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1980-10-31 第93回国会 参議院 安全保障及び沖縄・北方問題に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月三十一日(金曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員異動  十月二十四日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     野田  哲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 衛藤征士郎君                 堀江 正夫君                 瀬谷 英行君                 中野  明君                 立木  洋君                 柳澤 錬造君     委 員                 伊江 朝雄君                 板垣  正君                 植木 光教君                 大鷹 淑子君                 岡田  広君                 志村 愛子君                 戸塚 進也君                 夏目 忠雄君                 村上 正邦君                 大木 正吾君                 寺田 熊雄君                 野田  哲君                 矢田部 理君                 藤原 房雄君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君    政府委員        外務大臣官房長  柳谷 謙介君        外務大臣官房調        査企画部長    秋山 光路君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省中近東ア        フリカ局長    村田 良平君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        大蔵省主計局主        計官       日吉  章君    参考人        三菱電機株式会        社顧問      白川 元春君        憲法擁護国民連        合代表委員    遠藤 三郎君        京都産業大学教        授        漆山 成美君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の安全保障に関する諸問題並びに沖繩及び北  方問題に関する調査  (北朝鮮潜在的脅威問題に関する件)  (自衛隊海外派遣に関する件)  (ホルムズ海峡の安全通航問題に関する件)  (総合安全保障会議に関する件)  (北方領土問題に関する件)  (イランイラク紛争問題に関する件)  (防衛予算に関する件)  (国の安全保障問題に関する件) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ただいまから安全保障及び沖繩・北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十四日、本岡昭次君が委員を辞任され、その補欠として野田哲君が選任されました。     —————————————
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、国の安全保障に関する諸問題並びに沖繩及び北方問題に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 野田哲

    野田哲君 まず、朝鮮半島に関する外務大臣認識あるいは政府としての考え方、この点について伺いたいと思うわけです。  ことし発表された八月の外交青書「わが外交の近況」、これによりますと、朝鮮半島の問題については、「実質的な南北対話再開に向けての国際環境造りに貢献するよう努力している。」、こういうふうに述べられており、そしてまた北の朝鮮民主主義人民共和国との関係については、「北朝鮮との間では貿易経済文化などの分野における交流を漸次積み重ね、相互理解をはかる方針維持している。」、こういう方針に沿って、漁業関係やあるいは人物交流日朝貿易、この拡大を進めていくという方針が述べられている。この外交青書に関する限り、私は朝鮮半島に対する、特に朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮に対する態度、私どもも同意見であり、支持していきたいと思うわけでありますけれども、どうも最近の政府部内の言動はかなりこれとはニュアンスの違う声が起こっている。この点について、まず、伊東外務大臣は前の大平内閣官房長官から引き続いて外交分野を担当されているわけですが、この朝鮮半島に関する、特に朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮に関する認識につきましては、ことしの八月に発表された外交青書、ここに掲げてある、私がいま読み上げたような考え方に立っていると理解してよろしゅうございますか。
  5. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) わが国にとって、朝鮮半島の平和というのは、これはわが国の平和にとっても非常に大切なものでございますし、そういう見地からしまして、いま外交青書でお読みになった考え方と変わらぬ考え方を持っております。
  6. 野田哲

    野田哲君 防衛庁岡崎参事官、この方は外務省から出向されている方だというふうに聞いているんですが、この北朝鮮について、軍事力が増強されており、日本にとっては潜在的な脅威の増大だ、こういうことで、脅威拡大という立場北朝鮮認識しているという発言があった。このことについては一応統一見解として政府が薄めてはいるけれども、このような発言が出るということは、政府部内——防衛庁なり外務省なりの中に、それこそ潜在的にそういう認識があるということを私はあらわしているんじゃないかと思うんです。政府のその後の見解岡崎参事官発言を薄められてはいるけれども、しかし否定はされていないと思うんです。それは、北朝鮮潜在的脅威と断定することは国益に必ずしも沿うものではない、そしてさらにつけ加えて、朝鮮半島軍事バランスの変化が直接的ではないにしてもわが国に影響を及ぼす可能性がある、こういう形で、これはきわめて玉虫色表現になっている。  最近の傾向を見ると、外務大臣外務省にしてもそれから防衛庁にしても、平生私ども質問にはきわめて歯切れの悪い官僚諸君発言が、分野を超えた発言をする、そして後でこれを政府が追認をしていく、こういう繰り返しが続いていって、超えてはならないところをずっと既成事実をつくって超えていこうとしている、そういう傾向が見られる。今度の岡崎発言朝鮮半島の問題についても、私はそういう傾向一つととらえなければならないんじゃないかと思うんです。政府統一見解は、きわめてそういう点では岡崎発言北朝鮮脅威論について薄めてはいるものの玉虫色。けさの新聞によると、自民党の中で岡崎発言支持論があるので、その点なども横目でにらみながらこういう表現になったんだ、こういう報道がされているんですが、外務大臣、あなたが最初に言われ、外交青書にも書かれているように、朝鮮半島については南北対話再開に向けて努力をし肯献するように努力をしているんだ、こういう立場に立っており、朝鮮民主主義人民共和国についても相互理解を図る方針維持して漁業関係人物あるいは貿易等拡大を進めていこうとしているんだ、こういう立場で明快な見解統一見解としてなぜ述べられないのか。明らかにこの外交青書に書かれている朝鮮半島に対する認識岡崎発言、あるいはそれについてのその後の政府宮澤長官から発言された統一見解、これには食い違いがあるんじゃないですか。この点いかがですか。
  7. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 岡崎君が発言したことに対しまして宮澤官房長官から統一見解を出して、わが国としては朝鮮民主主義人民共和国立場というものを考える場合に、広い立場から考えなければいかぬと、それは経済の問題もありましょうし、文化の問題もありましょうし、いろいろ広い面から判断をしなけりゃいかぬということで、先生お述べのように、そういう見地からすれば北朝鮮軍事力増強潜在的脅威であると断定することは必ずしも国益に沿うものではないという統一見解を出したのでございまして、私どもはこれは、その統一見解そのまま、衆議院の方で、内閣委員会でございますが、終わったことでございますので、それで御了承をお願いしたいと思うわけでございます。  ただ外務省は、あくまで平和的に物事を解決していこうというのが外務省のこれはやらなければならぬことでございます。でございますので、統一見解もちろ統一見解としましてそれに沿うて、いま言いましたように、朝鮮半島の平和というのは本当にこれは日本の平和にとって大切なものでございますので、私も何回も華国鋒さんに会ったときも朝鮮半島の問題を話し、南進はあり得ないというようなことを中国側からも何回も聞いている。そういう南北対話環境づくり、できることなれば日本としても協力したい、そういう態度で臨もうというのがわれわれの外交の取り組む姿勢でございます。これはあくまでそういう姿勢で取り組みますので、その点はひとつ御心配なく、御了承願いたいと思います。
  8. 野田哲

    野田哲君 言葉じりをつかまえるようですが、潜在的脅威と断定することは国益に必ずしも云々と、こうなってるんです。断定はしないが何かそこにはやはりそういう認識はあるんだというような、宮澤長官による統一見解ではニュアンスがあるわけです。  いまの伊東外務大臣見解で、中国との間でも北朝鮮に対する認識は一致をしている、平和的にあくまでも対処していくんだと、こういうことで私は一応この問題はこの場ではとどめて、次の問題を伺いたいと思うんです。  ことしの夏に同じく外務省安全保障政策企画委員会、ここで第一ラウンドの取りまとめというのを発表されております。ここの中に書かれていることについて、八月十二日に参議院の内閣委員会で第一回目の議論がありました。この取りまとめに書かれている国連平和維持活動要員派遣をする云々と、こういう点については、わが党の矢田部君の質問に対して伊東外務大臣は、自衛隊海外派遣するというようなことは全然考えていない、こういうことで明確に打ち消しておられるわけです。ところが伊東外務大臣が退席された後で、公明党の峯山委員質問に対して、外務省政府委員大塚さん、この人の答弁は、「国連平和維持活動への要員派遣」というのは自衛隊としての部隊派遣想定をしているんだと、こういうふうに答えておられます。これ、議事録があります。そのことを契機にして、自衛隊海外派遣、こういう場合はいいんだとか、あるいはこういう場合にはいけないんだとかいうような議論があっちこっちで出ているわけでありますけれども伊東外務大臣最初答弁をされた、自衛隊海外派遣する、そういうようなことは全然考えていないと。これがなぜ政府委員発言、あるいはその後の政府見解等で曲げられてくるのか、不統一が出てくるのか、当の外務大臣としてはどのようにお考えになりますか。特に外務省取りまとめ安全保障政策企画委員会のこの第一ラウンドの取りまとめという問題の中から、これが発端になってそういう議論が起こってきている。この点についての外務大臣見解を伺いたいと思うんです。
  9. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの問題でございますが、私、大塚君が発言したときおりませんでしたので、一言半句わかっているわけじゃないのでございますが、そんたくするに、前に一回、自衛隊法を改正して南氷洋に、これは派兵とかそういうことじゃないんですが、南氷洋調査のとき、たしか一回そういうことがあったことがございますので、いまの自衛隊法のもとでは海外派兵とかそういうことは考えてはいないわけでございますが、もし将来法律改正でもあればという前提でも頭に置いてお答えしたんじゃないかと思いますけれど、それは私いませんでしたから申しわけございませんが、私の考えは、国連平和維持活動というのは、もうこれは国連世界の平和の維持、安定ということを第一の目的としているんですから、これは非常に大切な役目でございますが、それに協力する。どこまで協力できるかということでございますが、片っ方に日本には平和憲法あり自衛隊法があるわけでございますので、そういう法体系のもとで言えば、法律論をすれば、本当に武力につながらない停戦監視団でございますとか、そういう平和的なものには出せるということは憲法では認めておるかもしらぬが、憲法上はできるが自衛隊法じゃできないというような法解釈はいろいろあるわけでございます。  そういう法解釈でございますが、しかし私は、いまの自衛隊法はこれは海外派兵というのは考えていないわけでございますし、また憲法集団自衛権というものは認めてないと、こうはっきりしたものがあるわけでございますから、いまの法体系のもとにおいて、自衛隊法上、停戦監視団とか、そういうものにはできないけれども法律改正すれば憲法上は許されるというような法律論はいろいろございますが、自衛隊の問題は、そういう法律論を越えて、自衛隊派遣する、平和維持という目的のためであっても自衛隊法を改正して派遣するということになりますと、これはやはり非常に国内的にも議論がありましょうし、世界日本憲法というのは平和憲法だということで非常に高く評価しているわけでございますから、私は、政策的に、法律が許しても自衛隊員派遣するということは平和活動のためにもやらぬ方がいいと。むしろ、そういう協力の場合にはいままでどおり財政的な協力をする、あるいはお医者さんでございますとか、あるいは通信関係の人でございますとか、自衛隊以外の人で、シビリアン協力する方法があるんだろう、そういう方法が望ましいということを私は確信をしておりますので、いろいろ大塚君が発言したということはありますが、私は前提を置いて言ったんじゃないかと思いますけども外務省としては私の考え統一見解だというふうに考えていただいて結構でございます。
  10. 野田哲

    野田哲君 わかりました。  そうすると、伊東外務大臣としては、憲法上は武器を待たなければ自衛隊海外平和維持活動に出てもいいが、自衛隊法があるから、自衛隊法目的の中にはそのことは書かれてないから、現段階法律的に言えばできないが、じゃ政策的にはどうかというと、政策的に言えば、これは国民感情から言っても、自衛隊を出すよりもシビリアン等協力をする、この方がいいんだと、こういうことですね。
  11. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) そうです。
  12. 野田哲

    野田哲君 わかりました。  次は、イランイラク紛争に関連して、いま非常に国際的に揺れ動いているわけですが、ペルシャ湾あるいはホルムズ海峡、ここのシーレーンの確保という問題について国際的にいろんな議論が起こっておりますね。西側諸国国際監視部隊を検討するんだというようなカーター大統領構想があるんだとか、あるいは東南アジア海域シーレーン集団防衛構想があるんだと、これに対してアメリカが応分の負担を要求してくるとか、あるいはペルシャ湾安全航行日本も金の面での分担をというふうないろんな議論があるんですが、いままでの議論、感じとしては仮定のことを想定をしながらの議論がいろいろ日本の国内でもあったと思うんです。国会でもあったと思うんですが、外務大臣、具体的にこのホルムズ海峡とかあるいはインド洋とかペルシャ湾とか、こういうところについて、国際的に何かアメリカなりあるいはEC諸国の方から日本に対してこうしようじゃないかというような呼びかけがあったことがあるんですか。
  13. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 具体的に呼びかけがあったかということでございますが、具体的な呼びかけ、いわゆるパトロールの問題につきましては一度もないわけでございます。
  14. 野田哲

    野田哲君 金を出せという話もないわけですね。
  15. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 具体的にパトロールの相談も協議を受けたこともない。私どもも、計画はあるけれどもまだ具体化していないんじゃないかと思うんですが、一回もそういう協議がありませんし、ましてや経費の負担なんということは一言も言われたことはございません。
  16. 野田哲

    野田哲君 ごく最近、アフガン問題について、ソ連に対する西側諸国アメリカそれから日本がとっている経済的な制裁措置について、EC諸国の方では大分これを緩和をしつつあるんで、日本としてもEC諸国などとの動向を連絡をしながら、その方向を検討しなければいけないんじゃないか、やの発言外務大臣はどこかでなされたというふうに伺っているんですが、この考え方は一体どういうところなんですか。
  17. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) アフガニスタンのソ連による軍事介入後、いわゆる政治的な高いレベルの人の人事交流でございますとか、高い技術を要する製品、ココム関係のものを統一しようとか、先生のおっしゃったのは、政府ベースの新しい信用供与——普通の貿易はやっておるわけでごさいますから、政府ベース信用供与というものについてはケースバイケース考えようじゃないかというようなことをやったわけでございます。それで、もうやりまして大分になるのでございますが、やっている中に、ケースバイケース日本側森林開発とかそういうものについて政府ベース信用供与はいいからとか、石炭の問題とか、いろいろこれはいいとかいうようなことをやっているわけでございますが、その中に、どうもこちらはやらぬ方がいいじゃないかなと思うようなことについて、ヨーロッパ側が話が進んでいるというようなことがあったり、どうも統一のとれないことが出てきたのでございます。  それで、私この間アメリカへ行ったときも、対ソ経済措置というものを考える場合に、ばらばらではこれはおかしいことが出てくる。でございますので、何も会議ということじゃないんですが、何か打ち合わせる必要はあるんじゃなかろうかということを言ったことは確かでございます。アメリカへ行って。そういうことを言いましたので、国会でも御質問がありましたので、どういう形かは——形とか日時とかそういうことは何も決めておりませんが、この措置についてもう一回話し合う機会というものが必要でなかろうかということを私がお答えしたことがございます。ただ、具体的に会議をやるとか、どこでいつごろやるとか、そういうことは一切何もまだ決まってない、私の考え方をこの間アメリカに伝えたということでございます。
  18. 野田哲

    野田哲君 イランの問題ですね、イランイラクの戦争の問題ともう一つイラン人質の問題、特にイラン人質の問題が現在きわめて微妙なぎりぎりの段階に来ていると思うんですけれども外務大臣のところに、あのイランの人質問題のイランの今後の動向等について何か現地からの特徴的な情勢、見通し等が入っておりませんか。
  19. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 人質解放の問題は本当になかなか予想がつかぬ、大分動いていることは、これはもうイランの総理が国連に出席するというようなことから、動き出していることは確かでございますが、なかなか見通しは実はむずかしいのでございまして、当事者のアメリカ側も過去において何回ももういろいろ手はずを整えて、解放になるかと思ったらだめだったということは何回もいままであった。ですから、たとえばの話ですが、第三国の飛行機にでも乗って人質全員イランからもう第三国へ出たというときでないと解放考えられぬということで、非常にアメリカ首脳部も慎重な態度でこれを見ております。断定的なことは一回も言ってない。まだわからぬわからぬと、こう言っております。  私ども現地大使館を通していろいろ聞いているのでございますが、議会から出てこられる議員さんに直接会ったり、人を介していろいろ聞くというようなことをやっているんですが、本件に関しては議員さんの口が非常にかたくてほとんど聞けないというようなことを言ってきております。きのうですか、流れましたのは定足数が足りなかったということで会議が開けなかったということを聞いておるわけでございますが、果たして二日に議会が開会されて決着がつくような条件でもはっきり決まるのか、その辺のところは何とも予測しがたいというのが実際のところでございます。
  20. 衛藤征士郎

    衛藤征士郎君 今月の二十三日のある全国紙の朝刊に、クウェート大使である今井さんが在外公館活動理解をしてもらいたいという、そういうような記事を投稿しておりますが、大臣はごらんになられたでしょうか。
  21. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 朝日に載りました記事は拝見しました。
  22. 衛藤征士郎

    衛藤征士郎君 私はこの記事の中で、特に今井大使がこういうことを述べておることに関心を持ったものでありますが、「つい最近まで民間にいて外務省に入った私は、いわゆる「お役所仕事」に多くの問題はあるものの、やや違った感想を持つようになった。」と、このように投稿しております。「クウェートだけを例にとると、米国大使館の規模はわが館より一桁大きい。各地大使館衛星中継の無線で結ばれ、居留民の実態は常に把握され、必要とあれば軍用機が飛んで救出するシステムがある。」こういうことを書いております。また、この記事の中で、イランイラクの戦火から逃れまして帰国した方々の現地公館への非難が多いとか、あるいは一部の新聞週刊誌にきわめて大々的に非難記事が載せられていることは遺憾である、そういうような記事もここにあるんではございますが、今井大使が言わんとするところは、現在の在外公館定員数では十分に活動ができないんだ、もう少し定員をふやしてもらいたい、こういうことを私は言っておるんだと、このように解釈しております。  まず、外務大臣のこの今井大使投稿記事に対する御見解をお聞き申し上げたいと思うわけでございます。
  23. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの御質問のとおり、今井大使というのは、原子力発電株式会社技術部長をやっておられた技術者でございまして、原子力関係では世界的に名の通った人でございます。いまもおっしゃるとおり、新しくクウェート大使民間から入って大使になられた方でございまして、今井さんは民間でのいいところを十分見ておられる、その目で役所のことを見られたと思います。私も長いこと役所におりましたので、民間から役所仕事というと、まあまあ非能率で遅くて責任回避でというようなのが役所仕事だというようなことを、よく私らも役人をやっていたとき批判されたことがございますが、今井大使民間から入られて役所というものを中で今度見られたわけでございますが、行かれるとすぐクウェートで、イランイラク紛争の隣国で非常に苦労されたわけでございます。そして、イラククウェートを通ずる邦人の帰国ということに非常に骨を折られた、もちろクウェート政府も非常な協力をしてくれたのでございますが、あそこの大使館もわずかな人員で、日中は四十度を超えるわけでございますが、そういう悪条件のもとに非常に努力をしたということでございまして、今井大使もその先頭になってやられての感想をあそこに書いておられるわけでございます。自分が考えていたのとは若干違うじゃないかという意味の感想を述べておられるわけでございまして、一部の週刊誌等に実はいろんな記事が出たのでございます。それも今井さんは見ていると思うんでございまして、事実と違うじゃないかということで、非常に館員みんなあれを見て残念がったということを伝えてきておるのでございますが、民間から入られた今井さんがそういう目で役所仕事というものを見られて、今度は第一線で非常にわずかな人数で苦労しているということを見られてああいう寄稿をされたということは、私はこれは何よりも強い一つの世論の力になるだろうというふうに感じたわけでございます。われわれとして、もちろん反省せにゃならぬことはいろいろありますが、第一線にいる人々の大部分は非常にわずかな定員で苦労しているということは確かでございますので、私、外務大臣に今度はなりましたので、その点につきましては先生方の御協力も得まして、外交体制の充実ということには努力してまいるつもりでございます。
  24. 衛藤征士郎

    衛藤征士郎君 今井大使のおっしゃっておることは、かつて民間にあって、いざ大使になってみて、これはなかなかやっておるじゃないか、きわめて少ない要員でこれだけの仕事をこなすのは大変だ、しかしまだまだ十分な外交活動というものはできないので、何とかしてそういう面での配慮をしてほしい、こういうことを私は言っておるんだと思うのであります。  わが国在外公館に勤務する要員の数というのはきわめて少ないことはもう御案内のとおりでありまして、アメリカに比べましてけたが一けた違うというのはそのとおりだと思います。そのために、世界で発生する多面的にしてかつ複合的な諸現象に対して機動的に対処できないというジレンマを抱えておると思うわけでございます。しかも中東地域というのは、資源小国日本のエネルギー安全保障にとって枢要な地位を占めておるところでございます。その中東地域において、わずか数人の大使館員が外交業務や在留邦人の保護、各種エネルギー情報の収集、果ては領事業務に当たっている現象は、経済大国日本外交陣容としては余りにも貧弱であると断ぜざるを得ないわけでございます。これでは、今井大使が憂慮されておるとおり、石油外交の効果的遂行はおろか、刻々と変化をする石油関連情報の収集に一歩も二歩もおくれをとることになるのではないでしょうか。日本のエネルギー安全保障にとって、いわゆる油が断たれること、油断に対する不断の備えをどのように構築するかという課題もさることながら、実のところ、このような情報断絶に近い状態、まあ略して情断と言いますか、情断の事態をいかにして回避していくかという課題がこれから重要になってくると私は思うわけでございます。  いま論議の高まっております。いわゆる総合安全保障論の中で、意外とこの情報断絶の問題がおろそかにされておるし、また軽視されておるという感を否めないわけでございます。もちろん、安全保障政策は軍事的側面にとどまらず、エネルギーとか食糧、技術といった経済的側面のウエートが近年とみに高まりつつあることは御案内のとおりでございますが、現在の安全保障政策が総合安全保障的色彩を濃厚にしつつある理由は、言うまでもなく御案内のとおりでございます。しかし、反面、軍事的経済安全保障政策の効果的遂行にとって前提となる情報収集面で、前述のような後進性によって特徴づけられているのが厳然たる事実でございます。  私が申し上げたいことは、いわば情報面での安全保障政策の完全な立ちおくれと言ってもいい状況にわが国は置かれておるんじゃないかということを指摘したいわけでございます。総合安全保障論の理論構造の中から情報安全保障考え方が欠落しているということを申し上げたいわけでございます。私は、政府が事あるごとに強調されておる総合安全保障政策の中身について冷水を浴びせるものではございません。むしろ、それを補強する構想として情報安全保障政策の確立を強く望むものでございます。軍事的経済安全保障政策がハードな側面であるとすれば、私の言う情報安全保障考え方はそれとは対照的にソフトな側面から総合安全保障政策の政策体系の構築を強く望むものでございまして、この点につきましての外務大臣の御所見を承りたいと思うわけでございます。さきの今井大使の言を踏まえまして、わが国外交陣容の強化整備を急ぎ、情報収集体制の誤りなきを期することが急務の課題であると思います。外交当局の責任者として、外務大臣のこれに対する御見解あるいは今後の積極的な対応についての御所見を承りたい、このように考えております。  次に、大蔵御当局にお尋ね申し上げたいと思うわけでございますが、財政再建問題と、このような情報安全保障政策の取り組み方をするということは、相反する二つの目標を追い求めることになるわけでございまして、とりわけ、財政再建の年であるとは言われますが、私はあえて、今日のわが国の総合安全保障政策の中に危機管理に対する対応、危機管理体制の発動、そのおくれを見たときに一国民としてきわめて不安になるわけでございまして、この点からしましても、財政再建の課題とは相互に対立する目的ではありますが、何とか英知を結集して、大蔵当局におかれましても情報安全保障体制の確立に向けての御努力をお願い申し上げたいと思うわけでございまして、この点についての大蔵御当局の御見解を承りたいと思います。
  25. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 情報の問題でございますが、もうこれは先生おっしゃるとおりでございまして、何も外務省だけじゃないわけでございますが、情報を十分にとって、それを解析してその上に政策を打ち立てていくということは、これはもう当然なことでございまして、私は、情報収集の重要さということは先生と同じ意見で大切なことだというふうに考えております。  ただ、その点に欠くるところがないかというお話でございますが、これは今井大使の提言にもございますが、確かにいままでは外務省の中での人の資質の向上でございますとか、適正配置をするとか事務能率を図るとか、いろんなことをやっていることは確かでございますが、何しろ定員が非常に少ないことは御承知のとおりでございます。各省がこうどんどん定員がふえる時代があったのでございますが、いまは定員を削減しようということでございますが、各省定員がふえるときには外務省はほとんどふえなかった。定員を減らそうというときにふやそうということでございますのでなかなかむずかしい問題があるのでございますが、きょうも実は閣議で定員のことが行政管理庁長官から話があったわけでございますが、外務省在外公館を抱えているのでこれはひとつ例外にしてもらいたいということをきょうも閣議でいま申してきたところでございます。百六十四ありましたか、公館のうち、五十四ぐらいが五人以下の公館ということでございますから、五人以下ということはもう本当にわずかな定員という、御想像どおりでございますので、何としてもわれわれとしましては、外交体制の整備と定員の充実ということは必要最小限度やらなけりゃいかぬということで、私は、今井大使からも貴重な提言もございますし、最善のひとつ努力をしてまいるつもりでございます。
  26. 日吉章

    説明員(日吉章君) 御答弁申し上げます。  今日の国際情勢とわが国の置かれております立場考えますと、大蔵省といたしましても外交の重要性は十分認識しているつもりでございます。したがいまして、その機能を強化いたしてまいりますために、厳しい現下の財政、定員事情にもかかわりませず、従来から格段の配慮を加えてきたところでございまして、この点はお認めいただけるのではないかと思います。  ただ、現在の財政、定員事情はきわめて厳しいものがございますので、なお限られました予算、定員の中で、外務省御当局におかれましてもより一層の効率的な運用を図っていただくよう期待いたしたいところがあるわけでございます。  具体的には、予算なり定員につきましては、全体としましての財政、定員事情を踏まえまして外務省御当局から十分御事情をお伺いするとともに、関係します行政管理庁等とも十分御相談いたしまして、外交活動に支障のないよう適切な措置が講ぜられるように対処していきたいと、かように考えております。
  27. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 外務大臣がお忙しい中いらっしゃいましたので、外交面についてもいろいろお話をお聞きしたいところでございますが、きょうは特別委員会の性格上、過日大臣が——二十五日ですか、参りました北方問題のことについて、感想も含めて、また現地に立たされたその状況等についてお伺いしたいと思います。  大臣は、現職大臣として三人目ということで、地元でも大変な歓迎であったようであります。しかも、懇談的にいろいろお話ししたということで大変好評のようでございまして、これは各大臣がやっぱり——退任になる前に行くというのじゃなくて、現職として、これから何かをやるぞと、そういう意気込みで現地に乗り込まれた、そういう意気込みが、やはり地元の方にとりましては大きな期待感、こういうことがあったんだろうと思います。私は、そういうことで現職の大臣、しかも就任早々現地に参ったということに対しては非常に敬意を表するとともに、大臣官房長官当時から外交面やいろんなことについても携わってまいりましたし、また、現地の事情についても詳しく御存じであったはずだと思いますが、こちらにおいてお考えになったのと、現地に立たれて、やっぱりそれ相応の深く胸に期するものがあったんだろうと思いますが、その間のことについてひとつ御感想または決意のほど、どうであったのか、最初にお伺いをしたいと思うんであります。
  28. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 二十五、六日行きまして、洋上とそれから納沙布沖から目の当たりに北方四島を見てまいったのでございます。  国連の総会でも領土問題について演説をしましたし、グロムイコ外相に会ったときも領土問題を話したのでございますが、やはりこの目で目の当たりに見て、そして外交の責任者として決意を新たにして、政府姿勢というものは不動なんだ、不退転の決意で取り組むんだということをやっぱり地元の人にもわかってもらい、ソ連にもわかってもらうというつもりで参ったのでございます。  地元に参りまして、地元の関係者から種々話を伺ったわけでございまして、地元の人が三十五年、本当に経済的だけでなくて精神的にも苦労をしておられる。人によっては、三十五年やっても実現しないなら島よりも魚だという空気が出てくることもあるというような、あるいは二島だけでいい、もう仕方ないじゃないかというような空気も出かねないんだと。それでは四島一括返還という所期の目的には沿わないので、何としても根室地区の振興ということを考えてもらいたいというような、生活に密着した切実なお話も承ってきまして、あの島を見て、本当に歴史の非情さというか、厳しさということを感じてまいりまして、この問題につきましては、ソ連は隣の重大な隣国でございますし、ソ連とは平和的な友好関係を結んでいくということが、これは日本にとっても好ましいことでございますが、平和条約もまだできない、その前提がこの領土問題だと。これを本当に日本としては積極的に取り組んで片づけなけりゃいかぬという決意をかたくしてまいったのでございますが、これはきょうあすできることではございませんが、息長く、ひとつこの問題に粘り強く不退転の決意で臨んでいくつもりでございます。
  29. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 三十五年というと大変な月日でございまして、その問いろんな運動が展開されてまいりましたし、その間のことについては大臣もよく御存じのことだと思います。官房長官という内閣のかなめの位置にあったそういう立場から、そしてまた現在外交の責任者に立っているわけでございますので、また就任早々現地に立ったということで、いま決意のほどでございましたが、やっぱりこれは、そういうことを感じてきたということだけでなくて、具体的に何らかの道の開けるようなことを伊東外務大臣のときに何か具体的なものをつくっていただきたい。それが何であるかということはいろいろ御検討、またこういう国際情勢の中にありますので、すぐに何がということにはいかないかもしれませんけれども、何かは必ずつくるんだと、こういう決意だろうと思います。ぜひひとつ不退転の決意を貫き通して、道の開けるように最大の御努力をいただきたいものだと思います。  当地、地元でもいろいろな要望があったようでございますが、総理にもぜひというお話もあったようであります。大臣も帰ったらお話ししましょうということでございますが、外務大臣もみずからその地に立って、これまた感慨無量なものであり、厳しい歴史の非情性を感じたというような感想もございましたが、漁業交渉の折衝に当たられました鈴木総理大臣もその決意には変わりはないものと思いますけれども、やはり地元の方々、今日まで現地からこの委員会に来ていただいて、参考人として意見を聞くということはしばしばあったのでありますが、大臣がみずから赴く、また総理大臣の現職の中でというのはなかなかない。非常に厳しい日程の中で、むずかしい状況の中で、あすあさってというわけにはいかないかもしれませんが、一度はやっぱり総理大臣としても、現地のこういう現況というものに対して何らかの道を開こうという強い決意のもとで現地に赴くということは大事なことだと思うし、地元からの要望があって、お話しなさったのかどうかよくわかりませんけれども、お話しなさったのかどうか、また総理の気持ちはどういう気持ちでいらっしゃるのか、おわかりになりましたらお話しいただきたいと思うんです。
  30. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 二十六日、飛行場からまっすぐ総理のうちに私寄りまして、根室で出た話を全部お伝えしたわけでございます。その中に先生のおっしゃった総理の北方四島視察ということがあったのでございまして、総理にその旨を伝えたわけでございます。総理は、先生のおっしゃったように、日程その他ありますから、すぐ御返事をというわけにはいかなかったわけでございますが、この問題は総理にもまた話しまして、今後どうするかという総理の日程等をよく総理と御相談をしたいというふうに思っております。  外務省では、私帰りまして、今度外国に出る研修生、若い人でございますが、約十名足らずでございますが、北方領土もちゃんと見てから赴任しなさいということで、十二月ちょっと寒くなってでございますが、根室の方へやって現場も見てから赴任するというようなことで手はずを整えているわけでございます。
  31. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この問題解決というのは非常に息の長い、ねばり強い積み重ねがなければならないと思うのでありますが、当面する問題と、それから長期的に取り組まなければならない問題とあろうかと思います。長期的なことにつきましては、今日までも国連における強い主張とか、また、国際世論喚起ということでいろいろな動きをねばり強く続けるということが大事なことだと思います。国際世論の喚起ということについても、今日までも当委員会でもいろいろ論じられてまいりましたが、いろいろな出版物とか、その機会とかとらえて世界各国に対して啓蒙運動をねばり強く続けなければならぬだろうと思います。  それから、現在ソ連との関係については、アフガニスタンのあの問題以来、オリンピックボイコットを初めといたしまして、経済的にも人的交流についても一応の処置がとられているわけでありますけれども、きのう衆議院において、何らかの糸口をつかみたいということで、ソ連等の動きもございまして、経済的なそういう面についての柔軟性といいますか、緩和措置というものを考えなければならぬというようなお話があったようでございますけれども、日ソ関係の改善、その糸口をつかむということが当面としては大事なことの一つだろうと思います。政治と経済、これはやっぱり別にというわけには、あるいは限界があるだろうと思うのでありますけれども、こういうことについては余り時間もございませんから簡単で結構ですけれども、現在の外務省としてのお考えの骨子だけちょっとお話しいただきたいと思います。
  32. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日ソ関係非常に大事なことでございますので、何とか相互理解の上に長い友好関係を続けたい、これはわれわれの本当に心から願っているところでございますが、ただ、先生おっしゃるとおり、関係が温かかったときも冷たかったときもいろいろあるわけでございますが、いまは冷たい関係でございます。ただ、窓口は開いてございまして、さっき申し上げました経済措置の問題もケースバイケースでこれはやっているわけでございまして、全部とめているというのじゃないのです。通常の動きは前のとおりやっている、政府のベースの新しい信用供与についてはケースバイケースでやっているということでやっているわけでございまして、    〔委員長退席、理事堀江正夫君着席〕 こういうことになりました原因は、北方領土の返還はもちろんない、そこへソ連が軍備を充実する、日本の国民の神経を逆なでするようなことじゃないかということを私はグロムイコ外相に言ったのでございますが、アフガニスタンに対する軍事介入、これは世界の平和に対する脅威じゃないかということで、国連でも決議をしたというような、みんなソ連側の行動から原因が起きてきたわけでございます。それで、われわれとしましては無原則に何でも妥協するのだということじゃないと私は思う。やっぱり通すべき筋はちゃんと通す、これはおかしいじゃないですかと、これは直すべきじゃないかという筋は、通すべきことは通すということでソ連態度を、善隣友好というからには行動でそれを示してもらいたいということをこの前もグロムイコ外相に言ったのでございまして、その態度は私は何ら変わってないわけでございます。  ただ、経済の問題で言いましたのは、経済を緩めるとか強くするとか、私はそういうことを言ったのではないのでございまして、経済措置というものを続けるということであれば、余りアンバランスになるのはおかしい、これは歩調はそろえないとおかしいじゃないかという議論を私はしたのでございまして、何も私が緩めると言ったというんじゃないのです。歩調をそろえようじゃないかということを言ったのでございますが、しかし、それは別にしまして、ソ連との間で経済だけ一人歩きということじゃない、やっぱり政治と経済というものは一緒だというのが考えでございますが、どういうきっかけで話し合いに入るかということにつきましては、慎重にわれわれはいまソ連の出方を見ているという現状でございます。
  33. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それから、当面の問題といたしましては、地元の要望もあり、私ども委員会のごとに叫んでおるわけでありますが、北方領土隣接地域の定安振興対策ですね。何といいましても旧居住者の方々が、またあの根室を中心といたしましてのあの周辺の地域が経済的に非常に基盤が弱いわけでありますけれども、これがだんだん衰退しているようなことではならぬのはこれは当然のことでありまして、この振興策についても今日まで当委員会で私どもも訴え、政府もそのときそのとき何らかの施策はしてきたと思うのでありますけれども外務大臣官房長官のときに、これは各省庁にまたがるので、一本化して窓口をつくってもう少し強力に連絡をとりながらやったらどうかというようなことで、後藤田開発庁長官、そういう地元の強い要望、長い間のこれが実りまして、開発庁が窓口になってということでお話が進みつつあるというのですか、そういう話になったんですね。一応、北方領土隣接地域安定振興対策等関係省庁連絡会議ですか、こんなものをつくってはどうかということですが、これは前に官房長官のときにそう御発言になられ、現在外務大臣という立場にあって、外務省は直接の所管庁とはいかないのかもしれませんけれども現地へ行ってみられて、また過去の経緯からいいましても、これはぜひひとつ実りあるものにしてもらいたいと思いますし、また、この施策が地元といたしましては大変に望まれておることだろうと思います。  ことしは漁獲量も、イカ、サンマが大変な不漁で、あの地域の根室を中心といたします海域の漁獲高というのは低いということで、地元の商店街及び多くの方々が心配をいたしております。これは何もことしだけのことではございませんで、確かにこの漁業を中心といたしまして北方領土隣接のあの地域がいろんな面で繁栄している、発展している、経済的にも安定しておる、こういうことであってこそ、あそこへ赴いた人たちもやっぱりその必要性というものは痛感するので、疲弊するばかりであるということでは国内的な対応としては非常にまずい。これは当然のことだと思います。いろんな角度から論じてみましても、やっぱりこの地域の経済的な発展、振興対策というものに力を入れていかなければならないことは論をまたないと思うんです。せっかくこういう考え方も打ち出されてお話が進んでおるようでありますから、現地を見られてきて地元からの強い要望があったこと、こういうことで、これは閣議や何かで大臣がやっぱり声をかけていただいてやっていただきませんと、特に予算の伴うということで、今日こういう財政状態の中で、いままでと同じようなことではやっぱり同じことが繰り返される。ぜひその必要性を痛感なさったそういう立場の方が強く訴えていただいてこれを進めていただきませんと、なかなかこういう状況の中ですから反対する人はいないだろうと思いますけれども、省庁によりましては、なかなかそれに一緒に力を合わせて早く地元の声を実現しようということには進められないのではないかと思います。  こういうことで、ぜひこの連絡会議、各省庁間の推進、これは担当であるとかないとかではなくて、現地に立った伊東外務大臣がやっぱり強く訴えていただいて、担当の窓口は窓口でその省庁がしっかりやっていただきたいと思うんですけれども、ぜひひとつこれは進めていただきたい、また訴えていただきたい、推進していただきたい。伊東外務大臣のときに一つの大きな業績をつくっていただきたいものだと私は念願するんですが、どうでしょうか。
  34. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま御質問のには全然私は同意見なんでございます。現場へ行きまして、三十五年たったと、なかなか実現しないということでいろんな意見が出てくる可能性がある。それも一つは、やはりあの地区の振興対策をもっとやってもらいたい、それであれば四島一括返還という統一された国論でがんばっていける、ぜひそれをやってもらいたいということで、振興対策について強い要望があったわけでございます。これは本当に生活に密着したことが多うございまして、私も同じ考えを持ちましたので、帰途すぐ総理に会いまして、そのことを強く総理にお願いをしたわけでございます。また、開発庁の長官、原大臣にもぜひこれはお願いしますということで私からも言ってあります。総理にも言ってありますし、この点は先生のおっしゃることに同意見でございますので、少しでも現地の人の要望が実現するように私は積極的に、所管でございませんけれども努力します。
  35. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、二十四日の御発言の中に、中東問題、中東情勢について憂慮される発言がなされて、特にイランイラク紛争の問題に関して、「戦闘が一日も早く停止され、紛争が平和的に解決されることを強く希望しており、また、わが国として果たすべき適切な役割りを探求しているところであります。」ということが述べられたわけですが、イランイラク紛争に対する日本政府としての基本的な立場といいますか、この点はどういうことなのか。  それからもう一つは、ここでおっしゃっておる「適切な役割り」というふうに述べられておりますけれども、具体的にはどのようなことをお考えになっておるのか、その点をまずお伺いします。
  36. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 基本的な立場でございますが、イランイラクには何回も日本立場を伝えておりますが、早期にこの紛争を平和的に解決をすべきだ、そしてホルムズ海峡というようなところに紛争の影響が及ぶというようなことになれば大変なんだから両国で早期に紛争を解決し、ホルムズ海峡の航行安全ということには十分注意してもらいたいというようなことを伝えますとともに、両国に対しまして、いろいろな安保理事会でございますとか、イスラムのパキスタンのハク大統領が中心でございますが、イスラムの動き——PLO、キューバを中心にした非同盟の動きというような調停の動きがある。現実にはまだそれがなかなかむずかしいものですから    〔理事堀江正夫君退席、委員長着席〕 あらわれていないのでございますが、そういう調停には応ずるように、調停を支持する、だから両国とも応じなさいということを言うと同時に、日本はこの紛争に対しては介入はしない、中立の立場を守るということを伝え、実はアメリカにもソ連にも第三国はこの紛争に介入すべきでないということは何回も伝えておるというのが日本立場でございます。特にアメリカに対しましては、人質解放に伴って何かイラン側にアメリカが介入をするんじゃないかというような心配もあるということを国会でも先生方からいろいろ私は言われましたので、アメリカ側にも、特にアメリカ側人質解放がもしあっても、それは人質解放人質解放イランイラク紛争に介入しない、中立だということはちゃんと守ってもらうことは大切だというようなことも実は伝えているというようないままで行動をとってまいりました。日本の基本的立場と言えば、以上申したようなことが日本の基本的な立場だというふうに考えるわけでございます。  それから、日本のそれではどういう役割りを果たせるかということにつきまして、これはなかなかむずかしい問題でございまして、いまのところは御承知のように主張が非常に離れているわけでございます。イランイラクは。余り離れているものですから、先ほど言いました調停がいろいろあるけれども、なかなか調停にも中へ入れないというような状態でございます。まして、日本は宗教関係も全然異なり、あるいは調停というと、ある程度の力というようなものがよく後ろに作用するわけでございますが、武力というものは日本は持たない、自衛権しかない、あるいは武器についても三原則で輸出もしないというような立場でございますので、そういう力の面で、あるいは宗教的に一緒だからというようなそういう共通の基盤もないというようなことでございますので、なかなかこれは、ただ入ってどうだというだけで片づく問題じゃないですから、どういう時期にそんな志、意思もみんな何とかとこう思っているんですが、なかなか中へ入れないということでございますので、やはり日本考え方を一緒にしている国々と一緒になって、何かの機会に、そういううまい機会があればそれと共同してというのが一番現実じゃなかろうかと私は思っておりますが、いまのところ具体的にこういうことこういうことと申し上げるような段階にはまだ至っておりません。
  37. 立木洋

    ○立木洋君 いま大臣おっしゃいましたけれども、若干やはり懸念する動きというのも私はあるだろうと思うんです。それは、ことしの当初、まあ中東情勢に緊張した状態が生まれたときに、アメリカ側の動きとしては、たとえばケニア、ソマリア、オーマン等に基地をつくったり、あるいはそれを拡張するというふうな動きがありましたし、今回のイランイラク紛争等々の問題が出てきた場合でも、アメリカホルムズ海峡の安全の確保ということを口実にはしていますけれども、実際には九月の下旬段階で、アメリカの、何といいますか、インド洋艦隊あるいは中東艦隊などがペルシャ湾海域に集中するというふうな命令が出されました。これは大型原子力空母「アイゼンハワー」だとか、あるいはミサイル積載巡洋艦の「サウスカロライナ」、あるいは「バージニア」などなどが行きましたし、また十月の中旬になりますとさらにこれが増強され、十月の下旬にも続いているという状態があるわけです。それからまた、サウジアラビアには空中警戒管制機が配置され、また空中給油機も出されているという状況があるわけです。  それで、大臣が先ほどお述べになった、大国が当然介入すべきではないという立場から見て、このような状態ですね、ましてや力を、紛争拡大するんではなくて、一日も早く戦闘を終わらして平和的に解決しなければならないという観点から見て、こういう事態を大臣はどのように評価されますか。
  38. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先生のいまの御質問アメリカ艦隊だけおっしゃられましたけれどもソ連の艦隊もあそこに皆いるんでございます。
  39. 立木洋

    ○立木洋君 後でそれは質問します。
  40. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その点は先生誤解のないようにしていただきたいのでございますが、アメリカの艦隊は紛争の前からあそこに行っていることも先生もう御承知のとおりだと思いますが、その後で若干ふえている。私は隻数はいまはっきりはわかりませんが、ふえていることも考えられるわけでございます。  ただ、あのアメリカ艦隊があそこに出ているというのは、紛争後もしばしば言っておりますが、アメリカは何も紛争に介入するんじゃないということを何回もアメリカも声明を出しておりますし、私どもあの艦隊の役目というのはホルムズ海峡の航行の安全の確保、あるいは西太平洋からインド洋に行きます航路の安全な環境をつくっておくための配置というふうに私は考えておりまして、それによって紛争に介入するとか、力をもってそのどっちかに加担してどうするとかいうことは私は考えてない。前からそこにアメリカソ連も艦隊を出しているという事実でございますし、そのこと自体で今度いまの紛争に介入しているというようには私は考えておりません。
  41. 立木洋

    ○立木洋君 これは、防衛庁が出しております防衛白書の中に考え方が明白なんですが、軍事力の存在そのものが影響を与えるという見地があるんですよ、明確な。そしてそれは侵略する意図があるかないか、介入する意図があるかないかという問題とは別にして、いわゆる潜在的な脅威という言葉すら現在存在しているわけです。ですから、イランのバニサドル大統領自身もこういう事態に対して警告を発してますよ。あるいはまたイラクめ側にとってみても、イランに対する凍結した武器を解除するという問題についても、これは重大な事態になりかねないからと言って警告を発しておる。ですから、いま大臣がおっしゃったように、介入する意図があるかないかの問題では私はないと思うんです。軍事力の存在そのものが影響を与えるということをやはり重視すべきだ。これはソ連の艦隊も、いまおっしゃったように二十九隻あの近辺にいるわけですね。アメリカも行く、ソ連も行く、さあ介入いたしませんよ、しかしそういう存在そのものがイランイラク紛争、中東に与える影響というのは一体どういうものかということを考えたら、これは防衛庁が明確に見解を出しているわけですから、そういうものは介入の意思があるなしということは別としても、その存在そのものが潜在的な脅威だというふうに言われる状況が、現にイランにしろイラクにしろ、いろいろと問題を取り上げて警告を発している状態ですから、私はそうした事態は平和をどうしても貫くんだという立場で先ほど大臣おっしゃったんですから、これはもっときちんとした態度をとって、いままでもソ連側にもアメリカ側にも何回かおっしゃったと言われたけれども、私はこうした事態そのものが重視されなければならないというふうに思うんですが、重ねて大臣見解をお聞きいたします。
  42. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 余り軍事的な私は専門家でございませんので、適当なお答えがなかなかむずかしいと思うんですが、私どもの了解は、そこに出てますのは、アメリカソ連も出ていることは、そこのペルシャ湾の安全、ホルムズ海峡の航行の安全あるいはインド洋の航行の安全ということを守る、それが唯一の目的なんだというふうに私は解釈しております。それから先どういうことかということを私は考えているわけじゃなくて、本当に私どもホルムズ海峡の安全というものは日本にとってあるいは世界にとって非常に大きなことでございますので、それを守っている役目だというふうに解しているわけでございまして、存在自体が何かイランイラクのどっちかに介入とか、そういう私は意図もなければ心配もないんじゃないかというふうに見ておるわけでございます。
  43. 立木洋

    ○立木洋君 時間がありませんから、これはやりとりはあれですけれども、私は、いま大臣がおっしゃった点で一つ大切なことは、ホルムズ海峡のやっぱり安全を確保すると言われることですね。  そうすると、やはり大国の軍事力がなければ安全が確保されないというふうな私は見地ではだめだと思うんです。いわゆる力によって安全を確保するんではなくて、少なくとも先ほど大臣が言われた平和的な外交でのいまの役割りを果たすべき時期だ、こういうことを私は特に強調しておきたいんですが、その点と、それからこれは問題は全然別ですけれども、これは去る二十七日にソ連のブレジネフ書記長が発言してますね。ホルムズ海峡の安全通航問題をソ連を含めた国際会議で討議することを述べた、提案しているわけですが、これについてはどのようなお考えをお持ちになっておられるんでしょうか。
  44. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その演説は、私どもたしかワルシャワ機構の決議を何か引いておるんじゃないですか、たしか私そういうふうに読んだ記憶があるんですが、それで恐らく、はっきりしないのでございますが、国連の範囲内というようなことが使われていたんじゃないかと思いますが、国連でそういうことを議論してみてはどうかというようなことに言われたんじゃないか。ホルムズ海峡だけの特別な国際会議をやろうとか、そういう具体的な提案まで至ってないんじゃないかなと。国連の枠内というたしかあったはずでございますから、国連でそういうことを相談してもという意味じゃなかったかと私は思うのでございます。間違っていたら訂正しますけれども、私はそういうふうに解しております。
  45. 立木洋

    ○立木洋君 これはエチオピアの元首が来たときの席上で発言した内容です。これは外務省も注目しておるということが数日前の新聞に出されておったので、どういう御見解かということをお伺いしたかったわけです。お答えしていただければお答えしていただきたいんですが、ただ最後に、先ほど私も強調しましたように、やはり軍事力の存在ということがいろいろな影響をもたらすということは、当該委員会で先般でもいろいろ繰り返されてきた議論ですし、私は、そういう意味では日本政府が本当にイランにおける紛争問題、これが武力ではなくて平和的に解決されるべきだ、そのために日本も役割りを果たさなければならないというふうに考えておられるという大臣の御発言だったものですから、いまあそこに軍備が増強されるという事態はやっぱり十分に重視していただいて、そして力によって物事を解決するということではなくて、平和的な外交に基づいて解決されるように格段の努力をしていただかなければ困るのではないかという趣旨できょうのお尋ねをしたわけです。そのことについての最後の大臣のお考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わります。
  46. 村田良平

    政府委員(村田良平君) 先ほどの立木先生の御質問に関しまして事実関係を御説明いたしたいと思います。  二十七日のブレジネフ書記長がエチオピアのメンギスツ議長に対する夕食会で行いました演説のテキストの関係部分のみを読み上げますと、「今言われているように、もし実際にホルムズ海きょうを含む最も重要な海路の安全に関する危ぐが存在するならば、そのような安全を獲得する現実的な道はある。それは、本年五月のワルシャワ条約機構政治し問委員会議で明らかにされている。社会主義諸国は自由な航行に賛成である。だからこそ社会主義諸国は重要な海路の通っている場所において、軍事的な活発化を低下、制限することを提案しているのである。」こういうことでございますが、そのブレジネフ書記長が引用いたしましたワルシャワ条約の政治諮問委員会におきましては、次のような提案をいたしております。「国際情勢の平和と安定のため、同じく最重要な国際海路の確固たるかつ自由な利用のために、例えば国連のわく内で大西洋、インド洋または太平洋、地中海またペルシャ湾関係諸地域における軍事的プレゼンス及び軍事活動の水準を制限し、引き下げる問題の検討を開始する」、したがいまして、必ずしもホルムズ海峡に限った国際会議、こういうことではございません。
  47. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 紛争を平和手段で解決するということは、これはもう私はそのとおりだと思うわけでございまして、今後とも第三国に対しまして、イランイラクに介入しない、平和的に解決するようにということの努力は一生懸命いたすつもりでございます。
  48. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 外務大臣、国の安全保障というものを考えるときに外交の果たす役割りというものは大変大きいものがあると思うんです。そういう意味できょうはお聞きをしていくんですが、日本安全保障考えたときにきわめて重要な意義を持っているのが中国ソ連関係だと思うんです。この中ソ関係というものが今後どのようになっていくのか、その辺をどういう分析をなさっているかということです。いまも必ずしもいい関係ではないんですが、これ以上悪くなられても困ると思うのです。といって、またあの中国ソ連が昔のような一枚岩になってもこれまたいろいろ日本には困った問題になると思うんです。ですから、その辺の中ソ関係というものが今後どういうふうになっていくと見ているのかということ。それと同時に、わが日本として対ソ外交、対中国外交、これはどういうふうに対処するおつもりなんですか。鈴木内閣としては中ソ等距離外交をおとりになるのかどうなのか、それとも何か別な方法をおとりになろうとしているのか、それをお聞きをしてまいります。
  49. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答え申し上げます。  日本安全保障にとりまして中国ソ連というものも非常に大きな問題だから、これの取り組みをどう考えるかということでございます。これは朝鮮半島の平和というものもこれは日本の平和にとって大切なものだというふうに私は見ておりますが、いま先生のおっしゃいました中ソの関係でございますが、御承知のように、いま無条約の状態になったことは御承知のとおりでございます。ただ両方が条約はなくなったがひとつ交渉を始めようじゃないかというようなことで、あるいは事務的な交渉が去年から始まったのでございますが、ソ連のアフガニスタンに対する介入ということで、またその話し合いもとぎれてしまったというような状態でございまして、国境河川の安全航行の問題とか、事務的に断続的に話し合いが行われたりなんかしているようでございますが、いまは無条約状態ということでございます。  それじゃその状態が果たしていまの中ソ関係に大きな影響があるかどうかということになりますと、いまのままで、条約がなくなったら急にそう大きな変化がそこに起こるということはないじゃなかろうか、やはりお互いは最低いまの関係維持していくというのが両方の考え方じゃなかろうかと私は推測しているんでございますが、それはソ連中国それぞれのことでございますから、どういう考えかわかりませんが、恐らくそういう状態が続くのでなかろうかという推測をしているわけでございます。日本中国ソ連とも国交があるわけでございまして、日中は日中、日ソは日ソという態度でこの外交に取り組んでいるわけでございます。  この間グロムイコ外相とも会いましたときに、日本中国と友好親善を結んでいる、中国と一緒になってソ連に対抗するんじゃないかというようなことの話が実はあったわけでございます。そんなことは全然考えてないと、日中は日中、日ソは日ソで中国日本とは軍事的な協力なんていうことは一切ないと、そういうことはない。御承知のとおりでございます。ないのでございまして、中国の近代化に対する経済的な協力をしておりますと、これは中国経済的に繁栄することはまた日本にとりましてもこれは必要なことであり、アジアの平和ということに非常に私は寄与することだというふうに思いまして、中国の近代化には経済協力をするということを日本としてはやっております。日中は、中国の言葉で言えば子々孫々に至るまで友好親善関係を結ぶんだということをよく中国で言われますが、同じ考えで日中友好、それを単に日中の間だけじゃなくて、これはそのほかの地域にも、日中が友好親善であるということは非常に私は平和にとって大きな影響力があるというふうに見ておるわけでございます。  ソ連に対しましては、日本はこれも重要な隣国でございますので、ソ連とは相互理解の上に本当に友好関係を保っていくということがこれは日本の希望でございますし、そうありたいというふうに考えるわけでございますが、現在のところは、御承知のようなソ連のアフガニスタンに対する軍事介入あるいは北方領土に対する軍備の強化というようなことで、日ソ関係だけじゃなくて、アフガニスタンの問題に至りますと、これは世界の平和との脅威の問題に関連するグローバルな問題にもなるわけでございますが、そういう関係でいま冷たい関係にあるわけでございますが、いまのような関係になりましたのは、かかってソ連側の行動によるということでございまして、何とか平和友好、温かい関係を回復したいという気持ちはございますが、いま向こうのソ連態度といいますか、温かい話し合いができるような環境づくりソ連努力してもらいたいということをソ連に実は言っているわけでございまして、どういうきっかけができますか。イズベスチヤ紙では、鳩山さんが行かれた、日ソ共同宣言を最近取り上げて新聞に出ているわけでございます。最近なかったんです。ああいうことは。それがああいうことが書かれている。ああいうことが書かれたのはどういうことかなと思って私ども注意していま見ているところでございますが、日ソの関係相互理解の上に立って平和友好な関係を続けたいというのは日本考えるところでございます。
  50. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大臣、日中は日中だ、日ソは日ソだという、言わんとしていることはわかるんだけれども、福田内閣のときは全方位外交なんて言い出しています。私は外交に全方位外交なんかないと思うんですよ。よその国のことはさておいて、中国ソ連関係というものは私は非常にむずかしいし大事な問題を含んでいると思うんです。ですから、当然それは日中は日中でやらなきゃいかぬ、日ソは日ソでやらなきゃいかぬのだけれども日本側としてこの二つの国に当たるについてはバランスをとって当たろうとしているのか。確かにいま日ソ関係は冷たい。冷たければこちらはもうそのままにして日中に肩入れするとかという、その辺のところを結論的に、ですから私は先ほど、中ソ等距離外交を保たれるんですか、それとも別な形の外交をと聞いているんですけれども、バランスをとっていくのかいかないのか、そこのところだけちょっとお聞きをしたい。
  51. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日本としまして、どこの国は特に厚くし、どこは薄いという意味じゃなくて、この点はやはりどちらとも温かい関係を保つということが最も望ましいことでございますので、ソ連に対しましても、いま冷たくなっておりますが、私はソ連態度を変えた行動をされるということであれば、やはり温かい関係を結ぶように積極的に努力していくということでございまして一どっちに肩入れしてどうだということはいま考えてない、それは平等な考え方でつき合っていこうということでございます。
  52. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それでは両方バランスをとった等距離外交を堅持いたしますと、私はそういう理解をしておきます。  それから次には、先ほど藤原議員からも出ましたが、北方領土の問題です。私からも、外務大臣がこの間視察に行かれましたこと、本当に敬意を表したいと思います。で、行かれたお感じとかなんかはもう先ほどお聞きもいたしましたので結構ですから、問題は、大変むずかしいけれどもどうやってこちらに返還させるか、これはもう日本国民挙げての願いであり決意だと思うんです。ですから、外務省というのか外務大臣として、北方領土の返還ということについてこれからこういうプロセスで取り組んでいくんだという、これからの取り組みのそこのところだけお聞かせいただきたいと思うんです。
  53. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは非常にむずかしいことでございまして、いまは御承知のような関係にありますので、領土問題を前提にした平和条約の交渉をいつどうしようかとか、そういうことにまだ至ってないわけでございます。御承知のとおり、平和条約は交渉を毎年、交互にモスクワと東京でやることになっているんですが、園田外相が行かれて、今度はグロムイコ外相が来て相談をする番になっているんですけれども、それが中断している。去年から中断しているということでございまして、先生の言われる。プログラム、何か日程があったらどういうことを考えるかという御質問でございますが、まだそれに御満足行く御返事ができるような段階にいまなってないということでございまして、どうして領土を前提にした平和条約交渉に入れるかということを実は模索しているというのがいまの現状でございます。
  54. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 わかりました。短期にどうこうしようといったって無理なことなんで、できれば一つの長期的なプロセス、そういうものを持って取り組むようなことをお考えいただかないと、大臣がかわるたびに振り出しに戻るようじゃよくないので、そういうことをお考えいただきたいと思うんです。  三番目には、イランイラクの戦争の問題に関係をしてですが、一つの問題は、大国が介入するな云々、いろいろそういうこともあるわけですけれども日本政府としても、あのイランイラクの戦争が何とかして終止符が打たれる、そういうことに大きな役割りが果たせられるんじゃないかと思うんです。そういう意味におきまして、外務大臣としてお考えがないかどうか、日本政府としてのお考えがないかどうか。  それからあわせて、これは予算委員会でもちょっと私がお聞きをして時間なくなって終わってしまったところですけれども、あのイラン・ジャパン石油化学の建設作業に行っている人たち、あのときも外務大臣は、七百人ぐらいがいまこちらに移動してと言っているわけですけれども、問題は、こちらにもいま帰ってきているんですけれども、あれは日本人だけなんですね。約千人近くおったんですから。で、私が予算委員会でもちょっと言っておきましたように、あの建設作業に携わりている、日本からいけば外国人になってしまうけれども、いわゆる第三国人、約一万人おったわけなんです。日本政府日本人のことだけ考えて保護、引き揚げをということをやって、その作業に携わっておった一万人からおったこの人たちをもしもあすこにほったらかすということになれば、それはもう日本の国家的な権威にもかかわることなんです。ですから、その辺をどういうふうにお考えになり、どういう処置をなさっているかということをお聞きをしてまいります。
  55. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 予算委員会で先生から御質問があったことを覚えております。これはイランイラクでございまして、イラクの方は、いわゆるイラク人でない第三国人といいますか、たくさんおられたのでございますが、これももう半分以上は出国をしております。先生の御注意もありましたので早速現地大使館にも連絡をしまして、雇用している第三国関係の人々についてもひとつ出国について協力するようにということをすぐ手配もいたしまして、イラクでは先生おっしゃったように一万人の人がいたのでございますが、平穏裏にいまのところ第三国関係の人も出ております。  それからイランは、これはイランの雇用政策からしてほとんどイランの人を使うということでございまして、IJPCにもいわゆる第三国関係の人はほとんどいない。イラン人で、現地の人を使っていたということでございます。ただ、ごくわずか、本当にわずか、三名と言っておりますが、韓国の働いていた人がございます。この人はもう帰りまして、引き揚げてもう韓国に帰っているということでございまして、イランの方につきましては、いわゆる第三国の人を雇用していてという問題は起きておりません。ほとんど全部が日本人と言っていいわけで、これはいま引き揚げの途中だということでございます。
  56. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。
  57. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、最近の防衛論議なんですが、私の見方は、一言で言って悪乗り。きわめて意図的。しかもあなたのおひざ元の局長クラスが檜町、防衛庁の参事官クラスあるいは局長クラスとコーラスをしたがる。これも悪乗りというふうに私は見ている。あえてもっと言えば、きわめて意図的なキャンペーン、悪質、こういうふうに見ている。  そこで、生前、大平前総理がたしか逝去される少し前であったと記憶しますけれども、こういうことを言っていらっしゃる。ぼくは国際情勢に悪乗りした防衛力強化ムードには賛成できない、近ごろの議論には昭和二十年八月十五日を忘れたのが多過ぎる、こういう発言をされたわけです。私によれば、大平さんのその理念と哲学を最も深く、最もオーソドックスに継承していらっしゃるのがつまり伊東外務大臣であるという私の評価と認識なんですけれども、その外相は、近ごろのいわゆる防衛論議、部下のありよう、これを含めて、答弁の枠、方向を含めてどうお考えですか。
  58. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 亡くなった大平総理の発言でございますが、それどこで言ったか私知らぬのでございますが、総理の頭の中には、物事を何とか平和裏に解決をしていこうと。自衛力というものはしかしこれは必要最小限の自衛力を持っている。もっと具体的に言えば、九つの研究会があったんですが、あそこにも書いてありますが、他国には脅威を与えない、しかし侮られないようなというような表現で出ておりましたが、そういう自衛力は必要なんだ、しかし、それはあくまで自主的に日本考えていく問題だというようなことを常に亡くなった総理は言っていたことを私も記憶はしております。  私も外務大臣としまして、この防衛の問題につきましては、前の大平総理が考えていたことと考え方は一緒でございます。必要最小限の自衛力、それは他国に脅威を与えない、しかし、侮りは受けないだけのものは整備しておこう、しかし、紛争というようなものはなるべく起きないように、起きたら小さくするように、そういう外交をやるべきだ、平和外交憲法の平和外交ということをこれはもう徹してやっていくというふうに私も考えておりますので、いまの現象をいろいろどうかと、こう言われますが、どうも先生新聞に悪乗りなんて書かれますけれども、私は……
  59. 秦豊

    ○秦豊君 私の見方なんですよ。
  60. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外務省の中では、私の前でいろいろ議論しますときはそんな感じは持たないのでございますが、外務省、私の下で一糸乱れず平和外交に徹するということで取り組んでいくつもりでございます。これはもう前の大平総理に言われていたことは私の頭にありますので、そのつもりでやってまいります。
  61. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、近く安全保障会議ではありませんけれども、総合安保会議はまだできておりませんから、近く安保をテーマにして関係閣僚会議官房長官の私に対する答弁によると開かれる。そのときに提案ですけれども、最近、檜町と霞が関があえて言えばときどきコーラスするが不協和音があるという意味で、やっぱり近ごろの防衛論議については当然関心も高まっている反面不安も増大しているわけである。政府として近ごろの不統一を締め直すという意味合いで、乱れていない、心配ないとおっしゃらないで、あえて最近の防衛論議を総括する、平和外交に徹する、基盤的防衛力に徹する、周辺諸国には脅威を与えない、こういう伊東さんらしい所論を関係閣僚会議に改めて出してめりはりをつけるというお気持ちはありませんか。
  62. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 官房長官が言いましたのは、総合安全保障会議という構想だと思いますが、狭義の国防会議で、狭義の防衛論議だけでなくて、エネルギーも食糧も広い意味から防衛というものを考えなければいかぬということで安全保障会議を設けたいというのが総理であり官房長官考え方だと思います。そのときにどういう主張をするかということは、これはまだ何も決めているわけじゃございませんが、いまおっしゃいましたように、平和外交に徹するんだという基本的な考え方、これは憲法に平和主義ということが書いてあるわけでございますから、世界でも国連でも日本の平和外交というのは評価されておるということでございますので、その点につきましては機会あるごとに私は私の考え方を述べていくというつもりでございます。ただ、防衛の問題は国民の間でも非常に議論が出て高まっていることは、これは御承知のとおりでございまして、これはこれで私はいいと思うんです。日本が安保体制というもとで日本というものはどこまで自助努力をしていくんだということで防衛ということをみんなが真剣に自分のこととして考えていくということは、これは必要なことで、私はそれはそれで結構だというふうに思うわけでございますが、軍事大国にはならぬというようなことは、もうこれはいまの憲法から考えれば当然演繹されてわかることでございます。その点は十分に注意してやっていくつもりでございます。
  63. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、あなたの認識の中では、潜在的脅威を含めて、日本周辺で日本脅威を与えている対象国、どこですか。
  64. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ここは潜在的脅威があるとか、ここはないとか、そういうことを私がこの場で言うことは、これはもう本当に好ましくないことだと思いますので、朝鮮民主主義人民共和国のことを一つ議論しただけであれだけ問題になっているわけでございますので、ひとつこれは御勘弁を願いたいと思います。
  65. 秦豊

    ○秦豊君 私が伺った意味はつまりこういうことなんです。さっきから同僚議員も聞いていますけれども北朝鮮潜在的脅威の対象国とみなすやり方。いまは日本政府、行政の中ではソ連が潜在脅威の対象国、これはもう定説なんですよ。ただ防衛庁でさえ北朝鮮には渡洋の能力がないということを含めて、ケイパビリティー、能力の点では脅威の対象国ではないと、こう言っている。じゃあインテンション、企図、意図の点を意図的に拡大して、それこそ、それで岡崎発言なるきわめてゆがんだキャンペーンが行われている。しかし、これは論理的にも整合しないんですよね。脅威を構成する二つの要素のうち、一方を捨象し、一方を拡大する。整合しない。どうですか。外務大臣、お立場はわかりますけれども朝鮮民主主義人民共和国潜在的脅威とした岡崎発言宮澤官房長官の一見訂正発言伊東さんによると塩味がどうも足りないねということらしいんだけれども、塩味をきかした答弁をあえてお願いするとすればどうなんですか。無理でしょう、北朝鮮をそう言うのは。
  66. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 朝鮮民主主義人民共和国の件は、官房長官答弁で衆議院の方で内閣委員会でおさまっておりますので、これは終わったことでございますから、私から一々申し上げるのはどうも恐縮でございます。もう御勘弁を願いたいのですが、いま塩味のお言葉出たんでございますが、実は、あれを私答弁しましたときは、官房長官の後の、断定することは国益に沿わないという前の段階で、私はもう問い詰められまして、困ったあげくああいうことを言ったわけでございまして、官房長官が、断定することは国益に沿わないと、こう言った後であれば塩味のことは言わなくてもよかったなと、こう思っているのがいまの心境でございます。
  67. 秦豊

    ○秦豊君 いきなりポイントを変えますが、アメリカで交渉を持たれて御苦労だったわけですが、防衛費、例の九・七%論、これもあえて言えば日本の主体的な努力というよりは、ことし一月初頭以来のアメリカの上下両院を通ずる一種の風圧、ずばり言えば外圧の一つです。ミスター・コマーを頂点にした。やっぱりこれは、もちろん独立国の主権行為の一部で予算編成ですから、行政の権力ですから勝手に自主的に決めますよ。それはわかりきった話。だけど、なかなかそうはいかないのが日米関係、軍事同盟、日米安保と、これも常識的なフレームでしょう。  そこで、私はあえて伺うんですけれども、このアメリカの意向というのは、仮に九・七%は伊東外務大臣や鈴木総理の日本政府方針。ところがそれを了とした場合でも、たとえば地位協定二十四条の周辺をねらってくるのではないか。あえて言えば労務費の一部負担とか、あるいは米軍基地内の住宅改修、新築を含めた部門で直接日本側負担増を毎年継続的に求めてくる。それと防衛費の着実な増強をワンセットにした対日要求を基本にするのではないかと私思っているんですよ。だから、仮に九・七%についてワシントンから東京に向く声が小さくなったとしても、私がいま申し上げたような、地位協定との絡みで具体的な実を取ろうとするアメリカの方向は変わらぬと思うんだが、外務大臣、どうとらえていらっしゃいますか。
  68. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 九・七を要請しましたのは、先生がおっしゃったように、日本の自主的な判断で防衛庁が大蔵省に要求をされたわけでございます。あの中には先生おっしゃった地位協定に基づきます労務費の問題とか、それから施設面の問題とか、みんな入ってのあれは九・七でございます。地位協定の労務費の分、あるいは施設の面と、これは協定で許された範囲内のものをひとつできるだけめんどう見れるものはめんどう見ようというようなことで予算を組んでいるわけでございまして、九・七が少なかったから地位協定の方で、九・七とは別だというふうにはあれはなってない、中になっているということは先生に申し上げておきます。  私、向こうへ参りましたとき、九・七の問題が出まして、そういうシーリングで特別にやったことは評価するというようなことを言っておりましたが、そのほかは数字的なことは一切何も話は出ませんでした。抽象的な話は、着実とか継続的にとかいうことは出たわけでございますが、日本側としては何にも約束というようなことはしたことはないです。一切約束ということはしたことはございません。これは私は自主的に考えるんだということをどこでも強調したいのでございまして、これは今度の予算で結果が出るわけでございますが、どういう結果になりますか、われわれは、日本人としてはこれだけ必要なんだから考えるんだと、その中で地位協定の分はこれだけ、できるだけめんどう見てあげますよというようなことでやっていこうというふうに思っております。
  69. 秦豊

    ○秦豊君 ちょっとこの際申し上げておきたいことは、たとえば、ロバート・コマー国防次官から大河原駐米大使、そして伊東外相へのルートが一つ、それからマンスフィールド駐日大使から鈴木総理、伊東外相へのルートが一つ、もとは一つなんだけれども、ルート、チャンネルによってニュアンスが違うのが日米防衛協力問題、あるいは予算の問題、あるいは経済摩擦についての受け取り方のニュアンスのギャップが私はかなり顕在化しているように思えて仕方がない。だからマンスフィールド大使の言い分だけ聞いているとアメリカの正確な動向を見失いはしないかというのが、私の素人の、第三者の一つ見地です。ぬぐいがたい見地です。これはまあ答弁をあえて求めているわけではありませんが、微妙な問題ですしね。  最後に、全然違った観点から、当委員会の所轄である安全保障という観点で、やはりオイル、中東、PLOと。村田さんもいらっしゃるけれども、ぼくはオタイバ石油相にも会ってみましてしみじみ思ったことは、やはりこのアラブの大義がエルサレムとPLOを二本柱にしているとすれば、PLOが名誉ある国際的な地位を獲得する、権利を国際的に認証される、こういうことに日本が積極的に貢献をするということが、油、オイルの安定供給の基盤とかかわってくるという見方をぬぐえないわけですね。  今度私たちは、大鷹議員を事務局長とし木村俊夫元外相を会長とするパレスチナ友好議員連盟で幾人かで現地に行ってまいります。十二月に。外相のヨーロッパの日程とかなりオーバーラップするかもしれません。  そこで、具体的に伺っておきたいのは、そういうPLOの——われわれは今度まず行きます。来年呼びます。そういう中で外務大臣は、しかるべきランクの方が来たらやはり接遇をし、接見をし、会談をしていただくお気持ちがあるかどうか。また、同時に、PLO東京事務所の実質的な外交特権的処遇を含めて、来年、伊東外交の二年目を日本とパレスチナ関係のエポック、画期にしていただきたいというのが私の願いだけれども外務大臣としての御見解をあえて伺っておいて終わりたいと思います。
  70. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 中東和平の基本がパレスチナ問題にあるということは私もよくわかりまして、アメリカへ行きましたときも、キャンプデービッドは第一歩じゃないかと。あれだけでは永続的な公正な和平は来ないと思うと。やはりパレスチナ問題を考えなければいかぬと。それには、パレスチナ人の自決権というか、国家までつくる権利も認め、そしてイスラエルがPLOも認めることだと。PLOもイスラエルの存在を認めることだと。非常にむずかしい、そのこと自体はむずかしいんですが、それをやらないとあの地帯の平和はできないということを、マスキーさんにも、モンデール副大統領にも、ブレジンスキーにも、みんなに私は主張してきたわけでございまして、PLOがパレスチナ人を代表する唯一のものとは私はなかなか言えないと思うのでございますが、パレスチナ人をやっぱり代表するものだということはよくわかりますので、イスラエルの外務大臣にも私はそれを言ったんです。イスラエルの外務大臣に会いまして、あなたの方もPLOを認めなきゃいかぬじゃないかと、そしてPLOもイスラエルの存在というものを認めるということがもう話の第一歩じゃないかということを私は言ったわけでございまして、もしも来年PLOのしかるべき立場の人が見えましたら、私はお会いすることはやぶさかでございません。
  71. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  72. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ただいまから安全保障及び沖繩・北方問題に関する特別委員会再開いたします。  国の安全保障に関する諸問題並びに沖繩及び北方問題に関する調査を議題といたします。  本日は、国の安全保障問題について、お手元に配付いたしております名簿の方々を参考人として御出席をいただいております。  この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中のところ本委員会に御出席いただきましてありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本委員会の参考にいたしたいと存じます。  つきましては、議事の進行上、白川参考人、遠藤参考人、漆山参考人の順序で、お一人二十分程度御意見をお述べいただき、その後委員質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、参考人には御着席のまま御発言いただいて結構でございます。  それでは、まず白川参考人にお願いいたします。
  73. 白川元春

    参考人(白川元春君) 白川でございます。  ことしから一九八〇年代に入ったわけでございますが、最近の国際情勢の厳しさから、よく激動の一九八〇年代、または一九八〇年代半ばごろの危機、こういうようなことが言われております。この原因はいろいろあるわけでございます。エネルギー問題もその一つでございますが、その一番大きなものは、ソ連軍事力増強によりまして、従来アメリカが持っておりました対ソ軍事優位が崩れてきたというところに大きな原因があろうかと思います。したがいまして、西側陣営としましては最近のいろいろな情勢、特に昨年末からのアフガニスタン情勢を踏まえて西側が努力を結集して、これ以上ソ連の力を外にあふれ出させないというような戦略をとっておるように見受けられます。日本も西側陣営の一つであり、しかも大国と思われております。そこで、日本がこのような情勢の中でどのように世界平和のために努力をし貢献をするかということが現在日本に課せられた大きな課題であろうかと思います。  本日は時間の制約もございますので、この日本努力のうちで主として防衛面につきまして二つの事項について意見を申し述べたいと思います。一つは「防衛計画の大綱」の見直しについてであります。二番目は国の安全保障に関する国の施策についてであります。  まず、最初の「防衛計画の大綱」について申し上げます。  「防衛計画の大綱」は、昭和五十一年に閣議決定になりまして、これによって現在の政府は防衛施策を実施しているものでございます。昭和五十一年から四年たった現在、この間どのような情勢の変化があったでありましょうか。防衛計画の基本的な考えは、もう先生方御案内のとおりに、一つ前提を置いております。それは、米ソはお互いに戦をしないということが一つ、それから中ソは、いまのような状況が続いて、かつてあったような一枚岩にはならないであろうということが二つ目、それから三つ目は、日米安保体制はしっかりしている、それから四つ目が朝鮮半島は現状のまま、こういうような前提のもとに限定小規模侵略に対する防衛力を持とうではないか、こういうことでございます。具体的には大体自衛隊の量としてはその当事持っておったものを維持するとしまして、中の欠落事項を埋めてバランスのとれたものにしよう、こういうことでございます。さらに、先ほど申しました前提が崩れるような情勢の変化があった場合にはこれを見直して自衛力を増強するのだ、こういうことでございます。私はこの「防衛計画の大綱」の作業の前半はまだ現職でタッチしておりましたので、ある程度関係のある者でございますが、そのときの防衛庁側が感じておりました世界情勢は、五十年、五十一年でございますが、これは後になって考えますと、デタントぼけの時代であったような感じがいたします。五十一年に防衛庁が防衛白書を出しております。その後毎年出しております。五十二年の防衛白書の国際情勢のところと五十二年以降の防衛白書の情勢のところは、比べてごらんになりますと、そこに変化が見られます。だんだん厳しい見方をしてきております。ということは、五十一年の段階では、実際はソ連世界戦略なり何かをじっくり見つめれば今日のような情勢はある程度予測されたものと思われますけれども、一般の日本のムードはそういうことではございませんでした。そういうことで、国際情勢に関する防衛庁側の受け取り方がこの四年間に相当の差が出てきておるわけでございます。その後ソ連軍事力増強によりまして、もうアメリカ一国の力ではどうにもならない、同盟国の協力がなければソ連に対抗できないというようなことで、二年前NATOの首脳会議におきまして、各国は実質毎年三%増の防衛努力をやろうではないか、こういうことを申し合わせております。また日本に対しましては、昨年の秋から日本の防衛努力についての要情が公式の場に出るようになりました。こういうことが世界情勢の厳しさ、特に西側陣営にとっての厳しさのあらわれだろうと思います。  そこで、全般的にはそういうような情勢でありますので、日本はその中で西側の一員としていままでの防衛努力に増した努力をしなければ世界の平和には貢献できないという段階に至っていると思います。  さらに、もう少し具体的に日本の周辺のことを話しますと、日本は海に囲まれた国でございますから、たとえばソ連日本に侵攻してくるといった場合に、空と海のウエートといいますか、これが非常に高いわけでございます。従来はアメリカの海軍、特に第七艦隊の機動部隊日本周辺において非常な力を持っておりました、海と空の両面におきまして。アメリカの空軍ももちろん一部おりますし、それは自衛隊の海上自衛隊、航空自衛隊もあるんでございますけれども、第七艦隊のウエートというのは非常に強い。これが最近の情勢になりますと、第七艦隊が常に日本の近くで行動できるのであろうかという問題が出てきているわけであります。アフガニスタン問題のときには第七艦隊は一時日本の周辺から空になった時代がございます。インド洋に回りましたので。そういうようなことはこれから頻繁にあると思います。また、ソ連の海軍、海軍航空部隊の増強によりまして、第七艦隊の行動海域というのがそう日本に近づくわけにはいかなくなるのではないか。そうなってきますと、日本に対する侵略の危機、危険というのは増大するわけであります。ここは日本自体がそのすき間を埋めていかなければならない、日本防衛のために。  さらに具体的に申しますと、北海道の例をとりますと、北海道で一番侵略を受けやすい場所と言えば稚内正面、根室正面ということになりますが、この正面には陸上自衛隊部隊はすぐそばにはおりません。旭川の第二師団は大体名寄以南、東正面の第五師団は釧路、網走以西におるわけでございまして、一番先端近くにはおらないわけです。一番先端に何がおるかというと、レーダー部隊がおるだけでございまして、そこには対空火器も配置されておりません。先ほど申しましたような状況の変化を考えますと、そういうところにはやはり手当てをしていかなければならない。対空火器なりあるいは陸上部隊の配置なり、それから陸上自衛隊はいま持っておりませんけれども、海上から上陸してくるであろうと思われる相手の船を攻撃できるミサイル、こういうものも備えていかなければならないわけでありますが、現在それらは全くございません。  さらにもう一つ例を申し上げますと、海上自衛隊が実施します海上交通路保護でございますが、アメリカ海軍とソ連海軍との力関係の推移によりまして、日本がみずから負担をしなければならない範囲が逐次広がっていくように思われます。また、従来はソ連の潜水艦だけを対象にしていけばよかったのが、最近はソ連の水上艦艇あるいはバックファイアの出撃に基づきます対空考慮、こういうものが海上交通の方に必要になってきたわけであります。こういうものに対するこちらの手当てもほとんど実施されておりません。  さらにもう一つ申し上げますと、一番最初申し上げました一九八〇年代半ばごろの危機ということを考えますと、時間的な制約を非常に感ずるわけであります。そういうことから言って、いまの「防衛計画の大綱」はこのままでいいのかということになりますと、私はもういまや見直す時期を失しているぐらいに思います。少なくとも昨年ぐらいに見直しに着手をして手を打っていかなければならなかったのではないか、このように感じておるわけであります。  二番目は国の安全保障に関する国の施策についてであります。昭和三十二年に閣議決定されました「国防の基本方針」、四項目ございますが、その第二項目には「民生を安定し、愛国心を高揚し、国家の安全を保障するに必要な基盤を確立する。」と、こういう項目がございます。二十三年たちました現在、それがどのように実行されたでありましょうか。民生の安定は、経済力の飛躍的な発達に伴いましてこれだけは現実の姿となっておりますけれども、愛国心を高揚するための施策も実施されたようには私は思いませんし、また国の安全を保障するに必要な国の基盤、こういうものもほとんど手つかずのまま今日に来たと、こういうふうに言っても過言ではないと思います。  それでは、どういうことが国の施策として必要なのか。たくさんございますけれども一つは、国の安全保障に関する国家としての指導機構、これが確立されていないということがその一つであります。現在国防会議というものがございますけれども、これは防衛庁設置法に基づいてできたものでございまして、国の安全保障あるいは国防というものは国全体の仕事でございますので、そういう防衛庁設置法に基づくようなものではなくて、やはり独立した法律に基づいて高い時点で国の安全保障を討議し指導していく、こういうことが必要ではないかと思います。  それから、国の施策の二番目で申し上げたいのは有事法制でございます。有事になりますと、有事というのはもう平時と違った国家活動でございますので、平時の法令だけでは実施できない面がたくさんあるわけでございます。一昨年の夏栗栖解任事件のときにこの問題及び奇襲対処の問題が活発に出まして、時の福田総理からもこの有事法制を至急研究をするように国防会議でたしか御指導があったと思います。ところが、ちょうど二年たったいまそれがどのようになっておるか、これは日の当たるところには何ら出ていないわけであります。防衛庁の中ではもちろん検討はしておりますけれども、こういう問題は防衛庁だけでできる問題ではなく、関係各省庁と一緒になってでないとできないわけであります。こういうものができておりませんと、いざというときに自衛隊がその能力を発揮しようと思いましても、あっちこっちで法制上の制約にぶつかるわけであります。陸上自衛隊が、あるところに陣地をつくろうとしましても、いま陣地がつくれるのは自衛隊の演習場だけでございます。自衛隊法には物資の収用等についての項目がございまして、その中で土地の収用にも触れておりますけれども、そのための手続を一つも決めてないわけであります。これは政令問題でございますけれども、二つも決めておらない。ですから、実際そういうような場面で、その手続が決まっておりませんのでやる方法がないわけであります。そのほか、もうあらゆる面でやはり特別な法制が必要なのでありますが、それが全く実施されていない。  それから、次は民防の問題でございます。  いざとなれば、有事には日本本土は戦場になります。敵の——敵といいますか、相手の陸上部隊が上陸してくればもちろんなりますけれども、上陸してこなくても空襲は受けます。あるいは海からの攻撃もあるでしょう。そうなってきますと本土は戦場になるわけでございます。そのときに国民の被害局限とか、あるいは物資の流通だとか、そういうようなもののための活動が必要なわけであります。これが民防——民間防衛の範疇に入るものだと思います。これも日本におきましては全く手がつけられていない、そういうような状況でございます。  さらに、統合の問題もございますけれども、時間の制約がございますので、これは先生方の方から御質問がありましたときにお答えをいたしたいと思います。  それで、このように自衛隊はつくったけれども、有事のことを考えて国の体制といいますか、そういうものがほとんど実施されていない、こういうところに非常に大きな問題があろうかと思います。  この前の日曜日に朝霞で自衛隊記念日の観閲式がありまして、鈴木総理がおいでになって訓示をされました。その中で、質の高い防衛力の整備ということを言っておられます。質の高い防衛力と申しますのは、自衛隊の装備は質がよく、あるいは訓練が行き届いているということだけではなくて、いま申し上げましたような、国のそういう施策が伴って初めて高い質が発揮できるわけでございます。こういう点からいたしまして、国の施策、これは至急進めていただきたいということを念願しているものでございます。  そろそろ時間が参りましたが、最後に一つ申し上げますのは、日本安全保障あるいは日本の防衛というのは日本自体が決める問題でございまして、アメリカから言われたからやるんだ、あるいはGNP対比〇・九%を切ったらアメリカが文句を言うだろう、だからこれは切ってはいけないんだと、そういうような発想は私は逆だと思います。日本はいままで外国から強いクレームがついたときに動き出すというような傾向がございますけれども、それは逆なのでございまして、やはり日本が独自で決めて——もちろん日米安保体制がありますから細部はアメリカとの調整は要するとしましても、日本が独自で決めて日本がそれを実行する。そこにおいて初めて西側諸国からの日本に対する評価、信頼というものが出てくるのではないか、このように思います。  少し時間を超過いたしましたけれども、これをもって私の意見といたします。ありがとうございました。
  74. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ありがとうございました。  次に、遠藤参考人にお願いいたします。
  75. 遠藤三郎

    参考人(遠藤三郎君) 私、遠藤です。ごらんのとおりの老いぼれでございますし、それに東北なまりが出ますのでお聞き苦しいことと思いますが、速記しておられるようですが、原稿を持ってきましたから後で差し上げます。  白川参考人はマレー作戦のとき、私が飛行団長をしておったとき、部下の中隊長で来た優秀な将校です。それに時代が非常に違うんでございまして、白川参考人のお父さんの方が私に近いんで、陸軍大臣をやられた偉い大将です。昭和七年の春ですか、上海に行かれるときの軍司令官で、そのおぜん立てを私がやったものですから、急な作戦なので、私一緒に行ってアドバイスしてあげたのがお父さんです。不幸にして四月二十九日かな、あの天長節のとき爆弾でけがされて、それがもとで亡くなられました。  それから、漆山参考人は、これを見ますと京都産業大学の教授となっておるので、初めてお目にかかるんだけれども、この大学をこしらえた岩畔というのが、やはり私の後輩でございまして、もう亡くなりましたけれども、亡くなるまで近しくしておった人なんです。それほどもう時代が違っておるのに、どうやら白川参考人の意見と反対のようなことを言うんで、ちょっと心苦しいんですけれども、どうぞあしからず。  それから板垣委員はどこにおりますか——おめでとう。私のせがれと幼年学校が一緒なんです。お父さんがやはり私と仙台幼年学校の同窓でございまして、満州事変のときから非常に近しくしておったんです。それよりも先に、私、士官学校の生徒のとき区隊長をやっておりまして、それからの知り合いなものですから——どうも、きょうは脱線しそうで心配しております。  じゃ、ごあいさつに入ります。時間が少ないようでございますから、私は、軍備国防上、純兵学的に見た日本国の特色、ことにその弱点を結論的に申し上げます。  その弱点の第一は、細長い島国で奥行きがないということです。これは軍備国防上致命的な弱点でありまして、ミサイル兵器の進歩した今日、奥行きの広い国に対しては、たとえ同等の軍備を持っておりましても全く太刀打ちはできません。  第二の特色は、日本国内の構築物その他、可燃性が大であることです。かつ人口が稠密だ。この点から見まして、国内を戦場にしたのでは国防の主要な目的を達成することはできません。したがって、専守防衛なんということはなり立つはずがないんです。ことに、米軍が来援されるということになっておりますけれども、こんなところで、米軍が来、侵略した国の軍隊と日本軍と——まあ自衛隊でしょうが、チャンチャンバラバラやった日にはとんでもないことになるんです。  第三の弱点は、食糧、エネルギー、その他軍備国防に必要な各種資源の自給力が足らぬということです。これでは、一週間や六日で戦が終わるのなら別です。戦を長く続けるということは絶対不可能なんです。  以上、三点から見ただけでも日本国は軍備国防に適してないというよりは、むしろ軍備国防のできない国、武力戦争をやってはいけない国と申し上げてはばかりません。したがって、日本が軍備を持つということは無意味なんです。しかし、軍備国防の歴史は長くございますし、その慣習が民衆のはだにしみ込んでおりますのみならず、近年になってから、軍備は戦争をするためのものではなく、戦争を抑止するためのものであるという巧妙な説明がされてきました。したがって、軍備の全廃はもとより、軍備の縮小もなかなか困難なようです。しかし歴史は、軍備が戦争を抑止したということよりも、むしろ戦争の起爆剤、迎え水になったことの方が多いことは否定することできないんです。戦争の抑止力は、軍備ではなくて世論の力ではないでしょうか。世論が納得し得るような理由なり口実なしに兵を他国に進めて成功した例を見ません。  以上のようなわけで、私は、日本は軍備を持たない方がかえって安全と思っております。しかし私は、自衛隊を直ちに解散せよなどとは申しません。自衛隊にもいい面もありますし、また、百万を超す失業者を抱えておる日本が、二十六万の自衛隊員を解散いたしましたならば、それこそ社会不安、紛糾を招くおそれがあるからであります。自衛隊法の第三条に、「直接侵略」に対する「防衛」「任務」、この「任務」を削除さえすれば足ることなんです。「直接侵略」のあるなしは別といたしまして、右の「任務」がある限り自衛隊の増強は必然であります。日米安保条約の軍事条項も必要になってきます。それが結局戦争につながっていくと思われるのです。幸いにして戦争につながらなかったといたしましても、逐年自衛隊を増強し、米軍に基地を提供しながら北方領土の返還を要求してみたところで、ソ連が相手にしないのは当然だろうと私は思っております。また、米軍の核のかさに頼りながら非核三原則を唱えてみましても、また、自分から軍備を増強しながら国連会議その他で軍縮を訴えてみましても、識者の嘲笑を買うにすぎないものであろうと私は思います。百の説法も一つの垂範に及びません。裸になって訴えてこそ効果があろうと思うのであります。  軍備を持たないからといって日本が弱体化するとは思っておりません。反対に私は強くなると思っております。なまじっか軍備なんか持ちますと、相手国の軍備が気になります。相手国の軍隊が強くなったら戦々恐々、心が休まりません。裸になっておれば、かえって丹田に力が入ります。丹田がすわってまいります。昔から、匹夫といえどもその志は奪うべからずというりっぱな箴言があります。剣聖と言われた塚原卜伝も剣豪と言われた柳生但馬守も、兵法の奥義をきわめてからともに剣を捨てております。ガンジー翁は非武装、不服従の政策をとりまして大英帝国の羈絆からインドの独立をかち取りました。威武に屈せず富貴に淫しない心があれば断じて軍備なんかは必要でありません。  自衛隊法の改正は、国内法でありますから、これは格別むずかしいことじゃありません。日米安保条約の改正も廃止も、これは条文から申しますれば通告しただけでいいようにはなっておりまするが、やはり国際間の問題でありまするから相手の了解が必要と思います。こういう意見の違うところがあっても、和して同ぜずの態度で、誠意を尽くして話し合ったならば日米関係はそう悪化するとは私は思っておりません。  右は、私が、明治四十年ですよ、時代が違っております。陸軍の幼年学校に入ってから、昭和二十年ポツダム宣言を受諾して日本の陸海軍が解散するまで、四十年近い間の軍人生活と、大正三年ですよ、これも時代が違うんですが、青島に兵を出しましたな、あの青島出兵以来、大日本帝国といった日本がやったあらゆる事変や戦争、シベリア出兵もしかり、満州事変、支那事変、大東亜戦争しかり、ことごとく私は不思議に直接そのことに介入してまいりました。また、大正十二年、関東大震災のときは江東方面の警備を担当いたしましていろいろ体験いたしました。朝鮮人騒ぎ、それから地震で亡くなった人よりも火災によって亡くなった、あの実態もよく見ております。それから、大正十四年に参謀本部及び海軍軍令部の作戦主任幕僚といたしまして国軍全般の作戦計画を立案することを命ぜられました、そのときの研究。あるいは昭和二年ジュネーブで開かれました海軍の軍縮会議にも列席させられました。それから、帰ってきてから昭和六年国際連盟の全般軍縮会議のときの準備委員を命ぜられましたのでいろいろ研究いたしました。その他全生涯を通ずる学習から得た純兵学上の結論であります。先ほど申しました三項目は。決してイデオロギーや宗教に影響されたものではなく、また国連憲章や日本憲法に縛られて言うてるわけじゃありません。また、私はいずれの政党にも属しておりません。が、以上申しましたような理由で、日本社会党の非武装中立政策を高く評価するものであります。  軍備国防は誤りであるということは歴代の総理にも進言してまいりました。いまの鈴木さんにも言ってあります。特に、昭和二十年沖繩が失陥した際、日本の軍部が本土決戦などと狂気じみたことに騒いでおったとき、私は本当に身命をなげうってその誤りを上申し、やめようと努力いたしました。敵が上陸なんかしなくても、秋になってたんぼが黄色になったとき焼夷弾で風上から焼けばもう血を流さなくて日本は手を挙げるほか仕方がないんです。兵糧攻めです。また、敗戦の真後、ポツダム宣言を受諾して日本が軍隊がなくなるということでずいぶん混乱しておりました。そのとき私は東久邇さんの——総理大臣をやられた東久邇宮です。御了解を得まして、全国の著名新聞全部に、世界に先駆けして日本が軍備をなくすことは日本の黎明である、これでこそ国民大衆の物心両面の負担が軽減され、また世界の平和にも貢献し得るんだという旨を発表しております。  国会の公聴会におきましても、昭和二十九年の三月二十三日には衆議院の外務委員会でMSA批准の際、同年の四月十四日には衆議院内閣委員会防衛庁設置法案審議の際、並びに昭和三十三年二月二十五日、衆議院の予算委員会で同様なことを申し述べております。  その他機会あるごとに新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、著書等によりまして広く訴えましたし、近くは去る七月五日と八月十二日、二回にわたりまして朝日新聞の「論壇」で十項目の設問の形で私の意見を発表しておりますから、きょうは詳述を控えさしていただきます。  御質問にお答えしようと思います。野人のことでございまするから、失礼な言辞も多かろうかと思いますが、どうぞ御寛容の上、御遠慮なく十分につるし上げていただきます。  終わりました。
  76. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ありがとうございました。  次に、漆山参考人にお願いいたします。
  77. 漆山成美

    参考人(漆山成美君) 漆山でございます。  私は、いまお述べになったお二方の参考人の御意見のように現場を踏まえての体験から出た声ではございませんで、私は一介の書斎の人間でございますから、書斎で考えていたことを申し上げてみたいと思うわけであります。  私の論点というのは、現実の問題といいますか、現実には違いありませんが、国際問題の視点からこれを考えてみたいということでございます。  なぜそういう視点をとったかといいますと、日本に対して侵略があるというような事態というのは、恐らく第三次世界大戦というものを想定せざるを得なくなるだろうと思うんでありますが、そういうような状況の中でいかにしていわば国際的な秩序というものを維持していくかということが、そしてそのために日本はどうしたらいいかという視点も同時に考えていかざるを得ないからだと思うんであります。  それで、その場合、時間がきょうはございませんから非常に簡単なことになりますが、本委員会で意見を述べろということで、非常に短い時間でありましたけれどもソ連の対外行動のパターンの中にわれわれは何か手がかりがないかと思いまして、いささか第二次大戦以降のソ連の対外行動のパターンを考えてみたわけであります。それから第二番目に、ソ連の対外政策と内政の関連が、これが将来に向かってどういうふうな関係を及ぼしてくるかという点が第二点であります。第三点は、それに対して西側はどういう対応の仕方をしたらよいのかということであります。  まず、第一点のソ連の対外行動のパターンというのは、これは私の勝手な分類の仕方でございますけれども、経験的な現象を見ますと、三つの分類ができるんではないかと思っております。  その第一の分類は、俗に言うところのソ連の膨張主義というものであります。これは第二次大戦中のフィンランド戦争からバルト三国の合併、あるいはポーランドの分割、あるいは東ヨーロッパの席巻、あるいはイエメン、アンゴラ、エチオピア、最近に至ってはアフガニスタン等々の一連の膨張、それは場合によっては軍事的な措置を伴った膨張であります。こういうものの性格というものは、これは一概にどういうときにソ連が膨張するかということは必ずしも明白ではなくて、個々のケースによって多少の違いがありますが、きわめて乱暴に要約いたしますと、一つには反撃力が、ことにアメリカの反撃力が非常に弱かったときに出てきているような傾向がございます。  それからもう一つは、国によってこれは多少違いますけれども、その国に親ソ政権ができて、その政権の要請によって介入してくるというケースもあります。アフガニスタンなどはそのケースに入ろうかと思うわけであります。これは細かいことを全部申し上げますととても時間がございませんので、第一に一応膨張の傾向というものが見られる。  それから第二番目に、まことに奇妙なことといいますか、ソ連には撤退の傾向があるということも同時に言えようかと思うわけであります。  それを若干の例を申し上げてみますと、第二次大戦の後のイランの北部のアゼルバイジャンに英軍とソ連軍が駐留したことがございますが、これは英軍が引き揚げた後にソ連軍は居直ったわけでありますけれども、当時の西側の強い世論の反撃、アメリカの反撃等によりましてアゼルバイジャンから引き揚げたケースがございます。それから、一九五五年にオーストリアに駐留していたソ連軍がオーストリア国家条約の締結と同時にオーストリアから撤退したケースがございます。それから最近の例では、エジプトに、ナセル大統領時代にあそこにソ連が基地を設けて地中海のパトロールなんかやっておったわけでありますけれども、サダト大統領の立ち退き要求を受けて撤退したケースがございます。あるいはスーダンにおいても同様なケースがありまして、そのほかソマリアなどもそれに入ろうかと思うわけであります。これはどういう場合に撤退するかというのもこれも一概に言い切れないところがあるわけでありますが、場合によっては強い外部的な圧力を受けた場合には撤退する可能性がある、それから撤退してもそれに見合う膨大な利益を獲得できるような場合には撤退する可能性考えられるということであります。  それから、第三番目の対外行動のパターンというものは、不介入のケースであります。これは、私は主としてソ連の共産圏内部のことを念頭に置いて申し上げているわけでございますけれども、御承知のとおり、チェコスロバキアに対するソ連の介入の後にブレジネフ・ドクトリンというのが出て、社会主義諸国に対してソ連軍事介入をなし得るというような趣旨のことを明らかにしたわけでありますが、チェコとハンガリーに対しては確かにソ連は軍事的に介入した、しかしポーランド、ルーマニア、ユーゴスラビア、中国、これはいずれもソ連に対してかなり厳しい反発姿勢をとっていたり、国内自由化を進めようとしたり、自主路線をとろうとしたり、さまざまでありますけれども、いまのところソ連軍事介入する傾向はないわけであります。将来のことはわかりませんけれども、いままでのところはないわけであります。どういう場合に軍事介入、ブレジネフ・ドクトリンによって介入するか、どういう場合に介入しないかということも非常にデリケートな問題でありますけれども、この場合に言えば、抵抗意思の強い国はどうも介入していないようであります。ポーランドにおける強い反ソ感情、ユーゴスラビアの強い防衛意思というようなものがソ連の介入を防いでいるのではないかと思われます。中国の場合でも、あそこへ介入した場合の人海戦術の深刻さというようなものを考えて介入しないんだろうと思われます。  こういうふうに対外政策のケースは三つあるわけでございまして、ここからわれわれはどういう教訓を引き出せるかということは、後でちょっと申し上げてみたいと思うわけであります。  それから第二番目に、ソ連というのは、ソ連脅威ということがあらゆる角度でいま論議されて、場合によってはあすにでも北海道に侵入してくると、日ソ戦わばというような議論もかなり多いわけであります。私は現場を知りませんのであるいはそういうことはあるかもしれないとは思っておりますけれども、ただ、われわれはソ連脅威というものを強調する余り、一種のパニックに陥ってはいけないんではないかという気がしているわけであります。と申しますのは、私の見るところではソ連というものは幾つかの欠点を持っている国家である、これは気取った言い方をすれば粘土の足を持った巨人などという言い方をする人もおりますし、私はよく申し上げるんですが、胃潰瘍の弁慶だと、ミサイルやいろんな、なぎなたやいろんなものを背中にしょっているけれども、どうも胃潰瘍があるということをよく言っておるんでありますけれども、そういう何が問題かと言いますと、たとえばその中には指導者の老齢化というような問題もございましょうし、しばしば言われていることですけれどもソ連における少数民族の問題もこれがやがて多数民族になる可能性を秘めているということもございましょうし、あるいはアフガニスタンなんかにおいて一種のベトナム化というような現象が起こる可能性もなきにしもあらずでありますけれども、最も私が注目している胃潰瘍の部分と申しますか、は二つございまして、一つはいわばイデオロギーというものが一種の魅力を失ってしまったということであろうかと思うんであります。これはすでにヨーロッパではユーロコミュニズムというようなものがソ連からの独立性を主張しているわけでありますし、あるいは東欧におきましても、もしソ連軍というものがいなければハンガリー、チェコスロバキア、ポーランドなどというのは中立国家になっていたに違いないわけでありますし、それから国内的に見ましても、サハロフのような反体制の問題ないしは相続く亡命者の問題、あるいは軍艦なんかにおきましても、一九七五年にストロゼボイ号の反乱がありまして、これは恐らくポチョムキン号の反乱以来の反乱ではないかと私思っておりますけれども、そういうようなイデオロギーに対する不信感があるわけであります。私は直接ソ連の民衆がどういうふうに考えているかを世論調査するわけにはまいりませんけれども、一部の学者の説では、ソ連の民衆は平和とプライバシーと繁栄を望んでいると、革命後五十数年にしてそういう気持ちになっているという指摘もございます。こういうソ連の国内外におけるイデオロギー不信というものがやっぱり胃潰瘍の大きな要素であるということであります。  それから第二番目には、これは私は専門でございませんので明確な数字を申し上げることはできませんけれども、 いわゆる経済不振というものがかなり深刻に進行しているのではないかと思われるわけであります。これは先般日本新聞にも、日本政府の分析結果としてソ連の農業が非常に悪いと、五千万トン程度の輸入をせざるを得ないというような記事が載っておりましたけれども、大ざっぱに言いまして、ソ連経済というものは労働力の不足という問題、それから資源の不足、場合によっては、その中には石油の不足というような問題も含まれてくるかと思いますけれどもそういう問題、それから生産性の低さ、というような問題もあろうかと思うのであります。こういうものがだんだん西側の経済に依存してやっていかざるを得なくなっているわけでありまして、結局ソ連が、私の考えでは、軍備を膨大にしたというのは、大体一九六二年のキューバヘのミサイルの持ち込み事件でアメリカに非常に強硬な態度をとられて、それですごすごとキューバから逃げ出したというとき以来ではないかと推定しておりますけれども、そういう中で軍備の強行をしたために、かなりの経済にしわ寄せが来ているのではないだろうか。それで果たして、いろんな説がございますけれども、GNPの一一%とか一五%とかいう膨大な軍事費というものをいつまで強行することができるだろうか、ある段階で山、峠というようなものが来る可能性はないか。つまり無限のわれわれは軍備拡張競争というものを想定するわけにはいかないということであります。  そういう中で、第三番目に、非常に簡単に西側といいますか、日本のといいますか、そういうものの対応策というものを申し上げてみたいと思うのでありますけれども、第一番目に、これは常識かもしれませんが、私申し上げたいのは、日本は防衛の意思は非常に強いけれども、侵略の意思がないということを常に明確にしておく必要があろうかと思うのであります。それで、これは緊張が増大すれば増大するほどそういうお互いの意思の誤解のないように、パイプだけはきちっとつないでおくべきであろうと思うのであります。そういう点が第一点でございます。  それから第二点に申し上げたいのは、軍備競争というものが、これはまあわれわれにとっても重大な負担になるわけでありますけれどもソ連にとっても決して利益をもたらさないということをソ連に明確に示していく必要があるんではないかと思うわけであります。たとえば、ソ連がいま膨大な軍事力を持っているということが何のために持っているのか私はよくわかりません。人によっては予防戦争をするためだという議論もございますけれども、まあ私もう少し穏健に考えまして、その軍事力でもって何らかの政治的な利益を引き出そうというふうに考えていると仮に仮定しておきます。たとえば北方領土を放棄せよとか安保条約を廃棄せよとか、日本に限って言えばそういうような政治的な要求を貫くためにおどかしをつけるというようなことがございましょうけれども、私はそういう軍事力で政治的な利益をソ連に引き出させないように日本は対応していくべきであろうと思うのであります。あるいは西側も広くそういうものに対応すべきであると思うのであります。そのためにはどの程度の軍事力が必要なのか、私は専門家じゃございませんのでわかりませんが、一%以内という限定をみずからつける必要はないんではないかという感じがいたすわけでございます。簡単に言いますと、ソ連軍事力を増大しても、西側の全体の力ですぐにそれに追いついてしまう能力をこっちは持っているんだということで、軍拡のメリットを帳消しにしてしまう力を西側が持っていることが必要ではないかと思うわけでございます。  それから第三番目に、先ほど内政と外交との関係で申し上げましたが、ソ連がいまバターよりも大砲をという視点が強いように思いますけれども、仮に大砲よりもバターを、ないしは国内のいろんな諸矛盾の解決の方に漸次力を用いていく、たとえば、いま中国が毛沢東時代のような戦闘的な姿勢から内部改革というようなものに行かざるを得なくなったように、ソ連がいつの日にかそういう内部改革という問題に取り組まざるを得なくなったようなことを想定して考えておるわけでありますけれども、そういうような場合に、われわれは経済交流等によってソ連に、言葉はいやですけれども、利益を与えていくというような姿勢もとってよろしいのではないかと思うわけであります。一番問題なのは、たとえばアフガニスタンのような明白な侵略的行為、ソ連に言わせれば、単に招待されただけだということでありますけれども、ああいう侵略的な行為があった場合に、こちらから経済協力を申し出るというのは、かえって侵略を助長する危険性があるかと思うのであります。そのためには、私、こういう一応西側の姿勢と漠然と申し上げたわけでありますが、こういうことは日本一国でとてもできることではございませんで、広く西側の協力体制というものが必要になってくるわけでございます。たとえばそのためにどういうことをやったらいいかということでありますが、いささか書斎の人間としての言い方をお許しいただけますならば、この間、ロバート・コンケストというイギリスの学者がおりまして、アメリカの上院なんかでも証言しております。彼の書いた「プレズント・ゲインジャー」という本がございまして、現在直面する危機とでも言いましょうか、そういうものがございます。これは対ソ警戒論を説いた本でございますけれども、その中にただ非常におもしろいことは、私にとって参考になりましたことは、イギリスもヨーロッパも新しい大西洋憲章のようなものをつくる時期に来ているんだと。つまり、守るべき価値というものを自由社会が明確にしていく必要があるんだというようなことを言って、ニュー・アトランチック・チャーターをつくれというような主張をしております。  御参考までにその内容を五点ございますので申し上げてみたいと思うんでありますが、開かれた多元的な社会を守っていこう、それから自由討論による問題の解決を図ろう、それから政府は選挙によって交代し得るんだというプリンシプルを立ててはっきりさせていこう、あるいは独裁や計画経済などは否定しよう、それからある種のユートピア主義に陥らないように努力しよう。こういうようなことは、彼は私見として新大西洋憲章などと言っているわけでありますけれども、こういうものは別に機械的にそのままわれわれがまねすることはございませんけれども、西側が、軍事面において、経済面において協力し合っていくときの基本的な姿勢というものは、やはりある程度だんだんわれわれはつくっていく必要があるんではないかという気がしておるわけでございます。  そういう上に立って、私ごとにこういう西側の協力ということを重視いたしますゆえんのものは、防衛力というものを考えていく場合に、たとえばよく言われる、防衛力は軍事独裁をもたらすというような議論がございますけれども、私は、そういうものをチェックするためには、国内的にシビリアンコントロールということが明確になっていると同時に、国際的にそういう自由主義諸国が、いま言ったような原則を掲げてお互いに相互批判をしていく、余り変なふうにならないというようなことも一つの役割りになろうかと思っているわけであります。  そういうことと、それから最後にもう一つ、これは私憲法上の諸問題の余りむずかしいことは専門じゃございませんのでわかりませんけれども、やはり日本が国際秩序の形成者として動こうとする以上は、国連軍というものに対してもっと積極的に考えていいのではないかと思っております。これは朝鮮動乱型の戦争に日本国連軍として参加できないことは明白でありますけれども停戦監視のための国連軍など、ことに中東地域において、イランイラクの戦争が終わった後の中東情勢なんかに対応していくときに、停戦監視能力を日本が持つということは重要な国際的な寄与ではないかと思っております。  非常に簡単でありますが、私の意見を述べさせていただきました。
  78. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより、参考人に対する質疑を行います。  なお、参考人の皆様には、各委員質疑時間が限られておりますので、簡潔にお答えくださるようお願いいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  79. 衛藤征士郎

    衛藤征士郎君 白川参考人にお伺いいたしたいと思いますが、白川参考人はかつて統幕議長の要職にあられた方でございますが、その経験からされまして、先ほど、自衛隊における統合運用のあり方について、質問があればお答えをしたいというお話でございました。早速統合運用のあり方につきまして御所見を承りたいと思います。
  80. 白川元春

    参考人(白川元春君) 日本は海に囲まれた国でございますので、日本に対する何らかの侵略があった場合に、それがどのような様態でありましょうとも、一つ自衛隊だけがそれに相手をするということは考えられないわけであります。必ず三つの自衛隊が、あるいは二つの自衛隊がお互いに力を合わせてそれに対処しなければならないことは明白でございます。この二つないし三つの自衛隊を効率よく運用するというのがこの統合でございます。  現在防衛庁は、陸海空自衛隊にそれぞれ幕僚長がおりまして、別に統幕議長というのがおるわけでございます。一般のよく御存じない方は、統幕議長というのは各幕僚長の上に位をしておるものだと、もっと極端な人は、統幕議長が三人の幕僚長を指揮しているんだと、こういうような感じを持っておられる人もあるようでございますが、実態はそれにはほど遠いのでございまして、わかりやすく申しますと、三人の幕僚長と統幕議長は並列の形でおるわけであります。ただ、統幕会議という四人の会議の議長をやっておるということでございます。  そこで、自衛隊が作戦行動をする場合に、長官の行動命令、これはどのように部隊に伝わっていくのかということを申しますと、各幕僚長を通じて長官の命令が執行されるということでございます。ただし、日本のどこかに統合部隊ができましたときには、統幕議長を通じて長官の命令が執行される、こういうような規定になっております。  ところが、日本のどこかに統合部隊ができる可能性はあるのかということになりますと、私の経験から申しまして、全くございません。よく、北海道を陸海空の統合部隊にしたらどうだと、こういうような案が話題に出るわけでありますが、陸上自衛隊は地面に足がついておりますので、北海道は一つ部隊が北海道だけを固める。現に北部方面隊というのは北海道を警備地域にしておるわけでございますが、陸上自衛隊はそういうことが可能でございますが、航空自衛隊の場合をとりますと、北海道を防衛するためには北海道だけでの作戦では非常に窮屈なんでございまして、少なくとも東北地方を含めた空域がなければできないわけであります。あるいは東北地方だけでも狭いかもわかりません。それから、海上自衛隊も同じようなことが言えまして、一つの単位の行動の範囲というのは広いわけでございます。ですから、北海道だけに陸海空の統合部隊をつくるということは実態に合わないわけであります。  防衛庁では毎年、現在の防衛力で有事の場合にどのように部隊を運用するかという年度の計画をつくっておりますが、その中にも統合部隊をつくるということはいままでもございませんでした。したがいまして、私は、日本全部が一つの統合部隊である、このように考えてしかるべきではないかと思います。そうしまして、部隊を運用するときには、統合的見地から最も効率のいい陸海空部隊の使い方を、一人の指揮官といいますか、厳密に言えば指揮官は長官なのでございますが、一人のユニホームを経て実施をする、こういうような形にならないと本当の統合運用というものはできないように思われます。このためには、いまのような組織を変えて、部隊運用については議長が長官を直接補佐する、こういうような形にならないとぐあいが悪いのではないかと思います。  諸外国の例を申しますと、若干の差異はございますけれども、国防大臣のもとに主として行政を担当するシビリアンのグループと、それから部隊運用を担当するユニホームのグループとが並列に国防大臣のもとについている、このような形になっておりまして、現在の防衛庁の中央組織とは大分違うわけでございます。  このような組織は、これは防衛庁自体の問題だから防衛庁がやればいいではないか、本当に効果のあるものならば、こういうようなことになるわけですが、実態はなかなかそうはいかないのであります。昔、陸海軍が仲が悪かったというようなことを言われますように、ユニホームというのは一つの専門家であります。専門家というのはどうしても自分の守備範囲がかわいい、排他的になりやすい、こういうような傾向を持っております。  私が現役のときにアメリカ、ヨーロッパの各国を見せてもらいましたけれども、ヨーロッパの各国は、ほとんどいま私が言ったような中央の組織になっておりまして、これについて私は同じ質問をしてみました、このような組織になったのは軍人側の要請でなったのか政治の指導でなったのか。そうしますと、一国の例外もなく、政治の指導でなったと、このような答えでございます。したがいまして、この統合問題、特にこの統合中央組織の問題は、現場からはなかなか言い出せないというのが各国の姿でございます。日本も例外ではないと思います。  そこで、私は帰りまして、ちょうど当時坂田長官でございましたけれども、そのような状態をお話をして、いまの国会の状況で国会がこれを指導されるということはなかなかむずかしいでしょう、ただ、非常にこの方面に関心のある長官が五年ぐらい続けて防衛庁長官の席におられたならばあるいは日の目を見るかもしれませんと、このようなことを報告したことを覚えております。したがいまして、この問題は本来防衛庁の中の問題ではございますけれども、政治側からの強力な指導がなければ私はできないように思います。  簡単でございますが、これでお答えとしたいと思います。
  81. 衛藤征士郎

    衛藤征士郎君 先ほど参考人から、いわゆるデタントぼけの中から防衛大綱が生まれてきたというようなお話がございましたが、いまや状況は一変しておるわけでございますが、いわゆる現在の防衛二法についての御所見、このままでいいのか、あるいは防衛二法についての改正、防衛庁設置法、自衛隊法のいわゆる整備すべきところ等々についての御所見を承りたいと思います。
  82. 白川元春

    参考人(白川元春君) 防衛二法に関しまして私が一番最初に申し上げましたような事柄、それから先ほど言いました統合問題、そういうものを解決しようとしますと、これは当然防衛二法の改定ということになろうかと思います。  これはまた非常に大きな問題でございますので、しばらくそばにおきまして、現在の防衛二法、特に自衛隊法につきまして何年かに一遍はこれの改正が実施されるのでございますが、これがほとんど新しい部隊ができたときあるいは人員の増員を必要とするとき、このときだけに限って改定を実施されております。したがいまして、防衛二法を実際これでいいのかという原点に返っての改定というのはいままでほとんど実施されていないわけでございます。防衛庁といえども一つの行政官庁でございますから、その底に流れているものは一般の行政官庁のいろいろのしきたりをそのまま入れておるように思われます。自衛隊というのは、有事の場合のために必要なものでありますので、平時の場合の一般行政官庁のあり方とは違う場合があるわけでございます。そういうところから言って、一度原点に返ってながめる必要があるのではないかと思います。  私は、法律をよく勉強したことはございませんので、具体的内容になってきますときょうお答えはなかなかできないんでございますが、私が現役のときから通じて感じておりましたところを若干申し上げますと、少し枝葉末節的なことになるんでございますが、平時において武器等を防護するために武器の使用を定めておるところがございます。たしか九十五条だったと思いますが、そこにはどういうようなものを守るときに武器を使用していいということが書いてあるわけでございますが、それを見まして一番奇異に感じますのは、飛行機とか車両とかいうのは出ているんでございますが、レーダーとか通信機というのはないわけです。自衛隊法ができましたときには、これは昭和二十九年でございますから、もうそのときにすでにレーダーとか通信機というのは当然あったわけでございます。それから艦船がございません。もうそのときには当然海上自衛隊もおったわけです。ですから、そういうようなところが非常に私にとっては奇異に感じまして、それはそのままに現在なっております。  それから次に、陸上自衛隊と海上自衛隊には予備自衛官というのがございます。これは防衛出動命令が発令された後防衛招集ができるようになっておりますが、実際予備自衛官というものが欲しいのは、もうそういうときではむしろ遅いんでありまして、防衛出動待機命令のときに予備自衛官の招集の行動を起こさなければ間に合わないわけであります。  それから、有事法制に関連しまして、雑則に「防衛出動時における物資の収用等」という項目がございます。これは先ほど申しましたように、これに基づく政令が一つもできておりませんから、その手続等が整備されていない。ですから、法律にはありますけれども実行に移せないというものでございます。さらに言いますと、これも防衛出動命令ではなくて出動待機命令のときから必要なわけであります。それから、その文章を読んでみますと、土地の使用はできても収用は書いてありません。ですから、単に土地の上は使えるけれども、それを掘りくり返してどうのということまでできるのかできないのか、こういうところが不明確のままになっております。  それからもう一つは、これは非常に重要なことなんでありますが、例の栗栖事件のときに言われました奇襲対処の問題でございます。自衛隊の第一線の部隊が侵略者の奇襲を受けた場合にどうするかという問題でございました。最近の人工衛星とかそういうものが発達している限りにおきましては、昔のように朝起きたら石狩湾の沖に大船団が来たというようなことは絶対にいまございませんけれども、やはり侵攻をしようとする側はあの手この手を使って奇襲を考えるでありましょう。それから、敵の来襲がある程度察知されたとしまして、今度政府がそれに対して対応の決心が機を失せずできるかどうか、ここら辺に第一線部隊としては奇襲を受ける可能性があるわけでございます。そのときにまだ防衛出動命令は出ていないわけでございますから、第一線部隊はどうしていいかわからない。あのときの国会問答の中には、その命令が出ていないんだから部隊は退却するよりほかしょうがないんだというような発言もあったように記憶しておりますが、ここら辺が防衛二法の中で落ちている一つの大きなものではないかと思います。  このためには、自衛隊の最高指揮官である総理から、奇襲を受けた場合には部隊はとりあえず何をしろという行動の基準だけをあらかじめ部隊に渡しておく、それでその後防衛出動命令なり正式の行動命令が部隊に行く、その状況に応ずる正式な行動命令が部隊に着くまでの間、部隊がとりあえずその一つの基準に基づいて行動をする、こういうようなことが自衛隊法にないというのはやはり大きな問題だと思います。  細部いろいろあろうかと思いますけれども、ちょっと整理しておりませんので、このぐらいで御勘弁願いたいと思います。
  83. 衛藤征士郎

    衛藤征士郎君 時間がありませんので、最後にもう一問三人の参考人先生方に承りたいんですが、ソ連が最近、戦域核戦力SS20を極東に配備しておりますし、またその配備する配置もかなり大きな地域にわたっているということも承っておりますし、さらにはわが国の北方領土への部隊配備、軍事基地化、これは一体何のために、何の意図を持ってこのような極東配備をしたりあるいは北方領土の基地化をするのか。  これについては、わが国にありましては、脅威認識は相手の能力掛け相手の意図であると言われておりますが、相手の戦力、能力につきましてはいろいろと議論をされるのでありますが、その意図につきまして議論が見られないように思うのでございますが、きょうはせっかく三人の方々がおいででございますので、できるだけ簡単にこの意図についてどのようにお考えになっておられますか、御所見を賜りたいと思います。
  84. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 白川参考人から順にお願いしたいと思います。
  85. 白川元春

    参考人(白川元春君) いまSS20、北方領土の例をお出しになられましたが、私はそういう一つ一つの問題ではなくて、先ほど漆山先生もおっしゃいましたような、どうしてソ連はあれだけの軍事力を持っているのかというのが一つの出発点にならなければならないと思います。これはソ連といえども特にアメリカと戦をしようという気持ちは私はないと思います。やはりあれだけの軍備を持っておるといいますのは、その軍備を背景にしてよその国に影響力を与えようということが一つの根底にあろうかと思います。よくフィンランド化という話も出るのでございますが、事を構えずにある国をフィンランド化して自分の陣営に引き入れることができれば、これに越したことはないわけであります。したがいまして、いま先生のおっしゃいましたSS20も北方領土もそれの延長上にあるのではないかというふうに思います。  特にここで北方領土の軍備強化について申しますと、これは相当のいろいろの目的を持っていると思います。一つは、対米上の考慮でオホーツク海を自分の海にしたい、これは潜水艦から打ちますSLBM、これの発射区域として非常に好適な場所でございますので、それを自分のところに確保したいということももちろんありましょう。ありましょうが、日本の北海道のすぐ目の先に一個師団弱の軍備をしたというのは、一つの大きなねらいはやはり日本に対するソ連の力を見せつけておる、ここにあろうかと思います。そういうような自分の力を見せておいて、それで日本の国民に不安を感ぜさせる、とてもこれではソ連を相手にしてはもうだめだという挫折感を日本の国民に与える、こういうようなねらいが大きいのではないかと思います。  私、九月の半ばに道東の研修に行ってまいりましたけれども、やはり根室付近では、ともかく陸上自衛隊一個連隊でいいからここに駐とんしてくれないか、不安でしょうがないというような気持ちが強いように感ぜられましたけれども、そういうような効果を私はねらっておるものだと思います。
  86. 遠藤三郎

    参考人(遠藤三郎君) ブレジネフが何を考えているか、これは私がわかるはずないんです。しかし、従来の経験から見ますと、一面彼はおのれをもって他を律すといいますか、あるいは過去の歴史から見て、恐ろしがっているんじゃないですか、ちょっと反対のことを言うたんですけれども。  たとえば満州事変のときの体験から言いますと、満州に関東軍の兵力を増しますと、彼は必ず三倍にしておったんです。というのは、関東軍は内戦作戦ができるんです。どこを攻撃しようと、東に行こうと北に行こうと西に行こうと自由なんですが、その当時、シベリア鉄道が一本しかなかったでしょう、数千キロにわたるあのシベリア鉄道一本しかなくて関東軍からどこをつつかれるかわからぬ、ですから、どうしても三倍の兵力を置かなくちゃいかぬというのがもう明確にわかったんですよ。だから、いまはブレジネフが何を考えているかわかりませんが、しかしばかなことをやっているなと私思っておりますよ、あんなばかなこと。  しかし、ソ連の悪口を言う前に、ひとつ皆様方に考えておいていただきたいのは、日本ソ連に対してどれほど悪いことをしたかということをこのごろみんな忘れておられるようです。みんなと言っては失礼ですけれども、私のところに来る作家やなんか盛んにソビエトの悪口を言われますが、私もソビエトの悪口を否定なんかしませんが、一体あのシベリア出兵は何であったかというんですよ、大正六年。チェコスロバキアの捕虜を助けるなんという名目ではあるけれども、実際はバイカル湖まで横取りしようという野心があったんですよ。ロシアが革命直後で本当に力のないとき、あの大軍を日本はお先棒を担いでアメリカやなんかも一緒になってシベリアに出兵したんでしょう、結局しくじったんですけれども。  それからもう一つ、昭和十六年ですか、ヒトラーが独ソ不可侵条約を破ってソ連に入ってきたでしょう。その前の年でしたか、松岡外務大臣が全権になって行ってソビエトと日ソ中立条約を結んできたんですね。一年もたたぬうちにソビエトが心配になったものだから日本外務省に伺いを立てているんです。日ソ中立条約を守ってもらえるかと。松岡外務大臣は、日ソ中立条約よりも日独伊三国同盟の方が優先しますという返事ですよ。だから、彼は極東の兵力を引き揚げてヒトラーに当てようとしましたけれども、恐ろしくて引き揚げ得なかった。  そういう罪悪を犯しているのみならず、その年、関特演——関東軍特別大演習の名のもとにソ満国境に日本の陸軍は七十万の軍隊を集めたんですよ。いつでもヒトラーとはさみ打ちできるという態勢をやったんですよ。  こういう悪いことをやっておって、それを口をつぐんで、ソビエトの悪口ばっかり言うのは片手落ちじゃなかろうかと思います。悪かったことは率直に悪いと言うて、そうして堂々と正論を吐けば、ソビエトだってばかばかりじゃないと思いますから、幾らか言うことを聞くと思います。
  87. 漆山成美

    参考人(漆山成美君) 私もブレジネフに直接聞いたわけじゃございませんのでわかりませんけれども、私はソ連の対外的な意図というものは非常に複雑なものだろうと思います。いま遠藤参考人の方からおっしゃられたようないろんな歴史的な経験、日本ばかりじゃありませんで、ナポレオンにもやられたし、ヒトラーにもやられたし、ポーランドにもやられたわけでありますが、そういう被害感というものが非常に強くて、普通なら一対一で間に合うところを一対十五、一対三十というふうにやたらに防衛力を増大していくという被害感が強いということは確かにそのとおりだと思います。いわゆる防衛的攻勢論というふうにわれわれが称しているものであります。  それから二番目には、ソ連の意図について、これはアフリカのケースなんかを見るとしばしばわかるわけでありますが、非常に機会主義的であり、反応的であるということであります。ある国に何か親ソ政権ができるとすぐそこへ援助をやるとか、非常に機会主義的な反応をやる。ソ連世界征服のグラウンドデザインがあるのかないのかということは、しばしば議論されていることでありますけれども、私はむしろそういう機会主義的な要素の方が強いんではないかと思っております。  それから三番目には、これはあくまでもイデオロギー上の問題でありまして、彼らがいわゆる多様化した国際社会というものは否定しているわけでありまして、基本的には社会主義対資本主義の対立であるという考え方を言っておるわけであります。  そういう三つのファクターが非常に複雑な形で入りまじっているのがソ連外交の基本にあるんじゃないかと思います。  それから、いまのSS20やああいう新兵器を極東に持ってきているのはどういう理由かということでございますが、これは私の推測でありますけれども、全般に、ヨーロッパの方にもSS20を配置しているわけでありますが、やっぱり核戦略の対米優位というものを確保しようとしているのではないかと推定しております。それで、それによっていま現在のアメリカの核戦略というのはMADといって相互確実破壊戦略で、お互いに破壊し合うから余りたくさんの核兵器を持ったって意味がないじゃないかという議論でありますけれども、MAD戦略を突きつぶしてしまう意図があるのかもしれないと思っております。  それから、そういう意味では力関係ソ連側に有利に作用していくということを計算しているんだろうと思います。その力関係が有利に作用した中でどういうことを考えるかと言いますと、いまフィンランド化という言葉が出まして、それでもいいかと思うんでありますけれども、私流の言葉の使い方をさせていただきますれば、ソ連が望ましいと思う国際秩序をつくっていくということであろうかと思うんであります。それがどういう秩序かはまだ私にはよくわかりませんけれども。  以上でございます。
  88. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 私は二つの問題を質問さしていただこうと思います。  最初は白川参考人にお尋ねいたします。  先ほど、防衛力の質を高めるためには訓練を精到にしなければならない、装備品も近代化されたものにしなければならない、同時に国家的な規範になる施策をしっかりと整備しなければならない、こういうお話がございました。まさにそのとおりでありますが、同時に人の問題、単に訓練を精到にする、本当に使命感に徹した自衛官にする、さらに誇り高い自衛官にする、それで初めていざというときに近代的な装備を使ってその仕事を達成することができると私は思うわけですが、人という問題について、特に自衛隊の現状、自衛官の社会的地位、こういう面から見て、白川参考人、かくあらねばならないというお考えがあるだろうと思うわけです。お聞かせ願いたいと思います。
  89. 白川元春

    参考人(白川元春君) 自衛隊員が、特に自衛官が自分の職責に誇りを持ってこれに専念できるということが一番必要なのでありますが、そういう点で現在はどうかということになりますと、残念ながら全員がそういうふうになっているとは思えません。それは私は二つの原因があると思います。  それは、一つはこの防衛というものに対する国としての取り組み方、これが非常に敏感に自衛官の心に影響するわけであります。特に国会におきますいろいろのやりとり、そういうものがテレビや新聞ですぐ出ます。そういうふうになってきますと、これが国の姿勢なのかということを非常に敏感に反映するわけであります。ですから、国の防衛というものに対する国の取り組み方、これをひとつしっかりしてもらいたいということが一つ。  それからもう一つは、自衛官に対する処遇の問題でございます。私がまだ若いときに初めてアメリカに行って、家へ帰ってからいろいろアメリカへ行った話をしたのでありますが、そうしたら娘が、ああアメリカという国はずいぶん軍人を尊敬しているんだねと私に言いました。私は、日本を除いて各国は全部そうなっているんだと、こういうふうに答えたことを覚えております。最近の国際情勢を反映して逐次そういう方面にも御配慮がいっているとは思いますけれども、ここではやはり国を守るという特別な任務に服している自衛官、そういうものに対する国としての処遇の問題、これをひとつぜひお願いをしたいと思います。  以上であります。
  90. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 それじゃ、大変失礼でございますが、遠藤参考人にお尋ねしたいと思います。  実は私は陸士の五十期でございます。大変な後輩でございます。いろいろ実は教えていただきたいのですけれども、時間がございません。一つだけ御所見を承りたいと思いますのは、最近非武装中立論を唱える方、 いろんな理由を言っておられます。いろんな理由があるからこそ言われるわけでありますが、最近ちょっと私が気がつきました中で、日本は四方環海の国である、陸続きの国とは違うのだと、だから日本があえて自分から紛争の種をつくらなければ侵略のおそれなんかはないんだと、こういう論をちょっと見かけたわけであります。私自身は、確かに軍事技術から見ますと、もちろん陸続きよりも四方海で取り巻かれておる日本の方がより安全であることは言うまでもないと思いますけれども、それはやはり抵抗するという前提があって、来方がなかなかむずかしいから海にめぐらされている方が安全なんだということだろうと思うわけです。  そこで、もしも無防備だったならばどこへでも来れるわけですね、無防備であれば。四方海であろうが海でなかろうが。陸続きであるならばおのずから来方は限定されますが、海を経て来るのであれば心臓部にでもどこへでも来れる。かえって侵略は容易になるので、問題は相手方の意思の問題であって、軍事技術的に見ればまさに私の考えの方が正しいのじゃないかと思うのですが、閣下の四十年間の軍人としての豊富な経験から、その点を御教授願いたいと、こう思うわけです。
  91. 遠藤三郎

    参考人(遠藤三郎君) 弓や鉄砲で戦しているときは周りが海であったというのは確かにこれはりっぱな国防力だったんですよ。しかし、ミサイル兵器ができてしまってから海はもう問題じゃないのですな。  それからもう一つぜひ御考慮願いたいことは、ソ連脅威とか何とか、それからアフガニスタンの問題とか、あっちこっちにちゃんちゃんばらばら物騒なことが起こっているのが現実だと言われる方がたくさんあります。それも現実でしょう、形にあらわれたところ。しかし、もっと大事な現実の変化は私は次のように見ております。  それは、支配者の言うことに民衆は盲従しない。もうどこの国でもあらわれていますよ、ソ連でも中国でも。毛沢東なんかこのごろさんざんやられておるのですね。支配者の言うことに民衆は決して盲従しない。つまり言いかえれば民衆は人権に目覚めてきたというのじゃないでしょうかな。  それからもう一つ。どんな小さい国であっても大国の支配に甘んじない、この大きな形而上の変化、これが現実だと思うのですよ。その点をどうぞ見失わぬようにしていただきたいと思います。
  92. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最初に白川参考人にお伺いいたしますが、日本に対する侵略の危機ということをしきりに言われました。それは具体的にはどういうことかということなんですが、先ほど北方四島に一個師団の兵力が配備をされた、したがってこれが脅威である、北海道の根室ではこわくてしょうがないから陸上自衛隊を一個連隊ほど誘致したいというお話があったということでございますが、これは私どもが当委員会で北方四島の視察に参りましたときも言われました。言われましたが、その受け取り方は白川参考人の受け取り方と私とでは違うと思うのでありますが、あなたはもっともだというふうに聞かれたかもしれませんが、私はばかばかしい話だと思ったんです。われわれが北方四島をヘリコプターで視察をし、あるいは巡視船で回りましたけれども、われわれから見える範囲内における歯舞島には人っ子一人見当たらないわけです。一個師団だなんといったってヘリコプターに乗ったって船に乗ったって見えっこないんです。だから、本当にあそこに一個師団がいるんだといったようなことを確認のしようがない。これは総理大臣が見に行ったって防衛庁長官どなたが行ったって見えるわけのものじゃないと思うんです。  そこで、この防衛白書を見ますと、北方領土におけるソ連軍の配備というのは、国境警備隊が三千人程度だと、さらに色丹島においても二千名近く収容可能の天幕が設置された、こんな言い方。それから貨物船「リヤザン」号が百三十ミリの加農砲を積んで津軽海峡を通過した。こんな写真があるんですよ。そういうことでもって北方領土に一個師団配備されているんじゃないか、防衛白書には一個師団と書いてありませんけれども、先般の防衛庁長官がそういう答弁をしました。  そこで、あそこに一個師団仮に配備されたとしても、それが根室にとっての脅威になるという根拠は何かということなんです。具体的に日本に対する侵略の危機がそういうことによってあるんだ、北方四島にあるソビエト軍というのは北海道へ上陸をする意図を持ってあそこに来ているんだというふうにお認めになっておられるのかどうか、日本に対する侵略の脅威を具体的に一体どういうことで判断をされるのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  93. 白川元春

    参考人(白川元春君) 北方領土の兵力でございますが、これも私は新聞等で拝見した限りでありますので、先ほど私一個師団弱という表現を使いましたけれども、そのぐらいのものがおるという情報をもとにして私は言っております。あそこにおります一個師団弱といわれているものが日本の根室あるいはその周辺に侵攻するのかどうかということにつきましては、私はいまは侵攻する意思はソ連は持ってないと思います。それよりもやはりああいうところにおるということに意味があるのでございまして、これが精神的な不安あるいは圧迫、そういうものを日本の国民に与える、こういうことでございますから、いまあそこにおるのがすぐ侵略してくるというふうには私は考えておりません。また、情勢が変わって、あそこの部隊を北海道の東の方に侵攻させようとしましても、侵攻するときにはそれなりのまた別の装備を持ってこなければできないわけでありまして、いまはそういう装備は持ってないように私は承知しておりますから、あそこにおるということが向こうにとっては意味がある、こういうふうに考えております。
  94. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 遠藤参考人にお伺いいたします。  いま日本防衛庁がしきりに防衛の必要性を説いております根拠になりますのは、具体的に言うと北の脅威なんです。北方の脅威ということがその筋書きになっております。いま申し上げたような北方領土におけるソビエト軍の増強ということでも確たる根拠はないわけです。見てきたわけじゃないわけです。それから一個師団と言おうと二個師団と言おうと、防衛庁が言わなきゃ日本の国民は知りはしないんです。そんなことは。だから、防衛庁がどういう意図でこういう白書を発表されたかわかりませんが、講釈師見てきたようなうそをつきという言葉がありますが、防衛庁見てきたようなほらを吹き、こういうことをされても国民はわからないわけです。本当のことは。  そこで、端的に軍事専門家としての遠藤参考人にお伺いいたしますけれども、いましきりに宣伝をされているような北の脅威ということが実際問題としてあり得るのかどうか。  それから、防衛庁に調子を合わせるようにマスコミがいろいろとソビエトの脅威ということを書いておるのがあります。たとえばここに持ってまいりましたある週刊誌でありますけれども自衛隊ソ連軍が北海道で決戦をする、こういうシナリオ、北海道の地図が出ておりまして、これは白川参考人がさきにお述べになりました話と筋書きとそっくりなんです。なぜかというと、この地図を見ますと、ソビエト軍が稚内とそれから根室と両方から上陸をしたような想定の図が書いてあります。これはもちろ一つの話でありますけれども、これは地図が具体的に書いてあって、日本自衛隊の第五師団がこっちへ行くとか第何師団がこっちに行くとかそういうことが書いてある。そして、アメリカ軍が助けに来るのをここで持ちこたえるような仕組みが出てきている。まあ恐らく次号まで結論が出てみないとわかりませんが、次号ではアメリカ軍が増援に来て逆転をするといったような筋書きになっているんじゃないかと思うんです。つまり、こういうふうなPRがしきりに行われております。  そこで、一体日ソが戦う場合に北海道がなぜ戦場にならなければならないのか、こういう疑問が私にはあるわけです。みんな北海道の危機ということ、北の危機ということを強調しております。そして、確かに樺太も千島も近い。しかし、戦争というのは近くまで参りましたからついでに寄らしていただきますと、こういうものじゃないと思うんですね。北海道はなるほど人口が少なくて土地が広いから演習には確かに持ってこいの場所です。だからあそこで戦争をやるにはちょうどいいじゃないかというんであそこを戦場にするというふうには必ずしも決まらないわけです。だから、もし日ソが戦う場合に私は北海道に一番最初上がってくるといったようなことは軍事専門家から見れば果たしてどうかなと、こういう気がするんですよ。これは素人なら別ですよ。素人をだますには近所にソビエト軍がいるから上がってくるぞと、こういう言い方はできます。しかし、玄人の軍事専門家から見れば果たしてこのような想定が妥当だと思われるのかどうか、その点をまずお伺いしたいと思うんです。
  95. 遠藤三郎

    参考人(遠藤三郎君) お答えいたします。  このごろ国民の知的水準が大分上がりましたから、どこかに緊張があると言いませんと高い税金を取られて軍備をつくるなんてそんなばかなことに同意しませんよ。だから緊張があるあると、こういうんで、あの防衛白書を見ますと、どうもくだらない緊張論を多く書き並べておるようであります。  ソビエトは軍事的に見た際に一番大きい根拠地はウラジオストクなんです。ウラジオストクから太平洋に出るには三つの海峡ありますな。あの海峡を確保せにゃならぬということは考えておるでしょう。そしてまた、侵略の意思があるなら、あんな北海道の——北海道の悪口を言っちゃ悪いですけれども、大したことのないところをとるよりは、軍事的に日本をやっつけようと思えば、政治の中心あるいは経済の中心をやっつけますよ。あんな北海道でいたずらやって世界的に悪口言われるようなばかはソビエトにはいないと思います。しかし、緊張論を言いませんとどうしてもいまの国民は軍備増強に同意しませんよ。  もうずっと前に、アイゼンハワー大統領が二期務めましてやめるとき、産軍複合体は国を誤ると述懐しましたですな。私も大東亜戦争の中ごろから、航空兵器総局長官と言えばこれはなかなか大きな仕事でございまして、日本国内の軍需産業家で関係のない会社なんか一つもなかったんですよ。軍需産業家の気持ち、中にはりっぱな人もありますけれども、あんな負けそうな戦をやっておっても、やっぱりもうけようという気持ちのある人が非常に多いんですよ。だから、軍備がなくなった日には、またどこかにきな臭い紛争でもなけりゃ、いまの進歩した国民は軍事力増強になんか決して同意しません。だから、いまの軍人それから産業家、おまけに政治家の皆様に失礼ですけれども、政治家の御連中がうまく世論を操縦しているんじゃないですか。政治家が、みんなおりっぱな方ですからそんなばかなことはやられぬと思いますけれども新聞等を見ますと、やっぱり選挙の際ずいぶんたくさん献金をもらわぬと当選しそうもないと心配しておられる。その献金を一番たくさんくれるのは何か——軍需産業家なんです。三菱なんかことに一番多いんでしょう。その軍需産業家がどうしても軍備を持ってもらわにゃならぬ。だからアイゼンハワーは産軍複合体と言いましたけれども、いまで申しますれば産軍政、官界もこのころは少し入りましたな——の複合体が国を誤るんじゃないかと思っております。  大変乱暴なことを申しましたけれども脅威論はデタント時代、戦後デタント時代ありましたな、そのときに何をしたかと言うのですよ。空飛ぶ円盤なんです。地球外の、火星から地球を攻撃するかもしらぬなんて、こんなことを言うて本気になった人がたくさんおるんですよ。だから地球人はやはり軍備を持たにゃならぬ——途方もないことを言うておるのですけれども、このごろもまた空飛ぶ円盤が見つかったようですな。あんなことを言うことに惑わされてはいけないと思います。やはり冷静に良識を持って判断せにゃならぬと思います。  それから、先ほど白川参考人答弁されましたが、いまの制服自衛官の能力ですな、私どもの時代のように士官学校や陸軍大学で教育を受けたときと防衛大学で教育を受けた人とは違うだろうと思います。もっとりっぱになったと思いますけれども、昔は何といいましても、天皇みずから軍人でしょう。皇族も特別に体に故障がない者はみんな軍人になっておったのです。だから軍人志願者が非常に多くて、優秀な者が軍人になりました。これはうぬぼれのようですけれども、私そう思います。  しかし、朝から晩まで人殺しをけいこするような者はいつしか頭が狂っているんです。その点、私は非常に制服軍人に恐れをなしております。さきも言うたように、防衛大学の教育は少し変わりましたから、われわれと同じとは申しませんけれども、人殺し商売をやっている者にまともな考えがあろうはずがありません。非常に危険だと思うんです。それから、世間では月給どろぼうという悪口も言いましたですな、制服自衛官に。そんなことなかろうと思いますけれどもシビリアンコントロールは確かに大事ですけれども、果たして彼らに実力を持たした際にコントロールができるかどうか、どうも楠正成のような忠誠心があるとは私は言い得ない。のみならず、このごろの戦は、ミサイルでやられるなりあるいは飛行機でやられるなりしますと、もう大事なところを、中心点をやりますから、なかなかシビリアンコントロールのやる機会が少なくなったと思うんです。間に合わなくなったと思うんです。ですから、やっぱり日本が軍備、国防という観念をなくさぬ限りは、これは非常に危険だと思っております。大変乱暴なことを言いました。
  96. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ、今度は白川参考人にもう一度お伺いいたしますけれども、あなたはやはりユニホーム、専門家の立場をとってこられました。そこで、専門家の立場からして、日ソが戦うと、こういうことは想定したくないことだけれども、しかし現実の問題として、まあ、防衛庁長官は日本に仮想敵国はないんだと言いましたけれども、防衛白書も、その内容は明らかにソビエトを脅威とみなしているわけです。脅威とみなしている以上は、これは仮想敵国とみなしているというふうに判断をするのが常識的だろうと思うんでありますが、日ソが戦う場合に、やはりソビエトは北海道を優先的にねらって他のところをねらわないという判断が正しいのかどうか。戦術の原則から言うと相手の急所をねらうのが一番原則じゃないかと思う。一番相手にとって痛みの少ないところを優先的にねらうということは、これはあり得ないんじゃないかというふうに考える。したがって、兵法の原則として北海道をねらうという想定が正しいのか正しくないのか、その点はどのようにお考えになるのか、参考までにお伺いしたいと思います。
  97. 白川元春

    参考人(白川元春君) お答えします。  万一、日ソが戦う場合ということでの御質問でございますが、そのときにこちらから仕掛けることはないんでございまして、問題は、そのときに日本を攻撃するソ連側の戦争目的が問題であろうと思います。それともう一つは、米ソがどうなっているのかというのがもう一つ前提条件にならなければならないと思います。  そういう前提はございますけれどもソ連日本を非常に短い間に壊滅してしまおうというのか、あるいは日本周辺におる米軍を主に対象にしたいんだけれども、そのためには日本の防衛力は邪魔だからこれをつぶそうとするのか、いろいろあろうかと思います。一番手っ取り早いのは、遠藤参考人も言われたように、ミサイルを使って日本の心臓部を直接に攻撃するというのが一番手っ取り早いことかと思います。ただ、そのときにソ連考えております戦争目的に合致しているかどうかということがございますので、必ずそのようになるとも限りません。それから、何も日本の本土自体を攻撃しなくても、日本に対する海上輸送路をやっつけてしまえば日本が千上がってしまうのではないかと、そのような行動をとることもあろうかと思います。これも日本以外の国との関係で、ソ連が選ぶべき問題だろうと思います。  それから、先ほどから北海道に手をかけるのかどうかという御質問に関連しまして、もしソ連日本の一部かどこかを占領したい、そのために上着陸作戦をしたいというような方針をとったときに、どこに一番上着陸がしやすいかと、こういうふうになってきますと、やはり距離のことが非常に問題になりますので、いきなり本州の中央部に来るよりも、一番近い北海道に手をかけてきて、そこで次の準備をする、こういうことが白紙的には考えられるのではないかと、このように思います。  一番最初申しましたように、ソ連日本に対する侵攻を考えるときには、アメリカソ連との関係がどうなっているのか、そういうことによって非常に違ってくると思いますので、どれというふうに決めつけるわけにはいかないと思います。  以上でございます。
  98. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 先般の当委員会でもって、奥野法務大臣が私の質問に対していろいろとお答えになったんでありますが、憲法改正のポイントは、これは法務大臣見解ということでなくて、断って発言されましたけれども、第九条にあると、こういう意味のことを言われました。最近はまた第九条からさらに飛躍をされまして、またいろいろと多くの話題を提供されておるようでありますけれども、要するに、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」あるいはまた「交戦権は、これを認めない。」というのでは、これはやりにくくてしようがないということが前提にあるようだったと思います。  それから、明治憲法の欠陥は統帥権の独立にあったと、こういうことを言われました。統帥権の独立ということがあったために、軍部がいろいろと統帥権を後ろ盾にして勝手なことをやったんだと、こういう意味の言葉のように聞き取れたわけであります。しかし、シビリアンコントロールが今日は確立をされているから、仮に軍隊を幾ら持ったとしても、かつての明治憲法のように軍が勝手なことをする気遣いはないという意味の御答弁があったように私は聞いております。これは私自身が質問したことでありますから。  そこで、仮に憲法を改正して軍隊が公のものとなろうとなるまいと、あるいはその軍がどれだけの力を持とうと、シビリアンコントロールさえ確立されておれば軍が独走する心配はないというふうにお考えになるのかどうか。この点は過去においては、軍人は政治にかかわらずというふうに軍人勅諭に明記してあったにもかかわらず、満州事変あるいはシナ事変、太平洋戦争、いずれも軍がリードして計画をして実行したというふうに歴史的に私どもは聞いておりますし承知をしておりますが、そのような見方は間違っておったかどうか、間違いないのかどうか、その点もあわせてお伺いをいたしたいと思います。遠藤参考人
  99. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ちょっと御注意しておきますが、質問するとき、最初にお聞きする参考人をおっしゃってください。
  100. 遠藤三郎

    参考人(遠藤三郎君) お答えいたします。  確かに統帥権の独立というのは災いをなしました。天皇の命令でなければ聞かない、政治家はつべこべ言うなと言うてわがままをやったことは事実であります。したがって、こういうことを許しちゃいけないのでありまして、私はシビリアンコントロールに対しては非常に期待しておりますが、遺憾ながら、戦争任務を与えているんですから、自衛隊に。第三条で直接侵略に対する防衛任務、これは戦争任務ですよ。それを与えておって、戦争の準備をやったり戦争のけいこをやるのをとめるというのが、それがもうすでに間違いであります。  ことに、御承知のようにあの三矢研究とか三矢計画ですか、あのとき佐藤総理でしたか、びっくりして、怒っちゃって、処罰しにやならぬと言っているでしょう。しかし、そういう任務を持っておったらそういう計画をするのがあたりまえなんですよ。ああいう計画をやらしていけないならば、その任務を消さにゃいかぬ。任務を与えて手を縛っておるのは誤りです。罪悪です。それから、そういう任務を持っておればけいこしにゃならぬですから、リムパック演習だって何だって自衛官としてはやりたいのはあたりまえ、やらないのは怠慢ですよ。ああいうことをやらて悪いならば、その任務を取り消すのが先着です。任務を与えておって手を縛る、足を縛るなんということはとんでもないことです。  だから、その点におきましては、むしろ私は制服自衛隊の方に同情してますよ。気の毒だなと、できもしない任務をもらって、はいはいと言って言うこと聞いているのはおかしいじゃないかと、もう少ししっかりしてほしいと自衛官の方に言いたいです。できない任務を与えておいて手を縛るのは何だ、こう言うべきだと思います。それで、政治家の御連中は、できない任務を与えるようなものは罪悪であるということを考えていただきたいし、また文民統制は絶対に必要でありますけれども、これは戦争は文民統制はとうていこれは抜け道があってできないものですよ。シナのことわざに、良鉄はくぎにならずですか、良民は兵にならず。これはいいことを言うていると思います。本当にりっぱな人ならば人殺し商売の軍人にならないと思います。  その点、宇都宮さんなんかは、あれは幼年学校で退校になったと私言ったら、退校じゃなくて自分でやめたそうですが、良民だから。あの人のお父さんも陸軍大将、そういう家庭の者は軍人になるのは日本ではあたりまえだったけれども、あの人は軍人に愛想尽かして幼年学校のときやめているんです。偉い人ですよ。いまの自衛官も本当に良心があったならば、戦争はできません、憲法を直さぬ限りは、憲法に違反するような行動はできませんと言うのが本当で、それをぐずぐずやっているのは自衛官の連中もずるいやつだと思っているんです。  どうも非常に乱暴になって、先がないものですから私も少し気がもめてきましたです。このごろのようにどうも憲法を直せ、再軍備を進めろ、こう言われてくると、とてもこれはじっとしておれぬものですから、つい言葉が荒くなりましたが、しかしやっぱり法務大臣だけあって前の稻葉修氏か、あの人も字句の解釈はなかなか紙背に徹しておりますよ。芦田均さんが、あれは昭和四年以来私、懇意にしておったんですね。いまは亡くなっちゃったけれども、あの人がコンスタンチノープルの大使をやっておったとき私は遊びに行きまして、それから懇意になっているんです。あの人の大使館付武官が橋本金五郎というて、ケマルパシャの革命に非常にほれ込んじゃって、日本を革命しようというようなことばかり言うているものだから、芦田均さんももてあましておった。そこへ私が行って話すと、これは橋本と違う、遠藤の方が話がわかるということで、それからずっと懇意にしておったんです。あの人は、私が軍人なものだから、将来日本も再軍備するとき何かうまいこと道をあけておこうというわけで、憲法第九条の第二項に「前項の目的を達するため」というまくら言葉入れておきましたぞと私に言うておるんです。しかし、そんなまくら言葉を入れても、憲法の全文に通じておる平和主義に軍隊を持っていいなんということは少しも解釈できないんです。しかし、遺憾ながらあの第九条の前項には自衛ということは書いてないんですよ。だから、自衛のためならば軍備を持ってもいいじゃないかという疑問を持てるようにしちゃったんですよ。芦田さんも罪悪な人ですよ、あれは。だから、そういう議論はあるかもしらぬけれども、あの憲法の全文を通じて戦をしていいなんということがどこにありますか。ことに憲法議会で審議されました制憲議会のとき吉田総理が野坂参三氏の質問に答えて、古来自衛の名のもとに侵略戦争をやった例がたくさんあります。だからこの憲法は自衛のためにも軍備は持たないのですと明確に言うているのは、議事録にありますから見てください。  以上。
  101. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 遠藤参考人にお伺いいたします。  兵学的に見た日本のいわゆる防衛上の弱点ということを最初に挙げられました。確かにこの三つの兵学的に見た弱点というのは、日本日本列島を戦場にして戦うには全く不向きであるということを指摘をされておると思いますが、こういう条件の中にあってなお必要にして最小限度の自衛力、これはしばしば使われる言葉なんでありますが、他国に脅威を与えないが侮りは受けない、これは午前中の委員会でもその種の発言がございました、大臣から。最小限度の自衛力というものをどういうふうにして割り出せるのかということです。必要にして最小限度の自衛力というのの割り出し方というのはちょっとむずかしいと思うんでありますけれども、ただGNPの何%であれば最小限度であるというふうに言えるのか、GNPなどというものをはるかに飛び越して天文学的な数字を掲げなければこれは必要にして最小限度の自衛力とは言えないのであるか、どこかにこの目盛りは一体置けるのかどうか、その点についてお伺いいたしたいと思います。    〔委員長退席、理事堀江正夫君着席〕
  102. 遠藤三郎

    参考人(遠藤三郎君) お答えします。  予算は議会でお決めになるものですから、確かに予算面でGNPの一%以内ですか、お決めになったことは力強いです。しかし、それは余り意味がないものと思います。現に私ども現役時代、満州事変が起こる前に国防費は国家総予算の五〇%前後使っておったんです。戦が始まる前ですよ。戦争が始まってからなんか、ことに大東亜戦争が始まってから軍事費は臨時軍事費でどんどん取りましたものですからGNPを超過しているんです。だからいまは議会がお強いのですから予算面で制限をされるのが可能でありますけれども、しかしあれは意味がありませんよ。相手の軍隊がどんどん増強する際に予算面で抑えるということは、これは正道とは言い得ないと思います。だから軍備国防をやる以上は——いまのところは仕方がない、予算面で制限していただくことを私はお願いしますけれども、それは意味のないものと思っていただきたいと思います。  以上。
  103. 中野明

    ○中野明君 それでは白川参考人にお尋ねをいたします。  最初に、白川参考人には意見を述べていただいたんですが、参考人の意見をお聞きしますと、先ほど瀬谷委員とのお答えの中にも出てまいりましたが、ソ連日本に対する侵略の危機が非常に増大したということをお述べになって、そのすき間を埋めなければいかぬと、そういう面で北海道の正面装備というようなことをお述べになりましたが、そうなりますと、大体防衛白書の考えもそれに通じるものがあると思いますが、要するに、もしソ連日本に侵略をしてきたとすれば、その戦争目的ということを先ほどお述べになっていましたが、まああなたのお考えにもありますように、ソ連がもし日本に侵略をして来るとすれば、北海道だけを占領したいと、そういう意図が濃厚にあるというふうにお考えになっているような気がするんですが、その点もう一度お答えいただきたいのです。
  104. 白川元春

    参考人(白川元春君) お答えします。  ソ連日本に対する侵攻の危機が迫っているというふうにおとりのようでございますけれども、厳密に言いますと少し違うんでございます。それは一番最初に申しましたが、アメリカの対ソ軍事優位というものが崩れつつありますので、アメリカとそれの同盟国が防衛努力を出し合ってそのトータルがソ連の次のあふれ出ることを防止しようというのがいまの西側の考えだと思います。日本も西側の一員でありますのでその線に沿ってしかるべき貢献をしなければならない。日本の周辺を見ますと、先ほどは第七艦隊の例を申し上げましたけれども、そういうような面でアメリカの力というものがソ連に対して相対的に下がってきている。だから一時のようにアメリカがいままでカバーしていたものを、日本で機動部隊は持てませんから、そのほかのことでカバーをしなければならない、こういうことでございます。  それからもう一つ申し上げましたのは、一九八〇年代半ばごろの危機ということが盛んに言われております。これはソ連の対米軍事力優位のピークは大体そのころであろうという理由と、それからソ連自体が抱えております経済問題、その他の問題がそこら辺で従来のソ連軍事力維持できなくなるのではないか、それは一九八〇年代の半ばごろ、そういうところから、ソ連はその軍備をスローダウンさせるのか、いままでのような方向でいくのか、いままでの方向でいくということは私はもう経済的にちょっと成り立たないと思います。スローダウンさせるのか、あるいはこの際、冒険的行動に出るのか、そういうところから一九八〇年代の半ばごろの危機ということが言われているように思います。もしそういう危機——私は多分ないとは思いますけれども、そういうようなことが少しでも予想されるのならば、その時期というものを一つのターゲットにしてこちらの体制も整えていかなければならないのではないか、こういうようなことでございます。よろしゅうございましょうか。
  105. 中野明

    ○中野明君 先ほど、私の思い過ごしかもしれないんですが、侵略の危機を申されて、稚内とか根室の正面陸上自衛隊はすぐそばにおらぬとか、あるいはそれに手当てをせにゃならぬと、そういうような御説があったものですから、そうすると、いまの自衛隊は、ソ連がもし日本に攻めてきても北海道だけを目当てにしていると、そういうふうな前提のもとに物を考えておられるのかなというふうに思ったものですからお尋ねをしたわけです。  それで、白川参考人の御説には、「防衛計画の大綱」の見直しの時期はもう失したと、そういうようなお話もございました。私どもは、五十一年にできた防衛力の大綱、これは陸海空の自衛隊の整備すべき項目が一応努力目標として掲げられておる、このように理解しております。ところが、時期をもう失しているというような御意見なんですが、大綱の基準ではどこが不足していると、このように、元ユニホームのお方ですから率直な御意見を出していただけるのではないかと思うんですが、あなたの立場から見て何が不足していると、このようにお考えになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  106. 白川元春

    参考人(白川元春君) 二つあろうかと思います。  一つは、「防衛計画の大綱」、あれは大体五十一年から十年間を考えておりました。それをもとにしまして五三中業というものが五十五年から五年間でございまして、これは防衛庁内々の計画ではございますけれども、その線に沿って予算要求をしているわけでございます。    〔理事堀江正夫君退席、委員長着席〕 ところが、先ほど私が言いましたように、一九八〇年代半ばごろの危機というものがもし確率は少なくてもあると判断するならば、そこを一つの目安にしなければならないであろう。そうしますと、防衛計画の大綱に含まれているものが、それにはもう時期的に間に合わないわけでございます。  一つ具体的な例を申し上げますと、私は航空出身でございますが、最近航空基地とかレーダーサイトの抗たん化ということがよく言われております。飛行場に飛行機をしまっておく、戦闘機をしまっておくシェルターをつくらなければならない。これは五三中業では大体四十以下の数になっていると思います。三十幾つになっていると思います。それで、五十五年には二つが認められております。五十六年には、その中業の線でございますから、たしか四個か何かが要求になっていると思います。そうすると、シェルターは航空自衛隊の全部の基地にあれば一番いいのですけれどもそれは望むべくもないといたしまして、大体北の方の半分ぐらいの基地にいまシェルターをつくりたい、そうなってきますと、これはやはり三けたの数になるわけであります。そういうものをここ数年間につくらなければならないのに、中業の線でいっておりますから毎年数個しかできない。その数個も、うんと下の方の数でございます。もうこれでは時期的に間に合わないということが一つ。  もう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、北海道に上陸してくるこないは別にいたしまして、日本が侵略を受けるときには非常に苛烈な航空攻撃を受けることはまず確実だと思います。そのときに、特に航空攻撃の密度の多いと思われる日本の北半分、ここの対空火器というのがいま持っております数からしますと非常に少ないと私は考えております。対空火器の能力というのは、第四次中東戦争でエジプトがソ連製のSA6、これの矢ぶすまを立ててそこにイスラエルの戦闘機が入れなかったというような教訓もございますので、こういうようなものの増強というものは必要であろう。そうすると、それは「防衛計画の大綱」にはないものでございます。そういう「防衛計画の大綱」にないもので装備しなければならないというもの、対空火器にいたしましてもあるいは陸上自衛隊が持った方がいいと思われる地対艦ミサイル、そういうような部隊はぜひ持ってもらいたいものだと、こういうふうに考えておるわけであります。  以上です。
  107. 中野明

    ○中野明君 白川参考人にお尋ねしますが、それでは、最近自衛隊海外派兵とか派遣ということについていろいろ議論になりまして政府見解が出されました。一つは、海外派兵憲法上許されないと。そしていま一つは、海外派遣は武力行使の目的を持たない部隊派遣は許されるという考え方、しかし法律自衛隊の任務権限として想定されていないものは許されないと。こういう政府見解が出たわけですが、武力を使わない自衛隊派遣という場合は、予想されるケースとしてはどういうことをお考えになっていますか。
  108. 白川元春

    参考人(白川元春君) これは、たとえば国連軍の国境監視隊、今度もイランイラクの戦争が終えんしますとそういうような処置をきっととられると思いますが、そういう国境監視隊的なものはそれに該当するのではないか、こういうふうに思います。  それから、紛争地の在留邦人を、定期航空はもう行けなくなったというようなところから連れて帰らなければならない、ベトナム戦争のときも末期そういうような状態がございまして日航が無理して行ったんでありますが、そういうときに日本航空なり全日空に行かすよりも、やはりある程度の危険がありますから自衛隊機によって救出をする、そういうようなケース考えられますが、そこら辺が戦闘目的を含まない派遣になるのではないかと思います。  もう一つホルムズ海峡の封鎖がもしあったときに、あすこに機雷を敷設される、されたと仮定いたしまして、そのときに日本の海上自衛隊の掃海能力というのは非常に優秀でございますので、そういうのが機雷の撤去ですから、これが戦闘任務になるのかどうなのかということはちょっと疑問ではありますけれども、そういうことも政府としては考えておかなければならないんではないかというふうに思います。
  109. 中野明

    ○中野明君 それで、専門的に、私、素人でわかりませんが、白川参考人にお尋ねをするんですが、武力行使と言われておりますが、武器を持って海外派遣されることが即武力行使になるのか、それとも武器を使用した時点で武力行使になるのか、その辺はどういう判断を持っておられるんですか。
  110. 白川元春

    参考人(白川元春君) それはどうも私の専門外でございまして、平素勉強しておりませんのでちょっとお答えいたしかねます。勘弁してください。
  111. 中野明

    ○中野明君 はい、結構です。  それじゃいま一点、白川参考人にお尋ねしますが、有事のときに、先ほどのお話では、平時の法令だけでは実施できないということはたくさんあるんだと、二、三例を挙げられたんですが、陣地の構築等に手続が決まってないとかいうようなことを挙げられましたが、ほかに思いつかれたことがありましたら参考にお聞かせいただきたい。
  112. 白川元春

    参考人(白川元春君) これはどういう法律か、私、よく知りませんけれども、たとえば火薬を運搬するときに、たとえば青函連絡船に載せるときにはいろいろ制限がございます。それから貨車に載せるときにも制限がございます。これは平時の状況で危害防止という点で律しておるわけでございまして、ここら辺は有事のときには当然変えなければならないものと思います。  それから、有事の場合は交通——陸上交通網、海上交通網、航空交通網、これはそのときの状態あるいは危険度に応じて国が統制しなければならないと思います。交通管制といいますか、統制といいますか、そういうものは当然別な法律で律しなければならないと思います。  それから、路上重車両、たとえば陸上自衛隊の戦車等が走りますときには、これはいまの規定では自治体の長がそれをコントロールするようになっておりますので、作戦上の要求で、あるところに行きたいと言っても、その村長さんが、それはだめだということになりますと、そこで一つトラブルが起きる、そのようなことが考えられております。  それから電波法関係で、有事のときにはやはり一般の電波の使用の統制も当然必要かと思います。  挙げれば切りがないんでございますけど、三つ、四つ申し上げました。
  113. 中野明

    ○中野明君 それじゃもう一つだけ、最後に白川参考人にお尋ねしますが、最初の御意見の中で、日本がもっと努力をしないと世界の平和に貢献できないという意味の御説がありましたが、日本平和憲法を持っているということで、政府も、けさほども外務大臣も、日本平和憲法というのが非常に国連でも評価されて、日本が戦争をしないということも大きく貢献しているということをたびたび述べているわけですが、あなたの御説では、日本が防衛力をもっと増強しないと世界の平和に貢献できない、こういうふうにとれるんですが、その辺ちょっともう少しあなたのお考えを述べていただきたい。
  114. 白川元春

    参考人(白川元春君) アメリカの力の相対的低下、これをカバーするのは西側同盟国の一つの責任だと思います。そういう点で日本も西側の一員でありますから、それと同じ考え方アメリカの相対的力の低下をカバーする、そしてソ連の新しい外部への進出を防ぐ、それがすなわち世界平和へ貢献する一つの道ではないか。特に、今後問題になる地域は多分中東の公算が非常に大きいと思います。そうしますと、中東というところはアメリカを初め西側陣営の軍事的な足がかりがございません。新たにそちらの方に軍隊を持っていかなければならないわけであります。そうしますと、日本周辺を含んで、アメリカの相当なものが向こうの方にいわゆるスイングされるでありましょう。そのときに、スイングされた後、日本周辺にやはり軍事力が存在しなければならない。そういう意味で日本の防衛力増強というのが要請されておりますし、またしなければならない、こういうふうに考えております。
  115. 中野明

    ○中野明君 以上です。
  116. 立木洋

    ○立木洋君 最初に白川参考人にお尋ねしますが、先ほど同僚議員のお尋ねに対して、自衛隊員が誇りを持って仕事ができるようにしたいということを強調されました。これはやはり自衛隊が違憲であるかどうかという問題と私は深くかかわっているだろうと思うんです。もちろん私の立場参考人立場とは違うでしょうけれども、それでいままでも裁判上再三問題になってきましたし、私もある程度法律的な解決はいろいろ学んだわけですが、ユニホームを着て仕事をなさってこられた参考人として、つまり、自衛隊というものは憲法で保持しないと言われておる戦力と違うのか同じものなのか、違うとしたらどこが違うのか、同じだとしたらどういう点で一緒だと言えるのか、その点について最初にお尋ねしたい。
  117. 白川元春

    参考人(白川元春君) この問題は自衛隊自体の問題というよりも私は政治の問題だと思います。ですから政治的な高度な判断で九条に言うところの戦力に該当するのかしないのか、こういうことを御検討いただくのが私は筋だと思います。われわれは、九条に示された、九条の条文があっても自衛のための自衛力というものは持てるという一つ政府統一見解でございますから、そのもとで仕事をしてきておりましたから、私としてはあれに抵触するものではないというふうに思っておりました。これはもっと高度の政治的なあれだと思います。
  118. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ次に遠藤参考人にお尋ねいたしますが、先ほど参考人のお話を聞いておりまして、戦前軍縮会議等々にもいろいろ参加されてきたという御経験がおありだというお話を聞いたんですが、御承知のように、戦後国連の経過の中でも、いろいろな国連内外で軍縮交渉がやられてまいりました。最近の軍縮国連総会等々でも重大な問題が議論されましたが、国連のワルトハイム事務総長の報告等によりましても、一九七六年の時点で、いわゆるミサイルから発射される核弾頭、これが広島で投下された爆弾の百三十万個分すでに存在するということも言われておりますし、また現実に毎年のように三百五十億ドルも軍事費に世界的には使用されている。これは大変な全世界の富に対するこういう非生産的な、人を殺すためのそういう軍備に費やされているということに対する重大な社会的経済的な影響が指摘されておりました。  私はこの軍縮の問題というのは非常に重視しているわけですが、この軍縮という問題について、いま参考人がどのようにお考えになっておられるのか。同時に、この軍縮という点に関して日本政府がどういう態度をとるべきだとお考えになっておられるか、その点をお尋ねいたします。
  119. 遠藤三郎

    参考人(遠藤三郎君) お答えいたします。  自衛隊が軍隊であるか軍隊でないかということは、私軍縮会議で外国の御連中やなんかともずいぶん話したんですが、軍隊という国際的の定義はないようです。しかし、通念として、国際的通念として任務によるんだと。任務によるんであって編成とか人員の数で軍隊とか軍隊でないなんというのは間違いである。その任務つまり国防の任務を持っておる国家の編成した武装団体は軍隊であるというのが通念のようになっておりますからお知らせいたします。  それから、先ほど白川参考人のお話でおもしろいことがありましたから、ついでに申させていただきます。つまりソ連がどんどん軍拡していくとそのうちにダウンするだろうという意味のことがありました。これはちょうどいまから二十数年前ですか、蒋介石と毛沢東との間で台湾海峡で戦をしそうな雲行きのあったときですね。武力戦争をやっちゃいかぬぞと、中国の古訓に、徳をもって勝つ者は勝ち、力をもって勝つ者は滅ぶという教えがあるじゃないか、あなた方が台湾海峡でばちばち始めたら蒋介石の後ろにはアメリカがついておるし、毛沢東の後ろにはソ連がついておる——いまのようにけんかしておりませんでしたから、一枚岩と言っておったんですから。どっちも核兵器まで持っているぞ、どこまでエスカレートするかわからぬから、武力の戦争はやめて徳の競争をやりなさいと私が言うたところが、直接話を聞きたいから来て話してくれという。それで私行って裸の強さを無性にほら吹いたんですが、そのときに、いままで中国に参観に来られる日本の方は大抵左翼の人だと。左翼の人はあばたもえくぼに見ていってくださるのであんまりありがたくない。右翼の人に見てもらえばあらを探していってくださるから、いろいろ教えてもらうことがあるから右翼の人に見てもらいたいんだと。ことに遠藤さんのような軍人に見てもらいたいという、よほど私を軍人のかちかちと思ったらしいです。軍人を連れて見に来てくれというんで、翌年、私優秀な軍人を連れて行ったことがあるんです。そのとき、渡辺渡というこれもう亡くなってしまいました私の後輩ですが、非常に優秀な軍人です。それが中国と——中華人民共和国ですね、武装競争をやれと、軍備競争をやれと、そうしたら向こうはまいってしまうと。だから日本は軍備をどんどん増強せいと、いまは自由主義、資本主義社会がソ連陣営と軍備競争をやったら、いまにソ連がダウンするだろうというのとちょうど同じことを言っておると思って、それから二十年もたったのに考えが同じだなと思って少しおかしくなりました。  競争してあるいはソ連がまいってくるでしょうが、しかし公正に見れば、やはり共産主義、社会主義の方が軍備競争に、軍備を増強するのにロスが少ないんじゃないか。やはり資本主義国家の方は、軍備競争すれば、いま金持ちだからずいぶん使えるでしょうけれども、やはり軍需産業家が中に立ってもうけますからロスが多いんで、この競争はむしろ資本主義諸国の方が分がないぞと言うたことがあるんですが、どうもソ連を武力競争でダウンさせるには、えらい金を資本主義国が国民から税金でとらなくちゃできない相談だから、決して賢明な策とは私思っておりません。  ついでながら申しますが、その軍備競争、どんどん武力の均衡をとるために競争していくだろうと思うんです。もう少しでも弱いとこれは危ないから。ところが、戦力の均衡なんてあるかないかですね。なるほど兵員とか兵器じゃそれはちゃんと均衡がとれているかどうか計算できますよ。しかし軍隊を構成する、ことにそれを指揮する首脳の能力をどうして計算するんですか。これは計算できないと思います。幾らコンピューターが盛んになっても。そのコンピューターさえこのごろ故障を起こして、アメリカがまさにソ連のミサイルが飛んできたというわけで反撃しようとした例が少なくも私の知っている限りでも三回ありました。新聞を見ますと百数十回もあったと言うんですね。そういう場合に、そういう状態になっているのに武力の均衡で平和を保つなんということは絶対にあり得ないということをここに断言いたします。  それからもう一つ、どうしても政治家の方々に聞いていただきたいことは、最近スクランブルをやるあの飛行機にミサイルを積ますことをお許しになりましたですね。それから自衛艦に魚雷を積むようにお決めになったとかというように私聞きましたんですが、これはとんでもないことですよ。もしも日本を攻撃する企図のある国があったとすれば迎え撃ちで使うんですよ。領空のすれすれのところへ来る、領海の近くまで来る。そしてここまでおいで、ここまでおいでと呼び水にして、そうしてどっちが先に撃ったかわからぬですが、それを守っていれば、相手国は日本の飛行機が先に撃った、日本の自衛艦が先に撃ったから応戦したんだと、これは昔から全部そういう口実で開戦しているんですね。アメリカさんもベトナムで北爆を始めるとき、夜、所属不明の魚雷艇か、それが攻撃したから反撃するんだと言うて北爆を始めたでしょう。もうどの戦でもそういう例がたくさんあるからどうぞ御用心ください。あのスクランブルの飛行機にミサイルを積んだりあるいは自衛艦に魚雷を積むなんということはとんでもないことです。  これは岸さんが総理のときですかな、アメリカさんが空の防衛を担当しておったやつを日本に譲ったんです。日本の航空自衛隊大分力がついたようだから日本自衛隊でやれと。そのとき岸総理が非常に喜んでおったのを、私直接注意してやったんです。とんでもないことだと、もうアメリカからとったら戦争を開始する呼び水にされるおそれがあるからやめろと言ったけれどもあれは聞かなかったんです。そういうようなわけですから、どうぞこれは、いまもうすぐ死にそうな老兵の遺言のつもりで聞いていただきたいと思います。終わり。
  120. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 参考人に申し上げます。  質問時間が非常に制限されておりますので、質問の中身に簡潔にお答えいただきたいと思います。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 次に、漆山参考人にお尋ねいたしますが、国際政治が御専門だとお聞きしたので、先ほどの参考人発言に関連してお尋ねしたいんですが、先ほどはソ連考えているといわれるつまり社会主義対資本主義という対立の視点から問題を論じられたと思うんですね。参考人もちろん御承知のように、一九六〇年代、七〇年代、非同盟諸国のいわゆるパワーというのが大変な状況になってきたと思うんです。とりわけ、あの一九六八年、核拡散防止条約が締結された状況のもとで、非同盟の国の中でも幾つかの国々が参加したと思うんですが、そして七〇年、それが発効し、五年間たった第一次再検討会議の席上で、つまり非同盟諸国の国々の中では、核保有しておる大国が計画的に核を削減していくべきだということが現実にやられるのかどうなのかという問題と、もう一つは、核を保育していない国々に対して核保有国は核を使うべきではないということを明確にすべきだという御議論があったことは御承知だろうと思うんです。それから五年たって、またことし再検討会議が、第二次の会議が開かれました。だけどその間の経過を見てみますと、第一次の再検討会議では非同盟諸国の多くの国々の中では大変大国のあり方に失望を感じたと。明くる年の非同盟諸国の外相会議の席上では、いわゆる大国に任しておったんでは本当の軍縮、世界の平和と安全を守っていくことにはならないのではないかと、この点でわれわれもあるべき態度をとるべきだということがアルジェリアの外相の発言等々相次いで行われた。それが非同盟諸国首脳会議に反映し、さらには国連軍縮総会にまでなってきたという経緯があって、ことしの再検討会議では事実上最終文書がまとまらないという事態にまでなったと思うんですね。  私はいまの世界の平和と安全を考える場合、こうした非同盟諸国のパワーという問題をどう考えるのか、ただ単なる資本主義対社会主義という観点ではなくして、私は国連の中で占めておる三分の二にもわたるこれらのあり方ということを当然念頭に置いてこれからの平和と安全の問題を考えるべきだというふうに思うわけですが、参考人が特に国際政治の専門だということを聞きましたので、その点御見解を賜わりたいと思います。
  122. 漆山成美

    参考人(漆山成美君) お答えいたします。  いまの御質問の中で、資本主義対社会主義という形で世界をとらえるのではなくて、非同盟というものの力を考えろと、こういう御指摘だと思いますが、私もその点は全く同感であります。  ただ、ソ連の側は、公になっている首脳の文書などを見ますと、社会主義対資本主義と世界をとらえていると。それで世界が多極化しているというのはうそだと、それは要するにデマゴーグが流している考え方であると、こういうことを言っているという意味でさっき冒頭申し上げたわけであります。  それから軍縮の問題でございますけれども、私もある段階にまいったら軍縮ということは考えらるべきだと思っております。ある段階と留保をつけましたのは、これは白川参考人も申されたことでありますけれども、やっぱりバランスが確保されてなければいけないというのが私の考え方でございます。それで八〇年代の半ばぐらいに仮にバランスが確保されましたようなときに、それは軍縮という問題がまじめな議論になるだろうと思います。  私は軍縮の問題を考えるときに幾つかのポイントがあると思いますが、第一番目には、たとえば日本というものが軍縮問題を取り上げる場合に、どの国を対象に軍縮をするかということをまず決めてかからなければいかぬわけであります。たとえばソ連なのか中国なのか北朝鮮なのか、まあ韓国と日本との間に軍縮するというのは、これは一方的な軍縮になりますから、どの国を相手にするかということであります。全部の国を相手にして軍縮をするというなら、それはそれも一つ考え方であろうと思うんであります。  それから第二番目には、軍縮というのは軍拡と同じことでございまして、やっぱり最終的にはバランスであります。これは指揮官の能力だとか、そういうような非常にむずかしい問題があるということは遠藤参考人から御指摘のとおりでありますけれども、しかし基本的には軍縮というものはバランスがとれてなければいけない。それは一方的に軍縮をやるわけにはいけないということであります。  それから三番目には、軍縮で非常に重要な問題はやっぱり査察であります。これはたとえばICBMを減らしたけれども爆撃機をたくさんつくっちゃったとか、そういう代替物をどんどんつくられては困りますし、あるいはいわゆる隠してしまっても困るわけであります。ただ、その査察の場合にどうやって、ことに閉鎖性の強い国に対して査察をするかという問題が最後まで残ろうかと思うわけであります。私はそういうことを、困難を踏まえてなおかつ軍縮をやれとおっしゃる御意見には、ある段階に来れば重要な意味を持つだろうと思っております。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がありませんので、最後にまた白川参考人にお尋ねしますが、いま軍縮に関しての私の見解も若干述べましたのでお聞き取りいただけたと思うんですが、いまやはりいろいろ国会内でも議論されておりますのは、つまり本当にどれだけの軍備を持ったら日本の国が守れるというふうな安全感を持つような考えになるのか、つまりいまの防衛庁あるいは自衛隊といいますか、ですから、結局は力で国を守ろうとするならば、力だけで、軍備だけで国を守ろうとするならば、相手が強くなればさらにその優位性を持たなければいつも安全感は持てない、常に不安の状態に置かれるというと、結局は軍拡、軍拡と行くのではないか。いまの財政危機という大変な状態がある中で、そういう軍備をどんどんふやしていく、そして結局は相手の増強に常に気をとられながら軍備をふやしていくというようなことになるならば、これは本当に国の将来ということを考えてどうなのかということもちまたで、いろいろ新聞紙上でも出ているわけですが、そこで国を守るために必要だと、先ほど言われたんでは、つまり防衛大綱を見直せと言われましたね。いままでの大綱のあり方というのはいわゆる最小限度の防衛のという、これを見直すということになると侵略にどのような時点でも対処できるような、相手の動きに対応したようなことになると、ならざるを得ないと思うんですが、その点のお考えをお聞きしておきたいと思うんです。
  124. 白川元春

    参考人(白川元春君) お答えします。  防衛庁がいままで、第一次から第四次までの防衛力整備計画の段階では、相手側の能力というものを一つの物差しにして物を考えてきておりました。ところが、いろいろな制約から言って、逆立ちしてもそれには及ばないという現実の姿であったわけであります。  それで、「防衛計画の大綱」のときには、もうそういうことをいつまでやっててもだめだと、そういうことで、戦というのはほとんどないだろうという一つの淡い希望的観測のもとに、いわゆる平和時の防衛力という考えが出てきたわけです。もっと違った表現で言いますと、脱脅威論という考え方です。それで、「防衛計画の大綱」は大体その延長上にあると思います。  それで、私はやはり自分の国の安全を守るためにどれだけのものを持たなければならないかという基礎は、やはり相手の能力を基準にすべきだと思います。ですから、特に最近のようにアメリカの相対的力が減ってきたときに、減ってきたら減ってきたなりに、それと日本の防衛力との総和が日本の周辺でソ連に対して抑止になる、これが基本的な考えかと思います。そうすると、どれだけの量が抑止になるんだということはいろいろ問題があるわけでありまして、やはりこれは全世界的な情勢の中で考えなければならないと思います。  それともう一つは、先ほど漆山参考人もおっしゃいましたけれども、自分の方はともかくしっかり守るよ、守る意思がある、また、それだけの能力もある程度持っている、しかし、こちらは出ていかないぞと、そういうような意思表明といいますか、対話、こういうものがやはり裏打ちされないとだめだと思いますね。そういう点で例のアフガニスタンの後、特に西ドイツ、フランスあたりが一応アメリカの行動に平仄を合わせながらソ連との対話を続行しておった、こういうような姿は私はぜひ必要なものだと、こういうふうに思っております。
  125. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 最初に白川参考人にお聞きをするんですが、デタントぼけとおっしゃられたんです。別に言葉じりをとらえる意味ではなくて、一つの情勢分析のポイントにしたいと思ってお聞きをするわけです。  防衛庁がデタントぼけをしているという御判断をなさったときに参考人はまだ議長をなさっておったのか、それともおやめになってから防衛庁の何を見たらそうじゃないかというように御判断をなさったのか、その辺の少し背景をちょっと詳しく聞かせてください。
  126. 白川元春

    参考人(白川元春君) お答えいたします。  私が退官いたしましたのは五十一年の三月でございます。それで、「防衛計画の大綱」ができたのはその年の秋だったと思います。記憶に間違いなければ。あるいはもうちょっと早かったかもしれませんが、秋だったと思います。秋でございましたけれども、その防衛計画大綱の一つのもとになる長官の指示が出ましたのが五十年の秋でございます。そのときに基盤的防衛力という思想が出たわけであります。そのときは五十一年の防衛白書に出ているよりももっと激しいデタントぼけの情勢分析でございました。これは私は直接確認したわけじゃありませんけれども、むしろ外の方から、防衛庁は情勢の見方が少し甘過ぎるんではないかというような批判もあったぐらいでございます。ほかの省庁から。そういうのが五十年の秋の話でございまして、それが若干修正されて「防衛計画の大綱」の情勢見積もりになったというふうに記憶しております。  それから、デタントぼけの一つの例、これは日本の場合じゃございませんけれども、私は五十年の五月にベルギーのNATO本部を訪問したことがございます。そのときに、NATO本部のルンス事務総長以下その軍事委員会の人たちと話をしたのでございますが、そのときにこういうような説明がありました。ヨーロッパはデタントブームということで各国とももうデタントなんだからもう戦はないんだと、こういうことで各国とも防衛努力をスローダウンをした、ところがソ連の方はそのデタントムードのときにも毎年確実に着実な軍備増強をした、それで気がついてみると、いまはどうにもならない差になってあらわれておる、これからNATOもこれを挽回するような努力をしなければならないんだと、こういうような説明を聞いてまいったのでございますが、なるほどデタントというのはなかなかむずかしいものだなというような印象を受けて私は帰ってまいったことがございますので、御参考にお答えいたします。
  127. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今度は漆山参考人にお聞きをいたします。  先ほどソ連一つの第二次大戦以降のパターンというものを研究をなされまして、膨張的になるとき、それから撤退の傾向が出てくるとき、それから軍事介入をしていくということを事例を挙げて御説明があったわけなんです。そういう分析に立ったときに、いまはどういう傾向にあるというように御判断なさいますか。
  128. 漆山成美

    参考人(漆山成美君) お答えいたします。  いまの段階は膨張の段階だと思います。  それで私、先ほど申し上げるのを忘れたわけでありますが、ソ連が対外膨張をするときと、それからアゼルバイジャンやオーストリアのように引っ込む場合と、それから東欧においては介入するときと介入しないときとがあるということを申し上げましたけれども、これを判断する、非常にむずかしゅうございまして、私も最終的な結論を得ておるわけでございませんで、いまの過程のお答えとしておきたいと思いますですが、どうもこういうものを通じて見られることは、ソ連はやっぱり計算をする、いろいろな結果に対する計算をして、入っても大丈夫だというような計算が立つ場合には入ってくるように思います。しかし非常に強い反撃がある——それが地元であったり、アメリカであったり、ポーランドのように住民運動であったりいろいろなことはありますけれども、そういう強い反撃力が予想されるときには入ってこない。私はポーランドとチェコスロバキアというものを比べてまいりますと、ある意味で深刻なのはよりポーランドの方が深刻だろうと思います、問題の性質は。しかしチェコには入ったけれどもポーランドに入れないというのは、ポーランドの住民の激しい反ソ感情といいますか、そういうものをやっぱり相当計算しているんじゃないかと思うわけであります。そういう意味で力関係の計算というものに対してはわれわれ以上に敏感な国家であるというふうに私は考えておるわけでございます。  以上でございます。
  129. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 漆山参考人にもう一つお聞きします。  国際的な観点に立ってきょうもお話があったんですから、そういう観点に立ちまして日本安全保障ということを考えたときに、中国ソ連との関係というものは大変大きな影響を持つと思うんです。この中ソ関係。それから先ほどお話はなかったのですけれども、そういう立場に立ちまして中国ソ連関係というものがこれからどういう方向に進展をしていくというふうに分析をなさっているか、お聞きをしたいんです。
  130. 漆山成美

    参考人(漆山成美君) お答えいたします。  これは神のみぞ知る段階の問題でございまして、お答えしようもないのでありますけれども、ただ私、再三強調してまいったことは、いわゆるアメリカにもありますし日本にもありますが、チャイナカード論というものを御存じだと思いますけれども、要するに、中国を軍事的に強化することによってソ連に対抗させて、その分だけソ連軍事力を極東の軍事力中国の方に吸収して日本の安全を図ろう、あるいは太平洋の安全を図ろうというような考え方があるわけでございます。私はそれはある程度認めますけれども、しかしどうも余り本気になって賛成する気がないのであります。  と申しますのは、なぜかと申しますと、いま神のみぞ知る段階の問題だと申し上げましたけれども中国の将来ということにつきましては、内政的な意味におきましても対外的な意味におきましても、非常に不確定要素が多いのではないかと思うのであります。それで毛沢東時代と毛沢東以降とを単純に比較するわけにまいりませんけれども、少なくとも毛沢東時代の対外政策を見ますと、しばしば大きな激変を遂げているわけであります。それが毛沢東時代の固有のものなのかあるいは中国にそういう問題があるのか、そこら辺は私いまだにはっきりわかりませんけれども、かなりまだ将来のことはよくわからないという感じがしております。それで私は別に日中関係を破壊せよとかそういうことは一切申し上げているわけではないのでありますが、チャイナカードを使うということはむしろやめた方がいいと、そういう考え方ですね。これは日本はやっぱりアメリカなんかにもそういうことはきちっと言っておいた方がいいんではないかという気がしております。
  131. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。
  132. 秦豊

    ○秦豊君 私の場合はほとんど白川参考人に集中して、もし幸い時間がございましたら漆山参考人に一問伺いたいことがあります。  白川さんは、たとえば昨年の六月八日に自民党の国防問題研究会の方々が防衛二法改正の提言をなすったということはお聞き及びでしょうか。
  133. 白川元春

    参考人(白川元春君) そういうことが行われたということは聞いておりますが、その中身までは承知しておりません。
  134. 秦豊

    ○秦豊君 それから、防衛庁が、これはまともに内閣委員会で聞いても絶対に答えませんけれども、たとえば中央機構の改革素案というものを両三年検討して、ある程度素案を形成したというふうなことは間接にお聞きでしょうか。
  135. 白川元春

    参考人(白川元春君) 聞いておりません。
  136. 秦豊

    ○秦豊君 白川さん、私もちろん野党なんですが、実は、私は、白川さんやユニホームの頂点におられた皆さんを講師としてどんどんわが特別委員会にお招きして、さまざまな議論をしてみたいという提唱をした一人なんですよ。なぜかと言いますと、いま国会の防衛論議というのは、一般的にはマル秘の壁。一般的には防衛庁のかわしのテクニック。本当はここまで考えていても、答弁はこの程度という欲求不満を絶えず体感している一人として、やはりユニホームの頂点におられた、たとえば白川さんなりどなたであり、こういう方々がきょうは率直におっしゃっていただいて、私大変私なりに参考になったという充足感が一種あるわけです。まだ十分じゃありませんけれども。  そこで、なぜそれを伺ったかと言いますと、いま防衛二法、いまわが内閣委員会にかかっているのとは違いますよ、あれは定員増が主体ですから。そうじゃなくて、あなたの表現によれば、一般行政官庁としてではなくて、あなたはおっしゃらなかったが、まさに軍隊らしくと、あるいは戦える組織とか、そういう観点に立った設置法と自衛隊法の改正が検討されていても、遠藤さんのお話じゃありませんが、不思議ではありますまい。だから、そういう観点で、私ずっと自分でこう調べていると、白川さんがるる述べられた方向は、たとえば自衛隊法で言えば七十条、それから九十三条、九十五条、統幕議長のあり方に関するところでは防衛庁設置法の二十条、堀江先生たちが、あるいは防衛庁の皆さんが作業をしていらっしゃる方向とまさに符節を一にすると思います。  そこで、確認のためにちょっと伺っておきたいんですが、もうユニホームを脱がれたんだから気楽におっしゃっていただきたいんですが、あなたの言われた意味合いの中には、たとえば統幕議長を認証官とするとか、それから統幕会議を統括をする。第三点としては、あなた自身が言われた三幕僚長と横並びだと、世間が誤解しているんであって横並びだと、ワン・オブ・ゼムだと、それを仮にあなたの私見の中では、中央機構を、設置法を改めて、作戦思想とか部隊運用について統幕の中で意見がまとまらなかった場合には統幕議長の判断と結論を上位に置くというふうな改正も含めてあるべきだとお考えですか。
  137. 白川元春

    参考人(白川元春君) そのとおりでございます。
  138. 秦豊

    ○秦豊君 ますます参考になります。  それからもう一つ確認をさしていただきたいんですけれども、統合部隊とおっしゃったんですよ。いまはもちろんありゃしませんが、統合部隊考えれば当然統合幕僚監部というのを平時から持っておって、図上作戦やいろんな訓練をして、リハーサルをして、それで有事統合部隊設置という段階になだらかに移行する、あるいは瞬時にして移行するというふうなことをお考えなんですか。それとも統合部隊は統合幕僚監部に対応する実施部隊としてやはり常時から置いといて有事に備えると、どっちでしょうか。
  139. 白川元春

    参考人(白川元春君) 私が統合の御質問のところで答えましたのは、自衛隊法に載っておるその統合部隊、これは日本のどこかの一部の方面に統合部隊をつくるという考えでございますけれども、そうではなくって、陸海空自衛隊全部が一つの統合部隊であるべきだという私の考えでございます。ですから、部隊運用に関します長官の命令というのは、統幕議長を通じて執行される。したがいまして、その統幕議長を補佐する者、いまは統幕の事務局ということでございますけれども、そういうことになるとすれば、これはその事務局ということではなくて、統合幕僚監部ということになる、そういうような感じに近い名前になるのではないかと、こういうふうに思います。  さらにつけ加えますと、もしそのようなものができましたときには、部隊運用と情報というのはうらはらでございますので、情報機関の集約したものはこれは統幕が持つべきではないかと、こういうふうに思います。
  140. 秦豊

    ○秦豊君 そうしますと、こういうことをお考えでしょうかね。憶測を交えるとまずいですから、ちょっとおっしゃってください。イエスとノーで結構ですから。  たとえばいまおっしゃったことは情報機構の一元化という概念だと思いますけれども、そうすると、いま統幕であるのはたしか第二幕僚室が情報のセンターになっていますね。内局は数がたくさんあるから、防衛局の調査一課、二課。これを内局と統幕一つにしたセンターという構想でしょうか。
  141. 白川元春

    参考人(白川元春君) お答えします。  この情報というのは、部隊運用に直接関係のある情報という意味でございます。私の申し上げましたのは。ですから、たとえば内局も、あれは調査一課と二課でございますか、それから航空幕僚監部でも調査一課、二課でございます。これの大体調査二課で取り扱っているようなものが作戦運用に直接関係のあるものになろうかと思いますので、そういうものを集約する必要があるのではないかと、こういうふうに思います。
  142. 秦豊

    ○秦豊君 もうちょっと踏み込んで、たとえば部隊運用というのは狭義のこういうフィールドですね、広げて、平時有事ともに、日本周辺の軍事情報を収集し分析し評価し、そしてもし設置法、隊法が改められれば、統幕議長は防衛庁長官に対する最高の助言者に仮になりますわね。近い未来になるかもしれません。その場合の迅速化を図る意味の情報の一元化は、元統幕議長としては望ましい方向でしょうか。
  143. 白川元春

    参考人(白川元春君) そのように考えます。
  144. 秦豊

    ○秦豊君 それから、ちょっといまこの防衛庁側の表現を借りますと全然干からびてくるんですけれども、あなたいま三菱にいらしていろいろ御関連がおありです。いまから申し上げることは三菱に直結しないかもしれませんけれども、たとえば短SAMとローランドの関係ですね、あなたの後輩がローランドの優秀性についてかなり肯定的であったのが、ある段階から国産化に変わる。御存じのとおりの経緯です。  あの問題でも、私は単に秘密漏洩の云々をまるで捜査当局のように調査隊が調べること、あすこに問題の本質があるんじゃないと思うんです。あれは本当に、たとえば日本に適合した防隊の一つの手段、ある部門の手段として軍事的経済的合理性が果たして貫かれたのか。あるいはそれを政治が、あるいは何かの外圧がゆがめたのか。そういう問題を突き詰めることも本質の一つだと思うんです。いま問題が矮小化されているんですね。だから、白川さんお立場もありましょうけれども、短SAMの問題については軍事的経済的合理性が貫徹されたとお考えですか。
  145. 白川元春

    参考人(白川元春君) お答えいたします。  今回の国産短SAMとローランドの比較でございますが、私は国産SAMがどういうような性能のものか全く知りません。それからローランドの方は、これは普通の巷間のたとえば「ミリタリー・バランス」あたりに出ている性能の範囲しかわかりませんので、秦先生の御質問に自分はこう思うというような答えは、私はいまの段階ではできません。できませんけれども、片っ方は赤外線ホーミングのミサイルでございまして、片っ方はレーダーホーミングのミサイルでございますから、ここにはおのずから長短があるわけでございます。理想的に言えば、私は両種類持った方がいいと思います。それは、たとえばファントムが赤外線ホーミングミサイルとレーダーホーミングミサイルとを両方同時に積んでおるのと同じで、そのときの状況によって使い分けをするということでございますから、航空自衛隊の場合、あれは飛行場を防護するための一つの兵器でございますけれども、理想から言えば両方持った方がいいだろうと。しかし、限られた数で両方持つとすれは、これは経済的にものすごくふぐあいな点が出てまいりますので、性能と経済性と、それからもう一つは、やはり陸となるべく同じ物を持っておくと互換性が出てきますから、そういうものの比較検討の結果だったと、私は思います。  以上でございます。
  146. 秦豊

    ○秦豊君 それから、さっき同僚議員質問に対して、日本の海上自衛隊の掃海能力はかなりなものだと言われましたね。私もそうではないかと思うんです。蓄積があるから。対潜能力もかなりなものではないかと、実は、ちょっとこれは甘いかもしれませんがね。それはP2Jによるソ連原子力潜水艦部隊の音紋の収集と解析を含めてかなりなものだろうと思うんですけれども、その場合、よく俗に三海峡、三海峡と言うでしょう。ところが、実際にはたとえばソビエトと最もシリアスな武力抗争をまず誘発するのは宗谷海峡。ソ連は、だから三海峡同時突破じゃなくて、有事を予測した場合にはそれぞれの射程点に、発射点に——さんざん訓練をした発射点に定位置を取りますから、三海峡を通るという事態は有事のかなり前に行われるはずです。だから、封鎖が有効であるということは、ウラジオに帰るソビエトのSSBN部隊の後方を断つとか、あるいはそこで撃沈効果をねらうとか、補給と修理、兵たんを阻害するとかという意味でしかないと思うんですよね。にもかかわらず、なおかつ三海峡封鎖がアメリカ日本に求めている大きなアイテムであることも承知しております。元統幕議長としては、海峡封鎖論の有効性、海上自衛隊の現在の能力を基準にして、どうお考えでしょうか。
  147. 白川元春

    参考人(白川元春君) 私は統幕議長になって陸海空の部隊運用で一番わかりにくかったのが海上自衛隊関係でございます。私は昔の陸軍でございますから、陸上自衛隊のことは、兵器は変わったとしても余り変わらないだろう。それで在任間海のことを主として勉強をしたんでありますが、現在海上自衛隊が具体的に三海峡封鎖についてどのぐらいの能力を持っているか、これは私は的確には把握しておりません。把握しておりませんけれども、不十分であるという把握はしております。その中で一番やはりしにくいのは宗谷海峡でございます。これは対岸は樺太でございますから、それから一番間隔も広うございますので、あそこが一番やりにくいというふうに思っております。それで、いま先生おっしゃいました、ソ連が何かを考えたときにはあらかじめあそこを通過して出ていくであろう、これはもう当然だと思います。しかしながら、船というのはやはり港に帰って修理をしたり補給をしたり、そういうローテーションがあるわけでございますので、あらかじめ出ると言ってもそこにはおのずから全部というわけにはいかないわけであります。それでその戦は非常に短い期間で勝負がついたというんならばともかくも、そうでなければ出たものはまた帰っていかなければならないわけであります。そういう点であらかじめ出れるものは出すであろうけれども、長い目で見た場合にやはり私は努力すべき作戦内容だと思います。
  148. 秦豊

    ○秦豊君 それに関連しまして、今度概算要求では二十四億だったか二十五億円か、ちょっと正確に覚えていませんが、あのC130H、ハーキュリーズですけれども、たしか六機が要求機数になっていまして、後年度負担がありますから、来年度は二十何億——四億だったと思いますか、防衛庁に幾ら聞きましても、いや輸送能力の向上なんですよ。それで、白川さん、空の御出身ですし、C1でも体験をお積みだし、C1の改造型もありますし、あれは明らかに迅速機雷敷設用という運用を当然頭に置いた幕の決定だと思うんですよ。防衛庁は絶対に認めない。しかし、白川さんからすれば当然あり得るんじゃないですか。
  149. 白川元春

    参考人(白川元春君) 軍事常識的に見れば当然考えてしかるべきだと思います。特にさっき申し上げました有事の場合の宗谷海峡に対する機雷敷設、これは非常にむずかしわけでございます。船で機雷を敷設すると言ってもここにはもう能力に限界がございます。そうすると飛行機からまくということが考えられるわけであります。ただ、このハーキュリーズは、これはターボプロップでありますけれども、レシプロの飛行機でございますから、スピードにはある程度制限がございます。そういう点からいって、あの地域で樺太からする向こうの航空の傘の中で、夜間といえどもどのぐらい効果があるのか、ここら辺は具体的にはじいてみなければならないのだと思います。
  150. 秦豊

    ○秦豊君 時間がもう切迫いたしましたので、同じ問題で漆山参考人にとも思ったんですが、これはかないそうにありませんから、白川さんに確認の意味で伺っておきたいんですが、あなたはきょうの陳述の中で二、三回、八〇年代後半の危機という言葉を使っていらっしゃるんですね。危機がクライシスの危機であれば一体どういう根拠——こんな膨大な質問をこんな短い時間じゃだめなんですけれども、それはいまある部門の戦略分野におけるある分野ではアメリカの優位は辛うじて温存されているが、核ミサイル分野を初めかなりソビエトが優位性を占めて、四軍あるいは三軍の平均にばらしたら、もはや米ソ間にバランスはない、アンバランスしかない、それがソ連の戦力がピークに達するのは八三年から四年である、ところが四年を過ぎて五年を突き破ればNATOと自由世界アメリカの主体的な能力を総合して、再びアメリカが優位性を回復するであろうという予測が一般的にありますわな。そうすると、アメリカが再び優位性を回復する前がむしろ最も深い危機である、こういう御認識ですか。
  151. 白川元春

    参考人(白川元春君) そのとおりでございます。一九八〇年代後半のと私は言った覚えはないんでございますが……
  152. 秦豊

    ○秦豊君 八〇年代半ばということですか。
  153. 白川元春

    参考人(白川元春君) 半ばごろという表現をとりました。これは米ソの軍事バランスでございますが、アメリカを初めとしまして、NATO全部の国の先ほどから出ております人員だとか装備だとか、そういうもののトータルと、それからソ連とワルシャワパックのそういうもののトータルと比較しますと、私はやはり西の方が多いと思います。多いと思いますけれども、これを地域的に見た場合に、西側の方が劣勢である。と申しますのは、やはり西側の横綱であるアメリカ軍の大半というのは本国におるわけでございますから、これがヨーロッパで何かがあったときに大西洋を渡っていかなければならないという問題がありますし、それから中東が一番今後危険な地域であろうというふうに言われておりますが、そこには西側の足がかりというのがもうほとんどないわけでございまして、ですからそこで何かがあったときには西側の方が大分不利な形になろうかと、こういうことで、トータルとしてはまだ私は西側の方がいいとは思っておりますけれども、ローカルな面を突き詰めていきますと、バランスは崩れているというふうに考えております。
  154. 秦豊

    ○秦豊君 同じ問題で実は漆山さんにと思いましたけれども、時間が過ぎておりますので遠慮した方がいいと思いますのでやめます。残念ですけれども
  155. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の皆様に一言お礼を申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日の調査は、この程度といたします。     —————————————
  156. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国の安全保障問題に関する調査のため、来る十一月十四日午後一時に参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散会