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1978-03-28 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十八日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 羽生田 進君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    大坪健一郎君       大野  明君    川田 正則君       小坂徳三郎君    斉藤滋与史君       齋藤 邦吉君    津島 雄二君       戸沢 政方君    友納 武人君       葉梨 信行君    橋本龍太郎君       安島 友義君    上原 康助君       枝村 要作君    大原  亨君       金子 みつ君    川本 敏美君       栗林 三郎君    田口 一男君       千葉千代世君    矢山 有作君       草川 昭三君    古寺  宏君      平石磨作太郎君    浦井  洋君       田中美智子君    工藤  晃君  出席国務大臣         労 働 大 臣 藤井 勝志君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      三島  孟君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁労務         部長      菊池  久君         労働政務次官  向山 一人君         労働大臣官房審         議官      谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業安定         局失業対策部長 細見  元君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  委員外出席者         沖繩開発庁総務         局総務課長   関  通彰君         沖繩開発庁振興         局振興総務課長 中沢 祥枝君         外務省アメリカ         局安全保障課長 丹波  実君         大蔵省主計局主         計官      窪田  弘君         大蔵省主税局税         制第一課長   矢澤富太郎君         厚生省保険局保         険課長     小島 弘仲君         労働大臣官房参         事官      鹿野  茂君         労働省労働基準         局監督課長   小粥 義朗君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 森  英良君         建設省都市局公         園緑地課長   三好 勝彦君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     稲垣 実男君   川田 正則君     木村 俊夫君 同日  辞任         補欠選任   稲垣 実男君     石橋 一弥君   木村 俊夫君     川田 正則君 同月二十八日  辞任         補欠選任   川本 敏美君     千葉千代世君 同日  辞任         補欠選任   千葉千代世君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     川本 敏美君     ————————————— 三月二十三日  職業訓練法の一部を改正する法律案内閣提出  第五五号) 同月二十四日  労働組合法の一部を改正する法律案内閣提出  第三七号)(参議院送付) 同月二十七日  全国全産業一律最低賃金制確立に関する請願(  田中美智子紹介)(第二五〇〇号)  同(正森成二君紹介)(第二五〇一号)  消費生活協同組合育成強化等に関する請願(  小林政子紹介)(第二五〇二号)  同(松本善明紹介)(第二五〇三号)  同(小宮山重四郎紹介)(第二五二四号)  同(石川要三紹介)(第二五五一号)  同(小川新一郎紹介)(第二五五二号)  同(大野潔紹介)(第二五五三号)  同(佐藤守良紹介)(第二五五四号)  同(萩原幸雄紹介)(第二五五五号)  戦時災害援護法制定に関する請願楢崎弥之助  君紹介)(第二五〇四号)  同(渡辺武三紹介)(第二五五八号)  同外二件(下平正一紹介)(第二六二七号)  社会保障社会福祉拡充等に関する請願(二  見伸明紹介)(第二五〇五号)  同外一件(大野潔紹介)(第二五二三号)  同(有島重武君紹介)(第二五三八号)  同外一件(小川新一郎紹介)(第二五三九  号)  同(古川雅司紹介)(第二五四〇号)  失業対策事業就労者通勤交通費支給に関する  請願二見伸明紹介)(第二五〇六号)  国民年金改善に関する請願松本善明紹介)  (第二五〇七号)  同(有島重武君紹介)(第二五三七号)  療術単独立法化阻止に関する請願正森成二  君紹介)(第二五〇八号)  療術制度化に関する請願山本悌二郎君紹  介)(第二五〇九号)  同外九件(大内啓伍紹介)(第二五二一号)  同(山本悌二郎紹介)(第二五二二号)  同外四件(池田行彦紹介)(第二五四一号)  同(大野潔紹介)(第二五四二号)  同外二十八件(小坂徳三郎紹介)(第二五四  三号)  同外四件(佐藤守良紹介)(第二五四四号)  同外六件(萩原幸雄紹介)(第二五四五号)  同外二件(浜田幸一紹介)(第二五四六号)  同外七件(福田篤泰紹介)(第二五四七号)  同(古川雅司紹介)(第二五四八号)  同(山本悌二郎紹介)(第二五四九号)  同(綿貫民輔紹介)(第二五五〇号)  同外八件(石原慎太郎紹介)(第二六二五  号)  同(山本悌二郎紹介)(第二六二六号)  奄美大島医師介輔身分喪失に伴う補償措置  に関する請願草川昭三紹介)(第二五五六  号)  同(古川雅司紹介)(第二五五七号)  准看護婦制度廃止に関する請願山崎拓君紹  介)  (第二六二八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三四号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第三五号)  職業訓練法の一部を改正する法律案内閣提出  第五五号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  特定不況業種における雇用失業問題に関する実情調査のため、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木野晴夫

    木野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、派遣の日時、派遣委員の人選、派遣地等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木野晴夫

    木野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 木野晴夫

    木野委員長 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大橋敏雄君。
  6. 大橋敏雄

    大橋委員 勤労者財産形成法と言えば、連動して思い出される言葉は小さく産んで大きく育てるということです。なるほど昭和四十六年、財産形成法を創設しようということで国会で論議したころは、高度成長期でもあったし、あるいは人手不足の時代でもあった。また賃金水準もかなり向上したという状況下にあったわけですね。ところが、現在の社会経済環境というものは一転しまして、きわめて厳しい状況にあります。御承知のとおりに長期不況ということから、企業にありましても労働者福祉どころではない。また事業を支えるだけで精いっぱいだというような状況のもとにあるわけです。勤労者の立場からも、企業倒産等失業の不安が常につきまとっている。このような状況下で今回の財形法改正が行われるわけでございますが、私は、この勤労者財産形成法の基本的な理念といいますか、勤労者財産形成のための自己努力に対しまして、国や事業主が積極的にこれを援助して、勤労者財産形成を促進させようというのがその理念であったかと思うのでございますか、この考え方について変わりはないのかどうかということを、まず確認をとっておきたいと思います。
  7. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のように、この財形法制度化した当時の日本経済社会情勢というのは、いわゆる高度成長を背景とした情勢でございまして、そういう面からいいますと、経済的に恵まれたときに生まれた、こういうことであります。  それから現在の厳しい環境に入り込んできておりますけれども、そのような環境の変化にかかわらず、勤労者財産形成促進理念昭和四十八年の答申において、その理念が明確にされたわけでございまして、勤労者自主努力を国と事業主がバックアップして、そして勤労者のいわゆる資産形成充実していこう、こういう考え方、これは微動だにしない。幾ら困難な客観情勢であっても、これを貫き通していくという考えでございまして、勤労者賃金水準欧米並み相当改善をされてきましたけれども、いわゆる資産ストックの面においてはまだ非常に十分でない。したがって、いわゆるストック充実させる、こういったことによって基本理念に基づいて今後もひとつ充実、整備していく、こういう考え方で貫きたい。微動だにしない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  8. 大橋敏雄

    大橋委員 基本的な理念は少しも変わっていないのだということであるならば、私は今回の改正案内容を見ていますと、当初、労働省改正に当たりまして基本問題懇談会研究成果を踏まえて、いわゆる労働省改正原案として考えていたものとは大きく後退した内容となっている。これは残念でならぬわけです。この財産形成法維持発展のために必然的に改善を加えなければならぬ問題が取り上げられていたにもかかわらず、これは後退している。これはいかなる理由で後退したのか、説明を願いたい。
  9. 桑原敬一

    桑原政府委員 私ども、今回の財形法案の具体的な案を練ります場合につきましては、四十六年の基本理念あるいは、その後の審議会のいろいろな経過を踏まえて案をつくったわけでございます。私どもが今回、特に改正のポイントに置きましたのは、事業主のいろいろな援助と申しますか、そういう点が必ずしも十分でなくて資産形成がおくれているという面が一つございます。もう一つは、財形貯蓄相当の額にたまってまいりましたけれども、その還元融資的な仕組みというものが十分でない。こういう点が二つの柱でございます。  もう一点は、私ども原案に盛っておりましたのは、財形貯蓄について税制上のいろいろなインセンティブをもう少しふやしたいということを考えておりました。ただ、この問題につきましては、御承知のように日本のいまの財政状況の中において、その問題をどう扱うという政府部内の意思統一もございまして、特にいま、こういった貯蓄が非常にふえております段階で、日本経済の今後の運営をどうするかという問題を考えます場合には、貯蓄を奨励するよりも現段階はむしろ消費を勧めていくということの方がより重要ではないかというような基本的な議論がいろいろございまして、私ども基本理念としては、今後とも財政上の恩典をいろいろと生かしながら財形貯蓄を進めていかなければならぬという考え方を持っておりますけれども、今回の改正においては、そういった政府内の議論の中においても、先ほど申しました二点について最重点を置いて今回の御提案をいたしたようなわけでございます。
  10. 大橋敏雄

    大橋委員 この労働省改正原案には四つの柱が立っていたはずです。その一つは、財形貯蓄制度改善、いわゆる税制上の改善問題ですね。二つには、財形給付金と同助成金制度拡充、また財形基金制度の創設、財形融資制度拡充というものであったはずです。基金の新設だとか、あるいは給付金に対する助成金あるいは交付範囲拡大還元融資対象拡大等を見れば、いわば財形制度基本線をたどっていること、これは間違いないと思いますか、それにいたしましても今回の内容は、勤労者の実態的な実情といいますか、それに対しては目をつぶっているのではないかと思わざるを得ない向きがあります。  と申しますのは、財形基金改正案の中に具体化されてきているわけですか、財形貯蓄税制優遇措置などは全滅というかっこうになっております。勤労者高齢化、ライフサイクルのニーズに応ずるためのいわゆる結婚資金融資あるいは社内預金財形貯蓄への移行、定年退職後の継続措置は見送られているということであって、きわめて残念でならぬわけでございますが、この点について、一体どういうわけで、このように全滅させられるようなかっこうになったのか、もう一度答弁を願いたいと思います。
  11. 森英良

    森説明員 ただいま労働基準局長から御説明申し上げましたように、当初の原案におきましては財形貯蓄につきましても、特に中高年齢者についての枠の引き上げでございますとか、定年退職者についての退職後における利子の非課税措置継続でございますとか、また社内預金から財形貯蓄への切りかえにつきましての減税措置継続の問題でありますとか、さらに結婚融資というようなものもあわせて検討したことは、御指摘のとおりでございます。  しかしながら、特に財形貯蓄につきましては、とにかく現在の財形制度の現状が、問題点といたしましては、やはり貯蓄はとにかく伸びておる。ところが事業主に対する援助制度でありますとか、あるいは財形貯蓄原資とします融資制度還元状況がまことにふるわないというところに、どうも基本的な問題がございまして、そのほか御承知のような財政状況でございまして、減税措置拡充そのものについて非常に厳しい環境でございましたし、また現在の経済情勢から、貯蓄の奨励もさることながら当面は国内の消費需要拡大が必要でなかろうかというふうな問題もございましたし、さらに財形貯蓄の枠の拡大につきましては、ほかのマル優制度その他の一般の非課税枠との関係についてバランス考えなければならぬというようなこともございまして、今回の改正におきましては財形貯蓄面での特に税制上の優遇措置拡大は見送らざるを得なかったということでございます。  しかしながら、貯蓄そのものに対する優遇改善ということは、われわれもなお今後とも努力すべきだと思っておりますので、また機会をとらえまして、いろいろ検討してまいりたいというふうに考えております。
  12. 大橋敏雄

    大橋委員 要するに、税制状況国民経済状況等から、今回はその主眼を事業主援助制度及び融資制度拡充に置いたということだろうと思うのですが、われわれが情報を探りました上においては、これは大蔵省がいまも減税まかりならぬというかたくなな態度から、とうとう見送らざるを得ないということのようであります。これはやはり問題だと思います。  財政の均衡は、中期的に対処すべきだろうと私は思うのですが、当面は個人消費の喚起が景気浮揚重要課題とされまして、減税が必要だとの客観情勢もあることは御承知のとおりであります。ましてや財形制度は、勤労者の自主的、積極的な社会保障としての性格や、あるいは一面はインフレ阻止性を勘案できるわけでございまして、そういうものを考えていきますと財形貯蓄税制上の優遇措置改善などは何も反対される理由はないと私は思うわけでございます。結論的に財形制度理念、その重要性に対する認識がきわめて不十分ではないか。十分にその認識が徹底されていないということにあろうと私は思うのです。要するに、この財形理念とその重要性に対する知識と関心の向上に労働省としては全力を挙げるべきではないかと私は思うのです。これについてどのようなお考えか、お尋ねいたします。
  13. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘の点は全く同感でございまして、われわれも今後、財形審議会、こういった場を通じて御指摘の点を、われわれ労働省というところだけでは解決ができませんので、御指摘のような大蔵省中心に全体的に財形制度理念か後退しないように、着実に漸進的に推進していくということに対して全力を尽くしたい、このように考えております。
  14. 大橋敏雄

    大橋委員 結論的に申し上げますと、労働省原案に盛り込まれていたあの内容というものは、あきらめたわけじゃないんですね。必ずその方向で実現するよう努力していくということですな。
  15. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のとおりでございます。
  16. 大橋敏雄

    大橋委員 老齢化社会への急速な進展と社会保障充実は一体不可分の関係にあると思います。特に年金医療制度改善が急務とされている今日でございますが、これらの社会保障充実、いわゆる高福祉、高負担など言われているわけでございますが、そのような推移の中において財形制度の位置づけをどう考えておられるのか。この点をお尋ねしておきたいと思います。
  17. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御承知のごとく、今後の日本人口構造というのか、いわゆる高齢者社会にすでに入っておるわけでございまして、そういう面からいいまして公的なバックアップによっての社会保障制度という、これが老後の生活の安定保障のために必要でありますけれども、ただそれだけではなく、やはりみずからの力で老後に備えるという自主的努力というものを主軸にして、それに国や、あるいは勤労者であれば事業主、こういったものが援助していくという財形制度というのは、まさに私は車の両輪として両々相まって高齢者社会老後保障に備えるべきだ、このように考えておるわけでございます。
  18. 大橋敏雄

    大橋委員 考え方はよくわかるわけですが、老齢化社会となれば当然、社会保障充実社会保障拡充していけば負担の増大。これは税金か社会保障料かで、それが増大されていくわけでございますが、それはいわゆる強制貯蓄というようなかっこうになるわけですね。  御承知のとおり、現在わが国の貯蓄性向というものは非常に高いものでありまして、可処分所得の二〇%余りが貯蓄に向けられている。これが社会保障大幅充実ということになると、その名のもとに、その分が取り上げられるかっこうになるんではないか。つまり、年金だとか医療の問題に、その余力のあったお金が持っていかれる。そうなると、せっかくのいまの財産形成のための、いわゆる自己努力による貯蓄、これには国や事業主援助するわけでございますが、その方がそがれていくんじゃないか。ですから将来、この財産形成社会保障充実阻害要因になっていくんではないかというような懸念を抱かざるを得ないわけですが、その点について、もう一度、確認の意味を含めて答弁願いたいと思います。
  19. 藤井勝志

    藤井国務大臣 確かに、国の経済から生み出すお金と申しましょうか果実というものは、一応もとは一緒でございますから、どちらかに比重がかかれば、たとえば公的年金中心にした社会保障重点がかかれば、財形貯蓄の方があるいはおろそかにされる危険性といいますか可能性は、私は御指摘のごとくあると思うんです。しかし物の考え方としては、私はやはりみずからの力で老後に備えるという、この自助自立の精神、自力更生考え方というものが、むしろ主体であって、それに対して公的年金中心にした社会保障制度というように考えていく。重点はむしろ自助努力というものを中心に置いて高齢者社会に対応するというのが健全な国家の姿勢ではないか、私はこのようにさえ思うわけでございますが、ともかく車の両輪としてバランスをとっていく、こういったことを踏まえながらも、考え方としてはいま申しましたような考え方を選ぶべきではないか、こう思うのであります。
  20. 大橋敏雄

    大橋委員 時間が限られておりますので次に移ります。  持ち家融資制度に関しまして、財形法制度上は財形貯蓄残高の三分の一までは財形融資原資として調達できることとなっているわけでございますが、実績はきわめて伸びていない。その原因は一体何なのかということが一つ。  それから雇用促進事業団あるいは勤住協などの関係団体一緒になって、勤労者住宅あり方と合理的な財形住宅標準的タイプを研究する必要があるのじゃないかという声があるわけでございますが、この点についての御見解を承りたい。
  21. 森英良

    森説明員 先生御指摘のとおり財形貯蓄はすでに一兆六千億あるいは八千億というところまで、きわめて順調な伸びを示しておりますのに対しまして、これを原資とする持ち家融資につきましては、これまでの実績は総計で三百億程度の貸し出しになっておりまして、法律上三分の一までは還元できるとなっておる関係からも、融資還元の面での実績はまことにふるわないということは御指摘のとおりでございます。  そこで、この原因でございますが、いろいろのことが考えられますけれども、この持ち家融資が始まりましたのか、ちょうどオイルショックとぶつかりまして、その後の経済環境の悪い時期に差しかかりまして、なかなか融資の面でも阻害的な要因があったということもございますし、それから何分にも、まだ新しい制度でございまして、融資制度内容等のPRも十分に行き届いておりませんし、いろいろな問題があろうかと思います。また制度面におきましても、なおいろいろ工夫の余地があるように見受けられまして、そういう点も含めまして、今回の改正案におきましては特に持ち家融資制度拡充ということを最重点一つ改善を図ったわけでございます。  その改善内容でございますが、一つには、特に個人融資につきましては融資限度額を二倍から三倍に引き上げるということでありますとか、あるいは融資のための資格要件につきまして、やや厳し過ぎた面を緩和するとか、それから特に、これまで勤労者住宅協会が民間の勤労者向けにのみ分譲をやっておりましたのを公務員にも行えるようにするとか、そのほか公務員につきましては、これまで財形貯蓄だけはやっておりましたけれども融資還元の面が不十分でございますので、この点についての制度の障害を除くための数点の改善を行うとか、いろいろ配慮しておるわけでございます。
  22. 大橋敏雄

    大橋委員 要するに住宅政策土地対策は不可分の関係にあるわけでございますが、これに対する対応がまずかったということ。また先ほど申し上げましたように、雇用促進事業団勤住協など、こうした関係団体が相協力して勤労者住宅あり方やあるいは合理的な財形住宅標準的タイプを研究する、こういうことにまだ力が注がれていなかったという問題だろうと思うわけです。これは大いに反省していただいて前進の要素にしていただきたいと思います。  次に、教育融資でございますけれども進学融資といえども、その合理的な範囲があると考えます。融資対象となる進学にはどのようなものを考えているのか、お尋ねしたい。また融資条件と金利は何%にする考えなのか、これもあわせて、お伺いしたいと思います。
  23. 森英良

    森説明員 進学融資対象となる教育施設範囲につきましては、これから固めてまいるところでございますが、一応高等学校、大学または高等専門学校、その他の教育施設対象考えたいということでございます。その場合、その他の教育施設といたしましては、たとえば専修学校各種学校等のうち専門的知識を必要とする職業につくために必要な教育施設というものも考えておりますが、なお細部は、これから詰めていきたいと考えております。  なお、融資条件でございますが、これは財形貯蓄を実施しておる勤労者に貸すことにいたしまして、貯蓄残高の三倍、限度額三百万ということで考えております。  なお、利率につきましては、これはまだ決まっておりませんが、一応八・四%内ということで決めたいと考えております。
  24. 大橋敏雄

    大橋委員 高校、大学、短大、高専あるいは大学院も当然入ると思います。その他、一定の職業につくために必要不可欠な教育機関に入るものは認めていこうということで考えている、このように理解してよろしいですか。
  25. 森英良

    森説明員 そのとおりでございます。
  26. 大橋敏雄

    大橋委員 では次に移ります。  給付金制度は現行どおりであるわけでございますが、今回、助成金の交付対象については、従来の百人以下を三百人以下に拡大し、助成率三%。従来の五%、一〇%の助成率と交付対象は据え置かれたわけでございます。今回の改正案一つの目玉となっているのは財形基金でございますが、これは四十九年廃案となった当時の改正案内容そのものなのかどうかということですね。たとえば、事業主が拠出したものを労使の代表が自由に運用して七年後に従業員に元利を給付する、こういう内容になっていると思うのですが、その点をちょっとお尋ねしたいと思います。
  27. 森英良

    森説明員 財形基金制度と申しますのは、御指摘のとおり四十九年に国会に提出いたしまして参議院段階で廃案になりました案の中にもございました。その意味では、今回は二度目の提案ということでございますが、前回の財形基金制度におきましては、その運用の方法が当初の案では、現在、給付金制度になっております制度とは若干違った運用ができるようにしたいということであったのでございますけれども、結果的に政府内で合意が得られまして国会に出しました案におきましては、運用の点では、いまの給付金と全く違わないという内容基金制度であったわけでございます。そこで、次の五十年に再度、財形法改正法案を提出します際に、どうも運用方法が同じであっては給付金制度と実質的に何も違わないじゃないか。事改めて給付金制度と並んで基金制度を提案する理由もないのじゃないかということで、こちらの側の発意で基金制度を落としまして、給付金制度だけについて法案の内容として国会で御審議いただいたわけでございます。  しかしながら、今回御提案しております基金制度は、運用の面において、いまの給付金制度とは大幅に違っておりまして、給付金制度は現在、信託と生命保険、類型としましてはこの二種類しかないのでございますが、今回の基金制度は、それ以外に預貯金あるいは公社債の購入、金融債の購入というようなことでございまして、都市銀行、地方銀行あるいは労働金庫その他も取扱機関になりますし、また長期信用銀行、証券会社等も取り扱えるということで、取り扱える金融機関の範囲が非常に広がりまして、同時に取り扱える商品の範囲も広がっておるということで、前回の基金制度とは大きく違ったものになっておるわけでございます。
  28. 大橋敏雄

    大橋委員 いま基金制度給付金制度との異なりについて述べられたわけでございますが、要するに労使が自主的に資金の運用ができる。給付金は、その運用はもっぱら金融機関に委託するたてまえになっているわけでございますが、この基金の方は委託もよし、預貯金あるいは有価証券、生命保険など自由に運用できると解してよろしいですね。
  29. 森英良

    森説明員 今回の財形基金におきましても、基金は、いろいろな金融機関などの中から特定のものを選びまして、それと基金契約を締結して、それを通じて契約の相手方の金融機関等によって、いろいろ資産を運用してもらうということになるわけでございますが、非常に広範囲にわたる金融機関等の中から自主的に契約すべき相手を選択いたしまして、これに拠出金を合理的に配分して、全体として安全かつできるだけ有利な運用を図れるという点で自主的な運用の幅が広がっているわけでございます。
  30. 大橋敏雄

    大橋委員 一定規模以上の事業所に限定したということでございますが、これについて。
  31. 森英良

    森説明員 財形基金制度はやはり独立の法人でございまして、したがって意思決定の機関でございますとか、執行の機関というようなものを労使共同で設けているわけでございます。したがいまして、余りに小さなものでは、そういう法人としての安定性という面からも問題がございますので、やはりその構成員の人数につきまして最低限は切らなければならないであろうというふうに考えておるわけでございます。とりあえず、その人数は百人以上という程度で切りたいというふうに考えております。厚生年金基金等におきましては千人以上というような、かなり大きい最下限が決まっているわけでございますが、財形基金制度につきましては、厚生年金基金の場合のような保険数理的配慮というようなものは必要といたしませんので、百人以上程度の規模で切っておけば十分であろうというふうに考えている次第でございます。
  32. 大橋敏雄

    大橋委員 いまおっしゃるとおりに財形基金というものは事業主とは別個の独立した人格を持つ法人とされる。したがって私は実際の事務は基金が行うと考えるわけでございますけれども、事務局を置いたり、あるいは従業者を雇用したり、事務費負担等が相当なものになると予想するわけでございますが、こういう点については、どのようにお考えになっているかお尋ねします。
  33. 森英良

    森説明員 確かに基金制度を設けますと、基金の運用に関連しまして、ある程度の事務費がかかることは当然でございますが、この負担は拠出金とは別途に事業主がもっぱら負担してもらうということになっております。ただ基金制度におきます運用に関連しますいろいろな事務費と申しますのは、実態的に見ますと、先ほど申し上げました金融機関等の中から欲する金融機関を選択いたしまして財形基金契約を締結する。同時に、そういう複数の取扱金融機関があります場合には、それらに対する資金の割り振りを決めるというふうなことが中心でございまして、それほど大きな事務負担を生ずるものとは思いません。したがいまして、非常に大きな企業基金の加入員も多いというような場合は独自の事務局をつくることもあり得ようかと思いますが、一般には、その企業の福利厚生を担当する部局か、この基金制度の事務も兼ねて行うというような方法もあり得るわけでございまして、全体として余り負担にならずに合理的に運用され得るものと考えております。
  34. 大橋敏雄

    大橋委員 基金の設立の原則であります「一の事業主の全部又は一部の事業場について設立することができる。」そして一定の関係にあるものと言われているわけでございますが、この一定の関係とは中小企業が集まっている、いわゆる総合設立のようなものを指すのかどうか、この点も確認しておきたいと思います。
  35. 森英良

    森説明員 財形基金は、「一の事業主の全部又は一部の事業場について設立する」というのが原則でございますが、御指摘のように、政令の定めるところによりまして共同で複数の企業が集まってつくることもできることになっております。政令でどういうことを決めるべきかという点につきましては、いま考えておりますのは一応、同一の資本系列にある場合、あるいは元請、下請の関係にあるような場合、あるいは同一の地域内にある場合というふうな関係を予定しておりまして、この措置を通じまして、御指摘のとおり中小企業事業主が単独ではできないけれども、相集まって共同で基金をつくるということもできるように道を開きたいというふうに考えております。
  36. 大橋敏雄

    大橋委員 言うならば企業内福利厚生制度ということですから、あえて総合設立を必要としない。また一定の資本関係、元請、下請また同種同業ということで設立していくのだ、このように理解してよろしいですね。
  37. 森英良

    森説明員 そのとおりでございます。
  38. 大橋敏雄

    大橋委員 給付金制度を現に実施していて今度、基金制度の話を聞いた。では基金制度を採用したいと考えたときに、この辺の関係はどうなるのでしょうか。
  39. 森英良

    森説明員 給付金制度基金制度とは、いわば同じ目的に沿った一種のバリエーションでございまして、どちらかを選択してやっていただくという性質のものでございます。したがいまして、御指摘のように現在すでに給付金制度をやっておりまして、今回、基金制度ができましたので、これからは基金制度にしたいというケースも出てくることが考えられまして、法案の作成段階では、そういう場合の円滑な変換の道も考えるべきじゃなかろうかということで大分検討したわけでございます。しかしながら、どうもそういう変換を特に手続を認めることに余り実益はございませんで、その場合には給付金制度を中断していただきまして新たに基金制度をつくっていただく方が、どうもかえってスムーズな転換ができるという結論になりまして、その点につきまして特に規定は設けておりませんが、そういう形で措置していただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  40. 大橋敏雄

    大橋委員 給付金制度基金制度とは大体同じような方向にあるので、二つの中の一つを選んでもらいたい。従来、給付金制度を実施していて基金に切りかえようとすれば、従前の給付金制度というものは言うならば廃棄するようなかっこうで進んだ方がよろしいということになるのですか。
  41. 森英良

    森説明員 そういう事情がありまして、途中で給付金制度をやめましても税制上の恩典は十分受けられますので、途中でそれを打ち切って新たに基金制度をつくっても何ら損するところがないという関係になりますので、特段の、その間の引き継ぎの規定を設ける必要がなかったということでございます。
  42. 大橋敏雄

    大橋委員 この基金制度というものは大企業、中堅以上の企業のためのものであって、中小企業は従来の給付金制度でいけばいいのだというような考え方であるのかどうか。この点もお尋ねしたいと思います。
  43. 森英良

    森説明員 今回、財形基金制度を御提案申し上げております理由は、すでに財形政策上重要な事業主援助制度といたしまして給付金制度というものがあるわけでございますが、これがどうも少し制度的に簡単過ぎまして、また、その手続の簡単であることが、特に余り事務管理的な能力の少ない小零細企業のためには便宜であるわけでございますが、どうも中堅以上の企業にとってはいささか食い足りない面がある。そこで、そういう中堅以上の企業にも給付金以上に魅力のある制度をつくりたいということで基金制度をつくったわけでございまして、恩典等の内容も全く同じになっておるわけでございます。したがいまして実際上、小零細企業におきましては給付金制度をおやりいただくのが便宜でございまして、そういう意味で、そういうものが普及するであろうというように考えております。  しかし、基金制度も小零細企業を排除する趣旨ではございません。ただ、人数の制限というものがございますから、それ以下のものにつきましては共同設立等の法による以外に、なかなかできないわけでございますが、百人以上の人員で設立可能と考えておりますので、中小企業の中にも相当大幅に基金制度をやれるところがございますし、また、そういうことをおやりいただくことは、まことに結構であるというように考えておるわけでございます。
  44. 大橋敏雄

    大橋委員 財形給付金制度実績を見てまいりますと余り芳しくなかった。そういう実績の上に立って今回さらに、この基金制度が設けられて、事業主援助を導き出そうという考えに立っていることは問題ではないかと感ずるわけでございます。また、大企業と中小企業勤労者に格差を生じせしめていくようになるのではないかという不安も抱いているわけでございますが、この点について大臣にお尋ねしたいと思います。
  45. 藤井勝志

    藤井国務大臣 これから御審議願い、この制度が新しく改正の線に沿うて行われましたならば、その実情を踏まえながら、これはまだ新しい制度でありますから、常時、実際の運用については十二分に御指摘の点も踏まえて、そして財形審議会基本問題懇談会、こういった場で十分検討し、改めるべきところは改めていく、そういうことで本来の趣旨に沿うように今後も改善の点について注意を怠らないということで善処したいというふうに思います。
  46. 大橋敏雄

    大橋委員 この勤労者財産形成法に対する勤労者の関心と期待は想像以上に大きいものがあろうかと思います。また、先ほど申し上げましたように、小さく産んで大きく育てるということでありますが、決してこれがいびつに大きな成長にならないように特に注意しなければならぬと思うわけです。今回の改正の中で目玉というのはこの基金制度であろうかと思います。これか決して不公平を起こしたり、あるいは公正を欠くような結果になっては大変でございますので、こういう点に十分注意しながら運用に当たっていただきたい。きょうは時間が参りましたので、この辺で質問を終わりますが、どうか財形法の健全な発展のために全力を挙げられることを強く要望して、私の質問を終わります。
  47. 木野晴夫

    木野委員長 次に、工藤晃君。
  48. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 本日は、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案について幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  最初に、政府の方からちょうだいいたしました「勤労者財産形成促進制度の現状について」という冊子の中に「近年の経済成長により勤労者のフローとしての所得については改善がみられたが、貯蓄や持家といった資産の形成面では著しく立ち遅れている現状に鑑み、勤労者の豊かな安定した生活のために、勤労者自助努力による資産形成を促進することが雇用の安定、社会保障充実と並んで重要である。」こういうふうな御趣旨のことを書いてございます。これは御趣旨については全く賛成でございます。しかしながら、このたび出てまいりましたこの促進法の一部を改正する法律案の中で、勤労者財産形成基金制度の創設、この問題点と、進学融資制度の創設、この二点について、このままの考え方あるいは制度をそのまま促進した場合に、幾つかの問題点があるように感じるわけでございまして、これは将来いろいろな矛盾を生み出していくもとになる危険性があるのではないか、かように考えておりますので、その問題点について、まず最初に幾つか並べまして、それについてお答えをちょうだいしたい、かように考える次第でございます。  その第一点といたしましては、この財形基金制度、これは主として具体的には大企業及び大企業勤労者対象になる制度でございます。いままでございました中小零細企業に対する財産形成の諸制度は普及率が非常に低い。これは政府答弁においても、いままでるる述べてこられたとおりでございまして実効が上がっていない。にもかかわらず、一方において今度はまた新しい基金制度をおつくりになろうとしておられる。この対象が今度は、いま申し上げましたような大企業勤労者が具体的には対象になっていく。こういうことが一点、将来同じ勤労者間の格差の拡大につながっていくのではないか、かように考えるわけでございまして、やはりこの問題は、将来において社会保障を底上げしなければならない、あるいは充実していく場合に阻害要因となる危険性を持っているのではないかという点を非常に危惧いたしているわけでございます。これは例を別に挙げますと、たとえば医療制度の中で健康保険組合が健康保険制度の抜本的な改正、すなわち社会保障的健康保険制度をつくる場合の大きな阻害要因になっているのと全く同じような形のものが生まれてくるのではないか。別の形で、そういう形になるのではないかという危惧を持っているわけでございます。  第二番目には、勤労者財産形成を真剣に考える場合に、政府はもっと真剣に都市政策に取り組んでいただかなければならない。そうでなければ勤労者財産形成中心でございます持ち家制度の促進につながっていかない。ですから今後ともに都市政策に十分な御配慮をしていただきたい。これが第二点でございます。  第三点は、財形基金の資金が全額事業主負担でございまして、趣旨でございます自助努力の促進ということについては、全額企業主が負担するということについては、いささか、その自助努力を促進するという趣旨から反するのではないか、かように考えるわけでございます。  それから第四点としては、その是非は別といたしまして、公的サービスのためのいわゆる優遇措置と言われている医師優遇税制すら、ただいま不公平税制優遇税制を是正しなければならぬ、こういう世論が非常に高まりつつございます。そのような時代に新たに、たとえ、その理由は別といたしましても非課税の特例を新設することには間違いない。そういうことが不公平税制の是正あるいは優遇税制の是正という世論に、ある意味において逆行していくのではないかという懸念がございます。そういう点が第四点でございます。  第五点は、こういう制度をどんどんつくることによって行政の複雑化は当然進捗してまいると思います。また、一方においては省力化、合理化という行政改革が主張されている現在に、そういう行政上のいろいろな措置が逆行していくということは、ある意味において、できるだけ、そういうものに対する今後の実際上の配慮をしていかなければならない点ではなかろうか、かように考えるわけでございまして、このたび、もう一点出てまいりました進学融資制度の新設も、やはり文部省でいろいろなそういう融資制度もつくられている。他の省においても、こういうものがどんどんつくられていくということになれば、たとえば他の農林省あるいは郵政省あるいは他の行政官庁、いろいろその立場、立場で進学ローンを新設していくというふうな傾向が今後ともに派生する前例をつくれば、やはりこれは行政改革あるいは行政上の省力化という問題と逆行していく可能性がある。そういう点を指摘いたしたいと思うわけでございます。  ただいま、るる申し述べましたような点について、まず、その第一点であります。制度上は中小零細企業の方にも門戸は開かれていると言いながら、実際には、そういう中小零細企業には成熟していかないであろう条件であります財形基金。この中で勤労者のまず第一番に財形が立ちおくれている、そういう資料の中には、大企業勤労者だけの資料ではなくて中小零細企業の資料も一緒に含まれたものをまず統計的におとりになっていらっしゃる。そういう点において中小零細企業にも、それが普及しなければならない、そういう目的から、いささか反する、ある意味において大企業勤労者優遇されていくであろう制度には、いささか合目的ではないという考え方を持っておりますか、その点について御質問をさせていただきます。
  49. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いろいろ詳細な点に着目された御指摘でございますが、私の方から、ひとつ基本的な全体的な面を踏まえて答弁させていただきまして、また詳細にわたりましては政府委員から答弁をさせていただきたいと思います。  まず、これはいまさら申し上げるまでもないわけでございますけれども、現在、日本の社会構成というのが働かざる者食うべからずという、いわゆる勤労者社会になっておるわけでございますが、そのような姿は統計の数字からも出ておりまして、現在、一番勤労者の中で所得の低い、いわゆる第一分位の勤労者、低所得層でございますけれども、その九七・四%の世帯におきまして貯蓄をすべて持っておりまして、その貯蓄か毎年毎年純増すること二十七万円という、こういう平均の純増をしておりまして、金額はまだ十分ではございませんけれども、一応そのような所得を形成をしておる勤労者社会というのが、現在、高度成長を経た日本の現実でございます。そういう点を踏まえて、そしていわゆる勤労者財産形成政策というのは、そのような勤労者自主的努力を国と事業主がバックアップして、公的年金制度中心にした社会保障制度と相まって、今後の高齢者社会に対応していこうという考えでございます。  そのようなことを進めるに当たって、御指摘のごとく、私は都市政策というのがタイアップしなければならぬということは、住宅貯蓄考えた場合、宅地問題、土地問題を抜きにしては考えられません。したがって十二分に御指摘の点は関係省庁と連絡をとって、そして宅地の供給がスムーズにいくようにということ、これなんかが都市政策の財形住宅貯蓄の大きな基礎になるわけでございまして、私はごもっともな御指摘だと思います。  それから事業主負担が非常に多くて国の援助が少ないではないかという御指摘でございます。確かに、まだ制度が発足いたしました現在において、国の援助というのは、いわゆる中小企業助成金ということで雇用促進事業団を通じて出されております。しかし、この問題につきましては、なかなか相矛盾する点がございまして、余り国の援助が行き過ぎますと、かえって結果的に不公平になるという二律背反の矛盾をまた考慮しなければならない、こういうことがございます。この点も十分制度発足の現実を踏まえて絶えず検討していかなければならぬ大切な問題である。  そして不公平税制との関係において、住宅貯蓄財形貯蓄、こういった問題が果たしてどうかという御指摘でございますけれども、これはやはり勤労者社会というのがもう現在、日本社会の中心であり中核になっておる。この人たちがみずからの努力によって老後に備える、こういったことは私は大局的に見て、いわゆる不公平税制とは筋が違うと申しますか、こういうふうに思うわけでございまして、ある程度、伸ばそうという場合のインセンティブを税制面において配慮するということは施策の一つの手段である、私はこのように思うわけでございます。  それから進学融資制度中心にして、いろいろ制度が複雑化するではないか。こういう御指摘も私は一応理解できますけれども、いい制度労働省もやり、あるいは郵政省の進学ローン、いろいろなことが総合的に行われて成果が上がる、こういうことにも考えられるわけでございまして、やはり人間のつくり出す制度というのは、片一方には必ず、そのような問題が引き起こされますけれども、結果的にプラスマイナス、プラスの方が多いということになれば、その線へ前進していくというのが適当ではないか、このように考えるわけでございます。  同時に、今度の財形基金制度ということによって本当に零細中小企業事業主、その従業員、勤労者というものが救われるか、こういうことについては、私は御指摘の点を十分踏まえて、広く日本の社会を構成している勤労者が、この財産形成制度の恩典に浴されるように、絶えず問題を原点に返って検討し、改善をしていくことが絶対必要であろう。したがって財産形成審議会基本問題懇談会の場において、御指摘のもろもろの点を踏まえながら今後も十分検討させていただきたい、このように思っているわけでございます。
  50. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 大臣、御説明をいただきましたもろもろの点は、私どもも一応納得できる点でございますけれども、その中で多少、私が申し上げたニュアンスと違う点あるいは意見の相違するところを質疑させていただきたい、かようにいま思います。  三番目の、財形基金の資金が全額事業主負担であれば自助努力の促進にはならないのではないかという私の質問に対して、大臣は、全額事業主負担であれば国がもっと援助すべきではないかという発想に受け取られたようでございますけれども、私の申し上げたいのは、自助努力というのはみずから努力をすることでございまして、それを促進することであって、そういう財産形成貯蓄をするのに大企業企業主がその原資をすべて出すことについて、これは果たして自助努力につながるのかどうか。甘えではないか、こういうことを御質問したかったわけでございます。  それから四番目の、ただいま日本の社会はほとんどすべてが勤労者社会であるから、その勤労者社会の勤労者に対して課税上も優遇をしていくことは当然であろう、こういう御発想でございました。これについては私も一応賛成をしたいと思いますけれども、ただ問題は、すべての勤労者に一様であるべきであって、中小零細企業の、より財産形成がおくれている勤労者に対してこそ手厚く、そういう問題を留意していただかなければならない。ところが今度のこの基金は実際には大企業勤労者中心になるであろうと想像できる。このような勤労者にまず第一番に光が当たるのは発想が逆立ちではないか。こういう点を指摘申し上げたわけでございまして、不公平税制という趣旨には当てはまらないということは、公平に分配されるという前提がなければ、やはりこれは不公平税制であると考えざるを得ない。そういう点をひとつ大臣から御答弁いただきたい。
  51. 藤井勝志

    藤井国務大臣 自助努力でなくて、むしろ国あるいは事業主がバックアップして、勤労者は余り努力の結果を踏まえていないではないかという御指摘でございますけれども、もともと勤労者財産形成貯蓄をして、そして住宅貯蓄の場合の条件としては少なくとも金額か——ともかく財形貯蓄そのものをやっている、これは勤労者自主的努力によって貯金をするわけで、その実体の上に国と事業主が応援をするということでございますから、勤労者自主努力がやはり起点になる、前提になる。この中核はあるわけですから、まる抱えといいますか、外からの応援だけで自助努力がにじみ出ていないということでは決してない、このように御理解いただきたいと思っております。  それから、財形基金制度は本当に雰細中小企業事業主並びにその勤労者に御利益がなくて大企業の方に偏するのではないか、こういう御心配でございますけれども、確かに、これから制度が発足をしてみて御指摘のような方向にいくような傾向があれば是正しなければならない。われわれの今度の基金制度のねらいは、先ほど政府委員から答弁いたしましたように資金運用の幅を広めるということ、それから労使が共同して財形制度の趣旨を充実していくということにねらいがありますから、今度の場合は特に百名以上、三百名以下の中小企業基本法を前提とした線に焦点を合わせて、この制度勤労者財産形成制度の軌道に乗るように配慮しておるわけでございますから、ことし一年の実施、今後の実施を踏まえて、御指摘のような対象になるべき勤労者が外れてくるようなことのないように十分注意していきたい、このように考えております。
  52. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 私の希望と将来の杞憂いたしております点について大臣にただいま御回答いただきましたが、そういう点を十分御配慮いただいて、社会保障の推進の阻害要因にならないように、それがかえって社会保障の推進の一翼を担うように御配慮いただきたい。  時間がなくなってまいりましたので、最後に私はそういう意味で一つの具体的な提案をしておきたいと思います。  財形基金制度に積み立てられる資金を原資としまして、財形中心となる持ち家促進のために、大企業勤労者だけではなくて中小零細企業勤労者にも、持ち家促進のためにこの制度が利用されるような方法をお考えいただきたい、これを希望いたしますので、最後に、その点についての大臣のお考えを伺います。
  53. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘の点は審議会の意見も十分踏まえまして検討させていただきたいと思います。
  54. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) それでは、十分そういう点を御配慮いただいて、この制度そのものの精神は非常にりっぱでございますが、実際に具体的にやることになれば阻害要因あるいは危険な問題点が今後出てまいろうと思いますので、くれぐれも、その点に御留意いただいて、よりよき制度の発展を期待して私の質問を終わります。
  55. 木野晴夫

    木野委員長 次に、和田耕作君。
  56. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 財産形成法律につきましては、私どもも最初から、これの重要性を認めまして積極的に賛成する態度をとってきたのでございますけれども、この五年以上の実施の期間を見て、七百五十万というたくさんの労働者がこの制度に加入しておるこの問題を、政府としてどのようにごらんになっておるのか。それからお伺いいたします。
  57. 桑原敬一

    桑原政府委員 財産形成一つの柱は、私はやはり貯蓄だと思っております。勤労者がみずからの力で貯蓄をしていきたいという気持ちが、こういった数になってきておりますし、残高も一兆六千億になっておりますが、私どもは、そのこと自体は喜ばしいことと思っておりますけれども、やはり先ほどもお話ございましたように、すべての勤労者がもう少し均てんして貯蓄をしていく。あるいはその貯蓄ができるだけ還元されていくという状態に私ども努力しなければならぬ、こういうふうに感じております。
  58. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 外国から見れば日本人の異常な貯蓄性向ということは、一般の貯蓄にも見られることでありまして、その背景は、やはり将来の安定についての不安があるということが一番大きな理由だ、こう言われておるのですけれども財形の問題も、やはり有利な貯蓄という意味から見て、勤労者相当たくさんの人が短期間に加入しておるということですけれども、そうであればあるほど、特にこの制度の特殊な社会、経済、政治的な意味から見て、政府としては、もっとこの制度を積極的に伸ばしていかなければならないという立場で、この制度を見守っていく必要があると思うのです。  そのような目から見た場合に、事業主あるいは政府が、いろいろと援助をしておりますけれども、なお、その援助の基本姿勢というものが少し弱過ぎるのじゃないか。もう少し、この問題について積極的な姿勢が必要ではないかという感じを持っておるのです。そういう立場で、できるだけ財形制度一つの基本的な見直しを絶えず考えながら対処していっていただきたいと思うのですが、それについての税金あるいはいろいろな条件の優遇することは後から質問したいと思います。  まず第一に現在、大変不景気である。特に構造不況業種と言われるところの、これは大企業を含めて中小企業がかなり大きいのですけれども、離職の可能性というのは非常に強いですね。たとえば構造不況業種全体で約四百万の労働者がおると言われておりまして、少なくとも、その一割は失業になるのじゃないかという予想さえあるのですけれども財形制度に入った労働者が失業する。その事業から離れた場合には、どのようなことになるのでしょう。
  59. 森英良

    森説明員 財形貯蓄は、御承知のとおり事業主による賃金からの天引き、さらにその金を金融機関に対しまして預ける行為を代行する、そういうことを事業主が行うことによりまして成立するわけでございまして、したがいまして勤労者が、ある企業から退職いたしますと、そのままでは財形貯蓄が続けられないわけでございますか、六カ月以内に再就職いたしまして、そこでも財形貯蓄の取り扱いが行われておる。しかも、その場合に従前の財形貯蓄の取り扱い機関と同じ取り扱い機関が制度に取り組んでやっておるという場合には、その引き継ぎができるようになっておりますが、そういう前提条件がございませんと、やむを得ず、そこで中断するほかないというのが現在の状況でございます。
  60. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは大企業の場合も中小企業の場合もそうですけれども、再就職ということを考えた場合に、継続できないような条件の労働者が相当多く出るのじゃないかという予測かされるのですけれども、こういう問題は、政府はどういうふうにお考えになっておられるのですか。
  61. 藤井勝志

    藤井国務大臣 確かに、いま激変をし激動しておる日本の産業構造、いわゆる特定不況業種の離職者が多発するという、この現状から考えますと、私はいまのような問題にきめ細かく配慮しなければ、せっかくこの制度ができても途中で切れてしまうというのでは、これは本当に画竜点睛を欠きます。したがって、これが継続するように十分配慮していきたい。具体的にも、実施をやっている労働省としては関係省庁と連絡をして円滑に結びつくように、本人の意思がある以上は、これが継続するように配慮すべきである、このように思っております。
  62. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 再就職のできる人は、まだいろいろとあれができる。再就職のできないような人が出た場合に、これはもうしようがないということになりますか。
  63. 藤井勝志

    藤井国務大臣 担当の部長から、また補足説明をさせますけれども、やはり本人の自発的意思、これが前提でございますし、離職して次の職もいつ見つかるかわからない、こういう窮地に陥られた気の毒な方々、この人かやはりそれでも奮発して何とかがんばろうという場合、これはやはり継続を助けなければならぬと思いますけれども、本人がギブアップしたら、これはやむを得ない、こういうように私は思います。
  64. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いろいろの違った事情があると思うのですね。たとえば財形貯蓄の場合の十のうちの八割ぐらいまで貯金をした。その人が失業して、もう仕事がないということになった場合とか、あるいは十のうちの二割ぐらいしか財形に積み立ててない人が失業した場合とか、いろいろのケースがあると思うのです。たとえば八割ぐらい積み立てていた人、この人も、もうしようがないということになりますか。
  65. 森英良

    森説明員 二割、八割という御趣旨がちょっとわからないのですが、財形貯蓄一般に金額目標を立てまして、その何割を達成するというような形ではございませんので、余りそういう問題は起こらないと思いますけれども、いずれにしましても退職して、そのまま勤労者にならないという状況では、これは制度の性格上、財形貯蓄継続はむずかしいという状態になっております。
  66. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 つまり、これは自分で自主的な努力を放棄したというよりは、首切られたというケースが大部分ですね。しかも仕事につこうと思ってもなかなかつけない。私は、いまの事態は、こういう事態を考えておく必要があると思うのですよ。いまの事態は、今後三、四年すれば、またよくなっていくというふうには私は見ていない。いまのたとえば約二割くらいの生産がカットされるような状態で安定するんじゃないかというような面も見ておくということになれば、就職できない人が大分出てくるという感じかする。しかも、中小企業の年配の人で、そういう人が大分出てくる。若い人は何とかあるでしょうけれども、中小企業の年配の人で、この財形をやっておったけれども、途中で首切られて、しかもこれが再雇用されないというような人が出てくると思うのだけれども、そういう人が仮に出てきた場合、もうこれは数は少なくても必ず出てくると思いますよ。そういう人に対して国として何かの配慮が必要じゃないかというふうに思う。特に中小企業関係の人には、そういうことが必要だと思うんだけれども、労働大臣、いかかでしょう。
  67. 藤井勝志

    藤井国務大臣 確かに御指摘のような事態が発生することは十分予想できるわけでございますが、この制度そのものが、やはり勤労者の収入からいわゆる天引きして貯蓄するということでありますから、その収入源がなくなってしまうということになれば、すなわち、もう失業してしまう、こういうことになれば、この制度に対しては、もとがなくなってしまうといいますか、なじみのもとがなくなってしまうわけですから、私は、労働省としては雇用安定資金制度というこれを活用して、そして失業の予防、再就職の促進、こういう努力をして、いま御指摘のような問題に対しては全力を尽くす。それ以外は、もとが絶たれてしまったら別の対策で、またこれを応援をするということ以外は、むずかしいではないか、このように思うわけでございます。
  68. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 御説明のこともわからぬわけじゃありません。失業期間が長い短いは関係ないですね、この制度は。あるいは十年ぐらい失業しておっても、十年後に再就職して財形をやっておる制度の会社であれば継続するということですね。
  69. 森英良

    森説明員 財形貯蓄をやっておりました勤労者退職いたしまして、しばらく失業して、もう一遍再就職して財形貯蓄を続けられると申しますのは、退職後六カ月以内に再就職いたしませんと、それ以上にわたって失業しておりますと、もはや残念ながら、この貯蓄継続可能性はなくなるというのが現状でございます。
  70. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは退職して六カ月、半年間ですか。半年間に再就職しないと継続しないという意味ですか。
  71. 森英良

    森説明員 そのとおりでございます。
  72. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そうなりますと、いまの経済実情から申しまして、半年というのであれば、これはいろいろと他の制度でカバーできるあれがあるのですけれども、私はちょっとひどいのじゃないかという感じがするのです。やはり失業して少なくとも一年や一年半の期間、私は三年ぐらいの期間を置いてあげた方がいいと思うのですが、そういう問題についての御考慮の余地はないでしょうか。
  73. 森英良

    森説明員 現在のところ六カ月ということでやっておりまして、なお、その場合、財形貯蓄の具体的な恩典は利子の非課税でございますけれども、そういう意味では同じような恩典は、マル優の枠が残っておればマル優に切りかえておけるということは可能なわけでございます。財形貯蓄そのものにつきまして、さらにもっと長い期間にわたって失業期間中留保いたしまして、再就職後にもう一遍続けられるようにするということにつきましては、一つの検討課題ではございますけれども、なかなか税制上いろいろむずかしい意味がございまして、簡単にいかない面もございますので、今後の課題として研究させていただきたいというふうに考えます。
  74. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大臣、これはぜひともその期間を延長するという件は、現状から見て必要なことだと思いますので、ひとつそういう改正する含みで御検討賜りたいと思うのです。
  75. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いま御指摘の問題は、これまた財形審議会基本問題懇談会の場で検討をしていただきまして、その結果を踏まえまして政策的に配慮したい、このように思います。
  76. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 続きまして減税の措置についてでございますけれども、きょう大蔵省の方、お見えになっておりますか。いま、元本の五百万円まで減税だということがあるのですけれども、いま五百万円というお金は大きなお金ではありますけれども、財産という面から見ると、やはり中途半端なお金であることは間違いない。少なくとも一千万円ぐらいのところにいきたい。七百五十万円ぐらいまでは減税するという御考慮は、あるいは将来そういうことを検討するというお気持ちはないでしょうか。
  77. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 いわゆる財形の認めております優遇措置は、その利子の非課税という点で優遇措置を認めておるわけでございますが、現在、利子の非課税は財形のほかにも少額貯蓄控除、いわゆるマル優の三百万円、それから国債、地方債等の別枠で三百万円ございまして、郵便貯金が三百万円まで非課税ということで、もう三百万円、さらにこの財形の五百万円が加わりまして千四百万円の枠があるわけでございます。これに対しまして一般の貯蓄の世帯当たりの平均を見ますと最近の数字で二百九十五万、三百万をちょっと切るような状況でございまして、非課税の枠全体から見まして貯蓄の平均残高というのはまだかなり余裕のあるところにあるというのが一つ問題点でございます。  それから財形だけをとって考えますと、現在、財形の五百万円の枠の中で平均の数字は二十万円ぐらいのところでございますので、平均的な所得者を対象考える限りは非常に余裕のある数字になっているのではないかと思います。したがいまして、こういう状況で非課税の枠を引き上げますと、本来、財形貯蓄制度なり、あるいは少額貯蓄優遇制度なりが予定しております一般所得者と申しますか一般給与者の貯蓄の奨励ということではなくして、むしろ高額所得者の貯蓄奨励に役立ってしまうのじゃないかという点もございまして、この少額貯蓄の非課税制度財形を含めまして、まだかなり、その限度額には余裕があるというのが私どもの判断でございまして、これを拡大するということは目下のところ考えてないわけでございます。
  78. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 まあ、いまの御説明はわかりました。わかりましたが、いまの経済状態から見て、もっと、いま七百五十万円までには引き上げるということが、その他のいろいろな制度あるいは社会通念から見て著しくおかしければ別だけれども、私はそうおかしいとは思わないが、それは全くいま頭のすみのどこにもないというお返事ですか。
  79. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 貯蓄優遇制度につきましては、これも一つの租税特別措置でございます。こういった制度ができましたことは、財形は別といたしまして資本蓄積の必要が叫ばれていたようなときに、こういう制度ができたわけでございますけれども、果たして、これから先、税負担を一般的に引き上げていただいて社会福祉なりあるいは教育なりに充てていかなければならないようなときに、その貯蓄優遇制度そのものを続けるかどうかという大きな問題が一つございます。そういう背景を考えまして、さらにいまの限度額にはかなりすき間があるということを考えますと、こういった限度額を引き上げるという必要性は非常に乏しいのではないかという考え方でございます。
  80. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 一般の貯蓄の限度額を引き上げるというふうに見れば、いまのような御意見も出ると思うのですけれども、この制度はやはり財産形成制度でございますから、そういうふうなものとしての政治的な意味を持ち、経済的な社会的な意味を持っているわけですから、そういう面から、この問題を考えてみる必要があると思うのです。いずれにしても、この問題は、私が直接聞いているのは同盟の労働組合の諸君からですけれども、ぜひともこれは実現をするように努力をいただきたい、こう言っているんですね。ごもっともなことだし、財産の形成制度という面から見て、この問題については、ぜひとも今後御検討をいただきたいと思うのです。  なお、この問題はその他の減税のいろいろな措置とも関係があるのですけれども、とにかく政府は、つまり減税をする形で援助をするか、あるいはドイツ等でやっているプレミアムの形で、こういう制度を奨励するかということになるわけだけれども、いま、このプレミアムの制度は全然やってない。減税だって、ちょぼちょぼで大したことはない。しかも、そういうことをやっても五年間に七百五十万もたくさん入るのだから、ほっといたって大丈夫だ、こういう甘い見方があるのじゃないかと私は思うのですけれども、もっとどちらかの方法で、この制度そのものの重要性から見て、制度的に国がこれに関与すべきだ、こう思うのですね。  で、主計局の方お見えになっていますね。これは前のときにも私かなり強く要望したのですけれども、直接国が金を出すという形では問題があるとすれば、もっと間接的な形で、これを支援するという考え方自体が、原則的に無理だとお考えになっておられるかどうか。
  81. 窪田弘

    ○窪田説明員 貯蓄に対する優遇のやり方は国によって、それぞれ特色があるわけでございまして、西ドイツは御承知のようにプレミアム方式をとっております。これは財形以外の一般の貯蓄につきましても、たとえば六年以上置いた貯金については一四%プレミアムをつけるというふうな仕組みがございまして、その上に、この財形が乗っているわけでございます。わが国の場合は、戦前から国民貯蓄組合というふうな制度もございまして税制貯蓄優遇してまいったわけでございまして、その上に、この仕組みを乗せているわけでございます。そういう日本的な特色を持っているわけでございますが、そのほかにも、たとえば給付金制度というふうな優遇措置は講じているところでございまして、こういう日本的な特色を生かしながら、この財形の育成を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  82. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題も、いまの元本問題と並んで、実際の労働組合の諸君が、この制度に魅力を感ずるか感じないかという面の一つのポイントの点なんですね。これは、この前も、財形貯蓄をする労働者の諸君だけに国が援助をするということは、たてまえとしておかしいということだけれども、しかし、他のいろいろな制度を見ても、そういう制度はたくさんあるのですね、単に事務費を出すというようなことじゃなくて国がいろいろな形で援助している制度というのは。そういう面から見て、つまり、恐らく、この制度が特殊なものだというふうに見ておられるのではなくて、貯金制度貯蓄というもの、そのものに対しての見方に特殊な見方を持っているから大蔵省はがんばっているのじゃないかという感じがするのですけれども、どちらなんでしょう。この制度が国民のある一部の人に対してのものだからできないということなのか。あるいは貯蓄制度全体から見て、この制度を認めればおかしなことになるというふうにごらんになっているのか。どちらでしょう。
  83. 窪田弘

    ○窪田説明員 その二つのどちらかに割り切るわけには必ずしもいかないと思いますが、財形そのものの重要性は私どもも十分認識しておりまして、それなりにいろいろ配慮をさせていただいておるつもりでございますが、財政資金で、そういうものを援助しろということになりますと、仮にそれだけのお金があった場合、一般の住宅政策とか社会保障施策との兼ね合いということが問題になりますので、私ども現在の時点では踏み切れないのでございます。
  84. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 たとえば先ほど問題になっておりました大企業と中小企業がある、それは区分がなかなかむずかしい問題はありますけれども。中小企業の非常に困難な状態から事業主相当金を出すということになる。大企業も楽なわけじゃないのですけれども、金を出すという場合に金を出しにくいというのは、一般通念からいって中小企業の人たち。しかも中小企業の労働者の諸君は大企業の諸君よりはもっと援助をされなければ平等にいかないという条件がある。そこで中小企業はどこからどこまでという線を引くことは非常にむずかしいことだとは私もよく承知しておりますけれども、いわゆる非常に困難な状態にある中小企業の労働者諸君に対しては、大企業のようにできないような状態にあるんだから、国がある面を肩がわりをしてやるという考え方、今度雇用促進事業団がいろいろ援助しているのは、そういうふうな意味も加わっておると思いますけれども、たとえば雇用促進事業団がそういう仕事をやる場合に、それに対して国が援助をするというような考え方は成り立たないかどうか。その点をひとつお伺いしたい。
  85. 窪田弘

    ○窪田説明員 雇用促進事業団援助というのも、結局は広い意味での公経済かちの援助というふうに考えておりまして、御指摘のように、その点は中小企業に向けているわけでございます。今後、財形を発展させていくために、どういうふうに持っていくべきかということは、いろいろ御指摘いただいた点も含めて、労働省ともよく相談をしてまいりたいというふうに考えております。
  86. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その問題は技術的に非常に困難な面があるということは私もよく承知しておりますけれども、しかし、たてまえとして、その問題はいろいろ苦労なすっていただいて、ぜひとも労働者の現場を持っておる方々とも御相談していただいて、何とか工夫していただきたいと思うのです。先ほど申し上げた、いまの不況の状態のもとでの不況業種と言われるところの特に中小企業というのは惨たんたるものですね。社会労働委員会も今度、近くそういう現場を幾つか見に参るのですけれども、これはぜひとも特にそういうふうな問題について御考慮をいただかなければならないと思います。  まだ幾つかのことを御質問したいのですけれども、もう時間がありません。  持ち家の問題について、やはりこの融資枠をもっと拡大をするとか、その条件を緩和するとか利率を引き下げるとかいうようなことは、これはやはり今後も状況によって、どんどんやるおつもりなんでしょうね。
  87. 桑原敬一

    桑原政府委員 今回、御提案申し上げた点も特にそういった融資条件融資枠の拡大について御提案申し上げております。今後とも、こういったせっかく積みました財形貯蓄が有効に勤労者還元できるように逐次改善してまいりたい、こういうふうに思います。
  88. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 やはりこういうものは、だんだんと改善していかないと意味がないわけでございますし、特に一般の貯蓄性向が高いから、ほっといたってという、そういうような考え方をお持ちにならないように、これは特に大蔵省にそのことをお願いしておきたいと思います。  これで質問を終わります。
  89. 木野晴夫

    木野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  90. 木野晴夫

    木野委員長 これより本案を討論に付すところでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  91. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  92. 木野晴夫

    木野委員長 この際、越智伊平君、森井忠良君、大橋敏雄君、和田耕作君、浦井洋君及び工藤晃君から、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  その趣旨の説明を聴取いたします。越智伊平君。
  93. 越智伊平

    ○越智(伊)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。   勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。  一 勤労者財産形成促進制度全般について、諸外国の勤労者財産形成促進法等を参考にして、今後更に改善に努めること。  一 物価政策及び土地対策の一層の充実を図り、もつて勤労者財産形成の基礎的条件を整備すること。  一 勤労者財産形成促進に必要な税制財政面からの優遇措置あり方について検討を続けること。  一 勤労者財産形成給付金勤労者財産形成基金への拠出金は、全額事業主負担であることから、当該事業場のなるべく多くの勤労者給付金の支給を受けられるよう制度改善について検討すること。  一 勤労者財産形成貯蓄の伸びが著しい一方、これを原資とする還元融資が伸び悩んでいる状況にかんがみ、還元融資の一層の内容改善に努めるとともにその普及促進を図ること。  一 勤労者財産形成融資に当たつては、公正に使用されるよう勤労者財産形成促進制度の趣旨に沿つて監督官庁の指導を強化すること。  一 勤労者の住宅取得を計画的に促進するため、諸制度の整合を図る等の積極的な施策を推進すること。  一 勤労者財産形成促進制度における各種制度が広く活用されるようこれが周知に努めるとともに、手続の簡素化等を図ること。  一 勤労者財産形成基金制度の効果が実質的に中小零細企業勤労者の持家促進等に及ぶ方途を検討し、財産形成促進のための施策がこれらの勤労者にとって一層機能するための措置を講ずること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  94. 木野晴夫

    木野委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  95. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、本案については越智伊平君外五名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤井労働大臣。
  96. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、これか実現に今後とも一層努力いたしたいと存じます。     —————————————
  97. 木野晴夫

    木野委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 木野晴夫

    木野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  99. 木野晴夫

    木野委員長 この際、午後二時四十五分まで休憩いたします。     午前十一時四十三分休憩      ————◇—————     午後二時四十五分開議
  100. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和田耕作君。
  101. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題は同僚の西田君が専門で、ぜひとも質問したい幾つかのことがあったようですけれども、きょうは、どうしても出られない用事があるものですから、急に私がかわりまして二、三の問題を政務次官にお伺いをして、質問を終わりたいと思います。  駐留軍関係の離職者臨時措置法のいろいろの就職指導とか就職促進手当などを受けている現に失業している人は何人ぐらいいるのですか。
  102. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 現在、駐留軍の従業員として働いておられます数でございますが、五十二年の四月現在で二万三千二十四人でございます。それ以後のことしの一月までの離職者は七百三十六人となっております。従来からの求職者で残っておられる方々がございますので、その方々を合わせて御説明いたしますと、五十一年度末、すなわち五十二年の三月末時点で有効求職者が九千七百五十人だったわけでございますが、今年度の一月までの数字で新規申し込みが千二百八十二名ということでございまして、最終的に今年の一月末現在では七千八百十八名の方々が有効求職者として求職活動をしておられる、こういうことでございます。
  103. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いま沖繩は特に日本の地方の失業状況から見れば格段に多いわけですけれども、やっぱり駐留軍関係があるということが他の地域に比べて多いということの要素なんですか。
  104. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 沖繩県の失業情勢は、御指摘のとおり非常に悪い状況でございます。昨年の五月時点では非常に悪化いたしておりまして、失業率も七・九%という数字でございましたが、その後、九月以降若干好転してまいりまして、ことしの一月末現在では失業者数が二万三千人、失業率は五・六%となっておるわけでございます。  こういう失業者の多い状況の中におきまして、沖繩県の失業の特徴といたしましては、こういう駐留軍関係の離職者の方が非常に多い。すなわち、安定所の求職者のうち三七・九%ぐらいの方が駐留軍関係離職者の方々である。同時に、もう一つの特徴点は、三十歳未満の失業者が全体の六五%ぐらいを占めるなど、若年の失業者が多い。こういう二つが特徴点になっておるわけでございます。
  105. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは沖繩の土地で、これが吸収できる見通しがありますか。
  106. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 沖繩の雇用失業情勢が非常に悪い状況でございますので、これに対します雇用対策でございますが、基本的には、やはり沖繩の産業の振興によりまして雇用機会の確保をされるということが重要でございまして、そういうことのために、関係各省が連携をとりまして、いろいろな産業振興の施策をしておるわけでございますが、何しろ、こういう不況の状況でございまして、一朝一夕にそういう産業振興による雇用需要の確保ということはむずかしいわけでございます。  労働省といたしましては、そういう失業者の特徴点等も勘案いたしまして、一つは、やはり沖繩県における現地における雇用需要が非常に少ないとすれば、本土への就職を促進する広域職業紹介活動を充実するということ。それから駐留軍離職者なり沖繩振興開発特別措置法によります失業者に対する各種の援護措置がございますが、そういうものの支給を図る。同時に、やはり余り動けない方々には公共事業等によります吸収というようなことも非常に重要でございまして、そういう公共事業事業枠の拡大とか、あるいは御存じのように失業者吸収率制度というものが決められておりますので、そういうものを活用いたしまして雇用機会の増大を図っていく、こういうような施策を進めておるわけでございます。
  107. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは、たしか成田の開港に関連して何人かをよこすという報道があったんじゃなかったのですか。
  108. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 先ほど申し上げましたように、沖繩県の雇用失業対策といたしましては、現地に雇用需要が多く期待できませんので本土への就職を促進する。従来も広域的に求人の連絡等はいたしておりましたけれども、先ほど申し上げましたように、昨年五月前後、非常に失業情勢悪い状況でございまして、従来のような程度の広域的な求人連絡では不十分じゃないかということで、昨年の十一月と、ことしの二月の二回にわたりまして、本土の需要県、たとえば東京とか大阪とか神奈川とか愛知とか、二月時点では千葉県で成田の飛行場の関係で求人が非常にたくさん出てまいっておりますので、そういう求人を、直接求人者も沖繩へ行っていただきまして、そこで現地で説明会をすることによって広域職業紹介活動を従来よりも具体的に、積極的にやるということを進めてきたわけでございまして、今後とも、そういうことを続けてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  109. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この成田の問題、きょうは正式に延期することになったんだけれども、これは実際は成田には、どれくらいの人がここで働くようになっていたのですか。
  110. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 ちょっと成田の需要がどれだけかという正確な数字を持ち合わせておりませんので、後ほどまた資料等をお届けしたいと思います。
  111. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 特に、これは駐留軍の離職者という特殊な人であるだけに、沖繩でこれを再就職さそうとしても、なかなかむずかしいわけで、いわゆる本土で積極的に就職先を見つけるという努力が必要だと思うのですけれども、これまでの実績からいって、この沖繩の駐留軍の離職者が本土で働いたというのは、どれくらいの数に上っています。
  112. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 ただいま御質問になりました沖繩県の駐留軍離職者の方々が本土で、どのくらい就職されておるかということは、ちょっと把握いたしておらないわけでございますが、御指摘のございましたとおり、一般的には中高年齢者が非常に多いわけですし、年配になられますと、なかなか移転して就職するということはむずかしいわけでございまして、そういう意味では、駐留軍離職者を含む中高年の方々が本土へ就職されているという事例は余り多くなかろうかと思います。学卒者等について、あるいは全般の本土への就職がどの程度かという数字はございますけれども、問題は、若い人たちも一たん本土へ就職されて、またUターンして帰られるというような状況もございまして、これも沖繩の失業情勢が悪くなっている一つ原因になっておりますが、もっと本土で定着されるといいますか、職場に適応されるような施策を充実することによりまして円滑な定着を図っていく、そういうことも考えていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  113. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういう事情はよくわかりましたが、そういうことだというと、沖繩では将来、失対事業拡大するとかいうようなことでもしないと、なかなか間に合わないような状態が出るのじゃないでしょうか。
  114. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 先ほど来、御説明いたしておりますような状況でございまして、一般的には非常に雇用失業情勢が悪い。その中の特徴点としては、中高年の離職者の方々の占める割合が高いということと、それから若年の失業者が多いということでございますので、特に若年を中心に、広域的に動けるような方については本土への就職を促進する。そういうことのために、たとえば来年度からは就職資金の貸付制度等も設けまして、本土に二年以上定着された方は返還も免除するというような新たな施策も講じておりますし、先ほど申し上げましたような現地の求人説明会等も実施するということで、広域的な職業紹介活動を強化する。  それから、もう一つが今回御審議を願っておりますような駐留軍離職者臨時措置法なり、あるいは沖繩振興開発特別措置法に基づきます就職促進手当等を三年間支払いながら職業相談を進めるとか職業訓練を実施して再就職の促進を図る。それでもなおかつ、なかなか就職できないというようなこともございますし、公共事業への吸収ということも考えておるわけでございまして、御指摘失業者を吸収するような事業を起こすかどうかということにつきましては、先生も御承知のように直接失業者を吸収する事業の実施というのは、過去の経験からしましても失業者の再就職促進に結びつかなかったという欠点がございまして、数年前から、むしろ手当を支給しながら就職促進の活動を強化するという方向に変わってきておるわけでございまして、沖繩県につきましても、先ほど来御説明しておりますような産業の状況におきまして、安易に事業を起こしますと、また定着、滞留するというようなこともございますから、従来からやっておりますような広域職業紹介活動なり、あるいは失業者吸収率制度を活用する公共事業への失業者の吸収、こういうものをもっと具体的にきめ細かくやることによりまして、なお失業者の吸収を進めていけるというふうに私ども考えておるわけでございまして、そういうことを当面進めることによって対処いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  115. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私も同感だし、私どもの党も失対事業という形のものは好ましくないというのは、早くから、そういう態度を決めておるのですけれども、しかし、いろいろの事情をいま拝聴しておりますと、何ともならない人が相当たくさん出てくる可能性があるわけで、それには就職促進手当というような形で何年も何年もやっていくということも非常に困難な事情もあると思いますので、あるいは地域的に、そういうような問題が出る可能性が出てきやしないかということを心配するわけなんですけれども、それはそれとして、ひとつできるだけ離職者の救済のために努力をしていただきたいと思います。  最後に、この法律昭和三十三年五月制定されてから何回更新されておりますか。
  116. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 この法律は、当初制定されました昭和三十三年に五年の期間を定めた時限立法として定められまして、その後、五年を経過した時点の三十八年五月に五年延長し、さらに四十三年四月、四十八年四月、それぞれ五年ずつ延長してまいりまして、過去三回、延長をする改正をいたしておるわけであります。
  117. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 延長するたびに少しずつ条件をよくするとか、そういう改善はしておりますか。あるいは、そのままでずっと毎回延長しておりますか。
  118. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 従来の有効期限を延長する法律改正に当たりましては、少しずつ援護措置等を充実する改正も行ってまいっております。今回については期限の延長だけの内容になっておりまして、このような点につきましては関係審議会でございます駐留軍関係離職者対策審議会等にも諮問いたしたわけでございますが、従来の期限延長の改正のほかに三回ばかり援護措置の充実自体を内容とする改正も行っておりまして、そういう数次の改正によりまして援護措置の内容自体はかなり手厚いものになっておりますので、今回の改正については審議会等においても特段、御意見もなかったところでございますし、そういう意味で有効期限を延長するだけの改正を御提案申し上げた次第であります。
  119. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ただ、そのままのものを改正するということは余り能のないことでありまして、たとえば余り効果のないものを少なくするとか、もっと新しい効果のあるものをふやすとか、そういう考慮をしないといけないのじゃないでしょうか。また今後、長期滞留という問題が出てくれば、なおさら、そういうことを検討してみる必要がありはしないか、こういうふうに思うのですね。とにかく政府の政策の結果、出てくる失業なんですから、何とか早く、これが再就職あるいは生活安定できるような方法を講じていただきたいと思います。  私の質問はこれで終わります。
  120. 木野晴夫

    木野委員長 次に、上原康助君。
  121. 上原康助

    上原委員 私は、きょうは現在審議をいただいております駐留軍関係離職者等臨時措置法の若干の内容と、それに関連をいたします駐留軍離職者対策、あるいは現に駐留軍に雇用されている雇用員の基本問題、さらに、本土も沖繩もそうですか、相次いで首切り合理化が基地労働者には出ているわけですが、特に去る三月十日に発表された在沖米陸軍の整理統合に関連をする解雇の内容について、また七月三十日に予定をされております沖繩の交通方法変更に伴う米軍施設内の対策や米軍基地で働いている労働者の安全確保の問題、作業遂行に必要な諸対策についてお尋ねをしていきたいし、時間の都合もありますが、沖繩全体の雇用失業関係の全般的な問題についても触れさせていただきたいと思います。  そこで、まず最初に、今回この駐留軍関係離職者等臨時措置法の適用期限をさらに五年間延長するという提案がなされているわけですか、駐留軍を取り巻いている目下の諸情勢労働省あるいは政府関係当局が御理解をいただいて、法案の再延長を提案しておられることに一応の敬意を申し上げたいと思うわけです。  そこで、多くを申し上げるまでもありませんが、年々、基地関係労働者は整理の一途をたどってきております。今後一体、基地関係労働者の雇用状況といいますか雇用の動向というのはどういう方向をたどろうとしておるのか。本土、沖繩を含めて全国の基地に雇用されているのは現在、大体二万二千ちょっとじゃないかと思うのですね。これは横ばい状態で、ずっと続くのか。あるいは今後もさみだれ的といいますか、あるいは大幅な人員整理、解雇というものが出て、近い将来において基地関係労働者というのはほとんどなくなる状況にあるのか。そこいらの点については政府全体としてどのように掌握しておられるのか。そういった基本の問題をお聞かせをいただきたいと思います。
  122. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいまの御質問でございますが、今後の基地従業員の雇用の動向につきましては、私どもも長期的な見通しを得たいということで努力はいたしておりますが、的確なところはなかなかつかめないわけでございます。ただしかしながら全般的に申しますと、いまお話しのように現在の基地従業員は二万二千人でございまして、逐年整理がかなりございまして減ってまいったわけでございますが、この整理状況の推移を見ますと、本土と沖繩とを合わせまして、復帰以後四十七年度、八年度、九年度、このあたりは大体六千人から七千人ぐらいの整理が年々出ておったわけでございます。五十年度におきましてこれが約三千三百九十人、五十一年度は二千三百五十一人ということでございまして、この整理数はだんだん減ってきております。ことに五十二年度は一月三十一日現在で年度初めから全体で七百三十六人の整理、まだ二月、三月の分が多少これにつけ加わりますが、それにしましても八百人台で五十二年度はとどまるであろう、こういうふうに思っております。在日米軍の機能に大きな変化がない限りは、これから非常に速いテンポで従業員が減るというふうな状況は予想しにくいわけでございます。  現在、在日米軍は軍人の数が四万六千人ぐらいかと思いますが、基地従業員はその半数を割っております。御承知のとおり、かつては軍人の数と基地従業員の数は同数ぐらいおったわけでございますが、現在これは半分を割っておる、こういう状況でもありますし、整理数の逐年の推移から見ましても、この整理のテンポはスローダウンしてきておるという状況もございますので、この先のことについて、必ずしも楽観はできませんけれども、著しく大きい整理が続いていくような状況にはないというふうに現在の段階では見ております。
  123. 上原康助

    上原委員 そういたしますと、五十三年度はどのくらいを見積もつておられるのか。予算上はどうなっているのか、御説明ください。
  124. 亘理彰

    ○亘理政府委員 五十三年度につきましては見通しはございません。ただ、予算の特別給付金の積算上の根拠として一応の数字がございますけれども、これは整理の見通しということではございませんで、予算積算の必要上、過去の三年間にわたる傾向値を追って予算積算の基礎としておるということにとどまりますので、現在の段階では五十三年度がどのくらいになるかということの見通しはつかんでおらないと申し上げるのが正直なところでございます。
  125. 上原康助

    上原委員 ちょっと、その点については、またさらに後で議論を進めてまいりますが、一応過去三年の特別給付金実績に基づいて予算化をしたということですが、その人員は幾らですか。
  126. 亘理彰

    ○亘理政府委員 千数百人であったと思います。整理に係る一表の分と定年に係る二表の分と合わせまして予算積算上は千二百九十一人ということにいたしております。これは前年度五十二年度の予算積算上の数字は二千九百四十八人でありますので、この特別給付金の算定基礎としても、かなり減っております。
  127. 上原康助

    上原委員 大体この特別給付金の給付対象人員というのは、これまでの実績などをながめてみますと、さほど解雇人員数と差がないので、いま施設庁長官御答弁になられたように五十三年度においても千人前後の解雇者は出るものと予想される、そういうふうに考えざるを得ないわけですね。  そこで長期の雇用計画については十分な数字を明らかにすることは困難だということでありますが、いまの御答弁からしましても、ここかなりの期間、駐留軍というのが二万人前後は雇用をされるであろうということはおおよそ想像というか、推定できると思うのですね。そういう観点からしますと、この駐留軍離職者等臨時措置法は確かに臨時立法ではあるけれども、まだまだ必要性というものを認めざるを得ない。そういう御見解においては政府労働省も施設庁も同じかと思うのですが、いかがでしょう。
  128. 亘理彰

    ○亘理政府委員 初めに、ただいま先生がおっしゃいました前段のところで現地等において誤解が生ずるといけませんので申し上げておきますが、特別給付金の予算上の算定基礎は機械的に計算をいたしております。過去三年の平均傾向から推して計算いたしております。したがって、たとえば五十二年度では特別給付金の計算基礎としては二千九百四十八人ということでございますが、五十二年度の実際の整理数は、ただいまも申し上げましたとおり八百人台でとどまるだろうというふうに私ども見ております。したがって、五十三年度の特別給付金の積算基礎の人数が即施設庁の方で見ております整理の見通しを踏まえておるというふうにとられますことは誤解を招くかと思います。  それから先生の御質問の本論でございますが、私どもは、こういう状況でございまして、おっしゃるとおり二万人台の雇用は、少なくとも見通し得る当分の間は続くであろうと思いますが、それにしましても、米軍の編成がえその他の事情によりまして、やむを得ず生ずるところの整理が全くなくなるというふうには楽観はいたしかねるわけでございます。その意味におきまして、現在審議をお願いしております臨時措置法の今後における必要性と申しますか、これは大変欠くべからざるものであると思いますので、ぜひとも、この期限の延長につきましては私どもも心から御審議、御可決をお願いしたいと考えている次第でございます。
  129. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘の点、認識において全く一致しております。
  130. 上原康助

    上原委員 そこで、この臨時措置法の内容について若干お尋ねと問題提起をしておきたいわけですが、先ほどの和田先生の御質問にもございましたが、今回は期限の延長だけにとどめられて、内容面の改正あるいは改善というところまではいっていないわけです。それも諸般の労働情勢、いろんな点かあるいは影響したかと思うのですが、そのことはさておくとして、まず第一点として、臨時措置法施行令に基づいて就職促進手当の支給制限があるわけです。もっと具体的に言いますと、この施行令の第三章「駐留軍関係離職者等に対する特別措置」いわゆる就職促進手当の支給の項ですが、第七条の七の二項に「手当の支給を受けることができる者が、疾病又は負傷により就職指導を受けることができない場合において、その期間が継続して九十日をこえるときは、当該九十日をこえる期間は、手当を支給しない。」、こういうような現行規定になっているかと思います。これはいろいろほかの規定なり、あるいは法令との関係も、あるいはあるかと思うのですが、やはり「九十日間」という規定だけでは疾病者に対しての援護措置としてはきわめて不合理であり、不十分な点があると私は思います。そういう意味で、この点の改正がぜひとも必要じゃないのか。どのくらい該当者がいるかは、そこまでは十分わかりませんが、かなり関係者からは、このことについては改正をする、あるいは運用において、もっと弾力性を持たすべきだという提起かなされているかと思うのですね。この点についてが第一点。  それと、いま一つは職場適応訓練の改善についてであります。御承知のように、臨時措置法第十八条一項六号に、この職場適応訓練の問題があるわけですが、これも雇用促進事業団の委託を受けて、臨時措置法の第十条による公共職業訓練、いわゆる訓練期間が十二カ月後、さらに引き続いて民間企業で職場適応訓練を受けることができるようになっているようですが、途中、中断した場合は、またその資格といいますか要件が満たされないということで、できなくなっているわけです。したがって、この中断期間があっても職場適応訓練を受けることができるように改正をすべきだと思うのです。  まず、この二点について、どのようにお考えか。ちょっと細かい点で恐縮ですが、お聞かせをいただきたいと思います。
  131. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 ただいま御指摘をいただきました就職促進手当の支給に関する問題でございますが、まず第一点の傷病期間中に対する手当の支給の問題でございます。  先生御承知のように就職促進手当は、本来は四週に一回、安定所の窓口で就職の指導を受ける、その受けた期間について支給をするというのが原則になっておるわけでございます。したがいまして、この制度が発足した当時におきましては、七日以上の傷病期間がありますと就職促進手当というのは支給されなかったわけでございますが、昭和三十八年に諸制度との均衡から九十日間までについては支給を行う。その後については支給をしない、そういう意味では改善をいたしたわけでございます。したがいまして、この制度は、たとえば国家公務員における傷病による休職期間中も、九十日間は給与の支払いがあるけれども、その後はない。あるいは雇用保険であるとか健康保険における傷病給付金の期間が九十日間しかないとか、諸制度との均衡があるわけでございますが、いま先生に御指摘をいただきましたように、私どもも、それぞれのケースについて今後、実態を調査し研究した上で一定の検討をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。  第二点目の職場適応訓練の問題でございますか、職場適応訓練は本来、職場に適応していただくために一定期間継続して訓練を受けていただくというのが原則になっておるわけでございます。しかし、この場合におきましても、求職者のやむを得ない事情によって中断せざるを得ない場合が、どうしても出てくるわけでございますが、この辺については運用上、一定の配慮を行って運用いたしておるわけでございます。私ども、もう少し具体的に、その実態を調査しながら、実態に合ったような行政上の運用をさせていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  132. 上原康助

    上原委員 この臨時措置法の内容で、いま最も駐留軍離職者の皆さんが切望しているのは、就職奨励金の支給方法の改善についてであると私は思うのです。これは何も沖繩だけじゃなくして、本土も含めて中高年齢が多いというようなこともありますし、離職者の皆さんの一番強い要求になっていると思うのです。要するに、臨時措置法第十八条一項六号により、この認定を受けた駐留軍関係離職者であって、離職後三年以内に公共職業安定所の紹介により労働者として就職する者に次の区分で再就職奨励金が支給されていると思うのです。一年未満で再就職した者に対しては就職促進手当日額の七十五日分、一年以上一年六カ月未満で五十日分、一年六カ月以上二年未満で三十日分、二年以上三年未満で、これは沖繩在住者のみのようですが二十日間というふうに、四段階に分けて、再就職をした場合に一定の奨励金というものを支給するように現行法令上なっておるわけですが、これも先ほど申し上げましたように、最近の失業実態、あるいは中高年齢化しているという軍関係離職者をより速やかに安定した職場に再就職を奨励するという立場において、私は現行の再就職奨励金の支給方法を抜本的に改める必要があるのじゃないかという気がするわけです。  要するに、この臨時措置法の制定というか立法の目的というものは、あくまでも再就職、職業転換ということに、そもそも重点を置いておったと思うのです。しかし、現在ではむしろ援護措置ということに比重がかかっているような感を受ける。その必要性はもちろんありますけれども、三年間の期間があるからということで、促進手当ということに非常に拘束をされて、定着した仕事に三年後じゃないとつけないという、ある面では逆のブレーキになっておる面もあるのじゃないかという気がするわけです。したがって、一年以内に定着した仕事におつきになった離職者に対しては、残った分に対してもやはり支給をする、あるいは何らかの方法でもっと奨励をやっていくという、法律のたてまえそのものの趣旨を積極的に適用していくことが離職者対策になりますし、職業転換、労働者が新しい職場に魅力を感ずる、あるいはそれを開拓していくという意欲につながっていくと思うのです。この点が現行の面では欠落している重要な点じゃないかと思いますので、この点についても、ぜひ関係省庁で十分御検討いただいて、積極的に、いま申し上げたような方向に改正する御配慮を、この際おとりになる必要があると思うのですが、この点についての御見解を承っておきたいと思います。
  133. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘の趣旨は、私は非常に前向きで検討すべき御提言だと思うのです。関係省庁と連絡をとりまして今後に処したいと思います。  一つ、ここに付言しておきますけれども、そういう意味も含めまして、すでに御案内だと思いますが、中高年齢者雇用促進のために、中高年齢者を雇い入れる事業主に対しては助成する。中小企業者の場合には普通支払う賃金の三分の二、こういう制度を設けた趣旨も御指摘考え方に相呼応するものでございまして、とかく失業者が定着してしまう、これはその人のためにも幸せではなく、再就職促進という面からいって御指摘の点は十二分に含んで、今後検討させていただきたいと思います。
  134. 上原康助

    上原委員 そういったことについては、ぜひ十分な御検討を賜りたいと思います。  そこで、いま大臣から御答弁のありました雇用奨励金、事業主に対しての奨励金、中高年齢者雇用する民間企業を含めての、そういう制度ができたわけですが、これなども、もっと大胆に活用すべきだと私は思うのですね。これは何も駐留軍関係のみにとどまらず、最近の雇用失業状態を考えた場合に、要するに中高年齢あるいは炭鉱とか駐留軍とか、そういう離職者を雇用する事業主に対しては現在たしか最高一万四千円の賃金補助を出していると思うのですが、これだけでは幾ら中高年齢者といったってせいぜい八分の一ないし十分の一程度の足しにしかならないと思うのですね。もちろん財政の都合もいろいろあるでしょうが、雇用問題、失業問題をもっと抜本的に解決をしていくためには、しかも経済がこれだけ落ち込んだ状況では、やはりそういった社会政策的な雇用拡大、創出というものを考えなければいけないと思うのですね。奨励金をやると同時に、そういう方々を雇う雇用主、事業に対しても、もっと積極的な施策を、この際、打ち出すべきだと思うのですが、この点もあわせて御見解をちょうだいしておきたいと思います。
  135. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私の答弁の言葉足らずと申しますか、実は中高年齢者を雇い入れた事業主に対して助成するというのは、駐留軍関係離職者だけでなくて、全部の離職者に対し、中高年齢者雇用政策の一環として、これを受け入れる事業主に助成をするという職旨でございまして、ひとつそのように御理解をいただきたいと思います。
  136. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 ちょっと補足して説明させていただきます。  上原先生が指摘されました雇用奨励金につきましては、従来から駐留軍離職者については他の制度と異なりまして、年齢にかかわりなく、これを雇い入れた事業主の方に平均して月額一万二千円程度の雇用奨励金を一年間支給する制度があったわけでございまして、これは来年度におきましては一千円の増額を図るということにいたしておるわけでございますけれども、ただいま大臣が御答弁いたしましたことは、駐留軍離職者対策としてのそういう施策のほかに、こういう雇用失業情勢でございますので、中高年齢者雇用促進、雇用開発という趣旨から、四十五歳以上の方を雇い入れた事業主の方々に、中小企業ですと賃金の三分の二、大企業ですと二分の一の助成をするという、いわば雇用開発のための新しい制度を設けたわけでございまして、駐留軍離職者の方々の中には中高年齢者が非常に多いわけでございますので、こういうものも大いに活用いたしたいということでございます。具体的な中身はそういうことでございます。
  137. 上原康助

    上原委員 この法律、ほかにもいろいろあるにはあるのですか、あと一点指摘しておきたい点があります。  これも過去の経緯からして、あるいはまた現在の、補助金などをできるだけ削減をしていきたいという行財政全般の当面している状況からすると、なかなか容易でない面もあろうかと思うのですが、この離職者等臨時措置法で、各都道府県、市町村の離職者等対策協議会に対する経費の一部補助について規定をされているわけですね。指摘するまでもなく第九条第三項にそういう定めがございます。本土の関係都道府県というのは、たとえば神奈川にしても東京にしても財政逼迫はいろいろあるにしても、財政規模が大きい、あるいはまた、その他の面での運用に幅があるということで、さほど問題ないかもしれませんが、沖繩のように、集中して基地労働者が多い、あるいは解雇者も続々出るという地域では、市町村も離職者等対策協議会を設置しても、財政面なりいろいろな事務的な面などでなかなかむずかしい状況に追い込まれているわけです。  せっかく法律でこのことについて規定をされている。臨時措置法の第九条三項に「国は、都道府県又は市町村が地方協議会を置いたときは、予算の範囲内において、政令の定めるところにより、当該地方協議会に要する経費の一部を補助することができる。」と明確にうたっておるわけです。しかし、最近これはほとんどゼロに等しい。したがって、各都道府県が全額補助をするなり、いろいろなことをやらなければいけないという状況に相なっておるわけです。これも、私も事情をちょっと調べてみたのですが、先ほど申し上げたような状況どもあって容易でないということですが、もし、どうしてもそういうことが不可能であるというならば、こういう明文があるわけですから、そこいらのことについても何らかの形でぜひ御配慮をいただく必要があるのではないかと思って、御検討賜りたいわけです。  それといま一点、これは後ほど内閣委員会などでも検討されることになるのですが、この法律関係一つ見落としてならない点は、今回の行政機構改革で駐留軍関係離職者対策審議会を中央職業安定審議会に統合するということになっておるわけです。これはまだ、これからの審議の段階ではありますが、せんだって三月十五日に、御承知のように駐留軍関係離職者対策審議会が持たれて、駐留軍関係離職者対策の調査、審議についての要望書といいますか意見書が労働大臣あてに提出をされておると存じます。そこで、仮にこの駐留軍関係離職者対策審議会が中央職業安定審議会に統合されても、従来この離職者対策審議会が果たしてきた役割りというものを職業安定審議会においても十分生かされる方途を、いまから私はとるべきだと思うのです。その職業安定審議会に専門部会を置くなり、いろいろな形でやらないと、この離職者臨時措置法そのものか十分生かされない結果になってもいけないと思うのです。その点についても御見解をお伺いしておきたい。  なぜ私が、このことを指摘をするかといいますと、この法律だけにかかわるわけにはまいりませんので、この駐留軍関係離職者対策の方針については昭和四十九年四月三十日に閣議決定といいますか、なされて、中央駐留軍関係離職者等対策協議会で、この対策要綱が提起をされているわけです。ここで盛られていることは、現在でも政府として駐留軍離職者対策をおやりになっていく上で十分生かしていかなければいけない内容か盛られていると思うのです。これだけ重要な機能を果たしてきておりますので、今回審議会の統廃合で仮に廃止になるという結論が出たという段階では、いま申し上げたことは十分踏まえて生かされるように、現段階から御配慮をいただきたいと思うのですが、いま申し上げた二点について御見解を煩わしておきたいと思います。
  138. 藤井勝志

    藤井国務大臣 最後の方から先にお答えをさせていただきますが、御指摘のごとく行政機構改革の一環として、駐留軍関係離職者対策審議会が中央職業安定審議会の方に統合をされることになりまして、私の方はいままでの駐留軍関係離職者対策協議会の会長から要請を受けておりまして、御指摘の点は、当然考えなければならぬ点でございまして、われわれとしては一応統合された審議会の中に専門部会を設けるということ、そして特にまた御指摘のごとく駐留軍関係の離職者は沖繩関係が一番多いわけでございますから、沖繩関係の事情に精通された方ということも当然配慮しなければならぬ、このように思うわけでございます。  それから、特に最近の厳しい雇用情勢を背景にして、わけても沖繩地帯は特殊事情がございますから、そういった沖繩県の現場、第一線の地方自治体の雇用安定対策としては職業安定所があるわけでございますから、これが職業安定所には、現在の厳しい雇用情勢を踏まえて、国から職業安定行政推進の予算措置を相当しております。したがって、そういった職業安定所が中心になっていろいろな情勢交換の場をつくる、打ち合わせの会合をする、こういったことは十分財政措置をいたしておるわけでございまして、そういう点において御指摘の方向に雇用政策が展開するということを私は期待いたしておるわけでございます。
  139. 上原康助

    上原委員 そのほかに全駐労なり全軍労の方からも特に沖繩の駐留軍離職者対策を推進していく上での集団就労計画というのが出されております。駐留軍の離職者事業団を設立したいとか、あるいは雇用基金制度を設けて、いわゆる自力更生で離職者の皆さんがやっていく環境を、国も県なりも積極的につくっていただきたい。そのために、いろいろな計画なり助言、指導をやっていただきたいということが提案をされて久しくなるのですが、これなども、むずかしい、むずかしいということで一向に進展をしていないわけですね。この点は沖繩全体の雇用失業問題と関連をさせて後ほどお尋ねいたしますが、こういうこともやはりこの法律を積極的に活用、運用していく上では必要な政策の範囲に私は入っていると思いますので、その点もぜひ十分に、その提案等を受けとめていただいて御検討を進めていただきたいということを一応指摘して、次の問題に入ります。  そこで、こういう形で離職者対策なり、あるいは離職前のいろいろな職業訓練なども、この法律範囲でやってきておられるわけですが、次は施設庁に主としてお尋ねいたしますが、先般からいろいろ問題になってきました駐留軍の基本問題との関係で、日米間で七七春闘の賃金改定合意がなされる段階でいわゆる基本問題として、まだ継続検討になっている問題があると思うのです。その一つが、米軍がいろいろな施設なり機構を閉鎖する、あるいは縮少していくときに、請負業者に業務を移管していこうという、いわゆる業者切りかえの問題。もう一つは先ほど私が冒頭にお尋ねしましたように、一体今後の駐留軍の雇用計画というものがどういうトレンド、動向になっていくのか。少なくとも最低限度、会計年度内の雇用計画というのを明示すべきだと私たちは思うのです。三年ないし五年という中期の雇用計画というものが、もし明らかにできないということであるならば、少なくとも会計年度においては、どのくらいの解雇があり、またどういう人事措置がとられるということはやるべきだと思うのですが、この雇用計画についても日米間で継続審議になっておろうかと思うのです。さらに三点目は、これは地位協定にもうたわれておりますように、わが国の労働法令については基地労働者といえども、米軍といえども完全に尊重すべきだ、遵守すべきだということになっておろうかと思うのです。  いま申し上げた業者切りかえ問題、もちろん私は、これは絶対反対という立場で取り上げているわけですが、二点目の雇用計画、三点目の労働法令の適用問題、これは一体日米間のその後の話し合いというのはどういうふうに進展をしているのか。また政府としては、このことについてはどのように対処をしていかれようとしておられるのか。お聞かせをいただきたいと思います。
  140. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま先生のお話しのとおり、昨年の基本問題の日米間の合意に当たりまして、在日米軍と防衛施設庁の間で引き続き検討するということになっている課題が三つあるわけでございます。長期的な雇用計画の問題それから業者切りかえの問題、それから国内労働法令の問題ということでございます。この問題につきましては、いずれも駐留軍従業員の労務管理を行っていく上の基本的な事項でございまして、私ども雇用の安定確保という上できわめて重要な問題であるというふうに考えております。現在の段階では、防衛施設庁並びに在日米軍それぞれで所要の検討を行っているという段階でございまして、まだ本格的な交渉はこれからでございます。私どももいろいろ検討しておりますが、交渉ごとでございますので、具体的にどういうふうに詰めていく、あるいは詰まる見通しであるということを申し上げることはできませんけれども、いずれにしましても、この問題の重要性にかんがみまして、基本的に従業員の雇用関係、労働関係を一層安定した基盤の上に置くということを主眼といたしまして、できるだけ早く結論を得るように、対米交渉を促進してまいりたいというふうに考えております。
  141. 上原康助

    上原委員 賃金改定問題が合意を見て後に、この三点についてはどの程度、米側とはお話し合いを持ったわけですか。公式な政府間交渉といいますか、話し合いというのは持たれておらないのか。あるいはもし差し支えなければ、おおよそのめどづけは、この時期までに結論を出したいとか、そういうお考えもあって、やはり日米間の話し合いを進めると私は思うのですが、そこいらの点はどういう状況でしょうか。
  142. 亘理彰

    ○亘理政府委員 実を申しますと、これらの問題について私どもも早く交渉を進めなければならないというふうに考えておりますが、昨年の合意に基づきますMLCその他諸契約の改定の問題等がございまして、この継続検討事項の三つの問題につきましては、まだ具体的な交渉に入っておりません。先ほど申し上げましたとおり、日米双方でそれぞれ、この問題をどう進めるかを検討している段階でございまして、契約の改定問題は大体目鼻がついてまいりましたので、今後精力的に、この継続検討の問題について交渉に入りたいということで、米側にも話しておるところでございます。そういう段階でございまして、まだ、いつまでに結論が得られるかということを申し上げられないのはまことに遺憾でございますが、現在の段階では、これから鋭意交渉を促進するということで御了承いただきたいと思います。
  143. 上原康助

    上原委員 御答弁に納得しかねる面もあるわけですが、相手のあることでもありますので、特にきょうは雇用計画の策定問題と業者切りかえ、請負制移行の問題について、もう少し触れておきたいのです。  次に私がお尋ねをしようとする、この間も内閣委員会でも少し取り上げました、沖繩の在沖米陸軍が三月十日に発表したところの例の整理統合計画からしても、日米間の政府交渉にまで、合同委員会のたしか正式議題にまでなっている雇用計画の問題を全く無視する形で、整理統合計画というものを米側が一方的にやっているわけですね。したがって、そういうことに対しては施設庁も外務省も、いま少し毅然たる態度でやっていただかないと、結局、犠牲を受けるのは雇用員ということになるわけですね。今日まで基地労働問題はいろいろ議論をされて、福利厚生費の負担問題等についても、われわれもいろいろな意見などもありながらも、やはり従業員、働いている労働者に余りにも過重な犠牲なり負担をかけてはならぬという立場で、日本側もやれるべきところはやって、同時にアメリカ側が理不尽な合理化なり首切りをやってきたということに対しては、断固として政府も、その不合理なことに対しては筋を通すということが、今日のこの問題に対する多くの国民なり関係労働者の切実な声だと私は思うのです。それを無視された形ではいけないのではないでしょうか。したがって、この雇用計画の策定問題については、少なくとも米側に対して、米会計年度の当初において年間の雇用計画をまず明らかにさせる。あるいは年度内にどうしても雇用計画に変更があるという場合においては、その変更内容を一方的に発表するなりあるいは通告する以前に、政府間交渉で十分やって、調整した上でやるぐらいの手順を踏まなければいかぬと思うのですね。そして、万々やむを得ず解雇という措置をとらざるを得ない場合には、九十日の予告期間なりそれ以上をあくまでも守ってもらう。その間に自主退職なり、あるいは配置転換とか職業訓練を含めていろいろな手を打つ。こういうシステムというものをこの際、確立してもらわなければ困ると思うのですね。この点について、いま私が申し上げたようなことで当然臨まれると思うのですが、御見解を聞きたいと思います。
  144. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま先生のおっしゃることは大変よくわかるわけでございます。私ども雇用主の立場で、二万二千人の従業員並びにその家族を含めれば十万人近い生活にかかわる問題について責任を持っておるわけでございますので、従来から雇用の安定、労務の安定という問題につきましては、できる限りの努力をいたしておるつもりでございます。かつ、その場合に、おっしゃるとおり、できるだけ前広に米側の方針を承知して、その事態に対応するいろいろな措置を余裕をもって講ぜられるようにすることが大変意義のあることであるということも、私ども全く同感でございます。  三月十日に発表されました在沖米陸軍の業務の移管問題につきまして、また後ほどお答えする機会もあるかと思いますが、それ自体は雇用整理の問題に直ちにつながってくるということではないわけでございますが、当然影響か出てくるわけでございます。在日米軍の編成なりあるいは業務の所管分野の問題について、これは米軍の問題でございまして、合同委員会で検討するというふうな問題ではないと私どもも思いますけれども、関連して生ずべき労務への影響等につきましては、私どもも米側の考え方を十分に、できるだけ早く情報を得て、対策を講じてまいりたいというふうに考えております。  気持ちにおきましては、先生のおっしゃることに同感でございます。
  145. 上原康助

    上原委員 それは施設庁長官、私が申し上げたことを理解するとか気持ちをわかるだけではだめなんだよ。少なくとも、このぐらいのことはやっていただかぬと、それは失礼ですが政府としての体をなしませんよ。アメリカもそんな無鉄砲なことを、勝手気ままなことをするなら出て行けと言ったらいいですよ。安保条約をすぐなくするというなら私もこの議論をやめてもいいですよ。アメリカは、いま基地の維持費にしたって、いろいろな問題で、わが方に財政負担をやれという要求をやってきているわけでしょう。出すなら出すで、また相手が理不尽なことをやるなら、それに対しては毅然たる態度で筋を通して、国民の権利と利益を守るのがお役人なり政府の当然の責務じゃありませんか。そのことはぜひ踏まえてやっていただきたいと思うのです。  それともう一つは、請負制移行の問題ですが、残念ながら最近の円高で、これも今後、基地労働者には大きなインパクトになるわけですね。悪影響を及ぼす。現に昨年ありました横須賀の海軍の下士官食堂の問題とか、あるいは諸機関、エクスチェンジ、PXあたりの合理化、人員削減というものが出てきている、独立採算制のこの職場においては。したがって、もちろん円高問題日米間の経済状況というのは、そう簡単に、わが方の立場とかあるいは相手側の主張ということを聞きっ放し、言いっ放しというわけにはいかないでしょうが、少なくとも、こういう円高問題が続いているからということで、即断的に基地労働者の首切りなり、あるいは賃金切り下げなり、また労働の需要はあるにもかかわらず、民間なり、ほかの企業にやすやすと請負をさせるというシステムに移行するということはやるべきでないと思うのです。これなども、ぜひ歯どめをかけていただきたい。この点についてはどのように対処していかれようとしておられるのですか。
  146. 亘理彰

    ○亘理政府委員 業者切りかえの問題が、特にIHA従業員の雇用の安定にかかわる非常に重要な問題であるということについては、私ども全く認識は同じでございます。  昨年の横須賀におけるお話の件が出ましたときにも、私ども大臣以下あらゆるレベルで米側に交渉をいたしまして、できるだけ、その被害が少なくて済むように努力いたしたわけでございます。同時に、昨年の横須賀の問題は、十分な余裕を置かないで米側の案の提示がございまして、その処理に困惑したわけでございまして、万一、業者切りかえを必要とするような事態が生ずるという場合には、できるだけ早く前広に、その内容あるいは米側の考え方を知らせてもらって、日米双方で一緒になって最善の解決策を考えたいということで申し入れもしておるわけでございます。その業者切りかえの問題が決して安易にやれるようなものでないということは、去年の横須賀の経験あるいはその前にもあったわけでございますが、米側も十分認識しておると思います。私どもも、この業者切りかえの問題が安易に扱われることがないように、さらに一層注意をいたすとともに、米側にも私どものそういう態度を徹底してもらいたいというふうに考えております。
  147. 上原康助

    上原委員 そこで、全然やっておられないとは私は言いませんが、いろいろ御苦労もあると思うのですが、要するに、あなたはもっとえらいのですよ。あなたは二万三千名の雇用主なんです。しかも、防衛施設庁長官は、駐留軍従業員の賃金決定権もあるのです。法律上、それを引用するまでもなく。それを、どうもアメリカに弱いというか何かわからぬけれども、要するに米軍が、雇用問題についてはあくまでも使用者として、いわゆる採用権、雇用権それから解雇権、いわゆる人事の任用権を持っているから、そうなっているわけでしょう、自由裁量によって。このことに歯どめをかけないといかぬですよ、これは。もう二十五年前とは違うのですよ、安保条約ができた段階と。地位協定の運用にしたって。悪い方向に私は解釈を言っているのではないのです。二十四、五年前にアメリカが、失礼な言い方ですが、戦勝国として、あたかも高飛車にいろんなことを、日本をコントロールするみたいなことをやってきた。沖繩だってそうなんだよ。二十七年間踏み台にしてきた。むしろ、そういう条件で私たちは民主主義というものを、抵抗権というものを培ってきたんですよ。  そういう観点に立つと、この段階においては、アメリカが使用者という立場で人事の任用権全部を行使することに日本政府は断固反対だ。採用権にしても、解雇の問題にしても、合理化の問題にしても、軍事機密に関しないことについては一切日米間で協議の上でないと履行させぬ。決定させぬというところぐらいの毅然たる行政的立場と政治性というものがないといかぬと思うのです。そのことを改めない限り、この問題というのはなかなか議論がかみ合わなくなってくる。したがって、そういう任用権についても、この際ぜひA・B間、日米間で話し合っていただいて、もっと日本政府の権限が行使できる労務行政、労務管理というものをこの際、樹立をすべきだと私は思うのです。この点についての御見解いかがですか。
  148. 亘理彰

    ○亘理政府委員 駐留軍従業員の労務管理につきましては、先生十分御承知のとおり、いわゆる間接雇用方式をとっておるわけでございます。したがいまして、私が日本政府を代表して雇用主の立場ということでございますが、使用者は米側であるという形になっております関係上、この労務管理は第一義的には従業員を直接かつ実際に使用しておる米軍が行うというたてまえになっておるわけでございます。しかしながら、日本側としましても、いまお話しのとおり従業員の雇用主としての立場にございますので、米側の人事権につきまして勝手ほうだいにやらせておるということではございませんので、従業員に対してとられます各種の人事措置、給与その他の勤務条件の決定あるいは作業条件の変更等に際しましては、雇用主の立場でこれに関与しまして、従業員の身分や勤務条件等に不利益が生ずることのないよう米側と十分協議、調整を行っておるところでございます。  この努力が十分でないというおしかりはあろうかと思いますが、私どもとしましては今後とも、現在の方式のもとにおいて関係従業員が不利益をこうむることのないよう、不利益が少しでも、こうむる場合にも少なくて済むようにきめ細かい配慮をいたしまして、従業員の労務管理に毅然たる態度で臨んでまいりたい。一層の努力をいたさなければならないというふうに考えております。
  149. 上原康助

    上原委員 ぜひひとつ積極的な姿勢でやっていただきたいと思います。  そこで、いまの件とも関連するわけですが、私は去る二十四日の内閣委員会でも、ちょっとの時間でしたが、外務大臣にもお尋ねしたのです。きょう外務省もおいでと思いますが、先ほど少しお触れになっておりました在沖米陸軍が今回発表した整理統合計画、これは「在日米国陸軍支援責任の整理統合」なんて、何か日本語にしてはわかるようなわからぬような言い回しですが、この中で問題は、いろいろ、この背景はあると思うのですが、そこはいずれの機会に議論をするといたしまして、きょうは労務問題だけに限ります。  要するに、いまの米軍の再編統合の動きを見てみると、空軍と海兵隊は沖繩に集中する。海軍は本土の基地周辺。まあ岩国に若干海兵隊があるわけですが、そういう方向で、この二、三年どんどん縮小計画というか、強化されてきている面かあるわけです。したがって、ほとんど補給部門に関する限り在沖陸軍というものは今年いっぱいになくなっていく。同時に、現在でも御承知のように二千四百名くらいの陸軍関係雇用員が沖繩にいるわけですが、したがって、これだけの人に影響を与える重大な整理統合であるにもかかわらず、一方的に言ってきたということ、その後、直ちに在日米軍とも、あるいは在沖米軍ともいろいろ話し合って、その具体的内容を明確にして対策を立てるということでしたが、せんだって私も防衛庁長官にも施設庁長官にもお会いしたし、また外務大臣も、従来のような形式的な取り扱いではいかぬから、施設庁とも防衛庁とも協議をして積極的にやりますということをおっしゃった。どうなっていますか、その後。どのくらいの労働者に影響があるのか。あるいはいつまでに、今年いっぱいということですから、今年いっぱいというと十二月までなのか、あるいはアメリカの会計年度は御承知のようにいまは十月一日からですか、九月までに、この発表された雇用整理計画というものは実施していくということなのか。そこらは早急に明らかにして対策を講じないといかぬと思うのですね。この点、日米間の話し合い、政府の方針はどうなっておるか、御答弁をいただきたいと思います。
  150. 亘理彰

    ○亘理政府委員 去る三月の十日に在日米軍から、沖繩にあります米陸軍の業務の空軍あるいは海兵隊への移管計画が発表されたわけでございますが、これは五十一年の三月に発表されました在日米陸軍の再編成計画の一環だと聞いております。  私どもは、この計画の実施に当たりましては、当然のことながら従来の方針と同様に、従業員の雇用の確保を図るということに最大のねらいを置きまして米側と調整を図りたいと思っておるわけでございます。それにつきましても具体的な計画の細部を把握することが先決でございますが、この点につきましては、私自身も在日米軍の参謀長に、この計画の実施に当たっては従業員の雇用の安定に万全を期してもらいたいということを申し入れると同時に、計画の具体内容考え方をできるだけ早く示してもらいたいということを申し入れております。それから先般、鈴木労務調査官を沖繩現地に派遣いたしまして、在沖米各軍の幹部とも話し合いをいたさせたわけでございますが、現在の段階では米軍内部におきまして、この具体的な移管の方法、段取りにつきまして調整中であるということでございまして、まだ固まっていないというのが実情であると思っております。米側におきましても、地元において知事さんその他からも、いろいろ申し入れハされておりますし、関係従業員の雇用の確保については最大限の努力をするということを表明しているところでございますが、現在の段階では、まだ具体内容が判明いたしませんけれども、できるだけ早く、その見通しを得まして、関係従業員につきましての継続雇用の確保あるいは、やむを得ない場合には配置転換等の措置によって雇用を確保してまいりたいということで考えておるわけでございます。  いつまでに、この方針が実施されるのかということについては、まだ確たる情報を得ておりません。かなり時間がかかるのではないか。移管の具体内容について米三軍間で整整中であるというのが現在の段階実情であると見ております。
  151. 上原康助

    上原委員 長官、これは米側の態度、というより米側の計画がすべて煮詰まってといいますか、一切、向こうだけで策定をされた後に交渉を持ってもいかぬと私は思うのですね。したがって、そこいらは当然お気づきで、やっておられるとは思うのですが、もう少し先ほど申し上げたようなことを踏まえてやっていただかなければいかぬと思うのですね。  この間も少し引用したのですが、この中で「予備交渉の結果によると、受け入れ側の米軍では、場合によつては在日米陸軍から移管される日本人従業員の数より少い人員を必要とし、又は在日米国陸軍従業員が所持する技能以外の資格を必要とすることもあり得ます。この場合、人員整理措置か必要となります。」とあるわけですね。したがって、この該当者に言わせれば、今日このような不況、しかも、あれだけ深刻な失業状態の中で、さらに何千名切られるのか、何百名切られるのか、自分はどうなるのか、そういう気持ちでやられるというのはたまったものじゃないですよ。こういうことを一方的にさせるいわれはないのじゃないですか。これに対しては、先ほど言いましたような十分な対策をとってもらわなければ困ると私は思うのですね。  さらに、これはこういうことも発表の中で明らかにしておりますよ。「支援責任の整理統合は継続的に一九七八年末まで行われます。主要業務は米国陸軍から他の米軍へ移管されます。然し、予定されている整理統合の結果、施設を日本政府へ返還することはいたしません。」明確なんです。  最後に何をぬけぬけと言っているかといいますと、最後の結びのところでは、こういうことまで初めて出てきた。「これらの支援業務の移管は在日米国陸軍の任務に変更をもたらすものではありません。在日米陸軍第九軍団は継続的に主要部隊としての地位を保持し、日本政府及び陸上自衛隊との友好関係を堅持します。」冗談じゃないですね。だから、われわれが言っているように、基地機能やあるいはアメリカが駐留している任務や機能そのものはいささかも損なわないけれども、従業員だけ、そこで働いている労働者だけは、できるだけ切り詰めて合理化をしていく、首切っていくということは、どうにも合点がいかないのですよ。そこに大きな問題があるという認識で、ひとつぜひやっていただきたい。  そこで、いま、いつまでということは言えないということですが、早急に、そういう面は明らかにしていただきたいし、いま指摘をしたことも十分理解をした上でやっていただきたいし、このことについては過去にも既得権の保障はなされて、配転措置、他軍への配置がなされた経過もありますので、そういうことについては十分な対策をとりながら、この計画の内容を明らかにさせていくように努力をいたしますね。
  152. 亘理彰

    ○亘理政府委員 おっしゃるとおりでございます。先生御承知のとおり五十一年の三月に在日米陸軍の再編成計画が発表されまして、昨年におきましても相当な所管業務の移管が行われまして、昨年の二月から六月にかけまして陸軍とか空軍の間の調整がされました。その際も関係従業員は約千二百名に上ったわけでございますが、私どもも鋭意在日米軍司令部と折衝をいたしまして、その九〇%以上の従業員の方については継続雇用を図ることができたところでございます。  今回の移管方針の実施に当たりましても、従業員に大きなしわ寄せが起こらないように、私どもは先ほど来申し上げておりますとおり、できるだけ前広に米側の考え方確認し、それに対しまして私ども考え方をぶつけまして、最大限の雇用の確保、安定を図ってまいりたいというふうに考えております。
  153. 上原康助

    上原委員 その点は、あと一点残っておりますので、三月十七日に私も文書で申し入れをいたしました。その内容をぜひ踏まえていただきたいと思います。  それから三月十四日に駐労共闘会議の方からも「在沖米陸軍施設の他軍への移管に伴う駐留軍従業員の雇用継続要求に関する申し入れ」というのが出されております。特に「施設移管に当っては、昨年三月一日にとられた次の方針を米軍に遵守させること。移管で機能が変らない場合は、労働者の身分に変更を加えないこと。機能は変らないが、場所が変る場合は、転任の措置をとること。部隊問の事情から機能が変り、職種が変る場合は、人員整理者を優先的に採用すること。」こういうことは最低限度考慮に入れて対策をおとりになりますね。
  154. 亘理彰

    ○亘理政府委員 先般も先生から、ただいまのお考えを承りまして、私どもも大変有益な参考にさせていただけると思っております。先生のお考えを踏まえまして極力対処してまいりたいと思います。
  155. 上原康助

    上原委員 せんだっても総理府に来ていただいたのですが、お尋ねすることできませんでしたので、あと十分ちょっとありますので、交通方法変更問題について、主に基地関係についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  これもたくさんは指摘するまでもないのですが、七月三十日に向けて車の右通行を左に変えていく。この間、われわれ社会党としてもいろいろ総務長官なり関係当局に要求、要望してきたし、沖繩県当局も要綱発表段階において県の考え方ども提示をしながら、もっといろいろ県民要求を入れろということを求めてきたのですが、残念ながら、去る十七日でしたか発表された要綱というのは、特別事業について若干、一言、二言直しただけで、あとは総理府が最初に起案をしたそのままですね。これでは全く県民の要求を踏みにじったことになると言わざるを得ないわけですが、いずれ、そういう面は、また沖繩・北方問題特別委員会なりその他でも議論になると思うのですが、基地内の対策は一体どうなっているかということですね。  それと、施設庁、外務省にもぜひお尋ねしておきたいのですが、基地関係従業員の安全確保の問題はどうなっているのか。私が調べた範囲においては、基地内はほとんど手つかずですね。やっているのはアメリカのバスだけ、とびらを変えている。これでは七、八千名もいる基地従業員の場合、一体どうなるのかということと。基地内の安全対策はどうなるのか。米人は御承知のように右通行を国内ではやっている。きわめて危険な問題かあると思うのです。そして、この要綱で出ているのは「米軍基地対策 沖繩県の交通における米軍基地関係交通の重要性にかんがみ、米軍人等に対する交通安全教育・広報、米軍関係車両対策、基地内の交通安全施設の整備等について交通方法変更への充分な対応措置が行われるよう米軍側と緊密な連絡をとり必要な協力を行う。」これだけですね。全くあとはない。これはどうするおつもりですか。どういう対策をとろうとしているのか。それが一つ。  もう一つは、経費負担の問題はどうなるのですか。米軍施設内の交通方法変更をやる上で、どのくらいの経費がかかって、その負担は、これまでの政府の見解は、原則的には米側負担だということを言ってきたのですが、ここいらはどうなっているのか。ぜひ、この際明らかにしていただきたいと思います。
  156. 亘理彰

    ○亘理政府委員 沖繩におきます交通方法の変更につきましては、御承知のとおり、総理府に置かれております沖繩県交通方法変更対策本部で取り扱われておるところでございます。  在日米軍基地内の交通方法につきましても、七月三十日から基地外の変更にあわせて左側通行に変更するということで、これは総理府と米側といろいろ話し合いもございまして、米側で所要の準備を行っているというふうに承知しております。正直なところ、施設庁はこの問題について具体的に余りタッチしていないのでございます。  ただ、この交通方法の変更に伴いまして御指摘の基地従業員の安全確保の問題がございますので、この点につきましては、人身事故防止の観点から非常に重要な問題であると考えますので、私どもとしましても、沖繩県の渉外部を通じまして、必要な措置をとるように申し入れをいたしておりまして、米側におきましても、駐留軍従業員に対して交通方法の変更についての映写会等を実施しているという報告も受けておりますが、なお、必要に応じて米側に協力を求め、あるいは具体的な安全教育等についても、さらに相談をしてまいりたいというふうに思います。  なお、基地内の交通方法の変更に伴います施設等の費用が、ある程度かかると思いますが、この点につきましては私どもも、米側から要求も出ておりませんし、必要な措置については米側の負担において米側で実施するものと心得ております。
  157. 三島孟

    ○三島政府委員 米軍側とは日米合同委員会の場で、米軍人等に対する交通安全教育あるいは広報、米軍関係車両対策、基地内の交通安全施設の整備等につきまして、交通方法変更への十分な対応措置が行われるように、いま交渉しておりますほか、日本関係省庁及び在日米軍司令部関係者がたびたび会合いたしまして、話し合いを進めておるところでございます。また現地でも両者間の連絡会議を開催して話し合いを進めているところでございます。
  158. 上原康助

    上原委員 日米合同委員会でやっているというのは、どういうふうにやっているのですか。その合同委員会には、どこどこが参加しているわけですか。
  159. 丹波実

    ○丹波説明員 お答えいたします。  ただいま対策室長が申されましたことは、恐らく昭和五十一年の十月の下旬に、合同委員会を通じましてアメリカ側に、今度沖繩で交通方法が変わるから、ひとつ基地内の交通も変えてくれという申し入れをした、こういうことを指しておられると私は思います。
  160. 上原康助

    上原委員 皆さん少し物はよう考えて言ってもらわねば……。五十一年の十月ですか、もう一遍確かめておきましょう。
  161. 丹波実

    ○丹波説明員 少なくとも最初に、この問題を合同委員会で取り上げたのは五十一年です。
  162. 上原康助

    上原委員 じゃ、その後の合同委員会は何回開いていますか。
  163. 丹波実

    ○丹波説明員 合同委員会は先生御承知のとおり二週間に一回開いておりますが、アメリカ側は五十一年の十月に日本側が申し入れたときに、基本的に日本側の要請には協力します。こういうことになっておりまして、その後の具体的な問題につきましては、総理府の対策室が具体的にアメリカ側と折衝しておる、そう承知しております。
  164. 上原康助

    上原委員 私は何も、ここで質問するのを機械的に物を言っているんじゃありませんよ。少なくとも少しは考えながら私でも発言していますよ。だから、何らの対策もとられていないというのが私の受けとめ方、私の認識なんだよ。私は関係者から調査もした。いま三島室長がぬけぬけと——ぬけぬけと言ったら失礼ですが、あたかもやっているかのように、合同委員会でやっていますと言う。さっきは防衛施設庁長官は、この問題については余りタッチしていませんとはっきり言っているわけでしょう。外務省に答えさせてみれば、五十二年と言うかと思ったら五十一年の十月です。一体いま何年ですか。それで十分な対策をとっておりますと言えるんですか。冗談じゃないですよ。
  165. 三島孟

    ○三島政府委員 私、先ほどお答えいたしましたとおり、合同委員会の場で正式には交渉しておるほか、日本側の関係省庁と在日米軍司令部の関係者がたびたび会合を持ちまして交渉を進めておるわけです。また現地でも現地の関係者が集まりまして話し合いを進めておる、こういうことでございます。
  166. 上原康助

    上原委員 そうしますと、基地内の問題については一切、総理府の交通対策室が取り仕切っているということですね。
  167. 三島孟

    ○三島政府委員 私どもは一応、窓口という立場で、関係省庁と一緒に検討を進めておるということでございます。
  168. 上原康助

    上原委員 これに要する経費問題はどうなったのですか。
  169. 三島孟

    ○三島政府委員 米軍が管理権を有する基地内におきましては、米軍が、安全上の観点から実質的に交通方法の変更に伴う対応措置を行うことになっております。そして日本側は、米軍がこのために行う基地内の交通安全施設の整備等につきまして安全上十分な措置が行われるように米軍と緊密な連絡をとりながら必要な協力を行うというたてまえになっておるわけでございます。
  170. 上原康助

    上原委員 ですから、これまでの説明では、施設内のすみ切りとか、あるいは信号、交通標識その他を整備していくには、かなりの費用がかかるということでしたよね。先ほど施設庁長官は、施設庁に対しては米側から何の申し入れなり話がないので、アメリカ側の責任においてやるべきものだと思うという答弁があったわけですね。そこいらの点はどうなっているかということです。
  171. 三島孟

    ○三島政府委員 米軍側の責任において必要な対応措置をとることになっております。非公式の場では、たとえば標識がどれだけ要るんだとか、いろいろなことは米軍側の立場としておっしゃっておるわけでございます。しかし、あくまで米軍側の責任において必要な措置を講ずる。それに対して日本側としては実質的に協力できる範囲内で協力する、こういうことでございます。
  172. 上原康助

    上原委員 そうしますと、非公式でもいい、公式でもいい、要するに在沖米軍基地の施設内の交通方法を変更していく上でやらなければいけない作業に必要な経費は幾らぐらいかかるんですか。
  173. 三島孟

    ○三島政府委員 一応、非公式の場では施設関係だけでも五十万ドルぐらい要るというようなことは話には出しております。しかし、実質的にどれだけ必要かにつきましては、私ども十分承知はしておりません。
  174. 上原康助

    上原委員 外務省、外務省でもいいし施設庁でもいいのですが、この五十万ドルについては当然話し合いは日米間であると思うのですね。合同委員会を五十一年の十月にやって、その後も現地でもしばしば在日米軍とも話し合いをしておるという、いま三島室長の御答弁ですからね。どうなんですか、そこいらは。
  175. 丹波実

    ○丹波説明員 本件につきましては、私が総理府の担当の方から聞いておるところでは、ある時点では確かに四十二、三万ドルの金額の問題として日米間で話し合いがあった。それはそれとして現在は、標識を数千本、日本側から何とかしてもらえないだろうかという話も別途あって、今後いろいろ話を詰める段階にある、こう承知しております。
  176. 上原康助

    上原委員 もちろん、それはお話し合いはしてもらわにゃいかないと思いますし、また必要と思いますが、私は何もここで皆さんの揚げ足を取ったり、いろいろやろうという気持ちはないのですよ。余り皆さんが委員会などで突っぱねた物の言い方、御答弁をやって、その場限りで何とかしのごうという姿勢がしばしばあるんで、私はそれに対して不満であり納得いかないのですよ、はっきり申し上げて。と言いますのは、七月三十日というのは、もう、きょうは三月の二十八日ですよ。四、五、六、七、あと四カ月しかないです。基地内というのは皆さん御承知のように一つのコミュニティーになっていますよ。一つの大きな集落ですよ、嘉手納エアベースにしたって瑞慶覧にしたって、そのほかの基地にしたって。そうしますと皆さん、この間、参議院の質問のときなんかは、交通方法変更については万全の措置をとって、その作業はもう十分進捗していると胸を張ったようですね。しかし、われわれが見る限りは、決してそういう状況でないと思うのですね、民間地域にしても、ましてや基地内の問題等は。こういうことを十分に掌握をせぬで、いまだに費用も四十四、五万ドルあるいは五十万ドル、これもあっちが持つだろう、こっちが持つだろう。アメリカ側に言うと、これは当然みんな日本がやるだろうと言っている。それが話かつかないから手つかずと基地内の関係者は言っている、私の知る範囲では。そういうものをうやむやにして七月三十日が来ましたということで、県民なりみんなが見やすいところだけ変えましたということでやって、一体十分な安全措置というのがとられるのですか。私は、沖繩の県民、沖繩に住んでいる者として非常に懸念をするから、そういう不安を持つから、声を大にして何回もこういうことを尋ねているのですよね。こういうことについては、もう少し誠意を持ってやっていただいたらどうなんでしょう。それが一つ。ぜひその点、明確にさせていただきたい。  さらに、これは施設庁に。どうも窓口にはなっている。じゃどこがやるかということについては、みんなそれぞれの責任のなすり合い、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、そういうかっこうになっているような感じですね。基地従業員の対策なんか全くなされていませんよ。大型車両を運転している人々なんか非常に不安を持っておりますね。道路のすみ切りも基地内のものは全然変えられてない。そういう面とか、せんだって、これも「交通方法変更について」ということで五項目申し入れをいたしました。「交通方法変更に伴う米軍施設内の一切の経費については米側負担で実施させること。」二つ目に「交通方法変更に当つては、基地従業員の生命と職務上の安全確保を最優先し万全の措置を講ずること。」三つ目に「交通方法変更に伴う安全確保をはかるため、全軍労代表を含めた対策委員会を設置し、基地内における事前・事後の対策を十分に講ずること。」四番目に「特に大型車輌運転者(重機類等を含む)に対する事前の訓練及び安全教育を勤務時間中に実施すること。」五番目に「米軍人・軍属及びその家族に対し、交通方法変更の趣旨を周知徹底させ、特に新しく沖繩に勤務する者については一定期間の教育訓練を行い、基地内外を問わず日本の交通法規を完全に遵守させること。」少なくともこの措置については、施設庁も外務省も総理府の交通対策室も、早急に米側と連絡会議か何かの合同会議を持って、いまからやらないと、これは間に合いませんよ。これはどういたしますか。
  177. 三島孟

    ○三島政府委員 交通方法変更に伴う必要な対応措置といたしましては、ただいま御指摘のとおり、交通安全施設の問題のほかにも、車輌対策の問題、それから一番大事な交通安全教育の問題等があるわけでございます。確かに交通方法の変更が安全かつ円滑に実施できるように万全を期さなければならぬと思いますので、だんだん日時も迫ってきておるわけでございますから、一つ一つ問題点につきまして、米軍関係者とそれから私ども関係省庁集まりまして、いま具体的に詰めを行っておるわけでございます。おっしゃるとおり、ただいま申し上げました諸般の問題につきまして今後、具体的な対策の推進を図っていかなければならぬということで努力してまいりたいと思います。
  178. 上原康助

    上原委員 ちょっと抽象論で納得しかねるのですが、施設庁長官と外務省、基地内の雇用員の安全確保の問題については米側と早急にお話し合いを詰めて対策を講じていただけますね。
  179. 亘理彰

    ○亘理政府委員 私どもも基地従業員の交通方法の変更に伴う安全の問題については重大な関心を持っておりますので、先ほど申し上げましたように、いままでも沖繩県を通じまして在沖米軍に申し入れもいたしておりますが、さらに必要な申し入れその他の措置を考えたいと思います。
  180. 上原康助

    上原委員 ぜひこの点も、総理府も含めて十分な対策をやっていただきたいと思います。  そこで、時間も来ましたので、大臣またお戻りになりましたから、きょうの臨措法の件それから駐留軍の基本問題、いろいろお尋ねしましたが、最後に沖繩の雇用失業全般の問題について、さらに積極的に御努力をいただきたいと思いますので……。  これはしばしば取り上げてきたことなんですが、たとえば沖特なんかでの議論によりますと、沖繩開発庁は五十三年度の公共事業費で大体八千名程度の雇用増になるということを言っているわけですね。しかし、では実際の積算根拠とか、どういうタイプの労働者が雇用されるのか吸収できるのか。あるいは現在失業状態にある方から雇用するのか新規の方から雇用されるのか。いろいろ聞いていくと、全然この具体的なあれはないで、ただふんわりと七、八千名できます。あるいは一万人近くできますということで先行している面があるのですね。これでは私は納得できないと思うのですね。こういう面もぜひ明らかにしていただきたいということと、もう一つは先ほどから申し上げておりますように、依然として雇用失業問題というのはきわめて深刻な状況なんですね。しかも二十九歳以下というのが失業者の六五・五%を占めている。本土の場合はたしか三九%かそれ以下、四〇%を下っていると思うのですね、そういう状態。若年労働者がきわめて多数いるということ。それと新規雇用の問題にしても、最近、県の労働商工部の資料によりますと、むしろ新規雇用の方が非常に厳しいということになっているわけですね。今年の高校卒の場合を見て、進学者を抜きにして七千八百九十八人の就職希望者のうち、その半分ぐらいが、ぜひ県内で就職をしたいということのようですが、現在までに県内就職が決まったのはわずかに五百六十九人、県外就職、いわゆる本土就職にしても三千九百三十六人で、三千三百九十三人は県内に失業者として滞留するのですよ。これだけ若い皆さんが、将来の人生いろいろな面で設計を立てようにも、定着する仕事につけないほど人間にとって不幸もないし、社会の大きな弊害だと私は思うのですね。こういう状態。中学卒にしては進学者を抜いて約四百名のうちから、わずかに五名しか県内に就職できないという状態なんですね。したがって、従来のような援護措置だけで沖繩の雇用失業問題は、これは本土でもそうでしょうが、できないと思うのですね。  そういう面で確かに特効薬的なものはないでしょうが、先ほど言った援護措置の中身を積極的に変えていくとか、沖繩県内の中小企業に、もっと多面的に就職できるような手だてというものを積極的にやらなければいかぬと思うのです。そういう意味では、前々から申し上げましたように労働省なり開発庁なりが、県や関係団体から問題提起があればやるという消極的な態度ではなくして、受動的な立場ではなくして積極的に国自体から開発計画なりあるいは産業の誘導問題ということを計画を立てて、メニューを政府自体もおつくりになってやっていくという積極性がないと、この問題は解決しないと私は思うのです。そういう意味では、ぜひ連絡協議会の設置の問題等含めて万般の処置を多角的にとる必要があると思うのです。こういうことも含めてやらないと、この臨時措置法の趣旨も、あるいは雇用対策、失業対策、離職者対策というものは十分に、十分というどころか前進しないと思いますので、こういう全般的な問題について大臣の所見を伺って、ぜひ積極的な立場で解決していかれるように、要望を含めて御答弁をちょうだいしておきたいと思うのです。
  181. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御出身地の沖繩の厳しい雇用情勢を踏まえて、いま私に要請を含めた御質問でございまして、本当に地元のお立場からいって苦慮されておると思います。私も労働大臣として沖繩の特殊事情ということについて、いろいろ勉強いたしまして、さなきだに雇用情勢の厳しいきょう今日、さぞかし現地においては雇用問題が大変な問題になってきておるということを、はだで痛感をいたす気持ちでございます。  私から申し上げるまでもなく沖繩の特徴は、いわゆる駐留軍関係離職者と若い人が非常に就職の道が閉ざされておる。若い人の失業率が高い、こういったことでございまして、これまた私から申し上げるまでもなく、何とかして沖繩に産業の基盤を育成するということ、これは基本的な路線として堅持すべき問題だと思うのです。それと、本土の方は若年者の求人倍率にしても失業状態にしても沖繩とは逆でございますから、沖繩の若い諸君が本土の方へ、人間至るところ青山あり、こういう気構えを持って大いに広域職業紹介の背景のもとに本土へどんどん出てもらう。そのためには現在、支度金として融資する金が、二年本土で定着されれば、金額においては今後いろいろ改善しなければなりませんけれども、二年後には支払わなくてよろしい、こういう制度もあるわけでございます。それに駐留軍の離職者に対しては雇用奨励金のみならず、今度は全般的な中高年齢の雇用促進のための受け入れ体制というものも新しい雇用政策として打ち立てておりますから、そういったことも積極的にやり、この厳しい雇用情勢で非常に困っておられることもよくわかりますから、われわれとしては現地の職業安定機関をフルに積極的な活動ができるように推進をいたしまして、そして沖繩開発の関係では沖繩開発庁、こういった関係省庁とも十分連絡を密にして、一層御期待の問題に対して役所としてこたえ得るよう全力を尽くしたい、このように考えるわけでございます。
  182. 上原康助

    上原委員 もう時間ですから終えます。(拍手)
  183. 木野晴夫

    木野委員長 次に、古寺宏君。
  184. 古寺宏

    ○古寺委員 防衛施設庁にお尋ねをいたします。継続協議三事案というのがございますが、このアメリカと日本の間の現在までの継続協議の内容でございますが、どういうふうになっておりますか。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕
  185. 亘理彰

    ○亘理政府委員 御承知のとおり、昨年末の基本問題に関する日米間の合意の際に、三つの問題、すなわち日本の労働法令等の適用の問題、それから業務を民間契約業者に切りかえる問題でございますが、いわゆる業者切りかえの問題、それから三つ目は長期雇用計画の問題、これらについては在日米軍と防衛施設庁で引き続き検討を行うことになっておるわけでございます。実は先ほども上原先生にお答えしたわけでございますが、この問題については、いずれも従業員の雇用の安定確保上、重要な問題でございますので、できるだけ早く結論を得たいと考えておりますが、現在の段階では、まだ日米双方で、それぞれの内部において、これをどういう方向で解決すべきか、いろいろ検討している段階でございまして、日米間の本格的な交渉はまだこれからという段階でございます。  実は、いろいろ昨年の合意に基づきます協定の改定等に、施設庁の方も米側の方も関係者か忙殺されておりまして、この問題になかなか本腰を入れてかかれなかったわけでございますが、MLCその他の協定の改定の問題は大体目鼻がついておりますので、これから鋭意この三つの継続検討の問題について取り組みたい。できるだけ早く結論を得るように交渉の促進を図りたいと考えております。
  186. 古寺宏

    ○古寺委員 いつごろがめどでございますか。
  187. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま申し上げましたように、これから本格的な交渉に入る段階でございますので、交渉事でございますから、いつ結論を得るかということについて、いまの段階では明確な見通しを申し上げかねるわけでございます。できるだけ早く結論を得るように努力いたしたいということで御容赦いただきたいと思います。
  188. 古寺宏

    ○古寺委員 この三事案に対する労働省考え方はどうでございますか。
  189. 小粥義朗

    ○小粥説明員 三事案の特に最初の国内労働関係の法令についての問題でございますが、いわゆる労働基準法あるいは労働安全衛生法等の適用の問題がございます。一応、地位協定上は国内「法令の定めるところによらなければならない。」となっておりますが、実際の適用上では、率直に申しましていろんな手続等もございますから、なかなかむずかしい面もございます。したがって、そうした面がぜひ基本労務契約の中に盛り込まれるようにしてほしいという希望を私ども持っております。従来から防衛施設庁の方にも、そうした旨をお願いしておるところでございます。
  190. 古寺宏

    ○古寺委員 米側が、そういう要求に対して、これをのまない理由は何でございますか。
  191. 菊池久

    ○菊池政府委員 お答えします。  現在、特に労働法令の適用等につきまして継続検討の課題でございますので、技術的、実態的には労働法令を守らしていくということにしておりまして、立ち入り等の問題がございましても、その都度われわれが米軍等に交渉いたしまして、監督庁等の御指導をいただくというふうにいたしておる次第でございます。
  192. 古寺宏

    ○古寺委員 たとえば安全衛生等の問題で、いわゆる抜き打ちの立入検査とか、そういうものは可能でございますか。
  193. 菊池久

    ○菊池政府委員 先生の御指摘の点につきましては、米軍基地という特殊な地域でございますものですから、やはり立ち入りにつきましては、われわれの方で、いつ幾日立ち入りをしたいということで調整をとりまして立ち入りをするということにいたしております。
  194. 古寺宏

    ○古寺委員 労働省にお尋ねしますか、そういう施設庁が間に入って、それで前もって事前に打ち合わせをして、いろんな立入検査その他をやっているわけですが、その場合に、いろいろな問題が考えられるわけでございますが、その点については労働省はどういう点について懸念しておりますか。
  195. 小粥義朗

    ○小粥説明員 労働基準監督官が基地内に立ち入ります場合に、いろいろな態様がございますが、一つは事故が起きた場合の災害調査というような形のものでございます。それからもう一つは、現実に事故が起きているわけではございませんが、関係法令の遵守状況等を調べるという形のものがございます。従来、先ほど防衛施設庁の方からもお答えございましたように、基本労務契約の中で、そうした日本側機関による検査の手続が定められておりますので、それによりまして、あらかじめ通告した上でやる、こういうかっこうになっておりますから、それでやっております。たとえば災害調査の場合そうしたものは可能であるわけでございますが、ただ随時という形になりますと、現在の国内の民間事業所に対する監督指導の姿よりは少々窮屈な点があることは、これは否めない事実でございますが、その点は基地という事柄の性格上やむを得ない点もあろうかと思います。ただ、現在の基本労務契約で一応、安全衛生等の国内法の定めるところによって実施する計画を立ててやっていく、こういうことにはなってございますが、個々の具体的な安全衛生関係の規制等になりますと、必ずしも細部の点で、はっきりしないところもございますので、そうした点を基本労務契約の中に盛り込んでいただくことで、より明確にしていきたいというつもりでいるわけでございます。
  196. 古寺宏

    ○古寺委員 雇用計画についてはどうでございますか。
  197. 細野正

    ○細野政府委員 長期的な雇用計画については、先ほど来お話ございましたように、なかなか先の見通しが立ちにくいといういろいろな問題があるようでございますが、もちろん私どもの立場としては、それがある程度、見通しがついた方が望ましいというふうには考えているわけでございます。
  198. 古寺宏

    ○古寺委員 大臣、いま二つの問題、一つは労働法令の適用の問題あるいは長期雇用計画の問題、こういう問題について大臣は防衛施設庁を通して、あるいは直接、米軍側に要望したことがございますか。
  199. 藤井勝志

    藤井国務大臣 過去の事実的な関係の問題でございますから、政府委員をして答弁いたさせます。
  200. 小粥義朗

    ○小粥説明員 国内労働関係法令の適用の問題につきましては、私ども防衛施設庁を通じまして従来、米軍との折衝に当たっていただいているわけでございます。労働省として直接米側に申し入れるということはいたしておりません。
  201. 古寺宏

    ○古寺委員 こういう労働の専門的な分野につきましては、米側と折衝する場合に、やはり日本の代表としては労働省が直接米軍側と交渉するというようなことはできないのですかね、施設庁長官。
  202. 亘理彰

    ○亘理政府委員 施設庁も当然関係いたしておるわけでございますが、ほかの省庁の関与される分野について直接米側と交渉なさるということは、いろいろ例もございまして、できないことではございません。
  203. 古寺宏

    ○古寺委員 それはできないというよりも、改善する方向で検討できませんか。
  204. 亘理彰

    ○亘理政府委員 いま私、申し上げましたのは、それぞれ行政分野の所管庁におきまして直接米側とお話し合いをなされるということについては、例もございますし、できることでございます。私どもも駐留軍従業員の問題につきましては直接雇用主という立場にございますので、なるべくは私どもが所管行政庁の御意向を受けまして米側と折衝に当たっておりますが、所管庁において直接米側と話し合いをされるということも不可能ではございません。
  205. 古寺宏

    ○古寺委員 不可能ではないというお話でございますので、労働省の方から、駐留軍従業員の労働の立場を守るためにも今後、積極的にひとつ働きかけをしていただきたいと思います。  次に、円高ドル安に伴いまして、さらにまた米軍の機構の変更等に伴って、沖繩では二千名以上の合理化が行われるのではないか、こういうことが言われているわけでございますが、昭和五十三年度においての見通しを施設庁から承りたいと思います。
  206. 亘理彰

    ○亘理政府委員 まず全般的に駐留軍従業員の人員整理の状況の推移を申し上げますと、だんだん整理は減る傾向にございます。本土と沖繩を合計いたしまして、四十七年度には五千七百九十七人、四十八年度は七千六百七十一人、四十九年度は六千三百四十五人というふうに、六千人から七千人、年々の整理が出ておったわけでございますが、五十年度には三千三百九十人に減っております。さらに五十一年度には二千三百五十一人に減っております。それから五十二年度は、まだ年度の途中でございますが、一月三十一日現在の年度初めからの整理数は七百三十六名でございます。年度末まで合わせましても八百人台にとどまるという見通しを持っております。そういうことで、だんだん整理は漸減の傾向にあるわけでございます。私ども、これをもって直ちに今後の見通しを楽観的に考えるわけにはまいらないと思いますけれども、傾向としてはそういうことでございます。  ドル安円高の問題はございますが、駐留軍従業員は基地業務の円滑な運営のために非常に役に立っておる。当然のことでありますが、この従業員の貢献については米側も大変評価しておるところでございます。したがって、ドル安円高によって在日米軍の経理状況がだんだん窮屈になっておるということは事実であろうと思いますが、それが直ちに人員整理につながるものではないというふうに思います。現に、いま申し上げましたように、ドルあるいは円のレートの安定しておりました時期の方が整理は多かったわけでございまして、昨年の初めから、特に後半、非常なドル安円高傾向が顕著になってきたわけでございますが、これによって人員整理が非常にふえてきたという状況はないわけでございます。  それから、もう一つ指摘の在日米陸軍の業務の移管の問題海兵隊あるいは空軍への移管の問題が去る三月十日に米側から発表されたわけでございますが、これはまだ、その移管の具体的な手順等について米軍内部で調整中でございまして、内容がはっきりいたしておりません。沖繩におきます米陸軍の施設で働いております従業員の数は、全体で約二千五百人ぐらいおりますが、これが整理対象ということではもちろんないわけでございます。これは業務の移管に伴って人員整理がある程度出てくる心配はないわけではございません。しかしながら私どもは、この点については、この移管に伴って雇用の確保が大きく阻害されるというようなことの絶対にないように米側に申し入れておりまして、米側も雇用安定確保については最善を尽くすということを申しておるわけでございます。  なお、この移管の問題は一昨年から始まっておりまして、昨年も前半期にかなりの施設の移管が行われまして、その対象従業員も千二百人ぐらいおったわけでございますか、配転その他の措置によりまして九割以上は雇用継続が確保されたところでございます。私ども、この問題につきましては、なお今後とも米側ともよく連絡をとりまして、情報をできるだけ早くキャッチいたしまして雇用の安定確保に最大限の努力をいたしたいと思っております。
  207. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、この離職者の問題でございますが、定年で退職される方もあれば、あるいは整理の対象になる方もあろうかと思いますが、特に高齢者の離職者でございますが、非常に再就職というのはむずかしいわけでございまして、三沢の例をとりましても、現在百五十名から二百名ぐらい再就職できないでいるような実態でございますが、こういう問題については特に中高年齢層に対する雇用の創出とか、いろいろな問題があるわけですが、労働省として今後これらの問題に対してはどういうようなお考えをお持ちか、お伺いしたいと思います。
  208. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘ございましたように、中高年齢者雇用がなかなかむずかしい状況にあるわけでございますが、この点につきましては、来年度から中高年齢者を採用する事業主に対しまして賃金について補助をする制度を新設いたしまして、従来からやっております諸対策にあわせまして、いま申し上げました助成金制度を活用しまして中高年齢者雇用機会の増大を図ってまいりたい。あるいは緊急的に就労の必要のある方につきましては、これも公共事業が大幅に拡大されますので、それに対する吸収という形を従来以上に積極的にやってまいりたい。こういうふうに考えておるわけでございます。
  209. 古寺宏

    ○古寺委員 では具体的にお伺いしますが、高齢者なら高齢者、まず何歳からですか。それで、そういう方を採用した場合には、どのくらいの助成を、どのくらいの期間、助成するのか。それからまた年次計画でもって、たとえばいま現在六十歳だとしますと、次は五十九歳とか五十八歳とかと下げていくのか、いろいろな考え方があろうかと思いますが、具体的に構想をお聞かせ願いたいと思います。
  210. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま申し上げました助成金でございますが、これは高年齢者の場合は五十五歳以上の高年齢の失業者を採用した事業主に対しまして中小企業の場合、これはいまの安定資金制度と同じ規模でとっておりますが、この中小企業につきまして賃金の三分の二を、それから、その他の企業につきましては賃金の二分の一、これを五十五歳以上は六カ月間助成をするということでございます。それから中年につきましては四十五歳以上でございまして、これにつきましては、中小企業とその他とで賃金の助成の割合は先ほどと同じでございますが、期間が、この場合には三カ月ということでございまして、従来のたとえば雇用奨励金制度等に比べますと額的にもかなり大幅な増額になるという制度でございます。
  211. 古寺宏

    ○古寺委員 非常に支給する期間が短いので、果たして、どれだけの効果が期待できるかというのは疑問でございますが、一つ考え方として、定年制を一年ずつ延長していく方法なんというのは労働省はお考えになっていないんですか。
  212. 細野正

    ○細野政府委員 定年延長につきましても定年延長をした場合の奨励金制度というのがございまして、延長した年につきまして年額幾ら、一人当たり幾らということで助成をいたしている制度がございます。
  213. 古寺宏

    ○古寺委員 それがちっとも効果が見えないというのはどういうわけですか。
  214. 細野正

    ○細野政府委員 定年延長につきましては、御存じのように、この不況下におきましても延長そのものは進んでおります。まあ最近の不況によりまして、その延長の幅が、たとえば従来ですと五十五から六十ぐらいまで一遍に飛んでいったという状況が、最近の状況になりますと一年刻み、二年刻みというふうに非常に小幅になってきておりまして、そういう意味で延長のテンポがやや鈍って  いるということはあるのでございますけれども、御存じのように、制度の調査を始めまして以来、初めて五十五歳定年が五〇%を割りまして、一方、六十歳定年が約三六%ぐらいになるというふうに、たとえば五十年不況の中でも定年延長は進んでいるということが言えるわけでございます。
  215. 古寺宏

    ○古寺委員 その問題を余りやっていると時間がなくなりますので、この次に、またお聞きすることにしまして、福利厚生関係でございます。いままでは米軍側が持っていたようでございますが、今度は日本政府が一応分担する形になったわけでございますが、今後こういう社会保障、福利厚生の問題について防衛施設庁としては、その内容充実について、どういう政策をお考えになっているか、承りたいと思います。
  216. 亘理彰

    ○亘理政府委員 福利厚生のうちで法定の福利関係、社会保険等の負担の問題、それから任意福利費の問題とあるわけでございますが、五十三年度、この四月から、この関係につきまして日本政府で、予算が成立いたしますれば、これを負担することにいたすことに考えておりますが、当面は、いままで米側がやっておりましたものを、そのまま引き継いで日本側でこれを負担するということで予算措置をお願いしておるところでございます。ただ今後の問題といたしましては、これは予算措置の関係はございますけれども、私どもも従業員の希望等も十分聞きまして、この福利厚生関係充実について努力はいたしてまいりたいというふうに考えております。
  217. 古寺宏

    ○古寺委員 沖繩の場合でございますが、沖繩では健康保険は政府管掌健康保健に加入しておりますね。内地の方は駐留軍要員の健保組合に加入しているわけです。同じ従業員でありながら内容が違うわけなんですね。給付の内容も違います。負担内容も違います。こういうような差別をするというのは私はよくないと思うんですね。当然これは同じような負担、公平な給付をする上において、内地と同じように健保組合に一緒にするとか、同じような健康保険の適用というものを考えなければならないと思うのですが、この点についてはいかがですか。
  218. 亘理彰

    ○亘理政府委員 おっしゃるとおりでございます。この問題につきましては歴史的な沿革もございまして現在、二本立てになっておりまして、本土の従業員につきましては駐留軍要員健康保険組合で運営しておりますし、沖繩の従業員につきましては沖繩復帰以後、政府管掌健康保険に加入しておるという状況でございます。これを一本化すると申しますのは、沖繩の従業員につきましても本土の駐留軍要員健康保険組合に加入するということでございますが、この点につきましては、かねて沖繩の組合からもその要望が出ておりますし、本土の駐健保組合においても、その加盟について賛成の決議をいたしておるということもございまして、私どももこの要望にこたえまして、この一本化が早く実現するように努力をいたしたいと思っております。現在いろいろな手続あるいは駐健保組合が主体になりまして沖繩における給付の実態調査等も行いたいと思っておりますが、そういうことも含めまして手順を積極的に進めて、沖繩の従業員の駐健保組合への加入の早期実現を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  219. 古寺宏

    ○古寺委員 厚生省は、この点についていかがでございますか。
  220. 小島弘仲

    ○小島説明員 お話は承っているようですが、具体的に事業所編入の相談まではまだ提出されてないように聞いております。手続といたしましては、受け入れ側の組合員で規約の改正をいたしまして、そういうような事業所も組合員の範囲に取り込むという改正の手続がございますし、編入される事業所、沖繩の事業所になりますが、ここでは事業主とそこに働く被保険者の半分ですか、事業主と被保険者側ではその半数以上の同意が必要であるということで、手続が出てまいりますれば、それなりの措置は講じてまいりたいと思っております。
  221. 古寺宏

    ○古寺委員 厚生省は喜んで受け入れると思うのです。ですから施設庁の方は、従業員の気持ちになって、もっと積極的に働きかけをしなければならぬと思うのです。そういう点が防衛施設庁に欠けていると私は思う。ですから先ほどの協議三事案にいたしましても、なかなか問題が煮詰まらぬというのは、私はあなた方の姿勢にあろうかと思います。ですから従業員の立場に立って、雇用不安を解消するための雇用計画にいたしましても、労働者の権利を守るための労働法令の適用にいたしましても、こういうものをもっと積極的に進めていく必要があろうと思いますので、その点につきましては強く要望しておきたいと思います。  次はベースアップの問題でございます。国家公務員に準じてベースアップをするようになっておるのですが、これが毎年のように何かトラブルが起きないとベースアップをしないということを繰り返しているような感じを、われわれは抱くのですが、もう戦後三十年間も一生懸命働いて、早く言えば雇用主は政府であり防衛施設庁なんですから、国家公務員に準じてベースアップをきちっとやってあげるということが大事ではないかと思いますが、今後はいかがでございますか。いつも非常におくれているようでございますが。
  222. 亘理彰

    ○亘理政府委員 四十八年秋のいわゆる石油ショックがございまして、わが国の賃金水準が非常に高騰を来したということ、それからまた、米国政府の海外駐留経費の節減方針といったことも起因いたしまして、数年来、駐留軍従業員の給与改定の交渉が難航いたしたということは、おっしゃるとおりでございます。  そこで、おっしゃるとおり、こういうことではならない。従業員の雇用、生活の安定に直接かかわりのある重要な問題でありますので、公務員の給与改定に準じて、これと同時同率で実施するということを、できるだけ早く合意に達するようにいたさなければならないと私どもも当然考えておりまして、一昨年来、この問題がきっかけとなりまして、労務に関する基本問題の交渉を重ねてきたところでございます。  それで、昨年の五十二年度の給与改定につきましては、御承知のとおり公務員の給与改定の実施に余りおくれることなく、年内に米側との交渉がまとまりまして調印の運びとなったわけでございます。  今後の問題につきましても、昨年の日米間の合意の際に、米国政府は、良好な労務関係維持のために在日米軍従業員の給与改定を五十二年度と同様の考慮——ということは、公務員と同時同率で円滑に実施するということでございますが、同様の考慮を払って実施するように努力するということを申しておるわけでございまして、私ども、これを踏まえまして、今後とも、この給与改定の円滑かつ早期の実施について万全の努力をいたしたい、こう思っております。
  223. 古寺宏

    ○古寺委員 この従業員の生活や権利を守るということは非常に大事な問題でございますので、今後、これらの懸案の問題につきまして、労働省も防衛施設庁も積極的にひとつ前向きで取り組んでいただきたいことを特にお願いを申し上げまして、時間ですから終わります。
  224. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、草川昭三君。
  225. 草川昭三

    草川委員 草川でございます。  私は、昨年、この社会労働委員会として沖繩の現地視察をさせていただいたわけでございますが、その沖繩の現地視察の問題を踏まえまして、この法案に賛成の立場から、少し質問をさせていただきたいと思うわけです。  ただいま古寺議員からも、いろいろとお話があったわけでございますが、沖繩の状況は、失業者が約七%を超えておるわけでございまして、日本でも地域的には最高の失業状況にございます。現地の安定所の方々とお話をいたしますと、七%の失業というのは、実は暴動寸前の数字ではないだろうか。だけれども、その暴動寸前に、これを支えておるのは、実は雇用調整給付金、特に、いま提案をされておりますこの法案が生きておることではないだろうか。だからぜひ、これの延長をお願いしたい。あるいはまた、細かいいろいろな広域職業紹介等の要望も受けたわけでございます。  だけれども、この問題以外に、沖繩の中には戦後の私どもも非常に真剣に取り上げなければいけません混血児の問題なんかもたくさんございましたし、中には、この混血児の方々の中で無国籍、籍のない方がやはり相当数見えるという話も聞きました。そういう方々は、現在の現地における社会保障、一切の保護なり保障を受けていない。こんなことを私ども調査団も聞きまして、具体的に報告書が出ておるわけでありますが、じゃあ一体どこで、この問題をどう取り上げるか、団長を含めていろいろと相談をしたことを思い出すわけでございますが、それだけに、改めて私どもは、この深刻な問題をやはり取り上げていかなければいかぬと思うわけでございます。  第一番目に、防衛施設庁なり外務省の方に御質問をすることになると思うのですが、駐留軍関係の労務問題ということになるわけでございます。先ほども漸次、数が減ってきた、整理の減少、合理化は減ってきたということでございますが、中央駐留軍関係離職者対策協議会の四十九年四月二十五日の決定の中で「人員整理の見込は握」については「できる限り早期に」「は握するよう努める。」ということがあるわけですが、一体、ただいまのところ、どの程度の期間で施設庁は米軍の方から、このようなことを受けるのか、まずお伺いしたいと思うのです。
  226. 菊池久

    ○菊池政府委員 私どもは米軍に対しましては、できるだけ早く雇用の状態を通知するように交渉させておりまして、現在のところ、ほぼ九十日以前に通告を受けるというような慣行にいたしております。五十二年度におきましても、現在九六%程度が九十日以上前に通告を受けるというような状態にしております。
  227. 草川昭三

    草川委員 そうすると、約三カ月近い前に通告を受けて、実際上の労務問題にこれが移っていくわけでございますが、九十日間の事前通知ということを厳守しようじゃないかということになっておるわけですが、その間は、どういう費用の分担の形で、これが行われるわけですか。
  228. 菊池久

    ○菊池政府委員 普通の給与が支払われているということでございます。
  229. 草川昭三

    草川委員 私どもとしては、もっと事前に向こうの方から事前通知を受けて、わが国の負担なら負担というものを少なくして、そして、対象者には九十日以上の事前通告というものを十分与えていく必要がある、こう思うわけでございます。  この際、外務省の方にお伺いをしたいのですけれども昭和五十二年十二月二十二日の日米合同委員会での合意事項で、いわゆる法定福利費と任意福利費、管理費、三項目を日本側が負担するということになったわけですが、その間の理由、経過について簡単に。そして同時に、ヨーロッパの場合は、その当該国の一切の負担になったというようなことを聞いておるわけでございますが、その比較をあわせて、お答え願いたいと思います。
  230. 丹波実

    ○丹波説明員 簡単にお答え申し上げます。  先生御承知のとおり、先ほど施設庁長官もちょっと申し上げたところでございますが、近年の日本における物価高、賃金水準の高騰ということが背後にございまして、アメリカ側としては、何とかして毎年行われておる賃金改定、そういうものをスムーズに行うためにも日本側と話し合いを行いたいということが、昭和五十一年の夏、合同委員会で合意がありまして、その合意を受けて、日本政府とアメリカ側との間でいろいろ話し合った結果、御承知のとおり先生が御指摘された三項目、つまり法定福利費、任意福利費、それから労務管理費、この三つの項目につきましては今後、日本政府雇用関係の安定という観点から支出をしていく、こういうことで合意されたわけでございます。以上が経緯でございます。  それから、先生の次の御質問でございますが、先生が考えておられるのは恐らく西ドイツの例だと思うのでございますが、NATO協定というものがございまして、その典型的な例として西ドイツがあるわけですが、西ドイツにおきましては駐留軍労務者の雇用の形態というのは派遣国軍による直接雇用制に近い形態をとっておりまして、西ドイツ国内法に基づく各種の社会保険料事業主負担分については派遣国軍が負担している、そういうことになっておると聞いております。他方、駐留軍の労務者の雇用の事務については、西ドイツ側が給与計算や訴訟代行事務等一定の事務を行っていますので、この事務に要する費用は西ドイツ側と派遣国側との間の個別の協定によって派遣国側が支払っている、こういうぐあいになっております。
  231. 草川昭三

    草川委員 その西ドイツの例と日本の例とを同一にすることがいいかどうかということについては、ここの委員会での論議ではないので、私は避けていきたいと思うのでございますけれども、在日米軍に雇用されている従業員の方々にとってみれば、戦後ずいぶんの時期になるわけでございますから、やはり安定的な雇用を要求されるのは当然のことだと思うわけであります。そういった意味で、いまの条件というのは非常に不安定な雇用条件になると思うのでございますけれども、日米合同委員会で将来さらに、その他の人件費等の負担要求等が出てくるのかどうか。そういう見通しについて、わかればお答え願いたいと思うのです。
  232. 丹波実

    ○丹波説明員 アメリカ側として最近、一般的に軍を維持する経費というものが財政的に非常に緊迫しておる。それから先ほど申し上げましたように、他方においては日本における物価高あるいは賃金水準の高騰ということがあり、なお最近におきましては、きわめて激しい円高という現象もありますので、ますます在日米軍の経費というものは苦しくなっていく情勢にあると思われます。ただ、労務に関しましては、先ほど御説明申し上げましたように、昨年の十二月決着を見たばかりでございますから、それ以降、現在までのところ再び労務が問題になるという考え方は私たちは持っておりません。
  233. 草川昭三

    草川委員 では当分の間、現状ということになる、こういうことだと思うのです。  そこで、先ほどもちょっと御質問があったわけでございますけれども、法定福利費、任意福利費あるいは管理費というものがどういうような位置づけになるか、細かいことは私もわかりませんけれども、いままでは、これは米軍が一方的に実施をしてきたわけです。これが今度、日本側ということになったわけでございますが、通常の労使関係でいきますと、従業員代表の要望等を聞いて管理運営に当たるというのが常識的になっておるわけでございますが、この駐留軍の労働組合との事前協議というのですか、テーブルについて管理費の運営なり、一般的な福利の費用の運営等について労組と話し合いをして運営されるような気持ちが施設庁の方にあるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  234. 菊池久

    ○菊池政府委員 先生の御指摘の点、大変むずかしいのでございますが、実は経費分担いたします中身でございますが、法定福利費関係、これは各種の社会保険料の事業主負担分でございます。これにつきましては淡々と法令に定められた料率をお支払いするということでございます。  それからもう一点は、任意福利費関係でございますが、この中には褒賞の実施関係の経費それから福利厚生事業の実施の関係の経費、災害見舞い金の支給の経費、それから制服関係の経費、それから宿舎の貸与の経費、こういうふうなものが含まれます。そこで将来に向かいましては、この任意福利費関係について、もし予算の関係が許されれば、この辺が努力目標ではないだろうか、こういうふうにわれわれ考えます。ただし、五十三年度の経費分担につきましては、過去におきまして米軍サイドが持ちました経費を、そのまま肩がわりするというふうな姿勢に立っておりますので、五十四年度以降そういうふうな努力をすべきではないかというふうに考えております。
  235. 草川昭三

    草川委員 法定福利費と任意福利費、管理費の総トータルが五十三年度の予算で六十億前後と聞いておるのですけれども、ちょっと、この数字は定かでございませんので、もし間違っておれば御指摘願いたいと思うのですが、この予算と現実に従事する従業員の数とは、これはきれいに食い違いはないのですか。たとえばよく計算の諸元があって、大体一人当たりについて幾らの法定福利費、任意積立金、管理費なんというのがあると思うのですが、その基準は一般的な国家公務員の扱いの予算から逆算をして、この数字が出てきたのか。そこらあたりの積算というのですか、試算の内容についてお聞かせ願いたいと思います。
  236. 菊池久

    ○菊池政府委員 ただいま御指摘の特に任意福利費関係でございますが、これは米軍との間に結ばれております契約の中身におきまして単価が決まっておりまして、過去におきましても、その単価によりまして実施されたというふうな経緯がございます。したがいまして、私どもが、国が負担いたします経費も、過去におきまして実施されました経費を五十三年度は負担するというふうにいたしておるわけでございます。したがいまして、先ほど先生おっしゃいましたような国家公務員との対比におきましては若干違う点かございます。
  237. 草川昭三

    草川委員 過去の経緯から言うと、それが本当だと思うのです。しかし、駐留軍の労働者の方々から言わしてみると、そこにこそ彼らの非常に強い不満な問題があると思うのです。たまたま沖繩あるいはまた国内においても基地従業員であるがゆえに一般的な法定福利関係についても差があるということは、たまたま同率同額のベースアップを実施するというようなことの段階に、ようやくこぎつけてきたとしても、トータルな意味での差があることは歴然だと思うのです。そういう点で、私はかかる日米の話し合いにおける場合には、双方がどの程度持つか持たぬかということは、これは国際的に非常に重要な問題でございますから、ここでは触れませんけれども、もし分担をするというならば、当然、過去の積算の金額ではなくて、実際かかった費用の経費ではなくて、国家公務員と比べて、このような法定福利の費用というものは計上すべきではないだろうかということを、これは私は意見として申し上げておきたいというように思うわけであります。  そこで、この民間契約への切りかえという問題でございますが、先ほども質疑の中で、ドル安問題で人員整理は出ていない。ただし民間移行という問題については三月十日米軍の方から、ある程度の意向というものが表明されたということでございますが、常識的に考えるならば、先ほど外務省の方からもお話がございましたように、軍を維持するところの経費というものは非常に苦しくなってきておるという背景があるわけであります。これも私は全く事実だと思うのです。そういう背景があれば、予算の枠に制約をされておるならば、民間業務への委託というものは当然予測をしていかなければいかぬ。逆にその予測をして、しかも現在、働いてみえる方々にしわが寄らないように、いろんなことを考えていきませんと、また、これは後ほど触れますけれども第四種の労働者をめぐる諸問題というのは全然解決されていないわけです。安易な形で民間移行ということが行われると非常に問題だと私は思うのですけれども、この民間移行の問題も含めまして、実際、具体的な提案というのは何カ月前にこれもわかるわけですか。
  238. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいまの先生のお話は、いわゆる業者切りかえの問題だと思いますが、先ほども上原先生の御質問のときにもお話出ましたように、昨年も横須賀の下士官食堂においてそういう問題が出まして、その解決をつけるのに相当難渋をいたしたことはございます。  それで円高ドル安で、いわゆるIHA、諸機関の運営も苦しくなる点があることは確かであろうと思います。ただ一概に、そうばかりとも言い切れないので、円高ドル安になりますと、基地におります米軍の兵隊さんは基地の外でなかなかお金を使いにくい。基地の中で生活用品を賄うということが多くなるわけでございますから、そういう面では売り上げがふえる要素もあるだろうと思います。円高ドル安の問題が、いわゆる諸機関の運営に具体的にどう響いてきているか、まだ具体例は承知しておりませんけれども、いずれにしましても私ども、かねてから安易に請負業者に委託をして、そして従来の従業員の身分を不安定な状態に置くということは納得しかねるところでございますので、この点については、そういう動きがありますれば、できるだけ早く情報を得まして対策を講じたい、こう思っております。  どのくらい前にということは、必ずしも、はっきりしたルールはございませんけれども、昨年の横須賀の際には、かなり差し迫ってから通告が参りましたので、その点については、もっと前広に米側の考え方を聞かせてもらいまして、日米双方で妥当な解決策について協議をする時間的な余裕ができるように考えてもらいたいということを強く申し入れております。今後とも、その方針で臨みたいと思います。
  239. 草川昭三

    草川委員 そのように、ぜひやっていただきたいと思います。外務省の方、これで結構でございますから。  続いて、この第四種の労働者をめぐる諸問題の改善ということでございますが、前々回の場合もそうでございますけれども昭和四十八年の衆議院の社会労働委員会あるいはまた参議院でも「沖繩における旧第四種労働者をめぐる諸問題の改善を検討する」ということが附帯決議になっておるわけであります。ところが、現実には一体この五年の間に、どのようなこの種の問題が取り上げられ、あるいは調査をされておるのか、あるいは救われておるのか。これは具体的に一回お聞かせ願いたいと思います。
  240. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘の旧沖特法における第四種の労働者の扱いの問題でございますが、これは当時のベトナム特需の打ち切りとか、あるいは米軍の予算削減による食堂の民間委託を取りやめるとか、そういうふうなことで一時的に、その当時たしか二千人ほど離職者が出るような事態に対処いたしまして、先ほどお話ございましたような諸問題の改善を検討すべきではないかという附帯決議があったわけでございます。これを受けまして政府としまして、関係のある各省集まりまして、第四種被用者問題に関する対策連絡会議というものを設けまして、また現地に、副知事をキャップにしまして県と関係省庁の出先機関で、やはり第四種被用者の対策本部を設置する等、関係者一体となりまして、いろいろな対策をやったわけでございます。  特に労働省関係で申し上げますと、駐留軍のいま御審議いただいております臨時措置法とほぼ同内容の沖繩振興開発特別措置法を、この第四種の労働者に適用いたしまして、三年間有効の求職手帳を交付しまして、促進手当その他、先ほども申しましたような駐留軍離職者とほぼ同様の援護措置を講ずるというやり方によりまして、その再就職の促進を図ったところでございます。
  241. 草川昭三

    草川委員 この第四種の雇用というのですか、沖繩における労働者をめぐる諸問題は、いま労働省の方からお答えになられましたけれども、実際は第四種からも漏れておる人もいますし、第四種と言われた民間企業の下請の労働者の方々でも、内地へ一たん来たり、それからまた戻ったりするようなことから、救われていない人も非常に多いと思うのです。だから私は、さらにこれは継続して、ひとつ実態把握をされて、差別のないような取り扱いをしていただきたいというように思います。  時間がございませんので簡単に次の方へ移ってまいりますけれども、実はこれも沖繩の失業者が非常に多い。現地で雇用をふやしてもらいたいというのが一般的な意見でございますし、例の沖繩の海洋博の跡地利用、これは国営海洋博記念公園として整備中でございますけれども、これか実際は非常に内容が複雑になっておりまして、記念公園の管理財団が行っておる。この予算は開発庁が計上しておるわけですが、その執行というのは建設省だ。ところが、この建設省の方からどこにいくかというと、沖繩総合事務局開発建設部というところへいく。そして一部は、遊園地なんかは沖繩県のまた外郭がやっておるという、非常に複雑でございまして、あれだけ大がかりな沖繩開発のためのプロジェクトが一たん終わりますと、現地の人たちがどこへどう採用されておるのか、非常に私は少ないと思うのです。  非常に私は憤慨をいたしましたのは、ガードマンは全部直接従業員じゃないですよね。二次か三次か知りませんけれども、とにかく三次か四次の下請労働者として、ようやく沖繩の方々が採用されておるにすぎません。受付の女の子もしかりです。結局、直接の正規の国家公務員というのは、ほとんど本省から出向しておる人ですよ。沖繩の人の求人ということを考えたら、現地におけるあれだけりっぱな公園の運営なんかをするならば、もっと直接従業員として採用すべきだと思うのです。そういう点について、どうしてもこれは納得がいかないことですが、大体このことを質問しようと思ったって、一回りしないと、だれが答弁するか、きのうまでわからなかったのです。しかも最終的には、どこがこの所管をするのかわかったのはけさですよ。そんなことで一体沖繩の雇用の問題を語ること自身が私はおかしいと思うぐらいな不愉快さがいっぱいでございますが、とにかく、ようやく現地の雇用の問題については建設省所管だということがわかったわけで、建設省の方からお答え願いたい。
  242. 三好勝彦

    ○三好説明員 国営海洋博覧会記念公園につきましては、昭和五十一年七月沖繩におきます国際海洋博覧会の跡地を利用し、現在、面積約七十七ヘクタールの沖繩の特性を生かしましたところの亜熱帯性の公園ということで整備に着手しているわけでございます。現在、そのうちの一部、約三十六ヘクタールにつきまして一般の利用に供しておるという状況でございます。  この管理につきましては財団法人海洋博覧会記念公園管理財団に業務を委託して実施しておりますが、昭和五十二年度におきますこの財団の定員は二十八名でございます。  なお、この公園の管理業務につきましては、今後、公園が整備され進捗してまいりますと面積がふえてまいるわけでございまして、その現地の方々の雇用の機会も増大していくものと考えております。
  243. 草川昭三

    草川委員 だから、ここで労働省にお伺いをしたいわけですけれども労働省というのは、いまのような雇用をふやすという基本的な立場にあり、昭和四十九年の閣議報告、中央駐留軍関係離職者等対策協議会の対策大綱で、あるいは地方公共団体の協力を得て所要の対策を推進するなんという、はっきりとした、こういう約束事があるわけです。いまも言われたように、実際上はだれが管理をしておるのかということをずっとたぐっていくと、実際予算は開発庁というものが持っておる。だったら予算を持つ開発庁あたりが積極的に雇用拡大をはかって、しかも、できたら国の税金を出すわけですから、言葉が悪いのですけれどもピンはねですよね、一次、二次、三次なんという下請で、ようやくガードマンが採用されるのではなくて、正規に退職金もつく、いわゆる守衛さんを雇うように、労働省は、沖繩ということがこれだけ言われておる以上は、しっかりと雇用の形態についても私は発言をしてもらいたい、責任を持ってもらいたい、こういうように思うわけです。そういう点について、ひとつ局長から答弁を願いたいと思うのです。
  244. 細野正

    ○細野政府委員 非常に具体的な会社なり企業なり、あるいは団体等につきましての、また具体的な雇用形態の問題になりますと、直接に指導することもなかなかむずかしい面もございますけれども、しかし、お話の御趣旨そのものはきわめてよくわかりますので、今後とも努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  245. 草川昭三

    草川委員 特に、いまのことは私、具体的にやっていただきたいわけでございますが、やはり上滑りの政策だと、なかなかうまくいかないというので、債務保証制度というのがあるのですけれども、この保証制度は、融資のあっせんをして——融資のあっせんというよりも、失業者の方々が自立をして、ひとつ仕事をやりたい、何か商売をやりたいという場合に債務保証制度というのがある。私はこれは非常にいいことだと思うのです。だけれども余り成績が芳しくない、こういうことですけれども、その内容実績。なぜ利用状況か悪いのか。御答弁願いたいと思うのです。
  246. 細野正

    ○細野政府委員 債務保証制度はございますが、なかなか利用が芳しくないというのは御指摘のとおりでございます。  この中身は、自営業を始めようという方に対しまして、最高四百万円を限度としまして債務の弁済を保証しよう、こういう制度でございます。しかし、これがなかなか利用されておりません原因は、やはり金融機関にも、この制度がよく周知されておりませんことと、それから、もう一つ関係離職者にもまた十分知られていないという双方の面があるかと考えられますので、今後、金融機関に対しましては雇用促進事業団から、それから関係離職者に対しましては安定所におきまして、この制度の趣旨徹底に努めまして、御指摘のように、この利用の促進を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  247. 草川昭三

    草川委員 お言葉はいいのですけれども、ちょっとひど過ぎるのですよ。五十一年度の予算は利用者六十人で百二十万円、実績はゼロです。五十二年度の予算は六十八名で二百七十二万円ですけれども、ただいまのところ数字が上がってきていないということですね。予算を立ててゼロなんということは、よほどどうかしておると思うのですよ、運営をやるに当たって。そして、たまたま借りたけれどもむずかしかったとか、利用方法が悪かったとか、いろいろな理由があると思うのですけれども、ゼロだということで、五十二年度も五十三年度も同じような形で予算を立てられておるということは、私はこれは基本的にどこかで熱心さがないと言わざるを得ぬと思うのです。真剣に自営で立ち上がりたいという人はいると思うのです。特に最近、沖繩の場合は外食産業というものもかなり活発になってきておるわけですから、いろいろとそういう方々にも親切な配慮をするということが、私は沖繩の現状を少しでも解決することになると思うのです。  時間が来たので非常に残念でございますが、最後になりますけれども、事前の職業訓練の問題について施設庁にお伺いをしますが、在職者の職業訓練というものが実際上、いまの構内というのですか、基地の中で行われるのかどうか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  248. 菊池久

    ○菊池政府委員 先生御指摘職業訓練でございますが、これは臨措法の十条三項の規定に基づきまして、駐留軍従業員のいわゆる離職を余儀なくされる場合を想定いたしまして、事前に在職中に訓練を行うということでございます。これは米軍の施設の中におきまして、米軍から訓練に要する設備、器具等を無償で貸与を受けまして、当該訓練種目に関連しております技術者なり、技能、知識を有する技能者を講師に招きまして訓練を行うということでございます。これは現在、五十一年度の実績で見ますと、自動車整備、造園関係、調理師等の六種目をやっておりまして、大変好評を博しているところでございます。  それから、そのほかに米軍の施設の外で行います訓練がございまして、これは施設の中で器材等がない場合または貸与が受けられない場合に、各種学校、訓練機関等に委託いたしまして、米軍の施設の外で訓練をいたすというふうな内容であります。これにつきましては、五十一年度の実績で申しますと、自動車の運転、電気工事士の資格試験を受けるための勉強、和文タイプ等四十種目にわたりまして実施しております。合計約二千名の従業員が受講している実績がございます。
  249. 草川昭三

    草川委員 ぜひ、この職業訓練のあり方については、また訓練法全体の改正もあるわけでございますが、施設の中で時間内で、より充実した訓練が受けられることを要望して、私の質問を終わりたいというように思います。どうもありがとうございました。
  250. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、浦井洋君。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕
  251. 浦井洋

    ○浦井委員 沖繩の駐留軍離職者に関連をして雇用問題についてお尋ねをしたいと思うわけですが、すでに労働省でも御存じのように、沖繩県の駐留軍労働者は、四十七年の本土復帰当時が約二万人であった。それが五十二年十一月末現在が八千三百六人、四割ぐらいに減っておるわけです。そうですね。それで、この解雇された人員を見てみますと、四十四年以降で累積一万七千八百五十四人、それから四十七年以降では累積人員が一万三千百六十四人、これは沖繩県の資料によるわけでありますが、こういう形であります。いま審議されておる法律によって、この解雇された労働者に対しては再就職が援助されてきたということであるわけなんですけれども、そこで、まず数字をお聞きしたいのですが、四十七年以降に駐留軍を解雇されて再就職をした労働者が何人おるのか、ひとつお知らせ願いたい。
  252. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねの四十七年以降の離職者の中で再就職した方の数は、二千七百六十人でございます。現在四千四百四十九人が求職活動中、こういうことでございます。
  253. 浦井洋

    ○浦井委員 二千七百六十人ということで、これはもちろん老齢化しておる、あるいは死亡された方もあるでしょう。しかし、四十四年以降一万七千八百五十四人、四十七年以降一万三千百六十四人に比べると、やはり少ない。結局、解雇された人たちのほとんど大部分と言ってもよい人たちは再就職が困難だということを示しておると私は思うわけであります。だから、沖繩県の先ほどから言われておる非常に深刻な失業状態をつくり出しておる一つの大きな原因というのは、やはり駐留軍労働者からの大量解雇にあることは、これは大臣、明らかだと思うわけなんです。  そこで、もう一つ数字を挙げたいわけなんですけれども、職安の窓口における求職倍率を見てみますと、五十二年の一月から五十二年の十一月までの平均が求職倍率が十・八、すなわち求人一人に対して求職者が十・八人あるということ。それで、この期間の有効求職者数が一万七千百七十六人、この中で駐留軍の解雇者が五千二百七十四人、そういう数字ですね。だから、結局有効求職者数の中で三〇・七%、約三割の方が駐留軍からの解雇者である、こういうことになるわけです。この法律によって、駐留軍を解雇された離職者に対しては失業給付とともに就職促進手当が三年間出るというようなことで、いろいろと失業中の生活を支えるというたてまえにはなっておるけれども、やはり一番大きな問題は、これはこの支給期限が切れる前、あるいは切れた後、安定した職業につくというのが、やはり行政の側から見て一番重要な問題だと思うわけであります。  だから、ひとつ大臣に最初にお聞きをしたいわけでありますけれども、大臣もよく御承知のように、離職者は非常に高齢者が多いわけです。それから、先ほどから言われておるように沖繩県のいろいろな特別な産業の状況もある。だから再就職を確保するためには、いまのような離職者対策ももちろん必要でありますけれども、同時に県全体の雇用対策をもっと大きく見直して、しかも、きめ細かくやっていくべきではないか、全体として強化すべきではないか。このように私は思うわけでありますけれども、ひとつ藤井大臣の御所見をお伺いをしたいと思うわけです。
  254. 藤井勝志

    藤井国務大臣 沖繩が大変、雇用情勢が厳しいということ、そして、特に駐留軍関係の離職者が三割以上を占めているという、まさにそのとおりと認識をしておるわけでございまして、そういう面で現在、駐留軍関係離職者の対策としては、中央において協議会を設け、地方は地方で対策協議会を設けておるわけでございますが、そういう機関の横の連絡を密にしながら、同時にこの就職促進手当の支給ということと同時に雇用奨励金制度を活用するということも当然でございますが、それともう一つ、ことし五十三年度から新しい雇用政策として、中高年齢者、特にこの駐留軍離職者関係には、御指摘のごとく中高年齢者が多いわけでございますから、その中高年齢者の離職者の雇用促進のために、これを受け入れる事業主に対して助成をする、こういった制度を新設をするわけでございまして、これは中小企業事業主が受け入れた場合には、それが払う賃金の三分の二は国が援助をする、こういうことによって雇用拡大を、民間の活力を利用して図っていこう、こういうことであります。  同時に、やはり私は、沖繩の雇用問題はなかなかそう短時日では解決できませんけれども、何とかして沖繩の特性を生かしたような産業を興していくということ、これがまず基本的な方向でございまして、それと同時に最近、沖繩は観光の方向へ相当産業が伸びておるわけでございまして、海洋博を契機にして第三次産業としての観光開発、こういう面にも今後積極的にこちらも力を入れる、こういったことと相まって今後、離職者対策の整備をしていきたい、このように思うわけでございます。
  255. 浦井洋

    ○浦井委員 五十三年度から、受け入れた事業主に対して助成を新設した、これはひとつ成功を私もこいねがうわけですが、しかし、あとは特性を生かした産業とか観光開発ということです。これはしかし、沖繩県民が聞かれると、ちょっとぐあいが悪いですよね、それだけでは。やはり先ほど私が申し上げたように非常に失業率も高いわけですし、特に米軍基地がある。それの関係で特別な事情にあるわけでありますから、労働大臣として観光開発しか言えないということではぐあいが悪いのではないかというふうに私は思うわけです。  そこで、やはり緊急の問題として各論的に私は申し上げたいわけなんですけれども労働省は五十一年の五月の十四日に沖特法、沖繩振興開発特別措置法の第三十八条の規定に基づいて、沖繩県の労働者の職業の安定のための計画というのを定めておられる。その三十八条を見ると、その中には「就業の機会の増大を図るための事業の実施」ということを、これも行うことができるというふうになっておるわけでありますけれども、ところが労働省の計画の中には、故意か偶然か事業の実施という形で明記はされておられない。一体それはなぜなのか。それから事実、労働省の計画のとおり、いまに至るまで事業の実施はやられておらない。これは一体なぜなのか、この点についてお聞きをしたいと思う。
  256. 藤井勝志

    藤井国務大臣 沖繩では御承知のごとく失業者吸収率制度、これによって六〇%は失業者を公共事業に使う、採用するという、こういうことでありまして、これ以外に失業救済のための事業ということについては、これはやはり再就職の促進という、こういったことが勤労者の生涯を通じての幸せに通ずるわけでございますから、やはりできるだけ雇用の増大を図る。  それから、いま御指摘のように今度新しく制度をつくりました中高年齢者雇用対策の線が、どの程度、期待にこたえ得られるか、いろいろ問題がございます。しかし私は、いま申しましたような線以外、別途新しい事業の中で、やはりこれから伸びる産業、そういったものに常雇いとして今後働けるという、この雇用拡大を求めるべきであって、それ以外には失業者吸収率制度、これ以外、私は別途同じような事業ということはこれは適当ではないではないか、このように思うわけでございます。
  257. 浦井洋

    ○浦井委員 吸収率制度については、これから私お聞きしょうと思っておったわけなんですけれども、これは非常に迂遠であるし、また非常に効果も薄くて、しかも実態がよくわからないというような状況が、いまから私、質問していく中で大臣もおわかりになっていただけるだろうと思うわけなんです。それ以外に事業はつくらない、やはり基本的には新しい産業を興さなければならぬ。大臣、別にひっかかるわけではないですけれども、一体どんな産業を興されようと思っていますか。
  258. 藤井勝志

    藤井国務大臣 なかなか、これはむずかしい問題で、沖繩のあの地域の経済的、産業的いろいろな諸条件を考えますと、そう簡単に道が開けるとは私は思っておりません。ただしかし、ほかにより合理的な、よりいい方法があるかというと、なかなかわれわれの知恵では開発ができないということがございまして、一応沖繩のたどってきた、きょう今日の道すがらを回顧し展望するなら、やはり第三次産業、こういった方面、あるいはまた他の産業においても、これから伸びる付加価値の高い産業で、あそこに芽生え得るようなものを、いろいろわれわれも情報として伝えていく、情報として、われわれも職業安定所を通じて地域の住民の方々、離職者の方々によくアドバイスをする。これは要するところ、沖繩開発振興のための役所もできておるわけでありますから、そういった関係省庁との密接な連絡を保ちながら、労働省としてできるだけの努力をしていく。特に最近の厳しい雇用情勢において、なおさら、われわれは力を入れなければならぬ、このように思っておるわけであります。
  259. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣、列島改造論を読んでおられるようなお話をされるわけでありますけれども、私はよい方法があるということで質問をしておるわけなんですが、先ほどの私の質問、ひとつ細野職安局長の方から一遍答えていただきたいと思うのですが。
  260. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘のように、沖繩の雇用情勢、容易じゃないわけでございますが、しかし最近、たとえば昨年の夏ごろは七・九%、約八%近くまでいっておりました失業率が、最近におきまして五%台にまで落ちてきておる。その理由一つとしては、公共事業への就労が促進されていること、あるいは製糖関係、サトウキビ関係その他の、従来外国人労働力に頼ったところに対する就労関係が進んできたこと、それから先ほど大臣からお話がございましたけれども、第三次産業への就労かやや進んでおるというふうな、いろいろな原因があるわけでございますが、御存じのように、今後におきましても公共事業拡大が予定されておるわけでございますから、したがいまして、私どもとしては吸収率制度を活用しまして、なかなか県外へ出られない方については当面の問題として公共事業への吸収を一層進めてまいるということ。それから先ほど、これもお話ございましたけれども助成金制度を活用しまして民間雇用の機会をふやしていく。それから若い方を中心に、動ける方については本土への就職を進めていく。若い方については御存じのように求人が求職を上回るというふうな状況すらあるわけでございまして、そういう意味で今後の状況としては、先ほど申しましたような三つの方向というものを並行的に進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  261. 浦井洋

    ○浦井委員 事業をなぜ実施しないのかということについてのお答えが大臣からも職安局長からもなかったわけでありますが、どうですか。
  262. 細野正

    ○細野政府委員 結局、たとえば公共事業への、就労が促進されるということであれば、一時的な就労の道というものを希望しておられる方に対する要望には、それでこたえ得るわけでございますから、あえて他の方法を考える必要はないのじゃないかということと、もう一つは直接的に就労者を就労させることに重点を置いた事業というものについては、従来の経験から見ましても、かえって就労者が滞留をしまして、民間への再就職というものにつながらないという、そういう過去の経験もございますので、先ほど来申し上げておりますように、三つの方向で対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  263. 浦井洋

    ○浦井委員 あえて事業の実施をやらない理由は、就労者が滞留をしたり、大臣先ほど言われた公共事業と重複してくるというようなお話でありますけれども、そうすると、大臣や局長の推奨しておられる吸収率制度、これは沖特法三十九条に基づくわけでありますが、この公共事業への失業者の吸収は一体、具体的にどうなっておるわけですか。
  264. 細見元

    ○細見政府委員 お尋ねのございましたように、沖繩県の雇用失業情勢の現状にかんがみまして、沖繩県の労働商工部においては、従来から失業者の公共事業への就労について、ただいまお話のございました沖繩振興開発特別措置法に基づきます失業者吸収率制度を活用して、その促進に努めてきたところでございまして、まず吸収率制度の前提になります事業に関する施行通知書の提出件数も、昨年度の五百七十件に対しまして、本年度は、本年一月現在で七百六十一件、二月現在で八百四十四件と、逐次施行通知書の提出件数も増加をいたしております。  次に吸収人員につきましては、五十一年度の安定所紹介によります吸収人員が千八百三十四人、それから本年二月までの同じく安定所を経由いたします吸収人員が千五百三十一人となっております。ただ、お聞きいただいておりますと、千八百三十四人と千五百三十一人で、本年になりまして減少いたしておりますけれども事業全体の吸収人員は、昨年が四千二百一人、ことしが五千三百四十九人でございまして、ただいまのような差が出ましたのは、施工業者のいわゆる手持ち労働者の数が、昨年は二千三百六十七人に対しましてことしは三千七百六人と、手持ちの労働者の増加のために、安定所紹介によります吸収人員が昨年より若干減少しておるわけでございます。
  265. 浦井洋

    ○浦井委員 その辺、大臣よく考えてください。公共事業ということになると手持ちの労働者がおる。そこに、さらにまた失業者を吸収するということになると、やはり効率が悪いといいますか、だからこういうかっこうで、ことしの方が吸収人員が減っておる、こういうことになるわけなんです。  開発庁来ておられますか。開発庁にちょっとお尋ねしたいのですけれども、五十一年度と五十二年度、それから五十三年度予定の沖繩県内の公共事業への投資はどれくらいなんですか。
  266. 中沢祥枝

    ○中沢説明員 当初予算ベースで申し上げますが、五十一年度は七百九十九億五千六百万円でございます。五十二年度は九百九十六億四千百万円、五十三年度予算は千三百五十四億九千万円を予定いたしております。
  267. 浦井洋

    ○浦井委員 かなりの資金量が公共事業という形で流れていっておるわけですね。  そこで、もう一つ開発庁にお聞きしたいのですけれども、その沖特法三十九条による失業者吸収率制度の届け出の対象となる件数は一体どれくらいなんですか。
  268. 関通彰

    ○関説明員 お答えいたします。  開発庁から発注いたしました事業につきましては、発注請負業者が県の職安担当の部局に報告をすることになっておりまして、その県の職安担当の部局で、それぞれの業者から報告を得てまとめているというぐあいに聞いておりまして、報告の件数については私ども的確にお答えできない状態でございます。
  269. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣お聞きになったように、どのくらい効果があるものかという一つの目安になる件数も、はっきり開発庁でもわからぬ。だから大臣は吸収率制度を推進していきたいということでありますけれども、それがどういう効果があるのかようわからぬ。先ほどからの話でいけば、かなりの資金が投入をされておる。しかし一方では吸収人員が五十二年の二月で千五百三十一人ですか、そういうことでありますから、これはこの数字が多いのか少ないのかということもわからぬ。恐らく私は少ないだろうと思う。吸収人員が少ないだろうと思う。大臣が推進されるものならば、もっとたくさんの失業者を公共事業によって吸収できるはずであるのに、やれない。やはりネックがあるのではないかというふうに私は思わざるを得ないわけであります。そのために、提案でありますけれども、やはりいまの話でも大臣おわかりのように、公共事業の場合に施工業者が任意に届け出る、こういうことになっておるわけですね。だからやはり任意というところに私は問題があるだろうと思う。それで労働省としても昨年暮れにできた離職者対策法によっても、失業多発地域への公共事業重点的発注と失業者吸収を図るということを非常に大きな柱にしておられるわけでありますから、ひとつ、一つは公共事業の施工業者の職安への届け出について、緊急失対法の二十条でちゃんと届け出義務があるわけですから、これをこの際に義務づける。この吸収率制度の中の届け出でなしに義務づけるというようなかっこうに変えるわけにいかぬのですか。
  270. 細見元

    ○細見政府委員 ただいま先生から施行通知書の提出の義務化の問題がございましたけれども、現在も先生御承知のように、沖繩振興開発特別措置法の三十九条の四項におきまして「前三項に定めるもののほか、吸収率の定められている事業への失業者の吸収に関し必要な事項は、労働省令で定める。」ということになっておりまして、これを受けまして沖繩振興開発特別措置法に基づく就職促進手当の支給等に関する省令の第二条におきまして「当該事業に使用すべき労働者の数を、職種別に、主たる事業実施の地域を管轄する公共職業安定所に通知するものとする。」と書いてございますので、私どもといたしましては、現在も、この規定をもって施工業者に対して通知書の提出を義務づけたものであると解しております。
  271. 浦井洋

    ○浦井委員 しかし、その省令でいけば、やはり任意の届け出にならぬのですか。やはりもっと強い、たとえば緊急失対法の二十条にあるような、そういうきちんとした罰則といいますか、罰則を伴うところの義務化をやはりすべきではないか、私はそう思うわけです。それが一つ。  それから、そこまでいかなくても、やはりもっと届け出がちゃんと励行しておれば、もっと件数もふえるし、あるいは吸収人員もふえるというような統計の数字が出るかもわからぬ。現実には少ないわけだから。だから、やはり何らかのかっこう一つの強制力を働かして、そして届け出をしない業者に対しては、発注の強く言えば中止を指導するとか、そういうひとつ強力な行政措置を講じて、大臣の推奨されるこの吸収率制度がより効果的になるように、ひとつやれぬのですか。
  272. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘のように現在、施行通知書の提出の義務は業者に義務づけられておるわけであります。これがなぜ励行されないかということの一つの大きな原因は、その施行通知書が出されても、現実にそこへ行く求職者が安定所の窓口にいない場合には、その通知書の提出というものは全く無意味になるわけです。そういう意味で、安定所の窓口で現実に公共事業等へ就労することを熱心に希望する求職者がおられるかどうかということが、逆に言いますと、そこの安定所が施行通知書の提出を非常に熱心に法律の義務どおり督励しているかどうかということに逆にあらわれているというのか現状でございまして、そういう意味で御指摘の点、確かでございますので、私どもも今後一層、事業主体とも連絡をとり、そのために安定所を中心に施行主体である各市町村との連携のための対策会議等も設けることにいたしておりますので、その場を通じて施行通知書等の提出の督励をいたし、一層その吸収の効果を上げてまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  273. 浦井洋

    ○浦井委員 これはなかなか重大な問題ですから、私は形の上では義務づけられておっても、やはりネックがある。局長の言われたようなネック以外にも、やはりあるのではないかという感じはするわけですが、最後にもう一つの問題、これは中高年法です。中高年雇用促進法の第三章の手帳発給等の章と、それから特定地域開発就労事業、特開事業、これは第二十一条、第二十二条、これが沖繩の場合には適用除外になっておるわけなんです。特定地域開発就労事業は、労働省はもちろんよく御承知だと思うのですが、産炭地であるとか、あるいは高知県の中村というようなところで実施をされておる。沖繩の場合には本土以上に失業が深刻化しておるわけだから、やはり適用除外にしておくのはおかしいのではないか。先ほどから申し上げておるように、沖特法の三十八条がある限りは、やはりこれに依拠して本土同様に就労事業を何らかのかっこうで、特開というかっこうでもよろしいし、私が初め申し上げた労働省の計画に抜けておる事業の実施、そういうような形で、就労者が滞留するというような偏見、先入観を解きほぐしていただいて、もう一遍、新しい気分でこういう方法を見直してもらうわけにいかぬかいなというふうに私は大臣に思うわけです。  ついでに、ちょっと申し上げておきますけれども、中高年法の制定のときの、これは参議院でありますけれども、国会の附帯決議の中でも、「施政権返還後の沖繩に対する本法の適用については、沖繩の特殊事情をも配慮しつつ、中高年齢者等の雇用及び福祉につき遺憾なきを期すること。」ということになっておるわけでありますから、こういう深刻な事態になっておる場合、いわば行政としてもなりふり構わず、いろいろなことをやってみるというような考え方と意気込みが必要ではないか、私はそう思うわけなんですけれども、ひとつ大臣のお答えを聞いておきたいと思う。
  274. 藤井勝志

    藤井国務大臣 非常に雇用情勢が厳しい。わけても沖繩においてなおさらでございまして、そういう深刻な事態を踏まえて積極的な雇用対策、求人開拓をやれという御提案に対しては、全く私もそのように努力しなければならぬと思います。したがいまして、今度われわれとしては、やはり地域に密着をした職業開拓という面において地方自治体と密接な連絡を持って職業安定所が市町村と雇用対策協議会をつくる。こういうことで広く雇用情報についても連絡をする。同時に従来の制度、たとえば公共事業への雇用制度、こういったものもひとつ厳重に、受け入れ側の事業、建設業者も、同時にまたこれに就労を求める人も、制度があっても就労する人がしり込みしたのでは困りますから、本当にこの趣旨をよく徹底する。こういったことをやはり就労する人、使う側、同時にまた、これをあっせんする側あるいは公共団体、こういった者が一体となって積極的な雇用対策を推し進めなければならぬ。御説のとおりに考えておるわけでございます。
  275. 浦井洋

    ○浦井委員 これで終わりたいと思うのですけれども、大臣に要望しておきたいのですが、やはりこういう深刻なときには国が財政的な援助をして、そして自治体が責任を持って失業者を吸収して、新しい事業を起こしていく。これは国際的にも、たとえば第一次世界大戦の後ですか、チェンバレンであるとか、あるいは第二次世界大戦の前のルーズベルトのニューディール政策であるとか、かなりの効果を上げておるわけなんで、やはり現在ある失対事業というものの見直しということで、ひとつ新しい就労事業を起こしていくというようなことを研究もし、ぜひ着手をしていただきたい。失対事業に就労しておる人によって組織されておる全日自労という労働組合なんかも、新しい就労事業をやろうということで提言をしておるし、かなりの自治体がこれに賛意を表しておるわけでありますから、ぜひ、これは検討していただきたい。このことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  276. 木野晴夫

    木野委員長 これにて駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  277. 木野晴夫

    木野委員長 次に、職業訓練法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由説明を聴取いたします。労働大臣藤井勝志君。     —————————————  職業訓練法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  278. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま議題となりました職業訓練法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  職業訓練法昭和三十三年に制定され、その後、昭和四十四年に、当時深刻となっていた技能労働者不足に対処するため全面的に改正されて現在に至っており、この間、技能労働者の養成及び技能検定を通じて、労働者の職業の安定と産業の振興に努めてきたのであります。  しかしながら、最近における職業訓練を取り巻く社会経済情勢は、昭和四十年代前半とは著しく変容しており、職業訓練制度は、雇用情勢及び産業構造の変化、年齢、学歴及び職業別の就業者の構成割合の変化等に対応した新たなる役割りを果たすことが求められるようになっております。  すなわち、職業訓練は、労働者の職業生涯の各段階において適時適切に行われることが一層重要となっており、特に、離転職者の再就職等のための職業訓練の機動的な実施及び中高年齢者職業の安定のための職業訓練の拡充は喫緊の課題となっております。また、養成訓練についても、今後必要とされる技能の高度化に見合って、その質的向上を図ることが必要となっております。  このような課題にこたえ、今後における産業経済社会の質的転換に対応するための職業訓練制度の整備は急務であります。  これらにかんがみ、民間、公共一体となった幅広い機能的な職業訓練の実施体制の確立を図り、生涯訓練、生涯技能評価体系の理念の達成を推進すべく、公共職業訓練の整備、民間における職業訓練の振興並びに職業訓練及び技能検定の推進を目的とする団体の育成のための措置を中心として職業訓練法改正することとし、ここに職業訓練法の一部を改正する法律案として提案した次第であります。  次に、その内容の概要を御説明申し上げます。  第一に、職業訓練及び技能検定の基本理念である生涯訓練、生涯技能評価を目標とする旨を明確に規定するとともに、労働者は、養成訓練、向上訓練及び能力再開発訓練その他多様な職業訓練を受けることかできるように配慮されるものであることを明らかにいたしております。  また、職業訓練の実施体制について、事業主は、その雇用する労働者に対する必要な職業訓練の実施等に努めるべきものとし、国及び都道府県は、事業主等の行う職業訓練の振興及び内容充実を図るように努めるとともに、離転職者等に対する職業訓練その他必要とされる職業訓練の実施に努めなければならないものといたしております。  第二に、国及び都道府県が行う職業訓練について、離転職者に対する職業訓練を機動的に実施するため、必要に応じ、他の適切な施設に訓練を委託することとするとともに、職業訓練の実施に当たっては、関係地域における労働者の職業の安定及び産業の振興に資するよう十分配慮するものといたしております。  第三に、職業訓練施設について、現行職業訓練法による専修職業訓練校及び高等職業訓練校の区分をやめ、ともに職業訓練校として名称を統一し、その質的向上を図るほか、職業訓練施設のそれぞれの役割り及び設置主体の分担を整備いたしております。また、現在雇用促進事業団が設置している高等職業訓練校については、関係地域の事情を考慮しつつ、技能開発センターまたは職業訓練短期大学校へ転換させるよう努めることにより、離転職者及び中高年齢者に対する職業訓練の拡充並びに今後必要となる高度の技能労働者の養成のための施設の整備を図ることといたしております。  第四に、事業主等の行う職業訓練に対する援助等を強化するため、国は、職業訓練に関する調査研究及び情報の収集整理を行い、事業主等の利用に供するように努めるものとし、国及び都道府県は、事業主等に対し、認定職業訓練以外の職業訓練についても広く援助を行うように努めなければならないものといたしておりますほか、事業主等に対する助成等についても明確に規定することといたしております。  第五に、現行職業訓練法による職業訓練法人中央会及び中央技能検定協会、都道府県の職業訓練法人連合会及び技能検定協会をそれぞれ統合強化し、民間による職業訓練及び技能検定の推進のための中核的団体として、中央及び地方の職業能力開発協会を設立することといたしております。  その他、単一等級技能検定の導入及び技能検定委員の地位について所要の規定を設ける等の改正を行うことといたしております。  以上この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  279. 木野晴夫

    木野委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  次回は、明後三十日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会      ————◇—————