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1981-02-16 第94回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年二月十六日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       足立 篤郎君    池田 行彦君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    海部 俊樹君       片岡 清一君    鴨田利太郎君       後藤田正晴君    近藤 鉄雄君       近藤 元次君    始関 伊平君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       中村  靖君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       原田昇左右君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    細田 吉蔵君       宮下 創平君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    阿部 助哉君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       小野 信一君    大原  亨君       岡田 利春君    中村 重光君       野坂 浩賢君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       正木 良明君    神田  厚君       林  保夫君    寺前  巖君       東中 光雄君    松本 善明君       依田  実君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 伊東 正義君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 園田  直君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 小島 弘仲君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     谷口 守正君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         行政管理庁行政         監察局監察審議         官       佐々木晴夫君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  實君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         防衛施設庁労務         部長      木梨 一雄君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         国税庁次長   川崎 昭典君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         厚生大臣官房審         議官      吉原 健二君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      金田 一郎君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 松田  正君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      森実 孝郎君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省貿易         局長      古田 徳昌君         通商産業省基礎         産業局長    小松 国男君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         郵政大臣官房経         理部長     澤田 茂生君         郵政省郵務局長 魚津 茂晴君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省住宅局参         事官      松谷蒼一郎君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         自治省財政局長 土屋 佳照君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     中村  靖君   上村千一郎君     片岡 清一君   小渕 恵三君     原田昇左右君   倉成  正君     近藤 鉄雄君   始関 伊平君     近藤 元次君   正示啓次郎君     宮下 創平君   瀬戸山三男君     池田 行彦君   石橋 政嗣君     小野 信一君   不破 哲三君     東中 光雄君   河野 洋平君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   池田 行彦君     瀬戸山三男君   片岡 清一君     上村千一郎君   近藤 鉄雄君     倉成  正君   近藤 元次君     始関 伊平君   中村  靖君     宇野 宗佑君   原田昇左右君     小渕 恵三君   宮下 創平君     正示啓次郎君   小野 信一君     石橋 政嗣君   東中 光雄君     不破 哲三君   依田  実君     河野 洋平君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度一般会計予算  昭和五十六年度特別会計予算  昭和五十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度一般会計予算昭和五十六年度特別会計予算昭和五十六年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東中光雄君。
  3. 東中光雄

    東中委員 私は、最初に憲法の問題についてお聞きしたいのですが、総理は昨年の臨時国会から、いわゆる自主憲法期成議員同盟のことについてこう言われてきております。この議員同盟憲法について三原則を堅持しながら憲法の問題を研究調査する、そういう団体と私は心得ておるわけでありまして、私はそういう立場でこれに加盟しておるんだということ、これは速記録に出ておるとおりでございますが、それで私たち、いろいろ検討いたしました。議員同盟趣意書——綱領にも相当するところでありますが、これによりますと「現日本国憲法は、当時、占領軍によって一週間足らずで作られた英文の憲法をほぼそのまま日本文に訳した「押し付け憲法」であり、しかも日本の歴史と民族の伝統とを軽視した「占領基本法」ともいうべきものであります。」——これは趣意書でなくて、昨年出された会長名文書に書いてあるわけです。趣意書には「連合国司令官の指令に基いて作られたものであって、日本国民自由意志によるものとはいわれない。」こういう規定をしています。日本国憲法が「日本国民自由意志によるものとはいわれない」、これが議員同盟憲法に対する見方であり、そこから出発して、押しつけ憲法である、また、占領基本法とも言うべきものだ、さらに、他国憲法に必ずある国家緊急時の対処規定がないなど、独立国家としての憲法の体をなさないものである、こうまで言っております。  日本国憲法というのは国民自由意思によるものではない、だから、この憲法はやめて新しい憲法をつくるんだ、自主憲法を制定するんだというのが議員同盟趣旨だと思うのですが、総理は、日本国憲法押しつけ憲法、あるいは自由意思によるものとは言えないというふうな考えを持っておられるのかどうか、その点をお聞きしたい。
  4. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 議員同盟は、御承知のように自由民主党党員諸君が多数加盟をしておる団体でございます。そこで、まず私、申し上げておくのでありますが、自由民主党におきましては、現在、憲法調査会におきまして憲法の問題を調査検討を進めておるということでございまして、まだ、どこをどうするというような結論を得ておりません。憲法調査会で一応の成案が仮にできました段階におきましては、これを総務会にもかけなければいけない。さらに、国の基本法でございますから党大会にかけまして党としての決定がなされるわけでございます。そういうようなことでなければ、自由民主党の多数の諸君が参加しておるこの団体は勝手な歩きはできない、こういうぐあいに私は認識をいたしておるわけでございます。これが第一点でございます。  それから、この議員同盟のこととは離れて、日本国憲法押しつけ憲法であるかどうかということについての私の認識を申し上げるわけでございますが、確かにあの当時は占領軍の大きな影響のもとに憲法がいろいろ進められてきたと思うのでありますけれども、最終的には国会におきまして議決承認をされております。でありますから、一概に押しつけ憲法と決めつけるわけにはいかない、私はこう思っております。
  5. 東中光雄

    東中委員 国会において議決されたと言われましたけれども、その当時は国会はないのであります。帝国議会であります。これは天皇公布をしておるのです。そして天皇公布に際して勅語を出していますけれども、「この憲法は、」「国家再建基礎人類普遍原理に求め、自由に表明された国民総意によって確定されたのである。」はっきりそう言っていますよ。  そして、それは占領軍の意向と言われますけれども、あの太平洋戦争に入っていった——天皇主権のもとで、治安維持法であるいは国家総動員法国民基本的人権を抑圧し、弾圧をして、そういう中であの侵略戦争に入っていった、三百万の日本人が死んだ、二千万のアジア人たちが死んだ、こういう侵略戦争をやったことについて、連合軍側から戦争を終結するための条件として出されたのがあのポツダム宣言でしょう。  ポツダム宣言を受諾したのは日本国であり、日本国民であり、この受諾したポツダム宣言の中心になっておったのは何かと言えば、はっきり武装解除軍国主義を払拭するいわゆる平和主義であり、そして天皇主権じゃなくて民主主義主権在民方向を受け入れた。さらに基本的人権を尊重するということ、これもはっきりあそこに書いてある。これを受け付けたから、その線上での憲法改正という問題が出てきたわけです。だから、その憲法改正するについては、ポツダム宣言日本国として受けた、その方向で行かなければいけないのに、当時の政府天皇制天皇主権を残すというそういう抵抗をするから、だから指示も出たでしょう。それは経過にしかすぎないのであって、法律的な経過ははっきりとポツダム宣言受諾によってそういう方向で進んできた。だから天皇は「国家再建基礎人類普遍原理に求め、自由に表明された国民総意によって確定された」こう言っているのです。  ところが、この議員同盟趣意書には「日本国民自由意志によるものとはいわれない。」と書いているのですよ。そういう全く、憲法をいわば中傷する態度ですね。これが基礎になっておって、そして、これをやめて新しい憲法を制定すると言っているじゃないですか。憲法改正なんて言ってないですよ、自主憲法を制定すると言っているじゃないですか。奥野法務大臣は、この国家での答弁でも三回にわたって言っていますよ。憲法内容はそのままでもいい、新しい憲法をつくるようにしたい、憲法をつくり直したい、こういうことを三回も発言していますよ。国会でですよ。これは改正でも何でもない。改正どころか、憲法否定ですよ。  そういう点から言うと、日本国憲法を尊重し、擁護する、こういうふうに言われている総理大臣——憲法を否定する、新しい憲法を制定する、そして三千三百の自治体にすでにそのための文書を送って自治体決議をしてくれ、新しい憲法を制定することを要請する決議まで、そういう運動を起こしているのじゃないですか。調査研究団体ではなくて運動団体だということは、この規約にもはっきり書いてある。だから、総理がここで言われておること、議員同盟については三原則を堅持して憲法の問題を研究調査する、そんな団体じゃないということはきわめて明白じゃないですか。結社の自由はあるでしょう。しかし、総理がこの国会で言われたことと全く違う方向へ行っている。違う実態だということを認識されて、これに対してどうするかということをお聞きしているわけです。
  6. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、鈴木内閣は、憲法はこれを尊重、擁護し、改憲は考えていない、これは明確でございます。  それから、自由民主党は、憲法九十六条に基づきまして、いろいろ憲法の問題につきましては調査研究、また勉強をいたしております。しかし、まだ憲法調査会においても総務会においても党においても、何らの結論も得ておりませんし、決定もいたしてない、これも事実でございます。したがいまして、先ほども申し上げたように、その自民党議員諸君が多数参加しておる議員同盟、これが党を離れてどうこうという具体的な、憲法改正についてのここをこうする、ああするというような行動を起こすことはできない、起こす立場にはない、このように私は考えておるわけでございます。  それからなお、先ほど、議員同盟とは別に現行憲法に対する認識をお尋ねがございましたから、私は、客観的に見て、やはり占領軍の強い影響下憲法ができた、しかしこれは、この点が間違っておりましたが、国会でなしに当時の議会において議決承認をされたということであるから、押しつけ憲法と一概に決めつけるわけにはいかない、こういうことを明確に申し上げた次第でございます。
  7. 東中光雄

    東中委員 議員同盟はそういうことはやるべきではない、自民党議員の人が主として入ってやっておるものだから、こうおっしゃったんですけれども、そうやるべきでないと言われておることが実際にやられているわけです。しかも、その団体に、一般的に自民党の人というのではなくて、総理自身が入っておられるわけでしょう。だから、総理自身が入っておられるから、これは非常に矛盾じゃないか。総理が言っているようになってない。一国の総理でしょう。宰相が入っているその団体が、宰相がここでそういうことであるべきではない、こう言っていることの方向に動いているのだから、それならやめるのがあたりまえじゃないですか。それでもやはりやめないのだ、わしはやはりその運動の中に入っていくのだ、それじゃ党の立場議員立場内閣総理大臣立場と全く違う方向——顔が二つあることになる。しかも、新しい憲法をつくる要請運動というのは、決議をして、どこへ要請するのかといったら、日本国政府国会に要請せいと言っているのです、新しい憲法をつくろうということを。そういう決議をやっておるところもあるのです。そういうふうに進めているのです。総理は、自分が首班である政府へ、新しい憲法をつくれという要請運動を、自分もその団体に入ってやっている。非常に矛盾になるわけです。これはだれが考えたって余りにもおかしいじゃないかということになります。その点を聞いているのですから、いかがですか。
  8. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 盛んに議員同盟のことについて、それが直ちに私の責任であるというようなぐあいに結びつけて追及のようでございますが、議員同盟につきましていろいろ誤解を与えるようなことがございますれば、これは改善しなければならない、こう考えております。先般、櫻内幹事長議員同盟の副会長に就任されたようでございますが、今後におきましては、幹事長はやはり党の実質上の責任者でもございますから、行き過ぎのないようにその点は改善をアドバイスをしていくもの、指導していくもの、このように考えています。
  9. 東中光雄

    東中委員 総理議員同盟から脱退することを検討するということを答弁されてきたのですが、それは脱退するのでなくて、幹事長も参加をすることでその活動自体を今度は改善していくというふうに、いま言われたわけです。そういう点であるならば、総理がここで答弁されているその線に議員同盟が沿うようにというふうにしていくということを公の席で言われたのでありますから、そういうものとして議員同盟軌道修正改善をするために努力するということを言われたと理解をします。  そこで、次の問題に入りたいのですが、徴兵制憲法問題についてであります。  徴兵制度日本国憲法上許されないのだという昨年の八月十五日の政府答弁書でありますが、これについて宮澤官房長官は、法律的には間違っておりません、内容も違っておらないと存じます、法律的に申せば、まずこれが完全な答えと申しますか、いままでのいきさつをも踏まえて正確なお答えであることは間違いないと思います、いままでの解釈をもちろん変えるというものではありません、こういうふうに言われております。総理奥野法務大臣の発言に関連して、憲法は厳格、明確に解釈するのだというふうに言われたわけであります。  ところで、この答弁書をめぐりまして憲法十三条、十八条、そして十八条が徴兵制度違憲法的根拠になるのかならぬかということがずいぶん論議されてきたのでありますが、いま言論界でも、学者の間でも、徴兵制違憲の一番の根拠になるのは憲法九条だ、あるいは第一の根拠憲法九条だということが新聞等でもいろいろ言われておるわけであります。  その点に関連して私はお聞きしたいのですが、答弁書は完璧なものである、間違っていないと言われている答弁書は、全体を読みますと、いままで国会で議論になっておったのはその一部であります。「徴兵制度は、我が憲法秩序の下では、」云々ということがありまして、「平時であると有事であるとを問わず、憲法第十三条、第十八条などの規定趣旨からみて、許容されるものではない」こういうふうに言われているわけです。だから、いままで議論されているのは、法制局長官結論的に言えばということで十三条、十八条を言われているのです。結論的にじゃなくて全体的に言えば、「我が憲法秩序の下では、」憲法前文があり、憲法九条があって「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」という規定がある。そういう憲法秩序のもとにおいては、平時であると有事であるとを問わず、憲法十三条、十八条などの規定趣旨から許されない、こう書いてあるわけであります。だから、前提として「憲法秩序の下では、」とわざわざ答弁書に書いてある。その趣旨は、憲法前文及び憲法九条の、日本国憲法他国憲法と違う、そういう憲法秩序のもとでということだと思うのですが、法制局長官、どうですか。
  10. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 いま御指摘のように、徴兵制憲法上許されないという根拠として、憲法九条を引用する説が確かに学界にもございます。ただ、この点につきましては昭和五十三年の十月に、参議院の予算委員会で当時真田法制局長官が御答弁申し上げておりますが、いわゆる九条説というのは自衛のためにも一切の実力組織をわが国が保有することを憲法上認めない、そういう説が前提になっております。ところが、毎回申し上げているように、政府としてはそういう説をとっていないわけでございます。したがいまして、九条というものを引用して徴兵制憲法違反であるという説は政府としてはとり得ないところであります。  ところで、さらに御指摘の「我が憲法秩序の下」において云々ということを確かに答弁書で申し上げております。これは、私どもがそういうことを書いた趣旨といたしましては、その後に書いてありますように、「社会構成員社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものでないのに、兵役といわれる役務の提供を義務として課される」という、そこに理由があるわけであります。つまり、憲法の中には、基本的人権の尊重という考え方が憲法の根底にあると思います。そういう基本的人権の尊重という考え方を加味して考えますと、当然に負担すべきものとして社会的に妥当なものとは認められないというつもりでございます。したがって、ここで「憲法秩序の下」においてはというのは、直接には基本的人権の尊重ということを非常に大きな柱としておる「我が憲法秩序の下」、こういうつもりで書いたわけでございます。
  11. 東中光雄

    東中委員 私は、憲法九条のもとでは、徴兵制はもちろん、いま法制局長官の言われた実力を持つということも許されない、そういう解釈をしています。  しかし、私がいまここで言っているのは、私の解釈と同じように政府が立つべきだと言っているんじゃなくて、自衛隊合憲論だ、憲法九条から見ても許されるんだという政府と同じ立場をとっておる学者諸君が、それでもやっぱり憲法九条があるから十八条、十三条が生きてくるんだという趣旨に解しておると思うのですね。  日本国憲法の十八条は、アメリカ憲法の修正十三条と同じ趣旨でありますね。修正十三条は、奴隷及び不任意の労役は、犯罪に対する刑罰として適法に宣告を受けた場合を除いては、合衆国内またはその管理に属するいずれの地にも存在してはならない。趣旨は全く同じであります、文言は違いますけれども。  このアメリカ憲法修正第十三条の第一項は徴兵制を禁止する根拠にはなり得ないというのがアメリカの判決ですね。なぜアメリカではそうなるのかといえば、アメリカの憲法の第十二項あるいは第十三項によりますと、陸軍あるいは海軍を設けてこれを維持すること、はっきりそう書いてある。日本国憲法九条とは全く違うんです。あるいは民兵の編成、武装及び訓練並びに合衆国の軍務に服せらるべき民兵の一部についての統括に関する規定を設ける、こういう規定憲法十六項にある。だから、そういう憲法秩序のもとでは、修正十三条があっても徴兵制は合憲だということになる。  同じ規定徴兵制度は合憲でないという根拠は、日本国憲法は兵役の義務とか国防とかいうことは一切規定がなくて、逆に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」前文では、恒久平和主義が書いてある。それが前提でこそ十八条、十三条の解釈も出てくるんではないですか。論理的にするなら当然のことでしょう。だからこそ政府の見解も、わざわざ「我が憲法秩序の下では、」ということで、先ほど長官が言われたようなことが書かれてある。単にぽこっと十三条、十八条だけだというふうにはしてないわけです。そうじゃないんですか。
  12. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 先ほども申し上げたとおりでございますけれども、私どもは、ここの「憲法秩序の下」というのは、後に書いてあるように、十三条、十八条という条文を引用していることと対比して考えていただきたい。つまり憲法第三章に定める基本的人権の尊重ということがわが憲法秩序である、こういう理解をしているわけでございます。  それから、先ほどアメリカの憲法をお引きになって御主張になりましたけれども、確かにアメリカの憲法では、徴兵制は修正憲法十三条に違反しないというような解釈がされていることはおっしゃるとおりだと思います。しかし、アメリカの修正憲法十三条というのは、まさに南北戦争の直後につくられた規定であり、そもそも憲法秩序全体がわが国とは違っていると思います。また、アメリカ憲法の解釈というものをたとえ比べて持ってくるにしても、日本憲法について私どもは、直ちにそういう解釈が成り立つとは思いません。  それから、最後に申し上げますが、結局おっしゃいますことは、憲法九条において自衛のための実力組織の存在を認めてないという説をどうも前提にして御主張になっておられるように思います。無論そういう説があることは私どもは否定はいたしませんけれども、それは政府の説と違いますから、それは政府としては、そういう説を前提として徴兵制違憲ということの論拠とするわけにはいかないということを申し上げておきます。
  13. 東中光雄

    東中委員 そうすると、結局法制局長官の言われていることは、自衛隊は合憲であるという立場政府がとっておるから憲法九条を引くわけにはいかぬのだ、しかし、アメリカの憲法秩序日本憲法秩序と違うから、そういうことですね。南北戦争直後のあの規定は、アメリカの憲法秩序が違うから、だから十八条は徴兵制を禁止する根拠にはならないんだ、日本国憲法はアメリカの憲法秩序が違うから、要するに九条が入っているから十八条が生きてくるんだ、そういうふうにいま言われたわけですね。だから私は、そういうのを政治的解釈というのですがね。だって、自衛隊合憲を言うという立場に立っておるから、だから九条は言わないんだ。自衛隊合憲だと言う立場の学者でも、それは違う、徴兵制が禁止される根拠にはやはり九条があることが前提だというふうに見なければ論理的に説明がつかぬじゃないかという趣旨のことを言っていますわね。厳格に、正確に、明快に解釈せにゃいかぬわけですから、日本国憲法秩序というのは、九条があり、前文がある、そういう中での十八条なり十三条なりの解釈だということ、それを言うんじゃないですか。当然のことじゃないですか。
  14. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 アメリカ憲法のことは、御引用になりましたからお答えしたわけですが、アメリカ憲法の解釈と日本国憲法の解釈とは基本的に違うということをまず申し上げたかったわけであります。  次に、憲法九条なりあるいは前文というものがいわゆる平和主義というものを定めていることは、これはもう言うまでもないところであります。しかし、私どもは、憲法九条というものは、自衛のための実力組織の存在というものを認めているということまでは規定していると思いますが、それを充足するための手段としてどのような方法によるか、特に強制的な方法によるかどうかということは、九条自体から出てくるのではなくて、やはり十八条とか十三条から出てくるというふうに理解しておるわけであります。
  15. 東中光雄

    東中委員 自衛隊合憲論を言うために非常に論理的に合わないことを言われていると思うのですが、これは国民は納得しないということをはっきり申し上げておきます。憲法秩序の体系というのはそういうことだということをはっきりしておく必要がある。  同時に、自衛隊は自由意思によってその職務につくんだから十八条に該当しない、憲法違反ではないという論をされておるわけですけれども、自衛隊は、その意に反する苦役に服さしめられない権利というのは、自由意思によって選択すると同時に、いつでも自由意思によってその選択した職業から離脱するという自由でなければいかぬと思うのですね。自衛隊は自衛隊法によって、たとえば防衛招集命令が出る、あるいは防衛出動命令が出る、治安出動命令が出る、そうしたら、その段階からは自由意思によって離脱できないようになっていますね。罰則がある。そしてその罰則は、陸海軍刑法時代よりもまだ重くなっていますよ。刑罰によって、自由に選択した職業であっても自由に離脱できないようになっておる、こういうのが自衛隊の実態です。ですから、それをさえ合憲だということを言わなければいかぬものだから、だから、徴兵制についてもあくまでも九条を引っ張ってこないという政治的解釈に貫かれているということになると思うのです。  その点は、一点だけ聞いておきますが、自由意思によって職業を選択する自由がある、それは自由意思によって選択した職業から離脱する自由でもある、このことは認められますか。
  16. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 その点につきましては、東中委員は、もうすでに、予備自衛官の問題で当時の吉國法制局長官と論争をしておられますが、無論御承知のとおりだと思います。そのときにそういう御質問を同じようになさっておられるわけで、私が当時の吉國法制局長官と違ったお答えをするはずはないということは十分御承知だと思いますが、それは、自衛官になるに当たっては、当然、自衛官になることは自分の意思に基づいてなっているわけであります。かつ、自衛官の仕事というのは、国の防衛という非常に重要な仕事であります。したがいまして、合理的な理由がある場合に、その離脱に対して罰則をもって禁止をするといいますか、制限をするということも当然許されると思います。  なお、全く単純な私法上の雇用契約に基づいてある仕事についた場合に、それから、やめるというか離脱をする場合に、それは罰則でもって禁止をすることはできないというような解釈は、これは最高裁の判決にはございませんが、高裁判決にあることは御承知のとおりだと思います。
  17. 東中光雄

    東中委員 十八条の、その意に反する苦役に服さしめられない権利というものは、職業選択の自由を保障する、しかし、自由意思によって離脱する自由も保障するものでなければいかぬということは認めておられるわけです。しかし、自衛隊についてはそうじゃないんだ、一般の職業とは違うんだという、これはもう論理的にはむちゃくちゃな解釈だと、私はそう思いますので、そういう論理的にむちゃくちゃなことを維持するために徴兵制度についての違憲論をやはり論理的に曲げていく、これが政府の解釈、改憲の態度だ、私たちはそう思うわけであります。その点を指摘して次の問題に入りたいと思います。  核の問題で、先日わが党の不破議員が質問をいたしました。岩国のMWWU部隊についてアメリカから回答があったということで、外務大臣が答えられたわけでありますが、この回答の中でこういう条項がありますね。同部隊(MWWU‐1)とは、化学ないし核兵器の整備能力を有するものである。さらに、この武器隊は、核兵器の取り扱いに関する一般的訓練も行っているという項目があります。  ところが、このMWWU−1の岩国の問題については、二年前にやはり予算委員会の総括で不破議員から質問がされて、そのときに外務省は、このMWWU‐1は、航空機に搭載する武器の整備をする部隊だという答弁をされておる。山口県知事から、「核兵器問題について」という正式の照会が昭和五十四年の二月にされておる。それに対しての外務省の答えも、MWWU‐1は「岩国にあっては、海兵隊に対して武器取扱いの訓練を実施するものであります。なお、かかる訓練には、完全な即応戦力を確保するための武器取扱い及び装備品の整備に関する定型化した教育が含まれます。」こう文書で回答をしておられます。  二年前、同じMWWU岩国部隊について、核のことは一切触れてないのですよ、核部隊じゃないかという質問をされて、具体的な証拠、核要員名簿を示して追及しているのに対し、いや、それは武器です武器ですと、こう言っていた。ところが今度の回答は、二回にわたって、核兵器と化学兵器に関係した部隊だということをはっきりと言っておるわけですね。同じ問題について日本政府は、二年前はうそを言っておったのか、ことさらに核というのを隠しておったのかということになるわけでありますが、そういう点はどういうふうに説明されますか。
  18. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 この前不破さんの御質問でお答えしたのでございますが、前の照会に対する回答というのは、私自身いまここで覚えておりませんので、政府委員からその前との関係は申し上げます。
  19. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 五十四年の二月二十三日に、外務次官から山口県知事に対する返事を出しております。  その中で先方の質問に対していろいろ回答しておりますけれども、一つには「岩国にあっては、海兵隊に対して武器取扱いの訓練を実施するものであります。」それから、その「訓練には、完全な即応戦力を確保するための武器取扱い及び装備品の整備に関する定型化した教育が含まれます。」ということを申し上げているのは、いま委員から御指摘のとおりでございます。  それで、今回のアメリカの回答においても、核兵器を整備する能力があるということと、それから一般的な訓練をしているということでございまして、このときの答弁とアメリカ側の回答というものは矛盾してないと私たちは考えております。なぜならば、核兵器を整備する能力があるということは、アメリカ側の答弁でもございますように、そこに核兵器があるということとは別個の問題であるということを、答弁の中でも申し上げている次第でございます。
  20. 東中光雄

    東中委員 いいかげんなことを言ったらいかぬですよ。今回の回答では、核兵器を整備する能力があるということも書いてある。しかし、一般的な訓練なんて書いてないじゃないですか。核兵器の取り扱いに関する訓練をやっていると書いてあるじゃないですか。この前の回答では、核兵器ということじゃなくて武器の取り扱い、それを海兵隊に対して訓練しているのだ。明らかに違うじゃないですか。  外務大臣、同じ部隊について核部隊だという疑惑があるけれども、それはどうなんだ、任務は何なんだということを山口県知事が文書で照会を出した。それに対する答えが、いま局長が言われたように、核には一切触れないで、一般の武器の訓練をやっているだけだという答弁をしているわけです。そして、いまは核の取り扱いに関する訓練をやっているのだ、こういうふうに言っているわけでしょう。明らかに違うじゃないですか。少なくともこの点においては、前は隠しておったと言わざるを得ないわけですが、どうですか。
  21. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま政府委員がお答えしたとおりでございまして、先般不破さんからの質問のときには、アメリカにこちらが照会しましてそのままの向こうからの答えを申し上げたわけでございます。恐らく前のときもそういう照会をしましたか、その辺の手続は、私は前のことで、詳細知りませんが、事実をそのままお答えしていると私は思うわけでございまして、何も隠すとかどうとかそういうことじゃなくて、事実をそのままお答えしているというふうに私は思っております。
  22. 東中光雄

    東中委員 それは事実をそのまま答えられているのじゃなくて、アメリカから言ってきたことをそのまま答えているということなんですよ。事実はどうかということについての質問に対して、事実は調べない。アメリカの言ってきたことだけを伝声管のように答えているんだ。前回は、核については一切触れてなかった。一般の武器の取り扱いだけ言ってきた。今度は、核兵器の取り扱いに関する一般的訓練をやっているんだ、核兵器ということをはっきり言った。こういう状態になっているのですよ。だから、アメリカの言うとおりにそのまま伝えておったのでは実態はわからない。だから調査しなさい、調査して返事をしなさい、こう言っているわけですから、その点はどうですか。
  23. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 これは東中さん御承知のように、安保条約の運用という中でアメリカといろいろ照会をしましたり随時協議をしたりしてやっている中に出てきている返事をこの国会で御報告しているわけでございまして、日米安保の運用というものはお互いの信頼関係の上に立っているわけでございます。核兵器というものの持ち込みということになりますと、これは当然事前協議の対象になることでございますし、そういう協議はアメリカから受けておらないわけでございまして、私どもは、やはり日米安保を運用する上にはお互いが信頼し合うということを前提にしてやってまいっておりますので、アメリカから事前協議がない、当然核兵器の持ち込みはないということで、照会のありましたとおりをここで御報告申し上げておるのであります。私どもは、そういう部隊があるということ即それは核兵器が持ち込まれているのだということとは違うということを、従前から何遍もお答えをしているわけでございまして、この日米安保のことにつきましては、アメリカに対しての照会の返事を信頼しているというのが日本政府立場でございます。
  24. 東中光雄

    東中委員 アメリカの言うことは信頼する、それが日本政府立場である、日本に核兵器が持ち込まれておるかおらないか、岩国に核があるかないかということについて、アメリカの言うことをそのまま信頼するんだ。二年前はそのまま信頼した結果が、核訓練なんかやってない、一般武器の取り扱い訓練なんだ、こう言った。今度は、核兵器取り扱い訓練をやっているのだ、そう言ってきたら、ああそうですか、それで信頼しているのだ。あしたまた違うことを言ってきたら、またそれで信頼するのですか。  この前回示された回答書によりますと——アメリカの国防次官のコマー証言は、岩国にいるMWWUは核専門の部隊であるということをはっきり証言しています。そしてまた、MWWUは「航空部隊用の空中投下の化学兵器と核兵器の両方を装備している」こういうふうに言っている。アメリカの国会における公式の答弁であります。それに対して回答はどうかと言えば、核専門部隊であるということについては、核専門部隊でないとも言ってないし、核専門部隊であるとも言ってない。結局その点については、コマー証言はそのまま生きているということになるわけです。そうでしょう。そして、装備しているという点についても、やはり装備していないというふうには言っていない。言っていることは「核又は化学兵器の貯蔵、搭載の責任を有しない。」と言っているのです。だれも貯蔵、搭載の責任を有しているか有していないかというようなことを聞いているわけじゃないのです。コマー証言もそんなことを言ってないのです。貯蔵、搭載のことじゃなくて、装備しておるということは正式に言われているから、装備しておったら明らかに持ち込みじゃないかということを私たちは言っているわけであります。それに対するこの間の回答は、いずれにしても「如何なる場所に核兵器が存在するかしないかとの点についての米国の立場」はよく知られておるとおりである。要するに、あるとも言わないし、ないとも言わないのだという回答じゃないですか。これでは信頼するもしないも、コマー証言が明らかになった以上は、それがあるのかないのかということを明らかにすべきじゃないですか。この回答は何もそのことについては触れてない。違うことを言っているだけです。外務大臣、どうなんです。
  25. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 アメリカからの回答は、いま委員、持っておられる。この前申し上げたとおりでございます。  先ほどから申し上げますように、東中さんの心配は、核兵器が日本に持ち込まれておるかどうかということの御心配だと思うのです。この点につきましては、日本は非核三原則ということを厳に世界にも声明をし、これはアメリカにも十分わかっていることでございますし、安保条約の運用上も、核兵器の持ち込みというものは重大な装備の変更になりますので事前協議の対象になるということは、これはもう日米両国とも十分知っていることでございますし、そういう協議はいままで受けたことはないのでございまして、また、受けても、これは日本としてはノーという返事をするわけでございますので、私どもは、先生御心配になるような核兵器の持ち込みはないということを、アメリカの回答からも信頼をし、事前協議もないということで、信頼関係の上に立ってこの安保条約を運用しているということでございます。
  26. 東中光雄

    東中委員 事実関係について言うならば、二年前と今度とでは明らかに違っておる。回答を信頼しておったら、前の回答は実はうそだった。少なくとも、核を隠しておったということがわかった。  事前協議で政府はノーと言うという態度を明らかにしているからこそ、事前協議にはかけないで持ち込んでくるということがあり得るわけなんです。その点は信頼するんだと外務大臣は言われるけれども、コマー証言というのは、そういう日米安保条約の関係、核の関係については十分承知の上で、沖繩に核兵器、化学兵器を装備している部隊がある、それはMWWU‐1なんだという証言をしているわけです。その証言をしておるのに対して、ただ信頼しておるんだ。あなた、この証言を信頼しないんですか。コマー証言は信頼しないんですか。
  27. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 私どもは、そういうコマー証言があったということを前提にしましてアメリカに照会をしたわけでございます。その結果がこの前不破さんにお答えしたとおりでございまして、いま何度も御説明しますように、私どもはそういう核兵器の持ち込みはない、信頼している、これは日本政府の考え方でございます。
  28. 東中光雄

    東中委員 それは信頼じゃなくて盲従だと私は思いますね。そして、外務大臣はこの間の答弁で、われわれはアメリカを信頼しているんだ、アメリカに照会をしてその回答で信頼をしていくのだ、立ち入りというようなことはしないんだ、また、いままでした例がないんだ、こういうふうに言われたわけですけれども、一九七一年、昭和四十六年の楢崎弥之助さんの岩国基地での核の問題が問題になって、このとき、十一月二十二日に政府は、防衛庁第一幕僚室長伊藤公雄空将補ほか一名を現地に派遣をして、実際現地調査をやったじゃありませんか。やらないんだというのは、現にやっているじゃないですか。今度は、コマー証言という公式の発言がアメリカで出されている。それに対する回答は確かに来ましたけれども、核兵器、化学兵器を装備しているということについては何にも答えてない。違うことを答えているだけだ。そして、あるともないとも言わないんだという立場なんですから、日本政府としては、これだけの疑惑があるのですから当然調べるべきだ、前に調べたことがあるのですから。なぜ今度は調べないのですか。
  29. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 十年前のことは私ちょっと存じませんので、もしも政府委員が知っておりましたらお答え申し上げます。  先ほどから申し上げますように、日米安保というのはお互いの信頼の上に立っているわけでございますから、どこにどういう武器があるんだとかそういうことを一々日本側が調べるというようなことをやること自身、これは信頼をしていないということに立っての行動になるわけでございますので、私どもは、これは事前協議のまさに対象になることでございますので、相手方がそれの協議もないということで回答をよこしたわけでございますから、それを信頼をしていくというのがわれわれの考えでございまして、これは責任はもちろん日本政府日本国内のことについてはあるということでございます。
  30. 東中光雄

    東中委員 全く盲従、核隠しと言う以外にないと私は思います。もっと日本の安全と平和、核について、非核三原則は国是であるという立場に立つならば、向こうが事前協議をしてきても拒否すると言っているのである以上、事前協議もしないで持ち込んでおるということになったら大変なんだから、だから調査をしてはっきりすべきだというふうに思うわけであります。  ところで、資料をお渡ししておりますが、さらにこの岩国の基地には、わが党の調査で「核兵器安全管理運用規定」というものがこの部隊に配置されておるということが明らかになりました。お渡ししてあります「米海兵隊第一海兵航空団における同基地専用の現用」現に有効性を持っておる「指示文書の半期点検表」これは一九七六年六月三十日現在のものだ。その中に〇〇三四〇一・一A「核兵器安全管理運用規定」というものの存在がこの文書によって明らかになりました。  「核兵器安全管理運用規定」というのは、一般的な規定じゃなくて、この岩国基地での安全管理運用規定であります。しかも、核兵器を運用するところでなければこういう規則が要らぬということは、これはもう明白であります。わざわざこういう規則があるということ、それは点検表で一々点検をして明らかにしているわけですけれども、ということは、核兵器を持ち込んでおるあるいは核兵器の運用をやるということを前提にしているわけであります。こういう「核兵器安全管理運用規定」というものが岩国にあるということを外務省御承知かどうか。
  31. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま御提示いただきました資料そのものについて私たちは承知しておりませんが、仮にその「核兵器安全管理運用規定」というものがアメリカの部隊にあるとしても、アメリカの各部隊、それぞれの部隊はあらゆる事態に対応する即応戦力ということでございますので、その核兵器についての安全の訓練あるいは規定というのを持っているということは十分予想されるところでございまして、そういう安全規定があるからそれ自身でそこに核があるというふうに、私たちは理解しておりません。
  32. 東中光雄

    東中委員 あなたはいま訓練というようなことを言いましたけれども、訓練じゃないんですよ。運用規定なんですよ。訓練に関する規定じゃないんです。しかも、その「核兵器安全管理運用規定」の存在を知らぬ。いわんや内容は知りっこないわけです。内容もわからぬ、存在も知らぬのに、これは大したことないんだ、こういう無責任答弁ってありますか。  外務大臣、これは本当に非核三原則にかかわる重要問題なんですからね。こういうものの存在が私たちの調査で明らかになったんですが、これはやはりどういう運用規定で、この中身を見てみればこれは核兵器を持ち込むということが前提になっておるじゃないかということだったら、政府としても対処せにゃいかぬことがあるだろうと思います。そういう点で、これはひとつ内容を照会するなり調べて、そして報告をしてほしいと思うのですが、いかがですか。
  33. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 東中さんの御要望でございますが、私どもは先ほどから申し上げたとおりの態度でございます。この予算委員会で先生からそういう御質問、いまいただいた資料は私も初めて見たのでございますが、こういう資料で御質問があったということは先方にも伝えます。しかし、私どもは、さっきのような態度は厳に持って臨んでいるということだけは重ねて申し上げます。
  34. 東中光雄

    東中委員 伝えますじゃなくて、この内容をただしてくださいよ。たださなければわからぬじゃないですか。やはり厳格にやるべきものだと思うのですよ。岩国周辺のあの広範な地域の人たちの安全にかかわる、日本の安全にかかわる、非核三原則の国是にかかわるという問題ですから、管理運用規定が現に置かれているのかどうか、内容は何かということですね。調べてくださいよ。どうですか。
  35. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 向こうに伝えるということは、恐らく向こうだってただ聞きっ放しということじゃなくて、これはどうかということはあると思うのです、回答は。そういうことを含めて私は伝えます、こういうことを申し上げたわけです。
  36. 東中光雄

    東中委員 伝えますというのは、要するに照会をしてただしてみるということだ、そう理解しておきます。  時間がありませんので、もう一点申し上げておきたいのですが、あの資料に書いておりますNOPの問題です。コマー証言で出てきたNOP、ニュークリア・オードナンス・プラトーン、この部隊はMWWU部隊と同じように三個部隊あるということが証言の中に出ております。陸戦用の核兵器の専門部隊だということが言われております。米海兵隊の戦域核戦力、戦術核兵器専門部隊だと言えると思うのです。しかも、これはやはり三個部隊ある。これも核兵器専門部隊でありますから、しかもコマー証言でそういうことが出ておるわけですから、どこにあるのか、日本にNOP部隊はいないと断言できるのかどうか、この点について政府としてお調べになったかどうか、その結果をお聞きしたい。
  37. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 NOP部隊員が沖繩に来ているのかどうかということは、私ども承知しておりません。日本政府としては承知していないわけでございます。  ただ、先生の御質問というか御嫌疑といいますか、核兵器が持ち込まれているのじゃないかということを心配しておられるのだと思うのでございますが、これは先ほどから言いましたように、私どもはそういうことはあり得ないと思っておるわけでございます。ただ、いま向こうに伝えるということを私は申し上げたのでございますが、このことも、そういう先生の御質問があったことは、向こうへ的確に伝えます。
  38. 東中光雄

    東中委員 コマー証言では、NOP部隊というのはいわゆる核弾薬小隊ですが、各部隊ごとに六人の将校がいて、五十四人の下士官がいる。そして米海兵隊が持つ唯一の陸戦用戦術核兵器専門部隊だ。百五十五ミリの原子砲弾と八インチの原子砲弾という二種類の核砲弾を持っている。それから中規模核地雷、それから特殊核地雷、やはり二種類の核地雷を持っている。特にこの特殊核地雷というのはスーツケース原爆と言われています。直径は十三センチくらいだそうです。スーツケースにも入る非常に小型な核地雷であります。こういうものをこのNOP部隊は持っておるんだというのがコマー証言であります。  私たちは、このNOP部隊がどこにあるのかということでいろいろ調査をいたしました。少なくとも三個部隊があるわけですから、MWWU部隊と同じように三つの米海兵師団の中にある、それぞれにあるというふうに思われるわけであります。  第一には、アメリカの西海岸、カリフォルニア州のキャンプ・ペンドルトンに司令部を持っておる第一海兵師団の、ロサンゼルスから東約二百二十キロのトゥエンティーナイン・パームズ海軍基地、ここに核弾薬小部隊、NOP部隊があるということ、これは私確認をしました。先週の金曜日ですが、私の方からこのトゥエンティーナイン・パームズ基地に電話をしました。そしてNOP部隊へつないでくれと言ったのです。そうしたらその隊長が出てきました。パーカー大尉というんですが、パーカーというキャプテンが出てまいりまして、NOP部隊であるということは答えました。あと二つの部隊があるじゃないか、どこにあるのかと聞きましたら、それに対しては、どこにあるかということは答える権限は与えられておらないので言えないという答えでありましたが、このトゥエンティーナイン・パームズ基地がNOPの部隊であるということははっきりしました。  そして第二番目は、米東海岸のノースカロライナのキャンプ・レジューン基地にある第二海兵師団、この同じ基地にNOP部隊を持っていると見られるわけであります。  第三の方は、これが沖繩にあるんじゃないか。私たちがいろいろ調べてみました。この二十年間の沖繩米軍の電話番号簿をいろいろ調べてみました。そういう中で、沖繩県の宜野湾市北谷村のキャンプ・フォスターの中に、ニュークリア・オードナンス・プラトーンからニュークリアという字だけを削ったオードナンス・プラトーンという、OPという名前でのNOP部隊があるというふうに判断を下したわけであります。  といいますのは、アメリカの沖繩における補給部隊の体制ですが、第三海兵隊の役務支援群、これは大補給部隊でありますが、その中に第三整備大隊というのがある、その下に弾薬整備中隊がある、その下にこのOP部隊、NOP部隊があるというふうにわかるわけであります。しかも、このOP部隊と言われている、いま電話帳で書いてあるこの部隊のあるところは、米軍が沖繩を全面的に占領しておった、日本の施政権がなかった時分、一九六七年九月の沖繩の米軍電話帳で調べてみますと、まさにそのところにスペシャル・ウエポンズ・セクションというのがあったわけです。スペシャル・ウエポンズ・セクションと言えば特殊兵器部隊、化学兵器、核兵器部隊であるというのは米軍の常識であります。だから、OP部隊というのはスペシャル・ウエポンズ・セクションをそのまま引き継いでいるというふうに見るのは当然だと思うわけであります。現に、この第三海兵役務支援群の司令部の機構の中にもNBCセクションというのがあります。核兵器、化学兵器、生物兵器、この部門が設けられておる。こういう体系から見まして間違いないというふうに考えておるわけであります。  これは非常に重要な問題だと思いますので、先ほど外務大臣言われましたけれども、そういう点についての調査をする、私たち一野党の立場でそれでもこれだけ調べているんですから。やはり核の問題というのは非常に重要です。ぜひ政府として調査すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  39. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 先ほどから申し上げますように、予算委員会の総括で共産党の東中先生からそういう御質問があったということは、向こうにはっきり伝えます。その結果、向こうもどういう返事をよこしますか。お伝えすることはお約束申し上げます。  ただ、先生何回も御質問でございますが、そういう特殊兵器班といいますか、そういうものを電話帳ということでおっしゃっているわけでございますが、そういうものと核兵器があるということとはまた別問題だということは、日本政府として何回も責任を持って申し上げているところでございまして、非核三原則あるいは核兵器ということにつきましては重大な関心があるし、日本側としては事前協議をやっても一切ノーだということだけははっきり申し上げます。
  40. 東中光雄

    東中委員 実際にあるかどうかということと組織とは別だ、それはそのとおりであります。しかし、そういう専門の部隊がおることが公に明らかにされている状態で、その部隊が実際おるのかどうかということを調べるのは、これまた、政府の当然の責務だと私は思います。強く要請しておきます。  それで、質問を次の段階に移したいと思うのですが、レーガン政権になりまして、この間一月の二十八日に、第八一会計年度軍事情勢報告というのをジョーンズ米統合参謀本部議長が議会に対してやっております。やっと数日前に日本にも参りました。これは、たとえば朝日新聞は、対ソ多発報復戦略だというふうに言っています。同時多発攻撃戦略だ、新しい地球的戦略だということで、アメリカの統参本部議長が議会に報告をしておるわけでありますが、これについて、どういう点で新しくて、どういう方針なのか、そしてまた、日本政府はそれについてどう考えているのかという点についてお聞きしたい。
  41. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 アメリカの統幕議長あるいは各幕の議長は、年度のかわりに議会に対して証言をいたします。証言の内容は、一つには当該年度の予算獲得という意味もございまして、そこで言っていることそれ自身がアメリカの政策になるということでないことがまず前提になります。  今回ジョーンズ議長が、アメリカはある一定の地域で発生した事態に対しては別の地点で対応するということを言っておりますが、これはアメリカの従来からの戦略で、あらゆる事態、危機に対処して、甲の事態で発生した場合に、必ずしも甲だけでなくて乙の事態にも対応するんだということで、私たちとしては特に目新しい戦略というふうに考えておりませんが、いずれにしても、レーガン政権が発足しまして、もう少し具体的に防衛戦略なり外交戦略というものを見きわめてから、その新しい政権の政策について研究なりコメントができる段階でございまして、現在のところ、レーガン政権の具体的な政策について一々申し上げるのは若干時期尚早でないかと感じております。
  42. 東中光雄

    東中委員 ジョーンズ米統参本部議長は、カーター政権から引き続いて、レーガン政権のもとにおいても留任することになっています。そして、レーガン政権における最初の情勢報告が出されている。その中身はいま大して変わってないとおっしゃいますけれども、中東など、米国や同盟諸国に比較的利益ある地域に対するソ連の攻撃に対して、米国は、同地域で軍事的に対応するばかりでなく、他地域でもソ連の軍事的弱点、これも複数ですが、その地域に報復攻撃をかけるというふうなことを公然と言っています。新戦略は、そういう点では同盟国とも緊密な協議が必要だということも言っている。  それから、中東地域でアメリカが、集団自衛権の発動ということでソ連との戦争状態に入ったという場合に、他地域、たとえば極東におけるアメリカの海軍について、極東地域においても戦闘行動をやっていくということを戦略として打ち出しているわけであります。奇襲があるかないかと言ったら、万々々が一というふうに言われておった、そういう問題についてさえあれだけ議論をされたわけですが、これは現実にアメリカが軍事情勢報告で言っていることなんです。中東で、あるいはヨーロッパで戦争が起こった場合には三海峡封鎖をアメリカ軍はやるんだということを、去年の国防報告でブラウン国防長官が言った、同じ線上のものであります。  それで、この戦略によれば、中東で戦争が起こって、日本で、あるいは日本海、オホーツク海でアメリカが戦争を始めるということがあり得ると思うんですが、何万分の一じゃなくて、五分の一か百分の一か知りませんが、とにかく非常に蓋然性が強くなってきている。こういう状態でそういう事態になると、安保条約下にある日本は、アメリカ側から事前協議をする義務があるのかないのか。事実上の協議は別として、安保条約上の協議をするということになるのかどうかということをお聞きしたいわけであります。
  43. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  アメリカのレーガン政権の新しい政策につきましては、実は、われわれはまだ、じっと見守っているところでございます。恐らく総理がおいでになって、いずれかの機会にアメリカとの種々の関係についてお話し合いがあると思うのでございますが、レーガン政権の新しい政策はこうだという総合的なものはまだ出ておりませんので私どもは存じませんが、いま東中さんのおっしゃったことは、これは仮定の質問でございますが、中東問題について非常な関心を持っているということは確かでございます。その場合、いろいろな仮定の場合に、安保条約の協議の問題をいま御質問になったわけでございますが、これは仮定の問題として、条約上の問題でございますので、条約局長からお答え申し上げます。
  44. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  安保条約上の事前協議と申しますのは、事前協議の対象になるものが御承知のようにはっきりとしておりまして、配置における重要な変更、装備における重要な変更及び米軍が日本における施設、区域を戦闘作戦行動の基地として発進するような場合に事前協議がかかる、その三つでございまして、ただいまの仮定の問題につきまして、どのような事態になるのか、それはわからないわけでございますが、その事前協議にかかる対象となるようなことが行われます場合には事前協議が行われるとしかお答えようがございません。
  45. 東中光雄

    東中委員 事前協議が行われる場合に事前協議するというのはあたりまえなんで、問題は、アメリカがそういう戦略方針を明らかにしているという状態で、アメリカが多発報復ということで、オホーツク海、日本海で戦争をやる場合ですね、そういうケースの場合には、安保条約上日本と協議をすることになるのかならないのか、協議しないでやるのか、やれるのかということを聞いているわけです。
  46. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま条約局長が一般論を申し上げましたが、いま先生の御質問がいろいろな場合を想定されておりますので、ここですぐどういう場合にどうかということを一概にお答えするのは非常に困難かと思います。  事前協議の対象になるのは、さきに条約局長が申し上げた点でございまして、その他の場合について安保条約上四条における随時協議というのがございまして、そういう事態になって、日本側あるいはアメリカ側が十分意見を交換していくという場がございます。  いずれにいたしましても、恐らく先生の頭の中にあるのは、日本がアメリカの戦略の中に巻き込まれていくのではないかという御議論かと思いますが、日本日本としての立場がございますので、その際には随時協議なりあるいは事前協議の場を通して日本側の立場というものを明確にしていくというのが基本方針だろうと思います。
  47. 東中光雄

    東中委員 アメリカは事前協議、六条段階とかあるいは四条段階とかではなくて、中東で戦争に入った、だから今度は他の地域における弱点に対する攻撃をやるということで、日本の領土、領海に直接関係なしにやっていくということは、これは当然理論上あり得ることですし、そういうことがあり得るという方針でもあるわけなんです。だから、その場合には協議をするのかしないのか。これは安保条約と関係なしにそういうことをやっていくということがあるじゃないかと言っているわけです。外務大臣、わかるでしょう。
  48. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま政府委員から申し上げましたように、六条の極東の平和と安全にかかわるということで、基地を使用する場合の事前協議あるいはいま四条の場合の随時の協議ということでお答えしたわけでございますが、日本の基地を使用して先生のおっしゃるような戦闘行為ということになります場合には、六条か四条かで日本側としても向こうと協議をするということは、安保条約の運用上、安保条約の精神上、当然そういうことはあるというふうに私は考えております。
  49. 東中光雄

    東中委員 アメリカが戦闘行動を決めた場合に、そのことによって日本及び極東における安全、平和というのが問題になってきている、そのことによって事前協議に入っていく、しかし、それはアメリカが主導的にやっていくということがあり得るということを、私はこの戦略の中から指摘したいということを言っているわけであります。  次の問題に入りますが、日米共同の作戦準備についてのガイドラインの問題について聞きたいのですが、日米両国政府の合意によって、選択された作戦準備段階に入るという条項があります。その場合の「日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合」という項目があるわけですが、この「場合」というのは、自衛隊法七十六条に言う「外部からの武力攻撃のおそれのある場合」と違う、概念はもっと広いということを、先日答弁されたようであります。  どの程度広いのかということをお聞きしたいわけですが、自衛隊法の七十七条に言う待機命令が発令される事態、事態が緊迫し、防衛出動命令が発せられることが予測される場合というのがあります。その「場合」とガイドラインに言う「武力攻撃がなされるおそれのある場合」とどういう関係になるのか。
  50. 大村襄治

    ○大村国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  51. 塩田章

    ○塩田政府委員 結論から先に申し上げますと、待機命令の出される以前に防衛準備をしなければいけない状態はあり得ると思いますので、そういう意味では、私どもは、ガイドラインに言っております「おそれのある場合」の方が、待機命令の出る時期よりももっと早いということがあり得るというふうに考えております。
  52. 東中光雄

    東中委員 待機命令よりも作戦準備に入る方が早いということですが、それでしたら、作戦準備に入る時期というのはどういう情勢のときのことを言うのですか。
  53. 塩田章

    ○塩田政府委員 その準備段階をどうするかというのはこれからの協議課題でございまして、いま具体的に案を持っているわけではございませんが、いわゆる警戒態勢に入る本当の初期の段階から、防衛出動までに至る最高度に準備のできた段階まで、いろいろ段階があると思います。そういう意味では、一番最初の、いわゆる警戒に入る初期の段階といったものはかなり早いときにあり得ると考えられますので、そういう意味ではガイドラインに言う「おそれのある場合」の方が早いというふうに申し上げたわけでありまして、具体的にどういう事態になったらどういう段階に入っていくということは、いまからの研究課題でございます。
  54. 東中光雄

    東中委員 作戦準備段階というのに入るのは武力攻撃が行われるおそれのある場合、こう言っているわけですね。そこから入ったら段階はいろいろある、それは局長の言われたとおりですけれども、私は、入ってから後のことをいま聞いているのじゃないのです。入るきっかけになるのはどういうことなのか。それは両国政府が選択すると書いてあるのですから、日本国政府が選択するのでしょう。これから作戦準備段階に入るということの選択をやるわけです。大体それは防衛庁長官がやるのですか、外務大臣がやるのですか、総理大臣がやるのですか、どこがやるのですか。まずそれをお聞きしたい。
  55. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど申し上げましたように、いまから段階を追ってどういうことをするか研究をしていくわけでございますが、いま御指摘の、だれが判断をするかということも、当然その際に検討していくことになろうと思います。
  56. 東中光雄

    東中委員 何を言っていますか。ガイドラインは、すでにもう安保協議委員会で、外務大臣と防衛庁長官が出てアメリカ側と合意したのでしょう。その中に、おそれのある場合に準備段階に入る、あらかじめ区分された、その区分の段階について、どのように区分するかというのは後で協議する、しかし、その区分されたものをどういうふうに使うのかということについては、あのガイドラインではっきり決まっているわけじゃないですか。両国政府が選択する、そして合意したその選択した区分に従って、自衛隊と米軍はそれぞれがその準備を実施する、こう書いてあるじゃないですか。このガイドラインに言う「おそれのある場合」になったという判断をだれがするのか。アメリカと約束しておきながら、日本ではだれがやるのかわからぬ。伊東外務大臣はその当時の外務大臣じゃないけれども、外務大臣としては人が違うだけで一緒なのですから、いつから入るのですか、だれが決めるのですか。
  57. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま防衛局長から御答弁したとおりでございますが、この点は、純軍事的にも非常に高度の情勢判断が必要である、同時に政治的な判断も必要であるということで、政府レベルで行うことが望ましいということでこういう書き方になっておりますが、その点をどのレベルで行うのかということは今後の検討課題となっております。さらに研究段階の発展に応じてこういう点についても詰めていくということがあり得ると思います。
  58. 東中光雄

    東中委員 作戦準備段階に入るか入らぬかというのは、これは非常に重要な問題であります。そういう具体的なおそれを前提にして、だから具体的な作戦準備行動に入るわけですから、太平洋戦争に入るについて、対米戦争をやるおそれがあるということで作戦準備段階に入ったのは、いつ、どういうところで決めて入ったか、防衛庁、御承知ですか。
  59. 塩田章

    ○塩田政府委員 私、具体的に承知しておりません。
  60. 東中光雄

    東中委員 作戦準備というのは、太平洋戦争が始まったのは一九四一年の十二月八日でありますが、それに対して一年前の四〇年七月二十七日に、大本営と政府連絡会議で、「世界情勢の推移に伴う時局処理要綱」というのを決定した。そこで初めて「南方問題解決のため……武力を行使する……対米開戦は之を避けえざることあるをもって、これが準備に遺憾なきを期す」「準備に遺憾なきを期す」という、これは政府だけではないのです。大本営との合同会議で決めて、それから作戦準備に入っていくのです。そういう重要な問題ですよ。それを日本政府ではなくて、アメリカとの間でこういうガイドラインをつくって、それでやっているわけでしょう。  作戦準備段階に入って、徴兵やら部隊編成やらいろいろやって、段階の進むに従って、たとえば一九四一年九月六日に、いわゆる御前会議を開いて「帝国国策遂行要領」が決定した。ここで「帝国は、自存自衛を全うする為、対米(英蘭)戦争を辞せざる決意の下に概ね十月下旬を目途とし戦争準備を完整す。」こういう決定をしているのです。そしてまた、十一月五日に同じような御前会議を開いて、そこから連合艦隊は十一月二十二日に択捉島単冠湾に結集をする。ガイドラインに言う作戦準備のための移動です。そして十一月二十六日に出発をする。そして十二月八日にハワイ・オアフ島北方の二百三十マイルの洋上に展開をする。ここまでが作戦準備なんです。  ガイドラインによると、情報を収集し、移動し、行動準備をし、そして後方支援その他の作戦準備をやる段階だということが書いてあるわけです。そういう重要なことを一片のガイドラインで決めているわけです。しかもそれは、両国政府は選択すると言っているけれども、政府は、どこが決めるのかということもわかっていない。それじゃ、こういうものにどうして安保協議委員会で合意をしたのですか。  総理大臣、作戦準備段階に入るということは、日本の苦い歴史を見てもきわめて重要なことなのです。ガイドラインでは、そのことをアメリカと共同してやっていくんだということを決めている。その開始は、一体だれがどこでどの段階で決めるのかということについて総理のお考えをお聞きしたい。
  61. 塩田章

    ○塩田政府委員 その前に私からお答えいたしますが、先ほど申し上げましたように、段階区分はいまから研究するわけですが、この点につきまして、従来政府答弁で、日本政府の最高レベルにおいて決定することになるであろうというお答えをしたことがございます。それはいまも私ども、そのとおりだというふうに思っております。  ただ、具体的に段階区分がいまから決まるわけですが、一番最初の段階からすべて政府の最高首脳といった段階までにいくかどうかといったこともございますので、具体的にはいまから段階区分の研究によって決めていくということを、先ほど来申し上げているところでございます。
  62. 東中光雄

    東中委員 作戦準備段階に入る、しかもそれは段階的区分をするとはっきり書いてあるのだから、その段階的区分をどうするかということについては協議する、こういうふうになっているのでしょう。入ること自体は、両国政府の合意によって選択する、こう言っているのですから、その合意をする、日本国はだれがやるのですか。だれがそれを決定するのか。「おそれのある場合」ということをだれが決定するのかということがわからぬままで、日米間で事務レベルでどんどんどんどん進んでいく、これはゆゆしいことだと思うのです。総理、その点どうなんですか。
  63. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 日米ガイドラインによりまして、いま、これから具体的に詰めていく、どの段階でどうするかということ、段階を経て最終的な決定になるわけでありますが、それを詰めていこう、こういうことでございます。
  64. 東中光雄

    東中委員 作戦準備段階に入りますと、このガイドライン自身に書いてありますように「部隊の戦闘準備の態勢の最大限の強化」ここまでの段階だと言っているのです。だから、防衛出動命令がなくても、場合によっては待機命令も出さないままでその最高の段階までいくことがあり得るわけです。その最高の段階というのはどこかと言ったら、「移動」と書いてありますけれども、先ほど申し上げたように、ハワイ攻撃をするための択捉への結集、そしてハワイから二百三十マイルの海上まで展開をする、これ全部が戦闘準備態勢の最大限の段階の中へ入るわけですね。防衛出動は、命令はもちろん出ていない、準備段階ですから。しかし、部隊はそういうふうに「移動」という名前で集結し展開をする、三海峡封鎖のために移動し展開をする、こういうことになるわけですね。それはどこで決めるのかも政府はわからない、しかしガイドラインだけは結んである、こんなばかげたことがありますか。大変なことだと思うのです。「移動」とはっきり書いてあるでしょう。移動、集結、展開でしょう。防衛出動もなしに、出動命令もない、だから国会にもかけられない、国民も知らない、そういう中でどんどんそこまで進んでいく、日米協議でやっていく、これがガイドラインですよ。
  65. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  現在、防衛庁といたしましては、ガイドラインに基づく日米の共同作戦研究の作業を進めているところでございます。この研究は、あくまで平和憲法のもと、専守防衛の原則にのっとりながらわが国の研究を進めているところでございまして、ただいま先生、この前の戦争のときの事例を引き合いに出されましていろいろ御質問があったわけでございますが、全く場面が異なることでございまして、私といたしましては、そういった諸原則をあくまで踏まえながら、そしてまた、シビリアンコントロールの原則をも尊重しながら、こういった問題の研究を進めているところでございます。  また、研究でございますので、それが直ちに両国のあれを拘束するものでないということもガイドラインにはっきり明記されておることでございますので、そういった御懸念は全くないということを申し上げておきたいと思う次第でございます。
  66. 東中光雄

    東中委員 防衛出動命令を出すということになれば、これは内閣総理大臣国会承認を得て出すと自衛隊法の七十六条にはっきり書いてある。だから、それができるわけです。それ自体が私たち憲法違反だと思っていますよ。しかし、体系上はそうなっている。七十七条で待機命令を出すというのは、防衛庁長官が、情勢が緊迫した、そして総理大臣承認を得て、防衛出動命令が出るようになるかもしれない、そういう予測のもとに出すのだ、これも七十七条にはっきり書いてある。その前の段階の作戦準備段階、作戦準備行動に入るという決定はだれがやるのか、自衛隊法のどこにもない。しかし、それをやるのだということだけははっきりとこのガイドラインで言っているわけです。どういうふうにやっていくかという、その段階区分をどうするかという研究はいまやっている、これはそのとおりであります。入ることについてはだれが決定をするのか。隊法上何も決まってないものを、勝手にガイドラインで両国政府が選択する、こう書いてある。しかもそれはアメリカと合意するというのですから、何に基づいてその協議をし、合意をするのですか。その点、防衛庁長官、どうでしょう。
  67. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  ガイドラインにそういった事項が書いてあることは事実でございますが、ガイドラインにおきましては憲法、法令を尊重していくということも明記されているわけでございまして、そういった点を踏まえて研究を現在進めているわけでございます。現在のわが国の憲法、また、それに基づく自衛隊に関する法令は、あくまで尊重していくということでございますので、先生の御指摘のような御懸念はないと考えているわけでございます。
  68. 東中光雄

    東中委員 言っていることに答えてくださいよ、全然ピントが外れているじゃないですか。事は非常に重大だということです。「自衛隊及び米軍は、それぞれ、日米両国政府の合意によって選択された準備段階に従い必要と認める作戦準備を実施する。」日米両国政府の合意によって選択された準備段階に従う、こう書いてあるのです。日米両国政府のこのおそれありという合意は、どこで、どういう機関で協議をしてやるのか。安保条約の四条による随時協議の後段の方じゃないのですか。その点はどうでしょう。
  69. 塩田章

    ○塩田政府委員 四条の随時協議はあり得ると思います。  それから、先ほど来申し上げておるわけですが、準備段階の区分によりましては、さっき先生がおっしゃいましたように、最高度の準備態勢ということももちろんあり得ます。したがいまして、それより前に待機命令が出るという段階も、それはあり得ると思います。先ほど私が申し上げましたのは、その待機命令よりまだ前に準備段階もあり得るということを申し上げた。その一番最初の軽い——軽いと言っては語弊がありますが、部隊で、たとえばレーダーサイトなんかの警戒態勢を強めるといったようなところからだんだん始まっていくわけですけれども、そのすべての段階を通じましてだれが判断をするかということについて、いまからの検討の結果で答えを出したいということを申し上げておるわけで、基本的に政府レベルで行うということは先ほど来申し上げておるとおりでございまして、制服にゆだねるつもりはございません。
  70. 東中光雄

    東中委員 総理、もう時間がないのでお伺いしますが、作戦準備段階に入るということは非常に重大なことなんだ。段階を経るに従って重要性は一層強まっていきますけれども、前の戦争で言えば大本営と政府の合同会議から御前会議ということで入っていって宣戦布告までいくのです。これは当然そういう性質のものなんです。その作戦準備段階に入るということを日米両国政府の合意によって選択してやっていくのだ、こう言っているのですから、はっきり書いてあるのですから、どの機関で合意をするのか。それについては日本政府はどこで決めるのか、「両国政府」と書いてあるのだから。自衛隊法では、総理大臣が防衛出動命令を出す、待機命令は防衛庁長官総理大臣承認を得て出すとなっている。作戦準備行動というのは非常に重要なので、どこで決めるのか、アメリカと合意するについてはどこで協議をするのかということを言っているわけです。それは決まってないけれども、まず合意だけした、ガイドラインの線に沿ってこれから動いていくのだということになってしまうじゃないですか。  総理、こういう点について、これは非常に重要な問題です。それこそ国の安全保障にかかわる問題で、日米間の事務レベルで協議をして、とっとっとっとこれはひとり歩きをする。大変なことです。どう考えておられますか。
  71. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします。  いま研究を進めているところでございますので、そういった問題を含めまして慎重に進めてまいりたいと考えておるわけでございます。あくまで文民統制の原則に基づきまして、政府責任を持って取り組むようにいたしたいと考えておるわけでございます。
  72. 東中光雄

    東中委員 研究を進めているというのは、区分について研究をする、ガイドラインに基づいて研究をやるというのは、そのとおりだと思うのですよ。研究じゃなくて、ガイドラインに書いてある「日米両国政府の合意によって選択」する、それに従ってやるのだとガイドラインに書いてあること自体について、「両国政府」と言うけれども、日本政府はどこでそれを決めるのか。そして「両国政府の合意」と言うのだからアメリカと協議をせなければいかぬのだけれども、その協議をする場はどこなんだ。安保条約の随時協議の後段ではないのか。要するに、日本の安全について脅威が生じたと思う場合は、締約国の一方が要請をして協議をする、こうなっている。その条項ではないのかということを聞いているわけです。研究の問題じゃなしに、ここに書いてあることについて聞いているのじゃないですか。責任ある答弁をしてもらいたい。こんなものをあなた、何かわけがわかりません、これから研究していきます、しかも事務的な段階で研究しています、そんなことで済む問題じゃないじゃないですか。
  73. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来何回もお答えをしているところでございますが、この作戦準備につきましては区分段階をいまから研究するわけですが、それによって区分段階ができると思います。それができた場合に、どの区分によってどういう判断をしていくかということも含めていまからの検討課題であるというふうに先ほど来申し上げているわけであります。
  74. 小山長規

    小山委員長 もう時間ですよ。
  75. 東中光雄

    東中委員 はい。政府答弁がさっぱり要領を得ぬ答弁をされているので……。  区分について研究するというのは、そう書いてあるからそうするのでしょう。そのことについてどうこう私は言っているのじゃないのですよ。それで、あらかじめ基準をつくる。あらかじめ基準をつくるその作業をいまやっていることは事実ですけれども、ガイドラインではあらかじめその選定された基準があって、それを実際の段階でおそれがあるというふうに判断した場合には作戦準備段階に入るので、両国政府が合意して選択するとなっているのですよ。そうでしょう。そうなっているのです。ところが、その「両国政府」と言っているのはどこかと言ったら、わかってない。しかも、どこで協議をするのか、これもわかってない。わかってないけれども、そういうふうにやるということを決めている。これは安保条約あるいは自衛隊の体系からも全く外れたガイドライン体制、作戦準備行動ということで、どこかわからぬところで進めていく。そしてハワイの前の展開まで国民の知らぬ間に進んでいく。そういう体制になっているじゃないですか。それなら、どの機関で決めて、どこで協議をするのか、はっきりしてもらいたい。
  76. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 日本は、もう申し上げるまでもなしに、専守防衛に徹しておるわけでございます。  ここで問題になりますのは奇襲というような事態、非常に急迫した事態が外部から日本に加えられてくる、でありますから、情報の収集、分析、そういうものを的確にやりまして、そして先ほど来申し上げておるように、その状況によって、各区分に従ってそれぞれ情勢の分析、把握をしていかなければならないわけでございます。最終的にどうするかという問題につきましては、日米安保条約もございます。そういうものの運用等につきまして総合的に判断をする、こういうことになろうと思います。
  77. 小山長規

    小山委員長 東中君、時間ですよ。
  78. 東中光雄

    東中委員 時間ですから終わります。終わりますが、いま言われていることは、私のガイドラインそのものについての質問には何も答えておられないということを申し上げて、質問を終わります。
  79. 小山長規

    小山委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十五分より再開することとし、休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ————◇—————     午後零時五十五分開議
  80. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川俣健二郎君。
  81. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この前、時間切れになった食糧問題の過剰米処理から、続けて入らしてもらいたいと思います。  その前に、一部報道によれば、防衛費がGNP対比で二・五%、これが報道されておるわけですが、実は理事会で武器輸出の禁止の問題を論議しているときに、そういう報道が私の耳に入ったものですから。元の防衛庁長官方のグループで建議をする。それがどうやら報道によれば、あしたの十七日の自民党の役員会に提出する。その前に総理の手元に代表から提示されておるわけです。それは日本戦略研究センター、主宰が金丸元防衛庁長官。防衛計画大綱の見直し。メンバーは国防関係議員、大体前の防衛庁の長官の皆さん方、さらに元自衛隊の最高幹部、陸幕長とか海幕長ですね、こういったメンバーで出されております。出したという報道なんですが、総理はそれをどういうように受けとめておるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  82. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 川俣さん、いまお取り上げになりましたように、戦略センターの理事長でございますか会長でありますか、わが党の金丸信君とそれから箕輪君が、戦略センターの研究の結果まとめた提言としての書類を持参の上にお見えになりました。私はこのように忙しいものでございますので、まだよく読んでおりませんが、皆さんの長い間の研究の成果でございますから、党の国防部会あるいは防衛の関係機関に提言をするというお話でございましたから、どうかそのようにお願いをしたい、こういうことを申し上げておいたわけでございます。  しかし、政府としては、しばしば申し上げておりますように、いま「防衛計画の大綱」に基づきまして着実に防衛計画を進めておる、こういう段階でございまして、まだ到達もいたしておりません。したがって、いま防衛計画を改定するという考えは持っておらないということを明確に国会におきまして申し上げておるところでございます。したがいまして、あの提言でございますか、これは今後の勉強の課題として党においてもいろいろ論議が出されることと思っております。
  83. 川俣健二郎

    ○川俣委員 せっかく総理は「防衛計画の大綱」によると言うのだが、何人か自民党の防衛関係議員が入っておりますし、その中核部隊は白川元統幕議長、永野前陸幕長、それから竹田、きょうまでの統幕議長。白川発言は、防衛計画は時代おくれだという理念。それから永野発言は、自主防衛力強化がどうしても必要だ。竹田発言は、防衛費は一%では何の意味も持たない。こういうことで一つのものをまとめておるのですが、底流は、ソ連の軍事力が増強したために東西の軍事バランスが悪化した、これが一つ。二つ目は、八〇年代前半、いまですよ、日本の安全保障にとってきわめて警戒を強める時期だ、こういうきめつけ。三番目は、ソ連は決して防衛的な政策ではなくて攻撃的な拡張政策をとっている。こういう前提に立って、年々これから〇・二%前後増強し、最終年度の六十一年、二・五%に達するのだ。その上、報道は、陸海空の武装内容をきわめて具体的に、名前も全部羅列して具体的にずっと書いておりますね。しかし、私ら国会の審議に当たる者は、報道によるしか知り得ない。総理の手元にあるのでしたら、その資料を見せていただけるものなんですか。
  84. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 党の方に提出をするということでございますので、私は、これは特定の者だけに配付をするものでなしに、御希望であれば金丸氏や箕輪君にお話しをして、お届けをして、そして重要な日本の防衛に関する問題でございますから、各方面の御意見を拝聴するようにした方がいい、こう考えておりますので、私からそのことをお伝えをして、川俣さんのところにもお届けをするように申しておきます。
  85. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういうことであれば、御希望によればという前提ですが、もちろん希望しておるから話しておるので、後日それを見せていただいて、わが党の方からまた、同僚議員から意見を入れさせていただきたいと思います。  そこで、この前は食糧問題のしょっぱなで時間切れになってしまったのですが、まず、農林水産大臣に確認しておきます。  五十年から五十三年産米の六百五十万トンは食用から外して処理する、これは特会法の改正で、私の提案で法律改正になった。計画、立案、実施してきた。ところが、経理処理としては七年間で処理できるのだが五年間で処理いたしますということを官報に出した。いわゆる五十四年から五十八年までの間に六百五十万トンというものをきれいに処理する。もうすでに実施したのも見せてもらったし、計画中のものも、この前お配りして見てもらったとおりであります。  そこで、世に言われる重荷の過剰米処理というのがなくなるわけなんで、五十四年産米が減反政策によって百七十八万トンだけ残った。これは二百万トン体制という備蓄の確認もあるわけですから。ところが、昨年の五十五年は大冷害によって九百七十五万トンしかとれなかった。一年間の消費量は千四、五十万トン前後必要だ。そこで去年とった米、いわゆる新米だけに頼ったのでは足りないので、五十四年の百七十八万トンに世話になる、これは当然だと思います。いままで農家の保有米は三百七十万トンぐらいあったのだが、三百万トンぐらいにがまんしてもらう、冷害だったのだから。こういうことです。  そこで、私はここで確認しておきたいのは、二百万トンの備蓄体制というのは崩さざるを得なくなったということはわからぬでもないのです。ところが、この前お話し申し上げましたように、消費量は減っていくと農林省は言うのだが、総理府の統計による世論調査によれば、むしろこれからは米を中心にした日本型食生活に切りかえていくべきだという意見が圧倒的に多かった。これはこの前数字に示した。学校給食の米飯給食が五十一年は一万トンであった。ところが、五十六年は十万一千トン織り込めるようになった。それからもう一つの条件は、何といったって気象に影響を受けるわけですが、農林省が出しておる農業観測によっても、冷害は気をつけなければならぬと自分で言っておる。農協の方でも長期見通しで、そういうあれを見ております。ところが、気象庁は一体どうだろうかということで、この前「ひまわり」で出されて、もうほとんどまた冷夏が来る可能性がある。気象庁の予報官も、そのインタビューに載っておる。それから学会、それから民間の予報員、こういった人方のあれを私は参考に出したのですが、三月になったら、四月以降この秋まで、いわゆる米がとれる時期の間の長期予報が出せると気象庁が返事をなさったわけです。  こういうように考えてまいりますと、さらに減反の上乗せというか二期減反、これを喜んでいる人はだれもいない。後で、なぜ喜べないかという話をするのですが、それでもやはり、一回割り当ててしまったのだから、割り当ててしまってからこの予算委員会なんだから、そうむちゃ言わないでくれよという気持ちはわからぬでもないのだが、やはりこの辺で農林大臣、どうせこれは法律によらないというのだから、話し合いで協力を願ってやっていく、こういう和の政治でやっていこうという考え方であるようだが、どうしてもかたくなに、どこまでも割り当てたとおりにやるということなのか。四月になって雪解けになって、出かせぎが帰って——あなたも東北、よくわかると思う。これはどこまでもこのとおりやらなければならない、こういうような意地でこれをやろうとしておるが、完全な気象予報ができた暁は、長期予報が同じ政府から出るわけだから、こういう中でもう一度閣議なり話し合う余裕があるというぐらいはお話し願えるのじゃないかと私は思うのですがね。
  86. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 川俣委員の御質問中のいろいろな御意見、御主張、分析の仕方、私どもとほぼ一致いたしておるわけでございます。私といたしましても、この生産調整ということは、特に日本の農民にとってつらい、できることならばやらなくて済めば一番いいわけでありますけれども、いままでるる申し上げてきたような事情で転作、減反の道は避けて通れない、こういうことで、実は五十六年度からの三カ年はどうするかということは、私も就任早々非常に苦心をいたした点でございます。そこへもってきての冷害、大凶作ということが加わりましたために、いろいろと苦労をいたしたわけでございます。  私は、この転作は避けて通れないということを農業者団体自治体並びに政府が一体となって、お互いに理解し合って、そうして信頼関係の上に立った措置としての転作推進、こういうふうにならなければ成果を見ることはできない、こういうことで、その点に一番心を砕いた次第でございます。したがいまして、農政審議会等にも、いろいろと見積もり、見通し等の詳細なる、慎重なる、また的確なる答申を出していただくように要請をいたす傍ら、団体あるいは自治体等と緊密なる意見交換をいたしまして、そうして冷害であったという条件も取り入れて、六十三万一千ヘクタールという五十六年度の割り当てをさしていただいた次第でございます。  いまそれぞれの自治体団体等の御協力を得まして、もうすでに割り当てを終わったところもある、こういうことで、いまここで、川俣委員指摘のような理由でもう一度見直しするぞということになりますと、これはまた大きな混乱を招くということも予想されますので、私としては、一応先般お願いをした六十三万一千ヘクタールということで五十六年度はやらしていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  実はこの長期予報等も、ずいぶん気象庁を督励いたしましてやったわけでありますが、確たる長期予想というものが得られないという点も、実はこの間の予算委員会であれだけはっきりと気象庁長官が言われたので、私もびっくりした、こういうのが実相でございますので、そういう面についてはなお緊密な連携をとりまして、もし異常気象にでもなったら大変でございますから、二年続けたらそれこそ大変でございますから、そういう事態になっても去年よりも減収しないための手当ても十分しなければならないということで、一月二十六日に、詳細な五十六年度の農業経営のための指針、水田はもちろん畑作、果樹等についても示してあるところでございますので、その点は今後も十分対策の十全を期さなければならぬと考えております。
  87. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣は、長期予報によればかなり可能性がある、また冷夏が来る、異常気象が来るという予報を伺ってびっくりしたと言われるまではいいんですね。ところが、それでは大変だと言っていながら、何らかの手だてをすると言ったって、装置工場なら残業、夜なべして大量生産するということができるわけだが、大臣はよく知っておるように、まかない種は生えぬのだから、だからその辺が少し、すとんと私らに落ちないんだな。  そこで、いま大臣が、関係団体自治体とおっしゃるんですが、ちょうどいま自治大臣は、農業県の県知事をおやりになって出てこられた方ですから、一番先にこれを割り当てられたとき、率直にどう思ったかということ。それから、機関委任事務であろうかということ。それから三番目は、一割減反、一割増産という言葉があった。どこかの県知事が発した言葉だ。一割減反、一割増産、これはどういうことかというと、一割ぐらいのたんぼなら出そう、十枚のうち一枚の日陰の、悪いところを。あとの残る九枚で十枚分とれるじゃないか、こういうように県知事みずから教えた県があったが、ところが今度はそうはいかない。あるもの全部出しちゃった。今度ありていに言えば、美田を出さなければならない。これはかなり抵抗がある。  こうなると、自治大臣、どうですか、大分奥にお座りになっていて恐縮なんですが、経験談と、いまの機関委任事務その他……。
  88. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 機関委任事務の点については、もう御承知だと思いますけれども、これは機関委任事務じゃなくて、国、市町村、関係団体が協力してひとつやっていこう、こういう性質の事務である。これはいままでずっと申し上げておることでありますから御承知のことだと思いまするが、これは機関委任事務じゃないという理解のもとにこの行政を進めておるのが現状でございます。さように私も思っております。  それから、最初にこの割り当てを受けたときにおまえはどういう感じを持ったか、こういうお尋ねでございますが、当時知事をやっておりましたが、これは大変なことになったなというのが私の率直な意見でございます。特に私の県は、私が言うまでもありませんが、その前にしばらくの間、六十万トン増産体制というものを推進しておったことは、川俣さんも御承知だと思うのでありますが、その後でございまするから、これは大変なことになったなというのが率直な意見でございます。  そこで、当時農林省ともいろいろ打ち合わせをしましたが、農林省としては、全体の体制からこれはやむを得ない措置だということを強調され、私もその方面に経験を持つものでございまするから、その点を理解をいたしまして県の指導に当たってきた、そういうようなことで、末端におきましては大変むずかしい問題でございます。そういうような実感を持っております。
  89. 川俣健二郎

    ○川俣委員 末端においては非常にむずかしい問題だということなんですが、ここでちょっと、この間、公正取引委員会の問題でも、行政指導の限界ということで論議を起こしたのです。これは質問項目には「二期減反と行政法」ということになっているのですが、行政法というのは日本の国にはない。ただ、大学にはほとんど、終戦後は特に、必修か選択で行政法というのが文科、政経、法学部系統にあるわけなんです。  そこで、これは法制局長官にちょっと伺いますけれども、減反政策という通達は、ある面から見ると行政指導の範疇から外れておる。それはなぜかというと金を使う。通産行政というのは名刺がわりに出しているような状態。大蔵省の銀行通達というのもそうだ。ところが、これは膨大な金がかかる。これは何兆円となるわけだ。こうなると一片の通達でいけるだろうか。この辺、政府の考え方を私はどうしても聞きたいのです。
  90. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 この問題につきましても、五十三年以来、川俣委員しばしば御指摘になりまして十分御承知だと思いますが、重ねてお答えをいたしますと、結局行政指導というのは、御承知のように、国民の権利を制限したり、国民に対して義務を課したりするような、そういう強制力を持つものではない、これが行政指導の限界として当然言えると思います。水田利用再編対策事業につきましては、その実態について私が云々すべき限りではないと思いますが、私どもの理解としては、あくまでそれは協力をお願いするということであって、いま申し上げたような、権利を制限したり、義務を課したりするものではない、こういうふうに理解しております。
  91. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ちょっと自治大臣、もう一度煩わしたいのですが、義務を課すようなことは一切しないと言うが、末端ではどうです。喜んで合意してという気持ちですか。お上から達せられたものに対する義務だと思いませんか。
  92. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 私の経験では、末端において義務だと考えておるわけではございませんで、ひとつ協力していこう、こういうことだと思っております。
  93. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ずいぶん変わったものですね。しようがないなという言葉は、私は安孫子先生から何回も聞きましたな。  法制局長官、通達とは書面をもって行う訓令である、これは皆さん方もいいと思いますね。上級行政機関が指揮命令権に基づいて各行政機関に対して発する、いわば代理権を与えることである。たとえば、建設大臣が河川行政で通達を出せるというのは、河川法五十一条があるからです。法律というのは、最も民主的な法の形式であり、通達は法律に違反しない限りにおいて有効である。  環境アセスメントは何で出ないのだろうか。ここで五回、私は聞きました。今度は出します。土屋さんなんかは本当に、川俣さん信じてください、今度は必ず出しますと、締めくくりの質疑のときに。ところが、行政指導でやりますからと、ぐにゃぐにゃっと……。  こうやって考えてみますと、私はここで法制局長官に聞いてもらいたいのは、案外、外国では行政指導という言葉が国際用語になっている。簡単に言えば、日本の国は民主的だと言うけれども、行政指導で逃げるからなと言う。これはどういうことかというと、日本の国には行政法がない。明治憲法下における行政権が非常に強いときの名残が各法律体系に残っておるということ。たとえば食管法を読んでみたら、全部政府に納めなければならないということで消費者を守るようになっておる。ところが、しょっぱなから、命により限度数量は、いわゆる買い入れ数量は政府が、行政の方が決めることができる。こういう法律というのは、明治憲法なら通る。いまはそういうようなことは許されないのじゃないかなと私は思う。だから、行政権というものが非常にあって、何でも行政指導に乗せて金をつけてやるというのが補助金なんです。これが大きくなっちゃった、特に農林省は。  そこで、あなたからは返事はもらえないだろうが、いつまでも明治憲法下の思想、理念を持っている限りにおいては、行政権は交代しない、他の党に行政権が渡らない、政権が渡らないというきらいがある、これだと。やはり行政権というのはおのずから限界がある。ましてや、行政指導でできるのだということを公取でも言われておりますけれども、法律というものを越えて行政指導をしておるというのが無数にあるのではなかろうかと思うのですが、その道でずっと勤務されてきた長官はどう思いますか。その方の権威でもありますから。
  94. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 直接のお答えになるかどうかわかりませんが、まず第一に、行政指導についてどう考えるべきかということについては、四十九年に質問主意書が出まして、それに対してお答えをしているわけですが、簡単なものですから、それをちょっと読みます。   政府が行おうとする行政指導は、一定の行政目的を実現するため、相手方の任意の協力を得て行うものであって、国民の権利を制限し、又は国民に対し義務を課したりするような強制力を有するものではなく、行政機関の所掌事務の範囲内において行うものである。   行政指導は、このような性格を有するものであるから、法治主義の原則に反するものではないが、その実施に当っては、いやしくも行政権の濫用となったり、財産権の保障等の憲法基本的人権を侵害することのないよう十分配慮することは当然である。 これが、一般的なお答えとしては、ただいまの御質問に対するお答えになると思います。  現実の行政の面において非常に広範に行政指導が行われているということは、わが国のいろいろな事情に基づいてそういうものが行われていると思います。絶えず国会においても御指摘がございますけれども、その間において、ややともすればいま申し上げたような、行政権の乱用になったりするような事例もあるようでございます。そういう点については、いま申し上げたように十分戒心して、そういうことがないようにしなければならないということは当然だと思います。
  95. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういう教科書は読むだけなんだがね。農民の権利、耕作権というのは十割保障されておる。ところが、何を植えてもいいという耕作権はあるにしても、国の政策としてはこういうことになっておるわけだから、権利をある程度制約しなければならぬのだというのが一つの考え方。それからもう一つ、長官のように権利を剥奪しない範囲内だと言うならば、農民に割り当てられようとも、ここにジャガイモを植えろ、麦を植えろと言われても、農民がいま希望しておる、これから出そうとしておるのは、農林大臣も知っておるのだろうけれども、何を植えてもいいのだな、そういうことだな。
  96. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 法律的に強制はしてないという点では御指摘のとおりだと思います。
  97. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなるともう一つこの問題で、国会の先輩の皆さん方で、国家行政運営法というのが国会で取り上げられております。法制局におられた先生ですか、小関さんといういま大学の教授は、国民の権利及び生活に関係のある事項についてはみだりに委任命令を出してはならない、こういうのも書かれている。しかし、記録によると、いろいろ論議したけれども、これは不発に終わっておる。そこで今度は議員立法で出そうと、間もなく鈴木義男氏、山口六郎次氏、青木正氏が昭和二十七年、議員立法として出しておる国家行政運営法の提案理由の説明で、明治憲法を徹底的に解明して、新憲法のもと、やはり行政指導というものを少し洗わなければならぬということからこういうものが出ておるようです。これは知っていますか。
  98. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 この法律案が提案された詳しい事情は知りませんが、この法律案そのものは私いま手元に持って、すでに読んでおります。
  99. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなたはどういう学説で臨んでいるか知りませんが、多くの先生方は、たとえば北大の今村教授ですか、「法の支配を根幹とする新しい憲法の下においても、あいかわらず、明治憲法を象徴する法治行政の原理が頑強に存続している現状」を政府は反省すべきである。それから、岡山大学の原野という行政学の先生は、「行政指導とは、行政主体のおこなう勧告、指導、要望、あっせんなどのように、相手方の同意や協力によって一定の行動を期待する作用をいう。したがって行政指導は、非権力的な作用であり、本来、法的拘束力はもちえないものとされる。」これはあたりまえでありますけれども。それから神戸大学の山田教授、一橋の市原教授、同じく神戸大学の阿部教授等々が、いまの行政指導というのはほとんど補助金を乗せて行政指導の範囲を越したものにしておる、当然法律によらなければならないものを、補助金をいいことにして、行政指導というもので相手の権利義務を剥奪するような行為を行っているということを指摘しておるんだよ。こういうものはどうですか。それでも、それは一部の学者と、こう言いますか。
  100. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 基本的に行政というものはいわゆる法律による行政の原理というものによって行われなければならないという指摘とすれば、いまの学者の言っておられることと私が先ほど来申し上げていることとは違わないと思います。  ただ、そういう学者も、なおかつ、行政指導というものの存在を全面的に否定しているわけではなくて、往々にして、行政指導がややもすれば行政指導の枠を外れて強制にわたったり、あるいは不当な影響力の行使となったりするのを批判しておられるのだと思います。その点についても、私は先ほどそのとおりだと申し上げたわけで、考え方の基本において、私はそういう学者の指摘自体が間違っているとは思いません。  ただ、現実の行政で、それがどういう場合にそういうことになっているかどうかについては、私は直接の行政の責任者でございませんから、その点については、学者の指摘することが一つ一つ正しいとは申し上げられないと思います。
  101. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いや、長官、行政指導というのは当然あるべきなんですよ。当然あるべきなんだけれども、おのずから限界があるのじゃないか。特に、いまの行政指導というのは、戦争中の行政指導の範囲と同じだ。行政権が非常に強いときの観念でやっておる。その上に補助金というのを乗せていっているから、どんどん補助金というもので歯どめがない、こういうことを言っておるわけなんで、その辺はひとつ誤解しないでもらいたいのです。  そこで、そうは言っても、やっぱりあなたと私の考え方は、不平等で差別的な行政指導であってはならない。ところが、今回の減反政策の通達というのは、あなたは勉強してくれていると思うのですが、「以上、命により通達する。」こういうことで通達が出ている。ところが、「水田利用再編対策による転作の目標が達成されている市町村又は転作の目標の達成がその事業の実施により確実と認められる市町村の要請に優先的に配慮」せい。言うことを聞く農民のところへ補助金を多く持っていきなさいよ。ほかのやつですよ。減反の奨励金ではなくて、いろいろな農業の行政指導でやれる範囲内の補助金があるでしょう。それは言うことを聞いている農民に優先的に配りなさい、こうなっておる。ちょっと逸脱じゃないかな、どうです。それだったらどうです。仮定の問題で悪いけれども。
  102. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 私は、具体的な行政についての責任を持っておりませんから、いまのお話について直接お答えすることは非常に困難だと思います。  ただ、抽象的に申し上げれば、行政指導というのは、本来、相手方の協力を前提とはしておりますけれども、一定の行政目的を実現するために相手方に働きかける手段でございますから、その限りにおいてその実効性を高めるために何らかの対応手段を用いるということは、これは必ずしも否定するものではないと思います。しかし、それが行政機関の権限だとか地位を利用して不当な影響力の行使というような形になれば、これは無論、違法な行政指導として許されないと思います。
  103. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これの論争をやると農業のあれが時間がなくなるので、そこで行政管理庁長官に伺いたいのですが、公正取引委員会の論議もあったし、私のような見解もあるし、それからいまも長官が言ったように、もしそういうのがあればという仮定なんだけれども、行き過ぎなところはやはり検討しなければならぬと私は思うのです。そこで、第二次臨調でこういった問題に入っていくべきだと私は思うのですけれども、どうでしょうかね、長官
  104. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 行政指導は日本独特の一つの行政形態だと言われておりますが、考えようによっては、これは民間活力を生かそうという考えで出てきた要素もあるのであります。たとえば、通産省あるいは運輸省あたりで許認可で縛っておったのを、許認可で縛るのはいかぬ、許認可をやめてしまってわりあいに自由にやらせる、ただし、ある程度の基準を持って業界の調整を行うとか、そういうようなために行政指導というものが出てくる場合がありまして、これは許認可で縛るよりは前進している形です。ただ、それが過剰になりますと、おっしゃるように権利義務を拘束するという性格も出てまいりますから、これは大いに戒心しなければならぬところであり、また、公取の方もその点については監視しているところであります。  この辺のさじかげんをどうするかということは非常にむずかしい微妙なところでございますが、これを第二次臨調で取り上げるかどうかという問題は、第二次臨調の委員の皆さんがそれを取り上げることを必要とするかどうか御判断なさることであると思います。しかし、いわゆる行政指導に対して救済手段がないのではないか、そういう議論が行政学者の中にもありまして、救済手段としていわゆるオンブズマンというもの、ここへ目をつけるべきではないかという議論もございます。そういうさまざまな観点から、恐らく論議の対象には十分なり得るものであろう、そのように考えます。
  105. 川俣健二郎

    ○川俣委員 法制局長官はいま使われる身だろうと思うのだが、これはやはり日本の行政運営法というか、先輩が考えた法律ですが、ぜひ検討するべきではないかと私は思うので、あえて提言しておきます。  そこで、あなたがおっしゃるように権利義務だ。したがって、農林省は、いやならやめればいい、こういうことなんだな。いやだ、これは大変なんですよ。これをいやだなんと言う人は、よほど心臓の強い人、村八分になろうが何しようがいいというような人がいる場合ならそれは言えるけれども、ちょっと土地を耕す農民に、おれは断じて動かぬと言うような、これはなかなかいないよ。  ところが、私はびっくりしたのは、こういうのが来ている。これを総理、見てください。これはつくったものです。これはどういうことかというと、ある県のある農民のグループが、土地改良は要らない、土地改良は撤回するという、こういう撤回書というか署名書なんですね。  ここの予算委員会で私が座っていたら、私の地元でない人が陳情に来た。補助金をもらうんだったら、それは地元の先生のところにやったらどうかと言ったんだけれども、そうじゃない、どうしてもこれをやってもらいたい、こう言うんです。それはどういうことかと言ったら、補助金をくれじゃなくて、土地改良を進めようとする者に三分の一の反対者がいたらやらぬでもいいという法律を聞いたから、撤回書を判こを押してもらってきた。こういうことで、千五百十八名のうちの五百四十四名の人方、三六%になるようですが、当然三分の一というものを超えているようですが、いやだ、やらないでくれ、こういう撤回書を持ってきた。これはおれのところに持ってきてもいいのかと言ったら、いや、これは農林省に出しましたとこう言う。農林省に出してお上に盾突いていいのかと言ったら、いや、私ら何と言われようと、お上に盾突くことは悪いと思ってきたが、がまんし切れないでやってきた。しかも、そのとおり県営である。ところが、よく聞いてみたら無理ないんだね。皆さんの手元に配ってあります半ぺらをちょっと見ていただきたい。簡単なものなんです。  いま物が上がっているので、十アール百万円の土地改良の工事費時代になりました。ところが、これは示されたときは九十五万円だった。九十五万円だが、大体八年かかるものだから、中をとって四年間の利子の上昇分をとって、三行目に書いてありますが百十四万円、これが一反歩当たりの反当工事費である。ところが、農民は最高三〇%負担すればいい。だから、そのあれによって二三、四からあるのですけれども、これは三〇%としておる。この三十四万二千円だけ負担すれば事足りる、こういうことだった。ところが、よく計算してみたら三十四万二千円が、一カ年の利息、これを十年据え置きなんですが、十五年で償還する。そうすると、自分のたんぼを土地改良してもらう自分の負担分が七十六万七千八百八十六円になるというんです。もちろん、これには下に書いてあるように、ブル代かきとか客土、暗渠費用、こういったものが含まれていない。しかも工事中はこういう収入減もある。  こういうようにバックデータを見せられると、私もこれは黙っているわけにいかぬなと思っているのですが、農林省、こういうことの撤回書を受けましたか。事実ですか、どうです。
  106. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 事務当局から答弁させます。私はまだ聞いておりません。
  107. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 お尋ねの件は、東北のある県の事例だと存じます。私ども、目下その件について照会をいたしておりますが、この事業費が、いま配られました資料によりますと当初九十五万円、期間中の増高を見込んで百十四万円ということになっております。平均に比べまして若干高くついておりますが、これは一般的な圃場整備のほかに用排水事業を行うというようなことも含んでいるためというふうに聞いておるところでございます。  それから地元の負担率でございますが、一般的には三〇%まではいかなくて、二五%から二七、八%くらいの水準であろうかと思われます。これは県によって補助の地代が違いますので若干差がございます。そこで、個々の計算については若干差はございますが、いま先生がおっしゃいましたように事業費の二五%、最高三〇%以下程度の負担ということになるわけでございます。その負担は一遍に払うということになりますとこれはなかなか大変でございますので、私ども、むしろ負担を軽減するという意味で、長期低利の融資を行っているところでございます。十年間据え置きで、その後十五年にわたって償還する、二十五年の償還ということになるわけでございます。期間が長うございますから、総額としてはかなり大きくなりますが、負担としてはそれほどであるかないか、それは実際に負担する方のお考えもございましょうが、できるだけ負担できるようにということでいまの制度は仕組まれているわけでございます。  それから、お尋ねの地区について完全に同意がとれているかどうか、反対者があるんではないかということでございますが、この点については私どもの方にも陳情書が参っております。目下、県におきましてそれらのことも含めまして、その事業を採択するかどうかについて検討を行っているところでございます。私ども、この事業はむしろ地元で必要があるということで関係者の同意が成立して、そして要請があればそれを受けるという形になっておりますので、県のそのような査定を十分推移を見守った上で最終的な判断をいたしたいというふうに考えております。
  108. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは大事なことだから、こういうのはそうあるケースでないんだから、大臣に早く知らせにゃだめだよ。しかも、いまそこへ並んでいる大臣方の地元の撤回書だから。  それじゃ局長結論を聞くよ。私が示したのは私がつくったんじゃなくて、地元からそういった添付書類で持ってきたものだが、計算してみるとそう大差はない。三〇%をあなたは二七、八%と言うが、そう大差がないということが一つ。  それからもう一つは、土地改良事業というのは何が目的だったのですか。
  109. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 数字自体につきましては、先ほども申し上げましたような条件をつければ、結論的にそう大差はないと理解いたしております。  それから、土地改良事業は何を目的とするかということでございますが、これは申し上げるまでもなく、農地を整備、改善いたしまして、食糧自給力の向上、それから農業、農村の健全な発展を図るということを基本的な目標といたしております。具体的には営農の機械化、合理化に資するように土地条件を整備するということでございます。これによりまして、今日の農政の課題となっておりますところの自給力の維持強化、農業生産の再編成、生産性の向上といったようなこと、あるいは農村の環境整備等に資するというようなことで、十分政策上の意味があるもの、重要な政策であると理解いたしております。
  110. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そう大差がないと言うからほっとしたのだけれども、作文の金額かと思って私も確認の意味で聞いたのだが、そこで、まず九十五万円ですよと言って土地改良をさせられて、三割以内負担すればいいよと言ってさせられて七十六万七千円。これだけの金をかけるということは、やる方の農民側から見れば、やはり増収というか、見返りがあるということを言われているからだと思うのです。七、八俵が十俵ぐらいになる、これがあればこそこれだけの金額をかけるわけだ。ところが、政府がいまとっておる食管法に穴をあけて、政令を使って限度数量は一方的に政府が決めることができるということにする。そうすると、土地改良に金をかけて増収した分が、この限度数量というのは四十二年ないし四十四年が基準になっているものですから、金をかけた意味がない、こう言うのだ。これはどうなんですか。
  111. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 限度数量の問題自体については、後ほど食糧庁長官から答弁を申し上げます。  かけた経費に見合うだけの増収効果があるのではないかということでございますが、私ども投資効率というものを計算いたしまして、どれだけの投資をかけてそれによる増収効果が、これは生産量が上がるということだけでなしに、労働時間が短縮できるというようなことも含めまして、経済効果がどの程度あるかということを算定いたすわけでございます。それからいま一つは、農業生産の上昇によります年々の所得の増加、これに比べまして償還がどの程度の負担になるかということを比較いたしまして、その一定率以内というようなことを事業採択の目印にいたすわけでございます。  そういう点からいたしますと、この個別事例については、投資効果がどの程度で、それから償還率がどの程度になるかということは、数字自体がまだ、私どものところに上がって審査の対象になっているわけではございませんので、何とも申しかねますが、その辺は、地元の方々が負担し得るというような御判断に立つことがまず第一であろうかと思います。先ほど申し上げましたように、県の査定を待って、数字が上がりました段階で、私ども、その辺を慎重に見定めて査定してまいりたいと考えております。
  112. 松本作衞

    松本(作)政府委員 限度数量の配分につきましては、ただいま御指摘がございましたように、生産調整が始まる前の四十二年度から四十四年度の売り渡し数量を基準にいたしておりますが、その後の土地条件等の変化による変化は町村段階で織り込めるように措置をいたしておりますので、そういった実態の変化には対応しているものと考えております。
  113. 川俣健二郎

    ○川俣委員 法律によればそれらしく読める。ところがそうじゃないでしょう、いまの通達を出すくらいだから。あなたのところはたんぼがうんととれるようになったからそれも加味してくださいよなんという事態じゃない。原則はやはり四十二年と四十四年の、土地改良するずっと前のそれがベースになっておるのだ。よくもまあしゃあしゃあと。本当にいけしゃあしゃあというか、大臣、どうです、これは。
  114. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 この米の問題につきましてはいろいろと監視の目も厳しく、食管法に対する制度維持の要請も強く、そういう中で食糧庁が生産者の立場、消費者の立場を十分に考慮しつつ食管の改善並びに運営に努力をしてきておりますことは御承知のところと存じます。したがいまして、ただいま食糧庁長官から説明申し上げましたとおり、この限度数量につきましてもそのときどきの実態に沿うごとく運用されておるものと私は理解をいたしておるところでございます。
  115. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣はそういうものと理解していると言うのだが、そういうように教えられればそうなんだ。  では、長官、通達で出してください。その後金をかけて土地改良して増収した分は四十二年と四十四年の基準に足して、うんととれるところはそこを基準にして限度数量を割り当てられること、と通達を出せますか。
  116. 松本作衞

    松本(作)政府委員 ただいまの政令におきまして、政府に売り渡すべき米穀に関する政令というのに基づいていまの限度数量を配付しておるわけでございますが、その中に、先ほど申しましたような基準のほか、「この場合において、農地についての権利の設定又は移転による農地面積の増減その他の特別の事情により当該年平均数量を基礎とすることが著しく適当でないと認められる米穀の生産者については、合理的に判断して必要と認められる範囲内において、当該年平均数量を修正することができる。」ということが明記してございますので、私どもはその政令に基づいて運用が可能であると考えております。
  117. 川俣健二郎

    ○川俣委員 法律から政令をもらって、「できる」とうたっておる。「できる」ということは、しなくてもいいということだ。本当は、することなんだ、農民のことを考えるなら。「することができる。」という程度なんだ。こんなのを取り上げたらえらいことになるよ。土地改良した増収分を取り上げてみなさい、あなた。とてもじゃないが、あなた困るよ。農林省も困るよ。「できる」とうたっておるのだからいいんじゃないかというような言い方ではなくて、本当にそこを私は言いたいのだ。減反政策というものに協力をしてもらいたいと言うのなら、そういうところも配慮しながら土地改良とあわせてやってもらいたい。  それじゃ、もう少し、私も言いたくないけれども言うと、土地改良してもらったら転換率をという、転換率を定めております。転換率二五%。十町歩の土地を整備してきちんとした。十町歩の土地、その地域全体が圃場整備が終わった。北海道なんか特に持ち前は大きなあれで十町歩ある。そうすると、二五%なら二町五反はもとの稲作に戻ってはならないという念書でしょう、この転換率の念書というのは。念書というのはどうも評判が悪いな。この念書の転換率は義務ですか、協力願いですか。これはどうです。
  118. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 土地改良事業を採択するに当たりまして、かつて、いま先生の御指摘になりましたような事業執行者、市町村長あるいは土地改良区の代表者の念書をちょうだいしたことがございます。今日ではそれは計画の中に織り込んでおりますので、念書という形はとっておりませんが、実質的には同じことに相当するかと存じます。その通達は、五十三年以来毎年、若干の改定を見ながら出されているところでございますが、その中で「転作の定着化のための各種事業の優先措置等」というのがございまして、「原則として、水田利用再編対策による転作の目標が達成されている市町村又は転作の目標の達成がその事業の実施により確実と認められる市町村の要請に優先的に配慮するものとする。」ということになっておるわけでございます。したがいまして、転作はできるだけやっていただきたいということでお願いしておりますけれども、これは転作自体が義務を課するものではないということでございまして、市町村長なりあるいは関係農民の御理解を得て行うという前提に立っておりますので、私どもの土地改良事業の実施に当たってのこの要請も、義務とはいたしておりません。したがいまして、この要件を満たさないからといって補助金を出さないとか、あるいは出した補助金を返還させるというようなことはないわけでございますが、全体としては転換に非常によく協力していただいておりまして、個別の一、二の地区においては若干例外はあるにいたしましても、全般的には比較的円滑に推進されていると私ども思っております。  もちろん個別の地区では、強制ではございませんので、一応計画としては二五%程度の転換を達成することにしておったけれども、結果としてそれに届かなかったというところも、若干事例としては出てまいっております。
  119. 川俣健二郎

    ○川俣委員 農林省というのはずいぶん役人が幸せなところですね。補助金を出して、水田から畑作へ将来二五%転換させるんだ、だから大蔵省は出しているんじゃないかと思うんだ。では、基盤整備に最近十年ぐらい、どのぐらい出していますか、補助金の総額をちょっと聞かしてみてください。
  120. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 公共事業だけで見てみました場合、五十六年度予算で約九千億弱、八千九百九十七億円という大きな額になっております。
  121. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これがもう十何年続いておる。十何兆。そしていまだに投資効果が出ていないという、これも幸せな話だな。  大蔵省、どうなんですか。いま大臣がいないから、担当の方がむしろ詳しいと思うのだけれども、この補助金を出すときに二五%のあれがひっかかるんじゃないですか。どうなんですか、これは。いま第二期減反で転作する面積は全国で一七、八%で騒いでいるのですよ。ところが、土地改良すれば二五%は自動的に畑作に転換できるというんだから、将来は、何にも奨励金をやらぬでも、土地改良してもらった方がいいということのあれが念書になってあらわれているんじゃないの。どうなんです、これは。それじゃ義務化されていないんだな。これはちょっと大蔵省、どうですか。後でばっさりきたんじゃ大変だから。
  122. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 補助金の実施に当たっては、先ほども申し上げましたように各種の通達等をもって運用されるわけでございます。この通達につきましては、大蔵省の事務当局とも事前に十分の打ち合わせをいたしております。  先ほど私が申し上げましたように、義務とはしていない、要請でありますので、できるだけそれを達成していただきたいということにはしておりますけれども、それを達成できなかったからといって制裁措置をとることはしないということについては、大蔵省の方も了解していただいております。
  123. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大蔵省に言わせればいいじゃないですか、そういうように念書があれだと言うんなら。  そこで、さっきから、通達の話から土地改良、土地改良をして増収した分は限度数量の基準に入る。入れることができるということだが、国会確認は、入れてよろしい、入る。それから、二五%は義務ではない、協力だ、決してとがめない。それから、さっきの法制局長官じゃないが、農民の耕作権を制約するということであれば法律によらなければならぬ、だからここでペナルティーはかけられないという論争があったわけだ。  それで、法律を根拠とするだけではなくて、いままでの土地改良というのは、稲作、水田に大体土地改良してもらったのです。畑に土地改良というのはしてもらっていない、暗渠その他設備一切が。だけれども、全部米を植えさせれば——米を植えたい。米だけが価格保証するから、千四百万トンつくっちゃう。ところが、一千万トンでよろしい。だから四百万トン多いんだ、こういうことなんだ。そこで、一体これは定着するだろうかという論争をこの前にした。定着している地方がある。定着している地方があるのなら、その定着している方へむしろ転作物をつくってもらえばいい。  まあ東北の人方は、そこのひな壇に並んでいる人が大分いるんだが、まず単作なんだ。いまは雪の下だ。農民は出かせぎに来ている。とにかく稲しかつくれない。こういうことなんだ。そうなると稲を植えなければどうにもならないというのがある。ところが、米にしてはならない。稲を植えるように土地改良してもらって、農民は稲を植える期間しかいないんだ。しかも、農業技術というのは継続性があるんだ。昔は豆をつくれるというのはなぜかというと、冬場の間に農民がいろりのそばにおったからなんだ。わらじを編んで、なわをなって、俵を編める時期があったのだ。だから、ついでに大豆を乾燥する機会があったんだ。ところが、いまはそうではない。  そこで、稲を植えて米にはしないという境目が、飼料にしたらどうかという論議が出てきているわけなんです。そこなんですよ。そして、米まではいけないというので、青刈りというところまではよろしいということになった。ところが、もう一カ月の、八月の確認ではなくて九月の確認の登熟期まで持っていけば、米にはしないが飼料にするということになる。これがいわゆるえさ稲というか、えさ米という。こういうことなんだけれども、それに対して農林大臣はどういう見解ですか。
  124. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 青刈りの場合は、御承知のように転換作目として認めておるわけでありますが、それ以降、登熟期を過ぎたものに対しては認めておりません。  また、えさ米につきましては、本会議でも御答弁申し上げたところでございますが、長期的に見れば、水田の特性を日本の農政全般の中で活用してまいるという意義から言えば、その意義は確かに御指摘のとおりだろうと思います。  そこで、私も就任早々、何とかならぬものかと思って、私みずから、役所の人の話ばかり聞いておるのもと思いまして、試験場をずっと歩いてみました。そして、えさ米の試験状況、特徴、現状等を私なりに把握をいたしました。その結果、脱粒性が非常に強いということで、いま脱粒性のない新しい品種を固定化するというのが、このえさ米を将来大きく広げていくための最も大事な方法であるということで、実は五十六年度の予算におきましてもその点を勘案いたしまして、予算を新たに起こしまして積極的にその方面に取り組んでまいる、そういう姿勢をとり、技術陣を動員をする体制をとっておるわけでございます。したがいまして、私ども責任ある行政指導をしてまいります際には、やはり農家に対して奨励をする場合、少なくとも農家から不満の声が上がらない奨励品種というものをつくり上げてからというふうに考えておりまして、せっかく勧めました結果、刈り入れ期に入りましてはらばらとみんな収穫前に脱粒してしまうというようなことになりますと、これまた大変な事態になりますので、そういう点を考えまして、まだ奨励段階ではない、研究段階である、その研究に万全を期して、できるだけ早い機会にりっぱな飼料用の稲を造成をしてまいるというところに力を入れていくことが筋ではないかということで指導をいたしているところであります。
  125. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう十年になるよ、大臣。十年になる。ことし、どのぐらい植わると思いますか。特にあなたは参議院の本会議だったか、超多収品種の改良に取り組んでおる、安く生産できれば自給力強化の最もいい方法だ、あなたが知っているからこういうふうにお話しできたのだと思うんですがね。十年になるのだが、一体この春、全国でどのくらい植わると思いますか。事務当局でもいいけれども、ある程度予想していますか。どの程度植わると思いますか。
  126. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 飼料用の稲につきましては、ただいま大臣からお答えがございましたように、大いに力を入れてやれということで最近力を入れてやっているところでございます。国の研究機関につきましては、農事試験場を初めいろいろやってございます。今年度からは県の試験研究機関にも委託をいたしまして推進をしてまいりたいと思っているわけでございますが、何分にも収量が多くて栽培しやすくてということになりますと、ただいままでのところは食糧に重点を置いてやってきた関係上、簡単には出てまいりませんので、ただいまのところ、農家に直接指導、奨励するような段階には、残念ながら至っておりません。
  127. 川俣健二郎

    ○川俣委員 質問に答えてないんだ。私が聞いているのは、全国でどのくらいことしは植わると思いますかと聞いているんだ。
  128. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 飼料用稲の研究につきましては、五十六年度からかなり力を入れてやるということでございまして、いろいろいま民間、大学等で研究をしている方々とも連絡をとりまして実施をするということにしているわけでございます。目下、いろいろと連絡をとって相談をしているところでございますので、面積がどれくらいかということは、いまの段階ではまだ承知しておりません。
  129. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、つくる方から聞きますよ。では、これはつくってもいいんだな。
  130. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 いままでも研究心旺盛な農家によってつくられておるわけでありますから、これからもつくってはいけないということは農林水産省としてはとらざるところでございます。
  131. 川俣健二郎

    ○川俣委員 答えになっているようだけれども、現実はこういうことなんです。いままでは試験的でよかった。なぜかというと、減反面積がそれほどひどくなかった。今度は二期減反だ。そこに求めるのはえさ米だということになって、今度は一部の研究家だけではなくなった。かなり出回っていますよ。皆さん方予算委員会でひな壇に並んでいる間に、地元ではかなり出回っていますよ。ただ、認めないというわけにはいかない、そういうことだな。  そうすると、それでは大臣、立つついでに聞きますけれども、えさ米というのはどっち側ですか。穀物飼料ですか、それとも米の方ですか。種類はどっちに入るのですか。
  132. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 ずっと申し上げてきているところでありますが、食糧として取り扱っていったのでは将来のえさ資源としての地位を確保はできない、こういうことでございますから、食糧としては取り扱わない、こういうことでございます。
  133. 川俣健二郎

    ○川俣委員 米ではない、したがって食管法上はカウントされない、だけれどもえさにはなる。それでは転作物でいいんじゃないの。
  134. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 理屈はそのとおりでありますけれども、転作作目として奨励する以上は、作柄が安定し、品種が固定をしておるということで政府責任を持って生産を奨励するという段階でなければ、転作作物というふうにするわけにはいかない。その点は農家の諸君もよくひとつ御理解をいただいて、そして、とにかく固定化された超収量の、しかも脱粒しないえさ稲を造成するために、国としても技術試験場を中心にいたしまして全力を挙げてやっておるわけでございますので、その点は川俣委員も十分承知しておられての御質問かと思いますので、私どもとしてもその気持ちをくんで馬力をかけていくというふうに申し上げる次第でございます。
  135. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いや、承知しているのは、大臣の方は承知しているんだ。理屈ではわかると言うんだよ。食管法の米にはカウントできないんだ。それでは転作物でしょう。だけれども、いま現実に奨励はできるほどのものではない、責任を持って奨励はできない。では、いままで奨励したもので何があった。豚をやれと言ったら、もう豚で自殺しなければならぬ。卵をやれと言ったら、大企業が入ってきて、岩手なんか伊藤忠が入ってきたでしょう。こういうふうにしてお勧め品だというのは、どういうところをお勧め品と言うのかな。農民が損するであろうからということなんですか、お勧め品にはできないと言うのは。どういうことなんですか。
  136. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 えさ米に関しましては農林省の各局の行政に関係いたしますので、便宜、私の方からお答えさせていただきます。  ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、一つは奨励面の方から申しまして、転作作物として奨励すべき段階にないということがございます。それからもう一つ、食管法には御存じのように譲渡禁止の規定がございまして、問題は、えさ米と見られるものがまだ固定しておりません。固定してないえさ米につきまして、これが食糧として、主食として譲渡されるかどうかという十分な担保も現在ございません。したがいまして、そういうような段階におきまして現在農産園芸局の方の転作のカウントにも入れない、こういう取り扱いになっているわけでございます。
  137. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ずいぶんガードがかたいものだなあ。理屈はわかるのですよ。米ではないということは、私も認めるんだ。だから、そのえさ米を持って歩いたり、自分のたんぼでつくっても、食管法上違反ではないんだ。だけれども、転作物ではないというのがお勧め品ではないという意味なのか。植えてはいけないという意味なのか。植えてはいけないとは言わないと大臣が言う以上は、何ですかというのです。  それでは、ここでひとつ観点を変えてみますと、アメリカの下院で歳入委員会、日本の大蔵委員会ですか、私はわかりませんが、貿易問題小委員会で米日貿易問題のいわゆるタスクフォース報告という有名な報告が一次、二次と出ております。これにこういうように書いてある。「日本は米国の農産物輸入にとって単一では最も重要な市場である。両国間に深刻な農産物貿易問題はあるが発展的価値を離れることがあってはならない。日本に対し、わが国が大量しかも高品質の農産物の信頼できる供給者であり続けることを保障してかからねばならない。」こう書いてある。  そこで、国際分業論みたいな論議もあった。ところが、大豆の輸出禁止を五年前に食った。えさが高くなって農民がえらいことになった。年に三回上がった。そこに座っている人はみんな知っていると思う。このタスクフォースというものを、これどうですかね、どの大臣でもいいのですけれども、貿易問題小委員会、私どもこれをどう考えていいのですか。これが穀物飼料のえさ米と関係がありますか、どうです。
  138. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  このタスクフォースは、川俣委員御承知のように、米国のジョーンズ・レポートとも言われておりまして、昭和五十四年一月のレポート、ジョーンズさんは五十五年の九月にも第二次レポートを出しておりますけれども、その中で、いま川俣委員指摘のように、日本はアメリカにとって重要な農産物の輸入国であるから大事にしなければいかぬというようなことを書いておりまして、個々の問題については私どもも不満がございますけれども、アメリカの議会で初めて日本のそういうものについて触れて、その分析といろんな問題点について指摘した点でございますし、必ずしもこれが悪いとは言えませんので私どもは肯定しておりますが、その中のやはり一部だというふうに考えております。
  139. 川俣健二郎

    ○川俣委員 というのは、政治家ですから皆さんわかると思うのですが、中を抜いて、穀物飼料は一体いまどのくらい輸入しておるのだろうかということと、このえさ米が日本にお勧め品になった場合にどのくらいとれるのだろうかということを、ちょっと事務当局から。
  140. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  日本の穀物の輸入量でございますが、グレーンソーガムあるいはコーン等合わせまして約二千万トン余輸入をいたしております。
  141. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう一つの方はどうですか。農林な、もしこれをやったらどうです。
  142. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  これまでにえさ米につきましての研究段階に入っておりまして、先般も農政審議会におきまして、この問題についても議論のあったところでございますが、長期的な課題といたしまして、えさ米を固定化するための試験研究を進めるべき段階というふうになっております。えさ米を含めました飼料穀物の今後の課題につきましては、農政審議会におきまして今後検討することになっております。したがいまして、えさ米がどの程度になるかということについては、今回の見通し等におきましてもこれを落としておりまして、これから試験研究の進めぐあいとあわせて検討すべき課題と考えております。
  143. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは総理大臣、訪米されて余り心配しないでください。これは二千万トン。ところが、いまさっきからの話の中でわかるように、二期減反に上乗せになる二十万町歩、約二十万町歩というものを上乗せになった場合に、とれない場合は五百キロ、とれて一トンの二百万トン。政府の方は貿易摩擦等を非常に考えておられるようだが、これは一割にも満たない。全部に植えたって一割にも満たない。特に私は、さっきから一生懸命に提言しているのは、野菜とかジャガイモとか定着しない単作地帯においては稲を植えるように土地改良をしておるのだというところから見れば、二十万ヘクタールのうち半分だと思う。これは総理、どうです。  古米処理だってそうだった。五十四年から古米処理をする、東南アジアに売ったらどうかと言ったら、最初は試験的に二十万トンを計上したら九十五万トンが出た。これはいいものだなと思っていたら、アメリカの方から案の定、日米定期協議で、そんな米をおれの売るマーケットに持ってきてもらっては困るということであった。それにしても七十一万トンまでは売れた。これを飼料に置きかえていった場合、ある程度話になると思う。  何か、いまの農民の声を考えてもらわなければならぬということも、貿易の方も考えなければならないということもあわせて、総理大臣としてはこの問題をどう思いますか。しかも、総理大臣は農林大臣の経験者でもあり、東北の人でもあり、わかると思うのだが、この辺は総理大臣、どうです。
  144. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 食糧の自給力を高めるということは、わが国の農政の基本的な方向でございまして、いまの家畜の飼料、えさの自給力をふやすということもそういう方向に沿うものだ、こう考えております。  ただ、いまの米の輸出の問題につきましては、アメリカはもとよりでありますが、タイでありますとか、そういう米の輸出に大きく依存をしておる国の市場との摩擦の問題もございますので、十分連絡調整を図りながらこれを進めていく、こういう方針で臨みたい、こう思っております。
  145. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは残念ながら、処罰するというあれはないんだ。処罰するというのはないんだ。処罰の話をすると、この間公聴会のとき、御婦人の評論家が来まして、酒税を上げる、酒代が上がれば、私も飲むのですが、主人も飲む、だから買う酒の量を減らすという対抗手段で臨む、だから収入は必ずしも思うように上がらないだろう、大蔵大臣、この間こういう発言があったわけです。大蔵大臣は、いや、どうせこれは二、三カ月の上がったやさきの程度だろうとうそぶいてはいられない。これはやはり対抗手段としてですね。ところが、それじゃひとつ、本当の米でつくっている酒を飲もうか。いまの日本の米というのは、米こうじからつくるのは三割しかないのだから、知っているように。あとの七割は薬局からアルコール買ってつくるわけです。一番うまいのはどぶろくです。飲んだことない人はおかしいというのだけれども、おれは飲んでいるから。その問題と違って、このえさ米はこれからつくります。どんどんつくっていきます、つくらせていきますから。  そこで、政府はこれから中核農家をつくる考え方だというんだけれども、中核農家というのは、面積的に言うと一体どのくらいのことを言うのか。
  146. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  中核農家といたしまして、農家経済調査で調べております結果で御報告いたします。  これは昨年もお答えしたことでございますが、男子一人年間百五十日以上の農業労働に従事する者が一人以上ということで農家を調べて、その該当する農家につきまして農家経済調査で調べますと、全国では二・三六ヘクタール、約二・四ヘクタール程度、このようになっておるわけでございます。これは昭和五十三年度の農家経済調査でございます。
  147. 川俣健二郎

    ○川俣委員 官房長、そうなると面積規模が二・四ヘクタール。そうすると、いまの専業農家というのは何ヘクタールなんですか。
  148. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 五十四年の農家経済調査をベースにいたしますと、専業農家の一戸当たりの経営耕地面積は二町三反五畝になっております。なお、五十四年度の全平均、先ほど五十三年で申しましたが、中核農家は二・四九ヘクタール、このようになっております。(川俣委員「専業農家の方」と呼ぶ)専業農家は二・三五ヘクタールでございます。なお、専業農家には高齢者の専業農家が入りますので、規模が若干落ちるということは最近傾向としてございます。
  149. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私のあれでは、専業農家は一・七から一・八。この一・七から一・八の専業農家を基盤にして中核農家で食糧をつくらせる、こうおっしゃるのですが、私は、地域経済というのを何と心得ておるか知らぬけれども、いわゆる規模を拡大する、中核農家で農業をやらせるということなんだから、たとえば米代金にしろ、収入をいまの倍から三倍近くにするわけだ。ということは、農家数を二分の一から三分の一にしていくということなんです。そうなると、米代金が一軒のうちに三倍くらい入ることはわかる。ところが、これが地域にとってどのようにだめかというと、同じ米代金券少数農家にたくさん入っていりて初めて地域の経済というのは保たれるのです。床屋でも、パーマ屋でも、おみこし担ぐ人でも三分の一でいいわけだから、三分の二はもう農家から出ていくわけだ。それからくつ下だってそうだ。一人の人は一遍に二足も三足もはかないわけだ。しかも農家所得は四百二十万だ。四百二十万のうち農業所得は統計によると百三十万、時間がないから言うけれども。そうすると、兼業農家で農村がもっているということは理解できる。  大臣、どうですか。あなたのところもそうだけれども、兼業農家のおかげで地域経済が保たれているんです。
  150. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 そういう面も私どもが十分理解しておりますがゆえに、専業農家と兼業農家との調整関係等を農村の地域社会でどのようにバランスをとって生かしてまいるか、こういうところにやはり雇用の場も将来考えていかなければならない、こういう問題も付随してくるわけでございますので、総合的な立場からこれからの農政を展開してまいらなければならない。しかし、方向としては、やはり農業に秀でた人が農地の活用をして生産性を上げるということも十分取り入れて考慮をしていかなければならない、こういうことを申し上げてきておるところでございます。
  151. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで私は、結論じゃないが、また時間がなくなりましたので譲りますけれども、いま進めておる中核農家、農地三法で土地の流動化を図って一カ所に集めるという考え方はわかるが、しかもその上に、後ろから財界の方が、兼業はやめるべきだ、切り捨てるべきだ——こういう考え方で政府が考えているなら、これは大変な間違いだ。高度成長だって、経済が成長したといっても問題は農村の労働力じゃないか、数字を示す時間はないのだけれども。したがって、中核農家の育成強化、農地三法というものを改正したから農地が手放されるであろう、一カ所に集められるだろうということで太鼓をたたいたってだめだ。  農民というのは、苦しければ苦しいほど土地にしがみつくという習性がある。これは歴史なんだからしようがないのだ。さっき言ったように、四百二十万のうち百三十万しか農業所得がない。これは五十三年なんです。この間、五十五年のはどうですかと局長に聞いたら、局長は、五十五年は総合で、仕送りとか娘から送ってくるのとか入れて、一家の所得が五百十万だそうだ。その中の百三十万から百四十万だ。それでもしがみついていて土地を手放さないという習性がある。これを理解しないで、兼業農家は切り捨てるべきだという財界の意見がこういうようなことでずっと押し寄せてくるのなら、私は、やはり一考察あるべきでないか、こう思っておるのだ。農林大臣、どうですか。
  152. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 先ほど申し上げましたように、方向としてはやはり生産性の向上を十分考慮していかなければならないという路線の上に乗って、だからといって、すぐにそれでは兼業農家をと言っても、御指摘のように、農村の地域社会の発展のためを考えなければ、信頼関係を確立しなければ、農地の貸借等も進めることができないわけでありますから、その辺のところは十分実情に合った施策を進めてまいりたいというふうに考えております。
  153. 川俣健二郎

    ○川俣委員 しかも、私はもう一つ指摘したいのだけれども、政府全体が農地三法で土地の流動化を図るというなら、やはり一番考えなければならぬのは税金ですよ。土地を手放したら、あたりまえに所得として税金をかけられるので、どうして農地を放せるか。農地というのは、おやじから兄息子に譲られるから初めて無税なんです。これを現金化してみなさい。すぐ三人なら三人の子供に民法によって等分に分けなければならない。その辺の税対策もこの農地三法には一切ないのだ。せいぜい、五百万は免税ですよと大蔵省は言うのでしょうけれども、五百万ならいまの農業委員会にかければ五百万はできる。あるいはずっと伸ばして累進課税の形もとるよと言ったって、それだって大したことじゃない。だから私は、政府の一貫した農地三法で農地を流動化して中核農家で集めようという手だては、ねらいはわかるんだが、機能はしてないということを指摘したいのです。どうです、これは。この辺、農林大臣はわかると思う。
  154. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農用地利用増進事業が、さきの国会でもっていわゆる農地三法の成立を見て、目下精力的に進められているところでございます。農林水産省といたしましても、事業の採択基準を緩和するとかあるいは奨励事業として補助金を交付するとか、各般の施策を従来ともとってまいったところでございます。  あわせて税制につきましても、五十六年度、目下国会にお願いしておるところでございますが、一部改正をお願いいたしているところでございます。  具体的に申し上げますと、所得税につきましては、譲渡所得の特別控除について五百万円を控除の対象とするということ、それから特定の事業用資産の買いかえ、交換の特例の対象とすること、それから登録免許税につきましては、所有権の移転登記に係る登録免許税につきましては税率を千分の九、これは一般の場合は本則は千分の五十でございますが、それを千分の九に軽減するということ、それから地方税でございますが、不動産取得税につきまして、不動産取得税の課税標準を、取得の場合は取得価格から三分の一、地域によっては四分の一になりますが、それを控除する、それから交換の場合は、交換によって失った土地の価格または取得した土地の価格の三分の一のいずれか多い額を控除するというような各般の措置を講じているところでございます。  これで十分かということになりますと、私ども、実は要求の段階ではもう少し背伸びしたといいますか、高い水準のものを希望したわけでございますが、今日の実情等からいたしまして、それからまた、実態的に今後の事業の進行を見た上で改めて検討していくべき問題もございますので、五十六年度につきましては、以上申し上げましたような点で大蔵省の税務当局とも合意いたしまして、この税制改正をお願いするということにいたしておるところでございます。
  155. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから、五百万なんというのはいまでもあると言うんだ。もっと具体的に言うと、農林省は千五百万を提示した。なかなか大蔵省の壁は厚くて、いままでどおりの五百万になった。時間がないので、具体的にはひとつ個別的に御指導願えますかな——それじゃ、おかげさまで、どのぐらい税金がまけられるかということは、具体的に後で個別に御指導願いたいと思うので、この問題は終わります。  大変申しわけありませんが、あと通告しておる医療問題でどうしても一つ聞いておきたいのは、いま世に騒がれておるいわゆるベビーホテルなんですが、夜中の託児所というか、終日のもの、これが大変に問題になっておりまして、私がつかんでおる数字では、全国で五百八十七カ所、これだけある。しかし、実際はまだまだあるだろうと、調べておる人方は言っております。時間がなくなったので、この問題は後で同僚議員からさらに詰めますが、これは許認可は一切要らない。消防庁の問題はどうなるのだろう。許可、認可は要らない。届け出は必要かといったら、それも要らないという。そして五百八十七カ所、赤ちゃんをずらっと蚕だなのように、こういうことです。これではベビーホテルはほっておかれませんよ。厚生省はどう思います。
  156. 園田直

    ○園田国務大臣 ベビーホテルの問題は、昨年の年末に御意見を承ったところであります。自来数カ月間、無届けでありますからなかなか実態の把握が困難でありましたけれども、ようやく何とか把握をし、これに対する見当を関係方面、特に消防庁と厚生省が苦労して見当をつけたようであります。したがいまして、発言した私は楽でありますが、動いた当事者は大変なことでありますから、願わくは苦労をした児童局長答弁をさせていただきます。
  157. 金田一郎

    ○金田(一)政府委員 ただいま大臣からお話がございましたが、私ども、他の省庁等とも相談いたしたわけでございますが、ベビーホテルは、本来、保育所類似の事業でございます。そういう意味におきまして、児童福祉法による最低基準も現に適用になっておりません。そのための監督規定も適用にならないわけでございますが、現在、児童福祉法の第五十八条に、ベビーホテルを含みますこういった無認可のものに対しましては、不適当なものについては事業の停止または施設の閉鎖を命ずることができることになっております。ただ、残念ながら、これにつきましては手続規定が法律上若干欠けておりますので、そこらあたりも中心にして検討いたしているところでございます。  なおまた、安全面等の問題につきましては、ただいま先生御指摘いただきましたように、昨年十一月に私ども調査をしたわけでございますが、全国的な調査の結果、ただいま御指摘のような数字がわかったわけでございます。したがいまして、特に安全面につきましては消防庁ともいろいろ相談をしているわけでございますが、これにつきましても消防法等の問題もいろいろあるようでございますが、調査いたしました結果のベビーホテルにつきまして、どのような方法で安全面について両省相談して点検をするかということにつきまして、ただいま鋭意相談いたしております。  なおまた、ベビーホテルの急増の背景につきましては、夜間保育や乳児保育の問題もございますので、それらにつきまして、現在の保育所やあるいは乳児院でどのような受け入れをするか、こういった点もあわせて、ただいま検討いたしているところでございます。
  158. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ありがとうございました。終わります。
  159. 小山長規

    小山委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、野坂浩賢君。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  160. 野坂浩賢

    ○野坂委員 総理にお伺いをしたいと思うのですが、できるだけ国民の皆さんによくわかるように私も質問したいと思いますし、総理からもお願いをしたいと思うのです。各大臣も、余りむずかしい言葉を使わないで、わかるようにお願いしたいと思います。  総理の施政方針演説をお聞きをしました。今日までわが国の経済が発展をしてきたのは、平和主義民主主義基本的人権の尊重、そして自由体制であった、今後もこれによって寄与する、こういう最後のお話がありました。その前に総理が特に強調されましたのは、今日の世界情勢を説かれまして、われわれは西側の一員として位置づけておる、その意味は、自由と民主主義の論拠に立って、基本的人権を尊重しながら、それによって世界の平和と安全に寄与したい、こういうふうにお答えになったわけでありますが、そのとおりでありますか。
  161. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  162. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これから私は金大中の問題について質疑をするわけでありますが、いまお話がありましたように、この三つの条件というものを尊重してこれから進められるわけでありますが、いま韓国におきましての問題がございます。この中で、金大中氏と全斗煥、現大統領ですが、どちらが民主的だというふうにお考えでございますか。——その前にこういうことを言っております。アメリカは、全斗煥体制に対しては不満や危険はあっても、他にかわる有力な政権がないために、これを盛り上げざるを得まい、こういう見解を述べています。金大中氏は、御案内のように、韓国における政治報復に終止符を打たれ、民主主義達成に役立つなら私は死を恐れない、こういうふうに述べております。全斗煥氏は、国内の安定については社会的、政治的安定が重要であると述べて、社会秩序安定が危機の場合は、政府権力を強化をする断固とした措置をとる、こういうふうに述べられております。日本国民も、二人を並べてみていろいろと意見があるところでありますが、総理はどちらが民主的というふうにお考えですか。
  163. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 どちらが民主的かという御質問でございますが、全斗煥氏がいま韓国の指導者として政権を担当しておられる。そのための選挙も過般行われまして、近く最終的に選ばれるようでございますが、私は、このような選択は、基本的に韓国の国民が自由に選択すべき問題である、このように考えておるわけでありまして、他国の政権並びに指導者について私がこれに批判を加えるというようなことは適当でない、このように考えておるわけでございます。  金大中氏は、いま韓国の裁判を経て、そして高次の判断から減刑をされて、無期懲役という立場にあられるわけでございます。これも基本的には韓国の国内問題でございまして、日本に来ておられた金大中氏が何者かの手によって拉致されたというようなこと等もありまして、日本国民は、金大中氏の身柄につきましては大きな関心を持っておったわけでございます。政府も、そういうような観点からいたしまして、第一次、第二次の裁判、そして大法院の裁判の行方等に当たりましても、この金大中氏の身柄については重大な関心と憂慮を払ってまいったところでございます。それが一たび大法院において死刑の宣告、つまり上告棄却というような結果でございましたが、先ほども申し上げたような結果で助命をされたということにつきまして、日本国民のいままでの金大中氏に対する関心からいたしまして、安堵をしたというのが率直な私の感想でございます。
  164. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私の質問に答えていただきたかったわけでありますが、いずれが民主的な人士であるかという点については、韓国内部の問題であるから特に批判はできないということであります。それにまだ私が質問をしていない最終判決の減刑の問題に触れられまして、総理は重大な関心の表明をしておった、憂慮の念も表明をしておったということであります。しかし、ほっとしたということでありますが、この前の臨時国会で、ここにいらっしゃる大出さんからもお話があって、判決文全文をとってこなければその判断がつきかねるという外務大臣のお答えがありました。  今度は、それの全文を入手をすることを断念されたということでありますが、新聞ではそういうふうに承っておるわけですが、どういうお考え方でそのようになされたのか、お伺いします。
  165. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  この前の臨時国会で判決文のことについて言及をしたことがございます。判決文の要旨で、日本の国内での政治行動を問わないということはわかるが、なおその上に判決文があればなおいいという意味のことを言ったことは確かでございますが、それがないと判断が右も左もつきかねるということを言ったんじゃなかったと、いまでも私は記憶しておるわけでございます。  今度の判決がありまして、韓国政府の高い次元からの判断で無期ということになったわけでございますが、これはいろいろな向こうの事情で判断をされたのだろうと思いまして、日本としましては、日韓関係の今後の友好促進の上からは、これは好ましい措置であった、こういうふうに考えておるわけでございます。そういう見地に立ちまして、要旨でいままでもわかっていたことでございますし、今後とも判決文を請求していくということは、両国関係の将来を考えた場合に、これはどうも適当でないということを判断しまして、この前お答えをしたような次第でございます。
  166. 野坂浩賢

    ○野坂委員 新聞ではこう書いてありますね。「外務省が金大中氏裁判の判決文入手を断念したことは、これまでとってきた態度と矛盾し、今後に問題点を残す。」だろう、こういうことを前文にして、以下いろいろ書いてあるわけでありますが、判決の理由は国家保安法、これですか、要旨では。
  167. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いまの新聞論調ということでございますが、われわれ判決文を請求しておりましたときは、金大中氏の身辺に重大な関心があるということは、まあ極刑というようなことになれば日韓の将来に非常に影響があるということを懸念しまして、これは判決文をということを、死刑を免れる一つの方法というようなことも頭に置いて言っていたのでございまして、いままでの態度と矛盾しない同じ方向の考え方で、今度判決文を請求しない、要請しないということも同じ線上の考え方だと私は思っておるわけでございます。  なお、今度のことにつきまして、大法院の判決は棄却でございますので、従来は、恐らくそういうことと推定されるということを外務委員会等で答えたわけでございますから、やはりその点は変わってないじゃなかろうか、こういうふうに思っております。
  168. 野坂浩賢

    ○野坂委員 国家保安法ですね、よくわからぬのですがね、まあ内乱陰謀罪というのは死刑というのがありませんですね。国家保安法には首魁という形で第一条にあるわけです。「首魁は死刑または無期懲役に処する」この欄だと思いますが、そうしますと、これは韓民統の議長になった、韓民統の議長になったのは一九七三年の八月の十三日だ。金大中氏が拉致されたのは八月の八日であります。反国家団体というふうに指定したのは一九七八年ですね。五年後です。それが第一次、第二次の政治決着の中で、外国にいたときの言動については問わない。そうすると、これは関連が出てくるということになりますね。これは非常に問題だから、判決文全文をやはり入手をして適正な判断をする必要があろう、こういうふうに私どもは理解をしておったわけであります。そうするとこの辺が、日本での行動ではできないわけですから、反国家団体に指定するとしても。そういう点についてはどういうふうにお考えでございますか。
  169. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  判決要旨にもその点は触れておりますが、日本にいたときの政治行動については問わない、韓国へ帰ってから後の行動につきまして証拠によって判断をしたという意味の要旨が有権的な解釈で来ているわけでございまして、日本としましては、これはその要旨で政治決着には反しないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  170. 野坂浩賢

    ○野坂委員 入手断念の理由は、減刑措置を評価をした、それで今後の対韓国との関係を修復することが大切だ、こういうふうに判断をしたということになりますか。
  171. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま野坂さんおっしゃるように、今後とも日韓関係の友好緊密化ということを考えていくということであれば、死刑の判決が無期に減刑されて、われわれが本当に憂慮していた事態を免れたということになったわけでございますので、これ以上判決文の要請を続けることは、日韓関係の緊密化ということにプラスにならぬだろうということで判断をしてやったわけでございます。
  172. 野坂浩賢

    ○野坂委員 総理は先ほど、私は基本的な人権を尊重するのだ、これで一貫してやってきた、今日日本の経済発展もここにある、こういうふうに述べられたわけであります。減刑措置といいましても、命が助かったということで、政治的には死刑の判決だ、こういうことに通ずるだろうと思うのです。したがって、そういうことを含めまして、総理が考えておられるその基本的人権の尊重という意味で、今後もやはり金大中氏の減刑といいますか無条件釈放、その方向に向けて、あなたの精神から考えればその方向に行かざるを得ないと思うのですが、それについてはどうお考えかということが一つ。  それから、アメリカのニューヨーク・タイムズ等では、その後二、三カ月後にはアメリカに行くというふうに報じておるわけですが、それについての情報はどのように入手をしておられるのか、どういう動きがあるのか、これは外務大臣にお伺いしたいと思いますが、その際に日本へぜひ来たいということであるならば、総理大臣としてはお受けになるかどうか、その点伺いたいと思います。
  173. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 総理がお答えになる前に私からお答えをいたします。事実関係がございますのでお答えします。  一時、新聞に、アメリカへ渡るのじゃないかというようなことが出たことがございます。私どもも、ソウルにある大使館あるいはアメ勝方の大使館を通じてそのこともいろいろ調査をしたのでございますが、全然そういう動きはないということでございまして、その報道は何か別などこかのニュースだったらしいのでございますが、事実はそういうことはなかったわけでございます。いまもないと思っております。でございますので、いま野坂さんおっしゃる、そういうときに日本に寄りたいというときに受け入れるかというお話でございますが、これは本当の仮定の問題になりますので、これはもしもそういうことがある場合にどうするかということで、その場合には検討もしますが、いまここでお答えすることじゃなかろうと思っております。  それからもう一つ、身柄のことでございますが、これは拉致事件があっただけに、身柄についてやはり関心があることは確かでございます。しかし、いまの段階で死刑が無期になった、韓国の国内での政治活動を法律によって処断ということでございますので、これはあくまで韓国の国内の事情、国内の問題でございますので、これ以上いろいろ日本側が意向を伝えるということは、これは内政干渉になるおそれが多分にございますので、いまのところは、この問題につきましては一応の終止符が打たれたということで、今後は日韓関係の緊密化ということに努力をしてまいろうというつもりでございます。
  174. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は施政演説等におきまして、わが国の憲法の基本的な理念、そして自由経済体制、これを堅持してきたことが今日の日本の平和と繁栄をもたらした、こういうことを申し上げてまいったわけでございます。私はいまでもそのとおりに確信をいたしております。また、平和主義民主主義基本的人権というのは、これは人類全体にとっても堅持すべき不変の理想である、私はこのように信じておりますが、ただ、それぞれの国におきましては、それぞれの主権のもとにおきまして、国民のなした行為に対して裁判その他のことが行われております。金大中氏の問題も、まさに韓国において、韓国の国内問題として司法の独立性に基づいてなされた結果でございまして、それに、日本憲法がこうであるからということでとやかく申し上げる立場にはない、こう私は思っております。
  175. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間が余りありませんが、死刑が確定をしたということは、金大中氏の日本での言動が最終的に国家保安法違反ときめつけられた、こういうふうに理解しないわけにはいかぬと思うのです。金大中氏の海外での言動は不問に付するという金大中氏事件の政治決着の日韓合意というものを明らかにほごにしたものだというふうに理解をしないわけにいかぬのです。いわゆる重大な約束違反である、こういうふうに私たちは考えざるを得ません。大統領指示の減刑で金大中氏の生命は最悪の事態を乗り越えたとはいえ、政治決着の重大なる違反であるという面は払拭できないと思います。私たちはそう言わざるを得ない。いつの日にか大きな問題を残すであろうということを総理指摘をしておきたい、こう思うのであります。  そこで、私は朝鮮民主主義人民共和国の問題についてお尋ねをしますが、朝鮮統一についての環境づくりをやるということを、外務大臣は所信表明演説で述べられております。わが国は朝鮮半島の「安定確保と緊張緩和のための環境づくりに今後とも積極的に協力する所存であります。」云々、こうあります。この意味から、緊張緩和の方向に進まなきゃならない。そういう中で、二月一日から四月の初旬まで、米韓大合同演習が、チームスピリット81という名前ですでに行われておるわけでありますが、防衛庁は、一昨年でありましたかへ山下防衛長官が訪韓をされまして、いろいろと話があり、最近おやめになるのですか、きょうですか、きょうおやめになる竹田統幕議長もこの点については了承しておるということでありますが、防衛庁は、このチームスピリット81の規模なり、日本の防衛庁は参加をしておるのではないかというような話もございますが、その点はどうなのですか。
  176. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  これまで行われました米韓合同演習、チームスピリットと呼ばれておりますが、これはもっぱら韓国防衛を目的として米韓両国で行われる共同演習と承知しております。同演習がそのような性格である限り、自衛隊がこれに参加する考えは全く持っておりません。  なお、本期演習は、韓国領域における不測の事態に対処するため、米韓両国軍の展開、受け入れ及び運用について各級司令部及び部隊を演練することを目的とし、一九七六年から例年実施しているものであります。ことしのチームスピリット81演習は、韓国軍約十万人、米軍約六万二千人が参加し、二月一日から約二カ月間、韓国領域で実施されるものと承知しております。  以上をもってお答えといたします。
  177. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういう種類の演習には、今後ともわが国の防衛庁は参加しないということを確認してよろしゅうございますか。
  178. 大村襄治

    ○大村国務大臣 そのとおりであります。
  179. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この委員会でも、ブラウン国防長官の発言が、北からの、朝鮮民主主義人民共和国の全面攻撃がある、そういう点について対応するために軍備を強化をしていかなきゃならぬ、こういうことを述べられておるわけであります。これについて、朝鮮民主主義人民共和国からの南進はない、こういうふうに外務大臣は中国の例等を引いてお話しになりましたが、南進はない、こういうふうに判断してよろしゅうございますか。
  180. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 この前、いま野坂さんのおっしゃいましたことを挙げて御質問があったわけでございますが、朝鮮半島の北と南、人民共和国と韓国とですね、その間に緊張状態があることは、これは私は否定しない。それはそのとおりだと思うわけでございますが、それでは北側が全面的に韓国を攻略するというような差し迫った状態があるかどうかということの認識でございますが、これは前に朝鮮戦争がありましたとき、あれは中国が北と一緒に戦ったわけでございますが、中国は米中の国交正常化もしている、日本ともしているという関係でございますし、朝鮮半島を取り巻く情勢が、中国も、恐らくソ連もアメリカも、これはなるべくあそこに紛争が起きないようにということを本当は考えているのじゃないかというふうに思うわけでございますし、私はアメリカにも、何回もその話をしたことがございます。中国とも、行くたびにその話をしたわけでございまして、特に中国は、南進というのは考えられぬということを何回もわれわれに言っているわけでございます。でございますので、南北の間の緊張は、これは否定をしません、そのとおりあると思いますが、全面的な北からの攻略というようなことがないように希望しますし、また、そういうことがないような環境をつくるということも日本として一生懸命に努力する必要がある。朝鮮半島の平和というのは、日本の平和、安全にとっても非常に大切でございますので、今後ともそういう努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  181. 野坂浩賢

    ○野坂委員 アメリカのレーガン大統領は、韓国からの米軍の撤退は中止、技術援助は強化、こういうことを緊張の前提として言明をしておるわけであります。  アメリカの大統領と鈴木総理は今後会談をされるわけでありますが、それについては、いま外務大臣が御報告になったように、緊張状態はあるけれども、そのようなことはあるまい、こういう認識の上に立って首脳会談にお臨みになる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  182. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 朝鮮半島の情勢につきましては、ただいま伊東外務大臣から申し上げたとおりでございます。私も同様の認識を持っておるわけでありますが、先般、全斗煥韓国大統領が訪米をし、レーガン大統領との間に、米韓同盟の基本の上に立って今後も米地上軍が韓国に駐留をするということについて合意がなされたということは、これは南北の軍事的なバランスを崩さないこと、これが現在の朝鮮半島の平和が保持されておる、こういう認識に立つものだ、こう思っております。  私はそういう状況にあるということで認識をいたしておりますが、今後は南北が話し合いによって平和的な統一ができるような条件、環境というものをつくることに日本もできるだけ努力をしていきたい、そういう考え方を私はレーガン大統領にも申し上げたい、こう思っております。
  183. 野坂浩賢

    ○野坂委員 緊張の緩和をするためにどのような努力をされてきたのか、これが一つ。  時間がありませんから申し上げますが、政治家の交流ですね。外務大臣のお話では、経済、文化、そういうことをお話しになっておりますが、緊張緩和の環境づくりということになれば、やはり政治家の交流ということは必要であろう。外務大臣もいらっしゃったことがありますし、この中にも多く、いらっしゃったことがある、自民党の代議士の皆さんも。そういう意味で、その交流は必要ではないのか。よく日本の真意を伝え、そして朝鮮の自主的な、平和的な統一を促進するためには必要ではないだろうか、こういうふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
  184. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  緊張緩和の努力でございますが、前の大平総理が華国鋒さんと会ったときも、この問題を取り上げて話したときに私も同席をしたわけでございます。あるいはまた、私は外務大臣になって二度中国へ行きましたが、常にこの話もしたわけでございます。総理も、アメリカからブラウンさんが来たり何かするときには、こういう朝鮮の問題に必ず触れておられるのでございまして、われわれとしましては、本当にあそこの半島で平和が来るように、具体的な、実質的な話し合いができるようにということで期待をしておるわけでございます。  実は今度は、全斗煥大統領がワルトハイム総長に会いまして、この間呼びかけをしましたことについてへ北の首脳と話し合いをすることについて国連でも仲介をしてほしいというようなことが透ったことが新聞に出ております。いろいろ国連でもそういう話し合いはわれわれの代表も聞いておるわけでございまして、今後、具体的にどうということをいま申し上げませんが、できるだけの協力はして、平和な環境ができるようにということをやりたいと思っております。  それから、政治家の交流の問題でございますが、日本側の政治家が何人も北へ行かれたことは事実でございます。私も前に行ったことがございます。北側からは、いわゆる政治的な高いレベルの人の交流というものはいま考えていない。ということは、それは日韓関係、微妙な関係がございますので、その辺のところはよほど慎重に考えぬといかないというふうに思いまして、この問題につきましては、貿易とか経済とか文化とかいうことで積み重ねていくということをやっている。政治家、高いレベルの人が向こうから来るということにつきましては、これはよほど慎重に考える必要があるというのがわれわれのいまの態度でございます。
  185. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その環境づくりのためには意思の疎通ということが非常に大事だ、こういうふうに思います。そういう意味で、常に総理や伊東外務大臣は、日本の自主的な立場、主体的な立場に立って物事を判断をする、こういうふうにお話しになっております。韓国の全斗煥体制はそれをきらう、交流をきらうということをわれわれもよく聞いておりますけれども、十分説得をして、百九十億円の対韓援助についてもやられたわけだし、定期閣僚会議もやる、何とかかんとか早くやろう早くやろうという、そういう感じであるわけでありますが、自主性を堅持して、朝鮮民主主義人民共和国との政治家の交流についても日本の自主性を発揮して進められるように、特に要求をしておきます。  次に、国鉄問題についてお尋ねをしますが、国鉄の再建についてお伺いします。(「もう見込みないよ」と呼ぶ者あり)  総裁もおいででありますが、国鉄再建法は通過をした。これによって再建ができるのかできないのかというのは、いまお話が出ておりますようになかなかむずかしい、こういうのが一般の国民の見方ではないか、こういうふうに思います。  そこで、具体的にお尋ねをしますが、私は地域でいろいろと団体交渉を聞くわけでありますが、当局と組合側と話し合いをされております一番小さい団体、分会等は、これに協力をして、たとえば三十五万人体制でもわれわれは協力をして、本当にわれわれにはどういうふうにメリットがあるのだろうか、われわれ従業員、よくなることがあるだろうか、こう言って組合員の皆さんがお聞きになりますと、下級幹部でありましょう、その方たちは黙して語らないですね。下を向いてなかなか物を言わない。よくなるともよくならぬとも言われないですね。本当に国鉄再建法というのは、これによって再建ができる、こういうふうにお考えですか。
  186. 高木文雄

    ○高木説明員 再建ができるとかできないとかということに直のお答えにはならないかもしれませんが、現状におきましては、私どもがなすべきことをまずなさねばならぬ、それはやはり収入の増加を図り、経費を節することであろうかと思います。経費を節するという場合に、私どもの鉄道のコストの中で占めます人件費の割合が一般製造業その他と比べて著しく高い。また、民鉄あるいはバス等の民間の輸送業に比べましても人件費率が非常に高いということでございますので、経費を節します場合の焦点の一つとしては、やはり少しでも少ない人手で同じだけの仕事をするように持っていかなければならないということを、繰り返し職員諸君に呼びかけておるわけでございますが、率直に申しまして、それだけではなかなかまだむずかしい面がございます。  それは何かと申しますと、一番困っておりますのは年金関係の問題あるいはまた、戦後急に採用されました諸君が最近は大量にやめていくわけでございますが、その退職金負担の問題があるわけでございます。これは、ちょっと通常の企業ではお考え及ばないような巨額のものをそれらのものに要しておるわけでございまして、私どもは、これは過去からのものでございますので、現在の段階でその分をコストに算入した運賃でお客様にお乗りいただくというわけにはいかないということから、そうしたわれわれ自身の手ではどうにもならぬ問題については、やはり行政上あるいは財政上の御援助を賜りたいということをお願いをしておるわけでございます。ただ、これは非常にむずかしい問題でございますから、いま、じゃこうしてやる、ああしてやるというところまで結論は得てないわけでございますので、どうしても私どもの説明も、いささか説得力を欠く面があるかもしれません。しかし、われわれといたしましては、それらの点につきまして、第一線管理者あるいは労働組合の幹部諸君にも繰り返し、これ以外に道がないという意味でひとつ取り組もうではないかということで叱吃激励をしているという現状でございます。
  187. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま国鉄総裁がお話しになったのは、構造的な欠損部分ということになりますね。年金の問題やあるいは公共負担の問題を指摘されておるようでありますが、一昨年の十二月に閣議了解事項というのがあります。いわゆる五兆円のたな上げ問題あるいはローカル線、三十五万人体制の実施、そういうことが各項にわたって書いてあるわけでありまして、それがいま再建法となってあらわれておる。その中で、いま国鉄総裁がお話しになりました構造的欠損部分、たとえば公共負担といいますか、通勤、通学——通学の場合につきましては、五〇%は割引しなければならぬという法律があります。いまは割引率は七七・三%ということになっておりますね。今度は九・七%運賃を引き上げて、特に通学定期等は二三%も引き上げた。負担は政府でなしに受益者、いわゆる子供たちに、またその親たちにかかっておるという現状であります。閣議了解では、速やかに所要の財源を検討して、そして各省庁間で調整をし、これを処置するものとするということが公共負担の場合にも明記してありますし、さらに、年金の場合にも明記してあるわけであります。これについて、文部省はどのように大蔵省に要求されたのですか。
  188. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいま御指摘のごとくに、冒頭お話しになりました国鉄の再建、これらの問題につきましては政府を挙げて協力いたしておるような次第でございますが、われわれ、多数の学生、生徒を持っておりまする所管省といたしましては、事務当局同士においてずっと折衝を続けておる段階でございます。  なお、詳細なことにつきましては担当官から御説明を申し上げます。
  189. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いや、いいんです、時間がありませんから。事務的な折衝をしておると言うのですが、五十六年度の予算の要求に全然載ってないじゃないですか。どうなんですか、それは。
  190. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 その件につきましてはただいま折衝を続けておる過程にあることを申し上げた次第でございまして、まだ要求の段階におきまして、文部省といたしましてこれこれを要求するというところ以前の学生通学の問題で折衝を続けておる次第でございます。
  191. 野坂浩賢

    ○野坂委員 だれと折衝をしておるのですか。
  192. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 担当官から申し上げます。
  193. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、関係省庁におきまして、現在検討会議を設けて検討を進めておるところでございまして、その検討の結論を待ちましてそれに応じた措置を講じてまいりたい、かように考えております。
  194. 野坂浩賢

    ○野坂委員 厚生省は、この間も質疑がありましたが、身体障害者の割引券とか戦傷病者の特急乗車券、こういうものについてはどうお考えなんですか。
  195. 山下眞臣

    ○山下政府委員 文部省、運輸省と同様の検討をいたしておるところでございますが、私ども厚生省の気持ちといたしましては、国鉄のほかにも、あるいはNHKの受信料あるいは民間の交通機関、各種の減免を身体障害者についていただいておるわけでございます。一つの象徴というふうに考えておりまして、身体障害者の福祉の政策にもいろいろ優先順位がございまして、積極的に私どもの方でこれを要求するという考え方を持っていないことをその席では申し上げておるわけでございますが、なお今後御相談をしてまいりたいと思っておるわけです。
  196. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運輸大臣、構造的欠損部分の追加費用の問題ですね。たとえば昭和二十四、五年のころには満鉄とか華北交通とか、そういうところの皆さんが大量に国鉄にお入りになった、そういう方たちがそろそろ定年になってきた、こういうものの追加払いというのが大体二千七十五億円ありますね。これについてはどうお考えなんですか、政府としては。
  197. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お尋ねの構造欠損問題の中の公共負担の軽減について、いま文部省なり厚生省から意見を述べたのでございますが、この問題は、御承知のように五十四年十二月の閣議了解で決めまして、そして昨年の五月から事務当局によりますところの折衝をいたしておりまして、十回にわたる会議を開き検討いたしておりますが、なかなか広範な問題になってまいりまして、まだ結論を見ておりません。  そこで問題は、国鉄だけがこの公共負担を担当しておるのではございませんで、それじゃ私鉄の方はどうするかということが起こってまいります。それから公共負担の範囲も、通勤、通学だけではなくして、いろいろな問題に対する公共負担も現在やっておりますので、もう少し時間をかしていただきたい。根本的にこの公共負担のあり方を検討いたし、それぞれ大蔵省等を入れて協議の結論を出したい、こう思っておるのでございます。  もう一つの構造的欠陥の御指摘でございます退職金、共済年金とそれから特別退職金と二つあるわけでございますが、(野坂委員「年金もありますよ」と呼ぶ)その年金の方につきましては、現在、大蔵省の中に設けられております専門家によります研究会、ここで議論をされております。この結論を待つということに相なっておるのでございますが、その以前に、実は国鉄総裁の私的諮問機関でございます年金の研究会がございまして、その懇談会と申しましょうか研究会で、国鉄総裁に対する意見具申がございました。その意見具申は、国鉄共済は成熟度が非常に高い、したがって財政窮迫しておる事実はもう当然のことであるが、これの解決の方法として、同種類の共済年金と統合してはどうかということでございました。それを持ち込みまして、現在、大蔵省の中に設置されております研究会で検討を始めておるということでございまして、その専門家による研究会の結論を待ちまして速やかに財政当局と協議し、決定いたしたいと思っております。
  198. 野坂浩賢

    ○野坂委員 次に質問を変えまして、東北・上越新幹線、いよいよこれからやられるわけですね。これは昭和四十六年の十月に始まっておるわけです。当初は総事業費八千八百億円を予定しておりました。ずっと改定をされまして五十五年三月十八日の改定は、結局仕上げは八千八百億が二兆五千九百七十億円になっておりますね。それから上越線、これは四千八百億円というのが、同じ四十六年からでありますが、五十五年の三月では一兆六千百億ですね。それぞれ当初の総事業費の予定よりも大体三倍強、金が要っておるということであります。これは従来から国鉄総裁は、一年間で大体三千億円程度の赤字が出る、こういうふうにお話しになっておりますが、それに間違いありませんか。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 高木文雄

    ○高木説明員 開業いたしました当初は、新幹線システムは大変設備投資額が大きいということもございまして、償却費等で大体三千億ぐらいのふつり合いといいますか、つじつまの合わない額が三千億ぐらいに及ぶのではないかと、大変心配をいたしておるわけでございます。ただ、これは過去の東海道新幹線、山陽新幹線等におきましても、やはり開業当初には相当赤字が出たわけでございますが、ちょうど高度成長の時期に当たりましたので、こちらの場合には思ったより早く収支がとれるようになりました。東北、上越の場合には、最近の景気の状況とかいろんなことを考えますと、過去の例のようにはうまくいきそうもないということで、どうしても十年ぐらいはそういう、だんだん小さくはなりますけれども、やはり赤字だという状態が続くのではないかということで苦慮いたしておる次第でございます。
  200. 野坂浩賢

    ○野坂委員 今度予定されております整備五新幹線、千四百四十キロですが、これは五十四年四月価格で約五兆二千三百億ですね、これが十年計画でいきますと、大体いま大蔵大臣がいろいろと試算されておりますけれども、物価が上がってくると、いまのように三倍で済まなくて四倍にもなる。二十兆にもなって、地元に元も半分出せ、利息も半分出せ、こういうようなことになれば地方自治体はバンザイをしなければならぬだろう、こういうふうに想定されるわけでありますが、自治大臣は、この整備五新幹線についてどのようにお考えですか、地元負担の関係は。
  201. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 新幹線は一つのナショナルプロジェクトでございまするので、これは地方団体において負担すべき性質のものではないと考えております。
  202. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、国鉄の赤字といいますか、国鉄の再建というのは、構造的欠陥部分を含めてまだまだ熟慮、慎重に検討するという段階でありますから、非常にむずかしいということが浮き彫りにされるわけであります。  その中で、先日も、同僚議員からローカル線問題についてお尋ねがあったのです。自治大臣はもちろん反対、あるいは厚生大臣も問題があると。さらに防衛庁までもいろいろな厳しい意見が出されておる。通産大臣もお話をされておりますが、産炭地問題等で非常に問題がある、こういう調整は困難であるという状況であります。わずか八百億ですからね、この問題は。  そこで、私は総理大臣にお尋ねをしたいのでありますが、皆さんからはもう時間がありませんから聞かれませんが、あなたのところにも削減といいますか、廃止をする路線がありますね。盛線といいますか、あるいは久慈線、気仙沼線、山田線、そういうところがございますね。それについて総理は、六月の二十二日に投票されました選挙で、これは国の十分な補償で進めなければならぬという、ここに大臣の選挙公約がありますけれども、そういうふうにおっしゃっております。このAB線をつなぎますと、三陸縦貫鉄道ということになりますね。これについて総理大臣はどのようにお考えでありますか。ここに書いてありますよ、「拝啓鈴木総理大臣」。余り読むと記憶ないだろうと思って遠慮して読みませんが。
  203. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 臨時国会におきまして国会の御審議を経て国鉄経営促進特別措置法、これが成立を見たわけでございます。この中には地方ローカル線の問題だけでなしに、三十五万体制を前提としたところの各般の経営改善計画を中心に、いろいろ再建を進める基本的な方針が織り込まれておるわけでございます。その中の地方ローカル線の問題をいま御指摘がございましたが、いま、この選定基準を決めますための政令の問題で、運輸省が中心になりまして各関係省庁でいろいろ検討が進められておるわけでございます。特に地方振興、地域振興、こういう観点からは知事さん初め地方団体の御意見も伺っております。そういう点を十分しんしゃくしながら慎重に、かつ、できるだけ早くこの政令案がまとまるように、運輸大臣初め各省庁の大臣に私から指示をして急いでもらっておる段階でございます。  私の地元の三陸沿岸鉄道につきまして野坂さんからいろいろお話がございましたが、この選定基準等の結果を見ましてこの取り扱いが決まってくるわけでございますが、私はこの促進法の精神を踏まえ、また、政令が決まりました際にはそれに従って地元を指導してまいる所存でございます。
  204. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あなたは前に鉄道建設審議会会長でもあったし、総務会長でもあったわけです。そのときに「三陸縦貫鉄道の問題」というテーマでこう言っていらっしゃるのですよ。「三陸縦貫鉄道は本来幹線的性格を持つものである。沿線地域のみならず、東北全地域の開発発展に貢献する重要路線であり、その早期完成が強く望まれておる。したがって、私は国の十分なる補償と責任のもとにこれは進めていかなければならない」こういって書いてあります。だから、やるということですね。政治家が選挙をやるときは公約をするわけですから、いまあなたは総理大臣で最高の権力をお持ちなんですね。これは運輸大臣にこれをやれ、こういうふうにおやりになれば、いろいろと選定基準をつくりかえる可能性だって強いわけです。そういう点については、これは選挙公約を強く進められますか。——いや、総理大臣に聞いておる。
  205. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 総理の地元のことでございますし、私がいま運輸大臣として、国鉄再建の一環といたしまして地方ローカル線の対策をやっておる責任者でございますので、運輸省の責任者として方針を申し上げたいと思っております。  御承知のように、特定地方交通線の基準を制定いたしますと、それぞれの地元におきます対応が決まってくると思うのでございます。したがいまして、いま各県、各地方におきましては政令の決定待ちというところでございます。私は、総理からこれを公平にやるように——何といいましても国鉄は全国に路線を持っておりますので、特定のものに不公平にわたってはいかぬ、この精神でございまして、その趣旨を貫いて政令を決めたい。  ところで、現在御承知のように、当然幹線でありながら一部の区間が未開通であるがために、幹線としての役割りを果たし得ないというところがございます。しかも、その一部のところが現に工事にかかっておってそのままになっておる。いわゆる鉄建公団の手によりましてAB線と言われておる地域でございますが、この線につきましては、できるだけわれわれも促進いたしたいと思っております。  ところで、国鉄の現在の財政状況がこういう窮迫した状況でございますので、できるだけその地域の開発につながるそういうAB線の開発を地元の方と協力してやる方法をとっていきたい、こう思っておるのでございます。でございますから、この問題等につきましては、単に三陸線だけではございません。九州にございますものもあるいは四国にございますものも、それぞれその該当する地域の責任者の方々と鋭意話をしておるところでございます。そして基準が決まります。政令で基準が決まる。そうすれば直ちにその当該地元と話し合いをいたしまして、これは国鉄の責任でなく、その地元を中心とした責任でその区間を運用していただく体制をとっていただけるならば、われわれもその建設を進めていきたい、こういうことで話し合いをしたいと思っておるのでございまして、あくまでも原則論で貫いていきたいと思っております。
  206. 野坂浩賢

    ○野坂委員 先ほども自治大臣がお述べになりましたように、そういうものは国鉄、政府がやるべきであって、地方住民がその負担を負うべきでない、新幹線に派生をしてこういう意味をお話しになったわけであります。したがって、国鉄が経営ができないものを素人のものが経営できるかというところに大きな疑問があるわけです。何でもかんでも厄介者は離せばいいんだ、これで国鉄だけの再建をやればいい、あとはどうでもいいんだ、こういう考え方には問題があるだろうと思うのです。  そこで、総合交通体系の問題は、昭和四十四年から十二年間、いつも問題になっておるわけですね。問題になっておるけれどもなかなか進まない。進んだのは、こういうわずか八百億しかない。構造的欠損部分の二千七十億の問題、あるいは文部省の公共負担の問題、あるいは厚生省の意見を聞いてみても、これも六百七十億からありますね、そういうものと同じぐらいなんです。公共負担以下なんですね。その以下のものの八百億円のローカル線だけを俎上に上せてがあがあ言われるよりも、慎重に検討されておるわけですから、この政令についても拙速主義をとることなく、慎重にそういうことを十分に検討して、各省庁の意見も聞かれ、地元の意見も聞かれ、国鉄再建もこれだけでは無理なんだということを国鉄の総裁も明言しておるわけですから、それについて再度十分に慎重に検討して誤りのない方向を打ち出すということが大切だろう、私はこういうふうに思います。  運輸大臣に聞けばいいんですが、時間がありませんので、総理大臣に、私はこう思いますということを御答弁いただければありがたいと思います。
  207. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、この政令は非常に重要な内容を持つものでございます。地方振興にとっても大変関係が深い、また地域住民の生活、福祉にかかわる問題であります。したがいまして、各省庁並びに地方団体等の意見等を十分に聴取をしまして、慎重かつ、できるだけ早く政令案を決めたい、こう思っております。
  208. 野坂浩賢

    ○野坂委員 拙速主義はとらないで慎重に検討するということですか。そうですか。
  209. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 法律は通っているのですから、慎重に、かつ、できるだけ早く政令案をつくりたいと思います。
  210. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、時間の関係で国鉄問題はこれで終わります。  次に、同和問題についてお尋ねをします。  一九七八年の十月に、第八十五臨時国会で同和対策事業特別措置法が三年延長されました。その際に、附帯決議の三項があります。御承知のとおりだと思います。これにつきまして読んでみますと、「法の有効期間中に、実態の把握に努め、速やかに法の総合的改正及びその運営の改善について検討すること。」こういうことになっておりますね。これについて内閣委員会等で確認されておりますが、当時の稻村総務長官は、この三年延長で打ち切るものではありません、この三年間の中で今後同和対策をどう進めていくか、たとえば基本的な問題あるいは人権的な問題、教育問題、こういったことをこの三年の中でいろいろと研究していただき、また現地の実態を調べていただきます、そしてこの三年間の中でこれからの同和対策をどう進めるのかということは、今度の三年の延長に意義があることであります、こういうことを述べられております。  以下、たくさん意見がございますが、この一項に従って総理府は各省庁にどういう連絡をされ、どういう指導をされて、附帯決議にありますように実態の把握にお努めになっただろうか、まず代表してお伺いしたいと思います。
  211. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えをいたします。  総理府といたしましては同和対策室を中心に、この法律が延長されまして以来、その後の対策事業の進め方等、引き続き検討しております。  細部にわたりましては政府委員から答弁をさせます。
  212. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 実態の把握につきましては、いわゆるハードな面、物的事業の面と、ソフトな面、生活、就労等の実態の問題があるわけでございますが、関係各省庁がそれぞれ関係都道府県あるいは国の地方出先機関等に、対策といたしましてヒヤリングという形で実態の把握に努めているところでございます。
  213. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまのお話では、各自治体から意見を聴取して実態把握に努めておるということであります。前任者の稻村さんは、現地の実態を調べてもらう、だから現地に行ってもらうということだったと思いますが、まだヒヤリングの段階だということであります。  それではお伺いをしたいと思いますが、厚生省には、有病率はどの程度か、全国平均と被差別部落の比率あるいは障害者はどうか、生活保護率は一体どうなっておるのか。労働省には、失業率は一体どうなのか、賃金の実態はどうか。文部省には、高校の進学率の状況。こういうことを一人二分間程度でお話しいただきたい。
  214. 園田直

    ○園田国務大臣 総理府を中心にした五十年の調査は御承知のとおりでありますから、省略をいたします。ただし、これは御承知のとおり事業量を主体にした調査でありまして、有病率その他、私の所管のものに対する調査でございません。したがいまして、わが方はただいま調査中でありまして、その調査をまとめる目標は、昭和五十七年度概算要求の時期までにこれをまとめるよう、府県と協力をして調査をしておるところでございます。
  215. 関英夫

    ○関(英)政府委員 雇用面の実態について申し上げます。  五十二年におきます私どもの調査におきまして、同和地域におきましては、全国平均と比べまして臨時、日雇いといったような就業形態の割合が高く、一般常用雇用の割合が低い、あるいは自営業者、内職者といった比率が高い、あるいは就業先を規模別に見ますと、小さい規模の従業者の割合が高い、あるいは事務系の職種、専門技術的職業、管理的職業、そういったものの割合が低く、単純労働者の割合が高い等々の問題がございます。その後、私どもは、日ごろ現地の公共職業安定所で実態把握に努めることはもとより、本省から現地に赴きまして実態把握に努めておるところでございます。
  216. 三角哲生

    ○三角政府委員 高等学校の進学率につきましては、昭和五十四年の調査で同和地区は八九%でございます。全体が九四%となっておりまして、これは四十六年の時点で見ますと、全体が八五%のところ同和地区が七二・八%でございましたから、かなり改善を見ておりますが、なお一般地区との間に若干の格差がございますので、今後も所要の措置を講じてまいろうというふうに考えておる次第でございます。
  217. 野坂浩賢

    ○野坂委員 法務省はどうですか。
  218. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 御質問にお答えいたします。  昭和四十六年から五十五年までの十年間に法務局が新たに受理した同和関係の人権侵犯事件の数は千百五十件でございますが、最近二、三年のところは大体二百件程度ということでございます。その内容は、差別言辞に関するものが一番多く、それから結婚関係、差別落書きというような順序になっております。  以上でございます。
  219. 野坂浩賢

    ○野坂委員 一番初めにわかりやすくお尋ねをしますからと言っておったのですが、雇い方についてもいろいろな高低があるようなお話で、数字を挙げてお話しになりませんでしたので、私からお話しをしたいと思います。  厚生省の場合、有病率は全国平均が大体一一%、全国の平均はありませんが、五十二年に熊本県では二五・四%、北九州市では三三・一%、大阪では五十一年に三四・七%、こういう関係になっておりまして、おおむね有病率は一般地域の場合に比べて三・五倍、こういうことになっております。障害者の場合は、全国平均が一・八%でありますが、被差別部落の場合は二・七%、一・五倍であります。生活保護基準の場合は、保護率は大体六倍強というのが実態であります。失業率の場合は、大体二%が全国平均でありますが、被差別部落の場合は、大阪で二八・五%という数字を挙げておるわけであります。これが実態でありまして、文部省からお話がありましたのはそのとおりだというふうに私たちは承知をしております。総理大臣、わかったでしょうか。——わかりましたね。  私は、そういう中で、いま法務省からお話がありました部落地名総鑑、いわゆる差別をする総鑑でありますが、こういうものに対して部落差別事件というのが約二百件程度というふうにお話しでありますが、われわれは四百七件というふうに承知をしております。先ほどお話がありましたように、千百五十件程度であったということでありますが、その中身を精査してまいりますと、あるいはあなた方の言う百八十六件ということになるかもしれません。しかし、全体的には千百五十件、差別問題がありましたね。この中で一つも消えないというのが今日の状況なんです。非常に多くなっておる。しかも、この十二年間で悪質化しておるということが言えます。  たとえば、総理や大臣の皆さんのところにお配りしておりますが、こういうのがあります。差別の文で、これを読めばいいのですが時間がありませんから。その中で各企業が反省文を出しております。名前を読み上げますと、安田信託銀行、小林製薬、麒麟麦酒、東洋現像所、信越化学、三井造船、日新製糖、第百生命、日本テトラポッド、キッコーマン、田辺製薬、豊中信用金庫、ダイハツ工業、住友電工、光洋精工、日の出証券、以下二十数社書いてあるわけでありますが、これで省略をしておきます。  その中で特に、あなた方がお調べになりましても、そういうときには焼却して、ないということをおっしゃっておる会社で、たとえばここにありますが、中国電力株式会社の文を一遍読んでおきます。  「一九七九年六月に、広島法務局の調査に際し、会社の立場だけを考え、図書の利用期間を短くして、できるだけ社会的批判を免れたいと考え、図書は一九七二年秋に焼却したと偽りの回答をし、実際には、広島法務局調査直後の六月二十三日に焼却廃棄いたしました。」一九七九年までずっと持っておったんですね。「なお、一九七七年八月の広島県人権擁護委員連合会・広島法務局連名による差別冊子購入等のアンケート調査に対しても、「購入勧誘および購入の事実はない」と偽りの回答をしておりました。」というように、企業が、就職をするときにそのものを利用したと言っておるわけです。ここでも述べておりますが、「当社が差別図書を購入した一九七二年以降の身元調査の実態とその影響について、部落解放同盟の要請により」云々と書いてありまして、「その結果、身元調査によって影響をうけた者が確認されました」こういうことを認めているんですね。就職のときに差別をしました、こういうことをはっきり明記しておるわけであります。非常に問題であります。  そこで、ここにもありますが、大臣方にもお渡ししておるわけですが、綜合警備保障調査部の調査報告書に「特」というところがあるんですね。いわゆる興信所にお願いすると、「特」というところに部落出身かどうかを書くようにちゃんと指示してあるわけですね。そういうこともございます。  さらに、差別は命をとるということを、私はこの委員会を通じて明らかにしておきたいと思うのです。ここにも出ておりますが、浅野佳代さんという方の遺書があります。前文と後だけちょっと読んでみます。「あなたに私はいままでうそをついてきました。実は私は部落の人間です。私は、隠し通せるならば死ぬまで隠したい。」だから、あなたと一緒に私の徳島の里には行きたくない。それからずっといろいろ書いてありまして、「どうかこの次、女性を愛するときは、健康で家柄のよい、お母さんに気に入ってもらえる人をお嫁さんにしてください。さようなら」こう言って自殺をしております。いまちょっと読み上げたのですが、こういうのはたくさんあります。これだけあります、時間がありませんから多くを申し上げませんが。このような民主主義の時代に、差別が人の命をとる、何人もの命をとるということはあってはならないことだと私どもは考えるわけです。  さらに、最近新聞に出ておりますが、ここに領収書がございますが、一遍、差別のこの地名総鑑を売っておいて、そして君が買ったことをばらすぞ、だから金を出せと言って、ここに二十万円の領収書がありますが、こういうものもある。全く悪質化しておりますね。  こういう事情を受けて、先ごろも大原さんやあるいは参議院の本会議でお話があったわけですが、実態を把握して、総合的改正をしなければならない。そして有病率も失業率も、何倍も一般部落よりも被差別部落には多いというこの現状、この十二年いろいろと環境の整備はされましたが、今日こういう実態がある。特に被差別部落事件は非常に多い。そして人の命をとる。こういう現実を踏まえて、総理大臣は、最善の努力をしたい、あるいは本会議では、可及的速やかに結論を得るように努力をしたい、こういうふうにお話しになっております。  そこで、時間がありませんから、総理大臣にお尋ねをいたしますが、可及的速やかに結論を得るようにする、それは総合的改正、いわゆる三項目を確認されておりますように法の総合的改正ということを基本にして、そして最善の努力をしてもらうだろう、こういうふうに思います。その最善の努力は、園田厚生大臣が御答弁になりましたが、ことしの七月までに集約をしたいということでありました。この法律は五十六年度で終わりなんです。五十七年三月三十一日で終わるわけです。だから、この国会というのが一番の中心になっていかなければならぬ、こういうふうに思います。この後、一般質問なり各分科会で、それぞれの問題を同志同僚の議員の皆さんが新たにそれぞれの大臣に御質問になるだろうと思いますが、こういう状況を踏まえて、できるだけ最善の努力をする、可及的速やかにというのは、この国会の期間中にということが考えられるであろうか、その方に努力をされることを私は期待いたしますが、そういうふうに考えてよろしゅうございましょうか。
  220. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま野坂さんからお話がございましたように、現在の特別措置法、これは五十六年度末まででございます。したがいまして、私は、五十七年度の概算要求を政府で取りまとめる、これからそうするわけでございますが、それまでに、この改正のときの国会の御意見、決議その他を踏まえまして、政府として結論を取りまとめるようにいたしたい、こう考えております。
  221. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、次は農業問題に移ります。時間がありませんので駆け足でまいりますから、まろしくお願いしたいと思います。  同僚議員から詳しくお話があったわけでありますが、私は、世界の食糧事情の現状は一体どうなっておるのかということからお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。  御承知のように、アメリカは熱波によってトウモロコシ、マイロ、大豆が想像以上の打撃ですね。大体、前年の半作程度、千三百九十万トン程度ではないか、こういうふうに言われております。アルゼンチンは前年六百五十万トンに対して三百十万トン、オーストラリアでは百十万トンに対して九十万トン、中国は、この間新聞に出ておりましたように三〇%から五〇%程度減収になる、こういう状況下にあるということが伝えられておるわけであります。そういうことに間違いありませんか。
  222. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 大体そのように心得ております。
  223. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういう状況の中で、世界の備蓄量一というのは飼料穀物合計として九・二%程度になっている。これはあなたのところの新聞なんですから間違いないと思いますが、そういうことですね。
  224. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 一応、御指摘のとおりでございます。
  225. 野坂浩賢

    ○野坂委員 アメリカで、世界の穀物の状況ということの中でわが国の状況を指摘をしておるわけでありますが、紀元二〇〇〇年になりますと、日本の食糧の状況というのは四千万トンも買い入れをしていかなければならぬということを、アメリカの環境問題諮問委員会・国務省編「西暦二〇〇〇年の地球」と題して述べております。これは、日本の生産は紀元二〇〇〇年になると約一千八百万トン、消費は六千万トン、したがって、輸入は四千二百万トン、こういうことになるであろうということをいまの世界情勢からして推測をしておりますが、そういうふうにお考えになりましょうか。
  226. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま先生のお尋ねのございましたアメリカの政府の見解、紀元二〇〇〇年になった場合の日本の穀物の需給状況を想定しての記述でございますが、確かに将来、飼料の穀物の需要が相当多くなるだろうということを前提といたしまして、かなり大量の穀物の輸入が必要だという前提でさようなことを記述しているというふうに了解しております。
  227. 野坂浩賢

    ○野坂委員 世界の食糧状況は危機的状態だ、こういうことが確認をされたわけであります。  日本農業は、先ほども議論がありましたように、米あるいは牛乳、ミカン、野菜、過剰生産に悩んでおるというのが実態でありますね。米の生産調整が強化されればされるほど、一方において必ず農業の兼業化というものが促進されるのです。だから、お話がありましたように、農林大臣のところも、東北農民の皆さんは出かせぎに駆り立てられているというのが現状です。  要するに、いまの農業情勢は、現状分析をしますと農業生産の縮小です。そして衰退です。そして穀物の自給率は、去年は三四%でありましたが、今年度は三三%、昭和六十五年は三〇%、こういうことになっております。いわゆる衰退の一途をたどって、農業は窮地に追い込まれておるということが言い得ると思うのですね。この状況にどうやって歯どめをかけるかというのがわれわれの責任なんです。  いまもお話がありましたように、中核農業、地域農業を推進をするということでありますが、どうやってこれに歯どめをかけ、どうやって推進をするのか。一方では、米の値段を抑制する、生産調整をやって抑えつける、そしてほかのものをやれ。ほかのものは、今度の農政審なり閣議決定というもので、価格を調整をして生産性は上がってももうからぬようになる。これを伸ばす方法はたった一つであります。米の生産調整をやらない、これが一つ。それでなければ、他の作物を米並みに価格を引き上げてやらなければ、農業の進展というものは成らない。これはばかでもわかるのです。そうでしょう。そうだと思いますが、農林大臣に他に御意見がありますか。
  228. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 野坂君の意見はわからないわけではありませんけれども、しかし、やはりその間にもう一つ努力が要求されるんじゃないかと思います。と申しますのは、あくまで生産性ということを考えませんで、ただ保護をしていけばいいじゃないかという考えではないとは思いますけれども、そういう点をやはり十分考えながら、命から二番目の大事な食糧がなければどうにもならぬということはだれでもわかっておることでありますから、農業が衰退すればどうなるかということは、これは昨年国会でも御決議いただいたというその精神を踏まえてやはりやっていかなければならぬということで、私ども政府といたしましても、苦しい財政事情の中からでもできるだけの投資をして、そうして生産性の高い農家として、プロ農家としての使命を果たしながら、納税者に納得のいく農業を展開していこうという気持ちを持って対処していこうという方向を進むべきではないかということで指導いたしております。
  229. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ごりっぱな意見をちょうだいしました。生産性を上げなければならぬ、そうあらねばならぬと私も思います。過般行われました国会の穀物自給力向上の決議、ここにいまいらっしゃいませんが、武藤さんは、それを体して政府は最大努力をします、本会議でこう言って答えています。それを農政審議会が答申をして閣議が決定をしておるものは、穀物自給率は下がります、三四%から昭和六十五年には三〇%に下がります、こう言っておるのですよ。だめになってきますということを言っておるのです。こういうことで農政の担当はできますか。不適格ですよ。言葉では言いながら、今後の農産物の生産と見通しについては前より悪くなります。ただ単に飼料が二九%が三五%になりますということだけで穀物自給率が低下をする。しかも、紀元二〇〇〇年には四千八百万トンも輸入しなければならぬというようなそういう状況では、国会決議にどのようにこたえているんですか。
  230. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 食用の穀物自給力というものはそう落ちてこないということを、十カ年の需要と生産の長期見通しという中では農政審議会指摘をいたしておるところであります。しかし、御承知のように食生活が高度化いたしまして、畜産物の活用という点が非常に伸びるという想定をいたしておりますので、やはり飼料作物、特に飼料穀物の輸入を増大していかないと、畜産の需要の増加にこたえていけないという問題が一つあるわけであります。ここが非常に頭の痛いところ、こういうことで、飼料としての穀物を合わせますと、いま御指摘のように、十年後三四から三〇に落ちてしまう。何をしているんだ、こういうおしかりを受けておるわけでございますが、しかし、やはりそれをやっていくために並み並みならぬ努力をしてもそういうふうになる。  これは本当に政府が腰を据えて、農業政策に思い切った積極的な施策をとってまいりませんと、何としても所得の多い方へ多い方へと流れてまいりますし、専業農家がなかなか育ちにくくて、そして兼業農家がふえていって、反面、生産性が低くなる、こういう悪循環を繰り返す。これを断ち切って、何としてでも、先ほども申し上げてきておりますとおり、中核農家を中心にした地域社会の中で兼業農家の協力を得ながら理想的な体制に持っていく努力、いま国会の三法制定の精神によって、ある意味においては本物のスタートラインに着いた、こういう考え方でやっていきたいな、こう思っております。
  231. 野坂浩賢

    ○野坂委員 まあ口では努力しておられますけれども、全然努力しておらぬということになっておるわけです。たとえば土地の利用効率というのは、いま一〇二・三%です。昭和三十年代は一二六%程度あったじゃないですか。それが土地の利用率というものが少なくなっているということは、農業ではなかなか食えない、だから出かせぎ者も多い、こういうことになっておるわけじゃないですか。これが一つ。  それから、あなたはいま二期減反の問題をお話しなさったのですが、土地改良計画もお話しになりました。十年間で十三兆円予算を組んでおられますね。百二十万ヘクタールやるとおっしゃいましたね。どういう進捗率ですか。
  232. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 土地改良十カ年計画は、金額面においては約八割方達成しておりますが、実際の面積の面から見てまいりますと六〇%台、詳しい点は事務当局からお答え申し上げますが、そういうふうに遅々として進んでおらないという面が確かにあるわけでございます。  私どもといたしましても、ここ三十年、日本の農業というものは、土地条件の整備なんというのは戦後始められたものということでございますので、その面においては、先進国から比べますと基盤整備が非常におくれておるという感じを持っておるわけでございます。確かに、御指摘の土地利用率というものは非常に低下してきております。私どもが昭和二十六年に初めて団体土地改良、積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法というものを国会でつくっていただいて、二毛作を大いにやろうというような時代からぐんぐんと土地利用率は向上したわけであります。ところが、これがだんだん土地利用率が減ってまいったというのはなぜかというと、やはり農業以外の産業の所得面が大いに向上してまいりまして、そして農業の所得が減ってきておる、この辺に問題があろうかと思います。  そういう面、昨年の国会で三法を制定をしていただいて、そういう方向に対する施策の指導を積極的にしてもよろしいという立法をしていただきましたので、その方面に対して兼業農家の協力を得ながら、兼業農家に不利な立場を与えないような日本独特の体制をとっていくことによって、私は、日本の農村地域社会を必ずりっぱなものにつくり上げていくことができるという感じでございます。これには並み大抵の努力では実現は相当な困難を伴うということを覚悟はいたしておるわけであります。
  233. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がありませんから述べておきますが、農地関係の三法もやった、こういうことですが、一方では農地の利用を野放しにしておいて、他方では米作制限によって農業所得の伸びを抑えるというかっこうに出ておるわけですから、農業が伸びようとしても伸びるわけないですよ。  それから、大臣からお話があったように、確かに土地の利用効率は下がったとお認めだ。しかも、土地改良も五十七年度、来年一年残すだけですね。八二・四%、おっしゃるとおりです。しかし、畑作の場合の土地改良はわずか一三…七%です。いいですか、圃場整備の場合は四四・五%ですよ。金額さえよければいいのじゃない。農家の皆さんは圃場整備をやってもらうかどうかが問題なんです。畑はわずか一三・七です。よく覚えておいてください。そういうことで農政は進展しておるなんということは絶対に言えません。お認めですね。  さらに、時間がありませんから私は駆け足で参りますが、これからは畜産だ、こういうふうにおっしゃった。この統計を見ますと、畜産局長ですか、二千万トンの輸入だと言いましたけれども、輸入量は二千万トンですけれども、国内の供給でも輸入原料によってやるのが四百五十九万三千トンあるのですよ。そして、いわゆる国内産の原料でやるのは約三百万トン程度、こういうのが実情じゃないですか。先ほど言われたのは間違っておるのじゃないですか。
  234. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  飼料の自給率を見ます場合、純国内産で見ますと、五十三年が二八・九%という自給率になっております。これに対して……(野坂委員「五十五年度の概算で答えてください」と呼ぶ)五十五年度は概算でございますが、二九・四%という数字になっております。これはトン数で計算いたしますと、五十五年度は、粗飼料の生産が五百四十九万七千トン、それから国内産原料が二百二十八万六千トンでございますが、このうち、先ほど御指摘のように、輸入した大豆で油をしぼって、残ったかすを利用するというのがあるわけで、率はそれより低くなる、こういうことでございます。
  235. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そのとおりなんです。もう圧倒的に輸入飼料によって日本の畜産はやられておる。鶏や豚なんかはオリジナルのカロリー計算でいくとゼロですよ。そうですね。みんな外国から輸入している。だから飼料はどうするか、だからえさ米が問題になる、こういうことです。私のところはアルボリオJ10をつくっておるのですけれども、脱粒はそうありません。1には大体脱粒は三割程度あります。おっしゃるとおりです。あなたの場合は、えさ米を飼料作物として認めるということは何年後にお考えなんですか。
  236. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 筑波の試験場の話によりますと、大体三年後に一応の固定品種が造出できるであろう、しかし、その際には増収という面においてはそう大きく増収は期待できない、五年後には増収の面が少し伸びるということを言明をいたしておる次第でございます。
  237. 野坂浩賢

    ○野坂委員 三年後にえさ米は認める、こういうことです。  いま非常に緊急に問題になりますのは、飼料の価格というのは、五十四年の七月、五十五年の一月、五十六年の一月、大体八千円を前後して非常に上がっておる。大体ことしも七月にこれから変わるわけですけれども、四月にも上げると言っていますね。あるいは七月にもまた上げる、こういう状況になるわけです。だから、飼料は急がなければならぬ、こういうことは私とあなたの意見は一致しておると思うのです。  そこで大臣、考えられるのは、試験をする、国の試験場でやります、民間はだめなんですという考え方ではなしに、この飼料の危機的状況のときには官民一体になってやる、こういうことが私は必要だと思いますね。したがって、先進県であるたとえば秋田県とかあるいはわが鳥取県とか、そういう県については、農林大臣にも予算説明のときには参りましていろいろお話をしたのですけれども、そういう点で圃場を決めて、そして三年が二年に指定ができるようにその方法を民間にもやらせる、こういうかっこうになってまいりますと非常に私は前進するだろうと思いますね。  問題は、三千七百億円のいわゆる奨励金だ。奨励金をつけなければならない。だから、面積カットだけを認める。しかし、奨励金は出さない。したがって、それが三年が二年になる。たとえば、農政審議会の答申を見、閣議決定を見ますと、いわゆる一〇%引き上げようとすると三年かかる、三〇%引き上げようと思えば、増収をやるとすれば五年かかる、五〇%増収対策をやるとすれば十五年かかるということがありますが、現に麦等は、北海道でわずか二年間で三倍にもなっておるというのが現状なんですね。だから、民間の本当の意味の農業者、農民の皆さんの力によれば、われわれが考えておる三年は一年になる。そして官民一体の成果を上げればいいじゃないか。しかも、奨励金ではなしに、それは結構です、それならば、当面、全国の農民のために、われわれは面積カットだけで研究開発を進めてまいります、しかも国とも十分連絡をとります、そしてその圃場というものを明らかにします、こういう場合には、それを前進させるために先進県にはある程度認めていくということの方が、いまの飼料の現状からして私は当然だと思いますが、いかがお考えでしょう。
  238. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 野坂委員のお気持ちは十分理解できるわけでありますが、先ほど来申し上げてきておりますとおり、行政の路線の上にこのえさ稲を乗せていくということにつきましてはいろいろ問題があるということは、るる申し上げたとおりでございます。しかし、研究体制の中でよりいい体制をとるべきではないかということ、御趣旨はわかるわけでありますけれども、これはやはり国の試験場から県の試験場もあるわけでありますから、その辺の事情をよく考慮していかなければならぬ、こう考えます。したがいまして、事務当局の方からその辺のことを答弁させます。
  239. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほど大臣から、えさ米の試験研究の関係で相当増収になるというのは、これは三年後というのもございますが、五年後以降であろうというような趣旨の御答弁を申し上げたわけでございます。  問題は、これを転作作物にいつするのかというお話でございますが、これはやはりまだ試験研究の段階ということであるとすれば、五年後におきましてもその時点で判断すべきものでございますので、いまの段階で、いつから転作作物として奨励補助金を交付するかということについては申し上げかねるわけでございます。  なお、奨励金の方はそういうことであるとすれば、せめて、奨励金は要らないけれども何かそれは転作実績に算入する、いわゆるカウントするというようなことでも早くやれないかという趣旨のお尋ねでございますが、現段階におきましては、当面試験研究をやっていく、それから長期的課題として、やはり穀物自給率との関係もあって詰めていくというのが現段階のえさ米のシチュエーションでございます。したがいまして、これを転作作物の実績に算入する、カウントするということも現在の段階では困難であろう、かように考えております。  なお、鳥取県等の先進県、そういうようなところではどうかというような御趣旨もあったかと思いますが、こういうものの水田利用再編対策上の扱いといいますのは、やはり全国的視点に立ってやるべきものと考えますので、特定の地域に限定をしてでもカウントをするというのは困難ではなかろうか、かように考える次第でございます。
  240. 野坂浩賢

    ○野坂委員 二瓶局長は、大臣が三年後にはこの転作作物の対象にしたい、こういうふうにおっしゃっておるのに、それはそのときの段階だ、そういう後退をしたことは、私は局長にそういうことは聞いてない。責任者の大臣が三年後にはその作物を指定する、こう言いながら、そういうことは納得できません。したがって、時間は終了を告げておりますけれども、もう一遍、大臣、明確にしてもらうと同時に、官民一体で飼料対策は進めるということが必要ではないのか、そのために、私が具体的に提言をしたようなことについても十分に前向きに検討をしてほしいということをあわせて要望し、最終的に答弁をいただいてこれで終わりたい、こう思います。
  241. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 私の表現のまずさから誤解を与えたようでございますが、技術者が技術的にえさ稲の新品種を固定化していくために何年かかるかというと、大体固定化するには三年はどうしてもかかる、しかも、それでは一割か二割増収の品種しかつくれない、それ以上、三割なり四割以上の増収品種をつくるためには少なくとも五年は期間をもらいたい、こういうことで、あそこに集まった稲作技術者の大多数の諸君がそういうことを言っておったということを御紹介申し上げたわけでございます。したがいまして、それらの実態を見ながら、転作作物に指定したらいいのかどうかということは、その時点時点に立ってやはり判断をしなければならぬ、こういう気持ちを申し上げた次第でございます。  と同時に、野坂委員も万々御了解のとおり、いままでの私どもの進めてまいりました農業政策、農林水産行政というものは、もう本当に官民一体という形でなければ進まぬわけであります。生産調整にいたしましてもそういう気持ちで進めておるわけでございますから、これはもうえさ問題が大変だということはお互いに十分理解しておるわけでございますので、その点は御指摘のような線を十分踏まえてやってまいりたいと考えております。
  242. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これで私は終わりますが、いずれこの問題についてはもう一遍はっきりしていきたい、こう思います。
  243. 小山長規

    小山委員長 これにて野坂君の質疑は終了いたしました。  次に、坂井弘一君。
  244. 坂井弘一

    ○坂井委員 最初に、武器輸出に関しまして質問をいたしたいと思いますが、私は、きょうここで取り上げる武器輸出については、実は特に武器の生産技術の輸出ないしはその技術協力という面から具体的にお尋ねをしてまいりたいと思います。できるだけ私の方で要点をまとめましてお尋ねしたいと思いますから、どうか政府も簡明な御答弁をちょうだいしたいと思います。  そこで、まず最初に通産省に確認をしておきたいと思います。武器の生産技術の輸出につきましては、武器輸出三原則に照らして処理すべきものであり、武器生産技術の輸出は、今日まで申請もなければ許可も全くなかった。間違いないでしょうか。
  245. 田中六助

    田中(六)国務大臣 武器技術の輸出につきましては、現在のところないというふうに聞いております。
  246. 坂井弘一

    ○坂井委員 では、重ねてお尋ねをいたしますが、わが国の防衛庁に納入されます武器、これを生産しておりますいわゆる武器製造メーカーが、外国の国防省あるいは外国の武器製造メーカーと武器製造の技術提携を締結をした、このような事実は承知しておられませんか、あるいは承知されておりますか。
  247. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私がいま知っておるのは、英国の国防省と日本の防衛庁との間で、百五ミリ砲の技術提携をしておるというふうなことは聞いております。
  248. 坂井弘一

    ○坂井委員 お答えのとおりだと思いますが、この技術提携を締結したのは、わが方は日本製鋼所であります。相手側は英国の国防省。これは昭和五十年。この締結の事実はあるということをいま通産大臣はお認めになった、こう理解してよろしゅうございましょうか。
  249. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いま日本の防衛庁と申しましたけれども、これは一会社の日本製鋼所でございます。
  250. 坂井弘一

    ○坂井委員 では、同じく日本製鋼所に関してお尋ねをしたいと思いますが、昭和五十年八月、七四式戦車砲の技術提携をイギリスのヴィッカース社と締結をしておる、この事実については承知をされておりますか、いませんか。
  251. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 イギリスの国防省と日本製鋼所の間に技術援助契約というものが締結されておりまして、認可の日で申し上げますと、五十年五月二十一日ということになっております。
  252. 坂井弘一

    ○坂井委員 ヴィッカース社です。ヴィッカース社との提携……。
  253. 小山長規

    小山委員長 明瞭に言ってください。
  254. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 はい。  英国の国防省と株式会社日本製鋼所との間の技術援助契約でございます。
  255. 坂井弘一

    ○坂井委員 それは前段において通産大臣が確認いただいたことなんで、頼んでいない。ヴィッカース社との間に日本製鋼所が技術提携の契約を締結をした事実がある、そのことを承知しているかいないかと、こう聞いている。
  256. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 私どもの承知しておりますのは、ただいま防衛庁からもお答えしましたように、英国の国防省と日本製鋼所との間の契約でございまして、ヴィッカース社という名前は承知をいたしておりません。
  257. 坂井弘一

    ○坂井委員 確かな事実として、私はいま責任を持ってヴィッカース社との間において締結をした事実がある、こう申し上げた。申し上げた以上は責任を持って申し上げているわけでありますので、これは後刻調査をしていただきたいと思いますが、確認をしていただきたいと思いますが、質疑は以下続けて問題の提起をいたしたいと思います。  きわめて確かな情報と申し上げた方がよろしいかと思います。英国政府の軍需工場、つまりロイヤル・オーディナンス・ファクトリー、ここで戦車砲の砲尾環及び駐退復座機構、これは駐退装置です。射撃をやったときの衡撃を受けとめる装置ですね。これは後ほど申し上げますけれども、非常に高度な技術を要する装置であります。こういう装置がいま製造されておる。この装置がまさに日本製鋼所の技術であるということを指摘しましょう。  つまり、いま英国ではどうなっておるかといいますと、先ほど出ました百五ミリの戦車砲、これはロイヤル・オーディナンス・ファクトリー、つまり王室軍需工場、つまり政府直属の工場です。大体十一ございますが、いまここで百五ミリの戦車砲がつくられておる。そして、この戦車砲を支える砲座一式の中の砲尾環及び駐退復座機構、これは駐退機とかあるいは駐退装置とも言っておりますが、この部分はまさに日本製鋼所の様式、デザイン、技術、これによってつくられておる、こういう問題の提起でございます。  通産省、防衛庁は、こういう事実については承知をされておりませんね。
  258. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 私どもの承知しておりますのは、先ほどの英国の国防省と日本製鋼所との間におきまして技術の援助契約が結ばれておるということ、そしてその対象となりますのは百五ミリメーターの戦車砲用の砲身及び排煙器の設計、製造、検査及び試験のための技術であるというふうに伺っておりまして、それ以上の技術が対象になっておるというふうには承知しておりません。
  259. 坂井弘一

    ○坂井委員 なおその問題は続けますが、その前に防衛庁に一言伺っておきたいわけです。  七四式戦車の砲尾環、それからいま申します駐退復座機構、こうした砲座一式は防衛庁の秘密の保全に関する特約、これがかかっておりませんか、おりますか。特約条項が適用されていると思います。
  260. 大村襄治

    ○大村国務大臣 事実問題でございますので、政府委員から答弁させます。
  261. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 お答え申し上げます。  七四式戦車にかかわります契約には特約条項はございますが、ただいま御質問の砲尾環等につきましてはその特約条項は及んでおらない、こういうことでございます。
  262. 坂井弘一

    ○坂井委員 砲座一式……
  263. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 砲尾環及び砲座一式については特約条項がかかっておらない、こういうことでございます。
  264. 坂井弘一

    ○坂井委員 実は、先ほど若干申しましたが、この日本製鋼の技術によります砲尾環、駐退復座機構、これは実に世界にも冠たる優秀なものであります。これがいかにすぐれておるかということを論評したものがありますので、若干引用させていただきます。  「七四式戦車に装備するにあたり、砲塔の上面を低くするために、砲の駐退機には日本製鋼所が開発した同心駐退機という新しく、かつコンパクトな型に変えられている。」これは明らかに日本製鋼所が輸出をしたと、ここでは断定いたしております。さて、この駐退復座機構というのはどういうものかと申しますと、「百五ミリ砲の砲身は英国が開発したもので、従来の九十ミリ砲に対し、ほとんど寸法、重量を増すことなく威力増大に成功し、NATO標準化を実力でかち取った優秀なものであったから、ちゅうちょなく輸入に決定した。」ここからです。「ただし駐退機については、これも六一式のさいの不満が残っていたもので、M四七シリーズが同心駐退機を採用して、砲塔防盾の避弾経始をスマートにしているのを羨みながら、両側複筒駐退機に甘んじたものである。問題は駐退ばね製作技術で、複筒のほうが荷重条件がずっと楽なことはもちろんであり、かつ同心化のため、コイル径を自由に選択できないことであったが、見事に成功した。レオパルト1もセンチュリオンも」——レオパルトというのは西ドイツ、センチュリオンは英国です。これも「同心型ではなく、担当メーカーの技術を高く評価すべきであろう。」云々。つまり同心型の駐退復座機構を開発したのは日本製鋼所、この技術は実に高く評価されている。従来、百五ミリの戦車砲の技術、そして開発、これはイギリスのものであります。しかし、これをより完璧に、七四式戦車そのものの機構の中でさらに威力を発揮したのは日本製鋼所の駐退復座機構の技術だ。これがいままさに英国においても採用されておる、こういうことであります。  したがって私は、前段申し上げましたのは、あえて技術提携と申し上げた。通産省の答えでは、技術援助あるいは技術導入ということをむしろ意図されておる。言葉の使い分けは私は厳重にやっているつもりであります。つまり、一方的にもらう場合には技術導入でありましょう。これはライセンス生産によって外国の優秀な兵器生産技術を導入する、こういう場合には技術導入。技術協力というのは相互にクロスする問題です。さらに、わが方から相手方に技術を供与する場合は技術援助、こう言っている。この形は、まさにいま申しましたように、相手側からの技術の導入と、わが方からはそうしたきわめて優秀な技術を援助する。つまり相互の関係でありまして、これが技術協力。その事実について指摘をしたわけでございます。  さて、日本製鋼所が、先ほど言いましたように、英国の国防省、そして英国政府の軍需工場のロイヤル・オーディナンス・ファクトリー、ここへ戦車の砲座の一部の砲尾環、駐退復座機構の技術を提供しておるということになりますと、実は武器の技術関係の法令を見ますと、五十三年四月一日というのが法令上一つの線引きの形態をとっている。五十三年四月一日以降においては、そうした技術の輸出、それから相互の協力は全く締め出しておる。しかし、それ以前においては、どうも抜け穴がある。あるけれども、しかしながら政府は、従来一貫した政府の政治方針として、輸出はしない、技術協力はしない、こう言ってきた。実は落とし穴がこの辺にあるだろう、こう思うのであります。つまり五十三年四月一日以前は、残念ながら法的には野放し状態にせざるを得なかった、こういうことだろうと思います。その一つの例として、私はいまの問題を申し上げたわけです。しかし、それに対して政府は、先ほどの御答弁のとおり、そのような事実は一回もなかった、こう今日なお御答弁されているわけでありますが、それにしてはこのような事実があったということは、いかにも問題は重要だと私は思います。政府責任もきわめて大だろうと思います。通産大臣、どうお考えになりますか。
  265. 田中六助

    田中(六)国務大臣 技術提携ということを前提にいたしますときに、やはりそこには導入するもの、それから導入されるもの相互に協定があるわけでございまして、その技術提携の中で修正とか改善というようなものがあれば、当然それを知らせるというようなことは取り決めの中にあるわけでございます。  それから、いま、五十三年四月一日から事は変わっている、その前はおかしいというようなことでございますが、まさしく五十三年三月中に法改正があったのは事実でございます。しかし、それまでは標準外の勘定と標準規定による勘定が分けられておりまして、私どもは標準外、標準を含めて武器三原則並びに政府方針というものにのっとっておりますけれども、標準外決済におきましては、もちろんこれは、時期の問題で伸ばしたり縮めたりすることでございますので、標準決済は御承知のように現金払いでございますので、それはいいとして、標準外決済のときは、私どもその調査に当たって、それが武器三原則並びに政府方針にもとるならば、そこでチェックをして対処してきたわけでございまして、それを中心に変わったということではないのです。  なぜそこで、五十三年の三月、つまり四月一日から変えたかと申しますと、やはり日本は輸出貿易国でございますし、自由化というものがいまよりもさらに非常に問題になった時期でございまして、自由化してきますと、そこに標準外決済というものの規定がいろいろ外為法上問題になってきますので、むしろ私どもの政府原則の規制を大きくかぶせて、それを実行するためにも自由化の波からごっぽり外に外すという意味で、規制をかける意味で、五十三年の四月一日から変える外為法の変更をしたわけでございます。
  266. 坂井弘一

    ○坂井委員 通産大臣、それはあなた、ずいぶん苦しい答弁だろうと私は理解するのです。私の方は、政府立場を実は最大理解しようと思って努めている。五十三年の四月一日、ここで一区切りして、つまり五十三年三月末までは、標準決済内であれば、これのチェックはなかなかしがたかった、法的には。政府の方針は厳とあるのです。したがって、法的にどうあろうと政府方針は守らなければならぬ。その立場はわかる。しかしながら、標準決済内であれば、実は申請の必要もなければ、したがって許可の必要もない、こういうことになったわけですね、法律的には。だから、同情の立場で実は私は申し上げているつもりなんです。そういう意味では政府も苦しいなあと、実はそんな感じなんですよ。  それはそれとしましても、いまのようなことで、実態的には、すでに過去において武器製造の技術が外国に出ておる、こういう事実がある。いま、すべての武器または部品、つまり貿管令別表に言うところの一九七から二〇五、これに当たるものは技術輸出はしません、こう政府は言明される。それはそのとおりで結構なんです。しかし、いま私が申し上げました例のごとく、過去においてすでに出ていった技術、これは一体どうしますか。どういう措置をしたらいいのでしょうか。
  267. 古田徳昌

    ○古田政府委員 一般に技術提供先の国におきまして、提供された汎用技術といったものが高い水準に発展されまして、これが武器製造技術に応用されるというふうな可能性もあるわけでございますが、このような場合につきましては特段の問題はないかと思います。  ただ、ただいま先生御指摘のような武器製造にかかわる技術につきまして五十三年三月以前に標準決済ということになりますと、これまた、御指摘いただきましたように、許可を要しないということで外へ出ていったという可能性があるわけでございますが、その時点では合法的に行われたものということでございますので、現在の時点で法的な措置をこれについて云々するということは非常にむずかしいということでございます。ただし、これにつきましては、わが国から輸出された武器技術ということで、現在どのような状況になっているかということを十分実情を調査いたしまして、可能な限りの指導を考えてみたいというふうに考えているわけであります。
  268. 坂井弘一

    ○坂井委員 ちょっと総理に聞いていただきたいのです。  実はは私はこう考えたわけなんです。武器の輸出と言いますね。するとすぐ、わが国内でつくられた武器ないしはその部品が外国に出る、これはまかりなりません、それはそのとおりです。これは物なんですね。しかし、大体三つあるんじゃないか。一つは、いま私が指摘しております技術なんですね。これも物と同じように、今日まで政府は一貫して、これに対しては厳重に三原則に照らして処理をしてきた、こうおっしゃっている。それからいま一つは、きょうは触れませんが、いわゆる軍事関連施設、大体大別すればこの三つだろうか。  そこで、この三つを比べまして、私が一番重要視したいのはやはり技術なんです。実は技術と技術が集約されたものが武器であろう。技術が、つまりソフトウエアというものが、これがノーハウを持って、そしてそこで結晶されてつくられるものが一つの部品ですね。その部品の集合体というものが、これが軍艦であり戦車であり戦闘機である。つまり武器というものは、いま形にあるものではなくて、せんじ詰めてみれば、まさにこれは技術だ。一つの片々たる物があって、それを裏づける技術というものが外に出ますと、この技術がどんどんどんどん肥大化する。まさに技術は日進月歩でありまして、それがさらに大きな次の威力のある武器を生んでいく、こういうことだろうと思うのですね。  いま私が申し上げておるこの技術というのは、あくまでも武器生産に限っての技術ですよ。汎用品まで言っているのじゃないのです。武器生産に関する高度な技術というものが過去においてすでにわが国から外国に出ておる、それはいまも御答弁のとおりです。それに対してどうする、こうするということは、いま直ちに何とも言えない、実態を調べてみなければ、こうおっしゃる。だから、御提案しましょう。実態は確かにお調べください。実態は調べるべきです。調べるべきでありますが、いま私が申し上げておりますことは、これは電話でも確認してください。いまでもできることです。こんなことは簡単なことです。日本製鋼に聞けばわかるのです。もしそれで仮に否定されるというならば、私は私なりに証拠をきちんとお示しいたしましょう。  いずれにしましても、そういう事実がある。そういたしますと、いまこれだけ議論をしながら、武器の輸出に対して、三原則が手ぬるい、政府方針が手ぬるい、武器輸出禁止法までつくらなければいかぬのじゃないか。政府も一貫して、先般も総理は、三原則を貫徹するんだとおっしゃる。決意のほどは、これはごりっぱであります。しかし残念なるかな、現実の問題として、すでに技術が外へ出ていって、それがどんどんどんどん動いておる。一方では、これから出しません、こう言っている。大変な現実的な矛盾であります。  したがって、こういう実態に対して、政府とすればいまどうするのか、どう対応すればいいのかということを御判断の上でやはり決断をされなければならない、そう思いますが、総理、いかがお考えでしょうか。
  269. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いま委員指摘のように、武器技術というのは、やはりソフトウエアの部門に属すると思うのです。したがって、いまのような情報社会と申しますか、交通、情報の非常に発達した時代でございますので、この技術についての、つまりソフトウエアの移動については私どもより以上苦心をするわけでございますし、一々チェックすること自体も非常に困難でございますけれども、あくまで政府は、武器三原則並びに政府方針、それから、もちろん外為法に基づく罰則、そういうようなものを強調して、行政指導を強く厳にするとともに、また、製造業者あるいはメーカー、そういうものに対しましても、自覚、それから自重、そういうものを一生懸命促していくという方針を持っております。  これは法律によって規制したからといって、そういうソフトウエア部門がこの情報社会できちんきちんとなるように考えることはできましても、それは実態面では非常に困難な問題ではないかと思っております。  いずれにしても、メーカーに対する自粛、自重並びに私どもの行政指導を厳にやるという方針を貫いていこうというふうに考えております。
  270. 坂井弘一

    ○坂井委員 通産大臣、よくわかるのですよ。しかし、現実にいま動いているものに対してどうするのですかということに対するお答えにはなっていませんね。  厳にとおっしゃることはわかるのです。今後の問題なんです。いま、すでに出たものに対しては、それはもうどうしようもないのですと言うのなら、それも一つの答えでしょう。何とかしなければならぬと思いますというのも答えでしょう。時間を置いて検討させてくれというのも答えでしょう。その辺を申し上げているのであります。
  271. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答え申し上げます。  私どもは、英国と日本製鋼所との提携につきましては、私が最初に申し上げましたように、これは技術導入の一つの取り決めでございますので、相互に発展的な用品が技術向上をやってどんどん進んでいく場合、そのときは、その修正並びに改造部門についての報告は一種の義務であると思います。  それからもう一つは、そうでない部分につきまして、つまり汎用性のものにつきましては、これ武器の技術と——汎用性のことを言っているわけでございますが、汎用性については、二次製品、三次製品になって、向こうでそれが、トラックが軍用車になる、あるいはタンクになっていくという過程においては、これは私ども、関知はしても、それを一々指導するわけにいきません。  それからもう一つ、武器技術提携そのものについては、先ほどから申しましたように、五十三年の四月以前、以降も、私どもの政府原則並びに政府方針を貫いて、向こうから申請があればこれを許可する、あるいは許可をする場合も、大蔵省の税関関係でチェックをして、そのときにいろいろな罰則を加えると同時に、また、これは怪しいというようなとき、その他につきましては、それは物そのものでございますからはっきりしておりますけれども、技術というようなことになりますと、これは法律があってもなくても非常に困難な部面が続出すると思いますけれども、私どもの既定方針の調査によって、厳重にメーカーに対する反省並びに私どもの行政指導を貫く以外にないんじゃないかというふうに思っております。
  272. 坂井弘一

    ○坂井委員 残念ながら、相変わらず御答弁にならないのですね。私はいま、汎用性の問題とか汎用品を言っているのじゃないのです。明確に武器生産技術だ、こう申し上げておる。しかも、それは何かというと砲尾環であり、駐退復座機構というきわめて高度な武器の技術なんです。汎用性の問題じゃないのです。いいですか。しかも、そのことを申し上げて、そしていま現実にそういうことで相手国、外国でそれが動いているのです。この事実が一方にある。いまこちらの方は、これから技術は輸出はいたしません、技術提携もいたしません、これはいいのですよ。いいのだけれども、動いている事実がある。その事実に対しては何らかの対応がなければいかぬでしょうということを申し上げておるのです。
  273. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 事実の関係についてちょっと申し上げさせていただきたいと思いますが、日本製鋼所と英国の国防省との間の契約におきましては、その契約書上で、砲身に修正もしくは改造を加えたときには、直ちに相手方に通報をしなければならないという規定が入っております。御承知のように、技術の提供者と導入者との間でこういった規定はよくあるわけでございまして、特にわが国のように、必要な技術をぜひ導入したいという場合には、通常こういった条項をのまざるを得ないということに相なっておるわけでございます。したがいまして、こういった条項に基づいて相手方に通報するということはあり得るし、やむを得ないことというふうに考えておるわけでございまして、私どもの承知している範囲内では、日本製鋼所はこの規定に基づいて一遍だけ先方に通報したことがあるということでございます。それは五十二年の七月であるということでございまして、その内容は、大砲の砲身の砲尾のところにある薬きょうを取り除くための機構がございますけれども、その部分が英国軍等のNATO軍のものと日本方式のものと違う、したがってそれを日本方式に変えた、その変えた部分についてこう変えましたということを先方に通報したということだけであるというふうに承知しております。したがいまして、先ほど先生おっしゃいました駐退復座機といったようなことにつきましては、先方に何ら情報を提供していることはないというのが、私どもの聞いている事実関係でございます。こういったことが、いまわかっておる事実でございます。
  274. 坂井弘一

    ○坂井委員 余りむだな時間をとりたくないのですね。それから、いまの局長さんの御答弁は、あなたの方のお考えをおっしゃったので、私の提起している問題に対するずばりのお答えにならないわけなんですよ。  私は先ほど申しましたが、技術を受ける場合は技術導入だ、それから相互に技術を持ち寄るのが技術提携ですとわざわざお断りしたのです。いいですか。こっちが受けるのは技術導入。確かに百五ミリ戦車砲は相手側の技術がわが方に来たのです。これはいただく方です。それに基づいて、いまやライセンス生産まで至っているのです。そういう場合においても、ちょっぴりとこちらが契約条項の中で相手方に返す分がある。そんなことはわかっているのです。それは技術導入の中の一環ですよ。いま私が明確に申し上げておるのは技術提携です。こっちは駐退復座機構の技術を向こうに持っていったのです、ここまで言っているのですよ。でも、そういうことじゃないでしょうかというお答えは、それは私の問題提起に対するずばりのお答えにはならない。  それよりも、先ほどからるる申し上げておりますけれども、どうなんですかね、そういう事実がある。それでは、日本製鋼と言うから皆さんが抵抗を感じられるならば、一般論に置きかえても結構です。そういう事実が四十三年末以前にある。(「五十三年」と呼ぶ者あり)失礼しました、五十三年三月末以前にある。先ほど御答弁になったとおり全くないとは言えないでしょう。おっしゃられればそういう事実がある可能性もある。その場合にはどうするのですか。それは大変な問題でございますから時間をかしてくれ、十分検討させてくれとおっしゃるなら、まだそれは一つの答えでしょう。これから先のことばかり綿々とおっしゃって、私が聞いていることに対する答えにはならぬから、何回もくどくどしく申し上げなければならぬのです。  なぜこれを申し上げるかというと、武器輸出禁止法を制定するに当たっての一つの大きな素材としてお互いに考えてみましょうという意味で申し上げておるわけです。決して揚げ足をとったり、そんなことでもってすったかもんだかやるようなつもりは一切ありません。まじめな問題として提起しているわけですから、まじめにお答えいただきたい。
  275. 古田徳昌

    ○古田政府委員 ちょっと事実関係といいますか、一般的なシステムにつきましての御説明をさせていただきますが、五十三年三月以前に標準決済で輸出されたものにつきましては許可を要しないということになっておりますから、その時点で合法的に行われたものにつきましては、現時点で法的措置をどうかということについては非常にむずかしいということでございます。  ただ、先ほどもちょっと御説明させていただきましたけれども、私どもとしましては、三原則とかあるいは政府方針に反して輸出された武器技術があるということにつきましては、必ずしも全貌について把握しておりませんけれども、仮にわが国から輸出されました武器技術に関しまして現在でも有効な契約があり、輸出先でそれが活用されているというようなことがございましたら、それにつきましては可能な限りの調査を行ってみたいというふうに考えているわけでございます。可能な限りの調査を行い、できる限りの適切な指導を検討してみたいと思っております。
  276. 坂井弘一

    ○坂井委員 通産大臣、総理でも結構なんですが、法律的な解釈というのはいまのとおりだと思うのですよ。そして同時に、そういうことがあるならばということを前提に置きながらただいまの御答弁ですけれども、これは政府憲法上の要請に基づく武器輸出三原則並びに五十一年二月二十七日の政府方針ということに由来する重大な問題でありますから、したがって、こうしたきわめて政治的な、きわめて政府としての大きな方針の中での話でありますから、これは総理なり大臣なりが——こういうような事態はいまも御答弁のとおりでありますけれども、法的措置ということについては及ばない、よくわかるのです。しかし、実態が動いているということでございますから、そういうことがありとするならばということで、総理あるいはまた通産大臣から、その場合においては、それは政府としても重大な関心を持ち、どういう検討になるかは別といたしましても、検討せざるを得ないというのが私は常識的なお答えだろうと思うのですが、いかがなものでしょう。
  277. 田中六助

    田中(六)国務大臣 五十三年四月一日以前の、漏れているかもわからぬ可能性の問題をどうするかとおっしゃっているわけでございますが、私どもは、先ほど申しましたように、私は日英間の技術提携のことだけに問題をしぼったのは、それ以前に、つまり標準決済の部分で漏れているのではないかという委員の御懸念だと思いますけれども、それが正直に言ってつかんでないわけでございます。そしてまた、仮にそれが漏れておるのをどうするかというふうに言われましても、いま法律的にそれが違反とかどうだというふうに言えませんので、私どもは、いま事務当局から答えましたように、これを十分調査して、それでこれにどういうふうに対処するか、どこの会社がどうなっているのかということを調査して対処していく以外方法はないのではないかという気持ちがいたしておりまして、それは、その事実があるならばそれを調査して、そして対処していく方針をお伝えしたいと思います。
  278. 坂井弘一

    ○坂井委員 一例として申し上げたのです。個々にそれに対して対処されるということも当然かと思います。しかし、大きな方針の中の話でありまして、事例として、私は実はまだ幾つも申し上げたいつもりなんですが、一つの例として申し上げたのであって、いま直ちに私は、日本製鋼がけしからぬとか通産省がけしからぬとか言っているのじゃないのです。そうではないのです。そういう時期があったわけですよ。つまり法律上は、標準決済内であれば何ら差し支えがない、そういう時期があったわけです。それが今日なお尾を引いているところに問題があるのであって、そうした場合においては、政府とすれば当然、調査の上幾つかの事例がそうして出てきた場合には、個別に対処するという問題じゃなくて、もちろん個別も大事でしょう、大事でしょうが、一つの大きな三原則なり政府方針の枠組みの中でどう対処するかということをお考えになってしかるべきだと思うのですね。総理、いかがですか。
  279. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 坂井さんからるるお話を伺いました。五十三年四月一日以前の武器の技術の問題、この問題につきましては、政府としては実態を調査、把握をしまして、どのような処理、対応をすべきかということを十分検討さしていただきます。これは今後の問題にもかかわる問題でございますから、十分そのようにいたしたいと思います。
  280. 坂井弘一

    ○坂井委員 よくわかりました。  総理に、なお重ねてひとつお答えをちょうだいしておきたいと思うのですが、武器生産技術の輸出及び技術提携による武器の国際共同開発、これはかつてもこんなやりとりがございまして、それはやらぬのだ、しかし、そんな事実は承知したこともないし、もしそういうことがあるならばという、仮定の上での議論だったようですが、国際共同開発は、世界のいかなる国に対しても三原則及び五十一年の政府方針に照らして厳重にチェックをする、事実上国際共同開発の技術提携あるいは技術の輸出はしないということを、総理は明言できるでしょうか。
  281. 田中六助

    田中(六)国務大臣 武器技術の輸出と同様に、共同開発についても同じような考えで進めたいと思います。
  282. 坂井弘一

    ○坂井委員 したがって、かなり私は現実的に申し上げた。実際問題として、世界のいかなる国に対しても国際共同開発に対する武器生産技術の輸出あるいは技術提携はしない、いかなる国に対しても事実上やらない、こういうことでよろしいですか、理解は。
  283. 古田徳昌

    ○古田政府委員 武器の国際共同開発の具体的構想が進んでいるというふうには必ずしも承知しておりませんが、仮にそのような共同開発にわが国企業の武器あるいは武器技術の輸出が伴うというような場合には、その部分につきまして、先ほど大臣からの御答弁にもありましたが、武器輸出三原則及び昭和五十一年の政府統一方針に即して対応することとなるわけでございます。なお、防衛庁としましての国際共同開発につきましては、防衛庁の御判断によってとり行われるものと考えております。
  284. 坂井弘一

    ○坂井委員 武器でえらい時間をとってきますので、一点、資料としてお願いしておきたいと思うのですが、実は先般の矢野委員の質問に関してであります。次の機会に、日本製鋼所の戦車用アーマープレート、この戦車用のアーマープレート製造に関しまして防衛庁との関係をお尋ねしたいと思っております。そこで、あらかじめ防衛庁に次の資料の提出を求めたいと思います。  日本製鋼所が防衛庁向けに板厚八十ミリないし百ミリの戦車用防弾鋼板をつくっていると思います。この推移と現状、どうなっておるかについての資料の提出をお願いをいたしたい。防衛庁、出していただけるでしょうか。
  285. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 お答え申し上げます。  防弾鋼板の正確な数字を申し上げますと、わが国戦車の防弾性能を推定させる有力な材料になりますので、非常に正確な数字は申し上げられないと思いますが、ある程度の範囲内でお答えすることにいたしたい、ある幅でお答えしたいというふうにさせていただきたいと思います。
  286. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかりました。お願いいたします。  次は、行政改革に関係いたしまして、特に補助金について、これまた的をしぼりましてお尋ねしてまいりたいと思うのですが、現在の補助金論議を見ますと、交付手続の簡素化あるいはメニュー化、さらに類似のものの整理合理化等が言われておるわけですね。こういうことは、言うなれば奨励的補助金について採用できる手法かと思いますけれども、一方、国庫支出金の大部分を占めるいわゆる負担金等においては、そうしたメニュー化とかなんとかいうような手続的な対策は意味がないだろう。また、解決できる性格のものでもなかろう。問題は、国と地方との行政区分と財政分担、これをどうするかにあって、決して本質的に私は補助金の問題ではなかろう、実はこういう認識を持つわけであります。  同時に、中央集権的地方分権とでも申しましょうか、非常に特異なわが国の行財政機構、体質というものがあるように私は思うのですが、その場合、地方分権型財政、これを確立するということが、いまいろいろ指摘されるような弊害とかむだを排することができる道であろう。何よりも許認可を必要とする中央省庁の出先機関がそれによってほとんど不要になるだろう。あるいは補助金交付事務を中心とする中央省庁もかなり縮減できるのではなかろうか。また同時に地方自治体の方でも、補助、負担金申請などの仕事に相当人と時間を費やしておる部局、人員も、かなり削減できるのではないか。したがって、分権化なくして行政改革も経費の削減も本来的にはあり得ないのだ、こういう見解、こういうところに一つの視点を置いた政府の地方分権、これを重視していく、そういう方向にいくのだという決断がなければ、本当の意味の行政改革というのは進まないのではなかろうか、実は私はこう思うわけです。まず、総理の御見解を承りたいと思います。
  287. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 この地方自治、地方分権の問題は、古くしてまた新しい問題でございます。国によっていろいろ違っておりまして、もう本当に政府は国防とか文教とか重立ったものしかやらない、あとは地方に大部分を任せっぱなしだ、そういう国もございます。日本の場合はどれがいいのか、これは本当にむずかしい問題でございますから、今後とも自治省などとよく勉強させてもらいたいと思っております。
  288. 坂井弘一

    ○坂井委員 国庫補助あるいは負担金、これを地方に振りかえをする、地方財政の強化というのですか、自主財源の形に振りかえをする、これはいま効率的な政府をつくるという目的に私はきわめて合致しているという立場から申し上げているわけでありますけれども、御承知のとおり全国知事会は、国庫補助金事業の複雑な手続の実例を幾つか挙げておりまして、ある県の国土改良事業に関しては、国からの補助金を受け、事業を完成させるまでの実態調査を公表した。これを見ますと、期間は二年半かかった。この補助金事務に関連して、従事しました延べ人員が何と、これは日にちに換算いたしまして二千八百八十五・五日、上京した県職員数が六百四十一人、十九回。したがって、そうした補助金、負担金、これを地方に振りかえるということは、補助金行政の機構が大幅に簡素化されて、人員、部局の整理を通じた行政改革に非常に大きな貢献をするであろう、こう全国知事会の指摘からもうかがえるわけであります。  そこで、たとえば広島県でありますが、ここは五十五年度から総合補助金制度を発足させましたですね。これを見ますと、県の単独補助金が百二十件、八十二億、これを一本にまとめるという総合補助制度、こういう制度のようであります。この広島県の五十四年度当初予算で見ますと、補助金総額が二百八十八億、三百四十四件。したがって、県単独のもの、つまり県の主体性で決められるものは、金額で二八%、件数で二四%にすぎない。七十数%というのは国の関係の補助です。自分のところで自主的に判断されるのは二四%、二八%。しかし、これだけでもせめて、いままでひもつき的、ばらまき的に各市町村に補助しておったのを一括でやりましょう、これは私は大英断だと思うのですがね。  こういう制度に踏み切った、つまり総合補助金制度でありますが、これはどう評価されますか、大蔵大臣。
  289. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私も詳しいことはわからないわけですが、宮澤さん、非常に熱心なんです、その話は。私のところにも一応そういうようなことについてのいろいろな進言もちょうだいいたしました。ただ、県の場合は、大体その気候、風土、民俗、習慣、同じような考えを持っておる人が多い。国の場合は、北海道から沖繩まで、地域差というものも非常にございますしね、そこらのところが一体どうなのか。これは実際に補助金を交付しておる建設省とかあるいは農林省とか、そういうような実務官庁といいますか、そういうところの意見も聞いた上で判断をしていかなければならない。  ただ、われわれとしては、同じ農林省の補助金で普遍的なものについては、なるべく細かいことまで細目を国が決めて縦割りにしないで、メニュー化方式で、それで農林省の関係のものなどはいまなるべくそういう方向に持っていくように現にやっておるわけでございます。  ただ、土木の補助金もあるいは農林省の補助金も社会保障の補助金も、まとめてどかんと国がやるということになると第二交付税みたいな話になっちゃって、これはまたいろいろ大問題が出ている。同じようなものについてはできるだけ御指摘のような簡素化を図っていく、実情によって向こうの自主性を尊重する、そういうことは大切だと思っております。
  290. 坂井弘一

    ○坂井委員 杞憂に過ぎるんじゃないかなという感じを実は私は持つのですよ。これは後ほど触れますが、俗にひもつき補助といって、あらゆる分野に補助金の網がかかっておりますね。この補助金が財政を悪化させ、あるいは税負担を重くしておるということも非常に大きな問題ですが、私は、むしろそのことよりも、さらに視点を変えて見ますと、実はわが国の民主政治を根っこから侵食しつつある、このことの方がより重大じゃないか。まあえらい角張ったような言い方をして恐縮だが、どうも補助金というのはよろしくない。この辺の実態をよく見きわめて、切るべきものはきちんと切りませんと、民主政治の姿勢にも実はかかわると思います。後ほど触れたいと思います。  そこで、まず最初に、五十六年度補助金整理合理化措置の概要、これを見ました。新設された補助金百九十八件の合計額が五百二十八億円、これは廃止の金額を上回っておりますね。つまり、五十六年度廃止件数が二百九十二件で四百六十億四千万円、五十六年度新規件数が百九十八件、五百二十八億円。  そこで、中曽根行政管理庁長官にまず最初にちょっとお尋ねをしておきたい。  政府は、五十五年行革において補助金件数を四分の一整理する方針を決められた。私は昨年も、件数の整理というのは余り意味を持たぬのではないかということを指摘をいたしました。思い切ってむしろ額で、昨年九月のわれわれの四党合意もあるのですが、思い切って補助金総額の一割、これを削減するんだ、こういう大方針を検討するぐらいの勇断を持たなきゃならぬのではなかろうか。もちろんこの場合には、法律補助も見直して削減をするというぐらいの決断が必要だと思います。つまり、件数の減らしではなくて補助金総額を金額で一割頭からカットする、これぐらいのことを検討されたらいかがでしょうか。
  291. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そのお考えも傾聴に値する一つのお考えであると思います。臨時行政調査会におきましてあらゆる角度から補助金が検討されると思いますが、恐らくそういう御議論も出るのではないかと思います。
  292. 坂井弘一

    ○坂井委員 全国市長会でも、もうこんなのは要らぬから廃止してくれ、わざわざ廃止してくれと言うのを、またこれを廃止しないで乗っけているわけですな。聞いてみますと、それぞれ理由があるんだと、それなりの理由をおっしゃるけれども、要らないよとまで言ってきているのを、わざわざ国はつける必要はなかろうと率直に思いますね。  まあそれはそれとしましても、行政管理庁、非常にりっぱな調査をされたようでありまして、昭和五十四年度補助金調査、改善措置状況を五十五年の三月にお出しになっていらっしゃいます。内容を見ますと、調査対象は目と目細別で、補助金が二百十九件、金額が千五百七十五億円、委託費が十九件で三億四千万円、合計いたしまして二百三十八件、千五百七十九億円。さて、これだけ調査いたしまして、改善措置されたものを見ますと、補助金が百四十九件で金額が三十五億五千万円、委託費が十九件で六千六百万円、合計いたしますと百六十八件、合理化額が三十六億一千万円と相なっているわけです。非常にりっぱな調査をされ改善をされたと、私はこれを評価したいと思います。  ところで、ここでまだ改善措置がなされていない補助金が七十件あるのですが、この七十件の内容は行政管理庁、明らかにはできませんか。
  293. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。  行政管理庁の行いました五十四年度の監察の結果についてでございますが、私どものやりました調査の件数が多いものでございますので、調査の対象は一件ごとになりますと非常に数が少なくなってまいります。そういうことから、全国の傾向把握のために行いましたものでございませんので、個々の内容につきましての結果の公表はいたしておりません。  ただ、予算が決まりました後には、今後の改善の指針ともなるべきものでございますので、改善の措置がとられましたものにつきましては公表いたしまして、今後の改善の資料にするということにしておりますが、私どもの調査しました内容についての御発表は御勘弁いただきたいというふうに考えております。
  294. 坂井弘一

    ○坂井委員 それから、いまのは五十四年度ですね、五十五年度の補助金、委託費調査による改善措置状況、これはどうなっているのでしょうか。内容を聞いておりますと時間がございませんので、早く提出をしていただきたいと思います。できるだけ早く。いつごろお出しになれるでしょう。
  295. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。  ただいま計数整理中でございますので、なるべく早い時期に御提出いたしたいと考えております。
  296. 坂井弘一

    ○坂井委員 先ほどの冒頭申し上げました質問に戻りたいと思います。  各省庁に補助金はまたがっておりますが、とりわけそのうち——右へならえで農林大臣、ごしんぼういただきたい。農林省関係の補助金はざっと千二百件、全体の補助金の件数が三千八百件でありますから、農林省だけで約三分の一というところになろうかと思います。金額は、五十五年度で一兆九千億、このうち農業補助が一兆五千億。いろいろな補助金が込み合っておりまして、競合して効果がどうなっているのだろうかと思われるものがいっぱいありますね。あるいはいろいろな分野にはみ出しているのじゃなかろうかなと思われるような補助金、いろいろあるようです。それはそれとしましても、具体的にひとつお尋ねをしたいのです。  農林省の補助金で、概算要求も内示もされていない、概算がないのですから内示があるはずがないですね。もちろん前年度、五十五年度はゼロ。で、八月概算要求段階でも概算なし、したがって内示もなし、突如として予算決定段階でぽんと出てくる、こんなのありますな。これはどういうことですか。
  297. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 突然出たものはございません。ちゃんと追加要求をいたしまして予算化をいたしておる、こういうことでございまして、これは農林水産大臣として、そういう点は閣議の前後でありますとか、やはり四カ月間の間がございまして、いろいろと事情の変化というものもあるわけであります。したがいまして、より現実的な予算を編成してまいります際には当然あってしかるべきこと、特に昨年は、異常気象でありますとかあるいは魚価の低迷でありますとか、いろいろ農林水産業界にとっては厳しい情勢の中での予算編成ということでありましたので、私といたしましても、八月概算要求を出した後、ああ、これもしておけばよかった、あれもしておけばよかった、こういうことが出てくるのは当然である、こういうふうに御理解をいただきたい。
  298. 坂井弘一

    ○坂井委員 そういうふうに理解したいと思いますがね。しかし、ずいぶん奇妙な話じゃないでしょうか。必要なものならば、概算要求段階で出すのがあたりまえでしょうね。それが出ないから内示はゼロだ。しかるに、復活折衝の中でまた、ぽんと出てくる。こんな奇妙なことがあっていいんでしょうか。  巷間いろいろなことをこれでもって聞く。だから、私は耳ざわりになって仕方がない。地方自治体の首長さんあたりから、いやあ先生、実はおかしいですよ、あの補助金はと、こんなことは聞きたくないですね。聞きたくない。ですから申し上げておるのです。  そういうものが幾つもあるので、私は——実はこれは皆さんがお出しになった資料ですよ。いままでこれはお出しにならないから、むしろ強引にいただいたと申し上げた方がよろしいでしょうか。農林水産予算内示の概要、それからこっちは農林水産予算概算決定額の概要。つまり、あなた方が概算要求する場合、それから内示があっていよいよ査定に入る、そういう段階で各省庁と折衝する資料ですよ。だから、この推移はここで大体わかる。ああなるほど、この省はこの科目に、項目について前年はこうであった、それが概算要求段階はこれだけ要求したんだな、内示ではこうなった、ところがまた、これは復活のときに出てきたのだ、わかるわけですな。これは膨大なものでして、ずっと丹念に全部拾ってまいりますと、われわれがこれを見ましても、ずいぶんおかしいね、これはというようなものが、陸続とまでは申し上げませんが、ちょっと目につき過ぎるきらいがある。そのことをまず最初に申し上げておきましょう。  ですから、そういうことで見ていきますと——私は昨年も、つかみ金じゃないかと言って、武藤さんが農林大臣のとき申し上げた。これは大蔵大臣も御存じのお話だ。つまり農林漁業構造改善村落特別対策事業補助金百億、これはつかみ金じゃないか、こう申し上げた。いや、そうじゃありませんと盛んにおっしゃっておった。だが、今度の五十六年度予算ではこのつかみ金は廃止した、こうおっしゃるんだが、本当ですか。
  299. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 大体、私はつかみ金は余り好まぬ方でございまして、やはり行政官として国民に説明のできる予算をつくりたい、こういう念願で、実は党の方とも相談をして、ことしはあの百億は予算計上はいたしておりません。
  300. 坂井弘一

    ○坂井委員 としたら、農林大臣、御存じないのかもわからぬ。農用地利用増進特別対策事業、これは何ですか、八十一億二千五百万。
  301. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 これは国会で食糧自給力強化の決議をしていただき、その裏づけとして農地関係三法の制定をちょうだいしたわけでございます。したがいまして、この法律の精神を貫いてまいりますためにはどうしても新たな予算が必要であるということで、その予算に充当するために八十一億というものを計上いたした次第でございます。
  302. 坂井弘一

    ○坂井委員 さて、お答えになれば、そういうきれいなお答えになるのです。これはもともとつかみ金と言われておる。このつかみ金は、衣がえをしながら今日、五十六年度予算においてもなお生きておるということを私は申し上げたい。農用地利用増進特別対策事業に八十一億二千五百万円計上されております。  私は昨年の二月の当委員会におきまして、五十五年度に新設になりました農林漁業構造改善村落特別対策事業百億、これは五十四年度の農林漁業村落振興緊急対策事業費百億円の衣がえである、こう指摘した。そうしますと、当時の武藤農林大臣は、五十四年度は水田利用再編対策等農業生産再編成を進めていく地区について優先的にやった、五十五年度は農用地利用増進事業を思い切ってやろうということで、同じではない、こういう御答弁であります。今回新設の農用地利用増進特別対策事業は、武藤農林大臣がお答えになった、これをやりたいんだ、昨年度の百億はそれをやるための予算だったんだ、こうおっしゃったものが、そのまま項目がきれいに上がりまして、そして今年度の予算になってあらわれておる。  もう少し正確に申し上げますと、まず第一番、五十四年のときには農林漁業村落振興緊急対策事業費、これが七十二億九千万。これが五十五年になりますと農林漁業構造改善村落特別対策事業七十五億九千三百七十五万、これが本年度になりますと、農用地利用増進特別対策事業八十一億二千五百万。順次金額を上積みしながら今日ずっと衣がえで来ておる。それなんでしょう、これは。
  303. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 五十四年度、五十五年度におきまして、先生いま御指摘のような名目で百億円の予算の最終段階での計上がございました。それに対しまして、五十六年度におきましては、これは五十五年、先年の国会におきましていわゆる農地三法が成立して農用地利用増進事業というものを進めることにしたわけでございますので、そのための事業の経費といたしまして、農用地利用増進特別対策事業ということで当初要求として五十億円を要求いたしておったところのものでございます。ただ、この事業は、法律が成立してその内容がわかるにつれまして、各都道府県、市町村、特に農業団体等の間でこれを積極的にやりたいという話が盛んに起こってまいりました。私ども、当初は二百地区でこの事業を実施したい、地区において地域の総合的な農地利用の計画等もできて、モデル的なところを二百地区ぐらいというふうに思っておりましたところが、経過を経るに従ってその要望が強いので、できるだけ事業を大きく実施したいということになりまして、各方面の要請を受けて、予算要求の段階ではございましたが、当切要求の一部を組みかえまして、大蔵省に、三百二十五地区を対象に事業を実施したいので、金額的にも当初要求を上回ることになって八十一億二千五百万円となるけれども、それを認めてもらいたいということで折衝したわけでございます。その結果、最終的にその金額が予算計上の事務段階で認められるということになったものでございます。
  304. 坂井弘一

    ○坂井委員 御説明を聞けばそういうことなんでしょう。そういうことなんでしょうが、いま私が申し上げておるとおり、そのことは言うなれば、あなたの御答弁でも確かにそのとおり続いておるということです。新規政策としてそういう必要性があるならば、私はそれを否定しません。しかし、元来これはつかみ金じゃないかと言われた。それが衣がえで名目だけ変わってきて、確かに今日的な農政でそれが新規政策として必要なんだ、こういうことであれば、それまで否定するものではありませんよ。しかし、少なくともこうして見る限りにおいては、非常にこそくですね、このやり方は。さっぱりわからぬ。きれいになりました、もうつけておりませんと言いながら実はついてきている。こんなことは好ましくありませんということを申し上げているのです。  時間がありませんから、衣がえについて二、三申し上げておきましょう。  高能率養蚕団地育成事業費は五十五年に五億八千九百四十五万六千円、これが五十六年になりますと高能率養蚕産地育成事業費、団地が産地と変わったのです。これが三億ばかり増額されまして八億七千八百五十万。あるいは水田裏飼料作物生産振興奨励補助金、これが九億七千五百万。これがことしになりますと水田裏飼料作物高位生産対策事業費と名前が変わりまして十億四千四百万等等。  したがって、ここでこういう補助金がおかしいから全部ぶった切れというようなことを私は申し上げているのではない。もう一度、私のこの議論をもとに戻します。つまり、件数だけ四分の一削減しても余り意味はなしません。トータルの補助金総額で一割はカットするんだというぐらいの勇断を持って、そして新しく政策上これは必要だと思う補助金は当然つけなければいかぬと思うのです。これは優先順位の問題だと思いますよ。ですから、そういうことはそれできちんとやらなければいかぬ。しかし、いままでの延長線上の手法で考えて、こっちで廃止しました、こっちで新設しましたと言いながら、実はよく見ておりますと、きわめて巧妙に衣がえがある。こんな数字合わせを幾らしたって意味はなさない。のみならず、こうした補助金にまつわるいろいろな芳しからざる風聞というのがいっぱい耳に入るものですから、そういうことはこの際きちんと断ち切らなければならぬのではないかという趣旨で申し上げたわけであります。決して農林省を目のかたきにして言っているのではありません。ほかの省庁においても似たり寄ったりの感じでございまして、一例として申し上げたわけです。  そこで、総理に重ねてお伺いいたしますが、いま申しましたような実態、これらにもっときちんと目を注がなければならぬと思いますが、補助金のそういう内容を一度再点検する必要があるのではないか。同時に、そういうことであれば、いま申しましたように思い切った整理合理化を補助金の金額で行う、額で抑える、これぐらいの決断をすべきときに至っているのではないか。つまり、種々論議されますごとく財政が非常に窮迫をしておる、そういう折でありますから、一方においては国民にまた税の負担をお願いしなければならぬと政府はおっしゃる。われわれは、そういう手法ではなくて、たとえば不公平税制等の問題につきましても論議されましたが、同時に行政改革の面から見て、そうした補助金というものの実態から見て、一度総点検をやって、思い切って切れるものは切るという一つの決断を総理はお持ちになるべきときではなかろうか、こう思うのですが、いかがでございましょうか。
  305. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、今国会におきましてもしばしば申し上げておるのでありますが、行政、財政ともに、高度経済成長時代及びその延長線上におきまして確かに肥大化しております。これを思い切って合理化する、健全化するということが今日非常に要請されておる問題だ、こう私は考えております。したがいまして、いまお話がございました御意見等も私、同感な点が多々ございます。また、第二臨調にも御意見を伺い、そして五十七年度予算編成に取り入れるものは取り入れる、そういう腹構えで今後取り組んでいきたい、  こう思っております。
  306. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間がございませんので、問題を変えたいと思います。  会計検査院法の改正問題です。このことにつきましては、昭和五十二年五月に衆議院本会議議決があって以後、私がざっと数えてみただけでも衆参両院本会議での同種の決議が合わせて六回、当予算委員会を初め衆参各委員会での質疑が四十数回、本会議での質疑も十数回に上っておるわけであります。宮澤官房長官は、この問題については決算委員会で何回も御答弁されているようであります。総理も本会議答弁をしておられる。  改正内容や経緯についてはいまさら申し上げるまでもないと思うのですが、私が昨年二月の当委員会で質問をいたしました際に、当時大平総理が「できるだけ早く結論を急ぎたいと思います。今国会中には見当をつけて御報告するようにいたします。」と、実は非常に前向きの答弁をされたわけです。ちょうど一年たつわけでありますが、政府から何の報告も私は受けてもおりませんし、今国会における政府の提出予定法案にも入っていないようであります。  そこでお尋ねをしたいのですが、一体これはどういうことなんでしょうか。依然として検討を続けておるということなのか。それとも、政府としてはもはや会計検査院法の改正は断念、行わない、こういう結論を出したということでしょうか。いずれなんでしょうか。
  307. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましてはいろいろ努力をいたしておりますものの、実績が上がりませんでまことに申しわけないと思っております。私の前任者であります伊東官房長官も、昨年、関係各省を呼ばれて非常に努力をされたわけでございますが、論点は御存じでございますから省略をさせていただきます。  私自身また、就任いたしましてから努力をいたしてまいりましたが、ただいまのところ、会計検査院側と各省庁とを両方ともに満足させるような法の改正案を得るに至っておりません。実は昨年の暮れになりまして、新しく会計検査院長が就任をされました。私のところへお見えになりまして、自分としては各省庁側の行政経験もあるので、自分自身が説得に当たってみたいということを言われまして、いろいろ御努力をしていただいたようでございます。ことしの一月の二十日過ぎにも、そのようなことについて新検査院長からお話がございました。どうも必ずしも直接の話し合いも進展をしておるというふうなぐあいでもございません。したがいまして、引き続き私のところで調整をしなければならないという状況が残っておりますが、御承知のように、会計検査院が憲法によりましても検査院法によりましても独立の立場を持っておられることもございまして、関係各省庁だけをいわばひとつ私に全部預けてくれ、何か答えを出すというような扱いにもできませんで、結論に至っておりませんことを申しわけなく思っております。
  308. 坂井弘一

    ○坂井委員 せっかく宮澤官房長官答弁ですが、私は、これは会計検査院側の院長の方の問題ではないと思うのですね、事の経緯から見まして。改めて一通りずっと目を通してみました。そうすると、政府答弁は、昨年の大平総理の非常に前向きの答弁があっただけでして、それ以来、また二年前の答弁に逆戻りですね。要するに検討中とか調整に努力しておる、こういう答弁の繰り返し。ですから、問題はその検討あるいは調整の中身だと思うのです。  つまり、なぜいまだに院法改正についての結論が見出せないか。その反対理由の一つは、公権力の過剰介入になる、それからいま一つは、政策金融の推進に支障を来す、こういうことだろう。そういう理由であれば、これは立法政策上の重要な問題でありますから、むしろ政策論議の問題でありますから、これを担当する内閣の方で検討して結論を出してもらうしか仕方がない、そこで内閣にお願いをした、こういう経緯だろうと思うのですね。ところが内閣は、官房長官がお預かりになったままでなかなか結論が出ない。会計検査院は首を長くして待っておる、こういうことだろうと思いますよ、検査院の立場は。したがって、政府答弁の検討中あるいは調整に努力ということの中身について、これまでの答弁では非常にあいまいな点が多いので、やや具体的にそれをただしておきたいと思うのです。  まず、反対理由の一つである公権力の過剰介入、こういう点でありますけれども、今回の院法改正によって公庫、銀行等の政府系金融機関の貸付先について検査院が検査をすることがどうして公権力の私企業に対する過剰な介入となるのか、明確な根拠を示されたいと思うのですが、そんな根拠は私はなかろうと思うのです。私権に対する公権力の介入が小さい方がよいという点については、私は一般論として全く賛成であります。しかし、今回の会計検査院の権限強化は、これが必要になったという背景があります。つまり、あのロッキード事件を初めとする一連の事件を契機として、同種の事件の原因を解明して再発防止を図らなければならぬ、こういう背景ですね。それから考えましても、あるいはまた、ほかの法律の規定とのバランス、たとえば住宅金融公庫の貸付先につきましては、すでに公庫法で検査院が検査をすることができる、こういうことになっております。あるいはまた、国や公社の工事、物品の発注先についても院法で検査ができる、こういうことになっておる。さらにはまた、地方公共団体では会計検査院と同様の仕事をしている監査委員がございますけれども、自治体が貸し付けを行った貸付先について監査することができるということに自治法でもなっておる。しかもこの規定は、昭和三十一年の地方自治法の改正で、監査委員が監査できると、政府提案でわざわざ盛り込んだものですね。地方自治体の監査委員にできることが会計検査院になぜできないのですか。それならば監査委員の場合には公権力の過剰介入にならないのか。会計検査院の場合には公権力の過剰介入になる、これはおかしな論理であります。住宅金融公庫の貸付先あるいは国や公社の工事、物品の発注先に対する検査は公権力の過剰介入にはならないけれども、他の公庫や銀行等の貸付先については過剰介入になるのか、こういう理屈はどう見ても説得性を持たない。  でありますから、公権力の過剰介入というようなものに私は当たらぬと思うのですが、政府はやはり公権力の過剰介入に当たると考えていらっしゃるのですか。宮澤長官はまさかそんなことは考えていないとお答えいただけると思うのですが、いかがですか。
  309. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこがむずかしいところでございまして、私は両方の主張を何とか調整をしたいと考えておる立場でございますので、全面的に公権力介入云々という主張も認めたいとも思いませんが、しかし、検査院の方にも何かある程度便法はないのかというようなことを考えておる立場なものでございますから、政府という立場からどの主張が正しいというようなことは、ちょっと私の口から実は申し上げにくいのでございます。
  310. 坂井弘一

    ○坂井委員 もう一つの反対理由であります、会計検査院の検査が入るということになりますと借り手が減って政策金融の推進に支障を来す、こういうことを反対理由にしておる。この点についても、官房長官を初め総理、関係大臣も、特に中小企業者あるいは農民、いわば弱い立場の人々を前面に出して、この人たちが反対しているからだというような言い方はよろしくない。これは要するに関係省庁の役人の言い分を代弁しているにすぎないと私は思います。会計検査院の検査報告を一遍読んでごらんなさい。そんなことは断じてありません。もし検査報告をお読みになれば、そんな答弁はできないはずだと思います。この辺は長官総理ももう少しまじめに御勉強していただきたい。検査院は本当に真剣にやっていますよ。  なぜ私がそういうことを言うかと申しますと、あなた方が言われる中小企業者や農民は、もう二十年前から肩越し検査という形で検査をやっているのですよ。きわめて協力的ですよ。でありますから、検査報告に不当事項とかあるいはまた措置要求という形で指摘事項が載せられておる、こういうことなんですよ。むしろこうした中小企業者あるいは農業者は、国からお金を借りている以上は検査を受けるのは当然だ、これぐらいの認識ですよ。きわめて協力的です。だから、検査院の検査があるからということで借りる人が減ったというような話は聞いたことがない。だから、官房長官は、恐らくこの点については私の意見に同調されるであろうと私は思います。うなずいていらっしゃるからあえて答弁は求めませんが、これは杞憂にすぎないのじゃないかと実は思うわけであります。  そこで御質問いたしたい。要するに、いま申しましたように反対理由は明確な根拠があるわけではないということ、そういう立場で申しました。そこで、総理どうでしょうか。この段階では検討中とか調整中という答弁ではもう通用しない段階に来ている。総理が各大臣に会計検査院法の改正をするという意思を示される必要があるのではないか。これはむしろ省庁間の調整の問題です。総理が院法を改正すべきであるという意思を関係省庁にお示しになることが、私はこの問題の結論を得る一番のポイントだろうと思うのですが、総理、いかがでしょうか。
  311. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 総理大臣がお答えする前に私から、私は反対しておる方の一人なものですからお答えをいたします。  いまお話があったように、たとえば銀行検査というのは大蔵省がやっておるわけです。それで、銀行の健全性というものを確保するためにやっておりますが、だからといって、大蔵省の銀行検査は、民間銀行から金を借りている人のところまで入り込んでいって検査をするというようなことは、実際問題としてやりません。それから、商工中金というのは国が大部分の出資をしてやっておるわけですが、たとえば商工中金から金を借りるのに、商工中金から金を借りた人は会計検査院に調べられるよというような規定を残すことは、必ずしも賛成しません。これは大部分の人たちに聞いてみましたが、余り喜ばない。したがって、法律ですから、つくるとひとり歩きしてしまうというところに問題がある。開銀とか輸銀とかいうものについては、大蔵省も検査権限を持っておるわけです。会計検査院ももちろん検査をいたします。しかし、輸出商社や何かいろいろなところで輸銀の利用者もずいぶんあると思いますが、そういう場合に、輸銀を使ったものはみんな会計検査院がその会社を調べに行きますよということになると、果たして現在うまく機能するかどうか、実はこれは非常に問題があるわけなんです。  したがって、会計検査院が、国の経費をむだなく有効に使わせるということで一生懸命やってもらっておることは大変ありがたいし、それには極力協力をしていかなければならぬ。したがって、肩越し検査等に対しましても協力をさせるように、それぞれの官庁が慫慂しておることも事実でございます。しかし、そういう面もあるのだということについて、私どもとしては直ちに、輸銀から金を借りたら会計検査院が調べに行っていいということはなかなか言い切れないという実情にあることを御参考までに御報告いたします。
  312. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど宮澤官房長官から、宮澤君が官房長官になりましてからも引き続きこの問題に取り組んでおり、非常にむずかしい問題もそこに存在するということもるる申し上げたところでございます。内閣としてもまた、この問題はぜひ早く結論を得たい、こう思っておることでございますから、しばらく宮澤官房長官に中心になってやってもらいたいと思っております。
  313. 坂井弘一

    ○坂井委員 私は、この反対理由は全く杞憂にすぎないと思っております。総理も本当に心底から御心配だと思います。御心配であれば、法案審議の過程で十分に論議を尽くせばいいことではないかと思いますし、同時にまた、国会立場としましても、そこには一つの歯どめ措置として、国会の意思として国会決議を付するということも一つの方法かと思うのです、これは検査院がどうおっしゃるかわかりませんが。そういうようなことでありますから、いずれにしましても国会決議の今日までのあの趣旨なり経緯、同時に、一方におきます独立機関である会計検査院の意思、これはやはり尊重しなければならぬ。したがって、総理にひとつ御決断を願いたいのは、国会決議があり、会計検査院も早く早くと言って待っておる問題をこれだけ長い間日を置いたということは、ほかに例を見ないと私は思う。でありますから、少なくともそうしたような経緯を踏まえてみるならば今国会に提出すべきだと私は思うのですけれども、総理どうでしょうか、お約束いただけないものでしょうか、最後にお尋ねをいたしまして、終わります。
  314. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 坂井委員のおっしゃっていらっしゃいますことは、私の立場から考えましてもまことにごもっともなのでございますが、実はこの問題は両者間でかなりいろいろなもつれた問題になっております。できるだけ努力をいたしてみたいと思います。
  315. 小山長規

    小山委員長 これにて坂井君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十七日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十四分散会