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1976-10-27 第78回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十七日(水曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 大竹 太郎君    理事 小島 徹三君 理事 小平 久雄君    理事 田中  覚君 理事 保岡 興治君    理事 稲葉 誠一君 理事 吉田 法晴君    理事 諫山  博君       片岡 清一君    古屋  亨君       松永  光君  早稻田柳右エ門君       正森 成二君    沖本 泰幸君       山田 太郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君  出席政府委員         法務大臣官房長 藤島  昭君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 石原 一彦君  委員外出席者         警察庁長官官房         総務課長    鈴木 善晴君         法務省刑事局公         安課長     石山  陽君         文化庁文化部宗         務課長     石井 久夫君         最高裁判所事務         総長      寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局人事局長  勝見 嘉美君         最高裁判所事務         総局刑事局長  岡垣  勲君         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ————————————— 委員の異動 十月二十七日  辞任         補欠選任   田中伊三次君     松永  光君   千葉 三郎君     古屋  亨君   松浦周太郎君     片岡 清一君   青柳 盛雄君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     松浦周太郎君   古屋  亨君     千葉 三郎君   松永  光君     田中伊三次君   正森 成二君     青柳 盛雄君     ————————————— 十月二十六日  戸籍簿の出生及び死亡場所登録事務改善に関  する請願田中榮一紹介)(第九一五号)  明治五年式戸籍戸籍事務是正に関する請願(  田中榮一紹介)(第九一六号)  戸籍永世保存制度確立に関する請願田中榮一  君紹介)(第九一七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関  する件      ————◇—————
  2. 大竹太郎

    大竹委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所寺田事務総長勝見人事局長岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹太郎

    大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 大竹太郎

    大竹委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 最高裁当局お尋ねをするわけですが、きのう鬼頭判事補のいろんな問題については細かく聞きましたものですから、足りないところを補充するという形で聞くものですからそう長い間聞かないつもりですが、一体この鬼頭判事補という人はいまどこにいるのですか。その辺がわからないのですがね。最高裁判所としては本人がどこにいるというふうにつかんでいるのですか。
  6. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 鬼頭判事補所在につきましては、この事件が報道されて以来、彼本人の述べるところによりますと、プレスの各社にいわば追いかけられているのでなかなか大変であるということでございましたが、現職裁判官でございますので、私どもから、京都地裁所長に対しまして、本人から常に所長に対して所在を明らかにするようにというふうに申し伝えております。ですから、いま現在どこにおりますか、私自身、いわば所長電話すればわかるということになりますが、そのように所在を明らかにするように指示してございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どちらでもいいですけれども所在について、最高裁としては東京にまだずっとおれということを指示したのですか。
  8. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 昨日申し上げましたように、月曜日に事情聴取を行いまして、その際に東京におれという指示はもちろんしておりません。その日に帰ったはずでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何か、名古屋にもおらないという話もあるし、きょう朝九時ですか、都内某所証人召喚状を送達しに行っているらしいですね、仄聞するところですけれども。まあどちらでもいいですけれどもね。  そこで、最高裁としてはいまどこにいるかわからないのですか。
  10. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 先ほどこちらに参上いたす際に、確認はいたしておりませんが、ただいま稲葉委員指摘のようなことで、ちょっと場所を確認しておりませんが、召喚状の送達を受けたかどうか、それもまだ確認しておりませんが、そのような話を聞いてまいりました。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、きのうも質問した中で、この鬼頭判事補が外国へ出張しているのが出ていましたね。二回ですか、ドイツへ一回とか、ドイツとアメリカへ一回とか。これはどういう目的でいつからいつまでというちゃんとした——この当時どこの裁判所にいたのか、所長限りで行けるのか、あるいは最高裁まで海外出張の場合に許可を得るのか、私はよくわかりませんが、そこら辺のところは一体どういうふうになって、どういう目的で行ったわけですか。
  12. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 私どもといたしましては、裁判官海外に旅行する際には、当然のことでございますが、許可を得て出ていっていただいております。  鬼頭判事補につきまして私ども許可した海外渡航は二件ございまして、八王子支部におりました際に、四十九年の十二月二十九日から五十年の一月四日、渡航先西ドイツ渡航目的親族面会、知人の病気見舞い、それから、京都に移りましたことし七月二十三日から八月九日までの間に、渡航先西ドイツ、アメリカ合衆国、渡航目的個人的研究専攻テーマに関する調査文献の収集、こういうことで許可が出ております。  それで、許可手続は、所長から高裁を通じまして最高裁一括許可をしております。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 夏休みですから、これは裁判官だから夏休み中二十日間の休暇があるわけですから、それは休暇をとってどこへ行ってもいいのですが、この個人的研究、それから何とかのテーマ文献を収集するとか、これは何を言っているのですか。そういう点については最高裁としてももちろん調べられたわけでしょう。個人的研究というのは一体何の研究ですか。どういう文献を集めるということですか。
  14. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 一般に、裁判官の場合を含めまして、職員の海外渡航につきまして、御指摘のように目的を書いてもらって、一応その目的を見て、それに加えて、当然のことですが仕事の関係等を見まして、所長意見を付して上申をしてもらっているわけでございます。何せ、いわばプライベートなことでございますので、地元の所長がどの程度いわば審査といいますかということになりますと、その限界というのはなかなかむずかしいかと存じますが、本件につきまして、その目的について詳細に本人に伺って意見を上申してきたことはございません。  それから、この際申し上げておきますが、問題の電話のあった日が……
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは後から聞くよ。問題の電話のあった日のことをこれから聞くのですけれども答えてもらってもいいのですが、そうすると、七月二十三日から八月九日まで、これについてどういう目的で行ったかということは、これは最高裁としても本人から聞いたわけでしょう。個人的研究というのは結構なことですけれども文献を集めることも悪いことではありませんから、それはいいのですが、どういうことで、どういう個人的な研究なのか、どういう文献を集めるのかということについて、最高裁としても本人から事情聴取の中でお聞きになったでしょう。
  16. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 渡航申請が出てまいりました時点で、最高裁として、鬼頭判事補本人についてお聞きしたわけではございません。このたびの事情聴取に当たりまして、先ほど御指摘がありましたように、いわゆるにせ電話がかかった日がその許可期間内に入っておりますので、いわば日本国内にいたのかどうかということを前提といたしまして尋ねたわけでございます。それに対する答えといたしましては、八月四日が事件のあった日とされておりますが、その前四日間ほど香港に行っておった、目的は観光であるということでございました。鬼頭判事補の述べるところによりますと、その日の昼過ぎに京都官舎に帰りまして、疲れておったのでその晩はぐっすり寝込んだ、こういうような答えであったわけでございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、八月四日の、よくわかりませんが、何時ごろ香港からどこへ帰ってきたと言うのか。大阪ですか。飛行機で帰ってきたのでしょうから大阪へ帰ってきて、それから京都へ行ったと言うのですか。それで何時ごろに京都の宿舎に帰ったのか。何時のフライトで帰ってきて、どうだったということまで、それは犯罪捜査でないから余り細かいことまで聞くのはあれかと思いますが、その辺のところまでは調べられておったのでしょう。
  18. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 事情聴取の際は時間を確定できませんでしたので、やはり調査すべきであるということで、現在調査中でございます。本人の述べるところによりますと、香港からはキャセイ臨時便大阪空港に着いたということでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、八月九日までの出張がありましたね。それで、よくわかりませんが、香港へ観光したというのはいつごろのことを言っているわけですか。それが一つと、なぜ八月四日に帰ってきちゃったのですか。その八月四日に帰ってきたということを京都地裁なら地裁へ報告してあるんですか。
  20. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 詳しい事情までは確知しておりません。それから、四日に帰ってきたことを京都地裁所長に届け出たかどうかは、まだ確認しておりません。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 詳しい事情はあれかもわかりませんけれども、だから問題は、八月四日の夜に本人日本にいたかどうかということでしょう。そうすると、八月四日の夜に本人日本にいたということは間違いないわけですね。ぐっすり寝たかどうかは別として、いたことは間違いない、こういうわけですね。
  22. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 仰せのとおりでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 なぜ八月九日までのを繰り上げて八月四日に帰ってきたのですか。そこら辺のところはまだ調べがついていない、こういうわけですか。ついていなければ、今後あなた方の方で調べていただければいいと思いますが……。
  24. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 そのようにいたしたいと思っております。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの話を聞きますと、何か最高裁調べが、不十分という意味ではなくて、まだ大分余地が残っているように思うのですよ。これはまだ問題のポイントがよくわからなかったのかどうかわかりませんが、何かちょっと問題のポイントが残っているように思うので、これからさらにいろいろな調査最高裁自身としてもするのが本筋だと思うわけです。  そこで、もう一つ別のことを聞くのですが、香港からキャセイ飛行機大阪空港へ着いたというそのキャセイの便、乗客名簿調べればすぐわかりますね。何時に大阪へ着いたのですか。それはわかりませんか。
  26. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 キャセイ臨時便があったかどうか、その臨時便大阪空港に着いたかどうか、何時に着いたかどうか、まだ未確認でございます。しかし、調査中でございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 まあそれは、検察庁がやっていることなら、検察庁は本職だからぼくももっともりと厳しく言うのですが、最高裁はそういう捜査機関じゃないからこれ以上言いませんけれども、ここら辺のところは一番大きな問題じゃないんですか。一番ポイントになってくるのじゃないかと思うのですがね。どうしてそこまで調べなかったのかなと思いますが、それは今後調べてください。  そこで、この前の、よくわからなかったのですが、毎日新聞記者にホテル・ニューオータニで記者会見をしておりますね。その中でいろいろな問題が、答えが出てくるんですが、「TとNでは、Tについてだ。」「Tとは何か。」「田中角榮のことだ。三木さんは、あの電話の中で「田中をぜひ起訴せよ」と指示している。しかも、その後で話したことは内密にしよう、とも話している。」というふうなことを言っているのですね。そういうことを言ったかどうかということについて、これは本人に聞きましたか。
  28. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 昨日の当委員会におきまして、二十五日の毎日の朝刊の記事一つ一つにつきましてお尋ねをいただいたわけでございますが、きのうのお答えが大変説明不十分で申しわけございませんでした。  改めて申し上げますと、きのうも申し上げましたように、その記事につきまして当然鬼頭判事補に対して聞いたわけでございます。それに対する答えは、結局結論のところ、きのうは否定もしない、肯定もしないというようなことで申し上げたと思いますが、鬼頭判事補の私どもに対する基本的なそのときの言い方は、これは毎日新聞とのいわば単独記者会見で、かつ、それはお互いオフレコだということであったので、現にその新聞記事にもちょっと書いてございますが、オフレコだ、全部についてと書いてございませんが、そういうことであったので、最高裁事情聴取に対しては、それぞれの各個の事実についていわばコメントする立場にないといいますか、コメントしない、こういうような言い方であったわけでございます。したがいまして、私どもの方といたしましては、結局確認できなかったといいますか、きのうも申し上げましたように、否定肯定もしないような形だったものでございますので、はなはだ不明確な答弁になって申しわけなく存じております。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 はなはだ不明確な答弁といっても、それは不明確な答弁というよりも、しゃべる方の人が不明確なことを言っているから、あなたが言っているのではないですよ、鬼頭判事補が不明確なことを言っているから、あなたの答弁も不明確になってくるのじゃないんですか。ぼくよくわかりませんけれども、この方どういう方かぼくも知りませんから、わからぬけれども、各新聞なんかにいろいろな話が出ていますね。あなたの方では、これはちょっと聞きづらいことだし、言いづらいことかもわからぬけれども、どういう方なんでしょうね、この方。ちょっと変な質問だけれども、これはどういう方なんですか。
  30. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 この段階で、私が鬼頭判事補人物評をこの席上でどうだということをお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。しかし、私、一応事情聴取に当たりまして、初めてさしで対話をしたわけでございますが、確かに非常に変わった方であるという印象だけは言えると思いますが、その余の具体的なことについてはひとつ遠慮させていただきたいと思います。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それだけのことを言うのもあなたの方としてぎりぎりだろうと思いますから、これはこれ以上ぼくも聞きません。  そうすると、この記事に出ている言葉は一々聞いたことは聞いたのですか。こういうことがある。「あの話は本当のところ、三木さんと私しか知らないんだ。」こういう話も、きのうもぼくはずいぶんしつこく聞きましたよね。聞いたことは聞いたんだけれども、結局オフレコだから、それについてはノーコメントだ、結論的にはそういうことですか。それから、「私のほかに、電話をかけた人と、私に対するあっせん者がいる。」こういうことも言っていますが、「ニセ電話をかけたのは軽犯罪法違反だが、法的に現総理が前総理を殺そうと考えている方が……」、これは何だかはっきりしないな。そういうようなこともまあ聞いたことは聞いた。非常にこう何といいますか珍しいことですから、聞いたことは聞いたけれども答えとしてはどういうことでしたっけ。
  32. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 昨日も申し上げましたように、二十五日の毎日の記事は非常に重要なことが記載されております。その点をもちろん聞いたわけでございますが、結論的には、毎日との間ではオフレコであったはずなので、最高裁事情聴取に対しては、これらの発言の内容についてはコメントしない、コメントする立場にないというようなことが、私どもがここで述べる結論でございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは本当にオフレコだったのですか。そこまで聞いては悪いかな。
  34. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 その点は私ども確知しておりません。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから分限の場合、裁判官分限というのは、これはどういう場合にやられるので、処分的にはどういうふうになるのですか。たしか一万円以下の過料とかなんとかありましたね。どういう程度のもの、どういうときにかかって、どういうふうなものですか。
  36. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 裁判官身分に関しては非常に特殊な制度がとられておりまして、いわゆる一般公務員懲戒免に当たる場合はいわばないわけでございまして、弾劾裁判所による罷免というのがこれに当たるわけでございます。一般公務員の場合は、懲戒免はいわば任命権者がその免権者でもあるわけですが、裁判官の場合には、御承知のように内閣が任命権を持っております。一方、一般公務員懲戒免に当たる場合は、弾劾裁判所による罷免弾劾裁判所は御承知のように国会の方にあるという形で、裁判官の場合はいわば任命権者懲戒免権者が全然違う機関になるわけでございまして、その辺が裁判官身分の保障、その裏の問題という形で立法されていると思われます。したがいまして、その点の、私から申し上げるのは失礼でございますけれども、御認識をいただきたいというふうに思うわけでございます。  なお、懲戒としては、先はど御指摘のとおり戒告過料しかございません。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、戒告過料で済む——もう訴追も出ていますしね。戒告過料過料というのは過ち料ですね、これで済む案件ではない、こういうふうに最高裁としてはお考えになっているのですか。
  38. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 こんなことまで発言を差し控えさせていただくのは大変恐縮でございますが、現在調査中でございますし、最高裁判所でどう考えているかという点についてはひとつ御遠慮させていただきたいと思います。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 現在調査中、それはいいのですが、そうすると、今後はどういう点を主に調査をするわけですか。これがまず一点。  それから、いつごろまでにその大体の調査が終わるのか、こういうことですね。そこら辺のところの見通しはどういうことですか。
  40. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 鬼頭判事補につきまして御承知二つ事件がございますので、二つ事件それぞれについて、私どものできる限りの範囲内でまだ調べ残しが大分あろうかと存じます。きのうも参議院法務委員会お尋ねがございまして述べたわけでございますが、にせ電話事件関係では読売新聞社が相当重要な地位におられるわけでございますので、昨日午前十一時半に、いわば委員会委員長であります矢口事務次長読売新聞社に参りまして、編集局次長それから社会部長を訪ねまして、調査につき協力を要請いたしたわけでございます。これに対して読売新聞社側からは、報道機関としての限界はあるが、できる限り協力するというお答えをいただいたようでございます。  それから、その他まだもろもろの、先ほどの飛行機の問題とかいろいろあろうかと思います。あと、電話を仮に京都官舎からかけたとすれば、その京都官舎電話料調べて果たしてわかるかどうかという問題もございますが、できるだけのことはいたしたいというふうに存じております。  それから、いつまで調査がかかるかというお尋ねでございますが、もちろんなるべく早く調査を終了いたしたいというふうに考えておりまして、確定的にいつ幾日というふうなことを考えておるわけではございません。なるべく早くやりたいと思っております。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 このテープですね。これはだれかが廃棄したとか本人は言っているようですね。これはあるんじゃないですか。どうもそういうふうな感じを受けるのです。どこかにあるのじゃない、どこにあるのか知らぬけれども。そこら辺のところは捜す必要があるね。ぼくはどうもあるような感じがします。しかし、これは感じだから、これ以上どうだと言われても困るけれどもテープはどこかにあるような感じがしますね。どうですか、やはりあなたの方としてはこれを捜すのでしょう。
  42. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 まさにテープ存在そのものが問題でございまして、現在どこかにあるかないか、どうだというお尋ねでございますが、現在私どもといたしまして、テープの存否については何とも申し上げかねる段階でございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから、国会証人喚問が衆参決まったですね。これに対して最高裁としてはどういう態度をとっておられるのですか。司法権の独立との関係、いろいろあると思いますが、現職裁判官国会証人として喚問されたことはいままでない。これが初めてでしょう。それについて最高裁としてはどういうふうに理解しておられるわけですか。
  44. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 すでにけさの新聞に報道されておりますように、最高裁判所といたしましては、絶対的に拒否することもできないのではないか。ただ、希望としては、現在調査中であるということを一応意見として申し上げるということになるのではないかということを、昨日の最初にお話がありました、ちょっと不正確かもしれませんが、参議院ロッキード特別委員会でございましょうか、その方に申し上げてございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 最高裁刑事局長にちょっとお尋ねしたいのです。これは検察審査会法なので法務省の方がいいかもわからないのですが、検察審査会法の二条に「公訴を提起しない処分」というのがありますね。これの理解の仕方です。たとえば立件して不起訴処分とした場合と、それから立件しない場合だけれども事実上不起訴——これは大臣、あなたの中間報告言い方は不正確ですよ。あなたの方は、立件しないものを不起訴と言っていますからね。言ったでしょう。それが正しいのかどうかわかりません、後でロッキード委員会で聞きますけれども……。そうすると、この審査会法の「公訴を提起しない」という中に、いわゆるなぜ「公訴を提起しない処分」とまで書かれたかということがまず第一点です。  それから、立件をするしないというのは検察庁の自由らしいのだが、立件をしないのだけれども事実上不起訴みたいになっているわけだね、たとえば時効完成だとかいうような場合など。そういう場合に、検察審査会法のいわゆる「公訴を提起しない処分」に該当するのかしないのか。これはいま弁護士や何かから出ていますね。出ているから、それでその法律解釈を、本当は法務省に聞いた方がよかったかもわかりませんが、検察審査会裁判所の管轄ですから、最高裁の方にお聞きするわけです。
  46. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  最初の問題でございますが、検察審査会法の第二条の「検察審査会は、左の事項を掌る。」という中に「検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項」とありますが、この「公訴を提起しない処分」というのは、私の考えるところでは、刑事訴訟法の二百四十八条に、たとえば「起訴便宜主義」というところで「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状」云々というので「公訴を提起しないことができる。」こういう文言がございます。ですから、これと平仄は合っているわけだと存じます。もっとも「公訴を提起しない処分」という中には、ここに書いてある起訴便宜主義で、嫌疑はあるけれども公訴を提起しないという起訴猶予の場合だけではなくて、犯罪の証明が十分でないとか、あるいはもうはっきりと犯罪が成立しないとか、心神喪失、いろいろな場合があると存じますけれども、そういうことでこれがあるというふうに思います。  それから、その次の第二点目の、一体立件しているか立件していないかということがどういう関係を持つかということでございますけれども、これは私どもお答えするよりは検察庁関係の方がよろしいと思いますが、私としては、内部的に検察庁なりでどういうふうなお取り扱いをしておられるかという、内部規定上どういう名前で立件しておられるか立件しておられないかということが決めてあるということと、それから外から、検察審査会立場から見て、これは公訴を提起しない処分だというふうに考える範囲とは必ずしも一致するものではなかろうというふうには考えておりますけれども、しかし本来は一致するものだとは思います。  以上でございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何だか後の方がわかったようなわからないような感じなんですけれどもね、余りむずかし過ぎて。  そうすると、これは、法務省刑事局長を呼んでいたはずなんだけれども——呼んでいなかった。いや、ぼくも忘れてしまったけれども、呼んでない。じゃ大臣でもいいや、大臣の方が専門家だから。じゃ、それは後でロッキードの委員会で、三時からのやつで……。研究しておいてください。  そうすると、内部での検察庁の基準がありますわね。ぼくが考えるのは、検察庁で本来立件すべきものでも立件しないで落としちゃったときには、その検事の処分に対して全然検察審査会で対象にならなくなってくるというのはおかしいではないか、こういうことなんです。そこの疑問なんですよ。本件のいわゆる灰色高官、本件というか、ロッキードの問題の灰色高官という問題については、法務大臣は、不起訴だ、こう言っているのですけれども、これは中間報告のときに、言葉の言い方がちょっとぼくはラフだなと思って聞いていたのですが、立件しなかった、こう言うのですね。そういうわけでしたね、それは。それに対しては、全然検察審査会に対する道が開かれないというのでもないのですね。検察審査会の判断によっては検察審査会にかかることもある、こういうふうに承ってよろしいでしょうか。
  48. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 先ほどから申し上げましたとおりに、内部の手続で、検察庁の方でどういうふうに立件してどういうふうにどうなっていてどれをどう不起訴と呼ぶ、そういう問題と、それから検察審査会法に書いてある「公訴を提起しない処分」という場合がどういう場合に当たるかということは、本来は原則的には一致するものだとは思いますけれども、場合によってはそうでない場合もあり得るであろうというふうに考えます。  ただ、これがロッキード事件に関連してということになりますと、検察審査会は独立の機関でありますし、私どもとして、それは検察審査会が独自の見解でお決めになることであり、それに影響を及ぼすようなことは差し控えたいと思いますので、これ以上はちょっと御説明を差し控えさせていただきます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのあれ、最高裁側の答弁がありましたから、いまここで法務大臣としてお答えになりますか、あるいはロッキードの委員会お答えになりますか、どっちでも自由で、どちらでも構いません。
  50. 稻葉修

    稲葉国務大臣 午後にロッキード問題調査特別委員会が開かれることになっておりますから、その席上お答えを申し上げることにいたします。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 じゃ最高裁側、結構です。  全然別の問題になってくるのですが、民事局長にお尋ねするので、前へ出てくださいよ。  民法の身分法の改正が現在どういうふうに進んでいるか。たしか六項目ですかね。五項目か六項目があって、アンケ−トをとってやっているわけですが、その中で、たとえばぼくもよくわからないのですが、夫婦財産制の問題、それと妻の相続分の問題とか、そういうような問題ですね、一応どういうふうに進んでおって、法務省当局としてはどういうふうに考えておるのかということをまずお答え願いましょうか。ちょっと質問が荒っぽいかもわかりませんが。
  52. 香川保一

    ○香川政府委員 昨年の八月に身分法小委員会でのそれまでの審議の結果をまとめたものを中間報告という形で公表いたしまして、各方面に意見を照会したわけでございます。その意見が集まる間、御承知のこの前の国会に提案いたしました離婚復氏等の問題を小委員会で検討していただきまして、ことしの春五月ごろから中間報告に取り上げて、問題についていかように審議を進めるかということを小委員会で議論していただきまして、結局のところ急ぐのが相続関係であろうということで、いま御指摘の夫婦財産制の問題、それから相続人相続分の問題、それから寄与分の問題、この三つの柱を中心に早急に審議をしよう。大体最初に取り上げて審議するのは相続人相続分の関係から審議しようというふうな動きでございます。  他方、外国の立法例の調査をやることになりまして、イギリス、フランス、西ドイツ、アメリカ四カ国の相続関係の立法例を調査いたしまして、それを小委員会に御報告して、今後の審議の参考にしよう、ここまで参っておるわけでございます。  大体問題は、三つの柱と申しましてもそれぞれ非常に関連することでございますので、いろいろの意見が出ておりまして、小委員会は大体一月半に一回ぐらいの割合で今日まで開かれておるわけでありますが、準備を少しテンポを早めて、できるだけ回数を多く集中的に審議していただこうということで、いま小委員会の方にお願いしているところでございます。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 寄与分というのは、それは具体的にはどういうことを言うのであって、どういう点をどういうふうに改正をしようというのか、そこら辺のところはどういうふうになっているのですか。
  54. 香川保一

    ○香川政府委員 たとえば農家で考えますと、長男が両親と一緒に農業に精進いたしまして、したがってその財産の帰属は、両親といいますか父親なら父親に帰属するわけでございますけれども、その父親が亡くなりました場合の遺産について、長男の寄与が非常に大きいというふうな場合があるわけでございます。そのときに、現行の相続法では、配偶者が三分の一、残りを子供が相続する、こうなっておるわけでありますが、その場合の子供相続分というのが平等でございますので、これではやはり実質的に不平等じゃないかというふうなことが考えられるわけでございまして、そういう場合に、相続財産の形成に特別の寄与があった者について、それ相当のいわば取り分を多くすると申しますか、そういう制度が考えられておるわけでございます。これはやはり相続関係のいわば形式的な配分だけでは済まされない、実質的な相続関係というものを形成するためにはやはり必要な制度ではなかろうかと私ども考えておるわけでございますが、この制度を取り入れるといたしますと、やはり現行の制度の中では家庭裁判所においてその審判をしていただくという形をとらざるを得ないわけでございます。しかし、これはなかなかいろいろのそういった調査等も必要になってまいりますので、現在の家庭裁判所の機能のもとでうまくいくかどうかという点が一つ検討しなければならぬことでございまして、そういうものも含めまして、ぜひとも寄与分の制度を取り入れてみてはどうかと私どもは考えております。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのは、しかし問題としてなかなかむずかしいですね。これは憲法違反の問題出てこない。どうなのこれは。問題によっては、どうなのかな。ちょっといまの質問は質問だけにしておいて、答えはいいです。  それから相続の場合、いまの判例などでも、たとえば家を借りている、賃借りしている、夫婦で住んでいて、営業をやっている、そういう場合に、実際に相続を開始したという場合に、それは占有をしている配偶者だけに相続が現実には移るというふうな判例がたしかあったように思うのです。あるいはそうではなくて、そこにいない人たちについても賃借り権、あるいは借地権の場合もありますが、その問題の相続ということもあるわけですが、そこら辺のところはいろいろな問題が起きてくるところですね。その辺をどういうふうに解決しようとしておるわけですか。
  56. 香川保一

    ○香川政府委員 現行の相続法では、たとえば父の借家権が、父が死亡いたしました場合には、そこに住んでいようといまいと、配偶者が三分の一、子供が合わせて三分の二というふうに相続することになるわけでございます。ただ、実際問題といたしまして、たとえば次男がほかに住んでおるというふうなときに、次男が、そこの父親が住んでおった、つまり母親あるいは長男が住んでいる家の借家権を承継する必要もないわけでございますから、そういう場合にはほとんど全部と言っていいと思いますが、いわば遺産分割の協議がなされまして、そして現にその家に住むことを必要とする者にその遺産を集中させるというふうな、遺産分割の協議の制度を活用して合理的な決着をつけておるということではなかろうかと思うのであります。したがいまして、たとえば妻の居住権というふうなものを相続法の分野において保護しようというときには、いま申しましたような遺産分割が合理的に行われる限りは心配ないのでございますけれども、やはり相続関係となりますといろいろの問題でトラブルが生ずることもあり得るわけでございます。そういうことから、配偶者の相続権、特に居住権の保護を考えますと、そういった特別な居住権の保護の配慮をやはり立法的にする必要があるのではないかというふうなことを考えておりまして、イギリスの相続法ではその辺がうまくいっているようでございますので、それらを参考にして検討したい、こう考えているわけでございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから相続分の問題ですね。いまは、普通は配偶者が三分の一、子供が三分の二、これが普通の状態ですが、これは日本のように社会保障が不備な場合には、その配偶者、普通は妻ですが、その相続分をある年限——これまたむずかしいところで、ある年限というのは、一緒に結婚してから何年で線を引いたらどうかというようなこともなかなかむずかしいところかと思うのです。たとえば二十年なら二十年ぐらい一緒に住んでいる場合で、子供はみんな独立しちゃっている、こういうふうな場合には、配偶者の相続分を引き上げるというふうなことも将来の問題として考えられないでしょうか。その点はどうでしょうか。
  58. 香川保一

    ○香川政府委員 お説のとおり、現行法のように単純にその三分の一というふうなことだけでは、いろいろのケースの場合に必ずしも適当でないということは考えられるわけでございまして、したがって、その三分の一を、たとえば配偶者の相続分を厚くするということで単純に二分の一に引き上げましても、やはり問題は残るわけでございまして、いまお説のように、そういったいろいろの事情を勘案して、弾力的なと申しますか、きめ細かい法律関係を立法する方がいいんではないかというふうに現在考えておるわけでございます。
  59. 大竹太郎

    大竹委員長 諫山博君。
  60. 諫山博

    ○諫山委員 最高裁の人事局長に質問します。  きょうの朝日新聞によれば、鬼頭裁判官と思われる人が電話録音機を購入した。さらに、それを消すための機械も購入した。この非常に有力な疑いが提起されているんですが、購入した時期は、朝日新聞によりますと八月四日の数日前となっております。そうすると、鬼頭の海外旅行との関係が出てくると思うんですが、正確に鬼頭は何月何日から何日まで旅行していたことになるんですか。これは鬼頭の説明だけじゃなくて、最高裁の認識を聞きたいのです。
  61. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 現在のところ鬼頭判事補の述べたところだけが資料でございますが、私どもでできるだけのことをただいま調査中でございます。  その中身といたしましては、先ほど稲葉委員に対してお答え申し上げましたように、実際にその日に大阪空港にいわば着いたかどうかという問題、それから鬼頭判事補が言っているように、四日間というふうに言っているわけでございますが、実際にどのぐらいの期間行ったか、この確認の方法もいろいろ検討した上で調査するつもりでおります。
  62. 諫山博

    ○諫山委員 きょうの朝日新聞の報道は非常に具体的で迫真性があるわけです。そしてたくさんの人が、あれは鬼頭に間違いなかったと確認する証言をしたようです。最高裁判所はこの点はあらかじめ調べていたのか、それとも新聞で初めて知ったのか、さらにこの問題を今後調査するつもりなのかどうか、御説明ください。
  63. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 私どもといたしましては、きょうの朝日の朝刊で初めて知った事実でございます。したがいまして、先ほど申し上げたこととあわせて必要あれば調査するつもりでおります。果たしてどこまで調査が可能かどうかでございますが、できるだけのことはいたしたいと考えております。
  64. 諫山博

    ○諫山委員 鬼頭裁判官個人的研究のために西ドイツ、アメリカに行ったということですが、どういう研究テーマだったのか、それから行き先はどこだったのか、わかっていますか。
  65. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 ことしの夏の海外渡航目的その他については、彼が出した渡航申請書といいますか、渡航願の目的、先ほど申し上げました目的については具体的に究明がされておりません。  何回も繰り返しになりますが、鬼頭判事補のいわゆる夏季の間の渡航は、四日間の香港における観光旅行であったという限度に現在はとどまっているわけでございます。
  66. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、最高裁判所には真実に反する書類を提出していたということになるのですか。
  67. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 そういうことになるわけでございます。
  68. 諫山博

    ○諫山委員 アメリカにも西ドイツにも行かなったということですか。
  69. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 この期間に行ったということをはっきりとは私ども聞いてはおりません。
  70. 諫山博

    ○諫山委員 鬼頭自身はその点はどう言っていますか。最高裁判所には西ドイツとかアメリカに研究のために行くと届けたけれども、そのとおりはしなかったと言っているのですか。
  71. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 その点は必ずしも明確でございません。その意味では調査未了の分野であるというふうに考えております。
  72. 諫山博

    ○諫山委員 きわめて単純なことなんですが、これは鬼頭が説明を拒んでいるのですか。それとも、説明はしているけれどもとうてい信用できない内容になっているのですか。
  73. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 私どもといたしましては、先ほど申し上げた限度で、いわば心証ということでございまして、それ以外のことについてはいわば確定的にこうであった、こうでなかったということを申し上げる段階ではないというふうに考えております。
  74. 諫山博

    ○諫山委員 これはすでに参議院でも提起されているのですが、鬼頭の国際的な背景ということまで問題になっているわけですね。たとえばCIAとの関係とか、あるいはさまざまな国際的な組織を持つ謀略機関との関係ということさえいろいろ論議されている状態ですから、この前の西ドイツに旅行したという経過、さらにその真実、今度のアメリカ、西ドイツに対する旅行計画、その真実、そして何をやってきたのかということは、本件と非常に深い関係のあるものとして、ぜひ徹底的に調査していただきたいと思うのですが、どうですか。
  75. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 できるだけのことを調査いたしたいと考えております。
  76. 諫山博

    ○諫山委員 今度は宮本顕治氏の身分帳その他に関する問題で質問します。  法務省の矯正局長に聞きます。鬼頭が網走刑務所に行って身分帳を閲覧した、一部を写し取ってきた、これは最高裁判所調査では確定したようですが、法務省の現在の調査結果はどうですか。
  77. 石原一彦

    ○石原政府委員 十月二十一日以来引き続き調査をなお続行中でございますが、これまで調査した関係につきまして、中間的にではございますが、申し述べたいと思います。  調査の対象者及び調査期間を先に申し上げますが、一人は程田福松氏でございまして、昭和四十九年四月一日から五十一年三月三十一日まで網走刑務所長をいたしており、本年四月一日勧奨により退職いたしております。  程田氏に対しましては、本年十月二十一日及び昨十月二十六日に事情聴取をいたし、本日も実施中でございます。  もう一人は南部悦郎氏でございまして、昭和四十八年三月十六日から五十年三月十六日まで網走刑務所の庶務課長をいたしており、現在帯広刑務所の庶務課長でございます。  南部氏に対しましては、一昨日、十月二十五日及び昨日、十月二十六日に事情を聴取いたし、本日も実施中でございます。  まず、調査に当たりましては、御承知のように関係者が三人でございますが、いずれかの供述に信が置けるというような前提をとらず、また鬼頭判事補の供述が先に報道されておりましたことも勘案いたしまして、自分たちの記憶のままにできるだけ思い出して供述するようにという方法をとりました。  本日御報告申し上げます点は、まだ十分な事情聴取が済んでいるわけではございませんが、二人の記憶に基づく供述では一応のところまで来たというふうに思いますので申し上げるわけでございます。ただ、二年以上前のことでございますので、二人の供述に不一致の個所が多いのでございますが、むしろ不一致の中にこそ真実があるのではないかというふうに思われますので、そういうことでお聞き取りを願いたいと思います。  大きく分けまして、鬼頭判事補から依頼を受けて網走刑務所長室において面接したときの状況を先に申し上げ、次いでその後の状況について申し上げます。  最初の部分につきましては、程田氏の供述と南部氏の供述の間に相当な差異がございます。それを、調査の結果といたしましてそのまま申し上げたいと存じます。  まず程田前所長の供述でございますが、昭和四十九年七月二十三日、八王子支部鬼頭判事補から、二、三日中に終戦直前の政治犯収容者の書類を調査のため伺う旨の電話を受けまして、これに対しましては、法務省または管区あるいは裁判所からの正式な依頼状がなければ困ると言って断っております。なおその際、程田所長は、鬼頭判事補に返事をする必要もあるかと思い、電話番号を聞きましたところ、市内電話でかけているということで、自分のところの電話番号は明らかにしなかったようでございます。ところで、翌七月二十四日、札幌矯正管区の第二部長から、鬼頭判事補が終戦直前に執行停止した者についての調査につき取り計らってくれという趣旨の電話を受けました。なお、この電話の内容については、程田所長の供述のみでございまして、まだ確定されているわけではございません。それに対しまして、程田所長は、何らかの正式な依頼状が必要だと答えて断ったということを申しましたところ、第二部長は、そのために自分の方に照会があったのであろうということであったようであります。そこで程田所長は、事情を聞いて必要があれば許可しようというふうに答えました。ところが、二、三日中と言っていたのにかかわらず、その翌日、すなわち七月二十四日、これは矯正管区から電話があった日でございますが、鬼頭判事補から、網走駅に着いたから間もなく伺う、宮本顕治氏が終戦直後出所しているはずなので、そのことで訪ねたい旨の電話を受けました。     〔委員長退席、小島委員長代理着席〕 そこで、南部庶務課長に、鬼頭判事補の身元の確認をするよう指示するとともに、自分自身宮本氏が果たして網走刑務所を出所したか否か知りませんでしたので、このことを南部庶務課長に聞きましたところ、実は前に網走を出たことがあるという答えでございましたので、南部庶務課長身分帳があったらば用意していくように指示したのであります。その後間もなく南部庶務課長鬼頭判事補を案内して所長室に参りました。名刺を交換いたしました後、鬼頭判事補は、職務上の参考として研究したいので来た旨申し述べるとともに、宮本氏が当刑務所を出所しているので、確定裁判所名、確定年月日、罪名、刑名、刑期、入所年月日、出所年月日を知りたいと申した。そこで自分は、鬼頭判事補現職八王子支部裁判官である旨南部庶務課長から報告を受けていたので、わざわざ東京から来たのは、担当する事件の参考のため大事な急用で来たものと思い、宮本氏の身分帳により、先ほど申し上げました点について説明をした。なおその際、宮本氏は病気のため執行停止で出所したことを述べておいた。  そうしますと、鬼頭判事補は、自分の説明したことをメモさせてくれと言いますので、同室していた南部庶務課長に、庶務課に案内して、いま言った範囲内で説明するよう指示し、南部庶務課長は鬼頭を案内して退室をした。その面接した時間はそう長い時間ではなかったということであります。  以上が程田前所長の言うところでございます。  次に、南部庶務課長が申している点を申し述べます。  南部庶務課長の記憶によりますと、昭和四十九年夏ごろ、東京地裁八王子支部鬼頭判事補と名のる者から、職務上、治安維持法の研究のため、宮本顕治氏について調査したいのであすお邪魔する、これは外部には発表しないという電話を受けました。     〔小島委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、程田所長の指示を受けて、鬼頭判事補の身元を確認するため、折り返し八王子支部電話いたしましたところ、電話に出た書記官から、鬼頭判事補は確かに私の支部に勤務している。きょうはいないが、あしたは網走刑務所に行くと言っていたという回答を得たのであります。  そこで、待っておりますと、その翌日鬼頭判事補から、網走駅から電話しているが、いまからお邪魔するということがあり、承知したと回答をいたしました。間もなく鬼頭判事補が参りましたので、所長室に案内し、かねて所長から用意しておけと言われた身分帳を程田所長に渡したのですが、自分はお茶の接待等をするため退室して、程田所長鬼頭判事補との詳しい話し合いについては聞いていない。なお、鬼頭判事補が程田所長の部屋にいた時間は二十分くらいの記憶であるということであります。  これまでの点で申し上げますと、東京からの依頼につきまして両者の供述が必ずしも一致いたしておりません。私どもは、この両者の供述を見まして、最初程田所長電話いたしましたところ、法務省矯正管区あるいは裁判所からの正式の話がなければいけないのだといって断られたので、改めて南部庶務課長電話したのではないかということも考えられると思っております。  なお、間に入っております札幌管区第二部長につきましては、近日中に事情を聴取する予定であります。  また、七月二十四日であるという日時は、網走刑務所にありました電話書きとめ簿という書類によりまして確認いたしておりますので、その日が正しいものと思います。  そのほか、北海道に行ってからの依頼状況につきましても、両者の供述内容は必ずしも一致いたしておりません。さらに、所長面接時の状況も一致いたしていないと思います。  次に、南部庶務課長による鬼頭判事補の応接状況について申し上げますが、これは南部庶務課長一人が応接したことでございます。  程田所長から必要なところを聞いて教えてあげなさいというような趣旨のことを言われ、そのほかの具体的な指示はございませんでしたので、庶務課の応接コーナーに案内いたし、センターテーブルをはさみ、向かい合って着席して応接いたしました。鬼頭判事補は、最初、罪名、入所日等について聞きましたので、身分帳を見ながら答えておりましたところ、途中で、ちょっと見せてくれませんか、と申し出た。自分としてはちゅうちょしたのであるが、前日、職務上で来るという電話があったし、自分が電話をしたところ、確かに八王子支部に勤務はしているし、あすは網走に行くという書記官の答えもありました上に、東京からわざわざ来た判事補でございますので、信用して身分帳を渡してメモをさせた。その間、自分は電話、来客のために二、三回中座いたしましたが、一、二回出た後、その部屋に入室した際、鬼頭判事補身分帳の写真を撮っていた。理由を尋ねようと思ったのだが、すでにぱちぱち写していたし、東京地裁八王子支部裁判官であるという肩書きに押されて黙っていた。鬼頭判事補は、間もなく、終わりました、と言って身分帳を返したので、これを黙って受け取り、所長室にも寄らせずに退出させたが、自分としては気分が悪かった。なお、自分と鬼頭判事補との応接の時間は十五分ぐらいである。  そうしましたところ、一週間ぐらいたちまして、鬼頭判事補から、記録をよく見なかったので、診断書の写しをゼロックスで写して送ってほしいという旨の依頼が、電話であったか手紙であったかは忘れたがあったので、程田所長の指示を受けた上、診断書を法務省の名入りの用紙を使って庶務課の課員に原本どおりに筆写させ、送り文をつけて鬼頭判事補あて郵送した。ゼロックスは当時網走刑務所にあるが、これでコピーをとるのには費用がかかるので手書きにしたということでございます。この点につきまして、程田所長は、南部課長と鬼頭氏との応接状況につきましては記憶がございませんが、南部課長の供述中、筆写した診断書を送るに当たって所長の指示を受けたという点につきましては、どうも記憶がないと供述いたしております。しかし、いずれにいたしましても、その後、程田所長の言によりますと、札幌管区に、鬼頭判事補が来て関係部分を調べて帰った旨の報告はしているということであります。  以上がこれまで調査いたしました点につきましての両名の供述内容でございます。
  78. 諫山博

    ○諫山委員 いまの問題について二、三補足的に質問します。  そうすると、鬼頭氏が裁判官であったということがこれを写すことのできた決定的な背景のように理解できますが、そう見ていいですか。
  79. 石原一彦

    ○石原政府委員 確かに裁判官であったということが一つの要素でございますが、そのほかに、二、三日中に行くというのに突如翌日にあらわれたという緊急な用事らしいと思ったこと、本人の口から職務上の必要があるからということを言われたこと等も、身分帳の内容について説明する理由になっていると思います。  なお、先ほど申し上げましたように、程田所長のところでは、身分帳は自分が手にしておって内容を説明し、南部課長もそういう説明をし始めたところ、途中でちょっと見せてくれということで、先ほど申し上げたような理由から信用して身分帳を鬼頭判事補に見せたというのが事実のようであります。
  80. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、網走刑務所の中では、身分帳を見せたのは刑務所側で、それを写真に写したのは鬼頭自身、そしてこれは刑務所側の意に反することだったけれども、あえてやめてくれとは言わなかった、こうなりますか。
  81. 石原一彦

    ○石原政府委員 これまでの調査結果によりますれば、御指摘のとおりでございます。
  82. 諫山博

    ○諫山委員 最高裁の人事局長に質問します。  鬼頭が網走刑務所に行って身分帳を閲覧した、さらに写した、これは裁判官としての職務上の行為だったんでしょうか、それとも私的な行為ですか。
  83. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 その点は、問いましたところ、職務上ではないということでありました。
  84. 諫山博

    ○諫山委員 矯正局長に。そうすると、網走刑務所としては、いまのような経過で身分帳を閲覧させ、さらに写真に写すことも阻止しなかった、この経過は札幌の方に事後に報告したということになりますか。
  85. 石原一彦

    ○石原政府委員 刑務所側といたしましては、単に個人の研究であれば身分帳を見せるはずがないということであり、管区からの電話もありましたので、その結果についてはその後管区に報告してあるということでございます。
  86. 諫山博

    ○諫山委員 私は、前回の委員会のときに、身分帳は軽々しく第三者に見せるべき性質のものではない。そして法務省は、裁判所の提出命令があっても、松川事件ではついに提出をしなかった、こういう事実を指摘したわけですが、鬼頭判事補が札幌の矯正管区で説明した程度のことで法務省としては身分帳は見せていいという立場ですか、それとも見せるべきではないという立場ですか。
  87. 石原一彦

    ○石原政府委員 身分帳そのものは、前回からの御質問で御答弁申し上げましたように、その内容がすべて秘にわたるものではなくて、その中に秘とすべきものが多いから、それをそのまま出すことはならぬということにまずなっているわけでございます。そうして、裁判所の提出命令がありましても、身分帳そのものは出さないのが原則であり、次に、その一部を出す場合においても、人権上の配慮、行刑の運営上の配慮をすべきであるということでございます。  さらに、先般御説明申し上げましたように、提出命令と同様なあるいはこれに匹敵するような何らかの行為があれば、これは提出命令で出す場合と同様ではなかろうか。と申しますのは、刑事訴訟法等による裁判所検察庁、警察等からの正式の照会に対しまして、先ほど申し上げた支障がない場合には回答をいたしているところであります。
  88. 諫山博

    ○諫山委員 結局、矯正管区の承諾を与えた行為というのは間違っていたんじゃないですか。
  89. 石原一彦

    ○石原政府委員 この点につきましては、さらに調査をしなければ十分なことは申し上げられないのでありますが、私がこの経緯の全般を見ておりますと、矯正管区の話というのは、許可をするとか許可をしないとかということではなくて、事実上の問題として刑務所長に連絡をした。刑務所長は、先ほど申し上げましたように、事項を限っての照会でございましたので、身分帳を見ながら答えたのであります。その最初答えた内容そのものにつきましては、仮に裁判所検察庁、警察から御照会のありました場合には、もちろん職務上でございますが、職務上照会がありました場合には、これは答えて差し支えない範囲でございます。庶務課長身分帳を見せてしまったという点につきましては、裁判官を御信用申し上げての油断があったと思います。今日現在におきまして鬼頭判事補のいろいろな行動が問題になっておりますので、その鬼頭判事補に見せたということについて御批判をいただいているのでございますが、一般的には恐らく大半の裁判官はきわめて公平中正であろうかと思います。その方がおいでになって、堂々と名刺も出し、職務上の必要もあるから聞きたいと言われたときに、そう疑いをかけることができなかったというのが当時の刑務所側の様子ではなかったか。だからこそ、後で申し上げましたけれども、筆写して送ってくれというのに、法務省の名前の入った用紙を使って診断書の写しをつくって送ったというような事情に相なっているものと思います。
  90. 諫山博

    ○諫山委員 刑務所側が見せるべからざる身分帳を鬼頭裁判官に見せた、その背景として、一つは鬼頭が現職裁判官で職務上だという説明をしていた。もう一つは矯正管区の方から電話があっていた。この電話の内容が身分帳を見せてもいいという内容まで含んでいたかどうかはよくわかりません。しかし、管区の了解のもとに鬼頭が網走刑務所に来た、このことも背景になっていたと思うのですが、どうですか。
  91. 石原一彦

    ○石原政府委員 その点につきましては、彼ら関係者の心理内容まで立ち入って調査するわけにはいきませんけれども、御指摘のような点も確かにあったものと思われます。
  92. 諫山博

    ○諫山委員 身分帳を閲覧させること自体が不当なわけですが、それを写真に撮っていた。これを刑務所側が阻止しなかった動機はどう見ていますか。
  93. 石原一彦

    ○石原政府委員 先ほど申し上げましたように、南部庶務課長は、本人に見せた後二、三度中座したわけでございますが、その一、二度目に入ってきたところ、写真を撮っていた。よほど理由を尋ねようと思ったけれども、もうぱちぱちやってしまった後だし、いまさらそのことを言っても始まらないという気持ちと、先ほど申し上げましたような東京地裁八王子支部の判事補という肩書きに押されてと、これは本人の言った言葉のままでございますが、肩書きに押されて黙っていた。そのために自分は気分を害して、帰り際に所長のところにも連れていかなかったし、黙って書類を受け取ったまま玄関先まで行って退出させたということでございます。
  94. 諫山博

    ○諫山委員 最高裁の人事局長に質問します。  鬼頭氏が身分帳の一部を手書きで写してもらった、この経過が法務省の説明と最高裁の説明と幾らか違うように思うし、最高裁側としては、これは宮本顕治氏の診断書だけだというふうになっていますか。
  95. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 写真が失敗して、送ってもらった書類の点数はどのぐらいだったかということを尋ねたのでありますが、それに対する答えは、二、三点ぐらいであったということでございました。
  96. 諫山博

    ○諫山委員 矯正局長、そうすると鬼頭は相当たくさん写真を撮ったように受け取れるのですが、どのくらい写真を撮っているのですか。
  97. 石原一彦

    ○石原政府委員 写真を撮っておりましたときの全状況を南部課長は把握しておりませんので、断定いたしかねます。  なお、ただいまの診断書以外にも手書きのものを出したのではないかという点でございますが、二、三点ということを勝見人事局長の御答弁から伺っておりまして、私どもも相当この点についての記憶を出すようにというので強く記憶喚起をさせるように努力いたしたのでありますが、現在までのところは、診断書ということでございます。  なお、この点につきましては、さらに調査を続行いたしたいと思っております。
  98. 諫山博

    ○諫山委員 国家公務員法の第百条の中には、公務員が職務上知ることのできる秘密というのが出てきます。いわゆる守秘義務ですね。身分帳の中にはこの守秘義務で保護さるべき秘密がいっぱいあると思いますが、どうですか。
  99. 石原一彦

    ○石原政府委員 そのとおりでございます。
  100. 諫山博

    ○諫山委員 刑務所側、矯正管区側が、国家公務員法第百条で外部に漏らすことを禁ぜられているいろいろな資料を漏らした、これはどう考えても国家公務員法第百条に違反すると思われますが、この点の矯正局長の現時点の解釈はどうですか。
  101. 石原一彦

    ○石原政府委員 本件がいかなる犯罪になるおそれがあるのかという点につきましては、私自身も検討はいたしております。しかしながら、現在は公正な立場で矯正当局がこの事実を確定し、真相を究明することがまず大切でございますし、とやかく私がその内容について私の見解を申し上げるといたしますれば、仮に将来捜査になりました場合には、法務省の同じ管轄下にある検察庁が担当することにもなりますので、私としては、その点についてはむしろ口に出さない方が公正な態度、姿勢を保つという上で必要ではなかろうかと思っております。  さらに、事実が確定いたしました暁には、その点にまさに重点を置いているのでございますが、事実の確定にいまのところは重点を置き、その点ができるだけ解明された暁には、その内容を刑事局等にもお話し申し上げ、法律判断についての御検討を煩わす予定にしております。
  102. 諫山博

    ○諫山委員 刑事法的な評価はわかりました。  ところで、公務員のあるべき姿、行政責任という点から見れば、この一連の身分帳の漏洩行為というのは是認できますか。
  103. 石原一彦

    ○石原政府委員 これまでの調査結果を概観いたしますと、先ほど申し上げましたように、鬼頭判事補現職裁判官であることを確認をした、あるいは二、三日中というのに翌日あらわれたというような緊急のことと思った、本人から職務上という話も出たという点におきまして、先ほど申し上げました裁判所からの正式な御命令と同様だと速断した点にまず問題があろうかと思います。  次に、庶務課長につきましては、やはり身分帳の中にある事項について説明するに当たり、本人にそれを渡したという油断があったかと思います。さらにこの点はもう少し詰めて調査しなければなりませんが、所長課長に対する指示もやや具体性を欠くし、その指示に適切を欠く点があったのではないかというふうに思われます。今後とも、矯正行政の適正な運営を図る見地から十分な調査をいたしまして、措置すべきものがあればしかるべき措置をとるということを考えたいと思います。
  104. 諫山博

    ○諫山委員 いまの説明の中で、裁判所の正式命令と誤認した点に問題があると言われたのですが、裁判所の命令としては、たとえば正式な提出命令あるいは正式な検証、これ以外には身分帳類は外部に出さないということじゃないですか。そういうものでなかったことは刑務所の人には当然わかるのじゃないですか。
  105. 石原一彦

    ○石原政府委員 先般諫山委員からの御照会によりまして、昭和四十年の通達の写しをお渡ししてございますが、これによりましても、提出命令以外に刑訴の二百七十九条あるいは刑訴の百九十七条等に基づく照会がありました際に、人権に関係がない、名誉を侵害するおそれがない、あるいは施設の管理、運営に支障を生じないという場合には、回答ができるようになっているのであります。それが、書面でなくて裁判官自身がおいでになったという点において速断をしたと思われるのでございまして、提出命令だけについておっしゃられればそのとおりかもしれませんが、そのはかの照会方法との対比を考えますと、文書が来るのではなくて御当人みずからわざわざ東京から飛んでこられたという点において、刑務所側の判断が甘かったといいますか、速断をしたといいますか、油断があったといいますか、そういう点はあったのではなかろうかと思い、この点につきましてさらに詰めた調査をいたしたいと思っている次第でございます。
  106. 諫山博

    ○諫山委員 法務省刑事局長に質問します。  法務省刑事局長としては、鬼頭判事補の行為にいろいろ法律的な分析を加えているようです。たとえば、にせ電話事件は明らかに軽犯罪法違反だ、さらに偽計による業務妨害の疑いもある、こう説明をされているわけです。網走刑務所における一連の行為についても、当然刑事法的な判断を加えていると思います。たとえば、刑務所側、鬼頭側に国家公務員法違反の刑事責任が生ずる疑いが強いのではないか、さらに、いまの説明であれば、鬼頭判事補側に職権乱用の疑いさえ生じてくるのではないか、こう思われるのですが、刑事局長、そういう法律的な分析はどうなっていますか。
  107. 安原美穂

    ○安原政府委員 さしあたり鬼頭判事補の網走刑務所における事柄につきましては、調査の経過、結果につきまして、先ほど来矯正局長、人事局長から詳細御説明がございましたので、私どもまだ調査の途中でございまするから、具体的事実が明確にならないと法律の適用を論ずるわけにはまいらないと思いまするが、一般論といたしましては、国家公務員法の漏洩とかあるいは国家公務員法の漏洩のそそのかしの罪とかいうようなことが考えられると思いまするけれども、いずれにいたしましても、具体的な事件調査の結果をまたなければ、当てはめて申し上げる段階ではないように思います。
  108. 諫山博

    ○諫山委員 この問題について、にせ電話事件では検察庁として捜査に着手するという報道がされていますが、網走刑務所事件で捜査に着手するという報道が出ていないようです。だとすれば、非常におかしな取り扱いだと思います。この点はどうなっていますか。
  109. 安原美穂

    ○安原政府委員 いわゆるにせ電話事件というものは、今度の網走の問題に比べまして、犯人の何人かは別といたしまして、一見きわめて明瞭に少なくとも軽犯罪法の違反の事実があったと疑うに足りる相当な理由があるように思われるわけでございますが、それに比べますと、今度の網走の問題は、犯罪の容疑があるというにはなお事実の調査にまつべき部分が相当多いように思われるというような程度の差があることは否定できないと思います。  そういう意味におきまして、いま諫山委員は、にせ電話事件については捜査に着手したとおっしゃいますが、そういう意味においての程度の差を検察当局では認めながら、にせ電話事件についてはただいま法律的な検討を進めるとともに、捜査の方法等について検討しておりまするが、この場合におきましても、なお最高裁判所調査結果を重視して、それを待って捜査の方針を決めていきたいということでございまして、いわばまだある意味においては内偵の段階でございます。  なお網走の問題につきましても、事柄は、伝えられるところではきわめて重大でございますので、検察当局としても関心を持っていることは事実でございます。
  110. 諫山博

    ○諫山委員 法務大臣に質問します。  前回の委員会で、網走刑務所の秘密漏洩問題で最高裁側からの調査経過が報告されました。きょう法務省としての調査結果が報告されたのですが、この点について、法務省の最高責任者である稲葉法務大臣はどう考えておられますか。
  111. 稻葉修

    稲葉国務大臣 身分帳というようなものが、裁判官身分を有する者でありましても、手渡されて写真を撮るというようなことははなはだ遺憾なことだ、よろしくない。  それから、きょうの矯正局長の報告は中間のものでありますから、この上さらに調査を進めなければいかぬ。しかし、今日までのところではよくそこまで調査がいったなという感じがいたしますね。
  112. 諫山博

    ○諫山委員 よく調査がいったと言うけれども、私がむしろ問題にしたいのは、漏れるべからざるものが刑務所の中から漏れた、そして、少なくとも矯正管区がそれに関係していた、この点についての法務大臣としての反省の弁を聞きたかったわけです。     〔委員長退席、田中(覚)委員長代理着席〕  そこで、宮本顕治氏の診断書などが外に漏れている、この点はすでに春以来の国会でいろいろ論議されました。法務省が漏らすはずがないというふうに法務大臣も答弁されたし、それは決意としては当然のことだと思うのです。しかし、現に刑務所から外に出たという事実は否定できませんね。これがどこまで広がったかというのはこれからさらに調査を要するわけですが、とにかくあの刑務所の高いれんがべいの外に出てきた、このこと自体は否定できないわけです。だとすると、法務省から漏れるはずはないという答弁はやはり実情に合わなかったのではないかと思うのですが、どうですか。
  113. 稻葉修

    稲葉国務大臣 漏れるべからざるものが先ほど矯正局長の報告のような経緯で漏れたことは、はなはだ遺憾である、まことに相済まぬ次第であると思っております。
  114. 諫山博

    ○諫山委員 まことに相済まぬことであるというのは、だれに対して相済まぬと思っておられるのですか。あるいは何に対して。
  115. 稻葉修

    稲葉国務大臣 刑務官といいますか、それを監督する身分として、そういうだらしのないことでは国民に対しても相済まぬなあ、こう思っている。
  116. 諫山博

    ○諫山委員 いまのは一億国民に対して相済まぬという趣旨のようですが、この問題で最も人権を侵害されたのは宮本顕治氏だし、さらに日本共産党がきわめて名誉を傷つけられた。宮本顕治氏と日本共産党に対して特に相済まぬという言葉を法務大臣は口にすべきだと思うのですが、いかがですか。——これは法務大臣に答えてもらわないと、あなたからでは……。
  117. 稻葉修

    稲葉国務大臣 宮本顕治委員長並びに共産党はどういう点で被害を受けたのか知らぬが、どういうふうに思われるか知らぬが、鬼頭判事補に漏れた、鬼頭判事補に見せた、診断書の写しを手書きにして送った、こういう点で、内容はどういう名誉を傷つけたとおっしゃるのか、その辺はあなたどう思われるのか知りませんけれども、それから、鬼頭判事補のところへは行ったけれども、それはもうよそへはやらないのだという約束で見せているということは先ほどの報告で事実ですからね。それを、世間に皆行き渡っている、それはおまえらの責任でないか、法務大臣の責任だ、申しわけないと言えったって、そこまでは少し言い過ぎじゃないでしょうか。
  118. 諫山博

    ○諫山委員 第三者にはだれにも漏らさないからと言って渡したから責任はないと言われるのですか。問題は、あの刑務所の高い壁の外に出てきた、これがまさに問題なんです。裁判官個人に渡したのだ、よその人には見せるなと言っているから責任はないのだと、本当に冷静に考えて言えるのですか。
  119. 稻葉修

    稲葉国務大臣 いかに裁判官身分がある者といえども、先ほど説明したような経緯ではあっても、情状に酌量すべき点はあるかもしらぬけれども、そういうだらしないことでは困るな、今後はきちんとやらなければいかぬな、こういう反省をしておる、こう言っている。
  120. 諫山博

    ○諫山委員 問題はまさに、刑務所の壁の外に出てはいけないものが刑務所の壁の外に出た、ここにあるわけじゃないですか。さらに鬼頭からずっと広がれば責任はもちろん二倍、三倍加しましょう。しかし問題は、刑務所の外に出たことだ、ここにあると思うのですが、矯正の最高責任者である矯正局長はその点どう考えますか。
  121. 石原一彦

    ○石原政府委員 ただいまの点は、まず第一に、鬼頭判事補に漏れたという点についての矯正の責任いかんという点であろうかと思います。この点につきましては、先ほど来申し上げましたように、所長側に速断があり庶務課長側に油断があったと現段階では私は考え得るということをはっきりと申し上げたのであります。しかも、おいでになった方は職務上のことで調べたいと言ってこられたのでございまして、その方が外に漏らすということは当然考えないで見せてしまったというのが実情ではなかろうか、こう思うのであります。したがいまして、その後漏れたという点について、全く責任がないとか、いわゆる刑事責任以外の責任もないとかということを申し上げているわけではございません。しかしながら、現段階におきましては、鬼頭判事補に渡された手書きの診断書がどういうふうに動いたかというところが問題であろうかと思います。それが確定されて初めてそれ以外の方に対する責任問題が生ずるのでございまして、それをただいま私どもは一生懸命に調査いたしているところでございますので、その点につきましてはいましばらくお待ち願いたく、調査結果の御報告をいたしますから、その上でもって御質疑に相なりたいと思います。
  122. 諫山博

    ○諫山委員 最高裁の人事局長、にせ電話事件では、週刊新潮に最高裁として当たる、読売新聞とはもう接触しているのですかね。いろいろ鬼頭の行動の周辺を調べるということが言われているわけですが、網走刑務所の秘密漏洩事件では、たとえば網走刑務所の中にしかないはずの診断書を持っているという民社党の人たち、あるいは著書の中に診断書と称しているものを引用している松本明重、こういう人たちについてはすでに接触を始めていますか。どこから手に入ったのか、これは鬼頭の入手したものと関係があるのかないのか。どうなっていますか。
  123. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 昨日も申し上げましたとおり、鬼頭判事補は絶対に他に見せていない、もちろん渡してもいないということでございますが、世上、新聞で報道されていますように、鬼頭判事補から流れたという報道がございます。したがいまして、私どもといたしましても、可能な限り流れたと報道されているところに対して調査を進めたいと思っておりますが、まだ着手しておりません。
  124. 諫山博

    ○諫山委員 どういうところを調査してもらいたいということは、きのうもっと詳しく説明したのですから繰り返しません。  そこで、最高裁の事務総長に質問しますが、きのうあなたは、鬼頭の行為について、現職裁判官が政治的活動と疑われる行為をした、これは遺憾だと言われましたね。裁判所法で裁判官の政治活動の問題が規定されているのですが、これに触れるような行為だと思っておられますか。
  125. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 私が申し上げましたのは、そういう疑いを持たれてもやむを得ないような行為をしたというふうに現段階では申し上げておるわけでございます。まだ事実が十分解明されておりませんので、事実を解明した上で確定的な意見を述べさせていただきたいと思います。
  126. 諫山博

    ○諫山委員 それは裁判所法第五十二条一号の行為に当たると見られてもやむを得ないんだという見解ですか。
  127. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 私が現在申し上げておりますのは、さような純法律的な条文解釈というような厳密な意味ではなくて、もう少し一般的な意味において裁判官の行動として穏当を欠く、こういう趣旨で申し上げておるつもりでございます。
  128. 諫山博

    ○諫山委員 そうすると、条文の引用は省略しまして、裁判官は政治活動を禁止されている。この禁止されている政治活動をしたんじゃないかと疑われてもやむを得ないという趣旨ですか。
  129. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 大体さような趣旨でございます。
  130. 諫山博

    ○諫山委員 これは、にせ電話事件についてもそうだし、網走刑務所の行動においてもそうということですか。
  131. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 私が昨日申し上げましたのは、主としてにせ電話事件を頭に置いて申し上げておるわけでございます。ただ、網走刑務所の問題につきましても、鬼頭判事補の受け取りました書類がどうなっておるかということが非常に重要な問題でございまして、その問題の内容いかんによりましては、やはり先ほど来申し上げておるようなことになろうかと思います。そうして、全体を通じまして、裁判官は、単に政治的に中立的であるばかりでなしに、外部からそういうふうに受け取られる、いやしくも中立でないというふうな誤解なり、そういうふうに見られることも避けるべきであって、そういうきわめて広い意味において申しますれば、鬼頭判事補の一連の行為が相当に問題がある、申し上げておる趣旨はかようなことでございます。
  132. 諫山博

    ○諫山委員 事務総長にもう少し聞きます。  いまの矯正局長の説明を聞いていますと、これは現職裁判官だという肩書きを振り回したと思うのです。刑務所側では現職裁判官でなかったとすれば恐らく見せなかったであろう、矯正管区の方も現職裁判官からの電話でなければああいう応答にはならなかったのじゃないかと思われる。まさにこれは、国民から信頼される裁判官という肩書きを振り回した、こう見えるのですが、この点どう考えていますか。
  133. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 昨日来私どもの方の人事局長から、鬼頭判事補の言い分を御説明申し上げました。これに対しまして、本日、法務省の石原矯正局長から、刑務所側の各関係者のお話を承りました。刑務所の関係者の方のお話そのものにも若干の食い違いがあるようでございますし、これと鬼頭判事補の申し分とはかなり食い違った点がございます。それらの点を十分に解明いたしました上でお答え申し上げるのが相当ではないか、かように考えておるわけでございます。
  134. 諫山博

    ○諫山委員 新聞報道で、鬼頭の網走事件について、収集したという事実だけならそれほど問題にならないのではないかと見ていると書かれています。鬼頭判事補が網走刑務所から身分帳を写し取ってきただけなら大して問題にならないのじゃなかろうかという趣旨ですね。これが最高裁判所の公式見解だとすれば事はきわめて重大だと思って私読んだのですが、最高裁判所は現在そういう見解をとっているのですか、それとも新聞の誤りですか。
  135. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 最高裁判所としては、鬼頭判事補の一連の行為についていまだ何らの公式的な見解をとっておりません。御指摘の網走刑務所の問題につきましても、一応の本人事情聴取が終わったという段階でございますから、これの事実を詳細に確定いたしました上で、これがいかなる点を問題にすべきかということをさらに慎重に検討しなければならない、かように考えておるわけでございます。
  136. 諫山博

    ○諫山委員 鬼頭裁判官身分帳類を収集したという事実だけならそれほど問題にならないと書かれているのは、最高裁の見解ではないと聞いていいですか。
  137. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 現在のところ最高裁判所として公式の見解を有しておりません。
  138. 諫山博

    ○諫山委員 矯正局長にもう一遍聞きます。身分帳類が抜き取られたのか、抜き取られていないのか、確認する方法がいまありますか。
  139. 石原一彦

    ○石原政府委員 御質問の趣旨がよく理解できませんが、あるべきものがなければ紛失したかとられたかということになろうかと思います。その上で調査をすれば、その結果がわかるものはわかるということになるのではないかと思います。
  140. 諫山博

    ○諫山委員 身分帳には実に雑多なものがつづり合わせられると思います。そこで、ちゃんと目録がついていて、その目録の順序に内容がつづり合わせられているなら、どれが抜き取られている、あるいはどれが紛失したということがわかるわけでしょうが、それはわかる仕組みになっていますか。
  141. 石原一彦

    ○石原政府委員 身分帳は、仰せのとおりきわめて雑多なものが入りますので、目録をつける手数は大変なものになりますことから、目録はつけておりません。しかし、編綴順序が決まっておりますので、その編綴順序に従ってあるべきものがないという場合には、先ほどの御指摘のように紛失したかとられたかということになろうかと思います。
  142. 諫山博

    ○諫山委員 目録がないとすれば、厳格に確認する方法はないんじゃないかと思うのですが、いま宮本顕治氏の身分帳を見て、そういう点はみんな完備していますか。
  143. 石原一彦

    ○石原政府委員 現在、身分帳は私のところで保管しておりますが、残るべきものが残っているということでございます。
  144. 諫山博

    ○諫山委員 ことしの一月ごろ、身分帳の原本を網走刑務所から本省に引き揚げたということのようですが、これは民社党の質問がきっかけだと説明されました。もう少しそこのところを詳しく説明してくれませんか。いつごろ、どういう通告があって、どういう必要のために取り寄せたのか。
  145. 石原一彦

    ○石原政府委員 質問通告につきましては、ひとり民社党のみならず、他の党の方からも相当早目に参る場合もあります。特に通常国会等が始まりました冒頭は、御承知のとおり、本会議質問あるいは予算委員会質問等がございまして、各党から多くの御要望あるいは資料要求等が寄せられるのでございまして、詳細につきましては私も記憶いたしておりませんが、今度の宮本氏の釈放問題について国会質問があるということを聞きまして、三十年前のことであり、われわれは現状を把握しておりませんので、網走刑務所から取り寄せたのであります。  なお、昨日、あるいは一月六日に取り寄せたと申し上げたかもしれませんが、その後調査いたしましたところ、八日に向こうから送られまして、十日に着いております。そうしますと、六日と申しますのは、私どもが送れという指示をしたときではないかと思いますので、答弁の訂正をさせていただきます。
  146. 諫山博

    ○諫山委員 なぜこれを刑務所から本省に引き揚げたのかということに私は疑問を持つわけです。例の松川事件の国家賠償請求の裁判で被告側が出した書類の中には、身分帳というのは刑務所自身の使用のためにのみ作成される文書だ、それ以外の目的のものではないということが書かれているし、行刑上の必要があって本省に取り寄せたというなら納得できるのですが、そういう必要でもなさそうですね。どうしてこれを取り寄せたのですか。
  147. 石原一彦

    ○石原政府委員 法務省の管理のもとに監獄が置かれているのでありまして、まず監督権は法務省が持っております。さらにまた国会答弁の責任も法務省が持っているわけでございます。それで、行刑上の問題について御質問がありましたときには、資料を収集するのが当然であります。  その場合、現に受刑中の者であるならば、身分帳は現に使用しているのでございますからその写し等をとらせますが、すでに使用していない、すなわち釈放者の場合には、当方に取り寄せて内容を検討した方が時間的にも経済的にもいいわけでございますので取り寄せたにすぎません。取り寄せたことについて御疑問があるという点が、むしろ私は疑問に存じます。
  148. 諫山博

    ○諫山委員 この問題については、最高裁判所法務省が別々に調査している。そして調査中間報告では、どうも幾らかの点で相違しているという感じがします。法務省にしても裁判所にしても、真実の探求というのが本来の職業みたいなものですから、この点で真実が合致しないというと、これは大変なことだと思うのです。速やかに正確な事実を調査して最終的な報告をいただきたいということを要望しまして終わります。
  149. 田中覚

    田中(覚)委員長代理 沖本泰幸君。
  150. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私は他の委員会に出席しておりまして、当委員会に出席するのがおくれました。そこで、前に御質問なさった方々の御質問を十分に聞いておりませんので、御質問することが重複するかもわかりません。その点お許しいただきたいと思います。  まず法務省の方にお伺いいたしますが、具体的捜査に着手したということがきのうあたり報道され出したわけですけれども新聞によりますと、その手順が出ておるようで、新潮社、読売新聞社に対して協力要請、あるいは三木総理、布施検事総長からの事情聴取ということも、昨日刑事局長がお述べになったように、記事には出ております。それから鬼頭判事補本人の取り調べ、こういう順序が記事になっているように私は見たのですが、いろいろあると思いますけれども、こういうふうな形で現在調べが進んでおると理解してよろしいでしょうか。
  151. 安原美穂

    ○安原政府委員 結論から申し上げますれば、それは新聞の単なる報道でございまして、先ほども申し上げましたように、本件、特ににせ電話事件につきましては、最高裁判所調査の結果を踏んまえて具体的な捜査に着手するかどうかの最終的な判断をするというのが検察当局の考えでございますが、もうすでに、先ほど申しましたように、何びとかは判明いたさないにしても、そのにせ電話事件というものがあったということは、もう一見明白に近い問題でもございますし、その与えましたショックというようなものの深さも深刻でございますので、検察当局としては、どういう犯罪が成立するかという法律的な検討を行いますとともに、恐らくは新聞の報道にもありますようないろいろな捜査方法を検討はしていると思いますが、具体的にその手順でというようなことまでまだ確定しておるわけではございません。
  152. 沖本泰幸

    ○沖本委員 先ほどの御質問にもありましたけれども、いま最高裁検察庁とそれぞれ調査なり捜査なりをお進めの段階なんですが、昨日も法務大臣にお伺いしたりしたのですけれども、それぞれ機能が別でもありますし、それぞれ別にするわけですから、いまの御答弁の中でも、最高裁の方の調査を待っていろいろ検討もしたい、こういうことなんで、その間は、同時に進んでおるのか、その間にいろいろ御協議なり連絡なり何なりをおとりになりながらそれぞれのお立場でお調べは進んでいっているのかどうか、その辺はいかがなんですか。
  153. 安原美穂

    ○安原政府委員 ただいまも申し上げましたように、検察当局としては重大な関心を払っておることは事実でありますが、いかにして真相の究明に努めるかという手だてといたしまして、さしあたり最高裁判所調査の結果というものを重大視しておるということでございます。申すまでもなく、最高裁判所や事務総局にも調査の結果についての御通報方をお願いはしております。
  154. 沖本泰幸

    ○沖本委員 今度は最高裁にお伺いいたしますけれども読売新聞社に協力の要請をしたというふうに出ておりますけれども、どういうふうな中身について要請をなさったのか。また週刊新潮の記事についても同じような要請を当然すべきだ、私はそう考えますけれども、この点についてはいかがですか。
  155. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、昨日の午前十一時半に最高裁矢口事務次長読売新聞社編集局次長社会部長を訪ねまして、新聞社の協力を要請いたしたわけでございます。  要請の内容といたしましては、個々具体的な話し合いが行われたと思いますが、ただいまのところの要請は、いわば一般的な要請ということになろうかと思います。もちろん新聞社側は報道機関としての限界がおありなわけでございますので、できる限り協力するというふうなお答えをいただいたわけでございます。  なお、御指摘の週刊新潮社に対しても、しかるべきときに協力を要請しなければならないのではないかというふうに考えております。
  156. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これは、きのうニュースを聞いておったのですが、鬼頭判事補からNHKに電話をかけた内容で、これはたしか九時のNHKのニュースだったと思うのですが、鬼頭判事補本人から直接NHKに電話で、裁判所は私の話した事実を話していないということを言っていたというふうにあったと思うのです。  そこで、人事局長にお伺いしたいのですけれども、十時間余りにわたって事情を聴取したことで重要な内容を話していないのではないかという点で、翌日もう一度一時間にわたって事情聴取をおやりになったという点ですけれども、その辺のことでいろいろ食い違いが出ておりますので、どういうことになっているのか、具体的にお答えいただきたいと思うのです。
  157. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のNHKの報道につきましては、仰せのとおり鬼頭判事補から電話がございました。私にも電話がございました。その内容は、昨日稲葉委員お答えいたしました件についてでございますが、先ほど稲葉委員にもお答え申し上げましたが、二十五日の毎日の記事に対して鬼頭判事補はどう答えたか、こういうお問いであったわけでございます。それに対しまして、私の申し上げようが非常に不十分でございまして、たまたま私の発言の一部分を聞いた鬼頭判事補から、自分の言っている趣旨とは違うというような内容の電話があったわけでございます。先ほど改めて稲葉委員にも申し上げましたが、二十五日の毎日の朝刊の記事に対しては、毎日新聞社との間でオフレコで話したことであるから、記事になっている事項についてはコメントする立場にないという趣旨のことを言っておったわけでございます。それを私がきのうの答弁において、報道にある事実を否定しなかったとか肯定しなかったとかいろいろ申し上げましたので、誤解を生じたように思います。その点、大変申しわけなく思っておりますが、その点のことについて、先ほど御指摘電話があったとおりでございます。
  158. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いろいろなことをいろいろな形で言っておられるわけですね。こういう各社に対していろいろなお話をしておられるわけですけれども、それと、最高裁の方で事情聴取なさったニュアンスなり話の具体的な内容なり何なりというものに大きな食い違いがあって、いわば最高裁が戸惑うとか、あるいはもう一度最初から事情聴取をやり直さなければならないとか、そういうふうなことはあるのでしょうか、ないのでしょうか。または、今後どういう形で事情聴取をおやりになっていくのか、そういう点についてお伺いしたいと思うのです。
  159. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 まず、一般的に申し上げますと、私どもといたしましては、事情聴取に入る前に私どもでつかんだ事実というものはないわけでございまして、きのうも申し上げましたように、新聞報道を前提として事情聴取に入ったわけでございます。その後、鬼頭判事補の各紙に対するいろいろな発言が報道されておりまして、正直申し上げまして、毎日各紙を丹念に見さしていただいておりますが、果たして真相はどこなのかということについて、いまのところ、最高裁判所側といたしましては、何とも申し上げかねる状態でございます。これも昨日申し上げましたように、いわば読売新聞社にそのテープの存在を教え、テープを回して聞かしたというところだけは確定——確定と言うとおかしいのですが、そのところだけはほぼ間違いないのじゃないかと思われますが、その動機、いきさつ、もちろん、その背後にどういう方がいるのか、いないのか、その後の読売新聞社との間のいろいろないきさつ等につきましては、こうこうだったというふうに私ども自信を持って、いわば事実認定と申しますか、全くそういうような状態にないことを申し上げたいと思います。
  160. 沖本泰幸

    ○沖本委員 きのうもお答えになっておられましたけれども、いわゆる被疑者として検察当局が調べるような調べ方もできるわけはないし、身分をお持ちの方でもあるわけで、そういう立場から最高裁が対応していらっしゃるということで、非常に聞きにくい、調べにくい、調査しにくい点は想像はできるのですけれども、感覚としてどうなんですか、今後私たちも証人喚問という立場で考えなければならないわけですけれども、端的に言えば、裁判所では、裁判所のいろいろな質問に対して、まるまるほとんど内容的なものをつかんでいないというお答えなんですけれども、それ以外のことがぼんぼん外で出るので、最高裁としてはいわば戸惑っているというふうな形になるわけでしょうか。そういうところから、人格について、これからいろいろ検討なさるわけでしょうけれども、常識で考えられる点とか考えられない点とかいろいろあると思うのですが、そういう点はいかがですか。
  161. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 現在の私の立場で、国会委員会の席上で、戸惑っているということはもう言える立場にないというふうに思っております。私といたしましては、できるだけのことをやる、もうこれに尽きようかと思います。あるいはその結果につきましては、いろいろ御批判があろうかと存じますが、いずれにいたしましても、できるだけの努力は重ねなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  162. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、今後機会をとらえながら事情聴取をおやりになると考えていいわけだと思いますけれども、やはり同じようなことが繰り返されていって、そんなことを言える立場ではないんだというお答えなんですが、これからの事情聴取の内容については、最高裁としては決して期待が持てないというふうに理解していいのでしょうか。
  163. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 ここ数日、日時の経過とともに情勢がどんどん進んでおりまして、国会におかれましても、鬼頭判事補証人喚問を御決定になって、実現するかどうか、そして、恐らく国会の席上でどの程度述べるのか、それが真相なのかどうか、そのようなことも当然私どもといたしましては十分しんしゃくさせていただきたいと思っておりますし、     〔田中(覚)委員長代理退席、委員長着席〕 私どもはあくまでも私ども立場で、また本人について事情聴取をしなければならないときには、重ねて本人事情聴取を行うつもりでおります。
  164. 沖本泰幸

    ○沖本委員 日弁連は、鬼頭判事補問題について、司法の公正を守る立場から重大な関心を持たざるを得ないとして、鬼頭判事補のこれまでの訴訟指揮や言動について独自の調査に乗り出すことを決めたというふうに新聞にも載っておったように思います。日弁連は、訴訟指揮の件で、過去に幾つか不公正な訴訟指揮が見られたという話が出ていると言っているようですけれども、こういうふうな疑念を持たれるような訴訟指揮があったのでしょうか。この点どうですか。
  165. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 具体的な事件の審理の場において訴訟指揮に問題のあったということについては、現在のところ、私ども報告に接しておりません。ただ、法廷の場における出来事として、名古屋時代に、ある事件の際に法廷から飛び出したということがある紙に掲載されておりますが、そのことについては事情聴取をいたしました。また現にそういうことのあったことは、私どももかねてから承知しておったところでございます。
  166. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、訴訟指揮についてのいろいろな問題については、もう調査等は終わっておるわけですか、いまもまだずっと具体的な調査をおやりになっていらっしゃるのでしょうか。調査しているようでしたら、内容について報告していただけるかどうか。その点いかがですか。
  167. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 具体的な訴訟事件の審理に当たって、訴訟指揮がそれこそ飛び離れて非常識な訴訟指揮であるというふうなこともあり得ると思いますけれども、何せ裁判官のまさに中核である法廷での行為でございますので、調査といいましても十分慎重にしなければならないと思っておりますが、この事件の一環として、かつて勤務した地元裁判所に対しても、いわば世の指弾を受けるようなことがあったかないかについて、十分検討の上調査を指示したいというふうに考えております。
  168. 沖本泰幸

    ○沖本委員 きのうのNHKのテレビを見ておりましても、ニュースの時間ですけれども本人が都内の某所から電話をして、本人本人でないか確認がなかなかむずかしかったということで、もう一度電話で確認するために電話番号を問い直して確認したということも言っておられましたけれども本人に対して、最高裁との現在の関係はどういうふうになっておって、そしていま所在なり何なりというのは、本人が勝手に出てくるのでしょうか、所在はちゃんと最高裁の方に報告されておって、ここにおるということを言われておって、何かのときには事情を聞きたいのだという呼び出しに応ずる応じないというようなことになっておるのか。少なくとも現職裁判官である以上は、やはり所属もあるわけですし、そこの指揮監督を受けるということになりますから、それらとの関係、そういうものはどうなっているのでしょうか。職場を離れてしまって、いまはもう一私人としての自由行動をおとりになっているのだろうかどうだろうか、そういう点はどうなんですか。
  169. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 現職裁判官でございますので、仰せのとおり、所属の所長に対しまして自分の所在は当然報告せよというふうに本人にも所長にも指示いたしております。ただ、このようなことがありまして、やはり本人が、当然のことだと思いますけれども心身ともに疲れがあることやら、報道陣にいわば追い回されるというようなこともありまして、大分本人も苦労しているようでございますが、仰せのとおり、現職裁判官でございますので、あくまでも現在どこにいるというようなことは常に私どもないし京都地裁の方にわかるようにしてございます。  きのうは、私に電話がありましたときは、名古屋の自宅から電話があったはずでございます。先ほど稲葉委員にもお答え申し上げたのですが、けさほどは上京しておりまして、こちらからの証人の喚問状でございましょうかを受け取るためにきょうの午前中は在京しているはずでございます。
  170. 沖本泰幸

    ○沖本委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  171. 大竹太郎

    大竹委員長 この際、暫時休憩をいたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時十九分開議
  172. 大竹太郎

    大竹委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行します。正森成二君。
  173. 正森成二

    ○正森委員 私は、きょう、戦前の治安維持法によって宗教関係者がどのように迫害され弾圧されたかという問題について伺いたいと思います。  私がこの質問をいたしますのは、治安維持法というものが、暴力とか内乱といったようなものを取り締まるという法律ではなしに、思想あるいは信条ということによって結社を組織した者に対する断圧を行う法律であり、結局のところ良心の自由を持つ者に対する迫害であったということを、事実に基づいて明らかにしたいからであります。  そこで、まず最初に伺いますが、宗教団体関係者が治安維持法で検挙された人員というのは総計何人ぐらいになりますか。
  174. 安原美穂

    ○安原政府委員 お尋ねの件につきまして、当省に持ち合わせております資料によりますれば、昭和十年から十八年の末までの間に宗教団体関係者で治安維持法違反によって検挙されました者は千九百十一名となっております。
  175. 正森成二

    ○正森委員 千九百十一名の中には約二十四団体が含まれていると思いますが、これを全部各団体ごとにその人員を言いますと長くかかりますので、皇道大本教、天理本道、灯台社、創価教育学会、これだけについて、各何名検挙人員があるかお答えください。
  176. 安原美穂

    ○安原政府委員 皇道大本関係検挙者九百四十名、天理本道三百八十名、灯台社百二十三名、創価教育学会十一名、以上であります。
  177. 正森成二

    ○正森委員 私どもがたとえば皇道大本教関係について調べましたところ、検挙者は九百八十七名になっております。ですから、必ずしも法務省から提供していただいた数字が時点のとり方で正確でないと思われますし、刑事局長自身の御答弁によっても、たしか昭和十年から十八年までの検挙者数であるというふうにおっしゃいましたから、検挙された者は恐らく全体で数千名に上るであろうというふうに推測しても決して誤りではないというように思います。  そこで法務大臣に伺いたいと思いますが、宗教者が、他の刑法犯に触れる場合はともかく、治安維持法によって検挙されあるいは処罰されるということが現実に起こったわけですね。後ほど申し上げますが、中には不敬罪とあわせ処罰された方もありますが、現在の憲法体系では、単に布教に当たった、あるいは信仰を持ってその広宣流布を行ったというようなことを理由にして処罰されるということが現憲法体系上許されましょうか。
  178. 稻葉修

    稲葉国務大臣 許されるわけはありません。
  179. 正森成二

    ○正森委員 非常に大きな声で、許されるわけはありませんと、こうおっしゃいましたが、まことにそのとおりだというように私は思います。  そこで、治安維持法は大正十四年、それからその後昭和の初めと昭和十六年というように改正されてまいりましたが、昭和十六年三月に治安維持法が改正されて、新たに七条、八条が設けられました。この七条、八条といいますのは、「国体ヲ否定シ又ハ神宮若ハ皇室ノ尊厳ヲ冒涜スベキ事項ヲ流布スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ無期又ハ四年以上ノ懲役ニ処シ」云々という文言が新たに入ったものであります。なぜ昭和十六年にこのような新たな処罰規定が設けられたのでしょうか。
  180. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のとおり、治安維持法の七条、八条は、昭和十六年の改正で加わった条文でございますが、その改正の理由につきましては、当時の治安維持法改正法律案委員会における政府委員の説明によりますと、同法七条、八条関係の改正の理由といたしまして、御指摘のように、人心の不安に乗じ、一般大衆を対象として、神宮または皇室の尊厳を冒涜し、その他国民の国体観念を惑乱するような教義を宣布することを目的とする類似宗教団体に対して、当時の治安維持法の第一条、御承知のとおり、「国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ」というような治安維持法第一条を適用することが困難であったため、新たに「国体ヲ否定シ又ハ神宮若ハ皇室ノ尊厳ヲ冒涜スルコトヲ目的」とする結社及び集団に関する処罰規定を設ける必要があったという説明がございます。
  181. 正森成二

    ○正森委員 文部省が来ていると思いますが、類似宗教というのはどういうことですか。
  182. 石井久夫

    ○石井説明員 お答えいたします。  教派神道それから仏教それからキリスト教以外の宗教を言っていると思います。
  183. 正森成二

    ○正森委員 つまり当時公認の宗教団体といわれていたもの以外に新興宗教などがいろいろ興りましたが、それを類似宗教というように呼んだと通常考えられております。そこで安原刑事局長答弁がありましたが、私は、手元に、当時昭和十六年の七十六帝国議会において、当時の司法大臣は柳川平助氏でありましたが、その人が……(「陸軍中将だ」と呼ぶ者あり)これはいま同僚議員が言いましたように陸軍中将で、私も子供のころ新聞で読んだものであります。この人が提案理由の中でこう言っているのです。「治安維持法ハ、大正末期ヨリ昭和初年ニ掛ケテノ思想運動情勢ヲ背景トシテ規定セラレマシタル関係上、共産主義運動、殊ニ日本共産党ノ活動ヲ、主タル対象トシテ規定セラレテ居ルノデアリマス、然ルニ運動情勢ノ変化ニ順応シ、治安維持ノ目的ヲ達スルが為ニハ、……無政府主義運動、民族独立運動又ハ類似宗教運動等、各種ノ詭激思想運動ニモ、亦之ヲ適用スル実際上ノ必要ガアリマスルト共ニ、」云々「不備ノ点が多々存スルニ至ツタノデアリマス、」こういうように述べており、最後の方で「以テ高度国防国家体制ノ完璧ヲ期スル所以デアルト信ジ、茲ニ本案ヲ提出」というように言っておるのですね。つまり治安維持法の「国体ヲ変革」しというので、共産主義者を取っつかまえるということで十分だと思っておったが、それ以外にも類似宗教だとか無政府主義者とかいろいろ興ってきた。特に宗教団体というのは、国体の変革とまではなかなか言えない、しかし反対したり皇室の尊厳についてどうもぐあいが悪いところがある。それを不敬罪というような軽い刑罰ではなしに、治安維持法で、結社を組織しただけで無期懲役というような重い刑罰に処するということが高度国防国家をつくる上で必要だからこういうものをつくるのだ、こういうように柳川平助司法大臣が明白に言っておるということが言えると思うのですね。  そこで文部省の宗務課長に伺いたいと思いますが、当時政府は淫祠邪教の撲滅強化という方針を持っておったのではありませんか。
  184. 石井久夫

    ○石井説明員 私よく承知しておりません。
  185. 正森成二

    ○正森委員 法務省はいかがですか。
  186. 安原美穂

    ○安原政府委員 私も歴史家でございませんので史実は明らかにしませんが、いま随行の事務当局の者の知識をかりて申し上げると、当時公刊された文書等によればさような記載があるということでございます。
  187. 正森成二

    ○正森委員 これは歴史に属することでもありますけれども、現実に検察当局の対応として行われたことなんですね。だから、刑事局長は学をつけて答弁しなければならないということになると思いますが、私が指摘いたしますと、昭和十一年七月に、当時の光行検事総長が淫祠邪教の撲滅を強化するよう各地方検事局に指令しております。それを受けまして、内務省警保局の古賀強は、「あらゆる宗教というものを再検討しなきゃならないじゃないかという気持ちになった。それで当時の保安課長、局長まで進言して宗教係が出来、初代の主任が私になったわけです。大本事件で宗教係ができたのです。我々が信奉している日本の国体の本義は神社神道に端を発している。この神社神道に対抗してゆく諸宗教は、みんな治安維持法違反をひきおこしてゆく可能性をもっている」というように明白に言っているわけであります。  そしてまた、その後、大本事件を担当した京都地方裁判所検事局の三木晴信検事は、司法研究会でこういうことを言っております。「淫祠又は邪教の刻印を押される場合の動機、基準」ということで、五種類に分類いたしまして、その中の「政治上の標準」というところでこう言っております。「邪教の刻印を押す最後的決定権を有するものは政治的勢力である。宗教の教理が、時の支配権力や、国家組織と相容れない場合、又は当局の忌避に触れるが如き内容をもつときは邪教とせらる」、こういうように明確に言っております。これを見ると、宗教が邪教であるとされるかどうかということは時の政治的勢力が決めるのだ、特にそれは、「当局の忌避に触れるが如き内容をもつ」場合には淫祠邪教である、こういう考えでございますから、これが信教の自由と真っ向から対立するものであることはきわめて明白であります。  当時の憲法によりますと、「安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限」というような留保条件がついておりました。それがどんどんどんどん拡大されまして、時の政治的な勢力、その忌避に触れれば淫祠邪教である、こうなるわけですから、これはもう信教の自由だとか良心の自由というものはあり得ないことになると思うのですね。  法務大臣、まず最初に御答弁いただきましたが、私がいまのように説明した事実、その一端は安原刑事局長肯定されたと私は思いますが、いかがお思いになりますか。
  188. 稻葉修

    稲葉国務大臣 安原刑事局長よりは私がずっと年上ですから、そういう状態は身近に経験もいたしました。そんなことをやっているから戦争をしたり戦争に負けたりするんだな。自由にもっとおおらかにやっておかなければね。そういうことなんでございまして、時の政府に従わなければすべて宗教は邪教だ、こういう決めつけ方というものはあるものじゃない。私は、当時の政権者というのか、政治担当者というのか、行政の首脳部というのか、あるいは軍部もそうでしょうけれども、いかにも政治権力が国家組織のうちで最高のものという頭の間違いがあるんじゃないか、いまでも多少そういう傾向はありますが。政治は一番上なんじゃないのです。政治よりももっと上の宗教とか芸術とか学問とか、そういうものがあるということを知って、そういう事実を反省して、われわれはもっと謙虚にやらなければいかぬですな。
  189. 正森成二

    ○正森委員 私はおっしゃるとおりだと思います。ですから政治家たるものは、がつんと一発かますというような態度をおとりになるというようなことは、これはやはり慎まなければならぬというようにかねがね私は自戒しておるわけであります。  そこで次の質問に移りたいと思いますが、いま言いましたように、結局、神社神道ですね、これに反するというようなものはよろしくないのだという考えを持つわけですね。しかしそうだといたしますと、ほかにいろいろ宗教がある、公認された宗教あるいは類似宗教というのがある。そこで信教の自由で衝突してくるわけですね。これは神社参拝を強制する場合、あるいは天照大神の大麻というのですか、それを祭らせる場合いろいろ問題が起こってくる。それを切り抜けるために、神社神道あるいは国家神道とも言いますが、これは宗教ではないのだという便法で、この二つが両立するというのが歴史的な経過であったと思いますが、宗務課長、その辺について簡潔に説明してください。
  190. 石井久夫

    ○石井説明員 先生のおっしゃるとおりだと思いますけれども、要するに、終戦前、神社は行政上宗教として取り扱われず、国家の宗祀として特別の保護を受けていたわけでございます。明治四年に太政官布告が行われまして、神社は国家の宗祀であるとして特別な地位が与えられ、以後明治憲法の制定の際にも、神社につきましては、単なる国家の宗祀、祖先の祭りであって、憲法に言う宗教ではない、したがって、神社だけを特別に取り扱い、これに公的な地位を認め、国民に神社への参拝を強制しても、憲法に定める信教の自由にはもとらない、反しないという方針がとられ、これが、昭和十五年に施行されました宗教団体法というのがございますが、その宗教団体法まで原則的に引き継がれて、あの憲法の考え方がそのまま宗教団体法に生かされているわけでございます。したがいまして、神社につきましては、宗教団体法におきましても、宗教団体法の適用から除外いたしまして、特別な地位を与えられたわけでございます。
  191. 正森成二

    ○正森委員 現在の憲法において国家神道はそういうような地位を与えられておりますか。
  192. 石井久夫

    ○石井説明員 現在の憲法におきましては、もちろん、憲法二十条ですか、それから八十九条あたりにおきまして、信教の自由、また政教分離の原則というものが確立されておるわけであります。
  193. 正森成二

    ○正森委員 いま宗務課長答えたことは、もう近代憲法から言えば当然のことだと思うのですね。それを侵すような行為が次々に行われた。  そこで私は、その典型的な例を一つ二つ挙げてみたいと思うのですが、昭和七年に上智大学事件というのが起こりましたが、上智大学事件というのはどういう事件ですか。
  194. 石井久夫

    ○石井説明員 私ども、古い事柄でありますので詳しいことを承知しておりませんが、上智大学の学生が宗教的の信条によりまして神社に参拝しないということが起こりまして、これが問題になりまして、軍部の圧力により当該学生が処分された事件であるというふうに大まかには承知しております。
  195. 正森成二

    ○正森委員 これは当該学生が処分されただけではなしに、法務大臣にぜひ聞いていただきたいと思いますが、当時の軍部が、神社に参拝しないというような学生はけしからぬということで、それを意見として言うだけでなしに、カトリック系の学校から配属将校を引き揚げる、こう言っておどしたのですね。稲葉法務大臣は安原刑事局長よりもその当時のことはよく御存じだろうと思いますが、私も軍事教練を受けましたけれども、配属将校が引き揚げますと、学生に与えられている徴兵延期の措置、それから入営期間の短縮、幹部候補生の志願の特権というものが、これは軍事教練を受けなわけですから、全部奪われてしまうわけですね。そうすると、これはもうゆゆしいことだということで、ついに学校側は、神社は宗教でないということで、信者の神社参拝を認め、学生の参拝強制が正当化される、やむを得ずこういう措置をとったということになっているのですね。これは稲葉法務大臣はあるいは御記憶におありかと思いますが、こういうようなことは、いまは軍隊はなくて自衛隊があるだけでございますが、仮に自衛隊にしろ警察にしろ、こういう態度をとると言ったら大変なことですね。こんなことは断じてあってはならないことだと思いますが、いかがですか。
  196. 稻葉修

    稲葉国務大臣 断じてあってはならないことでありますのみならず、大体そんなことをやりはせぬわな。やろうったってやれるわけはないですね。
  197. 正森成二

    ○正森委員 そのやれるわけがないことが当時の治安維持法体制下では行われたんですから、治安維持法というものがいかなる法律でありいかなる体制であったか。だから、法務大臣も五月の私の質問に対して、暗黒裁判であると言えば言えるとか、暗黒政治であると言えば言える、もちろん比較の問題でありますが、こういう答弁をなさったんだろうと思われるわけです。  もう一つだけ挙げてみますが、同志社大学の神だな事件というのはどういう事件ですか。
  198. 石井久夫

    ○石井説明員 これは昭和十年かと思いますが、同志社の高等商業学校の柔剣道場でございましょうか、これが新築される際に、学生が学校当局に無断で神だなを設置した、これに対しまして学校当局が撤去をさせたとして配属将校が異を唱えまして、このことがやがて学校当局と軍部との対立にまで発展して、結局は先ほどのような事柄と一緒で、学校当局が軍部の圧力に屈して終局を見たということであろうと思います。
  199. 正森成二

    ○正森委員 いまの説明では一部が省略してありますが、ただ単に神だなを祭ったというだけではございませんでね、法務大臣、同志社大学の創始者は有名な新島襄先生でございますが、その肖像をわざわざおろして、その跡へ、当時の記録によりますと、三宅八幡神社の神符を神だなに祭った、こういうことをやったわけですね。だから同志社大学にとってはこれはもう大変なことですね。建学の精神を変えてしまうという象徴的な意味を持っておるわけですからね。ですから、これは信教の自由、良心の自由だけでなしに学問の自由にも非常に影響してくるというように思われるわけです。学者でもある稲葉法務大臣はどういう感想をお持ちになりますか。
  200. 稻葉修

    稲葉国務大臣 よろしくない。
  201. 正森成二

    ○正森委員 簡にして要を得て、よろしくない、こうおっしゃいましたが、それをやったのがまさに治安維持法体制なんだということを私は繰り返し指摘しておきたいというように思うわけであります。治安維持法がなければこういうようなことはなかなか行われなかったわけであります。  そこで次の質問に移りたいと思うのですが、皇道大本教ですね。これは第一次、第二次の大弾圧がありましたが、第二次の弾圧について伺います。  皇道大本教が、私の記憶するところではたしか昭和十年から十一年にかけてだったと思いますが、大きな弾圧を受けたと思いますけれども、この事件は治安維持法違反それから不敬罪等々で起訴された事件だと思いますが、そのうち治安維持法違反とされた理由ですね、これをお示しください。
  202. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のように、大本教幹部が治安維持法違反として公訴提起をされ取り調べを受けたわけでありますが、その治安維持法のいかなる部分に違反するのかということでございますが、治安維持法の第一条第一項所定の、国体を変革することを目的として結社を組織した、あるいは結社の役員たる任務に従事した、あるいは結社に加入した、あるいはまた結社の目的遂行のためにする行為をなしたというようなことに該当する、つまり治安維持法違反、国体の変革を目的とする結社組織、目的遂行行為ということで検挙されたものというふうに思われます。
  203. 正森成二

    ○正森委員 それは構成要件適用の経過を簡単に御説明になったんですが、大本教のどういうものが国体変革とされたのか、それは簡単におわかりになりますか。
  204. 安原美穂

    ○安原政府委員 要するに、大本教の教義内容が国体を変革することを目的としたものだという判断であったと聞いております。
  205. 正森成二

    ○正森委員 お聞きになりましたように、大本教の教義そのものが、つまり宗教の教義が国体を変革するというようにされて、事もあろうに死刑または無期という国体変革にひっかけられた。これは余りのひっかけでありましたから、その後第二審において、大阪の当時の控訴院において、高野裁判長が非常な勇断をもって、治安維持法関係については無罪ということで、無期懲役の出口王仁三郎氏、この方を懲役五年に減刑するということをせざるを得なかったという事案だと私は承知しております。  そこで、教義が国体変革とされたということで、私は手元に資料を持っておりますが、それを読み上げますと、非常に長い。第二審判決で、なぜ治安維持法に言う国体変革でないかということを、高野裁判長は詳細に説示しておられます。それを読みますと、それだけで三十分くらいかかりますから、全部省略いたしますが、ごく簡略に言いますと、どういうぐあいにこじつけたかというと、大本教における「建替え建直し」、すなわちみろくの世の実現の思想が——これは宗教ではよくそういうことを言いますね。恐らく現在非常に広宣流布している宗教でもそういうことをおっしゃることがあると思うのです。それが皇室の統治を否認することになる。王仁三郎というのは、前言った教祖のようなものですが、その人が統治者になるんだ、天皇にとってかわるんだというように決めつけ、それから極楽世界とか地上天国、これは宗教はだれでも申しますね。あるいはだれでもと言うと語弊がありますが、そういうことはよく言います。ところがそう言うと、それは現在の統治者を否認するんだ、地上天国、極楽世界、こういうことで広宣流布すれば現在の統治権者の権力を否認するんだ、こういうようにこじつけて、そして国体変革というすぐれて政治的な犯罪であるというようにしてしまったわけです。私はもってのほかだと思う。ですから、その点については法務大臣に改めて御見解は伺いませんけれども、法務大臣もそのとおりだと思われるに違いありませんから。そういうことであったわけであります。  そして法務省の御説明によれば、逮捕者が九百四十名、私の調査では約九百八十七名という莫大な逮捕者を出したわけですね。そのうち獄死した者は何人ぐらいおりますか。
  206. 安原美穂

    ○安原政府委員 当局で調べた結果によりますと、正確なことはわかりませんが、少なくとも二名はおるということでございます。
  207. 正森成二

    ○正森委員 少なくも二名ということでありますが、二名ではございませんで、もっと多く、獄死した者及び釈放されてすぐ死んだ者、それから獄中で自殺した者というような者を含めますと二十名を超えるというように歴史家及び教団関係者は申しております。しかし刑事局長自身も、少なくとも二名はいるということであります。ですから、治安維持法によって獄中で死亡したあるいは虐殺されたという者は、日本共産党員だけではないわけであります。宗教の幹部、そういう方に対しても、思想を持っておるがゆえに、信仰を持っておるがゆえにこういう弾圧を加えたのが治安維持法だったということを指摘しておきたいと思うのです。  それでは、こういうような信教のゆえに犠牲になられた方、その方の取り調べ状況は一体どういうものだったでしょうか。特高警察あるいは予審判事というものはどういう取り調べをしたでしょうか。宗教関係者の言い分をちゃんと聞いてくれたでしょうか。あるいは拷問の事実、暴行の事実というのは全くなかったでしょうか。
  208. 安原美穂

    ○安原政府委員 当時の事情はよくわかりません。
  209. 正森成二

    ○正森委員 わからないでは済まないと私は思います。当時の特高警察の記録だけではなしに、裁判所の記録に、公判の中になってから上申書が編綴されているはずであります。それはわかりませんか。
  210. 安原美穂

    ○安原政府委員 裁判記録に編綴されております上申書の中には、拷問を疑わせるような上申の事実があるようでございます。
  211. 正森成二

    ○正森委員 それでは、安原刑事局長がそこまでお認めになりましたから、法務大臣に聞いていただくために、非常に膨大なものですが、その上申書の一部を私の方で読みたいと思います。  昭和十五年の十二月二十七日大阪控訴院に上申書を提出いたしました東尾吉三郎、この上申書によりますとこう書いてあります。いろいろ自分の言うたことを言うたけれども信じてもらえない、こういう前提の上で、「私ノ申スコトヲ信ジテ戴ケヌナラバ何モ申上ゲルコトハアリマセヌト言ヒマスト 未ダ懲リナイカト鉄拳ヲ加ヘ足蹴ニセラレ 遂ニハ足ヲ頭上ニカケテ蹴リ倒サレルノデアリマス」云々、こうなって「御二人ノ警察官ハ忽チ立上ツテ 何ヲヌカスカト怒声ヲ張上ゲ左右カラ私ノ両頬ヲ乱打シ後ハ竹刀ヲ持ツテ処カマワズ打チ叩カレ 果ハ床上ニ引キ倒シテ足ヲ以テ全身ヲ蹴リ踏ミ 殆ンド私ヲシテ意識ヲ失ハシメル迄ニ暴行ヲ加ヘラレタノデアリマス …、コノ拷問ノ下ニ果シテ自分ノ真実が貫徹シ得ルデアラウカト危ブマレテ参リマシタ」「斯様ナ仕末デ作ラレタ警察ノ御調ベデアリマス……私ノ真意カラ出タモノデハナイノデアリマス」こう述べているのです。  出口伊佐男という人も同じように言っております。「急ニ椅子ヨリ引下サレ板ノ間ニ坐セシメラレマシタ 警部殿ハ」——ここでも「殿」を使っているのですね。読んでいて実にかわいそうですね。「警部殿ハイキナリ私ノ胸倉ヲ取ツテ平手デ頬ヲ二三度打タレ 「王仁三郎ハ既ニ自白シ髪マデ切ツテ更生ヲ誓ツテ居ルノニオ前ハマダ頑張ルカ是カラハ四ツ足扱ヒニスルカラサウ思ヘ」トテ散々ニ怒鳴リ付ケラレルノデアリマス」そして「否認スレバ 直チニ立上ツテ腕力ヲ加ヘヤウトノ気配ヲ示サレマス 尚「天皇陛下ノ御名ニ於テスル取調ベヲ何ト心得ルカ」「ドコマデモ頑張ルナラバアクマデ死ヲ賭シテ戦フ」」これは警部が言うておるのですよ。「等ト或ハ叱咤シ或ハ威迫サレ 実ニ心外千万ナル犯罪事実ノ肯定ヲ強要セラルノデアリマス ……四ツ足扱ヒト云ヘバ獣類扱ヒデアリマス」「ヨシ如何ナル拷問ヲ受ケマセウトモ最後ニハ自分ノ主張ヲ容レラレル見込ガアルナラバ私モ又徹底的ニ頑張ルベキデアリマス 然ルニ「アクマデ死ヲ賭シテ戦フ」トノオ言葉ヨリスレバ……之ハ単ナル威嚇デハナク徹底的拷問ニヨリ タトヒ死に至ラシムルモ自白セシメルトノ重大決意ヲサレテヰルモノト解スルホカナイノデアリマス」、こう言うておるのです。  あるいは、出口元男とか日出麿というのは王仁三郎の子供でありますが、「拷問にかけられ我が子のヒイヒイと苦しむ声を聞くは悲しき」「日出麿は竹刀で打たれ断末魔の悲鳴あげ居るを聞く辛さかな」、これは王仁三郎氏がこういう歌を詠んでおるわけであります。これを見ましても、どれくらいひどい拷問が行われたかということはほぼ推察がつくところであります。  あるいは、岩佐守の長男の正彦というのは、「昭和一一年四月中旬白河警察署に留置され、毎日深夜にいたるも眠らせないで一週間取調べをつづけられ、その間なぐる、蹴る、頭を下にして鼻より水を入れるなどの拷問をくりかえしおこなった。そのためついに強度の神経衰弱となり、病状悪化して、ようやく二カ月にして帰宅をゆるされたが、まもなく病死するにいたった」、こういう例があります。  あるいは、加藤利七という人物は、「取調べをうけるにあたり、焼火ばしを尻にあてて責められ、あおむけにたおされて警察官三、四人におさえられ、水を鼻にかけられて人事不省になった」、こういうぐあいに書いてあります。  あるいは、岩田久太郎というのは、六十二歳で「脚気衝心のため病死」と診断されましたが獄中で死亡しました。その獄中でうたった歌に「むちうたばわが身やぶれんやぶれなばやまとおのこの血のいろをみよ」、こう言うておるところを見ると、拷問によって血まみれになったであろうことは明らかであります。  そして、こういうようなひどい拷問というのは決して警察段階だけではありませんでした。たとえば予審判事もこういうような拷問とほぼ同じようなことをやっているわけです。  たとえば、出口王仁三郎氏の上申書が昭和十六年十月二十五日に出ておりますが、実に驚くべきことが書いてあります。つまり、後は上申書を引用しますが、「予審判事殿ハ大本ニハ一ツモ良イト思フ様ナ事実ハ発見出来ナイ徹頭徹尾悪イ事バカリダ 良ク見エルノハ「表看板」ダ「保護色」ダ「暗示」ノ陳列ダト仰セラレマシタ 被告ノ申上ゲル答弁ハ一言モ調書ニハ記入シテ下サラズ 出口伊佐男 高木鉄男 東尾吉三郎以上三名ノ予審終結書ヲ基トサレテ 毎日午前九時頃カラ一枚ノ厚イ紙二万年筆ヲ以テ自問自答ノ創作ヲナサレ被告人ニ対シテハ一言ノ御訊問モナク 彼ノ様ナ大部ノ調書ヲ十ケ月ノ日子ヲ要シテオ作リニナリマシタ 其ノ長イ間ヲ予審判事殿ノ御温情ニヨリマシテ三個ノ椅子ヲ与ヘラレ 之ヲ横ニ列ベマシテ一日中横臥シ 夕刻ニナツテ心ニモ思ハヌ恐ロシキコトノ書カレタル調書ヲ読ミ聞カサレ泣イテ署名拇印ヲ押シ 看守サンニ病体ヲ抱ヘラレ乍ラ監房ヘ帰リマシテ ヤツト息ヲツギ重湯ヲ頂イテ寝マシタ」、こう言っているのです。つまり、予審判事は十カ月の長きにわたって、一番中心である出口王仁三郎から一言も物を言わせないで、いすを三つ与えてそこで寝ておれということで、自分で自問自答して全部調書をつくってしまって、ただ判だけ押さした。  いいですか、大臣。これが治安維持法のもとにおける宗教者に対する弾圧の状況、特高警察の取り調べの状況です。予審判事といえば仮にも判事です。その判事が調書をつくった模様であります。これは裁判所の記録の中につづられておるものを印刷にしたものなんです。こういうことは絶対にあってはならない。こういうようなことが行われたのが治安維持法下の体制であったというように思いますが、そういうことについてどうお考えになりますか。
  212. 稻葉修

    稲葉国務大臣 そういうむごいやり方はよろしくないですね。島原の乱のときも、生きている者が二人とか三人とか、あとは全部三百何人殺された、そういう宗教史がありますがね。近ごろテレビ放送で夜行われている「必殺仕置人」とかああいうところに出てくる拷問と変わりないものね。よろしくない。はっと言って、征伐しなければならぬ、そういうことはね。しかし、いまはそういうことはありませんね。自由民主党の内閣も自由な、いい政治をやっているんじゃないですか。いまは非常に自由で、三木内閣もそんなに悪い内閣ではないでしょう。
  213. 正森成二

    ○正森委員 私が聞かないことまで御宣伝になったようでありますが、ロッキード特別委員会に行かれる時間が迫っておられるようですから、本当はもっと聞きたいのですが、あと一言だけ伺って、どうぞいらっしゃっていただきたいと思います。  そうしますと、ひとり宗教関係者だけを、大臣がけしからぬとおっしゃるような取り調べをした、しかし、本来の治安維持法の目的であった共産党員や共産主義者、その同調者に対しては、非常に結構な調べで拷問も何もなかった、任意の取り調べが行われたというようなことはちょっと考えられないと思いますね。国家にとっては、もともと治安維持法というのは共産党をやっつけるためにつくったのですから。それだけではどうも全部くくり切れないというので、治安維持法を拡大していったわけですからね。その拡大した、大本教というような——大本教というようなと言ったら失礼ですけれども、政治的な変革としては、国家にとってそれほど恐れなくていいものについてもこれだけのひどい扱いをするのだ。まして、その法律の、これでひっくくってやらなければいかぬ、こう思った集団に対しては、それらの人々が、私が岩田義道とか小林多喜二とかいろいろ例を挙げましたけれども、それに限らず、非常に厳しい調べが行われたであろうということは、これは蓋然性が強いんじゃないですかね。いかがです。
  214. 稻葉修

    稲葉国務大臣 蓋然性なしといたしませんな。  ただ、最初は、暴力をもって国家秩序を破壊する、そういうことを呼号しておった非合法の団体を取り締まろうという国のあれも全然間違っておったとは言えないと私は思いますよ。それがだんだん病膏肓に入って、宗教団体のところまでいって、だんだん戦争が進むに従って為政者の頭がのぼせてきた、こういうことなんじゃないでしょうかな。私はそう思いますね。それは初め、暴力をもって、団体を組織し、そうして国家、法秩序、憲法秩序を根底から破壊しようという団体をそのままにしておくわけにはいかぬというので治安維持法というものはできたのだから、だんだん改正されたりいろいろして、その改正されたときには清瀬先生とか、やはり疑問を持って、これはいかぬ、そんなにのぼせちゃいかぬ、こういうことが議事録に残っていますね。それが正しい公平な見方じゃないでしょうか。そう思います。
  215. 正森成二

    ○正森委員 いまの御答弁には二つ問題があると私は思うのです。昭和十六年の改正治安維持法がこの大本教の場合には適用されたのじゃないのです。その前の弾圧ですからね。だから、そういうぐあいに非常に拡大される前にすでにこういうことがやられているという点で、大臣の認識がお違いになるのじゃないかという点が一つ。  それからもう一つは、これはすでにわが党が予算委員会等で質問しておりますから、ここで長い時間をかけようとは思いませんけれども、治安維持法というのは、国体を変革する、あるいは私有財産制度を否認することを目的として結社を組織しさえすれば、暴力を使おうが使うまいが、議会制民主主義であろうがどうしようが、全部ひっくくれる法律なんですね。内乱でいくからいかぬのだとか、暴力を使うからいかぬのだというようなことは、治安維持法には一言も書いてないのですね。これは別に、内乱罪は内乱罪、暴力関係は暴力関係の取り締まり法規があるということでありますから、そういう点については、これは正確な認識を持っていただきたいというように思います。  念のために安原刑事局長に伺いますが、私が申しました昭和十六年以前の治安維持法が、これは暴力を使うから取り締まるのだというようなものではなしに、暴力を使おうが使うまいが、議会制民主主義によるものであろうがどうしようが、国体を変革し、もしくは私有財産制度を否認することを目的として結社をし、その目的遂行のための行為をすれば、それだけで処罰される法律であったというように解するのが法律的には正当ではありませんか。  それから第二に、共産主義関係で内乱罪等で処罰された者がおりますか。
  216. 安原美穂

    ○安原政府委員 昭和十六年改正前の治安維持法は、御指摘のとおり国体の変革、私有財産制の否認の結社の組織その他の行為を処罰するもので、暴力は要件ではございません。  それから、内乱罪で共産党関係で処罰された者もございません。
  217. 大竹太郎

    大竹委員長 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  218. 大竹太郎

    大竹委員長 速記を始めて。  それでは正森君。
  219. 正森成二

    ○正森委員 大本教関係につきましては、ただに逮捕、投獄されただけでなしに、大本教関係の建物ですね、信仰している人は神殿とか、いろいろな名前で呼んだようですが、それが全部破却命令を出されて取り壊されたというように聞いております。その法的根拠と破却の実施状況について御答弁願いたい。
  220. 鈴木善晴

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  現在の警察庁、御存じのように戦前の特高警察とは法律的にも制度的にも全く別個のものでございまして、特高関係の資料、警察庁には全然保管されておりませんので、御質問の事件の内容などについては、私ども全く承知していないわけでございます。  御質問の中に、大本教の建物の取り壊しのことが出ておりましたけれども、これも、いま申しましたように当時の記録が全くございませんので、そういう事実があったのかどうか、またそれがあったとした場合にどんな法律が適用されたのかということを私ども全く承知しておりません。
  221. 正森成二

    ○正森委員 承知しておらないというだけでは済まないでしょう。あなた方の前身と言うたら語弊がありますけれども、警保局ですね、そこが当時つくりました「特高月報」とか「特高外事月報」に載っておるわけですね。たとえば「特高外事月報」の昭和十一年の四月分と五月分には、破却状況の写真まで入れて報道されております。これは報道じゃなしに、当時の警保局保安課がつくって各県特高に送ったものですね。全然知らないですか。
  222. 鈴木善晴

    ○鈴木説明員 ただいま御答弁申し上げましたように、特高関係の資料、現在の警察庁には一切ございませんので、「特高外事月報」ですか、そういうものも見たこともございませんので、その内容がどういうことかについても承知しておりません。
  223. 正森成二

    ○正森委員 そんな答弁がありますか、あなた。わざわざそのために私は政府委員を通じて言うておいてあげたでしょうが。政府委員を通じて言うておいてあげたでしょう。そんなものは見たこともありませんというような、そんな答弁がありますか。どこにその復刻版があるとか、そういうようなことぐらいは知っているでしょうが。
  224. 鈴木善晴

    ○鈴木説明員 「特高外事月報」なるものの復刻版をどこかの出版社がつくって、それが国会図書館にもあるというようなお話は聞いておりますけれども、この出版物自体警察庁が監修してつくったものでもございませんし、その内容が当時の「特高外事月報」そのものであるかどうか、私ども確認のしようもございませんので、その内容について責任のある御答弁が申し上げかねる、そういうふうな意味で申し上げたわけでございます。
  225. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう答弁をしましたが、私は国会図書館から「特高外事月報」の復刻版を借り出してまいりました。これは当時の内務省の警保局の保安課が正式につくって、これは全国の特高警察に配付したものであります。それを国会図書館が残っておるものから復刻したものでありますから間違いがないというように思いますが、それを見ますと、建物破却の状況が非常にはっきりと出ております。ここには写真があります。写真では非常に壮大な建物が全部破却されておるということであります。しかも、その中の一文を読みますと、破却するにしても徹底的な破却であって、こういう記載があります。これは「特高外事月報」の十一年五月分の百四ページ以下に書いてありますが、「亀岡本部所在の月宮殿の如きは、頑丈なる鉄骨に網状の鉄筋を配したるコンクリート工事(口絵写真参照)を施して強靱堅牢を極め、数十発のダイナマイトを一時に爆破せしむるも僅かに局部的損傷を見るに過ぎざりしが、種々工作して主要部鉄骨鉄筋の露出を計りて之を酸素瓦斯にて溶解切断する等、異常の苦心を重ねて漸く之を破却し得たる実情にありたり。」こういうぐあいに書いております。  いいですか、宗教関係の建物をダイナマイト数十発を使って、それでも全部破壊できないで、いろんなことをして、異常な苦心をやって破壊したんだということを得々と書いておるのですね。  そうして、これは「特高月報」の記録ではありませんが、大本教関係者が、これは自分がやられたことですから、なぜこういうことが行われたかという命令関係を保存しております。それを見ると、これは「内務省は」昭和十一年の「三月十三日に本部及び地方を含む全教団建造物の強制破却処分を発令した。この発令は即日京都府に、次いで十五日には全国に示達された。これは「将来の信仰の対象として残ることを恐れて」という徳永検事正の談話(「大阪毎日新聞」昭和十一年二月二十八日)にも端的に示されている。」こういうぐあいになっております。そして京都府は、京都府達第二百十五号命令書で破却すべしという命令を出し、京都府達第二百十五号戒告書で、もし任意にやらない場合には「行政執行法第五条第一項第一号により官庁において破却行為を執行し、その費用を義務者より徴収する。右戒告す。」こういうぐあいに出しておるわけです。これが法的根拠であります。  そこで、文部省の宗務課に聞きたいと思いますが、現在こういうことがかりそめにも許されますか。
  226. 石井久夫

    ○石井説明員 現在の憲法のもとにおきましては、もちろん信教の自由の保障、政教の分離の原則ということが確立されておりますし、また、現在の宗教法人法はこれに基づきまして制定されているわけでございまして、宗教団体の自主的活動ということをば保障しているわけでございます。  こういう観点からいいますと、現在の法制のもとにおいて公的な立場から宗教法人の活動等に何らかの介入をするということがあり得るということは絶対にないと存じます。
  227. 正森成二

    ○正森委員 そこで法務省に伺いたいと思いますが、この大本教関係者では、二審では治安維持法関係では無罪になったということは申しましたが、それに間違いがありませんか。なお、これらの関係被告は、ポツダム宣言受諾後はどういうぐあいになったでしょうか。
  228. 石山陽

    ○石山説明員 お答えいたします。  大本教関係者につきましては、教祖の出口王仁三郎氏について不敬罪に関する部分が一部有罪として残ったほか、治安維持法関係部分は二審において全部無罪ということになっております。  なお、終戦後のいわゆる民主化措置に伴いまして、宗教関係に関します言論の自由関係の法律はいずれも廃止を命ぜられましたし、それによって仮に刑等を受けたりあるいは公判停止の者はいずれも政治犯としての釈放に当たる、あるいは大赦復権の対象になっているはずでございますが、大本教関係者は無罪ということで大審院も確定いたしておりますので、その関係におきましては、特別の民主化措置によらずとも無罪ということで確定したというふうに御了承願いたいと思います。
  229. 正森成二

    ○正森委員 そこで次に伺いたいと思いますが、創価教育学会の関係者を治安維持法として起訴したはずでありますが、これはたとえばどういう人が起訴されましたか。その起訴年月日とその理由を答弁してください。
  230. 石山陽

    ○石山説明員 ただいま御質問の創価教育学会関係は、終戦直前の昭和十八年の七月八日ごろ、創価教育学会の初代の会長でありました牧口常三郎氏外十名につきまして、治安維持法違反により検挙されたという記録が私どもの残存している資料のうちからうかがわれますが、遺憾ながら、この事件につきましては、戦前、戦後にわたる混乱期の時期でございましたので、現在記録が残存しておりませんので、その逮捕の際の事由あるいは被疑事実の詳細の内容ということについて御説明を申し上げることができませんので、遺憾でございますが、御了承願いたいと思います。
  231. 正森成二

    ○正森委員 創価教育学会の関係者が治安維持法のみで起訴されたことは間違いないと思いますし、それは当然のことながら、起訴年月日から見て、私がこの質問の初めに指摘いたしました昭和十六年による治安維持法の改悪といいますか、その第七条あるいは第八条によって起訴されたものであると思いますが、そうでしょうか。
  232. 石山陽

    ○石山説明員 罰条の適用状況につきましての資料はございませんが、私どもの推測では、先生と同じような意見を持っております。
  233. 正森成二

    ○正森委員 牧口常三郎氏はその後獄死したというように報道されておりますが、どの拘置所で昭和何年の何月何日に亡くなられましたか。
  234. 石山陽

    ○石山説明員 この関係につきましては、実は矯正局が記録を持っておりまして、私、所管ではございませんので、ただいまのところ資料がなくて、何年何月どこそこということは明確にはお答えいたしかねるのは申しわけございませんが、獄中から釈放されました直後に病死をされたような記録になっていると記憶いたしております。
  235. 正森成二

    ○正森委員 私の手元に法務省からいただいた記録があります。これは昭和五十一年の十月十五日に提出されたのですが、それには東京拘置所において昭和十九年十一月十八日に死亡しておる、こういうぐあいになっておりますが、これは法務省からいただいた資料ですから、それに間違いがないのではないでしょうか。
  236. 石山陽

    ○石山説明員 そのような資料が先生のお手元に参っておるとすれば、これは主管である矯正局から先生の方へお届けした資料だと思いますので、その記載に誤りがないと思います。先ほどの点につきまして、不正確な点は取り消します。
  237. 正森成二

    ○正森委員 そこで、創価教育学会がどのような被疑事実によって治安維持法として起訴されたかについては十分に資料がないのでお答えいたしかねるということですが、ここに先ほど私が指摘いたしました「特高月報」があります。これはこのころには「特高外事月報」が「特高月報」というように名前が変わっているわけであります。  その「昭和十八年八月分」を見ますと、牧口常三郎氏に対する訊問調書が載っております。この訊問調書を見ますと、どういう被疑事実で取り調べられたかということが非常によくわかるわけであります。そこで、私の方から簡略に申し上げたいと思います。  この「特高月報」の「昭和十八年八月分」百三十七ページ以下を見ますと、「創価教育学会の指導理念及目的は」から始まって、詳細に聞かれております。たとえばその中には、「広宣流布とは如何なる意味なりや」という質問もありますし、「法華経の真理から見れば日本国家も濁悪末法の社会なりや。」という質問もあります。また、「此の時押証第七号日蓮聖人御遺文を提示す。」とか、あるいは「此の時押第十二号日蓮宗綱要を提示す。」というところから見ますと、日蓮宗綱要やあるいは日蓮聖人の御遺文までが犯罪の証拠物件として押収されておるということは非常に明らかであるというように思われるわけであります。  そして問いの中には、「王仏冥合一天四海帰妙法と云ふ事は、上は 陛下より下国民に至る迄で日蓮正宗の本尊に帰依することなりや。」とか、「陛下が御本尊に帰依されて、其御心に従つて国家を御治めになると云ふ事になると 陛下の御自由の御意思が阻害されはせぬか。」というような問いが発せられております。あるいは「法華経の信仰をすれば無病息災の生活が出来るや。」という問いもあります。また、「御本尊と所謂日本の神々との関係は如何。」というような質問もあります。  そしてそれに対する答弁は、時間がありませんからもう詳細には申し上げられませんけれども、「伊勢の皇太神宮に対しましても、同様の意味で天照皇太神は天へ上つて後は空虚で悪鬼が入代つて居るから、そんな処へ参拝する必要なしと云ふのであります。」これは牧口常三郎氏の答えの内容であります。つまり、皇太神宮には参る必要はないということを言っておられるわけであります。また、「故に私達は忠孝の場合と同様一元的に「天皇一元論」で 天皇陛下を尊崇し奉ればそれでよし、伊勢の皇太神宮に参詣する必要なしとの信念で来ました。天皇陛下を尊崇し奉れば天照皇太神も尊崇し奉る事になります。」つまり、当時の創価教育学会の考え方は、伊勢の皇太神宮に参るというようなことは宗旨から見てどうかと思うけれども、皇太神宮というのは、あるいは伊勢の天照大神というのは天皇と同じことなんだ、われわれは天皇は尊崇しておるのだということを言っているわけであります。つまり、恐らく宗旨としては非常に遠慮をした言い方をされていると思うのですが、それでも治安維持法違反になっているということを私は指摘したいと考えているわけであります。また、「取払ひの対象となるものは如何なるものなりや。」という問いがあり、答えを見ますと、省略しますが、「伊勢大廟から出される天照皇太神(大麻)を始め明治神宮、靖国神社、香取鹿島神宮等其他各地の神宮・神社の神札、守札やそれ等を祭る神棚及び日蓮正宗の御本尊以外のものを祭つた仏壇や屋敷内に祭つてある例へば荒神様とか稲荷様、不動様と謂ふ祠等一切のものを取払ひ、焼却破棄さして居ます。」こういうぐあいに答弁されておりまして、「然らば被疑者が 皇太神宮の大麻や其他の神札等を撤去、焼却したものは何程位あるか。」「私の直接指導に依つて皇太神宮の大麻や其他の神宮・神社・仏閣等の神札・守札・神棚等を取毀し焼却した者は現在迄で五百人以上あると思ひます。」というようになっております。つまり、これから見ますと、天照大神と天皇様とは同じだと言っておっても、しかし天照大神は別のものであり、それは伊勢の皇太神宮に祭られているということを認めなければやはり治安維持法違反だ。そして、自分たちの信仰の、創価教育学会関係のものを家の中で祭り、ほかのものは祭らないということでなしに、伊勢神宮の大麻や国家神道の神札を掲げないということになればこれまた治安維持法違反であるということで取り調べを受けたということは、この取り調べ調書から恐らく明らかであろうというように思われるわけであります。  文部省、再度聞きますが、こういうようなことが、現在の憲法体系から見て、かりそめにも許されることですか。
  238. 石井久夫

    ○石井説明員 当時のことにつきましては、あくまでも旧憲法体制下に起こったことだと思いますので、私ここで論評することは適当でないかもわかりませんが、現時点において判断する限りにおいて申し上げますと、やはり問題があったのだろうということは言えるかと存じます。
  239. 大竹太郎

    大竹委員長 ちょっと、正森君、時間がありませんので……。
  240. 正森成二

    ○正森委員 終わります。最後の一問だけ……。  時間が参りましたので、委員長の御指示に従ってこれでやめさせていただきますが、問題があるという程度にとどまらず、これはとんでもないことだと言わなければなりません。私ども日本共産党は、「布教、伝道の自由をふくむ信教の自由を、いかなる体制のもとでも擁護する」「政教分離の原則をまもる」「宗教者の生活と寺院、神社などの文化遺産をまもる」ということを政策に掲げておりますのも、二度とこういうふうなことがあってはならないということをかたく信じているからであります。また、日本共産党と創価学会が一九七五年七月に、一九七四年十二月二十八日付でありますが、いわゆる共創協定というものを結びました。そこでも同じ趣旨のことについて合意されており、「創価学会は、科学的社会主義、共産主義を敵視」しない。「日本共産党は、布教の自由をふくむ信教の自由を、いかなる体制のもとでも、無条件に擁護する。」というように定めておりますのは、この苦い経験を二度と繰り返すような社会をつくってはならないと考えているからであります。  私が歴史的な事実を含めてきょうこのような質問をいたしましたのは、治安維持法がこういうように宗教を弾圧したのだ、そのための取り調べというのはいかにむごたらしいものであったかということも指摘して、再びあの暗黒の政治をこの日本において繰り返さないためであるということを指摘しておきたいというように考えているからであります。  これで質問を終わらせていただきます。
  241. 大竹太郎

    大竹委員長 次回は、来る二十九日午前十時理事会、十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十八分散会