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国務大臣(
鳩山威一郎君) ただいま議題となりました
所得に対する
租税に関する二重
課税の
回避のための
日本国と
ルーマニア社会主義共和国との間の
条約の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
政府は、ルーマニアとの間に
所得に対する
租税に関する二重
課税の
回避のための
条約を
締結するため、昭和五十年以来
交渉を行いました結果、昭和五十一年二月十二日に東京において、わが方
宮澤外務
大臣と先方フィナンツ駐日大使との間でこの
条約に署名を行った次第であります。
この
条約は、第七十七回
国会に提出されましたが、継続審査を経て第七十八回
国会におきまして審議未了となり、その後第八十回
国会に提出されましたが、同
国会及び第八十一回
国会で継続審査となって今日に至っている次第であります。
この
条約は、本文二十八カ条から成り、その主な
内容は、次のとおりであります。
事業利得につきましては、一方の国の
企業が相手国において支店等の恒久的施設を通じて事業を営む場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国で
課税できるものとし、
船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる利得につきましては、
相互に全額免税としております。
投資
所得に対する源泉地国での
課税率につきましては、配当及び利子に関しては一〇%、使用料に関しては、文化的使用料にあっては一〇%、工業的使用料にあっては一五%を超えないものとしております。
この
条約の
締結によりまして、二重
課税の
回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化の面での交流は一層促進されるものと期待されます。
よって、ここに、この
条約の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に、
所得に対する
租税に関する二重
課税の
回避のための
日本国と
ブラジル合衆国との間の
条約を修正補足する
議定書の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
わが国とブラジルとの間には、昭和四十二年一月二十四日に署名された
所得に対する
租税に関する二重
課税の
回避のための
条約が
締結されていますが、近年、ブラジルが行いました税制改正を考慮に入れるとともに、両国間の二重
課税回避の制度の一層の整備を図るため、
政府は、この
条約を修正補足する
議定書の
締結について
交渉を行いました結果、昭和五十一年三月二十三日に東京において、わが方
宮澤外務
大臣とブラジル側カバール駐日大使との間でこの
議定書に署名を行った次第であります。
この
議定書は、第七十七回
国会に提出されましたが、継続審査を経て第七十八回
国会におきまして審議未了となり、その後、第八十回
国会に提出されましたが、同
国会及び第八十一回
国会で継続審査となって今日に至っている次第であります。
この
議定書は、本文六カ条から成り、これによる主な修正補足は次のとおりであります。すなわち、投資
所得たる配当、利子及び使用料に対する源泉地国での
課税率につきまして、基本的には現行の一〇%を一二・五%に改め、また、ブラジルにおける
租税の減免等によるブラジルの経済開発を促進するための特別の奨励措置の拡充等を考慮に入れ、みなし税額控除に関する規定を整備したものであります。
この
議定書の
締結によりまして二重
課税回避の制度が一層整備され、両国間の経済交流はさらに安定した基礎の上に進められるものと期待されます。
よって、ここに、この
議定書の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に一投資の奨励及び
相互保護に関する
日本国とエジ
プト・アラブ共和国との間の
協定の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
エジプト
政府は、第四次中東紛争後の国内経済再建のため、昭和四十九年半ばごろより、
わが国に対し、民間ベースの経済協力を要請するとともに、投資
保護協定の
締結を希望する旨提案してまいりました。わが方は、この提案に応じて
交渉を行うことを決定し、同年十一月に、当時の木村外務
大臣がエジプトを訪問した際、両国間において
協定締結の
交渉を行う旨の合意が得られました。その後、わが方より
協定案文を提示の上、昭和五十年十一月及び翌五十一年七月カイロにおいて
交渉が行われ、この結果、
協定の案文について最終的合意を見るに至り、本年一月二十八日に東京において、わが方佐藤外務事務次官と先方ナーゼル経済・経済協力省次官との間でこの
協定の署名が行われた次第であります。
この
協定は、本文十四ヵ条及び
議定書から成っております。
この
協定は、投資の許可について最恵国待遇を
相互に保障しているほか、事業活動、出訴権、送金等に関する内国民待遇及び最恵国待遇、収用、国有化された場合及び戦争等により被害を受けた場合の補償措置、投資保証に基づく
政府代位、投資紛争
解決条約への付託、仲裁
委員会等について定めております。
この
協定の
締結により、
わが国とエジプトとの間の投資・経済
関係は一層安定した基礎の上に促進されるものと期待されます。
よって、ここに、この
協定の
締結について御
承認を求める次第であります。
次に、
国際海事衛星機構(インマルサット)に関する
条約の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
政府間海事
協議機関(IMCO)は、一九六六年以来、
船舶と陸地との間及び
船舶と
船舶との間の海事通信の混雑緩和及びこれらの通信の質の改善のため、海事通信に衛星通信技術を導入することについて検討を行ってきましたところ、一九七三年にIMCO第八回総会は、
国際海事衛星機構を設立するための
条約を作成する
政府間
会議の開催を決議いたしました。この
条約は、この決議に基づき、数次にわたる
政府間
会議及び作業部会での起草作業を経て、一九七六年九月の
政府間
会議で採択されたものであります。
なお、この
条約は、国家間の
条約ですが、このほかに、
政府または
政府の指定する事業体が署名し、機構の運用に関する細目を定める運用
協定が作成されております。
この
条約によって設立される
国際海事衛星機構は、海事通信の改善のために必要な衛星及びその関連施設を提供することにより、海上における遭難及び安全に係る通信、海事公衆通信業務並びに無線測位能力の改善に貢献することを目的としております。現在の海事通信は、主として短波によって行われているところ、衛星を利用することにより、増大する海事通信の需要に対応し、その質の改善、業務提供区域の拡大を図ることができるとともに、通信の自動化、高速度データ伝送等の提供が可能となります。また、緊急時の通信も改善され
船舶及び人命の安全に役立つほか、無線測位技術の改善も将来期待されます。
わが国としてかかる海事通信の改善に著しく貢献することとなる国際機関に参加することは、
わが国の海事通信の利用者の利益に資するのみならず、主要海運国たる
わが国の
立場を
国際海事衛星機構の運営において反映せしめるとの見地からも有意義なことと
考えられます。
よって、ここに、この
条約の
締結について御
承認を求める次第であります。
最後に、
アジア=
太平洋電気通信共同体憲章の
締結について
承認を求めるの件につきまして提案理由を御
説明いたします。
国際連合
アジア太平洋経済
社会委員会(ESCAP)を中心として従来より推進されてきた
アジア電気通信網計画に関連して、その完成を促進し、その後の有効な運営を図るための
協議機関を設立しようとの機運が
アジア=太平洋地域の各国に高まり、一九七六年三月二十七日、本共同体を設立するための憲章が採択されました。
この憲章は、本共同体の設立、その目的及び任務、加盟国の資格、主たる機関である総会等の権限、本共同体の経費を加盟国等の分担金で支払うこと等を
内容としております。
わが国は、
わが国と
アジア=太平洋地域の諸国との
関係の重要性にかんがみ、従来より同地域における電気通信業務の整備拡充に積極的な協力を行ってきましたが、
わが国が本共同体に参加し、技術的協力を推進していくことは、域内各国の強い要望にこたえるものであるとともに、域内各国に対する国際協力の増進の見地からもきわめて望ましいものであります。
他方、
わが国と域内各国との間の電気通信業務については、国際電話を例とすれば、域内各国との間の取扱量は国際電話全体の取扱量の六〇%を超える
状況にあり、同地域における電気通信業務の技術的向上と拡充は、
わが国と同地域との通信の経済性及び効率性の向上にも資するものと
考えられます。
なお、この憲章は、すでに十四カ国が締約国となっており、
わが国としても早急に
締結したいと
考えております。
よって、ここに、この憲章の
締結について御
承認を求める次第であります。
以上五件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御
承認あらんことを希望いたします。
以上でございます。