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1976-10-28 第78回国会 衆議院 懲罰委員会 第3号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
五十一年十月二十八日(木曜日) 午前十時六分
開議
出席委員
委員長
宇田
國榮
君
理事
奧田 敬和君
理事
木野 晴夫君
理事
三塚 博君
理事
田邊 誠君
理事
東中 光雄君 片岡 清一君 小島 徹三君 羽田 孜君 綿貫 民輔君 山口 鶴男君 沖本 泰幸君 玉置 一徳君
委員外
の
出席者
議 員
紺野与次郎
君 議 員
渡部
一郎
君 議 員 小沢
貞孝
君 ————————————— 本日の
会議
に付した案件
議員紺野与次郎
君
懲罰事犯
の件 ————◇—————
宇田國榮
1
○
宇田
委員長
これより
会議
を開きます。
議員紺野与次郎
君
懲罰事犯
の件を議題といたします。 この際、
本人紺野与次郎
君から
身上弁明
をいたしたいとの申し出がありますので、これを許可いたします。
紺野与次郎
君。
紺野与次郎
2
○
紺野議員
十月十五日の
衆議院
本
会議
で、
渡部一郎
君外一名提出の私を
懲罰委員会
に付する動議が、わが党と社会党などが反対したにもかかわらず、
公明党
、
民社党
、大多数の
自民党議員
及び新自由クラブによって可決されました。 私は、
国会
における言論の自由と
議会制民主主義
を守り、また
日本共産党
と
宮本委員長
に対する許すことのできない
謀略的反共宣伝
を打破するために、私に対する
懲罰
に断固反対し、一身上の
弁明
を行うものであります。 本
委員会
で
懲罰
の対象となっている私の
発言
は、そもそも
会議録
にも記録されていない議席からの
発言
、いわゆる
不規則発言
であり、かつて
懲罰
されたことのないものであり、これを
懲罰
に付することはまことに不当なものであります。 昨日の当
委員会
において、
渡部
君は、本
会議
での私の
弁明
に対して、
治安維持法
、
特高警察
によって
弾圧
されたみずからの
体験
をことさらに強調して
行為
の
正当性
を主張しているが、私の
行為
は
民主憲法下
においてなされたものだなどと述べております。
渡部
君の
発言
のこの論理こそ、まさに私が
批判
しているところなのであります。 私の
抗議発言
が現
憲法下
の
行為
だというなら、
矢野
君の
質問
も現
憲法下
の
行為
であります。わが党の
宮本委員長
に対する
治安維持法等被告事件
の中から、
スパイ挑発者
に対する
調査状況
の問題だけを勝手に切り離して、それがまるで
治安維持法事件
とは無
関係
に存在するかのように扱っているのが
矢野質問
なのであります。こういう
やり方
で、現
憲法
が
人類普遍
の
原理
に反するものとして排除している
治安維持法
のもとの
暗黒裁判
の
判決
を絶対化しているのが、
矢野質問
であります。すなわち、
矢野質問
こそ現
憲法
の精神に反する
やり方
で、
戦前
の
暗黒政治下
の問題を現
憲法下
で持ち出しているのであります。私の
抗議発言
は、まさに
暗黒政治
に事実上無
批判
な
矢野質問
に対してなされたのであり、私の
弁明
が
戦前
の
暗黒政治
に言及するのは当然であります。
渡部
君の議論は、私の
抗議発言
の
動機
を考えようとはしない
態度
のあらわれであり、
動機
についての
弁明
の権利さえ実際には否定するに等しいものであります。私の
抗議発言
を
矢野質問
とは無
関係
に、したがって、
矢野質問
に示された
暗黒政治
に対する
態度
の問題とは無
関係
に論じることができると考えるその論理こそ、
治安維持法
、
特高警察
、
暗黒裁判
とは無
関係
に
スパイ
調査
問題を論じる
矢野質問
の
態度
の繰り返しであり、われわれが
批判
していることなのであります。
渡部
君の議論は、結局、
矢野質問
のように、
治安維持法
と切り離して
スパイ
調査
問題を論じるのはよいけれども、
治安維持法
と結びつけて論じるのは悪いというようなものであります。そして、私の
抗議発言
の
動機
を頭から無視することで、
矢野質問
の
不当性
が問題になることを回避しようというものにほかなりません。 私の
抗議発言
は、
矢野質問
に示された
暗黒政治
に対する
態度
と密接な
関係
があります。それを理解しようとしない
渡部
君のような主張があるので、私は、再度この問題を明らかにしないわけにはいかないのであります。 第一に、私の
発言
は、
矢野
君の
質問演説
に対する、私の
体験
に基づくや
むにやまれぬ抗議
の声だったのであります。私は、本
会議
で述べたように、
戦前
の暗い時代を二度と繰り返してはならないという
歴史
の
生き証人
の一人として、
治安維持法
や
特高警察
による
犠牲者
にかわって
抗議
の声を上げずにはいられなかったのであります。 すでに、本
会議
で私
自身
の
体験
を述べましたが、当時の
暗黒政治
と
特高警察
の
弾圧ぶり
は、令状によらない
逮捕
と長期の
警察勾留
、
拷問
、
虐殺
、
長期刑
と獄中の非
人道的処遇
、
獄死
など、言語に絶するものがあり、その結果、
岩田義道
や
小林多喜二
らの
虐殺
となり、わが党の
指導者市川正一
氏、
哲学者三木清
氏、
創価教育学会
の
牧口常三郎
氏らも
獄死
させられました。また、数十万の人が検挙され、七万五千六百八十一人が送検され、千六百人以上の人が
獄死
しました。私は、
体験者
の一人として、二度と再びこのような
人権弾圧
の制度を許してはならないとかたく決意しております。 このよう検挙、
弾圧
は、
治安維持法
によったものであり、この
治安維持法
と
特高警察
による
恐怖政治
こそ、
日本国民
をあの
侵略戦争
に駆り出し、三百十万人の生命を奪い、国土を焦土と化したのであります。
日本共産党
は、このような
治安維持法
と
特高警察
による迫害に抗して、この
暗黒政治
がもたらす
侵略戦争
に反対して、一貫して闘ってきました。 今日、
日本国憲法
は、その前文に示すように、
治安維持法
や
特高警察
や
暗黒裁判
を、
国民主権
と不可侵の
基本的人権
という
人類普遍
の
原理
に反するものとして、明文で排除しております。しかるに、
矢野
君は、この
暗黒
、
弾圧政治
と
侵略戦争
を厳しく究明しようとはしないで、これと命をかけて闘った側をさまざまな口実で非難、攻撃する
質問
を行ったのであります。
矢野
君のこのような
質問
に対し、私
自身
の
体験
からほとばしり出た憤りの声で
抗議
したことは、現
憲法
の
民主主義的原則
に立った
正義
の声だったことを、私は改めて強調しておきます。 この際、私は、
懲罰動議
の
趣旨説明
に関して、聞き捨てならない侮辱的な
発言
について、
抗議
し反論するものであります。
渡部
君は、私の
発言
が日ごろの「温厚さから見て、」「同君の本意ではなかったのではないか、また、同君は
自身
の
発言
にあるいは率直に釈明したかったのではないかとさえ考えられまするが、しかし、それが周囲の状況により不可能になったと思えて仕方がないのであります。」と言ったのであります。私は、四十八年前から
暗黒政治
と
侵略戦争
に反対して闘ってきました。だからこそ、
矢野
君の
発言
に厳しい
抗議
の声を発したのであります。
渡部
君がその本意でないことを
国会
で
発言
しているのかどうかは、私の関知するところではありませんが、この私が本意でもないことを言ったかのように言うことは、
日本国民
の苦難の
歴史
の
生き証人
の一人である一
政治家
への重大な侮辱であります。 私の
抗議
の第二の理由は、
矢野
君が、わが党の
宮本委員長
に対する
治安維持法下
の
暗黒裁判
の
判決
を全く無
批判
に扱ったことに対する憤りにあります。 当時、
宮本委員長
らは、
日本共産党
の
指導者
として、
暗黒政治
と
侵略戦争
に反対し、
主権在民
、
民主主義
、
国民生活擁護
及び平和のために闘いました。 その際、
特高警察
が当時、党の
中央
に潜入させた二人の
スパイ挑発者
を摘発し、
調査
したのであります。これは、今日、現
憲法
で保障されている
結社
の自由、
政治活動
の自由を守るために当然の、正当な
政治活動
、
防衛措置
であったのであります。それを
矢野
君は、「リンチ的な
行為
が」「あったのでしょうか、なかったのでしょうか。」と問い、あたかも
宮本
氏が
治安維持法
とは無
関係
に
刑法
上の
罪名
のゆえに
重刑
を科せられたかのように印象づけようとしたのであります。
矢野
君の
質問
が取り上げた四十三年前の
宮本
氏らの
事件
は、すでに
参議院
でわが党の
上田耕一郎
君、
衆議院
では正
森議員
、
諌山議員等
の追及によって明らかにされたように、正式には
治安維持法等被告事件
と呼ばれるべきものであります。いわゆる
スパイ
調査
問題もまたそれに付随した一部をなすものであります。この点でも、
矢野
君の
質問
は本末を転倒して、木を見て森を見ないものと言わざるを得ません。 その森とは、当時の
暗黒政治
の全
体制
と
侵略戦争そのもの
であり、これと勇敢に闘った
日本共産党
と
宮本顕治
氏や私
たち
の
歴史的闘争
であります。 この
闘争
こそ、
日本
の
暗黒政治
と半ば封建的な
社会体制
に対して、より明るい
民主的改革
を求めたものであり、
歴史発展
の必然的な方向、
人類普遍
の
原理
の実現のために奮闘したものであり、当時における最大の
正義
であったのであります。これを
弾圧
した旧
憲法
と
治安維持法
の
反動的体制
こそ、
人類普遍
の
原理
に反したものであり、現
憲法
で排除されたことは
国民
だれもが知っているところであります。 しかるに、
民社党春日委員長
も、
公明党矢野書記長
も、
暗黒政治
を告発するのではなしに、逆にこれと闘った
日本共産党
と
宮本委員長
らにもっぱら攻撃の矛先を向けていることは、平和、
民主憲法下
の
政治家
として憤激にたえないところであります。 私はここに、当時私
自身
体験
した
治安維持法
と
特高警察
による
弾圧
の
犠牲
の総体及び
侵略戦争
の
犠牲
の総体について、
歴史的告発
を行うものであります。
治安維持法
と
特高警察
による
犠牲者
、
特高警察
の
拷問
、
虐殺
六十五人、
拷問
、虐待が原因で
獄死
百十四人、病気、
衰弱等
による
獄死
千五百三人、
逮捕
後の
送検者
数七万五千六百八十一人、
逮捕者数数
十万人。
侵略戦争
による
犠牲者
と被害、一、
日本
戦死、
戦病死者
二百三十万人、
海外死亡民間人
三十万人、
国内戦災死亡者
五十万人、以上小計三百十万人。焼失、
破壊家屋
四百九十五尺
戦災罹災者
八百八十万人。 二、外国
中国人死者
一千万人以上、ベトナム、インドネシア、フィリピン、インド八百六十万人。 以上のような
治安維持法下
の当時の
反動的体制
と、これに反対する闘いという高度に政治的な問題から切り離して、これに付随する
結社
の自由をめぐる
日本共産党
の
党組織
の防衛に絡む
スパイ
調査
問題だけを、しかも逆さまに針小棒大に大騒ぎをする
反共宣伝
が、自民、公明、民社の共同で展開されています。
特高警察
は、
裁判
にもかけずに
岩田義道
や
小林多喜二
らを
拷問
で
虐殺
したが、これこそ
リンチ殺人
ではないのか、その
虐殺者
はだれなのか、その
犠牲者
に国家としてどのように謝罪をしたのか、これこそ追及されなければならないことであります。 私はここで、現
憲法
第二十一条で保障している
結社
の自由が当時いかに迫害され、
特高警察
による卑劣きわまる
スパイ挑発政策
が横行していたかについて、私の
体験
を申し述べたい。 有名な
スパイM
、松村こと
飯塚盈延
について本
会議
でも述べましたが、この
スパイ
が党の
指導者上田茂樹
氏を
特高
に引き渡し、やみからやみに消してしまい、さらに
拷問
で
虐殺
された
岩田義道
氏や私
たち
を一九三二年十月三十日の一斉検挙の手引きをして姿をくらましました。この
スパイM
が十月初め
東京大森
の川崎第百銀行の
強盗事件
を
特高
の指示のもとに計画、実行して、
特高警察
はこれを
日本共産党
がやったと大々的に宣伝しました。これは、すでに開始されていた中国への
侵略戦争
を
国民
の不満をそらして推進するために仕組まれた
権力犯罪
であります。 しかも、
特高首脳部
は、
スパイ飯塚盈延
に大金を与えて姿をくらませ、その後、
飯塚
は終生、社会からの
逃亡者
としての生活を行い、待合に隠れ、
北海道
と満州を往復し、終戦後偽名で帰国して以来本籍を隠し、偽名を使い続け、元
特高
らに消されることを恐れ、一室に閉じこもり、昭和四十年酒におぼれて
逃亡者
としての悲惨な生涯を終えています。しかし、生地の本籍上の
飯塚盈延
はいまでも生きていることになっています。これは
スパイ飯塚
が当時の
権力犯罪
の悪どさを知る
生き証人
として消されることを恐れた
逃亡生活
の結果であります。その被害はその家族、子供らに及んでおります。 私は、有名な
作家小林多喜二
氏を
特高
に売り渡して
虐殺
させた
スパイ三船留吉
を初め、
大泉兼蔵
その他の
スパイ
を直接
体験
して見、聞きしてきました。このような
結社
の自由を破壊する卑劣な
スパイ活動
は
戦前
も戦後も断じて許してはならないものであります。
宮本委員長
らが当時、
特高
が
党中央
に潜入させていた二人の
スパイ挑発者
を発見して、その
調査
をし、これを除名にする方針をとったのは、自由と
民主主義
、
侵略戦争反対
の
日本共産党
の
政治活動
を行うために、避けることのできなかった当然の
正義
の行動であります。 ところが、たまたまこの
調査
中
スパイ
の一人が
急変状態
で発見され、
宮本
氏らはその回復のために努力したが死亡するという予期しない不幸な事態が生じたのであります。
特高警察
はこれを利用して、
宮本
氏らを
殺人者
に仕立て上げようとしたのであります。 これに対し、
宮本
氏は
暗黒裁判
の困難な条件の中で公判で
全面的反論
を行い、わが党の
スパイ挑発者
に対する最高の処分が除名であり、摘発された二人が正真正銘の
スパイ
であるだけでなく、持ち逃げ、
拐帯等
の
破廉恥行為
を党内に持ち込んだ
挑発者
であり、
調査
は全体として平穏に行われたことなどを事実に基づいて明らかにして、
指導権争い
だとか、殺害を共謀だの、
リンチ殺人
だのということが
特高警察
のつくった虚構にすぎないことを明白にしました。 また、急死の原因についても、
鑑定書
について
学問的批判
を加え、
特異体質
による
ショック死
、あるいは
急性心臓死
、すなわち
内因性急死
と見るべきことを主張しましたが、これは最近の
専門家
の研究によってもその基本的正しさが裏書きされているものであります。だからこそ、
殺人
や
殺人未遂
という
特高警察
のつくり上げた筋書きは、当時の
暗黒裁判
でもそのまま通すことができなかったのであります。 しかし、当時の
裁判
は
弁護人選任
の自由も奪い、
証人喚問
の要求を拒否し、
控訴権
さえ剥奪し、一方的に
有罪
と認定したのであります。 これは結局その大前提に
治安維持法
があり、これによって、
宮本
氏が
日本共産党
の
指導者
として活動すること自体を頭から重罪と決めてかかる
態度
があったからであります。 問題の核心は、
思想
を処罪の対象にしたということであり、したがって
転向
、非
転向
の別によって量刑を決めたということであります。
宮本
氏は非
転向
の
党中央委員
であるため
無期懲役
の
判決
を受け、
転向
した
中央委員
の一人は
懲役
五年、
未決通算
九百日になり、
スパイ
の一人も、名目的に
中央委員
であったため、
治安維持法違反
とされて
懲役
五年、
未決通算
七百日を科せられたのであります。 この事実は、
宮本
氏らの
裁判
がまさに
思想
を裁くもので、
刑法
上の
罪名
などはつけ足しにすぎなかったことの有力な証明であります。
宮本
氏につけられた
刑法
上の
罪名
は、
日本共産党
の
指導者
としての活動と一体不可分に伴ったものとされ、
治安維持法違反
と
刑法
上の
罪名
との
関係
を、一個の
行為
として数個の
罪名
に触れる場合、すなわち、
観念的競合
の
関係
にあるとして、
無期懲役
の
判決
が行われたのであります。つまり、すべてが
政治犯
という認定で最も重い
治安維持法
によって処断、
弾圧
されたのであります。 こうして
宮本
氏の
事件
は、
治安維持法等被告事件
と呼ばれ、
宮本顕治
氏に対する
無期懲役
の刑も、当時の
暗黒政治体制
の打破と
日本民主化
の
闘争
に対する
治安維持法
による
重刑弾圧
として科され、特に
民主的体制
への変革と
侵略戦争反対
の
闘争
の
思想
に対して加えられた
重刑
だったのであります。 このような、現
憲法
が排除した
治安維持法
による
暗黒裁判
を何か公正な
裁判
であったかのようにみなし、しかも
スパイ
調査
問題が
治安維持法事件
とは別個に存在するかのように扱う
矢野
君の
発言
に対し、私が
抗議
の声を上げたのは当然であります。 第三に、私は本
会議
で、私の
発言
が、
宮本委員長
の
復権
に関する
矢野
君の
発言
が戦後の
民主化措置
を正しく理解しないでなされたことに対する
抗議
であったことを述べました。
公明党
は、創価学会の
初代会長牧口常三郎
氏の
獄死
や、二代目
戸田会長
の入獄などについて何の教訓も感じていないのでしょうか。また、私が当時の
特高警察
による迫害の
体験
を述べると、
公明党
の諸君が笑ってそれが何の
関係
があるかと言っているのを見ると、 ————————————————————— この
民主化
に当たっては、急激で重大な
価値転換
が行われたのであります。
日独伊
三
国防共協定
による
ファシズム
、
軍国主義同盟
に対して、
世界
の反
ファシズム
、
民主主義
の
統一戦線
が形成されて、
日独伊
の
ファシズム
、
軍国主義
の敗北となり、
世界
の反
ファシズム
、
民主主義
の勝利となったのであります。そして、
ポツダム宣言受諾
によって、
専制的天皇制
の主権在君と
基本的人権否定
の
憲法
の機能は停止され、
治安維持法
などの
弾圧法令
と
特高警察
の
廃止解体
、すべての
政治犯人
の
釈放
などが行われたのであります。この
軍国主義
の解体と
日本民主化措置
こそ、
ポツダム宣言
にうたわれた
民主主義
の勝利の最大の目標であり、その重要な試金石がすべての
政治犯人
の
釈放
であったのであります。
世界
における多くの
民主主義的変革
の
歴史
において、その転換の重要な指標の一つは
政治犯人
の
釈放
であります。
戦前
の
日本
の
民主主義運動
においても、
日本共産党
の
綱領的要求
としても、すべての
政治犯人
の
釈放
は重要な要求として闘われてきたものであります。 当時の
日本政府
は、これに抵抗しました。一九四五年十月四日の
政治犯人釈放
などについての
連合軍指令
、
釈放
された
政治犯人
すべての
復権
に関する一九四五年十二月十九日の
連合軍指令
、それを実施するための
ポツダム勅令
七百三十号は、人類の普遍の
原理
となっている、
反動的体制
から
民主主義体制
への転換に際してのすべての
政治犯
の
釈放
という
世界
の
民主主義勢力
の意思を示しているのであります。 しかるに、
日本民主化
に抵抗していた当時の
日本政府
が、
宮本委員長
らの
復権
について
勅令
七百三十号第一条
ただし書き等
で抵抗しようとしても、そのようなことは通らなかったことは当然であります。そのことは、
宮本
氏が一九四五年十月四日指令による
釈放政治犯
として
釈放
当時から
連合軍
に報告されていた事実、それが
連合軍
と
日本政府
の十分な検討の上で行われていた事実、
釈放
によって
刑法
上の
罪名
も
政治犯
として扱われた事実、したがって、
勅令
七百三十号で
公民権
を当然回復すべきものとして
連合軍
から
日本政府
の
法解釈
がただされた事実等々、当時の
連合軍関係文書
などの発見によって明らかとなった事実によって、ますます明確になっております。
矢野質問
は、これらの戦後
日本民主化
の措置の絶大な意義をつかめないことを示し、今日の時代の
日本民主化
の
歴史過程
の本質と方向をつかめない政党の弱点をまざまざとさらけ出したものと考えざるを得ません。
黒柳議員
らが「
宮本委員長
の
釈放
は
マッカーサー元帥
の間違いで
釈放
になったのだ」等と、当時の
日本
の
司法当局
の
民主化サボタージュ
を指摘できない
立場
の
法務当局
でさえ言わないようなことまで
演説会
で言っていることは、これを重ねて証明しております。
矢野
君はまた、
勅令
七百三十号の「将来ニ向テ其ノ刑ノ
言渡
ヲ受ケザリシモノト看
做ス
」という
規定
の
法的意味
について
質問
しましたが、これに対し、
稻葉法相
は、「過去の
犯罪
事実がなくなったり
有罪
の
確定判決
があったという事実
そのもの
までが否定されるものではありません。」と答えましたが、
稻葉法相
のこのような見解はすでに前
国会
でも述べられていたものであります。
矢野
君の
質問
が、その
稻葉答弁
を再度引き出して、今日なお
宮本
氏に対する
判決
が有効ででもあるかのような印象を与えようとするものであることは、まことに見え透いており、私はこれに
抗議
したのであります。 実際、
矢野
君は一日の
記者会見
で、「
判決
が無効だとかを意味していないことがわかった」と述べていますが、これは、今日では
判決
がすでに効力を失っているということをも無視したものであり、
法務当局
でさえ言っていないことであります。 大体、
稻葉法相
の答弁でわかったなどというのが奇妙なことであります。
稻葉法相
は
勅令
七百三十号の
文言
を「奇妙きて
れつ
」などと言って、
民主化法令
としての
勅令
七百三十号の意味を全く解していない人であります。
勅令
七百三十号第一条本文は、読めばわかるように、
治安維持法等
によって「
刑ニ処セラレタル者
」である
政治犯
を「刑ノ
言渡
ヲ受ケザリシモノト看
做ス
」というのであります。これは
恩赦令
の
文言
、すなわち大赦の場合に「刑ノ
言渡
ヲ
受ケタル者ニ付テハ其
ノ
言渡ハ
将来ニ向
テ効力
ヲ失フ」といった
規定
と明らかに異なるものであります。つまり、恩赦の場合は、
有罪判決
を受けた事実は変更せずに、今後は
有罪判決
を失効させるとしているのに対して、
勅令
七百三十号は、それにとどまらずに、もともとの
有罪判決
を受けた事実自体をなかったことにするというのであります。
恩赦令
では、大赦の場合に「未タ刑ノ
言渡
ヲ
受ケサル者ニ付テハ公訴権ハ消滅ス
」という
規定
がありますが、
勅令
七百三十号の
文言
は、それと同様に、
公訴権消滅
と同様の状態にまで戻ったことにするというのであります。したがって、
有罪判決
を受けなかったのと同じなのですから、当然、
有罪判決
を受けた事実があるなどと今日言うことはできません。いわんや、
判決
がかつて認定したような
犯罪
事実もあったなどと今日言うことは、全く許されないものであります。
勅令
七百三十号のこの
規定
は、
治安維持法
を初めとする
弾圧法令
で
国民
を罰したことが間違いであったとする
民主主義
の
立場
、
ポツダム宣言
や
政治犯釈放等
に関する
連合軍指令
の
立場
に立てば、きわめて当然のものであります。これを「奇妙きて
れつ
」などと言うのは、
民主化措置
の意義をよく理解できず、
治安維持法
で
国民
を罰したことは当時は間違いでなかったかのように考えているものであります。ところが、革新と自称するはずの
矢野
君は、
治安維持法
を
日本共産党
への
対抗手段
として当然だったと言い、
民主化措置
を「奇妙きて
れつ
」と言うような
立場
に立つ
稻葉法相
の答弁を再度引き出すこととなる
質問
をあえてしたのであります。私がこれに
抗議
したのは、きわめて当然のことであります。 第四に、
矢野
君の
質問
が見え透いた口実のもとになされたことについての
抗議
です。
矢野
君は「前
国会
、私は余り関心がなかった」と言っているが、
公明党
は二月十五日、徳島の
二宮文造
副
委員長演説
、三月三十一日、
東京港
区
白金小学校
での
川崎都議
の
演説
、四月三十日の練馬区
富士見小学校
での
矢追秀彦議員
の
演説
、さらに八月以降は一層激しく
宮本委員長
を
リンチ殺人者呼ばわり
をしました。八月八日、
大阪枚方
市で
矢追議員
の
演説
で「もし依然としてがたがたやるなら、私
たち
もいろいろ反撃をしたい。
宮本委員長
の一番いやな
すね傷
に私
たち
さわらざるを得ません。すなわち
リンチ殺人事件
です。」、同じく八月十八日、
大阪交野
市で
近江巳記夫議員
は「
共産党
はどうかというと、一つは
宮本委員長
のいわゆる
リンチ殺人罪
であります。」、九月六日、神奈川県藤沢市で竹入
委員長
は
ロッキード疑獄事件
と対比して「あれ以上に悪いのは
殺人
だ。これ以上悪いのはない。いろいろの本を読んでみればわかる。……
殺人
の刑期が完了しているかどうかわからないと
春日一幸
が叫んでいる」と
演説
し、九月十八日、
大久保直彦議員
は、(「それは
国会外
での
発言
だ」と呼び、その他
発言
する者あり)中野区の
演説会
で、「今度の
国会
でこの
宮本灰色委員長
さんの追及をしなければなりません。……その
宮本委員長
の
リンチ事件
までを、
国会
で徹底的にやりたいと思いますがよろしく。……これからがんばりますのでよろしくお願いします。」と言い、九月十九日、
北海道芦別
市でも
相沢参議院議員
も「
宮本
現
委員長
の
関係
した
リンチ事件
」として
共産党攻撃
をやりました。 このように、
矢野書記長
が九月二十八日、
国会
で公然と持ち出す前に
全国各地
で
日本共産党
と
宮本委員長
を
スパイ
、
リンチ殺人者
だとする
反共個人攻撃
を行ってきた上で、
大久保議員
が言ったとおりにいよいよ
国会
を利用したのであります。 このように、前
国会
以来大いに関心を持っていたというのが
公明党
の実際の姿であります。それを
矢野
君のように「余り関心がなかった」などとまことしやかに言うのは、事実を偽るものであり、
公明党
一流の論法と言わなければなりません。私が
矢野
議員の虚構に憤りの
抗議
をしたのは当然であります。 また、
矢野
君は「
共産党
の異常なまでの反応ぶり」などと言っているが、これも根拠ある
質問
理由とはなりません。
治安維持法下
の
暗黒裁判
の
判決
を絶対化して、それをわが党が認めないからといって非難する議論に対して、わが党が
国会外
の言論によって厳しく反撃するのは当然であり、正当な権利に属することであります。 しかし、
国会外
で過去の
裁判
をめぐる論争があるからといって、それを
国会
に持ち出して
裁判
の当否について政府の判断を求めることが
憲法
上許されないことも三権分立の
立場
からいって明らかであります。
矢野
君は、
法務当局
に対し、「リンチ的な
行為
が果たしてあったのでしょうか、なかったのでしょうか。あるいは勝手に死んだという意味での異常体質による
ショック死
なのでしょうか。あるいは外から加えられた傷、外傷性ショックによる死なのでしょうか。」と
質問
し、「これらの事情について詳細に御説明願いたいと思います。」と
国会
の壇上で聞いているのであります。これは前
国会
における
民社党
春日君の
質問
の繰り返しであります。 しかし、行政府の一員である法務大臣には、
裁判
関係
の事実認定をする権限も資格もありません。法務大臣が
裁判
の対象となった事実の存否について答弁することが司法権に対する侵害であり、三権分立の原則のじゅうりんであることは明らかであります。
渡部
君は
矢野
君の
質問
が
憲法
違反ではないことを主張するために「
矢野質問
は、確定された
判決
の当否に
批判
を加えたものでもなければ、また、
判決
によって認定された事実認定の当否を論じたものでもありません」とか「
矢野質問
は、どういう事実
行為
に対して
裁判
所がいかなる認定をしたかを
質問
しているのにすぎません。」などと弁解しております。しかし、このような弁解が事実に反することは全く明瞭であります。
矢野
君ははっきりと「リンチ的な
行為
が果たしてあったのでしょうか、なかったのでしょうか。」「異常体質による
ショック死
なのでしょうか。あるいは外から加えらた傷、外傷性ショックによる死なのでしょうか」「これらの事情について詳細に御説明願いたい」ということを、事もあろうに行政府に
質問
しております。
質問
はどこでも、
判決
ではどう認定しているかなどと聞いていないのであります。この
質問
が
判決
の記載にどう書いているかを問うものではなく、まさに客観的な、
歴史
的に生起した事実がリンチ的な
行為
であったのか、それともそうでなかったのかということを、すなわち、行政府に
判決
記載事項の当もしくは否を独自に判断して答弁してほしいと迫ったものであることは文理上明白であります。 これが、前
国会
で法制局長官、最高裁事務総長、法務省刑事局長が「
国会
において
確定判決
の当否を論ずることは、国政
調査
権の行使の範囲を逸脱し、
憲法
の趣旨に反し、許されない。」と明言しているように、
憲法
に違反する
質問
であることは明瞭であります。
渡部
君は、
衆議院
法制局長の法的見解なるものを引用して、自分らの主張を証明するものとしておりますが、これは決して
渡部
君の主張を裏づけるものではありません。
衆議院
法制局長は右見解で、「問題は、
政治家
の過去の行動がすでに
確定判決
において認定された事実にかかるものであることから、事実の有無を問い直すことが司法権の独立に対する侵犯ではないか、ということでしょう。」とか、「この点につきまして、つぶさに議事録によって
矢野
発言
を点検いたしましたところ、知りたいという要望は、過去の事実の有無
そのもの
でありまして、その事実に関する
裁判
の事実認定の当否を問題としているとは認められません。したがって、それが直ちに
裁判
批判
につながり、司法権の独立に対する侵害をもたらすことにはならないと考えます。」などと述べております。 たが、
衆議院
法制局長の言う「知りたいという要望は、過去の事実の有無
そのもの
」と言う際の、その「過去の事実」とは一体何を言うのでしょうか。それがただ、過去に
判決
があったかとか、
判決
ではどう言っているのかという意味なら、法制局長の言い分もあるいは合理化されるかもしれません。しかし、
矢野
君の
質問
がそのような
質問
でなく、文理上、
判決
記載とは別の客観的、
歴史
的事実が果たしてあったのでしょうか、それともなかったのでしょうかと
質問
したものであることはさきに指摘したとおりです。 あるいはまた、法制局長は、
判決
記載でなく、客観的、
歴史
的事実を行政府に聞いても、それが、その事実に関する
裁判
の事実認定の当否を問題とする形で聞かれなければ、
裁判
批判
でないから、司法権の独立に対する侵害ではないとでも言うのでしょうか。
憲法
は三権分立を定めて、刑罰権をすべて司法
裁判
所にゆだね、刑罰を科する前提となる事実の認定もまた
裁判
所の専権としております。行政府は、司法
裁判
所の刑罰権の対象となった事実について、独自に「事実を判断し、」「詳細に御説明」する権限を有さない、許されていないということこそ三権分立を定めた
憲法
の精神ではありませんか。そうして、
矢野
君の
質問
が、法制局長の見解の文章によっても、この
憲法
の精神に真っ向から反することはきわめて明白であります。 法制局長もその点に気がつかないわけではありません。そこで見解は続いてこう言っております。「最後に、しかしながら、
矢野
発言
を契機として、問題に対する政府の対応の仕方を含む同問題に対する論議の展開の仕方いかんによっては、
裁判
の事実認定が正しかったのか、それとも誤りであったのか等のまさに国政
調査
権の範囲を逸脱する危険を生ずる可能性がないとは言えない。」とつけ加えざるを得なかったのであります。この法制局長の「最後に、しかしながら」の部分こそ、法制局長が良心からつけ加えざるを得なかった部分であります。すなわち、遠慮に遠慮を重ねた法制局長見解によっても、
矢野
君の
質問
が
憲法
違反を惹起するもので、
憲法
問題として仮に黒色ではないとしても、灰色
質問
であったことは否定されていないのであります。 私が、
衆議院
の法制局長さえ危惧せざるを得なかった
矢野
君の
質問
、そして前
国会
の内閣法制局長官、最高裁事務総長らの見解では明白に
憲法
に違反する
矢野
君の
質問
に対して
抗議
したのは、まさに三権分立に基づく
民主主義
を守るものとしての
抗議
であったのでございます。
矢野
君は、また、「犬は吠えても
歴史
は進む」という論文の題名に言いがかりをつけて、「
戦前
の権力者が
共産党
の諸君をアカ呼ばわりしたと同じ発想で、
批判
拒否、独善
そのもの
」などと
抗議
しております。これはとんでもない誤りであります。アカ呼ばわりは、
共産党
員に対してだけでなく、それ以外の政府に
批判
的な者に対して際限なく拡大されました。
戦前
の
侵略戦争
の拡大も、
日独伊
防共協定を武器に際限なく進められて、聖戦として美化されていきました。戦後はアカ呼ばわりでレッドパージや職場における
思想
差別が行われました。
日本共産党
は、反共主義に対する
思想
的、理論的
批判
を厳しく行いますが、それ自体はあくまで言論戦であって、権力的に言論を抑圧するアカ攻撃とは全く無縁であります。この二つを混同する
矢野
君の
態度
こそ、言論の抑圧を招きかねない重大な危険性をはらむものであります。 第五に、私が
公明党矢野書記長
を犬扱いしたという非難について、すでに本
会議
においてそれが意味のとり違いであることを私は明らかにしました。
矢野
君が「犬が吠えても
歴史
は進む」という「文化評論」臨時増刊号、一九七六年四月、ナンバー一八〇の「赤旗」党史班の論文の表題を取り上げて、「みずからに対する
批判
者を犬扱いにする体質」ではないかと疑問を持つのであえて以上の
質問
をしたと言い、この表題の意味することをまさ に自作自演しました。 本
会議
でも指摘しましたが、この表題は、
中央
アジア、シルクロードの地方で行われていることわざ、「犬が吠えてもキャラバンは進む」という言葉からとったものであります。ここで犬というのは、中傷、誹謗などの雑音のことで、犬にたとえているのであります。ことわざの意味は、中傷、誹謗などの雑音によっても真理と真実は曲がらず、みずからを貫き通し、
歴史
は進むべき方向に進むということであります。 いまの問題に即して言えば、わが党や
宮本委員長
に対して
リンチ殺人事件
などという謀略中傷宣伝をしても、真理と真実は曲がらず、
歴史
は
暗黒
時代から民主的時代へ進むことは避けられないことを意味しているのであります。 ところが、
矢野
君は、このことわざの意味を理解せず、誤って
共産党
を
批判
する者を犬扱いにする言葉だと理解し、事もあろうに、このことわざが戒めているとおりのことを自作自演し、
国会
壇上から、
治安維持法下
の
暗黒裁判
の
判決
を絶対化し、
日本共産党
と
宮本委員長
を非難する
質問
を行ったのであります。 私は、
矢野
君が「犬が吠えても」云々に言及しましたので、そのような
反共宣伝
はするなと言い、このことわざでたとえて、たしなめている中傷宣伝、すなわち反共の犬が吠えるようなことはやめろと
抗議
して、たしなめたのであります。これを
公明党
書記長が犬と言われたとして私を
懲罰
に付そうというのは、
国会
における言論の自由を抑圧する暴挙というべきであります。
公明党
がかつて
公明党
を
批判
した刊行物の出版妨害を行い、世論の強い指弾を受けたことは世間周知のことであります。
公明党
は、今度は
国会
の中で言論の自由を
懲罰
でおどし、その上、正木良明議員が私の
発言
に対して議場で暴力をふるうという事態までしでかしました。 正木良明君が私に対して暴力をふるった事実について、
渡部
君は、カメラの角度などがどうのと言ったあげく、正木君の暴力
行為
というのは
共産党
のでっち上げだとまで言っておりますが、
日本
テレビのビデオを見れば明らかなように、正木議員が猛烈な勢いで私の上半身を数回突き飛ばしていることは否定しがたい事実であります。当の正木議員は、十六日の神奈川県相模原市の
演説会
において、自分の暴行について、「こりゃやっぱり一発かましておかな、いかぬぞと。これがそもそもあれでしたなあ。」と言っております。いま問題になっている自分の暴行は否定せず、しかも一発かますなどという暴行の意図を持って行動したことを事実上自認したとさえ言える
発言
までしておるのでございます。
公明党
の諸君はわが党に対してでっち上げと言って非難していますが、私は正木君が率直かつ明確に事実を認めることこそ、
公明党
の諸君の事実認識の誤りを正すためにいま重要だということを強く訴えるものであります。私はこれこそ
国会
議場における言論に対する暴力
行為
として
懲罰
に付することを要求するものであります。 最後に、私は私に対する
懲罰
問題に重大な
関係
のある新たな事実の暴露について述べるものであります。 私は、本
会議
における
弁明
の中で、
治安維持法下
の
暗黒裁判
の
判決
を
国会
の場で蒸し返すことがわが国の自由と
民主主義
にとってきわめて重大な危険であることを指摘いたしました。私のこの憂慮がまさに現実のものであることは、鬼頭判事補をめぐる
事件
によってきわめて明らかになったのであります。
治安維持法等被告事件
で投獄されたわが党の
宮本委員長
の身分帳——人権上からも厳重な秘密扱いをされている身分帳につづられた諸記録が、現職
裁判
官によって法務省の一部当局者の違法な関与のもとで不法にも閲覧され、写し取られて網走刑務所の外部に持ち出されたのであります。しかも、その同じ
裁判
官は、検事総長の名をかたって三木首相に謀略電話をかけた
事件
にも深く関与しているのであります。これはロッキード隠しと
反共個人攻撃
とが一つの黒い手によって仕組まれた一大政治謀略であるという疑惑を生んでおります。このような政治謀略こそ、本
会議
における
渡部
君の言葉をかりて言えば、議会政治を崩壊させる
行為
であります。 特に注目すべきことは、
宮本委員長
の獄中資料——正当かつ適法な手段ではとうてい入手できないはずの資料の一部が単行本や雑誌などに公表されていることであります。中でも、
民社党春日委員長
はこの種の資料を所持している旨をみずから明言しており、同党の他の幹部は
民社党
独自の
調査
活動によって入手した旨を最近わざわざ明らかにしております。これはまことに奇怪千万なことであります。 司法部、法務行政、一部政党にまでわたるこれらの疑惑の徹底究明こそ緊急の課題であります。鬼頭判事補の
事件
と
国会
での違憲
質問
との
関係
の問題に対しても
国民
は注目をしております。私はこのことを
議会制民主主義
を守るために強く訴えるものであります。 私は、
日本共産党
と
宮本委員長
に対する
反共個人攻撃
を
国会
においてすべて停止すること、
矢野質問
に対する私の
抗議
の
発言
への
懲罰
を撤回すること、正木良明君の私に対する暴力
行為
を
懲罰
に付することを強く要求するものであります。そして、
ロッキード疑獄事件
の徹底究明と鬼頭判事補らの
暗黒
勢力の徹底究明をこそ速やかに行うべきであると主張するものであります。 以上をもって私の身上の
弁明
を終わります。(拍手)
宇田國榮
3
○
宇田
委員長
これにて紺野君の
身上弁明
は終わりました。 なお、ただいまの紺野君の
弁明
中不穏当と思われる
発言
がありましたならば、後刻速記録を取り調べの上、適当に処置いたしたいと思います。 午後二時に再開することとし、この際、休憩いたします。 午前十一時休憩 ————◇————— 午後二時九分
開議
宇田國榮
4
○
宇田
委員長
休憩前に引き続き
会議
を開きます。 これより
懲罰動議
提出者に対する質疑を行います。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口鶴男君。
山口鶴男
5
○山口(鶴)委員 過般の本
会議
におきまして、
紺野与次郎
君を
懲罰委員会
に付するの
動議
が可決になりまして、このような形で
懲罰委員会
が開かれておりますこと
自体
について、私ども残念に思っております。 私ども、今度の第七十八臨時
国会
の主要な任務は、
一つ
は、この構造汚職と言われたロッキード疑獄、これを徹底的に解明、究明することが何よりも重要である、このことを徹底的に解明、究明することによって
国民
の皆様方の御期待に沿いたい、これが私どもの第一の願いであります。第二は、西
日本
を中心とする水害、東
日本
を中心とする冷害、さらには倒産の憂きめ目に遭っている中小企業の皆さん、さらには、いまなお仲裁裁定の完全実施がなされていない、さらには公務員給与の改定もいまだ実施されていないわけでございます。この働く勤労者の方々の
生活
。政府の統計によりましても、名目賃金は確かに昨年に比べて六%くらい上昇しておりますけれども、物価の上昇分を差し引けば実質賃金は二・八%も低下しているというのが政府統計局の発表でもあるわけです。したがいまして、これらの課題を解決する、これがやはり今
国会
の重要な任務である、かように考えております。 したがいまして、これらの課題を達成するためには、
社会
党、
共産党
、
公明党
、
民社党
の野党が協力、結束いたしましてこれらの課題に立ち向かっていくということが何よりも重要ではないか、かように考えておる次第であります。 先ほど来、
紺野与次郎
君の一身上の
弁明
も拝聴しておったわけでありますけれども、「反共のイヌ、イヌがほえている」というような
不規則発言
が問題になったわけでありますけれども、この語源について、「犬は吠えてもキャラバンは進む」とかいろいろなお話がありました。しかし、そういう形で野党同士がいがみ合っていることによって喜ぶのは一体だれなのか、これを私はやはり考えたいと思っております。先ほども私、当
委員会
で
不規則発言
で申しましたが、結局、犬論議をしていて一番喜ぶのは自民党ではないのかということを私ども考えざるを得ないわけであります。そういう
意味
で、実は
一つ
の提案がございますので、
渡部
委員にお考えをいただきたいと思うのです。 それは、この問題が発生しました際、わが党の平林国対
委員長
が何とか、先ほど申し上げたような趣旨で両党間のあっせんをしたいということで、あっせんをいたしました。その後、
衆議院
の議院運営
委員会
理事
会におきまして
懲罰動議
の扱いについていろいろ
議論
をいたしました。 その際私が申し上げたのは、この
不規則発言
で
懲罰
になった例といいますと、前の吉田総理が予算
委員会
におきまして
不規則発言
をした。内容について私がここで申し上げることは不穏当な言辞でありますから避けたいと思いますが、とにかく
不規則発言
が問題になりまして、
懲罰委員会
に付されました。この際は、
委員会
ですから、速記者の席と近いわけでございますので、その
不規則発言
が速記録に載っておったわけですね。
不規則発言
で速記録に載ったものは
懲罰委員会
にかかった例がある。それからいま
一つ
、調べてみますと、有田二郎君が本
会議
において
不規則発言
をやった。本
会議
は、これを御案内のように、速記者の席と
発言
者の距離が遠いわけでしょうから、この議事録を見ますと、結局、その
不規則発言
は明確に載っていないわけであります。「
発言
する者多し」というような形になっているわけですが、この場合は、
懲罰委員会
にはかからなかったわけですね。有田二郎君が
発言
した言葉も不穏当でありますから、私はここで申し上げることは避けたいと思います。しかし、議場が騒然となりまして議長が休憩を宣告しました後の再開後の本
会議
で、有田二郎君は陳謝をいたしております。したがいまして、「反共のイヌ、イヌがほえている」というこの
不規則発言
、不穏当だとまでは私は申し上げません。不穏当な言辞ということになれば、これは当然
懲罰
の
対象
になります。私は、議運の
理事
会では、穏当を欠く
発言
ではないかということを私どもも考えておるということを申しました。しかも、これは議事録には記載されていない。したがって、有田二郎君の例にならいまして、何も本
会議
で陳謝とまでは言わない、いわば一党を代表する書記長の
発言
に対して穏当を欠く
不規則発言
があったということであるならば、遺憾の意を表するなり、釈明をするなりということをひとつ
共産党
の側からいたしたらどうか、そういたしましたならば、
公明党
さんそれから提案者であります
民社党
さん、両方の党においてはこの
懲罰動議
を取り下げないかということを申し上げました。 現在はすでに本
会議
で
懲罰委員会
に付するの
動議
が可決をされ、この
懲罰委員会
に付されております。議題となっております。この場合、取り下げの方法がないかといえば、これはあります。その場合は、この
懲罰委員会
また本
会議
の議場においてこの
懲罰
の取り下げを許可すれば、取り下げの方法は
国会
法、
衆議院
規則においてあるわけであります。 いかがでしょうか。この際、
共産党
さんの側において遺憾の意を表するなりあるいは釈明をされました場合において、提案者である
渡部
さんとしては、手続は今回は必要であります、
委員会
の許可という手続は必要でありますが、取り下げの御用意があるかどうか、この点をまずお伺いをしておきたいと存じます。
渡部一郎
6
○
渡部
(一)議員 ただいま山口先生から情理ともに備わる御指摘をちょうだいいたしまして、恐縮をいたしております。 今
国会
におきまして、ただいま仰せになりましたように、多数の
国民
生活
に関する緊急の案件を抱え、私ども、国政の審議に対し集中的にかつ執心に討議することは、
議会制民主主義
の確立のためにも、また私ども
国会
議員に対する、国政審議に対する
国民
の信頼を回復するためにもきわめて重要なことではないかと考えるわけでございます。 今回問題となりました
紺野与次郎
君の問題にいたしましても、本
会議
における
懲罰委員会
に付するの
動議
の
趣旨説明
の中におきまして、私は、本案件がこうした形で議題になりますることはきわめて不幸なことであり、私個人としてもきわめて不本意である、と同時に、
同君
の深い反省と今後の立ち直りを期待してこれを述べたいきさつがございますし、また、この
動議
を提出するに至る前にかなりの時間と余裕をとり、議院運営
委員会
におけるさまざまな交渉、あるいは、率直に申して御
質問
者山口さんの所属される
社会
党のさまざまな調停のようなお働きにつきましても、それを見守っていたわけでございます。紺野君御
自身
としても、こうした
発言
についてはふだんの言動から見て穏当を欠くものであることについては理解のできる人格と私は信じましたし、その
意味
で山口さんの所属される
日本
社会
党のさまざまな働きかけというものを私どもは謙虚に聞き、
動議
提出を見合わせる用意も含めて検討する旨、わが党の国対
委員長
がすでに述べているところであります。 本日、私はこの場に立ちまして、再度重ねての同趣旨の御
発言
でございますのでお答えいたすわけでございますが、本日は本
会議
からすでに当
懲罰委員会
に付せられている
動議
のお取り扱いの問題でございますし、また本日の御提案は私どもに対して突然お話がございましたことでございますから、こうするということの確定的なお答えはできないのではございますけれども、もし陳謝の意思が
紺野与次郎
君の方から表明され、遺憾の意、釈明等の意思表示が行われ、また
動議
提出者における合意が得られ、また
懲罰委員会
各
理事
の御了解が得られるような段階であるならば、十分に検討すべき余地がある有望な、かつ合理的な御提案ではなかろうかと私は敬意を表するものであります。 これにつきまして、私はこのような働きかけがいままで行われた経緯から拝見いたしますと、
日本共産党
の機関紙あるいはその他の宣伝物から拝見いたしまするときわめて可能性の薄いことではなかろうかとは存じますけれども、ただいまの山口さんからお話をいただきました趣旨につきましては、十分わきまえつつ、今後の参考にさしていただきたいと思うのでございます。
山口鶴男
7
○山口(鶴)委員
懲罰委員会
に付され、しかも
懲罰委員会
での
議論
がすでに開始をされているわけであります。したがいまして、現在の段階は、この
懲罰委員会
に付するの
動議
をどう扱うかという、議院運営
委員会
理事
会の段階とはおのずから違っていることについては私どもよくわきまえております。また、
懲罰動議
が提出をされ、まだ議院運営
委員会
理事
会で相談も始まっていない段階でわが党の
国会
対策
委員長
がいろいろ努力をいたしました段階とももちろん
状況
が変わっていることは、私どもよく承知をいたしております。 しかし、内閣提出の議案でありましても議員提出の議案でございましても、撤回の方法はあるわけですね。
国会
法の五十九条、
衆議院
規則の三十六条に
規定
がございます。その場合におきましては同意が必要なわけであります。というのは、
委員会
なら
委員会
、本
会議
なら本
会議
における許可が必要なわけでございます。その点が手続的には違っておりますが、方法としてはないわけではない。そういう点を考えまして、
一つ
の考え方を申し上げた次第です。十分検討したいということだそうでございますが、ひとつ提出されました
公明党
、
民社党
において十分御検討をいただきたい、このことを強く要請をいたしておきたいと思うのです。 その場合、私としましては、陳謝ということまでは申しておりません。議運の
理事
会でも実は申したのですが、釈明ないしは遺憾の意ということを私は申しました。これはもちろん、陳謝をしようということであればそれでも結構であります。陳謝ということを明確に私は議運の
理事
会では申したわけではないので、遺憾の意ないしは釈明、
国会
ではいろいろ方法があるわけでありますから、その方法はひとつ当事者間で御相談をいただいたらいいんじゃないかというつもりです。また、
紺野与次郎
君本人が遺憾の意を表明するなりあるいは釈明するなりということまで私は明確に言っておりません。御本人なりあるいは
共産党
という
一つ
の党が、問題を起こしました御本人なりその党が、いわば当事者である
矢野書記長
でもいいし、あるいは
公明党
さんでも結構だと思うのです。人対人でもいいでしょうし、党対党の
関係
でもいいのではないかと思うのです。 要は何らかの形で政治的な解決ができないだろうかというのが私の真意でございますので、その点ひとつ十分踏まえました上で、この
委員会
におきましても一日や二日のうちにすぐ結論が出るということではないだろうと思いますし、私どももそういう
意味
では犬馬の労をとっても結構だと思っているわけでございますので、ひとつ
渡部
さんにおかれましても私の意のあるところを十分おくみ取りいただきまして配慮いただきたい、このことを重ねてお願いをいたしておきますが、いかがでしょうか。
渡部一郎
8
○
渡部
(一)議員 ただいまの御
発言
につきまして敬意を表する次第でございまして、先生があえて犬馬の労までおとりになるとまで御
発言
いただきましたその御情熱に敬意を表したいと心から思う次第でございます。 どうか先生のそのお気持ちが本日
対象
となっております紺野君に対して伝わりますることを私は切望し、一祈念するものであります。
山口鶴男
9
○山口(鶴)委員 先ほど犬馬の労と申し上げたわけですが、私は穏当を欠く
発言
だと申しましたのは、やはり「反共のイヌ」という、この「イヌ」という言葉、取りようによってはいろいろな
意味
合いがあるのだろうと思っております。よく権力のイヌとか、あるいは労働争議等で会社側のイヌとかいう言葉を「イヌ」ということで使いますと、何か回し者だとかいうような、聞きようによっては当事者は大変憤慨する内容も含んでいるのではないかと私は思います。そういう
意味
で、(「回し者だ、回し者に間違いがない」と呼ぶ者あり)このような言葉を、
不規則発言
でありましても一党の書記長が
演説
をしている際に使うということは決していいことではないと私は思う。そういう
意味
で穏当を欠く
発言
だというふうに申し上げているわけです。ただいまの
不規則発言
も聞きようによっては非常に私は不愉快な気がいたします。そういう点は、やはり私ども
社会
党が
懲罰動議
については反対をしているその理由はどうだということを私は誠意を持って申し上げているつもりなんですから、(「いや、いや、あなたの
質問
に対して言っているのじゃないよ」と呼ぶ者あり)その点はよく理解をしていただきたいと思います。
宇田國榮
10
○
宇田
委員長
不規則発言
は禁止いたします。
山口鶴男
11
○山口(鶴)委員 さて、そこでさらにお尋ねをしたいのは、
矢野
公明党
書記長さんの本
会議
における代表
質問
、違憲かどうかということが議院運営
委員会
理事
会でも問題になりました。議院運営
委員会
理事
会の席上、
衆議院
の川口法制局長の見解なるものが示されました。私ども、これはおおむね妥当な見解ではないかと思っております。
裁判
の当否について立法府である
国会
が
議論
することは、これはまさに立法府の司法に対する干渉であり、三権分立のたてまえを崩すことであって、違憲であるということについては私ども認識をいたしております。 私も、ここに議事録を持っておりますが、
矢野書記長
の
発言
ずっと拝見をいたしまして、川口法制局長の見解にもありますように、「主として、ある
政治家
の過去の行動に関する事実の有無について政府に対し報告を求めた」というのが趣旨であるだろうと思っております。
裁判
の当否についてそれを
議論
するというつもりは
矢野書記長
にはなかったんではないかと思いますが、私がこの議事録を拝見した限りにおいては、私もそう思っております。
渡部
さんは、当然、
矢野書記長
とは同じ党に所属をし、
矢野書記長
の
発言
の真意というものについてもよく確かめておられるだろうと思うのでありますが、この点に対する提案者の御見解もあわせてお伺いをしておきたいと存じます。
渡部一郎
12
○
渡部
(一)議員 ただいま御
発言
になりました、
矢野書記長
の
発言
に関しまして
憲法
違反というような主張が
弁明
の際に行われているようでありますが、これは全く
憲法
違反との
批判
は当たらないものであると存じます。 当日における、すなわち九月二十八日午後二時から開かれた本
会議
の席上、
共産党
の金子君がまずこの問題に対して次第を述べ、そうして政府側の見解をただしたのであります。しかし、前
国会
以来、この問題については
民社党
及び
共産党
との間で厳しい応酬が続けられ、中には事実
関係
についてまでその本質的な意見が分かれているという観点から、
矢野
議員はあくまでも冷静、客観的に、
法務当局
関係
に対し事実を問いただしたものであり、それは当日の議事録を官報等においてごらんいただければ、十分御理解いただけるところではないかと思うのであります。また、
衆議院
法制局長の法的見解が、先日、十月十五日、文書によって提出されておりまするが、それにおきましても、「
矢野
議員の
発言
は
憲法
違反ではない」と明瞭な結論が下されているものであります。したがって、私どもは、ただいま御
質問
のございましたこの
矢野
さんの御
発言
に関して、
憲法
違反という批評は全く当たらないものと思うのであります。
矢野質問
は、事実
関係
の食い違いを今日的な課題として
質問
されたものであり、確定された
判決
の当否を問うものではなく、
確定判決
上どうなっているかを問いただした、つまり事実の有無を問いただしたものであります。ゆえに、確定された
判決
の当否に
批判
を加えていない以上、
憲法
違反との批評は全く当たらないものであります。したがって、法制局長の御
答弁
の中でも、「この点につきまして、つぶさに議事録によって
矢野
発言
を点検いたしましたところ、知りたいという要望は、過去の事実の有無
そのもの
でありまして、その事実に関する
裁判
の事実認定の当否を問題としているとは認められない」旨、表示が行われているものであります。私どもはその観点から、ただいまお話しくださいました御意見は全く事態を正確に御認識いただいていると思うものでございます。
山口鶴男
13
○山口(鶴)委員 いわゆるリンチ査問
事件
、まあ呼び方はいろいろあるようでありますが、これは四十年も前の出来事であり、しかも現在の
憲法下
においては許されるべきでない、
治安維持法下
のきわめて不幸な
事件
である、このような
事件
、内容につきましては、すでに文藝春秋その他いろいろな出版物等によりましても、その間の事情、事実の有無等についてはおのずから明らかになっている問題です。こういう問題を、先ほど申し上げたように、ロッキード疑獄の徹底究明、解明、さらには
国民
生活
を
防衛
する重大な議題を抱えておる第七十八臨時
国会
において、この貴重な本
会議
における代表
質問
あるいは予算
委員会
等の
議論
に供すことが果たして妥当であるかないかということにつきましては、私ども率直に言って否定的な見解を持っております。しかし、各党の代表
質問
はそれぞれ各党のお考えに立っておやりになることでありましょうから、私どもこういう
議論
をすることが現在の事態にふさわしい
議論
だとは思いませんけれども、しかし、あえて特定の党がそういう
議論
をされるその自由というものはそれぞれの党にある、かように考えております。要は、問題は
憲法
違反の
議論
であるかないかということになれば、事重大であります。したがいまして、この点につきましては重大な課題であると思いまして、私も
矢野質問
の内容を検討させていただいた次第であります。 ただ、そこで川口法制局長がこの最後に述べておられる言葉は、やはりお互いが自戒をしなければならぬだろうと思っております。「しかしながら、
矢野
発言
を契機として、問題に対する政府の対応の仕方を含む同問題に対する論議の展開の仕方いかんによっては、
裁判
の事実認定が正しかったのか、それとも誤りであったのか等のまさに国政
調査
権の範囲を逸脱する危険を生ずる可能性がないとは言えない。事は挙げて今後の良識ある議事運営にまつのみであります。」と、こう述べております。私は、やはりこの言葉はお互い十分かみしめる必要があるのではないかというふうに思っております。したがいまして、最後私が述べました川口法制局長の見解について、もし
渡部
さんの方においてお考え方があるならば、お述べをいただきたいと思います。
渡部一郎
14
○
渡部
(一)議員 先生、ただいま御指摘をいただきましたさまざまのポイントでありますが、私は、ただいまこの場所において、代表
質問
に何を各党が取り上げられたか、当否を論ずる場所ではないと存じます。問題は、「イヌ」と
発言
されたその問題につきましての当否が論じられているところでありまして、議会の品位を革正するところに問題があるわけであります。したがって、私は、法制局長の出された文書の最後の部分につきましての御見解につきまして、私どもも十分の自戒を遂げていきたいと思っておるものであります。しかし、私は、今回の
懲罰委員会
にこうした形で問題が提起されたことは、この法制局長のお話と背反するものではない、むしろ議会制民主主議を確立するためには、あのようなたぐいのばり雑言というものを許容する方が、より大きな危険性に対する引き金を迎えるのではないかと思うものでありまして、先日から申し述べておりますとおり、本
委員会
に提出された
懲罰事犯
につきまして、ぜひとも御賛同賜りたくお願い申し上げる次第でございます。
山口鶴男
15
○山口(鶴)委員 御賛同いただきたいということでありますが、議会におきまして数々の
懲罰事犯
が今日まで起きております。もちろん、吉田元総理のきわめて不穏当な
不規則発言
につきましては、私ども当然これは
懲罰委員会
に付するべきものだという
態度
を示したことはございますが、それ以外の問題につきましては、言論の府でありますから、できる限り
懲罰
というようなことを避けた方がいいという
意味
で、私どもは
懲罰委員会
に付するの
動議
についてはほとんど反対という
態度
を
歴史
的に堅持をしてまいった、それが私
たち
の党としての基本的な
態度
であるということを申し上げておきたいと思います。したがいまして、そういう
意味
から、穏当を欠く
不規則発言
だとは思いましたけれども、しかし
懲罰委員会
に付するの
動議
については、これは私ども反対である、こういう
立場
を堅持いたしてまいりましたことも、
渡部
さんのよく御存じのとおりだろうと思います。 ただ、私はここで各党が行います代表
質問
の当否を論ずるつもりではありません。だから、私どもの考えはこうだけれども、しかし各党においてそれぞれ代表
質問
をおやりになるわけですから、問題の取り上げ方については自由だということは申し上げました。しかし、私どもは、たとえばかつて
共産党
の、あれは金子議員だったと思いますが、当時狂乱物価のさなかに、代表
質問
の相当部分をお使いになって、八鹿高校
事件
なるものを取り上げたことがございます。また、引き続く予算
委員会
におきまして、村上議員が
発言
時間の大半をお使いになって、これまた八鹿高校問題に終始をされたということを私ども忘れることはできません。やはり私どもとしては、当時狂乱物価のさなか、八鹿高校問題に集中して
質問
をおやりになる、それはその党の自由ではあろうけれども、そういうことが果たしていかがかなという考え方を持ったということは、この際申し上げておきたいと思っております。 さて、先ほど
紺野議員
の一身上の
弁明
を拝聴いたしておりました。それぞれの議員の名前をお挙げになりまして、院外における
演説
の内容をずいぶん引用されておったのであります。私は、この際
憲法
の
規定
というものをもう一度確認したらいいのではないかと思います。
憲法
第五十一条には、両院「議員は、議院で行つた
演説
、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」こうなっております。これは私ども
国会
議員の持つ大きな特権であり、また、
国民
を代表する議員が院内において責任を持ってやる
議論
というものについてはそれなりの保障がされなければならないという、これはきわめて重要な
憲法
の
規定
だ、かように思っております。したがって、私どもも院外における行動あるいは院外における言論というものについては、当然これは責任を問う道はあるわけですね。さらにまた、院内における
演説
、討論というものについては、責任は問われないわけですから、したがって、院内の秩序を守るという
意味
で、
憲法
五十八条には、院内の秩序を乱した議員を
懲罰
に付することができる、こうなっているわけです。ですから、私は、そういった
憲法
の
規定
等考えました場合に、この院内で起きたこの事案を論議するこの
懲罰委員会
におきまして院外で行いました
議論
を数多く引用するということについては、この
憲法
の
規定
からいかがなのかという認識を持たざるを得ないわけであります。このような私の認識について
渡部
さんの方からお考えがあるならば、念のため承っておきたいと思います。
渡部一郎
16
○
渡部
(一)議員 ただいま先生から重大なポイントにつきまして御
発言
をちょうだいいたしまして、私は、
憲法
の諸
規定
を遵守するためには、私ども議員は事あるごとに
憲法
の
規定
を制定いたしました原点にさかのぼり、その起点を再考慮する必要があるのではないかと思うのであります。 ただいま御
発言
になりましたように、
議会制民主主義
の運用に関しまして、これをなれない人々がことさらに
憲法
の条項に背反するおそれのあるがごとき態様をとられているという点は、私はきわめて遺憾に存ずる一人でありまして、ただいま先生が御指摘になりました当
委員会
における
発言
中そうしたことがありとすれば、私は多くの問題点を将来に含むものではないかと思うものでありまして、今後におきましてもこうした点はお互いに相戒めて、本院の品位の確立のためにがんばっていきたいと思うのであります。(「何を言うか」と呼び、その他
発言
する者あり)
宇田國榮
17
○
宇田
委員長
静粛に願います。
渡部一郎
18
○
渡部
(一)議員 先ほども
委員長
からも制止されましたけれども、山口委員の御
発言
中、「権力のイヌ」の御説明中、回し者などという、回し者だからそんなのはあたりまえだというがごとき
不規則発言
がございましたけれども、そうしたものは実際に現在の同党の体質
そのもの
から生ずるものではないかと思われるがごときものでありまして、私は
懲罰
委員長
がそれに対して制止を加えられたのは当然のことだと思うわけであります。したがいまして、議会
民主主義
の運用に関しましては、今後ともわれわれは勇気をもって、その明快な、かつ品位ある運用に関してお互い思いをいたすべきものと考えるものでございます。
山口鶴男
19
○山口(鶴)委員 いま
渡部
さんからせっかくお話がありましたが、私の真意は、そういった犬論議をすれば喜ぶのは自民党さんではないのかということを実は私どもは申し上げたいのであります。そういう点が私ども
社会
党の一番の懸念する点であるということを御理解を賜りたいと思うのであります。 私、もうこれで終わりにいたしたいと思うのですが、最後に、過去の事例を私は引用をいたしました。
不規則発言
で議事録に載ったものにつきましては、
懲罰委員会
に付され、また
懲罰
が決定をされたという事例はあるわけでありますけれども、
不規則発言
でこの議事録に載っていないものについて
懲罰委員会
に付された事例はないし、またこういうものを
懲罰
にすることは私は反対であり、そういう
意味
で、本
会議
におきましても私どもは採決によって意思表示をいたしましたし、また扱いを相談しております議院運営
委員会
理事
会の中でも、また
委員会
の中でもそのような趣旨を私は申し上げました。
懲罰
に付することによって問題が解決するとは私は思いません。そうではなくて、こういった
懲罰
になじまぬ問題を
懲罰委員会
に持ち込むのではなしに、この際、野党同士が手をつないで、そうして重要な課題について立ち向かっていかなければならない現在の
状況
を考えますならば、先ほど来私が申し上げたような政治的な解決の方法こそが最善であるというのが私どもの考え方であります。冒頭、
渡部
さんに対しまして私の考え方を申し上げました。どうかひとつその趣旨を十分おくみとりをいただきまして、そしてこの問題が
懲罰
という形で決着がつくのではなしに、両党間の、あるいは当事者間の話し合いによる円満な解決というものを私どもは心からこいねがっている、このことを十分おくみ取り賜りたいと思います。 以上申し上げまして、一応私の
質問
を終わっておきます。
宇田國榮
20
○
宇田
委員長
次に、三塚博君。
三塚博
21
○三塚委員 まず、今回の
懲罰
案件について、その核心になっております問題からお聞きをしてまいりたいと思うのでありますが、
渡部
さんの提案の説明、さらに紺野さんの
身上弁明
、両日にわたりましてお聞かせをいただいたわけであります。 核心は、「無礼の言」があったかどうかという、
懲罰
に値する事犯があったかどうかというのが本
委員会
の審査の中心であります。先ほど
紺野議員
の
身上弁明
、まさに過去の
判決
の経過を詳細、執拗に展開をされました。そういう
意味
で、まさに当
委員会
がかつての
判決
をめぐって論議を展開されるのではないだろうかというような感じまでなりましたことは、先ほど来の
憲法
論議の実態にかんがみまして、きわめて遺憾なことであったというふうに思います。 私は、そういう
意味
で、二つの観点からお聞きをしてまいりたいと思うのでありますが、まず実態となりました犬論議であります。 この犬という言葉でありますが、文学的な表現で、シルクロードの何とかはほえるけれども何とかは進むという、こういう話もあったようでありますが、本来、犬というのは、紺野君の言うような解釈も一方にありますことも、それはそのとおりであろうと思います。しかし、
社会
一般上、犬ということになりますと、それは嫌悪感を催す、先ほどの
不規則発言
にありますようなことであります。そういう
意味
で、きわめて今回の
事件
は残念なことの一語に尽きるというふうに私は思うのであります。 そういう
意味
で、
身上弁明
の中で文学的な香りのあるものだという、どうも聞こえぬのでありますが、提案者の方では、これは文学的な香りのあるものと受けとめられるのかどうか、そうであれば、本件の審査はこれを必要としないことに相なります。 ちなみに、せっかくでありますから、私も
共産党
の好きな広辞林の辞書を読んでみました。「犬とは、大昔から人間に飼育されてきた家畜。柔順なので、家、羊などの番をしたり、嗅覚が鋭いので、狩猟、犯人の捜査に協力したり盲人を導いたりする。」この辺はいいことですね。例として「警察の犬」これは
スパイ
。「権力の犬、自分の立身出世と地位の安定を願い、上司の命令を忠実に聞く人。煩悩の犬となる、修行が至らぬため欲望のとりこになる。犬の遠ぼえ、憶病者が虚勢を張ること」であります。こんなことが以下たくさん書いてあるわけですよ。 そういう点からいきますと、私も大変嫌悪感を、犬というものについて
発言
の場所、
発言
の脈絡によりましては、大変なものだというふうに思うのでありますが、文学的な表現でもあるという
身上弁明
もありましたものですから、
渡部
さんの方でどうこれを考えられておるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
渡部一郎
22
○
渡部
(一)議員 ただいまお話をいただきました文学的な香りの部分は、私はこう申したわけでございます。「「イヌ」呼ばわり
発言
について、
日本共産党
・革新共同の代表は、「犬は吠えてもキャラバンは進む」という言葉からとった文学的な香りのある表現であると、へ理屈を展開しているようであります。」と。つまり、これは
日本共産党
・革新共同の代表が述べている表現を指しているものでありまして、私が文学的香りのある表現と申したわけではございません。文学的香りとは、同党文献において表示せられたものであります。
三塚博
23
○三塚委員 それで、先ほど山口君からも、いろいろ
不規則発言
、速記録によらぬものが
懲罰
の
対象
になったことはないというようなことがございました。しかし、
不規則発言
は現実に、先ほど来のお話のように、二回にわたって
懲罰
の
対象
になっておりますことは御案内のとおりでございます。 そこで、この
不規則発言
が行われた
状況
、また、
不規則発言
でありますからこれを
懲罰
の事犯にするということ
自体
がおかしいのではないかという、こういう考え方につきまして、見解をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
渡部一郎
24
○
渡部
(一)議員 当日、本
会議
場における代表
質問
中、
日本共産党
・革新共同の諸君によるやじはかなり猛烈なものがございまして、声の大きさよりも、むしろその内容の下品さで言うに忍びないものがあったわけでありますが、そのやじの応酬の際に一時期静まった時点におきまして、紺野君から「イヌ、イヌ、イヌ」という連呼がありまして、「反共のイヌ、イヌがほえている」というような声が上がったわけであります。これは御当人の予期せざる印象をわれわれに与えたのかもしれないと思うわけでありまして、多数の応酬の間で聞こえなかったのとは異なり、かなりの範囲に御当人のこのやじは聞こえたのであります。 この
不規則発言
が私どもにとりましては——
日本共産党
・革新共同の諸君には別かもしれませんけれども、公党の書記長を指して「イヌ」というレッテルを張る、その
演説
に対して「イヌがほえている」と
発言
することは、少なくとも政治的な
意味
合いを持つ
発言
というよりも、本院の品位を欠くことはなはだしいものであると考え、私どもはその場で
抗議
をし、取り消しを
要求
したのであります。 ところが、御当人は、当初何も言わずに青ざめておられたにもかかわらず、後に同党議員から鼓舞激励されたためか、開き直られて種々の
弁明
をせられたのは、まことに遺憾なことであります。私は、こうした点に関しましては、はなはだ遺憾に存ずるものであります。
不規則発言
だから何を言ってもいいということにはならないのでありまして、先ほども山口議員がお話しいただきましたように、
最大
の
懲罰事犯
と言われている吉田茂総理の
懲罰事犯
は、まさに
不規則発言
そのもの
であります。それが議事録に掲載されているかどうかは、問題の本質から言ってさしたる差異はないものと私どもは考えるものであり、不規則事犯というものもまた同じく問題になるものと考えるものであります。 また、有田議員の御
発言
がやはり不規則事犯の問題になったケースでありますが、議長は
規定
に基づかれて審議を停止され、そうして当人の反省を求められ、当人が再開後の議場において謝罪されたケースがございます。これは事実において御当人が、
不規則発言
ではありましたけれども、本院において正式に謝罪をされたケースでありますから、
不規則発言
であるから何を言ってもいいという
議論
にはなり得ぬものと思うのであります。
三塚博
25
○三塚委員 そこで、ちょっと論点を変えて、本事犯の発生の基本を考えてみますと、
矢野書記長
の代表
質問
、これに端を発したわけであります。先ほども質疑がございましたとおり、あるいは法制局長の見解等が示されておるわけですが、そういう点から申し上げますと、この事実の有無、あったかどうかということに論及することは
憲法
違反ではない、山口委員からもそういう
意味
の話があったわけであります。そういう点で、この基本はまさにそういうことであるわけで、私ども、今
国会
を通じ、稻葉法務大臣あるいは
関係
の政府委員から、本問題の質疑に対する
答弁
という形でその解明が行われております。 念のため整理をしてみますならば、問題は、傷害致死なのか、
ショック死
なのか、この有無の質疑が行われ、これに対して
答弁
が行われております。古畑
鑑定書
に基づいてこの
判決
が言い渡されたものである、こういう
判決
文などもあるわけでありまして、この辺、ここは別としても、さらに大変なものだということで、
共産党
の
紺野議員
の釈明にもありましたとおり、この
宮本委員長
の
復権
の問題がきわめて疑義があり、法令の上から解釈いたしますとそのような解釈が成り立たぬのに、それが
復権
をされたのはどういうことかというような、これまた予算
委員会
を初めそれぞれの
委員会
において質疑が交わされたところであります。 この点につきましては、言うなれば、
昭和
二十年、先ほど紺野君の
身上弁明
にもありましたとおり、十月、GHQの
指令
で、訴訟中の、
裁判
中の
思想
犯、
政治犯
を
対象
として
釈放
せられた。このGHQの
指令
には、
思想
犯罪
、
政治犯
罪のほかに
刑法
犯は含まれない、こういうふうになっております。この
指令
に基づいて同月十七日に出た
大赦
令でも、
刑法
犯罪
を含むものについては刑の赦免と
復権
は行われず減刑だけである、こういうことになっておるのですね。減刑は行われたのでありますが、しからばなぜ
釈放
が行われたのかというのが春日
委員長
の本院における
質問
の
一つ
のポイントでもあったわけであります。これについては、政府からは、事実に基づいて説明があった点によりますと、病気による刑の執行停止、こういうような
答弁
がなされております。 そして、
昭和
二十年十二月二十九日、GHQの
指令
に基づいて、いわゆる問題となっております
勅令
七百三十号というものが出されたわけであります。この背景は、迫りくる総選挙、これに選挙権、被選挙権を与えるという
意味
合いが、この
勅令
の出された大きな根拠であったというふうに言われておるわけでありますが、これについては「
政治犯人
等ノ資格回復ニ関スル件」ということになっておりまして、これを見てみますと、将来に向かって刑の言い渡しがなかったものとみなす、こういうことも書かれております。 この場合、ずっと追って見てまいりますと、将来にわたって刑の言い渡しがなかったものとみなすということの解釈が、
共産党
と政府側からの
答弁
とは完全に対立するものであります。過去の
判決
があったことまでは、稻葉法務大臣は、これは消滅するものではございませんと、こういうことになっております。これは法務大臣の
答弁
でありますから、そこで
勅令
七百三十号は、しからば
復権
でありますから、直ちに他の
政治犯
、
思想
犯の諸君と同じように
宮本委員長
は
復権
が行われたのかというと、そうではないのですね、これを見てみますと。私の調べによりますと、一年五カ月後に行われておるのであります。この辺が実はきわめて大きな論議を呼んだところであります。この点については法務大臣は、言うなればこういう表現をされました。超権力がここに作用して、やってはならぬ法令を超えてこれが行われた、こういうことになっておるわけでありますから、この事実
関係
は、先ほどの
身上弁明
とは——考えてみますと、やはり事実の有無という観点から言えば、このことはこのこととして了解をされるものでなければならぬというふうに思います。(
発言
する者あり)
宇田國榮
26
○
宇田
委員長
静粛に願います。
三塚博
27
○三塚委員 そこで、紺野君が
身上弁明
の中で言っております特に大事なポイントとしてありますことは、この
事件
はまさに
治安維持法
、
特高
その他によって無謀にも、いろいろな表現を使われておりましたが、でっち上げられた
暗黒裁判
であって、このことを取り上げることに対して、自己の
体験
から感じ、
抗議
の声を上げざるを得なかったものであって、どうしようもない
正義
の声だ、こういう言い方をされております。 このことは、本
事件
は一党の
委員長
にかかわる問題でありますから、いろいろいま
答弁
を聞いておりましても私
自身
も推測できる点はあるわけでございますが、
正義
の声、やむにやまれないそういう気持ちで出したものであるということで、何らこれは「無礼の言」にも当たらぬし、何ら
懲罰
にも値しないし、反省をすることなどというのはとんでもない話であって、反省をするのは提案者の方である、こういう言い方をするわけでありますが、この点について提案者の所見をひとつお伺いをしたいと思います。
渡部一郎
28
○
渡部
(一)議員 今回、
国会
法第百十九条の「各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私
生活
にわたる言論をしてはならない。」また第百二十条、「議院の
会議
又は
委員会
において、侮辱を被つた議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。」あるいは
衆議院
規則の各条項等を考えますと、紺野君の御
発言
はまことに「無礼の言」であり、かつ、
国会
において「議員は、議院の品位を重んじなければならない。」というような明確な
規定
に対し、頭から背反すると思うものでありまして、私は、そういう
意味
からこの
懲罰事犯
に関して皆様方に御賛同をいただきたいとお願いをいたしておるわけでございます。
三塚博
29
○三塚委員 そこで、この
治安維持法
に基づく
裁判
についてここでいろいろ論及してみても、当
委員会
の問題でありませんから、またその
懲罰
の事犯について具体的にお聞きをさせていただきます。 本件については、
紺野議員
は逆に正木さんから暴行を受けた、こう言っておるわけですね。それで、何とかというテレビ会社がちゃんとそれを写しているのだ、こう言うわけであります。暴行を受けて何回か胸を突かれた、こういうことであるわけです。暴行を受けて、
懲罰
さるべきはこの正木良明議員であって、自分が受ける理由は何もない、こういうことを言っておるのでありますが、この暴行ということについて提案者はどういうふうに理解をし、把握をされておるか、その辺についてお聞かせください。
渡部一郎
30
○
渡部
(一)議員 私は、ただいまお話しになりましたような事実は、全くないものと了知をいたしております。
三塚博
31
○三塚委員 私も、本
会議
場の中ごろでありますから、あの騒動がありましたとき見ておったわけでありますが、本
会議
場で議員が手を振り上げるとかどうということは、これはあり得べからざることであり、ないと私も思うのであります。 でありますから、これは後ほどわれわれもいろいろ
調査
をしてみなければならぬわけでありますが、えてして、反対論という
立場
に立ちますと、いろいろな理屈が当事者の争いの場合にはつくものであります。表現が悪いのでありますが、どろぼうにも三分の理なんという言葉が昔からあるわけですね。そういう言葉などもあるわけですから、両当事者間の争いというのはそういう
意味
で、民事におきましては
裁判
所において厳正公平な
裁判
官によってこれを判定をしていく、私ども
懲罰委員会
におきましても、委員各位はやはり冷静に物を考えて判断をしながら、どちらに正しさがあるのかということを見きわめていかなければならぬわけであります。 そういうことでお伺いをするわけでありますけれども、
公明党
さんが特に「無礼の言」として並べておるこの言でありますが、
紺野議員
は、提案者の説明にありますように、「反共のイヌ、イヌがほえている」こういう言葉、これはこういうことであるとすれば大変な問題ですよ。「反共のイヌ」——
共産党
の場合は、
共産党
の政策、体質に関する言論に対しては大変に鋭敏でありますことは天下周知の事実であります。わが党なんかは悪口を言わ
れつ
けているせいか寛大だと思うのですよ。そういう
意味
でも寛大です。議会政党としてきわめて鍛練をしておるので、そういう点で余りそのことについて気にもかけませんし、いい言葉であれば謙虚にこれを受け入れて分析をし、それを考えて政策に実行していくということになるのでありますが、
日本共産党
の場合はどういうのか、党に寄せられる
批判
は絶対聞く耳を持たぬ、そういう言動があるやに見られるわけであります。そういう
意味
で、反共ということはまさに今世紀に存在する
最大
の悪のように考えられておるのではないかというふうに私は、主観でありますけれども、思っておるわけであります。 そういう点から言いますと、もっとやはり
日本共産党
の諸君も、こういう問題が起きたときに一方的にこれを言うのではなくして、謙虚に、山口議員が先ほど来申されておりましたが、私も議運の委員として——ここに東中
理事
がおられますが、事態解決についてはいろいろ御苦心をされました。これは数度にわたって御苦心をされ、
公明党
の大久保
理事
さんも、そういうことであれば本件は党に持ち帰り善処してもよろしいですということであったのであります。私ども、あの当時はまだ
動議
提出の前でありますから、第三者としてその
議論
を聞いておりましても、やはり本院の権威のために歩み寄りというものがあっていいはずで……(東中委員「
動議
提出後だ」と呼ぶ)その前、
理事
だけの懇談で。そういうことであったわけであります。この場合はぼくの方が正しいのです。東中
理事
さんが言っていることは間違っていると思うのです。(
発言
する者あり)
宇田國榮
32
○
宇田
委員長
静粛に願います。
三塚博
33
○三塚委員 大変自分の言うことは正しくて他人の言うことは全部間違っているというふうに、先ほど
身上弁明
を聞いていましても、本院の問題をこれだけお騒がせを申し上げ、これだけ
懲罰委員会
を開きやらなければならぬ、大変な時期にやらなければならぬということについて、一言の反省も聞かれなかったことはきわめて遺憾であるというふうには思うのです。 これはこれとして、その点から申し上げますが、この「反共のイヌ、イヌがほえている」こういうことが実は本
動議
の問題になっておるわけであります。紺野さんは、「反共のイヌがほえている」というのではなくて「
反共宣伝
をやめろ」と言った、そして「反共の犬がほえるみたいなことはやめろ」、こういうことなんですね。「反共のイヌ、イヌがほえている」これではニュアンスが若干違う。しかし、「反共の犬がほえるみたいなことはやめろ」、こういう趣旨だったのか、「反共のイヌ、イヌがほえている」ということであったのか、その辺、事実
関係
だけをお聞かせください。
渡部一郎
34
○
渡部
(一)議員 紺野君の席と私ども
公明党
との席は隣接をいたしておりまして、正木君との間は約五十センチであり、私の席からいっても約二メートルしかないのであります。私は、紺野先生とは全く違って、かなり耳はいい方でありまして、よく聞こえる耳を持ち合わせております。そんな複雑なことを先生が述べられたのでは全くなく、「イヌ、イヌ、イヌ」と大声で叫ばれ、そしてそのうち「反共のイヌ」と言い、それから「イヌがほえている」と言ったことは、私ども周辺にいた者がひとしく認めている点であります。
三塚博
35
○三塚委員 以上で終わらせていただくわけでございますが、いまの話を聞いて、この
懲罰委員会
提案の説明、
身上弁明
などを聞いておる点につきましては、特に
共産党
リンチ事件
が、きょうは時間がありませんから申し上げませんでしたけれども、本問題の大変な核心になっているわけです。これが
原因
となってこの
懲罰委員会
開催にまでなっているわけでありますから、実は私もこの問題については調べておるわけでありまして、
紺野議員
を今度参考人として次の機会に来ていただきまして、
紺野議員
にお聞きをしてまいりませんければならぬと思うのでありますが、この辺も善処をしておいていただきたいと思います。 終わります。
宇田國榮
36
○
宇田
委員長
次回は、来る十一月二日、火曜日、午前十時より
理事
会、午前十時三十分
委員会
を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時二十三分散会