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1977-04-07 第80回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月七日(木曜日)委員会において、 次のとおり小委員及び小委員長選任した。  恩給に関する小委員       逢沢 英雄君    関谷 勝嗣君       竹中 修一君    塚田  徹君       塚原 俊平君    大出  俊君       栂野 泰二君    新井 彬之君       受田 新吉君    柴田 睦夫君       中川 秀直君  恩給に関する小委員長     竹中 修一君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十二年四月七日(木曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 正示啓次郎君    理事 木野 晴夫君 理事 近藤 鉄雄君    理事 竹中 修一君 理事 塚田  徹君    理事 木原  実君 理事 長谷川正三君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    宇野  亨君       内田 常雄君    加藤 紘一君       鹿野 道彦君    関谷 勝嗣君       塚原 俊平君    中川 一郎君       中村 弘海君    藤田 義光君       増田甲子七君    湊  徹郎君       大出  俊君    栂野 泰二君       矢山 有作君    山本 政弘君       新井 彬之君    市川 雄一君       柴田 睦夫君    中川 秀直君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      藤田 正明君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人  事  官 愛川 重義君         人事院事務総局         管理局長    長橋  進君         人事院事務総局         給与局長    茨木  廣君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         内閣総理大臣官         房総務審議官  美野輪俊三君         総理府人事局長 秋富 公正君         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         皇室経済主管  石川 一郎君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         厚生省援護局長 出原 孝夫君         労働大臣官房審         議官      松尾 弘一君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      門田  実君         内閣総理大臣官         房参事官    垂木 祐三君         内閣総理大臣官         房参事官    木戸  脩君         総理府恩給局恩         給問題審議室長 手塚 康夫君         宮内庁長官   宇佐美 毅君         大蔵省銀行局金         融制度調査官  西内  彬君         文部大臣官房人         事課長     別府  哲君         厚生省年金局年         金課長     高峯 一世君         郵政省人事局給         与課長     岩田 立夫君         郵政省人事局厚         生課長     深海 司朗君         労働省労働基準         局補償課長   溝辺 秀郎君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 森  英良君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     中村  直君   関谷 勝嗣君     水平 豊彦君 同日  辞任         補欠選任   中村  直君     宇野  亨君   水平 豊彦君     関谷 勝嗣君 同月二十五日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     大石 千八君   塚原 俊平君     山中 貞則君   中川 秀直君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   大石 千八君     宇野  亨君   山中 貞則君     塚原 俊平君   中馬 弘毅君     中川 秀直君 同月二十九日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     福島 譲二君   塚原 俊平君     愛野興一郎君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     塚原 俊平君   福島 譲二君     宇野  亨君 同月三十日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     古屋  亨君   新井 彬之君     矢野 絢也君   柴田 睦夫君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   古屋  亨君     宇野  亨君   矢野 絢也君     新井 彬之君   不破 哲三君     柴田 睦夫君 四月四日  辞任         補欠選任   米沢  隆君     大内 啓伍君 同月六日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     佐々木義武君   塚原 俊平君     渡辺 秀央君 同日  辞任         補欠選任   佐々木義武君     宇野  亨君   渡辺 秀央君     塚原 俊平君 同月七日  辞任         補欠選任   竹下  登君     鹿野 道彦君   中馬 辰猪君     加藤 紘一君   増田甲子七君     中川 一郎君   上田 卓三君     山本 政弘君   栗林 三郎君     大出  俊君   柴田 睦夫君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     中馬 辰猪君   鹿野 道彦君     竹下  登君   中川 一郎君     増田甲子七君   山本 政弘君     上田 卓三君   安藤  巖君     柴田 睦夫君     ――――――――――――― 三月二十四日  中小企業省設置法案新井彬之君外一名提出、  衆法第一一号) 同月二十三日  山形市等の寒冷地手当引き上げ等に関する請願  (鹿野道彦紹介)(第一七一三号)  同(渡辺三郎紹介)(第一七三三号)  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願(  栂野泰二紹介)(第一七三二号)  同(佐々木良作紹介)(第一八〇八号) 同月二十四日  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願(  松本善明紹介)(第一八六六号)  同(市川雄一紹介)(第一九三九号)  同(栗林三郎紹介)(第一九四〇号)  同(中川秀直紹介)(第二〇一二号)  扶助料及び遺族年金改善に関する請願(細谷  治嘉紹介)(第一九三八号) 同月二十八日  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願(  森下元晴君紹介)(第二〇七七号)  同(山原健二郎紹介)(第二一七八号) 四月四日  扶助料及び遺族年金改善に関する請願(福永  一臣君紹介)(第二五六三号)  同(馬場昇紹介)(第二五九二号)  山形市等の寒冷地手当引き上げ等に関する請願  (安宅常彦紹介)(第二五九一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月一日  恩給共済年金改善に関する陳情書  (第九三号)  同和対策事業完全実施に関する陳情書外二件  (第  九四号)  沖繩県区域内の駐留軍用地等に関する特別措  置法案早期制定に関する陳情書  (第九五号)  沖繩県区域内の駐留軍用地等に関する特別措  置法案反対に関する陳情書外八件  (第九六号)  沖繩県区域内の駐留軍用地等に関する特別措  置法案に関する陳情書  (第九  七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任の  件  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  三九号)      ――――◇―――――
  2. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより会議を開きます。  この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。  恩給制度調査のため小委員十一名からなる恩給に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 正示啓次郎

    ○正示委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次に、小委員及び小委員長選任についてお諮りいたします。  小委員及び小委員長選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 正示啓次郎

    ○正示委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  それでは、小委員に       逢沢 英雄君    関谷 勝嗣君       竹中 修一君    塚田  徹君       塚原 俊平君    大出  俊君       栂野 泰二君    新井 彬之君       受田 新吉君    柴田 睦夫君       中川 秀直君 を、小委員長竹中修一君を指名いたします。  なお、小委員及び小委員長辞任の許可及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 正示啓次郎

    ○正示委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ――――◇―――――
  6. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。受田新吉
  7. 受田新吉

    受田委員 皇室経済法審査の都度、私から重要な問題点指摘して御答弁を願っておるのでございますが、きょうは、皇室経済法直接の問題に関連する問題として幾つかを取り上げてお尋ねをいたします。  まず、宮内庁長官御苦労をいただいておるのでございますが、宮内庁長官職責宮内庁設置法に明記してございます。と同時に、総理府設置法総務長官職責が明記してあるのですが、総務長官宮内庁長官に対してどのような権限を持っておられるか、御答弁を願いたいのです。
  8. 藤田正明

    藤田国務大臣 総理府設置法の第十九条におきまして、「総務長官は、内閣総理大臣を助け、府務を整理し、並びに総理府所管事項について、政策及び企画に参画し、政務を処理し、各部局及び機関事務監督する。」この中で括弧の事項がございまして「法律国務大臣をもつてその長に充てることと定められている機関を除く。」こう書いてございます。宮内庁長官国務大臣でございませんので、総理府の方の管轄に入っている、かように存じております。
  9. 受田新吉

    受田委員 そうすると、宮内庁長官監督する権限があるということですね。指揮監督する場合と、監督する場合の権限相違を御説明願いたいのです。
  10. 藤田正明

    藤田国務大臣 これは監督指揮ということではございませんで、「所管事項について、政策及び企画に参画し、政務を処理し、各部局及び機関事務監督する。」こういうことでございますから、宮内庁企画に参画し、各部局及び機関事務監督する、こういうことでございます。
  11. 受田新吉

    受田委員 事務監督ということになれば、宮内庁長官監督することはできないということですか。
  12. 美野輪俊三

    美野輪政府委員 お答えいたします。  宮内庁長官宮内庁長官ということで、宮内庁業務を全体的に指揮監督しておるという関係にあろうかと思います。それで、内閣総理大臣宮内庁業務について監督をするということでございますので、その監督される職員の中には、宮内庁長官も入ってくるものというふうに考えております。
  13. 受田新吉

    受田委員 宮内庁長官内閣総理大臣指揮監督下に属する、これは宮内庁法で明確にうたわれておる。そうすると、指揮監督は、内閣総理大臣から宮内庁長官受けるということになりますね。そして、監督総務長官から受ける、こういうことですか。
  14. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃるとおりでございますが、総理府の方は、具体的には事務監督をする、こういうことでございます。
  15. 受田新吉

    受田委員 これは非常に大事な職務権限関係でございまして、すべて行政事務は、そうした職務権限を明確にしてなさるべきで、あいまいもこであってはならない。指揮権監督権相違を御説明願いたいです。
  16. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 宮内庁法によりますと、宮内庁総理大臣管理のもとにあるわけです。そういう文句で、指揮監督と書いてございません。総務長官の方は、ただいまお述べになりましたとおりに、事務全体についての監督をされる、そういう点ははっきりしております。
  17. 受田新吉

    受田委員 すべて公務員は、指揮監督系統が明確になっているはずです。宮内庁長官指揮監督受け上司はない、監督だけしてもらう、そういう特殊の職種であるかどうか、これは法制的な立場から、審議官で結構です。
  18. 美野輪俊三

    美野輪政府委員 お答えいたします。  基本的には、総務長官総理府の長ということではございませんで、総理府の長は内閣総理大臣、こういうことにされております。それで、総務長官は、内閣総理大臣業務執行等につきまして、これを補助するというような関係に入ってございます。そういう関係もございまして、制度的には宮内庁長官総理大臣のもとにあるわけでございますが、内閣総理大臣のその権限等の一部を総務長官が代理する、こういうような関係に入っているかと思います。  なお、先生お尋ね総務長官宮内庁長官との厳密な権限責任等関係につきまして、実は、突然の御質問でございますので明確なお答えをいたしかねますが、後日調べましてお答えいたしたい、このように考えております。
  19. 受田新吉

    受田委員 行政府に列する人は、基本的な職務権限関係を御承知であらなければならないのです。内閣法の第六条に「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部指揮監督する。」とある。その行政各部指揮監督するという中から宮内庁長官は外れておるというわけにはならぬと思うのです。だから、内閣総理大臣行政各部指揮監督するのですから、当然総務長官内閣総理大臣指揮監督受けてあなたは職務執行されるわけです。宮内庁長官も、同様行政各部の一部でございますので、内閣総理大臣指揮監督受ける。しかし総理府設置法には事務監督権規定してあるわけですが、監督指揮とはどう違うのか。これはやはりお役人は十分心得ておられないと、あいまいもことして職務に精励されるわけにはいかないのです。規律ある国家行政組織というものを明確にして職務に精励していただかなければならぬわけです。どうですかね。
  20. 美野輪俊三

    美野輪政府委員 お答えいたします。  内閣法には先生指摘のような趣旨の規定がございます。また、総理府設置法におきましては、先ほど申し上げましたとおり総理府の長は内閣総理大臣でございまして、そのもとに総理府総務長官という特殊な職が、総理府特殊性から置かれてございます。確かにそのもとに、総務長官は、内閣総理大臣を助け、政務を処理し、各機関事務監督する――指揮監督ではなくて、監督するという規定が入ってございます。したがいまして、内閣方針を各部局の長に指示する指揮系統権限は、規定の上では外れておるわけでございます。内閣総理大臣を補助して、整理し、監督するという限りにおいて、その一部を総務長官執行しておるもの、このように考えられると思います。
  21. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、指揮権というのは指示してそれに従わせる、監督というのは指示はできない、単なる監督だ。単なる監督というのはどういうことですか。
  22. 美野輪俊三

    美野輪政府委員 宮内庁は、総理府の外局としての言うなれば一つ機関を構成しているわけでございます。したがいまして、通常業務その他につきましては、それぞれ宮内庁において独自に考える。もちろん内閣方針に従いまして通常業務を考え、運営していくというような関係になろうかと思います。いわゆる直接上司というような形で、まさにその業務を直接具体的に指示するというような関係にはない。指揮監督ということの中にそのような相違があるのではないか、このように考えております。
  23. 受田新吉

    受田委員 総務長官、これは当然宮内庁政策企画に参画すると書いてある。そうする場合に、政策企画等に参画するということは、ただ単に参画するだけであって、こうあってほしいというような指示はできない、参画するだけ、余り大した存在じゃない、総務長官はなめて、かかられることになっても仕方がない、あなたのお話お話で承りますが、あなたには職務権限指揮権がないのですから、宮内庁長官としては所信に邁進しますと言えばそれだけかということです。なめられる総務長官であってもよろしいという法律の根拠かどうか、これは審議官が御答弁していただいて結構です。
  24. 美野輪俊三

    美野輪政府委員 先生承知のとおり「総務長官は、内閣総理大臣を助け、府務を整理し、」という規定になってございます。したがいまして、法律上の問題といたしましては、その条文の後段にございますように、指揮ということはございませんで、監督をするという形になってございます。ただ、これらの行政官庁の一般の業務執行でございますが、言うなればその上司権限を委任しあるいは専決するというような規定を各官庁いずれも持ってございます。そういうことの中で、内閣総理大臣総務長官に対する命令という形になると思いますけれども内閣総理大臣の意向におきまして、総務長官執行すべきことを命ぜられておる事項、これが専決事項というようなことになろうかと思います。そういう内閣総理大臣指示があれば、その限りにおいて、総務長官内閣総理大臣権限を代行するというような場合も出てくるかと思います。ただ一般的には、法律上の規定といたしましては、先生指摘のとおり、総務長官府務を整理し、各機関監督する、こういう規定になってございますので、指揮という文言はそこに含まれてございません。
  25. 受田新吉

    受田委員 認証官という規定は憲法第七条で、天皇認証をお受けになる職種、これはそれぞれの法律にも明記してあるわけでございまするが、認証官なるものは、天皇認証をお受けになるというだけであって、他に特典はないのかどうか。
  26. 美野輪俊三

    美野輪政府委員 認証受けることによりまして、それによる特段の特典とか特権とか、そういった形のものはないように記憶いたしております。
  27. 受田新吉

    受田委員 宮内庁には認証官がたくさんおいでになるわけです。長官を初めとして時従長、その他式部官長認証官――なっていない。そうするといま認証官時従長とお二人だけだね。その認証官で、宮内庁に二人いらっしゃる方々は、特別の認証儀式をお受けになるというわけでございまして、その認証官たる特権というものは別にない。単に認証式によって認証官と称せられるというだけの特典ですか。
  28. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいま仰せのとおりでございます。
  29. 受田新吉

    受田委員 もう、一つ宮内庁長官に関連して、私なつかしい思い出があるんですが、昨日朝お亡くなりになられた木戸幸一さん。木戸幸一さんは、かつて内大臣長期にお勤めになり、各大臣も歴任された人です。非常に皇室には御縁の深い方であった。これは私、郷里を同じゅうする山口県の先輩木戸孝允の孫でいらっしゃるだけに、非常に関心を持ったお方であったんですが、昨日朝お亡くなりになられた。陛下側近第一号として御苦労された木戸幸一さんに対しては、陛下も非常な哀愁のお気持ちを持っておられると思うんです。かつて側近でいらっしゃた内大臣、この木戸さんに対する愛情陛下にはたくさんあられたと思うんですが、木戸幸一さんの逝去に対しまして、陛下のお気持ちの表明というようなものをどういう形でお伝えになっておられるのか。何かお使いが行かれるとか、その他何か、かつて側近一号、宮内庁長官先輩と申し上げてもいい木戸先生逝去に対する扱いを、宮内庁長官、どう把握しておられるか。
  30. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 仰せのとおり、昨日木戸さんがお亡くなりになりました。長く宮内庁病院で治療しておられましたが、その効もなく、まことに残念だと思います。入院中も、陛下はしばしばいろいろお尋ねになっておりますし、お亡くなりになった報を聞かれて、相当感慨深くあられるように思います。御葬儀につきましても、いろいろお供えその他検討されておるわけでございます。  ただ木戸さんは、戦後、戦犯としての扱い受けられた方でありまして、それが出られました後においても、宮中には非常に遠慮して、お呼びしてもおいでにならないぐらいでございました。すでにいただかれておられる勲章も御辞退になっておられる方でございます。そういういろいろのことも考えまして、われわれとしては、できることをいたしたい、かように考えております。
  31. 受田新吉

    受田委員 陛下自身が長い愛情を与えられた方々に対して、余り陛下の御存在を強く見過ぎて、その陛下愛情を示されることを阻止されるようなかっこうであってはならない。木戸先生自身が遠慮されておる、私もそれを承っております。けれども長官は、現に宮内庁長官として陛下側近におられて業務を遂行されているだけに、余り人間としての麗しさというものを儀式的に阻止するということをやられることは、私はいけないと思うんです。長官自身、もうすでに二十数年宮内庁長官をおやりになっておられる。陛下信任が厚い方であることも私よく知っております。長期にわたって勤続されることは、陛下自身の信頼が深い。やはり宮内庁長官は、そういう陛下信任の厚い人が長く勤務して一向差し支えはないと私は思っているんですが、そういう特殊の職種宮内庁長官です。ある年限が来たら、すぐやめてもらいたいというような職種ではない。他の職種とは異なる立場にいらっしゃるのが宮内庁長官である。したがってこの宮内庁長官長期にわたって信任されて、その任にいらっしゃるということに基づいて、陛下国民から遊離させる方向に持っていくべきでなくして、国民の中に親和感をわかせる役を、だれよりも長官は大きな影響力を持つお方であるがゆえに、これを行わなければならないわけです。  これに関連して、先般皇太子妃おじ正田建次郎さんがお亡くなりになられた。これに対して弔問され、そしておじ様に対する追慕の念をささげようというときに、民間の人ならば、おじさんが御病気というと、すぐさっと飛んで行ける。しかし、皇室の一員でいらっしゃるだけに思うようにいかない。そういうときに、私は、宮内庁長官として、陛下皇室のそれぞれの方々に対するそうした人間性を十分尊重されるような扱いを、長官はしていただかなければならぬと思うんです。かつて貞明皇后がお亡くなりになられたときに、天皇陛下、お母様のお亡くなりになることに対しても、非常な制約があったことを私聞いておるのですが、人間性を十分尊重しながら、象徴天皇の権威を一方では立てながら、同時に国民統合象徴でいらっしゃる陛下でありまするから、国民との親和感をわかせる重い使命が宮内庁長官扱いの中に出てくると思うんです、出てこなければならぬと思うんです。こういう問題について、陛下及び皇室方々皇室一家人間性を高めるための扱い長官としては十分配慮しておられるのかどうか、御答弁いただきます。
  32. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいまのお話でございますが、私どもといたしましても、仰せのような気持ちを十分に持っているつもりでございます。ただ、いろいろの昔からの伝統でございますとか、こちらがそう考えてもそういうところから逆に考えられるという、いろいろなむずかしい問題がございます。  貞明皇后様について御発言ございましたけれども、私どもはそんなことはない、なかったと思っております。最も情の深いのは陛下でいらっしゃいます。私どもは、それが実現することを、心からいたしたいという立場において考えておるつもりでございます。
  33. 受田新吉

    受田委員 私が願っている方向は、陛下の御外出、そういうところにも非常な制約がある、警備も厳重にしなければならぬとかいろいろな外的要素があって、人間性を尊重する立場は非常に制約されておる。お母様の貞明皇后様が重体でいらっしゃるというときには、民間であればそこへ毎日でもお見舞いに行くというような、そういうところに人情の自然があるのですけれども、そういうところに天皇御一家には非常な制約がある。これは長官、その制約は排除してでも、その人間性を豊かにしてあげるという心遣いができるという御判断ですか。いまのお話を伺って、そういう心配は要らないということでございましょうか。
  34. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 いまもちょっと触れましたけれども貞明皇后様の場合は突然御病気で、すぐ御重体におなりあそばしたわけでございまして、御病気中お見舞いに行かれるという形をする暇のないことでございました。私どもは、ただいまも申し上げましたとおり、こちらで考えましても、向こうから非常にそれが病人に影響があるというようなことを言われて、車まで用意して、お出ましにならなかったということもあるわけであります。それを押してまでやることはかえってどうかということもあったわけでございます。過去においてはございました。しかし、そういう古い考え方というものはだんだん消えていくような努力を平素いたしておるわけであります。私どもとしましては、御質問の御趣旨のようにだんだんと進めてまいりたいと思います。
  35. 受田新吉

    受田委員 関連する質問を続けます。皇室関係して特に取り上げたいことは、他の委員会などで論議がほとんど出ない問題でありますから、いまからその問題に触れさしていただきましょう。  憲法第一条に象徴天皇制が明記してある。これは国民みんなが心得ておるわけです。できるだけこの憲法一条の精神をすべての国民が理解し、そしてまた協力して、日本国の統合の象徴である陛下に敬愛の情を深めていくような心遣いをすべきである、これが憲法に忠実な国民の使命であると思うのです。したがって、実は陛下の御外出などもできるだけ回数を多くして差し上げて、皇居の中でお散歩される自由ぐらいしかなくて、ちょっと買い物に行きたい、何かの民間行事を見たいというようなときに、それを一々制約をされて自由が束縛されるという形をできるだけ排除したい。どうでしょう。私、かつても質問しました。ヨーロッパの君主国の王室、比較的自由に外部との接触が保たれております。御外出も比較的自由である。日本の場合には、ある特別の暴漢みたいなのが、不心得者がそうした憲法第一条の精神を無視してそそうをするという危険があるという社会情勢、大変悲しいことでございますが、しかし、国民の大半は陛下に民衆に接触していただくことを願っておる。諸行事等にも陛下あるいは皇太子の御参加等をできるだけ多くしてもらいたいというように願っておる。こういう民間との接触で、たとえば買い物にちょっと行ってみたい、市場を見たいという、民衆に対する親和感を深める陛下の御意思というものをどう育てようとされておるか、長官、お答えいただきます。
  36. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 陛下のおぼしめしも、国民と親しくしたいというお気持ちであることはもちろんでございます。非常に警備を厳しくし過ぎまして、接触の機会がなくなるということを非常に悲しんでいらっしゃる方だと思います。私どもも、そういう意味からいいまして、できることなら本当に手放しでそうしていただきたいと思います。たとえばお正月の一般参賀というときにも、いろいろな不祥なことが起こりました。そういう関係から、万一のことを思いまして一つのガラスの箱の中に入っていただいたようなかっこうになっております。やりたくてやっているのではございません。早く取れるときが来ることを望むわけであります。そういうことでございまして、私どももそういう気持ちを持っておりますが、外国とやはりいろいろな歴史が違っておりますから、そう一挙にということはなかなかむずかしい。こちらがそのつもりでも、受ける方でずいぶん違った面が出てくることさえございます。そういう点一々申し上げると長くなりますからやめますけれども、われわれとしましてはそういうことでできるだけ考えてまいりたいと思います。
  37. 受田新吉

    受田委員 私は、陛下の御心境などは長官がおそばで一番正確に把握していらっしゃると思います。その長官陛下の御意思を尊重されながら、同時に対外的に陛下に対する失礼がないようにということに気を使っておられることもよくわかる。したがって、ここで私あえて指摘したいことは、来年六月十八日にブラジルで日本移住七十年の式典が行われます。現地では陛下のおいでを圧倒的な期待でお待ちしておる。私、日伯議員連盟の副会長をやっているだけに、私も強い要望を受けておるわけです。すでにヨーロッパ、アメリカのお旅をされた陛下です。日系人が百万になんなんとしようとするこの七十年の歴史で、ここまで日系人を大事にしてくれて、閣僚にも国会議員にも、相次いで日系人が少数の中から非常な信頼の上に立っている。こういう国には陛下自身お出ましを願って、日系人の将来に希望を与える、長い間御苦労であったという陛下愛情もお受けさせてもらいたいものだと私は思うのです。ヨーロッパ、アメリカのお旅をされた現時点で、陛下の御健康が許されるならば実現させてもらいたい。同時に皇太子御夫妻も同様のことでございまして、こういうときに陛下が行ってみたい、こういう御意思があれば、これを政治問題というようなややこしい問題とは別個に、ひとつ長官総務長官内閣総理大臣、外務大臣等にもお示しになられて、これを実行に移させる。これは決して宮内庁長官、遠慮されることはないと思うのです。政治的問題ということでなくして、本当の大所高所の国際親善に貢献していただくということであるのですから、この機会に来年のお旅をぜひ実現させてあげたい。総務長官宮内庁長官の双方より御答弁を願いたい。
  38. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 過般ブラジルの大統領が日本を訪問なさいました。そういうときに何となくちらほらそういう話が出ておりました。自来私の頭にもそれがございますけれども、まだ具体的のお話というものは何もございません。これは私一個で考えることでなく、政府の問題でもございますし、詳細ただいまの仰せになりましたようなことを参考にして、どうなるか検討いたしたいとは思っておりますが、まだ結論は出ておりません。
  39. 藤田正明

    藤田国務大臣 天皇御夫妻の健康が許しますれば、ただいま受田先生が言われたような方向で宮内庁長官その他総理とも御相談申し上げて考えてみたい、かように思います。
  40. 受田新吉

    受田委員 陛下の御健康が許されるならばという前提で、そういう方向で考えてみたい、これは私は当然かくあってしかるべきだと思っております。陛下の果たすお役割りはそうした政治臭のない大所高所からの国際親善、これへの御貢献、陛下自身の御心中もそのようにあるという、そういういま宮内庁長官からも陛下の御心中をそんたくした答弁があったと思いますが、ひとつこれを積極的に進めていただきたい。  次に、大変申し上げにくいようにも見えますけれども、避けて通ることのできない皇室の問題があるわけです。われわれは陛下の御長寿を切に祈り、その御長寿から来る国民の深い皇室に対する敬愛を前提としておりますけれども陛下に御不例、御不予のことがある、これは人間、生き身でございまして、その国民の願いにかかわらず陛下の御崩御という場合をわれわれは避けて通ることができないわけです。そうしたときに、皇室典範には、天皇の崩御に伴う大喪の礼が法律に書いてある。その大喪の礼の具体的な細目がまだうたってない。御葬儀、国葬という規定も明確にまだ出ていないで、従来行政措置でやってこられたというようなことです。公式制度をどう調べていくかということについて、公式制度連絡調査会なるものがすでにできて十数年たっておる。これは藤枝総務長官のときにスタートした。歴代の総務長官にしばしば私が質問して繰り返しておりますけれども、この問題について、連絡調査会なるものもめったに開かれない。その後どうなっておるのか、私がしばしば指摘しております。そういう御葬儀、国葬の問題、そして国歌、国旗、元号、こういう諸問題について、国の基本に関する大事な問題でありますだけに避けて通れない根本問題でございますが、これに対してどう取っ組もうとしておるか、総務長官
  41. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃるとおりに避けて通れない問題がございますが、まず第一に元号のことを申し上げますと、これはいろいろといままで世論調査をしておりますが、元号の方に関しましては、現在元号を使用している人、これは八十数%で圧倒的でございますし、また元号を存続すべきだと考える、その方がよろしいという数字もこれまた八〇%近く、圧倒的に多いわけでございます。ですから、この元号存続に関しましては前内閣の考え方をわれわれも継承いたしておりまして、存続すべきであろうと考えておりますが、これをどうやって決めるか、国事行為で決めるか、あるいは法律によって決めるか、それらに関しましてはなおもう一度国民の動向を確かめてみたい、かように考えておる次第であります。  国旗、国歌のことでございますが、これはもう国民の間に広く定着をいたしておることでございますから、これはいまさら法律云々というふうなことは必要ないのではないか、かように考えております。  それから国葬のことでございますけれども、これも旧国葬令は私たちは失効したものだ、かように考えておりまして、国葬に関しましては、吉田総理が亡くなりました四十二年のことでございますが、このときには内閣の決定で行っております。ですから、法律というよりも閣議の決定によって国葬は今後行われてしかるべきものだというふうな考え方を持っております。
  42. 受田新吉

    受田委員 大喪の礼はどういうことになっておりますか。同時に、陛下がお亡くなりになられた場合に、諡、御追号、従来は大正天皇に対しまして大正天皇、明治天皇に対しては明治天皇という御諡を差し上げてある。現在の陛下がお亡くなりになられた場合には昭和天皇ということになるのかどうか。
  43. 藤田正明

    藤田国務大臣 はなはだ申し上げづらいことでございますけれども、そういう場合には恐らく昭和天皇というふうにおなりになることだと思います。
  44. 受田新吉

    受田委員 その諡を差し上げる決定機関はどこになるのでございますか。
  45. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 大喪の礼とか即位の礼ということが皇室典範に決まって、その内容が詳しく決まっていないという仰せ、そのとおりでございます。しかし、どうも私ども宮内庁におる関係上これを表立ってなかなかやりにくい気持ちがいたしますが、しかし何十年かの先には起こるべき問題かもしれません。そういうことで、一応過去の例を全部調べ上げまして、いまの時代にどうしていいかというようなことは部内としては一応検討いたしております。  ただ、いろいろ基本的な点で問題があるだろうという点がございます。これらは、こちらでどういうふうにするかというようなことを簡単に、相手方も起こってくる問題でございまして、これはいずれその基本的なことは政府として御相談を申し上げたいというふうに思います。  即位の礼も同様でございまして、なかなか議論が起こりそうな問題もあるわけでございます。そういうところはある程度までわれわれとしては詰めているつもりでございまして、なるべく適当な時期にいたしたいと思います。  それから追号の問題は、いままでの立場は新しい天皇陛下がお贈りになるという形をとっておったと思います。そういう点も議論があれば考えなければならないと思いますけれども、ただいままでは新しい天皇が贈られるという形をとっておったと思います。
  46. 受田新吉

    受田委員 私たちは皇室の尊厳を十分守りながら、同時に国民との親和感を一方で高めて、わが家のお父様という立場陛下を敬愛したい、こういう気持ちがあるわけですから、これは決して避けて通る筋ではなくて、当然家族が、お父さん、長生きをしてください、そしてもしお父さんが亡くなられたときにはこういうような追慕の情を込めるのですよという規定をつくっておいて決して差し支えない。これは陛下自身にも決して失礼にならないと思うのです。特にお墓の問題なども、私数年前に指摘しました。天皇、皇后、太皇太后、皇太后は陵であります。それから、他の皇族はお墓となっておりますか、御陵とお墓は――多摩の陵、大正天皇及び貞明皇后のお墓は私たち敬愛の情を持ってちょいちょいあの陵を奉拝に行っております。そして小高い丘の非常に森厳な感じのする場所で、お山と樹木を拝見しております。これより何代かにわたって陛下の御陵は多摩御陵。秀麗な高尾の山を背景にした旧浅川駅からお参りできるあの一帯は、大正天皇の御陵をお定めになるときから、非常にいい場所に天皇の御陵をおつくりしたという歴史を私は顧みておるのですが、いかがでしょうか、新しいところを考えるということになると、またいろいろな問題が起こることを前のときにも指摘しました。むしろ数代にわたって多摩の御陵を皇室の、天皇、皇后の歴代の陵墓地区として考えておいて一向差し支えないし、またあの森厳なところに、お父様、お母様の大正天皇貞明皇后陛下の後を安らかにお眠りになるというのは、決して失礼にならぬことだと思うのです。そうした安定した陵墓地帯というものを宮内庁は考えておられるのかどうか、全然そういうことは白紙でおるのかどうか、ちょっと御答弁いただきたい。
  47. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 大正天皇貞明皇后の御陵が多摩にございまして、多摩御陵という陵になっておるわけでありますが、これは昭和二年にあの地帯一帯を武蔵陵墓地として決定されております。その一部に大正天皇貞明皇后の御陵墓があるわけであります。ですから、今後におきまして、当時の考え方というものを基礎にしてわれわれも考えていきたいというふうに考えております。
  48. 受田新吉

    受田委員 同時に、皇室の御先祖に対する陵の扱いです。私、昨年、当内閣委員会の視察で佐渡を視察いたしました。順徳天皇の御陵がある地区へ参上しました。吉田松陰が佐渡へ行きまして、この順徳上皇の大変痛ましい終えんの地をながめて、天下に一人の皇室を大事にする臣があらざるかという文章を書いた、その言葉が載っておりました。宮内庁事務官が一人ほど墓守りをしておられた。その墓守りをされておる人からもいろいろ事情を聞きまして、ここへお参りする人から、この順徳上皇のお墓をもっときれいにしたらいいという声もしばしば聞いておるということでございました。私同感でした。佐度で長い間島流しという悲しい運命に遭われた順徳上皇。後鳥羽上皇が隠岐、土御門上皇が土佐から後に阿波へ、順徳上皇は佐渡へ、それぞれ親子の三代の上皇が旅先で亡くなられた。その皇室の御先祖に対して、われわれは大変相済まぬという感じを持ったわけでございますが、順徳上皇のお墓は、ここが火葬場であったという、土を盛った上に樹木が茂っている非常に簡素なお墓でございました。皇室の御先祖のお墓ということであればもっときちっとすべきだという感じを持って、こちらへ帰ったときにもその意見を申し上げたのですが、ことしは予算の中に、順徳上皇のお墓をきちっと定めていかれる予算が組んであるようです。憲法第一条の象徴天皇の御先祖の陵というものは特にきちっとしておかれてしかるべきだ、日本の歴史の上でも、国民皇室に対する敬愛を深めていく上からも大事なことだと思うのですが、一人の事務官があそこで何もかもやっておられるという現状とあわせて、宮内庁長官、御所信を申していただきたいです。
  49. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 陵墓は、すでに御承知と存じますが近畿地方に非常に多いわけでございます。そのほか、一都二府三十県にわたりまして総数八百九十二基、四百五十四カ所に散在をいたしておるわけでございます。面積におきましても非常に広いわけでございますが、これを宮内庁としては五つの管区に分けまして、それぞれ職員を配置しておるわけでございますが、それだけ多くの陵墓に対しまして、職員の定員は百五十五人、非常勤が八十七人という数でございます。広いところでこれをきれいに清掃し、草を取り、いろいろな手当てをするということにつきましては、われわれとしましても非常に不十分な点があると思いまして、数年前から七年計画を立て、予算をふやして、それから第二期の整備計画の費用をいただいて、それをだんだん整備いたしたいと思っておるわけでございます。陵墓を訪れる方もだんだんふえつつございます。そういうことも考えまして、われわれとしてはこれから一層力を入れたいと考えます。
  50. 受田新吉

    受田委員 三月の末の毎日新聞に「異色の女帝御陵は別?」という見出しで、明日香村の史跡の中にある牽牛子塚古墳の発掘の問題が出されておりました。私、この地区はしばしば旅をしてまいりました。あの橿原市の大和三山、いにしえをしのぶには本当にゆかしい環境です。その中に歴代の御陵が数多くあるわけでございますが、第三十七代の斉明天皇――皇極天皇が重祚された斉明天皇のお墓とおぼしき出土品があるという報道、これは私非常にショックだったのでございますが、宮内庁としまして、斉明天皇の御陵とお決めになる、歴史の上で正確にこれを把握されておるかどうか。過去においても御陵の位置を定めるのにいろいろと歴史的にも問題があって、最終決定をする過程では他に候補の御陵もあったということをわれわれは歴史の上でつかんでおるわけでございまするが、正確に御陵を定められるということが困難な時代もあったわけであります。そういうことを感じますると、大和三山の周辺というものは本当にわれわれ飛鳥時代のいにしえを思うて、正確に御陵を定めるということが困難な事情もわかるわけです。「大和には 群山あれど とりよろふ天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は煙立ち立つ 海原は かまめ立ち立つ」こういう山の上へ登って見ると、海原に、湖の上にカモメが立っている、国原に民の煙がたくさん立ち上っている、ああうまし国日本よ、こういにしえの天皇仰せられた。こういう言葉を思うときに、この大和という国のよい環境の中に、正確に天皇の御陵の位置を定めてしかるべきである。先般の牽牛子塚の発掘に対処しまして宮内庁はどう判断をされるのか、お答えいただきます。
  51. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいま御指摘の情報はもちろん私どもも聞いております。ただ陵墓を決定いたしましたのは、明治時代に非常な学者を集めて研究の末決定されておるところでございます。その後いろいろな学説も出ております。宮内庁にも最近は書陵部にそういう方面の権威の人も委員として来ていただいて御意見も聞いておるわけでありますが、いろいろな出ました資料でそれを変えるというようなことはなかなかむずかしいことであると専門家も言われております。たとえば墓碑名が出てきたとかいろいろなことであれば相当はっきりしますけれども、そうでない限りはなかなか困難であるということが言われておるわけであります。われわれも放棄するつもりもございませんが、そう簡単に決められないものだ、慎重に将来も考えていきたいと思います。
  52. 受田新吉

    受田委員 こうして国土が建設計画の中で切り削られて、日本の国土がさいなまれていくわけです。その過程でこうした古い歴史の根源を突くようなお墓も出てくる。われわれはこうした古い文化財を大事にする国民であらなければならない。日本の国土を建設で荒らし回るその犠牲にそうした古い文化財をしてはならないという気持ち、これは私自身としても本当に痛烈に感じておるのでございますが、文部省もそういう古文化財の史跡、名勝、重要文化財というものを大事にする行政を進めてもらわなければいかぬのですけれども、きょうはお呼びしてありません。ただ宮内庁としては、皇室関係するこうした古い文化財、史跡というようなものについては目を大きく見開いて、必要があれば、天皇の御陵であるという懸念があるならば、ある意味で私は積極的にこれに取り組んでしかるべきである、こう思うのです。副葬品等を拝見して、天皇の御陵ではないかという古い学問を専門で勉強しておられる学者たちの声もあるわけでございます。総務長官はそうした建設事業というものにも関係のあるお仕事をされたことがありますだけに、国土の中のそうした貴重な古い時代の文化財を守るということは、そこを避けて道路を別につくるとか、あらゆる努力を払って、日本の古い歴史と伝統を、近代的建築、土木工事の犠牲にすることがないように、御出身のお仕事にも関連することでありまするので、長官としての御意思を表明していただきたいのです。
  53. 藤田正明

    藤田国務大臣 国土の有効利用ということは別な観点から大いに図っていかなければならぬことだと思います。しかし、いまおっしゃいますように、文化財の保護ということに関しましては軽重の度合いがあると思うのです。いまのような御陵墓、あるいは学問的にも非常に貴重なものであるということになればもちろんそれが優先するわけでございますから、国土の有効利用と言い条、そのようなものは避けて通らねばならぬ。ですからそういう学問的な貴重なもの、あるいは御陵墓というようなものがあればもちろん尊重し、文化財の保護という観点から処理していかなければならぬものだ、そう思っております。
  54. 受田新吉

    受田委員 長官、いまの飛鳥の古墳は、ある意味においては積極的に実態を把握されるべきだと思うのです。経費がかかってもよろしい。そういう御陵の懸念のあるという実態が一応専門の学者によっても取りざたされておるということであるならば、これは避けて通れない。積極的にお取り組みになったらいかがですか。
  55. 藤田正明

    藤田国務大臣 飛鳥に関しましては、飛鳥保存財団というふうなものも設けておりまして、これは民間と政府の方の助成金も出ておりまして、積極的にこれを守るというふうなこと、ただ単に守るだけではなくて、学問的に貴重なものがあれば、また宮内庁その他の御配慮もあって、公表すべきものは公表するというふうな考え方で、全体的には飛鳥一帯の地域を守ろう、こういうことで助成金も政府は出しておるわけでございますから、御趣旨のとおりだと思います。
  56. 受田新吉

    受田委員 高松塚の発掘で政府も大変力を入れられたわけです。さらにこの牽牛子塚古墳の発掘に伴う世論の動向等も見きわめられまして、これに手厚い手を打っていく。まぎらわしいからというのでそれをそのまま放置するべきではない。日本には古い歴史と伝統の上にいろいろなそうした文化財がある。これは日本国独得の国民感情からいって守ってもらわなければいけない。あえてわれわれが憲法第一条に象徴天皇制を国民の意思として決めて、そして天皇御一家に対して敬愛の情を深めながら将来の日本の発展に寄与しよう、こういうりっぱな夢を持っているわれわれに、それを裏づけるような行政の責任があると思うのです。したがって、天皇御一家を敬愛すると同時に、その御祖先のお墓も大事にしてあげる。同時に皇族であった方々のお墓も大事にしてあげる。それは決して国民感情の中に変な感じを持った者があるからというのでなくて、大勢はそれを擁護しようという国民感情であるという前提でお進めになってしかるべきだと思うのです。  御陵とお墓についていま宮内庁長官から計画を承りました。第二次五カ年計画によってこの大業が終わるという御判断ですか。なお第二次五カ年計画に続いて、憲法第一条の象徴天皇の御祖先及びその親戚の方の陵墓をきちっとするという方針ですか。
  57. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 御陵墓の整備でございますが、これをいま計画的に進めておりますけれども、御陵墓というのも結局は年代とともにまた変化してまいります。周囲の情勢もまた変化してまいりますから、これですべて終わるということはないんじゃないかと私は率直に思います。将来またそういう必要があれば、御審議を経て十分の手当てをしてまいりたい、さように思います。
  58. 受田新吉

    受田委員 次の日程があるそうですから、委員長から紙切れがいま来たようでございますから、いまから質問をほんの一、二問だけにしぼってすぐ終わりますが、さっきから私提示しております公式制度、このことにもう一度返っていきます。  総務長官の御所管で、各省からそれぞれ担当が出て、公式制度連絡調査会をつくっておられる。この会は任意の会でございますが、同時に非常に注目すべき会でございまして、スタート以来どういう運営をしておられるか、御答弁いただきます。
  59. 垂木祐三

    ○垂木説明員 お答えいたします。  公式制度連絡調査会議につきましては、三十六年七月に閣議決定により設けられております。それ以後、現在まで総会を四回、それから元号問題、国旗、国歌問題あるいは国賓の問題、そういう小委員会を全部で二十一回開催いたしております。それから、最終の総会といたしましては、五十年七月に総会を開いておりまして、その際は元号問題につきまして検討いたしております。
  60. 受田新吉

    受田委員 その中で得られた結論を御報告願いたいです。
  61. 垂木祐三

    ○垂木説明員 お答えいたします。  天皇の国事行為の委任の問題につきましては、国事行為の臨時代行に関する法律をたしか昭和三十九年でございましたか、制定いたしております。  それから、国賓の待遇の問題につきましては、これは閣議決定でございますけれども、閣議決定で、国賓の待遇についてということを決めておりまして、それ以後、その閣議決定に従いまして、国賓の待遇の取り扱いがなされておるわけでございます。  それ以外の多くの問題につきましては、現在検討中、こういうことになっております。
  62. 受田新吉

    受田委員 十五年もたって検討中がほとんどであるということでございます。これは春日遅々として進まない行政の怠慢と言って過言ではない。もう一つ、そういう思いつきのようなかっこうの会でなくして、閣議決定というよりも、何らかの総理府の付属機関を設けて、各界各層の代表者によって、正式にこうした公式制度を調べていくというような形をとるべきではないか。元号においてしかりです。元号においても、これはもういずれにしても避けて通れない問題です。いま世論調査では、元号を存置すべきだというのが大勢であるということであります。私もそう思っております。ところが、それを一方においては慣例としてやるか、法律としてやるか、いろいろあるわけでございまするが、それらについても十五年も論議をすれば一応答えが出てしかるべきでありまして、結局うやむやでこの二十一回の会が終わっている。二十一回というのは、大変のんびりした会で、十五年たって二十一回というのはやらない年もたくさんある。やらない年もあるんじゃないですか。
  63. 垂木祐三

    ○垂木説明員 確かに御指摘のとおり公式制度連絡調査会議につきましては、昭和三十六年から四十年にかけまして、積極的に会議を開いて検討いたしたわけでございますが、それ以後につきましては、先ほど申しましたように、昭和五十年に総会を開いたということでございまして、その間、十年間ほどのブランクがあったのは御指摘のとおりでございます。
  64. 受田新吉

    受田委員 これは御指摘のとおりです。これは大変大事なことなので、この公式制度調査会のようなものをつくって検討すべきだというのは昭和三十七年当時やかましくここで申し上げて、藤枝さんがいまのような、連絡調査会のようなものにしようという答弁があったわけです。あれから十五年たった。十五年の間に十年も空白がある。これは大変怠慢であったと言って過言でないと思います。元号は存置すべきだという世論、これが大勢である。私もそう思います。それを慣例でいくか、あるいは法律でいくか、あるいは行政措置でいくか、それらについて検討中だということです。天皇と同時に改元すると天皇制復活というような一部の世論がある。私はそういう政治的な配慮というようなものをそう余りむずかしく考える必要はない。ある何かの大きな国事を契機に改元をするということもある。往年はそうであった。そういうことも含めて、もう何らかの結論を出していい時期だと思うのです。それは戦後三十年たった今日、もう避けて通るべきものでなくして、一応陛下にいたしましてもそうした元号問題等についてこういうふうに国論が決まったという御安堵をいただいてしかるべきだと思うのでございまして、積極的に総理府にそういう問題を調査する付属機関、学識経験者その他の、できれば各党の代表者なども入れたようなかっこうでそういう機関を制定して、この際、抜本的な対策を立てるべきではないか。国旗、国歌は慣例としてできたのをそのままでいい。NHKも一日の放送を終わる段階で国旗を掲げ、そうして君が代の音楽を奏して、お休みなさいとやっておる。これに対して国民が、NHKが国旗を立てて、そうして最後に君が代の奏楽をやっていくのはけしからぬという声は聞いておらぬわけです。祝日その他のとき、何か国家の行事があるときにも国旗を立てる習慣をつくろう、これは海外へ行ったときに母国の国旗をいかに大事にするかという国民感情がもうりっぱにできておるのでございますから、ちゅうちょなくやってしかるべきだ。君が代という文句に問題があるという世論があるのを御存じですか。そういう問題については私はあえてそういう問題を取り上げてかれこれ言う必要はなくて、古今和歌集にある「我が君は千代に八千代に」のこの文句から出たものであって、天皇制一本の君が代というものじゃないのだ、お互い長生きしてお国の繁栄に貢献しましょうよという国歌であるという意味から、余りむずかしく考えなくてもいいわけです。そういう問題等もひとつ公式制度連絡会議のようなものを付属機関として設けてきちっとすべきじゃないかと思います。  もう一つ、儀仗兵、天皇に対する儀仗隊というのがあるのかどうか。象徴天皇に対しての儀仗隊というものが、警察隊、宮内庁か何かでやっておられるのかどうか、これも一つ質問をいたしておきまして、いま私がお尋ねしたことのお答えをいただくことで質問を終わらしていただきます。
  65. 藤田正明

    藤田国務大臣 公式制度連絡調査会というものが頻繁に開かれてないことも事実でございますが、ただいまおっしゃいました元号の問題あるいは国歌、国旗の問題、これに関しましては、国歌、国旗の問題はもう定着いたしておると私たちは考えておりますから、いまさら、戦後どこに法的根拠も何もございませんけれども、しかし、これはもう定着しておるものだ、しかしいまの元号の問題は、これは先生も御指摘なさいましたが、わずかではございますが、きわめて強い、人数にして、パーセンテージにしてはわずかでございますが、きわめて強い反論もあることも、これまた事実でございます。もう少し世論の動向を見詰めたい。五十一年の八月に世論調査をいたした結果を先ほど申し上げました。ことしの夏ももう一度世論調査もいたしてみたい。その上でこれをはっきりさしていこう、こういう考え方で、まず第一に世論の動向を見きわめた上で、いまのような公式制度連絡調査会というふうなものにもお諮りをする、こういうことでございます。あるいは別の機関を設けるかもしれません。いままだそういうふうな表向きのことにはなっておりませんけれども総理府といたしましては内々は十分に検討は進めております。
  66. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいま皇室関係の警備は、国家警察の一部隊たる皇宮警察本部というものが警備に当たっております。特に何か儀礼的な場合にはそういう特殊なある服を着て立つことはございますけれども、本務は警備ということにあろうと私は思っております。儀仗隊という感じのものは、特殊の場合にそういうかっこうをいたしますけれども、ないと思っております。
  67. 受田新吉

    受田委員 終わります。
  68. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、柴田睦夫君。
  69. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 皇室経済法施行法の改正案の提出理由として、政府は「最近の経済情勢にかんがみ、内廷費の定額及び皇族費算出の基礎となる定額を改定する必要がある。」こういって、具体的な改定に際しては、物件費については東京都区部の消費者物価上昇率を改定の根拠とし、人件費については国家公務員給与のアップ率を根拠としているわけですけれども、これらを根拠とする理由をまずお伺いします。
  70. 石川一郎

    ○石川(一)政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘のございましたような一定の消費者物価指数あるいは国家公務員給与の改善を参酌しながら、内廷費、皇族費の定額の改定を行ってきているわけでございます。これはもちろん内廷費の具体的な状況、各宮家の皇族費の状況等を勘案しながら考えておるわけでございますが、現在の定額は昭和五十年に定められたものでございまして、内廷費は一億六千七百万円、皇族費算出の基礎となる定額は千五百三十万円となっているのでございます。その後二年間の経済情勢の推移、特に物価の動向、なお二回にわたって国家公務員給与の引き上げが行われているわけでございまして、これらの状況を勘案しながら、今回定額をそれぞれ一億六千七百万円を一億九千万円、千五百三十万円を千七百六十万円というふうに改定いたしたわけでございます。
  71. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ちょっと質問に対する回答になっていないようですけれども、非常に急がれておりますので次に行きます。  内廷費と皇族費は非課税になっていると思うのですけれども、現行の内廷費と皇族費を、家族構成が全く同じである東京都区内に居住する人、有業者を一人として、その税引き後の個人所得であると仮定した場合、税込みの名目額を逆算すると一体どのくらいの額になるのか、改定後の内廷費と皇族費を同じ仮定で逆算した場合にどうなるのか、結論だけお伺いします。
  72. 石川一郎

    ○石川(一)政府委員 課税されるとした場合にどの程度の金額になるかということでございますが、実はこれは御指摘の仮定でも、私どもは税の専門家でございませんで、なかなかむずかしい問題があるかと思うのでございますが、皇族費につきましては一応一人ということでございますから、定額そのものは一人でございますので、仮にそれを給与所得とみなして給与所得控除は適用をいたす、あるいはこれには状況によりましては基礎控除ももちろん適用されるということもあるかもしれませんし、あるいはその他の控除が適用されるということがあるかもしれません。しかし仮に給与所得控除だけを適用して税込み名目額を計算いたしますと、現行額の場合におきまして、概算でございますが皇族費の場合二千八百万程度ということでございます。  それから内廷費につきましては、これは皇族費と異なりまして天皇と内廷皇族七方の日常の費用でございます。したがいまして、いま一人ということでございますが、お受け取りになる方は一人かもしれませんが、具体的にこれを皇族費と同じように税込み名目額を計算するということは私どもむずかしいのではなかろうかと考えておるわけでございます。ただ御指摘のように計算を仮にいたすという場合におきましては、所得税と市町村民税は超過累進税率構造でございます。そういうことで相当の額になると思うのでございます。中路先生昭和五十年に御指摘になった数字がございまして、それは四億六千三百四十六万円、一億六千七百万円に対してそういう数字をお示しになっておりますが、これはどういうように計算するか、いろいろむずかしい問題がございますけれども、それに近い数字にはなるのではなかろうか、こういうように考えております。
  73. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 一応計算するように言っておいたにもかかわらずはっきりお答えにならないのですが、この点、この内廷費一億九千万円非課税にすると、これを課税所得というさっきの条件でやりますと十一億八千万円ということになるようであります。  それでは、内廷費と皇族費の平均改定率は幾らになるかということですけれども、これは内廷費と皇族費を、家族構成が全く同じである東京区内に居住する家庭、先ほどのお話によりますと何か計算しにくいようなことを言われますけれども、この税込み名目額の平均改定率、これはどの程度になるのか、これはわかりますか。
  74. 石川一郎

    ○石川(一)政府委員 お答え申し上げます。  一応の仮定を置きましての問題でございますが、先ほど申しましたように皇族費につきましては千五百三十万円というのが、税込み名目額の場合におきましては二千八百万円程度ということでございますので、二倍にまではならないということになると思います。  それから内廷費の場合は三倍前後、これは正確に計算いたしませんとあれでございますが、それぞれの税の構造その他が違いまして具体的になかなかむずかしい問題でございますので、その程度のお答えで御了承いただきたいと思います。
  75. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それから内廷費の定額の年額と国家公務員の平均給与年額との倍率、何倍になるか、あるいは税込み名目でどのくらいになるかということと、税引き後の実質の倍率はどのくらいになるか、あるいは国権の最高機関である国会の衆参両院議長、これは総理大臣や最高裁長官と同じになっていますけれども、そうした人たちに支給される額、この倍率、税込みの名目額の倍率と税引き後の倍率ということも計算するように言っておきましたが、これはどうなっていますか。
  76. 石川一郎

    ○石川(一)政府委員 お答えいたします。両院議長の昭和五十一年の年収、これは歳費が千六百八十万円でございます。それから期末手当が七百二十一万六千円、合計二千四百一万六千円でございます。なお別に文書通信費とか議会雑費等がございますが、仮にこれを加えますと三千七十一万六千円ということでございますが、租税の対象になりますのはただいま申しました二千四百一万六千円ということでございます。これに対します内廷費の倍率、これは現行額では約七倍でございます。それから皇族費の倍率、これは約〇・六倍ということになります。それから税引き後の所得に対しましてどの程度の倍率になるかということでございますが、衆参両院議長の場合におきましては、二千四百一万六千円で計算をいたしますと、租税額が所得税と住民税で九百三十一万九千円ということでございまして、税引き所得は千四百六十九万七千円ということになります。これに対しまして内廷費の倍率は現行額で十一倍、皇室費が約一倍、こういうことになります。  次は国家公務員でございますが、一般職国家公務員の平均給与につきましては、人事院調査による昭和五十一年四月の平均給与は十六万三千五百二十円でございます。これに対しまして、昭和五十一年度の平均ベア率六・九四%を乗じた額に基づきまして試算をいたしますと、五十一年度の収入は概算二百九十七万三千円になります。このように試算した額に対します内廷費の倍率、これは現行額では約五十六倍でございます。それから皇族費の場合におきましては約五・二倍ということになっております。それから、ただいまの国家公務員の平均給与に対しまする租税を引いた後の額、これは二百八十三万円でございます。これに対する倍率は内廷費で五十九倍、皇族費で五・四倍ということでございます。
  77. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 給与所得のように税金が取られるという、そういう前提で計算してみると、いま言われたような数字とは相当違うんじゃないか。私の方で計算してみますと、内廷費の場合は総理大臣なんかの四十五倍になる、それから国家公務員の場合は三百九十八倍になる、そういう内容になっているわけです。これはまあ私どもの計算ですけれども答弁される方が正式な計算をされないということから違いが出てきていると思うのです。  問題は、税金のかからない内廷費や皇族費を改定するに際して、消費者物価の名目上の上昇率や税込みの公務員給与改定率を基礎にするというやり方には問題があるということを私は指摘したいのです。いまの世の中において国民の多くの人々が大変苦しい生活を強いられているときに、こうした大幅な改定を行われなければならないという緊急性や必要性が果たしてあるのかということであるわけで、私は本当に必要な金額であるかどうか、これがわからない。そういう意味で、こういう予算を国民生活改善の方に回すべきではないか、単に物価の上昇や公務員給与の改定率ということでは非常に差が出てくるわけですから、これは検討すべきではないかというように考えるわけです。そういう意味で、総務長官の感想をちょっと伺っておきます。
  78. 藤田正明

    藤田国務大臣 皇室にも長年の伝統もございますし、そうしてまたここ二年ほどそういうふうな経費がストップしておった、こういうふうなこともございますので、今回のこういう改正をお願いしたゆえんでございます。私は決して皇室の方で、内廷費にいたしましても十分過ぎるほどのものがあるとはゆめ思っておりません。非常に御節約をなさっておるというふうに聞いておりますので、今回のこの改正につきましてはぜひよろしくお願いしたいところでございます。
  79. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、この法案に関連して宮内庁を外局として所管する総理府お尋ねするのですけれども、本法案の提出根拠となった公務員給与を所管しております人事院にも出席してもらっておりますので、まず人事院の方にお尋ねしたいのです。  人事院の予算案に関連して根本的な問題として、一つは人事院が国家公務員労働者の労働基本権の代償機関として設置されて、国家行政組織法の適用を除外されて、内閣から相対的に独立した機関として位置づけられているわけです。その予算についても、国会や裁判所、会計検査院などと同じように特別な扱い受けるということになっております。  国家公務員法の第十三条第三項は「人事院は、毎会計年度の開始前に、次の会計年度においてその必要とする経費の要求書を国の予算に計上されるように内閣提出しなければならない。」と定めておって、その四項には「内閣が、人事院の経費の要求書を修正する場合においては、人事院の要求書は、内閣により修正された要求書とともに、これを国会に提出しなければならない。」こう規定があるわけです。ところが、人事院の内閣による修正前の要求書というのは、人事院が設置されてから三十年たつわけですけれども、この間に一回も提出されたことがないというふうに聞いているのですが、これはどういうことになっているのか、まずお伺いします。
  80. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 人事院のいわゆる独立性ということにかんがみまして、その職責の遂行のためには考えられる障害は排除をしていかなければならない、そういうような点がございまして、その制度的な要請の一環といたしまして、いま御指摘になりましたような予算関係の特殊な取り扱いというものが認められておるのであります。これはいま先生がお述べになりました国会、裁判所あるいは会計検査院という憲法上の機関とは若干異なりまして、人事院といえどもこれは内閣所管機関でございますので、その点おのずから取り扱いに区別がございます。したがって、予算に関する独立性というものにつきましても、国会等とは若干異なっておりますけれども、大体準じたような制度的な取り扱いがなされておるというのが制度上の取り扱いでございます。  そういうことで、われわれといたしまして、大蔵省の方と予算の折衝をやります際に、やはり人事院の独立性というものが損なわれないように、機能が十分に行われるように予算上の配慮を求めるということで従来からやってきております。御承知のように、やはりいろいろ予算折衝というものは各段階いろいろ話し合いがございます。そういうことで各省とその面では大体同じように、われわれの方といたしましても、最初に係官の方でいろいろ説明をし、また課長折衝、局長折衝というものがあって、最後に事務総長の折衝というものも行われておるのでございますが、幸いにして、いままでのところは、大蔵省も人事院の性格なり機能なり独立性なりというものは十分尊重をしてもらっておると解釈をいたしておるのでありまして、事実そういう線に沿った取り扱い、予算査定が行われておるという現状でございます。したがいまして、われわれといたしましては、これでもって全く満足のいく状況というような場合でない場合もございますけれども、これは一つの大きな国の予算編成方針というようなものがございますので、そういう線に協力をするという姿勢はやはりとっていくことが政府機関としては妥当であろうと思います。  ただ、それの限界といたしまして、人事院の機能がやはり果たせないようなことになりましてはこれは大変でございますので、そういうようなことが仮に行われれば、いま御指摘になりましたような制度的な措置というものも講ぜざるを得ないという場面が来るかもしれませんけれども、いままでのところは幸いにしてそういうことはございません。ずっと、人事院が発足をいたしてまいりましてから、財政的な措置というものもまずまず満足のいく程度に講ぜられてきておりまして、われわれの職責の遂行に当たっても、毎年度まずは円滑に推移をし、今日に至っておるというのが現状でございます。
  81. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、具体的に聞きますけれども、この五十二年度の予算の中で、行政措置要求等審査のために二百八十二万一千円、不利益処分審査のために三千十八万四千円が計上されているけれども、これで一体何件の事案を処理する予定なのか。人事院が抱えている未処理の事案は年々ふえ続けて、いままでは数万件に達していると言われておりますけれども、現在、一体何件ぐらい未処理のまま残っているのかということからあわせて、いまのような予算と公平局の体制では未処理分を処理するだけで数十年もかかるということになるのじゃないか、いままでの実績から見て。こういう調子では職員に関する人事行政の公正の確保及び職員の利益保護などに関する事務をつかさどるという職責を果たせないのじゃないかという疑問を持つのです。  さらに、ロッキード疑獄事件にも関連するわけですけれども、国家公務員法の百三条にかかわる問題でいわゆる天下り就職や兼業の問題、こういう問題についていろいろ各方面から改善のことについて指摘されている。五十二年度の予算案を見てみますと、服務、能率制度運営のための経費として五百二十万一千円が計上されているだけで、これは前年度の五百三十万一千円よりも少ない額になっているわけで、この公務員法の百三条の規定のあり方やその運用の改善に必要な研究調査費が全く計上されていないというように考えられるわけです。そうしたいろいろなことをやらなければならない、そういうことで概算要求を出して、現実に削られる。そういうことになると、実際いまの予算では、本来やらなければならない問題についてやれないのじゃないかということが出てくるわけですが、そういう現実の予算との関連で、この独立性という考え方で、それでいいのかどうかお伺いします。
  82. 長橋進

    ○長橋政府委員 お答えいたします。  五十二年度の予算関係でございますが、例の営利企業の就職関係につきましては、補正後に比べまして若干金額が減っておりますけれども、これはわずかでございまして、ほとんど同額と考えていいのじゃないかと思います。これにつきましては、これは人事院の予算全部がそうでございますけれども、仕事の性格上、やはり人的側面からの考慮ということも大事でございます。御指摘のように、金額面はもっともでございますけれども、そういう点を考えますと、総合的に見まして相応の配慮がなされているというふうに考えております。  それから措置要求でございますけれども、五十二年度につきましては一応二十八件ということになっております。  それから不利益処分関係でありますけれども、これはなかなか厳しい状況にありますが、このところ連年引き続き、前年度に比べまして十件増ということになっておりまして、五十二年度につきましては二百三十一件処理するということになっております。人員増につきましても、こういう厳しい中で、特に公平審査関係につきましては増加も認められておるような状況でございます。  なお、御質問の中で、公平の例の不利益処分関係の審査件数がございましたけれども、これはとらえ方によっていろいろございますけれども、請求者について言いますと約五万余件ということでございます。しかしこれは審理のやり方といたしまして、併合審理の方法とか、あるいは同様と思われるような事案につきましては典型的な判例が出ますと取り下げということもございますし、したがいまして請求者の数で言いますと五万余件になりますけれども、実際に審理をしなければならぬということになりますと、ちょっとわかりませんが数は大幅に減るのではないかというように考えております。  以上のような状況でございまして、総体的に見まして任務遂行に必要なだけの額は一応確保されているというように了解しております。
  83. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いまの不利益審査の問題を見ても、年々ふえていてなかなかはかどらないということが批判されているわけで、そういう面ではそういうものを本当にてきぱきと解決していって、そうした申請者の権利を守るということは当然やらなければならない問題であると思うのです。そのための予算の要求もあるだろうし、それをそのままたまったまま、仕方がない、あるいは取り下げするだろうというようなことでは本来の職務を果たすことにならない、こういうように考えるわけであります。そういう面から見てみまして、それを処置しよう、あるいはこの服務制度の問題を研究しよう、これはどうしても必要だということで概算要求をする、それをそのまま政府折衝の中で下がってしまうということでは、先ほど申し上げました法律の趣旨が失われてしまうというふうに私は考えるわけです。これはそういう意味では人事院が政府に従属してしまった状態になっているのじゃないかというふうに考えるわけですが、そういう意味で、修正前の要求書の国会への提出義務、これは内閣に課せられた義務でありますけれども、人事院として内閣に対して修正前の要求書を国会に提出するよう意見を申し出たこともないようであるわけです。そこで、この人事院の担当大臣である総務長官に、そういう状態でいいのかどうか、御見解をお伺いします。
  84. 藤田正明

    藤田国務大臣 人事院の自主性、独立性ということは十分に尊重いたしておりますし、いまの予算の問題につきましては大体大蔵省もその趣旨で人事院の要望を原則的には尊重していっておる、しかし若干横並びの各省どの関係もございますから多少のことはあるにしても、私は、原則的には大蔵省も予算的には人事院の自主性、独立性は尊重してやっておる、かように考えております。
  85. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、公務員の民間営利企業への天下り就職という問題についてお尋ねしますが、人事を介した財界あるいは大企業と政官界との癒着というのが、ロッキード事件を初め疑獄事件のたびに問題になるわけです。その癒着構造は、高級官僚の関係営利企業や関係業界団体への天下り就職、あるいは特殊法人役員への天下り人事を通じての法人運営の私物化、あるいは大企業の役員のまま事実上公務に従事して政府情報の入手などの利権を握る天下り人事、そうしたたくさんの問題が指摘されて、まさに重層的かつ綿密に仕組まれているというような問題があるわけです。この人事を介する癒着が疑獄事件を生み出す土台になるというだけではなくて、これはいまの世の中で国民生活を守っていくという上においても重要な関係があるわけです。  たとえば、昭和五十年の十二月に私鉄運賃の大幅値上げがありました。このとき日本民営鉄道協会はこの癒着関係を巧みに利用して政府の認可をとった、こういわれております。これは新聞の報道を見てみますと、五十年の八月に値上げ申請した後、与党の運輸関係議員との秘密懇談会を通じて政界工作を行ったということが出ている。それから元運輸大臣官房長の深草理事長などの天下り官僚を動員して官庁工作を行って、運輸省に年内認可の方針を固めさせたということも出ている。あるいは審査の段階では、現職の運輸次官や元高級官僚などが入っている運輸審議会を活用して、大増益の九月期決算が出そろう前にもうけ隠しの大幅値上げ認可を答申させた。こうした答申の後、川崎会長は自民党に一億五千万円の政治献金を行うことを明らかにして値上げ劇を締めくくったということが一連の新聞に出ているわけです。  ロッキード疑獄事件の真相を究明する、そして効果的な対策を講じるというのは、この国会の重要な任務でありますし、人事を介した財界、大企業と官庁との癒着にメスを入れ、効果的な対策を実現するということは、この内閣委員会の重要な任務であるわけです。  そこで、まずお伺いしますが、政府は、財界、大企業と政官界との癒着を断ち切るための対策を検討しているということを言われますけれども、現在どのような検討をしているのか、その概要を明らかにしていただきたいと思います。
  86. 門田実

    ○門田説明員 お答えいたします。  御指摘のように、昨年三木内閣当時以来でございますが、ロッキード事件の再発防止のための対策ということで、当面推進を図るべき対策あるいは長期的に取り組むべき課題というようなことで検討してまいっております。  内容的に申し上げますと、贈収賄罪の規定の整備でございますとか、犯罪捜査等につきまして条約を整備する、あるいは多国籍企業の行動規制の強化を図る、あるいは行政の公正確保のためにいろいろな措置を強化する、こういった点を取り上げております。そのほか政治資金規制のあり方や選挙制度のあり方につきましても検討課題として取り上げておるわけでございます。  総理が述べられておりますように、基本的には、いま御指摘の政治のモラルの問題あるいは金のかかる選挙なり政治のあり方の是正という問題がございますが、これにつきましては各党間の論議を待って所要の改善を進めていきたい、かように考えております。  行政サイドでできますことにつきましては、ただいま申し上げましたような内容のことにつきまして、それぞれの関係各省に問題をおろして検討を進めてまいっておる、こういう段階でございます。
  87. 正示啓次郎

    ○正示委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ――――◇―――――     午後三時十八分開議
  88. 正示啓次郎

    ○正示委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を続行いたします。柴田睦夫君。
  89. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 えらく急いでおられますので、ひとつ答弁を簡単にお願いいたしたいと思います。  三木前内閣は、昨年の十一月十二日のロッキード問題連絡会議で、当面の対策と今後の検討課題の二つの再発防止対策の大綱を決めております。行政の公正確保のための措置の一つとして、当面の対策では、行政の公正な執行につき疑惑を招かぬよう業者接触等について厳正な規律を確立し、綱紀粛正の強化を図るということを決め、今後の検討課題では、公務員の営利企業への再就職及び再就職後の行動の適正化を図る、再就職の承認基準の明確化等を図る、こういうことを決めているわけです。この点に関して、休憩前の答弁で、福田内閣としても前内閣方針を継承して関係官庁におろして検討しているという趣旨のことが言われましたが、この問題に関する関係官庁とは、具体的にどこどこを言うのか、お答え願いたいと思います。
  90. 藤田正明

    藤田国務大臣 関係各省と申しますと、人事院とか法務省から全省庁におろしたということでございます。
  91. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 人事院は、昨年十月二十一日の内閣委員会で、再発防止策について、人事院の所管としては、国公法百三条の問題がある。百三条関係というのは、真剣な検討を加えなければならない、こういう趣旨の答弁をされております。こうした政府の方針受けて、百三条の中の民間営利企業への天下り問題について、その後どのような検討をしてきたのかということを明らかにしてもらいたいと思います。
  92. 中村博

    中村(博)政府委員 人事院としましては、百三条の問題については常々関心を持っており、それからまた三十八年から報告制度が始まりまして国会でいろいろな御批判をいただいておりますので、そのような点を慎重に考えまして運用してきておるつもりでございます。現在、そういった関係事務の進みがありまして、私どもでどう検討しているかというお話でございますが、一つは、外国では一体どのようになっておるんだろうということでございます。それから、今後調べてみようかなと考えておりますのは、離職後二年間のいわゆる百三条の禁止にかかっておりますかっての職員、それがどのような動きをしておるものか、そういう点もあわせて調べてみたい、かように考えてございます。しかし事は、先生も御承知のように、一たん公務員をやめました以上はあくまでも憲法二十二条一項の職業選択の自由があるわけでございまして、この法律ができますときにもそのような御議論が国会であったやに伺っております。したがいまして、この問題は慎重の上にも慎重に審議すべきものという立場で現在いろいろな検討を進めておる、こういう状況でございます。
  93. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いつまでに結論が出るか、見通し言えますか。
  94. 中村博

    中村(博)政府委員 いま申し上げましたように大変慎重を要する問題で、憲法との直接のかかわりもございますので、いつまでということは申し上げかねる状態でございます。たとえば外国の事情にいたしましても、恐らく、外国の者が日本の国内事情を調べますときには、人事院規則、法律を読んだって多分わからないだろうと思うのですね。したがって、そのような実際の運用の実態を十分に把握しますために、たとえば私どもでは外国の大使館にお願いしていろいろなことを聞いておるのですけれども、なお私どもとして十全に理解しがたいところがある。したがって、留学中の者にもこの辺を現地に即して調べるようにというような指示を発するなど、その点についての詳細な理解をまず進めることが第一、かように考えてございますので、いつかとおっしゃれば、そのようなあらゆる準備が整った時点において最終的な検討がなされるであろう、こう申し上げるよりほかございません。
  95. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、いまの点、総理府としては具体的にどんな項目あるいは問題点を設定して、どういう体制あるいは予算で検討作業を進めているのか、また結論を出すめど、検討作業の現況とめどについて、総理府の方からお伺いします。
  96. 秋富公正

    秋富政府委員 いまの公務員法の百三条の問題につきましては、これは所管が人事院でございますので、ただいま人事院の方からお答えになったように、人事院で鋭意いろいろと御検討中でございます。それ以外のいわゆる人事管理を担当いたしております総理府の人事局といたしましては、従来からしばしばこの問題につきましては総務長官通達あるいは官房長官通達ということをいたしておるのでございますが、先般もいたしたのでございますが、各省庁の人事管理官を一堂に集めまして本年度の人事管理運営方針を定めたのでございます。その際におきましても、いわゆる国民の疑惑を招かないように、綱紀の粛正ということにつきましては周知徹底を図っておるわけでございます。  また、具体的に申し上げますと、適正な人事配置あるいは部内監察の励行、また具体的な実施状況につきましても、毎年度各省庁からその報告を求めるというふうにきめ細かく、その都度その都度、この問題については絶えず綱紀の粛正ということにつきまして私たちといたしましては努力をいたしておる状態でございます。
  97. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 最後ですが、福田総理は予算委員会で、行政改革全般について、ことしの八月中をめどに改革案づくりを進めるということを言明しておられますが、疑獄再発防止策についてもこれと歩調を合わせて八月中に成果を得る方向で検討作業を進めるべきであるというように考えますけれども、政府の考え方をお伺いいたします。
  98. 藤田正明

    藤田国務大臣 行政改革の機構につきましては、簡素化ということを重点といたしまして、八月をめどとして行政管理庁の方を中心といたしていまやっておる次第でございます。  汚職防止法云々のことにつきましては、これは現在ある法律を強化、運営していこうというふうな考え方を持っていま進めております。
  99. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 終わります。
  100. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  101. 正示啓次郎

    ○正示委員長 この際、木野晴夫君から本案に対する修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。木野晴夫君。
  102. 木野晴夫

    ○木野委員 ただいま議題となりました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案では、施行期日を昭和五十二年四月一日としておるのでありますが、すでにその日が経過しておりますので、これを公布の日に改め、本年四月一日から適用しようとするものであります。よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  103. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  104. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより本案及びこれに対する修正案を討論に付するのでありますが、申し出もありませんので、採決に入ります。  これより皇室経済法施行法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、木野晴夫君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  105. 正示啓次郎

    ○正示委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  106. 正示啓次郎

    ○正示委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 正示啓次郎

    ○正示委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  108. 正示啓次郎

    ○正示委員長 この際、総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。藤田総理府総務長官
  109. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいま皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について慎重御審議の結果、御可決をいただきましたことはまことにありがとうございます。  私といたしましても、本委員会における審議の内容を十分に尊重いたしまして、皇室経済法施行法執行につきましては遺憾なきを期してまいりたいと存じます。まことにありがとうございました。(拍手)      ――――◇―――――
  110. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、去る三月十五日に本院の承諾を得て内閣において修正いたしましたので、この際、政府よりその修正の趣旨の説明を聴取いたします。藤田総理府総務長官
  111. 藤田正明

    藤田国務大臣 恩給法等の一部を改正する法律案中修正点の趣旨を御説明申し上げます。  恩給受給者に対する処遇の改善を図るため、恩給法等の一部を改正する法律案をすでに今国会に提出し、三月三日当委員会におきまして提案理由を御説明申し上げたところでありますが、今回改善措置の一層の充実を図るため、この法律案に所要の修正を加えることとし、三月十五日本会議の御承諾をいただきました。  その修正点の内容は、公務員給与の改善に伴う恩給年額及び扶養加給額の増額並びに普通恩給の最低保障の引き上げについては、本年六月から実施することとしておりましたが、これを四月実施に修正し、その他の新たな改善措置は本年十月から実施することとしておりましたが、これを八月実施に修正しようとするものであります。  以上が、今回の修正点の趣旨であります。何とぞ、慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  112. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これにて説明を終わりました。     ―――――――――――――
  113. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  114. 大出俊

    大出委員 長年の懸案でございました恩給の実施時期につきまして、数年前に私の議員立法の形で実施時期を繰り上げたことがあるのですが、これが契機になりまして毎年一カ月ずつ早まってまいりましたが、今回は予算委員会、与野党伯仲という段階を迎えまして、妙なところで四月になりましたが、受給者の皆さんにとっては、これは大変喜んでおられるわけでありまして、御同慶の至りであると思っておるわけでありますが、ただ恩給全般を見直しまして、実はいまだに問題があり過ぎるわけであります。幾つか大筋について承りまして、総務長官以下の御回答をいただきたいのであります。  いま公的年金全体について総理府には調整機関があるわけでありますけれども、これはどんな会議をいま重ねておいでになるわけでありますか、御存じでございましょうか。
  115. 藤田正明

    藤田国務大臣 ちょっと質問がよく聞こえなかったもので失礼いたしました。社会保障制度審議会と公式制度審議会、この二つであろうと思います。
  116. 大出俊

    大出委員 いま、公的年金制度調整連絡会議と言われたものがありましたが、これはなくなりましたですか。
  117. 木戸脩

    木戸説明員 御説明を申し上げます。  公的年金制度調整連絡会議は四十七年の七月に設けられておりまして、現在でも存続をいたしております。ただ、当初、社会保障制度審議会の申し入れに基づきましてスライド問題について長い間検討を行っておりましたが、この問題につきましては、四十八年の十二月に社会保障制度審議会に、スライド問題については、すべての年度制度に共通する年金額改定の基準及び方式を求めることは各制度の根幹に触れる問題であるので、本会議よりも学識経験者等からなる検討の場で審議されることが適当であるという結論に達しまして、四十八年の十二月に社会保障制度審議会にその旨を報告してございます。その後におきましては、本会議は障害、遺族の年金の通算に関する具体的な方式につきまして、事務的な詰めを四十九年の十月から五十一年にわたって審議を行ったわけでございます。その結果、公的年金各制度にわたります障害、遺族年金の通算制度が実現したところでございます。そういうことで、現在のところは格別の案件は持っておりません。以上でございます。
  118. 大出俊

    大出委員 いま四十七年というお話ですけれども、この公的年金制度調整連絡会議というのは、四十七年じゃなくて四十二年の六月にできているわけですね。第一回会議が四十二年の七月二十五日に開かれているわけですね。実はこの会議は、当時私が四十六年の四月二十八日に大変長い質問をいたしましたが、幾つかこのときの約束があるわけであります。  ところで、社会保障制度審議会にスライド部分について移したというならば、移すときのいきさつというのは一体どういうことでございましたか。
  119. 木戸脩

    木戸説明員 四十二年の七月に社会保障制度審議会の方から申し入れがあったわけでございます。いろいろ申し入れもございましたけれども、その中におきまして「あらゆる公的年金は、」「その実質価値維持のため、調整が問題となるのは当然である。」「各種公的年金につき十分横に連絡をとり、その共通的な観念と個別的な観念とを分け、その間の異同を宣明する要がある。」そのような前提の上に立って「調整に当って使用すべき基準および方式、その財源の負担区分も確定されるであろうから、そこまで突っこんだ検討」を行ってほしい、こういう社会保障制度審議会の申し入れがあったわけであります。
  120. 大出俊

    大出委員 もう一遍承りますが、いまの話は昭和四十二年七月に社会保障制度審議会から申し入れがあった、こういうふうに言うのですね。そうですな。
  121. 木戸脩

    木戸説明員 はい。
  122. 大出俊

    大出委員 ということになると、この公的年金制度調整連絡会議というのは四十二年の六月にできているわけですよ。先ほどあなたは四十七年という話をされて、今度は四十二年に社会保障制度審議会から申し入れがあったと言うのですけれども、これは筋が通らぬのですがね。どういうことになるのですか。これは申し入れがあったからつくったというわけですか。
  123. 木戸脩

    木戸説明員 四十二年の六月二十一日に社会保障制度審議会からの申し入れがございまして、四十二年の七月に関係各省の事務次官会議を持ちまして、これに対しては公的年金制度連絡協議会というものをつくって対処するということで対処いたしまして、それで第一回の会議を七月の六日に持った、こういうことでございます。
  124. 大出俊

    大出委員 これは後の問題と絡みますから正確に、物をはっきりさせていただきたいのですが、もう一遍承りますが、私の持っておりますこの議事録は、大分色あせておりますが、昭和四十六年四月二十八日の衆議院内閣委員会会議録第十九号でございます。ここで平川さんがお答えになっておりますが「正式には公的年金制度調整連絡会議でございます。」「それは何年にできましたか。」という私の質問に「昭和四十二年六月でございます。」メンバーは総理府の人事局長以下、これはたくさんの方が入っているわけであります。第一回の会合が開かれた中身を私は当時調べて聞いたわけでありますが「昭和四十二年七月二十五日に第一回の会議を開催した」、中身は云々、こうなっているわけですね。大分食い違いますが、もう一遍整理して、ひとつはっきり答えていただけませんか。
  125. 木戸脩

    木戸説明員 やや厳密性を欠く御答弁で失礼いたしました。  私が申し上げましたのは、六月の二十一日に社会保障制度審議会からの申し入れがございまして、七月六日の次官会議におきまして年金制度調整連絡会議の設置を決定したわけでございまして、実際に第一回の連絡会議が開かれましたのは七月二十五日でございます。
  126. 大出俊

    大出委員 やはりこういうことははっきりしておかなければいかぬわけでありまして、実はいままで長い議論をしておるわけでございます。  そこで、このときの目的、調整連絡会議の大きな使命と申しますものは何と何と何でございましたか。
  127. 木戸脩

    木戸説明員 主たる問題は、いわゆるスライドについて共通の基準なり方式を出すということでございます。そのほか年金の通算の問題というような問題もございますが、主たる問題はスライドの問題でございます。
  128. 大出俊

    大出委員 実はこれはいまだに問題が残っているので質問をしているわけなんですが、当時の記録によりますと、いまの話のスライド云々というのはこの会議に審議を求めた課題の第三点なんですよ。第三点といたしまして、各公的年金制度に共通する点として三つある、その三つのうちの第一が調整いわゆるスライド制の検討だ。どうもこういうところはみんないいかげんになっておるから、所管総理府答弁がいまのようないいかげんな答弁をする。だから、いま日本の年金というのは大きく言って八つばかりありますけれども、どれもこれもあっち向くものはあっちを向き、こっち向くものはこっちを向く、てれんぱらんで、国民というのは権利義務をひとしくしておるわけでありますから、そういう意味でこういういいかげんな、共済審議会は共済審議会でかってなことを考える、こうなっちゃうのですね。これでは国民にとって皆保険だなんて言われてみたってとんでもないことになる。そこらがまず明確になってなければならぬはずであります。社会保障制度審議会に移したのなら、かくのごとくこういう経過でこの部分が移ったということでなければ意味がない。当時の内容というのは、これは当時の責任者の答弁です。むずかしい名前で、青鹿さんですかな。  ところで、各公的年金制度の目的、性格、制度の仕組みなどについてまず検討をする。なぜならばこれら公的年金制度の給付について――給付なんですよ、これは。公的年金としての共通の部分がある、つまり公的年金である限りは給付についてある程度の均衡をとられてなればならぬわけであります。そういう意味で公的年金制度の給付について、これが一つ。それと、それぞれの制度の独自の特殊な部分、こういうものがある。これをまず区分しなければならない。その上で、先ほどお話がちょっと出ましたが、各種公的年金に共通する課題の三つある中の一つとして調整いわゆるスライドの方式、次に年金額の算定の方式、これとあわせて最低保障の方式、さらに年金の支払いの条件、それから三番目に傷害、死亡事故に関する取り扱い、この傷害、死亡事故に関する取り扱いは部会が設置されて、進んでいく過程で議論が進んでまいりました。たとえば労務災害補償等についてもある程度の法律の定めもあるが、ルール化されているという面で、対象にするのは、そういう意味でいろいろ問題がある。だから、これはいま労災関係は残ったというんだけれども、最初は公的年金制度調整連絡会議の議題の対象外になっていた。当時、私はそれは間違いだということを指摘した。そうしたらこの対象外にしていた問題を対象の中に入れることになった。入れることになって、だからここで答弁していますが、「最近そういう意味でいろいろな面からの検討が進んでまいりましたので、この機会に労務災害問題についても一つのグループとして検討してまいって相互の調整をはかりたいという意見がございましたので、申し上げれば四つのグループに分けて目下検討に取りかかったという段階でございます。」これは私が当時、労災関係というものは労災保険法もございますし、共済にも障害年金がございますし、各般にわたってあるんだが、これがてんでんばらばらでは困るじゃないか、一体何でこれを公的年金制度調整連絡会議から外すんだということで物を申し上げたことがある。これは四十五、六年のことでございますから、古い話でありますが、そこでこれに取り入れることになった。これはこういう歴史があるのです。先ほどのお話を聞いてみると、この部分は残って、以後検討されてきた、こういうわけです。  私がここで総務長官に申し上げたいのは、皆保険という名がついておるんだが、日本の皆保険というのはいささかおかしなことになっておりまして、それぞれを調べてみると矛盾撞着だらけだという気がする。したがって全体をもう一遍見直してみる必要がある、私は実はこう思っている。だから、この問題はさかのぼってもう一遍承っておきたいと思って提起をしたんだが、いまわけのわからぬ答弁ばかりなさるんで、これじゃ議論のしようがない。改めて聞きますから、一遍この点は整理をしておいていただいて、社会保障制度審議会に移したんならかくのごとくというんで、移しただけの口上があるはずです。それを文書でひとつ出していただきたい。いま私が申し上げた課題があって、その三番目がスライドです。しかも三番目というのは三つあるのです。それはどういう整理が行われて審議会に移したのか。移すんなら移すんで書いたものを出さなければ移せぬでしょう。そこらのところをひとつ整理をしていただいて、いまのようなうろ覚えで言われても困るんで、きちっとしたものを次にお出しいただきたいんだが、いかがでございますか。
  129. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいま先生のおっしゃいましたような社会制度審議会に移したスライド云々、この件につきましては、詳細な御報告を申し上げます。
  130. 大出俊

    大出委員 議事録に残るのでちょっと御注意申し上げたいのですが、いま社会制度審議会とおっしゃったんだが、社会制度審議会というのは何ですか。
  131. 藤田正明

    藤田国務大臣 社会保障制度審議会でございます。
  132. 大出俊

    大出委員 これは議事録に残りますので、はっきりしておいていただきたいのであります。  いまそういう御答弁をいただきましたので、このままじゃいまあなたに承ってもおわかりにならぬと思うので、私の方から提起することは簡単ですけれども、長いので、出していただいた上で要点をしぼって次回に承りますので、委員長、これはそういうふうにお配り扱いいただきたいのです。せっかく私が当時――これは一冊ほとんど私の質問ですから、その中から皆さんの方もずいぶん角度を変えた審議をなさっているんで、私は当時いろいろな問題を提起しましたが、それなりに役に立っておると思っている。それだけに中身を詳しく知っているんで、ぜひひとつそれはそういう扱いをしていただきますようにお願いをいたしておきます。よろしゅうございますね。
  133. 正示啓次郎

    ○正示委員長 それじゃそういたします。
  134. 大出俊

    大出委員 そこで、いまの問題と絡みまして、詳細は後ほど別な機会に申し上げますけれども、この中から一点だけいま承っておきたいことがございます。  それは恩給法の二条ノ二、いわゆる調整規定というのがございますが、これはいまだにどうもスライドではない、調整規定なんですということになっているわけであります。しかし、いわば戦後処理に類する恩給という分野において、計算方式をこういうふうにして大蔵省に予算の要求をするからそれでいいじゃないかといって済ましておれない問題でありまして、あれだけの戦争をやった結果としてたくさんの被害者があり、軍人恩給分野というものも議員の皆さんの大変な御努力でたくさんの議員立法もございます。私の頭に入っているだけで、恩給関係の議員立法は三十四、五あるのでありますから、そういう長い皆さんの御努力で今日恩給法は成り立っておるわけであります。その一番の焦点になっておりました、つまりいまお話が出ましたスライドという問題、恩給法二条ノ二、これは山中総務長官時代に出してこられましたが、提案をしてきた政府に解釈がない。調整規定なる二条ノ二とは一体何だ。これは単なる調整規定でございます。こう言うが、その調整規定でございますという中身がない。結果的に審議会をこしらえて、解釈権を含めて審議会に審議をお願いした。その審議会会長の新居さんが、法律を提案し、改正した政府は、二条ノ二というものを出しておきながら、その解釈権をお持ちのはずなのだが、解釈をせずに、審議会にいかに解釈をすべきかを審議してくれとは何だ、ふざけた話でございましてということを笑って私に言っておりました。その後、この恩給審議会の答申が出されたわけでありますけれども、この恩給審議会答申を政府は実施しておられない。私は、これは政出府の重大な責任だと思っておるわけでありますが、これは今後一体どうするおつもりなのか、まず承りたいのであります。いかがでございますか。
  135. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃるとおり、審議会の答申におきまして、制度化その他所要の措置をとるということがございまして、その後、国会の附帯決議におきましても、制度化をしろというお話がしばしばあるわけでございます。私たちといたしましても一生懸命勉強しているわけでございますけれども、なかなか結論が出ないで今日に至っておりますが、制度化というその理想の状況と今日の現実における制度化をめぐる諸問題が周りにございますので、そこら辺をさらに研究していかなければいかぬと思っているわけでございます。審議会の答申なり国会の附帯決議なり、そういうものは十分尊重するつもりでございますけれども、そういう周りのいろいろな問題等をさらに研究してみたいと思っております。
  136. 大出俊

    大出委員 菅野さん、いま私が冒頭になぜ一体公的年金制度調整連絡会議の質問をしたかといいますと――私は十三年間毎年長い質問をしてきているのですからね。私のたび重なる質問に、制度化というものは公的年金全般にわたるので公的年金制度調整連絡会議の議を経て結論を出します、つまり制度化しますというふうに皆さんは、総理府はお逃げになったわけです。いまのお話のように、公的年金制度調整連絡会議はスライド部分を社会保障制度審議会の方に預けちゃったわけでしょう。そうすると、公的年金制度調整連絡会議のその部分の責任は終わったことになる。社会保障制度審議会から預けられて、終わって、向こうさんに渡したのだから。人がどんどんかわってしまいますけれども、審議室長が責任者でおやりになった時代、答弁しているのだけれども、この中で、各種公的年金を横に並べて調整を図っている、そこでスライドという方式の結論を出すのだから待ってもらいたい、これが皆さんの一貫した答弁だった。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 ところが、こっちの方は社会保障制度審議会に行っちゃったと言っているのに、いまだにほうり投げておくというばかなことはないでしょう。だから聞いている。いまのあなたの答弁答弁にならない。矢倉さんのときは、私は矢倉さんと個人的に非常に親しい人だったから、私的な話もした上で聞いているのですけれども、矢倉さんがお亡くなりになる前でございましたが、公的年金制度調整連絡会議をつくって結論を出すから大出さん待ってくれぬか、こう言うから、全国の適用恩給者の方々にはお年寄りが多いのだけれども、そういうわけだから待ってやってくれと言って、私はむしろなだめてきた。ところが片っ方の方は、いまのお話のように人がおかわりになって、社会保障制度審議会に行っちゃったとこう言う。行っちゃったのだが、制度化の方はどうなったのだと言えば、いまの菅野さんの答弁が出てくる。それじゃ余りに責任がなさ過ぎはせぬかと私は思う。世の中変動常ならぬのですよ。  早い話が、五十二年度予算の編成に当たりましても同じことが言えるのですけれども、新しい制度改正は十月から実施しますなんということになる世の中なのですね。いままででも積み残し積み残しで、お互いに苦労したことがあるわけです。やはりきちっとした制度化をここでしておかぬと、なおたくさんの適用者の方々がいるのだから、この方々は安心ができない。そうすると、計算方式はこんなことにして予算要求をしておりますからだけでは済まないのですね。そういう意味で、この点はそう簡単にいいかげんな答弁をされちゃ困るので、制度化という点についてどうお考えなのかをもう一遍聞いておきたい。
  137. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先生、いいかげんな答弁をしておるつもりは決してございません。この問題につきましては、先ほど周辺にいろいろ問題と言われましたが、歴史的にもいろいろな問題があるわけで、これは先生の方が十分御存じでございますけれども、かつて何にもない時代から、とにかくあの二条ノ二というのができたのは非常に画期的なことだったと思います。その二条ノ二を運用して審議会方式でやってまいりましたが、これは一律アップであった。その前から給与でやるべきではないかという御議論があって、四十八年から給与でやるようになった。しかし、それはやはり一律であった。その一律の問題がさらにいろいろな問題をはらみまして、これも先生の御指摘のとおりでございましたけれども、公務員の、主には上薄下厚でございますが、そういう傾向を考慮してやるべきじゃないかということで、昨年からそういう方式にまた踏み切ったわけでございます。そういう経過を経まして――制度化をするということは恐らくいろいろなことがあると思いますけれども、制度化の中にも、たとえば給与が変われば自動的にすらっと恩給も変わってしまうような、恩給法の改正を要しないようなスライドの制度化というものもございましょうし、給与でやるのだと書いておいて必ずスライドをするということも可能だと思います。  ところで、そういう歴史がございますけれども、いまやっておりますのは、先生指摘のように、二条ノ二を踏まえて、その中では国会の附帯決議も十分考慮して、給与で、しかも上薄下厚の分析をした上で予算を通じて実現をしているということでございます。     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕 その点についていま先生から御指摘があったわけでございますございますけれども、財政の非常に苦しいときにおきましても、またベースアップが非常に大きいときにおきましても、そういう給与でするという原則はここ数年、毎年毎年実現いたしまして、おかげさまでかなりの改善ができておるわけでございます。  そういう経過を経まして、それではどういうふうに制度化をするかということになりますと、ここになかなかむずかしい問題がございます。簡単に申しますと、分析の上でやるというのは、何という文章で書いていいかわからないぐらいむずかしいのですけれども、そういう技術的な問題は別といたしましても、いまの段階で全く給与でやっていいのかという疑問を実は私自身も内心抱いておるわけであります。それは、先生承知のとおり、かつては給与の方がずっと高うございましたけれども、現在においては物価の方が高いときがこの一、二年あるわけでございます。そういう問題が一点ございます。  もう一つは、たとえば実施時期の問題でございます。スライドというと本当は、公務員給与が上がった途端にスライドをする、時期の点も含めてそういうことじゃないかと思うのですけれども、これも、スライドの考え方には幅がございますので、一年おくれとか半年おくれとかいう考え方もございましょう。従来の実施時期につきましては、一年数カ月おくれからやっと今日一年おくれになったわけでございまして、そういう実施時期の問題が解決をしないまま制度化をするのは問題じゃないかという感じがいたします。  以上のような周辺の問題、それから、現実に、最初にお断りいたしましたように、受給者の皆さんはあるいは心配なさるかもしれませんけれども、ここ何年間かは、財政事情の非常に悪いときも、ベースアップの大きいときも必ず給与でやってくるという実績を積んでまいりましたので、いま言いました周辺の問題をさらに勉強した上で、先生の御指摘のようなことを万遺漏なく取り組みたいというのが私の心情でございます。
  138. 大出俊

    大出委員 菅野さん、私は菅野さんを責めているわけじゃないのですよ、事あるごとに話してきているのですから、またお見えもいただいておるのですから。ただ、私の頭の中にたくさんの心配事があるのですよ。というのは、長い年月手がけてまいりますと、事ごとに恩給法というものは気になるわけですよ。ほかの各種年金もございますから、それとの比較も頭に入ってくるわけですよ。きょうは、そういう意味で、厚生省の方にもお見えいただいたのは、たとえば厚生年金などの例もございまして、こちらの方は物価との関係が密接に出てくる仕組みでございます。これは後から承りますが、そういうことがあります。それとまた、今国会はこの内閣委員会にはまだ小委員会はないようでありますけれども、前国会は小委員会がございまして、私が珍しく小委員会にあらわれてこの制度化の問題に触れて、恩給審議会の答申で制度化すべきだと書いてあるじゃないかと言ったら、そんなことはないという答弁が皆さんの方から出てきた。ふざけたことを言いなさんなといった話になった。そうしたら、皆さんの方で答申をお配りになって、私が申し上げたように書いてあったはずですよ。そうでしょう。事、現職の、恩給局のどなたか忘れましたが、その方から公式に答弁をなさって、そんなことは書いてありませんというようなことを言われたのでは、ぎょっとする以上に、一体何を考えているんだと言わざるを得ぬでしょう。  ここに答申がございますので念のために申し上げておきますが、これは新居さんの恩給審議会の答申の四ページのちょうど中ごろに「この場合、その運用については、五パーセント以上消費者物価が上昇した場合にはそれに応じて恩給年額を改定すべきものとし、将来におけるその実効性を確保する観点から、これを制度化するなど所要の措置を講ずることが適当である。」と、これははっきりしているのです。これだけはっきりしている答申を受けていながら、そんなことはございませんと言われたのでは、ふざけたことを言いなさい、いまの恩給局のそんな諸君はやめてもらいたいと言わざるを得ぬじゃないですか。そうでしょう。それでは困る。しかも、この答申の中には「第一調整規定の運用に関する意見」で恩給法の二条ノ二をわざわざ挙げてある。「「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民ノ生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動が生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノトス」と規定しているが、この具体的な運用については次のごとく措置することが適当である。」と前置きをしているわけですね。これはさっき私が申し上げたように、解釈権を恩給審議会にゆだねて、審議会で解釈してくれというのだから、ふざけた話でございました。政府が法律を出しておいて、改正しておいて、この二条ノ二をどう解釈するかを審議会で検討してくれ――本当にそんなばかな話はない。だから、預けられた審議会も全く困ったと思うのですよ。その審議会が答申をして、つまり「将来におけるその実効性を確保する観点から、これを制度化するなど所要の措置を講ずる」と明確になっている。そうでしょう。ここらがどっかに行っちゃって、そんなことはございませんなんて言われたのでは、迷惑千万。  さらにもう一つ昭和四十三年三月にこの恩給審議会の答申が出された直後に、昭和四十三年四月十八日に、当時の会長であった新居さんに、御足労だったが内閣委員会まで参考人としてわざわざ御出席をいただいて、私は心配だからこの点をただしてある。ここに議事録がございます。昭和四十三年四月十八日内閣委員会議事録の第十四号。新居さんのここで答えておられることを言いますと「それから、ただそれだけではなしにこれを制度化するということばを使いましたが、」と新居さんが話しておられる。前の方、長いから切りますけれども、前の方で言っておりますのは、つまり物価がどんどん上がると、恩給生活者というのは大変な困窮状況になる、これを何とかしなければならぬのは政府の責任だ、だから、われわれが考えて、物価が上がったら上げなさいということにしたんだという趣旨のことをずっと述べまして「それから、ただそれだけではなしにこれを制度化するということばを使いましたが、ざっくばらんにいいますと、この点はひとつ政府の義務としてやってもらう」はっきりしているのですよ。いささか新居さんの方は中っ腹なんですね。政府が余りといえば無責任だというんだ。審議会をやってきた過程で、個人的に私にそう言っていましたよ。責任を負おうとしない、だからこう書いた。「ただそれだけではなしにこれを制度化するということばを使いましたが、ざっくばらんにいいますと、この点はひとつ政府の義務としてやってもらうというふうな気持ちがあり、」つまり、審議委員にそういう気持ちがあったというんだ。「またそういう発言もあったのですが、政府の義務はあたりまえじゃないかというふうなことで、そういう表現はせずに制度化する。では制度化するのはどうするのだというふうな、法律を改正するのか、あるいは政令を出すのか、あるいは閣議決定するのか、いろいろあるでしょうけれども、」それがまさに政府の責任だというのですね。「われわれがいまここでその先をやったのでは時間もなくなるし、そう法律論もやっておられないからというので」政府が諮問をしたんだから、政府がやる責任と義務があるということで出したんだと言っている。そうでしょう。  これだけ明確になっているのに、四十三年から今日まで、いかなる理由があるにせよ放任をしておくということは、私は、恩給受給者の方々の前に許される筋合いではないと実は思っているのですよ。かれこれ十カ年間ほっておくというばかなことはないと私は言うのです。世の中は変動常ならぬのですよ。公務員給与だって、後から人事院総裁が来れば申し上げたいと思っておりますけれども、まさかここにおいでになる委員部の方を含めて、公務員の皆さんで、よもやそう簡単に期末手当なんというものをぶっ削られてしまうと思った人はないと私は思うんだ。民間が少し不景気だ、二年目の不景気になったといったら、途端に期末手当を削るのですよ。こんな方式でやっておりますだけで世の中済みやしない。法律上明定しなければ、それこそまくらを高く眠れやしない。何が起こるかわかりはせぬじゃないですか。ことしだって、これだけ大騒動して、やっと実施時期四月にしたんでしょう。かつて皆さん御存じのとおり、私の議員立法のかっこうで、内閣委員会に何の関係もない国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済、農林漁業年金、農業者年金から援護を含めて右へならえで、わざわざ内閣委員会で私のところで押さえていた恩給法を通して――通さなければ一事不再議でできないから、右一カ月実施時期を繰り上げるという法律をつくって通したでしょうが。安心できはしませんよ、そんなことは。  そこは菅野さん、やはり恩給局長の立場なんだから、法的にせっかくこうなって、何遍もこの点については触れておるんだから、片や公的年金制度調整連絡会議の中から社会保障制度審議会に移すという段階ならば、ここで制度化をしなければ、いままで言ったことは全部食言だということになってしまうじゃないですか。だから、私はあなたがいろいろな理屈を述べることについてわからぬわけじゃない。私も知らない立場じゃないから、わからないわけじゃないが、制度化しなければならないこと、これは明確に政府の義務ですよ。いみじくも新居さんが、われわれに諮問しておいて、われわれが制度化しろと言うのにやらないなんてばかなことはないでしょう、責任と義務が政府にあるでしょうと言っている。以来十カ年間近くほっておくというばかなことはないでしょう。もう一遍聞きたい。あなたの時代じゃないんだからあなたの責任を問うのじゃないが、いかがでございますか。
  139. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先生のおっしゃるとおりでございますけれども、先ほどもちょっと弁明をさせていただきましたように、制度化をするに当たっての周りの状況が歴史的に動いてきています。それから、きょう現在においてもいろいろな問題がありますので、そういうものを十分整理をし、熟する段階を待ちまして理想的なものをつくっていくのが、一番受給者の皆さんのためにもなるんじゃないかという感じを持っておるわけでございまして、決してサボっているわけではないわけでございます。  先ほどの問題を繰り返すつもりもございませんけれども、実施時期の問題あるいは上薄下厚の問題、給与と物価の問題等々ございますし、そういうことで、受給者の皆様には御心配をかけないように、調整規定ではありますけれども、しかし、ああいうものが変動したときには速やかにやるんだというふうに法律の二条にも書いているわけでございまして、これはそれだけでも政府は完全に義務を負っているわけでございますので、さらに理想的な意味の制度化、理想的な意味のスライド制という問題につきましては、先生の御指摘のことを十分踏まえまして勉強したいと思います。
  140. 大出俊

    大出委員 そういううそを言っちゃだめですよ。二条ノ二があると言ったって、二条ノ二は、議事録にちゃんと残っておりますように、政府がこれを提案したときに、二条ノ二を挿入する法律改正のときに私が何回か質問しておりますが、これはスライドではございませんと言い切ったじゃないですか。単なる調整規定でございますと言い切ったじゃないですか。これは政府の見解ですよ。審議会答申を不問に付してしまえば、この政府の見解は今日なお生きているのですよ。スライドではございませんと言い切っているのですよ。冗談言っちゃいけませんよ。  ところで承りたいのですが、厚生省の方がお見えになっていると思うのですが、厚生年金というのは、このいわゆるスライド規定というのはどういうふうになっておりますか。
  141. 高峯一世

    ○高峯説明員 お答えいたします。  厚生年金のスライドは物価スライド方式をとっておりまして、前年度の消費者物価指数が前々年度の消費者物価指数五%以上上回りました際に、それを基準としてその年度から年金額を改定するという方式をとっております。
  142. 大出俊

    大出委員 もうちょっと具体的におっしゃっていただくとどういうことになりますか。五%上がった場合の例を挙げて申し上げてもいいのですけれども、どういう計算をなさいますか。
  143. 高峯一世

    ○高峯説明員 五十二年度の場合を例にとりますと、昭和五十一年度の昭和五十年度に対します消費者物価の伸びが、現在の見込みでは九・四%と見込まれております。この九・四%を現在の受給者の年金額に掛けまして、現在の予定では、厚生年金につきましては六月からスライド改定をするということを予定いたしております。
  144. 大出俊

    大出委員 お忙しいところをわざわざ御足労いただいたのは、ほかでもないのですが、これはどうしても恩給との関係があって明らかにしたいからなんです。  そこで、この第二十二条で「厚生年金保険法による年金たる保険給付については、政府は、総理府において作成する年度平均の全国消費者物価指数(以下「物価指数」という。)が昭和五十年度(この項の規定による措置が講ぜられたときは、直近の当該措置が講ぜられた年度の前年度)の物価指数の百分の百五を超え、又は百分の九十五下るに至った場合においては、その上昇し、又は低下した比率を基準として、その翌年度の十一月(国民年金法による年金たる給付にあっては、一月)以降の当該年金たる保険給付又は年金たる給付の額を改定する措置を講じなければならない。」こうなっていますね。つまり、国民年金なり厚生年金なりというのはこういうシステムでやっていこうということになったというわけですね。  そこで、承りたいのですが、皆さんが考えてみて、これは厚生年金あるいは恩給、いろいろございますけれども、物価というものを対象にする、あるいは恩給のように賃金を対象にする、いろいろな方式がございます。この辺の関係をどういうふうにお考えなのか。たとえば厚生年金は物価オンリーでいっているとすると、厳密にその計算方式をとるとすると、現職公務員の給与スライドというものの考え方とは変わってまいりますね。いかがでございますか。これはどちらがお答えいただいても結構でございますけれども、違いますね、はっきり。いかがでございますか。
  145. 高峯一世

    ○高峯説明員 現在とっております方式を考えますと、給与のスライドとは違っておるということになるかと思います。
  146. 大出俊

    大出委員 つまり、基準年度を千なら千とすれば、それに物価の上昇指数を入れた指数を掛けていくわけですから、明らかに物価なんですね。違います。ということになると、そこで、さっき恩給局長が触れておられました点に戻りますけれども、世の中が不況だ不況だということになって民間賃金が落ちていく、官民比較の面で公務員給与が抑えられてくるということになると、それを基準にという、つまりスライドなり計算の方式なりというものと、さっき触れられましたが、にもかかわらず物価は大きく上がっていくとなると、物価指数というものを中心にして引き上げていった方が引き上げ幅が高くなる、これは当然ですね。片や厚生年金はそっちの方にいくのだが、しかし恩給は現職公務員の給与というものと対比してそっちでいくとなると、その間の違いというものを国民一般という立場で考えてどう考えればいいのかという問題が出てまいりますね。これは同じ日本の、この国の年金です。この矛盾というのは一体どう考えればいいのだ、この関係は一体どこで調整すればいいのだという問題が出てまいりますね。これはフランスでもある。最近私は調べておりますけれども、フランスでも二重の矛盾があるというので大変大きな政治問題になり、議論の最中です。これは、アメリカと英国のシステムは違う。アメリカというのは物価です。片方、文武官の恩給の実施に関する法律というのを持っている英国なんかにすると、これは物価じゃない。違いも出てくる。ということになると、ここらのところを一体どういうふうに考えればいいかというのが一つの課題だと私は思っているのです。厚年あるいは国民年金方式と恩給の方式と、一体どこでどうすべきなのかという、これは一体どうお考えでございますか。
  147. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 総合的な問題でございますとどうも私がお答えする筋合いでもないわけでございますけれども、私が個人的に考えますのは、いま先生指摘されたような問題が確かにございまして、恩給立場で申しますと、先ほど来お答え申し上げておりますように、四十八年以来公務員給与をとってきたわけでございますけれども、この一、二年物価の方が上回るということになると、そういうことがある程度長く続いたり将来も予測されるようなことになると、物価という要素にもう一度戻らざるを得ないかもしれないという感じがするわけでございます。その点につきましては、これは将来の問題でございますのでいまどうこう言うわけにいきませんけれども、要するに恩給で申しますれば、恩給の実質価値の維持というものの指標にどれが一番適当であるかということの選択であろうと思っております。
  148. 藤田正明

    藤田国務大臣 確かにおっしゃいますような議論が生まれてくると思うのです。しかし、年金制度というものは、特に原則的にその個人が拠出しておる、中には無拠出制もございますけれども、原則的には個人が負担しておるというものがいまの厚生年金なり共済年金なりであろうと思うのです。いまの恩給と申しますのは、これは公務員が長年国家あるいは社会に功労があったがために、国家が全額負担をして支給するという性格のものでありますから、いわば公務員としての功労、それの延長のために国家が全額負担して支給する。ですから、そのものの性格も違いますし、私は、いまお聞きしましたように確かに矛盾もあろうと思いますけれども、しかしいまの公務員の給与に比較されながら、その他諸物価の高騰その他を勘案して調整していくのが適当であろうか、かように思います。
  149. 大出俊

    大出委員 これは総務長官、あなたとんでもない答弁されちゃ困りますな。これはお取り消しを願いたい、いまの御発言は。もってのほか。公務員は何かただで金をもらったようなことをあなたおっしゃるけれども、共済組合移行以前の公務員といえども恩給納金は払っているんだ。共済長期の掛金もかけている。冗談言っちゃいけませんよ。ふざけなさんな。そんな答弁で質問できるか。冗談じゃないよ。何だ、しゃしゃり出てきて。
  150. 藤田正明

    藤田国務大臣 いまの恩給の場合、軍人の場合にはなかった、文官の場合にはたしかありました。それでいま申し上げたような性格の相違が、負担するということではなくて、一つは公務員の延長としての退職公務員、あるいは国家に尽くした軍人のための年金、こういう性格の相違がまだ別に一つございます。  ただいまの文官の場合に負担をしてないということについては取り消します。
  151. 大出俊

    大出委員 とんでもないことを言うんじゃないよ。軍人恩給なんてものは復活反対を当時したのは野党なんだ、あんた方で入れたんじゃないですか。本来恩給法というものの中に軍人恩給を入れること自体が変則なんだ。軍人恩給に関する法律は本来ないんだ。普通恩給の中に入れたんだよ、そんなものは。恩給というものは恩給納金をかけている。冗談じゃない、ふざけたことを……。議論にならぬじゃないか。もうあんたの答弁聞かない。何てばかなことを言うんだ、何にも知らぬでおいて。話にも何にもならぬじゃないですか。何とかしてくれよ、理事会で。ばかばかしい。大臣ともあろう者がそんな無責任な発言がありますか。国がただでやっているんだ、ばかみたいなことを言って、ふざけなさんな。そんな答弁で済むか。審議できない。責任とってください。
  152. 正示啓次郎

    ○正示委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  153. 正示啓次郎

    ○正示委員長 それじゃ、速記をつけて。  藤田総理府総務長官
  154. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいま、大出先生に対する答弁が非常に不十分でありましたし、また間違った点もありましたから、取り消しさせていただきます。そしてなお、恩給がつく文官が、国庫納付金といたしまして二%は負担をいたしておりました。軍人の方も、下士官以上は若干負担をいたしておりました。そういう意味ではもちろんいまの一般の年金と同じような、率は違いましても、個人が負担をしておったわけでございます。その点を私の方が間違えたようでありますから、取り消しさせていただきます。
  155. 大出俊

    大出委員 予算委員会じゃないので、別にここでとめようと思ったわけじゃないので、その点御了解いただきたいのですが、私も、年金、恩給におなれにならぬ総務長官だからそういう答弁になったんだというふうに善意に理解いたします。ただ私は長くやっているものですから、そう言われたのでついどうも妙な気になったわけでございますが、これは御了解いただきます。  実は、いま大臣がお答えになった、お取り消しいただきましたが、これまた歴史がございまして、恩給納金を払っておる、つまり任官をした文官というのは十七年で三割三分三厘の恩給がつくということでございましたし、任官をなさっていない方々ですと、二十年で、共済長期の金を払っておられて三割三分三厘でございまして、これが、戦後電電公社などといういろいろな公社もできまして、特に電電公社が共済組合に移行するということで、二十年で四割ということでございまして、それが有利でございますので、私実は全逓信労働組合という組合の出身でございますから、電電公社の電報局、電話局の諸君は郵便局と一つ屋根の下においでになりましたから、五現業の方も何とか――私は、筋論として、本来公務員に対して共済組合へ持ち込むというのは筋が通らぬと思っておりましたが、時の情勢やむなく、永岡光治参議院議員、横川正市参議院議員、二人に私が話しまして、当時私が全逓中央本部書記長時代でございましたが、五現業も共済組合に移行をさせるという法律をつくって実は参議院に提案をさせまして、二国会継続審議になりまして、当時衆議院の逓信委員長は橋本登美三郎さんでございましたが、秋田大助さんが理事、高瀬傳さんが理事の時代でございますが、大変御苦労いただいて、ついにこの議員立法を、大蔵省の岸本給与課長等が、全逓信労働組合からの二人の参議院議員を通じての提案もこれありということで、人事主任官会議を数回開きまして、三十四年に五現業を含めて一括共済移行ということになりまして、ここで実は日本の公務員の年金体系が百八十度変わりまして、今日のような共済の制度に移行したわけであります。後に、三十八年でございましたか、地方公務員もこれにならって同じような方向に移ったという歴史があるわけでございまして、実は当時私は、共済に持ち込むことに非常に心配がありまして、将来日本の物価等がどんどん上昇をするような時期が来た場合に、果たして共済財政というものがもち切れるかという非常な疑問も持っておったわけでありますが、ここらのことがございまして、共済独自の財政を抱えておるために、ある共済組合は、掛金のこともございまして、頭を押さえるという、三十四万で押えてそれ以上は上げないという、ところが国鉄初め幾つかの共済組合は青天井であるという、これまた大変大きな矛盾を内包して今日に至っておるわけでありまして、いまは確かに国鉄の共済組合だけが大変財政事情が苦しくて破産寸前だなんという話も出てくるのでありますけれども、かくのごとく物価が上がっていくということになりますと、一つ間違うと近い将来各種共済組合財政それぞれ実は大きな破綻を招きかねない要因を含んでいる、いまこういう時期でございます。それだけに私は、先ほど冒頭になぜ調整連絡会議の話を持ち出したかといいますと、この辺で幾つもあります日本の年金制度というものをもう一遍見直してみる必要がありはせぬかという気が実はしているわけでありまして、そこらの伏線で先ほど来質問しているので、これは総務長官に、私の性格で、むかっとしたものだから恐縮でございましたが、言い直していただきましたから、これは御氷解をいただきたいと思いますが、大変大事な点はそこなのでございまして、先ほど菅野恩給局長さんが、全体的なことになるとすると私の答弁が適当でないかもしらぬというお話がございましたが、恩給というものは全体に絡む。絡むから公的年金制度調整連絡会議をこしらえたんですから、それは総理府にあるわけですから、本来これは総理府が責任を持ってやってきたわけでありますから、なお労災その他残っているわけでありますから、そうすると、実はきょう少し細かく承りたいと思ったのですが、妙なことで時間をとりましたから省略していきますけれども、いま大きく言って日本に八つの年金制度があるわけでございます。一つ国民年金、次に厚生年金、もちろん厚生年金保険法でありますが、三つ目に船員保険法がございます。四つ目に国家公務員共済組合法、これは国家公務員のみならず判事、検事、国立学校の教職員を含んでおります。さらに地方公務員等共済組合法、これも地方自治体の職員、公立学校の教職員、全国知事会など地方六団体や地方公社の職員を含んでいます。六番目に公共企業体職員等共済組合法、国鉄、専売、電電公社の三者。七番目に私立学校教職員共済組合法、これは私立学校法に基づく学校法人の教職員。八つ目に農林漁業団体職員共済組合法、農協、漁協等の職員。こうなっているんですね。のみならず、まだある。そのほかにわれわれがいま審議しております恩給がございまして、それから戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく年金がございます。さらに国会議員の互助年金、地方議会議員の共済年金、石炭鉱業年金基金、これも年金です。さらに農業者年金基金、これもこの国の公的年金であります。あるいは労働者災害補償保険による給付、これも年金でございます。あるいは税制適格年金、これは法人税上の優遇措置を受ける企業年金、民間労働者であります。これだけの年金を抱えておりますので、このあたりでもう一遍これら公的年金というものをどういうふうに見るかということを真剣に考えなければいけないんじゃないかという気がずっと私はしているのです。先ほど菅野さんからお話のあった、一体何を基準にスライドさせるかという問題もその中の一つです。つまり、いま外国の例を調べてみるというと、幾つかの国でその国のいろんな年金の矛盾というものが表に出てきている。相当深刻に悩んでいる国もある。非常にこの点ではおくれている日本ではありますけれども、やがてそれらの年金先進国の仲間入りをしていく時期が来る。たとえて言えば、厚生年金なんかも三十年年金だったのですけれども、これは昭和十七年にできていますから、三十五年になるのですね。そうすると三十五年年金にせざるを得ないものだから、どろなわ式に昨今三十五年年金だなんということにしているわけですね。ところが、基本的に考えると、これまたいろいろ矛盾があるのですね。だから、そこらのことを総体的に考えてみると、先ほど公的年金制度調整連絡会議というものが何かおかしくなったように承ったのだが、だから、実は社会保障制度審議会にどの部分を、どういうふうにお出しになったのかなどということをひとつ文書で欲しいと申し上げたのはそこに理由があるのですが、もう一遍これは改めて問い直してみなければならない問題だ、こう思っているわけです。各種年金間に大変大きなでこぼこがあり過ぎまして、その意味では、国民の権利義務に直接的に不平等を与えていることになる、こういう問題がございます。  だから、そういう意味で先ほど冒頭に申し上げたわけなんですけれども、ここらのことも踏まえまして、一体恩給の制度化は何に基づくスライドなのかというふうなことも含めて、どう考えたらいいのかという基礎となるべきものについて御意見をいただきたいのですが、いかがでございましょうか。どなたでも結構でございます。
  156. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 私は恩給のサイドだけで申し上げたいわけでございますが、先ほど来お話がございましたように、非常に基本的な問題で、確かに、指標を何にとるか、実施時期はどうか、あるいは掛金のあるものは掛金はどうか等々の非常に大きな問題がたくさんあると思います。恩給制度もその中の一環として他の年金制度と調和をとり、あるいはよきところはまねをいたしまして、改善をいたしてきておりますが、確かに先生指摘のように、恩給だけではどうにもならない面もあるように思います。そういうことを含めまして、先ほど公的年金制度調整連絡会議お話が出ましたけれども、これは私がお答えするとおかしくなるかもしれませんけれども恩給は、いわゆるそういう公的年金ではございませんで、たしか新聞等でお伺いしているところでは、厚生省の方にも年金の基本的なことを研究調査をしているものもございますようにお聞きしております。そういうところでも深い研究がなされるし、社会保障制度審議会においてもなされるのではないかと思います。ここら辺は私の権限外でございますのでお答えするすべもございませんが、恩給としてはそういうものも十分お手本にしながら、また恩給独自の性格もございますので、そういうものを踏まえてさらに改善に努めたいというふうに思っております。
  157. 大出俊

    大出委員 私はこれに対する意見も見解もたくさん頭に入っておりますけれども、これをいまここで申し上げ始めますと答弁にお困りになる点もございましょうし、時間もかかりましょうから、その点はまた改めて、先ほど冒頭に申し上げましたように、委員長の御了解をいただきましたが、総理府内閣委員会所管でございますから、総理府で長らく四十二年以来審議をしてこられました公的年金制度調整連絡会議の経緯について、かつ、社会保障制度審議会との関係についてお出しをいただいて、これはそのときにひとつ聞かしていただきたい。これはお約束をいただきました。その他の点はこの際は省略させていただきたいと思いますが、一つだけここではっきりしておいていただきたいのは、いつになっても制度化できないままで過ぎてきていいはずはないと私は実は思っている。制度化の仕方として、物価に乗るか公務員賃金に乗るかということは、両方を考える制度化の方法だってある。現に調整規定というのは、国民の生活水準を含めて三つにかかっているのですね。これを調整規定だと言うから、そういう解釈をして政府が出すから、こうなっているのであって、つまり、公的年金調整連絡会議の中の議論でも、ワンポイント置いてスライドさせる方式と、即直接的にスライドさせる方式と、方式がいろいろと議論されているのですね。やり方がいろいろある。外国の例から言っても幾つか例がある。連邦統計局の物価が三%上がったらいきなりスライドという国だってある。だから、そこらのところのとり方の方法というのはございますけれども、そこらのところは一遍次の機会に菅野さん、制度化というものをするのならばこういうことなんだというふうに、御検討をいただいているというのですから、そこらのところは一遍ぜひお出しをいただきたいのですがね。たまたま恩給の小委員会等もおつくりになるやに聞いていまして、私は理事でございませんからわかりませんが、それならばそこで議論することだってできるわけでありますから、しかもいま私が申し上げた幾つかの矛盾がございますから、ここらだって小委員会で時間をかけて話し合うことだってできるはずでありますから、そういう取り運びを願いたい。十年もたつのですから放任はできないと私は思っているのですよ。したがって、そういう意味で何らかの手だてをお考え願いたいのですが、いかがでございますか。
  158. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 私たちも永久に放任をするつもりはないのでございまして、先ほど来申し上げておりますように、周辺のいろいろな問題が片づけば、それが理想であるというふうに思っております。小委員会お話が出ましたけれども、小委員会の席等でそういう問題についても私たちの考え方なり問題点なりを御披瀝申し上げ、また先生のお教えをいただきたいと思います。
  159. 大出俊

    大出委員 ところで、先ほど冒頭に私が質問をいたしました公的年金制度調整連絡会議関係で、労務災害補償についてはある程度の法律上の定めもございますが、ルール化されておるからこれは対象にしまいということで、当初対象外にした、しかし、最近そういう意味でいろいろな面からの検討が進んでまいりましたので、この機会に労務災害問題についても一つのグループとして検討していこうということになったので、これを第四のグループにした、これが実は経過なんですが、この労務災害の問題については、一体今日どういうところまで進んで、どうなっておるわけでございますか。
  160. 松尾弘一

    ○松尾政府委員 先生すでに御存じかと思いますが、四十八年だったと思いますが、連絡会議におきまして、現在基礎を賃金額に置いておりますが、それが適当じゃないのかという御結論をいただいたように聞いております。
  161. 大出俊

    大出委員 これもいろいろ議論をしたいところでありますけれども、いまお答えをいただきましたが、私も調べてよく存じておりますが、ここでひとつ人事院の総裁もおいでをいただきましたので、少し急ぎたいので一点だけ懸案がございますので承っておきたいのですが、労働省の方に、私この間分科会で、風間時次郎という方、直接的に属人的に名前を挙げますけれども、この方が労務災害をお受けになって以来かれこれ五年間、等級も決まらずずるずる延びてしまっている例を挙げて、石田労働大臣に分科会質問をいたしました。労働者災害補償保険法等の関係からいきまして、迅速にとなっているわけでございますから、いずれにしても五年というのは大変これは申しわけないというお話がございました。この件に関して、補償課長の溝辺さん等から何回な連絡はいただきましたし、私も何遍か連絡を入れましたが、なかなか話す機会がございません。したがって、この席で、お約束でございますから、その後どういうふうに処理をされたのかということ、あるいはどういうふうになさりつつあるのかという点について御報告をいただきたいのですが、いかがでございましょう。
  162. 松尾弘一

    ○松尾政府委員 先般来、先生の御質問にもるるございましたが、大臣からも答弁いたしましたように、私ども強く指示受けておる次第でございます。いろいろございますが、いずれにいたしましても、三つの問題があるんではないか。一つ監督上の問題、それから風間時次郎さんを扱っている係官の処理の態度とか発言の内容、こういう問題、それから補償の実務の問題、この三つだろうと存じます。したがいまして、この問題を全部早急に的確に処理しろという御指示もいただきました。大臣からも強い御指示がございましたので、その線でやっております。また補償の経過につきましては、補償課長が来ておりますから、御説明さしていただきたいと存じます。
  163. 溝辺秀郎

    ○溝辺説明員 風間さんの件につきましては、先生からの御指摘もございまして、御本人とも本省の方から連絡をとりまして、御本人の病状をもう一度労働省の方として洗い直すという措置をとるべく、本人と現在接触いたしております。  で、御本人の御家族の話では、再入院、検査あるいは継続療養、これらについては、他の方面という意味がよくわかりませんけれども、他の方面と連絡をとった後返事をしたいという旨の申し出がございましたので、その返事を待ちまして、入院、治療継続あるいは再検査という手を打ちたいというふうに考えております。
  164. 大出俊

    大出委員 時間がかかりますから、この席でこの点の議論をすることは差し控えます。何遍か御連絡いただきましたが、私も忙しいものですから、お目にかかってお話しする機会がなくて、またおたくの方も大分お忙しいようで、私が連絡するといつもおいでにならない。どっかでまたひとつ時間を見つけていただきまして、直接的に御報告をいただきたい、こう思っております。  それでは、恩給の当面の問題について幾つか承って、次に進みたいのであります。  私が問題提起をいたしましてかれこれ五年目ぐらいになるだろうと思うのでありますが、恩給の仮定俸給表の引き上げを一律アップの形でずっとやってこられたのは、片や大変に気の毒な方々ができ、片や指定職その他でおやめになったような方は、現職の方に比べて――現職の方は、上薄下厚の配分をしておりますために、べらぼうに高い仮定俸給表になってしまっているという方がある。大きな矛盾でございますから、これを傾斜配分をすべきであるという、つまり人事院が公務員の給与の俸給表をおつくりになるときの配分の比率を基磯にして、傾斜配分をすべきである、一律配分はよろしくないということを提起いたしまして、長い年月がたちました。一昨々年でございましたか、大蔵省に恩給局がようやく傾斜配分の方式をお出しになって、これを大蔵省が拒否をする、昨年ようやく大蔵省が認める、ことし引き続き傾斜配分をなさる、どうやら私の悲願めいたものがそこまで来たわけであります。  そこで、時間がなくなりましたから簡単に承りますけれども、この傾斜配分の方式、おたくの手塚さんとおっしゃる方でございましたか、書いておられるのを私ここに持っておりますが「恩給ベアの新しい方式 平均から回帰分析方式へ」という、手塚康夫さんという方ですね。簡単に言うとどういうことになるのか、どなたでも結構でございますが、一言御説明お願いしたい。
  165. 手塚康夫

    ○手塚説明員 御説明申し上げます。  まあ、簡単というのはなかなかむずかしいしゅうございますけれども、はっきり申しまして、現職者の給与の改善を分析しておりまして一つの法則があるのではないか。要するに、図表をかいてみますとほぼ一直線に並ぶ。一直線ならば、きわめてごく初歩の数学で数式にあらわせるものですから、そうしましたら一つリスト、額、そういったものでいわば近い値が出るのではないか、そういうことでございます。
  166. 大出俊

    大出委員 いまの方は手塚さんでございますか。――御本人なら、この御本人がここにお書きになっているのに、私は数学の専門屋でない、全くの素人なんだからと書いておられますから、その点についてとやかく申す気はないのですけれども、つまり統計上の言葉云々が出てくるがという前置きをして、私も素人なんだがという苦心の作だろうと思いますので、その限り敬意を表するわけであります。だから、時間がないところですから、これ以上突っ込んだやりとりは差し控えます。改めてまたいずれかの機会にひとつ御説明承りたいと思っておりますが、この席では時間がございませんから差し控えます。  ただ、これは今度の法律でございますけれども、この法律の「仮定俸給表年額」、上段が「恩給年額の計算の基磯となっている俸給年額」ですね、ここにございますね。これによって当たってみますと、仮定俸給表でいきますと十八号――いま十八号というのはないわけでありますけれども、これが五十八万五千七百円。恩給年額の計算の基磯となっている俸給年額、これは五十八万五千七百円。これを十八とすると、一つ置いて隣の六十三万九千五百円というのが二十号になる。手塚さん、そうですね。それから七十四万七千七百円というのは二十五ぐらいになる、仮定俸給の号俸でいきますと。これに見合う。  二十八号の例をとりますと八十二万一千四百円。この八十二万一千四百円というのが、公務員の給料格づけでいきますと八等級の五ぐらいになりますね。これは、皆さんの方のこの表で八十二万一千四百円になっているところ、これが八十三万六千四百円ということで八等級の五号なんですね。つまり、これは一致はしないわけですね。そうでしょう。これが仮定俸給表の方でどうなるかというと、皆さんの方は八十二万一千四百円という、恩給年額の計算の基礎となっている俸給年額を引っ張ってきて、仮定俸給年額として八十七万八千七百円になっているわけですよ。ところが俸給表上、この八十二万一千四百円というのはございませんから、そうするとこれに近いものとなると、八等級の五号で年額八十三万六千四百円なんです。この仮定俸給表というのは八十九万一千六百円なければならぬ。ところが皆さんの方は八十二万一千四百円という、つまり俸給年額で八十七万八千七百円とこうなっているわけですね。  こういうことで、いま一例を挙げたわけでありますが、八十七万五千五百円の三十号、さらにこれをずっと追っていきますと、大体八の十ぐらいで九十七万六千八百円という俸給年額になる。ここでも百四万四千円ということになるんですが、おたくの方でいくと百四万二百円。違いがずっと出てくるわけでありまして、このおたくで言っている計算の方式、必ずしもこの俸給年額と仮定俸給表にフィットしない。ここらにいろいろな違いが出てくる、実際に具体的に当たっていきますと。そこらのところは皆さんの方はどういうふうに考えておられるのか、これをまた議論すると大変時間がかかりますので、御回答いただいておいて、もう少し皆さんの方と詰めてみて、改めてこの席で質問したいと思っているのです、時間がないから。  それで、たとえば一番上の方なんかでもそうなんですが、七十四号俸あたりになりますというと六・七%のアップになっているわけですが、七十四号ならば三百九十五万五千八百円というのが俸給年額、ところがこれがないから三百九十七万五千六百円をとらざるを得ない。この六・七%のアップなら、皆さんの方の仮定俸給表年額ならば四百二十二万三千百円なのですけれども、四百二十四万八百円になるというぐあいに、全部じぐざぐなのです。そうすると、果たしてこれは妥当であるかどうかという点に疑問を持つわけなのですが、簡単に申し上げると。そこらはどう説明をいただけますか。
  167. 手塚康夫

    ○手塚説明員 先ほど御答弁申し上げましたように、公務員給与の改善傾向、それを分析しますと何かの法則があると申しましたが、ただ、これが全部きれいな形で出ておるわけじゃございません。いわば一種の平均と申しますか、いままでの平均よりはもう少しきめ細かに実態に近いものが出るのではないかという、そういうことでございます。したがって、個々に見ますと、先生の御指摘のような多少のでこぼこは、対比しますとございます。  ただ、もう一つ申しますのは、かつて先生におしかりも受けましたが、三段階で要求いたしました。これは一番の難点は、共済年金の方に持っていって困るということでございます。恩給では仮定俸給というものを使っておりますけれども、共済では一円単位で連続している、そういった点を考えますと、要するに間の抜けているところの金額も、まあ近い値で推計できるというのがこの方式で、まあ従来方式よりも近いのではないか、そういうことで考えたわけでございます。
  168. 大出俊

    大出委員 これは議論はやめましょう、時間がございませんから。  そこで、菅野さんに、二、三点御指摘を申し上げて御研究をいただき、後ほどまた計算等もいただきたいと思っておるのですが、御見解もいただきたいのです。  大筋を申し上げます。前回の、昨年の委員会でございましたか、私が幾つか指摘をいたしました。それに対する御回答をいただいたわけであります。たとえば、恩給方式と通老方式との比較というわけです。これは、皆さんのお手元にこの資料がございませんから、どうも恩給局と私のやりとりになって恐縮なんですけれども、私も一部しかいただいていないので、どうしようもないので御勘弁願います。  これは、なぜ私が問題提起をしたかというと、こういうことです。この傾斜配分でなくて一律配分をやってきたために、仮定俸給表の方で上の方の方々というのは大変有利になっているのだが、下の方の方々というのは大変不利になっている、だから最低保障なんかが必要になるのだ、だから傾斜配分をすべきであると言って、そういうことにしていただいたのだが、過去にさかのぼって再計算をしてみたら、つまり昭和四十二年なら四十二年から今日まで傾斜配分を続けてきていたとすればどういうことになっていただろうか、それがもし矛盾を持っているのだとすれば是正をすべきではないかという一つの提起をしたわけです。  これに対して皆さんの方でお出しいただいた幾つかの問題があるわけです。その一つが、ここにある「昭和四十五年以降の公務員給与改善の分析結果による恩給の仮定俸給表試算」の中の十八号というのがございます。ここで長期在職者の場合、短期の場合等を比較してみますというと、短期の場合には大変損をしている方が多いことになるのではないか、長期在職の方は、最低保障というのをどこまで持っていくかということと絡みますが、たとえば五十八万なら五十八万とすると、そっちの方を六十四万ぐらいに上げればあるいは埋まっていくのかもしらぬと思われる節がある。だが短期在職者の場合からすると、これは明らかな矛盾であり、明らかに損をしているということになる。ここらは一体どうすべきなのかという課題が一つございます。一つずつ承りますが、そこらのところはどういうふうにお考えでございますか。
  169. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 いま先生が御指摘になりましたように、一律アップでずっと長年やっていたわけでございますので、上の方は得をし下の方は損をした、そういう限りにおいてはまさにそのとおりでございます。しかし、恩給の場合には低額恩給の是正というのも私たちの大きな目標でございますので、たとえば、かつて十一号から十七号まであったような号俸は全部十八号に切り上げた、あるいは最低保障を四十一年に設け、それを逐次改善をしてまいった、また、老齢者等に対しましては四号アップなりあるいは三百分の一の加算ということをやって、とにかくそういう方々に対する是正に意を用いてきたところでございまして、号俸と号俸とを比べるとかなりの差があっても、具体的なAという個人、Bという個人を比べれば、その号俸ではなくて、もう少し上がった号俸になっている。たとえば今度御提案申し上げております退職年次別格差是正の一環として行いました一号ないし三号のあップというのも、十八号と十八号とを比べたらあれですけれども、十八号の人がたとえば二十一号になる人もいるわけでございまして、そういうことでいろいろな是正をしたわけでございます。しかし、単純に号俸と号俸とを比べれば、先ほど御指摘がございましたように、一律アップのもたらした問題点というのは先生の御指摘のとおりでございまして、上の方では一〇%弱得をし、下の方では逆に二〇%近くそういう形では損と申しますか、低くなっているということが言えると思います。  ただ、先生も御指摘になりましたように、最低保障の制度というのを非常に充実してまいりましたので、長期の在職者につきましては、ほぼそれがクロスする部分まで最低保障でカバーをできているというふうに思います。  残りの問題は、これも先生が御指摘されましたいわゆる短期在職者についてはなお残っているではないかという点でございまして、短期在職者についても新しく最低保障等を設けましたけれども、これは長期在職者に比して割り落としをいたしておりますので、そういう点ではもっと低くなっているわけでございまして、いま御指摘のように、短期在職者について差があるということはそのとおりでございます。  ただ、これをどういうふうにすべきかというさらに深い問題になりますと、短期の方というのは、言い方が悪いと失言になってしまいますけれども、平均的には数年公務につかれた方でございまして、そうして、その中でもお年寄りの方には最低保障を設けておりますので、その最低保障に至らない方というのはさらにその中で比較的お若い方であるということでございますので、そういう方に対する配慮も十分しなければなりませんし、今度でも従来ありました加算減算率の緩和等をかなり思い切ってやったわけでございますけれども、そういうことをしながら、なおかつ残っている問題点についてどう考究すべきかということは、これからも慎重に検討してまいりたいというふうに思います。
  170. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、実は普通恩給、最低保障の計算をしていただきまして、この最低保障と合わせてみてどこに矛盾があるかということも調べてみましたが、ここで申し上げている時間がないようでありますので、これはまた小委員会か何かのときに少し説明をさせていただきたいと思います。  それから、生活保護法に基づく保護基準との関係を私申し上げまして、ここに御回答いただきましたが、老人二人世帯、一級地などの例をとりますと、これは逆に恩給受給者の側の方が安くなってしまう、こういう矛盾もございます。これは老人二人世帯と、こういうのですが、二人世帯なら月額五万五千五百四十三円、年額六十六万六千五百二十円、こういう金額になりますからね。そうでしょう。そうすると、これはやはりこのままそうですかと言えない面がございまして、これなども問題がございます。だが、これらは時間がございませんし、せっかくきょう人事院の総裁にお見えをいただきましたので、ちょっと関連をして、この賃金、週休二日制、恩給、三つ一緒にして承りたいことがございますので、いま申し上げた点等は改めて小委員会その他で言わしていただくことにしたいと思うわけであります。  そこで、人事院の総裁にお伺いする前に、今度愛川さんが人事官におなりになりましたので、きょうお見えいただいておるのであればちょっと承っておきたいのであります。私も長くやっておりますので、歴代の人事官の皆さんといろいろなことでやりとりもいたしておりますが、新しい角度で物をお考えいただきたいという気があって御質問をしたいのであります。  それはどういうことかといいますと、いままで恩給の議論をしてまいりましたが、人事院の方々おいでにならなかったのでありますけれども、公務員法上は恩給に関する人事院の権限はなお残されているわけであります。はっきり残っている。公務員法の百七条は、一音で言ってしまえば、やめた公務員の皆さんの生活を守るという意味の人事院の義務であります。百八条は「人事院は、前条の年金制度に関し調査研究を行い、必要な意見を国会及び内閣に申し出ることができる。」こうなっている。人事院は昔、いまもそうでございましょうが、給与局という局は次長制をおとりになった。慶徳庄意さんが次長をおやりになり、坂中さんが職階課長をおやりになった時代がある。この時代、給与局は何をやっていたかというと、懸命に恩給調査し研究し、恩給勧告を出すべく全力を挙げていたわけであります。だから当時は、人事院の給与局をあれだけの局にしたのは恩給を抱えていたからだと言っても過言ではない時期であった。だからといって今日そのシステムが変わったわけじゃないはずでありまして、給与局次長さんもおいでになる。だが最近は、次長さんは労働組合に憎まれ口をたたくぐらいが関の山になっていて、ろくなことはしない、と言ったら怒るかもしれませんが、冗談を言えばそういうことになる。だから、私もちょいちょい例を挙げて文句を言ったりするのでありますが、まあにぎやかになっていいとはいうようなものの、どうもそれだけでは困る。瀧本さんが給与局長、慶徳さんが恩給に詳しい次長さんであったわけであります。だとすると、恩給全体について、他の公的年金との関係もこれあり、研究の成果をもう少し表にお出しになる責任がありはせぬかという気がする、法律上明確にあるわけでありますから。何にもしないということならばこの法律は削ったらいい、人事院はそれに対応する給与局にしたらいいと私は思います。退職公務員の生活を守らなければならぬ人事院の義務とあわせて一体どうお考えになるかという点、すでに先ほど年金の矛盾その他について気のついたことを申し上げましたが、新たな角度から新しい頭で御研究を願えないかという私の気持ちがあるのです。これが一つ。  もう一つは、公務員法二十八条に「この法律に基いて定められる給与、勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般の情勢に適応するように、随時これを変更することができる。」つまり「情勢適応の原則」があるのであります。藤井総裁が週休二日制問題について大変御努力をされていることは認めますし、高く評価をいたすわけでありますけれども、もう日本は、公務員にせよ銀行の職員にせよ、ずばり週休二日に踏み切って、土曜日は銀行は休みです、郵便局は休みですということにしていい、またやるべき絶好の時期にいまある。なぜならば、アメリカを初め各国は、国際的な大恐慌、その後の大不況のときに、時間は短縮をする、週休二日制に踏み切るということになっていっているわけでありますから、不況だからけしからぬ、週休二日とは何事だなんというようなばかなことを言っている諸君の方がよっぽどばかなのであって、いまは国際的な例に従ってやらなければならぬ時期に来ている、こう思うわけであります。残念ながら、人事院の毎年の勧告をながめる限りは、日本国内における事業所別に見てこうだというようなことはお書きになるけれども、しからば国際的にどうなっているのかなんということはお書きにならない。これは困ったことだと私は思っておる。  愛川さん、人事官におなりになったわけでありますが、おのおの御専門がございましょうけれども、新しい頭、新しい角度でそこらのところに着目をし、お考えを願えないかという気がするわけでございます。そういう意味で一言御所見を承っておきたいのでありますが、いかがでございましょう。
  171. 愛川重義

    ○愛川政府委員 今度人事官に就任いたしました愛川でございます。  御承知かと思いますが、新聞社に長くおりまして外から批評をしておりましたのが、今度は役所の中に入って約一月になりますが、入れかわり立ちかわり業務報告というのを受けましてしごかれております。外から批評しておったときと違いまして、入ってみると、人事院というものは考えていたよりも大変むずかしい役所でございまして、数字に弱いものですから、実は閉口いたしておるわけでございます。しかし、公正中立、人事行政の専門機関として大変重要なお役所に今度みずから就任したわけでございますから、大いに勉強してまいりたいと思っております。  役所で伺いますと、大出さんはこの方面の大変ベテランでいらっしゃって、よく御意見を拝聴するようにということを、入れかわり立ちかわりやってくるお役人全部から聞かされましたので、実は恐れをなしておるわけでございますが、どうぞひとつ今後ともよろしくお願いいたします。  ただいまお尋ねの二点、そういうわけで御満足のいく御返事はできかねるかと思いますが、恩給とその他の年金との関係につきましては、私、社会保障制度審議会にしばらくおりましたので、総評や同盟の方の御意見も拝聴はしております。拝聴はしておりますが、それだけに、ある場合には一本化の方向を目指せという御意見も聞いてはおりますが、それぞれの制度にはそれぞれの歴史もあるし、いろいろないきさつもあるので、そう簡単にはまいるまいという感じを持っておるのでございます。いま大変お世辞をいただきましたが、新しい感覚を生かしまして、お教えもいただいて、せいぜい勉強してまいりたいと思っております。  それからもう一点の情勢適応の問題でございますが、おっしゃるとおり、情勢適応といってもそう明確な定義があるわけではないのであって、国内の社会情勢、民間給与の実態その他が一応の情勢であろうかと思っておりますけれども、これは外国の例も十分参考にしなければならない。しかも、人事院が外務省の出先を通して調査した結果によると、相当の範囲においてもうすでに週休二日制が実施されておるということでございます。そういうわけでございますから、国内の情勢等も勘案をいたしまして、民間から役所に入りました私の立場から考えましても、国民全体が十分納得するような形で、なるたけ国民に支障を来さないようにして実施したらいいのじゃあるまいか、これは私個人の考えでございますが、そういう感じを持っておるのでございます。  お答えになるかどうかわかりませんけれども、ひとつ……。
  172. 大出俊

    大出委員 大変貴重な方が人事官におなりまして、御経験のほども知っておりますからいまの質問をしたわけでありますが、ぜひ御研究いただきたいと存じます。  ちょっと委員長に御了解いただいて、ここにあります資料をお配りいただきたいのであります。
  173. 正示啓次郎

    ○正示委員長 どうぞ。
  174. 大出俊

    大出委員 配っている間にひとつ総裁に承ってこきたいのでありますが、前回の国会で期末手当を削られたわけでありまして、総裁がそこに入ってまいりますと、どうも公務員諸君の期末手当を削ったのはこの人だということになる総裁におなりになったわけでありますので、附帯決議をつけまして、速やかなる回復をということにしたわけなのであります。だから、せめて総裁はサンプル調査にせよ何にせよ――公務員の既得権、しかも総裁が口ぐせのように言っておった法定主義の公務員の給与でございますから、民間が不況で多少動いたからといってばっさり期末手当を削られるという筋合いのものではなかったはずだと私はいまだに思っておるわけですが、にもかかわらずお削りになったのだから、それならばサンプル調査でも何でもやって、どういうことになったのだということあたりはしかと御把握を願わなければならない筋合いだと実は思っております。そういう意味でそこらの、つまり民間の各種期末手当の推移等について、その後御調査あるいは御検討をされたのかどうかという点、ここにございますが「公務員給与制度の特殊性にかんがみ、今回の特別給の改定については、民間の動向を考慮し、可及的速やかに従前の月数に回復するよう努力すべきである。」これが本院の附帯決議でございます。いまの点いかがでございますか、総裁。
  175. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 お答えいたします。  特別給のカットにつきましては各先生からいろいろ活発な御論議なり御意見をいただきました。私も率直に心境を申し上げたつもりでございますけれども、この点については従来やったことのないことをやるわけでありますので大変悩みました。特に大出先生あたりからはいまお話しになりましたような御指摘受けまして、極端な言い方でございますけれども、本当に夜も寝れないというほどの悩みを実は味わったわけでございます。  ただ、諸般の情勢をかんがみました場合に、人事院勧告の持っている意味その他というところから、いわばやむを得ざるところとして公務員の各位にごしんぼうを願うということで踏み切ったわけでございます。心ならずもというのが私の心境でございました。その点はいまでも変わりはないつもりでございます。したがいまして、〇・二というものを算出いたしまするためにはすでに御承知のような配慮を加えたことは事実でございます。この点に関して附帯決議をいただいておりまして、その趣旨は十分に腹の中に入れているつもりでございます。  ところで、いまもうこの時期になっておりますが、民間の特別給の支給の状況その他は大変注意深く見守っております。それと同時に、今度、そのうちにやります民間給与の実態調査ではむろんいつもと同じような方向で調査をいたします。その調査の結果というものを見まして、附帯決議の趣旨もございますので、そういうデータが整ってまいることを期待もいたしておりますし、出てまいりますれば、それに応ずる措置というものは当然講じてまいらなければならぬという考え方は変わっておりません。したがいまして、そのうち着手をいたしまする民間給与の実態調査の際におきまして、特にいま御指摘のあったような点については注意深く調査をし、その結果を検討してまいりたい、かように考えております。
  176. 大出俊

    大出委員 これはどこへ行っても言われることの一つでありますから、総裁の気持ちがわかりますからこれ以上深追いはいたしませんが、ぜひ注意深い御検討をいただきたいのであります。  ことしの賃査の官民比較を含めまして、調査の重点、方式というのは目下御検討を恐らくもうなさっているんだと思うのでありますが、どの辺に重点を置かれてどういう調査をなさろうとお考えになっておられるのか、概略ひとつ総裁からお答えをいただきたいのであります。
  177. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 ちょうどその時期も参っておりますので、給与局を中心に慎重に検討をいたしております。まだ人事院会議で決定する段階には至っておりません。したがいまして、私といたしましてもまだ正式に報告を受けることに至っておりません。  ただ、推測を交えての発言で恐縮でございますが、せっかくのお尋ねでございますので申し上げますと、こういう民間の経済界の推移でございます。したがいまして、私は予断はいろいろ申し上げることは差し控えます。差し控えますが、全体といたしましては、それほどやはり変わった姿というものは出てまいらないのじゃないだろうかという感じがいたします。  といたしますと、やはり物価の点その他を考えまして、生活給的なといいますか、本俸を主体といたしまして、それに手当関係として従来もやっております通勤、住宅、扶養、こういう点を中心にしながら、やはり世帯持ちその他の点については重点を置いていく、結果的にはやはり本俸というものが中心になっていく、それが普通の姿ではあるまいかというふうに考えておりまして、去年、おととしと比べて特段のことを考えておるというわけではございません。  景気も大体、まだ不況という域を脱しておらないようでございますけれども、まずまずは落ちついた状況に相なってきておりますので、去年、おととしやりましたような管理職手当のカットの問題でありますとか、あるいは去年お願いいたしました問題とかそういうような点にも、やはり調査はいたしまするけれども、特に重点を置いてどうこうということでなくて、普通のベースで事を運んでまいるというのがことしの作業の中心ではないかと、かように考えております。
  178. 大出俊

    大出委員 大筋を申し上げますと、九月期決算以降の民間企業の状況等、私も賃金をやっている人間でございますから、春闘も控えておりますので、細かく調べておりますけれども、大きな企業というのは、輸出関係を持っておるところというのは大変にその面でプラス決算でございまして、どこを見ても大体七%から多いところで一五%ぐらい人件費の落ちでございまして、そういう意味で逆に製品価格は新価格体系どころじゃない、新々価格体系ぐらいになっておりますから、企業は縮小生産をしている、人件費はだから落ちている、系列も整理をしているということですから、これはという企業、上場企業等を中心に見れば、決算の内容というのは非常にいいわけです。資金等も銀行にどんどん返しているところもたくさん出てきているというわけでありまして、決してその意味でことしの春闘というのは弱気になる必要はない春闘だとよく私は関係者に言うのでありますけれども、確かに昨年のデータなんかで一万六千の倒産であるとか、これは一千万以上でございますが、以下を入れて六万件ぐらいありますけれども、しかしそれは春闘総体をながめてみるとそうではない、こういうふうに私は見ているわけであります。だから、こういう時期に特段の措置を――また期末手当を落とそうなんというようなことを、角野君きょう来ていないようだけれども、先にぽんと言い出されたら妙なことを――茨木さんはあそこで笑っているけれども、けしからぬことをされちゃ困る。そこらも頭にあって承ったのだが、特段のそういうことは考えていないと言う。大体本俸重点に、通勤、住宅、扶養手当等を含めました調査をおやりになろうと考えているということでございますから、まあ正常なんだなあというところでありまして、ぜひひとつ妙な考えは茨木さんお持ちにならぬように、笑って済むことじゃないので、これは御注意を申し上げておきたいわけでございます。  そこで、時間もありませんから、いま差し上げましたものについてちょっと触れたいのでありますが、週休二日という問題、私はもう割り切った方がいいと思っている理由は、いまお手元に差し上げましたのを――念のために差し上げたのでありますが、お持ちの方もおありと思うのでありますが、調べてみると、国際的に見ても、私どもが名前を知らぬような国でもみんな週休二日なんですね。世界じゅうの国が何カ国あるかどなたが御存じの方があれば、後でお答えいただきたいのでありますが、六十五カ国が週休二日制を採用しているのですね。いま差し上げましたものをごらんいただけばわかりますが、これは人事院総裁、特に総務長官は給与担当ですから、総務長官にもこれはお願いしておきたいのだけれども、どうも日本人というのは働き過ぎるのですよ。  いまお手元に差し上げた資料をごらんになればわかりますが、これは見たこともないカメルーンなんというような国があったりしますが、大体昼の休みなんというのはみんな二時間から二時間半なんですね。ところが、三時ごろまでやってあとは仕事をしない国があったり、これは一目見ておわかりいただけると私は思うのです。モーリタニアなんという国がありますが、朝八時から始めて十二時で午前中は終わり、午後はいつから始めるかというと、三時間寝ちゃんでしょうね、三時から四時まで一時間やったら今度午後は終わり、こういうわけですね。オートボルタなんてどんな国か知りませんけれども、暑いから朝早いのでしょうが、七時から始めて十一時半でやめた。午後はいつからだ、三時から五時でおしまいだというわけですね。しかも土曜日やっている国は一つもない。どこをながめてみても、みんなそういう調子なんですね。リベリアなんというのは、金躍日なんというのは八時から午後二時までしかやらない。月曜から木曜は八時から十二時まで。  これは主として銀行ですけれども、それにしても日本の銀行と比べればべらぼうな違いなんですね。土曜は一切やらない。やらないが、昼までやったら午後は三時間ぐらい休んじゃって、一時間か二時間やったらおしまいにしますというのがほとんどなんです。しかも土曜日やっているところは、この表に六十何カ国ありますけれども、一カ所もない、こういうことになっているわけですね。  リヒテンシュタインなんという国もありますけれども、午後は二時から五時までしかやらない。カナダあたりなんかでも月曜日から木曜日までは十時から始めて三時に終わり、金曜日には十時から始めて六時で終わり、金曜日だけ。これはカナダなんですね。これは何で十時から六時までやるかというと、土曜、日曜休みだからというわけですね。だから、こちらを調べてみると、どこを見ても、これはという国をながめてみてもそうなんです。ソビエトなんというのは、朝の九時から始めて午後は一時でおしまい、こういうわけですね。そうすると、日本だけ、何で汗水たらして銀行なんぞが土曜日まで一生懸命やらなければいかぬのかという気がするわけであります。  大蔵省に承りたいのですが、銀行法十八条がございますけれども、これは大蔵委員会のやりとり等もございますが、いつまでほっぽっておくお気持ちなのか、承りたい。足かけ四年がかりで十八条改正、十八条改正、ばかの一つ覚えみたいに朝から晩まで十八条改正を言い続けてきて、私の質問に対して森美秀政務次官なんかもこの委員会で、天下の大勢には逆らえません、川の流れは上から下へ流れるのですから従いますなんというようなことをさんざっぱら言って、いつになったらどういうことになるのですか。これはいかがでございますか。ここに例を挙げたんだが……。
  179. 西内彬

    ○西内説明員 お答えいたします。  現在、金融制度調査会におきまして、銀行制度に関します基本問題について、先生御案内のとおり七項目にわたって順次審議を進めてきております。それで、現在は第四番目のテーマでございます銀行経営上の諸原則についてかなり審議が進みまして、次の第五番目のテーマの銀行の取引、サービス部面における諸問題の中で、銀行のサービスの提供の仕方というものについての一環として金融制度調査会で御審議を願いたいというふうに考えております。間もなくそういうことで調査会での審議が進んでまいるというふうに考えております。
  180. 大出俊

    大出委員 もう一遍承りますが、その金融制度調査会に諮問をしておられる、それはわかるのですけれども、何かわざわざおくらしている感じもするので、これは下手に――銀行法という法律昭和二年にできた法律だから、ラフだから、大蔵省の権限はフルに活用できるなんて喜んでいる人も大蔵省にはたくさんいるのだから、だからというんでこれをおくらしたのではどうしようもない。私は、実は十八条改正をしなくたってやれるぐらいに思っている。法制局にもお見えいただいているから、後から聞きますが、だがしかし、できることならば十八条改正をやって、週休二日に踏み切ってもらいたい、そう思っている。十八条問題はいつごろになるのですか。大蔵省、日にちのめどはいかがですか。
  181. 西内彬

    ○西内説明員 銀行法の改正は大変に影響するところも多うございますし、多角的に長期的な視点から検討を行わなければいけないということで、多々問題点として詰めてまいるところがございますものですから、いつになってこれが上がるということはしかとは申し上げられませんけれども、ただ、精力的に小委員会をたびたび開きまして進めておることだけを申し上げます。
  182. 大出俊

    大出委員 それじゃあなた、いつになるかわからなければ、百年河清を待つたぐいじゃないですか。大平大蔵大臣が暗やみの牛みたいなことをおっしゃっておったけれども、それでも一両年と言ったんですよ。あなた、大臣は今度は坊という人ですが、これは一両年と言った大臣もいたのだが、あなたのいまの発言を聞いていると、いつになるかわからぬ、銀行法改正に手をつけられては困るのだというようなことが頭にあったのでは困る。本末転倒だ。そこのところはどうなんですか。十八条改正に限るのか、それとも銀行法全体に手をつけてもらおうというのか、どうなんですか。
  183. 西内彬

    ○西内説明員 お答えいたします。  現在、銀行法を含みます銀行制度全体のあり方について相互に関連がございますので、金融制度調査会に諮問をいたしましたので、その答申を待って必要な改正を行うという方針で臨んでおるわけでございます。
  184. 大出俊

    大出委員 たいてい世の中の審議会というのは、諮問をしたらいつごろまでに答申をと言うのが筋道なのですが、その諮問はしたが、いつになってもいいという諮問の仕方なのですか。
  185. 西内彬

    ○西内説明員 お答えいたします。  大体のめどは、数えたらあるいは立つかとも思いますけれども、大変影響するところが多く、支店が多く、委員先生のいろいろな御要求もございますし、そういう意味で拙速を避けてやりたいということで、いつまでにということを申し上げてございません。
  186. 大出俊

    大出委員 それじゃ、金融制度調査会に預けましたと言って逃げ口上をつくったということになるだけじゃないですか、いついつまでにということを一切言っていないというのじゃ。何年先でもいいということなんでしょう。そういうことですか、いかがですか。
  187. 西内彬

    ○西内説明員 各項目、七つの項目に分けまして、それを委員先生方のいろいろな御指摘問題点の詰め等を順次やっておりまして、そのためにこれがいついつまでにということでなかなか区切るわけにいかないという実態があるわけでございます。ただ、審議は故意に延引をいたしておりませんで、かなりのペースでもってどんどん進めておるということは申し上げられると思います。
  188. 大出俊

    大出委員 ではちょっと承りますが、ここに議事録があるのですが、大平さんの答弁です。「大平国務大臣 金融界の労使の間の話し合い、また、それが産み落とした了解というようなものにつきましては、私ども極力これは尊重してまいらなければならぬと思っております。」これは何かというと、銀行協会と全銀連の間の団体交渉で話がついて決まっているからですよ。そこで「これは御案内のように、十八条の改正問題のほかに、昭和二年の立法であるというようなことで少しアウト・オブ・デートになっておりますので、これを直そうじゃないかというような議論も国会の内外でございましたこと、御承知のとおりでございます。」だが一両年のうちにということで努力をしたい、こうなっておる。五十一年をもって一両年たっちゃったのです。ことしは五十二年ですよ。五十一年の六月ということを目途に努力をするということになっていた。一両年すでにたっちゃった。まだそんなのんきなことを言っているわけですか。これは何かあなた方意図があるのですか。かけておいた、期限は過ぎていない、聞かれればいつになっても、制度審議会でやっていますから、やっていますからと言っておけばこれは逃げ切れるということなんですか。いかがでございます。
  189. 西内彬

    ○西内説明員 決して意図がございまして延引をしているということではございません。最初に金融制度調査会におきまして検討項目をおかけして、どういう項目から順番にやるかということを委員の皆さんにお諮りをして、その順番が決まっておりまして、それを七項目という形で取り上げて順次それを上げてきておるわけでございます。それでこれが第五番目のテーマで、銀行のサービスの問題ということで、このところでやってまいるということになっておりますので、現在第四番のテーマが半ば済んでおるということで、毎月数回の会合を開いて懸命にやっておるということで、決して故意に延ばしたり、ある何らかの意図があるということではございません。
  190. 大出俊

    大出委員 だが問題は、これは改めてどこかで大臣引っ張り出して聞きますけれども、普通、審議会にかけるならば、このぐらいの時期にというふうに言わなければ、これは審議する方だってめどは立ちはしない。私は審議委員方々に知り合いもあるものですからいろいろ聞いてみている。中身も知っている。国会の側でも言ってくれと言っている、その方々は。早くやろうと思えばできないわけじゃない。だから聞いている。あなたでは言えないというならしょうがないけれども、そんなあなた、いつになるかわからぬなんてばかなことを、前大臣が約束をしておいて、ただではおけないですよ。これはひとつあなたの方でいつごろになるのかというのを、いつかわかりませんという答弁はないですよ。相談して、この次の委員会に改めて回答してください。いかがですか。
  191. 西内彬

    ○西内説明員 審議の結果の法改正まではどういうふうな段取りで進むのかということにつきましては、なかなか実は何月何日までというふうにめどがつかないと思いますが、先生の御意見を持ち帰りまして報告をいたします。
  192. 大出俊

    大出委員 持ち帰って報告をしてというのだから、この次の委員会のときに相談の結果を、私は別に大蔵大臣にでも物を言いますけれども、そんないいかげんなわけのわからぬ答弁で、この委員会で黙っているわけにいかない。御報告願えますな、いかがですか、はっきりしてください。よろしょうございますか。
  193. 西内彬

    ○西内説明員 持ち帰りまして報告をいたしまして、私調査会の事務局を持っておるものでございますので、全体的な判断もあろうかと思いますので、とりあえず先生の御意見を報告し、相談いたします。
  194. 大出俊

    大出委員 じゃ、改めてひとつ次の委員会にその相談の結果を承りましょう。よろしゅうございますね、委員長
  195. 正示啓次郎

    ○正示委員長 はい。
  196. 大出俊

    大出委員 ところで、郵政省にお出かけをいただいたのですが、二つございまして、先ほどの問題と一緒に承りたいと思って延ばしましたが、二つの一つは、いまの週休二日制に関しまして、郵便局を抱えているわけでありますから、こちらの方でも労使間でいろいろおやりになっているはずであります。この土曜日閉庁という問題をめぐりましてどういうお考えをお持ちでございますか、承りたいのであります。  それからもう一つ、時間の関係もありますからあわせて承りますが、かつて郵政省には逓信手、通信手という職種がございました。特定局等にもおいでになりましたが、特定局長さんの恩給に関する全期間通算が成り立ちましたのでいろいろ問題が出てまいりまして、前二回私が質問をいたしておりますけれども恩給方式で計算をした場合に有利になる方が三千何がし、この数字が妥当かどうかわかりません。最初は一万三千ぐらいと言っておられまして、再計算をして三千何がしと言うのでありますが、有利になるという計算をお持ちになっておいでになります。私は、事、退職をされた、御苦労なさった方々のことでございますから、有利になるのであれば、有利になる方法を考えてあげるというのが筋道であり、予算計算等いたしましてもそれほど多額な金ではない。郵政特別会計の中で処理をしているのがいまの政府負担分まで持っているわけでありますから、やってできなくはない。したがいまして、この点は恩給委員会等に持ち込んでいろいろ議論させていただきたいと思っておりますが、恩給局なり関係の省庁でよかろうということであれば郵政省は踏み切れるはずだと私は思うのでありますが、この二点について、ここで郵政省から御答弁をいただきたいのであります。
  197. 岩田立夫

    ○岩田説明員 週休二日制、これには土曜閉庁の問題が絡むわけでございますが、土曜に役所を閉めますと、国民の皆さんに与える影響が非常に大きい、社会的な影響も大きい。またこれは一方労働条件に絡む問題でございまして、いろいろの面から現在検討を続けておる段階でございます。
  198. 深海司朗

    ○深海説明員 お答えいたします。  退職された方から、先生が御指摘されましたような要望も受けております。心情的には理解できるわけでございますので、通信手、逓信手の実態につきまして恩給局の方に対しまして説明をしている段階でございます。
  199. 大出俊

    大出委員 もう一遍承りますが、郵政省はかつて日曜配達廃止問題をめぐりまして、諸外国が日曜配達をやめているというのに日曜配達をやっていた、これは廃止すべきである。長い年月、労使間の問題になりました。私も大変苦労した一員でございました。結果的に、当初百二十五局ばかり廃止をしてみた。トラブルは別に起こってはいない。諸外国も土曜閉庁云々という問題をめぐって歴史的にはいろいろあったようであります。しかし、今日銀行と同じように、やっていない。つまり、やる前というのは必ずそういう言い分が出てくるものでございまして、いまの答弁というのは妙な中途半端な答弁になっているわけでありますけれども、もう少し、労使間のやりとりを私は詳しく聞いておりますが、前向きで物を言ってもいいのじゃないかと思うのですが、もう一遍お答えをいただきたいわけであります。  それからもう一つ、通信手、逓信手、この問題も、これはむしろ郵政省で長らく働かれた方々先輩諸君でありますから、しかもそれぞれ相当な御年配の方々なんだから、いままでの通例からいけば、事郵政省にかかわるこの種の問題は積極的に物を考えるというのが郵政省の今日までの伝統だったはずだと私は思うのでありますが、何か後ろ向きとまでは言わぬけれども横向いて走っているような答弁であります。せっかく前向いてお答えになっていただいているのだから、もうちょっと前向きに話していただけませんですか。念のためにもう一遍御答弁願います。
  200. 岩田立夫

    ○岩田説明員 週休二日制と申しますか、これが社会の趨勢であるということはわれわれも十分認識しております。しかも、これがまた労働条件に非常に重要な問題だというようなことも認識しておりまして、労働組合との間でも勤務時間に関する専門委員会というのをつくりまして十分にいろいろ論議をしている段階でございます。
  201. 深海司朗

    ○深海説明員 お答えいたします。  先生からもっと前向きにと言われておりますが、先ほど言いましたように郵政省としましては、先生のおっしゃいますこともまた実際に通信手なり逓信手の方のことも、すでに言いましたような表現で恐縮でございますけれども、わかるわけでございます。したがいまして、恩給局の方に対しましても実は数回連絡をやっておるわけでございます。
  202. 大出俊

    大出委員 そう言っていただければわかるので、恩給局に数回お話をされているということでございますから、恩給局長菅野さん、これはやはり恩給というものは、軍人恩給にせよ文官恩給にせよ、できるだけ前向きに物事を解釈してきたのがこの委員会の今日までの歴史でもございまして、予算計算その他をしてもありますし、かつその金がどこから出てくるのかということも政府負担分まで含めて郵政の場合は特別会計から出しているわけですから、したがいまして、やってできないことではない。実は私も郵政の出身ですから話をしておりますが、やってできないことはないが、恩給局が何と言うのかあるいは関係省庁が何と言うのかというのが頭にあってそのことがすぐ出てくるわけであります。したがって郵政省というよりはむしろ関係のほかの方だということになるので、恩給局長、数字がここにございますけれども、やってできなくはない、やればできる、選択をすればいいわけでありますから。そこらのところは一体どうお考えなのか、ちょっと一言お答えいただきたい。
  203. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 前のときにもそういう御質問をいただきまして、私たちも勉強させていただいておりますが、いま郵政の方からもお話がありましたように、郵政の方からも資料をいただいております。そういうことを検討いたしておりますが、非常にむずかしい問題でございまして、恩給制度という長い歴史を通じての公務員の範囲あるいは通算の問題でございまして、大変むずかしい問題を含んでおりますので、いま結論を持っておりませんが、郵政の方から言ってこられた資料をいただいております方のほとんど全部というか、全部というか、これはすでに共済の方に移られた方の問題でございます。だから本来は共済の方の解釈の問題だと思いますが、その前に恩給もどう考えるかということでございまして、関係なしとはしないわけでございますけれども、先ほど申しましたようにまだ研究中でございまして、これからも研究を続けてみたいと思います。
  204. 大出俊

    大出委員 また小委員会その他でもう少し詰めていきたいと思います。  ところで、ここで労働省の方から、昨年度の週休二日制を含む労働時間等の調査結果が出ているようでありますが、ちょっと要点をお述べいただきたいのであります。
  205. 森英良

    ○森説明員 お答えいたします。  週休二日制の最近の状況でございますが、五十一年度につきましては最近ようやく数字が出まして、企業数につきまして約四三・四%が何らかの形の週休二日制をやっております。労働者構成比で見ますと、七一・三%が何らかの形の週休二日制の適用を受けておるという状況でございます。
  206. 大出俊

    大出委員 労働者数で七一・三%というと相当な数字であります。ここで人事院に承りたいのですが、人事院の調査結果からいたしますと、労働省との間の数字が少し違う感じがするのであります。事業所別にお調べになっているという点もあると思うのでありますが、念のために昨年調査に基づく人事院側の週休二日制はどの程度どうなっているかという点について要点にお触れいただきたい。
  207. 中村博

    中村(博)政府委員 人事院の調査によりますと、昨年の四月現在で、これは百人以上の企業でございますが、六八・九でございます。
  208. 大出俊

    大出委員 人事院の方も労働省の方もそれぞれ前進をしているわけです。要するに調査結果の概要ですけれども、労働省のものを見ますと、週休二日制の普及割合は企業で四割強と前年にほぼ同じであるが、労働者数では七割と前年よりは増加したとなっている。つまり人事院も労働省もおのおの調査をされておるようでありますけれども、いずれも前進しているが、七割ぐらいになりますとなかなか一気に前進をしない。つまり、やろうという意欲があり、かつやれるところは何らかの形の週休二日制をどんどんやってしまっているから、だからやれないにはやれないの事情があるのだから、そこのところはなかなか前進をしにくい。それでも多少なり前進をしているというのが現状なんですね。そうすると、このあたりで週休二日制という問題はどこでだれが一体決断をするかということになると私は思っている。  そこで、その前に承りたいのですが、銀行関係の組織などの方は、労使間の約束もこれあり、土曜でない日に代休の形で休んでいるわけですから、土曜も別の人が出てきてやっているということもあってかえって混乱をするから、早く土曜を休みにしたい。最近各銀行の店頭でビラを配っているわけであります。恐らく行ってみれば張ってあると思うのですが、大きなビラが銀行の店頭に間もなく張り出されることになる。それはどういうことかというと、国際的な趨勢から見て世界六十五カ国もの銀行が土曜に休んでおりますよ、したがって日本の銀行も土曜に休まなければならない趨勢でございます。ついては皆さんにあらかじめ御理解をいただきたいのですということで、銀行はいま一斉においでになるお客さんに、土曜お休みということに近く踏み切らざるを得ないのですからということの了解を次々に得ているのです。この中にはILOの早期実施勧告云々などというふうに書いてありますけれども、実は三月二日付でILOに総評議長名での文書等も出してあります。それはなぜかというと、国際的な金融機関の総会がございまして、ここで日本は一体何で土曜日も銀行がやっているんだという逆な批判も出ているわけであります。ここに出席したILO事務当局の労働組合の側から、日本は一体何でILOに持ち込まないんだという逆の話、したがってブランシャール事務総長あてに文書を出しなさいと逆に向こうから言われて出したような勘定なんです。三月二日です。そこまで来ている。この間私は西ドイツの人にも会いましたが、日本の造船は不況だ不況だと言って、大きな船の注文を日本が持っていっちゃうのは技術が高いのだからしようがないが、おれのところの足元のライン川の引き船まで注文をとっていっちゃうのはひどいじゃないかという話が出るのです。それでは幾らわれわれ組合側だって、反対だと言って日本商品のボイコットをせざるを得なくなるじゃないかという話が出てくるほどに日本は働き過ぎだちょうちんだとやかましく言われるわけですね。なぜならば国際的な一つのバランスを崩すから。そういう意味で言うと、やはりどうしてもこのあたりで週休二日に踏み切らざるを得ない、こう私は思っております。  そこで、お手元に差し上げてありますものの中で「銀行法十八条はILO九十八号条約に違反する」という命題で例の松岡三郎さんの所見をここに出しておきましたが、これはどういうことかというと、銀行の労使が団体交渉に基づく約束をしている、協約をつくっている。ところがそれが銀行法十八条ということによって実施できない。それは法的にどういうことになるか。このことをこの中に解説しているわけですよ。ILOの九十八号条約がある。これは私も国会へ出てまいりまして、ILO特別委員会で長い議論をした一人でございますが、一九五三年に批准しているこのILO九十八号条約、これからいたしますと、もしも団体交渉で労働条件にかかわるものがまとまった場合に、その国内にそれを制約する法律があった場合には、それを解消する方向でその国は努力しなければならぬということになっている。だから、労使間で話がついたにもかかわらず、銀行法十八条という制約があってできないというなら、それはむしろその方を解消する努力をしなければならぬのがその国の責任だということなんですね。でなければ、憲法に言う団体行動権だ、交渉権だというものはどこかへ行ってしまう、ILOの国際労働基準はどこかへ行ってしまうということなんです、これは。  そこで、法制局の皆さんにひとつ承っておきたいのですが、銀行法十八条というものを改正しないで、別な立法をこしらえて土曜日を休むという方法があるのかないのかという点、これをひとつ承りたいのですが、いかがでございますか。
  209. 前田正道

    ○前田政府委員 お答えいたします。  銀行法の十八条は、銀行が銀行業務の公共性にかんがみまして、土曜日は休まないという前提でやっておりますので、その銀行の業務を休まないということと、その銀行に勤務する職員の休暇をどうするかということは別の問題だろうかと考えております。
  210. 大出俊

    大出委員 つまり、ここに、いま差し上げたのに書いてある。恐らく政府はそういう答弁をするだろうと書いてある。しかし、それはあくまでもいまの銀行という経営にかかわることであって、労働条件そのものではない。だから、労働条件そのもので協約が結ばれるとすれば、それを尊重しなければならないのがその国の法機構のたてまえではないのか。つまり、この方がその意味で優先をするという解釈なんだ。ILOの方々にいろいろ聞いてみても、そういう見解、恐らく文書の回答をよこすだろうと思いますけれども、これは何も労使関係を制約はできない。それなら休んでもいいことになる。つまり、休んでもいいことになるから休んだ。そうすると、十八条があるけれども、これは銀行は事実上できない。そういう結果になる。つまり、そういうところまで突き詰めていくというと、別な法律をこしらえて、十八条を否定をして、土躍日休むということも不可能ではない。そのことはかつて大蔵省とのやりとりの中で出てきている。だから、私が聞いているのは、そういう方法があるはずだが、法制局はどう考えるかと聞いたんですが、いかがでございますか。
  211. 前田正道

    ○前田政府委員 労働協約が憲法二十八条に由来する権利であることは申すまでもございません。他方、銀行法の十八条の休日につきまして制限を設けておりますのは、銀行業務の公共性にかんがみてであろうかと思います。そこで、これは最高裁の判決でございますけれども、憲法二十八条の労働基本権に関しましても他の基本権と調和を図ることが大事であるという判決が出ていたかと思います。そういう意味合いにおきまして、その十八条と労働協約の問題の調和を図る点で実効が期せられるということであろうかと思います。
  212. 大出俊

    大出委員 したがって、できなくはない。つまり、かつて大蔵省とのやりとりの中で、私いまここに持っておりますけれども、週休二日制の推進に関する法律をつくって、その中で十八条に触れておけば、十八条改正をしなくてもやれるという、これは同じことなんだ。やればできる。たとえば国の行政機関の休日に関しても同じことが言える。その例も挙げておきたい。  そこで承りたいのですが、日曜日というのは、法律の根拠はどこにございますか。人事院に承ります。――ここにある。私か説明する。日曜日は、こうなっている。「日曜日は、勤務を要しない日とする。」これは一般職の職員の給与に関する法律の第十四条ですよ。給与局長茨木さん、横の方でしゃべってないで、聞いてなければだめじゃないですか。私が質問したのに、あなた答えないで、だめじゃないですか。人事院に承ると言って、人事院答えないのだから、困った人事院だ。一般職の職員の給与に関する法律の第十四条の第四項「前三項の勤務時間は、特に支障のない限り、月曜日から土曜日までの六日間においてその割振を行い、日曜日は、勤務を要しない日とする。」こうなっている。ここで決まっているのですよ。茨木さん、そこのところをよく読んでください。あなたは給与局長なんだから。だめですよ。  それでは、土曜日は何で決まっていますか。―ついでだ。土曜日は、人事院規則の一五-一。そんなものはすぐぽんと出てこなければだめじゃないですか。「職員の勤務時間等の基準」ここに決まっている。こっちの方は、土曜日は四時間でございますと、こうなっている。この第四条ですよ。ここで決まっている。土曜日は四時間でいいというのだ。  そこで、お手元に差し上げておりますこの「国の行政機関の休日に関する法律(案)」というのがございます。これは私がかつて内閣委員会に提案したんだが、政府のお出しになったのと相殺して、これは両方とも取り下げたわけでありまして、ここで書いておりますように、「国の行政機関の休日は、次の各号に定める日とする。一 土曜日及び日曜日。二 国民の祝日に関する法律規定する休日。三 一月一日から同月三日まで及び十二月二十九日から同月三十一日までの日。四 国の行事の行われる日で内閣総理大臣が指定する日。」こういうふうにしてしまえば「附則」と書いてあります以下には、手続がいろいろあります。三つの法律案を私は出しておりますから、この第一の方でありまして、二、三の法律案で諸手続が全部整うようになっていて――内閣の法制局じゃありませんよ。内閣の法制局はしょっちゅうひん曲げて物を言うから、衆議院の法制局と相談してこしらえたんだから間違いない。これをやれば、これでぴしっと土曜、日曜は休みになる。  同じ意味で、週休二日制の推進に関する法律というのをつくって、その中で十八条の処理をすればできる。つまり私がさっき申し上げているように、だがしかし、いままでの議論があるから、十八条というものを議論をしてもらって、十八条を外して、銀行の土曜を休みにしたいという考え方が私自身にもあるから、さっきから大蔵省に聞いている。やろうとすれば、立法技術的にはできなくはない。つまり、ここまで来ると、一体皆さんの物の考え方が那辺にあるのかによって、この国に週休二日制ができるかできないかになっているということなんです。国際的な趨勢は、六十五カ国の銀行は土曜日は休んでいる。しかも勤務時間は日本に比べて大変に短くなっている。昼の休みの時間も二時間も三時間もあることになっている。日本人というのは余りにも――そんなことを言えば大出君、君が一番働き過ぎだと言われかねないが、そこからじゅう働き過ぎだらけなんですね。もっとも、こんな時間まで委員会をやっているんではしようがないんだけれども。だから、やはりこの辺で少しお互いに頭を切りかえて考えなければいかぬと思うんですよ。総務長官、先ほどは恐縮でございましたが、一遍所感をこの辺で承りたいんですが、いかがでございますか。どうも少し考えなくちゃいかぬと私は思うんです。
  213. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃることはよくわかりますので、そこで政府の方では現在試行期間であることも御承知だと思います。昨年の十月一日からことしの九月まで、これを試行期間としまして各省庁でそれぞれ行っておるわけでございますが、それらの結果につきまして、人事院の方では、四月十五日までに中間的なところでひとつ報告を各省庁から集めて、そしていままでの見直しとともに、今後どうやっていくか、後半の試行期間も検討してみようというふうなお気持ちであろうと思います。  それで、この試行期間が終わりました後、御承知のとおりの閣僚懇談会がございますので、この閣僚懇談会にも人事院の方から御報告があって、いまおっしゃいましたような世界の趨勢あるいは日本国内のそのような大勢と考え合わせて、公務員の週休制については考慮せられる、話し合いが行われる、かように思っております。
  214. 大出俊

    大出委員 前向きに御答弁をいただきましたが、そこで人事院総裁に承りたいんでありますが、私は何回か総裁に公務員の週休二日制にかかわる質疑を続けてまいりました。総裁もまた何回か、勧告なり意見なりということで御努力をいただいてまいりました。かつまた、あわせて、さきの総務長官植木さんの時代にこれはもう大変な御努力をいただきまして――閣僚懇談会の中には妙な人がいまして、そんな公務員が週休二日なんて日本国が滅びるなんてことを言い出した人までいるわけですから。時には労働省まで反対だなんてばかなことを言う人がいまして、困ったことだったわけでありますが、経済企画庁なんかも、どういう風の吹き回しか、一生懸命反対をしたわけでございますけれども、そこらはいろいろ私どもの方からも、日本国は滅びはしないよという話から始めて、やみでやっているというととかくそういう言い分になるんだといって、ある省に物を言ったこともある。やみでこそこそやっているわけですよね。組合にいい顔をしているんだけれども、おれのところはやってるんだから、公式にやらなくてもいいんだというようなことをぬけぬけと言う人が出てくる。しゃくにさわって、会計検査院に一遍全部調べてみろと言ったことまで実はあるんだが、本当に調べさせたら困ってしまうところが出てくるから、がまんして、途中でまあまあということにしたんだけれども、実はいいかげんなことをやっているととかく遅くなるわけですよ。それではやはり困るんですね。人事院がせっかく試行を目指して努力をされたのなら、せっかく総理府の中にも、民間部会まで含めて部会を幾つもつくって御努力になったんだから、しかも、官庁関係で言えば、休むのなら土曜完全閉庁でいってくれというのが結論だったんだから、そうでしょう、だから、そこらを考えると、やはりこの辺でひとつ本当のところを人事院の皆さんが、総務長官を初めバックアップしていただいて、先頭に立って、この際踏み切るべきものはきちっと踏み切らなければいかぬと私は思っているんですよ。そういう意味で総裁に、いま総務長官に先に、政治的な面も含めておりましたから御答弁いただきましたが、総裁の立場から公務員の週休二日――私は、残念ながら、日本の場合には公務員主導型でなければ動けない国だと思っているんです。いまの日本の賃金だって、実はいまだに公務員賃金主導型です、私も賃金は素人じゃございませんけれども。だから、そうだとすると、この際やはり、公務員主導型で週休二日制に踏み切るのが筋だという気がします。そういう意味で、総裁の御答弁をいただきたいのです。
  215. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 週休二日制の問題については、いままでいろいろ御論議をいただいております。率直なところ、昨年の十月から始めましたいわゆるテストというのも、実は大変でございました。いま具体的に御指摘もございましたけれども、私からいろいろ申し上げることは差し控えさせていただきますが、大変なことでございました。しかし、ともかくテストに踏み切ったということでございます。この三月で半年を経過しました。いま総務長官もおっしゃいましたが、中間報告で、そのうちに一回詳しいことを各省庁から報告を求めまして、その結果を検討いたしたいと思いますし、また、一年経過をした時点において全体を通観いたしまして、さらに徹底的な調査検討をいたした結果、どうするかという問題に対する決断をしなければならぬ時期が来るのじゃないかと思います。  幸いにいたしまして、恐らく各省庁もそれなりに大変御苦心をなさっておる結果だと思いますが、現在までのところでは、このテストをやりました結果、業務の運営に何か目立った支障が出ておるというような報告は受けておりません。また、事実、あの程度のテストでございますからそう支障も出るわけがないというふうに思っておりますが、あと半年の経過を見まして、その段階において結論を下さなければならぬ時期が来ると思います。その際に人事院としてどうするかということは、いまこの段階ではもう少し言明は差し控えさせていただきたいと思いますが、事柄はやはり勤務条件に関する事柄でございますし、また先刻ちょっと答弁がおくれてはなはだ相済みませんでしたが、日曜あるいは月曜日から土曜日に時間を割り振るという規定が給与法にございます。これらの給与法の規定は、直接にやろうと思えば、やはり改善をしなければならぬ問題でございます。その際にはどういうふうな方式をとるか、勧告の方式をとるかあるいは意見の申し出という方式をとるかというようなこと、あるいは具体的にどうするかということは慎重に検討いたします。しかし、前々からも申し上げておりますように、テストに踏み切ったということは、やはりわれわれ人事院といたしましては、世界の大勢、民間の諸状況等を踏まえて、前向きに対処したいという気持ちに出ておるものでございます。そういう気持ちをもって慎重に対処をしてまいる所存でございます。
  216. 大出俊

    大出委員 私、実は総裁に大変御努力をいただいたことを知り過ぎている一人でございまして、出かけていかなくてもいいところまで出かけていって、実は閣僚の方々のお集まりでいろいろやりとりがあったいきさつを聞いたものですから、直接お目にかかって、ひとつ御理解をと言ってお願いをしたことまであるのですから、大抵のことは知っておりますが、長い年月やっておりますから。  ただ、私が先般総裁に質問をいたしまして、試行というのは世界の大勢を見きわめて踏み切るべきだ、人事院がそういう腹をくくって、時には総裁が、閣内にいろいろな意見があるのを御存じの上で、あえてもう一遍人事院がどろをかぶって物を言わなければいかぬかもしらぬというところまで深刻にお考えになった時期まであった、それはよく知っております。その上で試行に踏み切られたわけでございますから、それは実施を前提にするものであるのかどうか。私は少なくとも、経過があってこの試行に踏み切ったのだから、この試行というのは実施を前提にするものなんだということをはっきりしてくれぬかということを総裁に承ったことがある。そうしたら、総裁は、そのとおりです、と、とっさに実はそうお答えになった。  ところがその後、関係組合等々とのやりとりの中で、私と総裁のやりとりを例に挙げたら、あれは原則を言うたのだという言い方を総裁がされたといって報告を聞いたものですから、ちょっと心配になりまして、どうも試行がうまくいかなかったり、その間の試行の段階にいろいろな横やりがあったりというような支障があったかもしらぬという実は心配をしたのです。ところがいまのお話を承ってほっとしたのは、確かに試行の規模というのは小さいわけでございますけれども、それなりに特段の支障があったというお話は聞いていないと言われるものでございますから、しかも重ねて世界の大勢等もあるのだから、あるいは国内の大勢等もあるのだからと言われたので、ああそれではやっぱり前におっしゃったことは間違っていないのだなという気になったのですけれども、心配なものですから、総裁にこういうことを重ねて聞くのは失礼なんだけれども、試行をおやりになるというときの気持ちは、少なくとも実施というものを頭に置かれて、平たく言えば実施を前提に試行するというのが人事院の姿勢だったんだというふうにもう一遍確かめておきたいのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  217. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 前にもお答えをいたしましたとおり、テストというのは、世界の情勢、国内民間の諸情勢等を勘案をいたし、なお公務員の勤務条件の改善ということを考えましてその決断の時期が来ておるのではないだろうかということを前提にいたしておることは、私の気持ちとしては少なくともそうでございます。ただ、国民の感情、あるいはこれは内閣、各省のお考えもあることでありまして、その点、できる限り円滑に推移するように努力はしなければなりません。しかし、いつの日か、具体的なやり方等については問題がございますけれども、やはりある時期には決断をしなければならぬ時期が来るのではないかというふうに思っております。
  218. 大出俊

    大出委員 総務長官に伺っておきたいのですけれども、この種の問題、私も長らく、大蔵省の方においでいただいたり労働省の方においでいただいたり、いろいろ質問してまいりましたが、話をずっと詰めていきますと、すぐ出てくるのは、世の中が不況だからとかそういう話が出てくるのですね。ところが、そういう話が出てくるから、私もずいぶん神経を使って、国際的にどこの国がどうなってというところまで、銀行協会なんかでも調査団を派遣したり組合の側も調査団を派遣したり、いろいろなことをやっております。私も組合関係の出身ですから、国際的に知った人もおるものですから、その国の状況も聞いてみております。ところが不思議なことに、さっきもちょっと例に挙げましたが、アメリカもそうなんですけれども、大変な大恐慌が起こって、その後に大不況が来たというところでやっているのですね。そういう時期というのは、当然なんだけれども、勤務時間の短縮だとかあるいは職場確保だとか、そういうふうになるのですね。不思議にそういう時期に踏み切っているというところが非常に多いのですね。日本人の働き過ぎというのが国際的に云々される世の中だ。昨今の事情はかつての高度成長から大きくさま変わりをしている。だから、国際的に見て別に日本が先駆けてやるんじゃないんで、六十五カ国もわけのわからぬ国、と言ったら失礼だけれども、そういうところもやっているわけですから、いま大変におくれて踏み切ろうという段階なんですから、だからいま不況だからということは理由にならぬというのが私の気持ちなんですよ。だから総務長官、これは不況だからということを理由になさるんではなしに、いま一体何が必要なんだということに中心を置かれてぜひ決断をすべきときではないのかというのが私の気持ちなんです。そういう意味で、くどいようでございますけれども総務長官にその意味の御答弁をいただきたいのですが、いかがでございましょうか。
  219. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃるとおりに、不況だからということは大出先生がおっしゃるとおりの意味と私も思います。だからということにはならないと思いますが、いろいろ数字を見てみますと、百人以下の企業で現在週体二日制をとっているところのパーセンテージは三〇%ぐらいというふうに見ております。そうしますと、不況だからというのではなくて、そういう百人以下の小零細の企業に連体制というところは問題があるのではないかな、こういう気がいたします。  それからもう一つは、公務員といたしましては、これはもう社会にサービス、奉仕するというのが公務員の性格でございますから、やはり大勢に従って、社会全体がそういう大勢に完全になっていけば公務員の方は当然それに従っていく。公務員の方か先頭に立って週体二日制をやる――さっき、給与にしても労働条件にしても公務員主導型である。こういうふうな御意見も承りましたけれども、この連休二日制は公務員主導型ではどうもむずかしいなという感じもいたします。しかし、いずれにしろいま試行をやっておるところでございますから、ただいま人事院総裁言われましたように、この試行期間が終わり次第検討に入ることだと思います。
  220. 大出俊

    大出委員 もう最後にいたしますけれども、先ほどお話があった百人以下のところ、私も幾つか基準監督署その他回って調べてみたのですよ。東京の落合であるとか品川であるとか、幾つかございましてね。ところが、この週休二日制を百人未満の企業でとって非常にうまくいっておるところもたくさんあるのですよ。むしろその方がうまくいくと言っておるのですよ、そこの御主人は。ところが、中小、零細企業の中でそういう経営手腕に欠ける人もいまして、人の確保がうまくいかない。大分苦労してやっておるところもあって、何とか休ませたのだけれども、休ませるについての手腕、力量、才覚に欠ける、そういうところが多いのですね。監督署の方に聞いてみても、中小、零細企業の経営者の側からむしろ積極的に休みにしようじゃないかと持ちかけたところがたくさんあると言うわけですよ。その方が零細企業の労働者が定着するというのですね。ところがそれは、全然食わずぎらい、やったことがない、昔からのしきたりで一生懸命やっておるまじめな零細企業の方々というのは、何軒か聞いてみましたが、そういう頭が働かないですね。だからその辺は、やはり大勢がこうなってきている、どこの国だってそうなんですから、やはりそこまでのことを労働省なり何なりが本当ならば考えるべき筋合いなんですね。かつて労働省、大蔵省あたりが、四十七年でございますか六年でございますか、忘れましたが、銀行に対しては、銀行がそういう方向を向いてくれないと世の中の週休二日制が前進をしないから何とかそういう方向で努力してくれぬかということを言ったことがあるのですよ。これが実は呼び水で銀行労使間で協約までいったのですよ。銀行だって最初はなかなかそう踏み切れるものじゃないですよ、馬車馬みたいに動いておるのだから。ところがそれでやってみたら、今度は代休制度をとったりして半舷上陸でやっていったところが、かえって土曜日にお互いに苦労する。なぜかと言うと、世の中、中小企業も週休二日制が多いものだから、土曜になると、銀行がやっておるのだからというので、自分の企業が休みなんだからというので、中小企業の経営者が銀行に金の相談なんかにどこどこ来るというわけですよ。そうすると、銀行の方は間引いておるわけですから、逆に骨が折れるというのですよ。だから、やはりこれは銀行の方がむしろ積極的に、零細、中小企業に対して金の世話をしておるのですから、そういう諸君を教育しなければいかぬのじゃないかというところまで来ているというわけですよ。むしろその方が定着するのだし、いいですよということを金の相談に来られた方には一々話すようにしておると言う。そこに最後の隘路があるわけですよ。私が先ほど公務員主導型と言ったのは、この国のあり方として、銀行法十八条に手をつけようとすると、大蔵省の方は、これは言い過ぎになるけれども一つ間違うと銀行法全体に手をつけられてはぐあいが悪いというふうに考える方々も多いわけですよ、実を言うと。ラフな銀行法だから、大蔵省の裁量で相当なことができる銀行法ですから、それを細かく決められたんじゃという気持ちもあって、銀行法全体に手をつけてくれては困る、かといって十八条だけと言ったって審議会なかなかうんと言うまいという、そこらが陰の方からいろいろ私どもがいままで話しておる限り耳に入ることです。だからそういう意味で言うと、どうも土壇場に来ると、公務員についての、つまり官庁主導型で踏み切らぬと決着がつかない。何もいきなり踏み切るのではなくて、これだけ長い年月、私も何遍となくこの問題やってきておるわけですから、世の中の大勢も、今度の労働省調査でも労働者数にして七割を超えるのですから、そこまで来たのだから、この辺でもう国が踏み切る段階だろう、こういう気が私はするわけで、大臣が先ほどちょっとおっしゃった意味ではないのです。何も先頭切ってやろうというのではなくて、ここまで来たら踏み切らなければかえって混乱をする、こう思っておるという意味なんです。だから、これはやはり潮どきというのかタイミングというのがありますから、いつの日か云々とかでなくて、やはりそのタイミングをここで探すという、そういう姿勢が欲しいのです。もう一言お答えいただきたいのですが、総務長官いかがですか。
  221. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃることはよくわかりますので、確かに潮どきとかタイミングとかというのは必要だと思うのです。くどいようでございますが、現在の試行期間というものは、やはりテストをするということは、テストの結果支障がない、いいということになればやるということのテストなんで、全然やらぬということでテストをするようなばかなことはないわけでございますから、一応テストの期間を過ごさして、その後慎重に検討いたしたい、かように考えておりますので、よろしく御了承お願いします。
  222. 大出俊

    大出委員 わかりました。総務長官から代表して御答弁いただきましたから、これで切らしていただきます。  きょうは大変遅い時間から始めた関係もございまして長くなりましたことをおわび申し上げます。また、お呼び立ていたしまして質問が漏れた方もあるいはおありになるかもしらぬと思うのでありますが、お許しをいただきたいと思うのであります。
  223. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、山本政弘君。
  224. 山本政弘

    山本(政)委員 私は恩給法については大出委員のように詳しくありませんし、いわば全くの素人なんですけれども、実はいろいろな意味で矛盾を感じているようなこともありますので、そういうことについてお伺いしたいと思うわけであります。  昨年の十月六日の各紙の中に実はこういうことが載っておりました。網走市に住む少数民族オロッコ出身の北川源太郎さんという人が日本軍に諜報要員として徴集をされた、そして戦後、日本軍人としてシベリアに抑留された、国は当然軍人としての恩給をしてほしいということで実は申請をした、ところが厚生省から兵役法による徴集とは認められないという連絡があったということであったわけであります。  北川さんというのは樺太の南部の原住民の居留地で暮らしていたけれども昭和十七年に現地の日本陸軍に特務機関要員として駆り出された。軍で働かされ、そうして戦後、日本軍人としてソ連の軍事法廷で裁かれ、シベリアで八年近い刑を受けた後、日本に帰国をしてきた。そうして日本国籍を得た。ところが、身分が軍人ではなかったということで恩給法が適用されずにいた。こういうことがあるわけであります。  これを見ますと、私は、北川さんという人が軍人恩給の対象にならないということの政府の見解としては、日本国籍がなかったということが一つあるだろうと思う。もう一つは、本人は兵隊としてではなくて隊長の独断で採用されたものである、こういうふうに理解をしているのですが、一体そういうふうな理解で間違いがないだろうかどうだろうか。この点ひとつお伺いしたいと思うのです。
  225. 出原孝夫

    ○出原政府委員 御質問の趣旨の概要はそのとおりでございます。  北川源太郎さんにつきましては、当時要するに戸籍法による籍を持っておられる人に対しまして軍隊で召集をしておったわけでございますので、そういう意味で北川さんが軍人の身分を持つということは考えられないということが一つ。それからもう一つは、特務機関の中でそれぞれ雇傭人としてあるいは賃金でお雇いするということはあり得たわけでございますので、そういうことでございます。
  226. 山本政弘

    山本(政)委員 オロッコ人というのは国籍を特っておらなかったというのですが、そうすると、そのころ、戦争が始まった当時あるいは戦争中、高妙の人たちは国籍をお持ちになっていたのですか、持っていなかったのですか。
  227. 出原孝夫

    ○出原政府委員 要するに、本来の、もともとの日本人以外の方々につきましては、そのときどきにさらに追加して国籍法の中に入れておるのがございますので、台湾の高妙族の方々はそういう意味で国籍はお持ちになっておったということでございます。
  228. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、国籍を持っておったというのでしたら、私は一つだけ北川さんの質問の前にお伺いしたいのですけれども中村さんという人がおりましたね。この人は十二年ですか、かなり長い間モロタイかどこかにおられて帰ってきたわけですね。そうすると、その当時、あなたのおっしゃるように日本国籍をお特ちになっておったのだったならば、少なくともその期間における恩給というものはもらう権利があったのじゃないでしょうか。その点いかがでしょう。
  229. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 中村さんの件でございますけれども、確かに軍人として召集されていったわけでございますので、中村さんのようにずっと抑留されて――抑留といいますか、終戦後もかの地におられましたような方々に対してはその期間も計算をいたしておりますので、そういう意味ではあるのでございますけれども、これは恩給法の本質かもしれませんけれども恩給というのは国に対して長い間忠実に勤務をしたということに着目をするわけでございますので、恩給法の規定により、国籍を失った者についてはそういうふうな権利はないということでございますので、中村さんの場合にも、お気の毒ではございますけれども、そういう権利がないということでお出しをしておりません。
  230. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、国籍の点から言えば、北川さんはその後国籍を取得したわけですから、この点はなくなったわけですね。要するに恩給をもらえないという点については、その阻害されておる一つの点はなくなったわけですね、そうですね。
  231. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 北川さんの場合の国籍の問題、十分あれでございますけれども、私たちが、北川さんから御申請がございまして厚生省の御意見もお聞きしまして恩給を支給できないというのは、そういう人種とか国籍の問題がありましても、そうではなくて、北川さんのその当時の身分というものが、先生先ほど申されましたように軍人さんではなかった、傭人であったということが主でございます。
  232. 山本政弘

    山本(政)委員 私が質問申し上げたことだけにひとつしぼってお答えいただきたいのですよ。  ぼくが言うのは、一つは国籍の問題、一つは兵役法の問題と二つあったでしょう。ですから、この二点が障害になっておるんだろうが、そのうちの一点の国籍というものについては、それは要するに恩給をもらうことを阻害する原因がなくなっておりますねと、こう言っているのですから、問題はあなたのおっしゃる兵役の問題なんですけれども、そうですね。
  233. 出原孝夫

    ○出原政府委員 北川さんにつきましては、戸籍法による戸籍を持っていないわけでございますけれども、日本人であるということについては間違いないことでございます。したがいまして、国籍上の要件としては問題ないわけでございます。
  234. 山本政弘

    山本(政)委員 私も実は戦時中には戦争に行ったのですが、その前にちょっとお伺いしたいのは、明治四十年三月二十九日に法律二十五号というのが出ておるわけです。内閣総理大臣西園寺公望、司法大臣松田正久、内務大臣原敬となっている。「法律ノ全部又ハ一部ヲ樺太ニ施行スルヲ要スルモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但シ左ノ事項ニ關シテハ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得」として「一 土人ニ關スルコト」となっているわけですね。それが一で、以下四つほどありますが、そして「本法ハ明治四十年四月一日ヨリ之ヲ施行ス」。この一に、「法律ノ全部又ハ一部ヲ樺太ニ施行スルヲ要スルモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム但シ左ノ事項ニ關シテハ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得」として「土人ニ關スルコト」ということを設けた、これは一体どういう理由なんでしょうか。
  235. 出原孝夫

    ○出原政府委員 明治四十年の御指摘の「樺太ニ施行スヘキ法令ニ關スル法律」で「土人ニ關スルコト」ということが一つ、「勅令ヲ以テ之ヲ定ム」とございますが、実は私ども承知をしております範囲では、大正九年五月に「樺太ニ施行スル法律ノ特例ニ關スル件」という勅令が出ておりまして、その第一条に「樺太ニ於ケル土人ノ外ニ関係者ナキ民事ニ關スル事項」は「從來ノ慣例ニ依ル」というのがございまして、「從來ノ慣例」といいますのは酋長に任せるということがあったようでございますので、そういうことで戸籍からは外れておる、民事に関することということで従来の慣例に任せたというのが勅令で決められております。
  236. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、要するに土人という――土人という言葉は余り使いたくないのですけれども、そういう人たちの置れておる環境とかあるいは歴史的な条件とかというものがあって、そして法律を適用することを除外して勅令によって特別の措置をする、こういうふうに理解していいですね。
  237. 出原孝夫

    ○出原政府委員 そのとおりと思います。
  238. 山本政弘

    山本(政)委員 ぼくは逆用するわけじゃありませんけれども、いまさっき申し上げたように私自身戦争に行きました。経理の士官で、船で下士官、兵の教育をやりまして、昭和十七年でした。この戦争はなかなかむずかしくなるのじゃないだろうか、つまり船の計算を出して木造船の計算をして、そして、しかしみんながんばらなければしようがないじゃないかという話をして、そしてぼくは当時北海道の室蘭の木造船の造船所を見に行ったことがあります。ところが、その途端にぼくは憲兵隊に引っ張られたのですよ。申し上げたいのは、つまりそういう環境の中で、法的には適用の除外を受けている土人の人たちが、軍人でないという理由で、八年間抑留をされて帰ってきたことに対して何ら恩典がないということならば、前段に法の適用がなければ後段だって法の適用がないはずじゃありませんか。そうしたら、つまり法的な措置でなくて行政的な措置、そういうものがあってしかるべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  239. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先生の御質問に対するお答えになるかどうかわかりませんけれども恩給はやはり法律に基づきまして支給するわけでございますし、そういう前段にあるいは後段にというお話になりましたけれども、それに規定されるような条件に合わない方について支給をするというわけにはまいらないと思います。
  240. 山本政弘

    山本(政)委員 ぼくは後で、要するに外国の特殊法人のことについて、日・満・日、満・日というようなことについてもお伺いしょうと思うのですが、そのことに関してすら以前は法的には、要するに恩給局の皆さんだって、率直に言えば非常にがんこな態度をとられたと思うのですよ。しかし、それは緩和されてきているのですよ。ですから、ぼくは、こういう人たちがそんなにたくさんおるのかと言えば、非常に少ないだろうと思うのですね。だったらそういう人たちに対して、仮に恩給法の適用がなくたって何らかの行政措置があっていいはずだと思うのですよ。現に前のときには、中村さんのときには、当時の宮沢外務大臣が外務委員会で言っているじゃありませんか。中村さんの場合を考慮して、そういうものを考慮すれば大変気の毒だ、何かの措置をとりたいと言って約束をしているのです。それがいまだ何ら約束が履行されていないという現実があるのですよ。私はそれが不思議でならぬと言うのです。内閣がかわったからということじゃないでしょう。しかも、軍人でなかったと言うのですけれども、しかし当時の状況で、要するに特務機関に引っ張られていって、そして軍人と同じような教育、訓練を受けたというのでしょう。しかも、それは土人に対しては法的な適用がない状況の中でやったわけじゃありませんか。それならそういう特殊事情というものを考えていいはずじゃありませんか。私はその辺をお伺いしたいのですよ。棒をのんだように、法律規定があるとかないとかということじゃないだろうと思うのですよ。法の運用というものは人にあるのだと、私はこう思うのです。しゃくし定規に法というものを適用するだけが能じゃないでしょう。そして、現実にあなた方はいままで政府の中だって運用というもので、法というものをちゃんと解釈によって運用しているじゃありませんか。私はそのことを聞きたいわけですよ。なぜ行政的な措置が受けられないだろうか、つまり政策的な問題としてなぜ考えられないかということを聞きたいわけです。
  241. 出原孝夫

    ○出原政府委員 中村さんの場合には、お帰りになったときにすでに日本人でなかったということがあったわけでございます。それから、御指摘の北川源太郎さんにつきましては、これは特務機関で傭人として使ったということでございまして、こういう意味で、特務機関で使われた人は、特に北川さんが少数民族であるからどうということではございませんで、日本軍が各地におきまして同じように傭人として使ったケースが、数はわかっておりませんけれども、相当数あったはずでございます。したがいまして、それらの傭人の方々とは同様に軍属としてお扱いはできるわけでございますけれども、軍人ではなかったということはそのとおりなんでございます。
  242. 山本政弘

    山本(政)委員 私はいま初めて聞いたのですけれども、要するに軍属として認めることはできるというのは、これは一つの前進だと思うのですよ。その答えはぼくは寡聞にして知らなかったけれども、そういうお答えをいただいたということは、これは一つの前進だと思います。私は戦争を起こしたことの可否とかなんとかいうことをいま論ずるつもりはないですが、もし皆さんたちがそういうお答えをするのだったら、少なくともソ連の軍事法廷で軍人として裁判を受けたということに対して、軍人でないということを当時の日本政府がソビエトの政府なり何なりに対して釈明をしただろうか、交渉しただろうか。それをしないで、軍人と同じように取り扱われて、そして帰ってきた際に、それは法に規定というものがないから知りませんということにはならぬだろうと思うのですよ。総務長官、ぼくは総務長官は政治家であるからあえてお伺いいたしますが、私の申し上げたことに対する御見解をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  243. 藤田正明

    藤田国務大臣 そういうふうなケースが間々ございまして、官吏でないためにあるいは軍人でないために、軍人と同じように戦地で危険な目に遭われた方々に対して恩給が支給されない、こういうケースが間々ございます。従軍看護婦さんの場合なんかが同じようなケースでございます。これらのケースに関しまして、実際は頭の痛いところでございまして、事実上は全く軍人同様の危険な場にさらされて、同様なお働きになっておるわけでございます。それにもかかわらず恩給にそれが認められない。これは本当に困った問題だと思うておりますし、またいまこれらに関しましては研究もいたしております。
  244. 山本政弘

    山本(政)委員 お言葉をお返しするようで申しわけないんですけれども、要するに困った問題だということは、何らかの対策を講じなければならぬ、あるいは何らかの対策を講ずべきだというふうに私承っていいでしょうか、どうでしょうか。
  245. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいまのケースにつきましては初めてお伺いしたわけですが、従軍看護婦の場合は、何らかの措置はないかというふうに実は研究中でございます。
  246. 山本政弘

    山本(政)委員 ありがとうございました。従軍看護婦の方について、付帯的な問題としてでもあれですが、そういうお言葉をいただいたことは大変ありがたいと思います。  援護局長にもう一遍お伺いいたします。政府は、北川さんが日本軍人として裁かれないようにソ連政府に働きかけたんだろうか、どうだろうか。そういうことは一体あったんでしょうか、どうでしょうか。  私はオロッコ人という、本当にそういう言葉を使うのはいやですけれども、土人という、つまり当時までにすでにある程度の差別があっただろうと思うんです。そして、戦争に自分の意思でなくて引っ張られていって、結果的には軍事裁判を受けて帰ってきた。そしてまた恩給とかなんとかということについて、そういう自分の意思どおりにそれが行われないということについて、これは二重の差別というふうにぼくは考えるんです。ですから、そういうことに対して少なくとも政府は、当時軍人でない人が軍人として軍事裁判を受けたわけですから、そういうことに対する責任というものは一体どうなんだろうか。三つあります。つまり、何らかの交渉をおやりになったのかどうなのか。それから、軍人として裁判を受けたことに対して、どうお考えなのか。そして、それをしも法的に規制がないということで何にもお考えにならないというふうにお考えになっているのか、この三点です。
  247. 出原孝夫

    ○出原政府委員 北川さんが戦犯としての裁判を受けられたということは、北川さんが帰ってこられて、こちらで報告をいただいたときに初めて承知したものでございます。したがいまして、それまでのことにつきましては、政府としては承知をしておらなかったというのが実情でございます。したがいまして、それが軍人としての裁判を受けられたかどうかということにつきましても、さらに追及する手だてはとってございませんけれども、それぞれ帰ってこられた方につきましては、その御報告あるいは同時に帰ってこられた人の証言に基づきまして、記録として残しておりますので、そういう意味におきまして、北川さんの御発言をそのまま私どもの方は信用をいたしておる、こういうことでございます。  ちょっと第三点、聞き漏らしたんでございますが……。
  248. 山本政弘

    山本(政)委員 第三点は、そういうことに対して、法的な措置あるいは政策的な措置を講ずるというふうにあなた方はお考えにならないですか、どうだろうかとこう言っているんですよ。
  249. 出原孝夫

    ○出原政府委員 こういう人たちがお帰りになりましたときに、私どもの方の戦傷病者戦没者等援護法におきましては、亡くなった方でございますとかあるいは傷害を受けられた方につきましては、すでに御援護を申し上げるように措置をしております。したがいまして、元気でお帰りになった方々についてまでということは考えておりません。
  250. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、援護法によることを申し上げているつもりはありません。あくまでも恩給法について申し上げているつもりです。  これは内閣委員会調査室でつくってくだすっているものですけれども、これを読みますと、昭和五十二年度の恩給費の中に外国人恩給というのがありますね。そして人員が四名、金額が二百六十八万五千円ですか、こういう金額が載っておりますね。これ、話がもとに戻りますが、日本国籍を持ってない人が実は恩給をもらっているわけですね。そうですね。そうすると、話はぶり返すわけじゃありませんけれども、日本国籍を持たないから恩給はやらぬということにはならぬわけですね。外国人の人が、これはたしか大学の教師か何かだろうと思うんですが、この人たちが恩給をもらう根拠というのは、どういう根拠に基づいてやっているんでしょうか。法律があるんでしょうか、どうでしょうか。あったら、お示しいただきたいと思います。
  251. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 お答え申し上げます。  これは外国人という名前で呼ばれておりますけれども、いわゆる恩給法にいう恩給ではないわけでございまして、外国の方で大学の先生等で長く教鞭をとられたような方々に対しまして、昔から恩給法ではありませんけれども、国の債務負担行為というようなことで予算をお願いいたしまして出しているという、きわめて少ない例ではございますけれども、そういうものの一つでございます。
  252. 山本政弘

    山本(政)委員 法律に基づいて、そして規定をされているわけじゃないわけですね。これは確認したいわけです。
  253. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 御説明を申し上げます。  法律に基づくものではございませんけれども、その方を国立大学なら国立大学の先生に招聘して、日本のこれは各大学だと思いますけれども、いろいろ条件の契約などいたしますときに、そういう契約の中に、こういう条件のものはこうということを書きまして、そしてそれが予算措置になってあらわれているわけでございます。
  254. 山本政弘

    山本(政)委員 これは総理府恩給局の「恩給百年」というのに出ていたものですから、ぼくは抜き書きしてきたんですが、「この外国人恩給というのは俗称で、その内容が恩給に類似しているのと、古くから恩給局の原薄に登録されている」こういうふうになっていますね。同時に「恩給局において恩給関係法規と慣例による審査に似たことをしているので」云々というふうに書いているわけですね。そしてそれには「明治二十一年、元内閣傭仏国人ボアソナード・フオンタラビーの年金」ということで「司法大臣山田顯義から内閣総理大臣黒田清隆にあてた「雇外國人へ年金贈與ノ儀上奏」」というふうに書かれておるわけです。これに従ってぼくはできておるんだとこう思うんですよね。そうしたら、いわゆる外国人恩給というのは、法規によらざるものじゃありませんか。そうしたら、なぜ同じような方法で、要するに土人であるオロッコの人たちに対してもそういう政策的な措置というものができないのだろうかということです。外国人だからやるのですか。そして土人であるからそれをやらないのですか。その辺をお聞かせください。
  255. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先ほど来御審議がございますように、土人であるとかいうことで出していないということではございませんで、日本の国籍を持たれている方でございますし、そういう外国人ということではございません。先ほど来お答えを申し上げておりますように、その身分が軍人さんではなくて軍の傭人であったということに着目をいたして、遺憾ながら出せないということでございます。
  256. 山本政弘

    山本(政)委員 だからあなたは、軍人であるかどうかという、要するに軍人と軍属との違いを力説されていると思うのですけれども、しかし、国籍を持たなければ軍人になれないわけでしょう。その点どうなんですか。
  257. 出原孝夫

    ○出原政府委員 戸籍法による戸籍を持っておられなかったので、その人たちにつきましては兵役法で対象にしていなかったということでございます。
  258. 山本政弘

    山本(政)委員 戸籍法による国籍の得喪というのですか、国籍を得るあるいは失うというのがたしか戸籍法の中にあると思いますけれども、ぼくはそれによっているのだと思いますよ。だけれども、戸籍法というものを適用されていないから軍人になれない、しかし現実には軍人と同じ訓練を受けて軍務に服されている、こういうことだけの違いじゃありませんか。やらなかったのは、日本の政府が戸籍に入れてやらなかったということだけじゃありませんか。
  259. 出原孝夫

    ○出原政府委員 北川さんが軍人になられるように兵役法による召集を受ける戸籍を持っておられなかったことは確かでございますが、北川さんのような形で軍に雇われた方にむきましては、国籍を持っておるおらないにかかわらず、同様な訓練を受けておっても、これは軍の傭人であったということについては同じでございます。
  260. 山本政弘

    山本(政)委員 冗談じゃありませんよ。私は冒頭に、だからお伺いしたでしょう。戸籍法と兵役法と、この二つでしょうと言ったら、あなたは肯定なさったじゃありませんか。そして、アイヌの人たちは昭和七年にはもうすでに戸籍を取得しているわけでしょう。アイヌの人たちは、司法省令第四十七号によって「樺太「アイヌ」人ノ定籍ニ關スル件左ノ通相定ム」として戸籍を得るようになっているのですよ。だけれども、それ以降オロッコとかギリヤークというような人たちにはこれが適用されてないのですよ。法律に適用されてなくて、軍人と同じような仕事をさせておいて、これは法律ではないから恩給の適用というものは受けられませんよというような、そんなばかなことはないでしょう。だから私は差別だと言っているのですよ。
  261. 出原孝夫

    ○出原政府委員 北川さんと同じような仕事をされたいわゆる諜報機関の要員として雇われた人は、国籍のあるないにかかわらず、軍人と同じような訓練を受け方々でも、これは傭人になっておるということでございますので、そういう意味で北川さんはもともと軍人になる立場ではなかったのでございますが、北川さんが雇われたと同じような立場の方で、要するに国籍を持っておられる方々におきましても、同様に軍人にはなっておられない、こういうことでございます。
  262. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ局長、お伺いしますけれども、ひとつその例を挙げてください。何のだれべえで、どこのどういう諜報機関に従事しておって、そしてどういうことであった、いつ申請があった、しかしそれはだめだったということを具体的に示してくださいよ。抽象的なことでは私は理解できません。
  263. 出原孝夫

    ○出原政府委員 戦時中に軍の諜報機関の中でそれぞれ使われておったことは事実でございます。そういう人たちが恩給をほしいという形で私どもの方に申請された例はございません。
  264. 山本政弘

    山本(政)委員 それはひとつ、例として後で御報告いただくとして、問題はあなたの言う傭人というのは、少なくとも私の知る限りでは、私もかつて軍務に服した者ですから、ここで言う軍の訓練とかそういう教育とかいうものは受けていないのです。しかし、少なくともここに書いてあるものに関する限りで言えば「軍人と同様の訓練をしたもので、兵役法の適用はなかった。」ということだけしか書いてないじゃありませんか。諜報機関の中で諜報機関の要員という人たちがすべてあなたのおっしゃるように、ことごとく訓練を受けたかというと、諜報訓練は受けたかもわかりませんが、しかしここでは、これに間違いがなければ「軍人と同様の訓練をした」とこう言っているわけですよ。私はその点を問題にしているわけです。そうしたら実質的には軍人と同じじゃないか、こう言っているのです。ただ戸籍法の適用があるかないかだけで峻別するのはおかしいじゃないか、こう言っているのです。
  265. 出原孝夫

    ○出原政府委員 諜報機関がその雇った人たちを訓練する形はいろいろな態様があったと思われます。したがいまして、この人たちの場合に多数の人を集めて初年兵を訓練するのと同じような訓練をしたということはあったようでございます。しかしこれはあくまで軍人としてではなしに、この人たちを諜報要員として働いていただくために訓練したというように理解をいたしております。
  266. 山本政弘

    山本(政)委員 どうもぼくがわからないのは、この人が戸籍を持っておったら恐らく軍人になったであろう、こう思うのです。幸か不幸か戸籍を持っておらなかったという現実の前に、この人は軍人と同じような訓練を受けながら、結果的には今日軍人として取り扱われていないという不幸があるじゃないかと言っているのです。わかりませんか、ぼくの申し上げているのが。だから、実質的に同じだったら同じような取り扱いをしてあげたらいかがですか、もしそれが法的にできないならば、政策的にやったらいかがでしょうか、行政的な措置でできませんか、できるはずじゃありませんか、それは文部省の中に教師の外国人の恩給という措置があるじゃありませんかと、私は助け舟を出しているのですよ。なぜそれが考えられないのですか。なぜかたくなに、それだけのことをあなた方は応じないのですか。私はそれが不思議でならぬのですよ。
  267. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 お答え申し上げます。  先生のおっしゃる意味もよくわかります。私も大変お気の毒だと思うことにおいては人後に落ちるものではございませんけれども、恐らく外国人恩給的なものというのは確かに一つの示唆ではございますけれども、この方の場合はもともと日本の国籍かあったと思われますので――外国人恩給という俗称でございますけれども、そういうものができたのはこれは古くからございますので私も十分につまびらかにいたしておりませんけれども、恐らく外国人には、先ほど申しましたように国籍を持たない者には恩給が行かないということでございます。しかし外国の方で日本の国立大学等の教師になられて長いこと教鞭をとられて功績のあったような方々に対して、そういう勤務に入る前にどういう給与を払うとかどういう勤務体系であるとか勤務時間であるとか、そういう契約をされて、そのときに恩給に類するようなものも長い間勤めた場合には差し上げるという契約になりまして、そういうことをもとにして行われたのだと思います。  そこで北川さんのお話に移るわけでございますけれども、北川さんの場合にそもそも軍人には召集できなかったではないかということが確かにあるのですけれども、実際に御勤務をされました形態のもの、あるいはその身分というものは、やはりこれは日本の国籍を持った人でもたくさんなっておりますような特務機関という仕事でございますので、そういう方々に対してももちろん問題はあるかもしれませんけれども、現行制度を考えます長い歴史の恩給制度の中では、そういう方々まで年功恩給を差し上げるということは大変制度のたえまえからむずかしいということでございますので、かたくなに拒否をするということではなくて、私も先生のいままで言われましたようなことにさらに思いをいたしまして勉強してみたいと思いますけれども、現在考えられますのは、やはり非常にむずかしいということでございます。
  268. 山本政弘

    山本(政)委員 恩給の受給者の人員というのは四十一年から四十二年ごろをピークとしていま少しずつ減っているのではありませんか、少なくとも統計的に見れば。そしてぼくは、特務機関でたくさんおりますというけれども、おびただしくたくさんじゃないと思うのですよ。そんなにたくさんおるはずはありませんよ。その中でセレクトしていけばかなり人間もしぼられてくるんじゃないでしょうか。そうすると、そういう人たちに対してでも、もちろん北川さんも含めて、私は何らかの措置というものをやる必要があるんじゃないだろうか。それは先ほど長官がおっしゃった従軍看護婦の問題がありますというのと同じ条件じゃないですか。私は恩給は余り詳しくはありません、援護法についても詳しくはありません。しかし、つまり普通の一般的な常識からはそういうことが言えるだろう、こう私は思うのですよ。それがなぜできないのでしょう。それが不思議でならないのですよ。そしてなぜ、つまり戸籍法とか兵役法とか、あるいは国籍法とかということにおこだわりになるんだろうか。いまは少なくとも同じ日本人じゃありませんか。そして、高砂族というかつて国籍をお持ちになった人が台湾に行ったそのケースに対して世論が同情したことに対して、外務委員会で当時の宮澤外務大臣は何らかの措置を講じなければならぬとはっきりお答えになっているわけですよ。内閣がかわれば方針が全部変わるのですか。総務長官内閣がかわればそういうことに対する方針は変わるのですか。
  269. 藤田正明

    藤田国務大臣 内閣がかわって方針が変わるということは決してございません。自由民主党の内閣でございますから一貫した方針のもとに継承をしていっております。  いまお聞きした問題につきましても、先ほど従軍看護婦さんの例を申し上げましたが、まことにお気の毒なことでございますので、検討さしていただきたいと思います。
  270. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃこのケースの場合も検討していただけませんでしょうか。
  271. 藤田正明

    藤田国務大臣 検討をさせていただきます。
  272. 山本政弘

    山本(政)委員 実はもう一つあります。  外国特殊法人の職員歴を有する人たちに対する要するに恩給の措置でありますが、これまで昭和三十六年、三十八年、四十三年、四十六年、四十八年と、満州国官吏の在職期間の加算、あるいは外国特殊法人の在職期間の加算、それから満州国官吏、外国特殊法人の満・日の差別をなくする、あるいは外国政府の職員としての在職月数に抑留期間を加えることを認める、あるいは外国特殊法人の在職期間の加算を認めるというようなことで、ずっと進展をしてまいりました。  きょう私がお伺いいたしたいのは、元華北交通の防衛局におった人が訴訟をやっているというふうに承っております。辻さんとかという方だそうでありますが、その方の言い分は、簡単に言えば、満鉄に十七年以上勤めておるにもかかわらず要するに恩給というものがついてない、しかし満・日とか日・満・日とかということで、短期間で要するに満鉄に勤めておる人たちがたとえば国鉄に勤めているというときには通算というものがある、それはおかしいじゃないか、簡単に言えばこういうことで訴訟をしている、こう思うのですよ。それについて、なぜ要するに満だけの分については十七年を超しても恩給受給の対象として認められないのか、その論拠をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  273. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 恩給というものの性格によると思いますが、恩給というのは日本の公務員のいろいろな先ほど申しましたような条件に合った方々に対して支給をする公務員の年金でございますので、いま先生の御指摘の方は、公務員をやめたときにもらえる年金でございますので、そういう経験が全くない方についてお出しをするというのは制度のたてまえからできないということでございます。
  274. 山本政弘

    山本(政)委員 つまり、満鉄は国鉄や電電公社のように国が本来行うべき仕事をやっているという、広い意味では私は国家的な仕事を昔やっていたと思うのですね。そして朝鮮鉄道についてもかつて七年半くらい満鉄はその業務を引き受けたことがあると思うのですけれども、局長のおっしゃるのは、狭い意味での行政機関ではない、こういうふうにおっしゃっているのだろうか、それとも官制に基づく行政機関ではないというふうにおっしゃっているのでしょうか、そのどちらでしょう。
  275. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 恩給というものの性格でございますけれども、日本の公務員を対象にする年金でございますので、南満洲鉄道株式会社に長く勤めた方といえども、それは恩給するという条件には合わないということでございます。
  276. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、満州国の官吏は日本国の公務員でしょうか。
  277. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 満州国の官吏は文字どおり満州国の官吏でございまして、日本の公務員ではないと思います。
  278. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、その人たちが日本の方のたとえば国鉄とか日本の政府に入ったときに、要するに満・日ということでなぜお認めになったのです。
  279. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先生十分御存じのように、これはずっといろいろないきさつがございます。一番典型的なものは昭和十八年にできた日・満・日という制度でございますけれども、日本の公務員がその上司の勧めといいますか慫慂によりまして満州国に出向して、そして一定年限の勤務を終わった後日本に帰ってきてまた再び公務員になって、そしてまた一定年限を勤めた、そういう条件に合った方については、やはり日本の国の慫慂といいますか、命令と言うと行き過ぎになるのかもしれませんけれども、そういう要請によってかの国に渡り、そしてまた帰ってきて日本の公務員になったから、満州国の公務員の期間を除算するのは非常に気の毒であるということで、たしか昭和十八年だったと思いますけれども、新しい制度ができたわけでございます。そういういきさつでございますので、日本の公務員をおやめになるときには、その期間は日本の公務員期間じゃないのだけれども、計算上は通算をいたしましょうということで、満州国の官吏イコール日本の官吏というふうに理解をしたのではないと思います。
  280. 山本政弘

    山本(政)委員 出向でなくて満州国に初めから勤務をした人で、日本に帰って日本の仮に政府に勤務をした人も、これは通算されますね。
  281. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 その問題も、大分たちましてからそういう制度が開けたわけでございますけれども、これは向こうの期間が長くおられて、終戦という特殊事情で日本に帰ってこられた方々が日本の公務員になった、その公務員の方々がおやめになる場合に、やはりそういう特殊事情があって帰ってこられた方々でございますし、それからまたその当時のいきさつといたしましてそういう方が非常に多数ございました。たとえば退職をいたしますにも、満州国で長くお勤めになったということのために日本の公務員期間の恩給年限までは勤められないというような事情等の人事管理上の要請もございまして、そういう通算制度が開かれたものだと思います。
  282. 山本政弘

    山本(政)委員 私は満・日のケースがけしからぬと言っているのではなくて、実は大変結構だと思うのです。要するに恩給に対する態度としては一つの前進であると私は思っているのです。それを評価をしているがゆえにあえてまた言っているわけなんですけれども、それじゃ、仮に満鉄に十七年なら十七年おって、それで日本の国鉄なら国鉄に一年勤務した、そしておやめになったというときには、これは通算されますね。そうすると、まるまる満鉄で働いた人たちは、要するに恩給の受給資格を得るに足る期間まるまるやれるわけですね。ところがそれ以上満鉄におった人が、仮に二十年勤めておっても、あなたのおっしゃるような理由によってそれをもらえないということになると、これはやはりちょっと一般的にはおかしいという感じを私は持つのですが、その点いかがでしょう。
  283. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 具体例を挙げてのお話でございますので、私も先生のおっしゃることがよくわかります。ただ恩給制度というのは百年の歴史を持っておりまして、日本の公務員が退職をしたときに出す年金でございますので、いま言われた帰ってきて一年そこそこというのは、これは余りそういう例はないんじゃないかと思いますけれども、しかしそういう具体例を挙げられれば、法的には可能であるということをお答えせざるを得ないのです。しかしそれにしても、その方は公務員をやめたときの年金でございますので、これがやはり恩給制度としては限度ではないかと思います。満州国政府なり満鉄なりで十何年やっていたのを恩給で見るというのは非常にむずかしい。しかしお気の毒な事情だということは私もよくわかります。
  284. 山本政弘

    山本(政)委員 昭和三十八年に当時の恩給局長の八巻淳之輔さんという方が、ちょうどいまあなたと同じことをおっしゃっているのです。私はくしくも同じだと思ってここに速記録を切り抜いて張ってきたのです。昭和三十八年、いま昭和五十二年です。この昭和三十八年という年は今日までのような、要するに恩給の上における前進は見ておらないわけです。主な改正は三十六年、三十八年、四十三年、四十六年、四十八年、こうなっているわけですね。三十八年の改正前の内閣委員会の議論の中で恩給局長が言われていることを、かつての八巻さんが同じ恩給局長としてやっておられるのです。しかし事態は一体その後どうなったかということなんです。これは私は申し上げる必要はないと思いますけれども、その後何回かの改正があって、現在ではいま申し上げたように外国の特殊法人の場合もまるまる通算されるようになってきているわけですね。つまり政府の言う恩給法のたてまえという意味での技術的な限界というものはすでに越えられているのじゃないでしょうか。それで現にそのことを言っているのですよ。だとすれば、私はそういう点ではやはり御一考があってしかるべきだろう、こう思うし、戦前と戦後では恩給法の運用が変わってきているということも言えるだろうと思うのです。つまり恩給にかわって共済組合法が制定をされた。なぜそういう制定をされたかという趣旨というものは私は考えていいだろうと思うし、だから戦後の新しい恩給法の運用については、従来からの制度の引き続きというよりか、むしろ老齢者とか遺族とか、あるいは労働力を喪失した人あるいは減退した人、そういう人たちに対する、ある意味では社会保障的な性格を帯びたものとなっているというふうに考えていいだろうとぼくは思うのです。だとするならば、つまりこれも数の問題になるのかもわかりませんが、戦後三十年たって、そういう人たちはすでに七十を超えている人たちがほとんどであります。平均余命というようなことを言うのははなはだ失礼かもわかりませんが、そう長い老後の人生じゃないだろうとぼくは思うのです。とすれば、気持ちとしては私は、訴訟を起こした人たちの気持ちも十分にわかる。ですからそういう意味で、条件緩和が日・満・日、満・日というふうに変わってきたわけですから、もう一歩進めてみて、そういう人たちを救済するというようなことがひとつ考えられないだろうかどうだろうか。そして、私が申し上げたことは、その後の内閣委員会でやはり恩給局長がお答えになっておるのです。この制度の出発に当たりましては、遺族、重傷病者、老齢者に重点を置いて、必ずしも前の制度というものを生かしておるのじゃない、こうおっしゃっているわけですから、その点についてひとつ前向きの対策をおとりになるお考えはないだろうかどうだろうか、この点ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  285. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 確かに先生指摘のとおり、戦後の恩給制度は社会保障的な意味も含めていろいろな点で変わっております。外国政府のケースにつきましては、これも先生が三十八年以降のことをずっと言われましたのはそのとおりでございまして、いろいろな意味で措置を広げているわけでございますけれども、たとえば老齢者を優遇するとか、加算を復活するとか、あるいはベースアップをどうするとか、そういう問題は、これはもう恩給制度という土俵の枠内の問題であって、いわば技術的な問題であるかもしれませんが、その公務員の範囲あるいは通算ということになりますと、これは恩給制度の基本と申しますか根底と申しますか、そういうものに触れるわけでございまして、外国政府の場合にも、昭和三十六年に外国政府の職員を通算いたしまして以来種々の進展が見られましたけれども、これは先ほど申しましたように、最後に日本の公務員がやめた場合に日本の公務員に恩給を出す場合の在職年の数え方を、かつてのいろいろな事情を含めてカウントする部分があるということでございます。日本の公務員でおやめになられた方ではない方がそれに似たような勤務がありましても、一日も日本の公務員期間を持たない方にいまの恩給制度恩給を出すということは、これはやはり恩給の制度の枠の中ではむずかしい問題ではないか。したがって、種々改善をしてまいりましたけれども、いま先生が具体的に挙げられた満鉄で十七年以上勤務されたような方等々は、これはその方々がお気の毒じゃないとか、こちらとのバランス上問題にならないということではなくて、恩給という枠内では非常に処理しがたい問題であるというふうに考えます。  ただ、先生が御指摘のようにいろいろな御意見がございますので、恩給としてやれるか、あるいは恩給周辺の問題としてやれるか、あるいはもう少し離れた制度でやれるか、そこいら辺は、恩給並びに恩給周辺の問題としては私たち恩給局の立場からも考えますし、そういう意味だけではございませんけれども、先ほど大臣から答弁を申し上げました日赤の看護婦さんの場合もまさに同じポイントが一つあるわけでございまして、そういう意味ではそういうものの調査費などの要求もことしはいたしておりまして、広い意味で範囲問題、通算問題というものを、先生の御指摘のありましたものも含めて勉強させていただきたいと思います。
  286. 山本政弘

    山本(政)委員 もう一つだけお伺いしたいのですが、昭和三十六年とか三十八年の法改正というものが、たとえば外国の政府の職員とかあるいは満鉄その他の外国の特殊法人の職員を、恩給法上の公務員として認めようとしておるのかおらないのか、その点だけちょっと聞かせてもらえないでしょうか。
  287. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 それは、恩給法上の公務員というふうには考えておりません。ただその期間は、いま言いましたようないろいろな事情で、そういう期間を持った日本の公務員の方が御退職になるときにその期間を通算をする、期間として計算をする場合に通算をするということでございまして、それを全く同視しているという意味ではないわけでございます。
  288. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、恩給法上考慮をするということなんですね。恩給法上考慮をしていきたいということだということですね。
  289. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 その前の御質問が、普通恩給法上の公務員と見ているのかということでございますので、それは恩給法上の公務員期間とは見ていない、恩給法上の公務員期間といいますか、その満州国の公務員と日本の公務員が即イコールであるというふうには見ていないというお答えを申し上げたわけでございます。さらに検討していこうということは、そういう形で検討できるのかどうかわかりませんが、いまのところ全く雲をつかむような話でございますけれども、広い意味で日赤看護婦さんの問題等があります場合の共通点等もございますので、恩給の問題か恩給周辺の問題か、さらにもう少し離れた問題かわかりませんけれども、私たちは私たちの守備範囲において勉強させていただきたいと思います。
  290. 山本政弘

    山本(政)委員 極端に言えば、外国の特殊法人に十七年間勤めて、そうして日本の政府に一日勤めた、翌日何かの交通事故で死んだ、こういうような場合でもこれは通算になるのですね。そうすると、極端なケースですよ、一日ということがまさに問題になってくるようなことも理論としては言えるわけですね。そうすると、そういう意味では満鉄の人たちも一般的に通算をされれば、要するに適用されるような期間を勤めたにもかかわらずその適用を、あるいはあなたのおっしゃる周辺でも、何ら受けていないということについては納得のいかないものを感ずるのではないかと思うのです。したがって、いつかわかりませんからという、たしかそういうお言葉があったと思いますが、これはひとつできるだけ早く、それから従軍看護婦も同じだろうし、それからさっき申し上げた老人というのですか、そういう人たちのこともぜひひとつお考えいただいて、できるだけ早い期間にそういうことの目安をつけていただきたいということをお願いします。どうでしょうか、長官
  291. 藤田正明

    藤田国務大臣 五十二年度にはそのために調査費もついていることでございますから、おっしゃるようにできるだけ早くその辺の研究はいたしたいと思います。
  292. 山本政弘

    山本(政)委員 ありがとうございました。終わります。
  293. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次回は、来る十二日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十四分散会      ――――◇―――――