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1977-10-25 第82回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十五日(火曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員異動  十月二十二日    辞任          補欠選任     神谷信之助君      立木  洋君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 原 文兵衛君                 戸叶  武君     委 員                 上原 正吉君                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 町村 金五君                 三善 信二君                 阿具根 登君                 小野  明君                 福間 知之君                 渋谷 邦彦君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  鳩山威一郎君    政府委員        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アジア局        次長       枝村 純郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        水産庁次長    恩田 幸雄君        特許庁長官    熊谷 善二君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        厚生省公衆衛生        局保健情報課長  林部  弘君        水産庁海洋漁業        部長       松浦  昭君        海上保安庁警備        救難監      山本 了三君     —————————————   本日の会議に付した案件日本国地先沖合における千九百七十七年の漁  業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共  和国連邦政府との間の協定締結について承認  を求めるの件(内閣提出) ○日本国中華人民共和国との間の商標保護に  関する協定締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ルーマニア社会主義共和国との間  の条約締結について承認を求めるの件(第八  十回国会内閣提出、第八十二回国会衆議院送  付) ○所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ブラジル合衆国との間の条約を修  正補足する議定書締結について承認を求める  の件(第八十回国会内閣提出、第八十二回国会  衆議院送付) ○投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジ  プト・アラブ共和国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(第八十回国会内閣提出、  第八十二回国会衆議院送付) ○国際海事衛星機構(インマルサット)に関する  条約締結について承認を求めるの件(第八十  回国会内閣提出、第八十二回国会衆議院送付) ○アジア太平洋電気通信共同体憲章締結につ  いて承認を求めるの件(第八十回国会内閣提  出、第八十二会国会衆議院送付)     —————————————
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  去る十月二十二日、神谷信之助君が委員を辞任され、その補欠として立木洋君が選任をされました。     —————————————
  3. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件  及び、日本国中華人民共和国との間の商標保護に関する協定締結について承認を求めるの件  両件を便宜一括して議題といたします。  これにより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。小野明君。
  4. 小野明

    小野明君 まず、日中の平和友好条約について大臣お尋ねをいたしたいと思います。  福田内閣は、日中関係について、日中の共同声明は忠実に遵守をする、平和友好条約双方の満足し得る状態において速やかに締結をしたい、こういう基本方針を示されておりますね。  そこで、わが方が満足し得る状態、こういう表現があるわけですが、これは具体的にどういうことを意味されるのか、これをまずお尋ねをしたいと思うんです。
  5. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 御承知のように、日中平和友好条約締結問題につきまして、共同声明以来もう五年をけみしているわけでございます。その間に、いろいろ折衝も行われてきたわけでございますけれども、まだ最終的な結論を得ておりません。その内容につきまして具体的にどこの点が双方で一致しているか、また一致していないかという点につきましては、この席で申し上げることを控えさしていただきたいのでありますけれども条文等につきまして双方かまだ一致をいたしておりません。しかし、大筋共同声明にうたわれておりますとおりに定められておるというふうに私ども考えておりまして、その限りにおきましては大筋は変わりないわけでありますけれども、技術的な点につきまして双方主張は必ずしも一つになっておらない、そういう点につきまして、わが方といたしましてやはり主張すべき点は主張をいたしたいと考えております。そして最終的には双方が当然妥結をするわけでありますから、その段階におきまして満足すべき状態が得られると確信をいたしておるところでございます。そういう次第で、どこの点と申し上げることは差し控えさしていただきたいと思う次第でございます。そのような趣旨と御理解を賜りたいわけであります。
  6. 小野明

    小野明君 なかなかいまの御答弁では一向にわからぬわけですが、一応この外交折衝をおやりになっておる以上、わが国が満足し得る状態という原則はあるはずですね、双方が満足する、しなければ条約にならないわけですが、いろんなことを福田内閣は言われておるわけですか、わが方の満足し得る状態というのは一体何なのか、これをいま少し御説明をいただけませんか。
  7. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) その点につきまして予算委員会等でも福田総理がたびたびお述べになっておられますが、その内容につきましては、もうしばらく御猶予を賜りたいということでございます。しかし、大筋共同声明にうたわれてあるその線でまいる、こういうことでございまして、あとは技術的と言えば技術的な点でありますけれども、しかし、条約上の文面というものは長きにわたりますものでございますので、技術的にも万遺漏のないようにいたしたいというのが私ども考えでございます。
  8. 小野明

    小野明君 どうも納得できませんね。かつて福田さんがこのように言われておりますね、宮澤原則原則でも何でもないと。これは宮澤外相が自分の感想を述べたものであって、これに拘束はされない、こういう立場をとっておられますね。さらに福田総理共同声明の第七項、これについては平和憲法に基づくわが国基本的立場について中国側理解が得られるならば、これを前文に入れるか本文に入れるかは技術的な問題だ。これはことしの二月三日の衆議院会議において答弁をされております。これは大臣も御存じだと思います。そしてさらに、わが国憲法について中国側も十分な理解を持ってもらいたい、これは予算委員会での答弁でありますが、こういうふうに述べておられまして、例の宮澤原則にかわる新たな条件を提起されているようにも考えられるわけです。  平和憲法に基づくわが国基本的立場、こういう提起があるわけですが、それではこの平和憲法に基づくわが国基本的立場、これは具体的に一体何を言おうとされておるのか、言わずもがなのことを言ってそれが条約締結を阻害をしておるんではないか、こういうふうに考えられるわけですが、この点については大臣はどうお考えになりますか。
  9. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 宮澤大臣が四つの項目につきまして、これも国会でも説明をされたわけでございまして、これらの点は宮澤大臣とされての御理解を示されたものであるというふうに理解をいたしております。そのことが条約締結に際しまして、原則というふうなことでそれを条約締結に何らかの拘束を生ぜしめるごときものではないというふうに私ども考えておるわけでございまして、当然のことでありますが、わが国といたしましては、平和憲法のもとで、外交姿勢といたしましては社会あるいは経済制度を異にする国との間でも、いかなる国とでも友好関係を持続すべきものであるということは当然のことでありまして、その点につきまして、それを特に取り上げて強調をする必要もないことであると私ども考えておるわけでありまして、そういうことにとらわれないで条約締結交渉に当たりたいと考えております。
  10. 小野明

    小野明君 宮澤原則というのは、これは大臣だけの見解で、アットワークにはとらぬと。そこで、いま大臣が言われた憲法に規定をされておりますわが国の基本的な立場というのは、大臣が言われますように、いかなる国とも友好を結んでいくんだと、こういう立場であることは、それはわかる。しかし、事、日中の平和友好条約締結をしなければならぬという時期に当たって新たに言挙げするといいますか、平和憲法に基づく基本的立場と、これを持ち出されたということについては、何か意図がといいますか、具体的に一体どういうことを言おうとされておるのか、それをお尋ねしたいわけですがね、それをお聞きしたい。いま言われるようなことは一般論であって、だれにもこれは言えることですよね。具体的な問題は一体何なのか、改めてこういうものを持ち出しておるというのはどういうことであるか、これが尋ねたいわけです。どういうことでしょう。
  11. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 平和友好条約に関連いたしまして、特にこの日本憲法、これは平和に徹するという日本としての外交姿勢、これらにつきましてことさらに言挙げをするまでのこともないと、端的に言えば私どもはそういう気持ちでおります。日中平和友好条約締結に際して、そのことが特に強調される必要も私はないものというふうに考えてよろしいのではないかというふうに思います。以上です。
  12. 小野明

    小野明君 そういたしますと、何か具体的な考え方、根拠というものは別にない、平板に普通一般理解をしてもらえばよろしいと、いかなる国とも平和友好立場を持続をしていくのが憲法に規定されておると、この立場であると、こういうふうにお考えになるわけですか。
  13. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) わが国平和外交に徹する姿勢につきまして世界各国理解をされることが好ましいのでありまして、ただ当然のことと私ども考えておりまして、条約上のそれが絶対必要な要件であるとか、そういうことを申しておるわけではございません。
  14. 小野明

    小野明君 非常に不満といいますか、わかりにくいわけですが、大臣も御承知のように、日中の国交回復につきましては、まあ本来でありまするならば中華人民共和国との平和条約によるべきである。ところが、政府が従来固執をされてきた立場というのは、中国との戦争状態の終結というのは日台平和条約処理済みであると、そういう虚構に立っておられる。あえて虚構と言わしてもらいますが、残された問題は、北京政府承認外交関係の樹立だけである、こういう法理論によって押してこられたのが実情ですね。これは大臣もお認めになると思います。  したがって日中の共同声明締結を約束をした平和友好条約というのは、わが方からすれば単に友好条約でよかった。しかしながら、平和条約を結ぶべきであると主張した中国との妥協の産物であったと私は思うんです。中国側からすれば平和友好条約は実質的には平和条約であります。わが方としても、虚構に立った法理論は別として、実質的には平和友好条約締結なくしては中国との国交回復は達成されない、こういう認識を新たにしなければならぬと私は思います。  この条約締結交渉は、いわゆる覇権条項をめぐって宮澤原則でこじれてしまったんですが、いま私が申し上げたような歴史的な経緯を踏まえて、初心に立ち返ってこの平和友好条約締結という問題に取り組まれるならば、おのずから道は開けていくのではないかと思いますが、大臣の御見解を承りたい。
  15. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) この五年間にいろいろな経過がございました。もうその点につきましてここでくどくど申し述べることはいたしませんが、いろいろな経過はございましたが、ただいまおっしゃいましたように、経過経過といたしまして、日中共同声明の大道を歩んでまいるというためにはやはりもう一度初心に返るというくらいの心構えが必要であろうというふうに、私もそのように考えております。
  16. 小野明

    小野明君 大臣、いまその日中平和友好条約締結する、これを促進をする一番いい時期だと私は思うんですね。ひとつ本気になって、初心に返って進めるお気持ちであるかどうか。いろんな新たな難題を突きつけるんでなくて、そういうひとつ決意のほどを伺いたい。
  17. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 九月の二十九日に五周年を迎えまして、黄華外務部長との会談を食事をともにしながらいたしまして、そして——これはいつということは申せませんのでございますけれども、先方も平和友好条約を早く片づけよう、当方といたしましてもなるべく早く解決をいたしたい、まあ五周年の記念のときに片づいておれば本当によかったとお互いにその点は同感したわけでございますが、この条約締結問題は真剣に取り組んで、なるべく早くこれを仕上げたいというのが私どもの率直な気持ちでございまして、どうかその点につきましては御理解を賜りたいと思います。
  18. 小野明

    小野明君 それでは日中の商標協定について二問ほどお尋ねをしたいと思います。  この外務省の出した資料にも出ておりますが、従来わが国企業が受けてきた実害としては、たとえば「味の素」に類似の「味素」という商標中国製の同種の調味料に使われておる。香港シンガポールに出回っている等の例が挙げられておりますね。この商標協定締結によりまして、今後、これらの問題はどのように処理されますか。
  19. 熊谷善二

    政府委員熊谷善二君) いま御指摘の「味の素」のケースでございますが、数年来、中国の公司から香港シンガポールに対しまして「味素」といった商標を付しました化学調味料が輸出されている模様でございます。ただ、現在、日本中国との間では商標権保護についての協定が今日までございませんでしたので、この問題は法的な手続その他が何らとられてまいっておりません。この協定発効いたしますれば、日本側企業自己名義中国の方に出願ができるようになるわけでございますので、その段階で正式に出願もし必要な話し合いも行うというような予定でいるようでございます。  これはこの協定相互の国になかったということからくる一つ事例でございますが、この協定ができますれば、たとえば日本の側におきまして日本の業者が中国から輸入されるものにつきまして先取りして登録を行うといった事例も実は従来ございましたが、こういったケースにつきましても、従来いろんな話し合い等を通じまして実際的な処理は行ってまいっておりますが、今後は、この協定に従いまして正式の手続によりまして自己名義による登録が行われるということになりますので、両者の関係は非常にスムーズに行われることになるであろうというふうに考えておるわけでございます。
  20. 小野明

    小野明君 いま中国側の例を挙げたんですが、わが国にも、いまお話がありましたように、紹興酒とか、酒類、薬品類にもこういう先取り登録をしておるものがあると言いますね。これらはどういうふうに処理をされるのか、それがお聞きをしたいわけです。
  21. 熊谷善二

    政府委員熊谷善二君) いま御指摘紹興酒等商標案件でございますが、これはA社国交回復後の四十七年の暮れごろに、酒、薬品の類につきまして五十数件にわたります中国商標出願したわけでございます。中国側としましては、この出願登録をされる段階になりますと、中国から日本への輸入につきまして輸入の差しとめが行われるということも予想されますので、事態を放置できないということから、中国側の要請を受けました日本団体がこのA社話し合いを行いました結果、この出願をしたすべての商標につきましてその団体譲渡し、名義変更を行うということになりまして、五十年の三月に円満に解決はいたしておるわけでございます。恐らく、協定発効後は、中国側にこれが譲渡されるということになると思われます。  それから、もう一つ同様のケースでございますが、B社国交回復直前の四十七年の六月ごろでございますが、薬品につきまして中国商標一件を出願をいたした例がございます。本件につきましては、商標出願公告が出まして、これに対しましては従来中国から当該商品輸入を扱っております数社が異議申し立ての準備を行いまして、譲渡につきましての話し合いを行いました結果、四十九年の十月に譲渡の話がまとまりまして解決をいたしております。現在は、この日本側の商社の名義登録をされておるわけでございます。  こういったケースは、従来、先ほど申しましたように当事者間での話し合いを通じまして一応は円満に解決はされているわけでございますが、申すまでもなく、協定発効後におきましては、わが国商標法の定めるところによりまして、中国企業が直接にたとえば登録異議申し立てができる、あるいは無効審判請求ができる、あるいは不使用取り消し審判請求ができるということに、そのような手続に従いまして正当な権利関係が確立されるということになるわけでございます。  繰り返しますが、この協定発効によりまして、一般的にみずから使用する商標につきましては、あらかじめ自己名義登録を受けることができるようになるわけでございまして、ただいま申し上げましたようないろんな不都合な事態というのはこれからはなくなるであろうというふうに考えておるわけでございます。
  22. 小野明

    小野明君 漁業協定について二、三問お尋ねをしたいと思います。  この漁業協定が本年八月十六日から暫定的に実施をされておるわけですね。そこで、わが国協定違反として検挙をしたソ連漁船の数、これは十月十五日現在四隻、まあ違反の形態はいずれも操業日誌の一部不記載、こういうことであります。したがって釈放の条件である担保金提供額はいずれも五十万。これに対しましてソ連の二百海里内での日本漁船操業によって、取り決めた暫定協定が本年六月十日に発効をして以来、ソ連側に拿捕された漁船隻数は十月十五日現在で百八隻である。担保金も九千九百万の莫大な額に上っております。非常に私はこれは厳し過ぎると、こういうふうに思いますが、いずれにせよ、こういう状況が今後も続くということになりますれば、決して協定が円滑に実施をされておるとは言えない、こう思います。政府は、この問題に対してどう対処をされようとしておるのか、まずこの点をお尋ねをしたいと思うんですね。
  23. 松浦昭

    説明員松浦昭君) まず、お尋ねソ連船舶がわが方の二百海里内におきまして違反を犯しまして、その件数が比較的少ないという点のお話がございましたが、この点につきましては、ソ側船舶隻数がきわめて小さいということもございますし、また操業を認めましたのも八月以降でございまして、しかも大部分の期間はソ側はわが方の二百海里内の中に入ってこなかったという事実がございます。したがいまして、かなり件数が少なくなっているということが言えると思います。また、わが方の二百海里に入ってまいります際に、ソ側は相当厳重に船長等の教育をやっていたようでございまして、さような意味からかなり違反隻数が少なくなっているというふうに考えておるわけでございます。  一方におきまして、わが方の漁船はその隻数もきわめて多いわけでございますが、その違反が先ほど先生指摘のように百十件余り、また金額も約一億円という金額に達しておりまして、これは相当向こう側違反摘発と申しますか、これが厳しいという状況にあることは御指摘のとおりでございます。しかも、その中におきまして、罰金金額先生指摘のようにかなりまちまちであるという点は私どもも非常に遺憾に思っている次第でございまして、違反が起こりますたびに外交ルートを通じましてソ側抗議を申し入れておるわけでございますが、それに加えまして、先般ナホトカにおきまして担当官会議を開きまして、日ソ双方のふなれな点から生じましたそごに基づく、双方見解相違に基づく違反事例はすべて双方話し合いまして、かなりの解決を見ておるわけでございます。  その後におきましても、なお外交ルートを通じて話し合いましたほか、今般、私自身がソ連に参りまして、長期協定交渉をいたしました際におきましても、三日間にわたりましてソ側話し合いまして、できるだけ具体的な事実というものを話し合いますとともに、今後とも双方よく話し合って違反双方見解の差というものを調整していく、それによりましてこのような違反内容を減少させていくということを考えておる次第でございます。したがいまして今後もこのような話し合いを続けていくつもりでございまして、十一月十日以降行われますクォータ等交渉におきましても、監督官も交えましてさらに話し合いを進めてまいりまして、双方意見相違というものを調整いたしますと同時に、違反事態を少なくしていくということを考えている次第でございます。
  24. 小野明

    小野明君 ナホトカ専門家会議を開かれたというんですが、遺憾であるというような事態では、あなたの言われるようなことでは解決しないと思いますね。きわめてこれは問題が多い。新聞に報道をされただけでも、ソ連はささいなことにつけ込むとか、同じケース罰金額に差がある、あるいは船内の食糧用として持っていった魚にまで疑いがかけられて罰金を徴される、水産庁の指導のもとに操業日誌を書いておったのに、これが摘発されたと、日本漁民不満は絶えない、非常に高まっておりますね。これらの問題をナホトカで恐らく取り上げられたと思いますが、詳細なナホトカ会議の成果をここで御説明いただく時間もございませんが、これらの問題が解決をするのかどうか、要点だけをひとつ説明いただきたい。
  25. 松浦昭

    説明員松浦昭君) ソ側違反摘発事項につきまして、いろいろ分析をいたしてみますると、やはり無許可操業であるとか、あるいは禁止区域違反等わが方にどうも非があるというような件数が百十件のうちの七十九件ございます。それから操業日誌とり方等日ソ間の監督のふなれのために生じました問題で、ナホトカで合意を見まして、大体今後このような問題が起こらないであろうと考えられるようなそういう過去の事件が二十四件ございます。それから日本側抗議の結果罰金を返してきた件数が二件ございます。なお先生指摘のようなまだ双方におきまして見解相違がございまして、その意見の調整を行っておりまして、外交ルートを通じて抗議または協議中のものが五件ございます。その中にビルジの排出の問題であるとか、あるいはただいま先生指摘ハタハタをとりまして、それか食用であったにもかかわらず、これが漁獲をいたしたということで違反であるというような問題がございました。このハタハタ件等、まだ話し合いのついてないものにつきましては、今回の日ソ協議におきましても担当官同士話し合いまして、再調査等向こうにやってもらうということで強く話し合っておる次第でございます。  ただ、われわれとしては、このような話し合いを通じまして、できるだけ問題の解決をしたいというふうに思っておりますが、一つ重要なポイントは、わが方の漁船員のわれわれに対する報告とソ側監督官の調書が違っている場合が非常に多いわけでございます。そこが見解の分かれ道の一つの起点になっておりまして、そこでわが方としましては、向こう監督官の調書が出ました場合には、この調書のコピーをもらって帰ってくる。なるべく早くその事実をつかんで、そうして向こう側の方に早く抗議をし、早く調節を図るというような手をとっていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  26. 小野明

    小野明君 最後に、これは大臣お尋ねをしたいんですが、ソ連に拿捕された事件のうち、北方四島周辺のものが隻数にして三分の一である。金額にして半分であります。北方四島周辺の安全操業の取り決めに関しまして、昭和三十二年以来、ソ連交渉してきておるんですが、これが実現をしなかった。そればかりかソ連の二百海里の設定によりまして、この周辺水域の拿捕の不安が一層高まったと言わざるを得ないと思います。  大臣は、わが国漁業水域二百海里を設定をして、今回の漁業協定によってこの線引きが北方四島をも包含していることをソ連に認めさせたと、これに協定の意義があるんだと、こういう書き方をしておられますが、今後、この四島周辺の安全操業問題にはどのように対処をされていくのか、その辺をひとつお尋ねをしておきます。
  27. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 北方四島周辺では多数の中小漁船操業いたしておりますので、これらの水域につきまして多くの方々、特に現在まで多数の方々が拿捕を受けておられることにつきまして本当に残念に思う次第でございます。  協定につきましては、御承知のように、日ソ協定につきまして一応この領土問題につきまして、これは日本立場を害さないということが第八条によりまして、これは相当長くかかった交渉でありましたが、ああいう規定が入ったわけでございますが、具体的な水域の問題といたしまして、ソ連側が現実に管轄権を行使をしておるということがあるわけでございまして、今回のソ日協定におきましては、わが方の暫定措置法が適用になるということが決められておるわけでございまして、そういう意味で水域的におきまして、わが方の国内法も当然及んでおるという状態になっておるわけでございます。  しかし、現実のこの管轄権というものにつきましては、これはソ連が北方四島に対しまして長い間事実上の占有をしておるという事態が続いておるわけでありまして、この点につきましては水産庁当局も苦心をしておられるところでありますので、今後、水産庁当局とよく連絡を保ちながら、この安全操業の問題につきまして鋭意取り組んでまいりたい、かように考えているところでございます。
  28. 小野明

    小野明君 終わります。
  29. 福間知之

    ○福間知之君 大臣にお聞きしたいと思いますが、最初に例の金炯旭氏の問題についてでございますが、すでに御承知のように、今日アメリカの議会の倫理委員会等では金大中拉致事件から発展をして、アメリカの議員に対する買収工作をめぐって証言が続けられ、しかも議会の雰囲気というのは、例の最近の在韓米地上軍の撤退問題の見返りとして八億ドルの軍事援助を行おうかというふうな法案が通過しないのではないかというふうなところまで疑惑が拡大をしております。  わが国では、もうすでに、いままでも金炯旭氏の証言をめぐって政府側の一貫した主張は、伝聞が多いとか信憑性に欠けるとかいうことに貫かれてきているわけですが、日本の国民はアメリカの議会におけるこの金氏の証言の信憑性を評価しているところなどと比べてみて、私は一向に疑惑は晴れないと思うのですけれども、なぜ政府はそういう態度をとり続けておるのかお伺いしたいと思うのです。
  30. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 金炯旭氏の発言につきまして、最近は米下院の倫理委員会の公聴会におきまして発言があり、その前にはフレーザー委員会におきまして証言がなされたわけでございます。これらにつきまして、金炯旭氏につきまして事情聴取等の問題につきましては、これは現在金大中事件の関係から申しますと、これは刑事事件としての捜査が引き続いて行われておる。その捜査上参考になり得るかどうかという判断が第一義的  に必要であるというふうに考えておりまして、その判断は事件を扱っておられる警察当局の判断によるべきものであるというふうに私どもとしては考えておるところでございます。そして警察当局が刑事事件として有用であるかどうかという点は、やはり問題が証拠能力の点にあろうかと思うわけでございまして、この点の判断は私どもとしては遠慮したい点でございます。  ところが、現在までの確実なる議事録というものはまだ入っておりませんけれども、どうもその内容といたしましては、直接的な証拠になり得ないのではないかというふうに解されております。直接的に証拠がありませんと、事件の解決としてこれをもって一応外交的決着をつけた事件として韓国に日本がまた再度物を申す、そのためには、およそ事件としてはこういう事件であっただろうというようなことでは用に立たないので、やはり確実な証拠を添えたものでなければならない、こう考えている次第でありまして、もしその証拠能力があるということであれば、私は、積極的に調査すべきであろうと思いますし、それが単に宣伝といいますか、そういうだけで終わってしまうのであれば、これはかえって有益でない、むしろ弊害の方が多くなるのではないか、このような判断をしているのが率直なところでございます。
  31. 福間知之

    ○福間知之君 大臣は非常にきちょうめんな方で、きちょうめんな御答弁をいただいたんですけれども、その限りにおいてその心情は私は否定するものじゃありません、理解できます。しかし、その証拠能力という問題を一つとりましても、刑事裁判であれば伝聞だけではこれはいけないということは理解できるわけです。しかし、いま私たちはこの種の問題をかなり政治的に重大な事件とこういうふうなとらえ方で見ていますし、また、金炯旭氏を日本の裁判所に呼んでこいということは言ってないわけです。国会がやはりそういう伝聞にしろかなり疑惑を持った中身が証言としてなされているということから、国会に呼んで一応疑わしきを確かめてみようじゃないかと、これは裁判じゃありませんので、そういうことをしなければ、これは普通の刑事事件だって最初の初動調査というのはいわば聞き込み捜査から入るという場面が多いわけです。そういうことと何ら私変わらないと思うんです。伝聞だからということで証拠能力がないときめつけて、しかも積極的に真相をただそうという姿勢がその裏に隠されてしまうようでは、私は、国民の疑惑は晴れない、こういうふうに思います。  それから、二つ目には、伝聞とはいうもののこの金炯旭氏は単なるうわさで言っているとも思えない節があるわけです。というのは、彼のかつての部下が日本に来たときにみずから電話をして聞いているということも言っております。それから、七四年の二月二十八日から約五日間、四月二十日ごろから約二週間みずから来日して調査をしたと言っております。さらにまた、神戸の領事である李さん、あるいはまた許亨順参事官、これは金在権氏の補佐であったそうですが、この方にも会って全容を聞いたと言っております。また、在米中の例の金在権氏にも確認している。こういうふうに言っていますから、政府の言うところの金在権氏の話だけが情報のすべてではないというふうにも思いますし、アメリカのフレーザー委員会でも、委員長が、金炯旭氏の証言は委員会が独自に収集した資料とも合致しておって信憑性が高い、こういうふうに保証をしておるわけであります。こういうふうに考えてみますと、私は、単なる伝聞ということで済ますにはアメリカの議会の姿勢から見ても、それは少し当を得ないのではないか、こういうふうに思います。  三つ目にお聞きをしたいのは、金在権氏に確かめた方がいいんだと、こういうことを総理も予算委員会で申しておられましたけれども、それでは金在権氏に会うためにどういう処置をいまとっておられるのか、以上三つの点について見解を承りたいわけであります。
  32. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 金炯旭氏を国会予算委員会あるいはその他の委員会で証言のためにお呼びになるという点につきましては、これは国会の御判断によるしかないだろうというふうに思います。  私ども、金大中事件として、刑事事件として処理をするという観点からいたしまして現在警察庁と相談をいたしておりますけれども、警察に関するいろいろな証言につきましても、事実でないということをいろいろ証言をしておる、こういうふうに解されておるわけでありまして、したがいまして証言というものに信憑性が置けないのではないかという判断もしておるのではないか、そういうことで政府といたしましてはそのような判断をしておりますが、しかし、政治的な場面でのお取り扱いは、これは別個の観点であれば、そちらの方の観点から決められるべきことであろうと思うわけでございます。  それから二番目の金在権氏でございますが、これはたびたび御報告してございますように、大使館を通じて国務省に折衝をいたしておりまして、アメリカ側との折衝の過程といたしまして金在権氏の意向というものも伝わってまいったわけでございます。まあ国務省自体といたしましては、金在権氏が承知をすれば日本側の任意の事情聴取に応じてもアメリカ側としてはそれは差し支えないということでありますし、また、金在権氏自身も、自分としては日本側の事情聴取に応じなければならないとは考えていないけれども、拒否をするというつもりもないんだ、ただし自分は家族とともに米国内に永住をしたいと考えておるので、米国内でまたいろいろマスコミ等に騒がれるのは好ましくないので、米国外の適当な場所の方が好ましい、こういう意向を示してきたわけでありますが、そこで、わが方としては、じゃ一体いつごろ、米国外の土地というのはどういうところでならばいいのかということを当方から照会をいたしております。それにつきまして返事がまだいただけないでおるわけでありますが、たびたび催促をいたしておるというのが現状でございます。
  33. 福間知之

    ○福間知之君 金炯旭氏も、金在権氏が日本と話をして真相を明らかにすることを望んでおるようでありまして、ぜひやはり金在権氏が日本の世論に対して正しい事情説明をするべきだ、こういう意思を持っておられるようです。私は当然だと思う。  ということは、金在権氏がうそを言えば、金炯旭氏は黙っておかないだろうと思うんです。そういう点で金在権氏はいま非常に苦しい立場に立たされているということは容易に推察できるんですが、しかし、だからといって金在権氏を通じて事情を聞くことは避けてはならない。政府自身が金炯旭氏よりもむしろ金在権氏に焦点を当てていままで終始説明をしてこられていますから、私は、いつしからば会えるのか、大臣としてどういうふうにしたいとお考えなのか、これは余り先に延ばされても困りますので、御所見を伺いたいと思います。
  34. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) アメリカの国務省にも申し上げましたとおり、政府といたしまして金在権氏からぜひとも聴取をいたしたい、こういう意思を表示してございます。そういう次第で何とか接触して事情聴取にこぎつけたいというのが政府考えでございますが、なかなか今日まで先方の返事が来ないというのは、いまおっしゃいましたように金在権氏自身がいろいろ悩んでおるということもあろうかと思います。そういう意味で、相手があることでございますので、いつ会えるかと、こういうことはちょっといま申し上げにくいわけでございますが、努力をいたしたいと思います。
  35. 福間知之

    ○福間知之君 その場合、国会でもこれだけ重要視されて議論の対象になっているということ、再度これはやはりお伝え願って、せっかく早急な会見を願いたいんですけれども、どこでその場合会うのが適当だとお考えですか、アメリカはむずかしいとするならば。
  36. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 何分にも、この問題は先方の任意の事情聴取でございますので、やはり先方の希望するところなら、わが方といたしましてはどこでもよろしいが、先方に早く決めてもらいたいと思って、今後とも引き続いて先方の了承を求めて実現にこぎつけたいと思います。
  37. 福間知之

    ○福間知之君 金在権氏の問題もさることながら、私が先ほど申した金炯旭氏につきましても、やはりアメリカにおけるこの議会の証言というもの、われわれ余り正確かどうか、一応疑問を置きながらも、新聞の報道されるところなどを通じて、かなりこれはアメリカにおいては重大な意味を持って事態が進行している中心人物としての役割りを果たしているような気がするわけです。まあ議会の買収事件などを通じてワシントンがじゅうりんされたとまである国会議員が口にしているようですけれども、願わくば日本はそういうことがないように願うのみでありますけれども、しかし、事の進展いかんによっては、いま政府が予測しているように、そうきれいごとで済まないということもありますので、予算委員会の総理の発言じゃありませんけれども日本の閣僚とか議員に関する限り、そういう買収などされることはないと確信していますという総理の発言でしたけれどもね、アメリカですらもうかなりの人数が出てきているということを考えれば、これはその前の問題として金大中問題についてはもう少し積極的な解明を通じて国民の疑惑を晴らすように私は努力を願いたい。今回の国会は経済国会とも俗に言われておりましたから、この問題は一時のようには余りクローズアップされなかったですけれども、決してこれはしかし根が絶えたわけじゃありません。そういう点を十分ひとつ留意して、今後に対して対処していただきたい、要望を強くしておきたいと思います。  次に、ソ日漁業暫定協定の件につきまして、日ソ漁業協定で北方四島周辺でのソ連主張、まあ漁業に限った問題ではありますが、実際にソ連の支配権を認めている事実から、領土問題に関しまして日本政府が一歩譲歩したんじゃないかと解釈されかねないのではないかと思うわけであります。政府は、今回のソ日協定でいわゆる相打ちになったと説明をされていますが、実際、ソ連漁船は北方の四島周辺でも日本の許可証なしに入漁できるにもかかわらず、わが方は四島の領海十二海里内にいれば許可証があっても拿捕される、こういうふうなことから事実上の譲歩が感じられるんですが、こういう点、問題はないかどうか。将来の領土、漁業交渉の足を引っ張るということにならないかどうか。
  38. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 北方四島周辺につきまして、これは日本といたしまして悲願であります北方領土問題の解決、この点につきまして、これに今回の漁業協定が支障があってはこれは大変だというのが日本国民の一致した心配事でございまして、それなるがゆえに日ソ漁業協定も三カ月以上の時間がかかったわけでございますが、この点につきましては、この長い間の交渉を通じまして日本側主張というものも先方にもよく理解をされたというふうに考えております。そして日本主張というもの、これにはいささかの影響も及ぼさないということが第八条で書かれたことはもう御承知のとおりでございます。  今回のソ日協定におきましては、わが方の地先沖合いというその範囲は、漁業に関する暫定措置法そのままである、そのままの区域を第一条におきまして定めておるわけでございまして、したがいまして、この協定といたしまして水域的には日本主張がそのまま書かれておる、ただし、現実におきまして、先ほど申し上げましたが、ソ連が北方四島の占有を続けておるという事実はこれは続いておるわけであります。で日ソ協定におきまして先方が線引きをしたという事実もあるわけでございまして、これらの事実がありまして、現実の漁船漁業者が現にこの水域で拿捕を受けておるということは大変残念なことでございますが、この点につきましては、今後とも、水産庁とよく協力をいたしまして、これらの水域におきまして多くの漁船が拿捕を受けるというようなことがないように、日本側といたしましても今後ともこの努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  39. 福間知之

    ○福間知之君 鳩山外相は先般もニューヨークでグロムイコソ連外相と領土問題解決話し合いで御苦労なされたということでもありますし、わが国においても日を追って領土問題についてはやはり国民的関心も高まり、わけても先般の漁業協定交渉などは急激に国民のこの意識をかき立てた結果になっているということからも、一日も早いひとつ解決がわが方としては期待されるんですけれども、最近は、市町村も約七〇%が返還についての決議をやっているというふうにも聞きますが、大臣の感触として、どうですか、なかなか手ごわい相手ではありますけれども、何としてもこれはわが方は譲歩はできないぎりぎりのもう立場に立っているわけですから、国連の場での解決策、あるいはそういう方向に持ち込んでいくという手だて、そういうことはお考えになったことありますか。
  40. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) この領土問題の解決のために、平和条約交渉を行うべきでありますし、私自身、なるべく早く訪ソをいたしたいとこう考えて、臨時国会が終了いたしましたらすぐ参りたいというつもりでグロムイコ外務大臣折衝いたしたのでありますけれども、今年内は先方のいろんな都合でこれは無理だということで、年を越さざるを得なくなっておりますのは大変申しわけないと思っております。  国連の場で、この領土問題につきまして、いかなる行動をとったらよろしいか、これにつきましては外務省内部でもいつも検討いたしておるわけでございます。過去におきまして、国連の二十五周年の記念の際に、佐藤前総理が北方領土問題に触れまして演説をされたという経過がございます。そういう次第で、国連でいかなる活動をしたらよろしいかという点はなお研究いたすべきものと思っておりますが、とにかく二国間の問題でございますので、国連の場に持ち出す前に、やはり二国間におきまして最善の努力をいたすべきだという結論で、今会期におきましては国連の場におきましてそのような主張は差し控えてまいったわけであります。そういう次第で、二国間の交渉に全力を挙げたいというのがただいまの姿勢でございます。
  41. 福間知之

    ○福間知之君 戦略的というとおかしいですけれども、なかなかソ連の方も姿勢がかたいように見受けられますので、二国間での交渉話し合いというのが軸心になっていくということは、これは理解できますし、それは当然やらなければなりません。しかし、国際的な世論を一つの背景にしていくということも、これはあっていいんじゃないか。むしろこの際は効果的なんじゃないかなとも思うんですけれども、その判断は水かけ論で、ここに時間もないのにどうのこうの思っていませんけれども、ぜひひとつ今後を考えてもらう対象にしていただきたい、こういうふうに要望しておきたいと思います。  それから次に、漁獲量の割り当てで、従来、わが国の場合、年間百四十万トンぐらいの漁獲量があったわけですが、ことしの十二月までの協定による割り当て量では四十五・五万トン、ソ連日本水域内で三十万トン程度のものが三十三・五万トン、こういうことになっているようですけれども、ちょっと考えてみて何か不平等な感じがいたさないでしょうか、水産庁
  42. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) ただいま御指摘のように、日ソ漁業協定の場合には、昭和五十年度の実績に比較いたしまして、わが国の割り当て量は六四%でございます。それからソ日の暫定協定におきましては三十三万五千トンというものをソ連に割り当てましたが、これは同一期間の実績に対しまして六八%に当たるわけでございます。したがいまして四%の差があるわけでございます。  ただ、わが国が漁獲量の割り当てをいたします基準といたしましては、それぞれの魚種の資源動向、それからさらに日本漁業者がそれらの資源をどのようにとっているかという二つの問題を基礎にいたしまして、さらにソ連船の操業実績、それからソ連水域内におけるわが国漁船操業状況等を勘案して決めることになっております。今回、三十三万五千トンを割り当てたわけでございますが、そのうち二十万トンがイワシ、サバでございまして、これらにつきましては資源的にも最近増加しつつある資源でございますし、わが国漁業者との競合も比較的少ないということから、これらの魚種については比較的多く割り当てられたということでございまして、決して私どもの方は不平等であるとは考えておりません。
  43. 福間知之

    ○福間知之君 これはまた来年に向かっては、話し合いで多少の変動が予想されるわけでしょうか。
  44. 松浦昭

    説明員松浦昭君) お答えいたします。  今回、九月の二十九日から十月の二十日まで、いわゆる長期協定交渉ということでソ側と話し合ったわけでございますが、この会議におきましては、現在の日ソ協定及びソ日協定、この両暫定協定を、カニ協定並みの協議条項を設けまして、一年間延長するということで、この会議では合意を見たわけでございます。  しかしながら、その際には、単に延長の取り決めだけ合意をいたしてまいったのでございまして、クォータの交渉は、ことしの十一月十日以降、明年のクォータの交渉をいたすということで合意いたして帰ってまいりました。まだこのクォータの交渉はやっておりませんので向こう側がどう出てくるか、あるいはわが方がこれに対してどう対応していくか、これはまだ何ら向こう側と話し合っていない次第でございますが、感触から申しますと、御案内のようにソ連も世界の各地の水域で相当の漁獲の減を来しております。特にECの水域におきましては先般交渉が決裂いたしまして全くECの水域に入れないという状態に陥っております。
  45. 福間知之

    ○福間知之君 どこの水域ですか。
  46. 松浦昭

    説明員松浦昭君) ECでございます。ヨーロッパ水域に入れないという形になっておりまして、ソ側としても非常に極東水域に重点を置いてくるということが考えられますことから、相当交渉は難航するのではないかというふうに考えております。特に、先般、日ソ交渉が終わりました際に、鈴木大臣からもお話がございましたように、やはり余剰原則というものが適用される時代でございますし、また、ソ側は、ECが等量原則というようなことも申しておりますから、等量、つまり量を同じにするという原則を持ち出しているために、そのような角度から相当強いことを言ってくると思うわけでございますが、わが方といたしましては、とにかく伝統的な漁獲実績を確保するという立場から、この交渉にはしっかりとした態度で臨みたいというふうに考えております。  また、同時に、この場合の交渉は、わが方の船がソ側の二百海里の水域の中で操業をするだけではなくて、ソ側の船がわが方の二百海里に入ってまいります場合のクォータも同時に交渉するわけでございます。その場合の原則といたしましては、わが方といたしまして今般のソ日協定交渉の際に決めましたクォータにつきまして向こう側といろいろ話し合ったわけでございますが、その際の原則は、ただいま次長から御説明いたしましたように、わが国漁業水域内における漁業資源の動向あるいはわが国の漁獲の動向、さらに加えまして、わが国漁業水域内におけるソ側の漁獲実績、さらには、わが国の船がソ側でとっておりますところの漁獲、これが将来どうなるかといったようなことを総合的に判断いたしまして、両者、つまりソ連側わが国に入ってくるためのクォータとそれから日本側ソ連に入っていくときのクォータと、この両者を十分ににらみ合わせまして、その結果、クォータを決めてまいりたいというふうに考えております。しかしながら、基本的には、わが国の漁獲実績と漁業の伝統的な実績というものをできるだけ確保するという姿勢で臨みたいというふうに考えておる次第でございます。
  47. 福間知之

    ○福間知之君 ぜひひとつECが厳しければ厳しいだけ、こちらに対する風当たりが逆に強くなってくるということも予想されます。いまおっしゃったように伝統的な実績あるいは漁場確保のために努力をひとつ願いたいと思います。  次に、日本漁船協定違反で侵犯でつかまった場合、最近、日本漁船日本円を利用して、ソ連側罰金要求に対してその都度金を払っているというふうなことが耳に入るんですが、これは厳密には外為法違反になる行為なんですよね。また、逆にソ連船が違反した場合、どういう処置を講じているんでしょう。もしソ連船が侵犯した場合、現金払いでないとすれば、これは何かこれもまた不平等なかっこうだなあと、こういうふうに感ずるんですけれども、この点はいかがですか。
  48. 松浦昭

    説明員松浦昭君) この点につきましては、どうも先生指摘のように罰金の支払いを要求された場合に、日本漁船が所持いたしております円貨を支払っているというようなケースがあるということは私ども聞いております。外為法の違反になるかならないかという点につきましては、これはちょっと所管が違いましてよくわからないわけでございますか、場合によってはそのような事態が起こるということも私ども聞いておる次第でございます。  一方、ソ側漁船違反いたしました場合には、ソ連邦の場合には、国内法上ルーブルの国外持ち出しができないことになっておりますので、向こうはダリ・ルイバと申しまして公団がございますが、その支払いの保証の提供をもちまして足りるという形になっておるわけでございます。先生指摘のように双方を比較いたしまして問題があるではないかということにつきましては、私どももそのような点について十分検討しなきゃならぬというふうに考えておりまして、今回、ソ側に参りました際にも、何らかの方法でこの問題を解決するということでお互いに意見交換をいたしてまいりました。まだ具体的な方法を申し上げるまでには至っておりませんけれども、近い将来にできるだけソ側と話を詰めまして、わが方につきましても違反が起こらない方がもちろんよろしいわけでございますが、万一違反が起こりました際に、できるだけ迅速かつ確実な方法で、しかも外為法等の問題が起こらない、そういう方法を考究いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  49. 福間知之

    ○福間知之君 ぜひひとつソ連側と対々の方法を実現していただきたい。日本の漁民がせっぱ詰まってその場をしのぐためにいじらしいまでの気持ち日本円をビニールに包んで持っているという姿を想像しただけでも、何とも言えない気持ちに襲われるわけでありまして、公団からの支払い保証書ですか、ソ連の場合、日本の場合だったらそれに準ずるようなやっぱり保証書ぐらいを持って対処できるようにぜひこれは早急に取り組みを願いたい、要望をしておきたいと思います。  次に、水産庁の方に、さらに漁業水域の監視体制につきまして、専管水域二百海里の実施に伴いまして、わが方の管理体制について先ほど同僚議員からの議論にもありました違反件数が少なくとも幾つか出てきているわけですから、特に今後の体制として水産庁の方でどうお考えになっているか、お聞きをしたいと思います。
  50. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) わが国周辺の漁業水域にかかわります取り締まりにつきましては、主として海上における法律の遵守励行を主たる業務としております海上保安庁が当たることになっております。ただ農林省といたしましても、わが国漁船とのトラブルの防止、それからわが国漁業水域における外国船の秩序ある操業ということの確保、こういうような点から現在水産庁の取り締り船五隻——官船が三隻、用船二隻でございますが、これを必要な海域に出しまして外国漁船の取り締まり等に当たらしておるわけでございます。なお、本年度中には、さらに二隻追加するような予定で考えております。
  51. 福間知之

    ○福間知之君 この問題は、ソ連の側もそれなりに体制をとっていることと思いますし、わが国の場合とソ連と比較して、この監視船の数がどうだとかこうだとかいうことは現実をわきまえてない議論になると思いますので、そういうことは申しませんけれども、ぜひひとつ従来以上に充実をせなきゃならない。相手方の侵犯をとらえるという意味だけじゃなくて、わが方のとらえられている数が多いわけですから、ある意味じゃそういう指導、誘導というふうなことも含めて、私は監視という体制を考えていくべきだろう、そうして侵犯などトラブルを少なくする、こういうことがやはり必要かと思っていますので、要望しておきたいと思います。  最後に、沿岸漁業対策についてお伺いします。  二百海里時代を迎えまして国際的な漁業資源の保護という政策が必要となり、まあ強まっている中で、わが国漁業水域が縮小される運命にあることは言うまでもありません。そこで重要になるのがとる漁業から育てる漁業へという転換策だと思うんです。この点についての施策、将来の一つの希望的な展望というようなものはいかがですか。
  52. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 二百海里時代を迎えまして、わが国漁業水域の中における漁業の生産をいかに上げるかというのがわれわれの重大な使命であると考えておる次第でございまして、そのために、まず第一番目には、わが国沿岸の漁場の整備を行いたいということで、五十一年度から七カ年計画で二千億用いまして人工礁その他幼稚魚の飼育場等の漁場造成に努めている次第でございます。これらの畑づくりにさらに足しまして、種づくりとでも申しましょうか、栽培漁業の振興を図っておりまして、すでに瀬戸内海で実施しております沿岸漁の栽培漁業を全国的に展開するために、北日本に栽培センターを本年度予算でもって建設に着手しております。そのほかサケ・マスのふ化放流事業についても、その尾数その他質的な向上を図っております。  それからさらに、漁港につきましても、第六次漁港整備計画に基づきまして沿岸関係の漁港の整備を推進してまいりたいと考えております。  そのほか、わが国二百海里内の未利用資源を含めましていろいろな資源の調査をやりまして、さらに資源の有効利用に努力してまいりたいというように考えておる次第でございます。
  53. 福間知之

    ○福間知之君 その場合、ちょっと、私、これは思いつきなんですけれども、沖繩の周辺というのは栽培漁場としては適しているのですか、適していないのですか。
  54. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 沖繩周辺の海は、どちらかといいますと亜熱帯の水域に近いわけでございまして、比較的温度が高いということで従来の内地の状況とは違っておりますが、やはりそれに適したシマアジですとかイセエビの類、こういうものの漁場として好適な漁場であると考えられておりますので、それらについても技術開発を進めるべく準備をしている次第でございます。
  55. 福間知之

    ○福間知之君 終わります。
  56. 三善信二

    ○三善信二君 私は、御質問申し上げる前に、まず日ソ漁業暫定協定、これは三カ月もかかって外務大臣初め農林大臣、担当の方々が大変御苦労され、それに引き続いて今度のソ日の暫定協定、まあ一カ月でまとめられたと聞いておりますけれども、うらはらの問題とはいえ大変御苦労なさっただろうと思っております。その御苦労に対して敬意を表しておきたいと思います。  そこで、この協定に関しまして多少御質問申し上げますが、まず最初に、このソ日協定の経緯と申しますか、日ソ協定とソ日協定の主な相違点と、それから施行期日、そういったものも含めて、簡単にひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  57. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 御承知のとおり、日ソ協定は昨年十二月十日にソ連邦最高会議幹部会令によりましてソ連側が二百海里漁業専管水域を布告いたしましたことに基づきまして、日本漁船がそのソ連側のしきました漁業水域において操業し得るように、なお、その当時、今日まで存在しております日ソ漁業条約というものを念頭に置きつつソ連側交渉に入りまして、新しい二百海里漁業水域時代におきまして、ソ連の二百海里水域内で日本漁船操業し得る手続及び規則を定めるために交渉をいたしましたものでございまして、これは七七年の五月——本年の五月二十七日にモスクワで調印されたものでございます。  その後、この交渉経過及び世界の大勢にかんがみまして、日本政府も、日本国におきましてもやはりこの漁業専管水域というものを設定する必要があるという判断に基づきまして、国会の御審議も経まして、五十二年五月二日法律第三十号漁業水域に関する暫定措置法というものを制定いたしまして、本年七月一日から施行いたしましたわけでございますが、かくして日本の沿岸二百海里水域がわが国においても設定されたことに伴いまして、ソ連側も特に近年日本近海において漁業を営んでおりましたその操業を継続したいということから、わが国との間に協定に入る意向を示しましたために、東京におきまして交渉を行ったわけでございます。六月三十日から交渉をいたしまして、八月四日に調印をいたしましたわけでございまして、これによりましてソ連漁船日本の距岸二百海里の専管水域におきまして操業し得る手続と規則が定められた、こういうことでございまして、これによりまして日ソ双方がそれぞれの漁業専管水域の中で魚をとり合う、こういう枠組みができたわけでございます。  ただ、双方とも、まだ海洋法というものが、海洋法会議の結論が出ておりませんこともございまして、いずれも暫定的な措置ということで一年を限りまして、本年末までを期限として双方協定し合ったわけでございますので、来年一月一日からの操業という問題が出てきておるわけでございます。  この双方協定の差といいますか、若干の規定上の差異かございますが、おおむね同様の規定が盛られておるわけでございます。
  58. 三善信二

    ○三善信二君 漁業水域に関する暫定措置、これが七月一日に実施されておるわけですね。それから、このソ日協定が八月四日に署名されておる。この実施は八月十六日ですか。
  59. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) はい。
  60. 三善信二

    ○三善信二君 そこで、よく言われるのですけど、七月一日に暫定措置法ができてから、ソ連船をすぐ取り締まればいいじゃないかと。そのときは実施細目ができていないから、それはやむを得ない。八月四日に調印し署名したら、そこからすぐ発効して取り締まればいいじゃないかということも言えるわけですね。それを八月十六日から実施に移したと。相互主義の何かあるのかもしれませんけれども、何かそういう点でソ連船に対しては多少恩典を与えているような感じをよく言われるんですけれども、そういう点についてはどうですか。
  61. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 日ソ漁業交渉をモスクワでいたしましたときに、ソ連側のいわゆる二百海里水域法かすでに発効いたしておりましたにもかかわらず、交渉中ということで三月いっぱいの猶予期間をソ連側が私どもに認めましたことがございましたので、それに見合いまして、日本側も、七月一日に施行いたしましたけれども交渉中ということでまず一カ月を認めたわけでございますが、ただいま調印の後さらに認めたのはどういうことかというお尋ねでございましたが、これにつきましては、やはり調印されました後、許可証の発給その他多少技術的な準備期間を必要といたしましたので、それを十五日まで延長いたしまして猶予期間として認めたわけでございますので、まあ実際の日数からいたしますと多少こちらの方がたくさん認めたようなことはございますけれども、これは技術的な問題もございましたので、そのようなことで、ただいまお尋ねのような意味ではなかったと申せると思います。
  62. 三善信二

    ○三善信二君 それから、日ソ協定とソ日協定の違いの点につきまして、私かこの案文を読みまして多少感じましたのは、一つは、前文のところですね。ソ日協定には「漁業水域に関する暫定措置法に基づく漁業に関する日本国の管轄権」と、それから日ソ協定には、生物資源に対するソ連邦の「主権的権利」と。これはまあ同じようなものだと思いますが、表現の違いで、こっちは暫定措置法に基づく言葉を使ったと、ソ連の方はソ連の最高会議幹部会令に基づく表現を使ったと、その程度の差と解してよろしゅうございますか。
  63. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) ただいま先生指摘になりましたように、ソ日協定で用いられております漁業に関する管轄権という言葉は、この協定の前提となっておりますわが国二百海里法であります漁業水域に関する暫定措置法に定められている管轄権を指すわけでございます。具体的には、この暫定措置法は、この法律に従って定められている漁業水域における外国人の漁業に関してわが国操業禁止海域の設定、操業の許可、漁獲量の決定、入漁料の徴収その他の漁業規則及び違反の取り締まり、処罰を行う権限を定めているわけでございます。他方、日ソ協定に言いますところのソ側の主権的権利という用語でございますが、これはわが国の法律に言います漁業に関する管轄権ということと、基本的には、表現の違いにすぎないというふうに考えておるわけでございまして、これらはいずれの場合にも二百海里の漁業水域内において沿岸国が漁業資源の保存、管理を確保するために必要な限度で行使する権限を包括的にとらえた概念である、かように考えているわけでございます。すなわち漁業に関する管轄権と申しましても、また主権的権利と申しましても、その意味する権限の内容は同じ概念であると、このように考えている次第でございます。
  64. 三善信二

    ○三善信二君 それからもう一点ですが、日ソ協定では第二条の最後に「伝統的操業を継続する権利を維持するとの相互利益の原則に立つて与えられる。」この文章はソ日協定にはないわけですね。で、これはまあこういう意味でしょうかね、日ソ協定でもう確保されているからこちらで書く必要はないと、ただそれだけの単純な意味かどうかということをお尋ねしたい。
  65. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) この点につきましては、ただいま先生指摘のとおりでございまして、この二つの協定交渉の経緯にかんがみますと、いわゆる日ソ協定の方が先に交渉され署名されたわけでございますが、その時点におきまして、ソ連側といたしましては、その後における日本側の二百海里水域内におけるソ連側操業を確保したい、そういう趣旨で、いわゆる日ソ協定におきましてはこの規定が念のために設けられたわけでございますが、現実にいわゆるソ日協定交渉され署名された段階におきましては、すでにわが方の相手方二百海里水域内における漁業というものは確保されていたわけでございますので、このような規定を日ソの対応で設ける必要がなかったと、こういうことでございます。
  66. 三善信二

    ○三善信二君 次に、私は、ソ連漁船団が日本の近海に進出してきたその経緯とかそういうのを振り返ってみたいと思いますが、まずソ連漁船団がわが国の沿岸で操業をし始めたのは何年ごろからでしょうか。そして逐年操業を拡大していったそういう経緯。  それからもう一つは、この日本の近海にソ連漁船団がこういうふうに多く押し寄せてきたというそのためには、ソ連の国内のいろんな背景、そういったものがあったのではなかろうか。と申しますのは、常識的に考えまして、ソ連の人は海の魚というのは余り食べないのですね。ニシンとかカニとかサケ・マスとかそういう以外の魚というのは余り食べていない。それを何で日本の近海にこう大船団で押し寄せて、イワシをとったりサンマをとったりサバをとったり、そういうふうにやり出したかということで私も当初は大分不思議に思っておったんですが、だんだん操業状況も大船団を送り込んで日本漁業とトラブルを起こしてまでやってきたそういった背景について、もしおわかりであれば、お聞かせ願いたいと思います。
  67. 松浦昭

    説明員松浦昭君) お答えを申し上げます。  まず、ソ連漁船日本近海にあらわれまして操業をいたし始めましたときからの経緯でございますが、最初は昭和三十年ごろであったと思います。南千島あるいは北海道東部海域におきましてサンマ漁業の試験操業を行うといったようなことからぼちぼちと始まったようでございます。次いで昭和四十年ごろになりますと襟裳岬から金華山沖、あるいは茨城県の大洗沖ぐらいまであらわれてまいりました。さらに、昭和四十三年以降になりますと、サンマ漁業は北海道沖合いまで、サバまき網は北海道、八戸さらに銚子の沖まで下ってくるというような状況になりました。昭和四十五年以降は、さらに一千トンから二千トン級の大型トロール船が進出してまいりまして、大体、十月の上旬に北海道の襟裳岬の周辺にあらわれまして、三月ごろまでこれが南下して伊豆諸島の近くまでくる。御案内のようにサバの産卵場として重要な銭州等にも一回入るといったようなことが起こりました。さらに四月になって北上反転するという行動をとってまいったわけでございます。  漁獲量がどの程度まで揚がっているかということにつきましては、わが方も視認等の方法によりまして隻数が何隻入っているかといったようなことで判定をするほかはございませんので確たるわが方の資料を申し上げるわけにはいかないわけでございますが、ソ日協定におきましてソ側が提出した資料をもとにして申しますと、一九七二年が約四十万トン、七三年が四十七万トン、七四年四十九万トン、七五年五十二万トン、そして七六年が六十六万五千トンという数字を向こう側が挙げている次第でございます。逐年増加いたしているという傾向にございます。  このようなことで、日本近海に逐年その操業の頻度を増し、かつ密度を増してまいりました理由といたしましては、大きく二つのことが言えると思うのでございますが、一つは、ソ連の国内におきまして、特に畜産政策との関連におきまして動物たん白資源を漁業で確保しなければならぬという事情が起こったのではないかというふうに考えておるわけでございます。すなわち、先生も十分御案内のとおり、主要穀物の確保がソ連の内部においては相当困難でございまして、一時期におきましてはアメリカ、カナダ等から相当の穀類を買うといったような事態が起こりました。さような大量の穀物の輸入というものに立脚いたしますところの畜産ということで動物たん白の供給をいたしますよりは、自国の漁船によって、魚によって動物たん白を確保するということを指向したのではないかというふうに考えられます。特にモスクワの市内でもオケアン等を幾つかつくりまして、このオケアンで漁業省が直轄で小売をやるといったような行為も行っておりまして、さような意味での動物たん白資源の保護、確保といったようなことが大きな理由ではなかったかと思います。  それから、何と申しましても、いま一つの大きな理由は、他の水域におきまして、たとえばヨーロッパ水域、それもバレンツ海からさらに下りまして大西洋の東部海岸水域におきまして次々と規制が強化されるといったような状態が起こりましたし、また、大西洋の西海岸におきましてもアメリカによるあるいはカナダによる規制というものが非常に強く行われまして、ICNAFの水域においても非常な漁獲量の制限を受ける。さらに、アラスカ周辺の東部太平洋水域におきましても相当な制限が逐年加わるということから、どうしても他国の水域において漁労を行えないというような状態になりますと、わが国の周辺水域にその船舶を増してくるといったようなことが起こったのではないかと思います。特に、私ども注目いたしておりますのは、かような外国水域での操業の制限が今後ともなおソ連に相当かかってくるという事態でございまして、先ほど申しましたECの水域にもう入れなくなったといったような事態もこの一つの大きな事象であるというふうに考えている次第でございます。
  68. 三善信二

    ○三善信二君 いま御説明があった畜産政策との関係ということですけれどもソ連はちょうど日本に進出してきた時期と同じように世界各国に進出をして、アフリカからイカやタコをとるとか、国内では余り食べていないのですね、そういうのを。そしてナホトカの冷蔵庫にいっぱい冷凍して魚を保管している。ときどき日本に向かってそれを買ってくれと、そういうことを大分再三言ってきましたね。  現在、ソ連の国内でも、こういう海の魚というのを相当食べるような習慣が出てきたんでしょうか。
  69. 松浦昭

    説明員松浦昭君) ソ連の国内のことでございますので私ども定かではないわけでございますが、私どもが見ております限りは、相当程度魚を消費するという傾向が増大してきたという感じがいたします。また、同時に、ソ連政府が、先ほどもオケアンの例を申しましたように、魚の消費を非常に宣伝をいたしているという状態でございまして、そのような意味ではたん白資源を魚に切りかえているという事象は明らかであろうというふうに感じられます。  また、同時に、ただいま先生指摘のように、極東水域で魚をとりました場合に、これを輸送する方法が非常にむずかしい。そのために大量にとりましても、これをただ単にためておくだけじゃないかということもあろうかと思いますが、これはだんだんだんだんこれを加工利用するという形でもってその消費をふやして、それをモスクワ周辺の人口稠密地帯に持っていくというような傾向が感じられる次第でございます。
  70. 三善信二

    ○三善信二君 それとソ連日本の近海に大船団を繰り出して、その中には漁船に名をかりて日本の近海のいろんな調査をやっている、そういうことがよく以前言われたんですけれども、そういう実態を把握しておられますか。
  71. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) これにつきましては、何分外国の船のことでございますので、実際上どのようなことを内部で行っておりますかはっきり承知しておりませんが、ソ連漁船のほかにやはり科学調査船というものを各方面、特に日本の近海に出しまして、これがいわゆる科学調査をやっておりますので、漁船等とも相呼応して海底の状況とか潮流、その他そういうことの調査をやっておるものと私ども考えて推察しておりますが、何をどの程度にやっておりますか、その点につきましては詳細にわきまえておりません。
  72. 三善信二

    ○三善信二君 ソ連国内のことですからわからぬかもしれませんけれども、そういううわさが一ころ非常に流れておったというのも事実だろうと思います。  それから、この協定ができて、日本漁業者がこれまでソ連船と大変トラブルを起こして、網を切られたり、あるいは禁止区域に入られたり、そういうようなことで非常にトラブルを起こしておった。これまでそういうトラブルについて日ソ操業協定かなんかで損害賠償の処理委員会か何かおつくりになっておられるが、どの程度これまでそういうトラブルの件数があり、どのくらいの被害額があったか教えていただけませんか。
  73. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) ソ連漁船によります被害につきましては、昭和四十六年ごろよりソ連漁船の行動の活発化によりまして次第に増加いたしました。特に四十九年、この年には千四十二件に達しております。その後、五十年十月二十三日に日ソ漁業操業協定発効いたしまして、その後は減少傾向にございまして、五十一年度四百八十三件、本年度は六月末までに四十一件が報告されております。なお、漁業水域法施行後につきましては被害の報告はございません。以上合計いたしますと、四十八年の十月から以降二千七件という数字になっております。  なお、これらは漁業損害賠償請求処理委員会で検討されるわけでございますが、同委員会に九月末までに申請されたものは件数として八百五十一件。ただ共同申請がございますので、被害件数としては千二百二十三件がすでに申請されております。東京の委員会で審議中のもの七十八件、モスクワ委員会へ送付したもの五件ということになっております。
  74. 三善信二

    ○三善信二君 この日ソ漁業損害賠償処理委員会ですか、たくさん申請されているけれども、全然解決していないと、いま言われたような件数しかまだ解決していない。一体何でこんなにおくれているんですかね。
  75. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 請求委員会ができまして、何分にも初めてなものでございますので、当初はなかなか軌道に乗らなかったわけでございますが、やっと最近委員会の運営も軌道に乗りつつございます。一番の問題は、請求者の提出資料に不十分な点が多々あるということでございまして、これらの照会その他をやることによりましてどうしても審議の時間がおくれているという結果になっております。  なお、私どもといたしましても、このような資料の不備その他につきましては、関係者について強く指導を行っておる次第でございます。
  76. 三善信二

    ○三善信二君 漁業者の方から大変不満があって、この処理委員会に提出しても時間がかかって一つ処理が進まないと、損害をこうむっておりながら早く解決してもらいたいという不満が相当強いんですね。せっかくソ日協定もできて、これからこのソ日協定でそういう紛争が起きた場合には処理するということになるんだろうと思いますけれども、そういう機会にこれまでたまっている件数をもっと何とかソ連側交渉をして早く促進するようにひとつぜひこれはお願いしたいと思っております。  それから、先ほどもお話が出ましたし、御答弁もございましたけれども、このソ日協定漁業水域に関する暫定措置法、その関係ですけれども、これを読みますと、まず前文で先ほど申しましたように「漁業に関する日本国の管轄権を認め、」という規定があるし、それから第一条で、漁業水域が「暫定措置法に従って定められる漁業水域において」という文句がございますので、直接、この協定は暫定措置法に基づいているものだというふうに当然解釈できると思います。そうしますと、暫定措置法は北方四島に当然これは適用があるわけでございますから、領土問題に関しても、日本のこれまでの立場主張、それは全然この協定で貫かれているということに解釈してよろしいわけですね。
  77. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) そのように解していただいて結構でございます。
  78. 三善信二

    ○三善信二君 日ソ関係では常に領土問題というのが一番大きな問題で、平和友好条約もそれで非常に停滞している。で少なくともそういう魚の問題、漁業の問題については切り離してひとつやろうということでこの協定も始まっているわけでございます。そういう固有の領土という一つの権利、日本主張、それは完全に貫かれていると、それが基本的に一番大事だということは再三御質問もあるし、また貫かれているという御答弁もあっております。そういうことを念を押して私も確かめておきたかったということでございます。  次に、第三条に関連いたしまして若干御質問を申し上げたいと思います。日ソ協定交渉の際に、ソ連日本の領海内での操業というのをどうしても確保したいということをしきりに主張しておる、それは何としてもさせるわけにはいかないということで代表の方も大分がんばっておられたようでございますが、このソ日協定ではそういった点は完全に守られているということに解釈してよろしいかどうか御説明を願いたいと思います。
  79. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) わが国は領海におきまして外国漁船操業を認めませんし、この協定によってそれを認めたというようなこともございませんので、ソ連側もそういう主張はもはやいたしませんでしたことにかんがみて、ソ連側日本の領海で操業することは認められておりません。
  80. 三善信二

    ○三善信二君 それに関連しまして、この第三条に基づく「書簡」ですか、これに記載してあります一つの水域、操業区域と申しますか、これを少し具体的に簡単でいいですから、御説明していただきたいと思います。
  81. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 操業水域につきましては、わが国は二つに分けております。  一つは、北海道北部——オホーツク海側でございますが、これはソ連領になっております二丈岩を中心といたしました地帯で、これに対しましてイカナゴその他五千トンの割り当てをやっております。それからもう一つは、北海道、本州の太平洋側でございまして、野島崎以東、いわゆる千葉から北海道の根室に至る海域でございます。ここではマイワシ及びサバ二十万トン、スケソウ三万トン、イトヒキダラ五万八千トン、サンマその他四万二千トン、計三十三万五千トンになるわけでございます。
  82. 三善信二

    ○三善信二君 この操業区域で、日本漁船との競合に関して、たとえば禁止区域とか、あるいは資源保護上どうしても日本も遠慮するソ連も遠慮すると、そういうような点は十分考慮してあるわけですか。
  83. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 今回の規制をその後交渉いたします際に、特に私どもが心がけたことは、わが国の沿岸漁業の実態及び資源の問題でございます。特に、わが国の沿岸水域では多数の国内漁業者が存在しておりますし、多様な漁具で漁業を営んでおりますものですから、漁業調整その他の面もございます。これらと資源との問題を考えながら、特に資源の十分な保存、それからさらに国内規制によりますいろいろな漁業調整上の問題をソ連側に尊重させるという趣旨で臨んだわけでございます。  具体的に申し上げますと、沿岸漁業の非常に多い場所におきましては、まき網、各層トロール等を終年禁止にいたしますほか、北海道のオッタートロールの禁止区域線の中は各層トロール、棒受け等を終年禁止する等、いろいろ沿岸漁業との調整も図りながらやっておるわけでございます。
  84. 三善信二

    ○三善信二君 そうしますと、従来、いろいろなトラブルを、先ほども御質問申し上げましたが、起こしておった日本漁船とのトラブルというのは、もうほとんどこれからはなくなると、そういうふうに考えておいていいですか。
  85. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 現在のところ、ソ連船がこれらの制限に違反しない限り、そのような競合等のトラブルはほとんど発生しないのではないかと考えておる次第でございます。
  86. 三善信二

    ○三善信二君 それから、附属書に漁獲量、漁船隻数を書いてございますが、漁獲量につきましては三十三万五千トンですか、それから隻数は二百七十六隻。  で漁獲について、先ほど御質問もございましたように、ソ連が従来の実績に対して六八%までに削減したということを御説明がございましたが、その理由として、先ほど来、資源の動向とか、あるいはソ連船の実績とか日本操業実績とかそういうことを加味して決めたと言われておりますが、先ほどの御説明の中にちょっと気になる点が一つあるんですがね、イワシとかサバとかそういうのは資源の動向は今後そう問題ないんだと、こういうのは多少よけいにあえてとっても差し支えないんだというようなお話だったかと思いますが、イワシ、サバ、サンマでもやはり資源の動向というのは二、三年置きにこれは違ってくるという問題も従来から経験されているところでございますし、今回は六八%で結構だと思いますけれども、将来、もう少し日本近海の資源の動向を考えながら、こういう割り当て量あるいは漁獲量等もひとつ考えていかれたらいかがかと思っておりますが、その点どうでしょう。
  87. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 私どもとしては、サバ、イワシの資源につきまして現段階でいろいろ考慮しながらやったわけでございますが、特にマイワシの場合には、昭和四十一年に九千トンでございましたが、その後五十一年には百万トンを超すような急激な資源量の増加を来している次第もございます。ただ、今後、そのような増加が続くかどうかにつきましてはいろいろ問題があるところでございますし、サバにつきましては、どちらかというと現在高位に安定した水準でございまして、これからふえるという傾向にはございませんので、今後の資源の動向を十分考えながら、来年以降のクォータの決定に当たっていきたいと考えておる次第でございます。
  88. 三善信二

    ○三善信二君 それから、第四条に関して、「妥当な料金を徴収することができる。」と書いてありますが、現在、ソ連の方は、日本漁船に対して料金は取っていないんですか。
  89. 松浦昭

    説明員松浦昭君) ただいまのところは、取っておりません。
  90. 三善信二

    ○三善信二君 日米の場合、アメリカはどうですか。
  91. 松浦昭

    説明員松浦昭君) アメリカの場合には、まずトン数に応じまして取る分と、それから船側価格と申しまして水揚げのときの金額に応じまして取っている入漁料がございまして、この二種類の組み合わせによりまして、現在のところは、アメリカに対しましては入漁料を納めております。
  92. 三善信二

    ○三善信二君 ソ日の場合、日ソの場合、これは暫定協定だから十二月三十一日までは料金は取らないと、来年はまた来年で、この料金の問題もまた検討されるというようなこれまでのいきさつになっているんでしょうか。全然そういう問題はまだこちらからも向うからも話に出ていないと、どういう状況でしょう。
  93. 松浦昭

    説明員松浦昭君) ただいまのところ、来年これを徴収するといったような話は出ておりません。と申しますのは、御案内のように、アメリカの場合には沿岸漁業がございますけれども、遠洋漁業はほとんど行っておらないという事実でございまして、むしろアメリカ側としては入漁料を徴収する一方になるという形になっておりますが、ソ連の場合には、当然、外国で漁業をしておる分が非常に多うございますので、相互主義に基づきましてソ連漁船にも入漁料がかかってくるという状態に相なります。したがいまして、その点を恐らくソ連考えているのではないかと思っておりますが、いまのところは入漁料を取っておりません。しかし、将来の問題といたしましては、このような問題が起こる可能性はございます。
  94. 三善信二

    ○三善信二君 次に、第五条関係で一言御質問しておきますが、第五条に「日本国の法律に従い責任を負う。」と、これは具体的にどの程度の罰則を考えているわけですか。
  95. 松浦昭

    説明員松浦昭君) まず五条の御説明を申し上げますと、第五条に言いますところの漁業水域における魚類の保存及び漁業の規制のために日本国において定められている法令」といたしましては、当然、漁業水域に関する暫定措置法及びその施行令があるわけでございますが、このほかにも、取り締まりに関連いたしまして漁業法あるいは海上保安庁法等が適用になるわけでございます。  また、「日本国の法律に従い責任を負う。」ということになっておりますが、これは本件協定、またはさきに述べたわが国関係法令に定められました漁業規則に違反したソ連の国民及び漁船は、わが国の法律に定められた罰則、訴訟手続によって処罰されるということを意味しておりまして、具体的には暫定措置法の罰則あるいは漁業法あるいは刑事訴訟法等が適用されるわけでございます。  そこで、具体的な罰則でございますが、無許可操業あるいは禁止区域内の操業あるいは許可の制限条件違反等非常に重い場合でございますけれども、これらのものにつきましては一千万円以下の罰金が科せられるという形になっております。それからまた、承認の制限あるいは条件違反といったようなものにつきましては五十万円以下の罰金。あるいは許可船の標示、許可証の備えつけの義務等につきましての違反は二十万円以下の罰金、このような状態になっております。なお、漁業法の違反につきましては、監督官の検査の拒否あるいは忌避といったような場合には、六カ月以下の懲役または三万円以下の罰金ということが科せられるということになっております。
  96. 三善信二

    ○三善信二君 そこで、先ほども御質問がございましたけれども、罰則の関係で、具体的に、日本漁船ソ連に臨検され、あるいは罰金を払うと額が非常に大きい。きのうの新聞ですか、朝日新聞に  「カ二十匹で罰金百万」とこう出ていますね。すごい罰金日本漁船に科しているという感じがするわけです。先ほども答弁ありましたけれども、何となくわれわれの感じではソ連の方の罰金はすごいと。日本はまだつかまえていないし、まだそこまでいっていないからよくわからぬという御答弁があるかもしれませんけれども、もう少しこの点、先ほど松浦部長も言われましたように、ソ連折衝して均等化を図るとか公平を図るとか、そういうことを本当に積極的にやってもらわないと、日本漁業者の方がソ連の海域に出ていくときに本当にびくびくしておられるのですね。そういう点を本当に積極的にひとつやってもらいたいと思っております。
  97. 松浦昭

    説明員松浦昭君) ただいまの先生の御質問、まことにごもっともでございまして、特に、いろいろな違反事態があるわけでございますが、その事態に即応いたしました罰金金額というものが科せられるということが当然であると思うわけでございますけれども、どうも基準がわれわれから見て非常に不整合である、また基準がどうもよくわからないといったような問題があったわけでございます。その点非常にわが方といたしましても遺憾でございますので、今回、ソ側と話をいたしました際も、宮澤局長もそちらにおられますが、おいでになりました際に、イシコフ大臣に対しましても、罰金金額が非常にまちまちで非常に不整合であるという指摘もいたしてまいりました。また、監督官レベルの話をいたしました際にもその点を問いただしたわけでございます。  ソ側といたしましては、違反の種類あるいは程度によりまして一定の幅を持った罰金額というものの基準を設けているようでございますが、ただ、監督官が具体的に違反の事実を発見いたしましてそれを決定いたします場合には、違反船の総トン数でありますとか、あるいはソ側監督官に対する協力の程度あるいは累犯といったようなことを考慮して、かなり罰金に幅があるということは聞いてまいりました。ただ、わが方といたしましても、基本的にはわが方が納得のいくようなそういう罰金が科されるということが、まあ罰金は科されない方がよろしいわけでございますけれども、科されたとしても、そういう事態を確保するということが必要であると思いますので、今後とも、なお粘り強くこの話はしていきたいというふうに考えている次第であります。
  98. 三善信二

    ○三善信二君 取り締まり体制の問題ですけれども、これは水産庁と、主として海上保安庁がやっていると思いますが、私どもはこう感じている、取り締まり体制が非常に手ぬるいと。取り締まり船も少ないとか、そういう問題もあろうかと思いますが、海上保安庁の方から少し取り締まり体制について、何隻くらいの船を持って、人員どのくらいでやっておられるのか、ちょっと御説明願えませんでしょうか。
  99. 山本了三

    説明員(山本了三君) 海上保安庁からお答えいたします。  先ほどから御説明がございましたけれども、現在のところ、ソ連船が操業いたしております海域並びに隻数は、釧路沖から襟裳の東、いわゆる道南海域でありまして、隻数にして約四十隻程度であります。  で、海上保安庁といたしましては、この道南海域に、一管区に所属いたしております巡視船十七隻、これに他管区から二隻応援を出させまして、計十九隻をもって常時現場に五ないし六隻の巡視船を配置する、そういう監視体制をもって取り締まりに当たっております。この船艇のほかに、もちろん航空機を適宜飛ばしながら上空からも監視をする、こういう海空一体の取り締まり体制をしいておるという現状であります。
  100. 三善信二

    ○三善信二君 実は、九月でしたか、戸叶先生と阿具根先生立木先生と日韓の協定実施状況を視察に対馬へ参ったんですが、そのときに十二海里内に韓国の船がしょっちゅう侵犯をして、その取り締まりにも海上保安庁は本当に苦労されておりますね。何が一番問題ですかと、やっぱり船が足りないと。たしか二隻ぐらいで追っかけておられるんですからね、とんでもない話でね、とっても不十分である。私たちヘリコプターでずうっと十二海里の線を飛んでみたんです。海上保安庁、いまヘリコプター、飛行機で取り締まっていると言われましたけれども、本当ですか、ほとんどないんじゃないですか。
  101. 山本了三

    説明員(山本了三君) 海上保安庁は巡視船艇三百十隻、航空機三十四機を保有いたしております。したがいまして対馬海域におきましても、福岡に航空基地がございまして、ここからヘリコプターを飛ばし、空からの監視を折に触れてやっております。
  102. 三善信二

    ○三善信二君 まあ対馬管区ですか、非常に保安庁の方が嘆いておられましたが、今度予算要求を五十三年度はしているということで、こういう問題なんか、アメリカでもあの沿岸警備隊は飛行機を飛ばし、ものすごい監視をやっているんですね、取り締まりを。ソ連でも、はっきりわからないでしょうけど、相当の取り締まり船を出して日本漁船を取り締まっている。まあアメリカからやられ、ソ連からやられて日本漁船というのは本当に立場がないですよ。  もっと海上保安庁——水産庁の取り締まり体制もそうですけれども、こういう問題は、せっかくこの暫定措置をしいてきちっとやっておるわけですから、十二海里、二百海里、その辺の取り締まりに万全を期するように、漸次予算でももっと要求して、この外務委員会でも応援するということで、そういう点をやらなきゃ、十二海里、二百海里という線を引いて、取り締まりもできないようじゃ本当に困るということをつくづく感じているんです。予算の点なんか大いに応援しますから、ひとつどんどんそういう取り締まり体制の強化をやってもらいたいと思っている。  それから、今後の日ソ間の漁業問題につきまして、松浦部長は二、三日前帰られたんですか、ソ連から。
  103. 松浦昭

    説明員松浦昭君) おととい帰ってまいりました。
  104. 三善信二

    ○三善信二君 いろいろまたこの協定の延長の問題、先ほどお話しになったように、一応一年間延長することは決めてきたとおっしゃったんですが、その内容が問題でね、漁獲量その他またソ連の方も相当厳しい態度で出てくるのかもしれませんけど、やはりこれだけ削減され縮小された日本漁業ですし、何としてもその点はがんばってもらいたいと思っております。  次の交渉はいつごろから始められるのかということと、ソ連側はやはり毎年その漁獲量の問題等をもっと厳しく削減しようというような、そういう気配があるのか。そういう気配があったら、これはまあがんばってもらわなければいかぬわけですけれども、そういった見通し等を含めて多少御説明願いたいと思います。
  105. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 先般、先ほども説明いたしましたように、九月の二十九日から十月の二十日まで、団長はそちらにおられます宮澤欧亜局長が団長になられまして、交渉をいたしてまいりました。その結果、カニ協定のような協議条項を設けまして、一九七九年以降につきましては明年の一定時期までに会合をいたしましてさらに話し合いをいたすという条項を入れまして、一年間の暫定的な延長につきまして、その会議、つまり専門家の会議におきましては合意を見て帰ってまいった次第でございます。  しかしながら、この合意に基づきますところの実際上のクォータの交渉、及びこの暫定協定の延長によってカバーできない部分、つまり従来の協力の問題だとか、あるいはサケ・マスの問題だとか、あるいは日ソ漁業委員会の将来の問題とか、こういう問題につきましては別途交渉しなければならぬということでございまして、これらは協力協定交渉と申しておりますが、この暫定協定の延長以外の部分につきまして、クォータ等交渉とそれから協力協定交渉を、来る十一月十日以降、行うということにいたしてございます。  特に、御質問のクォータ等交渉につきましては、先ほども答弁いたしましたけれどもソ連もニシン問題その他で非常にきつい状態に置かれておりまして、相当厳しい態度で臨んでくるということは明らかでございますが、わが方の伝統的な漁業実績をできるだけ確保すべく、最大限の努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  106. 三善信二

    ○三善信二君 特にサケ・マスの問題ですね、これは二百海里内でソ連はとらしてくれない。二百海里の外も、こういろんな規制を持ち出そうと。まあこの問題、アメリカとの関係もあるでしょうけど、よっぽどこれ注意してかからないと、またよっぽど腰を据えてかからないと、相手がソ連ですから、ひとつぜひがんばってもらいたいと思っております。  それから、日ソ漁業協力の問題ですけど、従来あれは技術協力的なのはずっとやっておられたと。それからサケ・マスのふ化事業とか、そういった共同増殖事業とか、そういうのも長年こう話してこられている。その辺の進捗状況はどうなっているんでしょうか。
  107. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 一般の科学技術協力協定につきましては、毎年、資料の交換あるいは専門家の交流、種苗交換、共同研究というのを実施しておりまして、具体的に申し上げますと、五十一年度の状況で申し上げますと、日本側から漁業の専門家を出しまして、それからソ連からは増養殖の専門家が来日するということで、相互に入り合っておりますし、種苗といたしましては、日本側からウナギ、スズキ等を送付いたしました。ソ側からはオオムリの発眼卵をもらっておるところでございまして、なお共同研究につきましてはサンマ、サバにつきましてそれぞれ隔年ごとに日本あるいはナホトカで共同研究のシンポジウムをやっておる次第でございます。  なお、日ソのサケ・マスの共同増殖につきましては、過去、日ソ間で大臣ベースで何回も話し合われたところでございますが、やはり技術的な専門的な問題が残されておりまして、特にどこに設置するか、いかなる目的でやるか、それからあるいはその規模をどの程度の規模にするか等々につきまして、なお詰めるべき問題が残っております。私どもといたしましては、遡河性魚類の管轄権に関しまして非常に厳しい立場に立っております日本としては、どうしても北西太平洋のサケ・マス資源についてソ連と密接な協力をしながらやらなければならないと考えておるのでございまして、そういう意味から、今後、この事業を具体化させることにさらに努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  108. 三善信二

    ○三善信二君 サケ・マスの共同ふ化事業とか日ソの協力というのは、もう十年間もいろいろ繰り返してやっているんですが、一つも前進しない。ソ連側のいろんな事情があると思いますが、そういうことをやらないで、そして二百海里内はとっちゃいかぬの、二百海里の外もこれは自分の川から出たサケだから規制するとか、いろんな勝手なことを言ってきているわけですけれども、このサケ・マスの共同増殖なんか、特に日本は金出してもやっていいと言っているわけですから、もう少し何とかこういう点を進めていって、そして日ソ漁業全体の一つ友好裏な雰囲気というのをつくっていくということがこれからの一番大きな、また一番必要な問題じゃないかと思っておりますし、ぜひひとつ一、二年内に実現するようにがんばってもらいたいと思っております。  それから、最後に、モスコーにおける日本の大使館の陣容について、これは宮澤さんでも結構でございますから、いま何人ぐらいおられるのかというのと、その中で経済関係のスタッフというのは何人ぐらいおられるのか、その中でも漁業関係の担当の人というのは何人ぐらいおられるのか、ちょっと御説明いただきたい。
  109. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 日本の在モスクワ大使館の現在の人員は、研修員若干名を含めまして四十三名でございます。この中で経済貿易関係、これは科学技術のようなこともございますが、これを含めまして、その事務を担当しております者が、農林省出向者二名を含めまして七名でございます。したがいまして漁業は主としてこの農林省出向の二名の方が担当しておられるわけでございます。
  110. 三善信二

    ○三善信二君 最後に、外務大臣に御要望申し上げておきますけれども、恐らく、日本におけるソ連の大使館、それからモスコーにおける日本の大使館、まあ相互主義か何かで人数なんかも決まっているだろうと思いますけれども、いずれにしても日本におけるソ連の大使館の場合は、これはもう日本のあらゆる情報がとれるでしょうけれどもソ連においての日本の大使館というのは、これは人数が少なけりゃなかなか情報もとれない。また、これから経済外交あるいは漁業問題、いろんなそういう問題でもっともっとソ連の情報をとらなきゃいけないのと同時に、もうしょっちゅう貿易省、漁業省あるいは農業省、そういうところに行ってまず親しくなる、お互いにツーカーで物が言えるようになるというようなことがやはり特に日ソの外交においては必要ではなかろうかと私思います。そういう意味で、ぜひこういうスタッフの強化、そういうのを、各省との関係もあるのかもしれませんけれども外務省として外務大臣なんか特に御努力を願いたいと思っているんです。
  111. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 御要望の点、しかと承りました。ソ連の大使館はいま非常に不便な状況にあるということも聞いております。多年懸案になっております大使館の新築につきましても、いま鋭意努力中でございます。
  112. 三善信二

    ○三善信二君 ぜひひとつお願いします。  私の質問はこれで終わります。
  113. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 暫時休憩をいたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  114. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件  及び、日本国中華人民共和国との間の商標保護に関する協定締結について承認を求めるの件  両件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  115. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回の日ソ漁業暫定交渉は、恐らくわが国の外交史上過去においてその例を見ないくらいの大変重苦しい、忍耐を要求される、屈辱に満ちた、そういう交渉ではなかったろうかとわれわれは受けとめているわけでございますが、なるほど当事者の方々におかれましてはそのためにもずいぶん御苦労をなさったと、それはわれわれとしても高く評価をしております。しかし、いま申し上げたそういう経緯というものが、今回の交渉に当たって特に著しく表面に、日ソ外交交渉においてまことに顕著なそういう関係というものが浮き彫りにされたんじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。
  116. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 今回と申しますのは、来年の一月一日以後の漁業交渉についてでございますか、全体でございますか。
  117. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それも含めて。
  118. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) いわゆる日ソ漁業交渉あるいはソ日漁業交渉、それから来年以降の漁業交渉、今回は三回行われるわけでございますが、このソ連邦の二百海里漁業専管水域を志向するというそのこと自体か、わが国といたしまして何よりも国民の悲願である北方四島の返還という問題、これに支障が生ずるようなことになっては大変だという意味で、その点が一番の交渉におきます最大の関心事であったという意味におきまして、ただいまおっしゃいましたような日本といたしまして大変つらい立場に立っておるということで、その点につきまして、日ソ漁業交渉の際に、いよいよ三カ月ぎりぎりになりまして、今回の漁業交渉日ソ両国の従来からの主張立場に影響を及ぼさない、こういう条項をつくって一応の当面の解決を図ったという点でありまして、今後とも、やはり私どもといたしまして、北方領土問題、これが解決しなければ日ソ間の本当のわだかまりというものがぬぐえない、そういうことを痛感をいたしまして、私自身、なるべく早い機会に訪ソいたしまして、平和条約の継続交渉をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  119. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま鳩山さんがおっしゃったように、今回の交渉に当たってあくまでもこれは漁業問題にしぼるべきである、領土問題は切り離す、これはしばしば表明されてきたとおりだと思うんです。しかし、やはり一般常識的に考えた場合、いまお述べになりましたように、特に北方四島についての絡みというものが根本的に解決をされない限り、将来における漁業交渉というものが決して円滑に解決の方向へは向かないんではないだろうか。これはもう国民としてもそういう印象を強烈に私は持つであろうと思うんですね。  ただ、いままで領土というものがいわゆる外交交渉を通じて平和的に返還されるということは、沖繩のように恐らく希有のことに属するであろうということを考えた場合、ただ忍耐強く努力をする、そういう抽象的な言い回しでなければならないところにも大変苦悩があるだろうとぼくは思うんですよね。そういったいままでの外交史上ということで、何も今回の問題に限らずに考えてみた場合に、大変な困難であろうと。もう一つの突破口というふうに考えられておりますのが、いまお述べになりました平和条約締結という問題が絡んでくるだろう、こういった展望を考えた場合、漁業交渉、将来もういろいろとぎくしゃくした方向をたどることを考えますと、どうしてもこの四島問題というものを解決しないことには、ならないんじゃないかというように思うんですか、いかがですか。
  120. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日ソの間には、漁業関係日ソ間の友好関係を高めていく上の大きな一つの事業であったと思いますし、今回、二百海里時代を迎えたということが一つの大きな歴史的な変化でありますし、この変化の時をつかまえて平和条約交渉をいたすべきものというふうに考えておる次第でございます。  共同宣言を行いましてから二十一年たつわけでありますし、その間、双方交渉を続けながらも、先方は未解決の領土問題というものはないんだというような主張もいたしておりましたし、また田中元総理大臣が訪ソされましたときのやりとりということもございました。しかし、今日は当時とは二百海里時代を迎えたという点で非常に違ってきたと思うわけでありまして、この時代におきまして日ソ両国が本当に漁業面で協調していくためには領土問題を解決しなければならない。そして国民の間に領土問題を解決すべしという声が非常に高まってきつつあるということもいまおっしゃいましたように事実でありますし、最近、各地方団体あるいは市町村の議会におきましても北方領土問題を解決すべしという決議が非常にたくさん行われるようになったということも国民の間にそのような世論が熟してきているというふうに考えるわけであります。  こういう機会をとらえまして平和条約交渉をなるべく速やかに行いたいと考えておるわけでございます。  御承知のように、先方の態度は大変かたいものということはいろんな機会の先方の発言からも思われるところでありますが、日本といたしまして、日本の現状を打開する、そういう国民的な背景をよく先方に理解せしめて、そして何らかの打開策を講ずること、これを強く主張すべきものというふうに思っております。
  121. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまお話がございましたように、共同宣言が発せられてからもうすでに二十一年という長い期間、ソ連ソ連としての主張というものを一向に変えていない。日本としても、固有の領土ということでこれはもうしばしば衆参を通しましていままでも議論が集中されてきたところですけれども、こちらも正当性を訴える、ソ連ソ連としてまた正当性を訴える。一体、どこでその調整がとれるんだろうか。どこまで行っても平行線ではあるまいか、少なくともいまの態勢というものが変わらない限り。じゃ、もしその可能性というものが残されているとするならば、これは二百海里問題という新しい事態ももちろんその要素の中に入ってくるかもしれません。しかし、いままでの一貫した大変強硬なソ連外交の方向というものを考えた場合に、これはもうむしろ絶望に近いんじゃないかという印象すら受けるわけです。  その可能性について、これからどういう一体、ただ忍耐強く努力をするだけではそのめどが立たぬのじゃないだろうか。いままでの外交折衝の中で何が足りないのか。じゃ何を一体これから話し合いの中に持ち出して、まだ残された可能性というものをそこで展開できるかどうか。この点は外務省としてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  122. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) もう二十一年間も未解決の問題、決着のつかなかった問題でございますから、これは双方主張、これを言い合っておったんではなかなか解決しないではないか、こういうお話で、私どももその困難なことは重々承知をいたしております。  この問題を解決しようという努力が行われる方向に向くかどうかということもあろうかと思います。で日本の国内事情といたしまして、解決をすべしというそういう希望と申しますか、非常に高まりつつあるというふうに私どもは認識をしておりまして、そういう次第で、問題は決して簡単に片づく問題ではない、ないけれども、どういった態度で臨むべきかということにつきまして、やはり一歩でも二歩でも進展をさす方向でその基礎づくりから始めなければいけないというふうに考えるわけであります。
  123. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま言葉じりをとらえて申し上げるわけではございませんけれども、新しい基礎づくりからもう一遍見直してかからなければならないというその発想には、何か今後の御方針というものをお持ちになっていらっしゃるのでしょうか。
  124. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) これは従来から北方領土問題につきましては政府の確固とした主張がございます。私が申し上げていることは、長い間かかって漁業交渉が続けられたその根底にあるところの問題ということ、これが二十一年間なかった新しい要素が出てきたという点でありまして、その点を根拠といたしまして、いかにしたら日ソ両国の末長い友好関係が打ち立てられるかという点にあろうと思うのでございます。そういう意味合いにおきまして、平和条約というものがやはり両国の末長いお互いの利益につながるものでなければならないと思いまして、具体的な方針というものは従来から一つも変えてないのでございますけれども、そういう新たな観点から先方と話し合ってみたいと考えておる次第でございます。
  125. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほどもちょっとお触れになりましたが、鳩山さんがしきりに訪ソを希望していらっしゃる。これはやはり平和条約交渉締結への一つの足がかり、その推進を果たしたいというふうに理解してよろしゅうございますか。
  126. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) そのとおりでございます。  日ソ間には外相レベルの定期協議を行うことになっておりまして、これが昨年は行われなかったわけで、ことしもまた行われないということに結果においてなりそうでありますが、ことしどうしても定期協議を行って、あわせて平和条約交渉——日ソ間の大きな問題といたしましては平和条約が唯一の大問題であるとすら思っておるわけでありまして、主としてそのために訪ソをいたしたいと考えております。
  127. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういった日本側のその意向というものをソ連政府の方ではどう受けとめているのか。そしてまた、われわれの願望している平和条約締結というものについては、ソビエト側はどういう、いまそういう環境づくりができているというんでしょうか、感触をもって日本政府とこれから新しい折衝段階に入りたい、そういう機運がいま起こっているのかどうか、その辺どういうふうに分析されておりますか。
  128. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 先方が主張いたしておることは、これはもう御承知のとおり、非常にかたいわけでありまして、グロムイコ外務大臣との会談におきましても、この問題に対しますと、きわめて従来からの態度を変えておらないわけでございます。またブレジネフ書記長の新聞紙によります談話等におきましても、この問題につきまして、未解決の領土問題というものはないんだ、こういう主張が長く行われておりましたし、日本側が領土問題は未解決だ、未解決の領土問題を解決して平和条約を結びたい、こういう話について、それは一方的で不正確だというような表現を使われたりいたしておるわけでありまして、その点につきまして、先方の態度がなかなか弾力的になっておるという兆しは把握はいたしておりません。
  129. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういった現在のソビエト側の受けとめ方、あるいはなかなか困難だという、大変ガードを固めている。それは恐らく平和条約交渉の糸口には必ず領土問題が絡んでくるという背景もあるでしょう。非常に消極的といいますか、むしろその煙すらも見せない。しかし、ソビエトとしても単にいつまでもこうした事態というものを日ソ間においてずるずる引き延ばしていくというようなことが得策であるかどうかなんかも、ソビエトはソビエトなりにいろいろと考えて評価を下しているんだろうと思いますけれども、なぜ、その四島問題だけが絡んでいるために、日本国の要望する平和条約交渉というものに窓口を開かないのかどうか、その辺はどういうふうに受けとめていますか。やはり四島問題が非常に問題であるがゆえに、非常に消極的であるというふうに解したらいいのか。
  130. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 双方とも領土問題が解決できないということで平和条約ができない、このように双方とも考えておると思います。われわれはほとんど問題の大半は領土問題にあるというふうに考えておる次第でございます。
  131. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあソビエトに対しては、大変鳩山さんを初め、一刻も早く平和条約締結ということで新たな決意を持って臨まれようとする、これはまことに結構だと思うんですね。一方において、もう何十回となく予算委員会等を初めとして各外務委員会においても問題になりました日中間においては、先ほども午前中の議論を伺っておりまして、これは本当にどう一体われわれは理解したらいいんだろうという、まあ恐らく集約して私なりに政府考えていらっしゃることを一口に言えば、できるだけ早い機会に締結をしたいと、こういうお考えになるんだろうと思うんですがね。  できるだけ早い機会というのは一年先なのか二年先なのか、まさか五年以上というのは早い機会とは言えないでしょうね。まごまごしていると日ソみたいに二十年も越していまうなんということも危惧されるんではあるまいかと、いまお話を伺っておりまして、じゃ一体、日ソはいいとしても、日中はどうなるんだろうと。これは覇権問題を初めいろんなことがいままで議論されてきました。しかし、もうここまできますと議論が尽くされている感じなんですね。福田さんにしても、この議論については、もうできるだけさわらないように、さわらないようにと、何が問題なんだろうか、どう考えてもわからぬということがわかったということだけなんですね、われわれにとっては。  だから、やはり日ソ平和交渉へ臨む鳩山さんのいまの御決意と同じように、日中間においてなぜできないのだろうか、恐らく繰り返しの御答弁しか返ってこないだろうと私は思うんですよ。しかし、それはやはり率直にお認めになり、世論としてもできるだけ早い時期にということでそういう大体国民の考え方も向いているこの時期に、後は政府の決断いかんによって決まると、こういうことでございますれば、一体何がというふうにまた出てくるのですね、何がというやつが。その何がの説明が全くないというところに、この日ソとまた違ったいまの行き方がある。いままでもしばしばいろいろなふうに指摘されてきておりますように、あるいはソビエトの方に気がねしているんじゃないかと言えば、いやそうではない、日ソはあくまで日ソだ、日中はあくまで日中だと、わかりますよ、それは。ですから、願うことならば、日ソにお示しになっているいまの鳩山さんのお気持ちを日中にも向けていただいて、そのできるだけ早い時期というのは、いま申し上げたように恐らく五年以上のことを言うんじゃないだろうとぼくは思うんですがね、常識で考えましてもね。これは一、二年の間というふうにわれわれ受けとめたいと思うのですが、その辺いかがでございますか。まあついでですからと言っては大変申しわけないのですが、日中のことも重ねてお尋ねしておきます。
  132. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 福田総理日中関係につきましては常に申されておりますように、双方の満足し得る形というのはどういうことかという御質問もあったわけでございますが、それにつきまして、私は、日中の平和友好条約が本当に日中双方の末長きにわたる条約といたしまして歓迎できるようなものでありたいということ、それとともに、また国民の本当のコンセンサスのもとに結ばれるべきだと、この二つの気持ちが大事であろうということを先回も申したわけでございます。  これは黄華外相とも一晩お話ししまして本当に早く片づけたいということでお話をしてまいりましたし、そう遠くない時期であるということは、もうこれは確かだと思うわけです。
  133. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 しつこいって御批判があるかもしれませんけれどもね、いまのそう遠くないというのは新しい発言だと思うんですよね。そう遠くないということは、恐らく二年といってももうこれはやはり相当先になりますからね、そう遠くないというと大体もう一年あたりが限度ということになるんじゃないでしょうか。その辺はいまお気持ちをお察しいたしまして、これ以上お伺いしないつもりです。また別の機会にお尋ねすることもあろうかと思います。  そこで、また日ソ協定に戻るんですけれども、今回、暫定協定がさらに一年間延期された。いろんな御事情があったろうと思うんです。特に団長として臨まれた宮澤さんですね、われわれとしては五年間の長期協定ということが最初描かれた方向ではなかったんですか。
  134. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) さようでございます。
  135. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それが何かこう一年刻みで将来行くのか、あるいは二、三年ぐらいの、これも短期と言った方がいいのかもしれませんね、そういうような期間のまた協定に落ちつくのか、その辺は今回の交渉を通じてどういう感触をお持ちになられたんですか。
  136. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) お尋ねのとおり、私の感触でございますが、私どもは五年という期間をもってソ連側に提案いたしましたが、ソ連側は、これに対しまして、まだ海洋法の統一的な秩序ができておらないということが一つと、それからソ連側の二百海里の専管水域のもとになりました幹部会令、その他これが暫定措置であるというその根拠法規の暫定性、この二つの点から、それをもとにして結んだこの日ソ協定、二つのものでございますが、これをいま五年というような一定の期間延長することに疑義がある、こういうことでございました。  ただ、ソ連外務省の責任者も言っておりましたが、あの二つの協定は非常に自分たちはよくできた協定だと見ておる、したがってこれをいま当座一年延ばすことには異議はない、そしてさらにその先については、また一年経過したころに話をしてその先を取り決めようではないか、こういうことでございましたので、私の得ました印象としましては、確かに海洋法秩序がまだ統一的に規定されておらないということと、そのほかに、やはりソ連がこの日ソ漁業関係をどのように今後形づくっていくかということについて、まだ統一的なはっきりした構想を持っておらない、こういうことのために、当座一年間はこれをまた延長しよう、しかし、その先のことはもう少し時間の経過を見てからさらにまた考える、こういうような態度と私は見ております。
  137. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 将来どういうふうにまた推移していくかということは予想がつかないだろうというふうな感じがするんでございますけれども、せっかく結ばれたその暫定協定の中身というものはソ連側でも高く評価されていると。しかし、また一年先になっていった場合、いろんな情勢の変化というものもございましょうし、漁獲の割り当て量だとか、いろんなそういう内容的にまた変化を求められる、そういうような事態というものが起きやしまいかというやっぱり不安感があるんですね。  恐らく、日本側としては、暫定協定というものは、こちらとしてもまあまあこの辺で不満は残ってもしんぼうしなきゃならぬだろうというような判断のもとに署名されたんだろうと思うんですね。しかし、いま申し上げたように、そういった条件というものがあるいは変えられるおそれがある。長期ならば、一応安定した、漁民にとってもこの期間はまず安心してできるぞと、こういう希望を与えることができたわけですね、それができなかった。将来において、何かあるいは一年更改なんていうことを言い出してくるかもしれない、そういうことだって考えられるわけですね。その辺の先行きの展望と申しますか、どうなふうにお受けとめになっておられますか。
  138. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) ただいま御指摘のとおり、私どもソ連側に対しまして一番強く強調いたしました点は、関係漁民が安定した操業の見込みを持たないということは日ソ関係の上にも非常によろしくないということを強調いたしまして、この点についてはソ連側異議はなかったようでございますが、ただ、ソ連側は、先ほども議論が出ておりましたが、西の方におきましてECとも非常に不安定な漁業状態にございますし、かつまた海洋法の統一的秩序がまだどの方向に進みますか必ずしも見通しがつかない現在、一つの決まったものを五年間という長期にわたって取り決めるという踏み切りがつかなかったものと考えております。  私どもといたしましては、ソ連側は、ただいまおっしゃいましたように一年ごとに更改といいますか、いまおっしゃいました意味は一年ごとに改めるという意味かと思いますが、改めるようなことを向こうが申しましてきた場合には、これは相手のある話し合いでございますから私ども立場のみを貫くわけにもまいりませんか、やはり関係漁民が安定した見込みを持ち得るような方向に、これは水産庁その他とも十分にお話をいたしまして、できるだけその方に持っていきたいと。ソ連側がどういう見通しを持っておりますかということは、実は、まだはっきりとただいま私は把握しておりません。
  139. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回の協定を通じて、一番やはり心配をしながら操業しなきゃならぬというこの漁民の立場、これはもう当然、先ほども午前中にお話が出たとおりであります。で、いろんな規則がございますものですから、ソビエト側も最高幹部会令だとか大臣会議の決定であるとか、何かいままで五つぐらいの取り決めがあるんでございましょう。そういったような中身というものについて、当然日本の漁民が知らなければならない問題も含まれているんではあるまいかと。  私、先般、山陰方面へ参りました。で漁業組合としても、できるだけ事故を起こさないように、水産庁の指示等をもう十分把握しながら漁に出るように訓練もし教育もしておるというんですね。ただ、いかんせん、お互い日本にも戸惑いがあるだろうしソビエトの方にも戸惑いがあるだろうと。そこに起こる問題は臨検、拿捕ということにつながる、こうした事態だと思うんですね。で徹底と申しましても、なかなかもう何百人何千人の漁民の方に画一的に理解をさせるということは大変困難かもしれません。いずれにせよ、そうした不安感というものを取り除くためにも、その辺のソビエト側との話し合いというものが果たしてきめ細かく、たとえば罰金一つの問題にいたしましても、実際交渉はされてはいるんだろうと思うんですけれども、一体どういうところに基準を置いて——ただ操業日誌をつけてないということだけで、もう片っ方は百万だ、片っ方は二百万だと非常にばらつきがある。ぼくらの耳にはもっとひどい話も入ってきているんですよね。だから、そういったことについても実際にその交渉の過程の中に詰めた話がされているのかどうなのか、この点いかがですか。
  140. 松浦昭

    説明員松浦昭君) お答えをいたします。  違反の問題をできるだけスムーズに解決をするためには、何と申しましても、まず第一に、漁民の方々に、先生おっしゃいますように、向こう側関係法規をはっきり理解をしていただくということが必要であるということは全くそのとおりであるというふうに考えております。先ほど先生のお触れになりました五法規と申しますのは、恐らく最高幹部会令あるいは……
  141. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはわかっているから簡単に答弁してください、時間も余りないから。
  142. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 五法規につきましても、それを含みまして、必要に当たりましての注意をいたすために、六月から七月にかけまして東京、札幌、稚内、釧路、八戸、境港、福岡等におきまして協定内容の詳細につきまして各漁業種類ごとに説明会を開催しております。また長官名の指導通達も流しておりますし、各漁業団体、都道府県を通じまして漁業者に対して周知徹底を図っておる次第でございます。  ただ、先般のナホトカ会議で問題になりましたように、両者の意見の食い違いがございまして、そのために必要以上の摩擦が起こったということが確かに実態として起こったわけでございますが、この点につきましても、ナホトカで調節いたしました日ソ間の合意の内容につきましては、八月下旬に、関係漁業団体、道府県を通じまして海洋漁業部長名の通達を流しまして、直ちにその内容を指導いたしておりますと同時に、東京及び現地において説明会を開催するようにしておりまして、その指導徹底方に遺憾なきを期しておる次第でございます。
  143. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 実際、皆さん方おわかりになるんですよね、現場で働いている人というのは夜の夜中も働いておるわけですね。それは操業日誌のつけ損ないも出てくるわけですね、当然のことながら。そういったようなことも十分漁民の立場になった、またその実態というものを十分、特に水産庁あたりは、その辺はわれわれ素人が考えているよりも大変詳しく御存じのはずでございますので、あるであろうという将来のやはりいろんな事実を想定しながら、漁民が安心して操業できるという方向へ持っていく必要があったんではないかということが一点と、それから実際臨検を受けたときに言葉が通じないんですよ、言葉が。どういう折衝の仕方をやっているかということは、大変まあ背筋の寒い思いをしながら日本の漁民はそういう事件に遭遇しなきゃならぬということがあるわけですね。そういう問題なんかについても、どういうふうに一体問題が起こったときに処理をするような方向へ考えておられたのか。これはこれからも続きますよ。
  144. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 先生の御指摘のとおりでございまして、私どももできるだけきめ細かに漁民の方々にソ連の二百海里内での操業に当たっての心得というものを指導いたさなきゃならないというふうに考えております。特に、いま御指摘の語学、言葉の問題というのは大変な問題でございまして、これについてはわれわれも非常に心配しておるわけでございますが、ソ連の監視船には通常日本語の通訳が乗船しております。ただ監督官自身が未熟でありますけれども、ある程度まで日本語がしゃべれます場合には乗船してないという場合がございますが、大体、原則として向こう側は通訳を乗せております。それから漁民の方々にも、私ども会話集をつくりまして大日本水産会から手渡してございまして、だんだんその内容も拡充いたしまして、漁民の方々が一応筆談ないしは会話集で向こう側と意思を通ずるというふうなことも考えていきたいというふうに思っておりまして、現在、目下指導をいたしております。さらに、日本監視船が近くで行動いたしております場合には、できるだけ速やかに漁民とのトラブルを避けるためにそこに入っていくというふうなことも指導いたしている次第でございます。さようなことでまだ不十分ではございますか、さらにきめ細かく対策を立てまして、漁民の方々が安心して操業できるようにいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  145. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは結構だと思うんですよ、次善の策といたしましてね。言葉というやつは一夜づけでなかなかできない場合がございまして、それは当然交渉前からそういうことか本当は考えられた、したがって水産庁あたりでも事前にそういうような対応の仕方というものがあるいは必要ではなかったのかというふうに感じられます。  それと臨検される、拿捕される、いやな思いをいたしますね。それでそれぞれの港へ入ってくるわけです。とにかく罰金払って入ってくる場合もあるでしょう、あるいは罰金払わなくても臨検されただけでも一時間も二時間も拘束されるわけですね。もう一つ問題があるんですね、港へ入ってくるときに。臨検を受けた船については必ず検疫を通さなくちゃならぬでしょう。これは厚生省来ていますか、きょう。  その臨検を受けますと、まあ伝染病のおそれはないかということで必ず検疫官が立ち会わなきゃならぬと。夜の一時か二時ごろに船が入ってくる。ところが検疫官はお休みになっていらっしゃいますね、これは。大体七時か七時半ですよ、早く出てこられても。それは検疫官のいるところはいい、いないところは一体どうするんだ、せっかく積んだ魚は七時間も八時間も放置されてしまうわけです。だから魚価は下がりますね、当然鮮度を失いますから。こういう点でもっと弾力性のある対応の仕方というのはできないのかなという、これは厚生省にお尋ねするわけですかね、検疫の関係で。いかがですか。
  146. 林部弘

    説明員(林部弘君) いま先生指摘の点でございますが、ソ連船による臨検を受けるという形で洋上で外国人と接触したようなわが国漁船の場合に、これは法令上の用語ではございませんが、私ども俗にそれを洋上接触船と呼んでいるわけでございます。いわゆる海の上で接触したその洋上接触船と俗に言っております場合には、必ず検疫所によって検疫を受けなければならないということではなしに、検疫法の二十二条に特例を設けておりまして、比較的その漁船から近い位置の検疫区域以外のところで保健所によって検疫にかわるようなチェックを受けるということが便法として許されているというような事例もございます。  ただ、いま先生指摘の、夜中の一時、二時にその検疫のような形のチェックをするということは現実にはちょっとむずかしいと思うんでございますけれども、御指摘のせっかくとった魚が朝できるだけ早い時間に荷おろしができるような形での便宜を図るという問題になってくれば、これは過去からずっと続いている事例でございますが、北海道あたりで一定の時期だけサケ・マス漁業関係の船について特別な計らいをしているというような事例があるわけでございますから、いままでの事例ですと、あんまり北海道以外のところではそういう問題はなかったんですけれども、これから二百海里問題で洋上接触船の問題というものが、北海道の近海のみでなく、裏日本の方まで問題になってくるということであれば、状況を十分見きわめた上で、北海道方面において従前行っていたような取り扱いというものができるものであれば、そういう方法で対応策を考えたいというふうに現在思っております。
  147. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは北海道はそういう体制ができておるかもしれませんよ。しかし、いまは、おっしゃったように、この二百海里時代という新しい対応というものを考えなくちゃならぬわけですね。たとえば山陰を例にとってみた場合に、検疫官のいるところというのは境港と舞鶴と浜田しかない。保健所だってそんなにあっちにもこっちにもあるわけじゃないでしょう。船は大体夜中に入ってくるのですよ、それで朝の市場に出すのです。そうしたことも外務大臣よく聞いていただきまして、これは各省とのいろんな関連が出てまいります。ダブルパンチを受けるわけです。拿捕されて罰金払って船が入ってくる、またそこで待たされる、魚価は下がる、どないしますかという、これは漁民の声なんですよ。事実あったんです、あったことをいま申し上げているのです。それは厚生省の方ではどういうふうに報告が入っているのか。現在の体制をどういうふうに一体改善しなければならないのか、あるいはもっと弾力的にどういうふうに取り組まなきゃならぬのか、お考えになっていらっしゃいますか、いま。
  148. 林部弘

    説明員(林部弘君) 実態等につきましても、私どもとしてはある程度把握をしているつもりでございますが、これは季節的にかなり変動がございますので、年間を通じてそういう体制をとるということには、いままでの推移では、必ずしもならないんではないか。したがいまして、先ほど私が過去の北海道におけるサケ・マス漁業の例を申し上げましたのは、これは必ずしも保健所が引き受けるとは限りませんで、相当まとまったものの場合には検疫所の職員を派遣して行うというような事例もあるわけでございますから、私が先ほど状況を見きわめてしかるべく対応措置を考えるというふうに申し上げたのは、そういう意味で申し上げたつもりでございます。
  149. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 事実問題は、もういまおっしゃったようなのんきな状態じゃないんですわ。実際起こっている問題をぼくはいま申し上げているんでありまして、もっとその辺の実態を正確に把握をされて、魚価が落ちて漁民が苦しむというようなことのないような方法、もし保健所あたりで済むということ——その調べ方も実に簡単らしいんですよ、問診をするわけじゃない、問診に次ぐぐらいのような状態ですね、異常ありませんかということで、一人一人そんな問いかけでもって、それじゃ結構ですと。それでもう五時間も六時間も待たされる、検疫官は、夜中ですからね、起きちゃいませんから。そういうこともひとつ考えていただきたい。  それから、先ほども午前中に問題が出ましたソ連側の二百海里水域に日本漁船が入った場合に、これは日本の監視体制としてはそこまで入れないという場合がもちろん当然あるわけですけれども、しかし、違反を犯してはならない、いろんなアドバイスをするためのこの体制というものも——これは海上保安庁になるだろうとぼくは思うんですけれどもね、実際、問題が起こってからではもうどうにもならない。  たとえば、こういうことには十分留意しておりますか、あるいは、操業日誌もつけておりますかと、船の上からででもその周りにいる漁船に対して呼びかけをするとか、何とか適切なそういう方法というものがとられてもいいんではないだろうか。それには現在のこの海上保安庁の体制では、午前中もお話が出ましたけれども、三百十隻ですか、それから飛行機が三十何機、これは常時飛んでいるわけじゃございません、飛行機の場合は、整備もありますので。で、そういう点についても、新しい時代を迎えたこの現況というものを十分踏まえて、海上保安庁あたりもそれに対応できる警備体制、また日本漁船に対する援護体制と言った方がいいのかもしれません、そういったものをやはりお考えになってしかるべきじゃないだろうか。そのためにはもっと新しい船をつくってもらいたい。それから飛行機も、どんどん開発されているんですから、いま。その点どういうふうにいまお考えになっていらっしゃるか。かなかな予算を要望しても通らないなんということじゃだめですよ。
  150. 山本了三

    説明員(山本了三君) 先生指摘のとおり海洋二法が発効いたしまして、海上保安庁の守備範囲といいますか業務量といいますか、これは飛躍的に増大をいたしました。で私どもといたしましては、現有の勢力を当面有効適切に活用するということでありますけれども、なるべく早急に船艇、航空機を整備してまいりたい、そのように考えております。  五十二年度、本年度の予算におきましては、すでに御承知かと思いますけれども、ヘリコプター搭載の巡視船を一隻、それから三百五十トン型巡視船を五隻、三十メーター型の高速巡視艇二隻、それに大型飛行機、中型飛行機、中型ヘリ各一機、これを整備増強することにいたしております。さらに、これもあるいは御承知と思いますけれども、補正予算におきましてヘリコプター搭載の巡視船を一隻、千トン型の大型の巡視船、これを五隻……
  151. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 済いません、細かいところは結構ですから。
  152. 山本了三

    説明員(山本了三君) はい。並びに大型飛行機等をそれぞれ増強いたすことにいたしております。また、もちろん五十三年度以降におきましても、必要な巡視船艇、航空機の整備を図るように大蔵当局とも相談をいたしております。こういった体制をとりますと、私どもの適切な運用によって漁業水域の整備、これは飛躍的に警備が万全になる、そのように考えております。
  153. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 海上保安庁の方、どうか、これから一番大事な役割りを担ってお仕事をされるわけでございますので、思い切ってそういった改善を図るための要求をやっていただきたい、そう思いますよ。  それで北海道の方は体制が完備されましても、先ほど私が申し上げたように、山陽方面が全然手薄であるとか、あるいは九州方面が手薄であるというんじゃ何にもならぬわけです。やはり総合的に見て日本の水域は万全を期せられるだけの警戒ができるという方向にぜひ取り組んでいただきたい。結構です、その答弁は。  それから、最後に、まとめていまお尋ねします。  一つは、こうした二百海里水域の問題については、今後考えられると思われる国としては韓国があるだろうと思うんですね。すでに宣言をするような動きがあるのかどうなのか、あらかじめ日本政府に対してそういうような下交渉があったのかどうなのかが一つ。  それからもう一つ、もし韓国が二百海里水域を宣言した場合に、非常に問題になってきますのは、竹島の問題だと思うんですね。けさも伝えられるところによりますと、竹島に一家三人ですか、永住権を取ったと。これは非常に論争になっているいままでの問題でございますね。この領有権をめぐって、もし竹島の帰属というものが、何というのかな、既成事実として韓国の所属に帰するという国際的なそういう評価というものが出てきた場合、一体、日本としては引っ込みがつくのかどうなのか。これはこれからあの辺の水域を考えますと非常に重要な影響力と問題点が起きてくるんではないだろうか。この点について、まとめてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  154. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) まず、韓国が二百海里漁業専管水域を設定する動きがあるのかどうかという点でございますが、韓国は、確かに国連海洋法会議その他新しい海洋法秩序の発展ということに対応するために閣僚レベルの海洋法対策委員会というものを設けまして、それを中心にいろいろ検討を進めているという報道がございます。ただ、私どもも、従来から韓国のそういう動きを十分考慮するようにいろんな形でいろんなレベルで接触しておりまして、現在のところ、韓国としては二百海里の漁業水域というようなものを設けるということは考えていないというふうに承知いたしております。御承知のように、十二海里の領海設定ということにつきましては、今月の五日に、韓国の国会に法案が提出されておりますが、当面、そのあたりにとどまっておるんじゃなかろうかということでございます。  次に、竹島の問題につきましては、先生承知のように、私ども過去数十回にわたりまして韓国の各種の動きに対応して、これに対して抗議をし、わが国の領土主権の及ぶ島であるということを繰り返し指摘いたしております。したがいまして、今回また、昨日でございますが、韓国の新聞に報道されましたような動きがあるということでございますが、これまた事実を確認した上で私どもとしては抗議その他必要な措置をとるつもりでございます。このように、わが国として韓国のそういった領土権主張というものは認めないという立場は、これは非常にはっきりしておりますので、これが既成事実化していくということは法的にはないものというふうに考えております。
  155. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 鳩山さんね、いまの次長答弁を受けて、既成事実は認めないと言いつつも、もう韓国の軍隊が駐留しているわけですね。そして、現在、私申し上げたように一家三人が定住するためにそこへ移り住んだと。これは確認がおくれているとかなんとかいうことよりも、非常にその点遅いんじゃないかという問題と、一体、そういう問題に対して実際日本の主権の及ぶ領土であるということの主張が通るのかどうなのか、また、ぜひ通してもらいたいと、こう思うのです。その点を最後にお伺いして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  156. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 竹島問題につきまして、いま枝村君からお答え申し上げたわけでございますが、ことしの八月に海上保安庁が竹島の現状調査をいたしていたわけでございますが、その報告の中にもいろいろな心配なことがあります。これらにつきまして、私どもといたしましては、あくまでもこれは平和的な手段によりまして解決を図るほかないわけでございます。  閣僚会議の際におきましても、先方にこめ問題につきましての討議を申し入れたわけでありますけれども、先方としてはその討議自体を拒否するというのが実情でありまして、この問題につきましてまことに容易ならぬ事態であるというふうに考えまして、この点につきまして、この住民登録を移したという点につきまして、これは早速ソウルの方にいま取り調べ中でありますが、これにつきまして当然のことながらこれはいま抗議はいたすわけでありますけれども、このこと自体はまことに重大な影響を及ぼしかねない事態でありますので、本件の扱いにつきましては政府部内といたしまして検討いたしまして、より強いどういう態度がとれるか検討いたしたいと思います。
  157. 立木洋

    立木洋君 日中の問題で、ひとつお尋ねしておきたいんですけれども、先ほど来いろいろ問題になっております平和友好条約交渉の過程がどうなっているのか、どこに問題があるのかという点については大臣はどうしてもお答えにならないので、私が質問いたしても同じだろうと思いますから、その点はあえて重ねて質問いたしませんけれども、ただ、いわゆる覇権条項について現在の時点で大臣がどういう見解をお持ちになっておられるのか、その点だけお尋ねしておきたいと思います。
  158. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) この覇権条項につきまして、この言動は最も慎重でなければならない段階でございます。しかし、すでにこの覇権条項の扱いの問題につきまして、これは宮澤大臣のころからも、また総理もおっしゃっておりますが、これを協定本文に入れるかあるいは前文というようなことが問題になったことがあります。しかし、それらの点はそれほど重要な問題とは考えていないということはもうすでに国会でもそういう答弁も行われておるわけでありまして、問題は、覇権条項自体というより、それを若干取り巻く問題があるということは申し上げられると思います。しかし、大きな筋道というものは共同声明にうたわれておりますので、この共同声明をこれはもう尊重をして遵守をしていくということも福田総理もおっしゃっておりますので、むしろ今後は、技術的なと申しますか、細目の点の詰めが残っておるというふうに御理解いただければいいと思います。
  159. 立木洋

    立木洋君 いや、取り扱いの問題はもうわかっているわけなんですけれども、つまり覇権条項そのものに対する大臣の御認識、この前、宮澤さんが大臣のときには四点指摘されましたけれども、そういう御認識と一緒なのかどうなのか、あるいは違っている点があるのかどうなのか。覇権という問題に関する見解そのものをお尋ねしたいんです。
  160. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) この覇権条項内容につきまして、これは共同声明にうたわれておるからこれを尊重してまいるということで、それ以上のことを申し述べますとかえって問題がこじれるという心配がありますので、この共同声明で決められたところを尊重していくんだと、こういうことで御理解を賜りたいと思います。
  161. 立木洋

    立木洋君 じゃこれはまた改めてお尋ねすることにしまして、次に、ソ日漁業暫定協定の問題ですが、今度、宮澤さんおいでになって交渉なさってこられたわけですけるども、ソ日漁業暫定協定交渉経過との内容から見て、いろいろいままで大きな問題になってきましたやはり領土の問題、先ほども問題が指摘されましたけれども、こういう領土の問題がどういうふうになったのか。日本政府としては今度の協定交渉内容経過から見て、日本側立場が十分に確保されたというふうな御認識なのかどうなのか。そういう問題について最初に確認の意味でお尋ねしておきたいと思います。
  162. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 今回の一連の交渉の発端になりましたものは、ソ連政府が二百海里の漁業専管水域を設定したことでございます。その中に私どもが固有の領土として主張しておりますいわゆる北方四島が含まれる、これがいま線引きと言われておるものでございますが、この線引きを日本側が認めるかどうかということでございまして、これが交渉の最大の問題になったことは御承知のとおりでございます。  結論的に申し上げますと、日本政府ソ連との間に漁業取り決めを結ぶに当たりまして、このソ連の行いました線引きはソ連側漁業の管轄権を及ぼしている線の限界としてこれを認めたということでございます。ただし、そのことはソ連がその四島に対して領土主権を及ぼしているということを認めたことではないと、こういう主張を私どもが貫徹いたしますために、さきのモスクワ協定におきましては第八条、東京の協定におきましては七条におきまして、いわゆる両国間のその他の問題に関する見解ないし立場に影響を与えるものではない、こういうことを入れることによりまして、領土主権に関しては私ども立場はこの漁業取り決めによって何らの影響を受けてない、こういう立場を貫いたわけでございます。
  163. 立木洋

    立木洋君 わが国立場を確保し得たということは、大臣も先回衆議院外務委員会でおっしゃっておりましたけれども日ソ暫定協定で見てみますと、第一条では、ここには最高会議幹部会令ともう一つ連邦政府の決定という両方を挙げて、この連邦政府の決定というのはきちっと線を引かれた内容のものであります。今回のあれを見てみますと、第一条では、つまり「千九百七十七年の五月二日付けの日本国漁業水域に関する暫定措置法に従って定められる漁業水域」、この暫定措置法だけを挙げているわけですが、こういうふうな線引きにかかわる問題ですね、あるいはそういうものがいままでも問題になってきたわけですけれども、この暫定措置法だけでいわゆるソ連政府決定と同等のものと解釈できるのかどうなのか。この点やはり問題が残るんではないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  164. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 先生指摘のように、いわゆる日ソ協定の第一条におきましては、ソ連側の二百海里水域につきましては最高会議幹部会令第六条とそれから政府の決定に従って定められる、こういう規定文になっているわけでございますが、これはソ連邦沿岸に接続する海域には北西太平洋のほかに北氷洋、バレンツ海あるいはバルト海等がありまして、これらの諸海域についての科学的な条件や国際的環境等がそれぞれ異なっておりますために、ソ連といたしましては、各海域における具体的な漁業水域の設定は個別に行う方針であるというように見受けられるわけでございます。そこでソ連側の二百海里法でございますソ連邦沿岸に接続する海域における生物資源の保存及び漁業の規制に関する暫定措置に関するソ連邦最高会議幹部会令は、その第六条におきまして、この幹部会令の具体的な適用水域というものはソ連大臣会議が規定することとしておりまして、その条文に基づくソ連政府の決定がソ連側二百海里水域の範囲を定めるというのか、これがソ連側の法制であるわけでございます。  他方、わが国の二百海里法であります漁業水域に関する暫定措置法におきましては、この法律の第三条三項「漁業水域」の定義という法の規定ふりから明らかでございますように、わが国近海全体にわたりまして漁業水域を設定することを原則としておりまして、漁業水域の範囲を定めるための別途の法令は要しないような法の立て方となっているわけでございます。  御指摘日ソ協定第一条と本件協定第一条との間の形の上での相違点は、このような両国の法制の違いに伴う条文作成技術上の要請によるものでありまして、この違いによってわが方が不利になっているというわけではないわけでございます。
  165. 立木洋

    立木洋君 大森さんがいま言われたけれども、私はどうしてもその点はおかしいと思うんですね。いわゆる法的な根拠から言うならば薄弱だろうと思うんですよ。いわゆる北方領土に関するこちら側の立場を確保したということを、法的根拠をどこに求めるのか、どの条文にどういうふうに求めるのか、ソ連側は明確に線引きをした政府決定があるわけです。日本の場合には、そういうふうに要しないという形になっているけれども、それは暫定措置法では明確ではないわけですから、だからそれに対応するような形で法的根拠が求められた場合には、私は、国際的に見るとなかなかそこは問題が残された点だろうと思う。この点についてはあえてここで議論していますと時間が足りませんから、その問題は問題が残されているのではないかという指摘だけに私はとどめておきたいと思います。
  166. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 私が先ほど申し上げましたことをごく簡単に再度申し上げれば、ソ連の方の法制の立て方は、その水域についての線引きは具体的に別途の大臣会議決定というものによって具体的に引くという立て方をとっているのに反しまして、わが国の側におきましては、暫定措置法それ自体によってわが国の領域の周辺には二百海里の水域は設定されていると、こういう立て方でございますので、このような規定ぶりの差が出てきた、こういうことでございます。
  167. 立木洋

    立木洋君 その問題は次に残しておきますけれども大臣、御承知だろうと思いますが、最近数カ月間、特に北海道の地元の方々の中で四島一括返還というのは、それは望ましいかもしれないけれども、いわゆるこれではいままで大変長い期間かかったと、それだったら二島の歯舞、色丹返還をまず求めるということも現実的ではないかという声が、これは自民党の市会議員の方々も含めて現地で起こっておるということは、大臣、御承知でしょうか。
  168. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいまお話のありました二島だけでもいいから早く解決をすべきだという意見が現地の一部にあるということも承っております。
  169. 立木洋

    立木洋君 これが非常に大きな今後世論として発展するのかどうなるのかというのは、これはまだ推移を見なければわかりませんけれども、こういうふうな声が出てきているという点について、大臣はどういうふうに御判断されておられるでしょうか。
  170. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 政府立場は、四島一括返還ということを主張しておるわけでございまして、これは政府のみならず、国会の決議もたしかそのようになっていたと記憶をいたしております。  この点につきまして、二十一年間たってまだ解決してないではないかということを考えますと、何とか現実的な方法はないものかという意見が現地の間に起こってくるということではないかと考えております。しかし、この問題は、国会も御決議になったことでもありますし、政府といたしましても四島一括という点を崩しておらないということでございます。
  171. 立木洋

    立木洋君 四島一括というふうには私はなってないと思うんです、国会決議は。四島の返還ということにはなっていますけれども、返還の方法が一括であるのか分離するのかという点は国会決議でも明確になっていない。つまり、まず二島を返して、後でまたさらに返してもらうというふうなこともあり得るわけで、それは一括ではなかったと思うんですか、どうです。
  172. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) そのとおりでございます。
  173. 立木洋

    立木洋君 それで、大臣、六月の八日の日に私がお尋ねしたときに、とりあえず二島だけ返還するということはどうだろうかということを私はあのときもお尋ねしたんですが、政府としては四島一括返還が望ましいという立場でいままでもやってきたんだということをお述べになった後で、国内の世論の動向ですね、国内の世論の動向にも私は耳を傾けなければならないという趣旨の発言を大臣はなされたと思うんですよ。  で、まず、いままで長期間かかっても四島一括返還という形で事実上実現しない、現地の漁民の方たちはそのために大変な事態になっているし、今度の漁業の問題と絡みまして二百海里が制定されて後、現実にあそこで違反事件だといって拿捕されるというのが続々と起こっておるということで、現地の漁民の方々の中では何とかしてこの展望を一歩でも前に切り開いていきたいという要望が非常に強くなってきているわけですね。そうすると、あの鳩山一郎さんが行ってこられた、あの平和条約を結んで、まず二島の返還をというふうなことも、私は、そういう現地の方々の考えももう一度考慮に入れながらどのようにしてこの現状を切り開いていくのか、打開していくのかという問題をやはりもう一度政府自身が考えていただく時期に来ているんではないかというふうに考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
  174. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 政府といたしましては、既定の大方針がございます。他方におきまして、いまお述べになりましたような現地の一部にそのような声があるということも承っておりますけれども、この問題につきましては政府の大方針に従って処理すべきものというふうに考えております。
  175. 立木洋

    立木洋君 まあ政府の大方針でも変わることは再々あるわけですから、だから現実にどう展望を切り開いていくかという点でやっぱり努力をするというのが私は政府立場としては当然なければならないことだろうと思うんですね。やはりこの千島の返還、政府としては北方四島というふうに言われておりますけれども、現実にその実現を図るということは、日本の国民の利益だけではなくして、日ソ関係友好をしっかりした基礎の上に築くという点から見ても、これは大変重要な問題だと思うんです。この問題が残されている限り、日ソ関係というのはいつまでもやはり問題が残された事態を経緯しなければならないということになるわけですから、その点についてはよく御検討していただきたいということを申し述べておきたいと思います。  それで、先ほどソ連の二百海里内での日本漁船違反件数が十月の十五日現在百八件というふうに述べられたと思うんですが、違反した点について内容を先ほど述べられた点では、そのうち七十九件がわが方に問題があってなされた。あるいは二十四件は、日ソ間のすり合わせといいますか、まだ明確に問題がなってないために起こった件数というふうに言われましたけれども、わが方に問題があっていわゆる違反事件となった七十九件というのは、たとえばこれは政府が十分に行政指導を行っておったにもかかわらず漁民の方々が違反をした件数なのか、あるいは政府の行政指導の上で不十分さがあったために起こった件数というのはこの中にないのかどうなのか、その辺の分折はどうなっていますか。
  176. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 先ほど申し上げましたように、どうも日本漁船の方に問題があったのではないかと思われる件数が七十九件と申し上げたわけでございますが、その内訳は、無許可操業あるいは禁止区域違反等操業となっている、あるいは漁業日誌の記載漏れといったようなことでございまして、これらの事項につきましてはすでに十分に指導をいたしていた事項でございますので、この点については政府側には落ち度はなかったというふうに考えておるわけでございます。
  177. 立木洋

    立木洋君 操業日誌関係違反が非常に多いということを聞いておりますけれども、そのとじ方についての違反というふうなものも問題になっておる。ところが、日ソ間で事実上操業日誌のとじ方についてどういう合意がなされて、その問題も完全に徹底されておったのかどうなのか。あるいは操業日誌のとじ方について封印が必要だということは特に指導していなかったというふうなことも聞いているわけですけれども、その点については事実はどうなっていたのか。
  178. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 先ほど、日ソ間で合意を見てその結果問題が解決しているのが二十四件、こういうふうに申し上げましたが、この中に操業日誌のとじ方の問題があったわけでございます。これは封印の仕方が双方につきまして慣習等が異なりまして、双方に一致した点がなかったものでございますからこういうことが起こったわけでございますが、ナホトカ会議を開きまして、双方、とじ方につきましてもきちっとした合意をいたしまして、その結果を各団体に指導いたしてございますので、もはやこのようなことで問題が起こるというようなことはないというふうに考えております。また、現に、これらの操業日誌の問題で違反をいたしました件数も最近は激減をいたしているという状態でございます。
  179. 立木洋

    立木洋君 いや、話し合いの経緯ではそうなっているでしょうけれども、事実上、そういう指導を受けなかったという話はどうなんですか、そういうことは絶対ないんですか。
  180. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 先ほど申し上げましたように、これは双方操業日誌のとじ方、つけ方につきましての慣習上の差異がございましたので、慣習上の差異までわれわれは当時承知をいたしておりませんでしたものですから、この点は指導いたしておらなかったということは事実でございます。しかしながら、そのような問題が起こりましたので、直ちにナホトカ会議を開きまして、その結果合意した点で直ちに指導した、こういうことでございます。
  181. 立木洋

    立木洋君 今後そういう事態が起こらないようになるということは、もちろんこれは結構なことでありますけれども、しかし、こういう事件で違反として罰金を取られた場合、これはすべて返還してもらえるようになるわけですか、罰金の返還というのは先ほど二件と言われていますけれども
  182. 松浦昭

    説明員松浦昭君) これは操業日誌のとじ方が問題になっただけではなくて、ほかにもいろいろな違反と競合していた場合もございまして、さような意味から、このような違反事件について罰金を返してもらうということはなかなか困難であるというふうに考えております。
  183. 立木洋

    立木洋君 それから、十月の二十一日の新聞の報道によりますと、違反した漁船罰金を期限までに払わないため他の漁船操業許可証などを担保に取られたというふうな報道がなされてありますけれども、これはきわめて不当なことじゃないかと思いますが、これについてはその後の調査や事後処理はどういうふうになっていますか。
  184. 松浦昭

    説明員松浦昭君) お答えいたします。  まことに不当な事件であると私どもも思っております。したがいまして直ちに外交ルートを通じまして、この点につきまして調査をしてもらうように申し入れたところでございます。
  185. 立木洋

    立木洋君 その他、これは時間がないから次々と具体的な例を挙げるわけにはいかないわけですけれども、いろいろ話し合い経過の中でまだ十分に詰まっていない問題あるいは詰まっておるにもかかわらずその罰金の取り立ての内容だとか、その処理の仕方の上でソ連側に不当な点があったという点について、こちら側が抗議的な申し入れをされたことについて、ソ連側はどういうふうな反応を示しているんでしょうか。
  186. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 先ほども答弁申し上げましたように、なお残っております問題につきましては、先ほどの日ソ交渉におきましても、監督官レベルを通じまして向こう側にわが方の意図を十分に伝えたつもりでございます。これに対しまして、ソ側は、なお再調査をやるといったようなことを回答してきたものもございます。これはやはり根気強く向こう側と話をしなければいかぬというふうに考えておりますので、先ほどお話しいたしました十一月の十日以降行われます会議におきましても、監督官レベルの会議日ソ漁業委員会の例に準じまして開きまして、その間にまた双方ともさらに調査をいたしまして、その会議でなお詰めてみたいと思っております。これは非常に根気強く向こうとやらなければいかぬというふうに考えております。
  187. 立木洋

    立木洋君 協定実施されて以降、いろいろな話を聞いてみますと、漁民の方々の中でも、現実に中小の漁船の方々は、日誌をつけるだとか、きちっと事務的実務的に処理するだとかという点ではなれておられないというか、そういう点からいろいろ問題があるというふうなことも聞きますし、あるいは行政指導の点で徹底していないために十分に漁民の方々が、どうすればいいのかという、具体的に手をとり足をとりといいますか、その細部にわたるまでの指導がなされていないために、まあ一応言われているんだけれども内容理解できないためにそうなっていなかったというふうなこともあるようにも聞いておりますし、あるいはまた、件数が何件あるかは明確ではありませんけれども、たとえばソ連側話し合い内容に基づかないで、いわゆる不当にというか、そういう形でこういう違反事件になり、罰金を取り立てられたというふうなこともあるかと思うんですが、しかし、問題は、それはいままでの中でそういう経過があってやむを得ないと言って放置してしまいますと、一億円ぐらいに上る罰金を取られた漁民の方々は泣き寝入りになってしまう。  つまり、ソ連側が不当に取り立てたんであるならば、必ずこれを取り戻してもらえるかどうなのか。あるいは十分に行政指導が行き届かないために自分たちが知らないで、知っておったらやるんだけれども知らないためにやらなかったという形で事実上ソ連側罰金を取られたという点については、政府としては、その問題の事実を究明し、ソ連側に、不当な罰金の取り立てであるならば、それを返済してもらう。行政の不備があるならば、政府としても、何らかのやっぱり対応をとるというぐらいな形で、いままで起こってきた問題については対応していただきたいと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  188. 松浦昭

    説明員松浦昭君) まず漁民の側の指導でございますが、この点につきましては、先ほどお答えいたしましたように、かなり繰り返し指導を行っております。今後とも、なおきめ細かい指導を行っていきたい、できるだけ違反の事前防止に努めたいというふうに考えております。  それから、不幸にして起こりました違反事件につきましては、ソ側が不当あるいは違法にこれを取ったという場合には、最後までわが方としては粘り強く向こう交渉してまいるつもりでございます。現に、二件でございますけれどもソ側もその非を認めて金を返してきた例もございます。したがいまして、わが方といたしましては、そのような向こう側の不当、違法な罰金徴収につきましては、回を重ねまして何度も向こう側に話をするという態度で臨みたいというふうに考えております。
  189. 立木洋

    立木洋君 大臣、いま違反の問題に関してはこういう経緯になっているわけで、違反と申しましてもいろいろなそれぞれの原因の違い、ですから、漁民の方々が不当というか、不当に取り立てられた罰金だとか、あるいは十分に知らないためにそういう事態に陥ったというふうなことで、現実に金を持って船に乗っておらないともう不安でたまらないというふうな事態もいろいろあるわけで、これは外務省としても外交折衝の上で努力をして、一日も早くそういう事態がなくなると同時に、いままで起こった懸案について十分に関係省庁とも協力して、いわゆるそういう方々が泣き寝入りにならないような処理にしていただきたいと思いますが、最後に大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  190. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日本漁船が拿捕されまして、不当な罰金を取られているんじゃないかというような御指摘がございました。そのようなことがないように、水産庁の方でも大変努力をされておりますが、外務省といたしましても、水産当局と力を合わせて、そのようなことが全くなくなるような方向で努力をいたしたいと思います。
  191. 和田春生

    ○和田春生君 もっぱらソ日協定に関連してお伺いいたしたいと思うんですが、これはもうすでに調印をされておりますし、今年末までの期間を持った日本とソビエト間の協定であります。内容についてはいろいろ問題もありますし、政府側がとりつくろったいろいろな説明をしているのをそのまますんなり受け取るわけにいかないような問題もあると思いますが、ありていに言って、いまさらいいとか悪いとか承認するとかしないとか言っても始まらないものだとも言えるわけです。  それよりも、こういう協定条約というのは、申すまでもなく、外交交渉一つの帰結ですから、そこに到達するプロセスにいろいろな問題がある。同時に、こういうふうにまたこの次、次というふうに協定を結んでいくといく場合には、将来どうなるんだろうか、こういうような問題について、現在結ばれた協定交渉過程というものが一つの参考になるわけです。そういう点で、これからの日本ソ連の間の漁業交渉、関連して今月の二十四日からアンカレジで日米加の三国間の協議が開始をされているわけですが、その見通し等に重点を置いてお伺いをいたしたいと思うんです。  今度の二百海里の問題についても、御存じのように、アメリカの二百海里水域法がソ連の二百海里を触発をしてきたわけでありますし、この日米加の三国間協議というものの成り行きいかんがいろんな意味でやはり今後の日ソ間の交渉にも影響を与えると思うんですが、二十四日から始まったアンカレジの日米三国交渉、この雲行きは一体どうなのか、その結末はどうなると思われるのか、そういう点について、まず最初に伺っておきたいと思います。
  192. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 十月の二十四日からアンカレジにおきまして日米加の改定の交渉が始まったわけでございますが、それに先立ちまして、実は、ことしの夏にシアトルにおきましてアメリカ及びカナダの代表と私どもとが話し合いをいたしたことがございます。そのラインによりますと、従来、百七十五度ウエストのところにいわゆる抑止線が引かれておりまして、その東側においてはサケ・マスをわが方は自発的に抑止をしてまいったことは和田先生承知のとおりでございます。  この考え方をさらにアメリカ側としましては拡大いたしまして、従来の暫定抑止線の西側におきましても、アメリカの特にブ系のサケ・マスにつきまして、その回遊範囲にわたりまして何らかの規制措置を講じたい。と申しますのは、要するに遡河性魚類につきましては、その母川国がその管轄権を持つという思想から、アメリカ系のベニを最大限保護するという立場で臨んできたわけでございます。現在まだ交渉中でございますので、どういった事態が生じているか私どもつまびらかではございませんが、恐らくそのときの主張と同じ主張をアメリカ側はしてきたんじゃないかというふうに考えられるわけでございます。  しかしながら、先生承知のとおり、この水域はアジア系のサケ・マスの混淆しております水域でございまして、従来から長い間約二十年にわたりまして論争を続けてきた水域でございまして、当然、このような混淆水域につきましては所定の配慮があってしかるべきでございます。アメリカとの五年間の長期協定を結びました際も、その第六条で、混淆水域の特殊性にかんがみてこの水域のサケ・マスに関しては日米双方協議をするということに相なっておる次第でございまして、このような混淆水域の特殊性といったようなことから考えましても、また、わが方のアジア系サケ・マスというものの漁獲というものを伝統的に行ってきたその漁獲量を保護するということのためにも、この交渉におきましては強い態度で臨みたい。特に伝統的なアジア系サケ・マスの実績を確保するということが非常に大切だと思います。また、この交渉が将来のソ連との交渉にも影響を及ぼしてまいりますので、さような態度でわれわれ代表団の方は臨んでおるというふうに考えておる次第でございます。
  193. 和田春生

    ○和田春生君 報ぜられるところによりますと、向こう側は公海上のサケ・マスの沖取りを全面的に禁止する、そういう線を打ち出してくるのではないかと言われているわけです。アジア系のサケ・マスといいますけれども、アメリカの国旗やカナダの国旗や日の丸のレッテルを張ってサケが泳いでいるわけじゃありませんからね。結局、母川主義をとって沖取りはさせないのだと、地先沖合いだけだという形になってきますと、事実上、公海上のサケ・マスの沖取りというものは不可能になる、そういう可能性を持っていると思うんです。  どうも、特に二百海里時代に入ってからの日本漁業に関する外交交渉を見ておりますと、希望的観測ばかりが先走って次から次へそれが裏切られていって、結局は追い詰められて、どろなわ式に後追いの対策に追いまくられているという経過をたどってきていると思うんですね。そこで、この日米加の三国交渉についてそうなる可能性はあるのですか、ないのですか、見通しはどうでしょう、いま言ったような沖取り全面禁止について。
  194. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 私ども承知いたしております限りでは、アメリカはいわゆる二百海里外の公海上のサケ・マスを全面的に禁止するというような、そういう立場で臨んでくるのではなくて、ブリストル系のサケ・マスが回遊する範囲においてその範囲を押さえるという態度で臨んでくるのではないかというふうに考えております。むしろ海洋法会議の席上における発言等から見て、公海上のサケ・マスについて禁止を主張する国は、むしろソ連あるいはカナダといったような国ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  195. 和田春生

    ○和田春生君 日ソ間について見ますと、日ソ、ソ日の協定だけではなしに、日ソ漁業協力協定で公海上のサケ・マスの漁獲という問題があるわけですね。で、いま言ったように、ブリストル系の問題について公海上の沖取りを禁止するのだと、それがそのまま今度はソ連に移しかえられますと、今度はアジア系のサケ・マスについても日本がだんだん追い込まれてきて、日本がとれるのは北海道の川から出ていって戻ってくるやつだけだということになっちゃいかねないですね。事実上、理屈はこねてみても沖取りは全面禁止に追い込まれるという事態もあり得るのではないか、これは大問題だと思うのですが、そういうような日米加だけを見ずに、これが必ず日ソ間に影響を及ぼすという点で大丈夫なんですか、余り楽観的なことを言っておって。
  196. 松浦昭

    説明員松浦昭君) ただいま決して私楽観的なことを申しておるわけではございませんで、アメリカ側の主張というものがブ系サケ・マスの回遊範囲を広範にわたってその保護措置をとろうということを考えておりまして、これを安易に受けるようなことがございました場合には、日ソ漁業交渉にも非常に大きな影響を及ぼすということは当然でございます。現在、延長してまいりました協定暫定協定でございまして、これは二百海里内の問題だけを処理するわけでございますので、二百海里外の公海上のサケ・マスにつきましては、これは今後の協力協定の問題になってくるわけでございまして、この交渉にも当然影響をいたすわけでございますから、日ソのことも頭に入れながら、われわれ交渉団は交渉いたしておるというふうに承知をいたしておるわけでございます。
  197. 和田春生

    ○和田春生君 その問題はまた後で関連して取り上げることにいたしまして、ソ日、日ソそれぞれの暫定協定を一年間延長することに合意を見た。しかし、七八年、来年の漁獲量の割り当てについては来月からモスクワで交渉が行われるわけですね。この点につきまして、これも報ぜられるところによると、私ども直接情報をとったわけではありませんが、ソ連のノーボスチ通信でカチューラという評論貝が語っているところによると、かなり厳しい線を打ち出してくるのではないかと思われるわけですが、現在、政府としてその交渉の当事者がどういう態度でソ連が出てくるというふうに情報を判断されておるのか、漁獲量について数字を交えて端的に御説明願いたいと思います。
  198. 松浦昭

    説明員松浦昭君) けさの新聞に確かに報道がございまして、ソ連のわが方に許容するソ連水域内の漁獲量が八十数万トン、それからわが方がソ側に許容するクォータの量が六十数万トンといったような報道がなされておるようでございますが、それは確かに私ども読んでおります。  この考え方はきわめて単純な考え方でございまして、要するに、ことしの三月から十二月の間に七十万トンの漁獲量、クォータ量がソ連の水域において日本船に対して与えられております。一方におきまして、ソ側船舶がわが方の二百海里内水域におきまして許容されております漁獲量が、御案内のように、七月から十二月まで三十三万五千トンということになっております。恐らくこれを月割りにして十二倍したというだけの数字であろうというふうに考えております。しかしながら、このような考え方はきわめて私ども不思議な考え方だというふうに考えておりまして、クォータというのは当然年間の漁獲に直さなきゃなりませんけれども、その場合には、シーズンによりまして当然漁獲の総量が違ってくる。月々違ってくるということがございますし、かつまた魚種も組成も全く変わってくるわけでございます。したがいまして、そういう変動を全然考えに入れない、そういう物の考え方というのは私ども非常に不可思議な考え方だというふうに考えております。これが果たしてソ連政府そのものの考え方であるかどうか私ども定かでございませんので論評は避けたいと思いますけれども、私どもが受ける印象はさような印象でございます。
  199. 和田春生

    ○和田春生君 ソ連考え方は非常に単純で不可思議だと言いますけれどもね、ああいう国は単純で不可思議な考え方を端倪すべからざるテクニックで押しまくってきて、結局、こっちがいかれてしまうというのがいままでの経緯でしょう。だから、余り単純で少しおかしいと言ってばかにするわけにいかないんじゃないか。  やっぱり向こうの言っている理屈を私なりに考えると、それを認めるか認めぬかは別だけれどもソ連の二百海里内はことしの三月から十カ月の実績で日本の漁獲量を割ると月当たり七万トンだと。したがって、これを七八年に伸ばすという場合には、その十二カ月分を八十四万トンで合理的じゃないかと。一方、日本の二百海里内では、ことしの七月からそれが約三十三万五千トンなら、それを平均をとって伸ばしていけば六十七万トンぐらいになる、こういう理屈を準備している。そうすると、ソ連の方は実際にことしにとっているのが六十五万トン程度と言われているわけですから、ふえると、日本の二百海里内で。ところが、ソ連の二百海里内では日本が約百十万トン一月から二月までかなり馬力をかけてとっているわけですからね、魚種も違うということもあるけれども。そうすると日本の方はかなり大幅に削減をされる。結局、ほぼ数字的に見ると八十万トンと六十数万トンと、大体ソ連の二百海里、日本の二百海里内に量でイーブンにもっていく、こういう当初二百海里施行のときにソ連側から流れてきた情報というものに意図的に近寄せていく、そういうやっぱり戦略、戦術というものが含まれているんじゃないか。  単純で不可思議だなんて言っとったんじゃ、くわえて振り回されて、気がついたらまたぞろ減船とか漁船員の雇用対策で後追いにきりきり舞いをしなくてはいかぬと、こういうことになる可能性かあると思うんですね。そういう点の見通しについてどういうふうなのか、これも外務省水産庁と両方が一緒になって交渉しているわけですけれども、ひとつ余りいいかげんなことじゃなしに、いろんな可能性についてもしかと承っておきたいと思うわけです。
  200. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 私、非常に単純かつ不可思議ということを申し上げたわけでございますが、まあ鈴木大臣も先般の交渉の際に端倪すべからざるという言葉をお使いになりましたとおりでございまして、ソ連の出方、交渉の仕方というものは和田先生おっしゃるように理屈抜きの場合もございますので、当然私ども用心してかからなきやならぬということはよく承知している次第でございます。  しかしながら、私が申したかったことは、通常漁業に経験を持ち、かつ漁業の担当をしているという立場から申しますと、当然シーズナルな変動というものは加味さるべきでありますし、かつまた魚種の組成というものも当然シーズンに変わってくるわけでございますから、そのような点から申しまして、このような議論というものは決して当を得た議論でないというふうに私どもは思っているわけでございます。先ほど申しましたように、私ども確かにソ連が今回EC等の水域におきまして非常に苦しい立場に立っておりまして、できるだけ極東におきましてその漁獲量を確保したいという意図から、あるいはECとの間にはまさに均衡原則ということでやられておりまして、そのために今回EC水域での操業を停止しているというような状況から、当然、均衡原則をもとにするというようなことでこのような立場考え方を持つに至るということは可能性として考えられるわけでございまして、決して私ども安心をいたしているわけではございません。しかしながら、われわれは、先ほど申しましたように、やはり伝統的な漁業実績というものを確保するという立場で臨みたいと考えておりますので、先ほどから申しましたような角度から、このような提案が行われましても、私どもとしては、これに対しての反論をするという立場で申し上げた次第でございます。
  201. 和田春生

    ○和田春生君 この点について、この二百海里時代に突入するその前後の状況というのは非常に参考になると思うんで、これはひとつ外務大臣にお伺いしたいんですが、実は、アメリカが二百海里法を施行したと、当初ソ連は海洋漁業国だということで日本と同じような立場に立ってこの二百海里についてはむしろ否定的といいますか、大変消極的な姿勢を示しておった、そこに期待をかけておったわけです。  この点について、私たちの党では、昨年の春に、必ずこれはアメリカに従ってソ連もやると、そうなると追い込まれることになる、いまからそのことについて対策を考えていかなくちゃいかぬぞということを海洋法問題に関する緊急アピールで発表したわけです。で日本政府にも申し入れたわけです。当時、三木内閣の時代だったんですけれども、三木さんのごときはもう馬耳東風もいいところ、われわれが何を言っとるかも意味がわからなかったんじゃないかと思うぐらいのんびり構えておったわけですね。そしてアメリカがやった、ソ連も二百海里をやってきたと、ばたばたばたときて周章ろうばいをして、領海法にしろ日本の二百海里水域法にしろ、本当にこれはもうどろぼうをつかまえてからなわをなうどころではない、あわてふためいてやったと、そして辛うじて交渉に間に合わせて、それもどんどん押しまくられたという経験をしているわけですね。  そうすると、この二百海里というのが、その二百海里におけるそれぞれの沿岸国の主権的権利を認める、こういう方向に流れているわけですから、ECでもやはり二百海里の中でソ連漁業を締め出そうとしている、アメリカもカナダもそうである、あるいはサケ・マス等については公海上の沖取りについても制限を加えようとしている、当然、ソ連にはね返ってくる、結局、日本は追い込まれていくという形になると思うんですよね。  一体、そういう点について、水産庁は、漁業を所管している立場としてそういうものは認めたくない、日本の利益の立場に立って断固としてがんばっていきたいという気持ちはわかりますよ、しかし相手のある交渉ですからね、しかも相手がソ連ですから。そういう点について、これはもう外務大臣にお伺いしたいんですけれどもね、どういう方策と腹構えでこれからのこの日ソ間の交渉に対応しようとしているのか、この点をお伺いしたいと思うんです。一年間延長は決まったけれども、それは協定が延長が決まっただけで、来年度七八年度の漁獲割り当てというのは十一月から交渉が始まるわけです。もう一月というのは目の前にきているわけですから、来年の。その点を一つお伺いしたい。
  202. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 大事な漁獲量の交渉につきまして、本年の暫定期間、本年いっぱいの暫定交渉の際には、なかなか先方が漁獲量の交渉に入らないということで、非常に追い詰められたようなかっこうであったと思います。時間がなかったせいもあり、また、いわゆる釣り堀方式と言われているように、漁獲区域を非常に制限をされたという、そのような案を提示をされて、時間のないままに妥結せざるを得なかったということがございますので、今回十一月十日からの交渉におきまして、先方は、その前にこの協定の文案とともに直ちに漁獲量の交渉をしようという話もあったわけでありますけれども日本側といたしましては、やはり十一月十日から十分な時間を置いて、そして日本側主張を十分に主張できるような、そういうことを考えて十一月十日から交渉に入ろうと、こういう決意をした次第でございまして、なかなか交渉はしてみないとわかりませんけれども日本といたしましては、来年一年間の漁獲量につきまして十分な主張をしたい、このような覚悟でございます。
  203. 和田春生

    ○和田春生君 御承知のように、ノーボスチ通信というのは国営通信で、しばしばソ連政府の意図をこの通信を通じてほかの問題でも前ぶれとして流すというようなこともあったわけですね。このカチューラという評論員がどういう立場にあるか、漁業問題について、私はつまびらかにしないんですけれども、これは決して軽視できない前ぶれだというふうに思えてならないんです。で日本政府は、もしこの通信で流されているような態度でソ連が出てきたというときに、どういう受けとめ方と対応をするつもりですか。
  204. 松浦昭

    説明員松浦昭君) ただいまの御質問でございますが、私どもの対応の仕方、反論の仕方は先ほど申し上げたとおりでございます。そのベースに立って、これはなかなか相手のあることでございまして、しかもソ連でございますので、非常にむずかしい交渉になるということは覚悟しておるわけでございますが、先ほども申しましたように、いまの点につきましては、先ほど私か申し上げましたような反論をいたしながら、最後まで伝統的な漁業実績の確保のためにがんばっていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  205. 和田春生

    ○和田春生君 これは外務大臣にお伺いしたいんですけれども、反論するというのはそのとおりで、向こう側の言うことを言いなりに聞くという必要はないと思うんですよ。しかし、外交交渉にはやはりそれだけの方策がなければいかぬし、いまや日本は武力を背景にして押しまくるというような方針はとっておらぬわけです。何らかのバーゲニングパワーを持つか、あるいは取り引きになったときにそれに備うる手段というものの用意かなければ、がんばるばっかりでだんだん時間切れに追い込まれていって、結局は向こうの言いなりに押さえ込まれてしまう、こういう可能性があるわけですね。特に日ソ間の交渉においては、理屈や筋をそうすんなり聞いてくれるような相手じゃないんですから、しばしば苦杯を喫しているんですね。  今後、これは非常に大事だと思うんです、これからの交渉にとって。いまのは暫定ですけれども、七八年の漁獲量の割り当て、関連する日ソ間の漁業協力に関する交渉、これは非常に重要な位置を占めていると思うんですが、一体、それに対する方策は用意があるのかどうか。具体的に、そういう問題ですから、いやこんなことを思っていますと言ってここで手のうちをさらけ出すことを私は求めているわけじゃない、言えとも言わない。聞きたいときにはこっそり聞きますけれどもね、本当に大丈夫なんですか、用意があるんですか、ノーズロースじゃないでしょうな。それをちょっと外務大臣に決意を聞いておきたいと思います。
  206. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 漁獲量の交渉につきまして、これはやはり技術的な根拠が必要であろうと思いまして、水産庁の方で技術的な根拠を持って交渉に当たられることと思っております。私ども、これはなるべく有利な結果が得られることをこいねがうわけでございますけれども、そういう技術的なデータその他は水産庁の方で準備をされておりますので、私どもといたしましては、十分な折衝能力を持って臨みたいということでございます。  来年が一応暫定的な一年間の延長ということになりましたので、ソ連政府といたしましては、当然、ことしのまんまずっと来年に延ばすというような発想でおられるということは容易に想像かつくわけでございますけれども日本側といたしましては、前回が非常に時間切れであったということがございますので、時間切れのために一応決めざるを得なかった要素を今回は十分時間をかけてその点はひとつ是正をすべきだという考え方でございます。
  207. 和田春生

    ○和田春生君 そういうことをちょっと聞いているわけじゃないんです。もちろん数字を用意し、いろんな技術的な面において万全の対策をとることは必要ですよ。しかし、それで聞くような相手じゃないじゃないかと、いままで、向こう側は。そういう合理的な基準や数字とか科学的な調査というものに基づいて物事を割り切ってくれるというんならばいいけれども、そうではない、ごり押しがある。いま外務大臣は一年間の暫定だから、ことしのまんまで延ばそうとしているんだろうとおっしゃったけれども、そうじゃないんですよ。ことしのまんま延ばすと言いながら、先ほど私が数字を挙げたように、ノーボスチ通信に出されたソ連考え方が出てくれば、日本は約二〇%ぐらい削減をされることになるんです。日本の二百海里内におけるソ連の漁獲量は一つも減らない、むしろ少しかさ上げになるというような結果になるわけですよ、すでにそういう手を打ってきているんですから。  ぼくが言っているのは、単に技術的とか数字じゃなくて、よほど腹をくくって、この問題がうまくいかぬときにはほかの何か問題で取引をするとか、あるいはソ連側を押しまくっていって譲歩をかち取るとか、外交上の手だてがなければどうにもならぬのです。頼みます、困る困ると言っているうちに土俵を割っちゃうわけですから。その中身はどんなことを考えているとか、どういうふうにしようというようなことを言えと言っているんじゃないけれども、その腹はあるのかと、用意はあるのかと外務大臣に聞いておるんですよ。
  208. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日ソの間の漁業関係は、これは先方も日本の二百海里内において漁獲を日本政府に求めてくるわけでありますから、私どもは、やはり漁業漁業の分野におきまして協力関係を深めていくということで、ほかの問題との取引関係というふうなことは考えないで交渉に臨む所存でございます。
  209. 和田春生

    ○和田春生君 漁業の問題は漁業に限ってという形になりますと、領土問題はきょうは質問をいたしませんけれども、なかなかむずかしいんじゃないかと思いますね。というのは、領土も現在向こうに押さえられているわけですから、こちらは理屈を言っているだけですから、漁獲量もソ連の二百海里内でとっている方がはるかに量が多くて、日本の二百海里内でソ連がとっている方が少ないわけですから、これなかなか対等のパワー関係にならぬわけですね。ですから、よほどそこにこちら側も腹を据えてかからないと、日ソ関係の全面的なやはり問題としてとらえながらその一環として交渉に臨まなければ、またぞろしまったという形になる危険性を感じます。  同時に、これは外務省というよりもむしろ農林省その他政府全体の問題になるんですけれども、見通しを立てながら、余り楽観的なことばかり言っておると、そうすると関係漁業者も国民も何んとなくそうなるんじゃないかなという期待を持つわけです。結果だめだということになると周章ろうばいをする。しかも、もし来年さらに漁獲量が削減をされるという形になると、減船対策にしろ、漁船乗組員その他関連水産業者の雇用対策にしろ、ことしどころではない、非常に深刻な問題が起きてくるわけです。そういうことに対しても十分備えるだけの決意がなければ交渉はうまくいかないんじゃないか。用意をしてないと、困るから助けてくれというならいい。それに備えるだけの準備があるんだという形になれば、がんばろうじゃないかと、こういうことも出てくるという面があると思うんですね。  したがって、きょうはもうこれ以上この問題について抽象的な論議は繰り返そうとは思いませんけれども、やはりソ連との外交関係をにらんでの方策というものと同時に、国内的に最悪の事態を予想した次善の手を打っておくということがやはり日本交渉力を強める基礎になるわけなんです。そういう点について十分の配慮をして腹をくくり、腰を据えて臨んでもらいたいと思います。そういう点についての外務大臣のお考え、また必要があれば水産庁についてもお答えを求めておきたいと思う。
  210. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま和田委員がおっしゃいましたこと、まことにそのとおり同感でございまして、減量が続くという場合には、これは漁民の方々のまた大変な苦悩を増すわけでございますから、そういう意味合いにおきましても、これは本当に真剣に腹を据えて取りかかるべきものだと、こういうふうに考えます。
  211. 松浦昭

    説明員松浦昭君) 御答弁大臣クラスの御答弁でございますので、私から申し上げるような筋ではございませんですが、ことしの減船、いま苦しい交渉の後の減船でございまして、私ども骨身にしみて減船の苦労を味わったわけでございます。本心もうこんなことは繰り返したくないという気持ちでいっぱいであるわけでございますが、それだけに今回の交渉をしっかりやっていかなきゃいかぬという気持ちでございます。ただ、和田委員がおっしゃられましたように、初めから用意をいたしておくということになりますれば、それがわかれば当然胸のうちを全部あけてあるということになりますので、これはやはり背水の陣と思いながら交渉したいというふうに考えておる次第でございます。しかし、万が一の場合には、当然、ことしのようなことは考えておれないというふうに思っておる次第でございます。
  212. 和田春生

    ○和田春生君 これは強い要望ですけれども、やはり関係の業者だけではなく、日本の国民の食生活に大変重要なかかわりを持っているわけですから、きょうは質問をこれで終わりますけれども、ひとつその点について抜かりがないように、またぞろ日本は最後の土壇場になってうまいぐあいにやられてしまったということが今度こそはないように特に希望しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  213. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 他に御発言もないようですから、質疑は終了したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  214. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  次に、日本国中華人民共和国との間の商標保護に関する協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  215. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。      —————・—————
  217. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ルーマニア社会主義共和国との間の条約締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件  投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件  国際海事衛生機構に関する条約締結について承認を求めるの件  及び、アジア太平洋電気通信共同体憲章締結について承認を求めるの件  以上五件を便宜一括して議題といたします。政府から帰次趣旨説明を聴取いたします。鳩山外務大臣
  218. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ルーマニア社会主義共和国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、ルーマニアとの間に所得に対する租税に関する二重課税回避のための条約締結するため、昭和五十年以来交渉を行いました結果、昭和五十一年二月十二日に東京において、わが方宮澤外務大臣と先方フィナンツ駐日大使との間でこの条約に署名を行った次第であります。  この条約は、第七十七回国会に提出されましたが、継続審査を経て第七十八回国会におきまして審議未了となり、その後第八十回国会に提出されましたが、同国会及び第八十一回国会で継続審査となって今日に至っている次第であります。  この条約は、本文二十八カ条から成り、その主な内容は、次のとおりであります。  事業利得につきましては、一方の国の企業が相手国において支店等の恒久的施設を通じて事業を営む場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国で課税できるものとし、船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる利得につきましては、相互に全額免税としております。  投資所得に対する源泉地国での課税率につきましては、配当及び利子に関しては一〇%、使用料に関しては、文化的使用料にあっては一〇%、工業的使用料にあっては一五%を超えないものとしております。  この条約締結によりまして、二重課税回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は一層促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国とブラジルとの間には、昭和四十二年一月二十四日に署名された所得に対する租税に関する二重課税回避のための条約締結されていますが、近年、ブラジルが行いました税制改正を考慮に入れるとともに、両国間の二重課税回避の制度の一層の整備を図るため、政府は、この条約を修正補足する議定書締結について交渉を行いました結果、昭和五十一年三月二十三日に東京において、わが方宮澤外務大臣とブラジル側カバール駐日大使との間でこの議定書に署名を行った次第であります。  この議定書は、第七十七回国会に提出されましたが、継続審査を経て第七十八回国会におきまして審議未了となり、その後、第八十回国会に提出されましたが、同国会及び第八十一回国会で継続審査となって今日に至っている次第であります。  この議定書は、本文六カ条から成り、これによる主な修正補足は次のとおりであります。すなわち、投資所得たる配当、利子及び使用料に対する源泉地国での課税率につきまして、基本的には現行の一〇%を一二・五%に改め、また、ブラジルにおける租税の減免等によるブラジルの経済開発を促進するための特別の奨励措置の拡充等を考慮に入れ、みなし税額控除に関する規定を整備したものであります。  この議定書締結によりまして二重課税回避の制度が一層整備され、両国間の経済交流はさらに安定した基礎の上に進められるものと期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に一投資の奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  エジプト政府は、第四次中東紛争後の国内経済再建のため、昭和四十九年半ばごろより、わが国に対し、民間ベースの経済協力を要請するとともに、投資保護協定締結を希望する旨提案してまいりました。わが方は、この提案に応じて交渉を行うことを決定し、同年十一月に、当時の木村外務大臣がエジプトを訪問した際、両国間において協定締結交渉を行う旨の合意が得られました。その後、わが方より協定案文を提示の上、昭和五十年十一月及び翌五十一年七月カイロにおいて交渉が行われ、この結果、協定の案文について最終的合意を見るに至り、本年一月二十八日に東京において、わが方佐藤外務事務次官と先方ナーゼル経済・経済協力省次官との間でこの協定の署名が行われた次第であります。  この協定は、本文十四ヵ条及び議定書から成っております。  この協定は、投資の許可について最恵国待遇を相互に保障しているほか、事業活動、出訴権、送金等に関する内国民待遇及び最恵国待遇、収用、国有化された場合及び戦争等により被害を受けた場合の補償措置、投資保証に基づく政府代位、投資紛争解決条約への付託、仲裁委員会等について定めております。  この協定締結により、わが国とエジプトとの間の投資・経済関係は一層安定した基礎の上に促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、国際海事衛星機構(インマルサット)に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府間海事協議機関(IMCO)は、一九六六年以来、船舶と陸地との間及び船舶船舶との間の海事通信の混雑緩和及びこれらの通信の質の改善のため、海事通信に衛星通信技術を導入することについて検討を行ってきましたところ、一九七三年にIMCO第八回総会は、国際海事衛星機構を設立するための条約を作成する政府会議の開催を決議いたしました。この条約は、この決議に基づき、数次にわたる政府会議及び作業部会での起草作業を経て、一九七六年九月の政府会議で採択されたものであります。  なお、この条約は、国家間の条約ですが、このほかに、政府または政府の指定する事業体が署名し、機構の運用に関する細目を定める運用協定が作成されております。  この条約によって設立される国際海事衛星機構は、海事通信の改善のために必要な衛星及びその関連施設を提供することにより、海上における遭難及び安全に係る通信、海事公衆通信業務並びに無線測位能力の改善に貢献することを目的としております。現在の海事通信は、主として短波によって行われているところ、衛星を利用することにより、増大する海事通信の需要に対応し、その質の改善、業務提供区域の拡大を図ることができるとともに、通信の自動化、高速度データ伝送等の提供が可能となります。また、緊急時の通信も改善され船舶及び人命の安全に役立つほか、無線測位技術の改善も将来期待されます。  わが国としてかかる海事通信の改善に著しく貢献することとなる国際機関に参加することは、わが国の海事通信の利用者の利益に資するのみならず、主要海運国たるわが国立場国際海事衛星機構の運営において反映せしめるとの見地からも有意義なことと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、アジア太平洋電気通信共同体憲章締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)を中心として従来より推進されてきたアジア電気通信網計画に関連して、その完成を促進し、その後の有効な運営を図るための協議機関を設立しようとの機運がアジア=太平洋地域の各国に高まり、一九七六年三月二十七日、本共同体を設立するための憲章が採択されました。  この憲章は、本共同体の設立、その目的及び任務、加盟国の資格、主たる機関である総会等の権限、本共同体の経費を加盟国等の分担金で支払うこと等を内容としております。  わが国は、わが国アジア=太平洋地域の諸国との関係の重要性にかんがみ、従来より同地域における電気通信業務の整備拡充に積極的な協力を行ってきましたが、わが国が本共同体に参加し、技術的協力を推進していくことは、域内各国の強い要望にこたえるものであるとともに、域内各国に対する国際協力の増進の見地からもきわめて望ましいものであります。  他方、わが国と域内各国との間の電気通信業務については、国際電話を例とすれば、域内各国との間の取扱量は国際電話全体の取扱量の六〇%を超える状況にあり、同地域における電気通信業務の技術的向上と拡充は、わが国と同地域との通信の経済性及び効率性の向上にも資するものと考えられます。  なお、この憲章は、すでに十四カ国が締約国となっており、わが国としても早急に締結したいと考えております。  よって、ここに、この憲章の締結について御承認を求める次第であります。  以上五件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。  以上でございます。
  219. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 以上をもって説明は終わりました。  五件に対する審査は、後日に譲りたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十七分散会