運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1979-03-16 第87回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月十六日(金曜日)     午前九時五十四分開議  出席委員    委員長 加藤 六月君    理事 稲村 利幸君 理事 小泉純一郎君    理事 高鳥  修君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 坂口  力君 理事 竹本 孫一君       阿部 文男君    愛知 和男君       池田 行彦君    江藤 隆美君       小渕 恵三君    大村 襄治君       後藤田正晴君    原田  憲君       村上 茂利君    森  美秀君       山崎武三郎君    山中 貞則君       井上 一成君    伊藤  茂君       大島  弘君    沢田  広君       村山 喜一君    貝沼 次郎君       宮地 正介君    安田 純治君       西岡 武夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 金子 一平君  出席政府委員         大蔵政務次官  林  義郎君         大蔵大臣官房長 松下 康雄君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵大臣官房審         議官      福田 幸弘君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省理財局次         長       吉本  宏君         大蔵省証券局長 渡辺 豊樹君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         国税庁次長   米山 武政君         国税庁調査査察         部長      西野 襄一君   委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     佐藤 道夫君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月十六日  辞任         補欠選任   池端 清一君     井上 一成君   永原  稔君     西岡 武夫君 同日  辞任         補欠選任   井上 一成君     池端 清一君   西岡 武夫君     永原  稔君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度公債発行特例に関する法  律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 加藤六月

    加藤委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本孫一君。
  3. 竹本孫一

    竹本委員 大臣の時間がないようですから、簡単に三つほど問題だけ言いますから、適当に答弁していただいて結構です。  第一は、日本では国債依存が四割になったというのに財政に対する危機感というものが、大蔵省収支試算的見地からの危機感はあるけれども日本政治の姿勢、日本経済の全体のあり方、そういうものに結びつけた意味での深刻な受けとめ方が足りないとぼくは思うのです。しかしこれは日本の税金が少しまだよそに比べて負担が低いからみんなのんきに考えておるのか、あるいは日本政治家がだらしがなくて迎合政治ばかりに忙しくて、ごきげん取りのために予算を幾らでもふくらますということを平気でやれるものだから、そういう財政危機をのんきに考えているのか、その辺についての考え方を、どういうふうに思っておられるのかというのが一つ。  それから二つ目は、やはり赤字公債をなくするためには歳出の面に大なたをふるわなければならぬ。大蔵省の「省」の字は、御承知のように省くという字なんです。これは大変むずかしいシナの言葉から来た。説明すれば長くなるのですが、省くということは、いいことを一つやるよりも一つの悪い害を除くことの方が政治としては大事なんだということから来ている。そういう意味で、経費節減あるいは歳出の切り捨てというか削減といったようなものが大事なんだが、この三K赤字行政機構改革補助金を今度千二百六億円整理したようですけれども、そういうものに大なたをふるう必要が絶対あると思うがどうかというのが第二点。  それから第三番目、最後は、いまの大蔵大臣の考えでは、最終的には何年になれば赤字公債発行はやめるつもりであるかということとあわせて、その裏側ですが、赤字公債を出さなくなった場合に、大体よその国の公債依存度というのは二〇%以下ですね、日本は二〇%以下になるのか、するのか、あるいは何%くらいの公債というものを——建設公債なら幾ら出してもいいというわけにはまいりません。それはどのように考えておられるか、その見当を聞きたい。  以上、三点について時間の許す限り答弁してもらえば結構です。
  4. 金子一平

    金子(一)国務大臣 竹本さんの大変むずかしい御質問にお答えいたしたいと思いますが、第一段の問題ですけれども、特に高度成長時代に税収が予想外にたくさん入って、予算のばらまきができて、国に依存すれば何でも最後はしりをぬぐってくれるわ、めんどうを見てくれるわという、いわば甘え構造がずっとまだ続いておるのではないかと思うのです。それが石油ショック後そういう事態でなくなったという認識がまだ徹底してない。これは私どもの方にも大いに責任があると思うのでございまするけれども、もうそういう事態ではなくなったのです、やはりお互い責任を分け合って、お互い自助努力で、国も市町村も企業もそれぞれの責任を果たし、分野を開拓していかなければいかぬのですということを、もう少し真剣に認識し合うことが必要ではないかと考えております。それが一つです。  それからいま一つは、第二段の問題でございますが、三K赤字解消、これはなかなか一遍にできることではないと私は思いますけれども、ことしも食管、国鉄を初め健保についても御審議をお願いしておる次第でございます。一生懸命にいろいろ努力をいたしておりますが、いま聞いてみますと、三K赤字累積額は一兆七千億と言っておりますけれども財政再建のためにはしっかりと解消策を立てて片づけていくことがその前提として必要だと考えます。いまそういうことを前提にしていろいろの具体策を進めておる最中でございます。  それから最後赤字公債はどの程度かということですが、これは経済情勢の推移によって南下はあるといたしましても、常識的に二割や二割五分ぐらいのことは私はこれはあっても差し支えないのじゃないかと思うのですが、いまのような三割を超え四割に近いというようなことでいくということは、これはもう全く異常なことでございまして、できればないにこしたことはないのでございますけれども、ときには借金せねばいかぬこともございましょうから、一割五分や二割ぐらいはあってもしかるべきでしょうけれども先進各国並みのところまでは一刻も早く脱却しなければいかぬ、そういう気持ちで、切なる気持ちでいませっかく努力をしておる最中でございますので、この上ともの御協力をひとつお願いを申し上げます。
  5. 竹本孫一

    竹本委員 大蔵大臣は風とともに去りましたから、今度はひとつ政務次官にもう一度いまの問題を改めて伺います。時間がないので大臣に突っ込んで話もできなかったから、優秀なる政務次官に敬意を表しながらひとつ伺いたい。  先ほど申しましたように、日本財政が四〇%、三九・六ですか、公債依存があるということを、これは大蔵省大蔵省立場において危機感を持って叫ばれる、当然なことだと思うのですね。しかしそれは国民一般に対する今度は受けとめ方の方から言うと、プラスの面とマイナスの面と両方ある。ただあれは増税をする前哨戦のキャンペーンをやっておるのだという程度にしか受け取らない人もおりますから、私はしかし大蔵省立場を離れまして、政治家としてより広いより高い立場から考えてみると、単に四割の公債ということもありますが、一体、先ほど大臣答弁もあいまいだったけれども赤字公債をこれからいつまで出していくのか。将来、この間の試算なんかで見ても、六十年度には利子だけでも八兆四千億ですか、そういうようなことになっておるような状況を考えてみると、とにかくにっちもさっちも動かないというような情勢に陥る。本当に問題は深刻な様相を示しておる。しかしそれは、ただつじつまを合わせるためには増税をやれば済むんだ、一般消費税を導入すればいいんだということだけでは片づかないもっと深刻な問題を含んでおる。それはすなわち政府あり方、あるいは行政効率化、あるいはわれわれの日常生活生活のパターンまで変えなければならないような大きな問題を含んでおる、そういうふうに思うのですけれども、したがってこれは大蔵省次元を離れて、政治家レベルあるいは国家的なレベルにおいてこの問題に取り組まなければならない、それほど大きな問題であるというふうに思うのですけれども、ひとつ政務次官としてはこれをどの程度深刻に受けとめておられるかということが一つ。  ついでにもう一つは、アメリカあたり、またこれはどこでもそうですが、何もアメリカに限りませんけれども、いまは均衡予算ブームというのがあるのですね。バランスト・バジェット・ブームというものが出てきておって、大平さんも一口、チープガバメントと言って、また後で何か例によってわけのわからぬようなことになっちゃったけれども、スモールガバメントがいいか、チープガバメントがいいか、あるいは効率的な行政がいいのか、言い方はいろいろでありますけれども、いずれにしても、均衡予算というようなものにもう一遍まじめに取り組まなければならぬではないかというのが、ぼくは大きな意味では世界的な大きな流れになってきつつある。あるいはケインズ経済学に対する新しい厳しい批判が社会的な一般的な潮流になりつつある。そういう流れの中で、日本ではまだそういうブームどころか、そういう考え方も余り出てきておらぬという、この点についてはどういうふうに思われるか、この二つを伺いたい。
  6. 林義郎

    ○林(義)政府委員 大変尊敬しております竹本先生から御質問でございますので、私も誠意をもって申し上げたいと思うのです。  財政状態は本当に大変な状況にありますし、この前からの当委員会でのいろいろな御質疑を通じましても、一歩間違えばインフレの谷間に落ちるし、一歩間違えば国民に大変な負担を及ぼすというような状態であると私は思いますし、この財政の運営こそがインフレ対策の中で一番大きな問題だろうというふうに考えております。数字を挙げますと非常にむずかしい状況ばかりでございますが、これを何とかやりのけて、国民生活の安定のために最大の努力を傾けるのがわれわれの責務であろう、こういうふうに思っております。これからも一層努力をしていくつもりでありますから、よろしく御指導のほどを心からお願い申し上げます。  次に、いまお話にございましたバランストバジェットであるとか、ケインズ経済学に対する批判の問題、私も思いますのに、アメリカあたりで相当にケインズ経済学に対する批判というものも出ております。私から言うまでもありません、先生の方がよく御承知でしょうけれども、フリードマンのような考え方であるとかいろいろな考え方が出てきておるのはあります。ありますが、ケインズ経済学というのは一九二〇年代の不況のときに出てきた産物であろうと思うのです。残念ながら私はケインズに匹敵するような体系的な議論というのはまだないと思うのです。やはりそこは経済学がひとつおくれているというか、経済学がまだまだ発達をしていかなければならないような問題のように思いますが、財政の持つところの役割りの中で、ケインズ経済学で言うような有効需要政府支出によって喚起していくというようなことというのは、私は効果としていままでもあったと思います。ただ、その効果が果たしていまの段階におきましてどのくらいにあるのかどうかというところが問題だろうと思うのです。いわゆる乗数効果というものがどのくらいあるかということをさらに突き詰めていかなければならない、こういった問題もあるわけでございますから、単に財政を膨張させて景気を振興していくというような、また、それによって経済安定成長への道をつくるというような考え方というものをやはりこの際謙虚に反省をして、新しいバランスのとれた方向というものを考えていくということがこれからの私たちに与えられたところの役割りであろう、これはわれわれ及び大蔵省当局でもいろいろ考えていかなければなりませんし、国民各位のいろいろなお知恵をかりましてさらにいい方策を見出していきたい、こういうふうに考えているものでございます。
  7. 竹本孫一

    竹本委員 次官の方で誠意をもってお答えをいただくということで、大変ありがたいと思いますが、それではあわせて伺いますが、これはひとつわれわれ政治家としての問題でありますから次官にお伺いするのですけれども、とにかくアメリカ日本に対して、日本政治家ポリティカルペインを持たない、政治家としての悩みと痛みですね。たとえば政治家選挙民に苦いことを言って増税をしなければならぬ場合もある、あるいは思い切って自由化をやるために農民にある程度の犠牲を要請しなければならぬ場合もある、いろいろむずかしい立場に立つのだけれども日本政治家は、そういう政治家としての当然悩まなければならない悩みというものを余り持たない。裏から言えば、迎合ばかりやっている、それがまた予算をふくらましている、こういうことなんですが、そのポリティカルペイン選挙民の欲望を拒否するということよりもそれに迎合することの方が簡単だ、しかも公債を出してコストをかけずにやるなら最も簡単だというような学者の意見もありますけれども、とにかくわれわれ、ことにこういう重大なる転換期に立つ政治家は、特に政治家としての悩みを悩まなければならぬ、このポリティカルペインが必要だと思うのですね。自民党さんの若い先生方のチャンピオンにもなっておられる次官ですから、この辺でわれわれも政治家として厳しい試練を越える、その悩み悩み抜こうという決意がお互いになければいけないのではないかと思うから、この点をもう一つ伺いたい。  次にこれと関連しまして、主計局もおいででございますからお伺いします。  そのアメリカ均衡予算ブームの中では、とにかく歳出を切れ、少なくとも歳出伸びGNP伸び率の以内に持っていくべきだという意見がありますね。いつからどういうふうにやるかということは別として私はこれは一つ考え方だと思う。私は田中財政時代からよく言っておるのですけれども、年々二五%も予算を伸ばしていくなんというばかなことはない、そんなことをすれば財政が破綻することは決まっておるということを何回も言っている。最近になって十何%ということになっていますが、この問題については二つありますね。一つは、GNP伸び以下に予算歳出伸びも抑えるべきだという意見をどう受けとめられるかということと、それから、既定経費節減のゼロからの出発という考え方ですけれども、たとえば一五%まではいいのだということになると一五%については一種の既得権になるのですね。そういうことで予算あり方見直しをする、あるいは全面的な見直しをするということは私はできないと思うのですね。これはやはりゼロからの出発というような考え方で再出発しなければだめだと思うのだけれども、その点について主計局ではどういう考え方を持っているか、あわせて伺いたい。
  8. 林義郎

    ○林(義)政府委員 ポリティカルペインというお話がございました。私も単に大蔵政務次官ということではなくてこれからの政治家として、先ほど大臣から話がありましたように甘え構造でやっているのではどうにもならないと考えております。  私見、私のことになりますが、実はこの前の選挙のときの選挙公報の中に私は書いたのですけれども国民の中でも石油ショック以来情勢が非常に変わってきている。それは、借金をしてもいいから、何でもローンで借りてもいいからそれで大いに拡大していったらよろしいということではなくて、いかにいまもらっている給料でうまくやっていくかというようなことをみんな考えるようになってきた。国の政治においてもそういった考え方を取り入れていかなければならないし、いかに拡大するかというよりもいかに公平に配分をしていくか、またそれによって国民全体が豊かになるようなことを考えていかなければならないということを私は申し上げたのです。  そういった意味で、単に国民が非常に甘えているという感じじゃない。私は国民石油ショック以来ずいぶん気持ちは変わってきていると思いますし、その上に立ってわれわれ政治家が、そういった素朴なる国民の期待を十分に実現していくようにやっていかなければならないと思っているのです。そうした意味でこれから新しい方向を目指して私も大いにがんばってまいりたい、こういうように思います。  それから後のお話は、御指名でございますから主計局の方からお答えいたします。
  9. 吉野良彦

    吉野政府委員 GNP予算伸び率との対比においての御指摘でございます。確かに先生指摘のように、ごく最近年度の諸外国予算を見ましても、たとえばアメリカでございますと、名目GNP伸び率が、これは一九八〇年度予算でございますが、九・四に対しまして歳出伸び率は七・七というようなことで下回ってございます。それからまた、フランス等においても似たような予算になっているわけでございます。実は私どもも果たしてどのような背景でどういう経済的あるいは社会的なバックのもとでこのようなことが可能なのであろうかと非常に関心を持って見ているわけでございます。私ども日本の場合でございますと、少なくともここ数年間、名目GNP伸び率をかなり上回る予算伸びが続いてございます。ただ日本経済もいよいよ、いままでの高度成長から安定成長に移っていくことがいわば一般的にも認識をされるようになってまいりましたこととも関係があろうかと思いますけれども、少なくとも今度の五十四年度予算におきましては、いまだ名目GNP伸び率をかなり上回っているとは申しますものの、それ以前の年度に比べますと、上回り方はわずかながらでも下回ってきたということが言えるかと思います。  ただ、私どもこれからの問題を考えます場合に、諸外国と私ども日本の場合とでは幾つか事情が違っている面もあろうかと思います。たとえばよく言われておることでございますけれども社会資本整備状況あるいはまた社会保障制度の成熟の度合い、この辺が先進諸国ではすでにかなり進んでいるのに対しまして、わが国の場合にはいままさに社会資本なりあるいは社会保障水準整備の途上にあるということもございまして、御指摘のように名目GNPを下回る予算伸び率に今後必ず抑えていくんだというようなことは、なかなか自信を持って申し上げることもできませんし、果たしてそのこと自体が本当に日本の国情に即して妥当かどうかといったような問題もあろうかと思います。いずれにいたしましても、御指摘お話、私ども前から関心を持っております課題でもございますので、今後十分注意をしてまいりたいと思っております。  それから第二点の、既定経費と申しますか、予算編成に当たりまして、いわばゼロからスタートをして編成に取り組む必要があるではないかという御指摘、まことにそのとおりかと私どもも存じております。いわゆるゼロベース予算という言葉もございますけれども、私ども従来からも考え方といたしましては、予算編成に当たりましては既定経費を常に見直しをいたしまして、慎重な吟味をしてやってきたつもりでございますが、いよいよその必要性は高まっているわけでございます。特にそのような意味におきまして、五十四年度予算編成に当たりましては、従来にも増していわばスクラップ・アンド・ビルドというような考え方を徹底をさせようという意気込みで編成をいたした次第でございます。まだ必ずしもその成果は決して十分とは申せない状況でございますが、御指摘のとおり、今後ともそういう基本的な考え方努力を積み重ねていく必要があると存じております。
  10. 竹本孫一

    竹本委員 従来のように上回るものではなくなったという御答弁でございまして、それは結構ですけれども、私の立場から言えば、上回ろうとしても上回れなくなったという実情が根本の原因である、事ほどさように行き詰まってきたんだということをぼくは指摘をしておるわけですよ。  それから、これは念のためですけれども、おわかりのことだと思いますけれども社会資本が足らない、社会保障が不徹底である、だからそれを充実しなければならない、おっしゃるとおりであるし、野党は特にそれを力を入れて言っております。しかし、いまインフレが忍び寄ってきつつあるようですけれども、そういうインフレ問題等中身は問題ではないのです。われわれの政治的立場から言えば問題だけれどもインフレ自体から言えば、Aの支出であろうがBの支出であろうが、全体としての予算の総枠がその国のキャパンティーを超えておるか超えてないかというボリュームが問題なのだ。でありますから、中身がこうであるというのは一つの説明にはなるけれどもインフレを招かないとか予算が健全化するとかいう問題とは違う、次元が違う。インフレの心配をするときには、全体としてのボリュームがこなせるだけの日本のキャパシティーに合っているかどうかということが問題なのですから、その点はおわかりのことでございますけれども、念のため申し上げておきます。  それからもう一つ、あわせてですけれども、J・M・ブキャナンの本をちょっと読んでみましたけれども、いい言葉が書いてある。それは、均衡予算制度を破壊してインフレへの道を歩み始めておるということを予算無法状態、こういう言葉を使っておるのです。予算無法状態、確かにこれはいい言葉だと思うのですね。ひとつ私が先ほど来言っていることを締めくくって言えば、日本予算あり方無法状態にならないように、そして予算を通じて日本財政インフレを来さないようにけじめをちゃんとつけてもらいたいということをいままで言ったわけです。予算無法状態は困るということであります。  これに関連して、いま問題になっております赤字特例公債ですが、赤字公債特例公債借りかえは認めないということになっているわけですね、借りかえは許さない。借りかえは許さないとはどういう意味かということをひとつ伺いたい。
  11. 吉野良彦

    吉野政府委員 この特例公債につきましては、ただいま御審議をいただいております五十四年度特例公債法におきましても、第五条でございますか、国債整理基金特別会計法では許されておりますところの償還のための起債は行わないものとするということで、法律にも明記をいたしまして御審議をいただいているわけでございますが、実は一般的に申し上げますれば、国債借りかえにつきましては、国債整理基金特別会計法によりまして、いわば国債管理の一環といたしまして大蔵大臣政府にいわば授権をされている事柄かと存じます。ただこの問題につきましては、若干経緯がございまして、先生承知のように、五十年度補正予算の際に初めていまのような特例公債を出すことになったわけでございますが、その時点で当委員会におきましてもいろいろ熱心な御論議があったわけでございます。その御論議は、あくまでこの特例公債といいますのは臨時的なそして特例的な公債である。そうしてこれはまた一刻も早くやはりこの特例公債依存から脱却をすべきものである。であるとするならば、これは借りかえをしない、あくまで償還期限が来たら全部満額を償還すべきものではないかという、非常な財政再建という立場からの熱心な御議論がございました。そこでそういうような論議の経過を踏まえまして翌五十一年度の当初予算の際から私どもは、これは実は財政制度審議会の御意見もちょうだいをいたしまして、なるほどそれ自体それほど大きな意味があるものとも思えないけれども、それが政府財政再建への決意、一刻も早く特例公債から脱却をすべしという政府の決意を示すものとしてはかなり意味があるものであろうというような御意見もございまして、あえて五十一年度から法律上にも借りかえはいたさないということを明記することにしたわけでございます。  もともとただいまるる申しましたような趣旨あるいは経緯から出ましたものでございますけれども、私どもといたしましては、やはり特例公債から一日も早く脱却をする、そのためにはやはり可能な限り借りかえをいたさずに、償還期限が来ました場合には全部満額現金で償還をするというような基本的な考え方をいまとっているわけでございます。そこで、こういうことで法律で国会に対しましてもお約束をしておるわけでございますから、これは何としてでも実現をしていかなければならない、そういう課題であろうかと存じております。
  12. 竹本孫一

    竹本委員 特例公債については毎年法案を出して国会の、審議に待つ、そしていまお話しのように第五条との関係で借りかえはしない、満額を返すというたてまえになっているのですけれども、私、後でちょっと詳しく申し上げますが、赤字公債借りかえをしないということは一応わかる気もしますけれども、しかし果たしてそうであろうかというところにぼくはちょっと疑問を持っているのです。  その疑問の点は後で申し上げるが、その前に、一体今日、ことしのものを入れていままで赤字公債は幾らあるかということと、それからたてまえとして、試算立場で大体五十九年度でなくなるというんですか、そのときには赤字公債は全体としてどのくらいになるかという見通しをちょっと聞きたい。
  13. 吉野良彦

    吉野政府委員 特例公債の残高でございますが、昭和五十三年度末の見込みで申しますと十五兆二千億円、それから、国会に御提出申し上げております財政収支試算の本表でございますが、財政収支試算によりますれば、六十年度末の公債残高、その中での特例債の残高は四十三兆二千億円というふうに試算されているわけでございます。
  14. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、これは十年という期限があるので、初めの方は出し方が少なかったから大した問題ではないけれども、だんだん後になると五兆円だ七兆円だというように払わなければならなくなりますね、十年目が来る。そこで、赤字公債借りかえは許さないとかやらないとかいうことになっているというたてまえの根本についてちょっと伺いたいのです。  法律上の説明とかあるいは特例公債法律を出すとかいう問題は抜きにして、今度は実質的な資金繰りの面から根本的に考えてみると、たとえば、一般会計が全部プラスマイナスとんとんにいって予算ができた。しかし一般会計に余剰はない。赤字公債で五兆円払わなければならなくなったとか、二兆円でもいいですが、——まあ二兆円にしますか、二兆円払わなければならない。期限は来た。しかし一般会計の方からはそれがぼっと払えるだけの余裕はない、プラスマイナスとんとんだとしますね。それから国債整理基金の方にも別に、いまでも二兆円くらいでしょう、高は。ですから、そのうちから返していって、入ってくるものもあるけれども、仮にX年度において大したものはない。自然増収はもちろん、一般会計の中で計算してとんとんならとんとんの中に入って解消しているわけですね。要するにこちらがプラス・マイナス・ゼロになっておる。そこへ二兆円なら二兆円の赤字公債の期限が来たので、これを払わなければならぬ。しかし赤字公債借りかえは許さない、こうなっていますね。そのときにはどういう予算の取り組みをやるかということはどうですか。
  15. 吉野良彦

    吉野政府委員 財政収支試算でもお示しをしてございますように、この試算自体も、特例公債につきましては借りかえをしない、そういう意味で、六十年度までの試算でございますが、六十年度までの国債費の中にはいわゆる特例公債償還費も含まれているわけでございますが、それらの借りかえをいたさない特例公債償還費も含めまして、実は財政収支試算でお示ししておりますように、五十九年度までに特例公債から脱却をするという目標を立てているわけでございます。  そこで恐らくお尋ねは、財政収支試算では示されていないけれども、六十一年度以降、さらに六十年度までの特例公債償還が本格的に始まってくるではないか、そのときに、償還財源として借りかえをするのと、それから借りかえをしないで別途償還費を一般会計から繰り入れるのと、果たしてどこが違うのかというようなお尋ねかと存じますけれども、私どもといたしましては六十一年度以降、もちろん経済の姿その他が不透明でございますので確たることは申し上げられないわけでございますけれども、少なくとも五十九年度特例公債から脱却をいたしました後には、いずれにいたしましても再び特例公債に依存するような財政にはならないように、そこに目標を置いて財政運営をしていかなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。
  16. 竹本孫一

    竹本委員 必ずしも六十一年度以後の問題でなくて、あるいはその前でも私はいいと思うのですよ。私がいま聞いているポイントは、一般会計がプラス・マイナス・ゼロである。赤字公債特例公債償還が二兆円なら二兆円やってきたという場合には、整理基金の方からも出せない。整理基金の方へたくさんだまるくらいなら心配ないですから、出せない。一般会計はやっとこでとんとんだというような場合には、結局もう一遍今度は一般会計が改めて赤字公債を出す以外には方法がないではないか。そうすると、借りかえはしないというたてまえだけれども、結局資金繰りの中身をよく見れば実質的に、一般会計はプラス・マイナス・ゼロであるから、そのところへもう一遍一般会計から繰り入れるにしても、その一般会計の財源を赤字公債で二兆円集めてこちらへ払っていくというようなことになるのではないか、それ以外に方法はないではないか。そうなれば、それはそのたびに国会の承認を得なければならぬとかいうパブリックコントロールの問題は別として実質的には、日本財政全体を本当の意味で健全化するということでない限り、結果においては下手をしておれば——国民赤字特例公債については借りかえはないんだというのである意味においては安心しておるわけでしょう。政府がこれをやるんだと言うからそうかなと思っているわけだ。しかしよく考えてみると先ほど来私が申し上げているように、財政の健全化というのがなくて逆に予算無法状態だというようなことが続くならば、一般会計がプラス・マイナス・ゼロになって二兆円の支払いをしなければならぬときには、一般会計の方でもう一遍改めて二兆円の特例公債を出してそれを結果においては払うということになる。そうなれば、実質的に見れば借りかえと同じことになるではないか。そういう危機的なあるいは非常に危険な要素も全然ないような説明はミスリーディングであると思うがどうか、こういうことを聞いているんですね。
  17. 吉野良彦

    吉野政府委員 確かに先生指摘のように、特例公債につきまして借りかえをしないためにその分につきまして、そのほかの部分でちょうど予算の歳入歳出がとんとんになりまして、借りかえをしない部分だけまさしく財源不足になりまして、そのために特例公債を再び出すというようなことになりますれば、そういう仮定の議論といたしましては先生指摘のように、実質的には借りかえをするのと何ら異ならないではないかというような結果になるわけでございます。  ただ私どもといたしましては、繰り返しになりまして大変恐縮でございますが、そういうような仮定で描かれますような状態にならないような財政運営をいたしますためにも一日も早く、つまり五十九年度までには特例公債から脱却をして、現金償還をするための財政的な余力をつくっていかなければならない、そういうふうに考えているわけでございます。
  18. 竹本孫一

    竹本委員 大体ポイントははっきりしたようですけれども、仮定の議論と言われればこれは仮定ですよ。しかし、心配をしないでいいかと言われると、心配をしなければならない要素と危険が十分にある。そこを私はいま言っているわけでして、そこで、後でいろいろ申し上げますけれども、いま言う予算無法状態を早急に切りかえて方向転換をやっておかないと最後には、いま言ったような補完のためには一般会計そのものが赤字公債を出さなければならないはめに陥る危険が絶対ないとはしないということをまず認識して、それに対する十分な対応が政治的に必要である。  それから法律論から言えば、借りかえはしない、そういう法律ができているのだから、本当に借りかえはしないということでもう大きな安全保障ができたように思うけれども、この法律のたてまえは要するに、基本的なたてまえではあるけれども経済的というか実質的に見れば必ずしも絶対安心してよろしいという安全保障ではない。まあ空文であるとは申しませんけれども、この法律の表面価格どおりには受け取れない要素があるのだ。借りかえは許さないというとわれわれは非常に安心感が持てるように思うのだけれども、その辺の法律解釈の限界が一つあるのだという点について次官、いかがですか。
  19. 林義郎

    ○林(義)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、大変財政状態がむずかしいというのは、当面いろいろな国債発行することができるかどうかとかという問題ではなくて、まさにいま竹本先生指摘のように、いまこういうふうなことになっておったならば、少なくとも六十年以降におきまして大変むずかしい状態になるということを含めて、その面をいまから考えてやっておかなければならないだろうということを私は先ほどの決意の中でも考えながら申し上げたところでございます。  非常にむずかしい問題でございますし、法律論と実体論ということで先生から御指摘がありました。私もこの議論をあえて反対しようと思いませんが、そういったことにならないように、先生がいま御心配になりましたようなことにならないように財政当局としてはひとつ最大の努力をこれからも傾けていかなければならない、いろいろな手段を講じてそういったことにならないように努力する決意であることを御答弁として申し上げます。
  20. 竹本孫一

    竹本委員 それから三九・六%の公債依存度というものの危機感については、今度は大蔵省が盛んに宣伝されておるとおりで結構だが、日本財政史を振り返ってみて国債依存率が、戦争のときは六〇%までいったことがありますから別として、平時においては四〇%になったことはまずない、こう思うのですね。高橋財政のときでも、昭和八年ですか、最初に四〇%予算で出ていっても実際は三十何%におさめたということで、日本の歴史を見ても四〇%という例はまずないと思うのだが、そういう点の危機感というものがまだないじゃないか。それでどこまででも——初めは二〇%台%、次には三〇%を一つの歯どめにしようとした。今度は四〇を歯どめにしようという意味で三九・六にやっとこさ踏みとどまっておるが、下手をするとまた伸びるかもしれぬ。一体どこまで行くのかというのがよくわからない。四〇%というものは世界の財政状態を見ても日本の過去の財政史を振り返ってみてもまず例がないということについて、そのことをはっきり認識していわゆる決意を新たにしなければならぬと思うのだけれども、例がありますかどうですか、この点を聞きたいのです。
  21. 吉野良彦

    吉野政府委員 御指摘のとおり、公債依存度がわが国の場合で四〇%を超えましたのは、先生もおっしゃいましたように昭和八年に、当初予算におきましてはちょうど四〇%ということで予算が組まれてございますが、決算の結果は三三・四%ということで四割を切るということになっております。もう一つ、これは終戦当時の異常な状況でございますから平時とは言えないわけでございますが、昭和二十年度で、当初予算では三四%の依存度でありましたものが、決算の結果は四二%という実績があるわけでございます。実績といたしましてはわが国の場合、この二つがあるだけでございます。  そういう意味におきまして、私どもも四割になんなんとする公債依存度につきまして、容易ならぬ事態ということで深刻な受けとめ方をしているわけでございます。
  22. 竹本孫一

    竹本委員 これは政府としてそういうことを言うのはなかなかむずかしい点があるが、われわれから言えば、そういう意味で、やはりいまは予算無法状態であるとはっきり申し上げていいのではないかと思うのです、あえて御答弁を求めませんけれども。そういう意味で、後で申し上げます三K赤字の問題その他についても、勇断をふるわなければならぬ時期に来ているということを言っているわけです。  その問題に入る前にもう一つ、大体十兆円、正確に言えば九兆一千億ですか、収支試算で見るとそれだけの増税をやってもなおかつ、六十年度には百三十九兆円、約百四十兆円に近い公債を出さなければならぬということになっておる。ところが増税というのはなかなか問題が多い、反対も強いということでぐずぐずしておるとと言うと語弊があるかもしれませんが、なかなかそういうふうにいかない場合はどうなるかということを心配をする。収支試算の場合にもいろいろのケースを考えて、最悪の場合には六十年度に百八十五兆円ぐらいになるだろうと言っておりますね。  しかし、これはまた財政の危機を考える場合に、もっと正確に言うと地方財政における赤字というものもあわせて考えなければならぬと思うのです。ことしの年度末には六十兆円になるのだということで大変な問題だと思うのだけれども、一般会計その他を入れると地方だって四十兆円の公債があるでしょう。そうしますと、日本公債はすでに合わせて百兆円の公債ですよ。それが、昭和六十年度に引き締めていった、あるいは相当の努力と成果を上げたとした場合においても、一般会計でいま申しました中央が百四十兆円になるのだというようになれば、そのとき恐らく、きょうは自治省は特に呼ばなかったのですけれども、大ざっぱに言って両方合わせれば二百兆円ぐらいになりはしないか。  それから、最もルーズというかイージーゴーイングにやった場合は、中央で百八十五兆円も赤字が出る。約二百兆円に近くなるような時期が来れば、地方もイージーゴーイングをそのまま受けていきますから、いまの四十兆円がふえて百兆円くらいになる。そうすると今度は三百兆円になる。四〇%という公債依存度というものも歴史にないほどの重大な危機である、それからぼんやりしておれば公債が中央、地方合わせれば二百兆円あるいは三百兆円になるのだ、いますでに百兆円だというふうにぼくは思うし、その点を心配しているのだけれども、そういう点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  23. 吉野良彦

    吉野政府委員 先生指摘のとおり、五十四年度末におきまして、四条公債特例公債合わせまして国の場合は五十八兆七千億の残高、それから地方の場合でございますが、これは公営企業債というような特別の事業債的なものは別にいたしまして、国の一般会計に準じましていわゆる普通会計でとりますと、五十四年度末でこれが二十五兆四千億というようなことになってございます。そこで、先ほどの五十八兆七千億と二十五兆四千億を足しますと、合わせて八十兆を超えるというような残高になっているわけでございます。同様に、国及び地方につきまして財政収支試算で描かれておりますところによりますと、六十年度には国の一般会計では百三十九兆六千億、それから地方財政収支試算におきましては、六十年度の残高が三十八兆九千億という試算になっているわけでございます。  この地方財政収支試算でございますが、これは先生承知のように現在、地方財政対策の一環といたしましていわゆる財源対策債、建設地方債を目いっぱい出すという異例の措置をいたしているわけでございますが、この地方財政収支試算におきましては、その財源対策債は五十五年度以降そういうものは一応ないものとして試算がされてございますから、もしも仮に五十五年度以降も地方財政の運営上五十四年度と同様に、いわゆる財源対策債ということで建設地方債をさらに増額をしていくということに相なりますれば、六十年度末の地方債の残高も、この試算に示されております三十八兆九千億よりももちろんふえてまいるわけでございます。そういう意味におきまして六十年度末には、国、地方合わせまして二百兆円に近い公債残高になり得る可能性は十分あるわけでございます。  そういたしますと、この財政収支試算によりましても、GNPに対しますと、そのときの比率におきましても容易ならぬ大きな比率になるわけでございまして、御指摘を待つまでもなく、そういう巨額の公債残高を抱える財政になるという意味におきまして、私ども非常に深刻な受けとめ方をしているわけでございます。その意味におきましても私どもは、この財政収支試算を手がかりにいたしまして、何としてでも五十九年度には特例公債から脱却するような財政運営をこれから毎年度積み重ねていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  24. 竹本孫一

    竹本委員 私が地方四十兆円と言ったのは、いまの一般会計の二十五兆円とその他の十五兆円を足して四十兆円、こう言ったわけで、そういう考え方をとりますのは一つは、次に申し上げます民間資金需要とのクラウディングアウトの問題と関連して申し上げているのですが、財政の危機という面だけ考えても、むしろ両方足して考える方がべターではないかと考える場合に、仮に二百兆円になり三百兆円になりますと、対GNP比率というものが五〇%から七〇%くらいまでなるわけです。そういうような意味で、その辺もいわゆる無法状態を早く切り抜ける覚悟をしなければならぬかということを申し上げたわけであります。  次に、民間資金とのクラウディングアウトの問題がこれから深刻になってくるのではないかと思いますから、この点もちょっと聞いておきたい。  その理由は、いままでは民間が冷え切っておるから、そういう意味で資金の需要がなかった。もう一つは、いままでは民間の企業収益というものが悪いものですから、下手にやってみても引きに合わないというような状態であった。それからもう一つは、いままでは先ほどお話しの設備投資、高度成長というので、下村君じゃないが、投資が投資を呼ぶというような調子で投資をやりました。その近代的合理化の投資というようなものがありますからそれで間に合ってきたわけですね。しかし、昭和三十五年以来高度成長が始まったわけだけれども、それからずっと長い経過がありますから、今日では設備の老朽化ということが相当大きく進んでおる。これからの国際経済競争というような問題も、余り輸出をし過ぎるとしかられるけれども、とにかく大きな問題でございますから、設備の老朽化というものを一体どういうふうに見ておられるか。したがってもう一つ言うならば、設備更新のための設備投資というものをどのぐらいに認めて、クラウディングアウトの心配はないと言うならばないと言われるのであるか。民間の総資本ストックを大体百六十兆円としますと、わずかに一%動いたとしても一兆六千億の設備投資が行われるということになる。その資金需要というものをどう賄っていくかという意味において、まず、民間の設備投資が行われ始めてきた。今度はこれからは、三・五%とか三・一%伸びようとかいういろいろな予測が出ておりますけれども、私はだんだんに伸びると思うのです。伸びるようになったについては、政府のこの二、三年来のいろいろの努力というものも評価しなければならぬと思いますが、いずれにしても設備投資がふえてくる、またふえてこざるを得ないのだ。  その第一の理由は、設備の老朽化ということをもう考えなければならない羽目になってきておる。償却の方から考えてみても、六〇%以上の償却率を持っているものが全体の四割ぐらいあるということでございますから、設備投資はだんだんに始まってくるであろう。もう一つは、需給ギャップも一時の大体半分になったと見ていいではないかと私は思っているけれども、その需給ギャップもだんだんに縮まってきた。大きいのがいいわけじゃありませんから、これは縮まった方がいいと思いますけれども、それにしてもそれの限界がある。それからもう一つは、先ほど申しました企業収益というものがまあ大体、全部ではない平均して、五十四年度になれば最高の時期をむしろ回復してレベルは少し上に行ったということになるだろうと思います。そういうことから言うと、企業収益が上がり始めると経営者のマインドもより積極的になってくる。この三つの理由で、設備投資というものが相当行われてくるようになればクラウディングアウトの心配が出てくる、こう思いますけれども、先ほど来数字を挙げましたように、どんどん公債を出していくということとの調整はうまくいくと見ておられるかどうかということであります。
  25. 林義郎

    ○林(義)政府委員 クラウディングアウトの問題に関連しまして、民間の設備投資に基づくところの資金需要が相当出てくるのではないかという御指摘でございました。大まかに申しまして、先生指摘経済状況として、大体私もそんなような感じを持っているのですが、一、二コメントをさせていただきますと、設備投資の問題でございますが、いまお話しになりました中で、相当設備投資をスクラップする時期に来ているのではないか、こういうふうなお話であります。このスクラップをする時期かどうかということはどちらかと申しますと、企業家がまだ相当収益が上がるからこれからどういうふうなことをやっていこうか、こういうふうな形のものでございまして、この際大いにスクラップダウンをして新しいものをやろうというようなところまでにはまだ行っていないのだろうと私は思うのです。最近の設備投資の状況を見ますと、私の得ている情報ではむしろ、省力化であるとか減量経営のための投資というものが非常にふえている、こういうふうなことでございまして、新しいイノベーションを目指してやる投資であるとかどうというようなものについてはまだまだそこまで行っておらない、かつての高度成長の時代とはずいぶん様相が変わっておるというふうに私は見ております。  それから、需給ギャップもだんだん狭まってきたことも事実でございますが、造船であるとかその他のものにつきましては、大変な不況業種である、こういったこともございますし、まさに日本の大きな設備投資を支えるところの機械工業、特にその中での造船がそういうふうな状態でございますし、自動車などにつきましても、なかなか輸出の伸びが思うようじゃない、こういう形で、これもまたがってのような大幅な設備投資は期待できない、こういうふうな状況だと思うのです。収益動向も、確かによくなっておりましたけれども、まだまだ石油ショック前のような状況には至っていない。相当回復してきていることは事実でございますが、まだまだ神武景気だとかなんとか言われるような状況までには行っていないということは先生も御理解いただけると思うのです。  そういうふうな状況を反映いたしまして、全体の設備投資は相当回復してきておりますが、私たちの方で、その設備投資はあっても大体ことしの資金需要としては、十一兆円という形でいろいろお願いをしておりますその数字というものは賄えるだろう、こういうふうにいま見ておるわけでございます。これは、これから情勢がどういうふうに展開していくか、経済も相当上向きになってきておりますから予断を許さない状況でございますが、いろいろな工夫をこらして国債の消化にも努めてまいりたいし、また、その消化が逆に民間の資金需要を圧迫するということのないような配慮もこれから十分にやっていかなければならない、こういうふうに考えております。  数字的な話につきまして、銀行局長の方から御答弁をさせます。
  26. 徳田博美

    ○徳田政府委員 今後の設備投資、需給ギャップの問題、あるいは企業収益の問題につきましては、いま政務次官から申し上げたとおりでございます。  若干補足して申し上げれば、設備資金調達につきまして、その調達の内訳がかなり変わってきているわけでございまして、興銀の調べで申しますと、たとえば五十年度のころは、設備資金の調達を一〇〇といたしますと、借入金に三八%依存していたわけでございますが、五十四年度の計画では、一〇〇のうち五・八%が借入金依存というような形になっておりますので、その点でも金融機関に対する資金需要というのは必ずしも高まっておらないわけでございます。  来年度の資金需給を見通すということにつきましては、金融情勢にはいろいろ流動的な面が多いわけでございますので非常に困難でございますけれども、仮に現在のような金融情勢が今後も継続するというような仮定のもとに来年度の資金需給を試算してみますと、金融部門における資金の増加額が三十六兆円ないし三十七兆円程度と見込まれるわけでございます。これは五十三年度の実績の見込みが三十二兆三千億円でございますから、かなり上回るわけでございます。これに対しまして資金の使途でございますが、民間向けの貸し出しが、五十三年度は二十兆五千億円程度と予想されるわけでございますが、五十四年度は二十二兆円程度。一方、金融部門の公共債の実質負担が、五十三年度は十一兆八千億円でございますが、五十四年度は十四兆円程度、このように考えられているわけでございまして、五十四年度におきましては、この程度の公共債の引き受けはクラウディングアウトの懸念なしに一応消化できるのではないか、このように考えているわけでございます。ただ、しかしながら先生も御指摘のとおり、今後の金融情勢経済情勢によって民間の資金需要の盛り上がりということも考えられるわけでございますが、そのような場合には窓口規制その他の金融政策によってその辺の調整を行っていきたい、このように考えております。
  27. 竹本孫一

    竹本委員 とりあえずは何とかということで、五十四年度の需給バランスは大体とんとんというか見通しがつくわけですね。しかしこれは基本的に言いますと、とにかく設備投資が起こり、民間資金需要がふえるようでなければ、内需の振興もできない、経済の成長もない、アメリカからの押しかけも余りとまらない、こういうことになるわけです。しかしながらそういうふうにやれば今度は、その面は国債の増発とかち合って、そこにフリクションが起こるということもありますので、これは慎重に見守っていただくというふうに要望いたしておきます。  そこで最初の問題に返りますが、三K赤字という問題は、一時非常にやかましく言われたのだけれども、最近は鳴りを静めているようでもある。これについては先ほどちょっとお話がありましたけれども、これは財政あるいは大蔵省レベルの問題ではなくて国の政治の問題だという意味で、ポリティカルペインの問題まで私は言ったわけです。しかし、大蔵当局としてもしゃんとしてもらわぬとこれは言われるとおり、ずるずるべったりにいわゆる無法状態を拡大していかれたのでは話にならぬ。そういう意味も含めて少し伺います。  食管の問題も、この間ここで過剰米処理四百八十万トンについても、三百三十四億円の問題は一応法案が通ったばかりですが、そういうところで、一般の調整勘定への繰り入れというのが、あれこれ入れて六千三百四十億円ぐらいある。そのほかに、国内米のいまの管理というか、過剰米処理の問題も入れるというふうにしますと、大体七千億に近い食管会計の金額というものは、必ずしも前向きというか、プラス的な経費支出ではない。したがってこれに対しては、政治家がやはりポリティカルペインを悩まなければならぬ、あるいは勇気を出さなければならぬ問題ではないか。  それから国鉄の場合も、これは御承知のように、田中さんではないが、もうからないローカル線も福祉のために必要だということもありますし、そういう意味でいろいろと初めから引き合わない路線もある。あるいはまた非常に高齢化というか年とった人が多い。半分おるそうですけれども、そういう人的構成の面もありまして、国鉄としてはお気の毒な面といいますか、悩みとして考えられる要素も非常に多い。しかしそれはそれとして、とにかく一般純損失そのものだけでも五十四年度八千百五十二億円というようなものがある。そのほかに、・今度は助成金的なものもあるが、損益勘定の助成というものが二千九百八十九億円ある。それから、問題のたな上げをしたあのたな上げの利子その他は、正確に言えば毎年千七百九億円国が負担している。それは全部国が負担したからけしからぬとかという意味ではありませんけれども、合計して約一兆四千億近くのものが必ずしも生産性の高い要素ではないということですね。  それから健保その他の問題もまだありますが、これも一般会計が負担するのは福祉国家としては当然な要素もありますから、むだ金だというふうに批判することはできないし、四十八年のたな上げ分もだんだんふえて四千五百億円からになっておる。それから単年度赤字の累積も千百七十八億円あるというような形で、これも合わせれば約一兆円くらいある。そうすると、一兆円だ、一兆四千億だ、あるいは七千億円だというようなことを足してみると、とにかく相当巨額の問題があって、一時にこれを全部切開手術をするということは政治的にも無理がある。それからまた内容としても、これを単なる赤字補てんだというふうに決めつけることができない要素もあるということもよくわかります。  しかしいずれにしても、一時ほどの問題意識がないというところに問題があるというふうにぼくは言うのです。すなわち、三K赤字の克服ということは、補助金の整理、行政機構の改革などとあわせて、やはり財政再建一つ前提条件としては大きな条件になっているのではないか、その点に対する取り組みが不徹底というか不十分ではないかという点を私は心配をするのだけれども、いかがですか。
  28. 林義郎

    ○林(義)政府委員 いま竹本先生から数字を挙げられていろいろと御指摘がございました。最後のところの数字なんというのはちょっとと思うところがありますが、そこのことはおきまして、基本的な問題の御指摘でございますからお答え申し上げますけれども、非常に抽象的な話をすれば、国鉄にいたしましても食管にいたしましても健保にいたしましても、収支賄うような形でやってもらえれば一番いいことは計算上は明らかなんです。ところが、そういったことがなかなかできないのが、それぞれの立場におきましていろいろと問題がある、これは竹本先生からの御指摘もあったようなことでございまして、いま一遍で国鉄を黒字にしろなどということはなかなか言うべくしてできないことでございます。  政府の方といたしましても、長いことかかりましていろいろな形で国鉄の再建計画を策定し、特に最近では、五十二年末に閣議了解されました国鉄の再建基本方針に基づきまして、経営合理化の徹底、利用者負担の適正化及び所要の助成を図る、この三本柱でその再建を進めておるところでございます。さらに、五十四年度中には経営改善のための抜本的な見直しを行うということにしておりますし、そういった形で国鉄の、いま御指摘のような三K赤字と言われるところの大きな問題の改善に役立ててまいりたい、こういうふうに考えております。  医療保険制度の問題につきましては御承知のとおり、現在健康保険法の改正案を国会に御提案をして御審議をいただいているところでございますけれども、この改正案によりまして、給付の平等、負担の公平、高額な家計負担解消等の実現を図るとともに、患者負担と保険料負担あり方を合理的に見直すことによりまして、政府管掌健康保険の収支均衡を図ることをねらいとしておるところでございます。  食管制度につきましても、この前当委員会で過剰米の処理のことで御審議をいただいたところでございますが、全体と申しますならば、やはり今後も米の政府売り渡し価格の改定を図って、生産者米価、消費者米価の逆ざやの縮小を図るほか、事務運営の改善等に努めまして、財政負担節減をこの面から図っていくということを決めたところでございます。食管制度の問題につきましては、今後ともいろいろな点からやはり議論をしてまいらなければならない、こういうふうに考えております。  一般に申しまして、いわゆる三K赤字というのは前から問題である、こう言われておりますし、財政がこういうふうになってきておる折でありますから、先生指摘のように、何か三K赤字の問題はすっ飛んでしまったなどということになりましたのではこれは非常にいかないので、むしろこうしたときにこそやはりこの三K赤字の問題に真剣にお互いに取り組んでいかなければならない、私はこういうふうに考えております。
  29. 竹本孫一

    竹本委員 最後に、時間がなくなりましたから、この間長期国債の六・一%のやつを〇・四%ですか引き上げられた。これは三月にやったということ、そのほかのものと連動をさせないでとにかくやったということの二つの点においては評価すべきだと思っておりますが、〇・四%ということにされた場合の市場の情勢をどういうふうに判断されたのかということを伺いたい。  時間がありませんからあわせて伺いますが、国債のこれからの円滑なる消化の問題と関連をして、やはり期間の問題、レートの問題、それからもう一つは量の問題と、この三つの要素がそれぞれ非常に重要な要素として考えなければならぬと思うが、その点について、これからの国債管理政策の上でどういうふうな取り組みをなされる考え方であるかという点を伺って、終わりにいたします。
  30. 田中敬

    田中(敬)政府委員 先般〇・四%国債金利を引き上げたわけでございますが、市場実勢が〇・八、〇・九という指標を示しておりまして、私どもは市場実勢を分析するに当たりまして基本的には、長期国債を含めまして一般公共債の大量発行ということと金利の底打ち感に基づきまして、長期に向いておった金が短期資金へ志向していった、こういう意味で、基本的に長期資金の需給にアンバランスが出てきた、これが今回の乖離を起こした原因であろうと思います。総体の資金需給といたしましては、別に民間設備投資資金の需要が出てきておるわけでもございませんので、単に長期から短期へのシフトの問題と、それから余りにも大量の長期債の発行という重圧感というようなものが、長期債の値下がりを起こした原因だと思っております。そういう要因がございます上に、先般二月の初旬以降、景気よりも物価というようなことが言い始められまして、いままでは単なる金利の底打ち感というものだけであったのに対しまして、先高金利感、全面的金利改定があるのではないかというような心理的要因がそれに加わったものと思っております。  前者につきましては当然是正をいたさなくてはなりませんが、後者の先高金利感という問題につきましては、先般来日銀総裁も政府も申しておりますように、当面この金融緩和基調を持続するという方針でおりますので、先高金利感ということで加速された分だけはマイナスをして判断するのが市場実勢であろう、観念的にはそういうふうに考えたわけでございます。  それから計数的には竹本先生承知のように、公社債の実勢金利というものを算定いたします際に、現在使っております日本式の流通利回り計算方法、あるいは直利方式その他欧米方式というのがございますが、これらを全部総合勘案いたしましたところ、私どもはやはり実勢というのは〇・四、〇・五、その辺の間が実勢であろうということで判断いたしたわけでございます。  それから今後の国債管理政策でございますが、御指摘のように、まず量の問題でございますが、量の問題につきましては、先ほど来主計局でも申しておりますように、今後国債管理政策の基本というのは、何としてもその根っこにある大量発行というものを早急に圧縮して量の削減を図るということが第一であろうと思います。しかしながら、中期試算でも見られますように当分大量発行が続くということでございますれば、今後の国債管理政策としては、この発行、消化、保有、流通、償還を通じて、それが全部日本経済、金融の中にうまく溶け込んでいくということを基本として考えるといたしますれば、やはり時々の金融情勢に応じて期間の多様化を図ってまいりますとか、あるいは先般条件改定をいたしましたように、市中の実勢に応じて弾力的に機動的に速やかに条件を即応させていくというようなことを考えてまいりたいというふうに考えております。
  31. 竹本孫一

    竹本委員 終わります。
  32. 加藤六月

  33. 井上一成

    井上(一)委員 まず私は、特例債の発行状況についてお伺いをしたいと思います。現状の消化状況をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  34. 田中敬

    田中(敬)政府委員 御質問の趣旨がよくとれませんでしたが、特例債の消化状況とおっしゃったその特例債と申しますのは、国の特例債でございますか。——本年度全体で国債発行を約十一兆円予定いたしておりまして、この三月の発行をもちまして残額六千百億円というものが出納整理期間に繰り延べられております。この出納整理期間に繰り延べられました約六千百億円の国債というものは全額、これは特例公債でございます。そういう意味におきましては、六千百億円を残して残余はすべて消化した、こういうふうに申し上げていいと存じます。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 消化された中で、あるいは日銀が買いオペでどれほどの率を支えているのか、このことについてお尋ねをいたしたいと思います。
  36. 田中敬

    田中(敬)政府委員 日銀が買いオペをいたしました中に特例債がどれくらい入っているか、いま正確な数字を持っておりませんですが、昭和四十九年末の現在でとってみますと、オペ適格国債、すなわち市中金融機関に保有されまして一年を経過した国債というものは、金融調整手段、成長通貨の供給という形で日銀にオペで吸い上げられた比率が、オペ適格国債中九九%は日銀に移っております。ところが、五十年度以降大量国債発行になりますと同時に、経済成長が鈍化したということで、日銀のオペ比率と申しますのが急激な低下を見せております。  そういう意味におきまして、四十九年度末では適格国債中九九・九%が日銀にオペで吸収されたけれども、現在、昭和五十三年の十二月末現在では、オペ適格国債中日銀に持っていかれておるものというものは、昭和四十一年本格的に国債発行しました総残高に対しまして四二%でございます。ただし指標も示しておりますけれども、五十年、五十一年、五十二年、五十三年というものは、当該年度発行された国債に対しまして日銀がオペで引いた国債の額は相対的に非常に減少しておりますので、逆に市中の金融機関が保有している国債が急激に残高がふえておる、こういう現象を示しております。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 さらに私は地方債について、直接の主管ではないのですが、ひとつ大蔵省としての見解をここで問いただしておきたいと思うのです。  まず、長く私から説明をする必要がないと思うのですけれども、地方団体にあってあらゆる公共施設を整備していく中で当然、地方債という問題が地方自治体の大きな財源問題としての関心を持つようになったわけであります。とりわけ義務教育施設等で近年、その起債についてはほぼ全額政府資金で賄われるということになったわけでありますけれども、以前はそういう状況ではなかったわけであります。  まず第一点には、地方債の許可制の問題について、許可制そのものが適当なのか、あるいはもっと地方自治体にその権限を与えていくべきなのか、この点について大蔵省としての見解、そしてその見解を支える理由を示していただきたいと思うのです。
  38. 田中敬

    田中(敬)政府委員 地方債の許可に当たりまして、自治省、地方公共団体並びに大蔵省の間の許可協議の問題その他が、ここ数年来いろいろ議論されてきております。  大蔵省の基本的な立場といたしましては、大蔵省財政金融の総括責任を負う官庁である、こういう意味で、地方債であれ地方団体の借り入れ状況であれ、すべてこれを掌握する必要があるという基本的な立場を持っております。それと同時に、井上委員も御指摘になりましたように、地方債の相当部分を資金運用部資金、すなわち政府資金で引き受けております。そういう意味で、たとえ政府資金以外で地方公共団体が起債をなさるといたしましても、いわゆるその地方公共団体に政府資金を通じての債権者としての立場も持っております。資金運用部資金の管理者、債権者としての立場というような形から私どもは、各地方公共団体それぞれの財政状況を十分把握する必要がある、こういう基本的な立場で、従前来地方公共団体の起債につきまして、相当詳しい情報をいただくとか審査をさしていただいたわけでございますけれども、御承知のように、地方財政法の規定あるいはそれを受けました内蔵令の規定、そういう法律的な観点からの御検討が進みますと同時に、一昨年来大量の公共事業を発注して景気の振興を図る、その公共事業の遂行というものが、補助金の交付であれ、あるいは地方債の起債ということによって実質賄われるわけでございますので、これらの交付事務、起債事務を簡素にしてかつ効率的に速やかに行い得る、それが必要である、こういう両者の観点から、私ども自治省と協議の上、従前大蔵省が関与いたしておりました市町村の起債につきまして、義務的にと申しますか、法律的、義務的に大蔵省に御協議をいただく必要はない。従来市町村が起債をなさる場合に、大蔵省の出先機関がヒヤリング等をいたしておりましたが、これを廃止いたしまして、都道府県知事からの御通知だけをいただければ結構であるという措置、あるいは実際資金運用部の融資事務につきましても、井上先生篤と御承知と存じますが、膨大な資料をいただいておりましたけれども、こういうものをほとんど三分の一、四分の一以下に減らすという措置をとっております。  私どもは、冒頭申し上げましたような立場がございますけれども、やはり自治省、都道府県、市町村という段階的な地方団体のそういう秩序もございますし、それを乱すことなく、そういう公共団体の自主性というものは今後も十分伸ばせるような方向で検討いたしてまいりたいと思いますが、基本にはあくまで、冒頭で申し上げましたような財政当局の立場というものがございますので、必要に応じては今後自治省といろいろ協議はしてまいりますが、基本的立場は崩さないでまいりたいというふうに考えております。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 財政当局の立場ということを強調しながら、地方自治体の自主性を尊重していきたい、それと一点、説明の中に、いわゆる義務的な事務手続についてはそれを省く、これはぼくは一定の事務の簡素化という意味ではやはり進歩だと思うんです、この点については。  これまた私から申し上げる必要もないんですが、地方自治法の二百五十条に「当分の間」ということで、この許可制というものが盛り込まれたわけなんです。だから私の意見としては、当分の間ということですから、いずれ一定の期限が来れば当然これは外れるんだ、そしてあくまでも地方自治体の自主性を全面に尊重していくんだという姿勢が政府当局に見られなければいけない、こういうふうに私は思っているんです。そういう点では大蔵としては、いまその財政を預かる立場というものは強調されましたけれども、今後この許可制については、地方自治体の自主性を十分に尊重するという意向を私は持っていただきたいと思うのでございます。そういう御用意がおありなのかどうか、そういう線に沿って御努力を願えるのかどうか、ひとつ政務次官からでもお答えをいただければありがたいと思います。
  40. 林義郎

    ○林(義)政府委員 井上先生からの御質問でございますが、この問題は大変古くからある問題でございます。先生も篤と御承知のとおりでございますが、昨年大蔵省といたしましても自治省と相談をいたしまして、いろんなことをやってまいりました。当面はそういった形で運営をしてまいったならば、こういうふうに考えております。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 十分なお答えになったのかならないのかわかりませんが、ともあれ地方自治体の財源をやっぱり地方自治体が自主的に守れるように、大蔵としても協力をすべきであるということを強く要望しておきましょう。  続いて、縁故債について少し触れておきたいわけなんです。これはさっき私があえて近年政府事業、とりわけ義務教育施設ということを申し上げたわけですが、それについては全額政府資金が充当されることになりました。これは進歩でございます、しかし、従前はそうじゃなかったわけですね。だから、そういう過年度の資金運用については、私の手元にある数字では、政府資金というものは四二・三%。これは平均でございます。大都市圏における人口急増都市における義務教育施設の地方債の数字でございます。政府資金の占める比率というのが四二・三、そして縁故債が四八・九、その他が八・八。縁故債に頼るところが非常に多いわけなんです。不況の中での地方自治体の財源というものは、過年度分における縁故債のこの利息、これも決して低利じゃございませんから、一定の政府資金から比べれば高利だということです。そういうことがより一層財政を圧迫しているというのが現状です。  そこで、地方自治体の財源あるいは自主的財源を十分に確保する一つ方向づけというか姿勢として、私自身はこの縁故地方債を当然政府資金に借りかえすべきじゃないだろうか、こういうふうに思っているわけです。政府資金の引受枠を拡大することによって、順次ではあるけれども年次を追って、地方自治体の財源を少しでも財政負担を軽くすることにつながっていくのではないだろうか、こういうことを考えるわけです。  じゃ具体的に、もし借りかえを政府資金でやるとするならば、基本的にはいままでの引受金融機関がありますから、そことの協議をやっていかなければいけない。現実の問題としては、もうすでにその縁故債の大半が証券化されておるというか、事実上金融機関との協議はやりにくいというのが一つあるんじゃないだろうかということです。二つ目には、縁故債の政府資金への借りかえを地方自治体が強く求めれば、今後地方自治体が縁故債を発行する場合に、政府関係当局の協力が得られないのではないだろうかという不安があります。そういうことも考えていかなければいけない。あるいはまた、一たん繰り上げ償還をする、そうして政府資金をまた新たに導入していく。その繰り上げ償還をする場合には、どうしても自主財源が必要になります。そういう自主財源、資金確保が非常に困難だと思うのです。こういうことも現実の問題としては考えていかなければいけない。さっき申されました財政当局の立場という大蔵の立場からいけば、地方財政も健全に保たなければいけない、こういうことも考えられるわけなんです。地方財政を健全に保っていくためにも縁故債を政府資金に切りかえていかなければいけない、こういうことなんです。  こういうことについて大蔵当局の見解を、私いま具体的な問題で三点申し上げております。だから、いやこの部分は自治省なんだとかあるいはこの部分は大蔵の直接の所管でないんだとかそういうことじゃなく、国家財政あるいは日本経済日本財政を全部掌握していくべき機関であるというもっと高度な立場に立っていらっしゃるという基本的な御認識の中で、この問題についてどうお考えでいらっしゃるのか、重ねてお聞きをしたいと思います。
  42. 田中敬

    田中(敬)政府委員 現在の、地方財政対策という言葉を使うと大変変でございますけれども、地方におきましても非常に財源不足が出てきた、そのために財源対策債を発行する、あるいはまた、交付税特別会計に資金運用部資金を貸し付けて交付税の確保を図るというような措置がとられておる仕組みの中からいたしますと、地方財政の健全性、地方財政がどういうふうに動くかということは、国の財政自身とも大変密接につながっておる問題でございます。そういう意味におきまして、地方財政の帰趨は国の財政当局にとっても非常に重要な関心事でございまして、地方の財政問題であるからといって放置できない、むしろ国自身が内蔵していかなくてはならない問題、これは当分続くと思います。そういう意味におきまして、地方財政に対しましては大蔵省は、この財源不足の中でここ数年来いろいろ対策を講じてまいったわけでございます。  委員がいま直接御指摘になりました縁故債を政府資金で借りかえるという問題でございますが、これは率直に申し上げて非常にむずかしい問題であろうというふうに私は考えております。政府資金と申しますのは、郵便貯金あるいは簡保資金等そういうものを原資といたしておりますが、その原資の伸びが非常に悪い。一方で別途、財政投融資に対する需要が相当大きい。こういう中におきまして、御指摘借りかえをすべき財源である政府資金、運用部資金につきましてはここ数年来、一般的な資金運用部資金の財政投融資計画に乗せます比率以上に地方財政に重点を置いてこれを考えております。たとえば本年度財政投融資計画が一三・一%の伸びでございましたが、それに対しまして地方債を政府資金で引き受ける比率は対前年度一九%増ということにいたしております。御指摘のように、かつては地方債の総発行額の六〇%程度政府資金で引き受けた時代がございますが、昭和四十九年、五十年のあのオイルショック以降財源不足状態が参りまして、これがいっとき二〇%台までに低下いたしてまいりました。これを政府資金比率を上げるということでここ数年来努力をいたしてまいりまして、やっといま三九%まで引き上げてきたわけでございます。  そういう努力を地方債の引き受けについていたしますとともに、別途、資金運用部資金、政府資金の財源を枯渇させている大きな原因が交付税特別会計に対します貸し付けでございます。五十四年度予算上二兆二千八百億円、五十三年が一兆五千五百でございますから、約四七%も対前年比増という形で交付税特会に金を割愛するというような状況でございますので、縁故債を政府資金に借りかえるというのは、原資的にもなかなか問題がございますし、また、既発行の縁故債を借りかえるという問題は考えてみますれば、先生の御指摘は、それによって政府資金の金利が相対的に安いから地方財政に寄与するところが大きいというところからだと存じますけれども、そう見ましても財源事情がむずかしい。そういうことからいいますれば、この借りかえ問題というものは、地方公共団体が縁故で引き受けております地方金融機関にまず話し合ってみることが最初で、そこでまた条件のネゴをしていただくということが基本で、ストレートに政府資金への借りかえというものは現状では大変むずかしい問題というふうに思っております。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 私自身も問題点を三点申し上げたわけで、すぐに縁故債を政府資金で吸収していく、借りかえていくということは現実の問題としてむずかしい点があろう。さすればどうすれば地方自治体の財政負担が少しでも軽くなるであろうか。もっと端的なことを言えば、それまでの間とかそれを少しでも軽くするための一つの方策として、一地方公共団体がすでに発行している縁故債、既発縁故債に対する利率の引き下げをそれぞれの金融機関に大蔵当局が、何らかの形での指導というか要望というかそういうようなことでも示していくことは、地方自治体の財政健全化の一助になるのではないか、そういうこともまたいま当面必要な手だてではないだろうか。これはしますとかしませんとかそういうことじゃなく、私はこうあってほしいという希望も含めて質問をしているわけなんです。  だから、ここで必ずそうしましょうという約束までは取りつけられないかもわからないけれども、大蔵としてはそれくらいのことは当然金融機関に要望、あるいは指導という枠までいかなければ何らかの意思を表明してもいいんじゃないだろうか。本当に地方自治体の自主的財源を少しでも効率的に運用していこうということなら、これは当然だと思うのです。
  44. 田中敬

    田中(敬)政府委員 高利のものを低利に借りかえて負担を軽くするという御趣旨でございますが、当然そういう思考があってしかるべきだろうと思います。しかしながら債券というものは、あらかじめ十年、十五年の期限を定めましたら、それに基づいて事業計画あるいは償還計画が立てられる、そういう長期のあらかじめ前提されたものでございますので、これを途中で変更するということは、現在の局面のように、かつて三年前に八分あるいは九分で地方債を起こした、いま起こせば六分何厘で借りられる、だから安い方がいい、これは当然の発想だと存じますけれども、しからば今度は金融機関、貸している方からすれば、六分で貸したものが十五年底づけになっている、市中の実勢金利は八分、九分になっているということもございますので、金利の下降局面あるいは上昇局面、いずれもございますので、やはり債券というのは、そういう一定の予約した金利で十年、十五年の債権債務関係が続くということを両者が認識して初めて成り立つということからすれば、いたずらに途中での条件変更、借りかえというのは無理かと存じます。  しかしながら、最近の公共団体の財政事情にかんがみまして、八分、九分で借りたものを低利に借りかえたいという御要望は各方面から承っております。これにつきましては、単に条件を安い金利に変えるためということでは承服し得ないけれども、たとえば企業債でございましたら、償却ができたあるいはいろいろ埋め立て等につきましては売却が進んだ、資金的にもうすでに十分返済資金があるという種類の債券につきましてはこれを認めようということで、地方公共団体が各地方の金融機関と相談されてそういうことをなさっておることもございますし、現に運用部が政府資金で引き受けております地方債につきましても、そういう要望の団体につきましては、資金的に十分その団体に余裕があるということであれば、繰り上げ償還という形でそれは認めさせていただいております。そういう意味で、すでに返済資金が十分あり得る、それをつなぐために別途よそから借りてこなくても自己資金として返済資金があり得るところにつきましては、繰り上げ償還という形で高利の負担を免れていただこうということは表に出して表明もいたしております。
  45. 林義郎

    ○林(義)政府委員 井上先生から御指摘のありましたようないろいろな問題、私、考えますのに、やはり地方財政も大変な赤字の状況であります。いろいろな点でやはりこれの解決を図っていかなければならないし、先生もその方の御専門でもございますから、いろいろと御意見お話を聞いておりました。大蔵当局といたしましても、事務当局から御説明しましたように、交付税特会の繰り入れであるとかいろいろな形で努力をして何とかこれをやっていかなければならない、こういった努力は私は認めていただけるだろうと思うのです。ただ、それではいろいろなことがありますから、さらに自治省の方とも話をいたしまして、抜本的に対策を立てていくことがやはり一番必要だろう、こう思います。  そういった中で、いまの借りかえの話でございますけれども、一方、いま理財局長から御答弁しましたような問題もありますし、そういった問題も踏まえた上で、ひとつこれからさらに検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 午前中の時間があと余りないわけであります。局長、あなたのいまの回答の中でいわゆる繰り上げ償還云々、さっき私が指摘をしているのですよ。繰り上げ償還をするためには、やはりそれの資金、資金の余裕がいまの地方自治体にあると思うのですが、あなた。あなた方が出している起債、私は後で起債の償還年月日について具体的な事例をもって質問しますよ、そんな認識に立っているから。経済事情の変化によってこの起債の取り扱いだって、義務教育施設だって全額政府資金で賄おうという姿勢をやはり打ち出してきたんじゃありませんか。それ以前はそうじゃないんでしょう。だから全くもって冷たい。ただ単に金があって返したら、借りかえしたら今度は安い金利に、あるいは従前は一定の約束があるからその約束で、だから当然金融機関とも話し合いをしなければいかぬだろう。私はもう最初に言っているわけなんだ。本当はそういうことが望ましいけれども、それがすぐにできなかったら、せめてそれぞれの金融機関に対して、いわゆる利率の引き下げ等がより望ましいんだという大蔵の姿勢を示すくらい、私は決して矛盾しないと思うのですよ。当事者同士、地方自治体と金融機関との話ですから、それを大蔵がこうしなさい、ああしなさいと言うようなことはできっこないかもわからない。全くもってあなたの——それはあり余った余分な金があったら返したらいいんだ、繰り上げ償還したら全度は安い金利で借りられるんだ、そんなことはわかり切ったことだ。その資金がないから、現実的には非常にむずかしいだろうけれども、地方自治体の財政の実情というものがわかったら、何らかの手を打ってあげてくださいと言っているわけです。国だって国税の落ち込みがあるから、やはり国債発行という予想外のことをやっているのでしょう。もっともっと地方自治体の財政の実態というものを大蔵はつかむべきだ、こういうことを言っているのですよ。  時間が参りましたので、この起債の償還については、私は午後さらにもつと詳しく現状というものを認識をしてもらうために、数字をもってその起債を必要とした公共施設の耐用年数、そして起債の償還年限、これの矛盾を問いましょう。とりあえず午前中の予定の時間が参りましたので、これで質問を終えます。
  47. 加藤六月

    加藤委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  48. 加藤六月

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案質疑を続行いたします。井上一成君。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 午前中に続いて、さらに私は地方債についての質問を続けます。  地方自治体の財政負担を軽減するという点から、地方自治体の財政圧迫の大きな要因の一つである縁故債、これに対する取り扱いを午前中に私なりの意見を交えて指摘をしました。そのことについての大蔵当局としてのお考えをさらにお聞きしたいと思うわけであります。  長期債を私自身は超長期、たとえば一般会計債を例にとりますと、学校建設の場合には償還期限が三年据え置きの二十五年ということが一般化されておるわけであります。一方、この耐用年数は、鉄筋コンクリートの場合でございますと八十年という形態なのです。さらに土地に対する起債等についても、土地は半永久的な資産でもあるわけです。そういうことも含めた中で、起債の発行についてはさらに超長期の発行計画も検討するべき段階に入ったのではないか。政府資金での引き受けを検討すべきであるという午前中の質問に引き続いて、超長期起債発行も検討すべき時期であるということを私なりに指摘をし、このことについてのお考えを承っておきたいと思います。
  50. 林義郎

    ○林(義)政府委員 井上先牛から午前中いろいろと御質問がありまして、私ももう少しはっきり答弁をしろというお話だと思いますが、この問題はいろんな角度から考えていかなければならない問題だろうと私は思うのです。  縁故債の問題にいたしましても、関係のところに対して大蔵省はもう少し積極的な指導をすべきではないかということでございますが、金融の問題ということで考えますと、債券という形になっていますから、その金融機関が必ずしも保有をしていない、非常に利回りのいいものであればほかのところに行っているというようなことがある。そうしますとその連中は、借りかえということになりますとまた損をするというような問題も出てくるわけでございますから、そうした点も金融の問題としては考えていかなければならないと思うのです。  それから、いまの教育施設の問題、この問題についても、耐用年数八十年、こういうお話でございますが、確かに耐用年数の範囲内においてその期間で金を貸したらどうだ、こういう御指摘、私も一つのお考えでもっともだと思うのですが、それを地方公共団体がやるという場合に、それだけの長いものでやるということは、同時に、地方債の償還をいつの時代に、まただれが負担をするかという問題も私はあるだろうと思うのです。そうしたこと等ありまして、金融面からも、また本来、債券の償還についてだれが負担をしていくんだ、いずれは地方債などにつきましても税金でもって負担をしていかなければならない、こういうことでございますし、そういった点もあわせて考えていかなければならない問題だろうと思うのです。  先生は実はもう私から申し上げるまでもなく、地方自治の方はみずから執行者でやっておられた方でもありますし、地方の状態というのは非常に窮迫しているということは私以上に先生よく御承知のところでございますし、自治体のこの危機的段階を何とか解決していこうという精神の発露のあらわれだろう、私はこう思っておるのです。そういった御指摘でございますから、これは単に大蔵省だけでなかなか解決できる問題でもないと思います。自治省やそのほかのところともいろいろと相談をしながら、長期的に検討していくべき問題ではないか、私はかように考えております。
  51. 井上一成

    井上(一)委員 私はここでひとつ、国家財政の財源確保のために日夜大変御苦労をいただいております国税職員の処遇の問題について、二、三お尋ねをしておきたいと思います。  まず一点は、税務職員、いわゆる国税職員に対して誇りと希望、あるいはその知識と経験、だれが見ても当然であるという社会的評価を私は常に持つべきである、こういうふうに思うわけです。あるいはその実務経験を正当に評価すべきである、そういう立場に立つならば、今回税理士法の問題がいろいろと論議されておるわけでありますが、優秀な経験、そして適正な社会的評価、その実務経験による国税職員に対する社会の常識、世界の常識、あるいは職業法の通例から考えても、税務在職二十年で税理士の資格を、試験免除というような形じゃなく、むしろ無条件で付与をすることの方がより正当な社会的評価に値するのではないか、こういうふうに私自身は考え、かつまた、そういう考え方を今後とも披瀝をしていくわけでありますけれども、ここでひとつ当面のその所管でいらっしゃる国税庁のお考えを率直にお聞きをしたい、こう思います。
  52. 米山武政

    ○米山政府委員 現在、一般の試験にかえまして、税務職員で二十年以上の経験を持つ者に対しましては特別税理士試験によっているわけでございます。この問題につきまして現在、この制度の改正問題がいろいろ取りざたされているわけでございます。  私どもといたしましては、税理士の仕事というのは実務的経験というものが非常に物を言う仕事である、こういうふうに認識し、現在の制度でも、その税務職員の経験というものを非常に高く評価された仕組みになっているわけでございます。これは他の実務的なそういう仕事、たとえば司法書士とか行政書士とか弁理士とかそういうものにつきましても、一定の実務経験のある者については試験なしで資格を与えるという制度になっておりますし、また、諸外国、西ドイツ、アメリカ等の制度でも同様になっている、こういうふうに了知しております。したがいまして、現在の税理士制度、特別税理士試験の問題がいろいろこれから討議され議論される中におきましては、この経験というものを十分尊重していまより悪くならないようにひとつお願いしたい、こういうふうに私ども考えているわけでございます。
  53. 井上一成

    井上(一)委員 いまのお答えで、現状より悪い条件にはしないということでございます。当然だと思います。外国の例がお答えの中で出されましたけれどもアメリカでは五年で無条件の付与をしている、あるいは西ドイツでは十五年で無条件に付与している。同じように先進国である日本が二十年ということは、むしろまだアメリカ、西ドイツに比べてはおくれをとっているわけなんです。そういう意味から、いまのお答えの趣旨が十分生かされるように、そしてそれが実現できるように格段の努力を願いたい、こういうふうに思うわけであります。  いまのお答えで、いまよりも条件が悪くならないのだということで私は理解をしたいと思います。よろしゅうございますね、もう一度確認をしておきたい。
  54. 米山武政

    ○米山政府委員 この問題につきましては現在、自民党あるいは各党の先生方がいろいろ御検討されているようでございます。もちろん政府といたしましても、主税局中心でこの問題について取り組んでいるわけでございます。国税庁としましては、いま私が御答弁申し上げたような線をぜひ実現していただきたい、こうお願いするわけでございます。
  55. 井上一成

    井上(一)委員 結構でございます。当然国税庁としてはその考えを政府に理解をしてもらえるように努力をしていただきたい、こういうふうに私は思います。  さらに私は、俸給表の水準差の拡大、このことについてお伺いをしたいと思うのですが、昭和三十二年を別に基点にとるわけじゃございませんけれども、ここ数年来非常に引き上げ幅が低いわけでございます。たしか五十二年は一〇・三二だったと思うのですが、そうですね。これは、昭和四十七年が最低で、それ以後若干の引き上げがなされているわけですけれども、少なくともその職務の重要性なりあるいは多様性なり繁雑性、いろいろな観点から、私はこれはより引き上げをすべきである。一三・三%ですか、この昭和三十二年の水準までに引き上げていくべきだという考えを持っているわけです。このことについての当局のお考えをここで聞かしていただきたいと思います。
  56. 米山武政

    ○米山政府委員 昭和三十三年に現行の給与法が制定されまして、その際、一般職俸給表とは別に税務職員に対しましては税務職俸給表というものが設けられたわけでございます。その際、一般職俸給表と税務職俸給表との水準の差が、先出おっしゃいましたように一三・三あったわけでございます。この税務職表の一般職の俸給表に対する水準差というものは、国税職員、非常に関心を持っているわけでございます。国税職の仕事のむずかしさ、そういうものに対する評価の象徴、こういうふうに考えて、この推移については、単に給与がよくなったという問題だけではなくて、非常に大きな関心を持っているわけでございます。  四十七年から、私どもいろいろ関係方面にその実情を説明し、一時九・五まで下がりましたものが、いま先生おっしゃいましたように、五十二年には一〇・三二、それから五十三年では、人事院の勧告によりまして、さらにごくわずかでございますが、一〇・三二から一〇・三四、〇・〇二引き上げられております。いろいろ財政事情等もございますでしょうが、私どもといたしましてはこの点につきましては、さらにさらに引き上げを各方面に強く要求していきたい、こういうように考えております。
  57. 井上一成

    井上(一)委員 仕事に対する正しい評価ということをこういう形でやはりあらわしていかなければいけないと思うのです。財政的な予算の枠内に限られたものであるという一つの理由づけをもとに正しい評価がなされないということは、非常に残念だ、こういうふうに思うわけです。今後十分な努力を期待したいと思います。  二点目に、行政職の(二)表について、これまた調整手当の制度的導入を私は実現していくべきである。税務業務の円滑な執行のためにいわば縁の下の力持ち的な立場にいらっしゃるそういう方々に対しても、十分評価をし、それに見合った待遇に処していくのが当然ではないだろうか。このことについて、どういうふうに努力をし、どのようにその努力があらわれてきたのか、これもお尋ねをしておきたいと思います。
  58. 米山武政

    ○米山政府委員 運転手とかあるいはタイピストその他いろいろ労務関係の職員につきまして、行政(二)の俸給表が適用されているわけでございますが、いまの先出御指摘の俸給の調整額と申しますのは、ある官職が同じ職務の等級に属する他の官職に比較して特別いろいろ困難な職務に従事している場合には、四%から二四%まで六段階の調整額が適用されるという制度になっているわけでございます。  ただ、税務官庁における行政(二)の職員につきましては、この制度が適用されておりません。私どもは、一般職員に対しまして税務職俸給表が適用されるごとく、行政(二)の職員といえども、税務の職場の特殊性とかいろいろ配置上の特殊性というのがございますので、やはりこれについてはその特殊性を考慮して、この調整額の適用をぜひお願いしたいということで、ここ数年人事院に熱心に説明し、その実現を図っておるわけでございますが、現在までこれが実現しておりません。今後引き続きこの実現をぜひ見るように努力していきたいと思います。
  59. 井上一成

    井上(一)委員 ぜひその実現が実るように努力をしていただくことを私も期待したいと思います。  実は去年の予算委員会の分科会で、当時の村山大蔵大臣が私の質問に対する答弁にこういうことを言っているのです。私の質問というのは、いわゆる戦後の国家財政確立のために平年時よりも急激に、いわば十年か二十年に相当する人員を平年度で採用する、それも約三十年分ぐらいに相当する人員を三年間くらいの短期間で採用しているわけなんです。そういう方々が非常に御苦労していただいて、もうすでに中高年層職員として現在職場で活躍していただいているわけですけれども、こういう方々に対する昇任昇給が著しく立ちおくれておるという指摘に対して大蔵大臣は、「仕事に値する格づけなりあるいは俸給が与えられないということは大蔵大臣といたしましてはきわめて残念に思っておるわけでございます。」こういうふうに答えているのです。冒頭に、大変残念だ、そしてそれだけの対価、俸給が与えられていないということに、「今後国税庁長官に督励いたしましてこの処遇改善のために万全の措置をやりたい、かように決意している次第でございます。」こういう答えをしているのですが、それ以後、この問題についてはどのように取り組まれて、どのように改善がなされたのか、お尋ねをいたします。
  60. 米山武政

    ○米山政府委員 いま御指摘のように、税務署の職員構成というのは中高年層が非常に多くなっております。四十一歳以上の職員が全職員の約五割近くになっておるわけでございます。こういう職員はいま御指摘のように、戦後の最も困難な税務行政を支えて現在のような税務行政に築き上げてきたわけでございます。しかも、その人たちが依然として職場の中枢的な仕事に携わっている、こういう中高年層に対して、その給与上等の処遇についていろいろ努力をしてまいったわけでございます。  とりわけ、四十九年くらいから特にこの層が中高年層になってきたわけでございますが、その状況に対しまして、私どもこの処遇のために新しいポストの獲得に非常に努力をしてきたわけでございます。四十九年から五十三年の現在までに、税務署の課長に相当するいわゆる特三等級以上のポストにつきましては、約四千人の増をお願いしてきております。このために、中高年層のそのポストにつく率というのは、当時の二七%から現在約五〇%くらいに上がってきております。そういうふうに私ども努力をいたしております。そのほか、ポストだけでなくて、そのポストをどう格づけするか、等級をどう格づけするかという格づけにつきましても、人事院等と折衝しまして格段の改善を見ております。この三月六日の当委員会におきまして、特別措置法の一部改正の法案の際に附帯決議といたしまして、この改善についてさらに努力するようにというありがたい決議をいただきましたので、一層この改善については努力をしていくつもりでございます。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、大平内閣が効率的な政府ということに表現を変えましたが、ただ単に人員を少なくすればいいんだということであってはいけない。当然必要な人員は十分に確保されなければいけない。とりわけ、現在大変話題になっております商社等の過少申告の激増、これは過去五年間で総合商社十社で二十八億ですか、そういうような調査、あるいは、不況で税務業務全般が多様化していくとか事務量が増大していく、そういうことを考えれば、さらに人員増というものも今後十分に、国家財政を支えるにふさわしい国税機能が十分な体制に整えられるように定員の増員を図るべきである、こういう見解を持っておるわけであります。このことについて、私の考えについて国税当局はどう御認識を願っているのか、お答えをいただきたいと思います。
  62. 米山武政

    ○米山政府委員 御指摘のように、納税者の激増、それから仕事が非常にむずかしい案件がふえている、こういうわけでございます。納税者の増はここ十年間、申告所得税で見ますと百四十万人、一・四倍、それから法人数約七十万の増、一・七倍になっております。そういうふうに非常に急増しております。職員の数はこの十年間約千人でございまして、私どもその他いろいろ人員の増以外に努力はしておりますが、やはり基本的には人員の増というのが必要だ、こういうふうに思っております。ことし千四百人増を要求いたしまして、五百二人つけていただきました。ただ、計画削減がありましたので、四百二人計画削減を受けましたので、実質百人ということでございます。私どもはもう少しいただきたかった、こう思っております。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 全くもっていまのお答えを聞いても、これは大蔵当局にも認識を深めてもらわなければいけないのですけれども、仮に税務職員、国税職員の平均給与が概算四百五十万といたしましょう、それだけあるかどうか私は知りませんが。そして二十七億も二十八億も総合商社十社だけで脱税をしている。何人職員が雇えるのですか。二十七億としてざっと六百人ぐらい、そうでしょう、そういう計算になると思うのです。これは脱税を見過ごすよりもむしろ適正な課税をするための体制を整える方がいいんじゃないですか。まずそういうことについて、実質百名だとかそんな形じゃなく、国税職員の増員ということについてはこれから認識を改めて取り組んでいただけるかどうか、政務次官から……。
  64. 林義郎

    ○林(義)政府委員 国税職員は大変むずかしい仕事をしておりますし、それからまた、戦後長い税務行政を担当してきた職員が非常に多いわけでございます。そうした意味で、いろいろなことを考えてやっていかなければならない、こう思いますし、特に税務行政の中で非常にむずかしい総合商社の調査であるとか、非常に税務自体がむずかしくなってきておりますので、私はそういった点でいろいろな格づけを、先ほど国税庁の方から御答弁いたしましたように、格づけを特別にしていくことであるとか等級を上げていくことであるとか、さらには人員の増加を図っていくということであるとか、いろいろなことを考えていかないと本当にできないのだろうと思うのです。  当委員会におきましても先般お話が別の議員からございましたが、実調率というものが非常に下がってきている、これはやっぱり上げなくちゃいかぬと、こういうふうな話でございまして、その辺も考えながら、私も本当にこれは大切なことである。いまの先生お話の、二十八億あるから四百五十万で割ったらと、むしろ人を入れてやれということですが、人を入れたところでそれではできるかということになりますと、私はなかなかむずかしい問題もあるのだろうと思います。やはり国税庁の職員がやる気を出して一生懸命やれるような体制をつくり、それはやっぱり人の問題もありますし格づけの問題もありますが、いろいろな点を総合的に考えて税の公正な執行に当たらなければならない、こういうふうに考えております。
  65. 井上一成

    井上(一)委員 あと余り時間がありませんので、私ははしょって最後質問をいたします。  国税当局は日商岩井に対して、その事実関係がすでに明らかになったいわゆる使途不明金四十七万ドル、これは五十五万ドルですけれども、そのうちの四十七万ドルの使途不明金については、この五十五万ドルのうち特に私は四十七万ドルということは、中近東に対する淡水化プロジェクトに対する偽装の疑いが濃いものですからお聞きをするわけですけれども、これは重加算税を課するということになったわけです。国税通則法の六十八条、重加算税の性格というものは一体何なのか、どういうふうに位置づけていくのか。これはまさに脱税ではないか、そういう形の中から、法人税法百五十三条、百五十四条、これはいわゆる検査権ということが明記されているわけです。当然これによって、重加算税、いわゆる脱税がわかった、そういうことになりますと、これに対する罰則的なものとして百六十二条二、三号、そういうことが示されているわけです。当然国税当局は検察庁に対して告発をしなければいけなかったのではないだろうか、こういうふうに思うわけです。もうすでに検察庁がその問題を手がけておりますから、いままでにこの罰則適用をした件数があればその件数を聞かしていただきたい。そして年月日。  それから法務省に続いて、簿外資金だとかいわゆる過少申告、脱税工作に携わった者及びそれを指示した者は、一般的な論理として、それは背任だとかあるいは横領だとかいうことを構成する、あるいはまた脱税教唆だとかそういう罪名があるわけですけれども、今回の日商岩井のいわゆる簿外資金として運用してきた、いま問題になっております検察が押収しましたあの一連の事件については、これは背任なのか、横領罪を構成することに当てはまるのか、この点を尋ねて、私の質問を終わりたいと思います。
  66. 米山武政

    ○米山政府委員 最初の告発の件数でございますが、いまの先生の御質問は、使途不明金等の追及に際して、これに対して質問検査権の行使に対して答弁せず、そういうものに対して告発した件数は幾らか、こういうふうに理解して御答弁いたしますと、これは過去三件ございます。  それから第二の問題でございまして、日商岩井の使途不明金四十七万ドルについて、この使途をさらに徹底し、なぜこれは重加算税にとどめて不答弁罪等を適用しないのか、こういうふうな御質問と理解いたしましてお答えいたします。  法人税法の百六十二条二号の罰則規定といいますのは、これは質問検査権の円滑な行使を担保するために設けられたものでありまして、単に形式的にこれに該当するからといって、それをすぐに罰則規定で告発し、これに刑罰を科すというのは適当かどうか、非常に問題でございます。これに対して告発した例が先ほど三件あると申しましたのは、全面的に調査に入らせないとか、全面的に帳簿を見せないあるいは一切物を言わない、こういうふうな場合でございます。今回の場合は、経費の一部について使途をなかなか明らかにしなかった、こういうことでございまして、これをもって直ちに法人税法百六十二条二号の規定に基づいて告発するのが適当かどうか、私どもはそこまですることは適当でないという判断でおるわけでございます。
  67. 佐藤道夫

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  日商岩井関係の事件につきましては、御案内のとおり一昨日、日商岩井関係の者二名を外為法違反あるいは私文書偽造等で逮捕いたしまして、現在検察当局におきまして鋭意捜査中でございます。いずれにいたしましても、一昨日逮捕ということでございますので、検察当局としては、ただいま逮捕いたしました事実の確定を急いでおるということで、それ以外に御指摘の背任罪あるいは横領罪等の成否につきまして、ただいま現在あれこれ論ずるだけのいかなる資料も持ち合わせていないということで、せっかくのお尋ねではございますけれども答弁は遠慮させていただきたいと思います。
  68. 加藤六月

    加藤委員長 村山喜一君。
  69. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 いままで各委員の方々がそれぞれ取り上げられた問題をできるだけ重複を避けながら、質問をしてまいりたいと思います。  まず、これは林政務次官にお聞きをしなければならない問題のようでございます。  十五日に日商会員総会が行われて、そのときに齋藤幹事長が、一般消費税の導入の時期は来年の秋以降、そういうふうに示唆したということが新聞で報道をされておりました。ところが大蔵省は、国民の同意を得ながら、同意の形成を努力しながら五十五年四月実施というふうに受けとめておるのではないだろうか、こういうふうに思っているのですが、この秋には、三年目ですから恐らく総選挙もあるだろう、来年の初夏のころには参議院選挙がある、だからそういうのを避けて一般消費税の問題を出そう、そういう配慮がありありとわれわれには受けとめられるわけでございます。  そういうような状況の中で、財政の硬直化の問題をどういうふうにして解決をするのかということが、いま政治に課せられている課題だと思うのです。そういうような立場から、どうも選挙に向かっては、それはだれも重税を喜ぶ人はいないわけですから、与党である日本の政権を握っている自由民主党がそういうような調子でこれからも臨むということになるならば、政府と与党とは一体でございますから、それを受けて大蔵省は、財政再建のために一生懸命やろうと思いましても、肝心かなめの与党の方がそういう態度ではどうにもならないということに私は受けとめるわけでございます。今日までこういうような赤字財政にしたのは、われわれ野党の責任よりも与党の責任だ、政権を握っているあなた方が多数決で予算も通しておられるわけですから。あなたは大蔵政務次官ですから、与党と政府側のその二つ立場を兼ね備えた人だ、そういうような意味では、五十五年四月実施という気持ちは崩れていないのですか、どうなんですか。
  70. 林義郎

    ○林(義)政府委員 いま日商総会でのお話がいろいろございましたが、私も新聞で拝見をしております。党の中でもいろいろとまだ御議論をやっていただいておる。実は、細目の詰めその他もやらなければ法案の形としてもお出しできない、こういうふうなことで御答弁申し上げておりますし、私も党の方に、できるだけ早く法案という形で国民の皆様方に御理解賜るようなものを出したらどうだ、こういうことでお願いをしておるところでございます。五十五年度のできるだけ早い機会にやりたいという気持ちは、いまでも大蔵政務次官としては当然に考えているところでございます。  いまお話がありましたように、政治日程云々、こういうふうなことでございますが、そういったものも確かに大切なことでございますが、財政は大変むずかしい状況である、この状況をやはり何とか打開していくのが政治家として非常に大切なことではないかという気持ちを持って私は対処しておるところでございます。
  71. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 林政務次官の苦衷はよくわかるのです。それで、きょうはあなたは大臣にかわる人としてそこに座っていらっしゃるわけですから、いままでの日本の社会の体質から言いますと、不況時に減税をして好況期には増税をする、そういうようなものができる風土であるというふうに考えていらっしゃるのかどうか、その認識のほどをお伺いしたいのです。  というのは、どうも見ておりますると、この日本財政全体がケインズ政策の中毒症に陥っておるのじゃないだろうか。財政が注射効果がもう切れていま息切れのところまで来ているのじゃないか、そういうふうに私たちは見ているのですよ。そういうような意味から、いま民主主義の政治形態の中で、そういうような財政、不況期には減税をして好況期には増税をする、そういうようなものはどうもできっこないのじゃないだろうか。公共的な支出に対しては国民は、自分の財布を痛めない国債でやってくれるのだったら何ぼでもやってくれ、こういうような形になってしまって、そういうふうに与党が国民をならしてしまっておるわけですね、国債発行しましても当面はだれも腹が痛みませんから。そういうような状態の中にいまあるのじゃないだろうかというふうに私は思いますので、林政務次官認識のほどをお伺いしておきたいと思うのです。
  72. 林義郎

    ○林(義)政府委員 好況のときには増税を、不況のときには減税を、こういうふうな形での基本的なケインズ理論のシェーマを先生指摘ありましたけれども、やはり現実の問題としては、財政の下方硬直性と申しますか、一遍つけたものを切るというのはなかなか大変なことである、そうしたことからいたしまして、現実の問題としてケインズ理論というものがなかなか適用できないということもまた御指摘のとおりだと思うのです。私、全くそうだと思うのです。と同時に、もう一つ申し上げますならば、ケインズ理論というものが持っているところの、国債を出しまして有効需要を喚起するという政策も、その効果というものが必ずしもいままで言われたとおりの効果を果たしていないのではないか、こういうことがいま相当に言われてきております。  実は私は大学のときにはケインズというのは習っていなかったのです。その後に非常に勉強させてもらったのですが、そう学者ほど詳しくはございません。一応概略的な話でございますけれども、どうもケインズ理論というものは、やはり一つの物の考え方であるけれども、大いに欠陥があり、現実の問題に照らしたならば修正をしていかなければならないという感じを持っているのです。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕 特に最近では、アメリカのフリードマンであるとかブキャナンであるとかいろいろな方が、その辺の有効性の問題について御指摘を学問としてもいろいろとしておられます。しかし、ケインズセオリーと言われるような体系にはまだどうもなっていない。新しい体系をどこに持っていくかというのは経済学界においても一つの問題だろう、こう思うのです。  そうしたことで、現実にわれわれがこの赤字を処理していくときには、当委員会で私たびたび申しますけれども、やはり物価の安定、それから安定した経済の発展、そういったものを中核に置いたことを考えていかなければならないし、また、それに沿ったところの理論的な裏づけというものも必要ではないだろうか、こういうふうに思っておるところでございます。
  73. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、優秀な頭脳集団である大蔵官僚の皆さんが並んでおりますから、この点をどういうふうに明らかにし、またそれをどのように理解を求めて国民の協力を得ようとしておるのか。日本財政の硬直化、防衛費は世界の国々に比べまして少ないわけでありますが、その比率はきわめて小さいのに、公債発行のピッチといい発行量といい、異常というのか、大変アブノーマルな状態に立ち至ったということは一体どこに原因があるのか、その硬直化の原因を歳出の面からあるいは歳入の面から洗い直しながら、それに対応するところの措置を講じなければならない段階にあるのではないだろうかと思うのです。それを系統的に、いままで進めておいでになったのだろうとは思いますが、全体の構図としては、政策の面でそれをどうするかということは、政府が提起をする問題でありましょうが、その分析を要素ごとになされたものを一欄表でもつくって国民の前に明らかにしていく、またこの委員会を通じて国民に明らかにする、そういうような考え方はどうでございますか。
  74. 吉野良彦

    吉野政府委員 ただいま先生指摘のように、わが国の財政は、歴史的に見ましても、それからまた国際的な比較におきましてもいわばきわめて異常な状況に立ち至ってございます。  そこで、従来からもそうでございましたが、今日財政が深刻な状況になっていることを踏まえまして、私どもいろいろな機会に、国民の皆様方にも財政の現状をおわかりいただけるように、御理解をいただくようにというつもりで、いろいろ現状についての御理解を深めていただくようないわば情報の提供といったようなことを私どもなりにやってきたつもりでございますけれども、私どもも十分とはまだ決して感じておりませんので、今後ともありとあらゆる機会をつかまえまして、財政の窮状と再建の必要性につきまして一段と御理解を深めていただくようにあらゆる工夫をしていきたいと存じております。
  75. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 もう私から一々指摘をするまでもございませんが、一般会計歳出公債依存度の問題からあるいはGNPに対する政府債務残高の問題、あるいは財投原資の構成比変化と伸び悩みの問題、地方公共団体歳入の構成比変化の問題などに見られるように、病膏肓に入りつつあるというような気がしてならないわけでございます。  そこで一体、これだけ大量の公共債をこれから発行していくのに当たって、それを賄い得る預貯金の伸びというものとの関連の中から消化ができるのか。最近言われておりますように、先ほどはクラウディングアウトの問題はそう心配はないのだというお話竹本委員にございましたが、インフレの問題も、あるいは金融機関の国債を保有することによるキャピタルロスの問題も引き起こさないで、うまくこれから処理ができるだろうかということに対して私は疑念を持っておりますから、ちょっとその具体的な状況についてお聞きをしてまいりたいと思います。  そこで、五十三年度の公共債の発行額の収入金ベースの内訳をひとつ示してもらいたいと思うのです。中身は、国債、政保債、政府関係機関の非政保債、それに地方債、これのトータルと、それから市中消化の五十三年度状況、これは当初予定で結構でございますが、それから五十四年度の見込み額はどういうふうになっているのか、この数字について説明を願いたいと思います。
  76. 田中敬

    田中(敬)政府委員 五十三年度当初計画の後、国債の追加、政保債等の追加がございましたので、五十三年度の追加後の数字を申し上げますと、国債発行が十一兆二千八百五十億円。いまから申し上げる数字はいずれも収入金ベースでございます。政府保証債が一兆四千五百億円、政府関係機関等の非政保債、すなわちこれは国鉄が出します縁故債でございますとか電電債というようなものでございますが、これが一兆八千二百四十一億円、地方債が六兆八千百六十五億円、計二十一兆三千七百五十六億円が五十三年度の新規発行の見込み額でございます。  それから五十四年度につきましては、国債が十五兆二千七百億円、政府保証債が一兆五千六百億円、政府関係機関等の非政保債が一兆六千四百八十九億円、地方債が七兆四千十億円、計二十五兆八千七百九十九億円ということでございまして、五十三年度の追加後の数字に対しまして、総額で二一・一%増加発行ということが予定されております。
  77. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そのうち、市中消化はどれだけ予定していらっしゃるわけですか。
  78. 田中敬

    田中(敬)政府委員 市中消化の概念でございますが、以上申し上げました新規発行額のうち、資金運用部と公営公庫が引き受けるもの以外を市中消化といたしますと、五十三年度では十七兆四千八十五億円、五十四年度では二十兆三千六百六十九億円、五十三、五十四の対比は、五十四年度が対前年比一七・〇%増になっております。
  79. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 ついでにお尋ねいたしますが、公共債の発行残高は、五十三年度末トータルで幾らになりますか。
  80. 田中敬

    田中(敬)政府委員 けさほども関連の御質問がございましたが、公共債というのを分けますと、国債政府保証債、政府関係機関等非政保債、それから地方債ということになります。地方債につきまして正確な資料というのは、自治省は普通会計債しかとっておりませんが、先ほど私が申し上げました数字には、企業債等全部一応推計で含んでおります。これを含めて申しますと、五十三年度末で公共債残高が九十三兆一千九百億円、ブレークダウンいたしますと、国債が四十三兆二千三百億円、政府保証債が四兆七千六百億円、政府関係機関等非政保債が十兆二千億円、地方債が三十五兆円ということになります。
  81. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 五十四年度の場合は、それと同じ項目を拾い上げた場合には幾らになりますか。
  82. 田中敬

    田中(敬)政府委員 五十四年度末残高見込みは百十六兆円になります。
  83. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この伸び率が非常に高いものですから、一体それを消化できるだろうかという問題で、先ほど竹本委員の方からも質問がございましたが、その数字についてももう一回確認をいたしたいと思います。  そこで、政府の発表いたしましたいろいろな統計数値を見てまいりますと、これは経済企画庁の国民所得動向でございますが、新しいSNAの資料によりますと、まだ五十二年度末のフローとストックの表しか出ておりませんので、五十二年度の中で現金預金の金融資産がどれだけ伸びたかというトータルを見てみると、二十八兆ふえております、こうゆうような統計が出ております。それから、大蔵省の金融特集、財政金融統計月報の三二〇号によりますと、大体一般預金の年度中増加額は三十兆という数字が出ております。  日本の国は、従来個人貯蓄率が非常に高いから、これによって個人家計部門が黒字である場合には、政府のそういう公共的な投資に振り向けるとかあるいは民間の方に振り向けるという形で進めることが正しいのだ、こういうようなことで従来はケインズ流の財政運営をやってきたわけでありますが、貯蓄率の高さというのは一体何を根拠にしているのだろうかというので、私もそのことに疑問を持ちました。たとえば住宅ローンの場合などは、林政務次官も御存じのように契約貯蓄で、現物資産を取得して、その後は定められた契約に基づいて金を払ってまいりますから、それもやはり貯蓄勘定の中に入る、こういう統計でございます。それでわが党の北山愛郎副委員長がいつも言っておられたのですが、どうも不可思議ですよ、貯蓄の中には自動車を買ったローンからあるいは住宅を買ったローンからそういうものまで入っているのだ、こういうような話をしておられた。  そこで私も、それは物の考え方の問題でしょうが、国会図書館のレファレンスの三三七号を見ておりましたら、非常におもしろい力作で、石原義盛さんという人が分析をしていらっしゃるのに気がつきました。その中で、経済的な統計のとり方、これはいろいろな角度によって、たとえば新SNAの場合には、理論的な数値を用いまして、それによって推計をしておるわけですが、それに比べて大蔵省の場合には、実態報告で全部集計をして、そのトータルとしてあらわれたものだろうと思うのです。それで誤差が大分あるのだろうと思いながらも、貯蓄率というのは、大蔵省が採用しているのは一体、どうなのだろう。経済企画庁の国民所得統計がございますね、これが一番高くあらわれるのですが、二一・二%の貯蓄率という数字があらわれている。それから総理府の貯蓄動向調査というのがあります。これはみんな五十二年度を言っているわけですが、これによりますと一六・八、同じく総理府の全国勤労者家計調査によりますと一四・六、それから農林省の農家経済家計調査ですか、これによりますと二一・五、いずれも貯蓄率が違うわけでございます。消費されないものは全部貯蓄だという概念でございますから、先ほども申し上げましたように、住宅、土地購入も貯蓄、住宅ローンも貯蓄。民間金融機関の住宅ローンの五十二年十二月末の統計数字を見てみると二十三兆もあるのですね。  そこで私は、国債に振り向けられる預貯金というものは一体何だろうかというふうに分析をしてみなければならないのじゃないか。石原さんの分析によりますと、金融資産貯蓄と実物投資と契約貯蓄、この三つの分類をしたらいいだろうということで、それによっていろいろ分析をいたしてみました。経済企画庁の昭和五十三年度国民生活白書、勤労者世帯の貯蓄率の内訳というのを見てまいりますると、五十二年度の貯蓄率は二二・五ある。ところが、さっき言いました流動性のある金融資産の貯蓄率は一一・六%しかない。うち、その貯金純増は九・七%にとどまっている。実物投資二・九%で、契約貯蓄が八%。金融資産の貯蓄率は年々低下を続けているわけです。国債の消化に向けられるものは主としてこの金融資産の貯蓄だ、こういうふうに考えなければならないとするならば、貯蓄の中身が変わりつつあるのじゃないか。そのことから、一体大丈夫なんだろうかという疑いの目を持ったわけでございます。  そこで、これは銀行局長にお答えを願わなければならないと思うのでございますが、大蔵省は貯蓄率の高さというのはどういうものでとらえているのでありましょうか、これを説明してください。そしてさっき竹本委員に、五十四年度は三十六兆から三十七兆伸びるというようなお答えをされたように記憶しているのですが、一体それはその内訳をどのように分類をしていらっしゃるのだろうか。私がさっき申し上げました金融資産貯蓄と実物投資と契約貯蓄、こういうようなものとの関係を分析をされていらっしゃるのだろうかどうだろうかということを説明願いたいと思うのでございます。
  84. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生指摘のとおり、わが国の貯蓄率にはいろいろな見方があるわけでございまして、経企庁の国民所得統計であるとか、あるいは総理府の家計調査によるものとかいろいろございますが、いま二二%台というようなことで先生の御指摘になった数字は新SNAベースによる貯蓄でございまして、これは個人の一般の家計のほかに個人事業者も含まれているわけでございます。ですからそういう意味で、個人の純粋な消費者としての貯蓄よりも幅の広い概念になっておるわけでございます。
  85. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 ということは、銀行局長あれですか、大蔵省はこの新SNA方式を使っている、こういうように言われるわけですか。
  86. 徳田博美

    ○徳田政府委員 一般に日本の貯蓄率と外国の貯蓄率とを比較するような場合、あるいは日本の貯蓄率が非常に高いとか低いとかというような場合に大蔵省が申し上げている貯蓄率は、この新SNAによるものでございます。
  87. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それでは、林政務次官は通産省などに詳しいわけですから、前は二五%と言っておったのですね。けれども、実際このごろになりましてから、いやそれは下がりました、せいぜい高いところで二二・五%でございますというふうに統計数字自体が改まったのです。これは御承知だと思います。  そこで、その金融機関の増加額の何%が国債を初めその他の公共債の引き受けに回るのかということ、これは予算編成のころにいろいろインフレ・との関係で適正発行量がどれだけでなければならないかということの論議があったことを記憶をするわけです。というのは、金融機関の預金、貸し出しの伸びを五十三年度と同じように見て、そして適正発行限度額が十三兆とか、無理して十四兆とかという話が当時はあったやに記憶をしているわけでございます。そこでそういうようなことから、先ほど理財局長の方からお答えをいただきましたのは、数字としてことしの公共債の発行予定額が示されたわけでございますが、二十五兆八千七百九十九億円、二一・一%の伸びだということでございますが、銀行局長の説明にはまだないわけでございますが、ことしは預貯金の伸びはどれだけ伸びるという計算をしていらっしゃるのですか。先ほどの説明では、去年が三十二兆あったから、ことしは三十六兆から三十七兆だ、こういう説明であったように記憶をするのですが、そうなるとその伸び率はどれだけになりますか。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕
  88. 田中敬

    田中(敬)政府委員 まず最初にいろいろ貯蓄をどう見ておるかという御質問がございました。銀行局長からお答えいたしましたけれども、新SNAベースで見ます個人部門の貯蓄超過というところには確かに、個人が借り入れて、それをまた運用で預け入れているというのも貯蓄超過に入っています。そういうベース等は全部私ども一応勘案しておりまして、そういう貯蓄超過部門がどういうふうにして他の不足部分へいっているかというと、御承知のように金融証券市場を通じて運用されているわけでございますが、そういう形で、委員が御指摘のように、私どもが貯蓄超過がどれくらいあり、どうであるかというそういう計算は、御指摘のようなSNAベースでもいたしております。  それからいまお尋ねの、来年度の総合資金需給に絡みまして、五十三年度の金融部門への資金流入が三十二兆三千億で、五十四年度の見込みが三十六兆六千億と申し上げましたけれども、この金融部門への資金流入と申しますのは、一番大きいのは預金の増加でございます。預金の増加につきましては五十四年度は、一応五十三年度に対しまして一三・六%預金がふえるというふうに私ども試算をいたしております。ちなみに五十三年度の実績見込みでは一三%預金がふえるであろう。あと金融部門に対します資金流入といたしましては、預金のみではございませんで、たとえば興長銀等が金融債を発行して金融部門外から資金を持ってまいります。それを来年四兆二千億。一方また日銀が手形オペ等によって金融部門から信用収縮をいたします。それが来年は恐らく一兆四千億であろう。そういう差し引きをいたしまして、資金流入が三十六兆六千億と申し上げたわけでございます。  これに対しまして資金流出がどうなるかということでございますが、大体民間に対する貸し出しが約九%増、残高ベースで九%ふえるだろう。これはなぜ九%の貸し出しというのを見ましたかと申しますと、これも五十三年度の実績見込みが対前年九%の増を見込まれておりますので、おおむねそのような基調が続くということで九%増と見ますと、貸し出しが十九兆八千億円になります。それからあと資金流出といたしまして民間金融部門で受け持つものが、株式や社債の引受応募がございます。これが来年二兆五千億というふうに推計をいたしております。  そこで、あと残りますのが公共債の引き受けでございますが、先ほど申し上げましたように、全体の公共債の発行額二十六兆二千億のうち、金融機関引受分は約十五兆八千億というふうに想定をいたしております。そういたしますと、この株式、社債、貸し出し等の引き受けと、それから公共債の引き受け全部合わせますと三十六兆六千億よりも多くなるわけでございますが、ここで金融部門での資金流入の道が別途ございます。それは既発債の償還を受ける、それから日銀がオペで長期国債を取り入れるということでございまして、この償還、オペというものが五十三年度では二兆一千億ございまして、これは金融機関にある意味での資金流入になったわけでございますけれども、五十四年度におきましては御承知のように、国債長期債の償還年限を七年から十年に変更したということがございまして、来年はその谷間に当たっております。そういう意味では、来年は長期債の償還額が非常に少なくなる年でございます。そこで五十三年度償還、オペ等が二兆一千億ございましたが、日銀が成長通貨の供給として行いますオペというのは、ほとんど本年度と同額と想定いたしましても、償還額が少なくなるために、この部門における資金流入は一兆五千億程度というふうに考えております。そういう意味で計算をいたしますと、金融部門における資金流入三十六兆六千億に対して流出も三十六兆六千億ということでほぼとんとんになる。これはあくまでいまの金融情勢が続くという仮定の数字でございまして、このようにうまくいくとは思っておりません。これからの金融情勢の変化に応じていろいろ応用問題が出てきて、たとえば資金不足が起これば手持ち債券を売却するというようなものがあろうかと思います。ただ、ここで申し上げております金融部門と申しますのは、農協、信金等まで全部含んでおりまして、ここから外れておりますのは政府部門の資金運用部等だけでございます。
  89. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それで大体わかりました。しかし予算編成のころには、インフレとの関係で適正発行限度は十三兆程度ではないかという話がある中で、これは国債発行ですよ、金融機関の預金、貸し出しの伸びを想定をされたものがございました。それは預金が一四%。いま理財局長のお話を聞いておりますと、一三・六%と大体数字が合うようでございます。貸し出しは九%とおっしゃったから、九%というふうに当時も見ておったわけです。そうなった場合に、オペの問題は、これは信用通貨を供給する方式として日銀が操作をすることも可能ではありますが、実際預金がどのようにふえていくのか、その中でどのように国債があるいは公共債が消化ができるかという問題をわれわれとしては見なければならないかと思うのであります。そうなってまいりますと、当時言われていたのは、国債の引き受けは九兆四千億ぐらいで、そして資金運用部の資金やあるいは公募入札等そういうものを入れて十三兆円、無理して十四兆円だ、こういうふうに言われていたものが、今回は十五兆二千七百億円を発行する、こういう数字に予算編成過程の中で決まったわけです。  いま話を聞いておりますと、どうもつじつまは、そろばんは合うのです。そろばんは合うけれども、ぎりぎり、もう少しも余裕がない、そういう形で計算をされて非常に無理をされているのではないかという気がしてならないのですが、そういうような無理な資金の中で公共債を二一・一%も昨年よりも増発をする。伸び率は高いというものでは、どっかにちょっとした、局長も言われるようにトラブルでも発生をした状況が出てきたら、これがこの国債の利回りの問題やら何やらに絶えず敏感に響いてくるのではないだろうか。いままで、この金があり余っている中で国債相場が下がるはずがない、こういう神話がもろくも崩れてまいりまして、発行条件の改定に追い込まれたことは事実でございました。そこに私は、もうオペまで入れてかろうじて数字のつじつまを合わせて、そしてこの二十五兆八千七百九十九億円の公共債を発行せざるを律ない、国債は十五兆二千七百億円を発行せざるを得ない、本当に綱渡りではないだろうかという気がするのですが、林政務次官、どういうふうにお考えでございますか。
  90. 林義郎

    ○林(義)政府委員 大変むずかしい状況であることは、村山先生指摘のとおりでございます。先ほど理財局長あるいは銀行局長から御説明いたしました、ぴしゃり合っているというのが何かもう少し余裕でも持ったらどうだ、こういうふうな御意見と思いますが、資金需給の計画でございますから、一応そういった形で数字はできているのだろう、私はこう思うのです。  お話がございました、予算編成のときに十三兆云々とかという話がありましたけれども、新聞なんかでは十六兆とか何とかというような話もずいぶん出ておったわけでございます。特に積極論者の方からはもう少し出してもいいのではないかというような御意見もあったわけであります。結果としては十五兆二千七百億ということでございますが、資金運用部での引き受けで一兆五千億をやるとか、新しい方式での発行を考えるとか、いろいろなことを考えてやるということと同時に、われわれといたしましても、特例債というのはでぎるだけ切りたい、こういう気持ちでやったわけでございまして、もう基本としては特例債などというものは一銭でもいいから切りたい、こういう気持ちでやっておったわけでございますし、状況が許せばそういった形で今後も対処しなければならない事態も出てくるのだろうと思うのです。ただ、経済全体を言うならば、ことしはこれからさらに長期プライムレートが上がったりなんかするというような状況は、私はいまのところはそう考えられない、こう思っておりますし、こうした形でうまくいくのではないか。国際的な要因その他もございますから、一概に絶対大丈夫だということはなかなか言えないのでございますけれども、何とかこういった形でうまく持っていきたい、こういうふうに念じているところでございます。
  91. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、その成長通貨をオペレーションによりまして供給するという方式をとることはいいんでしょうが、全体の資金の流れの中でそれだけ通貨量をふやす、そういう中から問題の処理に当たっていくというようなことになりまするとどうも、いまインフレの心配が懸念をされておる、そういう状況の中でマネーサプライが増大をしていく、そういうような問題が発生をして、結局はインフレに突入をしていくような気がしてならないわけでございます。ですから、非常に限度いっぱい、これ以上はどうにもならない、こういう気持ちに私たちは受けとめております。したがって、これは後ほどまた申し上げますが、増収等があった場合にはこの特例債を減らしていくというような方法をとりながら措置をしていきませんと、ますます大変なことになるんじゃないだろうかという気がいたします。それは後ほどまた問題を提起したいと思います。  そこで、証券局長おいでになっていますか。——ちょっとお尋ねをいたしますが、昨年の六月でしたか、証券会社が引き受けましたものは二千七百八十億でございましたね。それが十月になりましたら七百億に四分の一にダウンをしましたね。そこであわてて資金運用部の資金で引き受けたり、証券会社の引受分を削りまして、何とかして国債の価格を保持をした、そういうような苦い経験がございます。そういうふうに私たちは見ているのですが、ことし公募入札三兆七千億、こういうように聞いております。この中身はバラエティーに富んでおりまして、二年もの、三年もの、四年ものというふうに食いつきやすいようなものも入っているようでございますが、果たしてこれだけ二兆七千億も証券が引き受けていけるだろうか、公募入札の分を消化ができるだろうか、こういうことについてどうも懸念をしておるわけでございますが、自信がございますか。
  92. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 三兆七千億円の公募入札の場合には、公募でございますので応募いたしますのは、証券会社だけではなく金融機関も応募しているわけでございます。従来の公募入札の場合には、いろいろなケースによりまして証券会社の入札しました割合は違うわけでございますけれども、私どもは公募に応ずる場合にも証券会社としてこれに応じて、これは自分が手持ちするわけではございません、機関投資家に売るわけでございますから、機関投資家に売れる範囲内で引き受けるということは指導しているわけでございまして、従来のケースからいいますと、大体銀行と証券が平均いたしますと半々ぐらいの感じになっていようかというふうに理解しております。
  93. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 公募ですからそういう形になるんでしょうが、個人消化あるいは機関投資家に売っていく場合には証券会社が主役になるわけですね。二兆七千億は、これは公募だからそのときの金利水準等によって処理ができるんだから大丈夫だ、こういうことで自信をお持ちになっていらっしゃるわけですか。去年みたいに、自分のところはもう引き受けの分は削除してくれと、こういうようなことにはなりませんか。
  94. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 先ほど先生から御指摘ございましたように、昨年の六月、夏ごろまでは証券会社のいわゆる十年もの利付国債の引受額は二千億円を超える大きな金額だったわけでございますが、その秋以降、その証券の引受額というのが下がっているというのはそのとおりでございます。これは金利が下がっていきます過程におきましては、証券会社が引き受けまして個人等に売っていく場合には、これは非常に売りやすいわけでございますけれども、一度金利が底打ち感になりますと、流通市場にも変化があらわれてまいりますので、以前よりは売りにくくなるというのは当然の現象かと思うわけでございます。したがいまして、こういう場合に証券会社が無理な引き受けをいたしまして、また無理な販売をいたしますと、またそのはね返りの問題というものもあるわけでございます。したがいまして、無理なく販売し得る範囲内で証券が引き受けていくということが望ましいわけでございます。  したがいまして、昨年の秋以降証券会社の引受額は減っているわけでございますし、今回条件改定があったわけでございますけれども、この三月については証券会社の引受分は、五百三十億円と若干二月よりはふえておりますけれども、以前に比べますと額としては大きくはございません。ただし、公募入札のものにつきましては、過去におきまして公募入札で証券会社が引き受けましたものは、これは期限の短い国債でございますので、機関投資家等にも十分需要があって、これは無理なく販売ができているというふうに私どもは理解しております。
  95. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 先ほど理財局長でございましたか、公共債発行の市中引き受けが一七%の伸びの説明がございました、二十兆。預金の増加がそんなに期待ができない状況の中で、一三・六%しか預金の伸びは期待ができないその中で、公共債だけは一七%の市中消化をやらなければならない。シンジケート団の十一兆七百億円、この引き受けは、国債発行価格の改定等をやったからまあ大丈夫だろうということなんでしょうが、シンジケート団の方では、今日の国債の利回りから見まして、どうも都市銀行の上位クラスの方は資産運用のものとして処理ができるけれども、都市銀行の場合の下位銀行あるいは地方銀行、相互銀行あるいは信用金庫、こういうところは、どうにも国債には手をやいているという姿が経営の実態ではないだろうかという気がいたすのでございます。というのは、最近は住宅ローンなど、これから全国都市銀行といえども新しい融資の先を開拓をしていかなければならない。銀行の大衆化というものを求めまして、やはりそこには消費者ローンというものを重視をしながら、特に住宅ローン等については目を向けておるわけでございますが、その十年の、まあ十年以上になるんでしょうか、長期金利の金利水準というものを見てまいりますと、長期プライムレートとの開きが若干ありますが、相当無理をしながらよくやっているなというふうに住宅ローンについては見るわけでございますが、それらのものと国債、十年もの、長期ものとの利回りの比率なんかを見ておりますると、どうも改定をしたもののなお消化しにくい状況があるように私たちは見るのでございますが、果たしてシンジケート団は十一兆七百億をうまく処理できるだろうかどうだろうかという気がいたしますが、この点は大丈夫ですか。
  96. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生指摘のとおり、国債の利回りと各種金融機関の資金コストという観点から見ますと、相互銀行、信用金庫あたりは、今回の十年もの国債の金利の引き上げを見込みましてもなお逆ざやの面があるわけでございます。したがいまして、こういう中小金融機関にとりましては国債の消化はかなりいろいろむずかしい事情があるわけでございます。ただ、金融機関全体の資金繰りの面から申し上げますと、先ほど理財局長から御説明申し上げましたように、現在は一般企業の経済活動がいまひとつ盛り上がりがないわけでございまして、その辺からの資金需要は必ずしも高まってないわけでございます。したがって金融機関としての資産運用の面としては、やはり相当の部分を公共債あるいは国債に向けなければならないような状況にもあるわけでございます。今後企業活動が非常に活発になれば、いろいろクラウディングアウトという状態もあるいは出てくることも考えられるわけでございますけれども、当面予想される金融経済情勢のもとでは、先ほど理財局長から申し上げましたような形での公共債の消化は一応おさまっていくのではないか、このように考えております。
  97. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 消費者金融の五十二年度末の貸付残高が三十二兆七千五百五十三億ある。住宅ローンが二十五兆、一般消費者ローンが七兆余り。その中で、五十一三年度の都市銀行の貸し出しの三分の一は住宅ローンに向かっておる。そういう状況の中で、最近は教育ローンなどが花盛りでございますが、教育ローンの場合一年から五年以内の三百万円貸す場合の年利は八・四%に対しまして、都市銀行の住宅ローンの場合は七・六二%という形で運用をしておるようでございます。考えてみると、銀行というのは短期の資金を預っておるわけですから、一年ものの定期預金が四・五、それから二年もので四・七五、その短期資金を預かった銀行、金融機関が、そういう長期のきわめて不確実性の時代にふさわしい、十年先はどうなるかわからないようなうまみのないものを抱えておっても、別なところで何かめんどうを見てくれない限りは困るわけですね、株式会社でございますから、国立銀行ではないのですから。  そういう意味から言いますと、これから大衆をとらえなければならないということ。大企業の場合にはさっきも説明がありましたが、自己資金で賄っていく、現先市場のあたりで短資を運用するくらいの力を持っている大企業がたくさん出てきているわけですから、銀行の方にはお世話にはなりませんという形になるでしょうよ。しかし、中小企業の場合はやはり借り入れをしなければならない。中小企業に資金を融通する。それから消費者ローンというものに銀行の大衆化の道として進んでいかざるを得ない。そこへ持ってきて国債をシンジケート団として十一兆も引き受けなければならない。こういうことを考えますと、どうも資産運用のうまみがさっぱりないという中で渋々ながらいま引き受けているのが実情だろうと思うのです。しかしこれが最近のように、運用利回りが高まって市場価格が大変変化をいたしてまいりますと、持っておってもみすみす評価損が出たり買却損が出たりするような状況が出てくると売りさばきたいと思うようになりましょうし、そういうようなところから非常にむずかしい段階に来たなと思うのでございますが、いまのお話では、民間の資金需要がさほどございませんから大丈夫です。大丈夫でないと言ったらこれまた大変でございましょうから、大丈夫ですというふうに答えているのだろうと思うのですが、損だということがわかりながら泣きの涙で中小の金融機関は引き受けざるを得ないというのは、これは林政務次官、どうでしょうね、御用金調達じゃございませんか。どうですか。
  98. 林義郎

    ○林(義)政府委員 渋々というか、やはり各銀行それぞれの立場におきまして、いろいろな計算をし採算をとってのことだと思うのです。そういった形でございますが、御用金思想とよくおっしゃるのですが、私は必ずしもそう思っていない。銀行の社会的な使命もありますから、いろいろな点で銀行は考えた上での話であろうと思うのです。いまお話がありましたように、消費者金融もやらなければならない、住宅ローンもやらなければならない、いろいろなことをやっている中で、銀行としても政府国債を引き受けることは、自分の銀行の利潤追求の中においても認められているところのものであろう、私はこういうふうに思っているのです。  ただ先生指摘のとおり、長期、十年になりますから大変不確定、不確実ではないか、そこが銀行の一番判断をするところではないだろうか。これを各行それぞれにという話になりますと大変なことになるから、現在の金融制度、金利体系、そういったものの中からやるならば、現在のシンジケートでの国債の引き受けという方法は現実に適した方法ではないかと私は考えております。  将来一体どうするかということになりますと、これまた別の話になってくるのだろうと思いますが、現在はそういった形で、尾根伝いに歩いているということかもしれませんけれども、非常にむずかしい状態を歩いているという感じはいたしますが、何とかやっていけるだろう、こう思っております。
  99. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 銀行局長にお尋ねいたしたいのですが、金融特集の統計によりますと、五十二年度中の「全国銀行の預金等の増加額に対する資金運用の割合」という表がございます。預金、債券のなにが十三兆六千億余り、それのいわゆる資金運用を見ておりますると、有価証券が四〇ですかその割合で、公共債の引き受けが三四、その中の国債の引き受けが二八・五、こういうような割合になっているようでございます。貸し出しは六九・七で、中小企業向けの貸し付けが三四・八。そこで、五十四年度はどういう傾向をたどっていくのでしょうか、そういうような見通しはつけていらっしゃるんですか。
  100. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生指摘のとおり、五十二年度におきましては全国銀行の資金運用というのは、普通のいわゆる銀行というところのイメージから連想されるような大企業向けの資金運用ではなくて、むしろ貸し出し面では中小企業あるいは住宅向けが主体でございますし、それから有価証券では公共債が主体である、いわゆる大企業を含めて一般の貸し出しは二三%にすぎない、このような状態になっているわけでございます。  これは、経済構造高度成長から安定成長へ移行するに従いまして、資金の需要全体が構造的に変化しているわけでございまして、かつては一般企業に対する資金の運用が資金運用全体の七割近くを占めていたわけでございますが、それが現在は四割近くに減りまして、逆に公共部門の比率が高くなり、また個人部門の比率が高くなっているわけでございます。これはこのような経済構造の基調の変化を受けた資金需要構造の変化でございまして、これからの安定成長経済下における金融面では、大勢としてはこのようなことでこれからも推移するのではないか、このように考えております。
  101. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 まさにそうだろうと思うのですが、どうもこんなに国債が次々に増発をされてまいりますと、金融機関というのは国債を引き受けるところだというようなかっこうで、国債引受金融機関というような名前をもらってもいいように感じます。それが資産運用としてペイをするんだったらそれは結構なことなんだけれども、どうも泣きの涙で応ぜざるを得ないような状態があるということになると、これは渋い顔をしているのは金融界だということが最近言われておりますが、それはまたこれから質問をいたします。  国債価格変動引当金、これは評価損なりあるいは売却損を計上せざるを得ないようになってきたということで、そういうような銀行の経営に対して監督官庁である大蔵省が、このようなことをしなければ大変だということでつくられた気持ちはよくわかるのです。ところが国債の場合には、前に経理基準がございまして、その中では、国債価格変動準備金というのが過去においてございました。有税引き当てであるとは言いながら留保性の利益をそういうふうに経理区分をする、こういうようなことが銀行局長通達で果たしてできるのだろうかということで、私はやらなければならない必要性というものはよく理解ができるのですが、そういうことのやり方ですね。銀行法というのは古い法律ですが、これは業法ではない。それで、銀行業務というのは商法や民法によってやっていくのだ。だからいまの銀行法自体が、監督官庁があって、主務大臣が検査をしたりあるいは規制をしたりするような形で運用をするという仕組みになっておりますから、おれたちはその権限に基づいてやったのだとおっしゃればそのとおりでしょうが、一体これは根拠は何によっておやりになったのですか、改めてお聞かせをいただきたいと思います。
  102. 徳田博美

    ○徳田政府委員 国債の評価損に対処するためのいろいろな措置につきましては、先生指摘になられた点もございまして法律的な面からいろいろ検討したわけでございます。たとえば低価法による評価を時価法に改めるとか取得原価法に改めるとか、そのような考え方もあったわけでございますが、いろいろな方式を検討した結果、国債につきましてはこの価格変動引当金をとることにしたわけでございまして、その根拠といたしましては、この国債の評価損に備えて計上する引当金は商法の二百八十七条ノ二に掲げる特定引当金に該当する、このような解釈で行っております。  その商法の特定引当金に該当する理由といたしましては、金利が上昇すれば国債の時価が下落することは必然的でございまして、経済情勢の変化に伴う金利の変動は不可避でございます。そこで、将来の金利水準の上昇に伴う国債の評価損等の発生はその蓋然性が高いというのが第一の理由でございます。それから、国債の時価はおおむね金利水準と連動して変動するものでございますので、将来の国債時価の下落によって生ずべき損失の合理的な推計が可能である、これが二番目の理由でございまして、この二つの理由によりまして商法上の特定引当金としてこの設置を認めたわけでございます。
  103. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 商法の特定引当金に相当するものだ、こういうことでございますが、これは銀行法なりあるいは大蔵省設置法、そういうような面からの検討はどうなっておるのですか。
  104. 徳田博美

    ○徳田政府委員 金融機関、銀行の決算経理につきましては、先ほど先生指摘のように、経理処理の適正化を図り、経営の合理化を促進するとともに、自己資本の充実と資産内容の健全化を図るというような観点から、銀行局長通達に基づきまして昭和四十二年以降、統一経理基準による経理処理を行わせているわけでございまして、今回は、この統一経理基準の改正によりましてこのような引当金の創設を指導したわけでございまして、これは金融機関に対する一般監督権の範囲内における行政指導である、このように考えております。
  105. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで私もいろいろ疑問を持ったのは、銀行法施行細則によって特定引当金というような項目を起こされたのだろうということなんですが、前に銀行の経理基準について通達を出されております。五十年の七月七日ですが、その場合には趣旨が書いてございまして、「商法の一部を改正する法律及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律が公布された機会に、銀行の経理基準を下記のように改正することとする。」ということで、改正の根拠というものを明示していらっしゃるわけです。今回はどのようななにによって出されたものですか。
  106. 徳田博美

    ○徳田政府委員 前回改正いたしましたのは、先先御指摘のようなことがございまして、それを契機として改正をしたわけでございまして、そのこと自体が必ずしも改正の根拠ではなかったわけでございます。今回、国債価格変動引当金を創設するに至りました経緯といたしましては、先ほどから先生いろいろ御指摘のように、国債の大量発行下におきまして金融機関の経理の安定性あるいは資産内容の健全性を保持させるという観点から、この改正を行ったわけでございます。
  107. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 安定性、資産内容の健全性と非常にいいことなんでしょうが、現在価格変動準備金の中で積まれておりましたもの、それから昨年の九月の決算期から特定引当金を創設されたわけですが、評価損なりあるいは売却損で処理を認めたものはそれぞれどういうふうになっておりますか。
  108. 徳田博美

    ○徳田政府委員 国債価格変動の引当金が創設されましたのは去年の九月期でございますが、その後、実はことしの三月期でまだ評価損を計上するような決算の処理が行われていないわけでございます。したがいまして、まだ実際の処理は行われていないわけでございますが、仮に評価損が発生いたしました場合にはその処理といたしましては、取り崩し方法といたしましては、評価損の百分の四十に相当する額を取り崩してこれに充てる、これは税の関係で百分の四十という数字でこれを取り崩す、一応このような取り決めになっております。
  109. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 価格変動準備金は全部でどれだけ積まれているんですか。——概数でいいですよ、正確でなくても、大まかな数字で。
  110. 徳田博美

    ○徳田政府委員 これは五十三年の上期でございますが、全国銀行で価格変動準備金の繰入額が四百八十八億円でございます。
  111. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 上期の数字はわかりましたが、下期までどれくらい積まれるのかまだ未定でありますし、評価損がどれだけ発生をするのか売却損がどれだけ発生をするのか、国債の上場、非上場の期間もございますのでどういう数字になるか、やはり一定の見通しをお持ちにならなければこういう制度をつくった理由がないと思うのです。したがいまして、価格変動準備金では評価損が出ればそれだけよけい積み増しをしなければならない制度でございますから、実情に合わないわけでございますので、その引当金というものを創設せざるを得ない。その引当金でどういうような事態に対応ができるか、一応の目安をお持ちになっていらっしゃるはずだと思うのですが、最近の国債の価格の下落といいますかそういうような事態に備えるのに、予定として考えておいでになるものはどの程度でございますか。
  112. 徳田博美

    ○徳田政府委員 一応五十四年三月期の見通しでございますが、仮に評価損が四円であるという仮定のもとに計算をいたしますと、都銀、地銀、長銀、信託合計で約八百億円の評価損が発生する見通しでございます。一方、前期末の国債価格変動引当金の残高は四百六十七億円でございますが、先ほども申し上げましたように税の関係がございますので、これは二・五倍に働くわけでございまして、約千百七十億円ぐらいに働くわけでございます。これと八百億円とを比較いたしますと、まだ若干余裕がある、このような形になるわけでございます。
  113. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 四円の値下がりだけでそういうようなことになります。これは最近の国債発行残高が大きくなっておりますので、非常に数量的に、値上がり値下がりによりまして大変なそういうような影響が出てくるということになってくると思うのです。引き当てができるところはいいわけですけれども、全体の経営が非常にうまくいかなくなってきつつある、資産運用の面でうまみがない、国債を持たされてもその面では赤字になっているようなところでは、これはますます大変でございます。そういうような意味では、もう長期国債というのは限度いっぱいまで来て、まさに政務次官がおっしゃるように峰渡りというのですか、そういうような剣が峰に立たされているような状況だと思います。  そこで時間がありませんので、質問を通告いたしましたのは全部しゃべれませんけれども最後一つだけお尋ねをしておきたいと思います。  というのは、最近の景気動向ですが、この中から企業収益が急速に好転をしてきている。三月期の予想増益率は二〇%近くなるんじゃないだろうか、史上最高の経常利益ベースじゃないだろうかという報道が最近されております。特に製造業、その中でも、いままで不振でありました素材産業は、業績が好転をし、そして九月期でさえも減収増益決算ができた、今回は大変な収益が生まれるだろうと三月期の決算が期待をされている。そういうようなことから、五十四年度の上期も、経済企画庁の設備投資計画の調査によりましてもあるいは通産省の設備動向調査によりましても、相当投資が動いてくるんじゃないかと、民間の設備投資が動いてくるような状況が伝えられております。  そこで、これは結構なことだと私は思うのですが、問題は、三月の上場会社等を中心にいたしました法人決算が非常に好調である。私も田舎の税務署に確定申告に参りましたら、四割ぐらいのところの企業は余りよくないけれども、六割を超えたところの、比率の上において六、四の割合で法人企業は大変好調です、残った四割はどうも赤字かあるいは法人税を納めるような力がない、こういうようなかっこうになっておりますという話を聞きました。そこでそういうような形の中で、税収が自然増収という形で生まれてくることが予測がされるわけです。そういうような事態に立ち至った場合には、従来そういうような税収の自然増収等については、国債整理基金の方に半分は入れるとかなんとかというようなのもございますが、問題は、どうも今日の経済状況から考えますと、インフレの心配も予想されるような状況でございます。これは通貨の供給の発行量の増大、その根底には国債の大量発行、こういうようなものも予想される状況の中にありましては、財政当局としてはできるだけ赤字国債発行の方を削っていくような方向の中で問題を処理をしなければならないんじゃないだろうかという気がいたすのでございますが、これに対する政務次官のお考えをお聞きをいたしまして、私の質問を終わりたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  114. 林義郎

    ○林(義)政府委員 先生指摘のように、確かに景気が上昇気配にある、こういうことでございますし、それに伴いまして税収の伸びも期待できる部面もあると思うのです。ただ、個別の法人税とか所得税、所得税の中でも、三月の源泉所得税とそれから申告所得税とそれぞれ違った動向を示しておりますから、いまのところ一概に絶対大丈夫だというところまではまだ行っておりません。行っておりませんし、この税収の動向を見ながら特例国債節減をしなければならないということも同様でございますし、そういった動向を見守りながら対策を考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  115. 加藤六月

    加藤委員長 この際、田中理財局長より発言を求められておりますので、これを許します。田中理財局長。
  116. 田中敬

    田中(敬)政府委員 お時間をいただきまして、本日いろいろ国債につきまして御質疑をいただいておる最中でございますので、大蔵省といたしまして、本日新たな国債一つの対策をとることを決定いたしましたので、この席上で御報告を申し上げたいと存じます。  それは、昨年九月に資金運用部が三千億市中から国債を買い入れたことがございます。それと同じように、本日この審議をいただいております最中、午後三時ごろであろうと思いますが、日本銀行が関係金融機関に対しまして、運用部が国債を一三千億買い入れる、国債の銘柄は第八回利付債で六・六%クーポンもの、これを三千億買い入れるというオファーをいたしました。本日オファーをいたしまして、二十二日に入札の締め切りを行いまして、四月三日に運用部へそれが入る、こういう措置を行いました。  これを行いました理由は、御承知のように運用部には、預託と運用の間のずれで相当の短期に運用し得る余裕資金の根雪のようなものがございます。そういうものはいま従来とも政府短期証券で運用してまいったわけでございますけれども、七十数兆に及ぶ運用部の収支対策上、なるべく有利な運用に資したいという観点で、運用部の収支改善、あわせて国債市場の安定に資するという目的をもちましてそういう措置をとることを決定いたしましたので、この席をかりて御報告させていただきます。
  117. 加藤六月

    加藤委員長 次回は、来る二十日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十六分散会