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白木義一郎君 私は、その教育の
効果は教師の教育的能力いかんに最大限にかかっている、こういう強い
考えを持っておりますが、現在では
大学のための高校教育、高校教育のための中等教育、中学教育のための小
学校教育、そのようになっていると
考えざるを得ないのであります。また、
大学の
先生より高校の
先生、高校の
先生よりも中学の
先生、中学の
先生よりも小
学校の
先生が知能的にも社会的地位も高いという今日的な常識をどうしても破らなければならない。むしろ小
学校の
先生は
大学の
先生と同じ専門職であります。
大学の
先生と違った
意味の専門的能力を必要とするのが小
学校の
先生です。しかし現在では
大学の教授と小
学校の
先生とは全然受け入れ方が違う、扱いも違う。これまでの教育の世界においてそういうことが閑却に付されていたところに小
学校の教育が
大学教育に従属するような現状になって、小
学校教育独自の
効果を上げることができなかった。この点を今後どうしても明らかにしていかなければならない。むしろ英知の劣ったようにみなされている子供の教育にこそ費用をかけ、また設備を充実して長期の教育が必要になるわけです。ということは、社会にあるいは将来害毒を流す傾向のある能力の劣等児といいますか、また不良の生徒を収容してりっぱに社会へ送り出すというのが国公立の
学校の本来の使命ではないか。ですから、むしろ教育者としては、できないであろう子供に全精力と全情熱を傾けていく、できのいい子はすらすらすらすらいくわけです。ところが、現実はこの手数の一番かからない成績のよい生徒を
選抜する
方向へどんどん進んでいるわけです、国公立が。そしてやっかいな手数のかかるのは私立
学校へ一任をしてしまうというような、国公立の設立の趣旨に反する
方向に進んでいるというのが今日の教育の空洞化というようなことに根本的につながることであろうと私は強く思わざるを得ないわけでございます。
そこで最後に、今回の法案につきまして討論をと思いましたが、残念ながら討論の機会を得ませんので、討論のつもりで申し上げておきたいと思います。
最近における
入試準備教育の過熱状況は極限にまで達し、塾や業者テストの横行、果ては非行、自殺に至るまで看過できない
段階であります。その
意味で、
大学入試の
改善に取り組むことは焦眉の問題であります。ところで、
大学入試の
改善策を
検討するには、その
前提として、まず
大学のあり方などを論ずることが必要であることは言うまでもありません。つまり今後の高等教育人口をどう見込むか、そして高等教育の大衆化についてどう評価するのか、それに従い、今後の
大学はどうあるべきなのか等について慎重な
検討が必要であります。しかしながら、今回提案されている
共通第一次
試験においては、それらの点が踏まえられているとは思えないと言っても過言ではありません。さらに、私
どもはこれからの
大学は国民に開かれた
大学を志向すべきであると
考えております。現在のように、主として高校卒業後すぐ
大学に入学するシステムだけではなく、生涯教育の観点から、仕事、住民運動、労働組合活動等の必要から、学びたい人に、さらには主婦や老人等にも
大学教育を保障する必要性を痛感しております。しかしながら、今回の
共通第一次
試験を
実施した場合には、そうした人をいま以上に締め出す
方向で作用すると言わざるを得ません。
以上のように、今回の
入試改革は
大学のあり方を見落とした小手先のものであります。
次に、
入試の
改善を実現するためには、
入試制度を変えるだけでは不可能であります。わが党が
質疑の中で明らかにしたように、
国公私立大学間の
格差の是正、単位の互換性の拡充、
大学間での転入、編制を容易にすること、各
大学における特色ある教育の充実、昼夜間開講制の拡充、学歴偏重社会の打破、国民の功利的な教育観の払拭等々、これらに積極的に取り組んで初めて
入試改革が功を奏してくると思うのであります。しかしながら、これについても政府のいままでの施策は不十分と言わざるを得ず、今回の
質疑の中でも具体的で積極的な提案はなされなかったのであります。
次に、
共通テストそのものについても多くの問題が
指摘されております。第一は
大学に対する影響であります。先日の当
委員会における林参考人が
指摘されたように、各
大学において
入試改革に取り組む姿勢が重要であり、現に一部ではありますが、個性ある学生を入学させるべく
入試に工夫をこらしている
大学があります。しかしながら、
共通テストは
五教科・六もしくは七
科目で
実施される予定であるため、オールラウンドの平均的で小ぢんまりした人間が多くなり、各
大学がそれぞれの特色を発揮しにくくなるおそれを感じております。したがって、さらに
大学間にピラミッド型の体系ができるのではなかろうかと危惧されております。また、
共通テストの
実施により、
入試権限については、
文部省、
大学入試センター、
国大協、各
大学の
関係で従来とは異なる様相を示し、
大学の
自治の点からも懸念せざるを得ないのであります。
第二には、高等教育に対する影響であります。
文部省は、
共通第一次
試験の
実施により
難問奇問の出願がなくなり、高校教育は正常化されると楽観視をしていらっしゃるように思います。しかしながら、高校側にしても多くの生徒が受ける全国的に
共通の問題であるということになれば、それに標準を合わせた授業を行わざるを得ないというのは当然のことと言えるかもしれません。さらに広域的な業者テストがはびこる余地もそこにあります。また
共通テストの時期が十二月末ということから三学期の授業は実質的には全く行えない状況となります。私学のみ受験しようとする人や就職する人などに対しても大きな悪影響を与えることは必至であります。また職業高校の卒業生については、二次
試験の代替
科目や
推薦入学制の活用等を図っても、おのずと限界があり、
共通テストの
実施により不利になることは否めない事実であります。現在においても職業高校の
問題点が多く
指摘されており、一層拍車をかけることになりましょう。
第三は、高校生の負担軽減につながるかということであります。
共通第一次
試験の
科目数については、現在
個々の
大学で行っている
入試よりふえることとなり、さらに第二次
試験も受けさせられ、その間の約三カ月の精神的緊張に相当なものがありましょう。また
一期校、二期校が一本化され、受験機会が減ることな
ども考慮に入れると、決して受験生の負担軽減にはつながらないと思うものであります。そのほかにも、予備
選抜に使うことの
問題点、マークシート方式の限界、第二次
試験のあり方、
大学入試センターの組織、運営のあり方、
共通テストに対する高校側のかかわり方等々
問題点は尽きないのであります。
以上、るる申し述べましたように、
共通第一次
試験の
実施については多くの
問題点があり、このまま強行した場合には当面の糊塗策にもなり得ないのではなかろうかと憂えるものであります。したがって、
大学入試センターに対する部分については、なお一層慎重な
検討を必要とすると思うものであります。
ところで、本法案においては
大学の
学部や
大学院の増設等と
大学入試センターの
設置とが一緒に盛り込まれております。しかしながら、
大学入試センターの性格やいままで述べてきたように多くの
問題点があることからして、当然分離して提案され、慎重な手続を踏むべきであったことを申し上げておきたいと思います。
大学入試センターの問題が余りに大き過ぎるため、おのずと
質疑はそちらが
中心になりましたが、時間が許されるのならば、高等教育全体のあり方、今後の
大学の拡充整備の方針、医
学部、歯
学部の
設置計画、医療技術者の養成及び
国立大学共同利用機関のあり方等についても論議を詰めておきたかったのであります。返す返すも本法案が分離して出されなかった点を遺憾に思っております。最後に、私
どもは
大学の
学部の改組、増設、
大学院の
設置等については積極的に取り組むべきであるという
立場に立っております。その
意味では本法案における
学部増設等はむしろ不十分であるくらいの
気持ちでおります。
いずれにせよ、この部分については賛成でありますので、本法案については多くの
問題点を含んでおりますが、学問、
大学の
自治をあくまでも尊重するという
立場から、やむを得ず賛成せざるを得ないという
意見を表明をいたしまして、私の質問を終わります。