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国務大臣(三木武夫君) この点も私、亀井君の認識と同じくするものですが、やはり発展を遂げたのは
日本人の
能力でしょうね。これにはやっぱり
日本の教育というものが物を言っていますよ。明治以来貧しい中で教育というのは最優先してきたですね。だからこれだけ普遍的に教育というのが行き渡っている国はないわけです。だから新しい技術でもこなすだけの
能力は持っているですからね、
日本人は。質のいい労働力というものは、
日本人が皆積極的に働こうという、怠け者でないですからね、じっとしておれないくらい働こうという意欲のある国民ですからね。やはり優秀な
能力と
国際環境というのは言われるとおり、すべての
国際関係が
日本の発展のために追い風であったのですね。
しかし、それは皆亀井君の言われるように
日本がつくったものではないじゃないかということ、つくったものでありませんよ、しかし、それに対する適応
能力は持っておったということでしょうね。そういうことが起こっても、これに適応していくだけの
能力がなければ、そういうふうな追い風のような風が吹いてきても、それがやっぱり経済発展の契機にはなってないでしょうからね。そういう点で、
日本人はやはり変化に適応する
能力というものは持っておる。
そこで、それならば平和を維持するために
日本が
国際環境というものを安定したものにしないとだめだということはそのとおりで、これだけの燃料から原料、食糧までも輸入して、それをまた元手にして再加工するわけでしょう。それで輸出を
世界にしておるのですからね。
日本はいやでもおうでも、やっぱり
世界とともに生きていく以外に生きる道はないですから、戦争でも起こって輸送路が絶たれたら
日本はもう手を挙げざるを得ない。
日本ほどそういう点で国の民族の生存を平和に依存している国は珍しいかもしれません。いろいろな点でやっぱり海外依存度が高いですからね、それだけに
国際関係が安定した関係を持つということに対して絶えざる努力をすることが平和維持の基本だと思いますよ。
また、日米安保
条約についてのいろいろなお話がありましたが、いま亀井君ごらんになっても、一国だけで守れる国はないですよ。私は
国際的集団
安全保障の時代だと
考えますよ。それはヨーロッパの諸国だって北大西洋
条約というものが大きな支えになっているのです。東欧圏だってワルシャワ
条約というものがやっぱり
一つの東西間の均衡を維持しながら、平和のために
一つの大きな支えになっておることは事実ですからね。それだけにアメリカが簡単に日米安保
条約を廃棄するんじゃないかということ
考えますと、アメリカのためにも利益なんですよ。
日本の、アジアにおいてこれだけ安定した国、
同盟国を持って、それがアメリカの大きな軍事力を背景にした抑止力というものが
日本の繁栄の大きな支えになっておった。だからアメリカに貢献しておるわけですから、
日本ばかりが一方的にアメリカの御厄介になっているというふうなひけ目にならぬ方がいいと思う。それは、一方的な利益だけで、向こうは何の利益もないような、そういうふうな
条約というものは長く続いていくことに理由はなくなりますからね。アメリカもまたやっぱりこれによって、
日本の安定のために寄与しているということがアメリカの利益にも合致して、日米の利益が合致しておるわけですからね。そこにこの日米安保
条約というもののやっぱり基盤があるわけですから。
安保
条約は、御
承知のように軍事力のことばかり書いてないです。日米協力というものを、むしろ日米の経済協力などが前文の方に大きく出ているんですからね。安保
条約というたら軍事面だけというけれ
ども、それは
条約としてはそういう体裁を、形はとってないということになる。だから、この
核防条約に批准して、アメリカの核の抑止力というものの支えがなくなったら大変だというように
考えるということは、安保
条約がそんなに簡単にすぐにでも廃棄されるだろうという危惧は私は要らぬと思います。
また、アメリカは、この
核防条約に批准することによって
日本は道義的な責任は加重したと見ますね。そういう点で、アメリカの歴代大統領も、この安保
条約のときにもアイゼンハワー大統領も、何か声明があるでしょう。やっぱり
日本人の意思に反してするようなことをしないというような声明もあって、
日本が皆核を持ちたくないというのは
被爆国民として当然ですから。そういうふうなこともアメリカは
理解しながら、
日本を守るという
条約を安保
条約でしておるわけですから、そう簡単に
日本が、日米安保
条約というものがすぐに廃棄される日があるというふうに私は
考えないのです。
しかし、自己の専守防衛力といいますか、それは持たなけりゃいかぬです。全部をアメリカにお願いしますというふうな、そんなことは独立国家として責任を果たしておる道でないですから、
日本もやっぱり国力に相応した防衛力を持ち、そしてまた集団
安全保障、日米安保
条約、これはやっぱり
世界的な大勢ですから、そのことで
日本の自主性が失われるといったら、ヨーロッパはみんな全部自主性がないということでしょう。どこもそうは
考えてないですから。