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国務大臣(
渡辺美智雄君) これはむずかしい実は問題だと私は思います。
厚生省はいま松浦
局長が言ったように、
売春そのものは
厚生省の所管じゃないんですよ。
厚生省の方は要するに空気、きれいな空気とか、それからきれいな水とかそれから採光ですね。採光がどうなっているとか、お客さんの入るところへどぶ水が入ったりおかしな水が入っちゃ困る、健康上の問題を取り締まっているわけですから。そこで
売春の取り締まりを
厚生省にやれと言われましても、これは大体
厚生省は医者とか薬剤師とか、それから地方に監視員とかおります。そういうところの衛生監視員なんてのがおりますが、衛生監視員は水の監視に行ったり、空気が悪いかどうかというのを見に行くのであって、男女関係を調べに行くのが
厚生省の監視員じゃないわけなんですよ。そういうような点から、
厚生省の権限でこれをやれと言ってもなかなかできない。ところが、現実は
先生がいまおっしゃったように、あるそうです。私も聞きました。週刊誌でも見ています。ところが暴力団なんかがいると、
厚生省の役人は大体おとなしいのが多いですからね、それはもう暴力団がいるとか、ひもがついているとかいうとおっかなくて大体立ち寄らないですよ、これは。やさ男ばっかりでね、ピストルを持っているわけでもないし。ですから、これはやはりもしそういうことを徹底するとすれば、
政府として、厚生
大臣としてでなくて
政府として、たとえば警察庁なり何なりが、あなたがいまおっしゃったように、風俗営業という問題についてもっときちっとけじめをつけられないのかという疑問は私は一つ持っているわけなんですよ、これは。
それはともかく、バーやキャバレーに行っても電気は何ルクス以上にしろと、ここだけが明るくてほかが暗くちゃね、向こうでおかしなことをやっちゃいかぬと、だから全部すみからすみまで何ルクスとこれは書いてあるわけですから、これは風俗営業法に。ですからそういうような問題で、仮にそういう浴場に異性を雇ってマッサージをしたり何かするのを禁止すると、これはなかなかむずかしいらしいんですね。異性がマッサージしては何で悪いんだと、個室で異性がマッサージしたら、それじゃたとえば個人のうちとかあるいは旅館の一部屋とかに女性のマッサージ、熱海であるとか何かへ行くと個人の人が行ってマッサージすると。そういうのも、それじゃ異性がマッサージ、女の方が男の人に、あるいは男の人が女の人のところヘマッサージに行って悪いということになれば、やっぱり
法律、同じ
法律になりますから、そこらのところの関係は一体どうなるのかと、なかなかむずかしいらしい、これは。
問題は、やはりこれは
社会全体の私は問題じゃないかと、
社会全体の問題。一つは、そういうところで本当にマッサージを受けて体を流してもらうなら何も一万円も出して行くばかは私はないんじゃないかと思うんです、本当の話が。何かほかの下心を持って行くんじゃないかというふうに勘ぐられても、これは仕方のない私はことだと思います。ですから、そういうところに行かないような
社会運動を起こすことも一つでしょうし、地域
規制をすることも一つでしょうし、
利用者がなければつぶれるわけですね。
利用者があるから栄えているわけですから、
利用者をなくすというのは腕ずくでこれは縛るというわけになかなかいかないということになれば、結局これは一つの
社会教育とか、道徳
教育とか、モラルの
教育とかなんということでなく、世間
一般の常識上の教養として、あるいは
教育としてそういうところへ行かないようにさせるという、これは
文部省でしょうね。そういうふうなことが一つ必要だと。
それから、もしそういうところへ行っても、結局そういうところで管理
売春をさせているというようなことになれば、これは
売春防止法があるんですから、警察庁はもっとこれは取り締まってもらわなきゃいかない。警察庁は見て見ぬふりなんかされたんでは困るわけですからね。ですから、これはそういう管理
売春のようなものについては警察庁がきちっとこれはやってもらわなきゃならぬと、私はそう思うんです。
厚生省のやることは何かと言うと、
厚生省として先ほど言ったようなことと、やはりこれは何でそういうふうに女性が転落をするかという問題、この問題もやっぱり
社会全体の問題だけれ
ども、昔は非常に生活に困窮をして転落をするというケースが多かった。
厚生省でも婦人相談所のようなものがございまして、いろんなことで家出をしたり、あるいはそういうふうな
売春等をやって検挙をされて厚生をするために預けられるという
施設を持っておるわけです。そういうところで統計をとって、婦人相談所の統計ですが、三年ぐらい前の統計ですかね、転落の動機というのを書いてあるんですよ。
昭和十年ぐらい前までは半分以上の者は経済的理由だということを書いてあった。ところが最近の統計では、
自分の意思によるんだというのが半分近い四八%ぐらい、経済的なものはずっと引っ込んじゃって、経済的なものは二八%か二七%ぐらいになってきておる。実際問題として、女性自身が普通勤めたって十万円しかもらえないと、そういうところへ行ってかせげば三十万になると、金ためるのにということなら経済的な理由だろうけれ
ども、私は、好きだからそういうことをやるんだというのが
自分自身という意思表示になっているかどうか知りませんが、そういうような本人自身の意思でやっているというのがかなり最近多いんですね、これは実際問題として。二十何回検挙された女性が、検挙して調べてみたら一億何千万か貯金を持っていたと。そうして、もう二十何回も
売春で検挙されている。こういうやつは本当にめんどうの見ようがないね、本当の話が実際問題として。ですから、これはやっぱり
社会全体の問題としてどういうふうにやっていくのか。経済的な問題、女性の地位の向上の問題、それからそういうふうな
売春取り締まりの問題、それから暴力団の撲滅の問題、もう全部の問題が私はかかわった問題であって、これを
売春問題と、ただ単に
トルコぶろだけのそういうような小さな問題ではなくて、もっともっと大きな私は大問題ではないだろうかというような気がするわけであります。
先生のおっしゃる
趣旨はよく私わかりますので、これは
総理府が中心になってやることで、私が
余りしゃべるとしかられちゃうかもしれないが、やはり
文部省、
厚生省あるいは警察、あるいは自治省、地域団体、こういうような
意見を盛り上げて、もし立法措置をするとしても自治省だけでなかなか解決のつかぬ問題ですから、私も閣僚の一人として、
国務大臣でもございますから、
先生のおっしゃる
趣旨もわかりますので、何とか
社会的な弊害のないような形に持っていく工夫をもりと研究をしてみたいと、かようにまじめに実は
考えておる次第でございます。