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1976-03-05 第77回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年三月五日(金曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 鯨岡 兵輔君    理事 坂本三十次君 理事 中山 正暉君    理事 羽田野忠文君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 正森 成二君       粕谷  茂君    木村 俊夫君       小坂善太郎君    竹内 黎一君       原 健三郎君    福田 篤泰君       福永 一臣君    三池  信君       山田 久就君    土井たか子君       三宅 正一君    鈴切 康雄君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君  出席政府委員         国防会議事務局         長       内海  倫君         防衛政務次官  加藤 陽三君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         科学審議官   半澤 治雄君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         外務政務次官  塩崎  潤君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         外務省国際連合         局外務参事官  大塚博比古君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     鈴切 康雄君 同日  辞任        補欠選任   鈴切 康雄君     正木 良明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(第七十五回国会条約第一二  号)      ————◇—————
  2. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これより会議を開きます。  第七十五回国会から継続になっております核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  お諮りいたします。  本件の提案理由説明につきましては、すでに第七十五国会において聴取いたしておりますので、これを省略することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  4. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山正暉君。
  5. 中山正暉

    中山(正)委員 先国会からの引き続きの案件でございます核拡散防止条約に関する件で科学技術庁長官にお伺いを申し上げたいと思いますのは、まず日本原子力開発象徴的な存在であります原子力船むつ」の問題でございます。大変これが日本の船でありながら日本の港に簡単に帰ってこれない、日本のいまの不安定な政治状況というのをよくあらわしておるものだと思いますが、私は体制反対をする方々の一つ動き象徴でもあると思います。原子力空母寄港阻止問題とか原潜寄港反対、これは一にかかって、安保の空洞化というものをどうするかという問題が根幹にかかっているのだろうと思います。  それから産業面では、核開発という将来のエネルギー源を遅延させることによって、日本産業体制に非常な大きな影響を与えようとする動き、それからまた、そういうもので日本核アレルギーというものを刺激をしてある勢力支持層をふやそうとする、いろいろな動きがあろうと思いますが、そこでその象徴である「むつ」の問題というのは、大きなこれからの政治問題の象徴として、特に原子力関係象徴として、その解決にいま鋭意——この間も政務次官佐世保へいらっしゃったということでございます。そのことに関しまして調査団が行かれた結果をまずこの問題の入り口として大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、「むつ」問題はどういうふうに、いま進展をいたしておりますでしょうか。
  6. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 御承知のように「むつ」の修理点検問題に関しまして、去年一年間かかりまして、これにまつわる万般の対策を政府としてはいたしましたので、今度は現地の方にこれを持ち込みましていろいろ御検討いただいて、そして理解を深めていただいて、できますれば佐世保修理点検のために受け入れていただきたいということで、先般私も長崎に参りまして知事佐世保市長にもお会いし、また引き続きまして総理大臣に私と官房長官運輸大臣が立ち会いましてこの検討方要請いたしました。その際、主として長崎県知事から、政府安全性等関連していろいろ受け入れについての検討を私どもにお願いするからには、まず検討のための資料を詳細に提供していただきたい、安全性の問題あるいは点検修理具体策等をいろいろ御説明していただきたいという無理からぬ御注文がございまして、したがいまして、それに引き続いてすぐまず長崎県庁並びに佐世保市の職員のこれに携わる皆様に御理解をいただくのが一番手始めだと思いまして、技術者を派遣いたしましてその説明をいたしまして、次いで現地側とも十分打ち合わせの上、小沢科学技術庁政務次官を団長にいたしまして、原子力事業団島居理事長もこれに配して必要な人員を加えまして、先般現地に派遣いたしましたことは御指摘のとおりでございます。  一昨日の夜でございますか、政務次官が先行して帰ってまいりまして、残余の皆さんはまだ佐世保長崎に残ってそれぞれ所要の任務に向かってただいま残っておるところでございます。したがいまして、政務次官から受けました報告だけを基礎にいたしましてお話申し上げますが、まず今度参りました主目的は、必要な個所と申しますかにごあいさつを正式に申し上げるということ、それから先ほど申しましたように、知事さんから御要請のありました諸資料政府として正式に手交いたしまして、その御説明に当たるというのが主たる任務でございます。県庁に参りまして、それから自民党の県連その他政党関係では公明党の支部でございましょうか、あるいは商工会議所とかいろいろ関連機関がございますので、詳細は私手持ちがございませんけれどもあいさつをいたし説明をしたわけでございまして、佐世保におきましても同様でございまして、それぞれ関連個所にはあいさつ、御説明を申し上げて帰ってまいりました。  ただ、残留部隊の方は、たとえば市でいろいろ協議会を開くので、政府側から直接説明をお願いしたいというふうな要請もあって、ただいまその説明をしておるようでございます。  何せいままでは長崎県あるいは佐世保市とは正式な表面の交渉は何もなかったわけでございまして、今度が初めての使節団として具体的な説明に入ったわけでございますから、問題の展開、根回し等はこれからでございまして、ただ県も市も同様でありますが、安全性等説明あるいはPRと申しますか、そういう点は主として国が責任を持ってこれに当たってまいりたいということ、それから原子力安全性問題に関しましては、国自体が最終的にあくまでも責任を負うという覚悟と申しますか、こういう点を明確にしてもらいたいということでございまして、そのとおりでございますから、そういうふうに進めたいと考えております。
  7. 中山正暉

    中山(正)委員 御報告のとおり、これからの核エネルギー象徴でありますこの原子力船むつ」の成り行きは、これからの日本の発展に大変大きな影響がある、特に平和利用とそれから軍事面での核の違いというものを、かつて被爆国であります日本国民にとりまして、この佐世保でうまく成功するかどうか、寄港地となるかどうかということが、これからの平和利用目的とした核の問題ということが日本国民に与える示唆は大きいと思いますので、大臣のお考えではいつごろこの実現性と申しますか、めどをどの辺に置いてお考えでございましょうか。核拡散防止条約批准はもう目睫の位置に迫っていると思います。またそれが私は世界の趨勢として当然のことであろうとは考えておりますが、その中にもいろいろ疑問点がございます。かつては非常にアメリカソ連英国という、特に米ソの間で考えられておった条約が、これが世界的な基盤に広がった。その中でも非常に私ども不思議に思いますことは、核大国査察を受けずに、特に核軍事大国平和利用部分まで査察を受けないのに、われわれの日本に関しては平和利用部分まで査察を受けるというのは、どうも私はこの条約の根本的な不平等性であるように実は考えるわけでございますが、大臣科学技術庁長官とされて、この不平等性というものを一体どういうふうに受けとめておられますでしょうか。先ほどの原子力船むつ」のめどとともに、その点に関しまして、時間がございませんので、あわせて御質問を申し上げておきます。
  8. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 「むつ」の問題は、言いかえれば「むつ自体原子力船むつ」が青森から長崎の方で承諾を得まして回送するのはいつかという点が一番ポイントかと思いますけれども、私ども総理からもお願いし、私自体からもお願いしておりましたのは、あくまでも権力で、現地反対を押し切って強行するという考え方ではなくて、あくまでも私ども安全性その他に関する御理解を広くいただきまして、そして円満裏に、青森で起きましたようなああいうケースにならないで問題を処理できるようにというのが私どもの深い念願でございますので、粘り強く現地皆様に御理解いただくよう最大の努力を払いまして、そして話せば必ずわかってもらえる問題でございますから、御理解を順次いただけるものという決心でこれから進めてまいります。  したがいまして、いつごろにこれが開始するのだという問題になりますと、見通しはもちろん定かでございませんけれども、しかし私は、青森県との話し合い等の話もあり、来年の四月でございますが、二年有半という撤去の時期でもありますので、それを少なくとも超すようなことはできるだけ避けたいと存じますので、早く決まればそれに越したことはございませんけれども、しかしさらばといって、この問題は粘り強く広く御理解いただくわけでございますから、私時間は相当ゆっくり見てしかるべきではないかと実は思っております。早く決まってくだされば、これにこしたことはございませんけれども、焦らずに進めていきたいというふうに実は考えております。  それから、この問題に関しまして、特に外務委員会でございますので、海外の注目を非常に浴びておる問題でございまして、わが国原子力船政策というものは一体どうなるのか。去年の六月でございましたか、ニューヨークで原子力船国際会議がございまして、その結論をしさいに検討いたしますと、今後十年後くらいには原子力船世界的に実用化時代に入るぞという結論を大体得ております。そういう明確な事態を予想しながら、世界一等造船国でありまた海運国である日本が、この問題に対して、「むつ」の問題を中心に原子力船の設計、研究開発等は断念したということになりますと、これは国際的にも大変問題が多うございます。  と申しますのは、原子力船というのは非常に航続距離の長い、長距離の輸送に一番適しているわけでございますから、ヨーロッパ、アメリカにいたしましても、日本がその一つ対象国になっておらないと、向こう自体海運政策が進まないような因果関係を持った世界的な問題になっております。したがって、日本原子力船政策というものは将来どうなるのだろう、「むつ」をどうするのだろうという点が実は大変世界的に関心を呼んでいる問題でございまして、私どももよくその点を考えて、先ほど御指摘のございました国内の情勢、原子力風土と申しますか、そういう問題のみならず、やはり国際的な一つ要請と申しますか、あるいは日本の将来の造船海運政策等のためにも、この際ぜひ不退転の決意でこの「むつ」の修理点検を済ませ、本来の実験船としての使命を果たして、データをこれからたくさん収集して、将来の原子力船に備える、わが国原子力政策に備えるということが一番重要なことだと思いますので、一生懸命努力申し上げたいと存じます。  それから第二段の核防条約不平等性の問題でございますが、その中で特にお話のございました、査察がはなはだ不平等じゃないか、核所有国にも平和利用原子力開発利用が進んでいるのに、平和利用という面に関しては同じ立場であるはずであるから、査察を当然に受けるべきじゃないかという御指摘は、私はなはだごもっともの主張だと存じます。これを受けまして、条約批准を済ませております特に英国、米国では、査察を受けましょうということで、国連機関との間でそれぞれ協定をただいま進めております。日ならずこれは成立すると思いますが、ただ、ソ連平和利用施設査察というものを受けるという状況にまだなっておらないのでありまして、わが方でも、国際場裏と申しますか会議等を通じまして、その受け入れ方を強く主張しているのでありますけれども、まだその機運にはなっておらぬように承知してございます。
  9. 中山正暉

    中山(正)委員 「むつ」に関しましては、成田空港のぶざまな姿を目の前にするわけでございまして、あと二年たつともうあれがポンコツになるという話でございます。三千億円という国民の血税をかけてこの飛行機時代に空港をつくったものが、ある種の政治目的を持った運動によって阻止をされておるというようなばかな状況を、私ども声なき国民の声を代表する者として、とても見るに忍びないわけでございますので、「むつ」に関しましても、エンタープライズは八基の原子炉で、何ノットでございましたか、一回ウランを注入すると地球を十何周とか、いまちょっと忘れましたが、大変航続距離が長いということを聞いておりますので、ぜひひとつ早期の御解決——いま国会の中を見ましても、私は多数決じゃなくて少数決時代が来たと思っております。国民の中でもある種の特殊な声が大多数の国民意見であるような錯覚をお起こしになりませんように、ひとつ大臣政治家としての御決断を最後にはしていただきたい。何でも一つにまとまるはずはありません。そういうことでひとつ早期の御解決をお願いをしたいと思います。  第二点目の問題として、私どもは、核軍縮が進行することと、それから非核保有国の安全が保障されること、それから原子力開発において平等化されることという、この核防条約批准には三点の留保点があったように思います。それを早期条約批准ということで、西ドイツなんかは大統領が権限で抑えております。寄託をまだいたしておりません。そういうことを聞いておりますときに、いまの軍事大国が、ソ連なんかは平和利用査察もさせないということでございますが、それも自費でわれわれが査察業務を行うというのは、どうも私これまた不平等な感じがしてしようがありませんから、軍事査察もさせない、しない、それから平和目的の核問題の査察もさせないというような国が費用を負担したらどうか、日本のような国が査察業務に関します費用を、そういう国々分担をして負担をしたらどうか。それからまた、国連分担金の率によって、まあ日本も大変大きな国連分担金を出しておりますけれども、そういうふうに大変多額にかかる費用をそういう国々に負担してもらったらどうかというようなことを考えておるのですが、大臣はいかがお考えでございましょう。
  10. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 この条約をなぜ急ぐのかという御質問が第一点かと存じますが、中山先生承知かと存じますけれども、いまから五年前でございますか、船田先生中曾根康弘先生、私が党の科学特別部会長でございますか、中曾根先生船田先生はそれぞれ国防関係等の党の部会長調査会長か、責任者であったと思います。この三人が責任者になりまして調印をしたのでございますけれども、あの調印をする際には、お話しのように確かに三点の留保条件批准に際しては満足してからということで、留保条件がございました。その後、党で核防条約促進小委員会でございますか、というものができまして、私ずっと委員長を務めさせていただいておったわけでございますが、いろいろ多方面の検討を党としても総合的に進めたわけでございますけれども、なかんずく大変急を要しますのは査察の問題でございまして、なぜあの当時、五年前に急いでと申しますか、調印したかと申しますと、その状況はいまも実は変わっていないのでありまして、あの当時調印いたしましたのは、わが国は何もこの核防条約批准するとせずとにかかわらず、二国間の相互条約が五ヵ国間にございまして、その相互条約に基づきまして核燃料あるいは施設等提供を受けているのでございますけれども、それに対する平和利用の担保といたしまして国連機関査察を受けることになっております。もしわが国平和利用に反するような場合には即座に自後の供給をとめるのみならず、いままで提供したものを全部引き揚げるという状況になっておりまして、現実にそれに基づきまして査察をどんどん実は受けております。もう十数年になりますけれども査察を受けておりまして、ところがこの査察自体が大変実は過酷なものでありまして、秘密保持に対しても何らギャランティーはない、あるいは査察対象査察方法等も無制限といったような状況で、これではわが国原子力平和利用自体が将来危ぶまれるという非常に関係者からの強い要望もございまして、幸い当時、国連ウィーン原子力機関調印を済ませますとそれに査察問題、保障措置に対して立案に参加できるということでございましたので、これに調印をいたしまして、さっき申しました三つの条件を付しながらこれに調印をいたしまして、そして自後数年間、保障措置改善方交渉に入ったわけでございます。  私が一昨年の暮れ長官を拝命いたしましてすぐいたしましたのは、第五次だと思いましたが、最終的な保障措置のミッションを送りまして、御承知のように大変問題になっておりました保障措置平等性、あるいは簡素化あるいは機密保持等に関してのわが国の希望が、いわばユーラトム並みということでほとんど満足すべき状況に達しましたので、一応保障措置協定といたしましてはこれでよかろうという状況になってきましたので、できますれば今後早く批准を済ませていただいて、そして新しい査察保障措置を受けたいということ、もう一つは、この条約批准いたしませんと、この前昨年のレビュー会議でも見られますように、燃料供給その他が大変不安定になる状況が目に見えてまいりまして、特にインド平和爆発を契機といたしまして、いわば未批准国に対する差別的な規制の強化と申しますかが国際的に進んでまいる傾向にもなってまいりましたので、わが国核燃料等はない国でございますから、これを将来とも確保する意味におきましては、どうしても批准をこの際急いで、急いでと申しますか、もう時期が来ておりますから、ということを私どもは強く平和利用のサイドから実は主張したわけでございます。  国際信用の問題がどうだとかあるいはさっきの御指摘ございました核軍縮あるいは安全保障問題等に関しましては、これは私どものただいま長官としての持っている分野から発言すべき問題でもなかろうと思いますので、それは割愛いたしますが、私どもが特にこの問題の批准をぜひひとつしていただきたいと念願するのはそういう理由が主でございます。
  11. 中山正暉

    中山(正)委員 時間がありませんので簡潔にあとはお尋ねを申し上げたいと思いますが、インドは、フランスという核拡散防止条約批准していない国とうまくやっているということでございます。私は、濃縮ウラン自給体制というものが確立されておかないと、この条約批准したりしますと、濃縮ウラン供給する体制の中で政治的な圧力がかかってくるような日が予想されるのではないか。私はチュメニ油田開発なんてそういう意味で、実はこれはソ連のウラジオストクのソ連海軍を支援するものだから、日本開発協力をするといずれは日本が大変な目に遭うという意見の持ち主でございますが、そういう意味で、これはどちらの勢力からも、日本がこれから世界の二大思想の真ん中で平和のために活躍をする意味でも、どちらにも生殺与奪の権を握られたくないというのが私の感覚でございます。その意味で、この核拡散防止条約批准しますと、もう一つは、これからの日本の有望な知識集約型産業の典型であります原子力産業の中身を全部知られてうまみがなくなるんじゃないかということと、それからあとは、ユーラトムと同じだ同じだという話がございますが、ユーラトムは、同じような国が欧州で地続きで国境を一つ越せば隣の国へ行ける、昼飯と晩飯が違う国で食えるというような関係の国の組織、機構と、最恵国待遇条項なんというのもあるそうでございますが、果たして同じようにいくんだろうか。ユーラトム査察技術研究費を見てみますと二百億出ておりますが、日本は七億しか出しておりませんです。専門員でも向こうは十五人、こっちは一人しかおりません。そういう内部事情が大分違う。  いろいろとお伺いをいたしましたが、いまの自給体制の問題、それから日本の将来の産業構造の中での有望産業がこれでだめになるのではないかということと、それからユーラトムとの違い、それからこの間新聞でちょっと見たのですが、秘密協定があるというような話が新聞の記事になっております。長官の御所管の問題ではないかもわかりません。しかし、御関連の三大臣の御所管の問題でございますので、大臣からもその問題につきまして以上四点お伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  12. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 お答え申し上げます。  まず、御指摘のこの条約に加盟いたしますと、日本知識集約産業の成長がとまるんじゃないか、障害をなしてくるんじゃないかという御議論  でございますけれども、その立論の根拠は、この条約に加盟いたしますと産業機密保持できないんじゃないかという趣旨かと思います。これは先ほども申し上げましたように、現在のままの状況では、いわゆる二国間協定だけで国連査察を受けているこの査察でいきますと、そういう憂えがございます。しかし逆に、この核防条約に加盟いたしまして、そして私先ほど申しました新しい保障措置協定によりますと、機密保持が厳重にできるようになってございますので、かえって産業の育成のためには大変貢献するのだというふうに、その意味から申しましても言えると思います。  それからウラン自給関係核燃料自給関係という意味だと思いますが、少なくとも、大ざっぱに申しまして、今後十ヵ年間に必要な天然ウランあるいは濃縮ウラン等は手当てが全部済んでございます。それ以後の問題に関しましても、ただいまいろいろ諸外国との協力下におきまして、開発輸入等進めてございますので、この問題も私は解決するものと存じます。しかし、先ほど申しましたように、やはりそのためにはこの核防条約に加盟いたしまして、各国が安心して加盟国として御援助願えるようにするのがわが国といたしましても一番万全でございますので、そういたしたいものだと存じます。  それから、ユーラトムとの相違関係は、政府委員の方から……。  秘密協定の方は外務省の方から御説明申し上げます。
  13. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 お答えいたします。  ユーラトムわが国との差でよく言われますのは、一つは、ユーラトムの場合には独立の査察の組織を持っている、日本は独立の査察の組織を持っておらぬではないか。それから人員の数が、ユーラトムの場合、御指摘のように約五十名実はおりますが、日本の場合には数名ではないか。それからユーラトムの場合には、その関係の技術研究開発に非常に多額の投資を行っている、日本はそれに対して非常に少ない、大丈夫かと、こういう御趣旨かと思います。  実は、私どもは、御指摘のように、ユーラトムと同じような査察のための組織というものは持っておりません。ユーラトムは、御案内のように一九五八年以来、域内の自主的な査察と申しますか、実施しておったわけでございます。日本の場合には、日本の自主的な査察ではございませんで、IAEA、国際原子力機関から一方的に査察を受けるという体制でございます。したがいまして、これはユーラトムと同じような国内の査察体制をつくり上げることになります。つくり上げることにつきましては、国際原子力機関の方でも、日本がそれをつくり得るということは十分に認めてございまして、法令の改正を含めまして、現在そのための体制を整備中でございます。そういう組織はできます。  それから、人間の関係でございますが、人間の質の問題をまず申し上げますと、たとえばユーラトムで大学を出ております査察関係従事者は、あれだけたくさんの施設を持ってございますが、二十五、六名と聞いております。日本の場合には、現在十二名で査察関係業務を行っておりますが、これは全部大学を出ておる。のみならず、前回の予算等の経緯の中で、もしこの条約の承認が得られれば、必要な人間の増強をすることも了解をいただいております。さらに、日本の場合には、国際原子力機関査察業務に従事した人間が現に科学技術庁におるわけでございます。国際原子力機関査察に当たっておった人間でございます。そういう人間もおりますので、レベルが非常に高い。したがいまして、必要な人間が確保できれば、ユーラトムと全く遜色のない体制はでき上がるというふうに見てございます。  それから、査察の研究開発に二百億と言われてございますけれども、これはいわゆる査察技術のみではございませんで、その他のいろいろな技術を含めて、保障措置関連でございますけれども、技術を含めまして非常に多額の経費を投入しているように聞いております。日本の場合、なるほど御指摘のように金額は多くございませんが、査察の技術そのものは非常にむずかしい技術ではございません。日本でも査察だけではなくて、いわゆる計量管理制度全体を通じますと、実は相当のお金が使われているわけでございます。したがいまして、査察の技術そのものに限定いたしますと、私どもユーラトムに劣らない技術レベルにあると、これは実はいろんな実際の機械等を挙げますとわかるのでございますけれども、そういうふうに自信を持って申し上げられるかと思います。
  14. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 原子力資材の輸出に関する秘密協定があるのではないかという新聞報道についてのお尋ねでございます。  私どもは、まず第一に、協定あるいは条約といったものはございませんということを申し上げたいのでございます。御承知のように、NPTの再検討会議後、核拡散防止については国際協力が進んでまいったのでございますが、原子力資材の輸出の可能な国が集まりまして、輸出について現行法令のもとでどのようなことができるか、この措置について相互に通報し合う、このことを協議したわけでございます。その内容を言っておるのではないかと思うのでございますが、それは現行法令のもとでの措置でございますので、条約あるいは協定でないことは、もう御案内のとおりでございます。  第二に、秘密であるかどうかという問題でございますが、この措置につきましては、まだ討議の途中でございますし、これからまだ関係国もふえそうな傾向にもございますので、その間しばらく公表しないでおこうという約束をいたした、これが秘密と伝えられたのであろうと思います。
  15. 中山正暉

    中山(正)委員 ありがとうございました。
  16. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これにて中山正暉君の質疑は終わりました。  続いて河上民雄君。
  17. 河上民雄

    ○河上委員 核防条約の審議にきょうから入るわけでございますが、きょうは科学技術庁長官がお見えになっておりますので、まず、原子力資材の輸出の問題につきまして、少しく伺いたいと思います。  非常に基本的なことですけれども原子力機器の輸出をわが国が現在行っておりますか。
  18. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 いろいろな細かい機器等を含めまして約四十億円台の輸出が行われております。
  19. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、いまも問題になりましたけれども、昨年十月二十日、ロンドンで開かれました核物質輸入会議の問題について伺いたいと思うのでありますが、これに参加した国はどことどこでございますか。
  20. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいま輸入会議とおっしゃいましたけれども、恐らく輸出国会議のことだろうと存じます。  これに参加いたしました国々は、実は申し上げたいのでございますけれども、それに出ました国々のそれぞれの国内事情もございまして、どこどこがその会議に参加したかということは、お互いに外部には出さないようにいたしましょうという申し合わせをやったのでございます。でございますので、まことに申しわけございませんけれども、参加国の名前はちょっと申し上げかねる次第でございます。
  21. 河上民雄

    ○河上委員 すでにこれ新聞にちゃんと名前が出ているのですけれども、それはここで申し上げてもいいと思いますが、日、米、英、仏、独、カナダ、ソ連と、こうなっておりますが、先進七ヵ国であることは間違いないですね。
  22. 大川美雄

    ○大川政府委員 わが国がそれに参加いたしましたことは、私どもとしても認めざるを得ないと思いますけれども、そのほかの国々については申し上げかねます。
  23. 河上民雄

    ○河上委員 日本がこれに参加した理由というのはどういうところにあるのですか。つまり、原子力機器輸出国として参加したのか。
  24. 大川美雄

    ○大川政府委員 わが国は、先ほど科学技術庁の審議官から御説明がございましたとおり、この種の機材機器の輸出についてはまだ余り実績はございません。むしろ今後そういう輸出を行っていくであろういわば潜在輸出国というような立場から、国際協力の観点も踏まえてこれに参加したわけでございます。
  25. 河上民雄

    ○河上委員 科学技術庁長官伺いますが、日本は、原子力機器の製造技術についてはもう国際水準に達しているというふうに判断しておられますか。
  26. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 全部が達しているというわけにはまだまいらぬと思いますけれども、物によりましては国際的な水準に十分達しております。
  27. 河上民雄

    ○河上委員 ソ連からわが国原子力産業界に対して、原子炉とその周辺機器十基分の輸入引き合いがあったというように伝えられておりますけれども、これは事実でございましょうか。
  28. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 事実でございまして、わが国の主要メーカーの皆さんが一団となりまして、ただいまソ連交渉に行っておると思います。
  29. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、日本の技術の中にはアメリカの技術のノーハウなどはかなり入っていると思うのですけれども、そのような関係があっても米国がその輸出を認めるというようにお考えでいらっしゃいますか。
  30. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 詳しく商談内容を聞いている段階ではないのでございますが、私ども聞いておりますところでは、ソビエトの設計による発注と申しますか、そういう内容の機器製造になろうかと思うのでございます。そのように聞いておるわけでございます。したがいまして、アメリカから導入した技術による分が皆無ではないかもしれませんけれども、ノーハウそのもの、あるいは技術設計そのものはソビエトから参るものでございますので、それを受けて、それを実際にエンジニアリングでつくり上げるという技術は可能ではないかというふうに聞いております。
  31. 河上民雄

    ○河上委員 一般的には、ソ連原子力の技術というのはアメリカと並んで世界でも最高かと思うのですけれども、そのソ連が何ゆえに日本——これから将来伸びるかもしれない潜在輸出国ということでありますけれども、そういう日本に特にこのたび十基分の輸入の引き合いがあったという、その辺の理由をどういうふうにお考えになっておられますか。
  32. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 実は、これも聞いておるところでございますが、ソビエトは日本だけではございませんで、ほかにも話を出しているということも聞いておりますが、実は一昨年来ソビエトとの間では原子力の交流と申しますか、相互の視察等がございまして、一昨年の末にソビエトのモロホフという国家原子力利用委員会の第一副議長というのが日本に参ってきておりますけれども、そのときに、日本原子力施設あるいは日本原子力技術について、言うならばかなり感心して帰ったというのが一つのきっかけではなかろうかというようなことを産業界ではよく申しておるようでございます。
  33. 河上民雄

    ○河上委員 これの外交的な影響の側面につきましてはまた後の機会にお尋ねしたいと思いますけれども、少し先ほどの核物質輸出国会議の問題について、外務省側ではこれは他の出席国との関係で公表できないという部分が非常に多いようですが、たとえばこの中で協議された内容などについては発表できますか。
  34. 大川美雄

    ○大川政府委員 協議されました内容につきましては、まずその趣旨と申しますか、目的から御説明申し上げれば一番おわかりいただけるんではないかと思いますけれども、要するに核の拡散を防止するための細かい技術的な細目を話し合った、こういうふうに表現すれば一番いいんではないかと思います。  具体的には、たとえば核原料あるいは核関係の施設、機材を輸出いたしますときに、買ってくれます相手国が必ず国際原子力機関保障措置を受けてくれることを約束することでありますとか、あるいは平和目的以外の、たとえば軍事利用には使いませんというような約束を取りつけることでありますとか、さらには、たとえば買いました国がさらに第三国に再輸出するような場合に、同じような条件を第三国に要求した上で再輸出を行う約束を取りつけるとか、さらには、このごろハイジャックとかテロリストの活動が非常に世間を騒がすようになっておりますけれども、こういった品物を売ります際に、輸送の途中あるいは先方へ着きましてからの使用中あるいは貯蔵中の核物質については、盗難防護の措置を十分講ずることを約束させるとか、そういったようなことをお互いに十分実施していこうではないか、こういったような相談を行ったわけでございます。
  35. 河上民雄

    ○河上委員 新聞などに報道せられるところでは、再処理センターの核物質の廃棄物の再処理の問題についても協議されたというように聞いておるのですけれども、当然そういう問題も入っておったわけですか。
  36. 大塚博比古

    ○大塚説明員 大塚でございます。お答え申し上げます。  いま先生が御指摘になりましたいわゆる地域核燃料センターと言われております構想は、核防条約レビュー会議、昨年の五月にジュネーブで行われましたレビュー会議でございますが、その際にも問題になりまして、これは現在国際原子力機関の中でフィージビリティースタディーと申しますか、実行可能性についての研究、討議が行われているところでございます。したがいまして、いまの国連局長からお話がありました、いわゆる輸出国会議の間で当然そういう話は出たことは出ましたですけれども、しかしそれについての何らかの結論とか、そういうことがあったわけではございません。ただいま申し上げましたとおり、この構想はただいま国際原子力機関を中心といたしまして検討中でございます。
  37. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、昨年、英国に再処理センターをつくるという話が報道せられました。この点につきましては科学技術庁としては十分承知しておられると思うのですけれども日本とイギリスとドイツ、いわば多国籍というか、そういう構想に対していまのところ賛成しておられるのか。それともただそういう話があったということですか。その辺のところをお知らせいただきたいと思います。
  38. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 BNFLという英国の会社との再処理契約は、ただいま進んでおります。もしその問題の御質問でございますれば、そのとおりでございますが、御指摘の点はそうじゃない別の問題だということであれば、私承知してございません。
  39. 河上民雄

    ○河上委員 そのBNFLの問題がそれでありますけれども、それはいまの日本におけるいろいろな平和利用核燃料の廃棄物の処理をする場所は日本にはない、したがって、外国でやるという方針で進まれるわけでございますか。
  40. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いま動力燃料事業団で進めております研究、試験は、まだ試運転の段階でございまして、来年の春以降になります。これに引き続きまして第二再処理の工場を建設する予定でございまして、数年前、原子力委員会で決めましたのでは、これは民間の施設にしたいという方針でございましたが、現在の情勢では民間だけでこの大問題が果たして処理できるかどうかという点が非常に危ぶまれもし、なかなかむずかしい問題だと思いますので、ただいま第二処理工場をどうしようかということを検討中でございます。ただ、それがいわば予定どおり進んでないからその方は断念して、そして英国等他力本願に全部いくんじゃないかという意味では毛頭ないのでありまして、第二処理工場あるいはさっきお話ございました地域的な国際的な処理工場等は、今後ともできるだけ検討も進め、できるものは促進してまいりたいと思っています。  それで英国の問題は、それまでのいわば中間的な措置とお考えくだされば結構だと存じますが、ただいまの段階では新聞情報だけで非常に恐縮でございますけれども、賛成派、反対派は英国内にはありますが、その賛成派の方の主力はむしろ労組関係の方が歓迎しておりまして、反対しておる向きの方は、日本はまだ核防条約批准してないじゃないか、したがってプルトニウムをつくってあげるのはおかしいじゃないかという、核防条約批准日本がまだしてないということが一つ理由——そればかりではないようでございますけれども理由にもなっておるようでございます。しかし、いずれにいたしましても、もう日本との契約もほぼ妥結に近づいてございますので、実質的にするものと考えております。
  41. 河上民雄

    ○河上委員 それは、新聞によりますと一千億円ですか、日本の負担する額といいますのはどのくらいになるのか。
  42. 山野正登

    ○山野政府委員 本件につきましては、ただいま産業界におきましてBNFLと交渉中でございますので、私ども若干の情報は説明を受けておりますけれども、商議途中でございますから、公開の席での御説明というのは御遠慮申し上げたいと思いますので、御了承をお願いいたします。
  43. 河上民雄

    ○河上委員 いまイギリスの会社と交渉しているのは、日本側ではどういうところですか。
  44. 山野正登

    ○山野政府委員 国内組織としましては各電力会社が協議しながら進めておりますが、実際の交渉の窓口といたしましては、現在の時点では濃縮・再処理準備会という組織がございまして、そこが交渉に当たっております。
  45. 河上民雄

    ○河上委員 では、大臣に重ねてお伺いいたしますけれども平和利用の問題につきましては、核拡散防止条約の精神から言って、これが輸出の場合、軍事目的に転用されないようにという、そういう一つの保証の措置が必要であるというのと同時に、国内においても同様の措置が必要である、こういうことが一つ言えると思うのでありますが、同時に安全の問題というのがあるわけでして、そういう点から言いますと、核燃料廃棄物の再処理問題というのは非常に重要だと思うのであります。つくる方ばかり一生懸命やっても、あとの再処理の方が、いまのお話ですと、何か全体の計画の中では極端に立ちおくれているような気がいたします。  そこで重ねてもう一度伺いますが、再処理工場について、いま準備している国内的な努力の計画と、それからそれができるまでの中間措置として、英国と、あるいは日英独で英国に工場をつくりここでやってもらうという話と、そのほかに何か将来考えていることがおありになるかどうか。特に報ぜられるところによりますと、原子力機器輸出と先進国の責任という立場から、アメリカでは北東アジア、中東、南米の三ヵ所に多国籍の再処理センターを設けるという構想に非常に熱意を持っているようなんでありますが、これに対して日本としてはどのように対応するつもりか。いま大臣が言われました構想の中で、これがどういうふうに位置づけられるのか、北東アジアという場合に具体的にはどこの国になるとお考えになっておられるのか、そういう点もひとつ伺いたいと思うのです。大体日本か韓国かどっちかしか考えられないわけですけれども、その点についてどういうふうにお考えになるかを伺いたいと思います。
  46. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 前段の使用済み燃料の再処理あるいは特に再処理施設から出てまいります高レベルの廃棄物の処理等は、おっしゃるとおり、現下の原子力行政、あるいは今後しばらくの間、これが一番中心課題になると思います。天然ウランあるいは濃縮装置等もございますが、なかんづく燃料サイクルの中で一番重要な問題点になっておりますのは再処理と高レベルの廃棄物の処理でございまして、この両方とも先ほど申しましたように、ただいま原子力委員会として、全般の燃料サイクルのいわば再検討のみならず、特にこの二つに当面の検討の焦点をしぼりまして、通産省あるいは学界あるいは財界と申しますか、技術者皆様に御参集いただいて、ただいま非常な集中的な努力を払いまして、進めつつございます。  それから二段目のアメリカの計画は、私としてはつまびらかでございません。もしそれが先ほどお話ございました核防条約のレビューの際に出た地域的な、リージョナルなと申しますか、極東なら極東地域における共同した再処理工場という意味でございますれば、私は大変結構なことだと思います。もしそうでないアメリカ独自の計画だというのでありますと、私実は承知してございません。外務省の方ででも情報がございますれば、かわって御説明申し上げたいと思います。
  47. 河上民雄

    ○河上委員 もう時間が参りましたので私終りますが、重ねてお尋ねいたしますけれどもアメリカの案が、多国籍で北東アジアに一つ設けたらどうかということ、漠然たることかもしれませんけれども、それに対して日本がその場に当たった場合、それに協力するというお考えかどうかということだけ伺って、私終わりたいと思います。
  48. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 技術的あるいは資本的といったような面では大変結構で、そういう際にはわが国としてもできるだけ参加した方がよろしいと思いますが、ロケーション、立地地点を日本の少なくとも国内でという御議論でありますと、これは御承知のように大変むずかしい状況でございますので、いまおっしゃる意味がそういう意味なんだということでありますと、これはにわかに賛成でございますと言うわけにはまいりません。慎重に対処しなければいかぬ問題と思います。
  49. 河上民雄

    ○河上委員 きょうのところはこれで終わります。
  50. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 河上君の質疑は終わりました。  次は、正森成二君。
  51. 正森成二

    ○正森委員 核防条約査察協定というのはユーラトム並みだと言われておりますが、実質的にわが国がどれくらい査察についての技術能力を持っておるか、あるいはもっと広く原子力関係について技術を持っておるかということが実質的平等を確保する上で非常に重要だと思うのですが、科学技術庁長官もそう思われますか。
  52. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 そのとおりだと思います。
  53. 正森成二

    ○正森委員 そこで、それに関係して若干伺いたいと思いますが、わが国原子力平和利用に非常に力を入れておりまして、原子力発電にも並み並みならぬ努力をされておるようでございますが、現在商業用に動いておる原子炉ですね、これが何基、何万ワット、試運転中のものが何基、何万ワットであるか、それをまずお答え願いたいと思います。
  54. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 営業運転中のものが十基でございまして、五百二十七万八千キロワットでございます。三月五日現在で運転中のものは七基、三百六十五万二千キロワット、点検中で操業を休んでおるものが三基、百六十二万六千キロワットでございます。
  55. 正森成二

    ○正森委員 昨年の六月現在では、営業用のものがまだ十基になりませんで八基でございましたね。そのときには動いておりましたのは三基で、残っておる五基は点検中だということになっておったと思います。それが本年の三月では、十基のうち七基ともかく動いておるということになっておるんだと思うのです。  そこで伺いたいと思うのですが、科技庁長官は、昨年の九月四日に島根県の鹿島町にある中国電力島根原子力発電所完工式に出席をなさったことがあると思うのですね。そのときに談話を発表されたことがあると思いますが、御記憶でございますか。
  56. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 談話は発表したことはございませんが、長い祝辞は述べました。同時に記者会見をいたしました。
  57. 正森成二

    ○正森委員 その記者会見の中で非常に注目すべき意見を述べておられますが、大分前のことでございますから、失礼ですが私が報道に基づいてそれを申しますので、それが正しいかどうかお答えを願いたいと思います。そのときに「佐々木長官は「政府は当初、昭和六十年までに全国で六千万キロワットの原発操業計画をたてていたが、今は四千九百万キロワットまで計画をダウンした。それでも激しい反対運動があるので、年間五、六基つくるのも苦しい。こう言って反対運動を批判なさった上で、全国各地で問題になっている原発の故障や事故について触れられて、「「何千本もある燃料棒にピンホールができ、放射能が漏れてもすぐアラームが鳴ってチェックできるのだから、これは原発が安全な証拠。最近各地の原発故障が大きく取り上げられ、反対運動が活発化している。私はこの風潮に疑問を持ち、原発のある英国やフランスの日本大使館に向こうの動きを調べさせたところ、故障があっても新聞には一行ものらないという。日本だけで問題になっているのはおかしい。こうしたことが将来の大事なエネルギー源である原発開発のブレーキになっている」」こういうぐあいに談話を発表されたそうであります。しかと相違ございませんか。
  58. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 もっと詳細に、詳しく話したつもりですけれども、概略を要約するとそういうことになると思います。間違いございません。
  59. 正森成二

    ○正森委員 まことに潔い御返事でございまして、そのとおり間違いがないということであります。  そこで伺いますが、「ピンホールができ、放射能が漏れてもすぐにアラームが鳴ってチェックできるのだから、これは原発が安全な証拠。」こういうことで、逆に安全な証拠だと言って胸を張っておられるわけでございますけれども、問題は、しかくそういうぐあいに簡単に胸を張っていいものでしょうか。いまいろいろなところで事故が起こっておりますが、それがどのように重大なことを惹起するおそれがあるかどうか、科技庁長官として御理解なさっているのかどうか、非常に私としては寒心にたえないのです。いま一度御存念のほどを承りたいと思います。
  60. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 昨年、私就任いたしまして以来、通常国会では、各私の関係しております内閣あるいは予算あるいは科学技術、決算等で、もうこの問題のみに実は議論が集中いたしました。したがいまして、あるいは御承知かと存じますけれども、問題の焦点はどうも軽水炉でございます。それ以外はただいま問題になっておりません。軽水炉に関して非常に危険なものだ、安全性のないものだという御議論をなさっているその立論の中に、いわばもう少し砕いて話せば、それほど心配せぬでもいいじゃないかということを一緒くたにして、安全というものの解釈を一緒くたにしているために大変国民の皆さんが心配なさるのじゃないかということから、いろいろ考えてみますと、これはいわば第三者、原子炉以外の住民と申しますか第三者あるいは環境等を汚染するような重大事故と、それからそうじゃなくて、炉内に、いまもお話ございましたようなピンホールが一つできて放射能が出る、このこと自体は別に第三者に対して被害を与えるとか、環境を汚染するとか、そんなものじゃございません。何でもないことなんでございますけれども、それを放置してだんだんそういう事故が重なってまいりまして、大事故につながってはいけませんから、原子炉というものはそういうことのないように、あらゆる多重防護あるいは単独系統の防護をいたしまして、入念に、あるいは最後の場合でもよそに出ないようにというあらゆる操作をしているのが原子炉の特徴でございます。したがって、いわゆる事故と称する、私の言う意味の大事故というものにはつながらないようになっていますけれども、といって、小さい故障をネグるということは大変危険でございますから、そういう問題は他の産業と違いまして、すぐ発見できる、早期発見できるようになっています。だからそういう場合にはすぐとめて、それを修理をして安全にして、それからまた運転しなさいよということで、世界の各国の中には、国によってはそういう小さい故障等は余り気にかけないで運転するところもあるやに承知しますし、またそういう問題は、さっきお話ございましたように、私も外国のを調べましたが、ほとんど記事にはなりません。ところが日本では、その小さい故障が起きると、私どもは安全第一と考えますから、それをとめる。したがって、操業度が低下するとかあるいは採算に影響があっても、それよりは安全がファーストだというのでとめます。あるいは米国でこういう点が大変問題になっているということであれば、こちらの方はまだ問題になっておらなくとも、同じ炉でございますから、その炉をとめなさいということでとめて点検をさせます。非常に丹念な操作をしているわけでございまして、私は新聞で申し上げましたのは、そういう小さいたとえばピンホールがどうとかいったような問題は、外国の新聞等では余り取り上げてないようですよ。しかし日本では、たとえば九州の玄海のようにあれは大変な騒ぎでございましたね。もう御承知だと思いますけれども、それはえらい騒ぎです。しかし、実際は別にどうということなしに修理をして、ただいま大変好成績で操業しております。ですから、私はやはり大きい事故とそういう小さい故障とをある程度分けて、そうして御理解をいただいた方がいいんじゃないか。大事故そのものに対しては、アメリカのAC、かつての原子力委員会がもう数年アメリカの科学者を動員して、膨大な費用を使っておととしの秋結論を出し、それを各国にまた配付して各国の批判を求めて、去年の秋に最終結論を出したわけですね。それによりますと、ラスムッセン報告で御承知のとおりと思いますが、そういう大事故というものは、原子力というものは危ないものだ、周辺に大変だという、そういう事故というものは起こり得ないのです。非常に、確率からいきますと何億分の一、これほど確率の低いものはないという結論を実は出しております。それと小さい事故の問題と一緒にして議論すると、日本では一緒にして議論している向きが多うございますから、それと一緒にして議論するのはおかしいじゃありませんかということを話したのを、新聞ではそういうふうに書かれたと思っております。
  61. 正森成二

    ○正森委員 一般の市民に大きな放射能被害が生ずるような、そんな大事故を起こされてはこれは大変でありまして、そうなる前に、未然に防がなければならないということをわれわれは希望しているわけですね。いま大臣は、盛んにピンホール、小さな穴ですが、一つや二つというように軽くおっしゃるのですが、報道をされているところではそれほど簡単なことではないようですね。外務委員会でございますから、あるいは科技特で十分審議されておって重複するかもしれませんが、その点は平にお許し願いたいと思うのですが、報道によると、たとえば関電の美浜一号炉の故障は非常に深刻なのではございませんでしょうか。たとえば、原子炉内で発生した高熱で高温の蒸気をつくって発電タービンに送る、いわば心臓部だと言われている蒸気発生器が、この美浜一号炉では完全に欠陥品であるということがわかって、いずれは取りかえなければならぬ、こう言われているのではないでしょうか。蒸気発生器というのは、直径二センチぐらいの細かいパイプ八千八百五十二本の集合体だそうですが、これにピンホールと呼ばれる小さな穴があいておる。発電所周辺に放射能漏れを犯すトラブルがあったということで、よくよく調べてみると、この八千八百五十二本のパイプの集合体の二〇%に当たる千七百七十本近いパイプが減肉現象というのを起こして、やがては全部に穴があくということになって、当座のところはパイプ全部に栓を詰める応急修理をしたけれども、そっくり新品にかえなければならない、こういうことが報道されているんでしょう。違いますか。それで、同じくわれわれが知っておるところによりますと、これがとんでもない工事で、これは発電所の外から厚さ十センチ以上もある鋼鉄製の大きなコンテナを焼き切って、それからその中にさらに一・五メートル——一・五メートルというのはこんなんですからね。そういう重コンクリートをこわさないと修理ができない。これは世界各国でまだ例を見ない大工事であって、特に重いコンクリートは全部汚染されておるということで、作業員が放射線被曝をすることも、いわばその可能性が非常に高いと言われているぐらいの大変な工事を行わなければならないと言われているんですね。これは私、外務ですから知識が浅薄かもしれません。ですからピンホールで一つか二つ穴があいておるというようなそんな程度のものでは、この炉の場合はないんじゃないかというように思いますが、いかがですか。
  62. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 美浜一号炉の現状はそのとおりでございます。ただ、私申し上げましたのは、ちょっとした放射線漏れがあってもすぐ原子炉とめます。そして原因の調査に入って、そして修理できるものは修理します。いまおっしゃったのは、修理をしようと思っていろいろ原因を調べたところが、予想外に病根が深かったということでございますから、そのもの自体はほうっておいたんであればこれは大変だったでしょうけれども、すぐとめて修理に入った。その修理の中には簡単にできるものもあるし、いまおっしゃったように非常に重いものもある。アメリカにもそういう例はないことないのですけれども、しかしおっしゃるようにこの修理そのものは、要すれば、詳しくは担当官の方から御説明させますけれども、大変大きい修理になるということは事実でございます。
  63. 正森成二

    ○正森委員 いま長官からるる御説明がありましたけれども、結局おっしゃるところは、大きな事故だったけれどもそれを発見できたということを非常に重視されるんですね。しかし人間というのは、たとえば自分の体でも本来健康であることを望むので、いろいろ調べてみたらがんであることがわかって、早い間に手術したから、治ったからいいじゃないかと言っても、本来健康であるということが人間にとって一番いいことだ。だから原子力の技術でも、事故というか欠陥が発見できるというのはもちろん大切ですけれども、なるべく欠陥がないようなそういう発電所なりあるいは施設でなければならない、こう思うんですね。これは一つやそこらじゃないんですね。  同じく私ども承知しておりますところによりますと、同じ関電の美浜二号炉では、ウラン燃料棒が曲がるという日本で初めてのトラブルが起こったのではありませんか。曲がった燃料棒というのは、他の燃料棒と接触するとオーバーヒートして、炉芯溶解という最悪の事態に進むおそれがあるので、高価な燃料を使い切るためにそっくり交換してしまう。燃料棒が曲がるなんというようなことはこれは考えられないことですね。そういうことが起こっているのではありませんか。あるいはこれが誤報であれば、その点について御説明願いたいと思います。
  64. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答えいたします。  美浜二号炉の燃料体の一部、燃料棒の間隙が接近する現象、ボーイングという現象でございますが、それが一部起こったのは事実でございます。この現象につきましては諸外国でも起こっておりまして、日本だけの現象ではございません。諸外国の場合には多少の燃料棒の曲がりが起こりましても安全上支障がないという判断をいたしまして、引き続き運転を継続するのが通常でございますが、わが国の場合は特に慎重を期しまして、その段階で炉をとめまして燃料を交換するということをやっております。  以上でございます。
  65. 正森成二

    ○正森委員 しかし、日本で初の事故であるということは間違いございませんね。諸外国でも起こっているとおっしゃいましたが、私が言ったのは、日本で初めてのこれは事故でしょう。
  66. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 このボーイング現象が世界各国、幾つか例がありますが、日本で初めて起こったかどうか、私現在資料を持っておりませんが、私の現在の理解では、米国でそのような例があって、それが米国での解析がございまして、そういう曲がりの現象があっても大事故に至らない、こういう解析が米国で行われたということがございます。最初に美浜の二号炉のボーイング現象が起こりましたときに、たしかその資料について研究をいたした記憶がございます。これは二年ほど前でございますが、その記憶からいたしますと、日本が最初ではなかったと現在承知いたしております。
  67. 正森成二

    ○正森委員 あなた何というお名前か知りませんけれども、私の質問日本語を正確に聞いてもらわないとむだになっちゃうんですね。私は「日本で初めての事故でしょう」と言うたのに、これが「日本が初めての事故でしょう」と。「で」と「が」でもうんと違うんですからね。だから、そんなトンチンカンな聞き方をして長々と答えてもらっては、時間のむだになるし、かなわぬですね。あなた、何という名前ですか。
  68. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 伊原原子力安全局長はいまの質問に正確に答えてください。
  69. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答えいたします。  日本で美浜の二号炉の燃料のボーイングが初めてであるかどうかという御質問につきましては、正確な資料は現在手持ちがございませんが、多分初めてであったと存じます。
  70. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いたいと思いますが、現在日本が輸入しているウランというのは、アメリカで製錬されて濃縮された低濃縮ウランだと思うのですね。で、これが日本原子力燃料として使われますが、ここへ入るウランというのは大体三%から四%ぐらいの純度のウラン235及びウラン238だと思うのですが、それが燃焼して減ってまいります。そして、結局分裂性のプルトニウム239と分裂しないプルトニウム240、それからウラン235というのがやはりこの棒の中に残っているということになると思うのですが、それをそのまま置いておかずに、使い終わった燃料からプルトニウム239と240及びウラン235を取り出す、これが再処理工場だというように理解しておりますが、私は専門ではございませんので、そういうように理解してよろしゅうございますかどうか、お答え願います。
  71. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 そのとおりでございます。
  72. 正森成二

    ○正森委員 その場合に、ウラン239の純度が一番高いのがほうり込んでから大体一ヵ月目ぐらいだ。だから、何ヵ月日に燃料の入れかえをやるのかということをチェックするということがプルトニウム239が核兵器に転用されるかどうかという点で非常に重要だと伺っておりますが、それは間違いございませんか。
  73. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 これは私ども平和利用主体でございますので、必ずしも軍事利用について詳しいわけではございませんが、先生の御質問の趣旨は、原爆の原料としてのプルトニウムというものはどういう組成のものが一番使われておるかというふうな御趣旨かと思われます。これは、御指摘のように、原子炉内での燃焼が次第に進んでまいりますと、プルトニウム239のほかに240、241、いろいろな同位元素がふえてまいりまして、その結果核分裂性でない同位元素がふえてまいる、そういう意味では質が低下する、こういうことになるわけでございます。そういう意味で、私ども承知いたしておりますところでは、非常に長く原子炉の中で燃焼された燃料から回収されるプルトニウムは、余り原爆の材料として適当じゃないというふうに承知いたしております。
  74. 正森成二

    ○正森委員 はなはだ慎重なお答えですけれども、余り深刻に考えてお答え願わなくてもいいと思うのです、まくら言葉として聞いているだけですから。  そこで、その再処理工場というのは東海村に建設ということになったと思うのですね。この東海村に動力炉・核燃料開発事業団というのが建設いたしました再処理工場が、ウランを実際に使って試験を始めたのは何月で、それから現在までの間に何回ぐらい事故が起こりましたか。
  75. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 動力炉・核燃料開発事業団の東海村におきます再処理施設につきましては、ウランテストを開始いたしましたのは昨年の九月でございます。それからいろいろのふぐあいが生じまして、私ども承知いたしておりますところでは、現在までに三十数件ふぐあいが発見されまして、それを手直しをいたしておるところでございます。
  76. 正森成二

    ○正森委員 その中には人身事故もございましたですね。
  77. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先生指摘の人身事故ということでございますが、作業員がウランの試料の分析をいたしておりますときに指先に硝酸ウランが付着いたしまして、これを除染するということがございました。この際の被曝の程度でございますが、国際放射線防護委員会の定めております基準のたしか三千分の一程度であったと思います。そういう意味では、私どもはこれは被曝事故とは考えておらないわけでございます。その除染も十分いたしておりますし、まあ数千分の一という程度でございますので、当人に身体障害が起こるようなことは全然ないわけでございます。
  78. 正森成二

    ○正森委員 昨年十一月に、二百リットルもの大量のウラン溶液漏れを起こしたと言われているプルトニウム蒸発管の故障というのがあったようでございますが、これはどういう理由に基づくものですか。一説によりますと、これはそもそも設計どおりに施工されていなかったのではないかという疑いもありますが、それについてどういうぐあいに科学技術庁は把握しておられますか。
  79. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 昨年の十一月に、プルトニウム蒸発管から溶液が漏洩したことがございます。この問題につきましては、フランジ部のバスケットの腐蝕とかボルトの緩みとかいろいろ考えられるわけでございますが、現在この再現テストを進めて修理を行う予定にいたしております。こういう三十数件ありましたのは、これは事故ではございませんで、試運転を現在いたしておりますその試運転の段階で、工場のいろいろのふぐあいを初期の段階で全部摘出をいたしまして、これを修理をいたしまして将来の本格運転に備える、こういう趣旨のものでございます。
  80. 正森成二

    ○正森委員 試運転だから事故ではない、ふぐあいだと、こういうことですね。日本語というのは非常に便利なものでありますが、普通、自動車だとかあるいは新幹線でも、試運転をしたときにそうそうふぐあいが多かったらこれは大変なことなんですね、まれにはふぐあいはあるでしょうけれども。  そこで、科学技術庁長官伺いたいと思います。私が御気分を害するのを承知しながらこういうように二つ三つ聞きましたのは、やはり日本原子力科学の技術というのが、それは諸外国もまだまだ研究しなければいかぬ欠陥を持っておるのでしょうけれども、十分なものとはなかなか言いがたい。これは、科学というのは日進月歩するものですからある意味では当然のことですけれども、そういうやはり欠陥を持っておると思うのですね。そうしますと、 ユーラトムの七ヵ国というのは、いろいろな意味で、やはり査察についても西ドイツとの対抗上非常に熟練しておりますし、日本側はそれに比べると今度初めてユーラトム並みになろうとしておるということで、その技術の実質性というものはなかなか努力が要ると思うのですね。今度の査察協定を見ましても、無条件に最恵国待遇というのを与えているのじゃなしに、やはり日本の技術の程度といいますか、そういうものに応じてというように、日本の技術がどこまで高まるかということを一つ条件にしているというようにとってとれないこともない個所があるというように私ども考えているわけなんです。それでいろいろ御質問をしたわけですが、皆さん方が去年の二月に交渉団を派遣されて、いわゆる今度日本に適用される協定をまとめられた。そのときに、お帰りになりまして、査察の合理化や簡素化が行われたということで、新聞の報道によりますと、四つぐらいこういう点がよくなったと言われておるように承知しておるのですが、あるいは私の読み間違いかもしれませんが、どういう点を査察がいままでよりも合理化され、簡素化されるというように今度の協定でとっておられるのか。時間が過ぎてまいりましたので、簡単で結構ですが、御答弁願います。
  81. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 お話しのように三点か四点、現在行われております査察に比べましてユーラトム並みを確保することによって、あるいはこの核防条約下の査察に移行することによって合理化される点がございます。  第一は、査察の主体性と申しますか、現在日本はもっぱら国際原子力機関査察に依拠しておるわけでございますが、改善後は日本の自主的な査察が主体になりまして、これにIAEAが立ち合う、あるいは日本査察を観察する形で国際原子力機関査察を行うという非常に大きな改善がございます。  それから第二に、現在の査察はいついかなる場所にも、いかなる資料にもアクセスできるということがたてまえでございます。それに対しまして、立ち入りの個所をあらかじめ協議によって制限することになります。特定の個所のみ立ち入りを認めるというふうに改善されます。  それから査察の量でございますが、これは現在のたてまえを申し上げますと、たてまえ上無制限でございます。無定量の査察協定上要求されれば受けなければなりません。それに対しまして改善後は、まず協定上最高限度が決まるほかに、実は補足取り決めというのが後でございますけれども、その中で実際上の上限、協定上の上限をさらに国内の制度等を勘案いたしまして減らしまして、それを実際上の上限にするというように、査察の枠組みと申しますか量と申しますか、それについてもはっきり決め得るといった点が主な改善点でございます。
  82. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう御説明を伺ったわけでございますけれども、たとえば自己査察、これが言われましたけれども、この自己査察というのは、私が承知しておるところでは協定の十五条の財政条項で、その全額を日本国民が負担するということにたしかなっておりますね。それで、通産省の予定で年間六千万キロワット、あるいは科技庁長官が談話で発表されたように、反対運動が多いから四千九百万キロワットだと、こういたしまして、現在の発電量に比べてほとんど、何倍ですかね、八倍ぐらいになりますか、そういうぐあいになりますと、この自己査察費用というのはどれぐらい必要になるとお考えになっておられますか。
  83. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 この査察費用というのは発電量とは必ずしも比例いたしておりません。発電規模のスケールアップということがございますほかに、査察技術の合理化、つまり機械、査察の各種機器を多用いたしますことと、計量管理のシステムを言うなればコンピューターに乗せまして、速やかにそのデータが検出できるというような制度を援用することによりまして、査察費用というのは大幅に減らし得ると考えております。私ども仮に試算いたしましても、六十年度でございますか、これはいま申し上げましたようないろいろな前提がございますので、正確な試算は実はできないと言えばできないのでございますけれども、よく一部で言われておりますように、百億といったような大台には決してなりませんで、私どもの現在の試算、現在の科学水準で試算いたしますと、やはり数億円のオーダーにとどまるのではなかろうかというような推算は一応してございます。
  84. 正森成二

    ○正森委員 数億円というと、現在の三億円程度と言われておりますが、それと余り大差がない、こういうように見込んでいるわけですか。
  85. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 五十一年度にもし——もしと申しますか、幸いに御承認が得られました場合に査察に移行するわけでございますが、その際は二億円弱でございます。したがいまして倍数から言いますと、数億円と申しましても、あるいは何倍かになるかもしれません。
  86. 正森成二

    ○正森委員 次に、あなたが御指摘になりました査察努力量の最大値を設定して、最大値は決まっておるけれども、実際はそこまで行かない、もう少し下の点を協議で決めるのだという意味のことをたしかおっしゃいましたが、それは無理もないので、協定で設定されている設定最大値というのは、技術的には余り大き過ぎて意味がない、そんなところまでとても調べる必要がないという数値であるから、だから協定でこれをもう少し下げるということになっておるのじゃないですか。  それからまた協定八十条によれば、再処理工場または五%以上の濃縮工場に対する査察努力量は一・五マン・イヤーといいますか、そういう最低値が決められているということで、必ずしもこの協定自体はあなた方の方で御自慢になるほどりっぱなものではなしに、協定のほかにさらに努力を重ねなければ、相当りっぱなものだと言えない程度のそういうものじゃないですか。
  87. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 御指摘のように保障措置協定の中では名目上の最大査察業務量、査察の量でございますが、かなり高いところに決めてございます。現実に日本が行われております査察に比較いたしますとかなり高いレベルでございます。しかしながらその上限値というのは、協定八十一条にございますけれども、八十一条のいろいろな条件によって実は実際決めてまいりまして、これまで幾つか保障措置協定の例がございますけれども、幾つかの例を参考にしてみますと、おおむねその協定上の上限の数値の三分の一程度のところで実際上の上限という形がとられているようでございます。
  88. 正森成二

    ○正森委員 なお私としてもう一言聞いておきたいのは、産業機密といいますか、その機密について機関がやはり施設にアクセスしていくわけですね。それから設計情報など検認することができるというようになっておりますが、それとわが国原子力技術上の秘密といいますかそういうものの保護との関係はどうなるでしょうか。この問題がありますためにユーラトム諸国というのは非常に神経を使ったと思うのです。わが国ではその点についてどういうぐあいに当局は考えておられますか。
  89. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 御指摘のとおりでございまして、日本における産業界もかつて非常に慎重であったわけでございます。そのために、むしろ先ほど御説明ございましたが、保障措置協定そのものをモデル化しまして合理化しよう。その中の一番大きな要点の一つは、秘密漏洩をいかにして防止するということにあったわけでございます。そういう意味で、現行の保障措置に比べまして現在予備交渉で合意を得ております協定の中では、協定の中で具体的に幾つかの方法を決めてございます。  たとえばよく言われますように、商業上の機密を有する区域を一つの物質収支区域、つまりブラックボックスと申しますか、出入りだけを見ればよろしいというようなブラックボックスの設定が可能であるとか、あるいは御指摘がございました設計情報の審査も、特に慎重を要するものについては域外持ち出しを認めないとかあるいは封じ込め監視といった、これは技術の問題でございますが、直接人間が目で見なければいけないという形ではなくて、そういう査察機器によってそれを確保するといった方法を多用するとか、さらに査察そのものにつきましても、先ほど申し上げましたように立ち入り個所の制限それから日本査察員の同行でございますね、必ず同行する。さらに査察員そのものの任命に対する拒否権も日本は持っておるわけでございます。  そういったように、現在と違いまして、協定上いろいろな仕組みを協定の中に組み上げまして、秘密を守るということについて大幅な改善が行われたと認識しておるわけでございます。それがあるがゆえに、日本産業界自身もぜひ促進してほしいという態度を見せておりますし、ユーラトムあるいはアメリカども——アメリカの技術は日本にかなり入ってございます。アメリカ産業企業等も文句を言わなくなっているというふうに私は了解しておるわけでございます。
  90. 正森成二

    ○正森委員 IAEAの憲章の第七条によりますと、IAEAの職員はその公約任務により知り得た企業秘密、または他の機密情報を漏らしてはならぬという趣旨の規定があるようでございますが、私の承知しておるところではこれは精神規定であって、それに違反したから刑事罰が加えられるとか、あるいはこれに違反したからIAEAがわが国に対して損害賠償の責任を負うとか、そういう具体的な民事、刑事上の義務はないのじゃないかというふうに理解しておるのですが、それとも刑事罰、民事罰について規定がございますか。
  91. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 国際機関の公務員でございますから、義務違反に対しましていわゆる刑事罰の適用はありません。もし機密が漏れる、そういうことはないと思いますが、漏れました場合の解決の方法といたしましては、まずIAEA、国際原子力機関との交渉に始まりまして理事会での審査、さらに仲裁裁判所の設置について協定上設けてございます。  それで、御指摘の職員でございますけれども、職員につきましては、IAEAの中で非常に厳しい職務管理規定がございまして、IAEAの方では仮に職員が退職いたしておりましても、その職員の行為によって生じた損害がございます。査察等によって損害が与えられました場合には、国際原子力機関として、その職員が退職しているか否かにかかわらず責任を持ちますということを言っております。これはIAEAの方に確認しておるわけでございます。もちろんIAEAそのものは当該職員に対して損害賠償と申しますか、求償するということもありますし、職員の義務違反に対しましては無給の停職とか降等、解雇というようなかなり厳しい措置がとられるようになってございます。ただ刑事罰があるかと言われますと、これはございません。
  92. 正森成二

    ○正森委員 いま御答弁になりましたのは、恐らく藤山オーストリア大使がIAEA事務局長のエクルンドに要請したのに対する返事の書簡などを指しておられるのだと思うのですね。しかしわれわれが田中金脈を追及いたしましたときも、現在ロッキード問題を追及しておりますときも、しばしばひっかかるのは、職務上の秘密だ、こういうことでお答えがないことですね。そして公務員は三年以下の懲役だとかなんとかいう規定があるのだからということで、なかなかガードがかたい。ところが、わが国の主権の一つの制限ですね、こういうぐあいにわが国のいろいろな施設に国際職員が、われわれが協定で合意したとはいえ、一定の範囲でどんどん接近してくるということは。それに対して秘密が漏れたという場合にはこれは処罰もできない。損害賠償も、仲裁裁定とかなんとか言いますが、非常に迂遠になっておるということは、これはやはりよくよく考えてみなければならないことだ、こういうように思うのですね。  しかしあなた方は、それらのことがあってもなおかつこの協定を含むNPTを批准するのがベターであると思っておられるだろう、こういうぐあいに思うのですが、時間が参りましたので、私は最後に科学技術庁長官に、われわれは条約あるいは協定に対する立場は立場として、国益が守られるように、そしてこの協定はいまから加入いたしますと最低二十年、場合によっては半永久的にわが国を拘束するということになりますので、その上でいろいろな適用においてわが国益を損わないように努力されることを希望して、その決意のほどをお伺いして、質問をこの点に関しては終わりたいと思います。
  93. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 御説を拝聴いたしまして、そういうふうに努力してまいりたいと思います。
  94. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 午後二時五十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後三時五十三分開議
  95. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河上民雄君。
  96. 河上民雄

    ○河上委員 きょうは、他の委員会の関係もあり、両大臣も非常に御出席の時間が制約されておるようでございますので、早速質疑に入らせていただきたいと思います。  まず両大臣にお尋ねいたしますけれども、NPTの批准と引きかえに非核三原則の修正といいますか、非核三原則を弾力的に運用するとか、あるいはこれを崩すとかいうような動きがいろいろ伝えられております。政府におかれてはそういうことは万々ないと思いますけれども、ひとつ、そういうことがないという意味において、政府のお考えを承りたいと思います。
  97. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非核三原則につきましては、しばしば総理大臣国会において言明をしておられ、また昨年も当委員会において私よりも申し上げたとおりでございまして、政府はこれを変更するという考えは持っておりません。また、御審議いただいております条約との関連におきましてそのことが必要になるというようなことは、もとより理論的にも事実上もないものというふうに考えております。
  98. 河上民雄

    ○河上委員 いま、三木総理大臣の見解というものが政府の見解である、こういうふうに言われておりますけれども、大変くどいようでございますが、昨年の二月十三日の衆議院予算委員会における楢崎委員質問に対する三木総理大臣の答弁。非核三原則というのは、緊急時も含めて日本の不変の国是であるかという質問に対して、三木総理は「日本の不変の原則でございます。」こう言われました。この御答弁は今日におきましてもいささかも変更はない、こういうふうに外務大臣の御責任において再確認していただけますか。
  99. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その三木総理大臣の答弁は、私もよく記憶いたしておりまして、今日もなおそのとおりであると考えております。
  100. 河上民雄

    ○河上委員 もちろんその国是というものは、単に宣言するだけではなく、あるいは国会の答弁の中で表明するだけではなくて、具体的ないろいろな状況の中でそれを貫徹してこそ初めて国是と言えるのではないかと思うのでありますが、そういう御決意を具体的なあかしとして伺いたいと思うのであります。  海洋法会議が、この三月十五日でございますか、数週間にわたってニューヨークで開かれるわけでありますけれども、そこにおいて非常に中心的なホットな問題として領海の問題がございます。この領海の問題について少しく伺いたいと思います。  わが国の領海を十二海里に決する時期はいつでございましょうか。
  101. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもといたしましては、海洋法会議が今年最終的な結論に達することを希望し、そのために最大の努力を払っておりますし、またその公算も決して少なくないと考えております。この海洋法会議において、領海の問題、経済水域の問題等々幾つかの要素が、いわゆるパッケージディールと称せられるもので初めて、各国間の利害調整の結果まとまり得ると考えておりますので、それらのうちの都合のいい部分だけを先取りすることは会議を成功せしめるゆえんでないという議長の意向もあり、まことにそのとおりと思っておりますので、わが国としては、できることであれば、この海洋法会議結論を待って実行いたしたいと考えております。  なお、同時に、政府におきましては、万々一今年内に海洋法会議がまとまらない場合、あるいは海洋法会議がついに流産をした——そういうことがないことを祈りますが、そういったようなことになりました場合には、わが国としてその段階で本件を討議しなければなるまいというふうに考えてはおりますものの、原則としては海洋法会議結論を持ちたいと思っております。
  102. 河上民雄

    ○河上委員 いま外務大臣の御答弁で、十二海里に領海を決める時期について伺ったわけでありますけれども、現在の心境としてはそのとおりであろうかと思いますが、いまの御答弁は、二つの目標が含まれておって、その二つの時期的目標がたまたま一致することを願っておるという意味の御答弁であると思うのでありますが、つまり海洋法会議結論を待ってという考え方と年内に処理したいというお考えと二つあるように思いますが、万々ないとは思うとおっしゃいましたけれども、これはどちらにウエートを置いてお考えになっておられますか。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 間もなくニューヨークで会議が開かれるわけでございまして、できればこの会議が最終的な結論に達すること、またそのために私ども最大の努力をいたしたいと思いますが、万々一何かの部分が残りましたときには、恐らくそれに引き続いて秋までの間にもう一つセッションをやってでもまとめようというふうな心構えに多くの国がおりますので、今年内に海洋法会議がまとまる公算はかなり大きいというふうに考えております。
  104. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、その次の会議も決まらない場合はさらに次の機会を待った方がいいとお考えになっておられますか。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、その次の会議というエクストラセッションというものがもう一つあるのだぞということになりますと、みんな何となく試験勉強みたいなものでございますので、まだゆっくりしてもいいというようなことになってもいかぬということは関係者が配慮はしているのでございますけれども、しかしいま河上委員の言われますように、ニューヨークの会議がありまして、それでまとまらず、もう一つセッションをやってもなおまとまらずということになりますと、各国の動向もございまして、その次にもう一度やってというようなことはあるいは——いわゆるそうなるともう話は長過ぎまして、そうなればむずかしいのじゃないかというような感じがいたします。
  106. 河上民雄

    ○河上委員 私はいま領海のことを伺っておりますけれども、今度の大きな問題はまた二百海里の経済水域の問題もあると思うのでありますが、二百海里経済水域の場合は、世界の大勢がそっちの方に向かいつつあるとはいえ、まだ具体的に二百海里経済水域をとっている国というのは必ずしも多数を占めておらない。そういう中で日本がこれに賛成するのかどうかという問題と、領海の場合、領海十二海里というのは事実として大勢になりつつある、三海里をとっているところはほとんどない、こういうような状況でございますので、この領海十二海里の問題とはおのずから性質が違うのじゃないかと思うのであります。つまり、領海十二海里の場合は、日本がこれを認めるか認めないかという決断だけが迫られているのじゃないか、こんなふうに思うのでありまして、会議結論を待ってと、こう言われますけれども、経済水域二百海里の場合とはちょっと性質が違うのじゃないか、私はそう思うのであります。つまり、日本がどうするかということだけを実は世界が待っているのであって、世界が決まるのを日本が待つわけではないのじゃないか、こんなふうに思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 厳密に申しまして、領海十二海里というものは確かに世界のかなりの国が採用しておるわけでございますけれども、これが当然の国際法であるというふうには私どもまだ考えておりません。実はこの点は、かつての三海里が当然の国際法であるということで、わが国は特段の法措置をとりませんで三海里というものにいたしましたけれども、仮にいまそれなら十二海里が国際法であるから一方的に宣言をすればそれでいいかということになりますと、やはり厳密に言えばまだそこまでは行き切らないので、十二海里にするのであれば、現状では法律が要るであろうという暫定的な結論が出ております。が、他方で、河上委員の言われますように、それなら、わが国が何かの理由によって法を制定して十二海里にいたしましたときに各国から批判を受けるか、非難を受けるかと言えば、私はそれ自身はそんなことはなかろう、やっていけないということはないであろうと思っております。ただ、政府がそういたしませんのは、先ほど申しましたように、海洋法会議のパッケージディールの、現状は変更しないで結論を待とうというのがパッケージディールの一つの要素になっておりますから、そのことを尊重した方が大きな意味で海洋法というものができ、わが国の国益に沿うのではないかという立場から、海洋法会議を待ちたいと考えておるわけでございます。
  108. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、一応その結論待ちということで政府のお立場は認めるといたしましても、そこで一つ疑問が残りますのは、会議結論が出た段階で、いまお話がありましたように法制化するあるいは宣言をするというような措置をとられるのか、それとも海洋法会議結論が成文化された条約批准、承認することによって十二海里にするのか、どちらをおとりになるおつもりでございますか。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はそこのところは確かに非常に判断のむずかしいところだと思うのでございます。会議の実体が決まりましたならば、あとそれを法文にする作業が残るだけだ、仮にそういうふうにきれいに物事が進んでいきますれば、パッケージディールは事実上できたということも言えるではないか、したがって、そこでわが国が十二海里にしたところでもう会議を壊す心配はないではないかという物の考え方もあろうと思うのでございます。しかし、他方で、そこまで行けばもう法文をつくるのは技術的な時間だけの問題であるから、それを待ってもいいのではないかという議論も私はあるであろうと思いますので、事実上問題がどのように進行するかということをもう少し待ってみませんと、そのいずれをとるべきか、はっきり決断のできない問題ではないかというふうにいま思っておるわけであります。
  110. 河上民雄

    ○河上委員 年内にやりたいという御希望との兼ね合いで伺っているわけでございますが、パッケージディールでやると、みんな一括して賛否を決めるということになりますと相当意見が分かれてきて、各国が批准してこれが成立するというまでに若干の年数がかかる場合もあり得ると思うのであります。そうなってまいりますと、年内にやるということは、当然結論が出た段階で法制化するということでないとつじつまが合わないように私は思うのでありまして、そういう意味で伺っているわけでございます。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お尋ねの点はよくわかりますし、またごもっともなお尋ねであると思いますのですが、実はその辺のところをはっきりまだ詰めておらないというのが実際のところでございます。
  112. 河上民雄

    ○河上委員 いま大臣は、領海を十二海里にする場合には法律改正といいますか法制化が必要である、こう言われたのでありますけれども、現在の三海里はどういう法律によってわが国は決めているのか、私も不勉強で寡聞にしてどの法律ということがわからないのでございますけれども、その点を教えていただきたいと思います。
  113. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま国際法規として領海の幅が三海里である、わが国にとって三海里であるということは、憲法九十八条に基づきまして、確立された国際法規として三海里が国内法的な効力を持っておる、こういうことでございます。
  114. 河上民雄

    ○河上委員 そうなりますと、条約で決まっておるから、それを認めておるから三海里になっておる、こういうことでございますか。
  115. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいまございます国際条約たる領海条約には、領海の幅員が何海里であるかという点については規定がないわけでございます。これはジュネーブの前の海洋法会議がその点についての国際合意をつくることに成功しなかったためでございます。したがって、領海条約上に規定はないわけでございますが、国際慣習法として領海は三海里までであるというのが国際慣習法であるということでございまして、それが国内法的に先ほど申し上げましたように効力を持っておる、こういうことでございます。
  116. 河上民雄

    ○河上委員 従来、わが国でいろいろな条約を結んでおる。特に海の問題に関して結んでいる条約の中で、三海里から十二海里にした場合に条約改正を要するものがあるのではないかと思うのですが、それにはどういうようなものがございましょうか。
  117. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 わが国締結しております国際条約で領海が何海里ということを定めたものは戦前に一つございまして、いまちょっと手元にございませんですが、戦前に日米間で酒の密輸を防止するために取り決めた条約がございます。その中にそういう規定がございます。
  118. 河上民雄

    ○河上委員 大臣、いま局長が言われましたけれども、私も少し調べましたらいまおっしゃった条約があるのです。それは戦争中はもちろん日米間が戦争になりましたために効力を失ったのだと思うのですけれども、昭和二十八年にこれが復活して、存続を日本政府は確定しているようであります。そういたしますと、これは現在も有効であるというふうに理解していいのでございますか。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 あれはたしか昭和の初めの条約で、アメリカが禁酒法をやりましたときに酒の密取引をどこまで取り締まる、取り締まらないということの関連条約だったと思いますので、実質上アメリカの禁酒がなくなりましたから実体的な意味はないのであろうと私は思いますが、恐らく条約としては正規に存在しているものと思います。これはなくなったというふうには考えておりません。
  120. 河上民雄

    ○河上委員 それを見ますと、現時点に立って重要なことがいろいろ書いてありまして、第一条「締約国ハ海岸線ヨリ外方ニ向ヒ干潮線ヨリ測リタル三海里ガ領水ノ本来ノ限界ヲ成スノ主義ヲ支持スルノ確固タル意嚮アルコトヲ声明ス」、三海里説をここに書いてあるのですね。第一条はそうなっておりますが、そうするとこれは今度、実体としてはなくなっているというようなお話ですけれども、しかし手続的にはこれは改正する必要があるわけでしょうか。
  121. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申します。  大変法律的にむずかしい問題で、私即答するのにちゅうちょするわけでございますが、一つには、その新しい海洋法条約が、要するに国際条約がどういう形で成立するか、それに対する日米の参加の態様がどういうことになるかということにも関係があるかと思いますが、いずれにせよ、国際的に十二海里ということが法律的に確立されたという事態になれば、その限りで、この条約のただいま先生の読み上げられた条項も実体的な影響を受けるだろうと思いますが、その影響にかんがみて、この条約に手続上どういう措置を施すべきかという点は、手続の問題としてその際に日米両国で協議するというような必要が出てくるかもしれない、当面そのような考えを持っております。
  122. 河上民雄

    ○河上委員 条約局長は、新たな海洋法に賛成し、またそれが法的に効力を持った場合は、それでこれよりも優先するのだということのようにお聞きいたしましたが、もし先ほど大臣が言われたように批准し、承認し、そしてこれが効力を持つ前に結論が出た段階で日本が独自に法制化する場合、これはやはり日米間で先にやらなければいけないということになるのではないかと思うのですけれども、その点はいかがでございますか。
  123. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 わが方が措置をとります際に、領海の幅員が十二海里たるべしということが国際法上どういう地位を持つかということにもよるのじゃないかと思うのでありますが、日米間で十二海里とすることについて実体的に問題がないのであれば、この条約が現実の問題としていまオペレートしているわけではないという実態にかんがみれば、この条約の第一条をどう処置するかの点は、おのずから話し合いで何らかの結論が出得るのじゃないかという気がいたしますけれども、これは、まさにわが方が処置をいたすことにいたしましたときの状況を十分に勘案いたしませんと、ただいまから明確なことをお答えしにくいというふうに考えております。
  124. 河上民雄

    ○河上委員 その点かなりペンディングな要素があるような気がいたします。特にこれが日本と全く関係のない国との間の領海に関する条約であればともかくでありますけれども、いわばオペレートしてないといっても、相撲で言うと死に体みたいなものだといっても、また土俵ぎわで魔術師みたいな解釈が生まれてくる可能性もあると思うのです。具体的に言えば、対馬海峡とか宗谷海峡とかそういうところに起こる日米間の問題のときに、これが不死鳥のようによみがえってくることがないとは言えないと思います。そこでちょっと伺っているわけでございます。いまの御答弁ではまだこれは将来の問題であると言いますから、かなりこの取り扱いについてはペンディングな要素が残っているというふうに大臣お認めになりますか。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは私も深く実は余り突っ込んでいないのでございますけれども、この条約アメリカが酒の禁止をしていたときの条約であるので、実体的な意味はもうないんだろうなと思いながら、昨年の十一月ごろでしたか、私はキッシンジャーと何か話をしておりますときに、日本が十二海里ということをやるとなると、どうも一つこういう条約があるようだ、古い条約で余り意味がないんじゃないかと思うけれどもという話をちょっとしまして、自分の方もじゃ研究させておこうなんということがあったのでございます。実はそのままになっておりまして、私もその後、それをさらに深くもせんさくもいたさないでおりましたので、もしそういう事態になりましたら、御指摘もございましたから、よく私の方も研究をし、米国側にもそういう話をしまして、どうしますか決めてまいればよろしいかと思います。
  126. 河上民雄

    ○河上委員 いま大臣から、キッシンジャー国務長官との間に、これが正式の討議の対象ではないけれども、話し合いの中に出てきたということを伺いました。やはりこれは、いま意識の表面に出ていないかもしれませんけれども、案外重要な問題かもしれないと私は思うのでありまして、ひとつペンディングであるということを、研究課題として大臣も意識しておられるということをここで確認いたしまして、この条約審査もまだ何回かあると思いますので、その間にまたさらに御意見伺いたいと思うのであります。  なお、これはあるいはよけいなことかもしれませんけれども、第二条を見ますると、「領水ノ限界外ニ於テ右船舶ヲ臨検スルニ対シ異議ナキコトニ同意ス」とありまして、アメリカも、もちろんこれは禁酒法時代でありますけれども、領海の外で日本の船を臨検した場合でも、日本政府は文句を言わないということになっておりますけれども、こういうようなことは実際にはオペレートしておったのですか。してなかったのだと思うのでありますけれども、こういう問題も、現実にもう宮澤外務大臣とキッシンジャー国務長官との間で、この条約の処理が残っていますねという話があった以上、これをどうされるおつもりですか、伺っておきたいと思います。
  127. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 再び大変むずかしい問題であれでございますが、ただいま私どもといたしまして、この日米間の条約に基づいて、現実に酒類の禁輸のために、この第二条に定めるような尋問及び検閲を行っておるかという点につきましては、私ちょっと事実関係承知しておりません。ただ先生御案内のように、現在の領海条約にもいわゆる接続水域という定めがございまして、「沿岸国は、自国の領海に接続する公海上の区域において、次のことに必要な規制を行なうことができる。」ということで「自国の領土又は領海内における通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の規則の違反を防止すること。」その他の規定がございます。ただいまちょっとこの接続水域によってとり得る行為と、この酒の現実の取り締まりという点が、どの程度どういうふうにカバーするのか、詳細には存じませんが、少なくとも通関上という観点からの規制は、接続水域の概念でも行い得ることではなかろうかと考えます。
  128. 河上民雄

    ○河上委員 この問題は、さっき大臣が研究課題としてひとつ一応の腹を固めて報告するとおっしゃいましたので、この程度にしたいと思いますけれども、ひとつこういう問題があるということを注意を喚起しておきたいと思うのであります。  領海十二海里、そういう方向にしたいというのが政府の態度であるというふうにいま伺ったわけでありますが、もし領海十二海里にした場合、日本を取り巻く海峡、対馬海峡を除きまして、ほとんど全部領海の中に包まれてしまいます。単に領海十二海里というふうにした場合、当然昭和四十三年の三木外務大臣の答弁及び非核三原則からいたしまして、いわゆる核積載艦、どの国のものでもそうでありますが、核積載艦はわが国の大部分の海峡を通過できなくなると思いますけれども、いかがでございましょうか、ただ事実だけ伺います。
  129. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生御案内のように、現在の海洋法会議において討議されております一番大きな問題の一つが国際海峡の問題でございます。この国際海峡の問題と申しますのは、領海が三海里から十二海里に拡張することに伴って、公海部分が消滅する海峡であって国際航行に使用されている海峡における船舶の通航がどうあるべきかという問題でございまして、わが国といたしましては、有数な海運国として、また貿易を立国の基礎とする立場から、このような国際海峡においては、一般領海におけるよりもより自由な通航の制度が確立さるべきであるという立場で臨んでおりまして、先ほど大臣からもお答えがありましたように、この問題につきましては、一般領海の幅の問題、それから経済水域の問題と絡んで、三つの問題についてのパッケージを成立させるという方向で現在会議の動向が動いておるわけでございます。最終的にどういう形になるかという点につきましては、いまなお様子を見なければ確定的なことが申し上げられない、こういうことでございます。
  130. 河上民雄

    ○河上委員 いわゆる単一草案あるいはその他のソースからいろいろ出ております案の中にあります国際海峡における自由通航の案をいまの中島条約局長の御答弁は指しておられるわけでございますか。
  131. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答えいたします。  ただいま申し上げましたときに私が国際海峡における通航制度と申しましたのは、一般的に通航の制度がどうあるべきかという点について論議が行われており、それに対してわが国としてどういう考え方で臨んでおるかという点を中心に述べたものでございますけれども、まさに先生指摘のように、いまの海洋法会議におきましては、前ジュネーブ会期の終末に議長が各国に配付いたしました非公式単一草案というものが、現実の問題として、交渉一つの有力な基礎として討議が行われ、いままでのところ非行式に行われており、これから公式に討議が行われる、こういう事態でございますので、現実にいまある案文がそういう海峡通航制度の案文としてどういうものがあるかという点であれば、いま先生のおっしゃられた非公式単一草案の条文がそれであるということになります。これを交渉の基礎として今後交渉が煮詰められていく、こういうことでございます。
  132. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど外務大臣は、非核三原則については平時であっても緊急時であっても不変の国是であるという総理大臣の見解をいささかも変更するつもりはない、こう言われたのでありますけれども、この非核三原則、不変の原則というのは、空間的にも、領海、領空、領土についても不変の原則である、そういうように理解してよろしゅうございますか。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういうふうに考えております。
  134. 河上民雄

    ○河上委員 そうなりますと、領海十二海里にした場合、核積載艦はわが国の大部分の海峡を通過できなくなると思いますけれども、宮澤外務大臣のお考えはいかがでございますか。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど政府委員から申し上げておりますいわゆる国際海峡というものが、新しい国際法である海洋法上どのように定義されるかということに関係があろうと思いますが、少なくとも国際法上認められた、したがってそれは国内法ともなるわけでありますが、わが国の権限を行使し得る地域において非核三原則というものはそのまま適用されるというふうに考えてよろしいと思っています。
  136. 河上民雄

    ○河上委員 いま、主権の及ぶ範囲において非核三原則を厳守する、空間的にはそうである、こういうようなことであったわけでありますけれども、主権の及ぶ範囲というのが領海十二海里そのものずばりであるというふうにわれわれは理解をしておるわけですけれども、国際海峡に関するより自由なる航行という一つの理念がもし国際的に認められた場合、領海に関する考え方とそういう国際法の理念と抵触するといたしましたら、これはどういうことになりますか。
  137. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 現在、いわゆる国際海峡という言葉を河上委員もお使いになり、私も用いているわけでございますけれども、その国際海峡というものが国際法として設けられますときには、その国際海峡というものはどういうものであるかということが当然に定義をされることになるであろうと思います。その場合、この国際海峡にはより自由な通航が認められなければならないということに仮になったといたしますと、そのような国際海峡の部分というのは、いわゆる普通に申しますところの領海というものとはちょっと違った性格を国際法上帯びるということになってくることがあり得ると思います。そういう場合に、わが国条約に加盟をするということになりますれば、そのような国際法上の定義に従いましたものとして、そのような国際海峡を考えていかなければならないということになるであろうと存じます。
  138. 河上民雄

    ○河上委員 いまの御答弁は、非常に微妙な重大な問題をはらんでおるように思うのであります。国際海峡という通念自体がまだはっきりしておらない、その中における通航権に関する権利義務の関係もこれから論議せられる、こういうことでありますけれども、いわゆる軍艦の航行に関する問題点として、国際海峡の通航権に関して、自由通航か無害通航かという問題、あるいは群島水域におけるいわゆる群島シーレーン通航権か無害通航権かという問題、それから経済水域において航行の自由を認めるか制限するかというような問題、いろいろあると思うのでありますけれども、いまの大臣の御答弁は、この国際海峡の領海内における軍艦の通航についても、わが国としては、無害通航を主張せずに自由通航をその中で主張せられるというふうに理解してよろしいのですか。そういう点になりますと、この非核三原則の厳守という点から見まして非常に重大な問題がそこに幾つも横たわっているように思うので、その点を確認をしたいと思います。
  139. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それらの問題が会議において議論せられる一つの問題であろうと思いますので、つまり、より自由な航行を許される場合がどういう態様についてであるのかということは、討議をしながら決めてまいらなければならないのであろうと思います。したがいまして、その点はいまのところ未知数だと申し上げるしか、ちょっと正確なお答えの仕方がなかろうかと思います。
  140. 河上民雄

    ○河上委員 いまの問題は、これからの条約審査の中で非常に重要なポイントだと思いますので、大変しつこいようでありますけれども、二、三伺っていきたいのでありますが、わが国の法律体系の中には、領海について無害通航権という概念しか存在しませんね。
  141. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま先生わが国の法律とおっしゃいましたのですが、わが国のいまの法的な状況は、領海条約という国際法にわが国が加盟しておりまして、その国際法が国内的にも法的な規範を持っておる、それのほかにいまの無害通航に関する法律というものはないと思っております。
  142. 河上民雄

    ○河上委員 自由通航権というような概念はどこでできるわけですか。
  143. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 どこでできるかという御質問のポイントが必ずしも私よくわからないのでございますが、要するに国際的に国際条約を作成します場合に、国際航行に使用される海峡については、単なる一般領海におけるがごとき無害通航権ではなくて、それよりももっと自由に船舶が通航できる制度をつくるべきであるという考え方があるわけでございまして、今度の海洋法会議でもそういう考え方が概念として明確化されて、これが次第に通念に定着していくという過程にあるわけでございます。
  144. 河上民雄

    ○河上委員 きょうは他の委員会との時間の都合で十分にはその核心に入ることができないで、いわば入り口のところでもう時間が来てしまったような感じがいたしますので、後日またさらに、大臣自身もペンディングな問題があるというふうに言われておられますので、その辺の確認も含めて質問を続けさしていただきたいと思うのです。残されました時間はもうほんの数分でございますので、そのことをまず委員長にお許しを得たいと思いますが、ひとつそういうことで残された時間を使いたいと思います。
  145. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 承りました。
  146. 河上民雄

    ○河上委員 大臣一つ伺いたいのでありますけれども、一体国是というのは何であるか。国際社会の中で生きていく以上、さまざまな条約体系というものの中で日本も生きていかなければならない。しかし、日本日本としての国是がある。たとえばスイスのような国はその中立という国是のために、制裁活動に加わらなければいけないという国連の規定を非常に厳密に解釈して国連に入ることを拒否いたしました。いわば国是というものはそういうものでないかと思うのですけれども、一体条約との関係において国是というものをどういうふうにお考えになっておられるか。
  147. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国是というのは、実は私が最初に使った言葉ではございませんので、総理大臣がどういう意味で言われたかということを非常に正確には申し上げかねますけれども、国の基本的な方針というような常識的な意味であろうと思います。でございますから、そのことは、憲法というものが同じく国の基本を定めるものでございますから、憲法にもとより反したものであってならぬことは明らかでございますし、憲法から生まれてくるところの具体的な国の基本の方針とでも申し上げるべきかと思います。
  148. 河上民雄

    ○河上委員 大臣、もう時間がございませんので、また次の機会にこの後伺っていきたいと思いますけれども、私は、いま核防条約の審議に当たって、やはり非核三原則は不変の原則である、これは国是であるという、そうした立脚点と、この条約あるいは海洋法というような新しい法体系というものを次々に取り扱っていく場合に、われわれが言っているところの国是というものをどうやって守り抜くかということが、実はいまわれわれに課せられた大きな課題であると思うのでありまして、その国際法体系という問題と国是という問題、この問題は、ある意味においては本条約の審議の一つの核心ではないかと思いますので、きょうは時間がございませんので、その問題を提起して、次の機会に譲らしていただきたいと思います。きょうは、これで終わります。
  149. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 河上民雄君の質疑は終わりました。  続いて、正森成二君。
  150. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、核拡散防止条約について質問をいたしたいと思います。  それで、昨年の五月、六月に審議を若干いたしましたので、そこでお伺いしたことはなるべく重複しないようにということで質問をいたすつもりでございますが、話を進める上で若干復習をする場合もございますので、それはお許しを願いたい、こういうように思います。  まず改めてお伺いしますが、この核拡散防止条約というのは、核兵器所有国が核兵器を増強することは禁止していない、核兵器を実験することも禁止していない、こう思いますが、いかがですか。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年もその話がございましたが、この条約自身はそういう部分について述べておるわけではございません。
  152. 正森成二

    ○正森委員 同様に、この条約核兵器所有国が自己に管理権を留保しておくならば、核兵器を非核兵器保有国に対して持ち込むこともまた禁止しておらない、こういうように思いますが、いかがです。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この条約自身は、そのことを禁止しておりません。
  154. 正森成二

    ○正森委員 そこで、たとえばわが国は非核三原則ということを政策上言っておりますが、西独やイタリアでは、パイロットが軍用機に核爆弾を載せて、たとえば敵地に飛んでいくということもまた禁止されておらない。管理権さえアメリカに確保されておれば、この核拡散防止条約はそのことを禁止していないと思いますが、いかがですか。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 よその国の法制を存じませんけれども、この条約は管理権を与えることを禁止しておるのであって、管理権を持ったまま核兵器国が核兵器をよその国に持ち込むということは、一般的にこの条約の禁止するところではないと思います。
  156. 正森成二

    ○正森委員 いま私がはなはだ失礼でございますが、外務大臣を煩わしまして確認いたしましたように、この条約核兵器所有国が核兵器を持ち続けることも増強することも自由である。もちろん、実験を行うことも自由であります。そして、核兵器を非核兵器保有国に持ち込むことも自由であれば、イタリアや西ドイツにおいては、核爆弾を西ドイツの飛行機が積んで仮想敵国あるいは実際には敵国の上へ持っていくことも自由である。ただ管理権さえアメリカが留保しておけばよろしい、こういう条約であります。ですからこそ、ラスク・アメリカ国務長官当時は、議会で証言して、核拡散防止条約は禁止される者に関する条約で、許される者に関する条約ではない、こういう名言をいみじくも言っておるものであるというように私は考えております。  そこで、次に伺いたいと思いますが、こういう核拡散防止条約ができます直前の一九六六年の一月には、米ジョンソン大統領から、数日置きましてコスイギン首相から、NPT条約について一定のメッセージが送られたと思いますが、そのメッセージはそれぞれいかなる内容のものであったか、お伺いいたしたいと思います。
  157. 大川美雄

    ○大川政府委員 一九六六年の一月に、アメリカのジョンソン大統領がジュネーブの十八ヵ国軍縮委員会に対しましていろいろのことを提案いたしましたが、その中で非核兵器国の安全保障につきましては、核への道を求めない国々については、核兵器による威嚇に対して、われわれの強い支持を確信してもらってよいというような提言をいたしました。なおそれから数日後には、コスイギン首相がやはり同じ十八ヵ国軍縮委員会に対しまして、ソ連は、核防条約に参加する非核兵器国でありまして、その領域内に核兵器を持っていない国に対する核兵器の使用を禁止する趣旨の規定を挿入する用意があるということを申したわけであります。前者がいわゆるジョンソン提案、後者がいわゆるコスイギン提案として知られている提案でございます。  これにつきましては、まずアメリカのジョンソン提案は、要するに核兵器国の善意に頼る以外にはっきりとした保証がないのではないかということで、盛り上がるほどの全般的な支持がなかった。ただ、数年後にはこのジョンソンの提案が一九六八年になりまして、例の米、英、ソの三国による宣言、それから安保理事会の決議という形になってまた出てまいったのでございますけれども、六六年には特に取り上げられなかった。他方、コスイギン提案につきましては、これもたとえば米国などは、この提案は、その領域に核兵器を持っていない国、非核兵器国に限ることで、要するにアメリカの管理のもとにある核兵器国の非核兵器国における展開を阻害しようとしているのではないか、そういう意図を持ってなされているのではないかというふうに解釈いたしましたし、他方、この提案につきましても、これはやはり核兵器国の善意に依拠する以外にははっきりした保証がないのではないかという批判もございましたし、さらに中国の場合には、一体これに従うのであるのかどうか、必ずしもはっきりした保証がございませんでしたので、一部非同盟諸国はこれに関心を示しましたけれども、その後ソ連といたしましても、それほどこの問題をさらに推し進めるようなことはいたさなかったわけでございます。それが前後の経緯でございます。
  158. 正森成二

    ○正森委員 大変丁寧にお答えいただいたと思います。  それで前者のジョンソン大統領のメッセージというのが後に国連安保理事会決議二百五十五号と呼ばれるものになったと私ども承知しております。そこで日本政府は、こういうたとえばコスイギン首相のメッセージに対して何か態度表明をする機会がございましたでしょうか。
  159. 大川美雄

    ○大川政府委員 コスイギン首相の提案が行われました一九六六年には、実はまだ日本は十八ヵ国軍縮委員会のメンバーになっておりませんでしたので、その場で直ちに反応する機会がございませんでした。
  160. 正森成二

    ○正森委員 日本がジュネーブの軍縮委員会に参加するのについて各国からいろいろ反対があったと思いますが、特にソ連側の反対が非常に大きかったと思いますが、軍縮委員会に参加を許されるについては、何か条件のようなものがつけられましたか。
  161. 大川美雄

    ○大川政府委員 そのような条件は一切なかったと承知しております。
  162. 正森成二

    ○正森委員 そこで、私は申し上げたいのですが、私の承知しておるところでは、コスイギン氏のメッセージというのは、一定の意味合いを持っておる。たとえば非核兵器保有国というのは、以後核兵器を持たないという一方的な義務を負担するわけでございますから、先ほど行われましたレビュー会議におきましても、特に非同盟諸国の非核兵器保有国から、この非核兵器保有国の安全を保障するためには現在の、三ヵ国の宣言や安保理事会の二百五十五号の決議だけでは不十分ではないかという意見が出てまいりましたことは御承知のとおりであります。  その場合に、わが日本のように非核三原則を考えておる、こういう地理的条件の国にあっては、核兵器を自国の領域内に置いておらない非核兵器保有国に対しては、核兵器保有国は核を使用しないということをNPT条約に挿入するとすれば、これは非常に意義があったと思うのですけれども、いまの御説明によっても明らかなように、それは、アメリカが非核兵器保有国に自己が管理権を持ちながら、核兵器を展開することを阻害するものではないか。特にNATO諸国を念頭に置いてそういうことが言われた、あるいは日本も念頭に置いておったかもしれませんが、そういうことのためにつぶれたということは、このNPT条約というものが一体何をねらっておるかということを端的に示しておると思うのですね。つまりアメリカ側は、自分が核兵器を持つことは自由である、増強することは自由である、核実験をすることも自由である、そして非核兵器保有国に自己が管理権を持ったまま展開することもまた自由である、こういう、非常にアメリカという核兵器保有国にとっては、やりたいことは何でもできるという条約ではないでしょうか。ですから、私は、そういう意味では、この条約は非核三原則をとっておるわが国にとってはきわめて不十分で、十分に評価し切れないものであるというように思いますが、どうお考えになりますか。
  163. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、この条約にすべてを求めるという立場、あるいはこの条約をいろいろな背景から全然一つだけ取り出しまして議論する立場ということからは、そういうことが私はおっしゃれるのだろうと思いますけれども、申し上げるまでもなく、この条約にはいろいろな、先ほど正森委員が言われましたように、カバーしていない部分がそれはたくさんございます。しかし、この条約に盛られました背景、それからこの条約と並んで現に行われておりますいろいろな努力、たとえば核軍縮の努力であるとか、一般軍縮の努力であるとかあるいは非保有国の安全であるとか、そういったようなものの一つとして、これ以上核兵器拡散させないためにはどのようにすればいいかという、そういう方法論と申しますか、そういう一つの方法としてこの条約があるのであって、この条約ですべてを覆い尽くしておるわけではない。また、この条約と並んで行われております世界的ないろいろな努力というものと切り離して全然別個に見るということも私は適当ではないと思います。ですから、正森委員がこの条約だけでは不十分だと言われますのならば、それはまさにそのとおりであって、それでありますからこそ、これと並んでいろいろな努力が行われているのでありますが、だからといって、この条約は賛成でないとおっしゃっていないのでございますけれども、もしそういうことであったら、私はその部分には賛成を申し上げられないということになります。
  164. 正森成二

    ○正森委員 外務大臣から御答弁があったわけですけれども、たとえばこの条約だけではカバーし切れないものがあるけれども核軍縮が行われているとかいろいろほかのファクターがある、こうお述べになりました。この核軍縮なるものがいかなるものであるかということについては、私は昨年の六月六日並びに六月十三日の質疑の中で相当いたしておりますので、時間がきょうはわずかしかございませんので、それをここに重複して申し上げて、外務大臣の御意見に反論するということは差し控えさせていただきたいと思います。  そこで、私はこのことを伺いたいと思うのです。私と外務大臣とは政党も違いますし、立場も異なると思いますが、共通して恐らく願っておることは、わが国が核戦争の惨禍に巻き込まれるようなことが夢にもあってはならないということだろうと思うのですね。これは私も外務大臣も同意見であろう、こういうぐあいに思いますが、いかがでございましょう。
  165. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 同意見でございます。
  166. 正森成二

    ○正森委員 そうだといたしますと、あの沖繩国会の最終のときに、核兵器をつくらず持たず持ち込まずというのが国会の決議になりましたが、しかし、それは政府に対していわば政治的な義務を課しておるということで、政府が変わればこれは守られないこともあり得ないことではありません。  そこで、わが党は非核三原則の法制化ということを提起いたしまして、すでに発表もいたしておりますが、わが国が核戦争の惨禍をこうむらないということ及びその手段の一つとして、政府もかつてお認めになった非核三原則が有用であると思われるならば、この核兵器をつくらず持たず持ち込まずという点を法律として定めるというようなお考えはございませんか。
  167. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国会の御決議でございますから、政府が変わりましても国会の決議というものは尊重せられるべきものであると私は存じますし、また歴代の総理大臣、現在の総理大臣も非核.三原則についてはしばしば態度を明確に表明しておられますので、特に私は立法を必要とするというふうには考えておりません。
  168. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう御答弁がありましたけれども、私は法律として制定して、つくらず持たず持ち込まずに違反する場合には、これはただに政治的責任が問われるだけでなしに、違法であるという評価を受けるということが必要ではなかろうかと思います。その理由として、はなはだ失礼でございますが、たとえば宮澤外務大臣は、昨年の四月二十四日、二十五日という、この核拡散防止条約国会に上程するかどうかという点で非常に微妙な時期に、こういうことを自民党の総務会で言っておられるのですね。事前協議は条約論からいえばイエスの場合もある、ノーだけの事前協議というものはあり得ない、首相の答弁は高度の政治判断として理解できる、国家が存亡の危機に立った場合、その安全を確保するためには自然人と同様に正当防衛をするのは当然だ、この場合は非核三原則より以前の問題であって、言葉の表現を超えた言わずもがなのことである、こういうことを明言されております。  そこで、そういうような事実があるとすれば、はなはだもって安心ができないのじゃないか。いま宮澤さんは外務大臣でございますけれども、識見が非常に豊かでございますから、将来総理におなりになるときがないとはいえない。そのときにこういう御見解をお持ちになりますと、必ずしも日本国民のすべてが安心するというわけにはまいらない、一点の疑念ぐらいは残す人間がおるかもしれないと思うのですが、いかがでしょう。
  169. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに私は、条約論としてはイエスもありノーもあるというふうに考えておかなければ筋は通らないであろうという意味のことは申しております。後段おっしゃいました、御引用になりましたことは、実はあのときに私どもの党内でいろいろな議論がございまして、これはまあ公の議論ではないのでございます。私どもの党内でのいろいろな討議でございますけれども、そういう中でだれがそういうことを言ったということでなく、そういうやりとりに私が参加したことは、これはございました。ございましたが、公に私の意見としてそういうことを申したということではございません。
  170. 正森成二

    ○正森委員 いま御説明がございました。それはそれとして伺っておきますが、しかし速記録を見ますと、六月の十三日に私が質問をいたしておりまして、そのときに、質問の最後の方でございましたが、私が朝鮮半島の問題に絡めまして、米軍に戦闘作戦行動を許すというような場合には日本が巻き込まれるというような事態が起こるのではなかろうか。私の質問は本当はもう少しいろいろの場合も想定しておりますが、時間の関係で多少不正確な点はございますが、仮にそういうように要約させていただきますと、宮澤外務大臣の御答弁は、これば正確を期するために速記録を読ましていただきますと、「わが国がそのような直接発進を許さなければならないような状況に置かれたときに、場合によってわが国に火の粉が飛んでくるかもしれないということは、そういう局面では、これはむしろそれくらいの局面であるからこそ発進を許す許さないということが問題になるわけでございますから、そういう場合には、それは当然やはり予想される事態でございましょう。」こうお答えになっております。さらにそれに続きまして、「とにかくそのような直接発進を許すというような事態においては、それはわれわれも火の粉を場合によってはかぶるという事態でなければそういうことは起こり得ないのではなかろうかと思います。」こう言っておられるわけであります。これは日本が戦闘作戦行動を許す場合には、ただに極東の平和と安全にとって必要だという場合だけでなしに、またわが国の安全にとっても必要な場合であるという、恐らく安保条約六条を念頭に置いての御答弁であろうというようには思いますけれども、明白に火の粉がかかるということもこれはやむを得ない。そういう事態だからこそ戦闘作戦行動を許すのだ、こう言うておられるのですね。そしてこの火の粉の中には、韓国においては核兵器が約六百発置かれておる。米韓条約では核兵器についてのわが国のような事前協議制度というものがない。そしてアメリカでは、フォード大統領もキッシンジャー長官も、核兵器の朝鮮半島における先制使用ということも言っておるとすれば、この火の粉の中には、やはり核兵器という火の粉も入っていないとは断言できないと思うのですね。そうだといたしますと、非核三原則を国会の決議で決めており、政府はそれを遵守すると言っておりながら、安保条約第六条との関係で、外相自身覚悟しておられる火の粉の中には、核兵器という火の粉も入り得ないとは絶対に言えないということは論理上出てくることがあると思うのですね。これは、たとえ核兵器拡散条約批准いたしましてもゆゆしい事態であると思いますが、いかがでしょうか。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょっと、どこかできちっとつながったお話であるかどうかが、私の理解が行き届かなかったのかもしれません。私が御答弁いたしましたのは、いまお読みくださいましたことを伺っておりますと、いわゆる安保条約にいう事前協議、直接発進という場合に、どういう場合に政府がイエスと言うことが考えられるかということとの関連のように存じます。この点はしばしば政府が申し上げておりますように、朝鮮半島に何か異常な事態があり、それがわが国の平和と安全を脅かすというようなことになったときに、事前協議について政府はどう考えるかという、そのような問題に対して、それはケース・バイ・ケースで決定することである。イエスの場合もあり、ノーの場合もあるであろうという趣旨のことをしばしば総理大臣が答弁しておられまして、それに当たる部分であろうかと存じます。他方で、韓国に戦術核というものが置かれておるということはしばしば報道せられますから、あるいはそうであるかもしれない。しかしそのことは、わが国の非核三原則とは関連のないことではなかろうかと存じます。  もう一つは、わが国核兵器をもって平和を脅かされることがあるであろうかないであろうか、あり得るかあり得ないかということであれば、私はあり得ないとは言えない。しかし、だからといって、わが国は非核三原則を捨てることはしないということであろうと思います。
  172. 正森成二

    ○正森委員 ただいまの御答弁で私は必ずしもよくわかったとは言い切れないものがありますけれども、さらに続いて別の質問をいたしたいと思います。  防衛庁長官伺いたいと思いますが、アメリカにおいて大規模な核事故ですね。大規模なというのは核兵器が爆発したという意味ではありませんが、それは何回ぐらいあり、そのうち一、二典型的な例をお挙げいただきたいと思います。
  173. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私からお答え申し上げます。  核兵器関係の事故でございますが、核兵器そのものが爆発をしたという事故はございません。この種の事故につきまして、事柄の性質上、大変資料が少ないわけでございまして、アメリカ以外の国については全く発表されておりませんので、アメリカにおきます最近十年間の事例、これの代表的なものを、ただいま御指摘でございますので申し上げたいと思います。  大体航空機事故に関連したもの、それからミサイルに関連したものが主でございます。ちょっと細かくなりますが御容赦を願いたいと思います。  まず一つは、一九六五年の十月の十二日、オハイオ州のライトパターソン基地でございますが、これはC124という航空機でございまして、これに対する給油中に火災が発生をいたしました。これには核兵器の非核コンポーネントを積んでおりました。したがいまして、核兵器の核の部分そのものではございませんで、非核コンポーネントを積んでおった、こういうことでございます。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕  それから、一九六六年一月十七日、これは有名な話でございますが、スペイン上空でB52とKC135が衝突をいたしまして、搭載しておりました四個の核爆弾が海中に落ちたわけでございますが、二個は爆薬が爆発いたしまして、プルトニウムとウランが飛び散ったわけでございますが、核爆発には至らなかった、残りの二個は回収した、こういうことでございます。  それから、一九六六年十二月、これはケンタッキー州のマッキニー付近におきまして、B58が墜落をいたしました。核爆弾を搭載しておったということでございまして、この詳細につきましてはわかっておりません。  それから、一九六八年の一月、グリーンランドの北部チュールの基地付近でございますが、これはB52が墜落をいたしました。この際の米国防総省の発表によりますと、核爆弾には安全装置がかけてあり、核爆発の危険はない、こういう発表が出ております。  それから一九六五年八月、アーカンソー州のリトルロック基地、ここでタイタンの二型がサイロの中で爆発をいたしまして、火災が起きましたが、核爆発は起こっておりません。  それから、一九六六年二月、フリゲート艦のルース号の甲板上におきまして、核ミサイルを落としましたが、爆発あるいは放射能汚染は起こらなかったということでございます。
  174. 正森成二

    ○正森委員 いま幾つかの例が報告されましたように、戦時でもないのに、非常にわれわれが考えてぞっとするような危険なことが起こっていると思うのですね。それで、いまの中に少し古いことですから出ておりませんでしたけれども、私どもが文献などでよく知っているもう一つの事故では、一九六一年の一月二十四日に、B52爆撃機がノースカロライナのバーズボロー上空で二十四メガトンの爆弾をやむを得ず投下してしまったという事故がございました。この爆弾は、地上に落ちたが、爆発しませんでしたが、後で調べてみますと、二十四メガトンの弾頭に六つの連動安全装置が取りつけられておる。爆発させる場合にはこれら全部を次々に外さなければならないようになっておったところが、実際に調べてみると、これは落下のために六つの連動安全装置のうち五つまでが外れていた。あともう一つ外れれば二十四メガトンが爆発するところであったということもアメリカ側の学者によって報道されております。ですから、核兵器というものは、戦時はもちろんのこと、平時であっても、これほどわれわれの肝を寒からしめるものがあるということは言えると思うのです。  そこで、続いて伺いたいと思いますが、核兵器が爆発をいたしましたときに、爆発の効果として対人家、対人間の関係で大体どういう効果のものであると防衛庁は考えておられますか。単位を適当にとってお答えください。
  175. 丸山昂

    ○丸山政府委員 この被害の状況につきましては、核兵器を使用いまします地域の地形その他によって大変差異がございますので、御案内だと思いますが、一度国連でこういった問題についての調査があったように承知をいたしておりますが、私ただいま手元に持ってきておりますものは、アメリカの一番大きな弾頭 ——弾頭のスローウェートだけではかりました場合に、ICBMのタイタンの二型でございますが、これが十メガトンでございます。それから、ソ連が持っておりますのは、同じくICBMのSS9、これが二十五メガトンであると言われております。  こういった点から考えてみますと、御案内のように広島型の原爆が二十キロトンでございますから、一つのICBMで大変な威力を持っておるということでございまして、したがいまして、その及ぼす被害も想像を絶するものがあるというふうに考えるわけでございます。
  176. 正森成二

    ○正森委員 そういう抽象的なことでなしに、たとえば十メガトンであれば何マイル以内はどれぐらいの被害が起こるということは言えませんか。それを爆発効果、熱線効果、レントゲン効果——放射能ですね。そういうように区別してお答えすることはできませんか。
  177. 丸山昂

    ○丸山政府委員 先ほど申し上げましたように、ただいま手元に資料を持っておりませんので、こういった問題につきましては、先ほど申し上げましたようにたしか国連核兵器の被害についての総合的な研究をいたしまして、ウ・タント事務総長あてに報告が出されておるように私承知しておりますので、もし御要望でございましたら、またその資料を後ほど届けさせていただきたいと思います。
  178. 正森成二

    ○正森委員 私は手元に持っておりますから知っておりますけれども、記録に残すために伺ったわけであります。  それでは、時間がございませんので次に進みたいと思いますが、アメリカでは確証破壊という言葉が使われております。これは核戦争になったときの相手側に与える被害の程度について言われる言葉でございますが、確証破壊とわざわざ言うのはどういう意味で確証破壊と言っておるのでしょうか。
  179. 丸山昂

    ○丸山政府委員 確証破壊、アシュアード・デストラクションの訳でございますが、この言葉が使われ始めましたのは一九六五年マクナマラ国防長官の国防報告書でございまして、ここでアシュアード・デストラクションという意味合いは、相手方がどのような先制攻撃をかけてきても、相手の国に対して当分の間国家としての機能を失ってしまうような破壊、つまり、そういうことを十分相手方が認識することによって先制攻撃を思いとどまらせるという、そういう意味の抑止的な効果を生むものである。     〔水野委員長代理退席、委員長着席〕 つまり、抑止を確実に保証するに足る破壊、これを与えるという意味で、アシュアード・デストラクションという言葉を使用いたしたように私ども承知をいたしております。
  180. 正森成二

    ○正森委員 いま丸山防衛局長が述べられたようなことでございますが、たとえば、マクナマラ・アメリカ国防長官の国防計画の年次報告、これは一九六九年から七三会計年度を見通したものでありますが、それを見ますと、アメリカ側が一九七二年に計画されたアメリカの戦力の約二分の一が相手方から先制攻撃を受けても生き残るであろう。そして、その二分の一の戦力が第二撃として相手方に対して攻撃を加える。そのうち四分の三だけが目標に到達できる。その場合に相手国に対して、第一撃を先に加えるということを断念するだけの抑止力を持っておるだろうかどうかということで、いま丸山防衛局長の言われたアシュアード・デストラクションの効果を計算した数字が国防報告に出ております。あるいはそれより新しいものが出ておるかもしれませんが、アメリカ側は、そういうものとしての米ソ両方の万が一の全面核戦争になった場合の双方の人口及び工業力に対する被害をどの程度に見ておりますか。
  181. 丸山昂

    ○丸山政府委員 六五年の国防報告書だと思います。この数字が間違っておりましたら、後で訂正させていただきたいと思いますが、残存兵器の五分の一が効果的にソ連の都市に攻撃を加えることができれば、ソ連の全人口の三分の一、工業力の半分を破壊することができる、ということが書かれております。それから一方——ただいまのは別の出典でございますが、六五年度の国防報告書に対しましては、これは一億の人口とそれからソ連の工業能力の八〇%を破壊することができるという数字が出ております。
  182. 正森成二

    ○正森委員 いまの数字は、私が持っております資料と若干違いますが、ほぼ似ておるというように言えると思うのですね。  そこで、つまり現在の核大国の確証破壊能力、まず相手側の奇襲攻撃を受けても、それを全部吸収して、なおかつ生き残って第二撃を加えてもそれぐらいの効果を発揮することができるということになっておるわけであります。そこで、そういうようなものだとすれば、わが国のように島国で縦伸的な、領土の幅がない、そして工業都市というものが集中しておるというようなところに、万が一核戦争の惨禍をこうむるということになれば、どのような被害が起こるであろうかということは、きわめて明らかだと思うのですね。  そこで、われわれとしては、こういう核戦争に巻き込まれないということこそがわが国の防衛上大事なのであって、どこかの国と一緒になって、核戦争が起こっても、火の粉をかぶってもやむを得ない。それが抑止力になるんだというような考え方は、核兵器を持っておる大国の安全保障であっても、わが日本のような国の安全保障とは言い切れないものがあるというのが私のいま考えておる意見であります。  そこで、防衛庁長官伺いたいと思うのですが、今度、ロッキード事件というものが起こりました。その中で、対潜哨戒機のP3Cというのが非常に話題になっております。御承知のように一九七三年のロッキードと児玉譽士夫との契約によれば、P3C五十機以上を日本の自衛隊、防衛庁に売り込むことに成功するならば二十五億円の報酬をもらうことになっております。もちろん児玉譽士夫は秘密の代理人でありますから、公然ともらえるわけではなく、ロッキードがこの額を上乗せいたしまして、日本政府がロッキードに払った後、何らかの秘密のルートで二十五億円児玉譽士夫に支払われるということに現在の段階ではなるでしょう。そしてロッキード、児玉譽士夫双方とも、この契約を解除したりあるいは取り消したりしたという報道はいまだありません。ところがこの間の内閣委員会での答弁によりますと、坂田防衛庁長官は、P3Cの輸入の可能性を排除せず、逆にその可能性が非常に高いというように受け取れる答弁をしておられますが、あなたのこの御答弁は、児玉譽士夫に二十五億円払うようなことがあっても、国防のためにはやむを得ないんだというようなお考えでしょうか。
  183. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私は、国民にやはり納得のいく形で機種の選定は行わなければならないというふうに思います。一点の疑惑を招くようなことがあってはならないというふうに思っております。それから現在、国産にするのかあるいはP3Cにするのかということは実はまだ決まったわけではございません。それからこれは当然なことでございますけれども、ポスト四次防をいま作業いたしておるわけでございまして、その作業の結果が大体三月末から四月にかけまして陸海空それぞれから私のところに報告があろうかと思います。それを見まして私いろいろ検討をいたします。装備につきましてもあるいは編成等につきましても、昨年度行いました長官指示に基づいて、新たなポスト四次防の防衛構想を練っておる最中であるわけでございます。これが一応出ました後におきまして、どういうような対潜哨戒機が必要であるかということを決めなければならない。その際は、やはりわれわれユーザーの立場からいたしますと、現在のP2Jの能力は、対潜能力の点におきましてかなりおくれをとっておる。これを近代化しなくちゃいけないということが要請されておるわけでございまして、その際われわれといたしましては、やはり水準の高いもの、本当に日本の防衛、対潜能力を持つ必要のある機種の選定を行わなければならない。何といいますか、純専門的、技術的立場で検討をしてまいりたいというふうに思っております。
  184. 正森成二

    ○正森委員 私は、いま坂田防衛庁長官のお言葉を伺って、ユーザーという言葉も出ましたし、純専門的、技術的という言葉も出ました。しかし現在われわれは自衛隊に対して——私は自衛隊の存在を認めるものではありませんけれども、シビリアンコントロールということになっておりまして、坂田防衛庁長官、言うまでもなく文官であり政治家であります。その文官である政治家である防衛庁長官がユーザーという言葉を使い、そして純技術的そして専門的に考えるというのであれば、これは政治家としての統制は要らないんじゃないか、こう思うんですね。私が、防衛庁長官政治家としての坂田さんに伺いたいのは、まさに政治家として、現在の状況の中でどう決断するかということでなければなりません。私が予算委員会で伺いましたときも申し上げましたけれども、国の安全というのは、一つか二つの新しい機種の飛行機を採用するかどうかにあるのではなくて、国民に、この国こそ守るに値するというそういう気持ちを起こさせるかどうか、それが政治家としての要編でなければなりません。ところが現在、日本国民がこれだけ疑惑を持っておるのに、そして私がわざわざ質問の中で、あなたはP3Cを購入することによって、児玉譽士夫に二十五億円いくということになってもよろしいのですかという具体的な質問をしておるのに、それば全くお考えにならないで、ユーザーとしての立場、純技術的、専門的立場とおっしゃることは、裏を返せば、坂田防衛庁長官はそのようなことには関知しない、こういう答弁だととられても仕方がないと思うのですね。これはわが国の将来のためにもゆゆしい問題である答弁であり、坂田防衛庁長官政治家としての資質に関係する問題である、こういうように思います。再度答弁を願います。
  185. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 もちろん私、ユニホームではございませんし、政治家でございますし、三十年国会議員をいたしておるわけでございます。でございますけれども、私が特に純粋に専門的、技術的という言葉をあえて申しましたのは、たとえば業者の圧力とかあるいはある個人の売り込みに政治的に動く、そういうものを排除しなければいけないということを実は強調した意味を含めて、そういうことを申し上げたわけで、先生の御案内のとおりに、終局的には国防会議によってこの機種選定が決定される、その方向が示される、方針が示されるということは御承知のとおりでございまして、国防会議では防衛庁の主張あるいはまた財政的見地、あるいはまた産業政策上の観点あるいはその他いろいろのもろもろの政治的判断によって決められてしかるべきだと思うのでございますけれども、しかし性能そのものについて、ユーザーの立場を全然無視した形においてただ決められるということではいけないので、やはりこの機種等については専門的、技術的意見を尊重していただく、しかしそれはやはり決められるのは財政的見地もございましょうし、あるいはその他の産業政策上の問題もございましょうし、あるいはその他いろいろもろもろの政治家としての判断もございましょうから、それは先生がいま御指摘になりましたような形で決められるものだというふうに思いますけれども、私があえて申し上げましたのは、ある売り込み専門の人たちの圧力とかあるいはその政治力によって、こういうユーザーの第一義的な意見というものが大幅に無視されて決められていくというようなことではいけない、正森先生おっしゃるような意味において、シビリアンコントロールの名において政治家の判断ということが当然なければならない、そのためにこそ国防会議というものもある、またそのためにこそわれわれ国会議員がある、あるいは国会があるというふうに私は承知いたしておりますので、基本的にそう先生考え方を異にしておるのではなかろうというふうに思っておるわけでございます。
  186. 正森成二

    ○正森委員 いま御答弁がありましたが、私はやはり相当差があると思います。一度ならず二度まで私が質問しておりましても、ずばりと正面からはお答えにならない。  もっと端的に伺いましょうか。児玉譽士夫氏とロッキードとの間の契約が本人の意思に基づいて結ばれたということは、きのう検察庁の取り調べによってもこれはほぼ確かなようであります。もしそれが確かだったとしたら、契約がなくならない限りは二十五億円払われるわけであります。そういうことが少なくもそのままの状態でもやはり買うというようにおっしゃるのかどうか、端的にそのことを防衛庁長官とそれから政治家としての宮澤外務大臣伺いたいと思います。
  187. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その点には冒頭に明確にお答えをしておるわけでございまして、国民に疑惑のあるような機種の選定はやるべきではないのだというのが私の考え方であるというふうにお答えを申し上げておるわけであります。
  188. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま防衛庁長官が、国民に疑惑の残るような機種の選定をすべきではないと言われました。私もそう思います。
  189. 正森成二

    ○正森委員 そこで、坂田防衛庁長官伺いたいと思いますが、あなたはやはり内閣委員会において、P3Cを技術的、専門的にごらんになったのでしょうが、対原子力潜水艦能力というのは現在のP2Jでございましたかの十倍の能力があるんだということで非常に御執心のようでありますが、やはり原子力潜水艦に対しては十倍の能力を持っておる、だから日本の自衛隊がこれを対原潜に対して使う場合には、これは非常にユーザーの立場からしてはいいんだというようにお考えでしょうか。
  190. 丸山昂

    ○丸山政府委員 十倍、単純に十倍という比較が誤解を生みやすいと思いますので、若干私の方から補足をさせていただきたいと思います。  これは、私どもの海上自衛隊でオペレーションズリサーチをやりまして、この効果の評価をいたしたその結果を申し上げておるわけでございます。  これにつきましては、個々の具体的な海域なりそういうものを使用してということになりますと、いろいろバリュエーションが出てくるというふうに考えられるわけでございますが、一応海域におきます探知率と、それから捕捉をいたしました潜水艦を最終的に撃破をいたしますこのそれぞれの確率をコンピューターにかけて比較をしたというものでございます。したがいまして、その十対一という比率がそのままいつも個々具体的な場面において適用になるかということになりますと、必ずしもそうではないと思いますが、大変差のあるものであるという点については御認識をいただけるものではないかと思います。  何ゆえにこれほど差がついてくるかと申しますと、一番大きな要素は、まずセンサーそれ自体に大きな違いがございますが、センサーでとりました情報を処理をいたします電子情報処理装置これが大変自動化されておるということによりまして、現在P2Jにおきまして手作業で作業しておるものが全部コンピューター処理になるという、そういう関係で、原潜が水中速力が大変速いということと対応いたしまして、これほどの差が出てくるというふうに御理解をいただけるかと思います。
  191. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんのでこれでやめさしていただきますが、私はP3Cを原子力潜水艦に対する攻撃、そのための対潜哨戒機という上で非常に効果があるというように考えておられるのは非常に危険だと思うのですね。原潜というのは、これはポラリスを積んでおるのもある。そういうのに対して、P3Cが実際に行動を開始して使わなければならないという事態は、これはわが国を取り巻く軍事状況では、ソ連を相手にドンパチやるとき以外には考えられないのですね。ソ連を相手にドンパチやって、わが国のP3Cがそういうように非常な能力を発揮して行動を開始するというときは、これは原子力潜水艦にはポラリス型もあるわけですから、わが国が原子戦争に巻き込まれる可能性が非常に強いということであります。そういうことを想定してP3Cを買わなければならないというような戦略的な必要を考えておられるということは非常に遺憾だ、これはますます核拡散防止条約というものが、結局はわが国の平和と安全に必ずしも役立たないということを一方の面からやはり言うているものではないかというように思うのですね。なぜかと言えば、安保条約の長期堅持というものが核拡散防止条約とうらはらをなしておるわけでありますから。  そこで、時間が参りましたので、私はここにアメリカのラルフ・E・ラップが「ザ・ウエポンズ・カルチュア」というのですか「兵器文化」というのを書いております末尾の言葉を少し引用さしていただいて、私の質問を終わらしていただきたいと思います。省略いたしますが、一部でこう言っております。「太陽の照り輝くカリフォルニアのスロープ、むかしはオレンジの花が咲き、実がなったのに、今ではくほんだ植物が生え始めていて、そこで技師たちが軌道兵器を設計しているのだ。……美しきアメリカ、それが今では、兵器製造業者で、世界の兵器商人のアメリカ、か。」こういうのであります。  私は、今度のロッキード事件を考えておりましても、そういう考えを持たざるを得ません。私は、核兵器拡散防止条約批准について、なおいろいろ検討すべき点があるというように考えております。
  192. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 正森成二君の質疑は終わりました。  続いて、鈴切康雄君。
  193. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカのロッキード社のP3Cオライオンは、皆様も御承知のとおり、核爆雷ルルを搭載できる装置を持っているわけでありますから、当然そういう意味から言うならば、今度の核防条約には切っても切れない立場にあろうかと私、思いますが、そのPXLの問題に入る前に、まず外務大臣にお聞きしておきたいと思います。  過日、衆参両院におきまして、ロッキード問題に関しての決議が行われました。この決議につきましては、言うならば、与野党一致の国会決議として採択をされたわけでありますけれども、この国会決議に対するところの御認識をまずお伺い申し上げたいと思います。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 両院におきましてこのような決議をなされるということは、まことに前例の乏しい、きわめて異例のことであると存じます。国民が本件に持っております異常な関心、この解明に対しての国民の心からの願いというものを国会がああいう形で表現をせられ、米国上院及び政府に対して要望せられたものというふうに考えております。
  195. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この国会決議は、「ロッキード問題のわが国に関するいわゆる政府高官名を含む一切の未公開資料を提供されるよう米国上院及び米国政府に特段の配慮を要請する。」というふうになっております。ところが、このところ、アメリカからの言うならば資料提供について、日米間で条件調整の交渉が行われる可能性があるというふうな見解を示されておりますけれども国会においてはその条件というものを一切つけていないわけであります。先ほども申し上げましたように、政府高官名を含む一切の未公開資料を提供せよということでございますけれども、こういうことになりますと、やはり条件におけるところの提供というものは国会軽視になるのではないでしょうか。その点について。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 米国の内部でいろいろ議論があるということは承知しておりますけれども、現実に米国がわが国に、条件を提示してきたということはまだ現在の事態ではございません。米国内の議論が報道されておるという段階であろうと思います。
  197. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もし条件という、米国の方からそのような状態で来た場合に、日本の国としては、やはり条件にも厳しい歯どめがかかってくるという事態を考えたときに、どうあるべきが国民の世論にこたえる道であるか、その点についてはいかがでしょうか。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 全く仮定のお尋ねでございますので、それとしてお答えを申し上げるしかございませんが、わが国の大きな国益に照らし、また実行可能であるか、ないかといったような観点からも当然これは検討をいたさなければならないものであって、条件をそのまま承知したというわけにはまいらないものであろうと思います。これは仮定の問題でございますから、どういうことが出てくるかわかりませんけれども、一般論として申し上げれば、そういうふうに思います。
  199. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この問題につきましては、すでにアメリカの銀行委員会においていろいろ論議をされている問題でありますので、そういう点につきましてかなり条件ということが付加をされてくるというふうに予想されるだけに、この問題についてお伺いをしているわけでありますけれども、いま一番やはり国民が知りたいのは、何といっても政府高官の名前と、そして金の流れではないかと思うわけであります。それと同時に、やはり守秘義務という中にあって余り明らかにされないでしまうのではないかという不安と、国会においてこれを明らかにせよという、そういう国民の多くの声があるわけでありますが、それに対してはどのようにお考えになっていましょうか。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の立場は、総理大臣がしばしば述べておられますように、提出せられた資料は原則として公開をする、これが政府の立場でございます。
  201. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 条件をもし向こうの方からつけてきた場合、国会はまさしく一切の未公開資料並びに政府高官名についてその資料を提出せよということを言っているわけでありますから、それに対してもし条件つきで来るようなことがあった場合、政府としてはどのような手続をされるか、あるいは釈明をされるか、そしてまた、国会に対する資料についてはどのように提供されるお考えでしょうか。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府間の話し合いとしての条件ということでございますれば、これは政府として、ただいま申し上げましたように、わが国の国益に照らし、そして何が実行可能であり実行可能でないかということは、十分判断をいたしてわれわれの態度を決めなければならないと思います。また、国会がどうお考えになりますかということは、これは国会において御意思をお決めくださりますべきことであろうと思います。
  203. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、要するにアメリカの高官名を含むところの資料が提出をされた場合、政府において取捨選択をしながら、そしてあと残りの資料国会に出すということは国会軽視になるのではないか、そのように申し上げておるわけでありますが、その点についてはいかがでしょう。
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府の立場は、総理大臣が述べておられますように、いわゆる政治的な顧慮というものはいたさないということでございます。
  205. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それではPXLの問題について、防衛庁長官にほとんど質問が集中するのではないかと思いますけれども、お答えを願いたいと思います。  実は、防衛庁から出しました「次期対潜機問題の経緯について」という内容の中に、「防衛庁はかねて国産化を前提とした次期対潜機の研究開発を計画していた。次期対潜機は現有対潜機の減勢を補うものであり、早期警械機の研究開発とともに防衛庁としては、研究開発の重要な項目であった。」このように、言うならば国産化ということについて強く推しておられたわけであります。ところが、昨日の委員会でございますけれども、国産かあるいは輸入かという問題についてはいまだ決まっておらない、これは私も承知しておるわけでありますけれども、P3Cは、現役機のP2Jの十倍も高性能があるのでというふうに述べられて、防衛庁当局としてはP3Cがロッキード事件とは別に依然有力な候補機であるという考え方を示唆されたというふうにありますけれども、かつての防衛庁の見解とは全く正反対になっているわけでありますけれども、なぜこのようにして変わってこられたか、その点についての背景、それをお伺いいたします。
  206. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私から御説明を申し上げます。  御案内のように、防衛庁といたしましては、四十三年当時から現在の対潜哨戒機P2Jの後継機についての研究開発をするという方針を立てまして、基本的な研究を行いますと同時に、四十五年から逐次国産化を前提とする研究開発ということで大蔵に予算を要求いたしましたが、これは先ほどの先生の御指摘にございますように、大蔵省としては、国産化をいたしました場合に相当の財政負担を伴うということで、国産化を前提とした研究開発ということについては終始反対をし続けておった、こういう状況でございます。防衛庁が国産化ということで当時進みました背景には、一つアメリカから貸与されました当初のいわゆるMAP供与の装備でございますが、これにかえるために、逐次国産でまいるということになっておりまして、それが一つの大きな背景でございますが、また同時に、当時わが国で知り得ましたアメリカの対潜哨戒機はP3Cでございまして、P3Cについては、頭脳に当たりますコンピューターの近代化計画ということが進められておるということは承知をしておりました。いわゆるA−NEW計画と言われるものでございますが、このA−NEW計画について在日のMDAOを通じまして、これに関する情報の提供を求めておりますが、これに対してアメリカははっきりと提供できないという回答をよこしておるわけでございます。そういうことでP3Cのレリースがきわめて困難であるという当時の判断も当然あったわけでございます。そういうことで国産開発という線で大蔵に予算要求をいたしまして、結論的に四十七年の十月、御案内のように両者との間の国産の是非をめぐる……(鈴切委員「答弁になっていないですよ、それは」と呼ぶ)ちょっと経緯をお話し申し上げておるわけでございますが、できるだけ簡単に申し上げます。  そこで、十月の九日の国防会議の議員懇談会における了解事項というものが出たわけでございます。その後四十八年に至りまして、P3Cについてのレリースの見通しがついてまいりました。当時海幕としてはすでに方針が専門家会議で議論をされる、検討されるということでございましたので、この点については明確な意思表示はもちろんアメリカサイドに対してなしておらないわけでございますが、ただ、先ほど申し上げましたように、それまでレリースされないという情勢が変わってきたということが一つでございます。  その後、専門家会議の期間中に、海外に第一回の調査団を派遣をいたしております。その際に、ヨーロッパの機器と、アメリカについてはP3C、それからボーイングの737を改造する型、こういったものを調べたわけでございますが、その時点にP3Cの優秀性というものがだんだんわかってまいったということでございまして、これはちょっと簡略化いたしますが、五十年、昨年の五月に第二回の調査団を派遣をいたしております。これはもっぱらP3Cだけについて調査をするためにアメリカに派遣をされたわけでございますが、そこで、特にコンピューターのソフトウエアの非常に発達をしておるということ、それの重要性、それから搭載機器の信頼性、こういったものについての優秀性を認識をいたしまして、そこで海幕の内部といたしましては、昨年の七月に性能、経費、納期、それから片や国内開発の困難性という諸情勢を勘案をして、海上自衛隊としてはP3Cを導入することを望むという意見が出てまいったわけでございます。しかしながら先ほどから申し上げておりますように、防衛庁といたしましては在来の経緯、その他いろいろな諸問題もございまして、結局現在の時点におきましては、次期防の、ポスト四次防の全体構想の中でその問題をもう一回見直すということで作業を行っておる、こういう段階でございます。
  207. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 非常に御答弁が長いので時間がなくなってしまうわけですから、簡単にしていただきたいのです。  ロッキードのコーチャン副会長の証言によりますと、日本政府高官に渡されたという多額の金の行方をめぐって、実は国民の間で大きな疑惑を生んでいるわけであります。PXL、次期対潜哨戒機をポスト四次防で決めるという立場である防衛庁としては、大変な影響があろうかと思うわけでありますけれども、PXLの問題で、ロッキード社を通じてある人を介し、政府高官に流れたという事実が判明した場合はどうされるかという問題が残ってくるわけであります。  そこでお尋ねをいたしますけれども、ポスト四次防の決定前にもし判明した場合はどうなるのか、あるいはポスト四次防決定後に判明した場合にはどうなるのかという点についてはどうお考えになりましょうか、防衛庁長官
  208. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これは国民に疑惑があってはいけません。自衛官の士気にも影響することでございますから、これは国民の納得のいくような機種の選定を行わなければならぬというふうに考えております。
  209. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 機種の選定をやるということですが、いま防衛庁はP3Cというものについて御執心なんですね。これはロッキード社です。ロッキード社のP3Cがどのような形で決まっていくか、これからの問題にしても、これからいよいよアメリカ資料が入ってくる。そして入ってきて、高官名について、それぞれかなりの政府高官の名前が出た場合に、ポスト四次防を決定する前にそういうふうな問題が出た場合には、P3Cはどうされるのかあるいはポスト四次防が決まってしまってからそういう問題が出た場合にはどうするのか、あるいは防衛庁は潔白だというふうにおっしゃっているわけでありますけれども、しかし、防衛庁のさらにシビリアンという立場から国防会議というものがあるわけであります。国防会議関係のそういう中から、もしもそういうふうな政府高官の名前が出てきたということになりますと、これまた問題だと思うのですよね。あなたが言うのは非常に抽象的で、国民の納得のいくようにということは、具体的にはどういうふうにするのですか。
  210. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 申し上げておきたいのでございますけれども、実を申し上げますと、P3Cを決めるのかあるいは国産に決めるのかまだ決まってないんでございます。そしてポスト四次防の防衛構想をいま考えているわけで、作業を進めているわけでございまして、その作業がこの三月の末から四月にかけまして私の手元に出てまいります。それを検討いたしまして、一体ポスト四次防ではどういう装備が日本の国防上必要なのか、あるいはまた編成はどうしたらいいのかということを決断しなくちゃならないわけでございます。そうなりました上で、一体機種の選定をどうするかということでございまして、どうしても、それはタイムリミットはございますけれども、一応八月ごろかと思うのです。最終的には十二月になるかと思うのでございますけれども、そしてその際、当然のことながら国防会議に諮らなければならない、こういうことでございまして、このP3Cということをよく言われますけれども、たとえば新聞等にも、坂田長官非常に執心だというような記事も出ますけれども、まだ決まっているわけじゃない。決めているわけじゃない。防衛庁の中におきましても、海幕はユーザーの立場からそれを非常に主張をしている。ということは、P2Jというものが非常に性能が劣っておる。現にアメリカが使っておりますP3Cというものを見ておりますし、知っておりますし、そういうことから考えまして、P2Jに乗っております自衛官は非常に苦労をしておるわけでございます。そういうことから言いますと、もう少し機能の高いものを持たせでやりたい、またそれが日本の防衛上必要だということは私いま考えておるわけでございまして、これ以上むしろ具体的にはお答えできないのが私の立場でございます。
  211. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 二月に陸海空の幕僚監部の方から、いわゆるポスト四次防に対して、十三兆円に上る一応原案というものが出されたというわけですね。その海上幕僚監部から出された原案の中には、P3Cということをやはり前提として、そしてポスト四次防というものを幕僚監部の段階でお考えになっているというふうに私は感ずるわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  212. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私の手元までまだ、三月の末かあるいは四月の初めになりますか、陸海空で話し合ったもの、あるいはもう事務的にはいろいろ出てきておるかと思いますが、私はまだ聞いておりません。
  213. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私から御説明申し上げます。  実は私も国会関係がございまして、二月から内局に対する説明がございましたけれども、私自身まだ直接聞いておりません。もちろん、ただいまおっしゃられますように、十三兆という数字はもう全く私存じておりませんで、いまの段階で、その全体の枠をどの程度に入れて要求が出てきているかということも承知をしておらないわけでございます。ただ、いまのP3Cにつきましては、先ほど申し上げましたように、海幕としてはそのP3Cが望ましいという考え方を持っておりますので、あるいはそれを中心とした案が提案されているものと思いますけれども、この点についても私、直接まだ聴取をいたしておりませんので、はっきりしたことは申し上げられない段階でございます。  それから、これは先生御記憶だと思いますけれども、昨年の内閣委員会におきまして私から申し上げておりますように、現在依然としてやはり国産かあるいはP3Cかという、こういう二者択一の問題で問題を考えておるわけではございませんで、いろいろなその間の折衷案、バリエーションをいろいろ考えながらいままでもやってきておりますし、これからもいろいろな点でその辺の問題については弾力性を持って考えてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  214. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 二月の初めに防衛庁の幕僚監部から出されたいわゆる陸海空、この原案を受けて、要するにいま現在、制服と内局の間に説明を受けておられるということですけれども、いま防衛局長は全然説明を受けていない、こういうのはずいぶんおかしいじゃないですか。それじゃ、これから八月まで、概算要求を出されるまでに、どのような過程でいろいろその問題が煮詰められていくか、その点について少し御説明願いたい。
  215. 丸山昂

    ○丸山政府委員 まず二月いっぱいかけまして、各幕から内局に対する説明をやっております。内局で聞いておりますのは各課長でございます。課長と部員が聞いておるわけでございます。これがまとまりますと内局からの考え方を幕に示します。これが三月、現在もうすでに三月に入っているわけでございますが、三月の中ごろになるかと思います。三月の末から四月の半ばごろにかけまして、今度の次期防の主要な項目になるもの、このPXLをもしやるとすれば、これが主要な項目の一つになると思います。FXとかいろいろあるわけでございますが、これについて直接大臣のところで御方針を決めていただきます。その大きな主要な問題を御決定をいただいて、そこでそれを含めた全体の計画、これを四月のいっぱいに各幕で作業をして、私どもの方に上げてもらうということになっておるわけでございます。そこで防衛局案ができますと、あとは防衛庁全体としての作業があるわけでございますが、この初年度は来年度の予算に関係するわけでございまして、来年度については、引き続いて五、六月を通じまして私どもの方の予算編成作業に入るわけでございます。そこで全体を合わせましたものが、先ほど大臣が申しておられます八月の末に、五十二年度の概算要求を防衛庁から大蔵省に持ち込むわけでございますが、そのときには、当然その後の四ヵ年の全体計画についても、大蔵省に説明をしなければならないということになるわけでございまして、大体そこがタイムリミットというふうに考えております。これはあくまでも事務ベースの問題でございます。そこでその後におきまして国防会議で御検討いただきまして、十二月の予算編成までの間に国防会議において次期防についての全体計画の御決定をいただく、大体こういう段取りになっておるわけでございます。
  216. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁はFXにしてもあるいはPXLにしても、今日まですべて商社を通じて購入をしてきておられます。私はここにやはり大きな黒い霧の疑惑が存在する原因をつくっているのではないかと思うわけでありますが、商社を通じて武器あるいは装備を購入する方法は、今後何らか改善をしていかなければいけないと私には思われますが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  217. 江口裕通

    ○江口政府委員 従来、機種決定等におきまして、とかく商社問題というのが世上論議になっておりますが、元来のたてまえから申しますと、航空機等の重要装備品の機種決定に際しましては、防衛庁が性能、経費等についてみずから調査検討を行いまして、国防会議の議を経て決定するものでございますので、本来商社の介入ということは考えられない性質のものであると私どもは了解しておるわけでございます。しかしながら、現在丸紅・ロッキード問題というのが御存じのように非常に世間に疑惑を与えておることは事実でございますので、今後、こういった機種決定につきましては、商社のいわゆる介入というものは一切排除したいということで、厳正にやってまいりたい、このように考えております。
  218. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁は、日本の防衛という観点から純粋な立場でよりベターなものを選択しなくてはならないはずです。何千億という買い物をするのに商社を通じなくては購入できない。あるいはアフターサービスが非常に困難だからという物の考え方をなくして、やはり購入するときに輸入会社のアフターサービスまですべて契約の中に入れるという物の考え方でいけば、こういうふう偽商社との黒い霧というものはおのずとなくなるわけでありますから、そういう意味において、今度のたとえばPXLが外国機導入であるという場合においてはどのようにお考えになりましょうか。
  219. 江口裕通

    ○江口政府委員 これも仮定の議論でございますので、いま直ちにこういうことになるというふうに申し上げることはできないと思いますが、たとえばPXLの対象といたしましてP3Cを導入するということが決まった場合でございますが、これはいろいろ形がございまして、完全輸入をいたします場合と、それからライセンス輸入をいたします場合がございます。それで従来の例で申しますと、104にいたしましてもF4にいたしましても、わが国が導入しておりますのは、おおむね、全部と申してよろしいわけでございますが、ライセンス輸入ということになっております。例外はRF4Eという偵察機を入れておる。これは十四機ばかり完全に入れておりますが、それ以外はほとんどライセンス輸入ということでございます。  ところで、ライセンス輸入いたします場合の契約でございますが、手続的に申しますと、防衛庁と、これをライセンスを受けてつくりますあるいは三菱重工でありますとか、そういったいわゆる日本のメーカーとの間の発注契約が行われる。それからさらにそのメーカーと相手方のロッキード社あるいはマグダネル・ダグラスというような会社との間の製造委託契約が行われるわけでございます。そこで、必要部品の導入あるいは機材の導入ということがございます。ただし、この場合は、従来ともメーカーが入れておるという形でございまして、ただ、一部輸送代行というようなことで商社が使われておるというのが実態でございます。しかしながらそれもやはり輸送代行の過程におきまして商社が入るといえば入るわけでございますが、そういうものにつきましても今後要すれば価格の適正化、向こうから入れます物を適正に入れるということが一番ポイントになると思いますので、その点についてはこれからも十分検討してまいって、不正なことの起こらないようにやってまいりたいと思っております。
  220. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは仮定の問題でありますけれども、P3Cの購入の可能性というものが私はまだ残っていると思うのですね。そういうときに、もし児玉または丸紅等に、ロッキードから契約に基づく支払いが行われるのでないかということも考えられるわけでありますし、またそうすれば、結局ははね返って国民の税金をこれら代理店、コンサルタントに支払うことになるわけでありますけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  221. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 でございますから、これまた仮定でございますから、何とも申し上げようが実は具体的にはないわけで、私が申し上げられることは、やはり国民の疑惑を招かないように、そしてまた国民の納得のいく形においてこの機種の選定を行う、こう言う以外にお答えはできないわけであります。
  222. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 まだ可能性は残っているわけでしょう。可能性が残っているわけですから、そういうふうな児玉あるいは丸紅等に契約に基づくところのお金がそれぞれ支払われる。そういうことになると、結局は国民に税金がはね返ってくるわけでありますから、もしP3Cという外国機導入の場合においてある程度決まるということになると、その分についてはあなたの方としてはまけさせるのか。どうです。その点は結局は向こうで手数料を払うわけですから、高い物をこちらは買わされるわけですから、そういう場合には厳然としてまけさせるというふうな、そういう態度で臨まれるかどうか。
  223. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そういうことが国民の疑惑を払拭するということになるとするならば、そういうことも考えなければならないというふうに思います。
  224. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五月二十五日から六月八日の第二次調査団の派遣は、外国機導入の場合、米国のP3Cを対象というふうにしておりますけれども、いつP3Cということが決まったのでしょうか。これは国防会議の事務局長がいいかと思います。
  225. 丸山昂

    ○丸山政府委員 第二次の調査団は防衛庁から派遣をしておりますので、私の方から御説明を申し上げたいと思います。  御案内のように四十九年の十二月の末に国防会議の専門家会議の答申が出まして、それに基づいて翌日の国防会議の議員懇談会におきまして、外国機の導入か、それから国産かという問題については、いずれと決しがたいという例の答申案が出ておるわけでございます。この外国機につきましては、すでに内閣委員会で何回も私、申し上げておりますように、ヨーロッパの二機種につきまして、そのほかアメリカのボーイングの737の改造型もございましたけれども、これは当初から余り問題になっておりませんが、第一次の調査団を派遣をいたしました際に、いずれも一九八〇年代の取得ということで当時開発中でございまして、現実にその調査の対象になるものがP3Cを除いてなかったということでございまして、当然専門家会議におきましても、外国機という場合にはP3Cということで御検討をされたというふうに私ども承知をしておるわけでございます。  そういう経緯を踏まえまして、いまの国産化かあるいは外国機導入かということについての財政的、技術的な基盤の諸条件関係省庁において詰めろ、こういうことになりまして、関係省庁と御協議をいただいたわけでございますが、私どもは、三月に国防会議の事務局におきまして関係省庁の参事官会議が開かれました際、次期の対潜機の調査団として今度はP3Cにしぼって調査をするということについて関係省庁の御了解を得まして、そして五月に先ほど先生指摘の第二次の調査団を派遣をいたした、こういう経緯でございます。
  226. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十二月答申のとき、いわゆる玉虫色の答申が出されて、国内開発をすることが望ましいけれども、当面外国機の導入を図ることもやむを得ないと考えられるというふうに内容はなっておりますね。そのときに、外国機導入についてはP3Cオライオンであると決定されたとあるけれども、それは本当ですか。これは国防会議事務局長。
  227. 内海倫

    ○内海政府委員 御答弁申し上げますが、答申につきましてはいろいろな検討の結果が、先ほども丸山防衛局長申しましたように、国産開発対象とする防衛庁案とそれからP3C、これはなぜP3Cと題したかと言いますと、防衛庁の方で調査いたしまして、その報告に基づくアメリカのP3C、それからイギリスのニムロッド、それからもう一つフランスで現用しかつ哨戒中の飛行機、こういう三者を検討いたしました結果、二つについてはとうてい一九八〇年以降でなければ入手し得ない状況にあるというふうな事情で、現状において対比検討する対象は、アメリカの現用しておるP3Cのみであるということで、さらにしぼりまして、この二つの、要するに国産開発予定機とそしてP3Cとを専門家会議において対比検討した結果、いずれをも否とする決定的な要素を見出し得ない、こういう結論になったわけでございます。  したがいまして、付言として、国産開発が本来望ましい、そしてそれはもし財政的な面、あるいは現在における技術的な諸条件、そういうふうなものが十分であるならば国産開発をすることが望ましいが、しかしながら現実を見ると、防衛庁の要望しておるような時期との関係から、もしそれがうまくいかないのであるならば、あるいはそういう条件を考慮するのであるならば、次の研究開発というものを考えて、当面つなぎの導入をすることもやむを得ないものと考える、これがいわゆる答申の考え方でございます。  したがって、一貫して流れた思想というものは、本来日本において使うべき物は日本で生産していくということが一つの基本的な理念である、そういうことでございます。  したがいまして、P3Cに決定するとか、あるいはP3Cをリコマンドするとか、そういうふうな意味合いのものではなく、ここに与えられた課題は、国内開発をすることの是か非かという問題を討論し、論議をし、結論を出してもらったわけで、その結論に対して、専門家会議としていま申し上げましたような付言を加えた、こういうことでございます。  したがいまして、専門家会議の立場からはP3Cを推奨するとか、あるいはましていわんやP3Cを決定するというふうなたてまえのものではございません。
  228. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうでしょう。答申には外国機導入の場合はP3Cというふうにはなっていないじゃないですか、そうでしょう。答申は、外国機導入の場合にはP3Cをしなさいというふうにはなっていないでしょう。まあ時間がないからいいです。なっていないのです、これは。  ところが、すでにもう丸山防衛局長の答弁には、専門家会議の段階におきまして外国機導入するとすればP3Cであるということになったわけであります、要するにもうこういうふうに答弁がされているわけですね。ここに私は一つの大きな問題があろうかと思うわけです。  実はニムロッドMK1とアトランティックMK2ですか、これは旧式の対潜機で、P2Jにちょっと毛の生えた程度なんです。専門家であれば全部そんなことはわかるのです。ジェーン年鑑をごらんになればそんなことはもう全部わかる問題だ。しかも、ニムロッドMK2とアトランティックMK2Bですか、これは一九八〇年代でないと開発されないということは、これは一本外務省を通ずればわかる問題でしょう。それをわざわざP3Cにまぜて、もう当然P3Cが外国機導入の場合においては決まることが承知の上で、しかもわざわざ調査団を出して、そうして高い費用を使いながら集めて、そして言うならば結論を出すなんということは、全くこんなものは許されませんよ。  しかも、御存じのとおり、昭和四十七年の十月九日に白紙に戻されましたね。そうして四十八年の八月十日に国防会議の専門家会議を発足して、四十九年十二月二十八日に答申を出し、この間実に二年と二ヵ月もかかっておるわけですね。そうしてその上に、さらに玉虫色のどっちつかずの答申を出して、外国機導入の場合はP3Cしかないという結論を答申に明記もしない、こういうふうなやり方はもう時間かせぎとしか思えないじゃないですか。要するに白紙に戻して、もう国産というものをあきらめて、輸入のそういう段階にしていくということの一つのパターンを示しておるのじゃないですか。今度のいわゆるPXLの問題について大変に疑惑を持っておるのは、言うならばそういうところに問題があるということなんですよ。その点についてはいかがですか。
  229. 内海倫

    ○内海政府委員 今日になってみますと、いかにもそれが引き延ばされたあるいは意識的に引き延ばしたと、こういうふうにいろいろと御理解されたり、あるいはそういうふうなことが私ども新聞その他で報ぜられておることを承知いたしておりますけれども、しかし現実の問題は、われわれ事務当局といたしましては、そしてまた専門家会議といたしましては、その与えられた任務の中で精いっぱいの努力をしてきております。ましていわんや、それを引き延ばすことがいま言われますようにP3Cの導入につながるものであり、あるいはまた引き延ばすことがP3Cの導入を目的にしたものであるというふうなことは、事務当局はもとより、あるいは国防会議の皆さんにおいても、あるいは専門家会議の皆さんにおいても、だれ一人そういう問題を頭に置いた人は一人もいない。むしろ、私どもはこの白紙になりました経緯、この経緯が、数年間にわたる防衛庁と大蔵との間のむずかしいいろいろないきさつをたてまえにして、こういうふうなむずかしい問題に対決して、どういうふうにこれを最も正確な、最も厳密な形で答えを出すかということが、私どもの一番大事な問題であるというふうに考えておったわけでございます。  結果的に見ますと、いま二年数ヵ月とおっしゃいます、それは事実でございますから間違いございません。しかしながら、そのことについていささかも、それがP3Cをどうこうするための意図であるというふうに御理解願うことは、私もきわめて残念でありますし、また関係した人たちにとってもきわめて、全く考えも及ばない問題である。このことだけは私は、先生のいまの御質問に対してはっきり申し上げておかなければならない。もしまた、今後いろいろと御質問もおありと思いますから、その辺の事情は私は十分に解明していかなければならない、こういうふうに考えております。
  230. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その疑惑は、いまのあなたの御答弁では晴れません。すべてそのような状態で、現実の問題として動いてきている。しかも児玉は、昭和四十八年にはコンサルタント契約を結んで、五十機PXLのP3Cを売り込んだならば、二十五億円支払われるという報酬規定までなされておるということならば、当然何らかの形で動かされてきておるということは、国民は決してすっきりした気持ちでこの問題を考えてはいません。あなたが言うそういう御答弁は全く国民の前においては通用しない言葉である、私はそのように思います。  しかもこの中にありまして、了解事項、その「国産化問題は白紙とし、」云々から「専門家の会議を設ける等により、慎重に検討する」普通ならば、慎重に検討するというのはいい意味でとれますね。ところが、いまこうなってまいりますと、これは延ばせという意味にしかとれませんよ。そうじゃないですか。慎重になんというのは、延ばせという意味にしか実際にとれません。すべてはそういうふうな事実関係に基づいて、いまの問題を判断するのが一番正しいやり方じゃないですか。それについては、今後政府高官の名前等の資料も来るわけでありますから、あなたの方はそれに対して正しかったかどうかは歴史が判断する問題であるにしても、とにかくこの問題について防衛庁長官、今後やはり国民に疑惑のないような決め方をしていかなければならないと私は思うのですけれども、最後に御答弁を願いたいわけであります。  もう時間が来ましたので御答弁だけいただいて、ずいぶんたくさん質問が残ってしまいましたが、またそれは後日にやるということにいたします。
  231. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 鈴切先生の御指摘、まことに私も同じような気持ちでございまして、ひとつ一点の疑惑も招かないような次期対潜哨戒機を決めたいというふうに思っておる次第でございます。そうでなかったならば、国民理解と支持と協力を求めた防衛力というような私の防衛政策というものは成り立たないというふうに思っております。
  232. 内海倫

    ○内海政府委員 答弁を求められておるわけではございませんが、ただいま先生お話しの件に関しまして、もう一度私は申し上げたいと思いますが、もしそういうふうなおっしゃるような黒雲のようなものがわれわれの上の方に漂っておったというような事実を、私があるいは関係の人々が片りんさえも知っておったならば、私どもはこういう仕事にはとうてい着手できません。私どもは、純粋な行政官として、純粋な仕事をする者として、最も何物にも煩わされないで誠心誠意仕事を続けてきておるわけであります。もしそれが、たまたまこういうふうになってきたから、おまえたちはあるいは国防会議は、あるいは関係者はそうであったのだろうというふうに御理解願うことは、この白日のもとで仕事をしておるわれわれとしては遺憾至極であります。
  233. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま御答弁いただいたわけでありますけれども、一向に疑惑は晴れないわけであります。
  234. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これにて鈴切康雄君の質疑は終わりました。  続いて永末英一君。
  235. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣は御退出の時間が迫っているようでございますが、いずれまた本委員会で委員長から十分に外務大臣の時間はいただけると確信をいたしておりますけれども、外務大臣に少しく質問申し上げます。  外務大臣は、アメリカわが国とが外交上パートナーだとお思いですか。
  236. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 はい。
  237. 永末英一

    ○永末委員 それはどういう種類のパートナーでしょう。全く対等の立場でやっていくパートナーだとお考えですか。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  238. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 基本的に、いわゆる民主主義と申しますか、そういうものを信じ、また自由経済を信じ、お互いの経済関係も補い合う関係にあり、しかも安全保障の取り決めを結んでおる等々、いろいろな意味から見ましてよき友人の国であるというふうに考えております。
  239. 永末英一

    ○永末委員 ラムズフェルド国防長官が本年度の報告を出しました。その中で次のようなことを言っているわけです。軍事力は国際紛争の基本的調停役である、この言葉を宮澤外務大臣は承認されますか。
  240. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはアメリカの持っておる哲学であろうと思います。わが国考え方がやはり違うのではないかと思います。
  241. 永末英一

    ○永末委員 さらにラムズフェルド国防長官は、軍事力の裏づけを得た外交政策をアメリカはやっておる、こう言うのですが、あなたの外交政策と一緒ですか、違いますか。
  242. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の外交政策は、憲法の定めるところに従って戦争を放棄した立場からやっておりますので、アメリカの外交政策とその点は考え方が違うと思います。
  243. 永末英一

    ○永末委員 さらにラムズフェルド長官は、アメリカに対する主たる挑戦者はソ連であると明確に国名を挙げて報告をいたしております。わが国の場合には主たる挑戦者がありますか。
  244. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の立場から申しますと、国を挙げてこれが挑戦者であるというようなことを申しますことは、私は適当でないと思います。
  245. 永末英一

    ○永末委員 だといたしますと、先ほど同じ意味での、同じ立場での外交上のパートナーであると言われましたが、明らかにアメリカわが国とでは、外交上パートナーらしくあっても、その基本的な動因は違いますね。
  246. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 よき友人の国であると申し上げましたが、同じような哲学を持つ外交上のパートナーとは申し上げなかったと思いますし、確かに意味合いは違うと思います。
  247. 永末英一

    ○永末委員 本日は核防条約の審議でございますので、少しくアメリカの戦略核戦力に対する考え方について、宮澤外務大臣がどういう評価をしておられるか聞いてみたいと思います。  現在ICBMにつきましては、ミニットマンが主力でございますが、アメリカは、ミニットマンは将来ソ連の大陸間弾道弾の精緻な発達によって骨抜きになるおそれがあると心配をいたしております。したがって、これに対しましてはMXミサイルが、一九八〇年代にミニットマンの一部または全部についてかえられるように開発を急がなければならぬというのがアメリカの評価でございました。これは核軍縮をやるつもりだとお考えになりますか。
  248. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この辺は簡単に申し上げることがむずかしいと思いますけれども、やはりSALTIあるいはSALTIIというものは、片方で両方とも熱意を持って推進しておるわけでございますから、全体としておのおのの理由からある程度の、いわゆる核軍縮という言葉を気に入らないかもしれませんが、青天井の競争はよそうという意識は働いておると思います。
  249. 永末英一

    ○永末委員 SLBMの現在の主力はポラリス3型、これが一番最新式でございますが、これをトライデントにかえようといたしておる。これは射程距離またば誘導等におきましてさらに精緻なものでございまして、これは核兵器の増強でございますね。
  250. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それ自身はより効率の高いものにかわると思いますが、SALTの全体の枠組みの中のことでございますから、SALTに働いておりますのは、青天井の競争はよそうという思想はやはり両者にあると思います。
  251. 永末英一

    ○永末委員 SALTの全体の数の中ですと、B52からB1へ変更することもあなたは賛成されますか。
  252. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは私が賛成とか反対とか言う立場にございません。大きな枠組みをともかく設けたということを、さらにその精神が進んでいってほしいと思うのみでございます。
  253. 永末英一

    ○永末委員 宮澤外務大臣はSALTIIというものの限界を非常に高く評価されておられるようでございますが、このラムズフェルド報告によりますと、二つの巡航ミサイル、すなわち水中ではSLCM、空中ではALCM、これをどんどん開発するのだと言っている。この巡航、ミサイルについては、まさしくソ連との間で合意を見かねてごたごたしていることです。あなたはこれをやらぬでおけという御意見ですか。あなたはこういうものは、ソ連とがたがたしておるのでやらない方がよろしいという御意見をお持ちでございましょうか。
  254. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 SALTIIのいまの段階が実は正確には外部にわからないのでありますけれども、いわゆるクルーズミシルとバックファイアとの間での何かの妥協ができましてSALTIIがまとまればいいということを考えております。
  255. 永末英一

    ○永末委員 これで宮澤さんへの質問の最後にいたしますが、わが国核防条約に入ると、核軍縮について、何かわが国政府は発言権が持てるようになるような印象をいままで与えてきた趣がございますね。したがって、もし、SALTIIというものが、これは青天井ではなくて一応天井をつくるのだから、世界核軍縮のために必要だとわが国が思うのなら、米ソ両国に対して、これらの点についても発言権がなければならぬと思いますが、そういう発言権を核防条約に入ることによって持てるとお考えですか。
  256. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国のそういう場合の発言権というのは、わが国がこのような平和憲法を持ち、それを三十年間忠実に実行してきておるということが、私は何よりも大きな発言権であると思いますが、さらに、核防条約批准しなかった場合、批准した場合を比較して考えますならば、わが国自身がこの条約批准することによって、わが国の今後二十年間の立場を規制するという意味ではやはり一つの、無言と申しますか有言と申しますか、そういう意味での意思表示になる、それは意味のあることと私は思います。
  257. 永末英一

    ○永末委員 宮澤外務大臣は、いずれまたお聞きいたしますので、どうぞ御退席を。  防衛庁長官伺いますが、あなたは基盤防衛力という構想を発表されました。その前提としてあなたが談話等で発表せられたところによりますと、現在デタントであるからということを前提にしてこれを考えたのだという御説明でございます。あなたの言われるデタントというものはどういうものですか。
  258. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私の申し上げますデタントは、力の追求の結果として出た政治的状態とでも申しますか、しかもそのデタントは、ディフェンス、デターレンス、デタントと言われるように、この三つは不可分のものである。相矛盾するものではない。したがって、デタントだからディフェンスは要らないというようなものではない、こういうような認識を持っております。
  259. 永末英一

    ○永末委員 似たようなことをラムズフェルド報告でも言うておるわけでございますが、しかしその場合には、ラムズフェルドは、ディフェンス、デターレンス、デタント、これら三つのものがそれぞれ二律背反でない関係であるためには、強い力で結びつけておるのだというので、自分の議会に出しております膨大なる国防予算のいわば理論づけにしておるわけでございます。しかし、あなたの方の基盤防衛力というのは、いままでの所要防衛力よりは少なくていいのだ、こういうことでありますので、どうもいま挙げられました三つの概念は同じ概念のようでございますが、強い力でなくていいという証明がないわけですね。この辺はどうお考えですか。
  260. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私が申しますのは、世界の戦略といいますか、あるいは今日のデタントというものは、さっき申しました米ソあるいはNATO、ワルシャワ、あるいはおのおのの同盟国、そういうような力の均衡によって平和維持がなされておる、緊張緩和が成立をしておる。こういう状況のもとにおいてわが国の防衛を考えた場合に、しかも、わが国周辺につきましては米ソ関係はそのとおり、それから中ソの関係においては対立状況があるし、かつては中ソともに日本の安保条約というものに対しましては非常に批判がありました。しかしながら、中国におきましては、自衛力というものは認める、安保条約も認める、こういうふうに変わってきておる。それからもう一つは、この間のソ連のブレジネフ報告によりますと、五年前あるいは去年あたりまでは、米軍の日本における駐留あるいは基地というものに対してかなり批判的でありました。それが今度は載っておりません。  そういう状況下において生起すべき侵略事態というものは一体どういうものかということを考えると、そういう日本周辺をめぐる状況、もう一つつけ加えますと朝鮮半島、これはアメリカのプレゼンスがある限りにおいては事は起こらないであろうというふうに条件考えますと、生起すべき侵略事態はきわめて奇襲的なものあるいは小規模以下のものである。それには即応力を持った基盤的防衛力で足りるということでございまして、私がいつも申し上げますように、国民に国を守る気概あるいは抵抗の意思が強力にあり、そして必要最小限度の防衛力があり、かつ安保条約が有効に機能するならばそれに対処できる。この二番目の必要最小限度の防衛力というもの、これを物理的な、単なる軍事力そのものを考えるならば、それは非常に小さいものかもしれないけれども、私が申しますその三つを加えられれば相当大きい役割りが果たされるのだ、これが私の考え方でございます。
  261. 永末英一

    ○永末委員 私は別に基盤防衛力の御説明を伺ったのではございません。ラムズフェルドは、デタントという言葉の概念を説明して、その中である一定の意味を与えているわけです。あなたの御説によりますと、デタントを前提にして、基盤防衛力でよろしいという結論に達せられた。デタントは日本が置かれている現状を指すものだとお考えですか。
  262. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 世界戦略の中におけるデタントというのはどういう意味かとお聞きになって、どういう認識を持っておられるのかと聞かれましたから、私はそういうふうに申し上げたわけでございます。
  263. 永末英一

    ○永末委員 だといたしますと、現状をデタントだと判断されているのですね。
  264. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 現状とおっしゃられますと、日本の置かれておる状態をどう見るかというふうにお聞きになっているのでございましょうか。
  265. 永末英一

    ○永末委員 端的に申しますと、アメリカ側は、もしラムズフェルドの言葉で表現せられているとしますと、デタントというのは希望であり、実験である、すなわち政策、つまり到達しようとするある状態、現在の状態ではなくて、むしろ将来のある状態へ向かう一つの行動というものを内容にしてデタントを解釈しておると思われる。ところが、あなたのいままでの御説明では、そのデタントというのは現在あるから、その上でと言う。こういう発想になっていると、同じ言葉でも違うと私は判断する。いかがですか。
  266. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そこのところの厳密な解釈は私もよくわからないのでございますけれども、私が申します意味は、普通にデタントと言うと、もう防衛力は要らないのだ、こういうことに対してそうではないのだという意味を実は強調したかったわけでございまして、アメリカのスリーDというのは、ラムズフェルドでなくて、むしろシュレジンジャーがそういうことを言っておったわけでございます。そのことを私考えておったわけでございます。しかし、シュレジンジャーとラムズフエルドと、基本的にデタントについての考え方はそう変わっておらないというふうに私は承知をしております。
  267. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官、あなたはいま、デタントでも力が要るのだと言われました。アメリカ人は、デタントを実現するためには力が要るのだと言っているわけですね。ちょっと違うわけです。しかし、これは別に哲学論争をやるつもりではございませんので、御検討願いたい。きょうはそれが主力ではございません。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  P3Cの系譜について御質問いたします。  昭和四十三年六月、防衛庁は第一回のPXLの調査団を欧米に派遣いたしました。このときの目的は何ですか。
  268. 丸山昂

    ○丸山政府委員 四十三年ごろからP2Jの後継機についての勉強を始めるということで、そこで四十三年にたしか第一回の調査団を出しておりますが、これは、次期対潜機についての各国のコンセプト、考え方、それからその運用構想、こういったものについての勉強をするという趣旨でございました。
  269. 永末英一

    ○永末委員 このときには、何かそれらの国々において使われておるまたは使われようとしておる対潜哨戒機等が問題になりましたか。
  270. 丸山昂

    ○丸山政府委員 当然それぞれの国において開発を予定しておりますもの、それから現に就役しておるものはもちろんでございますが、こういったものについての情報を集めることはやってまいっております。
  271. 永末英一

    ○永末委員 昭和四十五年度の予算でPXL調査研究費が二千二百万円組まれました。これは何に使いましたか。
  272. 江口裕通

    ○江口政府委員 御指摘のように、四十五年度は、技術調査研究委託費といたしまして予算で二千二百万円が計上されております。  この内訳でございますが、これは二つに分かって調査委託をいたしました。一つは、川崎重工業に対しまして千九百万円、あと日本航空工業会に対しまして、エンジン関係の性能調査ということで委託いたしております。川崎重工業に対しましては、次期対潜機の運用構想に基づきますところの性能諸元等の問題につきまして概定をする、そういう作業ということで計上いたしております。
  273. 永末英一

    ○永末委員 概定というのはペーパープランだけですか。
  274. 江口裕通

    ○江口政府委員 基礎調査の性格といたしましては、これは本来開発のためということに決まっておるものではございません。言うなれば開発あるいは国内の機体の改造あるいは輸入等いろいろなケースを想定いたしましてやるものでございますが、ここで申します概定と申しますのは、簡単に申しますとアイデアを得るというようなところでお考えいただければよろしいかと思います。
  275. 永末英一

    ○永末委員 アイデアを固めるというお話でございますが、次いで昭和四十六年には、似たようにPXL調査費として二千万円が組まれました。今度は何に使われましたか。
  276. 岡太直

    岡太政府委員 技術的事項でございますから私からお答えいたします。  四十六年度には予算としては三億百万円計上されております。執行としましては二億八千九百万円、川崎重工業に次期対潜機の調査研究ということを委託しておるわけでございます。  それで、この内容でございますが、これはやはり開発を前提としたものではなく、開発に当たりまして、国産の開発の飛行機のイメージをつくりまして、技術的に判断の資料をとるためにやったものでございます。  これと四十五年度の関係を申し上げますと、四十五年度は、運用の構想に基づきまして、大体どういうふうなかっこうの飛行機になるか、重量はどうであるとか性能はどうであるとか、それから民間機と共用できないかあるいは外国機のデータはどうかというふうな、開発と導入とを比較検討するための技術的資料の概要を得たわけでございます。これに対して四十六年度は、次期の対潜機について——対潜機と申しますのは非常なハイスピードも必要である、それから海面近くで低いスピードで小回りもきかなくてはいかぬというような技術的な問題もございます。こういう技術的問題を解決するための高揚力装置の研究、もう一つは、対潜機と申しますのは、今後やはり電子計算機を中心とするところの電子情報処理装置を持っていなくてはいかぬ、そして電子情報処理装置につきましては、日本では全然経験がないものでございますから、これに対していろいろと試験研究いたしました。  この空気力学と電子情報処理装置の二つの技術的裏づけをもちまして、四十五年度に概定した対潜機の要するに技術的根拠を決めたものでございます。これによりまして、次期対潜機を国内で開発する場合、技術的にどうなるかということがはっきりしてまいりましたわけで、これらは、いずれも国内で開発するものと導入というものを技術的に比較検討する場合に必要になる資料、こういうものでございます。
  277. 永末英一

    ○永末委員 四十六年九月には防衛庁から川崎重工へ向けて、このPXLの設計作業を発注されましたか。
  278. 岡太直

    岡太政府委員 四十六年度の技術調査研究につきましては、四十六年の九月九日に川崎重工業に、設計作業じゃなくして、調査研究を委託したわけでございます。
  279. 永末英一

    ○永末委員 調査研究の内容の重点は何でしたか。
  280. 岡太直

    岡太政府委員 先ほど申しましたけれども、重点は二つございます。一つは、対潜機に必要なハイスピードと低速の両方を両立するための高揚力装置の試験研究、第二は、電子情報処理装置、これを技術的に追求する、この二点でございます。
  281. 永末英一

    ○永末委員 二年間合わせますと四億円近くの金を使われて、そしていよいよ四十七年度になりますが、二月八日に四次防の大綱を決めたときには、PXLについてはどういう表現をとられましたか。
  282. 丸山昂

    ○丸山政府委員 四次防の大綱では、対潜哨戒機及び早期警戒機能の機能向上のための各種装備品等の研究開発という表現になっております。
  283. 永末英一

    ○永末委員 各種装備品の研究開発ということを二月八日に決められて、それに基づいて四十七年度予算では六億八千六百万円の予算がつけられた。これは何に使うつもりでしたか。
  284. 岡太直

    岡太政府委員 四十七年度に成立いたしました六億八千六百万円でございますけれども、これは対潜機に関して基本的な技術的マターを詰めていこうというわけでございまして、内容とするところはやはり電子情報処理装置、艤装、構造、そういうものを中心としてねらっておったものでございます。
  285. 永末英一

    ○永末委員 ここまで来ますと、大体これは十億円以上の金を使うわけですね。そこまで漸々積み重ねてきますと、普通のものの考え方なら、これは国内においてそれぞれのメーカーに、委託調査もやられたかもしれませんけれども、大体これは国内でつくるのだなというにおいがなければ、ここまで調査研究は出ませんね。どういうつもりだったのです、予算を組んだときの段階では。
  286. 岡太直

    岡太政府委員 これはやはり基礎的な調査研究でございまして、この予算を組みましたときは、開発に着手というようなことは考えておりませんでした。
  287. 永末英一

    ○永末委員 三年間ですね、しかも最初から、四十三年に第一次のPXLが基礎的な調査を外国にやったといたしますと、四年目でございますから、大体方針が決まってやっている。四年間も無方針で、ともかく予算を合計十億円も使うということはちょっと考えられないのですが、防衛庁長官、これは振り返ってどう思いますか。
  288. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 四十七年度の予算の約七億円、これは御承知のように執行がされておりません。しかしながら、われわれの方は四十六年も四十七年も概算要求としましては基本設計を要求しておるわけです。したがいまして、わが方に全然国産でそれをやるという意図がなかったとは実は言われないわけなんで、それはあったのだけれども、しかし結果としては、大蔵査定ではそれをあきらめさせられたというのが実情でございます。そして、結局勝負はどこかといったら、四十八年度で基本設計を入れるか入れないかで本当に国産にいくかどうかということだったと思いますし、四十八年度のときは二十六億の実は概算要求をしておるわけでございます。その中には基本設計が組まれておるわけでございますから、それがもし認められれば初めて政府としてもということにつながっていくということでございます。  それからもう一つは、御承知のようにアメリカがP3Cを開発いたしました。特に電子頭脳を開発するについては莫大なお金とそれから莫大な人員を要しておるわけでございまして、そういうことを考えますと、やはりまだ六億、十億以下のお金というのは、実を申しますとそれは基礎研究の段階だと言わざるを得ないというふうに思います。
  289. 永末英一

    ○永末委員 いま防衛庁長官は、初めのところと後のところとが少し、同じ対象を見詰めて言われたのかよくわからなかったのですが、私がお伺いいたしましたのは、四十七年度予算を組んだときに一体どういうことを考えておったかということをお伺いしたのであって、四十八年度予算に概算要求したときのことを伺ったのではないのでありますが、四十七年度の予算を要求した段階では、いままでの積み重ね上でございますから、何ほどかやはり国内においてこれを生産しようという方針が、明定はしていなくても、そういう一つの予測のもとに、その前年度の三億数千万円と比べますと、その二倍以上のものが組まれておったのではなかろうか。数字だけの意味としては、外部からはそう見える。あなたはどう受けとめておられるか、もう一度お答え願いたいと思います。
  290. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 それを実はおわかりいただくものとして申し上げたわけで、四十七年度にすでに基本設計を要求しておりますから、われわれの気持ちはおわかりいただくと思います。
  291. 永末英一

    ○永末委員 問題は、その七月七日に田中内閣ができまして、十月九日にその田中内閣のもとで四次防の決定が国防会議でなされるというところからこの進路が変わってくるわけですね。したがって、もう一度記録をとどめるためにはっきりしておきたいのですが、この四次防の決定でのPXLについての正確な言葉をひとつ言っておいてください。
  292. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これは、四十七年の二月の四次防のいわゆる大綱の中には技術研究調査にとどまるわけでございまして、四次防中には国産化ということは実はあり得ないわけでございます。
  293. 永末英一

    ○永末委員 私が申し上げておるのは、四次防大綱には先ほど言われたような言葉が載った。この四次防の決定にはどう書いたかということを伺っておる。
  294. 丸山昂

    ○丸山政府委員 四次防の大綱は、先ほど申し上げましたように、二月に先ほど申し上げましたような文章で出ております。(永末委員「そこはいい。十月九日」と呼ぶ)それから十月九日は四次防の主要項目でございまして、ここには対潜哨戒及び早期警戒機能向上のための電子機器等の研究開発を行う、こういう表現になっております。
  295. 永末英一

    ○永末委員 だから、四次防の大綱と四次防の決定のその部分だけを見ますと、どんがらの方はいいんだ、しかし電子機器の開発がおくれておる、ここをひとつやろうということに読み取れるわけですね。その言葉に関する限りですよ。ところが四十八年になりましてから、いままで過去三年間続いてきましたPXLの調査研究費というものはなくなってしまって、PXLの専門家会議の経常費というのが計上される。方針が変わりましたね、四十八年から。防衛庁長官
  296. 丸山昂

    ○丸山政府委員 この大綱とそれから主要項目との違いでございますが、これは国防会議の事務局から御説明されるとよろしいかと思いますが、私ども当時、この点については全く同じ内容である。表現が違う。と申しますのは、各種装備のうち最も代表的なものが電子機器である。その電子機器をここに特に明記をしたということでございまして、各種装備等もあるいは電子機器等、この「等」の中には機体を含むものであるという、防衛庁としては当時そういう解釈をしておったわけでございます。
  297. 永末英一

    ○永末委員 防衛局長、その「等」のところに機体を含むという防衛庁の解釈は後々も続いていくのでございますけれども、それは機体と中身とが一体になって物を考えているから、「等」を含むという防衛庁の解釈は国産である、こういうことでしたね。
  298. 丸山昂

    ○丸山政府委員 これは依然として国産につながるものでないという、そういう前提のもとに、機体を含む場合においては、確かに国産開発に非常に密着した形に近い形になりますけれども、あくまでもやはりこれは国産につながるものでない、そういう趣旨は、その年の五月に衆議院の内閣委員会で、当時の久保防衛局長がはっきりと答弁をしております。防衛庁ははっきりそういった国産を前提とするものでないという、そういう前提のもとに、なお機体をこの中に含んで、機体を含んだ開発を防衛庁としては要求する、こういう立場をとっておったわけでございます。
  299. 永末英一

    ○永末委員 しかし、「等」の文字で機体を含むということは、いま国産に近いという表現がございましたが、そういう印象が防衛庁にあればこそ、過般、四十七年十月八日の晩、十月九日の朝起きた事件について、久保防衛庁次官、その当時の防衛局長ですか、が受けた印象があったとわれわれ思うわけです。そうでなければ、全然白紙だったんだ、国産を前提にしなかったんだということなら、たとえ一時にもせよ、あるいは十月八日に、久保次官のところかどうか知りませんが、大蔵省からかかってきた電話があったとはいえ、それだけの間違った印象を久保次官が持たれるわけは私はないと思う。私は、大蔵省と防衛庁のこの問題に対する見解の差異は、防衛庁が暗黙のうちに国産を意図し、大蔵省はそれに対して最終的にはそれをけった、こういうことが事件の真相ではないかと思います。いかがですか。
  300. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私がそのことに対しまして事実調査をいたしました結果は、実はその時点まで、やはり大蔵とわれわれの方では、その「等」の中にわれわれは機体を含むと考えるということは、防衛庁で考えるのは結構です。しかしその勝負は、先ほど申し上げますように、四十八年度に基本設計を入れるかどうかということで決めようということの大蔵省と防衛庁との了解はあったということなんです。ところが、そこに白紙そして輸入を含めた専門家会議によってこれを決めるということが出ましたので、まあ今後まだわれわれは努力する可能性は残されておるんだなと。八日の前日には一応大蔵側は、支援戦闘機の方は確かに輸入をわれわれも引っ込める、そして防衛庁の言う支援戦闘機を国産で認めよう、しかし、AEWとそれからPXLということについてはこれからの勝負だ、こういうことでございますから、しかも、それは専門家会議に任されるということで、まだ可能性は残っておるというふうにわれわれは受け取ったものですから、全体といたしましてはそうショッキングなことではなかった、こういうことだと思いますし、十日の日に、当時の防衛局長であります久保さんも懇談会の途中で報告のために出てしまっておるんです。そういうことでございますから、そうショッキングなあれじゃなかったというふうに私の事実調査では出てまいりました。
  301. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官、いま白紙という表現をおとりになりましたが、白紙の前にはやはり色がついておったわけですね。
  302. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そこは永末先生どういうふうにおとりになるか知りませんが、確かにあの表現が、いまから考えますとそう適切なものであったとは私も思えないわけでございますが、そこが問題がいろいろ出てきたと思いますけれども、しかし、いま調査の結果言いますと、やはり白紙という意味は、防衛庁と大蔵省とのその関係、それはもう一遍白紙にして、輸入を含めて専門家会議で決める、こういうことと理解しております。
  303. 永末英一

    ○永末委員 先ほどから明らかにいたしておりますように、四十五、四十六、四十七とそれぞれ調査研究費がついて、十億の予算が使われてやってきた。四十八年度からは専門家会議の経常費が組まれてしまった。二億四千五百万円、専門家会議経常費というのは何に使うつもりの金であったのでしょうか。
  304. 内海倫

    ○内海政府委員 お答え申し上げます。  専門家会議ということで四十八年度についております予算は六十万円でございます。
  305. 永末英一

    ○永末委員 アメリカの方はどんどん改装いたしまして、P3A、P3B、P3Cとやってきておる。そのことは日本側も知っておるわけでございまして、それを知りながら、日本側は四十八年をさかのぼる三年間、それぞれ予算を費消してPXLに対する調査研究をやってきた。だといたしますと、その前年度の十月に専門家会議なるものをつくれというようなことが決まってきての、予算措置は四十八年の四月にできたのでございましょうが、八月にやっと専門家会議を発足するというのは、何でそんな四ヵ月もかかるのですか。
  306. 内海倫

    ○内海政府委員 御説明を申し上げたいと思いますが、あわせて私の立場も申し上げますので、お許しをいただきたいと思います。  私、四十七年の十二月の末に事務局長に着任いたしました。前任者からの引き継ぎは、突然に白紙にし、将来輸入を含んで云々ということで、専門家の会議を設ける等慎重に検討すること、こういう、まあいわば白紙還元と言われた了解事項ができて、前任者は、これについて自分としてもいろいろ考えたけれども、どうにも結論が私はつけ得ない、したがって、後任者である君でもう一度根本的に考え直してこれに対処してくれ、こういう引き継ぎでございました。したがいまして私は、一月から仕事を始めましたけれども、この了解事項に基づく「白紙とし」という意味はわかりましたけれども、されば、輸入を含め、あるいは専門家の会議というふうな文意をどういうふうに理解してこれを制度的にとらえ、そして確立していくかということについて非常に苦心をいたしました。これは、役人の立場であればおざなりな形で発足させるわけにはまいりません。そういう意味で、専門家会議というものを法律上措置するものなのかあるいはそうでないのか、あるいはこれの付議すべき付議事項は一体何なのか、あるいはこの会議の運営をどういうふうにしていくのか、さらに人の問題をどう考えていくのか、いろいろな観点から検討いたしました。ただいま先生のおっしゃいますように、数年にわたる防衛庁と大蔵との間の意見が食い合わないまま進んできた問題でありまして、いわばそれを専門家の会議にそのままおろしてきたわけですから、そういう問題に対決してこれを取り扱わなければならないという観点から、非常に慎重に検討をいたしました。私どもは、苦労をいたしましたが、ようやく四月の下旬になって一応の考え方をまとめて、これを関係各省に示しましたが、依然としていろいろ意見の調整がございまして、調整を終わりましたら直ちに人選に入りました。しかしながら、この人選がいかにむずかしいものかということを私は身をもって痛感いたしました。その人選が終えたのが七月の終わりでございます。その間御存じのように、国際金融情勢というものが非常に流動的でございまして、この問題を背景にしながら、いつこれがうまく発足していけるのかということで、これもあわせていろいろ考えて、ようやく四月下旬に考え方をまとめた。そして先ほど言いましたように最後に非常に人選に苦心惨たんをいたしました。これが私どもが八月まで延びた本当の理由でございます。わかっていただけない点もあるかもしれませんけれども、私どもがこれは慎重に、というよりも、これだけの大きな問題を突然におっかぶされた者の立場としては、いかように対処していくかということは想像以上に苦労の多いものであったということを御説明申し上げたわけでございます。
  307. 永末英一

    ○永末委員 内海事務局長にお願いしたいんですが、時間が非常に限られておりますので簡単にお答え願いたいんですが、いまのお話で、事務当局としては非常に苦労したということをるる伺いました。やっぱり無理な力が裏から動いたと思われますね、やあっとこう、いままでの動きを変えちゃったものだから、あなたの前任者もあなたも非常に苦労されたのではないかとお察しするわけでございますが、専門家会議の専門家というのはどんな人ですか。名前言っていただけますか。
  308. 内海倫

    ○内海政府委員 イロハ順で申し上げますが、岩尾一氏、堀越二郎氏、吉光久氏、高木昇氏、土屋清氏、粟野誠一氏、斉藤有氏、それから、第一回目だけ御出席であと欠席、辞退されたのが村山堯氏、以上八名で、実質的には七名で検討が行われました。
  309. 永末英一

    ○永末委員 いまの方々は、各省推薦わかりますか。
  310. 内海倫

    ○内海政府委員 各省にも人選を依頼し、そして候補名をいろいろ承りましたが、各省の推薦の人がそのままここに入っておりません。と申しますのは、各省推薦のあった人のほとんどが拒否あるいは受け付けていただけなかった、こういうことでございます。
  311. 永末英一

    ○永末委員 拒否されたというのは、やはり政治的に意味のあることだと思いますが、全部で何回開かれたんですか。
  312. 内海倫

    ○内海政府委員 全体の会議を十九回、分科会を七回、それから実地視察を三回でございます。
  313. 永末英一

    ○永末委員 少数の委員にしてはきわめて多数回開かれておりますが、昭和四十九年の十二月二十七日、年の瀬も押し迫ったころでございますが、事務局長に専門家会議から答申が出ておりますが、この答申はどういうことが書いてありましたか。
  314. 内海倫

    ○内海政府委員 どういうふうに御説明申し上げましょうか……。
  315. 永末英一

    ○永末委員 ポイントはPXLの国産か否かということについての何らかの色合いのついた言葉があったかなかったかということであります。
  316. 内海倫

    ○内海政府委員 それにお答えし得る部分だけ朗読をさせていただきます。  「次期対潜機については、将来の装備化の時点において、国内開発によるものをもって充てるか外国機をもつて充てるかについて検討したが、現段階でそのいずれかを否とする決定的な要素は見いだせなかった。」これが総合的結論でございます。  次いで付言されまして「一般的に言って、自衛隊の(特に基幹的な)装備については、自主開発、国内生産が望ましいとする意見にも首肯すべき点はあり、また、わが国航空機産業が置かれている環境も考慮すれば、次期対潜機の国内開発が待望されていることも十分に理解できるところである。したがって、防衛庁の運用上の要求を性能的、時期的に満足させ得る技術的、財政的基盤が確実であれば、対潜機のように、その運用からして相当の機数を必要とするものについては、国産化を図ることが望ましいと言えよう。ただし、現実の問題として、防衛庁から提示された国内開発案に関しては、今後その量産機取得までに相当の期間を要し対潜機能維持上問題があること等を考慮すれば、更に一段階先の研究開発を含みとしつつ、当面、外国機の導入を図ることも止むを得ないものと考える。」  これがPXLに関する答申でございます。  なお、念のため申し上げますと、当専門家会議に課せられたのは、これとともにAEW……(永末委員「それはいい」と呼ぶ)そのものがかかっておりますので、この両方の答申が出ております。
  317. 永末英一

    ○永末委員 いまの答申は最後まで趣旨は変わっておりませんね。
  318. 内海倫

    ○内海政府委員 答申は私のところに出されまして、私から議員懇談会に答申を紹介し報告して、後はすべて議員懇談会あるいは将来国防会議に任されるものでありまして、答申は私への答申をもって終わっております。
  319. 永末英一

    ○永末委員 昭和五十年三月に国防会議の参事官会議がこの件についてある決定を見ましたが、その決定はどういうことでしたか。
  320. 内海倫

    ○内海政府委員 経緯を申し上げます。  昭和四十九年十二月二十八日に私が議員懇談会に答申を報告を終わったことをもって国防会議の事務局の任務は一切完了いたしました。したがって、私自身も関係各省に対して、今度は新たに了解された議員懇談会の政府関係各省庁において速やかに調査検討することという線に沿って、各省においては仕事をしてもらうのであるから私の手は一切離れました、これを言明いたしました。  それから三月十七日の参事官会議とおっしゃるのは、先ほど鈴切先生の御質問に丸山防衛局長がお答え申し上げましたが、簡単に経緯を申しますと、関係各省庁からどういうふうに調査検討を始めていいか一遍調整をしてもらいたいという意見がありました。したがって、私は調整する権限は何もないから、参事官会議の場所を貸すから、関係省庁の間で話し合いをしてくれ、そういうことで話し合いをし、防衛庁から今後における調査検討の一案を持ってきて、それを防衛庁が紹介して、そして関係の各省庁の者がその防衛庁の案を聞いて、これをそれぞれ上司に報告すること、そして各省の方針をお決め願うこと、こういうのがいわゆる三月十七日の参事官会議と言われるものでありまして、もとよりそういう点において決定もする立場でもありませんし、する権限のあるものでもございませんし、決定も全くいたしておるものではございません。
  321. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁が次期対潜哨戒機のことをやり出した、そして国防会議に回りまして国防会議の行政事項としては、いま報告がございました四十九年の末をもって一応仕事としては終わってしまった。そこで防衛庁は防衛庁として動き出されたのかもしれませんが、もう時間が終わりつつございますので防衛庁長官に。  あなたは政治家として、その後ロッキード事件が明らかになりました、この経緯のときにも金は動いておるようでございますけれども、さてP3Cをあなたは導入するおつもりですか。
  322. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 本委員会でもたびたび申し上げておりますように、完全なる国産かあるいは完全な輸入かということではなくて、両方のコンビネーションというような形で今後は機種の決定をいたしたいというふうに思います。  しかし、その機種の決定につきましては、あくまでもわが国の防衛上どうしても必要であるというような気持ちから、専門的な技術的立場あるいはユーザーの立場等々を考えて決めなければならないと思いますが、もう一つは、いま作業をいたしておりますポスト四次防の防衛構想、それに対する装備あるいは編成ということもあわせてその後になろうかと思いますし、しかもこういうような問題が世間の疑惑を招いているわけでございますから、一点の疑惑も招かないような決め方をしなければならない。そうでなければ、陸海空の自衛官諸氏が命を賭して国を守るために精励をしておる、その人たちに対しましても申しわけないというふうに思いますし、国民皆様方に対しましても申しわけないというふうに考えておる次第であります。
  323. 永末英一

    ○永末委員 先ほど外務大臣は、ラムズフェルド報告について、私が主たる挑戦者はソ連と思うか、こう申しましたところ、外交上そんなことは毛頭考えてない、こういうことでございました。ところが、このラムズフェルド報告並びにブラウン統合議長の報告の中では、ソ連海軍が西太平洋において非常に強力になっておるということを前提にしながら、対潜警戒についての重要性、航路の安全についての重要性を申し述べておるのでございまして、さて、この対潜哨戒を日米共同でやるべき事項の中の一つに入れてくるといたしますと、これらがみんなこんがらかってくるわけですね。  そこで、質問といたしまして、あなたは、現在のアメリカのP3Cが持っておる電子機器、特にそのソフトウエア、ブラックボックスと言われるもの、こういうものは、交渉されてアメリカわが国に供与するとお思いですか。
  324. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 御質問意味がよくわかりませんけれども、われわれといたしましては、P2Jというものの機能が、分析力その他におきましてかなりおくれておりますから、この機能を高めるようないわゆる電子機器等を含んだ対潜機というものをつくり出すか、あるいはそういうようなものを輸入をして、そして、次期の対潜機を仕立てたいというふうに考えておるわけでございまして、これはかなり高性能のものでございますから、われわれの方の海幕といたしましてはそれを望んでおる。特に頭脳の点におきましては非常に願望を持っておる、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  325. 永末英一

    ○永末委員 あなたは二つのことを言われたのでありまして、次期対潜哨戒機については、ある部分は国産をし、ある部分は輸入をするということが大前提、電子機器について私が質問申し上げましたところ、これについても国産と輸入とを申されました。そして最後には、頭脳は非常に高度なものだ、こういう前提ですが、私が申し上げたのは、もし国産をするとしますと、電子機器の部分につきましても、あらかじめ設計を明示をしてやれば、わが国の電子機器産業でもできる面がたくさんあるのではなかろうか。ただ、問題となっておりますいわゆるブラックボックスにつきましては、そのコンピューターに入れられている、インプットされるものはわが国は持ち合わせがないのでございますが、これはわれわれでつくるわけにいきませんですね、ないのですから。そういうものについてあなたは入手し得る御自信がおありかということを最後に聞いておきたい。
  326. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 このレリースの問題につきましては、今後私たちとしては、ぜひとも米側に要求しなくてはならないというふうに思っておるわけでございまして、その可能性をぜひとも実現させたいというふうに思っております。
  327. 永末英一

    ○永末委員 時間が過ぎましたので、あとの点は次回に移しまして、きょうは、終わります。
  328. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 次回は、来る十日水曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十三分散会