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1981-02-18 第94回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月十八日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君       足立 篤郎君    石井  一君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       植竹 繁雄君    小里 貞利君       小渕 恵三君    越智 伊平君       海部 俊樹君    菊池福治郎君       近藤 元次君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       戸井田三郎君    中西 啓介君       橋本龍太郎君    原田  憲君       原田昇左右君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    阿部 助哉君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       大原  亨君    岡田 利春君       中村 重光君    野坂 浩賢君       山田 耻目君    横路 孝弘君       草川 昭三君    正木 良明君       矢野 絢也君    神田  厚君       林  保夫君    寺前  巖君       中路 雅弘君    松本 善明君       三浦  久君    河野 洋平君       依田  実君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         国防会議事務局         長       伊藤 圭一君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局取引部長 劒持 浩裕君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     谷口 守正君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         環境庁長官官房         長       北村 和男君         環境庁企画調整         局長      藤森 昭一君         環境庁自然保護         局長      正田 泰央君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁長官官房         審議官     柴田 啓次君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵政務次官  保岡 興治君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵大臣官房審         議官      梅澤 節男君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省関税局長 清水  汪君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁次長   川崎 昭典君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部大臣官房会         計課長     植木  浩君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生省環境衛生         局長      榊  孝悌君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省医務局次         長       山本 純男君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 松田  正君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    矢崎 市朗君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省産業         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省基礎         産業局長    小松 国男君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       高橋  宏君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設大臣官房総         務審議官    川上 幸郎君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第四局長  高橋  良君         住宅金融公庫総         裁       大津留 温君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   鴨田利太郎君     菊池福治郎君   倉成  正君     近藤 元次君   後藤田正晴君     中西 啓介君   始関 伊平君     植竹 繁雄君   塩崎  潤君     小里 貞利君   根本龍太郎君     石井  一君   細田 吉蔵君     原田昇左右君   不破 哲三君     三浦  久君   河野 洋平君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     根本龍太郎君   植竹 繁雄君     始関 伊平君   小里 貞利君     塩崎  潤君   菊池福治郎君     鴨田利太郎君   近藤 元次君     倉成  正君   中西 啓介君     戸井田三郎君   原田昇左右君     細田 吉蔵君   三浦  久君     中路 雅弘君   依田  実君     河野 洋平君 同日  辞任         補欠選任   戸井田三郎君     後藤田正晴君   中路 雅弘君     不破 哲三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。草川昭三君。
  3. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  官房長官の時間の関係がございますので、一番最初に、高齢化社会に備えまして一体私どもの将来展望はどうなるのだろうか。過日、総理府の方でも、若い方々年金負担等が少なくてそういうような制度が欲しい、あるいは高齢者皆さん方は将来展望からいって厚い給付が欲しいというような世論調査もあるわけですが、いろいろと将来の年金という問題を取り上げてまいりますと、長い間官民格差という問題もございますし、あるいは民間厚生年金財政事情等もかなり逼迫をしてきておるわけでございまして、ここ最近、厚生年金給付の将来展望についても引き下げを検討しなければならない、あるいは物価スライド等も見直しを考えなければいけないというような報道も一部なされてきておるわけでございます。国家公務員あるいは地方公務員あるいは公共企業体等方々には、旧恩給部分整理資源というのがずっと続いてきておるわけですけれども、この整理資源というものがばかにならないような金額になってきておるわけでございます。  そこで、実は五十四年度、去年の分でございますし、それから五十五年度の予算、これで国家公務員地方公務員公共企業体方々の旧恩給部分に対する追加費用というのでしょうか、整理資源の推移というものが、トータルで幾らになっておるか。それぞれ財布が違うわけでありますけれども負担をする金額は事実でございますので、そのトータル金額をお示し願いたい、こう思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あらかじめ御通告がございましたので調査をしてもらいましたところ、国家公務員地方公務員公共企業体職員の各共済整理資源は、昭和五十四年度におきまして一兆三百七十八億円、五十五年度におきまして一兆一千七百五億円の由でございます。  なお、詳しくは主計局の方から、場合によりましてお答えをさせていただきたいと思います。
  5. 草川昭三

    草川委員 私も実は去年の予算委員会で、整理資源が九千億になったということを答弁いただいたわけでございますが、いまお話を聞きますと一兆円を超したという数字が発表されましたが、これは大変なことになるわけでございまして、まだこれが完全にけりがつくには、一説によりますと三十年かかるだろう、こう言われるわけです。国鉄共済が破綻に瀕しておりますが、国鉄共済が、この追加費用というもの、旧恩給部分の、本来は国が持つべきものを共済が持つわけですが、共済がないから結局国にいろいろな意味でお願いをしておるわけでございますけれども整理資源がゼロになるには、昭和百年にならないとゼロにならぬというわけですよ。旧恩給で生きてきた人が亡くなって、その家族が亡くならない限り、整理資源というのはゼロにならぬわけですから、国鉄で言うならば昭和百年にならないとゼロにならぬ。それまでこれがずっと一兆円から一兆五千、二兆円とふえていくわけです。そういうような問題が、これは何回か申し上げますが、大蔵省の国の財産、地方自治体あるいは公共企業体財布が違いますけれども、その分を出さなければいけない。一方、民間の方は民間財布がありますから、この財布もそろそろ削らなければいかぬという時代に、官民格差という問題が改めて出てくると思うのです。  そういう意味で、現在のこのいろいろな年金制度の問題の整合性ある対応として、公的年金制度関係閣僚会議もあるわけでございますが、この整理資源の問題についてまとめて論議をする場がない。ぜひ私はい将来展望を含めて、まとめて何らかの対応が必要でないかと思うのですが、いかがなものでございましょうか。
  6. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 これは内閣全体の問題として取り組まなければならぬと思うのでございますが、仰せのとおり、この資金の大部分が実は国鉄関係でございますので、私たちも重大な関心を持っておる一人でございますが、その意味において御返答申し上げたいと思うのであります。  五十四年度決算で、先生のお尋ねの金額が、国鉄の分につきましては二千七十五億と相なります。それから、五十五年度で二千四百三十五億となっていまして、他の電電、専売等を入れましたら、総額五十四年度で二千五百七十四億、五十五年度で二千九百八十一億、こうなります。  御質問の中にございましたように、この整理資金がなくなるのにはあと三十年から四十年の間かかるであろう、仰せのとおりでございます。そこで現在、大蔵省の中に年金等専門家研究会が実はございまして、そこで鋭意勉強しておるところでございますが、一般共済年金の問題とあわせてこれが対策を講じなければならぬと思っております。逐年、金額が累増してまいりますしいたしますので、われわれとしても重大な問題だと受け取っておりますが、給付条件とあわせて解決を図っていきたい、このように思い、この研究会の結論を待って財政当局に要望するものはしていくということを決めていきたいと思っております。
  7. 草川昭三

    草川委員 私もこの問題を取り上げて、だれが一体日本の国全体の年金を総合的に取り扱われるのかということを何回か言っておるわけですけれども、実は窓口がないわけでありまして、いまの運輸大臣お話は、とりあえずは公共企業体ということが中心になるわけですが、これに国家公務員そして地方公務員、さらに民間厚生年金等の将来展望を含めながらやる窓口だけはぜひつくっていただきたい。こういう時代が来たということを特に強く要望をして、次に移りたいと思います。  第二番目の問題は、総理の今回の基本的な財政についてのお考えは、本会議でも十分私どもお伺いをしておるわけでございますが、いまの財政運営は、わが国の経済国民生活を根底から揺るがすものになりかねないという深刻な危機感が表明されまして、公債発行額を二兆円程度減額し、財政再建をさらに進め、いわゆる九・九%の非常に強いポリシーのある財政予算編成がなされて、われわれ、いまここで審議をしておるわけであります。しかし、私は素人でございますけれども、この予算案を勉強させていただいておりますと、非常に不可思議なことが出てまいりました。  たとえば、住宅金融公庫利子補給をするわけであります。住宅金融公庫は八%で財投からお金を借りまして五・五%で運用いたしますから、逆ざやになりますから、それを二千百七十四億三千五百万円、これはことし要りますよということが言われております。農林漁業金融公庫も九百十億要りますよ。まあ日本住宅公団は若干形が違っておりますけれども、これも二百十億要りますよという補給金額というものが決められており、大蔵省主計局もそれを認めたわけですね、これは要るだろうというわけですから。だから、要るということを決めた以上は、一般会計の中に補給金というものが出てこなければいけない。ところが、それは出るんだけれども、今度のあり方というのは、全額、その住宅金融公庫だとか農林漁業金融公庫利子補給が行ってなくて、カットされているわけです。たとえば住宅金融公庫は、六百六十一億何がしかの金額がカットされていくわけですから、きょうは住宅金融公庫総裁もお見えになっておられますけれども、現場としてはどうしたらいいかということになります。その六百六十一億カットされた金額というのは、財投に肩がわっておるわけです。資金運用部資金から借りるということになっておるわけですが、その六百六十一億という金額は、この予算書のどこを見ても書いてないのです。私は政府委員に六百六十一億というのはどこにあるのですかと聞いたのですが、残念ながら一つの言葉もございません。それで、説明書住宅金融公庫説明の中の最後の段の中で六六一というのが、いわゆる欠損金として計上されておるわけです。一体これはどういうことなんでしょう。  これは私どもが言うまでもなく、国会というのはここで予算審議する場であります。そして、この特別会計の問題についても、いつも委員長がおっしゃられるように、ここで審議をしておるわけでありますが、その数字が出てこなくてやるということは、財政運営上、私は基本的な問題があるというような気がしてなりません。この赤字相当額というものを五年間でめんどう見ようという言い方を主計局の方はしておるわけです。五年間でめんどう見ようということは、この予算委員会審議しなくてもいいのですかというわけですね。本来ならば五年間に後戻りをするわけですから、債務負担行為という行為、そういう手続をとらなければいけないのではないだろうか。そして、いわゆる資金運用部資金という財布の方に住宅金融公庫は金を借りに行くわけでありますが、資金運用部というのは安全かつ確実に運営をするということが大原則になっているわけです。五年間の借金証書をだれが発行するのか、そのようなことについてお伺いしたいと思います。
  8. 松下康雄

    松下政府委員 御指摘のございました農林公庫及び住宅金融公庫に対する利子補給繰り延べについてでございますけれども、まず事実関係につきましては、御指摘がございましたように、五十六年度におきますところの要補給額が非常に多額に上りまして、五十六年度におきます国の財政状況でございますとかあるいは金利の最近の動向とかを勘案いたしまして、五十五年度の補正後の公庫に対する補給額を上回る金額を五年間におきまして措置をしてまいろうという基本方針のもとに、五十六年度におきましてはその五分の一だけの金額を補給計上いたしたわけでございます。予算書上、その五分の一の金額を含めましたところの補給金額表示をいたしてございますけれども予算書体裁表現等の技術的な制約もございまして、昨年と比べていまの五分の四につきまして繰り延べ措置になっておるということは、御指摘のように、繰り越し欠損として表示をされているにとどまっております。ただ、この点につきましては、重要な点でございますので、私どもも、予算書と同時に御配付をいたしております来年度の予算説明の内容におきまして、ただいまの措置につきましては御説明を申し上げているところでございます。  このような措置につきまして政府といたしまして、住宅公庫あるいは農林公庫利子補給に必要な補給額については、これを完全に一般会計負担において今後とも補てんをしてまいるという基本的な方針は、何ら変えたものではないわけでございます。また、今後四年間残っておるわけでございますけれども、その四年間にそれではどういうような補てんをいたしてまいるかということはまた、それぞれの年度の財政需要に応じまして決定していかなければならないところでありますけれども、その年その年におきます予算に計上いたしまして国会の御審議を受ける、こういう方針であります。
  9. 草川昭三

    草川委員 いまの局長の答弁は、私は納得いたしません。こういう予算説明書体裁関係もあったから六百六十一億書かなかったなんという態度で予算というものが審議されていいのでしょうか。だって、こういうことは初めてでしょう。本来、お金が要るのだから一般予算必要経費として計上するわけですから、それを払えないから財投でおまえ借りろというわけでしょう。  これは理財局長に聞きますけれども財投というのはそんな簡単に借金肩がわりお金を使っていいのですか、資金運用部資金というのは。資金運用部資金というのは、それなりの事業計画があったから貸すわけでしょう。借金の穴埋めに金を貸すなら、ぼくだって借りに行きますよ。そんなばかなことが許されるわけがないでしょう。財政投融資お金資金運用部お金は、郵便貯金であり、厚生年金お金でいろいろな金だけれども、国というものを信用してそこへ集まるわけでしょう。住宅金融公庫の六百六十一億の借金肩がわりを、おい、おまえ、やっておけよ。しかも、いまのお話だと五年間かかって払うという約束を、一体だれがするのですか。国会がするのですか、そうじゃないでしょう、ここに書いてないのだから。大蔵大臣保証人になるのですか、五年間払うというのは。  住宅金融公庫総裁も来ておりますから、どういう話で五年間の金を返すのですか。まず、住宅金融公庫総裁から聞きましょう。どういう金の返し方をするのですか。いま五年間と言ったけれども、五年間の約束は明確にしてないでしょう。公庫総裁から聞きます。――理財局長、やってくださいよ、どういう金の貸し方をするのか。主計局の話はいいのだから。
  10. 松下康雄

    松下政府委員 その前に、健全性の点につきましてでございますけれども、先ほどもお答え申し上げましたように、住宅公庫につきましては、要補給額を今後とも一般会計措置をしてまいるという方針は、何ら変えたわけでございません。(草川委員「だから、五年間というのはだれが決めるの」と呼ぶ)特別の財政事情等にかんがみまして、私ども予算査定の立場から、これを五年間で措置をとっていただくという方針を決めているわけでございまして、このことはまた、関係者の方々についても御説明を申し上げているところであります。
  11. 草川昭三

    草川委員 関係者に説明して、われわれに説明がないんじゃないの。まず、金融公庫総裁に聞いて、金を貸す方の理財局長にどういうことになっておるか聞いてください。ぼくが言うとおりに議事を進めてください。
  12. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 財投資金というのは、それぞれの財投機関の事業資金を供給しておるわけでございます。住宅金融公庫等につきましては、公庫の金融活動に必要な資金を供給しておるということであります。もちろん、資金運用部資金法の規定に基づきまして安全確実、有利な運用ということをいたしておるわけでございます。ただいま主計局長が申し上げましたように、本件につきましては、公庫の収支差は国の一般会計補てんするという従来の方針には何らの変更がないということでございますので、私どもは従来どおり、これは安全確実な運用であるということで財投資金を回しておるわけでございます。
  13. 草川昭三

    草川委員 どなたも五年間の説明を、だれが約束をするのか言っていないのですよ。だから、来年はすとんと貸すのですか。大蔵省は来年からの約束も、金融公庫の方にまだしていないのでしょう。ことしだけ五年間、六百六十一億貸してくれ、悪いけれども財投肩がわりをしてくれ、こう言っているのか。あるいは来年も同じようなことをやるかということになったら、幾らこちらでマイナス二兆円、九、九%だと言ったって、こっちがふえていくわけですよ。赤字公債をこちらで出すと同じことじゃないですか。委員長、この予算委員会というのはきわめて重大ですよ、基本的ないかに九・九%に予算を抑えました、マイナス二兆円だと言っていいかっこしたって、一方で赤字公債を発行すると同じようなことを、国会のこういう議案書にも少しも説明がなくて、予算審議が本当にできますか。大蔵大臣が分裂的な予算だとかどうのこうの言ったのは、あれは正しいのですよ。全くこの組み方は分裂的なんですよ。どうなんですか、大蔵大臣。だって、あなたが保証するのでしょう。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、ともかく一般会計が非常に苦しいから、当然いままでの決まり切っただけの補給金を出すべきところを、今回はその五分の一だけを計上して、あとの五分の四を残りの四年間で持ちましょう、ついては、今回はその部分について財投でひとつ補ってもらいたい、そういう話し合いのもとで決めたものであります。
  15. 草川昭三

    草川委員 だから、そういうことを決めたということはこの予算委員会で、どこでわれわれはこの五年間というのは保証するのですか。五年間というのは大蔵大臣が保証するのですか。いわゆる財政投融資の計画で、住宅金融公庫はとにかく書類を持って財投お金を借りに行くわけでしょう。六百六十一億は五年間で返しますよという証文を入れて借りるわけですよ。実際は資金繰りで別な話になりますけれども、筋としては借りに行くわけです。じゃ、財政投融資資金運用部は安全かつ確実な貸し先にしなければいけない。しかし、その五年間はことし一回限りなのか。来年もまた財政再建で同じようなことをやられるかわからぬでしょうが。  ということは、来年もまたマイナス二兆円で赤字公債の発行を厳しくするけれども、どうしても払わなければいけない、もう決まっている金額ですよね。約二千七百億という必要経費の九二%というのは、いままで貸した住宅の逆ざやの利子の金なんですよ。ことしからの分は八%、その九二%に食い込むような六百六十一億なんです。だから、現場の建設省はどういう考え方を持っておるのか私はわかりませんけれども、現場の住宅金融公庫は、来年もこんなことをやられては規模を縮小する以外にはない。あるいは五・五%という法定的に約束された金利も逆ざや、上げなければいかぬという話も出てくるわけですよ。  だから、こういうことが不明確なまま、こういうような予算審議をやる大蔵省がおかしいと私は思うのですよ。大蔵省の役所なんというのは一番頭のいい人が多いんでしょう。頭のいい人が多ければ、もっとわかりやすい説明をしてくださいよ。私が言っているのは間違っておるかどうか、ちょっと聞きましょう。私の言っておることが基本的に間違っておるかどうか、大蔵大臣に聞きます。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 手続上の問題については政府委員をして答弁させます。
  17. 草川昭三

    草川委員 手続の問題、私が言っていることは筋が通っておるのでしょうと言うのです。ぼくの言っていることが筋が通らぬというのか、どっちか、それだけ聞きたいと思います。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほどから申し上げているとおり、これは五十六年度の一般会計の財源との関係で今回はやむを得ざる措置として、住宅公庫がしかも運営をやっていける、いままでとおり金繰りはつくというようなことであるならば、五分の一の分を予算計上するが、その不足分については、結局政府一般会計からは出さないけれども、とりあえず財投資金の方で立てかえてといいますか、それを利用してやっていただきたい。そういうようなことでやったわけであって、それは筋論から言えば、当然に利子補給の分を全部一般会計で見ろというのは、いままでもそうやってきているわけですから、それは当然なんです。ところが、一般会計お金がないということになれば、それじゃ補給ができなければ、利子補給を少なくして五・五%を少し上に上げるか、これも一つの方法なんです。貸付利息を上げてしまう、そうすれば、利子補給しなくて済むわけですから、少なくなって。しかし、それは借りる人に非常に負担が多くなるということのためにそれを回避いたしまして、それで財投から融資をして、いままでとおり同じ五・五%で貸せるように措置した。ですから、あなたの言うことも一つの論拠があるし、われわれの言っていることも、実務的にそういうようにやったのですということを申し上げているのです。
  19. 草川昭三

    草川委員 その実務的にやるというところに基本的な問題があるのじゃないですか。片一方は、赤字公債の発行はマイナス二兆円だ。そのしわがこっちへ寄ったわけでしょう。ぼくは、筋を通すなら、要るものは要るで、赤字公債は出すものは発行しなければいかぬわけです。そういう政策的に片一方の方を切っておいて財投肩がわりをするということが安易に許されるなら、委員長、これは重大な、これからの予算編成の基本的なあり方がこれで決まることです。こういうことが将来も許されるなら、幾らだって財投の方でこういう肩がわりがやられていったら、基本的な財政民主主義の原則、国会予算審議をするという原則、こういうものが踏みにじられるじゃないですか。何で便法的にこういうことがやれるのですか、大蔵大臣。あなた、いま、私の方が筋だけれども、こういうやり方もあると言うのは、運営のことを言ってみえるわけです。運営で、いわゆる役所の運営で、基本的な憲法に保障されておる財政民主主義というものをごまかしていくということになったら、これは国の将来の問題になる。どうですか、それは。――いや、もういいですよ、局長は。局長の言っていることはだめだ。借りる方の答弁は全然しないのだから、理財局は。理財局がどういうやり方をするかということを言っているのだから。理財局だって答弁しないし、金融公庫総裁だって答弁しないのでしょう。おかしいじゃないですか、そんな。
  20. 松下康雄

    松下政府委員 この措置につきましては、私ども国会での御審議に資しますために、予算説明書におきまして、補給金につきまして、この五十五年度予算額を上回る補給額については五カ年間で措置するものとしてこれこれの金額を計上しておるということもお示しを申し上げまして、御審議をいただいているわけでございます。また、私どもも、このやり方が、将来にわたって安易にまたこういうことを考えるのかという御指摘もございますけれども、本年の非常に特別の財政の情勢でございますとか金利の動向とかを考えまして、やむにやまれずこういう措置をとった次第でございまして、今後ともこういう措置に安易に訴えるというようなことまで考えておるわけではございません。
  21. 草川昭三

    草川委員 じゃ今後ともこういう安易な、安易なということをいまおっしゃいましたね、安易なことはしない、これはひとつ約束をしていただきたいと思うのです。大蔵大臣、どうですか。それでこの話は私は終わります。
  22. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは筋論から言えばあなたの言うとおりなんです。したがって私は……。(草川委員「早く言えばいいじゃないか」と呼ぶ)いや、私は認めているのです。したがって今回は、しかし財政上の事情もあって――本来ならば、利子補給額を少なくして貸付利息を上げるべきところが筋論なんです。しかし、それは利用者にとって負担が多くなるから、今回はこういうことにしてもらったということでありますから、今後は極力、こういうものについては避けるようにしなければならない、そう思っております。
  23. 草川昭三

    草川委員 押し問答になってもいけませんから、いま大蔵大臣に申し上げますが、私は財政のことなんか本当に素人です。田舎からぽこっと出てきた男なんです。だけれども、六百六十一億探したって出てないのです。これはおかしいなと言えば、こっちへ肩がわりしておる、いろいろと声が大きくなると、いま言われたように、筋はぼくだと、こういうわけです。小さい声で言っておったって全然あなたたちは相手にしてくれないのです。そうなんです。  しかし、これは非常に重要な問題だと思うのです。いま利子を上げたらいいというのはすりかえの論議です。本来は赤字公債を六百六十一億ふやすだけの話ですよ。しかし、それは総理がいかぬと言っておるから財投に肩がわった。しかし、こういうやり方というのは、まかり間違えば大変なインフレになる。それから、国民の皆さんは日本政府というものを信用してお金を預けて運用を任せておるのです。安易なやり方でこのお金を使われるということは、日本の将来にとって私は決してよくないと思います。総理から私の意見に対する見解を求めたいと思います。
  24. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 草川君のおっしゃっておりますことはオーソドックスな筋論でございます。これは私も認めております。  ただ、一方におきまして財政再建という命題、これも貫かなければなりません。いま大蔵大臣から、そういう中にあって住宅金融公庫の利息を上げるのも場合によればやむを得ないということもございましたが、それでは借り入れをすみ一般の国民にとって負担が大きくなる。そういうような諸般の事情を勘案いたしましていまのような措置をとらざるを得なかった。このことにつきましては、予算説明書で十分これを書きまして、そして国会の御審議もいただく、こういうことでございますから、財政法等にもとるものではない。今後におきましてはできるだけそのような措置がなされないように最善の努力をいたしたい、こう思います。
  25. 草川昭三

    草川委員 総理にそういうことを言われますと、もう一回話を蒸し返さなければならない。よくぼくたちの論議を聞いておっていただきたいと思うのです。こんなもの書いてないですよ。書いてないから、しかるべき措置をしなさい、保証をしなさいとぼくたちが言っているのです。六百六十一億はどこを探しても書いてないのです。これは決定的に間違いなんです。大蔵省が普通だったらぽんぽん物を言うのですが、私がこういうことを言うのについて歯切れの悪いことを言っているが、この中に六百六十一がどこにも書いてないのです。残念ながらそういうことをやったのです。本当はこういうときにこそ予算委員会はとまらなければいかぬのですが、私どもはそういうことでございませんから協力をする。総理、私が言っているのは本当に笑い事じゃないことです。非常に深刻な話なんです。時間の関係がございますから、私はそういうことだとして話を進めます。  第二番目に、最近、私どもの竹入委員長も本会議でいろいろと武器輸出等の問題について御発言があり、参議院の黒柳さんの方も質問主意書等を出しまして、政府の見解が出ておるわけでございますが、私は、外国の軍事施設の建設について日本企業が請け負う問題について御質問をしたいと思うわけでございます。  従来、政府には一定の方針がありますが、必ずしも明確ではございませんし、時日の進行によってかなりの揺れがあるように思われます。そこで私は、この際、外国における軍事基地の建設にどのような実態があるのかということを一回、洗いざらい問題を提起してみたいと思うわけでございますので、海外の軍事施設の工事受注一覧について、私がいまから国名を申し上げますから、建設省の方からお答えを願いたいと思います。  クウェート、それからアメリカ領ですがグアム島、それからフィリピンにスービック海軍基地というのがあるのですが、これは建設省の所管でないというのですから除外いたしまして、サウジアラビア、英領のチャゴス諸島、それからマレーシア、信託統治領でございますけれどもポナペ島、そのほかブルネイ、トラック島、これについてどのような海軍の軍事基地があり、発注者はだれか、日本の受注者はだれか、お伺いしたいと思います。
  26. 宮繁護

    宮繁政府委員 ただいま御指摘の地域におきます工事につきまして、国名それから工事内容、発注者、受注者の順に御説明をいたします。  クウェート、船だまりの建設工事、防波堤としゅんせつ工事でございます。防衛省、東亜建設工業。  グアム、グアム島アンダーソン空軍基地住宅施設修復工事、海軍省施設部、日産建設。  サウジアラビア、ジェッダ港しゅんせつ工事、これは国防省が発注いたしまして、台湾の栄民という業者が受注しまして、さらにそれを東亜建設工業が下請でやっておるものでございます。  英領チャゴス諸島、ジエゴガルシア米国海軍補助施設しゅんせつ工事、海軍省施設部、五洋建設、マレーシア、ルムット港建設工事、しゅんせつと桟橋工事等でございます。公共事業省、佐伯建設工業。  同じくマレーシア、ルムット家族住宅建設工事、公共事業省、間組。  ミクロネシア、ポナペ島、ポナペ島改修工事、これは国際空港と岸壁と道路等の工事でございます。太平洋信託統治領政府、これを代理いたしまして米国海軍省施設部、前田道路。  ミクロネシア、トラック島、トラック島の国際空港建設工事、同じく太平洋信託統治領政府代理であります米国海軍省、前田道路と前田建設工業のジョイントベンチャーでございます。  ブルネイ、ボルギア倉庫建設工事、公共事業省、飛島建設。  以上でございます。
  27. 草川昭三

    草川委員 そのほかにずいぶんありますし、追加でブルネイだとかトラック島の話が出まして、トラック島もお話によりますと三十九億円、かなり大きい金額でございます。ブルネイも十五億八千万円。海外の軍事施設のあり方について、それぞれ政府の所管によって対応が違うように思うわけでございますし、フィリピンの場合はスービック海軍基地というのがあるわけですが、これは日本の円借款が入っておりまして、外務省の所管になるのでしょうか、民間ベースでございますから外務省にお聞きをいたしますと、このスービック海軍基地というのは海軍基地ではない、海軍基地は隣にあるけれども大分離れたところで、純粋の民間ベースで三十万トンの修理専門の造船所にすぎないというようなお話があるわけでございます。ですから民間ベースで円借款もやっておるのだとおっしゃっておみえになりますが、私どもが調べていきますと、マニラ湾が南の方にあるわけでございますが、民間の造船所をつくるならば、マニラ湾の方になぜJICAは調査しなかったのだろうか。いろいろな調査のコンサルタントというのですか、いろいろな相談を受けたときには、フィリピン側の要請によりまして、ここにはアメリカの第七艦隊の基地があるわけでございますし、航空母艦もいるわけでございますから、どうしてもいざというときには航空母艦の修理を三十万トンドックでやれるような体制ということが暗黙の了解のもとに、大きな湾でございますけれども、これは要塞地帯になっておりまして、その要塞地帯の中に海軍の軍港がございまして、そのそばに三十万トンの造船所が設営をされた。ところが、これは純粋の民間ベースだというので、日本の場合も川崎重工業が四割の出資をいたしまして、現地の会社が六割で、ジョイントでフィリピンのシップヤード・エンジニアリング・コーポレーションという会社をつくって受注をし、五洋建設が八十五億でいま建造しておる、こういうことになっておるわけでございます。  これは少なくとも三十万トンですから、タンカーを中心に修理をするという名目だけれども、すぐ隣に第七艦隊の航空母艦もいるわけですから、第七艦隊としては横須賀まで来て修理をしなければいけない、アメリカ本国へ帰って修理をしなければいけない、だからそこの基地があるならばいずれ当然使うのではないか、こう聞いたのですが、いや、実は日本とフィリピンとのいろいろな交渉の議事録の条文の中に、軍事的な用途ということをしないという議事録があるから大丈夫だ、こういうお話でございました。議事録にそういうことを書かなければいけないようなところになぜ政府間の供与をさせるのであろうか。疑いがあるならば、もう少し地域を離れたところにJICAは相談に応ずるべきではなかったのだろうか、私はそう思うわけでございますが、フィリピンのこのことについて外務省から答弁を受けたいと思います。
  28. 梁井新一

    ○梁井政府委員 円借款を供与いたします前に、修理造船所の敷地をどこにすべきかという問題につきまして国際協力事業団は、フィリピンの各地、全部で六カ所の候補地を検討したわけでございます。ただいま先生御指摘のマニラにつきましては、この周辺の海域は非常に遠浅でございまして、大型航路のしゅんせつに莫大な費用がかかるということもございまして、その他いろいろ敷地を調べたわけでございますけれども、最終的には、スービック湾が大型船舶の入港に適当な水深も有する、特にスービック湾は山に囲まれておりまして非常に波が静かである、その他ドックをつくります上での土質と申しますか、重たい構造に耐える土質を持っているということもございまして、スービック湾に決定した次第でございます。
  29. 草川昭三

    草川委員 いま経済協力局の方からそういう御答弁でございましたが、三十万トンの船を支える程度のドックならば、私はこの近くにも、また他の適当な地域にもたくさんあったと思うのです。問題は、いまも触れましたように、このスービック湾というのはアメリカの第七艦隊の拠点でございますし、それから、その反対側にはベトナムのソ連の基地もあるわけでございますし、戦略的には非常に重要な地域でございます。だから私は、そういう地域であるだけに慎重な配慮をし、日本もホルムズ海峡なりあるいはまたマラッカ海峡の方を大型タンカーが通航をするわけでありますからいざというときにお願いをしなければいけないということは十分わかるわけでございますが、そういう意味を含めましても、このスービック海軍基地をいまなお、これはあくまでも民間だと言い切るそういう態度がかえって将来の誤解を招くのではないだろうか、こう私は思うわけです。  そこで、ちょっと行ったり来たりになりますけれども、いまのお話の中で、マレーシアのルムット軍港という問題が建設省の方からお答えがございました。これも当初は、実は木材港だということで国民の皆さん方には発表されたわけであります。マレーシアですから当然木材が出るだろうと思って私どもも現地へ行きますと、全くの山でございまして、山を切り崩して、完全な軍事目的のためにつくられた港であるわけです。マレーシア政府国防省が、西ドイツの専門のコンサルタントにこの軍港の設計依頼を出しました。これだけの非常に分厚いテンダーというのですか入札見積書というものを、私はたまたま手に入れました。これは向こうのお国のことでございますから資料配付ということは差し控えさせていただきますが、とりあえず総理、見るだけ見ていただきたいと思うのです。このテンダーという見積書の中をずっと見ていき手と、この港の埠頭には――埠頭というのですか係留桟橋と言われるものでございますが、海防艦あるいは魚雷艇、それからフリゲート艦というのがずっと並んでおるわけですね。その受注をされました佐伯建設のいろいろな関係者の方々お話を聞きますと、当初は何とかいけるのじゃないかというので、全体についての見積もりを出して受注をされたというわけです。ただし、そのときに、建設省の方から、後から少し注文がついたらまずいから、一部除外をして受注をしましょうというので受注をしたやに聞いております。しかし、その後、これは参議院の予算委員会だとかいろいろなところで問題になりまして、おい、ちょっとこれはやばいぞというような話を、建設省なり、通産省なり、運輸省なり、大蔵省なり、外務省なり、関係者の方々に相談をされまして、正確に言いますと、見積もりを出したのは五十二年の四月に入札の見積もりを出された。それから四月、五月、六月と、いま言った関係省庁と相談をなされまして、これはまずいだろうというので、この中の一部の引き揚げ船台というものだけを除外をして受注をされたおけです。そして、できたら現地のジョイントベンチャーと肩がわりをして、現地の人でくいを打って仕事をさせようと見受けられたのではないだろうか、そういうようなことがうかがわれるわけでございますが、結局これは軍港であった。こういう事実があるのですが、建設省はどのように判断をされますか。
  30. 宮繁護

    宮繁政府委員 マレーシアのルムット軍港建設工事の受注に関しましては、建設省では本件の工事につきまして、入札の前に佐伯建設工業よりの申し出によりまして関係省庁とも協議の上、リフト(湯船設備)、スリップウエー(斜路)、ヤード(修理施設)の各部分を除いて工事契約を締結するように指導いたしました。それで、入札等の経緯につきましてはただいま御指摘がございましたような経緯でございましたけれども、御指摘のように佐伯建設工業は、一応全部の工事について積算をいたしまして入札をいたしました。しかしながら、入札の前に建設省等関係省庁の行政指導によりまして、この入札の際にマレーシア政府の公共事業省に対しまして、リフトとかスリップウエーとかヤードについては日本政府の了解が必要であることを条件として応札をしたわけでございます。入札後、発注者でありますマレーシア公共事業省と協議を行いまして、日本政府の行政指導を受けて、この三施設の部分を除外して落札し、契約を締結したものでございます。それで、あとの工事は防波堤、しゅんせつ工事、桟橋工事等ということで受注をいたしたわけでございます。
  31. 草川昭三

    草川委員 ちょっと下請の関係を言ってください。下請でやるのではないのですかという質問です、外したところを。
  32. 宮繁護

    宮繁政府委員 これは佐伯建設工業に十分聞き取りました。そういうことはないということでございまして、私ども、そうだと確信をいたしております。
  33. 草川昭三

    草川委員 まあ私も、こういう問題について個別の企業のお名前を出すことは差し控えなければいかぬと思っておりますし、できる限り正確な共通の事実で問題を進めなければいかぬと思いまして、建設省の方にも何回か来ていただいて、下請の肩がわりで、これはいけないというスリップ船台をやるのじゃないですかということを、くどく私どもも聞いておったのですが、たまたま現地の方から来ておる資料を見ますと、向こうの公共事業局の幹部の方から手紙が来ておるわけです。これをちょっと翻訳して読みますと、入札条件について貴社の現地提携業者、いわゆるパートナーと言われるところでございますが、ムダジャヤ建設株式会社との合弁事業の契約書の草案はきれいに整備をされていると見られます、できる限り早く正式調印をしてやってください云々という手紙があるわけです。だから私ども、なるべくこちらも手のうちを見せて、こういう資料を持っておるからあなたも調べてくださいよというやりとりをして、肩がわりで外したところをやるのじゃないですか、そのパートナーと言われる現地の建設会社の能力はどうかを調べていきますと、現地の下請の能力というのは船一隻持っていないわけです。だけれども、そういう方とパートナーとして組むという約束があるわけですから、日本政府がだめだと言ったところは、日本の船で実際は名目的に看板だけ変えて工事をやろうとしておったのではないかということが一つでもうかがわれるわけであります。だから、こういう問題については、私どもが誠意を持って手のうちを示して調べてくれと言ったら、建設省の方もあるいはその他の役所の方もやはり正確な情報を出しながら――本当にこれは大変なことじゃないか、今度の場合でももう九百億、千億になろうとしておるわけであります。  私どもが調べておる中で、たとえば英領チャゴス諸島というのがあります。ジエゴガルシア米国海軍、これはB52がおりるように滑走路の拡幅、延長という工事で二十億円の受注を五洋建設がしておるわけでありますが、いま入札をいたしておりまして、去年の十二月に五十八億円の入札を出したと言われておるのです。これは新しい事実なんです。そして、そこに護岸工事をいたしまして第七艦隊が入るように、このチャゴス諸島の島でございますが、ジエゴガルシアの米国海軍の補助施設を、しかも米国の海軍省の施設部が発注者でこの五洋が受けるわけでございますが、では、そういう事実どこのマレーシアの軍港の問題とを比べてみると、確かに、このマレーシアの軍港については引き揚げ船台を除外したことは事実なんです。これは私も知っております。だから、逆に今度はマレーシア政府が頭にきて、何だ日本の連中は、一括請負を何だかんだと言ってもやると言ってくれたからこそしたのだ、最後になって、国会でうるさいことになったから、この分だけはだめだと、こう言った、もう一回受注をやり直さなければいかぬと言って、いま西ドイツとネゴをやっておるわけです。相手にだってこれは迷惑をかけるわけです。佐伯建設だって、全部仕事をやるつもりで受注したにもかかわらずいいところだけ外されたわけですから、大変な赤字になって佐伯建設は戻ってきておるわけです。一体だれが最初に――おい、これだったらいけるぞ、うるさいことがあったら下請に肩がわりさせてやらせればいいじゃないか、そういう知恵をつけた人がいるに違いないわけです。これらの会社の中身を細か三言いませんけれども、かなり大多数の幹部は、お役人の天下りがこの会社にもずいぶんいるわけです。そういう天下りのお役人の名前は一々申し上げませんけれども、知恵をつけた人がいるからこそこういうことをやる。トータルでながめてみると、このスービック湾の海軍基地なんというのは、民間民間だと言いながら、一番日本政府民間借款をやりながら、片や三十万トンという大きなドックを建設しておる。片や三千トンのスリップ船台で、おい、やばいからこれだけ外そうやと言っておりてしまった。不均衡じゃないかという声が一部にはあるのですよ。私は全部認めよという立場じゃないですよ。それはいわゆる裏の政治力の強さによって具体的な指導の方法が変わるというわけです。  いまや、まさしく、海外工事あるいは海外経済援助というものについていろいろな意味でのうわさが出ております。私も、鈴木総理が行かれた後、東南アジアを回ってまいりました。東南アジアで鈴木総理が、日本は軍事大国にならないというのが、向こうの新聞では非常に高く評価されておりました。にもかかわらずスービック湾のようなところでは、日本の大変なノーハウというものがそこに提供される、これは矛盾があるじゃないかという意見があるわけであります。諸外国から、東南アジアから、日本は大変強い期待を持たれておりますけれども、一体こういうことになるのか、私はこの際、一回、洗い直しが必要だと思うのです。  そこで、建設大臣にお願いをするわけでございますが、一体がかる細かい問題等について具体的な指導というもの、指針ということをもう一回検討する用意があるかないか、それについてまずお伺いしたいと思います。
  34. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  具体的な工事につきまして御指摘があったわけであります。これは建設省といたしましては、従来から武器輸出三原則、政府方針に基づいて指導してまいってきておるところでございます。直接武器製造あるいは直接戦闘の用に供する施設というような問題についてやってまいってきたわけでありますが、先生の御指摘のような具体的な問題について誤解を生ずるような場合もあるようにも考えられますが、あわせて今後の課題として検討させていただきたいと思います。  ただ、私たちは、先ほど先生もお話がありましたように、わが国建設業界の海外活動が大いに発展することを指導いたしておるわけであります。国内五百四十万人の就業者、五十万になんなんとする建設業者、特に日本の土木建築技術というものは世界にその力を非常に認められているわけであります。特に発展途上国においては日本に対するそうした指導、協力について大いに嘱望されておるわけでありますので、そうした面もあわせて、この施設の問題を今後の課題として検討しなければならぬのかなと、このように考えるところでございまして、なお慎重にひとつ検討させていただきたいと思います。
  35. 草川昭三

    草川委員 これはどちらにいたしましても、去年の三月、大平総理が参議院で御説明をされておるわけでございますが、軍事力の増強に役立つようなものには申すまでもなく協力すべきではない。あるいはまた、五十三年四月の衆議院の外務委員会でも、対外経済協力に関する決議の中で「今後とも軍事的用途に充てられる或いは国際紛争を助長する如き対外経済協力は行わないよう万全の措置を講ずる」こういうことを言っておみえになるわけでございますし、今度の衆議院の本会議のときにも、総理の方からこの点については再度御説明になっておるわけでございまして、従来の政府方針は変わらぬということを総理は言っておみえになるわけであります。  そこで総理の方から、いまのようなことを総括的に含めて、特に日米首脳会談がおくれておりまして、近く総理も日米首脳会談に臨まれる具体的な日程がある程度詰まったやに見受けられるわけでございますし、その場合にも、特に日米の間にはこのような軍事的な、特に防衛問題あるいは自動車問題だとか、マンスフィールド駐日大使の方からも率直に、特定の分野で特定の機能を日本に求めるというレーガン政府基本方針が伝えられていると私ども聞いておるわけでありますが、この日米の防衛分担の大きなテーマも含めまして、そしてまた、この国会の中でいろいろな意見が出ておりますが、国際的軍事的な役割りを負わぬということを非常に強く声明をされておるわけでございますが、そのようなことを明言できるかどうか。ひとつ総理の訪米日程の具体的な問題を含めてお伺いしたい、こう思います。
  36. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私の訪米日程につきましては、現在、両国政府の間で具体的な詰めを行っておる段階でございます。まだ若干時間を要するようでございますが、四月はいろんなことでレーガン大統領等にも御日程が詰まっておるようでございます。五月に入りますれば、できるだけ早い機会に両国の都合を調整をいたしまして訪米いたしたい、こう考えております。  そのレーガン大統領との首脳会談におきましては、日米二国保間の問題はもとよりでございますが、世界の平和と安定に寄与すべく両国政府の共通の関心の事項につきまして率直な意見の交換をいたしたい、このように考えております。わが国は、御承知のように平和国家として、日本の置かれておる立場及び国力にふさわしい国際社会の責任ある一員としての役割りを果たす、そして国際の平和と繁栄に寄与する、これが基本的なわが国の方針でございます。日本の自衛のための最小限度の自衛力を整備する、これは防衛の面におきましてはそれを堅持してまいるつもりでございます。それ以上の国際社会における日本の軍事的な役割りというものを期待されましても、それはわが国の憲法その他の点からいたしまして許されないことでございます。そういうことにわれわれは応じるわけにはまいらないことは、繰り返し申し上げておるところでございます。私は、経済的な協力あるいは技術的な協力あるいは文化的な面あるいは政治的な面で、日本としてはできるだけ世界平和に貢献する方向で努力をしてまいりたい、こう考えております。
  37. 草川昭三

    草川委員 いまの御決意はわかったわけでございますが、さらにもう一度念を押しますが、じゃ、首相の訪米時期というのは、いま四月はお忙しいというお話で、これは推定をいたしますと、いろいろな審議関係もございますが、五月の連休の後ということはいまはある程度煮詰まったと理解をしていいわけでございますか。具体的にもう一歩進んだお話をお伺いしたいと思います。
  38. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 私からお答え申し上げます。  総理からお答えになりましたが、恐らく五月に入ってからということになると思います。ただいまおくれておりますのは、向こうの日程、ヨーロッパの首脳が四月にどうとかいう、そういうような相手方の日程の都合でまだ具体的に決まっておらぬということでございます。もう日ならずして私は決め得ると思っておりますが、五月に入りましたらなるべく早い時期にと思って、いま外交チャンネルを通じて交渉しておるところでございます。
  39. 草川昭三

    草川委員 では、以上で、とりあえず海外基地の問題は終わりたいと思いますが、いま建設大臣の答弁に私は非常に不満でございます。通産の方は通産なりに、今度の問題についていわゆるジャッジというのでしょうか、一応対応のためのいろいろな会を開こうということも言っておみえになるわけでありますから、私は、建設の方も具体的な問題について国民の皆さん方に明らかになるように、そしてまた諸外国の方々にも理解ができるような具体的な対応を立てられるということを強く望んで次の問題に移りたい、こう思います。  次は、時間の関係等もございますので、医療問題に入らせていただきたい、こう思います。  まず簡単に医療問題について、過日も十全会問題等が具体的になっておりますが、医療の産業化という問題が、いま非常に大きな問題になっております。この医療の産業化というものについては、医療というものが金もうけの対象になるということは絶対許されないことでございまして、私どもは、とうとい人命をお預りをするお医者さんあるいは病院等が正しい運営、そしてまた、安心して経営ができるようなそういうものも支払いながら、保健行政あるいはまた医療行政というものはやられなければいけないわけでございますが、どうもながめておりますと、最近、医療の産業化というものが少し露骨になり過ぎておるのではないだろうか、こういう感じがするわけでございます。  いま皆様のお手元に資料をお配りをしたと思いますけれども、この資料を見ていただいてもおわかりのとおりに、先ほどの財投の方にも関係するわけでございますけれども、開発銀行の融資が非常に医療の方にも流れてきておる。これは果たして開発銀行の本来のあり方にマッチをするかどうかという問題提起をしたいわけであります。  開発銀行というのは、本来が民間金融機関の量的な補完あるいはまた質的な補完、それは政策目的に応じて開銀は融資をするわけでございますが、ホテル業界にかなり力を入れている。これは過去にも何回か問題になりまして、開発銀行はホテル銀行かと言われるような批判もあるわけでございますが、たまたま私が取り上げる例は第一ホテルというところにいろいろな融資をしてみえる。もちろん融資をして表中身は施設整備ということで出ておるわけでございますが、その第一ホテルの下にエンタープライズといって不動産業者が子会社であるわけです。このホテルの不動産業者が、ホテル関係の不動産をやっておるならいいのですけれども、静岡県の小笠郡大須賀町で総合病院を経営したい、こういう言い方で、現地の医師会と大変なトラブルが実はいま起きておるわけです。現地の医師会は、医療の産業化に反対だということでトラブルがあるわけでございますが、これは一つの例でございますが、こういうような流れというもの、お金に色がついておるわけではございませんから、別に開銀はそのために出したんではない、こうおっしゃいますが、こういう流れが一つはあるわけです。あるいは、そのほかいろいろな、結婚式場だとか中華料理だとかというようなところにも出しておみえになります。別に出して悪いということではないのですが、民間との競合が多過ぎるのではないか、これがこの上の表であります。  昭和三十一年から三十五年、民間金融機関の融資割合、特にこれは産業設備資金の割合ですが、七五・五%ございましたのが最近では五三%に減ってきております。政府系金融機関、一六・八%は三五・九、こうふえてきておる。その中でも開銀融資は五・八から一一・五にふえてきておるわけです。  それで私は、先ほど財投お話をいたしましたけれども財投資金というものも非常に不安定です。特に年金財政が小さくなってきた。資金運用部の方もいろいろと将来確たる計画が立てづらい状況になってまいりまして、いわゆる預金業務をしない銀行というのは開発銀行と輸出入銀行、こういうところですが、こういうところは預金業務の苦労がありませんから、出す方へものすごくやりますから民間との競合というものが非常に目立ってきておりまして、それがこのホテル業だとか病院経営になる。一方では、最近非常に大きくなりましたリース産業に開発銀行が積極的に融資に乗り出されます。  たまたま、ここに日本リースという会社がありますが、これもリース専門で「はまなこ病院」というものに出資をいたしまして、この「はまなこ病院」というのが、実はこれは老人専門病院でございます。ミニの十全会病院のようなものでございますが、これが倒産をいたしました、五億円で。病人が、寝たきり老人がたくさんおみえになるまま競売に付されたわけであります。病人つきの競売になったわけです。その大口債権者というのは日本リースなんです。いまお医者さんは、リース会社が医療器具はほとんど持ってきてくれますから、お金を出さなくてもリース料だけで病院経営ができますから、簡単に新しい機械を買われる。これが実は保険財政を大変圧迫をすることになるのではないか。一番右に、これも埼玉県の診療所志木クリニックというのがあるのですが、これもつぶれたのです。これもオーナーはリース会社なんです。  この医療リースという問題は、通産省にお伺いをいたしますが、通産省はリース産業発展のために、医療もやれと言って制度融資をやっておみえになるわけです。ICUのような救急医療なんかも、補助金出してリースやれ、こう言っておみえになる。一方ではプレッシャーがかかるわけです。ところが、受ける方の保険財政というのはどうなるかというと、保険の方はたまったものではないです。お医者さんは、レントゲンであろうが、断層写真なんかも新しいものを欲しいわけですから、リースの方がいいじゃないか、いいじゃないかと言って、結局高いものになってしまう。そして、医療産業というのはもうかるから、さあ新しい、付加加値の高い医療機器をつくって売ろう、こういうことになるわけです。  この犠牲をどこか裏で開発銀行が支えておるとするならば、それはもう本来の政策目的でないじゃないか。かえって日本の医療というもの、保険というものの首を締めるために開銀は積極的な営業活動をやっておるのじゃないかということが出てくるわけです。いやらしい言い方ですけれども、結果としてはそういうことになるわけです。だから、医療の産業化という問題についてどう考えるのか、あるいは少なくともこのようなリースの問題について、私は、国立病院だとか大学病院は避けてやっていただきたいと思うわけでございます。  通産省にちょっとお伺いをいたしますが、制度融資等もやっておみえになりますが、国立病院だとか大学病院にリースをどの程度使われておるのか、お伺いしたいと思います。
  40. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御指摘の開銀融資、つまり制度融資でございますけれども、五十三年度、五十四年度両年度で約一千七百件ぐらいございまして、国立病院関係は十二件、全体の約一%程度が現状でございます。
  41. 草川昭三

    草川委員 いま国立病院だけのことをおっしゃられましたが、文部省の方の大学病院の方もあるのでしょう。それも含めてのお話でございますか。
  42. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えをいたします。  文部省において調査をいたしましたところが、大学病院の医療機器につきましては単年度購入契約によりまして購入しておるところでございまして、数年間にわたる長期の賃貸契約によって受けておる事例はないと報告が来ております。  なお、国立大学付属病院の電子計算機につきましては、単年度ごとの賃貸契約でございます。
  43. 草川昭三

    草川委員 いま国立関係は原則的にはないというお話だったのですが、私どもが調べたところでは、実際はかなりあるのです。  それで、リース契約というのは、御存じのとおり、わが国の会計は単年度契約になっておりますから、長期にわたる契約というのはそれなりの手続が必要になるわけです。債務負担行為という手続をしなければいけないわけですが、まあまあというので、実際は裏で現場の事務長さんが五年契約のサインをするわけです。そして領収書だけは一年ごとの毎年度更改ということをやっておみえになりまして、一時リースが非常にふえた。最近ちょっと減ってきたわけでございますが、非常にリース産業が一方でふえればふえるほど、実は国立関係は会計処理上これに対応できない。だから原則的には、私どもが資料請求をいたしましても、リースは導入していないという答弁が全部来るのですが、裏では実際やられておるわけです。  リース会社は、たとえば日本リースなんというのは医療専門のリースですよというパンフレットを配っておるわけです。その中には、国立大学の名前が全部出ております。あるい国立病院の名前が全部出ております。公立病院の名前も全部出て、さあ皆さんもリースを使ってくれということでやっておるわけですが、こういうあり方というのはぜひ私は再検討してもらいたいと思います。事務長さんがインチキをやっておるとは言いませんけれども、正規の手続をするように、たとえば会計法上で言うところの電気代だとか水道代だというようなものは別扱いですよという方式もあるわけでありますから、私は、こういう事態について、会計検査院の方も今後どのような対応をされるのか。いまのようなあり方は見直すべき時期が来ておると思うのですが、どうでしょう。
  44. 高橋良

    高橋会計検査院説明員 お答え申し上げます。  国立病院につきましては、臨床研究部というところで、七カ所の国立病院におきまして電子顕微鏡をリースといいますか単年度契約で入れているものがございます。これは五十四年十月に入れておりますので、その後の使用状況その他を見まして、この機器につきましてかえる必要があるようであれば、リースの方がむしろ有利でございますが、そうでないような場合には購入する方が得な場合もございますので、そういった点をあわせましていろいろ検査いたしてみたいと思います。
  45. 草川昭三

    草川委員 この問題も新しい問題でございますから、医療の産業化ということを防ぐためにも、厚生省の方としてもぜひ一つの対応ということを考えていただきたいと思います。  そこで、時間がございませんので、リースの件についてはその程度にいたしまして、いわゆる薬価問題に移りたいと思います。  薬価問題については、私は昨年も問題提起をいたしまして、薬価調査は一体いつになったら発表できるのかということを当時、野呂厚生大臣に申し上げました。去年のこの予算委員会で、四月ぐらいには何とかしますよという御答弁だったわけでございます。しかし、いまなお実は発表されておりません。そして、年度内に発表するというのが厚生省のお言葉でございます。いわゆる三十一カ月間も調査をしてからほったらかしになっておるわけでございますが、おくれた最大の理由は一体何か。厚生省もりっぱなお役人がおみえになるわけですから、調査できないということはございません。調査はもう完全にできておるはずです。しかし、発表できない理由は何か、政治的な問題なのか、一言で結構ですから御答弁願いたい。
  46. 大和田潔

    ○大和田政府委員 お答え申し上げます。  薬価基準につきましては、五十三年七月に本調査を実施いたしまして、その後、五十三年十月から五十四年十一月までの間に五回にわたりまして経時変動調査を行ったことは御承知のとおりでございます。その後、石油問題等の問題あるいは公共料金の引き上げ等物価の動向にかんがみまして、直近の市場価格を把握しなければならぬということで、昨年、第六回目の経時変動調査を実施いたしたわけでございます。その経時変動調査の結果に基づきまして、私ども薬価算定の補正作業を行っておるところでございますが、その経時変動調査の結論というものがまだ作業中でございまして、そういったようなことによりましておくれておるところでございますので、御了承いただきたいと思います。
  47. 草川昭三

    草川委員 厚生省の方にけしからぬという言い方をするのは、私どもも、もうむだなような気がしてなりません。とにかく日本のこれだけスピードアップされた時代に、薬の調査が三年間たっても発表できない、三年間たってもいまのような局長の御答弁、これは通らぬ話ですね。だれが考えたって通りませんよ。それは行管庁に聞いたら、行管庁だって頭にくると思うのです。行管庁、いまお疲れのようでございますからやめておきますけれども。  実はこの資料を皆さん見ていただきたいのですが、国立病院と準公立、たとえばこれは日赤、済生会なんという病院です。それから自治体病院、これの薬の比較です。これはわかりやすいから一つだけ申し上げますが、制がん剤なんかは、薬価基準が六百七十九円という一つの単位でございます。ところが、国立もさすがに一生懸命がんばりまして二六・九%引きで買っておるわけです。厚生省が六百七十九円で買いなさいよと言っておいても、国立病院は二六・九%引きで買っておるわけです。これも一つ矛盾があるのですけれども。ところが、準公立の方へいくと三八%引きで買っております。自治体病院の方は、一つのこういうモデルを出しまして、自治体病院協議会の方で四〇%引きで買いなさいよという指示をしておるわけであります。  たくさんの数字がありますから見てまいりますと、いずれにしても国立病院は薬を高く買っておるということになります。だから、薬価調査というのは早くやってくれと私たちは言っておるわけです。国立、準公立あるいは自治体でどうしてこんなに差があるのだろうか。こんなばかなことはないじゃないか。財政再建と言っておりますけれども、こういう金額を切り下げただけで一年間に薬剤費は約四兆円であります。今度一八%下がると言われておりますけれども、たとえば二〇%でも八千億、薬価基準が下がるわけでございますから、これはひとつ本気で、納得のできる薬価調査をやらなければいかぬと思うのです。  公取委員長がお見えになりますから、一回公取の方から、なぜ薬価というのはこんなことになっておるのだろうか、公取としては流通問題について興味を持ちませんか、聞きたいと思います。
  48. 橋口收

    ○橋口政府委員 医薬品の価格、なかんずく医家向けの医薬品の価格の問題につきましてはかねてから関心を持っておるところでございまして、価格問題が生じます根源とも言うべき医薬品の流通問題全般につきましても関心を持っておるわけでございます。これは当委員会の中村委員の御質問にもお答えしたところでございますが、すでに医薬品の流通全般につきましての予備的な調査を行っておるわけでございまして、おぼろげながら問題の所在の概要というものがわかってきておりますので、今後本格的な調査をして、いま先生がおっしゃいましたような、同じ医薬品につきましての差別的な価格の発生の問題とか、あるいはなぜそういうことが生ずるかという問題等につきましての公正取引委員会としての解明をいたしたいというふうに考えておるところでございます。
  49. 草川昭三

    草川委員 ぜひ公取としても関心を持っていただきながら、薬価調査のあり方、すなわち国立病院が高いというのは、全体の薬の流通の中で国立病院を一割だけ高くしておけば、ほかの品物がどんなに安くても一割分の高いところに薬価というのは落ちつく仕組みになっております。これが九〇%バルクライン、こういうことになるわけですから、これを変えなければいけない。  私は去年、もう一つ、二倍の法則、大箱と小箱があると大箱の方が安い、小箱の方が高い、大箱が二つの大きさにならない限りはどうしても小箱の高い値段が薬価になるというからくりを説明しましたが、薬価調査のこのバルクライン、オンライン方法、いろいろな方法があるわけでございますが、これを直さない限りはだめだと思うのですが、この点について厚生省の意見はどうでしょう。
  50. 園田直

    ○園田国務大臣 薬価の問題についてはしばしば御発言をいただいております。残念ながら、御発言の趣旨は、私もこれを肯定せざるを得ません。  そこで私は、この前の国会でも答弁したと覚えておりますが、第一は、薬価の改定というものは三年間もほうっておくべきものではなくて、少なくとも一年に一回は実施すべきものであり、物価の急激な変動があればそれに応じてやるべきものである。今後はこのようなことがないということを約束いたします。  第二番目には薬価の改定、いま作業を急いでおりまして年度末までにはぜひやりたい、こういうことでやっておりますので、私、不肖でありますが、年度末までは厚生大臣が首になるようなことはないと思いますので、ここで答弁で逃げるわけでは断じてございません。  それから次には、薬価を決める場合の九〇%の問題でありますが、この問題でいろいろ問題が起こっていることは、これまた御指摘のとおりであります。いま審議会等に諮問もいたしておりますので、それも参考にしながら、今度は薬価の決定は国民の方が納得されるように、ガラス張りとはいかぬでもビニール張りでいきたい、こう考えるところであります。なお、国立病院と一般との薬価の相違、これは支払い方法、期日等で簡単に比較はできませんか、これも残念ながら、そういうことが事実であると私も考えております。この薬価の改定がおくれたために、厚生省が決めた薬価と実際の取引の薬価に差がある、これがまた医療問題その他に大きく響いてきておるばかりでなく、いま内閣で問題にしておる消費者物価にも大いに影響するわけでありますから、今度は必ず、答弁したとおりにいたすつもりでございます。
  51. 草川昭三

    草川委員 薬価算定のオープン化ということに若干の示唆をされた御発言でございますので、そういうことをぜひ採用していただきたいと思います。そこで、時間がいよいよなくなりましたので、私、きょうは実は総理に、お願いがあるわけですが、丸山ワクチンという問題がございます。細かい経過は一切抜きます。私どもは医者ではございませんから、効くとか効かないということを政治の場で論議をすることは厳に慎まなければいけない、こういう立場を私は持っております。しかし、行政ということは差別があってはいけない。同じ薬の申請をしたら、同じように片一方も出たら同様な基準で審査をしてもらいたい、これ一点張りで、私は何回か丸山ワクチンの問題を取り上げてまいりました。しかし、残念ながら、いまもって結論がついておりません。ようやく追加資料が出てまいりまして一定のところまで来たわけでございますが、昨年、園田厚生大臣は私の答弁に、私は裏の裏まで承知をしておる、とにかく差別をしないようにするということを約束をしていただきました。しかし、私はそうありたいと思うのですけれども、率直なことを申し上げまして、薬事審議会というのですか、そういう偉い大学の先生方の間では、この問題についてはこじれにこじれ切っておるわけです。いまのままでいくとするならば、丸山ワクチンは幻のワクチンに終わりかねません。  そこで私は、何回か申し上げますが、政治がそういうものに関与することは間違いだと思いますけれども、国民のがん治療という問題、そして毎朝五百人から六百人の人が、北海道から九州まで、寒空に並んでおるという事実を政治家は黙視すべきではない、こういう意味で、私は総理から、この薬事審議会の先生方のこじれた問題だけは解きほぐすような方向を探るような行政のあり方だけはぜひ御指導願いたいと思いますので、その点についての御意見をぜひお願いをしたいと思います。
  52. 園田直

    ○園田国務大臣 お許しをいただいて、前に一言だけお答えをいたします。  これも御発言のとおり、前の臨時国会で詳細に御発言があり、私もこれに対してある程度具体的にお答えをしたことを、確実に覚えております。おっしゃるとおり、こういう問題は単なるムードでやるべきではなくて、学問的にこれを公平に審査しなければ、後々問題が起こってはならぬと存じますが、また一方、これが薬害がないこと、もう一つはこれの製造許可を与える、実際使った人が望む声が非常に多い、それは海外までございます、こういう点は大臣として考慮すべきで、あとは薬事審議会の答申を待つべきでありますけれども、これは先般申し上げたとおり、資料その他について事務当局も非常に親切に世話してあげなさい、こういうことで資料が集まり、三月士一百初回の調査会が始まるわけでございます。御発言は十分忘れずやるつもりでございます。
  53. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今日、国民の間に、がんの治療対策の早期開発、これを要求する声が一層高まってきておるわけでございます。そういう中におきまして、丸山ワクチンにつきましての審議を促進してほしい、こういう問題提起が強く出ておるわけでありますが、いま厚生大臣からも申し上げましたように、中央薬事審議会で薬学、医学の最高の水準に立ちまして、製造許可の問題をいま鋭意進めております。厚生省におきましても、不足資料等の提示も求めまして促進方に努力をいたしておる段階でございますので、御期待に沿うように進めてまいりたいと思います。
  54. 草川昭三

    草川委員 時間が来ましたので、最後に一問、名古屋オリンピックの招致問題について総理の御見解を賜って終わりたいと思います。  御存じのとおり、一九八八年の第二十四回オリンピック競技を名古屋に誘致するというので、招致推進の議員連盟も発足して具体的に進んでおるわけでございますが、いよいよ最終決定のIOCの総会も始まるわけでございますので、総理はどのような御見解が、あるいは今後の具体的な支援方法について御見解を賜って終わりたいと思います。
  55. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 名古屋が、八八年国際オリンピックの招致に向かいまして非常に熱心に招致運動等、努力をしておるわけでございます。政府におきましても、閣議においてこれに同意を与えるという方針を決めたわけでございます。この国際オリンピックは、国際親善の上からも、またスポーツの振興という面からいたしましても非常に大きな意義があるものだと私は評価をいたしておりますし、東京、札幌オリンピックに劣らないような成果を上げたいものだ、そのために政府としてもできるだけの支援、協力を惜しまない、こういうつもりでおります。
  56. 草川昭三

    草川委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
  57. 小山長規

    小山委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  次に、依田実君。
  58. 依田実

    依田委員 きょうは新自由クラブを代表いたしまして、外交、そしてまた防衛問題について三十分だけ伺わせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  最初に、中国との経済問題について伺わせていただきたい、こう思うわけであります。  先般、日本からのプラント輸出の中断、中止問題をめぐりまして、大来代表が中国へ行かれまして、いろいろ向こう側とお話をされた。そして、一応中国側から国際上の通常の慣習に従って補償を考える、こういう答えが出た、こういうことでお帰りになっておるわけであります。しかし、われわれ考えてみまして、これからその通常の慣習をめぐっていろいろ議論が出てくるのじゃないだろうか、こういうふうに考えておるわけであります。と申しますのは、中国もなかなか閉鎖社会が長かったわけでありまして、いわゆる国際的な慣習というものに対する理解がどの程度あるのかどうか、それよりもまた、いまの中国の財政難の中で果たしてこういう補償問題をスムーズに解決していくことができるのかどうか、一抹の危惧を持っておるわけであります。  そこで、外務大臣にお尋ねをさせていただきたいのでありますが、これからこの問題をめぐって日本側としてはどういう対応の仕方、手順でこれに応じていくのか、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  59. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げますが、新聞紙上で、大きなプロジェクトにつきまして延期とか中止とかいう話が中国側から出たということで大大的に報ぜられておるということがございましたので、この問題が日中の今後の友好関係に傷がつくようなことになってはいかぬという考え方から、各省とも御相談しまして、大来政府代表に行っていただいて、そして中国側の実情を実は聞くということで、個々のプロジェクトについてどうするということでなくて、向こうのいわゆる経済調整の実態、今後の見通し等について話し合いをするということで大来代表に行ってもらったわけでございます。その結果、山に霧がかかっていたのが霧が晴れて、大体の中国側の考え方がわかってくるというようなことになったわけでございますが、実は今度、向こう側から技術輸入公司の副総経理という人がこれから来まして、いまの宝山の問題でございますとか石油化学、四つございますが、この問題について具体的な話し合いに来るということにいまなっておるわけでございます。  大来代表が向こうへ行きまして話した中で、いわゆる国際慣例に従った補償の問題でございますとか、あるいは向こうの一つのアイデアとして合弁とか融資の問題でございますとか、原料の石油を世話してもらう、逆に原料としての石油の世話を日本としてできないかとか、いろいろなアイデアが大来君と谷牧副総理の話の間には出たわけでございますが、大来代表は話を聞くということで帰ってまいりました。今度は向こう側から来まして具体的なプロジェクトについて話し合いが行われるわけでございまして、政府としましては、まず民間の企業が話し合いをし、進出した問題でございますので、その話し合いがどういうことになるかということをまず見守るというのが第一段階でございますが、その結果どういうことになりますか、政府が乗り出すような問題があるのか、あるいはそういうことがなくて済むものか、それは話し合いの結果によって政府は判断しようというふうに思っておるわけでございます。
  60. 依田実

    依田委員 今回のプラント問題を契機に、またもう一つの難問が出てきておる。と申しますのは、中国からの石油、石炭の輸入見通し、こういうものがどうも将来大幅に変わるのじゃないか。大来さんが行かれたときに向こう側で、一九八五年の中国の石油の生産量が現在の一億トンよりも一割か二割減るのだ、こういうような話まで出た、こういうことであります。また石炭の方も、八五年に本当は日本へ一千万トン供給をしてくれる約束になっておるわけでありますけれども、その辺についても最近、いろいろ危ない、こういう声も出ておるわけでありまして、こういうことを見ておりますと、日本の長期エネルギー需給の計画あるいはまた、日中間の長期貿易取り決めの土台というものが少し揺らいでいるのじゃないかという感じがするわけであります。通産大臣にこの辺のことの見通しをお聞きをしたいと思います。
  61. 田中六助

    田中(六)国務大臣 日中貿易の長期取り決めにつきましては、ただいま伊東外務大臣からお答えがございましたが、私もこれを非常に気にしておりまして、御承知のように日本も、一昨年の八月には長期エネルギー暫定見通しというものを立てておりますし、昨年の十二月にはまた代替エネルギーの供給目標というものをつくっておるわけでございます。したがって、この計画に大きな狂いを来しはしないかということでございますが、現在、中国の原油の方につきましてはまさしく修正をいたしまして、八一年八百三十万トン、八二年八百三十万トンでございますが、実はこれとても、どうも怪しい節があるわけでございます。したがって、残る石炭の問題でございますが、石炭の方は、むしろ向こうの方が貯炭などがたくさんあって非常に余っておるような状況でございまして、原料炭の方も予定どおり八一年は百五十万トン、八二年二百万トン、それから一般炭の方も百二十万トンから百七十万トンというふうに、大体石炭の方は安心のようでございます。しかしまた、向こうからも、先ほど外務大臣がおっしゃいましたように二十四日には大挙して参りますし、そういうような点につきましても、私どものエネルギーの供給目標あるいは暫定見通しに狂いを生じないような努力はし、また、いろいろな点で向こうにもアドバイスできるところはやっていくことが、日中関係にとりましても、将来の貿易長期見通しというものにつきましても、いい結果を生むのじゃないかと思っておりますので、私どもも鋭意その点は、わが国のこともございますが、向こうのことについても十分アドバイスをして協議していきたいというふうに考えております。
  62. 依田実

    依田委員 この問題を機会に私が考えますのは、企業の海外進出、このあり方じゃないかというふうに思うわけであります。と申しますのは、例のイランのIJPCのときもそうでございますけれども、最初は企業が利益追求、こういうととで進出を計画しておりながら、いざうまくいかないと、国策事業だから何とか政府がと、こういう考え方にどうもなっておるじゃないか。よく町で言われます、高いボーナスを払いながら政府に泣きつくとはけしからぬ、これは率直な庶民の声じゃないかき思うのであります。  私は、この中国への企業の進出についてもそういう面がなきにしもあらずだろう、こう考えておるのであります。と申しますのは、いまから二年前の外務委員会で私は、当時いろいろ企業が進出することについて、長い日で見ると日中間の友好に役立たない、必ず関係を悪化させる、こういうことを申し上げたのであります。と申しますのは、私の少ない中国への特派員などの生活から見て、中国というのは御承知のように、日本が最新鋭の製鉄所を持ってまいりましても――日本がそれまでになるのには、明治以降百年の長い技術の蓄積があるわけであります。また、一つの製鉄所を取り巻く何百という関連下請企業があって初めて大製鉄所は稼働しておるわけであります。それをいま、そういうもののない中国へ持っていくということは、本当に中国のためを考えれば少し考えてあげなければいかぬのじゃないかということを外務委員会で申し上げたのでありますけれども、いま果たしてそのとおりになってしまったわけでありまして、私はこの際ひとつ企業と政府の役割り、つまり海外へ企業が出るときの責任、そしてそれをどこでいつ政府がかわってバックアップするか、この辺のことについてひとつ慎重に考えていただきたい、こう思うわけであります。  通産大臣、IJPCの問題をめぐって、けさの新聞にも政府が乗り出すかに書かれておるわけでありますが、企業の責任と政府の役割りについてどうお考えになっておるのか、ひとつお尋ねをさしていただきたいと思うのです。
  63. 田中六助

    田中(六)国務大臣 まさしく企業の責任とそういうプラント輸出との関係、つまりIJPCや中国貿易関係などにつきましては、私どももプラント輸出全体につきましてやはり反省しなければならない、率直にそう思います。しかし、わが国の立場といたしましては、世界的な不況という、世界全体が不況の波にごっぽりつかっているような世界情勢でございますし、発展途上国あるいは日本のエネルギーの安全確保というような面からした場合、やはりプラント輸出がある程度国策につながる。私どもはあくまで民間に任して、民間企業の進出を助長するための環境整備ということがたてまえでございますけれども、やはりいま申しましたように経済的な問題あるいは政治的な相手側の危機、そういうような問題が加味してまいりますので、民間企業だけに任せることはできない場合もございますし、そういう点は民間企業の自主性を尊重しつつ、大きく言えばそういう発展途上国の向上あるいはそれがひいてはその地域の平和、それがひいては世界の平和、繁栄というようなものにつながる場合は、先進国の立場として当然これに何らかの手を下すべきでもあろうし、そういう観点からまた再検討しなければならないと思っております。しかし、根本的には、どういう情勢において、私どもも金あるいは資本、そういうものは国民との経済関係に直結している問題でございますので、そういう点の責任も感じつつ、十分再検討の余地はあるというふうに考えております。
  64. 依田実

    依田委員 いずれにいたしましてもこの日中間のプラント問題というのは、日中、将来の長い関係の上に非常に重大な影響を及ぼす。一つ取り間違えますと大変な障害になるんじゃないだろうか、こう思うのであります。何かいろいろ報道を見ておりますと、財界の中に中国不信だとか中国ショックだとか、そうい至言葉が言われているかに聞こえておりますけれども、しかし、このぐらいのことでショックを受けるぐらいなら初めから中国とおつき合いをしない方がいいんじゃないだろうか、私はこういうふうに思うわけであります。  昔から、中国という国はわからない、こういうことがわかったら一人前だ、こう言われているぐらいでございます。われわれが特派員の経験からいたしましても、長い四千年の歴史の中で本当に中国人というのは、われわれが高等学校のとき覚えた漢詩の世界ではございませんけれども、「日出て耕し、日入りて憩う。井戸をうがちて飲み、田を耕して食らう。帝力何ぞわれにあらんや」という漢詩がございまして、われわれよく暗唱いたしましたけれども、そういう世界なんであります。その上に、毛沢東の長い三十年の治世の中で大変疲れ果てているところもあるんじゃないかと私は思うのであります。いまの人民日報や文匯報にもたくさん書かれている事実でありますから申し上げますけれども、官吏の汚職であるとか、あるいはまた工場の非能率であるとか農民のサボタージュだとか、私は本当にいまあの国は大変だろうと思うのであります。そういう意味で、ひとつこの際、注意深くこの問題を取り扱うことが大事じゃないか、こういうふうに考えておる次第であります。  中国と国交が正常化されましたときに、ある中国通の方が、日本と中国というのは、長い間の歴史を見ると、国交が正常化しているときにいろいろトラブルが起こるんだということを言っておりましたけれども、私はこれが当たっておったんじゃないかというふうに感ずるわけであります。外務大臣にひとつここで、これからの中国外交について一言お尋ねをさしていただきたい。
  65. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  先生おっしゃるように、中国の現状はなかなか大変だと思います。十億の民をどうやって生活水準を上げて食べさしていくかということでございますので、今度の経済調整も、かかってそういうところから来ている。農産物の価格を上げる、あるいは賃金を上げるということで生活水準を上げよう、それがまたインフレとか財政赤字につながっているというようなことで循環して、なかなか大変なんです。しかし、いまの鄧小平さんあるいは超紫陽、胡耀邦さんという体制で中国の近代化を進める大方針は貫いていく、また、ある程度の開放体制もとるということで、壮大な実験といいますか、私はなかなか大変だと思うわけでございますが、翻って日中の友好関係ということは、いろいろな意味から見ましても日本にとりましては非常に大切なことでございます。それこそ子々孫孫にわたるまでという言葉をよく中国側が使いますが、長きにわたってそういう友好親善関係を続けていくということが、日本にとりましても、中国にとってもアジアにとっても、世界にとっても非常に必要なことだというふうに私は思いますので、中国の近代化路線に協力をするということで政府の円借款もやっておるわけでございますので、私は、今度のことで日中の関係に傷がつかぬようにということに細心の注意を払って、この問題は慎重に取り組んでいくつもりでございます。
  66. 依田実

    依田委員 次に、防衛問題に移らせていただきますけれども、先日、総理はこの予算委員会で、日本は軍事大国にならない、経済力と技術力で世界の平和に貢献をする、こういうふうにおっしゃいました。私もまことにそのとおりだろう、こう思っておるわけであります。アメリカのグレン上院議員の報告書の中にもそういうことが書かれておるわけでありまして、日本の軍事大国化というのは必ずアジアに緊張をもたらす、それはソ連だけじゃなくて、長い目で見て必ず中国にもいろいろな意味で脅威を与えて、いまのアジアの安定というものを崩す要因になるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  そこで、日米間の役割り分担、この話し合いということをこれから慎重に詰めていく必要があるんじゃないだろうか、こう思うわけであります。よくアメリカからいろいろ圧力があると言われておりますけれども、しかしアメリカ側も、日本の憲法上の制約であるとかあるいはまた国民世論の動向とかというのはちゃんとわきまえているはずだろう、こう私は思うのであります。その中で何を日本側ができるのか、そして何を日本側ができないのかを向こうは日本と協議をしたい、知りたい、こういうことだろうと思うのであります。  そこで、世によく言われます海上航路の安全確保、そういうようなものを日本が分担しろ、こういうようなことを言われているというようなことがあるのでありますが、私は、いまみたいな考えからしてそういうことはない。ましてや、ペルシャ湾の共同艦隊構想なんというのはとてもあり得ない、こう思うのでありますが、いままでアメリカとの折衝の中で、アメリカ側が日本側にそういうことを要求したことがあるのですか。
  67. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 イラン、イラクの紛争が起きた当時、共同パトロールとかいろいろな話が伝わったことは確かでございますが、日本に対してそれについてどういう分担をしてくれ、どういうお金負担してくれとか、そういう具体的な話は一切ございませんでした。そして、その後、ホルムズ海峡の航行の安全ということは、日本も紛争当事国にやかましく言いましたし、国連その他でもみんなやかましく紛争当事国にそれを言っているわけでございまして、いまのところは全然そういう心配はなしに航行の安全は保たれるわけでございまして、恐らく共同パトロールというようなことも実現してはいないんじゃないかと私は思いますが、日本には一切そういう要請等はございません。
  68. 依田実

    依田委員 これまでの日本の政策変更のパターンというのは、外圧がある、こういうことをてこにやるケースがどうも多いわけでありまして、また、それを手に使う一部の勢力がある。日本の防衛のために非常に残念だ、私はこういうふうに思うのであります。世に言われますソ連の北海道上陸論であるとか、あるいはまた憲法を改正しろとか、そしてまた、いろいろためにする議論が多過ぎるのではないかと思うのであります。そういう意味で、その前に大事なことは、そういう議論が起こる前に、日本の自衛隊というものはどういう姿であるのがいいのか、これを自分なりに政府がちゃんと持っておれば、いろいろ外からそういう雑音が入ったときに毅然としてそういうものを否定することができるのではないか、私はこういうふうに考えるわけであります。  そこで、日本の自衛隊の目標、水準、これをどこに置くのか、防衛庁長官にお伺いをさせていただきたいと思います。
  69. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします。  米側よりわが国の防衛努力について強い期待表明がなされてきたことは事実でございますが、政府といたしましては、あくまでもわが国の責任と自主的判断に基づき、国民の理解を得ながら防衛力整備を行っていることにつきましては、これまでたびたび申し上げているところでございます。  お尋ねの点でございますが、わが国は、みずから適切な規模の防衛力と日米安全保障体制をその安全保障の基本としておりまして、保有すべき防衛力につきましては、昭和五十一年に閣議決定をいたしました「防衛計画の大綱」を策定し、そこで定められております防衛構想、防衛力の水準等を目標として鋭意防衛力の整備を行っているところであります。また、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図るため、今後とも米国との間で積極的に意見交換を行い、相互理解を進めてまいりたいと考えている次第であります。
  70. 依田実

    依田委員 ちょっとお答えがかたいのでありますので問い直させていただきます。やさしく砕いて問い直させていただきますけれども日本の防衛に大きく言って二つの考え方があるのじゃないかと思うのであります。一つは、陸上兵力を増強いたしまして、ソ連が侵入したというか、何か仮想の敵が侵入した場合に、アメリカの助けが来るまでこれを持ちこたえる、これが一つだろうと思うのであります。もう一つは、敵の侵入を未然に防ぐ、これが大事だ、こういう二つの考え方の流れがあるのじゃないかと思うのでありますが、いまの防衛庁は、そのどちらかと言うとどちらになるのでしょうか。
  71. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  わが国が専守防衛の方針を基本としておりますことは御承知のとおりでございます。そこで、外部からの武力攻撃に対しては、できるだけわが国土に侵入される以前においてこれを阻止、排除する考えであり、国土に戦闘が及ぶのを最小限に食いとめたいと考えております。それでもなお侵攻の規模、態様によりましては着上陸されることも予想されるところでありまして、この場合におきましては極力早期にこれを排除することとしますが、独力での排除が困難な場合には、あらゆる方法による強靱な抵抗を継続し、米国からの協力を待ってこれを排除したいと考えております。したがいまして、御指摘の問題につきましては、防衛庁といたしましては、選択の問題としてよりは、むしろいずれの段階においても必要とする防衛力を整備していきたい、さように考えている次第でございます。
  72. 依田実

    依田委員 私は、未然に防ぐということがやはり大事だろうと思うのであります。この間、あるテレとを見ておりましたら、北海道の戦車隊長が、来たら大丈夫だ、われわれは戦うのだ、こうおっしゃっておった。確かに、意気たるや軒高で結構でございますけれども日本のような狭い国土の中、また都市に人口が集中しておる、こういう中で敵に一たび侵入されましたら、これはなかなか守り切れない、私はこう思うのであります。やはり未然に情報をキャッチしてこれを抑止しなければならぬだろう、こういうふうに思うわけであります。  先般ニュースで、例のソ連がポーランドに介入するかしないかというあの危機のときに、ブレジンスキー前補佐官が、アメリカがソ連軍のある空挺師団がポーランドに侵入の準備をし出した、こういう情報をキャッチして、カーターがクレムリンに電話をしてこれを抑止した。こういう話を漏らしておりましたけれども、なかなか日本はいま、そこまで情報収集をする能力はないかと思います。しかし、相手の状況を正確につかんで、そのデータを示して抑止するということが一番大事だろう、こういうふうに思っておるわけであります。いま日本は偵察衛星を持っていないわけであります。先般、自民党の中で、放送衛星か何かを上げるときにそれを偵察衛星にしたらどうだ、こういう議論が出たということでありますが、いまの宇宙開発事業団の法律からすれば、平和利用だけでありますからそういうことはできないわけでありまして、そうなりますと、一番最初に情報をキャッチするというのはレーダー基地であります。しかし、日本のレーダー基地は、全国で二十八カ所あると言われておりますけれども、その抗堪力については非常に問題がある、こう言われておるわけであります。防衛庁長官にその実情を簡単にお伺いをさせていただきたいと思います。
  73. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  レーダーがわが国の防空体制上きわめて重要な役割りを担っている点は御指摘のとおりでございます。全国に二十八カ所ございますが、その防空体制につきましては、これまでは旧式の対空機関銃が若干配備されているばかりで、ほとんど未整備の状態でございます。このため航空自衛隊では、今後、航空基地とともにレーダーサイトについてもその防空体制の整備を進めていくこととしておりまして、昭和五十六年においては基地防空用短SAM二セット及び携帯SAM六セットの整備に着手することにいたしております。なお、短SAM及び携帯SAMにつきましては、中期業務見積もりにおいて期間内にそれぞれ十二セット及び百二十セット整備することとしており、航空自衛隊の主要基地及びレーダーサイトに逐次配備していきたいと考えております。
  74. 依田実

    依田委員 レーダーの機能自体も、米軍から譲渡されたものがまだ半分ぐらいある、その更新にはあと十年くらいかかる、こういうことを聞いておるわけでありまして、よく言われます一九八〇年代の半ばに米ソ間の緊張状態が山に達する、こういう中で、十年かからないと日本のレーダー網が完成しないというのじゃ困ることであります。そのほかバッジであるとか継戦能力、いろいろ問題があるわけであります。日本は御承知のように高度の電子工業技術を持っておるわけでありまして、そういうものをフルに生かして本当に防衛のために大事な装備を整えるべきだろう、こう思うのであります。予算を見ておりますと、自衛隊の中で人件費、糧食費が四八%、正面兵器装備費が二二・五%にすぎないわけでありまして、この少ない予算の中で何を効率的に選択していくか、それをいま迫られておるのじゃないだろうか、こういうふうに思うわけであります。  さて、時間がございませんが、アメリカの対日防衛費の増額要求、この背景にはアメリカと日本との経済摩擦があることは疑いもない事実であります。やはりアメリカはアメリカの国策があって、アメリカの有利にこの防衛と自動車問題をリンクさせる、こういうふうに考えておることは間違いないと私は思うわけであります。そこで、通産大臣はこのリンクはさせない、こう言っておるのですが、果たしてそれで済むのかどうか。自動車の輸出問題を見ましても、いままでの行政指導で果たしてアメリカ側を説得できるのかどうか。クライスラーの問題なども含めてこれに回答を出さなければこの問題は解決しないと思うのでありますが、通産大臣、どうお考えになりますか。
  75. 田中六助

    田中(六)国務大臣 日米の経済摩擦、主体としては自動車摩擦でございますが、これは非常に頭の痛いことで、日本とアメリカがこの経済問題が即政治問題に化するということになっては大変でございますし、といって私ども、この経済体制、貿易関係というものは、長い間アメリカに日本が依存しているのも事実でございますし、これが爆発したり破裂しないように心がけておるわけでございます。アメリカに対しては第二次大戦敗戦以来非常に依存しておりますし、そういう観点から経済問題も考えなくてはいかぬと思っております。  それで、自動車摩擦につきましては、私ども、昨年の十―十二月の四半期におきましては四十三万六千台というふうに規定いたしまして、二%の削減を実現し、また、本年の一-三月には四十六万一千台を四十五万台以下にするということを提示しております。アメリカは、日本の自動車の輸出が即失業の輸入になるというようなことを言われておりますし、多少アメリカ経済もかぜを引いているわけでございまして、病人のまくら元でけたをからんこんからんこん言わせるというようなことはいけないと、私はずっと前から言っているのですが、そういう点でアメリカが病弱になっておるならば、少しは薬も出し、いろいろなことをするのが友好関係を維持する立場になるんじゃないかという観点からこの問題をとらえておるわけでございます。  また、クライスラーの問題につきましても、これは両国にとって非常に頭の痛いことで、特にアメリカは大変だろうと思います。カーター大統領が四億ドルの出資を約束して、それをレーガン政権にどういうふうに転嫁しておるのかつまびらかではございませんけれども日本にも関係のあることでございますし、といって、余り日本側からいろんなことを言うのも問題でしょうから、私どもは、クライスラー問題は、まずアメリカの動き、アメリカの推移というものを見守っておるわけでございます。  全体的に、この自動車問題につきましては、私ども真剣に、そしてアメリカの立場を十分考えようという観点から対処しておるわけでございます。
  76. 小山長規

    小山委員長 これにて依田君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  77. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田中通商産業大臣
  78. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先般、矢野委員から質問のありました武器輸出問題についての事実関係調査した現在までの結果を政府委員から答弁させます。
  79. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 二月四日に当委員会におきまして矢野先生から御質問のありました堀田ハガネの韓国向け武器輸出問題に関しまして、これまでに通商産業省におきまして調査いたしました結果を御報告申し上げます。  まず、先生がお触れになりました輸出見積書の件でございますけれども昭和五十一年一月九日、日本製鋼所が堀田ハガネから産業機械用鍛造素材の引き合いを受けまして、同年一月十六日にこれに関する見積書を堀田ハガネに提出した事実がございます。この件は、結果的には砲身素材と考えられるとのことでありますけれども、当時の担当者は、砲身素材としての認識がないまま見積もりを出したと聞いております。  なお、本件は、その後堀田ハガネから何の応答もなく、成約には至っていないと聞いております。  それから次に、先生御指摘のように、日本製鋼所は堀田ハガネからアーマープレートの成分分析の依頼を受け、昭和五十一年二月二十八日にアーマープレートの化学成分及び機械的性質についての回答を文書により行っております。この件は、その後堀田ハガネから何の応答もなく、成約には至っていないと聞いております。  その他、日本製鋼所幹部の訪韓、堀田ハガネと日本製鋼所との関係等につきましては、現在なお鋭意調査を続けているところでございます。
  80. 小山長規

    小山委員長 これより去る四日の矢野君の保留分の質疑を行います。矢野絢也君
  81. 矢野絢也

    ○矢野委員 再質問の機会を与えていただきましたことにつき、委員長並びに委員各位にまず御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。  それで、いま通産省から御報告がございましたが、私が質問してからもう二週間たっておるわけです。その間、日本製鋼所の方では、たとえば武器の見積もりについては出した事実はないと否定をし、結果はいま認めることになった。また、アーマープレートの分析もしたことがないと否定をしたが、やはりしたことが明らかになった。あるいはまた、一昨日わが党の坂井委員が質問をいたしましたが、ヴィッカース社という外国の軍需産業との技術提携の問題につきましても。最初は会社側は否定をした。坂井君の方から資料を示すと、その資料が動かしがたい資料であると、今度はそれがミスプリントであるなどということを言い出した。そんなことを言うならもう一つ出そうということでまた出しますと、今度は物が言えないというような状況でございます。事ほどさように不誠意きわまるでたらめな対応をしておる。通産省は本来、わが党を初め野党がここで言うまでもなく、政府方針があるわけですから、こういう問題をびしびしと出されるべきお立場にあると私は思いますよ。  いま御報告をいただいて、いままでの御調査については通産省の各位に敬意を表したいと思います。ただ、その他の問題については、大変失礼でございますが、まだ逃げの姿勢があると、印象としては言わざるを得ません。さらに今後調べたいということでございますから、具体的に徹底的にお調べいただきたい、その御報告をお待ちしたいと思うわけでございます。通産省とけんかするつもりはないのです。こっちは通産省のお手伝いをしているぐらいの気持ちでおるのですが、その回答いかんによっては、余り言いたくはないけれども、証人か参考人かで来てもらって直接やらせてもらうことになるということは一つ申し上げておきたいと思います。  そこで、いまの御報告に関して若干の質問を申し上げたいと思いますが、私は、五十二年の夏ごろに日本製鋼所幹部が訪韓をして大韓重機と商談をしたことを、具体的に先日指摘をしておるわけでございます。これに対して、この私の指摘の中で五十二年時点で言えば、その五十二年時点上りも過去において引き合いがあり、見積もりが出たということは、ただいまの御報告で明らかになりました。しかし、その他の私の指摘についてはこれから調べるということのようでございますが、一つだけ念を押しておきたいのです。  私が指摘した、五十二年夏ごろ日本製鋼の幹部が訪韓した事実はない、通産省のいままでの調べでは、日本製鋼の幹部が訪韓した事実はないと断定できるのかできないのか。つまり、五十二年夏ごろ、日本製鋼幹部が訪韓した事実はないという立場で断定をされるかどうか、このことについてお聞かせをいただきたいと思います。
  82. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 絶対にないという断定はいたしかねるわけでございまして、御指摘もございますので、引き続き調査をさせていただきたいと思います。
  83. 矢野絢也

    ○矢野委員 日本製鋼の方ではそういうことはないと言っておるようでございますので、重ねてこれはお調べをいただきたい。こちらもいいかげんなことを言っているつもりはございません。  それから第二点は、五十二年の時点において、日本製鋼は過去において見積もりを出した、そして五十二年の夏、正式の引き合いがあって見積もりを出すことになったというのが過日の私の主要な論点でございます。  そこで、いまの御報告では、その五十二年時点よりも過去の時点において見積もりを出したということがお調べの結果わかった、そのことの御報告がございました。しかし、私たちは、これが一回だけだとは実は思っておりません。私ども調査では、数回にわたっているのではないかという資料がございます。いまの御報告では一回だけについて御報告がありましたが、通産省の報告では一回だけと限定されて自信を持っておっしゃっておるのか、一回だけということが断定できるのかどうか、このことについて伺っておきたい。
  84. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 結論から申しまして、一回だけだという断定はいたしかねるわけでございます。ただいままで私ども調査した範囲内におきましては、先ほど御報告申し上げましたように一件だけであるということでございますが、ただいま御指摘もございましたので、引き続き調査をさせていただきます。
  85. 矢野絢也

    ○矢野委員 実は一回だけではないのです。引き続き調査をされるということ、一回だけと限定しておるわけではないという御答弁でございますから調査をお待ちしたいと思います。  それから、先日の私の質問に対して、武器の見積もりをすることは、通産大臣は、お人柄が率直ということだろうと思いますが、こういうことはやはり問題だと御答弁をなさいました。ところが政府委員は、法制度上違反ではないという意味の答弁をなさって、これは明らかに重大な食い違いがあるわけです。私の質問の時点では、見積もりを出したか出さないかが調べなくちゃわかりませんという時点でございました、政府としては。ですから私は、その食い違いはあえてその時点では問題にいたしませんでしたが、見積もりを出したことがもう明らかになっておる。しかも、防衛産業、防衛庁御用達の武器製造法認可の会社が見積もりを出しておるということが明らかになった。この食い違いは重大だと思います。このままでは済まされません。見積もりというものは宣伝広告と違うわけです。やはり見積もりを出して、条件が合えば契約に至り、契約が結ばれれば物を取引する、そういう商行為をするための実行段階のこれは行為でございます。その見積もりが法制度上違反でないなどということでは、これは抜け穴だらけでございます。このことについての通産省の御見解を承りたいと思います。
  86. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  武器輸出禁止の法律上の観点から申しますと、武器そのものではないことになるわけでございますので、三原則あるいは方針に基づく貿管令違反だというふうに直ちに直結することはなかなか困難でございます。しかし、やはりそれは、見積書が武器というものに関連している限り、これは私に言わせますと、法律違反と直ちにとられなくても、全く好ましくないことでございますので、それに準ずるようなものではないかというふうに考えられますし、この点も、私ども十七日に。省内に、国会の皆さんのお約束による武器輸出問題検討委員会というものをつくりましたので、その委員会で十分その点についても検討させますし、また、それぞれのそういう事業者に対しましても、貿易管理令に基づいて十分自粛自戒をさせて万全の措置をとりたいというふうに考えております。
  87. 矢野絢也

    ○矢野委員 通産省でプロジェクトチームをおつくりになっていろいろな問題について検討をされる、私も期待をいたしております。野党がこんなところでがたがた言わなくたってきちっとできるように、政府方針であり、政府の政策なんですから、ぜひやっていただきたい。その成果を期待しておるわけでございます。  通産大臣は、見積もりということは、やはり武器の見積もりは好ましくない、問題がある、しかし法制度の上では違反ではないと、みずから苦衷をお漏らしになっておると思うわけでございますが、この問題は、そのプロジェクトチームでしかと回答を出したいという意味の御答弁だと理解したいと思う。こんな、困るのです、好ましくないのですと言ったって、これは堂々とやっておるのです。違反じゃないなんて通産省が言うものだから、そうかそれはよかった、もっとやらしてもらおうかというようなことになるわけで、明確にやはり武器に関して見積もりは違反である、このような法制度の改革をなさる御意図があるか、もう一遍念を押しておきたいと思います、通産大臣に。
  88. 田中六助

    田中(六)国務大臣 なかなかむずかしい問題でありますが、十分いまプロジェクトチームでも検討をしようと思っておりますので、そこで私ども、知恵をしぼって検討したいというふうに考えます。
  89. 矢野絢也

    ○矢野委員 与えられた時間が十二分ということでございますので、ぼつぼつ締めくくりになるわけでございます。  総理に最後に伺っておきたいのですけれども、大体いまお聞きのとおりでございまして、武器の輸出、しかも武器製造法認可会社の武器の見積もりということ、あるいは、きょうは御回答がなかったけれども、これに防衛庁の職員が絡んでいるのではないか、あるいは韓国の国防省の元軍人が絡んでいるのではないかというような周辺も含めまして、私は問題指摘をいたしました。さらにまた、それについて、部分的ではありますが、通産省からお認めなさる報告があったわけでございます。さらにまた、わが党の坂井委員は技術提携の問題、さらにまた、きょう草川委員は軍事基地の問題、施設の問題、言ってみれば、武器、技術、それから施設総まくりでやっておるわけでございます。また、他の野党におかれても、この問題をいろいろな角度から具体的にお取り上げになっておる。ずっと総理はここでお聞きになっておるわけです。私は、言いたいことは、何も個人的にその会社に恨みがあって言っているわけではないのです。武器の輸出ということは、それではつくろうかというような簡単なものではないわけです。そのための開発、技術の研究には膨大な資金が要ります。また、特殊な武器をつくるためには膨大な設備投資というものが要るわけです。したがって、こういうものが日本経済の体質の中に組み込まれてしまいますと、ちょうど麻薬を飲んでいる患者みたいになりまして、一回限りの商談では済まなくなってしまう、膨大な設備投資をしてしまいますと。したがって、早目にそういう危険な芽というものが麻薬患者のようなことにならないように制度をつくる必要がある。やはり日本は平和産業でやっていくのが望ましい道である。これは総理自身もお認めになっておる。  こういうわけで、野党から立法の問題について要望いたしております。私の質問、その他同僚委員の質問を踏まえて、総理の所感をここで伺っておきたいと思います。
  90. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政府といたしましては、わが国が平和国家であるという立場から、武器輸出の規制の問題につきましては、かねてより武器輸出三原則あるいは政府の統一方針に基づきまして厳正にこれを執行していくということで努力してきておるわけでございます。過去におきましていろいろの御指摘をいただくような問題も出ておりますけれども、今後そういう点につきましては十分反省もし、えりを正して厳正な法の執行に努力してまいりたい。  また、武器輸出だけでなしに、技術の問題、施設の問題等もございます。こういう点も、三原則並びに政府方針に準じまして取り扱っていかなければならない、こう考えております。  ただいま通産大臣からも申し上げましたとおり、政府としても、今後プロジェクトチーム等におきましてさらに掘り下げた検討もいたしたい、こう考えております。  なお、各党間で、与野党間でお話し合いをいたします結論につきましては、政府としてもこれを尊重してやってまいりたい、こう思っております。
  91. 矢野絢也

    ○矢野委員 時間が参りましたので、最後に、通産省の皆さん方大変でしょうけれども、大臣は前にこの席で、手が足らぬと言って大分泣いておられた。しかし、こういう大きな問題でございますので、さらに努力をされ、確かな御報告をされることを重ねてお願いして、質問を終わりたいと思います。
  92. 小山長規

    小山委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  この際、通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田中通商産業大臣
  93. 田中六助

    田中(六)国務大臣 せんだって大出委員から質問がありました武器輸出問題につきまして、事実関係調査結果を政府委員から報告させたいと思います。
  94. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 当委員会におきまして、二月の四日に井上先生から、また二月の五日に大出先生から御質問のありました堀田ハガネの韓国向け武器輸出問題に関しまして、これまでに通商産業省において調査いたしました結果を御報告申し上げます。  まず、両先生から、砲身等の輸出として御指摘のありました件につきまして御説明申し上げます。  堀田ハガネは、両先生御指摘のとおり、昭和五十一年半ばごろから昭和五十四年半ばごろにかけて、砲身及びチューブ、ブリーチリング、ブリーチブロック、チェンバー、キャップチューブと称される物品を韓国の大韓重機工業に向け輸出したものと考えられます。  堀田ハガネが輸出した物品については、昭和五十六年一月十九日に神戸地方検察庁より捜査関係事項照会を受けておりまして、同月二十一日に防衛庁に鑑定を依頼しておりますが、これらの物品のうち、防衛庁の鑑定結果の得られたチューブと称する物品の一部につきましては、外国為替及び外国貿易管理法第四十八条の規定に基づく輸出貿易管理令別表第一の一九七の項の銃砲の部分品としての砲身に該当するものと判断いたしまして、その旨、二月二日、法務省を通じ神戸地方検察庁に回答をいたしております。  堀田ハガネの発注に基づきます生産数量は、チューブ約八百点、ブリーチリング約七百五十点、ブリーチブロック約八百点、チェンバー及びキャップチューブ合わせて約千百五十点、合計約三千五百点、合計生産金額は約七億円と推定されます。  また、大出先生も御指摘のとおり、これらの物品の国内における製造、加工の経路は次の二つであると考えられます。  まず、昭和五十一年半ばから昭和五十二年半ばまでの間は、堀田ハガネは砲身及びチューブ、ブリーチリング、ブリーチブロック、チェンバー、キャップチューブと称される物品の製造、加工を、素材の鍛造までは日綿実業を通じ山陽特殊製鋼に、機械加工につきましては泉鋼材に、熱処理につきましては大屋熱処理に、検査につきましては近畿検査工業に発注いたしております。  また、井上先生御指摘の三菱重工業につきましては、堀田ハガネから岡谷鋼機を通じブリーチリング、キャップチューブ及びチェンバーと称される物品の製造の発注を受け、下請企業に鍛造及び機械加工を行わせ、堀田ハガネに納入している事実があります。  次に、昭和五十二年半ばから昭和五十四年半ばまでの期間につきましては、チューブ及びブリーチリングにつきまして、素材の溶解、造塊、鍛造、機械加工、熱処理及び検査の全工程を一貫して関東特殊製鋼が堀田ハガネから受注し、これを実施いたしております。  次に、大出先生から御指摘のありましたクレーム処理に関しましては、これらの物品が大韓重機工業に納入された後、同社から出されたクレームに対し、関連企業が次のような対応をいたしております。  堀田ハガネ、山陽特殊製鋼及び大屋熱処理の三社は、昭和五十二年にクレーム対策を協議し、堀田ハガネ及び山陽特殊製鋼の職員が大韓重機工業に赴き、同社と試験方法の打ち合わせを行っております。また、最終的には、これらの三社に日綿実業を加えた四社でクレームに伴う損失の分担を協議いたしております。  関東特殊製鋼は、昭和五十二年及び五十三年に、クレーム処理のため同社の職員を大韓重機工業に派遣し、試験方法の打ち合わせを行っております。  なお、事情聴取におきまして、上記の各企業は、その取引に際し、取り扱った製品が砲の部分品であるという認識はなく、また、最終的に砲の部分品として使用されるという認識もなかったと述べております。  次に、大出先生から、アーマープレートの取引として御指摘のありました件につき御説明いたします。  堀田ハガネは、昭和五十一年に、装甲板と考えられる物品を韓国に輸出したものと推定されます。この物品の国内における製造、加工は、次の企業が実施いたしております。  日新製鋼は、昭和五十一年一月に、堀田ハガネから熱間圧延特殊鋼鋼板の製造を受注し、同年三月に納入しております。  大屋熱処理は、日新製鋼において製造された鋼板の熱処理を堀田ハガネから受注し、実施いたしております。  また、大出先生が言及された愛知製鋼の件につきましては、同社は、昭和五十年六月に堀田ハガネからの依頼により、装甲車用材料と称する物品に関する材質調査を行い、その調査結果を文書により回答したことはございます。しかし、この件は、その後商談も行われておりません。  その他の点につきましては、現在なお鋭意調査を続けているところでございます。  以上でございます。
  95. 小山長規

    小山委員長 これより去る五日の大出君の保留分の質疑を行います。大出俊君。
  96. 大出俊

    ○大出委員 ただいま通産省から、先般の私の武器輸出に関する質問並びに井上一成議員の武器輸出に関する質問に対する調査結果の回答をいただきましたが、台湾に関する私の指摘について回答がございませんが、そのほか全く私の指摘したとおりである。大屋熱処理が処理をいたしました目新製鋼経由で入ってきております戦車のアーマープレート、つまり装甲板、これと見られるものが輸出されたようであるということになっているわけでありまして、すべてお認めになったようであります。どうも全く知らない……。皆さん、各企業にアンケートをとっている、堀田ハガネ事件が起こって。アンケートをとって日新製鋼だって呼ばれて、あなた方聞いている。それを言わないんですね。私が質問の前においでいただいて承るというと、統計法に基づきまして守秘義務がございますので申し上げられません、個々の企業につきましてはだめでございます、まるっきり企業の玄関に突っ立って、一切はごめんだと断っているような姿勢ですな、通産省というのは。まことにもってけしからぬ話であります。  さて、きょう御報告いただきましたが、またこれ、非常に不親切きわまる報告でございまして、いま皆さんお聞きのとおりでありますが、実はその中身はみんなちゃんとあるんです。何がどうなっている、どうなっている、一々全部ある。ちゃんと細かく書いてある。税関に申請しているんです、輸出申告書を出さなければ輸出できないんだから。そうでしょう。輸出申告書を税関に出したら、そこに一通。さて、もう一通は通産に行くでしょう、あなたの方に。もう一通は大蔵省の統計の方でしょう。申告書を見ればみんなわかるじゃないですか。何が幾つ、何が幾つ、申告書にある。それを何にも言わない。こういう不見識な、しかも物事すべて隠そうとする調査結果報告なるものはいただけない。  本日は時間がございませんので、改めてこれは井上一成議員と私で本格的にひとつ質問をさしていただきたいと思っています。また、皆さんが御存じないとおっしゃるなら、新たな指摘を幾つでも申し上げて徹底した御調査をお願いをしよう、こう思っているわけであります。  以上申し上げまして、次の問題に入ります。  その前に、いまの武器輸出に関しまして総理と通産大臣に、私は非常に調査報告が不十分である、こういま申し上げましたが、三原則をおつくりになって、長い間この国、日本というのは、歴代内閣がその方針で来ているわけでありまして、歴代の通産大臣もそう答えてきておられるわけでありますから、もっと私は協力的と申しますか、解明しよう、こういう姿勢があっていいと思うのでありますが、総理、ひとつ御答弁いただけませんか。
  97. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 この武器輸出の規制の問題につきましては、日本が平和風家であるという立場からいたしまして、かねてから武器輸出三原則並びに政府統一見解の方針に基づきまして厳正にやってまいるという方針のもとに努力をしてまいったわけでありますが、御指摘をいただきましたように、過去におきましていろいろの御批判をいただくような問題が生起いたしておりますことは残念でございます。しかし、この問題は、日本の国として今後あるべき平和政策、日本の立場からいたしまして、今後とも一層厳正、厳格にこれをやっていかなければならない、私はこのように考えます。これは武器輸出だけでなしに、あるいは技術の問題あるいは施設の問題等につきましても、これに準じまして厳格にやっていかなければならないものだ、このように考えております。  また、この問題につきまして各党間でいろいろ御検討をいただいておるということでございますから、その得た結論等につきましてはこれを尊重して、政府としての最善を尽くしてまいりたい、こう思っております。
  98. 大出俊

    ○大出委員 通産大臣に承りたいところですが、先般、大臣六分お話しになりましたので、時間がきょうは大変少のうございますから、総理の御答弁の趣旨に沿ってひとつぜひ積極的な解明への御協力をお願いしたい、こう思います。  ところで、昨日も私聞いておりましたが、奥野法務大臣の発言をめぐります憲法にかかわる論議でございますが、私はどうしてもこれは明らかにしなければならぬ。きょう私どもの社会党はこの問題を議論をいたしまして、予算委員会をこのままで済ますわけにいかぬという実は腹づもりであります。この点はどうしてもひとつはっきりしていただきたい。  先に結論を申し上げれば、この辺で奥野さんに私はやめていただきたい。これだけどうも次から次から、改正、改正、改正ということであったのでは――ここに私は折ってありますが、きのうの議事録全部とりましたが、何とか国民の総意で変えなきゃならぬと言っているところが六カ所か七カ所ありますよ。どうにもならぬ、これじゃ。ほかに方法があれば格別でありますけれども、やはりもう一遍つくり直してみる以外には、いまの状態では意見が分かれる問題、解決できないのじゃないだろうかと。最後のところちょちょっと言い直して、心配いたしておると。心配なんて言わないで、と思っておりますと言えばいい。いま一例を挙げたが、これは翻訳をした第五号。第五号の中に三つ。これは第六号。六号の中にも二つか三つある。  そして、時間がありませんから本題に入りますけれども第七号。七号というのが実はきのうの総理の答弁。官房長官も答えていますがね。さんざん言ってきてなおかつ、まあ、だんだんはっきりしてくるのですね。これは奥野さんの答弁ですが、政党の間にも学者の間にも違憲の論議が出ておるわけでございまして、私たちは自衛隊の整備を図っていきたい、ところが、そういう違憲論があります結果、自衛隊の士気にいろいろ悪い影響を及ぼしておるわけでございまして、これを打開するにはどんな道があるだろうかといろいろ考えてまいりますと、国民がもう一遍考えて新しく憲法をつくり直す――総理、これは憲法改正ですよ。いいですか。国民がもう一遍考えて新しく憲法をつくり直す、これも一つの方法だろうと思うのでございまして、いま、それ以外には私なりに考える道はありませんので――これしか私は考えられないとおっしゃっている。言い切っているじゃないですか。それで今度は、総理は何と言っているかというと、先ほど来申し上げておるように、憲法を尊重、擁護ということについては全閣僚一致しておるところでございます。――一致してない。私は憲法の中でこういう条項が気に食わない、どうしても改憲しなければいけない、こういう主張に立って、この鈴木内閣の憲法は改正しないということには、どうしても政治家の信念として相入れないということであれば、鈴木内閣から去っていただくほかはない、このように考えております。――そうしたら、きょうの新聞を見ますと、奥野さん自身は何と言っているかというと、総理のきのうの発言は、いま私が速記録どおり読み上げたこの発言は、法務大臣は、私に言っているものでない。私に言っているものならば私の責任、進退、これを考えねばならぬけれども、私に言っているものでない。だから進退について考える気持ちはない、こう言うんですね。いいですか。だから、ここで総理に承りたい。質問者がどうおとりになるにしても、きのうの総理の御答弁は、出席している予算委員全体に対してお答えになっており、かつ国民に対して答えておる。そうでしょう。この前に人間ばかり法務大臣と質問者のやりとりがずっと続いている。続いて、どうしても質問者は、法務大臣の言っているのは、鈴木内閣方針に従うと言って、自衛隊もいまの憲法で許容していると、こう言っていながら、すぐ、しかしながらと言って、しかしながらの後は、つくり直すよりしようがないと言っているのだから、明らかに矛盾じゃないか、閣内不統一じゃないか、こう詰めた。法務大臣の件について六回も七回もやりとりして、だから総理、一体これをどうお考えになるんだと詰めた。つまり、法務大臣の発言それ自体についてあなたに詰めた。そうしたら、あなたは、先ほど来申し上げておるように、憲法を尊重、擁護ということについては全閣僚一致しておるところでございますと前置きをして、私は憲法の中でこういう条項が気に食わない――気に食わないと言っている。自衛隊違憲だなんというのは気に食わぬと言っているわけですよ。だから何とか整えなければいかぬ、だからつくり直すより道がない、こう言っているわけでしょう。どうしても改憲しなければいけない、こういう主張に立って、この鈴木内閣の憲法は改正しないということには、どうしても政治家の信念として相入れないということであれば、鈴木内閣から去っていただくほかはない。――法務大臣の発言について言っているのでしょう。はっきり答えてください。質問者はそう念を押して聞いているのだから。いいかげんにしてくださいよ。
  99. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 憲法の問題につきまして、前国会以来いろいろ御論議がありました。私は、これにつきまして、鈴木内閣方針、心構えを明確にして、この辺でこの基本法についてのいろいろの御議論について明確にしておきたい、こういう気持ちがあったわけでございます。そういう観点から申し上げたのでありますが、まず、現在の鈴木内閣は、尊重、擁護ということを堅持しておりますことは、しばしば申し上げておるところでございます。そして閣僚の諸君は、憲法九十九条に基づきましてこれを尊重、擁護していくということにつきましては、しばしば機会あるごとに申しておりますし、私にも誓約をいたしておるところでございます。私は、そういうようなことで、閣僚の中に、信念を持って、鈴木内閣のこの改憲はしない、こういうことに自分は反対である、こういう人間は一人もおらないわけでございます。そういう人間、人物がおりますれば、私は鈴木内閣から去ってもらいたい、こういうことを明確に申し上げたのでございます。(「だから、だれに言ったかと言っているんだ」と呼ぶ者あり)内閣全体に対して、そしてまた国民に対してそれを明らかにしたということでございます。
  100. 大出俊

    ○大出委員 いま最後のところは、総理が不規則発言に応答なさいましたが、内閣全員にとおっしゃるならば、きのうのやりとりは、奥野さんとのやりとりが続いていたわけでありまして、そこで、だからと総理に聞いているのでありますから、奥野法務大臣を含んで、とこうなりますね。奥野法務大臣の発言についてもあなたはお答えになったんでしょう、きのうの発言は。違いますか。
  101. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 それは内閣全体についてでございます。
  102. 大出俊

    ○大出委員 それじゃずばり承りますが、いいですか。これはきのうの毎日の夕刊、二つ対比して、「つくり直す必要」「法相がまた答弁」「政府としては自主憲法制定の動きは適当でないという立場をとっている。しかし、」常に「しかし」が入っている。「憲法九条をめぐっては自衛隊について政党や学者の間で合憲論、違憲論があり解釈が分かれている。そのことが自衛隊の士気に影響することを私は心配している。こうした解釈の食い違いを打開するためには憲法をもう一度つくり直してみる以外にはないのではないかなあ、と考えている」そうでしょう。違うでしょう。いまあなたが重ねて言い直されたが、これはあなたの言っている、一人もいない――いるじゃないですか。あなた、どういう責任をおとりになるんです。やめさせてくださいよ。審議なんかできぬじゃないか。
  103. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま大出さんから重ねて、奥野法務大臣の憲法に対する考え方はこうではないかという御指摘がありましたが、奥野法務大臣からこの機会に明確にお話を申し上げた方がいいんじゃないか、こう思います。
  104. 小山長規

    小山委員長 法務大臣。――法務大臣。
  105. 大出俊

    ○大出委員 待ってください。質問者は私で、総理が質問者じゃない。よろしゅうございますか。委員長、しっかりしてくださいよ。  私は総理に聞いているのですよ。法務大臣が繰り返し言っていることは、あなた、そこにおいでになるんだからわかっているでしょう。あなたが自分でお話しになったことはわかっているでしょう。一人もいないと言うんだから。改正なんというような意見を吐くのはいない、こう言う。あなたの目の前で何遍も言っているじゃないですか、だれが聞いたって。だから、あなたがああ言った、こう思っている、みんなが。ところが、そうじゃないと言われたんじゃ、もう一遍あなたに聞いてみたくなるじゃないですか。あなたはどう思っているんですか。あなたの考えを言ってくださいよ、逃げないで。
  106. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、奥野君は当委員会におきましても、鈴木内閣の憲法を擁護する、尊重するという方針、これには自分は、これを守ってまいります、このように言っております。それに関連しましていろいろ発言があったわけでありますが、私はこの前段の明確な、鈴木内閣の一員として憲法を尊重、擁護する、これを信じておるわけでございます。  その後の発言の問題については、私の受けとめ方と大出さんの受けとめ方、いろいろ解釈の受けとめ方が違ってはいけませんから、私はここで……(発言する者あり)ここで私は、奥野法務大臣からもう一度明確に所信を述べてもらった方がいいのではないか、このように思うわけでございます。
  107. 大出俊

    ○大出委員 だから全部訳してある。ここに書いてある。速記は全部起こしてある。それじゃまるっきりぬえだ。口の先で、鈴木内閣方針に従います、だが改正、それしか方法はありません、そう言っているんじゃないですか。そんなふざけたことで、あなた、政治ができますか、一体これ。はっきりしてください。やめさせてくださいよ。だめだ。だれが考えたって同じだ。(発言する者あり)
  108. 小山長規

    小山委員長 静粛に願います。奥野法務大臣。
  109. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私の基本的な考え方をお話しさせていただきたいと思います。(発言する者あり)
  110. 小山長規

    小山委員長 静粛にいたしてください。発言を許しておりますから。
  111. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 昨年の八月に、稲葉さんから自主憲法についてのお尋ねをいただきまして、個人的な考え方としていろいろお話を申し上げました。その際に、政府としては自主憲法について特段の動きをすることは適当でないとお答えをいたしました。その後、鈴木内閣は憲法改正は考えないと明確な姿勢を打ち出されたわけでございまして、私も内閣の一員であります以上は、その姿勢に疑問を持たせるような言動は避けていかなければならない、こう考えているわけでございます。(発言する者あり)きのう、いろいろなお尋ねで、個人の思想、信条にわたってのお尋ねのような感じになりまして、言葉短いわけでございますから、いまお話しのような疑問が出てきた、こう思っているわけでございます。やはり閣員であります以上は、閣員の立場を離れた個人的な話はあとう限り避けていかなければならない。そして鈴木内閣の姿勢に疑問を持たせるような言動はさらに慎んでいかなければならないという気持ちを深くいたしているものでございます。
  112. 大出俊

    ○大出委員 いま私が質問を求めていませんので、時間切っておいてください、そんなものは。じゃ、もう一遍、念のために申し上げましょう。仏の顔も三度という、世の中に通説がございます。  実は昨年の臨時国会のときに、この予算委員会理事会でまとめに入りまして、文章をつくった。これを総理がお読みになった。「法務大臣の憲法改正に関する発言は、適切を欠くものであり、」こういうふうになっているところは、実は原案は、「法務大臣の一連の憲法改正に関する発言は、」ということにしようということで理事会は話し合ったんです。ところが「一連の」を取ってくれとおっしゃる。これは去年の九月。これは委員長も御存じのとおり。「一連の」を取ってくれ。「一連の」というと、ずっと奥野さんがしゃべってきて臨時国会が来た。これまでしゃべったこと全部をとらえて、一連の奥野発言は、こうなると、やめさせるというふうになっちゃう。だから何とか「一連の」を取ってくれ。そして「法務大臣の憲法改正に関する発言は、」ということにしてくれ。これが「適切を欠く」としてくれ。つまり、だから今回はやめさせるとか云々とかという論議にしないでくれ。ただし、またこの後同じようなことが続くんなら、鈴木内閣は憲法改正しないと言っているんだから、泣いて馬謖を切らざるを得ぬということになるが、今回だけはと言うから「一連の」というのを取った。途端に騒ぎになった。大内君が、だから質問をした。この騒ぎになった。あそこで質問するというと、三原議員もここにおいでになるが、皆さんの立場がないから私はがまんして通り過ぎた。たくさん私は方々から文句を食いましたが、あえて通り過ぎたんだ、実は。そういう約束だから。にもかかわらず、次々に出てくる。がまんをし抜いている、私は。  そうしたら、昨年の国会の一番最後に何が起こったかというと、国対間で、野党の国対の委員長さんの間で問題になって、次々言うから政府の統一見解を求めておる。ここに統一見解がある。憲法改正問題が国務大臣の靖国神社参拝問題と一緒に問題になりまして、「再々答弁したとおりであるが、改めて両問題についての政府の統一見解を別紙のとおり提出する。」この別紙の中で違反があるのですよ、ここに。四項目、「内閣としては、憲法改正という問題を政治的日程にのせることは全く考えていない。」こう言い切っているのに、うちの稲葉さんが質問いたしましたが、週刊誌に載っている彼の発言は、八三年の参議院選挙ということでしょう。内閣は政治日程にのせることはしないと言い切っているでしょう、統一見解で。政治日程にのせてくれればいいんだというのはどういうわけなんだ、これ一体。そうでしょう。  おまけに第五項、「国務大臣として内閣方針に従うべきことは当然であるとともに、個人的見解を述べる場合にも、内閣方針について誤解を生ずるおそれがないように慎重であるべきであると考える。」個人的見解でも、内閣方針に誤解を生ずるような発言は厳重に慎むと、統一見解が出ているじゃないですか。誤解どころじゃないじゃないですか。さっき私が読み上げたとおり。国民がもう一遍考えて新しく憲法をつくり直す、と言い切っているじゃないですか。これ以外に私なりに考える道はありませんと。ここまで言われて、がまんの限界ですよ、私は。私は幾らたたかれても何しても、これ以上質問できない。――相談してください。毎日これじゃ審議にならぬじゃないですか。やめてくれ。(発言する者あり)
  113. 小山長規

    小山委員長 大出君、大出君、別の方角からの質問はできませんか。質問を続けてください。(発言する者あり)――別の方面からでも質問を続けてください。――大出君、質問を続けてください。――大出君、質問を続けてください、時間もあるし。――総理の答弁を求めますか。――質疑応答を続けてください。内閣にも要望します。――質問を続けてください。――大出君に申し上げます。このままでは国民も何のことかわからぬと思います。もう一度その質問をされ、政府からの答弁を求められたいと思います。もう一度質問されんことを望みます。(「責任ある審議になっておらぬじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)――責任ある答弁をさせます。内閣総理大臣、責任ある答弁をお願いします。(発言する者あり)  大出君、総理大臣に対して質問をお願いします。(発言する者あり)  総理大臣から責任ある答弁をさせますが、よろしゅうございますか。――国民の側は、何のためにこのように紛糾しているか、よくわからぬ点があると思うのであります。そういう意味で、もう一度質問してください。(発言する者あり)ですから、ひとつ質問をもう一度明らかにしていただいて――お願いします。
  114. 大出俊

    ○大出委員 議事進行について。  いま委員長、おかしなことをおっしゃる。国民にわからぬから発言しろとおっしゃる。委員長にそう言われたんじゃ私も迷惑だから発言します。  私は、いままで苦労して、きのうの速記録を全部起こしていただいて、折ってある個所を含め保て、きのうのやりとりの中身をずっと読み上げた。きのうの夕刊、けさの新聞で大きく取り上げている。そういう閣僚には去っていただく、そうでしょう。憲法改正、改正なんと言うのは去っていただく。それを読み上げて、しかも、奥野さんが前と後ろでずっと言っているのを幾つも取り上げて読み上げて、これしか方法がない、新しく憲法をつくり直すしか方法がない、私が考えてこれしかない、こう言っている法務大臣がいるじゃないか。違うじゃないですか、総理どうなんだ、はっきりしてくれと言ったら、しゃべった奥野さんから聞け、そういう総理の発言はないでしょう。そうでしょう。わかりますか。そんな無責任なあれじゃない。国民の皆さんにこれくらいわかることはないでしょう。  なぜあなたは、公平な委員長であるのに、一体何で国民の皆さんにわからぬとおっしゃるの。あなたにはわからぬでもほかの皆さんはわかるでしょう。それだけは念を押して、やめます。
  115. 小山長規

    小山委員長 いや、そういう意味じゃなくて、総理の答弁をもう一度正確に聞いてくださいと申し上げているのです。(「何回も聞いている」と呼び、その他発言する者あり)法務大臣が先ほど答弁をいたしましたが、それを受けて、総理大臣の答弁をもう一度確かめる意味で、総理大臣の……(大出委員「そんなものは私がさっき聞いたじゃないですか。何遍聞いたって一緒だ」と呼ぶ)その意味で申し上げているわけであります。  それでは、委員長から総理大臣の発言を求めます。
  116. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 憲法改正問題につきましては、私がるるお話を申し上げておりますとおり、鈴木内閣においては憲法を尊重、擁護する、改憲の意思はない、こういうことを明確に繰り返し申し上げておるところでございます。奥野法務大臣も、この鈴木内閣の改憲はしないという方針には自分も賛成である、服していくということをしばしば申し上げておりますことは御承知のとおりでございます。  大出さんから先ほど御指摘になりましたような点につきましては、これはこの委員会を通じて法務大臣との間で意見を十分掘り下げた検討をしていただくべきことである、このように思います。
  117. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私の基本的な姿勢は先ほど申し上げたわけでございましたけれども、昨年の八月から起こってまいってきておることでございます。その八月の場合におきましても、政府としては自主憲法制定に特段の動きをすることは適当でない、こう申し上げたわけでございますし、また、鈴木内閣が憲法改正を考えない、こういう姿勢をとっておられることにつきましても、この姿勢に疑問を持たせるような言動は避けなければならないということも、常に申し上げてまいってきているわけでございます。  昨日は再三にわたるお尋ねでございまして、私の信条を尋ねておられるのではないか、こう考えたわけでございまして、若干、私の個人的な疑問を短い言葉の中で申し上げているものでございますので、いろんな疑惑を与えてまいったように思います。やはり私は、内閣の一員であります以上は、内閣の一員としての発言にとどめるべきだということを強く感じているわけでございまして、これからもその姿勢をあとう限り貫くように努力したい、こう思います。(「そんなことじゃだめだよ」と呼び、その他発言する者あり)
  118. 小山長規

    小山委員長 大出君。――大出君。
  119. 大出俊

    ○大出委員 二言だけ、せっかくの委員長のお考えのようでありますから申し上げておきますが、私は、先ほど来から何回も、しかもこれは昨年十一月の臨時国会以来今日まで何回もなんでございますけれども、奥野さんという人の考え方、発言、私に言わせれば非常にずるいのですね。それは大臣をやめたくないものですから、一生懸命、片方で鈴木内閣方針には従う、従うと言った後、しかしながら、が必ずついている。しかしながら、いまの憲法というのは自衛隊に対する違憲論があるのだから、これは改めてつくり直さなければならぬ、いろいろ考えたけれども、私はそれしかいい方法はないと思っていると、明確にこれを改正しろと言い切っている。いまだってそこのところは何も触れない。鈴木内閣の一員だからとしか言わない。それで、ちょっとすきがあればすぐまた改憲論だ。それで突っ込まれるというと、鈴木内閣に従うと逃げる。こういうことを繰り返しやっていたのじゃ、そういう法務大臣がいたんじゃ国会審議にならぬ。  きのうの質問者だって、質問している私自身がわからなくなると言っているじゃないですか。何を言っているかさっぱりわからぬと言っているじゃないですか。私だけじゃないのだ。片っ端からわからぬのを相手に、法務大臣相手にやれますか。そんなことだめです。やめさせてください。国会審議にならぬ。(「大臣やめてからやりなさいよ」と呼び、その他発言する者あり)。
  120. 小山長規

    小山委員長 大出君、質問を続けてください。――質問を続けてください。
  121. 大出俊

    ○大出委員 再三再四委員長そう言うけれども、公平にお願いをしたいのですが、せっかく言うからもう一言言いましょう。  私は、無理言っているのじゃないのですよ。これは昨年の十一月以来なんだ。あのときも、全く憲法改正だということ、それしかないと言い切る法務大臣ならばこれはやめさせてもらいたい、鈴木さんの内閣が憲法改正ということを全く考えがないと言うならば、それで政治日程にのせる気もないと言うならばと、何遍も言っているでしょう。この国会が始まってから各党の方々ほとんど質問しているが、全部これでしょう。こういう、それこそ不毛の論争をしてもしようがないんだ。ぽんと言っておいては、言われると一生懸命、鈴木内閣方針に従ってと逃げて、これじゃ話にならぬでしょう。議論にならぬでしょう、正当な議論に。だから、総理がおっしゃったように、閣外へ去ってくれ、そういう人は。いいですか。憲法改正と言っている人は閣外へ去ってくれと、こう言っているのだから、何遍言ったって同じことを言っているのだから、そのとおりにしてくれと私が言っているのです。それだけのことじゃないですか。そのとおりに総理、してください、こう申し上げている。(発言する者あり)
  122. 小山長規

    小山委員長 総理の答弁を求めます。
  123. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 繰り返して申し上げますが、奥野君は、鈴木内閣の改憲はしないということについては自分も鈴木内閣の一員としてその方針に従う、それに賛成である、こういうことを申し上げております。そこで、大出さんは、その後にしかしながらと、こう言うということに疑問を持っておられるようでありますが、この点については当委員会を通じて詰めていただきたいというのが私の念願であります。
  124. 小山長規

    小山委員長 いま総理大臣から答弁がありましたから……(大出委員「もうよしなさい、いいかげんで。委員長不信任だ」と呼ぶ)ここで詰めてください。(大出委員「やめなさい、委員長、そんな委員長あるか」と呼び、その他発言する者あり)いま総理大臣から答弁がありました。それに対して質問があるはずですから、詰めてください。総理大臣から答弁がありました。――ただいまの総理大臣の答弁が不満ならば、もう一度答弁させます。――総理大臣がおっしゃっているんですから、総理大臣が言っていることは間違いないと思うのであります。  総理大臣からもう一度答弁させます。――総理大臣、総理大臣の答弁を求めます。総理大臣鈴木善幸君。(発言する者あり)総理大臣に発言を許しました。
  125. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいまお答えをしたとおりでございます。
  126. 小山長規

    小山委員長 総理大臣の重ねての答弁がありましたので……(発言する者あり)静かにしてください。総理大臣の重ねての答弁がありましたので、大出君、総理大臣に対する質問を続けてください。――総理大臣に対する質問を続けてください。ここは予算委員会ですから、総理大臣に対する質問を続けてください。――大出俊君、総理大臣に対する質問を願います。任命権者である総理大臣に対する質問をお願いします。――大出君、任命権者である総理大臣に対する質問をお願いします。(発言する者あり)ちょっと員外発言は――質問者は大出君。  大出君の質問は、法務大臣の任免に関する問題であります。法務大臣の任免に関する問題でありますので、まず、任命権者である総理大臣の答弁を聞いて、なお足らざるところは法務大臣に詰めてください。(発言する者あり)  三時半まで休憩いたします。     午後二時二十八分休憩      ――――◇―――――     午後四時二十七分開議
  127. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  先刻の大出君の憲法問題に関する質疑については、理事会において取り扱いを協議いたしたのでありますが、なお慎重に協議、検討を行う必要がありますので、後日、引き続き理事会において協議することといたします。  大出君の質疑は、保留分を除いて一応終了することといたします。     ―――――――――――――
  128. 小山長規

    小山委員長 これより一般質疑に入ります。  答弁を求められている大臣以外の大臣は御退席いただいて結構であります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小渕恵三君。
  129. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 一般質疑に入らしていただきたいと存じます。  委員会の部屋も静かになりましたが、私は三点の問題につきましてお伺いいたしたいと思います。  まず、大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、今般提出をいたしまして審議をいたしております五十六年度予算案でございますが、大蔵大臣はこれを予算と考えますか、予算案と考えられますか、ちょっとお答えいただきたい。
  130. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 法律は法律案と言って、何で予算だけ予算案と言わないんだ、こういう御質問だと思いますが、明治憲法以来わが国においては現行憲法も、議案としてのものも含めて予算というように規定をしておる。したがって、そういうような慣例に基づいて、憲法にそう書いてあるものですから、予算案と言わないで予算というふうに言っておるわけでございます。
  131. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 予算審議に当たりまして、委員長はこれを予算三案を、こう言うのですね。それから本会議では、予算三件につき、こう言って議長さんは締めくくるのです。御指摘のように明治以来の慣行ではありますが、大蔵大臣御案内のように、昭和五十二年に本委員会で予算案に対する修正問題が起きたことがあるのです。この問題につきましては、当時公明党の矢野委員が投げかけた問題につきまして、政府としても統一見解を出しまして、一応決着を見ておるわけでございますが、御承知のように、言うまでもないことですが、旧憲法と新憲法下では、国会における地位は全く変わってきておるわけだろうと思うのです。したがいまして、国会は他の議案と同じように、他の議案は成立をいたす前までは法律案であります。国会を通過して初めて法律として成立を見るということから考えますと、やはりこの予算につきましても予算案として国会に提出をされて、そして衆参両院の審議を経て初めて予算として成立するという方がきわめて素直だ、こう考えるわけですが、いかがでしょうか。
  132. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そういう考えも当然あっていいと思いますが、私は憲法を遵守し憲法に従わなければならないわけで、憲法五十九条では「法律案は、」云々というようなことで、みんな法律案、法律案ということが書いてありますが、憲法六十条の「豫算は、さきに衆議院に提出しなければならない。」というようなことや、その他の条項でも、七十三条の内閣の事務というところで、「豫算を作成して國會に提出する」とか、八十六条でも「内閣は、毎會計年度の豫算を作成し、」というふうなことで、みんな予算という言葉を使っておるものですから、内閣も憲法を遵守するということからすると、予算案という方がいいような気もするが、やはり憲法どおり予算ということにしておるわけであります。
  133. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 一般的な学説ないし憲法学者としては最も著名であった宮沢さんなどの憲法解釈を読みましても、「日本法では予算(形式的意味)は法律(形式的意味)と同じく一つの法形式であるので、法律の議案を法律案と呼ぶならば、予算の議案も予算案と呼ぶのが用語としては当を得ておるだろう。」こういうふうに指摘をしておるわけでございます。したがいまして、憲法にそのように書いておられるからということはまことにそのとおりでございますが、お気持ちとされましては予算案と考えることが用語としても望ましい、こういうふうにお考えになりませんか。
  134. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは持つ意味はそういう意味であります。
  135. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 この問題はこれ以上詰めませんが、日本では用語の使い方というのが間々必ずしも論理的になっておらない。したがいまして、この問題につきましても、大蔵省の先輩でしょうか、「財政雑話」というこの論文の中で、「結局、世間一般でもそうであるが、憲法でも財政法でも、法文上予算案と言うべきところを混同して予算と使っている」と指摘しておりますし、要は、日本では湯を沸かすという言葉があるけれども、本来的に言えば水を沸かすというのが本当であって、湯は沸いておるのだから湯を沸かすことはない、こういうことと同じことだというふうに、大蔵省の先輩も苦し紛れに実は述べておられることを見ますと、私は、やはり用語の問題、一字一句の問題ではなくて、新しい憲法下において考えられるとするならば、憲法におけるこの予算も、明治以来の慣行だからといってそのままであっていいかどうかという問題については考えておく必要があるのではないかということだけ申し述べておきたいと思います。  そこで、予算案についてでございますが、大蔵大臣は参議院の本会議におきまして、民社党の田渕議員の質問に対しまして御答弁をされた。それはいささか問題になったことですが、速記録を読んでみますと、編成した予算は首尾一貫をしておらないと書いてあるのですが、いま予算案を御審議願っておる立場から、この予算の編成に当たりましてどのようにこの予算のできばえを自己採点をされるか、お伺いいたしたい。
  136. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私自身は最善の案だと思っております。しかしながら、人によりますといろいろな御批判があるわけです。したがって、そういう御批判が全然ないような予算を組みたいのだけれども、現実には非常にむずかしいという話を申し上げたわけであります。
  137. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 私は、今度の予算の編成は率直に、非常に手際よくでき上がった予算だと認識をいたしております。いろいろ厳しい財政状況の中で、税収を確保しながら、しかもそれぞれの政策につきましても実行できるということは、それなりに結構だろうと思います。  また、国債の減額につきましても、当初二兆円ありきということを実行されたという点では大変結構なことだと思いますが、反面、なお予算編成に当たりまして、いろいろな財源確保のために努力をされた点もあるわけでございます。その中で電電公社からの納付金の問題があるのです。これなども大蔵省の考え方とおりに公社も協力するということで現在法律案が提案されておるわけでございますが、この問題につきまして、公社としてはあくまでも協力金である、こういうふうに理解しておるようでございます。国の財政が一大事だという状況の中で、公社法に基づいた独立した機関であり、政府ではないですが、しかしこういう一大事には何らかの協力をしなければならぬという態度は、それなりに麗しくもけなげな精神だと私は思う。  そこで、これは法律がこれから審議になるわけでありますが、大蔵省とされては四年の時限立法として考えられておることのように思います。したがいまして、こうした新しい財源を確保できることについて、協力された公社というより、むしろ通話される皆さんであり国民だろうと思いますが、大蔵省としても一言あってしかるべきところだと思いますし、あわせてこの四年の臨時かつ特例的な措置であるということをこの機会にお述べいただきたいと思います。
  138. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御指摘のように今回の措置は、五十九年度までの四年間限りの臨時的なものでございます。また、電電公社が労使一体として非常に生産性を上げていただいて、そして自己資本に対する比率なども非常によくなってきておる、こういうような状況の中で、利益の中から、国の非常に苦しい財政事情のもとで今回このような御協力をいただけることを大変感謝をいたしております。
  139. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 今度の予算審議の過程をいろいろ拝聴いたしておりまして、私なりにいろいろの御質疑について確認をしたい点もございますので、順次お尋ねをしてみたいと思います。  その一つは、税の過小見積もりのことが議論されておりました。今後税収がどういうふうになっていくかということは、景気の動向等十分考えなければ結論は出ないかと思いますけれども、しかし、現在の国内的あるいは国際的に置かれたわが国の経済環境を見ますと、必ずしもいい面ばかりでないように思います。最近の新聞を見ましても、アメリカとの自動車の問題あるいはECとの貿易摩擦の問題、中国の大型プロジェクトの中止等々、将来を展望して必ずしも明るい材料ばかりではありませんが、しかし野党の皆さんから、非常に過小見積もりになっておると同時に、将来にわたってどのように変化していくかということでお尋ねが大分ありました。  そこで、これはまことに仮定の話ではありますけれども、税の増収が仮に景気の好転によりまして図られるというようなことになりました場合には、その財源というものは減税の方に振り向けていくのか、あるいは国債の再減額というようなところに振り向けていくことが望ましいのか。これはあくまでも将来にわたっての仮定の問題でありますが、大臣としてのお考えはどの辺にあるか、お伺いしておきたいと思います。
  140. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは五十五年度、現在の予算についてですか。(小渕(恵)委員「五十五年度予算、いや五十六年度予算中」と呼ぶ)五十五年度予算につきましては、今回七千億円余の増収を見込んで補正予算を出しておるわけです。しかし、税の進捗状況等を考えると、これは政府が予定した以上の増収というものはあと一カ月半で出てくるというようにはとうてい見込めない。また、五十六年度予算につきましても、かなり強目の自然増収を見込んでおりますから、私といたしましては、五十六年度予算でそのような多くの自然増収が出るとは思っておりません。万一出たときはどうなんだ。出たときのことは考えておりませんが、われわれとしては国債の発行額をできるだけ減らしていくということは、今後の経済運営上も非常に重要な問題であるということは強く意識をしております。
  141. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 それは将来のことでございますので確たる御答弁をいただけないことはわかりますが、いま申し上げましたのは、国債減額に向かうか、あるいは所得税減税を考えるかということでございます。これは実は今日的な問題もございまして、当予算委員会におきましても所得税減税の要請が非常に高いわけであります。先刻来御質疑を聞いておりますと、政府側は、財源が不足である、全くできない、こういうことのもみ手一点張りのような感じがするのです。しかし、この所得税減税というものについて、いま少しく国民に向けてもこの厳しい財政状態を強く訴えると同時に、理論的にも、そういうものが現在必要でないとすればないという説明を十分すべきではないか。  いまアメリカで、御案内のとおりに、一〇%ずつ三年間所得税減税をやろうという考え方が出てきておるわけでありますが、あれも新しいサプライサイドエコノミーということで、供給をふやしながらインフレを抑えていこうという考え方にのっとっているようでございます。いま、わが国における状況とは全く質を異にしておるとは思いますが、世間ではこの要請が非常に強いのじゃないか。したがって、この所得税減税を香とされる大蔵大臣のお考えをいま少しく御説明しておいていただきたいと思います。
  142. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私といたしましては、いままで再々申し上げましたように、現在の財政事情のもとでは、残念ながら所得税の減税ができる状態にはございませんということを言っておるわけであります。物価の値上がり等、それが実質的な可処分所得を非常に少なくしておるという現状は認めておりますが、諸外国の課税最低限等と比べ、また日本の、諸外国には例を見ないほどの非常にたくさんの国債発行をしておるという現状を照らし合わせますと、残念ながら今回は所得税減税は御容赦を願いたいということを言っておるわけでございます。
  143. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 ただできないできないでもこれは困ると思うので、やはり将来に対する展望を国民にも十分理解をしていただくという説明が必要じゃないかと思うのですね。ですから、それと、たとえばこの財政再建期間中はどうこうするのだというようなことで考えるのか、あるいはその期間の中でも、さっき申し上げたように景気の動向によって、景気が非常に沈滞をしておるというようなことになりますれば、所得税減税によって需要を喚起するということで、これはそのときの情勢に応じますよ、こうお話をされるのか、その点いかがお考えになっておられますか。
  144. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほど小渕議員からアメリカの歳出削減の話がありました。私も、ストックマン予算局長が世間に発表しておる歳出削減案というものを拝見いたしましたが、これもほとんど過半数以上、三分の二に近いようなものは、みんな法律に決められているものを削減しようというわけでありますから、いろいろな社会保障関係その他大型プロジェクトはかなり思い切った削減をやっていこう、そういうことがうまくできれば所得税減税の財源が出るだろう、したがいまして、今年度は間に合わぬけれども、来年度において、税体系全体の見直し及び制度的に決められたものであっても、現在の事情からしてもっと政府の義務的な負担を少なくしてもいいじゃないか、こういうような合意が得られるという事態になれば、また全体の問題として所得税の数年間据え置いておる課税最低限その他についても、私は全然考慮しないというわけではありません。
  145. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 次に、予算編成時における編成のあり方について、ちょっとお伺いしておきたいと思います。例年、大蔵省は、各省庁に対してシーリングというものを設けて、大体予算の要求のめどを各省に割り当てをされるわけでございますが、このシーリングは、過去から現在にわたって順次そのパーセンテージは落ちてきておると思うのです。それは高度成長時代からこうした安定経済時代に入ってきておりますし、当然のことながら財源が不足するということもありまして抑えられまして、たしか五十六年度では七・五%だったかと思うのです。そこで、予算を実際つくられるということに相なりますれば、要求の限度であるところのシーリング、それに新規の政策費等を上乗せをされるというようなことと、加えて財政投融資、この三つをかみ合わせながら予算編成の実際はやっていくのだろうというふうに思うのですが、五十七年度以降、今後については、これも経済の動向を見なければわかりませんが、感じとすれば、シーリングというものはやはり低くしていかざるを得ないという感じがするのです。この辺について大蔵大臣、これはことしのことではありませんが、お伺いしておきたいと思います。
  146. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 シーリングを厳しくするねらいというものは、大蔵省に持ち込んできてから大蔵省が査定をするという以前にシーリングの要求枠を厳しくしますから、各省庁の中でみずから政策の優先順位というものを真剣に考えなければならぬ、それ以上の枠以上は要求できないということになれば、新規政策もやりたいとすれば、いままでの既存の政策の中でどれは切れるか、どれは削減できるかというようなことで、いままで要求した予算費目の整理合理化、効率化ということに大変役立つと私は思っておるわけであります。  今後五十七年度以降のシーリングをどうするかはもちろんいま決めておりませんが、私としては、当然まずそれぞれの省庁の中で自主的に現在の財政事情というものを承知した上で優先順位を決めてもらうために、私は厳しいシーリング枠の設定というものは今後とも必要ではないか、そう思っております。
  147. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 次に、新聞で伝えておるところの大型間接税なるものについてちょっとお伺いをしておきたいのですが、選挙区へ帰って若い中小企業の経営者に聞いてみますると、この問題に非常に深い関心を寄せておる。たしか二月二日の新聞によりますと、政府税調に企画特別委員会を設置して早々三月から大型新税の導入について具体的準備を始める、こういうふうな記事が載っておるのですが、いかがなっておりますか。ちょっとお伺いしたいと思います。
  148. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまお尋ねの件でございますけれども、御案内のとおり昨年の十一月に政府税調が中期答申をおまとめになったわけでございますが、その中で将来の財政再建の一つの税制上の方策の問題といたしまして、課説ベースの広い間接税というものが一つの検討課題であるという御指摘があったわけでございます。  昨年の暮れでございますけれども、五十六年度の税制改正の答申をおまとめになった時点におきまして、ただいま委員が御指摘になりましたように税制調査会の中に企画特別委員会というものが設置されたわけでございます。ただ、今後この企画特別委員会がどういう時点でどういう問題を取り上げていただくかということはまだ全然決まっておりませんで、今回の税制改正の国会の御審議等も参考にいたしながら、私ども税制調査会とも御相談申し上げまして、今後どういうスケジュールでどういう問題を御審議願うかという段取りで進めるということでございまして、現段階で具体的なことは何も決まっていないわけでございます。
  149. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 公式にはそういう答弁しかできないだろうと思うのです。大蔵大臣は正直ですから、せめて顔色を見てどうお考えになっておるか判断する以外にいまのところしようがありませんので、よく顔色を見てきてくれ、こういうことでございましたけれども、この問題は非常に大きな問題でございますので、引き続いてひとつ十二分な配慮の上に御検討いただきたいと思います。  そこでもう一点、大蔵大臣は公定歩合の引き下げについて非常に消極的のような新聞記事を見受けるわけです。きょう通産大臣は、現在日本は不況の中にどっぷりつかっておる、こういう御答弁を先ほどされておられましたが、公定歩合は言うまでもなく日銀の専管事項ですが、しかし大蔵大臣、通産大臣あるいは経企庁長官等々、それぞれの閣僚の御発言というものもいろいろな意味で影響してくるだろうと思うのです。  そこで、大蔵大臣がそうした消極的な考えをされるゆえんのものは、一つはいまの景気をどう見るか、景況感から景気を刺激する必要はないとお考えになっておるのか、あるいはもう一つは金利が非常に硬直化している、したがって国債の消化その他に悪影響がありましてなかなかこれはいじれないというような観点から発言をされておるのか、あるいは中小銀行経営その他金融機関の経営状態も非常に厳しい、こういうようなことで余り金利の問題をいじってもらいたくない、こうお考えになっておられるのか、いずれでありますか、その他でありますか、この点についてお考えをお伺いしておきたいと思います。
  150. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 金利の問題はたくさんの要素があるわけです。そのうちのどれだと言っても、これがどうだということはなかなか申し上げにくいわけでございます。私はこの公定歩合の問題というものは余り政府当局者が早々とそういうことは言うべきものじゃないんじゃないかという気がするのです。余りプラスになることはないわけですから。早々とそういうことを言えば、じゃ金利が下がるんじゃ投資をしばらく控えるかというようなことになると逆に景気の足を引っ張るということもあり得るわけでございます。私といたしましては、現在の景気動向に実は非常な関心を持っておりまして、政府全体といたしましても、これについては物価に悪影響を及ぼさない範囲においていろいろな手を打っていかなければならぬ、総合的にいろいろと機動的に対処しなければならぬとわれわれも一致しておるわけであります。したがって、十分に景気には配慮する。  金利の問題で私が申し上げておるのは、一つは物価問題がもちろんございます。続けて二回下げてきたわけでもあります。今後の物価の見通しの問題もございます。それから、仮に公定歩合を下げれば下げたときに実質的に実効金利が下がるという状態でなければ、ただ花火を上げただけであって余り効果はないということになるわけですから、やはり効果のあるように対処をする必要があるということをいろいろな条件を絡めて申し上げておるわけであります。したがって、私といたしましては目下公定歩合の問題については一切考えておりません。
  151. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 もっと詰めたいと思いますが、他の質問もございますので終わりますが、ことしの正月に大蔵大臣と御一緒にアメリカへ行きましてレーガン大統領の就任式に出席をいたしました折に、先ほどのお話のデービッド・ストックマン、彼と三人で話し合ったわけです。お互いにそれぞれの国における財政再建あるいは財政の硬直化の問題をいかに解消するかということで大変話がはずんだのですが、しかしその後政策を見ておりますと、アメリカ側は、もちろん新年度は新しい予算年度で新しい政権が編成していくわけでございますが、いろいろ大なたをふるってやっております。大蔵大臣も、予算編成を終わって審議中ではございますが、やはり持ち前の、新聞によれば最も日本でPR上手な大臣だと書いてあったから、ひとつ大いにこの中身の方もばっさりいろいろと予算を見直していただくように今後とも努力をしていただくと同時に、やはりときにおいては、行ったことにつきましても、どうも国民の目から見ると税金だけ取られて歳出縮減の方は一体何をやったかというような疑念もあるようでございますので、そうではないことも重々承知しておりますから、ぜひ国民にもそのことを理解していただきながら今後においても協力を得られるように最善の努力を図っていただくよう強く御激励を申し上げまして、大臣に対する御質問は終わりたいと思います。  次に、予定をいたしております第二の問題でございますが、先般自民党の市民防護委員会というものが設置されまして、不肖私委員長に就任をいたしまして、この機会に大規模災害に関する国民の人命、財産の防護の諸問題について若干お伺いをいたしておきたいと思います。  国民の生命と財産あるいは放射能災害を含む各種の大規模な災害から市民を守るということはまことに大切なことであることは言うまでもないことであり、政治の基本的な問題だと思います。そこで、国防の問題を論議される場合には、とかく軍事防衛ということだけが中心で話される。強いて言えば経済防衛というようなことも言われますが、諸外国でもほとんど考え方としては軍事防衛、市民防衛、心理防衛、経済防衛、この四つの柱が有機的に結合して国の防衛というものは完成されるのだという考え方が普遍的だろうというふうに思います。しかしながら、わが国におきましては、軍事防衛あるいは経済防衛につきましてはかねて来議論が深まっておりますが、なかなか市民防衛、心理防衛というような問題は取り上げられておりません。私も質疑をするに当たりまして速記録等を読みましたが、諸先輩の中でもかなりそれぞれの委員会で御質疑はされておりますが、まだ十分言い尽くされておらないような気もするわけでございます。  そこで本日は、この問題につきまして各省庁の責任者の皆さんに一通りお考えのほどを承っておきたいと思います。  まず外務省ですが、基本的な問題として核軍縮の問題があるわけです。国際政治の基本問題であり、わが国としても無関心ではあり得ないことでありますが、この核軍縮について外務省は一体どういう対外政策をとっておられるか。非核三原則でわが国がこの核の問題につきまして基本的政策を堅持するということはまことに結構なことだと思うのです。しかし、これはあくまでも国内の問題、消極的な問題だろうと思うのです。一方、国際的には国連中心ということを言われておるのでありますが、一部で言われておりますように、いまやソ連あるいは中国等におきましても核の配備というものがかなり大きくなっておる、こういう問題もありますので、わが国としては非核三原則の精神をさらに外に向かって広めるために、たとえば非核武装地帯を設けるなどという意見も出ておりますが、こんな問題につきまして外務省としてはどのように考えておるか、お伺いいたしたいと思います。
  152. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま御質問のありました核軍縮の問題については、日本が唯一の被爆国という特殊な状態もございますので、実は非常に関心を持っておりますし、国連の軍縮の場では核軍縮の問題につきましては日本が常に主張をいたしておるところでございます。二月の十日にもスイスの軍縮委員会で、核軍縮に関しましては地下の実験が禁止されていないということがございますので、それを含めた包括的な核実験の禁止という条約を早くつくるべきだということを主張をしているわけでございますし、核兵器の拡散防止条約にももちろん入っておるというようなことで、あらゆる機会に、特に国連の場が多うございますが、核軍縮ということにつきまして日本は考え方を主張しているところでございます。ただいま小渕さんおっしゃるように、ソ連、アメリカももちろん、フランス、中国、イギリスでございますか、方々で核兵器というものがあることは御承知のとおりでございまして、これをどうやって現実の軍縮ということに持っていくかということには非常に問題があるわけでございます。恐怖の均衡といいますか、核の恐怖の均衡ということで場合によっては平和が維持されているのだというようなことを主張する人もあったり、なかなかむずかしい問題がございます。あるいはいまおっしゃったような地域で非核地域を設けたらどうかという意見もございまして、条約ができておるところもございます。ラテンアメリカ系でございますが、これもその地域の信頼関係というものがぴしゃっとできておりませんとなかなかできないわけで、日本は原則的には実はこれは決議に賛成はしているわけでございまして、あらゆる機会に、少しでも広がらない、むしろ逆に核兵器というものの数を減らしていくという努力、米ソの関係でSALTⅡの交渉ができて批准されておりませんが、こういう交渉もやはり続けていくべきじゃないかというふうに、私どもはアメリカに行きました場合には意見を当然言うべきだと思っているわけでございまして、日本としては核の軍縮ということにあらゆる機会に発言を国際場裏でしていくつもりでございます。
  153. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 強い希望を持つことは当然のことながら、現実といたしますればなかなか実際核軍縮の方向に進んでいるという認識は厳しいものがあるというように認識をせざるを得ないと思うのです。したがって、その努力は継続しなければなりませんが、一方ではやはり現実的な危機に対する防衛対策というものも考えていかなければならないと私どもは考えているわけです。  そこで外務大臣、内政面で市民防護に従事する要員につきまして国際法で保護しようとする目的で、一九四九年のジュネーブ条約の追加議定書の策定が一九五七年ニューデリーで開催された赤十字国際会議以来数次にわたって審議をされまして、最近ではジュネーブにおきまして七三年以来国際人道法案が審議されておるわけでございます。わが国としてもこれに積極的に参加すべきだと思います。しかし、どうも外務省の態度を拝見をいたしておりますと積極姿勢に欠けるのじゃないかというような感じも持たざるを得ない点もあるのです。先刻来問題になっております専守防衛の問題がありますが、万一の話ではございますが、こういうことになって国内でいろいろ次事件が発生をするというようなことになりますれば、当然非戦闘員としてこれを保護しようという案につきましては、私は万人異論のないところだと思いますし、特に日本としてはそうした非戦闘員の保護の問題につきましては積極的に参加をしてこの条約の審議に加わるべきではないか、こう思っておるわけでございますが、最後に外務大臣、この点に触れてお尋ねしておきたいと存じます。
  154. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま小渕さんおっしゃったのは国際人道法案とかそういうもの、あるいは議定書の一、二というものがジュネーブの諸条約にあるわけでございまして、これは武力紛争の際の人権擁護ということを目的としたものでございまして、これには日本委員も参加しまして協議にはあずかって、何とかこれの実現ということをやっておるわけでございますが、なかなかむずかしい問題があって、先生おっしゃったように、まだこれが日の目を見ていないということは先生御指摘のとおりでございます。日本としてもこれに参加しまして、何とかこれを仕上げていくということに努力したいと思いますが、詳細につきましては政府委員から申し上げます。
  155. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 大臣の御答弁のとおり、積極的にこれに参与するという方向でございますが、問題点が一つございまして、これは民族解放闘争、武力解放闘争と申しますか、そういう事態が世界各地に発生しておって、これが国連憲章の認めませんところの武力解決というものを唱道する場合におきまして、こういう事態もこの条約がカバーしなければいかぬというような主張が強くあるわけでございます。これに対しましては、やはり国連憲章との整合性とかそういった点で、これら条約の内容を完全に適用するということに対してはちゅうちょする国がございます。例を挙げますると、米、葉その他主要先進国と申しますか、そういう国は消極論をとっておるわけでございます。ただ、大臣の御答弁にございましたように、また小渕委員の御指摘にございましたように、内容的にはこれは武力紛争における人権の保護ということでございますし、戦傷者、戦病者の保護をさらに強化していくということでございますので、その双方の兼ね合いにおいて判断をしなければならないということもまた事実と存じまするので、御指摘に従いまして、そのラインでまた検討を続けたいと考えております。
  156. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 次に、科学技術庁長官、お待たせしました。  放射能の防護の専門的事項は科学技術庁の所管と思われますが、いかがですか。諸外国では、広島、長崎でのわれわれ日本民族の悲惨な体験を教訓として戦後早くから営々として対核市民防衛施設を進めております。一昨年、視察する機会を私も得ましたが、スイスなども全くその例に漏れない。ひとりわが国だけは核アレルギーとして国民の心情を支配しているが、原子力の平和利用を促進する上からも、放射能や放射線についての常識、特に防護の可能性について十分なPRを行う必要があると私は思うのです。  そこで科学技術庁では、私ちょうだいしたのですが、「わたくしたちと原子力」こういう資料をつくって配付しておるようです。大変いいものです。「財政再建を考える」というので大蔵省で出したパンフレットがありますが。大蔵省だけに宣伝は任せないで、科学技術庁ももっともっと宣伝してもらいたいと思いますが、これなどを見ますと、放射線も大体人間が自然で受けるのが百ミリレムだ。しかし、この間アメリカで問題になったスリーマイルの事故あたりは一・五ミリレムしか被害を受けてないんだというようなこともあります。したがってこういった問題についても、科学技術庁としては、これは何万部出したか知りませんが、こういうものをもっともっと国民に配付して、いたずらな核に対するアレルギーというものを排除しながら、真にやはり国民が原子力の問題につきまして勉強のできるような努力をすべきじゃないか、こう私は思いますので、いまの諸点についてお答えをちょうだいいたしたいと存じます。
  157. 中川一郎

    ○中川国務大臣 原子力開発利用の必要性については、もう国民の大方の皆さんが理解していらっしゃるんじゃないかと思います。エネルギーが厳しくなってきて、省エネルギーにも限界がある、代替エネルギーとしてサンシャイン等もありますが、量的にもコスト的にもまとまって代替でき得るのは石炭あるいはLNGもありますが、やはり一番は原子力である。特にフランスなんかは日本と同じ事情にあるわけですが、電気の七三%までは原子力に切りかえる、こういうことでやっております。その際、一番問題になりますのが安全性でございますけれども、うらやましく思ったのは、フランスなどでは、社会党も共産党の皆さんも全面協力をしていらっしゃるということでございます。わが国では原子爆弾が落ちたということの特殊性もありまして非常にアレルギーが強いということでございますから、この安全性については国民の皆さんに粘り強く理解してもらう努力が必要だ。  一部の人は爆発するのではないかと言うのですが、これはウランを濃縮して一〇〇%の燃えるウランにしなければ、あるいはプルトニウムという特殊なものでない限り、いま燃えるウランを三%に濃縮した――原材料の鉱石は〇・七%ですから、それを濃縮して三%程度ですから、どんなことがあっても爆発はしないというものであるということ。それから放射線が漏れた、たとえば「むつ」から漏れた、スリーマイルが漏れたと言っても、これはレントゲン写真一枚の何分の一というくらい非常に少ないものであって、これは自然界にもある程度のものであり、また実績から言っても、二十一基、千五百万キロワットやっておるのですが、放射線が漏れて迷惑をかけたことはありませんし、世界でも二、三百基ありまして一億キロワット以上あるわけですが、これまた事故が起きておらないということでございまして、安全性については二重三重に一世界じゅうもそうでありますが、日本では特にダブルチェックと言って、政府の法律に基づくだけでなくて、民間のチェックも受けて安全性については努力しておりますし、今後も努力してまいります。
  158. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 次に、自治大臣にお伺いいたしますが、市民防護のソフトウエアと言うべき組織運営面の施策は、諸外国の多くは内務省が行っているわけですね。わが国の場合は、さしあたって消防、警察の活動が中心とならざるを得ないだろうと思うのです。しかし、その活動は地方自治体が主体となる。自治省として、消防、警察を中心とした地方自治行政の一部として検討を進める必要がある情勢に、来ておるというふうに考えますが、自治大臣としてはいかがお考えでありましょうか。
  159. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 市民防衛の問題は、言うまでもございませんが、主として核攻撃によるところの市民の安全を確保するという立場から、各国において法制を立て、そして物的設備あるいは団体的な結成等々やって努力をしておるところでございますが、日本におきましても消防があります。しかし、これは法律の明文から言いますと、そういうことを予測いたしておりません。そういたしますと、核攻撃に対する問題を扱うということになりますれば、やはりもう一度考え直さなければいかぬのではないか。この問題についてはやはり世論もございますし、また政府内部におきまして関係するところも多々ございますので、この辺の意思の統一を図る必要があるだろう。私はその必要性は認めるわけでございますけれども、簡単にいまのままで行くものではなかろう。そのための努力を重ねていかなければ共通の認識は持ち得ない問題が多々あるだろう、こう思っておるわけです。
  160. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 時間の関係がありますので、先へどんどん進ませていただきます。  国土庁長官、市民防衛は本質的に総合防災対策だと思うのです。現行の災害対策基本法はその成立過程は、御案内のとおり昭和三十四年の伊勢湾台風の所産というふうに言われておりますが、この自然災害対策法であります。その付属の政令で、人為の放射能災害も大規模災害の一つとして考えられております。しかしながら、政令で放射能災害を取り上げているのは非常に不自然だろうと思うのですね。したがいまして、その再検討をする必要があると思いますが、基本的に放射能災害を含む、各種の大規模災害を含むように改正して、市民防衛施策を包括するのが妥当であるというふうに思いますが、改正の意思があるかどうか。  御案内のように災害対策基本法第二条で定めております幾つかの災害、それを受けまして、今度は災害対策基本法施行令でこの放射能物質の大量放出ということをまずうたっておるわけでございまして、いまや放射能物質の大量放出の問題は科学技術庁は非常にその防護に御苦心を願っておりますが、関心の深いことは事実でありまして、万一ということを考えますれば、当然法律の本法の中に入っていてしかるべきではないか、こう思いますので、この点につきまして国土庁長官のお考えをお伺いいたしたい。
  161. 原健三郎

    ○原国務大臣 小渕先生のいまの御質問ですが、われわれ国土庁で扱っておるのは災害対策基本法によるものであります。もちろん、いまおっしゃったように豪雪、豪雨、地震などのような自然現象が一つ。それからいまおっしゃいましたように、政令によって、大規模の火事、それから爆発、放射性物質の大量の放出等の人為的な大規模事故等を扱っておるものであります。  それで、いまお尋ねのありました放射性物質の大量の放出とは、事故または災害により被災した原子力施設等からの放射性物質の大量放出が考えられておりますが、戦争時における核攻撃に対処することは、この法律ではもちろん想定いたしておりません。平時のことでございます。それによって、現行の災害対策基本法はあくまでも平時の災害を予想してこの法律ができております。御指摘のように戦争災害といった事態について、あるいはまたそれについての市民防衛という観点を含めて、これは別個の問題としてこれから十分将来検討いたしたいと存じております。
  162. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 次に、建設大臣にお伺いいたしたいと思いますが、最近新聞、雑誌その他で核シェルターなるもののことが紙面をにぎわしてきておるわけでございます。アメリカなどにおきましても、最近大変な地下マンションができ上がったというような記事も出ておりますし、実はわが日本の中でも、そういう問題に取り組んで、みずからの費用でこれを建設している人たちがおられるわけでございます。  そこで、この近くに五十人用のモデルシェルターというのが完成しましたので、私も先般見てまいりました。しかし、実際こういうシェルターを個々の人たちがつくられましても、現在の制度で言いますと、建設省は一体どういうふうな指導をしているのかわかりませんが、やや野放し状態になっておるのじゃないかという気がするのです。そういった意味でも、設備機器類の安全基準等を研究いたしまして、やはりこうした問題につきましての行政サイドでのお取り組みを願いたい、こういうふうに考えるわけでございます。このシェルターの問題につきましては、奇特な方と申し上げるべきか、あるいは当然しなければならぬというのか、これは認識の相違はありますけれども、先日も神戸で、あるお医者さんがつくり始めましたところが、近所からクレームがつきましてやめてしまいました。というのは、その人だけ助かるのか、こういう話になりまして終わってしまったのです。  やはりこういった問題は、本質的にはパブリックで考えるものだろうと思うのです。しかし、非常な危惧をする人と申し上げるべきか、あるいは諸外国の例から考えれば至極当然なことだろうと思いますけれども、こうした問題につきましても建築基準法上の特別の規定もない、こういうようなことでございますので、こういった点につきましても建設省としても御勉強しておられるか、また、おらなかったら、せいぜいひとつ積極的にこういった問題についての基準を定めて、せっかくつくるものならしっかり役に立つ――役に立つことのないことを願いますが、その基準を明らかにして、違法なもの、役に立たないものはつくらぬように考えることは至極当然ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  163. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  所管建設基準関係につきましては、御案内のように通常地震、台風、火災からの安全を守るということになっておりますが、核に対する対応については残念ながらそこまでいっておらないのが事実でございます。  先生御指摘のように、核シェルターについて諸外国で普及しつつあるということ、国内においても民間ベースで核シェルターをやっておられるということを聞いておりますけれども、構造物の関係あるいは設置の場所等、いろいろと問題点もあろうかと思います。専門分野にお願いする問題もあろうかと思いますが、今後の課題として、被災国である日本としては、建設行政の上からもせっかく検討をして、指導の形を前向きで進めていかなければならないのではなかろうか、このように考えるものでございまして、今後の課題として専門家等を通じて検討してまいりたい、このように考えるものでございます。
  164. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 最後に、防衛庁にお伺いいたしますが、現在の世界における核兵器の存在というものは、いまさらちょうちょう申し上げるまでもないことだと思います。  米ソの核の大きさ、あるいはその戦略核、戦術核を含めますと、弾数にして六万発以上、爆発力総計にして約二万六千メガトン、広島型原爆の百三十万発、こういうようなことになっているわけです。この膨大な核兵器の実戦配備はまことに狂気のさたと言わざるを得ないと思うのです。人類の英知がよくこの核戦争の発生を抑止することをわれわれは希求をいたしますが、わが国としても防衛上の基本方針ないし具体的な対応を必要とすると思われるのでございますが、防衛庁の検討の状況はどうか、ひとつ簡潔にお話しをいただきたいと存じます。  またあわせて、戦術核装備の外敵の侵攻対策で、極東地域では核爆発による死の灰というのがときどき西の方から降ってくるのです。したがって、そういった対策につきましても、これは防衛庁かどこかわかりませんが、もし防衛庁でやっておるのでしたら、その間の事情について御報告をいただきたいと思います。
  165. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  ただいま小渕先生御指摘のように、世界では米ソを中心として膨大な核兵器が存在しており、私といたしましても、御指摘のように人類の英知をもって核戦争の発生を防止することを心から願うものであります。わが国といたしましては、国是とも言うべき非核三原則を堅持しているところであり、先ほど外務大臣がお答えになりましたとおり、核軍縮を初めとする軍縮については、政府として、国連を初めとする国際的な場において、実現可能な措置が一つ一つ積み重ねられていくことが肝要であるとの基本的立場から、その進展のために積極的に努力しているところでございます。  そこで、わが国といたしましては、核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存することとしており、一方米国は、日米安保条約に基づくわが国に対する防衛約束について、繰り返しこれを遵守する旨述べているところであります。防衛庁といたしましては、今後とも日米安全保障体制の信頼性の一層の向上に努めてまいりたいと考えているわけでございます。  また、最後に御指摘のありました極東地域での核爆発による死の反対策についてでございますが、この問題につきましては、現在防衛庁としてはまだ対策を講じておらないわけでございますが、非常に重要な問題でございますので、民間防衛問題の一環として、政府全体として検討していきたいと考えております。  以上をもってお答えといたします。
  166. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 いろいろ議論してまいりましたが、正直に言って国民のこの問題に対する関心もそう高いものでないと思いますし、また、政府側の対応もきわめて緩い感じがいたしております。以下申し上げるようなことを申し上げましても、そうかなという気もするかもしれませんが、しかしICBMの問題にいたしましても、その精度について、この間新聞に出ておりましたが、米ソの核におけるバランス・オブ・パワーは命中精度の問題がある、こういうようなことがありましたから、仮に、どこかに向けて撃ちましても、無事の第三国たるわが国にということだってないとは限らないわけでありますし、また、コスモスクライシスということは数年前に起こりました。一九七七年、カナダに原子力発電施設を積んだ衛星が落下したことは御案内のとおりでございます。この問題も、資料によりますれば一九八〇年の十一月にソ連が三百万ドル払ってようやくカナダと話をつけたということでございますが、これも空の上からいつ落ちてくるか。現在、ソ連は十七発コスモスを打ち上げておりますし、アメリカはスナップショットというのを、これはマル秘ですが、大体同数上げているのじゃないかというようなこともありますので、この問題も重要である。また、核ジャックというような問題も出ております。  さらに、核拡散防止条約は百カ国に近いものが加盟しておりますが、しかし、さらに核兵器はなお拡散の傾向もまた事実である。あるいはソ連の最新鋭の御案内のSS20も倍増して、これまた新聞によれば、日本の方と中国主要都市、朝鮮半島をにらんでおる、こう書いてございます。  いずれにいたしましても、いたずらに国民の脅威をかき立てることは避けたいと思います。また、こわいものは見たくない、いやなものは聞きたくないといった国民の一般的心理は至極当然なことではありますが、しかし政府となりますれば、この問題について等閑視することは許されないだろうと思うのです。したがいまして、この問題につきましては、すでに福田内閣時代民間防衛については国防会議で勉強しろという御指示もあったそうですが、その後実際に進んではおらないようですが、昨今、これも新聞によりますれば、宮澤長官内閣委員会で検討を考えるやの発言もされておるように思います。  官房長官、来ましたか。――官房長官、いろいろ市民防護の問題につきましてお尋ねを申し上げてまいりました。正直申し上げまして、各省庁の取り組みというものは、他の問題が錯綜しまして十二分だとは思えないと私は思います。しかし、この問題につきましては、やや日本人の死生観の問題、運命観の問題あるいはすぐ目の前に火が飛んでこなければやらないという民族性にも起因することかもしれませんけれども、まさにこういった問題こそ政府が長期間にわたってあらかじめ検討していくべきことではないか、こういうふうに思います。よって、この問題につきましては、政府としても、福田内閣以来いずれかに所管を定めがたい問題でございますので、政府全体の問題として取り組む、こう言っておられますので、ぜひ鈴木内閣におきましてもこの問題を一つの重要な課題としてお取り組みをいただきたいという希望を申し上げ、官房長官の御答弁を伺って、この問題を終わりたいと思います。
  167. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、以前から小渕委員から御指摘があり、また私ども政府部内で何度か問題意識としてはぶち当たっておる問題でございます。すでに関係閣僚からお答えがあったかと存じますが、御承知のように、また先ほど御指摘になりましたように、しょせん自分の国は自分で守らなければなりませんし、そのことはやはり市民一人一人の生活の水準まで下げて現実的に考えなければならない問題であろうと思いますが、過去におけるいろいろな記憶もあり、また新しい憲法のもとでわが国が歩み始めておりますこの道もどういうことになっていくのかということについて、国民にもいろいろな考え方があるようでもございます。しかも、諸外国のいろいろな例を見ながら、そういう中で日本はこの問題をどういうふうに処理していくのかということについて十分な国民のコンセンサスというものがまだ生まれていないというのが事実であろうと思います。しかし、問題そのものが存在する、そして無視してはならないものだということは私は御指摘のとおりだと思いますので、政府全体として問題を慎重に検討していくことがやはり大切であろうというふうに考えておるわけでございます。
  168. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 ぜひ政府としてもこの問題につきまして十分内部的に御検討いただきまして、政府全体の問題としてお取り組み願いたいということを強く御希望申し上げておきたいと思います。  通告いたしました第三の問題は憲法問題でございますが、私の時間が参りましたのでこの問題は中止をいたしますが、ただ、この予算委員会の憲法問題に対する質疑を聞いておりまして、憲法について一字一句指もさしてはいかぬと言われる方々に対して憲法を絶対に改正をしませんと言う政府との話し合いというものは、まことに両者意見が一致をしておるわけでございまして、意見が一致しておる論議を興味深く実は拝聴してきたわけなんでございます。  そこで、憲法九十九条の問題について触れたかったのですが、憲法九十九条の規定は申すまでもなく遵守義務でございますが、その書き方というものは、天皇、摂政または国務大臣、国会議員、裁判官その他公務員は遵守する義務がある、こう書いてあるわけでございます。私は去年そちら側に座っておりましたときにこれを読みまして、実は何とも抵抗を感じなかったのですが、今日この席で質問しようと思いましたら、どうも国会議員の序列が、これは並列的に書いてあることですから問題はないわけでございますが、アメリカの憲法が下敷きになっておるということは絶対あり得ないかもしれませんが、しかしアメリカの憲法などを見ますと、大統領が憲法第二条の八項でその義務を負っている。ところが六条でしたかによりますと、アメリカでは議会、上院、下院、州の議員、そして行政官、裁判官、こういう順序になっておる。日本の憲法も、御案内のように憲法のこの序列は章の順番から言いましても、国会があり、そして内閣があり、裁判官がある、こういうことを考えますと、やはりただ序列だけの問題かという感じもしないでもない。  この問題についてもっと触れたいと思いますが、私が申し上げたいと思いますことは、この国会議員における遵守義務というものはきわめて高いものでもあり、したがいまして政府方々がいろいろ御発言をされておられるそのことは、みずからの御意思に基づいて発言し、かつ行動しておりましても、そのことが内閣全体の方針の問題にかかわるということでありますればこれはまた別の問題としても、純法律論的に言いますと、国会議員、国務大臣おのおのが同じような機能と義務を有している。特に九十六条におきまして改正の手続上の観点から考えますと、この点につきましては国会が発議権を持つということになっておるわけでございます。  もちろん、政府は憲法改正に対する提案権という形で他の議案と同じような扱いとして国会にその改正案を提出することがあり得べしということが政府の見解ではございますが、私もいろいろ調べてみますと、この問題につきましても社会党の石橋委員ども政府には提案権はない、こういうふうな御議論も過去にされておったようでございます。さすれば、必ずしも機能、権限と同時にその持つ責任と義務との関係はパラレルであるとは存じませんけれども、やはり国会議員における憲法の遵守の義務というものはきわめて高いものであると考えますれば、私は行政府にあられる国務大臣が発言されることがそのままに憲法違反だという法的な考え方があるとすれば、同様に国会議員も同じような発言をすれば憲法違反の疑いあり、こういうことになるのじゃないかと思うのですが、最後に法制局長官の御意見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  169. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 そのとおりでございます。
  170. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員 それでは、自然災害につきまして原田委員が関連して質問いたしますので、お譲りいたします。
  171. 小山長規

    小山委員長 この際、原田君より関連質疑の申し出があります。小渕君の持ち時間の範囲内でこれを許します。原田昇左右君。
  172. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ただいま小渕委員から国の防衛、防災等についていろいろ質疑がありました。私はこの関連におきまして、地震対策におきましても、みずからの生命、財産はみずからの手で守るという精神で、地域住民の間において自主的な防災組織をつくり、国、県等の施策と相まって防災訓練を実施することが最も重要なことと考えます。  私の出身県の静岡県におきましては、県知事、市町村長が陣頭指揮に立って大規模地震対策特別措置法に定められました諸施策の実施に当たっておるわけでございますが、同時に、地域住民が積極的に自主防災組織をつくりまして防災訓練を実施しているわけであります。自主防災組織はおおむね町内会単位で結成されて、県下に約四千七百の組織ができることを目標にしております。現在すでにその九〇%が組織化を終了しておりまして、特に焼津市等では抜き打ち訓練を何回も実施しておるという状況であります。このように、その地域の住民が自主防災組織をつくって避難訓練を実施するなど、自分たちでできることは大いにやるという気構えを示すことは最も有効な対策ではないかと思います。  去る二月四日の本委員会におきまして、大規模地震対策特別措置法に反対をされた共産党の不破哲三委員から、地震対策についていろいろ質問がありました。地震対策の重要性についてお気づきになったのは大変結構なことでございますが、しかしその中で重大な事実について国民に誤解を生ずるおそれのあるようなことを含んでおりますので、この際、私から政府にこの点をただし、明確な答弁をいただきたいと存じます。  まず首都圏についてでございますが、政府はこの予算案の中で、首都圏の防災対策を樹立する上に最も必要な被害想定の作業をする経費などを組んでおられるわけでございますけれども、結局あなた任せではだめです。国の対策ももちろん必要でございますが、何よりもみずからの手でみずからやるという気構えを持つこと、私は首都圏に住んでいる人たちにそのことが理解されなければならぬと思いますが、国土庁長官、いかがでしょうか。
  173. 原健三郎

    ○原国務大臣 いまの原田先生の御意見、まことに全面的に賛成でございます。大都市の地震対策について自主防災組織をつくられるのはまことにそのとおりでございます。しかも静岡県においてはきわめて積極的で、もうすでに着々と防災対策に知事以下全県民が進んでおることは、深くわれわれは敬意を表しておるところであります。  それで、いまお尋ねの大都市、ことに東京都においては、われわれもいろいろ考えておるのですが、災害対策基本法及び大規模地震対策法、こういう法律においても、それぞれ住民の責務を規定しておるところであります。お示しの自主防災組織は、防災基本計画及び地震防災基本計画で重要なものとして現法律の上でも位置づけられておるところであります。それで、東京都の方はまだどうも静岡ほど進んでおりませんので、東京都においても自主防災組織の確立のためにいま努力いたしておりますが、われわれ国土庁としてもさらに一層指導してこの組織の強化にこれから進んでいきたい、そして御期待に沿いたいと思っております。
  174. 原田昇左右

    原田(昇)委員 先般の不破委員の質問の中に、静岡県の調査によると、大地震が発生すれば浜岡原発の所在する静岡県の御前崎、浜団地域では地盤が液状化してしまう、そのような地域に新たな原発を建設することは危険で大問題だ、こういう指摘をしておりますが、私はこれは事実誤認もはなはだしい、こういう認識では非常に地元の住民に不安を来すと思います。この際、ひとつ明確に通産省からこの状況について御説明いただきたいと存じます。
  175. 田中六助

    田中(六)国務大臣 この前の地盤の流動化というのは地表の部分が液状化することでございまして、浜岡発電所などはやはり私どもは十分安全性というものを考えまして設置したわけでございまして、表面の部分を問題にしているのではなくて、その下に非常に強固な岩盤がありまして、その上に建てておるわけでございまして、そういう懸念はさらさらないと思っております。
  176. 原田昇左右

    原田(昇)委員 先般新潟地震というのが起こったわけですが、そのとき確かに地表の普通の土質のところに、液状化と言うとちょっと語弊があると思うのですが、正確に言えば流動化現象というのが起こりまして、鉄筋コンクリートのアパートが傾いた例があります。これは不破委員が御指摘のとおりでございますが、しかし建物の基礎くいを二、三十メートルの深さに入れて基盤に届くようにしたような建物はこういう被害は全然見られないということでございます。いまの通産大臣のお答えのように、浜岡原発はそういうしっかりした強固な岩盤の上に建っておるから絶対大丈夫だ、こういうことでございます。私も新潟地震の例を引くまでもなく、まことにそのとおりだと思いますが、これらの貴重な経験を生かして、耐震工学の一環としていろいろな技術が進歩しておると思うのです。したがって、原子力立地につきましてもその点を十分考慮して施工されておると確信するわけでございますが、この点について科学技術庁の見解はいかがでございますか。
  177. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御承知のように、科学技術庁は通産省がまず一義的に安全審査をしたものをダブルチェックすることになっております。浜岡の第三号発電所については現在審査中でございまして、まだ結論を得ておりません。ただ言えることは、不破委員が言ったように地震が起きたら液状になってしまうというようなことは全然ありませんで、表土は全部はがしてしっかりした岩盤の上にやりますから、新潟のような表土の中にやればいろいろな伏流水が出てくるというようなことで液状になることがありますけれども、非常に強い地震を想定した上で岩盤の上にきちっとやりますから、そんな状況はさらさらないとはっきり申し上げておきます。
  178. 原田昇左右

    原田(昇)委員 両大臣から大変明確な御答弁がございまして、ありがとうございました。  ところで、浜岡三号炉に係る通産省の審査におきまして、震度五の地震までしか想定しなかったと伝えられているけれどもどうかという不破委員の質問に対して、政府委員から震度五以上のことを想定してやっておるという答弁が前回あったわけでございますが、要するにあの地域の地震を想定する場合に、マグニチュード八・六の場合にはどのくらいの震度で、どのくらいの加速度の単位としてのガルを想定しておられるか、それに対して耐震構造であるかどうか、明確に答えてください。
  179. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいまの御質問でございますが、浜岡三号炉の安全審査に当たりまして、先般の不破先生からの御質問で、通産省が震度五で想定をして安全審査をしたのではないかという御指摘がございました。私もそのとき答弁に立ったわけでございますが、震度五以上をすべて想定したということでございます。これは歴史上の過去の大地震も全部踏まえまして、御承知のとおりあの地区におきましてはいわゆる安政大地震、これは史上における最大の地震という記録が残っておりますので、それを想定いたしまして、その地震にも十分耐えられるという観点で安全審査をしたわけでございます。  数字を申し上げますと、安政地震のマグニチュードは八・四であったわけでございますが、これは理論的に考えられます最高級の地震でございます。それに耐えられるという範囲におきまして、いわゆる専門用語を使わせていただきますと、ガルという表現がございますが、四百五十ガルをもって安全審査をしたわけでございます。この四百五十ガルは震度七も全部耐え得る、こういう想定のもとにやったわけでございますので、震度五以上、最高の震度七まで全部審査いたしました結果、安全である、こういう確信を持って私どもの審査を終わりまして、現在、科学技術庁でダブルチェックをお願いしておる、こういう状況でございます。
  180. 原田昇左右

    原田(昇)委員 よくわかりました。  ついでに伺いますが、それでは、いますでに運転中の一号炉、二号炉はその基準に合うかどうか。
  181. 高橋宏

    高橋(宏)政府委員 お答えいたします。  浜岡の一、二号機につきましても、先ほど御説明いたしました四百五十ガル、三号機と同じ震度でチェックいたしまして、その結果、安全であるということを確認いたしました。
  182. 原田昇左右

    原田(昇)委員 そうしますと浜岡における地震の上から来る心配はさらさらないというように理解いたしますが、およそわが国の原子力発電所は、浜岡に限らず、そのほとんどが地震危険地帯の上にあって危険だということをこの前の不破委員指摘しております。私は、それに対しても十分な安全上の考慮がなされておると理解いたしますが、いかがですか。
  183. 森山信吾

    森山(信)政府委員 確かに日本は地震の多い国でございますので、言ってみますと、日本全国が地震の危険にさらされているということでございます。ただ、発電所は絶対必要なものでございますので、いろんな角度から、たとえば地層の問題あるいは需要地との関係の問題あるいは水との関係等々の自然条件とのマッチが十分必要でございます。したがいまして、地震の問題も考えますけれども、その他の自然条件も全部考えまして立地地点を決めるわけでございます。  地震につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、絶対安全な確信がない以上は私どもは認可をしないわけでございますので、それを踏まえた上で通産省の結論を出し、重ねて科学技術庁でダブルチェックをお願いする、こういうシステムになっているわけでございます。
  184. 原田昇左右

    原田(昇)委員 そうしますと、私は、安全の上にも安全をということで、地震地域に建てられる原発はコストの面から言うと高くなって、消費者に高い電気を供給することになりはしないか、こういう議論が生ずるんじゃないかということを恐れるわけでございます。  そういうことになるのかならないのか、また、そういうことになっても、別ないろんな考慮から、やはりそういうところに原発立地をやらなければいかぬという事情があるんだろうと思いますが、その辺についてお尋ねしたいと存じます。
  185. 森山信吾

    森山(信)政府委員 浜岡三号炉のケースでお答え申し上げますと、耐震設計に伴います建設費の増加分が大体建設費全体の五%ないし一〇%程度ということでございます。それから、電力料金に占めます建設費のコストが大体七割でございますから、仮に五%余分に耐震強化の構造をしたというふうに仮定いたしますと、料金にはね返る率は三・五%、こういう数字になります。それから、一般的に石油火力発電所と原子力発電所の電気料金に占めます割合は、圧倒的に原子力発電所の方が安いわけでございまして、石油火力に比べましてほぼ半分近い状況でございます。  そういたしますと、仮に、先ほど申し上げたように徹底的な耐震設計をいたしましたといたしましても、そのはね返り分はごくわずかなものでございますので、石油火力を極力原子力発電所に切りかえていきたい、こういう趣旨には全く合致するというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  186. 原田昇左右

    原田(昇)委員 よくわかりました。  そこで、最後にお尋ねしたいのは、わが国のエネルギー事情を考えますと、輸入石油の値段というものは今後も引き続いて値上がりするであろうと予想されておるわけでございますから、どうしても自主的な石油に依存しないエネルギー開発をやらなければいかぬ。政府の計画でも、十年先に石油依存度を五〇%に引き下げよう、こういうことになっておるわけでございますが、その中で何が一番石油代替エネルギーとして大事か。いろいろなエネルギーがあります。一部の政党では、原子力は危険だからほかのソフト・エネルギー・パスとかいうことでやったらどうかとかいろいろ議論がありますけれども、やはり机上の空論ではどうしようもない。やはりわれわれ民族がしっかりこれから繁栄を続けるためには原子力エネルギーに頼らざるを得ない。  そこで、原発の建設推進ということは大変大事なことだと思うのです。誤った認識が流布されるようでは、原発立地は一向進まないということになるわけでございますから、政府は、国民に誤解が生じないように、正しい原子力の知識を普及させて、そうして原発立地に協力してくださる地域については、各般の施策と相まって住民が喜んで協力できるような体制をつくり上げるということが何よりも大事だと思うのです。それについて、通産大臣と中川科学技術庁長官の覚悟の所信をひとつお述べいただきまして、私の質問を終えたいと思います。
  187. 田中六助

    田中(六)国務大臣 原田委員指摘のように、私どもも、十年後には石油代替エネルギーを五〇%まで確保するというようなことでございまして、原子力発電所関係は十年後には七千五百九十万キロリットルを予定しております。現在二十一基稼働しておりまして、これを将来三十五まで持っていくのですが、何とか予定の線まで持っていくべく必死の努力をしているわけで、そのためには、まず安全性とかいろいろなことのPRをやると同時に、地方のそれぞれのニーズに応じた関係で交付金の設定をしておりますし、新年度予算におきましても、四本の柱を立てて、それぞれ交付金の交付を実現すべくやっておりますし、まずいずれにしても、安全だということのPRを徹底させると同時に、本当に実際に安全であるという試験も十分やると同時に、専門官の検査とか、いろいろなあらゆる手段を講じてこのための対策をとっておるのが、いま審議中の予算もそうでございますが、次々に同様の計画をやっております。
  188. 中川一郎

    ○中川国務大臣 エネルギーが非常にむずかしい時代を迎えて、代替エネルギーというふうになります。その場合、たとえば太陽熱をどうだというような人があるのですが、仮に浜岡の百万キロワット程度の発電をやるとすれば、現在技術では大体ゴルフ場百ぐらいの用地が必要だ、こういうことで実現性は量的に非常にむずかしいというものでございます。地熱についても、現在は五万キロワットがせいぜいでございまして、百万キロワットをやるなんということはなかなか大変なことでございます。そのほか風力なんということもありますが、いまは一風力で一キロワットですから、百万本の風力を建てなければということになり、こういうふうに量的にまだ非常にむずかしい。  それから、コストの面でも原子力発電は石油の約半分ということですから、消費者負担というようなことを考えたときにも、これはもう大いに促進をしなければならないものである。石炭についても、液化が成功しますとなんですが、これはまだ成功いたしておりませんから、石炭の燃えがらの処理というものがまた地域住民に大変な大きな影響を与える。LNGがかなりいいかなあということですが、これにも資源に限界がある。だとすれば、もう原子力が一番国民のために必要な代替エネルギーだとあらゆる面から言えると思うのでございます。  ただ、安全性についてまだ国民の間に理解、納得が得られないということでございますので、われわれとしては鋭意イデオロギーとかそんなことではなくて、本当に必要なものであるということを国民の皆さん、特に地元の皆さんには見ていただいて、いろいろPRしたらどうかと言うのですが、百聞は一見にしかず、現在の発電所がもう二十一基ございますから、そこを見てもらって、どんなに清潔にきれいにやっているか、安全性に神経を使ってやっているかということの御理解をいただくようにわれわれも努力していきたい、こう思っております。
  189. 原田昇左右

    原田(昇)委員 どうもありがとうございました。質問を終わります。
  190. 小山長規

    小山委員長 これにて小渕君、原田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十九日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会