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1977-02-08 第80回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月八日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       稻葉  修君   稲村佐近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    白浜 仁吉君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森山 欽司君    阿部 昭吾君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       武藤 山治君    浅井 美幸君       坂井 弘一君    広沢 直樹君       二見 伸明君    矢野 絢也君       大内 啓伍君    河村  勝君       工藤  晃君    寺前  巖君       正森 成二君    大原 一三君       田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省条約局長 中島敏次郎君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         厚生大臣官房会         計課長     持永 和見君         厚生省社会局長 曾根田郁夫君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         中小企業庁長官 岸田 文武君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省財政局長 首藤  堯君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     南部 哲也君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月八日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     塚本 三郎君   正森 成二君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     大内 啓伍君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  総括質疑を行います。矢野絢也君
  3. 矢野絢也

    矢野委員 公明党国民会議を代表いたしまして、質問をいたします。  昨年の総選挙、私ども公明党は五十六の議席を国民からいただいたわけでありまして、予算を伴う法案を提出する権限というものをいただいたわけでございます。これは力であるとともに大いなる責任のある立場である、このように私どもは自覚をいたしております。  総理は「連帯協調」という言葉が大変お好きなようでございますが、いずれにしても、このように保革が接近した国会におきましては、今日までの国民政治不信を解消する大切な手だてとして、国会運営それ自体、大きく転換が迫られておると私は思うのです。いままでのような相変わらずの行政優位の立場を、どうもいままでのところ、福田内閣は崩しておられるようではありませんし、連帯協調とか、ポーズだけでこの急場をしのぐということは許されることではありません。私たち議会人は、立法府として行政府に対するとき、政府に対するとき、あるいはまた議員として国民責任を負うときには、与党野党もそんな区別はないと思います。ここでは与党野党だという論争をするけれども国民に対して責任を持つという場合には、すべて政治家がひとしく責任を持たなくてはならぬ。議論をいたしますときは、与党だとか野党だとか政府の閣僚だとかいう立場の違い、これは当然あってしかるべきでしょう。しかし、それぞれが国民から選ばれた政治家としての立場の違いというものを超えた、国民から信頼される立法府議会のあり方をこの国会で取り戻す必要があると私は思うのです。国権の最高機関としての良識あるいは権威あるいは議会制民主主義の機能を回復する、そのため、私たち野党側にももし改めなくちゃならぬ点があれば、これは改める必要があると思うのです。しかし、今日までの議会制民主主義権威を失墜させてきたのは、そのほとんどは多数に物を言わせた妥協のないごり押し、無理が通れば道理が引っ込む式の話し合い拒否修正拒否、あるいはこの国会においても、福田総理は、言葉は丁寧なようでございますけれども議論はすれ違いという形が多いようであります。とことん話し合いをし、合意をできる接点というものをお互いに模索する努力、これを私たちも努めていきたいと考えております。  議会制民主主義を守り、政治不信を解消するために、総理の所感と申しますか、決意というものをまず伺っておきたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 矢野さんのただいまのお話、私も全く同感でございます。政界には与党野党があります。また、内閣もあり、国会自体もあるわけでございますが、やっぱり国会内閣との関係、こういうことを考えてみましても、国会には立法府としての任務、また政府内閣には行政府としての任務がありますが、これが何らの交渉というか、連絡というか、調整のないままに行われるということになりますれば、これはわれわれの願うところの国家国民、これに対してどういう影響が出てくるか、そういうことになろうかと思うのです。やっぱり私は、しばしば言って恐縮ですが、協調連帯、これは社会各部面における原理、原則でなければならぬ、こういうふうに思っておりまするけれども国会運営政治の場面、こういう面におきましても、その考え方でやっていかなければならぬ。  要は、一致するはずです、国家国民、こういうところで一致するはずですから、お互いにそういう立場でやっていきますれば、国家国民ということをにらんで、合一、調和点というものが必ず得られる、かように確信いたします。
  5. 矢野絢也

    矢野委員 私はこれから、公共事業減税かなどのテーマで、今日の社会的公正をどう回復するか、あるいは景気浮揚策をどのように具体的にとっていくか、あるいは私どもが要望しております減税につきましての財源問題、こういった点を中心に御質問をいたしますけれども、まず最初に、法律論立場政府考えをただしておきたいわけです。  つまり、国会立法府予算修正する場合、一体修正権限界があると総理はお考えなのかどうか。  国会は、かつて昭和二十三年の二月二十六日、当時の両院法規委員会両院議長に対しまして、「国会は、予算の増減又は予算費目の追加若しくは削減等すべて内閣の提出した予算に関し、最終且つ完全な権限を有する。」、これは両院法規委員会がこのような内容勧告両院議長に対して行っているわけでございます。これは財政についての国会中心主義立場からなされたもので、現行憲法の正しい認識に立ったものと言えます。しかし、従来絶対過半数を持っておりました自民党政府は、立法府予算修正権限界があるかのごとき答弁をされておるわけでございますが、この点について見解を明らかにしていただきたいと思います。
  6. 真田秀夫

    真田政府委員 お答え申し上げますが、ただいま矢野委員が仰せられましたかつての両院法規委員会勧告があったことももちろん存じております。でございますが、予算につきましては、憲法内閣にその提案権があるということは、これはもう明瞭なことでございます。一方、予算につきまして国会議決権をお持ちになっていることも、これも明瞭でございます。  そこで、議決権内容として修正権が含まれるということ、これもはっきりしておりますが、問題は、その修正内容としてどこまでできるかということでございまして、それは内閣が持っております提案権と、それから国会がお持ちになっております議決権に含まれる修正権との調和の問題でございまして、この点につきましては、従来から内閣といたしましては、それは提案権を損なわない限度において修正ができるんだというふうな考えでその間の調整考えているわけでございまして、具体的にいままでの国会における政府考え方といたしましては、それは項の新設は無理ではなかろうかというふうな解釈をとっております。現在でもそういう解釈をとっております。
  7. 矢野絢也

    矢野委員 いまの御答弁は、内閣予算提出権提案権、これを損なわない限度議会修正権というものは用いられるべきである、具体的には予算の款とか項とか目とかというのがあるわけでありますけれども、項の新設は認められないという御答弁であります。  かつて佐藤総理は、昭和四十六年一月の予算委員会におきまして、このように答弁をされておる。「御審議を願っておる以上、修正権はある、そうしてその修正権が、減額修正だけが許されて増額修正が許されないと、そういうものではない、しかし予算編成権に支障を来たすような、項をふやすとか、こういうような問題は、これは国会といえども最高機関といえどもなすべきことではない、かように考えておる。」と述べておられる。要するに、政府は、国会増額修正権はあるけれども内閣編成権侵害するような修正は許されない。具体的に、新たな費目予算における款項、これを付加する修正は許されないとする立場をとってこられたわけであります。  福田総理も同様の御見解でございますか。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私も戦後、財政の問題にはずっと携わってきておりまするが、この修正権問題についての理解はただいま法制局長官が申し上げたとおりに考えております。
  9. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、これはきわめて技術的な問題になりますから、大蔵省事務次官お答えいただけば結構だと思います。  問題になりますのが予算款項新設、この修正というものは認められないという立場でありますけれども、款とか項というのは専門的な言葉でありますけれども一つの例を申し上げますと、大蔵省歳入の部類で申し上げれば、款というのが租税ですね、そしてこの租税という款の中で所得税だとか法人税だとか相続税だとか酒税だとか砂糖消費税、こういったものが項に当たるわけでございますね。そこで、いま私たち野党がそれぞれ考えに若干の違いはあるにいたしましてもおおむね共通いたしておりますこの財源についての考え方、たとえば一兆円減税財源として会社臨時特別税を新たに新設すべきである、これは項の新設になると私は思いますが、この点についての次官のお考えを聞きたい。これが一点ですね。  それから、野党構想の中では、いままでの課税最低限を引き上げるという形での——今度は政府の案では百八十三万円を二百一万円に引き上げるということですね。課税最低限を引き上げるという形での減税ではなくして、一律に戻し税という形で、税を戻すという形で減税をすべきである。場合によっては納税をされておらない方、非納税者に対しても負の所得税という形で戻し税を行うべきであるという構想野党側にはございます。こういった戻し税方式あるいは負の所得税という形で減税を実施した場合、これは項の新設になるかどうか、この点についても伺いたい。  あるいはまた別の考えとして、そういう減税というよりも、所得の少ない方々に対する購買力をつけるためには、社会福祉を受給しておる方々に対して、一時金として特別交付金というものを支給してはどうかという考え野党の中にはあるわけでございます。たとえば老齢福祉年金生活保護、こういった福祉を受けておられる方々に対して、減税とは別の形で、たとえば年間三万円なら三万円というものを一時的な特別交付金として支給する、こういう構想野党にございます。こういうケースも項の新設ということに、あるいは項の変更ということになるのかどうか。  会社臨時特別税の場合は明らかに項の新設です。なぜかならば、四十九年の予算書にはこの項に会社臨時特別税というのが載っておる。今度は載ってない。これは明らかに新設だと思いますけれども、戻し税の場合あるいはまた福祉受給者に対する一時的な特別給付金、こういうケースは項の新設に当たるかどうか、事務次官からお答え願いたい。これはきわめて事務的な問題でありますから。
  10. 吉瀬維哉

    吉瀬政府委員 まず、矢野委員御承知のとおり、歳出につきましては、国会におきましてこの歳出の項の議決によりまして、政府歳出権国会の御承認によりまして行使するわけでございますが、歳入につきましては一つ見積もりでございます。現行の税法に基づきまして見積もりとして提出いたしまして、その見積もり経済変動等によりまして増減いたしましても、それは予算の実行上の問題になると思います。  いまの御質問は、かつてありましたが、会社臨特でございますが、これが議員提案で提案されまして、それによりましても、歳入予算見積もりでございますので、一つの税の新設がございましたが、歳入予算はそれによって修正されなかったような事例もございます。  それで、いまの御質問歳入における項の新設一つ歳入科目新設提案権侵害になるかどうか……(矢野委員「そんなことを聞いていない、事務的に項の新設になるかどうか、これは事務的な問題であります」と呼ぶ)それは項の新設になると思います。それで問題は、その歳入歳出の性格の差だけちょっと御理解いただきたいと思います。(矢野委員「私の聞いていることだけに答えてください、あとは福祉の問題と戻し税です」と呼ぶ)  それからもう一つは、そのいまの御質問の税の戻し方でございますが、税の戻し方が新たな歳出権を伴って、戻しに伴う、歳出に伴う項の新設というものがございますと、先ほど法制局長官お答えになりましたような問題が出ると思います。(矢野委員「項になるかどうかです」と呼ぶ)歳出の項の新設になると思います。そういうことでございます。(矢野委員福祉の場合は」と呼ぶ)福祉の場合も同じと思います。
  11. 矢野絢也

    矢野委員 これは総理、重大な問題が出てきているわけです。予算修正、この内容につきましてはこれから真剣に議論していかなくちゃならぬ問題だと思うのです。しかし、政府見解によると、国会予算修正権というものは、項の新設は認められないんだ、項を新設することは内閣予算提出権侵害になるんだ、こういうようにお答えです。しかし、いまおしなべての野党がそれぞれの構想として持っております財源対策あるいは減税の仕方、その特徴的な問題だけを取り上げていま大蔵省に聞いたわけでありますが、いずれもこれは項の新設を伴う予算修正内容になっておるわけでありまして、予算というものは、一カ所を変えれば当然歳出歳入面あちらこちら変わってくるわけであります。場合によってはもう十カ所以上も変わる。しかし、その変わるという理由は、立法府が政策的な判断に基づいて、今日の経済状況あるいは社会正義を回復する立場から、この予算はこのように変えた方がよろしいという政策的判断が背景にあるから予算修正するという要望になってくる。それが立法府政策判断に基づく予算修正。これは具体的に申し上げれば会社臨時特別税であり、福祉受給者に対する一時的な特別給付金であり、戻し税方式ということになる。この戻し税方式とか、このようなもろもろの修正のやり方が、議論以前的問題として、政府予算提出権侵害になるのだ、こういう態度で政府がおる限りは、これは予算議論しても意味がないじゃありませんか。立法府予算修正権についての、政府のこういった事態を踏まえた新しい見解を聞かしてもらいたい。
  12. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 憲法解釈でございまするから、そう新しい解釈というものが出てくるはずがありません。国会修正権政府予算提出権、この問の調整をどうするかということにつきましては、不変の解釈があるわけであります。しかし、そうだからといって、国会が動かぬ、こういうような事態を放置するわけにもいかぬ。そこは連帯協調だ、こういうことでいろいろ話し合ってみる、そういう余地はありますが、解釈をそうそう、こういう事態はこうだというようにするのはむずかしいじゃないか。事は憲法に関する問題である、かように御理解願います。
  13. 矢野絢也

    矢野委員 これは学者の説によりましても、宮沢教授あるいはまた佐藤功教授鈴木隆夫氏、一一引用いたしませんが、学説の多数派は、先ほど申し上げた最終かつ完全な修正権立法府が持っておるという見解が多数派であります。さらにまた、一々揚げ足を取るつもりはございませんけれども、かつての大蔵省主計局長であられた河野一之氏も「要するに予算案を一議案として見て、その全体の趣旨が没却されているのであればともかく、そうでなければ原則として発案権侵害は起こらぬという解釈をとりたい。」。以上のごとくであるとするならば、国会予算案に対してほとんどいかなる修正をも行い得ることになる。これは大蔵省主計局長見解です。  この問題についてはっきりした決着をつけてもらわない限り、減税やれのやらないのという議論それ自体意味がなくなるじゃありませんか。しかも、学界の多数説は最終かつ完全な修正権立法府は持っておる。これは当然のことであります。国会中心主義財政についての考え方とすればあたりまえのことです。  このような保革接近した国会において、大変失礼な言い方になって恐縮でありますけれども、一票の差で内閣がつくられた。その一票差の内閣予算をつくって立法府に出してきた。半分近くの議員がその内閣に反対をした。その国会に対して、一票差の内閣予算を出してきて、その修正には限界がある、総理、こんなことが言えるでしょうか。  これについては、委員長決着を出してもらわなければ議論できません。
  14. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 一票差だというお話でございますが、一票差でも、これは憲法の規定に従って成立した内閣ですから、これはひとつ尊重してもらいたいのです。  その立場に立ちまして、内閣提出権を持っておる、国会の方は修正権を持っておる、その調整を一体どうするか、こういう問題であります。ですから、これは冷静に、法律解釈の問題、憲法解釈の問題として議論をしていったらいいだろう、こういうふうに思います。  いま、政府解釈は先ほど申し上げたとおりでございますが、実際そういう解釈としても、これはその解釈をどういうふうにまた運用するか、こういうことになりますれば、これはむずかしい場合に臨んでこれをどういうふうに処置するかという道はおのずから開けてくる、私はこういうふうに思います。要は政府もあるいは国会連帯協調、この精神に立つかどうか、こういうことにあろうかと思います。
  15. 矢野絢也

    矢野委員 運用でしかるべくというふうにおっしゃいますが、しかしこれは運用で処理できる問題じゃないのです。会社臨特税の問題も、戻し税の場合も、明らかに事務的な扱いとしては項の新設になる。しかし、政府見解は、款とか項の新設変更というのは認められないのだ、この原則が明確に政府にある限り、運用余地なんかないじゃありませんか。そうしたら、款、項の変更新設は認められないとするいままでの政府見解は撤回されますか。
  16. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 憲法解釈をそう軽々に変えるわけにはいきません。いきませんが、その解釈のもとにおきましても、お互いに相譲り、相助け合うという精神に立ちますれば、おのずから道はあるではありませんか、こう申し上げておるわけであります。
  17. 矢野絢也

    矢野委員 私は憲法解釈を言っておるのじゃないのです。憲法解釈でいけば、内閣には予算提出権がある、議会には予算修正権がある、こういうことじゃありませんか。款、項の新設は認められないと憲法に書いてあるわけじゃないのです。政府の主観的な判断じゃありませんか。しかも、多くの学説はそういうものではない、完全かつ最終的な修正権立法府議会は持っておる、こうなっておるのでしょう。だから、款、項の新説は認めないという政府見解、これは憲法関係ないです。いいですか、それを撤回されますかということを私は確認しているのです。でなければ審議しても意味がないということを先ほどからるる申し上げているのじゃありませんか。
  18. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そこが憲法解釈なんです。解釈としてそういうたてまえをとっておる。しかし、解釈解釈として、その解釈を応用する、そういう局面におきましては、これは幅のある問題であって、一と言ったから必ずそれが一だ、こういう問題じゃなかろうじゃないか。要は、お互いが与えられた問題をどういうふうにさばくかという問題に当面しまして、お互いお互い立場考えながらどういうふうにやっておるかという協調連帯精神に立っていくということだろうと思います。
  19. 矢野絢也

    矢野委員 具体的な問題の処理、当然これから私たち議論を具体的にしていきたいわけであります。しかし、その前提になるのが、果たして立法府予算修正権はどの範囲まであるかという政府解釈、これは私たちはっきりしておかなくちゃ議論が進まないという意味で、原則的に款、項の変更政府として認めるのですか。先ほど佐藤さんの答弁を引用いたしましたけれども、款、項の新設はできないのだという従来の見解を撤回されるのですかという確認を求めているのですよ。らちの明かない議論はやめてください。時間がもったいない。はっきりしてください。
  20. 真田秀夫

    真田政府委員 憲法の中身、内容といいますものは、これは条文に書いてある文句それだけが憲法なんじゃございませんで、いろいろやはり憲法の条文の裏にある本旨、それが憲法の中身でございまして、それでいまの憲法の条文的には、先ほど申しましたように、予算提案権内閣に専属しておる。一方国会は、議決権の中身として修正権をお持ちになっておる。その間の調和をどこに求めるかというのが憲法解釈でございまして、その解釈として、従来政府は項、特に歳出の項の新設内閣予算提出権を損なうおそれがあるからそれは無理であろうという解釈をとっておるということでございまして、その点については、現在でも変わっておりません。
  21. 矢野絢也

    矢野委員 学者の間でも少数派の意見である解釈政府立法府に押しつけるということは正しいやり方ではないと思うのです。確かにあなた方がそういう解釈をしておったということは事実でしょう。しかし、その解釈をもって絶対正しいのだというやり方、ここに問題があるということを私は指摘しているし、総理連帯協調だと言っておるでしょう。ましてやこの国会の最大の焦点は、一兆円減税はいいのか悪いのか、やるとすればどういうやり方でするのだという議論国民の関心を呼んでいるのですよ。その一兆円減税を仮にやるとすれば、いま申し上げたそのような新しい項の新設が必要になってくる。それは政府解釈ではできないのだ。これじゃ議論ができないじゃありませんかということを私は言っているのですよ。後の運用の問題だとか、あいまいなことでは困ります。従来の款とか項の新設内閣予算提出権侵害になるという解釈をこの際明確に撤回してもらいたい、とのことを私は要求いたします。
  22. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 話が非常に抽象的になっておりますが、具体的にこういう一つの案が政府解釈としてこれは違憲であるか違憲でないか、こういうような問われ方をいたしますれば、私どもはそれに対しまして政府見解を申し述べます。  私が申し上げておりますのは、憲法にまつわる解釈をそう変えるわけにいかぬじゃないか、しかしその解釈をまた応用問題としてどういうふうに取り扱うか、そういうことにつきましては、これはそう硬直した姿勢はとりません、協調連帯精神に立ってやります、こういうことを申し上げておるのです。(発言する者あり)
  23. 坪川信三

    坪川委員長 近江巳記夫君より議事進行に関する発言を求められております。この際、これを許します。近江君。
  24. 近江巳記夫

    ○近江委員 ただいまの矢野委員質問は、きわめて重大な問題を提起をいたしております。国会修正権に関する最も基本的な問題でございます。この矢野委員質問に対して政府答弁というのは、いままでの佐藤総理の時代の見解から何ら一歩も前進しておりません。いま国会におきましては、一兆円減税を初めとしてこの予算修正ということが最大の問題になってきておるわけであります。この問題がこのままあいまいなままで進むということになってまいりますれば、あと矢野委員質問するということになりましても、これは非常に意味がないわけであります。はっきりとした見解をひとつ示していただきたいと思います。そうでなければ、これ以上議事の進行はできないです。
  25. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 矢野さんの御提起の問題は、これは非常に重大な憲法解釈問題であります。したがいまして、せっかくの御提案であります、かつ重要な問題でありますので、政府におきましても篤と検討いたしまして後刻お答えをすることにいたします。
  26. 近江巳記夫

    ○近江委員 はっきりとした見解をお出しになるということですが、あと、矢野委員質問というのはすべてこれ修正にかかってくる問題であります。そんな時間をかけることはできないわけです。それではいつ政府は正式な見解をお出しになるのですか。
  27. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいまの政府見解は、午後委員会が再開されるという時点において表明いたします。
  28. 矢野絢也

    矢野委員 先ほど私は、学者の多数意見が議会による最終かつ完全な修正権を認めておるということを御披露申し上げたわけでありますけれども、そういった学者の意見というものは、立法府が国権の最高機関であるという認識に基づきまして、行政府の一方的な判断、これを国権の最高機関である立法府がチェックをし、よりよきものにしていかなくてはならない、こういう立場からそのような多数意見が述べられているわけですね。そしていわゆる少数意見として立法府修正権限界があるとする学者の方々、これはどっちかというと行政府にウエートを置かれた、立法府を、言葉は悪いかもわかりませんが、これを軽く見られる論旨というものが私たちにはちょっと気になるわけでありますけれども、こういった議論から見ましても、そういう少数派の立場政府解釈がお立ちになっておるということは、そのこと自体が、政府立法府を軽視しておるということを如実に物語ることではないかと思うのですよ。  たとえば、幾らあなた方が、この予算提案権に対する立法府侵害である、立法府予算修正権には限界があるんだとがんばってみても、その限界を超えておるという修正案が仮にこの国会で成立したらどうするんですか、あなた。そんなものは無効だ、修正権を超えた、提案権侵害になる予算修正だから無効だと言っても、政府がお出しになった予算というのは国会議決がない、本案は、原案は。そんなものは政府は執行できないじゃありませんか。憲法構造から見ても、どうしても政府がのめない修正案というものが立法府によって可決された場合は、これは内閣総辞職か解散かということであって、この憲法構造の論理から見ても立法府予算修正権には限界がない、こう考えるのが私は妥当であると思います。しかし、政府が統一見解を再開、つまり昼過ぎにお出しいただけるということでありますから、次の問題に移りたいと思います。  ロッキード事件についてでありますけれども、公判も開始されました。検察当局の捜査も一月二十一日に児玉誉士夫、小佐野賢治、それぞれ所得税法違反、外為法違反で追起訴、議院証言法で起訴、こういったことで捜査も一応事実上打ち切られておる形になっておる。そこで、総理が言われておる徹底究明というのは、具体的にどういうことなのか。  さらにまた、児玉、小佐野この両名が病床にある。これは最大の捜査の障害になっておるようでありますけれども、約十九億円の児玉ルートに入っているお金の使途、児玉、小佐野の政界工作、この解明は残されたままであるわけです。したがって、検察当局に対しては、これまでの努力は大いに多といたしますものの、法の正義に照らしてさらに徹底して究明することを私たちは期待しておる。この点について総理見解はどうなのか。徹底究明ということを、いま申し上げた具体的な問題について。
  29. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ロッキード事件につきましては、そのうちで全日空、丸紅に関する面につきましては、これは大方捜査が終了いたしまして、そして公判段階に事は移っておる、こういうことでございます。政府といたしましては、この公判の維持に全力を尽くすという方針でございます。  それから、児玉、小佐野ルートにつきましては、この両名が健康上の問題があるわけです。そういうことで、遺憾ながらこの捜査が終結したというふうには申し上げかねるわけであります。しかし、この両氏の健康上の問題、それを前提といたしましてのできる限りの捜査が行われた。ただ健康上の関係から身柄をどうしてとかなんとか、それから調査を長く続けてとかということが限界がありまするものですから、ただいま直ちにこの残された部面の捜査を進めるわけにはまいりませんけれども、しかしこれから健康の問題その他事情の変化が出てくる、それに応じまして新しい問題が出てくる。その追及はひとつやっていかなきゃならぬということで、捜査本部等は解体いたしません。なお存続して調査を進めるという体制をとっていきたいと存じます。
  30. 矢野絢也

    矢野委員 私たちは、国会の国政調査権に基づいて事件関係者の証人喚問を行う、そこで真実の証言を述べてもらうことが必要だと思うわけであります。事件関係者の証人喚問を総理は積極的に賛成されるかどうか。さらに、証人喚問が公判に支障を来すというようなことを言っておられるようでありますけれども、具体的にどういうことを意味しておるのか。あるいは現在公判にかかわっておる問題以外のケース、たとえば対潜哨戒機の問題、さまざまな問題がございます。こういう公判に関係のない部分についての証人喚問、これは公判そのものの維持に関係がないと私は思いますけれども、こういった点についての御意見を聞かせてください。
  31. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公判に関係のないPXLというような問題につきまして国会でお調べになる、これは国会の国政調査権として御決定になる問題でありますので、これは国会でお決め願う問題である、こういうふうに考えますが、公判に関係というか影響、つまり公判はとにかく真実の発見ということを公判廷を通じまして一筋に追求するという立場にありますが、その真実の追求に対しまして予見というか、あらかじめ一つの印象を与えるとかそういうようなことがないような配慮は、やはり私は国会としても配慮すべきところじゃあるまいか、そういうふうに考えるのでありまして、したがって、現に公訴が進行中であります本件につきまして何か予断を与えるような証人の喚問、そういうようなことにつきましては、これは慎重にしていただきたいという希望を述べておるわけであります。
  32. 矢野絢也

    矢野委員 いまの総理の御答弁に私は大いに異論がございます。しかし、このロッキード問題あるいは日韓をめぐる問題等につきましては、日を改めまして同僚議員から問題を取り上げていきたいと考えております。  さて、財政経済問題についてでありますけれども、五十二年の予算、景気浮揚型の予算と称せられまして、景気対策が、公共投資の拡大で行う、これに力点が置かれておる。この一般会計の公共事業費は二一・四%の伸び、財政投融資関係でも公共投資関係の資金配分が非常に大きいわけですね。私はこの予算を見まして、公共投資重点の財政、これは景気対策に名をかりた高度成長時代の財政の復活ではないか、このような疑問をぬぐい切れないわけであります。  たとえばわが国の財政と欧米諸国と比較いたしますと、一つは公共投資への水準、日本の財政は著しく高い。そうして社会保障費の支出が著しく低いという特徴がございます。もちろんこれはオイルショック以来、国民の強い要求によってやや変化は見せてきておる、私も認めるにやぶさかではございません。しかし、ことしのこの予算を見ましても、公共投資は二一・四%、予算全体では一七・四%の伸びだというのにそれをはるかに上回る伸びを公共事業は示しておる。  たとえば昨年の公共事業の伸びは二一・二%、それよりもことしの伸びの方が大きい。しかも社会保障につきましては一七・七%、ほぼ予算全体の伸びに同じですね。しかも社会保障の予算の伸びが二〇%を割ったのは、これは六年ぶりなんです。六年間ずっと二〇%以上の伸びを社会保障関係予算は占めておったわけですけれども福田さんになってから六年ぶりに一七・七%というふうに社会保障の伸びが停滞してきましたね。若干、ここ二、三年来社会保障の伸びがあると言いましても、これはインフレによる単価修正という名目的な意味が強かった、本当のことを言いまして。だからそのような公共投資優先、社会福祉後回しという財政の構造的な変化というものは少しは見られるものの、定着しておるものとは言えないと思うのですよ。特にそれがことしの予算では逆行現象が著しいと思うのです。この公共投資と社会保障の問題、これが一つ。  第二点の問題は、この公共投資の内容を見ましても、道路などの産業基盤が非常に大きく、——産業基盤が大きいというのは高度成長時代の特徴だったわけですよ。そして生活関連が、全体に占める比率からいけば、構造的に非常に少ない。具体的に申し上げますと、道路関係だけで一兆二千六百九十三億円。しかし住宅は四千三百七十四億、その他生活関連が四千九百四十九億、合わせて九千三百二十四億。これが住宅と生活関連です。この道路予算公共事業予算全体の三〇%にもなっておる。いや、道路の伸びは一五・八%です、住宅は二〇・五%伸ばしましたと、きっと言うに決まっていると思うのですけれども、しかし、道路予算一五・八%は、この基礎の数字が大きいのです。住宅の方は二〇・五%伸ばしたといっても基礎の数字が少ない。住宅は四千三百七十四億で、増額は七百四十二億なんですね。わずかなものなんですよ。道路関係は千七百三十四億円ですよね。パーセンテージでいったらだめなんです。絶対の金額でいけば、はるかに道路の伸びの方が大きいわけでしょう。こういうような社会福祉後回し、公共事業優先という財政構造、その公共事業の中でも産業基盤づくり優先、生活関連後回しという財政構造についての総理の所見を承りたいと思います。
  33. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 予算案は一年度区切りになっておるわけです。五カ年の予算とか十カ年の予算というわけじゃないので一カ年のも一のなんです。この一カ年間において何が一番大事かといいますれば、それは社会保障の関係を軽視するわけにはいかない。文教関係も軽視するわけにはいきませんけれども、とにかくそれらを軽視せずにやっていくためにはやはり財源をつくらなければならぬ。また社会全体に活力を与えなければならぬ。そういうことを考えますと、五十二年度という年は何だといいますれば、やはり内外ともに経済の年である、こういう認識に立たざるを得ないのです。わが国はいま、世界が混乱しているその中で、アメリカ、ドイツと並んでいい調子でいっている。しかし同時に、いい調子でいっているものですから、世界経済を混乱から脱却させる牽引車的な役割りを求められているのです。どうしたってわが国は物価に注意しなければなりませんけれども、同時に、物価安定の基調を崩さない範囲におきまして景気対策をとらなければならない、そういう立場にあるわけです。その景気対策というと、これは財源が幾らでもありますれば、それはいろいろ複雑な考え方もできましょう。あるいはいろいろな施策を組み合わせるということもできましょう。しかし、財源が限られている。そういう中で、同じ財源を使えば一体何が一番効率的な働きをするかというと、公共事業ということになってくる。これは私は文句のないところであろうと思います。同じ財源を使い、それしかないとすれば公共事業ということになってくる。そこでことしは公共事業を重視する、こういう方針になったのですが、そういう中ではありますけれども、決して社会保障を軽視しているわけじゃありません。公共事業がずっと長い間わが国の財政支出の中で圧倒的に多かったのです。それをだんだん追いつき追い越せということで、社会保障予算がことしなんかはかなり引き抜いておるというような状態であり、一般経費なんか一三%そこそこの伸びだ。その中で一七%何がしの伸びを福祉予算社会保障予算には割り当てておる。こういう状態で、まあ景気対策という当面の要請と長い目の社会保障政策ということはこの予算で両立をされておる、こういうふうに考えておるわけであります。  それからもう一つは、公共事業公共事業と言うが、どうも道路偏重じゃないか、相変わらず高度成長型で、あれじゃないかという御指摘でございますが、道路費は、公共事業の中におけるウエートというものはずっと下げてきておるのです。逆に特に下水道がうんとおくれておる。この下水道に対する投資、それから学校建設とか病院建設でありますとか、そういうわれわれの生活に関する投資、これもふやしてきておる。しかしそれにしても、なお公共事業費全体の中で道路費は三分の一ぐらいになりますか、かなり大きな額なんです。これはだんだんへっこんでそこまで来ておるのですが、しかし道路といったってわれわれの生活に非常に結びついておるわけなんです。金のかかるのは東北の新幹線でありますとかそういうようなものもありますけれども、これとてもいま当面する就業状態の改善、これをやればずいぶんこれで働く人も出てくるとかそういうものもあるし、せっかくつくりかけたものを中途でほうり投げてしまうわけにはいきませんし、同時に道路におきましてもそういうものもやりますけれども、しかし特に地方の社会、これを発展させるための投資ということに重点を置いておるという御理解を願います。
  34. 矢野絢也

    矢野委員 昭和五十年度の経済白書を見ましても、わが国と西ドイツの人口一人当たりの社会保障費の支出では、西ドイツがすでに一九六〇年でわが国の一九七〇年の水準を倍、上回っておるわけですね。七三年にはわが国の五倍ということになっておるわけですよ。ですから、社会保障というものは国民所得の再分配という立場から考えなくちゃいかぬわけでして、単に受益者負担だけで見る問題じゃないわけですよ。積極的に国民所得の中から配分をしていかなくちゃいかぬ。ことしの福祉費を見ましても、調整財源の二千億円の中で何とか福祉年金というものを解決をされたわけでありまして、結局千五百円引き上げをしたということでありますけれども、こういうお粗末な予算配分のやり方、これは納得できるものじゃありません。これについてはまた後ほど具体的に申し上げましょう。  さて、私が申し上げた、公共事業よりも社会福祉がおくれておるし、産業基盤よりも住宅生活関連がおくれておるというこの二つの特徴、これはなぜこういうことになるんだということですね。いま総理は、いかにも公共投資が景気浮揚対策として効果があるんだということを力説されたようでありますけれども、私はいまの福田総理は、景気浮揚のために公共投資を選択したんだということよりも、財政向上の立場からそうならざるを得ないということの方がむしろ真実じゃないかと申し上げたいわけなんです。要するに別の面から申し上げても、素材部門の企業からの要請も、建築土木からの要請もあるのかもわかりません。あるいは政府自身に生活関連とか福祉をふやすという意思がないのかもわかりません。しかしいま申し上げた制度的な枠組みの中で選択はできなくなっておる、このことを私は指摘をしておきたいわけでありまして、その内容につきましては、まず公共投資の財源は、他の経費と違って大部分が特定化されておる。一つは建設国債ということ、二つ目には道路事業に対する自動車関係税ですね。これも特定財源になっておりますね。つまり建設国債の問題で申し上げると、財政法四条は、国債の発行をやむを得ず行う場合は公共投資の範囲内にとどめなさいという意味の規定でありますけれども、これは私はあくまでも国債発行を制限する趣旨である。これはただし書きの方ですからね。どうも政府解釈は逆になっちゃって、公共事業やるんなら、幾ら国債出しても構わないんだぐらいの発想になっておる。歯どめが本来であるのに、公共事業財源、これはもう国債なんだ、歳入面から、財政難のときには国債発行イコール公共事業という形で予算の編成が行われざるを得ない、この構造的な枠組みがある。つまり財政が国債を抱く限りは、公共事業のみは必然的に増大するという傾向がある。公共事業社会福祉かという選択よりも、国債を財政が持っておる以上はそういう選択ができない形で公共事業のみがふえていく。こちらの方が総理の本音だろうと私は思うのですよ。景気対策だ、どうだこうだ、そんなに景気対策に公共事業が効き目があるということを強調なさるのであれば、もちろん私は、効き目がないとは言いません。しかし、いまのデフレギャップはどれくらいあるんだ、そのギャップを埋めるために五十二年度予算の公共投資というものはどれだけのギャップを埋める効果があるんだ、総理はそういう具体的な説明をなさらないで、いたずらに資源有限論、これだけをお説きになっているだけであります。あるいはそのような公共事業優先の景気対策というものが財政上の問題、物価へのはね返りとか、土地に食われる公共事業の分析とか、地方財政の逼迫による公共事業の渋滞とか、そういう問題に全部目をつぶってしまって、ただ公共事業をやれば景気がよくなるのです——私はそのこと自体否定するものではないけれども、むしろそのような具体的な分析というものが国会に説明があってしかるべきだと思うのですよね。そういうものは一切なさらないでやっておる。それはやはり財政が国債を抱く限りは公共事業のみが必然的に増大するというこの財政構造に問題がある、これが質問の第一点であります。  もう一つは、いわゆるこの自動車関連税の問題ですね。たとえば、揮発油税、ことしは約一兆円の税収を見込んでおる。このような膨大な財源がすべて道路財源に充てられておる。現在、国民生活優先の公共投資ということが叫ばれておるにもかかわりませず、そちらの方に力点が入らないのは、この一兆円、これはほかにもありますけれども、このような膨大な財源が特定財源として道路オンリーになってしまっておる、ここに、この財政構造の必然性があるんじゃありませんか。私たちは、少なくともこの揮発油税、これを道路オンリーの特定財源という発想をもうぼつぼつ改めていいんじゃないか。この揮発油税が創設されたのは、昭和二十六年です。もうはるか大昔の、当時の日本の再建復興という立場からこういうことが出されたんだと思いますけれども、こういう自動車関係税の特定財源という考え方を改めるかどうか、これが第二点であります。  それから第三点は、これは地方財政との関係でありますけれども公共事業費の七割、これが補助金として地方へ行く、これは承知しております。国で幾らおふやしになりましても、地方自治体の財政能力がなければこれは無意味になってしまうのですね。総理は大蔵関係詳しいわけですから、言うまでもないことでしょうけれども、国債発行以前の財政では、国と地方との財政関係では一定のバランスがとれておった。なぜとれたか。それは、国の公共事業が税の自然増収の範囲内で賄われておるときには、一方における税の自然増収、この税の自然増収は必然的に地方に対する地方交付税の増加という結びつきがあったわけですよね、公共事業が税の範囲内、つまり国債でやってない限り。したがって、補助金、それと交付税、この相関関係は一応保たれておったわけです。しかし、国債を大量に発行して公共事業を増大させる、この政策をおとりになる場合は、それに見合った、自動的に地方財政にプラスになっていくという相関関係というものはもうなくなってしまっておるわけですよね。自然増収、地方交付税の増加、これが補助金の増加、交付税の増加という形で相関関係があったのがなくなってしまっておる。したがって、国債を抱いた財政、そのもとにおける公共事業の拡大というのはもう必然的に地方財政の悪化を招くことは、これはもうあたりまえのことなんです。だから、せんだっての党首会談におきましてもわが党の竹入委員長は、総理に対して、このような状況における地方交付税の見直しということを、この上昇を強く要請をしたわけでありますけれども、そのことをなさっていないわけです。つまり、財源移譲もなさっていない。地方交付税の引き上げもなさっていない。それは国債を発行した財政における公共事業という段階においては許されないことなんだ——いままでの税の自然増収の範囲内で公共事業をやるという段階なら一定の相関関係があったんだ。これについてどういうお考えをお持ちになるか。  以上三点お尋ねしたわけであります。
  35. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 矢野さんが御指摘のように、いまの現状から見ていきますと赤字公債というものを発行せざるを得ない。そういう中で、同じ公債にしても建設公債の方が罪が軽いじゃないか。これは財政法第四条の認めるところである。そういうようなことから、どうも公共事業をやるその財源財政法第四条で保障されているというような考え方にややもすればなりがちな流れのあることは、私もよく理解できるのです。しかし、私自身はそうは考えておりません。これはもう財政法第四条の建設公債にせい、あるいは特例法によるところの赤字公債にせい、いやしくも公債をそうみだりに発行することは相ならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。したがいまして、御指摘の点につきましては十分そのような考え方で気をつけてまいりますが、そういう中で五十二年度予算において公共事業費を非常に増額した、こういうことは、公共事業費を増額すれば建設公債が安易に出せるんだ、そういうような考え方でないことはもちろんでございます。そうじゃなくて、公共事業というものがいま求められておるところの、しかも内外から求められている、日本の景気をどういうふうに持ち上げていくかという観点からこれは最も高い効率を発揮するものである、そういう見解に基づくものであります。  次に、ガソリン税財源は、道路整備をしなければならぬ、道路整備というものが緊急の課題であるときの所産じゃないか——ガソリン税その他のいわゆる道路特定財源です。というお話で、もう今日になるとこの考え方について考え直しをしなければならぬか、こういう御指摘でございますが、私は、道路が整備されまして、もう特定財源では余りが出る、こういうような状態になりますれば当然そういう考え直しを行わなければならぬ、こういうふうに考えますが、五十二年度の状態、五十一年度以前はもちろんでございますが、五十二年度におきましてもあのガソリン税その他の特定財源だけでは道路に事業を行うに財源として足らないのです。そこで、あの自動車重量税の部分、これは一般財源でございまするから、それもかなりのものを振り向けておる。こういう状態でございますので、五十二年度の段階で特定財源問題を検討するという時期にはまだ来ておりませんけれども考え方はよくわかりますので、そういう……(矢野委員「やりますか、将来」と呼ぶ)これは道路が特定財源全部を必要としない、こういう時期になれば当然これは検討しなければならぬ問題である、さように考えます。  それから、地方財政の問題でございますが、これももう全く御指摘と同じ感覚を持っておるのです。つまり地方財政は、これはその約半分の財源が国の補助金と、それから地方交付税交付金で支えられておるわけであります。その中で約半分を占めるところの地方交付税交付金、これはいわゆる国の方の国税三税、それの三二%を繰り入れるということになっておる。ところが、いまのわが国の財政は公債に三割を依存する、こういうふうな状態になってしまったものですから、仕事はふえるけれどもさあ公債の何割を地方へ回すという制度になっておりませんものですから地方で問題が生ずる。しかし、それはよくわかりますので、そのような地方財政立場というものをよく踏んまえまして、五十二年度におきましては、地方において二兆円の赤字があるのです、その半分は特例措置で処置します、あとの半分はこれは起債等をやってまいりますけれども、それに対して政府は協力しますということで処置することになるので、しかし、そういう特例措置等をとったゆえんのものは、矢野さん御指摘のような実情があることに大きな理由があるということを申し上げます。
  36. 矢野絢也

    矢野委員 道路が完成すればというようなお話でしたけれども、日本国じゅうコンクリートで舗装しなければおさまらぬみたいな感じのお話で、やはりこの特定財源から外すかどうかは、道路ということよりも生活関連のウエートと道路のウエート、これをどういうふうにこれから配分していくかというバランスから考えなければいかぬ問題で、日本国じゅう道路が整備できるまでは特定財源外せないという発想は、これはもうお話にならないわけですよね。  いずれにしても、総論から各論に移りたいわけですけれども財源問題についてこの国会でいろいろ議論がされているわけでありますけれども、その前に、総理が資源有限論ということを力説される、私は資源が有限であるというのは同感でございます。しかし、そういう資源有限論がなぜそのまま福祉の切り詰めとか減税お断りの理屈になるのかというのは、大変失礼だけれども、ちょっと論理の飛躍があって説得力に乏しいと言わざるを得ませんですよ。そんなに資源有限論をお説きになるのなら、まず隗より始めよということが大事だと思うのですよね。いまどこの民間会社だって企業収益が低下しているわけですから、体質改善ということでそれなりの努力を一生懸命やっておるわけでしょう。個人の家計にあっても、物価の上昇、収入がふえないという中で切り詰めをやっているわけでしょう。総理のお説きになる前から、もうそういうことは国民や企業はそれなりにやっているのです。その資源有限をお説きになる総理が指揮をとられている政府、この予算、これが一番資源有限論にほど遠い編成になっているじゃありませんか。  外国の例を引くのは私は余り好きじゃありませんけれども、たとえばアメリカの大統領のカーターさんは、大統領に就任されたら公用以外の車の使用は禁止だ、せんだって「タイム」という写真の雑誌を見ておりましたら、政府高官がホワイトハウスの前でタクシーを一生懸命呼んでいるというような写真が載っておりましたよ。あるいはまた暖房の温度を下げる、まあこういうことはかっこうだけじゃしようがないわけでありますけれども、いずれにしても、このような、総理みずからが予算の冗費節減ということについて真剣な取り組みがあって初めて私は資源有限論をお説きになる資格があると思うのですよ。あるいは予算編成の場合も、去年の予算は各局、各部これだけ予算があった、ことしは何%ふやすんだ、このふえ方、伸び率がほかの局に比べてわが局は少ない、局長として、部長、課長としてメンツにかかわるというようなことで予算の査定が行われているじゃありませんか。資源有限をお説きになるのであれば、むしろこの三十兆円近い予算すべてを、それぞれの各局、各部についてゼロから査定するんだ、本当に必要なものなのか、必要でないものか。伸び率はいままでこれだけあったからこれに何ぼ上増ししようかというふうな、そんな安易な発想ではなくして、一遍ゼロに戻して、そこから何ぼ予算が必要であるかということをお決めなさる、これがこういう財政が非常に危機に瀕しておる段階における福田内閣としての予算編成態度じゃなかろうかと私は思うのですよ。残念ながらそういうような姿勢は見られなかった。そして、この予算内容を見ますと、すべて昔からの既得権、こういうものが尊重される形で、悪い意味での平等主義というものがはびこっておるように思うのですよね。  具体的な例を申し上げると、五十年十二月末に閣議了解事項というのがありまして、十五の特殊法人の廃止、移管、再検討ということが決められましたね、了解事項という形で。京浜外貿埠頭公団、糖価安定事業団、日本鉄道建設公団、阪神外貿埠頭公団、石炭鉱業合理化事業団、その他いろいろあります。この政府関係特殊法人労働組合協議会というところが、昨年、官僚の天下り実態、「天下り白書」というものを発表しましたけれども、調査対象の六十六法人の役員四百三十三人のうち三百五十人までが天下り、百十二人が天下り以後次から次へと政府関係法人を渡り歩いた渡り鳥官僚。そのたびごとに多額の退職金をもらっておる。あるいはまた、あちらこちらの特殊法人では、七十万から九十万というふうな高いお給料をもらった役員さんが、大変失礼な言い方でありますけれども、大してお仕事もないような感じでやっていらっしゃる。今度の「週刊現代」という雑誌で「これぞ減税の敵!」というような見出しで、「月給七十万円仕事もせずの“休眠”公団公社役員がこんなにいる」というようなことで特集が載っております。  私どももう具体的な調査に基づいて、本気になって総理減税のためのあるいはまた福祉のための財源を出すんだということであれば、あちらこちら幾らでも出るところがある。いずれやりますという御答弁でしょうけれども、そんな悠長なことではだめなんです。この国会野党の私たちもお手伝いします。一緒にやりましょう。大いに手伝って徹底的に分析いたしましょう。私たち減税を要求しておるわけでありますから、当然こういった仕事はやらなくちゃいかぬと思っているのですよ。そういう財源洗い直しのため補助金の見直しをやる、これについて総理はどういうお考えをお持ちですか。
  37. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まず第一に、私が資源有限、有限ということを強調して、一方においては福祉を切り詰める、こういう姿勢をとっている、一方においては減税に反対だ、こういうお話でございますが、これは非常に誤解がありまするから、私、はっきり申し上げておきたいのですが、資源有限、そういうことから立論いたしまして、私は、福祉はより以上重視しなければならぬ。資源有限、つまり低成長時代になるといままでのような高い成長はできないんだということになれば、やはり乏しきを憂えず等しからざるを憂えるというような配慮というものが非常に重要になってくると思うのです。ですから、これからの国全体の施策というものは、福祉といいますか、弱い者、小さい者、そういう人に対する配慮、これをさらに傾斜的に重視しなければならぬということにならざるを得ないのでありまして、資源有限であるから福祉を切り詰めるんだという考え方につながっていくということは誤解であろうと思うのです。  それから、減税につきましては、もうしばしば申し上げておりまするが、もとよりこれは真っ正面からつながっていく問題であります。  それから第二に、資源有限時代になって、経費節減、まず政府は隗より始めよ、こういうお話でありますが、全く私はそのとおりだと思う。でありまするから、今度の五十二年度予算におきましてもその考え方に立ってできる限りのことをしているのです。ただ、機構の改正、後で触れられましたが、公団、公社の問題でありますとか、政府の問題でありますとか、あるいは補助団体のあり方の問題でありますとか、そういう機構まで短時間で手が届かなかったのです。この問題はこの問題として、私は夏ごろまでに結論を得るように検討を進めたいと思っておりまするが、しかし、事いやしくも官庁の経費につきましては、これは思い切って今度の予算では削減をしたのです。その削減の内容について必要がありますれば主計局長から説明させますが、これはもうかなりのものをしたのだ、これは私は、最近にないくらいな大きな削減をしておるのだというふうに御理解願っていいんじゃないかと思います。私は常々言っているのですが、世の中変わってきたんだから、国も地方公共団体も企業も家庭も、みんなその対応の構えが変わらなければならぬという世の中でありますので、政府は何としても率先垂範の実は示さなければならぬ、かように明確に意識しております。
  38. 矢野絢也

    矢野委員 予算編成に当たりましても、伸び率査定ではなくして、ゼロから、必要なのか必要でないのかということを原点から洗い直す、こういうことが必要であるということを私申し上げたわけでありますが、たとえば不公平税制のシンボルみたいに言われておる租税特別措置法、これだって私は一遍全部やめちゃったらいいと思うのです。その上で、今日の時点におけるそれぞれの政策目標というのがあってしかるべきでございますから、政策目標に従ったそういう特別措置を新たに必要とするのだというのなら、これは国会に提案をなさればいいと思うのです。二十年も三十年も昔からある特別措置を幾らなし崩しに洗い直していますと言っても、これは印象としては私はよくないと思うのであって、そういう昔の政策目的というのはもうこの時代にはなくなっているはずでございます。そういう意味で、私たち租税特別措置法を中心として財源というものをいろいろ試算をしたわけでございます。一兆円減税を私たちやみくもに言っているわけじゃないのであって、とにかく約三千五百億減税を本年度予算でなさっているわけでございますから、六千五百億、この財源をどうするかという立場からいろいろと考えてみました。  一つは、企業優遇の租税特別措置の改廃、これで私たちは七百億。交際費課税の強化で七百億。受け取り配当の益金不算入制度の廃止、これで千百二十二億。退職給与引当金の縮小、これを一五%にする、千九百三十億。貸し倒れ引当金の縮小、これを一五%にする、これは金融機関を別にしまして七百六十七億。会社臨時特別税の復活千八百億。利子配当所得課税の特例の是正、今度は三五%、プラス五%なさったようでありますけれども、これをさらに五%上積みをして四〇%にする、七百五十億。有価証券取引税の改正、千分の三を千分の十にする、千五百億。高額所得者に対する一〇%付加税四百億。これで九千六百六十九億、約一兆円ですね。先ほど六千五百億の減税が必要であるということを申し上げましたが、このような税制改正によって約一兆円が出てきます。  あるいは政府金融機関の貸し倒れ引当金を今回も予算措置をされておるわけであります。これを半減して納付金にする、これで、たとえば国民金融公庫五百二十九億五千九百万とか、住宅金融公庫で六十五億八千二百万とか、農林漁業二十六億七千三百万とかいろいろございますけれども、全部で二千三百二十八億八千万。これで私たち、この貸し倒れ引当金を半分にすることによって千百六十四億円、これが財源として見られる。貸し倒れ引当金についても検討の余地があるのではないか、こういうような分析をしておるわけでございます。  そこで、さらに具体的に申し上げたいわけでございますが、個々について一々総理の御見解を簡潔にお述べいただきたいわけでありますが、まず交際費課税につきまして、企業が使った五十年度の交際費は二兆三百八億円です。このうち税金の対象になったのは三〇%程度、しかもこの交際費はいまや政治献金とかリベートとかに悪用されている傾向がございますが、政府の改正については課税対象わずか五%の引き上げで、税収も初年度二十億円、平年度で二百四十億円、こうなっております。これをもう一五%と引き上げまして、ということは、八五%にされたわけですから、一定限度額を超えるものにつきましては交際費一〇〇%課税、これは七百億円の税収が可能であると私たち考えておるのであります。交際費ですね。  それから、法人の受け取り配当について、これは非課税になっておる。しかし、これはいろいろ理屈はあるかと思いますが、なぜ法人の受け取り配当が非課税で個人の配当が課税になるのだ。あるいはまた、法人の最近の株式保有についても、多分に、ほかの債券と同じように投資的な意味が濃厚になってきているのですよ。そういった法人の受け取り配当は非課税になっておる。これはやはり四十九年度で二千九百一億円ある。銀行など資本金一億円以上の法人が二千五百八十三億円、九〇%も非課税扱いになっておるのがあるわけですね。これらに課税をいたしますと約一千一百億円以上の税収になると考えております。  法人税の各種引当金につきましても、私たちいろいろ要求いたしました結果、政府はあれこれやっておられるようでありますけれども、ここでやはり注目していいのは退職給与引当金、これに目をつけていいのではないかという気がいたします。退職給与引当金は期末に全従業員の半数が退職することを想定して引き当てておる、そして企業の課税逃れに利用されておるわけでありますが、その利用状況は、四十九年度では三兆七千三百二十九億円のうち資本金が一億円以上の企業が三兆二千百八十七億円、八六・二%もあるわけですね。これを検討する必要がある。貸し倒れ引当金も一兆五千九百九十億円のうち八〇%以上で、これが大企業と考えられますね。これら大企業分をさしあたりは一五%程度縮小する、これで二千七百億円の税収になるのではありませんか。  所得税関係でも、利子配当所得課税、総合課税されるより分離課税された方が有利になります源泉分離選択課税分、これを現行の三〇%から三五%へと五%上げられました、あるいはまた総合課税の対象にならない割引債の償還差益に対する源泉分離課税を一二%から一六%へ今回政府案では引き上げになっておりますけれども、これは政府の税調でも総合課税を提言しておるわけでありますし、金持ちほど優遇されておる。こういったことから、少なくとも三五%に上げられた分を四〇%に、あるいは割引債の償還差益、これは二〇%程度に引き上げはやるべきじゃないか。こういったことを実施しますと、七百五十億円の増収が見込まれます。  有価証券の取引税につきましても、現行課税は譲渡価格の千分の三、非常に低い。譲渡所得については、一年間の株式の売買回数が五十回以上でしかも株式の数量が二十万株以上、これは五十円額面としての計算ですね、これを超えない限り課税されないなど、これは金持ち優遇と言って差し支えないと思うのですよ。この千分の三を千分の十に引き上げる、これで千五百億円の税収になりますね。さらに、私どもが主張しております一年の課税所得が一千万円を超える、しかもその内容が資産利得の多い高額所得者に一〇%の付加税を課する、あるいは会社臨時特別税の復活などで二千三百億、こういうようなことを考えますと、一兆円の増収が可能になるわけです。私たち、六千五百億の財源ということで一兆円ということをいま具体的に申し上げたわけでございますが、こういうことに真剣に政府が取り組まれた方が国民の期待にかなう方法ではないかと私は申し上げたいわけでございますが、いかがでございますか。
  39. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 矢野さん、るる御指摘がありましたが、お考えの方の筋は私もわかりますが、やっぱり今日の経済の秩序というものは現行の諸制度の上に立っておるものだ、こういうふうに思います。これを諸制度、つまり経済秩序というものが立っておるそのもとの諸制度というものを一挙に変えてしまうのだ、こういうことになりますと、相当の混乱が起こる。そこで、この改正はその経済環境、社会情勢の変異に応じて、具体的に着実にやっていかなければならぬという態度をとりたい、かように考えております。また、そういう姿勢に基づきまして、五十二年度の税制改正等もやっていくという考えでございます。  それからもう一つ矢野さんのお話で、どうも特別措置というものが、これが企業偏重、大資本優遇というような傾向が強いのではないかという印象を与えるようなお話でございましたが、この租税特別措置によります減収額は、五十一年度で見ますと、七千億をちょっと超える、こういう程度でございますが、その中の大柱は貯蓄の問題なんです。つまり、マル優だとか何とか、ああいう制度によって零細貯蓄者を保護し、かつ貯蓄を奨励しようという意図に基づくもの。それから生命保険、これも零細な生命保険、これを保護、助長しようというような趣旨。それからもう一つは住宅建設を助長しようというための住宅減税。それからもう一つは医師の特例措置。この四つが大柱でありまして、御指摘になられるような大企業優遇税制というような面はきわめて——きわめてというか、そういう性質のものではございません。さあ、そういうものを、手を一挙に大幅に入れる、あるいは廃してしまうということになると、これはもう相当の秩序の問題に関係してくるのではないかということを恐れるのです。  それから、交際費の問題は、これはちょっとコメントしておきたいのでありますが、あれは企業原則から言いますと、全額経費になるべきものなのです。それを特例を設けまして、経費になるべきものを課税の対象とする、こういうことでございます。そういう性格のものであるにかかわらず、逐年課税を強化いたしまして、いま交際費二千五百億円ぐらいの収入を五十一年度では得ておるという状態であります。  非常に具体的な問題についての御指摘でありますので、必要があればなお主税局長からお答え申し上げますし、そうでなければまた別の機会に政府見解を申し上げさせていただきます。
  40. 矢野絢也

    矢野委員 私どもが示しましたこの財源の案、これはまた日を改めて同僚議員からより具体的な詰めをいたしたいと考えておるわけですけれども、ただ、どう言ったらいいのでしょうか、この租税特別措置法につきましていかにもこちらの大企業優遇税制であるという言い方が誤解であるような御答弁をなさったわけでありますけれども、これは私たちはちょっと納得できないですよ。この利子配当所得、これは一つの例をとって申し上げますと、四十九年度のケースで申し上げると、政府は利子配当所得の特例によって七百十億円減収になっておる。ところが、東京都の新財源構想研究会の数字によると、一千八百五十七億円利子配当課税の特例で減収になっておる。一千億も違うのです。これは昨日も社会党の石橋書記長から指摘がありましたけれども租税議論のプロセスの中でいつも問題になるのがこの新財源構想研究会の数字、これを問題にすると、いや、これは違うのです、政府の数字が正しいのですというような、私はそんな弁解がましい言い方でなくして、本当にこれが企業優遇特別措置でないんだというなら、真っ向から基礎データを挙げてこの研究会の数字に対して反論をその時点でなさっておくべきだったと思うのですよ。これは国民の一番関心を持っておる問題だし、ましてや国民納税意欲という面から考えても、もし東京都のこの数字が間違っておるというなら、政府責任をもって反論をしておかなくては、これは納税意欲に重大な影響が出ますよ。にもかかわらず、いままでなさっていない。具体的にこのような席で問題にすると、いや、政府の数字が正しいのです。しかもこの基礎データの説明もないというわけですから、私も、昨日石橋書記長が御要望なさったとおり、これらについての基礎データの提出を要望いたしたいと思います。
  41. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 東京都のいわゆる試算というものにつきましての反論はしておるはずでございますが、これはやっぱりこういう公式の場で申し上げさせていただく方がよかろうと思いますので、予算委員会のある段階でそうさしていただきたいと思います。  それから、そういうことに関連しての資料は速やかに提出いたします。
  42. 矢野絢也

    矢野委員 それでは問題を変えまして、国債問題。建設国債、赤字国債の国債問題ですね。  いまの不況で大規模な景気刺激策が必要である、この認識自体、私は決して反対はいたしませんけれども、この景気浮揚の財源として国債が大量に発行されておる。そしてかなりの確実さで予想される大量発行の長期化というものがもたらす問題点、これはやはり真剣に考えなくちゃならぬと思うのですね。これは、一部のように、赤字国債で減税という考え方は、わが党の場合はとっておらないわけでありますけれども、問題は、私はかつて、古典的かもしれませんけれども、経済学の授業のときにこういうことを学んでいるわけです。金利が自由化されている段階においては国債発行というものは、それが大量に発行されれば、これは市場に大量に流出するわけでありますから国債価格の下落、つまり利回りの上昇ということですね、という形で、高い利子でなければ国債が発行できなくなる。こういう高い利子で国債を発行しなければもう引受人がおらなくなるという形で、国債発行が自動的に制御される、そういう金利が自由化されているという段階においては。これは財政に対する自動的な歯どめということだと思うのですよ。そういうことを私たち古典的な意味で学んできているわけであります。しかし、いま政府がやっておられる国債管理政策というものは、行政のあらゆる手段を通じて国債の市中相場による売買、それに伴う実勢相場の変動ということにブレーキをかけていらっしゃる。具体的には、銀行に持たした国債は売ってはいけませんよという売買制限、事実上の売買禁止。あるいはまた、証券会社七社がシンジケート団みたいなのを組んで、国債の市場価格というものを一定以下に下がらせないように買い支えをさしておる。一種の国債の管理価格というものが証券会社によって形成されておる。これは皆、好きでやっておるわけじゃない。ちょっとでも変わったことがあったら、明くる日になったら大蔵省から電話がかかってくる。そういうのは、まことに大蔵省は緻密、巧妙な、完璧な国債管理政策というものをおとりになっておるということになるわけでありますけれども、これからの国債大量発行というものを考えたときに、このこと自体は決していいことじゃないんです。  いずれにしても、そういうようなやり方で人為的に歯どめを排除してしまって、一種の御用金調達思想という立場でやっているんですね。そういうことがまかり通っている間は、財政面での冗費節減への真剣な努力というものは私は期待できないと思うんです、御用金調達的なやり方で、一方で国債を発行するということは。それが可能な状況を行政でつくり出しておる。私は先ほど古典的と申しましたけれども、そのような市中の実勢価格によって国債発行条件が決まってくるという状況においては、自動的に財政に対する国債発行の歯どめがかかる。これは古典的かもわかりませんけれども、一歩でもそれに近づける努力が必要である。それと逆のことばかり政府はやっていらっしゃるわけですね。  そこで、私はまず二つ聞いておきたいわけでありますけれども、いままでの四十年代の国債発行は比較的少量であった。決して少ないとは言えませんけれども、これから比べれば少量だ。しかし、そういう時代の低位発行条件ですね、低い利回り。それから、買いオペによって銀行の持っておる国債を引き揚げるという、こういうやり方。これは五十年代ではもう通用しないんじゃないか。  一つは、大量国債発行によって、マネーサプライ、お金の供給がどうしてもふえてしまう。いまはまだ不景気ですから、民間資金需要はそれほど盛り上がっていませんので、銀行も国債を引き受けましょうということかもわかりませんけれども、将来民間資金需要が盛り上がっていきますと、マネーサプライというのは当然増加せざるを得ないし、これはそのままインフレにつながっていく。あるいはまた、インフレはだめだ、そのためにマネーサプライはふやさないんだということにすれば、当然銀行の手持ち国債がふえるという形で民間資金を圧迫する。このようなインフレ化、民間資金に対する圧迫、ひいては景気に対する足を引っ張る作用、こういうことになるんではないかと私たちは心配するわけなんです。そういう二律背反をどうお考えになるか。  あるいは、国債費の累増、これによる財政硬直化、これは財政支出の効果を大幅に減退さしておるわけですね。したがって、国債費を安くあげよう、こういうことになるでしょう。国債の発行条件を一層低くしたい、こういう危険性も高まってきます。こういう国債の発行条件を低くする、国債費を安くしたい、これはますます銀行に対する負担が大きくなる。銀行はその負担を背負えませんわ。そのまま民間貸出金利の引き上げ、あるいは預金金利引き下げという形で価格転嫁が行われる危険性がある。こういう状況を、国債発行の歯どめとしての市中消化原則の本来的な機能をいま見直すときじゃないか。市場実勢に従った発行条件で国債を発行することによって国債発行量が自動的に決まっていくという、このような市中消化原則、これをいま真剣にお考えなさるときではないかと思いますが、この点についてはいかがでございましょう。
  43. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いまわが国には、国債管理政策というものが事実上ないような状態ではないか。皮肉に言えば、非常に強度のものがある、つまり大蔵省の行政指導である、しかし本来的なものはない、こういう御指摘でございますが、その御指摘は私はそうだと思うんですよ。長年この問題は論議され、提唱されておりながら、なかなか実際化しないで今日に至っているんです。しかし、公債を多量に今後数年間出さなければならぬ、そういう状態下において本当に見直しをされなければならぬという段階に来ておると思うんです。お話のとおりですね。公社債市場というものが形成される、これが基本になるわけなんですが、その前提としては国債の自由流動性というものが、その条件、環境が整う必要がある。その辺がなかなかむずかしい問題でありまして、今日なお十分な状態になっておらぬ。しかし、この問題は御指摘もありますが、御指摘を待つまでもなく、もうこういう時代になると、この問題こそが大変な問題なんだ、これは大事な問題だというので、大蔵省においても鋭意いま検討を進めておるということでございます。  それから第二に、公債を多額に出しておりますとマネーサプライ、これが問題になってくるというお話でございますが、今日この時点においてはその心配はございません。これは大蔵省においていろいろな手段を尽くしておりますが、とにかく国債の完全消化ということが実現されておりますので、その辺につきましてはただいまの段階では心配ありませんけれども、との状態が長く続きまして、そしてどうも完全消化されないというものが出てくるような状態になりますると、これはえらい事態であります。そういうようなことで、私も必要以上に厳しいことを申し上げておるという状態でございます。  それから、公債が累増してくる、そういうことになると、これがまた財政を圧迫するんじゃないか。そういうような状態下においては、金利を下げるというような努力を財政当局はしがちである。それがまた公社債の自由市場形成といいますか、そういう国債管理のいい面を妨げるんじゃないかというお話でございますが、私は財政当局の気持ちとすると、なるべく公債の金利負担が少ない方がいいんですから、そのような気持ちにはなりがちでございましょうけれども、さらばと言って公債の消化ということもまた考えなければなりませんから、そういう結果において御心配のことになるようなことはあるまい、かように観察いたします。
  44. 矢野絢也

    矢野委員 ひょっとして将来国債がふえればというような、非常に人ごとみたいな見通しでおっしゃっているわけでありますけれども、ここでくどく言うまでもなく、五十五年の時点では六兆五千二百億の発行額で、国債費の負担が四兆四千二百億ですね、六八%ということになるわけですよ。これ自体非常に重大なことに国債費の面から見ても言えるわけです。  もう一つは、この国債発行というものについて、そんな特段の管理政策はとってないんだみたいなことをおっしゃっておりました。これは後ほど、そういううそは許されないということで具体的に申し上げたいと思います。  ただ、その議論の前に、私は日銀総裁に伺っておきたいのでありますが、とにかく銀行における国債の滞留状況、保有状況、これは私たちの調査では全国の銀行主要勘定速報をデータにして調べましたけれども、五十一年の十二月末国債保有高は七兆二千八十億ですね。これは現金などの資金調達額の残高の六・五%になっておるんですね。現在も六・五%国債を持たされておるということですね。そして五十一年中の国債引受額は四兆七千五百五十五億、買いオペが七千百六十六億ございました。これはふえて、四兆三百八十九億ということで、これ自体五十一年中の一年間の資金調達額の三一%ということになるわけです。こういう莫大な押しつけがもう現在すでに行われておる。  そこで、いま予定されておる国債発行の見通しというものを前提にしてどういうことになるかという予測を私たちしたわけでございますが、これは五十五年度末の保有国債残高が銀行の資金量に対する比率は一五%ということになってくるわけです。この条件は、五十二年度の予算をもとに大蔵省の中期財政展望を一つはもとにしました。二つ目には、銀行の国債引き受けシェア七〇・五%、これは五十一年の実績です。それから、日銀のオペ、年一三%ずつふえる。オペシェアが八五・三%、銀行の資金量の伸びが年二二%。この前提、これは必ずしも荒唐無稽な前提ではない。いままでの実績というものを踏まえた前提でありますけれども、これでいきますと、五十五年度の全国銀行の国債の滞留、現在は資金残高の六・五%ということになっておりますけれども、五十五年度になりますとどういうことになりますか、日銀総裁の見解を承りたいと思います。
  45. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  ただいまお話のございましたように、全国銀行の資産の増加額を毎年一三%、国債発行額につきましては五十二年度予算を基礎として中期財政計画の各年度発行額に五十二年度の追加発行額をプラスいたしましたもの、さらに市中消化の比率を五十二年度予算ベース八八・二%が続く前提、さらには市中消化の中での全国銀行引き受けのシェアを七〇・五%、これは五十一年の実績でございます。ということで、オペレーション、日本銀行の買いオペを一三%の伸びという前提で試算いたしますと、五十五年度末における全国銀行の国債保有額の比率は一三・二%ということに相なります。
  46. 矢野絢也

    矢野委員 一三・二%ですか。私どもは一五%ということです。いずれにしても現在は六・五%なんですよ、資金残高に対する国債保有高というものは。それがいまの総裁の御返事でも倍以上になる。私たちはこれは一五%になるという計算です。これは重大なことなんですよ。  これは一つは、景気がよくなってきますと、民間の資金需要というのはますます高まってきますね。その場合、市中銀行としてこれに応じ切れないという要素が一つ出てくる。あるいは応じようとすると、いままで持っておる国債以外の債券や株券を売る、あるいはコールに手を出すということになりますね、これをふやそうとすると。これはおのずから金利の上昇を招くという形で、景気回復期における経済活動に重大な悪影響を与えますね。そういう問題が一つある。  もう一つは、総裁はいま一三・何%とおっしゃいましたが、そのように銀行の国債保有高が増大していく中で日本銀行として買いオペ、これは当然業界——銀行界や産業界から、銀行の資金調達能力というものを高めなくちゃならぬということで、要望が出てくるでしょう。成長通貨の限度内というような御説明がいままであったわけでございますが、いままでの少量国債ならまだ——事実上国債というのは十年国債でなくして一年国債みたいな感じだったわけです。一年たったら買いオペで銀行が持っておったものを引き取ってもらえる。これからどんどんふえていく段階において、日本銀行として買いオペの方針をどのようにお考えになっておられるのか。ひとつこれは総裁から承りたいと思います。
  47. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  国債の買いオペレーションは、日本銀行が金融市場調節のために利用しておりまする一つの手段でございまして、ほかに貸し出しあるいは手形オペレーション、あるいは準備預金の調整等がございます。いかなる場合にどの程度の国債買いオペレーションを行うか、これはそのときどきの金融市場の基調的な情勢並びにそのときにおける金融政策のスタンス、たとえば緩和時期であるか引き締め時期であるか、そういうこととも密接な関係があるわけでございまして、一概にどういう方針だということは言えないのでございますが、しかし、概して申しますと、いまお話しのように、成長通貨の範囲内にとどめるのが適当であるとは思っております。  政府資金の揚げ超と銀行券の増発とが市場における資金不足をもたらす二大要因でございますが、政府資金につきましては、長い期間をとりますと、大体収支とんとんでございまして、結局は銀行券の増発分だけが資金不足になる。それはすなわち成長通貨ということになるわけでございまして、過去の例を見ましても、銀行券の増発がすなわち資金不足高に大体見合っておるわけでございまして、また国債の買いオペ額もほぼそれに見合った金額で推移しておるということでございます。  国債オペレーションを始めましてから昨年までの実績では、現金通貨、日銀券の増発並びに資金不足額はほぼ九兆前後で見合っておりますが、それに対しまして、国債の買いオペレーションによる供給額は八兆前後にとどまっておる、大体そういう関係でございます。もちろん、今後国債が増発されますので、いままでの国債買いオペの割合は発行額に対してかなり高い比率を占めておりましたが、今後はなかなかそういうわけにはまいりますまい。その辺のところが今後の金融調整の非常に重要なポイントになろうかとも存ずる次第でございます。
  48. 矢野絢也

    矢野委員 総裁、重ねて恐縮でありますが、先ほど、私どもでは五十五年の時点で資金残高の一五%が国債、これが一三%という御説明がありました。いずれにしてもそういう状況というもの、日本経済、インフレに対する要因、景気浮揚に対する影響、いまのこの一三%、私が言う一五%を総裁としてどのように御評価なさいますか、見解を承りたいと思います。
  49. 森永貞一郎

    ○森永参考人 先ほど一三%と申しましたのは、申し上げましたような前提のもとに計算をしたわけでございますが、現実の問題としては、いまは資金需要が比較的落ちついておりますので、国債の消化並びに産業資金の供給、二つながら円滑に推移しておるわけでございますが、今後産業資金の需要が景気回復とともに増大いたしてまいりました場合に、それがどうなるかという問題があるわけでございます。二二%国債に投資する場合に産業資金の必要な額を充足し得るかどうかという、そういう問題が起こってくるわけでございます。今後私どもといたしましては、景気の動静等もにらみ合わせながら、両方ともうまくいくようにということ、これは大変むずかしいことでございますが、極力努力をしていかなければならないポイントだと思っております。  景気がよくなりますと資金需要もふえるわけでございますが、一つには、政府歳入がふえる、ふえた分だけはこれは国債をぜひ減らしていただきたい、それによって両者の調整がうまくいくようにということが一つでございます。  それから、マネーサプライに影響がございますようなおそれがありますときには、私どもといたしましても金融政策の運用に万全を期さなければならないと思いますし、政府に対しましても財政施策の運用に当たりましてお願いすべきことはお願いしなければならない、そういうような状態なきを保しがたいわけでございまして、要するに、今後の推移を見きわめながら万全を期したいと思っておる次第でございます。
  50. 坪川信三

    坪川委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  51. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、福田総理大臣より発言を求められておりますのでこれを許します。
  52. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国会予算修正問題につきまして午前中矢野さんから御質問がありました。政府におきましても、見解につきまして回答ぶりを検討いたしましたが、検討の結果を法制局長官からお答えを申し上げます。
  53. 真田秀夫

    真田政府委員 国会予算修正に関しまする政府見解を申し述べます。  一、予算については、憲法内閣にのみ提案権が与えられており、一方、国会はこれを審議し、議決する権限を有する。  二、国会予算修正については、増額修正を含めて可能と考えるが、それがどの範囲で行い得るかは、内閣予算提案権国会の審議権との調整の問題であって、前記のような憲法の規定から見て、国会予算修正は、内閣予算提案権侵害しない範囲内において可能と考えられる。  三、御指摘の「項」の新設の問題については、「項」が予算議決科目の単位であり、政府の施策がこれによって表現されるものであることを考えると、一般的に言って、内閣予算提案権との関係からむずかしかろうと考える。  また、仮に、「項」の新設でなくても、既存の「項」の内容が全く変わってしまうような修正であれば、同様の趣旨から問題がある。  しかし、具体的にどのような修正予算提案権侵害することになるかは、個々のケースに即して判断すべき問題であると考える。
  54. 坪川信三

  55. 矢野絢也

    矢野委員 憲法上では、財政処理の権限国会議決に基づいてこれを行使すべきことを財政に関する大原則としております。国会に対して財政に関する最高最大の議決権を付与しておるわけであります。そのゆえに、予算について何らの制限のない修正権あるいはまた議決権を行使することが内閣予算提出権限と憲法上何ら矛盾するものではない、これは正しい憲法解釈であると私たち考えております。このゆえに、国会側の見解として午前中にも私、意を申し上げましたが、「国会は、予算の増減又は予算費目の追加若しくは削減等すべて内閣の提出した予算に関し、最終且つ完全な権限を有する。」、これは国会両院法規委員会勧告にも明らかであります。すなわち国会中心主義立場から、単なる増額のみならず、款項付加修正権限を有するとの見解立法府としては立っておるわけであります。しかし、いま示されました政府見解は、立法府予算修正権に項の付加修正を認めないとする見解であります。これは立法府修正権に対する行政府からの侵害であります。あるいはまた、それのみならず、仮に立法府予算組み替え動議による予算の再提出を政府に求めるといたしました場合も、恐らく政府は項の変更を伴う組み替え動議については困る、このような態度をおとりになることが当然このような見解から予想されるわけでありまして、これは立法府修正権への侵害のみならず、組み替え動議提出権に対する侵害でもある、このようになってまいります。このようないま示されました政府見解、明らかに憲法解釈の歪曲でありまます。立法府軽視そのものであります。いま一兆円減税、この問題が国民の強い関心を集め、立法府において真剣に景気浮揚対策、社会正義の回復、こういった立場からこの論議をやろうとしておるわけであります。また、保革伯仲のこの国会国民の期待に沿ったこの役割りというものを国会はぜひ果たしていかなくてはならない。しかし、いま示された政府見解では、予算修正についての論議というものは、大変残念ではありますが無意味なものになってくる、こう言わざるを得ません。したがいまして、この問題につきまして、委員長、国権の最高機関である立法府権威を守り、国民の期待にこたえるためにも憲法の正しい解釈に基づく政府見解が出されるよう委員長として御努力を願いたい、そのような正しい憲法解釈に基づく政府見解が示されない限り、大変残念ではございますが、この審議についてはこれ以上続けることはできません。
  56. 坪川信三

    坪川委員長 この際、理事会協議のため、暫時休憩いたします。     午後一時五十九分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕