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1980-04-01 第91回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月一日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————    分科担当委員異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      下田 京子君     渡辺  武君  四月一日     辞任         補欠選任      松前 達郎君     丸谷 金保君      丸谷 金保君     大木 正吾君      浜本 万三君     吉田 正雄君      黒柳  明君     渋谷 邦彦君      藤井 恒男君     井上  計君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         栗原 俊夫君     副主査         成相 善十君     分科担当委員                 浅野  拡君                 金丸 三郎君                 町村 金五君                 安田 隆明君                 松前 達郎君                 丸谷 金保君                 吉田 正雄君                 渋谷 邦彦君                 渡辺  武君                 井上  計君    国務大臣        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  細田 吉藏君    政府委員        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        防衛庁参事官   佐々 淳行君        防衛庁参事官   多田 欣二君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁長官官房        長        塩田  章君        防衛庁長官官房        防衛審議官    友藤 一隆君        防衛庁防衛局長  原   徹君        防衛庁人事教育        局長       夏目 晴雄君        防衛庁衛生局長  野津  聖君        防衛庁経理局長  渡邊 伊助君        防衛庁装備局長  倉部 行雄君        防衛施設庁長官  玉木 清司君        防衛施設庁総務        部長       菊池  久君        防衛施設庁施設        部長       森山  武君        防衛施設庁労務        部長       伊藤 参午君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君    説明員        外務省北米局安        全保障課長    丹波  実君        自治省行政局行        政課長      中村 瑞夫君        会計検査院事務        総局第二局防衛        検査第一課長   行方 敬信君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十五年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十五年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十五年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  分科担当委員異動について御報告いたします。  昨日、穐山篤君、塩出啓典君及び下田京子君が分科担当委員辞任され、その補欠として浜本万三君、黒柳明君及び渡辺武君が分科担当委員に選任されました。  また、本日、浜本万三君、黒柳明君及び藤井恒男君が分科担当委員辞任され、その補欠として吉田正雄君、渋谷邦彦君及び井上計君が分科担当委員に選任されました。     —————————————
  3. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 昭和五十五年度予算中、防衛庁所管を議題といたします。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。吉田正雄君。
  4. 吉田正雄

    吉田正雄君 先般外務大臣訪米をされた際、ブラウンアメリカ国防長官から日本防衛努力について強い要請がなされたということが再三報道されておりますし、それに関しては、私も先般の予算委員会あるいは昨日の分科会において外務大臣にも見解を問いただしたところでありますけれども、しかし、外務大臣あるいは防衛当局説明の間に必ずしもしっくりしたといいますか、見解といいますか、十分意思統一が図られているようには見受けられないんです。  そこで、今回の外相訪米に対するアメリカ日本に対する防衛努力要請について、防衛庁としては、それは単に外交的な問題だというふうに片づけておいでになるのか、やはり防衛庁に対する側面からの強い要請だというふうに受けとめておいでになるのか、その見解と今後の対応についてお聞かせ願いたいと思います。
  5. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) アメリカの大来外務大臣に対しまするお話については、私は大来さんが帰りましてからかなり詳細に承って承知しております。主としてブラウン国防長官の話が私ども関連が深いわけでございますが、私の理解は、本年一月に長官日本に見えまして、私の前任者である久保田長官いろいろ話があったことの延長線上にあると考えております。やや具体的なものが追加されておりますけれども、大体同一線上、同じ話だと私ども理解しております。したがいまして、ただいまお話がありました外交上云々というふうにはもちろん解しておりません。私ども防衛を担当しております防衛庁に対しても、外務大臣を通じて、やはり日本国としてといいましょうか、私どもに対してもアメリカとしての強い要望があったというふうに理解をしておるわけでございます。  それから、意思が疎通していないかのような、御質問の中にもございましたが、新聞紙上等でもそういうことが言われておりまするけれども、私どもは実はさようには必ずしも考えておりません。大来外務大臣に対してアメリカ側からいろいろの御要請があったのは、外交当局でございますから当然でございまして、これに対して大来さんは、着実な防衛費の増加については努力をしたい、やりたいと、しかし、なかなか顕著なというか、大幅なというか、そういうものに対しましては大変困難であるというようなことを述べてきたと、こう外務大臣は申しております。この点につきましては、そこまでのところは私どもと別に変わっておらないわけでございまして、ただいままでのところでは、外務省との間に意見の食い違いがあるというふうには実は考えておらないのでございます。  したがいまして、私どもがこの要請についてどう考えておるかということでございますが、防衛庁立場といたしましては、現在の国際情勢その他にかんがみまして、防衛力増強についてはできるだけ考えなきゃならぬ、こう思っておりまして、ただ、それには防衛計画大綱がございまするので、この大綱というものの枠以上にはもちろん考えておりません。大綱に到達をできるだけ早くするということで、これはもう終始さように考えておるわけでございます。また、これを防衛庁で決めておりますいわゆる中期業務見積もりという別な見地から考えますと、もちろん防衛計画大綱の中でございますけれども中期業務見積もりにつきましては、これは防衛庁限りでいろいろつくっておるものでございますが、これをできるだけ早く、いま申し上げたよう計画のもちろん中でございますからこれの中で考えてまいると。具体的にそれではどうするかというようなことについては、今後なるべく早い時期に私ども計画を固めていかなければならない、そして所要のところといろいろ相談をしてまいらなければならないと、かように考えておる次第でございます。
  6. 吉田正雄

    吉田正雄君 できるだけ早くという言葉がありましたけれども報道によりますと、一年縮めて八三年度までにそれを完成してほしいというふうな要請があったというふうなことも言われておるわけですし、さらには八四年危機説なんというのも流されたりしているわけですけれども、このできるだけ早くという意味は、そういう、あれですか、きちっと年度的にも具体的にはあるわけですか。
  7. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 中期業務見積もりというのは、五十九年度目標にしていわゆる主要なる装備について五十四年度価格で二兆七、八千億というものをやろうというのが中業の見積もりなんでございます。これを五十八年度に一年繰り上げられないかという話があったようでございますが、これは私は直接聞いておるわけではございませんが、外務大臣が聞いてきたようでございます。で、そのことにつきましては、これを繰り上げるとどのような形になるかということにつきまして、実は私どもの方でまあいろいろ簡単な計算はすぐできまするけれども、具体的に一体どうするのか、どうしたら縮まるのかということにつきましてはもう少し勉強さしていただかなきゃなりませんが、いずれにしましてもこれからの問題でございまして、いま私どもの方でいろいろな試算といいましょうか、作業といいまするか、そういうことをやってみておるわけでございまして、これが可能かどうかというような点については、これからの問題であろうと考えておるのでございます。  防衛庁といたしましては、一応防衛力増強というものについては、かねがね申し上げておりますように、防衛計画大綱の線までできるだけ早く持っていきたいという線がございますので、私どもとしては、できることならばなるべく早くということについては異論があることではございません。むしろこの内容は非常に問題がございますが、そういうふうに考えておる次第でございます。
  8. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、これもいろいろ取りざたをされておって、国民が非常に心配しておると思うんですが、防衛論議の中で、常に自衛隊防衛範囲の問題が論議をされて、極東範囲がどうであるとかこうであるとかと論議がされてきておるわけですけれども、端的に言っていま国民が一番不安に思ったり心配をしているのは、中近東情勢関連をして、日本自衛隊防衛範囲というものがそこにまで拡大をされていくんじゃないかと、また、アメリカ側からそういう非常に強い要望があるんじゃないかというそういう心配なり不安というものを持っているわけですね。具体的にそういう要請があったのか、また、防衛庁としてはそういうことは全然考えておらないのか、将来もそこまでの防衛範囲拡大というのはあり得ないというふうに考えておいでになるのか、そこをまず明確にしていただきたいと思うんです。
  9. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) そのよう要望はございませんし、また、私は日米安保体制のもとでそういう要望が出てくるというふうに予想もいたしておりません。また、私どもが現在の憲法、現在の日米安保、現在の自衛隊法の中で中近東日本自衛隊が出ていくということについては考えておりません。
  10. 吉田正雄

    吉田正雄君 二十九日の土曜日の読売新聞報道によりますと、読売新聞の代表の訪中団中国軍首脳との会談の中で、中国軍首脳日本自衛隊防衛力をさらに強化をすべきではないかというそういう希望表明がなされた。とりわけ、空軍あるいは対潜能力強化の必要があるんではないかという具体的な指摘まで行われておるということですが、これは読売新聞社訪中団だから別段どうということはないということになるかもわかりませんけれども、しかし、私はやはり軍首脳新聞社を通じての日本に対する強い希望表明だろうと思うので、これについて自衛隊としてはどのように受けとめ、どのよう判断をされているのか。それは一切無視をされるということなのか、媒体があったとしてもそれなりに検討すべきことだというふうに考えておいでになるのかどうか、お聞かせ願いたいと思う。
  11. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 私も新聞は拝見いたしました。これは読売新聞社論説委員長か何か行かれまして、話があったようでございます。しかし、私もどうもこれ、もちろん新聞を拝見したというだけでございまして、公式な通知とか、何か私どもの方に聞かせるとか、そういうことは何もございません。そういう意味では、内容についても新聞報道以上に私も承知しておるわけではございません。  しかし、このあらわれておりますことは、中国中国としての情勢判断から、特に申し上げるまでもなく、中国ソ連に対する感情というようなもの、そういうものはかなり厳しいものがあるようでございますので、あるいはこういうことも言及されたのではなかろうかというふうに思うわけでございまして、私ども、このことがどうであるというコメントをすることは実はいかがかと思っております。ただ、私どもとしましては現在、これも予算委員会の本委員会で申し上げておりますように、極東ソ連軍の顕著な増強等によりまして、わが国に対する北からの潜在的な脅威というものが強まっておるということは、これはもう具体的な事実だというふうに考えておりまするので、中国の御意見がどうであるとかいうこととは別にいたしまして、私どもの独自な立場で、防衛力増強というものについては自主的な判断で、先ほど申し上げましたよう範囲において強化をしてまいるということについては考えておると、かようなことでございます。
  12. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、いまの大臣のお答えですと、直接中国軍首脳のそういう希望表明があったからどうということじゃないけれども現状認識等あるいは整備必要性というものについては大体同じだというふうに受けとめられるんですが、そういうことでよろしいわけですか。
  13. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) どうも誤解があってはいけませんので、中国首脳と私どもお会いしたこともありませんし、中国との関係においてどうこうというふうにとられますと、これ間違うと大変なことになりますので、そういう意味ではございません。中国の御意見はそういう御意見であったということで承知しておりますと、しかし、特に私ども中国がいいとか悪いとかどうこうということをコメントする限りでございませんというふうに申し上げたわけでございます。
  14. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、中期業務見積もりについて若干お尋ねをいたしたいと思うんですけれども、これは週刊誌とか雑誌等でちょっと見た程度で、いま具体的に正確な数字も覚えておりませんけれども、たとえば、いざ——これは仮想敵国がどこであるかわかりませんけれども、いざ戦争というふうなことになると、日本空軍というのはわずか開戦十分か十五分で壊滅をさせられるだろうとか、あるいは陸上自衛隊の組織的な抵抗というのは二、三日で、一週間もすれば壊滅をさせられるんじゃないかとか、海軍力についても同様だというふうな、きわめて日本防衛力については問題にならないというふうなことが一部の週刊誌雑誌報道されたことを私覚えておるんですけれども、そのことはとにかくとして、現在の戦力がどういうふうなものであるのかというのは皆さん一番御存じだと思うんですね。  そこで、防衛大綱に沿ったこの中期業務見積もりの中で一体重点がどこにあるのかということと、それから、大綱が定められておるので、かつての四次防までのような、一定期間設定をしてそこで整備をしていくという考え方でなくて、逐年その大綱目標に向かって整備をしていくんだと、こういうことになっているわけですね。そういたしますと私は、大綱が定められて、それが当面まあ変わらないということが前提になっているわけですね。そういたしますと、このGNP一%というのが常に予算との関係論議されますけれどもGNPというのは変動していくわけですね。ですから、防衛大綱目標というものが当面固定をされているとするならば、このGNP一%というものも大して根拠がないんじゃないかというふうに思うので、この見積もりと一%、あるいは大綱と一%の関連というものがどういうものであるのか、この点お聞かせを願いたいと思いますし、それから、いただいたこの見積もりの中の二ページのところで、中期業務見積もりは、「固定的な計画ではない。」と。したがって、「各年度予算により、当該年度防衛力整備具体的内容が決定するつど、見積り見直しを実施し所要の修正を行うほか、三年毎に新たな見積りを作成し直すなど、」と、こうなっているんですね。そうすると、この三年ごとというのは、これはいまのこれと、この中期業務見積もり、これは一応五十五年度から五十九年度までの五ヵ年間になっているわけですから、この三年ごとという意味はこれとどういう関係にあるのか、将来も三年ごと、ずうっとこういうことにやっていくということなのか、その点がちょっと不明ですから、その点お聞かせ願いたいと思うんです。
  15. 原徹

    政府委員原徹君) ただいまの、まず第一点は、中期業務見積もり重点は何かということでございますが、防衛計画大綱の中の水準に持っていきますのにつきましては、第一は装備近代化でございます。装備近代化で、自衛隊は新しい装備もあるのでございますけれども、非常に古い装備が多いということで、装備近代化重点を置いていろいろ数量等が書かれているわけでございます。航空機関係、そういったものに重点を置いてやるわけでございます。それから二番目は、正面兵力だけではなくていわゆる抗たん性と申しますかあるいは継戦能力、そういうものについて自衛隊は非常に弱点がある。たとえて申しますと、抗たん性について申しますと、飛行場に飛行機が裸で並んでいるということでございますと大変弱いわけでございます。やはり掩体をつくるというような、そういうことをしなければならぬというようなこと。それからいまの継戦能力と申しましたけれども、弾の保有が非常に少ないというようなこともございますので、そういう装備近代化、抗たん性継戦能力、そういうことを重点にやっていきたいということを考えております。  それから、二番目はGNP一%との絡みでございますが、五十一年に防衛計画大綱が決められました際、当面は一%を超えないことをめどとするということになっておりますので、防衛庁限りの見積もりをつくる際におきましてもやはりそのことは頭に置かなければいけない、そういうふうに考えたわけでございます。いま実際に見積もりをやりましたのは、正面装備で二兆七千億ないし二兆八千億、五年間でそういうことでございます。あと全体、施設庁の経費とかあるいは研究開発だとか等々は見積もっておらないわけでございますが、しかし、一%以内に入るかどうかという一種検算みたいなことはいろいろいたしましたわけでございます。中期業務見積もりは、そのときにありました経済計画によりますと実質五・七五%の伸びをするということがございましたので、そういう五・七五%の実質成長ということを頭に置きつつ、一体これでどのくらいになるかといういろいろの検算みたいなことをいたしました。そういたしますと、現在の〇・九%の水準ではこれはなかなか消化できない、だんだんやはり一%に近づいていくであろう、そういう検算結果は大体その程度であろうというふうに考えておるわけでございます。  それから三番目は、これは見直しと三年ごとということでございますが、中期業務見積もり、もちろんこれは防衛庁限りの見積もりでございますから、それに基づいて防衛庁の中で翌年度に向かっての業務計画というものをまずつくるわけで、そのための参考資料でございます。業務計画に基づいていろいろの肉づけをいたしまして、そして概算要求ということになるわけでございます。この概算要求大蔵省と折衝して予算案が決まる、こういうことでございますので、予算折衝の結果必ずしもそのすべてが認められるわけでもございません。そういうことになりますと、その取り残し分といいますか、そういったことについてまず見直さなければならないということ。それから、これは五年間でこうやるということでございますから、別に年次割りというものをきちんと決めておるわけでもございませんわけで、そうしますと一年たちますと、一年たった後、それから先その次の年度にどうするかということについては、その取り残し分まで含めて見直さなければならないということになるわけで、そういうことで見直しということを言っておるわけでございます。今度は計画改定三年ごとということでございますが、要するに今度でございまするなら五十五年から五十九年でございますが、五十六年に作業しまして五十八年度から先の五年間、これについて新しいそういう見積もりをつくっていこう。ということは、一種ローリングと申しますか、毎年やれば完全なローリングでございますが、三年ごとローリングにしよう、その方が実際問題として状況の変化その他にも対応し得るであろう、そういうようなことを考えまして三年ごとに新しいことをつくる、そういうことでございます。
  16. 吉田正雄

    吉田正雄君 この一%、もうちょっと聞かしてもらいたいと思うんですけれども、いや〇・九%だとか、なかなか一%は困難だとか、いろんな言い方がありますけれども、たとえばことしの五十五年度予算における防衛費と、それからいま言ったGNPとの割合というのは、これはすぐ出てくるわけですね。したがって、いままでの防衛費平均伸び率GNP伸び率との比較をすれば、一%で交差する時点というのがいつになるのか——経済見通しGNP成長率、これは計画があるわけですから大体伸び率予想率というのがあるわけです。それと、防衛費のいままでの今日までの伸び、まあ今日までの伸びとあわせて、いまのこの大綱とそれに向かっての中期業務見積もりがあるわけですから、それをずっと延ばしていった場合には交差する時点というのが、私、出てくると思うんですね。そうすると、望ましいとか望ましくないとか、努力するとかしないと言っても、この計画に沿っていけば当然一%の線というのは私はすぐ突破するんじゃないかと思うんですね。その想定はいつになるのか計算されていると思うんですがね。
  17. 原徹

    政府委員原徹君) 過去の伸び率と申しますか、この三年間〇・九%というのは続いているわけでございます。ということは、マクロに達観して申しまして、GNP伸び防衛費伸びが同じであったから〇・九%、こういうことでございます。だから、この傾向が続くとなかなか一%に行かないという、こういうことになるのでございますが、私どもはいまのこの中期業務見積もり二兆七千ないし二兆八千億というのを一応積み上げて持っているわけです。あとはマクロ的な見方と申しますか、そういうことで申せば徐々に一%に近づく、五十九年ぐらいに一%に行くのではなかろうかと、そういうふうに考えているわけでございます。
  18. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、ちょっとお尋ねしますけれども、この中期見積もり最終年度である五十九年度の場合に、GNP幾らで、この中期見積もりに伴う防衛予算はどのように見積もっておいでになるのですか。
  19. 原徹

    政府委員原徹君) これは仮定計算をいろいろいたしますれば計算すぐ出るわけでございまして、たとえばこの間大蔵省の方から御説明ございましたが、GNPが一一・四%ずつ伸びていくと五十九年度幾らという数字が出ます。それに一%を掛けますと幾らという数字もこれは出るわけでございまして、そういう前提に立ちますと、仮に五十九年度GNPの一%ということでございますと、防衛関係費は三兆八千百五十億になる。そういたしますと、五十六年以降平均一四・四%の伸びである。これは前提といたしましてGNPが各年度一一・四%伸びる、そういう前提だとそういう計算になるわけでございます。
  20. 吉田正雄

    吉田正雄君 ですから、私はこの一%論議というのは、目標値がどうとかこうとかということと実際の大綱と、それからこの業務見積もりというものを考えますと、一%そのものを予算の上で設定をされているのは余り意味がないんじゃないかという感じがするんですね。これは一%ということを皆さんがおっしゃるのは、もうちょっとずばり聞きますと、大綱というものを達成するためにはやっぱり一%がちょうどそれに見合っているということなのか、少ないから一%ぐらいにまでは持っていこうということでおっしゃっているのか、その辺がさっぱりわからないんですよ。
  21. 原徹

    政府委員原徹君) 五十一年に当面とにかく一%を超えないことをめどとするということが閣議決定にございますものですから、私どもといたしましては防衛計画大綱水準に可及的速やかに持っていきたい、そういう希望は持っておるわけでございますが、防衛庁限りの見積もりをする際に、一%を超えた見積もりをつくっても何かということもございましたので、一%の範囲内におさまるように考えているわけでございます。したがいまして、五十九年度までやりましても私ども防衛計画大綱水準にはまだ到達しないのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  22. 吉田正雄

    吉田正雄君 時間がありませんから、その問題はまたいずれかの機会にもっと詳しくお聞きをしたいと思っております。  最後になりますが、私は、これはいままで科学技術庁あるいは消防庁、警察庁にも現状がどうなっているのか尋ねてきたんですけれども、原子力施設における仮想事故とかあるいは最大事故、重大事故、いろいろ想定規模がありますけれども、この原子力施設の事故に対する認識というのは、私はまだ政府当局者も国民も余り深刻に受けとめていないんじゃないかと思うんです。例のスリーマイルアイランドの事故後の状況の政府発表というのは非常に控え目な数字なんです。これは今日ますますはっきりしてきておりまして、あの原子炉というのは完全に使えないんですね。大統領調査特別委員会報告の中でも、原子炉の中にありますいわゆる燃料棒の四割は完全に破損しそれから溶けておる、つまり溶融をしておるということで、まさに炉心溶融の、メルトダウンの寸前にまで行ったということは報告書でも明らかなんです。したがって、再開をするというのは、あれを完全に新しいものに取りかえない限り、あの炉というのは完全にもう破壊し尽くされているんですね。使えないんですよ。いまでも格納容器の中には立ち入れない。非常に残留放射能が強いわけですね。それから環境に放出をされたいろんな放射性物質も、たとえば沃素一三一等についても政府発表のものと実際に多くの学者が事故の規模から想定して放出をされたであろうという量との間に非常に差があるわけですね。  そこで私は、いままでもいろいろ聞いてきたんですが、日本における原発に対する、あるいはその他の原子力施設における大きな事故に対する防災対策というものがきわめて不十分だと言うよりも、ほとんどなされていないと言っていいんじゃないかと思うんですね。これはいままでのいろいろな質疑の中にも明らかなんですけれども、私はここでお尋ねしたいと思いますが、原子炉の中には百万キロワット級ですと広島、長崎型原爆の死の灰の一千発分が一年間でたまってしまうんですよ。したがって、自衛隊がいろんなことを想定をされて訓練をされていると思うんですけれども、あるいはまた防衛力という面から言って、原子力施設に対してのそういう事態というものを想定をされて、それに対処できる防護体制と言ったらいいのか、仮に原子力施設に対する攻撃があった場合に、それに対する防衛というものをどのように考えておいでになるのかということと、それとは別途に、日常における災害時において、警察であるとか消防庁ではちょっと手がつかないんですよ、これは率直に言いますと。アメリカの場合でも州兵が出たりということなんで、あの事故であのくらいの動員が行われているわけですけれども、それを考えた場合に、自衛隊として日常における原子力施設の最大事故についてどの程度救援というか、救援体制なり防災体制ができるのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  23. 原徹

    政府委員原徹君) 原子力施設に対する攻撃にどう対処するかということでございますけれども、これは特に原子力施設に対する攻撃ということで部隊の配備ということはやっておりませんから、そういたしますと、たとえばやはり全般的な防空能力、主として爆撃のことが一番多いわけでございましょうから、その爆撃を未然に防止すれば一番よいわけでございますが、そうでなくても、わが国に対する攻撃がありましたときには、なるべく早期に発見してこれを撃ち落としてしまうというのが自衛隊の任務でございますから、その一般的な防空体制で対処するということになろうかと存じます。  それから、事故についてどうかというお話でございますが、ただいまのところは五十四年の七月の十二日でございますか、原子力発電所等に係る防災対策上の当面とるべき措置ということが中央防災会議の決定にあるわけでございます。ですから、災害一般について自衛隊は直接協力をするという体制にございますので、その決定に従いまして、事故が発生した場合には、科学技術庁の要請を受けまして専門家あるいは関係機器の現地への輸送支援、これを実施するということになっておりますし、また、所在する知事さんから災害派遣の要請がございますと、ヘリコプターとか艦艇等によりまして現地に動員されましたモニタリング要員あるいは機材を搭載したり、あるいは空から、あるいは海上からそういうモニタリングのための必要な支援を行うということが私どものその決定に基づく任務でございます。  そういうことはできるわけでございますが、いまの放射能の事故そのものについて直接どうするかということにつきましては、自衛隊の機材というものは、若干はございますけれども、余りすぐにその施設の中に入っていくというようなものはほとんどないというのが現在の状況でございます。
  24. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 吉田君、時間がそろそろ参っておりますから。
  25. 吉田正雄

    吉田正雄君 もうちょっとお聞きしますと、たとえばこの事故が起きた場合、素手では入っていけないわけですから、そういう点で放射線防護車ですね、どれくらいあるのか。あるいは放射線防護服、防護装備ですね、これが自衛隊の場合にはどの程度装備をされているのか。これは私は、自衛隊とすれば、これは好ましいとか好ましくないという問題、あっていいとか悪いという問題を抜きにして、当然想定として考えられるのは核戦争ということだってあるわけですから、そういう点で自衛隊の場合には放射能防護の体制、機材整備はどのようになっているか。それがなければ防災体制とか救援には行けないですよ、これは。そのことをお聞きしているんです。
  26. 原徹

    政府委員原徹君) お尋ねの件でございますが、化学防護車というのがこれは二両ございますわけで、あとは携帯除染器とかそれから化学防護衣であるとか、そういうものがあるだけでございます。
  27. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) いま防衛局長からお答えいたしましたが、御指摘のような件は、スリーマイルアイランドの経験から見ましても、防衛庁として災害出動する場合に大切な一つのあらかじめいろいろ用意しなければならないような大事な点だろうと思います。そういう点についてはさらにひとつ検討をさしていただきたい、かように思います。おっしゃるような趣旨で十分いろんな点考えていかなければならないと、かように思います。
  28. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 以上で吉田正雄君の質疑は終わりました。  次に、松前達郎君。
  29. 松前達郎

    松前達郎君 吉田委員に続いて、核の問題等について後で時間ございましたらまたいろいろと御質問申し上げたいと思いますが、四十分ですから、あるいはそれに触れられないかもしれません。  最初に、外務省お見えになっていると思うんですけれどもアメリカの軍事力増強についての要求というのが、やはり中期業務見積もりの繰り上げといいますか、前倒しという点で大体はっきりしてきたと最近報道されておるわけですが、私も、大来外務大臣訪米される前に、具体的に要求があるはずだというふうに申し上げておったわけですが、これが大体はっきりしてきたというふうに解釈していいと思うんです。  そこで、これらについて私なりの解釈をいま申し上げますから、それについてお答えいただきたいと思うんですが、アメリカ日本への防衛力増強への期待は、イランですとかサウジアラビアの軍事力を援助してきたアメリカ、これがイラン革命が起こったわけですが、それから石油戦略の面から直接アメリカの軍事力を対象として中東におけるアメリカの力を守ろうと、こういう決意をしただろうと。これは具体的に言いますと、一九七九年二月に、戦略即応打撃部隊というものをつくるということをペンタゴンが決定し、実行しているわけですね。内容は、第七艦隊あるいは第七十七機動部隊、海兵一個師団、陸軍の奇襲二個師団、大体十一万人と言われるわけですが、この機甲部隊がその対象になっている。これを中東の油田防衛に向けて、いわゆるスイングが行われる。アメリカは今後もこの体制は続けていくと言っておるんだと私は思います。そういう意味から、日本への防衛力増強を要求してきている。したがって、この増強というものは、ただ単に経費をどうのこうのとか、そういうお金の面ではなくて、恐らく自衛隊そのものの正面装備増強を要求しているんじゃないか。これは軍事関係の人だったら大体そういうふうに想像しているんだと思うんです。私もそういうふうに想像するんですが、その点についていかがでしょうか。
  30. 丹波実

    説明員(丹波実君) お答え申し上げます。  まず、第一点のアメリカ側の対日期待の高まりの背後にある考え方は何かということでございますが、この点につきましては、ことしの一月に出ましたブラウンの国防報告の中にも詳述されておるわけですけれども、大きく申し上げて二つの理由がある、こう言っているわけです。  一つは、一九六〇年代半ば以降から今日までのソ連の一貫した軍事力の増強というものに、いまやアメリカ一国ではなくて、アメリカ、ヨーロッパ、日本といったような主要な先進民主主義国が共同で対処していかなければならない。そのように対処しなければ、そういうソ連の一貫した軍事力の増強というものに追い抜かれてしまう、そういう危機意識があるということでございます。  それからもう一つは、中東、カリビアン、アフリカ、そういった地域に不安定要因が出てきておる。そういう不安定要因が、現実に起こった場合に緊急に対処する能力というものをつけていかなければならない。こういうのが二つの理由として挙がっておるわけです。そういうことを背景に、アメリカとしては何も日本のみではなくて、ヨーロッパ諸国に対しても一緒に共同の努力をやっていこうじゃないかと、こういうことを言っておるわけでございます。  そこで、具体的に日本に対してどういうことが求められているのかという点でございますけれども、この点は先生いま言われたように、自衛隊の抑止力を高めるという観点から、たとえば防衛力の質的な強化というものを図っていってほしい、こういう考え方になるんだと、こういうふうに思います。
  31. 松前達郎

    松前達郎君 そうすると、今度防衛庁にお伺いしたいんですが、質的な増強といいますか、強化といいますか、これらについて、大平総理は前から駐留費の負担ということを盛んに言っておられたですね。米軍の駐留費の負担。これは質的な問題とはぼくは余り関係ないんじゃないかと思うんです。一体それでいいのかどうか。それでアメリカが納得するのかどうかですね、恐らくしないと思いますが。  それと、もう一つは、質的な増強というのは一体どういうものを防衛庁としては考えておられるのか。
  32. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 駐留費の日本の負担をふやすという問題は、おっしゃいますように、防衛力の質的増加の問題ではないと考えております。これは日本が地位協定のもとにおいて負担できるものについては可能な限り増加をするということでございまして、アメリカとしてはこれは望ましいことであると、これまでやったことに対しても評価をしておりますので、その線上にある問題でございまして、おっしゃるとおり、実質的な防衛力増強の問題とは別な問題であると、かように考えておりまして、これはこれで検討を総理からの指示もございましていたしておるということでございます。  実質的な増強というものにつきましては、まあ御説明すると長くなりますし、専門家でいらっしゃいますから詳しく申しませんが、端的に申し上げると、私ども中期業務見積もりでいろいろ考えておるようなことをできるだけひとつ予算をつけて、優先前後の別はあるだろうと思いますが、早くやってもらいたいと、そういうことであると、かように存じておる次第でございます。
  33. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、先ほど来話が出ていたそういう内容になってくるわけですね。  そこで、もう一つお伺いしたいんですが、これは基本的な問題なんですが、防衛庁として防衛力の限界ですね、これはいろんな制約があると思うんです。先ほどの閣議で決まった一%というお金の面からの制約だとか、あるいは憲法上の問題から出てくる行動面での制約ですとか、あるいはいまお話がありました質的な面の増強という、いわゆる装備の面ですね、こういう面での限度ですとか、そういうふうな問題があるんですけれども、これについてはどうお考えでしょうか。
  34. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) お説のように、いろんな制約がございます。まあ一番大きく言えば憲法、自衛隊法がございます。しかし、当面防衛費を増加していく、それから実質的な防衛力強化していくと申しましても、これは憲法や自衛隊法はもとよりそうですけれども、憲法、自衛隊法の枠というよりももっとずっと手前のところで、防衛計画防衛大綱というものを私どもいま五十一年閣議決定いたしておりまして、ただいまのところそれを変更すると申しておらないのでございまするので、これで大きな枠が一つございます。また、つけ加えて申し上げれば、アメリカ防衛大綱を直ちにこういうものを突破して、取っ払っちまってどうこうしろということまでに言っておるというふうには、これは私ども理解をしておりません。したがって、この限界がございます。  そのほかにもう一つ、昭和五十一年の十一月の閣議決定で、GNPの一%程度を超えないという一つの歯どめといいましょうか、枠をこれは自律的に政府が決めておるわけでございます。そういう枠があると考えておるわけでございます。その範囲の中でそれでは何ができるのかという問題であろうかと、私はさように考えておる次第でございます。ただいまのところはさようでございます。
  35. 松前達郎

    松前達郎君 それともう一つ、いま戦闘能力とかそういった問題ばかりがいろいろ論議されているような気がするんですが、一番重要なのはやはり情報ですね。まず情報をキャッチしていかなければ何にもならぬ。情報をキャッチしてそれをまあいろいろと公表することによっての抑止力というものもあるわけです。そういう意味で、情報網というのが一体現在どの程度整備されてきているのか。たとえば、前に函館へミグが飛んできたときにも、何かわからなかったという話もありますし、そんなことじゃ幾ら戦闘力だけ擁してもまるで兵隊ごっこになってしまうんですよ。だからそうじゃなくて、情報というものを一体どういうふうに把握しようとされているのか。  それともう一つは、最近ソビエトの艦船、航空機等がわが国の周辺をいろいろと動いている。それについて新聞等でも大分出てきておりますけれども、最近のわが国周辺での外国の艦船、航空機などの動きというものについてどう把握されていますか。
  36. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) おっしゃいますとおり、防衛費といいましても非常に範囲が広いわけでございまして、何に重点を置くべきかということについては非常にいろいろ考えていかなきゃならぬのは当然のことでございます。特に、いまのお話しの情報の収集ということは、もう一番先にある大変大切な問題と考えております。いろんな点で不十分ながらいまやっておりますし、また今後も進めたいというふうに考えております。  あとの御質問とあわせて政府委員から答弁いたさせます。
  37. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 日本周辺のソ連の艦船、航空機の最近の行動についてという御質問でございますが、自衛隊は、対馬、津軽、宗谷の三海峡におきまして沿岸水域、水路等の安全に必要な情報を収集しております。ただ、情報の収集に当たりましては、天候の状況、使用機材の機能、種々の制約がございまして、海峡を通ります船舶の種類、国籍などを必ずしも確認できない場合もございます。このような状況のもとで確認し得た部分だけでございますが、ソ連艦艇の三海峡におきます通峡隻数は、過去五年間の平均で年間約三百二十隻程度でございます。その内訳は、対馬海峡約百四十隻、津軽海峡約五十隻、宗谷海峡約百三十隻でございます。艦種別もそのようなことで総合的には申し上げられませんのでございますけれども、主要なものを申し上げますと、カラ級巡洋艦あるいはクレスタ級巡洋艦等が通峡をしております。  航空機につきましても同じような状況でございますが、内訳を申しますと、過去五年間の平均で、年間約百八十回程度でございます。内訳は、日本海を南下して帰投する場合が百四十五回、対馬海峡まで抜ける場合が五回、太平洋から沖繩東方沖まで向かう場合が四回、太平洋を南下する場合が十回。いわゆる東京急行と申しまして、太平洋を通って房総半島沖で帰る航路がございまして、その場合などが十一回。それから北海道東沖で帰投する場合が五回でございます。これらの航空機の機種の大半がベアD、これはTU95という飛行機でございます。あるいはバジャーあるいはメイでございます。
  38. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、それらの把握というものが基本とならなければ、これは幾ら艦船を擁しても意味がないと思うんですけれども、ついきょうも何か新聞に出ておりましたですね。哨戒機が出ていって初めて、たかだか陸地から三十五キロぐらいのところを通っているのをやっと見つけたというような状況がきょうかきのうの新聞に出ていたと思うんですが、やはりこれら情報の収集というものがこれからは必要じゃないか、こういうふうに思っているんです。  そこで、ソビエトの今度は民間航空機ですね、アエロフロート所属の航空機がベトナムへ航空路を開設するというふうな問題がいま新聞等で報道されている。ハバロフスクから日本海を通って、対馬を通って、西表の方を通って、それでハノイまで向かうという航空路だと私は思うのですが、これについてどういうふうに防衛庁としては評価されているか。  それから、その使用機種がイリューシン62型というのですが、私よく知りませんけれども、恐らく成田に来ているやつとは違うんじゃないかと思うのです。この62型という飛行機は一体どういう飛行機なんですか。
  39. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 御質問のイリューシン62でございますが、ベトナムに何度か飛行しているということから、民間航空機の定期航空路をつくるのじゃないかという、新聞記事によるものでございますが、民間航空機の定期航空路をつくる申請については私どもはまだ存じておりません。あるいは運輸省の方が存じておるかもしれませんが、まだ存じておりません。  イリューシン62は、いまでもソ連のアエロフロートで使っております代表的な大型ジェット旅客機でございます。その同じ飛行機が、旅客機に使っているものと今回飛んだものと装備その他が違うかどうかという御質問でございますけれども、そこまでは確認しておりません。
  40. 松前達郎

    松前達郎君 これはイリューシン62というのは、いわゆるモスクワと東京の間を飛んでいる飛行機では——何ですか。
  41. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) モスクワ−東京路線にこれが使ってあるかどうか、ちょっとそこまで確認しておりませんけれどもソ連の国内航空の大型ジェット旅客機として代表的なものでございます。
  42. 松前達郎

    松前達郎君 どうしてそういうことを言うかといいますと、日本海を真っすぐ通ってきて、対馬の上を飛んで、それから西表、日本の一番南端、それを飛んで台湾の外を回って中国の横を通っていくというのですから、これはさっきの情報活動をしようと思えばできるんじゃないかと想像して言っているわけです。  そういうことで、これらについてはちょっと私自身疑義もあったものですから御質問申し上げたのですけれども、そういった情報活動について、たとえば衛星を使う、トレースするのに細かくトレースして探していくのじゃなくて、いわゆる衛星を使うということがもうすでに、いわゆる探査衛星というのはスパイ衛星なんですね。そういうことで行われておるわけなんですが、これらを使うと非常に能率がいいんじゃないか、何も艦船を見つけるだけじゃなくて、ほかのものを含めて。そういうこともあるので、そういうことについては考えられたことがありますか。
  43. 原徹

    政府委員原徹君) 確かに衛星の精度というものは非常なものでございますわけで、そういうものがあれば情報収集能力は非常に高まるわけでございます。ただいまそういうことを考えておりませんけれども、大変貴重なサゼスチョンであると考えますので、今後も十分考えさせていただきたいと思います。
  44. 松前達郎

    松前達郎君 それはたとえばアメリカのランドサットという衛星がありますね。これはただ単に資源探査衛星といいますけれども、現実はそうじゃなくて、赤外線センサーを積めば海中にいる原子力潜水艦を探知することができると、はっきり報告書に出ているわけです。こういうことで最近情報、情報と私申し上げますけれども、そういったことがやはり基本になるんじゃないか。ただ軍備だけを幾ら増強しても、そういったデータが十分そろっていなければ対応もできないはずである。だから、それがなしにもしやるとすれば、完全にアメリカの手先になって、人は石がき何とかというやつになるのですね。それからさらに、もっとそれがないとすれば、完全な兵隊ごっこになってしまうので、その点がやはり今後問題になっていいはずだと私は思うものですから、それを申し上げたわけです。それから核の問題なんですが、軍事行動と石油との関係、石油資源との関係というものが非常に大きな関連を持っている。これは先ほど冒頭に御質問申し上げたんですが、自衛隊は有事のときにあるんだ、よくそういうふうな国会での答弁も何回も聞いております。たとえばヨーロッパの場合ですと、ヨーロッパ駐在アメリカ軍というのが大体三十万人ですね。これが平時に使う石油が一日約二十万バレル、こういうふうに言われている。有事に際しては一日約四十七万バレルを使うと言われているわけですね。北大西洋同盟機構軍の二百五十万人、約二千五百機の戦闘機がすべて戦いに参加するかどうか、これはわかりませんが、二百八十万人のNATO軍の石油消費が一日百八万バレルである、米軍と合わせて一日百五十万バレルが必要なんだと、こういうふうな調査の報告も私見たことがございます。ですから、そうなってくると有事の場合の軍事行動の範囲というのが、時間的な問題から言ってそう長くはできないんじゃないかと、こういうふうなことですね、要するに資源問題から考えた場合に。したがって、なるべく早く解決しようということで、最終的に飛び出してくるのは核であるというふうなことをよく言われているわけです。しかも、核が登場したときに、たとえば二つの国が主たる戦闘を行った場合に、その国々の首府をたたくということは恐らくしないだろう。ダミーをどこか設定してそこをたたいて、そしてそれをきっかけにしていわゆる戦争終結に向かう話し合いが行われるはずである。これはもうほとんどの人がそういうふうに予測をしているんですね。こういうふうになりますから、やはり核に対する防御ということですね、さっき吉田委員も言いましたけれども、これについては十分われわれは検討しておかなきゃいけないんじゃないかと。核攻撃は日本はやらないということは、核武装はしないということをこの前細田長官もはっきりおっしゃいました。攻撃される可能性はしかしあるわけですね。何も日本が直接戦闘に介入しなくてもそういうふうなことも考えられる。そういうふうなことだと思うので、やはり核に対する問題というのは研究対象になるんじゃないか。  たとえば、スイスあたりですと「民間防衛」という本がありますね。これは各世帯に一つずつ配ったと言われている。これを見ましても、やはり核について相当個人個人の防衛体制というのが出ているんです。「核兵器で攻撃をしかけてくる敵を阻止することはできない。大国は、原爆や水爆を、数千個も貯蔵している。」、こういうことに始まって、「外国で起こる核爆発の被害をこうむることがあり得る。」、これはもうスイスの場合近いですから、外国は。こういうふうなことから、常日ごろ核攻撃をされた場合に対処すべき心構えというのがこういう本にちゃんと出ている。それから、さらにもう一つ最近では非常に問題になっている細菌兵器ですね、これについても出ているわけです。それから、化学兵器についても出ているわけですね。これは民間防衛ですから、ちょっと防衛庁そのものがやる仕事じゃないかもしれませんが、しかし防衛庁はただ戦争して——戦争しておって、敵の攻めてきたのを守って、それで、もしかそれが上陸されたりなんかしてそれで終わったんだというんじゃ、これは国民が大変な迷惑なんで、こういうふうなことについて今後やはり可能性があることですから、そういうことについての何らかの対処というものを考えておられるかどうか。これはさっきの吉田委員との関連もございます。
  45. 原徹

    政府委員原徹君) 石油がなくなるのですぐ核ということの点、まあございますけれども、現在私どもは核攻撃につきましてはアメリカの核抑止力に依存すると、そういう体制をとっているわけでございます。しかし、いまおっしゃいますように、民間防衛という見地から考えますれば、やはりそういうものに対する対処というものをすべきではないかという考え方もございまして、私も多くはそうであろうと思っております。ただ、これいまも御指摘ございましたように、防衛庁でやるべき筋合いがあろうかということになりますと、私どもは民間防衛一般につきまして外国の事情等調査をいたしておりますが、それ以上に音頭をとってやる立場にはないと思っておりますものですから、大変貴重な御意見でございますが、やはり政府全体としては取り組まなければならない問題ではないかと、そういうふうに考えております。
  46. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) ちょっと、私からつけ加えてお答え申し上げたいと思います。  ただいまおっしゃったようないろんな事態に対して、日本の場合は準備がなされていないと、特にスイスなどの状況も私見てまいりましたが、大変おくれておるということは全く御指摘のとおりでございます。そういう点について、防衛庁が何か先に立ってどうこうということになりますと、すぐ防衛庁で何か核云々というような話、誤解を招くような点もありまして私ども大変迷惑するわけでございますが、そういう立場でなくて、政府としてまた国民的な立場において、そういう点についてはいろいろ考えていかなきゃならぬと、かように存じておる次第でございます。つけ加えて御答弁申し上げておきます。
  47. 松前達郎

    松前達郎君 核の問題というのは、日本の場合ですと原子爆弾が落とされたわけで、それに対して、国民が大分それに対する関心というのは深いわけですね。ですから、やはりその辺をはっきりしておかなきゃいけない点がある。私は、さっき申し上げたのは、最終的には核が登場する状況にあるということですね。ですから、核が登場する状況にあるなら、それじゃ日本の場合も核を持とうじゃないかとなると、これはまた絶対に憲法上はそういうことも許されないし、恐らく国民感情からもそういうことば絶対許されない。しかし、持てるような状況になってきているということは確かだと思うのです。  だから私の場合、この前の総括質問のときに核爆弾について御質問申し上げて、全然知りませんとおっしゃったんですが、もしか必要なら資料たくさんありますから。町工場で非常に幼稚なものは幾らでもできるということは、もうすでに国民だれでも知っていることなんです。そういうことができる雰囲気にあるということですね。しかも、広島に落とされたのが濃縮型であり、長崎の場合が再処理型である。しかも、今後原子力関係の開発が進んだとすれば、それに伴うプルトニウムの生産も行われてくる。さっき吉田委員が言ったとおりであります。その辺はやはり防衛庁としてもはっきりとしておいていただきたいけれども、先ほど申し上げたいわゆる核攻撃に対する問題というのも、これは日本が戦争に参加するかしないかということに関係なく可能性がある。というのは、ダミーとして使われる可能性がある、これも考えておかなきゃいけない。こういうことで質問をさしていただいたわけなんです。  そこで、リムパックの問題も予算委員会で総括のときに御質問したんですが、シーレーン防衛の共同作戦のための演習であるということにはなったようでありますが、陸上自衛隊が今度一緒に何といいますか訓練、演習をやりたいということですね、これも報道されているわけです。これはアメリカ軍との共同演習、昨年の五月ですか、ロジャース参謀総長との合意をしたんだと、合意というのはどの程度の合意か知りませんが。これについて、こういった合同演習を行うつもりか行わないつもりか、希望として行いたいのかどうか、その辺をひとつ説明していただきたいんです。
  48. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 陸上自衛隊の共同訓練につきましては、現時点具体的な計画ございません。法的にこれが可能であるかどうか、こういうことにつきましては、先般御答弁申し上げましたように、法的には可能であろう、外国との共同訓練も設置法五条の二十一号で同様に可能であると考えておりますけれども、先般来いろいろ取りざたされております日米間の陸上自衛隊及び米陸軍との間の共同訓練は、制服の希望表明という段階でございまして、現時点まだ具体的な計画はございません。今後その必要性あるいは可能性等について検討してまいりたいと考えております。
  49. 松前達郎

    松前達郎君 その場合、これが実現されるということにもしかなった場合、たとえばハワイあたりにこっちから出かけていって、現地のハワイの米軍と一緒になってやるということは、これは私は全然話にならぬと思いますね。それじゃ今度国内でやろうとした場合、アメリカの軍隊を日本に持ってきて、そこで一緒にやるということになるとここでまた問題が出てくるんじゃないか。ですから、この問題はやはり非常に重大なことになろうと思います。ということは、日本に敵が上陸してくるんだということを想定するわけですから、海外派兵なんというのはこれはもう話になりませんのでね。そういうことですから、その点私自身は非常に重大な問題だというふうに取り上げておるわけなんです。希望であるというんでしたら、希望というのは幾らしても構いませんけれども。  それから、もう一つお伺いしたいのは、オケアン80というのがありますね。これはソビエトが各水域でやっている演習、リムパック80に対抗して、外交的圧力といいますか、そういうものも含めてやっているんじゃないかと思うんですが、これが最近行われるという情報があるんですが、これについて御存じですか。
  50. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) オケアン80につきましては、従来の例から考えまして、そろそろ行われるのではないかという予測が行われておりまして、われわれもそのようには考えておりますけれどもソ連が最近インド洋あるいはベトナムに多量の艦船を派遣しておりまして、ソ連としてもかなり忙しいのじゃないかということで、これが果たして、いつ大体どういう時点で行われるのか、従来のように世界的規模で同時に行われるのかどうか、そのあたりはまだ全く情報がございません。ソ連の動きを注視しておるところでございます。
  51. 松前達郎

    松前達郎君 こういうのが行われたり、リムパクが行われたり、それで日米と、それからソビエト、中国は私自身は余り信頼をしておらないわけですが、そういったような一つの共同体制ができてだんだんとエスカレートしていく、それの中に日本が巻き込まれて、そして手先に使われていくというふうなことになるとすると、最終的に、もしかそれで最悪の場合が起きた場合に、核攻撃の目標アメリカじゃなくて、ソビエトの目標日本であるということになると私は思うものですから、そういうエスカレートというのを、外交手段だとかあるいはその他の手段を使って、なるべくそのエスカレートを冷やす方向にいかないといけないんじゃないか。いわゆる軍縮といいますか、デタント等についても、アメリカも恐らくいま放棄したんじゃないかと思われる。そういう状況の中で、われわれがどう対処していくかという問題、非常にいま大切な時期だと私は思うものですから、御質問申し上げたわけなんです。  そこで、あともう少し時間ございますのでお聞きしておきますが、この前、防衛庁の方が中国でバッジシステムの講演をしたというのが報道されているんですが、これはどうなんですか。どの程度やられたか私わかりませんが、たとえばさっきの情報からいきましても、自分の国の主たる情報システムあるいは対応システムについて外国で内容説明するなんというのは、これは常識外れなんだと思うんです、幾ら中国であっても。この点は一体どういうふうに判断しておられるか。  また同時に、留学生を交換しようとか、これは防衛大学校のことかどうか知りません。研修生などをお互いに交流しようとか、そういうふうな意見も出ていたようですけれども、これらについてはどうお考えですか。
  52. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お尋ねの件は、三月十五日の新聞に出ました防大の土井講師、これが中国に旅行した際にバッジシステムの話をした、こういう記事に関連しての御質問かと存じます。  この土井講師の中国旅行は、実はこれは公用出張ではございませんで、三月の六日から三月十八日までの間、中国国内及び香港を視察をしたいということで、いわゆる私事旅行ということで休暇扱い、年次休暇をとりまして休暇扱いで参ったわけでございます。新聞の記事が出るまでは、こういうような研究会と申しますか、講演が行われるということを私どもも承知しておりませんでしたので、早速事情を聞きましたところ、訪問いたしました際に中国側の方々と、北京飯店でございますか、会食をし懇談会を持った、その席上で話のようでございまして、これは講演とか講義とか、あるいはそういう正式の研究会、こういうような公式行事あるいは大がかりなものではございませんで、話の内容も、本人に確かめましたところ、コンピューターのことが問題になりまして、コンピューター導入に当たっての一般的な考え方についての意見交換をし、その際に、これがバッジシステムであるとか、統計処理の用途のためにも使われる、こういう概括的な説明をしたということでございました。軍事的な技術を開陳したとか、あるいは秘にわたることを説明したということではないようでございます。  また、日中間の防衛大学生徒あるいは技術者の交流というような話が出たということでございますけれども、これも正式な防衛庁代表ということで承った話ではございませんで、たまたま粟裕次官と会う機会があった際の雑談ということで承知をいたしております。正式な申し入れその他は私どもは聞いておりません。
  53. 松前達郎

    松前達郎君 その報道が、そうすると多少大げさに報道されたということになるんですけれどもね。しかし、さっき公用でないとおっしゃるんですが、公用でなくて行ったら何やってもいいかということになると、これおかしな話になるんですね。身分はやはり身分として、はっきり防衛庁の身分なんですから、その点今後こういうことはないようにしていただかなきゃいけないんじゃないか。長官に言わすと、誤解を招くということになりますので、そういうことないようにしていただきたいと思うんです。  それで、もう時間が参りましたので、あと一つだけお伺いしておきたいんですが、先ほど石油と軍事行動の問題を申し上げましたけれども、それに関連して、いまの自衛隊の中で、有事のときに使う石油ですね、そういった備蓄あるんですか。
  54. 倉部行雄

    政府委員(倉部行雄君) 燃料の備蓄のことでございますが、自衛隊といたしましては特に備蓄というものは現在持っておりません。ただ、各年度の初めにおきまして燃料を調達する、あるいは契約して検査して受け入れるまでに相当な期間を要しますので、それに備えまして、その新しい年度の始まる前に、通常、まあこれは年によりまして多少変化はございますが、三ヵ月ないし四ヵ月ぐらいのランニングストックを年度末に持ちまして、そして次の年の年度初めの空白期間をカバーしていくというランニングストックは持つことがあるわけでございます。
  55. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、これはもうふだんの場合の必要になっている燃料をストックしているという程度なんですね。そうすると、たとえば有事有事とおっしゃっているけれども、有事になって総動員で動き出したときにどのくらいもつんですか。
  56. 原徹

    政府委員原徹君) ただいま装備局長からお話をいたしましたように、とにかく自衛隊の油の消費量というのは、現在、年間で申しまして八十万キロリットルかそこらぐらい。もちろんこれは、日本の消費量というのは二億七千とか九千とか、そのぐらいで、一%にならないぐらいのオーダーのものでございますから、それは、ただいまの段階で仮に有事になって非常に消費が多くなりましても、非常に少ないパーセントしかないということで、特に備蓄ということはいままで考えていなかったわけでございます。  今後の問題としてそれでいいかどうかということにつきましては、やはりそういうことも必要ではないかという意見もございますので、今後やはり考えてみたいと思っております。
  57. 松前達郎

    松前達郎君 これで終わります。
  58. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 以上で松前達郎君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  59. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) この際、分科担当委員異動について御報告いたします。  本日、松前達郎君が分科担当委員辞任され、その補欠として丸谷金保君が分科担当委員に選任されました。     —————————————
  60. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 渋谷邦彦君。
  61. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最初に、私、途中から委員会へ入りましたものですから、前の方がどういう質問をされたかちょっとつまびらかでございませんけれども、二、三日前に報道をされました一つの事件でございましょうか、伝えられるところによりますと、先月の中旬ですか、平野という一等陸佐がグルジヤで視察中に毒入りウォツカを飲ませられた。こういう事件があって、外務省もその事実を確認していると、こう伝えられています。この状況をちょっと教えてくれませんか。
  62. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 外務省の所管の問題でございますので手持ちの資料ございませんけれども、いま仰せのとおりの事実があったことは事実でございます。
  63. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま申し上げた平野一等陸佐は間違いないんですか。
  64. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 間違いないと存じます。
  65. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 外務省所管の問題ではあるかもしれないけれども防衛庁の方でございましょう、平野一等陸佐という方は。どういう視察をされたのか、どういう状況で毒入りウォツカを飲まされたのか、その経過。それで具体的にその事実関係について、ソビエト政府に対してどういう申し入れをされたのか。
  66. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 私どもが承知しております限りでは、武官がソ連の国内視察に、モスクワ地域外に出張いたしまして、それで出張の際にたまたま同席いたしましたソ連人から勧められましたウォツカを飲んだ。その後はなはだ気分が悪くなったと、そういう事件でございます。  これに対していかなる措置をとったかという御質問でございますけれども、これについては、確かに状況から申しまして、ウォツカを飲んだ後で気分が悪くなったという状況がございますのですけれども、これがソ連の官憲あるいは一部の者のしわざであるという確証がございませんので、これをソ連に対して正式な抗議の形とするかどうか、これはかなり非常にむずかしい問題のところでございまして、とりあえずは館員に対して今後注意するようにと、部内の注意を喚起しているというのが、現状だそうでございます。
  67. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 確かに大使館付武官という、こういう肩書きになるわけでしょう。しかし、防衛庁から出向していることは事実でございます。その辺の関連というものが、防衛庁としては、大使館付武官であるからこれは外務省の所管であるということでは済まされませんね。
  68. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 身分上から申しますと、外務省に出向いたしまして外務省職員になっております。武官という言葉はこれは通称でございまして、外務省の書記官になっております。
  69. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それは身分上の問題でございましょう。しかし、帰ってくればまた防衛庁に復帰されるわけでしょう。私どもはああいう状況を見ますと、非常に恥辱を与えられたような感じがしないではない。しかも、日本を代表して行っているわけです。これは細田さん、どんな印象をお持ちでございますか。
  70. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 私も実は報告に接しました。ですから、もっとこれにつきましては詳しい事情を調べてもらいたいということを当時申したのですが。そうでありませんと、軽々に物を言ってとんでもないことが起こってもいけませんし。ですから、十分さらに調査をいたしたいと、かように思います。確かなところがわかれば、いろいろそれに応じてとらなければいかぬし、重大な関心を持つべきことであろうと、かように存じております。
  71. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 くどいようですけれども、この事件の発生が三月十一日と私は記憶しているんですね。それからもうすでに二十日余りたっているわけです。状況調査については余りにも時間がたち過ぎているんではないだろうかという気がしないではございません。慎重に、また事実誤認のないようにその辺を確認をされて、そしてソビエト政府に厳重に抗議をすべきものについては抗議をしてもらいたい。この種の事件がまた起こるような危険性がないとは言えませんので、突然の質問であるいはその準備もおありにならなかったと私は思うんですけれども、しかし、それにつけても最近起こった事件ですから、岡崎さんがいま言われたように、そういう事実関係があったことは御存じであるわけです。御存じであれば、当然防衛庁としても、これから出向するであろういろんな方方、これからも行くわけでしょう、出てくるわけでしょう。十分それについての対応策というものを当然考えられていいわけでありますから、その辺を老婆心ながらいま申し上げたと、こういうことでございます。  それから次に、きょうも大変限られた時間でございますので、あれもこれもというわけにいかないと思うんですけれども、昨今日本防衛力整備という問題については大変議論が高まってきた。それはいいか悪いかはわかりませんけれども、さてそこで、こうした問題を真剣に討議し、日本のあるべき今後の防衛力整備を通じての自主防衛の役割りというものはどうあらねばならないかというためには、いろんな角度からのその分析、検討というものが当然なされていると私は思うんです。言わずもがな、アフガン問題に端を発しまして急速に国際情勢というものが冷却した方向にいま進んでいるわけです。戦争なんというのはいつ思いもかけないときに起こるかわからないという、これはかつての苦い経験である。パールハーバーのあの事件を想起するまでもなく、宣戦布告なしに始まるというようなことが最近の近代戦争の特徴かもしれません。そういった場合に、やはり備えあれば憂いなしということもありますように、十分なそれについての対応ができる分析というものが必要になってくることは当然だろうと私は思うんです。また、今日まで衆参両院の予算委員会等を初めとして、こういった議論の繰り返しがあったと思うんです。  特に最近非常に険悪になったというとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、この極東情勢あるいは中近東情勢について米ソの軍事力のアンバランスなども伝えられているその状況の中で、日本として当然どう一体対応しなければならぬかという、そういう問題も考えられなければならない。そういう状況の中で、防衛庁としてはこの極東地域あるいは中東地域についての軍事情勢というものをどういうふうに判断をされているのか、大変大まかなことですけれども、お述べをいただければありがたいと思います。
  72. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) まず、中近東地域でございますけれども中近東、南西アジア地域におきましては、在イランのアメリカ大使館の人質事件が起こりました。それに加えまして、ソ連のアフガニスタン侵攻が起こりました。アメリカのカーター大統領は、ペルシャ湾岸地域に対するいかなる侵略も、軍事力を含むあらゆる手段をもってこれに対抗すると言明しております。また、現在インド洋には米ソ合せて五十隻以上の艦艇が遊よく中でございます。わが国といたしましては、この地域は石油の大供給ルートでございまして、また世界戦略上の要地でもございますので、この地域の情勢には引き続き重大な関心を持っているところでございます。  極東情勢につきましては、これは過去数年間ソ連軍の増勢が著しいものがございまして、地上軍の増勢、特に昨年われわれ見通しを改定いたしまして、極東ソ連地上軍二個師団増加というふうに考えておりますけれども、二個師団とも極東軍管区地域に配備されているらしいということでございます。もちろん、択捉、国後に対する地上軍の派遣はその一環であると存じます。それからまた、昨年中にミンスクグループが到着いたしました。ミンスクグループの到着によりましてソ連太平洋艦隊が一挙に質的に増強されたんでございますけれども、同時に、中にイワン・ロゴフ等が入っておりまして揚陸能力も非常に増加しております。それからSS20、バックファイアー等のシベリアにおける配備があったようでございます。これは、従来さして大きいというふうに認められておりませんでしたソ連の中距離弾道弾の日本に対する攻撃能力、これが飛躍的に増加したものというふうに考えております。また、いまだバックファイアーは海上には姿をあらわしておりませんでございますけれども、これが有事の際に海上で使われるということになりますと、日本の海上交通路に対する潜在的脅威が倍加されるというふうに考えております。
  73. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 岡崎さんのいまの答弁を伺っていますと、きわめて大ざっばで、大体いままで伝えられていることを整理されながらおさらいしていらっしゃるのではないかという感じなんですね。それは、ぼくらもロング太平洋司令官が何を言ったか、そういうことも一応記憶をしているつもりなんです。そういったその状況を踏まえながら、一体米ソの軍事力のいまアンバランスというものが具体的に考えられるのか。ロングは確かに言っていますね、全体的な太平洋の軍事勢力というものを考えてみた場合に、二〇%から三〇%ソビエトに対して減少していると、これに対して何とかしなきゃならぬと。この問題はまた後から申し上げたいと思うんですけれども、そういういまアンバランスの状況が引き続き続いているのか。こういう状況を、大変シャープな分析力をお持ちになっている岡崎さんですから、もっとその辺を含めてお述べいただければありがたいと思うんですが。
  74. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) それほどの分析ができますかどうですか、あれでございますけれども、米ソの海軍戦力の比較でございますが、一九七〇年代の初頭ごろは大体米ソともに、アメリカの第七艦隊及びソ連の太平洋艦隊、これは大体百万トンずつと考えているようでございます。それが現在われわれの考えておりますのは、ソ連が百五十万トン、それから米国は六十万トンでございます。ただ、これを比較します場合に、アメリカの場合は第三艦隊というものが東太平洋に控えておりまして、それで第七艦隊に配備されました軍艦は、一定の期間を終えますと東太平洋に戻りまして、まず整備いたしまして、訓練いたしまして、でき上がって出てくるわけなんです。したがいまして、アメリカの六十万トンというのは、これはもう一艦残らず全部完全即応体制をとっております。ということで、この六十万トンとソ連の百五十万トンをそのまま比較することはなかなかむずかしいんでございまして、ソ連の百五十万トンは、これはどのくらいが第七艦隊と同じような完全即応体制にあるか、そういう問題でございますけれども、これは、自衛隊の場合は大体八割は即応体制にあると考えておりまして、ソ連の場合はかなり低いのではないか。これは、一つはソ連の能力をそこまで判断していいかという問題がございますけれども日本自衛隊の能力は世界的にも非常に高いものでございますから、かなり低いんじゃないかというふうに考えております。  それからソ連の、これは一般的な武器の戦略でございますけれども、古い物を捨てないで持っている。これは戦争になった場合に量が物を言うということで、かなり老朽化したものでも退役させないで何とか使えるようにしておくという傾向もございますので、非常に大ざっぱな感じでまあ半分ではないかというふうに考えております。  そういたしますと、これはトン数だけの比較でございますけれどもアメリカの六十万トン、それからわが自衛隊の二十万トンがございまして、トン数だけでもまあ拮抗し得ると、そういう状況にあるのではないかと考えております。しかし、これはいろいろそれに対してプラス・マイナスの要因を考えなければいけないんでございますけれども、もちろんアメリカの艦隊は空母機動部隊を中心としておりまして、この打撃力というものは、これはソ連の艦隊には比肩し得るものはない、つまり強大なものでございます。他面、第七艦隊は、一九七〇年の半ばごろからいままでは大体同じ水準を維持しているんでございますけれども、一つの問題は、昭和五十一年に第七艦隊の守備範囲が非常に広がりまして、それまではパキスタン以東だったものがペルシャ湾、ホルムズ海峡、バベルマンデブ海峡、ソコトラ、アデンさらに東アフリカ、これは世界で最も紛争の多い危険な地域でございますけれども、それを全部カバーするようになったと、これがここ数年間の新しい発展でございます。その間また事態の進展が急速に進んでおりますので、特にその地域の紛争が多くなっておりまして、第七艦隊のその地域における負担が圧倒的に多くなっておるという事態がございまして、太平洋に比べましてその部分の負担が非常に多くなった。これはまたある意味のマイナス要因でございます。それ全体勘案いたしまして、情勢はかなり厳しくなっているという程度の表現しか使えないと考えられます。
  75. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そうだと思うんですね。いまお述べになったその中で、トン数のみをもっては比較はできない、これは了解できると思うんです。装備力その他を考えた場合に、圧倒的にあるいは米艦隊の方が強力な装備を備えておるというようなことになると、あながちその比較というものが何を基準としてやったらいいかという問題は出ようかと思うんでありますが、ただ、いま答えを伺っておりますと、まあソビエトも相当中近東あたりに対しても軍事力を強化しているとはいうものの、現状においてはそう心配はないだろうというようなこういういまニュアンスのお答えではなかったかなあと思うのですが、そうではないんですね。やはり危険というか、脅威というものが相当強力になってきたというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。
  76. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) これは過去との比較で申しますれば、七〇年代初頭に双方百万トンであったものがいまや百五十万トンと六十万トンになっているというその趨勢だけから申しましても危険度が増加してきたということだけは、これはもう疑いのない事実でございます。
  77. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 さあそこで、アメリカ側としても不測の事態がいつどういう形で起こるか、これはもうだれしも予測し得ない問題だろうと、私、思うんですね。先般来からしきりに、日本防衛費というものをふやしてもっと防衛努力をすべきではないかということがいろんな形で、特に上下両院の軍事委員会を中心とした証言等を通じて、アメリカの考え方というもの、あるいは願望を込めて言っているか、それが具体的な要求として言っているのか、その辺は大来さんがこの間訪米されたときにもどうも定かでない面が相当残されて、近く大平さんが訪米されるときにもっと具体的にそれが詰められた、まああるいは一つの結論が出されるような展開が予測されはしまいかというよな状況といいますか、大変切迫したアメリカ側日本に対するそうした要求がいま提唱されているわけですね。それがいま岡崎さんがずっときわめて大ざっぱな——極東地域あるいは中近東地域における海軍力を中心とした米軍の軍事力というものが手薄になるというような背景もあるだろうと思うんですが、その手薄になったものに対して、何とか日本として海上輸送路の確保等もこれあり、当然その点については日本として分担をすべきではないかと、分担するためには現在のその状況で果たしていかがなものであるのか。具体的にGNP一%ということがしばしば言われております。昨日も私、第一分科会でも申し上げたんですけれども、それで、どうもその辺がすっきりしない。いまアメリカがしきりに要求している、防衛庁防衛庁としていろんなそういうアメリカがいま考えているようなことについての検討をなさっておいでになるだろうと思うんですね。向こうの要求に対してどう一体対応するのが一番望ましいいまの状況なのか。それで、私は三つ考えられると思うんですね。その意図するところが一体何であるのか、これは昨日も余り定かでない答弁しか聞けなかったものですから、防衛庁としては一体どういう判断を持っているのかということをお尋ねするわけです。  一つは、あるいは兵員自体を増強しろと言っているのか。これはもうかつて六千万ぐらいの人口のときに日本の平時編制が陸軍で十八万五千ですよ、これは長い間その状態が続いたことをわれわれ知っておりますけれども。それでもういま人口が倍になっています。果たして日本の国土の自主防衛という立場に立って見ても大丈夫なのかという問題が一つある。  それからもう一つは、予算の総括でもしきりに細田さんに申し上げました質的向上を図らなきゃいけないと、近代化の方向をどうしても図らなきゃならない。それはわかるんですよ。それはあえて私も一体何をどうするかということを聞きません、これは機密に属する場合だってないではありませんので。そうしたもっとやはり対応できるレベルアップを図るための負担をせいと、こう言っているのか、これは二つ目ですね。  それから三つ目は、これも私非常に心配しているんです。というのは、この間もちょこちょこっともう話をしてそれっきりになっちゃったんですけれども、現実にキューバのグアンタナモは要塞化されているわけでしょう。これはもう事実そういうふうに確認されているわけです。その対抗手段として、北方四島がいま基地化から要塞化の方向へこれから動かないという保証は何もないわけですね。そういった場合に、もう一つの対抗手段として沖繩なら沖繩の基地というものをもっと整備強化を図る必要があるんじゃないか、沖繩を中心として。あるいはこの日本国内にまだ残されている米軍基地というものの整備を図る必要がある、そのための日本側としての負担をせいと言っているのか。  まあ常識的に——私は軍事専門家じゃございませんから詳しいことはわかりません、大体考えられるその問題というのは、大まかに分けてもこの三つに集約される。その中でアメリカが一体何を日本に対して願望しているのか、あるいは要求しているのかということですね。恐らくいまは憲法の規制があり、あるいは国民世論がありということで、いままで政府は一貫して大変むずかしいということを言うてこられたわけです。大来さんが過日訪米されたときにも、日本の状況としてはそうだと、こういう状況なんですと、それに対してはバンスもブラウン理解を示したという答弁に終わっているんです。しかし、それだけで果たして済む問題だろうかと。これは、いまはそれが逃れられても、だんだん、だんだん情勢がいろいろと激変していく、その中でやはり日本に対してもう少しく防衛努力をすべきじゃないかと、もう依然として安保ただ乗り論というものも消え去ってないわけですね。それを調整する一環として、何らかの形でとにかく防衛努力をすべきじゃないか、そのためにはGNP少なくとも一%にそれをレベルアップして、その整備を図る必要があるんじゃないかと、これを重ねて、今度は防衛庁立場としてどういう御判断をお持ちになっていらっしゃるのか、これはむしろ長官の政治判断をお願いした方がぼくはいいと思うんですよ。
  78. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 先ほど吉田委員にもお答えいたしたのですが、この間アメリカへ大来外務大臣が行かれて、ブラウン長官初めバンスさんやカーターさんともお会いになって、いま三つの点を挙げてお話しになりましたが、具体的にその中身の問題までまだ私は入っておらないと思うんでございます、大来さんの報告を聞きまして。問題は、もっとより根本的というか、基本的な線で日本防衛に対する努力、こういう点についてやはりそれこそ着実、そして特にこの際は着実はこちらもそうしたいと言っておるわけですから、シグニフィカントリーに、顕著に、大幅にということが私は特に重点だと考えます。そういうことでございまして、大来さんは大来さんなりにお答えをして帰ってきたようでございますけれども、いやそれでよろしいという話になっておるというふうにも承っておらぬわけでございまして、この問題は依然として残されておると思うのでございます。  したがいまして、特に私は三つお挙げになりました中では、これはいろいろまだこれから中身が出てくるかもしれませんけれども、二の問題を中心にとにかく顕著に、大幅に日本防衛に対して努力をする、そして形にあらわす、そういう強い要請である、こういうふうに受けとめておるわけでございます。
  79. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 日本側として、さらにそれが具体的な話し合いがなされた場合には、いま挙げられた三つのうちの一つはこれは当然今後の展望を考えてやるべきであろうと、これは政府がいままで一貫しておっしゃってきたことに通ずる問題であろうと思います。ただ、やはりアメリカ側日本の国内世論というものをいたずらに刺激することはいかがなものだろうか、やはり自由主義陣営の一翼を担う日本が全然別の方向へ行かれても困る等々いろんな配慮もあるんだろうとぼくは思うんですね。しかし、上手だなと思うんですね。顕著だとか、とにかく大幅にだとか、いろんなそういう非常に抽象的な言い方ではありますけれども、これはいままで——もういま始まった議論じゃございませんので、当然それは防衛庁としてもアメリカ側が何を意図してそういうことを日本に対して望んでいるんだろうということは、もうこれは当然判断をしなければならない、そしてまた判断の上に立って、もし最終的に大平さんがカーターととにかくまた具体的に詰めの話になった場合に、せめてこの限度においてはわれわれとして最大の努力を惜しまない、こういう話し合いになるんだろうと思うんです。その中で、いま細田さんが言われたその三つのうちの一つに恐らく集約された結論というふうに私いま御答弁の中で理解をいたしたいと、こう思うわけです。  確かに質的な向上ということは言うべくして、大変大ざっばな表現でございますけれども、現在の状況の中で十分対応できるかどうか、何か仮想敵というものを考えないと、それに対応する軍事力の整備——まあ軍事力という表現もいかがなものかと思うけれども防衛力整備と申し上げた方がよろしいでしょう、これは具体的にできないと思うんですね。この間も私若干それに触れました。やはりそれを想定しながら、航空機にしてもあるいは艦艇にいたしましても、質的向上とは言うものの、一体その質的な向上を図るために、当然それに見合う、十分その自主防衛の機能というものが発揮できる状態に整備を図らなきゃならぬ、これも常識だと思うんですね、考えてみると。  そうすると、いまおっしゃった答弁をまたさらにそれを引用させていただくならば、いまの考え方で、必ずしもいま十分であるとは私も思いませんよ、日本の航空自衛隊にしても海上自衛隊にしても、その状況というものは、これはもう一般論的に考えてみた場合でも。それをどこまでのレベルまで一体上げようとしてこれからの質的な向上をお図りになろうとするのか。その辺、あるいはいままでも議論が出た問題であろうと思いますけれども、きょう私は初めて伺いますものですから、確認をしておきたいと思います。どこらあたりまで何年かけて——何年かかったって、五年かかればまたほかの方は近代兵器がどんどん進んでいくわけですからね。やはりある程度のレベルにいくためには何年ぐらいの努力目標を立てれば大体日本の現状としては十分自主防衛の機能が果たせると、こう判断なさっていらっしゃるかどうか。
  80. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) ただいまの御質問に対するお答えをいたします前に、前の御質問との関連ですが、やはり中期業務見積もりという日本防衛庁限りの——これは政府として決めたものじゃない、防衛庁限りの一つの見積もりというものを非常に高く評価して、そしてこれを早く実現をしてもらいたいという発言が大来さんにありましたよね。ですから、このことはちょっとつけ加えて申し上げておかなきゃいかぬと思います。  これは第二番目におっしゃった質的強化につながっていると思います。どこまでやったら日本防衛力というものが十分なのかということにつきましては、これはいろんな御意見があるだろうと思いますが、しかし、当面私どもとしてはいわゆる中期業務見積もりというものをできるだけ早く実現をしていくと。そして、いわゆる防衛計画大綱の線に少しでも早く持っていきたいというのが基本的な考え方ですけれども、したがいまして、議論を余り空疎なものにしないためには中業というものを、一応のこれの完遂でも二兆七、八千億、五十四年度ベースでかかる、物価ベースでかかるというんですから、これは相当大きな仕事でございます。これについて一応御説明を申し上げ、その中でも特に、それじゃ優先にはどこから手をつけていくかというようなことでこれは考えていくしかないと。基本的にはそういうふうに考えておりますので、防衛局長からひとつ中業について話してもらいます。
  81. 原徹

    政府委員原徹君) ただいま長官から御答弁をされたわけでございますが、防衛計画大綱というのは哲学が一つございまして、それで、いわゆる限定的小規模の侵略に対してどう対処するかと、要するに全面的侵攻に対して対処できることを考えていないわけでございます。それでいいかどうかという問題はまた別にあるわけでございますが、私ども日米安保条約で共同で対処をすると、そういう前提で物を考えておりまして、中期業務見積もりでいまの防衛計画大綱水準というのは、哲学的に申せば限定的小規模の対処ができる水準と、こういうことになるんであろうと思います。  まあそれでいいかどうかという問題はまた別に残っておりますけれども、私どもがいまやろうとするのは、その水準にできるだけ早くいきたいと。そのために中期業務見積もりをつくったわけでございますけれども中期業務見積もりができましても、実は量的にも必ずしも——相当改善になるとは思っております。しかし、全部その水準になるかといいますと、まだ残る部分があろうということでございます。防衛計画大綱水準をできるだけ早くするという趣旨で考えますと、それでいいかどうかという問題もまた残るわけでございますが、それは別にしまして、中期業務見積もりで何をやるかということになりますと、それは、一つは装備近代化でございますし、それから継戦能力の向上あるいは抗たん性強化、そういうことを中心にしてやってまいりたいと、そういうふうに考えておるわけでございます。
  82. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 これ以上あと時間もありませんので、また機会があれば、その事態の変化に伴ってお尋ねすることもあろうかと思うんですが、もう一つだけ、限られた時間の範囲で十分できるかどうかわかりませんけれども、先般行われましたリムパックでございますが、これはやはり結果から見ますと、集団安全保障体制の一翼をやはり日本が将来担うんではあるまいかというどうも疑問が去らないんですよ。これは、一つの共同訓練というものは、日本アメリカという、日米安保体制の枠組みの中で絶えずお互い協力し合ってという、そういう枠組みから外れた、ですからいろんな見方のある中で、むしろANZUS条約なんということよりもJANZUS条約というものに新しくつくりかえられる状況にいま変貌しつつあるんではないかという評価も一部でなされているような状況の中で、やはり太平洋の共同防衛ということを考えてみた場合に、どうしてもそういうような色彩が非常に色濃くなっていくのではないか。確かに、防衛庁設置法第五条第二十一号の規定によれば、これからどんどんいろんな共同訓練ができる、あるいはチームスピリットに日本自衛隊が参加をして、日韓米の共同訓練もそれは可能性が出てくる。そういうことがだんだん、だんだん拡大解釈されていくといろんなことが想定される。その想定される中で、自主防衛という枠を飛び越えたやはり集団安全というものにつながっていくそういう体制の中で、今後絶えず日本も一翼を担った訓練なり、あるいは実際にそういう戦闘行為が起こった場合でもその一翼を担っていくんだ。こういう疑問が消え去らないわけですけれども、その辺を全部整理して、一まとめで防衛庁としての見解をお示しいただければ大変ありがたいと思います。
  83. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) ただいまのお尋ねの、リムパック参加が将来たとえばチームスピリットあるいはJANZUSへつながるものではないだろうかという御懸念でございます。  これは、私どももリムパック参加決定の段階に至るまでの間、アメリカ側に十分このリムパックという演習の性格、目的等を事前に調査をいたしまして、その性格を確認をし、従来やっておりました外国との共同訓練の法的根拠の解釈でできるかどうか、政府部内でも十分検討いたしました。ただいま御指摘のようなJANZUSということになりますと、たとえば集団自衛権の行使を前提とした訓練、すなわちオーストラリアがたとえば攻撃をされた場合に、日本は攻撃されておらないにかかわらずオーストラリアを助けに行く、これが集団的自衛権であろうかと存じます。また、日米韓の三国一体になってのチームスピリットもあり得るんではないだろうか、こういう御懸念でございますが、これは具体的には韓国が攻撃された場合、日本が攻撃されていないのに日本自衛隊がこれを助けに行く、こういうことであろうかと存じます。これがどうも五条二十一号では読めないというのが政府の統一的な考えでございまして、現に同じANZUS諸国でも、アメリカももちろん参加しておりますが、ちょうどリムパックと一年置きぐらい、すでに三回カンガルーというのをやっておりますが、これはもうはっきりオーストラリアを防衛するんだと、こういう目的をうたっておりますし、チームスピリットは韓国を北からの攻撃に対して守るんだということを明示してやっておりまして、これらの演習には、集団的自衛権行使を前提とすることになりますので、私どもは参加をしないという政府の公式見解をすでに何回かお示しをして、いわゆる歯どめをお示しをしておるところでございます。  先ほど日米韓の三国のチームスピリットも参加の可能性が出るんではないかという御質問でございましたが、これは有権解釈として先般の予算委員会等におきまして大臣も明確に答弁いたしておりますように、これらの集団自衛権を前提とした演習には今後も参加をしないということを考えておるところでございます。
  84. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ただ、先ほどもずっと岡崎さんからの答弁もこれあり、それらを踏まえて、今後の国際情勢というものはどういうふうに変化していくのか、これは予測もつかないという情勢であることは間違いございません。ただ、いま言えることは、先般も私これ取り上げたわけですが、いま軍拡の方向へ動いていることは事実でございましょう。これはもうソビエトは特にそれがエスカレートしているんではあるまいかという、われわれはそういう大変な不安感を実は持っておるわけです。総体的に軍事力については、先ほど中東地域、極東地域における実情については大ざっぱでありましたけれどもお述べになったとおりだと思います。しかし、もっと広げてNATOだとかあるいは向こうの共産圏のワルシャワ条約機構の一連の関連の国々の軍事勢力を合わした場合に、いま大分アンバランスになってきている。そういう状況の中で、特に手薄になりつつあると言われる太平洋において、将来、可能性として考えるならば、いま御答弁があったことと逆の方向へオーストラリア、ニュージーランド等々が、やはり自由主義国家群の一員としてお互いに共同して守ろうじゃないかというような動きというものは十分可能性があるんではないかという懸念が残るものですから、確かに法律上の解釈ではおっしゃったとおりだと思うんですよ。これはもう曲げられない。けれども、状況に応じてはこれをまた法律改正をしても、やはりその辺をもっと幅広い弾力性のある日本としての対応をするこのあり方というものを考え直していくべきそういう時期も考えられるんじゃないかというようなことを含めて、その辺はいかがなものか。将来ともにわたってそういうことは全くないと断定してよろしいものかどうか、その辺はどなたにお伺い——佐々さんでいいんですか。
  85. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) リムパックの問題については、私どもの有権的な解釈についても本委員会の方で申し上げたとおりでございますが、おっしゃるような御議論がたくさん出ておることもよく承知しております。しかし、集団的自衛権というものを認めるということは、もしそういうことがあるとすれば、これは非常に大きな変更になるわけでございますので、このようなことは政府としては少なくともただいまもう毛頭考えておらないと、こう申し上げるほかにはお答えのしようがないということでございます。
  86. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それでは以上で終わります。
  87. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  88. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) ただいまから予算委員会第二分科会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和五十五年度予算中、防衛庁所管を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。丸谷金保君。
  89. 丸谷金保

    丸谷金保君 非常に空洞化したということでいろいろ問題が出ております憲法九条、この機会に改めて長官にお伺いいたしたいと思うのですが、明らかに日本国憲法は交戦権と、それに基づく戦力の保持というものを否定しているわけでございますね。この九条につきましては長官はやはり国の基本法として尊重していく、尊重してこれを守っていくということについては、考え方はお変わりございませんか。
  90. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 憲法の条章を守ることはもう当然のことでございまして、私ども憲法第九条というものは厳として国の基本方針であると、かように存じておる次第でございます。
  91. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、問題はいまの自衛隊及び防衛庁のあり方なんですが、自衛隊というのはそうするとその任務というのはどういうことになりますか、自衛隊法に出ておりますけれども長官から改めてひとつ。
  92. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 自衛隊の任務は国の——憲法第九条は、国の自衛の権利までは制限したものではないと、こういう解釈で生まれたものでございまして、国の自衛のため国土と国民を守るということのために必要な限りにおいて防衛することができると、かような解釈のもとに生まれておるのが私ども自衛隊であると、かように存じておる次第でございます。
  93. 丸谷金保

    丸谷金保君 貴重な体験をしたというふうな言葉がございます。貴重な体験、非常に尊い体験ですわね。日本の敗戦というのは、私たちは貴重な体験というよりもっと深刻に受けとめているんですが、日本の太平洋戦争の敗戦というようなものを貴重な体験として大臣はお受けとめになっておりますか。
  94. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 私ども昭和二十年、一九四五年の日本の敗戦というものは大変厳粛な事実でございまして、これをどういうふうに受けとめるかということにつきましては国民それぞれ非常に深くいろいろ考えさせられることがあると思います。貴重な体験というのは今後に向かってどういうふうに受けとめるかという意味では貴重な体験であるということが言えるかと存じておる次第でございます。  しかし、もっともっと深刻な、日本国民にとっては問題であると、しかし、貴重なという意味はこの戦争の教訓をいろいろ将来どう生かすかという意味で貴重であると、かように存じております。
  95. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は言葉の意味を確認したいんですが、貴重な体験と言えるかどうか、この体験をいかに生かしていくかということ、これは必要だと思うのですよ。しかし、貴重な体験か悲惨な体験かということになると、私はこれは貴重な体験として生かすような形でこれからの国の政策が、この三十年進んできた国の政策を含めて行われたんでは大変だと、貴重という言葉は非常に尊い体験だということなんです。しかし、あの戦争が悲惨な体験であっても貴重な体験ではないというふうに私は判断しておりますのでね。これは恐らく大臣もそうだろうと思うのですが、一体貴重な体験なのか悲惨な体験なのか。
  96. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) そういう御質問はごもっともだと思いますので、私がお答えしましたのはそういう意味も含めてお答えしたつもりでございまして、単に貴重なる体験であるというには余りにも重大なる問題でございまするので、先ほど申し上げたようなわけでございまして、貴重というのはこれからいろいろ学ぶべき点があるという意味では貴重であろうということを申し上げたんです。余りにも重大な、いろんな意味での重大な経験であったと、国民の試練であったというふうに認識しておるわけでございます。さようにお答えしたつもりでございます。
  97. 丸谷金保

    丸谷金保君 敗戦、太平洋戦争そのものの悲惨な体験の中にもいろいろこれから学ぶべきものはある、もちろんそれを学びながら戦後の日本が復興してきたわけでございます。ところが、たとえば南京事件がございましたね。これは貴重な体験とは言えませんわね。申しわけない体験でございますね。
  98. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 当然さようなことでございまして、このようなことを再びあらしめてはならぬという意味ではあるいは貴重という字は日本語じゃ当たりませんな、やっぱり。そういうことでございましょう。
  99. 丸谷金保

    丸谷金保君 原爆はどう思います。原爆による広島、長崎の悲惨な体験を、これ貴重な体験と言えるでしょうか、どうです。
  100. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) まさに日本国民がこうむった悲惨な体験であると、その典型的なものであると言うべきであろうと思います。
  101. 丸谷金保

    丸谷金保君 貴重な体験という意味は災い転じて福となすというふうな意味もあろうかと思いますけれども、しかし長崎、広島の原爆をわれわれは貴重な体験というふうな感覚で受けとめることはできないんです、悲惨な体験です。ところが、自民党さんはこれを貴重な体験という表現で何の不思議もなく原爆体験を話しておる、自民党を代表する方が。これは私は大変重大な、これはいまの日本防衛問題、それらの軸として、言葉じりをとらえるようですが、この違い、悲惨な体験なのか貴重な体験なのか、この違いは非常に重要だと思うんでしつこくお聞きするんですが、長崎、広島の原爆をよもや大臣は貴重な体験というふうな感覚でなく、むしろやっぱり悲惨な体験という認識だろうと思いますが、いかがでございましょう。
  102. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 日本語というのはいろいろな使い方がありまして、どなたがどういうふうな場合にどういうふうにお使いになったかは存じませんけれども日本語の通常の使い方では、貴重なる体験とは、原爆については貴重な体験というのは普通の日本語では当たらないというふうに私は存じております。
  103. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、実は安心をしたんですが、実は国会記録の中でそういう言葉が残っているんです。つい最近、本会議でのことでございます。特に防衛関係に非常に縁の深い方なんです。それで、私は、こういう考えで、長崎、広島を貴重な体験だというような考え方で防衛問題が論じられてくると大変だと、こう思ったので聞いたわけでございます。われわれはやっぱり戦争の悲惨な体験を、あるいは相手国になめさせた悲惨な体験、われわれが申しわけないような体験もしておりますし、国民自体としては悲惨な体験をしているんで、総体としてこの違い、この受けとめ方の違いが、いわゆる平和憲法九条に盛られた精神をどう受けとめるかという防衛の根幹にもなってくると思うんです。どうかひとつ、大臣、その点、敗戦、原爆、これらはやっぱり日本民族が受けた悲惨な体験という受けとめ方を持っていただきたい、重ねてお願いします。もう一度ひとつ。
  104. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 憲法第九条、これにつきましてはいろいろな解釈が国会の中でも論議されて、異論がいろいろございますけれども、ややコンセンサスとまでいくかどうか、固まった解釈があると思います。私ども政府としては統一見解を持っております。これに過不足なく私どもはその考え方で徹するということでいかなければならぬと、かように考えておる次第でございます。
  105. 丸谷金保

    丸谷金保君 同僚議員ですからあえてここで名前は出しません。もしそんなばかなことないと言うのであれば、私のところに記録もございますので、後でお見せいたしますが、貴重というのはやっぱりある意味でとうとい体験だと、この失敗はとうとい体験だと、こういうことはありますよ、人生にもありますしね。そういう意味での貴重と。しかし、この敗戦、原爆の洗礼、これらはとうとい体験ではないんで、そして、その悲惨な体験から日本は平和国家に徹しようと、こういう決意をしたわけでございますね。ですから、これはもう貴重な体験だから、これをひとつこの負けた体験を生かしてというふうなことではないはずなんで、そこに防衛の限界も当然出てこなければならぬと、かように考えますが、いかがですか。
  106. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 私は貴重なと悲惨なだけが対立をされてあるというふうには実は考えておりませんけれども、もっといろんな見方があると思っておりまするけれども、これはとにかく、事実としての前の戦争の経験、これによって憲法が決まり、そしてその憲法のもとに実は先ほど申し上げた意味での自衛のための自衛隊ができておるということでございますから、その本義をわきまえなければならぬということについては、おっしゃる御趣旨はそういうことだと思いますので、さように存じております。
  107. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで具体的な問題に入らしていただきたいと思うんですが、自衛隊は、防衛庁設置法その他で任務は決められておりますが、これは外国の侵略に対してのみ発動するというふうに理解してよろしゅうございますね、自衛隊法第三条。
  108. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 外国の侵略には違いありませんが、これは申し上げるまでもなく、「国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛する」、お説のとおりでございます。
  109. 丸谷金保

    丸谷金保君 どちらも侵略ですわね。  それで、この間接侵略の問題につきましては、この委員会でもしばしば取り上げられて、この限度についてはきわめて微妙なやりとりがなされておりますが、直接侵略、現に行われておる直接侵略について前防衛庁長官に御質問申し上げたんですが、なかなか歯切れのいい答弁をいただけないで、後ろの方でつくられた答弁をそのまま何遍でも同じようにお読みになる。こういうことでは困ったなと思ったらおかわりになったので、今度はそういうことはないんじゃなかろうかと思うんですが、竹島の現状について、防衛庁ではどういうふうな調査と認識を持っておられましょうか。
  110. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 竹島でございますが、竹島はわが国の固有の領土でありますが、現在韓国によって不法に占拠されておるというのが従来からの政府の認識でございます。
  111. 丸谷金保

    丸谷金保君 この自衛隊法施行令の別表第二にある中部方面隊、この防衛範囲に入っておりますか。
  112. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 警備区域の中に入っております。
  113. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、警備をしておるということですね。
  114. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 警備をしておるわけでございます。
  115. 丸谷金保

    丸谷金保君 現況を……。ごく最近の状況、どうでございますか。
  116. 原徹

    政府委員原徹君) 直接的には、海上保安庁がときどきそのそばまで行っていろいろの事情を調べているということでございまして、自衛隊が直接監視その他の行動をとったことはないと承知しております。
  117. 丸谷金保

    丸谷金保君 警備区域で、警備をしておるという御答弁がいまあったばかりですが、状況はわからないということですか。
  118. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 中部方面隊の警備区域に島根県が入っておりますから、そういう意味で中部方面隊の警備区域にあるというふうに申し上げたのでありますが、実際の警備行動をしておるかどうかについては、いま防衛局長がお答えしましたように、実際に陸上自衛隊なり自衛隊が行って警備しておるということはしておりません。
  119. 丸谷金保

    丸谷金保君 自衛隊員というのは国家公務員でございますね。そうすると、国家公務員は職務専念義務というのがございます。警備区域を警備していないことは職務専念義務違反になりませんか。
  120. 原徹

    政府委員原徹君) 警備区域というのは海上自衛隊の警備区域の中に入るということで、一般的に海上自衛隊の警備区域の中に入っているわけでございまして、そういうことでございますが、竹島につきましては現在の状態、わが国の何といいますか、支配が及んでいないのではないかと思いますが、そういう状態でございますから、特に警備ということで行動をしているということがないわけでございます。
  121. 丸谷金保

    丸谷金保君 あそこはマッカーサーラインの中でございましたね。
  122. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) お説のとおりでございます。
  123. 丸谷金保

    丸谷金保君 サンフランシスコ条約によると、マッカーサーラインの中ということで、順次アメリカ政府からそれぞれの日本付近の島嶼の返還を受けて、日本の行政権が及ぶというふうな形を逐次とってまいりましたね。そういう中で、竹島も明らかにそういう点で返還を受けた。その証拠として、返還を受けてからあそこは島根県隠岐島の五箇村というところの地域に入っております。〇・二三平方キロメートルの島ですが、これが地方交付税の基準財政需要額の基準の中に面積としても入っておるんです、明らかに。五箇村は、あそこは自分の領土として、自分の行政区域内として交付税の配付は受けている。だから、そういう点から言えば当然自衛隊としては警備しなきゃならないんじゃないですか。ただ、それは命令がなけりゃ警備できないということはあると思いますよ。だから逆に言うと、なぜそういう命令が出せないのかということです。
  124. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ただいま丸谷委員御指摘のとおり、アメリカとの関係ではわが方に当然に帰属するものとして扱われておるわけですが、その過程におきまして、御承知のとおり韓国側による不法な占拠が行われているという事実は遺憾ながら今日まで続いておるわけでございます。この事態をどのように解決するかにつきまして、外務省としましてはこれをあくまでも外交ルートを通じまして平和的に解決したい。それがその後もはかばかしく進展していないという御叱責はこうむるかもしれませんが、そのような方向で対処いたしておる次第でございます。
  125. 丸谷金保

    丸谷金保君 直接侵略、間接侵略の中で、間接侵略の問題はいろいろ論議されておりますが、これは具体的に日本の側から見れば直接侵略というふうに考えられますが、あえてそれを不法占拠と、侵略と不法占拠とどう違うんですか。
  126. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 正確には外務省の条約局長から御答弁申し上げる事柄かと存じますが、一応終戦後のどさくさに紛れて不法に占拠されたと、現実に韓国の軍隊が日本に向かって軍事的な行動を起こした帰結による事態ではないと、かように一応考えられるのではないかと思う次第でございます。
  127. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると韓国側——韓国側というか、外国が一方的に日本に武力によらないで上陸して、そこに陣地を構築し、日本漁船が近づくと機関銃を撃つと、こういう状態でもそれはあれですか、侵略じゃないんですか。
  128. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 確かに御指摘のように構築物を設けて、たとえば海上保安庁の巡視艇が参りますとそこから立ち退くような強制を受けておるわけでございますが、かたがた、漁船による安全操業の問題につきましては、一応この領有権の問題と切り離しまして、鋭意韓国側と折衝いたしておる次第でございます。現実には一応韓国側としても日本漁民の困難な立場というものにつきましては一応の理解を示しておりまして、したがいまして銃撃を受けるというような不祥事件は幸いにして起こっていないのがただいまの状況と判断いたしております。
  129. 丸谷金保

    丸谷金保君 ただいまの状況なんですよね。というのは、まだ漁に行ってないんです。五月から始まるんですよ、イカ釣りが。そうすると、それまでは——いま行ってないんですから、それは銃撃されないんですよ。去年はどうでした。
  130. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 昨年は銃撃というようなことはなかったように承知いたしております。ただ、臨検を受けたということは事実でございます。  それから、ことしの五月以降の出漁に際しましては安全に操業ができるものとの期待のみならず、心証を私どもは得ております。
  131. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、その自衛隊のいないところに向こうが上がってきて、わが国の明らかに領土を侵略しても、これは侵略でないということになりますね。これは非常に大変なことだと思うんです。
  132. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 侵略であるかないかという定義の問題は、これはきわめてむずかしい問題でございます。確かに、十分御意には沿い得てないうらみはございますが、私どもとしましては、とにかくこれを不法に占拠されているということで、鋭意平和的に外交交渉で何とか解決したいと念願しておる次第でございます。
  133. 丸谷金保

    丸谷金保君 自衛隊はその直接、間接の侵略に対して国及び国民の生命、財産を守るという設置法の精神からいいますと、侵略があったかなかったかというのはどこで決めるんですか、この最終的な決定は。それは外務省じゃないですわね。
  134. 原徹

    政府委員原徹君) 最終的には、まあ自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣で、内閣総理大臣がそういう事態を認定した場合は「防衛出動」を出すわけでございますから、内閣総理大臣が「防衛出動」を出すと、そういうことでございます。
  135. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうするとこの場合、竹島は、内閣総理大臣は侵略でないと、こう認めておると判断してよろしゅうございますね。
  136. 原徹

    政府委員原徹君) 侵略であるかないかは、まあ外務省いま不法占拠だと申しておるわけでございますが、自衛権を行使するための三要件というのがございます。要するに、まあ実力で排除する以外に他に手段がないときに自衛権は発動すると、そういうことでございます。他に手段があるかどうかということになりまして、その場合、ただいま日本政府といたしましては、これを外交的に解決すると、その手段で解決するのだということでございますので、そういう武力による実力行使はしない、これは日本政府のまあ政策でございます。
  137. 丸谷金保

    丸谷金保君 大変微妙な問題なんですがね。実は、そういう外交交渉でと言っておりますけれども、地元の漁民にするとこれ大変なことなんです、漁業権もありますしね。一体こういう事態を守ってもらえないのか、どうして韓国に対してそんなに弱腰なのか。それからまた、そこでトラブルを起こさないためのいろんな話し合いが進められるために、今度は北海道の漁民が困っちゃうんです。北海道の方にしてみると、西の方のそういったいろんなトラブルをできるだけ起こさないためにある程度韓国側に目をつぶってもらって、韓国側が不法占拠していると称する地域の近くまで行って魚をとらしてもらう、こちらの方でトラブルが起こらないような話し合いが進めば、今度は北海道の方では逆にどんどん入ってきて韓国が魚をとるということとそれぞれ有無相通じながら、政府はきわめて優柔不断な態度をとっているんではないか。そのためにそういうことがとれない政府、それから微妙な発言しかできない自衛隊、大体自衛隊というのは何なんだ、間接侵略の、イランがどうだとかこうだとかいうことよりも、現実のやはりわが国土で起こっている問題の解決、足元の解決もできないでリムパックだとかいろんなこと言ったってこれは始まらないと思うんですよ。そこら辺に対して防衛庁長官、少し閣内でしゃっきりと物を言っていただきたいんですが、いかがですか。
  138. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 実は私は島根県選出の者なので、竹島問題につきましては特に重大な関心を持っております。もうただいまあなたがおっしゃいまするように大変困った問題、しかも大変デリケートな問題でございます。このような状態で長く放置することは許されるべきことではないというふうに思っております。しかし、そのことが直ちに自衛隊どうこうということにはつながるとは必ずしも思っておりません。先ほど来の御質問にもございましたわけですが、日本のどこかの場所に他の国の軍の施設が構築されて、たとえ一個小隊でも一個分隊でもおるということになればこれは大変な問題でございましょう。ただ、どこでもとは多少事情が竹島は異なることは認めるべきではなかろうかと思います。それは、韓国の立場もあることはあるようでございますから、私どもは、しかしあくまでもこれは日本の領土であり島根県である、島根県の沖の五箇村である、かように承知しておるわけでございますけれども、向こうはそうではないと言っておるようでございます。しかし、そういう状態でございまするので、これについてはあくまでも外交交渉で、先ほど外務省からも説明がありましたが、これまでも外務大臣がしばしば、歴代といってもいいぐらい言っておられる、私どもにも言っておられるわけで、私の閣僚になる前でございますけれども言っておられるわけでございますが、これはやはり便便と長く放てきすべき問題じゃない、外交交渉で何らかの見通しをはっきりさせませんと、ある状態が長くなるということになるわけでございますから、これは私は憂慮すべき状態である、かように存じておる次第でございます。  やや防衛庁長官より外れておる答弁かもしれませんが、さように存じております。
  139. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、最後に私の方からそれを聞こうと思ったんですが、長官の方から……。  実は、この間も知事さんにお会いしてきました。頭抱えています。それからまた、五月になればいろいろトラブル起きると言うんです。それと、特に大事なのは、長官、地元選出の国会議員さんのところへ頼みに行くときわめて歯切れが悪い。特に与党の議員さんのところへ漁民が頼みに行ってもどうもすっきりしない。そういう印象を受けた人たちが、私のところへ自治体関係の人も来るんです。来ての話で、それから調査に入ったのですが、いろいろな韓国とのトラブル、それから交渉、こういうものを調べてみました。しかし、どうしても納得がいかないのは、少なくとも韓国には経済援助その他では日本もカードを持っているはずなんです。カードを持っていながら、この種の問題一つ解決できない。だからソウルの地下鉄汚職問題とかなんとか、いろいろなうわさが飛び交うんです。だから韓国に弱いんじゃないかと。自衛隊まさかそういうことないと思いますけれども、ひとつその点で防衛庁長官、現実に行われている侵略、外交交渉でやる場合でももう少し、よく事情を覚えておられるんですから、カードを持っている日本としての攻め方について、余り韓国側におどかされるようなことのない主張を閣僚会議でもしていただきたいということを要望して、最後に決意をお聞きして終わらしていただきたいと思います。
  140. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 大変貴重な御意見を賜りまして恐縮に存じます。島根県選出の国会議員としてでなくて防衛庁長官として、ただいまの点は十分ひとつ頭に入れまして、政府の中でさらに努力をさせていただきたい、かように存じます。
  141. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 以上で丸谷金保君の質疑を終わります。  次に、渡辺武君。
  142. 渡辺武

    渡辺武君 防衛庁が認可してつくられております公益法人で防衛施設周辺整備協会というものがございますけれども、これは現在やっている主な業務、これはどんな業務をやっておられるのか、それからその支所の所在地と数、それから職員の数、これをまずお答えいただきたい。
  143. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 周辺整備協会が行っております主な業務の概要は、一番が、防衛施設周辺におきます生活環境の実態調査及び環境保全への対策についての調査研究であります。二番が、防衛施設周辺におきます地域開発の実態調査及び防衛施設と地域開発との調和を図るための対策についての調査研究であります。三番は、前二号に掲げます事業に係る刊行物の発行及び講演会等の開催であります。四番は、防衛施設周辺におきまして、国、地方公共団体が行う環境保全への対策及び防衛施設と地域開発との調和を図るための対策についての協力であります。五番は、前各号に掲げます事項に関し、国、地方公共団体、個人等から委託等を受けて行う事業であります。これらは寄付行為において定められておる仕事であります。  次に、お尋ねの支所等の所在地でございますが、本部は東京都港区芝三丁目四十一番八号にございます。そのほかに、北海道支所が千歳市に、東北支所、これは仙台市に、青森出張所、これは青森県三沢市に、東京支所、これは東京都福生市に、茨城出張所、茨城県東茨城郡小川町に、埼玉支所、埼玉県狭山市入間川に、静岡支所、静岡県浜松市に、岐阜支所、岐阜県各務原市に、石川出張所、石川県小松市に、中国支所、山口県岩国市に、九州支所、福岡県行橋市に、宮崎出張所、宮崎県児湯郡新富町に、沖繩支所、沖繩県中頭郡嘉手納町にございます。  職員につきましては、総合計百四十八名が配置されております。
  144. 渡辺武

    渡辺武君 いま伺ったその業務ですね、あなたはこの整備協会の寄付行為の事業をただ読まれただけですね。私が聞いているのは、いま協会で現実にやっている主な業務は何ですかということを伺っているんです。
  145. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 御指摘のとおり、ただいま御報告申し上げましたのは寄付行為に定めました本協会がなすことと定められておる業務でございますが、昭和五十四年度におきまして何をやっておるかという現実の問題でございますが、それは、先ほどの一番最初申しました問題につきましては、コンターを作成したりあるいは住宅防音工事の調査研究をしておるというのが実情でございます。  二番目に申し上げました地域開発との調和の問題につきましては、厚木、佐世保基地等の周辺地域におきまして調和の問題を調査研究を行っております。  三番目に申し上げました刊行物の発行等これらの問題につきましては、「補助金便覧」とか防衛施設庁広報とかいう種類のものを発行いたしております。  四番目に申し上げました問題につきましては、航空機の騒音度の調査、告示済みの飛行場の航空写真の写真図の作成、これは環境保全の問題といたしまして周辺におきますテレビ受信機等の小修理を行う、あるいは知識交流を行う、こういう種類の仕事をしております。  五番目に申し上げました問題につきましては、防音量及び民生安定事業に関します実態調査を行っております。そのほかに緑地管理等の業務を行っております。  これが防衛施設周辺整備協会の現状でございますが、五番目に申し上げました「前各号に掲げる事項に関し、国・地方公共団体・個人等から委託等を受けて行う事業」というものの中に、協会が収益を兼ねて行っております事業といたしまして住宅防音工事の援助事務を行っておるというのが実情でございます。
  146. 渡辺武

    渡辺武君 だから、いろいろ挙げたけれども、結局一番最後のこれが一番主な業務でしょう。つまり、基地の周辺の住宅の防音工事、これの補助金の交付の申請書類の作成、それから申請の代行、それから補助事業の着手や完了や実績の報告書の作成とその届け出の代行、これがいまやっている主な業務でしょう。どうですか。
  147. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 先ほど定款の規定を御報告申し上げましたが、財団法人でございますから事業量の大小の問題はそれは種類によってございます。しかし、掲げました公益目的を達成するために財団法人というのはあるわけでございますので、各般にこうして手を広げてやっておるわけでございますが、財団法人を維持していきますためには相当量の収益事業をやらなければなりません。したがいまして、外見的にごらんになりまして個人の住宅防音工事の援助をするという仕事が主業務に見えるのは、これは先生の御指摘のとおりだと思いますが、財団法人としましては掲げました公益事業を追求しておるというふうに御理解賜りたいと思います。
  148. 渡辺武

    渡辺武君 いろいろもやもやした答弁なんだけれども、実際やっているものは、そしてまた、国から金を受け取っているいわゆる収益事業ですね、これは結局のところ防音工事に伴う補助金交付申請の書類、これをつくっている。そして一般の住民にかわってこれを届け出る、その代行業務をやっている。それから補助事業の着手や完了や実績、これの報告書をつくることとそしてそれを届け出る、その届け出の代行をやっているということだと思うんですね。  会計検査院の方に伺うんですけれども、大体いま私が申し上げたような業務ですね、これが周辺整備協会のいまやっている仕事の中の主なものだというふうに見て差しつかえないと思いますが、どうですか。
  149. 行方敬信

    説明員(行方敬信君) ただいまの御質問でございますが、協会は補助事業者である個々の個人から委託を受けましてその事業を実施いたしておりまして、国の方から直接補助金の交付を受けましてそのような事業を実施しているという筋合いのものではございません。したがいまして、私どもといたしましてはこの内容の調査、検査ということはなかなかむずかしい点があるわけでございますが、結局は事務費を対象とするという形になりますので、補助金の多寡にはね返ってくる。そういう形で私どもも関心は従来持っていたところでございます。  その関係から私どもが知り得た範囲のことを申し上げますと、確かに先生おっしゃるような補助金の交付申請あるいは完了報告書の作成、これらに関する協力というものを協会はやっておると思いますが、そのほかにも現地の補助事業に対する需要の有無あるいは現地説明、あるいはその後工事を実施するに当たりまして施工業者とは非常に頻繁な調整が要ると思いますけれども、これらに関するいわば工事のマネージメントといったようなものについてもかなり業務のウエートを割いているとは考えております。
  150. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 渡辺委員のお尋ねの仕事の内容でございますが、御指摘の補助金の交付申請、完了報告、一見私どもの耳には非常に書類事務的な点を御指摘されましたように承りましたのでございますが、この点につきまして私自身、理事長と現実の仕事の実態というものをよく調べて検討し合ったことがございますけれども、現実にやっておる仕事は、当時は確かに書類作成事務が主になるのではないかということで発足をしたわけでございますけれども、いざ仕事を始めてみますと、実際は住宅防音工事を実施いたしますために設計を決め、そして業者を選び、そしてそれらの間で必要な許可や証明をもらい、そしてあるいは現場の工事の執行に立ち合い、または検査に立ち会うというような手数が圧倒的に多うございまして、実際の仕事の内容といたしましては、純粋に交付申請、完了報告等の書類の調製という仕事はほとんどネグリジブルである。たとえば一つの計算でございますけれども平均的に調べてみますと、一軒の家を住宅防音工事をいたします際に約十一、二日ぐらいかかる計算になる。その十一、二日ぐらいの間で書類の調製、作成というような事務はいままでのところ、研究では大体二日前後ではなかろうか、あるいはもっと短くなっておる。これは職員が書類作成に堪能になるに従いまして、純粋に書類作成という問題は非常に小さくなっておりまして、したがいまして、現在やっておる防衛施設周辺整備協会の実務の実態を申し上げますと、先ほど私が援助という言葉を使いましたが、住宅防音工事を円満に遂行していくためのもろもろの発生いたします作業を代行しておるということかと存じます。
  151. 渡辺武

    渡辺武君 自治省の方に伺います。  いまお聞きの周辺整備協会が基地周辺の住民から依頼を受けて、そして補助金の交付の申請書類の作成やその申請の代行、それから補助事業の着手や完了や実績などの報告書の作成それからその届け出の代行、こんなふうな仕事はこれは行政書士の仕事になるんじゃないかと思いますが、行政書士の業務ですね、これはどういう業務でございますか。
  152. 中村瑞夫

    説明員(中村瑞夫君) 御説明申し上げます。  行政書士の業務につきましては、行政書士法第一条に規定がされておりますが、「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること」ということでございますので、いまお尋ねのありました事柄のうち、防衛施設局なりあるいは防衛施設庁なりに提出をいたします書類を作成する業務が行政書士法の業務になるということであろうかと思います。
  153. 渡辺武

    渡辺武君 そうすると、その行政書士の報酬の基準額はどのくらいでございますか。
  154. 中村瑞夫

    説明員(中村瑞夫君) 現在、行政書士の報酬の額は各都道府県行政書士会の会則で定める額以内で定めるということになっておるわけでございますが、その行政書士会の定める報酬の基準は三つの書類の種類がございまして、考案を要しない書類、考案を要する書類、高度の考案を要する書類ということになっております。  第一の考案を要しない書類につきましては一枚につき四百円、考案を要する書類につきましては一枚につき八百円、そして、高度の考案を要する書類につきましては一枚につきまして千六百五十円というふうに定められております。
  155. 渡辺武

    渡辺武君 その書類をコピーする場合ですね、これはどんな基準になっていますか。
  156. 中村瑞夫

    説明員(中村瑞夫君) これはいまほど申し上げましたように、行政書士会の会則で定められておりますのが限度額でございますので、私いまその額を申し上げたわけでございますが、コピー等をする場合には従来の各行政書士の業務の実態から申しますと、半額でございますとか、あるいは七割程度であるとか、その辺のところであるように聞いております。
  157. 渡辺武

    渡辺武君 そうすると、周辺整備協会がとにかく他人の依頼を受けて、そして官公署に届け出る書類の作成をやるという仕事ですね、私は実態を聞いてみると、ほとんどこれしかやってないというのが実態なんですね。岩国その他実際実情を聞いてみるとそういうことなんです。いろんなことは先ほど御答弁ありましたけれども、実態はまさにそういうことなんですよ。  そうすると、いま申しました行政書士の標準報酬額、これで若干概略計算してみますと、大体聞いてみますと一戸当たりの防音工事に要する書類ですね、六枚くらいだというんですね。そうすると、大体こんなものは形式の決まったものだから、そう頭を使う必要がないんです。だから、考案を要しないもの、一枚四百円、これが行政書士の標準の報酬額、それを六枚つくったとしますと二千四百円で済む。そして、たとえばこれを五部コピーしたというふうにしまして、先ほどおっしゃった半分もしくは七割と、その高い方の七割で計算してみますと、そうすると大体コピー料が八千四百円と、こうなる。そうしますと、書類の作成の場合の二千四百円にコピー料の八千四百円、これを加えて一万八百円で済むんですよ。それから仮に考案を要するもの、これは考案を要しないもの四百円の二倍ですね、八百円と先ほどおっしゃった。だからその場合でもそのわずかに二倍程度二万円とちょっとと、二万一千六百円くらい、これで済むんですね。これがいまの周辺整備協会の主要な仕事の、同じ業務をやっている行政書士が受け取っている報酬と同じことだというふうに見て私、差し支えないと思うんです。  ところで防衛庁に伺いたいんですけれども防衛庁は協会に対して一戸当たりの手数料ですね、いわゆる事務費、これをどのくらいこの予算として組んでいるのか。
  158. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 一戸当たりというお尋ねでございますが、計算されます工事価格の六・五%を上限とするということにいたしまして、百万円を超える工事につきましては六万五千円で打ちどめということで、現在は大部分が六万五千円で行われております。
  159. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、行政書士とほとんど変わらないような仕事をして、行政書士の場合であったら、高い場合でも二万一、二千円と、これで済むんですね。何で周辺整備協会の場合には、大体まあ六万五千円とおっしゃった、そんなにたくさんの事務費を一体払っているのか。私、これ不思議でたまらない。これはとんでもない国費の浪費になります。というのは、いまこの防音工事をやらなきゃならぬ人家ですね、数どんどんふえていっているんです。念のため、伺いたいんですけれども、協会が設立されて以来支払った手数料、これの年度ごとの額とその合計額、これ、幾らになっていますか。
  160. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 協会設立以来支払いました年度別の手数料は、五十二年が四億一千七百万円、五十三年が六億一千六百万円でございます。
  161. 渡辺武

    渡辺武君 五十四年度は。
  162. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 五十四年度はまだ現在進行中でございまして。
  163. 渡辺武

    渡辺武君 大体予定はどのぐらい。
  164. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 予定は、五十三年が六億ぐらいでございますから、恐らく二五%くらい増のものになるのではないかと思います。
  165. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、二十億円以上もの金が協会設立以来、協会に対する事務費としてもう防衛庁から支払われている。行政書士とほとんど変わらない仕事をやっていて、あなた方いろいろ言うけれども、現地の実態は全くそのとおりなんです。行政書士とほとんど変わらない、そういう仕事をやっているところに一戸当たりについて六万五千円も事務費を手数料として払っていて、すでに二十億円以上もの国費が使われている、これは私はとんでもない国費の浪費だと思いますよ。たとえば岩国の例で申しますと、事務員はこれは所長さん含めて八人、その八人の協会の支部が一戸当たり六万五千円で計算しまして五十二年から五十四年までの三年間、二千二百戸の防音工事を仲介している。そうしますと、どのくらいの手数料が入ったか、一億四千三百万円になる。それから築城の場合ですと、やはり七、八名の従業員がいるだけであって、そして約二千戸ですね、これの工事をやっている。六万五千円で計算してみますと、これまた一億二、三千万円という額になるんですね。もうとにかく人数に比べても異常に高い報酬、収入がある。どうしてこんなことをやるのか、もう不思議でたまらぬですよね。  それでなお伺いたいと思いますけれども、こういう整備協会ができる以前は、一体どういう形で防音工事のこういう書類の作成とか届け出だとかそういうことをやっていたんですか。
  166. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 住宅防音工事が本格化いたしましたのは大変新しいことでございまして、当初のうち非常に数の少ないときには、現実に現在整備協会がやっておりますような実務を個人がやられまして、相当部分をその個人がお願いをしております設計事務所にサービスとして手伝ってもらう、そういう形、防衛施設局の職員が細細と御指導申し上げながらやっておった。しかしそれは非常に数の少ない初期の段階においては可能でございましたが、こうして数がふえてまいりますと、そのやり方ではやっていけない。しからば一番効率的な、しかも個人がやられますので最も廉価につくやり方はないかということで、こういうふうな御支援をするということになってきた次第でございます。
  167. 渡辺武

    渡辺武君 廉価につくと言うけれども、廉価じゃないですよ。一戸当たり六万五千円、ただ決まりきった形式の書類を書いて、そういて防衛施設局に持っていくだけでしょうが。一戸当たり六万五千円も金を出して、何が廉価だって言うんですか。  私、現実に調べてみた。たとえば沖繩の嘉手納町、ここでは七五年から七八年までの三年間、たった一人の職員が実に千五百四十九戸、これの防音工事の事務手続の処理をやっている。あなた方、自治体の職員がこういう仕事をやってくれたときに、いままで委託事務費出しておりますか。
  168. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 先生御質問のお立場が、やっておる仕事はその書類調製だけだという御認識の上でお尋ねになりますと、六万五千円は安くないと、こういう御指摘になると思いますが、先ほど簡単に申し上げましたように、現実のこの仕事は、一般常識で御想像いただきましても、現在住んでおる家の一室を大工さんあるいは工事会社の作業員を入れまして自分の気に入るような状態において、かつ厳密に防音効果が上がるような工事を施工するわけでございます。ただ書類をつくれば工事ができるわけじゃございません。工事を実施するのには、個人が家を建てますときにも、工事の見積もり準備、そういうことでたくさんの手数がかかるものでございます。ちなみに申し上げますと、先ほどは十日余りという数字計算上申し上げたんでございますが、私の手元にあります一つの実例でございますと、この工事を全く整備協会等は使わないで個人で完全にやられたという実例もございます。その場合には、その方は十八日間そのために休んでおられます。それだけの人日が工事を行うためには必要であるというようなことは、これは世間の実際の建築というものの常識として御理解を賜れるところじゃないかと思いますが、先ほど申しましたように、書類の作成事務というのは、非常に現在は熟達いたしまして、こういう整備協会の職員がやりますと非常に微少なマンアワーしか必要でないという状態になっておりますので、実際にやっておる仕事は建築そのものを円滑に遂行していくための各般の作業を代行しておるということでございます。  なお、お尋ねの自治体の関係でございますが、地方自治体へはいままで事務を委任をしたことはございません。発足当初におきまして、そういう新しい複雑な仕事を各個人個人が思いがけなくやらないかぬということになりますので、地方自治体の方々が好意的にお手伝いをしてくださったという時期はございますが、役所から公共団体の方へ事務を委任したことはございません。
  169. 渡辺武

    渡辺武君 役所から正式に事務を委任すれば、地方事務費を払わなきゃならぬわけですね。一銭も払ってない。そうでしょう。地域の住民が自分でやっていく上で、いろいろ地方自治体の窓口へ行って相談する。そうすると窓口の人は、忙しい中にもかかわらず、一生懸命になって地域住民のために努力して処理してあげてきたわけですよ。それに対して一銭も払ってない。これは悪いことだと思います。悪いことだと思うけれども、同時に国の金の使い道として見れば、いままでは一銭もかからなかった。それでいま申しましたように、一人の職員で三年間に千五百五十戸近くも処理できている。それを整備協会なんというものをつくって、一戸当たり六万五千円も事務費を払っている。大変な浪費です、これは。しかもあなた、やれ設計をしなきゃならぬとか等々言うけれども、これは協会の仕事じゃないでしょうが。協会がね、設計の場合にはちゃんとその担当の専門家に設計をさして、その費用は別途払っているわけでしょう。うそ言っちゃだめですよ。私はちゃんと実態調べているんだから。長官どうです、この実態。私の言う方が間違いか、いまの御答弁が本当なのか、実態調べてくれますか。
  170. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 実態についての先生の御認識と……
  171. 渡辺武

    渡辺武君 答弁ちょっと簡略にしてください、私の聞いたことについて。
  172. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 私の申し上げているのと大分食い達っているわけでございますが、印鑑証明とか住民票とか謄本とか、こういう各種の証明書の取りつけが必要であります。それから住宅防音工事の申し込みという作業が必要であります。設計監理業者と打ち合わせまして、業者を決定し、図面、積算書の決定をしてもらうことが必要であります。補助事業等の交付の申請、この書類を作成すると同時に、これを進達し、かつ審査を求めなければなりません。施工業者の決定もしなければなりません。補助事業等の着手の報告もしていかなければなりません。施工中の立ち会い、これは何回もやらなければなりません。それから遂行状況の報告もしなければなりません。完了報告、実績報告と、こういうふうな実際に書類事務とは違いますこの工事を円滑にするための作業量というものは、先生御指摘のようなしかく単純なものではございませんで、相当の人手を食っておるのが実情でございますので、御理解賜りたいと思います。
  173. 渡辺武

    渡辺武君 長官、実態を調べてくれますか。
  174. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 私どもが監督しております公益法人の仕事のやり方についての御批判でございまするので、先ほど来いろいろ施設庁長官からお答えいたしておりまするけれども、なお先生から実態についてのいろいろな御指摘もございますので、私としましてはさらにこれは調査をさせていただきたいと存じております。けしからぬことがあればやめさせなきゃいけませんから。さように存じております。
  175. 渡辺武

    渡辺武君 けしからぬことがあればやめさせなきゃならぬとおっしゃったが、そのけしからぬことをやっているんですよ。いいですか。岩国の例で言いますとね、協会がこれが二十三の建設業者を指定しているんですね、工事を担当する業者としてです。これはほとんど岩国では大手の建設業者。そうして協会が防音工事を受けるべき住宅を二十戸ぐらいずつ一ブロックまとめましてね、そうして業者に対しておまえはここのブロックの工事をやれ、おまえはここの工事をやれというふうに指定をしている。割り振りをしている。そうして工事の設計の見積もりだとかなんとかいうようなことは全部それら業者にやらしているんですよ、協会がやっているわけじゃないんです、いまおっしゃったようなことはね。みんなそれらの業者にやらしている。協会はただ書類をつくって出すだけですよ。防音工事をやるに必要な実務というのはみんなそういう連中にやらしているのだ。  ところで、こういう二十戸ずつブロックつくって、そして業者を指定していて、おまえここをやれ、おまえここをやれというふうに割り振るという、こういうやり方、これは一体協会の寄付行為に反したことじゃないでしょうか。どうですか。
  176. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 業者選定問題につきましては、先生御指摘のような見方もあろうかとも思いますが、私どもの方で協会の実施しておるのを見ましたところでは、やはりその主眼といたしますのは、防音効果を確実になし得る技術水準に達しておる業者にやっていただいて、そして住民の方々がせっかく施工いたしますから、補助目的を完全に達成するということを主眼にして業者の選定をしているというふうに私どもは承知しております。  なお、御指摘の岩国におきまして二十戸くらいずつに分けておるというお話でございますが、協会の言い分を聞いてみますと、このようなグルーピングをするのも、ばらばらの業者が入り組んでやりますとどうしても初度的経費がダブってかかってまいりますが、これを効率的にやるためにはやはり一つの業者があるグループを統一してやるときに初度経費等が節約できるというようなメリットを考えて指導しておるように伺っております。
  177. 渡辺武

    渡辺武君 大体原則はこの防音工事をやるべき民家が、これが自分がやってほしい業者を選んでやってもらうというのが私は原則でなけりゃならぬと思う。したがって、どの業者でもこれはみんな県知事の認可を受けて、そして十分の能力を持った業者として事業、仕事をやっておるわけですから、そういう人たちを排除して特定の業者だけを指定をして工事を割り当ててやらせる。これは私は越権行為だと思うのですね、寄付行為違反だと思う。  それだけじゃないのです。私、ここに陳情書を一つ持ってまいりました。これは岩国冷凍空調設備協会、会長は叶谷徳之助さんという方ですが、呉防衛施設局の局長の木梨一雄さんあてに陳情書を出している。これはどういう陳情書かといいますと、自分たちは零細企業だと、いままでも空調工事でもってずっと仕事をやってきている、十分に能力もある。ところが全然指定されないために空調工事を受けることができないのだと、だからぜひわれわれに対しても施策の一端を担わせていただきたいということで陳情書が出ている。ところが、これを防衛施設局へ持っていったら、こんなもの持って帰れといって突っ返された、これが実態なんですよ。  こういうことは防衛施設局とそして協会とが何かくされ縁があって、そうしてこういう協会の越権行為、これを施設局がいわば協力してやらしておるというふうにしか私思えない。実態を調べて、そして特にやっぱり騒音で苦しんでいるのはこれは地元の業者ですから、だから地域の住民の人たちがこういう叶谷さんが会長をしておられる冷凍空調設備協会、ここで防音工事をやっていただいても結構だということであれば、当然これはやらして差し支えないものじゃないかというふうに思いますが、その点、長官どうですか。改めるとおっしゃったのだから——時間の関係があるから、長官言ってください。
  178. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 岩国におきまして協会がやっておりますのは、補助事業者から委託を受けまして請負業者との調整を行っているわけでございますが、補助事業者の利便、工事の適正、こういう観点から、まず岩国市の登録業者であること、岩国市に登録をしておる、それから岩国市の建築協会に加入しておる、岩国市に営業の本拠を有する地元業者であることというような三点の条件を満たす者の中から選定をして、あっせんをし、協力を行っている。こういうふうな報告を受けております。しかし、いま御指摘のようお話が出ますのは、やはりこの業界においても非常に熾烈な競争がございまして、立場立場によりましてそれぞれの主張がございます。したがいまして、今後におきましても住民の意向や請負業者の実情等をよく勘案いたしまして適正な指導をしていきたいと存じております。
  179. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 陳情書を持って帰れなんという話はどうも余り聞いたこともないんですが、そのようなことは大変よくないことでございますね、ありとすれば。
  180. 渡辺武

    渡辺武君 実際あったのですよ。
  181. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) ですから、いま施設庁長官からもお答えしましたが、先ほども申し上げましたように調べまして、まあいろいろな事情もあるだろうと思いますが、世間一般に通る話でなきゃいけませんからね。これはあたりまえのことでございますから、十分ひとつ気をつけてまいりたいと、かように存じておる次第でございます。
  182. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 渡辺君、時間ですので簡単にひとつ。
  183. 渡辺武

    渡辺武君 とにかくいま言ったように、不当に高い手数料を払って、ほんのわずかな人員でべらぼうな収入がある。しかも業者を指定して、業者と、そして協会の幹部との間のいろんな汚いこと、うわさ絶えないんですよ。私はこういうことの背景には防衛庁の古手幹部がこの協会にたくさん天下っている、そこに一つの重要な原因があると思う。  たとえば、私ども調べてみますと、協会の職員数百四十八名、本部二十四名、地方百二十四名、このうちの約六割が防衛庁関係の出身者、こういう状態です。本部役員二十一名中十三名が防衛庁からの天下り幹部。  もう時間がないから名前は言いませんけれども、たとえば会長の小幡久男氏、これは防衛庁の事務次官だった。理事長の長坂強氏、これは防衛施設庁の次長だった。常務理事の秋山氏、これは名古屋防衛施設局長。山田さん、これは防衛施設庁課長だった。河口さん、これは東京防衛施設局の部長だった。理事の山上さん、これは防衛施設庁長官。島田さんは防衛庁の事務次官。江尻さんは防衛施設庁の次長。鐘江さんは防衛施設庁の次長等々ですよ。  岩国の例で言いますと、支所長の古池さん、これは呉の施設局の総務部長だった。それから上野喜一郎氏もそうです。それから細川昭三氏、これは元自衛隊員。広田典生氏、これも自衛隊員。豊田香氏、それから上田氏というのは岩国市の職員ですけれども、それから土井信慶宗さん、これは三十歳の人で呉の施設局の施設課長の息子さん。こういうことで、古手幹部やその関係者がほとんどポストを占めていて、そうして防衛庁から一戸当たり六万五千円もの手数料をもらってのほほんとして金をふところへ入れている。あの基地でものすごい騒音に苦しむ住民の悩みを食い物にして、こういう連中が寄生しているんです。  そこで、私、会計検査院に伺いたいのですけれども……。
  184. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 時間ですから。渡辺さん、時間です。
  185. 渡辺武

    渡辺武君 質問だけちょっと。
  186. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 簡単に願います。
  187. 渡辺武

    渡辺武君 もともと全然要らなくて済んでいたようなところにこういう団体をつくって、しかも古手幹部が天下って甘い汁吸っている、不当に高い手数料を取っている、こういうことは国費の乱費じゃないかと思うのですね。ですから、会計検査院として協会の検査、これを直ちにやっていただきたいというふうに思います。  それから同時に、内部から内部告発が出ている。これちょっと申しますと、これは防衛庁の中でも……
  188. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 時間ですから簡単に願います、渡辺君。
  189. 渡辺武

    渡辺武君 暇な人間がたくさんあるということを言っていますが、同時にこういうことを書いてあるんですね。——現在、全国駐留軍自衛隊飛行場周辺の民防から上がる利益は膨大となり、協会職員は空会議、空出張、空超勤——空超勤の場合は括弧して、毎月一人当たり十五日間と書いてあります——相当額を支給しており、俸給、賞与、各種手当で使い切れない利益額の使途に懸命でありますと、で歴代施設庁長官及び幹部は、顧問、相談役、理事、参事等の職種につけ、国民の血税に群がる吸血鬼のごとき感があると、こういう内部告発もあります。会計検査院として、当然こういう実態について検査に入っていただきたい。  それからもう一点、これは自治省に伺いたいんですけれども、とにかく行政書士でない者が行政書士と同じ仕事をやっていると、これは行政書士法違反じゃないかと、そう思いますけれども、その点でよく実態を調べて、そうしてこうした法違反をもし犯しているということが明らかであれば、これは認可した防衛庁にも責任がある。こんな法違反を犯す団体はよろしく私は解散させなきゃならぬ、そう思いますけれども、自治省の見解をあわせて伺いたい。
  190. 行方敬信

    説明員(行方敬信君) 協会に関する検査でございますが、先ほどお話し申し上げましたとおり、国は直接協会に補助金の交付をいたしておりませんので、会計検査院法の規定に基づきまして協会を検査するということは非常に困難でございまして、そのような形では非常にむずかしいだろうと考えます。また、手数料相当額が高いか低いかということに落ちつくと思いますが、この点につきましては最近における対象戸数の増大、あるいは一戸当たりにいたしましても対象室数の増大というような客観的な状況の変化もございますので、現在の事務費の率が今後もいいのかどうか、この点についてはなお見守っていきたいと思っております。
  191. 中村瑞夫

    説明員(中村瑞夫君) 行政書士法の規定によりますと、行政書士会に入会している行政書士でない者が他人の依頼を受けまして報酬を得て官公署に提出書類の作成をすることはできないということにされておるわけでございます。したがいまして、行政書士によらないで報酬を得まして、ただいまお尋ねになっておりますような書類の作成を行っておるということでございますと、この規定に抵触をすることになるわけでございますが、先ほど来施設庁の方の御答弁を伺っておりますと、単に書類の作成だけでなしに、工事の着工前から着工、施工、完了等に至ります過程におきましていろいろと業務もあるようでございます。私ども、その間の事情を必ずしもつまびらかに承知をいたしておりませんが、その辺の事情も承りまして判断をさしていただきたいというふうに思っております。
  192. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 協会の運営につきまして、うわさ等を入れましてさまざま御指摘がございましたが、協会は防衛施設庁が監督責任を持っております法人でございまして、その運営につきましては十分に実情を掌握してやっておるつもりでございますが、せっかくの御指摘でございますので、なお今後指導に当たりまして、自粛自戒しながら運営をしていかせたいと、こう考えておる次第でございます。
  193. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 以上をもちまして渡辺武君の質疑を終わります。  次に、井上計君。
  194. 井上計

    井上計君 質問を行う前に主査にちょっと提案でありますけれども、狭い部屋でありますし、また分科会の性格から言って、立って質疑を行っておりますと、つい声も大きくなりますし、むしろ本当にじっくりと質問をしたり、また説明、答弁を伺ったりということの方がよろしいかと思いますので、できれば着席のままで行いたいと思いますが、ひとついかがでしょう。よろしいですか。
  195. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) はい、よろしゅうございます。
  196. 井上計

    井上計君 それでは主査のお許しをいただきましたので、着席のままで伺います。したがいまして、長官それから防衛庁側もどうぞひとつお座りになったままでお答えをいただければ結構でございます。  最初に伺いますけれども防衛庁の中、先般のスパイ事件等から、秘密保全体制検討委員会が設けられて検討をされたというふうに伺っておりますけれども、その結果、あるいは今後それについての対策等につきましてひとつお伺いをいたします。
  197. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 秘密保全体制検討委員会は本年一月二十三日に発足いたしまして、それ以来、防衛庁における現行制度の総点検を行ったわけでございます。いろいろ検討を加えまして、この委員会は事務次官が委員長をいたしております。その結果を実は三月二十八日、数日前でございますが、私に報告がございました。この内容でございますが、組織、それから施設設備、それから教育、人事管理などの多方面にわたりまして、秘密保全体制が現在どうなっておるか、それから問題点、そういうものを細かく指摘しまして、これに対する改善施策を提示をしたものでございます。  細部につきましては政府委員から答弁さしたいと思います。
  198. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いまの大臣のお答えを補足させていただきますが、まずとりあえずの措置としまして、二月八日に次官通達を出しまして、当面直ちに実施すべきことというのを指示いたしました。たとえば、文書の複製、破棄、貸し出しといったようなことの厳格な励行でありますとか、あるいは秘密文書をつくる部数を限定する、あるいは適切な破棄処分をするといったようなこと、あるいは退庁時に一人で残るような形にならないようにするとか、そういう当面直ちにできることは二月八日に指示いたしまして、それで引き続きまして、先ほど大臣から申し上げましたように、三月二十八日になりまして全体の方針をつくったわけでございますが、その概要を申し上げますと、まず組織の面につきましては、保全という見地から、重要と考えられる部隊、基地に保全の専従要員を置く必要があるんではないかといったようなこと。  要点だけ申し上げますが、二番目の施設設備の点につきましては、保全上重要な部門、特に秘密の文書が多いような場所を同じ建物の中でも集中的に配置するといったようなこと、したがってまたそこに対する出入りを規制することといったようなこと、それから保管容器の強度基準の引き上げでありますとか、あるいは複写機による文書複写についての管理システムを改善するといったようなことが施設設備の面について報告されているわけであります。  三番目に、教育面につきましては、計画的、系統的な保全教育というものを隊員に対して行う必要がある。そのために平素から服務指導の面におきまして秘密保全の重要性ということを教えると同時に、それを担当する教官の養成といったようなことも考えていく必要がある。  それから四番目に、人事管理の面につきましては、情報部門はとかく他の職域との人事交流といったようなことが疎遠になりがちでございますので、そういったものも人事交流の幅をあわせて考えていく必要があるといったこと。  最後に、手続面につきましては、秘密文書の複写、先ほど申し上げましたが、複写とか手続といったようなことにつきましてさらに厳格化する必要がある。それから退庁時、残業時の保全措置についても、規定上もさらにもっと厳格にする必要があるといったようなことで、防衛庁訓令の改正を図っていきたいというふうに考えております。
  199. 井上計

    井上計君 いま伺いましたけれども、これで大体万全だというふうにお考えですか。
  200. 塩田章

    政府委員(塩田章君) まあわれわれがやることでございますから、人間のやることでございますから万全という言葉はあれでございますけれども、私どもとしましてはこれを逐次実行していく、ことによりまして万全を期していきたいと考えております。
  201. 井上計

    井上計君 秘密漏洩ということが、これはいろいろと現在の憲法上いろんな問題もあろうかと思いますけれども、やはり私は刑の処罰といいますか、非常にやはり俗に言う安いという言い方は適当かどうかは別として、それも大きなやっぱり原因であるというふうに思うんですね。だからこれは防衛庁だけの問題ではもちろんありませんけれども、そういうふうな面について現在の処罰規定、あるいは刑法上の、いえばそれらの改正等についてのお考えはなされたんですか。
  202. 塩田章

    政府委員(塩田章君) この委員会の検討事項といたしましては、当面現行法の中でやるべきこと、やれることは何かということに重点を置きまして、その議論の中で現行の自衛隊法五十九条なり百十八条の罰則規定なりどうするかということも議論としては出ましたし、ずいぶん議論をいたしましたが、今回の結論の中には入れておりません。それは引き続き検討いたしたいということにいたしております。
  203. 井上計

    井上計君 それからもう一つ、いまこの中で設備等の部門を集中的に、これは内部の問題だと思いますが、たとえば艦船の修理であるとか、あるいは航空機その他の装備の修理、民間工場に当然出るわけですね。その場合にやはり秘密部門が当然これはあってしかるべきだと思います。またあると思いますが、そういう場合の、いえば民間の事業所、工場に対しての秘密保持ということについてはどういうふうな体制、対策をお取りになるんですか。
  204. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 現状では法律上の機密保全の体制はございません。当該民間会社との間の民事上の約束しかございません。
  205. 井上計

    井上計君 この点についてはさらにこれまた防衛庁だけの問題ではもちろんありませんけれども、私は検討をする必要があるんではなかろうかと、いかに防衛庁の中で秘密保持、また、そのような機密漏洩等についての対策を講じられても、防衛庁の中で全部が処理できるわけじゃないわけですから、ただ単に民間との修理等、そういう場合のなには民法上の契約ということになってまいりますと、事実上機密保持なんというものはもうないに等しいということになろうと思いますから、さらにそれらの面も含めて御検討あってしかるべきだと思いますが、長官どうでしょうか。
  206. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) お説のとおりもう大変重大な問題だと思っております。私どもの方で今後検討いたさなきゃならぬ重大な課題だと考えております。  現在はアメリカのものだけについて、御承知のように法律が定められておるわけでございますので、いまおっしゃったような点については今後十分検討いたしたい、かように思っております。
  207. 井上計

    井上計君 次に伺いたいと思うのですけれども、有事の際の継戦体制あるいは継戦能力等について、現状どのような状態になっておりますか、お伺いします。
  208. 原徹

    政府委員原徹君) いま継戦能力ということになりますと、持続的に戦闘を継続するわけでございます。まず第一に問題になりますのは弾の問題でありますが、陸上自衛隊について前々から弾の備蓄が非常に少ないということはそのとおりだと思いまして、昨年、今年と弾の調達量を契約ベースで二五%ずつふやしてはおります。中期業務見積もりでもかなりよけいの弾を買うことにいたしておりますが、それでもまだ十分という段階までには至らないだろう、そういう意味自衛隊いろいろ正面装備の問題もございますが、継戦能力の問題、これが弱点であろうと思っておりますので、今後ともそういう点に気をつけて正面装備だけでなくてそういう面に配慮しながら整備を進めていきたいと、そういうふうに考えております。
  209. 井上計

    井上計君 継戦能力の中で特に弾薬の備蓄の問題等いま御答弁ありました。これは新聞ですけれども、こういう記事が出ておるんですね。「昨年の場合、北海道のある戦車部隊の戦車砲の実弾発射訓練は一台につき年間わずかに三十数発、四人の乗員一人当たりでは十発以下」である、それから「かつて自衛隊員から募集した川柳の入選作に「タマに撃つタマのないのがタマに傷」というのがあった」と、こういうふうなことが書いてありますがね。いかに継戦能力、特に弾薬の備蓄という面だけから考えても継戦能力に欠けておるかというふうなことを私ども非常に憂慮するわけですけれども、それについて中期業務計画等の中でもいろいろと考えておられるようですけれども、しかし、そこで中期業務見積もりについて外務省としては政府計画への格上げを希望しておるというふうな、そのよう新聞報道があります。それから防衛庁としては、財政当局からそれらのものによって逆に削減をされるというふうなおそれがあるから、いまのところ希望しないというふうな、こういう新聞報道があるんですが、その点長官いかがなんですか。
  210. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 外務大臣なり外務省の幹部が中期業務見積もりをそのまま格上げをするとか、あるいは第五次防云々といったようなことをおっしゃったということは聞いておりません。ただ中期業務見積もりというのは御承知のとおりでございますが、防衛庁限りで立ててつくっておるものでございます。それについて一年前倒しにするというようなことを外務大臣要請を受けてきた、これ返事はしておらないわけでございます。そういうところまででございます。したがって、それ以上のところを正規にどうするこうするということは外務省としては必ずしも言っておられるように私どもは承知しておりません。ただ私どもとしましては、ずっと一貫して申し上げておるんですけれども防衛計画大綱を少しでも早く実現したいということを言っておるわけでございます。私ども、当然のことでございますが、中期業務見積もりは実現をいたしたいし、これもでき得れば早く実現したいと、こういうことも一貫して言っておるわけでございます。ただ、これはそのまま計画として政府で決定するかどうかという段階になりますると、これは大分前につくったものでもございまして、情勢もその後変わっておりますし、そこで、これはそのままというようなわけには実はまいらないのでございまして、よく検討して現在の状況下においてどう決めていただくかというようなことをいろいろ考えなくちゃいかぬものでございますから、それで何かあたかも防衛庁の方でちゅうちょしておるように受け取られる、あるいはないし新聞の記事がそういうふうに見えるということがあります。そうではないのでございまして、つまりもっと申し上げますと中期業務見積もりに書いておるよう正面装備強化とか、防衛力実質増強については私たちとしてはこれはオーソライズされたものにしていただけるなら、それは防衛庁としてはこんなありがたいことはないわけですから、それについて何らのちゅうちょ、不満はありませんので、希望はいたしておるわけでございます。しかし、そのままずばりとすぐ受けるかどうかというところはやっぱり検討しなきゃならぬ、こういう意味でございますので、御説明になっているかどうか、もしなにでございましたら、さらにお答えいたしますけれども
  211. 井上計

    井上計君 おおむねわかりました。新聞報道では防衛庁首脳がむしろ遠慮して格上げについてはちゅうちょしておられる、こういうようなふうに受け取れるよう新聞報道があったものですから、いささかおかしいな、こういう感じがいたしましたのであえてお尋ねをしたということでございます。ただ、それにつけても、私は、防衛問題について、われわれ各政党の中でかみ合わない論争がまことに多過ぎるというようなことをかねがね私自身非常に残念に思っておるわけですし、ただ単に、われわれ政党間だけでの全くかみ合わないという論議だけでなくて、政府の中でも、防衛庁外務省あるいは大蔵省あたりに、若干のというか、あるいはときによってかなりの食い違いもあるのではなかろうか、このようにも考えるんです。特に、総理は、おっしゃることは日米安保条約の効率的な運用であるとか、防衛力の着実な増強であるとか、平和のための国際環境づくりだというふうな三原則、私どもから考えるといわば観念論だけに終始しておられるような発言のように実は感ずるんですけれども。これは長官は別に御答弁ということじゃありませんが、希望として申し上げますと、もっと政府が積極的にこの各政党間の論議のやっぱり食い違い、こういうもの等について、これらのものを共通の土俵の場に上げるような、そういう努力もされる必要があるというふうに思います。と同時に、政府間でもやはりもっと一致した見解を自信を持ってお示しいただくような、そういう努力をされる必要があるというふうに考えます。これは特にお立場上いま御答弁むずかしければ結構ですが、あえて希望として申し上げておきます。
  212. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 大変おっしゃいますとおりであるというふうに私ども思っております。ただ、政府の中が非常に食い違っておるということではございませんので、政府としては一応の決まったことはあるわけです。これは大綱の線とか、あるいはGNPの一%程度をめどにするというようなことは決まっております。しかし、具体的に、それではどうするかということについて、実は防衛庁外務省とは現在のところ非常に大きな食い違いがあるというふうには思っておりませんけれども、しかし、財政を担当する大蔵当局は、これはおのずから、予算委員会の席上でも大蔵大臣答弁しておりますが、財政当局としての立場でのいろいろな御発言がありますので、これは直ちに、すぐは一緒になっておらない。まあ最終的には総理の御判断でこれは政府の中としてまとめなきゃならぬ、かように思っております。その他、各党の間の問題とかいろんな点につきましては、おっしゃるようなことがございますので、私ども、とにかく防衛当局としましては、国の防衛を預かるものとしまして、おっしゃるようなお気持ちは、よく私どもはありがたく承りまして、努力をとにかくさせていただきたい、かように思っております。
  213. 井上計

    井上計君 いま長官おっしゃている大きな食い違いがないということ、またそうでなくてはいかぬと思いますけれども、財政当局との問題等については、若干立場の違いによって、これはいささかいたし方がなかろうという感じがいたします。ただ、私がいま申し上げたのは、さらにもっといろんな、現在の日本の安全保障体制いかんという問題、あるいは防衛という問題等、いろいろとにかく総合すると私まだまだ見解の相違といいますか、認識の相違があるんではなかろうかと。一例を挙げますと、ソ連の脅威について、外務省としては、やはり外交上のいろいろとテクニックもあるとは思いますけれども、脅威というふうな表現をしたがらないということ。これは一例ですけれども。そういうふうな問題等が、何か、国民の間に、政府の、国の安全保障という問題等について全く見解が異なっておると、こういう印象をやっぱり与えていることも事実だと思うのです。そういう意味で申し上げたのでありますから、今後とも十分ひとつ御配慮、さらに御努力をいただきたいというふうに思います。  そこで、次にお伺いしたいんですが、抗たん性の問題です。抗たん性というのは私どもいままで余り耳にしなかった言葉でありますけれども、その現状はどうなんですか。
  214. 原徹

    政府委員原徹君) 抗たん性というと、確かに、大変、何といいますか、昔の言葉みたいな、自衛隊用語みたいな言葉でございますが、要するに、平たく言えば、抵抗力みたいなことでございます。例を挙げますれば、まず、航空機につきまして、大体のところは固定の掩体の中に入れております。戦闘機と申しましても、このごろでは百億近いものでございますから、そういうものを一機失えばそれだけ抵抗力が減るわけでございますので、そういう掩体ができているかというとほとんどないわけでございます。それが一つ。それからレーダーサイトでございますが、レーダーサイトにつきましてもやはりむき出しであるというふうなことで、これも一発食らうと能力がなくなってしまうというような面、その辺が大きなところでございますが、細かいところを数えれば、そういう意味での抵抗力に欠ける面というのは、これまた、ずいぶんあろうかと存じます。そういう意味で、これもやはりこれからやるにつきまして、単に正面の装備だけでなくて、そういうものがございませんと戦闘能力という面に関しましては十分でございませんから、そういう面にも配慮してやっていきたいと考えておるわけでございます。
  215. 井上計

    井上計君 いま局長伺いまして、これは、私どもの戦前の旧軍のいわば感じから言っても、抗たん性なんというようなのは全くと言っていいほどないんではないか、こんな感じがするんですね。  おととしあるいはさきおととしになりますか、三沢基地を私ども当時内閣委員会で視察に参りましたときに、三沢基地にありますレーダーの中央指揮所というのですか、あそこなんかは、具体的にお尋ねするんですけれども、どの程度の攻撃に耐えられるような設備になっておるんですか、あれは。
  216. 原徹

    政府委員原徹君) 戦闘指揮所につきまして、ただいま、私、三沢は具体的にちょっと覚えておりませんが、やはり地下式の耐弾指揮所というようなものが必要だろうと思います。そういうことで、中期業務見積もりでも、徐々にでございますけれども耐弾式の指揮所に変えていきたい、そういうふうに思っているわけでございますけれども、現在の三沢の状況は、私ちょっと認識がございません。
  217. 井上計

    井上計君 専門的なことはわかりませんけれども、私はあの三沢の基地を視察に行ったときに感じたことは、まず一発直撃弾を食らったらおしまいではなかろうか、全く指揮能力を失うのではなかろうかということを実は感じたわけですね。  そのほかに、各地にありますところのを十分全部見ておりませんが、ミサイルホーク基地にしても、あれでは全く掩蓋設備、そういうふうな抗たん性なんということについてはほとんどないに等しい。さらに装備の格納庫だけではありませんで、兵員宿舎等についても、一たん緩急あった場合には、やはり当然それも攻撃を受けるというふうなこともこれは予期しなくちゃいかぬと思うのですが、そういうふうな面についての抗たん性についても、やはりもっと配慮していかなくちゃいけないと思うんですが、どうなんでしょうね。
  218. 原徹

    政府委員原徹君) 大変御意見ごもっともでございまして、私どもといたしましてもそういう方向で行きたいと思っておるわけでございます。  ただ、隊舎までということになりますと、これまた容易なことでございませんが、それより前に、いまの航空機の問題、あるいはレーダーサイトの問題、そういうところからかかろうかと思いますが、方角といたしましては先生御指摘のような点を十分配慮してまいりたいと思っております。
  219. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) いまおっしゃいました点は、非常に私も防衛庁へ参りまして痛感いたしております。特に、指揮をする中枢、核でございますね、これをとにかく守るということ。それからやっぱりそれの一環ですけれども情報、通信、これを守るということ。それからいま防衛局長が申し上げましたようなことですね、これにつきましてはよほど力を入れていかなくちゃならない状態ではないかというふうに考えております。
  220. 井上計

    井上計君 わかっているけれども、やはり予算の制約等があって思うに任せぬと、長官こういうことですか。
  221. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 結論的にはそういうことになるかもしれませんが、それにしてももっとこの点については優先順位を上げて考えるべきであろうと、かように存じておる次第でございます。
  222. 井上計

    井上計君 時間がありませんので、これらの問題についてはもっとこれらの実態をやはり多くの人に知らして、もっともっとやはり論議をすべきである。こういう論議の中から、防衛予算GNP幾らが適当であるかというふうなことまで、やはり私が先ほど申し上げました各党間、あるいは政府とわれわれの間にもっと共通の土俵といいますか、そのようなものをつくって、もっと論議を詰めていかなければ、やはり国の安全保障ということについては論議することにならぬというふうに思っております。また、時間をかりて別の機会にぜひお聞きをいたしたいというふうに思います。  そこで、基地周辺整備費についてお伺いしたいと思うんですけれども防衛予算がすでに二兆何がし、一部の人たちは二兆幾ら防衛予算、膨大なものが全部軍艦やあるいは大砲や飛行機に使われておって云々というふうなことを言っておる人も実はあるようですけれども、実態、中身はそうではないということを、われわれは承知しておりますが、ところが余りこれまた国民の間に知らされていないんですね。私はこれは防衛庁——防衛庁だけとは言いませんけれども、やはり政府の責任だと思うんですね。だから、実際に防衛予算の中身の中にやはり国民生活に寄与しておるものがあるというふうなことをもっと知ってもらう必要があるというふうに思います。  そこで、基地周辺整備費の中身といいますか、簡単で結構ですから、それと過去三年ぐらいの実績についてちょっとお聞かせいただけませんか。
  223. 玉木清司

    政府委員(玉木清司君) 防衛施設の周辺整備の中身は周辺環境整備法に定められておりますが、項目的に申し上げますと、各種の障害を防止する事業、それから航空機騒音、演習騒音等を防止する事業、民生安定助成事業、道路改修事業、特定防衛施設周辺整備調整交付金、移転措置の事業、緑地整備事業、周辺の補償と、こういうふうな項目で実施しております。  過去の実績でございますが、手元の資料で申し上げますと、四十九年から五十三年までの五年間で三千二百五十一億という数字になっております。なお、五十四、五十五におきましては一千億以上の経費になっております。
  224. 井上計

    井上計君 いただいてる資料からまいりますと、五十五年度予算要求ですが、これが、基地従業員対策の強化等を入れますと、提供施設の移設も入れてですが、約二千三百億円程度になってますね。これはまあアメリカなりあるいは西ドイツ等、諸外国の例から見ると、こんなものは軍事費に向こうでは入ってるんですか、どうなんですか、おわかりなら。
  225. 原徹

    政府委員原徹君) 多分入ってないのではないかというふうに想像いたしますが、日本の場合は日本の事情がございますから、これは防衛費としてわれわれ承知をいたしております。
  226. 井上計

    井上計君 いや、多分私も入っていないだろうと思う。とすると、防衛庁をおだてるわけじゃありませんけれども、これは二千三百億、ちょうどやっぱり防衛予算の一〇%ですよね。ということは、現在防衛予算GNP〇・九%云々と言われてますけど、事実上は〇・八%しかないということなんですね。まあこれは、この辺のところも私、もっと防衛庁大いに声を大にして叫ばれたらどうかと。  まだ時間若干あるようですけれども皆さん方お疲れのようですから、以上でひとつ終わります。
  227. 栗原俊夫

    主査栗原俊夫君) 以上をもちまして防衛庁所管に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十六分散会      —————・—————