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1976-10-20 第78回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十日(水曜日)    午後一時十七分開議  出席委員    委員長 中村 重光君    理事 小沢 一郎君 理事 加藤 陽三君    理事 佐々木義武君 理事 佐藤 文生君    理事 宮崎 茂一君 理事 石野 久男君    理事 八木  昇君 理事 瀬崎 博義君       木野 晴夫君    竹中 修一君       森山 欽司君    坂本 恭一君       近江巳記夫君    小宮 武喜君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田 正男君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         科学技術庁長官         官房長     小山  実君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君  委員外出席者         運輸省船舶局首         席船舶検査官  堀之北克朗君         船舶技術研究所         原子力船部長  中田 正也君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十日  辞任         補欠選任   堂森 芳夫君     坂本 恭一君 同日  辞任         補欠選任   坂本 恭一君     堂森 芳夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出、第七十七回国会閣法第四号)      ――――◇―――――
  2. 中村重光

    中村委員長 これより会議を開きます。  第七十七回国会内閣提出日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  この際、お諮りいたします。  ただいま議題といたしました本案につきましては、先国会におきましてすでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村重光

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――  日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  4. 中村重光

    中村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木義武君。
  5. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案に関しまして御質問申し上げるわけでございますが、持ち時間も余りございませんし、また、他派の方々質問の希望が大変多いようでございますので、私は詳細にわたる質問は後日に譲りまして、きょうは特に法案に関連する事項を中心に御質問申し上げたいと存じます。  ただ、それに先立ちまして一般的な事項を若干伺いますが、主として私自体の見解を交えて申しますから、そのとおりであるということであれば、どうぞ、そのとおりでございますとお答えくだされば、大変時間の節約ができてよろしいのじゃないかと思います。  まず、原子力船研究開発の意義あるいは必要性といったようなものに関しましては、いまさらこの席で私から申し上げる必要もないと存じます。世界造船海運界は物流が多くなるに従いまして、順次、船は高速大型化しつつあります。したがいまして、高出力推進機関を次第に要求しておることは世界の趨勢でございまして、この点は私からくどく申し上げる必要もなかろうと存じます。そういたしますと、高出力推進機関といたしまして当然原子力船というものが大変重要度を増してくると存じます。世界のこの問題に対する今後の情勢等考えますと、各国とも非常な計画で将来のためにただいま取り組んでいるように承知してございます。わが国世界一の造船国でありますし、また有数な海運国でございますから、将来世界の進運におくれないように、過去、現在を通じまして、この原子力船実用化時代におくれをとらないように、国策としてこれを進めるのは当然のことじゃなかろうかと思うのでございます。したがいまして、この原子力船開発事業団法ができます際も、各党が全部賛成の上で出発したように記憶してございます。  日がたつに従いまして、第一船の原子力船もできました。これは御承知のように、いま申しましたような将来に備えての研究実験という意味のみならず、わが国原子力船原子力基本法原則に従いまして自主技術開発しようという大変たくましいビジョンを持ってこれに取り組んだことは、いまさら申し上げるまでもございません。幸いにして、少し予定よりはおくれましたが、原子力船むつ」も誕生し、その出力上昇試験実験に入ったわけでございますが、非常に残念でございますけれども、不幸にしてトラブルが生じ、御承知のような事態になったわけでございます。  ただ、長い目で見ますと、実験でございますから、初めから一〇〇%故障、トラブルのないものであれば実験の要はないのでありまして、実験でございますから、そういうものも当然予想されるところでございましょうし、起きました際でも、それが海を汚染したりあるいは第三者に被害を加えたりということがございますとこれは問題でございますけれども、そうじゃないトラブルが起きた場合には、これを修理いたしまして、そしてまた実験を続けていって、それがだんだん重なっていって、その蓄積の上に第二船、第三船と実用化に向かっていくのがわが国原子力船開発に対する国策じゃなかろうかと存じます。  そこで、それではその「むつ」の起こしましたトラブルに対して修理可能かということに関しましては、私の記憶しているところでは、ずいぶんいろいろな機関で、これ以上英知を傾けることはできないというほど、日本のこの道の大家の人たちにそれぞれ何回となくお集まりいただいて、いわゆる原子力基本法で言う民主的な一つの行き方として、総知を挙げてこの安全性検討にかかったように私記憶してございます。その結果、大山委員会報告によりますと、修理をすればこの船は十分所期目的どおり使える、その際はあわせて念のために総点検をしなさい、こういう結論が出ているようでございまして、まことにありがたい報告だと思っております。  そこで、しからば修理点検を一体どこでやるかということになりますと、ここが大変いま問題の焦点でありまして、青森むつ市では修理点検が無理なように見られますから、長崎佐世保港はどうだろうということで、その検討方内閣といたしまして知事あるいは佐世保の市長にお願いしている。そうして、その後、安全性等に対する地元の理解を深めるためにできる限りの努力を傾注しているのが現状ではないか、こういうふうに承知してございます。  そこで、現地で修理点検に対しては大変安全だということはわかっておりますが、行く途中はどうか。仮に長崎県あるいは佐世保市の方で引き受けてもよろしいということになりました場合に、青森県から長崎県に「むつ」を回送していくわけでございますけれども、その際は御承知のように補助エンジンで重油だけで回送するわけでございますから、別に原子力エナージーでこれを回送するわけでも何でもない、いわば普通の商船あるいは漁船と同じ状況で回送するわけでございまして、そうして、長崎県の佐世保に仮に入ることができたといたしました場合でも、普通の商船漁船と実体的には何ら変わらない。そして、係留した上で修理点検あるいはドックに入れまして検査等をするわけでございますが、その安全性に関しましては、先ほどくどく申しましたように、日本の総知を結集して何遍となく繰り返し繰り返し慎重に検討した上それは大丈夫である、こういうことになっておるのでございますから、日本原子力船の将来のあり方を考えますと、この際はどうしても政府としてはこの修理点検を、せっかく自主的に開発した船でございますから、済ませまして、そして本来の実験船として将来のためにデータの蓄積等を積んでいくのが当然、不退転の決意考えてよろしいかと思っておりますが、その点に関しまして御決意のほどを承りたいと思います。
  6. 前田正男

    前田国務大臣 ただいま佐々木委員のおっしゃるとおりでございまして、お説のとおりに、修理をして、そして原子力船はぜひともそのまま続けていきたい、こう思っておるような次第でございます。
  7. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 それでは前置きはそれくらいにいたしまして、さらに詳細にわたる点は後日、日を改めまして質問をお許しいただきたいと思います。  まず、原子力船開発事業団法そのものに関する御質問でございますが、この法律附則第二条で「この法律は、昭和五十一年三月三十一日までに廃止するものとする。」というふうな規定がございます。  まず、その本文の解釈に入る前に、限時法とは一体何ぞやという点に関しましてお尋ねいたしたいのでございますが、どうも限時法に対しては解釈が相当誤って理解されている向きもあるのじゃなかろうかと、私、実は大変不遜な言辞でありますけれども考えるわけでありまして、限時法というのは、文字どおりその法律効力を失う時期をあらかじめ明示しているのでございまして、その時期が到来すれば自動的にその法律効力を失うことになるということを法律に明示しておるのを限時法と言っているのじゃなかろうか、私はそういうふうに解釈しておりますが、間違いございませんか。
  8. 前田正男

    前田国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、法令を廃止するなど、別段の特別処置をとらなくても自動的に失効する、たとえばその効力を失うとか、その効力はいつまで有するとか、こういうふうに書いてあるものに限る、こういうふうに思っております。
  9. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 ところが、先ほど読み上げましたように、この事業団法附則第二条では、「廃止するものとする。」とありまして、効力を失う時期を、いつまでにこの法律効力を失するというふうには書いておりません。したがいまして、三月三十一日になれば自動的に当然この法律は失効するというふうに解釈すべきものじゃなくて、したがって、そういう意味の、先ほど申しましたような限時法とは言えないわけでございまして、こういうふうな書き方を決めたゆえんのものは、この前、ことしの五月十三日でございますか、私まだ科学技術庁長官をしておりました際に、民社党の小宮委員の御質問に答えたことがございますけれども、その当時を思い出しましてもう一遍繰り返しますが、自動的に自然に三月三十一日に失効しないわけでありまして、こういう規定を設けましたのはどういう意味かと申しますと、十年間この事業団が存続して、そして十年後に果たしてこの事業団目的が完遂されるかどうか、さらにこの事業団としてはまだその目的が完遂しないので、さらにもう少し存続してこれの研究実験を続けるか、あるいはむしろこの際廃止したらよろしいかということは、科学技術が非常に日進月歩で進歩しているときでありますから、十年前に十年後の現在を予測するということは大変むずかしい。したがって、むしろ法律には廃止するものとして当然失効するのじゃなしにしておいて、そして、その時点になって政府がこれを廃止するというんであれば、立法でもってはっきり廃止するとすべきであるし、そうじゃなしに、政府としてはこれはさらに存続させなければならないということであれば、存続の法律を出すべきだ、こういう意図に、私はこの法律をつくりました当時の責任者といたしまして、そういう記憶を持っておるのでありますが、そういう点に関しましてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  10. 前田正男

    前田国務大臣 仰せのとおり、この法律には有効期間が特定してありませんので、したがいまして、この法律廃止また失効させるためには、具体的にこの法律廃止し、また失効させることを内容とする法律が制定される必要があるということで、先ほどの限時法とはその性格が異なっておる、こういうふうに思います。
  11. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 よくわかりました。  そこで、法制局の方に御質問を申し上げたいのでありますが、この事業団法廃止するためには、いま長官からもお話ございましたが、別途廃止するための立法措置を講じることが必要でありまして、それまでの間は依然としてこの法律は有効であると解釈しますが、この点、法制局としてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  12. 前田正道

    前田政府委員 お答え申し上げます。  内閣法制局といたしましても、先生ただいまおっしゃいましたように、もし廃止するといたしますれば廃止のための法律が必要でございますし、その廃止措置がとられません限りにおきましては、事業団法は現在もなお有効であると考えております。
  13. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 この延期のための改正法案が七十七国会に提出されたのは、ことしの一月三十一日でございまして、この委員会審議をいたしましたのは五月二十日でございます。この間何ら審議せずにこの法案は眠っておったわけでございますけれども、これは一体どういうことでございましたでしょうか。
  14. 山野正登

    山野政府委員 先生質問のとおり、一月三十一日に国会に御提案申し上げまして、五月六日に科学技術特別委員会に付託になっておるわけでございますが、この間、私どもは一日も早く実質御審議をいただくことを期待しておったのでございますが、国会の御事情によりましてこういうふうにおくれたということはまことに残念に考えております。
  15. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 いまお話しのように、その経過はどうも政府の罪に帰すべきじゃなくて、もっぱら国会の方の事情によるように私も承知しておりました。いまお話がございましたように、先ほど法制局からもお話がございましたように、これを廃止するというのであれば廃止法案を出すのが当然でございまして、そういう廃止という意図が他党にあるならば、私は、はっきり廃止法案というものを出してここで審議すべきだと思うのですけれども野党側からそういう意見が出てきませんし、わが方はむしろ、この事業団は、先ほど申しましたように国策上存続して、日本の将来の民族のためにどうしても実験所期目的を果たさせたい、そのためにはこれはどうしても延期すべきものだ、まだ目的は達成しておらないということで延期法案を出しているのでございますから、私は、政府としてはその法案をひとつ今国会でどうしても成立させてもらいたいという念願であることは当然かと思いますが、いかがでございましょうか。
  16. 前田正男

    前田国務大臣 わが国エネルギー政策及び海運造船政策先ほどお話がありました点から原子力船開発というものはぜひ必要でございまして、それがためにこの事業団法はぜひひとつ延長することが必要だと思っておるわけでございます。したがいまして、この延長法律を前の国会からお願いいたしまして継続審議になっておるわけでござますので、ぜひひとつこの際、本国会において早期に成立するように御協力、御審議をお願いしたいと思うわけでございます。
  17. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 それでは、もし幸い野党側の御協力も得、委員長も御決心くださいまして、審議を終えてめでたく参議院に送付していただけばこれは一番ありがたいわけでございますけれども、今臨時国会期間あるいは性質上なかなかむずかしい状況にあるようにも承知してございます。仮に、政治情勢等によりまして本法律案審議結論を得ないまま終了した場合、政府は次の国会にも本延長法律案をそのまま提出する用意があるかどうか、念のために大臣の所見をしかと承っておきたいと思います。
  18. 前田正男

    前田国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、ぜひこの国会において成立するように審議をお願いしたいのでございますけれども、もし万一結論を得ないままで終了したというようなことになりましたならば、次の国会には同様の趣旨法律を出す考えでおるわけでございます。
  19. 佐々木義武

    佐々木(義)委員 冒頭申し上げましたように、原子力船開発問題に関しまして、まだまだいろいろ聞きたい点はたくさんございますが、野党側質問者が大変多いようでございますので、私の質問はここで、一応さわりだけを質問して終えまして、また後日質問させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  20. 中村重光

    中村委員長 次に坂本恭一君。
  21. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 大分時間をいただいて質問をする予定でおったのですが、私に与えられた時間が非常に短いものですから、答弁はできるだけ短く簡潔にやっていただきたいと思います。  いまも若干議論があったようですけれども、いわゆる附則二条に「五十一年三月三十一日までに廃止するものとする。」という規定がございます。これについて若干質問を申し上げたいと思います。  いまも若干の説明があったのですが、実は法制局の方からその限時法の類型から何から全部お聞きしょうと思ったのですが、どうもその時間はございません。先ほど答弁の中ですと、若干事業団法の場合にはいわゆる限時法には入らないようなお答えがあったのですが、その点はいかがですか、法制局
  22. 前田正道

    前田政府委員 最終的にはその限時法の定義の問題になると思うのでございますが、一応普通の法律につきましてはその終期が定めてないというのが一般であろうかと思います。その一般法律に対しまして、特に終期が明定されていますもの、これにつきまして私どもは限時法と呼んでおりますので、そういう意味から申しますと、「廃止するものとする。」という方は、一見似ておりますけれども、限時法そのものではないというふうに理解しております。
  23. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 その限時法と対比するのは恐らく恒久法だと思うのですが、恒久法と限時法と言ったらどっちに入るのですか、この事業団法は。
  24. 前田正道

    前田政府委員 それは、どちらかと言われますと限時法ということになると思いますけれども、また限時法の中が分かれますので、その意味においては「効力を失う。」という規定がある場合の限時法とは違うということだと思います。
  25. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 だから、皆さん法制局でまさに法解釈をやっておられる方々だから、それを前提にして私は聞いているのですよ。限時法の中に、いまの日本法体系で言えば三つぐらいの類型がある。そのうちの一つに、効力を失うというのも確かにありますね。だから、それだけを限時法と考え答弁をされておるのですか。
  26. 前田正道

    前田政府委員 私ども一般に限時法として申し上げておりますのは、その終期が明確に何年何月何日限り「その効力を失う。」というたぐいの規定を有する法律を指して限時法と解しております。
  27. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そういう前提でそういう答弁が出てくるならいいですよ。  そうすると、「廃止するものとする。」という言葉は何のためにあるのですか。
  28. 前田正道

    前田政府委員 一般終期を定めてない法律に対しまして、ある一定期間施行するということを前提にしております意味では、「効力を失う。」と「廃止するものとする。」という法律は、共通性があろうかと思います。  しかしながら、その違いはどこにあるかと申しますと、その法律の制定の際に、臨時的な必要に基づいて法律を制定するわけでございますけれども、その施行期間につきまして明確にある一定期間が予測されるもの、そういうものにつきまして「効力を失う。」という方の規定を置きまして、それからその期間がそれに比べますとそれほどまでには明確に確定できないという場合に「廃止するものとする。」という規定を置くのが従来の通例でございます。
  29. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 従来の通例というのはそれはそれでいいのですけれども、そうしたら「廃止するものとする。」という言葉はあってもなくても同じということになるわけですか。
  30. 前田正道

    前田政府委員 「廃止するものとする。」と申しますのは、「するものとする。」という表現からいたしまして、そこに一定方針なり原則と申しますか、廃止することについての一般的な原則なり方針を示した規定であるというふうに考えております。  それからなお、非常に社会的な変動が激しい場合に、ある一定期間をはっきり明定できませんけれども、もう一回その審議を、国会の御判断の機会を得たいというような意味合いでそちらの方の規定を使う場合もあろうかと思います。
  31. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 やはりいまの答弁ですと、「廃止するものとする。」という言葉法律的には要らないことになるわけですね。余り意味がないですね、これはあっても。いかがですか。
  32. 前田正道

    前田政府委員 その規定が置かれております以上は、その廃止につきまして一応の期間予定はされるわけでございますけれども、その期間の終了の経過に当たりましてどのように法律考えるか、もう一遍再考の機会があるということであろうと思います。
  33. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 それでは、この事業団法の場合には延長法案が出ているわけですけれども廃止法案延長法案も両方とも出てこなかったらどうなるのですか、この法律は。
  34. 前田正道

    前田政府委員 附則規定でございましても、法律といたしまして「するものとする。」という拘束的な意味を含めて規定されております以上は、やはり廃止であるかあるいは延長であるか、いずれかの法的措置を講ずることが当然であろうかと考えております。
  35. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 だから、私がいまお尋ねしているのは、延長法案廃止法案もどっちも出なかった場合に、その法律は何月何日をもって「廃止するものとする。」という場合には、その何月何日で死ぬのですか、生きているのですか。
  36. 前田正道

    前田政府委員 いずれかの法律が出されるべきだとは存じますけれども、仮にその出ていない時点においてその法律効力をどう考えるかということになりますと、ただいま申し上げましたように、「するものとする。」ということで原則なり方針を示したものでございますので、廃止の法的な措置がとられていません以上は有効であるというふうに考えております。と申しますのは、そういう前提とともに、これまでの国会での取り扱いを拝見いたしましても、廃止期限後に廃止されましたもの、それから廃止期限経過しまして延長措置がとられたもの、こういう法律のグループがございます。こういう点から拝見しますと、やはりそういう措置がとられたということにつきましては、それぞれの法律廃止期限経過後においてもなお存続するということを前提にしてとられた措置ではなかろうかと思うわけでございます。
  37. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 結局は恒久法と同じということになるようですね、皆さん方考え方でいくと。  そうすると、また別の問題に移りますが、たとえば廃止法案を出した場合に、その廃止法案が通過した場合には当然廃止になるのでしょうけれども、通過しない場合にはどうなるのですか、廃止法案が議了しなかった場合。
  38. 前田正道

    前田政府委員 単に廃案になりましただけで国会の御意思として廃止ということが明確に察知できません以上は、やはり同様の状態が続くと言わざるを得ないと存じます。
  39. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、延長法案の場合、延長法案が通過すれば延長になるのでしょうけれども、通過しない場合にはどうなるのですか、延長法案が通過しない場合、議了しなかった場合。
  40. 前田正道

    前田政府委員 その点についても同様であろうと思います。
  41. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 関連して大臣にお尋ねしたいのですが、一定法案を出して、それが国会の中で否決をされたという状況があった場合に、特に不信任案のときを考えていただけばいいと思うのですが、不信任案否決をされると信任の効果があるというふうに一般的に言われていますね。そういうものと、いま法制局と私が議論したのと同じでしょうか、違いますか。
  42. 前田正男

    前田国務大臣 この法律は、先ほど申しましたとおり法律としては現在有効に続いておるわけでございますから、不信任案の場合のときとはちょっと意味が違うと私は思います。
  43. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、延長法案が仮に議了したんではなくて否決された場合はどういうふうにお考えになりますか。
  44. 前田正男

    前田国務大臣 現在のところ延長法案の御審議をまだ願っておるわけでございまして、われわれは延長法案が必ず成立するもの、こういうふうに考えておるわけでございます。
  45. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 先ほどから大臣はそうおっしゃっていますから、それはよくわかっていますけれども、いま仮定の場合を想定して大臣考え方をお聞きしているのですから、もう一度お願いします。
  46. 前田正男

    前田国務大臣 私たちはそういうことはあり得ない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  47. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 いまの点について、否決された場合には法制局どういうふうにお考えになりますか。
  48. 前田正道

    前田政府委員 全くの仮定の問題として申し上げますと、否決されたといたしますと、もう存続するに由ないわけでございますから、あわせて同時に廃止のための措置がとられるべきであろうと思います。と申しますのは、同時に団法の第三十七条には「解散については、別に法律で定める。」という規定もございますから、もし否決ということでございますれば、当然その廃止のために必要な措置もあわせてなされることになるのだろうというふうに考えます。
  49. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 仮定の話は余りしてもしようがないのですが、その場合には、手続的には廃止法案を出さなければいけないのですか。
  50. 前田正道

    前田政府委員 そのとおりに考えております。     〔発言する者あり〕
  51. 中村重光

    中村委員長 御静粛に願います。
  52. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 別の問題に移りましょう。  私は当委員会委員ではありませんでしたので、人から聞いたことなんですが、この事業団法が生きていることしの三月三十一日までに科学技術庁の皆さん方は各委員にいろいろ働きかけをしておられたようです。その延長法案が通らないと予算がとれなくなるとかいろいろなことを言っておったようですけれども延長法案が通らなければ予算がとれなくなると言って各委員を啓蒙した理由は何でしょう。
  53. 山野正登

    山野政府委員 延長法案が成立しない場合には事業団の予算が成立しないとは考えておりません。
  54. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 考えていないのは結構なのですが、そういうことがあったのですか。科学技術庁の方で各委員のところを回って、延長法案を通してもらいたいという意味で恐らくやったのだろうと思うのですけれども、そういうことをやりましたか。
  55. 山野正登

    山野政府委員 事業団延長法案について関係の先生方の御理解をいただきますために、団法の内容につきましていろいろ御説明するということはいたしました。
  56. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 やったやらないは水かけ論ですからこれ以上やりませんけれども、一言申し上げておきますと、私どもはずっと以前から、三月三十一日までに延長法案が通らなければこれはまさに廃止になるという前提でこれまで議論をやってきたわけです。先ほどうわさということで予算の問題を若干申し上げたのですが、五十年度、五十一年度、さらには来年度の概算要求と年々予算の額が引き上げられてきているので、これは皆さん方は有効だという前提でやっておられるからそういうことになるのでしょうけれども法解釈学的にはそれは廃止してない、廃止法案が通るか延長法案が通らないか否決されるか、どちらかでない限りは事業団法自体は生きているという前提でお答えがあったと思うのですが、政治的にはやはり延長法案が通らない、そして今国会も通らないのじゃないかというふうに言われて、次の国会のことまで先ほど質疑が行われていましたから、そういう点から言えば、予算をどんどん、概算要求にしても今年度より大きいものをとっていこうというのはいささか政治的な責任を考えていないのではないかと私は考えざるを得ないのですけれども大臣はその辺についてはどうお考えでしょうか。
  57. 前田正男

    前田国務大臣 この法律が有効であります以上は、当然この事業団の従前の事業の成果を維持管理する業務は行えるわけでございますから、その範囲においての予算の御審議をいただいておるわけでございます。
  58. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 維持管理というのは、いわば清算法人ができる最大の権限なんですね。だから維持管理にとどめていただくということであればまだ私どもは理解ができるのですけれども、維持管理だけということで伺ってよろしいですか。
  59. 前田正男

    前田国務大臣 この法律によりまして与えられているこの事業のそれの維持管理でございます。
  60. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 では次の問題に移ります。船舶局の方、いらっしゃいますね。  「むつ」が船舶法五条による登録を受けたのはいつでしょうか。
  61. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 お答えいたします。  「むつ」の登録は、昭和四十八年六月十九日、東北海運局青森支局において行われております。
  62. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 四十八年六月十九日というのは、この「むつ」にすでに原子炉が設置をされた後ですか、前ですか。
  63. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 「むつ」に原子炉が設置された後でございます。     〔委員長退席、石野委員長代理着席〕
  64. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、その後で、原子炉がすでに作動をしている時点ですか。
  65. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 原子炉がまだ作動してない時期であると思います。
  66. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、この「むつ」が四十八年六月十九日に登録をされたそうですけれども、その時点でいわゆる船舶というものになっておったということになりますね。それはいわゆる補助エンジンがついているからということですか。
  67. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 船舶の登録と申しますのは、通常におきましては船体、機関、設備等の工事、すなわち物理的にその船が走れるような建造工事が全般的に完成した後におきまして、積量の測度及び船舶登記の手続が行われた後に行われるものであります。
  68. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、現在もその補助エンジンはついているのだろうと思うのですが、登録をされた時点のいわゆる機関ですか、エンジンその他は機関と言っていいんでしょうね。その機関はどういうものがついておったのですか。
  69. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 登録いたしますと船舶国籍証書を持有いたすわけでございますが、その船舶国籍証書の記載事項一つであります機関の種類につきましては、現行法上タービン機器に分類されますので、タービン機器と記載されております。
  70. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 船舶原簿を見ますと「むつ」の場合には種類は汽船になっていますね。これは仮に原子力船として完全に完成をしたら、やはり汽船なんですか、それとも原子力船と変えるのですか。
  71. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 ただいま申し上げましたように、船舶国籍証書は船舶が登録原簿に登録された時点で交付されるものでございまして、ただいまも申し上げましたように、この国籍証書に記載されております機関の種類につきましては現行法上はタービン機器に分類されておるわけでございますので、原子炉の完成時点で特にその書きかえをする必要はないと考えております。
  72. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうなると、通称はよく原子力船むつ」というふうに表示されておりますけれども、厳密に言うと汽船「むつ」でいいわけですね。
  73. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 ただいまは船舶国籍証書面の機関の種類のことについて申し上げましたが、もう一つ船舶が持つものに船舶安全法に基づきます船舶検査証書がございます。この船舶検査証書の面におきましては、検査が結了した時点原子力船というものを明記するつもりでおりますので、この「むつ」が原子力船であるかどうかということはその時点で明確になると考えております。
  74. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると現在の時点では汽船「むつ」ということになりますね。
  75. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 そのとおりでございます。
  76. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 ところで、科学技術庁の方にお尋ねしますが、むつ市における母港がいわゆる原子炉設置の許可の基準を充足をするということがよく言われているのですが、原子力船というのは母港がないと許可が得られないというふうに言ってよろしいのですか。
  77. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子炉等規制法の許可をいたします場合に、申請書の記載内容、さらにその許可をいたしますに際しましての許可の基準がございます。その範囲内におきましていわゆる定係港の諸設備等につきましての申請もあるわけでございます。そういう全体をくるめまして許可をいたすわけでございます。
  78. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 ですから、むずかしい言葉で言われると素人である私にはわかりませんので、原子力船を保有するには母港が必ず必要だということでしょうか。
  79. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 これはその事案の具体的な実態に即して考えるべきであると思います。日本の「むつ」の場合は別といたしまして、たとえば外国の原子力船の場合でございますと陸上付帯設備が必要でないというものがあり得るわけでございます。あるいは日本原子力船におきましても将来はそういうものがあり得ると思います。そういう場合と陸上の付帯設備が必要である場合と両方の場合がございますので、それぞれの実態に応じて考えるべきであると考えております。
  80. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そういうむずかしいことを言わなくともいいですよ。現在ある「むつ」には母港が必ず必要なんですか、必要でないのですか。
  81. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現在の「むつ」は陸上付帯設備が必要でございます。そういう前提で許可が行われております。
  82. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、一年半という約束で現在むつ市にあるいわゆる母港に係留されておるというのですか、停泊をしているわけですけれども、現在は「むつ」の母港になっているのですか、来年の四月十五日まで。母港なんですか、母港でないですか。
  83. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 法律上は母港ということの定めは特にございません。陸上付帯設備と原子力船とあわせて許可の対象となっておるわけでございます。
  84. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 ですから、それじゃ現在は陸上付帯設備がいまの「むつ」にとっては必要ではないんじゃないですか。
  85. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現在は船舶安全法に基づく検査の途中の段階でございまして、まだこれが完全な原子力船として稼働する状態になっておりません。そういう状態の実態を十分判断する必要があると考えております。
  86. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 実態を見て判断する必要があるというのはそれはそれでいいのですけれども、判断をした結論はどうなるのですか。
  87. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現在の付帯設備が現在の「むつ」の現状と合わせてどういう関係にあるかということの判断において現行の許可というのがなされておる次第でございます。
  88. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 それじゃまたちょっと前の質問に戻りますけれども、現在係留されているいわゆる母港ですね、陸上付帯施設を持っている、必要なわけですから。そうするとそういう陸上付帯施設を持っているところしか「むつ」というのは入港できないじゃないですか。
  89. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 原子力船も船の一種でございますから、船というものは、原則としてどこの港へでも入れるということで初めて船としての用をなし得るものであると考えております。そういう観点からいたしまして、原子力船の入港がいわゆる定係港だけに限られておるということではないと考えております。
  90. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 どうも答弁が別のことを答えているような気がしてしようがないのですが、それは変わりそうもありませんからこれ以上詰めません。  佐世保修理港にするということが発表されて以来、いろいろ物議を醸してそれなりの反対運動等も非常にシビアに行われているようですけれども、いわゆる修理港というのはどういうものなんでしょうか。
  91. 山野正登

    山野政府委員 私どもがただいま考えておりますこれからの作業と申しますのは、一昨年起こしました放射線漏れに対する措置といたしまして遮蔽改修を行うということが一つと、それから、それ以降原子力船懇談会あるいは「むつ」放射線漏れ問題調査委員会等でいろいろ御検討願いました結論としまして、この遮蔽改修を行います場合には、あわせて原子力プラント等を中心にした安全性の総点検をすべきであるという御提言があるわけでございますので、この遮蔽改修にあわせ、この御提言に沿いまして、安全性の総点検をしようといたしております。この一連の作業をする港を、私どもは便宜上修理港と呼んでおります。
  92. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、まあ俗称、便宜上でいいのですが、修理港というのはいわゆる原子炉の規制に関する法律上はどこに法的根拠を求めているのですか。
  93. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現行法制上は、定係港以外の港への入港あるいは修理のための入渠などにつきましては、原子炉等規制法第三十六条の二「原子力船の入港の届出等」この規定その他によって規制されることになっております。
  94. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、いわゆる遮蔽工事だけだったら二十三条の二項の四号には全然触れないということになるわけですか。
  95. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 その遮蔽工事の内容が、許可を受けました範囲内の工事であるか、その許可の範囲を越えるものであるかによって、扱いが変わってまいります。許可の範囲内の修理でございますれば、許可の変更の必要はございません。許可の範囲の外になる場合には、変更の手続が必要であります。
  96. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 だから、皆さんがいまお考えになっているのはその許可が要るのですか、要らないのですか、結論を言ってください。
  97. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 現時点ではまだ最終的な設計が完了いたしておりませんので、現時点において許可の範囲のうちであるか外であるかを判断する資料は持ち合わせておりませんが、一般論といたしまして、許可の範囲の中であるというふうに断言することはやや時期尚早であると思われます。
  98. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 中であると断言するのは時期尚早というのは、外であるという可能性がかなり強いということになるのですか。
  99. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 外になる可能性もございますので、必要に応じて許可の変更があるかないか、適切な処置をとってまいる所存でございます。
  100. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、その許可の外になる場合には二十三条のいわゆる「設置の許可」を改めてとることになるのでしょうか。
  101. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 そのとおりでございます。
  102. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 その場合には、二十六条のいわゆる事項の変更ではできないということになるわけですね。
  103. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先生の御質問趣旨、私あるいは十分に把握してないかとも思いますが、最初に設置の許可が二十三条によって行われまして、その内容の変更が必要なときには二十六条によって変更する、こういうたてまえになっております。
  104. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 だから、私が先ほど質問したのは、改めて二十三条の設置の許可を必要とするのですかと尋ねたら、そうですと言う。だから、私は、二十六条の変更ではないんですねと言ったら、今度は変更だと言うのでしょう。どっちなんですか。
  105. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 二十六条で変更の手続をとるわけでございます。
  106. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 その先の議論はやめましょう。  もう一つ別のことをお伺いしたいんです。  原子炉の規制に関する法律の二十四条の三号にいわゆる「許可の基準」があるのですが、その中に「原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること。」というのがありますね。現時点事業団にその技術的能力があるとお考えですか、いかがですか。
  107. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 あると考えております。
  108. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 大臣、いかがですか。
  109. 前田正男

    前田国務大臣 いまの答弁のとおりでございます。
  110. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 いわゆる調査報告書等をずっといろいろ見てみますと、どうもそれに欠けているようなふうの表現等も使われているのですね。そして報告書等がつくられたのは最近ですから、それから以後事業団が変わったというふうには考えられないのですけれども、技術的能力はあるとお考えですか。
  111. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先生の御指摘の報告書が具体的にどういう報告書を指すのか、現時点、私ややつまびらかにいたしませんが、技術的能力はあると考えております。
  112. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 技術的能力がないとはここで多分言えないでしょうけれども、技術的能力がないからああいう問題が起こったのではないのですか。それ以後事業団の構成なり研究スタッフなり施設なり、そういうものが飛躍的によくなったというような現象があるのでしょうか。
  113. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 「むつ」の放射線漏れにつきましては、設計上にやや不備な点があったということは事実でございますが、これは新しい技術の開発というものにおきましてあり得る問題でございます。そういう問題を十分原因も究明いたしまして、故障を修理いたしまして、適格な原子力船にするということが必要でございまして、その能力はあると考えております。
  114. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 これはこれ以上続けても平行線になるだけだろうと思いますからあれですが、こういう問題が起きたというのは、やはりそれなりの能力がなかったと言わざるを得ないと思うのですね。ですから、そうなれば許可をした、いわゆる許可権は内閣総理大臣にあるというふうな規定になっているわけですが、許可をした内閣総理大臣のいわば政治的な責任がかなり大きいのではないかと私ども考えているわけです。ですから、これはもとに戻すということであれば、許可を一たん取り消す以外にないのではないかと私は考えているのですが、大臣の御所見をお願いします。
  115. 前田正男

    前田国務大臣 先ほど政府委員答弁しておりますとおりに、変更の許可のお願いで結構だと思います。
  116. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 では、最後に一点だけお尋ねします。  つい先ごろ十月十五日の西日本新聞に報道されているのですが、今月の三十日から十一月の三日まで五日間「海と船と原子力展」というのが挙行されるようですが、これはどなたが主催をされるのですか。
  117. 山野正登

  118. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 この新聞によりますと、大体総費用一千五百万円と書いてあるのですが、どの程度の予算を組んでやっておられるのでしょうか。
  119. 山野正登

    山野政府委員 約一千万円程度と承知いたしております。
  120. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 もうちょっと正確におわかりになりませんか。
  121. 山野正登

    山野政府委員 細かい端数はちょっと承知しませんが、一千万円ないし千百万円程度と承知いたしております。
  122. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 主催は事業団で、後援が科学技術庁と運輸省だというふうに言われているわけですが、後援をする科学技術庁がその正確な金額がわからないというのはちょっと解せないのですが、知らないのですか。
  123. 山野正登

    山野政府委員 一千万円ないし千百万円という程度でもし御満足いただけませんようでございますれば、後ほど現在の見積額というものを御報告いたします。
  124. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 それじゃ、それはお願いしておきます。  あなた方から言えば、いわゆる地域住民の協力を得たいということでこういうキャンペーンを張るんだろうと思うのですが、一面かなり何となくほおをなで上げられるような、逆なでをされるような感じを受けている人がかなり多いのではないかと思うのですね。そういうことについてはやはり十分皆さん方としては配慮をすべきではないかと私は考えているんですが、いかがですか。
  125. 山野正登

    山野政府委員 私どもは、従来ともこの長崎県あるいは佐世保市というものが原爆の被爆県であることとか、あるいは日本でも有数の水産県であるといったふうな現地の特殊事情というものは十分頭に置きながら、この種の普及啓発活動を進めておるものでございまして、できるだけ原子力船あるいは広く原子力の開発利用の必要性とか安全性といったものを市民あるいは県民一般方々によく理解をしていただくということを本旨としまして、お説のようにできるだけ地元の感情というものを考慮しながら進めていくというふうに配慮いたしております。
  126. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 新聞にもあと後ろの方に書かれているんですけれども、ことしの三月二十五日、現地連絡事務所開設以来、一般市民を対象に百六十回、参加者六千人の説明会を行ったり、あるいは市民二千人を対象にした佐賀の例の九電の玄海原発見学会、いろいろやっておられるようですが、この説明会というのは何かいろいろおみやげつきでやるとか、また、玄海原発に行く場合には貸し切りバスで事業団の方が説明員として乗って至れり尽くせりのことをやっておるようですが、その辺の事情はわかりますか。
  127. 山野正登

    山野政府委員 恐らく先生の御指摘は、たとえば説明会等におきまして、事業団がこの説明をお聞きになる方々がメモをとりますために下敷きを配付しましたり、あるいはボールペンを配付するといったふうなことを御指摘になっておられるのではないかと思うのでございますが、これもお説のように、物を配って、じみちな説明を省略して、それで理解を得たというふうなことにするということをしようとは夢にも思っておりませんので、そういう誤解を招くような行為にならないようにこの点は十分事業団を自戒させておるところでございます。
  128. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 バスで玄海原発のところに行く、これは何か特定のバス会社と契約をしてやっておるということを聞いておるんですがどうですか。
  129. 山野正登

    山野政府委員 バスを借り上げましてこれで輸送しておるということはそのとおりであると思いますが、これが絶えず特定のバス会社のものだけを使っておるかどうかという点、私ただいま承知いたしておりません。
  130. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 とりたてて一社と契約するのが悪いという意味ではないですけれども、その点について多分に地元では誤解を招くようなことが非常に多くやられている。ですから、そういうことはまずおやりにならない方が、特にこういう時期でもあるわけですから、その辺は事業団の方を十分指導していただきたいと思います。  さらに、玄海の原発に行くのに小学校とか中学校のPTA、そういうところにかなり強力に売り込みをやっておって、あるPTAではひんしゅくを買うようなことをやっておるのですね。ですから、そういうことも絶対にないように指導をしていただきたいと思います。  最後に、いま私がいろいろ申し上げたことについての大臣の御所見を聞いて、質問を終わりたいと思います。
  131. 前田正男

    前田国務大臣 いろいろと誤解を受けないように適切に指導さしていただきたい、こう思っております。
  132. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 終わります。
  133. 石野久男

    ○石野委員長代理 次に八木昇君。
  134. 八木昇

    ○八木委員 先ほど坂本委員質疑に対する政府並びに法制局の御答弁を聞いておりますると、現在の原子力船開発事業団法の有効、無効の問題についての御答弁、私には理解ができないのでございますけれども、これは委員長に冒頭にお願いをいたしておきたいと思うのですけれども、これは単にこの事業団法の問題のみならず、やはり今後も起こり得る問題でございますから、これはぜひ法学者その他を中心とする参考人をお呼びいただいて、そしてこの委員会で討議をする、そういう機会を与えていただきたいと思います。その点を要請をいたしておきたいと思うのでございます。  それからまた、恐らくはいま御答弁になったようなことで、有効だということで今後押し通していかれるとするならば、これは住民の側から、そうなればこれはいたし方ございませんから裁判を提起するということもあり得ると思いますから、そこできょうはこの問題についての質疑は一応私はやりません。将来の機会に譲りたいと思います。したがいまして、法制局の方は、ほかの委員からの要求があっておれば別ですが、御退席願って結構でございます。  そこで、お伺いをいたしたいのでございますけれども、かねてより、これはもう日本のどこへいまの「むつ」を持っていこうとしても簡単にそれはできないと私どもは思いますけれども、特に佐世保港を選んだということにつきましては、従来から言われておりますように、特に長崎県が被爆県であるということ、日本で第二番目の水産県であるというようなことのほかに、佐世保港というものそれ自体が非常に特に不適当なところではないか、こういうふうに私は感じておるのでございます。そこで佐世保港の実情について、大臣どのような理解をしておられるのでしょうか。御承知のようにアメリカ軍の艦艇がその主要な部分を使用いたしておるのでございまして、佐世保港内がアメリカ軍との関係等においてどういう状況になっておるのか、簡単にお答えいただきたい。
  135. 石野久男

    ○石野委員長代理 八木委員から委員長に要請の件につきましては、後で理事会にお諮りいたします。
  136. 山野正登

    山野政府委員 佐世保港の状況につきましては、御指摘の米軍の制限水域というのがございます。この制限水域も四種類ぐらいに分かれておりまして、立入禁止区域あるいは航行可能区域あるいはサルベージだけが禁止されておる区域というふうにいろいろございます。しかし、また一方、それ以外に民間の造船会社等が占有をいたしております米軍と関係のない水域もございます。そういうものが混在しておる港でございます。
  137. 八木昇

    ○八木委員 大臣御就任後まだ期間も少ないのですけれども、たとえば私はこういう佐世保港の平面図を持ってきたのですが、これは海上保安協会佐世保支部の製作で、佐世保海上保安部の監修になる図面ですけれども、こういった図面をごらんになったことがございましょうか。
  138. 前田正男

    前田国務大臣 就任早々ですけれども佐世保事情につきましては一応の説明を聞きましたけれども、十分にまだ検討はしておりません。
  139. 八木昇

    ○八木委員 ここへ持っておるのですが、それで、黄色とか桃色、あるいは薄緑色とか、こうございますね。これは全部米軍の規制区域ですね。これは佐世保湾のほとんど全部ですよ。そうして米軍が直接使用しておる立神地区、平瀬、すぐそれに接してSSKのたったこの部分だけが白いのですよ。この状況はおおよそ御承知でしょうか。
  140. 前田正男

    前田国務大臣 十分にまだ検討はしておりませんけれども佐世保修理ができる可能性があるということは聞いております。
  141. 八木昇

    ○八木委員 ところで、私の承知しておるところでは、この佐世保港、佐世保湾と言っていいのですが、佐世保湾の広さは三十三・三平方キロメートル、そのうちの八八・八%、二十六・六平方キロメートルが米軍の制限区域でございます。そうしてつい先般、長崎県漁協の委託によりまして、このSSKのドック、岸壁、それの近くあたりを視察したいと思って行きました漁船が米軍から逮捕、取り調べを受けております。その一点だけを考えましても住民安全という観点からしまするというと、これは全然不適当なところであると私は考えておるのです。  そこで、この長崎県の質問に対する六月の科学技術庁と運輸省の回答、これによりまするというと、一体SSKのどのドックで仕事をやり、そしてどの岸壁で仕事をやるのか明確にお答えになっておりませんね。そこで、この図面をいまそこへお渡ししますから、印を入れてください。どのドックを使用し、そしてどの岸壁を使用するのか、そうしてドックではどういう作業を行い、岸壁ではどういう作業を行うのか。たとえば制御棒の駆動試験をやるということになっておりまするが、その制御棒を引き抜かれる作業はドックでやるのか岸壁でやるのか、どのドックでやるのかどの岸壁でやるのか、肝心かなめのことを答えていない。これでちょっとかいてくれませんか。
  142. 山野正登

    山野政府委員 ただいま私ども長崎県と佐世保市にこの受け入れの検討をお願いしておる段階でございまして、まだ受け入れ結構という御返事をちょうだいいたしておりませんので、具体的にどこの造船会社と契約するかということすら最終的には決定していない段階でございます。予想されますのは、もちろん佐世保重工を私どもは想定いたしておるわけでございますが、そういうふうな次第でございますので、佐世保重工ともどのドックを使うか、どの岸壁を使うかといったふうなことは全然まだ話し合いをいたしておりません。  一般的に言えることは、この遮蔽の改修工事あるいは安全性の総点検といったふうな作業はあるいは主として岸壁で行い、船底等のチェックについてはドックで行うということになろうかと思いますが、この辺につきましても今後修理業者が決まり次第具体的に詰めていくということであろうかと思います。
  143. 八木昇

    ○八木委員 そういう無責任な態度、それから方針未確定のままこの佐世保港にこの原子力船を持っていく。その原子力船むつ」なるものは一回燃料棒をたいているわけですよ。そして、その燃料棒を装荷したまま持っていこうというのですから。しかも、もともと佐世保港というのはそういうところなんです。それにいまのような答えで、受け入れオーケーか否かということを迫る。無責任だとお思いになりませんか。だから、あなたが思われなくたって、県の質問書にも、これは第二項目目の質問事項としてそのことが出ておりますね。その点で非常に大きな関心を持って答えを求めておるわけなんです。「原子炉内に燃料を装荷したまま、停止した形で本船をドックし、または岸壁に係留した場合の安全性はどうか。詳細に説明願いたい。また、「ドックし、または岸壁に係留して実施する」とあるが、実際にどうするのか。」  いま言いますように、この長崎県側からの質問は幾つかの懸念を含んでの質問でありますけれども、たとえば一つはいまのように生きておる燃料棒を入れたまま制御棒を抜く検査をするという。その検査をよもやドックでやるということはないでしょうな。  ドックのすぐ近くは、私は佐賀県の人間ですからよく知っております。学校があります。住宅がたくさんある。そういうことについての明快なる科学技術庁の態度を求めておる質問なんですけれども、その点すらもまだ今後、大体どこの会社にやらせるかもわからないし、今後の作業の計画の中で決めていくなんという返答でしょう。回答でしょう。その点いかがですか、これは大臣、答えてくれませんか。
  144. 山野正登

    山野政府委員 まず第一点の具体的にドックあるいは岸壁等を決めないままに修理港の検討をお願いするのは不適当ではないかという御指摘でございますが、この点につきましては逆に私どもは、地元でまだ諾否の御回答をお出しになる前に先走って私どもが造船会社と具体的な修理計画の内容を詰めるということは、地元の御意思を無視したという姿勢にとられることを恐れるものでございまして、そういう意味で適当でないのではないかと考えております。  それから第二点の燃料棒の扱いでございますが、御指摘のようにこの「むつ」は確かに出力試験はいたしておりますけれども、この出力の程度並びに期間はきわめて小さいものでございまして、現在燃料の中に含まれております放射能はきわめて低いし、また、一次冷却水の放射能レベルも一般の飲料水と同程度のものであるというふうに私ども考えておるわけでございますが、修理港において燃料棒を装荷したままで修理をするかしないかという点につきましては、「むつ」総点検・遮蔽改修技術検討委員会でも十分御審議をいただきました結果、先ほど申し上げましたような状況であるので、燃料棒を抜かなくとも十分安全性を確保し得るという結論をいただいておりますので、現在燃料棒を抜いて作業をするということは考えておりません。
  145. 八木昇

    ○八木委員 いまお答えですけれども、県自体がいまの点について質問書を出しているのですから、そんなことはありませんよ。いまおっしゃるように真に気を回しておられるとすれば、そんなことをする必要はありません。だから、そのお答えは私は返上いたします。  では、具体的にお伺いいたしますが、ドックで制御棒駆動試験をやるというようなことはよもやないのでしょうね。
  146. 山野正登

    山野政府委員 先ほど申し上げましたような事情でございますので――燃料棒でございますか、制御棒でございますか。
  147. 八木昇

    ○八木委員 制御棒です。
  148. 山野正登

    山野政府委員 制御棒の駆動試験をどこでするかということは最終的に決まっておりません。が、恐らく岸壁で行うという可能性が高いと思います。その際にも、この制御棒の駆動試験が十分安全性を確保してできるという自信を持っております。
  149. 八木昇

    ○八木委員 岸壁で行う可能性が高い程度しか答えられないというのは、私は了解できないです。むつ市の母港の場合は、御承知のように燃料棒を抜きかえをするためのクレーンからいろいろな装置から何から厳重にそれを設備した上で、しかも岸壁に置いているわけですよね。そうしてやるように、もともと厳重にそういったことをやることで初めて設置許可が出ているので、絶対にドックではやらないということをここで断言できないということについてはやはり疑惑を深める、こう思います。  先へ進みたいと思いますけれども先ほど坂本委員質問と関連をいたしますが、その前にもう一度大臣に、大臣がかわりましたから最初に確かめておきたいのですが、政府考えとしては、佐世保をいわゆる修理港――いわゆる修理港としか言えないのですが、その意味合いが非常に不明確ですが、いわゆる修理港としてだけしか考えていない。将来ともどんな場合でも絶対に佐世保を母港とするという考えはないと断言できますか。
  150. 前田正男

    前田国務大臣 現在のところ修理港としてお願いしておるわけでございます。
  151. 八木昇

    ○八木委員 私の質問は、将来とも母港とすることはないと断言できますかと質問しておるのです。
  152. 前田正男

    前田国務大臣 新定係港の問題につきましては、修理港が決まりましてからまた考えていきたい、こう思っておるわけでございます。
  153. 八木昇

    ○八木委員 それでは、場合によっては、いろいろな紆余曲折を経ていよいよ佐世保が母港ということになる場合もあり得るということですな、いまの御答弁では。
  154. 前田正男

    前田国務大臣 新定係港につきましては、これから修理港が決まってからいろいろと検討するわけでございますから、そのときにどういうふうに考えていくかということはそのときにならないとわからないと思います。
  155. 八木昇

    ○八木委員 佐世保は母港の対象としてはいまも将来も絶対に考えないとは、お答えできませんか。
  156. 山野正登

    山野政府委員 ただいまは、大臣が御答弁申し上げましたように、まず修理をしてその後に定係港を決めましょうというふうな方向で考えておるわけでございまして、修理港問題が解決しました後で定係港の選定に入るという手順を考えておりますので、この段階で特定の港を定係港の候補に入れる入れないといったふうな議論を申し上げるのは適当でないかと存じます。
  157. 八木昇

    ○八木委員 まあきょうのところはそうしておきましょう、そういう答弁では非常に問題になると思うのですけれどもね。  そこで、お伺いをいたしますけれども原子力船、しかも、それはまず一応諸外国の完成した原子力船日本の港のどっかに入港するとか、原子力潜水艦等の軍艦が米軍が借り上げておる港なんかに入港するとかという場合と違いまして、これから開発しようという原子力船ですね。したがいまして、これは原子炉規制法によっての設置許可というものは、そこに完全な原子燃料棒の取りかえとか、あるいは燃焼後のいわゆる死の灰のみならず、比較的汚染度の軽いそういう汚染物の処理とか、そういったふうなもの等々を完全に備えた、そしていろいろな条件を備えた母港というものがあって、そうしてその母港の設備、建設はかくかくしかじか、こうやってどこの場所にこのようにつくるということが前提といいますか条件として初めて設置許可がなされたものである、かように思うのですが、その理解は間違いないでしょうな。
  158. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 「むつ」につきましては、陸上付帯設備も含めて許可の対象になっております。
  159. 八木昇

    ○八木委員 だとすれば、事実上むつ市の母港は、定係港は完全にもうなくなっていますね。死に体以上のものであって、これはどうにもできないという状態になっておりますね。したがいまして、今日では母港が存在していないわけですね。そのように理解してよろしゅうございますか。
  160. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 設置許可の観点からいたしまして、特に母港という定義はございませんけれども、全体的に見て、船の現状と陸上設備との関係というものを考えて許可行為が行われておりますわけでありますし、またその許可につきまして、四十九年の十月に実体の変更に伴いましての変更の許可も行われておるわけでございます。
  161. 八木昇

    ○八木委員 いまのお答えは、私の問いに対する真っすぐのお答えではないので意味がよくわからぬのです、私の方の頭が悪いのかもわからぬけれども。大体「むつ」というのは出力三万キロだから、原子力発電所なんかに比べると、それは小さな原子炉です。しかし、三万キロでありましても、これを一年間運転すれば十キログラムの死の灰が出るんでしょう。広島のあの大原子爆発の結果振りまかれた死の灰が一キログラムといわれておるのですから、だから「むつ」の原子炉を一年たいて出る死の灰は、広島原爆から出た死の灰の十倍出るわけですよね。そういうものでしょう。この私の理解が間違っておれば御指摘願いたいですが、大体そんなふうに私どもは聞いておるのです。しかも、「むつ」はともかく強行出港をして一回燃焼させているんですよ。しかも、その燃料棒を装荷したまま動かそうというのですよ。ですから、そういうことを考えますと、いまの原子炉規制法、そしてそれに基づいての「むつ」の設置許可ということから考えてみますると、やはり母港をどこにする、そうして母港の設備をこうするということが決まって、そして改めて許可がなされる。改めて許可がなされないまでも、少なくとも母港の決定が先でなくてはならぬのじゃないでしょうか。そうしてしかる後、修理なら修理を始める。少なくとも具体的に修理の作業を始める以前には母港が決まっていなければならぬ。そうでないと、厳密な意味では法的根拠がないことになるというふうに理解するのが素直な理解だと思うのですけれども、いかがですか。
  162. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 まず最初の御質問でございますが、「むつ」は出力上昇試験の段階で〇・〇七メガワット日程度の燃焼に達しましたところで試験を中止いたしております。したがいまして、現在核分裂生成物はほとんど燃料の中には存在しない状態でございます。  それから、仮定の議論といたしましてこれを全出力で一年間動かした場合に、かなりの放射性廃棄物が出てくるのは御指摘のとおりでございますが、これは反応の都度、短寿命の放射性廃棄物は減衰して減るわけでございますし、かつまた、全体が厳重な系統の中に閉じ込められておりますので、原子爆弾の場合と比較するのは適当でないかと考えております。  なお、陸上付帯設備につきましては、できる限り早急に新しい定係港を選定させていただきました上で完全な設備を設置いたしたいと考えております。
  163. 八木昇

    ○八木委員 しちめんどうくさいことを私は聞いておるつもりじゃないのですけれども、要するに、本来「むつ」というものは定係港なしに存在し得ないものではないのか。それで「むつ」を動かす、しかも一回とにもかくにも燃料棒を使用したものを装荷したまま動かすということについては、少なくとも新しい定係港の決定なしにそんなことができるのかという一番基本的なところを聞いておるのですよ。
  164. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 「むつ」の遮蔽の改修並びに総点検を終わりまして出力上昇試験を開始いたします場合には、陸上の付帯設備も必要であると考えております。
  165. 八木昇

    ○八木委員 これまた私の質問に対してまともにお答えをなさらぬので、どうしようもありませんがね、まあ技術的なことの質問に移りたいと思います。  それではお伺いをいたしますが、今度修理港が決まってそこへ「むつ」が移動した後にはいろいろな機器の点検あるいはテストをおやりになるのですけれども、どこに相談を持ちかけても一番問題になりますのは、一体なぜ燃料棒を抜き取らないまま遮蔽の補強工事をやってみたり、あるいはそのまま炉心の上ぶたを外してしまって仮ぶたをするというのですが、少なくとも外して仮ぶたがはまるまでの間は青天井でしょう。そんなことをやったり、ましてや制御棒を抜き取る試験までやる。一体なぜか。なぜ燃料棒を抜き取らないでやるのかということはどこでも問題になるわけですね。現に非常に大きく問題になっておるのですが、その理由は何ですか。
  166. 山野正登

    山野政府委員 燃料棒を抜き取らないでやるということについては二つ観点があると思うのでございますが、一つは、先ほど申し上げましたように、現在の圧力容器内部にございます放射能は十分低いので、燃料棒を入れたままで遮蔽改修あるいは安全性の総点検をいたしましても環境への安全性は十分確保できるという観点。いま一つは、この燃料棒自体の健全性の確認につきまして、燃料棒を製作します時点あるいは装荷いたしました時点での検査結果等から、また、その後の一次冷却水の水質検査の結果から見まして、十分健全であるということが結論できるというこの二点ございまして、この二つの観点から燃料棒は抜かないという結論にいたしておるものでございます。  それから、上ぶたを取る件につきましては、これは圧力容器の上蓋の上部に新しく遮蔽体を追加することを考えておるわけでございますが、上ぶたのあるままでやりますと非常に空間が狭うございますし、それから作業ミスによりましてほかの機器を壊す危険もあるということでございますので、この上蓋を取り外しまして、取り外した状態で遮蔽体を追加するということを考えております。したがいまして、上ぶたを取り外しました期間、仮ぶたをしようということでございまして、理論的には上蓋を取り外しました時点で若干空間線量率というものは上昇するはずでございますが、これは放射線防護上特に問題になる量とは私ども考えておりません。もともと仮ぶたをいたします目的は、異物等が圧力容器の中に落ちてくるといったことを防護するためにやるというふうに御理解いただきたいと考えております。
  167. 八木昇

    ○八木委員 まあ論争は、きょうのところは時間の関係もあってやむを得ませんから避けますけれども、結局、この燃料体を抜かなくてもやれるということを長崎県に対する回答でも言っておるけれども、燃料体を入れたままでないといろいろな試験ができない、入れておかなければならぬのだということは言ってないわけですね。入れたままでもやり得るのですと。だから、それを取り外した方がいいということは明らかなんですよ、逆の点から言って。要するに、入れたままでもやれるということだけしか言っていないことだけは確かです。しかし、燃料体を入れたまま制御棒の駆動試験をやろうとするから、結局無理が出てくる。そういうことになると私ども考えるのですけれども、それにもかかわらず燃料体を入れたまま今後修理点検をやるということについては別の理由がある。それは次の二つのうちのどちらか、あるいは二つともかしか考えられないと私は思っておるのです。  それは、皆さんまだ一度もやったことないのですから、一回使用した燃料を安全に抜き取るということについてもいままでまだやったことがないことなんですから、それすらも自信がないのか。それとも、燃料体を扱うということについてはいろいろと世間でも問題にするだろう、だからそこら辺を政治的に考えて臭いものにはふたをしてしまう、そのままにしていじらぬ方がいい、こういうことか。いずれかであるか、そのどっちともであるか以外に考えられないと私は思うのです。  それは別としまして御質問をいたしますけれども、漂流していた「むつ」ですね、これはもう制御棒の駆動機構はもう一切動かしませんということを確認してもらうためにそれに封印をしましたね。そして、青森県漁協の代表もしくは青森県漁協の委任する専門家がそれに立ち会って封印をしましたね。今度はその封印をどこかの港へ持っていって切るんですか。
  168. 山野正登

    山野政府委員 まず第一点の御質問の燃料棒を抜かない理由でございますが、先ほども御説明申し上げましたように、燃料棒を抜く必要があるかないかを判断しまして、私どもは燃料棒を抜く必要はないという判断に達したわけでございますので、不必要なことをいたしまして国費の乱費をするというのは適当でないという判断でこの燃料棒を抜かない次第でございまして、おっしゃいましたように、この使用した燃料を抜き取った経験がないから抜き取る自信がないという趣旨ではございません。これは、陸上の軽水炉で使用済みの燃料を抜き取る作業というのは、発電所では常時行っておる作業でございまして、さして技術的にむずかしい問題とは考えていないのでございます。  それから、政治的に考えまして、臭い物にふたをするということでもないと私ども考えておりまして、要するに一言で申し上げれば、必要でないからいたしませんということではないかと思います。  封印の方は、これはただいま封印されておるのはおっしゃるとおりでございます。修理港に参りまして制御棒の駆動試験をいたしますときには、当然この封印は切る必要がございます。
  169. 八木昇

    ○八木委員 燃料体を入れたまま制御棒の各機関を駆動させるということは、何といいますか、いわゆる一種の運転ですね。だからそういう意味において、そのようなことはもう陸奥湾内では絶対にいたしません、そのあかしのためになされておるのが封印でしょう。そのときに立ち会った学者はそう言っております。いかがですか。
  170. 山野正登

    山野政府委員 修理港においても、私どもは「むつ」の原子炉の運転をいたしません。原子炉の運転と申しますのは、未臨界の状態から臨界の状態にいたしましたり、あるいは臨界状態を維持しましたり、あるいはさらに臨界状態から未臨界状態に持っていくといったふうなことを指すものと考えますが、修理港においてこの制御棒駆動試験をいたしますときには、臨界にならないように制御棒を一本ずつ操作して駆動試験をするということを考えておりまして、運転状態に持っていくことは考えておりません。
  171. 八木昇

    ○八木委員 決して皮肉で言うつもりじゃありませんが、聞かないことを答える必要はないですよ、私がその問題は後で聞きますから。  それで、私が聞いていることは、燃料体を装荷したまま制御棒の機構を駆動させることは運転ではないのか、だから今後陸奥湾内では絶対に運転しませんというあかしのためにそういう制御棒駆動機構にわざわざ専門家の立ち会いまでやらして封印をしたのではありませんかと聞いておる。そのことについて答えてください。
  172. 山野正登

    山野政府委員 修理港におきましては、一本ずつ制御棒の駆動試験をするつもりにいたしておりまして、これを運転とは考えておりません。  それから、この封印の点でございますが、おっしゃるとおり、青森県におきまして原子炉の運転をしないということを保証いたすために封印をいたしておりますが、修理港に持ってまいります際には、この封印を解きませんと一本ずつの制御棒の駆動試験もできないわけでございますので、運転をしないという条件のもとに封印を切るという趣旨を申し上げたのでございます。
  173. 八木昇

    ○八木委員 そのお答えも満足できませんが先へ進みます。  要するに、長崎県の質問に対しての皆さんの回答では、「核分裂の連鎖反応が持続しない状態を、原子炉が止まっている、つまり運転停止の状態という。」こういうふうに原子炉の停止状態の定義を述べていますね。そんなことはないと思うのですよ。停止は、文字どおり十二本の燃料棒が全部停止しておる状態が停止でしょう。要するに、十二本の制御棒が全部挿入されていて、そうして完全に停止しておる状態を停止と言うのでしょう。そのうちの一本の制御棒を引き抜けば、それはおっしゃるようにまだ臨界に達しないかもしれないけれども、その保証はまだないわけです。達しないかもしれないが、しかし、一本制御棒を引き抜けば、それは未臨界の状態であるとは言えても、停止とは言えない。そういう点で、言葉のごまかしの回答をあえて意識的になさっておると私は理解するのですが、何か弁解なさるところがございましょうか。
  174. 山野正登

    山野政府委員 先生ごらんになっておりますところの下の方にもございますように、この一本抜いた状況と申しますのは、核分裂の連鎖反応が持続しない状況でございまして、このことによって臨界ないしは運転といったふうな状況にはならないと考えております。
  175. 八木昇

    ○八木委員 未臨界という状態だということは言えても、それを停止しておる状態ということは言えないのじゃありませんか。そしてまた、少なくともこの危険な燃料体に入れられておる制御棒を、十二本のうち一本を、交互に抜くとは言いましても、一本を抜くという場合には、従業員やその他の配置にしても、やはり運転態勢の配置についておるわけでしょう。そうでなくてやれるのですか。
  176. 山野正登

    山野政府委員 この制御棒を一本ずつ引き抜くということにつきましては、それが確実に行われますようにいろいろ考えておるわけでございまして、一つはグループ引き抜き回路の取り外しということをいたします。この回路を取り外すことによりましてグループの引き抜き、複数の制御棒を同時に引き抜くということができないように、まず措置いたします。続いて、同時引き抜き防護回路という新しいものをつけまして、クラッチ電源回路にロータリースイッチを加えまして、十二本の制御棒のうち試験するものだけ一本だけの制御棒に対応する電源回路しか接続できないようにいたしまして、複数のものが引き抜かれるということができないように措置するわけでございます。
  177. 八木昇

    ○八木委員 いまの点も答弁をそらしておられますけれども、そのことを言われましたから、先にその点についてお伺いをいたしますが、皆さんのお出しになったこの回答書ですね、これの八十五ページに図をかいておられますね。「同時引き抜き防護回路図(試案)」という図面がありますね。これではなるほどロータリースイッチがあって、そうして最初の一本目の制御棒のところに電気が入る、電気が通る、そうして引き抜いたり挿入したりのその一本についての制御棒の駆動操作をやる、そのテストが終わってからカチッとそのダイヤルを動かして二本目のところに電源をつなぐということの説明図にはなっていますよ。そういうことの説明図にはなっておるけれども、しかし、私も技術屋じゃありませんから余り詳しくはわかりませんが、もともと電力会社にいましたから、事務屋ですけれども多少のことはわからぬことはないのです。そうしますと、機器なんというものはどんな場合でも一〇〇%ということはあり得ません。でありまするから、一番最初の一本目の制御棒に電源をつないで、そして操作をやった、そうして引き抜いたり挿入したりしたんだけれども、もう挿入し終わったとみなして二本目の制御棒のところへ電源がいくように次のスイッチに切りかえた、こうしたんだけれども、しかし実際には十分に挿入されていなかったけれども、表示としては挿入されている表示が出ておるというような場合がありますね。それからまた簡単な例で言えば、リレーならリレーがショートをしていた、そのために、挿入し終わっておると思っていたんだけれどもまだ挿入されていない状態であった、そして二本目の方へロータリースイッチが切りかえられた、そういうような誤操作とかあるいは事故とか、そういう機器類の故障とかというような場合で、実際には一本目の制御棒は挿入し終わっておると思っていたんだけれども、現実には挿入されていないまま二番目の制御棒の駆動に入った、そういう場合には二番目の制御棒の駆動は自動的に駆動しない、こういう装置にはなっていないようですね。そうでしょう。そういう装置になっているならなっているようにこの図面が出なければならぬ。
  178. 山野正登

    山野政府委員 まず原則としまして、制御棒の駆動手順というのを明確に定めまして、おっしゃいますような誤操作がないように各段階で確認を行ってやるわけでございますが、一つの制御棒を引き上げまして、これが次のスイッチに切りかわります場合には、これは電磁クラッチでつり上げておるわけでございますので、電磁クラッチの電源が切れまして自動的に制御棒は落下いたします。それからさらに制御棒が果たして十分に挿入されたかどうかといったふうなことは別の計測器によっても確認できるということになっております。
  179. 八木昇

    ○八木委員 いまの説明は、ダイヤル1から2へ移した場合にはいかなる場合でも自動的に制御棒は落下するようになっている、そういう説明ですか。そうすると、それがなっておるはずだけれども、落下していなかったという場合はそれはあり得ないとおっしゃるのですか。そんなことはありませんよ。
  180. 山野正登

    山野政府委員 私どもは原理的にそのように考えておりますが、なお中性子濃度等も十分に測定しまして、そういうことがないということを確認して次のステップに移るというふうにいたしたいと考えております。
  181. 八木昇

    ○八木委員 こういうもののやりとりは時間を食いますので恐縮でありますから、もどかしい気がするのですが、さらに先へ進みます。  私が言っておるのは、原理的なことを言っておるのじゃ全然ないのです。原理的にはどうであろうとも、現にあるわけです。起こるわけです。たとえば私の県の佐賀県の原子力発電所、玄海原発の誤操作が七、八カ月前にありましたね。そして放射能漏れがありましたね。原理的にそんなことは起こり得ないことになっている。ですからその点を私は言っておるので、これは二本とも制御棒が引き抜かれておる状態になることが絶対ないとは言えませんぞということを質問しておるわけなんですよ。先へ移ります。  そして、もともと一本引き抜いても臨界には達しないとおっしゃるのだけれども、その証拠としてちゃんと三菱原子力工業の臨界実験装置MCF、これでもって行われたこの実験の結果から確認されておるというような意味のことをこの回答書で言っておられますけれども、それ自体が第一信用できませんし、この際、私承っておきたいのですが、そのMCFに関する設計、実験データの全容を私どもに手渡していただけますか。公開なさいますか。それを理由に挙げておられる以上は、それを公開しなければ説明にならぬじゃないですか。
  182. 山野正登

    山野政府委員 結論は、提出いたします。
  183. 八木昇

    ○八木委員 それはぜひ私どもの方にお渡しいただきたい。私が見たってよくわかりませんから、そのいただいたものを学者に検討してもらいますから……。  そこで、先へ移ります。  一番最初に、共産党の瀬崎委員が御指摘になった問題、その後石野委員も御質問になったんですけれども、この「むつ」の一次冷却水の中からセシウム137が発見されたという問題について一、二伺いたいと思うのです。すでに若干の質問が過去においてなされておる問題ですけれども、これは非常に重大問題ですから。  それで、このセシウム137が「むつ」の一次冷却水の中から確かに発見をされました、しかし、その濃度は飲料水よりも薄かった、したがってまあ問題はありません、こういうことを言っておられるのですけれども、それは飲料水より薄いのは私は当たりまえな話だ、こう思うので、補給水と比べてどうであったか。現実の「むつ」の原子炉の炉心に送られる一次回路の補給水の濃度よりも高かったことは事実でしょう。それは否定をしておられませんね。それよりも高かったことは事実です。その点、いかがでしょう。
  184. 山野正登

    山野政府委員 セシウム濃度の比較におきまして、一次冷却水と飲料水とを比較すべきでない、補給水と比較すべきであるとおっしゃるのはそのとおりでございまして、事業団並びに分析センターの行いました比較分析も、一次冷却水と補給水について行っております。飲料水との関連につきましては、これは恐らく理解をしていただきやすいようにという意味で飲料水との比較という表現をあるいはしたかもしれませんが、測定自体は一次冷却水と一次系の補給水とについて行っております。  それから、その測定結果でございますが、一次系補給水と一次冷却水との間にこのセシウム濃度の高い低いという問題でございますが、この両者の間には有意の差はないという結論が出ております。
  185. 八木昇

    ○八木委員 そこで、その一次回路中の水の問題ですが、その水を調べるためのサンプリング、それはこの回答の九十一ページに図面がございます。イオン交換樹脂によるところの浄化作用を経てきた水です。それは当然放射性物質をイオン交換等の中でもうほとんど抜き取りますから、そこで結局その浄化装置をくぐってきた後の回路の部分でサンプリングをしていたのでは、それはもう全然意味をなしません。私の説明が十分かどうかわかりませんが、その意味はおわかりのはずです。そこでこの九十一ページの図面のどこの場所でサンプリングをなさったのでしょうか、その方法を簡単に。もうあと残り時間も少ないですから。
  186. 山野正登

    山野政府委員 この図の中でどこでサンプリングをしたかということはただいま私答弁できませんが、いずれにしましても一次系の補給水と冷却水には有意の差はなかったということでございまして、その採取する場所については、その場所によって有意の差のあるなしに影響のあるような場所を選んだとは考えておりません。
  187. 八木昇

    ○八木委員 それではちょっと答弁になりません。このセシウム137の問題がなぜ重大問題であるかは申すまでもないことで、燃料棒の被覆管自体に欠陥があって、ひび割れがあったか破損があったかピンホールがあったかによって、いわゆる燃焼させた後の死の灰が燃料体自体から漏れ出て、一次冷却水の中にまじっていたという疑いの問題ですから、そうするとその放射線を出す物体が浄化装置で吸い取られてしまってから後の水を調べたって意味をなさぬのです。ですから要するに、いまの炉心から出た直後の地点、その水をサンプリングしなければならないし、それからいまの浄化装置内のイオン交換樹脂そのものも調べてみなければならぬ、こう思いますが、そこら辺の具体的なものを全部網羅したもの、そしてそのときのはかった数値、そういったものを明らかにした資料を私に提出してくれませんか。
  188. 山野正登

    山野政府委員 後ほど提出いたします。
  189. 八木昇

    ○八木委員 それでは最後の質問です。  燃料体を装荷したまま非常に無理なテストをなさるところに非常に問題があるということは私先ほど申し上げたとおりで、そのことがまた住民サイドからはやはり非常に問題にもされておるわけなんです。最後にお伺いをいたしますけれども、この全系統機器の動作性能を確認するための機能テストを実施するということを皆さん回答なさっておられます。燃料体を装荷したままそういうことが完全にできるはずがない。そういう燃料体が入っている以上は、あなた、そこに人間が近づくこともできないし、完全にできるはずがないのです。まあそれをひっくるめてお伺いをいたしますが、実際に運転する場合と同じ状態に圧力を上げ、温度を上げ、蒸気を発生させ、そうして蒸気発生器の部分から何から一切合財を含めて、そういう同じ状態をつくり出してテストするのですか、そういうことが燃料体を装荷したままできるのですか、この点を承っておきたい。
  190. 山野正登

    山野政府委員 原子炉は運転しないのでございますが、ポンプの運転等によりまして温度上昇等は可能でございますし、また、原子炉を運転しないままに模擬信号によって同じ反応を求めるということは可能でございますので、そういう方法でやるということでございます。
  191. 八木昇

    ○八木委員 これはもともと最も初歩的な欠陥が暴露されたというのが漂流中のあの出来事で、フル出力のたった一・二%出しただけでああいう事故になっておるわけですから、炉心部におきましても蒸気発生器の部分におきましても欠陥がないなどということが考えられません。でありますから、それの十分なテストというものが行われなければ、ただ遮蔽の防護措置だけを、よろい、かぶとをかぶせたように物すごい重量のものをもって上を覆い隠してみたところで、さあ莫大な金をかけてそうして出力テストを始めたら、今度は随所にほかの部分で欠陥が見出されるということはありますね。でありますから、テストをやるというならやはり燃料棒は抜いてやらなければ試験にならない、私は素人ながらそう思っております。通常の機器でもそのようなことでもってやっておりまして、しかもタービンならタービンを新しくつくった、それをメーカーのところでどんどんテストをやる。そうして今度は電力会社に据えつけてからどんどんテストをやる。それが三十万キロのタービンなら三十万キロ以上、三十七、八万キロまでそれをぶんぶん回して、それでもなお耐えられるということによって初めて――営業運転としては三十万キロですかそれ以上は運転しない。もともと機器というものはこういうものでしょう。そういうように最後に申し上げておきたいと思います。  大臣に要望しておきたいのですが、きょうはほんの一部しか質問できませんでした。いろいろと問題があると私は思っておりますので、その点はひとつ今後相当慎重に対処してもらいたい。  それから委員長にお伺いをいたしますが、先ほど事業団法の法的有効無効の問題について参考人を呼んでもらいたいと言ったのですけれども、このような問題は、一長崎県が委嘱する何か地方の委員会あたりで討議することによって簡単に結論を出せる問題じゃないと思います。ですから、国権の最高機関である国会の、しかも本委員会日本の優秀な学者、技術者というものを参考人として呼んで、突っ込んだ生の意見を聞くという機会を設けていただきたい、これを申し上げて、私の質問を終わります。
  192. 石野久男

    ○石野委員長代理 御要望の点は理事会に諮ります。  次に瀬崎博義君。
  193. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まず第一の問題は、科学技術庁や原子力船事業団長崎あるいは佐世保で行っている行為が国会審議を実質的には軽視しているのではないかという点であります。佐世保で今月の末ごろから「むつ」に関する展示会をやられるようですね。お尋ねしておきたいと思います。
  194. 山野正登

    山野政府委員 おっしゃるとおり、事業団において行う予定にいたしております。
  195. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その展示会の目的は何ですか。
  196. 山野正登

    山野政府委員 一言で申し上げますれば、原子力船についての理解を深めていただくというためでございます。
  197. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ということは、政府並びに事業団側の願望としては早く「むつ」を受け入れてもらいたい、いわゆるその一つの下準備、こういうことですか。
  198. 山野正登

    山野政府委員 下準備と申しますかやはり地元の県民あるいは市民の方々に原子力、原子力船といったふうなものについての必要性安全性といったふうなものに対する理解が十分ない限り、円満に受け入れていただくということは不可能と考えておりますので、そういう理解を得るための活動でございます。
  199. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういう国民的な理解を得たいというものであるならば、全国至るところでやるべき性質のものだと思うのですが、ほかでやっているのかどうかということと、特別にこの佐世保でやろうということとの関係は一体どうなるのですか。
  200. 山野正登

    山野政府委員 展示館等は東海村にもございますし、また福井県にもございます。(瀬崎委員原子力船の」と呼ぶ)それから原子力船につきましては、現在青森県にある展示館が一つでございまして、それ以外にはございませんけれども、私どもは広く原子力の普及、啓発活動というのは全国規模でやっておりますが、特に長崎県並びに佐世保については原子力船問題がいま焦眉の問題でございますので、特にこの地で行うということにしたものでございます。
  201. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 要らぬことを言ってもらいますとかえって話がややっこしくなるのですね。明らかにこれは「むつ」を一日も早く押しつけたいということの具体的なあらわれだと思うのです。  確かにこの事業団法延長問題について有効とか無効とかいう点では、各党それぞれの見解はあるだろうと思うのです。私どもにも独自の見解はあります。が、しかし、現在この延長法案審議途上であることは歴然とした事実であって、まだ結論をこの国会は出していない。そういう段階でこの事業団がさらに具体的に進めて「むつ」の修理港の一つの既成事実をつくり上げよう、こういう点が私はきわめて不謹慎だと思うのですね。  まず大臣に、こういう点は慎んでほしいと思うのですが、いかがでしょう。
  202. 前田正男

    前田国務大臣 なるべく御理解を得るためには、できるだけのことをわれわれはしなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  203. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これはできるだけの理解を得るためにすることではなくて、できるだけの誤解を生み出すためにやっておるような行為であると私は思うのです。  そこで、先ほど原子力局長は、物品を配ったりして住民の誤解を招くような行為は厳に慎むように事業団に言ってあるんだ、こういうことでしたね。しかとさようですか。
  204. 山野正登

    山野政府委員 そのとおりでございます。
  205. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 きのう私どもの党の清家さんという方外三名が、この開かれようとしております展示会のことについて話を伺いに行ったわけです。残念ながら責任者はお見えでなかった。資料を下さいと言ったら、事務員の方が資料の入った袋をくれたわけですよ。ところが、中から出てきた物は何と下敷き、ノート、ボールペンだったのですね。これも資料のうちなんですか。
  206. 山野正登

    山野政府委員 ボールペン、下敷きが資料とは私も考えませんけれども、そのときの状況を具体的に詳しく聞いてみませんと何とも判断いたしかねると思います。
  207. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 あなたはこの前お会いしたときも、またきょうも先ほどは、そういうことが誤解を招くからやめるように言ってあるんだ、こうおっしゃったのでしょう。ちっともやめられていないのですね。こういうことが国会を軽視しているし、また、事業団自身がもう科技庁の言うことを聞かなくなっているのか、そういうふうにしか取れないのですね。現にそういうことが行われていることは、この後ろに生き証人もいらっしゃいますので、何なら事情は直ちにわかるわけなんですが、厳にやめるように今度は具体的に処置をとってもらえますか。
  208. 山野正登

    山野政府委員 具体的に申し上げますと、私が適当不適当と申し上げたことがあり、また申し上げたいのは、たとえば説明会等で筆記用具のない方にボールペンを渡して筆記していただくといったふうなことは、過度の宣伝とは考えておりません。ただ、わけもなく街頭で一般方々にボールペンを配るといったふうなことは誤解を招く行為であろうかと考えますので、そういうふうな具体的な例で申し上げたわけでございますが、後者のようなケースがないようにという注意は重々事業団にいたしておるつもりでございます。
  209. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一般的に袋の中にちゃんと入れてある、そういう物はセットにしてあるのですね。決して筆記用具がないからとかあるいはボールペンを持ってこなかったであろうからということでなくて、きのうの人なんかも、だれが見てもそういう物は用意しているわけです。だから、そういうへ理屈はやめてもらいたいと思うのです。  さて、本来国政レベルで判断をつけなければならない問題を、事実上自治体の判断にゆだねていくという点がいまやはり一つの大きな問題になってきておると思うのです。  ほんの一例でありますけれども長崎県へ出しました政府側の回答の中で「原子炉プラント機器及び全系統の点検はどのようにして行うのか。また、「原子炉を停止した状態」で機器及び全系統の健全性の確認、あるいは性能テストが出来るのか。」という設問に対して、一般の原子炉施設の場合のテストの仕方についてはずいぶんと詳しくここに書いてあるわけです。「まず、原子炉を運転しない状態で機器や系統の点検を十分に行う。その後、原子炉を起動し、順次原子炉出力を上げてゆき、その過程でいろいろなプラント機器が十分設計通り働くかどうかを点検する。このように、まず原子炉を停止したままの段階、次に出力の低い段階、最後に全出力状態と順次原子炉プラント機器の試験、点検を行い、原子炉施設全体としての性能、信頼性を確認するというのが、原子炉施設の試運転の基本的な考え方である。」「むつ」の場合はわずかに三行触れてあるだけですね。つまり、これに準ずるということなんでしょうが、「出力上昇試験に備え、まず修理港で原子炉を止めたまま原子炉プラント機器の点検を行い、健全性や性能を十分に確認する。」結局、出力を伴う試験のことについては一言も触れていない。だから、そのことについてここへ書き足すとすれば、どういう文章になるのか、ここでひとつ答えていただきたい。
  210. 山野正登

    山野政府委員 修理港では原子炉を運転しないということでございますので、ここでは原子炉を運転しない状況における点検についてのみ、機能試験についてのみ言っておるわけでありまして、将来定係港が決まりますれば、定係港において、原子炉を運転した状態、つまり出力上昇試験を行うわけでございますので、ここで特にうたう必要はないと考えます。
  211. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、他の港に定係港を見出して出力上昇試験をした。当然うまくいく場合もあるだろうし、何らか新たな欠陥が出てくるかもしれない。その場合、その「むつ」はどこで修理することになるのですか。
  212. 山野正登

    山野政府委員 洋上におきまして、あるいは他の地の岸壁等におきまして出力上昇試験中にふぐあいが生じたという場合、これをどこでどのようにして修理するかということは、その起きました故障の内容によってまた変わってくるかと思います。たとえば洋上で修理可能な場合もありましょうし、あるいは定係港において修理可能な場合もあるでしょう。もし御質問趣旨がこの洋上あるいは定係港で修理できない、また造船所等の設備がなければ修理ができないといったふうな場合には、そういう個所にまた修理をお願いするということをせざるを得ないと考えております。
  213. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では、そういう施設のある個所というのは、つまり修理を行ったところ、その造船所、そういう意味ですか。
  214. 山野正登

    山野政府委員 故障の起こった場所によっても異なると思います。たとえば九州一円の海域において故障が起こった場合、あるいは北海道の一円の海域において起こった場合、選ぶべき港というのはおのずから変わってこようと思いますが、たとえば現在考えております遮蔽改修と同じようなものが仮定の問題として起こったというふうな場合には、改めて長崎佐世保市等に受け入れの協力をお願いして、再度御了解を求めるというふうな場合もあり得るかもしれません。
  215. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では、いまの手順で行くと、二年前に青森の洋上で起こって漂流したというふうな事態が起こる心配は十分ある、そう考えていいわけですね。
  216. 山野正登

    山野政府委員 私は、ただいま仮定の問題を論じておるわけでございまして、私のいまの説明でもって、今後「むつ」の開発を進めていくについて同じ過ちが恐らくまた繰り返されるであろうということを申し上げておるわけでは決してございません。できるだけそういうふうなことがないように努力をいたしますが、万一そういうふうなことがあったらどうなるかということを申し上げておるのでございます。
  217. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 前回の場合も全く同じだ。「むつ」の安全を疑う者は世界の科学に挑戦するものだ、こう言って出港させて、ああいう状態になった。科学ですから、しかもいままでの原子力船むつ」の建造過程を見てくると、当然試験の結果どういう事態になるかわからない。あらゆる事態に備えておくのが、これが本当の科学技術行政ではないかと思うのです。一たん他の定係港で、あるいは洋上で試験した、修理の必要が生まれてきた、そこで改めて、もとの港であるか造船所であるか、あるいは別の造船所であるかそれはともかくとして、入港のお伺いを立てなければ入れないような状態で洋上試験に移る、他の定係港の試験に移る、これはきわめて見通しのない、でたらめなやり方だ、同じことを二度繰り返すものだ、このことを強く警告しておきたいと思うのです。  同じ意味で、この前のときには遮蔽工事を行いました三菱原子力工業の詳細設計上、さらに製作上の責任は免れないという結論は、この国会で一致したわけです。しかし、残念ながら契約上の時効があったためにその責任を三菱にとらせるわけにいかないのだ、まあウエットな責任はとらせ得るけれども、ドライな意味ではとらせられない、これが前の生田原子力局長答弁であった。今度の場合は二度とそんなことの起こらないような契約は、どことまだ決めていないようでありますが、たとえば佐世保重工なら佐世保重工とそういうものを取り交わすぐらいの腹はあるのでしょうね。
  218. 山野正登

    山野政府委員 前回の契約におきましては、確かに瑕疵担保期間が切れました後にああいうふうなトラブルが発生したわけでございまして、契約上の責任を追及することが不可能であったわけでございますが、今回修理の契約をするにつきましては、具体的にこの修理契約の各条項をどうするかというのはこれから詰めるべき問題ではございますが、御指摘のように、できるだけ国損を招かないというふうなことを十分考えながら詰めていきたいというふうに考えております。
  219. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それだったら当然のこと、修理を終わった、いわゆるテストも終わってこれで万全だというところまでの責任を契約上相手に負わせなければならない。そのときに、さて低出力試験をやる定係港もまだ見通しがついていない、洋上試験に移った場合、いろいろ事故を起こしたら戻ってくるところがはっきりしていない、こういうことで相手が契約に応じられますか。
  220. 山野正登

    山野政府委員 これは契約の問題でございまして、たとえば瑕疵担保期間を十分長くとれば対価は高くなりますし、また、瑕疵担保期間を短くとれば対価は安くなるという相対的な関係にあると思いますが、この辺も全体としての国損を招かないという方針で十分検討したいと考えます。
  221. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、こういうことになるのですよ。いつどこでどういう試験をしてこの修繕の完全を証明するか、こういうことがはっきりしないのに無理やり契約を決めようとするからそういう無理なことが起こってくる、順序が逆だ、こういうことをはっきり言っておきたいと思うのです。  さて、仮定の話だけれども、一たん出力上昇試験に移った、欠陥が生まれてきた、これをもとの佐世保かまたは他の港に御厄介になって修繕しなければならない、こういう場合には、原子炉安全専門審査会のいわゆる立地審査指針に基づく条件はどのように適用されてくるのですか。たとえば、停泊場所から管理地帯の境界までに必要な離隔距離が五十メートルとか、非居住地帯の境界まで二百五十メートル、こういう基準がありますね。原子炉は一たん動かしている。どうなりますか。
  222. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 その場合は、原子炉は冷態停止の状態で入港することになると思いますので、離隔距離の問題は生じないわけでございます。
  223. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 つまり、一たん運転して新しく死の灰が原子炉の中に生まれた状態であっても、要は原子炉停止状態であるならばこの立地指針の適用は受けない、こういうことですね。
  224. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お説のとおりでございます。
  225. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、ここではっきりしたことは、原子炉立地審査指針があるにかかわらず、そういうものは適用されないまま、今後原子炉が動かされても、また佐世保に戻ってくる危険もあるし、あるいはどこかの港へ入る危険もある、そういうことがはっきりしたと思うのです。  次に、第二の大きな問題といたしまして、日本で最初の原子力船研究開発が正しい方針と正しい手順によって行われているのかどうかという点であります。  わが国原子力船開発研究は、民間では昭和三十年の原子力船調査会が、政府では昭和三十二年に運輸技研において始められたと言われているわけでありますけれども、そもそも当時、原子力船開発のために必要な研究の中心テーマは何であったと考えておったのですか。
  226. 山野正登

    山野政府委員 一般的に申し上げまして、軽量で信頼性の高い舶用炉の開発というのが一つあると思います。特に、この舶用炉の場合には、陸上炉と違いまして、海上における動揺あるいは船の振動といったふうなものに対しても十分信頼性の持てる原子炉である必要があるわけでございますので、その辺が当時の開発一つの眼目ではなかったかと考えております。
  227. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 当時の島村原子力局長国会答弁で、原子力船の設計の前提となりますものは、一、外力の原子炉に及ぼす影響、二、舶用原子炉の振動及び動揺に関する研究、これはあなたがいまおっしゃいましたね。三、遮蔽計算コードの作成に関する研究、これで全部ではないと思うが、三点挙げられております。これはいずれも当然の設計の前提条件になるものではなかったのですか。あなたの言うのでは抜けているように思う。
  228. 山野正登

    山野政府委員 そのとおりだと思います。
  229. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 きょうは、船舶技研で直接原子力船研究に携わっていらっしゃる中田原子力船部長がお見えになっていますので、中田さんに少しお尋ねをしたいと思うのです。これから私が申し上げますことは、運輸技研、船舶技研を通じての話であります。  原子力船の遮蔽に関する研究とか、その他遮蔽に関して六項目の研究が、主として昭和四十三年以降ではありますけれども、四十一年から四十八年にかけて行われております。なぜこの時期にこうした遮蔽の研究が集中的に必要であったのか、また、これら遮蔽に関係した研究の中心的な課題は一体何であったのか、これをひとつお答えいただきたいと思います。
  230. 中田正也

    ○中田説明員 お答えいたします。  研究者の立場から二つの主流がございまして、当時原子力船の試設計をしている折に、遮蔽の計算コードが細かいところまで計算できないのだということを承知しまして、遮蔽計算コードの開発と、詳細な点まで将来予測できるように計算コードを開発せねばならない、こういう見通しでやったものと、それからもう一つは、細かい点ができないにもかかわらず原子炉をつくっていくならば、その計算できない部分は実験的に模型試験をしなければならない、こういう見通しで、そういう部分的な計算の困難なところを巨視的に遮蔽能力を見るという実験と、この二通りの研究を主力に進めてまいりました。
  231. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 遮蔽の計算コードが、当時細かい部分まで計算できなかった、それができるようにする研究だというお話なんですが、理論的には当然計算可能になるはずのものであったわけですか。
  232. 中田正也

    ○中田説明員 理論的には計算が可能であるという見通しでございました。
  233. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、その研究の結果、細部にわたって計算は可能になったのかどうか、最終的には四十八年でそれぞれこの遮蔽関係の研究は終わっておりますので、お尋ねをしておきたいと思うのです。
  234. 中田正也

    ○中田説明員 これは船舶技研のみならず各会社の技術者、それから原子力研究所の研究員、みんな志して、それぞれのアイデアを生かして研究を進めてきましたが、船舶技研では相当程度複雑な遮蔽体の計算ができる計算コードを開発しました。これは米国などの外国とは別個の計算方式でございます。
  235. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、そのせっかくの計算コードは「むつ」の遮蔽には何らかの形で適用されましたか。
  236. 中田正也

    ○中田説明員 「むつ」の初めの設計のときにはまだできておりませんでした。今回「むつ」の放射線漏れの件が起こりまして、それの原因追求の際に初めて大仕掛けにその計算コードを動かしました。
  237. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、せっかく昭和四十八年には船舶技研で相当細部にわたっての精密な計算を可能にするコードが、計算方法が開発されていながら、その時点ではこれが「むつ」に適用されていなかった、これは重大な欠陥だと私は思う。従来明らかになっておったのは、これをつくった三菱原子力工業、ここの社長が参考人として国会へ来た席上、これは去年の六月の話でありますが、私の質問に対して、ごく最近までそのような計算コードの開発されているのを知らなかったと言って、大山委員会の柴田参考人を驚かしたり会場の失笑を買ったものでありますが、今度はこれは政府責任ですよ。同じ政府部内の研究機関においてちゃんと計算コードが開発されていながら、これが応用されていない。そしてあんなでたらめなことを言って、時の長官が強行出航させて放射線漏れを起こした、これはもう起こるべくして起こった。まず、この点について政府の責任を明らかにしておいてほしいと思うのです、大臣
  238. 前田正男

    前田国務大臣 こういうことに対しましては、なるべく慎重に運ぶ必要があるのではないか、こう考えておる次第でございます。
  239. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは何のために船舶技研にそういうふうな研究をしてもらっておったのですか。こういうことが国民的な立場から見て疑惑として起こってくるでしょう。科技庁は一体何をしておったのか、原子力船全体の責任は持ってなかったのか、ただただそのごく一部分である「むつ」のことしか頭になかったのか、こう言われても全く仕方のない状態ではありませんか。いかがです、大臣
  240. 山野正登

    山野政府委員 私ども、運輸省ともどもできるだけ原研あるいは船舶技研のそのような成果というのは活用する立場にあることは御指摘のとおりでございますし、また原子力船事業団におきましても、そのような見地から、技術委員会等には船研、原研等の技術者にも参加していただいておりまして、できるだけそういうふうなことができるような体制にはしておるつもりでございますが、もしそれが十分でなかったという点があれば今後大いに反省してまいりたいと考えております。
  241. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もしだなんて、事実を直接の研究者がおっしゃっても、それに率直に即応する謙虚さがない。やはり科学の進歩は、それぞれの立場の研究者、技術者あるいは行政の立場にいる人の謙虚さが私は必要だと思う。事実は事実として率直に認めなければ進歩はありませんよ。  さて、遮蔽効果実験と、昭和四十三、四十四年に三菱原子力工業が米国ウエスチングハウス社に依来した設計のチェック・アンド・レビューについては山野原子力局長がことしの五月の本委員会で、「過去の舶用炉の遮蔽についての実験は不十分のものであったということは認めざるを得ないと思っております。」とか、先方、つまりウエスチングハウス社のコメントが、「全体の一般的な評価としまして、まずまずこれでよかろうという前置きがありました後に各種のリマークスがついておったわけでございますが、この一般的な評価だけで事が足れりとしまして、細かいコメント等に対して十分な配慮が足りなかったということも認めざるを得ない」こう答えていらっしゃいますね。  そこで、これは中田さんにお伺いしたいのですが、このウエスチングハウス社のチェック・アンド・レビューというものをごらんになったことがありますか。
  242. 中田正也

    ○中田説明員 ありません。
  243. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 またここに問題が出てくる。ちょうど四十一年から船舶技研では、七つの課題で遮蔽問題での研究を開始しているわけです。特に予算もふえて熱心に取り組まれていると見られるのは、この表から推定して、昭和四十三年から――まさにそのときに重要な資料としてこのウエスチングハウス社がチェック・アンド・レビューを日本側に送ってきている。当然、事業団にしてみればこの共同研究をやっているはずなんですから、船舶技研にもそういう資料を流して、研究材料にするのは当然じゃないかと思うのですね。こういう点でも、事業団に直接の責任があるんだろうけれども、それを監督しておった科学技術庁としても当然責任を感じなければいかぬのじゃないですか。大臣、いかがです。
  244. 前田正男

    前田国務大臣 その当時の事情はよくわかりませんけれども、いまのお話の点はやはりもっと慎重に、ひとつ政府間の連絡をしていくべきではないか、また十分な検討をすべき問題だと私も感じます。
  245. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、「むつ」が事故を起こしましてから、中田さん、このチェック・アンド・レビューというものはごらんになりましたか。
  246. 中田正也

    ○中田説明員 ございません。
  247. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今日でもちっとも改まっていない。何をか言わんやであります。さらに、船舶技研においては舶用炉の研究にも取り組んでいらっしゃるわけでありますが、大体四十六、七年ごろから舶用炉に対する取り組みが始まりますね。なぜこのころから舶用炉に取り組まれかけたのか、主な目的はどういうことであったのか、そういう点を少し部長の方から説明願いたいと思うのです。
  248. 中田正也

    ○中田説明員 運輸技術研究所時代から、舶用炉の中の陸上炉と違う特異な点として舶用炉の研究はしておりました。研究項目として予算に計上して要求はしてない、勉強だけにすぎなかったという点が長い間続いておりましたが、原子炉を直接使わない研究であるならば舶用炉の研究をするのも踏み切れるんだという姿勢で、「むつ」と別個に一般の原子炉、舶用炉として研究を始めたわけでございます。
  249. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 「むつ」と別個にということは、やはり「むつ」が現在搭載している舶用炉が決して舶用炉の終着点ではない、まだまだ研究しなければならない問題が多いということでやられているわけですか。
  250. 中田正也

    ○中田説明員 船に積む炉にはいろいろの形式、構造が考えられまして、船の大小それから速度、そういうような船側の要求を満たすにはいろいろの舶用炉が考えられる。そういう点で、一般性のある原子炉として「むつ」型以外のもう一つの新しい原子炉の勉強を始めたわけでございます。
  251. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もらっている資料で見ます限りでは、いずれの舶用炉の研究も現在まだ進行途上のようですね。たとえば舶用軽水炉の小型化に関する研究などという項目もありますが、こういうものが結論に到達するのはいつごろであろうかということ、それからもう一つ部長が現在直接研究に携わっていらっしゃって、この舶用炉部分でこういう研究が必要なんだ、あるいはやりたいんだとお考えになっているような研究がありましたら、それを少し話していただきたいのです。
  252. 中田正也

    ○中田説明員 舶用炉として適当な形の炉の分類はまだ幾通りも考えられると思います。それで、一般性のある船の舶用炉にはこういう程度ならこれが最適だというような目標をつけたいと考えております。  それから、現在実際に研究をしていろいろの船の炉を評価してみますと、私どもは常に細かい点のデータが欲しくて、この技術的な資料を十分蓄積したい、こういうふうに考えております。
  253. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 重ねてお尋ねして恐縮なんでありますが、そうすると、現在のこの舶用炉の水準というのは、たとえばこういう型ならこれが最適なんだというふうな標準タイプ的なものはまだ生まれるところへはいっていないということが前者の解釈になっていいのかどうかということと、それから、この評価をいろいろしていく上で、データというのは現在非常に不足しているんだ、そういうふうに理解していいのでしょうか。
  254. 中田正也

    ○中田説明員 前者についてはお言葉のとおりだと思います。  それから、データ不足と申し上げましたのは、私の表現が悪かったと思いますが、データがたくさんありながら、私たちが何か探すときには本当に駆けずり回らないと選ぶことができないという、その集積と分類とか、そういう面で私たちの力はまだまだもっと尽くさないといかぬと思っております。
  255. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いまのお話を伺っておりますと、現在中田さんのもとで船舶技研が行っていらっしゃる舶用炉の研究というものは、つまり「むつ」があろうとなかろうと、現在どうしてもやらなければならない研究分野であるという感を私深くしたのでありますが、そういう理解を持っておけばよろしいわけですか。
  256. 中田正也

    ○中田説明員 お言葉のとおりだと思います。
  257. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先般、部長にお会いしたときにこういうお話がありましたね。いまのような研究を進めるにしては余りにもスタッフが少なく、そのため研究の進行状況は遅々たるものだと言われたのでありますが、ここは御遠慮なく研究者としてその実情を話していただければ結構なんでありますが……。
  258. 中田正也

    ○中田説明員 研究者の立場から申しますと、幾らでも人手も欲しいし予算も欲しい。これは原子力船関係のみならずどの部門におっても皆そういう期待を持っております。で、期待されている点が多ければ多いほどもっと自分たちの仲間がふえてほしい、こう思っております。
  259. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 聞いておられて、科技庁の方も舶用炉の研究段階がどの程度のものか大体おわかりになったと思うのですね。わかっていていままでは知らないふりをしていらっしゃったのだと思いますが、そういう点から見れば、大山報告を読みますと、いまのお話と一致するわけですよ。たとえば「原子力第一船の原子炉は、事業団発足以前から国産とするという考え方が主流であった。」「しかし、国には軽水炉国産化に乗り出す姿勢は乏しく、軽水炉は業界の導入に任せており、国が軽水炉に対し基礎研究必要性を認識したのは比較的近年になってからである」この認識がいまの船舶技研の研究の一端になってあらわれているのじゃないかと思うのです。さらに「原理的には可能であっても工学上の問題は残る。そこで、陸上に同型炉をペアで建造すべしとする意見や、実験炉あるいは原型炉を経て、開発を段階的に進める計画も示されたが、いずれも、結果的には見送られた。」あるいは「事業団の設立以前に運輸技研などで、すでに第一船の基礎研究は終了しており、事業団は第一船を建造し、その実用化試験を担当するだけの機関という一般的認識があった」こういう指摘があるわけですね。科技庁としては、この大山報告の指摘は、いまの中田部長の話とあわせて率直に認められますか。
  260. 山野正登

    山野政府委員 わが国におきます原子力船開発というものが、第一船「むつ」の開発を済ませれば、それだけで将来原子力船実用化時代に対応できるとは私ども考えておりません。これは、第一船「むつ」の建造によりまして、国産技術で原子力船開発するという技術を蓄積しますと同時に、原子力船の航海によりまして運航等の技術も蓄積しようということでございますが、これと並行いたしましていま問題とされております舶用炉の研究開発等を含む基礎研究が同時に行われる必要があるということは私ども十分認識いたしておりますし、また原子力委員会におきましても、経費の見積もり等においては、そういうふうな観点から本件を考えておられると思っております。
  261. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いまの答弁自体も、少なくとも第一船を建造するに当たって必要な基礎的な研究も不足していたという大山委員会の指摘は率直に認められたものじゃないと思うのです。じゃ、いまの局長の答弁前提にして考えても、昭和三十八年二月二十日の科学技術委員会で当時の島村原子力局長が、先ほど申し上げました原子力船設計の前提となる三つの研究テーマについてこう断言していますね。基礎研究はおおむね終了した。少なくともいまから十数年前のこの判断、認識はきわめて無責任なものであった、あるいは現状を率直に認めたものではなかった、こういうことだけは言えますね。
  262. 山野正登

    山野政府委員 「むつ」の開発に着手するに際しまして、基礎研究はおおむね終了したという言葉は、その前後の関係を見ませんと、妥当であったかどうであったかという判断は私すぐにはいたしかねると思いますが、基礎研究必要性というのは一に現時点のみならず過去にさかのぼっても重要な問題であったというのはおっしゃるとおりだと思います。
  263. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 再び中田部長にお尋ねしたいのでありますが、運輸技研、船舶技研を通じまして原子力船研究に投入されました予算の総額は幾らになっておりますか。
  264. 中田正也

    ○中田説明員 概数でよろしゅうございましょうか。
  265. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 はい、結構です。
  266. 中田正也

    ○中田説明員 国立機関原子力試験研究費というものをおよそ十四億五千万円ほどいただいておりまして、そのうち原子力船に関するものがおよそ十億九千六百万円。これが五十一年度、本年度までの予算でございます。
  267. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もう一遍お尋ねしますが、十四億が何をあらわすのですか。
  268. 中田正也

    ○中田説明員 これは昭和三十二年度から五十一年度までの国立機関原子力試験研究費としていただいた分でございます。
  269. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そのうち原子力船に使われたものは。
  270. 中田正也

    ○中田説明員 そのうち原子力船関係が十億九千六百万円ということでございます。
  271. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 広い範囲で原子力船をとってみて十四億五千万、狭い意味原子力船関係の基礎研究をとれば十億というのが大体いまの説明の内容だと思うのです。  そこで、今度科技庁がもくろんでおります「むつ」改修予算は幾らですか。
  272. 山野正登

    山野政府委員 「むつ」の修理に幾ら金がかかるかということは、安全性点検の結果どれだけの作業量が出るかということにもよるわけでございまして、いま正確な数字は申し上げかねますけれども、一応本年度中に修理港に回航できるという前提考えました場合に、来年度事業費としまして大体十億円程度は必要であろうかと思っております。
  273. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今度の「むつ」の改修だけで十億要るのですよ。先ほどお話は、昭和三十二年から五十一年までのほぼ二十年間の船舶技研における原子力船研究費の累積が多くとっても十四億、狭い範囲で直接の原子力船研究をとれば十億、こうおっしゃっておるのですね。修繕のためにたった一年で十億、二十年研究のために十億。これは一体どう考えられます。さらに、青森で漁民に対していろいろ不始末をしたために支払わなければならなくなった補償費は幾らですか。それとあわせて考えてみてください。
  274. 山野正登

    山野政府委員 来年度十億円の開発費と申し上げましたのは、これは全部修理に充てる費用ではございませんで、事業団の必要な予算を開発費と補助金とに分けまして、開発費の方が十億円程度であると申し上げたわけでございまして、これがすべて修理費という趣旨ではございません。  それから、青森県におきまして、一昨年いわゆる四者協定によりまして現地に支弁しました金というのは約十三億八千万円でございます。
  275. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 前田大臣、いまお聞きいただいたと思うのです。基礎研究が大事だ、大事だと言いながら、大体船舶技研の研究テーマは他とダブっていないそうでありますが、二十年かかって十億余りですね。これで基礎研究を重視しておったと言えるのかどうか。ひとつ大臣の御答弁を願いたい。
  276. 前田正男

    前田国務大臣 御指摘のとおり、十分であったとは私も感じませんけれども、この船舶技研の研究費を含めて全体の原子力の研究は原子力委員会で調整をしておるはずですから、それに基づいて船についても研究の調整が行われておったんじゃないか、私はこう思うのですけれども、そのときの記録は私よく知りませんけれども、いずれにいたしましても、いまのお話のように十分でなかったことは確かじゃないか、こう思います。
  277. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 少なくとも船舶技研で開発されておった遮蔽の進歩した計算コードを事前に「むつ」に適用しておくとか、あるいは舶用炉の十分な研究の成果というものを生かすというふうな一貫性のある態度をとっておったならば、いま十億円が全部じゃないと言ったけれども、当然それに近い改修費は組んでいるのに決まっているし、青森県に十四億ほど投入したこういう資金も要らなくて済んだであろうし、こういうことを考えただけでも、国の原子力船開発方針なり手順は間違っておった、逆立ちしておった。いま求められておるのは、そこを反省して、そこをいま抜本的に改めるべきだ、こういうことが求められているんじゃないかと思うのですよ。  次に、昭和四十年十二月三日に開催されております原子力委員会第三回原子力船懇談会におきまして、技術小委員会の技術報告書が提出されております。そこでは、「安全性確保の観点からの問題点」として、「日本原子力船開発事業団の現基本設計は、安全性の面においては、サバナ号の例に比較すると多少改善されているが、なお、付属資料のCに掲げるような諸点を含んでいる。」と指摘をしているわけであります。この付属資料のCとは一体どういうものなのか、主な内容をひとつ説明してほしいのであります。
  278. 山野正登

    山野政府委員 この技術小委員会の御指摘の問題点というのは、私も手元に持っておるのでございますが、付属資料のCというのは、ただいま探しておるところでございます。
  279. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その後段にはこう書いてあります。「上述の通り、かなり重大な点で不確定な諸問題を含んでいるので、研究開発と建造の進め方を慎重に検討する必要があると考える。」この基準になっている付属資料なんで、私はきわめて重要な内容を含んでいるのじゃないかと思う。これが科学技術庁で簡単に見つからないというのは一体どういうことなのか。このときのこの指摘は、一体当時どの機関が取り上げてどのようにこれに対処したのか、そういう点だけでも答えていただきたいと思うのです。
  280. 山野正登

    山野政府委員 これは当然原子力船開発問題でございますので、原船懇のこのような技術的問題に対する結論というものは、日本原子力船開発事業団が十分に問題点として認識して処理したと考えます。
  281. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは原子力船事業団がこの資料というものを受け取ってどういうふうに対処したのか、必ず後日報告してほしいのでありますが、よろしいか。
  282. 山野正登

    山野政府委員 そのように努力いたします。
  283. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 きょうは、ちょっと当初要望しました時間が割り当てられておりませんので、後へ残して、ぜひまたひとつ質問機会を与えていただくように委員長にお願いをしたいと思うのであります。  要は結局、日本原子力船研究開発の基本方針並びにその手順が首尾一貫したものではなかった。各研究機関ごとにそれぞれ一生懸命やっておられたんであろうけれども、まちまちに行われておった。横の連絡もなかった。これをまとめるところもなかった。せっかくの成果をお互いに生かし合い、少なくとも「むつ」には反映していかなければいけないのに、それもしていなかった。「むつ」は一人歩きしておった、と言われても仕方のない状況だ。これはやはり、当初民間主導で原子力船開発が始められ、これがある時期、もうすでに私も国会でいろいろ申し上げましたから繰り返しませんが、政府がやるような形になった。このような基本方針の立て方の誤り、そういうことも反映しておると思う。私もこの際、「むつ」ばかりが原子力船開発の問題じゃないということがわかったのですから、改めて科学技術庁は科学技術庁らしく、原子力船開発研究の全分野にわたって、全体にわたって、一度その基本方針を見直すようにしてもらいたい。その一部分として「むつ」をどうするか、こういうことが位置づけられ、考えられるのではないか、そのように考えます。  若干の残った時間で、原子力船事業団そのものについて二、三質問しておきたいのであります。  第三に、私が提起したい問題というのは、果たして原子力船事業団というこの体制が国家的事業たるわが国原子力船研究開発にふさわしい組織なのかどうかという問題であります。また、これは大山委員会も最も厳しく批判している部分でもあります。ごく要点だけ捨い出してみますが、たとえば研究をするような体制ではないという点について、「現実には基礎的な研究実験についてはその業務に含め得なかったきらいがある。」とか「事業団の設立以前に運輸技研などで、基礎研究は終了しており、事業団は第一船を建造し、その実用化試験を担当するだけの機関という一般的認識があった」というふうに報告しているわけです。  また、十年やそこらの時限法では技術的な蓄積、完結はとうてい不可能ということについて、たとえば「十年間に満たない寿命の事業団に基本設計から詳細設計、建造、運転に至る過程を一貫して担当する人材を固定させることは困難であった」あるいは「時限立法では、国家事業として推進してきた開発が技術的な完結に達しないまま挫折してしまう恐れが大きい」また、寄り合い世帯ではとうていこういう大きな事業はできないという点について、原子炉の設置、据えつけを終わった昭和四十四年には原子炉部を廃し、昭和四十七年からは、まだ試験も終わってないのに原子炉課を廃し、さらに昭和三十八年から四十九年までの間に技術関係の責任者である原子炉部長、技術部長は三菱、石播、それから所管庁の出向者ばかりで、二、三年ごとに次々に交代した、こういう状態で「技術上の主な責任者開発の段階を通して変わらないことが、首尾一貫した開発の推進のためには望ましい。」こう結論づけているわけです。つまり、この事業団体制では、たとえ――まさに仮定の話でありますが、今後「むつ」を守りしていくにしてもこれは不十分なものなんだという結論だと思うのでありますが、これは科学技術庁として率直に認めているのですか。
  284. 山野正登

    山野政府委員 原子力船開発を始めるに際しまして、当時は官学民の総力を結集しよう、と申しますのは、当時この分野で十分な技術者というものを確保するのは相当困難な状況にあったわけでございますので、関係の研究機関の技術能力あるいは産業界の技術能力というものを最大限に活用しようということで、官学民で一諸に開発できる体制ということでこの事業団が選ばれたものと思っております。  それで、事業団でこれまで行ってきました開発についての評価というものは、御指摘の放射線漏れ問題調査委員会のみならず、原子力委員会に設けられました原子力船懇談会でもいろいろ検討願ったのでございますが、その際に、いろいろ過去の、職員の交代が頻々とあったとか、あるいは事務処理機関的な性格に堕してしまったといったふうな御批判は、私ども率直に反省いたしておりますが、一方、この同じ結論としまして、今後の開発体制といたしましても原子力船事業団を中核としてこれを補強し、増強していけという方向も示されておるわけでございまして、私どもも反省すべき点は反省いたしまして、この体制でできるだけの大きな成果を上げていきたいというふうに考えております。
  285. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今日まで十年の時限立法蓄積できなかった人材や技術が、今日を出発点にして考えれば、政府法案が通ったとしても、また十年間、つまりいままでと同じことをもう一回やろうということなんだけれども、それで人材、技術が蓄積できる、こういう保証は一体あるんですか。
  286. 山野正登

    山野政府委員 保証という点になりますと、どういう御観点か非常にむずかしいと思いますが、昨年この事業団の首脳陣も交代し、かつ、できるだけ技術蓄積ができますように主要ポストにはできるだけ有能な人材に長く座っていただくというような方法等も講じようとしておるわけでございますから、今後の十年が過去の十年と全く同じことに終わってしまうということにはならないと思います。そうならないように十分努力をしたいと考えております。
  287. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 十分努力をしたいというだけで、中身として変わった面が過去の十年と何にもないのですから、それで違った成果が出たら私はその方が不思議だと思います。  昭和三十八年の二月二十日の委員会で、これは与党自民党の安倍晋太郎議員がこのようにおっしゃっていますね。「私は第一船が実験船でございますし、原子力の平和利用という点から考えましても、むしろ原子力委員会あるいは原子力研究所で責任を持ってこの第一船を建造するという形の方が、むしろスムーズにいくのではないか」つまりわれわれ野党の測では、共産党は当時この事業団に反対した唯一の党であったわけでありますが、与党の中にすらこのような批判的意見があったというわけであります。なぜ大臣としては、このようなある意味では今日を予測したような指摘に対して十分科学技術行政に取り入れられなかったのか、大臣のお考えを聞いておきたいのです。
  288. 前田正男

    前田国務大臣 先ほど政府委員お話ししましたとおり、当時の技術あるいは人員の確保、経験というようなものから各方面の協力を得るということで事業団ができた、こう考えられるわけでございます。したがって、まだその実験船がこれからでございますから、この事業団の体制を整えて、当時の法律目的のとおりに実験を済まさなければならぬのじゃないかと思っておるわけであります。しかし、いまお話しのように、将来の原子力船というものについてどう考えていくべきかということについては、これはまた原子力船懇談会もございますから、よくみんなと相談もしていかなければならぬと思いますけれども、とにかくいまのところ各方面の協力を得て事業団をつくって、そして第一船の実験船をやろうというまだ中途の体制でございますから、これはもうとにかくそのままの形で延長を御承認願って、第一の事業団をつくりました目的がまず達成されなければ将来の問題についてはまだ考えられない。いろんな御意見があると思いますけれども、そのいろんな御意見を集約していくのはまだ早いんじゃないか、こう思っておるわけです。
  289. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いろんな意見を集約して一つにまとめる時期が早いというなら、この事業団という体制を十年も延長するというこの結論もまた早いということに私はなると思うのです。やはり現在までこの原子力船建造ということでは事実上事業団を中心にやってきて、それで本日大きなミスが表面化しておるわけですね。この事業団でやるのか、違った研究体制をもってやるのか、これはやはり一つの大きな焦点ですから、まさに英知と衆知を結集しなければならない時期だと思うのです。そういう点で、大臣の重ねての見解を求めておきたいということ。  それから、これも去年の六月の委員会で、当時の生田局長でありますが、大山委員会報告に対してこういうことをおっしゃっています。「十分傾聴に値する御意見は取り入れてまいりたいと思いますし、私どもで異論のあるところは、さらに大山先生その他の先生とも十分討論をいたしまして、その結果で実行に移してまいりたい、かように考えております。」その後、この大山委員会の関係者と一体何回会って、どんなことを討議してこられたのか、また、どういうことをその中で実行に移そうとしていらっしゃるのか、この点をお答えいただきたいと思います。
  290. 前田正男

    前田国務大臣 前半の問題は私から答えさせていただきます。  これはいま申しましたとおり、事業団法ができました目的がまだ中途でございますから、だからこれはやはり事業団法ができた目的、第一船の実験船という目的が終わらなければ、またその目的が終わるような見通しが、将来の問題については終わってからのことだと思うのです。だから、やはり多少ここで時間をいただきまして延長を認めていただきたい、こう思っておるわけでございます。  後半の問題は政府委員からひとつ……。
  291. 山野正登

    山野政府委員 私個人が大山先生とその後お会いして本件についていろいろ御意見を聞いたということはございませんが、しかし、先ほど申し上げましたように、この調査委員会の御報告というのは私ども十分に尊重していくつもりでおりますし、また、すでに原子力船事業団理事諸公にも一新を願い、かつまた、できるだけ技術蓄積能力がありますように技術陣の増強というのも予算面でも手当てをしておりまして、私どもとしましては十分尊重して措置しておると考えております。
  292. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほど大臣お話からいけば、結局「むつ」の建造が中途半端だから、したがって事業団をここでほうり出すわけにいかぬのだ、こういうお話ですね。逆に言えば、結局この事業団はこの欠陥原子力船むつ」と運命をともにしなければならない、そういう宿命を負っているようにわれわれは受け取るのです。私どもとしてはあくまで「むつ」の改修即原子力船研究開発の道なんだ、これでは科学技術庁そのものの存在さえ問われてくる。本当に原子力船開発研究に対して科技庁とは一体どんな存在なのか、そういうふうな疑問すら起こってくる。本来科技庁は「むつ」を含めてこの原子力船開発研究の全般に対して計画を立て、またいろんな連絡を密にし、指導を行っていく、そういうふうな役割りでなければならないのじゃないか。こういうことをもっと積極的に発揮してもらいたいと思うのです。私どもとしてはそういう見地から、この事業団延長には強く反対するものであることをここで意思表明いたしまして、終わらせていただきます。
  293. 石野久男

    ○石野委員長代理 次に近江巳記夫君。
  294. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず初めに、この開発事業団法附則第二条にあります「昭和五十一年三月三十一日までに廃止するものとする。」これは他の委員からも質問が出ておりますが、もう一度改めて内閣法制局の見解をお伺いしたいと思います。明確にお答えください。
  295. 前田正道

    前田政府委員 何年何月何日までに「廃止するものとする。」と申します規定は、何年何月何日限りその効力を失うという規定とは異なりまして、一定期間内に廃止するという方針と申しますか原則、これを宣明した規定でございまして、その期限が参りましたから当然に失効するものではないというふうに考えております。
  296. 近江巳記夫

    ○近江委員 この原子力委員会の「原子力船懇談会報告」を見ますと、事業団法の改正につきまして「現在の事業団法昭和五十一年三月三十一日をもって廃止されることとなっているが、前述の事業を遂行し得るよう同法に所要の改正を加えることが必要である。」これは裏を返しますと、これをやらなければ前述の事業が遂行できないということになりますね。こういうように、これは昭和五十年九月十一日原子力委員会原子力船懇談会が出しております。政府だって明確にこういう見解に立っているじゃないですか。こねは裏を返しますと、この法律がきちっと存続しなければ事業はできないということですよ。
  297. 山野正登

    山野政府委員 この原船懇での御指摘は、事業団法というものが三月三十一日を過ぎれば有効か無効かという観点に立っての結論ではございませんで、原船懇とされましては、やはり国会で今後の原子力船開発に取り組む姿勢について御同意をいただいた上で引き続きこの「むつ」の開発を進めていくべきであるという御趣旨でございまして、現在団法が有効であるかどうであるかという議論とは全く別の次元での結論でございます。
  298. 近江巳記夫

    ○近江委員 そんなすりかえ論みたいなことを言ってはいけません。文書でも「事業を遂行し得るよう同法に所要の改正を加えることが必要である。」と、はっきりと言っているわけです。ところが、これは期限が切れているわけでしょう。いままでこういうようなケースは、大学運営に関する臨時措置法があるわけですけれども、これなどは予算を別に伴っていないのです。事業団法は莫大な予算を伴うわけです。あなた方はどういう根拠をもってそんなことを言うのですか。
  299. 前田正道

    前田政府委員 「廃止するものとする。」とされました法につきましては、廃止措置がとられない限り有効と考えていることは先ほど来申し上げているとおりでございますが、その一つの例で答えさしていただきますと、ちょっと長いのでございますが、特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法というのが四十六年にできたのでございます。これはたまたま四十六年三月三十一日という時点におきまして、一つの法は「その効力を失う。」というふうにされております機械工業振興臨時措置法。もう一つの法は「廃止するものとする。」とされておりました電子工業振興臨時措置法、これを統合した法律なんでございますが、「その効力を失う。」とされました機械工業振興臨時措置法の方には何ら手当てはされておりませんけれども、「廃止するものとする。」とされました電子工業振興臨時措置法の方につきましては「廃止する。」という手当てがされているわけでございます。したがいまして、「廃止するものとする。」とされております法律につきましては、改めて廃止措置がとられない限りは、もちろん延長もございますけれども廃止措置がとられません限りはなお生きているというふうに解するのが当然ではなかろうかということでございます。
  300. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは結局後追いの解釈じゃないですか。政府がそういうような措置をしたからということで、法制局はそれに前例として従っている。おかしいですよ。法というものはもっと厳格でなければいかぬのと違いますか。そういう前例があるからこういうことをやっている、その前例自体が間違っている。
  301. 前田正道

    前田政府委員 その点につきましては、これは全く同様なあれではございませんけれども昭和二十三年の第二国会におきます両院法規委員会の勧告というのがございまして、このときに、片一方では一定の期日から「その効力を失う。」とされ、もう一つの方は「廃止するものとする。」という端的なあれではございませんで、改廃しなければならないという規定があった法のことについてでございますが、その点につきまして、その両院法規委員会の勧告の理由の中に」定期日までに法律を改廃すべきことを定めた法律」これにつきましては、ちょっと飛ばしますが、「その期日に当然廃止されるのではなくて、これを改廃する法律を制定する必要があることは論を俟たない。」こういう考え方もお示しになっているわけであります。そういう点から、従来「その効力を失う。」と「廃止するものとする。」この両方の法律があるということだと思います。
  302. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、いままでそういう前例があったとして、皆予算が伴っているのですか。先ほどあなたが例に挙げられたのは、予算をつける法律ですか。
  303. 前田正道

    前田政府委員 「廃止するものとする。」とされておりますのは、その期限が来ましたら廃止延長か、いずれかの措置をとらなければならぬと思うのでございます。したがいまして、その期限が参りますので改めてその延長措置をとるという方を法律の改正案でお願いいたすとしますと、それに対応して予算をお願いするということであろうかと思います。
  304. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一遍言いますが、前例として挙げられました電子工業ですか、それから特定機械ですか、これなんかはやはり毎年予算を組んでいるのですか。
  305. 前田正道

    前田政府委員 所管の法律でございませんので、ちょっとそこまで調べておりませんでした。
  306. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま申し上げましたように、この原子力船事業団法というのは年間莫大な予算を組まなければならぬわけでしょう。だから、いわゆる大学臨時措置法等とはこれは全然違うわけですね。こういう点におきまして非常に疑義がある。先ほど指摘しましたように、原子力船懇談会の報告の中でも、これがなければ事業を遂行できない、裏から読みますとそうなるわけですね。そういうことを政府がそういうあいまいな姿勢でいくということは非常に私はよくないと思うのですね。非常にこの解釈があいまいであるということと、この恒久法と時限立法、これはそうするとあなた方の解釈では時限立法じゃないということですか。
  307. 前田正道

    前田政府委員 先ほども申し上げましたとおり、最終的には言葉の問題になろうかと思います。私どもが時限法として理解をしておりますのは、何年何月限り「その効力を失う。」という終期を明確に確定をいたしました法律を指しまして時限法と理解をしております。
  308. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしてもこの問題は、あなた方のそうした見解ではなかなか納得しがたいものがあるわけです。今後さらにこの問題については詰めていきたい、このように思います。  それから「むつ」の問題でありますけれども、前に前田大臣、これは雑談だと思うのですが、当初これは実験船ということであったわけですね、それが貨物船にかわった、こういうところに問題があるのだというようなことも、これは委員会じゃございませんがちょっと前に聞いたように思うのですが、今回のこういう「むつ」の事件というものはやはりその辺に無理があったんじゃないかと思うのです。たとえば六千トンのものを八千トンに改造して、その中にいわゆる貨物のスペースというものをとらなければならぬ、そういう中に、いわゆる遮蔽の問題であるとか、そうした無理があったのと違いますか。それについてはいかがですか。
  309. 前田正男

    前田国務大臣 その問題に直接はどうかと思いますけれども、私らもこれに関係してきたのですが、ただ私は、第一船は実験船でありますから、なるべく政府関係の実験をやるような、そういうものの方が、時間的な問題とかあるいはまた研究費の問題とか、その他いろいろな点において有利じゃないかというふうに初め考えられておったわけですけれども原子力船がだんだんと実用化の方向へ動き出すというようなことで、半分貨物の実験船的なものになってきたわけです。しかし、大山委員会が指摘されておるのを見ておりまして、初めの段階のようなものならもう少し実験その他に手順的に余裕があったのじゃないかということを感じるわけです。しかし、いずれにいたしましても今日のことでございますから、いまの「むつ」というものはこういうふうにでき上がっておるわけでありますから、このでき上がっております「むつ」が、事業団目的である原子力船実験船としての目的を達するように、この際延長をお願いいたしまして、皆さん方の御了解を得て成立さしてもらいたい、こういうように考えておるわけでございます。
  310. 近江巳記夫

    ○近江委員 前田大臣先ほどの御答弁の中にも、当初六千トンの気象観測船を八千トン特殊貨物船にする、こういう船種の変更があった、この辺がやはりちょっと無理があったんじゃないかというような、そういう意味での御発言であったと思うのです。当初からの計画であれば無理なくいったんじゃないか、そのように疑義をはさまれたわけでございますが、この変更のときの経過を見ますと、当時、昭和四十一年十二月十五日、これはちょうど大蔵大臣は田中角榮氏ですね。それでこの原子力委員会がすでに決定しておりました原子力第一船開発基本計画まで一挙にこういうように変更している。基本的な計画がそういうように一挙に変わる、こういう中に私は今回のこの「むつ」のそうした原因というものが一番根本的なものがあるんじゃないかと思うわけです。当然大蔵省が金を握っておるわけでございますから、原子力委員会がこんな簡単に変わった最大の理由はやはり収益性の問題であったということが当時言われているわけですね。純粋な科学の立場から原子力委員会としてもこうした決定をして計画を進めてきた、それがそういうように収益性ということを一つの眼目にしてそんな簡単に変えていく、ここに一番の大きな問題があると思うのです。  こういう政府の姿勢に対してどのように反省されていますか。また簡単に変えられる原子力委員会の弱体性というものについてどういう反省をお持ちですか。
  311. 前田正男

    前田国務大臣 そういう問題につきましては、先ほど大山委員会から出ておりますようなことで、もう少し慎重にやらざるを得ないんじゃないかというふうに私たちも反省をしております。したがいまして、原子力船事業団自身の目的は達成ができておりませんので、すでに「むつ」もできておるわけでございますから、これが達成されるようにひとつ延長は認めていただかなければなりませんけれども、将来の原子力船につきましては原子力船懇談会等の意見もありますから、またこういう事業団目的が達成される段階におきまして原子力船のあり方というものについて検討しなければならぬのじゃないかと思っておるわけでございます。
  312. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は原子力船のことだけを言っておるのと違うのです。純粋に科学的な立場からそういう計画をしておられることがそんなに簡単に変えられるとか、またそういう弱体な原子力委員会についての問題を私は提起しているわけです。今後またいろいろのプロジェクトを推進されていかれるわけですから、こういうことがいとも簡単に行われるということが最初のボタンのかけ方の間違いなんですよ。重大な反省をしてもらわなければならぬと思うのです。率直に大臣科学技術庁の代表として反省しますか、こういう態度を。
  313. 前田正男

    前田国務大臣 これはもちろん大いに反省をしなければなりませんし、また慎重にやらなければならぬことだと思います。先ほど来大分御指摘ありました、政府機関の間の予算の相互調整はしておると私は思ったのですけれども、どうもその間の連絡が不十分だったとかいろいろなことが指摘されましてまことにどうも残念に思っておるわけで、私たちが原子力に当初かかりましたときは原子力委員会と全部相互調整するし、原子力の研究費は一括計上しておりますから、各役所は十分連絡ができておるものと私たちは考えておったわけですけれども、そういういろいろな御指摘がありますし、また大山委員会からも御指摘がございますように、そういう点については大いに反省しなければならぬと思います。  また船だけではないというのはいまお話しのとおりで、原子力全体につきましても、原子力基本法を制定しましてスタートした当時からいろいろと世界の変化がありまして、それに応じたようないろんな問題が出ておりまして、また日本をめぐる内外の情勢も、御承知のとおり高度成長から低成長に変わるとか、環境安全問題というものが非常にやかましくなりまして、原子力全体の見直しという問題も出てきておることはすでに御承知のとおりでございまして、それに伴って政府は原子力行政の懇談会等も設けております。また、私たちはそれを受けまして、安全行政を強化するために、すでに安全局は一月にスタートしておりますけれども、来年度は原子力安全委員会を設置しよう、こういうふうなことで、それに伴いまして原子力行政全般にわたりましてこの機会にひとつ見直しをして基本的な構想というものを練っていく必要があるのではないか、こう思っておるような次第でございます。
  314. 近江巳記夫

    ○近江委員 この大山報告書の中で「調査検討の結果から、本委員会は、単に「放射線漏れ」のみならず、念のため、原子力船むつ」の原子炉部分について全般的に技術的な再検討をする必要があると考える。」こう出ているのですね。これは政府としてはどう考えているのですか。
  315. 山野正登

    山野政府委員 原子炉部分につきまして、安全性について総合的に再点検しろという御指摘はそのまま受けとめておりまして、具体的な内容につきまして、わが方と運輸省で設けました「むつ」総点検・改修技術検討委員会でも慎重に御検討を願いました結果、遮蔽改修にあわせましてそのような総点検をするという計画を決めております。
  316. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、この事業団では一九六九年に原子炉部をなくしているわけでしょう。一九七〇年には原子炉課もなくしておる。これは事実ですか。この原子炉自体のそうした研究というものにつきまして、原子力船事業団に担当といいますかそういう部局はあるのですか。
  317. 山野正登

    山野政府委員 原子炉自体につきましては技術部が担当いたしておりますが、なお、この原子炉につきましては非常に幅の広い問題でございますので、船舶技術研究所あるいは原子力研究所等の協力も当然得ております。
  318. 近江巳記夫

    ○近江委員 技術部なんというものは、技術なんといったってこれは広範なものでしょう、船舶技術から何から。一番心臓部の大事な原子炉の点につきまして、最初は部まで設置しているわけですね。そして後は課も廃止しておる。結局「むつ」の建造に当たりまして、一たん原子炉ができますと、必要な試験もせずに、炉に関してはいわゆる問題が何もなくなったかのような幻想を持って先に進んでおる、こう言わざるを得ないのです。こういう安易な姿勢というものが今日のこういう事故を招いておるわけですよ。そんな体制で――いわゆる大山報告書からもこのように指摘されておる。政府がやりますと言ったって、われわれが安心できますか。原子力船というのはどこがつくるのですか、事業団でしょう。政府はもちろんバックアップして監督してやるにしても、主体者である原子力船事業団になぜないのですか。大体こういうこと自体が間違っているのですよ。いかがですか長官
  319. 山野正登

    山野政府委員 技術部の中に、原子炉という名前は使っておりませんけれども、技術一課、技術二課とございまして、技術二課の方で原子炉を担当いたしております。したがって、そういう名前を冠してはありませんけれども、担当する部局はあるということでございます。
  320. 前田正男

    前田国務大臣 どうも私はその辺の事情はよく存じませんけれども、いま担当の課があるということでございますから、十分にしっかりやってもらいたい、こう思っておるわけでございます。
  321. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはひとつ、その名称云々で言うんじゃありませんけれども、実体というものをしっかりしたものにするべきじゃないですか。私が先ほど申し上げた、炉さえできればこれで終わりだというきわめて安易な発想からそういう体制にもなっているように思うのです。根本的にこの点は反省していただきたいと思うのです。  それから、長崎県の質問書に対する回答書を政府は出しておるわけですが、たとえばモニタリングシステムにつきまして、このことが「むつ」の安全性の問題に直接関係があるのですか。
  322. 山野正登

    山野政府委員 原子力船むつ」の原子炉内におきます放射能レベルにつきましてはきわめて低いわけでございまして、修理港におきましては原子炉を運転しないで冷態停止のままで所要の遮蔽改修、総点検を行うわけでございますので、私どもはこの修理によりまして放射線上問題になるようなものが外部に出るということは考えておりませんけれども、しかし、一般方々にそういうふうなことはないんだということを確認していただく意味で、モニタリング設備のあるところの方が好ましいというふうに判断しております。したがって、モニタリング設備のあるところを選んだということでもって、この修理作業の過程においてこのモニタリングでもって感知できるほどの放射線漏れ等がある、あるいは放射能漏れがあるという趣旨ではございません。
  323. 近江巳記夫

    ○近江委員 蒸気発生器伝熱管のいわゆる探傷、傷を探る問題ですが、実際こういうことは可能なんですか。美浜一号炉の場合にも、人間の作業空間というものが小さいために非常に困難な作業で、「むつ」の場合はこれよりもさらに小さいわけですね。この蒸気発生器についてどのようにして行うか、非常に専門家からは疑問視されておるわけであります。  この蒸気発生器につきましては、美浜一号炉の場合と同型の立型U字管方式を採用しておるということを聞いておるわけですが、これを使用しているうちに簡単に穴があくということは専門家から指摘されておるわけです。そういう点から、試験をするよりもU字型でないものと取りかえる方策というものを採用すべきではないかと思うのですが、また、この二次系の水質処理についてもわからないわけですね。この点についてはどう思いますか。
  324. 山野正登

    山野政府委員 この蒸気発生器の探傷試験につきましては、御指摘の陸上炉における同種のものの経験というものを十分に生かしてやっていくというふうに考えております。もちろん、具体的にこの手順のとおりできるというふうに私ども考えております。それから、新しく全く別のものに取りかえるということは現在考えておりません。
  325. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは何も答弁になっておりませんよ。美浜一号炉の場合でも、いわゆる人間の作業空間が小さいために非常に困難な作業であるということが言われておるわけです。それよりはるかに小さいのでしょう。あなた、そんな簡単にこれはできるのですか。いいかげんな答弁してはいけませんよ。専門家が指摘している。
  326. 山野正登

    山野政府委員 その点につきましては、事業団でまず検討しました結果を技術検討委員会でもしさいに検討願いまして、十分できるという御判断をいただいております。
  327. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはあなたがそう言うのですから、私も実際に見ておりませんからね。次の問題に行きたいと思います。  この圧力容器のふたの取り外しをすることになっておるわけですが、これはどこの岸壁で遮蔽改修工事を行うという予定を持っているのですか。場所によってはこれは非常に問題が大きいわけですね。ということは、この圧力容器を開放するわけですから。それについてはいかがですか。
  328. 山野正登

    山野政府委員 現在の時点では、まだ特定の岸壁を予定いたしておりませんけれども、この上蓋を取り外すことによりまして理論的には放射線率は若干上がるわけでございますけれども、これによって外部に悪い影響を及ぼすということはないわけでございます。それだけ内部の放射能レベルは十分低いということが言えますので。この上蓋を取りました後、また仮ぶたもいたしますが、この仮ぶたも、むしろ異物が圧力容器の中に落下するということを防止する趣旨でもって行うものでございます。
  329. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしても、ここのところは非常に心配な点ですね。  それから、この燃料棒につきまして、燃料棒には何らの傷はない、このように言っているわけですね。ところが「むつ」の燃料棒につきましては、目標として破損率は〇・一%としておりますので、約三千本のうち三本程度の破損は初めから予想されるわけです。この点についてはどうですか。  それから、この「むつ」の燃料棒はヘリウムを加圧封入した加圧型のものでなく、使用すると焼き締まりのためにつぶれるおそれがあると専門家が指摘しているのですよ。
  330. 山野正登

    山野政府委員 燃料棒の健全性でございますが、これは燃料棒を製作しました時点、それから原子炉に装荷します時点での検査記録は残っておりまして、この検査記録による確認と、それからこの後炉内におきましては、一次冷却水を検査することによりまして、この水質から判断して、現在の燃料棒は健全であるという結論を得ておるわけでございます。今後ともこの水質管理というのは十分にいたしまして、燃料棒の健全性が保持されるようにしたいと考えております。  それから、ヘリウムを加圧封入した型でないので使用中に焼き締まりがあってつぶれるおそれがあるということでございますが、最近の炉におきましては焼き締まり対策の一つとしまして、加圧された燃料を使用いたしておりまして、「むつ」の場合は加圧型ではございませんが、一次系の圧力が陸上の炉に比べまして十分低いので、特に問題ないというふうに考えております。
  331. 近江巳記夫

    ○近江委員 この「むつ」の燃料をつくったのは、たしか三菱ですね。つくった工場はいまでもあるのですか。その辺についてちょっとお聞きします。
  332. 山野正登

    山野政府委員 三菱原子力工業株式会社でございまして、現存いたしております。
  333. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはもちろん会社自体は大きい会社ですから、それをつくった工場というものはあるのですか。念のためにちょっとお聞きしておきます。はっきり確認して言ってくださいよ、いいかげんなことを言わぬと。
  334. 山野正登

    山野政府委員 つくりましたのは同社の大宮工場と思いますが、現在も同じ場所で同じ種類の作業をしておるかどうかということは確認の必要があろうかと思います。
  335. 近江巳記夫

    ○近江委員 それをもう一遍確認しなさいよ。また後で報告してください。  それで、専門家からそういう指摘があるわけですが、そういう加圧型のものにかえる必要があるんじゃないですか。その点はどうですか。
  336. 山野正登

    山野政府委員 先ほど答弁申し上げましたように、「むつ」の場合は一次系の圧力が陸上炉に比べまして十分低うございますので、特に交換の必要はないと考えております。
  337. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、私がこう指摘したことが後でまた出るかもわかりませんよ。後悔なさらないようにひとつ十分な点検をお願いしたいと思います。  それから火災につきまして、火災の対策をまだ考えてないのですが、一般に船舶の火災というものは修理中に溶接等のために起こるわけですけれども、これはないと決めてかかるのは非常に断定的だと思うのですがね。そういう考え方でいいのですか。
  338. 山野正登

    山野政府委員 原子力船むつ」の防火対策につきましては、運輸省の方の規則がございまして、その規則にのっとりまして必要な警報機等を備えるとともに、船舶の区画割りを十分にいたしまして、一たん火災が発生しましても、これが延焼しないようにというふうな対策も十分に講じてございますので、耐火上は十分じゃないかと考えております。
  339. 近江巳記夫

    ○近江委員 実際に火災の対策を本当に十分に考えているのですか。
  340. 山野正登

    山野政府委員 ただいま申し上げましたように、防火構造は海上人命安全条約という条約と、それから船舶安全法の船舶防火構造規程というものがございますが、この双方に基づきまして設計されております。船内は防火壁あるいは防火とびらによって十分に区画されておりまして、火災の発生を防止しますとともに、各区画に設けられました火災探知機あるいは消火装置によりまして、万一の火災発生にも直ちに対応し得るような構造になっておりまして、耐火上の問題というのは対策は十分とられておると考えております。
  341. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからECCSについてですけれども、これは実際に運転したときのことでありますけれども、「むつ」のECCSには不明の点が非常に多い、また現在の基準に合っていない、こういう問題点が指摘されておるのです。これについてはいかがですか。
  342. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ECCSの問題につきましては、陸上発電炉につきましての基準的なものがあるわけでございますが、「むつ」の場合は陸上炉と被覆材の種類が違いまして不鋳鋼を使っております。そういう観点からいたしまして、別の配慮、解析がなされるわけでございますが、現在までのところは特に大きな問題はないと考えております。
  343. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは、このように専門家が指摘しております何項目かのことにつきまして指摘をしたわけです。技術上のことにつきましては、これは学者じゃないから私は論争すべきものを持っておりませんが、専門家がこのように指摘している何項目かにつきまして指摘をいたしましたが、いま政府委員からも答弁があったわけですけれども長官としては今後どういうように配慮されますか。
  344. 前田正男

    前田国務大臣 いま政府委員答弁したとおりで心配ないと思いますけれども、やはり十分に検討はしていく必要があると思います。
  345. 近江巳記夫

    ○近江委員 この「むつ」の今回の事故というものは、これも何回も指摘しておりますように、わが国のいわゆる原子力行政そのものの姿じゃないか、私はこのように思うわけです。そこで、本委員会に何名かの参考人の方にも来ていただいたわけですが、国民の納得のいく原子力行政の立て直しを早急にすべきである、これが一番肝心ではないかという指摘があったわけです。そこで、懇談会の結論が出るまで、いつも政府は懇談会の結論を待ってという話がありまして、そういう形で逃げてきたわけですが、懇談会の結論が出まして、そういうことのいわゆる意欲的な改革というものがわれわれには感じられないわけです。そういう姿勢であっていいのかどうかということを私は問いたいと思うのです。いかがですか。
  346. 前田正男

    前田国務大臣 行政懇談会の意見を受けまして、すでに五十二年度の概算要求には原子力安全委員会を設けることにいたしておるわけでございます。その他の安全の一貫性につきましては、これはもちろんいま申しました安全委員会については予算の審議とそれの設置に必要な国会法律の御審議を願って、皆さん方の御賛成を得なければできないことでございますけれども、一応政府としては概算要求に要望しておるわけでございます。  それから、そのほかの行政の一貫性の問題あるいはそれに伴ういろいろの措置の問題等は、安全の推進に非常に重要な問題でございますので、そのほかの原子力の行政とあわせまして、一応原子力のトップクラスの方たちの基本的な構想を承りまして、それに基づいて、これは関係省庁がたくさんございますから、そういうところと十分に相談をいたしまして、これを実現化していきたい、こう思っておるわけでございまして、すでにその方面に行動を起こしておるわけでございます。
  347. 近江巳記夫

    ○近江委員 この安全委員会の設置につきまして当然皆さん方の御賛同を得なければというお話があったわけですが、自民党の科学技術部会の方では相当な反対があるかのように聞いておるわけですが、この辺は十分話し合われているわけですか。どういうようになっておりますか。
  348. 前田正男

    前田国務大臣 十分に話し合いをいたしまして、自民党の部会の方も概算要求を提出することを認めたわけでございますから、概算要求を提出しておるわけでございます。ただ、自民党も別にこれに反対しているわけではございませんで、こういう委員会をつくるについては、その後の安全行政を初め原子力行政全般にわたって十分な検討をする必要があるじゃないかということでございますから、先ほど申しましたとおり、私たちはこれを十分に検討しようと思いまして、すでに行動を起こしておる。この前新聞で発表いたしましたとおり、基本構想についての懇談会を設けまして、まず対策を講じていこう、こうしておるわけでございます。
  349. 近江巳記夫

    ○近江委員 この懇談会からは安全委員会を初めとして何項目かの提言がなされておるわけですね。その他の改革につきましては、政府としてはいまどういうように取り組んでいるわけですか。
  350. 前田正男

    前田国務大臣 先ほど答弁させていただいておりますように、安全委員会につきましては概算要求をしたところでございますが、その他の一元化あるいは一貫性の問題、あるいはまた党の方は行政の一元化も検討せよという意見が出ておりますけれども、行政懇談会の方の一貫性の問題、党から出ております一元化の問題あるいはまたダウンストリーム等の促進の問題、こういう問題は非常に基本的な構想にかかる問題でありますから、先ほど申したとおり、基本的な構想の御意見を承る場をつくりまして、それをもとにいたしまして、安全委員会を要求しております科学技術庁といたしまして、ある程度の構想をまとめたところで関係の省庁と相談をして、そして具体化に入っていきたい、こういうことでございまして、その行政懇談会の意見を受けてすでに行動を開始しておる、こういうことでございます。
  351. 近江巳記夫

    ○近江委員 また、そういう行政懇談会というものを一つの隠れみのにするといいますか、またそれで時間の引き延ばしにかかるというような面にも受け取られないこともないわけですね。それは、やはり国民が原子力行政全般につきまして非常に不安を持っておるわけですからね。やはり懇談会からもこういう具体的な話も出ているわけですから、それが、前のいわゆる懇談会が結論を出すまでも相当な時間がかかったわけです。それで、まだかまだかと、とにかく政府はそれを待っている。で、今回はまたそういう行政懇談会をつくる。だからその点を、やはり国民が、速やかにそうした改革をやって安心できるものにしてもらいたいということを言っておるわけですから、それはスムーズにやってもらわないと困ると思いますね。どうなんですか。
  352. 前田正男

    前田国務大臣 行政懇を受けまして、行政懇の一番大きな問題であります安全委員会については予算要求をしておるわけでございます。だから、今度は、その安全委員会を原子力委員会から分離するのに伴いまして、行政懇の方から一貫性でやれという話でございますから、一貫性というものを貫いていくのには、うちの党の方では、一元化するのが一番一貫性が貫きやすいじゃないか、こういう御意見もありますから、そういう問題を受けて、ここで別に時間をかけてどうこうしようと思っているわけではありませんけれども、これに伴いまして、やはりいろいろと安全問題だけじゃなしに、行政は原子力行政全般に関係する問題でありますから、それをどう受けとめていくかということを意見を聞こう、何も引き延ばししようというふうな気持ちはありません。行政懇の意見を実現するためにはどうしたらいいかということで、それが原子力行政全般に及ぶことでありますから、その意見をまとめて、そして、これをなるべく早く実現していかなければ、御承知のとおり安全委員会の予算は五十二年度の予算に要求しておるわけでございますから、そんな引き延ばしなんかする考えはもちろんありません。
  353. 近江巳記夫

    ○近江委員 私の話をちょっと勘違いされたと思うのですけれども、いわゆる専門家からいろいろ意見を聴取してまたやっていくという、その二段構えのことをぼくは申し上げたわけです。これも二段構えのそうした専門家から意見を聴取していろいろ検討してもらう、そういう作業が余りおくれないように、ひとつ速やかにやっていただくように大臣からも進めることは大事だと思います。  それから、こうしたことが、まだいわゆる具体化が進んでおらない。もちろん安全委員会は来年度出したいということをおっしゃっているわけですが、全般としては非常におくれている。こういう点におきまして、佐世保修理港等につきましてはいわゆる白紙還元して、やはり原子力行政の確立をまず前提とする、こういう姿勢が大事だと思うのですが、現時点におきまして、佐世保修理港という考え方は変わらないわけですか。ほかに何かお考えなのですか。
  354. 前田正男

    前田国務大臣 これは、政府といたしまして長崎県、佐世保市にお願いして御検討願っておることでございますから、ぜひひとつそのわれわれの要望をお願いしたいと思うことでございますが、原子力の問題につきましては、いま申したとおり、そう別に長くかかる問題でありませんで、五十二年度の予算を政府が決定いたしますのは、通常でいきますと十二月の末に予算を決定するわけでございます。したがいまして、五十二年度の末に概算要求いたしました安全委員会ができました場合の残りの原子力委員会その他の原子力行政全般に対してどうするかということでございますから、あるいはまあ、予算の決定が年を越すこともたまにはありますから、年内と必ず言えませんで、年越すことがあるかもわかりませんけれども、とにかく、五十二年度の予算の決定に際しまして態度を決めなければならぬということでありますから、そう先の問題ではない、こう思っていただいて、私たち別に延ばすつもりはございません。  しかし、それと同時に、そういうふうに五十二年度において安全委員会もつくりますし、すでに安全局の方は一月にできておりますし、安全予算の方は、御承知のとおり安全研究というのが非常にふえておることでありますので「むつ」の修理港についてはひとつぜひ御了承を願いたい、こう思っておる次第でございます。
  355. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府としては、こうした行政懇の答申を得まして、何回も申し上げておりますが、精力的に事を進めて、しかもまた国民の納得のいく、安心のできるそういう体制を一日も早くつくっていただきたい、これを申し上げて、私の質問を終わります。
  356. 石野久男

    ○石野委員長代理 次に小宮武喜君。
  357. 小宮武喜

    小宮委員 今年の二月十日、政府の「むつ修理港要請に伴って、長崎佐世保の地元では賛否両論が並行しておるところでございます。特に安全性原子力船開発必要性等々、広範多岐にわたってこの問題点が指摘されておりまして、同一の事柄をとらえて、一方では安全であるという、一方では危険であるという意見が対立しておるのが現状でございます。このような状態では、一般住民はどちらを信用すればよいのか、判断のつきかねるところであります。したがって、私はこれらの問題点について住民の立場から政府の見解をただしておきたいと思います。  まず最初に、原子力船開発の問題でありますが、原子力船は将来とも経済的に成り立ち得ないものであり、それゆえに「むつ」の開発の真の目的は軍事利用を志向したものであるという意見があります。そこで確認しておきたいことは、原子力船開発必要性についてどう考えるのか、この点、最初に御答弁を願いたい。
  358. 前田正男

    前田国務大臣 原子力船必要性につきましては、貿易量が増加するということから、船舶の高速化、巨大化の傾向がますます出ておりまして、これに伴いまして高出力推進機関が必要とされてきておりますが、こうした推進機関については、最近のエネルギー事情から見て、在来の燃料に比較して原子力が有利となってきておることでございます。また、原子力船は少量の核燃料で長期間にわたって連続運航を行うことができ、大量の燃料油の塔載が不要でありまして、スペースを有利に利用するということができる等の理由から、すでに先進諸国においてもその開発が進められておりまして、世界有数の造船国海運国たるわが国においては、先進諸国におくれをとらないよう原子力船開発を進めることがわが国における原子力の利用促進並びに造船及び海運の発達のためにきわめて重要であると考えておりまして、また、この開発に当たりましては、軍事利用等の懸念がないように、厳重に原子力基本法に基づきまして、その研究開発を推進しておるのでございまして、御懸念のないようにひとつわれわれは努力しておる次第でございます。
  359. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、この「むつ」の開発は軍事利用につながる懸念は全然ないというふうに確認していいですか。
  360. 前田正男

    前田国務大臣 わが国の原子力は、基本法に書いてございますとおり平和目的に限りということでございますから、原子力に関しましては利用開発はすべて軍事利用には関係ないということでございます。
  361. 小宮武喜

    小宮委員 次に総点検、改修についてでございますが、遮蔽改修を完全に行うためには放射線漏れの徹底的な解明が必要だと思います。しかし、いまだその原因究明が十分になされておらず、したがって、このような状態では遮蔽改修は可能であるとする政府事業団の計画は全く根拠のないという指摘もされておりますが、そこで放射線漏れに対する原因究明は十分になされたのかどうか。  それからもう一つは、第二点は、遮蔽改修は技術的に行い得るとの自信を持っておるのかどうか。
  362. 山野正登

    山野政府委員 一昨年の放射線漏れが生じました際の原因究明につきましては、原子力研究所の遮蔽研究室長を班長といたします。名の専門家から成る調査班を組織いたしましてこの原因の解明に当たったわけでございます。この調査班の人選につきましては、「むつ」の遮蔽の設計、製作にそれまで関与してこられた方々を中心に編成したわけでございますが、実際の測定に当たりましては、出力上昇試験の際に船上にいた実験チームの測定技術者を充てたわけでございます。それで、測定調査の際の原子炉の出力は、測定が十分可能な出力ということで、専門家の判断によりまして〇・二三ないし〇・二四%という出力が選ばれております。この測定結果につきましては、私どもは十分に信頼性のあるものと考えておりますし、また、この結果に基づいてつくられました改修計画自体、「むつ」総点検・改修技術検討委員会でも最近御検討を願っておりまして、今後この計画を具体化するにつきましても原船事業団が主体となりまして関係方面の協力を得ながら、できるだけ新しい遮蔽設計計算コードを使い、また、原研のJRR4という炉を用いました実物大の模型による遮蔽効果の確認実験の結果といったふうなものも採用して慎重に進めたいと考えておりまして、遮蔽改修は技術的に行い得るという自信を持っております。
  363. 小宮武喜

    小宮委員 この大山委員会報告では、遮蔽部分のみならず他の部分についても技術的再検討、いわゆる安全性点検を行うべきであるという指摘がなされているわけですが、「むつ」総点検、改修に際して、遮蔽改修についてのみ重点的に取り扱われておるような印象を受けるわけですが、安全性点検も徹底的に実施するつもりなのかどうか、ひとつ確認しておきたい。
  364. 山野正登

    山野政府委員 お説のとおり、遮蔽改修にあわせまして原子炉部分を中心にしました全般的な技術的再検討というものを行おうと思っておりまして、遮蔽改修だけに重点を置きまして、その余の原子炉プラント設備を中心とした安全性点検をおろそかにするといったふうなことはゆめゆめやらないようにしようということを考えております。
  365. 小宮武喜

    小宮委員 次は安全性の確立についてでございますが、これが地元住民にとっては最も関心の深い問題でございます。修理期間中に原子炉事故等を起こし、周辺海洋が汚染されたり、また、作業従事者のみならず周辺住民に対しても少しでも悪影響を及ぼすことがあってはならない、こういうふうに考えるわけです。政府修理港において「むつ」の原子炉を動かさないと約束しておりますが、このような状態でも事故の発生が懸念されるという意見もありますけれども、地元住民にとっては判断のつきかねる点でございますので、この点ひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  366. 山野正登

    山野政府委員 修理港におきましては原子炉は冷態停止に保ちましたままで修理作業を行うのでございますので、御指摘のような原子炉の重大事故が起こりましたりあるいは周辺の一般公衆に放射線上の災害を及ぼすといったふうなことはないと考えております。
  367. 小宮武喜

    小宮委員 それでは、四十九年十月以来「むつ」は青森むつ市の母港岸壁に係留された状態にありますが、現在までに乗組員に放射線障害があったとか海洋が汚染されたとかという事実があったかどうか、その点いかがですか。
  368. 山野正登

    山野政府委員 そのような事実はございません。環境保全につきましては、青森県、むつ市等で構成されております原子力船むつ」安全監視委員会という組織に絶えずこのモニタリングの結果を定期的に報告いたしまして評価をしてもらっておりますが、その結果「むつ」に起因いたします環境の汚染は全く生じていないということが確認されております。
  369. 小宮武喜

    小宮委員 ないとすれば、修理港における「むつ」の状態は遮蔽改修工事、原子炉プラント機器の点検等を除き何ら変わるところはないはずだ、かように考えるわけですが、しかしながら、これら工事等の実施に伴って作業従事者に放射線被曝を与えるとか海洋を汚染するなどの原因となるべき放射性物質の発生がほかにあり得るかどうか、その点いかがですか。
  370. 山野正登

    山野政府委員 そのような可能性もあり得ないと考えております。
  371. 小宮武喜

    小宮委員 また、制御棒駆動試験を実施することになっておりますが、この点に関して制御棒を一本でも動かすことは原子炉を停止した状態に維持することとはならないという意見もございますが、いずれにしましても本試験が安全に実施し得るか否かの問題でありますが、発電炉においてこの種の試験を実施しているのか、また本試験の実施上いかなる安全対策を講じるつもりなのか、その点いかがですか。
  372. 山野正登

    山野政府委員 制御棒の駆動試験は、これは制御棒一本ずつにつきまして駆動試験を行うことを考えておりまして、この試験によりまして原子炉が運転状態になるといったふうなことは絶対にないと考えております。この一本ずつの制御棒駆動試験というものが十分確実に行われますように各種手順を明確に定めますとともに、必要な機器を新しく取りつけまして、これが確実に行われることを保障したいと考えております。
  373. 小宮武喜

    小宮委員 この制御棒を二本同時に動かすということは、これは放射能漏れにつながってくるのか、その点いかがですか。
  374. 山野正登

    山野政府委員 仮定の問題としまして、二本同時に制御棒を引き抜きましても、臨界の状態に達することはございません。
  375. 小宮武喜

    小宮委員 それから、この遮蔽改修工事の際、圧力容器の上ぶたを取り外し工事用仮ぶたをするということになっておりますが、その目的は何ですか。
  376. 山野正登

    山野政府委員 遮蔽の改修の一環としまして、圧力容器の上ぶたの上部に新しく遮蔽材を追加することを予定いたしておるのでございますが、現状のままでそういうふうな遮蔽材を追加するということは非常に作業空間が狭いために不便でございますし、また、その改修作業によりましてほかの機器を傷めるといったふうなことも懸念されますので、上ぶたを取り出しましてそのような追加の遮蔽をしたいと考えております。そこで上ぶたを取り出した後に圧力容器の中に異物が落ちないように仮ぶたをすることを考えておるわけでございます。
  377. 小宮武喜

    小宮委員 その仮ぶたというのは、いわゆる工事をするのに狭いから云々ということじゃなくて、異物が入り込むからそのために仮ぶたをするというふうに理解していいですか。
  378. 山野正登

    山野政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  379. 小宮武喜

    小宮委員 上ぶたを取りはずす際、圧力容器内の放射性物質が外部に出るのではないかという懸念もありますが、その点いかがですか。
  380. 山野正登

    山野政府委員 圧力容器の中の放射能レベルは十分低うございますし、また気体状の放射性物質もないわけでございますので、上ぶたを取りましてもそのような放射能漏れが発生するようなことはないと考えております。ただ理論的には、上ぶたを取り除きますればその時点で空間線量率がわずか上がるというようなことがあろうかと思いますが、これは放射線防護上特段問題になるようなものではない、ごくわずかなものであるということでございます。
  381. 小宮武喜

    小宮委員 修理期間中に火災事故があったら大変だと思うのですが、それに対しては十分な配慮が当然なされるものと考えておりますが、その対策はどういうふうにするのか、その点いかがですか。
  382. 山野正登

    山野政府委員 「むつ」という船自体の防火構造につきましては、関係の条約あるいは国内の関係法規規定に基づいて設計、建造されたものでございまして、これらの基準に従って船内に防火壁なり防火とびらが十分に区画すべくつくられておるわけでございまして、これによって火災の発生を防止しますとともに、各区画に設けられた火災感知装置とか消火装置によって、万が一火災が発生いたしましても直ちにこれを消しとめて延焼を防止するような構造になっております。したがいまして、修理期間中においてもこの構造によって火災事故に十分対処できると考えております。     〔石野委員長代理退席、委員長着席〕
  383. 小宮武喜

    小宮委員 次に、政府佐世保港を選定した理由の一つとしてモニタリング設備を挙げておられますが、この点に関しても幾つかの問題点が指摘されております。  その一つに、佐世保港内はすでに米国の原子力船、艦艇の出入港で汚染されており、「むつ」の放射能とは区別しがたいという説もあるわけですけれども、この点についてはいかがですか。
  384. 山野正登

    山野政府委員 佐世保港は、原子力軍艦の寄港に伴います放射能調査によって放射能水準が十分把握されておりまして、私どもはこの面からも同港が修理港として適しておるというふうに考えておるわけでございます。これまでの調査結果によりますれば、原子力軍艦の放射能の放出によって港内が汚染しておるという事実はございません。  それから後段の、将来原子力船佐世保港で修理されると仮定しました場合に、原子力軍艦と原子力船むつ」とこのような放射能による汚染の源の区別がつかないではないかという点でございますが、この点につきましては、「むつ」自体にもモニタリング設備がございまして、発生源において感知、測定できるようにしてございますので、そのようなおそれもないというふうに考えております。
  385. 小宮武喜

    小宮委員 現在、佐世保港にあるモニタリング設備は非常に旧式のものである、したがって十分機能しないという意見もいろいろ出ておるわけですが、この点はいかがですか。
  386. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 佐世保港周辺に設けられておりますモニタリングポストにつきましては、周辺住民の健康と安全を確保するという観点から特に専門家の御意見、原子力軍艦放射能調査専門家会議の御意見も聞きまして、配置の場所、機器の性能等を総合的に常に検討いたしております。現在の体制でこの監視の機能は十分にあるということでございます。
  387. 小宮武喜

    小宮委員 次に、先月むつ市長が、佐世保周辺には民家があり、隔離条件から考えても修理港としては不適当であるという発言をされたという旨の新聞報道がなされておるわけですが、この点について政府はどのように考えておられますか。
  388. 山野正登

    山野政府委員 「むつ」の場合には、遮蔽改修工事を行うに際しまして原子炉は冷態停止のままに維持されるわけでございますので、重大な原子炉事故が発生するとは全く考えられないわけでございます。したがいまして、原子炉事故を想定した場合に用いております。停泊場所からの離隔距離を決めました原子力船運航指針というものは適用されないというふうに考えております。
  389. 小宮武喜

    小宮委員 次は「むつ」の開発のあり方についてでございますが、そもそも「むつ」の開発方法はその出発から誤っておるという指摘があります。すなわち、陸上に同型炉を建造し、段階的に進むべきであるという意見がございます。そこで、アメリカ及び西ドイツの原子力船の場合にはどのような開発方法がとられたのか、その点ひとつ説明を願いたい。
  390. 山野正登

    山野政府委員 米国あるいは西ドイツにおきます原子力船開発の際にも、同型の炉を陸上に建造しまして、これによって開発を進めたということは聞いておりませんで、私どもの進めております原子力船むつ」と全く同じパターンの開発方式をとっておると考えます。と申しますのは、舶用炉の場合に、陸上炉と違う点と申しますのは、振動とか動揺に対する信頼性あるいは負荷変動に対する対応性という点が異なるわけでございますが、このような問題はやはり船に実際に搭載して実験するというのが最も妥当かと考えておりますので、所要の陸上におきます実験としましては、むしろ遮蔽につきまして、遮蔽の効果を確認するためあるいは遮蔽の設計をするための計算コードの信頼性を確認するための実験をすればそれで十分であろうというふうに判断しておるためでございます。
  391. 小宮武喜

    小宮委員 いまの原子力局長答弁では、「むつ」の研究開発の進め方については誤りはなかったということですか。  そこで、もう一つ、「むつ」の原子炉は、船に搭載する以前に陸上試験を行うべきであるという意見がございます。これは、私もその点についてはよくわかりますけれども、それが一番ベターだと思うのです。しかしながら、ディーゼルエンジンのように単体のものであれば移動据えつけも可能でありますけれども、原子炉は大きなシステムであり、仮に陸上に設置して試運転を行ったとすれば、次にこれを解体して船に搭載するということになるわけですけれども、これが実際に可能かどうかということと、もう一つは、この問題は運輸省から御答弁願っても結構だし、原子力局長から答弁してもらっても結構ですが、お尋ねしたいのは、船舶安全法ではこの陸上試験についていかなる義務を課しておるのか、まあ運輸省の方で二点とも御答弁できれば答弁してもらって結構だし、その点ひとつできれば両方から御答弁を願いたい。
  392. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 お答えいたします。  まず初めの御質問でございますが、舶用機関としての原子炉は、御承知のとおり原子炉本体のみでなく、安全設備あるいは遮蔽設備等、多くの関連施設から成り立っているものでございます。また、これらを接合いたします管系統につきましては、原子炉室あるいは機関室あるいは原子炉補機室など広い範囲にまたがっておるものでございまして、これは溶接によって結合されておるわけでございます。したがいまして、これらを再現いたしまして、仮に陸上でテストをしたといたしましても、そのものを解体いたしまして船体に設置することはきわめて困難なものだと考えております。  次に、舶用の原子炉は、原子炉であると同時に舶用の機関でもあるわけでございますが、海上におきます厳しい負荷変動であるとか、あるいは振動、動揺などに耐え得るものでなければならないわけでございます。これらを総合的に確認するためには、原子炉を船体に設置した後に試験を行う以外には方法はないものと考えております。  次に、原子炉の核特性については、「むつ」の炉が、炉の型式及び出力におきまして特殊なものではなくて、従来のわが国の陸上炉の経験であるとか、あるいは外国の原子力船開発手順から見ましても、模型実験並びに長期間の海上実験等によりまして確認すれば十分であるという判断から開発計画が定められたものでございます。  以上、三つの点を申し上げたわけでございますが、この理由によりまして、原子炉を船に載せる前に陸上テストを行うということは適当ではなく、きわ打て困難な問題であると考える次第でございます。  次に第二の御質問でございますが、「むつ」の原子炉の船舶安全法に基づきます検査におきましては、船舶機関規則、原子力船特殊規則、船舶設備規程等の安全法関係法規に適合しているかどうかにつきまして、原子炉の建造の進捗状況に応じまして、材料の試験、溶接の試験、圧力の試験、仕上がり検査等を実施しておることになっておるわけでございます。また、部分的な機能等の試験につきましては、陸上にございます研究炉あるいは陸上の臨界実験装置等を使用いたしまして実施しておるわけでございますが、総合的な性能及び安全性の確認につきましては、原子炉を船舶に搭載した後にそういう状態で行うことにしているわけでございます。こういった原子炉の検査のステップにつきましては、基本的には他の舶用機関の場合と同様であると考えております。  以上でございます。
  393. 小宮武喜

    小宮委員 陸上で同型のものを建造して、それで試験をやってみても、また解体をして今度船に搭載した場合は、結局また搭載する際の連結の作業があるから、船に搭載してからももう一度さらに試験をする必要があるということだと思うのです。そうすると、陸上で事前にやらないで、こちらの方で搭載してからやっても結果は同じだというふうに理解していいですか。
  394. 堀之北克朗

    ○堀之北説明員 いま先生のおっしゃいましたとおりでございます。
  395. 小宮武喜

    小宮委員 次に、「むつ」は出力上昇試験の段階で放射線漏れを起こしたわけでありますが、いわば開発中途の過程で起きたものでございます。しかし、放射線漏れという事実ははなはだ遺憾と言わざるを得ないのですが、本来技術開発の過程において、原子力の場合は特にそうですか、他の技術開発においてもやはり試行錯誤がある場合が当然起きてまいります。かといって、それが当然であるかのように安易な気持ちで、また政府がほかの技術開発についても、研究開発過程ではいろいろな問題が起きるので当然だというような気持ちであったら困りますけれども、私はやはりいろいろな新しい技術の開発の中にはそういうような問題もあり得るということは理解はします。しかしながら、事原子力に関しては、そういうような考えであってはならない、こういうふうに考えるわけです。  最後に、今後の見通しの問題でございますが、修理港問題の解決には何よりも地元の理解と協力が必要であるということは、もう言うまでもありません。現在、地元では原爆被爆者あるいは漁業者等の強力な反対運動が展開されておるわけですけれども政府は今後どのように対処していくつもりか、その点お聞きします。
  396. 山野正登

    山野政府委員 私どもといたしましては、今回の佐世保港におきます「むつ」の修理の間、安全性の確保につきましては万全を期することにいたしておるわけでございますので、この点につきまして地元の方々に疑問が残らないように、できるだけ誠意を尽くして、十分理解を得るように努力してまいりたいと考えております。このために、これまで政府並びに原子力船開発事業団長崎市あるいは佐世保市に現地の事務所を設けまして、政府の現地事務所の方は政府の連絡窓口としまして、主として長崎県並びに佐世保市によくコンタクトを保ち、また事業団の方は広く一般方々への広報の窓口としまして、これまで鋭意努力をしてまいったわけでございますが、今後もこのような安全性についての疑念がいささかも残りませんように、十分な普及活動をしてまいりたいというふうに考えております。
  397. 小宮武喜

    小宮委員 政府は、佐世保修理港要請について非常に自信を持っておるようでございますけれども、もし、長崎県あるいはまた佐世保市で修理港要請を拒否された場合は、どうしますか。
  398. 前田正男

    前田国務大臣 これはぜひひとつ御理解を得てやっていただきたい、こういうことで私たちはできるだけの努力をしていきたい、こう思っておる次第でございます。
  399. 小宮武喜

    小宮委員 そういうふうに言わざるを得ないと思いますけれども、そういうことがそれだけの理解と協力を求められるような見通しがあるのか、自信があるのかという問題で、これは質問する方も、大臣答弁はなかなかむずかしいだろうということは考え質問しておるわけです。そういった意味で、いろいろいままでのやりとりの問題、あるいは地元で賛成、反対の両論が並立しておるということも、もともとその理解と協力を得るための努力を最大限にすべきだ。しかし、もう政府の言うことは信用できぬということになれば、これは前提が全然変わってくるわけですけれども、しかしながら、大臣考えるように、そう簡単にこの問題が解決されるとは私は考えておりません。そういった意味で、お互いが十分腹を割って話し合いを進めるべきだというように考えます。  もう時間も来ましたので、これで質問を終わりたいと思うのですが、まだまだいまの質問による答弁の中でも、またほかの問題もありますので、さらに今後ともこの安全性の問題については所信をただしていきたいと思いますが、きょうはこれで終わります。
  400. 中村重光

    中村委員長 次回は、明二十一日木曜日、午前十時理事会、十時十五分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会      ――――◇―――――