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1975-08-22 第75回国会 衆議院 外務委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年八月二十二日(金曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 毛利 松平君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 正森 成二君       塩谷 一夫君    田中  覚君       福田 篤泰君    山田 久就君       勝間田清一君    川崎 寛治君       松本 善明君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   伊藤 圭一君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         外務省情報文化         局文化事業部外         務参事官    大島 鋭男君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 八月二十二日  辞任         補欠選任   中村 梅吉君     田中  覚君   原 健三郎君     塩谷 一夫君   金子 満広君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     原 健三郎君   田中  覚君     中村 梅吉君   松本 善明君     金子 満広君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。山田久就君
  3. 山田久就

    山田(久)委員 残念ながら時間の制約もあるようでございまするので、今回の三木総理訪米による両首脳共同声明並びに日米間の新聞発表、これに関連いたしまして、問題をしぼって二、三の点について外務大臣にお尋ねいたしたいと思います。  今日、日本自身にとりましてもアジアにとってもあるいは世界の平和にとっても、この日米関係というものの重要性ということは改めてこれを申し上げるまでもない。この間において、日米関係というものの基本的にはその信頼感信頼関係というものが非常に重要なことは、私は大臣もよくおわかりだろうと思うのです。これを築くためのいろいろな条件というものはいろいろあろうかと思います。しかしながら、何でも率直に話し合えるという間柄において、この会談の率直に話し合える両方背後のことが間々外部に漏れる、あるいは妙なことで外に出るということは、そういう意味信頼感を傷つける上においては大変私は大きな障害になるものと考えます。  そこで、ちょうどこの十三日の読売新聞、これによりますと、いわゆる共同新聞発表案のもとの案なるものが、何か「無期限極秘」とされておるようなものが新聞に出ていることはもうすでに御承知のとおりだろうと思います。その内容については、これはまあいろいろ私なんかも考えがございますし、これに対するいわゆる野党側からの反対論というものは必ずしも当を得ていないとは思いますけれども、しかしながら、こういうことが出ていくということ、しかもこれについては大変どうも妙な関係で出てしるんじゃないかというような憶測も出ているようでございますが、これは非常に残念だと思う。これは外務省として、特にこういうものを扱っている当局として私はその点に非常な問題があると思うが、ひとつ外務大臣、この間の消息、どういうことになってこういうことになったのか、お尋ねいたしたしと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、共同声明あるいは共同新聞発表というようなものは両国文字どおり共同作業によってつくり上げられるものでございます。ことに日米のように信頼関係の深い国にありまして当然そうでございますが、その前段階で、両国事務当局が当然素案を書きまして、それがおのおのの国の中でさらにいろいろに変更されまして、そして両方協議に持ち込まれて最終的なものをつくり上げる、そういう段階幾つか経ておりますので むろんその間にいろいろな素案あるいは第二次案、第三次案というようなふうにおのおのの国の中でも変化いたしますし、両方協議に入りましてからでもいろいろに変化をいたします。御承知のとおりのことでございます。  先般そのようなものが某新聞に載せられた由でございますけれども、むろんこれにつきましては、何ら正式の意味合いのない種類の文書である、正式の文書でないのみならず、特段の意味合いを持つものでないというふうに私ども考えております。
  5. 山田久就

    山田(久)委員 外交交渉の前段の段階でいろいろな変化が行われ得ることは、これはいま大臣の御答弁を待つまでもなく当然のことでございますけれども、この発表新聞に出ておる点は、つまりそういうものの過程が漏れてくるというような不安、私は、そのもたらす影響というものは決して軽視さるべきものではない、こう考えます。しかもいま大臣ちょっと言われましたけれども、どうも伝えられるところによると、この点については、機密保持ということについて何かやはり規律が弛緩しているんじゃないかということを思わせるような点があるやに思われている。私は、ここでこの際さらにこれを追及しようとは思いませんけれども、しかしこれはやはりそれで過ごしていられない点があると私は考えますので、ひとつさらによく徹底して、しかもこういうこと自身が、先ほど申し上げたように、相手をして率直にいろいろなことを打ち明ける、それを非常に懸念させるというような大事なことにつながると私は思いますので、ひとつ、この点さらによく注意して善処をお願いしたい、こう思います。  次に、この問題にも関連いたしまして、朝鮮半島における問題あるいは従来から韓国に言われている韓国問題と朝鮮あるいは極東の安全保持について、従来の佐藤ニクソン当時の声明表現方法が違っているじゃないか。これについて、いまの文書等とも関連していろいろな憶測が出ておることは御承知のとおりでございます。これはいろんな意味において余り好ましくない、この際改めてこの点についての有権的な解釈、立場、これを突っ込んでここにぜひ明らかにしていただきたい、こう考えますので、ひとつ御解明をお願いいたしたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘の問題は、先般の日米会談におきますいわゆる共同新聞発表の中で、韓国の安全という問題を、「朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり、また、朝鮮半島における平和の維持」がわが国にとっても必要である、こういうくだりについての問題でございますが、何かこの点がかつての佐藤ニクソン共同声明韓国条項との関連でいろいろ議論になっておるようでございます。  私ども今度の日米会談を顧みまして、韓国の問題というものはあるいは韓国の安全というものは、もちろん韓国自身にとどまるものではありませんで、北鮮との関連において考えられなければならないということは当然でございます。したがって、それは全体としては朝鮮半島における平和ということになるわけでございますが、そのような朝鮮半島の平和というものは、総理大臣がしばしば言っておられますように、朝鮮半島わが国との距離からして、またわが国の安全にとって非常に緊密な関係がある、こういうことを今回の共同新聞発表で申しておるわけで、これは現在の私ども認識をそのまま素直に述べたものでございますが、強いて申しますれば、朝鮮半島というところから説き起こします前例は、たしか昭和四十八年の田中ニクソン共同声明にもあったかと存じます。すなわち、われわれとしては、将来朝鮮半島が何らかの平和的な形で繁栄をする、南北の対立というものが何かの形で緩和されあるいは解消されるということを基本的に望んでおるわけでございますから、そういう朝鮮半島というものから考え、そうしてさらにその平和が、わが国の平和との関連というふうに説き起こしたというところに、強いて申せば一つ意味合いがあろうかと思いますけれども、しかし基本的に申しますならば、現状を率直にわれわれの認識として述べたということになろうかと考えます。
  7. 山田久就

    山田(久)委員 基本的には従来の考え方と特に変化はないというような御趣旨かと思いますが、朝鮮半島の問題は、いろいろこう避けて通ったりいろんな表現を用いたりしている点が政府に従来なかったとは言えません。しかしながら歴史上の長い教訓ということを見てみますと、要するに、この朝鮮半島政権というものがつまり安定した政権であるということ、しかもその政権日本との関係において友好的な政権であるということ、つまりそれがどうかということが、過去においては常に日本紛争に巻き込まれてきておるという歴史的な大きな教訓を与えていることは御承知のとおりでございます。したがって、安定した政権で、しかも日本に対して理解を示す。御承知のように、ちょうど朴政権のときまでは反共それから反日という形でずっと通っていたのが、朴政権になりましてから、初めて日本との関係というものを改善しようというようなことになったわけでございまするけれども、つまり基本的にそういうものの存在が日本の平和と安全のために必要だという点についてはもっと勇敢に、国民説得力を持って、余りこの点について動揺されるというようなことがないということが望ましいというふうに考えます。  そういうような意味において、今度いろいろなことを言われておるわけでございまするけれども、そういう確信に立ってひとつ朝鮮半島の問題に善処されるということを、希望を特にここで申し添えておきたい、こう考えているわけです。  なお、この点に関連してお尋ねしたいと思うのですけれども一体朝鮮半島のいまの現状に照らして、しからば具体的に平和と安定ということの手段としてどういうようなことが一番望ましいのだろうか、現実的な姿としてどうなんだろうかということを考えてみる必要があろうかと思います。御承知のように、東独西独という場合もそうですけれども、一方がマルクス・レーニン主義という非常なイデオロギー的な立場に立っておりまするときには、政治的にも、つまり反対した意見あるいは反対した一つの政治的なものを容認しないというような立場に立っているだけに、統一問題というものの民族の悲願ということは非常にわかるけれども、しかし、具体的にこれが平和的に統一されるという見込み、私はこれは非常にむずかしいのじゃないか。それは言うべくして非常にむずかしい。やはりそういう認識に立って物を考えていくのじゃなければ、それは単に一つの宣伝、ゼスチュア、それがかえって混乱を招くおそれがあるのじゃないか、こう思うので、やはり共存方式と言うならば東独西独——つまり現状というものをとにかく認め合うという、そういう形においての解決策ということをもっと真剣に考えるべきじゃないか。そういう点について、そういう考え方をエンカレッジすべきじゃないかというふうに考えますが、この点についての外務大臣の所見をひとつ承知いたしたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま山田委員の言われましたようなことも、ベストの方法ではないかもしれませんが、現状より何がしかの前進ではないかという考え方は、私は、一つ考え方として確かにあろうと存じます。けれども他方で、一九七二年に南北でともかく話し合いをしようという共同声明にまで至りました経緯もございますし、また、とりわけ北鮮立場としては、いかなる方法にせよ、いわゆる分裂国家というようなことを承認し、固定化するような方法というものは反対であるという立場を強くとっておるということから考えますと、実際にはドイツの場合と同じような動き方をするような合意なり考え方がどうも両者の間にないように考えるわけでございます。御説のような考え方も第三者的には一つ方式のように考えられるお方もおられるように思いますけれども両者、特に北鮮立場は、そういう方式をむしろ拒否するということに現在あるのではないかというふうに見ております。
  9. 山田久就

    山田(久)委員 なぜこれを拒否するかというその背後情勢分析が私は非常に大事だろうと思いまするけれども、にもかかわらず、しからば一体、その反対の適当な具体的なオルタナティブがあるかというと、私はこれはないと思う。いわゆる両独協定のような形じゃないにしても、とにかく、つまり存在するものをその形にということで、せめて国連へ加入して、一つの安定した形をそこにつくっていくということ、あるいは、みずからは、北鮮では自国の承認ということを非常に強く各方面に働きかけているにかかわらず、今度は韓国の方の問題になってくると、共産圏の中で韓国承認しているものは一つもない、また、それに対して強い反対を示している。私は、問題が非常に一方的なような形になっているということで、そのために、わが国に対して北鮮と、こう言うけれども、中国あるいはソ連の韓国承認という問題についてはきわめて冷淡だ。もう少しそういう雰囲気をエンカレッジする必要があるというふうに私は考えまするので、この点についてひとつ当局の御勘考を煩わしたい、こう思います。  時間が何か制限があるようでございまするので、もう一点……。  今回の三木首相訪米の際に、これも見方によっては、ちょっと茶番のような形でもあるかもしれないけれどもフォード大統領との番外会見というようなものが行われたというので大分わいわい言っている。私は、首脳部が会ったからといって何もあわてることはない、そんなことはどこにでもあることだろうと思うので、そのことをとやかく言うつもりはありません。しかしながら、ただその会見そのものが、つまり外交一体という感じにおいて十分把握されているような形になっていないのじゃないかというような憶測を生んでいるのは、私は、この点はあるいはよくわかっていて外務大臣がどうも知らなかったというようなことを言っているのかもしれませんし、そこら辺は、私も外交に携わってきて、そういううそは大分ついたこともあるので、余り人のことを言おうとは思いませんけれども、そういう妙な憶測を生んでいるようなことは、この種のこととして余り好ましくない、こういう点について何か特にこの際外務大臣立場から付言されたい点があるならば、ぜひひとつそういう点でお話を承りたい、こう思うわけです。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も山田委員と同じように、あのような形における首脳だけの会談というものは幾らあってもいい、その間に記録に残さないいろいろな話を首脳がし合うということは、きわめて有意義なことであると考えております。今回の場合、それがかなり速急に取りまとめられましたために、私がそれを事前に知らなかったことは確かでございますけれども、もちろん会談が行われました後には、その事実は私どもも知ったわけでございます。このような会談が行われることは、私はきわめて有意義なことであると思いますし、また、外交も基本的には、ことに首脳会談のような場合に、総理大臣主導下に行われるべきが当然であって、私どもはそれを補佐する立場でございますから、何もその首脳同士会談が当初の予定になかった、あるいはその記録が残らなかったということは、私は外交の一元化に少しも差しさわりになるものではないというふうに考えております。
  11. 山田久就

    山田(久)委員 最後に、現在の、潜在的には世界平和の一番重要な問題としての中東和平の問題ですけれども、いろいろな動きがあるようでございまするが、外務省の得ておる情報といたしまして、この中東和平の実現の見通し、そして、特にわれわれが承知しておいたらいいような問題点というものがあるならば、ひとつこの際それをお聞かせおきいただきたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 四月にキッシンジャー国務長官のいわゆるシャトルが実を結びませんに至りました以来、ワシントンを中心にイスラエル及びアラブ米国との間で何度か行き来が行われ、詳細な詰めに至りましたことは御承知のとおりでございます。現実にキッシンジャー米国国務長官が再び現地に出かけたわけでございますが、いろいろな情報を総合いたしますと、このたびのアラブイスラエル間の取り決めというもの、その他幾つかの態様の取り決めができるかと存じますけれども、まとまる公算は高いというふうに私ども判断をいたしております。  その際問題になりますのは、一つイスラエル国内において硬軟両派があるであろうという国内問題、他方で、たとえばPLOのごときは、これはエジプトの妥協であると言ってやや批判的な姿勢をとっておるとも伝えられます。したがいまして、そういう問題は両側に残っておりますけれども、この際一つの結論に達するであろうという公算は高いと存じます。  さて、問題点は何かということでございますけれども、実はこれはもう御承知のように、いわゆるサイナイ半島における暫定的な処理がここでできるかどうかということなのでありまして、その他の問題、ゴランハイツの問題でありますとかあるいは最終的にいわゆるパレスチナ人の問題でありますとかいうものは今後に残された問題にならざるを得ない。したがいまして、中東和平が全面かつ最終的に実を結ぶというのはまだまだかなりの距離と時間がかかるのではないだろうか。ただ、関係各国が建設的に考えますならば、このたびの諸取り決めというものはそれに向かっての第一歩であるという、そういう認識を持つべきではないかというふうに私ども考えております。
  13. 山田久就

    山田(久)委員 それでは、きょうはこの程度で質問を終わらせていただきます。
  14. 栗原祐幸

  15. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、外務大臣に対しまして、先般行われました日米首脳会談関連しまして、数点について質問を申し上げたいと思うのであります。  さきに三木首相フォード大統領との日米首脳会談が終わりまして、両国共同声明共同新聞発表が明らかにされたのでありますが、今度の首脳会談は、日米両国の間の関係の深い多角的な国際関係の問題について、対等の立場でそれぞれの考え方を率直に披瀝されましてお互い話し合いをされまして、そしてベトナム以後の世界情勢あるいは特にアジア政策等について、お互いに率直な話し合いをされまして、そして、太平洋二国家としての両方の国の、今後の、特にアジア政策等についての前向きの政策お互いに話し合われる絶好チャンスであったと思うのでありますが、しかし、この日米会談発表されました共同声明とかあるいは新聞共同発表等を見ますると、どうもそういう絶好チャンスが生かされていないのではないか、こういう危惧の念を持つものであります。特にアメリカ側は、私の考えでは、ベトナムアジア政策について、何か方向感覚を失ったような状況にあるということを言っても間違いがない。しかも六月十八日でありますか、日米協会におきまして、キッシンジャー国務長官は、緊張と対決を緩和するあらゆる名誉ある方途を探究するというような意味の演説をしておられるのであります。  ところが今度の共同声明新聞共同発表等を見ておりますと、日米間の緊密な関係がきわめて用意周到に何か羅列されまして、水も漏らさぬというような用意周到な文章になっておる、こういうことが言えると思うのでございます。残念ながら、日本はこう考え、今後のアジア政策についてこういうような方法考えておる、たとえば朝鮮問題に対するあり方、あるいは東南アジア政策等についてわが国はどういうような意見をこの日米会談において具体的に示したかというようなことは何ら明らかにされていない、こう思うのであります。  そこで、きょう三木総理大臣出席になるならば、直接私はいろいろなことを総理大臣にお聞きしまして、国民が知りたがっておるような今後のわが国三木内閣アジア政策あるいは朝鮮政策等について簡明に御答弁を願うというのは、私は国民が望んでおることであると思うのであります。しかし、きょうは出席になりません。あなたは日米会談において、外務大臣として三木総理を補佐され、また外務外交責任者としてこの会談に臨んでおられるのでありますから、私に答弁される姿で、日米会談というものは、今回の会談はこういうものであったのだということを簡明に、わかりやすく国民に示すような意味でまず答弁を願いたい、こういうように思うのであります。丁寧に御答弁を願いたい、こう思うのであります。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたび会談をいたしまして私が感じておりますことは、日米両国とも、東南アジア地域においておのおのの国がいわゆる自立の精神を持って、そして国民の輿望を反映した政治をしつつ繁栄をしてほしい、平和にいてほしいとこいねがう点では、全くその間に相違はなかったわけであります。そして、そういう問題を考えます場合に、当面の短期的な必要性とそれから長きにわたる一種の理念的なあるいは理想的な物の考え方とが両方なければならないわけでございまして、そのどちらに重点を置いて考えるかということは、これはおのおの国によって幾らか私はニュアンスがあろうと思います。たとえて申しますならば、われわれとして、先ほども山田委員からお尋ねがございましたけれども朝鮮半島ということを申しますのは、韓国の平和と安全はわれわれにとって大変に大事でございますけれども、しかしやはり南北間の関係というものが平和なものでなければならない、紛争をはらんでいないものでなければならないという意味では、朝鮮半島全体というものを私どもとしては考えていく必要があると存じます。その点ももちろんアメリカとして異存があるわけではございませんけれどもアメリカ自身は当面米韓条約というものを持っておりまして、そしてサイゴンの陥落以来、北あるいは南——北の場合が多いと存じますけれども、何かの誤算で紛争が起きるということはぜひとも避けなければならないということを特に強く考えますことは、私は無理からぬことであろうと存じます。  またインドシナ半島におきまして、私どもはいわゆる北ベトナムともできるだけ早く外交関係を結びまして、大使館も開きたいと考えておるようなわが国の物の考え方立場であるわけでございますけれども、戦争が終了しました直後のアメリカとしては、長期にわたってはともかく、とりあえずそういうことを考えるというような気組みになっていない。これもある意味では無理からぬことであろうと存じます。  したがいまして、これから末永い東南アジアにおける平和と繁栄というものを考え立場において両者は一致いたしておりますけれどもアメリカとしては当面、アメリカ自身が持っておる韓国に対する条約上の義務、あるいはアメリカ自身が経験をいたしましたインドシナにおけるああいう一種の撤収といったようなものから、ことにアメリカ国内における議会、あるいは世論と申しますか、そういったようなものを相当配慮をいたしつつ、長期の目標を追っていくということでございませんと、フォード政権としてはなかなか真っすぐ理念にだけ走っていけないという悩みがあるようでございました。率直に私の感じておりますことを申し上げるわけでございますが、したがいましてこれは当然のことながら、両国とも頭に置いております理想、理念は同一でありながら、なお当面どの点に重点を置いて考えるかということになりますと、ことにアメリカ国内事情等々がございまして、ここのところをどのように国論をまとめていくかということにフォード政権もなかなか苦労をしておるらしいというようなことを感じて帰ったわけでございます。
  17. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと外務大臣の御答弁は、ベトナム後の東南アジア政策について、あるいは東アジア朝鮮半島の重要な現在の状況等について、日米間における考え方には非常な相違があったと認識した、あるいはこれらの政策についても一致することはできなかった、こういうような御答弁でございますか。もう一遍承っておきたい。長期的な見通しにおいてもどうですか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 長期的な見通しについては、これは両国考え方に恐らく何らの乖離がない。アメリカとしても相当苦しい経験をいたした後でございますだけに、ことさら各国が自主独立の政治、民意を反映する政治をやって繁栄をし平和になってもらわなければならないということ。そのためには対話がどうしても必要である。その対話のための条件というものは共同声明の中に書かれておりますけれども、しかしそういう条件のもとで対話をしていかなければならないということは、これはアメリカとしてもわが国としても全くそこで一致をしておるわけでございます。  ただ、わが国の場合、ベトナム戦争にも直接かかわったわけではございませんし、また他国と防衛条約関係を——他国と申しますよりは、たとえば韓国でございますけれども、そういったような義務を条約上負っておるわけでもない。その点はアメリカとはおのずから経験なり立場が異なっておりますので、アメリカとして当面そういうごく最近における経験、あるいは条約上持っております義務といったようなことに、アメリカなりの影響を受け、そういう現実に起こった経験あるいは現実に負っております義務というものを強くそれだけ感じるということは、これはわが国立場が違いますだけに無理からぬことであろうと思います。そういう短期的なニュアンスというものはやはりおのずからある、あることは少しも不自然ではない、しかし長期的にわれわれが何を相ともに求めなければならないかということは、これは共同声明に明らかになっておるとおり、両国は全く一致をしておるというふうに私は考えております。
  19. 堂森芳夫

    堂森委員 この共同声明を見ますると、創造的な国際的な協調といいますか、そういうものをうたっております。ところがいまの御答弁をお聞きしておりますと、現在の段階においてベトナム後のインドシナ政策についても、また現在における朝鮮半島における政策についても、日本考え方アメリカ考え方は全く一致することができなかった、こういうふうに判断してようございますか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう少し具体的に申し上げました方が御説明がしやすいのかと思いますが、たとえば、先般国連加盟の問題につきまして韓国南北ベトナムの問題があったわけでございます。わが国米国は、この三国が一緒に加盟することが最も望ましいという立場では一致をいたしました。しかしそれから先、わが国としては、韓国が加盟を認められないことはきわめて遺憾なことではあるけれども、それであるがゆえに南北ベトナムの加盟に反対という立場はとらないという表明をいたしました。米国は御承知のように、いわゆる普遍性の原則のゆえをもって拒否権を発動いたした。これなどは明らかに両国考え方の違いが現実になってあらわれたわけでございます。これはおのおの違う立場の国であり、違う経験、違う条約上の義務、違う憲法を持っておる国でございますから、そういう具体的な問題について立場意見が違い得ることは私は少しも不思議ではない。基本的に一致しておればよろしいのでありまして、そういう具体的な問題について考えの違いがございますからこそ対話というものが必要であり、そしてそれが創造的な対話になり得る。全部が同じであれば創造的な対話は生まれないわけでございますから、共同声明に申しております創造的な伝々というのは、両国の間に基本的な意見の一致がありながら、具体的な問題についてやはりおのおのの国の立場を反映して考え方が違ってくる、その場合によく対話をやろうではないか、そういう意味に創造的な関係、対話というものを私ども考えておるわけでございます。
  21. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんから、私、この共同声明新聞発表関連して具体的に質問を進めたいと思うのでありますが、この共同声明におきましての形といいますか共同声明発表の仕方が、従来の日米共同声明日米首脳会談とは全く形が変わってきた、こういうことが言えると思います。それは三木さんの好みでもあったと思うのでありますが、そこで、この共同声明の中で特に国家主権の尊重などという五原則——あたりまえのことでありますが、こういうような五原則等をわざわざこの共同声明に盛り込んだということについては、日本側にはそのねらいがどこにあったのかということも注目すべきことではないか、私はこう思っておるのであります。特にフォード大統領が十一月に中国を訪問するだろうと言われておるのでありますが、共同声明においては中国関係のことについては何ら一言も触れられておりません。あるいは新聞発表にも触れられていない。そういうことでこれらの問題を、この国家主権等の原則五つが加えられたということが、あるいは大国の覇権主義というものに対してお互いに話し合われて、そこに何らかの結論といいますか話し合いが進んだという結果ではないのかというような考えも持つのでありますが、この点についての御答弁を願っておきたい、こう思うのであります。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この原則云々の項でございますが、その前の項におきまして、いわゆる国際的対話の必要を説いておるわけでございます。ただ、そのような対話というものは無原則な対話であってはならない、あるいは無原則な対話であっては意味がないということを示しますために、どのような原則が必要であるかということをこの第三項で述べたわけでございます。したがいまして、これは今後両国がいろいろな国と対話をいたしていきます場合に、このような原則に基づいての対話である、全く無原則な対話というものでは創造的でないし意味がないということを申したわけでございまして、ただいま堂森委員が御示唆になりましたような一つのことを頭に置いて、このくだりを合意したわけではございません。
  23. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、私は質問を前に進めてまいりたいと思いますが、今回の日米会談の主要な題目はやはり朝鮮半島の問題にしぼられた印象が深いと思うのであります。新聞発表の第三項の前段で、韓国の安全が朝鮮半島の平和維持に緊要である。それから後段では、朝鮮半島の平和維持日本を含む東アジアの平和と安全に必要である、こううたっておるのであります。  一九六九年の佐藤ニクソン会談では、韓国の安全が日本の平和にきわめて緊要であるということが、佐藤総理の認識としてこれが明記されて、強調されておるのでありますが、その後の新聞発表におきまして総理とあなたが新聞発表しておられます。総理は、これは別に韓国条項の再確認であるとかいうような考え方ではないのだ、これはすなわち現実を認識した結果できた発表である。ところがあなたは新聞発表で、これは佐藤ニクソン会談における日韓条項の、韓国条項の再確認である、こう解釈してもらって結構である。こういうふうに明らかに変わった発表が総理とあなたの間にされておるのでありますが、これはどういう意味でございますか、改めて私はあなたからお聞きしたい、こう思うのであります。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず最初に事実関係を申し上げますならば、このたびの三木・フォード会談におきまして、いわゆる韓国条項といったようなものについて議論が行われたことは一切ございませんでした。わが国からそれに言及したこともなく、またアメリカ側からそれを確認する、しないといったような問題もございませんでした。これは事実関係として申し上げるわけでございます。  それから次に、このたびのただいま御指摘の共同新聞発表の三項でございますが、私どもこの文章を書きますときに、特に何か作為をした、あるいは特定の意味を持たせるためにこういう表現をしたということは、事実問題としてございませんでしたので、ただ強いて申しますならば、韓国の安全は確かにわが国にとって緊要な関係を持ちますが、それもさることながら、朝鮮半島全体というものをやはり考えておくことが必要ではないか。すなわち朝鮮半島における南北関係といったようなものが、これが即朝鮮半島の平和あるいは紛争そのものになるわけでございますから、その関係ということにやはり多少将来のことまで考えると着目をすべきではないか、こういう気持ちが強いて申せば幾らかこの三項の中に入っておろうかと思います。この点は、ちょうど昭和四十八年に田中首相がニクソン大統領と会見いたしました後の共同声明において、「両者は、朝鮮半島における新たな発表を歓迎し、」と、朝鮮半島ということでこの事態を共同声明の中で四十八年には述べておりますが、幾らかそういう思考方式がこの中に入ってきておるというふうに、強いて申せば申し上げることができるであろうというふうに存じます。ただ、そのことはそのことといたしまして、一九六九年のいわゆる佐藤ニクソン会談の後の共同声明における韓国条項というものは、これは当時の声明としてはそのまま有効に残っておるわけでございます。ただ、今回それについてわれわれが言及したこともなく、アメリカ側が確認を求めたこともない。これは事実問題としてそういうことはなかったわけでございますから、したがいまして三木総理大臣が、そうではあっても韓国わが国関係朝鮮半島わが国関係は、素直に見てかくのごときものではないかという説明をしておられます。それは私はそのとおりであろうと思いますので、それをこの第三項に書き入れたというふうに御理解をいただきたいと思います。
  25. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、あなたの新聞発表と総理の新聞発表とは私は違うと思うのでありますが、あなたは違わない、同じであるという判断でございますか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点、違うという論評を受けまして私としては実はやや意外であったわけでございますが、今回、韓国条項云々という話は何も出ておりませんので、したがってこの共同声明にもそれに直接触れておらないわけでございますけれども、一九六九年の韓国条項というものがもう廃棄されたものであるかどうかということでありますれば、私どもはそう考えておりませんで、それはそれとして存在をしておる、ただ今日の時点に立ってそういう問題が日米首脳間で議論になったことがあるかといえば、そのことは別になかった、こういうことでございます。
  27. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、あなたはずるく答弁をかわしておられると思うのであります。私は了承できませんが、時間がありませんから……。  そこで、今回の日米会談におきまして私は非常に残念な点は、朝鮮問題一つ見ましても、アメリカ側はやはり力の均衡ということに重点が置かれておると思うのであります。ところが三木さんはそうではなかったと思うのであります。宇都宮さんが三木さんの特使だったかどうか、これは問題は別にしまして、金日成主席と会ってそして報告をされて、日米会談に臨むために北朝鮮側のそうした事情等も頭に置いて行かれたということは、朝鮮半島の平和と安全のためにはアメリカの力の均衡の外交というものだけではいかぬ、そういう判断に三木さんは立っておったと思うのであります。そして、北朝鮮韓国との話し合いというものについて、日本はあるいはアメリカ側に対してそうした外交的な措置を推進すべきであるという考えを三木さんは持って行ったと私は思うのでありますが、しからば今回の日米会談で、北朝鮮に対して、両国間でどういうような話し合いが行われたのでありますか、アメリカ側は北朝鮮に対してどういう考えを表明したのでありますか、これも答弁を願いたい、こう思うのであります。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その問題について、三木総理大臣はこのように説明をしておられますし、私どももそう思うのであります。すなわち、長い将来を考えるならば、何としても朝鮮半島における北と南との関係が、いわゆる紛争をはらまない平和なものにならなければならない、このことについては日米両国とも異存のないところでありますが、しかしそこに至る間、あるいはそのような平和的な南北関係を樹立するために、現実に均衡状態というもの、あるいは紛争が起こらないような状態というものの保証が必要である、そのゆえ、自分としては米軍が米韓条約によって韓国に駐留することを必要と考える、そういうふうに総理大臣は述べておられまして、私はそれがすなわち政府の立場であると考えております。したがいまして、今回の会談におきまして総理大臣は、自分が入手をされました情報に基づいて、金日成氏がこのようなことを言っておるということは紹介をされました。と同時に、これは必ずしも新しいことではなく、昨年の三月ごろにすでに金日成氏が、北鮮側が言ったことと同じ趣旨ではあるがと言って紹介はしておられます。しておられますが、しかしそうであるがゆえに何かをすべきである、することはできないであろうかということは総理大臣も発言をしておられませんし、米国側もそのような反応を示しておりません。
  29. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、そこにも、今回の日米会談における非常に大切な、絶好のよい機会であったにもかかわらず、力の均衡というアメリカの従来からの政策に対し、日本側は話し合い、協調というような政策を打ち出すことができなかったということには、非常な遺憾の意を表したいと思います。これは見解の相違とあなたはおっしゃるかもしれませんが、そういうふうに判断をするのであります。  そこで、あなたは秋の国連総会にも出席されると新聞に出ております。それでは、在韓国連軍に対するわが国の態度はどのように今日考えておられるのか、どういう態度で今後臨まれるのかということについてもあわせて答弁を願っておきたい、こう思うのであります。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点につきましては、わが国が共同提案国になっております決議案の趣旨にも明らかであると考えますが、わが国としては、在韓国連軍が解体をするということはしかるべきことであろう、しかしその際に配慮をいたすべきことは、一九五三年の休戦協定の当事者がそれによってなくなる、つまり朝鮮半島における平和を定めました枠組みが法律上も実際上もなくなるということであっては、これは平和を保つゆえんでありませんから、その枠組みをどうやって維持するかということは関係者が相談をすべきである、その枠組みを維持した上で在韓国連軍が解体をするということはわが国としてもしかるべきことと考える、その時期は来年の一月一日であってもいい、こういうのがわが国立場でございます。
  31. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、時間がありませんので次に進みますが、去る十三日外務大臣は、韓国を訪問して朴大統領と会見したアメリカの下院議員団と懇談の席上で、韓国で武力紛争が発生した場合の日本の態度について、北が大規模に南下したときとその他の紛争が起きた場合とでは日本国民の反応は異なるであろう、こういう意味の見解を表明されたと新聞は報道しておるのでありますが、あなたは韓国条項については何ら日米両国の間に話はなかったとおっしゃいますが、私はやはり新韓国条項というものが生まれてきたという判断をすべきであるというふうに考えてあなたが発言をされたと思うのでありますが、いかがでございましょうか、こういう答弁をしておられるのでございましょうか。それから、日本国民の反応が異なるであろうと言われたということは、政府の対策も違うということになるであろうということでございますか、これも承っておきたい、こう思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段に御紹介になりましたようなことを、確かに私は米国の下院議員の諸君に申しておりますが、後段に言われました政府の対処につきましては、質問もございませんでしたし、私からは申しておりません。  前段に申しました意味は、このような質問に対して、すなわち韓国日本とは一衣帯水の間にあるが、韓国に事件が起こったときに日本人はどのようにそれを身近な問題として感じるであろうか、つまり日本の安全に関連のある問題として感じるであろうかという種類の質問でございまして、それは私は、たとえば全く仮説の問題であるけれども、北の大軍が南に入ってきて、そうして南を席巻するという事態の場合と、そうではなくて、その他の目に見えない、表面に立たない方法で南に向かって浸透が徐々に行われるというような場合とでは、日本国民の受ける衝撃あるいはリアクションというものはおのずから違うであろうということを申しました。これは私事実そうであろうと考えましたがゆえに、そのように申したのでございます。いずれにしても、全く仮定の問題でございますけれども。それに対して日本がどう対処するかというような問題は、質問にも出ませんでしたし、私も別段申しておりません。
  33. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは、これも仮定論でありますが、さっきのアメリカの下院議員団が質問したように、北朝鮮の南進の可能性を想定した上で、米軍が日本基地からの発進を求めてきた場合は、政府として事前協議でイエスという態度をとることを明らかに言うことはこれは無理である、そんなことはわからない、そのときである、こういう意味でございますか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これにつきましては、質問もございませんでしたし、したがって答えもいたしておりませんが、政府の基本的な立場は、総理大臣がしばしば述べておられますように、それがわが国の平和と安全にどのように直接間接に関係があるかということを判断しつつ、そのような仮定の場合に、わが国はイエスと言うこともありノーと言うこともある、これが政府の正式の立場でございます。
  35. 堂森芳夫

    堂森委員 イエスと言う場合もノーと言う場合もあり得る、こういうことでございますね。  それから、新聞報道によりますと、来月の十五日にソウルで日韓定期閣僚会議が開催されることが決まったと報道されておりますが、本当に決定したのでございますか。それから、日韓の定期閣僚会議が開催されたとしますならば、朝鮮半島現状認識についての協議が焦点となるのではないか、こう私は思うのでありますが、韓国側から韓国地域における有事の際の日韓協力体制の強化について要請があった場合、わが国の対応策はどういうふうになるのかということを私は承っておきたい、こう思うのであります。  それからもう一つは、時間がありませんからお尋ねしますが、七五年で期限切れとなりますところの日韓経済協力協定、これが期限切れとなった後の経済協力に関する形はどういうふうになるのか、構想をお持ちであると思うのでありますが、それもあわせて答弁をしていただきたい、こう思うのであります。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般、私が訪韓をいたしました際、閣僚会議をなるべく早く開きたいという韓国のお話がございまして、私もできるだけ御希望に沿うようにいたしたいと申して帰ってまいりました。来月半ば云々というお尋ねでございましたが、今回は招請国が韓国でございますので、したがいましてその日程をどう定め、どういたすかということについては、いわばホストの方の発表を待つ、意思決定を待つということが礼儀であろうと存じます。したがいまして、公にはまだ確定をいたしておらないというふうに御承知を願いたいと思います。ただ私どもとしましては、臨時国会の開催というようなことも考えられることでございますので、そのようなことも考えまして、できるならば日曜、祭日といったようなところで開いてもらいますならばわが方としてはそれだけ便利ではあるがということは申してございます。いずれにしてもホスト側の意思決定にまちたいというふうに考えております。  なお次に、そのような会議が開かれました場合、いわゆる有事の際のわが国の基地の利用等々の問題が議論されるかと申しますと、私はそういうことは議論されることはないと考えております。と申しますのは、この会議には、もともといわゆる防衛問題あるいは軍事問題等々は関係者が出席をいたしておりませんし、過去から議題になっておりません。今回もまたそのような関係者が出席する予定はございませんので、そういう性格は今回の会議も持たないものと考えております。  第三の点でございますが、この点につきましてちょうど昨日、今日いろいろな報道があるようでございますが、私どもとして何か新しい、いわゆる有償、無償五億ドルの履行が終わりました後の基本的な方針を決めておるわけではございません。ただ最近のオイルショック等々から、韓国の経済もわが国より一層よけい影響を受けておるということは事実でございますし、またそのことは国際的にも認知されておることもございますので、いわゆる民生安定あるいは産業基盤の充実といったようなインフラストラクチュアに関します部分は、当分、わが国としてもできるだけの支援はしていかなければならぬのではないかというふうに私としては考えておりますけれども、これは恐らく閣僚会議が開かれますならば、両国関係閣僚間でいろいろ討議が行われることになろうと存じております。報道されますような希望が先方から公に伝えられ、あるいは私どもがそのようなことを方針として決定したというようなことは、ただいまのところございません。
  37. 堂森芳夫

    堂森委員 私は日韓閣僚会議が開かれた場合にいろいろな心配があると思うのです。今回の日米会談後の共同新聞発表を見ましても、平和維持のため、安全保障上の諸取り決め重要性に留意したという項目があるのでありまして、これは日米安保条約というものについての留意が今回の日米会談において出てきた一つの新しい問題点であるという認識を私は持っておるからであります。  時間がございませんから最後の問題に触れますが、さっき山田議員が質問されましたフォード大統領三木総理の単独会見、これでありますが、直ちにそれは秘密外交であるというふうに申すことができるかどうかは、にわかにこれは言えないことでもあろうかと私は思うのであります。少なくとも、外交というものは総理が頂点になって、そして外務大臣がその下におられる、そして外務官僚の諸君が総理の指揮のもとに一致結束して外交に当たるというのは、その国の外交のために当然のことであろうと私は思うのであります。ところが、フォード・三木会談に私的な通訳が使われて外務省の公的な通訳が使われずにやられた。しかも外務大臣は事前には知られなかった。こういうことで、私は外交としての本当の姿からいって正しいことであるとは絶対に思わないのでありますが、外務大臣のどうという答弁はあるいはしにくいかもしれません。もう一度この点についてあなたの答弁を求めておきたい、こう思うのであります。今後そういうようなことのないように外務大臣は当然努力をすべきであるというふうに思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど山田委員にも申し上げましたように、私は両首脳だけでこういう話をするということは意味のあることであるというふうに考えております。また外国でもしばしば行われておりますし、電話を通じて行われる場合もしばしばあるわけでございますから、したがってだれかが立ち会わなければならないということはない。どのような通訳を使いますというようなことも全く自由なことで、通訳を使わないで話す場合すらあるわけでございますので、それでどうこうというふうには考えない。ことに記録を残す必要のない、あるいは残さない方がいい種類の会談であれば、よけいにそうであろうかと思います。  なお蛇足でございますけれども三木総理大臣の場合には、実際には会話の内容はほとんど御自分で理解をしておられますので、補助的な意味で通訳を使われたかと思いますが、それだけよけい、だれがその衝に当たりましょうと大した問題ではないように私は考えます。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員 終わります。
  40. 栗原祐幸

    栗原委員長 河上民雄君。
  41. 河上民雄

    ○河上委員 私も日米首脳会談関連して二、三お尋ねをいたしたいと思います。  大綱につきましてはもうすでに同僚委員よりいろいろお尋ねがございましたので、私は少し角度を変えて二、三にしぼってお尋ねをしたいと思うのであります。  まず第一、今回共同声明共同新聞発表という二段構えの形式をとられたわけでありますけれども、これはいま御指摘がございましたように、あまり従来例のないことであったように思うのですが、一体、この共同声明というものと共同新聞発表というものの関係あるいはその効力というものはどういうものであるか、私はそれをまずこの際明らかにしておかなければならないと思っております。  まず、これは条約局長にお尋ねいたしますが、共同声明の法的な地位、これはすでにこの委員会におきまして過去にもう何度か論議されておりまして、大体のところ共同声明というものは法的な拘束力はない、つまり、内閣がかわっても引き続き他の内閣を拘束するものではないというふうに従来理解されておりますけれども、そのように理解してよろしいわけでございますか。
  42. 松永信雄

    ○松永説明員 一般的に申しますならば、共同声明でありますとか、共同発表とかいうようなものは、国際法上のいわゆる国際約束であります条約あるいは協定というものとは異なりまして、法的な拘束力を持つものではないというふうに考えられております。
  43. 河上民雄

    ○河上委員 それでは外務大臣にお尋ねいたしますけれども一体共同声明というものと共同新聞発表というこの二つに分けた理由はどこにありますか。また、共同新聞発表というものと共同声明というものとは全く同じ性格のものであるのか、それとも上下の関係に立って互いに補完するものであるのか、そのような点、いかがでございますか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今度のことには実は多少沿革がございまして、いつもさようでございますが、こういう際、数カ月かかりまして、両国事務当局が懸案となっておりますような事項につきまして整理をいたしまして、そうして頂上会談を契機としてそれらについてのいわゆる意思統一、あるいはペンディングな問題の処理を図る、こういうことをしょっちゅういたしますことは河上委員が御承知のとおりでございます。それがいわば今回共同新聞発表の形をとってあらわれたわけでございますが、そのようなことを準備をいたしております段階で、総理大臣から、これはこれで必要なことであるには違いないだろうが、仮に自分とフォードとがもう少し基本的な両国の哲学とでも申しますか、関係について話し合ったとすれば、それはやはりそれとして何か残しておくべきではないかというお話がありまして、私はそれはごもっともなことであるというふうに考えました。それでアメリカにそれを、これはむろん私どもが渡米をいたしますかなり前でございますけれども、そういうようなことを向こうへ申してやりまして、たまたま先方はフォード大統領キッシンジャー国務長官とも旅行中であったわけでございますが、旅先で、先方もそれは好ましいことではないかというような反応を示してまいりました。したがいまして、それならばそういうものが、いいものができればひとつ努力をしてみようということで、最終的にはキッシンジャー長官と私のレベルまででこの共同声明というものをまとめたわけでございますが、同時に従来から準備をいたしておりましたもの、これは両国のいろいろ事務的な諸問題の処理にはきわめて必要なものでございますので、これをも同時に取り決めまして発表いたしたわけでございます。  したがいまして、共同声明共同新聞発表というものは拘束力が異なるのであるのか、両者に上下と申しますか、何かそういう関係があるかということになりますれば、私は両方その点では同じ性格を持つものである、両国の合意であるという意味におきましては同じものである、ただ声明において、申しましたような沿革から両首脳がより基本的な問題、物の考え方について合意をしておるという意味では、声明の方が基本的な物の考え方について触れ、新聞発表の方が両国間にございますもろもろの問題についてもう少し具体的に、そして実務的に物事を合意しておるという意味での実際上の違いはあろうと存じます。しかし、両国が同じく合意をしたという意味では両者は全く同じ性格を持っております。
  45. 河上民雄

    ○河上委員 それでは共同声明というものは条約のような法的拘束性を持たない、しかし両国首脳が合意したという意味において政治的なある程度の拘束性というものがある、その限りにおいては共同声明共同新聞発表もほぼ同じものである、こういうふうに理解して二つの文書発表された、こういうふうに考えてよろしいわけでございますね。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 両国の合意を示したものであるという意味におきましては両文書とも同じことでございます。
  47. 河上民雄

    ○河上委員 それではこの内容について、もう余り時間もございませんので少しはしょりまして一つ、二つ伺いたいと思いますが、その共同声明の中に「すべての国々が創造的な国際的対話を確立することが必要である。」ということが冒頭にうたわれておりますけれども、この「すべての国々が」というものの中には、北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国も当然入っておるのですか、入ってないのですか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは非常に厳格な意味でのお尋ねでございましたら、北朝鮮わが国承認をいたしておりませんし、米国承認をいたしておりませんと申し上げざるを得ないであろうと思います。どうも私はそういうお答えは——しかし、そんなに厳密にここで「国」という言葉が使われたかどうかということになりますと、必ずしもそうとは言い切れないところもございましょうから、余り厳密にお答えすることが建設的な意味があるかどうか、私自身ちょっと疑問に思いますけれども、きちんとお尋ねがあれば、やはりそのようにお答えすべきだろうと思います。
  49. 河上民雄

    ○河上委員 今回の日米共同首脳会談一つの大きな問題は朝鮮問題だったと思うのでございまして、その朝鮮問題につきましても、先ほど来問題になっておりますような三段論法で日本との関係を論じておる。その中に朝鮮半島南北一体として考えるという考え方も一段入っているわけでございますね。そういう場合に、この「すべての国」という中に朝鮮民主主義人民共和国が入っていないのか入っているのか、その辺はっきり言えないということになりますと、この文書一体どういうことでつくられたのか。特にこの共同声明は、非常に三木総理理念をうたったものであるということになっている以上、一体その辺はどうなるのでございますか。いまのお答え以上答えられなければそれをひとつ記録にとどめておく以外にないわけでございますけれども、それは一体どういうことでございますか。そのことは同じように続いて問題になると思うのでありますけれども共同声明の中には「アジアにおける公正かつ永続的平和」というような表現がございます。そしてまた共同新聞発表の中では、今度は「アジア諸国」と前段にはあり、後段になりますと今度は「東アジアにおける平和と安全」という三段論法の一つの中に「束アジアにおける平和と安全にとり必要である」云々というような言葉が出てまいります。一体この「すべての国」とか「アジア」とか「東アジア」という場合に、この範囲というものは一体どう考えたらいいのか。これは政治的な拘束性をある程度共同声明共同新聞発表というものは持っているといたしますと、当然これははっきりしておかなければいかぬと思うのでございますが、いまの質問につけ加えまして、一体この「東アジア」というのはどういう範囲を想定しておられるのか伺っておきたいと思う。
  50. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 この共同声明の「東アジア」という表現でございますが、具体的には、地理的範囲を特に厳密に想定して使った概念ではございませんが、大体の考え方といたしましては、南東アジアと北東アジアを総称した、両方を含めた概念として用いた次第でございます。
  51. 河上民雄

    ○河上委員 従来、安保条約では極東の範囲というのが非常に問題になったわけですけれども、極東というのと東アジアというのは一体どういう関係に置かれるのでしょうか。また、その東アジアという中には朝鮮半島全体が含まれるというふうに理解してよろしいんでしょうか。
  52. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 ただいま申し上げましたように、東アジアといいます場合には北東アジアが含まれるとわれわれは考えております。したがいまして、北東アジアということになってまいり、それがもちろん朝鮮半島を含むわけでございますから、その意味においては北朝鮮も含まれておるとわれわれは解しております。  それから、極東という概念との関係でございますけれども、これも一般的な言葉としての極東ということになりますといろいろな概念、定義はあると思いますが、先生の御質問意味が安保条約との関連ということでございますれば、これは従来から政府としての統一見解がございまして、御承知のとおり、大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び台湾地域もこれに含まれるというふうな言い方をいたしておるわけでございます。
  53. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、共同記者発表の第三項における「現行の安全保障上の諸取極」という中には、日米安保条約それから米韓条約は当然含まれておるんだろうと思うのでありますが、その場合に、アメリカとしては米台条約も入れているつもりでしょうか、どうでしょうか。
  54. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 この第三項に言っております「現行の安全保障上の諸取極」というのは、その前後の関係から見ていただけば明らかなように、朝鮮における平和の維持との関連で、そのための「安全保障上の諸取極」というわけでございます。したがいまして、第一義的に申しますれば、休戦協定それから米韓相互防衛条約が入ってくるのであろうと考えます。  他方日米安保条約でございますけれども、この日米安保条約は、御承知のとおり日本の安全だけでなくて、韓国を含みます極東の平和と安全の維持に寄与するものでありますから、この朝鮮半島における平和の維持にとって韓国の安全が緊要であるということは明らかでございますから、その意味におきましては安保条約及びその関連取り決めもここに言う「安全保障上の諸取極」に含まれると解し得ると思います。アメリカ側も同様に解しております。
  55. 河上民雄

    ○河上委員 いま、私は質問の中で、日本政府はともかくとして、アメリカ政府では米台条約もこの中に入れているつもりですかということを伺ったのです。
  56. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 ただいま申し上げましたように、朝鮮半島における平和の維持ということに関連した諸取り決めということでございますから、われわれとしては、米台条約は含まれていないと解しております。
  57. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、もう余り時間もございませんのではしょりますが、外務大臣一つだけ伺います。  今回の会談の中で、朝鮮民主主義人民共和国に対する対話の働きかけについて、外相レベルでお話が出たかどうか、またフォード大統領の訪中に関して何かお話が出たかどうか、それから金大中事件のいわゆる政治的決着について、それが話題になったかどうか、それを伺っておきたいと思います。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる北朝鮮との問題でございますが、非常に長いこと話が出たわけではございませんけれども、国連軍解体決議、われわれが共同提案しておりますその決議案との関連では何かの話し合いがなされなければならない。少なくとも平和のフレームワークを維持するために、米軍司令官と北鮮軍司令官といったような何かの話し合いがなされなければならないようにあの決議案はなっております。したがいまして、あの決議案はそういうことをやはり含んで示唆しておるという意味のことは、ごく簡単にですが、私が申したことはございます。  第二に、フォード大統領の訪中につきましては、私から申し上げるのは直接には差し控えるべきだと思いますけれども、訪中が予定されておって、その予定に特に変更があったというふうには了解をいたしておりません。  第三に、いわゆる金大中事件でございますが、これについては特段の話はございませんでした。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 日米会談についてなお詳しく伺いたいのでございますけれども、もう時間がございませんので問題提起にとどまるのは残念でございますが、残されました時間があと一、二分でございますので、少し話題を変えます。  PLOの代表の方が先般日本に来られまして、外務大臣もアル・フートさんにお会いになっておるのでございますが、これは外務大臣としては大変結構なことだと私ども思っておりますけれども、それに伴って、というよりもそこの最大の実際的な課題でありますのは東京事務所の開設の問題でございますが、これについて政府のお考えを承って私の質問を終わりたいと思うのでございます。  民間ベースでどうだというようなお答えであったようでございますけれども、具体的にどういうものがそこに含まれているのか、特にECの代表部には外交特権が与えられているという前例もあるわけでございますが、それとの比較においてどういう待遇が用意されておるのか、それだけ伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アル・フート氏は、私のところにはいわば表敬というような意味で見えられました。したがいまして、話の内容も、いろいろな問題に対するPLOの考え方あるいはPLOの現状というものについて、私の理解を深めるためにいろいろお話がございました。言葉遣い等々もきわめて慎重なお話でありました。ただいまお話しの具体的な問題につきましては、前もって主管局長がアル・フート氏と話をしておりますし、その後にもいたしたようでございますので、私との関連では、そのような話は出てまいりませんでした。したがいまして、お尋ねの点につきましては、主管局長からお答え申し上げます。
  61. 中村輝彦

    中村説明員 アル・フート氏と私お会いいたしまして、東京にPLO事務所を設置する場合にはどういう問題があるんだろう、それに伴いまして、日本の事情はどういうことなんだろうということから、アル・フート氏からいろいろ御質問もございまして、私の方でも日本の法制上の問題その他いろいろ御説明したわけでございます。その際、日本のいわゆる承認の問題とか外交特権の問題とかということはもうとうによく御存じでございまして、向こうからは、そういった要求的なお話は何もございませんで、入国の際にどうなるんだろうあるいは日本においては言論は保障されるんだろうかといったようなことから、種々御質問がございました。そういう点で十分御説明をしたつもりでございますし、十分先方も理解されたものと考えております。結局、私的な資格で、いわば私的な事務所をつくるということを前提に頭の中で考えての御質問であったと理解しております。
  62. 河上民雄

    ○河上委員 いまのお答えではちょっと不満でございますけれども、すでに時間が参りましたので、私はこのくらいできょうはやめます。
  63. 栗原祐幸

  64. 松本善明

    松本(善)委員 今回の三木首相訪米共同声明共同新聞発表について引き続いて質問したいと思います。  韓国条項の問題について、いままでの質疑を前提としてお聞きしたいと思うわけですが、これは、六九年の共同声明と比べるならば、明らかに拡大である。その点では、韓国の安全が東アジアの安全にかかわるように日本政府も認めるということになっている点で、この点は明白だと思いますし、この東アジアの範囲が、先ほどのアメリカ局長のお話で言うなれば、極東の範囲よりもはるかに広いということになるわけです。これは、この共同新聞発表の機会に、アメリカアジアにおける諸条約米韓条約にとどまらず、米台条約あるいは米比条約、その他のアメリカ軍の他国に対して負っておる条約上の義務、これを果たす米軍の役割り、これを在日米軍にも果たさせよう、こういう関係に広がっていくものだと思いますが、この点についての外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと御質問意味がしっかり把握しかねたわけでございますけれども、ここのところで、実は起草しておりますときにいきさつが多少ございまして、朝鮮半島に平和が維持されるということはアジアにとって大事なことである、こういうことはよく通念上申しますけれどもアジアといっても、漠然と使いますと非常に言葉の範囲が広いので、もう少し限定したらどうかというような意味で東アジアという言葉を使いました。したがいまして、先ほど局長が申し上げましたように、東アジアというものをどこの国、どこの国というふうに厳密に頭に置いた上でこういう表現をいたしたわけではございません。が、そのこと自身は、つまり朝鮮半島においてもし紛争が起こるならば、その近隣の地域はみんな迷惑をする、それからいろいろな影響を受けるわけでございますから、そのことを率直に述べただけであって、それに対してどういう行動がそこから予想されるか、わが国にとってあるいは米国にとって、というようなことはここに何も触れておりませんし、またそれをここで申し述べているわけではないのであります。
  66. 松本善明

    松本(善)委員 それじゃ具体的にお聞きしていこうと思いますが、六九年共同声明では、韓国の安全が日本の安全に緊要だということは言っていたわけですけれども、そのことと東アジア韓国の安全を結びつけたような表現はなかったわけです。その点では、韓国の安全を東アジアの安全と結びつけたという点では拡大であるということは明らかではありませんか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、ちょっと私は同意いたしかねますのは、韓国自身が東アジアにある国でございますから、そこで、韓国に何かあれば東アジアに影響があるだろうということは、どうもそういうことになってしまうわけであって、何か東アジアというものを、特定の幾つかの国を考えて、韓国に何かあったときにその国々がどういう行動をとる、あるいはとらないといったようなことをここで言っておるわけではございません。
  68. 松本善明

    松本(善)委員 それは議論としては全くナンセンスで、韓国も東アジアだということだから東アジアに影響があるというようなことならば、ここに東アジアという言葉を入れる必要は全くないわけなんです。私は、いまのような外務大臣の説明ではとても日本国民は納得をしないし、東アジア韓国の安全を結びつけたというところに今度の新聞発表では非常に重要な意味があると思います。これは弁解されることがあればあとで弁解されればいいと思いますが、質問としては、じゃあ韓国の安全と日本の安全もしくは東アジアの平和と安全という問題との関係で、韓国の安全というのはどういうふうに日本の安全とかかわっているのかということを伺いたいのでありますけれども外務大臣認識として、朝鮮半島で武力衝突が起こった結果、日本に外国の軍隊、朝鮮民主主義人民共和国の軍隊というようなものが攻め入ってくるというようなことがあり得るとでもお考えになっているかどうか、この点の認識を伺いたいと思います。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうもはなはだ物騒なお尋ねでございますし、全く仮定のことでございますので、私からそれをイエスともノーともお答えいたさない方かよろしいのではないかと思いますが——。
  70. 松本善明

    松本(善)委員 この新聞発表で言われている、日本の安全は韓国の安全にかかわっているということはまことに物騒な話なんですよ。だから、その真意は一体何事なのかということが日本国民の関心の対象になっているわけです。だから、これは一体どういうことを外務大臣考え日本政府は考えてこういう新聞発表をしておるのか。日本の安全にかかわるというのは、一体日本に外国軍隊が入ってくるということまで考えているのか。そういうことはあり得ないと私は思いますけれども、そういう答えが素直に出てこない。本当にそう考えているのですか。朝鮮民主主義人民共和国の軍隊が仮に日本に入ってくるというようなことがあり得る、それについてはイエスともノーとも答えられないというのが外務大臣の本当の考えですか。それが国民に対して言う言葉ですか。もう一回お答えをいただきたいと思います。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう御質問にはお答えしない方がいいと申し上げているのです。
  72. 松本善明

    松本(善)委員 まことに遺憾なことだと私は思います。一体どういうふうに朝鮮民主主義人民共和国を認識をしているのか。私はとうていそういうことはあり得ないと思いますが、韓国の安全が日本の安全にかかわるということを言っているから、一体どういう意味なんだろうか。  それじゃ具体的に別の角度から聞きますけれども韓国の安全が日本の安全にかかわるというのはどういう意味ですか。距離が近いということは、これは日本国民は全部知っています。火の粉がかかるというような言い方もされます。それは一体具体的にはどういうことなのか。朝鮮半島で何が起ころうと、日本が軍事的に中立を守っていれば何もかかわりないということはあり得ると思います。そういうことはあり得ないのかどうか、私が聞きたいのは、韓国の安全が日本の安全にかかわるというのは具体的にはどういうことが日本に起こり得るのか、このことを明確にお答えいただきたいということであります。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 とにかく韓国わが国との距離はこれだけしかございませんから、一般論として隣の国で動乱があり、戦争があれば、それは隣国はいろんな意味でそれから影響を受けることは、ちょっと考えましても当然のことではないかと私は思います。
  74. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞きますのは一もちろん影響はあるでしょう。ベトナムアメリカ軍が敗退したということでも非常にいい影響がアジア全体に起こっておりますし、そういうような影響がいろんなことで起こることは、これはもうだれもがわかっております。しかし、それが日本の安全とかかわるというのはどういう意味なのか、何を想定しているのかということを外務大臣に伺いたいのであります。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ですから、具体的に申してまいりますと、いまそういう事態が目前に予想されるわけでもないのに、いかにも物騒な議論をすることになると思いますから、私の口からはそれは申し上げない方がいいというふうに申し上げておるわけです。
  76. 松本善明

    松本(善)委員 物騒な議論をアメリカでしてきたのですよ。それは外交上の言葉でやっているから物騒ではないということではないのです。安全にかかわるということは物騒なことなんです。それについて答えない方がいいというのはまことに国民をばかにした、国会をばかにした議論だと私は思います。聞かれて、それについて答えない方がいいというのはどういうわけですか。とうてい理解はできない。日本から、アメリカ軍は朝鮮半島の武力衝突に干渉しない、日本は軍事的に全く関与しないという状態であれば、これは日本が戦乱に巻き込まれるというようなことは決してないと思います。そういう場合に日本が軍事的に中立を守るということこそが日本の安全であるというふうに考えますが、この点について外務大臣意見を伺いたいと思います。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それだけでございましょうかね。たとえば日本韓国北鮮といいますと余りに例が生々し過ぎますからもう少し抽象的に申し上げますが、たとえば隣の国で戦乱があったというときに、いわゆる難民あるいは負けた方の軍隊と申しますか、そういうものが隣国に向かっていわゆる避難をしてくる、逃げてくるというようなことは世界史上何度もあることでございます。しかもそういう人たちは武器を持って逃げてくる。そうしますと、それについての追蹤が隣国の意思いかんにかかわらず行われ得る。そういったようなことは世界歴史に幾らでもあることではないでしょうか。ですから一般的に申して隣の国、しかもきわめて近い隣の国で戦乱が起こるということは、隣国にとってはやはりこれは無関心ではいられない事態であるということは申し上げても間違いではないであろうと私は思います。
  78. 松本善明

    松本(善)委員 いまのは、朝鮮半島の問題について言うならば、韓国軍ないし米軍が負けて日本に逃げてくるという場合に、追撃が日本に対して行われるということを想定しているというふうに考えざるを得ません。日本から米軍が出ていかない、軍事的には日本は一切関係しない、そしてそういうような軍隊が、韓国軍が入ってくるというようなことを認めないという態度を厳格に守るならば日本の安全は守られるんじゃないですか。その点はどうお考えですか。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 抽象的でなく、具体的に歴史の例をお考えになるとわかりますように、隣国として、隣の敗走した兵隊が自分の国へ入ってくることを歓迎するなんてことはないわけです。意思にかかわらず入ってきてしまうことがある。わが国のように海岸線が長ければそれはなおさらそうでございます。私はいま何国、何国ということを申しておるのではありませんけれども、隣国で起こった紛争の被害を隣の国が受けるということは、これはさあいらっしゃいといって迎え入れるのではなくて、現実の問題としてこれは歴史上幾らでもあったことであります。
  80. 松本善明

    松本(善)委員 ちょっと角度を変えて伺いますが、この共同新聞発表に関してハビブ国務次官補がワシントンで記者会見をやって、その中で触れております。それで、朝鮮において武力紛争が生じた場合に米国としては日本が何をすることを期待をするのか、米国としては、日本米国にとって友好的な中立の立場をとると考えてよいかという記者からの質問に対して、ハビブ次官補は、この今度のいわゆる共同新聞発表韓国条項を全部読み上げて、趣旨としては、好意的中立以上のことを期待している、こういう明らかな答えをしております。で、私は外務大臣にお聞きしたいのですが、朝鮮半島で武力紛争が起こった場合には、日本韓国の側に立つのですか。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御質問意味を明確にしていただきたいと思いますが、韓国の側に立つのかというのはどういう意味でございますか。
  82. 松本善明

    松本(善)委員 言葉どおりであります。中立を守らない、紛争に対して確固として中立を守るという立場ではなくて、韓国の側もしくは、もっと言えばアメリカ側立場に立つかということです。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の平和と安全が脅かされるというふうに感じますれば、わが国は自衛のための措置をとるということはあろうと思います。それ以外のことは考えておりません。
  84. 松本善明

    松本(善)委員 だから私は先ほど来再々お聞きをしているわけだけれども、先ほど、どういう意味韓国の安全が日本の安全にかかわるかということをお聞きしたら、難民とか負けた方の軍隊が逃げてくる場合ということを言われました。それは日本の安全にかかわりますか。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は韓国日本北鮮という名前を挙げずに申し上げておるわけですけれども、隣国で戦争があって難民あるいは負けた軍隊が武器を持って入ってこられれば、それは隣の国としては当然安全は脅かされる、秩序はやはり乱されると考えざるを得ないと思います。
  86. 松本善明

    松本(善)委員 そういう場合に日本が自衛をするというような立場に立つわけですか。先ほどからの問答との関係で言うならば、自衛ということがあり得るということを言われましたが、いまのようなことが起これば自衛ということになるのですか。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 隣国としては、当然そういう事態がないように考えていくのが本当であろうと思います。
  88. 松本善明

    松本(善)委員 この問題については、私はもっと率直に国民に言われなければならないと思います。私は、この表現その他について言うならば、いまのような事態だけを想定しているものとはとうてい考えられない。  それで、その点でもうちょっと伺いたいのですけれども、この韓国条項の最後のところに安全保障上の取り決めの問題があります。先ほども議論になりました。これは米韓条約、そして休戦協定、安保条約などを意味するということはハビブ国務次官補も言っておりますが、そうすると、日本政府も含めて東アジアにおける平和を維持するために「現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」ということになっております。休戦協定や米韓条約重要性、東アジアの平和を維持するための重要性に留意をしたということになっております。ということになりますと、私は大変大事な問題だと思いますのは、沖繩を米軍が完全占領して、米軍が自由にここを使っておった時期、この時期には米韓条約上の義務を沖繩の米軍が果たすという役割りを持っておりました。いまそういう米軍はいないわけです。在日米軍は安保条約の拘束のもとにあります。そういう状況にありながら、この米韓条約重要性に留意をした、これは一体どういう意味だろうか。在日米軍を米韓条約上の義務を果たすために使うというようなことについても同意をしたのではないか、少なくともそういうニュアンスを持っております。そういう点で言うならば、これは私、一番最初にこの質問で申しましたように、アメリカアジアにおいて負っておる軍事、条約上の義務を果たすということにこの新韓国条項というものは重大な意味を持っているんじゃないか、こういうことを考えざるを得ません。この点について外務大臣はどうお考えですか、伺いたいと思います。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはいまあなたのおっしゃったことを私は全く排除するつもりで申すのではありませんけれども、私どもがここで考えておったのは、朝鮮における休戦協定がございます。これをいま国連でどうするかという問題が国連軍解体との関連であるわけです。ですから、あのフレームワークがなくなってしまっては困るではないか、こういうことを実は主として頭に持って「重要性に留意した。」と言っておるわけでございます。沿革としては。しかし、いまあなたのおっしゃいましたような可能性というのは私は無論否定はいたしませんけれども、実はああいうことを頭に置いてここは議論をしておったわけでございます。
  90. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、なかなか大事な問題になってきましたが、在日米軍が米韓条約上の義務を果たすために行動をするということについて、これは外務大臣は否定をしないというふうに受け取ってよろしいですね。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の申し上げておりますのは、いま国連決議のことを言っているわけであって、われわれは、国連軍を解体するという共同決議案を日米両者とも出しておるわけですけれども、それだけでは困るので、この諸取り決め一つであるところの停戦協定、その一方の当事者がなくなって、フレームワークがなくなっては困るではないか、こういうことをここで言っているわけなんです。
  92. 松本善明

    松本(善)委員 私がいま言っているのは休戦協定との関係で、国連軍の解体問題についても論議をしなければなりませんが、これは時間がありませんので改めてしたいと思いますが、私が言いたいのは、はっきりとハビブ国務次官補も言っているし、いまの答弁でありましたように、米韓条約がこの安全保障取り決めの中に入っているわけです。米韓条約との関係で、米軍が米韓条約上の義務を果たすという、在日米軍がそのために使われるということを肯定する趣旨かということを聞いているのです。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その御質問の最後の部分がよくわからぬので——米韓条約はよくわかります。在日米軍がどうしてそこへ入ってくるのですか。
  94. 松本善明

    松本(善)委員 なぜかと言えば、韓国の安全が「東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。両者は、かかる平和を維持するだめに現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」というのが新聞発表ですね。韓国の安全と、それから東アジアの安全と、その平和を維持するためにこの諸取り決めがあるということが言われているから、それで言っているのですよ。
  95. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 御質問の趣旨を私も十分把握しておらないかもしれませんが、この共同新聞発表の後半の部分、「両者は、かかる平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」とあるこの「かかる平和」というのは、朝鮮半島における平和を指すわけでございます。先ほど私もそういうふうに御説明申し上げたつもりでございます。これは英文をごらんいただきましても、日本文をごらんいただきましても、誤解はないと思います。したがいまして、朝鮮半島における「平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性」と言っておるのでありますから、先ほど申し上げましたように、第一次的には休戦協定及び米韓相互防衛条約がこれに該当するであろうということを申し上げたわけであります。  しかしながら、日米安保条約も極東条項というものを持っておるわけでございまして、そういう意味において朝鮮半島の平和には関心を持っておるわけでございます。しかしながら、その日米安保条約というものと米韓相互防衛条約というものは、何ら直接に結びついておるわけではないわけでございます。
  96. 松本善明

    松本(善)委員 私はこの点ではさらに論議をすべき問題が残っておると思います。とうていいまのような説明だけでは納得をいたしません。しかし、これだけやるわけにいきませんし、日本の安全との関係朝鮮の問題をこういうふうに論じているということは、アメリカだけでなく、日本朝鮮の民族の自決権に干渉するということになるということを私は指摘をしたいと思いますし、今度の日米会談では、特に核問題について会談が行われたのが広島の被爆の日である、三十周年である。にもかかわらず一国会で決議をした核兵器の全面禁止というような問題について何ら触れてない、これはまことに遺憾であると思います。これは指摘にとどめ、もし弁解することがあれば答えていただきたいと思いますが、質問としてはこの問題と別のことをちょっと最後に伺っておきたいと思います。  一つは、ベトナム民主共和国に対する無償援助についての交渉の現状、それから大使館設置の見通しについて伺いたいと思います。  第二は、南ベトナム臨時革命政府を承認したわけですけれども、これはいままでのなし崩しで外交関係をやっていくというのではとてもだめだと思います。私も今度ベトナム、ラオスに行きましていろいろ視察をしてまいりましたけれども、やはりいままでアメリカと一緒にかいらい政権を支持してきたという日本立場を根本的に反省をして、そして新しい基礎で築き上げるということでなければだめだと思いますが、この点についての基本方針を伺いたい。  それからもう一つ、PLOの東京事務所設置問題でありますが、これは先ほど質問が出ましたけれども、一番大事な問題はPLOをパレスチナ人民の唯一の合法の代表として認めるということだと思います。昨年の国連総会では、アラファト議長がこのPLOを代表する者として国連に招請をされておる。国連中心外交ということでいくならば、これは当然にこの経過からしてみましても、それからあのときの国連の決議からしてみましても、パレスチナ人民の唯一、合法代表としてPLOを認めるということが重要だと思いますが、この点について日本政府の態度を伺いたい。  この三つの点と、それから先ほどの核の問題についての、なぜ日米会談で核兵器の全面禁止の問題を言わなかったのか、この四つについて答弁を求めたいと思います。
  97. 高島益郎

    ○高島説明員 私から初めにベトナムの問題につきまして御説明いたします。  ベトナム民主共和国との間の話し合いにつきましては大分時間がかかっておりますけれども、その後双方誠心誠意、交渉の妥結のために努力いたしておりまして、現在、本年度無償供与として先方に提供すべき金額として八十五億円ということで大体話が詰まっておりまして、これの使途、使用手続等につきまして、細かい手続問題をいま詰めておるところでございます。私どもこの場で見通しをはっきり申し述べるわけにはまいりませんけれども、ほぼ大丈夫である、きわめて近い将来に妥結し得るという確信を持っております。  ハノイにおきますわが方大使館の設置でございますけれども、この方も大分予定よりもおくれておりまして非常に遺憾に思っておりますけれども、実はビエンチャンでの交渉にハノイ大使館で勤務すべき二人が直接参加いたしておりまして、この交渉が妥結いたしませんとわが方も人員を派遣する段取りになりませんので、この交渉の妥結次第一ハノイに大使館を設置するということで先方との間の話も進めております。  それからPRGとのいわゆる外交関係でございますが、この方は先生おっしゃいましたとおり、やはり先方の態度にもかんがみまして、外交関係正常化のための話し合いというものも必要であろうと私どもも思っております。現に西欧各国もそういうラインに従いましてそれぞれ話し合いを進めておりまして、現在、四月三十日以降全部で十九ヵ国ございますが、かなりの国がそういう話し合いをまとめております。  ただ、しかし現状を申しますと、話し合いがまとまったにもかかわらず、いかなる国もまだ大使館を設置しておらないわけです。そういう状況にまだサイゴンがなっておらないという点も事実であろうかと思います。しかし私どもの方といたしましては、まずハノイとの話し合いを詰めることを先決にいたしまして、これを基盤にPRGとの外交関係についても何らかの手を打っていこう、こういうふうに考えております。他面、現在なおサイゴンに約八名ほどの館員が残っておりまして、邦人の生命、財産の保護等につきまして先方の関係当局との話し合いは随時行っておりまして、そういう関係では特別の支障を生じておりませんが、これにつきましては、このこと自体はまだいわゆる正規の外交関係を先方が認めたものではないという態度は、私たちの方としてもよく承知いたしております。  以上でございます。
  98. 中村輝彦

    中村説明員 従来からわが国といたしましては、PLOをパレスチナ人の代表的な民族解放団体であると考えておりまして、また言葉を改めますればパレスチナ人の正統なスポークスマンであるというふうに考えているわけでございます。  去年の国連総会におきまして、パレスチナ人の代表であるPLOをパレスチナ問題に関する国連での審議に参加させようという決議に対しましても、日本は賛成したわけでございますけれども、こういう支持の態度をとりましたのも、いま申し上げましたような考え方に基づくわけでございます。したがいまして、この間宮澤大臣アラブの三大使と会談されました際にも、同じ趣旨でもってその点を繰り返しはっきりさせたわけでございまして、PLOはアラブ人の正統なスポークスマンであるということを改めて明確にしたわけで、この態度は従来から一貫しているわけでございます。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういたしますと、残りましたのは核兵器の問題についてどうして話をしなかったのかということでございますが、この話をするといたしますと、何といってもわが国の核拡散防止条約をどうするかという問題に触れることになろうと思いますが、これにつきましては、残念ながら前国会で御承認を得るに至りませんでした。また正式に反対を表明しておられる党もあるわけであります。しかし私どもとしては、この条約に加盟するかどうかという問題はあくまで日本の国内問題である、そういうふうに考えておりまして、そういうこともありまして核拡散の問題、核の問題は話をいたしませんでした。
  100. 松本善明

    松本(善)委員 答弁に満足できない点がたくさんありますけれども、時間が参りましたのでこれで終わりにしたいと思います。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一言申し上げておきますが、もちろん政府としては、この条約を早期に成立させたいという意思は新聞発表には盛り込んでおります。
  102. 栗原祐幸

    栗原委員長 永末英一君。
  103. 永末英一

    ○永末委員 日米会談の結果発表されました共同新聞発表の第三項の韓国朝鮮半島の安全に触れた個所で、いままでも問題になっておりましたが、「かかる平和を維持するために」という目的を挙げて「現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」こういうふうになりますと一現行の安全保障上の取り決めというのは、ラフな言い方で申しますと、軍事的な取り決めをやっているわけでございまして、そうしますとわが国はその軍事的な取り決めで発動せられる問題についてのみ留意をしたのである、ほかのことはやらぬ。日本独自のいろいろな朝鮮半島の平和を維持するための努力、そこに重点があるのではなくて、いま米韓条約とかなんとかある、それの条約の発動についてのみ留意した、こういうぐあいに解釈されますが、いかがですか。
  104. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 この表現朝鮮半島における「平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性」ということに関しましては、仰せのとおり、主に安全保障上の問題、いわば軍事的な問題の重要性を言っておるわけでございますが、その後で「同時に、両者は、緊張を緩和させ、ひいては平和的統一を達成するために南北間の対話が進捗することを強く希望した。」ということも言っておるわけでございます。また、総理のナショナル・プレスクラブにおける演説においてもこの点を、朝鮮半島の平和と安定というものは関係当事者が自主的に話し合って平和的統一を達成する以外にないということを、非常に強調されておるわけでございまして、決して軍事的な観点のみに立ってこの朝鮮半島の問題が話し合われたということではないと存じます。
  105. 永末英一

    ○永末委員 当事者間の話し合いというのは、当事者間はまあ休戦協定はございますけれども、言うなれば戦争状態にあって、一応停止している状態である。したがってその直接の話し合いがなかなかできないので、ああいう赤十字会談のような形が始まりましたが、一応中絶をいたしておる。この場合希望しておるのでございますけれども、実際平和的状態を持続せしめるためには、やはりその背後におる大きな国、アメリカ、ソ連、中国あるいはまた隣国である日本、そういう国々が朝鮮半島における平和の持続に対して何らかの保障をしていく、そういうことが条件として整わなければ、この二つの政府間における交捗はなかなかできない、これが実情ではなかろうか。だといたしますと、日米会談ではわが国の方針としては、アメリカはいわば交戦国の一方でございますから、なかなか北側とはストレートな話し合いに入れないとするならば、そこにわれわれの果たし得る役割りがあるのではなかろうか。われわれは交戦国ではございません。だといたしますと、文脈としては、安全保障上の取り決めに留意するというのは先に出るのではなくて、もっとやはり平和維持のための努力についてわが国のなし得ること、そういうことはアメリカのなすことの範囲外であるけれどもそれはやるのだ、こういうものがあらわれてしかるべきだとわれわれは見ておりましたところ、もろに軍事上の問題が出てき、まず第一に、われわれはアメリカの軍事的対決姿勢に一緒になっていくのだ。これじゃちょっと順序が違う。一体そういう私が申し上げましたような主張をわが国はされたのかどうか、外務大臣に伺いたい。
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの永末委員のおっしゃっている意味は私によく実はわかっておるわけでありまして、そういう基本的な考え方自身は、むしろ共同声明の方のいわゆるイデオロギーを超えてダイアローグすべきだというところに——これは厳密に言ってここには国と書いてあるではないかということはともかくといたしまして、基本的にはそういう考え方がもっとも基本問題として共同声明の中に、具体的ではありませんけれども、物の考え方として入っておるわけでございます。  そこで、ただいま御指摘の問題でございますけれども、私どもとしては、そのいわゆる共同提案をいたしました国連軍の解体決議の中で、休戦協定の枠組みを維持するためにどうすればいいかということを考えております中で、米国北鮮との接触、軍ということではございましても、そういうことをやはり前提に一つ置いておるわけでございます。  他方で、いわゆる非同盟側の決議というものは、いろいろあいまいな点はございますけれども、ともかく北鮮米国との接触というものをやはり何か考えているらしく思われる。そういったようなことをいろいろ考えますと、どうしても、これは今回の日米会談そのものと申しますよりは、来るべき国連総会においては何かそういう場が求められなければならないのではないだろうかということを私どもとして頭のどこかでは実は考えておるわけでございます。その場合、わが国がどのような有効な役割りをあるいはどのような表向きの役割りを果たせるかということは、もう少し推移を見なければならないと思いますけれども、基本的に関係当事国たちが何か話し合いの場を持たなければならないではないか。私どもはコンセンサスというような言葉で申すこともございますけれども、何かそういうことをやはり考えていくのがわが国外交一つの大切なこの際の仕事であろうというふうに思います点では、私は永末委員のおっしゃっていらっしゃることは十分理解ができると思います。
  107. 永末英一

    ○永末委員 私どもは、わが国外交の当面の最重要の課題はやはり朝鮮半島紛争状態を起こさせないことだと考えております。その意味合いでは、アメリカは、言うならば、先ほど申し上げましたように、ある意味で軍事的な対決姿勢を強めなければバランスが崩れるという政策をにわかに捨て去ることはできないと判断をいたしておる。したがって日本立場アメリカ立場とは、朝鮮の平和の維持ということ、言葉は一緒でございましても、おのずからそこに違いがあると考えます。  さて、そういう場合に、わが国におきます米軍の出動に関しましてあるいはまたそういう状態に関しましては、従来、岸・ハーター書簡によって安全保障協議委員会なるものが設けられて、安保条約第四条に基づく随時協議あるいは第六条に関する事前協議事項に関して相談をしようということになっておる。ところがこれは、わが国の方は外務大臣と防衛庁長官という政治的判断をなし得る者が出てまいりますが、相手方は、この書簡によりますと、東京におりますアメリカ国の大使並びにハワイにおります太平洋軍司令官、こういう、言うならば、政治的判断をなし得ないアメリカのポストの人が当たっておる。きわめてこれはへんぱではなかろうか。これから起こる随時協議なりあるいは事前協議の話もきわめて政治的な配慮と、そしてまた政治的な何ほどかの手段とを要することが話し合いの内容にならざるを得ない、こう思いますから、私どもは、あなた方がアメリカへ行かれます場合に、アメリカとの間に高度のやはり協議機関を持てと、こういう要望を申し上げました。春日・三木会談を通じて申し上げたはずでございます。その結果出てきたものは、相も変わらず、十五年前の日米安全保障協議委員会の枠組みであるということをお取り決めになったのはいかなる理由であるか、お伺いしたい。
  108. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 この安全保障上の重要問題に関しましては、総理がアメリカの大統領に会われるとき、また外務大臣アメリカの国務長官と会われますときに、そういう安全保障上の重要問題については話し合う場があるわけでございます。今回も広い意味での安全保障上の問題として朝鮮半島の問題を話し合われ、さらにこの安保条約の問題についても、この共同新聞発表にあらわれているようにお話し合いがあったわけでございます。したがいまして、必ずしも安保条約に基づく安全保障協議委員会だけが場ではございませんので、そういうふうな会談の場を通じて、安全保障上の話は十分できるものと考えます。  さらにつけ加えさしていただきますならば、今回の新聞発表の第二項の後段に書いてございますように、外務大臣と国務長官とは、共通の関心を有する二国間及び世界一般の問題について、年二回検討を行うということになりました。これはまさにそういうふうな話し合いの場がさらに広がり、またある意味で深まるということだとわれわれは存じます。他方、第四項の最後の点につきましては、これはもう少し具体的な問題でございまして、これはかねて坂田防衛庁長官が国会でお話しになっておられますような問題に関して今後具体的に話し合っていく、問題としてこれは安全保障協議委員会の枠内でやった方がよかろうということで、両者考えが一致してこういうふうに書かれておるわけでございまして、これはいわばかなり実務的な問題だと御了承願いたいと思います。
  109. 永末英一

    ○永末委員 時間がございませんので答弁はごく簡単に願いたいのですが、外務大臣、これは政治的判断の問題だと思うのです。いまアメリカ局長の申しましたのは実務的なもの。実務的なものであるならば、わざわざここに書く必要はないことである。われわれが申し上げたのは、随時協議とか事前協議とか言っておるけれども、きわめて政治的な内容を含んでこの協議が行われるようになるだろう一そうであるならば、わが方がその立場にある防衛庁長官、外務大臣が出られるなら、相手方も似たような対応し得る、政治的な判断のし得る者とやはり協議を持ち得るようなものをつくったらどうか、要望を交えてあなた方に提案をしたはずである。ところが、にもかかわらずこういう決着に至ったのは一体どういうことだ、どういうぐあいに了承されておるのか、このことを伺っておる。そのアメリカ局長答弁ではだめだ。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 安保条約そのものとの関連におきましては、わが国において米国を代表する者、とすればやはり大使ということで、そう考えざるを得ないのではないであろうか、一国を代表いたしますから。したがいまして、米国政府の方針が、より高い方針が伝えられるとして、それは大使を通じてのチャンネルであるということで十分なのではないだろうか、安保条約の問題といたしましては。しかしそのような条約の枠内で問題をとらえずに、もう少し広い視野でとらえるといたしますれば、先ほど局長が申し上げましたように、外務大臣あるいは防衛庁長官が相手方といろいろ話をする、あるいは総理大臣と大統領が話をする、そういう仕組みでよろしいのではないだろうかというのが私どもの判断であるわけでございます。
  111. 永末英一

    ○永末委員 この点はもう少し考えをはっきりと伺っておきたいのでございますが、時間がございませんので、いずれ別の機会に留保しまして、もう少し聞いておきたいことを伺います。  先ほどから話が出ておりますように、国連軍の解体を内容とする共同決議案を日本政府も出しております。恐らく北朝鮮側も従来どおり、国連軍の即時解体とアメリカ軍の撤退を内容とする決議案を出すでございましょう。もしわれわれが出した方が成立せずあっちの方が成立した、こういう場合にはどういうことになりますか、外務大臣
  112. 大川美雄

    ○大川説明員 北鮮支持国側も実はすでに決議案を出しております。昨秋の初めに出ております。われわれといたしましてはもちろんほかの共同提案国と協力いたしまして各国に接触中でございますが、わが方の決議案が、国連軍司令部解体へ持っていくために何とか話し合いに持っていきたいというきわめてまじめな真摯な内容の決議でございますので、国連加盟国の多数がこれに理解を示すことを衷心から希望しているものであります。もっとも、国連の場でございますから、これはいかなる事態が起こるか、そのときそのときのいろいろの案件との関連で、全く予想し得ない事態も起こることはたまにはございます。万が一、いまお尋ねのような事態になりました場合には、これは国連総会決議でございますので、厳密に申しましては法的な拘束力はございません。勧告的な性格のものでございます。
  113. 永末英一

    ○永末委員 答弁、御丁寧でございますけれども、ちょっとポイントがはっきりしておりませんな。そういう場合が、国連のあの数でございますからあり得るわけであって、なるほど成立させたいから出しておるのでございますけれども、そうなった場合に、われわれの事志と違って、対案の方が成立した場合には、これは何ともならぬわけでしょう。そのことはお考えを願いたい。  さてもう二分ほどいただきたいのですけれども、将来国連軍の解体がはっきりした場合には、現在ございますわが国における国連軍の地位協定はなくなりますね。
  114. 松永信雄

    ○松永説明員 御承知のごとく、国連軍の地位協定は、国連軍が朝鮮から撤退いたしました日の後、一定の期間を経過したときに終了するということになっておるわけでございますから、国連軍が解体されるあるいはその国連軍が撤退するという事態が出てこなければ終了いたさないと考えております。
  115. 永末英一

    ○永末委員 朝鮮関係の問題、質問したいのでございますけれども、時間でございますから後に譲りまして、一つだけ、ビルマにおきまして、七月七日、パガン地方に大地震が起こりました。その地方の寺院、パゴダ等々、重大な文化的遺産に被害がございました。文化協力というのは、わが国が開発途上国に対する国際協力の上で重要な問題だと思います。これらについて政府自体としてこれらの復興、現状維持等にどういうように協力しようとしておるか、あるいはユネスコ等に働きかける意思があるかどうか、第三には、すでに外務省関係の社団法人として日本ビルマ協会等がございますけれども、これらがこれらのことに協力をしたいという場合には、それに対して十分協力する意思があるかどうかお答えを願いたい。
  116. 高島益郎

    ○高島説明員 ビルマの先月八日の地震の結果、いわゆるパガンの文化遺跡が非常な損害を受けているということにつきましては、私ども非常な関心を持っておりまして、早速宮澤外務大臣から先方のラ・ポン外務大臣に対しまして見舞いの電報を送りました。先方からもこれに対し謝電をいただいております。  現在、ビルマ政府が特に中心になりまして現地の被害の状況を詳細に調査中でございます。この調査の結果を見た上で、わが方としてどういうことを考えるかということを検討したいと思っておりますが、このこととは直接関係なく、わが方といたしましては、かねてからこのパガン文化遺跡の保存につきまして非常な関心を持っておりまして、この文化遺跡の保存のための必要ないろんな資材を先方に供与できないだろうかという観点から、いろいろ必要な資材の品目あるいは金額等について検討をいたしておるのが現状でございまして、したがいまして、将来現実にこの被害が明らかになり、かつこれに対しましてユネスコ等を通じて国際的なアピールがあった場合に、わが方としてその段階で検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  117. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  118. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部一郎君。
  119. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このたびの交渉におかれて外務大臣は非常に向こうへ行って御苦労をなさった後でございますから、さだめしお話になりたいことがたくさんあるだろうと思うのでありますが、きょうはお急ぎになっているようでありますからつづめて申し上げたいと存じております。  まず今回の訪米におきまして、私どもは非常にその努力を多としておりますとともに、今回の日米共同声明あるいは新聞発表等に盛られた内容が、ある意味では不透明な、ある意味では疑問点が残っており、ある意味ではよくわからないという意味国民の関心が集まっているわけであります。したがって、その問題を少しでも晴らすためにこの貴重な時間を費やしましてお話をお伺いしたい、こう思っているわけであります。  まず今回の共同声明の中で考えなければなりませんのは、この日米安保条約という仕掛けが実際にはどういうふうに機能しているかという点であります。台湾条項あるいはベトナムに対する派兵のような問題はすでに終わった問題となり、朝鮮問題だけが事実上残っておる。そしてその朝鮮問題に対して新しい日米間の体制ができ上がったのではないかというふうに、私たちはこれを見る限り思われるわけであります。では、この仕組みはいままでの韓国条項とまずどういう差があるのか、あるいはないのか、その辺のところをまず明快にお示しをいただきたいと存じます。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今回、いわゆる韓国条項について首脳間に議論、討議のなかったことは先刻来申し上げたとおりでございますが、しかし総理大臣がしばしば明らかにしておられますとおり、韓国に万一紛争が起こりました際、事前協議を求められてわが国がいかに対処すべきかということは、ケースによりましてイエスと言う場合もあり、ノーと言う場合もある。わが国の安全、わが国の平和、わが国の国益に基づいて判断をする、こういうふうに申し上げておりますことは従前と変わりがないと思います。
  121. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この共同新聞発表の問題の第三項でありますが、「両者は、韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり、また、朝鮮半島における平和の維持日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。両者は、かかる平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。」こう明快に述べられておりますが、この朝鮮半島における平和の維持日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり重要であるということは、アジアよりも小さくなったという先ほど御答弁がございましたが、依然として非常に広大な地域を示すものではないかと思われます。インドシナ半島あるいは中国あるいは朝鮮半島あるいは台湾等、それらすべてを指すものであるかどうか、私はお伺いしたいと思う。そして朝鮮半島における平和の維持というのが影響しているというにとどまる表現なのであるか、それともこれらの地域の平和と安全のために日米両国がともに手を携えて関与するという決意の表現なのであるか、その辺を明快にしていただきたいと存じます。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 万一朝鮮半島において紛争が起こりましたときは、わが国にとりましても影響はございますが、恐らくは中国その他の国もそれについて影響がないとは言えない。これは当然なことでございますが、東アジアの一角に戦乱が起これば周辺の国々は何かの影響を受けざるを得ないという、これは認識論でございまして、それ以上認識論を超えてどういう行動をとる、とらないということをここで言っておるわけではございませんから、先ほど申し上げましたように、東アジアという表現は、まあアジアと言えばいかにも大き過ぎますので、もう少しそれを現実的に縮めてみて東アジアと申したわけでございます。それ以外に別段他意はここではございません。  なお、そのような朝鮮半島の安全について、平和の維持についてわが国は無関心であり得ない、米国もまた無関心であり得ないわけですが、それはたとえば米韓条約のようなもので現実に均衡が維持されておるとは申すものの、やはり本質的には体制を超えてのいろいろな話し合い、ダイヤローグというものが進んでいかなければならないということは、これは共同声明の方で両首脳が述べておりますわけで、この発表の第三項からくると申しますよりは、やはり声明の方の基本の考え方に出ておると申し上げた方が正確であろうかと思います。
  123. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 朝鮮半島における緊張状態の発生に対して日本国が巻き込まれないようにするということは最低限の日本国の要求でなければならないだろうと思います。ところが現在、シュレジンジャー米国防長官が、北からの韓国に対する侵略に対しては核兵器の使用も辞さないというふうに述べている。またそういう時期において三木総理が、日米首脳間に朝鮮半島認識に不統一はないというふうに述べられておる。そうして、この新しい意味の新韓国条項というようなものがきちっと結ばれていく。これは日本政府がアメリカと組んで朝鮮半島の平和に積極的に関与し、新しい体制をつくり上げることによって、むしろ巻き込まれていく危険性を非常に大きくするものではないか。アジアに対するアメリカの核戦略体制に引きずり込まれていくことではなかろうか。こうした疑問というものは、率直に言って国民の中に多く存在するだろうと思います。この点をひとつ明快にしていただきたいと存じます。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一九七二年の南北間の声明にございますような精神というものはやはりもう一度生かされなければならない、そういう方法のみが恒久的な平和を朝鮮半島にもたらす方法であって、武力によっていわゆる平和を維持する、均衡によって維持するというのは、どちらかと言えばこれは本質的な物事の解決ではないということは私ども常に考えております。しかし、そのような対話が行われ、実を結ぶまで、あるいはそれを促進するために現在の均衡というものはやはり維持していかなければならないであろうという認識でもまた日米間は一致をしておるわけでございますから、片っ方のいわゆる現在の力の均衡の維持というものに触れたからといって、本質的な問題の解決は、多少時間がかかってもやはり対話によるしかないというそういう究極的な目標をわれわれは見失っておるわけではないわけでございます。
  125. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その一九七二年の精神に立ってといま言われておりますのは私もまことに結構であると思いますし、その点については私も同感です。しかし、木村前外相が、かつての韓国条項は沖繩返還に伴う日米安保運用についての日米間のつなぎの文章であった、それがいつまでも日本朝鮮政策の基本として取り扱われるのは間違いである。ではどういうふうにすればよいか。それは、少なくとも韓国条項を修正し、韓国の平和ではなく、朝鮮半島の平和に日本が関与するという方向を打ち出し、さらに北の脅威はないという方向で積み上げていくべきではないかというふうに明快に述べておられるわけであります。私は立場の相違を超えてこれは一つの大きな見識ではなかろうかと思いますし、その意味で今回の日米交渉、相手のある日米交渉ですからやりにくいのはわかりますけれども、そういう方向への一歩前進の気配が薄かったような気がいたしているわけであります。その点をどう評価されておられますか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この共同発表の中で朝鮮半島云々というふうに述べておりますのは、先ほども申し上げましたように、確かに韓国の問題というのはわれわれにとってきわめて大切な問題ですが、同時に、実は南と北との関係ということで問題をとらえることがさらに本質的なとらえ方である。そういう意味朝鮮半島というふうに発想をしておる、そういうことが強いて申せば新しい表現ということになるんでございましょう。そういう意味では、私ども考えておりますことも渡部委員の言われますこととそんなに隔たっておることではございません。
  127. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、少なくとも日本政府が南北朝鮮紛争を激化する方向に手をかすというようなことは慎むべきだと思いますし、民族自決の原則に従って朝鮮半島が安定した状況をつくり出すということは、わが国にとって望ましいことであろうと思っているわけであります。その点は全く御異存がなかろうと思いますが、私どもが心配しておりますのは、むしろアメリカ政府がベトナム戦争後の強い後遺症の中にある、そしてある意味の挫折感の中にある、その挫折感の中にあるアメリカが、朝鮮半島あるいはそれを含む周辺地域のいわゆる日米安保で規定されている極東の地域において、ベトナム型の失敗を二度としないというので、核兵器を先頭に持ち出して振り回す、そういう危険性を防ぐために、外交の努力はもう一段続けられてもいいのではないか、こう思っているわけであります。  私はきょうはもう時間が全くなくなりましたし、大臣は三十八分に立たれなければならぬというお話ですから、あと一分しかありませんから、この次にいたしましょうか。  それで、この間からラロック氏等が日本においでになっておって、アメリカではもう核兵器というのは通常兵器の中に入っておるんだ、したがって、日米安保において核兵器の持ち込みは拘束されない、そういうふうにアメリカ軍は理解していると堂々証言しておりますし、また当委員会において、日米幕僚研究会とか統幕間の打ち合わせとか、陸幕、海幕、空幕等のおのおの関係幕僚の打ち合わせ等が、ここに防衛庁からリストとして提出されておりますが、外務省の御存じのないところで盛大に行われつつある。こうした関係の樹立というものに対しては、私どもはもう一回見直すべきではなかろうか、こう思っているわけであります。特に核兵器の日本への持ち込み、それをアメリカ側がもう何の制約も受けてないと考えているなどということは、非核三原則からいっても重大な問題であるし、これらの諸点については十分御研究をいただいて次回御答弁をいただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 関係方面ともよく打ち合わせまして、次回までにお答えを用意いたしておきます。
  129. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日はこれにて散会をいたします。     午後一時三十九分散会