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1976-10-06 第78回国会 衆議院 運輸委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月六日(水曜日)     午後零時七分開議  出席委員    委員長 中川 一郎君    理事 加藤 六月君 理事 佐藤 守良君    理事 三枝 三郎君 理事 浜田 幸一君    理事 増岡 博之君 理事 斉藤 正男君    理事 坂本 恭一君 理事 梅田  勝君       木部 佳昭君    佐藤 文生君       關谷 勝利君    田中  覚君       丹羽喬四郎君    野田  毅君       葉梨 信行君    細田 吉藏君       三塚  博君    宮崎 茂一君       森  美秀君    太田 一夫君       久保 三郎君    兒玉 末男君       楯 兼次郎君    米田 東吾君       紺野与次郎君    三浦  久君       石田幸四郎君    坂口  力君       松本 忠助君    河村  勝君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         運輸政務次官  阿部 喜元君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君  委員外出席者         通商産業省機械         情報産業局自動         車課長     中沢 忠義君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 杉浦 喬也君         労働省労働基準         局監督課長   倉橋 義定君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     田口 通夫君         日本国有鉄道常         務理事     高橋 浩二君         日本国有鉄道常         務理事     尾関 雅則君         日本国有鉄道総         裁室法務課長  栗田 啓二君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 十月六日  辞任         補欠選任   竹中 修一君     田中  覚君   徳安 實藏君     三塚  博君   渡辺 紘三君     森  美秀君   石田幸四郎君     坂口  力君 同日  辞任         補欠選任   田中  覚君     竹中 修一君   三塚  博君     徳安 實藏君   森  美秀君     渡辺 紘三君   坂口  力君     石田幸四郎君     ————————————— 十月五日  国鉄運賃値上げ反対等に関する請願阿部昭  吾君紹介)(第二三〇号)  同外五件(勝澤芳雄紹介)(第二三一号)  同(久保三郎紹介)(第二三二号)  同(斉藤正男紹介)(第二三三号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三五〇号)  同(福岡義登紹介)(第三五一号)  地方交通事業維持確保に関する請願天野光  晴君紹介)(第三三九号)  総合交通政策の樹立に関する請願小沢貞孝君  紹介)(第三四〇号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第三四一号)  同(吉川久衛紹介)(第三四二号)  同(倉石忠雄紹介)(第三四三号)  同(羽田孜紹介)(第三四四号)  地方陸上交通事業維持整備法案等成立促進に  関する請願小沢貞孝紹介)(第三四五号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第三四六号)  同(吉川久衛紹介)(第三四七号)  同(倉石忠雄紹介)(第三四八号)  同(羽田孜紹介)(第三四九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改  正する法律案内閣提出、第七十七回国会閣法  第一六号)  陸運海運航空及び日本国有鉄道経営に関  する件等      ————◇—————
  2. 中川一郎

    中川委員長 これより会議を開きます。  陸運海運航空及び日本国有鉄道経営に関する件等について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。久保三郎君。
  3. 久保三郎

    久保(三)委員 運輸大臣お尋ねするわけですが、先般就任に際してのごあいさつがありましたか、本来ならば、新しい大臣としてもっと詳細に抱負経綸をお述べになるところだと思っておりましたが、大変簡単にごあいさつがありましたので、改めてこの機会に二、三お尋ねをしたいのであります。  まず、第一にお尋ねしたいのは、新しい運輸大臣として、特に来年度に関係して当面いかなる施策を重点的に取り上げられるのか、これが一つであります。もちろん、昨日から審議が継続されました国鉄再建については当然だと思うのでありますが、それ以外についていかなるものを考えておられるか。  たとえば、造船界は御承知のとおりかなり深刻な不況というか、受注減のために困っているが、この対策について一番問題なのは、下請中小企業の、しかも、そこで働く労働者の雇用の安定の問題であります。いまだ寡聞にして、政府においてはこの対策が十分であるようには見受けられない。  日本社会党としましては、先般われわれの考え方を、前の大臣でありましたが、大臣あてに申し入れをしているわけであります。この詳細についてきょうお答えをいただくというわけにはまいらぬかと思うのでありますが、そういう問題についてはどういうふうに思うのか。いずれにしても、重点施策はどういうふうにお考えであるのか、お答えをいただきたい。
  4. 石田博英

    石田国務大臣 前回ごあいさつのときにも申し述べたのでありますが、まず、基本的な姿勢といたしましては、ロッキード事件という、現在わが国の政界を騒がしております事件運輸行政をめぐって起こったということでございます。したがって、現在までの航空行政指導という方向そのものに、いままで私ども聞いておる範囲内においては誤りがあるとは思いませんけれども、世間運輸行政について信頼感を失いつつあるということもまたこれは疑いを入れない事実でございます。  さらに、認可許可事務が約二千六百件に上っております。この圧縮について従来とも何度か試みた模様でありますが、一面、人命を預かっている仕事でございますので、その後にできました法律その他のためにやむを得ずまたふえたというのも実情でございます。  要は、数ではなくて、その執行に当たる基本的な精神であろうと思うのでありまして、一言に言いますと、李下に冠を正さずという気持ちを持ってこれからの運輸行政に当たらせるよう、綱紀粛正を旨といたしまして厳格に行政指導に当たりたいと思っておることが第一点でございます。  第二点は、しかし、それだからといって行政が萎縮しては困るのでございます。任務の重大性を認識して、萎縮することなく、しかも世間疑惑要請にこたえられるような士気の振興とでも申しましょうか、これにも務めたいと思っておる次第でございます。  国鉄再建につきましては昨日も御質疑をいただきましたし、これからも御質疑があると思いますので、これは省略をいたします。  それから、第二番目は、いま御指摘海運、特に造船界の深刻な不況でございます。私は、基本的認識といたしまして、わが国造船界、持にタンカーを主とした造船界先行き見通しを誤って設備の過剰に陥っているように思います。それかいわゆる石油ショックと、それに伴う熱エネルギー世界的な節減傾向というようなものに加わりまして深刻な不況に見舞われておる。これについて、御指摘のように、特にその企業に働いている勤労者が職を失ったり、あるいは労働条件の低下に苦しむことのないように具体策の検討を命じておるところでございまして、この具体策については事務当局からお答えをさせたいと思っておる次第でございます。  それから、第三番目は、やはり、巨額の投資を続け、しかも開港がおくれております新東京空港開港でございます。これはでき得る限り摩擦を少くして新東京空港開港を早めることに努力をいたしたいと思っております。  それから、第四番目は、御承知のごとく、新しい海洋法時代を迎えようといたしております。二百海里の経済海域、十二海里領海はいまや国際的な趨勢と相なっておりますので、これに対応し得られるような海洋保安行政を展開いたしたい、そういうふうに考えておる次第でございます。  以上が、国鉄再建を除きまして、私が運輸行政を担当するに当たりまして考えておりますことでございます。
  5. 久保三郎

    久保(三)委員 お話がありました中で、たとえばロッキード問題に関係して省内の綱紀粛正を図るということですが、具体的にどの程度どういうふうになさるというのか、これは必ずしも明らかではないようですね。しかも、巷間伝えられるところでは、招待ゴルフなどは自粛しようとかいうこともあるそうでありますが、これももちろんだと思うのですね。しかし、この責任所在というのが明確でないからいつでも問題ができるんだと私は思うのです。役人というのは大体二年か長くて三年たてばとんとんとんとんいってしまうから、責任所在が明確でないのですね。そのために行政の乱れが来るということが一つある。  この責任明確化ということと、それから、信賞必罰というものが必ずしも的確に行われていないと思うのですね。持に、エリートコースを歩んできたような役人は、一遍エスカレーターに乗ればそのままずっと上がっていくというかっこうで、途中で政策失敗があっても、これはもう何にも処罰はない。きのうも国鉄の問題で申し上げましたが、政策失敗については、これが企業というか、会社や工場ならば直ちに問題になるのです。ところが、役人世界ではそんなものは問題にならぬ。そこに問題が一つあると思うのです。そういう問題を含めて、ロッキード関係して、綱紀粛正許認可事項についてもそのとおりでありますが、具体的にどういうところまでやっておられるのか。私がいま指摘しましたところの責任所在明確化はどういうふうにしてやられるのか。  それから、もう一つ造船の問題で、大臣お話では、先行き見通しを誤ったというのが企業責任になっております。もちろんこれは企業野方図競争原理というか、そういうものにある程度問題があると思うのです。しかし、それをチェックし、これを抑制できなかった造船政策というか、海運政策というか、そこにやはり問題があると私は思うのです。たとえば、御承知のとおり、造船の場合は船台については許可事項でありますが、業者から言わせれば、その許可をしたから船台を大きくした、あるいは増設した、しかし不況に見舞われて、いまや困った、ということだと思うのです。いずれにしても、問題は運輸行政のあり方について責任を明確にするということだと思うのです。そのことについて具体的に対策をお立てになることが先決ではないかというふうに思います。  それから、時間もありませんので幾つお尋ねするのでありますが、お述べになりましたことも重要かもしれませんが、いま最も大事なのは、国民生活に密着した地方交通をどうやって維持していくかという問題であります。きのうも国鉄ローカル線の問題について私からお尋ねをしましたが、この対策も明確ではありません。御承知のとおり、前国会以来われわれ社会党としましては一つ法案を提案しております。それは地方交通を民主的に再編成し、整備するということを中心にしているわけでありますが、これらは政府は全然関心を持っておられないのでありますか。いずれにしても、地方交通をどうやって維持し、地方経済のために寄与していくかという大きな問題があると思うのですね。これらについて御所見のほどを承りたいと思うのです。  それから、海洋法の問題でありますが、海洋法の問題を単なる保安庁の問題としてとらえるのではなくて、もう少し外交政策の上からもこれはとらえる必要があると思うのです。たとえば最近のミグ25に見られるような外交政策では、保安庁機動力をふやしても、残念ながらこれは物にならないのではないかというふうに思うのであります。いずれにしても、そういう問題を含めて今後やっていただきたいと思うし、また、そうせねばならぬと思うのであります。  繰り返しは申し上げませんが、ロッキード関係しての綱紀粛正具体的対策はどうなっておるのか。お話のありましたように、許認可事項の整理も必要だし、それから、古い法律制度は改廃することも必要であります。と同時に、民主的な制度はもっと重点的に確立していくということだと思うのであります。その中で当然行政責任を明確にしていく必要がある。  それから、世論を尊重するという立場には幾つかあると思うのでありますが、国会議論は、野党議論はいままで聞き流しが多いのであります。そのために独善に走っていくきらいがある。ロッキードの問題一つとっても、政府部内と与党の間で密室でいろいろなことをやられてきたから問題が出たんではないでしょうか。そればかりじゃないと思いますけれども、そうだ。国会という場所議論が展開されないし、展開されてもかみ合わないというところが問題の大きな点だと私は思うのであります。  これらについてはいかがでありましょうか。
  6. 石田博英

    石田国務大臣 第一点の問題でございますが、ただいま運輸省としては、次官を中心といたしましてこれに対処する委員会を設け、先般も各地方局長等を招集いたしまして、それぞれ現実行政に当たっている者の立場からの意見を聴取し、いま取りまとめ中でございます。しかし、作文に終わっただけではこれは何にもならぬのでありますが、ごく小さいことから、いやしくも人に疑いを受けたり疑惑の目で見られるようなことのないように、いまお話にも出ましたような招待ゴルフとか、あるいは過度の関係業者との接触とか、そういうところから改めさせてまいりたいと思っておる次第でございます。  第二番目の責任所在の問題でございますが、久保さんのおっしゃるように、いわゆるエリートコースをたどっている者は政策的失敗があってもエスカレーターに乗ったようなものだとは必ずしも思いませんが、御指摘のような事実があることも、私は役所をお預かりいたしましてたびたびよく承知をいたしておるのであります。決して否定をいたしません。それで、この場合に行政責任にある者のとるべき態度は、一つには信賞必罰でありますけれども、もう一つは、そういう前歴にとらわれることなく有能な者を抜てきするように必がけることだと私は考えておる次第でございまして、従来もいささかそういう面に力を注いでまいったつもりでございます。  それから、もう一つは、責任所在が明確にならない大きな例の一つは、いわゆる行政指導であります。その行政指導は口頭で行われることが多くて、それが記録として残っていない。そのために、だれがやったのか、どの程度まで話をしたのかということが後の者によくわからない。ロッキード事件のような事件が起こりましても、そういう記録が残っていないために問題の真相究明に支障を来すというようなこともあったように思います。したがって、これからは行政指導を行う場合はこれを必ず記録に残すということ、これは実行に移したいと思っております。  それから、もう一つ、これはこれから具体案考えたいと思っているのでありますが、役所の中に考査委員会とでもいうようなものを設けまして、いま御指摘信賞必罰の実を上げていくようにしたいと思います。  それから、造船の、特にタンカー部門における過剰設備の問題は御指摘のとおりであろうと私も思います。これは私事を申して恐縮でございますが、私は、事実、七、八年前から、エネルギーだけに限らず、資源有限性というものをあらゆる機会に述べてまいりまして、資源を無限と考えて行う経済活動政治活動というものは必ず失敗するということを言い続けてまいった一人でございますので、そういう点について、造船所許可業務の遂行にはやはり反省すべき点があったように私は考える次第でございます。  それから、国会議論については、実は私初めて運輸委員会で昨日来御議論を拝聴しておりまして、私が従来考えておらなかったこと、あるいはまた従来気がつかなかったことを幾つかお伺いをいたしました。大変勉強をさせていただいた次第でございます。したがって、与野党間あるいは政府野党というような関係でなくして、ともに日本交通行政の改善を図るという立場で御議論を拝聴し、これをできる限り現実と合わせて実行に移すように努めたいと存じます。  それから、新しい海洋法時代を迎えた対策というものは、無論海上保安行政だけが独立して行えるものではございません。外交あるいは防衛というような問題とも当然関連して考えなければならぬことは言うまでもないのでございますが、ただ、私の所管が海上保安行政でございますので、海上保安行政に限って申し上げた次第でございます。
  7. 久保三郎

    久保(三)委員 時間もありませんが、新国際空港の問題に言及されましたが、航空局長からでも結構ですが、いま政府成田の新国際空港開港を大体いつと考えているのか。  それから、もちろんその開港前提条件幾つかあるのですが、大きいものだけでもたくさんあるが、これはどうか。  それから、もう一つは、まだ決まっていないのは飛行コースの問題が確定していない。これはIATAの申し合わせによって開港三カ月前にならぬと決めないそうでありますが、しかし、住民との関係考えれば、開港三カ月前に決められたのでは賛否を表明することすらできない。いまの飛行コースは大体こういうふうになるでしょうというような予想に立って地元説得をすると言ったら言葉が違うのかもしれませんが、説得に当たっている。こういうことでは、まさに、いままで空港幾つか挫折しながらやってきた歴史をそのまま繰り返しているように私は思うのであります。もう少し、真実はこれだということを土台にして地域住民の理解を得るとか、あるいはその対策を真剣に考えるとか、そういう姿勢がなければ開港はおぼつかないと私は思っているのです。  いずれにしましても、開港はどの程度に予想されているのか。いかがでしょうか。
  8. 高橋寿夫

    高橋(寿)政府委員 お答え申し上げます。  成田空港開港までに片づけなければならない問題がたくさんございますが、幾つかを申し上げますと、一つ航空機に使う燃料を輸送する問題でありまして、千葉の方からパイプラインを敷設するという本格的な構想がまだ実っておりませんので、暫定的に鹿島港あるいは千葉港から荷揚げしたものを鉄道で運ぶということについていま進めているわけでございますが、御承知のように、鹿島港から荷揚げする分につきまして茨城県の関係町との話し合いがつきまして、現在はそちらの方の障害はほぼなくなりまして、鹿島港石油荷揚げ基地をつくる工事にとりかかるところでございます。これは鹿島石油という会社が発注して行う工事でございますが、この工事に要する期間が私どもほぼ九カ月ぐらいというふうに聞いているわけでございます。そういたしますと、十月に着工いたしますれば、九カ月でありますから、来年の夏になってしまうということでありますので、夏より前に開港することは技術的に物理的にやはりむずかしい情勢であると思います。  それから、もう一つは、現在の四千メーター滑走路の南の場外に妨害鉄塔が二本ございまして、これがそのままでございますとあの滑走路に飛行機が離着陸できないわけでございますので、これを何とか除去してもらわなければならないということでございます。原則的には空港公団がこの妨害鉄塔設置者に対しまして除去の要請をいたしておりますが、どうしても要請に応じてくれない場合には裁判の手続等も経ましてこれを撤去することをしなければならないと思っております。  それから、次の問題は騒音対策でございますが、騒音対策につきましては従来とも空港公団千葉県といろいろ協議をいたしまして着々と進めておるわけでありますが、なお、先生からいま御指摘成田空港に離着陸する航空機飛行経路との関係もございますので、その辺につきましても、いま、作業の成果を見ながら現地の方々と鋭意お話をしたいと思っております。しかし、飛行経路につきましては、管制あるいは空域の分割等の問題もございましてまだ結論が出ておりませんので、なるべく早くこれを出しまして地元とのお話し合いに入りたいと思っております。  御指摘のように、ああいう非常に静かな田園地帯に巨大な空港ができるわけでありますから、そのことによるインパクトは当然大きいと思いますので、これをできるだけ少なくするという意味で、私どもは、御指摘のように、事前にわかることはなるべくオープンにいたしまして地元方々の御了解を得ながら進めていきたいと思っておるわけでございますので、よろしくお願いいたします。
  9. 久保三郎

    久保(三)委員 申し合わせの時間でありますからこれは答弁はよろしゅうございますが、いまの鹿島港からの油輸送について茨城県内関係町の合意は得られたというふうにお話がありましたが、私の聞く範囲では、ある町では、この合意は、言うならば町長が軟禁状態に置かれて、そこで調印を強いられたということです。真実かどうかは別としてそういう話もあり、その協定白紙還元というか、あるいは追加条件というか、そういうものを出しているように聞いておりまして、あなたのお話のように手放しで円満にいっているわけではないと思うのであります。  それから、もう一つ飛行経路の問題でありますが、千葉県との協定では、すでにずっと前に千葉県内直進上昇だというようなことを決めて、それで、あとはそれに従っての対策ということになっているのですね。これは非常に非民主的だと思うのです。われわれの県である茨城県の上空で旋回しようというのであります。こういうこと自体がやはり納得できない要素の一つになっているわけで、いままでの公団のやっている仕事はみんなこんなものなんですね。そこに反省を加えて真剣に、さっきの話ではありませんが一責任のあり場所をきちんと決めてやらなければいけない。  時間もありませんからこの程度にしておきますが、これは一言申し上げておきます。  以上です。
  10. 増岡博之

  11. 紺野与次郎

    紺野委員 石田運輸大臣に対してお尋ねいたします。  ロッキード疑獄事件がいま大きな問題になっておりますし、運輸省としてこの問題に関係した者として、橋本登美三郎運輸大臣佐藤孝行運輸政務次官がすでに逮捕されて、そして起訴されるということか起こっているわけですね。ですから、世界を騒がせたロッキード疑獄事件はまさに運輸省中心として起きているわけですが、そういう点で、石田運輸大臣はこのことについてどういうふうに考え、かつ反省しておられるか、まず、この点についてお聞きしたいと思います。
  12. 石田博英

    石田国務大臣 御指摘のとおり、ロッキード事件運輸行政に絡んで起こった事件であります。私は、先ほどもお答えを申しましたように、運輸省としての航空行政指導方向というものに誤りがあったと思いませんし、また、運輸省職員の中から被疑者が出た事実もございません。しかしながら、いま申しましたように、運輸省に絡んで起こった事件であるために、国民全体が運輸行政に対して、一言に言えば何となくうさん臭い考えを持っていることも事実でございます。  そこで、何よりも信頼を回復することが第一でございますが、信頼を回復するために、先ほど久保さんにお答えいたしましたような具体的な処置をただいま進行中でございます。特に、許可認可事務をたくさん持っており、しかも、その許可認可事務が中央に集約されることが比較的少なくて、地方に分散されていることが多い。それだけに関係者との接触その他に留意させなければならぬと思っておる次第であります。ましてや、その中心の真任をとる任に当たる者といたしましては、そういう新しい行政上の粛正の先頭に立つ覚悟でこれに臨みたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  13. 紺野与次郎

    紺野委員 運輸行政の末端の方に問題がある。そういう点もあるでしょう。しかし、今度の事件はまさにてっぺんに起こった問題でありまして、同じ自由民主党政権の運輸大臣運輸政務次官というような人が賄賂を取りまして、そうして運輸行政の基本的な方向を金で変えるということからこの問題が発起しているのであって、国会といたしましてはその政治的道義的な責任を追及するということが主眼でありますから、まず、この、前の運輸大臣運輸政務次官が賄賂を取って起訴されるというふうなことが起こったことについて、国民に対して、そのことに限ってどういうふうにお考えですか、責任をどうお感じでありますか、これをお聞きしたいと思います。てっぺんの問題であります。
  14. 石田博英

    石田国務大臣 私は全体としての姿勢を申し上げたのでありますが、いま御指摘の点についてははなはだ残念に思い、運輸省を代表する者として国民各位に深くおわびを申し上げたいと思っておる次第でございます。  ただ、先ほども申しましたように、運輸行政それ自体に具体的な方向上の誤りとかいうものはなかったように私は報告を受けておるわけでございますが、しかし、何度も言うようでございますけれども、国民から運輸行政に対する信頼を非常に失っていることも事実でございますので、あわせてそういう点の粛正に当たりたい。しかし、同時に、私ども同じ政党に属する者として、私自身は運輸行政に関与することは初めてでございますけれども、そういうようなことが繰り返されないように厳格に行政を執行してまいる、こういう気持ちでございます。
  15. 紺野与次郎

    紺野委員 それでは具体的にお伺いしたいのですが、今度のロッキード事件を見ますと、運輸省の高級幹部が、たとえば若狭氏とかその他沢というふうな運輸省の高級官僚というか、そういう指導的な立場におった人がいわば天下ったんですね。そういう人が天下って全日空等に行って、そして、これが運輸省の中にいるもとの自分の子分であった人、部下であった人たちと非常に緊密な関係があって、そこからこういうひん曲がったことが長期にわたって体系的に行われて、そして最後には運輸大臣までが黒い花を咲かせたという、こういう仕掛けになっているのですね。  そういう点から言って、運輸行政の幹部の人たち、いろいろな会社に天下ったこういう人たちが運輸省の元部下等々と連携を持ってこういう不祥事を出したという具体的な点がありますので、そういう点についてどうお考えですか。
  16. 石田博英

    石田国務大臣 私は、航空事業に限りませんけれども、原則として、その企業の運営はその企業で育った人が中心になってやるべきだと思います。いわゆる天下りというようなことは、原則として私は余り歓迎いたしません。妙な例をとるようでございますが、私は新聞界の出身でございますが、私が政界に入りまして十年ぐらいたったころにテレビ会社方々にできたが、それは幹部はみんなそれぞれ出資する親会社から天下りでやってきた。そういう習慣がいつまでも続きますと、下で働いている人は励みにもならないし、能率も上がらない。だから、こういうことは避けるべきだと基本的に私は考えております。  ただ、若狭氏や沢氏がどういう事情で全日空へ入ったかということについては、私は承知をいたしておりません。しかし、役所の人が入るということは、一面において役所との関係を円滑にするという便宜もありましょうが、他面においては御指摘のような弊害が生ずることも避けられないことだと思います。  ただ、この際お考えをいただきたいことは、役人といえども老後の生活をしていく権利があるわけでございますので、その役人のある一定度の地位に達した人が次の就職口を見つけて働くことを全部天下りだと言われるのも、これは少し酷で、なるべく過去の業務とのつながりのないところに新しい働き口を見つけていくことが必要だと思います。  先ほど申しましたのが原則的な考えでありますが、役所に勤めて一定の年になって退職された人の行き先というものもやはりお考えおきをいただくようにお願いを申し上げたいと存じます。
  17. 紺野与次郎

    紺野委員 いまの大臣お答えの中に、できるだけその会社出身の人たちがその会社の幹部になった方がいいんだということがありました。就職ということももちろんあるでしょうが、そういう点では天下るということは好ましくないと言われたと思うのですね。  それで、ここ五年ぐらいの間に運輸省から——これは海も空も陸もですけれども、運輸省から主要な会社に天下ったというか、就職したというか、これは両方の意味があると思いますが、これの一覧表はどんなふうになっているか。これは検討しておられると思いますけれども、この際私たちの方にも参考に見せていただきたいというふうに思いますが、どうでしょうか。
  18. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま手元にないようでございますので、調査をいたしまして御報告を申し上げたいと存じます。
  19. 紺野与次郎

    紺野委員 きょうは海の方の方は来ておられませんか。——ことしの九月十一日に、菱洋丸五万二千百五十七トンという船が真っ二つに割れるという事故が豊後水道で起こった。この前、事故が起こった直後にここに資料が来ておりますが、問題は、世界的な造船第一位の国でありますから、今度は、その国の五万トン級のタンカーが真っ二つに割れるというふうなことになった原因ですね。その原因と、これに対する対策と反省ということがどういうものか、報告してもらいたい。
  20. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 さきの九月十一日に、デッドウエートで約五万グロストン、重量トンで約九万トンの菱洋丸というタンカーが折れ曲がったという事故があったわけでございます。その後直ちに私ども船舶安全法を担当いたします船舶局と、それから海上保安庁も独自の調査をいたしました。私どもは検査官を現地に派遣いたしまして現場の調査をしておりますが、幸い、折れ曲がったことでございまして、割れて全部裂けたというような事故ではないようでございます。  そこで、原因につきましては、主として船体の構造の関係者、気象関係者、運航関係者というような中立の学識経験者に集まっていただきまして、大阪大学の名誉教授寺沢一雄先生を長にして調査委員会をつくりました。そこで、先月の二十九日に第一回の調査委員会を開いたわけでございますが、幸い豊後水道でございますので、気象、海象の状況についてもかなりの精度で推測できるであろう、それから船体も残っておりますので、これについて現場調査をしまして、あと強度計算等を終えますれば原因の技術的な解明ができるのではないか、こういうことで調査委員会を発足させております。  その調査委員会の結果を見て原因の技術的解明に当たるわけでございますが、何分本船はかなり船齢の古い船でございまして、三十九年できでございますから約十一年、十年以上たっておりますし、そこで、当時の積み荷の状態、天候の状態、現場の損傷状況等が原因解明のかぎになると思われますが、今後この調査委員会が急いで事故の損傷の原因解明に当たると思いますので、その結果を待って必要であれば対策を立てたいと考えております。
  21. 紺野与次郎

    紺野委員 十一年たっているということですね。そうすると、「かりふおるにあ丸」という大きな貨物船がたしか北太平洋で沈沈したと思いますけれども、これはそのころ造船したものじゃないですか。その点はどうですか。
  22. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 昭和三十九年の船でございますから、御指摘の「ぼりばあ丸」「かりふおるにあ丸」と相前後してつくられたものでございます。
  23. 紺野与次郎

    紺野委員 その当時にできた、同じような大型の貨物船及びタンカーは現在何隻ぐらい運航しておりますか。
  24. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 全体の隻数については、手持ちの資料を持ってきておりませんので、後で調べまして御説明申し上げたいと思います。
  25. 紺野与次郎

    紺野委員 では、そういうことで、その当時の大量生産された大型汽船について資料をいただきたいということと、それから、その当時の船について危険があると考えられれば、抜本的対策というか、あらゆる方法を考えて、同じようなことが起こらないような補強工作をやるとか、その他いろいろな積極的な対策をしてもらえるようにできますか。
  26. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 「ぼりばあ」と「かりふおるにあ」は大型の鉱石専用船でございますが、積み荷がタンカーとやや異にした積み方をしておりました。そこで、当時両方とも調査委員会をつくりましていろいろ検討したわけでございますが、その結論をもとにいたしまして、二百メートルを超える船につきましては、従来考えていた以上に船をつくっております綱材の摩耗が早いとか、あるいは小さな亀裂が出てくるとか——これは大事に至らない亀裂でございますが、そういうことがわかりましたので、それらの船につきましては、第一に必要な総点検を全部いたしまして、その結果、補修、補強が必要なものにつきましては全部手を打ちました。  それから、摩耗の発見のために普通の船ですと二年に一遍船体の内部の検査をやりますが、その後は、これらの船につきましては一年に一度内部の検査をしていくということで実施をさせておりまして、したがいまして、今度の船も一年ごとに船体内部の検査をしているということでございます。
  27. 紺野与次郎

    紺野委員 では、あと一問だけ、国鉄にお聞きしますけれども、一番新しいもので、北海道の函館線で、函館から森町の付近で転覆した列車ですね。これは一つの車両以外全部転覆したという、まことに考えることもできないような大事故が起こっておりますが、これは原因は何ですか。
  28. 尾関雅則

    ○尾関説明員 先生の御指摘の事故は、去る十月二日の午前四時四十八分に、北海道の函館本線の駒ケ岳と姫川の駅の間で起きた事故でございまして、その時刻に、四七八一列車という五稜郭の操車場から東札幌へ行く急行貨物でございますが、これが五稜郭の駅を通過しましてからしばらく行きまして  ここの区間は御承知のように連続の下り勾配でございます。森町に向かって駒ヶ岳のふもとから連続の下り勾配で、千分の二十ぐらいの勾配が連続してございまして、また、半径が非常に短い。三百メートルくらいの半径の曲線が連続しておる区間でございます。この区間で前から十二両目から一番後の三十九両目までと、それから最前部の機関車を含めまして十一両目までが二つのグループに分かれまして、折り重なるように脱線転覆をしたわけでございます。  脱線しました痕跡と、それから脱線後の状況から見て、相当なエネルギーを持って走っていたとしか考えられませんけれども、目下、乗務員の申し立てあるいは脱線後のいろいろな状況を合わせまして現地におきまして調査をしておるところでございまして、はっきりした原因は目下のところまだ判明しておりません。  以上でございます。
  29. 紺野与次郎

    紺野委員 では、大臣にだけ伺いますが、このような非常に驚くべき事故が起きておりますから、これについて、今後こういうことが起きないようにどのような考えでおやりになるかどうかをお聞きしたいと思います。
  30. 石田博英

    石田国務大臣 問題は、国鉄総裁が直接的には責任を持つ事項でございますが、これは国鉄だけに限らず、海陸空の交通を預かる者といたしまして、原因の究明、同時に、その原因の除去というものに全力を尽くしたいと思っておる次第でございます。
  31. 紺野与次郎

    紺野委員 では、これで終わります。
  32. 増岡博之

    増岡委員長代理 松本忠助君。
  33. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ただいまより、公明党を代表いたしまして、国政一般についての質疑を数点いたします。  わが党はかねがねあらゆる法案と、また、国政一般に関しまして慎重審議を主張してまいりました。特に、重要法案と言われる国鉄関係法案につきましては、公聴会、地方公聴会、現地調査、学識経験者あるいはまた国鉄関係労働組合の方々等からの意見聴取、連合審査等は法案審議に並行して行うことを主張してまいりました。  特に、当運輸委員会といたしましては、火曜、金曜日は法案審議、水曜日は一般国政調査を行うことは長年の慣習、慣例でございました。本日は水曜日でありますので、公明党は一般国政審議を要求してまいりましたが、普通は一時間をめどとしていままでは行ってまいりました。ところが、きょうはこの要求が入れられませんで、わずかに二十分ということでございまして、十分の審議が行われませんことはまことに遺憾に存じます。また機会を見て十分時間をとって質疑をいたしますが、きょうは国鉄問題を除き、数点にわたりまして国政一般について質疑をいたしたいと思います。  現在、わが国は、高度経済成長がもたらした多くのひずみを是正するために、これまでの行政のあり方や制度の見直しをすることが必要となっておる。しかし、五十一年度の運輸省予算はこういう行政の変革を求める国民の要求と異なりまして、不況克服という名目で、過去の高度経済成長の幻影を追い求めるように、大型プロジェクトと言われるような新幹線であるとか本四架橋というような大規模な公共投資が依然として進められてまいりました。一面、ロッキード疑獄の真相が解明せられるに従いまして、エアバス導入に伴う運輸行政の不明朗な姿勢国民から厳しい批判を受けるなど、運輸省許認可行政のあり方に重大な反省が求められております。  御承知のように、ロッキード疑獄事件は政、官、財の三者の長年の癒着が生んだ構造汚職であり、運輸省行政姿勢に向けられた国民の批判はきわめて強いと思うのでありますが、そういうことを配慮いたしましたのか、事務次官を長といたしまして運輸行政総点検本部というようなものが運輸省内に設けられました。国民の批判にこたえるために、法律、法令体系の改正、行政指導あるいは許認可事項、監督の明確化等、行政の改善を図るためにこういうものが設けられたものと思うわけでございます。  そこで、大臣お尋ねをいたすわけでございますが、その後のこの総点検本部の業績と申しますか、結果と申しますか、そういうものに対しまして、まず、大臣から御報告をいただきたいと思います。
  34. 石田博英

    石田国務大臣 先ほどもお答えいたしましたとおり、総点検本部は本省としての検討を行うと同時に、地方局長を集めまして、実際上の許認可事務の運用状況、その改善の方向あるいはまた希望というようなものを聴取して取りまとめ中でございますが、具体的のことは官房長からお答えをいたしたいと思います。
  35. 山上孝史

    ○山上政府委員 運輸行政の総点検の実施に関する訓令というものを去る八月の二十五日に制定いたしまして、それに基づきまして、先生の御指摘のように、事務次官が本部長となる運輸行政総点検本部を設置いたし、さらに、その下部機構といたしまして、本省の総務課長クラスをもって構成する幹事会を設け、さらに、それを補佐するために本省の総務課の補佐官クラスの補佐官会議というようなものを設置いたしまして、現在まで二十数回会議をし、率直な意見交換を行い、その中ではすでに具体化したものがございます。  たとえば、総点検の実施項目といたしましては、先生からも御指摘がありましたように四項目ありますが、第一は、運輸行政制度面についての許認可行政の合理化の余地の検討、第二が、行政の意思決定の過程における公正さを保障するための行政手続の検討、第三が、先生御指摘のような行政指導その他行政部内の意思決定、それから、その部外への伝達における責任所在、意思決定の経緯、理由というようなものを明確化するための事務処理体制の改善、第四には、職員個々人の行動に関して、部外から行政活動の公正さについていささかも疑惑を招くこととならないための措置の検討、このような四点について二十数回の会議で検討してまいっております。  その中ですでに措置いたしましたものは、去る九月の八日に事務次官名でもって依命通達をいたしました「事務処理体制の改善について」ということでありまして、いま申し上げました総点検の実施事項の三番目の行政指導等について、従来往々にして、重要な行政指導でありましても、決裁文書で最終権限者まで決裁をとり、それをちゃんと保存するということにつきまして、これは各省共通の問題かもしれませんが、そういう措置を行っていなかったということがいろいろ疑惑の的になった原因になっておりましたので、これにつきまして、行政指導等におきましても、重要なものにつきましては正確に決裁文書で決裁をとり、それを保存して、そして、その後になりましてたとえば何か問題があっても、それを後の人がだれが見てもそのときの経緯及び理由が明確にわかるというようなことにするという措置につきましては、すでに実施済みでございます。  その他の検討項目につきましては、逐次具体的な結論が出次第措置していきたいと考えております。
  36. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣、私は、こういうように事務次官が中心となって四つの項目について意欲的に取り組んでいることは大変結構だと思うわけであります。必ずやこの成果が上がり、それが実施に移されて、運輸省としては今後は人様から疑われるようなそういう問題は一切ないというふうにきちっとできることを期待しておくわけであります。  そして、その調査の結果を文書にして公表した方が有終の美を飾ることになるのではなかろうかと私は思いますので、したがいまして、こういうことをこのようにやったという、その結論をまとめて文書として発表することについて大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  37. 石田博英

    石田国務大臣 ただいま官房長がお答えをいたしましたのは、話のまとまった分からすぐ実行に移したことを御報告をいたしました。これは先ほどの御質問にお答えいたしましたように、責任所在を明確にしないとか、あるいはまた、重要な行政指導が何ぴとの手によってどの範囲でどういう目的で行われたかということが記録に残っていないとか、決裁を受けていないとか、こういうことがいろいろな問題を起こす一番の原因であると私も思いますので、それを一番最初に実行に移させた次第でございます。  しかし、それ以外のことでも、意見がまとまり、実行に移すことは、それが決められ次第、御指摘のように世間に公表して、世間の御理解と御比判を得たいと考えております。
  38. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣の御答弁にありましたように、決まったものから即時実行に移していくということは大変いいことだと思います。そして、また、そのときそのときに記者会見等で事務次官の本部長から御発表があると思います。それはそれで結構だと思いますが、私の言うのは最後のことです。  いま、大臣も、最後にはそのように処置をされるという御意向だったと思いますが、これは各官庁の大きな見本になると私は思うし、そして運輸行政というものを全く間違いのない方向に今後送り出していただくためにも、ぜひこれを文書に盛って御発表いただくことを御確言をお願い申し上げたいと思います。
  39. 石田博英

    石田国務大臣 必ず御希望のように処置をいたしたいと存じます。
  40. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次の問題は、過疎バスの問題でございます。  過疎バスの輸送の強化という問題でございますが、バス路線の維持につきましては、国庫補助率というものが非常に低い。そして、サービスが低下している。そういったところから、この車両の近代化に係るところの経費の補助というものをやるためにはどうしても補助率の引き上げをしなければいけないと思いますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  41. 石田博英

    石田国務大臣 一つの方法としては、そのバスの路線のあり方をそのままにしておいて赤字を補うということも一つの方法だと思いますけれども、その地方の実際上の交通確保の問題がもっとほかに考えられないかというような検討もまた必要だと思っておる次第でございます。  なお、詳細は官房長から、現在とっております処置について御報告をいたさせます。
  42. 山上孝史

    ○山上政府委員 先生の御指摘の、地方バスの運行についての国からの助成といたしましては、本年度の予算でお認め願っておりますのが六十八億ばかりでございます。来年度の要求といたしましては、運輸省といたしましては八十六億七千二百万、約二六%強の増額要求をいたしております。  先生も御承知のとおり、来年度の予算の要求につきましては、閣議決定で要求枠が非常にきつく締められております。運輸省といたしましては一四・六%ということでありますが、その中でも、地方バスの運行対策につきましては、二六・六%の増ということで重点的に措置したつもりでございます。  なお、御指摘の補助率の問題につきましては、制度改善といたしまして、私どもの要求の中では、たとえば補助対象事業者の要件の緩和について、これは現在バス事業はもとより全事業でも赤でなければ補助の対象になりませんが、それを緩和するとか、あるいは補助対象経費の拡大とか、あるいは新規なものといたしまして、市町村の廃止路線代替バスに対する運行費補助を新規に設けたいとか、そういうような制度改善をいまの八十六億の中で要求しております。
  43. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 官房長の御答弁でわかります。来年度予算に十八億も要求をよけいにしている。この努力はわかるわけでございますが、この点については、要望が満たされるようにぜひ十分の御配慮を願いたいと思うわけでございます。  次に、離島における海空の交通の維持のための、船の方としましては船舶航路事業者に対する補助並びに補助対象の拡充、それから空の方で考えますと、離島航空業者に対する交通基盤整備のための補助の強化、こういった離島の交通サービスという問題について、来年度の予算の中ではどのように取り組まれる考えがあるか、お示しをいただきたいと思います。
  44. 山上孝史

    ○山上政府委員 先生の御指摘の離島航路の補助につきましては、今年度の予算といたしましては十九億でございますが、来年度は大きく二十五億要求をいたしております。これも先ほど申し上げましたけれども、全体の要求枠一四・六%の中で三一・七%という重点的な配慮をいたしております。  中身といたしましては、特に新規につきましても、事業所の数で八つ、航路の数でも八本ということで、新規の分も含めまして増額の要求をいたしております。  また、航空関係につきましては、特定離島定期航空運航費補助といたしまして、これは昨年からの継続でございますが、一億円これも要求をいたしております。
  45. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 数点まだ聞きたいので、お答えも簡略にひとつ願いますが、次に、自動車事故の被害者を救済するという方向につきまして、すでに自賠責保険というものができておりますし、私どももこの推進のためにはずいぶんといままで努力をしてまいりました。幸いに交通事故が非常に減少いたしまして、本年七月一日の発表によりますと、六月三十日までの上半期の交通事故の死者は四千六百三十二人ということで、初めて年間に一万人台を割る、四けたでこれがおさまるということになれば、これは大きな成果ではないかと私は思います。  そういうように交通事故が非常に減ってきたが、これに対するところの被害者の救済という問題について、自賠責保険の最高限度額が現在は一千五百万でございますが、最近のインフレ状況において、被害者が直接こうむっているところの交通事故の後遺症の問題について、あるいは交通遺児の問題について、こういう人たちの生活を守るための生活保障費の給付、医療費の無料化、救済体制の充実というような点について私は特段とお願いをしたいわけでございます。もちろん、これは運輸省独断で決まる問題ではございませんし、大蔵省との共管の事項でございますので、運輸省としては、この問題に対して大蔵省に極力前向きに取り組んでいただきたいが、少なくとも限度額を二千五百万円に引き上げるという運動は、運輸省側からこれをやらないとできないと思います。もちろん、内閣の交通安全対策室等とも密接な連携をとってやっていただきたいと思いますので、この点についてのお答えをいただきたいと思います。
  46. 石田博英

    石田国務大臣 国際的に見ても、人身事故に対する補償というものはまだまだ引き上げるべきであるという基本的な考え方については松本さんの御意見と一緒でございますので、御指摘の方向に向かって関係方面との折衝を進めるつもりでございます。
  47. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 官房長、二千五百万の線はどうですか。見込みはありませんか。
  48. 山上孝史

    ○山上政府委員 先生の御指摘の死亡の保険金額は、五十年の七月一日から千五百万円に、従来の一千万円が引き上げをされたわけでございます。  なお、大臣お答え申し上げましたとおり、今後可能な限りこれを引き上げるという方向で関係各省と相談をいたしたいと思います。
  49. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次に、海難事故対策を充実するために、巡視船、救助船の近代化、大型飛行艇等の航空機の配備を強化するとともに、タンカー災害等による海洋汚染を防止するための流出油の処理資材の確保、処理体制の充実、こういう面について特段とお骨折りを願いたいと思うわけでございます。また、港湾防災体制を強化するための消防船艇、タグボート、こういうものについても当然近代化がなされねばならないと思うわけでございます。また、特に最近は外洋シーバースの建設、安全な石油類の輸送システムの開発というものも十分検討されなければならないと思うわけでございます。  これらの点について、これは海上保安庁関係と思いますが、かわって官房長からお答えいただいても結構であります。
  50. 山上孝史

    ○山上政府委員 まず、先ほども触れられましたような新しい海洋秩序への対応ということで、海上保安庁におきます警備能力の増強のために、来年度は百四十三億、巡視船艇あるいは航空機の増強を要求しております。これは本年度の予算額に対しましては二二三・九%という、二倍以上の重点的な増額をお願いしております。  また、御指摘の海上防災の関係につきましては、油回収装置等の整備等を含めまして六十六億ということで、本年度の予算に対しましても一五%強の要求になっております。  こういうことで、来年度は海上保安庁における御指摘のような能力を大幅に増強いたしたいということでございます。
  51. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 最後の質問であります。  きょうは航空局長がお見えでございますので、最後に航空局長から御答弁をいただきたい問題がございますが、空港の拡張と建設を主な目的といたしましたこれまでの空港整備計画というものの再検討の時期が来ているのではなかろうかと思います。そして、また、主要空港及び地方空港航空保安施設の整備を積極的に行っていただきたいと思いますし、なお、また、騒音緩衝地帯の造成、家屋の防音工事及び移転補償の強化等の騒音防止対策をより一層推進するための計画をぜひ重点的に実行してもらいたいと思うわけであります。これが一問。  第二問は、新東京国際空港の問題についてでありますが、この開設についての決意、見通しを伺いたい。  こういったものについてお伺いをして、私の質問を終わります。
  52. 高橋寿夫

    高橋(寿)政府委員 お答え申し上げます。  まず、空港整備の問題でございますが、つい先ごろの閣議で第三次空港整備五カ年計画を決定いたしました。これは昭和五十一年度から五十五年度まで五年間に九千二百億円を投じようとするものでございますが、この約三分の一、三千五十億円は御指摘空港周辺の環境対策に投じようとしております。それから、千三百五十億円を保安施設の整備に投じたいと思っております。かようなことで、いま、緊急の問題としては周辺の環境問題、それから安全問題、これにやはり重点を置いて進めることにいたしております。  それから、二番目のお尋ね成田の問題でありますが、先ほども久保先生の御質問にお答えいたしましたとおりでございますが、現在、鹿島港から石油を荷揚げする荷揚げ基地の工事にかかっておりまして、これから着手いたしますが、それがほぼ九カ月かかるという見通しになっておりまして、それができ上がりませんとどうしても油が来ませんので開港できない。そういたしますと、来年の夏ごろというものが開港のめどというふうに考えております。現在、空港滑走路南端の外側にございますところの妨害鉄塔の除去あるいは騒音対策の推進、さらに航空管制の問題等、それらを進めまして、来年の夏ごろまでには何とか開港いたしたいということで、現在関係方面と鋭意折衝を続けているところでございます。
  53. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 以上をもって終了いたします。また機会を見まして十分時間をいただきまして、国政一般について質疑をさせていただきたいと思います。  以上です。
  54. 中川一郎

    中川委員長 河村勝君。
  55. 河村勝

    ○河村委員 大臣、まだ就任早々で事情をよくお聞きになっていないかもしれませんが、いま運輸省関係の当面する一番大きな問題がこれから審議に入る国鉄の問題であることはもちろんでありますけれども、そのほかに大きな問題が幾つかあります。いま話が出ておりました成田空港の開設問題もその最も大きな一つであります。これは、空港がいつ開港できるかという告示あるいは宣言をした大臣だけでも勘定するともう八人ぐらいになるのですが、いまだかつてそれがそのとおりいったためしがなくて、じんぜん今日に至っている。これはもう日本の国内的な重要な問題であるだけでなくて、国際的な信用を失うことは多大なのですね。これはたとえれば多少差しさわりがあるが、いろいろな反対をするような運動が影響したことも事実であるけれども、それだけではなくて、大臣自身が、自分で手を染めて自分でやろうとした人が一人もいなかった。だから、空港公団に任せて、成田空港問題の閣僚協議会とかなんとかいうのがありますけれども、そんなものはただの茶飲み話程度であって、本当に責任を持ってやった大臣というものは一人もいないのです。だからこういうことになっている。  いま、航空局長の説明を聞くと、来年の夏にはこの鹿島の問題が解決をして、夏にはできるだろうなんて言っておりますけれども、従来の実績に徴すればまるっきり信用できないわけですね。だから関係各省にわたる事柄が多いわけですから、大臣みずからが乗り出してやらないことには、今回もまただめだと私は思うのです。  そういう意味で、一体大臣はどの程度の報告を受け、どの程度の決意をお持ちであるか、それを伺いたいと思います。
  56. 石田博英

    石田国務大臣 成田空港開港が大変おくれている根本的な原因は、これは利子のつかない国家のお金を使ってやっているということが一番大きな原因であろうと思うのです。まず、手始めに、私がよその立場で見ておって感じてきたことでありますけれども、場所の決定に当たって、周辺あるいは与野党を問わず、もっと各党の人々の意見なり希望なりというものを総合する努力が必要であったように思います。  それから、第二は、その執行に当たって、結局は利子のつかないお金でございますから、シビアな態度がとれなかった。それから、それと同じようなことになるかと思いますが、政治的責任と申しましょうか、政治的推進役と申しましょうか、そういう人のあり方に問題があったことも否めないと思います。  しかし、これは無論いつまでもほうっておける問題ではございませんので、この調整も私の職務の一つでございますから、必要があれば私自身が乗り出してでも、来年の夏の開港を目途に全力を尽くしたいと思っておる次第でございます。
  57. 河村勝

    ○河村委員 航空関係のもう一つの大きな問題に日米航空条約の改定交渉があるわけであります。いろいろな歴史的ないきさつはここでは省略をいたしますが、いずれにせよ、相互乗り入れをする場合には両方の国が同程度の経済的利益を受けるということがこの条約の基本的な成立要件でありますね。ところが、敗戦後、占領時代から続いたこともあり、かつ、沖繩返還というような、外国であったものが日本に入ってしまったというような原因も加わって、不平等性というものが、元来存在しているものがなおふえつつあるように思うのです。したがって、この交渉は今度来年が改定期であったか、その辺は私もきょうは突然の質問だから資料を持っておりませんからよく知りませんが、とにかく、そういう絶好の機会であり、これを逃したら、またもう一遍交渉をするということはあるいは不能になるというような時期ではないかと思っております。  でありますから、これを大臣としての最も大きな課題の一つとして考えてほしいと思いますので、もし交渉経過をまだ十分お聞きでなければ、事務当局にまず答弁をしてもらって一その上で大臣の答弁を伺いたい。
  58. 石田博英

    石田国務大臣 ほぼ交渉経過も聞いております。それから、来年が沖繩返還五カ年に当たりますので、来年が交渉の期限でございます。同時に、現在すでに交渉が開始されているわけであります。日米間の航空交渉の関係は、御指摘のように非常に不平等であります。幾つかの問題点も含んでおることも承知いたしております。したがって、この交渉に当たっては、まずその不平等な立場を除去するように全力を挙げてまいるつもりでございまして、この機会を逸すれば不利益がなお続くばかりでなく、たとえば協定をイギリスのように廃棄したような場合でも、今度は果たしてそれが利益になるかどうかという別の見通し、計算もしなければなりません。  交渉をまとめて、しかも不利益を除去できるように格段の努力を払いたいと思っておる次第でございます。
  59. 河村勝

    ○河村委員 もう一点伺っておきます。  それは仲裁裁定の取り扱いの問題であります。今回仲裁裁定を国会に付議する際に議決案件にしたというのは非常に不見識なやり方であって、私は、石田さんが、いままでの経歴その他お考えから言えば、どうしてこういうことをやられたのかと不思議にたえないのであります。議決案件というのは、要するに国会にげたを預けて政府が右とも左とも判断を下さないということですね。ところが、過去の例を見れば、承認案件として出した場合と、たった一つの例ではあるけれども、不承認を求める件として出した例もあるのですね。これは当否は別にして、政府がこれは実現すべしあるいは実現すべからずという判断を下して、それで国会にその当否を問うておるわけですね。ところが、議決案件となると、これはまるっきり政府の主体的な意思というのは何もないのですね。こういうばかげたことをやるのは非常な悪例であると私は思う。なぜこういうことをおやりになったのか。もう出てしまったものは仕方がないが、一体、今後こういう裁定の取り扱いをどうするつもりか、今回だけでなしに、今後にわたってのそのお考えを伺いたい。
  60. 石田博英

    石田国務大臣 三十五条を付加するときは、私は労働大臣で、あなたは国鉄の職員局長で、事件の取り扱いはもうわざわざ御説明申し上げる必要はないと思います。公労法の精神というものは、公共の利益のために公共企業労働者の諸君から争議権を奪っている代償措置として仲裁裁定の完全実施が柱になっている、ただ、政府の予算編成権と国会の予算審議権との関連もございますので十六条の規定が設けられておる、このように私は理解しておるわけであります。  そういう理解の上に立ちまして、私は、私の独断で組合側と三十五条追加を内容とする仲裁裁定完全実施を約束いたしました。政府も公労法の精神を守る、そのかわり組合も公労法の精神を守る、これが相互に約束を取り交わした内容でございます。  私は、この取り扱いを今日でも間違っていると思いませんし、政府として貫くべきものであると考えております。したがって、この三十五条の努力義務を実施するということについての熱意は何ぴとにも劣るものではございません。しかしながら、今日国会から許容されております予算の枠の中ではいかんともしがたい状態にあることもまた事実でございます。五%については予算化されておりますけれども、残余の分についての捻出さえも、本年の九月から十月にかけての金繰りその他、御推察いただければおわかりになるとおりの状態であるのであります。  従来の取り扱いといたしましては、不承認を求める件はいまの三十五条追加以前に出された案件でありまして、それ以後は一件もないわけであります。そして、昭和四十八年まではずっと議決を求める案件として出しまして、そして、御審議の途中に政府が予算的措置をとり得る見込みがついたことを理由として、それを取り下げてまいったのであります。議決を求める案件として出したことそのものが、すなわち、いまも申しました三十五条の精神を実行する意思のないあらわれだとお考えをいただくのはちょっと問題があろうかと思います。  この間三木総理大臣の答弁にもございましたように、政府の基本的な姿勢と今後の方向はやはり三十五条精神の尊重でございます。ただ、現状はいま申し上げたとおりであります。そして、これは、これから先を申すとまた絡ませるとかなんとか言われるかもしれませんが、政府といたしましては、そういうことを可能ならしめるためも兼ねまして、今回御審議を願っております法案の一日も早い成立を期待するのが当然であると考えておる次第であります。
  61. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  62. 中川一郎

    中川委員長 この際、午後一時四十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時四十三分開議
  63. 中川一郎

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。河村勝君。
  64. 河村勝

    ○河村委員 大幅な運賃値上げをやる場合には、三つ大きな問題が出てまいります。一つは言うまでもなく物価に対する影響で、それからもう一つは、他の運輸機関との運賃のバランスが大きく崩れてしまうという問題が一つと、それからもう一つは、大きく値上げしたならば、それだけ収入があるというならばよろしいけれども、値上げしたことによって収益がそれほど上がらないという問題があるわけですね。この三つが組み合わさりますと、これが増幅をしてきて、たとえば物価問題について言えば、国鉄が大きな値上げをしたことによって他の運輸機関とのバランスがとれなくなって、他の運輸機関の運賃もまた上げるというようなことになりますと、これはきのう経済企画庁の人が言っておりましたような物価上昇寄与率が〇・五%なんというわけにはまいらなくなって、心理的な要素を加えれば非常に大きな問題に波及をするわけですね。そういう角度から今度の問題を取り上げてみたいと思います。  そこで、まず、第一に伺いたいのは、この日本国有鉄道再建対策要綱には、「昭和五十一年度及び昭和五十二年度の二年間で収支の均衡の回復を図り、以後健全経営を維持することを目標とするものとする。」と書いてありますが、この方針には現在でも変わりございませんね。
  65. 石田博英

    石田国務大臣 御承知のごとく、法律の成立がおくれておりますので、それによる歳入欠陥は二千億円以上に上ると思いますが、これは七月一日実施可能と考えてそのくらいに上ると思っておりますが、来年度予算編成の中でそれを何とか処理をいたしまして、そして既定方針どおり二年で経営の健全化の達成を図りたいと考えております。
  66. 河村勝

    ○河村委員 二年でその収支の均衡を図るということを前提としますと二千億——まあ、この問題は後にしましよう。  一応六月一日実施の予定でこの計画が立てられましたが、そういう前提に立っても、来年度もやはりことしと同じく五〇%の運賃値上げをやるという計画になっているというふうに理解をしてよろしいですか。
  67. 住田正二

    ○住田政府委員 本年度五〇%の値上げをお願いいたしておるわけでございますが、来年度につきましては、まだ不確定要素がいろいろございますので、最終的に値上げ率を決めていないわけでございます。  不確定要素と申しますのは、ことしの運賃の値上げのおくれをどうやってカバーするかとか、あるいはこの委員会で問題になっております地方交通線の問題あるいは貨物の問題についてどういうような対策を講ずるかというような点についての方針が最終的に固まっておりませんので、そういう点が固まり次第来年度における運賃の値上げ率を決めたい、さように考えているわけでございます。
  68. 河村勝

    ○河村委員 運賃値上げのおくれというのが一つの要素だということでありますが、そうなれば、他の財政措置、国の資金手当て、これがことしと同じであれば五〇%、それにこの二千億、仮にこの法案が十月中に成立をしたと仮定をしても二千億の穴があくわけだから、それをプラスしたものが値上げ分に加わらないことには収支の均衡ができないという勘定になる。  そうすると、繰り返して言いますが、国の財政措置というものが今度提案された内容のものと同じであるという前提に立てば、来年度の運賃の値上げというものは、収支を均衡させるためには五〇%プラスアルファ、二千億をカバーするということであれば、恐らく六〇%から六五%ぐらいの値上げをしなければならないことになるであろうと思いますが、いかがですか。
  69. 住田正二

    ○住田政府委員 いま御指摘のように、財政措置が本年度並みである、それから、本年度新たに発生した赤字二千億というものを全部来年度の運賃値上げに転嫁するということになりますと、恐らく五〇%を超える値上げ率になると思われます。しかし、私どもといたしましては、できるだけ値上げ率を低く抑えるように、先ほど申し上げましたようないろいろな問題を現在検討いたしておりまして、運賃の値上げ率はできるだけ低く抑えたいと考えておるわけでございます。
  70. 河村勝

    ○河村委員 少なくとも、当初の計画で来年度五〇%値上げをもくろんでいたという正式の政府発表その他はありませんが、いろいろな角度からの報道がなされていたけれども、それは事実無根ですか。
  71. 住田正二

    ○住田政府委員 本年度の五〇%に続きまして来年五〇ということが言われたことは確かにあると思います。ただし、その五〇というのは前提があるわけでございまして、先ほど申し上げました本年度の赤字二千億のほかに、本年度は運賃値上げか予定どおりにまいりましてもなお五千億の赤字が発生することになっております。したがいまして、新しい五千億と合わせますと七千億ということになるわけでございますが、そういう本年度の赤字を来年の運賃値上げに転嫁するという前提で考えますと五〇%という数字も出てまいるわけでございますが、そういう前提が変わりまして、本年度発生する赤字については別の措置で対処するということになりますと、必ずしも五〇%の値上げは必要でないということになろうかと思います。
  72. 河村勝

    ○河村委員 来年度五〇%値上げということは夢にも考えておらないと考えてよろしいのか。
  73. 住田正二

    ○住田政府委員 来年度の値上げ率はいまの段階では決まっていないということでございまして、先ほど来申し上げておりますように、五〇%よりも低い値上げ率におさめるように努力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  74. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、ことしの財政措置はあくまでもことしの財政措置であって、このままでこれを今後とも継続するというものではない、来年度には、今日のこの財政措置では不十分であって、相当大きな新しい追加の財政措置を必ずしなければならない、と、そういうことは十分認識をしているわけですか。     〔浜田委員長代理退席、増岡委員長代理着席〕
  75. 住田正二

    ○住田政府委員 来年度の値上げ率を決める場合に幾つかの要素があるわけでございまして、一つは、先ほど申し上げました本年度発生する赤字約七千億をどう始末するかということで、この点につきましては、先生御承知のように、国鉄は現在なお相当の積立金を持っておりますので、そういう積立金の処理と関連して対策を講ずる場合があると思います。  また、いままでの委員会で問題になっております貨物の赤字をどうするかとか、あるいは地方交通線の赤字をどうするかとかということに関連して何らかの財政措置が講ぜられる可能性もあるわけでございますが、そういう措置の内容が決まってまいりませんと来年度の値上げ率が決まらないということでございまして、なお予算編成までには数カ月ございますので、この間にいろいろ関係方面と折衝して財政措置を講じた上で来年度の値上げ率を決めたいと考えておるわけでございます。
  76. 河村勝

    ○河村委員 ことし程度の財政措置をしておいて、それで二年で収支を均衡させるというようなりっぱなうたい文句をつくるものだから、この再建対策要綱そのものが非常に荒唐無稽なものになるんですね。だから、そういうものを出しますとすべて政府のやり方というものは信用がなくなってしまう。だから、これは要するにせっぱ詰まってぎりぎりのところまで運賃を上げてやれということだけの根拠しかなくなってしまうわけです。  だから、恐らく五〇%値上げをお考えであったらしいが、ごく簡単な例をとって、他の交通機関との関係を例にとっても、私鉄との比較で、新宿−小田原間で比較をいたしますと、ことし五〇%上げても国鉄の方がかなり高くなるが、これをさらに五〇%上げると、小田急の方は四百円、国鉄の方は千二十円ですね。二倍以上になるでしょう。それから大阪−三宮間で見ると、私鉄が百三十五円に対して国鉄は四百五円で、ちょうど三倍である。だから、二倍とか三倍とかいうようなものがまるっきり同じ鉄道でありながら並んで走っていくなんということは、これは考え得べからざることでしょう。だから、五〇%値上げなんというものはもともと全く架空のものである。  貨物運賃などに至っては、ことし五〇%上げてまた来年五〇%上げたら、恐らく荷物がなくなってしまうのではないか。そういう認識をお持ちでないかどうか。
  77. 住田正二

    ○住田政府委員 いま先生の御指摘のように、今回の五〇%の値上げをした後に、来年さらに何%になるかわかりませんけれども、仮に五〇%程度の値上げをやりますと、他の交通機関と比較いたしましてかなり無理が生じてくることは否めない事実であろうと思います。  その点非常に問題がありますので、来年度の値上げにつきましては、そういう他の交通機関との競争関係を考慮しながら、適正あるいは適切な運賃値上げの幅にとどめるように努力をいたしてまいりたいと思っているわけでございます。
  78. 河村勝

    ○河村委員 私は、その考え方は逆立ちをしているのじゃないかと思う。運輸省は最近口を開けば総合交通政策ということを言っているわけですね。総合交通政策というのは、それぞれ適正な分野において適正な運賃で各運輸機関が共存共栄しようというものですね。であれば、こういう国鉄のことしの五〇%でも、他の運輸機関をどれほど考えに入れて決めたのか非常に私は疑わしいと思う。それを安易に、国の財政措置は来年はどういうふうに考えるのだというようなことも何もなしに、結果的に二年間で収支均衡させようとして、どうしても五〇%以上上げなければならぬというような案を発表して、これで国鉄は二年でりっぱになるのですという案を出すというのは運輸省として不見識じゃないかと私は思う。他の運輸機関との運賃比率というものをどの程度までそれぞれの機関がとり得るものかというバランスを考えた上で、二年間で上げるとすればこのくらいが限度だというようなものがまずなければ、政策として全く根拠なきものだと私は思う。  そういう総合交通政策的な立場から、今度の対策要綱というのは一体どういう理由があっての構想になっているのか、それを聞かせてもらいたい。
  79. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄の運賃を決める場合には、他の交通機関との競争関係を考慮して決めなければならないことは当然のことだと思います。私どもといたしましては、これまで国鉄運賃は比較的低位に抑えられてきた、したがって、確かに先ほど御指摘になりましたような問題点はございますけれども、倍ぐらいまでであれば他の交通機関とのバランスをそう崩すことにならないであろうと、こういう判断をいたしまして今回の再建対策要綱をつくったわけでございます。  ただ、今年度と来年度と二回上げます以降は、もうそう運賃値上げはできなくなるのではないか、五十二年以降の運賃値上げをさらに続けるとすると航空とのアンバランスあるいは私鉄とのアンバランスがかなりひどくなる、そのために交通体系が混乱するおそれがある、ただ、倍程度であればなおバランスは維持できるのではないかということで——もちろん単純に倍にするということではなくて、他の交通機関との競争関係を十分考慮して適正な運賃値上げにする必要があろうかと思いますけれども、大まかに申し上げまして、倍程度であればバランスが崩れるということにはならないという判断をいたしております。
  80. 河村勝

    ○河村委員 倍ぐらいはよいというのは恐ろしく重大な発言ですよ。そうすると、いま例を挙げた私鉄との関係で言えば、新宿−小田原でとりましょう。これは私鉄が四百円で国鉄が千二十円で、二倍半です。これでもよろしいというのか。それから航空運賃も、いまここに試算を持ってこなかったけれども、東京−大阪間で比較をしても、国鉄の方が恐らく二倍近い運賃になるはずだ。レジャーで旅行しようという観光バスに至っては——この収入は大きいけれども、恐らく国鉄の運賃の方が観光バスに比べて三倍くらいになるでしょう。もう国鉄で旅行しようという人はいなくなってしまうな。  それでも構わないというのか、それとも、国鉄が二倍に上がったら、他の運輸機関もそれに比例をして上げさせようという魂胆なのか。そうなれば、これは物価問題としてゆゆしき問題になる。そのどっちかを考えていなければ倍ぐらいまでは平気だという発言はできないはずだと私は思うが、それを一体どう考えておるか。
  81. 住田正二

    ○住田政府委員 倍ぐらいまでは平気で上げられるという認識をいたしているわけではございませんで、工夫していろいろ考えればどうにかこうにか倍ぐらいまでは上げられるだろうと考えておるわけでございます。  他の交通機関との競争関係でございますが、航空との関係では、従来東京−大阪の航空運賃と東京−大阪の新幹線運賃が比較されてきたわけでございます。グリーンの場合は別といたしまして、競争関係から考えますと、東京−大阪の航空運賃よりも新幹線の普通車の運賃が若干は低くなる程度に抑えたい、そうすれば飛行機と新幹線との間の運賃バランスがそう崩れることにはならないのではないかというふうに考えております。  また、私鉄につきましては、個々の路線をとりますと確かに非常に不均衡が目立つところがあるわけでございます。しかし、すべての路線が国鉄と私鉄とが競争をしているわけではございませんし、最近の事例を取り上げて考えてみましても、時間価値が非常に高くなっておりまして、たとえば西武線と中央線とが並行しておるような場合に、国鉄の駅までなら歩いて五分くらいだ、西武線の駅に行く場合には十五分かかるというような場合には、国鉄の方が高くなりましても、それによって直ちにお客さんが西武線に流れるということではなくて、やはり、時間の問題であるとか便利さの問題とか、そういう面でお客さんが選択することになるわけでございまして、運賃の差によって直ちにお客さんが移動してしまうということにはならないと思います。  また、国鉄が上がったら他の交通機関の運賃も上がるのではないかという御指摘がございましたけれども、海運にいたしましても、航空にいたしましても、自動車にいたしましても、やはり、法律に基づいて適正な原価、適正な利潤という面から判断されるわけでございますので、国鉄運賃が上がったから他の運賃が直ちに上がるということにはならないと思います。
  82. 河村勝

    ○河村委員 どうも余り理由にならない説明ですが、それでは、倍になった場合の東京−大阪間の国鉄の運賃と航空運賃との比較を具体的に試算をしたことがありますか。あるでしょうね。どうなりますか。それから、観光バスとの比較をしてみたらどうなりますか。それから、貨物運賃はどうなりますか。貨物運賃が倍になって、貨物が国鉄に一体どれだけ残りますか。これは国鉄から聞きましょう。
  83. 住田正二

    ○住田政府委員 先ほど倍と申し上げましたのは旅客の場合でございまして、貨物の場合には、倍に上げるということは恐らく不可能であろうかと思います。  それから、新幹線につきましては、倍に上げますと、東京−大阪でとりまして新幹線の方が航空より若干高くなりますので、そういう点については調整が必要であろうかと思います。
  84. 河村勝

    ○河村委員 いずれにせよ、現在の財政措置を前提とすれば、国鉄運賃を二年で均衡させるためには倍ぐらいにしなければならぬ。しかし、それは現実の問題として実行不可能なものだと言うほかはないのですね。そう思いませんか。まじめに本当にそんなことができると思っているのですか。しようがなしに試算しているのでしょう。
  85. 住田正二

    ○住田政府委員 しようがなくて倍で試算しているということではなくて、先ほど申し上げましたように、倍にすることについてはかなり問題がありますけれども、いろいろ工夫をすれば他の交通機関と極端なアンバランスが生じないような値上げが可能であると考えております。  なお、先ほども申し上げましたように、来年度五〇%の値上げをするということを決めているわけではございませんで、できるだけ低い値上げ率になるように財政面その他の面で努力をいたしたいと考えているわけでございます。
  86. 河村勝

    ○河村委員 運輸大臣、結論はいま渋々言ったようなことであって、本当に二年で均衡させようと思えば、ことしのような財政措置ではまるっきり絵にかいたモチという以上なんですね。だから、二年、場合によっては三年でもよろしいけれども、二年ないし三年で本気で収支を均衡させようという方針を貫くつもりならば、この財政措置について、後でいろいろな中身については申し上げますけれども、抜本的な改善をやらなければ本当に実現可能な収支均衡策にはならないのだということは大臣はお認めになるだろうと思うが、いかがですか。
  87. 石田博英

    石田国務大臣 言うまでもなく、鉄道は電信や電話と違って完全な独占事業ではございません。競争相手があるわけでありまして、運賃の値上げの限度というものはおのずからあるわけでございます。したがって、その前提の上に立って国鉄再建する場合には、今回のような財政措置と運賃の値上げで、特に財政措置におきまして、それだけのもので済むものとは私も考えません。  しかし、まず第一に私が国鉄当局に要求しておりますことは、発想の転換とでも申しましょうか、従来こうであったからその継続と考え施策を講ずるというのではなくて、たとえば国鉄の資産の運用その他にも工夫を加える、あるいは処分をすべきものは処分をする、現在高く売れるところに必ずしもなくていいものなら、これは安いところへ買いかえる、あるいは国鉄の運営における合理化をさらに促進する余地を見出していくというようなことで、そういう自主的な努力がまず必要であろうと思います。  第二番目には、御承知のような状態に国鉄の運営自体があるわけでございますから、従来の形の財政措置を増加させるという発想がいいのか、あるいは、本来国鉄が負担すべきものではない、他の行政費として負担すべき性質のものは行政費として負担してもらうというふうに持っていく方がいいのか——それから、赤字の一番大きいものの一つは貨物でありますから、貨物輸送のあり方についてもう一度洗い直してみるとか、あるいは地方線の運営の形態についても考究をするというようなものを加味しながら再建を図っていかないと、これは競争線があることでありますので、これはもう運賃の値上げに限度があることはよくわかっております。
  88. 河村勝

    ○河村委員 そのとおりです、国鉄の中での近代化、合理化の努力を前提とせずにこの問題は成り立ちませんが、しかし、余りにひど過ぎる状態になってしまったものですから、まずあるところまで国でめんどうを見てもらって身軽にしてもらえば、それから後は国鉄の自主的な努力でもってやれるんだ、死にもの狂いでがんばればとにかくやれるんだという条件まではつくってやる国の義務があるということだと思うんですが、大臣、いかがですか。
  89. 石田博英

    石田国務大臣 私は、相対的なものだと思うんですね。やれるところまで一般の国費でめんどうを見るということが先行いたしますと、世間でよく言われる親方日の丸という意識がそのまま継続する危険がございます。やはり、みずからの努力というものが少なくとも並行して——私はそれか先行することを望むものでありますが、少なくとも並行して行われないとそういう期待した成果は上げられないと私は考えております。
  90. 河村勝

    ○河村委員 それはあたりまえで、これをやってくれなければ働かないなんというようなことが別段に許されるものではないけれども、しかし、働いても働いてもどうにもならぬという状態に置いたんでは、やはり人間のやることですから、ひとつ死にもの狂いでやってやろうという気魄も出てこないわけであるから、それに必要な最低の条件は必要であろうという意味で私は申し上げたわけであります。  そこで、やや具体的なことでありますが、ことしの五〇%値上げについても、本当に予期したような収入が上がるであろうかという疑問を私は持っているのでありますが、旅客三六・九%、貨物三七・二%の実収率を予定した、その根拠は一体どういうことですか。
  91. 田口通夫

    ○田口説明員 実収率を予定いたしました一つのポイントは、昭和四十九年十月の運賃改定の実績をもとにいたしました。  四十九年十月の運賃改定の実績をもとにしたということはどういうことかと申しますと、例を貨物にとらしていただきますが、まず、名目改定率が貨物の場合、昭和四十九年十月が二四・六%ですが、この二四・六%を上げなければ十月一日以降貨物はどのような伸びを示すか、あるいはどのような形の数量になるかという経済要件を一応いろいろ式に当てはめまして、これがどういう動きをするだろうかという量を算定いたしました。そういたしまして、それに二四・六%を掛けますれば、もしそのまま収入があれば名目改定率と実収率は合うのですけれども、現実はそうではなしに減っております。  数字を申し上げますと、このままいけば、四十九年十月一日以降下半期で千九十七億くらいの収入があるであろうが、しかし、二四・六%上げますと、まるまる入ってきたとして千三百六十六億になるということになります。これは算術計算です。しかし、三月三十一日になってみまして、実態的に入ってまいりました収入が千二百八十七億でございまして、名目改定率で二百七十億、実収率が百九十億という差が出てまいります。これを逓減率とかあるいは利用率と申しておりますが、その場合に、その利用率をそのままとることではなしに、名目改定率と利用率との相関関係をとりますために、名目改定率対利用率の比率を出したわけでございます。名目改定率を高く上げれば逓減率も落ちる。そのカーブですか、直線でもいいのですが、それを私どもは運賃弾性値と申しまして、それを出すことによって、各普通旅客、定期旅客あるいは貨物というものの運賃の弾性の率をそこで決めまして、その率をもちまして、今回の普通旅客運賃四九・七%、定期旅客運賃五六%、貨物運賃五三・九%に対しましてその運賃弾性値を用いまして利用減率を出したわけでございます。  したがいまして、もっと端的に申し上げますと、名目改定率が高くなればなるほど利用減率は落ちてまいります。現に、四十九年十月の改定で、普通旅客の場合、名目改定率が二二・九%に対しまして利用減率は五%でございましたが、今回の四十九・七%の普通旅客の運賃値上げに対しまして利用減率を八・六というふうにいたしております。したがいまして、逓減率は名目改定率が大きくなれば大きくなるほどやはり大きくなるという形でございます。
  92. 河村勝

    ○河村委員 国鉄で、これから来年もう一遍五〇%ずつ値上げしたら逓減率はどうなるかという試算をしたことがありますか。
  93. 田口通夫

    ○田口説明員 実は、この運賃弾性値を使いまして単純に計算はいたすことはできると思いますけれども、今度の四九・七%に対する実収三六・八%は実際に経験いたしておりませんので、これを踏まえた上で出しませんと単なる算術計算上になりますために、あえて出してはおりません。
  94. 河村勝

    ○河村委員 単純計算するとどうなりますか。
  95. 田口通夫

    ○田口説明員 単純計算をいたしますと、名目改定率に対する利用減率がやはり四九・七対八・六でございますので、運賃弾性値を〇・二二と固定いたしますれば、同じように来年度も四九・七%上げますとすれば三六・八%になります。
  96. 河村勝

    ○河村委員 その単純計算値はどうも意味がなさそうだね。それは本当の単純計算だ。これは一定の限界を超すと逓減率というものはもうまるっきり変わってしまうので、これは単純計算はわからぬから、それは聞く方が無理だったかもしれないが、それはまあいいでしょう。  そこで、今度は過去債務のたな上げの問題に入りますが、今度過去債務のたな上げについて新しい観念が導入されてきたのは進歩だと私は思います。そういう意味で、過去債務というものが非常な重荷になっている、それをカバーしてやらなければならぬという発想はよろしいのでありますが、この債務七兆円弱のうち累積赤字三兆一千億だけに限定をして、それをさらに固定資産再評価積立金を半分取り崩してという形でまた減額して、それで二兆円ぐらいにしてしまう、こういう考え方になっておりますが、再評価積立金の問題はきのう説明がありましたからいいとして、累積赤字分を対象にして債務をたな上げするというのは一体どういう理論的根拠があるのですか。
  97. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄は五十年度末で六兆八千億を超える長期債務を持っているわけでございますけれども、この長期債務は本来国鉄設備投資をするために借りた金でございます。したがって、債務と資産と見合っているわけでございますので、国鉄の長期債務が全部不良債務であるということにはならないわけでございます。資産があるわけでございますので、今後その資産を活用して、その収入で借金を払っていくということであれば、別にその債務によって財政が圧迫されるということではないわけでございます。  問題は、長期債務のうち不良債務と認められる分があるわけでございまして、その累積赤字に相当するものが不良債務に当たるのではないか。もちろん累積赤字の全部ではなくて、ここで御説明申し上げておりますように、再評価積立金の半分を減らしているわけでございますが、再評価積立金は昭和三十一年に再評価して、その後約二十年たっておりますので、当時ふくらました簿価はほとんど償却をいたしているわけでございます。その間償却不足ができまして累積赤字の一部を形成しているわけでございますので、そういう点を配慮いたしますと、再評価積立金で累積赤字の一部を帳消しにするということは是認されるのではないかというように考えまして、三兆一千億のうち再評価積立金のうちの半分を取り崩して、二兆五千四百億に相当する長期債務を国が肩がわりする、それによって国鉄が現在持っております過去の欠損を一応なくしてしまう、そういう措置をとったわけでございます。
  98. 河村勝

    ○河村委員 しかし、不良債務といえば、これは従来の設備投資のために借りた金というのはほとんど不良債務じゃないのですか。たとえば東海道新幹線に対する投資ですが、こういうようなものは確かに収入を得ながら償却可能でしょう。だけれども、大部分の投資というのは普通の会社が投資をやっているのと違って——普通の会社なら赤字になれば新しい投資は抑えてしまって、やらないようにするけれども、国鉄の場合にはいやおうなしにやらざるを得ない投資がほとんどですね。ですから、実際収益を生むものというのはほとんどない。一部の東海道新幹線とか、あるいは電化、ディーゼル化というような近代化投資はいいでしょうけれども、それ以外の債務はほとんど残らず償還不可能なものでしかないということじゃないですか。
  99. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄が投資をするために借金をする、その投資によります収入で借金を償還するという場合に、一番問題になりますのは運賃が適正であるかどうかということではないかと思います。投資に見合う十分な運賃があれば借入金の返済は十分可能であるわけでございます。これまで運賃水準が非常に低かったということのために償却不足が起こり、借入金の返済ができなかった面がありますので、そういう意味では不良債務的な性質もあろうかと思いますが、運賃が適正であれば借入金の返済は必ずしも不可能ではない、さように考えておるわけでございます。
  100. 河村勝

    ○河村委員 運賃が適正であればといったって、現実に運賃が適正ではなかったし、同時に、これから先そう運賃を上げていくことも不可能な状態になってきているわけでしょう。そうすれば、いままでの不良債務は依然として不良債務だから、ある部分を残してたな上げをするのが本当ではないのか。破産した場合には、会社更生法の適用をすれば、設備投資資金を含めて大体みんな一応凍結をして、それでやるわけでしょう。それと同じようなもので、国鉄もこれだけ破産状態になってしまったら、もう一遍これを出直してやろうとする場合には、少なくとも過去の債務の利子からは解放して、これから先はもう責任を持ってやれ、後は赤字になっても何でもおまえらの責任だぞ、後はいかなる血の出るような合理化でもやって再建しろということになるのではないか。だけれども、一応過去の債務というものからは解放してスタートさせるというのが今日の政策としては一番適正なやり方であろうと私は思うが、この点は大臣はどうお考えでしょうか。
  101. 石田博英

    石田国務大臣 大ざっぱに申しまして、設備として残っているものは、その設備の運用によってその債務の返却に充てるべきもの、しかし、われわれの世代の間に赤字として残ったものを次の世代の負担にするということは不当だ、そう考えております。  さて、その設備として残ったもののうちで、いま御指摘のように、いろいろな他の政策的な要求によって、国鉄としての運賃コストを割って運営をさせられているものがある。そういうものの処置は検討を要するものだとは思います。  大ざっぱな原則としては、ただいま申したような方法で処理をするのが筋であろうと私は考えておる次第であります。
  102. 河村勝

    ○河村委員 たとえば、大都市の通勤輸送対策にこの十年間で投資した額というものは六、七千億になるでしょう。これは資産としては残っているけれども、全然利益を生む可能性がないわけですね。これは一例でありますけれども、そういうものはやはり不良債務であることには変わりはないのじゃないですか。
  103. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄は明治以来いろいろな投資をしてまいりまして、現在二万二千キロの設備を持っているわけでございます。したがって、この中には非常に安い簿価のものもあれば、最近投資したような非常に高い簿価のものもあるわけでございます。したがって、最近投資したようなものについては、それだけとりますと収支相償わないというものもあるわけでございますが、しかし、全体として考えた場合に、運賃が適正であれば全体の償却費等によって債務の返還は十分可能であると考えているわけでございます。  現在の国鉄の経費の中に占める償却費の率というのは大体一〇%程度でございます。同じような鉄道事業といたしまして私鉄を例にとりますと、私鉄も古い施設と最近新しく大都市通勤対策のための投資をやっておりますが、そういうものの全施設の償却費を見ますと、経費の中で一四%ないし一五%ぐらいの比率になっておりまして、償却負担という点から見ると、むしろ国鉄よりも私鉄の方が大きいという数字が出ております。  したがって、そういう大都市の投資の償却というものが直ちに不良債務となるということではないわけで、やはり、運賃が適正であって、必要な償却に見合う運賃が入ってくれば債務の返還は十分可能であると考えられるわけでございます。
  104. 河村勝

    ○河村委員 それではもう一つの例として、取りかえ工事のための設備投資ですね。これは本来減価償却による内部留保を充ててやるべきものです。ところが、ずっとそれができないままに放置されているから、そういう取りかえ部分についても全部借金でやっておる。こういうものは、もし運賃が低過ぎてカバーできなかったというならば、これは国の責任で、国の出資で当然やるべきものでしょう。そういうものは債務として残存するとすれば、これまたやはり不良債務という以外にはないのじゃありませんか。
  105. 住田正二

    ○住田政府委員 線路といいますのは鉄道事業の基本的な施設だろうと思いますけれども、そういう線路の償却費は当然利用者が負担すべきものではないかと思います。  全体として、国鉄の投資に伴う償却が国鉄財政の圧迫になるという場合にはそれなりの措置をする必要があろうかと思いますけれども、先ほど来申し上げておりますように、運賃が適正であれば収支均衡はとれるという判断をいたしておりますので、そういう個々の施設の償却が大きいとか少ないとかいうことではなくて、全体として見れば、運賃さえ適正であれば償却は可能であり、債務の返済も十分できるという判断をいたしておりますので、現在の施設に見合う債務が不良債務であるというような考え方はとっていないわけでございます。
  106. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、あなたの言う適正運賃というのは、過去の償却不足も取り返すに足るだけの運賃水準、それが適正だ、こういう理屈になりますね。
  107. 住田正二

    ○住田政府委員 過去の償却不足というのは五十年度末の三兆一千億の赤字の中に含まれているわけでございまして、この赤字については過去債務の肩がわりということで償却いたしているわけでございます。したがって、過去の償却不足を将来の利用者に負担させるというようなことは考えていないわけでございます。
  108. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、あなた方の考えとしては、この過去債務に対する対策は今年度で終わり、したがって来年以降はもう何もなしだ、だから、過去債務の肩がわりという問題についてはこれ以上改善の必要を認めない、そういう結論なんですか。
  109. 住田正二

    ○住田政府委員 過去債務対策は、先ほども申し上げましたように、五十年度末に国鉄が持っております累積赤字を解消するということを目的にとられた措置でございます。したがって、その意味では過去債務対策というものは終わっているということになると思いますけれども、先ほど来申し上げておりますように、本年度も七千億の大きな赤字が生ずるということになりますし、それとの関連におきまして来年度どういうような財政措置をとるか、どの程度の運賃値上げをする必要があるか、現在検討中でございますので、新しい問題としては何らかの措置をとる場合もあろうかと思いますけれども、過去の累積赤字の解消策としての過去債務対策というものは終わった、今回の法律の成立が図られましたらそれで終わったというように考えているわけでございます。
  110. 河村勝

    ○河村委員 いまちょっとわからなかったが、別の問題としてはあり得るかもしれないがというのは、それはどういうことですか。
  111. 住田正二

    ○住田政府委員 今回の過去債務対策というのは、五十年度末の累債赤字の解消のためにとられた措置でございます。しかし、来年度末で収支均衡を図るという再建対策の目標から言いまして、来年度運賃値上げをどの程度にするかとか、あるいは財政措置をどういうふうにするかという問題がまだ残っているわけでございます。
  112. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、理屈はともかくとして、今後、明年度以降の運賃とのバランスを考えて、過去債務の処置についても、それは不良債務であるとかないとかいう理屈は別にして、これからやはりめんどうを見なければ収支均衡できぬというものについては手当てをしていく、こういうことですか。
  113. 住田正二

    ○住田政府委員 いまの先生の御質問が、来年度現在やっております過去債務対策と同じような措置をとる可能性があるかどうかという御質問であるとすれば、いまの段階ではそういう措置までとらなくても本年度の赤字の解消策はあるのじゃないかと思いますけれども、いまいろいろな問題を検討中でございますので、この段階で同じような措置は絶対にとらないとか、あるいはとるとかいうことはちょっと申し上げにくいわけでございます。
  114. 河村勝

    ○河村委員 それから、ついでに聞いておきますが、たな上げした債務の償還ですね。これはこの対策要綱によれば、「財産処分収入等をもって償還させる。」ということになっていますね。財産処分収入で償還なんかできますか。
  115. 住田正二

    ○住田政府委員 対策要綱で書いております「財産処分等」というのは、むしろ現在国鉄がやっております関連事業収入を中心考えているわけでございます。関連事業収入は本年度で約五百数十億ございまして、私どもの見通しでは、毎年大体三%ずつふやしていくことができれば、その三%の財源で今回無償貸し付けをいたしました二兆五千四百億の償還は可能であると考えているわけでございます。  私どもといたしましては、三%程度でなくて、関連事業収入についてはもっとそれを上回るような増収努力をやっていただくことを国鉄に期待いたしているわけでございますが、三%程度のものであれば十分可能であるというように考えているわけでございます。
  116. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、財産処分収入というのは、別段土地を売り払えとかなんとかいうことではなくて、国鉄が事業をやってもうけろということなんですか。
  117. 住田正二

    ○住田政府委員 財産処分もないわけではないと思いますけれども、私どもとしては、できるだけ国鉄が現在持っておる財産を利用して収入を上げて、その収入で過去債務の支払いに充てるなり、あるいは先ほど大臣が申し上げましたように、今後は運賃収入の増加も非常にむずかしい面もありますので、そういう関連事業収入をふやして経費増に充ててもらいたいという、そういう期待をいたしているわけでございまして、財産を売るということは必ずしもいい手段ではなくて、むしろ財産を十分に活用していただきたいというように考えているわけでございます。
  118. 河村勝

    ○河村委員 そういう事業収入に期待して償還までやらせようというなら、ことし事業のやれる範囲を拡大するために国鉄法の改正案なり何なり出してこなければつじつまが合わないでしょう。いまやれる程度の事業でそんなにふえていくとは私には思えない。だから、前にも言ったことかありますけれども、たとえば横浜から大船に行く根岸線という最近つくった線路がありますが、これなどは、国鉄がわずかに線路部分しか買収しない。その周りの土地は全部不動産業者が買って、いまやもう最高級住宅地として非常なもうけだ。だから、国鉄が線路の両側一キロ以内ぐらいを買い、かつそれを活用する道を開いておれば、根岸線などというのはいま赤字線であるが、そちらの収入だけで建設費がもう残らず出てしまって、後はもうかってもうかってしようがないような線路です。これからだってそういうものはある。  だから、本当に償還収入増を当てにするなら、少なくともそのくらいの法律案ぐらいを出していなければ本気で考えているとは私には思えない。ただ償還しろと言ったってとても当てがない。だから、本当は事業収入というのは後から考えた理屈であって、土地がたくさんあるなんということを言うと、一般の人はああなるほどそうかしらんなどと思うから、それにつけ込んでごまかしてやろうというような魂胆としか思えない。その点はどう考えられますか。
  119. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄が今後関連事業収入をふやしていこうと努力する場合に、現在の法律範囲内では不十分であるかどうかという点については、今回法律をお出しする前にいろいろ検討いたしてみたわけでございます。やり方としては、国鉄みずから経営する場合と、その土地を民間といいますか、第三者に使わせて、その収入の一部を国鉄がもらう場合と、二つの方法があると思いますけれども、後の方法であれば、特に法律改正をしなくても現在の法律の規定の範囲内で処理できますので、今回の改正に当たっては法改正をしなかったわけでございますけれども、今後国鉄が関連事業収入をふやしていきたいと考えます上において、現在の法律の規定が障害になるということであれば改正をしてまいりたいが、今回の法律の提案の際にはまだ改正の必要はないのではないかということで一応見送ったということでございます。
  120. 石田博英

    石田国務大臣 実は、私もその根岸線の横を毎日通っている人間でございますが、あれを通るたびごとにいま仰せのような不合理を痛感しておるわけであります。これは事情が許せば営業法の改正というようなことも当然あわせて行うべきものだと私は思うのです。  一般的な常識で言えば、親会社経営がしっかりしておって子会社の方がどうもあやしいというのが普通ですが、国鉄だけは逆で、子会社経営は健全で親会社がきわめて不健全だということはどだいおかしい話だと思いますので、そういう点を踏んまえて、もし法律改正が必要なら法律改正に踏み切ればよろしい、他省との権限の競合なんということは人様の前で言える話じゃありませんから、これは役所内部で調整をすればよろしいと考えております。  ただし、今国会はとにかく何はおいてもこの鉄道二法の通過を願わなければいけませんので、なるべく余分なものは差し控えたいというのが真情でございます。
  121. 河村勝

    ○河村委員 それでは、次に、地方交通対策について伺います。  今度新しく地方交通対策費という名目で百七十二億を計上してあります。これももとの考え方としては一つの前進だと私は思います。しかし、百七十二億が軽微だというような言い方をすると一般的にはちょっとしかられるかもしれませんが、全体のスケールから言えば、百七十二億というのは二階から目薬ぐらいのところで、焼け石に水といった感じでありますが、一体、この百七十二億というものを計上した根拠はどういうものですか。
  122. 住田正二

    ○住田政府委員 本年度の予算で計上いたしました地方交通対策費百七十二億円というのは、暫定的な意味で計上いたしたわけでございまして、今後ともこういうような形でいくということを決めているわけではございません。地方交通線につきましては、昨日来申し上げておりますように、現在運輸政策審議会でその対策を御検討いただいているわけでございまして、今後その提案を待って来年度の助成のあり方を決めたいと思っております。  本年度の百七十二億円の計算基礎でございますけれども、これは地方交通線の運営費の一部を補助いたしているわけでございます。計算基礎を申し上げますと、地方交通線の運営にかかっております経費のうちの人件費の半分と物件費とを足しまして、それから収入を引きます。一応地方交通線として私どもがとりあえず対象として考えているキロ数が九千二百キロでございますので、その九千二百キロで割ります。人件費から収入を引いた不足といいますか、経費の不足分を九千二百キロで割ります。そういたしますと、一キロ当たり九百万円という数字が出るわけでございます。この九百万円に九千二百キロを掛けまして、九千二百キロのうちいろいろ対策を講ずる必要のある路線が半分ぐらいであろうということで二分の一を掛けまして、また、補助率を二分の一といたします。本年度六月一日から値上げでございますので、さらに十二分の十を掛けましたものが百七十二億円でございます。
  123. 河村勝

    ○河村委員 大体九千二百キロで割って九百万円が出て、それをまた九千二百キロ掛けてというのは一体どういうことですか。それをまた半分に割る。これは本当にナンセンスでありますが、人件費の五〇%を見るというのは一体どういう意味ですか。
  124. 住田正二

    ○住田政府委員 先ほど申し上げましたように暫定的な措置でございますし、また、人件費補助という色彩を余り強く出したくないということで二分の一にとどめたわけでございます。
  125. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、百七十二億は運営費の一部補助で余り理論的根拠がない、とりあえずの措置であるということでまあいいとして、こういうものを出そうとした発想というのはどういうことですか。
  126. 住田正二

    ○住田政府委員 先ほど申し上げましたように、来年度予算に関連いたしまして現在地方交通対策をいろいろ検討いたしているわけでございますが、来年度に財政措置を講ずるということのあかしというような意味で暫定的に本年度予算を計上しているわけでございます。(発言する者あり)
  127. 河村勝

    ○河村委員 向こうで声を上げたりしたのでちょっと聞き損なった分があるけれども、そうしますと、九千二百キロが確定的な数字であるかどうかは別にして、それはなお検討の余地があるとしても、とにかくこの線区というものはいかに一生懸命経営努力をやっても、現在の鉄道の宿命として赤字が出ざるを得ない。だから、そこに一定の合理化目標を置くか置かぬかという問題はもちろん残るでしょうけれども、原則的にはこういうものは国で補てんしてやらなければ成り立っていかない、そういう考え方が基礎にあるものだ、そう考えてよろしいわけですね。
  128. 住田正二

    ○住田政府委員 九千二百キロにつきましてはなお検討の余地があると思いますが、九千二百キロについて赤字が生ずることは明らかな事実でございます。ただ、この赤字をどういう形で処理していくかという点についていろいろな意見があるわけでございまして、その一環として地方公共団体に経営を移譲するという方法もあるでしょうし、また、第三セクターをつくってそれに経営を任せるという方法もございますし、また、地元方々に特別に運賃を負担していただくということも考えられますし、また、国と地方公共団体が補助金を出すということも考えられますし、いろいろな形があるわけでございます。どういう形をとったらいいかということをいま検討をいたしているわけでございまして、私どもといたしましては、地方交通線の赤字が国鉄財政の大きな負担になっていることに着目いたしまして、その負担を解消することを来年度予算以降でやりたいと考えているわけでございます。
  129. 河村勝

    ○河村委員 主要な二点について伺いましたが、もう一つ大きな問題として貨物輸送の改善がありますが、きのう説明を聞いていますと、五十五年度までに固定経費で収支均衡を図るという基本方針の説明として、固定経費を二〇%節減するんだという説明があったように思いますが、それでよろしいか。それでよろしければ、一体そういうことが可能だと考えているかということを聞きたい。
  130. 田口通夫

    ○田口説明員 固有経費の二〇%を削減する覚悟でおりますし、可能だと考えております。
  131. 河村勝

    ○河村委員 二〇%節減できればとにかく収支は均衡できる、そういう計算になりますか。
  132. 田口通夫

    ○田口説明員 固有経費の二〇%を削減いたしますと、五十五年度、正確に申しますと五十六年度の運賃収入と五十六年度の固有経費が、今後の運賃値上げその他ももちろん勘案いたしておりますが、現状の運賃ということではなしに、運賃の変動と経費の削減ということでバランスをとるように最大の努力をする、また、それが可能であるというふうに考えております。
  133. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、その二〇%節減の人件費と物件費の割合は何%と何%ですか。
  134. 田口通夫

    ○田口説明員 人件費、物件費ともおおむね二〇%と考えております。
  135. 河村勝

    ○河村委員 では、収入面の方で伺いますが、昭和四十五年以降貨物輸送はトン数、トンキロともに逐年減少しているわけですね。特に、これは不況の影響があるからでしょうが、四十九年に対して五十年度は一〇%減っておる。特に最近目立っているのはコンテナや二次産品の輸送まで減少している。そういう傾向が見えるのですね。だから、いままでいろいろなコンテナ化、フレートライナーその他でもって輸送需要をふやす努力をされてきたと思うが、それでもなおかつこういうものが減ってきている。そうなると今後こういう傾向というものは阻止できないのではないか、輸送量がふえていくということは予想することができないのではないかと思いますが、その点はどう考えているか。
  136. 田口通夫

    ○田口説明員 御指摘のとおり、四十五年度から五十年度の輸送量をながめますと、確かにトン数、トンキロとも、総輸送量も七一%あるいは七五%というふうに二〇%ないし二五%下がっておりますし、コンテナにつきましてはわずかに——四十五年度を一〇〇といたしますと、それでも一四九ということでございますが、御指摘のとおり、四十八年度をピークといたしまして、年々五%、六%という下がり方をいたしております。  ただ、コンテナ及び二次製品の場合でございますが、四十八年度、四十九年度、五十年度は内航海運及びトラックにおきましても、私どもそれぞれ勉強いたしますと下がっておりますが、この傾向は一つの傾向として除外いたすといたしまして、現在五十一年度の最近の貨物輸送状況を見ますと、ようやく前年を少し上回るという、底が見えてきたという感じを持って見ております。  しかし、ただ、今後この五〇%の運賃値上げがございますとまたダウンになるということも考えられますので、私どもとしましては、相当思い切った運賃の弾力的活用を図りたい、それによってできるだけの逸走率を防御して収入を上げていきたいというふうに考えております。
  137. 河村勝

    ○河村委員 かなり長い間他の運輸機関との協同一貫輸送ということを旗印に揚げてやってきておられるけれども、フレートライナーその他ある程度の効果は上げていられるであろうが、私は、それほど今日まで目立った成果が上がっているようには思われないのです。  鉄道輸送のドア・ツー・ドアの性能がないという欠陥を補うために協同一貫輸送というものは必要だ、絶対欠くべからざるものだという発想そのものは正しいのだけれども、現実問題としては、通運業との間でも本当にそれだけの体制ができているかどうかについては私は非常に疑問を持っているんですね。これを本当に解決しないと、今後運賃を上げれば貨物が減るというようなことの繰り返しで、輸送量が伸びるという可能性がないように私は思うので、この点について何か大きな発想の転換はできないだろうか。かつてのように通運業に対して国鉄が資本を持っておる子会社であればコントロールが可能だろうけれども、いまのように半ば競争会社みたいな形になっていてやることはなかなかむずかしいと思う。  そういうことを含めて、本当に協同一貫輸送できる体制というものを法律の改正を含めて考えてみるべき時期に来ているのではないかと思うが、そういう点について考えは持っていませんか。
  138. 田口通夫

    ○田口説明員 国鉄と通運業界の関係はまさに御指摘のとおりでございまして、過去、非常にコマーシャルベースでやったということよりも主従の関係でやってきた。これは歴史的ないきさつがございましたが、その結果、あるいは一方では通運業と路線トラック業を営んでおるというようないろいろの要因で、単に事務上のみならず、感情的にもぎすぎすと一時対立したこともございますが、そういうことを言っておりましても現状はどうにもよくなりませんので、今後この協同一貫輸送という言葉だけではなしに——いままでは半信半疑の友達という形でつき合ってきましたけれども、それを捨てまして、メーカーと代理店といいますか、販売店といいますか、そういう形の制度を努力をしてつくっていきたい、したがいまして完全にコマーシャルベースで話し合っていきたい、こういうふうに思っております。  国鉄もよくなるし通運業もよくなるということが両業者の発展のためには当然必要でございますので、いままでの発想、基本的な考え方を変えまして、主従の関係とかいうことではなしに競争関係ということではなしに、通運機能を鉄道の中に取り入れて、代理店発想というような考え方で進めていきたいというふうに考えております。
  139. 河村勝

    ○河村委員 運輸省としては、それは国鉄業者同士の相談に任せているのですか。運輸省としてこの問題を取り上げて、何かの形でまとめていくという考え方は持っていないんですか。
  140. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄の貨物をどうしたらいいかということは非常にむずかしい問題だろうと思いますが、現在国鉄の方でもいろいろ御検討中でございますし、私どもも私どもの立場からいろいろ検討いたしていきたいと思っておるわけでございますが、その過程におきまして現在の通運事業の規制のあり方を変えていく必要があるというような結論が出れば、その方向で処理いたしたいと思います。それで、今後の検討課題として考えているわけでございます。
  141. 河村勝

    ○河村委員 それから、貨物の場合、人件費でも二〇%節減するということだが、その後いろいろなヤードの自動化とかなんとかいうこともありましょうけれども、本当に二〇%節減できるという具体的なめどがありますか。
  142. 田口通夫

    ○田口説明員 具体的な間違いのないめどというのは現在検討中でございますけれども、現在、貨物の輸送の一番弱点といいますのは、非常にいろいろの体型の列車を持っておりまして、その各列車が不当にヤードにおいて作業を複雑化させており、余分な作業をさせておるということと、それから、いろいろと非能率な輸送をやっておることであります。戦前では三個列車で運んでおったものを、現在五個列車もかかって牽引定数も満たさないで走っておるというような現実もございますので、根本的に発想法を改めまして、まず輸送力列車、それから物資別のように大量に——ロット貨物は従来どおりの物資別輸送でやるといたしまして、あと都市間のコンテナ輸送とそれから輸送力列車という形のものに非常に単純化いたしまして、構内の作業もそれだけ、いままでは三回も入れかえをしておったのが一回で済むというような形に作業体制をシンプル化いたしまして、そして、それだけではもとに戻りますので、コンピューターシステムをその中に導入して、現在は地域間急行のみコンピューターシステムを導入いたしておりますが、これを全体的にコンピューターシステムを導入いたしまして近代化を図っていけば現在七万七千人ほどの充当人員で——固有経費に属する要員は充当人員でございまして七万七千人ぐらいでございますけれども、約一万五千人ぐらいの節減はできるのじゃないかと思います。実際の合理化はもう少し多くなりますが、減員としては一万五千人ぐらいは節減できるという見通しのもとに具体的に検討を進めております。
  143. 河村勝

    ○河村委員 全体の社会に週休二日制というものができ、日曜は仕事をしないという体制ができつつある。     〔増岡委員長代理退席、佐藤(守)委員長代理着席〕 だから、貨物の場合は、人件費を節約しようと思ったら日曜、休日を休んだらどうか。思い切った発想の転換ですね。貨物駅も休むし、ヤードの作業も日曜は休み、急直行貨物列車はヤードをパスしていくものは走らせてももちろんよろしいけれども、あとはみんな休んで、途中で留置線なり何なりにほうり込んだらよろしい。それで、いろいろな生鮮食料みたいなものの到着が日曜日にあれば、それはやってもよろしいが、最近は市場なんかも日曜日は休んでいるみたいだな。そうなれば、国鉄は一年じゅう動いているのだというのはもうやめて、お客様はやむを得ぬけれども、貨物は日曜、休日は休みということにすれば人件費の二〇%節約ぐらいはわけないですよ。予備員がそれだけ減ってしまいますからね。それくらいのことを考えた方が貨物で本当に収支均衡をとるのは楽だろうと私は思うが、それくらいのことは考えてみませんか。
  144. 田口通夫

    ○田口説明員 御指摘のように、確かに民間企業は週休二日制でございまして、特に日曜日の出荷は相当波動を来たして減少いたしておりまして、われわれの方でも、地方の実態に合わせて、貨物取り扱いの日曜日の休止を指定することに現在努力をいたしております。現在一週間七日フル営業しておりますよりも、これによりまして、御指摘のとおり休日の代務要員が節約になりますので、要員効果は非常に高く出ると思いますし、人件費の節減に効果があるということを期待しております。  それで、まず、全部一斉にやるということもさしあたっていろいろと問題がございますので、フロント及びフロントに近いヤードといいますか、そういうところと地方の実態をかみ合わせて、貨物取り扱い休止日の指定を鋭意推進していきたいという決意でおります。
  145. 河村勝

    ○河村委員 部分的にやっていくのも結構ですけれども、これはむしろ全体規模で思い切って貨物は日曜休みが原則だというルールをつくってしまえばいい。これは行楽貨物というのはないわけですからね。貨物というのは人が休めば動かなくなって一向差し支えないわけです。だから、思い切ってそうやったらいいと思うのだな。そうすると予備員の二〇%減ぐらいは単純に考えても出てくる。予備員は現在三〇%のものが二〇%ぐらい要らなくなる。そうすれば直ちに二〇%削減と同じことになる。それくらいのことを考えてみるべきだと私は思います。  そこで、一応いろいろ伺いましたが、地方交通対策にいたしましても、過去債務たな上げにいたしましても、どうもいろいろな理屈はあるけれども、さしあたり財源が足りないから、国でめんどうを見ようと思っても結局見られないということがやはり根本だと私は思います。だから、理論的にルールとして、過去債務は原則としてたな上げにして、それで、地方交通線については一定の合理化目標をつくって、なおかつやむを得ざる赤字は国で補てんするという原則をまず国でつくることが先決であって、もしその条件が充足できれば、私が試算をいたしますと、国の出資というものは年額にして七千億くらい要ると思いますので、現在の三千五百億に比べればかなり高いけれども、出せない額ではないと思う。そうして、いま先行き見通しもない、来年は五〇%なんか上げられないということはわかっていながら五〇%上げてわりあいに能率が上がらない、しかも物価には影響を及ぼすというようなことはやめて、むしろことしは三〇%以内に抑えて、同時に、来年あるいは再来年は二〇%くらいで抑える。そうしますと、私の試算としては大体二年ないし三年で国鉄は収支均衡する。それから後は、物騰に見合った運賃値上げは必要かもしれないけれども、一般に非常迷惑をかけるようなこういう思い切った大きな値上げをしなくとむやれる体制ができる。私は試算としてそういうものを持っている。これはもちろん過去債務の全部のたな上げと地方交通線の原則的全額補償を前提とするわけですけれどもね。そうすれば、ことしは三〇%以内、来年あるいは再来年に二〇%以内という、そのくらいの運賃値上げで賄えると私は思う。  これはあなた方に試算を示して御検討いただいておるわけではないから、ここでそれについてどうだという結論的な答弁は聞くことはできないと思いますが、あなた方も五〇%無理に値上げしたいと考えているわけではないと思う。だから、ことしもしそれができないならば、来年にでもそのルールを確立して、とにかく運賃の幅を極力抑えていき、国としてはめんどうを見るべきものは見るというようにしたらどうか。しかる後に、それでもなおかつ企業努力に待つべきものは相当大きいはずですから、これは国鉄労使に全面的な責任をかぶせて、あとはおまえたちでやれというふうにやるのが一番賢明な策だと私は思いますが、大臣、いかがですか。
  146. 石田博英

    石田国務大臣 前段のお話の方はにわかなお返事はちょっと申し上げかねる点も幾つかあると存じますが、ただ、後段の部分ですね。国が行政的あるいは政策的な意図を持って国鉄経営を——国鉄の方としては運賃コストの方から言って余り好ましくないものを負担させる場合における処置、あるいはそのほか政策的な意図を持って国鉄の負担にゆだねる部分、そういうものは原則としてそれぞれの政策を実施する役所において負担するという形で、結局的には国庫が負担するという形にいくのが順当だ、原則として私はそう思います。  それから、いろいろな面においてやはり発想の転換が必要であろうと思います。その発想の転換の中には、法律的な障害があれば、その法律的な障害を法改正その他によって取り除いていって、一言で言えば、皆民間の企業経営態度に立って経営責任を負うという姿勢が必要じゃなかろうかと思います。そのためには、国が持つべき限界、責任範囲について——これはおのずから議論がいろいろ出てくることだろうと思いますし、にわかにここでお返事は申し上げられませんが、ただ、私は、そのほかの条件が非常に違っておるのに、従来こういう経緯があったからその経緯のまま続かなければならないという、そういう物の考え方の持続だけは何とかして改めていきたいと考えております。
  147. 河村勝

    ○河村委員 この点については非常に大きな問題でありますから、ここでもって直ちに答弁を求めようとは思いません。  そこで、最後に人間関係のことをお尋ねいたしますが、総裁はいなくなっちゃったかな。
  148. 佐藤守良

    佐藤(守)委員長代理 総裁は間もなく参るそうです。
  149. 中川一郎

    中川委員長 速記をちょっととめてください。
  150. 中川一郎

    中川委員長 それでは、速記を始めてください。  河村君。
  151. 河村勝

    ○河村委員 せっかく最後に総裁に今後の方針をただそうと思ったら、あなたがいなくなって休憩をしたものだから、どうも少し気が抜けて迫力がなくなってしまいましたが、最後に人間関係のことだけはあなたに聞いておかなければならない。ほかのことは、留守中のことは幕僚に聞いてください。  この再建対策要綱の中には、国鉄再建のための労使関係の速やかな正常化と経営の刷新という中で、「責任ある業務遂行体制と厳正な職場規律の確立」ということが書いてあります。あなたは就任して約半年余りになりますが、ここに書かれている「責任ある業務遂行体制と厳正な職場規律の確立」ということについて、どのような決意と方針のもとに臨んでいますか。
  152. 高木文雄

    ○高木説明員 国鉄再建の問題につきましては、先ほど来いろいろ御論議をいただいております財政上のといいますか、経営上の赤字の処理の問題が非常に重要な問題であることは言うまでもございませんけれども、何と申しましても、基本は、国鉄の職場の実態から申しまして、経営者といいますか、それから働く者といいますか、あるいは労使といいますか、それが一体となってその運用に当たり、特に、設備産業ではなくて労働集約的産業でございますだけに、いわば労使が本気で自分の職場を立て直すといいますか、打ち立てるといいますか、そういう心構えを腹の中から持って臨むことが必要だと私は思っております。むしろ、それは、どのように政府からの援助がありましても、あるいはお客さんにお願いして運賃値上げができましても、基本の姿勢が整っておりませんと何にもならぬという感じがいたすわけでございます。  現状は、残念ながら、まだいささか必ずしもそれが十分整っていない。いろいろと夜も働かなければならない職場であり、また、雨が降りましても雪が降りましても黙って働いていかなければならない職場であるという意味におきまして、通常の職場とは非常に違った点がありますから、その点については私どもも十分理解をしなければなりませんし、また、利用者の方々にも御理解をしていただきたいという面があります。  しかし、また、それ以外に、今日、いろいろないきさつで、不幸な事件の積み重ねで不信関係がありまして、まだ十分動いていないという部分があります。それは過去に起こったいろいろいきさつがございますので一挙にはなかなかまいりませんが、薄皮をはぐようにしてだんだんそのけがを治していくということをし、そして、働く諸君もただ働くというだけではなくて、経営自体に関心を持ちながらやっていくというような雰囲気を盛り上げてまいりたいと思っておるわけでございます。  しかし、残念ながら、昨年の秋のスト権ストだとかこの春のストだとかいうことで見られますように、まだややほど遠い感があるわけでございますが、私は決して希望を失っておりませんので、組合という立場、あるいはそれを離れての職員という立場で、うちの諸君と話し合いを深めることによりましてそういう雰囲気が必ずできるものと確信しております。私は素人でございますけれども、半年の経験から申しまして、その方向へ行けるものと思っておるわけでございます。
  153. 河村勝

    ○河村委員 いまの答弁は、「責任ある業務遂行体制と厳正な職場規律の確立」と書いたことについての、それに相応する答弁ではありませんね。  私はこう思うのです。もちろん人間関係というものは非常に温かい心の通いがなければならないし、それが理想だけれども、現在の国鉄の現場は、私はいま外野席から見ておりますが、同時に、現場の第一線の助役とか運転掛とかいう管理的な立場にある人たちと話を交わすことが非常に多いのですが、彼らの苦悩というのは、通常の業務を命令することもできない。国鉄というのは非常に有機的な組織です。ですから、業務を遂行するためには、軍隊的にと言うのは少し言葉が適当ではないかもしれないけれども、秩序にのっとって命令すべきものは命令して一遍に下まで浸透させるという、そういう業務運営上の指揮命令系統が確立されていなければならない。それがあって、しかる後に人間関係、本当のヒューマンリレーションというものを一緒に考えていくべきだと思うのです。  ところが、いまや現場の第一線管理者というものは完全に自信喪失状態になっている。もちろんりっぱなところもあるし、それほどひどくないところもあるけれども、ところによっては、いわば職場が組合管理なんですよね。これでは業務組織というものは能率も上がらないし、事故も起こりやすいのです。ですから、現場管理の第一の目標というのは、まず、この職場秩序が正しく動くように、指揮命令系統がしっかり動くように、ここに重点を置かなければいけない。そうでないと、怠け者が何も仕事をしないで給料をもらうのは平気だというような気風が一部に見受けられることを否定できないと私は思う。だから、ここのところを正すのが先決だと私は思うので、そういうお答えを私は期待したのですが、いまのお答えは非常に抽象的で、私にとっては非常に不満足です。  だから、あなたは実際現場の人たちから実態のわかるような話を聞きなさい。いろいろなえらい駅長さんとかなんとかを時に集めて聞いたって本当のところはわかりませんし、労働組合との交渉の席上でもわかりません。やはり、第一線で本当に苦労している人たちの話を聞けるようにしないとだめです。これは総裁ばかりではないと思う。本社の幹部もすべて同様ですけれども、そういう実態認識がいま十分あるかどうかということについて私は非常に憂慮をしています。その点について、あなたの決意のほどを伺いたい。
  154. 高木文雄

    ○高木説明員 非常に残念でございますけれども、御指摘のような事態や現象が現場その他において起こっておることはいろいろ話にも聞いておりますし、また、いろいろな具体的な案件の処理について感ずることが多いわけでございます。しかし、幸いにそれを直していこうという空気もまたあるわけでございまして、このままでよろしいというふうには現場でも決して思っていない。それを何とかして早く規律が確立できるように持っていかなければならぬという気持ちは、そう急にというわけにはまいりませんけれども、漸次浸透してまいるものと私は確信をいたしております。  その場合に、どのくらいの速さで、あるいはどのくらいの力で是正の道を歩むかということはなかなかむずかしいわけでございますが、間違いなくそういう方向で動いておりますし、私どももそれを一日も早いスピードで、いい状態に持っていきたいというふうに思っております。御指摘がありました点の是正につきましては、必ず何とかやりますということをこの場で申し上げておきたいと思います。
  155. 河村勝

    ○河村委員 国に大きな援助を期待しなければならないし、運賃という形で、値上げ幅のいかんは別として、国民に対しても負担をしてもらわなければならない。そういうことであれば、まずその前提として、どうしても国鉄の職場を立て直すということがなければそういうことを要求する資格もありませんし、また、いかに金をつぎ込んでも国鉄は立ち直りません。  ですから、そういう意味で、運賃値上げを含んだこういう問題を提起された際にもう一遍その決意を新たにして臨んでほしい。それを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  156. 中川一郎

    中川委員長 楯兼次郎君。
  157. 楯兼次郎

    ○楯委員 まず、最初に、今後の国鉄がどうなるかという点についてお聞きしたいと思います。といいますのは、昭和二十四年から公共企業体になった。ところが、以来今日まで国鉄はため息の連続ですね。前半はため息の連続だ。これは賛美のため息ではない。苦渋のため息ですね。後半は毎日毎日赤字赤字で泣いておる。昭和二十四年から三十年間こういう連続ではなかったかと思います。  公共企業体になりまして、われわれが国会でいつも議論をしたのは、仲裁裁定をなぜ政府は守らないのかということで、仲裁裁定の完全実施ですね。二十四年から約十年間は、金がないということで、いつも十六条によって裁定が国会に出る。石田さんが労働大臣のときに、私が予算委員会で、なぜ政府は裁定を完全実施しないのかと言って質問した覚えがあるのですが、政府はなかなか守らないので、組合は仲裁裁定を守れと言って、政府法律を実施させるためのストライキをやらざるを得なかったというふうに社会党の側から言えば言えると思います。そして完全実施をすることになったところが、今度は十年ぐらい前から、国会が開かれると国鉄は赤字で金がないという泣き言の連続です。  私は、昭和二十九年以来運輸委員というのは今度が初めてですけれども、外におっても、国会が始まる、運輸委員会は何をやるのか、国鉄の赤字赤字という議論である、と、こういうことです。だから、将来国鉄が長距離というか高速というか、こういう陸上の交通の中心を担っていく存在たり得るかどうかということです。斜陽国鉄は過去と同じように日がたつに従ってだんだんとつぼんで、しまいにはいま言われておるように本当に倒産してなくなっちゃうのじゃないかというようなおそれもあるわけですが、運輸大臣並びに国鉄総裁から、国鉄日本の陸上交通輸送についてどういう地位であらねばならないかという、将来に対する展望と覚悟をひとつお聞きしたいと思います。
  158. 石田博英

    石田国務大臣 仲裁裁定の問題については、私も楯さんから御質問を受けたことをはっきり覚えております。そして、私は、公労法の精神というものは、一方において、公共の利益を守るためにストライキを禁止している代償措置として仲裁裁定の完全実施が規定されており、十六条はあくまで例外である、その例外の規定をしょっちゅう利用することは誤りであるという趣旨のお答えをしたように記憶しておりますし、自分自身、組合と、これは実は大蔵省との共管事項にも属しますので、当然大蔵大臣の同意を要することでありましたが、実は同意を求めないで完全実施をお約束をいたしました。そして、政府の方も公労法の立法の精神を守るから組合の方も守ってくれというお約束が成立をいたしまして、たしか昭和三十五年までは組合もストライキがなかったように記憶をいたしております。  その後政府の方といたしましては、昨年まで完全実施を目途として、完全実施を結果的には実行してまいりました。その取り扱いは、一昨年まではやはり議決案件として出して、そして財政的措置ができたときにそれを撤回して実施したわけでございます。この基本的な考え方はあくまで貫くべきことだと考えております。  政府も、今回においてもその基本的態度には変わりがないのであります。ただ、五%は予算的措置がしてありますけれども、その残余の部分についても、国鉄の現状としてはいかんともしたがたい状態でございますので国会の議決を求めた次第でございます。  それから、国鉄わが国の総合的な交通体系の中でどういう位置を占めるべきかということは、大ざっぱに申しますと、都市間の輸送、大都市圏内の輸送、それから中距離・長距離の貨物輸送というものが根幹ではなかろうかと思っております。しかし、わが国のように熱エネルギーの不足な国におきましては、熱エネルギー経済上の配慮が当然必要だろうと思いますが、いかなる輸送機関が一番節約できるかというと、これは言うまでもなく船でございますが、船の次は汽車であります。列車であります。トラックとか自動車とかは非常にたくさんのエネルギーを要することは申すまでもありません。熱エネルギーの上から言って、より有利なものがより不利なものに追いまくられているという実情は私にも実はよくわかりませんが、これはきわめて不思議なことであると同時に、改良の余地が十分あることだと思います。  したがって、この原則がわが国に特に強く残っている限りにおいては、国鉄の将来、国鉄の使命というものはやり方次第でその役割りを十分発揮できるものと確信をいたしております。
  159. 高木文雄

    ○高木説明員 昭和二十四年に公共企業体になりました当時と比べますと、いわば独占性といいますか、そういう点は大分変わってきておりまして、貨物輸送につきましても、旅客輸送につきましても、他の輸送手段との間において、お客さんの方が好きなものを選ぶことができるという状態になっておるわけでございます。その意味におきましては、公共企業体発足の当時、あるいは明治からその当時までと今日とでは大変事情が変わっているということは間違いないわけでございますが、しかし、日本の北の端から南の端までこれだけの施設がつながって整備されておるということは非常に貴重なものであると考えますので、これは時代の変革と無縁であってはいけないわけで、それに即応してまいらなければなりませんけれども、同時に、百年の遺産というものを大事に守っていき、それによってほかの交通手段には発揮できない持ち味を出してまいりたいと思います。  いま大臣から御指摘がありましたエネルギー面から見ての有効性ということは石油ショック以来より一層高まってきたわけでございますので、そういう意味で、今日までの変化の中でもう一度鉄道を見直すという気持ちで国民の皆様から受け取られるような運営をしてまいりたいというふうに考えております。
  160. 楯兼次郎

    ○楯委員 いま、総裁は、オイルショック以来、いわゆる省資源といいますか、省エネルギー立場から国鉄の重要性が見直されたというふうに言われますし、われわれも過去三年間そういう話を聞いておるわけです。ところが、それだけ重要視されてきた国鉄に対する過去数年のオイルショック以後の政府の投資を見ますと、他の交通機関に比べてきわめて矮小であるといいますか、量が少ない。大ざっぱに言って、たとえば道路投資に比べて三分の一であるというようなことはどういうわけですか。  大臣、総裁は政府の省資源、省エネルギー立場から国鉄は見直されてきたと言うにもかかわらず、昨年、ことし、その前年と、他の交通機関に対する政府投資と比べてきわめて少ないが、これは一体どういうことでしょうね。
  161. 石田博英

    石田国務大臣 詳しい数字は後で事務当局からお答えをいたしますが、道路にはガソリン税その他の目的税がございまして、その目的税が利用者負担というふうな考え方にいたしますと、利用者負担率は九〇%前後、非常に高いものになるだろうと思います。それから、一番低いのは港湾でありまして、港湾は二〇%弱のように記憶いたしております。それに比べますと国鉄は七〇%弱程度が利用者負担であって、利用者負担の率が低いといえば低いし、高いといえば高い状態でございますが、省エネルギーという見地から必要とするのは、やはり、産業構造の変化あるいは立地条件の変化というようなものに早く対応するような体制の変化と頭の切りかえというものがまず必要であろうと私は思いますし、投資の増加はそういうもの抜きにやりますと、結局国鉄の財政上の負担増になる危険がある。現状、必ずしも不足だとは考えておりません。
  162. 高木文雄

    ○高木説明員 いろいろ見方があると思いますが、私は、一つは省エネルギーという面での国鉄の有効性というものは間違いないと確信をいたしておりますけれども、そのことについての国民の御理解が十分得られていないということによるものではないかと思います。  それから、私どもとしてもっと積極的に主張すべき点も過去においてあったかと思いますけれども、何分経営状態がこういうことだということから、国鉄に投資をしても有効にその投資が生きるかどうかということについての信頼がなかったからではないかと思う次第でございまして、エネルギー面から見た、また、その他の面から見た有効性についてはもっと強く国民の皆様に訴えまして御理解をいただくと同時に、何をもっても、現在時点での経営の基盤をきちっと立てることによりまして投資の意味というものについての御理解をいただくということが必要ではないかと思います。  これは今後の努力をしていかなければならない重要な問題であると思っております。
  163. 楯兼次郎

    ○楯委員 省エネルギーだとか省資源だとか、オイルショック以来いろいろな議論が言われますが、これは三木さんの言葉じゃありませんが、なかなかうまいことを言うのだけれども、実行は少しも伴わないということに準ずるんじゃないかと思うのです。われわれがいろいろの参考書を読んだ場合に、国鉄の有利性なんかが非常に強調されておりますけれども、政府の取り扱いはその実体が伴っておらない。口が悪いようでありますが、短時間で申し上げますと、そういう印象を受けるわけです。  諸外国でも鉄道がもう斜陽であるというので政府は大分困っておるようでありますが、国鉄を維持するために最も適切有効であるという外国の例を一遍ここでお示しを願いたいと思います。
  164. 住田正二

    ○住田政府委員 鉄道産業というのは第二次世界大戦以来斜陽産業ということになっておりまして、その傾向は依然として変わっていないで、むしろ悪くなってきておるわけでございますが、そういう傾向を直そうとして努力した例もあるわけでございます。  たとえば、ドイツの国鉄再建ということを目標にドイツの運輸大臣がレーバープランというものをつくりましていろいろやってみたわけです。当初は長距離貨物をトラックで輸送することを禁止しようというようなことも考えたわけでございますけれども、ドイツのように市場原理で経済が動いている国ではそういう貨物の統制はなかなかむずかしいということで、そういう考え方は放棄されて、その後は税金を取るということでトラックの長距離輸送を規制したわけでございますが、それも一年、二年は効果があったわけでございますけれども、鉄道運賃がどんどん上がってくるということになりますと、トラック運賃の中で税金の占める比率は余り大きくないということで、一、二年は鉄道貨物の減少はとまったのですけれども、その後また鉄道貨物は減ってしまったということで、十分な効果を挙げていないわけでございます。  それから、御承知と思いますけれども、アメリカではペンセントラルという東部の方の最大の鉄道会社がすでに倒産して、破産したままで動いておる状況でございますし、イギリスの例をとりましても、営業キロ数で半分近い減少になっておりまして、いまなおイギリスの場合でも縮小の方向に動いておるわけでございます。また、ドイツの場合でも、本年度恐らく一兆二千億円程度の赤字が出るのじゃないかということで、ドイツ政府としてもその財政負担になかなかたえられないということで、いまいろいろな案が出ておりますが、選挙も終わりましたので、近く、現在持っております三万キロを半分の一万五千キロぐらいに減らしてしまうという案が出てくるんじゃないかということは言われております。したがいまして、外国の鉄道の例を見て、あの国はうまくなったからあの国のやったことをまねれば日本もうまくいくというような模範例というものはちょっと見当たらないのではないかと思います。  ただ、日本の場合には、私どもといたしましては、アメリカあるいはヨーロッパと大きな相違点があるんじゃないかと考えておるわけでございますが、どういう点が違っているかといいますと、一つは、日本の場合には運賃が非常に安い。外国の運賃と比較いたしまして、日本の場合には値上げが抑えられてきたということで、運賃の値上げの余地がなお十分あるという点が違う。したがって、運賃を値上げすれば収支は改善できるということと、もう一点は、鉄道というのは先ほど御指摘がありましたようにやはり大量高速の交通機関でございます。日本の場合にはヨーロッパと違いまして、東海道から山陽にかけて、いわゆるメガロポリスと言われている人口密集地帯があるわけでございまして、こういう人口密集地帯では大量高速輸送の需要が強いわけでございます。したがいまして鉄道特性が十分にあるわけでございまして、そういう運賃値上げの余地がある、あるいは鉄道特性が十分発揮できる余地があるという点を考えますと、欧米ではうまくいかなかったけれども、日本の場合には努力すれば十分再建できるし、健全経営が維持できる、と、さように考えているわけでございます。
  165. 楯兼次郎

    ○楯委員 外国と日本とは、基盤というか、情勢が違うという点は理解できるのですが、何か運輸省の運賃値上げの宣伝に私は質問したようになってしまったようですが、それでは運賃の、金の問題について、私は素人ですから余り細かいことはわからぬものですから、ちょっと具体的なことをお聞きしたいと思いますが、過去、運賃値上げといいますか、再建計画が二、三回出てまいりましたね。そのときに、社会党はもちろんですが、各野党は反対をしたわけです。その反対の理由は、物価高騰につながるということが一つの理由で、それから第二の理由は、この再建案は完全に実施をしても真の再建にならない、中途半端であるということだった。そういうことで各野党は過去における再建計画には反対をしたというように大ざっぱに言えば記憶をしておるわけです。過去、これでは再建にならないということだった。また、事実物価の上昇その他の悪条件を勘案をしても、いままでの再建計画では、多少は違いますけれども、それが今日の結果を招いたことは明らかだというふうにわれわれは認識しておるわけなんです。  だから、あなたの方のお出しになった再建案では真の再建になりませんよと言った過去におけるわれわれの立場から言って、今度の再建案は過去における再建案とは全然違うんだという相違点があったら、過去のものとは違うという、その相違点を具体的にここで簡潔に明示をしていただきたいと思います。
  166. 住田正二

    ○住田政府委員 過去二回再建の案をつくってみたわけでございますけれども、その二つの案がうまくいかなかった大きな原因は、長期計画を前提に再建考えておったということではないかと思います。  二つの再建案とも十年間という長期の目標を立てまして、十年目に収支が均衡するということを目標にいたしておったわけでございますが、十年という年月は非常に長い年月でございますし、その間にいろいろなことが起こるわけでございます。そういういろいろの不確定要素を織り込んで再建計画をつくるということはやはりむずかしいわけでございまして、そのために物価の値上がりが非常に高くなるとかいうことで、前二回の再建計画が挫折したわけでございます。  したがって、今回の再建計画をつくるに当たりましては、従来のような長期の再建ではうまくいかないということで、二年間で再建を図る、二年間での再建ということは、まず、過去の累積赤字を全部解消してしまうということであり、かつ、現在の国鉄の収支アンバランスの体質を改善して収支バランスをとる体質に直す、その二つが達成できれば再建ができるということで、二年間で過去の赤字を解消するとともに、適切な運賃値上げによって収支アンバランスを回復する。その点が従来の再建計画と根本的に違っている点だと思います。  そういうような考え方をとりました背景といたしまして、従来の長期計画では、高度成長ということを前提に今後十年間需要が相当伸びるだろうということを考えておったわけでございますが、現在のように安定成長あるいは低成長の時代になりますと大幅な需要増というものは期待できない。そういうことになりますと、需要増を前提に再建を図るということでは非常に不確定であり、不安定になりますので、二年間で、低成長あるいは安定成長のもとにおいては短期間で再建を図る必要がある。その点が従来の考え方と大幅に違っているところでございます。
  167. 楯兼次郎

    ○楯委員 二年間にわたっての再建計画を立てたということがいままでの計画とは大いなる相違点であるということを局長は言われるのですが、先ほど来からほかの議員の質問を聞いておると、本年五〇%、来年五〇%の値上げだということがこの資料にははっきり書いてあるわけですが、ところが、来年の値上げは考えておらないというように私には聞こえたのですが、これはどういうことですか。率を考えておらないというのか、値上げはするのだが、どれだけ上げるということはまだ考えておらぬということか、どちらですか。     〔佐藤(守)委員長代理退席、浜田委員長代理着席〕
  168. 住田正二

    ○住田政府委員 先ほどの河村委員の御質問は、来年五〇%上げるということが決まっているというような御質問であったわけですが、来年五〇%上げるということはまだ決まっていない、率につきましては今後いろいろな措置を講じましてできるだけ低い率に抑えたい、幾らにするかということはまだ決まっていない、しかし、相当の値上げによって五十年度末で収支均衡がとれるようにしたい、こういうように考えているわけでございます。
  169. 楯兼次郎

    ○楯委員 二年間で値上げをするという計画は決まったが、上げるということは決まっておらぬということですか。それがよくわからないですよ。
  170. 住田正二

    ○住田政府委員 本年度、来年度と二年間運賃値上げをして、来年の末で国鉄の収支均衡を図るという方針は決まっているわけでございます。しかし、来年度何%の値上げをするかということが現段階ではまだ決まっていない、今後予算の時期までに決めたいということでございます。
  171. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは来年度何%上げるかということは決まっておらない。われわれの方はいろいろの資料で五〇%、五〇%というふうに理解しておるのですが、それはいいと思うのです。ところが、来年度の値上げというものが、パーセンテージはわかりませんけれども、スムーズにできるかどうかという点が——われわれ社会党はもちろん反対ですが、議論としてはあなたの計画しておるような状態にはいかぬのではないかという点が心配されるというか、考えられるのですね。だから、来年度も二年間にわたって上げるという、その運賃値上げができないという場面も想定していまから対策を考慮しておるのかどうかという点をお聞きしたいと思います。
  172. 住田正二

    ○住田政府委員 二年間にわたりまして大幅な値上げをいたすわけでございますので、利用者の面から見れば相当強い御批判があろうかと思うのです。しかし、先ほども申し上げましたように、長期的に収支の均衡を図るという考え方をとっておったのでは、前二回と同様また再建が崩れるおそれがあるわけでございます。したがいまして、国鉄財政再建をするためにはそういうような大幅な値上げが必要であるということを利用者に十分納得をいただく努力をこれからいたしたいと思います。  そのためには、利用者だけに負担をかけるわけではなくて、国鉄自体としても徹底的な合理化をやって利用者の理解を得られるようにいたしたいと思いますし、国としても適切な助成をしてそれをサポートするという努力をいたしたいと思っておるわけでございます。
  173. 楯兼次郎

    ○楯委員 生臭い話ですが、私は、来年度は運賃値上げを考えずに国鉄再建考えた方が最も妥当ではないかと思う。整合性があるという言葉がよくはやるのですが、その方が整合性があると思います。  といいますのは、これは自民党の諸君にしかられるかもしれませんが、いよいよ年内に衆議院の選挙がありますが、この格差が接近をするとわれわれは思っておるわけです。これは自民党の副総理ですかひょっとしたらひょっとするということを盛んに言っておるわけですね。ひょっとしたらひょっとするということは、これは保革逆転も不可能ではない、そういう場面も考えられるということだろうと思うのです。そうしますと、いわゆる自民党的な政府再建案、値上げというものはまず実現不可能であるというふうに考えて今後対処した方が最も常識的ではないか。まして、来年六月ごろ参議院選挙があって、選挙が終わればまたこれは色合いが変わるかもしれない。こういう点からいけば、来年の値上げはあきらめて、値上げをしない再建策をいまから考慮する方が、これは笑い話のようでありますが、最も常識的じゃないですか。言いにくい話でありますが、見解はどうですか。大臣、総裁。
  174. 石田博英

    石田国務大臣 政治問題が入っておりますので私がお答えするのが適当かと存じますが、まず、国鉄再建でございますが、運賃の値上げだけに頼って再建するということには限度があることはわかっております。これは国民負担という面からも一つと、いま一つは、決して独占事業ではない、競争相手がおるということが一つであります。しかし、もう一つは、利用者負担の原則はやはり貫いていくべきだと思っておるわけであります。したがって、国鉄自体の資産の運用、活用は、法律的な規範があればその法律的な規範の排除に努める、あるいは他省との権限の重複等があればこの調整に努めるという、そういう方向に向かっての積極的努力がまず必要であります。  第二は、上から下まである親方日の丸意識の払拭であります。国鉄というのは、国有財産破産法という法律はありませんから、破産は結局はないだろうとたかをくくった物の考え方ややり方というものは上から下まであるが、これは改めてもらわなければなりません。  それから、従来の百年の歴史は確かにとうといが、その百年の歴史に拘束され、それに束縛された結果がこうなったとも言えるわけでありますから、発想の大きな転換も求めたいと思っておる次第であります。  さらに、本年十一月一日に実施されるといたしましも、五千億の赤字に加えて歳入欠陥が二千億、七千億、これは何としてでも措置をしなければなりませんから、財政的措置を考えなければならぬものだと思っておる次第であります。  さて、選挙の結果どちらが勝つかは別といたしまして、私としては、はなはだ興味があるのは、社会党が政権をおとりになったときにどういう再建策を実際上具体的にお考えになるかということで、あるいはわれわれと案外同じことになりはしないかと考えておる次第でございます。
  175. 楯兼次郎

    ○楯委員 生臭い話はこれでやめたいと思いますが、社会党が政権をとったときは、けさの新聞あるいは昨晩からのテレビに社会党国鉄再建案が堂々と報道されておるので、自民党政府の案とどこか違うかという点はひとつ御検討をいただきたいと思います。これは大臣も私も冗談のように言っておりますが、しかし、相当考えていただかなければならぬ問題だろう、そのときはそのときだということだと、いままでの国鉄再建計画と同じになるのではないか、こう思います。まあ、しかし、これはここでけんかになるといけませんから打ち切っておきたいと思います。  それでは、今度は事務的なことをちょっとお聞きしますけれども、五十一年度に約七千億円の工事費が盛られておりますね。われわれが考えると、倒産寸前の国鉄が膨大な新規改良工事に約七千億円も計上するということはおかしいじゃないか。それは保安関係であるとか赤字補てんにそういう金があったら使うべきであると、これは素人考えかもわかりませんが、そういう強い印象を受けるのですが、これもひとつ釈明をしていただきたいと思います。
  176. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄の投資は、過去十年あるいは十五年前と比較いたしますと、相対的にかなり減ってきているわけでございます。昭和四十年に公共投資の中に占める国鉄の投資の比率は一六%程度でございますが、現在では一〇%程度に減っております。本年度七千九百億円の工事費を計上いたしておりますが、そのうちの半分ぐらいが輸送力増強工事、半分ぐらいが安全、公害、合理化関係の投資でございます。  現在国鉄の需要はそう大幅に伸びておりませんので、大きな投資は必要でないわけでございますけれども、先ほど来御指摘のありますように、国鉄としては大量高速輸送の使命がやはりあるわけでございまして、現在、御承知のように各線について輸送隘路が生じております。そういう輸送隘路を解消するための工事をやはり国鉄としてせざるを得ない。そのために七千九百億の半分、あるいは半分よりもうちょっと多いかもしれませんが、その程度がそういう隘路の打開のために使われて、大半が安全、公害、合理化工事になっております。今後とも国鉄工事の重点というのは、安全、公害、合理化方面に重点的に使われるということになろうかと思います。
  177. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、次に、これも私は会計のことはよくわからぬものですからお聞きするのですが、国鉄のこの赤字ですね。これの借入金が約六兆八千二百億ですか、六兆八千億ぐらいですね。それから、三十九年からの累積赤字が約三兆一千億と盛んに言われておるわけです。だから、国鉄の赤字というのは、損益勘定の約三兆一千億円と借入金の約六兆八千億ですか、その合計の約十兆円が国鉄の赤字である、借金であるというようにわれわれは理解をするんですが、これは間違いですか。  これは国民も、マスコミ等では、運賃の赤字が三兆一千億だ、それから借金が六兆八千億だ、合計約十兆円の赤字、借金があるというふうに理解しておると思うのですけれども、これは間違いかどうか。もし間違いならばどういう点が重複をしておるのか。会計士のような専門的な説明じゃなくて、常識的なわれわれにもわかるような説明をしていただきたいと思います。
  178. 住田正二

    ○住田政府委員 長期債務と累積赤字というのは全然別のものでございまして、それがプラスされて十兆円の赤字になるというものではないわけでございます。借入金というのは別に赤字でも何でもないわけでございまして、国鉄の場合の長期借入金というのは、それによって資産をつくり、投資をするための借入金でございます。赤字の方は国鉄の業務によって生じたものでございます。  したがって、国鉄の財政が非常に悪いという点をとらえて言うならば三兆一千億の赤字があるという点であろうかと思いますけれども、ただ、長期債務が六兆八千億あるということは、そのための利子負担等が非常に大きいことになりますので、潜在的な意味では赤字要因になるということだと思います。しかし、六兆八千億が国鉄にとって赤字なんだということではないわけで、国鉄の赤字は三兆一千億だけでございます。
  179. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは私は素人なものですから、先ほどちょっと質問の前に河村君と話しておったわけですが、河村君は大分質問をしておりましたので大体わかりました。  それでは、次に、赤字の三兆一千億円のうち、昭和三十年に固定資産の再評価をしていますね。そこで一兆何がし、今度の政府のたな上げ分以外は再評価で帳消しになっておるという説明があるのですが、もう少しわかるようにこれを説明していただけませんか。
  180. 住田正二

    ○住田政府委員 会社が破産をしたり整理をするという場合に、赤字を解消するためには、積立金であるとかあるいは資本金を取り崩すというのが一般的な方法であるわけでございます。それで、国鉄の場合に三兆一千億の赤字がありますけれども、同時に、資本金として四千六百億くらいですか、また、積立金として一兆四千億、両方合わせまして一兆八千億以上の資本金、積立金があるわけでございます。したがって、三兆一千億の赤字はございますけれども、実質的な赤字というのは三兆一千億から一兆八千億引きました一兆三千億が国鉄の純粋の赤字になるわけでございます。  それで、今回赤字解消策としてやりましたのは、再評価積立金のうちの半分だけを赤字の解消に充てる。赤字の解消の充て方としては、先ほど申し上げましたように、破産会社の場合には一兆八千億まるまる充てるのが普通でございますけれども、一兆一千億の再評価積立金のうちの半分の五千六百億だけを充当する。したがって、なお一兆二千億以上の資本金、積立金勘定が残っているわけでございます。五千六百億の積立金で三兆一千億の赤字を取り崩しますので、残った二兆五千四百億に相当する長期債務を国が実質的な意味で肩がわりをするということで、残った二兆五千四百億の赤字も解消するという措置を今回御提案いたしております法律の中でとっているわけでございます。
  181. 楯兼次郎

    ○楯委員 あと、資産再評価の時期の制限といいますか、十年たったらよろしいとか、二十年たったらよろしいとか、そういう規制というものはありますか。勝手にはできないという規制はありますか。
  182. 住田正二

    ○住田政府委員 資産再評価というのは、たしか昭和二十七、八年ごろだったと思いますけれども、民間企業で一般に行われたわけでございまして、国鉄の場合もそれにならって資産再評価をしたわけでございます。民間の場合には資産再評価によりまして生じました再評価益、国鉄の場合の再評価積立金と同じでございますが、これは全部株主に割り当てをするとかいうことで資本勘定に繰り入れたわけでございますが、国鉄の場合には資本勘定に繰り入れないで、再評価積立金としてそのまま持っていままでに至っているわけでございます。  資産再評価をいたしました資産の方は、再評価をしたのが昭和三十年でございますので、すでに二十年以上たっているわけでございます。それで、国鉄の資産の平均的な耐用年数は大体二十年か二十二、三年程度になっておりますので、すでに二十年たっているということは、再評価した資産の償却は大体終わってきているというように見ることができるわけでございます。したがって、再評価積立金の一部を取り崩しても特に不健全にはならないというように考えているわけでございます。
  183. 楯兼次郎

    ○楯委員 三十年の再評価の時期は大体終わっておるということをおっしゃると、また近く再評価できるのですか。できて、また赤字を償却することができるのですか。
  184. 住田正二

    ○住田政府委員 再評価は戦後一度行われただけでございまして、その後は民間企業も実施をいたしていないわけでございます。  確かに、昭和三十年の再評価のときと現在では、物価等も非常に上がっておりますので、財産価値としては、昭和三十年に比較しますと何割増し、あるいは倍以上の価値となっているかもしれません。したがって、再評価できないことはないと思います。しかし、再評価するということは、財産の帳簿価額が高くなるわけでございまして、したがって、償却負担が非常にふえるわけでございます。そうなりますと企業としてはやはり健全性を害することになりますので、一般にはそういうようにさらに再評価をやるというようなことはやっていないのが通常でございます。  したがって、国鉄の場合にも再評価をすれば赤字が消えるじゃないかというような御意見をお出しになる方もおられますけれども、そういう方法をとることは、当面は形だけはよくなりますけれども、長い目で見れば国鉄の財政を悪化させる要因となるということで、そういう方法はとっていないわけでございます。
  185. 楯兼次郎

    ○楯委員 これもしり切れトンボみたいなものですが、次へ進みます。  今度の再建法案議論するとき、赤字の二分の一の貸物輸送に触れぬわけにはいかぬわけですよ。だから、いままで質問をされる方は全部これをやっておるのですが、私もちょっと簡単に触れておきたいと思います。  私は、料金を値上げしても、あるいは国鉄の書類の中にある「所要の近代化・合理化」ということはどういうことをやるのかわかりませんが、こういう手だてを講じても、貨物の赤字というものはなかなかなくならないと思うのです。これは私の個人的な見解ですが、私がもっと根本的なことを考えなければいかぬと思うのは高速自動車道ですね。簡単に言うと、いまやトラックの方に、自動車の方に陸上の貨物輸送が恐らく半分近くもとられておるわけでしょう。その高速道を建設をし、計画をするのは建設省じゃないかと思うのです。だから、高速道というのは、当時われわれも議員立法で縦貫道を出したのですが、これはレールなき鉄道で、乳母車が入るわけにいかぬのですよ。自転車が入るわけにいかぬのですよ。だから、私は英語なんか余り知らぬですが、レールレス・レールウェーという名称でやっておったわけですね。したがって、自動車道審議会というものは運輸省の中に置かなければだめですよと、これは石田運輸大臣も当時関係をしておったと思うのですが、これを私は当時社会党の運輸部長で再々主張したのです。これは将来えらいことになるから、この縦貫自動車道あるいは高速自動車道の審議会は運輸省内に置かなければ、よく言われる日本の総合的交通体系というものは立てることはできぬじゃないかと言って運輸省を応援をしたという形になったんですが、とうとう建設省の方に行ってしまった。  だから、むずかしい理屈を抜いて言えば、いまや日本の陸上の貨物輸送は建設省がやっておるということですね。そして、陸上輸送の約一二、三%しかシェアのない運輸省運輸委員会で貨物輸送についてかんかんがくがくの議論をするということはおかしいのじゃないかと思うのですよ。  だから、何も私はなわ張り根性を出すわけじゃないのですけれども、レールのない鉄道である高速道の計画その他は当然運輸省が主管になってやらなければ円満なる総合交通体系というものはできがたいのじゃないかと思う。根本を議論せずして、ただ料金を上げる。料金を上げれば二、三割貨物は減りますよ。このままでおったら、しまいには鉄道の貨物輸送というものはゼロになるかもわからない。この点はどうお考えになりますか。
  186. 石田博英

    石田国務大臣 高速道が始まったころの輸送シェアは、運輸省は三〇%か三五%ぐらいあったと思うのです。ところが、御指摘のように、いまや一三、四%を割り始めてきております。  所管をいずれにしたらいいかということについては、御説のように、陸上のトラック輸送だけが、しかも道路の部分だけが建設省であって、上を走っておる自動車、トラックは運輸省の所管でございます。したがって、運輸省は輸送という面で、国全体の輸送計画の中で強力な発言権を持つべきだという楯さんの御意見は、私は、運輸省をあずかる者として、大変貴重な応援演説としてありがたく承るわけでございます。  ただ、これはまだ当該当局に諮っているわけではありませんで、私の意見として言って検討を依頼しているだけでございますが、そういう所管争いをする前に運輸省としてやれないかということです。たとえば羽田線はいま満員でございます。そこで、京浜線の上に高速道路をつくったら緩和に役立つし、国鉄の収入にもなりやせぬか——それをつくるためには途中で何時間か列車の走らないときに工事をしなければなりませんから、夜間の短い時間しか工事ができないという負担が一方において生ずるかもしれませんが、他の一方においては土地代が要らないという利益もあるわけです。そういう面をひとつ検討してもらえないかということを依頼しております。あるいは山手線、京浜線は、これは東京だけで例を言えばそうですが、大阪にだって名古屋にだって方々にありますけれども、そういうところの町の真ん中に貨物線が走っておる。町の真ん中に貨物線が走る必要はないので、それを高速道路というふうに運用する方法はないかという点について検討してもらっているわけでございます。  いまのところ道路公団の技術者に検討してもらっている過程だそうでありますが、ところが、道路公団はなるべく自分のところの領分を取られたくないものだから、それはむずかしいですよという結論が出るに決まっているのですが、これはそうでなくて、日本土木学会とか民間企業、つまり仕事の欲しい方の技術者に検討させてみたらどうかというようなことを考え、そして、そういうものを通じながらいま楯さんがおっしゃったような方向づけを考えてみたいと思っておる次第でございます。
  187. 楯兼次郎

    ○楯委員 なぜ私がこういうことを言うかといいますと、終戦以来叫ばれてきた総合交通体系、いわゆる海運、トラック、鉄道等、これのおのおのの分野をつくって統一性を持たなければいかぬじゃないかということが言われてきたのですね。これは何もトラックだけのことを言うのじゃないのです。私は国道までは言いませんよ。いわゆるレールのない道を何も運輸省が独占せよと言うわけじゃないのです。主管にならなければトラック、鉄道の総合交通体系というものはなかなかできがたいのじゃないかという意味から言うわけです。何も、なわ張り根性で、レールのない鉄道だから運輸省によこせと言っておるわけじゃない。それが総合交通体系のできない最大の原因ではないかと思うわけです。  そこで、話を進めますが、この国鉄の貨物輸送の「所要の近代化・合理化等の施策を講ずる。」ということは先ほど議論した総合交通体系といいますか、自動車、船舶との一貫輸送といいますか、そういうものとどういう関連において近代化、合理化を考えておられるのか、具体的にひとつお示しを願いたいと思うのです。
  188. 田口通夫

    ○田口説明員 まず、国鉄の近代化、合理化といいますのは、大きく分けまして三つの柱があろうかと思います。  一つは、国鉄は貨物安楽死論その他いろいろとございますけれども、そういうことよりも、先ほど大臣からも話に出ましたように、私どもは中長距離・大量高速貨物をしっかりやっていかなければならぬ。それをやるためには近代化をやっていきますが、まず、私どもの考え方としては、コストダウンを徹底的にやっていきたい。これは先ほどお話が出ましたように、休日は貨物の扱いを休んだらどうだというようなことにも通じますし、また、先ほど御説明申し上げましたように試行錯誤をやってきたわけですけれども、現在列車体系が非常に複雑で、ヤードの作業も一回の入れかえで済むものを三回、四回やっており、作業員に非常に負担がかかっておる。そういうこともございますので、できるだけ列車体系をシンプルにしてわかりやすいものにしたい。その結果として、ヤードの作業も非常に簡素化される。具体例を申し上げますと、そういうような形で全体の輸送体系を変えることによってコストダウンをやっていく。これが一つでございます。  二つ目は、いま総合物流体系の中で、あるいはトラックとの協同一貫輸送の中で具体的にどういうことを考えているかということを申し上げますと、これは、やはり、先ほどから指摘がありましたように、トラックはトラック、鉄道鉄道という形で、相互に不信の友という形の中でやってまいりまして、どうもしっくりいかないということでございます。これはもちろん、御存じのとおり、戦後国鉄日本通運の資本が分離いたしまして、金の切れ目は縁の切れ目という形になったわけですけれども、しかし、そんなことは言っておられませんので、現状から通運業者国鉄、区域業者国鉄、あるいは路線業者国鉄が実際に機能し合うフロントといいますか、駅ターミナルで設備関係を充実することによって両方がお互いに使える設備をつくる。たとえばロットの大きい輸送列車をこなすトラックのために保管倉庫をつくる、あるいは荷さばきを近代化するという形で、トラックの機能、鉄道の機能というものをできるだけ一緒に合わせて、全体としての輸送コストを下げるという努力が二つ目の柱だと思います。  三つ目は、私ども今度五〇%値上げいたしますと、荷主に対してもまた競争力が非常に失われる国鉄におきまして、いままでの非常に頭のかたい運賃制度の運用ではなしに、物資別に細かい運賃制度の弾力的運用をやりましてできるだけ貨物を確保したい、こういうふうに考えておる次第であります。
  189. 楯兼次郎

    ○楯委員 この赤字の細かい問題はいろいろありますが、省略をします。  大臣、あなたは、けさの新聞を見ますと、久保三郎君の質問に対して、学生割引ぐらいは文部省の負担にしなければ、とおっしゃいました。私は、昭和二十八年、九年だと思うのですが、ここにおられる關谷さんにも協力を得て、たしか身障者の割引を厚生省から約三億円——あれは文部省だったか、ちょっと忘れましたが、その法律をつくって、議員立法で出して、当時三億円の金をもらったことがあるのです。だから、これは公共負担で政府が金を出すというのは一番筋が通っていると思うのです。ところが、二十年来言われておりながら実行されない。これが国鉄の赤字の一因にもなっておると思うのです。だから、せっかくああいうことを言われましたので、もうかれこれここで質問はいたしません。相当の決断と暇と努力が要ると私は思うのですが、ぜひひとつ何十年来の主張を石田運輸大臣時代に実現をしてもらいたいと思います。
  190. 石田博英

    石田国務大臣 後ろに大蔵省がいるかいないかは知りませんけれども、これはまず第一に大蔵省は猛烈に抵抗するだろうと思います。こういう行政上の筋はなかなか一朝一夕に通せないところにまた日本行政の欠点もあります。まあ、いわば、私はきのう久保先生の御質問に乗じてと言ったら語弊がありますが、それをありがたい時期だと思いまして、世論に呼びかけたつもりでございます。そして、自分自身もその具体化について努力をしていくつもりでございます。  いま、楯先生のお話の中にありました身障者に対するものですが、これは外障者に対するものはこちらでいま割引しておりまして、内障者に対する分も厚生省としてはお金でやるのだというお考えのようでございますが、お金でやることはむろん結構でございますが、そういう厚生行政の一環としてやられる分はやはり厚生省の負担でやっていただくのが筋です。  それから、これは自分でやったことで多少予盾をしておりますが、私は、労働省をお預かりいたしておりましたときに、学校に入っている学生さんと、学校へ入れないで中学校や高等学校で職場につく人、職業訓練所に入る人とどちらが恵まれているかと言えば、学校に入っている人が恵まれている、そちらに学生割引があって、片方の訓練所やあるいは工場で働らいている人に、通勤割引はあるけれども学生と率が違う、そういう割引がないのは不当だということで、交渉いたしまして国鉄におっかぶせた経験がございます。  これはいささか後悔はいたしておりますが、行政の筋としてはやはりこれも労働行政で持つべき筋、そういう方向で努力をするということで、とにかくアドバルーンを上げたつもりでございまして、これから各方面の御協力を得て、もちろんみずからも努力して実現を図りたいと思います。
  191. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、次に、もうこれも再三質疑に出ておりますから要点だけ申し上げますが、七千キロの新幹線計画がありますね。それから高速道路も七千キロの計画があります。これはいわゆる田中内閣の高度成長計画といいますか、日本列島改造論にもとづいた経済社会基本計画にあるわけです。そして、低成長時代といいますか、時代が変わったので、この七千キロの新幹線建設計画は当然もうすでに変更されておらなければいかぬと思うし、変更すべきであると思うのですが、変更されておるのかどうか、その計画の推移を御説明願いたい。
  192. 石田博英

    石田国務大臣 いま御説明になりました七千キロの新幹線の計画でございますが、その計画の内容は二、三種類ございますので、あとで事務当局で申し上げたいと存じますが、その当時は実は私も運輸審議会の委員でございまして、それに参加した一人でございますが、おっしゃるとおり、高度成長の時期でございました。したがって、現在のような安定成長の時代と申しましょうか、低成長の時代、それから財政の負担能力、産業の条件変化というようなものを勘案いたしますときには、当然それに応じたものがなければならない、一応鉄道建設審議会の議を経たものといえども、その実施の面におきまして情勢変化に応ずるようにいたしたい、こう考えております。
  193. 住田正二

    ○住田政府委員 現在、新幹線につきましては、工事中のものと、整備計画を認可したものと、基本計画を決めたものと、三種類あるわけでございます。工事中のものは御承知のように東北新幹線と上越新幹線でございます。整備新幹線の方は整備計画だけ決めておりますけれども、まだ実際には工事に着手いたしておりません。  いま大臣から御説明がございましたように、七千キロメーターの背景には高度成長ということがあったわけでございますが、今後つくる新幹線につきまして収支を検討いたしてみますと、採算のとれるものは非常に少ないわけでございます。国鉄の財政再建を現在やっているわけでございますが、仮に二年間かかりまして収支均衡を図りましても、赤字の新幹線をつくりますと、そのために運賃値上げをしなければいかぬというような実態を招くおそれがあるわけでございまして、今後新幹線計画を実施する場合には、やはり、第一に、国鉄の財政がそれに耐えられるかどうかということを前提に検討する必要があろうかと思います。  いずれにいたしましても、新幹線計画というのは大変な資金が必要でございますし、また、工事も長期にわたりますので慎重に考える必要があるわけでございますが、当面は、第三次全国総合開発計画が、来年になると思いますけれども策定されることになっておりますので、今後工事すべき新幹線をその中で決めていきたいと考えているわけでございます。
  194. 楯兼次郎

    ○楯委員 そうすると、手直しをする案もないということですか。
  195. 住田正二

    ○住田政府委員 七千キロそれ自体を直すということは当面考えておりませんけれども、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、具体化に当たっては、国鉄の財政状況であるとか、あるいは国の財政状況とか、あるいは各長期計画とか、そういうものを勘案して慎重に実施に移していきたいということでございます。
  196. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは私は警告しておきたいのです。たとえば大正十一年の鉄道敷設法ですが、この夢のような鉄道敷設法で住民は惑わされ、政治家は板ばさみになって、そしてできるのは赤字線で、もうにっちもさっちもいかなくなっている。だから、この鉄道敷設法を廃止しなさいという意見がずっと続いておるわけです。だから、七千キロの計画を今後長く存置しておくと、あなた方の採算が合わぬとか金がどうこうという理論より、建設をせよという政治力の方が先行してしまうわけですよ。だから、情勢が変わったら、いまのうちなら変えやすいと思うのですね。日にちがたてばなかなか変更できがたくなりますよ。それだけひとつ警告をしておきたいと思います。  それから、成田新幹線のことを聞きたいと思います。空港そのものはいつも問題を起こしておりますが、成田空港に接続をする新幹線の計画はどうなっておるのか、現状を御説明願いたいと思います。
  197. 住田正二

    ○住田政府委員 成田新幹線につきましては、昭和四十七年に工事実施計画を認可いたしております。建設は御承知のように日本鉄道建設公団で施行することになっております。  四十七年以来、地元の公共団体と新幹線の工事につきまして協議をいたしてきたわけでございますが、なかなか話し合いがつかないで、たとえば江戸川区では訴訟まで起きておるという状況でございまして、進捗率が悪いわけでございます。現在工事をやっておりますのは成田空港の中のターミナル、まあ新幹線の終着駅でございますが、そこの工事をやっております。また、空港から成田に至る付近までの測量をいまやっておりまして、その測量に基づいて用地買収の準備をいたしております。そのほかの地区につきましては、先ほど申し上げましたように地元と協議をいたしておりますが、現段階ではまだ用地買収に入れるという状態ではございません。
  198. 楯兼次郎

    ○楯委員 ちょっとこれは場違いかもわかりませんが、この空港開港見通しはどうですか。本体の見通しがわからぬのに仕事の進めようはないでしょう。
  199. 住田正二

    ○住田政府委員 私の担当ではございませんが、成田の新空港につきましては、来年の春以降に開港をできるのではないかというように聞いております。
  200. 楯兼次郎

    ○楯委員 担当者が見えぬそうですからこれ以上追及しないのですけれども、この計画一つを見たって、これはもう相当、でたらめという言葉は当たるかどうかわかりませんが、いいかげんなものですよ。そう思いませんか。  それから、次に進みまして自動車ですが、私は自動車の生産を制限せよとは言いませんが、いま物すごい自動車ラッシュですね。輸出も多いでしょう。だから、通産省の方にお伺いしたいが、日本での自動車の保有台数は現在三千万台あるということが統計に出ておるわけですね。これは今後何台ぐらいがわが国における台数の最も適正な規模であろうかということをお伺いしたいのです。
  201. 中沢忠義

    ○中沢説明員 御説明申し上げます。  先生の御指摘の保有台数についての今後の見通しでございますが、通産省に産業構造審議会というものがございまして、自動車分科会で、四十九年をベースにいたしまして、今後五年ないし十年の保有台数、国内需要、生産、輸出という見通し関係者に集まっていただきまして慎重に積算いたしましたが、その結果を申し上げますと、結論的には、昭和四十九年を基点にいたしまして、昭和五十五年までの六カ年におきましては年率につきまして三・九%の伸びを示しまして、昭和五十五年では三千三百八十万台という見通しを得ております。また、昭和六十年につきましては、四十九年を基点といたしまして年率三・一%の伸びの結果、昭和六十年では三千七百四十万台程度の保有台数になるだろうという見通しになっております。  これは昭和四十年代の年率一八・二%の伸びに比較いたしまして三%程度ということで、普及台数にもよりますけれども、今後の保有台数の伸びは非常に落ちるという結論になっております。
  202. 楯兼次郎

    ○楯委員 この台数の、道路の許容量だとか、そういう面積等から比較して将来の適正台数はどのくらいであるか。もうこれはほうっておけば、車に乗ってはなかなか目的地へ到着しませんわな。だから、どのくらいが適当であろうかということを伺います。
  203. 中沢忠義

    ○中沢説明員 お答えいたします。  これは道路の建設状況あるいは交通流の改善問題等とも関係いたしますけれども、この産構審の見通しといたしますと、今後十年の中期的な見通しといたしましては、四千万台弱の程度が適正な自動車の保有レベルではないかというふうに見通しておるものでございます。
  204. 楯兼次郎

    ○楯委員 もう一問で終わります。  今度は、道路の通行規制に関連して労働省の方にお伺いしたいのですが、深夜の高速自動車道の交通量は物すごいものがあるだろうと思うのです。これはたとえば東名で深夜どのくらいの交通量を把握されておるかということと、それから、長距離トラックの労働者労働条件が極度に悪化していると思うのです。せんだっても、北海道から九州まで寝ずにトラックを運転していたというようなことで事故があったが、トラックの運転手はもう命がけで働いておるというような印象を簡単に言うと受けるわけです。したがって、これは、労働基準法違反とそれから騒音公害というような点から考えて、労務管理の行政指導はどのようにやってみえるかという点をお伺いしたいと思います。
  205. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 お答えいたします。  深夜高速道路で長距離運転がどのくらいあるかということにつきましては労働省で調査した結果はございませんが、五十年におきまして長距離運転の実態につきまして調査いたしましたところ、十二時間を超えまして運転をしているというようなケースが全体の三〇%ございました。これらの中で、いわゆるハンドル時間と申しますか、連続して非常に長時間ハンドルを握っているというようなものが三〇%ちょっとございまして、われわれといたしましては、長距離運送におきます長時間運転なり長時間のハンドル時間につきましては好ましくないということで、昨年、長距離貨物運送に従事する運転者につきましては、一ハンドル時間につきましては五時間以内で適宜休憩なり交代をするようにという指導通牒を発しまして、現在業界及び個別の事業場につきまして監督指導を行っているわけでございます。  そのほか、労働基準法におきまして労働時間の規制がございますが、四十二年以降、自動車運転手の特殊性に基づきまして、この基準法よりもさらにシビアな改善基準を設定いたしまして、一日の労働時間、一週間におきます勤務の時間につきましても一定の制限を設けまして、関係業界、関係事業場につきまして計画的な指導を続けてきているわけでございます。
  206. 楯兼次郎

    ○楯委員 終わります。      ————◇—————
  207. 中川一郎

    中川委員長 この際、連合審査会開会の件についてお諮りいたします。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案について、本日物価問題等に関する特別委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。
  208. 中川一郎

    中川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、本連合審査会の開会日時は、物価問題等に関する特別委員長と協議いたしましたが、明七日午前十時から開会する予定でありますので、お知らせしておきます。      ————◇—————
  209. 中川一郎

    中川委員長 質疑を続行いたします。  坂本恭一君。
  210. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これまでにたくさんの委員の方からそれぞれ御質疑がありましたし、余り同じようなことをお尋ねしても意味がないのじゃないかと思いますけれども、若干は重ならざるを得ませんので、その辺は御了承を賜りたいと思います。  一番最初に大臣にお聞きしたいのですが、全く素朴な疑問なんですが、約七兆円に近い債務が現在残っておるわけです。この債務をだれかが何とかしなければならないという全く素朴な疑問があるのですが、それじゃだれがその債務を処理しなければならないのか、これについて大臣の御見解をまずお聞きしたい。
  211. 石田博英

    石田国務大臣 今日の事態に至った責任論というものは一応別にいたしまして、現在ある債務のうちで、大ざっぱに申しますと、先ほどもお答えを申し上げたとおり、現在の世代のわれわれが残した赤字というものはわれわれの世代のうちに片づけておくべきものだ、言いかえればこれは国庫が肩がわりして処理していくべきものだと考えておりますが、現在施設、財産等として残っておるものについては、その運用を改めることによってこれから後の利用者も御負担を願いたいと、基本的にはそう考えております。
  212. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そういうお答えが出てくるだろうともちろん予想していたのですけれども、いまの大臣お話ですと、いわゆる三方一両損的な物の考え方じゃないか、過去の債務というものは、われわれも含めてこれまでの国民が全体的に負担をして処理をすべきではないか、その上で国鉄再建を図っていくのが一番筋が通るのではなかろうか、と、私はこのように考えているのですが、いかかですか。
  213. 石田博英

    石田国務大臣 私は、やはり、施設を利用する方も御負担を願いたいものだと思っております。
  214. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 赤字がいままでたまってきた責任については、これ以上私からは申し上げません。(発言する者あり)
  215. 中川一郎

    中川委員長 静粛に願います。
  216. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 昨年の十二月三十一日の閣議了解の再建対策要綱というものがあるわけですが、これの一番最初の「国鉄の役割」というところに「独立採算性を指向した自立経営を行う」ということが明記されております。しかし、たしか田中内閣のころだったと思いますけれども、民営論とか、あるいは地方線については分割論とかいろいろなことが一これは一部民営論になりますか、そういうようなことが言われておりましたし、当委員会でも、たしかそのころの藤井総裁にはいろいろその点についての質疑等もあったように記憶をしておりますけれども、大臣はその点についてはどうお考えになりますか。
  217. 石田博英

    石田国務大臣 地方線の赤字問題の処理が必要なことは言うまでもないわけでございますが、その処理の方法の一つとして、いまお話しのような民営論とかあるいは委託論とかいろいろな議論が出ておることも私も承知いたしております。  どういう議論が正しいかということと、また、それを実行に移す場合には地域住民方々の同意、協力がどうしても必要になるわけですので、そういうものが得られるかということをいま私どもの方で審議会で御検討を願っておるわけでありますが、ただ御検討を願うというのではなくて、幾つかのたたき台をわれわれの側からも出して御検討を願い、できるだけ早く結論を出して処置に入りたいと考えておる次第でございます。
  218. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 ここにあるところの、先ほど申し上げました「独立採算性を指向した自立経営を行う」というのは、いわゆる現行の公共企業体という形態を引き続き継続してとっていくというお考えだと受け取っていいんでしょうか。
  219. 住田正二

    ○住田政府委員 再建対策要綱の中で「独立採算性を指向した自立経営を行う」ということを言っております趣旨は、いま先生の御指摘のとおりでございます。  ただ、これは基本的な話でございまして、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、地方ローカル線の一部を切り離すとかあるいは民営に持っていくということとは直接は関係ない問題ではないかと思います。
  220. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 別の問題だということは先ほどの御答弁でもわかりますけれども、いわば地方ローカル線を民営にするというか、自治体に——これはどういう形態にするかは別にして、いまの国鉄でさえなかなか採算ベースに合わないから切り離しをしようというようなことを考えておられるんだろうと思うのですけれども、それを引き受けるというところは、まず普通に考えればないと私は思うのですね。ですから、そうなると、その地域の住民の人たちの足をどうするのかというような観点に立てば、やはり、切り離さないで現状のまま公企体としてやっていき、その中で解決していく問題ではなかろうかと思うのですが、いかがですか。
  221. 住田正二

    ○住田政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げまておりますように、地方交通線の問題の対策としてはいろいろな対策考えられるわけでございまして、どういう対策地元の方が選択するか、今後地元との協議によって方針を決めたいと思っておるわけでございます。  私どもとしては、地方交通線は全部地方公共団体に移譲するんだとか、あるいは民営にするんだとか、あるいは廃止をするんだということを現段階で決めているというわけではございませんで、地元の方といろいろお話し合いをした上で方針を決めたいと考えているわけでございます。
  222. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 まさに、皆さんの方が白紙の状態で臨んでいって、話し合いの結果こうなったというのであれば、これはそれなりのものはあるのですけれども、何となく一定の基準を決めてやっていくというようなくせがどうもあるような感じかあるんですね。ですから、そういうことはぜひないようにしていただきたいと思うわけです。  また、地方線の問題が出てきましたから、それに関連して別の問題に入っていきますけれども、いま地方線と言われるものはいままでのところは恐らく全部赤字ですね。そういうように赤字であることはあるんだけれども、やはり、住民の足を守るということになれば、どうしてもこれは必要なものだというふうに考えられるわけです。ですから、赤字だからそれじゃ地域の人と話をして、それで話がつけば民営に移すとか国鉄から切り離していくというような議論はちょっと短絡的だと私は思うのです。  ですから、最初に申し上げましたように、地方線区というのはまさにほとんど全部赤字になっているわけですが、赤字だから全部切るということには多分ならないだろうと思うのですが、その点についてはいかがですか。
  223. 住田正二

    ○住田政府委員 先ほども申し上げましたように、地方交通線は赤字でございますが、それを廃止するということを決めているわけではないわけでございます。  ただ、私どもとして申し上げたいのは、これまでの経験でございますけれども、地方交通線をどうするかということでいろいろ検討している経緯におきまして、地元の方がほとんど利用されない——ほとんどというのは語弊もあるかと思いますけれども、利用度がきわめて低い、バスを利用するとか、オーナードライバーになっておられるとか、実際に鉄道を利用していないにもかかわらず、廃止ということになると非常に反対をされる。一種の地域エゴではないかと思いますけれども、そういうことではやはり問題は解消されないのではないかと思いますが先ほど来申し上げておりますように、いろいろな案を出して、それを選択していただく。せっかくあるものを廃止するということは策としては一番まずい策であるわけでございますので、赤字解消の方策が得られるのであれば、何も無理をして廃止をする必要はないわけでございます。
  224. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 その議論はいままでも大分ありましたからこの辺でやめますが、再建対策要綱の赤字ローカル線関係した記述の部分があるわけですが、この中で「国の積極的な支援のもとに」という表現が使われているのですが、具体的にはどういうことですか。
  225. 住田正二

    ○住田政府委員 この再建要綱では、地方交通線の対策国鉄責任において処理するということになっているわけでございますが、これは国鉄だけで処理できる問題ではないわけでございまして、やはり、国の積極的なバックアップが必要となるわけでございます。  国の支援の具体的な内容でございますが、一つは財政的な支援と、一つ行政的な支援と、二つあろうかと思います。財政的な支援につきましては先ほど来この席で申し上げているわけでございますが、本年度百七十二億円の交付金を計上いたしておりますが、来年度、現在運輸政策審議会にお諮りいたしておりますので、その御意見を伺った上でさらに財政援助の強化に努力をいたしたいと思っているわけでございます。また、行政的支援といいますのは、仮に廃止をしてバス輸送の方に転換するという場合には道路の整備も必要な場合があると思いますし、その他いろいろ道路輸送の転換に必要な行政上の措置があれば、そういう面で国が努力するということでございます。
  226. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 国鉄だけで処理できる問題じゃないからという御答弁があったのですが、ということは、これから将来に向けても、赤字ローカル線についてはやはり国鉄だけで処理できる問題ではないということになるのじゃないかと思うのですね。だから、その点については、積極的な支援は結構ですけれども、過去も、国鉄に余りにもなすりつけてしまって国がめんどうを見ていなかったという結果が出ているわけですから、「国鉄責任においてその取扱を検討することとする」ということかその後に続いているのですが、これはむしろ「国鉄責任において」というよりも、「国の責任において」と書きかえた方が本当はいいのではないかと思うのですが、いかがですか。
  227. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄は明治以来二万一千キロの路線を運営いたしてきたわけでございます。その中にはもちろん幹線のものもありますし、地方交通線もあるわけでございまして、それを全部合わせまして国鉄経営責任を負っているわけでございます。したがって、言葉の問題ではございませんけれども、二万一千キロの路線をどう経営していくかということはやはり国鉄責任であると考えるべきではないかと思います。  私企業の場合でも、たとえば中小私鉄をとりましても、地方交通線の整理というものは私企業責任でやっているわけでございまして、別に国の責任でやっているわけではないわけでございます。ただ、私鉄の場合と国鉄の場合とはやはり差があるわけでございまして、国鉄責任だけでは処理できない面も多いであろう、そういう意味で国の積極的な支援を行うということにいたしているわけでございます。
  228. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 御説明は御説明で理解はできるのですけれども、基本的な物の考え方に違いがあるというのはどうしようもないことかもしれませんけれども、私どもは、むしろ、これまでの赤字の要因はローカル線だけではないのでしょうけれども、そういう点を一つとらえてみても、国がいままで余りにも責任を持っていなかったという結果が出てきているのじゃないかと思うのです。ですから、基本的な物の考え方としては、むしろ国が過去の債務についてももちろん責任を持たなければいけないだろうと思うし、将来の問題に向かっても、それは企業努力とかなんとかいうことはもちろんのことにして、もしそれでもなおかつ赤字が出てきて、そしてそれが特に地方ローカル線だというような関係になれば、これは地域住民一人一人云々というよりも、むしろ国が責任を持つべきではないかと私は考えるわけですが、それは平行線だろうと思いますから、これ以上やりません。  次に移ります。  もちろんこの再建対策要綱の文章をまた引用することになるのですけれども、「責任ある経営体制の確立」の中で、「労使関係を速やかに正常化する」という文言が使われております。これは昨年末のスト権のときにもいろいろ問題がありましたし、したがっていろいろな問題点が当委員会でも論議をされたように記憶をしております。ですから、スト権の問題については余り触れるつもりはありませんけれども、「労使関係を速やかに正常化する」という言葉の意味はどういうことなんでしょうか。
  229. 住田正二

    ○住田政府委員 今回の国鉄財政再建の基本的な考え方でございますけれども、財政面の健全性が回復されただけでは国鉄の財政再建は達成されない、やはり、国鉄の運営をやっておりますのは国鉄の労使でございますので、労使が一体となって企業運営に努力しないと今後健全運営を維持することがむずかしいだろう、そのためには労使関係の正常化を図る必要がある、現在のような労使関係の乱れでは、たとえ財政面の再建ができても再建はうまくいかない、そういうことで労使関係の正常化が必要である、と、こういうことをうたっているわけでございます。
  230. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 この閣議了解はまさに暮れに出たわけですから、その前に、スト権についての政府の基本見解ですか、基本方針ですか、そういうものが出された後にこれがつくられているわけですね。まさに、スト権ストに向けて労使関係というものは完全に不正常化していた。だからこういう言葉を使ったのじゃないかと私は思うのですが、いかがですか。
  231. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄の労使関係が昨年スト権ストを契機に不正常化したことは間違いないわけでございますけれども、しかし、スト権ストだけが原因ではなくて、マル生運動以降国鉄の労使関係が荒廃しておったことは事実でございます。それにスト権ストが輪をかけたということはあり得ると思いますけれども、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、財政面の再建だけではだめだという認識のもとにこういう字句をうたったわけでございます。
  232. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そうすると、国鉄の方に伺いますが、労使関係を速やかに正常化するためにどういう施策を具体的にとっておられますか。
  233. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいまの御指摘の文言の趣旨は別といたしまして、私がいまやっておりますのは、何と申しましても、輸送産業の場合には、設備投資によって物をつくるということにウエートがある産業に比べますと、はるかに労働集約的な産業になっております。それから、国鉄の場合には、バスあるいはトラックの運転手さんの勤務形態なんかと大変違いまして、車を運転する人、それから修理をする人、信号のことに当たる人、駅務に当たる人というふうに非常に分業、専門化をいたしておるわけでございますが、その専門化したものが緊密に一定の決められたルールに従っておのおのの職分をきちっと守っていくということでないと列車が動かないということで、その意味では、労使の間もそうでございますけれども、職員が相互において一体感を持つということがなければ列車、電車がうまく動かないという体質を鉄道というものは基本的に持っていると思います。その点を考えますと、いまの赤字という問題もありますけれども、赤字があるなしにかかわらず、労使、そしてそれぞれの職員が相互に一体となって自分の国鉄というものを、自分の鉄道というものを守っていこう、そして守り立てていこう、そしてお客ざんに最大のサービスを提供するにはどうしたらいいかということを考えるというような雰囲気ができてこなければならないというふうに思うわけでございます。  私は別に具体的な新しい制度をつくるとかなんとかということはやっておりませんけれども、あらゆる機会にそういうことを職員の諸君に呼びかけることによって、職員の一人一人が自分に与えられた仕事をまずきちっとやり、そしてそれが全体にどういうふうにつながっているのだということを理解をして、そして、同時に、ただ車を動かすとか車掌さんの仕事をするとかいうことのほかに、国鉄という自分のうちの経営なり事情はどういうことになっておるのかということに関心を持ち、自分の問題として考えるような空気をつくらなければいけないぞというふうに呼びかけているわけでございます。  夏前から労使懇談会というようなものを考えまして、主要な各組合と私どもの間で経営問題についてもいろいろ話し合おうじゃないかということを——つまり、労働組合の労働法上による交渉とか協定とか、そういうかた苦しいことは別にして、それとはまた別のお座敷でそういう話をいろいろしようじゃないかということを呼びかけているわけでございますが、職員諸君といいますか、組合の方もそういう呼びかけに対してはむしろ積極的に応ずるということになってきておりまして、ごく徐々にではありますが、国鉄経営の問題、国鉄自体の問題について、余り形式張らないでわりと気楽な立場話し合いをしていくという雰囲気が生まれてきていると思います。ただ、長年のいきさつとぬぐいがたい対立感みたいなものがありますのでちょっと時間がかかると思いますけれども、少しずつそういう雰囲気は生まれてきているというふうに思いますので、この空気を進めていきたいというふうに思っております。
  234. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そういうふうに積極的に進められているということは、そのまま受け取っておきます。  そこで、これは前にもたしか前国会のときに御答弁があったかと思いますけれども、例のスト権の問題について、前藤井総裁は条件つき付与論ということを明言をして、当委員会、予算委員会等で発言をされておりましたが、高木総裁は当然その藤井前総裁の考え方と同じように考えておられるということになるのでしょうか。
  235. 高木文雄

    ○高木説明員 私は、藤井総裁がスト権を条件つきで付与したらどうだという御意見をお持ちになったことにつきましては、それは決して藤井総裁の個人的な思いつきということから出てきたものではないと思います。それはそれなりに、長年の御経験と、それから現状を見てそういう意見を出されたものと思います。しかし、そのことがまたいろいろな世間の批判を受けたわけでございまして、それに関連してスト権ストが起こったという事実もまたありましたけれども、条件つきスト権付与ということについて幅広い支持が得られないという状態でああいうことになっていったと考えております。  たまたま基本問題について、内閣といいますか総理府に再び審議会が設けられて、そこで、スト権問題といいますか、労働基本権の問題と、それから私ども公共企業体の経営形態のあり方の問題を一括してもう一遍いろいろ議論しようということになっておりますので、私といたしましては、現在のところ、積極的にこの問題について私としての意見なり国鉄としての意見なりを申し述べるというのには適当な機会ではないのではないかということで、いま意見表明を差し控えておるわけでございます。しかし、いずれの日にか、この審議会におきます審議の進みによりましては、また、その後の労使間の進みぐあいを見ましてある種の意見をまとめる時期が来るかと思いますが、今日の段階ではそれを申し上げないという意味ではなくて一意見というものをまとめないままにしておるということでございます。
  236. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 たしか五月の時点だったと思いますけれども、組合との話し合いの中で、いわば避けて通れない問題だというような発言があったということを新聞等を通じて私どもは聞いておりますけれども、その点についてはいかがですか。
  237. 高木文雄

    ○高木説明員 これはやはり労使の基本問題でございますので、私は、時期が来ればそれは避けて通れない問題だと考えておりますが、現在まだ昨年から一年足らずしか経過しておりませんし、あのスト権ストに対する利用者といいますか、国民の皆さんの批判も非常に強い、まだ傷がいえていないという状況でございますので、いままだそういうことについて何か見解を出しますのには適当でない。しかし、これは全然私の仕事ではないよと言うわけにはまいりませんので、そういう意味におきましては、国鉄の総裁として時期により何らかの意見を出すべき時期が来る問題でありまして、そういう意味で避けて通れないと申したわけでございます。
  238. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 スト権の問題についてこれ以上深入りする気はありませんけれども、運輸省の方にちょっとお伺いしたいのですが、例のスト権の新しい懇談会の現状までの経過をちょっと教えていただけませんか。
  239. 高木文雄

    ○高木説明員 メンバーが決まりまして、部会が決まりまして、国鉄担当の委員が決まりまして、そして会長さんも決まりました。たしか、どういう手順でこれから勉強していこうかということの打ち合わせが済んだところだと思います。九月から始まったばかりでございますので正確には存じておりませんが、一、二回会合が持たれたという程度の進みぐあいであると聞いております。
  240. 住田正二

    ○住田政府委員 今度の懇談会の中には三つの部会が設けられております。経営形態の問題と、それから当事者能力の問題と、それから法令問題と、三つの部会がございます。経営形態の中に国鉄、電電、郵政等の各公共企業体別に分科会が設けられておりまして、国鉄関係では第一回だけ顔合わせをしたというように聞いております。
  241. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 スト権は触れないでいきたいと思いますけれども、若干国鉄の当局の方から御説明を願いたいのですが、当局と労働組合との間の訴訟の関係ですが、現在係属中が何件で、これまでに判決があって確定したものが何件であるかというようなことをちょっと数字を挙げていただきたいのです。
  242. 田口通夫

    ○田口説明員 組合との関係で現在係属中の案件が九十件でございます。そして判決が出ましたものが二十件でございます。
  243. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいまの二十件は確定した分でございます。
  244. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そうすると、現在係属中の九十件は、一審、二審、三審という、そのどこに係属をしているのか、それはわかりますか。
  245. 栗田啓二

    ○栗田説明員 補足して御説明申し上げます。  現在係属しております事件は九十件でございますが、現在地裁段階に係属しておりますのが七十七件、高裁段階に係属しておりますのが十二件、最高裁に一件係属いたしております。
  246. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 まだ、地裁の段階がほとんどということですね。九十件のうち七十七件が一審ということですね。
  247. 栗田啓二

    ○栗田説明員 御指摘のとおり、七十七件が第一審に係属いたしております。
  248. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 九十件と、確定したのが二十件ということは、いままで国鉄当局が対組合との間で訴訟をやっている総数が百十件になるということですね。そのうちまだ二十件しか終わっていないということになるわけですね。  先ほど来労使関係の正常化ということが言われているわけですけれども、そういう観点から、こんなにたくさんの訴訟案件を抱えているということはどういうふうに総裁はお考えですか。
  249. 栗田啓二

    ○栗田説明員 御説明が漏れておりまして大変申しわけございませんでしたが、確定しましたほかに、訴えの取り下げになりましたものが十四件、訴訟中和解になりましたものが十件、合計二十四件が判決でなくて終了いたしておりますので、つけ加えて申し上げさせていただきます。
  250. 高木文雄

    ○高木説明員 そういう事件がたくさんあり、訴訟事件で当局側と、それから同じうちの職員とが争わなくちゃならぬという事態が起こっているということは決して平常な状態ではないと思うわけでございます。ただ、私どもといたしましては、それぞれの案件につきまして、一々それぞれの理由によりまして現行法上そのような扱いをせざるを得ないというもののみに限定して訴訟事案として扱っておるわけでございます。好きこのんで多くの事件を訴訟に持ち込んでいるというつもりは決してないわけでございます。こういう事態は過去におきますいろいろのいきさつとか歴史的な事情とかいうものから生まれてきたわけでございますが、今後におきましては、何よりもそういうところへ持ち込まなければならぬような事件が起きませんように、対立的緊張感をもう少し取り除いていく努力を日ごろふだんからしでいく必要があると思います。  いま起こりました、現に係属になっております案件につきましては、過去の経緯もありますし、裁判所の判断を仰ぐということ以外に道はないのではないかと思っております。
  251. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 先ほど追加して説明されましたが、取り下げが十四件、和解で終了したのが十件ということですが、和解をしたものもあるわけですね。それぞれケース・バイ・ケースだろうと思いますけれども、和解というのは話し合いができたということですね。そういうものが百三十四件のうち十件あるということは、それぞれ民事事件というのは和解の可能性があるわけですが、そういう点について努力をされてきているのか、また、これからそういうことをしようと考えておられるのか、その辺はいかがですか。
  252. 高木文雄

    ○高木説明員 法曹界の坂本先生に申し上げるのは非常に恐縮でございますけれども、現在、御存じのように、労働関係の案件につきましては、率直に申しまして非常に類似した事案について裁判所ごとに判断が分かれるというような場合もあるわけでございまして、非常によく似た事件で、地域といいますか、裁判所ごとに違う判断が出てくる場合もありますので、労働問題についての一種の裁判上の法的安定性というものが十分まだできていない段階でありますものですから、私どもといたしましても、ずいぶん長いこと争っている問題についていつまでも訴訟を係属しているということについては一面においてはいささか疑問を持つわけでございますけれども、現在の労働案件についての訴訟の実態から言いますと、一度提起いたしましたものについてそう個別に争うのはもうやめようやというわけにもいかないわけでございますので、基本的にはおっしゃるように和解できるものはなるべく和解していくということは言うまでもございませんが、そう多くのケースについてこれを整理していくというふうには結果としてならないのではないか、もう少し様子を見てやっていくより仕方がないのではないかというふうに私はいま思っております。
  253. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 和解というのは、それは訴訟の過程の中でそれなりのチャンスがないとやはりなかなかできないということは十分わかっているわけですけれども、それにしても、当事者双方がそのつもりにならぬことにはまず話にならないわけです。ですから、そういう心づもりといいますか、そういう方向で物が考えられていくようになれば案外できる。全然和解になじまないものもあろうと思いますけれども、まあ、和解ができそうなものも結構あるように思う。私自身も一件抱えていますし、いろいろ話を聞いているので、当局の方がそういう物の考え方になれば、それは組合の方だって多分応じていくだろうというふうに思いますが、その点でいかがですか。
  254. 高木文雄

    ○高木説明員 もう少し個別の案件を私自身勉強してみませんといけませんのですけれども、いずれにしましても、何とかして労使関係を正常化していこう、対立的な零囲気を解除していこうという基本的な考え方から言いますと、いま御示唆のありました点も非常に重要なポイントであろうかと思いますので、今後勉強させていただきたいと思います。
  255. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 法務課長は、いま五十一年ですが、暦年にさかのぼって、五十一年、五十年、四十九年と訴えが提起された件数がわかりますか。
  256. 栗田啓二

    ○栗田説明員 大変申しわけございませんが、昭和四十年以降の数字だけで申し上げさせていただきたいと存じます。  昭和四十年に二件でございます。四十一年に三件でございます。四十二年に五件でございます。四十三年に十二件でございます。四十四年に十一件でございます。四十五年に十一件でございます。四十六年に三十一件でございます。四十七年に二十一件でございます。四十八年に十一件でございます。四十九年に七件でございます。五十年に七件でございます。五十一年、現在までに四件でございます。
  257. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 いまの数字をざっと見ただけでも、マル生がいつ行われたかということが大体出てくるくらいはっきりしているのですけれども、そういういろいろな経過——マル生のときの事件が何となく大半を占めているような感じを受けるのですが、そういうようなことも含めて、そういう面ではかなり正常化が進んできているのじゃないかと私は見ているのです。そういう面で、先ほど申し上げた和解とか訴えの取り下げということはなかなかむずかしいでしょうけれども、和解で何とか解決をすることが、今後の正常化には非常に大きくつながりが出てくるのじゃないかと私は考えているわけなんです。  そういうことで総裁の御意見をちょっと伺わせていただきたいと思います。
  258. 高木文雄

    ○高木説明員 いわゆるマル生の問題につきましては、だんだんその思い出が薄れておりますし、いわばいい方向へいっておりますけれども、しかし、私は当時おりませんでしたからわかりませんが、当該の関係者の間ではいまもってなお忘れがたい怨念みたいなものが残っておるわけでございまして、そこで、その問題をどう処理するかということについては、まあ、私どもの幾つかの組合の相互間の問題というものが派生的に生まれてまいりますので、おっしゃることは非常によくわかりますが、なおもうしばらく様子を見た上でないと、一般論として、そのときの問題についてより積極的に和解というような平和的な方法で解決することを進めることが全体としてよろしいかどうかについては私はまだ自信がないわけでございます。  先ほど申しましたように、そこらのところの扱いが労使関係の円滑化に非常に重要な問題でございますから勉強をしてまいりますが、その際に御意見として十分承っておきたいと思います。
  259. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 それはぜひ前向きの方向で総裁自身も考えていっていただきたいということを要望申し上げておきたいと思います。  それに関連して伺いますが、これはまさに正常化を破壊するような訴えを当局の方が起こしまして、ことしのたしか二月だったと思いますが、いわゆるスト権ストについての損害賠償請求訴訟というものが出されたわけですけれども、その後その訴訟の進展はどういうぐあいになっていますか。
  260. 栗田啓二

    ○栗田説明員 本年六月十四日に第一回の口頭弁論が開かれまして、訴状の陳述、答弁書の陳述が行われております。次いで、九月二十九日、先般第二回の口頭弁論が開かれまして、原告、被告ともに第一準備書面を提出いたしまして、いずれも陳述いたしております。  次回は十二月十五日に第三回の口頭弁論が予定されておりまして、被告側の準備書面が陳述される予定になっております。
  261. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これは訴状を私も手元に持っておりますが、当局の言い分を、損害賠償の原因の事実を簡単に説明してください。
  262. 栗田啓二

    ○栗田説明員 ごく簡単に申し上げますと、まず、「被告らの行為」といたしましては、「昭和五十年十一月二十六日から同年十二月三日まで、スト権奪還闘争と称して、公共企業体等労働関係法第十七条に違反する争議行為を実施し、各所属組合員が所定の業務につかなかったため、全国にわたりほとんどの列車の運転等が休止し、原告の業務は著しく阻害された。」となっておりまして、こういう行為に起因しまして日本国有鉄道のこうむりました損害が二百二億四千八百二十七万八千円になるということでの訴状を構成いたしております。
  263. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 事実はそれで結構なんですが、違法性というのはどこにあるのですか。
  264. 栗田啓二

    ○栗田説明員 かいつまんで申し上げます。この闘争につきましては、略しまして本件闘争ということで申し上げさせていただきます。  本件闘争は公労法十七条の規定に違反する違法な行為であることはもちろんでございますが、その目的が公共企業体の職員のスト権の獲得ということにございまして、原告、つまり国鉄と、被告、つまり組合との間における団体交渉によっては解決することのできない事項を目的としたストライキでございます。いわゆる政治ストということに相なると私ども考えておりますので、これは非常に明白なものではないか、また、このストライキが連続八日間という非常に長期にわたりましたために、全国的に輸送業務を停廃させ、かつ、国民生活に重大かつ深刻な影響を与えたものでございますので、実質的に見ましても不当かつ違法な所為である、ということで違法性を構成いたしております。
  265. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そしてその公労法十七条に違反している、そこに違法性があるということですね。
  266. 栗田啓二

    ○栗田説明員 違法性の一つの理由として、公労法十七条違反の事実を摘示いたしております。
  267. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 違法性の理由の一つというと、ほかにもあるのですか。
  268. 栗田啓二

    ○栗田説明員 先ほど申し上げましたように、当事者間で解決できない事項を目的とした、いわゆる政治ストという面と、それから、非常に長期にわたり、かつ全国的規模にわたりましたために国民生活に対し著しい影響を与えたという二点も違法性の問題として列挙してございます。
  269. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 その政治ストとか、あるいは長期間にわたって停廃したとか、それは法的に言うとどこに該当するのですか。
  270. 栗田啓二

    ○栗田説明員 違法性を理由づける事実であろうと存じます。
  271. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 法的根拠は何の法律の何条ですか。
  272. 栗田啓二

    ○栗田説明員 民法七百九条でございます。
  273. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 それを最初からそういうふうに言えばいいのです。  要するに、その七百九条の不法行為が——根拠の事実として、その政治ストと長期間にわたって停廃を及ぼしたという、この二つの事実が七百九条に該当するということになるわけですか。
  274. 栗田啓二

    ○栗田説明員 民法七百九条で要求されます権利侵害の違法性の理由といたしまして、先ほど申し上げました三点を数えているわけでございます。
  275. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そうすると、その七百九条の権利侵害の事実の中に、その公労法十七条違反と、それから政治ストと、長期間にわたって停廃を及ぼしたという、この三つの事実が入るということですね。
  276. 栗田啓二

    ○栗田説明員 御指摘のとおりでございます。
  277. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これは裁判にかかっていますからいつになるかわかりませんけれども、法的な判断は恐らく裁判所が下すんだろうと思うわけです。しかし、いま申し上げた三つの事実がいわゆる七百九条の構成要件ということであるわけですから、公労法十七条についてはちょっともう一回説明をしてもらいたいのですが、公労法十七条に違反すると当然民法の七百九条に該当をするんですか。
  278. 栗田啓二

    ○栗田説明員 この辺につきましては、裁判所の御判断を待ちたいと存じております。
  279. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 裁判所の判断に待つのは結構なんですが、皆さん方の見解をいま私は聞いているのですよ。裁判所の判断はいずれ出てくるでしょうから。
  280. 栗田啓二

    ○栗田説明員 違法性があると存じております。
  281. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 では、もう一つ突っ込んで聞かせてください。公労法十七条の法益というのは何ですか。
  282. 栗田啓二

    ○栗田説明員 公共企業体の事業の運営を円滑ならしめることによりまして、国民生活を保護することであろうと存じます。
  283. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 その辺になるとまた意見の違いが出てくると思いますし、ここでこんな議論をやっていたって余り意味はないんだろうと思いますけれども、法的にもかなりいろいろな問題かあろうと思うのですね。  いま法務課長の方から御説明いただいたのですが、法的に見てもいろいろ問題があって、さっき伺ったところでいくと、裁判所は口頭弁論が大体三カ月に一回ぐらいのペースですから、これは恐らく容易なことではないと思う。何年かかるかわからないというような、いわばどろ沼的な問題じゃないかと私は考えているのですが、こういうことを長いことやっておって労使関係の正常化にいい影響があるんでしょうか。
  284. 高木文雄

    ○高木説明員 常識的に言いまして、とにかく非常に長いストがあって、その結果として私ども国鉄経営にとりまして非常にマイナスになっておることは事実でございます。そのマイナスになっている事実について、これを放置しておいてよろしいかどうかということについてはいろいろ御議論があろうかと思います。  私どもの解釈で、現行法上違法な行為があって、その違法な行為の結果——違法であるということはともかくといたしまして、結果として非常に大きな経営上の赤字が発生した。その赤字が発生したものについて、いわば明確に相当因果関係があるという場合に、経営者の立場において、いわば国民からお預かりして国鉄経営に当たっている者としてそれを放置しておいていいか——赤字が生まれたとなりますと、またそれが次の値上げの一要素になりましたり、あるいは補助金をいただく原因になりましたりするわけでございますので、そのことについて一切もやもやとしたままの状態に放置しておいていいかということになりますと、これはいろいろな方にいろいろな御意見がございましょうけれども、一遍きちっとしておいた方がいいのではないかという声が世論的にも非常に強いと私どもは理解をいたしておるわけでございます。  確かに、この問題がごたごたと長く続きますことは、労使関係の面から言いますと好ましいことではないことは承知をいたしておりますけれども、さりとて何かふたをしたままで置いておくべき問題でもないと思うわけでございまして、当国鉄だけでなくて、公共企業体全体のいろいろな紛争に絡む問題の処理をどうしたらいいかということについて、裁判所の判断をこの際求めておくということが必要なことではないかと考えているわけでございまして、私どもも、これをただ長く紛争を引っ張っておくという意味では決してなくて、適当な時期にしかるべき判断を求めたい、それがまた国鉄経営についての国民の理解を得る一つの道であろうかと考えております。
  285. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 あの当時にそういう国民の世論があったとは私は考えられません。どこかから圧力がかかったということはいろいろ聞きましたけれども、それは別問題にしても、この辺で一遍けじめをつけると言うが、一遍けじめをつけるのに十年も二十年もかかっているのじゃ話にならないと思うのですが、どうなんですか。
  286. 高木文雄

    ○高木説明員 何しろ初めての事案でございますし、原告も被告も相当勉強しながら訴訟を進めていくということになりますので、そう性急に早くやれというわけにもまいりませんけれども、いま言ったような意味におきまして、私どももできるだけ早い時期に裁判所の判断を求めるように努力をいたしたいと思います。長く続くことは決して好ましいことではないと思っております。
  287. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 大臣一言伺いたいのですが、先ほど来国鉄の方からいろいろ御説明を受けたり、いろいろ質疑をやりました。最初に申し上げたところのいわゆる労使関係の正常化という観点から、私が弁護士だからということではないのですけれども、一応こういう関心がありましたのでいろいろお聞きをしたわけですが、こういう問題も正常化についてはやはりいろいろ考えていかなければいけないような問題がたくさんあるのではないかと思うのです。     〔佐藤(守)委員長代理退席、浜田委員長代理着席〕  それに加えて、特に最後にお聞きをした損害賠償請求訴訟というのは、これはもう御承知のところだろうと思いますけれども、イギリスの方で七十数年前に同じような問題があって、それなりの解決の仕方というものが行われているわけです。タフベール事件という事件があって、その後法的に立法によって労働争議法というものができて解決をしたというケースが七十年ばかり前にイギリスの方では行われているわけです。ですから、そういうことも含めて、やはりスト権の問題については、懇談会が新発足をして、いまのところまだ動いていないのですけれども、そういう考え方でぜひ進めていただきたいというふうに考えるわけです。  その点についての大臣の所見を一言お聞かせを願いたいと思います。
  288. 石田博英

    石田国務大臣 私はしばしば労働行政をお預かりをいたしましたので、私個人といたしまして、公共企業体のスト権のあり方について意見は持っております。しかしながら、いま私は運輸大臣として公共企業体の一つである国鉄を監督管理する立場でございますし、もう一つは、現に中山先生を会長として調査会が設けられて進行中でございます。したがって、こういう立場におる私が現在の段階において私の私見を申し上げることは適当でないと考えております。  しかしながら、労使関係についての私の基本的な物の考え方を申しますと、労使関係の紛争の処理は、これを勝敗として扱ってはならない、その紛争の処理が行われた後でいかに善美な労使関係が樹立されるかという観点からこの問題を扱っていくべきだということで、これで私はしばしば労使関係の紛争の処理に当たりましたが、基本的にそういう態度で一貫してまいったつもりでございますし、今度も、これからもそういう考えで通したいと思っておる次第でございます。
  289. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 正常化の問題についてはこの辺で終わりたいと思いますが、これから幾つかの点について、余り関連性はないかもしれませんけれども、お尋ねをしたいと思います。  先ほど楯委員の質問の中にあったと思いますけれども、いわゆる新幹線網七千キロという、ここではしょっちゅう使われている言葉ですけれども、この問題について先ほど局長の答弁がありましたけれども、どうも余りはっきりしないのですね。再検討するとか、あるいは見直しをしなければならないような必要性があるのかないのか、どうもその辺がはっきりしませんので、もう一回ここで答弁してください。
  290. 石田博英

    石田国務大臣 これは私からはっきり申し上げておいた方が適当だろうと思います。  鉄道建設審議会におきまして基本計画ができ上がっておりまして、それに三つばかり種類があるようであります。鉄道建設審議会には各党の方が入っておいででございますが……(「やったことがないよ、最近」と呼ぶ者あり一私は自分も委員であったことが何度かありまして、私自身は委員として何度か出席をいたしました。そこで決まった計画でございます。そこで、これを変更するとなりますと、もう一遍その議にかけなければなりません。  あの計画ができましたときと現在とでは諸条件が非常に違ってきておることはもう御承知のとおりでございますが、ただ、こういう席上でこんなにざっくばらんに言っていいかどうかは別問題といたしまして、あの鉄道建設審議会ではいろいろな地方的事情を背景とした御発言も多くて、そういう御発言の集約体として生まれているわけでございます。したがって、いまのような状態のもとでそれを開いて修正することが適当かどうか、これはやはりちょっと考える必要があろうかと思います。しかしながら、客観的な情勢が明らかに変わってきておりますので、その実施の面におきまして情勢に応ずるような処置をいたしてまいりたい。つまり、もっと平たく申しますと、あのときつくった計画をそのまま実行するような条件では今日なくなったと認識はいたしております。
  291. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 まあ、それはニュアンスとして伺っておきます。  情勢の変化があったという認識があるわけですから、新幹線をどんどん進めていくというよりも、むしろ——数日前も私の手元に、これは皆さんのところにも多分行っているのだろうと思いますが、複線化、電化の協議会の陳情書が来たのですが、まだまだかなりたくさんの電化、複線化をしなければならないような、そういう必要性のあるようなところがあるわけですから、むしろそちらの方に力を入れていくべきではないかというふうに私どもは考えておるわけですが、その点についてはいかがですか。
  292. 住田正二

    ○住田政府委員 先ほども楯先生の御質問に御答弁申し上げたわけでございますけれども、現在、国鉄関係の投資の重点は安全、公害、合理化の面に置いているわけでございます。今後の輸送力の伸びというものはそう大きくないとわれわれは考えているわけでございますが、しかし国鉄の現状から言って、各地に隘路が出ている点も否めないかと思います。したがいまして、そういう隘路打開についてはなお今後輸送力増強工事が要るのではないかというような意味で、東北新幹線、上越新幹線あるいは複線、電化の工事をやっているわけでございますが、ただ、今後大幅に輸送力増強工事をやるというような状況ではなくなってきているのではないか、さように認識いたしているわけでございます。
  293. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 ですから、いまおっしゃることはよくわかるので、むしろ、新幹線をやるくらいだったら在来線をやるべきではないかということを申し上げているわけです。
  294. 住田正二

    ○住田政府委員 新幹線がすべて意味がないということではないので、東北新幹線にいたしましても、上越新幹線にいたしましても、すでに東北線、上越線はパンク寸前の状態でございます。複々線化のためにもう一本線路をつくる必要があるわけでございますが、その場合に、新幹線をつくった方がいいのか、在来線をつくった方がいいのかという選択の問題になりますと、やはり新幹線の方がプラスであろう、さように考えておるわけでございます。  したがって、複々線化の必要もないような、現在の在来線だけで十分運べるというようなところに新幹線をつくるということは、先ほども申し上げましたように国鉄の財政に対して相当な圧迫になるわけでございますので、そういうような工事をするよりも、在来線の強化を図っていった方がいいのではないか、さように考えておるわけでございます。
  295. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 次に、やはり再建対策要綱の中に、終わりの方ですけれども、「資産の活用及び処分並びに附帯事業の増収」という言葉が使われております。先ほど来御答弁もあったように思いますけれども、若干その点について質問をしたいと思います。  「資産の活用及び処分」の「処分」という方ですね。この「処分」というのは恐らく売却あるいは賃貸ですか——普通は処分といえば売却ですね、その点、資料をいただいておりますけれども、最近の国鉄の所有資産を処分した、土地で言えば面積、価格、それから建物とか船とかいろいろなものがあろうと思いますけれども、その辺についてまず御説明を願います。
  296. 高橋浩二

    高橋説明員 いま先生のおっしゃいますように売却したことでございまして、その売却の最近三年間の数字をちょっと申し上げますと、四十八年度にちょうど百億売却いたした、四十九年度に百三十二億売却いたした、それから五十年度に、昨年度でございますが、百六億の売却をいたしております。
  297. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 総額はわかりましたけれども、土地はそのうちどのくらいか、また、そのほか建物とか汽船とかいろいろあるということが注書きにしてあるのですけれども、その辺の内訳はどうなっておりますか。
  298. 高橋浩二

    高橋説明員 大部分が土地の売却でございまして、四十八年度では土地の面積にいたしまして約二百七十万平方メートル、それから四十九年度で二百七十万平方メートル、それから五十年度で百三十万平方メートルでございます。
  299. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 五十年度まではこれでいいのですが、五十一年度は途中なんですけれども、見込みとしては本年度見込みがわかりますか。
  300. 高橋浩二

    高橋説明員 本年度の予定といたしまして、ちょうど百億円の売却を予定しておりますけれども、最近地方自治団体等に売却する分が非常に売却がしにくいという実態がございます。しかし、ただいまのところ約半年ほどを過ぎまして、およそこの目的は達成できるだろうということでございます。
  301. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 それから、国鉄の所有の土地、建物ですね。これは処分、売却ではなくて賃貸しをしているものもあろうと思うのですが、それはどうなっておりますか。
  302. 高橋浩二

    高橋説明員 賃貸しというのは、私の方で土地を貸したもの、建物及び高架下をお貸ししでいるという、この三つをひっくるめましてお貸しした例を申し上げますと、ちょっと四十八年の資料を持っておりませんが、昨年度の五十年度では四十八億円の収入になっております。
  303. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 それは、できれば総額ではなくて——土地、建物、高架下と三つあるわけでしょう。それをちょっと言ってください。
  304. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 しばらくお待ちください。
  305. 高橋浩二

    高橋説明員 昨年度の五十年度で申し上げますと、土地代で約二十五億でございます。それから建物で五億六千万、それから高架下で十七億六千万でございます。
  306. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 いまのは昨年度一年間の収入ということになるわけですか。
  307. 高橋浩二

    高橋説明員 そのとおりでございます。
  308. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 それでは私が前にいただいたものとちょっと数字が違うので、細かく言ってください。正確に。
  309. 高橋浩二

    高橋説明員 土地の使用料が二十五億一千万です。それから、建物の使用料が五億六千七百万でございます。それから、高架下の使用料が十七億六千二百万でございます。合計いたしまして四十八億三千九百万でございます。
  310. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これは使用料なんですが、五十一年度の見込みはこれと同じですか。あるいは使用料は値上げになっているんですか。
  311. 高橋浩二

    高橋説明員 私の方の目標といたしましては、約三割ほどよけいに収入がなるように予定をいたしておりまして、目標といたしまして六十二億ほど予定をいたしております。
  312. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 三割ぐらいふえて六十二億になるというのは、使用料の引き上げによってなるのですか。それとも、新たな賃貸借契約といいますか、そういうものが結ばれているということですか。
  313. 高橋浩二

    高橋説明員 若干面積の増もあろうかと思いますが、大部分は使用料の引き上げを予定いたしております。
  314. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 最初に御説明をいただいたところの、いわゆる売却した部分については、「資産の活用及び処分」という言葉で言えば、処分をしていけば活用の範囲がだんだん狭まってくるということになってくるのですね。五十年度というのは五十年三月までを含めるわけですから、処分をして再建対策要綱の趣旨を全うしていくには五十年度はもっと多いのかと思っておったところが、四十九年度より売却したのは少ないですね。それはどんなところから出てきているのですか。
  315. 高橋浩二

    高橋説明員 昨年度百三十億ほどでございますけれども、新しく不用地が発生いたしました翌年には、売却いたすものが多くなりましたときには売却額がふえるというのが実態でございます。  たとえば高架化事業等、駅を高架化いたしますと、その高架化したために残地が生まれてまいります。そういうところが出てまいりますと、駅の付近でございますので比較的高い値段で売却できるというので、そういう収入が入るときには全体の売却額が多くなるということで、この三年、四年間はほぼ百億ぐらいが標準でございますけれども、たまたま昨年は非常な努力をいたしまして、百三十億ほどの売却額になっておるのが実態でございます。
  316. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 ついでに一つお伺いをしておきたいのですが、国鉄の場合には不動産を賃貸しと言っているんでしょうか。賃貸しする場合にはたしか大臣認可か何かが必要だと思うのですが、それを必要ではないのですか。必要なのは処分するときだけですか。
  317. 高橋浩二

    高橋説明員 面積が非常にまとまって大きな場合、あるいは一件について非常に高額な場合は大臣認可を得ますが、それ以外は国鉄の総裁限りで処理ができることになっております。
  318. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 では、参考のために伺いますが、これは多分運輸省令か何かで決まっておるのだと思いますが、その数字を明らかにしてください。
  319. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 しばらくお待ちください。
  320. 住田正二

    ○住田政府委員 運輸大臣認可を必要とする場合でございますが、貸し付けようとする財産の価額が一件につき一億円以上の場合、また、土地または建物を貸し付ける場合には、その貸付面積が一件につき七百平方メートル以上のときということになっております。そのほか細かいものはございますけれども……。
  321. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 資産の活用については、先ほど楯委員お話のときにいろいろ御説明があったようですからこれ以上申し上げませんが、処分といってもどんどん売っていけば先ほど申し上げたように活用する範囲がだんだん狭まれてくるということですが、その辺の運用はもちろん私どもが申し上げるまでもないと思いますけれども、適正な運用をぜひお願いをしたいと思います。
  322. 高木文雄

    ○高木説明員 基本的には、こういう経済状態でもございますので、貸して利用していただけるところは利用していただきたいし、また、処分することができるものは処分したいと思いますが、どうも、基本的に国鉄が大変貧乏になったという御認識が一般にはまだ広がっていないものですから、売ろうとすると国鉄なら安く売ってくれるかというふうな観念がどうしても出てくるわけでございます。  それから、もう一つは、現在なるべくならばやはり公共目的の方に売るべきだという議論がどうしても出てくるわけで、市町村とか都道府県とか、公的なものに売るべきだという議論がどうしても出てまいりますが、市町村の方もお手元不如意ということで、そうどんどん話ができないということになっておりまして、基本的には資産の処分なり活用なりをうまくやりたいという気持ちは非常に強く持っておりますが、なかなか思うように進まないというのが実態でございます。  そこで、さらにもう一つは、いままではいずれかと言えば国鉄自身の方が、土地というのは非常に大事だからということもあって、とっておきたいという気持ち、あるいは何か国鉄自体が後で使いたいという気持ちが働く。潜在的にはそういうものがあったと思いますが、これからは、事態がこういうことになっておるわけでございますし、また、各地域で駅前の相当なスペースのところを持っておってむしろ市街地の開発のじゃまになっておるというふうな場合もございますし、また、先ほど大臣からお触れになりましたように、いままで考えられなかったような活用の仕方というものも研究しなければいけないと思いますし、私ども自身の仕事のかなりのウエートを置いてこの問題に取り組んでまいりたいと思います。  ただ、いままで内部だけでいろいろ苦労しておったところが少しありますので、外部の方の御意見も聞いてやっていくというようなこともやっていかなければならないと思いますので、五十一年度で直ちに急に土地の利用料収入がふえるということはちょっとお約束できません。少し長い目でごらんいただきたいと思います。
  323. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 次に、国鉄には非常に多くの下請の関連会社があるわけですが、その窮状とか何とかということは私はこの際触れません。ただ、いろいろな形で契約をされているのではないかと思うのですが、一般的にお尋ねをすると説明が大変だというようなこともあるようですから、私の地元にあります九州整備という会社について伺いますけれども、そういうところとはどういう形の契約をしておられるのですか。
  324. 尾関雅則

    ○尾関説明員 先生の御指摘の九州整備という会社は車両清掃その他の仕事を請け負っておる会社でございますが、一般に車両清掃の契約と申しますのは、車両の形式別とか、それから掃除の程度、大、中、小とか、ホームで折り返す場合とかいうような、掃除の程度による区別、この二つによりましてある一年度の間単価を定めまして、その単価を年度ごとに契約するという方式をとっております。
  325. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 その単価の算出について細かいことは私どもは聞いてもよくわからないのですけれども、単価の算出について、いわゆる労働者の賃金等もその中に考慮をして単価を決めておられるのですか。
  326. 尾関雅則

    ○尾関説明員 契約単価の決め方は、会社から見積もりをいただきまして、その見積もりをもとにして、もう一方積算基準と申しまして、われわれの方で、先ほど申しました車種別の車両、たとえば食堂車とか寝台車とかの清掃の大掃除というのは大体どのくらいのマンパワーが必要かという基準を設けてございまして、これをこの会社では年間このくらいやっていただくことになるだろうという推定を計算いたしまして、それで一体幾らの人工が要るかということをまず計算をいたしまして、それに三省協定賃金と申しまして、労働省等で発表されております賃金の単価を掛けまして、それを根拠にして単価を計算して、それから会社の方とネゴシエーションをして契約をするということに相なっております。
  327. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 その三省協定というのをちょっと説明してください。
  328. 尾関雅則

    ○尾関説明員 建設省と労働省と、それから運輸省でございます。この三省の協定で全国各地別と職種別に賃金の日額を調査いたしまして、本年度は公共事業の積算の基準にこういう賃金が使われることが妥当であろうといって発表されておるものでございます。
  329. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 時間がないのですが、できればいまの細かいものを全部資料として欲しかったわけですが、各地区別とか何だとかいういろいろな形で大体大まかな数字がはじき出されておるのじゃないかと思うのですが、概略をちょっと説明してください。
  330. 尾関雅則

    ○尾関説明員 先ほど私の答弁いたしました中に間違いがございまして、謹んで訂正させていただきますが、三省とは運輸省と農林省と建設省でございます。  それから、先生の御質問でございますが、普通作業とか軽作業とか特殊作業というような作業種別と、そのほかに電工とか石工とかがございますが、そういう作業種別と、それから県ごとの地域別によりまして単価が定められております。
  331. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 熊本の場合はわかりますか。
  332. 尾関雅則

    ○尾関説明員 ただいま手元に持っておりませんので、必要でございましたら後ほど御説明に上がることにさせていただきたいと思います。
  333. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 先ほど申し上げましたように、いわゆる三省協定のあれは、労務職賃金算出基準というのですか、これをあらかじめいただいて検討した上でやりたかったのですが、その時間的な余裕がなかったのできょうは余り深入りするつもりはないのですが、その算出基準ではじき出されている金額というものがかなり低いというふうに私ども聞いておるのです。熊本の場合には、いわゆる地域の最賃というものがあるのですけれども、どうもそれも全うしていないのじゃないかということも聞いているので、細かい数字をいただいたらこれは一目でわかるわけですから、ぜひ早目にお願いを申し上げたいと思います。  それと、この問題については九州整備がどうということではなくて、とかくのうわさが私どもの耳に入ってくるのです。どうも地方局が金を抜いているのじゃないかというようなうわささえ入ってきておりますので、これはまた機会を見てやりたいと思いますけれども、そういうことがあり得るのですか。
  334. 尾関雅則

    ○尾関説明員 国鉄におきます契約というのは厳正に、また、結果につきましては検査院等の監査、検査も受けておりますし、そういう御指摘のようなことはないと考えております。
  335. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 ここでそれがあるというお答えはまず出てくるはずはありませんが、その資料を出していただくことと、できるだけ細かい資料をぜひお願いを申し上げたいと思います。  以上で終わります。
  336. 浜田幸一

    ○浜田委員長代理 次回は、明七日午前九時五十分理事会、午前十時運輸委員会物価問題等に関する特別委員会連合審査会、午後一時運輸委員会公聴会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十分散会