○林孝矩君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま
政府より
提案されました
公衆電気通信法の一部を改正する
法律案について、
総理並びに
郵政大臣に
質問いたします。
本
法案は、郵便
料金に続く
政府の公共
料金値上げの第二弾として、
国民が非常に重大な関心を持っている
法案であります。
それは、
公共料金の画一的な
値上げが諸
物価の高騰を誘引することは必至であり、
インフレ再燃のおそれがきわめて強い中で、不況に苦しむ
国民生活をますます窮地に追い込むことになるからであります。
一月二十七日、
総理府統計局が発表した二月の消費者
物価の
上昇率は、対前年同月比で東京区部において一〇・七%になり、
政府が
国民に約束してきた三月の消費者
物価対前年比一けたの公約は、すでに絶望的であるとされております。
この現状をもたらした
原因は、一応、昨年末からの異常気象による野菜類の続騰とされておりますが、それのみではなく、昨年の消費者米価
値上げが
影響していると見るべきであります。
そこで、
総理にお伺いいたします。
政府は五十一年度の
経済見通しで
物価上昇率を八八%としていますが、どのような根拠があって八・八%の
上昇率に抑えることが可能なのかということであります。
五十一年度は、ただいま
提案された
電話電報料金の
値上げを初め、
国鉄運賃五〇%、
NHK受信料約五〇%、その他、
国立大学授業料約二・七倍、さらに四月早々に申請予定の電力
料金値上げなど、
公共料金の
値上げが軒並みに予定され、それに通産省が指導する新価格体系の形成、こうした
値上げラッシュは、
物価狂騰が最も激しかった四十九年度に、国鉄、私鉄、タクシー、電気、ガス等の
公共料金が相次いで
値上げされた当時と、全く酷似しているからであります。むしろ、
値上げ幅や実施される
公共料金の種類は、四十九年度をはるかに上回っているのであります。
しかも、公債の大量発行、金融緩和と大
企業優先の景気対策とによる過剰流動性、第一次産品の輸入価格の
上昇、製品価格の
引き上げなど、
物価高騰に結びつく要因が山積していると言うべきであります。
総理は、こうした
状況を
考えても、なおかつ
政府の消費者
物価上昇率八・八%の実現は可能であると
考えられておるのか、五十年度の
物価公約がすでに
破綻した現状と照らし合わせ、明確な
答弁を伺いたいと思うのであります。
さらに、
公共料金支出が低
所得者層になればなるほど家計に占める割合が高くなることが明らかになっております。
たとえば四十九年度の勤労者世帯五分位階層別で見ると、第一分位、すなわち最も低い
所得層では、
公共料金支出が家計に占める割合は一五%にも及んでおります。したがって、五十一年度に主なものだけでも十数種類ある
公共料金の
値上げラッシュは、家計の中で
公共料金負担比率がきわめて高い低
所得者層に多大な
影響を及ぼすものと思われます。こうしたことは
総理はすでに御承知と思いますが、低
所得者層に及ぼす
影響を緩和するための対策を持っておられるのかどうか。それとも、
所得格差や税の不公正が問題になっている今日、
所得の低い人に対する何らの
配慮もなしに
公共料金の一斉
値上げを強行しようとする
考えなのか、お伺いしたい。
次に、
わが国は情報化の進展が急速に進み、郵便事業はすでに百年を経過し、NHKの開局も昨年五十周年を迎えるに至っております。しかし、その反面、情報過多が
社会的に問題になり、プライバシーの保護が重視されるなど、情報化
社会の進展の功罪が改めて問われております。さらにまた、
電話、
電報、郵便、テレックス等の通信事業の需給
関係も、ここ数年大きく
変化しているのであります。
こうした
社会変化に対し、
さきの六十三
国会のころから、情報の
社会的位置づけや定義を明確化するため、
国会や
国民各層の間から、現在及び将来の情報化
社会に指針を示すべきだとの要求が出ているのであります。特に、情報化
社会の進展に伴う、プライバシーの保護と基本的人権の保障、情報の
国民生活への優先的
利用、情報の民主的管理、情報格差の是正など、
原則の確立はいまや緊要な問題となっております。
しかしながら、これに対し
政府は何一つこたえていないばかりか、六十五
国会では、公共的な目的をもってつくられた公衆電気通信網を一部の大
企業の要求に応じて開放するとともに、そのツケとして
電話料金の不当な
値上げを
国民に押しつけるなど、
国民の犠牲の上に立った情報の大
企業優遇
措置を行ったのであります。
今回の
電話電報料金の大幅
値上げは、かつての高度成長型
経済政策に追随してつくられた
電電公社の第五次五カ年
計画を遂行するためのものにほかなりません。今後の
日本経済の中で、なお高度成長型の
投資計画の遂行が必要なものなのかどうか、大いに疑問を抱かざるを得ないのであります。
このほかにも課題は数多くありますが、
政府は、情報化
社会の進展に対応する基本政策も基本的理念もないまま、
事業収支の
改善にのみ目を奪われて、多大な
負担を
国民に課そうとしていることは納得できないのであります。
政府は、情報化
社会に対応した基本政策をまず
国民の前に提示することが先決であると
考えますが、その用意があるのか、
総理並びに
郵政大臣の御
所見を賜りたいのであります。
続いて、
郵政大臣に対し何点かの
質問をいたします。
その第一は、
電電公社の事業
計画の規模が現在並びに今後の
経済事情に適応したものと
考えているのかということであります。
電電公社は、四十八年度を初年度とする第五次五カ年
計画を
策定して、その事業費の総額は七兆円という膨大な
投資が予定されています。しかし、いわゆる
石油ショックを契機に
わが国の
経済が
変化をしてきた以上、
公社の五カ年
計画の見直しが必要となることは当然であると
考えられます。にもかかわらず、
公社は五カ年
計画の根本的な見直しを行おうともせず、その
投資による借入金の穴埋めとして、
電話電報料金の大幅
値上げを画策し、
国民に大きな
負担を課そうとしているのであります。
さらに、
電電公社は、事業
計画を推進するため、五十一年から五十三年までに五兆四千三百億円の
投資を必要とするとしていますが、これは四十八年から五十年までの
投資額三兆七千六百億円と比較しても明らかなように、過大な
投資であると言わざるを得ません。
したがって、事業
計画を根本的に
策定し直すべきであり、いたずらに
電話電報料金の
値上げを図るべきでないと
考えますが、この点について大臣の明確なる
答弁を求めるものであります。(
拍手)
質問の第二点は、事業別
収支の問題であります。
公社は、
事業収支の悪化の
原因が、
人件費や物件費の高騰とともに、住宅
電話にあるように
宣伝をしておりますが、これは全くためにする論議と言わざるを得ないのであります。
すなわち、
加入数が
増加すれば、一
加入当たりの
電話収入がある程度低下することは当然であり、こうした現象は、アメリカを初めいずれの国でも起きていることであります。確かに住宅
電話は、事務用
電話に比べて
利用度が低いことは事実としても、通信費を必要経費として認められている事務用
電話と同次元で論ずるべきではなく、また事務用
電話が景気によって左右されるのに比べ、
住宅用電話の
利用は比較的安定しており、
事業収入の安定のためにも、
住宅用電話は優遇されてしかるべきであります。
さらに、
住宅用電話は、事務用
電話からの受信面において、総
収入に大きく貢献していることも考慮されるべきであります。
また、四十九年に
公社が発表した事業別
収支状況に明らかなように、
電話以外の事業がすべて
赤字であり、特に
企業優遇の
料金制度がとられているデータ通信、テレックス等の事業は、
収入に対する
赤字額比率が高いことを見逃しにできないのであります。
したがって、直接
国民生活に
影響を与える
住宅用電話料金は抑制し、事業活動に供される通信
料金の是正に努め、
公社全体の
収支改善を図ることが
公社としてとるべき
責任ある態度であると思いますが、大臣はこの点をどのように
考えておられるか、御
所見を伺いたいのであります。(
拍手)
また、
電報料金の大幅
値上げは、
電電公社の事業全体の
立場からの論拠が薄く、
収支均衡にのみ目を奪われた
経営姿勢が貫かれています。
電話等との共通通信分野の調整、配達
制度のあり方など
電報事業の全体の
改善を図るとともに、定文
電報の
増加など、サービス
向上に努めることが事業
改善にとって不可欠であると思いますが、この点もあわせて大臣の
答弁を求めるものであります。
第三に、
公社の事業体質についてであります。
公社の固定資産はここ数年急激に膨張しておりますが、それに比例して、支出に占める減価償却費の割合も増大し、五十一年度を例にとると、その比率は実に三〇%以上に達しております。同系事業の国際電電が一七%、その他、国鉄が一一%、電力一七%、ガス一三%であることから、
公社の減価償却費がいかに過大であるか明らかであり、また、耐用年数を過ぎた
設備が何年も稼働して利益を上げ、さらには、撤去した
設備に手を加えて地方で再
利用されているという事実も
指摘されております。ちなみに、この比率を国際電電並みにするとしますと、約五千億円もの支出が減額されることになり、これは今回の
料金値上げによる増収分に匹敵するのであります。
このようにして見ますと、
公社の
赤字は、極端に表現すれば、つくられた
赤字とさえ言えましょう。大臣はどのように
考えておられるか、明確な
答弁を求めるものであります。
さらに、
公社の体質
改善に関連して言及しますが、現在、ロッキード献金問題で重大なる
疑惑を
国民に与えている
小佐野賢治氏が、
電電公社の
経営委員として
総理から
任命されていることに関して、先ほど
総理は、
小佐野氏が証人喚問されたからといって罷免すべきではない、そのような
答弁をされました。しかし、
小佐野氏は、ロッキード献金問題が起こって以来、この
電電公社の
経営委員会を欠席しております。この事実を
総理は御存じなのかどうか。また、重大な
経営委員会を欠席する、出席しないということに対して、
経営委員としての適格
理由を
総理はどのように
考えられておるのか。また、国権の
最高機関である
国会で行われている証人喚問に対して、このような程度の認識しか持っていないという
総理の
考え方を私は疑います。
総理は、では一体、
小佐野氏にどのような罷免
環境が生まれたときに
小佐野氏を罷免すると決断を下されるのか、その点について
総理の明確なる
答弁を求めます。
国民の目から見て、こうした
疑惑を抱かせている人物が
公社の
経営に重大なる
影響を与え得る地位にいることは、
国民の
公社としての
立場から見て適格と言えるかどうか、明白であります。
総理の
見解を賜りたい。
最後に、来年度の
公社予算は、その事業規模と
内容において、今後予測されている
わが国の
経済成長率に適応しないばかりか、
国民のための通信
制度としての使命から大きく逸脱したものと言わなければなりません。また現在の
赤字は、過大な
投資や他に比類のない減価償却費の計上など、
公社自身の放漫
経営によって生じたものであり、さらにまた、データ通信やファクシミリなど、大
企業のための
投資を増大し、一方では
専用料金などによって破格の
料金割引を行い、
収入の低下をみずから招いた結果であると言えます。そうしたツケを大幅な
電話電報料金の
値上げによって
国民にしりぬぐいをさせることは、絶対に許されるべきではありません。
政府は、本
法案の速やかなる撤回と、
電電公社の来年度予算を抜本的に改めるべきであることを強く要求して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣三木武夫君
登壇〕