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1976-05-21 第77回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月二十一日(金曜日)    午前十一時七分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月二十一日     辞任         補欠選任      増原 恵吉君     初村滝一郎君      稻嶺 一郎君     安田 隆明君      野坂 参三君     塚田 大願君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 久興君                 秦野  章君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 初村滝一郎君                 安田 隆明君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 竹田 四郎君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 塚田 大願君                 向井 長年君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君    政府委員        防衛庁防衛局長  丸山  昮君        科学技術政務次        官        小沢 一郎君        科学審議官    半澤 治雄君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    伊原 義徳君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省条約局長  中島敏次郎君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(第七十五回国会内閣提出、第  七十七回国会衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (核兵器拡散条約に関する決議)     ―――――――――――――
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、宮崎正雄君が委員を辞任され、その補欠として稻嶺一郎君が選任されました。
  3. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 田英夫

    田英夫君 核防条約の問題については、すでにきわめて長時間にわたって、数年にわたって検討をしてまいりましたので、問題点はほとんど検討し尽くしたという感じがしております。  しかし、最後の締めくくりの意味お尋ねをいたしますが、主として私は、日本がこの条約参加をするという状態になった場合に、ただ条約に加わっているというだけでは済まないはずでありまして、前回もそういう態度からお聞きをいたしましたけれども、むしろ唯一の被爆国であるということ、核の問題については国民全体がきわめて高い関心を持っているという、そういうレベルからすれば世界に例を見ない国であるという特徴から、むしろこの条約の中に盛られている核軍縮、あるいは非核保有国安全保障、あるいは原子力の平和利用、こういう問題についてどこの国よりも率先して先頭に立って行動を起こしていく、こういうことでなければならないと思いますので、そういう意味で、これから将来に向かって具体的に政府がどういうことをお進めになるか、そして私どもとしてもそれに対して推進をすると言いますか、そういう立場でなければならないと思いますので、具体的に政府としてはどういうことをおやりになるか。また、それがどこまで可能なのか、可能とお考えか、そういうことを順次お尋ねしたいと思います。  そこで、まず基本的な問題として、この前も申し上げましたけれども、この核防条約というのは、そもそも米ソ中心になってこの条約をつくりました段階では、つまり米ソによる圧倒的な核優位という状態を保とうという精神があったことは否定できないと思います。その点は、いわゆる部分的核実験停止条約という形で空中、大気圏内の核実験を禁止した。これは、すでに水爆をつくり上げた米ソにとってみれば、他の追随国水爆を持たないように規制するためには、大気圏内の核実験を禁止することによってそれができる。しかし、米ソともになお戦術核兵器を進歩さしていくということが必要であったために、地下における実験は存続さした。その延長線上で、今度は核を持っている国をふやさないという名目のもとに、その後生まれてきたフランス、中国を含めイギリス、この三国に対して圧倒的に米ソが核優位にあるという状態を保ちつつ、他に核保有国はふやさない、こういう精神核防条約の発祥のころの基本的な根底にあったと思います。  しかし、私どもがそういうことがあるにもかかわらず、ここで核防条約日本参加すべきという結論に達しましたのは、いまの国際情勢というものが核防条約締結されたころと根本的に変わってきているという、そういう理解があったことが一つの原因になっております。つまり、米ソというものが依然として圧倒的な核優位にある、そして軍事的にきわめてぬきんでて優位にあるということは否定できませんけれども世界情勢というものは相対的には米ソの優位、つまり政治的な観点からすると、米ソの優位というものはいま相対的には以前に比べてはるかに低くなってきているんじゃないだろうか。こういう理解があるのでありますが、この点について外務大臣はどういうふうにお考えですか。
  5. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的に田委員のおっしゃっていらっしゃること、私も同様に考えます。
  6. 田英夫

    田英夫君 そこで、一見無関係のようでありますけれども、そういう政治情勢の中で次に考えられますことはいわゆる第三世界、まあ南北といってもいいんですけれども、それよりももっと広い意味といいますか、南北というと主として経済的な南北の対立を想定、想起しますけれども、そういうことではなくて、いわゆる第三世界と言われる国々発言力国際舞台できわめて高まってきているということが一方の特色といいますか、米ソの圧倒的優位が崩れてくる中で第三世界発言力が高まってきている、こういうことが一方であります。この第三世界こそまさに非核保有国であるわけであります。したがって、私が申し上げたいのは、本来この条約非核保有国イニシアチブをとって、非核保有国の側から核を絶滅する道程として、米ソを含めて五カ国の核保有国核軍縮を強要する、義務づける、こういうことから発想すべきだったと思うのですけれども、残念ながらそうではなかった。しかし、いまやこの国際情勢の中では、この条約性格を根本的に変えていくことが可能なのではないかということに思い至るのでありますが、そうなりますと、非核保有国の中で先進国でもあり、また核を持つ能力もあり、経済力もあり、政治的な発言力国際的に高い日本が、この第三世界と言われる国々非核保有国先頭に立ってこの条約性格を変えることができないだろうか、そうして再検討会議というものも条約上去年行われましたけれども、さらにまた続くことがあるわけですから、そういう中で日本はこの条約そのもの性格を変えることができないだろうか。条文的に変えるということよりもむしろ精神的に変えていくということなんでありますが、そういうことはお考えになれないでしょうか。
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) お尋ね中心は、この条約に盛られているような物の考え方を、非核保有国の側から積極的にいわばイニシアチブをとって進めていくべきではないかというお考えでありますが、そのような発想は私もきわめて同感のできる発想だと思います。
  8. 田英夫

    田英夫君 そこで、やや具体的にその前提に立って考えてみますと、たとえば第六条の問題、核軍縮の問題で、これはきのうも宮崎委員だったと思いますが、第六条の軍縮というものがあいまいである、こういうことではどうも納得できないという御発言があったと思いますが、その点では同感なのであります。こういうところをもっと明確にするという、非核保有国立場から、米ソを初めとして核保有五カ国に対して核軍縮を義務づけるという点をもっと具体的にすべきではないか。もし、再検討会議日本が今度出席するとすればそういう点を提案すべきではないかと思いますが、これは条約上の問題、条文上の問題でありますが、具体的にそういうことはできないだろうか、やるとすればどういう表現を用意できるだろうか、こういうことをお尋ねしておきたいと思います。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米ソの核超大国が存在をしておりまして、それが無制限に核競争をして覇を競うという状態よりは、ともかく両方の間でいわゆるデタントというものを考えようという状態の方がまだしも好ましいことは確かですけれども、本来からいえば、その二大核超大国なんというものはなくなってしまった方がもっともっと好ましいことに違いありません。その方が理想であると思います。その他の核兵器国についても同様なことが申せます。  そこで、六条のような規定をより有効にどういうふうにしていくことができるであろうかと、私どももこれは問題のポイントの一つであると思いますが、これは田委員も当然お考えの上でおっしゃっていらっしゃることですが、条約文をどのように書くかということもさることながら、そのような道徳的な圧力米ソその他の核兵器保有国に、いわゆる先ほどおっしゃいました非核保有国のグループでございますね、それがどれだけ有効にかけられるかという、そういうモラルプレッシャーというものを高めていって、その結果として何か条約的なものが生まれてくる、こういうふうにやはり考えていくのがいいのではないかと存じます。
  10. 田英夫

    田英夫君 いま大臣が道徳的な圧力というふうに言われた点は私も全く同感なのでありまして、最終的には条約文を直させるところまでいくにしても、いろいろな形で、いろいろな場面で道徳的に、特に米ソに対して核軍縮をせざるを得ないような圧力をかけていくということが今後きわめて重要ではないだろうかという気がいたします。  ところが、残念ながら現在の情勢を見ますと、さすがに第三世界発展途上国と言われる国々は核を持とうということは言いませんし、また自分でつくる能力もない。そしてまた、核のかさの中に積極的に入ろうという、そういう大国依存はしないという姿勢の中から出てはおりません。その点は大変大切なことであり、いいことだと思いますが、一方、実は発展途上国軍備拡張というものはすさまじい勢いでいま広がっていると思います。しかも、通常兵器軍備ですけれども、それを主として供給しているのが米ソ中心とする先進国である。先日開かれたIPUの会議で、私は、発展途上国軍備拡張競争が非常に危険な状態になっているということを指摘をして、そういう発言会議の席でいたしました。しかし、いわゆる発展途上国、第三世界という国々はこの点についてはむしろ当然のこととしている、反省姿勢はないと思います。それはもう一つ突っ込んでいけば、発展途上国軍備拡張というのは、拡張してみたところで米ソというような圧倒的なものがある以上は、それに比べてみればささやかなものであるということがあるんじゃないかと思います。そういうことから考えても、やはり問題は、根源は米ソの特に核軍縮というものをやめさせなければならぬ。そうすると一体どういう場があるだろうか。当然考えられるのは国連とか、しかし、国連あたり発言をし決議をしてみても、これは具体的に縛ることにはならない。どういうことが想定されるでしょうか。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまなかなか複雑な問題を御提起になったわけでございます。いわゆる発展途上国米ソの核超大国主義には反対しながら、それならばわが国のような憲法を持ち、わが国のような思想を持っておるかというと、そうではない。ということは、この核関係及び通常兵器関係両方について言えることでありまして、御承知のようにこの条約に加盟していない、あるいは批准していない国を幾つか考えてみますと、インドとパキスタン、イスラエルとエジプト、ブラジルとアルゼンチンというように、ある意味で相手を意識しているような形跡がございます。そして、そういう姿勢でございますから、通常兵器の装備についてもやはり同じことが、それらの国の間で同じように通常兵器による武装が進んでいて、それを大国が、大国と申しますか、兵器供給国がいわば多少売り込み競争的なものもあって、オイルダラーのようなものが相当多額の兵器購入に向けられているという現実がございまして、このことは、今後わが国非核保有国先頭に立って米ソモラルプレッシャーをかける上で、ある意味余りよろしくない要素でございますから、この問題をどういうふうに処理処理と申しますか、どうなっていくことが望ましいかという問題が一つ確かにございます。  それはそれといたしておきまして、米ソモラルプレッシャーをかけるということになりますと、やはり米ソともいろいろ国際舞台において友好国というものを持っておる。そうして友好国の数はなるべくふやしたいし、友好国との間が緊密でありたいということば、自分自身の利益の上からも考えておることでございますから、そういう意味で非保有国であるところの米ソおのおの友好国圧力をかけ得る要素というのが、米ソの利己的な動機からも私は皆無ではないのではないかと考えておりまして、そういう意味の場を通じまして圧力をかけていく、プレッシャーをかけていくということが可能なのではないかというふうに思うわけでございます。
  12. 田英夫

    田英夫君 具体的に米ソ圧力をかける、道徳的圧力をかける、これはやはり私は第三世界結束をして、つまり非核保有国というものがまず結束をして核を絶滅するという方向に向かってコンセンサスを持たなければならないと、こう思います。にもかかわらず、さっき私が申し上げたように、大部分の第三世界国々は、核は持とうとはしておりませんが軍備を拡張している。こういう状態の中で果たして可能なんだろうか。きわめて短絡的に言ってしまえば、日本のような平和憲法を持っている国だけしかそれは言えないのじゃないだろうかということになるかもしれません。しかし、現実にたとえば非同盟諸国会議というような場面でそういう合意が生まれるとすれば、これは一つの力になるんじゃないかという気がいたしますが、そういう点で具体的にどういう場があるか、もう少しお考えを伺いたいと思います。
  13. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、非同盟会議というようなものは確かに一つの場でございますけれども、この辺からあるいは田委員と私との見方が多少分かれるかもしれないと思いますのは、非同盟会議そのものが、一般的な数々の案件について基本的に中立的な姿勢であるかどうかということになりますと、いろいろ具体的なケースについて見ておりますと、必ずしもそうは言えないのではないかという感じを私としては持つわけでございます。米ソモラルプレッシャーをかけるということの成功の秘訣といいますか、かぎは、どっちにも偏らないで両方圧力をかけるということでありませんと、すぐに拒否反応に会うということでございますので、したがって、純粋にそういう意味での中立的な場、あるいは中立的な立場から両方圧力をかけるということでなければならないであろう。いまの現状で非同盟会議というようなものがそういうことに動きますと、これはやはり、恐らく米国側は一種の先入観と申しますか、プレジュディスのようなものがありまして、拒否反応を本能的に持つのではないかというふうにも思われます。それに対して、仮にわが国とか西ドイツとかが米国に向かって、米ソ核軍縮交渉をもっと推進してもらいたいと言うのであれば、そのような拒否反応というものは本来非同盟からのようなケースとは異なると思いますが、今度はしかし、西ドイツ自身が御承知のような立場にございますから、わが国と全く同じ歩調、同じ程度でそういう話を、賛同して一緒に進め得るかと言うと、それにもまた問題がございましょうと思います。それでございますので、たとえば再検討会議の場と申し上げてしまえば、これはお答えとしてはきわめてイージーなお答えになるわけですが、そう何年に一遍というようなまぬるいことではこれいけませんので、やはり十八カ国軍縮委員会といったようなもの、国連もよろしいわけですが、少し大き過ぎるというようなこともあります。どうもあそこらあたりが中心になってやっていくということが結局一番有効な場ではないかというふうに私は実は思っておりますが、なお、これは政府委員がもっと経験を持っておりますから、あるいは補足をしてくれるかと思います。
  14. 田英夫

    田英夫君 どうですか、国連局長
  15. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 従来から非同盟諸国並びにソ連、東欧の国々軍縮の進展のために、たとえば世界軍縮会議というような構想を推進してまいったわけでございますけれども、これに対しまして西側の国々、それから中国が反対をいたしますので、それに非同盟諸国が若干業を煮やして、昨年のリマにおきまする非同盟諸国外務大臣会議で、それじゃ世界軍縮会議ができないのであれば、軍縮に関する国連総会特別総会でも考えたらどうかというような構想を出した経緯がございます。これは、ことしのスリランカにおきます非同盟諸国頂上会談でも、あるいはさらに論議が続けられることになるのではないかと予想される点でございます。そういった例がございますので、非同盟諸国の間でかなり活発にいろいろ軍縮を進める上でのアイデアを出しております。  なお、昨年の国連通常総会におきまして非常にたくさんの軍縮関係議題がございましたし、例年に比べて多くの決議が採択されたんでございますけれども、それに比べて中身が余りないということで反省の機運が出ております。それを反映しておると思いますけれども、スウェーデン及び若干の非同盟国々が、軍縮分野における国連役割りがこれでいいのかどうか、軍縮の上における国連役割りの再検討ということをやるだめのアドホック委員会の設置を提案いたしまして、これが採択されたわけでございます。その結果、ことしの一月からそういったアドホック委員会が実は作業を始めておりまして、六十六カ国でやっておりますけれども日本もそれに積極的に参加しております。今後六月に一回と九月に一回と会合いたしまして、そこで出てきた意見というのをまとめて、ことしの秋の第三十一回通常総会に出すことになっております。  そういった形で、一般的に軍縮やり方軍縮討議やり方についての反省と申しますか、今後もう少し推進するような方法がないものかどうかという見地から、いろいろ国際的に論議されております。
  16. 田英夫

    田英夫君 問題は、結局経済問題についてたとえばこの間のUNCTADであるとか、あるいは昨年の国連経済特別総会であるとか、経済問題については一つムードができてきていると思うんですね。新しい経済秩序をつくらなくちゃいかぬということがあらゆる国際会議の場でもあるし、また、そういう特別の会議が持たれている。軍縮の問題、特に核軍縮の問題について、やはりさっき大臣の言われた道徳的圧力をかけるというためには国際的なムードをつくる必要がある。そのムードをつくる主役はやはりいわゆる第三世界でなければならない、そして日本でなければならない。この核防条約参加をした日本主役の一人にならなければならぬという気がするわけですが、いま国連局長言われたように、恐らくスリランカの非同盟諸国会議では何らかの形でこれが形になって出てくるのじゃないだろうか、広い意味軍縮ですけれども。それを期待しているわけですけれども、残念ながら非同盟諸国会議には日本は声をかけるわけにいかない。私どもは出席さしてもらおうと思っているわけですけれども、これはきわめて非公式のものでありますし、日本意見というものはどうもそこに出てこない。  そうなりますと、具体的には主役たり得る場がないんではないでしょうか。せっかくこの核防条約参加をした、冒頭申し上げたように、ただ名前を連ねたとというだけでは仕方がないので、積極的に動くとすれば政府としてどういう場をお考えになるのか、その辺が実は不安なんです。国連軍縮特別総会日本から提起されるということもいいでしょうし、具体的にどういう方法があるでしょうか。
  17. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 先ほど私が申し上げした世界軍縮会議というような構想も、日本は原則的には支持という姿勢をいままでとってまいっております。ただ、それが本当に成功いたしますためには、すべての核兵器国が積極的に参加する形で開かれないと余り意味がないんではないか。それから、やはり国連の枠内でこれを行うべきであろう。それからもう一つは、現在テンポは遅うございましたけれども、いろいろの成果をおさめてまいった現在の既存の軍縮フォーラム、たとえばジュネーブ軍縮委員会というようなところの交渉を妨げないような形で行われるべきである。それから討議の内容としては、何といっても核軍縮関係に最優先を与えるべきであろう。しかも、やるからには十分の準備をして、準備が足りなかったためにその会議がうまくいかないというような結果に陥らないようにすべきであろうといったようなことを日本としては考えてまいったわけでございます。  それから軍縮特別総会という問題は、実は先ほど申しましたように世界軍縮会議がなかなかうまく動いていかないということから出てきた別の構想でございますけれども、こちらの方については非同盟諸国のそういった立場がございますけれども、いろいろ各国の思惑がまちまちでございまして、果たしてうまくそのラインで進んでいくかどうか、ちょっといまの時点では予測しかねるような状況でございますが、いずれ、にしてもわが国としましては毎年の国連総会の場で引き続き核軍縮中心核兵器国に対して努力を行ってまいりたいと考えるわけでございます。  それから、先ほど申しました軍縮分野における国連役割りの再検討についても、積極的に日本として討議していく。  なおもう一つ、先ほど申し上げませんでしたけれどもジュネーブ軍縮委員会の場におきましても、主として非同盟諸国の方から、たとえば例の米ソ共同議長制というものまで取り上げてこれでいいのかどうかといったようなこと、その他軍縮委員会の仕事の仕方についての手続的な面からの討議がニューヨークのアドホック委員会討議と並行して進んでおりますけれども日本としてもそちらの方でも積極的に参加していく所存でございます。
  18. 田英夫

    田英夫君 いま伺っておりますと、われわれとしては重大な決心をして、自画自賛をするわけじゃありませんが、社会党としても二年間にわたって、ときに大きな声を出して激論をしてまいりました結果、きょういよいよ討論採決ということになるわけですけれども、それなりに非常に一つの意義を認め、考えているわけです、これに参加することの。  それにしては、いまの御答弁は余りにも淡々としているという気がいたします。この拡防条約参加する以上は、日本として一つの決意を持って、世界一つ姿勢を示すということがあってほしい。  そこで、ひとつ具体的に伺いたいんですが、もうきょうは討論採決ということはこの予定表に入っておりますから、それを前提にしてお話ししていいと思うのでありますけれども、あした本会議でしょうか、つまり、日本が批准という姿勢をとった段階で、政府は何か声明のようなものを用意しておられますか。
  19. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 衆議院外務委員会におきましても決議が採択されました。本院の当委員会におかれましてどのようにお考えでいらっしゃるか、つまびらかにいたしませんけれども、従来の御審議から拝察をいたしますと、あるいは委員会としての意思表示をやはりお考えになっておられるかもしれないと思いますし、田委員から、この間三つの点についての政府考えお尋ねになって、私どもとしては、これは慎重に検討さしていただきたいと申し上げたような経緯もございます。それらの経緯から考えまして、どの段階になりますか、仮に批准書寄託の段階でありますとか何かの段階で、やはり日本政府としてのこの批准書を寄託するに至ったゆえん、今後日本政府が核に関する軍縮はもとよりでございますが、非核保有国の安全、平和利用等々について何を考え何をしようとしておるかといったようなことを、やはり内外に向かって意思表示をすべきではないかというふうに私ども考えておりまして、まだ総理大臣、閣議等にそういうことの可否について諮ってはおりませんけれども、やはり何かそういうことを将来に向かっていたすべきではないかと思っております。
  20. 田英夫

    田英夫君 これはぜひ政府姿勢を、衆参両院の委員会で示された国会の意思、そしてそれを結集して、日本政府としてのこの問題についての姿勢世界に向かって示していただきたいということを希望したいと思います。  実は、委員会としても決議をしたいということを各党でいま御相談をしているところでありますけれども、私の気持ちからすれば、これは外務委員会決議というよりも、参議院としての決議という形で本会議において決議をしていただきたいとさえ思います。この辺は委員長からお取り計らいいただければ大変いいと思いますが、そのくらいの問題ではないだろうかとさえ思います。これはまあ国会の中の問題ですけれども。  そこで次の問題ですけれども、実は、これは政府・自民党の皆さんに対しては苦言を呈することになるのでありますが、私どもこの批准に賛成をしながらも、どうしても今後の、いま申し上げたような核軍縮、そして日本安全保障ということを突き詰めて考えていきますと、一方でアメリカの核のかさの中に入っていながら、それで核軍縮、核の絶滅、そういうことを世界日本が呼びかけるということは本当にできるだろうか、こういう疑問を持たざるを得ないんです。この点は前回もかなり触れましたので、もう改めて繰り返しませんけれども、日米安保条約というものがあり、そしてその主要な部分は実はアメリカの核のかさの中に入っているという考え方、そして、そのもっと根底にはアメリカの核の抑止力というものが働いているということによって日本の安全が保たれるという核抑止力の哲学がある。これはどうしても私は、それに頼っていながら核の絶滅を日本が言うということは、他の国々を説得することはできないと思うんですが、もう一回大変大事なことですから、これは防衛庁長官とお二人から考え方をお話しいただきたいと思います。
  21. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現在の安保条約の体制というものは、申し上げるまでもなく、将来国連において、国連の力によって世界平和が十分に保障されるという、そういう時点までの体制というふうに私ども考えておるわけでございます。したがって、もっともっと望ましい、わが国憲法の前文が考えておりますような状態というものをわれわれは最終的に志向していかなければならないと考えておるわけでございます。そういう意味では、現在われわれが核軍縮というものを叫びながら、なお現実の問題として国連がそのような力を持つに至っていないということから、私どもとしては安保条約体制というものを選んでおるわけでございまして、私どもから言えば、この二つのことは矛盾をしておるというふうには考えておりませんで、われわれが実現すべき理想と現実の事態とのギャップというものを残念ながら認識せざるを得ないということからとっておる措置だというふうに私ども考えております。そのことから申し上げられますことは、したがいまして、われわれは核軍縮というものを叫び続けてまいりますけれども、やはり米ソの間でバランスのとれた核軍縮、これは通常兵器まで正直を申しますと含んだバランスというふうに考えることが望ましいので、バランスのとれた形での軍縮というものを続けて進行さしてもらいたい、こういうふうに申しておるわけであって、無条件でアメリカだけがやめてくれればいい、あるいはソ連だけというようなことを私ども申しておるわけではありません。そういう立場というのは、田委員のお考えから言えばややパンチの欠けた主張ではないかというふうにおっしゃるであろうかと思いますが、理想と現実との間に現実にギャップがあるということを私どもは認識する立場でありますので、これはわれわれが最大限打ち出せる一番国益に沿った方法ではないかというふうに思っているわけであります。  なお、先ほどのお尋ねと関連をいたしますけれども、いまの米ソの核装備状況から申しますと、これも繰り返し申し上げませんが、ある程度の軍縮ということは、その体制の問題としてでなく、米ソ間の現実のオーバーキルの状態から考えられてしかるべきであるというふうに私ども思うものでございますから、それで先ほど非同盟国等々のお話もありましたが、体制の問題に突き当たる、そこへいく前に米ソ両方ともまだまだ切り落としていいぜい肉がそれ自身の論理の中にあるというふうに私ども考えていまして、したがって、なるべくこの体制の問題としてでなく、この問題を、核軍縮の問題を取り上げてまいるのが有効ではないかという気持ちを持っておりますことを申し添えておきます。
  22. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) わが国の防衛の責任者といたしましては、国を守る国民の意思と申しますか、それと自衛力、さらに安保条約と、この三つがあって初めて日本の独立と安全というものが期しられるという現実から申しますと、やはりアメリカの核抑止力というものはどうしても必要であるというふうに思います。
  23. 田英夫

    田英夫君 時間がきましたので、この問題はここですぐに決着のつく問題ではありません。これからも引き続き議論をしていかなければならないこと、だと思います。  最後に一つだけ伺っておきたいんですが、原子力の平和利用の問題について、これは科学技術庁の御所管だと思いますが、前回からの皆さんの御議論の中にもしばしば出てきましたけれども平和利用の名のもとにしばしば危険な実験が行われている、また、行われる可能性がある。こういうことからすると、この機会に日本から原子力の平和利用、いわゆる平和的な核爆発、そういう場合にも国際管理下で行う。これは国際原子力機関なり機構があるわけですから、その監視下に必ず行うべきだということを提案してはどうか、現状とこれからのお考えを簡単に伺いたいと思います。
  24. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 平和目的の核爆発は、御承知のとおり、現在の技術的な知識からすれば軍事目的の核爆発とは区別ができないということになっておりますので、わが国といたしましては、有効な検証のもとで、検証を伴った国際管理のもとで行われるべきだという立場というか、主張をずっと続けてまいりました。  核防条約の第五条では、核兵器国が非核兵器国のために行う平和目的核爆発については、適当な国際的監視のもとで行うということが第五条で規定されておりますが、その国際的監視の内容、あるいはその国際的制度の中身については、ウィーンの国際原子力機関におきまして、いろいろな角度から専門家レベルで検討が現に行われております。
  25. 田英夫

    田英夫君 終わります。
  26. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、余り細かい問題ではなしに、核防条約の審議の最後に当たりまして、政府考え方について二、三お尋ねしておきたいと思います。  まず、今回の核防条約の批准に当たりまして、いままで問題になっております核兵器国軍縮の問題、あるいはまた、非核兵器国安全保障の問題、そういうような点については不十分な点も多々あるけれども、しかし、この核防条約に正式に加盟することが一つの新しい出発である、加盟することによって日本発言権を得て、そしてさらに核軍縮の問題、あるいはまた、非核兵器国安全保障の問題にさらに取り組んでいく新しい出発である、このように政府考えておるのか、恐らくそうではないかと思うんですけれども、これを外務大臣防衛庁長官に確認をしておきたいと思います。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように考えております。わが国として、従来そういうことに最大の努力を払ってまいったつもりでありますが、今回御承認を得てこの条約の批准ができますならば、この条約の加盟国としてもっともっと説得力のある立場から、そういう新しい問題に取り組むスタートであるというふうに考えております。
  28. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 防衛庁長官といたしましても、外務大臣からお答えになりましたとおり考えております。
  29. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど田委員の質問に答えまして、この核防条約の批准に当たり、政府として何らかの声明を出した方がいいのではないか、そういう御意見がございますが、私ども賛成であります。そういうものには当然いま言った点を盛ってもらいたい。というのは、核防条約に反対をする人たちの意見もそういう点にあるんだと思うんです。また、中国やフランスがこの核防に加盟しなかった理由もそういう点にあったわけですから、そういうことを日本政府発言することは今後にとってプラスになるのではないか、これは外務大臣の御意見を承っておきます。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どももそのように考えておりまして、そういう趣旨のことを盛り込むべきではないかと考えつつ検討をいたそうと思っております。
  31. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 防衛庁長官にお伺いしたいと思いますが、本委員会においても核のかさ、あるいは また核の抑止力、こういうものに日本が頼っているということはいろいろ論議されたわけでありますが、これはわれわれも概念的にはわかるわけなんですけれど、一体なぜこれが必要なのか。NATOにおいては、いわゆるワルシャワ条約の通常兵力が強いので、それに対するバランスの上に必要である、こういうお話があったわけですけど、日本の場合はどういうわけでこれが必要であるのか。これ簡単に。
  32. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) せっかくの機会でございますから、客観的に正確にお答えを申し上げたいと思いますので、防衛局長から御説明を申し上げたいと思います。
  33. 丸山昴

    政府委員(丸山昴君) ただいまNATOのお話がございましたが、NATO地域にアメリカが約七千個の戦術核を配備をしておるということを、アメリカの核のポリシーとしては、核の存在についてイエスもノーも言わないという基本原則があるわけでございますけれども、その基本原則の例外としてNATOに戦術核の配置を確言をしておりますけれども、これはいま先生御案内のように、ワルシャワ条約機構とNATOとの間の通常兵力のバランスという見地から、あえて配備を明言しておるわけでございますが、これは地域的な抑止力ということでございます。もちろん、戦術兵器による抑止の基調として、アメリカ並びにイギリスの持っております戦略核兵器の抑止力というものが前提に横たわっておる。いま引例をされました戦術核兵器というのは、通常兵器のバランスを考慮に入れての問題であるというふうに考えてよろしいんではないかと思います。  わが国の場合は、それではアメリカの核抑止力に依存するという考え方、これが何から出ておるかということでございますが、わが国に対する脅威、潜在的な脅威でございますが、これがどのような形で行われるかという蓋然性の問題ではなくて、一般的にわが国安全保障考える場合において、あらゆる侵略に対して対抗し得る措置というものを、当然わが国の独立を考え国家の存立を考える場合には考えておかなければならないことでございますが、その場合に、現在の核戦争の時代におきましては、あらゆる段階の侵略のタイプというものがあるわけでございまして、そのあらゆる侵略に対応する措置というものを、具体的にわれわれとしてはその方策を持っておらなければならないということでございます。御案内のように、わが国憲法九条の規定もあるわけでございます。わが固有の自衛力の保持ということにつきましてはおのずから限界があるわけでございます。そこで、わが国に対する予想される侵攻というものは、全面核戦争から地域的な紛争に至るまで、あらゆる形のものが考えられますが、通常兵器によります局地的な紛争に対するとりあえずの対処能力は自衛隊において持っておるわけでございますが、それ以上のものについては全く無策でよろしいかということになるかと思うわけでございます。その点につきましては、日米安保条約によりまして、アメリカの核抑止力によってこれに対処する方策を日本政府としては選んでおるということであるというふうに考えておるわけでございます。
  34. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 たびたびここでも論議ありましたように、いま言ったように、日本はどうしてもアメリカの核のかさに入っていなければならない。そのために国連におけるたとえば核軍縮の問題あるいは国連でもたびたび提案されております核兵器を非核兵器国に使わないというふうな提案、そういうことに対しては、結局日本としてはそういうことを推進していけば、いわゆる核の抑止力というものがなくなってくる。そういう立場から今日までの国連におけるわが国核軍縮政策というものは、やっぱりアメリカの核のかさにおるために、結局アメリカの核のかさの中を出ることはできない、そういう点に非常にわれわれも歯がゆさを感ずるわけですけれども、この点については先ほど外務大臣からも答弁がありまして、これは理想と現実の違いだと、そういう御答弁じゃないかと思いますけれども、時間がないので答弁は要りませんけれども、われわれはそういう点に非常に矛盾を感ずるわけであります。  そこでしかし、いまのままでいいというわけにはいかない。たとえば安保条約にいたしましても、いまアメリカでは大統領選挙行われておるわけでありますが、だれが大統領になるかもわからない。カーター氏のごときは、当選したら朝鮮から軍隊を撤退するということを言っておるわけでありますし、そういう点でわが国の防衛当局としては、安保条約がなき後、たとえば核のかさがなくなった後のことも当然考えておかなければいけない。もちろん私たちは、核のかさというものは日本平和憲法精神からいってよくないという考えでありますけれども、あえて政府立場を認めたにしても、そういう点はやはり考えておるのかどうか、そういう点はどうなんですか。
  35. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) いまアメリカにおきましては大統領選挙でございますが、しかし、共和党が勝つにしろ民主党が勝つにしろ、どういう方が大統領になられましても、日米の防衛協力関係あるいは日米安保条約というものは依然としてこれを保持するということが、わが国にとって大事であるばかりでなく、アメリカ自身の国益にもつながるというふうにアメリカは考えておるというふうに私は思うのでございます。  それから、もし安保条約がなくなった先どうするかということも考えておかなきゃならない。まあごもっともなことだと私は思うのでございますが、いま申しましたことからいたしまして、これは現実考えますと、そういう状況にはアメリカ側もいたさないというふうに確信するものでございます。しかし、理論的に言うならばそうなった場合はどうなるかというのが御質問だと思いますが、私はいま考えられ得る日本の独立と安全というものは、もし安保条約がなかったとするならば、基本的に防衛構想を変えなければならないというふうに思っております。
  36. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 外務大臣お尋ねしますが、いまのアメリカの考え方は力のバランス、これはこの前委員会で申しました力のバランス、日本政府も結局アメリカの力のバランスによって平和が保たれるという考え方に同調しているわけです。まあしかし、そういう考え方はいずれにしても一刻も早く変えていかなければならない。たとえば、いま現実にソ連も、きのうの新聞でございますか、かなり防衛力を増強してきておる。あるいはヨーロッパにおいても、ソ連の軍備の増強に対してNATOはどう対応していくかということが非常に問題になっておる。さらには、まあ核防には中国、フランスが入っていない。いまは中国にしても非常に力は弱いからいいようなものですけれども、やはり中国やフランス以下まで米ソ核軍縮するということは当然考えられないわけでありますし、いまの体制では。そういう点を考えますと、われわれはやはりそういう力のバランスという、そういう構造に乗っかっておっていいのかどうかですね。やはりわれわれは平和憲法を制定をした、その当時は、世界の国に対してまる裸で訴えていこうという、そういう出発にあったと思うのですけれども、そういうところからわれわれ大分離れている。そういう意味で、この力のバランスによる平和という考え方は一刻も早く打ち破っていかなければならないし、それを超える新しい世界平和の原理というものを日本がやはり先頭切ってやっていくべきじゃないか、そういう努力が全く日本政府にはないのじゃないか、そういういら立たしさを感じているわけですが、外務大臣はどうでしょうか。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現在の日米間の安全保障体制を定めました安保条約の有効期間を定めました第十条の第一項は、やはりいま塩出委員が言われましたような理想的な状態というものを考えて設けられた規定でありまして、そういう意味では、力のバランスによる平和の維持というのは現実でございますけれども、最終的に理想的な状態であるというふうに考えておるわけではございません。そのゆえにこのような有効期間の規定があるというふうに考えておりまして、私どもとしては、この条約に加盟をすることもそうでございますが、核軍縮を叫び、あるいは非核保有国の安全を叫ぶということも、そのような状態に近づくための努力である。従来もやってまいったつもりでありますけれども、この加盟を機会にさらにその努力を倍加してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  38. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 余り時間もございませんので、私は、やはり日本被爆国である、したがって、原爆の悲惨さを全世界に知らしめていく、やはり原爆の悲惨さということが私は核軍縮の一番の原点でなければならないと思うんです。ところが、私も原爆関係の、日本の原爆の悲惨さを世界にいろいろPRするために外務省は一体どういう努力をしているんだと、このように聞きましたところが、そういう予算は全く取っていない。ただ、昨年の三月、イラン国営テレビ局の撮影スタッフが広島へ原爆ドームとか資料館を取材をして、そしてイランテレビ局が日本・広島後の三十年という放映をした、それに協力をした。あるいは今年三月、豪州の教科書会社が教科書に使用するために写真をもらいたいという要望があって写真を提供した、こういう写真を送ったんですということで、なるほどこの写真は確かに広島の原爆の悲惨の写真ですけれども、それ以外には外務省のパンフレットはどうなんだと。そして、いろいろ原爆のことを書いたのをどうかといって持ってきてもらいましたところが、これは後で外務大臣、見てもらいたいと思うんですけれども、これはこういう原爆の雲だけですよ。これはもう悲惨さというよりも、これはちょっときれいなキノコ雲だ。それからまた、これはどうかというと、これもやはり原爆の雲しか載ってないわけですね。それから、こっちの方は写真は全然ない。ただ、この本文の中に五行、第二次世界大戦の後、日本は平和を愛する民主国家として再出発をした、日本の民族は戦争の悲しみを深く経験をし、特に広島、長崎の原爆を味わっておる、このように英語で五行で書いているだけなんです。そういう点から考えまして、私は、この前も申し上げましたように、諸外国から日本へ来た国賓の方もなかなか広島へ来ることもないわけで、日本政府は広島の原爆の悲惨をPRするために、やはり再び繰り返さないためにもう少し原爆の悲惨さをPRするパンフレットぐらいはもっとつくって、積極的にPRすべきではないか、私はそういうことを主張したいわけですけれども、この点はどうでしょうか。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 過日本会議において塩出委員から、広島あるいは長崎等は、できるだけわが国を訪問する外人等に現実を見てもらう、現地を見てもらうということが望ましいではないかというお尋ねがございまして、私もさように考えますということを申し上げました。そう考えております。  そこで、原爆の問題でございますけれども、私どもは原爆体験というものは繰り返してならないということを世界の人々に訴える立場は、体制とかイデオロギーとかいうことを超えた立場でなければならないというふうに思っております。したがいまして、国連等でそういう試みがありますときには、私どもも従来協力をしてまいりましたし、今後もいたすべきであると考えます。しかし、他方で、ともすればこの問題が体制の問題あるいはイデオロギーの問題として取り上げられやすいということについては、私ども非常に注意をいたしておりまして、そういうことになることは、原爆の犠牲になった人々の本来の願いではないであろうと考えておりますために、そのような危険に陥ることを注意しつつ、いわゆるイデオロギーや体制の問題でなしに、このような体験を繰り返してはならないという、そういう立場からの主張には全面的に積極的に協力をする、こういう立場をとっておるわけでございます。
  40. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 パンフレットつくりませんか。原爆のパンフレットですね。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、たとえば広島市でつくられる、長崎市でつくられる、場合によりましては国もつくってむろんさしつかえのないことでありますけれども、それがいわゆるイデオロギーであるとか体制の問題として利用されるというようなことは好ましくない結果だということも同時に注意をいたしております。
  42. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に一問だけ、もう時間もございませんので。  この前私は、やっぱり国連に資料館みたいなものを設置するように努力をする決意はないか、これについてはこの前本会議で答弁なかったわけですけれども、エネルギーとかあるいは食糧危機とか、いろいろな問題ありますけれども、私は核兵器の問題は最大の地球上の問題でないかと思うんです。そういう意味で、イデオロギーの問題も、そういう点も配慮すべきでしょう。しかし、そのことのあまり、余り消極的になり過ぎているのがいまの政府じゃないかと思うんです。そういう点でそういう努力をする気持ちがあるのかどうか。国連に、たとえば原爆の資料館のようなものを設置するように努力するとか、そういう考えはどうですか。
  43. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国連が、かつて核兵器白書というものを事務総長が出したこともございまして、国連側でそのような関心を持つということでありますれば、わが国としては、これは主体が国連でございますれば協力をしていいことだと思います。
  44. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 こちらから積極的に、国連から言われたらやる、これも全部要求されて出すというのだから、もう少しやはり日本は積極的にやる義務が、私は亡くなった人に対しても一つの責任があるんじゃないかと思うんですけれども、そういう点でもうちょっと積極的にやってもらいたい、それを要望します。
  45. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) よく検討さしていただきます。
  46. 立木洋

    ○立木洋君 外務、防衛関係まだお尋ねしたいこともございますけれども、きょう後で総理もおいでになりますから、総合的にそのときにお尋ねすることにしたいと思います。  時間も短かいので、科技庁の方おいでになっていただいているのでお尋ねさしていただきたいと思います。  政務次官御案内だと思いますけれども、アメリカで、GESMOの問題ですね。プルトニウムの安全管理に関する諮問等々の問題が出されておりますが、これに関して日本政府としてはどのようにお考えになっているのか、また、どういう意見をお持ちなのか、その点について最初にお尋ねしたいと思います。
  47. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) GESMO、すなわち、混合酸化物燃料に関する一般的環境報告書、これはただいま先生御発言ございましたように、米国のAEC、原子力委員会が一九七四年に草案を発表いたしまして、さらに各方面の意見を聞いて一九七七年に最終的な報告書を出す、こう言われておるものと承知いたしております。  この報告書の考え方といたしましては、プルトニウムを軽水炉に平和利用でリサイクルをするという考えに立ちまして、それが環境に及ぼす影響を、ウランだけを燃す場合と比べて比較しておるという内容でございますが、草案の内容といたしましては、核物質防護措置を十分充実するということを条件としてプルトニウムの平和利用というものが可能であるという考え方が出ておると承知いたしております。  わが国といたしましても、この米国考え方というのは非常に大きな影響を実質的に持つわけでございますので、当面この米国考え方の固まるのを待ちますとともに、すでに実証試験を実施いたしておりますヨーロッパ諸国の動向もあわせて勘案いたしまして、プルトニウムの平和利用の実用化に当たりまして参考としてまいりたいと考えております。
  48. 立木洋

    ○立木洋君 事実上広島に落とされた原爆がウラン235ですか、そして長崎に落とされたのがプルトニウム。ところが、平和利用だということで、原子炉等々で行われるウラン235が事実上プルトニウムをどんどんつくり出していく、そういう状態なわけです。ですから、この諮問が出されてからアメリカでも相当議論されておるところだと思うのですが、いまアメリカではプルトニウムというのはどれぐらいの蓄積の状態になっているのでしょうか。
  49. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先生の御質問は、原子力発電所で生成されたプルトニウムがどれくらいかという御質問かと思いますが、詳細は私ども承知しておりません。ただ、一般論といたしまして、発電所でプルトニウムが生成いたしましても、まだ再処理がほとんどされておりませんので、単体で分離されたプルトニウムは生成量に比べれば比較的少ないと考えております。
  50. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカで蓄積されているプルトニウムというのは、いま言われたような点で、私たちが聞いているのでは、広島の原爆の数十万発にも及ぶのではないかというふうなことを聞いておるのですが、そうなんですか。
  51. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) あるいはそういう説もあるかと思いますが、ただ、一般論といたしまして、軽水炉で生成されますプルトニウムは、原子爆弾用としては質が悪いというふうなことは言われておると承知いたしております。
  52. 立木洋

    ○立木洋君 質が悪いかいいかという問題でなくて、それが事実上原爆になるわけですからね。日本で行われている軽水炉ではどれくらいプルトニウムがいまできているのですか。
  53. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 昨年の十二月末現在で約三トン半生成しておるという数字がございます。
  54. 立木洋

    ○立木洋君 三トン半と言えば大分の数量になると思うのですが、これは長崎に落とされた原爆に比べてみたらどれぐらいの倍数になりますか。どれぐらいの量になりますか、規模になりますか。
  55. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先ほど申し上げましたように、長崎で落とされました原爆は非常に質の高いプルトニウムでございますので、その使われました量で単純にこの数字を割ることは適当ではないのではないかと思われますが、もし単純に割るとしますと、数百発になるということは言えると思います。
  56. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどのお話もあったわけですが、あれは国連局長のお話でしたか、いわゆる核の平和利用の名目で行われる実験ですがね、これは事実上核兵器、つまり原爆の実験ともうほとんど区別ができない、実験状態から言えば。それから事実上平和利用だということで、軽水炉で使われるウラン238、これが実際にはプルトニウムをつくり出していく、長崎で落とされた原爆ですね、がつくり出されていく。そうすると、これは実際に平和利用で行うといま言っても、事実上原爆をつくるという点を見るならば、紙一重というか、ほとんど区別ができない、技術的にはなかなかむずかしい。そういうふうに判断されるのではないかと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  57. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 先ほど申し上げましたように、プルトニウムの質の問題のほかに、先生の御質問は、このプルトニウムがたとえば盗難に遭った場合というふうな御指摘かと思います。現在わが国におきましてプルトニウムが単体で存在いたします量は約八百キログラムでございますが、これは日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団、この両者で研究開発用に使用しておりまして、これについては絶対盗難というふうなことがないように厳重な管理がなされておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましてはそういう盗難のおそれはない、また、今後ともそういうことがないようにさらに体制を充実強化していきたいと考えております。
  58. 立木洋

    ○立木洋君 技術的にいろいろ突っ込んでお尋ねするには時間がなさ過ぎますので、私はきわめて短絡的な質問の仕方をしているわけですが、アメリカでは、たとえば平和利用だということで原子炉を、軽水炉等々を外国に輸出する。そこでつくり出されるプルトニウムというのが本当に完全にそこまで管理ができるのか、目が届くのか、事実上届かないではないか。そうすると、平和利用の目的だということで軽水炉を外国に輸出して、そこでプルトニウムがつくり出されている、その国が原爆を持とうとすれば、現在の国際的な技術水準では、平和利用の目的だと言いながら事実上原爆がつくられるということはもう可能な状態になっているわけですから、アメリカ自身としてもこれは大変な問題だということで、いろいろと議論がされているところですね。こういう問題については、アメリカでいまの問題になっている点についてはどのようにお考えになっておられるか。
  59. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 米国におきましてそういうことが議論されておるということは承知をいたしております。ただ、わが国の場合は、原子力基本法によりまして、わが国がこのプルトニウムを平和利用以外に使うということはあり得ないわけでございますから、わが国としては米国の議論がそのまま適用されるということではなかろうと考えております。
  60. 立木洋

    ○立木洋君 いや、私はわが国ということを名指しで言った覚えは一つもありません。つまり、諸外国にいろいろ出されていく、平和利用の目的だということで。今後ともやはり、前回来いろいろ議論されていますように、どうしてもわれ先にと競って輸出していく、相手が輸出しないとうちにこちらが輸出しようというふうな競争関係にもあるわけですから、そういう状態というのが、どんどん外国に平和利用の目的だということで軽水炉が輸出され、そこでつくり出されていくということになれば、どこの国でもいわゆる原爆を持とうとすれば持てるような状態が一面でつくり出されていく、極端な言い方をすれば。そういう状態ということについてどのようにお考えになるのか。これは一つの政治的な判断ですから、政務次官の方からお答えいただきたいと思うんですが。
  61. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) ただいま局長から答弁申し上げましたように、わが国としては平和利用ということで徹しておるわけでありますから、そういうことであるわけでございますけれども、いま先生御指摘のように、各国にそういった施設が輸出されて、そこで原爆の材料になるプルトニウムというものが蓄積されてくる。もしそれが軍事的な爆弾に利用されるということになってはいけませんので、そういう意味におきましても、この核防条約というものはやはり必要なんじゃないかと思います。
  62. 立木洋

    ○立木洋君 それは核防と関係ないですよ。核防では認められているのです。
  63. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) いや、平和利用ということでもって、軍事利用に転化されることのないように、平和的な利用というものはお互いに各国が堅持していかなければならないわけですから。そういうことではないかと思いますけれども
  64. 立木洋

    ○立木洋君 いままで何回か問題になってきたし、この外務委員会でも議論されたわけですけれども、いわゆる査察、十分に査察が行われ得るのかどうなのか。
  65. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 国際原子力機関、IAEAには御案内のように保障措置査察局という局がございまして、現在約七十名前後の査察官がおりまして、保障措置協定に基づく査察を現に実施しておるわけでございますので、私どもはIAEAの査察が有効に働いていると、これは国際的にも評価されているわけでございますので、軍事利用への転換を防ぐという意味での査察が効果を持っているというふうに考えております。これはわが国の実情に照らしましてもそのようなことが言えるのではないかというふうに考えます。
  66. 立木洋

    ○立木洋君 だけれども、いろいろ検討してみますと、たとえばユーラトム並みだとかというふうなこともいわれておりますけれども、実際にはなかなか細部にわたって査察をすると言ったってこれはできない。むずかしいわけですし、また、それぞれの国の利益もありますし、国益等々もあるわけですから、そうするとある重要な点、ポイントになれば、その当事国のいわゆる帳簿に頼って判断せざるを得ないということが実態ではないでしょうか。
  67. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) お説のように、計量管理制度というのが前提としてございますから、いわゆる帳簿でございますね、測定、記録、それが全部報告されております。これは国を経由してIAEAに報告されているわけでございまして、それは単に査察というのは帳簿の突き合わせだけではございませんで、現物との照合、それからサンプルによる分析、そういった実態上その記録あるいは報告が間違いがないかどうかということをそういう方法でも検証しているわけでございます。したがいまして、単に帳簿づらを合わせるというのが査察の内容というわけではございません。
  68. 立木洋

    ○立木洋君 いわゆる平和利用を目的とする、実験にしてもそうですし、いわゆる軽水炉からつくり出されるプラトニウムが、原爆をつくり出す国際的な技術水準というのはそこまで高まっているという状態は、たとえばすべての国にそういう軽水炉をどんどん輸出するという状態は、ある意味では原爆をつくる可能性を国際的にばらまいておるという実態になり得るだろうと思うんです。査察の面から見ますと、それはいま言われたように相当な、七十名ですかの査察員がおっていろいろやっておる。しかし、事実上最終的に頼らなければならない問題点というのはやはり帳簿になってくるという点も問題点があるわけですし、これは核を持とうとする国においては原爆をいつでも持てる状態が一方ではつくり出されていく。ですから、結局は核兵器を全面禁止する、国際的な舞台から、というふうな状態が事実上つくり出されていかれないと、いわゆる平和利用の目的だと言いながらも原爆をつくり出していく条件が実際には拡散されておるということに私はなり得るんじゃないかと思うんですよ。そういう意味ではやはり非常に危険な点だろうと思うんです。これはアメリカでもプルトニウムの管理、安全管理がどうなっているのかという問題が問題になっていますし、こういうふうな状況をどうように御判断になられるのか、最後に宮澤大臣お尋ねしておきたいと思います。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはもう立木委員よく御承知のとおりのことでございますから、これは全くもろ刃のやいばということになるわけでありまして、いろいろなことから考えまして、この平和利用というものを、もろ刃のゆえに回避をするというわけにはいかないというふうに私ども考えますし、この条約もまたそういう思想で書かれておるわけでございます。でありますから、結局査察であるとか、あるいは何よりも、査察より前におのおのの管理者、管理国の意思でございますけれども、その意思による厳重な管理やあるいは第三者による査察というようなことに帰着せざるを得ない。むろんフィジカルプロテクションの問題もございましょうと思います。危険であるがゆえに平和利用の道をあきらめるというわけにはやはりまいらないとすれば、それだけのいろいろな意味での注意、管理ということになってまいるだろうと思います。
  70. 立木洋

    ○立木洋君 昨日の議論でも問題になりましたし、ですから、日本としては原子力基本法で平和利用ということをしっかり押さえながら、そうして安全を前提とし、民主、公開というふうな法律に基づいてやられておる。しかし、なかなかそれが違反された場合でも十分に監督が行き届かない問題点というのもきのう指摘されておったと思うんです。だからこの点を厳格にやっていただきたい。同時に、やはり核兵器の全面禁止をやっていくということを中心に据えないと、当面の状況の中で、いわゆる平和利用と原爆をつくるということが事実上切り離すのがむずかしい状態にあるというふうなことを考えた場合、当面最も急がれることは核兵器の全面禁止、これをどう実現するかということが私は最大の努力の眼目にならなければならない。そういう点では、いままで議論されてきた問題としては核抑止力との関係、日米安保条約との関係、その他いろいろな配慮があってだろうと思うんですけれども日本政府核兵器の全面禁止ということは、一応旗を出しておりますけれども、どうもその旗が遠くの方にあるようでそれは一応理想として述べるだけで、なかなか核兵器全面禁止という点での努力が十分になされていない。この点からもぜひとも今後努力をしていただきたい。いわゆる当面の重要な現実的な課題として努力をしていただきたいということを最後に要望しておきたいと思うんですが、大臣にその点もう一度確認をしておいていただきたい。
  71. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは先日来しばしば申し上げておりますとおり、この条約に加盟することができますれば、心を新たにしてその努力をいたしたいと思っております。それから、確かに核の力を爆発に使用するということは、平和目的とそうでない場合とがどうしてもいまの段階では区別をしにくいのでございますから、平和目的と称する核爆発についてもやはり限定的、制限的に考えざるを得ないのではないかと思っております。
  72. 向井長年

    ○向井長年君 私は、全く短時間しかございませんので、二、三点、特に条約の第五条、核爆発の平和利用について若干お聞きしたいと思います。  核防条約では、核爆発装置についてそれが平和利用のものであっても禁止し、そのかわりに、核保有国が核爆発の平和利用については非核国に利益を供与する、こういうことになっていますね。  そこで、一九六八年の国際会議で、わが国の鶴岡代表が、核爆発装置のうち、核エネルギーを制御されない形で放出するように設計されていない高速炉、あるいは臨界実験装置、原子炉暴走実験装置、核融合発電炉等はその条約の禁止の対象にはならないんだということを言われておりますが、これは政府の公式見解ですか。
  73. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 六八年の国連総会における鶴岡代表の発言、ただいま先生が御引用になりました発言は、政府の公式見解でございます。
  74. 向井長年

    ○向井長年君 この核爆装置の定義、国際的な合意があるのか。もしないとするならば今後詰めていく必要があると思いますが、この点どうですか。
  75. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 核爆発装置の定義という問題につきましては、昨年衆議院でも問題になったんでございますが、そのときに政府としての統一見解を申し上げた経緯がございます。それを申し上げますと、この条約におきます核兵器その他の核爆発装置というのは、核分裂または核融合による爆発を利用したすべての装置を言い、平和目的の核爆発装置もこの条約の対象としております。
  76. 向井長年

    ○向井長年君 それが政府の統一見解でしょう。このことが国際的な合意が得られておるのかどうかということ、政府はそう考えているが、国際的にはこれがそういうことであるということの定義の解釈が合意を得られているのかどうか。
  77. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  この条約に関しましては、核兵器の定義もこの条文中にございませんし、それから核爆発装置に関しての定義もないわけでございます。したがいまして、何が核兵器であり、それを含めました核爆発装置であるかという明瞭な定義というものはございません。しかしながら、わが国は、先ほど先生も申されましたように、鶴岡大使の発言でもはっきりといたしておりますし、それに対する各国の反論もございませんでした。したがって、そのようなわが国立場というものは十分国際間で通用し、受諾されたものと考えております。  かたがた、アメリカの方でございますが、これは一九六八年にこの条約が審議されました上院の公聴会におきましても、米軍縮庁のフォスター長官が、核爆発というのは制御されない核分裂または核融合である、というふうに発言いたしております。したがいまして、先ほど先生が、私も御説明申し上げました鶴岡大使の発言というものによるわが国の核爆発装置の解釈というものは、その面から考えましても妥当性があるものというふうに考えております。
  78. 向井長年

    ○向井長年君 日本の統一見解が、政府の統一見解が理解されているというようには解釈できましょうが、これはやはり国際的な合意という立場から、外務大臣、今後これは詰める必要があるんじゃないですか、明確に。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはごもっともな仰せでございますし、本来この条約自身がそういう定義をいたすべきが本筋だというお考えは私どももそう思いますが、条約を起草いたしますときに、ずいぶんそのような試みをいたしましたけれども、厳密な意味で合意できる定義に至らなかったというふうに実は承知をしております。
  80. 向井長年

    ○向井長年君 これは今後やはり明確に国際的な合意を詰める必要があると思うんですよ。これはひとつ十分検討いただきたいと思います。  そので次に、平和利用の核爆発実験は現在国際的にどこまで進んでいるのか、特にアメリカ等ではプラシェア計画というんですか、こういう問題があると聞いておりますし、ソ連も若干進んでおると聞くんですよ。この問題についてどういう状況になっておるのか、おわかりだったらお答えいただきたいと思います。
  81. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 御案内のように、平和利用核爆発には二つの方法があると言われております。一つは密閉爆発と言われるもので、深い地下で爆発をさせまして、鉱産物の採取なり貯蔵なりあるいは地下工場の研究といったものに利用する方法と、噴出爆発と称しまして、比較的地表に近いところで爆発させまして、運河、港湾、道路の建設等に利用しようとする方法等があると聞いております。  御指摘のように、アメリカでは一九五七年以来プラウシェア計画というものがございまして、天然ガスの採取なり地下に貯蔵庫をつくる、あるいは港湾建設といった利用のための研究開発を進めまして、昨年あたりまで聞いておりました情報では、技術的、経済的な評価に入っておるということも聞いておったのでございますけれども、最近の情報によりますと、安全面、環境面でいろいろ行き詰まりが出まして現在中止されているというように私は承知しております。  それからソビエトにつきましては、ことしに入りまして新聞等で特にボルガ川に水を落とす大きな計画があるといったことが報道されておりますけれども、これはなかなか確認が得られませんでして、ソビエトで相当程度平和利用核爆発の研究が進んでいるんではないかということはうかがわれるんでございますけれども、詳細は承知いたしておりません。  以上のような状況にございます。
  82. 向井長年

    ○向井長年君 これは今後エネルギー問題として非常に重要な問題だと思うんですね。したがって、核保有国から非核国に対する便宜はどのようにして与えられるのか、そういうことを現在検討されていますか。あるいは、場合によればこれは協定を結ぶのが当然であると私は思うんですよ。この問題についていま政府はどういう態度で、また、どういうような検討がいまなされておるか、お聞きいたします。
  83. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) この問題につきましては、御承知のとおり、条約の第五条におきまして、国際的な監視のもとに、かつ、国際的な手続によって無差別の原則に基づいて非核兵器国平和利用核爆発の便益が提供されるということになっておりまして、それを受けまして、すでにウィーンの国際原子力機関におきまして専門家レベルで法律面でありますとか経済面でありますとかあるいは安全の面、環境に及ぼす影響の面等、いろんな角度から平和目的核爆発についての問題を検討が進められております。日本もこれに積極的に参加いたしております。
  84. 向井長年

    ○向井長年君 そういう検討をなされておるとするならば、今後その協定を結ぶのがあたりまえだと思いますが、そういう政府の方針はありますか。
  85. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 現在の検討の段階では、まだどういう形でこれを取りまとめるかというところまでは進んでおりませんけれども、方向としてはそういうような方向に向かうんではないかと見ております。
  86. 向井長年

    ○向井長年君 次に、核技術の輸出についてお伺いしたいんですが、四月二十一日のサンケイ新聞に出ておりますが、核技術輸出で合意か、しかも、これは日本を含めた七カ国ですね。無原則な輸出が核拡散につながるおそれがあるからその輸出基準を決めたというのがこの事実関係になっておろと思いますが、こういうことはあったんですか。秘密協定ですか、七カ国。
  87. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) いま先生がおっしゃいました秘密協定ということでございますけれども、そのように報道はいたされましたけれども、協定という言葉は必ずしも該当しないと申しますか、むしろ協定あるいは取り決めではございませんで、この話し合いに参加いたしました国々が、それぞれ一方的に各国が採用しております輸出政策をお互いに一方的に通報し合ったということでございますので、その意味では取り決めではございません。  秘密という点につきましては、これは確かに秘密ということで、参加いたしました国々のそれぞれの国内事情から、参加した国名、それから話し合いました内容につきましても公にしてもらいたくないという要望がございまして、参加国の申し合わせでこれは現在まで公表をされておりません。  なお、これはまだ、いわばその話し合いがずうっと継続されているようなかっこうでございまして、今後原子力関係の資材機材の輸出面から核の拡散ということになっていくことをお互いに防止するための国際協力の一環として、だんだんこれからこの話し合いに参加する国の数もふえていくのではないかとは思います。これはむしろふえていくことが望ましいということだろうとは思いますけれども、そういった関係もございまして、現在のところではまだ公表されるというようなことにはなっておりません。
  88. 向井長年

    ○向井長年君 これはかってインドが、核爆発実験が一九七四年五月に行われていますね。これはカナダからの核技術の輸入によって行ったものだと思うんですよ。こうなってくると、核拡散のおそれを防ぐためには、この七カ国の合意というか、話し合いというものは、ただ単に行政府内部だけで確認しておるということでは用をなさない。少なくとも国際的にオーソライズをしなければならぬ事項ではないか、こういうふうに私は考えるんですが、この点どうでしょう。
  89. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) インドの平和核爆発の際に使われました資材、これは実は原子力機関の査察の対象になっておらなかったような次第でございますけれども、いま御指摘のラインで国際的にオーソライズと申しますか、そこで決めまして、それを国際的に公のものにするというようなお考えは、私どもとしても将来の問題として検討に値するんではないかと思います。
  90. 向井長年

    ○向井長年君 これは外務大臣、ひとつ十分検討しなけりゃならぬと思いますよ。こういうようにして次々と出てくれば何にもならぬことになりますからね。  そこで、時間がないようでございますが、たくさんあるんだけれども、最後に一つだけ聞いておきますが、核の不使用条約ですね。核の先制不使用と言いますか、この条約締結が私は必要だと思う。特に中国は絶対に核は先制使用はしないということを宣言していますね。あるいはまた、ソ連でもそれと同様なことを言っております。アメリカにおいても中南条約で不使用条約を認めておると思いますが、こういうようにして、国々でこういうように先制はしないんだと、先に使わないんだということを言っておるわけでございますから、核防強化のためにこれはわが国がこれに対して強く訴え、また主張する必要があるかと、こう思います。この点について政府はどう考えられますか。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる、いま二つのことを言われましたので、一つは非核地帯の設定ということによって核兵器が使われないような構想というのが一つの問題で、それはラテンアメリカにおいてそういう試みがあって条約もつくられたわけでございます。しかし、現実にはソ連が条約のプロトコルに加盟しないということで実効を発揮するには至っていないわけでございますが、そのことでも見ますように、核兵器国がみんな賛同をしてくれるということでありませんと有効な非核地帯というものの設定がむずかしい。しかし、たびたび申し上げておりますように、だからといって、そういう構想そのものをわれわれは捨ててしまうということは適当なことではなくて、やはりそういうものができるための条件整備を図っていくのが本当ではないか、前向きにとらえていくべきだというふうに政府としては考えております。  それから第二の問題は先制使用の問題でございますが、その先制使用と言います場合に、核兵器のまず第一攻撃をかけないという意味と、通常兵器の戦いが行われているさなかにおいて核兵器を最初に使わないという場合とが両方あると思いますが、通例は後者の意味で使われておると思いますので、それについて申し上げますと、現実にはアメリカがたとえばヨーロッパにおいて戦術核兵器を何千個か置いておるというようなことを言っておることの意味が、結局NATO体制とワルシャワ体制との通常兵器の格差、これはワルシャワ体制が何としても陸続きであるというようなこと、したがって、ヨーロッパの平和が通常兵器とそのような戦術核との総合においてバランスしておるという事実があったりいたします。よその地区にもそういうことがあり得ることだと思いますが、そういうことから申しますと、いわゆる先制使用はしないということについて、われわれの友好国の間にもいろいろ議論があるのではないかというふうにいまの段階としては判断をせざるを得ないと思います。
  92. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) これにて休憩いたします。    午後一時一分休憩      ―――――・―――――    午後二時三分開会
  93. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、増原恵吉君が委員を辞任され、その補欠として初村滝一郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  94. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 核兵器の不拡散条約について質疑を続行いたします。
  95. 戸叶武

    戸叶武君 まず、三木総理にお尋ねいたします。  この核防条約というものは、日本の外交防衛政策の中において最も重要な政策でございます。それは、賛成の者も反対の者も、日本の運命の分かれ道と考えて六年間いろいろな論議を続けてまいったのであります。この重要法案が国会に審議される段階において、いま、三木総理を支えているはずの与党である自民党のぶざまな態度は、国の運命とかかわりなく政権争奪に憂き身をやつしている権謀術策は国民ともに怒るところであって、許しがたきものであります。私は、核防条約を批准の前に、このような政治姿勢のもとにおいて、果たしていまの自民党が国の政治の中枢にあって外交防衛において責任を持てるかどうかということに非常な危惧を感ずる次第であります。三木首相から、一言、この政情の混雑の中にいるあなたの苦悩が顔にもにじみ出ておりますが、さぞ残念と思いますけれども、問題はこの困難の中にあって、心頭を滅却すれば火もまた涼しで、あなたの心境には澄んだものがあると思いますから、そのひたむきな心境をまず承りたい。
  96. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いろんな自民党内の動きが、野党である戸叶さんにもいろいろと御配慮、御懸念を煩わしたことは恐縮に考えますが、私は、内外ともに非常な難局である、戦後三十年間最大のやっぱり日本は大きな難関に差しかかっていると思います。これに対して、国民から私に負託されておるこの政治の最高責任者としての責任は、どんな困難があっても私はこれを乗り切っていく覚悟でございます。その責任と使命を果たさなければ日本の政治がおかしくなってしまう。だからこれは、必ず政府・与党としての重い責任を自覚して、私自身も党内を取りまとめて、国民の御懸念のないようなことにいたしたいと、非常な決意か持っておる次第でございます。
  97. 戸叶武

    戸叶武君 本会議で質問した際にしみじみと三木さんのお顔をながめて、三木さんこれは死ぬ覚悟で、死ぬというのは誇張に聞こえますが、命を捨ててかかっているなということが私は見えました。この問題を論議するに当たって、前の警視総監を努めたお方ですらも、参議院会館で右翼の暴力団に部屋を占領されているという始末です。国会始まって以来そういうことがないのです。殺すつもりではないがと言いますが、少なくとも威喝です。こういう状態の雰囲気の中でわれわれは審議を続けてまいったのですが、冷静を保って、参議院の外務委員会というものは良識の府として、せめて、与野党の外交防衛においても非常に距離感があるので、それを核防条約の批准を契機として、これを接点としてもう少し国の問題に対して共通の場を持たなきゃならないという信念のもとにわれわれは論議してきたんです。  社会党は議論の多いところです。議論ばかりしている党だとも言われます。批判政党だとも言われます。しかしながら、ここの六年間において党内で各権威者を呼んで勉強し論議をし、口角あわを飛ばして争ってもまいりました。しかしながら、衆議院のあの核防条約は、上がる日までもみにもんでいながらも、一たび三役一任で決まった際には、最も強固な反対論者の有力者も賛成のために議場に姿を出して手を挙げたじゃありませんか。政党というものはさようなものです。いろいろな意見があるにしても、党内で活発な論議をして、少なくとも議場に入ったときには党人であれば党の責任において言動はやるべきで、それに違反したときにはみずから党を退くなり除名してしかるべきであって、いまの自民党は自由が、放言だけあってまさに無政府状態です。あなたは責任を持つと言っているけれども、あなたの足を引っぱるやつの方が多いように見受けられますが、その辺はあなただけが引き受けたと言っても心もとない点もありますので、その辺、新聞ではあれやこれやとにぎやかに書いておりますが、真相はいかなるものか承りたいと思います。
  98. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは一つの大きな政党の過渡期だと私は思っております。いろんな悩みを政党は旨抱えておるわけで、したがって、この苦悩を通じて、日本の政党政治というものは苦悶、試練、これを乗り切ってやはり日本の議会制民主主義の土台というものは固まるものだし、これを私は何か不幸な出来事、ロッキード事件もその一つですが、その他にもいろんな不幸な事件はあるけれども、災いを転じて福とするという言葉がありますが、これを日本の議会制民主主義の土台を固めていくよき転機にしなければならぬと私は考えておるわけでございます。したがって、戸叶さんの、野党の方々から見ればいろんな御批判はあると思いますけれども、自民党もこの試練を乗り切って、本当にやっぱり自民党というものが国民の負託にこたえられるようなりっぱな政党に脱皮していくひとつの機会だと私はとらえておるわけで、これを悲観的には見ていないのですよ。  これは戦後三十年、一つの歴史の区切りが来たわけですから、内外ともに重要な問題を抱えておるわけですから、この選択というものに皆苦悶はあるし、いろんな考え方の相違もありましょうが、これを乗り切って日本の民主政治は本物になってくると私は考えておるわけでございまして、日本の議会制民主主義の将来に対して私は悲観論者ではない。どこの国でも、アメリカだってあれだけのやはり最近のアメリカというものを見ても、あの苦難を乗り越えてやっぱりアメリカの民主主義というものは前進をしておるのですから、私は必ずこの試練は乗り越えなければならぬし、乗り越え得るものだと信じておるものでございます。
  99. 戸叶武

    戸叶武君 三木さんはみずから議会の子だという自負を持っております。議会主義というものは絵にかいたぼたもちでなくて、これは苦悩の限りを尽くしてその時代に責任を持った人たちが積み重ねてルールをつくり上げたものです。イギリス憲法の不文法は、文字を書かないというところに力点があるんではなくて、歴史の年輪を積み重ねたところにイギリスの議会民主政治のいままで揺るぎなき一つの理想形態はでき上がってあるのだと思います。いまのイギリスは必ずしも理想的とは見られませんが、そういう意味において日本の、この機会に私は三木さんに承りたいんですが、あなたでも、あるいは椎名さんでも、それぞれの立場で国を憂え、党を憂えているんでしょうが、椎名さんの感覚の中にはどうしても自民党から政権を放すまい、あの中でたらい回しをやろうという妄念がまだ宿っているんじゃないかと私は思うのです。激動変革のグローバルな時代に、世界の潮流というものの中に触れないで、自分たちがいままで過ごしてきた日本の古い形の政治の慣習にとらわれて、政界名うての寝わざ師を周囲に置いて政権移動をうまくやろうなどという考えがすでに私は時代錯誤だと思うのであります。しかしながら、滅びていくものはみずから滅びるあがきをするのが歴史の変転の中における大きな教訓です。迷う者をして迷わしめ、権謀術策の徒をして権謀術策の限りを尽くせしめ、キッシンジャーだってもう長くないと言われているじゃないですか。あれほどダイナミックな権謀術策の士も、人々の心をつかむことのできない権謀術策というものは、しょせん力の外交の上に立った権謀術策であって、蘇秦、張儀の徒より一歩も進むことはできないと思うんです。  私は、日本がいまこの核防条約を批准するということは、われわれ、ある者は手を縛ることだと言う。しかしながら、明治維新の草莽の志士に一個の哲学を与えた先覚者は、何にもなくてよい景色かな、つまらない邪念とか何かを捨てて、本当に虚心になって時代を開こうという尊皇維新の志士に植えつけた哲学というものはとうといもので、それがあったからこそ明治維新もなされ、また、二百年前のアメリカの独立戦争もかち得たんだと思うんです。二百年たってアメリカも理想主義を失ってきている。イギリス帝国主義から農民が立ち上がって抵抗して、そうして独立をかち取ったあの精神は、フランス革命の思想を受けながらもフランス革命に先駆した大きな歴史的な火花です。いまはそうでなくて、民族解放でなく、力に頼って世界を抑えようとしている。ソ連も同様だ。イデオロギーや何かでなくて、アメリカンデモクラシーなり、ソ連の持っている考え方なり――私はイデオロギー論争はしない。現実的に核を持っている二つの国が、バランスをとるという名のもとに超大国世界を威圧している姿が、この均衡という名のもとにおいて不安定な平和をつくり上げているのがいまの世界状態で、一歩誤れば核戦争が勃発するかもしれない。シュレジンジャーですらも、ニクソンのような人にボタンを押すことを任せていたらどうなるかわからぬという危惧があったということをアメリカでは書物でも書いております。  私はそういう意味において、まあ、あなたのことはあなたも覚悟しているからいいでしょうが、しかし、私は本当にわれわれ野党も、あなたを支えている与党も、本当に近代政党として脱皮していくのならば、選挙に金がかからないような選挙をやって、ボスに金をもらわなければならないような選挙をやらないでいくことであります。  それと同時に、政権を移動させなければだめです。イギリスの歴史においても、内閣制度を確立したウォルポーンが二十年政権の中に、いまの自民党幕府のような、権力を握れば金が集まる、金を集めりゃ悪いこともしたくなる、そういう形において、一番腐敗政治をつくり上げたんです。やはりピットの父、大ピットが、ナポレオンに対抗する前に、まずこのイギリスの腐販政治をぶち破らなければならないと言って闘ったところに、あの闘いの中にイギリス民主主義は確立したんです。二十年もたてば水も腐ります。いままでの自民党の保守党の政治家の中に緒方竹虎さんなり松村謙三さんなり、一個の理想を持って苦悩した人たち、たとえば指揮権発動に反対し、あるいは吉田さんの解散権の発動に反対して、そうして緒方さんは吉田の後継をもって名実ともに言われながらも、断固として爛頭の急務という警鐘を乱打して、保守党の自覚を促して、みずからはさびしく政界において消えていったじゃないですか。松村謙三さんもそうです。あれほどの君子が保守党を二大政党にしないと、この幕府政治をやらしておくと堕落するということを、死ぬまで彼は言い続けていたじゃありませんか。そのときどきに緒方を利用し、松村謙三を利用する者はあるけれども、この精神を継承している人が自民党にどこにいるんですか。大きなめがねをもってながめても、ほとんどいなくなってしまったんじゃないですか。この根性、これをのぞき見たならば、田中正造、尾崎行雄、島田三郎を初めとして、日本の自由民権と護憲の運動をやり続けてきた民間の志士は、政治はここに死んだのではないかというふうに私は嘆くと思うんです。  危による者は危うからずという言葉があります。あなたは一番危ないところにいます。しかし、一番危ないところにいるから危なくないという逆説も成り立つんです。私は、戦争のさなかに中国の杭州に行きました。あそこの禅寺で昔、禅坊主が横に生えている大きな松の大木の上に座って座禅を組んでいた。そこへ得意満面の杭州の地域の太守になった、あるいは文人墨客崩れかもしれませんが、それが、おいおい和尚、松の木に登っていちゃ危ないよと言ったら、彼が、危による者は危うからず、私は危なくない、危ないところに座っているんだから。得意満面のあなたの方は危ないと言ったそうですが、これは一つの例ですが。  どうぞ私は、この中に三木武夫の勝負師という、あなたは一生に一度勝負やると言った、勝負は勝ち負けのすごろくのさいじゃない、三木武夫の見識がどこにあるか、ど根性はどこにあるかということを、体を張って戦ってこそまことの政治家であって、いまのような自民党なら分解させなさい。こんなような、党中党が乱立しているだけであって、元禄時代における柳沢、田沼の賄賂政治からあの吉良上野介の賄賂政治に至るまで、赤穂四十七士は主人のかたき、主君のかたきを打ったんじゃない。庶民の怒りを代表して、あの権力と悪政に対して、元禄の腐敗に対して抵抗していったから庶民の歓迎を受けたんです。いまの自民党を立て直しなさい。そうすれば、おのずからわれわれ野党の中にも反省すべき点が多々あるのであって、もっと責任を持って祖国を憂え人類を憂えて、日本の政治というのは日本のエゴイズムの上に立っているんじゃないというだけの私は平和憲法の中にある精神、非核三原則、今日また出すであろう国会の外務委員会決議、そういうものによって私は貫かれていくと思うんでありますが、そういうことをあなたにお願いしますが、危による者は危うからず、その心境はすわっておりますか、大体座っているからすわっているように見えますけれども、どうでしょうか。
  100. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま私も戸叶さんに申し上げておりますように国民に対してやっぱり責任と使命を持っておるのですから、この私に課されている責任や使命を中途半端で放棄することは絶対にないということを申し上げておきます。  それともう一つは、いま戸叶さんのお話しになって、非常に同感するところが多いのですが、政治や選挙に金がかかり過ぎるというこの現状は打開しないと、日本の民主政治というものは私は健全に発達しないと思う。もう国会から村会に至るまで、こんなに選挙に金を使っているような現状が、ますますこの状態というものが是正されないで続いていって、民主政治というようなものは健全に育っていくとは私は思わないのです。その願いを込めて政治資金規制法であるとか、あるいはまた公職選挙法の改正であるとか、これは戸叶君に言わしたら不完全なものですよ。私の願いも、いま御指摘のようなことからああいう法案を国会に提出して、金権に毒されない政治をつくり上げたいという願いを込めた法案であったわけでございます。  また、野党と与党との政権交代の基盤というものが日本には育っていないということが、日本の民主政治を非常に不安定なものにしておる。やはり民主政治である以上は、多元的な政党の存在というものを否定して民主主義はないのですから、そういう場合に自民党だって責任をとらなければならぬ場合があるのですから、そのときに混乱を起こさないで政権を担当できる基盤が日本の政党政治にないということが、日本の民主政治を私は非常に不安定にしていると思うのでございます。これについては野党の諸君にもお考え願わなければならぬ点が多々あると思います。政権の交代ごとに日本が混乱を起こすような、そんな政権の交代を議会制民主主義は予定してないのです。もう少しやはり、政権の交代があっても国民生活、外交政策に混乱を起こさないで政権が交代できるというルールこそが議会制民主主義を支えてきた支えですから、ところがいまのような状態では、国の基本的な政策というものが百八十度変わることが予想される政権の交代は議会制民主主義が予定した政権の交代ではないということである。こういう点で与野党間の話し合いがもう少し行われて、政権の交代が混乱なしに行われる政党政治の基盤をつくることが、日本の民主政治安定の私は基盤だと思うのです。そうでないと、なかなか政治責任のけじめがついていかないですからね。そういう点で、戸叶さんの言われる点については、特に最後に強調されました二点については、私は全く同感でございます。     ―――――――――――――
  101. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) この際、委員異動について報告いたします。  本日、野坂参三君が委員を辞任され、その補欠として塚田大願君が選任されました。     ―――――――――――――
  102. 戸叶武

    戸叶武君 それではそういう意味において、与野党にも平和外交という形において、われわれがこれを賛成する以上は、今後において、国際信義において責任を持たなければならないし、協力もしていかなければならない。その意味において、外交防衛政策において、核拡散防止条約の批准ということは、核防条約国に加盟するということは、その責任を持つことであって、これが今後における与野党の中にも、私は平和外交推進という動きを目指しての接点となると思うのです。そういう意味において、歴史的な段階でありますから、私の核防条約に対する心配な点を二、三質問することにいたします。  日本核防条約国に加盟した以上は、核兵器の廃絶を目指し、簡単にはこの廃絶は困難と言いながらも、ひたむきな姿勢で平和外交に徹して、軍縮を、特に核軍縮を推進すべきだと思いますが、三木さんはそれに対してはどのような見通しと考えをお持ちですか。
  103. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 核防条約、これは私自身も核防条約の不平等性というものは確かに認めまして、この不平等性を補っていく道というものは三つあると最初に考えました。  私は外務大臣の当時、一九六六年のときにホイスターというアメリカの軍縮庁の長官を私は日本に招いて話をした中の一つの大きな項目は、やっぱり軍縮非核保有国核保有国とに分かれて、それを何かこう区別するだけでは意味がないので、核の保有国というものはだんだんと核軍縮を行って、しまいには核の国際管理とか全廃とかというところにいくことがこの条約というものの最終の目標ですからね。そういうことで核軍縮というものをやはり推進していかなければならぬ。ただしかし、それはやはり五年ごとに再検討会議というものを私は提案したわけです。五年ごとにおやりなさい、その実績というものは見さしてもらう、実際にそのことが進んでおるかどうかですね再検討会議というものは日本の提案によって生まれた。五年ごとにやることになっておるんです。そういうことで、やはりこれを機会に、まあ日本はいままで署名はしたけれども批准をしてないわけですから、軍縮会議などにおいてもずいぶん活発には発言しておりますけれども核軍縮なんかを推進していけという日本の説得力には弱い面がありました。これはやはりここで核開発、核兵器開発の能力を持つ日本が、みずからその道を断つんですからね。だれが見たって、日本が核を持とうとすれば一番持てる最短距離にある日本ですからね。ですからこれを日本の平和外交の一つの大きな転機に私はしなければならぬ。そういう意味核軍縮といいますか、核ばかりでない、一般兵器についても軍縮というものは推進していくという大きな日本の責任も使命も生まれた、そういうふうにこの核防条約の批准は受け取るべきだと考えております。
  104. 戸叶武

    戸叶武君 日本核軍縮推進の大きな使命が課せられているという御認識には賛成であります。しかし、現実において世界各国の人が共通に感じているのは、あなたが言われたように、この核防条約は持てる国が持たざる国に、どっちかと言えば押しつけたような形において、拡散防止という名目はあるが、米ソ大国一つの覇権がここに確立せられて、世界の死活権は米ソの動きいかんにかかっているというような形で、他の国々はここに従えというような模様になっているわけであります。それを、核を持てば持つことのできる日本が、核を持たないで素裸で、そして発展途上国の核を持たない国々と一緒にスクラムを組んで物を言うというところになれば、それはいままでよりも強く私は核軍縮の方向づけができるんじゃないかと思います。  そこで、外交に対しては長い関心を持っている三木さんにお聞きするんですが、米国は、かつて広島、長崎に原爆を落とした後で、あれほど大きな被害が出るとは思っていなかったんでしょうが、やはりすぐ後では核の国際管理を考えたはずであります。しかし、ソ連が応じないという名目でソ連との競争に移っていったのですが、いまの状態で一気に核の国際管理というところまではいかないかもしれませんが、そういうふうな方向へ方向づける手段というものはないものでしょうか。原点に戻すことはできないものでしょうか。
  105. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 戸叶さんの言われるように、アメリカが広島や長崎に原爆を落とした直後には、アメリカ自身も核の国際管理というものを考えて、そういう提案も行われたんですが、御指摘のように、ソ連との話が折り合わずに実現を見なかったのですが、どうもこの核の問題というものは、その国々の安価保障という、国としたら一番やっぱり基本的な政策との関連がありますから、なかなか一気にわれわれが考えておるような理想の目標には達成できませんから、どうしても私は現実的にこれを進めていくよりほかにない、実効の上がる方法としては。そのためには、やっぱり核軍縮という入り口からこの問題を進めていくことが実際的である。だから、いきなり国際管理と言いましても、これは目標であっても、現実の努力目標としては、余りにも一気に最終目標という方向に実現をすることはむずかしいので、核軍縮というところから始めていく。最後は国際管理ということでしょうからね。それまでに行く過程としては、軍縮の促進ということが現実的だという感じがいたします。
  106. 戸叶武

    戸叶武君 最近における軍縮の成果というものは、どの程度具体的には上がっているでしょうか。
  107. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 実際的に見れば、核防条約ができて、非常に露骨な核兵器の拡大競争というものが自制せざるを得ないという国際的雰囲気は生まれてきたと思います。だから今日まで、戸叶さん御承知のように、幾つかの核軍縮に関係する条約というものは核防条約ができてから生まれておるのですね。たとえばABMの制限条約であるとか、戦略兵器の制限暫定協定であるとか、核兵器実験制限条約であるとかですね、また米ソ・ウラジオストクの合意であるとか、それから平和目的の地下核爆発に関する米ソ間の合意であるとか、また、今度は核戦争それ自体を防止する条約とか協定では、一つには、偶発戦争の防止協定とかホットラインの改善協定とか核戦争防止協定など、こういうふうにその成績というものは、非常な大きな前進とは評価できないにしても、核防条約以来、何とかこれを制限していこうという一つ世界的な大きな潮流は認めざるを得ない。  そういうことで、もし核防条約というものができてなかったら、核軍備というものに対しての拡大競争というものはもっと露骨に行われておったんではないか。やはりそういうことがもうできない世界的な一つの大きな潮流が生まれてきて、そして核軍縮へ向かって、歩みは遅々としておってもそういう方向に歩み出しておるのが今日の世界情勢である、こう私は見ておるわけでございます。
  108. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。  この核拡散防止条約を、先ほど戸叶委員からもお話しがあったように、社会党の中でもずいぶん議論がありました。にもかかわらず、なおかつわれわれがこの批准に同意しようとするのは、核がこれ以上拡散しては困るということとともに、この前も宮澤外相にお尋ねしましたが、単にこれが、長く批准をしないならば国際信用にかかわるというだけでなしに、平和憲法を持つ日本、そしてこの核防条約を批准しようとする日本が、ジュネーブ軍縮委員会なりあるいは国連の場なり、あるいは二国間の関係においてどういう努力をするかということが、これを批准する政府に課せられた私は任務だと思うんです。でありますから、ただ批准をすれば事足りるということではないと思います。あるいは、単に批准がおくれれば国際信用にかかわるという問題だけでもないと思うんですね。だから、これを契機にどれだけの努力をするかということが政府に課せられた重大な使命だと思います。でありますから、ジュネーブ軍縮委員会等で、たとえば核を持つ国が持たない国を攻撃しないとか、あるいはおどしをかけないとかいう保障を取りつけるとか、あるいは先制、先に核兵器を使わないという条約なり協定を国際的に結ぶようにするとか、何らかの努力を、ジュネーブ軍縮委員会なり、国連の場でやらなければ、単に批准をしただけでは意味ないと思います。そういう努力を期待すればこそ、私どもがあえて問題のあった条約に批准賛成するわけです。でありますから、この機会に三木総理のこの条約批准するに当たって取り組まんとする核拡散防止のための姿勢について一応お尋ねしておきたいと思います。
  109. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 羽生さんの言われたとおり、それはやはり日本があのような世界に特異な憲法を持って、これは新しい世界への日本のやっぱり挑戦、チャレンジです、ああいう憲法はほかにはないんですから。そして非核三原則、この原則を掲げて、そして調印をしたけれども六年たっても批准はしないということは、何か日本人は、これは戦争を知らない人たちがもう大半を占めておるわけです。しかし、世界は忘れていないんですからね、第二次大戦を。そういうめがねと二重写しで日本を見ておるんだということは日本人が忘れてはならぬ。そういうところへ、なかなか核防条約というものの批准というものがまとまらないということは、何か核兵器の開発をする機会をねらっておるんではないかという疑念も、全部ではありませんけれども起こりますし、また、国際的な約束というものは万難を排して守らぬと国際的な信義というものは成り立たないんです。  振り返ってみると、椎名さん以来、椎名、その次は私がやったわけです、外務大臣を。それから愛知、大平、宮澤、皆国連で演説をやっておるんですよ、必ずやると言って。そして佐藤さんもやっぱりそれを言われて、歴代の外務大臣国連という場でこれを約束して実行できないということは、いかにも国際信義にも関係するが、そのことはしかし、そういう歴史を踏まえて考えることも必要ですが、本当に羽生さんのやはり言われたことは、それはいままでのことで、ここで社会党も内部の、党内の事情というのは私もよく承知しておりまして、戸叶さんや羽生さんの御努力というものを多とします。自民党の中にもこれの決定には非常な、二十年間日本の行動をやっぱり束縛するわけですから、この選択をすることについては皆それぞれいろいろ考えるものがあったと思いますよ。それを乗り越えてここまで来たわけで、この来たことに対して、一体日本のこれからの大きな役割りは何だということを考えてみますと、日本以外ああいう憲法を持っておる国はないのですから、やっぱり核戦争というものを防ぐという、これはもうすべての政策に優先する政策です。いろんなことはあっても、核戦争防止ということ以外に、政治家が人類に果たす責任というものはこれ以上の大きなものはない。人類の共滅になること明らかですからね。そういう意味で、そのためにはいま羽生さんの言われたいろんな過程が要りますよ。そんなに幻想ではないわけですからね、外交は。そういう現実的なステップを踏んでいきつつ、核戦争というものがまかり間違っても起こらないというそういう世界を築くというために、あれだけの世界に類例のない憲法を持ち、非核三原則を持っておる国のこの批准というものを一つの機会として、日本の平和外交というものが一層新しいスタートに立たなければならぬ、この使命感を日本の外交は持たなければならぬというあなたの御意見には私も全く同感であります。
  110. 戸叶武

    戸叶武君 これからのわが国の外交というものは創造的な平和外交でなければならない。しかも、アメリカと親しんでもアメリカに隷属するものでもなければ、中国と友好を結んでも中国に従属するものでもなければ、ソ連と親しんでもソ連の第五列になるのでなく、みずからの責任において祖国と人類に対してどういうふうに貢献するかという一つの強烈な理想主義が外交の中に流れなければ世界の人々を揺すぶることはできない。この拡散防止条約の批准の問題に対して、東南アジアや豪州の人、あるいは日本に近接した各国が日本の態度を見詰めていたのは、どっちを向いて走るか。どっちを向いても険しい道ですが、われわれは戦争手段に頼らないで名実ともに平和外交をやっているのですというこの国是が定まるならば、前線で働く外交官にもそれが信念となって働きがいがありますが、日本の国内の政治はとにかく政権争奪となると野獣のごとく荒れ狂う、どこにも一片の理想主義がない。こういう形においては全く始末に負えないアニマルだという感じが強くて、東洋においては特に信義です、東洋の外交の基本は信義です。お互いに信用できないところに疑心暗鬼が生まれているのですが、これによって日本の私は行方がはっきりしたと思いますので、やはりそれならば創造的平和外交というものは抽象的な言葉でなく具体的にあらわしたらどういうのかという形において、その出発点において外務委員会でも衆議院、参議院ともに決議を出します。外務委員会だけでなくて、国会で非核宣言をするなり政府声明を出すなりして、これから本腰で日本が平和外交と取っ組む、核軍縮から核兵器の廃絶にまで進むのだというこの烈々たる宣言をやはり出して、政治は堂々の戦いです。こそこそ寝わざ師ばかりが横行するようなゴキブリ的な政治から明朗濶達な政治へ転換しなければならないときだから、そういうことを私は国会も政府もやったらいいと思うのですが、先ほども田君がこれにも言及しましたが、もう少しはっきり三木さん並びに外務大臣からお答えを願います。
  111. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、日本の平和国家としての意思を最も強烈に内外に表現するものは拡防条約に対する国会の承認だと思っています。これは日本のような国は核兵器を開発すればできる国ですからね。できない国ならそんなに迫力ありませんよ。できる国がやっぱりみずからその道を断ち切るわけですから、もうこれほど日本が平和国家としてこれから出発していくんだということを強烈に世界に印象づけできる道は私はないと思いますから、したがって、これを一つの平和外交の大きなやっぱり転機であるととらえて、日本の外交に新しい活を入れなければならぬと思います。核防条約の承認ばかりが平和外交ということの意味、そういうことだけではない。やっぱり世界の平和を崩していくような条件というのはあります、幾つか、世界の平和を崩していくような条件。その条件を一つ一つなくしていくためのじみちな努力というものが平和外交というものの内容をなす。一口に平和外交といっても、それだけで平和外交が推進できるものでないです。一体、世界の平和を崩していく条件は何だ、幾つかの条件はありますよ。その条件をなくするためのじみちな努力の中に平和外交というものはあるんだ、そういうことにするにしても、日本がもう平和国家であるというこれだけの強い意思表示はないんですから、これを境にして日本の平和外交に新しい使命感というものですか、これをやはり皆持っていかなければならぬことだと考えます。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 午前中も田委員に申し上げたことでありますが、わが国は唯一の被爆国であり、また、このような憲法を持っているただ一つの国でありますから、今回、幸いにしてこの条約の御承認を得て加盟国となりました場合には、いわゆる非核兵器国を糾合して、イデオロギー、体制を超えまして米ソ核軍縮を呼びかけていく、やはりわが国としてはその先頭に立つ資格もありますし、その責務がある、そういう場をつくっていかなければならないというふうに考えるのであります。
  113. 田英夫

    田英夫君 関連。  審議の過程で宮澤外務大臣にはすでに提案をいたしましたが、恐らくアメリカへの配慮と思いますが、積極的な御返事をいただけなかったことなんですが、改めて最高責任者である三木総理に伺いたいんです。  核防条約の批准が実現をした段階で、政府が次のような行動をとられることを提案をしたいわけです。  それは、アメリカ、ソ連、中国、フランス、イギリスという核保有国に対して、日本政府の名において書簡を送るという形でいいと思いますが、その内容は、貴国は、あなたの国は、自国の核兵器を、日本を含む非核保有国への攻撃に使用しないことを約束するか。二番目に、貴国は、自国の核兵器を、非核保有国への威嚇のために使用しないことを約束するか。三番目に、貴国は、核軍縮について、今後積極的に関係諸国との協議を進め、核兵器絶滅へ努力することを約束するか、という三カ条について書簡を送ることをやっていただけないものかと、こういうことであります。
  114. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 田君の言われること、核防条約の国会の承認の機会をとらえて国際的な日本発言をしろということでございますが、国の安全保障に関係する問題というのは、一番やっぱりその国としても非常に利害関係といいますか、ほかの経済上のことと違いますから、第一義的なやっぱり利害関係というものを考えますから、日本は私はこれで核防条約を批准したから一気に日本人の胸の中で思っておるようなことが実現を図っていくということよりも、いままで少し発言力、説得力といいますか、説得力の弱さがあったんですがね、この批准をしないことで。これはもうできたんですから、これから国連の場もありますし、軍縮会議の場もあって、終局においては核戦争の危険を防止する、もうなくしていくということが究極の理想ですから、それに向かってあらゆる場において日本が積極的に努力を積み重ねていくということが現実的でないでしょうか。この機会をとらえて、まあ、一つ考え方としてはわかりますけれども、それでそれなら実現ができるかというと、そう書簡でわかりましたということにもならぬでしょうから、そういう場面で、いろんな国連とかあるいはまた核軍縮というものの軍縮会議とか、そういう場において、この条約を批准したという日本の決意というもの、強い決意というものをやっぱり背景にして、より一層積極的にわれわれの理想に向かって近づけていくということが外交としては私は実際的だというふうに考えます。
  115. 戸叶武

    戸叶武君 三木さんは高い理想を掲げながらも、現実の上に実際政策を通じて一歩ずつ理想を実現させていくという信条を持っているようですが、まず、地下核実験禁止協定とかあるいは核保有国との間に核不使用二国間取り決めとかいうことは、すぐにでもやれば可能性がある問題ではないかと思いますが、日中平和条約も早期に妥結しようとしているんでしょうが、日本中国の間にでもまずそういうことから始めていったらどうでしょうか。
  116. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 戸叶さんの言われることはよくわかりますが、地下核実験の禁止協定、これは御承知のように国連でも二国間でなしに包括的な協定がいま議論されていますからね。私は二国間というよりかは包括的なそういう地下核実験の禁止のような、世界的な規模の協定ができるのは私は好ましいと思うんですよ。
  117. 戸叶武

    戸叶武君 その包括的なことが望ましいといっても、遅々として進まないときには二国間協定からでも何でもやるべきだし、また、アジア・太平洋非核化国際会議をわれわれが開催し、関係各国に呼びかけて非核地帯を設置しろというのも、なかなかむずかしい問題でしょうが、世界的な規模において国連なり何なりが一気に強化されるとも思えないので、そういう方向に向かって前進するということを誓約しながら、要するに全体との調和はいつでも可能なようにして、そういう方向に、あなたが言う具体的というのは、総括的とか何とかという名で逃げるんじゃなくて、できるところから始めるという考え方をもう少し配慮してみたらどうでしょうか。
  118. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) どうですかね戸叶さん。二国間協定といっても、まあそれはよい悪いは別ですよ。しかし、東西間の平和というものの中に一つの均衡といいますか、東西間の軍事力なんかの均衡ということも否定できないのですから、二国間だけで地下の核実験禁止協定といっても、それはやっぱり核保有国がそれに対して皆賛成をしないと、なかなかやはり協定に入ってそういうことはできない。向こうの方は野放しでそういうことができるということになれば、これは一つのバランスにも影響をしますからね。どうしてもやっぱり包括的というものは、機運は相当そういう機運になってきつつあるんですから、昔はやはり地下核実験禁止というものは査察なんかの点で非常にむずかしかったのですが、いまだんだんとそういうふうな難関が突破されつつありますからね。昔のような、ただ逃げ口上というのじゃなくして、現実世界の政治の課題になってきておるんじゃないでしょうか。そうでないと、二国間だけでということになれば、なかなかやっぱり二国間の協定というものの成立がむずかしいと私は思いますね。だから核保有国が皆入るような協定に持っていくことが、そういうことが実現したときの実効性もあるし、また、実現の可能性もあるのではないか、こう思うんです。  また、最後に言われました非核地帯というものの設定ということは私も賛成ですよ。いまできておるのはラテンアメリカだけですけれども、しかし、ほかの地域でも、国連などでも、中東とかあるいは南太平洋とか、あるいはまたアジアの地域でありますとか、いろいろな提案は行われておるのですけれども、まだ日の目を見てておるのはラ米の核兵器禁止条約ですか、そういうものによって非核保有地帯というような一つの実効のあるような動きが出てきておるわけですからね。核保有国はソ連が批准をしてないというようなことで実効性が完全なものじゃなくなっているわけですが、アジア・太平洋地域においても、どうもアジア・太平洋地域というのは核保有国米ソ中が含まれてきますからね。核保有国がそういうものに対して承認をしないと、なかなかやはり実際に実効のある一つの非核保有地帯ということの実効性は上がりませんから、なかなかアジア・太平洋地域においてはむずかしさがあると思いますね、ラテンアメリカよりも。しかし、これはやっぱり日本が努力をするべき一つのテーマであるとは私も思います。
  119. 戸叶武

    戸叶武君 時間が参りましたので、これで終わります。
  120. 亀井久興

    ○亀井久興君 限られた時間でございますので、私は安全保障の問題と、もう一つは原子力行政の問題、この二点にしぼって総理のお考えを承りたいと思います。  核防条約の不完全性、不平等性というものについては、先ほども御答弁である程度お認めになったわけですが、特に核兵器国核軍縮が実質的には進んでいないというその現実ははっきりとあるだろうと思います。再三再四この点は指摘されていることでございまして、私も核軍縮というものに直接この核防条約が役立つものではないんじゃないか、そういう認識をしておるわけでございますが、ただ、この条約を批准するということによって、諸外国の日本に対する不信感というものをなくすことになり、また、特にアジアの周辺諸国の日本に対する信頼感というものをつくり上げる、そのためにプラスになるということであれば、私は日本安全保障ということについて大きな前進ではないかというように考えておるわけでございます。そうだからといって、この核防条約を通したからこれでいいんだということであってはならない。この点についてはもう外務大臣からも再々御答弁いただいておることでございますが、とにかく、私はこの核防条約の批准というのは多面的といいますか多角的といいますか、多面的安全保障の一環なんだと、そういう受けとめ方をしておるわけでございますが、その認識で間違いないと思いますけれども、もう一度その点の総理のお考えをはっきりと承りたいと思います。
  121. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私も亀井君の言うとおりだと思います。これは核防条約を批准したからこれで終わりというのでなくして、新たなる外交上の日本の責任と使命が加わってきた、やはりこれから平和外交といいますか、世界の平和を推進していくために日本は根限り努力をする一つの背景もできたということだと思います。  国際関係においても、核防条約に加盟をするということは国際関係の安定度を増すことは事実ですね。この間、ちょうどニュージーランドの首相が参りまして、そうしてマルドーン首相と話をしておったときに、これはやっぱり大きく持ち出すわけですね。そうしてちょうど第二回の会談をやったとき衆議院を核防条約が通過した、私に会うなり、本当によかったねということで、ニュージーランドは何も核兵器をどうこうという国じゃない、平和な国としてやっていこうというその国でも、何か核兵器を開発できる能力を持っておる日本であるだけに、一種の危惧の念を持っておったんですね。そういう意味で東南アジアにおける国際関係というものが、日本はやっぱり平和国家としてこれからやっていこうとしておるんだという感じを強烈に与えるでしょうね。そのことが国際関係の安定度をやっぱり増すゆえんだと思います。  また、これは非常に多面的な日本の平和外交の一面としてとらえるべきだ、こう言われることも全く同感でして、ここはごく一面ですからね、やはり戦争が始まった場合のことも考えなきゃなりませんが、その前に戦争を防ぐという努力こそ、もうそれにも増して必要なことですから、そういう意味において外交というものの役割りもあるでしょう。そういう日本という国の安全を脅かされるような国際関係をつくらないということ、また、国内においてはやはり政治経済にわたる国内の体制を強くせないと、国内が崩れてきたならば、戦争というものは、私はじっと見ておると、戦争の煙というものはその国が出しているんですね、その国民が。戦争を呼び寄せているような面がありますよ。国内の混乱というものにやっぱり世界の軍事干渉が起こってきて戦争が起こっていますからね。国内がつけ入る余地がなければ、いまの世の中に侵略の旗を立てて外国を侵略できるようなことは簡単にできるような国際情勢じゃないですからね。戦争の煙をみずから出すようなことをしてばならぬ。そのためにはやっぱり堅固な健全な国内の一つの体制というものを維持せなきゃならぬ、こういうふうないろいろな要素があると思いますよ、平和の中で。その一つ要素であってすべてであるわけではむろんないと、同感であります。
  122. 亀井久興

    ○亀井久興君 次に、核防条約を批准した際に非核兵器国安全保障は万全なんだろうかという、この点についてもいろいろな疑問点が出されたわけでございますが、その際に、日本の防衛、安全保障というものは一体どういうことなんだろうかということを若干考えてみたいと思うんですが、防衛庁長官がおいでになりませんけれども防衛庁長官日本の防衛を論じるときに、国民の生命と自由を守るためには国民の国を守る意思が第一だと、それから二番目に必要最小限の自衛力、三番目に日米安全保障体制、この三本の柱があって初めて日本の防衛が成り立つんだということを再三再四言われているわけです。私もまさにそのとおりだと思うんですが、この三番目の日米安全保障体制の堅持という、この点について与野党の議論が大きく分かれるところでございまして、午前中の田委員の御指摘の中でも、アメリカの核のかさというものに入りながら核軍縮を唱えるということには矛盾があるのではないか、そういうような御指摘もありまして、それに対して外務大臣は、決してそうではないんだと、理想と現実というもののギャップをいかにして埋めていくかという、そういう問題としてとらえておられるようでありますし、こういう野党の方の御指摘と別に、われわれ同僚議員の間にも、アメリカは本当に信頼できるんだろうか、アメリカ側から日米安全保障条約というものを廃棄されるという可能性はないのだろうかという、こういう指摘も再三されておることだと思うんです。  そこで私は、一体今後日本で、もし戦争に日本が巻き込まれるとしたならばどういう戦争が想定できるんだろうかということをごく素朴に考えてみたわけなんです。そういたしますと、一つには中東において行われたような本当の数日間で勝負を決してしまうという電撃戦争、それから二番目にはアジアや中東各地で行われているようなゲリラ戦争、それから三番目には私は謀略情報戦争という、こういうもんではないだろうか。決して日本が戦争に巻き込まれるようなことがあってはならないわけでございますが、ごく素朴に考えてみた場合に、私はこういうことが想定されるであろう。そのために、当然日本の防衛のための必要最小限の自衛力というものは保持しなくてはならぬということだろうと思うんです。  それで、当然核兵器日本の現状からいたしましても持てるはずもありませんし、持ってもならないものでございますが、私がいま申し上げたような防衛というのはごく狭い意味の防衛であって、本当に日本安全保障、もっと積極的な防衛というものを論じる場合には少し視点を変えなくちゃならぬだろう。と申しますのは、現実に三十七万平方キロというこの狭い国土の中に一億を超える人が生きている、生活をしている。その一億一千万の人たちが現在自由主義体制のもとで生活を享受をしておる。その生活をさらに向上させ、しかも将来にわたって安全というものが確保できるんだという、その自信が生まれてこなくてはならぬというように思うわけなんです。  そのときに私は、戦後の日本の歩みというものを考えてみましたときに、資源小国である日本がどうしてここまで進んでくることができたのかということを考えてみますと、私はやはり内外に大きな要因があったと思いますが、内にあっては国民がきわめて勤勉によく働いた。それからまた、知識水準がきわめて高いというこの点、非常にとにかく健全でよく働き、知識水準の高いそういう民族が単一民族、単一国家としてのまとまりを持っていたということ。それからもう一つは、やはり私は国際環境に非常に恵まれたということだろうと考えておるわけでございます。それで国際環境に恵まれたという、その恵まれた国際環境を巧みに生かした、その生かしたというところはやはり、私は日本人の力だったろうと思いますけれども、それではその国際環境というものを本当に日本が、こういう国際環境をつくるということが日本の国益にプラスし、しかも世界に貢献する道なんだということを自主的に考えて努力をしてきた結果がこうなっておるんであれば、私は何にも心配することはないのでございますが、いつぞやの石油ショックでもわれわれ非常に痛い経験をいたしましたように、世界のどこでどういう出来事が起こっても非常に敏感に影響を受けるという国でございますから、やはり私は平和な世界環境というもの、局地戦争は常にあっても全面戦争というものがない平和な国際環境というものを守っていく、このことが私は日本の本当の防衛ではないかというように理解をしておるわけでございます。その点についての総理のお考えと、また、もしそれが総理も同感をしていただけるのであれば、それではそのことを踏まえて具体的にどういう政策をとっていかれようとするのか、その点をお伺いしたいと思います。
  123. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この点も私、亀井君の認識と同じくするものですが、やはり発展を遂げたのは日本人の能力でしょうね。これにはやっぱり日本の教育というものが物を言っていますよ。明治以来貧しい中で教育というのは最優先してきたですね。だからこれだけ普遍的に教育というのが行き渡っている国はないわけです。だから新しい技術でもこなすだけの能力は持っているですからね、日本人は。質のいい労働力というものは、日本人が皆積極的に働こうという、怠け者でないですからね、じっとしておれないくらい働こうという意欲のある国民ですからね。やはり優秀な能力国際環境というのは言われるとおり、すべての国際関係が日本の発展のために追い風であったのですね。  しかし、それは皆亀井君の言われるように日本がつくったものではないじゃないかということ、つくったものでありませんよ、しかし、それに対する適応能力は持っておったということでしょうね。そういうことが起こっても、これに適応していくだけの能力がなければ、そういうふうな追い風のような風が吹いてきても、それがやっぱり経済発展の契機にはなってないでしょうからね。そういう点で、日本人はやはり変化に適応する能力というものは持っておる。  そこで、それならば平和を維持するために日本国際環境というものを安定したものにしないとだめだということはそのとおりで、これだけの燃料から原料、食糧までも輸入して、それをまた元手にして再加工するわけでしょう。それで輸出を世界にしておるのですからね。日本はいやでもおうでも、やっぱり世界とともに生きていく以外に生きる道はないですから、戦争でも起こって輸送路が絶たれたら日本はもう手を挙げざるを得ない。日本ほどそういう点で国の民族の生存を平和に依存している国は珍しいかもしれません。いろいろな点でやっぱり海外依存度が高いですからね、それだけに国際関係が安定した関係を持つということに対して絶えざる努力をすることが平和維持の基本だと思いますよ。  また、日米安保条約についてのいろいろなお話がありましたが、いま亀井君ごらんになっても、一国だけで守れる国はないですよ。私は国際的集団安全保障の時代だと考えますよ。それはヨーロッパの諸国だって北大西洋条約というものが大きな支えになっているのです。東欧圏だってワルシャワ条約というものがやっぱり一つの東西間の均衡を維持しながら、平和のために一つの大きな支えになっておることは事実ですからね。それだけにアメリカが簡単に日米安保条約を廃棄するんじゃないかということ考えますと、アメリカのためにも利益なんですよ。日本の、アジアにおいてこれだけ安定した国、同盟国を持って、それがアメリカの大きな軍事力を背景にした抑止力というものが日本の繁栄の大きな支えになっておった。だからアメリカに貢献しておるわけですから、日本ばかりが一方的にアメリカの御厄介になっているというふうなひけ目にならぬ方がいいと思う。それは、一方的な利益だけで、向こうは何の利益もないような、そういうふうな条約というものは長く続いていくことに理由はなくなりますからね。アメリカもまたやっぱりこれによって、日本の安定のために寄与しているということがアメリカの利益にも合致して、日米の利益が合致しておるわけですからね。そこにこの日米安保条約というもののやっぱり基盤があるわけですから。  安保条約は、御承知のように軍事力のことばかり書いてないです。日米協力というものを、むしろ日米の経済協力などが前文の方に大きく出ているんですからね。安保条約というたら軍事面だけというけれども、それは条約としてはそういう体裁を、形はとってないということになる。だから、この核防条約に批准して、アメリカの核の抑止力というものの支えがなくなったら大変だというように考えるということは、安保条約がそんなに簡単にすぐにでも廃棄されるだろうという危惧は私は要らぬと思います。  また、アメリカは、この核防条約に批准することによって日本は道義的な責任は加重したと見ますね。そういう点で、アメリカの歴代大統領も、この安保条約のときにもアイゼンハワー大統領も、何か声明があるでしょう。やっぱり日本人の意思に反してするようなことをしないというような声明もあって、日本が皆核を持ちたくないというのは被爆国民として当然ですから。そういうふうなこともアメリカは理解しながら、日本を守るという条約を安保条約でしておるわけですから、そう簡単に日本が、日米安保条約というものがすぐに廃棄される日があるというふうに私は考えないのです。  しかし、自己の専守防衛力といいますか、それは持たなけりゃいかぬです。全部をアメリカにお願いしますというふうな、そんなことは独立国家として責任を果たしておる道でないですから、日本もやっぱり国力に相応した防衛力を持ち、そしてまた集団安全保障、日米安保条約、これはやっぱり世界的な大勢ですから、そのことで日本の自主性が失われるといったら、ヨーロッパはみんな全部自主性がないということでしょう。どこもそうは考えてないですから。
  124. 亀井久興

    ○亀井久興君 多面的な高度な外交努力というものが一番大切だということについてはよく理解いたしましたが、唯一の被爆国であるというわが国、そしてまた、世界で類のない平和憲法を持っているという現実、また、それに加えて非核三原則を堅持している、それでもなおかつ、日本があるいは核武装するんではないかというような、そういう危惧の念を周辺諸国から持たれるということも、これまた私は現実としてよく認識をしなくちゃいかぬ問題だろうと思うんです。ですから、日本の平和外交というものはそう容易なことではない。よほど腹を据えて、先ほどから再三申し上げているように多角的な外交努力をしなくてはならぬだろう。いま日米安保の問題で、総理から、アメリカの方からも日米安保というものは必要なんだというようなお話ございましたが、これがアメリカにとってただ単にプラスになるということだけではなくて、さらに、たとえばアジアの発展途上国、そういう国々日本というものによって非常にとにかく自国が得ているものが大きいというようなことになって、どこの国も日本を攻撃をするということはみずからの国益にマイナスになるんだという、そういう環境をつくっていくことが私は一番大切ではないかというように思うわけです。  その場合に、いろいろな知恵が要るだろうと思うんですけれども、たとえばスイスの実態を見ておりましても、やはりああいう中立国というのがさまざまな国際機関というものを持っている、そのことによって世界に貢献をしている。どこの国もスイスというものをやはり大切にしていかざるを得ないという、そういう現実日本も大いに参考にすべきではないか。ですから、積極的に日本国際機関というものを、国連大学もございますけれども、もっともっと積極的に誘致をしていく。どこの国も日本には手触れたら損だというような、そういう方向に努力をすべきではないかというように考えておりますが、この点について、総理と外務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  125. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私の言ったのは、アメリカの国益にも合致するということは、日本が一番発展途上国に囲まれておるわけですから、アジアにおいて日本が一番安定した国として、工業先進国として初めて欧米と肩を並べるような国になったということが、やっぱり技術協力とか経済協力というものもできる国の日本になったわけですから、これがこんなに日本が安定してなければ、東南アジアに対していろんな面の協力をするということはできませんよ。そういうことがアジアの安定に対して少なからず関心を持っておるアメリカとしての国益にも合致するということで、そういう広い意味があるですよね、アメリカの。そういうことで、やはりそういう期待にこたえなきゃならぬですよ。また日本は、これだけ平和に依存している国はないんですからね。国連なんかのいろんな機関、これに対して日本がじみちな協力をするという努力を積み重ねてないと、平和国家だ、平和国家だと言って十年一日のごとく唱えるだけでは、実績が伴わないと平和国家としての実感もわいてきませんからね。亀井君の言われるように、国際機関をできるだけ日本は積極的に協力すべきだという意見は全く同感ですよ、これはやらなければいかぬ。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いまの、日本に戦いをしかけるということは自分の国にとってむしろ損失になる、マイナスになると相手が考えるような国に日本をしておくことが大切だということは、私は非常にいい、適切な御指摘だと思います。そのために日本国際機関を置くというようなこともこれも確かにいいことでありますし、また、日本が、たとえば南北問題について非常な貢献をしておる、しかるがゆえに、そのような国を失うことは南北問題全体にとって損失であるとか、あるいは日本という国あるいは日本人が国際的な文化にいろいろ貢献をしておる。したがって、これを失うことば損失であるとか、やはりそういうような国をつくっていくということは、わが国にとって広い意味で非常に安全保障に役に立つ、まことに私同感でございます。
  127. 亀井久興

    ○亀井久興君 次に、他の委員から非核地帯を設定すべきであるという御指摘があったわけですが、私、その意見にもかなり賛成はするんですが、もう一つ現実考えてみたときに、たとえば非核三原則との関連から考えてみましても、つくらず、持たず、持ち込ませずという、その持ち込ませずということが非常に大きな問題に再三再四なるわけで、その際に、領海が今後十二海里になったらどうなるかとか、あるいは国際海峡の自由航行の問題どうするんだとか、そういう問題いろいろ出てきたわけですが、私、たとえば領海が十二海里なら十二海里ということで設定をされたとしましても、その領海のちょっとでも入ったらばこれは持ち込んだということになるからいかぬ、それがちょっと外れていれば、これはもう領海の外なんだから構わぬじゃないかという、これは何といいますか、たてまえから言えば確かにそのとおりだろうと思うんですけれども現実世界の核戦略というものを考えてみたときに、その領海にわずか入ったところにいるのと、ちょっと領海から出たところに核を搭載した原子力潜水艦があるのと、それほど現実には変わりはないだろう。ですから、私は、むしろちょうど部分核実験禁止ということが考えられておるわけですから、部分的な非核地帯というものが考えられないだろうか。たとえば海だけなら海、いま問題になっておるのは、日本の場合には海というものが一番やはり大きな問題になっているわけです。ですから、たとえば日本海というものをひとつ部分非核海ですか、そういうものにしようじゃないかというような、そういったことが考えられないだろうか、この点についての御見解を承りたいと思います。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、亀井委員はむろん誤解をしていらっしゃいませんし、その心配はないと思いますが、わが国に関する限り領土、領海、領空、いわば完全な非核地帯ができ上がっておるわけでございますから問題ないわけでございますけれども、もう少し広く、たとえば、太平洋地域とか西太平洋地域とかいうものを考えてまいりますと、確かに亀井委員の言われるようなむずかしい問題は私現実に出てくる可能性があると思うんです。  それはラテンアメリカと違いまして、この地域は非常に大きな海の部分を含んでおって、しかもそれは公海であるということになりまして、それを含んで全部非核地帯をつくるということは、一体、公海が公海でなくなるというような要素を含んでくることになりますから、それはかなりむずかしい問題を含む可能性もありますので、いまのようなアプローチも私は現実的な一つのアプローチになり得る、そういう要素考えなきゃならないんではないかと思っております。
  129. 亀井久興

    ○亀井久興君 次に、デタントということについてちょっと承りたいと思うんですが、私は世界が緊張緩和の方向に向かっているのかいないのかという、この点についての意見が非常に分かれるもんですから、それで核防条約の批准の問題についてもずいぶん意見が分かれてくるんではないか、そういう感じがしておるわけなんです。  それで、私は、デタントというのは、ちょうど、妙なたとえですけれども、相撲で非常にいい勝負で、水が入るような大勝負だ、横綱同士がやっておる。そういうような水が入る直前の姿なんというのはまさに停止しているわけです。ところが、周りから見ていると全然力が入ってないように見えるけれども、実際には双方は猛烈な力を入れている。その力がちょうど拮抗しておるからとまっておるという、まさにこの状態がデタントではないかというような感じがするわけですが、この点いかがでしょうか。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現在の米ソ間のデタントというのを分析していけば、まさに亀井委員の言われるようなことになるわけだと思います。すなわち、ソ連はもとよりですけれども、アメリカの大統領がデタントという言葉を、力を通じての平和という言葉に言いかえるんだと申しましたとおり、力の均衡によって維持されている状態が現在のデタントであるということは、私そのとおりであると思います。ですから、本来から申せば、そういう状態でない、文字どおり力を抜いた、こうなるともう平和ということになっていくわけですが、それが好ましいと思いますけれども、しかしながら、米ソがともかく核戦争というものはどのようにしてもお互い回避しようではないかと考えるに至った状態は、無制限な競争をしてすきがあれば相手をやっつけようと考えている状態に比べれば一つの進歩であると考えますし、これがどっちに向かっていくかというお尋ねがございましたが、私は、いまの米ソのいわゆるオーバーキルになっている核装備の状態から見ても、デタントという言葉は使うにしろ使わないにしろ、両方のそういう意思の合致というものは私は簡単に崩れることはないと、そう考えます。
  131. 亀井久興

    ○亀井久興君 次に、いま世界全体が、まあ国際社会と言ってもいいですが、新しい秩序を求めて大きく動いているというこの現実は、恐らく総理もよく御理解になっておられるだろうと思います。それだけに、その新しい秩序を求めるためのいろいろなことを各国とも考えておるだろうと思いますが、日本の場合には、とにかく国際的な話し合いというものには積極的に参加をしていかざるを得ない、そういう体質を持った国だと。したがいまして、総理も先ごろランブイエの先進六カ国の首脳会議、ああいうものにもお出かけになっただろうと思うんですが、現実日本国連外交というものを中心にしておりますけれども、残念ながら国連が生まれて以来、世界で起こった国際紛争が国連の場だけで解決をされたということは一度もない。ですから、その裏でいろいろな大国間の駆け引きというものが続けられている。今日、新しい世界秩序を求めるそういう動きの中でも、私はさまざまな駆け引きというものが行われているだろうと。その際に、その駆け引きの道具として、ある場合は軍事力というものが使われたり、あるいはエネルギー資源が使われたり、あるいは食糧が使われたり、まあいろんなものが使われておるわけですが、日本の場合には、積極的にそういうものに参加をしていかざるを得ないという国でありながら、本当に日本発言力の力として、いま申し上げたような駆け引きの道具としては何も持っていないわけですから、何をもって日本の力にするのかという、この点が私は非常に大事なところではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  132. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあいろんな、言われたように軍事力とか食糧とかエネルギーというようなそういう材料はないんですが、しかし、日本の国は非常に私は国際社会において特徴を持っていると思いますね。それは何かといったら、力というものの、力でそれならばすべて解決できるかというと、できませんね、いまは。力だけで解決できる時代ではない。皆やはり世界の納得を得ないと解決できませんからね。力にも限界というものがあるということが国際社会でわれわれはもう見せつけられておりますからね。力を持たないということが、軍事力とか食糧とかエネルギーを持たないということが弱みばかりだとは言えないですね。それだけに、国際社会において日本ば何かこう、調停者と言うとちょっとおこがましいけれども、そういう役割りがあるんでないでしょうか。私は、ランブイエの会議なんか出てみましてそういう感じが非常にしたわけです。先進工業国の一員でありながら、この間うちまで発展途上国ですわね、日本は。その人たちのやはり悩みというものもはだでわかるんですね。西欧の社会というものは、もう文化的にも工業的にも先進国としての歴史も長いですから、われわれのようなはだで感ずるという、発展途上国に対する悩みというものの切実さは違うですね。だから、力を持たぬと国際政治に貢献できぬということは、むしろそういう、人を何か圧迫するような力を持たないところの強みというものもあるのではないかと、外交で。それはやはりいま言った、いろいろなお互いの立場というものに対して日本理解することのできる立場にもありますから、それを生かすということだと思うんですよ。いまないんですからね。だから、それをいまつくるといってもできないんだから、日本が弱点のように見えるけれども、いまの世界国際情勢というのは必ずしもそれが弱点ではなくなってきつつあるのではないか。むしろ力を持たない日本がその長所というものを国際政治の中で生かす道を考えれば、それはやはり日本国際社会において大きく貢献できる。スウェーデンだってそうですわね。格別何も世界に対して脅迫できるような材料はないですけれども、やっぱり国際社会でなかなか貢献しておるということ。だから、そう日本役割り国際政治の上で余り過小評価することには私は反対です。
  133. 亀井久興

    ○亀井久興君 次に、やはり安全保障の一環なんですけれども、私は、日本は、ウサギの耳はなぜ長いのだという、そういうことを一番考えなくてはならぬ国だろうと思うのです。それだけに、世界のどこでどういう出来事が起こっても敏感に影響を受ける国ですから、どこの国よりも早く正確な情報をキャッチして、それに対応した政策を打ち出すということが一番私は大事なことではないかと思う。  ところが、どうも情報というものに対する価値が何かないがしろにされているのではないかというような感じがしてならない。現実に、たとえばCIAとかKGBとか、ああいう諜報機関の暗躍ぶりというものもありますけれども、それは他国の主権を侵すというようなことはやってはなりませんけれども、やはり許される範囲で正確な情報をできるだけ早くキャッチして、それにとにかく対応した政策を打ち出すという体制をもっと私は確立をしていただきたいという感じがするわけなんです。何か行政機関、各省庁ばらばらにそれをやっているけれども、それを何か総理の手元でもって集約した形でひとつ情報というものを取拾選択できないものか。この点いかがでしょうか。
  134. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま、諸外国の情報というものは外務省を中心にして収集されておるわけです。これはまた別な機構を内閣につくりまして、情報の収集が二元的な組織を持つことがいいかどうかということは私は疑問がある。だが、日本の情報収集能力が私は弱いと思いますね。これはやはり外務省が一番出先も持っておりますし、だから外務省自身としての情報を収集する能力というものをもっと強化していくような方法考えることが一番実際的ではないか。これは情報収集というものはその社会に相当行ってないとむずかしさがありますからね。いまの外務省の情報収集というものの能力をもっと強化する方途を考えるべきだという必要性は、亀井君と私は同感ですね。
  135. 亀井久興

    ○亀井久興君 時間がありませんので、最後になりましたが、簡単に、原子力行政の問題ですが、不拡散条約の批准によって、ウランの濃縮だとか軽水炉の開発とか、こういうことについての自主技術の開発が非常にむずかしくなる、そういう危機感が非常に強くあるわけですが、私どうも、一部の科学者の意見なんかを聞きますと、国の原子力政策というものの方向が誤ったのではないだろうか。現実世界の趨勢は、原子力発電所を見ましても軽水炉が中心である。ところが、その軽水炉についての技術者というものは非常に少ない。それで重水炉であるとか、あるいは高速増殖炉とか、こういうものにいま集中をしてやっているけれども、それで果たしていいのだろうかという危機感があるように思うのですが、この国の原子力行政というものについての総理のはっきりとした御見解を承り、また科学技術庁のお考えを承って、私の質問を終わります。
  136. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、亀井君の最初に言われた原子力の平和利用の面においては、ウランなど、これはとても日本の国内の埋蔵量では、これは実際昭和六十年代まで、六十年までをとってみたら、日本の国内の埋蔵量というのは約一万トンぐらいですからね、十分の一ぐらいしかないのですよ。だから、日本のウランの資源は、やっぱり日本の実情には余り役に立たないぐらいの埋蔵量ですね。そういう燃料も輸入するし技術も輸入して、とにかく立ちおくれたですからね、自主技術の開発ということは、これは非常に大事だと思う。そうでないと、全部そういうものが外国から輸入されてくるということになってくると、いろいろな点で、まあ信頼性、安全性の上においても多少やっぱり不安に思いますから、これから力を入れなければならない。  現在軽水炉というものに対していろいろ意見は出ておりますが、最も実用的なんですね、軽水炉は。どこの国の状態を見ましても、実際問題としては軽水炉による原子力発電が行われていますから、そのものが――そんなら何かはかのものか、実際現実に実用化されておるものがあるかというと、そうは言えませんからね。だから、これは将来いろいろ研究はしていかなければならぬでしょうけれども、いまはそういう点で軽水炉というものをやっぱり中心考えざるを得ないけれども、それを補うものとして必要な自主技術の開発といいますか、人材養成の努力、こういうものがやっぱり並行してなされることが必要だというふうに考えます。
  137. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) ただいま総理から御答弁ありましたとおりなんでありますが、特にわが国の場合におきましては、外国から新しい技術を導入してそうして実用化を図ってきたということにあるわけです。  軽水炉の点につきましても、いろいろトラブルなんかも発生して、その点について若干立ちおくれているのじゃないかという先生の御指摘のとおりでありまして、その点につきましては、私どもとしてもこの軽水炉の安全性をより高くし、信頼性を向上するための自主的な研究というものにもつと力を今後入れていかなければならぬのじゃないかというふうに考えております。
  138. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 自民党の締めくくりの質疑を総理に直接できることは大変光栄です。  私は、核防条約の批准のために一番若い議員として真剣に取り組んでまいりました。その結果、私は納得する条件として、先日この委員会において三つの条件を申し上げました。  第一は、三木総理大臣、あなたは直接な説得力が自民党内部に欠けている。だから一部のいろいろな批判があるんです。だから、きょうあなたはずばり答えていただきたい。  二つ目は、非核三原則の現実的な修正であります。こんなことを言うと、総理はびっくりなさっちゃうと思いますけれども、ゆっくりこれからぼくは伺います。  第三は、核弾頭解体のアピールと行動です。きょうの総理の答弁次第で賛否を決めたい。ぼくは本当にいまここでもって手が挙がりかかっているのだけれども、どうか批准賛成の右手を挙げさせてください。  早速質問に入ります。時間がないから簡単に答えていただけばいい。できるものはイエス、ノーならノーで結構。  世界で唯一の被爆国であり、憲法のもと平和国家であるわが国が六年間も核防条約の批准をおくらせることによって国際信用を大きく失墜させるだけじゃなくて、これは非常に大変なことなんですよ。私はこのことは全く残念なんです。対日不信感を醸成させたのではないかという認識も強く持っております。また、国際信用を失っては、わが国の国益のために大きなマイナスであり、特に六年前に調印したのです、日本は。一国としてですよ、調印して、国際信義の上から約束を果たしたいという率直な答弁が総理にないんですよ。総理御自身の答弁として、お言葉として、外国からの圧力でなくて、わが国の自主的な選択として今国会でぜひ批准をしたいんだ。自分の、総理のポストをかけたっていい。さっき戸叶大先生が、三木さんは首だか命だか知らないけれどもかけていると言う、あの気持ち、社会党の長老から言われないで、三木総理が首をかけているんだ、ぜひお願いしたいと言って総理が、私たち自民党員の一部慎重派もいます、はっきり言って。どうか総理の説得力でもって、特に私は自民党の一番右じゃないかというふうに言われている男ですが、本人はすごいリベラリストでもって、自民党の一番左で、三木さんの隣に並んでもいいんじゃないかと思っているぐらいの信念を持っております。どうか私を納得さしてください、ぼくはいま命がけでやっているんですから。お願いします。
  139. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 糸山君の、一番ここの中で若い世代の感覚を持っている糸山君、これに対してどういう感じを持っておるかということは非常に重要なことであります。党内の説得力が足りなかったではないかと、糸山君、私もやったんですよ。慎重論の人たちに来てもらっていろいろやったけれども、まだ若い糸山君の目には総理の努力が足りなかったということは、これは反省をいたします。  それから第二番目の国際的な約束、これは私は言ったと思いますけれども、まだしかし足りないということでしょう。これはやっぱり国際的な信義というものは約束を守るというところに生まれてくる。約束を守らぬということになれば信義も何もありませんよ。国際信義は国際的な約束を守るということで、これは先ほども私が答えましたように、もう歴代の内閣全部これはやっぱり早期に批准をいたしますと言ってきておるんですから、これをいつまでも延ばすことは、何か日本核兵器開発をしようという一つの気持ちがあるのではないかという疑念を持たして、国際関係においても信頼感といいますが、また安定感、これに対して非常にマイナスの効果をもたらすことは糸山君の御指摘のとおりでございます。
  140. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ただいまの総理の御答弁、納得いたしました、第一項に関しては。  じゃ第二項にいきましょう。非核三原則の第二項、すなわち、持ち込ませずをめぐるあいまいな解釈についてです。自民党からもただいま亀井議員から質問ございましたけれども、総理、この解釈の中には核の一時通過、核のトランジットは入っていないのではありませんか。非核三原則の理念はよくわかります。しかし、わが国安全保障が日米安保条約に大きく支えられている観点からすると、核を持ち込ませずの解釈の中に、いかなるときでもだめだということまで含まれては現実的ではないと考えます。私はそう理解しておりますが、間違っておりますか。
  141. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 核をつくらず、持たず持ち込ませずという非核三原則は、国民の支持も得ておる三原則であると思いますから、従来どおりこの三原則は堅持してまいろうという考えでございます。
  142. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 では総理、もうずばり聞きますよ。有事の場合はイエスもあり得るのですね。
  143. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、有事、有事でないと、一体有事というのはどういうことかということで、いろんな場合を、具体的に有事であるとかないというのでなくして、あらゆる場合に非核三原則を堅持したいということで、糸山君の御納得を得たいわけでございます。
  144. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 どうも、納得を得たいわけですとにやにやと笑われちゃうと弱いもので、ずばりいきましょう。  私は総理に非核三原則の、けさの新聞にも出ていましたけれども、堅持することを前提にして現実的な修正を求めているんです。私は三原則を破れとか言うんじゃなくて、現在の非核三原則は認める。でも、その修正とは何かと言うと、一は持たず、二はつくらず、これは当然のことですよ。これ変なことを言ったら、社会党の田先生がすごい顔でにらみつけているから言えないけれども、三です、三は上陸させず、四は領空を飛行させず、この新四原則ですが、総理、いかがですか。
  145. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはもう従来の自民党内閣が、私だけじゃないんですよ。従来の内閣がこれは堅持をいたしてまいった三原則でございますから、どうか三原則を堅持したいという政府の意図で御了承を願いたいと思うのです。
  146. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 総理の答弁伺ってまいりました。三原則を厳守したい。  では伺います。歴代の内閣は皆そう答弁されてまいりました。私を初め国民の大多数は三原則はすでに破られているんじゃないかと思っている人も多いと思うんですが、総理、いまこそ勇気を持って国民に語るときです、あいまいのままにしておかないで。うそのない政治を打ち出している総理なんですから、わが国安全保障の根幹に触れるこの問題をあいまいにさせておいてはいけない。ましてや、領海三海里のいまでも疑惑があるのに、領海十二海里に広がったらますます疑惑は深まるばかりであります。特に、津軽海峡などはソ連の原子力潜水艦も入ってくるかもしれない、十二海里になれば。総理、クリーン三木と言われて評価の高い総理だからこそはっきりと言えるんじゃないですか。いかがですか。
  147. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは従来の政府の方針というものを糸山君、堅持をいたしたいと思うわけでございます。
  148. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 せんだって、当委員会において宮澤外務大臣は、五月十三日のこの外務委員会の私の質問に対して、私見として、寄港を認めるとかえって不安がつのり政治の混乱を招くおそれがあるといった意味の答弁をされたと思います。それなら政治の混乱が起きないように総理が国民に説得し、理解を求めるという政治努力が必要ではないんでしょうか。核の一時通過があったことが、もし万が一外国から公表された場合ですよ、ラロック証言だってあるんだし、ロッキード事件以上の政治の混乱を招くおそれがあります。歴代の総理はみんなそうやってうそをついていたことになりますよ、もしそういうことを言ったら。総理、あなただってうそをついた総理大臣だった、外相もうそつきの外相であったということになりますので、いかがですか、最後にこの答弁、はっきり。
  149. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私はうそをつきたくないということを念願としておるわけです。うそをつけばこれは人間の信頼関係というものは生まれてこないわけです。ただ、この問題についてはもうアメリカに対しても、外務大臣も、総理大臣としての私も、しばしば日本の国民の一つの核に対しての異常な感覚というものはもう伝え過ぎるぐらい伝えてあるわけで、アメリカはよく理解することができると、そうして日本のこの方針を尊重すると言っておるんですから、それ以上糸山君、この国際関係というものはある程度信頼関係がないと、そんなことを言っても当てにならない、持ち込んでおるに違いないと、こう言ってしまいますと信頼関係というものはやっぱり損なわれますからね。それほど言うわけでございますから、やはりアメリカとしてもそういう日本人の国民感情というものを尊重して、非核三原則をアメリカもやっぱり守っていこうと、こう考えていると見ないと、言うことは皆うそ言っているんじゃないかということでは国際的な信頼関係は生まれませんからね。
  150. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ただいまの総理の御答弁、恐らくそういうことだろうとぼくも思っておりました。もうこれ以上出てこないだろうと思っておりましたけれども、念のため御注意申し上げておきますが、もし今後二十年先、三十年先、実はあのときにトランジットがあったんだということになったら、自由民主党はどうなるかお考え願いたいと思う。もう非核三原則の修正はじゃあきらめましょう。これだけ言ってわからなければ、いいです。そのかわり、自民党は知らないですよ、私は。いいですか。あきらめます、追及しません。  そのかわり、私は総理に一つの提案を申し上げたいと思います。核防条約を批准したければ、一つの提案を申し上げます。  それは、核兵器の全廃を念願するわが国は、すべての核兵器国に対し、核弾頭を解体し、これをエネルギー源として平和利用のために放出させるように強力にアピールするということなんです。これなんか夢みたいなことを言っているかもしれませんけれども、とんでもない。唯一の被爆国の政治家として核はこりごりです。戦争を起こさないようにすることは、われわれ政治家の大きな使命であり悲願でもあります。戦争に直結するおそれが十分にある核兵器という怪物を政治家の手によって解体し、人類平和のために利用すべきではありませんか。総理はそうお考えになっておりませんか、このことについて。
  151. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 糸山君のいまの御提案は夢物語ではありません。若い人たちがやっぱりそう考えることは、私は当然のことだと思います。一九六六年の三月でしたか、アメリカが十八カ国軍縮委員会でこういうこと提案したことがあるんです、アメリカ自身が。核兵器保有国核兵器用の核分裂物質の生産を停止して、いま持っておるウランの235、これをやはり平和的に転用しようじゃないかという提案を行ったことがあるんです。だから、糸山君のこれは夢物語ではない。現実世界の政治の一つ議題に上ったんですが、日本はその場合に積極的に賛成である、歓迎すると、こういう発言をしておるんですよ。決して夢物語ではない。しかし、ほかの核保有国、ソ連との話が折り合わないで実現できなかったんですが、あなたの理想というものは夢物語ではない。
  152. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 さすが総理だ、違う、言うことが。私もいまの総理の答弁に非常に納得しましたから、最後にこれだけ言って――総理よく聞いてくださいよ。  わが国が核弾頭の解体というような具体的な提言や具体的な行動をあらゆる機会に世界に向かってアピールし、最大の努力を尽くすことです。そのことは、同時に核防条約精神に完全に合致するのではないでしょうか。これは社会党さんも同じだと思います。人類の平和のために努力することに情熱を持っていらっしゃるただいま総理の答弁、いますぐにでも、あるいはことしの秋の国連の場で、総理、核弾頭解体を世界に向かってアピールする、約束してください。それをすることによって、不平等条約と言われている核防条約の批准の意義が生きるのではありませんか。重ねてお願いします。それが日本国際信用を高め、世界三十六億人類の未来のためにあなたが行う責務ではないでしょうか。二十一世紀の私たち若い青年たちのためにも、ひとつあなた三木さんがやらなければだれがやりますか、総理、お願いします。頼みます。
  153. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 糸山君の非常に御熱意はよくわかります。ただ、これはやはりひとつの考え方だと思いますね。いままで持っておる核弾頭、これはやはり平和利用のために転用するという考え方は、ただ核弾頭をそのまま国際的管理というだけではなくして、これを平和利用に転用するということは一つ考え方です。だから、そういう考え方で日本はあらゆる国際会議の場で、将来日本が願っておるのは核兵器の全廃ですからね。そこへやっぱりいく過程の間の一つの提案だと思いますね。そういうことで、そういう御趣旨も踏まえて、いろんな国際会議の場がございますから、それは日本の理想にも合致することですから推進をいたすことにいたします。
  154. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ありがとうございました。
  155. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは非常に時間が限られておりますので、総理にも答弁はひとつ簡潔にお願いしたいと思います。質問も簡潔にいたしますから。  最初に、今回核防条約にわが党は賛成をするわけでございますが、決して内容がいいから賛成するわけではありません。いろいろな不十分な点は多々あるわけですけれども、いまさら反対をしても条約はもとには返らない。そういう意味で、これからが新たなる出発であると、このように考えておるわけであります。  それで、総理に確認をしておきますが、総理としてもこの核防条約におけるそれ以後の軍縮の進展あるいはまた条約の内容における非核兵器国に対する安全保障、そういうような点については決して十分ではない、不十分である。しかし、この核防批准を一つの出発として国際社会において発言権を得、さらにこういう問題において努力をする、このように認識をされていると思っておるわけでありますが、それで間違いないかどうか。
  156. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) そのとおりです。
  157. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 非常に簡単で、ありがとうございました。  そこで、ただ発言権を得ただけでは困るわけで、やっぱり私としてはこの核防条約の成立以来今日まで、あるいはそれ以前からの国連におけるわが国姿勢というものは、必ずしも満足するものではないと私は直観して思っております。そういう点でさらに努力をする、そのことを誓うかどうか。
  158. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは発言力を持ったということでは意味がないので、なぜ発言力を持ったというかと言えば、その発言力を生かすところに発言力を持った価値があるので、発言力を持ちましたということだけで満足するなら意味はないですから、その発言力を生かして、国際社会で積極的に塩出君の言われるように努力をいたします。
  159. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わかりました。  それで、いま世界にはいろいろ人口問題あるいはまた公害問題、食糧問題、いろいろな問題があるわけでありますが、私はこの核の脅威から人間を守る、ほかの問題はもちろん重要ではありますけれども、これが最も大きな問題である、こう私は認識しておるわけでありますが、総理も同じ認識に立っているかどうか。
  160. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 塩出君の言われるとおり、私も全面的な核戦争が起これば、それは南米の人ぐらい生き残る人はあるかもしれませんよ。しかし、大半の者はやられてしまうのですからね。だから勝った者も負けた者もないですよ。ともに滅びるというのが核戦争の持つやっぱり一つの運命ですよ。だから、いろんな問題はあるけれども、核戦争を防止するというぐらいに優先性のある政治課題はない、すべてに優先する、人類の生存がかかっておるからである。
  161. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ここまでは非常に総理と私は見解が一致するわけでありますが、これから後はどうなるか非常に心配なんであるます。  今回の審議を通しまして、結局わが国はいわゆるアメリカの核のかさ、核の抑止力に日本の防衛を負っていかなければならない。これは私たちの考えとは別ですけれども政府立場を認めた場合ですね。そしてなおかつ、一方では核軍縮を進めていかなければならない。結局核軍縮が進んでいけばそういう核のかさの力もなくなっていく、また、世界に核全廃を叫ぶにしても、一方では日本は核のかさの世話になっておるじゃないか、こういう点で矛盾があると思うんですけれども、総理はやはり一国の責任者として、私は率直にその矛盾は認める、矛盾というか理想と現実の違いというか、そういうものは認められるんじゃないかと思うんですけれども、その点はどうでしょうか。
  162. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 安全保障の問題というものは、ほかの経済上の問題と違いまして、なかなかやはり国としての一番至高の利害に関係しますから、一気に理想にいかないんですね、これは。したがって、現実的にはいわゆる核兵器保有国を認めながら軍縮を言うということの矛盾ということを言われるんですけれども、最も実効性の上がる方法といえば、軍縮から始まって、やがては核の全廃というところに持っていくべきで、やっぱりステップ・バイ・ステップにいきませんと、一気に理想と言っても、ちょっとした経済上の利害打算ではないだけにむずかしさがある、いろんな矛盾があることは塩出君の言われるとおりだと思います。
  163. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、今日まで国連におきまして、非核兵器国に対し核兵器の使用を禁止するとか、あるいは核兵器国はいかなる場合も最初に核兵器を使用しないことを約束するとか、あるいはまた、先般のジュネーブの再検討会議においていろいろな提案が、同盟諸国から非常に具体的な核軍縮の提案が出されてきたわけでありますが、結局そういうものに対しては常に日本政府は消極的にならざるを得ない。先ほどからのお話を聞いておりますと、非常に三木総理の、総論としては非常に賛成なんですけれども、事具体的な問題になってくると、どうしてもアメリカの核のかさにおるためにアメリカの核政策と対決することはできない。どうしてもアメリカに追従せざるを得ない、よく言えばこれは現実主義者と言えるんですけれども、悪く言えばこれはアメリカ追従と言える。そういう点でわれわれも非常にこの外務委員会等を通しましても、その総論は賛成、けど具体的な問題になってくると非常に態度は消極的だ、アメリカに追従している、こういう点が非常にいつもいらいら思うわけなんですけれども、総理どうですか、そういう点は。
  164. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) やはり私は政治に総論は必要だという論者ですよ。総論のない各論だけの政治というのは混乱が起こる。常になっぱり政治には総論が必要である。そしてそれを裏づけて各論でいかなければならぬということです。だから総論、三木総理には各論なしということには異存がありますよ。しかし、総論の政治家であるということには、私はこれを不名誉なことだとは思ってないんですよ。  そういうことで、これはやはり現実には理想があっても、そこへ行くまでの間にはいろんな、一つの過程というものを経なければならぬわけですが、日本軍縮会議などにおいても、相当今度の軍縮会議なんか行って日本の活躍がありますね。しかし、正式のメンバーでないんですから、オブザーバーという制約の中においても非常に今度の軍縮会議なんかでは日本は活躍して、最終宣言なんかの場合は、やっぱり非核保有国安全保障という問題に対しては日本の努力が実を結んだんでないでしょうか。  そういう点で、まあいままで相当活躍はしておりますが、今度は軍縮会議でも、これに批准をすれば正式のメンバーになるんですから、――いまの軍縮会議というのは再検討会議です、再検討会議日本は相当な活躍をした。そういう場合においても非常に日本は後ろめたさみたいなものはないんですからね、批准をしたんですから。大いに努力をするべきであります。
  165. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わかりました。  それで、先ほど総理は答弁の中で、まあ安全条約が結局なくなる心配は絶対ない、そういうことをおっしゃっておるわけでありますが、まあしかし、先はわからないわけですね。やはりこれは政権がいつかわるかもわからない。三木内閣が続く間は安保条約、それは間違いないでしょうけれども、もっと長い目で考えた場合、やはりアメリカの大統領選挙においてだれが出てくるか。アメリカは世論の国ですから、私たちはもちろん安保条約というものは反対ですけれども、与えて政府立場考えた場合にも、当然この安保条約なきときの日本の防衛をどうするか、そういうものもこれはピジョンとして持たなくちゃいかぬ。それに対する対応も踏まえて私はやっていくべきじゃないかと思うんであります。先ほどの話では、もう安保条約は絶対これは心配ない、後のことは全然考えてない、そういうようなお話で、ちょっとわれわれは心配なんで、その点はどうなんですか。
  166. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは塩出君、いまの国際的な安全保障一つの方式というものは集団安全保障の方式によっておるんですな、世界各国ともそうですよ。そういうことですから、この仕組みをアメリカが、日本の意思に反してアメリカ自身がこのシステムを崩すということは、別に新しい平和維持の機構ができたら別ですよ、これは。できないのに、この世界の平和を維持しておる一つのいまのシステム、これを崩すということは考えられない。それは何か国連などを中心にして新しい安全保障の機構というものができる可能性がないとは言えませんね。そういうものも何もなしに、NATOももうアメリカが脱退する、安保条約も廃棄する、こういうふうなことにアメリカがいくとは思わない。大統領がかわりましても、まあ日本とは違いますから、あんまり外交政策とか国防政策に非常な大きな隔たりはないんですね、アメリカの場合は。だから、ことしは大統領の選挙の年でございますが、大統領の選挙の結果どういうことになりましても、そういう政策に大きな急激な変化があるとは思っていないわけでございます。
  167. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理はそういう心配ないと、そういうことでございますので、これ以上論議はいたしませんけれども、まあそこで、今回の核防条約はいろいろな欠陥があると思いますが、一つはやはり中国、フランスが入っていない、こういうことが大きな問題じゃないかと思うんです。これはやはりもうちょっとねばり強く中国、フランスが入るところまでやるべきだったわけでありますが、中国が入らないということを知りつつ独走してしまった、まあこういうところにやはり大きな問題があると思うんですね。そういうこと考えますと、幾ら核防条約加盟国核軍縮しても、中国核軍縮をしなくて、中国よりも米ソの方が下になるということはあり得ないわけですから、そこに一つの大きな限界があると思うんですね。そういうわけで、私は今後の方向としては、その中国、フランスを加盟させるという、そういう方法もあるでしょう。あるいはまた、この間ヨーロッパで七カ国の原子力産業輸出国が非核兵器国に輸出する場合には軍事転用されないようにやると、そういう秘密会議が行われたと新聞で聞いておるわけでありますが、ああいう会合にはフランスも入っているわけですね。そういう意味で、この中国あるいはフランスの点については、総理としてはどういう方針でいくのか。加盟させるという可能性があるのかどうか。あるいは、いま言ったような、別な、核兵器国が全部入ることのできるような、そういう一つの枠組みを考えていくということも私は考えられるんじゃないかと思うんですけれども、その点はどう考えますか。
  168. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 塩出君の言われるように、フランスも中国もこれに加盟をすることが、いろんな国際協定を結ぶ場合に非常にその国際協定というものに安定性があるわけですから、今後は日本としてもこれは努力をしていきたい。フランスのドゴール大統領とも私は話をこの問題についてしたことがあるんですけれども、フランスが願っておるのは核の全廃である。核を全廃する、そのためには核クラブに入って発言力を持たないとなかなか強力な発言力にならぬからと言っていました。しかし、フランスでも中国でも、核、核で、核の威力で世界に対して大きな発言力を持とうというねらいでないことは事実でしょうからね。だから、核軍縮というものが進んでいくならば、中国やフランスが絶対にこれに加入をしないとあきらめることは私は早過ぎると思います。今後とも、あらゆる場を通じて、中国やフランスに対して、核防条約に対して加盟をすることの努力をすべきだと思っております。
  169. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは非常にむずかしい問題で、実際に米ソ核軍縮が進めばいいわけですけれども、ヨーロッパにおいても、ソ連の方の軍備が非常に強化されて、それに対抗するためには断固NATOも増強しなくちゃならない、こういうことをキッシンジャーが言ったということもけさの新聞に載っておるわけで、そういう意味で非常に途道遠しですけれども、これはここで論議をしておっても時間がございませんので、その点は、政府としても、特に中国は一番近くの国なんですから、中国にはひとつ、一刻も早く平和友好条約を結び、この核の問題についても話し合えるように努力をしてもらいたい。これは答弁は結構です。  それから次に、いわゆる非核地帯構想、これは衆議院でも参議院でも、本会議でも問題になったわけで、総理は非常に賛成なんですね、この非核地帯構想には。ただ、国際環境が熟していない、そうしてどうも実効性の上に問題がある。中南米のいわゆる非核地帯においてはソ連が結局それに保障を与えていない、そういうような点があってどうも実効性がない、そういうことを言っているようですけれども、しかし条件は私は熟していると思うんですよ。また、条件が整うのを待つのじゃなしに、条件をつくっていくために努力をしていく。そういう点で、どうなんですか、もう少し、非核地帯構想の問題にいたしましても、もうASEANの国々は非核地帯には賛成だと言っているし、オーストラリアもニュージーランドも、それからまた韓国においても、そういうアメリカの核を撤退してもらいたいという、この前総理にそういう親書も来ているわけでしょう。これは韓国政府の意向じゃないにしても韓国の国民の声ですよ。そういう点を考えれば、私は、条件が整わないというのは何の条件かと言えば、言うならば、日本政府のアメリカの核のかさにおるということから、こういうものができちゃうと核抑止力が弱くなっちゃう、そういうことが唯一の条件であってそれ以外にはないんじゃないか、その点はどうですか。
  170. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 去年の国連では、非常にこの非核地帯構想というものは決議案として出たんですね。南米とか東アジア、中東、アフリカ、こういうのも出たわけです。皆日本も賛成したんですよ。非核地帯構想というものは日本は賛成なんですよ。だけれども、アジア・太平洋地域ということになってくるといろいろ各国の立場も違ってくる。これは核保有国がそれを尊重するということも大事ですからね、そのことがなかなか、米ソ中でしょう、アジア・太平洋地域だからね。複雑なものもございますから、努力はいたしますけれども、いまラテンアメリカのようにソ連は承認はしてないといっても、まあソ連からすればラテンアメリカ地域というものは非常に遠隔の地域ですから、アメリカやほかの国々は皆賛成したんですから、これは非常にやっぱり効果がありますわね。どうもアジア・太平洋地域という、ラテンアメリカのように国際的な環境というものは単純でないところにむずかしさがあるんですよ。塩出君の言うことに対して反対でないんですよ。そういうものができることは一つの安定度を増すだろうけれども、しかしまた、こう、やると言っておいて実現しないじゃないかといってお責めになりますからね、だから、なかなか現実的にはむずかしさがあると、こう申しておるわけです。
  171. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いや、ともかく総理としては努力をするといういまお話がありましたから、だから私は決して、努力してできなければこれはまあ認めます。努力もせぬでできぬじゃこれは認めるわけにはまいりませんし、その点は今後どこまでやっていくか、よく見守らしていただきたいと思います。  それから、もう時間ございませんが、具体的にやっていかなければいかぬわけですけれども核軍縮を進めていくためには核保有国の首脳が話し合うということ、何といってもやっぱり人間というのは話し合えば意気は通ずるわけですよ。そういう意味で、昨年総理はランブイエへ行って、その話もたびたび私は聞きましたけれども、今度は日本が提唱してひとつ核保有国の首脳会議日本で開く、こういうことも私は検討の余地はあると思うんです。決してそうやっても一回で話がまとまらない、二回でも三回でもやる。そういう核保有国の首脳会談を開く決意、検討する決意があるかどうか、それが一点。  それともう一つは、先ほど亀井委員から、国際会議日本でやれと。私も大賛成です。それで広島、長崎、こういうところを余り世界の人は知らないわけですから、そういう意味で、広島等においては国際平和文化センターをつくろう、こういう動きもあるわけですから、特に広島、長崎等にそういう国際平和文化センターのようなものをつくって、そういうところで国際会議をやるように。これは金もかかるわけですけれどもね。  それと、もう一つ最後に一点は、午前中外務大臣とも話をしたわけですけれども日本の外務省としては、原爆の悲惨を世界にPRする資料が全くない。私のもらった資料がこの中にありますけれども、五行ぐらい英語で、日本は原爆を受けた。写真が載っているやつを見れば、これキノコ雲だけで、本当に原爆の悲惨を世界にPRするという気持ちは全くないわけで、私はもっと、宮澤外務大臣はもう全く煮え切らない答弁だった。煮え切らないというか、アメリカに気がねをしてね。無理もないと思うんですけれども、そこを勇気をもって言うのがわれわれの務めですから、そういう意味で、世界に原爆の悲惨をPRする資料ぐらいつくって努力してもらいたいし、国連に原爆資料館ぐらい、総理は一番大事な問題だと言われた問題ですからね、国連に資料館をつくるぐらいひとつ努力をしてもらいたい、この三点について簡単にひとつ御答弁いただきたい。
  172. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 核保有国会議日本が提唱せよという御意見日本はそういう主催国になることを少しもいとうものではないんですけれども、やっぱり至高の国の利害が絡み合っておる安全保障の問題で、何かそれまでに、やるまでの間に核保有国の間でそれだけの準備ができずに、いきなり唐突に日本核保有国の指導者会議を招集すると言っても、何か世界から見ればジェスチャーみたいに映りまして、そういう点が、下地も何もなしにやるということは実効性が上がらないし、一番重要な核保有国米ソですから、米ソの間で制限をしていこう、こういう方向に動き出しておるわけですから、どうでしょうか、いま日本核保有国首脳会議を提唱するということは、現実問題としてなかなか実効が上がらないのではないか。色よい御返事をしたいんですけど、余りどうも実効の上がらぬことに無責任なことも申し上げることは適当でないわけですから、正直なところをお話をしておきます。  広島、長崎に対して、この悲惨さは余り、パンフレットを見ても少ないと言うけど、これは相当な、原爆というものの恐怖でしょう、世界の中で。それはやっぱり恐怖、皆原爆というものの悲惨さというものから何とかしなきゃならぬということで国際政治が動いておるわけですからね。それを現実に受けたものが長崎と広島というんですから、この悲惨な状態というものは世界人類の脳裏に刻み込まれていますよ。そういう点で、この問題はあらゆる機会に、これはやっぱり核というものに対しての、軍縮問題にしても核戦争防止にしても、一つの生きた材料ですから、このことを、あらゆる機会にその悲惨な状態というものを世界にもよくわからすような努力をせよということは賛成です。  ただ、広島に国際会議場をつくれということは、これは地元の関係もあるし、研究をさしていただきたいと思います。
  173. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 世界の広島だから、ひとつ頼みますよ。
  174. 立木洋

    ○立木洋君 総理も御承知のように、私たち日本共産党はこの条約の批准には反対であります。  それは、いま当面する重要な課題になっており、全世界の人々が願っておる核兵器を全面的に禁止する、この道を実現するためにも、そして日本がアメリカの核のかさに入り、自主性を失っておるという状態をやめて、真に平和で中立な日本を実現するために、そして再び広島や長崎のようなああいう悲惨な状態を繰り返さないで本当の世界の平和を実現するというためにも、私たちはこの条約が重大な問題点を含んでおるということから、私たちはそういう態度をとっているわけです。もちろんこれは、この核防条約に賛成されておる方々の中でもそういう重要な問題点というのは指摘されておりますから、そのことによっても明らかだろうと思います。  問題は、この核防条約が今後国際的な舞台において、真の国際的な平和にどういう役割りとどういう内容を果たし得るのかという問題によって、この問題というのは明確に証明されるだろうと私たちは考えております。  そこで、総理にお尋ねしたいわけですが、前回の本会議の席上におきまして、私の質問に対して総理は、この核兵器の不拡散条約というのは核軍縮の第一歩になり得るものであるというふうに御答弁なさいました。また、本日の委員会におきましても、この条約核軍縮においてすべてを満足させるものでもないということもお話しになったわけです。そこで、この核防条約の中に、前文に書いてありますが、武力による威嚇または武力行使を慎まなければならないということが前文に明記されておりますし、第六条では、核軍縮を忠実に実行するような交渉を行わなければならないということも書かれているわけです。こういう武力による脅迫や行使、あるいは核軍縮の忠実な履行、こういうものが現在よく守られているとお考えになるか、それとも不十分であるとお考えになるか、いかがでしょうか。
  175. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) こういう条約ができなかったなら、もっと大手を振って核兵器の拡大競争が行われたかもしれません。しかし、そういうことはもう米ソ両国ともできない国際的な一つの環境が生まれたことは事実です。そうして、やはり制限しようという方向に米ソ両国とも向かっておることは否定はできないと思いますが、まあ実質的に見れば、立木君の言われるように不十分だと言わざるを得ない。しかし、日本は最初から、この条約に調印するときからも強く言って、軍縮の義務も課されておりますから、そういうことで再検討会議というものを、先に言ったように五年ごとにやって、軍縮の実績をやっぱりレビューしなければいかぬというのは、日本が強く言ったんです。そういうことで、軍縮への第一歩であるということは、これはやはり事実だと思います。  それは、立木君と意見が違いますのは、この条約というのは核戦争を防止するということが大きなやっぱりねらいです。核戦争を防止するために、核兵器保有国が五カ国だけでももうたくさんですから、これ以上、皆がやっぱり国の一つの何といいますか、威力といいますか、発揮するために核兵器を開発しようという考え方が、みんな各国にそういう考え方が起こってきて、核兵器保有国がこれ以上だんだんふえることが核戦争を偶発さすような危険を増すのか、この五カ国にとどめておいて、そしてそれを五カ国というものに対して軍縮を推進していく方が、実際的にやはり核戦争が偶発するようなことを防ぐのに役立つかという考え方の相違だと思います。私たちは、ほかの賛成をされた方々も、これ以上核兵器拡散されるよりも、あるやっぱり枠を入れといた方が核戦争防止に役立つという判断のもとに、賛成をされたと思います。そういう点では、立木君と一つの認識に対して差がありますね。
  176. 立木洋

    ○立木洋君 威嚇の点はいかがですか。武力による威嚇。
  177. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 武力によって威嚇するということは、武力によって威嚇をしたり武力によって侵略することはなおのこといかぬと、これはもう……
  178. 立木洋

    ○立木洋君 守られているかどうかということです。
  179. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはやはり、なんじゃないですかね、大きな国際的世論というのが生まれてきておるんですね。一つの大きな圧力となっていますよ、これは。部分的に見ればいろいろまたそういう事実はあるにしても、しかし、大手を振って武力で威嚇するようなことがなかなかできにくい国際環境が起こっておることは事実ですね。
  180. 立木洋

    ○立木洋君 部分的に見ますと、確かに青天井ではなくて、一定の不十分であっても限界を設ける。第一次SALTの場合で見ましても、ICBM、先ほど総理挙げられましたけれども、あの当時決めたのが最高が二百基です。当時で言えばアメリカはゼロでした。ソ連には六十四基あったんです。それをそれなら二百基まではふやしていいということで、きわめて大幅な量ではありますけれども一応青天井ではなくなった。その分野だけ見ますと、それは確かにいわゆる軍縮の方向だというふうに言われるかもしれない。ところが、核兵器というのはあらわれた現象だけの、量的には制限するんですよ。核兵器というのは、いつまでも同じ時代にとどまっているんではなくて、新しい核兵器がどんどんつくられる。第二次SALTでいま行き詰まっているのは何か。バックファイアの問題にしたって巡航ミサイルにしたって、いままで考えられない新しい核兵器が生まれてきたんですよ。そしてまた、それに制限をするとまた新しい核兵器が生まれてくるんですよ。質の開発については何ら規制がないんですよ。ですから、核兵器を独占している国というのはますます性能のいい核兵器を持っていくようになっていくんですよ。部分的に言えば確かに制限を加えた、核軍縮の第一歩というふうに言われる総理の発言を私は部分的には否定しようとは思わぬですよ。しかし、長期的に見るならば、新しい核兵器、新しい質の兵器がどんどん競争によってつくられていく、核軍拡の方向に進んでいるということは、私は明白な事実だと思うんですよ。  それからもう一点、この大手を振って核による威嚇が行われない状態になっておるというふうに言われました。しかし、アメリカは現在もう何回核による威嚇を行っておるか。いわゆる事態があれば核兵器の先制使用も辞さないということはアメリカ政府の首脳というのは繰り返し言っておりますよ。そういうことは国連憲章ですら許されない。核防条約においてすらそういうことが書かれてある。しかし、それが大手を振ってまかり通っているというのが現在の状態だと私は思うんです。三木総理はそう言ってもまた反論されるでしょうが、先ほど言われたお言葉で質問をいたしますと、十分ではないというふうに言われました。だが、十分ではないという点までお認めになったわけですから、なぜ十分ではないのか、核軍縮が十分に行われないのか、その原因についてお尋ねしたいと思います。
  181. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは立木君は、もう新しい核兵器ができればそれに対して対抗するような兵器ができる、それをまた打ち破る兵器ができて、質的に見れば何も一つの制限にはなってないではないかと言われますけれども、各国とも、なぜ米ソの間でも真剣にこういう話ができておるかということは、経済的な理由もあるんですね。そんなにむやみに核兵器の開発ばかりに金をつぎ込むわけにもいけないし、世界の世論もまたそういう方向に行っているでしょう。次々に質的に核の拡大競争をもたらすようなことにやっぱり世論というものは否定的な世論もあるでしょう。世論もあるし、自国のやっぱり経済力核兵器の開発というものは経済力の負担が非常にかかってきておるという点も見逃すことはできないんです。だからそんなに、大国はこれからほかのものを犠牲にして、国民生活を犠牲にして核兵器の開発をやって世界の制覇を考えているんだと、そういうふうには見ないですよ。やはり世界大国といえども国際社会の一員ですから、世論を全然無視してやるんだというわけにはいかないし、そんなに時代はもう常に逆行しておる方向に行っておるとは私は思わない。だから、今後は軍縮会議であるとか再検討会議であるとか、あらゆる場を通じて、条約の中に軍縮の義務を課されておるんですからね、これをやっぱり一つのよりどころにして、積極的に軍縮というものの義務の履行をこれから強力に推進していくべきだと思うんですよ。  立木君の場合は、一気にあなたの考える理想の社会というものをお考えになるのかもしれませんが、まあ議会制民主主義というものは、そんなに世の中が一夜にしてひっくり返るというような政治的変化を予定した制度でないんですよ。それならばほかの制度をもってくればいいんでね。これはやっぱり漸進的に進歩を望んで議会制民主主義が成り立っておるんですから、それは終局においては核兵器を全廃しろという考え方はわれわれも変わりないんですが、一気にそこへいかなければ皆世界が悪者みたいに言うようなことは、どうも私は賛成できないんです。
  182. 立木洋

    ○立木洋君 総理、軍縮が不十分だと言われる原因が何かということをお尋ねしたんです。全然それについては……。
  183. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) やはり一つの平和というものが、東西の、東西といっても米ソのですが、その均衡の中にあるわけですね、現実の中には。そういうことで、何かお互いの信頼感といいますか、そういうものの欠如だと思いますね。そういうものが、もう少し信頼感というものが高くて、何かこちらが核兵器の開発をしない場合に、相手方の核兵器の開発が非常に進んで、バランスを失するようなことになっては大変だという、そういうものがやっぱり不十分にしておる私は原因の一つだと思う。そういうような国際的集団安全保障というものに対して、やっぱり核兵器などに対しては米ソが責任を持っているんでしょうからね、その集団安全保障に。その均衡を破られたら大変だという気持ちがやっぱりあるんだと思うんです。
  184. 立木洋

    ○立木洋君 どうも総理、お話しなされるとだんだん長く続きますから、途中で切っていただかないと……  この原因はやっぱり私は核独占の維持にあると思うんですよ。核兵器の独占の維持にある、この問題は。その問題をよく御認識いただかないと私は困ると思います。  そこで、次の質問なんですが、安全保障条約、いわゆる集団安全保障によって、いまの時代というのは一国だけでは守ることができないから、すべて集団安全保障条約に依存せざるを得ない状態だ、世界の大勢はすべてそうであるとさっき総理言われましたね。いかなる軍事ブロックにも加盟しないという非同盟諸国は八十カ国にも上っておりますが、これの動向についてはどのようにお考えですか。
  185. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ非同盟という立場もあるでしょうけれども、しかし、世界一つの影響力を持っておるような国というものは、やっぱり何らかの集団安全保障体制の中で国の安全というものを守っていっておるのが現状である。このことがいい悪いというよりも、いまの安全保障世界のシステムになっているということですね。非同盟諸国のあることは否定しません。
  186. 立木洋

    ○立木洋君 その問題についてまた反論すると長くなりますので、次の質問に移らせていただきますけれども、昨年いわゆる核防条約が五年たって再検討会議がやられたわけですね。そのときに、御承知のように、メキシコなどが中心になった十八カ国が、いわゆる核による威嚇、そういうものをやめてほしいと、核を非核保有国に使用するというようなことはやめてほしいという要望も出されました。あるいはまた、核保有国核軍縮をもっと忠実にやってほしいという要望も出されました。日本はオブザーバーとして参加したわけですから、その範囲内でいろいろ意見を出されて、まあ御承知のような最終宣言になったという経緯は承知しておるわけですが、この再検討会議が行われた時点で、いわゆる非同盟諸国の人々というのは、この核防条約に対してきわめて不満を持ち始めた。核軍縮が忠実に守られていない、また、核の威嚇が大手を振って通っておる、使用すべきでないということも事実上明確にされるという点には至らなかった、そういう点では八十カ国にも上っておる非同盟諸国の中では大変な不満が出てきているわけです。この現状について総理はいかがお考えですか。
  187. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 外務大臣お答えをしておるようですけれども、私は非同盟諸国がいろいろ不満を持つことはわかると思います。核軍縮というものが、非常にもっと早い足取りを期待したかもしれませんが、それに対して必ずしも早い足取りだとは言えない。しかし、だからといって、みんなどこの国も核兵器を開発して保有国がふえることに対して非同盟諸国が賛成しているとは思いませんよ。ただ、米ソなどが、そのときの決議案だったか議定書案に米ソとも反対をしたということで、それが実を結ばなかったわけですが、これはやはり両方とも、私は米ソとも、実際に核戦争をやろうとは思ってないわけだ、一番核戦争の恐ろしさを知っておるものは米ソだと思う。核というものはやっぱり抑止力として使おうとしているわけですからね。そこになかなか、われわれから言えばよくわかりますよ、そのメキシコや非同盟諸国の気持ちは。しかし、初めから、持ったけれども使わないのだとか、何かそういうことに対して、使う意思はない、核戦争をやればどんなに大変なということはわかるし、ベトナム戦争でもアメリカは、核というものは、使おうという意見もあったかもしれぬけれども、使うことはしなかったですね。そういうことから考えてみて、やっぱり一つの抑止力というものを失うということの懸念だと思います。核戦争をやろうと思ってない、一番やりたくないものは米ソである、恐ろしさを知っておるからね。
  188. 立木洋

    ○立木洋君 お言葉を返すようですけれども核兵器の一番恐ろしさを知っているのは私は日本の国民だと思います。米ソではないんです。
  189. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いや、日本は別問題ですよ。
  190. 立木洋

    ○立木洋君 それを第一に言わなかったら、日本立場の自主性がないわけですから。
  191. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それは日本のことは言うまでもないことです、実際に被害を受けたのですから。日本を除けば……。
  192. 立木洋

    ○立木洋君 まあ決して揚げ足を取ったわけではございませんから御了承いただきたいと思うんです。  私は、日本政府がアメリカの核のかさに入っているわけですね。そして核のかさに入るということは、事実上日本政府は、破れがさに入っておったら困るわけですよ。ちゃんとしたかさでなければならない。そうすると、アメリカの核兵器の開発がおくれる、そしてソ連だけが強まるというふうになると、やはり政府が困るだろうと思うのですよ、私たちは別な考えですけれども。やはりきちんとした核のかさをさしてもらいたい。そうなると、ある意味では核軍拡を肯定するという事態も私は出てくるだろう。そしてこれは、言われましたけれども、たとえば核を使うぞと言ってアメリカが外国に核の威嚇を行う。それについて総理は、それは核の抑止力であるとお答えになった。また、先日の外務委員会では宮澤外務大臣は、それは少々建設的な発言だと考えますと。私はちょっとそれに反論を申したのでありますけれども日本立場というのは、アメリカの核のかさに入る、いわゆる外国に対して核の威嚇を行うことを肯定するというふうな状態が出てきたり、ある場合にはより強力な核を持ってほしいという希望になったりするという事態が私は生まれてくるんじゃないかと思うんですよ。破れがさでは困るんですから、政府立場で言えば。そういうことになるんじゃないでしょうか、端的にお答えいただきたい。
  193. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) どうも私、立木君の御意見というものは、どう言うんですかね、そういうふうに、そこまでわれわれの論理は飛躍しては考えないんですよ。日本が願っておるものは核兵器の全廃であることは間違いないです。それまでの、行くまでの過程として、政府としては実効性の上がる方法をとりたいということだけが違いで、立木君は、一気に全廃を言わぬから軍縮会議なんかいうのでも、一つのまやかしものみたいなことを言われますけれども国際政治の現実というものは、立木君の言うようにはいかないんですよ。やっぱり一歩一歩、ことに国際政治の場合にはそうですからね。そんなに日本が、核はますます競争して、核兵器の競争が行われて、そしてやることを望んでいると考えることは、立木君の独断に過ぎませんよ。
  194. 立木洋

    ○立木洋君 これは日本政府立場の私は矛盾だと思うのです。総理大臣いかに言われても、それは矛盾なんですよ。全面禁止をすると言ったって、一方ではやっぱり強い核のかさでなければ困るんだから、そういう依存をしている、核のかさをさしてくれているアメリカにやはり頼るということになれば、破れがさでは困るんです。いかに言われてもそれは矛盾ですよ、政府立場は。それ以上私は言いませんけれども。  そこで、この核のかさに入るという状態は、いつまでお続けになるつもりですか。
  195. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この核のかさ、かさと言って、いかにも日本が非常なひけ目を負っておる日米関係のように言われますけれども、これは世界は集団安全保障一つの大勢になっておるわけです。西欧諸国だって皆そうですし、また、ほかのアメリカの加盟しておるような条約は皆大なり小なりそういう意図があるんですからね。そういうことで自主性を持ってないのだという考え方に対しては、私は賛成できないんですよ。西欧諸国だって皆自主性を持っていますよ。だからそういう意味からして、かさに入れられて、いかにもそれが従属関係にあるということは、どうして日本人がみずからそういうふうに考えるんですかね。やはりアメリカに対して、これは一つのシステムですからね。アメリカ自身がこの抑止力を通じて世界戦争というものを防止するために役割りを果たしているとしたら、これはアメリカとしても大きな世界に対する貢献ですからね。その上へもってきて、その抑止力によって安全保障というものを補っておる国は全部自分の従属国だというふうに、そんな大それた考え方を持つはずはないし、持ったって、そういう国々は皆そういうようなことは考えてないわけですから、あまり卑下して日本立場考えない方がいい。
  196. 立木洋

    ○立木洋君 核のかさというのは、私たちが発明した言葉ではございませんで、関係の大臣からも何回もお話を聞いております。私たちは、日本民族の誇りというのをだれよりも持っているつもりですから、決して卑下はいたしておりません。そのことだけは明確にお話ししておきます。ただ、こうやって論議していきますと、何日かかっても尽きないだろうと思うんです。  最後に、この点だけ提案いたしたいと思うんです。  それは、ことしの秋国連総会が開かれますが、いわゆる世界軍縮会議というのについては、原則的には日本政府は賛成であると昨日の答弁で聞きました。ことしの国連総会では、この核軍縮軍縮の問題というのが大きな議題になり得る状況が生まれてきております。もちろん核大国の中では反対もあります。しかし、ことしの国連総会において、日本政府は、やはり国連の場で核の軍縮の問題を討議する、アドホック委員会もできたわけですから、軍縮総会を開くように積極的に努力をしていただきたい。これはいままで軍縮の問題、特に、なかんずく核軍縮の問題では、国連を外しますと中国とフランスは参加しないんです。国連の場にはこれは加盟しているわけですから、おのずから参加して一緒に議論ができるんです。国連総会の場で核軍縮討議をするということは、きわめて私は重要な意味を持つだろうと思うんです。当初から一挙に解決できるなどとは思っておりません。しかし、これは新しい国際的な議論を発展させる上で一定の意味を持ち得ることになるだろう。そういう意味で、ことしの秋の国連総会核軍縮の総会を持つように、日本政府も積極的に努力をしていただきたいと思いますが、この点についての御答弁をいただいて私の質問を終わります。
  197. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 国連の場においてこういう軍縮問題というものがいろいろ論議されるとは賛成ですし、わが国もそういう場合に軍縮の推進に対して努力をしていきたいと思います。軍縮交渉は、実質的には三十一カ国ですか、軍縮委員会というものがあって、実際のいろんな軍縮交渉というものをいままでやってきておるわけですから、この軍縮委員会役割りというものも無視することはできぬと思いますね、実際的な意味で。国連の場において軍縮問題が論議されるということには私は賛成です。
  198. 向井長年

    ○向井長年君 三木さん、私が最後の質問でございますから、もうしばらくがまんしてください。  私は、核防条約の質問に入る前に、あなたのいやなことを質問したいと思います。  それは、いま国民が最も関心と疑惑を持っておるのは何であるか、政治に対して。私は自民党の内政干渉はするものじゃありません。しかしながら、本委員会においても、核防条約の審議過程で自民党の一部の議員が、党内不一致の質問がたびたびなされておる。しかもそれを政府にぶっつけておる、こういう状態が先般来あるんです。これは私は、言うならば、あなた、総理・総裁としての指導力の欠如だと思う。これに対してどう考えられますか。
  199. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この問題は、向井さんもおわかりのとおり、重大な、これから二十年の日本一つの進むべき方向に対して方向づけるわけですから、それぞれの議員の立場意見はあり得ると思います。しかし、自民党は党の意見としてこれに賛成をしようという立場をとっておるんですから、その過程におきましていろんな議論が出るということは、この法案の重要性からしてやむを得ない場合もあると思います。しかし、やっぱり最終の段階においては党が方針を決めてあるわけですから、みんなが当然にこの方針に従わなければならぬもんである、こういうように考えております。
  200. 向井長年

    ○向井長年君 もちろんそうですよ、議員は自由に発言するなには持っておりますからね、それを私は批判しておるのじゃない。自民党内で十分やらなけりゃならぬことを当委員会で政府にぶつけている、こういう問題があるから、これはちょっと話が違うんじゃないか、こういう感じで申し上げておる。  そこで、最近毎日のように新聞あるいはニュースをにぎわしております自民党さんの党内派閥の動き、これは一党の内部の問題として国民は聞き流すわけにはいかぬ。なぜならば、あなたが政権を担当しているからですよ、行政府を担当しているからね。そうなれば、三木総理を最近におきましては引きおろそうというような動きが顕著になっておる、新聞あるいはニュースで。この理由は党内でいろいろあるんでしょう、これを私たちは探索しようとは思いません。あなたは非常に不幸な人だと同情しますよ、私はね。しかし、あなたはこれに対して毅然たる態度で、ロッキード問題その他不況克服、これに対して国民の疑惑を解かなけりゃならぬ、こういう責務があるのだと、こう言ってあなた訴えておるんでしょう、そういうことが党内で理解されておるような状態じゃありませんね、いま現在は。あるいは、国民もこれに対してまだ理解が乏しいと思う。こういう状態の中では、あなたはこの際、毅然たる、勇敢なる態度をとって国民に信を問うのがあたりまえじゃありませんか。先般、予算委員会でいろんなことが言われた、解散はいま考えておりません、ことしは期間が来ますのでいずれやらなきゃならぬ、こう思うと言われておりますけれども、いまこそ、あなたの率いる党内がこういう状態を起こしておる、国民は疑惑を持っておる、こういう問題については、あなたは決然と国民に信を問うのが、いまこそ私は必要じゃないかと思う。これに対してあなたはどう考えられるか。これは本当に憲政の常道じゃありませんか。だから、あなたは解散権持っておるんだから、当然国民の信を問う立場から、党内を含めて、やる意思はあるかないか、まずお聞きしたいと思います。
  201. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 当然に解散はしなければならぬ、議員の任期も今年の十二月で来るわけですから。私はこのロッキードの問題というのは、御承知のように捜査が核心段階に入っているときです。このことからくる一つの政治の空白というもの、まあ二カ月ぐらい、そういう解散をやればあるでしょうね、そうしてまだ真相というものは解明されてないわけけですから、そういうときに国民の判断を求めるということが、解散をやる場合にしても、国民としても、何にも真相も明らかでないときに解散をやって国民の信を問うということは、国民の期待にも反するのではないか、ある程度このロッキード問題の真相が解明をされた暁において解散をやることがいいのではないかと私は思っているんですよ。やはり解散というものは、これは今年はやらなきゃならぬし、そうしてくると、やはりタイミングというものは日本の政治のために一番適当な時期を選ぶべきで、だからロッキード事件がなければ、それは向井さんの言われること、ごもっともな点があると思いますよ。この事件が起こって、そうしてそれがまだずうっと先ならいいけれども、いよいよ核心に入ろうとしているときですから、しばらくやっぱり時期を待つ方が、国民の判断を求めるにしてもその方がいいのではないかということが私の気持ちの中にあるので、いままで率直に申し上げたわけでございます。
  202. 向井長年

    ○向井長年君 三木総理はそういうように解釈し、国民にそういうように訴えておられることはわかりますよ。しかし、政権を担当しておるあなたの党が、まあ言うならば派閥がたくさんあるわけでありますが、こういう諸君があなたを引きおろそうという動きをしておるということが新聞に出ておるんですよ。そうすると、ロッキードをあなたは解明、明確にしなければ解散しないんだと言っておっても、そういう動きがいま顕著になっている。これは国民は非常に疑惑を持っていますよ。あるいは関心を持っていますよ、どうなるんだろうという。党内であなたの言われたことが十分理解されて、挙党でそういう形がとられるとするならば私は了解するけれども、そういう状態じゃないんじゃないですか、いま。どうなんですか。
  203. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 党内においても、いますぐ解散やって国民の信を問えという意見では向井さんないんですよ。やはりある程度真相が解明されてからの解散ということが党内の総意ではないでしょうか。だから自民党のいろいろな問題、非常に新聞に報道されておりますけれども、私は戸叶さんの質問にも答えたんですから、とにかく国民に対して責任を負うておるわけです。幾つかの公約もいたしておるわけですから、その責任と使命というものを中途で放棄する考え方はないんですよ。そういうことで、自民党のいろいろな問題も、この問題は、政党自身も大きないまやっぱり戦後最大の試練を受けていると思いますね、政党は。三木十年という歴史の切れ目、これは一つの大きな戦後政治の最大の試練だと思う。私はこれを、ロッキード事件の究明ばかりでなしに、日本の議会制民主主義というものを正す一つの機会としてとらえなければいかぬ、よい機会たらしめなけりゃいかぬ。ただロッキード事件、ロッキード事件ということで何もそれが終わってしまうのではなくして、これを一つ日本の議会制民主主義の土台をもっとしっかりするよき転機としてとらえたい。災いを転じて福としたいと考えておるんですよ。党内についてもやはりできるだけ私の考え方を説得するつもりですよ、国会でも終わりますれば。
  204. 向井長年

    ○向井長年君 余りこの問題時間とっちゃいけませんが、党内で解散を早くやれということはそれは言ってないでしょう。しかし、あなたやめなさいと、ロッキード問題あなたではなくとも、他の者がやっても徹底的にやるんだということを言われてるんですよ。したがって、私はそういう時期に、少なくともやはり、党内不一致の状態の中で政権をこのまま担当して、そしてまた国民の信託にこたえようと、こういう意欲はわかりますよ。意欲はわかるけれども、こういう時期こそあなた決断しなきゃならぬ時期じゃないかと、こういう感じがするので、いまこういう問題を取り上げて質問した次第です。したがって、答弁は要りませんが、いま、もろもろの問題に対する政治不信という状態は国民が強く持っておる時期ですから、あなたは非常に責任が重大である。早期にこれは国民にこたえて、適当な時期に、もう国会は二、三日で終わりますけれども、早急に考えなけりゃならぬ問題であろう、こういうことを付言しておきたいと思います。  そこで、核防問題につきまして若干質問いたしますが、大体各委員から質問がされまして重複するかと思いますけれども、今回のこの条約は、周知のとおり、核保有国核軍縮があいまいなままに非核保有国の禁止を規定した、こういうことでございますから不平等条約である、これは私たちもそう考えております。欠陥はたくさんある。しかしながら、核兵器の野放しになっている現状を凍結しなきゃならぬ、こういう立場からわれわれは一つの評価をしております。しかしながら、これはこれでいいのではなくて、これからがスタートである、たとえば核軍縮のスタートである、こういう立場でこの問題をとらえて政府もおると思うんですよ、総理もね。そうなれば、非核国であるわが国は、この核防批准を契機として世界核軍縮のイニシアをとるべきである、先ほどからもたびたび言われておりますが。そしてそれによって核防批准の積極的意味があらわれてくるわけでありますから、そこで、日本としては今後この問題を取り上げていかなきゃならぬが、ただ言葉だけではなくて、具体的に訴える必要があると思うのです。これはけさから宮澤外相にも質問いたしましたが、私は、まず、この際三点をひとつ研究されて、そして世界にこの問題を提起すべきである。  その一点は核兵器の先制不使用条約締結、それからアジアの非核地帯の設置、核実験の全面禁止、この三つを軍縮委員会等でわが国が提起しなきゃならぬ問題ではないかと思いますが、これに対する考え方をお聞きしたい。
  205. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いままでもそういう質問が出ましてお答えをしたんですが、なかなか一気にいかない問題ばかりで、いま私ども考えておることは、核軍縮というものを日本がこれから力を入れていきたいと思う点はどういう点かといいますと、やっぱり包括的な核実験の禁止協定というものを結ぶ。これはもう水中も地下も大気圏も、包括的な核実験の禁止というものを、これは地震の探知技術なども日本は協力のできる余地がありますからね。これがまあ一つ。それと、平和目的のために核爆発をやるんだと言うんだけれども、軍事用とはこれなかなか区別がしにくいものですから、平和目的の核爆発というものに対して何か規制を加えるべきではないか、そういう点で、ひとつ核軍縮に具体的に日本が今後積極的に努力をしていきたいというのはこういう点であります。
  206. 向井長年

    ○向井長年君 特に、核実験の禁止については一九六三年に部分核停条約が結ばれておりますね。地下核実験は野放しである。部分核停条約以後アメリカでは二百六十回も実験をやっておる。ソ連では百回やっておる。こういう状態になっておるんですよね、現在は。核実験を行っていることはまことにわれわれは遺憾であると思うんですが、現在アメリカの大統領選挙が、予備選挙が行われておりますが、民主党の最有力候補であるカーター氏ですか、これは少なくとも五年間のいわゆる核実験禁止を提案しております。この提案を含めて、この際、核実験禁止について日本政府は声を大にすべきではないか、こういう感じがいたしますが、どうでしょう。
  207. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私もそう思います。核実験の禁止というものは、日本がやっぱり努力するのに、そういう世界的な空気もだんだんと醸成されてきておりますからね。まあ日本は、努力しても実効性の上がるものが一番いいですから、こういう点では向井さんの言われるように積極的に努力してみたいという方向です。
  208. 向井長年

    ○向井長年君 最後に。  今後は国が核軍縮問題について積極的にイニシアをとっていかなきゃならぬということをわれわれも主張するんですが、それに見合う国内体制の整備がまず必要だと思うんですよ、国内体制の整備。これは同じ非核国であるスウェーデンでも平和研究所が設置されております。放射能汚染の研究や具体的な軍縮提案を行っているのは御承知のとおりであります。わが国としても非核政策を進め、世界核軍縮にイニシアをとる上でこうした常設の研究機関を設置したらどうだろう、こういう考えを持つのですが、この点どうですか。
  209. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはスウェーデンもそういう研究機関は民間のものですね、政府も補助しているんです。日本でもそういうのがちょっと動きがあるわけで、そういうものはできた方がいいと私も思います。今後はやっぱりそういう研究機関、私は政府立場から離れて、民間の団体の方が好ましいと思うんですけれども、そういう団体が、やはりそういう機運もございますから、そういう団体ができることにひとつ……
  210. 向井長年

    ○向井長年君 好ましいでなくて、政府が積極的にそういう機関をつくるように努力されたらどうですか。
  211. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは外務省の内部においても、やっぱりこの問題というのは、これだけの問題になりましたら、外務省の機構の中では軍縮という問題は大きな問題になってくるんですが、その上に、政府ばかりでなしに、民間でも政府立場と離れたそういう機関があったらいいと思うのです。政府の方は、もとよりこの軍縮問題というものはこれからの日本国際外交の中で一つの大きなテーマになりますから、向井さんの言われるようなことは非常に傾聴すべき御意見だと思いますが、政府の中でもむろんやるでしょう。民間もそういう団体があったらいいというふうに言っているのですよ。
  212. 向井長年

    ○向井長年君 ほかにもありますが、時間が来ましたのでこれで質問終わりますが、総理、一言らち外の問題でございますが、きょうこの核防条約はあと討論、採決をするようでありますが、その他、他の委員会もいままだ案件たくさん抱えております。なかなか二十四日にはそう全部が議了するわけにはいかぬ法案もあるわけであります。まあこういう中で重要な法案が大分残されておる。まあ延長はこれは恐らくしないでしょう。そうなれば、いずれ近くいわゆる臨時国会を開会されるんではないかというように見ておるわけでありますが、総理、どうなんですか、臨時国会はいつごろどうしてやるという意向はありますか。
  213. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は向井さん、なかなかそう簡単にあきらめない方ですよ。まだこれからあしたがあるんですよ。土曜日がある。土曜日と月曜日とございますから、もうできる限り一つ野党の方々の御協力を得まして、それは野党の皆さん方も、そう法案を一つこの国会で握りつぶしたからといって、国民はよくやったということにはならぬのではないかと思いますから、これは野党の皆さんの良識に訴えて、もう二十四日までに必要な法案というものは議了していただく、賛否は別ですけれども。その結果を踏まえてどういうことにするかということは考えたいので、こういうものは最後まであきらめたらだめですよ。     ―――――――――――――
  214. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、稻嶺一郎君が委員を辞任され、その補欠として安田隆明君が選任されました。     ―――――――――――――
  215. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。立木君。
  216. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表いたしまして、核兵器の不拡散に関する条約に反対する立場から討論を行います。  本条約に反対する第一の理由は、核保有国の核軍拡競争の手を何ら縛るものでなく、核保有国核兵器独占体制を維持強化するものとなっているからであります。  わが国民の核軍縮の強い要求にもかかわらず、核保有国は第六条に規定された全面核軍縮精神に反し、条約発効後の五年間で核弾頭数は米ソで約三倍に増加し、命中精度の向上、多核弾頭化など核保有国の核軍備を何ら縮小しないばかりか、力の均衡の名のもとに新たな核兵器開発、際限のない核軍拡を容認するもので、核軍縮の一歩とはなり得ないことは明白であります。  反対の第二の理由は、アメリカなどの核保有国が外国へ核兵器を持ち込むのを何ら制限せず、完全に野放しにしている点であります。本条約核兵器拡散防止を核心としながら、核保有国非核保有国のどこに核を持ち込み配備しようが何ら制限せず、新たな核保有国の増加とは別の形での核拡散ともいうべきものを許しているからであります。しかも、これは日本にとってきわめて重大であります。政府の非核三原則堅持の言明にもかかわらず、日本はアメリカの核関連部隊を全国的に駐留させ、アメリカの核戦略体制に事実上巻き込まれて、アメリカによる日本への核持ち込みの疑惑は政府の答弁によっても解消されていないからであります。  反対の第三の理由は、核保有国による非核保有国への核使用を禁止せず、国連安保理事会の非核保有国安全保障決議と相まって、相対する核軍事ブロック化に道を開くものであります。このことは、核保有国にだまされたという非同盟諸国の不信と不満の高まりを見ても歴然といたしております。  しかも、本条約の批准促進と引きかえに日米軍事同盟の核軍事同盟化というアメリカの核戦略下に公然とわが国を引き入れることは重大であります。それは、アメリカの核先制使用発言に対して、わが政府がそれを核抑止力として建設的であるとさえ述べていることを見ても明らかであります。  いま必要なことは、本条約の批准ではなく、核兵器の完全禁止と当面核兵器の使用禁止の国際協定の成立に全力を傾け、わが党提出の核兵器禁止法案の速やかな実現を図ることこそ、この問題についての日本発言力世界に対して強め、世界で唯一の被爆国民である国民の悲願に真にこたえる道であります。  以上の点から、本条約の批准に反対するものであります。
  217. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 秦野君。
  218. 秦野章

    ○秦野章君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題になっておる核兵器の不拡散に関する条約に賛成の意を表明いたします。  国民の間には、この条約に対する反対の意見も多少あると思うんです。そういう意味においては苦悩に満ちた賛成でございますけれども、政治とはそもそも苦悩に満ちなければならぬと思っておりまするので、この条約は批准すべきだと、こういう判断でございます。  宮澤外務大臣が言われましたように、この条約はベストでなくてベターだと、これは条約一つ性格をまさに表現をしておると思います。しかし、それだけに、ベストでなくてベターだということの中から、どのような積極的な姿勢を出すのかといえば、結局これは、私は今度のこの条約批准によって日本軍縮、平和に対する確かな地位を得たということにおいて、これからの発言権といいますか、政府の積極的な行動だと思うものであります。  昨日、わが党の木内委員から御質問があった例の六条の問題であります。確かにこの六条の問題条項は軍縮軍備縮小に関する問題については、とにかく署名から六年たった今日までそんなに効果がなかった、余りなかったということは明らかな事実だと思うんです。そのことが何か、この条約は、この条項はまやかしではないかという批判さえあるのも、これはむげにできない批判だと思うのであります。これは、わが党の木内委員はこの条約署名のときに国際会議に列席された方でありますから、その経過をよく御存じで、身をもってそのことを体験されておるのでございますが、私どももまた心からそう思うわけであります。  そこで、この軍縮という問題、これは野党の方からもいろいろ御意見ありましたけれども、確かにこの問題について政府が今後どういう態度をとっていくかという問題でありますが、私はその前に、日本はアメリカと安全保障条約を結んで、いわば同盟国であります。同盟国であるから、核のかさの下にいるから、アメリカの手先だから、超大国軍備の一方の旗頭にある国に対して発言権はないであろうという野党の意見に、もしそこに一つ意味があるとするならば、私ども同盟国だから、そこの太いパイプを通じて日本の自主性をどう貫くか、その自主性の中に軍縮への発言というものをどう貫くかという、そういう問題だと思うんです。で、やはり同盟国を離脱して発言することの方が強いという意見もありますけれども、やはりアメリカはまだデモクラシーの国として、日本が苦言を呈し、いろいろ提言をすることに耳を傾ける可能性の高い国だと思う。そういう同盟国に私どもはもっと積極的なやはり発言をしていくということにおいては、今後政府として、外務大臣防衛庁長官も、大いに堂々とアメリカともっと交渉をなさっていただいて、自主性が同盟国の中に全く失われないという努力を持続するということが非常に大事だと、こう思うのであります。  何せ、いまだれでもこれ、非常に心配しているのは核の危険でございます。代表質問でも申し上げたように、アメリカはとにかく日本に原子爆弾二つ投下したんであります。あれは一つでよかったと思う。せめて一発にとどめれば十万、二十万を殺さずに済んだ。私は、これは力のあるものが勢い余っての過誤だと思うんです。しかし、力があるものというものはしばしば過誤を犯すというのが歴史の現実であります。アメリカだけじゃありません。どこの国でもあるわけであります。しかし、こういった人間社会の宿命が今日まであったし、これからも絶対ないとは言えぬというところに人類最高の危険がわれわれの目前に、直前にあるわけですね、核の問題で。そういう意味においては、この核の問題というものに対してやはりいろいろ工夫をこらして、そういう意味においては外務省も、ジュネーブの出先も、できたらなるべく軍縮の体制も強化して、ぜひ軍縮への提言をひとつ努力していただきたい。  巨大国家は巨大なるがゆえに知性が高いというわけでもないでしょう。知恵が豊かだというわけでもないと思うんです。われわれは、もうこれからそっちの方で生きていくほかはないわけですから、どうかそのことを特にお願いをしておきたい。  日米関係の同盟は三十年、これからも当分続くでしょう。実に長いですよ、この同盟関係は。しかし、長いということには一つの危険があるわけですよ。どういう危険かといえば、なれといいますか、その同盟のパイプの中を通じて日本が独立国としての見識を伝え続けることができるであろうか、その問題だと思うんです。宮澤さんのような英知豊かなる外務大臣がおられるときに、われわれは全く信頼を寄せております。しかし、霞が関の外交陣というものは日本の国家とともに永遠にあるわけです。この巨大な霞が関のこの外交陣営に私は注射を打つような思いで、このアメリカとの同盟のその仲が空洞化しない、活力のある同盟であること、知性的な活力のある同盟であることを提言して、私の賛成討論を終わりたいと思います。
  219. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 戸叶君。
  220. 戸叶武

    戸叶武君 私は、日本社会党を代表し、核防条約批准の最後的な論議を行った上で、本日ここに賛成の意を表します。  わが党は、核兵器の全面禁止を目指して創造的な平和外交をこれから推進するに当たって、全面的に協力を誓うものであります。われわれが賛成した以上は、平和外交をまともな平和外交として推進させて、政府の過ちは具体的に指摘してそれは改めさせたい。  外交防衛に対する日本で与野党の接点がなかったということが、野党をしていたずらに批判政党たらしめ、また、政権を握った者が長い間政権にかぶりついて、今日のような収拾ができないような、アナーキーな政党にまで転落するに至ったのです。この政治をわれわれは是正することが、この核防条約を起点として私たちは深く考えなければならないと思うのであります。特に、日本の出先外交官の苦悩は、日本は一体どっちを向いて走っているんだ。核の悪夢から消えない東南アジアや近接諸国はそれを心配しております。田中さんもタイやインドネシアであれほどつるし上げられたではありませんか。日本の総理大臣が金をばらまいていけばどこでも歓迎されると思うのは大きな間違いです。もっと理想を持ち、もっと誠実を込め、他民族の心をかち取るような外交がなければ、核なんか持っても何にもならない、恥をかくぐらいのところであります。どうぞそういう意味において、出先の外務省の役人の人も、それぞれ国家を背景に責任を持って行動しなければならない人たちが、平和のために、祖国のために、人類のために犠牲になっても尽くすんだという、この腹が決まった後における行動的な日本人の私は活動というものが、世界が刮目して、改めて私は見直されるだろうと思うんです。  特に、この悩み多き論争の過程において、ずいぶん前世紀的な論議が日本にあって、まだちょんまげが切れていない、村田銃がある、まだ力にのみ依存して復讐の鬼となっている者もあるということが全部わかって、外国でも恐れると思います。何もかもさらけ出したオープンな論議です。日本の強みは、何もかもさらけ出してその中から真実をくみ取ってもらう以外にないのです。てらう必要がないのです。そういう意味において、私たちは野党は野党として、特に社会党においてはこの機会に外交防衛に対する批判政党でなく責任を持たなければならない。対話によって、何が正しいかによってわれわれの行動を現実政策でつば競り合いの戦いをしなければ政治にならぬ。われわれも命がけでこの問題に対しては取っ組んだのです。病気でいる羽生君も病院から出てきておるのです。われわれの志が遂げられなければ、場合によっては党を除名されてもわれわれはこの志を述べようとまで決意を決めてきているのです。反対した人も、党できまったときには議場に入らないで反対するのではなく、堂々と議場に出てきて、賛成の挙手を衆議院においてやっているじゃありませんか。近代政党の節度というものはかようなものです。社会党はいまだ未完成でありますが、志は憂いをもって祖国を守り、祖国だけよければよいという米ソの覇権主義あるいはその他の国々考え方とは違って、あれほど悲惨な洗礼を受けたのであるから、キリストにおけるペテロ以上に、徒手空拳をもってローマで十字架にかかるような気持ちで今後平和外交推進のために挺身する覚悟であります。政府にも協力もし、文句も言います。オープンです。陰湿ないまの政治はだれがやっているのです。国民は憤っています。解散権の問題は総理大臣にあるが、総理大臣の絶対権ではない。過去のような伝家の宝刀ではない。反対党の不信任案に対する自衛の行使ではない。人民の合意を得られるという信念の上に立って、タイミングを外さず、心静かに祈るような気持ちで、私は解散権は断行したらいいと思う。何も椎名のじいさんに刀を預ける必要はない。刀を預けると、浅野匠頭の殿中の刃傷ということになるから、どうぞ堂々と節度ある議会民主主義の成果を上げていただかれんことを期待し、そして私たち同志の心を述べて、これで私の賛成討論といたします。
  221. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 塩出君。
  222. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました核兵器の不拡散に関する条約の承認を求めるの件について賛成の立場から討論を行うものであります。  人類の前途にはエネルギー問題、食糧問題、公害問題等幾多の難関が横たわっております。しかし、米ソ中心としてますますエスカレートしている核兵器を初めとする軍拡競争をとどめ、軍備なき世界平和を目指すことこそ人類最大の課題であり、本条約の目指すところもここに第一の目的があるべきであったのであります。  しかし、六年前にわが国が署名したこの条約の内容は、核兵器国核軍縮、非核兵器国安全保障等の点においてまことに不十分であることは、六年間の歴史を通し、また、本委員会の審議の中で明らかになったのであります。そして、米国の核のかさのもとで米国の核抑止力を頼りにするわが国は、米国の核政策の域を一歩も出ることができず、世界に誇る平和憲法を持ち、世界で唯一の被爆国でありながら、日本の使命に立った国際外交がなかったため、このような不十分な条約となったことに対し、政府に強く反省を求めるものであります。また、条約署名後の日本の外交も、核兵器撤廃の最先端に立つべき使命がありながらその使命を果たしてこなかったのが現実と言わなければなりません。  さらに、中国、フランスという核兵器保有国が未参加のまま見切り発車したことも大きな欠陥と言わなければなりません。このような不備を認めながらもわが党がこの条約に賛成するゆえんは、いまさら批准をしなかったからといって、それだけで核防条約の内容を変えることも核軍縮を推進することも不可能であるからであります。そして、核防条約に加盟して、そこを第一歩として核軍縮被爆国日本の使命に立った国際外交を推進してほしいという願望を込めたものであり、政府も今後大いに努力をするという姿勢に大いなる期待をするがゆえであります。理想を高く掲げ、かつ、現実を踏まえて進むのが外交のあるべき姿であります。政府としても、バランス・オブ・パワーの上に立つ平和ではなく、国境を超えた信頼と友情に基づく真の平和、軍備なき世界平和実現に、世界の最先端に立って、たとえどのような困難な道があろうとも、勇気を持って努力をしてほしいことを強く要望し、賛成討論を終わります。
  223. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 向井君。
  224. 向井長年

    ○向井長年君 私は、民社党を代表して、核兵器の不拡散に関する条約に対し、賛成の討論を行います。  すでに周知のごとく、本条約は、米ソ等の核保有国に対する核軍縮措置がきわめて不十分であること、それから核保有国の査察についてソ連が拒否していること、中国、フランスという核保有国参加を拒んでいること、また、非核保有国に対する安全保障の確保が十分でないこと等多くの欠点を残し、しかも、非核保有国にとっては不平等な条約であることは否定できない事実であります。しかし、だからといって万一わが国がこの条約に反対した場合は、わが国が諸外国から核武装への道をたどるものと疑われて、国際的に孤立化することは明らかであります。しかもそれは、非核原則を堅持し、世界における核兵器の絶減を願うわが国の国是に逆行し、世界核軍縮に背を向けることになることもまた明らかであります。この見地から、われわれは本条約に賛成するものであります。  すでに、ローマクラブ等の提言にもあるとおり、いま地球は人類の英知によって管理することができるか、それとも人類のエゴによって破滅への道をたどるかの岐路に立っています。エネルギー、食糧、人口、海洋、そして核兵器がそれであります。本条約は欠陥のある条約でありますが、しかし、それが核兵器国際的な管理への第一歩となり得ることも事実であります。問題はこれで終わるのではなく、これからであります。特に今後の課題として核不使用条約締結核保有国軍縮の義務づけ、核保有国に対する国際原子力機関の査察義務づけ、一切の核保有国に対する核防条約加入の促進、全面的核実験の禁止などが、なお山積しております。  われわれは、政府は、これら核防条約の欠陥穴埋めと、世界核軍縮の推進のため、本条約の批准を契機として取り組み、それを通じてわが国非核保有国として世界核軍縮のイニシアをとるよう強く要請し、私の討論を終わります。
  225. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 他に意見もないようですから討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  226. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  228. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) この際、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  田君から発言を求められておりますので、これを許します。田君。
  229. 田英夫

    田英夫君 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の共同提案にかかる核兵器拡散条約に関する決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    核兵器拡散条約に関する決議(案)   核拡散の危機的状況にかんがみ、核兵器拡散条約の批准に当たり、政府は、左の事項につき誠実に努力すべきである。  一、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずとの非核三原則が国是として確立されていることにかんがみ、いかなる場合においても、これを忠実に遵守すること。  二、すべての核兵器国に対し、核兵器の全廃を目指し、核軍備の削減・縮小のため誠実に努力するよう訴えること。  三、唯一の被爆国として、いかなる核実験にも反対の立場を堅持するわが国は、地下核実験を含めた包括的核実験禁止を実現するため、一層努力すること。  四、非核兵器国安全保障の確保のため、すべての核兵器国は非核兵器国に対し、国際連合憲章に従って、核兵器等による武力の威嚇または武力の行使を行わざるよう、国際連合、ジュネーブ軍縮委員会その他のあらゆる国際的な場において強く訴えること。  五、世界の平和維持に非核化地帯構想が重要な意義を有していることにかんがみ、このために国際的な努力をすること。  六、原子力の平和利用については、自主、民主、公開の原則を堅持し、安全性の確保に万全を期し、研究、開発及び査察の国内体制を速やかに整備し、核燃料供給の安定確保に努めること。   右決議する。  以上でございます。何とぞ御賛成くださいますようお願いいたします。
  230. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 立木君から発言を求められておりますので、これを許します。立木君。
  231. 立木洋

    ○立木洋君 ただいま提案されました決議案に対し、若干意見を述べさせていただきたいと思います。  私の考えでは、第三項を次のように訂正したらどうであろうかというふうに考えております。  わが国は唯一の被爆国として、すべての核兵器の製造、実験、貯蔵、使用に反対し、全面的な禁止協定が締結されるよう、一層の外交的努力を続けること、このように改めるようお願いしたいわけでありますが、これは衆議院、参議院両院の決議の内容そのままでございます。  第三項では、提案では、核実験の問題が取り上げられておりますが、私たちとしては、製造、実験、貯蔵、使用という全面的な禁止協定にする方がよいという提案を行いました。理事の方々も、内容的には反対ではないけれども、文脈、内容等々その他でこれを取り入れることに最終的には意見の一致を見られなかったという点についてはきわめて残念であります。しかし、私たちは全体としては賛成であるという点だけ述べて、私の発言を終わります。
  232. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) それでは採決をいたします。  ただいまの田君提出の決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  233. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、宮澤外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宮澤外務大臣
  234. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 核兵器の不拡散に関する条約につき、本外務委員会の御承認をいただきましたことを厚く御礼を申し上げます。  この条約の審議に当たり、あらゆる角度から熱心な御議論を尽くされました各位の御努力に敬意を表します。  ただいま採択されました決議につきましては、政府として、本件決議委員会の全会一致をもって可決されたことを十分踏まえつつ施策を講じてまいるべく最善の努力を払う決意でございます。
  235. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十二分散会