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1982-07-08 第96回国会 衆議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年七月八日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 石井  一君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 山崎  拓君    理事 上田 卓三君 理事 渡部 行雄君    理事 鈴切 康雄君 理事 小沢 貞孝君       有馬 元治君    上草 義輝君       狩野 明男君    亀井 善之君       倉成  正君    塚原 俊平君       吹田  愰君    細田 吉藏君       宮崎 茂一君    岩垂寿喜男君       市川 雄一君    木下敬之助君       中路 雅弘君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君  委員外出席者         法務省矯正局医         療分類課長   上館  貢君         厚生省公衆衛生         局企画課長   木戸  脩君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第二六号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二七号)      ――――◇―――――
  2. 石井一

    石井委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  3. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最初に、防衛庁長官防衛二法以外の問題でお伺いいたします。  それは、長官選挙中に飛島建設から寄附を受けておったということが明らかになったようでございます。これは明らかに選挙違反でございまして、この中身を詳しく御説明願いたいと思います。
  4. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘の点は、先般の衆議院の予算を御審議いただいております予算委員会でも御質問を受けたことがあるわけでございますけれども、五十五年の選挙のときに、大変親しい飛島建設の社員の方五人から寄附をいただきました。それを事務の方の者が飛島建設という名前で届けてあったものでございまして、その御指摘を受けたものでございますから、早速、個人からいただいたということの事実で、いま県選管の方に訂正の申告をしたところでございます。
  5. 渡部行雄

    渡部(行)委員 届け出の仕方が間違って、そのためにこういう問題に発展した、だからその届け出書を訂正して、いわゆる手直しをして合法的なものにしたと言われますが、しかし、それは飛島建設からもらったということが問題であって、帳簿の内容を合法的に変えて、会社からもらったのを個人からもらったことにしたから何でもないというものではないと思うのですよ。  なぜそういう規定があるかというと、御承知のように、飛島建設などというのは国の予算の中で相当の請負をやっているわけですから、そういう国の仕事をしているものから選挙中何がしかの金をもらった。これは一体金額幾らなのか。そういうものをもらって選挙をやれば、当選すれば便宜を図るという、また片一方はそれを期待するという、こういう因果関係ができて政治が汚れる。そこにこの問題があるわけですから、そこら辺をきちっとお答え願いたいと思うのです。
  6. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 もちろん私自身は御指摘を受けた段階で初めて承知をしたわけでございまして、献金を受けたとき、また受けたときの状態等、私はその場にもいなかったものでございますから正確には承知をしておりません。御指摘を受けた段階で、仙台におります私の事務所の者に問い合わせたところ、いま申し上げたようなことで、飛島建設の私の本当に親しい個人的な人たちが、しかも五人で二十万円をポケットマネーで集めてきたということでちょうだいをしたものでございますので、そのまま飛島建設作業所という名前で届けてあったものでございますから、それを作業所におられる方々のお名前で届け直したということでございます。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 結局、五人で来られたというのは、その二十万円をのし袋に入れて、そして飛島建設作業所と書いて持ってこられたんでしょう。五人が四万円ずつばらばらに持ってきたわけじゃないでしょう。  それじゃ、その五人の方がちょうど四万円ずつ持ってきたのか。ある人は五万持って、ある人は三万持って、ある人は四万持ってという、その金額が平均していなかったのかどうか。その辺はどういうふうにつかんでおりますか。
  8. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 さっきも申し上げましたように、その時点で私は全然承知しておらなかったものでございますから、どういう形で持ってきていただいたのか、その中身等についてはまだ承知をしておりません。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 こんな問題で余り長いことやりたくありませんが、どうも歯切れが悪いですね。おたくはこの前も、ゆすり、たかりの問題でも、最後非常に歯切れの悪い始末の仕方だったのですが、今回だって男なら男らしく、いや実はこうだったということをはっきり国民に言ってわびをするなり、あるいは軽率だったら軽率だったということをはっきりすることが大事じゃないでしょうか。しかもあなたは大臣ですよ。国民が最も尊敬するそのいすに座っておられるわけですから、その辺の処理の仕方と申しますか、自分責任の感じ方、これをやはり国民の前に明らかにして今後に対処することが大事じゃないかと私は思うのですが、その点はいかがなものでしょうか。
  10. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 今後担当者等によく法令の勉強をさせまして、こういう記載ミスのないように今後とも注意をしてまいりたいと思っております。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、その持ってきた五人の氏名を明らかにしていただきたいと思います。そしてまた、長官はそのほかに建設会社等から寄附は受けていないものかどうか。毎月大体平均してどのくらい寄附を受けておりますか。その辺についてお答え願いたいと思います。
  12. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 その他建設会社からは寄附を受けておりません。(渡部(行)委員氏名は」と呼ぶ)  いま手元に氏名の書類がございませんので、ちょっとお答えできかねます。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは後からその氏名を明らかにしていただきたいと思います。  そこで、初めて防衛二法に入るわけですが、ただ私が入るにしても、非常に申しわけないとか、そういう自分のやったことに対して全く責任を感じておられないというのは一体どういうことでしょうか。その手続の仕方が間違ったということだけで自分には何にも責任がないのだ、手続した者が責任があるのだというように、本来自分が全部知らなければならないことを知らないでいて、その責任事務手続者にかぶせるということはどういうものでしょうね。男のする仕事でしょうか。
  14. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 記載ミスであろうとそういうミスを犯したことは、もちろん私の秘書なり責任者がやったことでございますので、責任はあります。したがって、早速選管に届け直すように指示をしたところでございます。     〔委員長退席佐藤(信)委員長代理着席
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この点は、後で氏名を明らかにさせていただくことで終わります。  そこで、まず、長官日本防衛という問題、自衛権という問題をどういうふうに把握しているのか、自衛権中身というものはどういうものによって構成されているのか、その辺についての御見解をお願いしたいと思います。
  16. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 自衛権あらわれとして自衛隊というものがあるわけでございますが、自衛隊はもちろん憲法が許容する自衛のための必要最小限度の実力としてのみ認められると考えております。したがって、この限度を超えてこれを増強することは許されないというふうにも考えております。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だから、防衛政策が非常に間違うもとになると私は思うのです。というのは、あなたはいま自衛権イコール自衛隊にして答弁されておるわけです。自衛権というのは自衛隊イコールではないのですよ。国の生存権人間生存権としての固有の権利であって、憲法から与えられた権利ではないと思うのです。だから、人間が生存し繁栄するためにとるいろいろな手段が自衛権中身になってくると思うのです。そのためには、ある者は、武力で自分を守り子孫に繁栄を受け継がせるという思想の方もおるでしょう。ある人は、戦争のない条件をつくって身を守る方法を考える人もあるでしょう。あるいは食糧安保だとか資源の問題とか、そういう具体的なものを総合してこの自衛権を充実させる、こういう考え方の方もあると思うのです。それをあなたは自衛権イコール自衛隊、こういうふうに結びつけたら、これは問題にならないと私は思いますね。それでは外交なんか要らないですよ。何のために外交というものが重要視されておるのか。あるいはその他の、たとえば独立国家として手前の食う分くらいは手前でつくるという自給自足の態勢食糧自給態勢、そういうものも自衛権の一環として考えていかないと総合的な国の安全と繁栄は期すことができないじゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  18. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 言うまでもなく先生のおっしゃるとおりでございまして、自衛のためには、自衛隊だけでは全うできませんし、外交総合安保も、その他もろもろの施策、また国民の生活の向上、国内の安定等総合安保という考え方もございます。私は、自衛権一つあらわれとして自衛隊というものがあるということを申し上げたのでございます。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 何か、最初選挙違反の問題をやられたら答弁の仕方が大変不親切だというふうに感ずるのですが、もっときちっとした論拠を持って答弁してもらいたいと思うのですよ。  それで、あなたは今回のシーリングでどの程度防衛予算政府要求されましたか。
  20. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 財政事情財政再建重要性、他の諸施策との関連、また「防衛計画大綱」に定められた水準を可及的速やかに達成したい等々いろいろ勘案をいたしまして、いまのところ二千五百億円、九・七%のシーリングをぜひお願いしたいということで、財政当局目下協議中でございます。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 二千五百億円というと、これは五十七年度予算より少ないじゃないですか。
  22. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ちょっと説明が不足しましたけれども、増加額が二千五百億円です。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、要求額を聞いたので、増加額を聞いたのじゃないですよ。  それで、ほかではこれほど臨調が騒いでマイナスシーリングでやれというようなことを言っておるし、大蔵大臣マイナス五%くらいでいきたいというようなことも言っておったようですが、あなたは九・七%の伸び率要求されるその神経は、どこから来ているのですか。これはあなたの情熱というか意欲、そういうものなのか、アメリカからまたしりをたたかれて、どうしようもなくてそういうふうな要求になったのか、それとも制服組から突き上げられたのか、その辺はどうなのでしょうか。
  24. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど申し上げましたとおり「防衛計画大綱」に定めております水準を可及的速やかに達成しなければならない、その責任を負っております防衛庁長官として、事務当局その他の詰めを見まして、この程度要求をしないと所期の目標を達成できないということで判断をしたのでございまして、あくまでも行政的、事務的に積み上げた数字でございます。
  25. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、防衛大綱を達成するために、つまり前年度の九・七%増ということで今後もいくというお考えだ、こういうふうに理解して差し支えありませんか。
  26. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 防衛庁としては、前年度に比して金額にして二千五百億円、パーセントにして九・七%の増でぜひお願いをしたいということで、目下財政当局協議中でございます。
  27. 渡部行雄

    渡部(行)委員 五六中業が終わると防衛大綱基準に達するわけですね。それで、昭和五十八年から五年の間にこの五六中業が達成される、こういうふうになりますと、その最後の年度は大体どのくらいに予測されておりますか。
  28. 塩田章

    塩田政府委員 五六中業作業は現在財政当局その他関係省庁と詰めておりまして、いまの時点でまだどのくらいになるかということを申し上げられる段階ではございません。
  29. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は決まったものを言えと言っているのじゃないのですよ。想定はするでしょう。大体、自分が六十二年度までにこの中業を達成するというならば、その五年間の中で初年度はどのくらいの予算、次年度はどのくらいというふうに、追ってその予算の割り当てをするでしょうが。そうしてその最終年度は大体このぐらいじゃなかろうか、それは物価の変動やいろいろありますから正確には出ないと思いますが、大ざっぱなところでそういう予想はしているのじゃないでしょうか。それを聞いているのですよ。
  30. 塩田章

    塩田政府委員 中期業務見積もり作業は、五三中業のときも同様でございますけれども、主要装備品につきましてある程度詳細な見積もりをしまして、積み上げて予定を立てるということではございますが、現在五六中業につきましてそのための作業をやっております。いまやっておりますのは、お話の前提になります、どういう装備品をどれだけわれわれが欲しいと言い、財政当局がそれは無理だと言うことの折衝をいまやっておりまして、その結果を得まして主要装備品について五年間に大体どれぐらいのものだという答えが後から出てくるわけです。いまその前の折衝をやっております。  いずれにしましても、そういったことで主要装備品につきましてはある程度積み上げたもので五年間のめどが立つわけでございますが、それにしましても、五三中業のときもそうでしたが、それをもって年度割りを決めましてどの年度にどれだけというようなことは、中業としてはもともと決めるつもりではございません。そうではなくて、あくまでも五年間のめどを持っておって、そしてそれによって防衛庁が毎年予算要求いたしますが、予算要求するための参考資料ということでつくるものでございますから、おっしゃいますように年度割りを決めていくというようなことを考えておるわけではございません。
  31. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうも私の質問がよく理解されていないようですが、私は決めていく過程を聞いているのじゃないのですよ。あなたが予想する――何でもそうじゃないですか。予想がされて初めて計画というものが積み重なっていくのじゃないでしょうか。精神構造の中で考えていったならば、まず最初にどういうものをつくるかということのアウトラインを描いて、そしてそれを達成するにはどういう順序でどのくらいずつやっていけば達成できるかという、そういう一つ過程を通じて後でなるほど基礎的な数字が決まれば当然総合的なものが決まるわけですから、そこまで言えと言っているのじゃないのです、大体どのくらいにいくだろうか、主要装備だけでもいいからちょっとお聞かせ願いたいのです。
  32. 塩田章

    塩田政府委員 先ほど来お答えいたしておりますことは、いまおっしゃいましたまさに主要装備の大体の見通しをいま折衝中でありますということでございまして、そのために、たとえば戦車でありますとか火砲でありますとか艦艇でありますとか飛行機、それぞれについてわれわれはこれだけ欲しいと言い、また相手方はこれだけでいいのじゃないかというような意味での折衝をやっているということでございまして、それが大体決まりますと、少なくとも主要装備品についてはトータルで大体このぐらいだなというのは出てまいります。しかし、いまはまだその前の段階折衝中でございまして、いま数字を申し上げられるような段階ではございませんということを先ほどからお答えしておるわけです。
  33. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、いまの時点で、大綱基準を達成するまであとどのくらい金をかけるおつもりですか。大体でいいですよ。そんなにきちっといくものじゃないでしょうが、大体目安としてどのくらいを想定されておりますか。
  34. 塩田章

    塩田政府委員 まさにその点をいまやっておりまして、いまの時点で大体どのぐらいだということを申し上げられる段階にないということを先ほど来申し上げておるわけでございまして、その点いま折衝中でございますので、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  35. 渡部行雄

    渡部(行)委員 折衝するには折衝の種があるでしょう。種なしであなた折衝しているのですか。何もわからないで行って、そして幾らくれということもそれではわからないじゃないですか。全体計画がこうなって大体このくらいかかりそうだ、だから今年度はこのくらいにしてもらわないとどうしても足りない、そういうふうに言って初めて大蔵省だって、なるほどと思えばそれに従うでしょうし、これほどきつい財政だからこっちの方はがまんしろということにもなりかねないだろうし、いろいろあるでしょう。その種をあなた持たないですかと私言っているのですよ。持っているなら種の概要を国民の前になぜ明らかにできないですか。
  36. 塩田章

    塩田政府委員 主要装備品につきましての折衝でございますから、例で申し上げますと、「防衛計画大綱」に「対潜水上艦艇 約六〇隻」と書いてございます。その六十隻ということを目指して私たち要求しているわけです。しかし、それにしましても約六十隻というのがどういう内容の六十隻なのか、また具体的に、約ではなくて正確には何隻なのかといったようなことになりますと、まだ折衝中でございまして、全然答えがないわけです。それが出ますれば、おっしゃいますように、しからばそれに幾ら経費がかかるかというのは当然出てまいります。その上でトータルめどもついてくるわけです。いまは、例で申し上げているわけですが、護衛艦約六十隻というのは一体中身はどうするかという議論をしておる、こういう段階でございますので、いまおっしゃいますように、いまの時点トータル大体どのぐらいだということを申し上げられる段階にないというのはそういう意味でございます。
  37. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、こういうふうに理解していいですか。たとえば六十隻という艦艇を想定した場合に、まだその艦艇はどういうものにしていくかということはわからない、あるいは飛行機にしてもその機種がどういうふうになっていくかわからない、こういうことで、全体として数字はいまのところつかむ段階でない、こういうふうに理解していいでしょうか。
  38. 塩田章

    塩田政府委員 要求でございますから、われわれはどういう船が何隻欲しいということは、当然それは言っております。それから、どういう飛行機が何機欲しいということも言っております。しかし、それは折衝でございますから、われわれのとおりいくかどうか、もちろんわかりません。わかりませんで、いま申し上げたようにいろいろな折衝過程をいま経つつありまして、どういう形になるかまだわからないということで先ほど来申し上げておるわけでございます。
  39. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だから私はさっきから、あなたがその折衝をする基礎は何であるかということを言っておるのですよ。それを、言っております、言っておりますと言うのだから、言ったことをここで言ってもらえばいいのですよ。
  40. 塩田章

    塩田政府委員 これは私どもと関係省庁との間の折衝でございまして、それの結果、防衛庁案というものをまとめて国防会議にかける、こういうことでございまして、いまやっておりますことはまだ防衛庁案の前の折衝段階でございますので、そういう意味でその数字幾らであるということを申し上げることは控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  41. 渡部行雄

    渡部(行)委員 つまり、こういうことでしょう。国防会議にもかけない前に、数字幾らと、おおよそでも発表することは差し控えたい。最初からそう言えば話がわかるのに、あっちこっち持って回ったような言い方をするからさっぱりわからないのです。  そこで、今度の防衛予算というのは、長官、ほかの予算と比べて突出していると思いませんか。
  42. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、すでに「防衛計画大綱」の水準昭和六十二年度まで、少なくともそれまでに達成しなければならぬということは、閣議決定その他で決定をしております政府方針でございますから、その方針に基づいての予算要求なり毎年の予算でございますので、突出しておるとは考えておりません。
  43. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いまの答弁は違いませんか。「防衛計画大綱」をいついつまでに達成しなければならないなどということは、いつの閣議で決めました。
  44. 塩田章

    塩田政府委員 いま長官がお答えになりましたことは、去年の四月二十八日の国防会議で、今度の五六中業の作成に当たって「防衛計画大綱」の水準に到達することを基本として作業をしなさいということの御了解をいただいた、そのことを申し上げておるわけでございます。
  45. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だから話が違うじゃないですか。片っ方はしなければならないというのと、達成することを基本とするということでは、全然意味が違うのじゃないですか。これはどうなんです。同じことなんですか、それは。
  46. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 文章では「基本とし」となっておりますけれども、国の防衛を預かる責任者としてはぜひ達成しなければならないという、私の気持ちについてはそう変わりないと思います。
  47. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だからあなたは非常に危険なんですよ。あなたは何のために文官でありながら防衛庁長官をやっているのですか。それは制服の軍人が言うなら話がわかりますよ。あなたはむしろ制服を抑える立場で、軍備を抑制する立場で、そして軍が出過ぎることのないようにする、そういう立場で考えないと、防衛庁長官などというのは控え目に考えてちょうどいいですよ。それをあなたはまるで制服を着た以上に張り切ってしまって、競馬馬みたいに走られたのでは日本防衛なんて危なくて任せておかれませんよ。  そこで、大綱をやろうとする気持ちはそれはわかります。また、そういう方向に進んでいることもわかります。しかし、予算の構成の中で、いま国民が非常に困って、中小企業なんかは大変な倒産件数を数えておる、そういう中で、ほかでは皆五%以上もマイナス要求をしているのに、自衛隊だけが、防衛庁だけが去年より多い予算要求ということは私はどうも納得できないのですが、これは私だけじゃないと思います。国民も恐らくそうだと思います。だから、それについてもっと納得のいける御説明をお願いしたいと思います。
  48. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 すでに政府基本方針になっております「防衛計画大綱」の水準を可及的速やかに達成しなければならない、達成したいということは、これは防衛庁長官として当然の考え方であり、むしろ責務だと私は考えておりますし、また、抑制等お話も出ましたけれども、いまわれわれが持とうとしております防衛力というのは自衛のための必要最小限度のものでございまして、それすらまだ達成できてないということでございますので、抑制ということよりもむしろ、国民から本当に信頼をされる、そういう必要最小限度防衛力というものをぜひ可及的速やかに達成したいというための努力が予算とかそういうことにあらわれているわけでございまして、これは防衛庁なり防衛庁長官としては当然の考え方なり努力目標だろうと思います。
  49. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで大蔵省にお伺いしますが、この防衛庁要求に対して、けさの新聞にも出ておるように、「七・八%増以上を確保」こういうような記事が出ております。そして「防衛費の総額は約二兆七千九百億円」、これはそのまますんなりと大蔵省では承認できそうなんですか。
  50. 窪田弘

    ○窪田政府委員 けさの朝日新聞の記事は全く根拠のないものでございます。そういう考え方は私ども持っておりません。  国防とか治安が国の最も重要な事務であるということは私どももよく心得ておりまして、大いに努力しなければならないと思いますが、いまの日本財政は大変困った状況にございまして、五十六年度も三兆三千億という思わざる歳入欠陥を生じますし、国債もなかなか発行が思うに任せないという状況でございますので、来年度は前例のないマイナスシーリングということでお願いをしております。  そこで、社会保障も文教もその他もろもろの施策もこの際はがまんをしてくださいというお願いをしているわけでございますから、防衛費につきましてもいわゆる聖域ということではなくて、やはり厳しく対処したい、していただきたいと考えておりまして、いま防衛庁折衝段階でございます。
  51. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、けさの朝日新聞は信用しないことにします。  そこで大蔵省は、防衛庁は聖域とはしない、いまこういうお答えをいただきまして、そういう方向でぜひやっていただきたい、こういうふうに考えるものですが、また一方で経団連あたりからも、歳出カットを徹底的にやりなさい、こういうハッパがかかっているようですし、しかし日本経済全体を見ますと、一体このまま推移したらどうなるのかと非常に不安が増大しております。そういう点で、一体今後この五十六年度の歳入欠陥あるいは五十七年度の歳入欠陥というものを見通した場合に、補正予算を追加予算でやっていくのか、減額予算で臨時国会等を開いていくのか、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  52. 窪田弘

    ○窪田政府委員 まず五十六年度の歳入欠陥の対策につきましては、決算調整資金で穴埋めをする、しかも、それで足りませんものですから、国債整理基金にたまっているお金を一時お借りをする、こういうことで処置をする考えでございます。五十七年度につきましても五十六年度の歳入欠陥の影響はあると思いますが、現在の段階では幾らということをはっきり決めることができませんので、これは今後の情勢を見たいと思っております。  それで、五十六年度の借りたものは五十八年度までにお返ししなければならないということになっておりますので、補正予算の声もございますが、私どもはもうちょっといろいろ経済、財政の状況を見てその辺は検討したいと考えておりまして、いま具体的に決めておりません。
  53. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、今度のマイナスシーリングでは聖域なしに全体的にマイナスでいく、こういうふうに受け取っていいのでしょうか。
  54. 窪田弘

    ○窪田政府委員 いま各省と御相談をしている最中でございますが、いろいろ各省にも当然増的なものその他歳出の増加要因がございますが、いわゆるシーリングの例外というのは昨年程度の項目にとどめさせていただきまして、そのほかマイナスシーリングになじまない経費、たとえば生活保護とか、そういうものもございますので、そういうものを除いた残りの経費について、マイナス五%ぐらいを掛けさせていただくということでいま御相談をしているところでございます。
  55. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、国連分担金とか海外援助資金等についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  56. 窪田弘

    ○窪田政府委員 いわゆるODA、政府開発援助につきましては、昨年からも例外の項目になっておりますし、今回も例外として認めたいと思っておりますが、これをどのくらいのものにするかということは、外務省の他のいろいろな施策とも関連をいたしますのでいま御相談中でございますが、日本の世界に対する公約というものは尊重していかなければならないだろう。国連分担金も半ば義務費でございますので、これもどうするかということは考えなければなりませんが、ただ、シーリングというのは、要求の枠を算出するための一つの算式と申しますか方法、計算式でございます。それによって出ました数字の中で各省が重点的に配分をして要求をしていただく、こういう性格のものでございますので、個々のものをいまどうするということはちょっと申し上げる段階ではないわけでございます。
  57. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大蔵省は、あとお帰りになって結構でございます。どうもありがとうございました。  続いて法制局長官にお伺いいたします。  いま防衛庁長官とも少しやりとりしましたが、最近、日本憲法というものについて、何らこれをそんたくすることなくどんどんと右傾化というか、日本が軍国主義の方向に傾斜しているというふうにわれわれ映ってならないのです。この辺で、果たして憲法というものが尊重されているのかいないのか、こういう検証を国会の場ですべきだと私は思うのです。そういう意味で、いままで何回か議論されてはまいりましたけれども、この辺でもう一度この平和憲法に対する本当のあり方は何かということを国民の前で議論すべきだと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  58. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 憲法は国の基本法であり、あらゆる国政の基礎をなすものだと思います。したがって、毎日毎日国政を進めていくに当たって、常に憲法との関連というものが重視されなければならないことは当然のことであろうと思います。
  59. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、自衛権というものの持つ意味ですが、この統一見解の中では、憲法に書いてないから自衛権憲法上認めている、こういうことが書かれておりますけれども、私はいつも思うのですが、書いてないからその反対のことをやっていいということにはならないと思うのです。そんなことをしたら、法律にないから何をやってもいい、ないものであれば何をやってもいいということになるのじゃないでしょうか。私は、自衛権は否定しませんよ。これは憲法と無関係な基本権であって、独立国家ができたらその瞬間に基本的に備わる権利であるから、これを憲法と結びつけて憲法自衛権は保障しているんだ、こういう論法の仕方というのはどうしても納得できないのですが、その点はどうでしょうか。
  60. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 砂川事件の最高裁の判決でも、わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されてはいない、こういうことを言っておりますが、いま渡部委員のおっしゃいましたような趣旨がそういう趣旨であれば、私も渡部委員のお考えに同感でございます。ただ、私どもは、別に法律に書いてないから何でもできるというような発想はやった覚えはございません。
  61. 渡部行雄

    渡部(行)委員 憲法の中で、第二章に「戦争の放棄」というのがあるわけです。しかもその第二章というものは、ただ九条一条しか書かれてない。なぜ九条をわざわざ第二章として特筆したのか、その思想についてお伺いしたい。
  62. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 いつも申し上げておりますけれども、わが国の憲法がいわゆる平和主義あるいは国際協調主義というものを基本的な原則の一つとして維持しておるということは言うまでもないと思います。そこでおのずから第九条という規定が非常に重要視され、それが他の規定と特に区別をされるという意味一つの章を形成するということになったのではないかと思います。
  63. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはやはり第二次世界大戦の余りの悲劇から、二度とあのような悲劇を繰り返してはならない、そこで憲法がわざわざ戦争の放棄という章を設けて、このことに警告を発した、こういうことに受け取るのが本当じゃないだろうか。しかも、法律というのはその文言と実態とが合わなければどうにもならないはずなんです。文言と実態がまるっきり合っていない。だれが読んでも、陸海空軍はこれを保持しないとなれば、これは日本には陸海空軍がないものと考えるわけです。だから、そこに非常に矛盾が出てくる。学校の生徒が読んで、お父さん、日本には陸海空軍はないですね、何と答えたらいいでしょうか、子供にそう聞かれたら。憲法を読んで、日本には陸海空軍はないだろうねと聞かれたら、法制局長官は何と答えますか。     〔佐藤(信)委員長代理退席、田名部委員長代理着席
  64. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 相手が子供である場合には非常にむずかしいと思いますが、一言で言えば、日本には陸海空軍はありません、ただ、自衛のために必要最小限度の実力組織としての自衛隊はあります、そういう答えしかないと思います。
  65. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうしたら、子供に、あの海に来てどんどんと演習をやっているあれは何軍と言うんですか、陸を歩いている自衛隊はあれは何て言うんですか、アメリカの軍人と日本自衛隊はどこが違うんですか、こういうふうに聞かれたらどういうふうに答えたらいいんでしょうか。
  66. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 そこまで聞かれましたら、もう少し詳しく法律的な説明をしなければいけないと思います。  そこで、外国からわが国が侵略された場合に、それを実力をもって追い返す、排除するという組織としては、これは日本自衛隊も、世界のほかの国の軍隊、いまアメリカ軍と言われましたが、そういうものと同じ任務を持っているということが言えると思います。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、わが自衛隊は、憲法によっていろいろな制約がございます。たとえば、アメリカの軍隊を含めて世界のほかの軍隊は、国際法で特に禁止されている以外の害敵手段を自由にとることができると思います。しかしわが国の自衛隊は、自衛のため必要最小限度の武力行使しかできないということになっておりますし、交戦権も持ち得ません。海外派兵もできない。そういう憲法上の制約がある。したがって、表面的にアメリカの軍隊と似ていても、日本自衛隊は本質的に違う、こういう説明をすることになると思います。
  67. 渡部行雄

    渡部(行)委員 海外派兵はできないということをはっきりと明言されましたが、この間、国連の平和維持軍ですか、これには自衛隊法を改正して検討したい、こういうことを外務大臣が言われましたが、これは法制局長官の法律的立場からはどういうふうにお考えですか。
  68. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 あのときも、議論の経過において、いわゆる武力行使を伴うものについてはこれは海外派兵に当たるわけでありますが、そういうことはできないということを前提として、武力行使を伴わないものであればこれは憲法は否定していない。しかし、自衛隊の現行法ではそういう任務を与えていないから、法律を改正しなければ国連平和維持協力はできない、こういうことが理屈の上で前提になっているわけでございます。
  69. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで問題を変えますが、戦争と抗争の違いはどこでしょうか。戦争と抗争、「自衛のための抗争」ということがこの統一解釈の中にありますね。「戦争を放棄したが、自衛のための抗争は放棄していない。」こういうふうになっているのです。その戦争と抗争の違いはどういうものでしょうか。
  70. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 私どもはかねがね、現在の憲法九条のもとにおいて自衛のための必要最小限度の武力行使はできる、こういうことを申し上げているわけであります。  そこで戦争とどう違うかということになりますが、これは戦争という言葉の定義にもかかわってまいりますが、自衛のために必要最小限度の武力行使ということを行った場合に、相手方との間に一定の戦闘状態が起こるわけであります。したがって、そういう戦闘状態を戦争というならば、これは確かに戦争になるわけであります。しかしながら、先ほども私が申し上げましたように、一般に戦争といえば国際法上特に制限された手段以外の自由な害敵手段を通じてやるわけであります。たとえば交戦権も当然それに伴ってある、相手国を屈服させるまで最後までやる、そういうようなものが戦争であるというふうに一般には観念されていると思います。したがって、そういう観念に従って言えば、わが国は先ほど申し上げたように必要最小限度の武力行使しかできないわけでありますから、明らかに戦争というものとは違うものしかできない、こういうことになるわけであります。戦争と自衛のための抗争あるいは自衛のための必要最小限度の武力行使というのは、そういう違いがあるわけでございます。
  71. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、日本はどんな場合にあってもこの憲法のもとでは宣戦布告というのは永久にできないわけですね。
  72. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 宣戦布告というものが、先ほど私が申し上げましたような通常の戦争というものに付随する観念であるとすれば、そういうものはできないと思います。しかし、自衛のための必要最小限度の武力行使を開始するぞということを世界に向かって宣言するなら、それを仮に戦争宣言と言われるならば、そういうことは当然やると思います。
  73. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは抗争でなくなるんじゃないでしょうか。戦争になるんじゃないでしょうか。その宣言をして、いよいよ自衛のための抗争を開始するぞということは、どういうことでしょうか。たとえば日本海で、相手の軍艦が来た、日本の軍艦も近づいていく、そうした場合に、向こうから一発受けないうちはこっちは撃ってならないということなんでしょうか。その辺はどうなんですか。
  74. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 宣戦布告の問題と先制攻撃の可否の問題とが少し混乱しているんじゃないかと思います。私どもは必要最小限度の武力行使しかしないと言っておりますときには、これは先制攻撃はできない。つまり、かねがね自衛権の三要件として申し上げておりますが、その第一の要件として相手方から不法な侵略があったことということを申し上げておりますから、いわゆる先制攻撃はいたしません。
  75. 渡部行雄

    渡部(行)委員 宣戦布告と先制攻撃が混乱していると言われましたけれども、何も混乱したわけじゃないですよ。そうすると、いわゆる相手の侵略を受けたということは、領土を侵されたということで判断するのか、あるいは日本の領海の中ででも漁船が拿捕されたとかあるいは船舶が撃沈されたとか、そういうことで侵略とみなすのかどうかですね。その辺はどうなんでしょうか。
  76. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 これも従来からたびたび申し上げておりますが、わが国の自衛権の発動に当たってはいわゆる三要件というものがあるわけであります。その三要件につきましては、先ほど申し上げたように、相手方から不正、緊急の侵略があった場合にそれを発動するということを申し上げておりますが、さらにそれを具体的に申し上げますと、いわゆる組織的、計画的な武力攻撃があったときに初めてわが国の自衛権は発動する、こういうふうに申し上げているわけであります。したがって、漁船が一隻やられたからといってそれが直ちに組織的、計画的な武力攻撃と見られない場合もありますから、その場合には自衛権は発動できないということになります。
  77. 渡部行雄

    渡部(行)委員 仮に北海道沖で、ある国から日本護衛艦が撃沈された、ところが今度九州沖でまたある国の軍艦と接近した、この場合は向こうが撃ってこないうちはこっちは撃ち返すことはできないわけですか。
  78. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 これもたびたび申し上げておりますが、先ほど申し上げたように、わが国に対する武力攻撃が発生したとき初めてわが国の自衛権は行使できるわけでございます。ただ、その武力攻撃が発生したときという、いつをもって発生したと見るかは、そのときの国際情勢だとか相手国の明示された意図とか攻撃の手段、態様等によるわけでございますから、いろいろな条件を総合的に勘案しなければいけないと思います。したがって、いまの御設例の一つ一つにどうだこうだということはなかなか申し上げにくいと思いますけれども、要するに武力攻撃というのは組織的、計画的な攻撃でございますから、そういうものすべてを見た上で判断をしなければいけない、こういうことになるわけでございます。
  79. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は具体的に聞いているのですから、抽象的に聞いているならば抽象的な答弁でいいけれども、具体的な場合に判断できないではどうしようもないんじゃないですか。だから、不正の攻撃があったその瞬間から、継続して全部敵対行為とみなして今度はこっちから反撃を加えていくのか、それとも一々、その攻撃があってそこで抗争という反撃を加えるのか、その辺はどうなんですか。
  80. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 これも昭和四十五年に例の「ニイタカヤマノボレ」の無電が発せられたときをもって攻撃を加えたかどうかという問題として当時いろいろ論議されたところでございますが、その場合にも政府の統一見解として、現実の事態においては先ほど申し上げたようにそのときどきの国際情勢だとか相手国の明示された意図であるとか攻撃の手段、態様等によるのであって、抽象的にあるいは限られた与件のみ仮設して論ずるわけにはいかないということを申し上げているわけであります。確かに、いまいろいろ御設例になりましたけれども、その一つ一つについてここで具体的にどうだこうだということは、先ほど申し上げたように申し上げかねると思います。
  81. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはだから非常にあいまいだと私は思うのです。問題は、今度具体化すると、そういう一つ一つの問題についてはここでは答えかねるというようなことで逃げてしまう。一体、それじゃ日本憲法というのは、外国の憲法と違っているそのよさというものはどこにあるのですか。
  82. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 外国の憲法との比較でございますが、端的に申し上げて、外国の憲法の中にも侵略戦争の放棄というような規定を持っているものがございます。しかし、わが国の憲法は、九条の解釈としてはそれのみにとどまらないわけであります。外国では、侵略戦争は放棄しているけれども自衛戦争は反対にできると考えていると思います。しかも、その自衛戦争というのが、先ほど来申し上げているように自由な害敵手段を行使することができるということを前提として、交戦権もあり、またわれわれができないと言っている海外派兵もできるだろうし、またわれわれが持ち得ないというような装備というものも持ち得るというふうに解されていると思います。およそそういうことは外国の憲法では制限されていないと思います。ところが、わが国の憲法におきましては、再々申し上げているとおり自衛のためといえども必要最小限度の武力行使しかできませんし、またそれに見合う装備についても必要最小限度のものを超えることはできないという九条二項の規定があるわけでございますから、これは明らかに外国の憲法とは非常に違うと思います。
  83. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、防衛庁長官にお尋ねしますが、それじゃいまの防衛大綱必要最小限度の武装である、こういうふうに考えていいでしょうか。
  84. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 自衛のための必要最小限度防衛力と考えております。
  85. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、この大綱が大体昭和六十二年度で達成されたと仮定した場合は、その後は新しい装備というものはやめて、古くなったら取りかえる、そうしてその水準を維持するということになっていくわけですね。
  86. 塩田章

    塩田政府委員 昭和五十一年にできました現在の「防衛計画大綱」の中でも言っておりますが、「諸外国の技術的水準の動向に対応し得るよう、質的な充実向上に配意しつつ」云々とありまして、そういう意味では防衛力の整備において相対的な面があるということは当然想定いたしておりますが、その昭和五十一年当時の時点におきまして、いま長官がお答えいたしましたように当時の時点における平和時における必要最小限度のものとしてああいう大綱が策定をされた、こういうことでございます。しかも現在われわれはまだそこにも到達していないということで、そのための努力をしておりますが、御指摘のように、これが昭和六十二年に到達するかどうかありますけれども、到達すればあとは装備を入れかえるだけなのかという点につきましても、これはいま申し上げましたように相対的な面があるということも当然配慮しなければならない問題であります。五十一年当時の時点において平和時における必要最小限度のもの、そうして情勢の変化によってエキスバンドするための基盤的なものであるということで当時策定されたものであります。
  87. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、憲法に違反する装備というのは、どういう装備が憲法に違反する装備になりますか。具体的に現在あるいろいろな兵器の名称を挙げてひとつお示しいただきたいと思います。
  88. 塩田章

    塩田政府委員 この点につきましては、従来から自衛のための必要最小限度を超えない実力を保持するということは憲法によって禁じられていないということで解しておりますけれども、同時にまた、性能上もっぱら他国の国土の壊滅的破壊のために用いられるようなもの、そういうものは保持することができないということをかねてから申し上げております。たとえばICBMでありますとかあるいは長距離爆撃機でありますとか、そういったものはこの憲法の精神からいって当然に持てないということを申し上げてきているわけであります。
  89. 渡部行雄

    渡部(行)委員 外国に届くミサイルとか、そういうのはどうなんでしょうか。
  90. 塩田章

    塩田政府委員 単に距離的に届くということであれば普通のミサイルでも届くこともあるかもしれませんが、いま私が申し上げましたのは、相手国国土に壊滅的打撃を与えるような、もっぱらそういうことを目的にしたような兵器、そういう意味で典型的なものとしてICBMということを申し上げましたが、そういったものは持てないということで、それはミサイルは全部持てないという意味ではございません。
  91. 渡部行雄

    渡部(行)委員 法制局長官、大変御苦労さまでした。あとは結構でございます。  そこで、今度の防衛庁設置法の改正について考えますと、海上自衛隊と航空自衛隊をふやしておるようです。特に海上自衛隊に力が入っておるようですが、これはどういう要員になるわけですか。
  92. 塩田章

    塩田政府委員 今回定員の増をお願いいたしておりますのは海上自衛隊と航空自衛隊でございますが、たとえて申し上げますと、五十七年度海上自衛隊につきまして六百四十一名の増員をお願いいたしております。  この内訳を申し上げてみますと、艦艇、航空機が新しく就役するということに伴いますものが千三百七十人、一方、艦艇、航空機が除籍されますものがございますので、そのために不要となるものが九百六十二名ございます。その差し引きをいたしまして、そのほかに、たとえば艦艇、航空機等の就役に伴うものではございますけれども、直接的ではなくて、たとえば地上のいろいろな要員、音響業務支援隊でありますとか誘導武器教育訓練隊の要員でありますとか、そういう新しい装備に伴いまして当然必要になってくるもの、そういった地上の要員が二百三十三名、それで合計しまして六百四十一人ということを海上自衛隊の場合お願いをしているわけであります。内容的にはそういうふうに、新規就役と除籍と、その関係を差し引きいたしまして、なおそれに伴います若干の要員ということでお願いいたしております。
  93. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最近の自衛隊の力の入れ方、防衛庁の力の入れ方を見ておると、これは海上自衛隊に相当のウエートをかけておるというふうに思われるのですが、間違いありませんか。
  94. 塩田章

    塩田政府委員 ただいまの御指摘が直接どういう点を指しておられるのか必ずしもよくわかりませんけれども、たとえば予算的な面で陸海空のシェアを比較しまして数年間の傾向をとってみますと、確かに御指摘のような面がございます。海空陸、陸はむしろ一番シェアは減っているといったような面が確かにございます。そういう意味では御指摘のとおりだと思います。  しからば、それはどういう考え方かといいますと、もちろん海上自衛隊につきまして、航空自衛隊もそうですけれども、先ほど来申し上げております「防衛計画大綱」の線に早く到達したいといいます場合に、やはり一番現状と大綱との間の差があります。陸上自衛隊の場合は比較的差が少ないという点もございますし、また、御承知のように最近の装備品がだんだん高価なものになっているといったような点もございまして、予算的にはシェアで見る限りいま御指摘のような傾向があるということでございます。
  95. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで私は考えるのですが、いまさら海上自衛隊にそんなに力こぶを入れて一体これから先の近代戦争に役立つだろうか、こういうふうに思うのです。あのフォークランド島の紛争を見ておわかりのとおり、一発のエグゾセで一千名近い者がぽんと死んでしまうのですからね。ミサイル一発でアルゼンチンは二、三百名一遍に海底の藻くずと消えたわけですよ。イギリスはイギリスでまたフリゲート艦や駆逐艦がやられた。一番損害を受けやすいそういうものをたくさんつくって戦争に備えるというのだから、ちょっとおかしいじゃないのですか。しかも日本は、外国に対しては攻撃は加えられない、いつでも自衛立場でしか行動はできない、憲法の制約がある限り。そうなると、何のためにそういうよそまで、インド洋やあるいはどこまででも行ける船をつくって、一遍に千人も二千人も乗せて危険な戦争の中に持っていくのか。そういう考え方は私は非常に古いのじゃないか。しかも、今日の科学はロボットが非常に進歩して、むしろそういう船舶がどうしても必要ならば無人化を図っていくとか、そういう人の犠牲を払わない方向で考えるのがこれからの戦略じゃないでしょうか。
  96. 塩田章

    塩田政府委員 まず海上自衛隊重要性につきましては、その任務がわが国周辺の数百海里の海上の防衛、あるいはシーレーンを考えました場合には約一千海里程度のシーレーンの防衛ができるようにということで整備を図っておりまして、私どもは非常に重要な任務を持った部隊であるというふうに考えておりますが、その際、いま御指摘の、たとえばフォークランドの戦訓なんかから見て海上艦艇のミサイルに対する問題点なんかの御指摘があったわけでございますが、個々の戦闘につきましていろいろな教訓があったことは事実でございます。ただ私ども、フォークランドの今度のことで直ちにいかなる結論を出すかということにつきましては、なお勉強すべきものが多い、情報が必ずしも十分でないというふうに考えておりまして、それは大変大きな関心を持っておりますので今後とも研究してまいりたいと思いますが、いずれにしましても、海上自衛隊の整備ということにつきましては非常に重要なことであると私どもは考えております。  なお、最後に御指摘になった、人員の削減あるいは具体的にはロボットの御提案があったわけでございますが、いま新しい艦艇が就役いたしますと、同じトン数あるいはもっと大きなトン数でも、実際の乗組員はむしろ少なくなるといったような傾向はどんどんあらわれております。私いま具体的な数字を手元に持っておりませんけれども、たとえば同じ三千トンクラスであっても、昔にできたものといまできるものとでは人数がずいぶん少なくなっております。そういった傾向はすでにあらわれております。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席
  97. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、フォークランドの紛争でどういう教訓を防衛庁は得たでしょうか。
  98. 新井弘一

    ○新井政府委員 お答えいたします。  ただいま防衛局長からの答弁の中にすでに言及されておりますが、確かに今回のフォークランド紛争を通じまして、たとえば原子力潜水艦の初の実戦使用であるとか、航空機による艦艇攻撃等、あるいは近代的な誘導ミサイルの利用、使用等いろいろな面で、大変軍事的観点からは注目すべき問題があると思います。  ただし現在の段階では、われわれが承知している情報というのは一言で言えば断片的な情報の集積であって、具体的な事実関係ということは必ずしもはっきりしてない。この点は、実は紛争当事国であるイギリスにおいてさえしかりで、先生御承知かと思いますけれども、六月二十二日にイギリスの国防省が一九八二年の予算見積もりについての報告を議会に出して、その中で国防大臣のジョン・ノット氏も、実際に今回のフォークランド紛争を通じて具体的な戦訓というものを念頭に置いて今後の防衛政策を考える、そのためには、それに先立ち今回の紛争の全貌が徹底的に究明されなければならない、そういうことで、現在イギリスの政府それ自体こういった分析をやっていて、恐らくこれは十一月ごろに出ると思います。他方、イギリスの議会におきましても、七月二十日ごろから公聴会を開きまして、そこで実際に戦った兵隊さん等からのヒヤリング等を開始いたしまして、恐らくこれは来年の一月早々になると思います。そういう事情でございます。  私どもも、こういったイギリス自体の調査等も十分フォローしながらわれわれなりに事実の究明に努めたい、そういうふうに考えております。
  99. 渡部行雄

    渡部(行)委員 あのフォークランド紛争は、結局何もプラスがなかったのじゃないでしょうか。全部マイナスじゃないでしょうか、両方にとって。確かにイギリスは戦勝国には名目上なったけれども、損害はむしろアルゼンチンよりも大きいというふうに聞いておりますし、また相当の最新兵器を駆使して戦ったようですが、しかし結果的に見ると、フォークランド島はそのままであり、そこにただアルゼンチンの軍人とイギリスの軍人が入れかわっただけで、何にも得したことがない。むしろ経済はますます大変になって、そしてアルゼンチンではもう政府までかわってしまって、イギリスでも相当の批判がまた出てきている。こうなると、あの紛争で一番大きな成果というのは、戦争は何にもならないということ、これじゃないでしょうかね。その点はどうでしょうか。
  100. 新井弘一

    ○新井政府委員 ただいまの御質問につきましては、それに先立つ私の答弁の中で半ば以上答えていると思います。すなわち、全貌が明らかになった時点で、先生がおっしゃったことが妥当するのか否か、改めて判断したいと思います。
  101. 渡部行雄

    渡部(行)委員 後で判断するというのだから、これはあなたの勝手ですが、しかし、戦争がプラスになるという結果が想定されるとすれば、これは大変なことになるのじゃないでしょうか。
  102. 新井弘一

    ○新井政府委員 一言、私の説明で足りなかった点、この点は、まさに戦争それ自体は大変不幸なことであったという基本認識が根底にございます。
  103. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、防衛庁長官にお伺いしますが、あなたはこういう「日本防衛」という本の中で、「国の独立と平和を守るための必要最少限の軍備であり、その目ざすものは戦争の抑止力となる自衛力なわけです。」こういうふうに言っているのですね。そうすると、日本の軍備というのは戦争抑止力をつくり上げる軍備として考えている、こういうことですね。  そこで、その抑止力と力の均衡ということはどちらが大事なんですか。
  104. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 力の均衡の中に戦後三十有余年の平和が保たれておるわけでございまして、力の均衡も大事でございますし、また、そのための一翼を担うわが国の抑止力としての防衛力というものも大事だと考えております。
  105. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、仮にAという国とBという国がある、そのAという国がBという国に対して抑止力を備えるという場合に、どちらの軍備が大きくなるのでしょうか。
  106. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 どちらが強くなるというよりも、両者の防衛力が常に均衡の状態にあることが望ましいと思います。
  107. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いまアメリカは戦争の抑止力という言葉を盛んに使う。そしてその抑止力というのは、徹底的に抑えてしまうんだ、こういうことなんでしょう。だから、抑止力をつくり上げるということは、仮想敵国に対してそれ以上の軍備を備えようとする思想につながると思うのですよ。しかし、それで果たして戦争の抑止が本当にできるだろうか。そこで、イスラエルの問題や、いま言ったアルゼンチン、イギリスの問題などを考えれば、必ずしも軍備を強化すればそれが戦争の抑止になるということにはなっていないじゃないですか。いまのフォークランド紛争とイスラエルのレバノン侵攻を見た場合、あるいはイラン・イラク戦争でも結構ですが、この抑止力と均衡というこの言葉でどういうふうに説明できますか。これで戦争をなくすという説明をしてくださいよ。
  108. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 やはり平和を保つためにはどうしても力の均衡が根本でございまして、わが国の場合の抑止力というのも、わが国にもし侵略を意図する国があったとするならば、そう簡単にわが国の侵略はできない、そういう意味での抑止力を持つということは必要だと思います。
  109. 渡部行雄

    渡部(行)委員 何言っているか、さっぱりわからないですな。イギリスは物すごい、言ってみれば相当の軍事大国ですよ。アルゼンチンと比べたら問題にならないほど力を持っているわけです。にもかかわらず、戦争はアルゼンチンの方からしかけたんじゃないでしょうか。これは抑止力になっていないという証拠なんですよ。軍備を増強すればそれが抑止力になるというものではないという一つの証明なんです。そうして、ただ米ソだけが均衡をとっている。  しかし現実に、この間マクガバン氏が来て講演した際に、このままでいけばソ連の軍備の方が強化されていく、アメリカの方はだんだん比較的に弱っていく、こういうことが言われておりますけれども、マクガバン氏は、そんなこと絶対ない、その証拠には、いま仮にソ連の持っているすべての軍備とアメリカの持っているすべての軍備を交換しましょうと言われたらアメリカではイエスと答えるか、絶対にそういうことはさせない、こういうふうなことを言っているんですよ。アメリカの方が、いま科学的にも量的にも質的にも、あらゆる面でソ連を凌駕しておる。これはもう本当の軍事専門家は認めておりますよ。そこを隠して、何かソ連が物すごく恐ろしいみたいな、ソ連がいまにも侵攻してくるような印象を国民に与えながら、だから軍備を増強しなければならないという、まるで日本が盧溝橋事件で自分の方で火をつけてそこに侵攻したような形の古い手を打っていると私は思うのです。もっと国際分析なりを正確にして、その上に立って、本当に国の安全を保障するにはどうあるべきかということを国民に問いただせばいいじゃないですか。それを、そういう事実を隠して、まさに現実と言っていることとは違っている、こういうことではならないと私は思うのです。その点についてお伺いします。
  110. 新井弘一

    ○新井政府委員 ただいま米ソの軍事力の比較について先生から御発言ございましたけれども、基本的に私は先生の御判断には同意しかねます。  すなわち、ソ連の脅威をアメリカあるいは西側が一方的に言いまくっておる、それでそれを軍備増強の口実にしているという御発言でございますが、事実関係を見ますと、ソ連は御承知のとおり一九六〇年代以降、特にキューバ危機以降でございますけれども、GNP比にして実に一二%ないし一四%、軍事力の増強に努めてきた。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕 その結果、一九六〇年代の時点においてすでに通常兵力ではソ連は圧倒的に西側に対して優位にあったわけでございますが、核戦力、これは具体的には戦略核戦力あるいは戦術核戦力等に分かれますが、この分野においても非常に、特にデタント時代を通じて量的、質的に改善してきた。その結果、現在、核戦力につきましても米ソほぼ均衡している。このソ連の四半世紀にわたる軍備増強の蓄積効果、それがさらに顕在化するのは一九八〇年代であろうというふうに見られております。そういうことの結果、このまま米国あるいは西側諸国が防衛努力を怠っているという状況が続く限りは恐らく近い将来東西の戦力バランスが逆転をする、これは客観的な事実であるというふうに私は認識しております。  他方、もう一度先生の前の論点に返りますと、平和というものは均衡によらないと言っておりますが、東西関係に見る限り、戦後、一九四五年以来現在まで三十数年、世界大規模紛争が東西間において抑止されてきたということは、とりもなおさず双方の兵力バランス、抑止力が効いたということの何よりの証拠であり、また、そうではないという実証は遺憾ながら先生もなし得ないというふうに思います。  にもかかわらず、じゃなぜフォークランド、ああいう地域においてあの種の戦争が起こるかといいますと、端的に言って、その当事国間において抑止力、勢力バランスにおいて必ずしも正常な状態が保たれていない結果、相手が他方の戦力についてミスカリュキュレーション、誤解をする、おれはおまえたちより強い、あるいは仮にこの島を武力でもって取っても相手は恐らくやってくるまい、またやってくるだけの実力もあるまい、そういう判断、このミスカリュキュレーションを防ぐということが実は平和の確立、平和の維持にきわめて必要である。もちろん、軍事力を増強するとか持つとか、そういうことではなくて善意で平和が確立されればこれが最上でございますけれども、遺憾ながら人類はまだそこまで成熟していない。そういうことから、結局軍事力のバランスということを背景にやはり持たざるを得ない、そういうふうに私どもは認識しております。
  111. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、あなたとかけましょう。  いま西側の経済力とそれからソ連の経済力とどういう力関係になっているか。あなたは、近い将来に逆転する、ソ連の方が強くなる、こう言いました。しかし本当にそうなのか。私は、そんな近い将来ならないと思う。いまの西側の陣営とソ連のワルシャワ条約機構とを比べて、西側という中には中国も範疇の中に入れて考えた場合に、そんな簡単にソ連がいまの経済力でアメリカを凌駕するようなことは絶対あり得ない。どっちが正しいか、かけましょう。これが一つ。  それから第二点は、戦争は武器によって起こるような言い方をあなたはしておる。戦争は武器によって起こるだろうか。武器を持てば戦争になるなら、武器を捨てることなのですよ。問題は、その底流にある経済関係、支配関係、そういう格差がもろもろに作用し合って、最後の解決手段として戦争に訴えてくるのですよ。戦争は最後の手段なのですよ。その前にすでに経済戦争あるいは市場分割の争いが先行しているのです。これを見落としてはだめですよ。しかも、あなた、今度のフォークランド戦争ではフランスもアメリカも武器を輸出してもうけたのじゃないでしょうか。こういうところの死の商人の影を忘れて、われわれがただ表面の砲火の飛び交うところだけ見ておったのでは問題を見失いますよ。これはどちらが正しいか、歴史が証明すると思います。
  112. 新井弘一

    ○新井政府委員 まず第一点の総合国力の問題でございます。この点は確かに先生がおっしゃるとおり……(「経済力もあるのだよ」と呼ぶ者あり)これから申し上げます。先生のおっしゃるとおり、総合国力においては、米ソ比較しますと、たとえばGNPにしてアメリカがソ連の倍である、あるいはNATO等同盟国を加えますと総合国力において西側が強い、優位にあるということは事実でございます。  ただ問題は、単に総合国力、経済の指標とか人口その他、これらの数字で比較するのでは意味がなく、問題はそれが特に国際政治ということになった場合に、これは私は米ソに限って言っているわけでございますけれども、軍事力に顕在化しないと最終的な抑止力にならないわけでございます。そういった点を私は指摘しているわけでございます。  それから二番目の問題でございますけれども、この点につきましては、基本的には戦争は最後の手段であるといった点については私は同じような認識を持っております。この点、先ほどの私の発言について多少先生に誤解があるのではないかという感じがいたします。
  113. 渡部行雄

    渡部(行)委員 外務省の方が来ましたので、この辺でちょっと外務省の方にお伺いいたします。  最近、韓国の外務大臣日本にやってきて、政府高官や自民党の大物と言われる人々に相当、どういう会見をしたのだかわかりませんけれども会見をしておられるようです。そこで何か、国民が受ける印象としては、円借款の問題でどんどん日本の外務省は韓国から押されてくるのじゃないか、だんだん譲歩を余儀なくされてきているんではないか、こういうふうにいままでの経過の中から見受けられるのですが、その点について、大体この辺でタイミング的にもぴしゃっと毅然とした態度を国民の前に明らかにすべきだと私は思いますが、その点いかがなものでしょうか。
  114. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先週の末から昨日にかけて韓国の新しい外務部長官が訪日されたわけでございまして、その間、外務大臣、関係閣僚とも会われまして、日韓経済協力の問題を含めまして討議されたわけでございます。  日本側としましては、四月の末に外務省の柳谷外務審議官日本側の考え方を韓国側に伝えたわけでございますが、その考え方というものが、新聞にも報道されております表現で申し上げますと、ぎりぎりの案であるということで、今回もその日本側の考え方を韓国の外務部長官に詳しく御説明申し上げたわけでございます。韓国側はそれには満足しておらないということから、日韓双方のこの問題に対する考え方には依然として大きな隔たりがあるということは申し上げざるを得ないと思います。
  115. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この日韓のやりとりを見ておると、私は非常に不思議でならないのです。金を借りる方がいばっていて、貸す方が小さくなっておる。一体これはどういうことなんでしょうか。私は、この裏には、韓国はただ援助を受けるという考え方じゃないと思うのですよ。やはり日本一つ防衛線として韓国の値打ちがあるんだ、それに対する当然の義務としてやるべき援助ではないか、支払うべき金じゃないか、こういう思想が根強く残っているからもたもたしているんじゃないか。したがって、その辺に対して、日本のいろいろな立場から外務省はもっとはっきりと物を言うべきじゃないでしょうか。その点いかがでしょうか。
  116. 木内昭胤

    ○木内政府委員 韓国側に対しましては、私どもの経済協力が韓国の国民の民生安定、社会開発ということを指向しておるということははっきりお伝えしておるわけでございます。また、ただいま先生御指摘の、金を借りる方が大きな顔をしておるという側面は、確かにそういうところはなきにしもあらずという感じがいたしますのは、やはり韓国の関係の閣僚としますれば韓国の国内に対する顔というものもあるわけでございまして、その辺は私どもも、そういう事情があることは現実の問題として認めざるを得ないわけでございます。しかし、私どもに対する韓国側の態度、今般参られました李範錫外務部長官の態度も、これを懇請するという非常にまじめな態度に終始しておられるわけでございまして、私どもはその点を頭に入れて折衝を続けるということかと存じます。
  117. 渡部行雄

    渡部(行)委員 アジア局長はこれで退席されても結構です。  次にお伺いいたしますが、今度の国連軍縮会議で鈴木総理が演説をやりました。軍縮の三つの側面などに触れたあたりは大変りっぱな内容のものでありますが、しかしこの中で非核三原則に触れていないようなんです。私は、非核三原則は日本の国内の問題かもしれませんけれども、今日、日本の周辺を核を持った原子力潜水艦やあるいは航空母艦などが行ったり来たりしておる。こういうような場合に、むしろ日本の国是としてこの非核三原則を前面に出して、全世界からその理解を受ける、こういう積極的な態度が必要でなかったかと思うわけです。総理がいなくて残念だけれども、ひとつそういう点で、外務省はどういうふうにこの問題を受けとめておられるのか、お伺いいたします。
  118. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  鈴木総理は第二回軍縮特別総会における一般演説で、わが国の憲法の平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼するということを引用しつつ平和憲法の意義を強調いたしまして、それに引き続いて「軍事大国にならないことを決意し、核兵器については、持たず、造らず、持ち込ませず、という非核三原則を国是として堅持しております。」というふうに述べております。これは委員が御指摘になられました点と符合するものであろうというふうに存じております。
  119. 渡部行雄

    渡部(行)委員 軍縮の三つの側面というものの中で、「国連の平和維持機能を強化・拡充する」ということは、具体的にはどういうことを指しているわけですか。
  120. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  国連は本来国際間の平和と安全の維持を図ること、これを目的といたしておりまして、そのために憲章の中にいろいろうたっているところでございますが、現実には必ずしもそのとおりにまいっておりません。そこで、国際的な軍縮を推進する上におきましては、そのような努力を可能にするような環境を醸成するということが重要であろう、そのためにはやはり国連といった世界の各国が参加国として集っているこの国際機構を活用する、つまり国連の平和維持機能を強化するということが重要である、このような認識のもとに、鈴木総理はその演説の中におきまして三つの提言をいたしております。  その一つは、国際紛争の予防、またこれが起きたときには拡大しないように即時に抑えていく、こういうための国連の役割り、これを十分明確にしていくべきではないか。また、国連がそのような役割りを演ずるに際しての加盟国の分担、どういうふうに加盟国は協力すべきかということを明らかにする必要があるのではないか。さらには、軍事面での世界あるいは各地域における状況、これを十分把握して、必要に応じてその状況を明らかにしていく、公表していく、こういうことも必要であろうということで、この三点をわが国の提言として鈴木総理は明らかにされているのでございまして、わが国もこういった方向においてできるだけの協力を進めてまいるということでございます。
  121. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この演説の中で、国家間に相互信頼関係を醸成することが大切だという意味の発言をして、その後で、「とりわけ最近ソ連が、高度の性能をもつ移動性中距離核兵器の配備を著しく増大したことにより、欧州においては、これに対応する中距離核兵器の配備計画を余儀なくされております。」こういうふうに書いてあります。何かソ連が中距離核兵器を配備したからやむを得ずヨーロッパでは配備しているんだということを言っておりますが、いまや軍事バランスというのは地球的規模で考えなくちゃならないと思うのですよ。それはヨーロッパとソ連というそういう小さな範囲で考えるべきじゃないと思うのです。  そういうふうに考えると、これは外務省に言っても仕方ないのかもしれないけれども、せっかく国家間の相互信頼をつくろうということを言っておきながら、一方的にソ連に悪というものを押しつけている。こういう考え方では非常に矛盾していると思うのですが、その辺はどうなんでしょうか。
  122. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 世界的規模で軍備のことを考えなければいけないというお説は、そのとおりであろうかと思います。極東に配備されておりますSS20、こういう中距離核兵器の撤廃についても、私どもは機会をとらえてソ連側に要請をしている次第でございます。  信頼醸成措置の問題につきましては、先ほど来御議論がございますとおり、一九七〇年代を通じてソ連の軍備拡張は著しいものがあると私どもは認識しております。それのみならず、第三地域に対するソ連の進出ということが最近きわめて顕著でございます。特にアフガンに対するソ連の侵攻、さらに、日本の近辺におきましては極東地域におけるソ連軍の増強という事実がございます。なかんずく、私どもがどうしても重大視せざるを得ない点として、わが北方領土におけるソ連軍の駐在、またその増強という事実がございます。こういう行動をソ連がとっている状況のもとで、どうして信頼醸成の話ができるでしょうか。これはやはりソ連が行動をもってまず誠意を示すということ、その行動の後に初めて信頼醸成の話し合いが可能になる、かように私どもは考えております。
  123. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この問題はどっちに是非、善悪があるというようなことではなくて、どうすれば本当に信頼関係ができるか、どっちが先でどっちが後だという順序の問題じゃないと私は思うのですよ。あらゆる接触において、信頼されるように、また相手も信頼するように、そういう一つの態度というものが大事じゃないか。  現に、サハリンの開発だって一緒にやっているでしょう。ところが北方領土は解決しない。しかもこれは、自民党がサンフランシスコ条約で賛成したからああいうふうになったのでしょう。そういうことを抜きにしてこれを、それじゃ具体的にどういうふうに解決するかというその案がいまだに出てないじゃないですか。これは国連の中でひとつ全体討議にかけるなり、あるいは国際司法裁判、そういうものにかけるなりしてやるとか、あるいは現実にどういう関係で北方領土を占領しているのか、そういうものをもっと現実のものとして煮詰める考え方を進めていかないと、私はそれこそフォークランド島みたいに、こっちから押しかけていかなければどうにもならないというような問題になりかねないと思うのですよ、場合によっては。そういうことではなくて、どっちが先、おまえが足を踏んでいるんだから話をしていられないというような態度でなくて、日本はとにかく平和憲法を持ち平和の外交を進めてきているんだから、そういう意味で、世界の平和のイニシアチブをとるにはどういうふうに国連の場で行動すべきかというのは当然に考えられなければならないと思います。  それから、時間が来ましたので、午前中の最後に、毎年大体十一月の末から十二月に核不使用決議案というものが出されておるようです。ところが、最初日本はこれに賛成をしておったのが途中で棄権をするようになり、そして一九八一年の十二月九日には反対した、こういうふうな経過になっておりますが、今度また新たに出た場合にはどういう態度を表明するおつもりなのか、その辺をひとつお聞かせ願いたいと思います。  それから、この鈴木総理の演説の中には、不退転の決意で軍縮を履行する、こういうふうに世界に向かって宣言しておるわけですから、そういう立場から言うならば、むしろ私は日本が提案国の中に入ることが望ましいのではないか、こういうふうに思いますが、その辺についてお伺いいたします。
  124. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねのございました点につきましては、先般予算委員会におきまして鈴木総理大臣は、予算委員会に御出席の委員からの御質問答えて次のように述べておられます。どういう内容で、どういう背景で、どういう形で出されるか、その実際に出たものを十分あらゆる角度から検討し、そして私どもが最も重く見ておりますのは国会の御決議、この趣旨を十分踏まえて総合的な判断を下す、こういうことで対処したいと述べておられるのでございますが、私どもといたしましてもこの趣旨に沿いまして、実際に決議案が出てまいりました場合にはいろいろ慎重に検討して対処いたしたい、かように考えております。
  125. 渡部行雄

    渡部(行)委員 以上で午前中を終わります。どうもありがとうございました。
  126. 石井一

    石井委員長 午後二時十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十八分開議
  127. 石井一

    石井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部行雄君。
  128. 渡部行雄

    渡部(行)委員 午前中に引き続いて御質問いたします。  それは、今国会において細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約が批准されまして、それに関連する国内法も一応整備されたことになっておるようでございますが、私はこれで万全かどうかということを考えますときに、非常に疑問が残るのでございます。  そこでお伺いいたしますが、最近の細菌あるいは毒素の研究、移動、実験、生産、貯蔵及び兵器化等に対する国際監視体制は一体どうなっておるのか、この辺に対して具体的に御説明願いたいと思います。
  129. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねのございました問題に関する国際的な監察機構ないしは体制がどのようになっているかという点につきまして申し上げますと、この条約におきましては、禁止されておりますところの生物あるいは毒素及びこれを使用する兵器に関する禁止及び防止、これを徹底させる義務は、それぞれの加盟国が国内憲法上の手続等を十分とりながら徹底的に実施していくということになっております。換言をいたしますと、第一義的には、それぞれの加盟国が国内法に基づいて、条約の定めるところに従いましてその趣旨を徹底するということになっているのでございます。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕 しかしながら、万が一にもそのような義務の履行が十分行われないという場合には、関係国間におきます協議というものがまずございます。それで話が進まない場合には、国際連合の安全保障理事会に問題を付託いたしまして、そこでその問題を調査し、事実関係を調べて必要な措置を国連憲章の定めるところに従ってとる、かようになっております。
  130. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、これはそれぞれ徹底する義務というのはその加盟国自身にあるわけですね。  これは批准してから間もないけれども、しかし現実には調印は約十年前にやっておるわけで、そういう点での日本における徹底の仕方は一体どういう措置をされてこられたのか、その辺をひとつお聞かせ願いたい。
  131. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  わが国の場合には、この義務を履行するために国内法を定めております。先般御承認をいただいたものでございます。この国内法の中におきましては、徹底させるための手段としまして、まず第一に、第三条におきまして、外務大臣及びその他の主務大臣が周知徹底させるための措置をとるということを定めてございます。つまり、周知徹底を図ること、これが第一点でございます。  その次に、第五条におきまして、主務大臣はこの条約を実施する上で必要な場合におきましては報告を求めることができるようになっております。その報告を求めることによりまして条約が定めるところを実施するということでございまして、万が一にもこの条約に反するような行為があります場合には、それぞれに該当する刑罰が定められている。  こういった一連の措置によりまして義務の履行を図るということになっております。
  132. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、この場合の外務大臣のほかの主務大臣とは、たとえば農林水産大臣とか通産大臣とかあるいは文部大臣とか、そういうものを指すのでしょうか。具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  133. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま渡部委員が御指摘になられましたようなそれぞれの大臣は、その所管の業務、職務内容に照らしまして、仰せのとおりに入ってまいるものかと存じます。ただし、先ほど引用させていただきました国内法におきましては、主務大臣については別途政令で定めるということになっておりまして、具体的にどのような大臣がこの国内法が定めるところの主務大臣に該当するかは政令において決まることでございますので、それまで、どのような形になるかはただいまのところは定かにはなっていない、こういう状況でございます。
  134. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはいま現実にどんどんと細菌を利用する、微生物を利用する、あるいは遺伝子工学、そういうもので開発が進み、研究が進んでおるわけでございまして、これがまだ政令で主務大臣を確定しないとなると、いろいろと支障が出てくるのじゃないかと私は非常に心配するわけでございます。  たとえば病院関係で細菌等に対する監督責任は厚生大臣にあるでしょうし、あるいは学校等における研究等は文部省にあるでしょうし、また農薬関係での研究は農林水産大臣になる。こうなると、非常に危険な生物あるいは物質を管理する上で一つの体系的な管理ができない。これでは困ると思うのです。そういう点で、いまとりあえず現行の国内法で本当に細菌や毒素の生産、研究、実験、移転、貯蔵あるいはこれを兵器化するなどに対し、これを監視、管理、捜査、摘発などの措置がとれる法律が整備されているのかどうか、この点について、ひとつお聞かせ願いたいと思います。そして、もしそういう措置が現行法の中でもやれるというものがあれば、その具体的な御説明を願いたいと思います。
  135. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいまお尋ねのございました点につきましては、突然のお尋ねでございましたので、また関係の各省庁の法令等でございますので、私この場で十分お答え申し上げることはできない点をおわび申し上げたいと思います。  ただ、私の了解させていただいているところは、わが国にはこの条約が禁止するような生物あるいは毒素剤を使用するような兵器は存在しない、持っていないということでございまして、したがいまして、それらのものを規制するような法律あるいは政令その他のものはない、こういうふうに了解いたしておるのでございます。
  136. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは、あなたそういう断言はしない方がいいですよ。表面は無害であっても、それを数種類混合すれば猛毒になる、そういう性質のものがあるんです。たとえばハブの毒ですね、あのハブの毒は何から成っているかというと、アミノ酸から成っているんですよ。アミノ酸がたしか十六だか幾つだか、それが合わさってあの猛毒になるんですよ。アミノ酸一つ一つは、これは消化剤にこそなれ毒にならないのですから、そういうものでいま日本にありませんなんて、そんなたかをくくっていられるものじゃないんですよ。しかも、いまアメリカにある、ある神経ガスは、これは物すごい猛毒で、そして一つの要素はGBという表示でされて、もう一つはVXというものであるわけなんです。一つ一つ取り出すと、これは全然無害なんだ。しかし、これを二つ合わせると、まさに生物兵器としてあるいは毒ガスとして大変な猛威をふるうしろものなんですよ。だから、見たところ毒でないからあるいは人畜無害だからというような安心感で今日の生物あるいは毒素というものを見てはならないと思うのです。そういう点で私は少し甘いじゃないか。その辺に対してお答え願いたいと思うのです。
  137. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま渡部委員から仰せがございました点、十分玩味させていただきまして、検討させていただきたいと存じます。
  138. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それから、そういう横断的な一つの対策がおくれているというのは、とにかく批准がされてからやるというよりは、むしろ調印したときから準備が進められなければいけないわけですから、その十年間の中にいまなおそういうことでできないということは、これは私の推理が間違っておればお許し願いたいと思いますけれども、各省庁の縄張り根性というものが阻害になったり、あるいは企業秘密というようなことで入る余地がなかったり、そういうもろもろの問題が阻害要件になっているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  139. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいま御指摘になられましたような具体的な例につきましては、私、十分つまびらかにいたしませんので、申し上げることを差し控えさせていただきたいと存じますが、いろいろな複雑多岐にわたる問題があったこと、またあることは事実でございまして、私どももそういった点、一つ一つ十分手当てをしていくことを考えていたのでございますが、御期待どおりに迅速に事を運ぶことができなかった。ようやく本年に至り御承認を仰ぐということになりましたことは事実でございます。この点十分心にとめて、将来一層の努力をいたしたい、かように考えております。
  140. 渡部行雄

    渡部(行)委員 まあこういう問題はなかなかはっきりと言いにくいでしょうから、あなたの表情を見て推察して、質問を次に移したいと思います。ひとつその点は、十分急いでよろしくお願いいたします。  さて、そこで問題なのは、いまいわゆる条約の対象になる細菌や毒素がないからということで、わりあい安心感を持って今日を過ごしているということは大変危険だと私は思う。そこで私がお願いしたいのは、もう一度この機会に振り返って、過去の歴史の中から、細菌兵器というものあるいは毒ガスというもの、そういうものが一体どういうふうにつくられ、どういうふうに使用されたか、あるいはそれを使用するまでの過程の中でどんな事実があったかという、この歴史を掘り起こしていただきたいと思うのです。この前も榊委員から指摘がありました七三一部隊のことなどもその一つでございますが、いま自衛隊の中で極秘裏にこのような細菌兵器や毒ガスの開発がなされていると仮定した場合、まずこれをどうしてかぎつけるか、そうしてどうすればこういうことが絶対できないようになるのか。絶対にそういうことはあり得ない、またできないんだという保証はないわけですね。その辺を一体どういうふうにお考えでしょうか。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 塩田章

    塩田政府委員 事、防衛庁あるいは自衛隊に関して申しますならば、現在そういうものを持っておりませんし、持とうという意図もございません。  お尋ねが、自衛隊がいまはそうかもしれないけれども今後の保証がないではないかという点でございますけれども、第一義的には、これは防衛庁自衛隊を御信頼いただくよりないわけでございます。また第二義的には、そういうことになれば予算面とかなんとかいろんな規制もあるわけでございまして、いずれにしましても、私どもは現在持ってもおりませんし、持とうとしてもおりませんということをはっきり申し上げたいと思います。
  142. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これはもちろんそういうことなんです、表面は。いつでもそういうことなんです。ところが、この七三一部隊だって、表面切って人体実験をしているなどということは、これは一口だって外に向かっては言えないんです。そういう性格のものなんです。だから、私はいまもちろん自衛隊にそういうものがあるとは言っていませんよ。一つのたとえとして言ったまでですから、その辺は御了承願いたいと思います。  そこで考えられるのは、政府はこの機会に、人道的な立場から、またあらゆる生物や自然を守るという考えから、過去においてなされた細菌兵器や化学兵器等による一切の事件を専門的に再調査してみる、そうしてその真相を国民の前に明らかにしながら、このような非人道的な、残酷比類ないそういう兵器に対する全世界の人々の憎しみを駆り立てるということが一番予防策になると私は思うのですよ。そういう点でもう一度、日本ばかりでなくいろいろな例があるでしょうから、そういうものを調査する御意思はございませんか。
  143. 塩田章

    塩田政府委員 防衛庁には戦史部というのがございまして、一般的な戦史の勉強はもちろんしております。その中でもそういった記述はあると思いますけれども、ただ、いま御指摘のように、改めて徹底的な調査研究をするかというお尋ねでございますけれども、私どもいまそういう計画は持っておりません。また実際上も、御承知のように資料等もこういった関係のものはほとんどございませんし、一般的にいままで言われている戦史の中に出てくる程度のものはすでに公刊されたものがありますけれども、改めてここで隠された資料を掘り起こして徹底的に調査するかというお尋ねでございますけれども、いまのところ私どもそういう考えを持っておりません。
  144. 渡部行雄

    渡部(行)委員 なぜ私がこんなに過去の問題に拘泥するかと申しますと、これは御承知の関東軍七三一石井部隊の真相がこの間テレビで放映され、あるいは出版物等でも暴露されて、そうしてその内容が大体国民にもわかるようになったわけです。さらに、毎日新聞社による追跡調査の生々しい当事者等の告白などが記事となって出、これを読んでいると身の毛のよだつような思いになるわけです。その残虐性、非人道性は言語に絶するものでありまして、何としてもこのようなことは許せるものではない、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで問題なのは、本年二月五日の毎日新聞によって明らかにされたものでありますが、平和憲法下で人体実験が行われているという形跡があるわけです。その一部を読んで御紹介申し上げますと、「占領軍命令で厚生省・東大 終戦直後、十二人以上 関係者証言」とあって、その上に「受刑者使い人体実験 発疹チフスの感染研究」こういう大見出しで出ているわけです。  終戦間もない昭和二十二年、厚生省と東京大学の研究所がGHQの命令により、当時まん延していた発疹チフスの研究のため刑務所の服役者に感染させる人体実験をしていた事実が、関係者の証言と毎日新聞社の調べで四日、わかつた。日本側は当初、感染、発症の人体実験は被実験者の生命にかかわるとして拒否したがGHQに抗しきれず、受刑者から志願者を募って行ったという。志願者であっても、身柄を拘束された弱い立場人間を病気にかからせる実験は、日本国内では例がなく、倫理上も許されないとされてきただけに、占領下、GHQの命令とはいえ、三十五年ぶりに明らかになった新事実は衝撃的である。 こういうふうに述べて、あとその内容が細かに述べられている。  そしてさらに「医の倫理に汚点」という大見出しで「ショック占領下の人体実験 命令でも許されぬ行為」こういう見出しで、  東大伝染病研究所一現在の医科研)付属病院を舞台に、昭和二十二年に受刑者を使って人体実験が行われていた事実は関係者に大きなショックを与えている。わが国の人体実験はこれまで戦前の旧陸軍満州七三一部隊や毒ガス部隊などが中国で行ったケースに限られるとみられており、それも「戦時中のことだから」と説明されてきた。ところが今度明るみに出たのは戦後であり、しかも舞台は最も医の倫理を重んじるべき大学の研究所。GHQの命令があり、“占領下”の時代だったことを考えても「医の倫理以前のこと」と多くの医学者たちは受け止めている。 その後ずっと今度は石井部隊の幹部の問題なども書かれているわけです。こういう事実が明らかになった今日、一体、日本にはそういうことは想像できないなどと言っておられるだろうか。  さらに「田宮猛雄先生を偲ぶ」という本があるのです。これは前の日本医師会会長武見太郎さんが編集した本で、非売品なんです。だから書店には出回っていない本なんです。これを読むと、まさに恐ろしくて、本当にこんなことがあったのだろうかと疑わざるを得ないわけです。  ちょっと読んでみます。   一九四六年の秋には又先生と私がGHQに呼び出された。厚生省から浜野局長も呼ばれ出席した。例によってサムス大佐の両側にはトーマス中佐、ホイルラー中佐、タイガー中佐、バーギー少佐も並んでいた。サムス大佐は日本にも発疹熱があり、これが衣虱を通過して発疹チフスになるとの説もあるので、それを人体実験で確めることは防疫上極めて重要だから、医学生を用いて人体実験を行なうようにといった。そこで先生は日本に発疹熱の汚染地はあるが、そこから発疹チフス患者がでたとの報告は過去においてはない。しかし、そのような移行説をたて、満州で実験的証明に成功したとの報告はあるが、その証明法に不備の点があると話され、また医学生がそのような実験台となって勉強を放棄するのは学生の本務にもとることであり、またかりに致命率がゼロのはずの発疹熱が強毒となって何人かが死亡したりすることがあっては、人道上許されないと先生がいわれました。するとサムス大佐は米国では医学生を使うが、日本ではそれをやめよう、その代り米国でもやっている受刑者を使おうといいだし、また米国では発疹チフスに有効な薬が発見されているから死亡の心配はないから実験をやるように主張した。人体実験に受刑者を使うことは日本では前例がなく不可能だと申されたが、彼は可能か不可能かについては法務省に確かめてからにせよといった。すると先生は、新薬があるから生命は大丈夫ということだが、その薬名と、現物をみせて頂きたいと申された。彼は困り、急に立ち上り、他に約束があるからとて先生の問いに答えずそのまま立ち去った。あとで、先生は卑怯なやつだといっておられた。しかし可能か不可能かについて確かめることを約束したのだからといって、先生は私と法務省を訪ねた。最初は前例がないといわれ、考えてみましょうとのことだった。局長室をたびたび訪ねているうちに、法的に可能なやり方がみつかった。それには本人の自由意志による承諾書が絶対必要であることを前提とし、まず私とホイルラー中佐が受刑者を集めて発疹熱の病気のこと、実験のやり方を説明し、数日後に応募した者の中から選んで実験を始めた。 云々と書かれているわけです。これは私はその辺のおかしな週刊誌とは違うと思うのですよ。やはり皆権威のある人たちのつづった文章であるし、私は真実だと思っております。こういう事実が平和憲法のもとで白昼堂々となされておったのをだれも知らない、そういうことで済まされるでしょうか。知らなかったでこういう重大な問題が済まされるでしょうか。  しかも、さらにまだあるのです。今度は読むのはやめますけれども、ここに写真が出ておる。この写真は、ここの田宮猛雄先生、この人物はかつて日本医師会の会長をやり、東大の医学部長をやられた方でございます。この人がアメリカからお金をもらうために、二万五千ドルをもらうために調印しておるところの写真が出ておる。昭和三十五年です。こういう事実。さらに今度は自衛隊に協力した、その写真が出ているのです。「冨士山麓にて自衛隊と共同実験中の先生(昭和三十五年一月)」となってここに出ておる。これはまさに、私は本当に不思議なんですね。  しかも、このサインした前のページを読むと、ちょっと読んで見ますか、清水という人が語っているのに「東大というところは、軍からの研究費というとやかましいところなんですね。」伊藤という人は「軍と関係づけて金をいただくとは何事かというようなこともいっていました。けれども、米国政府との中に四六〇医学研究所が」――これがこの前も指摘されたいわゆるアメリカ軍の細菌実験部隊でございます。これが「入ってとりもったということにすぎないということもいっていました。ですから別に何でもない。」この金は受け取ってもいいんだ、こういう趣旨のことが述べられているわけです。  大臣はこの事実を知っておりますか。まずそこからいきましょう。
  145. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 知っておりません。
  146. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いまわかったでしょう。これからどうします。
  147. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 自衛隊に関した部分の御説明がありましたけれども、その点は調査をしてみます。
  148. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ひとつこの点は十分調査をしてもらいたいと思います。  そこで、厚生省はこの事実をどういうふうにつかんでおりますか。
  149. 木戸脩

    ○木戸説明員 御説明申し上げます。  先生御指摘の五十七年一一月五日に毎日新聞にこの関係記事が掲載されたわけでございます。私どもの方も早速調査をいたしたわけでございます。  私どもの方の所管に国立予防衛生研究所というのがございます。そしてこの二月五日の毎日新聞には北岡さんという方が載っておりますが、この方が当時の予防衛生研究所の副所長でございまして、予防衛生研究所の関係のところを調べてみました。当時のものにつきましては予防研究所の年報というものがございまして、昭和二十二年に発疹チフスの発生の機序について連合軍最高司令部援助のもとに実験が進められたというような記事が年報にございます。当時の直接この実験に関与したと思われる方は皆死亡しておりますので断定は申し上げられませんが、いま先生がおっしゃられたようないろいろな資料から推測をすれば、このような実験が行われた可能性は否定できないというふうに考えております。
  150. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで法務省にお伺いしますが、法務省ではこのときのその受刑者というのは何人希望をとられたのですか、それを教えていただきたいわけです。
  151. 上館貢

    ○上館説明員 お答えいたします。  当時の記録が見当たりませんので、その辺の事実がどうか判明いたしておりません。したがいまして、受刑者が何名応募したのかということもわかっておりません。
  152. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは法務省は全然わからぬと言うけれども、私が先ほど読んだのは一九四六年、しかもその秋である。秋であれば、当時の法務省の担当責任者はだれか、いわゆるここで言う局長というのはだれなのか、こういう関係を担当する局長というのは。
  153. 上館貢

    ○上館説明員 当時の責任者は岡田善一行刑局長であります。
  154. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その方はいま生きておりますか。
  155. 上館貢

    ○上館説明員 同氏は昭和四十七年十月二十三日に死去しております。
  156. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その当時こういう問題にかかわった人たちで、いま生きている人が何人かいると思うのですが、それは調査できませんか。  とにかく、いまこの公式の委員会で厚生省では否定できないというその事実を言っておるわけですから、そうした場合に、ただ死んだからといってそのまま放置できる筋合いのものじゃないと思うのですよ。その辺お伺いします。
  157. 上館貢

    ○上館説明員 先生の趣旨を踏まえまして、調査の上、先生に御報告いたしたいと思います。
  158. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ひとつよろしくお願いいたします。  なお、厚生省の方でも手がかりになる資料なら何でも結構ですから、私もそういうものを総体的に追跡してみたいと思いますので、そういう資料があったらよろしくお願いいたします。  そこで、私は思うのでございますが、細菌とか微生物とか毒素というようなものはちょうど原子力のようなものだと思うわけです。なぜなら、平和利用と戦争利用が常にうらはらに共存しているからでございます。ですから、戦争利用の完全な抑制ということになれば、その細菌や物質が全く廃棄されるか、さもなければそれを支配する人間の良心が完全に機能するかのいずれかによるほかないのではないかと思うからでございます。その点で私は、核戦争に反対するため、広島、長崎の原爆の惨劇を全世界の人々に知らしめると同じような立場で過去の資料を発掘して、もって全世界の人々の良心に火をつけていく、これが細菌兵器、生物兵器をこの地上からなくしていく上での最も大事な一要素ではないだろうか、こういうふうに思うわけでございますが、一体どういうふうにお考えでしょうか。これは内閣総理大臣か官房長官がいればいいのですが、いまのいきさつからどなたになりますか。
  159. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 もしそういうことがあったとするならば大変遺憾なことでございまして、そういうようなことがないためにも、いま先生のお言葉をかりますならば人類の良心に火をつける、そういうような御趣旨には私も賛成でございますし、ただ、その手だてをどうするかとなりますといろいろ検討の要があろうと思います。
  160. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、そういう立場で御検討をお願いいたします。  そのほか、現在大阪市内で開業医をしている方で、元七三一部隊の軍医中佐の流行性出血熱の生体実験の様子や、関東軍五一六毒ガス部隊と七三一部隊のハイラルでの合同人体実験、これではいわゆる「マルタ」と言われる中国人百人を対象に行って、そうして約半数が死んでいる。これは名前は隠しますが、当時の某少佐によって明らかにされておるわけでございます。  最近、特に科学技術の進歩が目覚ましい中でこのように微生物工学や遺伝子組みかえなど、これはほとんど規制がないような状態で行われているようでございます。これには企業秘密や研究上の秘密があることはよく承知できるのでございますが、問題はこれをどういう形で監視し監督していくかということでございます。そこで私は、やはり特定の専門家によってそういう委員会というか機関というか組織というか、そういうものをとにかくつくって、そのかわりこの人たちは絶対的な守秘義務をもってその査察やあるいは監視、監督に当たる、こういうようなものが必要になると思うのですが、その辺については、これは条約局長ですか、どう考えますか。
  161. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 わが国の国内法でお尋ねの点にどういうふうに対応しているかは先ほど御説明申し上げたのでございますけれども、ただいま渡部委員から仰せられました点、なかんずく監視を十分にしなければならないという御懸念、御配慮、この点は十分念頭に置きまして、条約が定めるところの実行、履行に遺憾ないように努力をしなければならない、かように考えております。
  162. 渡部行雄

    渡部(行)委員 防衛庁長官からは、何らかの機会に総理や官房長官にこういう問題についての対策の仕方をひとつ伝達していただきたい。特にこの条約関係では、その責任を持つ外務省において全般的な対策についての検討をお願いしたいと思います。  次は、いま徳島県の吉野川遊園地にファントム104Jというのが展示されておるようでございます。これはどういう目的で展示されたのか、その辺をお伺いいたします。
  163. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 吉野川遊園を経営しておりますところの徳島興発という会社から、徳島県民はもとより四国全地域にわたる県民というか市民に対して、航空思想の普及であるとか、自衛隊、特に航空自衛隊に対する理解、認識を深めるというふうな広報上の効果も添えて、F104、これはもう耐用命数を過ぎまして用途廃止したものでございますが、それを遊園地に展示したいというふうな申し入れがありまして、本年六月航空幕僚監部において承認を与え、現在現地において展示中である。この根拠は、言うまでもなく、防衛庁の管理に属する物品の無償貸付及び譲与等に関する総理府令に根拠を置いたものでございます。
  164. 渡部行雄

    渡部(行)委員 このことは、F104Jというのは国の税金でつくったものでしょう。
  165. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 当然のことながら、国の予算においてつくっていただいたものでございます。
  166. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それをこの徳島興発株式会社という個人営利会社に対して無償で譲与したということはどうでしょうか。しかも、この遊園地は入場料を取って、大人七百円とか言っておりましたが、そういう国民の血税でつくった公のものを一営利会社にただでくれて、しかも、これは運んでいって組み立てば全部防衛庁側でやっておるようですが、それは義理か何か特別な関係があるのですか。
  167. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 この種の貸し付けは、現在までのところ地方公共団体、学校、民間のこういった施設に対して百数十機のいわゆる貸し付けというものを行っておりますが、私どもの考え方としましては、民間企業であれ、その展示する場所が多数の市民が集まる場所であって、きわめて公共性が高い、自衛隊の広報に有益であるというふうな判断をして貸し付けたわけでございまして、先ほど申し上げたような法律あるいは総理府令に基づいて行ったものでございます。  いままたもう一つ、現地への運搬費あるいは組み立て費等を自衛隊で負担したのではないかというふうな御指摘でございますが、それは一切貸与を申請した企業の方、会社側で行ったものということでございまして、防衛庁としてはこのための経費というものは支出しておりません。
  168. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私はその経費を支出したとは言っていないのです。つまり、組み立てや運搬は防衛庁側でやったでしょう。そうした場合、その際の費用弁償は会社側がすることに法律上もなっておるわけですから、それじゃその費用は幾らで運搬できたのか、これが第一点ですよ。  第二点は、いままで全国に百何十機かあったと言うが、これは戦闘機はないのですね。今度初めて戦闘機をここに展示しておるようでございます。しかも、このF104Jというのは、これが最後の飛行機じゃないでしょう。一部はいま現役で実際に使っているが、これは先につくったから古くなって廃棄処分にした、こういうものじゃないでしょうか。二機ばかり廃棄されたうちの一機。どうでしょうか。
  169. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 質問の第一点の、組み立てその他のお手伝いというものは、特に自衛隊としていたしておりませんことが第一点。  それから第二点は、現在までF104Jのこの種の展示に使っておるものは七機でございまして、飛行時間が過ぎまして耐用命数が来ますと、この飛行機を用途廃止いたしまして、部品取りであるとかあるいは武器、搭載物品というものを外しまして、いわばどん殻だけをこういうふうな形で広報に役立てている、こういうことでございます。
  170. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、この遊園地で自衛隊の隊員が六人ばかりで組み立てたという情報が入っているのですが、それはうそですね。
  171. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 組み立てその他は会社側で行い、わが方の自衛官がその知識を付与したということはあるように聞いております。
  172. 渡部行雄

    渡部(行)委員 知識を付与したというのは、そこでいわゆるこういうふうに組み立てるのだということを指示したことを指すのですか。
  173. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 多分、この飛行機の組み立て方その他についての知識をいろいろ教えたのだろうというふうに思います。
  174. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だから、現実に行っているじゃないですか。それはちゃんと出張旅費をもらって行っているのじゃないですか。そうでなくて、どうしてそこに自衛官が行くのですか。
  175. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 会社側の意向を受けて、会社側の費用でそういった知識を付与する、いわゆるいろいろなことを教えるために派遣したというふうに聞いております。
  176. 渡部行雄

    渡部(行)委員 だから、私がさっきから言って  いるでしょう。行ったことが悪いとかなんとかとまだ一度だって私は言っていないのですよ。それじゃどういう費用弁償を受けたのだと言っているのですよ。会社側から幾らもらったのですか。
  177. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 先方からの依頼に基づいて出張したものでありまして、どのくらいの出張旅費をもらったかについては存じておりません。
  178. 渡部行雄

    渡部(行)委員 先方から依頼されると、自衛隊はすぐ出張するのですか。だれか、その出張命令を出す一つの命令系統があるのじゃないですか。それはどうなっているのですか。
  179. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 もちろん出張には出張する理由なり手続というものが決められておりまして、この場合、航空自衛隊が管理しておるところの物品、すなわち耐用命数を終わったF104を当該遊園地に組み立てて展示するというふうなことから、私どもとしては、広報上も有益であるというふうな判断をして要員を派遣したのだろうというふうに思います。
  180. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうも何か奥歯に物がはさまったような言い方ばかりされているのですね。あなた方が本当にそれはいいことだと思うのなら、堂々と最初から、こういうわけで自衛隊員を何人つけて展示に協力した、そしてその旅費は向こう側が支払ったとはっきり言ったらいいじゃないですか。何か最初はだれも行かないみたいで、向こうの作業員がやったみたいな言い方をしたと思うと、だんだんついてみると、いや知識を授けるために一緒について行ったなんという、そういう人をばかにしたような話はないと思いますよ。  私が言いたいのは、公共の自治体とか、そういうところでいろいろな知識を広めるためにやるならばまだがまんできますが、こういう攻撃用戦闘機を使って、しかも金もうけの道具にするという、こういう国防意識があるでしょうか。自衛隊の隊員の人たちは、毎日毎日命がけで訓練しているのですよ。命との引きかえっこですよ。それを今度は自分の事業の金もうけにその飛行機を持ってきて、そして戦闘機のかっこよさだけを見せて、おまえたちも乗ってみろ。何回か乗っているうちに、今度は本当に乗って戦闘に行かなくっちゃならなくなるかもしれない。問題は利用の仕方ですよ。そしてそういうことをすると、防衛庁とそういう業者との間にありもしないうわさを立てられたり勘ぐられたりすることは、私は決して日本防衛政策としていいことではないと思いますね。その辺に対して長官はどういうふうに考えますか。
  181. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 いま官房長からも申し上げましたとおり、やはり徳島県、四国全地区の市民の方々が大ぜい集まる場所と承っておりましたので、そういうところに使用済みの航空機を展示をいたしまして、航空自衛隊についての広報あるいは航空科学教育の普及、また航空思想の向上等を通じまして自衛隊の広報活動に資するものと考えたわけでございまして、関係法令の規定にのっとって貸し付けたわけでございますので、有意義なことであると考えております。
  182. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間が参りましたのでこれでやめますが、防衛庁長官はいま貸し付けたと言いましたけれども、先ほどは譲与したと言ったのじゃないでしょうか。私の聞き間違いでしょうか。
  183. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いま大臣がお答えしたとおり無償貸し付けでございまして、先ほど私が申し上げた譲与といったのは、関係法令の題名を引用した際に、そういうフレームの中に譲与という言葉が入っていたと思います。
  184. 渡部行雄

    渡部(行)委員 譲与と貸し付けではまるっきり違いますよ。あなた、そういういいかげんな態度で答弁してもらっては困りますね。お茶飲み話なら構わないけれども、私たちだって真剣にやっているわけだから。どうも質問内容答える方の答弁とがすれ違っている。まともに四つに組もうとしないんですね。意識的に別な方に別な方に答えてきておるので、これ以上、本当はやりたいのですけれども、時間が来ましたからやめます。どうもありがとうございました。
  185. 石井一

    石井委員長 次に、鈴切康雄君。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 宮澤官房長官、大変にお忙しいところ御苦労さまです。  どうしてもきょうは官房長官に来ていただいて質問を申し上げなければならない問題点は、去る六日の日に鈴木総理が参議院の内閣委員会で、鈴木内閣では防衛費は国民総生産の一%以内の方針は変えない、これはかねがね言っていたわけでありますけれども、その国会答弁を変えるような発言、すなわち五六中業期間中にも経済成長率の鈍化によって一%ラインを突破する可能性を示されましたけれども、この方針について宮澤官房長官が六日の夕方の記者会見において政府考え方を整理してお示しになった、そういう報道記事がなされておりましたので、このことについての内容をもう一度この国会の場においてお聞き申し上げます。
  187. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま防衛庁においていわゆる五六中業等の作業をしておられるわけでございますが、私の承知しております限りでは、各年度防衛関係費がGNPの一%を超えないことをめどとしておるところの昭和五十一年十一月の閣議決定については、防衛庁として現在のところこれを変えてもらう必要はないと考えておられるというふうに私は承知をいたしております。  総理がせんだって参議院の内閣委員会において答弁をされましたことの趣旨は、したがいまして政府として昭和五十一年に決定いたしましたその方針をこの際改めるということを考えているわけではないということが基本でございますが、たまたまわが国の長期計画でございます七カ年計画をこの際改めるという方針政府は持っておりまして、新しい計画が今年の末ごろには一応大まかにはでき上がるというプログラムで考えておりますが、昨今の情勢から判断をいたしますと、これからの経済成長率は七カ年計画で考えておりましたものよりはやや鈍化をするのではないか、これは明確には作業が終わってみないと申し上げられないことでございますが、最近の傾向ではそういうふうに見えます。  その場合に、仮に防衛費を分子というふうに考えますならば、分子の方の事情は別に特にどうということはないわけでございますけれども、分母の方の事情でGNPがいまわれわれが考えているほど大きくならないかもしれない。これはただ可能性でございますけれども、そういう可能性というものはこれは考えられることである。したがって、そういう分母の方の事情がどうなるかということは必ずしもいま先がはっきり見通せない、五十一年に考えておったような高い成長というものはあるいは今後しばらくむずかしいかもしれない、そういうことも考えられることでございますということを参議院の内閣委員会で総理大臣が言われました。したがいまして、このことは政府方針として五十一年の閣議決定を改めるということではございませんで、その決定はそのまま尊重し維持してまいりますが、分母の方の事情というものが多少これから先不確定な要素がある、こういうことを御説明を申し上げたということでございます。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、五六中業防衛計画大綱水準達成をまず基本的に考える、そして防衛予算はいまおっしゃったとおり極力抑制をしていくという考え方であるのか。また、一%以内ということを頭に入れて、そして五六中業達成の水準に努力するという考えなのか。  こう私は質問をいたしますれば、いまの分子分母の関係から申し上げますと、まず五六中業のその分子というのは、「防衛計画大綱」が決まればそれはもう変わらないということですから、基本的に考えて、当然その中で防衛予算というものを極力抑制していくんだ、こういう考え方でよろしゅうございましょうか。
  189. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 五六中業の詳細なことにつきましては防衛庁の方から御説明があろうかと思いますけれども、五六中業自身も、これは私の聞いております範囲では、いわゆる正面装備が作業の中心でございますから、後方関係の経費でありますとか人件糧食費等については作業そのものの中心ではございません。仮に推算をしてみればどうといったようなことであろうかと思います。したがいまして、防衛費全体を五六中業が正確にはじいていくわけではないだろうと思うのでございます。しかし、それはそれといたしまして、それにいたしましても具体的な計画の実施は毎年そのときどきにおける財政経済事情、国の他の諸施策との調和を図りつつやっていく。いわば将来の予算の支出を厳格な意味で拘束するわけではない。これは基本的な了解でございます。  しかし、そこでお尋ねの点でございますが、そうではございますけれども、五六中業としては「防衛計画大綱」というものをできるだけ早く達成したいという命題を持っておるわけでございますから、全く恣意的にあれこれ変えられるわけのものではないであろう。弾力的には考えなければなりませんし、各年度の支出を拘束するわけではございませんけれども、しかし全く恣意的に何でもいいというわけのものではないであろう、そういう要素は私は持っておるであろうと思うのでございます。したがいまして、分母が変わった場合に分子もそれに従ってくるくる変えられるものだというところまで申せば、それは少し極論ではないか、私はこういうふうに考えるわけでございます。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、分母の方は変わり得るけれども、分子の方はくるくる変えることはできないということであるとするならば、私が申し上げましたように、五六中業防衛計画大綱水準達成をまず基本的に考えて、その中で防衛予算を極力抑制していくのだという考え方であって、むしろその一%以内ということだけを頭に入れて五六中業達成の水準をこれからそれに合わせていくということにはならぬだろうと申し上げたわけでございますから、もし御反論があれば御答弁願えればいいわけでありますが、そういうことになりますと、一%以内という枠で現実的に運用せざるを得ないというふうに判断するのですけれども、その点はどうでしょうか。
  191. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 防衛庁自身が五十一年度決定を変えていただく必要はないと考えておると言われます意味は、先ほど申しましたように防衛費そのものが正面経費だけから成っておるわけではございませんし、そのときどきの経済財政状態も考えるということは基本的な了解事項でございますから、したがって、防衛庁としてはそういう閣議決定の線に沿って毎年毎年の予算要求をするためにできるだけのいろいろな工夫も御努力もされる、こういうことだというふうに了解をしております。
  192. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、当面一%以内ということであるので、それに対しては政府の方としてもそれを極力守る、努力するというふうにおっしゃっておりますけれども、国際経済の推移とか日本のGNPの伸びという関係から一%を超すことがあってもやむを得ないという判断でございましょうか。
  193. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政策の方向としてはそうならないように努力をしていくし、またそれでやっていきたいというのが政府の考えでございます。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やっていきたいという願望、そしてまたそれでなくてはいけませんし、一%をどんどんと超えてしまったということではこれはもう歯どめがなくなってしまうわけであります。  そこで、このところ政府考え方が非常に変わってきたというか、言い回しが巧みになってきたのですね。当面の防衛力の整備については、実は五十一年の十一月五日に国防会議とそれから閣議決定がされております。この内容をちょっと読んでみますと、「防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度防衛関係経費の総額が当該年度国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」これは閣議決定ですからそのとおりだと思うのです。ところが、このところGNP一%の枠、「枠」という言葉をお使いになったり、あるいはGNP一%は超えないという言い回しの微妙な変化が実は私は気になってしょうがないのです。  そこで申し上げたいことは、政府が考える一%以内の中に一%そのものが含まれるかどうか。これは実は論議になっていないのですよ。よく〇・九九九九九は一%以内、これはもう常識でわかるのです。それから一・〇〇〇〇一、これは一%以上、これもわかるのですよ。ところが、この一%そのものが政府が言っている一%以内に入るのかどうかという問題については、実は論議がされていないのですね。ですから、これが当面非常に切実な迫った問題になってきているだけにこの一%の扱いというものはおろそかにできない問題になってきた、私はそう判断しているのですが、それに対して政府としては、一%は一%以内に入るのだというようにお考えなのか、いや一%そのものはもう入らないのだというふうにお考えなのか、その点だけちょっとお聞きしたいのです。
  195. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょっと初めてのお尋ねでございますが、この昭和五十一年十一月五日の閣議決定を見てみますと「各年度防衛関係経費の総額が当該年度国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめど」と書いてございますので、「超えない」ということがめどでございますから、「百分の一に相当する額」そのものでございますと、それはこの閣議決定のうちに入るというふうに読むべきであろうと思います。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと一%はどういう位置になるのでしょうか。
  197. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この閣議決定の文章は一%を超えない額でございますから、一%はこの閣議決定の中にある、こう考えるべきだと思います。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうすると、一%の額を超えないということは、一%になると超えてしまう、端的に言いますと一%そのものは超えてしまう、こういう解釈ですか。
  199. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 つまり、ぴったりであればこの閣議決定はそれを許容しておる、こういうことだと思います。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 わかりました。それではこの一%というのは、結局一%そのもの自体はこの閣議決定の中にあると判断されたというふうに私は思います。  そこで、GNPの伸びが鈍化をした場合におきまして一%を超えるような事態が将来起こってくるということになりますと、実は一%の歯どめというものはこの閣議決定だけがあるわけでございますけれども、その歯どめがなくなってしまうのですね。私は歯どめの必要性はないなどと考えてはいけないと思うのですけれども、これは閣議決定、そして国防会議にかけられたわけでございますから、一・何%という事態になった場合においては当然これは閣議決定国防会議にはおかけになる、こう申してよろしゅうございましょうか。
  201. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、政府の政策意思といたしましてはこの五十一年の閣議決定をなお尊重していくということでございます。万一そのような政策意思を変更するということを政府決定いたします際には、これは当然この閣議決定にかわる決定をいたしていくことになるであろうと存じますが、ただいまそういう考えは持っておりません。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 当然そういう手続は必要なわけですね。そういう場合に、どういうふうな形になるか知りませんが、私は歯どめは必要だと思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  203. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は鈴切委員の言われますことにまことに同感でございます。ただいまとしては、この五十一年の決定を歯どめとして尊重していきたいと考えております。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 官房長官がきょうは非常にお忙しかったということは、いよいよあす閣議があるのですね。その閣議においてシーリング閣議決定が行われると見てよいのか、まだまだ後にそういうふうな閣議決定をするのかですね。もし閣議決定をするということであるなら、もちろん防衛予算もその決定の範囲内にあると私は思うのですけれども、その取り扱いはどうなのでしょうか。
  205. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 明日シーリング閣議決定ができますかどうか、実はただいまのところまだ作業が続いておりまして、正確に申し上げることができません。できるならばそういたしたいという目途で各省庁で努力を続けておりますけれども、ただいまの時間でまだはっきり申し上げることができません。  なお、いずれにいたしましてもシーリング決定いたしますときには、その例外となるものがどういうものであるか、そしてそれはおのおのどういうわけで処理するかということは恐らく同時に決めることになろうと考えておりまして、防衛費は五十七年度も例外でございましたし、恐らく五十八年度においても同様な扱いになるというふうに考えております。
  206. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 明日でもシーリング閣議決定をしたいという願望を持っておられるようですけれども、なかなか煮詰まらないというその煮詰まらないのは、要するにこの防衛費の問題が非常に隘路になっているというふうに私は聞いているわけですが、その点はどうなのでしょうか。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も十分つまびらかにいたしておりませんが、何省庁かにつきましてまだ煮詰まっておりませんで、聞くところでは、防衛費もその一つであると承知しております。
  208. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 臨調の土光会長が、防衛予算においても聖域を設けるべきではない、あるいは突出を許すべきではないというふうなことから、ゼロシーリングの中にあって防衛費の突出とかあるいは聖域化という問題については政府はどのようにお考えになっているのでしょうか。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる費用対効果の原則を厳格に適用していかなければならないという意味では、防衛費といえども例外ではございませんから、聖域だとは考えておりません。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 申しわけありません。大変にお忙しいところを来ていただきまして、先に御質問を申し上げたわけでございますけれども、どうぞお帰りになって結構でございます。  質問を続けます。  防衛庁長官、余り顔がさえないようですね。その顔がさえないというのは、なかなか大変な問題を抱えておるのじゃないかと私は思うのです。けさ、防衛庁長官大蔵大臣にお会いになりましたね。いまお会いになるということは、当然シーリング以外にないわけですから、大蔵大臣とはどのようなお話をしましたか。
  211. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘のとおりでございまして、大蔵大臣とお会いをいたしまして、来年度防衛関係費の概算要求枠の問題について話をしてまいりました。  私の方からは、「防衛計画大綱」に定める防衛力の水準をできるだけ早く達成する必要があるとの認識のもとに防衛力の整備を進めております、概算要求枠についても、このような従来の基本方針のもとに着実に防衛力の整備が進められるものでなければならないということ、また、このことが日米安保体制の信頼性をさらに高め、わが国の平和と安全をより確固たるものとするということを強調いたしまして、大蔵大臣防衛関係費についての特別の配慮を要請してまいったところでございます。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほどの答弁から言いますと、防衛庁としては九・七%のシーリング要求した、二千五百億増である、これを言っていっても大蔵省の方のガードがなかなかかたいということなんですね。ですからそういうことから言いますと、大蔵省の方は四・六%、千二百億円という枠を一番初めにやって、いまそれがどんどんと煮詰められてこなければならない事態ですから、実際には煮詰められてきているわけですね。ところが、九・七%というこちらの防衛庁考え方から言いますとまだまだ大変きついという状況であることは、私はほぼ感じでわかるわけなんです。  問題は、九・七%については大蔵省はそれはだめだよ、こういう話でしょうけれども、しかしそれでは当然、鈴木総理もあるいは防衛庁長官もアメリカに対して防衛のさらなる努力をする、こう言っている以上、昨年の七・七五四%よりはいまの段階においてはもっと上に行っているんだ、ところが九・七%にはなかなかいかないんだ、こういうことでしょうか。
  213. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど大蔵大臣にお会いしましたときは、金額で千七百九十億円、アップ率で六・七%ですか、これだけは認めるというようなことでございまして、私どもはとてもその額では来年の防衛関係費をまとめることはできないので、金額で二千五百億円、パーセントで九・七%は譲れないということで物別れになってまいりまして、いまなお折衝を続けるということになっている段階でございます。
  214. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまの御答弁を聞きますと、防衛庁長官の顔がさえないのは私はよくわかりますよ。このアップ率がいいとかどうとかということを私の方の立場から言うとよくないと私は思いますけれども、防衛庁考え方からいって、六・七%、千七百九十億ですか、これではちょっとのめないなということで、顔がさえないという意味はわかりました。  そこで、少なくとも昨年の七・七五四%は上回るという状態でないとこれはちょっとどうかなということを頭の中ではお考えになっているんじゃないかと思うのですけれども、問題は、大蔵大臣と話をして、六・七%ですよ、そこまでは認めましょうという話になっていると言うのですけれども、これは大蔵大臣とあなたの話でさらにどんどんと上積みできるというふうに判断されているか、あるいは、場合によっては総理大臣に最終的な政治決断を求めるという段階にまでなっているのか、その点のお考えはどうなんでしょうか。
  215. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 まず数字を申し上げますけれども、金額で千七百九十億円、それからパーセントで六・九%、それまでは認めてもらうというようなことまでの段階でございまして、それではとても私どもはのめないということでいわゆる物別れになりまして、目下事務関係、私もこれが終わりましたら役所に帰りまして、その報告などを聞きましてからこれからのやり方を検討したいと思っておりますけれども、もう一度大蔵大臣折衝するというような気持ちでおりますので、それ以後のことにつきましては、まだいまのところ何も決めておりません。
  216. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 では、大蔵大臣と話し合いをされて、大蔵大臣と話し合いのついた中でこちらがいいということであれば、それはそれでいいでしょうけれども、それがなかなか困難だということになると、これはやはり総理大臣の判断とか決断とかというものを求めざるを得ないということでしょうね。
  217. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先刻も申し上げましたけれども、まず、大蔵大臣にさらに防衛庁の意のあるところを申し上げて、大蔵大臣の御再考を願うということで進めたいと思いますので、その後のことにつきましてはまだ何も決めておりません。
  218. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛局長にちょっとお伺いしたいわけであります。  八月末に予定されている日米安保事務レベル協議では、アメリカ側が太平洋の海上防衛分担の防衛力整備を強く求めてくるんじゃないだろうかというふうな感じがするわけでありますけれども、日本側及びアメリカ側ではそれぞれどういうことを話し合われるというふうに想定されているか。もちろんフリーディスカッションだとはいいますけれども、雑談なんというわけにはいかないでしょうから、当然防衛庁としては、何をアメリカに期待し、何を報告し、そして何を議題としたいのか、また、アメリカからは日本にどのような話を持ち出すだろうかということまであれしないと、八月末の安保事務レベル協議には臨めないんじゃないかと思いますね。防衛局長も、きょう私がここで質問をしますと、防衛局長としてはここでは最後になってしまうわけでありますので、やはりこれは明らかにされておいた方がいいのではないでしょうか。
  219. 塩田章

    塩田政府委員 次回のハワイの安保事務レベル協議につきましては、いま御指摘のございましたように、日程的にまず八月の末ということで大体調整ができました。具体的な出席メンバーでありますとか、そこで出ます話題でありますとか、そういうことはさらにいまから詰めていきたいということで、いま鋭意折衝をしております。  ただ、いまも御指摘がありましたようにこれは元来がフリーディスカッションでございますから、いわゆる議題というわけではございませんけれども、話題といいますか、そういうような意味でどういうことがテーマになるかということにつきましては、いま申し上げましたようにいまから詰めるわけですけれども、あえてどういうところが想像されるかというお尋ねでございますが、アメリカ側から言えば、この間のワインバーガー長官の訪日の際のお話からしまして、御指摘のようなシーレーン防衛問題等が話題に出るだろうということは想像されます。わが方から言えば、いまからの五六中業がもしできますればそういったようなことが話題になるだろうということも、これは決まったということではなくて、どういうことが想像されるかということでございますので申し上げますならば、そういったことが主な話題として出るだろう、もちろんそれだけではないと思いますけれども、そういったことが考えられます。
  220. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、シーレーン防衛と五六中業におけるどういうふうな正面装備をしていくかという問題について、こちらの方からもいろいろと話をしなければならぬだろうし、また向こうの方の意見も出るだろう、こういうことですね。
  221. 塩田章

    塩田政府委員 考えられる話題としてそういったことが考えられるだろう、こういうことでございます。
  222. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 塩田防衛局長は、五六中業については六月二十九日の参議院の予算委員会で、五六中業は昨年の国防会議決定にあるように「防衛計画大綱」の水準に到達することが目的である、その水準に到達できればシーレーンの防衛が現状より格段に能力が向上すると考えるということでありますが、能力が向上することは私は当然だと思うわけでありますけれども、防衛計画大綱水準に到達するということは、少なくともシーレーン千海里、周辺海空域数百海里の海空の優位態勢がとれるというふうに判断してよろしゅうございましょうか。
  223. 塩田章

    塩田政府委員 いまのお尋ね、優位態勢とおっしゃったと聞きましたが、どういう意味かわかりませんけれども、私どもが格段に能力がアップするであろうと言います意味は、シーレーンの防衛という点から考えまして、およそ一千海里程度は実施できるような防衛力の整備ということで現在やっております。それが「防衛計画大綱」という線に到達することによって現状に比して格段によくなるであろうということで申し上げたわけですが、その場合の具体的な意味としましては、たとえばわが国の船団あるいは場合によっては独航船、いろいろなケースが考えられますが、そういったわが国の船が航路帯を通ります場合に、必要な時期に必要な範囲で相手方の妨害を排除して航路を安全に航行することができるということをねらっておるわけでございますが、そういった面からいって相当に能力がアップされるだろう、こういうことで申し上げたわけであります。
  224. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま言われました海上の安全保護ができるような態勢にしたいということは、少なくともその場所においては制海制空という、これは防衛庁がよく使う言葉ですけれども、制海制空というものに対しては、守るわけですからね、守る態勢というわけですから、それはかなりこちらの方に有利であるという考え方でその点はいいのかどうか。
  225. 塩田章

    塩田政府委員 制空ということになりますと、これは航空自衛隊の行動半径の問題がございますから、シーレーンの防衛ということで限界がございますが、制海という点について申し上げますならば、先ほどもちょっと申し上げましたが、わが方の必要とする時期に必要とする範囲において安全に航行ができるということは、これはぜひ図っていかなければなりません。元来の制海という意味はそうではなくて、海洋そのものを支配する、こういう意味の制海という言葉であったと思いますけれども、いまはそういうことはとても、米ソの海軍でもなかなか不可能なことでございまして、一般の海軍としましては、あるいはわが国の海上自衛隊としましては、必要な時期に必要な区域を必要な範囲に排他的に利用できる、そういう意味で考えておるわけであります。
  226. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカはわが国の海上防衛力整備についていろいろ見解を持っており期待を示しているが、しかし大綱水準の到達とは両者の内容が一致しているわけではないとあなたはおっしゃった。この一致をしているわけではないという、その一致をしていない内容の違いというものはどういうものか、またアメリカはどのように言っているのでしょうか。
  227. 塩田章

    塩田政府委員 これはいろいろな機会にお答えをしてきたと思いますが、わが国は、「防衛計画大綱」にしましてもあるいはガイドラインにしましても、海上自衛隊の整備目標としまして、わが国周辺数百海里及び航路帯を設ける場合にあっては約一千海里程度を守れるようにしたいといって整備を図っております。具体的には「防衛計画大綱」の定める線に早く到達したいということをわれわれは言っている。これは終始私どもはそう言っているわけですが、これに対しましてアメリカ側は、その前段の考え方、これはよく理解を示しているわけです。そういう意味では一致しているわけです。  ただ、その周辺数百海里あるいは航路帯を設ける場合にあっては一千海里というその程度を守るにも「防衛計画大綱」の水準では足らないのではないかという点において一致していないといいますか、要するに、足らないではないかという言い方では向こうはありませんが、向こうはいろいろこれこれが要るではないかという言い方で言っているわけでございますけれども、要するに端的に言えば、わが国の、われわれが整備目標としておる「防衛計画大綱」の水準の兵力では十分な護衛ができないのではないかという意味において、アメリカ側とその意味では見解の相違がある、こういうことを申し上げたわけであります。
  228. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、ちょっと私は申し上げなくてはならぬのは、いずれにしても私どもの党は防衛政策については政府考え方とちょっと違うわけですけれども、いまここで論議をしなくてはならない問題は、やはり政府防衛政策はどういうふうな考え方であるかということをたださなければならぬという点に立って私は質問申し上げているわけであって、それをやれよやれよというわけでは毛頭ないということを頭に入れていただきたいわけであります。  そうしますと、アメリカが言ってきているところの、「防衛計画大綱」の中のシーレーンの防衛についてもそれでは不足なんだというふうに言われているのは、やはりP3Cと護衛艦、この密度がちょっと薄いのじゃないか、数が少ないのじゃないか、こういうことでしょうかね、現実的に言いますと。
  229. 塩田章

    塩田政府委員 今度のハワイの事務レベル協議でどういうことを言うかということはもちろんまだわかりませんけれども、アメリカ側は、具体的にいまのP3Cがどうだとか護衛艦がどうだとかということではなくて、日本防衛努力を「防衛計画大綱」で考えているあの水準よりももっと期待するということを言っておるわけです。したがいまして、端的にいま御指摘のようにP3Cがどうだとかいう言い方をしてくるかどうか、これはまだわかりません。そういうことも考えられますけれども、いままでのところもっと一般的に言っておる、こういうことでございまして、必ずしも具体的に何をどうというふうに言っているわけではないのです。
  230. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それ以上あれしましてもなかなか答えにくい点でしょうから……。  それでは、実は千海里以遠の海上交通保護をどうするかという問題があるわけですが、日米安保条約の解釈によりますと、極東の範囲はフィリピン以北、そして朝鮮半島及び台湾地域も含まれるというふうにあるわけです。そしてグアム島以西フィリピン以北の海上輸送路の安全というものが非常に問題になってくるわけです。千海里から船が来るわけではなくして、その以遠から当然来るわけですから、そうなりますと、グアム島以西フィリピン以北の海上輸送路の安全というのはこれはどちらが防衛分担をするかという問題が出てくるわけです。これについてはアメリカが分担をするのか、あるいはまたわが国が分担をするのか、分担する国というのはいかなる方法で防衛責任を果たすようになるのか、その点ですね。もちろんその千海里、周辺海空域数百海里というのをしゃくし定規でここからここまでなんという、そういうふうなことで分担をするということにはならないでしょうけれども、それは私もわかりますけれども、この点どういうふうになるのでしょうか。
  231. 塩田章

    塩田政府委員 わが国がかねてからわが国の周辺数百海里、航路帯を設ける場合にあってはおおむね千海里程度はみずから守れる程度の力を持ちたいということを、アメリカ側もこの点は理解しておるというふうに先ほど申し上げましたが、そのこと自体はもちろん防衛力の整備目標の話でございますけれども、実際のオペレーションにつきましてもわが国がそういう立場で整備を図っているわけでございますし、それからガイドラインの記述から申しましても、大体わが国の海上防衛力がそれ以上のところを防衛できるというふうなことは向こうも考えておりませんで、いま御指摘のような点は、一般的な表現ですけれども、一般的に言ってアメリカに期待する、こういうことをかねてから申し上げておるわけであります。
  232. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカに期待する、こちらは一方的に期待すると言っても、この問題についてはアメリカ側ときちっとお話し合いになって、われわれはとにかく「防衛計画大綱水準までやるから、あとのことについては有事の場合においてはぜひそれはおたくの方でやってくださいという話し合いがついたのでしょうか。それとも、期待をしているというのは一方的にこちらが思って、そうやってくれるだろうということなんですか。その点はどうでしょう。
  233. 塩田章

    塩田政府委員 具体的な作戦計画があるわけではございませんけれども、先ほど申し上げましたようにガイドラインの記述自体がそういう記述になっておりますし、そのことをアメリカも了解をしてガイドラインができ上がっているわけでございますから、一般的期待ではありますけれども、全く一方的というわけでもない。ただ、御指摘のように、その一般的期待を裏づけする具体的なオペレーションプランを持っているのかと言われますとそれはないわけでございますけれども、そういう意味では一般的期待でございますが、おっしゃいますように一方的なものではないというふうに私どもは理解していいのではないかというふうに考えております。
  234. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 南東航路千海里、京浜からグアム島まで千三百海里あります。そうしますと千海里から約三百海里の長さと、南西航路千海里を超えフィリピン以北に至るということになりますと、やはり数百海里を結ぶ海域の防衛分担ということになりますと、これは憲法の制約という問題もありましょうし、また能力という問題もありましょう。そうなりますと、恐らく防衛力整備計画大綱に到達するまでには二割から三割ぐらいのアップをしなくちゃならないでしょうね。そうなりますと、事実上不可能であると私は思うのです。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 ところが、アメリカの第七艦隊がたとえば中近東方面に紛争があったためにそこに移動、そういうことになりますと、そこは本当に真空地帯みたいなかっこうになってしまうわけでありまして、そうなりましたときに果たして海上輸送の安全というものが保たれるかということになると非常にむずかしい問題だなというふうに私は思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  235. 塩田章

    塩田政府委員 七艦隊がペルシャ湾ならペルシャ湾の方にスイングするかもしれない。それは当然考えられるわけでございますが、そういうこともございますから、そのときそのときの状況によってどういう作戦計画を立てられるのかということはとうていいま具体的には申し上げられない。抽象的に先ほど来申し上げておりますように、一般的に米海軍に期待するというのはいろいろなケースがございますので、あえて表現すれば、一般的に米海軍に期待するというより言いようがないという意味で申し上げておるわけであります。
  236. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海上交通保護作戦の展開の中に、洋上の防空基地を持つという考え方をお持ちになっておりましょうか。いわゆる洋上防空基地構想、こういうものがありましょうか。
  237. 塩田章

    塩田政府委員 現在、洋上防空としての基地という点からいえば、たとえば那覇基地なんかは洋上の島の基地には当たるわけでございますけれども、それ以外に新しく基地を考えておるのかと言われますと、それは考えておりません。硫黄島につきまして訓練基地の整備は行っておりますが、新しい作戦基地という意味で基地の整備ということは考えておりません。
  238. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、硫黄島は訓練基地であるということであるとするならば、これは島民に返還をしてもよいということになりましょうか。それとも、この間みたいに、実は日米で硫黄島に上陸作戦を展開した。硫黄島は御存じのとおり大変にまだ遺骨が収集できないということで、硫黄島に住んでおられる方、またそこで亡くなられた方、収集ができないということで非常に困っているわけでありますけれども、それに対して事もあろうに、いまから三十七年前のあの上陸作戦を訓練をしたということは私は国民の感情を非常に逆なですると実は思うわけですけれども、これに対して硫黄島は島民に返還をするということでもよろしい、訓練基地であるならその程度でよろしいというふうにお考えになっているのか、あるいは、いやそうではないのだ、硫黄島はこれから非常に重要ないわゆる洋上防空の基地になり得る要素があるから、これはまだまだ返せないのだというふうにお考えになっているのか。その点はどうなんでしょうか。
  239. 塩田章

    塩田政府委員 硫黄島の訓練基地化の計画を進めておると申しましたが、これは現在のあります基地を使ってやっておりまして、別段それによって使用区域を広げるとか、そういう問題ではございません。島民の方がお帰りになるかどうかという問題は、したがって私どもは訓練基地を設けるかどうかに直接の関連のある問題ではなくて、これはやはり国土庁なり東京都なりでお考えいただく問題ではないかという意味におきまして、私どもの方からそのことについて何かをコメントする立場にはないわけでございます。承るところによりますと、国土庁、東京都方面でその関係の調査も鋭意進めておられるというふうに伺っております。
  240. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、硫黄島についてはそれ以上の洋上防空基地なんというふうな大それたものを考えていないのだ、訓練基地程度であるということであって、防衛庁としては訓練基地程度でよろしい、だから、国土庁あるいはそういう関係でもし返還できるということの考え方に立てば、そういう考え方でも尊重する、こういうことですね。
  241. 塩田章

    塩田政府委員 返還というふうにおっしゃったわけですが、土地の使用関係からいっての返還ということでございますれば、現在、大部分は国有林地を使っておるわけでございますけれども、一部民有地の借用地ももちろんございますが、たとえばいまの地域の借用地をさらに返還するのかと言われますと、率直に申し上げまして、実際問題これはなかなか困る問題もあります。ただ、いまの基地を広げようとしているのではないということで、それは別途に申し上げました国土庁なり東京都なりの御調査の結果でどういうふうな結論になりますか、そちらの方の御判断を待つよりないということでございます。
  242. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 シーレーンの海上交通保護のために、言うならばP3Cと、また大切なのはDDH、これは護衛艦ですけれども、ヘリを三機積んでいるのが現在四隻ぐらいあるわけですね。それに対してふやすという考え方はあるのでしょうか。それとも、それよりちょっと小さいDD、いわゆる二千九百トン級についてヘリを積めるような形にするのか。その点の構想はどうなっていましょうか。
  243. 塩田章

    塩田政府委員 ただいまの点は、現在私どもの構想が、「防衛計画大綱」で言っております約六十隻というものができました場合の構想としまして、四つの護衛隊群で、各護衛隊群を一応八隻ということを考えている。それには二千九百トン型DDが五隻、それからおっしゃいましたDDHが一隻、それからDDGという三千九百トン型、最近は四千五百トン型になっておりますが、それが二隻、こういうことで計八隻。その場合に、御指摘のようにDDHに三機のヘリコプター、DDに各艦一機づつ五機ということで計八機。これが私どもいま考えておる標準的な護衛隊群ということで整備していきたいということで、いま整備いたしております。したがいまして、二千九百トン型以前のDDを使っている間はそういうようにいきませんので、逐次DDの整備を図って、いま申し上げました一個護衛隊群八機のヘリコプターの運用ということを目指して考えておるわけであります。
  244. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海上交通保護の作戦になりますけれども、作戦についてはいかなる脅威に対してどういうふうに守るかという対応が必要だと思うのですけれども、それに対して、防衛庁としてはどのような作戦の体制を整えられようとしておられるのですか。
  245. 塩田章

    塩田政府委員 そういう点になりますと、まず、では脅威は何かということから始まるわけでございますが、いつも申し上げておりますように、シーレーンの防衛という点から考えましての脅威は空と水上と水中、こういうことになるわけでありますから、その場合の水中のいわゆる潜水艦に対しましては、いま私が申し上げましたような標準型の護衛隊群四つをもちまして、それにP3Cの部隊をもちまして対処していきたいということをかねてから考えておるわけです。  水上艦艇部隊に対しましては、これは他国の水上艦艇部隊がわが国のシーレーンの攻撃に来るかどうかということになりますと、実際問題なかなかどの程度の可能性があるかという問題になりますけれども、いずれにしましても、そういうことが起こった場合にはアメリカ海軍の力等を借りなければとてもわが国の海上自衛隊の力だけでは対抗できないのではないか。これはかねてから申し上げておりますように、機能的に考えて自衛隊の及ばざるところは米軍が支援するという考え方で、日米共同対処ということになろうかと思います。  空からの脅威につきましても同様に言えるわけでございますけれども、まず第一には、航空自衛隊のエアカバーが及ぶ限りは航空自衛隊がカバーしますということがやはり何と言っても第一だろうと思います。航空自衛隊のエアカバーの及ばざるところは、いま護衛艦の整備に当たりまして、対空のミサイルでありますとか対空の高射機関砲でありますとか、そういうものを逐次整備を図っております。そういうことによって対処するように考えておりますけれども、同時にまた、自衛隊の機能の及ばざるところはやはり米海軍との共同対処ということを考えていくということになろうかと思います。
  246. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本本土からレーダーの及ぶ範囲内というのは大体二百海里程度だと思うのですけれども、たとえばバックファイアが迂回してきたという場合において、それじゃ果たして海上交通の保護ができるかという問題があるわけですね。そうなるといわゆる護衛艦等のレーダーでしょうけれども、護衛艦のレーダーというのは内地にあるレーダーと比べると非常に距離の飛ばないものであるわけですから、そういうふうなことになってくると、やはりレーダーの空間的なところが非常にできてくるというように思うのですけれども、そういう場合においてはどういうふうな対処をされようとしておるのでしょうか。
  247. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘のような場合、現時点におきましては先ほど申し上げました海上自衛隊艦艇の対空装備、たとえば向こうがミサイルで撃ってくるという場合にそのミサイルを落とすための装備といったようなことを考えていくということと、先ほど申し上げました日米共同対処ということ以外にないわけであります。
  248. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛力の整備計画大綱の中で何と言っても問題になってくるのは、それはそれなりに正面の装備の問題については比較的日の目を見るわけでありますけれども、継戦能力があるかということになると、これは後方支援とか継戦能力という問題についてはまだ余り整備されてないだろうというふうに実は私は思うわけでありますけれども、日本が継戦能力を保っためには日本だけの物資だけではどうにもならない。となると、平和時における物資の輸入量というものがあるわけですけれども、その平和時における物資の輸入量に対して、少なくとも有事における所要輸入量、言うならば、これだけはどうしても入れなければならないという輸入量というものはある程度考えなければならぬでしょうし、また、それに対して国家備蓄というものも考えなければならぬと思うのですけれども、その点は防衛庁はもうすべて詰めておられるのでしょうか、どうでしょうか。
  249. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘のように、エネルギーや資源及び食糧の多くを海外に依存しておりますわが国にとって、総合的な安全保障の見地からこれらの備蓄を進めることは必要なことであると考えております。先般の総合安全保障閣僚会議でもこれらの点について議論がございましたけれども、具体的にこれをどの程度行うかといった点につきましては、政府全体として検討をされる性格のものでもございまして、私ども所掌官庁でない防衛庁が本件について直接申し上げることは適当でないと考えております。
  250. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは防衛庁長官、ちょっとおかしいことでして、それであるならば、何から何を守るかというそういう防衛力整備なんて実はできるはずがないのですよ。少なくとも何から何を守るということになれば、国家備蓄はそれじゃどれぐらい必要なのか、あるいは、たとえばいま輸入原材料が六億トンぐらいでしょうかね、六億トンからもう少しいっていましょうか、その原材料六億トンに対して、その大体何分の一ぐらいは最低とどめることができるか、そして国家備蓄としては大体どれぐらい持たなくちゃならぬかということは、防衛力整備計画の中で一番大切な問題ですよ。それを中途半端なことを言ったって、それはだめです。
  251. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 私も鈴切委員と全く同様の考え方でございまして、そういうことを念頭に置きながら、日にちは忘れましたけれども、閣議の席上で私から問題提起をいたしまして、その結果、引き続いて一カ月後ぐらいでしたか、先ほど例示を申し上げました総合安保閣僚会議が開かれまして議論はなされたのでございますけれども、まだ政府全体としてお示しをするような結論なり成果は生まれておりません。
  252. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いや、それはおかしいことだ。防衛庁長官、それであるなら、本当に「防衛計画大綱」の防衛力を整備いたしますとか五十八年度予算幾らとりますとか、基本的なものが決まらぬことにはそういうことにはならぬでしょうよ。だから、そういうあいまいなことでは恐らく許されないでしょうし、当然それに対しては何らかもう議論がなされなければならぬはずですし、少なくともそういうものの議論の過程というものはあるんだろう。そうでなければ防衛庁長官、あなたの任務は務まりませんよ。だから私は、これは防衛二法の審議ですけれども、その点のあいまいさ、六億トンという一つのものに対して少なくともこれだけは海上交通の保護、全部が全部入るなんてそういうことの態勢はとれないでしょう、そうした場合に、これだけのものは当然一応安全確保をしなくちゃならないというその設定というものは大切な問題だし、また備蓄というものも当然大切な問題であろう。それでなければ継戦能力のことは全然話は進まないんじゃないでしょうかね。その点どうなんですかね。
  253. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、全くそのとおりでございますので、なお御趣旨を体しながら、しかるべき機関、場所でそれらのことが早急に検討が進められるように防衛庁長官としても努力をしてまいりたいと思います。
  254. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは機密であるかどうか僕は知りませんけれども、いずれにしても、そういうものがなければ海上保護という根本に立っての問題は解決しないだろうということは申し上げておきたいわけであります。  それじゃ、有事において船舶運航を野放しにしておくということは当然できないわけですね。有事の場合においてはそれなりに海上保護をするという観点から考えたならば、船舶をどのように運航するかという問題が実は上がってくるわけでありますけれども、これらを保護するため一貫した体制づくり、あるいはきょうはどこどこの緯度を通ってどういう船が通りますよというようなそういう情報の一元化とか、あるいはそれに対して港はここの港にしなさいとか、ここは危険だからこちらへいらっしゃいとかということの指令の一本化とか、そういうものについてはどこがコントロールし、どこがそれを受け持つんでしょうか。防衛庁が全部やるんですか。防衛局長どうですか。
  255. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 このことにつきましても鈴切委員と私も全く同感、同様でございまして、何度も触れて恐縮でございますけれども、この問題についても私も閣議で問題を提起いたしまして、その結果、総合安保閣僚会議が開かれたわけでございます。先ほどの国家備蓄なり輸入の問題とあわせまして論議はなされましたけれども、結論としては、やはり総合的な観点から政府全体として研究を行おうというようなことで終わっておりまして、まだその後の作業なり成果はわれわれの手元では明らかにはなっておりません。
  256. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その問題も重要な問題じゃないでしょうかね。防衛庁防衛庁で考えるというんじゃ、結局統一のとれたものにならぬわけですね。だから、防衛庁に対して何らか指示を与えるなり、あるいは一本化で海上の運航というものを安全ならしめるためにどこかで指令をし、情報をとりということにならぬといけないわけですね。これは総合安保の観点から検討するんでしょうか、それとも有事法制の観点からこの問題をやるんでしょうか。
  257. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 やはり総合安全保障の考え方から検討されるべき性格のものと考えます。
  258. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 シーレーン防衛についてはアメリカからわが国に対して強い要望がなされておりますけれども、特に私が重大な関心を持っているのは、極東有事の際のシーレーンの防衛だと思うのです。私がこれから質問をいたします前提で申し上げるのは、どこまでも極東有事の際であって、武力紛争の一方の当事国はアメリカであり、日本は直接の当事国ではないということを前提として質問を申し上げたいと思うのです。  日本がシーレーン海域に対する、いわゆる海の方の優位を確保するという立場から、この海域において共同防衛という名目でアメリカの船舶、艦船を自衛艦もしくは自衛隊機が護衛をしなければならないのかということは、どうなんでしょうか。
  259. 塩田章

    塩田政府委員 先生の御指摘のような前提に立てば、自衛隊は動く段階ではありません。
  260. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 何ですか、もう一度。
  261. 塩田章

    塩田政府委員 先生の御指摘になったような前提、日本が紛争の当事国でなくて、アメリカだけが当事国であるという段階では、アメリカの艦船を日本自衛隊が護衛するということはあり得ません。
  262. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは、安保条約上の解釈からいっても護衛をしなくてもよいということに実はなるわけですね。それじゃ、まるっきりわれ関せずということでいいんでしょうか。
  263. 塩田章

    塩田政府委員 条約上もそうでございますが、自衛隊の任務上も、自衛隊が武力を行使するためには防衛出動の下令がなければなりませんので、防衛出動の下令になるという事態でない段階で御指摘のような行動はあり得ないわけでございます。
  264. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ、日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合に、日本がアメリカに対して行う便宜供与というものはまるっきりないかということになると、私はそうじゃないと思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  265. 塩田章

    塩田政府委員 その点は、いわゆる安保六条事態の研究としまして、ことしの一月から研究を始めておるところでございます。いかなる便宜供与があるかということで研究を始めておるところでございます。
  266. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その問題について研究を始めているというわけですけれども、どういうふうな進みぐあいになっていましょうか。
  267. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いわゆる日本以外の有事の研究でございますが、先ほど防衛局長から答弁いたしましたように一月から着手いたしまして、まだ会合を二回だけ開いた状況でございます。したがって、ここで具体的にどういう研究をしているかということを申し上げるほど研究の内容というものが発展していないのが現状でございます。
  268. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日米協力のガイドラインについては、統幕会議とか在日米軍司令部という形でいままで煮詰められてきたと私は思うのですね。ところが、実際にいま私が申し上げましたような、日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合における米軍に対しての日本の便宜供与という問題については、恐らくその段階では私は話が煮詰まらぬだろうと思うのですね。となると、そういうふうな問題については、どこでどういう形でどういう体制で研究が行われているのですか。
  269. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 この点については鈴切委員も御承知のとおり、日本以外の有事の研究につきましてはガイドラインのいわゆる三項に従って行っておりまして、それにはいろいろな限定といいますか制約があるわけでございます。まず第一にわが国のアメリカと結んでいる条約、協定の範囲内である、あるいは日本の法令の範囲内である、しかも、その出てきた研究の結果が日米両国政府を立法、予算あるいは行政上の措置で拘束するものでないということでございます。  ただ、この問題については、いわゆる五条の研究と違いまして、アメリカ軍と直接的に軍事的な協力関係に立つということでございません。したがって、防衛庁だけでなくて外務省ということで、現在外務省と防衛庁の審議官クラスが中心になって話を始めているという状況でございます。
  270. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、こちらの方は外務省、向こうの方はアメリカの大使館という形になりましょうか。それとアメリカの司令部という形になるんでしょうか、相対の関係ですと。
  271. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 現在のところのメンバーは、外務省から北米局の審議官、それから安全保障課長、防衛庁から防衛議官と統幕の事務局長でございます。それに対するアメリカ側は、まず在日米軍の参謀長、それから在京米大使館の政務、軍事担当の参事官、そのほかにスタッフがついて出ている、こういうことでございます。
  272. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 話はまた戻しますけれども、先ほどの話の続きになります。  アメリカが紛争の当事国であり、シーレーン防衛にある日本の国が、アメリカの船舶、艦船が敵の攻撃を受けようとしている場合または敵の攻撃を受けた場合、日本としてはどういう処置をとられるのでしょうか。
  273. 塩田章

    塩田政府委員 先ほど申し上げましたが、自衛隊としてはそれを防護する、保護するということはあり得ないわけでございます。
  274. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうした場合、シーレーン防衛について、アメリカが紛争当事国であれば日本はもうノータッチだ、情報も何も、まさか情報を流さないということはないでしょうけれども、ノータッチだということで済まされましょうかね。
  275. 塩田章

    塩田政府委員 まだ日米共同対処行動のできる段階でない、日本が何も侵略を受けてない段階でございますから、日本側としてはこれはもう共同対処はできないわけであります。
  276. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこのところを明確にしていただかないと、日米の軍事協力関係が進行する場合、日本立場というのは個別的自衛権の範囲というのは非常に困難になってくる、集団自衛権の新解釈を必要とするような事態にだんだんなってくるような感じがするわけです。集団自衛権というものは憲法九条においてこれは抵触をするということでありますから、私は、そういうことからいいますと、やはりそういうところは明確にしておいた方がいいだろうというふうに思います。  それでは、アメリカがチャーターしたわが国の船舶で、国籍が日本中身はアメリカが使用する戦略物資の運搬であることが実は敵側にキャッチされ、攻撃された場合、船籍が日本の場合においてはアメリカに対する攻撃とみなすのか、あるいは日本に対する攻撃とみなすのか、その点についてはどうなんでしょう。
  277. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御質問にございましたチャーターされた船の問題というのは、いま先生が御提起になられましたような形に対しまして一般的にお答えしますことは非常に困難でございまして、あくまでも純粋の法律論として御説明いたしますと、基本的には、チャーターされておりましてもされておらなくとも、船籍国、日本の船であればその安全を確保する責任というのは日本国にある、これは一般論として当然のことでございますが、チャーターされました場合にその安全を確保するという一般的な責任がどういうことになるかということにつきましては、チャーターした相手、チャーターの態様、その他個々のケースにつきまして非常に異なってくる場合があろうと存じますので、ただいま先生の御質問のような場合にどういうことになるかということを一概に申し上げるわけにはまいらないというふうに思います。
  278. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 なかなかむずかしいことを言いましたね。たとえば、アメリカが裸用船をした場合に、船籍が日本である場合国際法上どういう位置になるかということについては、これは日本の船籍であればそれは日本の国という地位である、こういうふうに明確に言ってよろしゅうございましょうか。
  279. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 まず現実の問題からちょっと御説明さしていただきますと、私の承知しておりますところでは、わが国の国内法によりまして、裸用船を第三国に対してやります場合におきましても、たしか電波法だというふうに記憶しておりますが、通信士は日本でなければいけないというふうなことが決められておりますので、そういうことも考えますと、実際問題として先ほど先生が御提起になりましたような形で米国あるいは米軍が日本の船を日本の乗員が一切いない形で裸用船をするということは、わが国の国内法からいってもあり得ないのではないかというふうに私は理解しております。  ただ、先ほどあくまでも国際法上の一般論として申し上げましたことでございますが、これは日本の船舶でありましょうとまた第三国、外国の船でありましょうと、それが裸用船をされてさらに別の国が運航しておるという場合に、別の国の政府にチャーターされた場合にはその国の公船であると国際法上は認められるということが多いのではないかと私は考えます。そうなりますと、今度はその国の公船でありますから、船舶の安全を確保するという責任は、チャーターされた先の国がその安全確保の責任を持つ、国際法的にはそういう場合もあるであろう。  したがいまして、一般論として、先ほど先生が御質問になりましたような場合に国際法上のその船の地位がどういうふうになるかということを一元的に申し上げることはできないというふうに、先ほど御答弁申し上げた次第でございます。
  280. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたの答弁はいつもいつもまだるっこしくて、最後にわからなくなるということは有名なんですけれども、それじゃもう少しはっきり言わなければなりませんね。  それじゃ、戦時国際法では、日本のいわゆる船籍を持った船がアメリカの物資輸送をするということであるならば、それは敵側が攻撃を加えることはできるのでしょうか。
  281. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 敵側がということをおっしゃいましたけれども、そういう国がわが国の船舶に対して合法的に攻撃を加えるということはできないと存じます。
  282. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ちょっと待ってください。戦時国際法では、たとえば日本の船籍であって、しかしアメリカの物資輸送という目的を持って運航しているということであれば、これは言うならば紛争をしている相手国はそんなものをどんどん許すようなことではとても戦争にならぬわけですね。そうした場合に戦時国際法としては、そういう輸送の物資を持っている場合には当然攻撃できるんじゃないですか。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕
  283. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先生の御質問は、いわゆる伝統的な戦時国際法、戦争というものが一つのルールの中で合法化されていた時代の戦時国際法のもとにおきます交戦国と中立国との関係というものを念頭に置かれての御質問かと思いますが、そういう形で現在そのまま伝統的な戦時国際法というものが紛争当事国と紛争当事国でない第三国との関係に適用されるというふうにはまいらないと存じます。  いずれにいたしましても、紛争の当事国になっております国以外の第三国に対しましてその一方の国が攻撃を加えるということは、国連憲章の上でも国際法のもとにおきましても認められない武力の行使であろう、こういうふうに存じます。
  284. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦時国際法においては、たとえば敵側の船に対しての臨検はできるでしょうし、それからまた、言うならばそれに対して不法な物を持っていれば当然没収もできるでしょうし、言うことを聞かなければそれを撃沈もできる、これが戦時国際法じゃないですか。となれば、アメリカならアメリカの紛争で、チャーターした船の中にアメリカの軍時物資を積んでおる場合に、そのチャーターした船に対して紛争の相手国がそれをそういう形で撃沈ができないとか、言うならば何の手も加えることができないということであるならば、もうその問題については、どんどん船籍を変えてそれでいわゆる軍事の戦略物資というものを運ぶということができるのじゃないでしょうか。
  285. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先生の御質問に対しましてまず基本的なところから申し上げますと、いずれにいたしましても現在の国際法あるいは国連憲章のもとにおきましては、憲章五十一条に基づきまして、自衛権の行使以外の武力の行使というものは適法なものとして認められていないわけでございます。したがいまして、先ほど先生がおっしゃいました臨検でございますとかあるいは拿捕をしまして、その船舶に積載しております物資を没収いたしますとか、そういう一連の実力の行使を伴う行為というものが、自衛権の範囲でございますればそれは国際法上当然適法なものとして認められるということになりましょうけれども、そもそものそういう自衛権の行使を国際法上あるいは国連憲章のもとで認められております自衛権の範囲を超えて第三国に対して実力で船を撃沈するとか拿捕をするとか、そういうことは当然国連憲章のもとにおきまして認められない行為であろう、こういうことで先ほどから御答弁申し上げておる次第でございます。
  286. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私はそう聞いているのじゃないのです。要するに、船籍が日本の場合においてはこれはいわゆる日本に対する攻撃である。たとえばアメリカが紛争当事国であり、相手国と戦争しておった。ところがアメリカがチャーターをしたその船自体が日本の船籍であり、そして軍事物資を積み込んだということであるならば、それは日本に対するところの攻撃であるということを言っているでしょう。ところがあなたは、それはアメリカが守らなければならないと言っているわけでしょう。アメリカが守らなくてはならないと先ほど言ったじゃないですか。その船籍については責任を持ってアメリカが守らなくてはならないというのですね。日本への攻撃に対して日本の国としては、全くそれではその問題についてはやられっ放しということなんですか。
  287. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 あるいは私が先生の御質問を取り違えてお答えいたしたかもわかりませんが、私が先ほど日本の船舶に対する攻撃は認められないと申し上げましたのは、米軍があるいはアメリカの政府がチャーターをした船籍の日本船ということで申し上げたわけではございませんで、正真正銘の日本の船舶、それが先生の御指摘のように仮に米軍の物資を積んでおったというようなことを仮定した場合に申し上げたわけでございまして、チャーターをされたような場合につきましては、先ほど申し上げましたように、それが国際法上のどういう地位になるかということは、そのチャーターの条件、態様、そういうものを見ませんと一般的には申し上げられないということは先ほど冒頭に申し上げたとおりでございます。
  288. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 わが国の船籍である船舶がアメリカと紛争関係にある国によって攻撃をされた、そういうことは当然チャーターされた船にいわゆる戦略物資が積まれているわけですから、相手方の船に攻撃された場合においては、自衛艦並びに自衛隊機はどのような処置をおとりになるのでしょうか。やられっ放しか、それとも攻撃をするのでしょうか。
  289. 塩田章

    塩田政府委員 日本の船が公海におきまして他国から攻撃を受けたという場合に、その日本の船に対する攻撃がわが国に対する組織的、計画的な武力攻撃であるかどうかということがまず判定されるべきだと思います。その結果、わが国に対する武力攻撃であると判定されれば防衛出動が下令されるということになるかもしれませんし、たった一隻とかあるいは二隻とかというようなことで、それが必ずしもまだわが国に対する組織的、計画的な武力攻撃ではないということであれば、いろいろな外交交渉等によって解決を図られるというケースもありましょう。そういう意味で、一概にどうなるというふうにはお答えをいたしかねるわけです。  ただ、公海でなくて日本の領域で攻撃を受けたという場合には、五条事態になりますから、これは日米共同対処という問題が起こってまいります。
  290. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は前提を申し上げているわけであって、それで論議を進めているわけなんですけれども、そこでアメリカと紛争をしている国から、アメリカの戦略物資を日本の船が運んでいるのはけしからぬじゃないか、そういう場合には撃沈しますよということを再三再四申し渡しが相手の国から日本の国にあったとするわけですね。そうしたときは、組織的、計画的というよりも、向こうからそうしますよと言われた場合においてはこれはただ単に一隻が間違って撃沈されたというわけにはいかないでしょうよ。となりますと、それは組織的、計画的という範疇に入るのですか。
  291. 塩田章

    塩田政府委員 それは、そのときの時点の具体的な判断によるというふうにしか申し上げられないと思います。
  292. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それをもとにして、いま一隻、二隻じゃ外交交渉でやろうというのですけれども、もうどんどんとそういう形で撃沈されたという形が続いたという場合においてはどうなんでしょうか。
  293. 塩田章

    塩田政府委員 ですから、どの程度、どういう事態になるかということによってその具体的な時点で判断をしないと、いまここで何隻ならどうだとか、そういうふうにはとても申し上げられないと思います。
  294. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういう問題もなかなかむずかしい問題が実はあるわけであって、これに対してアメリカも一緒になって日本の国の船籍の船を守り、日本の国も相手に対して攻撃を加えるということになると、まさしく集団自衛権の形になってしまうわけですね。そういうことで非常にむずかしい問題があるわけですが、それはそれで問題提起しておきましょう。  次に御質問申し上げたい問題ですけれども、極東有事において、マスコミの報道によりますと、アメリカのわが国に対する要望は自衛隊基地の日米共同使用あるいは軍需品の輸送手段の提供、輸送船団の自衛隊機による護衛あるいはわが国における武器の調達であるというふうに言われておるわけでありますが、自衛隊基地の共同使用については、安保条約、地位協定の二4(b)で解釈をするようになるのでしょうか。
  295. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これからその点は協議する項目にあるいは入るかと思いますけれども、理論的に申し上げれば、自衛隊の施設を米軍に提供する場合、共同使用ということになれば二4(b)ということでございます。
  296. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 地位協定第二条四項(b)では、その条文の中には、一定の期間に限るというふうになっていますね。有事の場合、一定の期間を限ることはなかなかむずかしいわけでしょう。そうなってくると、解釈上大変に無理な点が出てくるわけでありますけれども、どういう形でアメリカに基地を共同使用させることを認めるようなことになるのでしょうか。
  297. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま御引用になりましたように、(b)は確かに「合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、」こういうことでございます。  では「一定の期間」というのは一体どのぐらいの期間かということでございますが、これもいろいろの場面があるかと思います。したがって、何日であれば一定の期間になる、何日であればだめということはここで断定的には申し上げられないわけでございまして、具体的なケースについて判断するということになるかと思います。
  298. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一定の期間を限るというふうにある以上、一定の期間というものを共同使用する場合においては少なくとも何らか取り交わしをしなければならないわけでしょう。明記しなくてはならないでしょう。明記しないで口だけでいいのでしょうか。
  299. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 地位協定の二4(b)の「一定の期間」というものは何かということにつきましては、先生御承知のように、昭和四十六年二月二十七日衆議院の予算委員会政府がお出ししました統一見解というのがございまして、そこで四つの形というのをお示ししておるわけでございます。すなわち、   年間何日以内というように日数を限定して使用を認めるもの。   日本側と調整の上、そのつど期間を区切って使用を認めるもの。   米軍の専用する施設・区域への出入のつど使用を認めるもの。   その他、右に準じて何らかの形で使用期間が限定されるもの。   右のごとく、使用期間を限定する方法については、当該施設・区域の態様、使用のあり方、日本側の事情等々により必ずしも一定せず、個々の施設・区域ごとに、具体的に定めるしかないが、いずれにせよわがほうの施設を米軍に臨時に使用させるという二4(b)施設・区域の本質のワク内で合理的に定めていく考え方であります。 というふうに述べておりますので、当然いま申し上げました基準に照らしまして米側との間で合意をする、こういうことになろうと思います。
  300. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまの解釈どれを見ても、一定の使用期間というものを限定するということになっているのじゃないですか。となれば、有事の場合に限定のしょうがないだろうと私は申し上げるのです。それに対しては、いわゆるこれからアメリカとその問題についての解釈あるいはまた方法は詰めていくということなんでしょうかね。
  301. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど私御答弁した中に、いわゆる日本有事の際の研究、これは日本とアメリカとの安全保障条約あるいは地位協定、それから日本法令の範囲内ということでございますので、あくまでも地位協定の範囲内ということでございます。したがって、二4(b)で提供する場合どうするかということは、いま条約局長が御答弁したような基準がございます。それに従ってやるということで、それを超えるということは、日本有事の場合の研究の前提条件になっております安保条約、その関連協定との範囲内ということでございますので、そういうことはないと思います。
  302. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これも一つ問題が残ったような感じがいたします。  さて、防衛庁は、有事の立法の研究によって問題点が昨年の中間報告で明らかになったわけでありますが、防衛庁として法制化を考えなくてはならない問題点と、他省庁にまたがる法律事項での解釈と法律になじまない事項の手直しについては研究した、そのように言っておりますが、どう他省庁との調整をしているのか、そのままになっているのか、その点についてはどうなんでしょうか。
  303. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 有事法制の研究につきましては、昨年の四月にいわゆる中間報告をさせていただいたわけでございますが、この中間報告の中身の主な点は、いわゆる私ども検討の種類を三つに分けまして、第一が自衛隊あるいは防衛庁所管の法令、それから第二は防衛庁以外のいわゆる他省庁所管の法令、それから第三の分類としましてはいずれの官庁ともなかなか所管を決めにくい問題についてある。そのうちの第一分類についての報告をしたことは御承知のとおりだと思います。  現在、検討の主力といいますか中心を第二分類、すなわち他省庁の所管の法令についての研究を続けておりますが、何せこの関係法令の数が非常に多うございまして、法律の数にして五十から六十件くらい、検討項目にしますと百件以上を超える、関係省庁も十幾つにわたるというふうなこともございます。  そこで、いま私どもがやっておりますことは、非常事態あるいは有事の事態というようなことがいろいろ規定されているわけでございますけれども、これが主として災害みたいなものを指しているのでございますけれども、その中にいわゆる防衛出動を下令されたような事態も含み得るのかどうか、そういった点について関係各省庁のいま御意見を拝聴している段階でございまして、そういった意見を徴した後、実際に問題になるのはどの点だろうかということを正式に関係各省庁に協議を申し上げよう、こういう段階でございます。
  304. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、いま百件以上の詰めを鋭意やっておられるというわけでありますけれども、この中間報告はもうすでに出たわけでありますが、最終報告は大体いつごろをめどとしてお出しになるおつもりなのか。また、いまあなたがおっしゃっているように、他省庁の法令にかかわる問題についてはそれなりの話をしているというわけですけれども、所管庁が明確でないそういうふうな問題等についてはどういう形で詰めようとされているのですか。
  305. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず、第三分類というか所管省庁のはっきりしていない問題というのは、たとえば国民の避難誘導に関する問題、言いかえますと民間人保護に属するような問題がこの中に含まれると思います。それからさらに、捕虜の取り扱いについてのジュネーブ四条約というものがございますが、そういったものに関連する国内法規をどう決めるかというのはどこの省庁で取り扱ったらいいかというのが非常にむずかしゅうございます。私どもとしては、広く関係省庁を横断的に網羅したような組織があってそういうところで検討していただくのが適当だろうと思いますが、まずそのためにも防衛庁としてある程度の材料というものを提供しなければならないのじゃないか、まず防衛庁の中でどういう形で検討していただいたがいいのか、そういうことも含めていま検討しているということでございます。
  306. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中間報告だけでなしに、最終報告は出されますね。
  307. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いずれ検討結果がまとまりますれば当然報告をさせていただきたと思いますが、何せ先ほど申したように中身が非常に広範多岐にわたるものでございまして、いまこの場でもっていついつまでにということを具体的に申し上げるような状況にないということでございます。
  308. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、三海峡封鎖の問題について少しお聞きいたしましょう。  アメリカの前海軍作戦部長は、六月十六日の上院外交委員会で日本の安全保障問題について証言をし、NATO方面の米ソ戦争は同時に太平洋方面に連動されることになり、そのときに、米国及び日本が直ちに宗谷、津軽、対馬の三海峡を封鎖できるかどうかにかかっているという三海峡封鎖の重要性を証言したというふうにありますけれども、そのことについては間違いございませんか。
  309. 塩田章

    塩田政府委員 その種の証言があったことは承知しております。NATO正面で事態が発生した場合に同時に極東でも発生する可能性があるということ、その場合に御指摘のような三海峡の封鎖といったようなことが重要な意味を持つという意味のことを証言したということは、承知しております。
  310. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海峡封鎖ということになりますと事実上の戦争状態になり、きわめて重大な事態を迎えると思うのです。このハロウェー前海軍作戦部長の証言のように、NATO方面の米ソの戦争発生は、同時に太平洋方面の米ソ戦争になることは必至であるとしているけれども、防衛庁はその点についてはどういうふうなお考えに立っておりましょうか。
  311. 塩田章

    塩田政府委員 この点は、全く千差万別ではないかと思います。
  312. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 「米国の戦略概念の成否は、米国および日本が、ただちに宗谷、津軽、対馬の三海峡を封鎖できるかどうかにかかっている」とありますけれども、アメリカが日本に海峡封鎖を迫ってきたとき、日本としてはどういう対処の仕方があるのでしょうか。
  313. 塩田章

    塩田政府委員 事態がまだ日本は何も攻撃されていないという場合におきましては、日本は海峡封鎖する必要もありませんし、そういう考え方もないわけでございます。したがいまして、いま御指摘のように、日本が何も当事国になっていないという段階でアメリカが一方的に封鎖するというようなことをお尋ねかと思いますけれども、そういう場合に、私どもとしましては、日米の平素の緊密な同盟関係からいきまして一方的にアメリカがするというようなことは考えられない、十分にわが方との相談があるだろうと考えております。いずれにしましても、わが国はもちろんまだ封鎖という段階ではございませんし、アメリカが一方的にするということも実際問題としては考えられないというのが私どもの考え方であります。
  314. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 安保第五条の発動でないので、アメリカからの申し入れに対しては当然断わる、その点はこういうことでいいのですね。
  315. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いまの御質問が、日本が攻撃されていない場合、しかしどこかで事態が起きている場合ということでございますが、いろいろな状況がございます。その場合一つ考えられるのは、安保の六条で極東の平和と安全が脅かされている場合、その場合にアメリカ軍が日本の施設、区域から出ていって機雷を敷設するというケースでございます。これは、それが戦闘作戦行動に該当するかどうかということになれば、事前協議の対象になります。その結果、その際日本政府の判断として、それが戦闘作戦行動に該当して好ましくないということでノーと言うこともあるし、またイエスと言うこともあるということでございます。  なお、この場をかりまして恐縮でございますが、先ほど私二度答弁で「日本有事」と申し上げましたが、「日本以外の有事」でございますので、御了承願います。
  316. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 多発戦争遂行能力を備えておりますソビエトと欧州の戦争が勃発すれば、もちろん極東の軍事情勢も変わってくるわけです。三海峡はソ連にとって潜水艦を初め艦船の重要な通路になるわけでありますが、アメリカから事前協議の対象として、日本の施設、区域から三海峡を封鎖したいという申し出があった場合、日本はノーと言われるのでしょうね。
  317. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど来の御答弁と同じことになるわけでございますが、極東の安全と平和が脅かされているということで米軍が日本の施設、区域を使って行う場合、この場合にはその三海峡封鎖の態様いかんによっては事前協議の対象になるわけでございます。その場合には日本側としてはイエスもありノーもある、こういうのが従来からの日本政府の態度でございます。
  318. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 NATOで戦争が勃発した。このハロウェー前海軍作戦部長は、当然日本の三海峡についてはこれができるかできないかによって重要な意味合いを持つ。ということになりますと、いまのあなたの御答弁で言いますと、そういう事態もしょせんは事前協議にかかった場合にはイエスもありノーもあるのだということになりますね。
  319. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど私、限定的にお答えいたしましたが、極東の平和と安全が脅かされている事態、その事態において日本の施設、区域を使って米軍が戦闘作戦行動に赴く、そのときにはイエスもありノーもあるということでございます。それ以外の場合は、先ほどのお答えと違いまして、この安保条約の対象そのものにはならないわけでございます。
  320. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 極東の安全と平和ということで、もしアメリカの方でこれは極東の平和と安全にやはり関係があるよということになりますと、そうなった場合にはNATOにおきますところのいわゆる戦争というものが結局はこちらの極東における平和と安全ということに結びつけて、三海峡封鎖ということをアメリカの方から言ってきた場合において、それは事前協議の対象となり、しかもそれ自体がノーでもありイエスでもあるのだ、こういうことですね。
  321. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まず、NATOの状況が日本あるいは極東の安全と平和のためにどういうかかわり合いがあるかということでございますが、これは第一義的に、もしそういう事態になった場合には日米間でいろいろな意見の交換が行われるということになるかと思います。先ほど来申し上げておりますのはそうでなくて、実際に日本が火の粉をかぶるような事態、そういうような場合であって、米軍が日本の施設、区域から直接戦闘作戦行動に出るような形態で三海峡を封鎖する、その場合には事前協議の対象になるということを申し上げておるわけでございます。
  322. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、たとえば、わが国の施設、区域を使って直接戦闘作戦行動に出る場合においては当然事前協議にかかるわけでありますけれども、アメリカの第七艦隊から飛び立った航空機が三海峡を封鎖したいということであった場合、それは日本の国の主権の及ぶところであれば当然何らかの協議、随時協議がある、主権の及ばない範囲であるならばそれはアメリカが勝手に封鎖をしてもよい、こういうことなんですか。
  323. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これは必ずしもいま先生のおっしゃったようなことにはならないと思います。公海部分でありましても、わが国は沿岸国でございまして、公海部分に対してアメリカがいまおっしゃったような何らかの行為、行動をとるという場合には、その影響というものは当然沿岸国であるわが国に重大な関係があるわけでございますから、これは一般国際法の問題といたしましても、わが国がそれを自由であるということで受忍しなければいけないという関係にはまいりませんので、当然わが国との協議が必要である。これは安保条約の枠組みの中で申し上げれば四条の随時協議ということになろうと思いますが、安保条約を離れましても、一般国際法の問題として、アメリカが勝手に公海部分でありましてもそういう行動をとるというわけにはまいらないだろうと思います。
  324. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 三海峡封鎖はわが国の自衛権の行使以外にないと櫻内外務大臣が言われましたけれども、自衛権の行使については厳密な条件があります。一つは、わが国に急迫不正の侵害がある、そしてほかに全くこれを防衛するという手段がない場合、防衛をする。それには必要な限度でとめなくてはならないというわけでありますが、そこで防衛出動命令がなされ、安保条約五条が発動された場合においては三海峡封鎖もあり得るわけでありますけれども、防衛出動待機命令以前においては、いかなる形であろうとも三海峡封鎖はないと断言できますか。
  325. 塩田章

    塩田政府委員 まだ武力の行使ができない段階でございますから、武力の行使に当たる行動は一切とれない、こういうことでございます。
  326. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 次は、指針に基づく研究作業の実施はどうなっているかということについてちょっとお聞きをしたいと思います。  防衛庁では、「日米防衛協力のための指針」に基づいて統幕会議と在日米軍司令部との間で共同作戦計画の研究作業を行って、五十六年の夏においては一応の概要がまとまった。わが国に対して武力攻撃が行われた場合の状況を設定して研究を行ったわけでありますが、指針に基づく研究作業は逐次行っているというふうに聞いておりますが、実施状況はどうなっていましょうか。
  327. 塩田章

    塩田政府委員 何度も申し上げますが、昨年の夏に概成をしたというのは、一つのシナリオについての計画が概成をした、こういうことでございまして、その後、引き続きいろいろな違ったシナリオについても研究しなければなりませんし、また、作戦計画以外の準備段階の問題でありますとか指揮調整機関の問題でありますとか、そういった研究テーマはまだ残されておりまして、そういったものについても逐次研究を進めております。  それから同時に、先ほど来話題になっておりますように、ガイドラインに基づく研究のもう一つの部門である第三項に基づく研究につきましても、先ほど来申し上げておりますようにことしの一月から始めておる、こういうことでございます。
  328. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 研究項目としてどういうものが取り上げられているのでしょうか。
  329. 塩田章

    塩田政府委員 恐縮ですが、いま手元に資料を持っておりませんのですが、いま申し上げました作戦計画の研究のほかの項目としまして、後方支援活動あるいは情報活動、それから指揮調整機関、こういったような項目について研究することになっております。そのほかにもう少しあったと思いますが、恐縮ですがいま手元に資料がございませんので、いま主なものとして以上のようなものでございます。
  330. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五三中業の中で、これは五三中業といってもまだ五十五年から五十七年までしか終わっておりませんけれども、人件費と糧食費あるいは正面経費、後方経費というふうに分けてまいりますと、大体どれぐらいで、どういう比率になっておりましょうか。
  331. 塩田章

    塩田政府委員 その前に、先ほど資料がないと申し上げました研究項目でございますが、手元に届きましたので申し上げてみますと、共同作戦計画のほかに、作戦上必要な共通の実施要領、調整機関のあり方、作戦準備の段階区分とその共通の基準、作戦運用上の手続、通信電子活動、情報交換、それから後方支援といったような項目でございます。  それから、いまのお尋ねでございますが、五三中業期間中の人件糧食費、正面経費、後方経費の割合でございますが、五十五年度で申し上げてみますと、人件糧食費が四九・三%、正面経費が一七・五%、後方経費が三三・二%、五十六年度で申し上げますと、人件糧食費が四七・七%、正面経費が一九・一%、後方経費は同じく三三・二%、五十七年度で申し上げますと、人件糧食費が四六・六%、正面経費が一九・七%、後方経費が三三・七%でございます。
  332. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五六中業における防衛費が対GNP比一%以内におさまると仮定をした場合、防衛庁の現在の考え方では正面と人糧、後方の比重というものは、いま御答弁になりました五三中業の言うならば五十五年-五十七年の一つの傾向から見て、どういうふうにお考えになっているのか。正面を重視するのか、それとも後方重視をしていかなければならないのか、その点についてはどうお考えでしょうか。
  333. 塩田章

    塩田政府委員 五六中業作業といいますものは、主要な正面装備費につきまして積み上げ計算をしてある程度めどをつけるということが目標でございまして、いまそれをやっているわけです。したがいまして、それ以外の人件糧食費とかあるいは後方経費といったようなものについてそういったような積み上げをやるわけではございませんので、現在その割合についてどういう考えを持っているかといういまのお尋ねでございますが、そういうことをいま考えているわけではございません。いずれそういった五六中業ができまして正面経費につきまして五年間の大体のめどがつきました場合に、それから後、人件費でありますとか後方経費についてある程度仮定を立てて推計をする、推定をしてみるということは、これはいずれやらなくてはいけないだろうと思っておりますけれども、いまの時点では、五六中業作業としまして正面経費についての折衝をしておる、こういうことでございます。
  334. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 言うならば五六中業の正面主要整備項目について折衝をしているわけでしょうけれども、防衛庁として五六中業に対してどういうふうにこれから――防衛力の整備大綱水準に達するには、いままでの五十五年と五十六年、五十七年の傾向から、このままの推移でよいのか、あるいは、いやそうではなしにもう少し、正面装備の方もそうだけれども後方支援の方には比重を置かなくちゃならぬのか、こういう問題についてはどうお考えでしょうかと聞いているのです。
  335. 塩田章

    塩田政府委員 いま申し上げたような意味で、数字的にどういう傾向になるだろうということを申し上げることはいまのところできませんけれども、物の考え方としてどうだというお尋ねであれば、私ども、こういうような時代になってきまして、正面の装備品が非常に高度になってくるというようなことに対応しまして、それに対応する後方の支援態勢というものの重要性、教育訓練でありますとかあるいは戦術支援でありますとか、いろいろな支援態勢が要りますが、そういったものが正面装備が高度になればなるほどウエートが高まってくるという面がありますので、そういう意味では後方施設関係というものも私どもは重視していかなければいけないだろうというふうに考えております。ただ、それは一般的な考え方でございまして、いま申し上げましたように、数字的に傾向をお答えすることはいまの時点ではいたしかねるわけであります。
  336. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大筋として「防衛計画大綱」達成ということでありますけれども、大綱決定が五十一年十月の時点であるので防衛計画としては時代に即応しないという声も実はあるわけでありますが、防衛計画大綱達成の中で手直しをしなければならない点があるのか。あるとすればどの点なのか。また、数量については明記してあるけれども、中身についてはその都度の検討になっておりますけれども、「防衛計画大綱」の手直しは必要ないと見ているか、その点についてはどうお考えでしょうか。
  337. 塩田章

    塩田政府委員 私どもは現時点で「防衛計画大綱」の手直し、見直しは考えておりません。大綱の線に到達することを目標としていま努力しているわけであります。
  338. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五六中業見積もりの作成も、いわば防衛庁の内部の参考資料という位置づけでは余りにも不明確で、防衛力増強を野放しにするものだという意見も実はあるわけでありまして、何らかの形で国防会議の議題としたいというふうに前々から言っておられるわけでありますが、どういう方式をおとりになるつもりなんでしょうか。
  339. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいま鋭意作業を進めております五六中業、近々国防会議に付議することを予定しておりますけれども、防衛庁が概算要求等の参考として作成する資料であるという中期業務見積もり基本的性格を変更することは考えておりません。国防会議において私、防衛庁長官から報告をし、了承をしていただくという方式が適当ではないかといま考えております。
  340. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、国防会議にかけて閣議に報告をし、閣議の了承を得るという程度にするわけであって、結局閣議決定あるいは閣議了解という形にはならぬということでしょうか。
  341. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおり、国防会議に私から報告をして、国防会議で了承していただくという方式が適当であろうというふうに考えておりますが、閣議にはどうするかにつきましてはまだ決めておりません。
  342. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 こういう問題についてはもうそろそろ考えなくてはならない問題ですね。実際にはまだその程度しかわかっていない。すなわち国防会議にかけるにしても、閣議の了解事項とか閣議決定事項とまでは考えていない、こういうことですね。
  343. 塩田章

    塩田政府委員 いま中業そのものの作業を一生懸命やっておりますが、同時に、いまの御指摘国防会議のかけ方の問題につきましてもおいおい相談をしております。いま大臣からお答えいたしましたような方向で調整中であるということで、御指摘のようにもう余り時間がございませんので、確かに急いで決めたいと思っております。
  344. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 「防衛計画大綱」から五三中業最終年度五十七年の計画に基づく達成を差し引いた数が、五六中業でやらなければならない防衛計画となるわけです。しかし、単純に引いた数だけでよいかといえば、装備の老朽化、リタイアするという問題もあると思いますが、装備の改善等いろいろ計画の中に織り込まなければならない問題があるということは私もよくわかるわけでありますが、陸海空の主要装備の中で、現在の防衛力の現状と大綱水準との比較はどうなっておるでしょうか。リタイアを補うための装備をどのように考えておるか、リタイアを考えなくてはならないのは主要装備の中で何か、そういう具体的な問題を御説明願います。
  345. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘のような観点から申し上げますと、陸上自衛隊の場合は具体的な装備品大綱に上っているわけではありませんので適切な例はないわけでございますが、強いて言えば、ホーク部隊の改良ということを考えていかなければなりません。  御指摘の、リタイアを考えてどうしていくかというのは、むしろ大綱装備品が具体的に上がっております海空の自衛隊の場合でございますが、その場合、海上自衛隊につきましては、たとえば対潜護衛水上艦艇約六十隻という場合に、これを現在、五十七年度でお認めいただいておるものができ上がった時点の隻数とそれから今後リタイアしていくものとの隻数を勘案しまして、五六中業期間にどれだけのものをつくるかということを考えていかなくてはならないわけですが、同時に、先ほど来申し上げましたように、護衛隊群の内容整備ということを考えておりまして、そういったものに見合う内容艦艇にしていきたいというふうなことを考えております。そういうことは、たとえば海上自衛隊の作戦用航空機につきましても、昔のP2VとかP2Jとかというのがだんだんリタイアしていくというのに対しまして、私どもとしてはだんだんP3Cといったようなもので充当していきたいというふうなことを考えております。  航空自衛隊につきましても同様に、戦闘機について言いますと、F15というようなものを、リタイアの機数を勘案して取り入れたいというふうに考えております。
  346. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 高空域の防空用地対空について、この六群のナイキJということなんですが、これについてはパトリオットミサイルとナイキフェニックスという二つの候補があるということなんですが、これについては今後どういうふうにお考えになっていましょうか。
  347. 塩田章

    塩田政府委員 航空自衛隊のナイキ部隊六個群でございますが、この次期後継機を選定する時期に来ておりまして、この点はいま大きな問題点の一つでございます。ただ、いまの時点で私ども、ペイトリオットにするかあるいはナイキフェニックスにするか、まだ決めておりません。五十七年度予算をもちまして、その辺の最終的な検討といいますか、をやりまして、その上で結論を出したいというふうに考えております。
  348. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは、確かに国内の生産がそれに間に合えばいいわけでありますけれども、実際には、ナイキフェニックスの場合においてはこれから開発をしなければならないという状態があるわけですね。開発をするということになると、これから仕事をしたってやはり七、八年の期間はどうしてもかかるわけですね。となると、七、八年たって、そして費用対効果という問題等も考えてまいりますと、実際にはこの五六中業では間に合わないということになりかねないという問題があろうと僕は思うのですが、その点考えていきますとちょっと国内生産というものは直ちに間に合わないという状態も考えられるわけでありますが、どういうふうにお考えでしょうか。
  349. 塩田章

    塩田政府委員 ただいま申し上げましたように、ペイトリオットにするかナイキフェニックスにするかという選択をいずれしなければならないわけでございますが、その場合、両者それぞれいろいろな点につきまして比較検討をしていくということになると思います。その場合に、いま御指摘の、ナイキフェニックスの場合にまだ研究段階であって開発段階にもなっていないということから来る時期の問題、時間的なずれの問題は、ナイキフェニックスに当たっての一つマイナス点といいますか、評価するに当たってのマイナス点であることは間違いないと思います。ただ、そのことだけでもってフェニックスはだめだというふうにいま決められるかどうか、これはまだ今後の検討課題であろうと思っております。
  350. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 航空警戒管制の問題でありますけれども、これについてはレーダー等がすでに入れられるということになっているわけでありますが、随時入れるについては、その場所が非常にいわゆる真空地帯になるおそれが多分にあるわけですね。入れるときに全くそこのところが使えないという状態になる、その問題に対してはどういうふうに対処されようとしているのか。  また、いま現在いわゆるそういうレーダー基地等があるわけでありますけれども、別にレーダー基地を求めてやるのか、あるいは現在のレーダー基地を使用してそこを近代化していくのか、その点についてはどうなんでしょうか。
  351. 塩田章

    塩田政府委員 原則としていまのレーダー基地の地点を使うということで、別な新しい地点を使う考えはいまのところ持っておりませんが、その際に問題は、いま御指摘のように実際に換装のときに時間的な空白時を生ずるかどうか、こういう問題でございまして、それはわれわれとしては一番大きな関心のあるところでございます。  今回、三社から見積もりをとりまして、日本電気をメーンにするということで大体話ができておるわけでございますけれども、その場合の見積もり一つの項目としまして、その点の時間的なロスを最小限にしてくれということを言ってあるわけです。それに基づきまして一つの評価点として評価をしまして、時間的ロスを最低限にするということで考えていきたい。  さらに、それでもゼロになるかどうかということになると問題がありますが、現在例の移動警戒隊も持っておりますから、そういうようなことも使って、とにかく逐次換装しながら、しかも各基地の時間的な空白がないように、そういうことは最大限に配慮してやっていきたいというふうに考えております。
  352. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一番問題なのはやはり後方支援態勢の強化じゃないかと私は思うのです。継戦能力の向上とかあるいは弾薬等についてはどういうふうにやって備蓄をしておくか、あるいは抗堪性の向上とかいろいろあると私は思うのですけれども、その点についてどうお考えになっていましょうか。  まずお聞き申し上げたいのは、継戦能力の向上をどういうふうにされようとしておられるのですか。
  353. 塩田章

    塩田政府委員 継戦能力という観点からいろいろな要素が考えられますけれども、大きくは弾薬、もう一つは予備自衛官の問題、人員の予備の問題であります。  弾薬につきましては、これは大綱にも別に具体的に数字は掲げてございませんので、大綱達成という場合にどれだけの備蓄を考えておくか、これは数字的には大綱そのものの問題でありませんけれども、内容的には私ども非常に重要な問題であるというふうに考えております。これは御承知と思いますけれども、実は弾薬の備蓄が非常に少ないということで、昭和五十三年以来、逐次毎年備蓄をふやすということで予算的な措置をしていただいております。今後、これも引き続き、五六中業期間中も弾薬の備蓄ということは私どもは重点的に考えていきたいというふうに思っております。  それから予備自衛官の問題につきましては、五三中業は陸上自衛隊の予備自衛官については一応四万五千人ということで、毎年千人ずつの増加ということで整備をお願いしておりまして、現在御提案申し上げている自衛隊法の改正でもその点を含んでお願いをしておりますが、五六中業につきましてはまだ人数は決めておりませんけれども、やはり同じような予備自衛官の充実ということで考えていきたい。なお、海上自衛隊、航空自衛隊につきましても、できれば予備自衛官の充実を図っていきたい。航空自衛隊は現在ゼロでございますから、そういった点も含めて考えていきたいというふうに思っております。
  354. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまの弾薬の問題について、かなりこれは秘密的な点があるので細かいことはちょっと聞けないと思いますけれども、五十七年度においての予算から見ますと、陸上自衛隊の弾薬の購入は五十六年度に比べれば何%くらい伸びていますか。それからまた、海上自衛隊の魚雷とか機雷とかミサイル、これは全体でどれくらいの伸びがあるのか。また、航空自衛隊のミサイルはどれくらいの伸びがあるんでしょうか。
  355. 塩田章

    塩田政府委員 大変恐縮でございますが、概数でよろしければ、陸上自衛隊の弾薬は過去何年か金額で二五%増の伸びをお願いしております。概数でございます。それから海上、航空のミサイル等の武器につきましては、これは毎年同じではございませんので、ちょっと概数でも申し上げにくいのですけれども、五十七年度たしか四〇%強の伸びをお願いしておったと思います。
  356. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 航空自衛隊はどうですか。
  357. 塩田章

    塩田政府委員 航空自衛隊のミサイルも、それから海上自衛隊のミサイルあるいは魚雷といったようなものにつきましては、いま申し上げたような数字でございますけれども、正確には資料をもちましてお答えいたしたいと思います。
  358. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これについて五十七年度はそういう形でやったわけでありますけれども、やはり抗堪性の強化という関係から考えますと、さらに伸び率をもう少しとりたいというようなお考えなんでしょうか。やはりそれは、これから同じような形でやっていけばそれで済ませる問題であるというふうにお考えになっていましょうか。
  359. 塩田章

    塩田政府委員 その点は陸と海空は若干違いまして、こうなるかどうかわかりませんけれども、陸の場合は私はいまのペースを落としたくないという気持ちを持っておりますという程度にしか、ちょっといまお答えいたしかねますが、気持ちとしては、いままでのペースでなるべくいきたいという気持ちを持っておるということを申し上げたいと思います。  それから海空につきましては、これはどういうペースでいくかということよりも、目標として何発を整備していくかという問題でございますので、状況によりまして、各年度予算要求の際に全体の整備を見ながら考えていきたいというふうに思っております。  ただ、いずれにしましても、現状が非常に十分でないものですから、かなり高い伸び率でお願いしなければいかぬことになるだろうと思いますが、考え方としましては、どれだけのものを整備していくかという意味で海空の場合は陸とやや違った考え方になろうかと思います。
  360. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ、即応態勢の向上というものもやはり重要な問題点じゃないかと私は思いますが、どういうふうにお考えになっていましょうか。
  361. 塩田章

    塩田政府委員 即応態勢ということも、いまの継戦能力ということと並びまして、あるいは指揮通信能力ということと並びまして、現在の自衛隊の非常に整備すべき問題点であるというふうに私ども考えております。即応態勢につきましてもやはり人員の面と装備の面と両方があろうかと思いますが、まず人員の面で申し上げますと、たとえば陸上自衛隊の人員の充足率といったような点につきまして、現在の充足率、今年度で八六・三三%でございますが、実態的にはことし〇・三三%ふやしていただいたことによりまして旭川にあります第二師団につきましては若干の手当てができると思いますが、全般的に、特に一般の普通科部隊等につきましては必ずしも十分な充足でないというのが現状でございまして、即応態勢という観点からこれは何とか今後とも引き上げるということを努力していきたいというふうに思っております。ただ、まだ具体的に五六中業の中でどういうふうな数字になっていくかということはいま詰めておるところでございます。  人員以外の装備の面で申し上げますと、たとえば海上自衛隊の魚雷、機雷、ミサイルあるいは航空自衛隊のミサイルといったようなものが整備に非常に時間がかかるものですから、即応態勢という観点から、平素からある程度のものはすぐ使える状態で整備をし、一部は護衛艦艦艇に搭載するというようなことも考えておく必要があるということで、魚雷、機雷の調整所あるいは航空自衛隊のミサイルを調整する場所、そういったようなものを逐次整備をしておりますし、御承知と思いますが、一昨年でしたか、航空自衛隊のスクランブルする飛行機にミサイルを搭載することにしましたし、あるいは海上自衛隊艦艇に平素から魚雷を搭載するということにしたのもそういう即応態勢という観点からの一環でございますが、そういった点を逐次今後とも図っていきたいというふうに考えております。
  362. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 即応態勢の中で指揮運用面に対してもやはりこれは重要な問題じゃないかと私は思うのですけれども、いわゆる作戦の調整機関というものはどういう形になるのでしょうか。中央指揮所というものとはまた別に、作戦の調整機関というものが何らか持たれるというふうに判断してよろしゅうございましょうか。
  363. 塩田章

    塩田政府委員 中央指揮所は現在建設中でございまして、できれば五十八年度中には運用開始ということでいま進めておりますが、御指摘のように中央指揮所自体は建物であり施設であるわけです。そこで、指揮運用の態勢自体をどうするかということは、これは中央指揮所の建物の建設自体とは別な話として防衛研究等で研究いたしまして考えていかなければならない問題でございますが、中央指揮所ができますれば実際問題としてすべての情報が一カ所に集まりますし、あそこで防衛庁長官が指揮も一遍にできるわけでございますから、そういう意味で大変に画期的な内容の充実になるだろうというふうに思います。そういったことも踏まえながら指揮のあり方といったようなことも検討してまいりたいと思いますけれども、現状では、いま具体的にどこをどうするということではなくて、いつも御説明申し上げておりますが、統合演習といったようなことも積み重ねながら、その間で今後の陸海空自衛隊の指揮のあり方といったようなことも答えを出していきたいというふうに考えておるわけです。
  364. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり日米作戦調整機関というものは必要になるのじゃないだろうか。日米作戦調整機関ですね。だから、それは確かにアメリカはアメリカの指揮系統、それから日本日本の指揮系統にしても、いわゆる共同対処とかいろいろ煮詰めてきている以上は、いざという場合には日米の作戦調整機関というものは必要じゃないだろうかと私は思うのですけれども、それはどうお考えでしょうか。
  365. 塩田章

    塩田政府委員 その点は、先ほどガイドラインに基づく研究項目の中で指揮調整機関のあり方ということを申し上げまして、日米間で研究することになっております。現に研究を進めておりますけれども、具体的にはまだ余り進んでおりませんで、答えを出すという段階には至っておりません。これも陸海空いろいろな共同演習をやっておりますし、陸も最近は始めたわけでございますが、そういった日米の共同訓練等を通じまして具体的にはどういうふうなものがいいのかというようなことはだんだん積み上げていくということになろうと思いますが、日米ガイドラインに基づく研究テーマの一つとして取り上げている、こういうことでございます。
  366. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間にもなってまいりましたので最後の質問に入りますけれども、五六中業という一つの見直しの作業が入りまして、それから、それに関連して五十八年度予算の概算要求、それから予算決定というような、十二月までにはこれから幾つもの作業を手順を踏みながら進めていかなければならない問題があるわけでありますね、国防会議にかけるとか。これを整理しますと、五六中業とかあるいは五十八年度予算の概算の問題とかという一つの手順といいますか、日程的にいいましてこれからどういうふうなことが考えられ、どういうふうに決められていくのか。たとえば五十八年度の事業計画等もつくらなくちゃならないわけでしょうし、そういうものは全体的にどういうふうな一つの流れになるのでしょうか。
  367. 塩田章

    塩田政府委員 一番早いのはシーリングでございます。これは間もなくということだろうと思います。続きまして、先ほど来申し上げておる五六中業の最終段階に入ると思いますし、同時に防衛庁作業としましては、いまお話しになった五十八年度業務計画というものを、これは例年の例でいきまして大体七月中にはつくる、八月の初めにかかるかもしれませんが。それと同時に八月の下旬の概算要求ということになろうかと思います。ことしの場合、その間に、これは別なことでございますけれども、八月の終わりにはハワイの協議もあるだろうということも考えられます。あとは年末の例年の予算要求ということになっていくのではなかろうかというふうに考えます。
  368. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、五六中業国防会議にかけるのは七月の中旬か下旬なんでしょうか。
  369. 塩田章

    塩田政府委員 私ども、そういうめどでございます。
  370. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大変長い間質疑をしてまいりましたけれども、結論から申し上げますと、国際情勢とかシーレーン防衛とか有事法制とか、あるいは三海峡封鎖とか五六中業とか「防衛計画大綱」、GNP一%等々の問題を取り上げてまいりましたけれども、政府の考えているという防衛政策というものは、むしろかなり軍事的な色彩をたどっているように私は感じます。軍事的な面だけを強調するということは、これはフォークランド紛争とかあるいは中東紛争を見ても、平和的な解決が非常に遠くなっているという結果になっておりますし、戦争をしますと大変に多くのとうとい人命を奪い合うという悲惨な状況は、ごらんのとおり証明されております。わが国としては、平和憲法の精神にのっとって平和的な手段による解決を目指すためにも、総合安全保障という観点に立っていかなければならないということを私どもとしては申し添えまして、質問を終わります。
  371. 石井一

    石井委員長 次回は、来る十三日火曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四分散会