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1982-09-21 第96回国会 衆議院 決算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年九月二十一日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 東家 嘉幸君 理事 中川 秀直君    理事 中村 弘海君 理事 井上 一成君    理事 新村 勝雄君 理事 春田 重昭君    理事 中野 寛成君       近岡理一郎君    井上 普方君       高田 富之君    和田 一仁君       三浦  久君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         郵 政 大 臣 箕輪  登君  委員外出席者         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務大臣官房審         議官      加藤 淳平君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務大臣官房審         議官      小宅 庸夫君         外務大臣官房外         務参事官    英  正道君         外務大臣官房会         計課長     斉藤 邦彦君         外務大臣官房領         事移住部長   藤本 芳男君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         大蔵省理財局次         長       勝川 欣哉君         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     藤村 和男君         厚生省援護局庶         務課長     加藤 栄一君         会計検査院事務         総局第一局長  佐藤 雅信君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 八月二十日  辞任         補欠選任   三浦  久君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   金子 満広君     三浦  久君 九月二十一日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     井上 普方君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     石橋 政嗣君     ————————————— 八月二十日 一、昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算   昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算   昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算   書   昭和五十四年度政府関係機関決算書 二、昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計   算書 三、昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算   書 四、昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算   昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算   昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算   書   昭和五十五年度政府関係機関決算書 五、昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計   算書 六、昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算   書 七、会計検査院法の一部を改正する法律案新村   勝雄君外四名提出、第九十三回国会衆法第一   二号) 八、歳入歳出の実況に関する件 九、国有財産増減及び現況に関する件 一〇、政府関係機関経理に関する件 一一、国が資本金を出資している法人の会計に関    する件 一二、国又は公社が直接又は間接に補助金、奨励    金、助成金等を交付し又は貸付金損失補    償等の財政援助を与えているものの会計に    関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十四年度政府関係機関決算書  昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書  (外務省所管)      ————◇—————
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、外務省所管について審査を行います。  まず、外務大臣から概要説明を求めます。櫻内外務大臣
  3. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 昭和五十四年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は二千八百五十四億四千二百七十万円余でありまして、支出済み歳出額は二千五百五十二億四千九百六十二万円余、翌年度繰越額は二百七十一億五千五百三十八万円余、不用額は三十億三千七百六十八万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額二千五百七十億九千五百七十五万円、前年度繰越額百九十七億七千二百七十七万円余、予備費使用額八十五億七千四百十七万円余でありまして、前年度から繰り越したものの内訳は、経済開発等援助費百八十三億二千百二十万円余、在外公館施設費十四億五千百五十七万円余であります。  支出済み歳出額の主なものは、エネルギー対策のため国際原子力機関に対し同機関の憲章に基づく分担金及び拠出金として十六億九百四十三万円余、並びに各種国際機関に対する分担金等として四十四億九千六百六十三万円余。  次に、経済協力の一環として、青年海外協力隊派遣開発調査センター協力機材供与保健医療協力農林業協力開発技術協力開発協力専門家養成確保等の事業、アジア諸国等開発途上国に対する経済開発援助及び国連開発計画等の多数国間経済技術協力のための拠出等に要した経費一千六百七十六億九千五百九万円余であります。  次に、翌年度繰越額について申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定による明許繰り越しのものは二百七十一億五千五百三十八万円余でありまして、その内訳経済開発等援助費二百六十九億三千六百二十七万円余、在外公館施設費二億一千九百十万円余であります。  不用額の主なものは、外務本省の項で退職手当を要することが少なかったこと、経済協力費の項で経済開発等援助費を要することが少なかったこと、在外公館の項では、職員諸手当を要することが少なかったこと等のためであります。  以上でございます。
  4. 永田亮一

  5. 佐藤雅信

    佐藤会計検査院説明員 昭和五十四年度外務省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。  これは、契約電力電力使用実績に比べ著しく過大となっているのに、契約電力変更の処置をとらなかったため、電気料金が不経済に支払われていたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  6. 永田亮一

    永田委員長 これにて説明の聴取を終わります。
  7. 永田亮一

    永田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  8. 井上一成

    井上(一)委員 国益を考えるときに、外交問題の処理ということは大変重要であると私は思います。一つ間違えば国際的に孤立化をしてしまう、あるいは紛争、戦争への中に立たされてしまう、そういうことから考えますと、外務省仕事というものは非常に大切なことであるし、また重要なことだと思います。  国際関係が複雑になればなるほどそのことは言えると思うわけでありますが、内面、他省庁との関係がより深く必要となるわけです。国内的な視野で見るか、国際的な視野で見るか、いずれの視野で見るかによっておのおのの意見も異なろうと思います。そんな折に、外務省はどのようにそれを調整し、バランスをとって、外交問題をどういう方法で処理していこうとしているのか、あるいはしてきたのか、その点についてまずは伺っておきます。
  9. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 井上委員がおっしゃるまでもなく、外交重要性、また内政との調整をいかにしていくかという面、これらのことは、その衝にある私としては常に念頭に置いて行わなければならないことであると思います。  わが国は世界の平和と安定に積極的に貢献する、そのことを通じまして、みずからの平和と安全を守り、また豊かな国民生活を確保していくということをその基本方針としておるわけでございまして、その基本方針の中で、ただいまおっしゃったような、調整の必要のあることは調整をとりながら、外交の成果が内政面にも十分反映して、国民のために寄与できるよう専心をしておる次第でございます。
  10. 井上一成

    井上(一)委員 外務省というのは、やはり国際的な視野に立って物事をとらえていく、そのことをいかに調整し、バランスよく処理していくかということが大事である。しかしながら、いまいろいろな問題を抱える中で、どうしてもそういうことがしっかりと見出すことができないと思うのです。いわば高度な専門的な知識あるいは専門的なものが要求されているのに、他省庁通産なら通産文部省なら文部省の壁というものは非常当局くなってくる。むしろ専門的に、教科書問題であれば教科書問題として、文部省の方がより高度な専門的な分野での知識あるいはスタッフを抱えているわけですから、そういう意味で、どうもそちらに、他省庁に引っ張られているような感がするわけであります。  そういうことであってはよろしくない。やはり外の動向、第三国の動向をしっかりと正しく把握しながら、そして正しい判断、正しい処理を必要とするのではないだろうか、私はそういうふうに考えるわけです。そうでないと、外務省仕事というのは領事部門だとか、あるいは条約の制定だとか、儀典だとか、そんなことになってしまうのではないだろうか、そういう点でもう一度外務省見解を問うておきます。
  11. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 井上委員のおっしゃるように、外交案件処理する上におきまして、国際的視野に立って物事をよく判断をする、これはきわめて重要なことでございます。しこうしてただいまおっしゃいましたように、通産あるいは文部の専門的な見解というもので大変壁が高くなるのではないか、そういう御指摘があったわけでありますが、そういうおそれを私は否定をいたしません。しかし、それらの壁を、円満に、国際的に処理する上におきましては、ただいま仰せのような大きな視野、見地の上で考えていく、こういうことによりましてスムーズに物事を打開していきたい、このような考え方で物事処理に当たっております。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 外務省がしっかりしなければいけない、こういうことを私は特に指摘をしておきます。  それでは、私は具体的な問題に入って尋ねたいと思うのです。  実は、七月二十三日付の内閣答弁書で、教科書問題について沖繩出身喜屋武参議院議員さんへの答弁書が出ているわけなんです。ここに、教科書検定に関する質問に対して、「教科書検定においては、その記述が、客観的かつ公正なものとなり、かつ、適切な教育的配慮が施されたものとなるよう求めているところであり、このことによって我が国と他国との友好関係が損なわれることはないと考えている。」と答弁しているわけです。外務省はこんな見通しだったのですか。
  13. 藤井宏昭

    藤井説明員 お答えいたします。  この答弁書が出ました五十七年七月二十三日の時点におきまして、他国との関係が円満におさまるようにということで、その願望をここで述べているというふうに了解いたします。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 何を言っているのですか。私は、そんな願望だとかでなく、こういう認識だったのかというんです、外務省は。こんな認識だったのですか。
  15. 藤井宏昭

    藤井説明員 本年の七月二十六日に中国から最初の正式の申し入れがあったわけでございますが、この問題が新聞で取り上げられましたのは六月二十六日ごろからでございます。この時点におきまして、他国の世論あるいは特に政府からの意見というものはまだ出ていなかったわけでございます。ただ、外務省といたしましては、この教科書の問題というものがどういう問題であるのかということを内々関係省庁等とこの時点では議論をしておったということでございます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 外務省はこれは相談にあずかったの。大臣教科書問題一つをとらえても非常に他省庁とのそういう調整あるいは他省庁の壁が高い。恐らくこれは外務省は事前に十分な相談にあずかっていなかったのではないだろうかと私は思う。こんな答弁は間違いだ、そう思いませんか。
  17. 藤井宏昭

    藤井説明員 外務省のこの時点での認識についてお尋ねでございますので、ただいま申し上げましたとおり、この教科書の問題、これがアジア諸国等にどういう影響を及ぼすのであろうかということで、六月の末に日本新聞で取り上げられましてから、外務省といたしましては関係の省と内内にいろいろ相談をしていた時期でございます。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 こんなに大きな問題になるとは外務省は思っていなかったんじゃないの。どうなんですか。
  19. 藤井宏昭

    藤井説明員 この時点におきまして、先ほど申し上げましたように諸外国からの非難等は表面化しておりません。外務省といたしましては、この問題が潜在的に重大な問題になり得るということはございまして、しかし、この問題について十分な知識も有しておりませんので、その点についてどういうことであるのかということを内々検討しておったのがこの時点でございます。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、いま初めてお読みになったかもわかりませんけれども、文部省がこんな大きい問題になろうとは思わないという認識であれば、まあまあ国内的な視野ではそうかもわからない。しかし、外務省は、やっぱりこの時点で、これは大きな問題になる、これは大変なことになり、かつまた、近隣友好国に対する及ぼす影響というものが大きいのだという認識を持たなければいけないし、そういう意味では、本当にしっかりしているのでしょうか、そういうことを指摘したいのです。大臣からひとつ見解を承っておきましよう。
  21. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 正直申し上げまして、この喜屋武さんの質問主意書につきましてはよく当時相談を受けたのかどうか記憶が十分でないのでありますが、ただいま拝見してみますと、沖繩関係などを中心に、また、最後の段階で朝鮮半島や中国大陸に関する記述について触れられておるわけでございまして、外務省がこの答弁書について十分な連絡の上にこういう答弁書がつくられたかどうか、もちろん連絡はあったものと思いますが、この答弁書を拝見いたしますと教科書検定ということを中心答弁書ができておりますので、その時点では外交上の配慮というものは率直に申し上げて不十分な点があったのではないか。検定に関する問題としての政府答弁書、こういうことになっておると思います。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 私は、冒頭に申し上げたように外交というのは非常に大事だ、そういうことから具体的例としてこの問題を一つ指摘をしたわけです。さっきの答弁は苦しい答弁をあなたはしている。大臣は素直にいま答弁された。外務省は、相談というか、ただちらっと聞いたぐらいなら別ですけれども、実質的な相談にはあずかってないのであろうと、むしろ外務省側に立って私はそう思います。  さて、教科書問題については一応の外交決着がついた。しかし、日本人がした行為というものは、中国人に対しても韓国の人々に対しても、それぞれの国の人の心には残っているわけなんです。古い話ですけれども、元総理である佐藤総理が、沖繩が返還されなければ日本の戦後は終わらないと言ったわけです。沖繩が返還された今日、日本人はもはや戦後ではない、そういうふうに思っています。しかし、アジア同胞として考えた場合はいろいろな問題がまだ残っているわけなんですね。教科書だけではありません。こういう問題だけではありませんけれども、そういう意味ではアジア同胞として考えるならば戦後はまだ終わっていないのではないか、こういう認識になるわけです。教科書問題が一件落着した、これでおしまいなんだ、こういう受けとめ方をするのか、むしろ、これは一つの警告であった、このように受けとめて深い反省の認識に立つのか、これは大臣からお答えをいただきましょう。
  23. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 過去における不幸な戦争の問題がこの時点できれいさっぱりになった、そういうような見解に立つことは、これは恐らく何人もできないであろうと思います。したがいまして、中国関係を考えますならば、この日中共同声明の中でわれわれが表明しました「過去において日本国戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」これはある時点が来たら解消するものだ、こういうことには私はならない、常にこのことは念頭に置いておかなければならないと思います。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、近い日に鈴木総理中国を訪ねられます。当然、教科書問題についても何らか総理としての発言があろうと思います。中国側もそれに注目をいたしております。そこで外務省として、訪中をされる総理に対してどのようなレクチュアをされたのか。ただ、いままでの政府見解を繰り返すにとどまるのか、さらに一歩踏み込んだ姿勢を表明するのか、どちらなんでしょうか。
  25. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 両国の間で鈴木首相首脳会談をする際にどういうことを議題にするかということにつきましては、まだ明確になっておりません。しかし、鈴木首相心構えといたしましては、ただいま私が御説明を申し上げた日中共同声明前文というものは、常に首相としての、また日本としての心構えとして念頭に置いて、協議話し合いをすべきものと思います。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 すでにもう外務省としては中国側のいろいろな情報を収集されておりますし、実情も大使館を通して掌握されております。このことについて総理に何を進言されましたか。どういう見解外務省進言されましたか。
  27. 藤井宏昭

    藤井説明員 お答えいたします。  訪中に当たりましての総理との御協議と申しますかは、いまだ進行中でございまして、本日から本格的な話し合いに入るということでございます。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 本日からということで——私は限られた時間だから、私の質問に対して的確に答えてくださいね。だから、いままでの見解をただ表明していいんだ、いやそうじゃない、総理中国に訪ねたときにはもう一歩踏み込んだ見解、そこまで踏み込むべきだ、外務省としてはどっちの見解を持っているのですか。
  29. 藤井宏昭

    藤井説明員 ただいまも申し上げましたように、総理外務省のこれからの打ち合わせは、これから行われるわけでございますので、現段階でどういう見解であるかということを厳密に申し上げるわけにはまいりませんけれども、ただいま大臣も申し上げましたように、日中共同声明前文見解というものはいささかも変わらないということが基本的な姿勢であろうかと思います。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 ばかを言いなさいというんだよ。日中共同声明前文見解は変わらぬという、これはいままで言ってきたことだ。あるいは後世の史家の判断にまつ。こんなばかな答弁をしているわけだ、国会でも、ここでも、官房長官が私の質問に対して。内閣官房のサイドだけで鈴木訪中に対して総理へのレクチュアをしておったらだめですよ。外務省もっとしっかりしなさいよ。外務省外務省としての国際的な視野に立った国際的なフィルターにかけて総理に対するレクチュアをしなければだめだ。外交問題はもっともっと外務省中心になってやらないかぬよ、こういうことを言っているわけです。  一歩踏み込みますか。踏み込んで、それ以上の踏み込んだ中身まで私はいま具体的に問おうとしてないわけです。姿勢として踏み込むべきだ。それだけではどうも外交処理としては十分でない、中国との友好はいままでの見解だけではだめだ、一歩踏み込む、その姿勢を何らかあらわしてほしいと外務省は思っているでしょう、こういうことなんです。大臣、いかがですか。
  31. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外務省としては、ただいまの御質問の御趣旨が教科書問題に関連しての御質問、こう踏まえますならば、この教科書問題が起きて以来の中国動き、批判、そういうものを総理に正しく伝え、それからその後、官房長官の談話後にとられた経緯を踏まえながら、総理の正しい判断を仰ぐよう、外務省として承知しておることをよく御説明を申し上げる、こういうことが第一義的であると私は思うのであります。  ただ、その次に、仮に私に対して外務大臣はどう考えるか、こうなりますれば、その御質問に応じて私の所見を述べ、最終的には総理の御判断によって、そして教科書問題はこんなふうに対処していくとか、あるいはこの日中国交回復十年を節目としての今後の両国外交関係をどう展開していくかとか、また現に中国がとりつつある近代化路線に対して日本側としての用意、どのような協力をしていくかとか、そういうことについて総理中心の御判断、また必要に応じて私が総理に対して意見を述べる。外務省としてはそういう関連の資料なり正しい動きというものを提供することが一番適切ではないか、こう思います。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 だから教科書問題に限っては、外務大臣は、いままでの見解よりさらに一歩踏み込んだ姿勢を打ち出すべきであるという、まあ私もそう思っているのだけれども、総理からの何か質問なり相談があれば、そういう見解を助言するというふうに理解していいわけですね。
  33. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大変甘い考えを持ってはいけないのでありますが、御承知のように、報道機関を通じますれば外交上は決着、そして今後日本検定制度というものがどんなふうに動いていくか、それは内政の問題として先方も承知をしておることで、これが中国側の十分な理解が得られるようなそういう動きであるべきであると私は思うのであります。しかし、いままでのいろいろな動きから検定委員の方々もいろいろ判断をする上に恐らく間違いのない判断をされるものと思うのでありますが、そういうことでありますから、いま外務大臣がこの検定制度についてどうこうと言うこと、そういうことではいけないのじゃないかと私は思うのであります。ただ、政治的、外交的な判断の上から言えば、それは腹蔵のない意見交換の上で総理判断をすべきものである、私が意見を求められれば、また同じような立場判断をしたい、こう思うのです。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣検定問題について私はあなたに聞いてないわけなんです。総理訪中するについて教科書問題の話が出るわけなんです。それはいままでの見解オウム返しにそのまま発言をしてそれで事が終える、それでいいのだというようにはあなたは考えてないでしょう、こういうことを言っているのです。イエスかノーか。いや、考えているなら考えているでいいのですよ。考えてないでしょうと私は言うのです、少なくともあなたは。ただ、総理からあなたにそういう相談があるかないかは別ですが、そういうことなんです。それを聞いているわけなんです。
  35. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それは言うまでもなく、われわれとしての政治判断あるいは外交上のことを踏まえての判断に立っての応答、そういうことは当然考えられる、また私がそういう場面に立てばそのような立場応答をしたい、こう思います。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 私は総理外務大臣から、あなたのそういう一歩踏み込んだ見解中国へ示すべきだということは、むしろ積極的に外務省として、大臣として進言をすべきだ、こういうふうに思うのです。これはどうですか。あなたの方から進言をする、総理から尋ねられる前に外務省として。当然それは外務省役割りでしょう。外務大臣いかがですか。
  37. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御承知のように、私は今回首脳の交流に際し随行を命ぜられておりますので、その際の私の心構えの一端としては、井上委員のおっしゃるそういう場面も当然考えられると思います。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 これから外務省側に、私の質問に対してできるだけ的確に答えてください。遠い背景なり説明は、私が要求しない限り必要としません。  外務大臣は、さらに近いうちに国連総会に出席をされるわけです。いろいろな方と会われると思いますが、韓国の李外相と会見する予定を持っていますか。
  39. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在、両国関係ではそういう交渉はございません。ただ私は、国連総会の場は、本会議場に入って顔が合ってそっぽを向く、そういうようなことはないのでありますから、そういうときにはあうんの呼吸で食事でもしようとかちょっと話したいなとか、そういう場面はあり得ると思います。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、私は当初から外交というのは非常に大事だ。外交ということは、きっちりと向こうの予定も聞き、あるいは向こうの段取りも聞きながらこちらの予定を合わして、ちゃんと前もって設定をして、そこでどんな話をしようか、そういうことが本当は外交日程なんですけれども、いま言われるように、廊下でばったり会って、やあこんにちはと、顔を背けるなんというようなことはあり得ないことだし、これはただ出会いだけであって会見にはならないわけです。では、あなたは会いたいと思うのか、会いたくないと思うのか。
  41. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御承知のように、韓国の国内におきまして、外交教科書問題決着をしたといいながらもなかなか厳しい情勢もある折からでございまして、お尋ねの点にはっきり割り切って言い得ることもなかなかむずかしいと私は思うのです。この辺をどうぞ御理解をいただきまして、先ほどのすっきりしないようなお答えをしておりますが、私としては柔軟な姿勢で臨みたい、こう思っております。
  42. 井上一成

    井上(一)委員 教科書中心ですけれども、両国にかかわるいろいろな問題があるわけなんですね。だからこういう時期に会いたくない、あるいは会うことがどうだ。むしろどんどんと会ってわが国の外交を展開していくべきだ、私はこう思うのですよ。大臣、いかがですか。むしろ積極的に会うべきである。
  43. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そういう考えもないわけではありませんが、本当にいま非常にデリケートなものがございまして、そういうことを言うことがいいのかどうかというようなことも私の判断の中にあるものですから、そこで弾力的な姿勢で臨みたい、こういうことをお答えしておるわけであります。
  44. 井上一成

    井上(一)委員 そこで、私は問題を一つ提起しておきましょう。  今回の教科書問題については、わが国の反省の立場というんでしょうか、誤った対応に対して適当な表現をもってあなたは処理されるでしょう。しかし、わが国の教科書における誤った記述については率直に謝るべきである。ただ問題は、対韓経済協力の話、このことはもし会ってもどうしてもやってはいけない。なぜならば、教科書問題外交決着した、そういう折に、こんなときに経済協力の問題を取り出して交渉に入る、あるいはそれが解決する、そういうことになると、教科書問題もすべて金をもって解決したのではないか、こういう、両国国民はもとより広く世界のすべての国に対して、日本外交のあり方というものが問われる。そういう意味では、会っても経済協力の問題については一切触れない、あるいはいまこの問題を取り上げない、やってはいけないのだということを私は外務大臣に申し上げるわけです。  外務大臣、私と同じような見解に立つでしょうか。それとも、いやいや、長い懸案で一年以上になるんだ、だからもうこの折にというお考えをひょっとしたら大臣持っていらっしゃるかもわからぬので、ここはちょっと確認をしておきたい。いまの時期にこの問題はやってはいけませんよ。わかりましたか。大臣、どちらなんですか。
  45. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 経協問題は問題で一連の交渉の経緯、流れがある問題でございます。そこにこの教科書問題もございまして、いま御質問のようなそういう見解をおとりになる方もございます。しかし、経協問題がある程度煮詰まってきておったことも事実なんでございます。したがって、先ほどから申し上げるように、両国の間がなかなかデリケートなことでございまして、そこで柔軟な姿勢ということを申し上げたわけで、この御質問の御趣旨のことも私はまた一方において懸念をしておることも事実であります。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 あなたとしては積み上げてきたいろいろな問題だから処理もしたいという気持ちも半面はある。しかし、時期が時期だけに、これはいろいろなわが国外交認識を第三国あるいは当事者国、日本国民にも韓国の国民にも誤って映すおそれがある。私はどうしてもいまやっちゃいけないというのはそういうことを申し上げているので、そういう点については大臣、私の見解も十分理解できますね。
  47. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 非常にむずかしいことは、おっしゃることは確かに私もよくわかるのであります。ただ、一方におきまして、日本が財政上非常な困難な場面に立っておるように、まあこれも韓国がどのような状況かよく聞き、よくただしてみなければならないことでございますが、非常な困難な問題を抱えておるということを考えると、ここで教科書問題があって、それとの関連でまずい、こう言い切り得るかどうかということもむずかしい問題が若干あることを申し上げておきたいと思います。
  48. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、当事者間ですら非常に微妙な時期だから、この問題についてはいろいろな見方がある。さらに日本、韓国以外の国々はこの問題をどうとらえるか、認識するか、このこともやはり考えなければいけないわけですね、外交ですから。そういう意味で私は、どうしても経済協力の問題をいまの時期にやっちゃいけないということをここでくどいほど申し上げるわけなんです。そういう理解に立ちますが、いまの流れの中ではそういう位置づけに置いていいでしょう、外務大臣。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕
  49. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外交面では、事前にいろいろと制約を受けるということになると相手との話もまたそれなりにむずかしくなってくるのでありまして、おっしゃることは、先ほどから申し上げるように確かにそういう見方もある、そのような見解を私もとっておるわけでありますが、といって、あなたからだめ押しをされて、そのとおりですというわけにもちょっといかないところがございます。
  50. 井上一成

    井上(一)委員 私の見解と同じように、外務大臣としてもそう理解している。その線に沿って、私はむしろ積極的外交を進める中で教科書問題について忌憚のないわが国の真意を十分伝えるべきである、そういうふうに思います。  次に、一九七七年の八月に当時の総理である福田さんがマニラに行って、わが国は軍事大国への道は進まない、そういう決意をいたしました。鈴木総理もことしの六月の第二回国連軍縮特別総会で一般討論演説をされて、「軍事大国にならないことを決意し、」と述べられたわけです。  そこで私はお伺いしたいのですが、軍事大国への道を選ばないとか、軍事大国にならないということはどういうことを指すのか、外務大臣にお聞きをします。
  51. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本は戦後一貫して、国際紛争について戦争手段に訴えるというようなことはしない、いわゆる戦争放棄という立場にあるわけでございます。日本が自衛隊を持つにしてもそれは専守防衛である、こういうことを申し上げてきておるわけでありますから、そのことが第三国から見てなるほどそうだという限りにおいては軍事大国ということにはならぬ、私はこう思うのです。
  52. 井上一成

    井上(一)委員 いま大臣は期せずして第三国がそういう判断をする、これも私は一つの基準だと思います。それじゃ国内的にというか、第三国が判断のできるような判断基準は何なのですか。
  53. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 その基準は明白であると思います。  第一は、憲法にのっとる、こういうことでございます。また、専守防衛についてどのような自衛をしていくかということは防衛大綱で示しておるわけでございまして、あくまでも日本が憲法を踏まえ、また国会などでお約束をしておる非核三原則にのっとり専守防衛に徹していく、このことによって達成できるものと思います。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  54. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ「防衛計画の大綱」が達成されるまでは軍事大国でない。逆に言いかえたら、防衛計画大綱以上の軍事力を持つということは軍事大国になるということですね。
  55. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この防衛大綱は、日本の置かれておる国際環境、情勢その他を踏まえていま防衛大綱があり、そしていま五六中業という作業をしておる、こういうことでございますが、その防衛大綱の前提は専守防衛、こういうことになります。しかし、防衛大綱が達成された後、それじゃそれ以上になれば軍事大国か、こういうことになっていきますと、そのときの国際情勢、環境等を考えて専守防衛にこれで十分であるかどうか、こういうことを考えていかなければならないという問題は残ると思います。
  56. 井上一成

    井上(一)委員 あなた、何を言っているのですか。判断基準を決めたら第三国の人々が判断をする、それはそうでしょう。そして憲法を持ち出される、そして防衛大綱の問題が出る。いまは防衛大綱の基準内であれば軍事大国でないという一つ認識だ。それじゃそれを超えれば軍事大国なのか、そのことを聞いているのです。それじゃ国際情勢が云々で変えれば、憲法を変えれば軍事大国にはならないのですか。どうなんですか。
  57. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 憲法はどうということには私はいかないと思うのですね。これは常識的に判断すべきものである。周囲の軍備状況というものに日本の防衛が十分それでいいのかどうか、これが防衛大綱達成後において、あなたは大綱を達成したらそれ以上のものはもう軍事大国の方へ入るのかと言うから、それはそうでなく、やはりそのときに国際情勢を考えなければならない、日本の国際環境を考えなければならない。しかし、それはもう一つ理屈っぽくなりますけれども、現在サミットでも低いレベルで均衡をとろうという東西間の動きもあり、あるいは削減交渉も行われておる、こういうようなことからいって、あるいは防衛大綱ではもう行き過ぎだというようなことも想定ができないわけじゃないと思うのですね。だから、どうぞ私の申し上げた大綱後はどうかということを考えます場合には、やはりそのときの国際状況、環境というものを考えて判断するということでよろしくお願いいたします。
  58. 井上一成

    井上(一)委員 それはよろしくお願いしますと言ったって、どだい無理なんですよ。大臣、軍事大国であるかないかというのはやはり第三国が判断をするわけなんですよ。さらに、軍事大国でありません、それはなぜなのか、これだけの軍事力しかありませんとか、あるいはこれだけの装備しかありませんとか、これだけのという一つ判断の基準を世界の各国に示す、説明ができる、そういうことでないといけない。  だから、自分勝手に、何ぼ軍事大国でありませんと言ったって、第三国は、軍事大国だ、ASEAN諸国のそれぞれの国々は、いまの日本の軍事力、軍備拡大に懸念を表明しているじゃありませんか。外務大臣外交フィルターの中を通したいまの日本の軍拡路線というものは、ASEANの友好国からも恐れられているのですよ。外務省が十分な分析をし認識を持たないということは私はおかしいと思う。  それでは、あなたはわが国が軍事大国でありませんということをどう説明するのか、お聞きしましょう。現在の国際情勢の中で、いまの計画の大綱の範囲内であれば軍事大国になりません、そして、そのためにその範囲内でとどめますとか、そういう説明がない限り、世界の国々はわが国を軍事大国でないと判断はでき得ないと思うのです。大臣、いかがですか、どう説明するのですか。
  59. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはすでに御説明申し上げましたとおり、日本は専守防衛に徹しておる、憲法がございます、非核三原則を遵守しております、そしてこの防衛大綱でやっていきます、それでもういいんですよ。ただ、御質問があって大綱後はどうかということから、そこで、そのときにはそのときの状況を見なければなかなか判断がしにくいことを申し上げておるので、それは、もう一つ申し上げたように、低いレベルの均衡から言えばあるいはもう大綱もどうかなということにもなる、そういう可能性もあるのじゃないかと私は思うのです。まあ、いまの時点ではおっしゃるとおりなんです。
  60. 井上一成

    井上(一)委員 相手国がどう思うかということをやはり十分認識、そういうことを一つ判断基準に入れなければいけないわけで、いま大臣は、憲法があるから憲法の枠の中では軍事大国になれないんだ、こういうふうに、意識の問題というのですか、意思の問題。専守防衛だ。それじゃ、いま憲法を改正しよう、そういう動きはむしろ軍事大国化の方向であるという理解をしていいですね。
  61. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 憲法改正のお話になってきますと、これは憲法をどこを改正しようとしておるのか、こういうことから判断をしなければならない。ただ、皆さんのと申し上げて、失礼ではないかと思うのですが、皆さんのお立場で、いわゆる憲法改悪というものが九条を中心に何か企図しておるのかというようなことになってくると、それはそれで問題があると思いますが、憲法改正についてはいろんな論議があるのでございますから、いわゆる改悪の方向でない考え方というものもあるということを念頭に置いておきたい、こう思います。
  62. 井上一成

    井上(一)委員 憲法論議については、私はまた場所を変えますが、やはり、周りの人たちがわが国を見て軍事大国でないという判断、判定をしてもらわなければいけない。憲法があるから、ないから、そのことの論議よりも、むしろ他の国の人人がわが国をどういう位置づけにするか、こういうことがやはり大事だと思うのです。いまの日本の持っている軍事力で何ぼあなた方が軍事大国でないと言っても、アジアの諸国が客観的に日本は軍事大国になっていると判断すれば、それは軍事大国ではないか、こういうことです。  そういう意味でも、軍事大国にならないことがむしろ大切であり、そのことがASEAN諸国友好関係を深めることになり、外務省は——平和外交というものはそういうものだと思うのですよ。口で平和外交だとか平和憲法だとか言ったって、これは言うだけのことだ。そういうことを相手に十分認識してもらえる、そういう外交外務省は展開していかなければいけない、それが外務省役割りであり、使命である。そんなことをやらなければ、外務省は必要ありませんよ。平和外交とはそういうものである。大臣、いかがですか。
  63. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ASEAN諸国のみならず、アジアの諸国の見解、そういうものについて常に耳を傾けておる必要は当然あると思います。
  64. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、外務大臣、ちょっと尋ねますが、アメリカは軍事大国だとあなたはお考えですか。そういう認識に立ちますか。
  65. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在、世界の超大国あるいは世界の両軍事勢力というふうに表現すれば、アメリカとかソ連は軍事大国と言って、それは常識的ではないか、私はこう思います。
  66. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、中国はいかがですか。
  67. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 中国について、恐らく、お互い国会議員として話し合ってみて、中国は軍事大国だというような、そういうことが何か書物の上にあるいは論議の上に出てきておるかどうかということを考えますと、私はそういうことはほとんど耳にしておりません。
  68. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、大臣、韓国はどうですか。朝鮮民主主義人民共和国はどうですか。
  69. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は、ただいま中国について申し上げたように、いろんな書籍あるいは論議の中で、これこれの国は軍事大国だというようなことは耳にしておりません。
  70. 井上一成

    井上(一)委員 そうすると、軍事大国はいま米ソ、アメリカとソ連だけだ。しかし、ASEAN諸国は、日本もその中に加わっている、あるいは加わろうとしている、こういう認識を持っていますよ。そういう認識をやはり外務省は的確につかまなければいけない。さらに、世界の軍事費が五千億ドルも六千億ドルも使われているという今日、軍事費の増大というものが世界経済の再建に大きな阻害要因となっていると思うのです。外務省もそういうような認識に立っているのかどうか、このことについても聞いておきます。
  71. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 最近の事例で申し上げますならば、第二回の軍縮特別総会で、総理は、この軍事費の増大を懸念して、軍縮を達成したい、そしてそれによる軍事費がそうかからずに済む、こういうことになれば、その余力を活用しようじゃないか、こういうことを申し上げておることで御理解をいただきたいと思います。
  72. 井上一成

    井上(一)委員 レーガン大統領の、強いアメリカを目指す米国の軍備拡大予算、この予算に対して外務省はどんな認識を持っていますか。
  73. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 レーガン大統領が就任後言われておりますことは、ソ連がデタントと言いながらも、軍事力の増強をずっとしてきておる。そしてそのことは、一九八〇年代になるならば、東西の軍事力のバランスを欠くおそれがある。だからアメリカとしても軍備についての努力をしなければならないし、西側においてもそれ相応のことを考えてくれ、こういう趣旨のことを言われて、そして、いわゆる強いアメリカを目指す、こういうことになったのではないかと思うのです。しかしながら、オタワ・サミットにしても、あるいは軍縮総会の論議などをずっと踏まえましても、何としても東西間の軍事力の均衡ということは、これを低いレベルに持っていくべきである。そこで米ソ間におきましても、中距離核戦力の削減交渉あるいは戦術兵器の削減交渉、そういうものをやろう、現にそれが行われておるわけでございまして、ですから……(井上(一)委員「大きいのか、小さいのか、予算としては」と呼ぶ)ですから、一概に軍備増強だけがねらいであるということでなく、一方におきましては、低いレベルの均衡という努力が払われておるということも考えておかなければならぬと思います。
  74. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、簡単に要約して、私は、軍備拡大予算はどう受けとめておるのか、まあ正当である、あるいは大きいとか小さいとか、あるいはまあまあ、そういうことを聞いているので、さらにそれでは、レーガン政権下におけるアメリカの世界戦略というのは、一口に言って、一体どんなものですか。どのようにあなた方は認識しているか。——いや、大臣に……。
  75. 松田慶文

    ○松田説明員 大臣からお答え願う前に一言申し上げさせていただきますが、レーガン政権……(井上(一)委員大臣に言っているんだ。もう時間がないから、アメリカの世界戦略は、大臣、どういう認識をしているか」と呼ぶ)結局、抑止戦略だと考えております。
  76. 井上一成

    井上(一)委員 僕は大臣に尋ねているんですよ、アメリカの世界戦略というものは、一口に言ってどういうものですかと。
  77. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いろいろ見方がございますからなかなか簡単にお答えしにくいのでありますが、ただ最近におけるアメリカの世界観を見ておりますと、先ほど申し上げたようなデタント以降のソ連の動きからして、第三国への進出などが行われ、そしてアフガニスタン、ポーランドのそういう問題が起きる、あるいはベトナムとか、そのほかエチオピアとか、そういうところへの進出も行われておる、これを憂えておって、そのために強いアメリカを目指したということも、これはアメリカの世界戦略の一つだと思います。
  78. 井上一成

    井上(一)委員 強いアメリカを目指す、世界戦略の一つ、と。私は、日本とアメリカがいま同じ西側の一員であるという位置づけで同盟関係であると位置づけているわけです。そういうことであるならば、アメリカの世界戦略における日本役割り分担は何なのか、大臣、いかがですか。
  79. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 同盟関係にある日本がどうか、と。しかしこの同盟というのは、言うまでもなく安保体制によって基礎づけられておるものであって、その同盟関係というのは、日本に万一のことがあるための防衛上の問題であるわけであります。だから、このことから、日本がアメリカの世界戦略にどう携わるのか、そういうことにはならないと私は思うのです。
  80. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、一千海里の航路帯防衛は、アメリカの世界戦略上の日本側役割り分担ではないのですか。
  81. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 航路帯の問題、シーレーンについては、繰り返し言われておるように、日本のような国情からいたしまして、海外に多量の物資を仰いでおる、その航路帯を守る上においてどうするか、こういう問題でございますから、このことがアメリカの世界戦略にどう、こういうことにはならないと私は思います。
  82. 井上一成

    井上(一)委員 シーレーンについては、いままでもうずっとそういう答弁があったわけです。  それではアメリカは、この一千海里シーレーン防衛をどういうふうに位置づけているのか。いわゆる世界戦略の一環に位置づけて、戦略的動脈であるというふうにアメリカは位置づけている、私はそう認識しています。ハワイ会談で、この問題についてどういう話がアメリカ側からあったのか、要点だけ……。
  83. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 先般の日米安保事務レベル協議におきましてのシーレーンに関連してのアメリカ側の発言の要旨は、まず第一点として、海上交通の安全を確保するという、いわゆるシーレーン防衛については、日本自身のためにとってバイタルな問題であるということが第一点でございます。  それから第二点は、そういう観点に立って見た場合に、日本の現在の防衛力というのは必ずしも十分なものではないのではないかということでございまして、今後対潜能力、防空能力等を高めることによって、その能力が高まるであろうということを申しておりました。
  84. 井上一成

    井上(一)委員 ハワイ協議で二日目の三十一日に統合参謀本部のビグレイ第五部長は、日本本土及び周辺海空域一千海里のシーレーンは、中東、韓国など西側にとってきわめて重要な戦略地域に紛争が発生した際に、米本土からの大規模な軍事力投入と、その長い補給路確保のために不可欠の要素だ、何も日本自身の防衛のためだけではない、世界的広がりを持った重要問題だ、そういうような趣旨の発言があったと思うのです。こういう発言があったでしょう。さらに、アミテージ国防次官補代理は、これもいわゆるアメリカの世界戦略の中に位置づけたその認識をきっちりとしているわけなんですね。どうなんですか。
  85. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 アメリカ側は、このシーレーン防衛について、日本側があくまでも日本の防衛のため、日本の自衛のため、国益のために必要であるという認識を持ち、さらにはそのシーレーン防衛も、あくまでも個別的自衛権の範囲内にとどまるというふうなわが方の条件というものを十分認識した上での発言でございまして、いま先生言われたような細部にわたる説明というものは承知しておりません。
  86. 井上一成

    井上(一)委員 国会では、わが国は個別的自衛だ、アメリカは軍事生命線に位置づける、何ぼそういうことを言ったって、第三国から見れば、日本の行為はアメリカの世界戦略の役割り分担ということになっている、そういうことではないのですか。
  87. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いまの個別的自衛権の範囲の点は、このハワイ会議においても、日本側から念のため、わが国のシーレーン防衛はあくまでも個別的自衛権の範囲にとどまるものである旨、これを確認した、こうなっておるので、米側においてもそのことを承知しておる、こういうことですね。
  88. 井上一成

    井上(一)委員 いつもそういうふうに抗弁しているわけですね。絶対に役割り分担、共同防衛ではないと。さっきから言うように、第三者から見ればどう映るのですか、常識的にどういう認識に第三者は立ちますか、こういうことなんです。  あるいは、外務省は結果としてという言葉をよく使いますね。結果として、そうじゃなかったんだ、外務大臣日本は個別に防衛をするんだ、アメリカは世界戦略の一環としてそこを位置づけている。これは別々なんだ、これはそういう答弁なんです。しかし、はたから見て、第三国から見て、それはどう映りますか、どういう認識に立ちますか。さらに、結果として役割り分担あるいは同一役割り、こういうことになるのじゃないですかと言っているんです。大臣、いかがですか。
  89. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 航路帯の問題は、井上委員からもしこういうふうに言っているじゃないかということがあれば、それでまたお答えのしようがあるのですが、一般的に言って、日本がこれだけの原料を海外から買い付け、また貿易立国としての日本が多量の物資を海外に運ぶ。その場合に、日本が一千海里内の航路帯を守るということは、これは第三国から見てもそうだなということではないでしょうか。
  90. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ外務大臣、今回共同研究をしよう、どんな立場で共同研究するんですか。  外務大臣、僕の質問を聞いておってください。そっちの書いてあるものを見ておったってだめなんですよ。それは仮想のこういう質問が出るだろうということで答弁を書いているのだから、外務大臣、そうじゃない。いま私は、アメリカはこっちだ、日本はこっちだ、あなたはよその国もそう思います、ああそうですか、私はそう思いませんよ、しかし、よその国もそう思いますよ、そうですか、それじゃ一緒にこのことについて共同研究しましょうなんというのは何をやるのですか。別別にやればいいじゃないですか。日本は勝手にやる、アメリカも勝手にやる。私は外務大臣に聞くのです。外務大臣はどんな見解を持っているか。別々なら別にやったらいいじゃないですか。一緒にやるのですよ。一緒にやろうなんということは要らぬでしょう。これは外務大臣から答えてください。
  91. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 今回のシーレーン防衛に関する共同研究というのは、主として防衛庁の分野にまたがる事項でございますので、便宜私からまずお答えをさせていただきたいと思います。  今回ハワイ協議におきまして、アメリカ側からわが方のシーレーン防衛能力についての不十分な点があるのではないかというふうな指摘がありました。その指摘されたゆえんのものは、アメリカが、わが方の立場に立って日本のシーレーン防衛能力というものをいろいろと研究した、その結果そういうふうな結論になっている、こういうお話でございましたので、私どもとしては、米側がどういう研究をしたか知りませんが、その研究の前提になる脅威の実態、あるいは侵攻のシナリオの設定等について、われわれとしても研究すべき余地がある、アメリカがどういう前提で研究したかということについて話を聞く必要があるだろうということから、われわれとしてもこの共同研究を提案したわけでございまして、私どもとしてはあくまでもわが方の立場というものを前提にしながら、このガイドライン、いわゆる「日米防衛協力のための共同指針」の範囲内で、日本の共同作戦計画の一環として研究をしようということを提案したわけでございます。
  92. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣外務省仕事というものを私は重要であり、大切であるということを冒頭に言っているわけなんです。防衛庁は防衛庁の見解を持っていいでしょう。軍事というフィルターで物を見た場合の認識と、平和外交というフィルターで物を見た場合の認識とはおのずから違うと思うのです。外務大臣、いかがなんですか。こちらにアメリカが、個別に日本が、こういう訓練の中で共同研究をしよう、世界戦略の位置づけに日本役割り分担をしていないのだとあなた方は言い切っているわけです。私は、役割り分担を結果としてさせられているのじゃないか、そうなっているのじゃないか、こういうふうに思うし、これは常識的に判断してまともな人には全部そう映るのです。外務大臣、どうですか。時間がないから、真剣に的確な答弁をくださいよ。そうでなければ私は持ち時間に終えませんよ。
  93. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 安保体制の中にある米側は、日本が千海里以内の航路帯を守る上に努力をしている、しかし、それに欠くるところがあるとすれば、そういうことについて支援の意思は私は当然あると思うのです。すると、そういう見地からどういうふうに航路帯を守るかということについての共同研究というものは、当然推定されると思います。
  94. 井上一成

    井上(一)委員 そうでしょう。あなたもそう思うわけね。守ってほしい。それは役割り分担になるのでしょう、大きい役割りであるとか小さい役割りであるとかは別にして。大臣、いかがですか。外務大臣外務大臣委員長、時間がないから……。
  95. 松田慶文

    ○松田説明員 ただいまの御質問役割り分担という御言及がございましたが、あくまでも大臣答弁のとおり、ただいまやっております仕事は日米安保体制の運用という枠組みの中で、条約を踏まえ、憲法を踏まえ、やっておる仕事でございまして、その中の運用の役割りについてはおのずから分担がございますが、先生御指摘の米国の世界戦略についての役割りという観念あるいは視点は毛頭持っておりません。
  96. 井上一成

    井上(一)委員 私は、軍事面からのフィルターとさっきから言っているのは、やはり平和外交の視点でこの論争をしたいわけですよ。外務大臣はおわかりですか。私は、そういう視点でこの論争をしなければいけない。だから、防衛論議になればあなた方は的確な答弁一つも出してこない、答えない、答えられない、そんなことでどうするんですか。そんなごまかして時間だけ過ぎればいいという問題じゃありません。  それではさらに私は外務大臣にお伺いします。  共同研究の内容はどういうものかと聞けば、恐らくまた憲法の枠の中での研究だ、日米安保の運用の問題だといろいろ言うでしょう。しかし、防衛庁はそんなことの枠の中ではみ出さない、やらない、そんなことは私は信じません、思いません。憲法の枠だとかあるいはそれを隠れみのにしていろいろなことをやっていくわけだ。それで外務大臣、ひとつしっかり聞いておってくださいね。もし軍事生命線としての、アメリカの世界戦略に位置づけられているそういう中での共同研究、世界戦略の一環として想定した場合ですね、これはまだこれからシナリオを書くのですから、そういう世界戦略の一環として想定した場合の研究なら断るべきであると外務大臣は思われますか、受けるべき、それもいや少々はとお考えですか、どちらですか。
  97. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほどから世界戦略の中でどうということに御質問が行われておるわけでありますが、私どもは安保体制の上から、また御質問の趣旨である千海里航路帯の問題から、世界戦略の関係でどうということは全然考えておりません。
  98. 井上一成

    井上(一)委員 だから、これから研究して、まだシナリオわかりませんから、そういうものなら断るべきだという見解ですね、外務大臣
  99. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 安保体制の上からそういうことは考えられないと思います。
  100. 井上一成

    井上(一)委員 安保体制の上から考えられないということはどういうことなんですか。アメリカはそういう世界戦略の位置づけにしているわけなんですよ。それで、もしそういう位置づけの中でのシナリオ作成ならわが国は平和外交を貫く上から考えて断るべきであるという私の見解なんです。外務大臣もそうでしょうねということを念を押しているわけなんですよ。いかがですか、外務大臣
  101. 松田慶文

    ○松田説明員 米国の世界戦略という視点は私どもは持っていないことは先ほどからるる御説明申し上げているところでありまして、五十一年に始まりました「日米防衛協力の指針」に基づく米側との共同作業の一環としてこれをやるのでありますが、わが国が個別的自衛権の範囲を出得ないこと、それはもとよりでありまして、その範囲を出るような話題には進まないという意味で、私どもはこの研究には一定の制約、限界があると考えております。
  102. 井上一成

    井上(一)委員 あなた方はそういうことを国会では始終繰り返して答弁しているわけなんだよ。しかし、外交のフィルターというのは、さっき大臣が言われた第三国にこれがどう映るか。あなた方はスピード出していない出していないと言いながら、スピードは出ているのですよ。自分が運転しておってスピードが出てない、スピード違反をいたしておりませんと言ったって、スピードを出している。スピード違反をしているわけだ。車でわかりやすく言えばまさにそういうことだと言うのです。あなた方はのうのうとスピード違反しておりませんと言う。乗っている者、運転している者じゃなく、歩いている者、そこにおる者が判断をすべきだ。  そういう意味で、くどいようですけれども私もう一度、外務大臣、これは念を押しておきます。いわゆる中東有事の場合だとかいろいろな意味で、千海里シーレーン防衛というものはアメリカの軍事生命線としてアメリカにとっては戦略的に非常に大事だと思いますよ。アメリカにとっては大事なんですよ。だから、そういう想定の中の研究なら断ります、外務大臣としては断るべきであるということを私はここで確認しているのですよ。それが平和外交だ、そういうことなんですよ。大臣から。
  103. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私はシーレーンの問題はあくまでも日本を守るためのことである、こう認識しておりますから、どうも先ほどから世界戦略のことをいろいろ言われるものだから私もちょっと戸惑うのですが、何か伏線があるんじゃないかと思うのですけれども、単純に考えればそういうシナリオに日本が賛成するわけにはいきません。
  104. 井上一成

    井上(一)委員 単純でいいのですよ。私は伏線も何もないわけだ。それから外務省というのはきっちりそうしなければいかぬよということを言っているわけです。第三国の動向を、さらに日本の平和外交というものはどういうものであるか、そういうことを尋ねているわけなんです。  さらに、柳谷外務審議官は、ハワイにおいてアジア地域の情勢について、アジアは小康状態、安定をしている、こういうふうに述べられたと報道されているわけです。間違いありませんか。
  105. 藤井宏昭

    藤井説明員 おおむねその趣旨のことを述べたと了解しております。
  106. 井上一成

    井上(一)委員 他の地域はまあともかくとして、アジアは一応安定している。ソ連の脅威というものがいまいろいろな形で話題になるわけです。そこで外務大臣にお伺いをしますが、中ソ改善あるいは和解、どの表現が適当であるかわかりませんけれども、中国側からの何らかの動きがあるように私どもは承知するのですが、外務省はこの問題をどのように分析をしていますか。
  107. 藤井宏昭

    藤井説明員 中国とソ連の関係につきましては、ことし三月、タシケントにおけるブレジネフの演説がございまして、それに対しまして中国は、ソ連のタシケント演説に留意する、さらに今後の行動を見守るという態度をとっております。さらに最近では、第十二回党大会におきましての胡耀邦の政治報告におきまして中ソ関係に触れまして、ソ連が一定の行動をとるならばソ連と中国関係がさらに改善され得るということを述べております。
  108. 井上一成

    井上(一)委員 改善は時間の問題だと認識されますか。
  109. 藤井宏昭

    藤井説明員 問題は改善という際の中身でございまして、ある意味ではすでに一ころに比べまして、昨年のたとえば秋以降今日に至りましていろいろな動き、人の交流等がございます。したがいまして、そういう意味で改善されたということも言い得るかもしれません。  問題は、今後どのようにこれが進展していくかということでございますけれども、その点については十二回党大会における胡耀邦の政治報告におきましても一定の条件を提示しております。この条件をソ連が簡単にこれに応ずるということは困難かと思いますので、改善については一定の制約はあるということは当然言えるかと思います。
  110. 井上一成

    井上(一)委員 朝鮮民主主義人民共和国の金日成主席が先ごろ中国を訪問し、大歓迎を受けた。これはすでに承知されていると思うのです。このことは東アジアにとってどういう影響があると認識されているのか。さらに、対ベトナムの関係修復についても努力が払われているように思われるわけですけれども、その辺についての認識、さらにはこのような中国外交の対応について、外務省はどのような認識に立っていらっしゃるのか、このことについても聞いておきます。
  111. 藤井宏昭

    藤井説明員 朝鮮民主主義人民共和国の金日成主席が十六日から中国を訪問しております。これは七年ぶりの訪問でございまして、中国朝野の大歓迎を受けておるということは承知しております。しかしながら、その訪問がいかなる意味を東アジアについて持つかという御質問でございますが、それにつきましてはこの訪問で何が話し合われ、どういう結果が発表されるかにかかっておりますので、この点については現段階ではいまだ論評が困難かと思います。  それから、御指摘のベトナムにつきましては、たとえば九月一日にベトナムのトー・フー氏が、中国との関係を良好に保ちたいという趣旨の発言をしておりますし、中国の万里副首相は、報道でございますけれども、邦人のスポーツ交流の方々に対して、ベトナムとも良好な関係を持っていきたいという趣旨のことを発言なさっているやに聞いております。ベトナムと中国については、御存じのとおりいろいろ深い、武力闘争等ございますので、この関係が一朝にして改善されるのか、その点については予断を許しません。が、そういう発言が最近はあるということは事実でございます。
  112. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、いまお聞きのように、中国中心アジア外交は平和的な動きがあるわけなんです。そこでこのような国際情勢の中でお伺いをするわけですけれども、ハワイでの協議の中でソ連の脅威論に対する日米間の認識はどうであったのか。違っていたのか。全く同じ認識を持っていたのか、その辺についてお尋ねをします。——ちょっと委員長外務大臣答弁を求めます。
  113. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ハワイ会談の中でどのようなソ連の情勢判断が行われたか、そのことを詳細は承知をしておりませんが、アメリカは従来ソ連の極東の配備状況などについて懸念を示しておりますし、また日本自体もソ連のSS20、バックファイアの配備等から非常に軍事強化が行われておる、こういうふうに見ております。そういう見地からいたしますと、ソ連の状況というものについて私どもが一応懸念を持つ、こういうことでございます。
  114. 井上一成

    井上(一)委員 私の聞いているのは、ソ連に対する脅威の認識はアメリカと日本とはどうなんですか、違うのでしょうか、認識の違いあるいは全く一緒なのでしょうか。アメリカのような世界の一番軍事大国、ソ連と超大国だと言われる、国際関与の及ぶ力の大きい国と、あるいは国際的に関与する力がまだ非常に少ない——あなた方はさらにはまだ軍事大国にはなり切ってないと言うのですけれども、私はそれは少しおいでおいでも、隣国である、隣である、そういう関係日本のソ連に対する認識はおのずから違って当然だと思うのですよ。そこは大臣、いかがでしょうか。大臣認識を聞いているわけです。
  115. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまお答え申し上げたことで尽きるのでありますが、日本から見れば、この極東における状況というものが心配であるわけですね。それについては、このSS20、バックファイアの状況から懸念をしておることを申し上げたのであって、このことについては現実にそういう状況にあるのですから、アメリカも同じ懸念を持っておると思います。
  116. 井上一成

    井上(一)委員 それでは大臣はアメリカも日本もソ連に対する脅威論は同じだ、脅威に対する認識は同じだ、こういうことですね。
  117. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 極東の状況に対しての見解は私は違わないと思います。
  118. 井上一成

    井上(一)委員 それはいつからそういうふうに同じになったのですか。
  119. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは別に私は相談して、ああいうことだから大変だなとかどうとかいうことを言っておるのでないんで、いま申し上げたように現実にそういう配備の状況などから日本は懸念を持っておる、しかし極東のその状況からすればアメリカも同じ考えに立っておるのではないか、こういうふうに申し上げておるのであります。
  120. 井上一成

    井上(一)委員 去年の七月には宮澤官房長官は対ソ認識については日米の若干のずれがあるということを言われているわけなんです。私は今回のいわゆる極東の、さっき柳谷外務審議官がハワイで発言した、アジア中国中心とした小康状態の平和外交、平和的動きのあるいまのアジアの中で、つい先日のハワイ会談におけるソ連脅威論についての日米の見解認識に違いがあるのか、こういう尋ね方をしたわけですが、あなたは一緒だというので、いつ、ではここ一年間に極東のいわゆる動きが緊張を増したのか。それなら外務審議官が言っていることとは少し変わるわけなんで、大臣いかがですか。
  121. 松田慶文

    ○松田説明員 御指摘のハワイでの協議は安全保障協議、したがいまして主として軍事体制、軍事力に力点を置いた協議になっております。このソ連の軍事力の認識につきましては、たとえば昨年のオタワ・サミットの場合における西側のソ連の問題に対する協議においても、あるいは昨年五月の鈴木総理大臣の訪米時における協議の場合においても、軍事力に関して米側とわが国とが一つの共通の認識を持っていることは昨年来御説明申し上げているところでございまして、この一年に変わったということは特段ございません。
  122. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、柳谷外務審議官アジアでの国際情勢は小康状態である、そういう発言があり、私がいま言ったように世界の警察官ともいうべき、言葉が適当でないかもわかりませんけれども、アメリカの見る見方と、隣国であるわが国の見るアジアでのソ連に対する見方は、私はおのずから変わるんじゃないだろうか、こういうふうに思うのですよ。それをしきりと聞いているのですが同じだということですから、どういう点が同じなのか、どういう理由で同じなのか。ただいま言うように極東の有事を、極東の危機を訴えられていますか。じゃ、審議官との認識は違うのかどうか。
  123. 松田慶文

    ○松田説明員 ハワイ協議におきます柳谷外務審議官の国際情勢の認識に係る発言と食い違うではないかという御指摘でございますが、この記録を簡単に御紹介申し上げますと、柳谷が説明いたしましたことは、アジアについては朝鮮半島の引き続く緊張状態、カンボジアに対するベトナムの軍事介入の継続、アジアにおけるソ連の軍事的増強とこれを背景とするインドシナヘの進出等、問題は多い。しかしながら、他の地域との比較においては一応の小康状態があると見ている。当面深刻な危機というふうな認識はないというふうに結論づけておりますが、その前段においてソ連の軍事力増強とこれを背景とするインドシナ半島への進出ということを明確な認識として伝え、その点については一致している次第でございます。
  124. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、これから私はあなたに尋ねますが、じゃ一緒だということですね、アメリカの認識日本認識。それは軍事力の増大、軍備拡大、そういうことを一つの具体例に出されましたね。大臣、そうですね。
  125. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 柳谷審議官の所見はいまの説明でおわかりだと思います。  私へのお尋ねは、先ほどからソ連の関連を私にお尋ねであったから、そこでいまの極東の情勢から日本としてはこの情勢に懸念をしておる。また、アメリカはどうかというからアメリカも同じであると思う、こう申し上げておるわけです。
  126. 井上一成

    井上(一)委員 そこで、同じ、そこまでもう進めましょう。同じだというのはどういう認識かというと、ソ連の軍事力の大きさを指摘されましたね。なぜなのかというと、ソ連の持つ軍事力の大きさ、それをいま一つの理由に挙げられたと思うのですが、そうですね。
  127. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのとおりです。
  128. 井上一成

    井上(一)委員 さらには、それじゃ軍事力が大きい、それが一つ脅威だ。攻めてくるか攻めてこないか、あるいはどうするかということは、意図はわかりませんね。意図はわかっていますか。わからないでしょう。
  129. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は軍事力の状況から懸念をしておる、こういうことを申しておるわけで、意図はどうか、これは私にもわかりませんね。
  130. 井上一成

    井上(一)委員 それは意図はわかりませんね。それはそうです。  そこで、大臣、さっきのあなたの答弁、軍事大国、わが国の意図はわからないわけです。意図の問題じゃなく、自国は別として、自分自身は能力を大きくしてうんと拡大しても、いや軍事大国でない、しかし第三国に受けとめさす認識というものはそれによって左右されますね。まさにソ連の軍備拡大がわが国の潜在的脅威になっているんでしょう。そういう認識なんでしょう。
  131. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それは、そのとおりです。
  132. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、日本も意図は、そんなもの戦争しません、憲法があります。しかし、どんどん能力を大きくしていけば第三国はどのように認識しますか。日本のソ連に対する認識と全く同じ認識を持っても不自然ではないでしょう。
  133. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはいまの五六中業が達成された場合にどういうふうに第三国が見るかということが一つのめどになるわけですが、日本の場合は他国と違う憲法を持ち、また非核三原則を明らかにし、そのことによってなおかつそれでも脅威だ、こういうところがあるのかどうか。私は、残念ながら井上委員が第三国のどこが日本を軍事大国と言っておるのか——私は、おそれがあるとかそういうことは耳にしておるのですが、これこれだから日本はもう軍事大国で脅威だ、そういうことは余り聞いておらないのです。
  134. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、聞いたからどうだとかでなく、ソ連に対する潜在的脅威というものは、常識的に考えて軍事能力がある、軍備が非常に強い、そういうことは、隣国であり友好を保たなければいけないわが国に対してでもそういう懸念を抱かせている事実かもわかりません。半面、マルコス大統領が日本の軍備拡大について少々の懸念を表明しているじゃないですか。そんなことはきょうは問いません。聞いたことないなんて言って、外務大臣ですよ。いやしくもあなたは日本外交の最高責任者ですよ。そういう能力がふえればふえるほど、第三国、他から見ればやはり脅威に感じるんですよ、心しなさいよということなんです。わかりましたか。私はここで歯どめを、まさに平和外交をうたう外務省が防衛庁の軍事フィルターの流れのままに流されると大変なことになりますよ、こういうことを言っているんですよ。外務大臣、私の意図しているところ、私があなた方に訴えているところが十分わかりますか。平和外交というのはそういうものですよ。外交のフィルターというものはそういうものですよ。そういう見方をしなければ外交というものは国益に沿わない。大臣、いかがですか。
  135. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 別に井上委員に逆らうわけではございませんが、御所見は御所見として承っておきます。
  136. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、それじゃさらに私は伺います。  先日、鈴木総理が財政非常事態宣言を国民に訴えられたわけです。その中身をきょうは問題にしません、時間がありませんから。ひょっとして、場合によってはODA予算も縮小するかもわからぬ、そのような厳しい予算の中で防衛費だけの突出、防衛費をふやさなければならないほど、それほどあなたはソ連を脅威だと認識されるのですか。
  137. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはストレートにソ連がどうという、あなたの御判断ですね。私は繰り返し申し上げておるように、日本は自主的に防衛大綱というものを明らかにして、その中で作業をしておることであって、その防衛大綱はどうか、それは日本の専守防衛を考えてのことである、またそれにはいろいろな制約がある、こういうことを申し上げておるので、ちょっと御質問の真意を理解できにくい点があります。
  138. 井上一成

    井上(一)委員 きのう国家公務員のベアの見送りを閣僚会議で決定されたわけですね。この問題も深く尋ねる時間がありませんが、これは人勧制度を無視した全くもって暴挙なんです。このことで質問をするわけじゃないのですけれども、人勧凍結をしてまで防衛費の突出、外務省が力を入れている海外に対する経済援助、経済協力の予算まで縮小して、国民にいわゆる非常事態宣言をして、いわば防衛予算だけを突出させようとしている、そんなことがいま外交的なフィルター、平和外交を推し進める上に必要なのかどうか、そのことなんですよ。どうなんですか、外務大臣
  139. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 防衛予算についていま外交面からいろいろの御批判を言われておるわけでありますが、予算の編成については防衛庁自身が防衛大綱に基づく、しかも繰り返し申し上げる専守防衛の上でこれでいいか悪いか、こういうことで判断をして要求をしておる、しかもその要求については大蔵省が防衛についてはこの範囲でやれということを指示されたその中でやっておることでございますので、外交面からどうか、こういう御質問かと思いますが、この段階でとやかく申し上げるのはいかがかと思います。
  140. 井上一成

    井上(一)委員 何を言っているのですか、あなたは外務大臣でしょう。日本外交をあなたは最高責任者として責任を持ってやっているのでしょう。口先だけの平和外交じゃだめなんです。口先で何ぼ平和外交を言ったってだめですよ。私は何もむずかしいことを言ってないのです。いま防衛費をふやさなければいけないというのは、一応十分研究もせぬとソ連の脅威論につながるわけですから、そういうことを考えたら、いま防衛費だけを突出させなければいけない、日本外交はそんな認識なんですか。おかしいならおかしい、決めるのは大蔵で、査定があってどうされるかそれは別にして、外務省としては平和外交のフィルターではそんなにまでして防衛費の突出は必要ないんじゃないかということを私は言っているのです。どうなんですか、くどいことは要りませんから、必要なら必要とおっしゃってください。余り感心しませんとかいろいろな答えがあるでしょう。
  141. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大変いろいろ誘導的におっしゃいますが、専守防衛というのは、やはり内閣で責任分担しておりますから、その上からの要求、しかも大蔵省もこの範囲ということでやっておることでございますから、先ほど申し上げたとおりこの段階でとやかく言うのはいかがか、こう申し上げておるのであります。
  142. 井上一成

    井上(一)委員 これはもう国内的な内閣での役割り分担だとかそういうことではなく、国際的な視野での外務大臣としての平和外交を貫く上においての認識なんですよ。もう一度くどいようですけれども、それまでして防衛費の突出は希望するのか、当然だとおっしゃるのか、それはちょっと行き過ぎですと私は思っているけれども私の力では何とすることもできません、そういうことはわかるのです。外務大臣認識を聞いているのですよ。いまの防衛費だけの突出というのはどうなんですか。
  143. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外務大臣認識として、日本の防衛についてその責任を持っておる防衛庁がいろいろ御検討の結果概算要求をしておる、そうであれば、それはそれで理解をしなければならないと思ってます。
  144. 井上一成

    井上(一)委員 それは間違いですわ。そんな外交では平和外交とは言い切れません。外務省局長なり審議官、そんな外交をやっておったら日本は再び誤った道に入りますよ、心しなさい。  防衛庁に関連して一言だけ聞きましょう。いま人勧実施凍結、あるいは平和外交推進の大きな柱を削ってでも防衛予算を突出させていく、そういうことが、あなた方はふやせると実際思っているのですか。真剣に本音から、そんなことがふやせると思っているのですか。また、ふやさなければいけない——いま外務大臣はうまいこと答弁しているわけです。私は防衛庁に本音として、これだけ平和外交をつぶしてまで、そんなことしてまで防衛予算をふやせると思っているのでしょうか、一言。
  145. 矢崎新二

    ○矢崎説明員 お答え申し上げます。  安全保障は国の政策の中でもきわめて重要な問題であろうと思うわけでございまして、防衛力の整備に当たりましては憲法及び基本的防衛政策に従いまして国民の理解を得ながら「防衛計画の大綱」の水準をできるだけ早く達成する必要がある、こういう基本方針のもとに防衛力の着実な整備に努めているところでございます。  先般の閣議におきまして五十八年度の概算要求のシーリングが決まったわけでございまして、対前年度千九百億円、七・三%の増が認められたわけでございます。この要求増加枠と申しますのは、厳しい財政事情のもとにあるわけでございますけれども、その中で他の諸施策との調和を図りながら従来の基本方針に従って着実に防衛力の整備を進めていくための必要最小限のものであると考えている次第でございまして、私どもといたしましては国民の御理解を得ながらこの枠の中で調整いたしました概算要求をぜひお認めいただくように最善の努力をいたしたいと考えている次第でございます。
  146. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁についてはまた時を改めます。  さらに、この間伊藤防衛庁長官がNHKの「政治討論会」で一千海里シーレーン以内での米艦隊の護衛に自衛艦が当たってもこれは集団的自衛権の発動にはならないというような発言をして、後で訂正を、言葉足らずだと打ち消したりして、全国の国民に大変無責任な発言をしているわけです。きょうは防衛庁長官が来ておりませんから、このことは次の折に譲りますけれども、防衛庁は、第七艦隊の護衛は憲法があるからできない、と同時に戦争に巻き込まれたくない、アメリカの護衛はしたくないのだ、あるいは憲法があるからできないけれどもしたいのだ、どっちなんですか。
  147. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 言うまでもなくわが方の防衛力の行使というものは、あくまでも自衛権の範囲内で自衛権の行使に必要な限度でやるということでございまして、それ以上のものでもそれ以下のものでもございません。
  148. 井上一成

    井上(一)委員 それではしたくないわけですね。どっちなんですか。憲法があるから、憲法という枠の中で、個別自衛権ということだけに枠があるからできないのか。したいのか、したくないのか。
  149. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 いまいろいろ御指摘がありましたが、どういう環境、条件のもとでということが捨象されていますので、的確な答弁になるかどうか疑問でございますが、いずれにせよアメリカの艦艇を守ることのみ、もっぱらそのことのためにのみ自衛隊が行動するということは、憲法に言う個別的自衛権の範囲を逸脱することになるのではないかというふうに考えております。
  150. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカの艦隊のみ守るといま言われましたね。だから、アメリカの艦隊がここにおる、日本の船がここにおる、そしてここが攻撃を受けた、こっちは攻撃を受けていない、この攻撃を受けたアメリカの艦船に攻撃をする船か飛行機、そうしたら、それは攻撃することができるのですか。したいんですか。
  151. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 すでに日本に対する攻撃が行われており、安保条約第五条の発令が行われておるという場面での共同作戦の場でいま御指摘のようなことがあるとすれば、、その敵というのはわが方にとっても敵でございますから、その敵に対して攻撃を加えることは常識的に当然であろう。ただ、その結果アメリカの船が守られるということも、またこれは当然のことであろうというふうに思います。
  152. 井上一成

    井上(一)委員 安保五条を出されるだろうと思っていました。では、一千海里以内で米艦船が攻撃を受けた、わが国の船は攻撃を受けていません、こういう状況、このときにわが国の自衛艦はどうするんですか。
  153. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 自衛権の行使というのは、まずわが方の領土、領海、領空に限られることなく、自衛のため必要な限度において公海、公空に及ぶことがあり得べしということは、これは従来からたびたび申し上げているとおりでございまして、一千海里の海上においてそういうふうな攻撃があった場合どうかということでございますが、あくまでもわが方の自衛のため、防衛のために必要な限度で行動するということでございまして、その結果あるいは米艦船が守られるということがあり得るということは当然だろうというふうに思います。
  154. 井上一成

    井上(一)委員 わが国の艦船は攻撃を受けてない、その場合どうなんですか。アメリカの艦船が攻撃を受けておる、その場合はどうなんですか。
  155. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 もし先生のお尋ねの趣旨が、まだわが国に対する武力攻撃が行われていない状況でのお尋ねであれば、そういうことは当然できません。
  156. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ護衛をするということはできないわけでしょう。護衛にならないわけです。
  157. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 そういう段階での護衛ということであれば、できないと思います。
  158. 井上一成

    井上(一)委員 だから、そういうときの段階、防衛庁長官がどういう意図で、きょうは防衛庁長官来てませんから、だから護衛というものは、ここにアメリカの船がいた、それで何らかの形で攻撃を受けた、その攻撃から守ることが護衛でしょう。パトロールするんじゃないんだから。護衛は、常にそれを守っていく。それは護衛にならないでしょう。それは護衛じゃないわけだ。護衛はできないでしょう、そういうことになれば。
  159. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 わが国に対する武力攻撃が行われる以前において、護衛ということは考えられません。
  160. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ今度は、アメリカの艦船が攻撃を受けた、近くにわが国の自衛艦が通っていた、援軍、いわゆる助けてくれ、そういう要請があった場合に、駆けつけていくのか、いやそれはやんぴ言うてこっちを通っていくのか、いやうちはできません言うて通っていくのか、見過ごしていくのか、どっちなんですか。
  161. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 これもただいまの答弁と同じでございますが、わが国に対する武力攻撃が行われる以前の段階においては、助けにいくこともございません。
  162. 井上一成

    井上(一)委員 あなた方は有事の研究、日本有事、極東有事研究あるいはシーレーン共同研究、日米共同訓練、いろんなことをやっておるわけです。アメリカが攻撃を受けて、そばを通っておっても、助けてくれ言われても、日本は助けぬと帰ってきます。本当はそんなことはせぬと思いますよ、いまの訓練の状況から見れば。そういうことを考えたら、こんなもの、訓練も要らなければ、共同研究もむだなことをやっておる。そんなむだなことに予算が費やされている、そういうことなんです。アメリカから助けてくれ言われても助けられません。そういう状況の中でつまらぬ予算が、防衛予算だけが突出している。どんどん、どんどんと、第三国から見れば、わが国の軍事大国化が懸念される状況に押し込められていく。外務大臣、いまお聞きのように、そういう状況にある日本の平和外交というものはどうかじをとっていくか。そんなもの必要ないんじゃないですか。
  163. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いろいろ仮定を置かれての御質問なんで大変お答えしにくいわけで、最初に申し上げたように、日本の国情からしてシーレーンを守る上にある程度の防衛予算が必要だということは、これはだれもが認めるところではないかと思います。
  164. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、いろいろ議論をして、いま防衛論議はいろんな見地から国会でやるわけです。しかし、いま私の質問に対する答えなんというのは、全く常識的に判断して、現実的にアメリカの船が攻撃を受けても、助けを求められても日本の自衛艦は行きませんなんて答弁をしている。そんな現実になったら、飛んでいくかわからへん。そのために訓練をやっている。そんなことはやれないんだから、行けないんだから、そういう事態になったってわが国の自衛艦は手一つ出せないんだから、そういうことなら、いまいろんな研究、訓練がなされているけれども、そういう必要はないんじゃないですか。  そういう予算はまさに平和外交に大きな阻害要因になっている、そういうことを私は申し上げているわけなんです。大臣、ありきたりな答弁、本当に私は外務省けしからぬと思いますよ。持ち時間があるから何ですけれども、こんなことで外務省いいのか。本当にもっともっとしっかりしなければ、日本の将来というものは案じられる。防衛予算なんというものは必要ないということを具体的に私は、いまやっていることがいかにむだであり、いかに間違ったことであるかということをいま指摘してきたわけなんです。そういうことで、外務大臣にもう一度、憲法の枠の中でやります、憲法の枠を踏み外しませんと言いながら、もう防衛庁は一歩も二歩も踏み外して外へ出ていっている。私は、せめて外務省はこの憲法の枠の中でどんなことがあっても平和外交に徹して守り切るんだということを約束してほしい。最後に大臣、このことをあなたはここできっちりと約束できるかどうか。
  165. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大変御熱心にいろいろ御質問を受けまして、この質問の最初に井上委員が御確認をされましたように、私は、日本は専守防衛に徹底すべきである、また憲法は守るべきである、また非核三原則のように国会で明白な方針を打ち出して決議にもなっておる、これを守っていくべきである、その上に立っての防衛であり、またそれを踏まえての外交をやっておる、これには間違いありません。
  166. 井上一成

    井上(一)委員 時間が参りましたので、私は、最後に今回の中東における大変痛ましい、嘆かわしい虐殺事件について外務大臣に尋ねます。  政府は、きょうすでに発表されているわけですけれども、談話として今回の虐殺事件について日英両国あわせて国連調査の実現に努力する、こういうふうに言われているわけですが、イスラエルが大きな責任を持っているということも表明されているわけです。そう判断した材料は何なのか、これが一つ。現地の大使館員からも十分な判断材料、報告がすでに本省に来ているのかどうか。さらに、事件のあった現地に足を踏み入れたのかどうか。そういうような報告が具体的にないとすれば、いつも新聞報道によればとか、正式なコメントができないということでいままで外務省は逃げるわけなんですけれども、そういうことではいけないと思うのです。この点について出先機関の情報も一層必要になるわけですけれども、電信連絡が不十分だったとかどうだとかいろいろなことが言われますけれども、まずこの三点について尋ねておきたいと思います。
  167. 英正道

    ○英説明員 お答え申し上げます。  若干御質問に対する御返事の順が不同になりますけれども、現地の大使館の電信室が戦闘によりまして完全に破壊されてしまいましたので、現在大使館の電信機能は動いていない。もちろんテレックス等で通常の連絡をとっているわけでございますけれども、昨日までは現地との電信事情が十分でございませんで、現地の大使館から西ベイルートにイスラエル軍が入りて以降の事情については遺憾ながら報告が来ておりません。それが実情でございます。  それから、昨日櫻内外務大臣の談話が出ておりますが、それはもうすでに報道されておりますので内容は省略いたしますけれども、その中で申し上げておりますことは、もちろん今回の痛ましい事件に対する遺憾の意がございますが、「イスラエル軍の支配する地域でパレスチナ難民虐殺事件が発生し、多数の無事の難民が犠牲になったことは、まれにみる暴挙であり、わが国としては、かかる残虐な行為に対し激しい憤りを表明する。」ということを申し述べております。イスラエルの責任を確定したという御趣旨の質問でございましたけれども、この点につきましてはまだ事実を、先ほどのような事情で私どもといたしましても完全に把握しているわけではございません。諸報道を総合いたしますと、イスラエル軍がみずから手を下したということはない、しかしジャマイエル次期大統領候補の暗殺以降、イスラエル軍が西ベイルートに入ってその状況のもとに今回の事件が起きているということは、やはりそういう結果をもたらしたということにイスラエルとしても道義的な責任はあるというふうに感じております。
  168. 井上一成

    井上(一)委員 判断材料は、新聞報道だけ、あるいは、イスラエルの支配下で起こった問題だということだけでイスラエルに対する大きな責任があるという判断をしたのか、さらに現地に足を踏み込んだのか、あるいはそれ以外の判断材料を外務省として独自の外交ルートで入手したのか、そんなことについて……。
  169. 英正道

    ○英説明員 いろいろなソースからの情報入手に努めておりますけれども、基本的には、国連のオブザーバーが現地におりまして、その数も増員されるわけでございますけれども、その報告が、日本時間で恐らくきょうの午後か夕方になると思いますが、出るということにまたなければならないというのが遺憾ながら事実でございます。
  170. 井上一成

    井上(一)委員 安保理の今月は議長国ですね、外務大臣。そんな状況の中でわが国の外交役割り、働きなんというのは、いま聞いている答弁なんか——本当に外務省はしっかりしなさい。外務省がしっかりしなければ日本の平和というものは維持できませんよ。心してきょうこの質問をあなた方はかみしめてほしい。  時間がありませんから、あとは次回に譲ります。
  171. 永田亮一

    永田委員長 井上普方君。
  172. 井上普方

    井上(普)委員 私は、日本教科書問題外交問題に発展したことははなはだ遺憾に存じておるのであります。     〔委員長退席、中川(秀)委員長代理着席〕 当然歴史の事実というものは事実として客観的に子供に教える、学生に教える、そしてそのことによって真実を教えることによってこそ次の世代の諸君が反省もするし、また日本の方針も決めていくのだ、こう考えておるのであります。  しかしながら、この日本教科書検定制度が始まりまして以来、私も昭和三十二年の中学校、高等学校の歴史あるいは社会の本を読んでまいりました。そのときにはいかにも日中戦争は侵略戦争であるということを明記しておるのでございますけれども、ここ二十二、三年の間に検定制度のもとにだんだんとそれが変わってまいりまして、進出であるとか侵攻であるとかいうような言葉に変えられたことは、もう私が申し上げるまでもございません。しかし、このことで外交問題に発展いたしまして、その解決が外交ルートによって解決されておる、しかもそれも正誤表でなされておるというまことに政治的な決着を見ておりますことは、はなはだ私といたしましては残念なのであります。  しかし、この問題につきまして先般箕輪郵政大臣は、八月の二十八日でございましたが、自民党の政経文化パーティーにおきましていろいろと御発言になっておられるのであります。新聞の報ずるところでございますが、「だれが中国に教えたのか。教えた人間が日本にはおるのだ。国を売る、国を裏切るような人が、この日本人社会の中におる。すでに今年の三月、北京にそのことが知らされていたことを私は外務省から聞いた。」と言われております。「怪しいのはだれか。確証がないから言わないが、想像に任せる。」こういうことをあなたはおっしゃいましたと新聞は伝えております。あるいはまた他の新聞によりますと、売国奴がおると言って暗に一部野党を指しておるんだとも報じておるのであります。したがいまして、はなはだ迷惑をわれわれは受けると同時に、この郵政大臣のお考え方に対しまして私どもは絶対に納得ができない、こういう考え方に立ちまして、先般も内閣総理大臣に対しましてわが党といたしましては箕輪郵政大臣並びに松野国土庁長官に対しまして罷免要求をいたしたのであります。  そこで、まず第一番に郵政大臣にお尋ねするのでございますが、一体あなたはどのような御発言をなさったのか、お互い政治家でございます、証拠があるとか証拠がないとかいうような問題で逃げることはまことに政治家としてはひきょうだと思いますので、あなたは一体どのようなことを御発言になりましたか、この点をまず第一番にお伺いすると同時に、第二の問題といたしましては、教科書改ざんに関する中国及び韓国の批判を内政干渉と受け取ることは私どもは納得できない。  第二に、過去の日本の侵略戦争あるいは植民地支配に対しまして反省が全くない。もうすでにポツダム宣言三十六条でございましたかは、日中戦争並びに韓国支配に対しましては侵略支配である、植民地支配である、侵略戦争であるということを、われわれが無条件に甘受いたしましたポツダム宣言の中には掲げておるのであります。でございますから、この問題を侵略戦争と規定することを否定することは、これは私は許されない事柄であると思うのであります。この点についての御反省をいかにお考えになっておられるかお伺いいたしたい。といいますのは、過去の日本の侵略戦争や植民地支配に対しまして謝りやあるいは反省のような御発言新聞報道によりますと、われわれが判断いたしますと、反省の認識がない、逆に美化しておるように思われてならないのであります。  第三には、単なる異なる考え方を持っておる者を売国奴であるとか、あるいはまた国を売る者であるとかと言って一方的に切り捨てる考え方、これはファシズムに通ずる道である。民主主義の世の中におきましては当然にあらゆる議論、意見というものがあって、そこで論議を展開することによって民主主義というのは発展するものだと私は思います。一方的にこれを売国奴呼ばわりするということはファシズムに通ずる道であると私は思う。  したがって、この以上四点につきましてあなたの御所見をお伺いいたしたいのであります。
  173. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 私が、八月二十八日だと思いましたが、岐阜県における自民党の政経文化。パーティーで教科書問題についてお話をいたしました。ただいまその発言の中で売国奴という言葉を使ったような御発言がございましたが、私はそういう発言はいたしておりません。  概略を申し上げますと、こういう発言をいたしたわけであります。  すなわち、この検定教科書問題が国際問題になっているが、きょう千何百人、二千人近い人が集まっております、これは岐阜県の有識者の方々だと思いますけれども、検定教科書をごらんになった方がいらっしゃいますでしょうか、知事さんも市長さんもいらっしゃる、どなたでも結構ですが、読んだ方がいたら手を挙げていただきたい、こう申し上げましたところ、どなたも、一人も手を挙げる人がおりませんでした。ほとんどの日本人は、この検定教科書を読んでおらないわけであります。来年から使おうとしておる教科書で、本屋さんにまだ並んでおりません。ですから、ほとんどの人が読んでいないのであります。ところが、うわさによれば外国の方に教えた人がいる。その人はわずかの日本人で、検定教科書のことを知っている人だ。そもそも教科書、教育問題は国内の問題です。内政の問題です。国内で大いに議論をしていただきたい。歴史は史実に忠実でなければなりません。もしも史実を曲げたような教科書であるとするならば、そのことを国内で大いに議論をすべきであります。皆さん、どう思いますでしょうか。国内で満足な議論も行われていない。そのうちに外国から抗議を申し込まれた。その外国に教えたならばその国の民族は必ず怒るであろうことを承知の上で教えた人があるとするならば、それは国を売る行為だと私は思います。皆さん、いかがでしょうか。他の民族がわが民族に向かって怒ったときには、戦争につながってくることであります。われわれは二度と戦争をしてはならない、そういう決意をいたしております。大事なことなのであります。国内で議論をすべきであります。そういう表現をいたしたのであります。国を売る行為と言ったのは、私の趣旨はそういうことで申し上げたわけでありまして、その際、売国奴という言葉は一切使っておりません。新聞によってはそう書かれた新聞もございますけれども、国を売る行為と言ったから売国奴というふうに短絡的に書かれたものと私は思います。  それから、御指摘内政干渉云々の話がございましたけれども、私は、岐阜の政経文化パーティーはもとよりでありますが、閣議においても閣外においても、どこにおいても、外国からの内政干渉ということは一切申したことがございません。本件に関して一切ございません。  その次に先生御指摘された、日本の侵略戦争や植民地支配に対し、謝りや反省の認識が全くなく、逆にこれを美化しているということでありますが、先ほど申し上げましたように、私は、侵略戦争は侵略戦争と書くべきであるし、歴史が史実に忠実でなければならないということを申し上げたところであります。これも美化したつもりもありませんし、何にもこういうことには触れておらないのでありますす。  なおまたさらに、異なる考えを持つ者を切り捨てる姿勢は、戦前の軍部独裁政権と同じようなファシズムである、こういうことでありますが、異なる意見の人を切り捨てるということではなしに、そういう考えの人がそれを、史実に違ったことを検定教科書に書いているということであれば国内で大いに議論をすべきであるということを申し上げたのでありまして、それに該当しないということを申し上げたいと思います。
  174. 井上普方

    井上(普)委員 箕輪大臣のいまの御答弁を聞きますと、牽強付会の言があると私は思います。といいますのは、この検定制度についてすでにわが党は三十七、八年以来ずっと問題にしてきておる。しかも歴史教科書において侵略を進攻としたり、あるいは進出としたということは私どもは過去十四、五年にわたって指摘し続けてまいっておるのであります。お互い十五年も国会議員をやっておるのだから、これが国会において大論争になっておることを知らないというわけはないはずであります。知らないと言うならば大臣の御勉強のほどもおおよそのことはわかります。このことは検定制度の家永裁判だけではなくて、この問題についてはわれわれはすでに過去において重要な問題として指摘しておることをあなたは御存じなかったからこういうことを言っておるのだと思います。  あなたもおっしゃるとおり、それは現行の白本と称するものは一般にはだれも見ておりません。見ておるのは執筆者と出版者と、さらにはまた検定官だけでございましょう。これが一般に出ないことはあたりまえの話なんです。白表紙の本はそれだけの人しか見ないはずなんです。全部これは極秘にしてやられていることも——これまたあなたは、皆さん見ていますかと言ったって、おるわけはないのだから。わかり切ったことをあなたはおっしゃっておる。しかしそのことがともかく漏れてきた。執筆者から漏れたのかもしれません。新聞紙上に出てきた。ことしの検定においてそれが出てきた。だから問題になってきたんだ。  もうすでにわれわれは過去において執筆者から何回もそれを聞いてきているのです、十四、五年来。そして国会において問題にしてきておる。いつも問題になっておる。このたびだけの問題じゃない。昭和三十二、三年ころの教科書と現在使われておる教科書の様子を見てごらんなさい。比べてみたことがありますか。まさに史実をねじ曲げたような教科書になっておる。それに対して中国側あるいは韓国側から文句が出てきた。あるいはその間には新聞社独自の、あるいはまたマスコミ独自の取材があったかもしれません。しかし、それをもって国を売るという言葉をあなたは使われておる。いまの話では、売国奴という言葉は使わなかったけれども、国を売るという言葉は使っておる。でございますから、あなたのお考え方はまず事実が違ってきている。大衆の前でのお話に。  さらにはまた、こういうようなことでございますので、あなたの御発言というものは事実を曲げた御発言でもあるし、美化することはなかったとはおっしゃいます。いまはともかく、史実は史実のとおりいまの教科書が書かれておるとあなたはお考えですか。この点ひとつお伺いしましょう。いまの歴史の教科書は史実を史実として書かれておりますか。どうです。
  175. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 先生仰せのとおり、この教科書問題は、過去においても国会等で何回も社会党の先生からも御指摘のあったこと、また国会で議論が大変多かったこと、私も十分承知をいたしております。ただし、今回の検定教科書の問題は、国会の場とか広く国内で議論されておらないのであります。  六月の末に報道機関新聞がこれを指摘いたしました。そうした国内の議論が全然煮詰まっていないうちに、外国から抗議が来た。パーティーに集まっておる人方もわれわれも全く知らなかった。新聞に出たことは知っておりますが、過去と違って国会でも議論も何もほとんどされていない、私はそう認識しておりました。したがって、過去と同じように国内で大いに議論すべきである。外国に火をつけると、それはそちらの民族は怒るだろう、それでは困る。国内で大いに議論すべきだという趣旨で申し上げたわけであります。現在の歴史教科書が史実に忠実であるかどうかは、私は詳細に見ておらないからわかりませんけれども、少なくとも歴史本というものは史実に忠実な歴史本でなければならないと考えております。
  176. 井上普方

    井上(普)委員 あなたは国会で論議にならなかったとおっしゃいますけれども、今度の国会は御承知のように中断中断があって、問題になることが少のうございました。しかしながら、新聞に出て、国会においても問題になったことは事実なんです。私どもの外務委員会におきましてもこの問題は問題にするし、あるいはまた文教委員会におきましても大いに問題になった。そのきっかけになりましたのは新聞記事であったことは事実です。新聞記事が問題を提起したことは事実です。しかし国会で問題にならなかったなんということはないですよ。  それはともかくといたしまして、いずれにいたしましても、あなたのお話は言い逃れにきゅうきゅうとされておるように思われてなりません。すでに私も先日、宮澤官房長官に対して、松野さんとあなたとお二人の罷免要求に参りました。よく調べてみますけれどもこういうように御迷惑をかけましたことについては遺憾の意を表します、特に総理大臣からお二人に対しましては厳しく注意をいたしますというお話があった。宮澤さんは全面的にこのことを認めた。  そこで問題になりますのは、一部の新聞にも書かれておりますように、あなたは言わなかったとおっしゃいますが、言外に、他の野党が中国に漏らしたんだというような意見新聞に出ておるのであります。少なくとも国務大臣発言だ、慎重でなければならない。わが党は大いに迷惑しているんです。  もう一つ申しますよ。竹村健一という評論家と称するやつはこの間も盗作問題で大問題になった。この男がこういうことを言っているんです。これはわが党の土井たか子君の選挙区であります兵庫県におきまして、「教育をみんなで考えよう」という会がございました。出席者は大体千人くらいだったそうであります。     〔中川(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 その中において質問が行われた際に、こういうことを言っています。「変えた・変えないよりも、この二カ月新聞が騒いだ事実の方が大事なんだ、」それから「この話の起こりは、社会党の女代議士の土井とかいうのが中国大使館にタレこんだのが事の起こりだ、こんなありもせぬことをタレ込むやつは中国大使館の犬であり国賊だぜ。新聞もいいのはサンケイその次が読売・悪いのは朝日毎日だ。」こう言っているんですな。これは講演後の質問であります。  ところで、私は録音を聞きましたが、こういうことを言っている。「それでね、大体ですね、けさの新聞にも出てたけど、箕輪という大臣がね、やっぱり通報したやつがおる、社会党の。僕も聞きました。これは土井たか子という女代議士……。」明確にあなたから聞いたということを言っているのだ。しかもそれが公衆の面前で、しかも選挙区で言っている。これに対しては、少なくともあなたの御発言というものは社会党を誹議するものであるというとり方をせられてもやむを得ないでしょう。すでにあの、まあ盗作をするくらいのやつなんだけれども、この竹村健一なる者はこういうことをしゃべっておるんだ。あなたは責任を感じませんか。どうです。そしてまた、あなたはこの竹村健一に対してこういうことを言いましたか。どうです。
  177. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 私が岐阜発言をいたしましたとき、私は政党の名前も言っておりませんし、個人の名前ももちろん言っておりません。そして、私が岐阜で発言したときに、私の頭の中には土井たか子先生の顔も名前も、全然ございません。そんなことは全然考えておりませんでした。これは土井たか子先生に飛び火が行ったことについてはまことに申しわけないと思いますが、その後、週刊誌を読んでおりまして、ああ、土井さんが疑いをかけられているんだなということを初めて知ったわけであります。  それから、兵庫県における竹村さんの御発言、いま初めて承りました。私は面識はございますけれども、ここ十年来竹村さんとは話をしたことがございません。ましてや、頭にもなかった土井さんのことを竹村さんに申し上げた覚えは毛頭ありません。神聖な国会で私が証言をいたします。何かの間違いだと思います。
  178. 井上普方

    井上(普)委員 あなたはいま岐阜での発言には個人の名前もお出しにならなかったし、政党の名前もお出しにならなかったとおっしゃいます。それはそれだろうと私は思う。しかしながら、それを類推せしめるような御発言があったのじゃございませんか。だから各新聞が、野党をともかく攻撃しておるんだ、一部野党を売国奴呼ばわり、ということを書いた。あるいはこれは一つ新聞だけではございません、もうすでに神戸新聞にいたしましても、共同通信にいたしましても、朝日にいたしましても、毎日にいたしましても、書かれているのです。すべてあなたがある政党を類推せしめるがごとき発言になっている、記事になっている。あなたはこの責任はお感じにならなければならない。ここの場であなたはそういうことについてのなにはしていただかなければなりません。  それからもう一つ、それで土井君につきましては、竹村君が捏造した御発言だと私は受け取りまして、私どもといたしましては法的な手続をとりたいと存じますが、これは親告罪でございますので、私の方も本人が外国から帰りまして処置をいたしたいと思いますが、あなたが土井君のことにつきまして、竹村さんとは十年来お話し合いをしたことはないということはよくわかりました。しかし、あなたのこのような軽率なる発言によって各新聞とも出されているのだから、この点につきましてはあなたは陳謝をする必要があると思いますが、いかがでございますか。
  179. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 岐阜で私の発言の中でこういうことを申し上げました。いま申し上げたように、外国がそれを聞いたら怒るであろうということを教えたという人を、私はうわさで聞きました。しかし、そういうことを言う人は、これは自民党の政経文化パーティーでありますから、きょうお集まりの自民党の方々の中にはないと私は思いますと、こういうことを言ったわけであります。そうすると、ほかの政党かなというふうなことに書かれたかもしれませんが、まさかきょうお集まりの人の中には、手を挙げさせてみましたけれどもだれもいませんし、自民党の中にはそういう人はいないと思いますということを申し上げたわけであります。
  180. 井上普方

    井上(普)委員 自民党にはおるまいということは、他党におるということを類推させるじゃありませんか。おるのですか、おらぬのですか。あなたは先ほど来、そういうような人がおるということをおっしゃっているのだから、それじゃ、だれが言ったのです、外国に。だれが言ったのです。あなたは、だれが言ったと聞いているのです。
  181. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 それは申し上げるわけにはまいりません。うわさとして聞いております。したがって、会場でも申し上げましたが、私が確認をいたしましたわけでもありませんし、見ていたわけでもありません。したがって、申し上げられません。しかし、きょうお集まりの皆さんのような自民党の中にはそういう人はよもやいないだろうと思いますということを申し上げただけでございます。
  182. 井上普方

    井上(普)委員 政治家として責任をとろうじゃありませんか。いいですか、自民党の中にはこういう人はおるまい、しかしうわさによれば、言ったのがおるけれども、その人は言えない。これは、他党の野党の中にはおるということに類推させる言葉じゃございませんか。無責任に、しかもそれをだれが言ったのだ、うわさでだれから聞いたのだということを言えば、言うことはできないと言う。こういう軽々なる——あなたが国務大臣でなければ、私は言いませんよ。少なくとも国務大臣である。そういう地位の者がこういう軽々しい発言をし、しかも、他党を誹謗するがごとくとられる発言をせられるということは、まことに迷惑至極。現にあなたの発言によって、あなたの発言だ、あなたから聞いたと言って竹村はこういうように誹謗しておるじゃございませんか。すでに被害者が出ておるのだ。あなたはこの際、ここで前言を取り消し、陳謝するぐらいのお気持ちはないのですか。宮澤さんは、もうすでにわれわれに陳謝している。御本人がそれに対して陳謝できないということは、われわれは納得できないのです。どうなんです。
  183. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 ただいま申し上げましたように、よもや自民党のきょうお集まりの中に、こういう自民党の中にはいないだろうと思うと言ったわけで、特段社会党とか、特段共産党だとか、他の野党の名前を挙げてその中にいるのですよということも一つも私は言っておらないのであります。政党人あるいは政党に属せざる人、先ほど先生が申しておったとおり、教科書検定官だとか、あるいは教科書をつくっている会社だとか、ほんの一部の日本人しか知らないのでありますから、その人がどこの政党に属しているかどうかというようなことは一切私は考えておりませんし、野党に疑いをかけるために申し上げたわけでも何でもないのであります。ただし、その発言によって土井たか子先生があらぬ疑いをかけられたとするならば、先ほども申し上げましたように、土井先生には非常に申しわけなかった。したがって、私の知っておる限りにおいて、たとえば竹村先生からそういう発言があったということでございますけれども、それについては、全く私は十年来物も言ったことがありませんということを申し上げて竹村先生の証言をしたつもりでおります。
  184. 井上普方

    井上(普)委員 時間が参りましたけれども、このような御発言でわれわれ納得するわけにはまいらない。あなたは、ここにおられる自民党の人は言ってはおるまい、しかも、あなたは知っておる。この白表紙の検定本を見ておるのは、先ほども申しましたように、検閲官と著者とさらには出版社だけしかそれは知らない。あなた、見た人がおりますかと言って手を挙げてくれと言ったって、見た人はおらないのはあたりまえの話なんだ。そういうことを言いながら、しからばあなたが、知っておる人は検定官と出版社と執筆者、これだけだということを言っておったのであれば、私は何も申さない。類推せしめるような言葉を吐いておるじゃありませんか。他党の人だと言わんばかりのことを言っておるじゃありませんか。  私も、実はこの間「社会党にもの申す」というテレビの番組に出ました。自民党から三人、公明、民社、共産から各三人で、私は十二人と対談を二時間やった。そのときにあなたの発言だと言って、箕輪さんはこう言っていますと言って、自民党の中から私に対して、社会党が中国に漏らしたのじゃないかという質問がありました。そんなことをもし箕輪が言うたとするならば、箕輪郵政大臣というのはうそつきであると私は言いました。すでにそのように伝えられておるのです。またあるいは自民党の中から流しておるのかもしらぬ。公開の場で、テレビの前で私はそれを聞かされた。重大だなと思っておるから、この前も宮澤官房長官に対して私は抗議を申した。宮澤官房長官は御迷惑をかけたと言ってわれわれに陳謝しておるにもかかわらず、御本人のあなたは何らそれに対して反省の色がない。許しがたい事柄であると私は言わざるを得ない。あなたはまだ他党に迷惑かけたと思っていないのですか。その点をお伺いしたいのですよ。
  185. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 何回も繰り返し繰り返し申し上げておりますように、ほかの政党に迷惑をかけるとか、そういう気持ちでしゃべったことでは一切ございません。ただし、いま個人の名前が出まして、土井たか子さんが大変御迷惑をこうむっているというお話がございましたが、そこへ飛び火をしておるということであれば、土井たか子さんには申しわけなかったなということで、私は何回も申し上げているところでございます。
  186. 井上普方

    井上(普)委員 土井たか子君個人の問題もさることながら、他の政党に対してあなたは迷惑をかけたと思っていないのですか。現に私は、私自身の事柄をあなたに申し上げておる。けさの七時三十分から徳島におきましてはこのテレビ放送が五十分にわたって行われておるのです。自民党の諸君の中から私にそういう質問があった。自民党の箕輪大臣がこう言うたが、社会党が漏らしたのですか、国を売ったのですかというようなことを言っていました。とんでもないということで私は強く否定いたしましたが、国民の中にはそういうように考えさせられるような発言があなたにあった。だから、宮澤官房長官は、私らに対しましてはまことに相済まぬ、他の政党に対して御迷惑をかけたことは相済まぬという謝罪があったのでございますけれども、やったあなた御自身が何らそれに対する反省がないということになりましたならば、われわれとしても重大なる決意を持たざるを得ない、いかがでございます。まだそれでも、個人、土井君だけについては迷惑かけたけれども、他党には迷惑かけていない、こうあなたは強弁なさるおつもりなのか、この点お伺いしたいのです。
  187. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 決して強弁をするつもりはございませんけれども、いま土井たか子さんの名前が出たので、そこまで御迷惑をかけているのかなということで申し上げたわけでございます。私は、きょうお集まりの自民党の方々にはよもやそういう人はいますまいということを言ったことで逆に野党の方々が、社会党とは申しませんが、その他野党の方々が疑われたとするならば、それはまことに遺憾であると思います。そういうつもりは全くなかったのです。野党に何かけんかして、野党がやったのですよということを言ったこともありませんし、全くそういうつもりはなかったのですけれども、しかしながら野党に大変迷惑をかけたということであれば、遺憾の意を表したいと思います。
  188. 井上普方

    井上(普)委員 ようやくあなたはそういうことをおっしゃられましたので、われわれは不満足でありますが、きょうのところはここで終えておきます。いずれ改めてこの問題についてはもう一度機会を得てやりたいと思います。  時間がございませんので、もう一つ外務省当局にちょっとお伺いしたい。  教科書問題で少しお伺いしたいと思ったのですが、時間がございませんので、違う問題でございますけれども、公共企業体の労働組合の諸君が、議決案件にいたしましたがためにこの点をILOに提訴いたしております。ILO事務当局からは、これは早く返事をくれ、少なくとも私らが聞いておるのでは、十月上旬までに返事をくれということを政府側に要求いたしておるようでありますけれども、まだその御返事がないようでありますが、早急に御返事を出すおつもりであるか、いつごろまでに御返事を出すおつもりであるか、その点をひとつお伺いしたいと思うのです。
  189. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  本件につきましては、ILO事務局よりできる限り早期に意見の提出を日本政府として求められておりますので、外務省といたしましては労働省その他関係省庁とも十分連絡を取り合いまして速やかに対処していきたいと考えております。いつまでに出せるか、現在作業しておりますが、できるだけ早く出したいと思っております。
  190. 井上普方

    井上(普)委員 できるだけ早くということはILO当局も言っておるようでありますが、少なくとも十月の上旬には出せるということを私どもは期待してよろしゅうございますか、その点だけお伺いしておきましょう。
  191. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  ただいま申し上げましたとおり、ILO事務局からの照会に対しましては特に期限というものは付してありませんが、われわれとしてはできるだけ早く対処したいと考えているわけでございます。十月の十日までにという先生の御指摘でございますが、いつまでに出せるかちょっと現段階ではお約束いたしかねるというのが現状でございます。
  192. 井上普方

    井上(普)委員 それは約束できぬと言うけれども、極力早く出して労働者の諸君を安心させる、提訴を実現させるということを外務省当局もやらなければ、世界的にともかく信用を失墜するということを申し上げて、私の質問を終えます。
  193. 永田亮一

  194. 新村勝雄

    新村委員 最初に外務大臣及び現政府外交の基本的な姿勢についてお伺いしたいと思いますが、これは前の井上委員も触れておりますので、重複をしないようにお伺いをしたいと思います。  かつて、これは福田総理のときでありましたけれども、日本の基本的な外交姿勢はいわゆる全方位外交である、全方位外交を展開するんだということを折に触れて言っておられたわけであります。その前にもやはりそういう趣旨のことは政府としては言っておられたようであります。それから何年か経過をいたしまして、世界情勢も若干は変わっていると思いますけれども、いわゆる平和国家としての日本は全方位外交でなければならないという考え方に対して、外務大臣はどうお考えですか。
  195. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本外交を進める上におきまして、福田元総理が外相当時に、また総理当時にも全方位外交ということを強く主張をせられておりましたが、私もそのとおりに心得ておるわけでございまして、ただ、そのときどきの情勢に応じまして、ある程度国によってアクセントがつく、そういうことはこれはあり得ると思いますが、基本的には全方位外交で結構だと思います。
  196. 新村勝雄

    新村委員 全方位外交の考え方を踏襲する、ただしと、ただしがついておるわけであります。これはそうおっしゃるだろうと思っておったのですけれども、やはり日本はアメリカと安保条約を結んでおるという関係がございます。さらに、いわゆるサンフランシスコ体制の、もとに組み込まれておる。別の面からすれば、アメリカの世界政策あるいは世界戦略と無関係ではあり得ない、こういうことはあろうと思いますけれども、そうしますと、ただし書きつきの全方位外交、こういうことになるわけでありますが、それがどの程度のどの範囲で全方位外交と言われるのか、ただし書きがそこにどういう形でどういう程度にかかわっていくのか、これを伺います。
  197. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 新村委員がおっしゃるように、日本外交の中で日米関係が基軸とも言える、これはそのとおりでございますが、先ほどお答えしたように、そのときどきでアクセントと申しましょうか、ウエートがある程度違うことを現実として認めなければならない。対米外交はただいま申したとおりでありますが、しかし、日本として近隣諸国との外交というものを重視しなければなりませんし、また、最近のように中東でいろんな問題が起きる、日本が大切なエネルギー源をここへ求めておる、そういう見地からすると、中東外交を等閑視することはできないというようなことでございまして、ある程度のアクセントがつくということは認めざるを得ないと思うのであります。
  198. 新村勝雄

    新村委員 よく言われるのですが、世界の力の配置状況というのですか、それはいわゆるソ連・東欧ブロック対西側、こういう形でとらえられる場合がありますけれども、そういう場合に日本はどういう位置におるわけですか。
  199. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 世界情勢を見て、東西関係というのが非常に重要である、こういうことになりますと、現に西側で首脳会議を持つ、ベルサイユ・サミット、オタワ・サミットというように首脳の連携をとり、またこのサミットが非常に重要視されておるということからお考えいただいてよろしいかと思いますが、日本は西側の一員として外交を進めておる、こういうことになります。
  200. 新村勝雄

    新村委員 東と西という概念ですけれども、これには二つの意味があると思うのですが、いわゆる政治体制上の東と西という概念が一つはあると思いますね。共産主義あるいは社会主義ブロック対自由陣営、こういう図式が一つありますが、そのほかに、いわゆる両軍事大国が軍事的に対立をしておる、対決をしておる、そういう形で軍事力が配置をされておる、こういう形での東と西、こういう見方があると思うのですけれども、そういう場合に、日本が西側であるという、そういう考え方はどういう見地からの西側であるのか、それをお聞きしたい。
  201. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御質問を私なりに解釈しますと、地域的関係なのか、軍事的関係なのかということになろうかと思うのでありますが、ただいま申し上げましたように、いわゆる西側の一員である。ですから、これを私なりに解釈すれば、西側の、価値観を共有しておる自由主義、資本主義の立場の諸国、それと共産圏諸国、それがいわゆる東西関係として一応考えられることではないかと思いますが、その場合の西側の一員、こういうことでございます。
  202. 新村勝雄

    新村委員 政治体制上の西、東あるいは地理的な、地政学的な西、東ということと、それからもう一つの西、東があるんだと思うのですね。それは、いわゆる米ソの世界戦略上から見た西、東ということがあると思うのですけれども、日本立場はどちらであるのか。どちらの意味における西側であるのか、両方の意味における西側であるのかということです。その点いかがでしょう。
  203. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私はただいま御説明を申し上げましたように、価値観を共有しておる西側の一員、こういうふうに受けとめておる次第でございます。
  204. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、両大国の世界政策あるいは世界戦略とは直接は一応関係ない、こういうことに理解してよろしいですか。
  205. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この米ソの対立という事実はあると思うんですね。そして、そういう世界戦略の中の東西というとらえ方もあろうかと思いますが、私が申し上げておるのは、いわゆる西側の一員である、同じ価値観を共有する諸国の一員である、そういうことで、東西対立の中の一員というふうに受けとめておるわけではございません。
  206. 新村勝雄

    新村委員 いやしくも平和国家を自認する以上は、東西両大国の世界戦略の一環であるということであってはならないし、これは絶対に避けなければならないと思うのですけれども、最近公表された防衛庁の「日本の防衛」、これは防衛庁の所管だと言えばそれまでですけれども、外務省とは密接な関係があるはずであります。  いわゆる日本の安全を図るという観点からすれば、これは防衛庁と外務省とはきわめて密接な関係があるわけでありますけれども、その概要を見てみますと、従来以上に特定の国を仮想敵に仕立て上げていく、こういう姿勢がはっきり出ておるわけです。こういう点について、この「日本の防衛」の第一章の「世界の軍事構造」というところを見ますと、四カ所、五カ所にもわたって特定国を、仮想敵という言葉は使っておりませんけれどもそういう表現をしておるわけです。こういう姿勢、考え方に対して大臣はどうお考えですか。
  207. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いまその文章が手元にないのでありますが、仮想敵国という表現であるのか。従来、いま御質問の趣旨がソ連を念頭に置かれておるとするならば、日本はソ連について潜在的な脅威がある、こういう見解をとっておることは事実でございます。
  208. 新村勝雄

    新村委員 「日本の防衛」によりますと、ソ連の行動なりあるいはその軍事配置を日本のいわゆる潜在的な脅威という観点から解釈をしておるわけですね。単に事実を事実として述べておるだけではなくて、一定の観点に立って解釈をしておる。ということは、そういう言葉は使わないけれども、仮想の敵国というか軍事上の対立の相手というか、そういうことに仕上げておるということは、この文章を読んでまいりますと明白ですね。そういうことと、それから全方位外交あるいは日本の平和主義、こういうこととのかかわりを大臣はどう説明をされるのか。そこらを明確にしておかないと今後の外交論議が全く一貫しないものになってしまうと思うのですが、いかがでしょう。
  209. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本は、言うまでもなくソ連邦との間では近隣の相接する国である。したがって、外交の面ではこのソ連との間を重視しておるわけでございます。現在ソ連との関係が仮に悪いということで考えてみますならば、それは平和条約が結ばれておらない。日本としては、固有の領土の返還を求めて、これを解決して平和条約を結んで正しい外交関係を結びたい、こういうことを念願としておるわけでありますが、しかし近隣の国のことでありますから、その平和条約が結ばれない段階でも国交を持ち、また必要に応じての対話を行っておる、そういう意味合いからいたしますれば全方位外交の中の対ソと言えるわけでございます。
  210. 新村勝雄

    新村委員 対ソ関係ですけれども、対ソ関係についてお伺いをしたいわけですが、その前に、現在の第二次大戦終了後の世界の流れといいますか、それは何といってもその基点をなす、原点をなすものはヤルタ協定ではないかと思いますね。これが、戦争のまだ終結を見ない一定の段階で秘密協定として、日本があずかり知らない形でつくられたわけですけれども、その後の世界の力を根本において規定をしておるのはヤルタ協定であって、サンフランシスコ体制も、これはヤルタ協定が基本的にその底の流れにあるからこそああいう形になったと思うのですけれども、そういう大きな流れの中で日本日本の領土問題も不幸な形に置かれておるということだと思うのです。  ですから、そこらの基本的な認識の上に立ってやはりこの問題に対処をしていかないと、その問題だけを取り上げてもなかなか先に出ないのではないかと思いますが、外相はどういうふうにそこらの認識を持っておられますか。
  211. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ヤルタ協定、そういう秘密協定のあった事実を認めないわけにはいかないと思いますが、しかしながら日本は、この協定というものはあくまでも関係国間の私的のものである、日本がそういうものに制約されるものではない、こういうことで一貫してきておると思います。したがって、この領土問題を云々する場合には、言うまでもないサンフランシスコ平和条約を基本に考えなければならないと思います。
  212. 新村勝雄

    新村委員 日本はあずかり知らないわけでありまして、これはもちろん日本の責任ではありませんけれども、事実として戦後の世界の流れの根本にあるのはやはりそれではないか。そういうところからサンフランシスコ条約も出てきたし、またソ連のいわゆる東欧圏の制限主権論も出てきたし、場合によってはソ連はアフガンの進駐についてもやはりそういう発想が基点、底流としてあるのではないか、そういう解釈もされておるわけでありますけれども、そういう流れを認識しながらいかに対ソ外交に対処していくかあるいは懸案の問題に対処していくかということが重要ではないかと思いますけれども、そういう点はいかがですか。
  213. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ヤルタ協定が話し合われたその当時の経緯、そういうものから考えますときにその流れがそのままで来ておる、こういうことになりますと、このヤルタ協定の志向するところを非常に重視しなければなりませんが、その後におけるこのヤルタ協定の関係国の動静を見る場合、おのずからこの協定の価値というものは結ばれた当時とは大きく変遷しておると思うのであります。特に日本としてはそのような協定を承認することはできないし、またいわゆるヤルタ体制を認めるわけにもいかない、幸いにしてアメリカあるいはイギリスの考え方を現時点ではどうかということを判断いたす場合には、この協定は形骸化してきておるものではないかと思うのであります。
  214. 新村勝雄

    新村委員 これはもちろん日本はあずかり知らないし、アメリカはその後必死になってヤルタ協定の軌道修正を図ろうとしたわけですけれどもそれがなかなかできない、依然としてできないまま現在も世界を支配する大きな力の中に働いているということは争えないと思うのです。そういう状況の中で日本はどう対処していくかということなのですけれども、そういう状況があるにもかかわらず、やはり日本としてはいわゆる全方位外交の可能性を追求していく、そういう姿勢が必要だと思いますけれども、外務大臣はいかがですか。
  215. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 全方位外交、そしてその中に対ソ外交というものを考える。対ソ外交重要性また必要性は先ほどから申し上げておるとおりでございます。ソ連邦は近隣の国でございます、また現に国交を持っておってその間にいろいろな行き来があるわけでございますから、対ソ外交もまた日本としては重要であるということは言うまでもないのであります。
  216. 新村勝雄

    新村委員 現在の日ソの関係はどういう状況と御認識になっていますか。
  217. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日ソ間で非常に残念なことは、国交回復後平和条約締結をしようということで進んでまいっておりますが、領土問題についてソ連が解決済みであるというかたくなな姿勢をとり、また固有の領土である北方四島に軍事基地などが置かれておるというまことに遺憾な状況にあるわけでありますが、日本といたしましては、この問題を解決して平和条約を結んで日本とソ連との間が本当に友好親善の中におつき合いができるようなことに一日も早くしたい、こういうことで努力をしておるわけでございますが、国交回復して経済的、文化的な関係はありながらも最も大事な点が欠けておるということで、きわめて残念に思っておるところでございます。
  218. 新村勝雄

    新村委員 かつて日ソ共同宣言までこぎつけた実績があるわけですね。そのときは平和条約締結と同時に歯舞、色丹は返す。択捉、国後についてはそのときは解決しなかったということだと思うのです。ところが、現在はその状況からはかなりまた遠く離れていくというような状況だと思います。日ソの間の共同宣言のときの状況と現在の状況、これは大変な不連続であると思いますが、そこをどうお考えになりますか。
  219. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日ソ共同宣言を踏まえますならば、その後領土問題が継続的に話し合われて結論を得るべきものではないか。また、一九七三年の田中・ブレジネフ会談の折にも両国の間の懸案事項について継続的に話し合って平和条約を結ぼう、そして記録によればそれは領土問題であるということは明らかであったと思うのでございます。そういうことから考えますと、この八、九年の時日の経過、この間はソ連がかたくなな姿勢をとっておって日本としてきわめて遺憾な状況にある、すなわち現時点は領土問題未解決、平和条約の締結されない、日本として非常に遺憾な状況にある、こういうことでございます。
  220. 新村勝雄

    新村委員 そこで、この状態を放置しておけばいつになっても前進はないわけであります。前外務大臣のときに、現実にそこまではいかなかったと思いますけれども、かなり前向きに対ソ問題を考える、こういうような公式の発言もあったわけであります。若干の準備工作等もやられたようでありますけれども、その後それがほとんど進展していないということだと思いますが、現大臣になられてから対ソ打開工作をどのようにやられているのか、その概要を伺いたいと思います。
  221. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 園田外務大臣当時にグロムイコソ連外相とお話し合いがあって、ひとつ事務レベルの協議をしようじゃないか、こういうことがあったと思うのであります。そしてそのことは、私が外相就任後におきましても継続されて、本年一月、モスクワにおいて高級事務レベルの協議を行っておるわけでございます。その席上でも、残念ながら懸案の領土問題についてはソ連側が解決済みという姿勢を崩さない、まことに遺憾であります。  また、私としても対ソ関係は大事なことである、こういう見地に立っての努力はいたしておるわけでございまして、先般軍縮特別総会の機会にグロムイコ外相と腹蔵のない意見交換をいたしましたが、やはり依然として領土問題は解決済みということを言われております。また、今後におきましても、たとえば今度の国連総会で幸い会う機会を得ますならば、日本としての主張というものを繰り返したい、また理解を求めたい、こう思っておる次第でございます。
  222. 新村勝雄

    新村委員 大臣になられてからソ連外相にお会いになって腹蔵のない意見交換をなさったということでありますけれども、腹蔵のないと言うからには、相手の考え方もある程度はわかったのではないかと思います。そこに何らかの前進の手がかりがなかったのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  223. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま御説明申し上げたとおりに、園田外相の場合でも私の外相の場合でも、出先で懇談をしておる。かみしも脱いで話し合おうということがそういう出先での話し合い、こういうことになっておるわけでありますが、御承知のように正規の日ソ外相会議ということになりますと、外交上のしきたりとして、相互主義でありますから、本来であればグロムイコ外相が訪日をされましてそして懸案問題を初めとして両国間の問題について協議をし、ときに結論を得る必要があるのではないか。問題問題で結論を得る必要のものがあると思うのですね。もちろん領土問題が妥結をして平和条約が結ばれるということが日本としての最も強い主張と期待でありますが、その問題については、いままでの状況からすると常に解決済みということを言われるきわめて遺憾な状況にございます。これらのことについてはねばり強く交渉をし、また、御承知であろうと思いますが、現在、国連の場を通じて国際世論にも訴えておる、固有の領土であるということの主張をしてその反響についても日本としては期待をしておるようなわけでございます。
  224. 新村勝雄

    新村委員 国連の場を通じて国際世論を喚起するというお話でありますが、国連の場で単なる言論の形でそれをやるのか、あるいは国連の機関に国際司法裁判所というのがあると思いますけれども、それに提訴というのですか、そこで決着をつけるというお考えもあるのですか、それらも含めて国連での解決ということなんですか。
  225. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 両国がお互いの立場を固執しておるような長年の状況にありますから、私どもは日本の主張というものには一点の曇りもないということをかたく信じておりますので、国際司法裁判所に提訴してそこで決着をつけるということも一つの方法であり、好ましいことだと思っておりますが、残念ながら国際司法裁判所に持ち込む上には、そのことについての両国の合意がなければならぬということで、これもなかなか前進をしかねておる、ソ連が応じてきておらないという状況にあるわけでございます。  それからただいま国連で北方領土問題を訴える場合に、ただ言論でそういうことを言うだけのように受け取られがちの面がございますけれども、しかし、従来の経緯から見ますと、日本の主張というものが順次各国に理解をされておるというケースがだんだんに出てきておりますので、やはりねばり強い努力というものの必要性を痛感しておるわけでございます。
  226. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、司法裁判所における決着というのはソ連が同意をすればおやりになる考えがあるのか、あるいはそういう提案をいままでされたことがあるのかどうか。
  227. 栗山尚一

    ○栗山説明員 御質問のとおり、政府といたしましては、ソ連が応じますれば国際司法裁判所で領土問題について裁判所の法律的な判断を得るということは従来から明らかにしております。先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、ソ連がこの問題について裁判所で争うということに応じませんために、やむを得ず裁判所に提訴することができないというのが現状でございます。
  228. 新村勝雄

    新村委員 そうすると、その点もこれから主張されますか、それともそういったこととは別に外交交渉でおやりになる、一本やりでいくということですか、両方併用されるわけですか。
  229. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ソ連の従来からの態度に照らしますれば、遺憾ながらソ連が裁判所で物事決着をつけるということに応ずる可能性というものはないというふうに判断せざるを得ないと考えております。したがいまして、本件につきましては、従来からも申し上げておりますように、ねばり強くソ連と外交的な話し合いを通じて解決をしていくということで一貫した努力を続けておるということでございます。
  230. 新村勝雄

    新村委員 最後に、この点で大臣にお願いやらお伺いするのですけれども、こういう外交折衝をする場合に、そういう言葉は使わぬにしても、文脈からすれば相手国を仮想敵国とも言えるような表現をするあるいは扱いをする、あるいはまたそういう世論をつくっていく、こういうことは決して得策ではないように思うのですね。従来も自民党政府は、基本的には全方位外交でいくということもおっしゃっておるわけでありますし、何といっても過去において多くの問題はあったにしても隣国でありますし、またこういう大きな問題も懸案として持っておるわけでありますから、それを平和のうちに解決をするという基本的な姿勢がないと、かえってこの解決をおくらせる、こういうことになるのじゃないかと思います。そして、たとえば軍事問題にしても、軍事問題を客観的に冷静に事実を述べるということであればいいのですけれども、そうじゃなくて、これをたとえば潜在的な脅威という形で主観的な解釈を与えるということは、いたずらに両国の間に無用の波乱を起こすことになりはしないかと思うのですけれども、大臣はいかがでしょうね。
  231. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 新村委員のおっしゃることで私はいいと思うのです。  と申しますのは、たとえば北洋漁業問題、これは毎年時期が参りますればその話し合いをして、日ソ漁業条約、ソ日漁業条約を結ぶということを現実にやっておるわけです。  それで、潜在的な脅威というのは、別に日本がそういう見地に立つ立たないにかかわらず、ソ連がどういう意図であるかは存じませんが、現にSS20やバックファイアの配置の状況、それにもう一つ北方領土の軍事基地のことなどを考えた場合、日本としてこれは黙視しておるわけにはいかないので、そういうことを潜在的な脅威という表現をしておるわけであります。日本としては、これは決して好もしいことではないわけでありまして、隣国のことでありますから、平和条約が結ばれて友好親善を深めるということは日本としての大きな方針で、よろしいと思います。また、そういう心づもりでおります。
  232. 新村勝雄

    新村委員 平和国家が仮想敵国をつくるというのは大変な矛盾でありますので、その辺よくお考えをいただきたいと思うのです。  時間がありませんが、もう一点だけお伺いいたします。  外務省が十九日ですか外交文書の一部公開をいたしましたが、現在の外交というのは国民の世論に基礎を置かなければ本当の力が出ないと思います。かつては、前の時代には、外交というのは全く時の権力者の手中にあって、国民は全く知らされないうちに事態がどんどん進行していったわけですけれども、そういうことでは困るわけでありまして、そういう意味でもできる限り外交文書等も公開をしていただく、明らかに国益に反するという部分を除いてはできる限り公開をしていただくというのがいいと思うのです。ところが、現在の日本外務省の公開基準というのは、英米に比べてかなり厳しいというふうに言われております。これを少なくとも英米並みにするか、あるいは英米並み以上にしても、日本の場合にはいわゆる軍事大国のようにそういう面での秘密がはるかに少ないはずでありますから、ほとんど全部の外交文書を公開できるはずでありますけれども、その基準についてもっと緩和するお考えはないのかどうか。  それからまた、次の公開がいつになるのか。それから、たとえば戦後処理の問題については永久に秘密ということはあり得ないと思いますけれども、最も秘密を要する部分についてはこれは大体いつごろまでに公開するのか、そういう方針を伺いたいと思います。
  233. 伊達宗起

    ○伊達説明員 お答えいたします。  最初に、公開の際の基準について厳格な公開の基準でやっているのでもう少し欧米並みに緩くしたらどうであるかということでございます。  私ども実は、これは現在、情報公開ということは非常に問題意識として、特に政府の持っている情報というものを国民に知らせることが必要だということから、情報公開法というようなことも言われて検討されている状況にございますけれども、御承知のように外務省は独自の判断によりまして、外交関係の記録を公表するということに踏み切ったわけでございまして、それが六年ちょっと前でございます。第一回は五十一年の五月に公表したわけでございます。そういう意味で、外務省としては時代に先駆けまして努力をしているところでございますので、その点は御評価いただきたいと思うわけでございます。  ただ、当初発足いたしましたときから、やはり外交記録の性格から申しましてどうしてもまだ公表を差し控えなければならないものもあるということで、若干は公表を差し控えてきたものでございまして、今回も、基本といたしましては、外務省のファイルにありまして外交記録として保存されているものはできる限り広く公表する、公開するという方針が大前提でございますけれども、やはり現在の外交問題と直接関係あるようなものは公開が差し控えられるということでございまして、やむを得なかったものと思います。ただ、つけ加えますと、全体といたしまして公開しなかったもの、非公開にしたものの数はそんなに多くございません。一割にも満たないものであると御承知おき願いたいと思うのでございます。  それから、次の公開はいつごろになるであろうかということでございます。  これは実は外務省の公開の基準といたしましてもう一つ、三十年のルールということでございましすので、三十年たったものは公開していくということでございますので、原則的に毎年必ず一年は経過するわけでございますから一年分は出てくる。そうすると毎年一回は公表、公開をするということになるわけでございますけれども、何と申しましてもこの公開の作業といいますものは、特に今回は第七回目でございましたけれども、ちょうど平和条約関係ということで、そろそろわが国の対外関係というものが非常に複雑になり、範囲も広がってきて、文書も多くなってきたという状況にございましたので、本来は昨年に公表すべきであったものが一年ぐらいおくれてしまった。これはどうしても人員、予算が乏しいところで記録公開の作業を始めたわけでございますので、この点もまたさらに改善していかなければならないと思っておりますけれども、今後は外交再開、昭和二十七年以降のことになってまいりますので、どうしても非常に膨大な作業にならざるを得ない。そうすると、現状の勢力をもっていたしましては毎年毎年一回ずつきちっと公開できるかどうか、実は見通しが立たないような状況にございますので、次の公開時期はいつかということにつきましては私からただいまはっきり申し上げるわけにいきません。ただ外務省といたしましては、せっかく始めた事業でございますので、国民の御要望にもこたえるべく、できる限り早く全力を尽くして整理のついたものから公開していきたい、そういうふうに考えている次第でございます。
  234. 新村勝雄

    新村委員 終わります。
  235. 永田亮一

    永田委員長 春田重昭君。
  236. 春田重昭

    ○春田委員 外務省の広報活動についてまず御質問したいと思います。  日本の商品の広告宣伝というのは一流である、ところが政府日本紹介は二流とよく言われておるわけでございまして、この海外広報につきまして外務省基本方針、また現在とっている活動について簡潔にまず御説明いただきたいと思います。
  237. 加藤淳平

    加藤(淳)説明員 お答え申し上げます。  ただいま御質問にございましたように、日本を海外に知らしめるということは戦後ずっと一貫して実施してまいっておるわけでございますが、まだまだ誤解が多い、理解が足りないというのが実情でございます。しかし、私どもといたしましては、在外公館を通じ、あるいは国際交流基金というような外郭団体、あるいは民間団体に対する助成というような手段を通じまして、日本の真の姿、ありのままの姿を海外に知らせるということのために努力をいたしております。特に、昨今非常に財政状況がむずかしくなってまいりましたが、その中でいろいろと知恵を出しながら努力をいたしているところでございます。
  238. 春田重昭

    ○春田委員 大臣にお尋ねしたいと思いますが、今回の日本教科書の問題、侵略というものを進出、侵攻と、また削除したり、満州事変や南京事件等の誤った紹介、こうしたものにつきまして外国から痛烈な抗議が出ておるわけでございますけれども、大臣としてはどのような御認識なのか、御見解をお伺いしたいと思います。
  239. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本教科書に対してアジア諸国、特に中国、韓国から厳しい批判があったということは事実でございますが、先般の宮澤官房長官の談話をもとに、韓国、続いては中国外交上の問題としては一応御理解をちょうだいし、一段落をしておるという状況にございます。  今後は、日本の国内における教科書検定制度が、これらの批判について検定審議会の委員の方方がどのようにお考えになり、今後の基準の改正とか記述の改正について御協議願うか、こういうことだと思うのでありますが、基本としては日中共同声明前文あるいは日韓国交回復の際の両国の合意事項の中にそれぞれ、日本として過去の行為を反省する、そういう立場でおりますので、これからの教科書問題について、一応外交上については一段落をしておるとは言いながらも、迷惑をかけたとかそれに対する反省とか、そのことについては常にわれわれとしては心得ておかなければならないことだと思います。
  240. 春田重昭

    ○春田委員 その国を正しく理解したり、またしてもらうためには教科書が最も重要な資料となるわけでございます。日本紹介の各国の教科書があるわけでございますけれども、大臣、各国の教科書の中にも誤った日本の紹介がされていること、そうした事実を御存じですか。——大臣です、大臣に聞いているのです。局長に聞いてない。大臣に聞いているのです。
  241. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、各国の教科書あるいは教材につきまして日本についての間違った記述などがあることは認めなければならないと思います。  そこで、それらのことにつきましては文部省の外郭団体でございます国際教育情報センターが各国のそういう教科書、教材を常にレビューしておると思います。そして間違いがあるという場合にはそのことを指摘しておって、それなりの効果を上げておると承知しております。
  242. 春田重昭

    ○春田委員 日本の紹介というのは当然文部省がやるとともに、外務省ないし在外公館の業務の一環として日常やっていく必要があるわけでございます。いま大臣がおっしゃいました財団法人の国際教育情報センターが出しております資料の中にも、これはオーストリアの教科書でございますけれども、日本の銀座を紹介しているのですけれども、まだ電車が走っているわけです。それからこれはイギリスの教科書でございますけれども、奈良、平安朝時代があたかも現代の日本みたいな形で紹介されている。それからこれはレバノンです。けれども、これも最近の東京という形でこういう明治時代の挿絵が挿入されているわけです。——これをちょっと大臣に見せてください。  また、ある教科書の中には日本中国の一角であるような、そういう記述もあるわけでございまして、こうした諸外国の日本紹介の実態に対して、文部省だけに任すのじゃなくして外務省も積極的に意欲的にやっていくべきである、私はこのように思っているわけでございますけれども、外務省につきましては、先般の教科書問題では各国から強烈な抗議がありまして政治問題化したわけでございまして、わが国としてはこうしたいわゆる誤った紹介記述に対して外務省としてどう対処しているのか、お聞きしたいと思うのです。
  243. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いま資料を拝見させていただきましたが、ただいまの春田委員の御指摘のような事実が各国の教科書、教材にあることを承知しております。先ほど申し上げた国際教育情報センターは、これは外務省の認可の公益法人でございまして、外務省として補助金をつけて、この過ちを正すような御努力を願っておるわけでございます。  この各国の教科書、教材の過ちということについては、これはもう大分古い、恐らく十四、五年前からこの国際教育情報センターが中心でいろいろ指摘をしてまいったと思います。私の記憶に間違いなければ、私、前に文教委員長をやったりしたことがございますが、その当時からのことで、相当努力をしておると思うのです。いまこういう立場でございますからそういうわけにはいきませんが、私もこの国際教育情報センターの評議員などして、いろいろ協議に参画したこともございます。したがって、春田委員のおっしゃるように、そういう間違いが公然と教育の上で行われておったんではいけない、日本としてそのようなことのないように努力をすべきだと思います。
  244. 春田重昭

    ○春田委員 そんな人任せみたいな発言じゃなくして、いわゆる過去から問題となり指摘もした、努力もしたとおっしゃっても、現実そのような紹介が相も変わらずに出ているわけですよ。そういう点で、外郭団体だけに任すんじゃなくして、もっと本省、在外公館が努力すべきだと私は思うのです。たとえば米国人や韓国人の世論調査をやってみても、日本に対する感覚的な意識というのは非常に大きな差がある。私たちが思っている以上にあるわけですよ。これはやはり外務省の広報活動の一端というそういう仕事がありながら、非常に弱いという面を端的に示した例ではないかと私は思うのですよ。そういう点で、私は強く外務省の反省を促すものです。  また、日本をどういう国に売り込むかは、民間企業だけではなくして、私は政府自身がやってもいいのじゃないかと思うのです。たとえば欧米諸国は元首初め自国の商品の売り込みには物すごい力を入れているし、努力しているのですね。かつてフランスのジスカール大統領が日本に来た場合も、コンコルドの売り込みをやったと聞いております。また、カナダのトルドー首相が来たときにも原子炉の売り込みをやった。現在英国のサッチャー首相が来ておりますけれども、いわゆる日産の自動車工場の英国進出の問題についても、非常に忙しい中を割いてまでも会社役員と会おうという努力をしているわけです。こういう点から考えても、総理を初め外相が先頭に立って日本のPRをやる必要があるのではないか。もちろん企業のお先棒を担ぐというのではなくして、日本の国益になるものについては、私はいわゆる国策としても意欲的に取り組むべきである、こうしたいわゆる広報活動も、売り込みをやるべきである、こういう考え方を持っておりますけれども、大臣どうでしょうか。
  245. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 春田委員がおっしゃるとおりに、日本外交の推進の上に広報活動が重要であることは言うまでもないと思います。外務省国会の皆さんの御協力のもとに、予算とかあるいは人員とかそういうものに大変な御理解をちょうだいしながら、広報活動についてもまた力を入れておるところでございますが、これはいわゆる多々ますます弁ずということで、これでいいということはないのであります。十分な徹底した広報活動の必要性は私もつとに認めておるところで、今後もその方針で広報活動には一段と力を入れてまいりたいと思います。
  246. 春田重昭

    ○春田委員 広報活動もさることながら、また情報活動も非常に弱いわけですね。たとえば最近の例では日米の貿易摩擦の問題、また日米の経済摩擦の問題、対ソ経済制裁の措置の問題、または対韓の経済援助の問題、高金利政策に対する対米の分析の問題、防衛費の増額要求問題、過去においてはオイルショックの問題、中東情勢の問題等もある。また特に教科書問題で、先ほどから論議されておりますけれども、中国、韓国政府の意向や国民感情の分析と情報収集が非常に悪くて、相手国の譲歩の限度を見誤って二転、三転した、そして結果的に長引かせてしまったという例もあるように、これはやはり情報収集が非常に弱いという点を示した例ではないかと私は思うのです。  私もたまに海外に行きますけれども、いろいろな商社の方や企業の方たちに会うわけでありますけれども、むしろ在外公館よりもこうした商社や民間企業の方が情報が早い面が多々あるわけですね。そういう面でも、広報とともに情報収集、そして分析、これは欠かすことができない問題だと私は思っておるのです。正確に早く仕入れることが日本を守ることになるわけでございますので、そうした点でどのように御認識なさっておりますか。
  247. 伊達宗起

    ○伊達説明員 お答え申し上げます。  おっしゃいますとおり、確かに迅速でかつ的確な情報収集というのは外交の生命でございます。外務省といたしましても三十年来、外交再開以来、特にその点には意を用いてきているわけでございますけれども、御承知のように、最近では臨時行政調査会の行政改革に関する第三次答申がこの七月に出たわけでございますが、そこでも情報機能の強化という御指摘を受けているわけでございます。  したがいまして外務省としては今後ますます情報機能というものを強化していきたいと思っておりますが、いままでやってきた問題意識として、いままで改善を試みてきたところ、また今後も努力を傾けていきたいと思いますところは、まず第一に情報収集を担当する職員をふやすこと、それから在外情報でございますから、職員の在外勤務におきます期間というものを従来よりも長期化する、それによって情報ソースとのコンタクトを維持する。  それから、通信手段を機械化する、あるいは電算機の利用ということで最新の技術を採用して省力化を図る、それからまた迅速化を図る。さらに担当職員の研修、訓練というものを強化して、情報収集に遺漏なからしめるというようなことをやっているわけでございます。また組織の面におきましても、情報収集のほかに、ただ単に収集するだけではなく、分析し、整理し、それを管理して、さらにそれを外部の関係政府機関ないしは関係の民間筋に伝達をするということも重要ではないかということで、この方面にも力を入れていきたいというふうに考えているわけでございます。
  248. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、外務省本省には報償費というのが本省と在外公館に予算化されておりますけれども、この性格と予算額につきまして簡単に御説明いただきたいと思います。
  249. 伊達宗起

    ○伊達説明員 報償費の予算の額でございますが、何年から……、最近の数年でよろしゅうございますか。  五十四年度におきまして、外務本省では十八億四千三百八十三万四千円、在外公館が二十九億五百七十八万五千円、合計いたしまして四十七億四千九百六十一万九千円というのが予算額でございまして、決算額は四十七億四千八百九十一万五千円になっております。五十五年度におきましては、外務本省が十八億二千五百三十万四千円、在外公館が二十七億八百三十六万円、合計いたしまして四十五億三千三百六十六万四千円というのが予算額でございまして、決算額は四十五億三千三百六十二万八千円ということになっております。昨年度、五十六年度でございますが、外務本省では十八億二千五百三十万四千円、在外公館が二十五億七千六百六万九千円、合計いたしまして四十四億百三十七万三千円というのが予算額でございまして、決算額は四十四億百三十一万八千円ということになっております。本年度は予算額だけでございますが、外務本省が十八億五千三百十万円、在外公館が二十六億九千十万円、合計いたしまして四十五億四千三百二十万円というのが当初の予算額になっております。  報償費と申しますのは、本来的な定義から申しますと、国の事務事業に関して功労があった者に対しましてその労苦に報い、あるいはそのような国に対する寄与を奨励する意味において国が使用する、あるいは国の事務事業についての部外の協力者に対して謝礼という意味あるいは代償的な意味において使用する経費でございまして、先ほども金額を申し上げました外務省の報償費と申しますのは、諸外国との関係におきまして外交関係を有利に展開するために使用するものでございます。  これを大別いたしますと、在外公館におきます外交活動あるいは情報収集等に必要な経費でございます。それからまた、特定の問題に関して調査を依頼する、その調査に対する代価というようなぐあいにも使われております。また、国際会議へ参加いたしましたりあるいは各種の使節団というものあるいは特派大使等を外国に派遣いたします際に、所要のいろいろな外交工作が必要でございます。その場合に報償費を使わしていただく。あるいは外国の元首ないしは要人が本邦に参ります。その場合に国賓、公賓として招待外交に必要な経費として使う。あるいは一番最後でございますけれども災害見舞い、緊急な災害見舞いをしなければならないというようなときには使わしていただいているというのが大体外務省といたしまして報償費を使う目的の大別でございます。
  250. 春田重昭

    ○春田委員 情報収集のために、たとえば先ほど問題になりましたIBM事件のように、要するにお金で情報を買うというのですか、こういうことは外務省としてやっているのですか。また、それは許されることなのですか。
  251. 伊達宗起

    ○伊達説明員 お答え申し上げます。  外務省の情報収集と申しますのは、非合法な情報収集はやらないということで、すべて合法的な手段によって獲得する情報を言っているわけでございまして、ただ、その場合にも情報の提供者はそれだけのサービスをしているわけでございますので、それに対して何がしかの代償と申しますか、代償的な意味のものを使うことはときどきあり得ることだと思います。ただ、これは、先ほどIBMの例を引かれましたが、IBMの場合には非常に秘密の情報を非合法な手段によって獲得したというところが問題とされているわけでございますが、外務省の場合にはそういうことで情報を獲得しようとしていることはございません。
  252. 春田重昭

    ○春田委員 合法的にはやるけれども、いわゆる情報を得るためにはお金を出すこともある、代償はお金と理解してもいいんですか。
  253. 伊達宗起

    ○伊達説明員 お金だけには限りません。ほかのものもございます。
  254. 春田重昭

    ○春田委員 お金もありますか。
  255. 伊達宗起

    ○伊達説明員 含まれております。
  256. 春田重昭

    ○春田委員 先ほど局長の方からいわゆる情報活動は非常に大事であるということで、予算、人員面でも今後増加していきたいという話がございましたけれども、この報償費に関しましては、先ほど局長が御説明あったように五十四年度から年々減少しているわけですね。全体の予算が厳しいのはわかりますけれども、いわゆる外務省全体として調整しながら、臨調答申にも出ているわけでございますから、この報償費についてはやはり情報活動のためには増額していく必要があるのではないかと私は思いますけれども、どうでしょうか。
  257. 伊達宗起

    ○伊達説明員 お答え申し上げます。  春田委員指摘のように年々減額ということでございまして、先ほどの私の御説明でもおわかりくださいますように、報償費というのは主として在外において使用されているわけでございますので、在外における物価の高騰ということからいたしますと、実は減らないで定額であったとしてもだんだん窮屈になってきていることは事実でございます。これが増額になるように私どもとしても希望いたしますし、また努力もしてみたいと思います。
  258. 春田重昭

    ○春田委員 最後に大臣にお伺いしますけれども、いずれにいたしましてもこの広報、情報活動というものは人をふやしたから、予算をふやしたからということで得られるものではないわけでありまして、やはり臨調答申の中にあります外交機能の強化というものは現存機能の強化と体質改善ということにもとれるわけでありまして、やはり効果、効率的に予算を使う、また在外公館の方が一体となって要するに情報収集に当たる、広報活動に当たる、こういう努力がなかったならば、予算や人員をふやしても何ら効果あるものはとれないと私は思うのですね。  たとえば在外公館には大使、公使、領事そして一等から三等書記官までいるわけでございますけれども、こんな話も聞くわけですよ。たとえば、いわゆる各省から派遣のメンバーもおるわけです。通産や農林、いろいろな各省からの派遣のメンバーの方がおりまして、中にはある大使館においてはなかなかうまくいってない面がある。たとえば三等書記官が外務省出身で一等書記官が通産省出身であった場合、この一等書記官を飛び越えて公使の方へ大使の方へ報告が行く、大使館の中の活動そのものもそういう声を聞くわけでございますから、そうした面で臨調答申の中で言われる体質改善というものをやっていくべきではないか、このように私は考えるわけでございまして、最後に大臣の御所見をお伺いいたしまして、この問題については終わりたいと思うのです。
  259. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 まず、情報収集機能の強化それから広報活動をやはり強化していく、これらの問題は外務省の機能の上で非常に重要であるということはもう言うまでもないことでございますし、先ほど官房長より御答弁申し上げたような臨調からの第三次答申においても触れられておるところでございますし、またこの機能強化についての方針もお答えを申し上げておりますが、私といたしましてもより一層情報収集、広報活動に努力をいたしたい。ただ、この人員の増とか機構の改革だけではどうかという御指摘もございまして、まさにそのとおりでありまして、一体情報収集や広報活動が十分でき得る体制になっているかどうかということがやはり重要だと思いますので、より一層そういう面の努力をいたしたいと思います。
  260. 春田重昭

    ○春田委員 第二番目は国援法による帰国者の送還費の問題についてお伺いいたします。  日本の海外旅行者は毎年増加し続けておりまして、現在約四百万と言われているわけです。また移住、留学、勤務等の関係で海外に在住している人は約四十四万人と言われております。このように邦人の海外旅行、滞在者が増加するとともに国援法、すなわち国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律、これがありますけれども、この適用を受ける者が増加しているわけであります。  そこで、この国援法につきまして、その性格と手続につきまして、時間がございませんから簡単に説明いただきたいと思うのです。
  261. 藤本芳男

    ○藤本説明員 国援法につきましては、毎年認めていただいております予算、大体一千三百万円でございますけれども、これを在外公館からの申請に基づいて送る、こういうことでございまして、まず、もちろんその前提といたしまして、帰国したいけれども金がないという困窮者からの申請を待ちまして本省に稟請して送る、こういうことになっております。
  262. 春田重昭

    ○春田委員 この予算といわゆる歳出済み額と不用額というもの、この点で実態を調べてみますとかなり不用額が多いのですね。  たとえば昭和五十一年の予算額は二千六万五千円です。使用した額は六百三十一万五千円ということで、不用額は一千三百七十四万九千円、実に不用額は六八・五%になっている。五十二年度は二千六万五千円で使ったお金が五百二十六万八千円、不用額が一千四百七十九万六千円で七三・七%。五十三年度が一千七百二万三千円の予算で使った額が三百八十五万六千円、不用額が一千三百十六万六千円で七七・三%。五十四年度が一千三百八十一万三千円の予算で、これは補正で七百五十万八千円減額していますね、したがって、使った額が四百九十二万八千円ですけれども、減額しておりますから不用額が百三十七万六千円で九・一九%。この年度だけ非常に低い。五十五年度は一千三百八十一万三千円の予算で使った額が八百五万円、したがって残ったお金が五百七十六万二千円で四一・七%。このように非常に不用額が高いのですね。  確かに不確定要素が多いと思いますけれども、このように五カ年間の使用額を見てもかなり低い額で、不用額が多いわけでございますから、不確定要素があるとしても従来の実績、推移等を見れば額が大体出てくるのじゃないかと思うのです。よ。五十七年度の予算でも一千四百五万九千円が組んであるのでございますけれども、いわゆる不用額が多いという点で今後の予算の組み方について考える必要があると私は思いますけれども、どうでしょうか。
  263. 藤本芳男

    ○藤本説明員 先ほど先生御指摘の過去の事例もございますが、どうも最近のトレンドを見ておりますと大体におきまして、五十六年度が一番いい例かと思いますが、予算額一千三百三十万余りのうち大体半額を使っておるわけでございます。御指摘のようにそれでは半額が残っておるではないかということでございますが、ただこの経費は、困窮者の需要があります場合に対応しなければならない、多くの場合はきわめて人道的な理由があるわけでございます。したがいまして、もし需要が非常にふえた場合には、場合によっては予算を超えてでも出さなければならないこともあります。非常に極端な例といたしましては、昭和三十六、七年だったと思いますけれども、予算額の数倍に上る四千数百万というものを支出せざるを得ない事態があったわけでございますし、また、昭和四十六年、七年、八年でございますけれども、これも帰国者が非常に多かったということで対応せざるを得なかったというふうな事情がございますので、やはりこれは需要に応じて対応するということであろう、そのための予算額、こういうふうに御理解いただきたいと思っております。
  264. 春田重昭

    ○春田委員 それはわかるのですけれども、最近の実績を見れば非常に少なくなってきているということで、オーバーしても予備費があるわけですから、そうした予見しがたいものについては予備費を流用できるわけですから、そうした面で今後一考を要する問題であると私は主張しておきます。  この送還費の貸付状況及び返済状況ですけれども、これも説明してください。
  265. 藤本芳男

    ○藤本説明員 昭和二十九年にこの制度を始めましてから昨年度、すなわち昭和五十六年までの貸し付けの総額が二億三千七百万でございます。また償還してまいりましたのが約二千六百万円、償還が済んでないものが二億一千百万でございます。
  266. 春田重昭

    ○春田委員 昭和五十四年の決算額で見ますれば十六件の貸し付け、四十人が出ているわけですね。貸付額が六百十万円、返済額が三百十九万円となっております。そして貸付残高は昭和五十四年度の場合で一億九千九百十八万円となっているわけですね。五十七年四月三十日現在ではこの貸付残高が二億一千百一万となっておるわけです。すなわち債権額となっているわけですね。先ほど御説明になったように貸付額が二億三千六百九十三万円に対し返済額が二千五百九十一万円ということは約一割ぐらいですよね。貸付残高が二億一千百万円という非常に高い額になっておるわけでございますけれども、この理由はどういう理由なんですか。
  267. 藤本芳男

    ○藤本説明員 帰国者のほとんどが資力のない困窮者でございまして、もちろん私どもは貸し出しを実行するに当たりましては領収書をとりますし、また返還誓約書というものもとるわけでございます。     〔委員長退席、東家委員長代理着席〕 かつまた、帰国者が日本に帰りました後も督促の努力を怠らないわけでございますが、実情はきわめて困窮した家庭が多くございましてなかなか督促に忍びないという事情がたくさんあるわけでございます。したがいまして、このような実情になっております。
  268. 春田重昭

    ○春田委員 必ずしも全部が全部病人や老人じゃないと思うのですね。そういう点で帰国してくる、そうして自分の田舎に帰るということで、在外公館ではいろいろな誓約書、何年間で返済するとかそうしたものを書くみたいでございますけれども、なかなか返さないということで外務省そのものが地方にそういう督促の実態調査等に行くと思うのですが、これはどれくらい予算を組んでいるのですか。
  269. 藤本芳男

    ○藤本説明員 調査につきましては、国内での調査でございますけれども、手紙を出すということ、それから領事二課の課員が出張して督促に回る、そのための出張旅費ということでございますので、ただいま数字を持っておりませんけれども、金額としては必ずしも多くないと思っております。
  270. 春田重昭

    ○春田委員 非常に少ないということを聞いているのですよ。そういう点で外務省は本省一本ですから、大阪に事務所みたいなのがあるみたいですけれども、全国くまなく調べていくのは大変だと思うのです。そういう面でも、今後いろいろな面を考えていく必要があるのではないかと私は意見を言っておきます。  そこで、この国援法は昭和二十八年に制定されまして二十九年から貸し付けが始まっているわけでございまして、二十九年からの累積が先ほど言った二億一千百万になっているわけですね。この間には、先ほどおっしゃったように老人や病人、それから生活保護を受けた方もあると思います。そうしたたぐいの方たちはかなりあるのではないか、こういった面からもそうした実態をよく掌握して、いわゆる徴収不能な方については年度を切って棚上げするとか、そうした措置も必要ではないかと私は思いますけれども、どうでしょうか。
  271. 藤本芳男

    ○藤本説明員 御指摘のとおりでございまして、私ども債権の管理の態様を改善しようということで考えております。特に、十年以上たちました、言うなれば消滅時効にかかったようなものにつきましては、調査をいたしまして債権を整理するということを考えてみたいと思っております。
  272. 春田重昭

    ○春田委員 続いて中国在留邦人の帰国問題について御質問いたします。  中国在留邦人の引き揚げ、一時帰国問題でございますけれども、この帰国手続と引き揚げ者、一時帰国者が何名おるのか、この実態についてまず御説明いただきたいと思います。
  273. 藤井宏昭

    藤井説明員 お答え申し上げます。  昭和五十六年度につきましては、引き揚げ者の総数が五百九十二名、百六十四世帯でございます。それから一時帰国者は、往路につきましては二百六十四世帯で人員は五百四十五名、それから復路につきましては世帯数が二百四十二、人員としては四百五十一名でございます。
  274. 春田重昭

    ○春田委員 この引き揚げまた一時帰国者の手続はどういう手続をとったらいいのですか。
  275. 藤井宏昭

    藤井説明員 手続といたしましては、わが在外公館に対する申請ということでございまして、それに対しまして日本政府から帰国の際の旅費、それから渡航手続、税関申告の必要のために北京、上海に一時滞在する必要があるわけでございますが、その滞在費を政府が持つということでございます。
  276. 春田重昭

    ○春田委員 この在留邦人の帰国旅費の負担が外務省と厚生省で分かれているわけでございますけれども、どういうところで負担が分かれているのか、これを簡単に御説明いただきたいと思います。
  277. 藤井宏昭

    藤井説明員 お答えいたします。  厚生省は旅費を持っております。旅費は大別して二つございまして、中国の国内の旅費、航空運賃、それから中国から日本に参ります旅費を持っております。それから外務省が分担しておりますのは、先ほどちょっと触れましたけれども、北京あるいは上海に参る必要がございまして、その数日間の滞在費でございます。
  278. 春田重昭

    ○春田委員 そこでお伺いしますけれども、先ほどお伺いしました国援法におきましては外地の負担は全部外務省が持っているわけですよ。要するに在留地から北京や上海に来るまでは全部外務省、それから北京、上海から船や飛行機で日本に来る、それも外務省、そして日本に着いてから自分の田舎に帰るまでは厚生省が負担しているわけです。ところが、この中国在留邦人につきましては、居住地から北京や上海までは厚生省が持つ。そして全員が集まるまで一時そこに滞在しますからその北京や上海の一時滞在費は外務省が持つ。そして北京、上海から東京、大阪に船や飛行機で行く、これは厚生省が負担。そして東京、大阪から自分の田舎に帰る、これも厚生省が負担しているわけでございまして、国援法と違いまして外務省は一時滞在費だけしか見ていないわけですね。そういう面で手続が非常に複雑だという話もあるわけでありまして、そういう点からいったら、いま厚生省が負担しているものについては、日本に帰るまでは全部外務省が持つ、こうして一本化してすっきりすべきであるという意見もあるわけでございますけれども、この点、どうでしょうか。
  279. 藤井宏昭

    藤井説明員 この考え方はどちらかと申しますと厚生省が基本的な帰国の旅費を負担する。ただ、北京、上海におきましては中国政府に対しましてわが公館が、個人個人ではなくて一括して滞在費を支払っているということでございまして、それが中国政府の便宜にもなる、同時に在外のわが邦人の保護という観点からも望ましいということで、中国における特殊事情と申しますか、そういうことで滞在費を負担しておるということでございます。これは昭和二十八年以来ずっと問題なくこういう方式で実施されておるというふうに了解しております。
  280. 春田重昭

    ○春田委員 確かに昭和二十八年からそういう形でやってきているわけでございますけれども、日中正常化したのが昭和四十七年で、それから大使館もできたわけでございます。四十七年以前は大使館がなかったわけでございますからそういう形でもいいと思うけれども、国交が正常化して大使館ができた以上四十七年以降については国援法と同じような扱いをすべきじゃないかという考え方を私は持っておるわけでございまして、この辺もすっきりするために考えていただきたいことを要望しておきます。  それから、中国の残留孤児の問題でございますけれども、身元が判明したのは何名か、そのうち永住帰国したのは何名か、一時帰国したのは何名か、これは厚生省ですか、人数をまず御説明いただきたいと思います。
  281. 加藤栄一

    加藤(栄)説明員 御説明いたします。  中国残留孤児でございますが、これまで調査依頼がありましたものは、ことしの八月三十一日現在で千四百六人でございます。これまでに身元が判明している者が五百七十二名でございます。身元が判明した者のうち本邦に帰国いたしました者、永住帰国者百二十名でございます。それから  一時帰国者が二百四十二名でございます。
  282. 春田重昭

    ○春田委員 そこで問題なのは、この永住帰国者の場合、中国に残る養父母、または配偶者、奥さんや子供さんですね、これに対する措置が問題になったわけでございますけれども、その後厚生省でいろいろ検討されていると聞いておりますが、どういう見解になったのですか。
  283. 加藤栄一

    加藤(栄)説明員 中国残留孤児で帰国される方につきましては、養父母の方あるいはそのほかの身内の方でその残留孤児が扶養しておりました方が中国に残られる、こういう問題が起きておるわけでございまして、ことしの五月に中国に職員が打ち合わせに参りましたときに、中国側から扶養の問題が提起されております。私どもの方では、永住帰国の方のわが国へ帰られましてからの社会適応の問題とかいろいろございまして、ちょうど中国残留日本人孤児問題懇談会というのをこの三月から開催しておったのでございますが、その懇談会におきましてもいろいろ御審議をいただきまして、この八月二十六日に、早期解決の方策について御意見をいただいたところでございます。その懇談会の御意見等も踏まえまして、いま対応策を固めて中国側と折衝いたしたいというふうに考えておるところでございますが、基本的な考え方といたしましては、基本的には孤児と養父母との間で解決するというのが本来の性格ではございますけれども、この問題の解決が中国政府協力の前提とされておるということと、孤児の帰国直後は自立が困難なこと、それから、孤児の身分といいますかいまの身の上に陥った事情というものを考えれば、政府としても援護措置を講ずることが必要である、こういう御指摘を懇談会でいただいておるわけでございます。したがいまして、孤児あるいは孤児を引き受けました日本の親族が自力で扶養費等を支払うことが困難な場合には、現在の社会福祉施策による資金貸付制度、具体的には世帯更生資金というものがございます。世帯更生資金貸付制度を私どもの方で担当部局とも折衝いたしまして、孤児が養父母等に扶養費を仕送りする場合の資金を貸し付ける、こういうことで対応しようということで案をいま固めまして、また、送金を確実に養父母の方にお届けするということのために、特定の公益法人に送金の代行、そういう手続等をさせる、こういう二本の線を確定いたしまして、ただいま外務省を通じまして現地の日本大使館から中国側の意向を打診していただいておるという段階でございます。
  284. 春田重昭

    ○春田委員 外務省にお伺いしますけれども、この日本側の意向に対しまして中国政府の対応はどう出ているのですか。
  285. 藤井宏昭

    藤井説明員 去る九月十日、わが方の在北京大使館から中国外交部に対しまして、ただいま御説明がございましたような趣旨の申し入れをいたしまして中国側の意向をこちら側は聞いております。それに対しまして中国側外交部は、内部で詳細に検討した上で回答したいということでございます。現在中国政府内部で検討中であると承知しております。
  286. 春田重昭

    ○春田委員 当初中国側政府の意向は、そうした世帯更生資金による貸し付けでなくして、いわゆる援助、補助という考え方であったやに聞きますけれども、この点どうですか。
  287. 加藤栄一

    加藤(栄)説明員 その点、具体的に一定の方式を定めてこういうことではどうかというほどの向こうの方の要求というものはないと承知しております。私どもの方は、わが国の社会福祉の考え方から、あくまでもやはり自助努力というものが基本になりますが、またその自助努力をもってしても対応できない場合には社会保障制度が十分な支えをする、こういうことでいかがなものかというところで中国側にお話をいたしたいと考えておるところでございます。
  288. 春田重昭

    ○春田委員 この中国孤児に関する養父母の問題、また配偶者の問題、これは日本側からボールを投げて、中国がそれを受けて、いま中国側で検討中ということですね。  そこで大臣にお伺いしますけれども、大臣は二十六日から総理訪中されるわけでございますが、この問題につきましてはテーマの中に上がっているわけですか、また、大臣としてはこの問題につきましては懇談する予定になっておりますか。
  289. 藤井宏昭

    藤井説明員 ただいま中国側総理訪中の際にどういう問題を取り上げるか等について話し合い中でございまして、どの問題が取り上げられるかということは現段階では確言しかねる次第でございます。
  290. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 仮に外相会談の折にこの話が出るとかあるいは首脳の間でお話が出た場合には、孤児の皆さんが大変お世話になっておることでありますから、養父母の皆様のお気持ちも体し、また中国側のお考えも聴取いたしまして、誠意をもって臨んでまいりたいと思います。
  291. 春田重昭

    ○春田委員 この中国の孤児の肉親捜しにつきましては、昭和五十五年から予算化されましてその調査費用が出ておるわけでございます。五十五年が四十七名、五十六年が六十名日本に来ているわけでございます。五十七年度におきましては百二十名が見込まれているわけでございますけれども、そうした問題がまだ決着しておりませんので、五十七年度はこの肉親捜しがまだ始まってないわけですね。そうしたためにこの問題がこのまま推移して暗礁に乗り上げますと、この百二十名せっかく組んだ予算そのものが未消化になっていくおそれがあるわけでございますので、大臣訪中されたときは、この問題が大臣訪中によって解決するように努力していただきたい、このように要望しておきます。  ところで、中国問題とともに、先ほども問題になりました教科書の問題ですね、これにつきましては外務大臣は今回の訪中でどのように中国側に意向を示すつもりなのですか。
  292. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外交の上では御承知のように一段落いたしておりまして、現在日本の国内における検定制度の中で検討をしておるわけでございますが、この検定制度関係については、従来これは内政問題であるという御理解を賜っておるわけでございますが、何か中国側において意見があれば、それらについては誠意を持って聞いてまいり、対応できることはいたしたい、こう思っております。
  293. 春田重昭

    ○春田委員 文部省の方にはおいでいただきましたけれども、せっかくでございますがちょっと時間がございませんので、また後日御質問したいと思いますので、きょうはもう結構でございます。  最後に、アメリカの軍事技術の協力問題でございます。  現在外務省、防衛庁、通産省三省で検討中であると伺っておるわけでございますけれども、その後検討して結論が出たのかどうか、お伺いしたいと思うのであります。
  294. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  昨年来関係省庁の間で鋭意検討を続けてまいってきておりますが、現時点におきましてはまだ最終的に結論が出ておりません。その点御報告申し上げます。
  295. 春田重昭

    ○春田委員 結論が出てないということでございますが、外務大臣訪中されまして、その後国連に十月一日から五日まで行かれますね。この時期までには政府方針を決めてお行きになるのかどうか、その辺の見通しはどうでしょうか。
  296. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまお答えがありましたように、いまだ結論を得ておらないのであります。防衛庁長官も渡米をされます。私もニューヨークに参りました折にはシュルツ国務長官とお会いするので、そういう折に結論が出ておることが好ましいのでありますが、昨年来議論を繰り返しまして関係省庁の中での意見の一致をなかなか見ない現状でありますので、その現状を率直に鋭意申し上げて理解を得たいと思っております。
  297. 春田重昭

    ○春田委員 私たちは、この軍事技術というものは武器輸出三原則の中で武器とともに軍事技術も含むと理解しておるわけでございまして、今回のこの問題につきましては明らかに武器輸出三原則に抵触するものである、このように思っております。  政府としましては、この問題がアメリカから要求された場合、否定しないで、検討中であるということでお答えになっておることは、いわゆる条件等何らかの制約をしても前向きになることを示唆しておるものであると私は考えておるわけでございますけれども、新聞等では外務省や防衛庁は何らかの形で協力していきたい、通産省においては三原則を守りたいという点で非常に消極的、否定的であるということで対決しているようなことが書かれておるわけでございますけれども、外務大臣、どうでしょう。検討中であるということは前向きに検討するのか、向こうの言っていることについては全く話にならない、ただ、即答した場合日米安保条約の問題もあるし、また、外務大臣の国連の、またアメリカのそうした訪米の向きもあるし、若干時期をずらして報告したい、こういう後ろ向きの検討なのかどうか、その腹を外務大臣、お聞かせいただきたいと思うのです。
  298. 松田慶文

    ○松田説明員 いずれ大臣から御答弁あろうかと存じますが、ただいままでの検討の状況だけを御報告申し上げたいと存じます。  政府といたしましては武器三原則を今後とも堅持していくことには全く変わりございません。しかしながら御案内のとおり米国との間には安保条約、相互防衛援助協定という安保体制がございまして、その枠組みの中でよその国とは違った仕組み、状況がございます。特に相互防衛援助協定では技術あるいは機材等を相互に援助し合うという国会の御承認をいただいている条約もすでにあるわけでございまして、この間の調和、すなわち三原則の考え方とこの条約に基礎を置く安保体制との調和が実は問題の中心でございまして、その間が実は検討の主題となっております。したがいましてどちらを特にどうするということなく十全な調和を図るというむずかしい問題のために時間がかかづているということを御理解賜りたいと思います。
  299. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまの答弁で尽きるわけでございまして、従来戦後一貫してアメリカから日本は武器、技術の提供を受けておる立場からいたしますと、この三原則でなかなか対応し切れない面もある。したがっていまお答えがありましたように、どのような調整が可能なのかというところに問題があると思います。
  300. 春田重昭

    ○春田委員 委員部から時間を厳守せよということで言ってきました。大臣は宮中でサッチャー首相との晩さん会があるみたいでございますので時間厳守を言ってきたのじゃないかと思いますが、いずれにいたしましてもこの問題につきましてはまた後日防衛庁の決算委員会がございますので、その時点で改めて質問したいと思います。  いずれにいたしましても、今日のこの右傾化の現象というのは私たちに危惧を抱かせる面が非常にたくさんあるわけです。防衛費の突出問題を初めといたしまして、憲法第九条の改正の問題、靖国神社の公式参拝の問題、また教科書の問題等々考えてみたとき、武器輸出三原則をもし破ればこの右傾化に拍車をかけることになるわけでございまして、この国会決議は断じて守るべきである、このように私は主張し、本日の質問は終わりたいと思います。
  301. 東家嘉幸

    ○東家委員長 代理中野寛成君。
  302. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 きょうの新聞にも、昨日外務大臣がパレスチナ難民虐殺に関する国連調査団の派遣について御提案をなさったということが載っておりました。この国連の平和維持機能の強化につきましては六月九日の軍縮国連における総理の演説でも触れられましたし、八月二十四日にデクエヤル国連事務総長が来日されたときに、総理との間でまたそのことの話が繰り返されて行われております。大変大切な課題だと思うわけであります。  平和というのは口で唱えておれば実現をするというものではありませんし、その恒久平和を実現するということもまた大変困難なことであります。しかしながら現在起こっているあらゆる紛争を未然に防いだりまたは解決するためにわが国としても最大限の努力を尽くしていく、そういう具体的な行動がやはり望まれていると思いますし、むしろそういう具体的な行動がまだ乏しいとして、諸外国から日本に対する批判が集まっていると言っても過言ではない、そういう状態ではないかとさえ思うわけであります。  そういうことでお尋ねしたいわけでありますが、一連のこのような動きの中で国連の平和維持機能の拡充強化について一般的な願望だけを述べているのか、それとも日本として大いなる貢献をする具体的なプログラムや提案を持ちながら言っておられるのか、このような基礎的な認識についてまずお伺いをしたいと思います。
  303. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 国連の平和維持機能の強化拡充につきましては、ただいま中野委員がおっしゃったごとく、軍縮特別総会における総理演説の場合あるいはデクエヤル事務総長が来訪された折にもこのことに総理が言及をしておるわけでございます。  現在、外務省としてどのようなことを考えておるかと申し上げますと、第一は、世界及び各地域の軍事情勢を把握してその実態を適宜公表するような機構の設立がどうか、その可能性はどうか、こういうことが一つであります。それから国連の事実調査機能の強化の方策、こういうものについて検討する必要がある、また国連が国際紛争に臨機に対応し得るような各国における国連平和維持活動への協力体制をどのようにやるか、それから平和維持活動に関する国連による研修計画について検討する必要がある、こういうようなことを考えておるわけでございますが、これは言うまでもなく国連での平和維持機能のことでありますから、各国の合意のもとにただいま申し上げましたようなことが具体化することによりまして平和維持機能が少しでも強化されることを期待いたしたいわけであります。
  304. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 その場合にわが国としてどのようなことをなさる考えがあるのかということなんであります。いま大臣の御答弁中でもございましたが、その維持機能を強化しようと思えば、そしてわが国が何らかの役割りを果たそうということになれば、人的派遣や資材の供与等々、これは当然必要になってくるわけであります。また、たとえばきょうの報道でも、外務大臣の談話として報道されているパレスチナ難民虐殺に対する国連調査団を安保理に打診をするということを指示されたということなんですけれども、この場合にも日本からの団員派遣も含めての指示がなされたように報道されております。また現実にそういうことがなければわが国が何らかの役割りを果たしたということにはなかなかならないだろうと思います。これらのことについていかがお考えでしょうか。
  305. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  ただいま大臣がお答えになられましたとおり、基本的にわれわれといたしましては国連の平和維持機能をできるだけ活用するために加盟国として日本も及ばずながら協力したいと考えておるわけでございます。たまたま日本は現在安全保障理事会の理事国でございまして、かつ今月は安保理事会の議長も務めております。したがいまして、いま中野委員から御指摘のありました、第一にベイルートにおける虐殺事件でございますが、これにつきましては、先生御案内のとおり、おととい、ニューヨーク時間の十九日の明け方に安保理決議五百二十一号というのが採択をされておりまして、これに基づきまして国連の監視団を十名から五十名に増員すると同時に、国連事務総長に対してこのほかにとるべき追加的措置等々について四十八時間以内に報告をしろ、この報告に基づいて安保理事会でまた審議しようということになっております。したがいまして、この事務総長の報告は日本時間の今晩あるいはあした早朝くらいには出てくると思いますが、この報告の内容も確かめた上で、わが国としては、理事会の議長国でもありますので、できるだけ積極的な役割りを果たしてまいりたいと考えております。  それから、もう少し一般的な話といたしまして、わが国としては国連の平和維持機能を拡充するために、先生ただいま御指摘いただきましたように、従来財政的な協力はしておるわけでございますが、このほかに人的、物的な協力もしたいということで考えております。ただ、これは具体的な要請があって初めて具体的に検討し得る問題でありますので、現在作業しているものはありませんけれども、われわれとしていま考えておりますことは、たとえば南アフリカの不法占領下にあるナミビアというところがございますが、ここの独立ということが決定し、それの前提としての国連監視下の自由選挙が行われる場合には、この国連監視下における選挙の実施にわが国としては財政的手段以外の形で、いわば人的、物的になりますが、協力することを考えてみたいと考えております。  それからもう一つ、国連の平和維持機能というものは実は憲章上はっきりした準拠規定があるわけじゃありませんで、過去の国連の歴史におきまして経験的に編み出されてきたものでございます。したがいまして、この機会にもう一度平和維持機能というものを十分検討して、国際紛争が起きた場合にこれに臨機に対応し得るようにするにはどういうふうなことを考えるべきか、加盟国側における一層の協力体制のあり方とかあるいは国連における審議のやり方とか安全保障理事会との関係とか、いろいろ問題点があろうかと思いますが、こういう点につきまして国連でもう少し検討を進めるべきではなかろうかということを従来われわれは主張してきているところでございます。     〔東家委員長代理退席、委員長着席〕
  306. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 まだ具体的な問題が提起されなければその対応については生まれてこないということですが、しかしどのくらいまではやれるという枠はやはりきちっとつくっておかないと、緊急を要する場合にはそれから検討を始めたのでは間に合わないということがたくさんあると思います。  ちなみにお尋ねいたしますが、国連の安保理でレバノンに対して調査団を派遣をする、日本人も参加してくれ、こういうふうになった場合はどうなさるおつもりですか。どういう人が行くのですか。または行かないのですか。
  307. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 安全保障理事会が設立をいたします調査団といいますものはいろいろな形があろうかと思いますので、予断は避けなければならないと思いますが、一つの形といたしましては、安全保障理事会のメンバー国の代表で構成する調査団を現地に派遣するとか、そういうことはあろうかと思います。その場合、たまたま日本はいま安保理事会の理事国ですから、当然そういうところに参加する資格があるわけでございます。また、中東問題の重要性にかんがみまして、当然わが国といたしましてはそれに参加するということも含めて検討していくべきものであろうとは考えております。しかしながら、現在の時点におきましては、先ほど御説明いたしましたとおり、調査団を派遣するという形では具体的にまだ問題は上がってきていない、そういうことでございます。
  308. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それでは先ほどお答えになられたナミビアのことですが、選挙監視団、これは派遣する方向で前向きに検討されているようですが、ここにはどういう方を派遣することになるのですか。
  309. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  この点につきましてはまだ具体的な検討を進めているわけではありませんけれども、政府の内外、民間人も含めまして適当な方に参加していただくのが望ましいのではないかと思っております。
  310. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 話は若干変わりますが、たとえば東南アジア、カンボジア難民等々の難民キャンプに医療班等々を派遣してまいりました。むしろ民間のボランティア的な活動が中心になって始められたケースも多かったわけであります。  もうずいぶん前の話になりますが、その地域が騒がしくなったときに真っ先に日本人だけが逃げ出したということが報道されて、なんだずいぶん恥ずかしいことをということで批判が出たことがありました。この原因について一説には、その日本人の医療班を守ってくれるものがなかった、だれがその人たちの身辺を守るのか、日本の場合には常にこういうことの裏づけが十分にされていない。結局、外国の軍隊等に頼るのでしょう。しかし、果たしてそれが十分保障されると言えるのかどうか。常に不安感を持ちながらそういうところで従事するケースだってあるわけであります。  いずれにせよ、私たちは国が責任を持って海外のこういう国連の機能を発揮するための仕事にもっと積極的に参加をしていく、参加をさせていく。また、こういう軍事的な問題の場合には、当然そこには軍事専門家の派遣というふうなことも必要になってくるでしょう。そういう場合に果たして自衛官の派遣というものはできるのか否か。これらの問題はすでに事前にそれなりの調整が必要ですし、場合によっては自衛隊法の改正等が必要になってまいります。  いまこれだけ世界が騒がしくなってきて平和が危ぶまれているときに、だれの疑いも入れない平和をつくるための行動、騒動をおさめるための行動に日本が積極的に参加する、その中に自衛官が派遣をされたとしても、これは決してどこからもとがめ立てされるものではないはずであります。これらのことについても積極的に御検討がなされなければならないと思います。こういう基本的な問題について、個々具体的な問題についてはその都度検討する、または私がナミビア等についてお尋ねしましても、これはまだ検討中とお答えでしたから、それでは基本的な認識について大臣にお聞きをしたいと思います。
  311. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御質問は二つに分けてお答えしなければならないと思います。たとえばナミビアの独立支援グループヘの貢献、との場合の財政援助あるいは選挙監視要員の派遣、これは現在前向きに検討のできる問題でございますし、私としてはそういう場合には資器材の供与とか要員の派遣、これはぜひ実行をいたしたい、こう思っております。  ところで、この平和維持活動への自衛官の参加の問題になりますと、活動そのものは理解ができる。今後国民の幅広い支持を踏まえて検討すべきものと思いますが、現在、武力行使を伴わない場合でありましても、御指摘のようにそれば自衛隊法の改正を伴う問題でありますから、自衛隊法の改正をして自衛官を派遣するということについては、先般の通常国会におきまして総理御自身がそういうことは考えないということを明白にしておりますので、いま早急に自衛隊法を改正して、そういう場合にも用意をする、そういうことはこの段階では申し上げられないと思います。
  312. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 国連憲章に、平和維持活動への協力が国連加盟国の義務として二条及び四十三条に記載をされております。この義務に対して日本はこれから積極的に役割りを果たしていこうという心構えだけは、総理初め外務大臣も御発言をなさっているわけでありますが、先ほど来の御答弁ではまだもう一つはっきりしないのです。人的派遣また資材の供与等々、抽象的な言葉でわかるのですが、これらについてもっと積極的な役割りを果たす、そのための形はどうなるのか、人的派遣とは公務員なのか民間人なのか、もちろん両方あるでしょうけれども、きわめて抽象的でまだわかりにくいわけでありますが、大臣にもう一度そのことを含めてお尋ねをしたいと思います。
  313. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  先生御案内のとおり、国連憲章七章四十三条に定めてあります国連軍というものにつきましては、戦後の国連の歴史におきまして、米ソ間の対立が主要な原因でありますが、拒否権の壁というものがありまして、国連軍をつくるに至らないまま、したがって第七章を準用し得ない状態のまま国連は育ってきているわけでございます。そういう状態のもとで経験的に国連軍というものがスエズとかあるいは中東等々に派遣されまして現在に至っているわけでございますが、これはいわば国連憲章のいずれの章にも準拠しないものでございます。したがいまして、国際紛争が起きますたびにその都度つくっている、こういう状態でございます。それで、先ほど来私どもが申し上げておりますことは、こういう国連の平和維持機能というものをこの際もう一度見直しまして、一つ何か大きなパターンというものをつくっておく必要があるのではなかろうか、そのために加盟国間で検討しておく必要があるだろうということを申し上げているわけでございます。  したがいまして、国連に対する人的な協力という場合にも、現在置かれた状態のもとでは国連が出してくる要請に応じて対応していかざるを得ない。たとえばナミビアの場合ですと、選挙監視要員という形で要請が来た場合には、その選挙監視を行い得るような人材を国内で探す、そういうことで対応していかざるを得ない、そういう現状にあるわけでございます。
  314. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 もう一つ大臣にお尋ねしますが、六月三十日の参議院予算委員会で秦野議員の休戦監視団などに自衛官を出す方向に踏み込まなければ国連外交は実らないという質問に対して、大臣は、平和的なもの、休戦監視団などは考えねばならないと述べたとお聞きしておるわけであります。これは事実でありますか。大臣の真意はどこにありますか、再度お伺いしたいと思います。
  315. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 休戦監視団の構成というものをよく考えなければならないと思うのであります。また監視団の目的あるいはそれに伴う行動というものを考えておく必要があると思いますが、全くの戦争状態が終わって、そして国境について対立国の争いがあるが一応の話し合いがついておるのでそれを見守るというような非常に限定されたような場合、それも日本は最初から絶対に参加できない、こういうものでもないじゃないかというようなことで、ケース・バイ・ケースで考え得る余地もあるのじゃないかという趣旨で申し上げておりますが、これが一歩出て、監視をしておるが、しかしまたその間に万が一にも武力行使のおそれが出るというようなことになってきますと、おのずからそれは別問題になるのでございまして、これは大変デリケートなことで、恐らくそういう気持ちをあらわしながら秦野議員にお答え申し上げたと思うのであります。
  316. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 少なくとも外国でわが国の自衛官が軍事的行動に巻き込まれたりまたはそれに参加をしたり、これは絶対にあってはならないことですし、明確に憲法に違反することだと思います。私のお尋ねしているのは、明らかに平和維持のための行動、それも軍事的な行動ではない平和的な行動に関してのことでお尋ねをしているわけであります。前提としてはそういう意味大臣のお答えになった前提と同じことだと思います。そのことを積極的に考えるかどうか。本当に真剣に国連の平和維持機能を果たそうと思えば、日本日本なりに憲法の枠の中において最大限の役割りを果たさなければならないであろう、そのことをいま強く世界から求められていると言っても過言ではない。大臣もその辺を抽象的にいまお答えになったわけでありますが、それを積極的に御検討になるのかならないのか、単に大臣の現在の考えとしておっしゃっておられるのか、再度お聞きをしたいと思います。
  317. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 国連平和維持機能を強化しよう、拡充しよう、こういうことについては日本も積極的に検討することにやぶさかでない、そういう姿勢をとっております。しかしその検討の結果いろいろ結論が出て、その結論に伴って一体日本はどうするかという場合におきましては、ただいま中野委員がおっしゃったような日本としては限界がございますから、あるものについては参加のできない場合が起こり得るということは当然ではないかと思います。
  318. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ある場合は参加できないのは当然、そのことは最初からわかっているわけです。その派遣するための前提条件となるものを検討をされているのか、またはされるのかどうですかということをお聞きしているわけであります。
  319. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いまの段階は国連において平和維持機能の拡充とか強化をどうするか、こういう問題ですね。その検討にはもちろん日本協力をしていく。しかしその出た結論で日本はそれについてはどうするかということになると、日本には場合によっては参加し得ない場合も起きてくるのじゃないか、こういうことを申し上げております。
  320. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 結局、こういうケースの場合は日本はこういうふうに対応するという国内の検討というのはあるのかどうかということを聞いているわけです。国連全体として検討するということは先ほど来の御答弁承知をいたしました。しかし参加できない場合もその結果出てくるであろう、当然のことなんですが、しかしここまでなら出せるという積極的な姿勢日本が示すということの方が、せっかく日本側が提案した平和維持機能の強化について日本がいまとるべき態度なんではないでしょうか。結局どこかで検討がなされる、それを受けて日本はその場合検討する、それでは余りにもそれこそ無責任と言われても仕方がないのではないのか。日本はいま何を果たそうとして、何を提案しようとしているのか、そのことがわからないんです。それをあえてお聞きしたいわけです。
  321. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 一番先にイロハニ、まあイロハニとは言わなかったけれども、四つ国連による検討すべき事項を一番先に申し上げております。これは反復になりますから申し上げませんが。それで何か迂遠のようですけれども、その検討にはもちろん日本は積極的に意見も述べ、参加していいと思うんですよ。出た結果について、さあ日本はどうするかということについては、その際日本としては、その平和維持機能の強化拡充に日本としてでき得ることは積極的にやりたい、しかしそれには、中野委員もおっしゃっているように日本としての限界があるのじゃないか、こう申し上げておるわけであります。
  322. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 その場合に、それでは日本の限界、これは憲法上の限界も、またそのときによっては財政上の限界もいろいろあるかもわかりません。もう一度だけお尋ねいたしますが、その限界の一つに自衛官の派遣の場合の限界があります。そして、あくまでも私のお尋ねしているのは、これは平和的な内容の段階だけの限界を心得た上で申し上げています。しかし、それでもなおかつ自衛隊法の改正が必要になりませんか、自衛官を派遣するという場合には。そのような必要性が起こってまいりませんか。むしろ今日段階ではそのような事態を不幸なことだけれども迎えつつある。またそういう要請が来ないとは断言できない。むしろそういう要請は、明確にではないけれども国連の趨勢としてそういう動きがあることは事実だと私は思います。このことについて、国内として検討をしておく必要があるのではないのか。たとえば総合安全保障閣僚協議会等でこれらのことについて協議をしておく必要はないのか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  323. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この問題はすでに国会でも論議がされて、そして武力行使を伴わない場合はいいんではないかという御意見も出て、それについて前向きな答弁のあったこともございます。しかしながら、おっしゃるようにもし前向きにするとするならば早速に自衛隊法の改正という問題が出てきます。そうすると、その自衛隊法の改正についてはどうか。これについては、自衛隊法改正というそのこと自体からちゅうちょする向きもあって、総理は、いまこの段階では自衛隊法の改正は考えない、こういう御答弁をされた事実もあるわけでございます。また、中野委員のおっしゃるような御意見もあるわけでございますから、これは国民各界各層の意見を徴しながら長期的な検討をすべき課題だと思います。ただ、先般の通常国会ではそういう自衛隊法の改正をしないということを鈴木総理答弁されておりますので、現時点政府の方針はその総理のお言葉のとおりであるということを御了承いただきたいと思います。
  324. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それでは、先ほど申し上げましたが、大臣としては平和的なものについては検討もやぶさかではないという御答弁をなさった。それは長期的な考え方であって、というか基本的にはそういうことも将来必要になってくるだろうという大臣のお考えを持ちながら、しかし、総理のそういう表明に対して内閣の一員としてそれを政府方針だとして守っていく、こういうことなんですね。
  325. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのとおりでございます。
  326. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それでは、この問題については今後長い、それこそ長期な話でありますから、折を見て改めてまた言及をしていきたいと思います。  次に、教科書の問題に若干触れたいと思いますが、私はあのような教科書の問題が政治問題化したことが大変残念ですし、そしてそのことについては中国及び韓国との折衝の中で一応政治決着を見たことになっております。しかし、きのう、きょうの報道等でも、まだたとえばロサンゼルスやそのほかのところでデモが起こったり日本に対する批判的な運動がなお活発に行われているわけであります。決してこれはイデオロギーの問題ではない、国民感情の問題であります。そういう中で現地の日本人が財産的に被害を受ける、または危険を感じる状態に追い込まれているということさえもあるわけであります。政府として政治決着が済んだからそれでいいというものではないだろう、このように思うわけであります。  あわせて、やはりそれぞれの国々との文化交流というものがもっともっと活発に行われなければこの種の問題は今後とも尾を引いていくということではないだろうかと思います。ゆえに、今後、中国とも韓国とも、もちろんそのほかの国々ともそうでありますけれども、外務省として文化交流等についてどうお考えになられるのか、このことをお聞きしたいと思いますし、またこれからも折に触れて、それぞれの国民の皆さんに日本の意のあるところを十分に説明して、そしてわれわれは誤解だと思いたいけれども、しかし実際には意図的な動き日本の中にもないとは言えない。しかし、国民大多数の気持ちはこうなのですということを十分に理解してもらう必要がある。  たとえば日中戦争を侵略であったと考えるのはもう国民の率直な気持ちであるはずであります。中にはそれなりに言いわけをされる方もいらっしゃるでしょうし、ノスタルジア的に考えてこれを侵略と思いたくない方もいらっしゃるかもしれない。しかし、そのお気持ちはお気持ちとして、現実は侵略であったことは事実だと思います。こういう日本国民の率直な気持ちをあらゆる場を通じて伝えていく、そして日本に対する認識をもう一度新たにしていただく、この活動が大いに必要だと思いますが、現段階における外務省のお考えをお聞きしたいと思います。
  327. 加藤淳平

    加藤(淳)説明員 お答え申し上げます。  中国と韓国に対する日本を理解させるための活動と申しますのは、これは私どもの広報活動あるいは文化活動の実施の上でも最も重点的に実施しておりまして、たとえば本年度では財源の不足を補うために新たに補助金を供与いたしまして国際交流基金の韓国及び中国に対する活動を支援しておりますが、これに限りませんで、いろいろなパンフレットの作成等につきましても本年度は特別に重点を置いて予算をつけておりますが、そのような万般の分野におきまして中国と韓国というのは私どもの広報活動あるいは文化活動においての重点国として事業を実施しておる次第でございます。
  328. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 大臣に何か重ねてお聞きするようで恐縮ですが、日中戦争日本の侵略であったのかどうか、この問題が起こったときに文部省は直すことにずいぶん抵抗なさった。外務省の方は外交的見地、政治的見地からこれを是正すべきだというふうに御主張なさった、これはだれしもが知っていることであります。しかしこれは直すとすれば、事実からすれば侵略と日中戦争を書かざるを得ない内容です。ということは、外務省は日中戦争を侵略とお考えに、お認めになったというふうに考えてよろしいですか、改めてお聞きをいたします。
  329. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これについては一貫してお答えしておるのでありますが、日中戦争のそういう行為がある、これについて国際的に厳しい指摘、侵略戦争だということを言われておるわけですね。それで、政府はそういう指摘された事実を深く認識しておる。そして、その中国に対し、韓国に対しては、それぞれ国交回復のときの日中共同声明前文であるとか日韓の間の共同声明であるとか、そういうものに日本政府の気持ちとか反省とかというものを明確にいたしたので、それを厳守していく、これが一つ。それから、戦後、御承知のとおりの国際紛争を戦争手段によって解決するようなことをしない、いわゆる戦争放棄ということを明白にした、こういうことで日本姿勢というものははっきり出ておるのではないか、こういうことを申し上げてきておるわけであります。
  330. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 侵略と認めたか否か、その一言だけをお答えいただければよかったのですが、これは常にいま大臣答弁になられたような形で一言でお答えにならないお立場を厳守されておるようでございます。聞くだけまた同じ質問の繰り返し、押し問答になるかもしれませんからやめますが、しかし、ここでちょっとお聞きしたいのは、たとえばソビエトのアフガン侵略——まあ果たしてこれを侵略と言うのかどうか。言葉の使い方というのは、たとえばベトナム戦争のときにも北が南を解放した、果たして解放だったのかどうかいろいろな問題や論争が行われておりますが、いずれにいたしましても、外務省は侵略という言葉を外交文書やまたは外務省発行のいろいろな書類でお使いになったことがありますか。
  331. 栗山尚一

    ○栗山説明員 朝鮮動乱、朝鮮戦争あるいはベトナム戦争との関連で、政府が侵略という言葉を公的な文書で用いた例があるかという御質問でございますが、それはございます。  一例を申し上げますと、平和条約、旧安保締結のときに、同時に朝鮮動乱、朝鮮戦争のために派遣されました国連軍を支援するということで、米国との間に交わしましたいわゆる吉田・アチソン交換公文というものがございますが、その中で「武力侵略が朝鮮に起こりました。」という表現が日米双方の書簡の間で用いられております。
  332. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 言葉のすり合わせというふうな問題から、結局、侵略にするのか、侵攻にするのか、侵入にするのか、いろんな論議が交わされました。しかし、この際、こういう貴重な体験を経た今日、われわれはやはりこれらの言葉遣いについてはよほど慎重でなければならない。本当は慎重にしたがために今度の問題が起こったのかもしれませんけれども、そこに意図的なことが含まれておったと私たちは考えるがゆえに、やはり反省が必要だというふうに思いますが、これらのことについて、言葉の使い分けについてやはり十分慎重であってほしいな、こう思います。  この際、文部省にお尋ねをいたしますが、この問題が起こってきた、問題が拡大した一つの要因に、検定制度が民主的ではないとか、不明朗だという印象を持たれている。どういう法律の根拠に基づいて検定制度があるのかさえも明確でないという議論があります。この際、やはり検定制度そのものを見直し、そしてもっと民主的といいますか、国民が納得する開かれた検定制度というものを確立していくべきだ。検定制度をなくせとは私は申し上げません。検定制度はやはり必要だと思う。その検定制度をもっと国民が納得する開かれた検定制度にする努力というものが必要ではないか、こう思うわけであります。そのために、たとえばそれを明確に法律化していく、または検定の最終責任を負う機関、そのメンバーはやはり国会で任命する、そういうこと等も含めた検討が積極的になされるべきではないか、こう思いますが、いかがお考えですか。
  333. 藤村和男

    ○藤村説明員 ただいま先生から教科書検定制度についていろいろ御意見がございましたが、現在文部省におきましては、中央教育審議会におきまして、教科書制度全体を含めまして、教科書役割りとか、それから検定、採択、給与等のあり方等について御審議をいただいているところでございます。したがいまして、文部省としましては、この審議の結論を得た上で必要な措置を講じてまいりたい、こういうように考えているところでございます。  なお、検定の内容の公開についての御意見がございましたが、教科書検定のプロセスにつきましてはやはり採択の公正に影響を及ぼすおそれがあるという観点、それから基本的には、やはり教科書というものはでき上がったものについて判断をしていただくという考え方に基づきまして、これを公開にするということは考えておらない次第でございます。  それから、審議会の委員の人選などについてでございますが、この検定に関する審議会、正確に申しますと教科用図書検定調査審議会のメンバーは、やはり学問的、専門的な見地から内容について御判断をいただくということでございますので、それにふさわしい方に、文部大臣の任命によりまして、なっていただいているわけでございまして、特にその任命方法につきまして問題があるというふうには考えておらない次第でございます。
  334. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 任命の方法に問題があるないにかかわらず、それは国民が解釈することだと思います。  ゆえに私は、たとえば国会で指名をされる、現在日本の政治制度の中で国民を代表する国会が任命する、これが一番公正である、こう認めざるを得ない。結局、これは国民の誤解を生んではならないこと、また国民に信頼をされること、そういうことが大事なわけで、そのために私どもの考えとしては、公正な検定制度だ、またはその人的配置も公正に行われている、そのことを裏づける、また国民の目の前にはっきりと印象づける、そのことの一つとしてやはり審議会の制度、また国会の任命する制度等々、前向きに検討されなければいけないことではないか、こう申し上げたわけです。  その観点に立っての文部省の前向きの御検討を、そしてまた、できるだけ早い結論が出されることをわれわれとしては期待をしたいし、そのために法改正も必要ですから、手続はなお一層緊急を要するだろうというふうに思うわけですが、一言だけその考え方についてお聞きしたいと思います。
  335. 藤村和男

    ○藤村説明員 先ほど冒頭に申し上げましたように、中央教育審議会におきまして、検定制度も含めまして教科書に関する問題を御審議いただいているところでございますので、もちろんこの審議は基本的な教科書の制度に関するものに限定されるわけでございますが、それらの審議の結論を待ちまして対処をしてまいりたい、かように考えております。
  336. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 先に進みます。  北朝鮮へ渡った日本人妻のことですが、すでに今日まで二十七回にわたって閣議または国会、各委員会等で取り上げられている問題であります。そのたびに政府答弁は、善処しますという答弁が繰り返されております。しかし、いまだにこの問題は解決を見ておりません。  昨年、七月十七日の閣議で、時の奥野法務大臣がこの問題をお取り上げになりました。そして、政府としてあらゆる機会を通じて働きかける、そして努力したい、こういう見解がまとめられたようであります。  また、一九八〇年、一昨年の九月十五日の報道では、金日成主席も日本人妻の里帰り歓迎という見解を、当時日本から北朝鮮を訪ねた人たちにお答えになった報道が出ております。しかし、これまた全くその後の反応はありません。  先ほど同僚委員から中国残留孤児の話が出ました。大変大切な問題であります。同じようにこの日本人妻の問題も、中国孤児の親の平均年齢が六十五歳くらい、日本人妻たちの親の平均年齢はすでに七十歳を超していると言われています。どちらも緊急を要する問題であります。幸い、中国の人道的な配慮から、残留孤児についてはその作業が進んでまいりました。しかしながら、この北朝鮮へ行った日本人妻の問題は全く進んでおりません。  大臣も御存じだと思いますが、その運動をしている人たちがつくっている「望郷」というパンフレットがあります。ここに「外務大臣様へ」という手紙がことしの八月号に載っております。   里帰りお願い   今から二十一年前の秋と思います。   私等親類一同いくら反対してもむりやり連れて行かれました様な次第です。一時は気が狂いそうでした。   二〜三年経ったら会える様な話でしたが、二年位は何の便りもなく、毎日毎日便りが来るのばかり待っておりました。   その内便りがあり、涙を流し流し読みました。すぐ返事と小包を送り、届いた便りも一年近く経って来ました。   昨年迄、十二、三通便りが来ました。その内容は皆同じで物乞いばかりです。 お砂糖を送ってくれませんか、薬を送ってくれませんか、と。それを自分で使うのではなくて、それを売って、そして生活費に使ったりするのであります。  泣いて泣いて読むばかりでした。此の様な人々は大勢行って生活している事と思います。   何卒、一日も早く里帰り出来る様にお願い致します。 というのです。ほかに、すでに亡くなったお父さんの北朝鮮にいる娘さんへの遺言、おまえの名義で日本で貯金をしている、おれが死んでもそのことを忘れないでくれ、そういう手紙も寄せられております。まさしく人道上の問題です。なぜこの問題が遅々として一歩たりとも進まないのか、私どもには全く理解ができません。私は、ここで大臣のきっぱりとした御決意をお聞きし、また具体的な行動をなお一層強く要請をしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  337. 藤井宏昭

    藤井説明員 まさに先生御指摘のとおり、この問題は人道問題として外務省としても重視し、このためにいろいろ努力をしてきております。ただ、いかんせん北朝鮮とは国交がございませんので、日本赤十字社と緊密な協議の上、日本赤十字社を通じて先方の赤十字といろいろコンタクトしているわけでございます。なかんずく、昨年の三月には、外務省はすべての御家族の方々に書簡を発出いたしまして、その結果集まりましたデータをもとにいたしまして、日本赤十字社から昨年の九月に北朝鮮の赤十字社に対して調査の依頼をしております。その結果につきましては、さらに昨年の十月に再び、フィリピンで行われた赤十字国際会議の機会にも、赤十字の関係者が先方の赤十字の関係者にさらにフォローアップをしておるわけでございますが、先方からは返事がないという状況でございます。本年に入りましてからも、日本赤十字はいろいろなルートを使いまして先方の赤十字からの回答、調査結果について督促しておるわけでございますが、遺憾ながら現在までのところ回答がないという状況でございます。近々、九月末に北朝鮮帰還船が新潟に入港するということが考えられておりますので、その際再び先方と接触をするということが考えられている由でございます。
  338. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 いま御答弁の中にありましたように、国交がなくてもまさに人道的立場から帰還船に関する便宜を図り、そして今日まで、もうほとんど北朝鮮へ帰るという人たちも少なくなってきていると思いますが、しかし今日までずいぶん多くの人たちが帰っていかれた。そのときに日本人妻が一緒に行っているわけであります。結局今日まで行われたことはすべて、国交がないけれども人道的にということで行われているのです。しかし里帰りもできない。手紙の交換さえも、届いたのは珍しいのであります。幾たびとなく、手紙を交換したい、生活に困っていれば何か送ってあげたい、その親の気持ちさえ通じないというのはどういうことなんでしょうか。こちらが調査を依頼しても返事が来ない。私たちは、そこに何か問題が横たわっている。もっと国際的な世論を喚起することも一つの方法かと思いますが、私は、もっともっと日本立場でこの人たちを保護していく、そのことの役割りを果たさなければいけない。日本人なのでありますから。それがなくしてわれわれは安心して生活をできないということになってしまうではありませんか。私は、これらについて大臣にぜひとも積極的な役割りをなお一層果たしていただきたいと思いますが、大臣からの御答弁をお願いしたいと思います。
  339. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 全くの遺憾な問題で、国交がないということでとり得る手段に限界があるわけで、しかしそういう限界の中で日本赤十字社を通じて、先ほども答弁があったように、努力を繰り返してはおるわけでありますけれども、ほとんど反応のない状況にあるということはまことに残念至極のことでございます。限られた中でなお努力を継続し、、そういうことの繰り返しの結果が何か成果が出るようにいたしたい。  このメモをずっと見ましても、昨年一カ年間赤十字社の関係あるいは帰還船の関係で努力をしておる。本年に至りまして、わずかばかりの返書が来ておるとか、また先ほど御答弁がありましたように、今月末に帰還船の入港の機会に本件について先方との交渉をするというようなことでありますが、いずれにしても中野委員がおっしゃるとおりきわめて遺憾なことであり、人道的な問題でありますから、でき得る手段はせいぜい努力をいたしまして、従来も効果が上がってないことなんで御答弁を申すのにも大変心苦しいのでありますが、ひとつさらに努力をして何らかの成果を得たい、こう思います。
  340. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 他に用意をいたした質問がございますが、時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  341. 永田亮一

    永田委員長 三浦久君。
  342. 三浦久

    三浦(久)委員 外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  ことしの五月の三十日ですが、福岡市中央区二丁目にある谷旧陸軍墓地、ここは国有地ですけれども、そこに「大東亜戦争戦没者之碑」というものが建てられ、その除幕式が行われたわけであります。  これは非常に大きなものであります。ここに写真がありますので、もしか必要があればごらんいただいても結構だと思いますが、高さが七・三メートルあります。幅が四・四メートルあります。奥行きが四メートルあります。そういう非常に大きな本のですね。その背面に碑文が刻まれておりますが、その碑文はもう外務省の方に私お届けしてありますので御承知かと思いますが、ちょっと読んでみますと、これはいわゆる大東亜戦争——大東亜戦争という言葉を使っておるのですが、大東亜戦争は「聖なる戦いであった」というふうにあの戦争を賛美しているわけですね。  どんなふうに書かれてあるかといいますと、「昭和二〇年八月一五日「万世のために大平を開かん」との詔により万斛の涙をのみ終戦を迎えた その後三十六年営々として祖国再建に努力いまや世界の大国となった 惟うに今次の大戦は自存自衛のため日本国の存亡をかけ 虐げられた民族の解放と万邦共栄を願っての聖なる戦いであった 遂には敗戦の悲境に沈淪せしも次々と亜細亜の民は独立と自由の栄光をかち得たことは 世界史上曽てなき歴史の荘厳なる事実である」こういうことが半分ぐらいに書かれてあるわけですね。  この「自存自衛のため」とか「日本国の存亡をかけ」とか「万邦共栄を願っての聖なる戦いであった」とか、これは昭和十六年十二月八日の開戦のあの詔勅の中に出てくる言葉ですね。私は、こういう碑が国有地に、国やまた福岡市の関与によって建てられている、許可によって建てられているということは非常に大きな問題だろうと思う。  この前、教科書問題が非常に大きな外交問題になりましたけれども、これと全く同じ性格のものだということを私は言わざるを得ないのですね。そして、あのときには政府声明、さらにまた日中共同声明、そういうものがまた確認され、あの戦争については非常に反省している、こういうことが政府によって言明されたわけですね。ところが、そういう政府の考え方ともこの碑文の内容というのは全く違っていると思うのです。  大東亜戦争というのは、当時の戦争した日本政府がつけた名前です。そしてその当時、大東亜戦争というのはシナ事変以降の戦争を大東亜戦争と言うというふうにはっきり定義を決めておりますね。ですから、あの中国に対する侵略を含めたアジア諸国に対する侵略戦争というものが「万邦共栄を願っての聖なる戦いであった」、こういうことは私はいまの政府の考え方とも全く違っておると思います。ですから、国有地にこういう碑が建てられているということは、外交上非常に大きな影響を及ぼすだろう。教科書問題の陰に隠れてまだ外交問題にまで発展はしておりませんけれども、これからいっそういう外交問題に発展するかもわからない、そういう要素をはらんだ問題だというふうに私は思っています。この点について外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  343. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 三浦委員からのただいまの御質問について、まず碑文を読み上げられて私への御質問でございます。  いまこの碑文、あるいはこの碑文の後に、この印刷物には建碑奉賛団体芳名というのがついておりますが、この二十数団体が奉賛をしながらこういうものが今年の五月三十日に建てられた、こういう事実だと思うのであります。  これは、これだけの団体が関与して、しかも国有地にこういうものが建ったということになりますと、払い下げを受けたんだろうと思うのですが、あるいは借りたのかどうか知りませんが、相当長期の計画によって五月につくられたものと思います。  教科書問題に始まりまして、いま外交上の折衝によって一段落をしたというこの段階からいたしますと、せっかくの外交上の一段落をしたそういう点からすると、この碑文の書きぶり等まことに当を得ない、誤解を招くおそれのあることが非常に多いと思います。わが国の姿勢に疑義を生ぜしめるようなことがあっては好ましくない、こう考える次第でございますが、これは本委員会三浦委員が問題提起をされるについては、すでに関係者の間でも善後措置が図られておるものではないか、こう想像するわけでございます。いずれにいたしましても好ましくない、疑義を生ずるような面がございますので、これらの点につきましては、外務省として十分関心を持ち、成り行きを見たいと思います。
  344. 三浦久

    三浦(久)委員 大臣、これは現在の国有地であります。ですから払い下げは受けていないのです。現在、この国有地は市に無償で貸与されています。そしてその市が、今度この碑を建立する顕彰会というものに貸しているわけです。貸すに当たっては現状変更の許可申請を大蔵省にいたしております。そして、大蔵省はその現状変更の承認を与えているわけですね。だから、国と市が許可を与えてこういう碑をつくらせたということははっきり言えるわけであります。外務大臣からは外交上好ましくないという御答弁がありましたので、今後やはり何らかの形でこの問題を解決しなきゃならない。まさに日本姿勢を諸外国に疑わしめるようなこういう碑文は、私は削除させなきやならないと思うのですね。  大蔵省にお尋ねいたしますけれども、大蔵省はこういう碑文がつくられるということを知って現状変更の承認をしたのですか、どうでしょうか。
  345. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 昭和五十六年四月に福岡市から福岡財務支局に現状変更の承認申請がありましたが、そのときにはかかる碑文は申請添付書類にはありませんでした。したがいまして、国がこのような碑文を認めて慰霊碑の建立を認めたということはありません。
  346. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、こういうような碑文の内容であれば許可はしなかったというふうに承ってよろしいですか。
  347. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 仮定の問題でありますので、確定的なお答えはしがたいわけでありますが、しいてお答えすれば、碑の建設に当たりまして、顕彰会からかかる碑文が盛られた慰霊碑の建立について事前に御相談を受けていたならば、本件墓地の管理主体であります福岡市にお願いしまして、誤解のないような、今日のようなトラブルの起きないような碑文を顕彰会において書かれるようにお取り計らいするようお願いしたと思いますが、本件の場合そういう機会がなかったことはきわめて遺憾であると思います。しかしながら、すでに多くの方々の賛同、拠出を得て建立された現段階でありますので、新たな申請とは同一に論じがたいと考えておりまして、このような現状を踏まえて何らかの善処策を市にお願いしておる段階であります。
  348. 三浦久

    三浦(久)委員 大蔵省としてはどういうふうに処置をしたいというふうに考えておるのですか。
  349. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 大蔵省といたしましては、かかる碑文が誤解、混乱を招くおそれがある問題でありますので、かかることがないような円満な解決が望ましいと考えておりまして、かかる方向で、直接墓地の管理条例の主体であります市に対して善処方をお願いしておるということであります。
  350. 三浦久

    三浦(久)委員 市に対して善処方を要望しているというだけじゃ私は解決にならないと思うのですよ。これはいま大蔵省が言われたように、いろんな手口を使って市をだまし、私は市が形式的にはだまされたかっこうになると思うのですね。本当は恐らくすり合わせでもってぐるでやったんじゃないかと思っているのですけれども、一応は顕彰会から市がだまされる、また国は市からもだまされている、そういう関係でこの手続が行われてきているのです。ですから、この国有財産無償貸付契約書、国と市が結んだものがありますね。これは五十五年三月六日。これに基づいて契約の解除を私はできると思う。たとえば、これは最初は墓ということで申請があった。ところが、でき上がったものは、墓じゃないのですね、碑ですよ。最初は墓地条例に基づいて墓として申請しないと許可にならないから墓という名目で出しているけれども、でき上がったものは、墓と書いてないですよ。碑と書いてあるのですよ。この国有財産無償貸付契約書の第四条、ここでは「谷陸軍墓地及び谷公園の用途に自ら供しなければならない。」こうなっている。ですから、こんな戦争を賛美するような碑を建てるために利用するというようなことは、この第四条の用途違反なんです。  それからまた、この碑というのは、所有者は顕彰会です。市のものじゃない。そうすると、その土地を利用しているのは顕彰会です。市じゃないのです。それははっきりしている。  そうすると、この契約書の第十条に、市は「貸付物件の使用権を譲渡し又は」国の「承認を得ないで第三者に使用させてはならない。」こうなっている。ところが、第十条に基づく許可申請というのは出てないでしょう。そうすると、第十五条に、この契約条項に違反した場合には契約を解除することができるという規定がありますね。ですから、あなたたちが、もっとこういう条項を使って、もっと強い態度を示せば、三カ月も四カ月もかかってまだ何にも解決できてないでしょう、そんな状態はもうとっくに解決しているはず。あなたたちが、本当に、大東亜戦争を賛美する、あの侵略戦争を賛美するなどというこんな碑はけしからぬという態度に立って、そしてきちっとした手続をとれば、もうとっくに解決しているはずだと私は思う。  こういう契約条項違反でもって契約を解除する、そういう立場にあなたたちは立つことができますか。そういう強い姿勢を市や顕彰会に示すことができますか、どうですか。
  351. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 いま御指摘の数点についてお答えいたします。  まず、これは記念碑であって墳墓でないという点でありますが、確かに記念碑的な性格もあわせ有すことはもちろんでありますが、同時に納骨堂が設けられておりまして、したがって、これは、墳墓、墓という性格もあわせ持っているわけであります。したがいまして、ここの墓地、公園の用途であります墓地の使用用途に合致する墳墓であるという点については、われわれはこれにかなっておるということで認識しております。  二番目に、利用計画の問題でありますが、先生御指摘の、十条の、「第三者に使用させてはならない。」第三者に使用ということで今度は認めるべきではなかったかということでありますが、私どもは、九条の三項の、市の利用計画の変更ということで承認したわけであります。  これについてはいろいろと御議論がおありと思いますが、たとえば第三者使用ということは、たとえて言いますならば、あすこで盆踊りをやるとか屋台を出すとか、そういうふうな、いわば恒常的にならないような程度の第三者の使用という場合に十条で認可することがあると思いますが、それが恒常的に現状の利用計画を変更するような事態でありますならば、十条を含んだ意味におきまして九条三項の現状の利用計画変更というのを市から出させてこれを承認するのが筋であると私どもは考えております。  かかる観点に立って本件を眺めてみますと、市からは顕彰会が墳墓の性格を有する本件慰霊碑を建てたいということで利用計画を出してきまして、そこの碑文については若干問題がございますが、しかし依然として墳墓の性格を有する慰霊碑である、そういう利用計画の当初の目的を逸脱するものではないと考えておりますので、これをもって契約違反ということで解除することは、いささか困難であると考えておる次第でございます。
  352. 三浦久

    三浦(久)委員 そんなことを言っているから足元見られちゃうのだよ、あなた。本当にこの碑文を訂正させるという気持ちがあるのならそんな態度はとれないはずだ。たとえばあなた、これは納骨堂があると言ったが、確かにそうだ、ありますよ、私見てきた。しかし、骨が入っていますか、遺骨が。入ってないですよ。遺体を埋葬するとか焼骨を入れるとか、それがお墓でしょう。でも、遺骨は入っていないですよ。顕彰会の人たちは何と言っているかというと、お骨はこれから捜して入れると言っている。あなた、冗談じゃないですよ。どうやって捜すのですか、日本の国の中。じゃ、海外の遺骨を探索にいくかもしらぬ。そういう場合も可能でしょう。しかし、その遺骨が福岡県人のものかどうかなんということがいまごろわかりますか。そんなことはわからないでしょう。ですから、これは今後永久にまず遺骨は入らないというふうに見なければいけないのです。ですから、墓が墓じゃなくなって碑になっちゃっているのです。そして、背面にもこんな大東亜戦争を賛美するような碑文が刻み込まれる、こういうことなんですよ。  それからあなた、また九条でできる、これは土地の利用関係の変更のない現状の変更なんですよ。あたりまえのことで、じゃなきゃ何で十条なんという規定が必要なんですか。十条は、貸付物件の使用権を譲渡したりまたは承認を得ないで第三者に使用させてはいけない、こうなっているでしょう。ですから、その前の九条というのは単純ないわゆる現状変更、利用計画を変更しようとする場合、こういう場合でしょう。そうすると、たとえば市が何かをつくったとか、そういう場合なんです。それが第九条なんです。それが現状変更、土地利用関係の変更がない場合の現状変更を言っているのです。土地の利用関係についての変更がある場合には十条に決まっているじゃないですか。だから、あなたたちは碑文をそのまま肯定しよう、肯定しようという立場でこういう契約書の解釈をするからそういうことになるのですよ。事の重大性があなたはわかっていないのだよ。本当にこの碑文を削除しようというふうに考えるのならば、第四条並びに第十条違反という論点は十分成り立つ。  それからまた、これは詐欺ですよ。私ちょっと経過をあなたに言いましょう。たとえばあなたが言ったように、市に対して顕彰会が申請をした場合には、この碑の前面はさっき言いましたように「福岡県大東亜戦争戦没者之墓」となっている。現状は「碑」になっている。それから側面、ここでは「福岡県慰霊塔建設委員会」、こういうのが刻み込まれる予定だ。現状はどうなっているかというと「勲一等旭日大綬章剱木謹書」こうなっている。全然違うものなんですよ。それからまた背文面は、申請はどういうふうになっていたかといいますと、いま問題になっている碑文が書かれているところは、この顕彰会の申請では「福岡県慰霊顕彰会会長太田清之助書」、こうなっているのだ。それが全く似ても似つかないようなものがつくられてしまったのですよ。そして申請をするときには、さっき言ったような設計図をつけた。その設計図がそのまま現状変更の申請書につけられている。ですから、市も国もこういう碑文ができ上がるということは知らなかったということが言えるのですね。  ところが、何で市が国に対して第十条の申請をしないでこの九条の現状変更の申請をしたのかというのが私はよくわからない、実際の話。しかしだれが考えてみても、これは第三者がその土地を利用している、いわゆる市以外の第三者がこの土地を利用しているということは間違いがない。顕彰会が利用しているということは間違いがない。そうでしょう。ですから、そういう体裁をとったら第九条ではまずいということで、いわゆる土地の利用関係についての変更はないような申請を国に対して市がしているのだ。たとえば市に対しては顕彰会は、この慰霊碑の維持管理は顕彰会が責任持ってやります、できない場合には福岡県郷友連盟がやります、そういう誓約書が入っている。市もまた、顕彰会が責任持ってやりなさいよ、こういうふうに言っている。ところが国に対しては、この碑の維持管理はだれがやるというふうに申請されていますか。
  353. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 済みませんがもう一度……。市に対してですか。
  354. 三浦久

    三浦(久)委員 いやいや、国に対して市が、この碑の維持管理はだれがするというふうに申請をしてますか。
  355. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 たしか添付書類で、それは顕彰会が維持管理を責任を持ってやるということになっていると思います。
  356. 三浦久

    三浦(久)委員 そんなことうそですよ。それは、全然あなたたちは調べてないね。
  357. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 大変失礼しました。ちょっといま手元になしでやったものですから、申しわけございません。  市の申請によりますと、「慰霊塔の維持管理については、福岡市が市墓地条例並びに同条例施行規則に基づき適切な維持管理を行います。」となっております。
  358. 三浦久

    三浦(久)委員 そうでしょう。市が条例や施行規則に基づいて責任を持って維持管理すると言っているのでしょう。その市が顕彰会に対してはおまえがやれよ、こう言っているのですよ。何でこんなだまし合いみたいなことをしなければいけないのですか。それは、顕彰会が維持管理するということになれば第三者利用になる、だからこういうごまかしをやったのだろうと私は思うのですよ。しかし私はいまだに、何で第九条の申請をして第十条での申請をしなかったのかというのがわかりませんけれどもね。こういうふうに、大変不明朗な手続のもとに一貫してこういうことが行われているということなんですよ。ですから私は、もっとシビアな態度をとるべきだというふうに思うのです。  いま私がいろいろ申し上げましたけれども、納得いきませんか。第十条の許可申請が出ていないということ、本来は十条でやらなければいけない問題だということ、この点は納得いきませんか、次長さんどうですか。
  359. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 お言葉を返すようで大変申しわけございませんが、やはり顕彰会が建てるにしましても、いままで更地であったところへ土地の現状を変更するわけでありますので、私どもといたしましては九条三項の土地利用計画の変更ということで従来から扱っておりまして、実は戦後旧陸軍墓地に私ども把握した範囲内でも約三十数件の慰霊塔が建っているわけでありますが、それもおおむねこの種の現状変更承認で処理しておりますので、福岡市だけに限って特に意図を持って九条三項によって十条を回避したというふうなことはございません。  それから、先ほど御質問ありました骨が入っていないということは全く御指摘のとおりでありますが、私どももこの点については聞きましたところ、あそこにガダルカナル島の何か遺骨がある、それからそれだけじゃなしに、何か日清戦争の慰霊塔の中に今次戦争の福岡県で戦没された方の遺骨を一部納入されている向きがありまして、これを今後そちらに移す予定であるというふうに聞いておりますので、私どもも先生のおっしゃるようにうかつなのかもしれませんけれども、一応これから納骨堂に骨が入れられるものだろうというふうに思っているわけであります。
  360. 三浦久

    三浦(久)委員 どうも非常に消極的なんだね、この碑文を訂正させるということについて。そういう態度でいいのですか。私は何か変な感じがするのですよ。たとえば、この碑の建立の発起人は、自民党の大物代議士と言われている三原朝雄さん、彼になっている。それから山崎拓という代議士もなっている。それから亀井県知事もなっている。そしてこの除幕式のときには副知事も来ている。市からは助役も来ている。それであいさつまでしている。冗談じゃないですよ、あなた。こんな碑文のある碑に対して祝辞まで述べているんだから。私は、あなたがそういうかたくなな態度をとるということは、その背後にいま言った政治家のいろいろな圧力があるのじゃないかと疑問視せざるを得ないのですが、その点はどうですか。
  361. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 そういうことはございません。  先生のおっしゃるように、この碑文はそれ自身として取り上げれば確かに種々問題はあります。ただ、それ自体として取り上げるよりも、お墓に刻まれたものである、そうすると、日本の民衆の気持ちとしてお墓に葬られる人の気持ちをそんたくして書くというふうな風習、心情があるということは事実でありまして、そういう観点に立って遺族会の方々が当時の戦没された方々の心情を思って書かれた。ただ、それが、今日の時点に立ちますとはなはだ誤解を生む問題があります。そこで福岡市がいろいろと遺族会の方々とお話しされて、これはあくまでも平和を祈念するものであります、戦争を賛美するものではありませんというふうな釈明文をつけられてそういうふうな誤解がないようにされるということでありますので、私どもといたしましては、約七千万近い浄財を集めて、遺族の方々の気持ちをくんで建てられた慰霊塔という現実を踏まえて、できるだけ円満に解決したいというふうに考えている次第であります。
  362. 三浦久

    三浦(久)委員 しかしあなたも相当なものですね。これは英霊が書いたんじゃないんだよ。英霊がこんな碑文を書いたんじゃないんだ。いま生きている者が書いたんだから。自分の評価として書いているのじゃないか。死んだ人の意思をそんたくして書いた、だから構わないんだみたいな、そういう考え方にもうあなたたち官僚というのは全体としてなっているんですか。書くのならもっと書きようがあるでしょう。それは外務大臣の考え方とも違うじゃないか。外交上好ましくないというふうに大臣はおっしゃっているんです。それをあなたは、一生懸命浄財を集めて、それでもってせっかく建てたんだ、死んだ人の気持ちをそんたくしてやったんだからいいみたいな。それは一体どういうことなんですか。あなたは、こういうものが国有地に建てられているということは外交上好ましいと思うのか好ましくないと思うのか、どっちなんですか。言ってください。
  363. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 私は好ましいとは思って、おりません。ただ、先ほど申しましたように、国といたしましては、市に対する無償貸付契約に従ってやっておりますので、これがこの碑文によって慰霊塔であるという利用目的に反するというところまでは認定しかねるので、これを破棄して云々するということはいたしかねるということを申し上げているわけであります。
  364. 三浦久

    三浦(久)委員 もう二重三重に違反しているのですよ。申請が全然違うということですよ。そうして出てきたものは、大東亜戦争、いわゆるあの侵略戦争を賛美する碑文が書かれているのでしょう。そんなものをつくるためにあなたたちはこの墓の管理をしているのですか。市に貸したのですか。そうじゃないでしょう。だから、市自身が、戦争を賛美するがごときものは好ましくないからそういうものはやめてくれというふうに現状変更の許可があったときに国から言われた、だからそのことを顕彰会にも十分に言った、そして許可をしたというふうにちゃんとメモに書いている。これは市の書いたメモです。ですから、あなたたちの許可条件にも違反しているのですよ。私がこう言うと、証拠がないからそんなことだめです。何を言っている。市がちゃんとあなたたちからそう言われたということを認めているのだから。否定しているのなら証拠がないということが言えるかもしれないけれども、市自身が認めているのだからね。だから、この碑文を削除させる、そういう立場に立つならば法的にもいろいろな手段がある。ですから、それでもって契約を解除するぞ、だから改めなさい、改めなければ解除するぞ、そういうような強い姿勢をあなたたちが見せなければいつまでたったって解決しない。あなた、好ましくないと思うのなら、やはり除去させた方がいいと思うのですが、どうなのですか。
  365. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 先生よく御存じのように、本件顕彰会と直接の相対する当事者は市でありまして、福岡市の墓地条例に従いまして、市はその第四条に「墓地を利用しようとする者は、規則で定めるところにより市長の許可を受けなければならない。」ということで、顕彰会は市の許可を得たわけであります。第七条に「利用者が次の各号のいずれかに該当するときは、市長は、墓地の利用の許可を取消すことがある。」として、「許可を受けた目的以外に利用したとき。」とかその他の規定があるわけであります。したがいまして、顕彰会に利用許可を取り消すか否かということは市の条例に基づく権限であるわけであります。それで、先生すでに御承知のように、市は、これは違法ないしは著しく不当と判断しかねるので行政的にこれを取り消すということは市としてはできないというふうに答えておりますので、その段階を踏み越えて国が直接顕彰会に云々することは法的にいかがなものかと考えているわけであります。
  366. 三浦久

    三浦(久)委員 あなた、私の質問を何を聞いているの。私は市に対して契約の解除をやれと言っているのですよ。国と市との国有財産無償貸付契約書の四条と十条に違反しているじゃないか。だから市に対して契約の解除をしなさい、市に対して契約を解除すれば、当然もとの契約がなくなるのだから顕彰会は使うことはできないじゃないですか。そんなこともわからないじゃ困りますね。私は、国が直接顕彰会に契約の解除をしろなんて言っていませんよ。しかし、それは民法上はできるけれどもね。私は市に対してやれと言っているのですよ。市に対してそういう強い態度を示す、そのことによって顕彰会も考え方が変わってくるのです。どうですか。
  367. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 繰り返しになって申しわけございませんが、先ほど申しましたように、私どもは九条三項によりまして市の利用計画を承認したわけでありますが、この利用計画上、現在、本件は慰霊碑として利用計画どおりに使われている、碑文が適当でない面がありますが、それによって慰霊碑としての性格、目的を逸脱する程度のものとは考えられませんので、この利用計画違反ということで契約解除することは困難であろうかと考えておるわけであります。
  368. 三浦久

    三浦(久)委員 いま非常に強い世論があるのです。こんなものけしからぬと地元でも大きな問題になっているのですよ。それで、あなたたちのさしがねかもしらぬけれども、市と顕彰会がいろいろ話し合って、そしていまどういうことになりかかっているかというと、この碑文の説明文をつける、こうなっているのです。知っているでしょう。そこではこういうことを書く。それは背面の台座のところに小さくこの碑文の説明文を入れるという。それはどういうのかといいますと「この碑は今次の大戦において尊い生命を捧げられた人々の当時の心境を想い 敬弔の意を現わすとともに 再び悲惨な戦争を繰返すことのないよう  恒久の平和を祈念して建立したものである」こういうのを入れるというのですよ。しかし、これはこれだけならいいですよ。これが一体、どうしてさっき読んだ大東亜戦争賛美の碑文の説明になるのですか。こんなことで物事をごまかそうとしているのです。  そうして、市自身は何と言っているかといいますと、もうしようがない、これでわしらもしようがないと思う、しかしまだ、そういう碑文の説明文をつけるというごまかしのやり方に市民の怒りが非常に強いものだから、われわれはそう思うけれども、しかし関係機関に対していま意見を聞いているんだ、こう言うのです。関係機関とはどこか。財務局だ、こう言うのです。大蔵省です。そうすると、大蔵省はこんな碑文はそのままにしておいて、ちょっと小さな説明文を台座にちょこっとくっつけた程度でもういい、問題は一件落着というふうに考えているのですか、どうですか。
  369. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 私どもといたしましては、このような釈明文を添付することによりまして、誤解の生ずる、問題の多い文章から生ずる困難が回避されて事態が円満に解決されれば非常にありがたいと思っております。
  370. 三浦久

    三浦(久)委員 何たることですか、一体。あなたたちはこんな説明文をつけただけでよろしいというわけですか。あとは市民は黙っていろ、そういうことですか。外交問題に発展したらどうするのですか。ちょっとまいりましたね。私はもうちょっとまともな答弁が出てくるんじゃないかと思ったんだけれども、やはり黒い影を感ぜざるを得ないです。  外務大臣、お聞きのとおりなんですよ。それで、いま市が契約解除する権限があるんだなんと言っていますが、市は何と言っているかといいますと、戦争についての評価は国もしていないんだ、こう言っているのです。だからああいう碑文の内容であっても契約違反だと言うことはできないんだ、こういうことを言っているんです。ですから、国があの中国への侵略、これを侵略戦争と認めないということが地方自治体のこういう問題にまでそういう影響を与えているということを私は一つ指摘したいと思うのです。  やはり侵略戦争は侵略戦争と認めて、そんな戦争はもう再びやっちゃならぬのだ、そういう立場を鮮明にさせるということが、アジア諸国との善隣友好外交を進めていく上で非常に大事だろうというふうに私は思います。  いま大蔵省は大体そんな考え方らしい。ですから傍聴に来ている県と市の職員は喜んでいるかもしらぬ。しかし、私はこれで一件落着というわけにいかないと思う。私は、外務大臣が大蔵省と十分に話し合ってこの碑文を削除させる、そういう方向で十分に協議をしていただくことを心から要望いたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  371. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、この御提供の資料からいたしますと、二十一の団体、グループの関係しておる問題でございまして、今回の一連の教科書関係の問題からして、この碑文で好ましくない、わが国の姿勢に疑義を生ずる点がございます。その点については、これらの関係の方々の納得の上でぜひお考えをいただきたい、こういう気持ちを私は持ちます。  ただ、ただいまの一問一答の中で、これが建設に関連する土地問題等については私が十分な知識を持っておりませんので、これはこれとして十分合理的な合法的な処理が行われることを期待するわけでございますが、問題のこの碑文の表現につきましては、関係者の間で現在協議中あるいは善後措置がとられつつある、こういうことを聞いておりますので、外務省として関心を持って成り行きを見守りたいと思います。
  372. 三浦久

    三浦(久)委員 大臣、ただ関心を持って見守るということではなくて、どういう方向でいま一件落着がなされようとしているのかと言えば、さっき言いましたように、碑文はそのままにするのです。それでその下に、いやわしらは再び戦争が起きないようにするためにこの碑をつくったのですというような説明文をただくっつけるというだけなんですよ。本文は何にもいじらない。そういうことでは、大臣はいま外交上好ましくないと言われましたけれども、そういう好ましくない状態が治癒されるというふうには私は考えないですね。ですから、大臣自身が、外務省自身がやはり大蔵省に積極的に働きかけてそういう誤解を解くような碑文に訂正させるというふうに私は御奮闘いただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  373. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 碑文の表現で問題のあることは先ほどから申し上げておるところでございまして、きょうここで問題が提起されて承ったところでございますので、よく検討させていただきます。
  374. 三浦久

    三浦(久)委員 終わります。
  375. 永田亮一

  376. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣が六時までという時間制限がありますから、大臣も簡潔に明瞭にひとつお答えいただければ、六時前にここを出られると思います。  それで、午前中の井上一成議員は、今度の総理大臣訪中に関して当然避けて通れない侵略問題について危惧を表明されましたが、私も同様の危惧を持っておるわけです。  そこで大臣に、こういうことを聞かれておるかどうかお伺いしたいのですが、あの日中共同声明がつくられるときに、私も、国内でもあるいは北京でも端々に聞いておる事実でありますが、田中総理が向こうに行かれて周総理とお話をされたときに、田中元総理が、大変御迷惑をおかけしたというような話をしたときに、周総理はすぐこうお返しをされておるわけですね。迷惑というのは、女性のスカートに過って水をかけてしまったというようなときに使う言葉です、淡々としかも痛烈にこういうお返しをした。こういう逸話を大臣聞いたことがありますか。
  377. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 聞いたことございません。
  378. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実は、橋本情報文化局長は当時中国課長、木内さんは首相の秘書官であった。この日中共同声明作成に直接かかわった人ですから、お二方がきょうおられれば聞いてみたいと思っておったわけです。そしてあのやりとりの中で、中国側は、あの日中戦争はやはり侵略戦争であったという主張をされたはずである。いろんなやりとりの結果、これは中国の要人からも聞いたことですけれども、周元総理が非常に巧みな妥協というか、案文作成について知恵を出された。ここで、私はこれは必ず問題になると思うから一緒に行かれる外務大臣の注意をあえて喚起したいわけですが、先ほどから基本認識として、基本姿勢として、日本側日中共同声明のゼンブンとおっしゃっているがゼンブンのゼンの字は前という字ですか、全体の全の字ですか。
  379. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 引用しておる文言は前の前文でございます。
  380. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はそれだけでは不十分であると思うのです。それは共同声明をつくったときの経過があるから私はそう指摘せざるを得ない。やはり全体を基本認識にすべきである。このあなたが言う前文の「日本国戦争を通じて」、ただ「戦争」になっておる。さるかわりにこれを補うものとして重要な個所があるのです。それは共同声明第三項ですよ。ここで一番最後に「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」これを入れられたのが周元総理の知恵であると私は思う。また田中元総理もその辺を考えてこれを入れられたと思うのです。本文にあるのです。  このポツダム宣言第八項とはどういうものか。先ほど井上普方議員がポツダム宣言の中に侵略というのがあると言うが、それはありません。あれは間違いです。ポツダム宣言に侵略という言葉はない。ではポツダム宣言の第八項とはどういうものか。いいですか。第八項は「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」、そしてあと領土のことが書いてある。カイロ宣言の条項というのは英語ではタームズという言葉になっている。日本語は条項になっている。タームというのは言い方とか言葉の使い方とか、そういう意味です。そうすると、では、このカイロ宣言はどうなっておるか。カイロ宣言にはそれこそあなたがいまおっしゃる、これは全部が一つの文章になっておりますけれども、この中に「三大同盟国八日本国ノ侵略ヲ制止シ」とある。  いいですか、問題はここなんですよ。だから日中戦争が侵略戦争であったかどうか前文に明示はないけれども、共同声明の本文から三段論法的に侵略戦争であったというのは明確なんです。共同声明本文がそうなっているのです。いや、そんなことはこの共同声明をつくるときに認識はなかった、こうお思いですか、どうですか。私の指摘に対して外務大臣はどう思われますか。——局長に聞いておるんじゃないんだ。外務大臣認識を聞いておるんだ、急がれるかち。あなたが答弁するのなら六時過ぎまでおってもらいますよ。先ほどの外務大臣答弁では中野議員の質問に対しても、外国がこう認識しておるからそういう認識を何とかとおっしゃっているけれども、そうじゃないんだ、共同声明自体がそうなっておるのですよ。
  381. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま条約局長に聞いてみますと、非常に専門的な表現でございますので、ひとまずお聞き取りを願いたいと思います。
  382. 栗山尚一

    ○栗山説明員 簡単にお答え申し上げます。  日中共同声明の第三項は、先生御承知のとおりに、台湾が中華人民共和国の一部であるという中華人民共和国政府立場がございまして、これとの関係でこの問題を処理するために設けられました項目でございます。  したがいまして、日中共同声明に書いております、ポツダム宣言第八項の立場を堅持するということは、言うまでもなくカイロ宣言にさかのぼりまして、台湾が中華民国、すなわち中国でございますが、中国に返還されるべきである、こういう日本政府認識日中共同声明の第三項で述べた、こういうことでございます。
  383. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは違いますね。英文ではアンドで結ばれているのですよ。英文ではアンド・アドヒヤになっているでしょう。それからカイロ宣言だってそうだ。「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」、アンド何々になっているのです。これは独立しているのです。これはあなたの言うような解釈じゃないのですよ。日中共同声明の英語のテキストを持っていますか。
  384. 栗山尚一

    ○栗山説明員 英文のテキストは私も承知しておりますが、日中共同声明の正文はあくまでも中国語と日本語でございます。その上で申し上げておることでございますが、日中共同声明の第三項前段で、日本国政府は、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」、そういう「中華人民共和国の立場を十分理解し、尊重し、」そこでアンドということで「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」こういうことになっておるわけでございます。
  385. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのとおりです。だからそう言っているのです。いいですか。そしてポツダム宣言の第八項はどうなっているか。あなたはよもやポツダム宣言の中の「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」、これは関係ないとお思いではないでしょうね。まさか領土のところだけ言っているのだという認識じゃないでしょうね。あなたはカイロ宣言のところの領土の問題だけだというふうにお思いですか。それは重大問題です。そういう認識だと、総理中国に行かれてまた問題が起こりますよ。だから私は、共同声明前文だけを基本認識にするなんていうのは、もちろんそれも必要だけれども、それでは足らないと言っているのはそこなんです。必ず問題になりますよ。見ていてごらんなさい。
  386. 栗山尚一

    ○栗山説明員 先ほどの繰り返しになりまして恐縮でございますが、日中共同声明の第三項は、あくまでも台湾の法的地位につきましての日本政府見解日中共同声明第三項の後段で述べたものでございまして、その趣旨は先ほど私が申し上げましたように、台湾というものは中国に返還されるべきものである、こういうことを述べたものでございます。
  387. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなことをやりとりしたってだめですよ。じゃ逆に聞きましょうか。あなたはもういいです。外務大臣、いいですか。ポツダム宣言を無条件受諾したのでしょう。そして日中共同声明が引用しているポツダム宣言の第八項には「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」、これが冒頭に来ているのです。そのカイロ宣言はどういう内容になっているかというと、「三大同盟国八日本国ノ侵略ヲ制止シ」となっている。このカイロ宣言、つまり日本国に関する英米華三国宣言ですね。昭和十八年十一月二十七日カイロで署名。カイロ宣言のこの項に対して櫻内外務大臣はどういう御認識ですか。これは違うという認識ですか、このとおりだという認識ですか、大臣認識を聞きたい。
  388. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 前の前文か全体の全文かが御質問の主眼点であると思います。宮澤官房長官の談話をごらんいただきますならば、この前文をはっきり書いておるわけでございます。ただいまの御議論を承りまして楢崎委員の御所見なり御見解はわかりましたが、今回の問題では官房長官の談話でまえ文の前文をはっきり書いて、そしてひとまずそれを基本にして、いろいろいきさつがあった上で中国の方は外交上の決着ということが言われておる次第でございます。
  389. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの私の質問はそうじゃないのですよ。このポツダム宣言八項が指摘している「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」、そのカイロ宣言の中の「三大同盟国八日本国ノ侵略ヲ制止シ」、これに対してどういう認識をお持ちですかと僕は聞いているのです。いま私が指摘したカイロ宣言のこの条項についての外務大臣の御認識はどうですか。
  390. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは言うまでもないことで、楢崎委員の御理解がちょうだいできると思いますが、条約とか法律の条文等について個人の所見というのはいかがか、こう思います。
  391. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、個人じゃございません。このカイロ宣言のこの条項に対する日本国外務大臣としての認識を聞いておるのです。
  392. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは先ほど申し上げたように、私の知識が不十分であってはいけませんから担当の条約局長に御説明をさせる、こういうことを申し上げた次第で、御了解願いたいと思います。
  393. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 恐縮ですけれども、外務大臣認識を聞きたいのですよ。条約局長認識じゃないのです。今度総理に随行して一緒に行かれますから、外務大臣の御認識を聞いておるのでありまして、条約の解釈を聞いているのじゃないのです。条約の解釈なら条約局長に聞きますけれども。僕は意地悪い質問をしているのじゃないのです。非常に重要な個所だからお聞きをしておるのです。
  394. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 こういう場合には、やはり正しく解釈をし、理解をする上には条約局長のお答えをもとにする以外にはない、私はそう思うので、その辺の御理解をいただきたいと申し上げておるわけであります。
  395. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、何回も言うようですけれども大臣の御認識を聞きたいのです。役人の認識を聞きたいのじゃないのです。申すまでもなく、大臣というのは単なる条約の解釈だけで行動できない、すぐれて政治方針というものを基礎にして条約の解釈はなさるべきである。これはいつも言うように外務省の表に銅像の建っている陸奥宗光さんが言うた言葉でしょう、外交の要諦は条約の解釈にあらずしてすぐれて外交の方針だと。そういう立場で私は外務大臣認識を聞いているのです。ではこれに対して認識はないということですか、何も思わないということですか。
  396. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 条約局長の解釈が至当であるという認識だと、認識を問われればそう申し上げる以外にないと思います。
  397. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは念のため条約局長認識を聞いておきましょうか。このカイロ宣言における「三大同盟国八日本国ノ侵略ヲ制止シ」という三大同盟国のこの考えはどうなのか。間違いなのか、妥当なのか。
  398. 栗山尚一

    ○栗山説明員 日中戦争を含めまして第二次大戦時の日本の行為というものが国際的に侵略として厳しい批判を受けた、そういう反省に基づいて行動しなければならないということについては政府が申し上げているとおりでございまして、大臣も屡申し上げているとおりでございます。先ほど私が申し上げましたのは、先生の御質問が、日中共同声明第三項に言っておる「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」この意味がカイロ宣言にさかのぼってどういう関係にあるかという御質問でございましたので、これは交渉の経緯からいきまして明瞭なように、ここに述べられております「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」という意味は、カイロ宣言に述べられておりますように台湾が中国に返還されるべきであるという日本政府認識を述べたもの、こういうものとして日中共同声明の第三項は合意された。これは大変申しわけございませんが、私自身も当時総理外務大臣にお供をいたしましてこの共同声明の基礎作業に参画させていただいた経緯がございますので、私自身もこの条項の意味につきましては明確に承知して答弁申し上げておるつもりでございます。
  399. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 失礼ですが、私もある程度知っているのです。このやりとりの内容について、あなたたちがここで言えないようなことを。これは外に出せないことになっている。どういうことが議論されたか、それを踏まえて私もやっているのですよ。  それでは形を変えて質問してみたいと思いますが、先ほどの、諸外国からいろいろな批判があるという諸外国の批判の中にこのカイロ宣言で言う三国の指摘も含まれた上での外務大臣の御答弁だ、このように理解していいですか。もしそうならば私はわかるのです。
  400. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それは楢崎委員のおっしゃるように私も考えます。
  401. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体明確になったと思います。この諸外国の批判の中にカイロ宣言のその指摘も入る。これは微妙なところですから、そういう認識であれば、今度総理が向こうに行かれるのに随行される場合に十分なアドバイスができるのではないか、このように私は確信をいたします。そして、この訪中がそういう意味で成功することを祈ってやみません。大臣、結構です。  あと、先ほど三浦委員指摘をしました福岡県の戦没者の碑文の問題ですが、私の地元の福岡市の谷というところの墓地の問題であります。  もう一度念を押しておきますけれども、大蔵省が許可するのでしょう。この変更についての許可権者はだれですか。
  402. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 利用計画の変更という意味でありますならば、大蔵省が市に対して許可するわけであります。
  403. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が問題にしたいのは、こういうことがこのまま黙認されるならば、国の許可によって碑文のついたああいうものが建っている、国の行為として、認識としてああいうものはいいのだということで許可したんだ、それを私は問題にしたいのです。いま教科書でも書きかえの問題が外交問題にまで発展した問題の一つの解決の糸口になっている。日本政府は一方においてそういう立場をとりながら、一方においては国の行為としてこういうものを黙認する、そういう行為が許されますか。そこを私は問題にしたいのです。  これがあの戦争中に建ったのならいいですよ。戦争中に建ってもおかしくない文章ですよね、あれは。それが驚くなかれ、ことしの五月三十日に建てられた。しかも、こういう問題がまさにアジア近隣諸国に大きな衝撃を与えている、そのずばり焦点の問題でしょう。しかも、いいですか、大蔵省が許可した文書を見てごらんなさい。どうなっていますか。「五十六年四月二十日、福岡市から「国有財産無償貸付地の現状変更承認について」申請」、「五十六年四月二十七日、福岡支局は」これは財務局ですね、「福岡市に対し申請書のとおり承認」した。申請書はどうなっておるかというと、福岡市から財務局あてに出された申請書は、さっきも指摘がありましたけれども、「慰霊塔を別添設計図のとおり建立するため」にお願いしますという申請です。では、別添設計図はどうなっておるかというと、さっき三浦委員指摘したとおり。だから、申請別添設計図のとおりになっていないのです。そのとおりならいいですが、なってないものが建っているのだから、これはどうなるのですか。  だから、教科書でも書きかえの問題が起こっているから、当然いまの焦点ですから、もし許可されたならばこれを申請書のとおりにすべきだ、そのように指導すべきじゃないですか。そうでしょう。申請書のとおりにしなさいとどうして市に言えないのですか。別に大きな岩が立っているのをのけろと言っているのじゃないですよ、あなた。塗りつぶすこともできるし、削ることもできるのです、簡単に。至難のことを言っておるのじゃないですよ。十九団体か何団体か知らないけれども、福岡市民だけでも百万人おるんだ、県民は四百万ですよ。十九団体が言ったからといってどうしてそれがまかり通るのですか。何を言っているのです。こんな政府の考え方と違うものが建っているときに、同じ政府の大蔵省がそういうことをやるのだったら、いまからでも大蔵大臣を呼びなさい。だめですよ、さっきのような答弁じゃ。冗談じゃないですよ。こんなばかにされた話がありますか。申請書は別のものを出しておって、建ったものを見たら別のものが建っておる。しかも、それは国の方針と違う。いまのまさに懸案の問題でしょう、この戦争の性格についての。円満に解決——円満って何ですか、円満とは。冗談じゃありませんよ。申請書のとおりにすることが正しい解決の方法ですよ。  あなた、返答できないなら、いまからでもいいから大臣を呼びなさい。だめですよ、こんなものをあいまいにしては。もし指摘されたらどうしますか。人民日報にも載っているんだ。岸さんの満州建国の碑ですか、それと福岡市のものは人民日報に載っているのですよ。それで鈴木総理が行かれて、基本認識はこうです、ああそうですか、それは結構です、しかし地元でこういうことになっていますがどうですかと言われたときにどうしますか。二枚舌になるじゃありませんか。だから単に教科書を書きかえれば済むという問題ではないというのをわれわれが繰り返し繰り返し言っているのはそこなんです。政府の基本認識なんです。日本国民の基本認識なんです。それがああいう形で別にあらわれたら一体どうなりますか。われわれの立場もありませんよ。私は福岡市民の一人としてもそれを言いたい。冗談じゃないですよ。私は今度福岡に帰って進藤市長にも厳重に抗議しようと思っている。こんなことがあいまいに許されていいわけはないのです。ちょろちょろとした釈明文を書いて済むような問題じゃないでしょう。
  404. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 先生御指摘のとおり、添付申請書の内容どおりに慰霊塔が建設されなかったことにつきましては私どももきわめて遺憾に思っているわけであります。それで、もちろんその事態が判明しました段階におきましては福岡市を通じまして種々お申し越しのような点も含めまして善処方を御要望したわけでありますが、現在の段階におきましては、先ほど申しましたようなラインで何とか事態を円満に収拾したいということで福岡市と地元の方々がお話し合いになっているわけでありますので、しばらくその事態を見守りたいということでございます。
  405. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 善処とは何ですか、善処とは。十九団体が納得すればいいのですか、ほかにずいぶん反対している人が多いのですよ。そういう人たちに対する善処も考えなければいかぬじゃないですか。だから、申請書のとおりに直すとなぜできないのですか。あたりまえの話を私は言っているのですよ。申請書と違うものが建っているんだから、申請書のとおりしなさい、簡単にそれはできますよ、むずかしいことではありません、それを言っているのです。そういう指導を福岡市にもう一遍しなさいよ。そんなことじゃあなた、だめですよ。総理訪中を前にして何ですか、この態度は。
  406. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 本日の御議論を踏まえまして、もう一度よく市と協議したいと思います。
  407. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、私や三浦委員指摘しましたとおりに、そういう方向で福岡市とやってください。いいですね。
  408. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 できるだけの努力をいたしますが、何分にも先ほど申しましたように相手方のある話でありますので、先ほど三浦先生に申しましたように法律的な限界もございますので、われわれとしては精いっぱい努力してみたい、協議してみたいと思う次第であります。
  409. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 十二日に決算委員会がありますから、十二日の冒頭、これに対する政府の対処方を明確にしてもらいたい。いいですか。  委員長、お取り計らいをお願いします。
  410. 永田亮一

    永田委員長 わかりました。
  411. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、これで終わります。
  412. 永田亮一

    永田委員長 次回は、来る十月十二日火曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十九分散会