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1982-02-24 第96回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十四日(水曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 羽田野忠文君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 高鳥  修君 理事 中川 秀直君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君       石橋 一弥君    今枝 敬雄君       上村千一郎君    大西 正男君       木村武千代君    高村 正彦君       佐藤 文生君    佐野 嘉吉君       白川 勝彦君    森   清君       渡辺 秀央君    下平 正一君       鍛冶  清君    安藤  巖君       林  百郎君    田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 坂田 道太君  出席政府委員         警察庁長官官房         審議官     鈴木 良一君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務大臣官房司         法法制調査部長 千種 秀夫君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省矯正局長 鈴木 義男君         法務省保護局長 谷川  輝君         法務省訟務局長 柳川 俊一君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   森広 英一君         防衛施設庁総務         部補償課長   角谷 弘幸君         外務省北米局安         全保障課長   加藤 良三君         文部省初等中等         教育局高等学校         教育課長    中島 章夫君         文部省初等中等         教育局教科書管         理課長     佐藤 禎一君         文部省大学局大         学課長     齋藤 諦淳君         厚生省援護局庶         務課長     岸本 正裕君         建設大臣官房官         庁営繕部営繕計         画課長     小川 三郎君         自治省行政局選         挙部選挙課長  岩田  脩君         自治省財政局調         整室長     亀田  博君         最高裁判所事務         総局総務局長  梅田 晴亮君         最高裁判所事務         総局人事局長  大西 勝也君         最高裁判所事務         総局民事局長兼         最高裁判所事務         総局行政局長  川嵜 義徳君         最高裁判所事務         総局刑事局長  小野 幹雄君         最高裁判所事務         総局家庭局長  栗原平八郎君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十四日  辞任       補欠選任   井出一太郎君     渡辺 秀央君   佐野 嘉吉君     石橋 一弥君   鍛冶  清君     矢野 絢也君 同日  辞任        補欠選任   石橋 一弥君     佐野 嘉吉君   渡辺 秀央君     井出一太郎君   矢野 絢也君     鍛冶  清君     ――――――――――――― 二月二十四日  スパイ防止法制定促進に関する陳情書外二十  四件  (第一〇号)  同外一件  (第一一三号)  国籍法改正に関する陳情書  (第一一号)  刑法改正反対に関する陳情書  (第一二号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署職員  増員に関する陳情書  (第一三  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一一号)  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 羽田野忠文

    羽田野委員長 これより会議を開きます。  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 法務大臣所信表明を承りまして、奥野法務大臣の昨年の検察長官会同における訓示並びにやはり昨年の辻検事総長全国検察長官会同における訓示等を見まして感ずるところがございます。坂田さんの所信表明の中で、「厳正な検察権行使に遺憾なきを期し」という言葉がございます。奥野法務大臣は「刑事政策的配慮を加えた有効適切な検察の実現に努めるとともに」というところが関心を引きました。辻検事総長訓示にあっては、再審事件がふえたということの中で、「このことをも契機として、この際、この種凶悪重大事犯捜査処理公訴維持遂行等について改めて検討を加える必要があるものと考えます。」「緻密な公判活動を推進して事案の真相を余すことなく法廷に顕出するよう指導し、」という点がございます。  私が申し上げたいのは、今日ロッキード裁判を通じて検察陣国民の非常な信頼のもとに緻密な法廷における活動をしておることが特徴的なことであります。しかし、一方においては、この辻検事総長訓示にありますように、再審事件がふえた、したがって公訴維持遂行について改めて検討を加える必要がある、捜査処理についても同様だ、こういうことを昨年言及をしておりまして、奥野さんは同じ席上で、これはどういうつもりで言われたか知りませんけれども、この問題についても若干触れておるような気がいたします。  ロッキード事件における検察陣国民的信頼と相まって、もう一つ最近新聞なりいろいろなところで出てまいりますのが、不起訴事案が注目をされるところであります。この不起訴事案につきまして、私が本委員会で提起をいたしました農地不正登記、五十五年十二月から昨年にかけまして農地不正登記が九人全員起訴猶予となりました。それは一方で脅迫をして登記所職員に対して不正登記をなさしめた者、それが誤りであったと思ってもこの不正登記に応じた職員ともども起訴猶予となりました。これが非常に、新聞にタイトルで「後味悪い”やり得”」「農地不正登記」「全員起訴猶予」と出ております。  一方では、やはり同様、国会におきます武器輸出問題における堀田ハガネ、この堀田ハガネ起訴猶予となりました。不起訴となりました。国会においてはこれは貿管令違反として各党超党派の追及に遭ったものでありますが、通産省としては明らかにこれは法違反事件として処理をしたにかかわりませず、兵庫地検はこれを法廷において維持することができないという理由をもって起訴猶予、不起訴となったわけであります。  この「厳正な検察権行使」ということが、このロッキード事件とこの種起訴事件というものはまだほかにもあるわけでありますが、一方においては法廷において公訴維持することが困難であるものについてはちゅうちょをしているのではないか、やるべきところをやらないのではないかという批判が存在をしておると私は思います。その点についてどうお考えでございましょうか。
  4. 前田宏

    前田(宏)政府委員 どういうふうにお答えしたらよろしいかと思いますが、まずその前提といたしまして、検察長官会同における当時の大臣あるいは検事総長訓示について、それを御引用されてのいまのようなお尋ねになっているようでございますが、大臣訓示の中で刑事政策的配慮が必要だということを言っておりますのは、別にその厳正な処理というものと矛盾することではないというふうに理解しております。別にこの機会に言ったわけではございませんで、毎々申されていることでございます。つまり、単なる事実認定だけじゃなくて、いろいろな有利、不利な情状というものも考え、その犯人なら犯人改善更生に役立つような処理をしろ、こういう趣旨でございまして、先ほど来のお尋ねのような問題にはつながらないことではないかというふうに思うわけでございます。  また、検事総長訓示の中で、最近再審になる事件等があるということを理由に、捜査あるいは公判活動検討を加える問題があるというような部分がたしかあったと思いますけれども、それも、その言わんとしたことは、有罪になった者がその後何年かたって再審ということになり、無罪ではないかというような論議を招いているわけでございますので、捜査についてももっとしっかりすべきである、公判活動でももっとしっかりやるべきである、そういう手落ちのないように、こういうことを言いたかったものであろうというふうに理解されるわけでございまして、公判維持が困難なものについて何か処分をちゅうちょするというか、弱気であるとか、そういうような趣旨のものではないというふうに理解しております。
  5. 横山利秋

    横山委員 たとえば、農地不正登記を引用してみましょうか。「グループの送検事実は、ウソ登記申請書作成、提出し(私文書偽造、同行使罪)、日比所長登記させた(公正証書原本不実記載、同行使)。また日比所長は、ウソと見破りつつ登記簿作成した(虚偽公文書作成、同行使)」こういう歴然たるものであり、これが間違いであったので、愛知県農政局それから法務局ともに全部洗い直して、その訂正を大がかりで数カ月かかってさせたわけであります。明らかにそれは間違いであった、犯罪に適合するということでありました。にもかかわらず、これほど歴然たるものが不起訴ということについては、どうしても市民的に納得がいかないのであります。  それは私の想像するところでありますが、この法務局職員が自発的に辞職をした、辞職をした者に対して遡及して犯罪として起訴することは忍びぬ、こういうことではなかったか。そうすると、その法務局職員を処罰しないなら、恐喝をしてそれを犯させた人間を片一方だけ処分するわけにはいかないではないか、そういう政策的配慮、そういうものが働いたのではないかと思わざるを得ないのであります。  それから、堀田ハガネにつきましても、もうこれは各位御存じのように、国会予算委員会であれだけ天下を聳動させたものである。それが砲身の材料がどうとか、あるいは砲身の中に線が入っていないとかという理屈をつけて公判維持が困難であるということも、少し地検態度に怯懦の気持ちがあるのではないか、そう思わざるを得ないのであります。  一つには政策的、政治的配慮一つにはもっともっと国民の負託にこたえて起訴をし、法廷において処分をする、法廷において決着をつけるという点についての勇気が足らないのではないか、私はそう考えざるを得ないのであります。いかがですか。
  6. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まず、具体的な登記関係のことでございますが、横山委員もいま仰せになりましたことで大体同じようなことになるかと思いますけれども、まず、いわゆる登記所長と申しますか、法務局出張所長につきまして、これは起訴猶予ということに確かになっております。それは理由はいろいろあるわけでございますけれども、これがいわゆる表示登記に関するものであって、たてまえとしてはいわゆる申請主義というものをとっているというようなことがまず前提にあるわけでございますし、横山委員も御案内のように、申請人の方が大変執拗に要求をしたということで、その物件の状況が宅地でないのにそれを宅地ということで登記をした、こういうことでございまして、そういう背景事情もございますし、また、先ほど御指摘になりましたように、本人が本件について深く反省をいたしまして責任をとったというようなこと、また、先ほどお話がありましたように、法務局におきまして洗い直しをして実態が正しくされたというような諸般の事情を考慮して、起訴猶予にしたわけでございます。  登記所長以外の関係者につきましては、先ほどのような意味で連鎖的に起訴猶予にしたというわけではございませんで、それぞれの事案ごと犯罪の嫌疑がない者あるいは証拠が不十分な者というふうに、それぞれ事案に応じた処理をしておるわけでございます。  一方、堀田ハガネ事件につきましては、昨年の十月に当委員会お答えをしておりますし、先ほど横山委員の方からお話がございましたので詳しくは申しませんけれども、要するに、あの物件輸出貿易管理令の別表の第一の一九七に掲げられておりますところの銃砲の部分に当たるかどうかといういわば事実認定の問題として立証が困難であるという、いわば技術的なと申しますか、そういう判断からそういう処理がなされたわけでございます。  したがいまして、検察庁といたしまして、いわゆる政治的な判断といいますか、配慮といいますか、そういうことを入れて処理をしたわけではございませんし、また、勇気がないではないかというようなお話もあるわけでございますが、一面から言えば、証拠が不十分なものを起訴するということはそれ自体適当でないわけでございまして、検察庁といたしましては、あらゆる事件につきまして証拠の有無を検討し、その証拠によってどういう程度まで事実が認定できるか、そして起訴、すべきかどうかという判断をした上で処理をするわけでございまして、御批判はあろうかと思いますけれども、特に特定な事件について何か消極的であるというような考えは持っていないわけでございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 大臣、お聞きになったとおりであります。私がここで申し上げたいのは、一つは、ロッキードにおける国民的期待というものが集まっておる、したがって、ロッキード裁判に関する検察陣に対する期待というものがかなり強いんだ、そのことについて毫もゆるがせにやってはなりませんということが一つ。それから、農地不正登記についてはきわめて証拠歴然たるものがある、なぜ政治的な配慮をするのか。それから、堀田ハガネについては国会の意思は決まっておる、通産省もこれを違法だと思っておる、それを検察陣がなぜ不起訴にするのかという批判でございます。いかがですか。
  8. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま刑事局長からお答えいたしたわけでございますが、私は、所信表明の中におきまして、やはり国民期待するような厳正な検察権行使に遺憾なきを期してもらいたいという願いを込めて申し上げたわけでございます。検察当局は、従来から厳正公平、不偏不党の立場を堅持して、具体的事件処理に当たって事案の軽重に即した適正妥当な検察権行使に努めておるというふうに承知をしておりますし、また、信頼をいたしておるわけでございます。
  9. 横山利秋

    横山委員 不起訴事案につきましての検察審査会活動につきましては、昼からの法案の際に取り上げたいと思います。  刑法改正について伺います。  刑法改正の問題について前奥野法務大臣が、この席上であるいは新聞記者会見を通じて、問題が起こったら直ちにそれをキャンペーンとする事例が二つございました。  一つは、新宿バス放火事件の際、間髪を入れずに奥野法務大臣は、これが精神障害者であるという前提に立って刑法改正を唱道されました。ところが、精神障害者とされた犯人が、その後の検査ではそうでなかったということが明らかになった言われておりますが、検察庁の意見を聞きたい。  それから、同じように深川事件犯人は、いまのところ精神障害あるいは刑法上の免責条項である心神喪失状態であったとは認められていないという報道がされておりますが、検察庁はいかがでございますか。
  10. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まず、いわゆる新宿バス放火事件でございますが、五十五年の八月十九日に発生しておりまして、警視庁で捜査をし、東京地検に送られて、東京地検におきまして慎重に検討の上で起訴をしているわけでございます。本人精神状態につきましては、捜査段階鑑定もされておりまして、結論的には一応心神喪失あるいは耗弱というまでには至らないという認定をいたしまして起訴をしているわけでございますけれども、その鑑定内容でも全く正常であるというわけではございません、若干の異常があるというふうに見られているわけでございます。しかも、公判におきましてもその点が問題になっておりまして、現に、裁判所が再度の精神鑑定をするという決定を去る二月十九日にされておるような状態でございますから、そういう意味精神状態に問題があるということは言えると思います。  また、深川事件でございますが、この件につきましても、結論的には起訴しておるわけでございますので、全く心神喪失であるとかいうわけではないわけでございますけれども、その捜査段階における上智大学の福島教授鑑定によりましても、刑事責任能力は相当限定されていた可能性はあるけれども、全く喪失というわけにはいかないというような御判断がされておるわけでございますし、また、その点が公判でも問題になっておるわけでございまして、弁護人側からも再度の鑑定申請があり、それについて裁判所がこれを採用するというような経過になっておるわけでございます。  なお、二つ事件だけお挙げになりましたけれども、それに接続いたしまして、新聞報道等でわりに大きく出たと思いますけれども、地下鉄内で大学生を包丁で刺したという事件がやはり去年の八月の二十日にあったわけでございますが、このケースにつきましては、心神喪失ということで不起訴処分になっておるわけでございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 私が申したいのは、いま仮に局長の言われるように、法廷において、いま、その精神障害者であるかどうか問題になっておる、どちらとも言える、譲ってもどちらとも言えるというような鑑定が必要である段階だというのでありますが、この深川事件の際には、犯人川俣軍司覚せい剤常用者であるかどうか判明する前に、政府覚せい剤常用者ときめつけて、保安処分導入のてこに使ったということなのであります。奥野法務大臣なんか最もその唱道者でございまして、新聞だったら、すぐ、それは覚せい剤、だからこれは保安処分が必要で、だから刑法改正が必要である、そういうやり方を一回のみならず、二回、三回とこれを使っておる。そういう点では、刑法に関する政府態度というものは国民を偶着するものだ、もっと慎重でなければならぬ、そういうふうに私は考えておるわけであります。  そこで、昨年、刑法改正作業の当面の方針としてお出しになりました、新聞でもいろいろ取り上げられておるわけでありますが、この名称保安処分から治療処分とするとしました。治療内容は、これによりますと「精神障害により放火、殺人、傷害、強姦、強制わいせつ又は強盗の罪に当たる行為をした者について、心神喪失のため罰することができない場合又は心神耗弱のため刑を減軽する場合において、治療施設に収容して治療看護又は習癖を除去するための措置を施さなければ再び精神障害によりこれらの罪のいずれかに当たる行為をするおそれがあるときは、裁判所は、治療処分に付する旨の言渡しをすることができるものとする。」とありますが、この名称を変えた意味と、それから、従来いうところの保安処分治療処分との違いは何でありますか。
  12. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいまのお尋ねお答えする前に、先ほどお尋ねに対しますお答えを若干補足させていただきたいわけでございます。  例の深川事件の直後に当時の大臣発言をされておりますが、その発言内容は、たとえば犯行の動機、精神状態を含めた背景事情はまだ明らかでない、今後の捜査によって判明することになろう、犯人精神状態は正常でないようにも思われるけれども専門家鑑定結果を待たなければ確定できない、覚せい剤常習者であるとの報道もあるけれども、まだその点は確認されていないというようなことを言っておられるわけでございます。  次いで、いまのお尋ねでございますけれども保安処分と申しますのは、いわば講学上といいますか、学問上の定着した言葉であるというふうにまず御理解をいただきたいわけでございまして、その内容といたしましてはいろいろなものがあるわけでございます。例の草案におきましては、精神障害者に対する治療処分と、薬物使用等習癖を有する者に対するいわゆる禁絶処分というものの二つ考えられておりまして、この二つをいわば総称するものとして保安処分という表題がつけられているわけでございますが、諸外国の立法例等によりますと、それ以外にも、たとえば労働を忌避する者について強制的に労働をさせるとか、さらにもっと広がりますと、運転免許の取り消しであるとか、そういうものまで広く含めて保安処分であるというふうに呼んでいるわけでございます。  現在私ども考えておりますのは、ただいま横山委員がお読み上げになりましたような基本的な考えを持っておるわけでございまして、実質的には、草案のいわゆる保安処分とそう違わないわけでございますけれども内容的には、精神病あるいは薬物使用習癖等に基づいて、それが原因となって精神障害を起こして、その障害によって一定の重大な犯罪をするというものを対象に考えておるわけでございます。そして、そういう者について、病気であれば当然治療でございますし、薬物使用習癖を除く措置というものも広い意味治療であるという理解をしておるわけでございます。したがいまして、草案考えられております二種類のものをいわば一本化して、それを実態に合わせて治療処分という名前をつけるのが適当であろう、こういう考え方から、いまの私どもの構想におきましては、治療処分という名前をつけるのが適当であろうというふうに考えているわけでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 よくわかりませんが、治療ということは、病人を治すという病人主体になる、保安ということは、それによって起こるべき犯罪を防止するための社会的立場主体になる、そうきわめて常識的に思われる。あなたの言うところの治療保安との結果的な違いというものがはっきりしないのですが、もっとずばり言ってください。
  14. 前田宏

    前田(宏)政府委員 結局、刑法で刑罰以外の犯罪に対する措置をするわけでございますから、当然のことながら、その本人の、まあ改善更生と申しますか、それを図って社会復帰をしてもらうようにするという面と、やはり危険な行為をした方であり、またそういうことが重ねられるおそれがあるということでございますから、そういう人について社会の安全を守るという意味、それを保安と言えば保安かもしれませんが、そういう両面があるわけでございます。  このいわゆる保安処分、現在考えております治療処分におきましても、やはり精神障害によってそういう重大な犯罪をした、現にしておる、そしてまた今後もするおそれがあるというわけでございますから、そういう人たちについてはどういうことをしたらいいかというのが実質でございまして、その場合に、そういう病気原因であるということであれば、それを治すということが本人のためでもあり、また社会のためでもある、こういう両面を持つわけでございまして、その両者はいわば矛盾するものではないと考えます。
  15. 横山利秋

    横山委員 よくわかりませんが、この「刑事局案の骨子」と言われておりますものに、「治療看護又は習癖を除去する」ということの中で、「習癖を除去する」という言葉がちょっと目につくわけであります。「習癖を除去するための措置」とは何でありますか。
  16. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いま三つのことを言われたわけでございますが、その第一の方の治療というのは、いわば狭い意味治療であろうと思います。純粋に、狭い意味病気に対する普通に言われている治療でございます。  看護といいますのは、それに伴って、当然看護的なものが必要であろうということでございます。  習癖を除去する措置と申しますのは、先ほど申しましたように、広い意味では治療であろうと思います。つまり、たとえば薬物の中毒になっておって、それが原因精神状態がおかしくなっておるということでございますから、それを何とかして治さなきゃいけない。その場合に、ただ病気である場合と、そういう平たく言えば中毒のようなことになって習癖を持っておって、それを除かない限りまた同じような状態になって、同じような危険なことをするおそれがある、こういうことでございますから、それを薬によってそういう習癖を抑えるというようなこと、あるいはいろいろな心理療法なり作業療法なり、いろいろな新しい療法があると思いますけれども、そういうことによって、そういう覚せい剤なら覚せい剤等の薬物に対する習癖、そういうものを除いていく措置がその実態に応じて当然医学的にも考えられておるわけでございまして、そういう措置を指しているわけでございます。
  17. 横山利秋

    横山委員 「習癖を除去するための措置」というのは、広い意味治療だとおっしゃる。  厚生省に伺いますが、いま措置入院制度で、治療看護、またはいま説明をされた習癖を除去するための措置はなされていないんですか。
  18. 三浦大助

    ○三浦政府委員 私ども精神障害者やあるいは覚せい剤の慢性中毒患者のような方々の措置入院の場合には、治療、保護それからなるべく社会復帰を早くさせようという方針でいまやっておるわけでございます。
  19. 横山利秋

    横山委員 私の質問に答えていないのですが、あなたの方は早く社会に復帰させたいとおっしゃるのだが、そのための措置の中に、治療看護または習癖を除去するための措置は含まれていないのかという質問です。
  20. 三浦大助

    ○三浦政府委員 措置人院のような場合には、そういうことも含まれておるわけでございます。
  21. 横山利秋

    横山委員 法務省が、いま厚生省がやっておるこの三つは全部含まれておるのにかかわらず、それを治療処分として特に特定しなければならない理由は何でありますか。
  22. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように、私どもは、犯罪が起こりました場合に、刑事手続の面でどういう措置を講ずるのが適当であるかということを考え立場にあるわけでございます。それは単に治安的な面だけじゃなくて、そういう行為をした人に対する面も両面考えているわけでございまして、そういう人たち社会復帰を図り、兼ねて一般の社会の安全を図る、こういうことでございまして、その場合に、正常人でございますならば刑罰という手だてがあるわけでございますが、正常でない場合には、いままでの考え方によりますと、いわば無罪あるいは刑が軽くなるというのが従来からの考え方でございます。そうしますと、当然のことながら、刑事手続の面から見ますと穴があくといいますか、そういうことになるわけでございまして、それなりの刑事手続の上での結論というものが必要であろうと思うわけでございます。  繰り返すようになりますけれども、その場合に、対象者がどういう方であるかによって刑罰でやる場合もありますし、また刑罰の中で懲役になる場合もありましょうし罰金になる場合もありましょうし、また実刑になる場合もありましょうし執行猶予になる場合もありましょうというようなことで、それぞれの事案あるいは当該本人との関係でいろいろな処遇が考えられるわけでございます。それと同じような意味で、精神障害によってそういう犯罪を犯した人に対しては、それなりの措置が必要であるというふうに考えるわけでございます。  一方、精神衛生法の面では、確かに精神障害のある方に対する措置というものが考えられておるわけでございますけれども、私どもの一応理解しておりますところでは、精神衛生法というのは、やはり本人の、患者のと申しますか、医療、保護ということが中心になっているということでございましょうし、各都道府県知事が判断をするということになっておりますけれども鑑定医の判断あるいは当該病院長の判断というものが実質的な根拠になっているということでございまして、そういうことから、性質上と申しますか、運用上と申しますか、あるいはさらにさかのぼって制度上と申しますか、そういう基本的な性格からくるおのずからなる限界があるのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。  したがいまして、それだけで果たして私ども考えておりますような目的を十分果たし得るであろうかということになりますと、私どもの方からも何がしかやるべきことがあるのではないかというふうに思うわけでございまして、そういう考え方の結果として出てまいりましたのが、現在考えておる治療処分の制度でございます。
  23. 横山利秋

    横山委員 長々とおっしゃるけれども、要するに、現在の措置入院制度について、法務省としては現状について看過できない、簡単に言うと、ぼくはそういうことに結論できると思うのであります。  それで、厚生省に伺いますが、いまこの刑法問題で、保安処分について、厚生省及び精神医療学会あるいは精神病院はかなえの軽重を問われておる。簡単に言うと、本来ならばあなたの方の責任であるけれども、見ちゃおれない。一体どうなっているんだ。おまえの方に任せておいたらだめだから、法務省が刑事政策の上でやらざるを得ないということに言及をされておる。しかも、そうは言いながら、この刑事局の案の骨子によりますと、「治療施設については、国立の精神病院等を用いることの可否につき、厚生省と話し合いつつ、検討中である。」見ちゃおれぬけれども、しかし、この治療処分は厚生省でひとつめんどう見なければいかぬぞということですね。こういうようなことについて、一体厚生省は基本的に現状を何と考える、その改善は何と考える、そしてこの治療処分について何と考えておるのか、伺いたいと思います。
  24. 三浦大助

    ○三浦政府委員 私ども精神障害者あるいは覚せい剤の慢性中毒患者によります犯罪の発生につきましては、重大な社会問題であるという認識は持っております。ただ、厚生省といたしましては、精神衛生法の理念に基づきまして、精神障害者に対します医療あるいは保護あるいはまた社会復帰が適正に図れるようにということでいままで努力をしてきておるわけでございまして、精神衛生行政というのは、医療と保護を理念としております。したがいまして、精神衛生行政と精神障害者による犯罪の防止ということは、これは次元の異なる問題でございまして、あるいはまた、精神衛生行政に犯罪者の処遇を直接求めるような措置ということは、これはなかなかむずかしいのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 なかなかむずかしいといったって、それは私の質問に答えになっておらぬじゃないですか。どういうことなんです。おれのところは医療と保護をやっているだけだ、犯罪のことなんかおれの知らぬことだということですか。  あなたの方のやり方が、気に食わぬとは言わぬけれども、まだるい、おまえの方がしっかりしておらぬからこういうことになるんだ、だから保安処分なり治療処分をせにゃならぬということを、わかりやすく言えばそういうことを言うておるわけですね。あなたの方は、そんなことをしてもらわぬでも、おれの方は医療と保護に万全を尽くしておる、早く社会復帰させたいけれども、もちろんこれを不十分のまま社会復帰させたならば犯罪を犯すおそれがあるときには措置入院を続ける、それはあたりまえのことでしょう。それが完璧にやっておれば、十分な効果を上げておれば、保安処分治療処分も必要でないではありませんか。第一義的にあなたの方の責任だということなんですよ。それについてお答えが不十分じゃありませんか。
  26. 三浦大助

    ○三浦政府委員 先ほど申し上げましたように、私ども行っております精神衛生行政というのは、精神障害者に対します適切な医療と保護を確保することを理念としておるわけでございまして、犯罪の防止というのは刑事政策の観点から、社会の安全の確保を図るということでございます。したがいまして、精神衛生行政というのは、犯罪防止の責務を直接的な目的とするものではございませんけれども、間接的にその防止には役立てる、こういうことでございまして、ただいま先生御指摘のございますように、私どもも現在、公衆衛生審議会の精神衛生部会におきまして、この措置入院制度を的確に運用するにはどうしたらいいのだろうかというようなことも、いま御審議をいただいておるわけでございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 どうも靴の上から足をかくようなお話ですね。私の質問にまともに答えていらっしゃらないような気がする。  いま検討中であるという治療施設について、国立の精神病院等を用うることの可否についてはどうお考えですか。
  28. 三浦大助

    ○三浦政府委員 現在の精神医療というのは非常に開放的になっておるわけでございまして、これは早く精神障害者社会復帰を図ろうということで、非常に開放的になっております。そこへ犯罪防止を目的とするような目的で病院に収容するということは、なかなかむずかしい。したがいまして、現在の時点では、国立病院を利用するというのは非常に混乱を起こすのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  29. 横山利秋

    横山委員 その点について厚生省から断られたら、法務省は一体どうするつもりですか。
  30. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まだ厚生省と御相談をしている最中でございますので、仮定論になりますので、その上で考えたいと思います。
  31. 横山利秋

    横山委員 刑法の自余の分についてお伺いしますが、「公務員機密漏示罪、尊属殺に関する規定等については、なお検討の上、決定する。」とありますが、特に公務員機密漏示罪というものが、現行の公務員の秘密保持、職務上の秘密を漏らした者については処分されるというくだりの条文は、きわめて広範に各法の中に存置されておるわけでありますが、それがなおかつこの刑法の中で特定をして重くしなければならない理由と、それからもう一つは、いま情報公開法を私ども国会に出しておるし、野党各党すべて出しておる。歴代の総理大臣が情報公開法について前向きに国会で答弁をしておる。この公務員機密漏示罪と情報公開法との関係は、まさにうらはらの関係である。この漏示罪を設定し、公務員に対して圧力を加えるならば、情報公開法の全き運用はできないものときわめて常識的に考えられる。この点についていかがですか。
  32. 前田宏

    前田(宏)政府委員 現在、公務上の秘密の保持につきましては、御案内のとおり、国家公務員法等に秘密を漏らしたということで処罰規定があるわけでございますが、法定刑が一年以下というようなことで、軽いわけでございます。それは、秘密ということでございますので、いろいろなもろもろのものが含まれているということもあるいはあろうかとも思いますけれども草案といいますか改正案の中で考えられております公務員機密漏示罪は、文字どおりいわば機密というものを対象にしておるわけでございまして、公務員法等で考えておる秘密よりはさらに重要な秘密を漏らした場合に、それはより重く罰せられてしかるべきではないかという考え方に立っておるわけでございます。  それから、第二の情報公開の法制化の問題との関係でございますけれども、いわゆる情報公開法の問題につきましては、公務員の守秘義務でありますとか、あるいはプライバシーの保護との関係でありますとか、いろいろな面があるわけでございますので、政府部内におきましていろいろと検討が進められておるわけでございます。  しかし、情報公開法が仮にできました場合でも、いわば適用除外と申しますか、私どもがいま考えておるような機密的なものにつきましては、当然適用除外ということが考えられるわけでございまして、諸外国の立法例でも、たとえば国の安全あるいは防衛、外交あるいは犯罪捜査、そういうようなことにつきましては適用除外ということにしている例が多いように承知しておるわけでございます。したがいまして、それを考えますと、情報公開法なるものができました場合でも、特に矛盾することにはならないのじゃないかというふうに考えております。
  33. 横山利秋

    横山委員 これは大臣に伺います。  刑事局長は法律の専門家でございますから、情報公開法だって適用除外があるだろう、だから両立するという答弁です。しかし、政治的に考えますと、この公務員機密漏示罪が刑法の中で確固たる地位を占めることになれば、それが公務員に対する心理的にも業務運営上にも大きな圧力を加えることははかり知れがたいものがあります。情報公開法というものは、いままで隠しておるお役人から知らせるお役人、サービスするお役人に意識変革をさせなければだめだと私は思っておるわけであります。当然のことであります。そうなりますと、いま区分けはなるほど局長の言うようにできても、きわめて常識的に言えば、両立しない、政治的には両立しない。いま何が一番大事であるか。行政改革の一つのポイントは、国民にサービスすることだ。サービスする中で情報公開法は必要だと、中曽根長官も行革委員会で答えておるわけであります。これは同時の問題でなくて、両立する問題でなくて、情報公開法こそ今日の重要な政治的課題であるとあなたはお考えになりませんか。
  34. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま刑事局長が御答弁申し上げましたとおりだと思うので、私はやはり両面があるというふうに思うので、矛盾はいたさないというふうに思います。
  35. 横山利秋

    横山委員 これはまた議論のあるところでございますが、私どもは、この情報公開法こそ今日の急務の問題であって、機密漏示罪の段階ではない。現にいま国家公務員法を初め各法にある公務員の守秘義務というものは、もうたくさんの法律にすべて載っておる。何がそれでふぐあいであるかという点について、毫も必要性を感じない、そう思いますよ。  それから、尊属殺についてでありますが、これまた「なお検討」ということになっておりますね。この尊属殺については、もう累次の本委員会で私ども取り上げたわけでありますが、最高裁の判決がありました際に、これは最高検からの通達が出て、事実上、刑法二百条、尊属殺についての条項は死文化しておるわけですね。この死文化しておる尊属殺についての規定については「なお検討の上」というのはどういう意味でありますか。
  36. 前田宏

    前田(宏)政府委員 すべて御案内でございますから、詳しくは申し上げませんけれども、いまお話しのように、最高裁判所で、二百条の規定につきまして、刑が重過ぎるという観点から違憲の判決が出ておるわけでございます。したがいまして、裁判の実務におきましてはこの規定は適用ができないというのが現実でございまして、それに応じまして検察庁といたしましても、被害者が尊属である場合に普通殺人罪の規定を適用して処理をしておるということでございますが、その一般の殺人罪の適用の中で、相当幅広い法定刑でございますから、情状によって適切な科刑が実現できるわけでございますから、いわば情状面でそういう点が考慮されているというのが実情であろうと思います。  この規定を削除するか、あるいは形を変えて存置するかということが次の問題でございますが、その点につきましては、これまでもしばしばお答えいたしておりますように、こういう問題についていろいろな物の考え方があるわけでございまして、直ちにいずれが正しいと言うわけにもまいらないようなむずかしい問題であろうというふうに理解をしているわけでございます。したがいまして、現在の改正作業の中でもそういう事柄が大変重要であり、かつ、むずかしい問題であるということでございますので、なお検討をいたしたいということに現在なっておるわけでございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 周旋第三者収賄罪について伺いますが、公務員に不正なことをなさしめ、または相当なことをなさしめざるようという言葉が入っておりますね。これは、たとえば私ども国会議員が地元の陳情を聞いて、政府、役人に対してこういうことをしてやってもらいたいということを言うたとします。そして、それを役人がそのとおりにした。そこで何が一体不正なことをなさしめたことになるのか、何が一体相当なことをなさしめなかったのかという点について、具体的に、できれば事例を挙げてあなた方の見解を一遍明らかにしてもらいたい。
  38. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいま御指摘の「不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為ササルトキ」ということは、いま考えておりますいわゆる周旋第三者収賄罪に特有の問題ではございませんで、現行法にございますいわゆるあっせん収賄罪、あるいは周旋収賄罪と言ってもいいかもしれませんが、それ自体にそういう表現があるわけでございます。第三者収賄にいたしますのは、賄賂の供与先が本人ではなくて第三者である場合を対象に加えようという趣旨でございますので、まずそのように御理解をいただきたいわけでございますが、それでは「不正ノ行為ヲ為シ又ハ相当ノ行為ヲ為ササルトキ」というのはどういう場合になるかといいますと、なかなかむずかしいわけでございますが、判例によれば、積極的なあるいは消極的な行為によってその職務に反する一切の行為を指すのだというような表現もあるわけでございます。  文字どおり「不正ノ行為」あるいはそれに見合うものとして「相当ノ行為ヲ為ササルトキ」ということでございますから、先ほどお尋ねのようなことで、たとえば陳情があって、できればこうしてやってほしいということで、それがその職務上許容される範囲内のことであれば、別に不正な行為をしたとかあるいは相当な行為をしなかったというようなことには当たらないわけでございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 時間がなくなってまいりましたが、刑法改正についていま日弁連と協議をしておられるのでありますが、その展望はどういうことになっておりますか。法務大臣所信表明によりますと、「国民各層の意見を十分考慮しつつ、真に現代社会の要請にかなう新しい刑法典が実現するよう、改正法案を今国会に提出することを目途として引き続き努力いたしたい」と言っておられるのでありますが、作業状況からいって慎重の上にも慎重にというのが法務大臣の御意見らしいのですが、今後の展望はいかがでありましよう。
  40. 坂田道太

    坂田国務大臣 刑法改正は、非常に基本的な法制であります。しかも、明治四十年以来の大改革ということでございますので、その内容もさることながら、手続も大事だというふうに私は考えまして、日弁連との会談も、就任いたしましてから十二月一回、一月二回目、そしてまた、今度三月の十七日に日弁連と交渉するという運びになっておるわけでございます。でき得べくんば今度の国会に間に合うように、最善の努力をいたしておるところでございます。
  41. 横山利秋

    横山委員 これは率直に言いまして、仮に国会へ提出されましても、一国会でこれが通過するということはとても考えられません。私どももいま刑事局の案を中心にして二、三お伺いをしたいのでありますが、われわれもきわめて議論のあるところでありますから、提出をされるに当たっては、手続上についても全く民主的に、遺憾のないようにされるように切望します。  監獄法について伺います。  ここに五十年六月二十四日の参議院の議事録がございます。福田国務大臣から、   この代用監獄業務は、明治四十一年の監獄法第一条第三項の規定の解釈としては、国から都道府県警察に委任された事務と解されますので、地方財政法第十二条の規定は適用されないと存じます。   代用監獄業務の内容は、御案内のように非常に複雑であり、その業務の性格が国と地方公共団体相互の利害に関係があるものであるのか、あるいはもっぱら国の利害に関係があるものであるのかについては、ここでにわかに断定することは困難であると存じます。   現在、国は代用監獄に拘禁または留置される者の費用を負担しているところでありますけれども、国と地方公共団体の財政負担のあり方及び代用監獄業務の特殊性等から見て、国が負担すべき費用の額等については、今後関係省庁において検討をされるべき課題であると考えます。 この結論についてまたるるやりとりがございますけれども、法制局長官もこれについて同様だと言っておるわけであります。  そこで、自治省に伺いますけれども、この代用監獄についての法務省との協議について、自治省の考え方を明らかにしてもらいたいと思います。
  42. 亀田博

    ○亀田説明員 お答えいたします。  代用監獄に係る事務の考え方なりあるいは経費負担の問題につきましては、ただいま先生の方から御紹介がありましたように、去る五十年の六月の地方行政委員会でいろいろな議論が行われて、その際に、政府側として統一見解を申し述べたところでございまして、具体的な問題につきましては、今後関係省庁において検討されるべき課題であるということになっておったわけでございます。  自治省といたしましては、代用監獄に係る経費の負担の問題について考える場合には、いわゆる代用監獄の事務の性格というのが問題になるであろうとは存じますが、経費負担の点に関してだけ申し上げれば、この事務の性格にかんがみまして、全額国において負担する方向で経費の負担区分を法令で明確に定めるとともに、所要の予算措置を講ずるべきであると考えまして、その後、関係省庁に対して申し入れをいたしておるところでございます。  経費的にはさようなことでございますが、この問題は、先ほど来申し上げますように、代用監獄制度の制度の問題にきわめて密接な関連がございますので、この制度の、あるいはそれを規定いたします監獄法の全面改正が関係省庁において検討がなされておるというふうに聞いておりますので、その際には先ほど来の問題はきちんと整理がなされるべきであるというふうに現在は考えておる次第でございます。
  43. 横山利秋

    横山委員 要するに、代用監獄問題は、基本的に、被疑者の身柄を警察に預けて捜査させると、自白の強要など無理な取り調べが行われる可能性が多いというのが天の声で、代用監獄をやめる、しかし、いまやめるといったってどうしようもないじゃないか、漸減をするという方向にコンセンサスが得られておると私は推察しておるわけであります。漸減をするという前提でありながら、いま自治省のおっしゃるように、代用監獄についての国と地方の経費の負担を明らかにする、つまり、要するに自治省としては銭をよこせ、おれの方でめんどう見ているんだから銭をよこせ、こういうことなんでございますね。  それから第二番目に、警察庁が警察拘禁施設法をつくりたいと言い出した。警察としては、警察で預かっておる、それは本来検察庁の人間だけれども、おれらが預かっている以上おれらに責任がある、したがって、おれらの職務権限なりやり方を法律的に明らかにする必要があるではないか、これもまた当然であります。しかし、当然ではあるけれども、自治省の要求や警察拘禁施設法は、代用監獄をここで固定化してしまうというおそれなしとしないのであります。その点について法務省はいかがですか。
  44. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 お答えいたします。  代用監獄の問題につきまして、法務省といたしましては、監獄法の全面改正ということに関連して、法制審議会におきまして各界の意見を十分に聞きながら、一応の結論が出されたわけでございます。  これによりますと、代用監獄の制度は基本的な形では存続させる、しかしながら、その内容の性格をはっきりさせる、これは財政負担の問題も含むわけでございますが、はっきりさせますとともに、代用監獄であるから被疑者あるいは被告人の権利に不当な影響がないように配慮をしていこう、それから、監獄法の全面改正ができました暁には、一方で法務省の方の努力によりまして代用監獄に被疑者、被告人等を収容する場合をなるべく少なくしていこう、それから、一方警察当局といたしましては代用監獄における業務の内容を公正かつ権利の保障に十分なものにしていく、こういうことで結論が出たわけでございます。  私どもといたしましては、現在、この線に沿いまして監獄法の全面改正を図るべく努力をしておるところでございます。
  45. 横山利秋

    横山委員 法務省は警察拘禁施設法に賛成ですか。
  46. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 現在私どもは、警察拘禁施設法というものの詳しい内容について、まだその内容を示していただいておりませんので、それが法務省の考え方あるいは法制審議会の考え方に反するとか反しないとか申し上げる段階ではございません。ただ、法制審議会の答申が出ます段階におきましては、先ほども申しましたようにあらゆる方面の御意見をお聞きし、特に警察庁からも関係官あるいは責任者が法制審議会に参加していただきまして、その全部の意見をまとめ、最後には全員一致という形で法制審議会の答申が出たわけでございますので、そういう経緯からいたしましても、法制審議会の答申の趣旨に反するような形で警察拘禁施設法案というものが出てくるということはないと理解いたしております。
  47. 横山利秋

    横山委員 法務大臣は、国が負担すべき費用の額については関係省庁で検討し、監獄法の改正のときに解決を図るという福田法務大臣の所見で、そのままでよろしいのですか。
  48. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 昭和五十年の国会で参議院において議論されましたところによりますと、問題になった点は二つございまして、一つは、代用監獄の業務を留置場で行わせる、すなわち都道府県で行っておるということについての法的性格は何であるのかということが問題になったわけでございます。それから第二番目は、これは当時の法制局長官のお答えでございますが、それが国の事務であるということになれば、それについての国と地方との財政負担をどういうようにしたらいいのかという問題でございまして、この二点につきましては、現在の監獄法改正の問題に絡みまして、自治省等と十分な連絡をとりながら、適正な解決を図りたいというように考えております。
  49. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、施設法が制定された場合には、警察の留置場へ入っている人間は、一体留置場に入っているのか代用監獄へ入っているのか、本人はわからぬ。けれども、留置場に入っている人間と代用監獄に入っている人間と、法律上は区別されるわけですね。留置場に入っている人間は施設法が適用される、代用監獄に入っておる人間は監獄法が適用される。部屋が別にあるわけじゃないから、同じような部屋ですね。そういうときに問題が起こった場合には、どちらの法律が適用されるのですか。
  50. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 法制審議会からいただきました答申によりますと、代用監獄としての留置場に収容された者につきましては監獄法、今度刑事施設法と言っておりますが、それの規定が適用される、こういうことでございます。
  51. 横山利秋

    横山委員 そんなうまいこといくものですかね。おまえはきょうから代用監獄におることになる、おまえは刑法の監獄法が適用される。しかし、適用されるといったって、監督しているのはお巡りさんですからね。お巡りさんがおまえはいままでは施設法によって処理しておったけれども、きょうからは今度は監獄法が適用されるということになる。お巡りさんがその区分けがうまくできるだろうか。そして問題が起こった場合に、施設法によってやっておるのは直に自分の上司だからそれでうまいこといくけれども、監獄法が適用されたときにその責任は、監督権限は法務省ということになりますね。そんな使い分けがうまくいくものですかね。
  52. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 この点は、現在におきましても、代用監獄につきましては監獄法の規定が基本的に適用されるということになっておりまして、法制審議会におきましては、この点をも前提にして先ほど申し上げましたような結論が出たわけでございます。  なお、使い分けができるかどうかという点については、警察庁の方からお答えがあろうと思います。
  53. 鈴木良一

    鈴木(良)政府委員 お答えいたします。  刑事施設法案と私の方の拘禁施設法案との兼ね合いなのでございますけれども、これも結局、先ほどからいろいろお話が出ておりますように、代用監獄の性格をどう考えるかという問題から出発する問題であるわけでございまして、それが費用負担の問題にも兼ね合うというところでございまして、その二点の問題につきまして、現在法務省とすり合わせ中であるわけでございます。したがいまして、刑事施設法の方でどういうふうに書くか、警察拘禁施設法の方でどういうふうに書くかという、書き方の問題を実は現在詰めておる最中でございまして、先生御指摘のように現実には使い分けがなかなかむずかしいわけでございますので、そこら辺のところは現実の問題を踏まえながら鋭意詰めてまいりたい、かように考えております。
  54. 横山利秋

    横山委員 監獄法改正部会の附帯要望事項が四つありますね。それに施設の運営協議会というものが出てまいりますが、運営協議会では、代用監獄をも含んで協議をするのでしょうか。  あるいはもう一つは、再審開始決定した者や死刑確定者の扱いを現状から変えるのかどうか。  それから代用監獄、これはあなた方と少し意見が違うのですが、将来なくするということなんですけれども先ほど、基本的には存置するがだんだん収容者をなくしていくという話でありました。事実上これを固定化するわけではないと私ども考えるのですが、存置による代用監獄の改善はどういうふうに行われるのか。  それから、いま言ったように代用監獄廃止の年次計画はどういうものなのかということが附帯要望事項でございますが、その点はどうお考えになりますか。
  55. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 ただいま御指摘のございました附帯要望事項と申しますのは、法制審議会の答申が出る一つ前の段階で、法制審議会の中の監獄法改正部会という部会が出しました答申の案の中に入っておるものでございます。  このうち、刑事施設運営協議会というような形のものが出ております。これは、附帯要望事項の性質からしてもそうでございますが、将来、監獄の運営、刑事施設の運営に当たっては、外部の関心を持っていらっしゃる方々、あるいは学識経験者あるいは関係の公務所等外部の方々の意見を十分に聞いていくという趣旨でございまして、この点については、今国会に提出しようとしております監獄法の全面改正案におきましても、部外者の意見を聞くように努めなければいけないという規定を設けることを考えておるところでございます。  第二点の「再審開始の決定が確定した受刑者及び死刑確定者と弁護人又は弁護人となろうとする者との接見交通」の問題につきましては、その後法務省それから関係の省庁といろいろ検討いたしました結果、この点については特別の規定を設けなくても、受刑者あるいは死刑確定者であって再審開始の決定があった場合には、刑事訴訟法三十九条の弁護人等との接見交通については被告人に関する規定が適用されることが解釈上できるということになりましたので、この点については特段の立法措置等は必要ないであろうというように考えております。  それから第三点の「将来、できる限り」「刑事施設の増設及び収容能力の増強に努められたい。」という点は、一昨年十一月に出ました法制審議会総会の答申におきましても含まれておるわけでございまして、これは附帯要望事項ということではなくて、全面改正ができた後の改正法の実施に当たって考慮すべき事項ということで掲げられておるわけでございます。  この点につきましては、御承知のように現在大変厳しい財政状況にございますけれども、法務省といたしましては、拘置所すなわち刑事の被告人、被疑者、勾留されている者を収容する施設をできる限り増強するということに努めておりまして、ここ二、三年の間にも新たに数カ所拘置支所等を新営新設あるいは改築いたしまして収容人員の増加を図っておりますし、明年度の予算においてもそういう点で一歩一歩前進できるように考慮を払っているところでございます。  最後の点については、これは警察の問題でございますので、別途お答えさせていただきたいと思います。
  56. 鈴木良一

    鈴木(良)政府委員 附帯要望事項の四でございますけれども、「関係当局は、刑事留置場の構造、設備及び管理機構の改善並びに収容処遇に当たる警察官の教養訓練の充実に努められたい。」という要望をいただいておるわけでございますが、私の方も、現行制度に必要な改善を加えた上で、被勾留者の人権の保障に欠けることのない制度として警察の留置場を整備したいということで、今日まで改善措置を講じてまいりました。  それで、最初の留置場の構造、設備の改善の問題でございますが、従来から格段の努力はしてまいっているところでございますけれども、特に五十四年の十一月に留置場の設計基準を全面的に改正いたしまして、五十五年四月から実施に移しておるところでございます。改正の主な内容といたしましては、留置室の設置形態につきまして扇形の原則を廃止する、あるいは留置室及び接見室の面積を拘置所並みに拡張する、あるいは留置人のプライバシーの保護を目的として、留置室の前面の下半分に不透明の合成樹脂板を張って遮蔽するということを内容といたしておりまして、昭和五十五年以降に新築する留置場は全部この基準でやっておるわけでございますが、それ以前に建築したものにつきましても逐次改善に努めておるところでございます。  それから、管理機構の改善の問題でございますが、これも捜査部門があずかるということが誤解を生ずるということでございますので、一昨年の四月に、従来刑事部門が所掌しておりました留置業務を全国一斉に行政管理部門に移しております。警察庁では従来の刑事局から長官官房に移しておりますし、府県の警察本部では、総務部のあるところは総務部へ、総務部のないところは警務部が所掌する、同じように、警察署におきましても総務課あるいは警務課というところが所掌するという形で、留置人の取り扱いはもちろんでございますけれども、接見、差し入れ等の業務もすべて警務課長の指揮のもとに行われるという制度に改めております。  なお、警察官の教養訓練の充実の問題でございますけれども、従来警察大学校でも幹部教養をやっておりますが、この内容を一層充実させました。また、五十六年度からは、府県の警察学校で、改めて任用する看守の教養を新たに二週間行うことにいたしまして、従来の教養期間を大幅に延長し、内容も充実させてやっておるところでございます。
  57. 横山利秋

    横山委員 建設省、おいでになっていますが、本委員会で歴代の法務委員長を中心にいたしまして、公式、非公式に霞が関法曹地帯のマスタープランについて、建設省、最高裁、法務省を呼んでその促進を図ったことがございます。終局的には、日本弁護士会の会館の建設か作業が進んでおり、全国で募金をしておるのだけれども、一体このマスタープランの中でどこに位置づけるのか、それがはっきりしないので、日弁連会館の建設作業が順調に進まない、こういうことでございます。  それでもう何回も、速やかにマスタープランをつくって、いま高裁が建築中でありますが、それがいつごろできるのか、それならば高裁はどういうふうに移ってその跡はどうなるのか、あそこの地帯の改造計画はどういうふうに進むのか、その点について何回も督励をしておるのでありますが、一にかかって建設省のマスタープランによらなければ、それが骨格ができなければだめではないかということで、そのままになって今日に至っておるわけであります。この間の、あなたの方がどういう作業を続けておって、いまどういうふうになりつつあるか、まず御報告を伺いたいと思います。
  58. 小川三郎

    ○小川説明員 お答えいたします。  御指摘の霞が関法曹地帯、私ども霞が関中央官衙地区のA地区と称しておりますが、この地区の国家機関の施設といたしましては、現在建設中の東京高等、地方、簡易裁判合同庁舎のほかに法務省の総合庁舎、それから合同庁舎の第六号館、いずれも仮称でございますが、これらの建設が予定されております。  国政の中枢機能を持つ中央官衙地区の施設整備につきましては、A地区のみならず、中央官衙地区全体の長期的な施設需要等の見通しを考えまして建設計画が必要でございますので、現在、中央官衙施設の現況調査をもとにその関係省庁との協議を進めているところであります。  御指摘のA地区についてでございますが、弁護士会館の建設問題を念頭に置きながら、現在法務省と業務の適正な執行に必要な施設規模等につきまして協議を行っているところでございまして、なお昭和五十七年度におきましてA地区についてのマスタープラン作成のために必要な事項の調査を実施することとしております。
  59. 横山利秋

    横山委員 予算はついているのですか。予算は要らないのですか。
  60. 小川三郎

    ○小川説明員 それにつきましては、この調査と申しますのは、マスタープランを作成するために必要な施設の規模あるいは設備機能等の設計諸条件を整理するというための調査でございまして、既定経費の中で実施することと考えております。
  61. 横山利秋

    横山委員 法務省は、これはどなたが所管されるわけですか。この種の法曹地帯でございますから、法務省としての考え方があると思うのですが、どなたが御報告なさいますか。
  62. 筧榮一

    ○筧政府委員 前回も横山委員お尋ねがございましてお答えしたところでございますが、私どもといたしましては、法務本省の建築につきましては建設省といろいろ御協議をしておるところでございます。これにつきまして、日弁連の方からぜひその地域に会館を建設したいという御要望がございまして、弁護士会の業務の性質上もこの地域に建設されることが望ましいというのが私ども考えでございまして、この点につきましてはその要望を建設省その他にお伝えして、側面から協力をしておるというところでございます。
  63. 横山利秋

    横山委員 去年もおととしも同じ建設省、法務省の答えなんですけれども、それではマスタープランができ上がるのはいつごろで、それはどういうやり方でできるのか。ひとつ確答をしていただきたい。
  64. 小川三郎

    ○小川説明員 マスタープランにつきましては、A地区だけでなくて、霞が関中央官衙地帯全体の計画の一環ということでございまして、いろいろな問題を含んでおりますので、各省庁と今後とも必要な調査を行いながら、また各省庁、関係機関の御要望を伺いながら、鋭意作業を進めていきたいと思います。
  65. 横山利秋

    横山委員 いつごろできるのですか。三年かかっているじゃないですか。何しているのですか。
  66. 小川三郎

    ○小川説明員 それにつきましては、それぞれの官署と十分な協議をしなければならないということで、いつということにつきましてはお許しいただきまして、鋭意努力を……。
  67. 横山利秋

    横山委員 やる気がないのじゃないですか。三年かかっているのですよ。私、最初口火を切ったのは三年前です。
  68. 小川三郎

    ○小川説明員 五十七年度につきましても、そういうことで調査をいたすように考えておりますので……。
  69. 横山利秋

    横山委員 五十八年度でも五十九年度でも、もうちょっとはっきり言ってください。何年も何年も同じことを質問しておって繰り返してはいかぬから、五十七年度中にはマスタープランをつくります、そう言ってください。
  70. 小川三郎

    ○小川説明員 五十七年度中にマスタープランの諸条件を確定できる調査を行いまして、その上でさらに作業を進めたい……。
  71. 横山利秋

    横山委員 それでは、マスタープランのできるのはいつですか。
  72. 小川三郎

    ○小川説明員 その時期につきましては、明確にお答えすることは御勘弁いただきたいと思います。
  73. 横山利秋

    横山委員 まことに私は遺憾千万だと思います。こういう質問をすることも、あなた御存じの上でいらっしゃっておると思うのです。大体、法曹地帯の高等裁判所の建設も順調に進んでおるようなんですから、あとのことの方法がもういいかげんに話がつかなければだめだと思うのです。  最後に、時間がなくなったのでちょっと飛ばしてしまったのですけれども、商法について伺います。  ポイントは、省令の公布が四月以降になるそうだということでありますが、問題点であります財産上の利益の無償供与の開示をめぐる点で、総会屋の排除や政治資金の明朗化を図るためにも株主に送付する営業報告書で開示すべき、あるいはまた、商法改正で監査役の権限が強化されたのであるから、仮に無償供与で違法な支出があるなら、その支出について監査報告書で示せばいいとか、法務省が昨年十月に公表した試案のように、附属明細書で開示すればいいとかということで、一致点がまだ見出されないという話であります。本件は、商法改正の法務委員会において、くどく私ども野党側から、政府にその点を明らかにせよ、政治資金の明朗化、総会屋の排除のためにも十分やれ、こう言っておるところであります。きのうラジオだったか、車の中で聞いておりましたら、警察庁は総会屋一一〇番を設置するという話だそうでございますけれども、今度の商法改正がねらいがそういうところにあるとすれば、この辺で、何か消極姿勢を示しておる財界の人間の言うことに負けて、省令公布が骨抜きになるということを大変心配しておるのでありますが、いかがですか、
  74. 中島一郎

    中島政府委員 省令の制定につきましては、法制審議会商法部会の意見をよく聞いて、これを十分に尊重して行うということで、商法部会ともお約束をしておりますし、また、国会の附帯決議にもそのように指摘をされておるところでございます。そこで私どもといたしましては、まず商法部会の意見と申しましょうか、結論を待っているというところでございます。  ところで、商法部会におきましては、昨年の夏以来数回にわたって審議されまして、問題点もほとんど煮詰まってきております。ところが、ただいま御指摘ございました無償供与の開示の問題その他二、三の点につきまして、委員の間でまだ意見の対立が若干ございまして、意見の一致を見るに至っていない。そこで、二月三日の商法部会におきましては、結論を出すことをいたしませんで、委員の間であるいは関係者の間でもう少し意見の調整をしてみようということになったわけでありまして、現在鋭意調整中でありますので、私どもとしては間もなく商法部会としての御意見をお示しいただけるものというふうに考えておりまして、その御意見をお示しいただいた上で私どもの結論を出したい、こういう段階でございます。
  75. 横山利秋

    横山委員 これは、省令は政府の行政の枠の中にあることでありますけれども、しかし、国会の意思というものはきわめて率直果敢に申し上げておるわけでありますから、もうおれの方の権限だから、おれの方の判断に任してくれとは言わせませんから、そのつもりで国会の意思というものが正しく反映するように商法部会におきましても御説明を願いたいし、私どもの要望を明白にひとつお伝えを願いたい、こう思います。  以上です。
  76. 羽田野忠文

    羽田野委員長 林百郎君。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、まず法務大臣の政治姿勢についてお尋ねしたいと思います。  あなたの所信表明の中には、検察庁は常に「国民信頼期待にこたえるよう、誠心誠意、その職責を尽くしてまいりたいと存じます」と、こう書いてあるわけであります。それから念のために、あなたが統轄している検察官に対する、修習生に対する教育の要綱を見てみますと、こういうことが言われておるわけであります。「検察官は、常に視野を広め、識見を高めることに努めるとともに、健全な国民感情を正しくつかみ、国民から深い信頼を得るよう絶えず謙虚な反省を行わなくてはならない。」ということを検察官に常に修習生のころから言っているわけですね。  そこで、情実入学というか、入学に対するあなたのあっせんというか、どういうことですか。この問題ですが、いま日本の国の教育の全般的な秩序というものは、上級学校へ入学する場合には、やはり点数を中心にして、原則にして、もちろんその人柄だとかなんとかということも考慮はいたしますけれども、原則は点数なんですよ。だからこそみんなが必死になって勉強をしているわけなんです。いまちょうど入学の時期でございますし、そういうときあなたが、そういうペーパーテストだけでは教育は成り立たないんだ、総合的な人格形成やいろいろの点を考えなきゃならないということで、あなたがああいう青山学院へ推薦をして、そのことのために合格点を取った者が不合格にされてしまって、あなた方が推薦した者が逆に入っている。そういうことが果たして国民信頼をかち得る法務当局の総帥としてのあなたの立場に適当なものであるかどうかということですね。  たとえば、昭和五十三年度の青山学院の高等部の入学を見ますと、男は百九十五点、女子は二百三十二点なければならないのです。ところが、福田さんが推薦した人は百十四点なんです。一たんはこれは不合格になったけれども、福田さんの推薦だということで、二百三十二点のところを百十四点で入学させているわけです。あなたが推薦したCという学生は、男は百九十二点以上が合格点なのに、Cという男の人は、あなたの親戚とかここにちょっと書いてありますけれども、それはあなたの個人的な問題ですから、後であなたの説明も結構私聞くつもりですが、百九十二点以上なのが百七十八点。はなはだしいのは、Mという人は、百九十二点合格なのが、坂田道太氏の推薦によって百七十三点で入学しているのです。  こういうことは、あなたの予算委員会また昨日のあなたの教育に対する、前文部大臣ですから教育に対する一定の見解を持っておるのは当然だと思いますが、あなたのおっしゃることは、それは教育評論家としてそういうことをやるということは結構でございますか、いまの日本の国の入学の基本的な体系というものは、やはり合格点を取る、それによって正々堂々と入学するということじゃないでしょうか。  それをあなたが青山学院へ紹介状を出す、福田さんが紹介状を出して、二百三十二点なければならないのが百十四点で合格している。そのために正常な点数を取った人がそれだけ外されちゃうわけなんですから、そんなことが、大臣の資格を持っている人は二重丸で、二百三十二点のところを百十四点でも合格できるのだよということがわかったら、それはいま非行問題だとかいろいろなことが言われますけれども、まじめに勉強する気になりますか。うちのお父さんは福田さんと、あるいは坂田さんとよく知っているんだから、なあに勉強なんかしなくたって、坂田さんから紹介状一つ出してもらえばいいよということになったら、どうなりますか。だから、私はいろいろは言いませんけれども、あなたはこういうことを再びやるべきでない。そういうようなお約束をここでしていただけますか。  これは青山学院の大木院長も、点数がはなはだ低い者を合格させたということはまずい、こういうことはこれからやめます、そう言っているわけですね。それから、あなたと同僚の文部大臣も、これは記者会見で言っているのですが、私学だということで情実入学は不明朗だ、あってはならないことだ、私学としては仕方がないという考えは困る、こう言って、大学当局も謝り、文部大臣も謝っているのに、あなたはこれに対して、法の秩序を守る、国民信頼をかち得なければならないという検察の最高の地位にあられるあなたは、再びこういうことはしない。あなたが推薦したことが、学校の内部ではこういうことになって、二百何十点も要るのが百十四点ぐらいで合格して、合格した人はそのために落とされているということを考えた場合に、なおこういうことをお続けになりますか、どうですか。
  78. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、参議院の共産党の委員の方から御質問がありましたので、それにお答えをいたしたわけで、こちらから積極的にそのようなことを申したわけではございません。しかも私が申しましたのは、紹介したことはある、それをはっきり申し上げた。そして、それはわれわれの代議士仲間の常識じゃないかという意味を申し上げたにすぎないわけでございまして、いま林先生が御指摘のように、いま制度となっておりまする試験制度をぶち壊すようなことはやるべきではないというふうに私は思っております。法務大臣になりました以上は、やはりその点は配慮していかなければならないなと考えております。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 私も、あなたの答弁はいろいろ聞いています。選挙区に対してできるだけのサービスをしておくということはわれわれの常識だということも聞いておりますけれども、それはやはりけじめをつけなければいけないと思うのですよ。だから、国会議員の常識だったって、われわれはそんなことしたことないですよ。それはあなたの常識かあるいは自民党の常識じゃないですか。そういう方法によって選挙民にサービスする。そして泣く泣く合格点を取っている子供を落とさして、逆転さして、合格点を取らない者を入学させるというようなことは、あなた、いま法務大臣になった以上はそういうことは再びやらないように十分慎重な態度をとるとおっしゃったから、そういうように聞いておきます。  それで、なおあなたから弁解を聞いておかなければならないことは、あなたは教科書協会から二十万、これは光村図書出版社ですが、この社長の稲垣さんが教科書協会の会長をやっていますが、昨年の八月六日、これは記者会見で自分で言っておりますから。二十万坂田さんにもお出ししました。これはあなた、記憶ありますか。
  80. 坂田道太

    坂田国務大臣 それは記憶ございません。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 昨年の八月六日の会見で、会長はみずから社長を務めている光村図書出版の例として、自民党国会議員とのつき合いを並べ立てた。後援会費として坂田道太さん年間二十万円、あと砂田重民さんに十二万と書いてありますが、あなたはこういうことを言われて、この人に何かこういうことを言われては困るとかなんとかおっしゃいましたか、取り消してもらいたいとかなんとか。
  82. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、事実がないものでございますから、そういうことは申しませんでした。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし、そういう重要な、場合によっては涜職にも関係するようなことを言われて、事実がないからといって黙っていていいんでしょうか。あなたの名誉のために、あなたに正義感があったら、とんでもない話だ、もらわないものをどうしてもらったと言うんだと言うべきじゃないでしょうか。そう思いませんか。それが国民の前に、今度あなたは法務大臣になったのですから、法務大臣としての姿勢を示す大事な手だてじゃないですか。
  84. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、林さんと同じように三十六年国会に出ておりまして、身辺を清潔にするということを実は心がけてきておるわけでございます。私も一人の人間でございますから、いろいろ間違ったことをやることもあったかもしれません。しかしながら、この点に関しましては、私、良心に誓ってそういうことをしないというふうに、最大限の努力と慎重さでもって今日まで来たつもりでございます。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたがもらってないと言うなら、あなたの方の弁解を一応聞いておきますけれども、これも、昭和四十七年にもう政界を退かれました石井光次郎さんの後援会への献金として、五十年から五十五年の間に七千四百五十万円の献金が教科書協会からされている。  いま教科書の検定だとかあるいは偏向教育とかなんとか言われているときに、こういう教科書協会から金をもらっているというようなことを、事もあろうに今度は法務大臣になったあなたが、これはどの新聞を見ても書いてあるのですよ。これはある地方紙ですけれども、やはり稲垣氏が、私はいろいろ議員さんの後援会にも入っていますから、年間十二万とか二十万の会費を払っているわけです。坂田道太さん、砂田さん、文教委員ではありませんが、まあある人の名前、自民党の議員さんの名前が出ています。これは省きますが、会社の経理から出していますと、どの新聞にもみんな出ているのですよ。  これだけ言われた人が法務大臣になっても、国民信頼する気になるかどうか。そういうことをあなた考えられましたら、これはやっぱり稲垣さんに、もらってないならもらってないということを一言言うべきじゃないですか。それでなければ、これから法の厳正な適用を考えられるあなたの立場としては、これはまずいじゃないですか、念のために助言しておきますけれども
  86. 坂田道太

    坂田国務大臣 私も政治家でございますから、いろいろ間違ったことがあったとは思いますけれども、こういうことが記事に出ましたものですから、実は私の後援会でございますね、それを調べてみたわけでございますが、それには記載がございません。ありません。だものですから、私も別にどうということもいたさないで今日まで至っておるというのが本当の実情でございます。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 一応あなたの言うことをお聞きしておきますが、私は、こういうことはやっぱり稲垣さんに言って、国会でそういう質問を受けた場合には、私も稲垣さんに事実無根のことを言われて大変迷惑だ、あなたから取り消してもらいたいということを言うべきだと思いますが、あなたがどうしても言わないというならば、やむを得ません。  それから、あなたは五十四年の選挙収支報告、これは収支報告ですから。熊本県のトラック協会から十万円の金をもらっていますね。これはあなたの収支報告に記載してあります。これは間違いないでしょう。
  88. 坂田道太

    坂田国務大臣 その点、五十四年だったか、五十一年だったかと……。私、五十一年と聞いているのでございますけれども、ございます。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 問題は、この熊本県のトラック協会というのは軽油引取税の分配を受けているわけです。軽油引取税というのは、これは自治省の次官の通達で、わが国がやるべきことをかわってやるから、その費用について基準財政需要額としてこういう軽油引取税の一部を配分するということになりますので、実質的には国から出ている金と同じなんですね。国から出ている金をもらっている企業は政治献金をしてはならないし、またもらってもならないということになっているわけですが、その点は確かめられましたか。この熊本県トラック協会というものは、国からそういう補助金なりそういうものをもらっているかどうかということを調べられましたか。
  90. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、五十一年と聞いておりましたものでございますから調べたわけでございますが、確かにそのトラック協会か何かからは入っている。そして、うちの事務の方はそういうふうな届け出をしておる、こういうことなんです。  五十一年と申しますと、私、防衛庁長官の時代の選挙ではなかろうかというふうに思いますので、そのときは役目柄全国を駆け回っておりまして、そういう金がどうなっておるのかは全然私自身は知りませんし、いわんやそのトラック協会がどういう、政府から何かお金をもらっている、補助金を出しているというようなことも私はそのときは承知をいたしていないわけであります。また、うちの者どもも知らなかったと思います。そう申してもおります。ところが、聞いてみますると、何かトラック協会にお金が出ているということは承知いたしたわけであります。
  91. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっと大臣の記憶を改めるために、ここに熊本県公報がございますから、これをちょっと見てください。昭和五十四年十二月三日付の公報です。「昭和五十四年十月二十二日第一回の報告分」とありますから、これを見てください。——わかりましたか。
  92. 坂田道太

    坂田国務大臣 私の記憶違いでございます。
  93. 林百郎

    ○林(百)委員 国からどういう名目にしても補助金が出ている、援助金が出ているということになりますと、これは公選法で、出してもいけないし、政治に関して寄附をしてもいけないし、もらうのもいけない。これは三年以下の禁錮、二十万円以下の罰金。罰金になっているのですよ、あなたは知っているかどうか知りませんが。これは五十四年の十月ですから、この十月で時効になるのをあなたは待っているのかもしれませんけれども、これは思い過ぎかもしれません。しかし、これは捨ておきがたいことなので、あなたとしては適切な処置をとるべきだと思いますが、どうするお考えですか。
  94. 坂田道太

    坂田国務大臣 私は、法律上の知識が実はございませんのでわかりませんが、よく調べまして、どういう法が適用されるか、法務大臣でございますから、これはやはり何人といえども法の前には平等であるわけでございまして、それには従わなければならぬというふうに思います。
  95. 林百郎

    ○林(百)委員 具体的な例はそうしておきます。  そこで、この前、奥野法務大臣のとき問題になりましたが、田中角榮氏の判決も早ければことしの暮れ、来年の春と言われていますけれども、この前、榎本前夫人の証拠採用について検察態度を非難がましいことを言い、あるいは裁判所証拠決定にまで及ぼすようなことを言われまして、事実上指揮権発動のようなことを言われたわけです。田中角榮に対する判決というものは、自民党にとってもまた政府にとっても非常に重要な影響のあることはわかります。わかるけれども、しかし法務大臣である限りは、少なくとも検察官はその有罪のために全力を尽くして立証に努力しているわけなのですから、その一番の責任者であるあなたが、このロッキード事件の推移につれて、この前非難を受けたような奥野法務大臣の行ったような言動はしないということを、ここで約束できますか。
  96. 坂田道太

    坂田国務大臣 前法務大臣がどういうふうにお話しになったか、つまびらかではございません。しかしながら、公判中の問題につきましては、私、検察信頼していきたいというふうに思っております。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 それでついでに、これを厳正に事実を調査して刑事処分をすべきものはすべきものというけじめをつけてもらいたいのですが、実は私の方の調査団が新潟へ行って、いわゆる田中ファミリーの企業の調査をいたしましたところが、新潟県の公共事業の約六、七割がいわゆる田中ファミリーと称する幽霊会社にとられているということがわかったわけです。そのうちで特にはなはだしくて、新潟県の県自身も、うその申告をしたということで、三カ月ですか営業停止をしておりました越後道路サービスというのがあるわけなんですが、これは机もなければ店もない、営業所もないというようなところで、それからその後、違う会社も幽霊会社を設立したようですが、少なくても幽霊会社で虚偽の届け出をして建設業の許可をとったとなりますと、行政措置としては営業の停止、取り消しができますが、同時に、それは刑事処分にも該当するわけなんです。  建設業法の四十五条の三項、虚偽または不正の事実に基づいて許可を得た者は三年以下の懲役、三十万円の罰金とあって、これは各新聞社でもみんな書いているわけですが、机一つないのですね。それでいて年間に七千万円ぐらいの仕事をとって、そのうち六千万円ぐらいは完全に下請に出しているというひどいやり方をやっているので、新潟県と言えば、田中ファミリーが建設業についてはほとんど支配をしているというような状態ですが、これについては、うその届け出をしたということですでに行政的な措置は県がしているわけですから、これについてはひとつ事実を調べて厳重な刑事的な処置をするようにすべきだと思いますが、どうですか。大臣刑事局長と両方に聞きましょう。もう行政措置はされているのですよ。
  98. 森広英一

    森広説明員 いま御指摘の事柄は二月十九日付の報道で承知をしておりまして、これにつきましては、事実関係につきまして若干の関心を持って、若干の調べをしておるところでございます。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 若干の調べということはどういうことなんですか。もう県の方は、うその届け出だということで営業の停止をしているでしょう。そうすれば、それは当然刑事罰と連動してくるのに、若干の取り調べぐらいで済むのですか。あなたは警察の方ですか、刑事局ですか、どっちです。
  100. 森広英一

    森広説明員 警察庁です。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 警察庁ですか。そんなことでいいですか、あなた。一方では行政措置されているのですよ。行政措置というのは、うその届け出があったから、やめているのですよ。ところが、建設業法で言えば四十五条で、うその届け出をすれば処罰するということになっているのに、若干の関心を持っているぐらいでいいですか。要するに、そういうことをすれば、田中角榮という男にひれ伏しているんだ、警察も検事局も新潟県では頭が上がらないということになりますよ。そんなことで警察や検事局の権威が確立できますか。もう一度考え直して、捜査をするならする、措置するならするとはっきりここで言いなさいな、あなた。何ですか、その態度は。
  102. 森広英一

    森広説明員 若干という言葉が何か大変誤解を受けたようでございますが、新聞に出ておることの事実関係を確認をしておる、こういうことでございます。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 何であなた新聞だけを頼りにするのですか。新潟県に警察本部があるでしょう。何でそこに問い合わせをしないのですか。新聞の記事を見ているだけでいいのですか。そんなことならだれだって見ていますよ。あなたは捜査責任者でしょう。それがそんなことでいいですか。すぐ県の警察本部に聞いて、これはどういうことなんだ、刑事的な責任はどうなるんだということを問い合わせないでいいんですか。あなた、何でそんなに歯切れの悪いような、遠慮をしたようなことを言っているのですか。将来のあなたの出世にでもかかわるのですか。はっきり言いなさい。
  104. 森広英一

    森広説明員 新聞の記事を見て知りましたので、そのことが事実であるかどうかということを新潟県警において、たとえばそういういろいろやっている内容を申し上げるわけにもいきませんけれども、監督関係官庁とも連絡をとって事実関係の確認を県警がやっておるという意味で申し上げたわけでございます。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣、田中角榮というのは、ロッキード問題と絡んで、これに厳正な措置をとるかとらないかということは、日本の法曹界というか、ことに検察当局の権威にかかわることですから、いま警察では取り調べすると言いましたけれども検察当局の方も事実を確かめて、措置すべきものはきちっと措置すべきだと思いますが、どうですか。
  106. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいま警察庁の方からお答えがありましたように、現地の新潟県警でそれなりの措置をとっておられるようでございますので、検察当局におきましても、警察と十分連絡、協議をいたしまして、適切な対処をすべきものと考えております。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 それからもう一つ。これは私の方の調査によるのですけれども、二月二十二日、うちの瀬崎さんの質問でわかったのですが、三井建設の宮城取締役の営業報告によりますと、楠という人、これは東北農政局なんですけれども、これを三井建設の仙台支所に採用している、見返りとして半年で五億円を確保することができた、こういう報告があるわけなんですが、新聞によりますと、かつて自分と直接に関係のある事業に役人が天下りする場合には人事院の承諾あるいは当該大臣の承諾を得るのに、一年四カ月も承諾を得ていない。また、こういうポストをあなたに与えるからひとつうちの会社へ来てくれと言うことは、一つの賄賂にもなるという判例もございますが、このことについても三井建設と東北農政局との関係について、これは厳重な取り締まりあるいは捜査をしなければならないという段階に来ていると思いますが、そのことについては検察当局はどういうように考えていますか。警察でも、どちらか手をつけている方、まず言ってください。
  108. 森広英一

    森広説明員 いま御指摘の問題につきましても関心を持って情報の収集に当たりたいと思っておりますが、まだ具体的にそういう犯罪があるということで本格的な捜査を県警が開始したという報告は受けておりませんけれども、関心を持って情報を収集していると思います。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 将来刑事的な責任が及ぶということになるとすれば、やはり厳正な措置をとるべきだと思いますが、これは刑事局長、どうですか、当然のことだと思いますがね。
  110. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいま警察の方からお答えがありましたように、まだ具体的な事実関係も十分把握されていないようでございますから、それから先のことでございますので具体的なお答えはいたしかねるわけでございますが、一般的に申しまして、林委員の仰せのとおりであろうと思います。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 それから、これも選挙法の百九十九条、二百条の違反で、現閣僚が八人、前、元閣僚が十七名、それからさらに次官あるいはそのほかも入れまして、四十七名の選挙法違反のリストを私の方で提供いたしました。警察の方はこれについて捜査をするという意味のことを言っておりますが、その後、これはどうなっておりますか。
  112. 森広英一

    森広説明員 御指摘のように、この前の刑事局長の答弁以来、対応する各都道府県警察に指示をいたしまして事実関係の調査を現在させておるところでございます。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 御承知のとおり、これの時効は三年なんですよ、三年以下の禁錮、二十万円以下の罰金ですから。そうすると、これを見ますと、早いのはことしの五月ごろから時効になっちゃうのですね。時効になったのじゃどうにもしようがないわけですが、あとは政治的な倫理の問題になりますけれども、これは法務省の刑事局としてはどうしていますか。あなたは法務委員会で何か歯切れの悪いような答弁をやっておりましたけれども、どうするつもりですか。これだけの者が違法資金をもらっているということになると、こういうことが許されるとすれば、これは国民にとっては大きな問題ですが、どうなさるおつもりですか。
  114. 前田宏

    前田(宏)政府委員 予算委員会で別に歯切れの悪いお答えをしたような記憶もないわけでございますけれども先ほど来警察からもお答えございましたように、警察の方で事実を調査中であるということでございますから、その結果を待って適正に対処いたしたいということでございます。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 その捜査がおくれてもし時効になったらどうなるのですか。どういう責任をとりますか、局長
  116. 前田宏

    前田(宏)政府委員 犯罪捜査の場合に、時間がかかりまして時効になる場合もないわけではございません。しかし、一般的に言えば、時効にならないように、その前に処理をするのが当然でございます。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 じゃ、時効にならないように処置をなさるということを刑事局長が答弁されたと聞いていいですね。時効の前に処置するのが通常のやり方です、こう答えたと聞いておいていいですね。そうじゃないと、五十四年の七月ごろのもありますから、至急に捜査をしなければいけないわけです。だから、通常は時効になる前に処置をされる、それが捜査のたてまえですというようにあなたが答弁したと聞いておいてもいいでしょうか。  それからもう一つ、これは警察でもいいのですが、鈴木総理は予算委員会で、出身県は岩手県ですか、岩手県の警察と目下相談をして、法律の知識もなかったから指導といろいろの御注意も受けていますと言っていますが、その後、岩手県と鈴木総理と、政治資金との関係についてどういう交渉をされていますか。それが一つと、それから書きかえると言っていますけれども、書きかえの事実はあるのですか。その三つ答えてください。最初に刑事局長、時効の問題を。
  118. 前田宏

    前田(宏)政府委員 私が申しましたことを林委員が確認をされておるわけでございまして、その間にどうも違いがないような気がするのでございますけれども先ほど申しましたように、犯罪捜査でございますから、できるだけの努力をして事実関係を明らかにするということは当然でございますけれども、一般のこととして言えば、時効になる場合もないわけではない、しかしそういうことにならないようにするのが当然であろうということを申したわけでございます。
  119. 森広英一

    森広説明員 二点お尋ねでございますが、一つの、書きかえした事実があるかどうかという点につきましては、私どもではそのことはまだ承知しておりません。  それから、その前にお尋ねの岩手県警察に相談をしてその書きかえ云々ということについては、全く関知をいたしておりません。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 鈴木総理が岩手県の県当局と、いろいろ助言を受けたり、調査のし直しですか、いろいろのこともしているということは、何もしていないということですか、何かしているということですか。予算委員会で総理はそう答えていますね。
  121. 森広英一

    森広説明員 総理がどのようなことをされているか、私は関知しておりません。また、答弁を引用してお尋ねでございますが、それは何か警察に云々という答弁ではなかったように思いますけれども、お間違いでないかどうか、それは別の機関かもしれませんが、私の方は、とにかくそういう書きかえの指導をするとか相談を受けるとか、そういうようなことについては関知しておりませんので、御理解をいただきたいと思います。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 自治省来ていますね。——自治省の方で、何か岩手県の選挙関係のそれぞれのセクションと鈴木総理との間で、鈴木総理の届け出、これは事務当局が当たっていると思いますが、何か接触があるという話を聞いていますか。
  123. 岩田脩

    ○岩田説明員 御指摘もございましたので、岩手県の選挙管理委員会の方に様子を聞いてみました。総理の新聞記事でございますか、あれに関しましては地元の後援会の関係者の方が選挙管理委員会にお見えになりまして、届け出を訂正する場合の書式の書き方とか、そういったことについてお話があったそうでございますけれども、まだ正式にそういった届け出が出ているといったようなことではないように聞いております。それ以上のといいますか、そういった手続についての問い合わせ、相談といいますか、そういう書式等の問い合わせを受けたということだと聞いております。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 これは書きかえれば犯罪の成立がなくなるのですか、刑事局長。一たん事実に間違いないことをお届けしますといって届け出て、そして新聞に発表になり国会で問題になったら、それじゃ書きかえます。法律を知らなかったと言うが、言うまでもなく、法律を知らないことをもって罪とならないということにはならないわけですね。書きかえれば罪にならないのですか。四十何人が全部書きかえるということになるのですか。あなたは何か選挙運動に関しての献金と間違えたんじゃないかとかなんとか、選挙運動というようなことで範囲を狭めるようにしましたが、条文にはそんなことは書いてないのですね。選挙に関してと書いてあるわけですからね。書きかえればいいのですか。
  125. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほどから何か誤解があってはいかぬと思いますが、私は選挙運動に関しというふうに狭めるようなことをお答えした記憶はございません。そういうこと自体お答えした機会がないわけでございます。  それから、いまの書きかえ云々のことでございますけれども、これはまた一般論ですけれども、仮に犯罪が成立している場合に、そういう報告書を直したからといってその犯罪の成否が変わってくるということはないわけでございますけれども、その前提として、もしその事実関係自体が犯罪にならないものであって、それをまた事実に合わせるように直したということであれば、もともと問題のないことでございます。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 だってあなた、選挙法でこれは事実と間違いありませんと誓約書をくっつけて出しているわけでしょう。それを後で事実と違っていたから書きかえることを認める、そういうことはできるのですか。これはもう明らかに証拠の隠滅じゃないですか。  それじゃ刑事局長、仮に書きかえたとしても、今度は政治資金規正法の方で、国から補助金だとか援助金だとか、そういうところからもらっている企業、あるいは個人もそうでしょうが、そういうものはもう一切政治の寄附をしてはならない、またもらってもならない、同じく禁錮三年以下、二十万円の罰金ですね。書きかえたって、今度それに該当するかどうかはまた別な問題でしょう。それはどうですか。
  127. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まず、前段のことにつきましては、予算委員会で同じようなことをお答えをしたつもりでございます。つまり、実態が問題なんであって、実態が違反しておれば違反でしょうし、違反していなければ違反でないでしょう、こういうことを申したわけでございまして、それ以上のことを申したつもりはございません。  また、いま第二段のお尋ねでございますが、あのとき以来問題になっておりますのは、国といわゆる請負契約的な関係のある場合ということで問題になっていたわけでございまして、先ほどお話しのような政治資金規正法の補助金等の交付を受けているという問題としては議論されていなかったと思います。
  128. 林百郎

    ○林(百)委員 議論したかしないのじゃなくてそういうものに該当すれば新たな犯罪が成立する可能性があるだろうということを聞いているのですよ。
  129. 前田宏

    前田(宏)政府委員 規正法に当たる場合にはその違反になるということは当然でございますが、私が申しましたのは、そういうことがあの事案で問題になっているのではなくて、国と請負契約にある相手から寄附を受けたことが選挙法違反になるんじゃないかということが問題にされていたということでございます。
  130. 林百郎

    ○林(百)委員 問題になるかならないかじゃなくて、このことがどういう犯罪類型に該当するかどうかということを調べるのが検察当局でしょう。だから、誓約したものをいまさら事実と違っていましたと書きかえること自体が、私は証拠隠滅だと思いますよ。  しかし、百歩譲って、事実と違っていたから事実に違わないような届け出をする、そうしたとしてもまた違う犯罪類型に該当する場合は、当然違う犯罪類型として検察当局としては独自の捜査ができるわけでしょう。できないのですか。論議がそこで——論議というのは国会でやったたけですからね。検察当局は全般的な視野で事案を見ることができるわけですから、当然できるわけでしょう。それをやらないと言うのですか。もし違う犯罪類型に該当するようなことになるとすれば、書きかえても当然検察当局としてはそれについて関心を持つということはあたりまえじゃないですか。どうですか。
  131. 前田宏

    前田(宏)政府委員 これも誤解をいただいていると恐縮でございますが、先ほども明確に、政治資金規正法の規定の要件に当たれば、その違反になるということを申したわけでございます。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、文部省にはおいで願ってお聞きしなくて恐縮でしたが、先ほど大臣の答弁を引用しましたので、改めて文部省の見解をお聞きする必要はないと思いますので、もしお忙しかったらどうぞお帰りくださいませ。文部省だけはお帰りくださいませんか。  それから、今度の問題は、昭和五十二年九月二十七日にアメリカのファントム偵察機が横浜で墜落して、二人の子供を亡くして、みずからも傷害を受けた林和枝さんが、ことしの一月二十六日の未明に亡くなられて、しかも二人の幼児の名前を呼びながら、六割も七割も焼けただれていたその皮膚を何とか回復して、そして健康な体になって子供を抱きたいと言いながらも死んでいったわけなんですけれども、これについては、加害者の米軍のパイロット二人、ジョン・エドウィン・ミラーとドーニ・R・ダービン、この責任はいまどうなっているか。これはどこですか、施設庁ですか、あるいは検察庁で聞いていますか、どっちか所管でひとつそれに答えてください。
  133. 前田宏

    前田(宏)政府委員 あるいはお尋ね趣旨を取り違っているかもしれませんけれども、刑事事件としては、五十五年の十二月二十六日に、当時の事故を起こしましたパイロット等につきまして不起訴処分がなされているわけでございます。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 これは第一次裁判権はアメリカ側にあるわけでしょう、公務上の軍人がやったのですから。起訴というのはどこが起訴したのですか。日本政府ですか、アメリカ政府ですか。
  135. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いや、先ほど申しましたのは、検察庁におきまして起訴しない、つまり不起訴処分に付されているというふうにお答えしたわけでございます。
  136. 林百郎

    ○林(百)委員 どうして不起訴処分にしたのですか、私がさっき説明してしまったけれども
  137. 前田宏

    前田(宏)政府委員 こういうケースにつきましては、いわば形式面といいますか手続面と実質面と両方があるわけでございまして、処理の結論と申しますか、その面におきましては、先ほど委員も仰せになりましたように、わが国に第一次裁判権がないという形で不起訴処分をしているわけでございますが、そういうただ形式的な処理をしただけではなくて、実質につきましても鋭意捜査を遂げまして、結局被疑者とされているパイロット等につきましては、刑事責任を負うに足りる、つまり過失を認めるに足りる証拠がないという実質的な判断をいたしておるわけでございます。
  138. 林百郎

    ○林(百)委員 子供が二人も死んで、家が壊されて、それでいままた林和枝さんが死んでいるのに、過失致死にもならないのですか。もっとも、第一次裁判権がアメリカにあるのだからですけれども、そんな見解をあなたは持っているのですか。それよりは、第一次裁判権がアメリカにありますので、日本に裁判権がありませんので、これはアメリカの裁判権に服するのだ、そういうことではないですか。日本政府が独自で不起訴だの起訴だの決められるのですか。地位協定の十七条にそんなことが書いてあるのですか。
  139. 前田宏

    前田(宏)政府委員 そういうことでございますから、先ほど来申し上げておりますようにいわば両面があるので、処理の結論といたしましては第一次裁判権なしという理由で不起訴処分にしておりますが、実質につきましても、事柄が重要でございますから、いろいろと捜査をいたしましたということを申したわけでございます。
  140. 林百郎

    ○林(百)委員 何だかわかったようなわからないようなことですが、それで結局、アメリカではどうなったのですか。その報告は聞いていますか。
  141. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど来林委員におかれましては、事故が起こった、被害者が生じた、それ自体まことに痛ましいことでございますけれども、いろいろな交通事故その他災害もあるわけでございますが、結果が起こったからといって、そのすべてが刑事事件になるわけでもございませんで、やはり実態に応じ、証拠によって判断さるべきことでございまして、起訴されるものもありますし起訴できないものもあるということは当然であろうかと思います。  そこで、この場合には、私ども認定といたしましても、過失を認めるに足る証拠がないというのが実質的な判断でございます。向こう側の御判断はよくわかりませんけれども、聞いております結果だけは、向こう側としても処分は特にしていないというふうに聞いております。
  142. 林百郎

    ○林(百)委員 何たる情けないことかね。あれほど悲しんで林和枝さんが亡くなり、子供が二人亡くなり、家は壊され、そして裁判になっているのに、日本政府も不起訴だ、向こうも不起訴だ、アメリカに対するそんな屈辱的な態度はないと思うのですよ。  それでは、これは検察庁にお聞きしますが、公務上の死亡事故で——殺人、強盗、強姦でアメリカ軍人、軍属が犯した件数は、安保条約が成立してから何件ですか。日本人が被害者ですよ。
  143. 前田宏

    前田(宏)政府委員 どうもお尋ね前提がちょっと間違えていると失礼でございますが、誤解があってもいけませんので申し上げますが、いま仰せになりましたような殺人とか強姦とか強盗とかいいますものは、公務中の犯罪ではむしろないわけでございまして、つまり、もとから申しますと、地位協定の上では米側に第一次裁判権がありますのは二種類あるわけでございます。その一種類は、被害が合衆国側にある場合、あるいは合衆国自体、さらには軍隊の構成員、軍属、それらの家族が被害者である場合、それが一つの類型でございます。それから第二の類型がいわゆる公務中の犯罪ということでございまして、いま仰せになりましたような事件は、むしろ第一の類型に属するものでございます。
  144. 林百郎

    ○林(百)委員 それはいいですよ、第一の類型で結構ですから、公務上強盗、強姦もないでしょうが、主に殺人だと思いますが、あるいは殺人というか過失致死罪もあると思いますが、それでは日本人が亡くなった事案というのは何件ありますか。外務省でわかっていますか。
  145. 加藤良三

    ○加藤説明員 米側が第一次の裁判権を行使した犯罪で日本国民が被害者である事件の最終の裁判結果について、日米合同委員会の場を通じまして通報がありました件数は、三十五年の六月以降四件でございます。その内訳は、有罪三件、無罪一件ということでございます。
  146. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの方からいただいた資料は、公務上で発生した件数が三万八千四百七十四件、死亡者が四百九十四件、こうなっています。これをお見せしますね。「米軍事故の年度別、公務上・外別発生件数、死亡者数及び公務上補償金額」講和条約発効後五十六年九月末まで、こういうことで出ておりますが、これは違いますか。
  147. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 いま先生から見せていただきましたその資料は、防衛施設庁から出したものでございます。  防衛施設庁といたしましては、地位協定十八条関係の事故発生件数という形でとらえておりまして、被害者の救済の立場から、被害の大小または態様のいかんにかかわりませず、事故が発生したものはすべて被害者または関係省庁、たとえば自治体でありますとか警察でありますとか米軍でありますとか、そういうところから発生の事実の通報を受けたという件数をまとめたものでございます。  それでまいりますと、昭和二十七年四月から五十六年九月までの事故発生件数は、公務上で三万八千四百七十四件ございます。死亡者は四百九十四名でございます。それから、公務外につきましては十一万七千八十三件、死亡者は四百七十九名となっております。
  148. 林百郎

    ○林(百)委員 それで、検察庁に聞きますが、裁判にかかったのは三万八千四百七十四件のうち三件だけですか。殺人でなくても、公務上の件数がこれだけあったわけなんですね。このうち裁判にかかったのは幾つあるのですか。
  149. 前田宏

    前田(宏)政府委員 あるいは重ねて防衛施設庁の方からお答えがあった方がいいのかと思いますけれども、公務中、公務外といいますのは、補償の関係での区分であろうと思うわけでございます。したがいまして、その数が全部犯罪だという意味ではないというふうにまず前提があると思いますので、その点を御理解いただきたいわけでございます。
  150. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がありませんから急いで聞きます。  公務上と公務外で合わせると十五万あるのですよ。そのうち裁判にかかったのは一体幾つあるかと聞いているのです。公務上でもいいから、公務外で日本が第一次裁判権を持っているのでもいいから、それはあなたの方でわからなければ、施設庁わかりますか。
  151. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 施設庁では、それは把握しておりません。
  152. 林百郎

    ○林(百)委員 検察庁も把握してないんだね。
  153. 前田宏

    前田(宏)政府委員 古くからのことはすべて把握しているわけでございませんが、たとえば五十五年の一年間について見ますと、検察庁でおよそ米軍関係の事件を受理したのが、総計で三千件余りございまして、起訴したのが千件余りあるわけでございます。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 それは公務上ですか。公務外で日本が裁判権を持っているのですか。
  155. 前田宏

    前田(宏)政府委員 結局、起訴いたしますには、日本側に裁判権がある場合になるわけでございます。
  156. 林百郎

    ○林(百)委員 昭和五十五年だけですが、あとはわからないですね。言えないですね。安保条約が成立した、いま施設庁が言った二十七年から五十六年までの総数の中で、公務上が三万八千四百七十四、公務外が十一万七千八十三といいますが、それは言えないですね。
  157. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど来何回も申しておりますように、林委員のおっしゃる公務中というのは、全部それが犯罪だという前提でどうもお尋ねが繰り返されているようでございますけれども、その数は、いわゆる補償の関係で、公務と公務外とで補償の扱い方は確かに違うわけでございますので、そういう意味での区分がされているものと理解しております。
  158. 林百郎

    ○林(百)委員 非常にいいかげんな処置がされているので、われわれにはよくわからないことなんですけれども。  それで、施設庁にお聞きしますが、亡くなった林和枝さんとの賠償の関係です。  それから、いま裁判になっている椎葉さんとの関係はどうなっているか。  それから最後に、時間がありませんので、法務大臣にお聞きするのは、地位協定によって第一次裁判権、第二次裁判権というようなものがありますけれども、大体身柄が勾留されているのは、アメリカの軍人がやった場合あるいは軍属、家族もそうですが、日本が起訴して裁判にかけるまでは、身柄はアメリカ側が持っているわけですね。大体アメリカへ帰しちゃうわけですね。実際日本は、アメリカの軍人や軍属によって行われた行為の裁判権を非常に制限されていて、これは全く治外法権と同じ形なんです。これはやはり日本側の裁判の権利を主張して、日本側が当然の裁判を行使して、その治外法権的な状態を是正していく方向で努力していかなければならないと思うのですよ。  これは最後に法務大臣にお聞きしますが、その前に施設庁から林和枝さんの賠償の問題と椎葉さんとの裁判関係とを聞いて——ちょっと、刑事局長じゃなくて、日本の治外法権の問題ですから法務大臣にお聞きして、それで私の質問を終わります。
  159. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 昭和五十二年九月に横浜市内で発生いたしました米軍機墜落事故によります林家に対する損害賠償につきましては、家財家屋等の財産関係及び御子息二名の遺族賠償、慰謝料等はすでにお支払い済みでございます。また、先ごろ亡くなられました和枝さんにつきましては、療養費及び看護料を毎月お支払いをいたしておりました。療養につきましてはできる限り協力をしてまいったところでございますが、このたび不幸な事態になりまして、私どもも大変お気の毒だというふうに思っております。今後遺族賠償、慰謝料等の措置につきましては誠意をもって対処する考えでございます。
  160. 林百郎

    ○林(百)委員 椎葉さんの方はいまはどうなんですか。
  161. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 椎葉家からは、椎葉寅生さんほか三名が原告となりまして、国及び事故のパイロット二名を被告といたしまして、昭和五十五年九月二十六日、横浜地方裁判所に訴訟を提起いたしております。
  162. 林百郎

    ○林(百)委員 それは、訴訟中だということですね。
  163. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 そうでございます。
  164. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは大臣
  165. 前田宏

    前田(宏)政府委員 大臣からお答えになります前に、事務的なお答えをまずさせていただきますが、先ほども、たとえば五十五年の例で申しましたように、相当数の起訴事件があるわけでございます。地位協定の土におきましては、日本側と米側といわゆる裁判権の分配という形で一次裁判権をどちらが持つかというふうに取り決めがされているわけでございまして、そのことは、たとえばNATO協定におきましてもそういう形がとられているわけでございまして、こういう外国の軍隊に施設等を利用させる場合の裁判権の取り決めとしては、最も合理的であると理解されていると思います。  なお、先ほど委員のおっしゃいましたように、何か犯人を米側が黙って帰してしまう、そのために裁判ができないんだというような前提でのお尋ねのように受け取れたわけでございますけれども、そういう事態はないというふうに承知しております。
  166. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣が答える前に、施設庁、いままでの賠償総金額はわかりますか。
  167. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 この横浜事故関係の賠償金額は、総額といたしまして約五億二千百五十万円でございます。
  168. 林百郎

    ○林(百)委員 総件数に対して。
  169. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 総件数でございますか。いま林家に対する……。
  170. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの方、二十七年から五十五年まで数字を出したでしょう。その総額はどうなっていますか、公務上の場合と公務外の場合で。
  171. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 私どもで把握しておりますのは公務上の支払い金額でございますが、二十三億二千四百万でございます。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 公務外は。
  173. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 公務外は、いまここに統計上把握いたしておりません。
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 どうして把握してないのですか。
  175. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 統計資料を全部整理すれば出るかと思いますけれども、現段階ではその整理をいたしておりません。
  176. 林百郎

    ○林(百)委員 私に後でいいから、統計上調べて、履けてください。
  177. 角谷弘幸

    ○角谷説明員 かなり時間がかかることと思いますが、極力やってみます。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 じゃ、大臣の答弁。治外法権の問題で私は非常に気になっているので、その答弁を聞かしてください。
  179. 坂田道太

    坂田国務大臣 ただいま刑事局長から答弁いたしましたように、日本側がやるべきことはちゃんとやっているということでございます。
  180. 林百郎

    ○林(百)委員 治外法権上は何も問題ないというのですか。刑事局長、答えてください。
  181. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、治外法権というのは全然手が及ばないという場合のことを指すのだろうと思いますけれども、地位協定で、日本側と米国側とでどういう場合にはどういうふうに分配をしていくかということで、つまり平たく申しますれば、事案に応じて米軍側でやるべきもの、また日本側でやるべきものをより分けているわけでございまして、そういうことでわが国における米軍関係者犯罪というものを適切に処理しているつもりでございます。
  182. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。  どうも時間超過して、申しわけありません。
  183. 羽田野忠文

    羽田野委員長 午後一時十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時十二分開議
  184. 羽田野忠文

    羽田野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所梅田総務局長大西人事局長川嵜民事局長兼行政局長、小野刑事局長及び栗原家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 羽田野忠文

    羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  186. 羽田野忠文

    羽田野委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  187. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 この法案についての質問をいたします。  最初に、このいただいた資料の中の2の「下級裁判所の裁判官の定員・現在員等内訳」というのがありますね。ここで判事が三十名、判事補が八名、簡裁判事が三十七名、こういうふうな欠員になっておるわけですが、これはどういうわけで欠員になっておるのかということと、この数字は現在では変わっておるかもわかりませんが、その後変わっておれば変わっておるということですね。それから、将来これをどうやって埋めていくのかということについて御説明願いたいと思います。
  188. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 ここに備考で掲げてございますように、この欠員の時点は昭和五十六年十二月一日でございます。判事、判事補につきましては、例年四月の初めに新しく採用しあるいは任命されるということになりますので、年度途中におきまして次第に退官、死亡等によりまして、そのような事情で少しずつ欠が生じてまいります。簡裁判事につきましては、例年八月の初めに任命されます。したがいまして、同じような理由で、十二月一日になりますと例年まあまあこの程度の欠が出てまいります。十二月一日現在でございますので、その後さらに少しふえてまいっておると存じます。数は正確には存じません。  ただ、判事、判事補につきましては四月一日に補充されますので、欠は全部大体埋まっております。簡裁判事につきましては、八月まで生じました欠は八月に埋まるということになっております。
  189. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 きょうは最高裁の人事局長が重要な会議があって出られないということでございますので、実はもっと聞きたいことがありますが、これは別の機会、ことに分科会がありますから、そちらの方にしたいと思います。  どういう点を聞きたいかといいますと、いま修習生が四月の十日前ですかに判事補に任官する人たちも出てくるわけですが、どのくらいおりますか、その際お伺いしたいと思いますが、例年だと大体どのくらいになりますか。普通は七、八十人くらいですか。ことし何名くらい志望者があるのですか。二回試験もありますからその結果もありますが、そうなってくるというとこの判事補の欠員は埋まってきて、そしてなおかつよけいにふえてくるのではないか。それから判事の欠員ですね、これがどういうふうに変化をしていくのかというふうなことなどや、それから簡裁判事は、これだけが今後どうやって埋めていくのかというような問題と、それから特に簡裁判事の任用の問題について、これは規則でやっているんでしょうけれども、もっとはっきりとした法的なものを確立していくというような方法をやる必要があるのではないかというような問題が残っているというふうに私は思うわけですが、これはきょうはそういう関係がありますので、お聞きをしないことにしておきます。  そこで、これも人事局長がいないから別の機会にした方がいいかと思いますが、裁判所におきますところの事務官を五名減らして書記官を六名ふやす、それで結局一名員数がふえる、こういうことですね。こういう法案ですが、ここで大きな問題は、事務官と書記官との待遇がいろんな面で非常に違っておるわけですね。これは私から申し上げるまでもないことです。そういうふうな点などの問題と、それから廷吏の人は、これは事務官ですね。これが研修所に入る場合に、法学部を出た人は一年間ですね。それから、そうでない人は二年間の研修を受けるわけですが、そういう人たちがどういう形で、所長選考か何かやるわけでしょう。所長選考をやってそこで合格した者が研修をするということですね。これはその経過をずっともう少し知りたいというふうに私は思っておるわけです。これは、廷吏の人はこのごろ大学の法学部を出た人が非常にふえていますね。ふえておって、そして内部試験を受けて研修所へ入って書記官になる人が非常に多いわけですが、こういうふうな経過もお聞きをいたしたいというふうに思います。  ここで、国会の速記者の方かおられるのであれですが、どうも裁判所の速記官とそれから国会の速記の人との間の労働時間、これがよくわからぬですね。片方に言わせると、片方の方は軽いと言うし自分の方が重いと言うし、そこにいろいろな意見がありまして比べようもなかなかむずかしいかとは思うのですが、こういうふうな問題についても予算の分科会でお聞きをするということにしておきたい、こういうふうに思います。  それから、もう一つ問題になりますのは、調停委員の選び方の問題なんですが、いままでは市町村を経由したり何かして選んでおったわけですが、いま所長が選ぶというか、これは調停委員候補を選ぶので調停委員を選ぶわけではないのですが、その選び方が裁判所なり検察庁の出身の人に偏り過ぎているのではないかという、どこかの弁護士会の決議みたいなものもあるわけですね。こういうふうないろいろな問題があるものですから、そういう問題も含めて別の機会にお伺いをしたいというふうに思っております。  そこで、一つ問題となりますのは、いろいろ出てまいりました裁判官の問題に関連をして、研修所の中に高裁の判事の人が一人行かれて、あと二人の方も行かれていろいろ研修をやられるということですね。それはまだ具体的に固まっていないとは思いますし、これもまた人事局の管轄ですから詳しいことは別の機会に聞きたいと思うのですが、総務局長ですか、わかっている範囲でお答え願えればということできょうは結構です。
  190. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 従来、裁判官の研修につきましては、裁判官である司法研修所の教官が担当してまいりましたが、教官は、同時に司法修習生の指導をも担当しておりますために、裁判官の研修に専念しにくい状況にあり、また研修の時期につきましても、すべての司法修習生が研修所を離れて全国各地の裁判所検察庁、弁護士会で実務修習を行っております九月、十月ごろの約三カ月間に裁判官の研修を集中せざるを得ない状況でございました。そこで、裁判官の研修の充実強化を図りますために、本年から司法研修所に司法修習生の修習とは別に裁判官の研修部門を置きまして、これに経験豊かな裁判官三名を裁判官の研修専任の教官として配置いたしまして年間を通じて研修を行えるようにし、また研修を受ける側の範囲も、これまでは判事補と簡易裁判所判事に限られておりましたのを広げまして、中堅の判事等まで拡大することになったわけでございます。研修の内容等につきましては、これから選任されます三名の方で具体的に練っていくのだというふうに聞いております。
  191. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いまのことに関連しましては、きょうは人事局長が所用でおられないということもありますので、この程度にしておきます。  そこで、司法法制調査部長にお伺いいたしたいのは、これは本当は大臣に聞けばよかったのですが、裁判所職員定員法を出すときになぜ法務省がやるのか。裁判所には内閣の行政機能もあるわけですが、予算については例の法律がありますけれども、素朴な疑問として、裁判所職員の定員法を出すのになぜ法務省がやるのだろうかということをだれでも考えるわけですね。何だか法務省と裁判所とが一体となっているみたいでおかしいじゃないかということを考えますので、なぜ裁判所のものを法務省がやるのかということと、それから司法法制調査部というのがこれまたよくわからないのですね。内容にどういうふうなものがあって、どういうことをやっているのかを御説明願いたいと思います。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕
  192. 千種秀夫

    ○千種政府委員 まず、法案の点でございますが、政府が法案を出すということになりますと、政府の機関のどこかで担当する場所が必要でございまして、法務省が裁判所の仕事に一番縁が深いものでございますから、法務省の中のただいま御指摘の私どもの司法法制調査部で担当して、この法案の作成準備作業をしているというわけでございます。  司法法制調査部がどういう仕事をしているかということは、一言で申し上げますと、司法制度に関する立法準備作業、調査及び法令、判例等の整備、それから統計、こういう仕事を包括してやっております。その一環として司法制度、すなわち裁判所に関係のある立法はすべて私どもが担当してやっているというわけでございます。
  193. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 弁護士会は独立した組織になっておるわけですけれども、弁護士法の改正とかなんとかいうときにはこの司法法制調査部が主管という形になるわけですか。なるとすれば、どういう理由からでしょうか。
  194. 千種秀夫

    ○千種政府委員 先生御承知のとおりに、現在の弁護士法は議員立法でできておりまして、これを改正する場合にどうするかということは、いままで直接例がございませんので私どももわかりませんけれども、たとえば沖縄の弁護士の特例とか、こういう問題が出てまいりますと、政府のどこで所管するかということになりますと、やはり司法法制調査部が一番縁が深いということになりまして、この間のいわゆる沖弁法の延長の場合も、これは議員立法でございましたが、立法準備作業のお手伝いという点では私どもがやっておりました。今後もそういうことになろうかと思います。
  195. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それでは、いろいろな詳しいことというか、そういうふうなものはまた別の機会にいたしまして、実は私のところに日弁連新聞というのをいつも送ってこられるのですが、その中に、奈良の弁護士会である裁判官に対して、これは昭和五十五年の四月に着任した裁判官ですか、その人に対して何か決議が出ておって、最高裁に対してもその決議書などが送られてきておるというふうなことが伝えられておるわけです。そこで、これはどういう点が問題となってこういう決議ができたのか、それから内容はどういうことなのか、こういうふうなことをまずお伺いをさせていただきたいと思います。
  196. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の奈良弁護士会の要望書でございますが、これは本年の一月十一日付の文書でありまして、奈良地方裁判所長、最高裁判所長官あてに提出されております。  この内容を御説明する前に事案の経緯を簡単に申し上げておきたいと思いますが、約束手形金請求事件につきまして原告が五十六年五月二十一日に訴えを提起して、被告は二人であります。手形の振出人と裏書人で、金額は五百万、こういう手形訴訟の形で提起されました。そして第一回弁論期日が六月二十九日というふうに指定されましたところ、被告の方に弁護士さんがつきまして、その第一回期日の三日前の六月二十六日に、受任したけれども実は岡山家裁へ出頭する必要があるので期日を変更してほしいという変更申請とともに答弁書が提出されました。しかし、六月二十九日の期日におきまして、担当裁判官は被告代理人、もちろん欠席でありますが、欠席のまま訴状陳述、答弁書擬制陳述ということで結審をした。そして翌六月三十日にその判決の言い渡しをした、こういう経過がありまして、その後その判決は原、被告代理人に送達されておるわけでございます。事実関係がはっきりしないのはそのあたりでありますけれども、その間にその手形判決の脱漏部分が補充された、これは言い渡し後のいわば違法な書き込みではないかというようなところが、この事件では問題になったようであります。  この問題とともに、奈良弁護士会の要望書には十三項目の事柄が書かれておるわけですけれども、いま申しました事件担当の裁判官について、この事件には関係なく、一般に訴訟指揮上いろいろな問題がある、善処してもらいたいという趣旨の要望書が提出された、こういう経緯でございます。
  197. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、いまのこれは要望書ですか。ちょっとはっきりしませんが、決議があって、決議を要望書という形で渡したということなんでしょうかね。その点が第一点です。  それから、六月二十九日の第一回の口頭弁論ということなんですが、これは手形事件ですが、原告の方の弁護士は大阪の方でしたね。その訴状の送達は当然大分前になっているわけですね。いつごろになっているのでしょうか。それから、弁護士のところへ行った日にちははっきりしないかな。そこまで記録にはわかりませんが、訴状の送達がいつなのか。  それからもう一つは、いま言った岡山家裁に行くというのは、何をしに行くから延期してくれということなんでしょうか。そういう疎明書類はついておるのですか。恐らくついていないかもわかりませんね。岡山とではちょっと離れているから疎明が間に合わなかったのかもわかりませんが、岡山家裁の何なんですか。審判なんですか、調停なんですか、何しに行くのかちょっとよくわかりませんが、そこら辺、疎明がどういうことなのか。  それから、何か答弁書には抗弁がついていたわけですね。この抗弁が法律的に成立する抗弁かどうか。これは手形事件ですから、手形が偽造だというのならこれは法律的な抗弁かもわからぬけれども、支払い猶予の抗弁みたいなのはよくありますから、法律的な抗弁かどうかわかりませんけれども、そういう抗弁が出ていたわけですね。そういう点はわかっている範囲で結構です。まだそこまで詳しいことはわからないかもわかりませんから、わかっている範囲があれば、わかっている範囲で結構です。
  198. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 まず最初の、要望書と申し上げましたが、奈良県弁護士会が決議をされまして、その決議を要望書という形で送付してこられた、こういう関係でございます。  それで、その後の事案の経緯でありますが、訴状の送達がいつされたかはちょっと明らかでありません。訴え提起が五月二十一日、それで五月二十八日に期日の指定をしておりますから、二十八日から一週間以内には送達されていると見てよろしいかと思います。したがいまして、指定された期日は六月二十九日でありますから、かなりのゆとりはあるはずであります。  被告代理人が岡山へ事件のため出張しなければならないという程度にしか、現在のところ、その事情は承知しておりません。  それから、その際出されました答弁書には、本件手形五百万円の約束手形は、百七十万円の借金の支払いの担保のために振り出したものだというような記載があるようでございます。  大体以上でございます。
  199. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、いまのを見ますと、期日の指定とそれから期日の第一回の口頭弁論の間に約一カ月ありますから、これは通常のやり方ですね。これではこの点は問題ないですね。早い人になると、二週間くらいで期日を指定する人がありますから、これは無理なんです。やはり一カ月はどうしてもなければならないので、この点は妥当と見てよろしいでしょう。  ただ、三日前にその答弁書を出したということがどういう経過なのか。ここら辺のところがわからないと、その二人の被告側の方で送達を受けたのがいつなのか。受けてすぐ相談をしないでそのまま握っていたのか。弁護士のところへ相談に行ったのがいつなのか。それがわからないとどちらの方に責めがあるかということはよくわかりません。三日前に出したというのは、よくその間の事情がわからないので、ちょっと判断しにくいところだというふうに私も思います。  それからいまの抗弁も、百七十万支払ったということの意味が振出人との関係では意味を持つかもわかりませんけれども、それは裏書人との関係では全然関係ないとも言えますし、抗弁が切断されますから、そこら辺のところがよくわからないのですが、いずれにいたしましても、それはそうなんです。  そこで、この脱漏ということについてはあなたの方も余り触れたがらないわけですが、東京地裁の場合の手形部ですね、手形部はいま場所はどこにあるのか忘れましたが、もと裏の方の何か汚いところにありましたね。流れ作業みたいにやっていて、ぼやぼやしていると自分の順番がわからなくなっちゃって、自分のは済んでいたりなんかしまして、書記官が下の方にいない。書記官が上の方にいましたね。  奈良では、手ワの事件ですから、これは普通は判決はどうなんですか。定型的ですから、印刷したものを使って、これは実際は書記官が書くのじゃないですか。東京なんかあれは書記官が書いているのじゃないですか、みんな定型的だから。裁判官は一々あそこまで書かないですよ。最初から自分で全部書けば、それは脱漏するわけないですよ。だから、どうも印刷したものにちょっちょっと書き入れるので、書記官が書いたのじゃないか、こう思うのですが、これは推測ですから、どうもそうらしくもないのですが。脱漏というのは、不動文字で書いたところへ書き加えて入れるわけでしょう、この判決は、手形事件ですから。それに対してはどういう点が脱漏したわけですか。余りみっともいい話じゃないので、言いづらいでしょうけれども
  200. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 先ほど来問題になっております事件の手形判決は、御指摘のとおり、定型的な用紙に書き込むというかっこうになっております。それで問題とされておりますのは、先ほど申し上げましたように、被告は振出人と裏書人の二人でありますが、でありますから、正しい書き方は、「被告らは各自原告に対し金五百万円を支払え」、こういうことになるべきところ、その「ら」というところと「各自」というところは空欄になっておって書き込むようになっておるのですが、そこの書き込みがなかった。したがって、請求原因事実のところとかあるいは訴訟費用の負担のところで、共同被告に対する負担をめぐる民訴九十三条の条文の書き入れ等が抜けていた、こういうことのようでございます。     〔熊川委員長代理退席、太田委員長代理着席〕 ただし、これが最初につくったときに抜けておったのは間違いないようでありますけれども、それを補充したのがいつであるかということについては、まだ事実関係が詳細がわかっておらないというのが実情でございます。
  201. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 民事ですから、判決原本に基づいて判決言い渡ししなきゃいけませんね、刑事と違うわけですから。だから、原本はできておったわけですね。いま最初に言われたところの、書き加える前の原本が送達されておるわけでしょう。原告代理人と被告代理人に送達されておったんじゃないでしょうか。そうすると、その段階では執行はできるんですか。その主文で両名に対して執行できますか。
  202. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、当事者に送達されました正本には、書き加えがなかったわけであります。ただ、原本は書き加えが言い渡し前にされて、正本に書き加えるのを忘れて送っちゃったということか、そうでないのかというあたりが実ははっきりしないところであります。  その抜けたままの正本で執行ができるかどうかということになりますと、これはある程度問題ではなかろうかと思いますけれども、実はこういうケースであれば、更正決定で通常の形に直せるはずのものだと思われます。中身を見れば、当事者の表示も二人書いてあることでありますし、当然更正できるものでありますので、そういう手続をして執行をするということになろうかと思います。
  203. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、よく誤字なんかがあって、脱漏があったりなんかしますね。代理人が持っているときには、代理人に連絡して持ってきてもらって、そこで事実上了解を得て直すということは相当ありますね、書記官の方でも。代理人も、書記官と別にどうこうということありませんから、それを認める場合が多いのですが、本件の場合は、本人に渡しちゃったんじゃないですか。本人に渡しちゃったために、それが被告の方に、本人のところに行っちゃってるからできないということだったと思うのですが。  そこでまた、中間判決というのを、ちょっとよくわからないのですが、手続が、判決が送達されて、中間判決で、この場合の中間判決というのがよくわからないのですが、確定していない段階でしょう。それで中間判決に回したんでしょうね、よくわからないのですが。申し立てがあって、中間判決をやったのが職権でやったのか、どういう経過で何を中間判決したのか、ちょっとよくわからないのですが、そこら辺、御説明願えればと思います。
  204. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 事案の御説明の先ほどの続きになるわけでありますが、七月九日に被告側から手形判決に対する異議申し立てがありました。そして通常訴訟へ移行したわけでございます。それで八月三日に移行後の第一回の口頭弁論通算しますと第三回になるわけでありますが、口頭弁論期日が開かれまして、そのときに出されました被告側の準備書面に、本件手形判決の原本は言い渡し後に変更された違法があるという主張をされたようであります。そこに一つの手続上の争点が生じたということになるわけであります。そこで、担当裁判官は、通算して第四回目の期日、九月二十二日でありますが、この期日にいまの中間の争いについて弁論終結をして、九月二十四日第五回期日に中間判決をした。それで、その中間判決の内容はしかく明確に御説明できないのでありますけれども、要するに、この手形判決の手続が法律に違背していることを前提として、民訴法の四百五十七条によって取り消した、中間判決で手形判決を取り消したということになっております。こういう経過でございます。     〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
  205. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 非常に技術的な話になりますから、余り細かいことを抜きにいたします。中間判決というのはないわけではありませんけれども、当事者は、何もいまの場合に中間判決を特に求めたわけでもないようですね。ですから、そこのところはいろいろな問題点があるのですが、それはそうとして、結局これは和解がついたわけですね。そのようですね。  だから、これ、第一回の期日というのは、被告側の都合を聞かないで決めるわけですから、普通は。普通はというか、全部そうですが、そのために約一カ月の間置いてあるわけですから。だから、被告側の方で受け取って、それをすぐ代理人のところに頼んで渡して、委任して、代理人の方でずっと握っていておくれたのか、あるいは被告の方で忘れちゃって、三日ぐらい前にあわてて頼んだのか、そこらはよくわかりませんから、どっちがどうということは前に申したように言えないわけですが、しかし、普通は第一回で、ことに抗弁が出ている場合ですよ、その抗弁が支払い猶予の抗弁だけだったらこれは別にしょうがないですけれども、弁済をしたという抗弁が出ておるならば、特に振出人との関係ではそれは問題が出てくるわけですから、弁済したというだけで、弁済の証拠なんかは出てなかったのかもわかりませんが、いずれにしても、こんなにして、次の日に判決しているわけですね。  手形事件で、欠席判決でもやはり二週間は置くのが普通じゃないんですか。判決の期日は、民事の場合ですから、あれは告知を必要としないわけですね。代理人がついているわけで、代理人に期日の指定を告知しなくてもいいわけですね。理屈はそうかもわかりませんけれども、普通はこれは、仮に欠席判決だとしても、もう一遍再考を促す。欠席判決の場合、訴状をもらっていても、何かの都合で出すのを忘れたり何かしている人もありますからということで、もう一遍再考を促すということで、判決言い渡し期日についても通知をするのが普通じゃないですか。あれは法律的には通知しなくてもいいことになっているのですね。  ここら辺のところ、実際の手続としては、親切にもう一遍、どういうわけで出てこなかったのかどうかということを確認するという意味もあって、もう一遍期日の呼び出し状を出す。その場合に、判決宣告というふうにちょっと書き添えて出す場合もあるし、単純に口頭弁論という形だけで呼び出す場合もありますけれども、そこら辺のところは法律的にどうなっているのかということが一つと、実際は十四日ぐらい間を置いてやっているのが普通じゃないかと思うのですが、そこのところ、どうでしょうか。
  206. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 第一回の期日につきましては、先刻御承知と思いますけれども、当事者間に合意がない限り、顕著な事由がないと変更は認めないというのが実務だろうと思います。実際には、被告欠席で原告が出てこられるというと、原告の方に、延期申請が出ているのだけれどもどうですかということを聞いて、結構ですと言えば延ばすのが普通だろうと思います。ただ、原告がやってくれと言えば、これはやらざるを得ないし、結審もせざるを得ないだろうと思われます。  判決言い渡し期日の指定につきましては、これは手形事件でありますので、簡単に判決原本ができるから、もう翌日でも間に合うということでこういうことになったのかとも推測いたしますが、通常は、おっしゃるとおり二週間、三週間の期間を置くのが実務の扱いであろうと思います。  そして、その判決期日の呼び出しでありますけれども、これは呼び出さなくても違法ではないというのが実務でございます。したがいまして、そういう扱いをしているところもありますし、呼び出し状を出しているところもあるというようなのが実情ではなかろうかと思っております。
  207. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、十三項目という中にいろいろな項目があるわけですけれども一つは、訴訟指揮が非常に強引だというようなこともいろいろあるようですね。それから証人の尋問時間を不当に制限する。こう言っても、何も尋問時間は代理人の請求どおりの時間を認めなければならぬということはありませんから。事案によりますから。代理人がたとえば二十分でいいと言っても実際は一時間かかることもありますし、一時間と請求しても二十分で終わってしまうこともあるから、そう機械的にはもちろんいきません。いずれにしてもそういうふうなことですね。  それから、いきなり和解に入ってしまう、期日を指定するというようなことも出ていますね。これはここだけの裁判じゃないんじゃないか。全体としてこのころ第一回で——それはもちろん交通事故の損害賠償かなんかで、交通事故の態様を認めているときで損害額だけについて争いがあるというならば、すぐ和解に入るということも考えられるかもしれませんけれども、とにかく和解に入る。和解、和解ということで片づけるという傾向が非常に強いですね。  だから、裁判官は判決を書くのを非常に嫌がるんですね。なぜ嫌がるのかと聞いてみたら、とにかく高裁がおっかないというわけです。高裁へ行って見られるのが実におっかないというわけだ。高裁に行って判決を見ると、この判事はできるかできないかすぐわかってしまうから、和解ならとにかく見られないからというのが大分あるようですね。ある単独の裁判官が高裁へ転勤することになったわけです。それで、会ったら非常に喜んでいるんですね。おかげさまで今度は私もほかの裁判官の判決を見るようになりましたと言ってあいさつされた裁判官もおられたんです。高裁の陪席になったんですが、非常に喜んでおられたんです。いろいろありますが、とにかく判決を書くのを嫌がりますね。  これは、いまのような判決の書き方がいいか悪いかですが、余り簡単に書いてしまうとわけがわからないですね。当事者の方では全く納得できないですね。一番簡単なのは、請求の趣旨並びに原因は別紙添付訴状のとおり、被告の主張は答弁書及び準備書面のとおり、評価の標目もそのとおりだと書けばいいので、理由というのは簡単でしょう。原告の請求を棄却するなら簡単で五行か六行書けばいいという形で、そういう訴状や答弁書や準備書面をくっつけて書いてくる判決がいまどの程度ありますか。それが一番簡単なんです。それが一番事件がさばけるというんで、そういうことをやっている人もいるんですよ。訴状をリコピーにとって、答弁書をリコピーにとり、準備書面をリコピーにとって、それをくっつけて別紙のとおりだとやる。だから請求原因とかなんとかというものは何にもないのですよ。そのとおりだというのだから簡単でしょう、あと理由だけ書けばいいんだから。理由もそんなに必要がない。これをやれば幾らでも事件がさばけると言う人もいるんですが、それではもらった方はわからないんですよ。だから、勝っても負けても裁判というのだから、少なくとも当事者がそれを読んで納得できるような判決でないと困るんだと思いますが、裁判の内容のことについて、余り国会でかれこれ言うべき筋合いではありませんからその点はセーブいたしますが、ここに出ている十三項目というのは、主なものは一体どんなものなんですか。
  208. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 この要望書に摘記されております十三項目、主なものは、人証調べの訴訟指揮の不当、それから和解期日の運用に対する問題、その他、これは訴訟指揮に属することかどうかわかりませんが、記録をよく検討しないで法廷に臨んで訴訟指揮をするとか、法廷で当事者代理人に不適切な言動がある、こういったようなことのようでございます。
  209. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いろんなことが出ていますね。何か証人の人ですか、直接電話して何か証人を呼び出されたようなことも出ておるわけですが、そんなことはちょっと考えられないですけれどもね。それから、代理人を無能呼ばわりしたとかなんとかということが新聞記事に出ていますけれども、これはどこまで本当かわかりませんけれども、いずれにしても、こういうふうに弁護士会で決議するというのはめったにないことですよ。決議しようとする動きがあることは事実ですね。ある別の弁護士会でもありますね。ありますけれども、そこまでやるのはよそうということで、やらないんです、普通は。それが出ておるということは、これはよっぽどのことであろうというふうに私も思います。  そこで、これに対して最高裁としては、これはどうも弁護士会というものとの間の意思の疎通を十分してなかった、それが欠けておったということも大きな原因じゃないかと思いますがね。この要望書十三項目、いろいろな問題が出ていますが、これに対して最高裁当局としては、どういうふうな行き方といいますか、態度をとるわけですか。
  210. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 具体的な事件における個別的な訴訟指揮の問題でございますと、原則として司法行政上関与すべきことではございませんが、要望書を拝見いたしますと、わりに一般的な態度としてとらえているようでもございますので、現在事実関係につきまして、高裁を通じまして調査中であるというふうに聞いております。したがいまして、現段階で何らかの措置をとるかどうかということにつきましては、まだ申し上げる段階にはございません。
  211. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは大阪高裁ですから、元来、普通の場合は高裁の範囲内の出来事ですね。いずれにいたしましても、弁護士会で決議するというのはよっぽどのことてす。だから具体的な——裁判官独立ですから、それに関与して、それに反するようなことは、高裁としても最高裁としてもできないわけです。これをやったら大変ですからそれはできない。ですけれども、いずれにいたしましても、事実関係をよく調べて、それに応じた一つ措置というものをとっていただきたい、こう思うのですね。よっぽどじゃないでしょうかね。これは何かここにあらわれたこと以外のこともあるかもわからぬし、どういう理由から意思の疎通を欠いたのか、ここら辺のところはよくわかりませんのでこれ以上のことは聞きませんけれども。  そこで、また話は戻るわけなんですが、今度の増員関係の中で問題となっておりますのは、たとえば地方裁判所の特殊損害賠償事件だとか高裁の工業所有権関係行政事件処理の充実強化、地裁における覚せい剤取締法違反事件等刑事事件処理の充実強化、こういうふうになっておりますが、しかし考えてみると、覚せい剤取締法違反事件法廷へあらわれてくるときには、これはむずかしい事件というのは率直に言ってないんじゃないでしょうか。これは警察の段階とか検事の段階では、これに法律で規定されたものが含有されているとかなんとかといういろいろな鑑定とかなんとかがありますけれども法廷へ出てきて覚せい剤事件でむずかしいというのは余りないんじゃないでしょうか。きょうは刑事関係の人来ていませんね。来ていないから、これは別の機会にしましょうかね。これはちょっと私よく意味がわかりませんがね。  そこで、お聞きをしますけれども裁判所によって裁判官の、ことに民事の場合、手持ちの件数というよりも、むしろ落とさなければならない一つのノルマと言うと語弊があるのですが、それが裁判所によって非常に違いますね。いま一番忙しいのは横浜じゃないですか。この前ある人に聞いたら、横浜では月に一人の裁判官が六十件を落とさないといけないというふうに言われておる、こう言うのですがね。三十件だったかな。普通は大体どのくらいノルマ、ノルマと言うと語弊がありますけれども、どの程度を落とすように、処理するというふうになっておるのですか。場所によって違いますね、甲号支部の場合、乙号支部の場合。ことに乙号の場合なんか非常に事件が少ないところがあります。これは本当にいま少ないけれども、いま一番多いのは横浜ではないですか。どういうふうになっていますか。
  212. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 どのぐらいの新受なり手持ちがあれば適正なのかということは、裁判所の規模、それから特殊部で特殊事件を扱います場合等、必ずしも全国的に通じて平均的なことを申し上げるわけにはまいりませんけれども、大都会の通常事件を取り扱います部におきましては、一人の裁判官が手持ちとして二百件ぐらいを持って処理していくということが、経験的に見ましてまあまあ穏当な線ではないか。横浜の場合には、委員御指摘のとおり、多少それを上回る負担があるように聞いております。
  213. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 ずっと前に、矢口さんが何局長のときだったかちょっと忘れましたが、聞いたときには、三百何件が大体手持ちの平均のように言っておられたように思うのですよ。ただ、そのうちで寝ている事件が相当ありますからね。寝ている事件があるし、それから延期、延期でいく事件もあるし、まあだんだん延期も効かなくなってくるかもわかりませんが、そういうのもあるから一概に言えませんけれども、民事の場合、手持ちの二百件——手持ちのことを私は聞いているのじゃないですが、月にどの程度の事件を落とさなければいけないというノルマというようなものは決して法律的にもあるわけじゃないし、いろいろな面であるわけじゃありませんよ。ただ、実際問題として何かそこら辺のところが内部にあるようですね。横浜の場合は、私、六十件と聞いたのですが、どうもこれは多いなと思ったのです。  それで、各係があるでしょう。各部の係があって、書記官同士でいろいろな話をしているわけだ。競争みたいになるわけだね。おれの部はこれだけ事件が落ちたというようなことでやっているわけです。横浜の場合は事件が非常に多いのでよけいに一つの部をつくるのでしょう、民事を。高裁だっていま民事十五部ですか、もっとふえて十七になったのかな。二つふえたのですね。もとは十二部ぐらいだったのがどんどんふえてきて、刑事は減ってきているわけでしょう。そういうような関係もあるのですけれども、月に何件くらい落とさなければならないという事実上のノルマみたいなものがあって、そしてそれのために、裁判官は、何とかして早くしなければならない、早くしなければならないということで、十分に両方の言い分も聞かないうちにとにかく和解に入っちゃえというようなことでやって、話し合いで解決しちゃえ、それなら判決書かなくて済むしというようなことで、相当強引に和解をやるというのもあるのですね。これは実際問題としてあるんだ。  私の経験なんかでも、ちょっと別のところへ行って私が行くのがおくれたら、依頼者が裁判官の前で泣いているわけですよ。僕がそこへ入っていって、どうしたんだと言ったら、いま裁判官にぎゅうぎゅう和解しろと言われてどうにもしようがなくなってしまった、私としては不本意だと言って、裁判官の前で泣いているのですからね。そこへ私が入っていったものですから、何だというのでよく聞いてみて、その和解案はだめだということで撤回になって、もう一遍話し合おうということになったことがあります。  代理人がついているときはそうでもないのだけれども、ついてないときは相当ぎゅうぎゅう、これをのめのめとやる。性格にもよりますが、いろいろな人がいるわけですね。余り事件を落とせ落とせと言うと、結局は判決を書くのが大変だから、強引に和解に持っていこうとする。十分両方の言い分を聞かないで、結局片一方の言い分だけ聞いて和解にしてしまう。  たとえば離婚事件なんかでもそうですよ。前置主義だから調停からいくわけです。そして離婚事件になるわけです。両方の主張を聞いて、両方の本人を調べてからならば和解もいいけれども。あるいは本人を調べる前に和解した方がいい場合もあります、感情的になっちゃうから。ありますけれども、片一方だけ調べてそこで和解をすることになってくると、片方は了解しないですよ。片方の言い分だけ聞いて和解するのではおかしくなってくるということで了解しないとか、いろいろなことがあります。  こんなことは余り国会で論議すべき筋合いのものじゃありませんけれども、ノルマ的にこれだけ落とせというような形になってくると、いろいろな弊害が出てくるのじゃないかと思うのです。  そこで、実際どうなんでしょうか。私、疑問に思いますのは、いつか聞いたのですけれども裁判所所長の仕事です。職務は一体何なのかということなんですよ。これはなかなかむずかしい。人事局長詳しいのですが、きょうは人事局長おりません。何なのか、私にはよくわからない。職員の人事の問題はよくわかりますよ。  裁判官から何件落としたとかいうことを表をつくって、全部所長の方に報告するようですね。所長はそれをまとめて最高裁に報告するのですか。ことに民事局なんか報告するでしょうけれども、最高裁に報告するときにはもちろん個人名は出ないのでしょう。個人名は出ないけれども一つ裁判所ごとに、事件はどれだけ新受があって、どれだけの事件が落ちたかということの報告はあるわけでしょう。これはどういうふうになっているのですか。実際どういう報告を求めているのですか。
  214. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 御承知のように「司法統計年報」を総務局が所管しておりますが、毎月、たとえば地方裁判所でありますと地方裁判所ごとに新受が何件、既済が何件、未済が何件ということを、地方裁判所単位でまとめて報告を求めております。
  215. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、最高裁へ上がってくるときには地方裁判所単位、あたりまえの話でね。ところが、その前の段階の資料というのは、各裁判官からとらなければ地方裁判所でまとまらないわけでしょう。あたりまえの話ですね。そこで各裁判所でA判事、B判事、C判事ごとのあれをとるわけですよ。そこで裁判官の成績というものが所長の頭の中に入ってくるのじゃないですか。余りいくとあれですが……。  それから、たとえば高裁からの判決の結果を、しばらくおくれますが、まとめて裁判所に送りますね。これは破棄差し戻しになった、これは何とかかんとかと送りますね。あれは執務上の参考にするのだというふうにあなたの答えは出てくるのでしょうけれども、あんなことも必要ないのじゃないですかね。  差し戻しになったって、たとえば刑事の場合なんかは、一審で示談がつかなかったものが高裁の段階で示談がついて量刑が変わってくる場合もあるし、差し戻しは事実誤認の場合が多いからちょっと違うかもわかりませんけれども、原判決破棄の場合だって、必ずしも原裁判所と関係のない別個の事由によって起きる場合もあるわけですから、高裁でこういう判決があったということを、別に地裁へ民事、刑事知らせる必要はないと僕は思うのです。あれを見ると全部わかるわけですよ。この判事のやった判決が高裁でこういう結果になって、それがどうだ、こうだということが全部一覧表になって来ているわけでしょう。あれは高裁でやっているのかな、最高裁は関係ないのかもしれませんけれども、ああいうことも必要ないのじゃないかと僕は思うのですがね。まあ余り裁判の内容に立ち入ったことはお聞きするのを避けます。  いずれにいたしましても、この定員で賄えるかどうかということの一つの問題がありますね。それと同時に、前に申し上げましたことに関連をして、ノルマとは言いませんが、やかましいノルマ的なものを課するようなことはやめた方がいいのじゃないでしょうか。だから裁判にゆとりがなくなっちゃって、いまの裁判はぎすぎすしているのですよ。人間性というものがだんだん失われてきて、とにかく早くやれ、早くやれということばかりです。  ある裁判官といろいろ話をしたら、最高裁がうるさいからと陰で言うのです。最高裁がうるさいからというのはどういうわけですかと言ったら、いや、あそこににらまれたら——まあ、これ以上言いませんけれども、とにかくいろいろなことがありまして、余りやかましいノルマないしノルマ的なものを課することのないように、もう少しゆったりとした気分で裁判ができるような環境というものを研修所の中でつくっていただきたい、こういうふうに私は要望をして、質問を終わります。
  216. 羽田野忠文

  217. 横山利秋

    横山委員 最初に、この間、一月の終わりに横浜地裁に巣くう悪質競売グループの摘発があったことは御存じのとおりであります。私どもこの問題についてここでずいぶんいろいろな角度からかつて議論をいたしまして、裁判所の中で談合が行われておる、しかもその談合をやっている連中は暴力団である、裁判所の中で暴力団がもうけて、そして一般の民衆を阻害して安く落札をしており、一般民衆が行ったらすごい目でにらんで、そして押しのけて入札に参加できないようにさせておる、こういうことが議論になりまして、今度期間入札それから情報公開というふうに踏み切られたのでありますが、それにしても横浜地裁の状況はまことに遺憾千万と言わなければなりません。  このようなことは本委員会においてもずいぶん議論がされておったわけでありますが、なおかつ行われておるということは、一体、この入札についての公正妥当な執行の責任はだれが負うのでありますか。
  218. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま横山委員御指摘のケースは、去年の十二月十八日の読売夕刊に出た記事の関係であろうと存じます。  この事件におきまして、まず最初に概略を申し上げておきたいと思いますが、いわゆる土地、建物の競売事件でありますが、旧法事件でございます。物件宅地、建物含めまして八物件を一括競売にした。最低競売価格は三億ちょっとであったということであります。これを入札の方法で売却をしたわけでありますが、この入札に加わったのがA社、B社の両名である。最初両者ともに最低競売価格相当金額を入札したために、両方同じだということで、追加入札をすることに執行官はしたわけであります。この追加入札の段階でA社だけが入札をし、執行官の認識ではB社はどういうわけか入札に加わらなかった。結局、A社だけが最低競売価格に百万円上乗せした金額で落札した、こういう経緯でございます。  当日、競売期日には監督補佐官と書記官二名が臨場して立ち会っていたようであります。競売場、売却場には関係者大体百名くらいが参集していたようでありまして、二十八件の物件が売りに出されたということであります。場内は静粛で、問題の行動は執行官から見る限りなかったということでありますが、新聞記事によりますと、B社が追加入札に加わらなかったのは、どうも競売場の外で暴力団が追加入札に加わることを妨害したということのようであります。この点については裁判所側としては全く認識がなかったわけであります。現在警察で捜査中というふうに聞いております。  こういうのがこの事件の経緯でありますが、競売場において公正な競売が行われることについては、もちろんその場においては執行官が秩序維持権を持って厳正な秩序のもとに競売を実施するという責任を負っておりますし、そういう環境をつくり出すためには、各裁判所がその責任を負っているということになろうかと存じます。
  219. 横山利秋

    横山委員 私の手元にありますのは、一月になりましてからこの悪質競売グループ摘発の記事を各紙一斉に出しておるわけでありまして、「東京地裁に巣食う悪質競売グループ摘発 一億円の脱税容疑」、いまお話しのように「裏で談合か 首謀者追及」で東京地検特捜部の強制捜査。それからこちらの方は、横浜地裁の不明朗な競売制度で「評価額ぴたりの落札 債権者の中止要請も無視」をした。それからこちらの方は「裁判所もまんまと欺く 東京信金詐取の「松崎」 競売配当、二重取り 着服三千万 支払証改ざん」の記事等まことに——今回この二つ改正がどういうふうな効果をもたらすか知りませんけれども、それにしてもこういうような巧妙なやり方をする向きがありますと、どういうふうにしたってこれは免れがたいのでありますが、まず最初に、今度の期間入札並びに情報提供が、聞くところによれば大都市の七カ所しかないという話であるそうですが、なぜもっと広げないのか、また、このやり方というもので、裁判所職員はもとより、執行官事務所においてもかなり業務量がふえるとは思うのですが、その態勢は整っておるかどうか、伺います。
  220. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 悪質競売ブローカーあるいは暴力団関係者の競売場からの締め出しというようなことは、新執行法の一つ改正の大きな目的であったわけでありまして、そのために、それを効果的に実現するために期間入札の制度も設けられたわけであります。ところが、施行後一年数カ月たちますけれども、現段階で期間入札を実施している主な庁は、御指摘のとおり十数庁にすぎないわけであります。この中には東京、大阪、名古屋、福岡といったような大きな庁が含まれておりまして、かなりの件数は期間入札で処理されておるわけでありますけれども、それにしても、全国的に見ればまだ一部だというふうに言わざるを得ないわけであります。  この期間入札の新しい制度、これはいわゆる悪質競売ブローカー対策としてはかなり有効な手段であることは間違いないわけであります。これをもっと各裁判所で取り入れていくべきであろうと私ども考えております。先ほど申しましたようにまだ十数庁しか取り入れていないという現状は、やはり現段階におきましては期間入札制度をとり得ない旧法事件がかなり残っている、それと新法事件とがいわばふくそうしておるためになかなか処理の態勢が整わないというようなこと、あるいは新しい制度であるためになじみにくいというようなところがあろうかと推察しているわけでありますが、先ほど御指摘のようないろいろな不祥事が出てまいりますとそういうことは言っておれないわけであります。実はつい最近も、期間入札制度を積極的に採用してもらうよう各所長あてにお願いをしたような状況であります。  ところで、この期間入札制度をとりますと、従前の競り売りあるいは期日入札とは異なりまして、新たな仕事がふえることは事実でございます。主としてふえるのは会計の出納官吏の仕事であろうと思われます。競売の入札のための保証金を振り込んでくるわけでありますが、それの処理事務がふえるということになります。しかし、先ほども申しましたとおり東京、大阪、名古屋等の大庁におきましてはすでにこれを実施しておりますし、かなり小さい規模の庁でも実施しているところがありますので、十分この制度を取り入れていく態勢というものはあるというふうに私どもは見ております。できるだけ各庁がこの期間入札制度を取り入れていくように私どもも望んでおるところであります。
  221. 横山利秋

    横山委員 法務省から出ております法律案関係資料の十五ページを見ますと、地方裁判所における司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減員として十一名、それから民事執行法に基づく執行事件処理の充実強化で十名のプラス、差し引き一名の減ということは、この種の民事執行法なり入札に関連をする事案のことが多いのですか、この増減は。これでいくと結局一人減っちゃう。仕事がふえるけれども、まあいままでのグループで配置転換でやっていく、こういうことですか。
  222. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件処理の充実強化のために事務官を十増加させる予定でございますが、そのほか、地方裁判所関係で申しますと、特殊損害賠償事件等あるいは刑事事件の充実強化もございます。地方裁判所における司法行政事務の簡素化、能率化の点は、これらいま申し上げました裁判部門に携わっている者ではなく、事務局部門を対象といたします削減でございますので、裁判部門の方は増強され、司法行政部門につきましては能率化を図りまして削減によって賄っていこうとするものでございます。
  223. 横山利秋

    横山委員 そうすると、この入札関係で期間入札や情報公開で仕事がふえるというのは、どうやって人員を生み出すことになるのですか。
  224. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 事務局部門につきましても、おっしゃるとおり多少事務の増加がある面もあるとは存じます。事務局はその他相当広範囲にわたった仕事を担当しておりますので、必要なところへは人員を増加して振り向けることになろうかと思います。
  225. 横山利秋

    横山委員 ちょっと意味がよくわからぬけれども、要するに人が足りないから、仕事はふえるけれどもがまんしてもらうよりもう仕方がないということを言いたいのですか。そうじゃないのですか。ふやすのですか。
  226. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 実際の事務の繁閑に応じて、会計部門の事務がふえますれば、やはりそこには人の手当てをするということになろうかと思います。
  227. 横山利秋

    横山委員 先ほども、執行官が表であるいは裁判所の裏でやっておるというものは仕方がないにしても、この前私の知り合いが、そんなもの横山さん行けばわかる、入札しているときに暴力団らしいのがおるから、見れば大体わかりますよ、ではおまえさんはどうしたんだと言ったら、私も連れていった、こういうふうに言う。普通に行ってとても入札なり落札なりできる雰囲気じゃないから、私も暴力団系統一人連れていったがね、こう言っている。  そんな、見ればわかるという雰囲気を一体執行官は何をしておるのですか。その排除とかそういう者に対して粛正というものが執行官自身としてはできないのですか。裁判所として、そういうようなことについて執行官を督励して、そういう雰囲気なりそういう人間の排除ができないのですか。
  228. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 東京地方裁判所の場合でありますと、先ほども申し上げましたとおり期間入札に切りかえておりますので、そういう状況はもうすでにないと見ております。それを期間入札をまだ実施していない庁におきましては、競り売りなりあるいは期日入札の方法がとられておりまして相当数の関係人が集まってくる、場合によっては騒然とすることもあり得ようかと思いますが、ただ、執行官としては、暴力団であるということが一見わかるかどうか、これも問題でありますけれども、仮にそれがわかるといたしましても、妨害行為その他の行為に出ない限りは、出ていけと言うことはできないわけであります。売却場でそういう妨害行為が執行官の面前で行われることを放置しておくというようなことが仮にあるとすれば、これは論外のことでありまして、執行官自体強く責められるべきことだろうと思いますけれども、執行官の面前でそういうことが行われているとは、私どもはないと信じておるわけでございます。
  229. 横山利秋

    横山委員 執行官については、ここで何回も執行官法の制定の際にもその議論をされておりますが、ひとつ執行官の問題で解決しておかなければならないのは、報酬の問題であります。  当時、執行官の身分の完全公務員化ということが議論になりました。しかし当時は、そうは言っても報酬が下がるおそれがあるから、当分そのまま様子を見ながら逐次執行官を完全国家公務員化するというような方式で理解があり、たしか附帯決議もできておるのですが、そのままじんぜん日をむなしゅうして数年放置されておるのはどういうわけですか。
  230. 千種秀夫

    ○千種政府委員 執行官の制度につきまして、ただいま先生御指摘のような附帯決議がございましたし、私どももその附帯決議の趣旨を体していろいろと研究しているつもりでございます。お言葉の中にもございましたように、執行官の制度というのはいろいろの沿革がございますし、あるいは仕事の特殊性がございまして、私ども過去一年におきましても何回かその研究会を催し、資料を持ち寄って検討をいたしましたけれども、やはりそこにむずかしいのは、全国一律に一つの制度にした場合に、ある者にとっては不利益になるような点も出てまいりますし、地方の方で事件の少ないところにおいては緊急に何とかしてやらなければいけないと感ずるような問題もございまして、それを一律な制度にするときにどの辺に持っていったらいいかということが非常にむずかしい問題のように感ずるわけでございます。  そこで、いろいろな実態調査し、どの辺に持っていくかという判断を得るために時間を要しているわけでございまして、その間何年か経過いたしましたけれども、ただ漠然と放置してあるというわけでもございませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  231. 横山利秋

    横山委員 漠然と放置してあるのじゃないんですか。できないならできないと、これはもうあきらめてくれ、国会の決議ではあるけれども、実際問題としてはできないならできないと言わなければ、その答えになりませんよ。私も、当時も、困難ではあるけれども真剣になってそのように努力するとおっしゃるから、そうかと言っておいたんだけれども、あれから漠然と遊んでおるわけではないとおっしゃたって、何をしておるのですか。なぜできないか、その点もはっきりしておいたらどうですか。
  232. 千種秀夫

    ○千種政府委員 いまいろいろと検討いたしまして、ここでできないということを申し上げるほど結論が出ておりません。
  233. 横山利秋

    横山委員 また来年も再来年も同じことになりますな。  三番目に、午前中の話で、検察審査会の問題であります。  午前中、不起訴になりました二件を取り上げたのでありますが、そのほかにも不起訴になりました問題について私は二、三の事例を承知をしておるわけであります。ところが、さて、不起訴になったからそれはけしからぬと言って検察審査会がこれを起訴すべきであるというようなことをいたしますためには、検察審査会の審査申し立て権者は、「告訴若しくは告発をした者、請求を待って受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被った者は、」というふうに限定をされておるわけであります。  たとえば、堀田ハガネにいたしましても社会の耳目を集めた問題であります。それから、農地不正登記にいたしましても、名古屋、愛知県はもとより、東海三県で非常に世間の関心を受けたものであります。これはけしからぬ、なぜ起訴にしないのかと翕然たる議論があるわけでありますが、その告訴、告発をした者ではないわけであります。強いて言うならば国会で、法務委員会で話題になった。私は別に、告訴、告発をしたわけではない。そうなりますと、だれもそれがけしからぬといって言うべき人がないわけであります。  私は、この経験にかんがみまして、審査申し立て者を単にこの四者に限定さるべきでなくて、一般国民がだれでも検察官のありようについて不服を申し立てることができるように改善をすべきであると思いますが、いかがですか。
  234. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 検察審査会法の三十条には、いま横山委員が御指摘のように、審査の申し立て権者を限定しているわけでございます。この検察審査の制度は、検察官がいたしました不起訴処分の当否を事後的に審査するという制度でございますので、審査の申し立て権者の範囲というものを告訴人とか告発人、請求人、被害者というように不起訴処分の直接の関係人に限った現行法の法制というものは相当な理由があるものというふうに思われます。  確かに、いま委員が御指摘になりました例は、いわゆる社会的あるいは公共的な犯罪ということで、いわゆる被害者のないという犯罪であろうかと思われます。確かに、被害者のない、こういうような罪につきましては、告発した者でなければ審査の申し立てができないということになるわけでございますが、この法が考えておりますのは、まず告発をいたしまして検察官の厳正な処分を求めた上で、それにもかかわらず不起訴となったというときに告発人として審査の申し立てをするのが筋であって、それが現行法の趣旨とするところであるというふうに考えられるわけでございます。  告発は、御承知のとおり何ぴとでもできるということを考えますと、審査の申し立ての範囲をさらに拡大して何ぴとでもできるという必要性は乏しいのではないかというふうに考えます。もし仮に、この申し立て権者の範囲を何ぴとでもできるというようにいたしますと、場合によりましては、告訴、告発をした、あるいは被害者というような方たちが、もう審査の申し立てをする意思がない、たとえで申しますと、初めは被害者が告訴いたしましたけれども、その後示談ができて、それで不起訴になったというような場合に、事案内容をよく知らないという、直接事件と関係のない第三者もさらに審査の申し立てができるというようなことにもなるわけで、そこまでの必要性が果たしてあるのかどうかというような点もございますので、慎重に検討する必要があると思うわけでございます。  ただいま委員が御指摘になりましたが、そういう公共的のような犯罪につきましては、これは検察審査会法の二条で職権で審査できるという規定がございまして、現に検察審査会の方にそういうふうに申し出がありますと、審査会で審査いたしまして、相当であるということになれば職権で審査するというような扱いもしておりまして、運用でここずっと賄われておりまして、それほど現実に支障はないのじゃないかというふうに考えております。  そういう観点から見まして、何ぴとにも申し立て権があるというようにあえて改正する必要はないのではないか、ただいまのところはそのように考えております。
  235. 横山利秋

    横山委員 昨年の本委員会検察審査会の運営並びに法律の改正について私が数々の問題提起をしたことは、御記憶に新たかと思います。その経緯を通じて見て、横目でながめてみて、検察審査会は、最高裁が検察陣に対していちゃもんをつける、結果としてそういうシステムであるだけに、検察審査会の運営については最高裁はずいぶん消極的だな、それから法務省はこれに対して抵抗しているな、おれのところの仕事に余りいちゃもんをつけぬようにしてくれというような心理的な反発があるなということを私は痛感したわけであります。  たとえば裁判官に対する訴追請求はだれでもできますね。ところが、検察官の仕事に対する審査請求は告訴、告発をした者でなければいかぬということは片手落ちではないのか。私もこの間、ある不起訴事案検察審査会の会長に、おかしいですよ、一遍調べてくださいと言ったことはありますが、しかしながら、それはたしか検察審査会で満場一致で決めなければだめでしょう。過半数ですかな。一人の人が、おまえさんは三十条は適用にならないから正式な審査申し立てばできませんよ、けれども、文句があるなら言ってごらんなさいという程度では、だれも憤激をしてそれを持っていくというような人はないのですよ。  仮にお話しの事例のように、告訴した人間、告発をした人間が和解をして話が済んでおると言ったところで、それは和解をしておればまあまあということはあるけれども、法に触れた、あるいは社会的に責任を追及さるべき者はやはり罪は残っておるわけですから、だからといって、和解したからといって不起訴相当が正しいかどうか、それは議論の余地のあるところであります。  先ほど私が事例として挙げた農地不正登記などは明らかに政治的解決であります。法務省が、自分の子分はやめたんだから、まあひとつよろしく頼むわと言い、ああ、そうですがとそれを認めたために、今度は脅迫した人間までが、起訴したのでは片手落ちなので、あいつも勘弁してやろうという政治的な配慮ですよ。そういうばかなことがあっていいものかということが世間の雰囲気なんです。  だから、この三十条を改正して、だれでもできるということによって、どんな弊害があるのか。だれでも申し立てができるということにした結果、猫もしゃくしも検察審査会へ申し立てをするのか。それに、検察審査会が大変なことになるのか。考えられぬですよ。年間不起訴になります案件というものはそんなにたくさんあるわけでなく、しかも、それが社会的に議論のある問題というのはさらに少なくなるわけでありますから、この問題については一遍ひとつ検討してもらいたいと思いますが、どうですか。
  236. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 ただいまの御提案でございますが、私どもこれまでにも全く考えたことのない新しい問題でございます。ただ、私どもは、現実には職権の審査というようなことで、そういう点については大体賄えているというふうに考えておりましたので、今後とも検討いたしたいと思います。
  237. 横山利秋

    横山委員 現実にはとおっしゃるけれども、去年やったときに、不起訴になったものについて、こういうものは不起訴になりましたけいって検察審査会へ一々検察陣が報告して、それが一体適当であるかどうかを自動的に調べるようになっているわけじゃないでしょう。だから、だれかが気がつかなければいかぬ。検察審査会の審査員だって、全部が全部わかっているわけじゃないのですから。それで、市民の中から正義感に燃えて、これはおかしいと言ってきて初めて行動が起こるのであって、よほどでない限り、検察審査会が自動的に職権でやるということはまずない。冒頭私が申しました雰囲気が手伝って、職権でやるなんということは、検察陣に対して果たし状を突きつけるようなことでありますから、やはり市民なり国民の一部から訴えがあったからというのが順当なあり方だと私は思うのですよ。これはもう法務省としては御賛成でしょうね、こういうことは。どうですか。最高裁判所は遠慮して物を言っておる。
  238. 小野幹雄

    ○小野最高裁判所長官代理者 私がいま申し上げているのは、別に法務省に遠慮して申し上げているわけでも何でもございません。ただ、制度のたてまえから、それで足りるのではないかというふうに考えているわけでございます。  なお、ただいまの職権の審査でございますが、これはだれかが言ってきて初めてやるという場合もございますが、そうではなくて、審査員なり事務局なりがいろいろ資料を集めまして、こういう問題が起きているというようなことで審査会にかけまして、これは取り上げるべきだというようなことをも自発的にやっているわけでございます。
  239. 横山利秋

    横山委員 これは正式に一つ問題を提起したわけでありますから、私の考え方が妥当か否か、現状はどうなっておるか、一遍十分調査をしてもらいたいと思います。  去年の六月、最高裁判所長官が裁判所長を集めまして訓示をいたしました中に、こういう言葉がございます。   職務の内外を問わず、身を律するに厳正たるべきことが要請されております。しかし、そのために、裁判官が社会から遊離し、独善に陥ることがあってはなりません。社会の動向に関心を払い、自己を顧みるゆとりを失わず、健全な社会常識と高い品性を身に付けることもまた肝要であります。 これは、裁判官及び職員の綱紀について、裁判官が収賄の容疑で逮捕されることが起こったから訓示をなさっておられるわけでありますが、問題は、「しかし、そのために、」というところであります。裁判官は、公正廉直こそ裁判に携わる者の生命であり、いやしくも国民一般から疑惑の目を持って見られることのないように身を律するに厳正たるべきことが要請されておるが、そのために社会から遊離し、独善に陥ることがあってはなりません、こういうことなので、もっとも千万な訓示で、先を見ていると私は痛感をいたしました。  なぜそういうことを言うかといいますと、裁判官が収賄の容疑で逮捕されたために、全国の裁判官に衝撃を与えた。私が去年国政調査で地方へ回りましたときに、裁判所長を初め皆さんに、この種の問題はいまどんな心理状態でございましょうかといって尋ねたことがあるのですが、どこもかしこも、残念なことが起こった、これから一生懸命やらなければいかぬのはいいけれども、疑惑を持たれぬように厳正にやると言うておられたのですが、その反面、長官が訓示をされたように、孤高の精神といいますか、あるいは社会に余り接触しないようにというか、あるいは訴訟指揮が独善的になっていくというか、こういう傾向を、私は最近一、二の例を承知いたしておるわけであります。  長年訴追委員をやっております私としては、訴追委員会の仕事は首を切るか切らないかという二者選択でございます。二者選択だけれども、首を切るということは、これはちょっとかわいそうであるけれども、ずいぶん独善的な運営を訴訟指揮でなさっておられるということを痛感をすること一再ならずであります。特にそれが労働問題においてしかりということが言い得ると思うのであります。きょうは、特別に私の頭の中にあります該当裁判官のお名前を出すのはちょっとちゅうちょされるわけでありますが、まことにその訴訟指揮たるや、前任裁判官の踏まれた、弁護士やあるいはその他の皆さんと打ち合わせしたことも、私は私のやり方があるというようなやり方で、全く独善的で、そのために忌避あるいは裁判官追放の運動がかなり広がりつつあるわけであります。  私が、どういうことでそういうことになりましたかといってその事例を見てみますと、やはり法廷指揮は裁判官の判断事項であるという鉄則の中にありますから、これは訴追委員会の仕事にはなじまないなということは考えざるを得なかったわけであります。考えざるを得なかったけれども、何という独善的な裁判官であろうかということを実は痛感をいたしました。この労働関係の、関係団体なりあるいは市民の運動がどこまで発展するかわかりませんけれども、こういう状況というものについては、一体、最高裁判所長官の訓示の項目が、長官は先見の明があってこういうことを訓示されておるのでありますが、実際問題として、その先見の明がこういう傾向として出ておるということを痛感せざるを得ないのでありますが、どうお考えでありますか。
  240. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 御指摘のケースが労働事件であるということでございますので、私から申し上げますが、報道等によりまして御指摘のケースのようなものを承知しております。ただ、具体的な訴訟指揮の状況等を一々報告を受けるわけのものでありませんので、報道されている限度でしか承知しておりません。  いずれも、先ほども問題になったことでありますけれども具体的事件における個々の訴訟指揮については、この訴訟指揮権が裁判権の円滑な行使のために認められたものでありますので、その行使の適否を論ずるということは、場合によっては裁判官の独立に影響を及ぼすおそれもありますので慎重を期さなければならないのでありますが、限度を超えた、だれが見てもおかしいというようなことがあれば、これは当然問題にされてしかるべきことであろうと思います。  充実した審理、裁判を行うために認められました訴訟指揮権の行使が上手であるか下手であるかということは、いい裁判ができるか、あるいは当事者を納得させる裁判ができるかということにかかわってくるものであります。したがいまして、私ども裁判官は、常日ごろからこの訴訟指揮権の行使ということにつきましてはお互いに経験を語り合うなどして切磋琢磨し、また、司法研修所における研修、研究の機会等にこの問題を常に取り上げて、研究の対象にしておるというのが実情でございます。
  241. 横山利秋

    横山委員 私の言わんとする事例が頭へ入っておるようでありますし、私も裁判の判決を左右しようと思って言っているわけではないのでありますからこれ以上は言いませんが、少なくとも裁判官が法廷関係者から信頼されて公正な判決が出るための雰囲気づくりをする、そして、結果はともあれ満足すべき裁判が行われた、手続その他遺憾がなかった、自分たちの主張も十分聞いてくれた、こうなった以上はやむを得ないならやむを得ない、あるいはこれは不満足だから控訴するという、満足感といいますかあるいは信頼感といいますか、そういうものがなければコンピューターでやった方が話が早いので、これはひとつ善処を促しておきたいと思います。  それから、「調停時報」がたまたま配付されましたので、先ほどざっと目を通したわけでありますが、家庭裁判所におきましても地方裁判所におきましても、二十二ページから二十三ページにかけて、民事事件は五十三、五十四、五十五の急増、それから家庭裁判所にあっては、審判事案、調停事案、少年の保護事案、その他事案、まさに急増しておるわけであります。こういうような状況にもかかわらず、十五ページの家庭裁判所における司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減員が十七、それに対して、家庭裁判所における家事調停事件処理の充実強化七、十七名減らして七名増員する。これもまた先ほどの問題と同じように、何をやっているのだろうか。  この十七減らしい七ふやすというのはどういうことなのか。どこにどうしてやるのか。二十三ページの家庭裁判所の統計を見ると、審判事案はまさに一万件ぐらいふえておる。調停事案は前年度に比べて三千件ふえている。少年の保護事案は四万件ふえている。その他事案が三百件ふえている。どうやってやるのですか。この数字との比較はどう考えたらいいのですか。
  242. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げたことではございますけれども、家庭裁判所におきます家事調停事件処理の充実強化のために七の増、一方、司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減員といたしましては十七の減を立てたわけでございます。家事調停事件処理は裁判部門でやっておりますので、そちらの方に増員されますと事件処理の面で強化されてまいります。司法行政部門は事務局の職員でございますので、現在の国家財政の立て直しに対して、私ども裁判所といたしましても内部的な努力をして能率を上げることによって司法行政面での努力を払いたいということでございまして、そのために裁判部門に支障があってはならないわけでございますが、その点は年々少しずつ増員を図っていくことで、地道な努力を重ねてまいりたいというふうに思っております。
  243. 横山利秋

    横山委員 つまり、事務所から、おまえらはもう調停の方へかわれといって、どんどん現場へ追い出すということですね。  それから、十九ページの事務官の欠員状況を見ますと、最高裁は五十四人の欠員、地裁は百八十七人の欠員、家庭裁判所二十五人の欠員、何やかや合計すると二百六十五人の欠員ですね。裁判官は、十六ページを見ますと、判事が三十人の欠員、判事補が八人の欠員、簡裁判事が三十七人の欠員、司法行政は欠員だらけだね。欠員だらけのくせに、増員要求をして判事の員数を八人増加、裁判官以外の裁判所職員を一人増加。まあ厚かましいと思うんだ、一人というのは。百人の間違いではないかと私は思うのだけれども、一人としてよくも書いたもんだと思うのです。  これは欠員がどうしてこんなにたくさんあるのか。欠員ということは予算としては全部ついておるわけでしょう。なぜもっとどんどん欠員を埋めないのか。その点はどうなんですか。
  244. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 まず、十六ページの裁判官の点でございますが、御承知のように、判事、判事補につきましては、四月に採用しあるいは判事に任命されてまいります。したがいまして、十二月一日現在でこの程度の欠が出てまいったわけでございます。(横山委員「一番少ないときの材料を出したのだな」と呼ぶ)いえ、決してそんなことはございませんで、これが充員されます四月までの間には、もう少し欠員が出てまいることも確かでございます。(横山委員「四月には完全に埋まるのですか」と呼ぶ)四月には欠員は埋まります。簡裁判事につきましては、八月に新しく任命され、七月の末までの間に少しずつ欠が出てまいりますけれども、これも八月に埋まります。  一般職の十九ページでございますけれども、欠員の合計は一番下の欄の一番右側でございまして、百六十でございます。やはり書記官、家裁調査官また速記官等につきましては、養成に相当時間がかかりますのと、それぞれ四月に採用するということになりますので、次第に四月になればこのような欠には相ならないわけでございます。
  245. 横山利秋

    横山委員 先ほど間違えました。私の引用した数字は過員の方ですね。百六十が完全欠員、そうですね。わかりました。  四月に埋まるということなんですが、総じてあなたのところの仕事というのは、四月に完全に埋まればそれがノーマルなことなんだというふうになりますと、定員というものは、定員について予算がつくわけですから、四月に完全に埋まって、ずっと翌年の四月までに減っていく、減っていくこの三角の分の銭は、毎年いつも余っているわけですか。年の中途で、これが定員だとすると、こうなって、銭が完全に使えますね。あなたの理論だというと、四月に完全に埋まります、それからずっと下がっていきます、翌年の四月にまた上がります。銭はこれだけ真っすぐもらいますから、いつも三角の部分は銭を余しておるわけか。
  246. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 先ほど総務局長が説明申し上げましたように、官職によりましては四月でないと埋めにくいというものがかなり裁判所では多いわけでございますが、それ以外の途中で埋められるものもあるわけでございます。  ただ、いま横山委員御指摘のように、満杯のときから順次減っていった三角は人件費がどうかということでございますが、まさに理論上は御指摘のとおりでございますが、もう少し技術的に申し上げますと、人件費の積算というものが必ずしもそういう積算の方法をとっておりませんので、理論的にはおっしゃるとおりでございますが、実際上はそう言えるかどうかということはもう少し検討を要するわけでございます。定員掛けるということではございませんで、過去の実績等から人件費というものを昇給原資分等を加えまして積算してくるという予算の技術士の問題もございまして、理論的には御指摘のとおりでございますが、実際上はそう簡単に割り切れるものではないというふうに、ちょっとお答えせざるを得ないかと思います。
  247. 横山利秋

    横山委員 ちょっと答えにくいかもしれぬけれども、人件費というのは、最高裁の裁量で年末手当だとかいろいろなところに流用ができるものですか。
  248. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 私も、非常に細かいことになってきますと、あるいは正確にお答えできるかどうかわかりませんが、大きな意味での人件費の中に報酬とか手当とかいろいろなものが含まれて出てくるわけでございますが、私が先ほど申し上げました趣旨は、人件費というものは過去の実績から順次決まってくるものでございますので、もちろん増員分について幾らという人件費の加算はございますが、一般的には、過去の人件費とそれに昇給原資等をコンピュータ等ではじきまして決まってくるものでございまして、これは必ずしも裁判所について特殊ということではございませんで、一般の公務員の人件費というものがそういう形で決まってくるというふうに私どもは了解しております。
  249. 横山利秋

    横山委員 わかったようなわからぬようなことだけれども、まあいいや。  それから、一つ最後に伺いたいのですが、裁判所の施設というものは、これは最高裁が直営でやるものと建設省に建ててもらうものと、両方あるわけですか。
  250. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおりでございます。
  251. 横山利秋

    横山委員 名古屋の拘置所は、たしかあれは直営でなくして、建設省に建ててもらっておると思いますが、そうですね。知りませんか。その拘置所の指名の問題について一時うわさが飛びました。たしかあのときの記憶は、拘置所長はわしのところの問題でないと、こう言いましたが、なぜ直営の場合と建設省とで別々の場合があるのでしょうか。知りませんか。
  252. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 拘置所でございますと、法務省の所管でございますので、私どもちょっと存じておりません。
  253. 横山利秋

    横山委員 あなたの方ではどうですか。建設省でやってもらうものと直営の場合と、両方あるわけですか。
  254. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 さようでございます。
  255. 横山利秋

    横山委員 どうしてそういう区別があるのですか。
  256. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 ちょっと私もその辺は担当でございませんので……。
  257. 横山利秋

    横山委員 だれが担当ですか。
  258. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 経理局でございます。
  259. 横山利秋

    横山委員 それではこれは別途の問題にして、質問を終わります。
  260. 羽田野忠文

    羽田野委員長 沖本泰幸君。
  261. 沖本泰幸

    ○沖本委員 前の先生方の御質問とダブる点があるかもわかりませんが、その点お許しいただきたいと思います。  今度の改正で増員された裁判所職員の数は、判事が八名、裁判所職員が一名となっておりますが、これは過去十年の間で非常に少ない数じゃないかと思われるのですけれども、この程度の増員で事が足りるのか、あるいは足りないのだけれども差し繰って何とかがまんしようということでやっておられるのか。     〔委員長退席、中川一秀一委員長代理着席〕  それとあわせまして、第六次定員削減計画が五十七年から始まり、裁判所も削減に協力という方向ではないかと思うのですけれども、その協力人員数及び削減人員の数の決定されていく経過等で、今後の方針について、両方あわせて教えていただきたいのです。
  262. 千種秀夫

    ○千種政府委員 裁判所職員の増員につきましては、ここ十年以上毎年少しずつ増員をさしていただいてきておるわけでございます。これは一つには、裁判官を初めとしまして、裁判所職員の資格というものがかなり厳格でございまして、急にふやそうといたしましても、必ずしも補充はきかない、人材が得られないということが一つございます。  そこで、先ほどお話でございますが、満足であるかあるいはがまんしてやっておるのかということになりますと、端的に申しまして、がまんしてやっておるというのが適切かと思いますけれども、毎年充員といいますか、人材確保という観点から、ただ空の増員枠をいただいても何にもなりませんので、その補充の実現方を見きわめつつ予算折衝をいたしまして、裁判所で増員の計画を立てられたものを私どもが法案としてお願いするということになっております。  そこで、過去十年ばかりの経緯を見てまいりますと、裁判官、判事、判事補につきまして見ますと、毎年十人を割る数人ずつ増加をしてきております。過去十年の中で、五十二年に十五名という判事補の増員がございますが、あとは全部一けたでございます。それから判事につきましては、ここへまいりまして、五十五年二十二人、五十六年十六人ということで、二けたが二年続きましたが、これは逐年判事補を増加してまいりましたものが十年たって判事に任官する、そこで判事の枠をふやしていただいた、こういう経過でございます。したがいまして、過去十年累積してみますと、判事につきまして四十三人、判事補について四十四人、簡裁判事について十人、合計で九十七人。これを昭和四十年からずっと見てまいりますと、その数が合計二百四十一人という数字が出ております。かように徐々にではございますが、長期間にわたって見てまいりますと、ある程度の増員は得られておる、また、この方針は今後も持続し、少しずつ増員をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。  書記官、事務官につきましても同様なことが言えるかと存じます。  計画削減につきましては、裁判所の方で鋭意やっておられることでございますので、そちらからお聞き取りいただいた方がより的確かと存じます。
  263. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 まず、委員の御質問の中に、今回の定員法の改正、この程度の増員で足りるのかといった御指摘もございましたので、その点についてお答えさせていただきます。  ただいま定員法の改正で御審議いただいております判事八名、裁判官以外の裁判所職員一名ということでございますが、裁判所の場合どれだけの職員がおれば十分かということは、数字で申しますとなかなかむずかしい問題があろうかと思います。私どもも今回の増員で理想的な状態になるというふうには決して思ってもおりません。今後もさらに増員をお願いしなければならないこともございましょうし、また、増員以外の点につきまして、訴訟の促進を図る工夫、施策も必要かと存じます。  増員の関係で申しますと、調査部長からも申し上げましたとおり、判事につきましては給源の点がございますし、質を下げるわけにはまいりません。書記官につきましても、年々養成できます数に限度もございますので、一挙に増員いたしましても埋まらないということでは意味がございませんでしょうから、それらの点をあわせ考えまして、今後とも充員との見合いで努力を続けてまいりたいと思います。  定員の削減の点でございますけれども政府は、昭和五十六年八月二十五日閣議決定「行財政改革に関する当面の基本方針」におきまして、昭和五十七年度以降五年間に自衛官を除く国家公務員の既定定員の五%を目途に定員削減計画を実施することを決定し、これに基づきまして、昭和五十六年九月十一日の閣議決定「定員削減計画(第六次)の実施について」におきまして、各省庁別の定員削減の目標を定め、内閣官房長官名で最高裁判所事務総長あてに、政府の方針に協力を依頼する趣旨で右の閣議決定が参考送付されました。裁判所といたしましては、もちろん行政庁におきますこの閣議決定に拘束されるわけのものではございません。しかしながら、従来の定員削減計画の場合と同様、いろいろな事情を考慮いたしまして、その御趣旨を十分理解いたしまして、今回の第六次の削減計画につきましてもできる限りの御協力を申し上げようということに決定したわけでございます。  ただ、裁判部門の裁判官、裁判所書記官につきましては、これは直接裁判事務を担当する職員でございまして、事件の適正迅速な処理を図るためには、これらの職員を削減の対象とするということは適当でございませんので、司法行政部門、行政庁の事務と似たような面のございます司法行政部門につきましては、事務の簡素化、能率化等を図る余地がございますので、その部門の職員のみを対象といたしまして、裁判部門の活動に妨げのない範囲で政府の方針に協力するということにしたわけでございます。その結果、五十七年度は裁判所事務官三十七人を減員することといたしました。第六次定員削減計画か昭和五十七年度から始まりますので、今後もできるだけの協力はいたしたいというふうに存じております。
  264. 沖本泰幸

    ○沖本委員 裁判官、速記官等はなかなかそうはいかない、別の部門で考えなければならぬという御説明だったのですが、今度の日航機の事故等で、結局きわめて正直な、まじめな、融通のきかない人が案外心身症にかかったり精神的な欠陥に陥りやすい条件を備えておるようなことが最近の話題になっているわけですね。ですから、横山先生がしばしば当委員会でお出しになる裁判官の方の事故の問題等で一考えられないようなことで事故を起こしておられる。万引きをされた裁判官がいらっしゃるとか、これは明らかに常識で考えられない行動等が極端な心身的な支障を来して起こっていることだと思うのですけれども、結局、人が人を裁くということになりますから、一番神経を使い、法律に基づくことであっても苦しまれるのじゃないかと思います。  そういう関係で、結局、定員枠はどうにか少しずつふえていっているけれども、そのかわりに、もう使いものにならぬ裁判官が生まれていらっしゃるのじゃないだろうか、あるいは相当期間療養していただかないと復帰していただけそうにもないという支障のある方がいるんじゃないだろうかというふうに考えますけれども、裁判官とそれから速記官、書記官等の直接裁判に携わる方々の中で、どの程度そういう欠陥が起こっているか、その辺をお知らせいただきたい。
  265. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 裁判官及び裁判所職員の中で、ただいま沖本委員御指摘のように、精神的な病気と申しますか、そういうものにかかっている者がどの程度あるかというふうなお話かと存じますけれども、現在手元に余り正確と言える資料がないわけでございますけれども、その種の病気で休んでおられる方が数名いるということは言えるわけでございます。最近の中から申しますと、裁判官や裁判所職員だけではなくて、世の中一般の社会情勢の変化に伴いまして、その種の病気を持っておる方というのがふえているということは、一般的にも申し上げることができると思いますし、裁判所もほぼ同じような趨勢でそういうものが次第に発生してきておると言えるのではないかと思います。しかし、先ほどから申し上げておりますように、特に裁判官の数が少ないからそういうことになっておるかということとの関連で申しますと、私どもとしては必ずしもそうは考えていないわけでございます。  ただ、申し上げられますことは、特に裁判官の仕事と申しますのは、裁判官の独立ということからもおわかりいただけますように、かなり孤独な作業が多いわけでございます。法廷に出て両方の言い分を聞き、帰って記録を読んで判決を書きというような仕事がかなりの量を占めておるわけでございますから、裁判官の置かれているそういう環境というものはわれわれも十分意識しておりまして、そういう環境からして勢いそういうことになりやすいということは言えるかもしれないということから、そういうことは常に気をつけておりまして、裁判官にそういう徴候があります場合には、同僚、先輩等がよく気をつけてそういうようなことにならないようにするということも含めて、いつもそういうことには留意をしておるところでございます。重ねて申し上げるようでございますけれども、人が足りないからそういう病気がふえておるというふうには必ずしも理解していないわけでございます。
  266. 沖本泰幸

    ○沖本委員 定員をふやしていってもそれなりの事故者が出ているので、結局は数が足らぬという状態が起こっているということも考えられるわけですけれども、その辺、十分検討して事に処していただきたいと思うのです。  同時に、先ほど横山先生もお触れになったわけですけれども、安川判事補なり谷合さんなり、それから最近は訴追委員会で板垣判事の不訴追が決まったということになるわけですけれども国民的な立場から見ますとなぜなんだろうというふうに疑問に思うような、普通の人でもなかなか陥らぬようなことにことっと陥ってしまっているとかいうふうなことが、最近になって非常にあったわけでもあるのです。  結局、独立して身分が保障されている。それは裁判のための身分保障でもあるかわりに、いろいろなことに染まらないための身分保障でもあるのじゃないかとも考えられるわけです。それと、厳格な試験の上、あるいは司法修習、いろいろな面から養成されていって裁判官におなりになるわけですから、われわれ国民から見ると最優秀な方であるということになるので、その方々がなぜああいうことになるのだろうかというのが国民の心配でもあるわけです。     〔中川一秀一委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、そういう方に裁判を見てもらうとどういうことになるかわからぬというのは一番心配な点になるわけですね。ですから、そういうことのないように、安心して裁判をやってもらえる、生命、財産の安全を図ってもらえるということが一番基本になるわけです。  結局、そういう裁判官の事件に関して、最高裁の方で、裁判官会議で、具体的にもう一度いろいろな養成をしていく、検討を加えていくようなことがあったというふうに報じられておるわけですけれども、再発防止のための歯どめなり、あるいはそういう点がうまくこれからいくものでしょうかどうでしょうか。あるいはまた、そういうことがあったためにより締めつけが強くなってしまって、逆効果になったりするようなことはないだろうか。いろいろな面があるわけですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
  267. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 御指摘のように、最近裁判官の不祥事が相次いで起こっておりまして、当委員会でもたびたび御指摘をいただいておるところでございます。私どもといたしましては、こういう不祥事一つ一つをとってみますと、それぞれにやはり特有の理由というものがございまして、全部を通じてどこがいけないからということにつきましては、必ずしも、これだけを直せばどうなんだ、こうなんだ、こうなるんだというふうに簡単にはいかない面があるわけでございます。  ただしかし、申し上げられますことは、裁判官は単に法律的素養があるだけでは足りないのだ、広い視野と社会的な素養というものが必要であるということだけは疑うべくもないことでございまして、そういう点から考えてみますと、いろいろ理由があり、あるいはいろいろ対策があるのかもしれませんが、とりあえずの処置といたしましては、従前行っておりました裁判官の研修というものに何か欠陥がないだろうかということを考えまして、先ほど沖本委員、この点を御指摘になったのかと存じますけれども、司法研修所というところは、いままで司法修習生の修習と裁判官の研修、両方やっておるところではございますけれども、現実には修習生が年間八カ月研修所におりますために、裁判官の研修をやろうといたしましても、なかなかその期間にはできない、司法研修の教官は修習生の修習にかかり切りになってしまうということもございますので、年間を通じて裁判官の研修ができますような措置を講ずべきではないかということで、従前おりました司法研修所の裁判教官のほかに、今回新たに裁判官研修の部門を担当する教官というものも任命、最終的には四月に全部そろうわけでございますが、そういうものも任命し、裁判官の研修部門と修習生の修習部門とをはっきり分けまして、そういう専門の教官に裁判官の研修というものを専門的にやっていただこう、そういう体制をいま整えたというところでございます。  具体的にどういう研修をしていくかということにつきましては、新たな研修の教官を迎えまして、さらにもう少し詰めていきたいというふうに思っておりますけれども、その骨子といたしましては、先ほども申し上げておりますような、要するに、事件に即した法律的な勉強とか素養とか、そういうことではなくても、もう少し広い範囲の研修というものを行いたい。それとともに、その研修を行いますについて、いわば上からの押しつけといいますか、締めつけにならないように、裁判官の研さんというものは基本的には裁判官自身の自己啓発ということが一番肝心でございますから、そういうことができるような研修というものをこの裁判官研修の中でやっていくようにしたいというようなことについて、いまおよその制度と申しますか組織と申しますか、そういうものをつくって、試行錯誤ということになっていくかもしれませんが、これから順次そういう体制に持っていきたい、こういう段階にあるわけでございます。
  268. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いわゆる判決を下す面においては、やはり法律に従って判断をされるわけですけれども、人間の情操ということになってくると、そっちの方向ばっかりでやっていたんでは案外おかしくなるんだということで、むしろ全然逆のいろんなものによってしょっちゅうストレスを解消するような形で気分を転換した方が正確なことがやっていけるということになります。研修はいいんですけれども、同じ方向の研修ばっかりに偏ってしまうと、よけい締めつけみたいになるおそれがあるわけですから、われわれの素人考えでどうこう言うことはありませんけれども、もっと広い形で人間的なものを備えてもらう方が、もっと大きな形ですぐれた裁判官が得られるんじゃないかというふうに考えます。そういうところはどういうお考えでいらっしゃるわけですか。
  269. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 ただいまの沖本委員の御指摘はまことにごもっとも、私どもは全くその点は同感でございまして、今度やろうとしております裁判官研修というものも、まさにそういう方向でやっていきたいと考えております。研修は、各層の裁判官、いままでは判事補とか簡易裁判所判事を中心にやっておりましたが、今度は中堅判事をも加えましていろいろな形の研修をやっていきたいと思っておりますけれども、たとえばその中でも、長年裁判だけやっておるということではマンネリになる、いろいろな障害が起きてくるということもございますから、一時事件を離れて、一定の期間自由な立場で自分が勉強する、勉強と申しましても法律の勉強という意味ではございませんが、自分の人格の向上と申しますか、幅広い視野を身につけると申しますか、そういう面での自己研さんをやっていただくようにしよう、そういう機会を現場の裁判官に与えていこう、そういうことをも含めました研修というものを考えておるわけでございます。
  270. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その辺は十分これから御検討いただいて、心配のないような方向でいろいろやっていただきたいと思います。  それで、私も横山先生と同じ執行官の問題になるわけですけれども、このごろは余り関係のあることはありませんから裁判所へ行くことないのですけれども、前に行って、裁判所の地下室の方で、本当に先ほどの話、見たらわかることで、とにかく作業用の地下たびをはいて大きな乗馬ズボンみたいなのをはいて、はんてんみたいなのを着た者が、わがもの顔で裁判所の中をうろうろされると、普通の状態の人は精神的に相当なショックを受けますね。そういう人たちが競売の中に入ってくると、それだけ見ただけでそれこそわかるわけです。裁判所の中に執行官の事務所を置いておったらおかしいのじゃないかというような御質問をして、別によけたということがあるのですけれども。  ところが、これを読んで見ますと、つまり執行官が裁判所の中に事務所を置いて、手数料が幾らだとかいろいろなことを明示して、看板をかけなきゃならぬというようなことが載っているわけですけれども、一般的に考えますと、執行官なのかあるいは執行官の代理でいろいろなことをする人夫なのか、その辺が一般では区別がつかないですね。むしろ、人夫をやっている人が執行官みたいなことをやるわけですね。そのためにみんな勘違いしてしまうような場合もたくさんあるわけですから、そういう区別は一般の人が見てどういうふうに見分けられるようになっているのかという点。  それから、「執行官は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる。」こういうことが民事執行法の六条に載っているわけですけれども、結局、威力を用いるというのはどういう意味に当たるのかということです。むしろそれは入ってくる暴力団みたいなものに威力を用いるという意味なのか。あるいは威力というのはどういう意味に当たるのか。その暴力団的な人たちを排除するための威力あるいは警察を用いるということになるのか。ところが、執行官の人と暴力団とがぐるになっていたり、一緒くたになってやられると、その威力というのは結局一般の競売をやりに来た人たちに影響してくることになるわけですけれども、そういうところはどういうふうになっているのですか。
  271. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 執行官法が制定されまして、執行官はかなり公務員性を強めたわけであります。旧法時代は執行官はそれぞれ役場を持つ、それは裁判所の庁舎外に役場を持って執務しておった例も多かったわけでありますが、執行官法の制定によりまして公務員性が強化されました。執行官も常勤の裁判所職員である、ただ一点、俸給制でないという点だけが違うんだ、だからこそ執行官はすべて裁判所の庁舎内に執務場所を持つべきであるということになったわけでありまして、その後、外に役場を持っておりました執行官も順次裁判所の庁舎内に収容して、現段階ではすべての執行官が庁舎内に事務室を持って執務をしているのが実情でございます。  御指摘の人夫、執行官は執行を行います場合に人夫等を補助者として使うことができます。たとえば建物の明け渡しの執行だとかあるいは建物を取り壊して土地を明け渡してするという執行なんかの場合には、一人でやるわけではありませんで、いろいろな補助者を使います。御質問の中にありましたのは、そういう場において、執行官がだれであり、補助者として使われている人夫との区別ができがたいのではないかというお話であったかとも思いますが、そういう場合、執行官は常に身分証明書を携行するようにしておりますし、大がかりな執行になってまいりますと、執行官は執行官としての腕章をつけさせる、あるいは人夫は人夫としての、補助者としての腕章をつけさせるというようなかっこうで識別できるようにしております。  なお、威力を用いるという点でありますが、あの条文に出ておりますのは、いま申しましたような、たとえば建物の明け渡し執行であるとか建物収去、土地明け渡しの執行のような場合に、主として債務者側からそういう執行を妨害するために抵抗をする場合があります。そういう抵抗を排除するときに有形力を用いる、警察の援助を求める、こういうのがあの条文の趣旨でございます。  暴力団の関係で申し上げますと、先ほど来の答弁でも申し上げましたが、競売場の中で、いまは売却場と申しますけれども、暴力団が入ってきてその競売を妨害するというような行為をいたしました場合には、執行官は新法によって与えられました秩序維持権に基づきまして退場を命ずることができる、こういうことになっております。
  272. 沖本泰幸

    ○沖本委員 伺っていて、もうひとつ納得いかないのです。結局、差し押さえられるときに、あるいは物品が競売に付されるというようなときに、執行官が来る。それに差し押さえされた方が少しでも妨害するということのために威力を用いるという御説明があったわけですね。ですけれども、むしろその威力というのは、警察力とか秩序のはっきりした人たちの威力をお借りするのではなくて、現実には人夫の威力を借りているのじゃないですか。いつも執行官は後ろの方に下がっておって、ただ肩書きだけがある。それで、その他のこと一切は手なれた人夫の人なり何なり、そういう人たちがかわってやる。だから、いろいろな不服があったりあるいは理不尽なことがあっても、その場はそのままで通されてしまう。差し押さえの場合はそういうこともあり得る。  それから競売場の場合は、ここにも出ていますが、これは五十三年の浦和の競売暴力汚染というわけですけれども、これは「暴力団住吉連合系の組員三人を「公の競売入札妨害」の疑いで逮捕」したということなんですが、これに当たった浦和の警察が   聴いた被害者や目撃者の証言によると、三人の逮捕のきっかけとなった三月一四日の競売は、正午前から地裁内の会場に約四十人が集まって行われ、二十九件の物件がかかっていたが、斉藤らは、目あての物件の番がやってくると、会場の最前列に立ちはだかり、場内を威圧。問題の宅地は、最低価格七百九十五万円から出発し、ほか四人との競争となった。しかし最後は、斉藤らのグループとAさんがせり合い、Aさんが千円きざみでつり上げるのに対し、斉藤らは、監督官として立ち会いの裁判官や執行官四人、他の参加者が見守るにもかかわらずドスのきいた声で「てめえ。このやろう。表で待ってろ。ぶっ殺してやる」などとおどし続けていた。この時は執行官の一人がついにたまりかね亀山に「退場」を命じたが、亀山は執行官にまでも「ぶっ殺してやる」と捨てぜりふを残して立ち去った。結局、おどしに屈しなかったAさんが一千五十万円で落札したが、斉藤らは三十分間に百回以上も、おどし文句を浴びせていた、という。 こういうふうなところから推測しますと、結局ほとんどまかり通っている。余りひどいのでたまりかねたということですが、これ以下のある程度ならまかり通ってしまっているということになるんじゃないだろうかというふうにも考えられるわけですし、そういうものに類したものは、私たちも、大阪でなんですけれども盛んに聞いてはおるわけです。  ですから、談合グループがあって、その中でぐるぐる回されてしまうし、ほかの人の入る余地もないし、何かがあるとおどされてしまうというようなことになるわけですね。それで結局、期間入札ということにもなるわけですけれども、ここで先ほどの問題に関しましても、「浦和地裁民事部の鈴木小太郎首席書記官の話 ありそうなことだとは、前から感じていた。暴力団の介入はあってはならないことだが、競売はだれでも自由に参加できる以上、どうやって防ぐかはむずかしい。競売を主宰する執行官には年中、注意を呼びかけているのだが……。」こういう談話も出ているわけです。  それから、「全国の競売を指導、監督する最高裁民事局三課の今井功課長は」ということで、これは横浜のことで新聞に載っておるのは、「不動産物件について暴力団系競売屋が入り込んでいる実態は聞いているが、今回のように動産物件ではあまり聞かない話だ。」だから聞いているわけですけれども、動産については聞かない。「執行官には民事執行法により「競売秩序維持」の強い権限が与えられ、もし競売屋が暴力団などとわかれば、すぐに排除できるようになっている」、こういうふうには話はあるわけですけれども、それじゃ一体、さっきのような暴力団系の人がおったら、警察に言って排除できるのですか。あるいは排除しておる例というものを裁判所ではいろいろわかっておるわけですか。その辺はどうなんですか。
  273. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 御承知のように、昭和五十五年十月に新しい民事執行法が施行されまして、売却場における秩序維持権が執行官に与えられたわけであります。執行官は、もちろんその権能を十分に駆使して、売却場の秩序維持を図り、公正な売却が行われるようにすべき責務があります。  御質問の、執行官の面前で執行妨害行為が行われ、それを放置したまま不適正な売却を行ったというような事例は聞いておりません。また、そういうことはないと信じております。ただ、先ほど御指摘がありました浦和の事件、あれはちょっといま資料を持ち合わせておりませんので正確な記憶がありませんけれども新聞に書かれておる内容裁判所の方で調べた事実関係とはやや異なるところがあるようでありますけれども、かなり乱暴な行動に出た人がおって、執行官が退場を命じたか警告したところ、出ていったというケースはあったようでございます。  したがいまして、そういう粗暴な行動に及ぶ者がいまなお後を絶たないということも事実のようであります。こういう場合には、執行官が先ほど申しました秩序維持権を行使しまして、的確にそれを排除するとか秩序を回復する措置を講ずべきでありますが、なかなかむずかしい問題でございまして、やはり新法が新しく採用いたしました期間入札という制度、これを活用することによって、そういう悪質な業者等を排除していくという方法をとっていくべきだろう、こういうふうに考えております。
  274. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ということは、排除すべきではあろうけれども、現実はそうではないのだということですか。結局どこで聞いても、悪質暴力ブローカー的な競売屋が談合ばかりやって、そしてその人たちが自由に安い値で落として、それを欲しい人にはぐるぐる回してつり上げたり、あるいはこの新聞にも出ておりますけれども、値段をぴたっと当てて落としておいて、少し手数料だけ足して買い戻せということを執行官からも言われているというような内容も、ここに出てきておるわけですね。  そういうことが幾つも出ておるということは、すでにこういうことはずっとあるというふうに理解していいのじゃないかと思うのですね。そうすると、われわれが期待する裁判所というものとイメージが全然違うものがその中にある、こう判断しなければならないということになるのではないのでしょうか。ですから、そういういわば破産した、倒産した、その債権のかわりに競売に付して幾らか足しにしてもらうというものを、もう一度どん底にまで突き落としてしまうようなことが、結局裁判所の中で行われておるということをみんな理解しておるということになるのですけれども、それが一番忌まわしいことになるのではないかと思うのです。  ですから、執行官から向こうのことは裁判所は知らぬぞということであっては困るわけなんですよ。執行官を監督指導する役割りの方がちゃんと決められておるわけでしょう。そういう人たちはどうしていらっしゃるのか。そういういろいろな忌まわしい事件でこういうことを指導したとか、こういうことを監督したとか、こういうところを改めさせたとか、あるいは執行官とぐるになっている問題だとかいうようなものが報告として上がってくるのか、そこの段階で消えてしまっているのか。あるいは執行官に手数料を出しますね、足りないときには。国から払うわけでしょう。その分は全国でどの程度あって、幾らぐらい払われておるのか。それで、悪質だったということで執行官を取り消された人はいままでにどれくらいおるのか、その辺もお答えいただきたいのです。
  275. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 横浜地裁小田原支部の動産執行事件について御指摘があったと思いますが、たしか、ぴったりの価額で落としたというような見出しの新聞記事がありました。あの事件は、債務者は家庭電気器具をずいぶんたくさん買われた人のようで、結局払い切れなくてメーカー側から差し押さえを受けたということのようであります。それで、執行官はその電器メーカー側の申し立てによって差し押さえに行ったわけです。そのときに執行官は、差し押さえ物の評価には一応の相場があるわけでありますが、その相場に従って評価をして、それを競売に付したわけです。その評価は関係人にはわかっておるわけであります。そして買い受け人がその執行官の評価額と同じ金額で落としたということであります。  通常は、執行官が評価した金額がたとえば百万円だといたしますと、百万円で落としてくれる人があるような場合は少ないわけでありまして、競り売りでも、競り上がっても五十万とか六十万とか、その辺までしかいかないのが通常のようでありますけれども、その事案では執行官が評価したところまで上げたということでありまして、その記事は、何かいかにも談合があったようなことをうかがわせるようになっておりますけれども、実際はそうではありません。その関係で執行官に責められるべき点はなかったというふうに私どもは見ておるわけであります。  ただ、先ほど来いろいろ御指摘のように、執行官は何といいましても当事者の利害が直接に対立する非常に深刻な場において仕事をするものでありますから、立場上厳正でなければならないのは言うをまたないわけであります。そこで、こういう執行官の特殊な勤務状況に照らしまして、執行官の監督体制は、御承知のとおり通常は地裁の所長が監督官になりまして、地裁の民事首席書記官あるいは事務局長が監督補佐官として執行官の監督に当たるというふうに監督体制を整えておるわけであります。  それで、お尋ねがありました執行官が手数料収入が少なかったときに国庫から補助を受けるという点でありますが、これは執行官国庫補助基準額令に定める額、すなわち行政職俸給表(一)の四等級七号俸の俸給月額に十二を掛けた額、これが現在では二百五十三万八百円ということになっておりまして、手数料収入がこの額に足りなかったときはその差額を受けるということになっておるわけであります。五十五年度にこの補助金を受けた執行官は六名おりまして、その受給総額は五百二十万円余でございます。  大体以上でございます。
  276. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまのお話は、多分横浜の問題だろうがこういうことで事実と違うということをおっしゃいましたけれども、私たちは自分で調べたわけではありませんから、新聞紙上に載ったものしかわからないわけですけれども、この新聞に出ておるのは   競売には、執行官のほか、七人の競売人が参加したが、ほんの形式的なもので、実際に競売(セリ)に加わったのは二人だけ。うち一人は差し押え物件さえ見なかったという。結局、最初から物件を確認していた一人が、執行官が事前に出した評価額と同額で落札したが、 これはいまおっしゃったところですね。   直ちに家財道具を持ち去られると思っていたAさんに、執行官は「(落札業者と)二人でよく話し合いなさい」と助言したという。   これを受けて落札業者が一人残り、「きょう、ここに来た仲間の手間賃を払わなければならないから九万円上乗せしなさい。あなたが買い戻した方が得だよ」と申し入れ、連絡先として指示したのが暴力団稲川会系荒井組の息がかかった宣伝広告会社「S社」だった。   業者本人も地元・小田原署の暴力団リストに組員として載っており、同署で調べたところ「S社」は、最近競売関係に進出、かなり活発な動きをみせている。   法律的には、Aさんが競売された物件を買い戻した場合、残っていた月賦代金から落札価格を差し引き、残金を引き続き返済することになる。競売人に渡す上乗せ九万円は丸々損をすることになり、Aさんは「あまりにひどい競売で腹が立つ。裁判所の執行官が立ち会っている以上、公正に納得するやり方をしてほしい。あれでは執行官は競売人の“仲間”と同じだ」とカンカンだ。 こういうふうに書いてあるわけです。  それから、この問題でまたほかの新聞には、「横浜地裁では、毎週金曜日を競売日に決め、」これは期間入札制にしたという点ですね。「同地裁の競売入札会場に競売参加者を集め、新法前に受け付けた物件は競りで、新法後の物件は入札でという二通りの競売方法で処理していた。」これは先ほど横山先生のときに御説明があったわけですけれども、   競売入札会場という一種独特の雰囲気に、たとえ一般の人が参加しても気後れするのは当然。依然として競売入札会場は専門ブローカーに牛耳られ、おまけに資金源を求める暴力団までが「競売屋」の看板をあげる始末。   事実、競売物件は、不動産の場合、市価に比べ少なくても二−三割は安く、落札して転売しただけでも、かなりの利ざやが入る。また、競売が“密室”だけになるべく安く落札するための談合も日常茶飯事で、仲間内では、談合金にさえランク付けがあるほど。   昨年末以来、同地裁を舞台にした“暴力競売”(稲川会系暴力団が競売妨害をしたり、競売入札会場でにらみをきかす——等々)か明らかになったが、某競売ブローカーは「横浜だけでなくどこでもやっていることだ」と告白する。 というわけです。  だから、結局僕が言っているのは、このことだけをとらえて言っているわけじゃないのです。同じようなことをよその地方でも私自身が聞いているわけです。ですから、どこでもあるということに判断していいのじゃないかと思われるわけです。ですから、前も申し上げたとおり、裁判所とは全然違うイメージを受けるわけです。弱い者がここでもう一つひっぱたかれるというような、ひどい場面が裁判所で行われているということは問題だということになるのです。そういうことになると、弱い国民は、裁判所で公平な裁判を受けてみたところで、最後はどうにもならぬということに結末がなっていくわけでしょう。ですから、何とかしょうと思って努力しているんだということでは困るわけです、これは。  ですから、少なくとも、こういう暴力がまかり通り、不正がまかり通るようなことは断じて排除してもらわなければならぬ、こういうことになるのです。どんなことをしても、裁判所からはこういう問題は排除してもらわなければならないということになるわけですから、どこでも、この人は執行官だということは会場におる人や国民の目によくわかるようにしてもらい、かわりにやる人夫は、人夫がそんなことかわりはできないんだと。ところが、ともすれば人夫が執行官みたいなことをやるわけです。警察官でない人が警察官のまねをやるのと同じということになるわけですからね。そういう点の区別をはっきりしてもらい、監督強化を十分してもらわなければならないと思うのです。  だんだんいろいろな問題で倒産する人もふえてきているわけですし、いろいろな問題が重なるわけですから、その辺を十分お考えになってやっていただかなければならぬと思いますけれども裁判所の方はどういうお考えで今後に対処されますか。
  277. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 ただいま委員の御指摘の中には、問題の場面が二つあると思います。裁判所の中で行われる競売売却と外で行われる執行の問題、この二つがあろうかと思います。  最初の、裁判所の中で売却場で行われる競売、ここでこの手続の中へ暴力団が入ってきて甘い汁を吸うというようなことがあってはならない。ただ、裁判所も、全く裁判所の外で行われていることにまでは目が届きませんし、いかんともしがたいわけでありますから、そういうところで違法なことが行われることを排除するために、期間入札というような制度もこれからどんどん広げていくべきだというふうに考えておりますし、各地方裁判所においても、その方向で進んでいるのが現状でございます。  競売場の中も、先ほど申しましたように、執行官が責任を持って取り仕切ることになっておりますが、その競売場の入り口から一歩外へ出ると何が行われるかわからない。それも裁判所の構内、そういう場合には、裁判所職員がその競売場の内外を巡回して、そういう違法行為が行われないように監視するというような措置もとらなければならないと思います。現に、横浜地裁の場合には、こういう新聞記事が出た後、裁判所の中でいろいろ協議して、競売場の内外の巡回を厳格にして、三月からは期間入札を採用するというふうな措置をとったようであります。そういうようなことで、委員御指摘のようなことが起こらないように、裁判所としては一生懸命努力しているところでございます。  裁判所外での執行の現場における問題は御指摘のとおりでありまして、違法な執行、その執行官の手足になります執行の補助者が違法な行為に出ないよう、執行官は十分気をつけるべきでありますし、そのように私どもも指導しているわけでございます。
  278. 沖本泰幸

    ○沖本委員 重ねて言うようになりますけれども、結局、税務署の税金の取り立てというのは、国民にとってみて重税、重圧感がある場合には、これは鬼の使いみたいな感じを受けるわけです。それから、お葬式に関しては、焼き場の焼却人夫はそれこそ地獄の鬼の使いみたいな感じなんですね。同じように、裁判の結果起こってくる差し押さえ、取り立てなり、そういうふうな内容も、競売もやはり同じような感じを受けることであってはならぬわけですから、むしろ執行官そのものは、弱い人の立場に立って、納得させてあげて、十分な執行が行われるようにしてもらわなければならないと思うわけです。それがむしろそうではなくて、暴力団と同じ立場にあったりあるいは同じように見られたり、あるいは人夫だけが横行しているような執行官であってはならないと私は思うのです。  ただ、倒産するにしても、計画倒産もあればいろいろな場面があるわけですから、一概に皆弱い人とは言いかねる面もあるかもしれませんが、少なくとも国民の目には、その辺がもっと明るくスムーズにいくようにしてもらわなければ、私は裁判所のイメージをことごとく傷つける一番大きな原因になっているような気がするわけですから、その点を十分今後早急に改善していただきたいことをお願いしまして、終わります。
  279. 羽田野忠文

    羽田野委員長 岡田正勝君。
  280. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 予算委員会の関係がありますので、時間をごく短く切り詰めますので、お答えの方も明瞭にひとつお願いしたいと思うのであります。  まず第一に質問いたしますのは、三名の有名な非行判事がおりますね。最近問題になりました谷合さん、板垣さん、安川さん、この三名の方々の事件後における身分上の処分は一体どういうふうになったか。それから、それぞれ三名の年齢をお答えいただきたいと思います。
  281. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 まず、谷合判事補でございますが、谷合判事補につきましては、御承知のように、昨年裁判官弾劾裁判所におきまして罷免の判決があって、裁判官の身分はそれでなくなったわけでございます。  それから次に、板垣判事でございますが、板垣判事につきましては、まず最高裁判所一つまり裁判所の中での手続といたしましては、仙台高等裁判所におきまして、裁判官分限法に基づく分限の申し立てをし、特別の部におきまして分限裁判ということで戒告の裁判がございました。それからさらに、これは裁判所がということではございませんが、ほかからの訴追請求に基づきまして、私どもお聞きしておるところでは、新聞等でも報道されたことでございますが、裁判官訴追委員会に対する訴追の申し立て、訴追請求があったようでございますが、訴追委員会で先般訴追しないという御決定があったというふうに理解しております。結局、板垣裁判官につきましては、最初に申し上げましたように、分限の裁判があったということでございます。  なお、これは処分と言えるかどうかわかりませんが、板垣裁判官につきましては、その後配置がえが行われまして、山形の酒田支部から、現在は浦和地方裁判所の川越支部へ配置転換を行っております。  それから、安川裁判官につきましては、これは少し前のことで、私の時代ではございませんが、訴追の請求がありましたが、立候補によりまして裁判官の身分喪失で、訴追の手続はそれで終了したというふうに聞いております。  なお、年齢でございますが、ちょっといま手元に正確な年齢の持ち合わせがございませんので、正確には申し上げられませんが、期ということで申し上げますと、板垣裁判官は十九期、といいますのは、昭和四十年に司法修習生になって四十二年に任官した。それから、谷合裁判官は二十五期と申しまして、昭和四十六年に司法修習生になりまして、四十八年に判事補に任官したということでございます。安川簡易裁判所判事、これはちょっと記憶がはっきりいたしませんが、特別選考ということで大分前に簡易裁判所判事に任命したということで、簡易裁判所判事としては比較的お若い方でございます。
  282. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この裁判官を八名ふやすという提案、それからその他の職員を一名ふやすというただいまの御提案については、私は賛成であります。賛成でありますが、世間を騒がし、裁判官としての判事としての品位を著しく失墜せしめたこういう顕著な方々、非常に不名誉な話でございますが、いまさっきお話がちょっとありましたように、谷合さんにしてもこれは恐らく三十代ぐらいの人じゃないかと思いますね。こういう方が四十八年に任官をいたしまして、間もなくのことでありますが、たしか井上という弁護士、その人からゴルフセットや背広をもらったりしている。非常に感覚を疑うのでありますが、そういう事件を起こされた。  また、板垣さんの場合は、同じ井上弁護士が破産状態になりましたゴルフ場の管財人ということになりまして、その破産しかけたゴルフ場を井上弁護士が安く買い取ろうというような意図があったのでありましょう、御承知の東京二十という会社をつくっちゃいまして、それに対して板垣さんに出資を求めた。板垣さんはそれに対して六百万円の融資をしたほか、土地などを担保提供いたしまして、評価いたしますと、合計して約一億五千万円近くの便宜供与を与えたという形になっております。これは先ほど御報告のありましたとおり、訴追委員会におきましては、二月十五日に、残念ながら訴追しないということに決まりました。これは疑惑を残しながらです。疑惑を残しながらもそういうふうに決まったわけでありますが、これが決まりました一番大きな原因というのは、われわれ推測しかできませんが、一番大きなファクターとしては、その便宜供与をしたことについての見返りがどのくらいあったかということのはっきりしたものがつかめないから、結局は訴追しないということに決まったのではないかと思うのであります。  これも非常に残念な出来事でありますが、安川さんのごときはとんでもない人でありまして、係争中の女性に関係を迫る、全く語るのも恥ずかしい、顔が赤くなるような感じのするような事件を起こしていらっしゃるわけでございます。  いずれにいたしましても、皆三十代、四十代の若い方ですよ。将来を非常に嘱望されておりながら、言うならばエリート中のエリートというべき立場にありながら、みずからその自分の将来にふたをしてしまったというようなことが起きておりまして、私は大変残念なことだと思っておるのであります。  そこで、裁判官に対して判事補に任官する前に二年の研修があるわけでございますが、一体研修はどうなっておるのかなという感じがするのです。非常にどぎつい言葉で言うならば、判事になる人の研修の内容というのは、まさに雲の上の研修みたいなことをやっているのじゃないかな。全然外のばい菌が何にもないようなところへ出ていって仕事をするというような研修の仕方をしているのじゃないか。外へ出れば、無菌状態からばい菌がうようよしているところへ出ていくわけですね。しかもお年は若い。若うございますから、私ちょっと言葉が過ぎるかわかりませんが、世間知らずのお坊ちゃんのような人が外へ出ていくものですから、これも語弊があるかもわかりませんが、たくさんの弁護士の中では、一部には海千山千のなかなかの者もいるわけですね。そういう人たちの中にもまれちゃうと、ついつい、世間を知らぬものですから、いまのような誘惑にひっかかっちゃう、そして自分の若い将来をあたら自分でつぶしてしまうというようなことになるわけでございまして、研修所の中においてもっと世間の厳しさというものを十分教えるべきではないか。研修すべきではないか。  たしか昨年も、この委員会におきましてこの問題は出たと思うのです。その後研修所の中におきまして、研修内容で、本当に無菌状態の研修というんじゃなくて、もっと世間をよく知っていただくような厳しい研修というものが、果たしてそれから以来一年間行われておるんだろうかどうだろうかという心配があるわけです。今度判事の増員が八人あるわけでありますが、それに関連をいたしましてお尋ねをする次第であります。
  283. 大西勝也

    大西最高裁判所長官代理者 確かに谷合裁判官、板垣裁判官等、先ほども申し上げましたように比較的お若い方々でございますが、ただ、谷合裁判官の場合は、むしろ大学を出てからいろいろ社会的経験も積んで、普通の方よりはむしろ積まれた方では実はあったわけでございますが、それはそれといたしまして、ただいま岡田委員御指摘のとおりに、世間知らずの面がないかというふうにおっしゃられますと、いや、そんなことは絶対ないとはここではちょっと申し上げるだけのあれがないわけでございます。  研修ということで申し上げますと、一つには司法修習生二年間、つまり裁判官、検察官、弁護士になるまでの修習、つまり法曹になるまでの事前の教育の問題と、裁判官について申し上げますと、裁判官に任官いたしましてからの裁判官としての事後教育の問題、その二つがあるわけでございます。  前の方の事前教育の方につきましては、これはもう大学の法学教育との関係もありまして非常にむずかしいところでございますけれども、何と申しましても二年間で法曹としてのミニマムスタンダードと申しますか、最低限のつまり法曹として立っていくだけのものを教育しなければいかぬということがございまして、もちろん司法研修所でも単に法律知識だけではなくて、広い社会的な視野、素養を得させるためのカリキュラムというものもある程度組んでやっておりますけれども、それで十分かと言われますと、ここで胸を張って十分だというふうには申し上げられないというふうに先ほど申し上げたわけでございます。  もう一方、裁判官の事後教育の面、これも恐らく先ほど岡田委員おっしゃいましたように、昨年もそういうお話が出まして、お答えしているのだろうと思いますが、判事補につきましても、一人前の判事になるまでに十年の期間がございますが、その間に二年置きくらいに集めましていろいろやっております。この研修におきましては、これも修習生のときよりはもっと、単に法律知識等の詰め込みということではございませんで、外部からもたくさん講師なんかも来ていただくとか、座談会をやりますとか、先輩法曹の話を聞きますとか、いろいろな工夫をしてやっておるところではございます。  ただしかし、この点につきましても、先ほど来御指摘のような最近における不祥事等を勘案いたしますと、いままでのことで十分であったかということになりますと、必ずしも十分ではなかったかもしれない。もっともっとそういう法律的知識の詰め込みではなくて、広い視野を得させるためのそういう研修というものをやっていかなければいかぬということで、ことしの春からは、この間新聞にも載りましたけれども、少し構想を新たにいたしまして、そういう方面にも重点を置いた研修というものをやっていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  284. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次に、裁判官の数の問題であります。  私は、率直に言って、一般の国民はどうも裁判のスピードが遅いな、なかなか解決に至らない、いま世間ではこういう話がもっぱら出ているのですね。民事裁判に持ち込むぐらいだったらもうしようがない、これだったらもう示談でいこう、時間がかかってどうしようもないというようなことが普通になっちゃっているのです。それでも、そうはできぬ、示談にはできぬという分が民事に持ち込まれておるような、ぎりぎりの数でございまして、一般では、裁判のスピードが余りにも遅いために、民事なんというのは半ばあきらめているというような状態が多いのです。やはり裁判官の方が数が少ないんではないか。これは弁護士等のいろいろな関係もありまして、なかなかそう簡単には手続上いかないということも承知はいたしておりますけれども、一般の国民からいうと、裁判といったら長いぞ、あんなものにかかったらとんでもないことになる、まさに十年一昔というようなことを覚悟しなければいかぬということが一般的な常識にさえなっておるというふうに思います。  この裁判官の中長期的な立場に立ちましたいわゆる増強、補充の関係、これにつきましてはどういう構想をお持ちでございますか。
  285. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 昔から、やはりもめごとの解決には相当時間がかかるということがいろいろことわざにもなって言われておりますように、確かに事件の解決というのは多少の時間がかかることは、何もわが国だけの問題でもないようでございます。諸外国の例を見ましても、わが国より多少時間がかかっているところもありますけれども、民事事件について申し上げますと、わが国よりは先進諸国におきましては多少短いのが現状でございます。その点、私どもも司法行政を担当します立場といたしましては、十分わきまえまして努力しなければならないと存じております。  昭和三十九年に臨時司法制度調査会の答申が出されましてから今日、相当数の裁判官以外の職員の増員が図られてきております。何をもって裁判をやるのに十分な数かということは、大変むずかしい面があろうかと思います。現状が理想的であるとは決して思っておりません。しかしながら、裁判官あるいは裁判官以外の職種について見ましても、書記官、家庭裁判所調査官、速記官といったような職種につきましては相当期間の訓練を要する、養成に時間がかかりますし、裁判官につきましては質を落とすということはおよそ考えられないことでございますので、定員だけを伸ばしましても、果たしてそれだけ埋まっていくであろうかという心配もございます。長期的に少しずつじみちに努力を重ねていくということで今後も続けてまいりたいと思いますし、人をふやすという点だけではなしに、訴訟手続上の工夫その他も考えてまいらなければならないと存じます。今国会に民事訴訟法の改正案が提出されることが予定されておりますけれども、その辺も訴訟を促進するための改善策だというふうに考えております。
  286. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 最後の質問にさせていただきます。  大臣所信表明の中にもありましたが、保護観察官の拡充、そのことについて触れていらっしゃいました。昨日のどなたかの質問の中でお答えがありましたけれども、いや、大変なんです、一人の保護観察官で約二百件事件を受け持っておりますというようなことをおっしゃっておられました。まさに現場の保護観察官の皆さんは大変な労働といいますか、肉体的な方もまた精神的にも大変な過重な労働を強いられておるわけでありまして、この方に対する人員的な拡充というようなことは考えていますか。仄聞するところによりますと、むしろ減員をするのじゃないか、一%ぐらい減らすのじゃないかというようなことさえ耳に入ってくるのでありますが、いかがでございますか。
  287. 谷川輝

    ○谷川政府委員 お答え申し上げます。  昨日、沖本委員の御質問に対して、私、率直なところを申し上げたのでございますけれども、御承知のとおり絶対数が不足しておることは間違いございません。しかも、事件の質というものが、非常にむずかしい事件がふえてまいりました。昨日もいろいろ出ておりましたけれども、私どもの方の仕事は、いわゆる矯正施設、刑務所とか少年院に入っておる人たちを塀の中でお守りするという方ではございませんで、刑務所や少年院から仮に出所した人間、それから刑期を終えて出てきた人間につきまして、二度とそういう非行や犯罪を犯さないように見守っていって、しかも彼ら自身にみずから更生させようという仕事をやらされるわけでございまして、ある意味においては刑務所と似てはいますけれども、やはり質が違いまして、施設内処遇ではなくて、社会の中で、しかも、何と申しますか、彼ら自身の自立を待つということを保護観察していくという仕事でございますから、ある意味においては、塀の中でぴしっと取り締まる方がきついか、社会内において自立していくのを地域の人たちと一緒になりながら見守っていく方がむずかしいのか、この辺はいろいろ問題のあるところでございますけれども、いずれにしましても、人間が人間を扱っていくという法務省の本来の仕事の中、大半がそうでございますけれども、そういうむずかしい仕事をやっておる。一人当たり平均いたしまして二百件持っておりまして、これを観察官だけでなくて、いわゆるボランティアである四万七千おられます保護司の方たちにお手伝いを願いまして、一緒になってやっておる。  なおこのほかにも、あえて御説明申し上げますと、更生保護婦人会という組織がございまして、これまた、地域の婦人の方々が結束いたして非行少年たちを立ち直らせるためにお手伝いをしてくださっている。これが人員的に申しますと、数は非常に多うございまして、全国で二十万人の更生保護婦人会の皆さん方がお手伝いくださっております。  そのほかにBBSと申しまして、ビッグ・ブラザーズ・アンド・シスターズといいまして、地域内における若い青年の方たちが、これまた非行少年たちの友達活動といいまして、更生を見守り、手伝ってくださっておる。これは七千人余りの方たちがおられまして、いずれも私どもの仕事のお手伝いを願っておるわけです。  こういう方たちと一緒になってやっていきますので、役人だけがやらなくてもいいのじゃないかという見方もありますけれども、これまた昨日も御説明申し上げましたように、保護司の先生方も決してみんなお若い人たちばかりではない、本当に頭の下がる熱心な仕事をしてくださっておるわけでございますけれども、若い人とのゼネレーションギャップなどもこれあり、あるいはまた覚せい剤であるとか暴力組織の人間たちも対象者としておりますので、特殊な扱い方というのももっと勉強していただかなければならない、こういうことで、私どもとしては専門家である保護観察官を国家財政のいまのこの状況の中でできる限り一人でも多くふやしていこうと努力しておりまして、今度の五十七年度の関係で申しますと、皆さん方国会で御承認願えれば、十七名の増員がいただけるという方向になってきておる次第でございます。
  288. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。私の質問は終わらせていただきます。
  289. 羽田野忠文

    羽田野委員長 安藤巌君。
  290. 安藤巖

    ○安藤委員 提案をされております定員法の改正で、裁判官八名、裁判官以外の職員一名増員ということになっておりますが、これではとてもじゃないが不十分だというふうに思います。ところが、その定員増の裏づけになる予算定員の方も、裁判所の方の一般会計予算も拝見をして調べてみたのですが、裁判官以外の職員は、提案によりますと、昭和五十七年度で二万一千三百四十五人ということになるわけですね。ところが、この予算定員の方を見ますと、そのうち裁判官以外の職員で三十八人は六カ月ということになっていますね。この六カ月ということになると、六カ月後はこの定員が三十八人減る、こういう予算の裏づけの関係からすると減るということになると思うのですが、これと定員との関係、どうなりますか。
  291. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 増員されます裁判官以外の裁判所職員につきまして六カ月の予算しか計上されておらないという点でございますけれども、一般職につきましては、年度途中の自然退職者が相当ございますが、このうち書記官、家裁調査官、速記官につきましては、年度途中の補充が御承知のように困難でございます。養成に時間がかかりますのと、新規採用、養成後出てまいるのが四月でございますので、年度途中の欠が生じましてもなかなか途中では埋められないという事情がございます。また、毎年八月には一般職の中から簡易裁判所判事に任命される方も相当ございますため、年度途中における欠員が生じてまいることは避けられないのが実態でございます。  そこで、裁判所といたしましては、財政当局との折衝の過程におきまして、今回の増員に必要な経費を全体の予算の枠内におきまして検討いたしました結果、増員分につきましては十二カ月の予算を計上しなくても足りるというふうに考えまして、六カ月の予算を計上するにとどめたものでございます。  ただ、書記官、速記官等につきましては、四月に採用する必要がございますので、四月に採用するということに相なりますけれども、全体の枠内で動きますれば四月の採用も可能だというふうに考えております。
  292. 安藤巖

    ○安藤委員 途中でやめていく人がある、だから定員から見て欠員が生ずるということはわかるのです。しかし、それはそれとして、別の問題として、定員をさらに補充するという努力をしていただく、これはあたりまえの話だと思うのですね。問題は財政当局との話し合いの関係上ということをおっしゃったのですが、それとの関係でいろいろ予算上頭を悩まされたということはわかるのです。  こういうことでいきますと、その定員法で定員が決めてあっても、予算の関係からすると、定員自体、いまの場合三十八人の人が定員よりも少なくていい、六カ月後はそれよりも少なくていいんだということを認めたことになってしまうんじゃないですか。だから、これは定員法のしり抜けですよ、三十八人分、半年分。どうもおかしいですわ。これはごまかしとしか言いようがないですよ。もうちょっとよくわかるように説明していただきたい。欠員が生じたら補充していくというのは別です。最初から、三十八名は六カ月分だ、あと六カ月は定員よりも三十八名少なくなることを承知の上で予算定員を組んでいる。じゃ、定員法は一体どうなるのだということですが、どうですか。
  293. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、やはり欠員との兼ね合いで、必ずしも十二カ月分の予算がつかなくても、当初の年度についてはやっていけるということに尽きようかと思います。
  294. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、それはあくまでも問題が別だと思うんです。欠員が出ることはわからぬでもないですが、それは別途補充するということを考えるべきであって、最初からこの三十八人に関しては六カ月で結構ですというのは、あとの六カ月に関しては、定員法で決められている数よりも三十八人減ということで、予算の関係でそういうふうに切り下げている、こういう考え方、姿勢といいますか、これが財政当局、大蔵当局からぎゅっとやられると、はあ、さようでございますかといって、私どもか非常に歯ぎしりするほど——これは最高裁判所を応援しているのですよ。歯ぎしりするほど情けない話だと思うのです。こういうのをこれから改めてもらいたい。ちゃんと一年間取って、欠員が生じたらどんどん補充していくことを考える。養成のことも長期に見て考えて、そういうことをやっぱり考えていただく必要があろうと思うのです。その辺、一遍しっかりどうですか。
  295. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 毎年、欠員の状況等、差がございますので、その辺との兼ね合いで必要な人数、必要な予算、果たして何カ月分必要かといったような点を毎年検討してはまいりたいと思っております。
  296. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもまだはっきりした返事じゃないですけれども、しっかり定員法の定めた定員があるのですから、やっぱりそれに合わせた予算を組まなかったら、財政的な裏づけが何もないということを言わざるを得ぬと思うのです。  そこでもう一つ、今度のこれは司法法制調査部の方でおつくりになった。部長さんお見えになるけれども裁判所職員定員法の関係の資料もいろいろつけていただいておるのですが、沖縄の関係。沖縄も、沖縄県というりっぱな日本の国ですよ。ただ、これは沖縄の復帰に伴ういろいろな特別措置に関する法律の関係で、沖縄の裁判所職員定員等については別の法律があることは知っております。だから、これはいいかげんに別建てでなくて一本にすべきじゃないかとなると思うのですが、きょうはその問題はさておいて、裁判官を八名ふやし、それから裁判官以外の職員も一人ふやすという、定員増ということになっておりますね。ところが、沖縄の方では、これは最高裁の規則というのが別にあって、そして定員が定められておるのですね。その規則によりますと、今度は沖縄の定員を裁判官二人、裁判官以外の職員一人減らしているのですよ。そうしますと、裁判官八名ふやします、裁判官以外の職員一人増員しますと言ったって、実は裁判官は六名ふやすにすぎないし、そして裁判官以外の職員は増員はゼロ、こういうことになるのですよ。  そういう関係の資料は司法法制調査部でおつくりになったと思うのですけれども、そうじゃなかったらほかの人に答えてもらいたいのです。そういう資料が全然ついてないものですから、まさに八人ふえて、一人ふえるのだというふうに理解してしまうのですが、実態は違うのです。沖縄県はよその国じゃないんですよ。だから、その辺のごまかしをやっていただいては困るのですが、そういう資料をどうして提出をしないのですか。
  297. 千種秀夫

    ○千種政府委員 別にごまかしているわけではございませんけれども、法律が一応別になっておりまして、裁判所職員の定数に関する法律を改正するにはやはり裁判官を八名増員することになるものでございますから、その資料を出しているわけでございまして、それ以外の資料は御質問に応じて、必要に応じてお答えいたしたいと思います。
  298. 安藤巖

    ○安藤委員 これはそちらの方を私の方も調べてみたからわかったのですけれども、そうじゃなかったら、たとえそれぞれ数は少なくても増員ということになるのかなと思ってしまうではないですか。今度は、沖縄県ははっきりと日本の国なのですから、ちゃんとこれも入れて資料として出してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  299. 千種秀夫

    ○千種政府委員 ただいま先生も御指摘のように、沖縄の方は別の法律になっておりまして、裁判所の規則で決めておるものでございますから、この法律について直接の資料として必要であるということでございましたら、今後検討いたしたいと思います。
  300. 安藤巖

    ○安藤委員 大いに必要なんですよ。日本全体で裁判官がどれだけふえて、裁判官以外の職員がどれだけふえるかということを、沖縄のやつを入れていただかぬことにはわからぬじゃないですか。これは必要ですから、そういうようにしてください。  それから、いまこれはお気の毒なことなんですが、徐明という人、この人は、最初は札幌の人が写真とか手紙を交換しておって、これは自分の娘に間違いないということで迎え入れようとしたわけですね。ところが、札幌の家庭裁判所鑑定の結果、親子関係はないということになって、お気の毒なことになっておるのですが、いまこの人が東京の家庭裁判所に就籍許可の審判の申し立てをしておられるわけです。これは後でも家庭裁判所調査官の関係でお尋ねをするつもりでおりますけれども、こういうような申し立てがある場合は、家庭裁判所調査官の方は、とにかく父母は存在しない、日本の国籍は持っているようだけれども戸籍は特定できないというようなことですが、日本人であるかどうかという人類学的な問題に突っ込むようなことまで調査されるようなことになるのでしょうか。
  301. 栗原平八郎

    ○栗原最高裁判所長官代理者 委員お答え申し上げます。  ただいま委員から御指摘のとおり、この一月の二十九日に東京家庭裁判所に就籍許可の申し立てがあったわけでございます。二月の十八日に第一回の審問期日が開かれまして、事情を聴取したようでございます。その期日に、この申し立て人には二人の弁護士の代理人がついておられまして、次回までに申し立て人本人からその生育歴等を書面でしたためて提出するということで、次回期日は追って指定、こういうことに相なっておるわけでございます。  この方の場合は、いわゆる中国残留孤児に当たるのではないかと思われるわけでございます。就籍を許可するかどうかというのは要件が定められておりまして、日本国民で本籍を有しないかあるいは本籍が不明ということに相なっておりますので、果たして日本国民かどうかということは、国籍法の定めるところに従いまして裁判所がその要件の審査をしなければならないわけでございます。  具体的に申し上げますと、父親が日本人であるか、あるいは父親が知れない場合は母親が日本国民であったかどうかということを確かめない限りは就籍を許可すること相ならないわけでございます。  ただ、この人の場合は、同時にどういう経緯で中国に残留するようになったかというような点につきまして、本人の記憶もありましょうし、また、その中国の近隣の人のたとえば証明書その他のものもあるいは得られるのではなかろうかと思うわけでございまして、具体的な事件内容がわかりませんので確かなことはよく申し上げかねますけれども通常の事件処理のあり方で考えますれば、調査官に対して調査命令が下りるのが普通ではあるまいかと思います。  以上でございます。
  302. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、後の問題とも関連しますので——厚生省からも来ていただいておりますね。厚生省の方にお尋ねしたいのですが、御承知のように中国残留孤児六十人の方々がいま日本に来ておられて、もう六人の方が父母を含めて血縁者を見つけたというのが新聞報道にあるのですが、厚生省の方では、身元不明の中国残留孤児というのはまだ何人中国にいるというふうに見ておられるのか。そしてその中で、いま来ておられる方もそうでしょうが、中国の公の機関の日本人孤児証明というのを持ってきておられると思うのですが、そういう人たちはいま向こうにおられる人も含めて何人というふうに把握しておられるのか、お尋ねします。
  303. 岸本正裕

    ○岸本説明員 お答えいたします。  まず第一点の中国の残留孤児がどのくらいいると考えているかという点でございます。私ども正確な数字は把握できないわけでございますが、五十七年の二月一日現在で申し上げまして、私ども厚生省に、自分は中国の残留孤児であって日本にいる肉親を探してほしいという依頼を申し出ております方々が千四百五人いらっしゃいます。そのうち、現在までいろいろな方々の御協力を得て身元が判明した方が四百九十三名でございます。したがいまして一差し引き現在調査中の者が九百十二名ということになるわけでございます。  私どもは、この九百十二名につきまして、ただいま六十名を日本にお招きして調査をしております。そのような施策を進めているわけでございますけれども、この背後に、いま当方に調査依頼は出していないけれども本人孤児であるという方が全くいらっしゃらないというわけではないと思います。ただ、その数がどの程度あるのかにつきましては全く推測の域を出ないわけでございまして、はっきりとした数字がわからないのが実情でございます。  それから、中国の公的機関から日本人の孤児であるという、血統的に日本人であるという証明書が出ている数がどの程度かという御質問がございましたが、これにつきましては、現在私ども先ほどの千四百五名という調査依頼を受けました中ではちょっと正確な数字を把握していないわけでございますが、約二百件程度であろうというふうに考えております。
  304. 安藤巖

    ○安藤委員 ついでにお尋ねしておきますが、いまおっしゃったような数の人たちが残留孤児ということで中国にお見えになるわけですが、今回六十人、その前にもありましたが、これからこの血縁者を見つけて日本人として遇する、この不幸な境涯に終止符を打つということのためにはどういうような方法を厚生省としてお考えなんでしょうか。
  305. 岸本正裕

    ○岸本説明員 これはただいま国会で御審議いただいております五十七年度予算で計上してあるわけでございますけれども、昨年度六十名、本年度六十名という訪日、まあ日本にお招きをする、そして調査をする、その対象数を来年度、五十七年度予算におきましては百二十名というふうに倍増させることを考えております。  そのほかに、ただいま申し上げましたようにいま九百名余の方々がいらっしゃるわけでございますから、この調査の促進を図るという意味で、厚生省の職員が中国に赴きまして、これらの孤児の方に集まっていただいて直接に事情を聴取する。いま現在ですと、孤児本人から寄せられた手紙が唯一の手がかりということでございますけれども、それを直接事情を聴取することによって、この手がかりを充実したものにしていきたいというふうに考えております。  それから、それに伴いまして、いろいろ写真等の資料の充実を図りまして、これを都道府県また市町村の窓口に置いておきまして、この肉親関係の方々が自分の息子、娘さんを捜すのに役立てたい、こういうふうに考えております。これはいま御審議いただいております予算の中でそういうことを計画しております。
  306. 安藤巖

    ○安藤委員 厚生省の方、どうも済みませんでした。ありがとうございました。もうお帰りになって結構でございます。  そこで、先ほどの徐明さんのことについて、最初札幌の家庭裁判所へ申し立てがあった、これは就籍許可の申し立てというのがなされたんですが、札幌の方へ申し立てられたときは、先ほどお話ししましたが、お父さんだと名のる人があって、そしてその上で就籍許可の申し立てというのがなされたわけですね。  それで、これは法務省にお尋ねした方が筋かとも思うのですが、親がはっきりした、その親の籍に入れてほしい、こういうことになるわけですね。そういう場合でも、これはこういう就籍許可の申し立てというのを家庭裁判所へ申し立てなければ親の籍に入ることはできない、こういうような仕組みになっておるんですか。
  307. 中島一郎

    中島政府委員 父親が判明をいたしておりまして、日本国籍を持っておる、戸籍もあるということでありますれば、その父親の戸籍に入れるということが可能であります。出生届け出の義務者から出生届を出してもらって、戸籍に入るということになろうかと思います。
  308. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、その出生届の義務者というのがいろいろ書いてあるわけですが、証明が要るわけですね。だから、その生まれたときの産婦人科のお医者さんとかあるいは助産婦さんとか、何かそういう証明があれば簡単にいくと思うのですが、いま就籍許可申し立てをするということになるのかどうかということで、出生届というお話があったんですが、その出生届義務者が市町村役場へ提出する場合、そういう証明書がない場合はどういうことになりますか。
  309. 中島一郎

    中島政府委員 出生後相当長年月たっておりまして、通常の出生届ではございませんので、市町村長限りで取り扱うということはしておりません。その場合は法務局に出生届の受否の伺いというのを出すことになっておりまして、法務局でいろいろと調査をいたしまして、受理すべきものについては受理の指示をいたしまして、それに基づいて市町村長が出生届け出を受理する、こういう取り扱いになっております。
  310. 安藤巖

    ○安藤委員 この中国残留孤児の人たちの場合、もう現実にそういう実例はありますか。
  311. 中島一郎

    中島政府委員 ございます。
  312. 安藤巖

    ○安藤委員 いま何件ぐらいありますか。
  313. 中島一郎

    中島政府委員 件数は十分把握いたしておりませんけれども、数件ございます。
  314. 安藤巖

    ○安藤委員 そのほかに、先ほど言いましたような就籍許可の申し立てというようなことも考えられると思うのですが、そういう父親、届け出義務者が存在しない場合、きょうだい、おじ・おい、こういうような場合もあるわけですね。弟だったとかあるいは妹だったと確認をした、そういう場合は届け出義務者がいないわけですが、そういう場合はどういうような手続が考えられるわけですか。
  315. 中島一郎

    中島政府委員 市町村長が職権記載をするという方法がございますので、関係者からその職権記載を促すということになろうかと思います。
  316. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、職権記載を促すというのは、職権記載の申し立てというようなかっこうになるんですかということと、それからそういう場合は、職権記載を促されたその市町村長はどういうような調査をして、そしてどういうような確証が得られたら職権で記載するのかということも、あわせてお尋ねをします。
  317. 中島一郎

    中島政府委員 申し立てと申しますと、それに対する判断の義務があるというふうに聞こえますので、申し立てというふうに申すのもどうかと思いますけれども、職権の発動を促すという事実上の扱いになろうかと思います。  それから、そういう場合の市町村長の措置でございますけれども、この場合はやはりその内容によりまして、先ほども申しました法務局長に対する受否伺いを出して処理することになります。
  318. 安藤巖

    ○安藤委員 そういう場合に、家庭裁判所への就籍許可の申し立てというような方法も考えられますか。
  319. 中島一郎

    中島政府委員 市町村長の調査あるいは法務局長の調査よりも家庭裁判所調査機能というものが充実いたしておりますから、家庭裁判所によって調査をしてもらって就籍の許可をもらうということもあり得ます。
  320. 安藤巖

    ○安藤委員 どちらの方が早く目的を達せられるか、これは大きな関心事の一つなんです。それは具体的なケース・バイ・ケースがあろうと思うのですが、一般的に言って、いまのお話だと、家庭裁判所の方がそういう調査機能があるからということをおっしゃったのでお尋ねするのですが、その人たちにとっては、そういういろいろな方法があるとすると、どちらの方がいいだろうと迷うわけですよ。どちらがいい、どちらをお勧めする方法だというふうに法務省は考えておられますか。
  321. 中島一郎

    中島政府委員 先ほどもおっしゃいましたように、事件事件によることでありますから、一概には申し上げられないと思いますけれども、市町村長、法務局長という系列だけで事が済むという意味では、その系列の方が簡単ということになりましょう。ただ、やはり行政機関としての裁量の限界のようなものもございますから、そういう意味では家庭裁判所によって救済されるケースもあるかというふうに考えております。
  322. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、いまの場合は肉親と対面をして確認ができた場合の話ですが、そういう人にめぐり会うことができなかった人の場合ですが、そういう場合は、先ほども徐明さんのことでお話ししたのですが、やはり家庭裁判所への就籍許可申し立てということしか方法がないのか、あるいは、これは私が思ったのですが、日本の国籍を持っているというのがひっかかるのですが、そこを一応振り切るとして、帰化ということも考えられるんじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか。
  323. 中島一郎

    中島政府委員 本来は、日本国籍を持っておるという御本人の認識でありますれば、就籍という手続で処理をしていただくことになろうと思いますけれども、御本人がそこはあえて固執しない、帰化という方法によって日本国籍を取得するという方法でもいいということであれば、帰化の手続をとっていただくということになろうと思います。
  324. 安藤巖

    ○安藤委員 帰化の手続ということになった場合に、いまの国籍法の四条、五条関係ですか、条件がなかなか厳しいわけですね。条件を満たさない場合は、とにかく十年間日本国内に居住していなければならぬというようなことになってくるのですが、この場合に、そういう厳格な条件ということではなくて、これは別のケースでございますけれども、よく簡易帰化というようなことが沖縄にいる人たちの場合でも考えられているようですけれども、いわゆる簡易帰化というような、何かいい方法は法務省の方としては考えておられないでしょうか。
  325. 中島一郎

    中島政府委員 通常の外国人でありますと、帰化の要件といたしまして居住要件というのがございますが、それは引き続き五年以上日本に住所を有するということが求められております。ところが、いま御指摘になっております事案におきましては、それは父も母もはっきりしないけれども、日本国民の子であるということはどうも間違いがないらしい、こういうケースでありますから、国籍法の六条の二号におきまして、「日本国民の子で日本に住所を有するもの」につきましては居住要件なしに帰化の許可をすることができるという条文がございますので、この条文を活用することができようかと考えております。
  326. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうような事例は、いままでにありますか。
  327. 中島一郎

    中島政府委員 現在までのところ、そういう具体的な事件があったということは、私、聞いておりません。
  328. 安藤巖

    ○安藤委員 それでは、時間の関係もありましてほかへ移ります。家庭裁判所調査官との関連でお尋ねしたのですが、ストレートにその調査官の問題についてお尋ねしたいと思うのです。  これは、きのうも家庭裁判所の少年に対する家事審判事件の話が出まして、少年に対する警察の方でのぬれぎぬを家庭裁判所が、弁護士、付添人ですね、の人たちの熱意ある調査活動によって救ったという場合と、家庭裁判所が結果的にいって過って保護処分にしてしまった、しかし後からそれがとんでもないぬれぎぬであったということでそれを晴らした、保護処分を取り消したという事案があったことは御承知のとおりだと思うのです。  もう一つ、これは東京の家庭裁判所の関係ですが、新聞報道によりますと、母親が面会に行ったときに、その少年がひざの上に指でやっていないということを書いて、母親がそれを見ておって涙を流して弁護士さんに頼んだということでもって、弁護士さんががんばって調査をして、そういう結果をかち取ることができたわけですね。もう一つの八王子支部の方では、一度はぬれぎぬを着せられてしまったというようなことなんです。  家庭裁判所調査官の人たちはもちろん一生懸命やっておられるというふうに思います。ところが、これは基本的にいつもついて回るわけですが、とてもじゃないが人手不足でもって十分調査ができないというような状況にあるということを私も何度か聞いておるのですが、家庭裁判所調査官の人たちは、これは法務省から出していただいた資料なんですが、昭和五十年から五十七年まで含めて、全然定員増の要求もしておらないし、そしてもちろん増員にもなっていないという状況なんです。  先ほど言いましたのは一つの事例でございますけれども、最高裁としては家庭裁判所調査官の増員というようなことは全く考えておられないのですか。そういうとんでもない状況にあるというような実情は十分知っておられると思うのですが、増員の関係については考えておられないのかどうか、あるいはその要求をこれからはやっていかれるつもりなのかどうかをお尋ねいたします。
  329. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 昭和四十年から四十九年までの十年間に家庭裁判所調査官の定員を百二十人増加させてまいりましたが、御指摘のとおり、五十年以降は増員を図っていないことは事実でございます。少年非行が増加の傾向にありまして、家裁で取り扱います少年保護事件は、昭和五十五年には約五十八万件に達しておるようでございます。しかしながら、過去を振り返って少し長期的にながめてみますと、昭和三十年代の後半から昭和四十年代の初めにかけましては、年間約百万件の少年保護事件が係属していた時期がございまして、その当時に比べますと、現在特に家庭裁判所調査官の負担が過酷であるとまでは考えておらないのでございます。だからといって、現在の家庭裁判所調査官の数で全く十分であるかというふうに言われますれば、もちろんそれで全く十分であるとまでは考えてはおりません。  しかし、御承知のように、家庭裁判所調査官は非常に専門的な職種でございまして、心理学、教育学、社会学等の知識に基づきましてケースワーカーとしての側面から事件調査に当たるという職務の関係上、任用基準が非常に高うございます。また、養成に相当の時間も要します。養成の人数にも限度がある。したがいまして、増員を形式上いたしましても充員されないということではぐあいが悪い。当面はより緊急性、必要度の高い裁判官、書記官の方に増員の精力を振り向けているというのが現状でございます。
  330. 安藤巖

    ○安藤委員 十分じゃないけれども何とかやっていけるみたいな話をおっしゃったのですが、先ほど私が東京家裁と同家裁八王子支部の二件を申し上げたのは、これは、家庭裁判所調査官が一生懸命にやろうと思っても、とてもじゃないが、残念ながら調査し切れない、結局は警察での捜査の結果をうのみにせざるを得ないというのが一つ原因になっているのじゃないかと思うのです。  そこで、全司法労働組合からも、五十七年度には、というよりも、いますぐにでもこれだけ人をふやしてほしいという要求が出ておるのです。これは百二十四名出ておるのですが、御存じですか。
  331. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 そのような要求があるということは、承知いたしております。
  332. 安藤巖

    ○安藤委員 要求があることは承知しても馬耳東風というようなことでは、何にもならぬわけでございます。増員を要求しても認められなければ何にもしようがないと言うのだが、もともと要求しなければ認められるわけがないんです。要求しても認められなければ何にもならないんだったらば、要求しないんだからそんなものは認める余地が全くないわけですよ。  それで、これは一つの資料ですけれども、こういうのも読んでいただく必要があるのですが、こういうのは読んでおみえになるのですか。  全司法労働組合と司法制度研究中央推進委員会の「司法制度研究」、これは昨年十月発行ですが、全司法が発行しているようなものは、最高裁としてはこんなもの読めるかというようなお考えなんですか。やはりこういうのも読んでいただきたいと思うのですが、そこで家庭裁判所調査官の問題でこういう声が出ているということが指摘されているわけですよ。  「調査官は本庁や甲号支部に配置されているがここでも常時限界以上の事件をかかえていて(東京近郊のA甲号支部の例では調査官一人当り常時一五〇件前後の少年通常事件をかかえている。)とうてい得心のいく調査ができない」という悲鳴に似た切実な声が上がってきているわけですね。それから「N庁の場合、調査官のもち帰り仕事が恒常化し、しかも病休者が次々に出て、このままでは総倒れになるのではないか」というような声まで出てきているわけですよ。だから、こういうような声をしっかり踏まえていただきたいのですよ。こういうのを一遍よう読んでくださいよ。どうですか、読んでいただけますか。
  333. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 全司法から出されましたものを私どもも拝見する機会ももちろんございますし、読む意思は十分持っております。
  334. 安藤巖

    ○安藤委員 いまそういう御答弁をいただきましたので、読んでいただいて、要求しても認められなければ何ともしょうがないというようなことではなくて、やはりいま具体的に挙げましたようなことが二度と起こらないように努力をしていただきたいと思うのです。  そこで、私は先ほども申し上げたのですが、司法法制調査部長さんにさらに苦情を申し上げなくちゃいかぬですけれども、関係資料をいただきましたが、どうも気に入らぬのが、たとえば十七ページの「新旧定員内訳」それから「定員・現在員等内訳」とあるのですが、ここには備考欄に「簡易裁判所職員については、」云々というふうにあるのです。やはり簡易裁判所職員、書記官、事務官は何人だ、廷吏さんは何人だということを書いていただきたいですよ。これは書いてないのです。それは備考欄にありますよ。しかし、内訳がわかりませんわ。  内訳がわかってくると、たとえば簡裁のいわゆる独立簡裁が、二人庁とか三人庁というようなところが、簡裁の数あるいは書記官、事務官の人たちの数、計算すれば、これはおかしいじゃないか、二人庁、三人庁のところが多いじゃないかというようなことだってすぐわかってくるのですね。法務委員会委員派遣で調査に行きましたときにも、ちょいちょいそういう話も聞きますが、あのときはなかなかずばり本物の話が聞けなくて、適当にとにかくやっておりますということで、ごまかしじゃないけれども、ていのいい話が出て、それで通ってしまうということもわりとあるのです。やはりきちっと簡易裁判所職員を出していただきたいと思うのですが、その点はどうですか。
  335. 千種秀夫

    ○千種政府委員 ただいま御指摘の資料でございますが、簡易裁判所につきましては、法律の上からも、地方裁判所の方と下級裁判所が一緒になっておりますから、簡易裁判所だけの定員というものが実は法律の上ではございませんので、それでこういうような資料になっているわけでございます。  現状がわかりにくいという点でございましたら、またそれはそれなりにわかるものがあるのかもしれませんが、私ども裁判所からいただいた資料をここへつづっているものでございますので、こういう次第になっているわけでございます。
  336. 安藤巖

    ○安藤委員 責任裁判所の方へおなすりつけになったようですが、やはりその辺の内訳はわかるように勘考していただきたいと思うのです。  それでもう一つ、これも裁判所の方が出してくれないからということになるのかどうか、ようわかりませんけれども、速記官、タイピスト、廷吏さん、この人たちが全部「その他」ということで片づけられているようですね。これはやはりはっきりさしていただきたいと思うのですよ。というのは、念のために、「昭和四一年・第五一回国会提出」「裁判所法及び裁判所職員定員法の一部を改正する法律案参考資料」、同じような題ですね。このときは「新旧定員内訳」それから「定員・現在員等」という表がありまして、速記官、技官、工手、廷吏それからタイピスト、全部載っているのです。これはいつからこんなふうに省略してしまうことになったのですか。これもよくわかりません。きちっと出していただきたいと思うのですが、どうですか。
  337. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 私も昭和四十一年ころのいきさつ存じませんで、その当時は、現在「その他」としてありますものの内訳をさらに細かくしているようでございます。どのようないきさつでこうなったのかも、残念ながら存じませんけれども、今後の問題として検討させていただきたいと思います。
  338. 安藤巖

    ○安藤委員 前向きに検討していただけるのだと思うのですが、やはり出してくださいね。出していただかぬと、その内訳は具体的にわかりませんから、つい上すべりというわけじゃないですけれども、その辺のところに目が届かないで、ふっといってしまう場合だってあるのですよ、そういう意図がおありになるかどうか知りませんけれども。だから、これはきちっと出してくださいね。  それで、いま速記官の話もしましたけれども、速記官の問題につきましては、昨年、忙しいときに一度お尋ねをしたことがありますけれども、あのときは労働組合の方で差し当たって九十五人ふやしてほしい、定員が九百三十五名、これは御確認になったのですが、研修生の人たちを含んでも相当の数ですね、百八十六人の欠ですか、含まなかったら相当な定員からの欠員があるわけです。だから、九十五人というのは定員にも満たないささやかな、しかも切実なる要求だったのですが、先ほど聞きましたら、二月二十一日現在では九十五名じゃとてもじゃないがだめだ、百二十六人ふやしてほしいということを労働組合の方では切実に言っているのですが、これはやはり早急にふやしていただきたいと思うのです。  一九五四年から六二年ころまで、毎年速記官は百人から八十人くらい養成をしておられた。期でいくと五期から十期くらいまでの人たちは、入所人員が九十一、八十八、九十五、百十一ということで、八十名から九十名、百十一のときがあったのですが、六二年以降二十人近くになってしまっておる。いまもほとんど二十人ずつでしょう。だから、採用する枠が少ないからじゃないかと思うのですが、枠をふやすというようなことはお考えにならないのですか。
  339. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 入所しております人は約四十人だと存じますけれども、以前は内部だけから速記官の卵として採りまして養成しておりましたが、とてもそれでは応じきれないということで、昭和五十年度から外部の人からも採用することになっております。しかしながら、マン・ツー・マンの養成で非常に技術を要するということから、最初入所しました方の中にも不適格ということでふるい分けされて、速記官として養成できない方も出てまいるわけでございまして、またいま申し上げましたようにマン・ツー・マンの養成ということで、教官の方も相当の人数が必要になってまいるといったようなこともございまして、現在の養成人員というのはやはりぎりぎりの線ではないかというふうに思っております。  ただ、欠員が相当ありますことは確かでございます。しかしながら、毎年少しずつではございますけれども着実にふえていっておりますので、いましばらくごしんぼういただきたいというふうに思います。
  340. 安藤巖

    ○安藤委員 ごしんぼうをするのは私ではなくて、裁判所職員の人なんですよ。いましばらくごしんぼうというふうにおっしゃるのですが、速記官の定員九百三十五名、いつになったら達成できるという見通しですか。
  341. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 最近の情勢でまいりますと、毎年二十名くらいずつふえております。したがいまして、数年かかるとは存じますが、次第に充員されていく態勢であることには間違いございません。
  342. 安藤巖

    ○安藤委員 そういうことでなくて、先ほど言いましたように、二十人ということじゃなくて百人から八十人とか五、六十人とか、幾らマン・ツー・マンのあれだとおっしゃっても、たくさん採用してたくさんやれば、やはり速記官になりたいという希望を持って入所されるわけですから、皆さんそれぞれ努力をされるわけですよね。もともと募集する人員を少なくしぼっているからこうなっているのですよ。とにかく定員よりも二けたに近い数が足らないままで、二十人ずつやっていきます一やめておいきになる方たってあると思うのですね。そうなったらちっとも追いつかないというようなことになってきて、いま労働組合の方ではしびれを切らして、百二十六人早くやってくれという要求を出しているのですよね。だから、この要求だけでもまだ定員に満ちませんよ。それだけでも早急にここ二、三年のうちにとにかく追いついちゃう、そういうようなことはどうですか。前向きにやりますというお考えはないのですか。(「大蔵省を呼んでこい」と呼ぶ者あり)
  343. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 毎年四十人ずつ研修生として入所させておりまして、毎年充員されていきます人数が二十人程度だと申し上げましたのは、やめる方を差し引いてなおかつ二十名ずつ着実にふえているという趣旨でございます。先ほども申し上げましたとおり、養成をいたしますにはマン・ツー・マン的な教育が技術的に必要でございますので、やはりこの程度の養成人員がいっぱいだというふうに考えております。
  344. 安藤巖

    ○安藤委員 いっぱいと言ったって、本当はとてもじゃないがいっぱいじゃない、もっとふやしたいという気持ちを持っておられると思うのですよ。先ほども不規則発言で大蔵省を呼んでこいという話もありましたが、財政当局に対して、必要なんだ、どうしてもこれはふやしてもらわなければいかぬのだと、しっかり要求を出す必要があると思うのですよ。私に対してあなたは、これで大丈夫だ、こうやってふやしていけばそのうちに追いつきますなんて調子のいいことを言ってかっこうつけてはだめなんですよ。私は最高裁を応援して、もっとふやすために一緒にやろうじゃないかと言っているのですよ。だから、その辺のところも十分理解していただきたい。  だから、いま二十名ずつで数年のうちに定員に追いつく。いま百八十六人の欠員で二十人ずつですと、九年かかりますよ。しかも二十人ずつやめていく人がある。九年かかるのですよ。これはやはりだめですよ。定員法で定員が決まっているのですから、この定員まではやはり二、三年で充足していただきたいですね。これが一つ。  時間がありませんからもう一つ、タイピスト。  このタイピストの人たちも、これは昭和五十二年からの資料しかありませんが、昭和五十二年から五十六年度まで、いつも定員よりも現在員が少ない。しかも五十五年が八十八人欠、五十六年が現在員が九十一名定員よりも少ないのです。タイピストの人といいますのは、裁判官が書いたもとからきちっと判決を打つ人です。だから大事な仕事ですよ。この人数が足らないんで大変な目に遭っておられるわけですね。これもやはり速記官と同じように、先ほど言いましたような数だけ定員よりも少ないのです。現在員を定員にまでいっぱいに合わせる、そういうような計画は持っておられますか。
  345. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 速記官の養成につきましては先ほどお答え申し上げたとおりでございますが、タイピストにつきましては、昭和五十六年十二月一日現在で九十一人の欠がございます。しかし、裁判所の組織は、全国に支部、簡裁、検審まで含めますと約千四百もの組織がございまして、特定の時点である程度の欠員が生ずることはやむを得ないわけでありますけれども、ただ、タイピストにつきましては、書記官とか家裁調査官のように特殊な資格を要するというわけのものではございませんので、欠員が出ますれば、これまでもなるべく早期に補充するように努めております。  定員の増の点につきましては、最近ゼロックス等事務機械が相当発達しておりまして、現在のタイピストの数で必ずしも裁判事務、司法行政事務に支障を来しているとは考えられませんけれども、今後の事件の推移等に応じまして各庁への適正な配置に努めるとともに、増員の必要が出てまいりますれば、あるいは増員についてお願いしなければならないことにもなろうかと思います。  ただ、最近の国の財政事情等もございまして、昭和五十七年度におきましては、まず最も増員の緊急度の高い裁判官、判事、裁判所書記官について増員をお願いしたいという趣旨でございます。
  346. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が来ましたから最後に、いまのタイピストの方で、裁判所の方ではいまの人員でやっていけるんだというふうに言っておられるのですが、労働組合の方では、九十一名定員よりも現在員が少ないんだ、その現在員と定員との間の数九十一名よりも少ない数、五十四人さしあたっていまふやしてほしいという要求を出しているのですよ。せめてこの要求だけでも早急に実現をしてやるべきだと思うのですよ。その点どうでしょうか、色よい返事をお聞きして、私の質問を終わります。
  347. 梅田晴亮

    ○梅田最高裁判所長官代理者 各庁の方から、退職その他で欠員が生じますと、その都度、補充についての相談が出てまいります。必要のあるところは、私ども十分補充させていただいているというふうに思っております。
  348. 安藤巖

    ○安藤委員 終わります。
  349. 羽田野忠文

    羽田野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  350. 羽田野忠文

    羽田野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  351. 羽田野忠文

    羽田野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  352. 羽田野忠文

    羽田野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  353. 羽田野忠文

    羽田野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十四分散会