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1979-05-24 第87回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十四日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 佐藤  隆君    理事 羽田  孜君 理事 堀之内久男君    理事 山崎平八郎君 理事 島田 琢郎君    理事 馬場  昇君 理事 古川 雅司君       江藤 隆美君    國場 幸昌君       玉沢徳一郎君    津島 雄二君       中尾 栄一君    中村喜四郎君       平泉  渉君    福島 譲二君       小川 国彦君    柴田 健治君       新盛 辰雄君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    芳賀  貢君       日野 市朗君    松沢 俊昭君       武田 一夫君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君  出席政府委員         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         農林水産政務次         官       片岡 清一君         農林水産省経済         局長      今村 宣夫君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         農林水産省食品         流通局長    犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁次長   角道 謙一君         水産庁長官   森  整治君         水産庁次長   恩田 幸雄君  委員外出席者         環境庁自然保護         局企画調整課長 高峯 一世君         文化庁文化財保         護部記念物課長 逸見 博昌君         資源エネルギー         庁石油部精製課         長       加藤 昭六君         運輸省船員局労         政課長     松木 洋三君         労働省労政局労         働法規課長   岡部 晃三君         労働省職業安定         局雇用政策課長 白井晋太郎君         建設省河川局開         発課長     堀  和夫君         参  考  人         (水資源開発公         団総裁)    山本 三郎君         参  考  人         (水資源開発公         団理事)    田中 和夫君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 佐藤隆

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  本件について、本日、水資源開発公団総裁山本三郎君、水資源開発公団理事田中和夫君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤隆

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  4. 佐藤隆

    佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉沢徳一郎君。
  5. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 林野庁に御質問申し上げます。  ただいま日本は、五年前の石油ショックと同じようなエネルギーの危機を迎えておると思うのでございます。そうした場合に、わが国石油ショックというものを受けた場合になぜ経済が混乱するかと申しますと、やはりエネルギー大半を外国に依存しておる、こういうことにあると私は考えるわけでございます。  もともと日本にも古来の日本人の持っておるエネルギーというものはあると思うのであります。たとえば、石油におきましても国内の海底資源をいま探査をしまして掘削をしておる。しかし、同時にまた、私どもの周りにより安価に得られる資源というものを放置してきた。たとえば家庭燃料として使われてまいりましたまき木炭、こういうものはやはり見直し資源利用方途というものを考えていかなければならぬのじゃないか。木炭その他まきがほとんど使われなくなりましてから、わが国山村というものはまさに過疎状態になっておるわけでございます。  こういうものをやはり考えましたときに、まき木炭見直しましてこれをもっと効率のある資源として利用できないか。林野庁でも検討を始めておるということでございますので、現在どういう方向においてこれを検討研究をしておるのか、もし活路が見出せるとするならば、その方途等につきまして御質問をいたしたいと思います。
  6. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  最近のエネルギー事情に関連をいたしまして、特に石油中心としました化石エネルギーの節約問題というのは、当面非常に世界的な問題になっているわけでございます。そこで、私たちといたしましても、いま先生から御指摘ございました木材についての、いわゆる木質系エネルギーというものについて見直しが必要になってきておるというように考えております。  このため具体的な方法といたしましては、第一番目には、木質材料を直接エネルギー利用する方法、第二番目には、アルミニウムとかプラスチックとか石油をたくさん使うものをいわゆる木材によりまして再代替する間接的な利用と、こういう方向を初め多様な対応が必要になるというように考えております。  これらの観点から、五十三年度から広葉樹資源の役割と施業技術についての調査というものを始めまして、この中で広葉樹木質系エネルギーとしての見直しを含めることにいたしております。また五十四年度からは、国立林業試験場中心になりまして都道府県林業試験場等とも共同いたしまして、大型プロジェクト研究ということで国産材の多用途利用開発に関する総合研究というものを行っているわけでございます。この中におきまして、間伐材であるとか小径材であるとか、あるいは残廃材等エネルギーとして活用する方法についていま検討を始めております。特に木質材料を直接エネルギー利用する方法につきましては、過去におきましても薪炭ということで長い間活用してきた歴史もありますし、こういう研究と並行して従来の蓄積をもとにしまして簡易炭化等を初め木材炭化による活用であるとか、あるいは燃焼器具等の改良であるとか、あるいは乾溜による木ガス利用であるとか、そういう方法を実用化する技術を検討することが必要であるというように考えております。ただ、木質系エネルギーについては、化石エネルギーに変わりました大きな理由としましては、経済性であるとか利便の問題であるとか、あるいはこういう原材料の供給、流通あるいは貯蔵、利用、そういう一貫したシステムをつくるということが大事でございますので、これらの問題についても、なお今後研究改善努力をいたしまして、木質系エネルギー見直しを初めこれらの拡充に努めたいというように考えております。
  7. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 この木質エネルギーを今後見直し開発をしていくという点におきまして、林野庁は、たとえば木炭がだめになった時点から広葉樹をどんどん切りまして針葉樹に切りかえるというような指導をしておるわけでございますね。しかし、こういうのも十分見直し検討するということが大事じゃないか、こう考えるわけでございます。たとえばそれに関連しますが、ただ成長が早いというようなことでかつてカラマツ等を植えてやったのでありますが、これはただ成長が早いというだけで余り用材にも使われませんし、無用の長物になっているというような事例もございますので、やはり長期的な計画のもとに、つまり何を将来の方向としてやるかということを十分検討されて進めていかれるよう要望する次第でございます。  次に御質問を申し上げますが、いま山村におきまして何が最大の問題になっているかと申しますと、外材の輸入の問題これはあらゆる角度から検討されておるわけでありますが、それと同じような重大な問題が発生をいたしておるわけでございます。それは、林業家が毎年造林を一生懸命やっておるわけでありますが、植えた苗木がカモシカに次から次へと食われてしまう、それによって大変な被害が起きておるわけでございます。私は岩手県でございますが、山村地域に行って造林をする方々に会いますと、ことしは余りにも被害が大きいので造林をする計画をやめてしまった、こういう人もおるわけですね。聞くところによりますと、岐阜県、長野県、三重県におきましても同じような問題が起きておるわけでございます。  そこで、林野庁はこの全国被害状況というものを的確に掌握されておるか、されておるとすれば毎年の損害額というものは大体どのくらいに見積もられておるか、それから対策としましてどういう対策を講ぜられておられるかについて御質問します。
  8. 角道謙一

    角道政府委員 カモシカの林野の被害につきましてお答えを申し上げます。  カモシカによります森林の被害は、民有林国有林を合わせまして五十年度は千九百五十一ヘクタール、五十一年度には二千五百四十三ヘクタール、五十二年度は三千二十九ヘクタールとなっておりまして、近年増加の傾向にございます。     〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕 五十三年度については現在集計を行っておるところでございます。  そこで、五十二年度の被害状況地域別に見ますと、民有林では、大体中部を中心にいたしまして約十県で二千五百二十九ヘクタールの被害が発生しておりました。この中で、長野県が千二百二十九ヘクタール、岐阜県が五百十二ヘクタール、岩手県が四百五十一ヘクタール、この長野岐阜岩手の三県で民有林被害面積の大体八七%ということになっておるわけでございます。国有林では、長野、東京、名古屋営林局等におきまして、七営林局で大体五百ヘクタールの被害が生じております。  また、樹種別に見ますと、ヒノキが二千二百六十三ヘクタール、約七五%を占めておりまして、このほか杉が四百三十三ヘクタール、約一四%、松が二百四十ヘクタール、これは八%でございまして、このヒノキ、杉、松で大体九七%ということになっております。  いまお尋ね被害額でございますが、これは樹種、樹齢その他がございまして、金額としては、私どもとしてはなかなか正確には把握しがたいということでございます。  それから防止対策といたしましては、当面私どもカモシカにつきましては特別天然記念物ということで国が保護しておる貴重な野性動物でございますので、国による保護を図るということと同時に、カモシカ食害による被害防止する、そして林業経営を安定させるために、この二つをどう調和させるかという点に私ども一番苦心をしておるわけでございます。そこで、文化庁環境庁林野庁の三庁間におきまして対策についていま協議を進めておりますが、これによりまして、カモシカ生態カモシカ生息分布であるとか、カモシカ食害防止方法というものにつきまして、三庁で分担をして実施をしてきております。特に、昨年の九月には三庁間で協議をいたしまして、被害が特に激甚でありますところの岐阜県、長野県の御岳あるいは乗鞍地域に所在します林野庁所管国有林の中に保護区域を設定いたしまして、これ以外の地域におきまして、被害防止に必要な措置といたしまして麻酔銃でのカモシカ捕獲ということを文化庁環境庁中心になって講じておるところでございます。  なお、今後の対策につきましては、文化庁環境庁とも御相談をしながら十分な対策を確立してまいりたい、かように考えております。
  9. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 特別天然記念物だということで非常に大事に保護しておる、これは結構なことでございます。結構なことでございますが、それだけに殺傷してはならないということに意を用いまして、対策としましてはいろいろ考えていますね。防護さくをやるとか、ポリネットをかぶせる。ポリネットというのは、委員各位あるいはよくあれでないかもしれませんが、木にこうしたネットをかぶせてやっておるわけです。しかし一本一本かぶせますと大変な労力が要るわけでございます。あるいは忌避剤、薬剤を一本一本やりまして、そしてカモシカに食われないようにしておる。麻酔銃も含めましていろいろな策をやっておるのでありますが、向こうも野生獣でありますから、すばしこいわけですから、生け捕りもなかなかそう簡単には生け捕られない。  それで、対策が十分ではない、ここで問題となってまいりましたのは、被害の非常に大きい地域からこのカモシカ射殺した方がいいのじゃないかという議論が出てきておるわけでございます。ところが、射殺をするということになってまいりますと、これが特別天然記念物指定されておるということでございまして、なかなかそういう対策は練られない。  そこで、私は、この論点を明確にするために、非常に単純な問いでございますけれども、一体特別天然記念物とは何ぞや、特別天然記念物とは一体どういう概念なのか、この点を文化庁に御質問いたしたいと思います。
  10. 逸見博昌

    逸見説明員 御説明いたします。  お尋ね天然記念物というものは、文化財保護法の中で規定されておるわけでございます。そして文化財の定義といたしまして、文化財保護法の第二条がございまして、ここに動物、植物、地質鉱物わが国にとって学術価値の高いもの、これを記念物という、こう書いてございます。そしてこの規定等を受けまして、第六十九条でございますが、「文部大臣は、記念物のうち重要なものを史跡名勝又は天然記念物指定することができる。」こういう規定になっておりまして、天然記念物というものは文化財保護法上位置づけられておるものであるということでございます。
  11. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 文化財保護法にそもそも取り入れられる原点となったのは一体どこか、こういうことになるわけですね。  それで、私が調べてみましたら、天然記念物、ナチュールデンクマールという用語は、ドイツ人アレキサンダー・フォン・フンボルトの「新大陸の熱帯地方紀行」に用いられたのが初めてである。その後、一九〇六年十月にプロイセン天然記念物保護管理研究所の「活動原則」が公布され、初めて天然記念物が公式に位置づけられた。同原則の第二条は、「天然記念物とは、特に特色ある郷土の自然物を言う」として、動植物の類を含めておる。この考え方がつまりわが国文化財保護法に取り入れられた、こう考えていいわけですね。  ところが、各国の例を見てまいりますと、天然記念物という概念は、当初は動植物も含めておったわけでありますが、ドイツを初めとしまして、いわゆる天然記念物というのは自然の景観であるとか学術価値のある史跡というふうなものに限られまして、動植物というものは天然記念物から外されておるというのが現状ではないか、こう考えるわけでございますが、この点についていかがですか。
  12. 逸見博昌

    逸見説明員 わが国文化財保護法動物天然記念物と位置づけておりますのは、これは私どもは基本的には、一般動物と異ってそれが学術上重要な価値を持つもの、こういったところに見出しておるわけでございます。  カモシカについてその点を若干説明しますと、カモシカ特別天然記念物ということで現在指定されておりますのは、カモシカ自体わが国固有動物である、わが国にしかいない動物であるということ、しかも大型野生の哺乳類でございまして、進化の最先端に位置する動物であるということ、それから高地寒地適応型で、一定のなわ張りを持って生息するという生態上の特色を持つ学術上大変貴重な動物である、こういった観点から、天然記念物として文化財保護法上とらえ、これはわが国では歴史的、伝統的なものでございまして、現在の文化財保護法の前の史蹟名勝天然記念物保存法によりましても、いわば自然保護という観点からではなく、こういった動物のうち学術価値の高いものにつきましては文化財保護という観点からとらえておるわけでございまして、現在の文化財保護法もその歴史的、伝統的な経緯を踏まえておる、こういったことで現在も天然記念物として保護しておるということだろうと思います。
  13. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 これは学術上きわめて価値の高いものであり、わが国固有動物であるという点をお話しいただいたわけでありますが、ところが動植物の場合で、学術上きわめて価値のあるものであり、その国固有動物であるというような場合におきましては、各国動植物保護令というようなものをもちましていわゆる絶滅する種を保護する、こういうことで別個に管理研究の対象にしておるという例が多いと思うのですね。  そこでドイツの例を見てまいりますと、こういう動植物保護令の場合におきましては、確かに保護をする。ただし、保護するけれども、それが農作物とかあるいは人間生活影響を及ぼすというような場合におきましては、狩猟法によりまして適用除外を設けておりまして、そして個体除外をやっておるという例が大半ではないか。  ドイツにおきましても、狩猟法等を見ますると、農林業獣害が生じた場合には、農林業利用者は獣類を駆除する権利を有しておる、あるいは獣害のひどい場合は所轄官庁狩猟実行権者狩猟を命じ、命令に従わない場合はみずから狩猟を行いまして害獣を減殺することができる、こういうことになっているわけであります。しかも、ドイツの各州の保護令を見ましても、大体経済的な損失を避けるためには、人間生活を守るという立場から減殺をするという処置を認めておる。  日本におきましては、特にカモシカ日本にしかいないというきわめて貴重な動物でありますが、さらにアメリカの例を見ますると、アメリカにもやはりバイソンといういわゆるバッファローの例がある。これはかつて千五百万頭くらい西部の大平原においては闊歩しておったらしいのでありますが、これが大変な乱獲によりまして数十頭に減ったわけですよ。ところが、これは非常に学術価値があるわけでありますから、これを保護しなければならぬということで、一九〇五年に特別保護区を設けまして、そしてオクラホマ州のウィチタマウンテンズ国立野生鳥獣保護区、五万九千エーカーの地域に十五頭を放しまして繁殖を図ってきた。ところが、これが大体千頭までふえてまいりますと、保護区の中における適正な個数を確保しまして、これ以上ふえた場合は、いかにこれが保護令によって保護されておってもこれを殺しておる、あるいは肉を食ったり、皮を利用したりしているわけですね。資源利用する、こういう考え方なんですね。そのほかの害獣におきましても、保護区におきまして必要以上にふえた個体に対しましては、個体を減らすという努力をしておる。あくまでも保護区において生息環境の持つ収容力を極度に上回った場合は個体数を排除するという考え方である。だから、あくまでも環境の持つ収容能力に見合った個体数を安定的に維持するという考え方であるわけです。  そういう考え方から見ますれば、わが国カモシカ保護するということにおきましても、決して無制限にカモシカ保護していいはずはないのであります。人間農作物その他に影響を及ぼすということであるならば、ある程度これを減殺するという努力をしてもいいんじゃないか。そういう場合に、もちろん私どもカモシカを全部乱獲をしてとれということを言っているわけではありませんが、人間生存をする、カモシカ生存をする、共存共栄ですね、そうした場合には、保護区をもう少し広範に指定をいたしまして、そして農作物その他に影響を与えるような場合におきましては効果的な個体数を減殺する、こういうことも認めていいんではないか、こういう点につきまして、文化庁のお考えはどうですか。
  14. 逸見博昌

    逸見説明員 先生承知のように、現在の制度のもとではカモシカにつきましては種の指定ということでございまして、一定地域指定をまだいたしておりません。そういうことで、カモシカ日本全国どこかにいる限り生存保護されるというたてまえになっているわけでございます。ただし、現在岐阜県でも行っておりますけれども文化財保護法の中にも現状変更許可という制度がございまして、たとえば一定地域食害が大変起こって社会問題化しておる場合には、そういった地域につきまして一定の頭数について捕獲を認めるという措置も現在行っておるところでございます。御承知のとおり岐阜県におきましては現在百十頭、間もなく六頭追加する予定でございますが、そういった形で捕獲ということ自体は認めておるわけでございます。そういったことでカモシカ保護という問題と林業保護という問題の調和、これを図ってまいりたいと思っておるわけでございます。
  15. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで、天然記念物ということだけで取り締まるのではなくして、動物保護令というようなもので切り離してやっていくというような考え方はありませんか。
  16. 逸見博昌

    逸見説明員 現在も、いま私が説明いたしました現状変更許可、たとえばカモシカ一定地域捕獲をするというためには、文化財保護法上の現状変更許可が必要であると同時に、環境庁の方における鳥獣保護法立場から許可を要することになっております。  そういったことで、現在はカモシカ保護について二重の保護という形になっておるわけでございますが、私どもといたしましては、先ほどからるる申し上げておりますとおり、カモシカというものが学術上きわめて価値の高い日本にしかいない大変貴重な動物だという観点から、学術上の価値ということに注目をいたしまして、一般鳥獣とは別個に文化財保護法上の天然記念物として保護する、こういったことで現在臨んでいるわけでございます。
  17. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで第八十条の解釈でございますが、つまり現状変更を行うことができるということは文化庁長官許可を受ければできる、こういうことですね。そうした場合に、捕獲ということだけでなくて射殺も含めた捕獲ということができるかどうか。これは解釈上できるのですか。
  18. 逸見博昌

    逸見説明員 現在文化財保護法第八十条の現状変更の中身として、一定動物射殺するということも解釈としては当然含まれると考えております。
  19. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで、これはやはり現状を正確に把握することが必要だと思うのですね。現状を正確に把握するといった場合に、現在一番被害を受けているのは山村地域方々なんですよ。これに対して林野庁が何ら発言がないというのはおかしいと思うのです。国有林も同じような被害をこうむっているはずなんですよ。山村地域でございますから声が小さい、なかなか届かない。私どもはとにかく選挙区に参りましてよく現状を認識して帰ってくる。現在林野庁は、一応被害は知っているけれども余り問題にしない。しているとは思うのですけれども、声が出てこない。一方、文化庁さんの方ではどこで所轄しているかというと、天然記念物課ということでしょう。動物関係を扱っている人は非常に少ない。しかも各県はどこがそれをやっているかと申しますと、教育委員会でやっているわけですよ。これは文部省なんですか。そうしますと、これは実態調査個数の確認、被害状況というのはなかなか伝わらないのじゃないかと思うのですがね。これに対して一層の努力をやる用意が文化庁にございますか。どうですか。
  20. 逸見博昌

    逸見説明員 私どもも各都道府県教育委員会、市町村の教育委員会を通じまして、社会問題化しておるような大変な地域につきましては、刻々と正確なデータを求めて、それに対する対策がどうあらねばならぬかというようなことは検討を続けているところでございます。
  21. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで林野庁実態を正確に把握しまして、これはとにかく農民を救っていくことなんですから、もっと勇敢に被害状況を明らかにしていただきたいと思うのです。私はきょうここに陳情書を持ってきていますが、これは村から県庁に出す。県庁から今度は林野庁にこういう資料が来てないですね。来ていますか。これはやはりもっと明確にすべきだと思うのですよ。  それから環境庁においでになっていただいておりますが、環境問題についての考え方ですが、自然保護をただやるというような行き過ぎた物の考え方でなく、環境というのはやはり憲法で認められておりますように、ひとしく人々が生活環境をよくして、そしてりっぱな文化生活が行われるようなことが保障されるのが憲法のたてまえなんですから、やはり環境庁も、そうした場合に人間生活が脅かされて、ただただ動物天然記念物だから保護しなければいかぬ、これを駆除すれば罰金を食らって、禁錮五年以下の懲役を科せられるというようなことだけにこだわっておってはだめだと思うのです。環境というのはやはり人間が住みやすくする状況をつくっていくことなんでありますから、林野庁環境庁の御見解をその点について賜りたいと思います。
  22. 角道謙一

    角道政府委員 私どもとしましては、このカモシカ対策といたしまして、三庁の会議におきましては、保護区域を設定いたしまして、現在の種としての重要天然記念物指定を区域指定にする、それ以外のところではむしろ有害鳥獣として射殺する、あるいは捕獲することもできないかというようなことを主張しておりますけれども、先ほど来文化庁からもお話ございましたが、いまの段階ではまだ最終的な結論には達していないわけでございます。  実態の把握につきましては、私ども今後ともなお正確を期しまして、これらの対策について十分山村方々が安心できるように努めてまいりたい、かように考えております。
  23. 高峯一世

    ○高峯説明員 環境庁の所管しております鳥獣保護狩猟ニ関スル法律というのがございますが、それにおきましても特例規定がございまして、有害鳥獣駆除等特定の理由がある場合には、環境庁長官が許可をいたしまして捕獲することが認められてございます。そういった特例措置もございますので、特定の鳥獣、たとえばいま問題になっておりますカモシカにつきましては、これが天然記念物ということでもございますので、文化庁ともよく連絡をとりまして、また林野庁ともよく連絡をとりまして、カモシカの生息の実態、それから行動の実態、こういった点を勘案いたしまして、遺憾のないような措置をとってまいりたいと考えております。
  24. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 この問題は非常に深刻な問題となっておりますので、ぜひ早急に効果的な対策をとることを要望いたしまして、この点についての質問を終わります。  次に、水産庁に質問させていただきますが、その前に、私は、今回の日ソ漁業交渉の問題で非常に厳しい条件を付せられた、それに関しまして、二百海里時代が到来をいたしましてから、二年来、減船あるいは廃業その他いろいろあったわけでありますが、つまり漁船員が失業をした。これは相当数に上っておるわけでありますが、この雇用問題についてまず御質問をしたいと思うのであります。  やはり海に生きる男は海に自分の職場を求めたいというのは人情であるし、理の当然であると思うのでありますが、労働省におきましては、転職の場合、陸上の勤務に転職を希望する人に対して対策を講じておる、その実態は一体どうなっておるか。  それから、運輸省におきましては、やはり海の職場を失った者が同じように、しかし海に転職をいたしたい、こういう希望を持ってやっておる、これに対する対策はどうなっておるか。この二つをそれぞれ御質問させていただきたいと思います。
  25. 松木洋三

    ○松木説明員 お答え申し上げます。  日ソ協定の締結等に伴う漁業離職者の救済対策としましては、先生承知のとおり、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づきまして、離職者の再就職の促進等を図っておるわけでございます。  私どもの船員職安の方に参っております求職者、手帳を発給いたしましたのは本年三月末現在で六千九十五名という数字に相なっております。その離職者の方々のうち何らかの形で再就職をした方の累計が三月末現在で三千九百十六名ということに相なっておるわけであります。  後から労働省からもお話があろうかと存じますが、先生御指摘のとおり、いまの段階では漁業離職者の方々の大部分が海上職場を希望しておられる、こういう状況でございます。全体としてはやはり漁場が狭まっておりますので、私どもとしても相当数が陸上職場へ転職されることを期待しておるわけでございますけれども現状はそうはなっておらぬ。海上職場の拡大という点では、基本的には沿岸漁業の整備等の問題があろうかと存じますが、私どもいまの段階では、この再就職先の開拓ということで、水産庁の御協力を得まして、より広域的な求人情報の収集に努める、さらにそういった情報の交換についてより迅速、的確性を持たせるというようなことで、予算的にも措置をいたしまして一層の努力をしてまいる、そういう体制をとっておるところでございます。
  26. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、船に乗っておられた方は海へ行かれるという希望が強いわけでございまして、労働省で扱っております海から陸へ行かれる方の状況は、五十四年三月末現在で手帳の発給状況が六百六十四件でございます。そのうちいま再就職された方が二百十二名、それから職業訓練に入っておられる方が百四十一名、あとの方は失業給付ないし促進手当等の支給を受けておられます。  今後ともこれらのこの法律に基づきます対策を進めるために、この法律は二年の時限になっておりますので、現在この国会に延長をお願いいたしておるわけでございます。
  27. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 現状非常に厳しい就職状況にあるということが、これは数字で明確になっておるわけでございます。なおかつまた、海に生きる男はやはり海に職場を求める、これが適切な就職の場所がなければ、自分の漁村に戻って沿岸漁業をやるというのが今日の実態でございます。そうした場合に沿岸漁業を振興しなければならぬという水産庁の言うことはよくわかります。その方向で進めなければならぬと思うのでありますが、そこで、本年、この日ソ漁業交渉におきまして、昨年と同様漁獲割り当て量四万二千五百トンを確保をしたということは、努力は評価いたします。しかしながら、三十二億五千万円の協力費を払う、昨年の二倍近いものを。しかもソ連は、日本が日中条約を結んだということによって、非常にいたけだかに日本に対してあらゆる圧力を加えてきておる。今後、これがますます今度はこの開発をやって漁民を苦しめる、日本を苦しめるというようなことになれば、将来これは全部だめになってしまう可能性もあると思うのですよ。そこで、水産庁は沿岸の漁業を振興するというようなことにおきまして、沿岸の河川においてサケ・マスのふ化事業をどんどんやっておる、これはきわめてよろしいことであります。ところが、そこで問題は、沿岸漁業に帰ってきて仕事をやる場合におきまして、収入の道を与えてやらなければいかぬ、そうでなければ潜在的な失業と同じになる。減船対策によって船主はいろいろ補償をもらった。しかしながら、一般の漁民は就職状況が非常に苦しい中におきまして所得向上というのをやれないというのが現在の状況である。  私は水産庁にお尋ねしますが、昨年沿岸漁業におきまして二十トン以下の漁船がアカイカを取るということを禁止した、これは資源保護という立場からはいいわけでありますが、資源保護をして、原状回復してまいりますならばこれを認めるんですか、どうですか、それが第一点。  それから第二点は、サンマが回遊してくるわけですよ。九月ごろになりますと北海道の沖合いから来るわけでありますが、三陸沿岸に、千葉県の沖合いにまで来るわけです。二十トン以下の中小漁船に対して漁獲を認めたらどうだ。これは地先沖合いに出ていって魚をとる、それでいいわけでありますから、大型漁船だけに認めるということだけでなく、そういう方法を講じる考えはないかどうか、長官どうぞ。
  28. 森整治

    ○森政府委員 第一点のアカイカの漁獲禁止措置でありますが、この件は、要するに流し網でアカイカをとるという漁業を禁止をしたわけでございます。これはイカ釣りの漁業と競合するという漁業調整上の問題と、それからイカの流し網漁法というのが、何といいますか漁獲効率がよ過ぎるということで資源に悪影響を与えることを懸念したということで、本年の一月一日から北緯二十度以北、東経百七十度以西の水域における禁漁の措置をとったわけでございます。この考え方からいたしますと、資源が回復するかどうかということの問題もございますけれども、イカ流し網による操業には非常に多くの問題があるわけでございます。たとえて言いますと、サケ・マスの混獲でございますが、こういう決定的な問題があるわけでございます。そういうこともございまして、今回急遽この措置をとったわけでございますから、当面流し網の漁業の禁止を解除する考えはございません。  それから、サンマにつきましてでございますが、確かに二十トン級の船にもサンマをとらせるということにつきましては、十トン以上につきましては農林大臣の承認が必要ということになっておるわけでございます。この農林大臣が承認するに当たりましては、漁獲努力を抑制するために前年の実績者に承認をする、実績者以外は承認をしないという方針を従来とっておるわけでございます。しかし、一昨年でございましたか、小型のイカ釣り漁業が非常に不漁でございまして、特に救済的な特例措置での要望がございましたので、四十五隻に限って承認した例がございます。しかし、昨年は関係業界との調整がついにつかずに承認を見合わせたという経過を持っておるわけでございまして、千葉以北の太平洋の沿岸の各県におきましてその要望が出ておるわけでございますが、今後も関係業界の意見をまとめまして、その結果を参考として結論を出すということにいたしたいというふうに思っております。
  29. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで、もう一つ問題があるわけでありますが、イカの流し網を禁止したのはサケ・マスの混獲を避けるためだ、こういうことであります。しかし、今後の日本の水産行政におきまして、沿岸漁業におきましては、やはり日本で消費しているサケ・マスの十五万トンのうち、国内で生産するのが五万トン、カナダ、アメリカから輸入しておるのが五万トン、そうしてソビエト海域から持ってくるのが五万トン近い、こういうことであるわけです。しかし、ソビエトの漁場を閉鎖されるということを想定をするならば、やはり日本の生産を十万トンにふやす、そういう努力が今日行われていると私は考えるわけですよ。そうした場合に、ただ禁止をするということじゃなくして、サケ・マスの捕獲をいま定置網と河川でしか認められてないわけでありますが、ところが、各県の漁業調整規則によりますと、北海道、青森は刺し網をやるのを認めておるわけです。これは全部やりますと確かに資源が枯渇してしまいます。しかしながら、いろいろ研究をしまして、私も漁民と会ってみた、そうしましたら、やはりサケ・マスは淡水のところに入りますとえさをとらない、しかし海水にいる限りはえさをとりますので、これは釣ることはできる。つまり、はえなわをやって釣ることができる。ある程度これを認めれば資源を枯渇させないでとることができるのではないか。何しろとにかく日本とソ連との間には、北緯あるいは東経何度で何万トンをとらせるというところまでいきまして、協力費の内訳も、向こうがふ化を幾らやりましてそのうち回帰率が何ぼだというような細かい計算までやっているわけですから、日本の河川で生産をしました、ふ化したものが回帰率が何%で、つまりその海域におきましては何トンとらせる、河川におきましては何トンあるいは海におきましてはどのくらい、こういう計算はできないわけではない。いいですか。ますます日本の沿岸にサケ・マスが回遊してきますと、ただただ密漁者だからといって取っつかまえるというような漁民を苦しめるようなやり方では、水産行政は成り立たないと思うのですよ。将来とにかくソ連が完全に北洋というものを締め出すというような場合、さらに七千人も八千人もいる漁民がどこに活路を求めたらいいかという問題を、いまから十分検討しておかなければいかぬですよ。日ソ漁業交渉のときにいつも金ばかりで解決するとは考えられないのですから、これこそが私は沿岸漁業を振興する唯一の手段である、こういうふうに考えますので、御見解を承りまして質問を終わります。
  30. 片岡清一

    ○片岡政府委員 ただいまお話しのように、海洋におけるサケ・マスの問題は非常に厳しい状況になってきております。したがいまして、どうしてもこれは国内においてふ化放流事業を盛んにして、そして国内における生産を上げていかなければならぬ、こういうことはお話しのとおりでございまして、今後その方向に向かって一層努力をいたしていくために、それぞれ北海道及び本州において、ふ化場における稚魚の買い上げその他放流施設の整備等について国でも十分補助を行いまして、そうしてこのふ化を大いに盛んにして沿岸漁業の振興を図っていきたい、こういうことに力を入れておる次第であります。(玉沢委員捕獲についても検討していただきたい」と呼ぶ)捕獲についても十分検討をして、そしてその漁獲量の十分な成果を上げるようにいたしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  31. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 終わります。
  32. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 津島雄二君。
  33. 津島雄二

    ○津島委員 農林水産業振興に関する若干の問題、御質問を申し上げますが、本年度予算に関連して農林水産大臣が説明それから所信表明をしておいでになりますが、その中身をよく拝見いたしますと、全体として非常にきめの細かい配慮をしておられまして、いまの農林水産業の抱える問題についていろいろな対策を考えておられることは評価できるわけでありますが、私ども読んでみて感じますのは、要するに、問題は皆さんわかっておられる、いかにそれを実行するかということと、それからそれを実行するについて社会的、経済的な障害が非常に大きいということにあると思うわけであります。  ことしの大臣の予算の重点事項について、まずもって地域農業生産体制の総合整備というのを挙げておられる。もっともなことでありますが、この問題一つとりましても、片や需給に即応した農業生産の体制をつくるにはどうしたらいいかという大きい問題がございます。これは米を中心として非常に大きい問題でございますから、きょうの限られた時間ではとうてい議論し尽くされない。  そこで、もう一つ、これと並んで言っておられますのが、意欲的に農業に取り組む者に農地利用の集積を図りつつ、これを中核とした農業生産の再編成を図る、こういう点だと思います。それにつきまして、農地の流動化を一層促進するため、貸し手農家の掘り起こし活動と農地賃貸借への踏み切りとなる流動化奨励金の交付等を内容とする農用地高度利用促進事業を行いたい、こういうふうに述べておられます。時宜にかなった措置であると思いますけれども、しかし、考えてみますと、農地の流動化を図るというのはかねがね言われてきてなかなかできない、いわば日本地域社会、ことに農村集落の社会経済体制を変革しなければならないというような大きな問題をはらんでいるわけでございます。  そこで、まず事務当局の方から、この流動化奨励金の中身と、そしてそれが一体どのようにこの所期の目的を達成するために有効であるかということについて、簡単な御説明を賜りたいと思います。
  34. 大場敏彦

    ○大場政府委員 流動化奨励金の中身といいますか、これは農地の流動化を促進するために、主として賃貸借をねらっているわけですが、貸し手が一種の踏み切りをしてもらう、そういう場合の一種の踏み切り料という形で、反当たり定額を奨励金として交付する、こういった制度で、具体的に申し上げますれば、賃貸借期間の長短によって差をつけております。たとえば、三年から五年の間は十アール当たり一万円、それからそれ以上は二万円という形で差等はつけておりますが、そういった定額の奨励金を地主側、貸し手側の一種の踏み切り料という形で交付して、それだけで問題はもちろん片づかないわけでありますけれども、はずみをつけた形で農地の流動化を図っていきたい、こういうことが予算の中身であります。  それから、効果いかんというお尋ねでございますが、もちろん、農地の流動化という大きな流れを促進するためには、根本的な諸制度の改変ということは必要であろうと思うわけであります。たとえて言うなれば、いろいろ法制の問題もありますし、それから貸し手側、借り手側がそれぞれ安心して借りられあるいは貸すことができる、そういったシステムを整備する必要があるでしょうし、そういう制度を盛り立てるためのいろいろな各種政策、誘導助長政策を強化する、こういったもろもろの抜本的な制度が必要であることは当然でありますし、そういった方向でわれわれいま鋭意検討中でございますが、そういった制度を仮にいまつくりましても、根本は皆さんの理解と協力という形で物事を進めなければなりませんので、農地の賃貸借の掘り起こし、貸し手及び借り手側の掘り起こし、そういった運動ということが根本的には必要になってくるだろう。こういった意味で、その一つの有力な武器として、いま御指摘になりました流動化の奨励金という手法、これは現在やっているところもあるわけでありますが、そういった実績をも考えて取り入れたということであります。もちろん、これは農業委員会等の活動あるいは市町村の活動というものを待って効果を発揮させていただきたいと思っているわけでありますけれども、そのこと自身で効果が上がるということではなくて、同時に他の諸制度の改変ということも絡み合わせて、それからこの制度をうまく活用していくという形の掘り起こし運動の積極化ということと絡んで効果を上げていくものだ、またそういうような効果がある程度上がるものじゃないかと私どもは思っております。
  35. 津島雄二

    ○津島委員 ただいまのお答えでも御指摘があったように、この奨励金そのものではなかなか所期の目的は達成できない。関連するいろいろな制度改善が必要でございますが、何といっても、私の見るところ最大の障害は、農地の資産としての価値が上がってきているということでございます。いま十アール当たり三年から五年で一万円と言われておりますが、たとえば十アールの土地を仮に手放したと仮定をいたします。そうすれば、それに対応する一千万、一千五百万というものが銀行預金になる。その銀行預金で定期にしていけば百万円近いものが毎年入ってくるわけですね。これに比べれば一万円というのは全く〇・一%にも足りないということで、そういう意味で言えばきわめて中途半端な措置になりかねないものでございます。  こういうように農地が資産として価値が上がっているということが、日本の農用地の高度利用を非常に妨げている一つの要因である、いい悪いは別でございますけれども。しかし、農民が好むと好まざるとにかかわらず、こういう農地の資産化というものが進んでいくわけでありますから、農用地の高度利用を図る場合に、できるだけ資産としての農地を農業の近代化のために提供できる、しかし所有権とそれに伴う資産価値だけはいろいろな意味で諸制度で守ってやるという配慮が一番大事であろうと思うわけであります。この点については、もうすでにいろいろな制度改善ということが検討されていることは私もよく知っておりますけれども、きょうはひとつ特殊な面を取り上げまして、皆様方の検討の材料にしていただきたいのであります。  まず第一に、仮に私が農地を持っておって自分で農業をやれない、これを手放す場合に、貸してやるのかどうか。自分の後継者に譲れば、御承知のとおり、相続税は非常に有利な取り扱いを受けるわけでありますが、どういう人に譲ればどのような相続税上の優遇措置があるか、簡単に御説明をいただければと思います。
  36. 大場敏彦

    ○大場政府委員 相続税の優遇措置、これはたしか五十年からとられているわけでありますけれども、相続に際してその相続をした者が、恒久的と言っていいか、かなりの長期間にわたってその土地を農地として利用する、こういったことが保証される場合、具体的に申し上げますれば、二十年間その土地を農地として使う場合には、いわゆる相続税評価額とそれからその農地を農業用に使った場合の担税力との差額、農業投資価格評価との差額というものにつきましては、これは納税猶予して、二十年間農業を継続した場合には免除する、こういった措置が現在とられております。これはいま御指摘のありましたように、賃貸借、そういったことではございませんで、所有権の移転ということに伴う相続という場合に限られております。
  37. 津島雄二

    ○津島委員 いま御説明がありましたように、たとえば自分の後継者に所有権を移してしまう、生前贈与をやるということになりますと、とにかく贈与税はずっと払わずに納税猶予をしてやろう。そして、だれも自分が死ぬと思っていませんけれども、不幸にして相続の事態が起こりますと、これは二十年営農を続けるという前提で、相続税の方は一般的な資産価値を考慮せずに安い評価で済ませてあげる、こういう制度があるわけであります。  さて、いま農業にとって最大の関心が、農業の後継者を確保することではありますけれども、しかし優良な後継者でなければいけない、本気で農業をやってくれる人でなければ値打ちがないわけでありますね。また、自分の息子さんが町へ出てしまって後継者がいないという場合については、できるだけ賃貸借その他で先ほどの農用地高度利用をさせてもらいたいというのがいまの政策の要件であります。さて、自分の子供が町に出てサラリーマンになってしまった。私の住んでおります郷里の近辺にもたくさんございますけれども、隣の息子は一生懸命農業を続けてやりたい。そこで、流動化奨励金もありますから、賃貸借に出したということになりますと、所有権は残っている。そして都市近郊の農家でありますから坪当たり十万というようなところもこれは幾らもあるわけでありますが、その場合には相続税はどうなりますか。いま十アール当たり一万円もの奨励金をお払いになって、できるだけ貸してください、こういうことになっておるのですけれども、仮にそれをやると一体相続税の方はどういうことになりましょう。
  38. 大場敏彦

    ○大場政府委員 贈与税及び相続税の世界で特例を開いておりますけれども、それはあくまで受贈者あるいは相続者がみずからその農地を農地として利用する、こういった場合に限定されておりますので、それが他に貸すというような場合には、相続税ないしは贈与税、そういった特例の世界では、現在の制度では特例は認めていないということでございます。
  39. 津島雄二

    ○津島委員 先ほど、この問題の促進のためには関連の諸制度をいろいろ考えなければならないと言っておりましたが、たとえば民法上の問題とか農地法の問題となりますと、これは個人の権利関係に響いてまいりますから、そう軽々に改善を図ると言っても問題があることはよく承知しておりますけれども、いまの税の話は、これは行政法でありますし、そして私は特にここで御指摘申し上げたいのは、いまの租税特別措置法七十条の四と五でありますけれども、この特例はみずから政府が設けている特例措置なんですね、特別措置なんです。この特別措置がじゃ現実にどう働くかといいますと、たとえば十アールなら十アールの土地でも資産価値からいえば非常に大きい場合に、これを隣の農家に高度利用させるために移すと損をしてしまう、特例措置があるばかりに逆に相続税が上がってしまう、こういう結果になっているのはどういうものでございましょうか。むしろ特例措置が、農林省が一生懸命予算までつけて促進しようということに対して逆櫓を立てるかっこうになっているのではありませんか。私は、この租税特別措置、いまの納税の猶予という制度については、税の専門家としていろいろ問題があると思っております。そのことがいいか悪いかは別といたしまして、しかしその特例措置がある以上は、それが国の大きな政策の目標に対して逆に働くというこの事態だけは、私は真剣に検討していただきたいと思うのです。いまのこの特例措置をそのまま残しておきますと、十アールであれあるいは五アールであれ、とにかく譲らずに、自分の子供に譲ったかっこうにしておいて、嫁さんが一年に二回、周りの近所の人の応援を得て田植えと稲刈りをやれば何とかやっていけるというような兼業農家が逆に促進される、つまり小農地にしがみつかせる形になっているというのは、これはぜひ真剣に考えていただきたいのでございます。  時間がございませんし、かなり技術的な問題でございますから、きょうは深くは入りませんけれども、まず第一に、いまの七十条の四、五の特例措置をひとつ検討していただきたい。いま大切なのは、何が何でも親子の間の相続に税をまけるということだけではないはずであります。優良な本当の意味の農業後継者を育てることでなければならないはずであります。同時に、優良な農業後継者があるいは農業の担い手が本当に真剣に農用地を高度利用してやっていこうという場合に、逆櫓を立てるような結果にならないような御配慮は絶対に必要だと思いますので、きょうはその点についての御検討を特にお願いを申し上げまして最初の点は終えたいと思います。政府委員の方からあるいは政務次官の方から簡単に御見解をお願いして、次に移りたいと思います。
  40. 大場敏彦

    ○大場政府委員 御指摘非常に大事な点だろうと思います。技術的に言えば、贈与税はやはり経営の若返りとかあるいは細分化の防止、そういう視点もありますし、それから相続税の場合には、これは長期間農業としてその土地が利用される、そういう保証という点から特例を開いている、こういう点がありますから、賃貸借に出した場合に、それがずっと農地として利用されるか、どういう相手の場合にそれが確保されるか、どういう期間であればいいか、そういった点も実は詰める必要があるだろうと思うのです。税制の問題ですから、これは何も不変のものではないとは思います。いま御指摘になりました農地の流動化という点の新たな構造的視点から法律も含めていろいろ制度見直しということは必要でありますので、いま御指摘になりました点は十分踏まえて、これは税務当局の理解も得なければなりませんが、よく相談してみたいと思います。
  41. 津島雄二

    ○津島委員 それでは次の問題に移ります。  同じく大臣の予算に対する御説明の二つ目の大きな柱が、需要の動向に即応した農業生産の振興ということになっております。この需要の動向と農業生産の関係については非常に大きい問題がございまして、どの問題、主食を取り上げても副食を取り上げても大変なんでございますが、私はきょうはあえて米の問題を取り上げずに、野菜類、畑作物の需要と供給の関係、そして価格の変動の問題を御質問したいと思います。  まず第一に、随時いただいております農家経調の数字を見て非常に驚きますのは、農業所得がここのところずっと横ばいで来ております。伸びても三%ぐらい。これはいまの農業をめぐる環境を考えますと当然と言えば当然なことでありますけれども全国農家をならしてみて、大宗をなすところの水田からの所得を考えてこういう状態になっているわけでありますから、いまわれわれとして大いに促進をしたいところの畑作をやっている農家にとりまして、価格の変動というものが農家経済に及ぼす影響というのは非常に大きいことは御指摘するまでもないわけであります。いまさら私が申し上げるまでもなく、大体農業生産というもの、ことにこれが特殊な作物になればなるほど限界生産量と価格の変動の関係が非常に大きくなるわけでございますね。ですから、変な言い方をしますと、価格安定措置に乗りにくいものほど価格が変動しやすいという一種の二律背反の状況にあるわけであります。  そこで、たとえばいろいろな農産品の価格を見ておりますと、野菜の中でも根菜類の去年からの価格低落は非常にひどいものでございまして、現実に私の地元で盛んに生産されておりますナガイモ等も、これはもう春になると掘り出して出荷をするわけでありますけれども、出荷をすればするほど赤字になる、そのまま土の中に置いておきたいけれども、それもどうにもならぬというような状態に追い込まれているわけでございます。  そこで、まず、いまの野菜の価格安定の仕組みがどういうことになっているか、簡単に御説明をいただきたいと思います。
  42. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 ただいま御指摘のございましたように、野菜につきましては需要と供給が見合わないと価格の変動が非常に著しく出るという性格を持っております。  これに対する価格安定の措置でございますが、大きく分けて二つございます。一つは、全国的に重要な野菜、これを指定野菜と言っておりますが、これにつきましては国が設けております特別の法人であります野菜供給安定基金、これが価格補てんの事業を行っておりまして、一定の基準価格から価格が低落いたしました場合に、その一定の割合につきまして低落分の価格補てんをするという仕組みで、あらかじめ数量を予約をいたしておりまして、その価格補てんのための財源として国が七割ないし七割五分、残りは出荷する出荷団体と県とが折半をしてあらかじめ資金を造成をしておくということでやっておるわけでございます。  それからもう一つは、指定野菜ほどは全国的に流通する重要野菜ではないけれども地域地域におきまして重要な野菜である、しかもある程度広範な流通が行われる、こういうものにつきましては、特定野菜といたしまして、各都道府県に野菜価格安定のための法人をつくっていただきまして、この法人が指定野菜と同じような仕組みで価格補てんを行う。この価格補てんの財源の一部について、国は野菜安定資金協会から助成をするということで価格安定を図っておるわけでございます。
  43. 津島雄二

    ○津島委員 念のためにいまの指定野菜と特定野菜の指定されているものを若干挙げていただきたいのです。それからついでに、特定野菜の場合の国からの助成割合。
  44. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 指定野菜は十四種類でございまして、大根、白菜、キャベツ、キュウリ等々でございます。それから特定野菜でございますが、全体で十九品目ございます。イチゴ、エダマメ、カブ、カボチャ、カリフラワー等々でございます。先ほど話のございましたナガイモ、これはヤマノイモということで五十一年度から指定をいたしております。  それから特定野菜の助成割合は、三分の一国が助成をするということでございます。
  45. 津島雄二

    ○津島委員 指定野菜の指定が適切に行われているかどうかという問題もありますけれども、私が特に御指摘申し上げたいのは、価格の変動が大きいものほど実は地域的なものである。全国的なものは地域的なものに比べると変動割合が、まあこれは大豊作でもあれば別でありますけれども、需給の動向というものは全国的につかみやすいわけであります。私どもの見たところから言えば、現実に農家として全力を挙げてやっている作物といえば、やはり地域的に非常に特殊な作物の方が多いわけであります。そしてそういうものほど実は需給関係というのはつかみにくい。いまのヤマノイモの場合でも、恐らく全国で五、六県あると思いますけれども、その五、六県についてはそれぞれ熱心にやっておられるのですが、たとえば中央市場における価格の動向なんというのは、結局大きく変動してから後で困ったということになりがちなんでございます。  そこで、ここでお尋ねをいたしたいのでありますが、特定野菜についてもう少し需給動向を的確に把握できるような仕組みを、農林省が全部やれというのも無理だと思いますけれども、関係の地方団体と協力をしてやれる余地はないであろうか。価格低落をしてから、もう土の中から掘れないような状況になってから何とかしてくれというようなことをできるだけ避けたいという気持ちから、まずお伺いしたいのであります。  二番目に、助成の割合が指定野菜の半分にも満たないという現状はどういうものであろうか。もう少しこれを格上げをしていただく可能性はないか。この二点についてお伺いをしたいと思います。
  46. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 先ほどお答えしました点でちょっと訂正させていただきたいと思いますが、特定野菜は十九品目と申しましたが、五十四年度四品目追加で二十三品目でございます。  ただいま御指摘のございました地域的な野菜について、あらかじめ需給予測をして需要に見合った生産が行われるようにすべきではないかという御指摘でございますが、まさにそのような必要性はあるものというふうに考えております。具体的にいろいろな品目について申し上げる時間がございませんので、ナガイモについて申し上げますが、ナガイモは五十二年産までは価格が比較的堅調でございまして、五十一年、五十二年の特定野菜の価格補てんの対象としてはほとんど活用されてなかったのでございますが、五十三年産は、青森県を中心にいたしまして面積が非常に近年ふえてきておるということから、価格が昨年十一月から大幅な低落をしておるということでございます。しかし、五十三年産も特定野菜の価格補てんの事業としては余り活用されてないという事情がありまして、生産農家の方々にとっていろいろ深刻な事態が起きておるというふうに承知をいたしております。  そこで、先ほどの需給調整でございますが、本年二月、三月主産県六県が集まりまして、私どもそのような指導をしたわけでございますが、出荷の調整、さらには基本的には生産を計画的に進めるということで、調整のための会議を開いておるところでございます。そういった形で、ことしはやや事後的になったのでございますが、五十四年産についてもこの会議で、どのような作付をするかということで寄り寄り協議をいたしておりまして、大幅な作付増加を需要とは無関係につくるということで価格低落を来さないようにするということで、計画的な生産を行うということでただいまその方向に向かって進んでおるところでございます。他の品目につきましてもそのようなことを必要に応じてやっていくということでございますが、指定野菜はやはり全国的な流通のものでございますので、組織的な需給調整の会議を開いておりますが、地方的な野菜につきましては、主産県がやはり主体になってやるということが必要である、またその方が適切である。ナガイモについて申し上げれば、主産県六県で全国の生産量の八割近くを占めるというようなことでございますので、そういうことでやっていっていいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから補助率の問題でございますが、やはり地域的な野菜につきまして国が助成する姿といたしまして、やはり地方公共団体にも地域的な野菜の重要性ということで力をいたしていただきたいということから三分の一という助成率になっておるところでございます。これを引き上げるかどうか、これは財政の中でやはり全体のバランスというようなことから困難な状況でございますが、なお検討をしていきたいと思います。
  47. 津島雄二

    ○津島委員 なかなかむずかしい問題でございますが、たとえばさっきのナガイモの場合も、ことしに入ってから需給調整会議をやっても後の祭りでありまして、これは地元の公共団体の行政にも今後改良の余地はあると思いますけれども、やはり植えつける前から、需給動向から生産県が本当に把握できるような仕組みを農林省も陰に陽に促進をする姿勢をお願いを申し上げたいと思います。  そこで、次の質問に移りたいと思いますが、地方選挙を終わって町村長が出てきますと、これで町村長選が終わったのだがいよいよ農協の問題をどうしますかというのがありまして、かねがね農協の経営問題については多くの方が心配をしているところでございますが、特に農業所得の伸びが先ほども御指摘しましたように鈍化をしてきている。さらにその上に、信用事業というものは私はいまの金融情勢からいってますますむずかしくなってくる、こういうふうに考えております。一体、農協の経営状況について、ことにかねがね合併が必要であると言われているような小型の農協についてどのような感触をお持ちなのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  48. 今村宣夫

    ○今村政府委員 農協の経営につきましては、御指摘のように農協をめぐります諸般の情勢は非常に厳しいものがございます。したがいまして、農協の経営についても今後厳しい環境のもとに置かれるということは御指摘のとおりだと思いますが、現在までのところを私たちも重要な関心を持って見守ってきたわけでありますが、預金は預金金利が下がりまして貸出金利の引き下げはおくれるというようなことに助けられまして、いままではわりあい信用部門の収益はそれほど悪くならなかった、むしろよくなってきたというふうなそういう情勢にも助けられまして、最近までの経営はそれほど経営が悪化しておるという状況ではございません。大体、従来までは当期利益の伸び率は一〇%ぐらいございましたが、五十三年度どういうふうになりますか、まだ確たることはわかりませんけれども、伸び率は下がりますけれども、経営は私たちが心配したほどではないということがあります。  問題は今後の問題でございまして、御指摘のように、信用事業におきます預金、貸し出しの伸びの停滞、あるいはまた販売事業、購買事業におきます取り扱い高の鈍化、あるいは一方人件費の高騰、こういうふうな問題がございますから、これらの状況を考えますときに、農協経営の今後の合理化なりその経営基盤の確立ということについては、特段の意を用いていく必要があると思います。  そこで、御指摘の合併問題でございますが、農協は規模が拡大すればそれだけ経営基盤が確立するということは御指摘のとおりだと思いますけれども、問題は、合併に伴いましていろいろなメリットがあると同時にデメリットもございます。たとえば、組合が地域から離れていくということもございましょうし、大型化に対応しますようなそういう経営管理体制が不十分なまま大きくなるということでありますれば、かえって合併のデメリットの方が強く出てくるということがございますから、合併を考えます場合におきましても、そういうメリットを生かしデメリットを少なくするような形で、合併後の組合経営ということにつきましては特に留意をしていかなければならないというふうに思います。  なお、御指摘のように小さい単協もございます。したがいまして、そういうふうな単協につきましては、経営基盤の確立等の観点からさらに合併を進めていくことは必要であるというふうに考えておるわけでございます。
  49. 津島雄二

    ○津島委員 農協の合併が適時適切に行われることが必要であるということはほぼ異論がないと思います。  そこで、何といっても、合併になりますと含み資産をみんな税法上吐き出させられるという問題がございます。ですから、望ましいこととは言いながら、かつて五十三年までございました租税特別措置がないところで合併をしろというのは、残念ながら合併の大きな阻害要因になると私は思うのでございます。これはずっと議員立法できた法律でございますし、特に政府委員の方から御答弁を求めませんけれども、最近の状況を考えますときに、農協の合併についてやはり法制の整備もあわせて検討すべきではないかということを申し上げて、最後の質問に移りたいと思います。  先ほどお話をいたしました大臣の所信表明の中で、今後の畜産対策の一つとして、未利用の里山等簡易な造成手法により開発して草地を造成するということを言っておられ、大変結構なことだと思うのでありますけれども、私どもの地元などはましな山林はほとんど国有林でございます。国有林の活用については、かつて私どもの地元でモデル閣議が開かれたときに発表されたというような事情もありまして、私ども特別な関心を持っておるわけでありますけれども、あの法案ができましてから、実際の利用になりますと林野庁営林局の方もなかなかむずかしい条件をおつけになるとか、賃貸料が高いとか、あるいはなかなか応じてくれないということで、活用が思うように進まないという声が強いのでございますけれども、この点についてどのような状態にあるのか、またどのような努力をしてこられたかを最後に御質問申し上げたいと思います。
  50. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  国有林地の畜産的利用につきましては、従来から草地造成なり林間放牧のための貸し付け使用ということで積極的に私ども対応しておるところでございまして、農業構造改善事業が発足しました三十八年から今日までの活用実績のうちの約八割は畜産のための活用でございます。  そこで、私どもこの畜産的利用を進めるためにどういうことをしておるかということでございますけれども一般的には、たとえば宅地あるいは営利用の土地の貸し付けの場合には相続税評価額の約百分の五、五%を基準として貸付料を決めております。また、その他の一般の土地の場合には百分の四、四%が基準になっております。それに対しまして、草地の場合には三%、さらにこれが共同利用で行われます場合には、一・五%、また、林間放牧の場合には百分の二、二%に年間三百六十五日とした場合の放牧日数の割合を掛けたもの、そういうことによりまして、一般的には、草地利用あるいは共同放牧に対しましては相当の優遇措置を講じてきておるわけでございます。また、契約が更新されます場合、地価上昇等が非常に大きい場合には、経営の観点から見ますと非常に大きい衝撃を与えるとまずいということがございますので、一般的には前年対比一・二倍という限度を設けておりますけれども、草地等につきましては一・一倍というように、引き上げ限度につきましても優遇措置を講じておるということでございます。  ただ、こういう措置をとっておりますけれども、最近、たとえばいま青森県のお話がございましたけれども、地価上昇も一般に激しいというような場合には畜産農家にも相当影響があるということもございますので、こういう一般原則によりがたい場合には、近傍類地のたとえば小作料であるとかそういうものを参考にいたしまして、個々のケースに応じまして実際には経営に大きな影響を与えないように十分処理をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  51. 津島雄二

    ○津島委員 質問を終わりますが、最後に、農村集落、最近はやりの言葉で言えば田園都市構想を進める上においても、地価上昇がある程度目立っているようなところにも国有林は必要なんですね。緑を守らなければならない。そういう意味で、いまの百分の五以下の賃貸料の画一的な適用は、やはり場合によって弾力的にやっていただくとか、見直しが必要であると思いますので、その点を含めて、国有林の活用を積極的に考えていただくことについて、政務次官から御決意の表明をいただいて、終わりたいと思います。
  52. 片岡清一

    ○片岡政府委員 津島委員の非常に適切な御見解につきまして、十分検討を重ね、そしてその方向に向かって、国有林野の実情を考えながら、民間に十分利用していただくような方向に向かって進んでいきたい、かように考えておる次第でございます。
  53. 津島雄二

    ○津島委員 終わります。
  54. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 小川国彦君。
  55. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、水資源開発公団に対しまして、利根川河口ぜき問題を中心質問をいたしたいと思います。  利根川の河口ぜきが昭和四十六年五月に完成をされましたが、この河口ぜき建設の目的は何であったのか、この点をもう一度改めて公団の総裁からひとつ御説明を承りたいと思います。
  56. 山本三郎

    山本参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  利根川河口ぜき設置の目的は、利根川下流部の塩害を防止するとともに下流部から用水を確保しよう、こういう目的でございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、堀之内委員長     代理着席〕
  57. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ところで、利根川の現状において、いま総裁は塩分の除去と取水量の確保ということを言われましたが、同時にその中には、長い年月歴史的に坂東太郎と言われる利根川に内水面漁業という形で生活を依存してきている内水面漁業者の生活権の確立といいますか、あるいはまた半面から言いますと、漁業被害防止ということも当然考えておかなければならない問題と思いますが、この点についての配慮はどのように考えてこられましたか。
  58. 田中和夫

    田中参考人 お答えいたします。  当然、水資源にもなるべく影響がないように、利水との調和を考えてということであったわけでございます。
  59. 小川国彦

    ○小川(国)委員 言うならば、利根川河口ぜきの建設によって、一名潮どめせきと言われるわけですから、塩分除去の問題と利根川上流におけるいろいろな取水の確保、それから漁業被害防止、こういう三つに私どもはこの目的を考えているわけでありますが、ところで、この利根川の現状においてこの三つの目的は果たされてきたのかどうか、この点についてはどのように理解しておりますか。
  60. 田中和夫

    田中参考人 先生も御承知のように、操作のための管理規程を設けまして、いまおっしゃいましたような利水とそれから漁業の関係と大変際どい操作の問題でございますけれども、その操作の規程に従いまして現在まで操作をいたしてきております。
  61. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ところで、利根川という大きな動脈に河口ぜきをつくった。私どもはこれを人間の体にたとえてみれば、日本の国土全体を流れている川というのはいわば血管のようなもの、利根川はその中でも関東全体を流れている大きな川の最たるものであります。人間の体にたとえてみればいわば大きな動脈である。その動脈に河口ぜきというせきをつくることによって、脈をとめる、血脈の流れをとめる、こういうせきをつくるわけでございますから、その治水の確保、利水の確保、特に利水の確保というものが図られるといたしましても、当然それによる河川の汚濁あるいはまた漁業被害といった問題が発生してくるのではないかということを当初から懸念をしておったわけです。  水資源公団においては、利根川を流れております水量が、河口ぜきを建設しました昭和四十六年当時、千葉県の東庄町新宿地先の地点で毎秒五十トンの川が流れている。そこで、新たに上流で新規取水を二十トンとった場合、維持用水として三十トンの水が残る、こういうふうに机上計算されたようでございますが、これはそのとおりでございますか。
  62. 田中和夫

    田中参考人 いま先生からお話がございましたように、利根川の工事実施基本計画では、本川下流部において主として塩害防除に必要な流量としては五十トンと見込んでいるわけでありますが、塩害防除に万全を期するために利根川の河口ぜき事業が計画されたわけでございまして、この計画においては、新規利水を取水した後のせきからの流出量を検討した結果、確保すべき流水量を約三十トンと見込んだわけでございます。
  63. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ところが、その三十トンというふうに計算されました水が、利根川という大きな川の幅で見てみますと、利根川の河口ぜき地点における利根川、下流に至ってまいりますから川幅も非常に広くなってまいりまして、約六百メートルぐらい。水深が四メートル。これで計算しますと約二千四百立方ということになりますが、ここを毎秒三十トンの河水が流れたといたしますと、秒速、一秒間の流れというものは一・二五センチメートル、毎分にしましても七十センチ、一メートル足らずの流れでしかない。しかも、これは表流水であって、下の方の流れはもっと少ないことになる。一分間に一メートル流れないということは川ではないのではないか、川の流れはとまってしまったのではないか、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。こういう状態で、果たして利根川は河川と言えるのかどうか。川というものはやはり水の流れるものでなければならないということはもう当然の理でありまして、そういう点で、改めて維持用水三十トンというものは何なのか、こういうことが問われるのではないかと思いますが、この点についてはどういう御見解を持っていらっしゃうますか。
  64. 堀和夫

    ○堀説明員 お答えいたします。  感潮部におきましては、潮の流れが大きな要素になっております。そういうことを考えますと、感潮部における特徴といたしましては、私どもは維持用水五十トンあるいは河口ぜき設置による維持用水三十トンということは、河川としての性格上そういうことは当然あるというふうに考えておるわけでございます。
  65. 小川国彦

    ○小川(国)委員 現実にあるのですから、これは当然あるとおっしゃられてもあれなんですが、しかし、河川というものがこういうような全く流れない状況の中で果たしてその川の生命が保たれるかどうか、そこまで私は考えを発展してお尋ねをしているわけなんですが、秒速一・二五センチメートル、毎分にして七十センチというのは全然流れがわからないわけです。目で見てもわからないぐらい。そういう状態の中で、果たして川の生命というものがあるのかどうか、そのことをお尋ねしているわけです。
  66. 堀和夫

    ○堀説明員 お答えいたします。  感潮河川の河口部においてはそういう状態がありまして、その中で河川の生態系が営まれておるというふうに私ども考えておるところでございます。
  67. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、では具体的にどういう現象が起こっているかという面から、川の命が失われているということをただしていきたいと思うのですが、まず最初に利根川の塩分濃度の問題でございます。  利根川の河口ぜき建設の目的の一つには塩害の防止ということが挙げられておりまして、そのためにこの河口ぜきをつくったとも言われているのですが、昭和四十七年あるいは四十八年の塩分濃度が二〇〇PPmから五〇〇PPmを超えた日が相当な日数に上っていると言われているわけです。この二〇〇PPm以下でなければならないといいますのは、厚生省が定めている飲料水の塩分濃度、いわゆる塩化イオンの基準というものは二〇〇PPm以下でなければならないということになっていますし、農業用水においても塩分濃度五〇〇PPmを超えては被害が発生すると言われているわけであります。  ところで、これについては、これは建設省、水資源公団、いずれでも結構でございますが、利根川の塩分濃度が年間通じまして二〇〇PPmを超えている日は何日あるのか、五〇〇PPmを超えている日は何日あるのか、この数字を示していただきたいと思います。
  68. 田中和夫

    田中参考人 いまここに数字を持ってきておりません。
  69. 堀和夫

    ○堀説明員 いま手元に何日あるかという先生のお話に対する資料は持ってきておりませんが、塩分濃度が平均でどのくらいか、最大、最小でどのくらいかというデータはいま手元にありますが、それについてお話しいたしますと、二十六キロ地点の河口ぜきより上流の阿玉川閘門では、平均が四八五PPm、最大が一〇四〇、最小が四八・六という結果を得ております。五十三年の実績でございます。
  70. 小川国彦

    ○小川(国)委員 もう一度伺いますが、平均で四八五。最高、最低をもう一度言ってくださいませんか。
  71. 堀和夫

    ○堀説明員 五十三年、平均が四八五、最大が一〇四〇、最小が四八・六という結果が出ております。
  72. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私ども調査によりますと、四十七、四十八年の塩分濃度の二〇〇PPmを超えている日は、昭和四十七年で三百六十一日、それから昭和四十八年で三百六十五日。言うならば、二〇〇PPmを超えている日は、年間三百六十五日とすれば、四十七年ではわずか四日間が二〇〇PPm以下であって、三百六十一日というものは二〇〇PPmを超えている。それから四十八年には三百六十五日二〇〇PPmを超えている、こういう実態があるわけです。  ですから、これでまいりますと、明らかに上水道をここから取水している場合には、たとえば小見川町とか、ここから上水道を取水しているわけですが、そうすると年間通して厚生省の定める塩分濃度の基準を超えた水を飲んでいる、こういう実態にあるわけなんですが、こういう点において、川というものが本来的な塩害防止という役割りを果たし得ない状態になってきているわけです。こういう実態については、公団の方はこの点を認識しておられますか。
  73. 田中和夫

    田中参考人 先生承知のように、河口ぜきをつくりますときに、阿玉川の、河口から二十六キロ地点で五〇〇PPmということを、関係者寄りまして五〇〇PPmでいこうということを決めて、それで操作をしておるわけでございまして、いま御指摘のような四十七年、四十八年に、三百六十一日とか三百六十五日とか二〇〇PPmを超える日があるということは、そのとおりの数字のようでありますけれども、河口ぜきをつくりましたときの経緯は、阿玉川の地点で五〇〇PPmということが基準になっておるわけでございます。
  74. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、水資源公団というのは、河口ぜきを建設する時点に、すでにその上流にこれを上水道として取水しているところがあるのを知りながら、そこのところの水質がこれを建設することによって、小見川町に何万という人間が住んで生活をしているわけですが、その人たちの上水道が二〇〇という基準を早くも倍以上超えるような基準でこれを設定してやってきたのか、こういう重大な責任を問われると思うのですが、そのことは水資源公団の正式決定なんでございますか。
  75. 田中和夫

    田中参考人 お答えいたします。  いま先生の御指摘のような上水道に向かないPPmになりました場合には自己水源等に切りかえていくというようなことで、その当時話し合いができたわけでございます。
  76. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その点については、小見川町に対して何らかの協定をするとか、自己水源に切りかえるための補償措置をとるとか、そういうことは明らかにされているのですか。
  77. 田中和夫

    田中参考人 千葉県の当局と話をしております。
  78. 小川国彦

    ○小川(国)委員 現実にその補償措置が行われたのですか。
  79. 田中和夫

    田中参考人 補償はいたしておりません。話し合いでそういうことに決まったということでございます。
  80. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすれば、今後そういう事実が明らかになってくればそれについての措置はとる、こういうことを話し合いで決めておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  81. 田中和夫

    田中参考人 その当時、責任者の間でちゃんと話し合いがついておるわけでありますから、いま先生のお話のようなことにはならない、こう考えております。
  82. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これはちょっとおかしいですね。自分の飲んでいる水が厚生省の基準を倍以上超えた水になるということを千葉県との話し合いで決めだと言っても、自治体の町民が納得するでしょうか。その水が飲めなくなって、そういう塩辛い上水道の基準を倍以上超える水になるということが千葉県と話し合いがついたと言っても、現実にそういう状態になって、仮に地下水を掘るとか別途の水源を考える場合に、そのことの手当て、対策が全くなくて、果たして承知をされたというふうに理解できましょうか。
  83. 田中和夫

    田中参考人 私どもの方の理解では、千葉県当局が町の方と話をして了解を得ておる、こういうふうに考えております。
  84. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この点は今後の問題の究明に残しておきたいと思います。  続いて、漁業被害の問題について伺いたいのでございますが、昭和四十三年の一月十七日、水資源開発公団の本社で行われた「利根河口堰建設に伴なう漁業被害に対する研究会記録」というのによりますと、当時公団側は、稚アユ、サヨリ、シラスウナギ、シジミ等に限定して考えてみて、遡上率、河口ぜきを越えて魚の上っていく遡上率は、九〇%から九五%内外、こういうふうに見まして、そしてウナギについては「被害率は専門家の調査結果をまたないと断言はできないが、公団の見解としては、堰堤の操作如何により相当量そ上するものと思われる。多少の影響はあると思うが大半はそ上するものと推定する。成鰻については、水流にのり自由に遊泳できるのでそ上阻害はない。」こういうふうに説明をしております。  さらにまた、同じ研究会の記録によりますと、シジミについては「堰堤上下流の漁場の塩分濃度が適当なので、多少の影響はあるが大きな繁殖阻害等は考えられない。」こういうふうに説明をしておりますが、十一年経過した今日、この漁業被害状況についてはどのように判断をしておられますか。
  85. 田中和夫

    田中参考人 前回の河口ぜきの補償の場合には、よく関係者と話し合いをいたしまして、両方合意の上で恒久的な補償額を確定いたしたわけでございます。今回、五事業、千葉県下の四用水路、霞ケ浦開発という事業に関連いたしまして、それの関係の補償交渉を現在継続いたしております。その中で関係の漁民の方々の意見も十分聞きながら、実態がどうであるかということをその後のデータ等から判断をいたしてまいりたい、こう考えております。
  86. 小川国彦

    ○小川(国)委員 昭和四十三年に河口ぜきが建設をされまして、そうしてその後昭和四十六年に完成をして、引き続いて三カ年にわたりましてシジミの被害が発生し、全滅した年もありまして、漁民に大きな被害を与えたわけであります。その結果、昭和五十三年四月には利根川水系対策協議佐藤三郎会長が、これは宇都宮市泉町一の三というところに住んでいる会長でございますが、「突発的漁業被害防止対策についての要望書」を提出しているわけでございます。  さらにまた、昭和五十一年五月十五日には、水門をあけよということで、九十隻、約三百人の漁民が抗議の水上デモを行っている。このデモは前後三回にわたって行われているわけでありまして、生活を支える魚介類を殺すな、せきをあけよということで、これは水資源公団に抗議文書も提出をされているわけであります。  こういうような状況から見ますと、当然シジミの問題、それから魚類の問題、これについて河口ぜきが建設されて十一年たった現在、改めた視点において漁業被害実態というものを公団が的確に把握して、これに対する抜本的な対策を講ずることが必要ではないか、こういうふうに感ずるわけでございますが、この点につきましてひとつ公団の考え方、姿勢を伺いたいと思います。
  87. 田中和夫

    田中参考人 先ほども申し上げましたように、河口ぜきの設置に伴います漁業上の一切の損失につきましては、すでに四十三年の七月に関係利根川流域の五県の連合会と漁業補償契約を締結いたしまして、一切の損失についての補償を完了したという形になっております。両方合意いたしまして協定を結んだわけでございます。いまお話しのように、河口ぜきの管理を始めましてから後に、昭和四十六年、四十八年、五十年というふうにシジミが斃死して問題になったことはよく承知いたしております。しかし、いま申し上げるようなことで、河口ぜきに関する補償は、話し合いの結果円満に協定を締結されておりますので、その河口ぜきの補償の見直しということはいたす考えはないのでありますが、その後、先ほどもちょっと申し上げましたように、千葉県の四用水路事業、それから霞ケ浦開発というようなことで、その事業を実施するに伴います利根川の流量の減少というようなことでシジミ等に影響があるということにあわせまして、この際、たびたびシジミの問題等も発生いたしますので、河口ぜき関係のユーザーの御協力も得ながら、シジミ漁業について抜本的、恒久的な解決を図りたいということで、現在補償交渉を行っているところでございます。
  88. 小川国彦

    ○小川(国)委員 河口ぜき建設後の問題についていま見直しをする考えはない、こういう形で言っておられるわけでありますが、私どもは全体として見直すということを言っているのではなくて、現実に被害が生じている実態については、公団も率直に目を向けて、その対策を講ずべきではないか、こういうことを言っているわけです。確かに四十三年七月の協定の中では、この問題について一応の妥結を見るという形をもって終わっているわけでありますが、いま理事も承認されたように、四十六年、四十八年、五十年のシジミの被害というのは、千葉県が代行して一時その補償を行わなければならないほど非常な被害か発生をしているわけであります。  それから、また同時に、その後における漁業被害実態については、昨年の六月の千葉県議会におきましても、川上知事が次のような発言をしているわけです。  「四十三年三月水資源公団と漁組の方々との間に漁業補償の契約が締結されています。この漁業補償は、河口堰をつくることによって生じる被害影響補償であります。その影響補償という前提で契約・補償が行われたのでありますが、四十六年に堰が完成した後、四十八年に漁業被害が起こり、その後も被害がときどき起こっているのが実情です。この被害が当初、協定を結んだときに想定していた程度を非常に超えて被害が起こっているというところに問題が生じています。これらについて県としても、企画部、水産部、土木部、この三者構成の協議会をつくり、これらの問題に根本的に対処して、水資源公団等に要請していく姿勢でおります。」こういう千葉県の姿勢を明らかにしているわけです。  この中では、明らかに四十三年七月の協定以後に予想をはるかに超えた被害が発生しているということを千葉県の知事も認めているわけでありまして、その点では、四十三年七月の協定はありまするけれども、その後における事態というものを公団でもひとつ適切に把握して対処してもらいたい、こういうふうに考えているわけでありますが、その点について現行、公団の姿勢としては、シジミについては全面的な被害補償を考えようということを思っておられるようでございますけれども、ウナギその他に関する魚類の補償についてはこれを考えていないというような向きもあるように感ぜられるわけであります。このことについては、すでに河口ぜき建設以前に行われました学者の調査に基づく協議会の中でも、今後せきの開閉のいかんによっては魚類全体に影響があり得るということは認めているところであるわけです。したがって、私どもは、公団が補償に臨むに当たっての考え方というものは、単にシジミに限るのではなくて、影響被害を受けた魚類があるとするならば、これについては正しく補償を行っていく、その対策を講じていく、こういう姿勢が望ましいというふうに思うわけでありますが、ひとつこの点についての公団の考え方をもう一度伺いたいと思います。
  89. 田中和夫

    田中参考人 いま仰せのとおり、千葉県当局も重大な関心を持って、この問題を解決すべきだ、抜本的に解決すべきだということで、そういう御意向でございますし、私どもも同じような考えで、今回、先ほど申しましたようなことでシジミの問題に取り組みたい、こう考えておりますが、その他の魚類につきましても、先ほど申しました五事業、霞ケ浦、千葉県の四用水路事業の関係で影響があれば、その影響のことについて交渉してまいりたい、こう考えております。
  90. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうした前向きの姿勢でひとつお取り組みをいただきたいというふうに思うわけであります。  先ほども申し上げましたように、河口ぜき建設の際に予想しなかった被害状況が起こっている。それは先ほど申し上げた上水道、漁業被害、そうした問題が起こっている中で、さらに房総四事業に、二十五トンでございますか、新規取水をするということになりますと、これは当然これを上回る被害というものも考えられますので、その点ひとつ十分な取り組みをしていただきたいと思います。  それからさらに、河口ぜき管理のあり方についてお伺いをしていきたいわけでありますが、御承知のように、この河口ぜきが、水資源がきわめて不足というような状態から予想しない水需要がありまして、それからまた、予測されたような貯水が思うようにいかない、こういう状況から、せきの開閉がなかなか思うように行われていないというような状況がございます。先ほど行われた漁民のデモにいたしましても、やっぱりせきをあけよというようなところに焦点があるわけなんでありますが、ウナギについて言いますと、河口ぜき上流五キロで約十センチぐらいのヘドロが堆積してしまっている。いわゆる川のところにつくったせきの上流にヘドロがもうずっと堆積をしてしまっておって、このためにウナギの生息が非常に困難になってきている。それからシジミについて言いますと、この河口ぜきで流れをとめてしまっているために、上流は酸素欠亡、下流は赤潮、こういう事態が発生して被害を受けているというわけであります。ですから、管理部門においてこの河口ぜきの開閉というものをひとつ思い切ってやってもらう必要があるのじゃないか。たとえば降雨時とか大雨時とか選んで、せきの上をあけるだけではなくて、せきの下をあける、そういう思い切ったあけ方の中で、川底に沈でんしているヘドロの処理を一気に行う必要があるのじゃないか、こういうことが強く要望されているわけですが、そうした管理の運営についてひとつ思い切った処断ができないかどうか、この辺をお伺いしたいと思います。
  91. 田中和夫

    田中参考人 御承知のように、河口ぜきは利根川の下流の出口に近いところにございまして、江戸川の河口を基準点といたしますと八十センチないし一メーター三十センチのゲート上流における水位しかないわけでございます。その中でゲートの操作を行っておるということでございます。かつ感潮区間と申しますか、潮が行き来する区間であるということで、せきの上下流の水位差は最大でも一・三メーターという程度でございます。したがって、ほかのダム等に比べまして流水の貯留能力というものはきわめて限られておるということが言えるわけであります。このために、いまお話しのような、流水を一時貯留してこれを一挙に放流する、フラッシュするというような操作をしたといたしましても、その効果は余りない。過去何回かやってもみたわけでありますけれども、おのずから限界がある。少なくともいまおっしゃったようなヘドロ、堆積土を一掃するというほどの効果は、技術的に見てほとんど期待ができないと思われるのでございます。  そういうようなことでございますので、先ほど来申し上げておりますように、いずれにいたしましても、このシジミ等の問題については抜本的な対策を講ずべく、現在漁民の方々とせっかくお話し合いをしておるわけでございますから、御指摘のような処置は、それが解決すれば、漁民とのお話し合いがつけばそれで解消するといいますかということになるわけでございまして、そういう点で御理解をいただきたい、こう考えておるわけでございます。
  92. 小川国彦

    ○小川(国)委員 田中理事のお話を承っておりますと、漁業補償が済めばすべて解決するんじゃないか、何かこういう考え方にも受け取れるのですが、私どもはそうではなくて、やはり先ほども触れましたように、川の生命というものを保っていくからには、上流五キロにもわたってヘドロが沈でんしている状態というものは、本来の川の機能というものも失わしめるわけで、川には水の浄化作用もあれば、流れる中で浄化作用もあれば、いろいろな作用を持っているわけですね。それがこういうようなヘドロの沈でんを放置していくという状態は好ましいことではないわけでありまして、川本来の機能というものを尊重していく上からも、単なるせきの開閉だけでなくて、あるいはしゅんせつするとか、何らかの方法を公団当局においても研究をして、このヘドロ除去の問題に取り組む姿勢をひとつ持ってもらいたいと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  93. 田中和夫

    田中参考人 十分検討してみたいと存じますが、先ほど御説明申し上げましたようなことでございますので、そのヘドロの除去というようなことについては、いまでも三千トンくらいの洪水が出ることもあるわけでございますので、そういう洪水による掃流があれば解消する問題でもあるわけでございますが、なお、せっかくの先生のお話でございますので、十分検討いたしてみたい、こう考えます。
  94. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そういう形でひとつせきの管理というものに取り組んでいっていただくと同時に、それから、いま田中理事の方からお話が出てまいりました房総四事業、霞ケ浦開発事業の実施に当たって、当然、いまお話しのように、新規取水を含めた漁業補償問題の解決策というものを公団当局は考えておられる、このことは明らかになったわけでありますが、その実施に当たっては、茨城県側の漁業者も補償の対象になると思うわけでありますが、茨城県側についてはどういうふうな処置になっておりますか。
  95. 田中和夫

    田中参考人 茨城県関係の漁業組合関係の補償は、利根川本川については済んでおります。
  96. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうしますと、一衣帯水のところでございますから、すでに茨城が済んでいるということでありますと、茨城と千葉に対処する考え方とか方針、これは一貫したものである、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  97. 田中和夫

    田中参考人 同じような考え方、同じような方式で考えてまいりたい、こう考えております。
  98. 小川国彦

    ○小川(国)委員 現実には私ども承っているところでは、以前、内閣に対して私が衆議院の議長を通じまして、霞ケ浦漁業補償に関する質問主意書を提出いたしたわけです。このとき公団が政府を通じまして五十二年四月十二日に私によこしました答弁書の中では、「利根川本川のうち霞ケ浦開発事業に係る漁業補償の対象となる水面の範囲は、常陸川との合流点より下流の部分のみである」、こういうことが私に対する答弁書では出されたわけであります。ところが、いま伺いますと、その常陸川との合流点より上流の部分で茨城側がすでにその補償が終わっておる、こういうふうなことでございます。それを調べてまいりますと、同じ利根水系で内水面漁業を行っている茨城県側については、常陸川漁協については四十九年十二月二十七日に四十五億、波崎共栄漁協には五十一年三月三十日に八億七千万で漁業補償は完了しておる、こういうふうに言うわけであります。  そうすると、私がこの質問主意書を提出した時点においては、下流であるということであったわけですが、その時点においてすでに茨城側が解決を見ていた、こういうことは私にとってはきわめて不本意な感じをこの答弁書に対して抱くわけなんですが、その点については皆さんの方がこういう答弁書を出されるときには、もう少し事実に即してひとつ答弁書というものをつくっていただきたい、こういうふうに私は思うわけでありますが、その点についてはいかがでございますか。
  99. 田中和夫

    田中参考人 いまお話がございましたように、昭和五十二年の三月二十二日付で質問をいただきまして、内閣からお答えを申し上げております中には、「漁業補償の対象となる水面の範囲は、常陸川との合流点より下流の部分」と考えるということでお答えをしております。  いまお話しの茨城県側につきましては、これは言いわけじみますが、その組合の主たる区域はせきより下流でございまして、たまたま漁業権の範囲が上まで及んでおったということでございまして、協定に際しましては、その上の部分も含めて合意のもとに解消することで話し合いがついたという経緯がございまして、そういう経緯を踏まえて、現在でもこういう考え方で霞ケ浦開発に伴う補償については取り組むつもりでおります。
  100. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは過ぎたことですから、そうくどく追及はいたしませんけれども、やはり国会に出す答弁書というものは、事実をもう少し正確に具体的にひとつ答えていただきたいと思うのです。確かに、同じ漁業組合であるから一括やったという経過はわかるのでありますけれども、公団からの報告によればというこの政府の説明では、分岐点から下であるというふうに言っているわけでありますが、事実はその上にさかのぼった部分の補償がなされているということは、やはりこの答弁の中できちっとその事実に触れておいてほしかった、こういうふうに思うわけでありまして、この点は今後ひとつ十分注意をして臨んでいただきたいと思います。  それから最後に、今後公団と関係漁協との話し合いということにこの問題はゆだねられておる。そこに当然千葉県側も関係府県としていろいろな対策に臨むであろうということを私どもは期待をしているわけでありますが、現状の交渉形態を見ますと、四十三年当時は上流も下流もなかった、五単協一本で許可を取った漁業をしている組合でございますから、当然これを一本の形でいろいろな交渉を行ってきているというふうに見ているわけでありますが、今回の交渉に当たっての公団側の態度が、河口ぜきをはさんで上流と下流というふうな分け方をしております。この点については同じ利根川でございますから、私どもやはり一本の形でこれに臨むという、基本的な構えとしてそういう姿勢を持って当たっていただきたい、こういうふうに考えるわけでありますが、その点はいかがでございますか。
  101. 田中和夫

    田中参考人 私どもも全く同感でございまして、当初からぜひ一本でお願いをしたいということで交渉を始めたわけでございます。途中でどうしても上流と下流と分けた方がいいのではないかというような御意見がございまして、現在はそういう形で交渉が進んでおりますけれども、いまお話しのように、できることならば一本で交渉ができればな、こういまでも思っております。
  102. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それから被害実態につきましても、せきの上流、下流という分け方をされてきているようでございますが、被害実態を見ますと、たとえばさっき申し上げたように、下は赤潮、上は酸欠というようにいずれも似たような、被害の原因、形態は異なっても実質的な被害状況は一本である、こういうふうに私ども理解をしておるわけです。従来、こういう補償問題が終わった後というのは、漁協関係内部においてえてして紛争が起こりがちであります。そういう点で、ぜひ公団側にもそういう禍根を残さないような形の行政方針というか行政態度を望みたいと思うのですが、その点をもう一度。
  103. 田中和夫

    田中参考人 四十三年のときの交渉でも一本でやっておりましたけれども、実は漁獲量等については上流、下流、あるいは上流、中流、下流というふうに区分して定めておったわけでございます。それによって組合、漁連の中でいろいろ話し合いがなされて配分がなされたと考えております。こちらは漁連一本でございますが。そういう経過を全く無視するわけにもまいりませんので、前回補償した残りの残漁獲量について補償するという形をとらざるを得ませんので、従来の経緯も踏まえながら、しかし皆さんが納得いかないところもありますので、千葉県等によくあっせんをしていただきまして努力してまいりたい。先生のような御趣旨で努力してまいりたい、こう考えております。
  104. 小川国彦

    ○小川(国)委員 公団側からはおおむね基本の考え方は承ったわけでありますが、最後に建設省にもう一度お伺いをしたいと思います。  利根川の治水とか利水のあり方、これは単に水資源公団の立場で考える問題だけではなくて、国全体の立場で考える問題ではないか。したがって、利根の治水とか利水というのは国家事業でありますから、単なる受益者、被害者の問題ではなく、国としての立場、国としての事業を行っていく、こういう考え方が必要ではないか、こういうふうに思うわけでありますが、その点について建設省としての所見をひとつ承っておきたいと思います。
  105. 堀和夫

    ○堀説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、利根川は非常に重要な河川でございまして、利根川における水資源開発事業も、治水対策あるいは従来の不特定用水の確保、維持用水の確保、こういうことを総合的に調整し、総合的に目的を達するというところでやっておる事業でございます。そういうわけで、水資源公団事業につきましても、建設省は治水面において主務官庁ということになっておりますので、そういう面で積極的に公団を指導していくつもりでございます。  それから、なお、具体的に申しますと、すでに利根川の上流では三十三年度竣工の藤原ダム以来、矢木沢、下久保等六ダムを完成しておりますが、こういう事業等に当たりましても、治水とそれから生活用水の確保、さらには維持用水の確保ということを常に念頭に置いて実施しておるわけでございます。  それからまた、河口ぜきの水質問題につきましても、現在現場事務所におきまして、水質の調査委員会を設置いたしまして、いろいろ基本的なデータの収集、解明を行っているところでございます。
  106. 小川国彦

    ○小川(国)委員 一点だけ農林省の方に……。  お忙しい中においでいただいていて、大変遅くなって恐縮でございます。実はこの利根川の河口ぜき建設とそれからその後の新規取水の問題をめぐりまして、特に新規取水を求めている四事業というのは、いずれも農林省の土地改良事業に伴う新規取水の要請であるわけです。したがって、私どもも基本的にはこれらの用水事業が一日も早く完成していただきたいということは、国政全体を見る立場から当然こいねがっているところであります。ところが、先ほど来申し上げておりますように、河川用水の利用の中では当然の成り行きとして漁業被害の問題が起こってきている。この対策とか解決なしに農民の問題にというわけにはなかなかいかない事情があるわけです。農林水産省でございますから、農民の立場とこういう水産業に携わる者の立場、両面をにらんで農林省の御指導というものも願っていかなければならないと思うわけです。農民と漁民が利害相対立する形の中で責め合うのではなく、兄弟かきにせめぐということがありますが、そういう形ではなくて、相互理解の中で農業者、漁業者の生活が両立することを考えながらこの問題の前進を考えていってほしいというふうに思うわけであります。  現地の一部農民の中には、漁民があえて反対のための反対をしているのではないか、こういう声もあるわけでありますが、そういう点については、ひとつ農林水産省の指導の中でこうした農漁民の対立をなくしていくような、そういう指導を十分賜りたいと思うわけであります。その点についてひとつ農林省の方針なり考え方を最後に承りたいと思います。
  107. 片岡清一

    ○片岡政府委員 先ほどからこの大事業の問題点につきまして詳細に承っておりまして、仰せのとおり大変重要な問題を包蔵しておりまして、その中に農民と漁民との間にいろいろの問題のあることは十分考慮しなければならない問題でございまして、そういう点で、いまお話しのとおり、農民と漁民が何かそこで相対立するような関係にならないように、十分注意をしてこの問題の処理に当たらなければならぬと思うのでございます。目下のところ、水資源公団がこの両方に向かって鋭意円満な交渉を進めており、そしてそれぞれの対策をとっておるところでございますので、農林省といたしましても、十分その対策の推移を見つめながら、この問題が円満にいくように指導していきたい、かように思っておる次第でございます。
  108. 小川国彦

    ○小川(国)委員 以上で終わります。
  109. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 この際、午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  110. 佐藤隆

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野坂浩賢君。
  111. 野坂浩賢

    ○野坂委員 五月二日、閣議の終了後に渡辺農林大臣は、北海道沖における韓国とわが国との漁業に絡みますトラブルの問題について、韓国側に対して北海道沖からの撤退を求める、こういうことを述べておられるわけであります。そしてまた、韓国側がこれに応じないという場合、部分的に二百海里を設定するという意味の発言をされたことが新聞に載っておるわけであります。こういう状況を受けましてこの委員会でも三月に、この問題にどう対処すべきかということに対する大臣の御答弁は、水産庁のトップ会談、そういうことを進めて問題を打開していきたい、こういうお話があったことは記憶に新たなところであります。それを受けまして、森水産庁長官は、十七日と十八日にソウルでトップ交渉をされたというふうに新聞は伝えておるわけでありますが、この内容について、私は公にされておるというふうに思っておりますので、支障がなければその内容と、わが国はこれからどのように対応するのか、そしてあわせて、この部分的二百海里を設定するという問題を含めて、西日本の漁業界の皆さんの意向、そういうことも踏まえてどのような対応をし、対策をお考えになっておるのか、その内容と今後の方針についてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  112. 森整治

    ○森政府委員 今回の五月十七、十八日の会談におきまして、わが方日本といたしましては最近急速に資源が悪化している、それに対する対策を至急に講ずる必要がある。それから、漁具の被害がいまだに後を絶たないのでその被害防止する。それから、国内の漁業規制、ある一定地域につきましてオッタートロールの漁法を禁止しているわけでございますが、そのバランスを考慮して韓国漁船が、わが国のトロール漁船と同様にオッタートロールの禁止ラインを尊重するように強く求めたわけでございます。これをもし韓国側が受け入れるならば、その措置が、韓国の、メンタイと言っていますが、それに非常に依存をしておる、そういう事情にあるということはよく理解はするから、限定された隻数のかけまわし漁船をオッタートロール内で認めるということにつきまして、国内説得をしてもよろしい、そういう用意があるという妥協案を提示して解決を求めたわけでございます。しかしながら、韓国側は北海道周辺の資源の状態につきまして、一部につきましてはいろいろ資源が悪くなっているということは言っておりましたけれども、全般的に見解が違うということで、まず両国、日本と韓国の両方で共同の資源調査を行う、と同時に資源調査ではすぐには問題が解決できないかもしれないから、暫定的な措置として、室蘭沖でのスケトウダラの産卵期であります十二月と一月、産卵期の最盛期という意味だろうと思いますが、十二月と一月を禁漁する、それからあわせて北海道沖領海外の一、二海里につきまして周年操業禁止区域を設けて資源保護はやりたいということを提案してきたわけでございます。しかし、それ以上一歩も出ないということで、また出られないということでございまして、両国間の主張の差が非常に幅が大き過ぎるというふうに思ったわけでございますが、いずれにせよ、そういう状況のままで会談が物別れに終わったということでございます。  そこで、いま御質問の今後の問題、また展望を含めてどうかという御質問でございますが、今後の問題につきましては今回の会談の結果を踏まえまして、かけまわしの漁法を認めるということにつきましてまだ北海道の業界の了解は得ておるわけではございません。ですから、そういう業界の考え方をただすということが先決であるというふうに思っております。と同時に、北海道の見解がどういうことになりますか、そういう問題も含めまして、西日本の今後影響が出るかもしれないそういう方々の意見も伺いたいというふうに思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても関係する業界が単なる北海道だけでなしに日本全体としてこの問題をどういうふうに判断していくかということにつきまして、早急にいろいろ意見を伺いまして早急な対応策を検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、いま西日本の意向はどうかという御質問がございましたけれども、いま私が申しました韓国と日本側の意見の開きそのままをお話しいたしまして、今後の対応策を至急に検討していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  113. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまのお話ではスケトウダラの産卵期である十二月なり一月、そういうところでは百メートル未満は操業しないとか、あるいは領海から一、二海里離れてやるとか、あるいはまた共同調査資源確保のためにやるとか、そういう提案をされて、オッターラインといいますか、そういう中でかけまわしといいますか、隻数を制限してやる漁法だというふうに聞いておるのでありますが、そういう方向を、韓国の提案どおりをわが国に持ってきて協議をするということなのでありますか。わが国の主張はこれとは違っておるわけでありますが、その方向については韓国側はどういうふうに対応しようとするわけですか。
  114. 森整治

    ○森政府委員 韓国側が提案しておりますのは、産卵期に入らないとか一、二海里は周年入らないとかいうことでございまして、それでは資源保護なり漁具の紛争の問題の解決にはならないということをはっきりとわが方では申したわけでございます。わが方の申しておりますのは、オッタートロールの禁止ラインからトロール漁船は外へ出ろ、要するにトロール漁法では資源保護ができない、したがって、かけまわしの漁法は認めてもよいからそういうことでスケトウをとるということに考えたらどうであろうかということを言ったわけでございます。これに対して向こう側は、試験操業的なことはやってみたいけれども、いままで経験がないからそういう考え方に対応するということにはまいらない、いま韓国が提案したのがぎりぎりの提案であるということであったわけでございます。  そこで、隔たりがあり過ぎるから、この状態のままでは話が続かないですなということで会談を別れたということでございまして、向こうの提案を持って帰って検討するというつもりはございません。むしろ、私どもが提案したかけまわしの漁法というのも、実は北海道の業界でまだ了承をしたということにはなっておらないわけであります。要するに、全部出ていってくれというだけでありまして、とっていいとは一つも言っていないわけであります。それはそうかもしれませんけれども、まあそこのところは、北海道の業界としても資源保護の漁法であるならばかけまわし漁法というのを韓国に認めたらどうであろうかということを私どもは話を早速しておるわけでございます。その返事はまだ返ってきておりません。その返事を持った上で、いろいろ西日本方々にも、北海道の意見はこうであるが、もしこうでまとまらないとすれば西日本へも影響するということで、西日本の見解も求めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  115. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、引き続きまた水産庁同士のトップ会談をやるのですか。一体韓国側は何を――こちらからかけまわし漁法を提案しておるわけですが、韓国側にわが国から出ていけ、出ていってほしいということを言った点については、向こうも資源保護の問題等含めて検討するということになりますか。
  116. 森整治

    ○森政府委員 向こうが抵抗しておりますのは、オッタートロールの禁止ラインそのものが非常に広くとり過ぎているのではないかという疑いを持っておることが一つ。したがいまして、オッタートロールを聖域視しておる日本側の考え方に対しては承服できないということを言っておるわけでございます。そういう見解の相違があるわけでございまして、再び庁長と長官との会談をするという約束はしてまいりませんでした。むしろ、今後どうするかについていろいろ国内で検討した上で、至急今後の段取りについては返事をしたいと思っております。
  117. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ちょっと話は違いますが、外務省にお尋ねをいたします。  尖閣列島の領有権問題は現在どのようになっておるのか、たな上げになっておるのか、その周辺の漁業は、昨年は中国船が相当来ておったわけでありますが、今日の状況はどうで、日本の漁業操業についてはどのような状態になっておるかということを御報告いただきたい。
  118. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えいたしますが、まず第一点の領有権、領土問題、これは実は領土問題でございませんので、先生承知のように、尖閣諸島は日本固有の領土でございます。また、現実に有効支配して一おる。たまたま昨年の四月に、先生承知のように、中国の漁船が入ってきた、われわれとしては領海侵犯の問題があったわけでございます。そこで、昨年八月、日中条約交渉の際に、園田外務大臣より鄧小平副総理に対して二度とあのようなことは起こしてもらったら困るということを指摘しましたところ、二度とこういうことは起こさない、自分を信頼してもらいたいという話があったわけであります。そして、先方としてはこの問題は取り上げたくないということでございます。すなわち、わが国としては国際法的にもまた歴史的にも固有の領土である、現実に有効支配している、先方が問題を取り上げない、二度と侵犯するようなことはしない、四月のような事件を繰り返さないということを最高首脳部の方から公式の場で説明があったということで、日本の主張が貫かれたと思っております。このような立場は現在でも維持されておりまして、決してたな上げしたというような問題ではございません。取り上げないという言葉を往々にしてたな上げというぐあいにわれわれから見て誤って使われておるということがございますが、あくまでも取り上げないということでございます。  それから、第二点の日本漁船の安全操業の問題には、全然問題ございません。ただ台湾籍、中国籍、若干の船につきましては、その都度、誤って入ってきた場合には日本の方から警告を発して退去させているというような実情にございます。したがいまして、漁業の問題につきまして、尖閣諸島周辺では、特にあの領海の中では全く問題がございません。
  119. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この国会の予算委員会でも、アジア局長にあるいは大臣にお尋ねをしたわけでありますが、竹島の問題があります。五月一日ごろまでに何としてもめど、決着をつけたいという強いお話をいただいたわけであります。今日、五月一日から漁業は解禁になったわけでありますが、わが郷土山陰沖の漁業対策協議会等ではここに出漁することができないというのが現状でございます。その後私どもは、この委員会で発言をしたり議論をすることによってそのことがどのように影響するかということをいろいろと聞かされてまいりました。一年間、静かに慎重に長く、そういう意味で努力をされておるという姿を見てまいったわけでありますが、今日どのような状況になっておるだろうか、何とかこれに対応していかなければ地元の漁民の死活問題にかかわるではないかということを心配いたしております。その点についての外務省の御努力実態と見通しをお聞かせいただければ幸いだと思いますし、引き続いて水産庁長官にお願いをしたいと思いますのは、せっかく北海道沖問題で御足労を煩わしたわけでありますが、このソウルでは竹島問題等については一音半句もお触れにならなかったのだろうか。新聞には、そういうことは韓国の新聞にも出ておりませんから承知しておるところではございませんが、どのような対応をされたのだろうか。水産庁におかれましてもこの五月一日を目標に最大の努力をされてきたと考えておるわけでありますが、それについての御見解をできるだけわかりやすくお話をいただければありがたい、こういうふうに思います。
  120. 三宅和助

    ○三宅政府委員 竹島の問題につきましては、この安全操業というものを領土問題と切り離しまして解決したい。特に漁業関係者にとって死活の問題であると先生御指摘になりましたが、私たちもそれを十分承知しております。したがいまして、そういうことでいろいろな形で最大限の努力をしてまいったわけでございますが、領有権問題との関連もございまして、なかなかはっきりした解決策を見出せていないというのが現状でございます。しかしながら、われわれといたしましても、今後とも水産庁とも十分協議しながら最大限のいろいろな形の努力をしたいということでございます。
  121. 森整治

    ○森政府委員 もちろん竹島の安全操業の問題については、今回の会談につきましては北海道の韓国漁船操業問題が中心の議題であるということは御承知のとおりでございますが、もちろん竹島の問題につきましても、庁長とだけの話の席では、私としては私なりの説明をし、韓国側の配慮を求めておることはそのとおりでございます。しかし、だからどうというようなお話、いまいい結果が出たというわけではございません。
  122. 野坂浩賢

    ○野坂委員 静かに深く慎重にという言葉をよく聞くわけでありますが、韓国側では非常に世論を高めていろいろとこれに対応される、日本は沈思黙考であるということが果たしていいのかどうか、私たちは疑問に思っております。最大のあらゆる努力をしておるということでありますが、実績としては何にも見えないというのが現状だと思うのであります。これについて、最大努力以外は言えないのか。本当に少しでも進展をした度合いというものがあるならば、それをもって漁民の皆さんにある程度の前進がありますということさえも言い得ないということでは、非常に批判は高まってくるだろうと思います。われわれのところもそうでありますが、北海道沖の問題につきましても、北海道の漁民はもはや政府不信であるということを新聞で書き立てられておるというのが現状でありますから、それについて、それぞれ外務省なりあるいは水産庁が努力をしましたという内容があれば御説明をいただきたいと思うのです。最大努力をいたしますということは何回もお聞きいたしまして、この間は五月一日にはめどをつけますということでしたけれども、一向にらちが明かない。どの程度のどんな措置現状とっておるのか。委員長もおいでですが、きのうから日韓議員連盟も開催をされて、四十七名の韓国の議員の諸君たちが来ておる。そういうところでも具体的に話にならぬものかどうか。一体どのような方式をおとりになっておるのか。昨年でありましたか、外務大臣は大統領とも会見になった。そして、その前には、ある程度許容する、こういうような話まであったけれども努力をしておるにもかかわらず、だんだん逆の方向に行っておるではないかというのが現状と推察できるわけであります。それについてはどうお考えですが。
  123. 三宅和助

    ○三宅政府委員 現実に漁民の皆さんが操業できるために最大限の努力を払っている、そのためにいろいろな方法で最大限の努力を払っているということで、それ以上の説明は御勘弁願いたいと思います。  それから、じゃ現実にどうなのかということで、決して私たちは逆戻りしているということではないと確信しております。
  124. 野坂浩賢

    ○野坂委員 去年の四月三十日以前の状態に返すことができる、こういうことですか。そういう状態である程度やり得る、こういうふうに判断してもいいわけですか。
  125. 三宅和助

    ○三宅政府委員 現実的な解決、現実に操業できるような方向に向かって最大限の努力をしているということで御了承願いたいと思うのです。
  126. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これ以上やりましても行ったり来たりですから。  去年の春の漁期は多獲性の大衆魚の魚価の暴落、そういう状態がありました。秋は異常水温によって有史以来の不漁、そういうのがわれわれの漁民の実態であったわけであります。そこへいまの竹島問題がそれに輪をかけまして、出漁ができない、生活ができない、こういうのが実態でありまして、水産庁の方にも漁業の経営安定のために漁業経営維持安定資金を貸してほしいということを言ってきておると思うのであります。金額にして三十億円だ。竹島でとれるイカなりカニかごということになりますと、大体五十一億六千万円程度ないとやれない。ですから、その程度のことはやっていただかなければならぬし、本来ならば補償もしてもらわなければならぬ。こういうふうに考えておるわけです。漁民の責任ではなしに政府の責任だ。その政府は知らぬ顔をしておる。努力をしておると言っておるけれども、実績は何にもない、こういうのが実態なんです。だから、とりあえず維持安定資金は三十億円というふうに鳥取、島根で言っておると思いますけれども、それについての対応なり善処は当然してもらわなければならぬと思っておるわけですが、それに対してはどうですか。政務次官でも水産庁長官でも結構ですからお答えをいただきたい。
  127. 森整治

    ○森政府委員 竹島の問題に絡みまして、漁業の操業ができない、それがどのくらいの影響を持っているかということになりますと、主としてイカ釣りが多いわけでございますが、御承知のように、非常に海域が広く操業をしておる、竹島の漁場の影響というのをどういうふうに見るのかという非常にむずかしい問題がございます。いずれにいたしましても水産庁といたしましては、これに対していろいろ全体的に、年間の操業から見た結果、経営の不振の問題が出ているという判断をいたしますれば低利融資の措置を講ずるということを考えたわけでございまして、したがいまして、今回の五十三年度におきます措置といたしましては、御承知のように、島根、鳥取の両県に対しまして数億の低利長期の経営維持安定資金の融資を決定いたしたわけでございます。今後ももしそういう事態が出るということになれば、引き続きこの措置を継続してとる用意はあるわけでございます。
  128. 野坂浩賢

    ○野坂委員 融資は利息をつけて返すのですからね。魚はとれないけれども、金を借りると利息をつけてくる、本当は補償してもらわなければならぬ。当面その融資で、補償問題についてはいずれ改めて議論をさせていただきたい、こういうふうに思っております。  もう一つお尋ねしたいのは、漁業の重油の問題でございます。いま原油の値上がり、これに伴ってのインフレの懸念、省エネルギーの問題、たくさん問題がありますが、漁業のA重油の問題についても非常に関心が高いところであります。最近わが県の方では五月ごろからA重油が需要に対する供給が不十分である、足らないということで、漁船の出港、出漁中止というようなことすら起きるのではないかということが心配をされ、現実に起きておるというのが実情であります。  したがって、これを取り扱っておられる通産省にお尋ねをするわけでありますが、重油は昨年と比べてどの程度値上がりをしておるのかということが一点と、二点目に、需要に対応する供給体制は確立しておるのかという点をお尋ねをしたいと思うのであります。  水産庁としては、このような不測事態を招かざるようにそれぞれ関係省庁なり業者とも連携をとって値上がりを防ぐと同時に、需給のバランスといいますか、需要に対応できるような措置を確保するように措置をしていただかなければならぬと思っておるのでありますが、それに対する態度とやり方についてそれぞれから御答弁をいただきたい。
  129. 加藤昭六

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  原油価格の方は昨年十二月に比べましても二五%以上上がっておりまして、なお上昇の気配が見られております。このような状況を反映したものとA重油の上昇は思われます。  それから、国際石油事情が非常に厳しい折ではございますが、A重油の供給計画につきましては、全般的な原油処理計画については五十三年の上期には一億一千五百二十四万八千キロリットルでございましたが、五十四年、本年の上期の供給計画におきましては一億二千百三万キロリットル、これは五%増でございますが、といった計画を立てておる中で、A重油につきましては、特に五十三年の上期の実績が九百四十七万一千キロリットルに対しまして、五十四年の上期の計画は一千二十五万キロリットルで、伸びといたしまして八・二%の伸びを計画しております。ちなみに、水産用A重油の昨年の伸びが二・五%でございます。特にA重油につきましてはこうした上期の需要期を考慮いたしまして十分な努力をしておるところでございます。  また、このような計画でございましても、国際的な現在の石油緊迫情勢を反映いたしまして地域的には入手難等の問題が生じておるわけでございまして、こうしたところにおきましては個別に実情をよく聞いた上で円滑に処理するよう関係機関に、水産庁と連携いたしまして、よく指導していきたいというふうに考えております。
  130. 森整治

    ○森政府委員 資源エネルギー庁の御答弁のとおりで、全体の需給はそういうことでございます。  そこで、私どものところにも、局地的にあるいは一部の関係者から石油需給問題についての要請がございました。これにつきましては個別具体的に資源エネルギー庁に連絡いたしまして、いろいろの御指導の要請をして処理をしておるということでございます。したがいまして、全般的には需給のバランスが崩れているというふうには考えてはおりませんが、なお石油の需給をめぐりまして現地の情勢を具体的に把握する必要があろうということで、県等との連絡を緊密にいたしまして、適時情報の交換、収集を行いたいというふうに考えておりまして、すでにこのための連絡体制の整備等につきまして各県にその措置をお願いをして、すでに通達済みでございます。  したがいまして、もう一回申し上げますと、個別具体的にいろいろ情勢を把握しながら、必要な場合にはいつでも必要な指導ができるという体制をとっております。現に御要望のあったものにつきましては、逐次資源エネルギー庁にも連絡をいたしまして、解決についての御指導をお願いし、現に解決をしておるというふうに考えております。
  131. 野坂浩賢

    ○野坂委員 力強いお話がこの辺であったわけですが、私どものところでは前年の四月のときの実績が五千四百十キロリットルであった。本年の四月の需要量は五千五百八十キロリットルだ。しかし、元売りの割り当て量は四千二百五十キロリットル、いわゆる八〇%に減になっておる。約千三百キロリットルというものが不足しておる。だから、船が思わしく出ていかない、こういう結果が出ているわけであります。いま通産省の側ではA重油の場合は八・二%全国的にはアップしておるんだというお話がございました。そういう情勢であるとすれば、全国地域別にでこぼこになっておるというふうに考えられるわけでありますから、いま両省の課長なり長官がお話しになったようにそういうことは絶対させない、十分対応するということを信じて質問を終わるわけですが、そういう不足なり不自由はさせない、必ず対応するというふうに考えてもよろしいわけですね。一言でお願いします。
  132. 片岡清一

    ○片岡政府委員 大変重要なことでございますので、通産省と十分連絡をとってさようなことのないよう努力していきたいと思っております。
  133. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間が参りましたからこれで終わりますが、せっかく政務次官に立っていただきましたから、いまの竹島問題等につきまして、あるいは北海道の問題につきまして非常に困難があるということは十分承知をしております。しかし、日本の漁民の死活問題であるということも間違いのない事実であります。韓国の諸君たちは世論を盛り上げてこれに対する態度を明らかにしようとしておるわけです。わが国は、そのように騒ぐと結果的にマイナスではないかということだけが取り上げられて今日までじっと見守っておるわけでありますが、それでは漁民が浮かばれないというのが今日の実態であり実情でありますから、ぜひ十分外務省とも連絡をとられまして、一日も早く漁民が安心をしてわが領域で安全操業ができるような配慮なり努力をやっていただきまして、可及的速やかに解決をされることをお願いをしておきたいと思うわけであります。  最後に、政務次官のその決意の表明をお聞きしまして私の質問を終わりますから、よろしくお願いします。
  134. 片岡清一

    ○片岡政府委員 北海道沿岸の問題につきましては、これは特に緊急を要する問題でございますので、先ほどから水産庁長官が申しましたとおりの方針に基づきまして、できるだけ早急に問題の解決を図りたいと思っておる次第でございます。  なお、竹島問題につきましては、これは御承知のように、きわめてデリケートな問題もございます。しかしながら、これは沿岸の漁民の皆様方には大変重要な問題でありますので、これにつきましても十分対処して、速やかに問題の解決の方向に向かうように努力を進めていきたいと思っておる次第でございます。
  135. 佐藤隆

    佐藤委員長 松沢俊昭君。
  136. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 時間が非常に限られておりますので、簡単に御質問を申し上げたいと思いますが、私が御質問を申し上げるのは米の生産調整の問題であります。  まず最初に、食糧庁長官にお伺いをいたしたいと思いますが、米が過剰であるというその過剰の原因だとか責任だとかということは別といたしまして、過剰になってきているということだけはこれは私も認めるわけなんであります。  そこで、その過剰の処理をめぐりまして、今国会におきましては四百八十万トンの古米処理をするということがすでに決定されておるわけでございます。そして、いま新生産調整が行われておるわけでありますが、私は率直に申し上げますけれども、新潟県等の倉庫を見ますと、常温倉庫の場合におきましてはどんどんとやはり米が出ておりまして、単協等におきましてはもう空っぽになってしまったというそういう単協もあるわけであります。でありますから、問題は、政府の方で大変困るということは、政府が買ったとしても買った米が動かないという、需要がないという、売れないという、そういう地帯があると大変困るということになると思いますが、売れる米は政府にとっては余り心配ないところの米になるということになると思うわけであります。  そういうような観点に立ちまして見ますと、一体全国的に見てどの地域の米は買ったけれどもさっぱり売れないというところの状態になっておって、どの地帯はそんなに心配なしにどんどん出回っているのだという、大ざっぱな状況というのをお聞かせ願いたい、こう思うわけであります。
  137. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 政府はいま過剰米を抱えて四苦八苦しているわけでございますが、確かにいまお尋ねにございましたように、過剰米が全国同じように在庫しているわけではございませんので、地域間にかなりの差がございます。私ども、昨年の十月末の五十三米穀年度の終わりから五十四米穀年度に移る際に、これまでもお答えしておりますように五百七十二万トンの古米の持ち越しをしたわけでございます。これは一年古米だけではなしに、二年古米、三年古米もそうでございます。この五百七十二万トン全部過剰というわけではございませんので、そのうちで当時の計画としては百七十万トンぐらいは古米を、五十四米穀年度になりましても五十二年産の一年古米を配給するという予定をしておりましたので、当時の考え方からしますと、五百七十万トンのうち百七十万トンぐらいを引いたところが大ざっぱに言いまして過剰だということになるわけでございます。  そういう点から、五百七十万トンそのものの県別の古米在庫量が、そのまま過剰在庫量の県別の在庫量ということになりませんけれども、現在手元にございます資料で見ましても、五百七十二万トンという数字を前提に見ましても県別にかなり差がございます。先生のところの新潟県の場合は、一年古米が、五十二年産米が比較的多いのですが、二十一万トンばかりが十月末にございます。また、いろいろ問題がございます一例で北海道、生産調整を一番やっておるところでございますが、ここでは八十三万トンぐらいの古米を持っておったということでございますので、例を申しましたが、県別にかなり差があるということは、五百七十万トンのうちの相当部分が過剰米だという考え方に立てば、過剰米の県別の在庫も県によって差がある。大ざっぱに申し上げれば、良質米の生産地帯は比較的過剰米の古米の在庫が少ない。低質米地帯といいますか、味の余りよくない、業者から余り好まれない、卸業者から好まれない、消費者も好まないというようなところの産地の県には古米の在庫量が比較的多いという傾向は見られます。もちろん良質米地帯も一切過剰米がないということではございませんが、その間の差がかなりございますし、五十三年産米についてはまだやっておりませんけれども、一層差が出てくるのではないかなという印象を持っております。
  138. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いま食糧庁長官の方からお話がございましたように、やはり地帯によって在庫の量が非常によけいなところと非常に不足なところと、こういう分布がなされていると私も思っております。  そういう立場で生産調整という問題を考えますと、去年も私申し上げましたのですけれども、やはり生産調整をやるにはそれなりの条件がなかったならばできないわけなんであります。そこで、農林省の方といたしましては水田の地下水位の調査だとかそういうものをおやりになりまして、それで大体七十センチの地下水位を上回っていなければなかなか田畑輪換という、そういうことはむずかしいのじゃないか、こういう方針も農林省の方では明らかにされたわけなんであります。  そこで、去年の生産調整の成績を見ますと、いいところと悪いところと非常にアンバラが出ております。そして、悪いところの地帯というのを調べてみますと、大体農林省の調査されたとおり、田畑輪換のできないところのそういう条件の地帯というのが、これはやはり達成率が非常に下がっている、こういうことが言えるわけなんであります。ところが、最近になりましてから市町村長ですね、これは新潟県の場合でありますけれども、市町村長がとにかく生産調整を達成しないと農道の予算もつけない、あるいはまた土地改良事業の予算もつけない、最後には保育園をつくるのも生産調整をやらぬ場合においてはつくってやらない、このようなことまで言っているわけなんでありまして、私は条件のないところにそんなような公権力を使って農民に圧力をかけるということは大変大きな問題なんじゃないか、こう思うわけなんであります。農林省の方といたしましてはそういうような指導を市町村長にやっておられるのかどうか、あるいはまた政府の各省庁、それが生産調整をやらなければ予算はつけないという、そういう指示というのを出しておられるのかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思うわけなんであります。
  139. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  水田利用再編対策につきましては、これの円滑な推進を図るということが何といいましても現下の農政の最重要課題であろう、こういうふうに認識をいたしております。したがいまして、農林水産省といたしましては農林水産省所管の各種事業につきましてもそれぞれの事業の性質に応じましてできるだけ水田利用再編対策の推進に役立つような形で活用してまいるということは、これは基本的に必要であろうというふうに考えております。そういうようなことで五十三年の四月にも事務次官依命通達を出しましたし、また、ことしになりまして多少事業の種目等が変わりましたので、その辺の差しかえ等もやりまして次官通達を出してございます。この通達の趣旨は、水田利用再編対策に関連しますいろいろな事業につきまして、新規地区の採択なり、継続地区への予算配分というのに際しまして、原則として転作の目標を達成しておる市町村、あるいはその事業の実施によりまして目標達成が確実と認められる市町村の要請に優先的に配慮するということにしておるものでございまして、限られた国家予算でございますので、この予算の執行に当たってそういうような配慮をするのは当然必要なことであろう、こう考えておるわけでございます。  そこで、ただいま出していますのは事務次官の依命通達ということでございますので、これは農林省所管の補助事業等についてのことでございます。したがいまして、厚生省の関係の保育所の関係とか、建設省の道路の関係とかいうように、政府全体として、内閣として決めておるということではございません。  なおまた、県の方でいろいろ県単事業というのがあろうかと思います。あるいは市町村で市単独事業というのがあろうと思いますが、出しておりますこの通達につきましては、国の方の補助事業ということでございますので、それ以外の県の単独事業、市町村の単独事業等の運用のやり方につきましては、これはその地方公共団体の長の方で判断をしてやっておられるのではないか、かように考えております。
  140. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 これは新潟県の実態でございますけれども、県が転作によるところの収入が幾らあったかというところの調査をやったわけです。それで、県内千三百三十地区、県内全農家の三二%に当たる五万六千戸、この中から選び出しながら調査をやりましたところが、転作によって現金収入が得られたと答えた者が二七・一%、得られなかったと答えた者が三分の二余りということになっているわけなんであります。これは私が申し上げましたように、転作条件のないところに転作を強要するわけでありますから、どうにもならぬわけなんです。しかも、農林省の転作の作目の中には青刈り稲も認めるということになっているわけです。青刈り稲というのは、えさ用として認めるわけなんでありまして、えさ用にならなかった場合には刈り捨てなんであります。したがって、そういうところには奨励金は出ないはずなんであります。ところが現実には、そこにも奨励金が出ているじゃないか。町村長は、刈り捨てでいいから何とかしてくれというようにして強要してきているわけなんであります、こういうようなことで転作作物の定着化を皆さんは図ろうとしておるわけなんでありますが、図ることができないじゃないかということなんです。そしてまた、あなたの依命通達からいたしまするならば、転作の成績のいいところには予算を配分して、転作の成績の悪いところには予算を配分しない。それならば、いつになっても転作条件はできないということになるじゃないですか。成績の悪いところは、転作条件がないから成績が悪いわけなんであります。そこに予算をくれなかったなら、いつになっても転作はできないということになるのじゃないですか。全くこれは矛盾していると思うわけなんであります。私はそういう点で、そういう圧力をかけてやるということが日本の稲作農業を守る道につながるのかどうか、非常に疑問に思うわけなんであります。また、転作をやれば奨励金をもらえるということで、ばらばらと豆をまいて、あとはさんじょばらいというたんぼもたくさんございます。でありますから、結局転作は条件のないところにはできないのだということをこの調査は証明していると思うわけなんであります。  そういう点で、さっき食糧庁長官にも私聞きましたけれども、何も新潟県の米が余って政府を困らせるような状態は全然ないじゃないですか。何で売れるところの米を刈り捨てにさせたりなんかして収入ゼロにさせなければならぬのかということ、これが一つです。  それから、もう一つの問題といたしましては、転作の通達を私見ております。要領だとかいろいろなものがありますけれども、たとえば、ある農家に一反三畝の転作の割り当てが来た、あるいは一反七畝の割り当てが来た、こういう場合、平場地帯におきましては区画整理がほとんどできておるわけなんです。区画整理ができているわけでありまするから、一筆ごとにやるということになっているわけでありますけれども、これは一筆にならぬわけであります。仮畦畔をつくってやるのだ、仮畦畔をつくって七畝なら七畝、三畝なら三畝に区分けをつける。それは実測でやらなければならぬことになっているわけです。一体実測でやっているところの調査があるか。全然ないじゃないか。全部目測ですよ。それもなかなか確認できないというところの状態になっているわけです。これは国の金を使うのですよ。国の金を使うのにこんなにでたらめな使い方がどこにあるかということです。やるのだったら、しっかりした金の使い方をやってもらわなければならぬと思うのです。  こういう点では、次官もおられますから、次官からも見解を明らかにしてもらわなければならぬし、こういう具体的な現実の問題が起きているというこのことにつきましては、これは局長から明らかにしてもらわなければならぬと思うわけなんですが、どうでしょうか。
  141. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 転作条件のないところに転作を押しつけるのはおかしいというお話でございます。私どもといたしましても、転作等目標面積といいますものを県別に配分するときに、いろいろな要素を勘案して配分を決めたわけでございます。ただ、その際におきましても、ただいま先生からお話がございましたように、圃場の条件というようなものなど、やはり転作条件というものについて十分考慮しなければいかぬだろうということで、湿田の多いところは目標が少なくなるような配慮というものを、この配分の際にもやっておるわけでございます。したがいまして、国が県別に配分した際の目標転作率といいますものが、新潟県は五・九ということで、宮城、山形と並んで最低になっておるわけでございます。北海道などは三四・九ということで、そういうふうに配分しておるつもりでございます。もちろん、今度は県の方では当然それを県内の市町村に、市町村の方ではさらに市町村内の農業者に配分をされると思いますが、この点についての配慮はやはり県なり市町村においても行われておるのではないかというふうに思っております。したがいまして、そういうことで、転作条件のないところには、比較的目標転作率というのは実際問題としても少ないという姿になっておるのではないかと思っております。  それから、青刈りのお話も出たわけでございますが、こういう湿田地帯等におきまして、これは湿田の程度にもよろうかと思いますけれども、相当地下水が浅いというような水田につきましては、イグサとかあるいはレンコンとかクワイとかジュンサイ、青刈り稲とかあるいは水田養魚とか、いろいろなものがあろうかと思います。この点につきましては、いわゆる乾田地帯といいますか、そのものよりは畑作物の選択の幅は狭いのではないかと思ってはおりますが、これは転作は全然不可能ということではないのではないか。また、それとともに、そういう排水条件の整備というものもやはり事業実施ということによって相当進展されるという向きにつきましては、転作特対の事業なり、あるいは五十四年度からは排水特別事業といいますものも採択要件等も緩和して新規で予算計上もいたしております。こういうものを御活用いただき、転作の方もあわせて進めていただきたい、かように思っているわけでございます。
  142. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いまあなた、いろいろのことを言っておられますけれども、転作条件のないところに転作はできませんからとやらぬと国の予算はつけないというのでしょう。それじゃいつになっても転作はできないじゃないですか。いまあなたは、そういうところ、地下水の浅いところは浅いところなりに何とかしていきましょう、こう言っているのでしょう。そう言っていながら、一方、通達では、そういうところは予算をつけるな、こういうことでしょう。それじゃいつになっても転作できないということになるじゃないですか。全く言っていることと通達は矛盾しているんじゃないですか。
  143. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず一つは、私が先ほど申し上げましたように、原則として転作の目標を達成している市町村、またはその事業の実施により目的達成が確実と認められる市町村の要請を優先的にということで、その事業の実施により目標達成が確実と認められるということで事業をやりたいということであるような場合には優先的に考えましょうというのが一つと、それからもう一つは、これは限られた予算で条件が等しければどうかということでございますので、じゃこれ以外はもう予算は使わないのかということになれば、それはそうじゃございませんので、限られた予算ではありますが、その中でこういうものを優先的にということで申し上げているのであって、大体そのほかのところも、補助金の方は転作特対にしても十分用意してございますので、そのほかにもそういう排水条件の整備というようなことで、必要なところにはこれは配分をするつもりでございます。
  144. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私はその通達は読んでいますので、何回御答弁願っても全然乾かない話なんです。問題は、その通達では優先順位というものを決めてやるということでしょう。それで、成績のいいのから順々にやっていくわけですよ。だから、成績の悪いところというのは条件がないから悪いのだという、そのところを直してやらなければ成績は上がらぬでしょう。それはわかるでしょう。それをどうするのかということですよ。だから、差別をつけてやってもだめなんだというのです。本当に皆さんが転作をやって、バランスのとれた日本農業というものを考えていくんだということになれば、そういう通達は矛盾しているじゃないかというのです。あなたの答弁も私が言っていると同じことを言っているわけだ。通達は逆なことをやっているわけですよ。  ですから、もっと具体的に御説明申し上げますと、これはある村のことなんでございますけれども、いままで転作をずっとやってきましたね。新生産調整の以前ですよ。新生産調整、去年からやりましたでしょう。それ以前にその村では、五十一年十五ヘクタール、五十二年も十五ヘクタール、これだけの割り当てが来ておりましたけれども、五ヘクタールだけしかできないというところの状態があるわけですよ。ところが今度、昨年になりましたところが百十九ヘクタール割り当てしたのですよ。そうして今度、それまで達成率が悪かったからということで、ことしはその倍近くの二百十五・四ヘクタールを上乗せをやったのですよ。条件は全然ないのですよ。条件が全然ないところにもってきてこういうひどいところの数字をやるものでありますから、それじゃ今度は役場の方ではどうしようもないものだから、村長みずからずっとこう行って、転作しないと農道の予算はつけない、何はつけないというわけで、保育所までも建てられないなんという話になってしまっているわけですよ。  だから、要するに、一つの村でも全部で一体どのくらい損害を受けるかということになりますと、米を取らないということになりますと二億七千万円の損害を受けるのですよ。さっき私は県の資料を説明しましたとおり、転作農家は三分の二以上が収入ゼロなんですよ。ここはだから全然条件がないんだから二億七千万の被害があるわけです。特にその中で、二百十五ヘクタールの中でいま申告しているのを見ますと、青刈りが九十五ヘクタール、農協の管理が四十七ヘクタール、あとは微々たるものなんですよ。これが要するに新潟県の稲作農村の実態であるということなんですよ。皆さん、こういう現実というものを一体どう見るのかということです。しかも、こういう二億七千万円も損害を受けるということになりますと、奨励金をもらっただけではこれは三分の一にしかならないのですよ。そうしたら農協の運営、経営というものは一体どうするのか、こういう問題にぶつかってくるのです。だから、村長に私は聞いたのです。あなた、そんなことをやれば農協がつぶれてしまうじゃないかというのです。どういうふうにして村は対策を立てるのかと聞いたら、対策はございません、政府の方から対策を立ててもらう以外にないでしょう、政府がやったのだから、こういうことなんでしょう。  こういう実態、霞が関のビルのところにばかりいて、現地をあなた方把握して、それは不都合だ、これはこうしていかなければならない、農林省の方針とは違うんだ、こういうところの指導というものをなぜおやりになることができないのか、私は非常に歯がゆさを感ずるわけなんであります。こういう点、政務次官もおられるのですけれども、こういうべらぼうなことをやらせて、日本の農業の発展のために転作をやるなんてとんでもない話だ。やらせられれば農協はぶっつぶれてしまいますよ。やらなければ事業費は予算化しないというのでしょう。全く矛盾しているじゃないですかというのですよ。どうでしょうか。
  145. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生の方から、新潟県のある村につきまして五十一年、五十二年、五十三年等の転作の割り当て面積並びにその実施状況等につきましてお話があったわけでございます。問題は、五十三年に相当大きく面積がふえておるということは、五十二年のときは大体九十万トンの要調整数量ということでございましたが、五十三年度からは水田利用再編対策ということで、約その倍の百七十万トンの要調整数量ということをベースにして、転作等の面積比を、先ほど申し上げましたように、転作条件というようなことも加味しながら配分をしたわけでございますが、その新潟県におかれてさらに町村別に配分されます際、そういう面も配慮されたとは思いますが、いろいろな諸要素を考えて配分されたのではないか。県内の配分につきましてとやかく言う筋合いではないとは思います。そういうことでの数値として出てきておるものであろうかと思います。  それから、私たちもこの転作の奨励金というものを考えます際に、特定作物五万五千円、一般作物四万円、あるいは計画加算というのが、特定作物であれば一万から二万、平均して一万五千円というような大ざっぱなことで申し上げておりますけれども、やはりこういう転作奨励金の総体の額といいますものも、稲作の所得減というものに見合って転作奨励金と転作の作物による収入というようなものを計算をしてみて、大体これは全国的でございまして、ナショナルベースでございますが、おおむねそこでパラレルになるというようなことで、奨励金の単価等も決めておるわけでございます。したがいまして、これは全国的でございますから、地域的に当てはめました際に完全に稲作の従来の収入に比べてぴしゃりそれを補てんするというところまで行っていないところもあるでしょうし、地域によってはそれ以上の収益を上げているところ、たとえば高級の野菜というようなものへの転作等によってそれ以上の収入を上げているところもそれはあろうかと思います。問題はやはりその地域地域によりましていろいろな圃場条件なりを見ながら作物の選定といいますか、選択というものを十分考えていただいて、それで転作を進めていただくということではないかと思います。  それから、転作条件の悪いところの転作の条件整備について、先ほどの通達の面で矛盾しているではないかというお話があったわけでございますが、要するに排水事業等をやります際には、やはりその排水事業の緊急度というものはどうしてもこれは考えざるを得ないと思っております。したがいまして、その緊急度を考えた際に、同じ緊急度の場合のところで条件が等しければ、その事業をやることによって目標を達成するという市町村に優先的に配慮するということでございまして、排水の緊急度が余り高くないところと高いところと、これはまた高いところの方に出すのはもう通達を出すまでもなく当然の原則だと考えております。その上に立っての通達である、こう理解をいたしております。
  146. 片岡清一

    ○片岡政府委員 米の生産調整の割り当てにつきましては、これは現地の実情に即したように割り当てられるべきものでございます。先ほどからのお話のように、何か一部の町村で大変無理なものがあるようにお話がございました。私もこれはちょっと意外に感じておるのでございますが、農林省といたしましてはそういう実情がそれぞれありましょうから、都道府県にまずお願いをして、知事の方で各市町村別の割り当てをひとつ実情に即するようにお願いするという原則をお願いいたしておるのでございまして、細かい問題についてはこれは実情に沿うようにぜひやっていただかなければならぬものと思っております。そして、どうしてもこれは、何と言うても今度の水田再編対策は今後の日本の農業の一番基盤になることでございますので、これは何としてもやはり農民の皆さん方に御理解を得て、できるだけ自主的にやっていただく、こういうところにお願いをしなければならぬので、それぞれやはり応分の御努力を願わなければならぬわけでございます。そういう意味で、原則論をわれわれは申し上げておるのでありまして、細かい点にまで無理を言うておるつもりはないのでありますが、その点ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  147. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 これで終わりますが、とにかくこれは何も別に市町村の仕事でもないし、府県の仕事でもないのであって、農林省の仕事なんです、生産調整というやつは。だから、あなた方は、出して、後は県任せだ、町村任せだなんというわけにいかないわけだ。もともと農林省の仕事なんですよ。ですから、そういう極端なところはひとつ実情を聞いてもらって、そして善処をしてもらう。これはひとつ約束してもらいたいと思うのです。どこもここもというわけじゃないのです。そういうようなところはそういうふうにして話を聞いて、善処をするということだけひとつ約束していただきたい。
  148. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 この転作の目標面積等の配分、これは国の方といたしましては県別配分は国の責任においてやっております。それから今度は、県の市町村別配分、それから市町村長の農業者別配分、これはやはり県なり市町村がそれぞれの実情というものを踏まえて配分をすべきものというふうに考えておりますので、そこまでとやかく言うのはいかがかと思っております。  ただ、ただいま先生から御指摘のございましたようなそういう問題がいろいろあるということにつきましては、県との打ち合わせ等をたびたびやっております。そういう面におきましてはよく事情もそこは聞いてみたいと思っておりますけれども、特に県の方にこういうふうにすべきだというようなやや命令的なかっこうで申し上げるということは困難かと思います。
  149. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 もう時間が来ましたからやめますけれども、政務次官どうですか、善処するというぐらいのことを言ってください。当然じゃないですか、そんなでたらめなことをやっては。
  150. 片岡清一

    ○片岡政府委員 実情に即するように必要なものについては十分調査をし、そして、それぞれの対策を講じていきたいと思います。
  151. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 終わります。
  152. 佐藤隆

    佐藤委員長 竹内猛君。
  153. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、最近の石油の値上げを中心とし、あるいは円・ドルの関係を踏まえて飼料の動向というものに関して、前回に引き続いて質問をしていきます。同時にまた、昨年の六月十四日に本委員会で決議をしたこの決議が今日どういうように生かされているのかという問題についてもここで確かめたいと思います。なお、全日配の静岡の清水、北海道の小樽の飼料工場の閉鎖に伴う諸問題についてもお尋ねをしたいと思います。  まず、飼料についてお尋ねしますが、昨日通産省の資源エネルギー庁のお答えの中から、現在すでに石油は二五%の値上げである、将来に関しては全く見通しがつかない、こういうお答えがございました。石油が上がるということは、すべての物の値上げの基礎になりますから、これは大変なことになります。同時にまた、アメリカ日本との関係で、特に円・ドルの関係からいって、去年は円高、ドル安という中でえさの値段が下がった。四十八年の段階まで下がりましたが、ことしからはすでに商社系のえさは五月に値上がりをし、また七月には値上がりをしようとしておる、こういう状態でありますから、えさの値上がりは必至であると見なければなりません。そのときに、円とドルとの関係というものを農林水産省は大体幾らぐらいに見ておるのかということもあわせてお答えを願いたいと思うのです。
  154. 杉山克己

    ○杉山政府委員 飼料価格の動向でございますが、これを決める要素として、まず一つは、飼料自身の需給事情、それからいま一つは、円の相場、さらには、いま先生が御指摘になりました石油関係の影響が、これは直接には運賃というようなことではね返ってくるのかと思いますが、その他もろもろの形を通じてどう影響を及ぼしてくるか、こういった点であろうかと思います。  基本的な需給の面につきましては、個別の世界的な各国状況を一々御説明することは省略いたしますが、基本的にはかなり供給に余裕がある。特別、需給関係から価格が大きく上がるという動向にはないものというふうに見ております。ただ、石油の関係が、そういう需給とは別途に一般的な物価を押し上げる、その影響があり得るのではないかと言われれば、それはあり得るかもしれませんが、その点については予測がきわめて困難だというふうに考えております。  それから、円の相場の問題でございますが、今日まで飼料価格、国内の販売価格はきわめて安定的にむしろ安い価格で供給されてまいりました。しかし、ごく最近に至りまして、特に円安の傾向を反映いたしまして民間の飼料価格が値上がりを見せつつあります。相場は幾らで織り込んでいるかといいますれば、昨年十二月以来は一ドル百八十四、五円見当で見込んでおったわけでございます。今日ではこれが二百二十円弱というような水準になっております。相場のことでございますから、今日ただいまのことだけで判断するわけにはまいりません。     〔委員長退席、堀之内委員長代理着席〕 いずれ七月、期がかわるときに先の見通しも含めましてこの点について十分検討して、七月以降の価格についての指導をする必要があるというふうに考えております。ただ、私どもは、私どもだけの立場での判断でございますが、現在の円安が今後これ以上ひどく円安になることはまああるまいというふうには考えております。一応の区切りのところまでは来たのではないかというふうに考えておるわけでございます。それから、船賃については、これは一般的に石油価格の不穏な動向を反映いたしましてか、今後とも値上がりする傾向が若干見受けられます。これら全般を通じまして、私ども今後のえさの原料価格、また、その経費といったものは値上がりする。したがって、コスト的に見て飼料価格は若干値上げせざるを得ないのではないかというふうに見込んでおります。どの程度になるかということは、七月の期がかわる際に、要素も十分判断した上でこの点新しい水準を決めてまいりたいというふうに考えております。
  155. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう一つ、関連をしてお聞きしますが、アメリカの飼料の作況の中に悪いものがあるという報道が伝えられておるけれども、これは真実であるかどうか。もし、あるとしたならば、それは今後の飼料の価格にどういうように反映をするかということについてもお答えをいただきたい。
  156. 杉山克己

    ○杉山政府委員 アメリカの収穫でございますが、これは昨年五十三年の面積当たり収量は史上最高でございます。五十四年はその水準までには届かないというふうに見ておるわけでございます。ただ、全体的な水準としては、現在の水準自身が需要に比べてかなり高い生産力水準にあるわけでございまして、面積当たり収量が昨年には及ばないにしても、それから作付面積が若干、昨年に対して三%程度減るんではないかというように見込まれておりますが、その程度の減があるにしても一、全体としては在庫も十分あることでありますし、特に供給がショートするというふうには考えておらないところでございます。
  157. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういう飼料を取り巻く状況を前にして、昨年の六月十四日に本委員会が養鶏の振興に関する決議をいたしました。この中で、特に商社系養鶏というものに対して、何とかしてあれの進出を防いで、お互いに生産調整をまじめに守って、そして紳士的に養鶏の発展をしようではないかということで、それぞれ努力をしていこうということになったわけでございます。それから一年たちました。先般の私の質問に杉山局長がお答えになったのには、昨年までは年に二回調査をしたけれども今度は四回の調査をした、こういうことです。  それで、その調査の結果資料を出してもらいたいのですが、商社系養鶏というものは本当に影をひそめたのか、それとも依然として手のつけられないものになっているのか、この辺はどうですか。
  158. 杉山克己

    ○杉山政府委員 昨年の国会での決議を受けまして、その後諸般の対策を講じているところでございます。その中で実態の把握はどうかということでございますが、従来年二回の調査を年四回ということに改めまして、五十三年度中は五十三年五月末、それから八月末、十一月末、五十四年の二月末、この四回実態調査を行っております。その結果を見ますと、一番最近の五十四年二月の結果はまだ集計されておりませんが、五十三年の五月末と十一月末を比較いたしますと、総戸数が一万六千八十八戸が一万五千八百六戸、それから総羽数が一億一千二百二十四万二千羽が一億一千二百四十二万七千羽。一番問題になりますのはこの羽数でございますが、ほぼ横ばい、わずかながら増加しているという状況にあるわけでございます。  その中で、いわゆる無断増羽とされる悪質なものはどうかといいますと、五十三年五月末では二百三十八戸ありまして、羽数が四百三十三万九千羽ということになっております。これが十一月末には百五十戸ということで、羽数は三百八十五万五千羽ということで若干減ってまいっております。もちろん減ったにいたしましても、まだこれだけの無断増羽があるという実情でございますので、私ども、その明らかになった百五十戸に対しまして減羽をするように指導をいたしておるところでございます。その結果、減羽計画を作成したものあるいは協議中のもの百四十二尺まだ調整がつかないものが九戸というような状況になっておるところでございます。
  159. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最近、養鶏の全国的な仲間が、もう今日の養鶏を守るためには何とかして自分自身が減羽をして、そうしてこれを支える以外にないということで誓約書を出しながらそれぞれ減羽をしている中で、なお一万五千八百六戸という中の百五十戸これは一%ですね、その一%の中に、しかも羽数にすると相当な羽数を持っている養鶏家がいる。そうしてしかも、そのうちで九戸がいまだにこれに対して誓約をしないというところが実は問題なんです。ここが問題なんです。  それで、この間この質疑の中で、私どもは、これから卵の値が上がらない、養鶏が倒産していく中には一つはやみ増羽の問題、もう一つは卵価の不安定の問題、もう一つは経営の拡大といいますか、そういうことから来る問題があるというふうになっていますけれども、その中心のやみ増羽の問題に関してはどうするかというと、今後えさが上がっていく中で、えさの値上がりを商社系はしているけれども、全農系の場合においても基金でこれをカバーしていくという話をされました。これはそうですね。そういうふうにお答えになりましたね。  そこで、その基金をということになりますと卵価安定基金と、もう一つは飼料の基金があります・けれども、この基金の状況はいまのところどうなっていますか。
  160. 杉山克己

    ○杉山政府委員 無断増羽者が完全にはなくならない。これだけ強力な行政上のいろいろな手段を使って指導してまいりました結果、一般的な増羽傾向はとまったとは思いますし、それから、かなり減羽の是正ということも出てまいったと思いますが、一部御指摘のように、とまらないものがあるわけでございます。これらに対してどうするかということでございますが、従来からこういったものに対しては鶏卵価格の安定基金の補償の対象にしないとか、養鶏に関する国庫補助がいろいろありますが、それらの補助の対象にしないとか、あるいは制度融資の金融の対象にしないとか、いろいろな制裁措置といいますか、協力しないことに対する対策としてこれをとってまいっているところでございます。  その卵価安定基金について状況はどうかということでございますが、これは五十三年度中の価格補てんは、従来におきます最大規模に達しておりまして、総額約百二億円の補てんを実行いたしております。こういった大きな補てんを行ったことの結果として、どうにか養鶏企業も卵価の著しい低落の中でも経営を続けられてきたということが一つあったのかと思います。ともかく百二億円というような補てんを行った。その財源状況でございますが、これはみずからの積立金、それから国庫補助金というようなことで賄ってまいっているわけでございますが、それでは足りない。昨年度、五十三年度の大きな補てんのためにはそれを賄うための借入金をするようなことも行ったわけでございます。借り入れの額は三十数億円に達しております。それから、そういう資金繰りだけでなしに、最終的にこれは三年間の設計をもって収支を見込んでいるわけでございますが、どうもやはり三年先になってもその収支の状況改善されない、根本的に回復され得るとは思えないということもありまして、財源補てんのために畜産振興事業団による補助約九億円をこの四月に交付したわけでございます。そういうような状況で、財政的に基金の運営がきわめて苦しい問題につきましては各般の対策をとってまいったところでございます。  それから、飼料価格の安定基金についてどうかということでございますが、これは今日まで飼料価格が比較的安定してむしろ低価格で推移してきたということの結果、その安定基金を使うということはなくて、もっぱらその蓄積を続けてまいったわけでございます。これは二段階ございまして、団体がみずから積み立てるもの、それから異常な価格変動に対応するため国庫補助を一部行って積み立てるものという二種類あるわけでございます。これらにつきましては民間の自主積み立てによるものが約三百七十六億、異常な場合に備えての国庫補助を伴う積み立ての、いわゆる異常補てん原資造成と言っておりますが、この分が、これは計画で見込みでございますが、五十四年度末で約七百億に達するという状況になっております。その意味ではかなりの資金がある、こういう状況でございます。
  161. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それで、補てんの問題ですけれども、基準卵価が引き下げられる、補てんも財政難によって打ち切られたということで、たとえば補てん単価が一月三十二円、二月が三十七円、三月が二十円、こういうことになる。支払いの方は一月が十二円で二月ゼロ、三月ゼロ、こういうようなことを報告されたところがありますが、これは実態と合っていますか。
  162. 杉山克己

    ○杉山政府委員 個々の月々の単価そのものはいまチェックしているわけではございませんが、傾向として全体の財源事情、先ほど申し上げましたような状況から満度に補てんができないということで、期末近く、一部お話しのような足切りを行ったということは承知いたしております。
  163. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、いよいよ決議の趣旨に沿って協力をしてみずから経営を守るために減羽をする養鶏家と、それに応じない、しかも、さらにまだそれを拡大しようとするものがいる。一種の治外法権的な考え方を持っている。金も世話にならない、つくった卵も勝手に処理する、土地も自分で借りる、こういうことで手のつけようがない。こういうものについて一体どういうようにしたら反省を求めて協力させることができるかということについて、政務次官どうです。この前、今井さんが政務次官のときにそれはきわめて明快な答弁をされたのです。
  164. 片岡清一

    ○片岡政府委員 あれも要らぬ、これも要らぬというほど厄介なものはおりません。したがいまして、この対策は大変厄介な問題ですが、しかし何とか価格補てんその他の問題で反省を求めていく、そして全体の立場から良心的に処置してもらうということに対して相当きつく要望していくというような方策を講じていく以外にないのではないか、そういう点で今後大いに考えていきたいと思っておる次第でございます。
  165. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、やみ増羽というものがどこでどうしているかということがわかっているわけでしょう。つかめているわけでしょう。百五十戸のうちの九戸ということがわかっているのだから、どこでだれがやっているかということはわかるわけでしょう。その点は明らかになりませんか。
  166. 杉山克己

    ○杉山政府委員 調べた限りにおきまして、先ほど来申し上げておりますように、まだ調整のつかないのが九戸残っておる、そして、その企業がどこにあってどれだけの羽数かというような実態はわかっております。ただ、政務次官からも御答弁申し上げましたように、行政上むしろ限界と考えられるような制裁措置を各種とってまいっておるわけでございまして、それらのことも甘んじて受ける、安い価格になっても国の補助の伴う卵価の補てんは受けなくてよろしい、養鶏について施設その他の整備についても助成を受けなくて結構です、融資も自力でもって賄っていきますというものに対しては、これは制度的にこれ以上どうということはきわめて困難な問題でございまして、私ども、全体の事情を十分説明して個別に納得をさせる、そういうひざ詰めの指導が最後に残された手であろうというふうに考えております。現にいままでもこれを続けてまいっているわけで、現在九戸残っておりますが、九戸に至るまで、この間その努力の繰り返しによってその水準まで持ってきたという経過があるわけでございます。
  167. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その九戸というものを、あるいは氏名とか公表できないですか、できるでしょう。それをひとつ資料を出してもらえませんか。
  168. 杉山克己

    ○杉山政府委員 資料を調製いたしました上で提出いたします。
  169. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私の茨城県では二年ほど前から養鶏業界は非常に暗雲が漂っておりました。これは全国でもそうです。そこで、昨年の七月から本年に入って一億円以上の倒産が数件あります。その原因は、さっき言ったように、卵価の落ち込み、大手企業、商社の殴り込み、それから飼料の値上げと企業のための拡大の結果という形になっております。その中で鹿島養鶏というのがありますが、これは六億円、七万羽、それから北相馬の守谷の、これは食鶏ですが、一億円、それから水戸の種鶏場、これは五千五百万円、岩間というところで茨城ハイエッグ、これは三億円、それから猿島町の花島フーズ、これが三億円、ことしの二月に入ってから北浦ファーム十六億円という倒産であります。この北浦というのが殴り込みをかけた養鶏だ。  そこで問題は、倒産したところの金がどうなっているかということについてお調べになっておりますか、どこからこの金を融資を受けたのか。
  170. 杉山克己

    ○杉山政府委員 全国的に個別企業の経営の内容までは私ども承知いたしておらないわけでございます。ただ、茨城県で、これは大養鶏地帯でございますが、かなり経営が不振で中には不渡りを出したというような事例は幾つか承知いたしております。この経営不振、不渡りを出したというに至った原因は、個々の経営によってかなり差があるわけでございます。卵価安定基金に加入していなかったために価格の低落に対応し切れなかったというようなものもございましょうし、それから運転資金を十分用意しないまま経営基盤の整備、いわゆる投資を先に行ったために資金繰りが苦しくなったというような経営もあるというふうに承知いたしております。個々の企業がどこからどれだけ融資を受けたかということは存じませんが、ここに挙がっている個別の、企業名は省略させていただきたいと思いますが、たとえば環境整備事業で移転整備をやった、その際は公庫資金あるいは近代化資金というような制度資金で二億数千万円の融資を受けておったというようなものもございます。これは殴り込みをかけたというようなものではなくてまともな経営を行っているところでございますが、そういうような経営体が卵価低落に際して資金繰りが苦しくなったというような事情があるということを聞いておるわけであります。  なお、北浦ファームの内容につきましては今後十分調べたいと思っておるわけでありますが、詳細は承知いたしておりません。
  171. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは、先ほど局長からのお話で、やみ増羽をやっているものについてはぎりぎりの制裁を加える、こういうことですけれども、ぎりぎりの制裁というのは、少なくともお金も世話にならない、えさも世話にならない、何もかも国の世話にならない、自力でやっていくということだと、そういうふうに私は理解しますね。そうなると、一番の問題は、外国から入ってくる輸入の、免税をしているえさもこれを渡さないということ、あるいはまた、もちろんえさ基金に関してもこれも対応しない、こういうことについてはどうです。これは政務次官も一緒に答えてください。
  172. 杉山克己

    ○杉山政府委員 配合飼料価格の安定基金は、文字どおり飼料価格の変動、高騰に際してその価格を安定させるために補てんを行うということを趣旨としているものでございます。その趣旨が一つありまして、必ずしも養鶏だけのためのものではない、畜産全体ということでできているということで、養鶏のためにこれを特別に利用するということ自体が趣旨としてどうかということがありますのと、それから、そこは生産調整をきわめて重大な施策として考えているから、養鶏のためにそれだけ利用するというか、活用することも許されるという考え方もあるわけでございますが、一番問題は、これは長期の一つの安定制度、仕組みでございまして、加入者は長期にわたって積み立てを行う、そして、えさ価格が上がったときにそれに対する補てんを請求できるという、いわば法的な請求権を持っているわけでございます。そういたしますと、そういうものに対して、養鶏についての生産調整に協力しなかったからといってそういう請求権を強制的に奪うことができるのかということになりますと、これは法律上大いに疑義のあるところでございます。一方的にはなかなかそういう措置まではとり切れないということがございまして、私どもは飼料価格安定基金の問題につきましては本人の自主的な協力を期待する、要請するということで、養鶏についての生産調整に協力いたしますという誓約を出させることにいたしております。そうして初めて飼料価格安定基金への加入を認めているということでございますが、問題は、そういう誓約書を出してもこれを守らない、破ったものが出たときどうするか、そこが制裁できなければ好き勝手に破られてしまうではないかということであろうかと思います。いま申し上げましたように、法律上の問題もございますので強制することは困難でございますが、私ども、個別にそういう事例が出た場合には通報をして、それに対するえさ基金からの個別指導を行うというようなことを考えており、このことを局長名での通達等によっても明らかにしているところでございます。ただ今後、単にそういう指導だけでもってどこまで実効が上がるかということで、それをどのように強化していくかということについては、なおこれだけでなく全体的、総合的な対策とも関連させて、十分効果あるように考えていかなければいけないというふうに考えております。
  173. 片岡清一

    ○片岡政府委員 私はやはり制裁といいますか、最後に反省を求める一つの大きな材料は、いま畜産局長が述べましたえさ基金の問題だと思います。これは私もよく研究しておりませんので、いまここで確たることは申せないのですが、法律解釈の問題としてちょっと問題があるようでございます。それらの点でひとつ十分検討をして、何か方法を講じられるものならそういう方向でも何か検討して反省を求めていく、そういうふうにしたいものだと自分では考えておるのですが、なお検討をいたしていきたいと思います。
  174. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 重ねてこれは要請をしますが、最後の問題ですね、全国の養鶏農家の一%の中のそのまた九戸これがなお頑迷にがんばるということならばえさ基金から脱退をさせるとか、それは方法は幾らでもあると思う。何としてもそういう不穏当な、そういう治外法権的な物の考え方を持っているものについては、これは許してはならない。よく農林水産省は民法上の契約の論理を持ち出すけれども、一方において悪いことをしてお互いの自主的な約束もできないものがそこだけを主張するというのはおかしいじゃないですか。そういうようなものについては、これは世論がそんなのは支持しませんよ。だから、やはりそれは世論の前に屈服させるようにしていかなければ、今度はまじめな正直者がいよいよだめになってしまうのだから、それは何としてもやってほしいということを要請をしながら、最後に労働省の方にお尋ねをしたい。  昨年の九月一日、全日配の会社が清水のえさ工場と北海道の小樽のえさ工場の閉鎖を労働組合に通告をした。その通告をするときに、約束の第一条では配置転換をする場合においては労働組合としっかり話をする、こういうことになっている。ところが、この清水工場の中では何人かが指示する方向に協力しない、それは首にするぞということで、知多の方の工場に移った人がいるようです。それから、小樽の工場の場合はちょっと清水と違って誘致工場でありまして、全日配は組合の方には通告したけれども市の方には何ら話をしなかった。そこでびっくりして、九月の十一日に小樽市議会では工場閉鎖反対ということで決議をした。これは誘致工場であり、そのために四十何社というものが関連をしている、地域社会に非常に大きな経済的な影響を及ぼすということで反対の決議をした。それから、十一月十一日には小樽の市長及び市会議長がさらに同様の趣旨のことを会社に申し入れをしている。さらに、同じく十一月二十七日には北海道の商工観光部長が閉鎖をしないようにという要請をしております。このように営利至上主義のために、会社がもうからない、自分たちがもうかるときには港をつくって勝手に会社を立てて、そうして今度はいよいよ状況地域の方に重点的に畜産が振興するようになれば、それをつぶして労働者を首にして、そうしてそっちの方にいくということについて、住民も無視されるし、労働者も首にされるということについては、これは許しがたいことだと思う。時間があれば実際に参考人でも呼んで、来てもらって本当の真意を聞きたいわけだけれども、きょうはそういう時間がありませんから、労働者に対しての対応はどうされたのか、こういう点について結論だけをお伺いしたいと思います。
  175. 岡部晃三

    ○岡部説明員 日本配合飼料の労使紛争でございますが、これは昭和四十八年ころから経営悪化ということで、先生お述べになりましたような、五十三年二月合理化案の大綱が出まして、さらに五十三年九月に正式に合理化案が出たということで、これをめぐりまして会社と全日配労組との間に紛争が生じておったわけでございます。  その内容を見ますると、お尋ねの清水工場につきましては、昭和五十三年十月三十一日をもって工場を閉鎖する、小樽工場につきましては、昭和五十三年十二月三十一日をもって工場を閉鎖するというふうなことでございまして、配置転換を内容とする合理化案であったようでございます。  この清水工場の問題につきましては、静岡地裁あるいは静岡労働委員会というところに案件が係属したわけでございますが、その間、また配置転換を従業員に通告するということで、組合側の工場占拠等々のことがあったようでございますが、賃金不払いというふうな問題が生じまして、これは静岡地裁の要請によりまして賃金の仮払いを行うというふうな種々の経緯を経まして、本年の四月に至りまして静岡地労委が和解に乗り出しまして、その勧告が去る五月十九日成立いたしまして、清水工場の問題については解決を見たというふうに承知いたしております。  ただ、小樽工場の方につきましては、これは先生御指摘のように、小樽市あるいは北海道庁がいろいろあっせんの労をとったようでございますが、やはり操業の停止が行われまして、いろいろの問題が生じたということでございます。しかしながら、これも清水工場における和解の動き等からいたしまして労使の歩み寄りが見られておる状況でございます。去る五月十八日、トップ会談が行われまして、小樽の問題につきましても労使が現在鋭意その解決に努力をして、またその希望が持てるのではないかというふうな状況であるというふうに承知いたしております。  私どもといたしましても、この案件につきまして、さらに必要に応じ御相談にあずかりたいというふうに考えております。
  176. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。
  177. 堀之内久男

    ○堀之内委員長代理 津川武一君。
  178. 津川武一

    ○津川委員 きょうは、リンゴのことで二、三質問をしてみたいと思います。  最近のリンゴの生産、それからリンゴの消費、販売はここ数年どうなっているのか、まず明らかにしていただきます。
  179. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず、リンゴの生産の方でございますけれども、栽培面積等につきましては、主要県、北海道、青森、岩手、秋田、長野、この辺でございますが、四万八千ヘクタールございます。それ以降逐次減少を見ておりますが、五十一年あたりが一番下がっておりまして、最近は横ばいで推移をしておるという現況でございます。  それから、生産量の方でございますが、五十一年は全国で八十七万九千四百トン、約八十八万トンでございました。五十二年産につきましては九十五万八千八百トン、大体九十六万トンというところでございます。それが五十三年になりまして大分落ち込みまして、八十四万四千トンという生産量に相なっております。
  180. 津川武一

    ○津川委員 そこで、農林水産省が設定している長期見通しではどうなっているか。昭和六十年見当でお知らせいただきます。
  181. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 果樹農業振興基本方針、これは五十一年の八月に公表をいたしておりますが、その際の六十年度、これが目標年度になりますが、それの需要の面は百二十四万七千トン、それから生産の目標といたしまして、大体同数でございますが、百二十一万五千トンということでございます。
  182. 津川武一

    ○津川委員 百二十一万トンを六十年目標にして、最近は八十五万トン、九十万トン、九十五万トン、これでは達成されそうもないと思います。現実からかなり離れておりますので、長期見通し、長期計画は変更して着実にやるべきだと思いますが、この長期計画に対する見通し、気持ちをお知らせ願います。
  183. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十一年の八月に策定をいたしました果樹農業振興基本方針、これはその後の推移を見ますると、リンゴについては、ただいま先生から御指摘のあったように、百二十一万五千トンというところまではなかなかむずかしそうな雲行きでございますし、特にミカン等につきましては、これは相当供給過剰というかっこうになっております。そういうことでもございますので、ミカンなりリンゴ等を含めて、その他の果実につきましても、この基本方針の改定作業というものを現在取り進め中でございます。今年度中には策定をいたしたいというふうに思っております。一般的には農産物の需要と生産の長期見通しというものは官房が中心でやっております。したがいまして、それとの整合性ということも考慮に入れて、本年度中を目途に改定作業を終えたい、かように思っております。
  184. 津川武一

    ○津川委員 そこで、東京の女子学生にアンケートをとってみますと、リンゴをもっと食べたいという人がかなりあるのです。しかし、生産がそういう状態であります。  そこで、生産の伸びない原因が何であるか、いろいろなことが考えられる中で、腐乱病がございます。北海道でも青森県の三戸でも岩手県の二戸秋田県の鹿角、それから長野県の伊那谷、かなりの腐乱病が蔓延しております。これを駆除するために、生産農民がかなり真剣に考えていろいろな工面をしております。政府もそれなりの援助をしております。  そこで、私は何回か政府に、いわゆる腐乱病の特効薬、こういうものをつくるように、そういう会社があったならばそれに援助するように、こういうことを要求もし、お願いもしてきたわけであります。幸いなるかな、政府はそのために、腐乱病では、いわゆる登録番号で言うとSF七七一八、構造式で言うと九アグニヘプタデカメチレンジグアニジニウムトリアセテートという、これは大日本インキ化学のものでございますが、これに国の援助を出すようになりました。また、もう一つ、デリシャス系統の秋の異常落果を防止するために、これも登録番号で言うと石原産業のLSG一五二二、この二つに、国が毒性があるかないかの試験研究をするように予算を組んだこと、私はそれなりによかったと思います。実はせんだってその毒性検査をしておる小平市の残留農薬研究所を尋ねてみましたが、そこでは、政府から補助をもらったので懸命にやっております。  そこで、腐乱病防止のこの薬、落果防止剤のこの二つの薬の効果がどんなものであったのか、どこで実験してその効果がどのくらいあったのか、在来の薬に比べてその度合い、優劣などというのはどんなものであったのかをお示し願いたいのでございます。
  185. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話がございました新規化合物の薬効試験の成績等はどうなっておるかということでございますが、一つは腐乱病の防除薬剤、先生がおっしゃっておられた大日本インキ化学工業株式会社が開発したものでございますが、これにつきましては、五十二年度におきまして、青森県りんご試験場と青森県の畑作園芸試験場におきまして実施をした薬効試験によりますれば、本化合物により処理した場合には、無処理に比べまして再発病の程度はきわめて低い結果が得られております。また、リンゴ腐乱病に対します既存の登録農薬に比べまして同等ないしすぐれた結果が得られておるということでございます。  それから、もう一つの落果防止薬剤、石原産業株式会社が開発した化合物でございますが、こちらの方につきましては、福島県の園芸試験場で実施いたしました薬効試験によりますと、本化合物の落果防止の程度は無処理区に比べまして相当高いというふうになっております。  それからまた、岩手県の園芸試験場において実施しました試験では、リンゴ落果防止剤に対する既存登録農薬、たとえばB9などでございますが、そういうのに比べますと効果はやや劣りますものの、無処理区に比べますと高い防止効果が得られておる、こういう薬効試験の成績が出ております。  以上でございます。
  186. 津川武一

    ○津川委員 そこで、確認の意味でもう一度お尋ねしますが、腐乱病の防止剤はいままでのどの薬よりも効果があった、こういうふうな実験成果でございましょうかしら。もう一つ、落果防止剤は、いままでは一般に使われておったいわゆるヒオモンというやつが、毒性試験研究がないために販売停止になっておりますが、これよりはやや劣る、こういうことでございましょうかしら。そのヒオモンに比べてどのくらいの効果があるのか。いままで、やらないよりはいいと言っていますけれども、農民が、落果防止剤、腐乱病対策のこの薬に対して非常に期待を持っておりますので、いろいろな営農の計画を立てる上にも必要なので、重ねてお答え願います。
  187. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 腐乱病の方につきましては、これは従来のものと比べまして同等というふうに見られるわけでございます。     〔堀之内委員長代理退席、委員長着席〕  それから、もう一つの落果防止薬剤の方でございますが、これにつきましては、ヒオモンとの関係ではどうかというお尋ねでございますが、ヒオモンよりは落果率が少のうございます。結局よく効いておる、こういう結果に相なっております。
  188. 津川武一

    ○津川委員 そこで、二つの薬、残留農薬研究所が研究しておりますが、農民の方では腐乱病で非常に困っている。落果防止剤でことしの秋も非常に心配している。いつごろ何か実験のめどがつきそうでございますか。
  189. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 現在、残留農薬研究所で慢性毒性試験、それから次世代試験等の長期毒性試験を実施しておるところでございます。ただ、こういう試験につきましては、予備試験をやり、それから本試験をやり、さらにその後データ解析をやるということに相なりますので、まず三年はかかるのではないか。ただいまお話のございました農薬につきましては、五十三年の暮れごろから試験開始をやっておりますので、それから三年間は少なくともかかるのではないか、かように考えております。
  190. 津川武一

    ○津川委員 次に、最近の冷たい春といいますか、異常寒冷に対するリンゴの影響でございます。青森県では、この五月以来のかつてない異常寒冷で、開花は約十日間おくれるという状態でございます。満開はきょうかあしたというふうに考えられております。これでは結実にかなり大きな影響、大損害が出てくるんじゃないかと思って、生産農民も地方自治体も、りんご協会も農協も全力を挙げて被害を少なくするために人工授粉に取り組んでおります。県でも特別対策本部を設けております。また、高校や中学校に人工授粉の援農もお願いして、高校の生徒も中学校の生徒も応援に出ております。商工会議所も自分たち関係の中小商店の皆さんに援農を要請しております。電力会社も援農に出ております。自衛隊も援農に出ております。そこで非常に懸命になっております。これが青森県の現状でございます。  そこで、異常寒冷による全国のリンゴの開花状況のおくれはどんなふうになっているのでしょうか。
  191. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 本年の五月上、中旬に低温があったわけでございますが、これの影響のありましたところは山形、岩手、青森、北海道等でございます。確かに五月中旬の低温によりまして開花が一週間程度おくれを見せております。このため一部に受粉の不良なりあるいは着果の不良ということも予想されたことからいたしまして、各県とも人工授粉の徹底等の指導を行っておるところでございます。なお、天候の方は五月二十日以降好天に恵まれたということもございまして、目下人工授粉作業が急速に進んでおるというふうに見ております。したがいまして、現時点では大きな被害には至らないものと見込まれております。  以上でございます。
  192. 津川武一

    ○津川委員 山形県、長野県の開花のおくれの状況はどうなって、何日くらいになっていますか。
  193. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 山形県、長野県とも開花のおくれは一週間程度、かように聞いております。
  194. 津川武一

    ○津川委員 局長は余り影響がないんじゃないかと見ておるようですが、私もそうありたいと願っておりますし、地元の人たちは懸命にやっております。青森県だけで言うと、人工授粉を所期の目標どおりやると五十四万四千人の労働力が必要であると計算されております。先ほど申しましたようにいろいろなものを頼んでも、最終的には七万人からまだ不足している、これが現状でございます。そうすると、農林省としても何らかやることがないのでございましょうか。この点で、県庁やいろいろな自治体、電力会社まで、商工会議所まで動いているときに、農林省、黙っていていいのか。たとえば農林省の現地の出先機関、食糧事務所、統計情報部、いろいろな工事事務所、かなりあります。ここらあたりも、あしたあさって、ここ三日か四日が勝負なので、そこへ政府機関が援農に出してやるとすれば、非常に皆さんが力強く考えるから、そういう点が考えられないだろうか、たとえば農林省のこれに対する激励なりお見舞いといいますか。もう一つは、出かせぎ者に急遽帰ってもらうように指導する、援助する、ここらあたりが考えられないでしょうか、こう思うわけであります。お答え願います。
  195. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話がありましたけれども、結局たとえばふじ、スターキングのようなものが開花がおくれた、それに国光あたりまでの開花時期が重なったということで授粉作業が集中してきているというのが現在の実態だと思います。そういうことで、先生からお話がございますように、中学校、高等学校、あるいは電力会社、自衛隊等々の援農ということを県の方でも呼びかけて、また現実にそういうことをやっておられるということを聞いておるわけでございます。  問題は、あと国の出発機関、これは統計事務所も食糧事務所の方も、あるいは土地改良事務所等も国のあれがあるわけでございますけれども、これを援農に動員するかどうかということにつきましては、食糧事務所であれば食糧庁、工事事務所であれば構造改善局というのもございますから、いまここで、援農ということについては県の方もいろいろ努力されているので国の方もすぐそうさせましょうというところまでは、ちょっと私の段階では申し上げかねますので、そういう御要請があったということで内部で早急に検討してみたい、こう思っております。  それから、出かせぎの者もこの際帰農させてという話もございますが、この面につきましても就業改善課等でこういう問題を取り扱っておりますので、ここで農蚕園芸局長としてそうさせますと胸張っての答弁ができませんものですから、これも検討させていただきます。
  196. 津川武一

    ○津川委員 実は人工授粉も、あすが金曜日、あさってが土曜日ですが、やなあさっての日曜、ここいらが勝負なんです。だから、政府のお仕事もみんなあるでしょうけれども、何らかの形で政府も応援するのは私はかなりいいことじゃないかと思うわけであります。この点答弁があれば片岡さんから聞くとして、なければなくてもいいですが、とにかく伝えていただきたいと思うのです。  この点でもう一つ心配なのは、冷温が来たときに、藤坂の試験場ではことしの最高温度が例年の最低温度よりも低いのです。実はこの時期が花粉が造成される時期なんです。したがって、花が咲いた、雄しべにどのくらい花粉があるかということを私は指でこうやってみるのです。いつもならよく花粉がついてくる。ことしはついてこない。花は咲いたけれども何だかみたいなことで、さあ受精させる能力のある花粉がないのじゃないか。花粉の活力があるのかどうか。雌しべの卵と雄しべの精子、この精子がついてないのじゃないか。  もう一つには、ハチが来ていてもこれが花につく、着花の力が欠けているのじゃないか、こういう点が実は心配なんです。この心配は山形側から出てきている。青森県の農業試験場に言ってみると、さあ大変だ、調べてみましょうと言って、今度一緒にやってみたら、やはりそういう状況なんです。ここのところを調べていただく。そうしてミツバチ、マメコバチで受粉しているという状態だったら、ことしの花粉にそういう活力、授精能力がないとすれば、マメコバチでやったところは全部結実しないという結果になる。それが心配なんです。これは結論を急いでほしいのです。マメコバチ、ミツバチでやっていると思うところにその力がないとすると、早急にここには人工授粉しなければならぬ。いままでは活力あるものとして人工授粉していない。したがって、この点をひとつ調べていただいて、速やかに一つの結論を出して、心配だったら、やっぱりマメコバチでやったところに対しても人工授粉せいという方針を立てていただかなければならない。これが一つ。  現在、人工授粉しているのは去年の花粉なんです。ところが、こういう活力のない花粉がことしあるとすれば、来年度の人工授粉の花粉のために特別に活力のあるところの花粉を選び抜かなければならぬという大事な課題にぶつかってきた。  この二点、もし方針があったら聞かしていただいて、なかったらばすぐ検討していただきたいと思うわけであります。
  197. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 山形県におきましては、これは青森県等と違いまして従来から人工授粉の実施率が低いところでございます。ただ、ただいま先生からお話がございましたように、活力のある形になっておるのかどうか、その辺が危惧される、こういうお話でございます。この面につきましては試験場等で調べている向きもありますので、早速私の方も連絡をとりまして、その辺につきましては活力ある花粉かどうか、早急に十分把握したいと思います。  それから、来年度の話でございますけれども、これにつきまして不足する地区が生ずるような場合におきましては、地区間、県間の融通によって対処するということで、この花粉の貯蔵といいますか、こういう面もあれしまして、その間の融通措置によって対処するように指導していきたい、こう思っております。
  198. 津川武一

    ○津川委員 二瓶局長、私の言っていることを理解していないんじゃないのかな。ことし活力のない花粉をためても来年だめなんです。したがって、ことしよく調べて、来年の花粉は間違いなく受精する花粉をつくるように指導せいということなんです。そういうものでなければ、花粉を集めて授粉しても何にもならない。そこのところを早急に検討していただきたい。これが一つ。  片岡さんがせっかくおいでになったから、政府機関でひとつお見舞いなり援助なり、現地に出向くように指導していただくよう、これは片岡さんからも答弁願って私の質問を終わります。
  199. 片岡清一

    ○片岡政府委員 大変いろいろ示唆に富んだお話を賜りまして、ありがたく拝聴いたした次第でございます。それぞれの立場がありますので、ことに自然を相手の農業というものは時期を失するとだめでございます。したがって、その時期にみんなで協力して実りを大きいものにしていくということの必要は十分わかるのでございますが、それぞれの分野において仕事をしておる人たちを集めて動員するということは、かなり厄介な問題でございます。先生も御存じのように、労働組合の方の了解も得なければなりません。そういうことでなかなかむずかしい問題ではございますが、御説の点は非常に示唆に富んだ問題でございますので、十分拝聴して、今後の対策に処していきたいと考えておる次第でございます。      ――――◇―――――
  200. 佐藤隆

    佐藤委員長 この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案について、参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 佐藤隆

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出席日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 佐藤隆

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る三十日水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十五分散会