○稲富委員 それから、麦作の契約
生産奨励金をお出しになるということでございますが、実は、この奨励金が昨年のごときは非常におくれまして、
農民がもらうのに困っているのです。それで、この奨励金のごときものは、奨励金という名前じゃなくて、もう
麦価の中にこれも包含するのだ、奨励金じゃなくして、当然必要なものなんだから
麦価の中にそういうものを含めて
麦価を
決定するのだ、と、こういうような
方針でいかれることが妥当ではないかという
考えを私は持っておりますので、この点も一考をお願いしたいと思うのであります。
次に、もう
一つお尋ねをしたいと思いますのは、これは先刻からもいろいろ
論議されておりますが、本年度の
米価決定に対しましては、
政府は各
方面からの圧力等によって、
農林省でも
生産費と消費価格との一元
諮問をやりたいというようなことがなされておるということが先刻からもいろいろ
論議されておるのでございます。これに対しましても、先刻いろいろ御
意見を聞いておりますと、もちろん
食糧庁長官は、
生産価格と消費価格というものは切り離されて
考えるべきではないというようなことを言われておるのでございますが、
食管法に対して
農林省は大体どういうような解釈をしていらっしゃるかということについて、率直に言って疑問を持つことが多いのでございます。
自分の勝手な
食管法に対する解釈をしていらっしゃるのじゃないかと思うのです。たとえば
食管法の第三条には、「米穀ノ
生産者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ
生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ
政府ニ売渡スベシ」となっているのですが、ところが、
政府は、
食管法第三条に「
政府二売渡スベシ」ということになっているにもかかわらず買い上げ制限をやられる。
農民には
政府に売らなければいけないと義務づけながら、買う方の
政府は勝手にこれを買い上げ制限をするということは、
食管法の「命令ヲ以テ定ムル」というのを、余りにも朝令暮改というのか、勝手な解釈をしていらっしゃるのじゃないか、と、私はかように
考えます。
さらに、第三条の二項にも「前項ノ場合ニ於ケル
政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ
生産費及物価其ノ他ノ
経済事情ヲ参酌シ」とあって、次に、「米穀ノ再
生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」とある。この
食管法の第三条の「米穀ノ再
生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」という、ここに
生産者に対する
食管法上の
米価決定の
要素があると私は思う。やはり、農家が、
生産者が次期
生産を確保するということを趣旨として
米価は
決定すべきものじゃないか、と、かように私は
考えます。
さらに、消費者価格については、御
承知のとおり第四条で、先にいろいろ書いてありますが、ともかくもその二項には、「家計費及物価其ノ他ノ
経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」となっておる。
食管法の消費者価格を
決定する一番の主眼、重点は、この最後の「消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」ということになくてはいけないと私は思う。
でありますがゆえに、
生産費を
決定する場合は
生産者の再
生産を確保することを旨とする価格に
政府が取り組むべきであり、消費者価格を
決定する場合は消費者の家計を安定せしめるということを旨として
政府がこれに取り組んでやるべきであると私は思う。ところが、
政府と
生産者、
政府と消費者という形でなくてはいけないにもかかわらず、
生産者価格が上がれば直ちに消費者価格も上がらなくちゃいけないんだということは、曲がって
考えますと、これはどうも
生産者と消費者を対立させるような謀略があるんじゃないかと、これは余りにも邪推かしらぬけれども、そういう感じさえ私はする。これを一時に
決定するということ、すなわち
生産者と決めるべき
生産費、消費者と決めるべき消費価格を一時に
決定するという
政府は、
自分でやらなくてはいけない
政府の
責任をいかにも回避しているというようにさえも私たちは疑わざるを得ないことになってくる。これは
政府としては非常にずるい
やり方だと私は思う。
それで、
生産費は
生産費として次期
生産を確保することを旨として
考え、消費価格は消費価格で家計を安定せしめるということを旨として別個に
考えていくべきもので、そして、その決め方は、
生産費と消費価格をすべての
国民に対していかに調和をとるか、調整をするかということに
政府としての大きな任務があると私は思う。それを同時にやるということは、いかにも
政府がその
自分の任務を忌避して、そうして両側にこれを
決定せよというようなずるい
態度に出ているんじゃないかということさえわれわれは疑わざるを得ないのです。
政府が本当にそうでないとするならば、
食管法の第三条、第四条に決めておりますように、
生産費は
生産費として、消費価格は消費価格としておのずから別個に
諮問して別個に
決定すべきものだ、これが
食糧管理法の立法の本当の精神である、と、かように私は
考えるわけでございますので、この点も特に
考えていただきたいと思います。いままだ決めておらぬとおっしゃっておりますから、ひとつこれも参考にして決めていただきたいと思いますが、いかがでございますか、承りたい。