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1975-07-31 第75回国会 衆議院 外務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年七月三十一日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 正森 成二君       小坂善太郎君    正示啓次郎君       谷垣 專一君    石野 久男君       江田 三郎君    川崎 寛治君       土井たか子君    三宅 正一君       渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  委員外出席者         警察庁警備局長 三井  脩君         警察庁警備局参         事官      中村 安雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   伊藤 圭一君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 七月十七日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     宇都宮徳馬君 同日  辞任         補欠選任   宇都宮徳馬君     宇野 宗佑君 同月三十一日  辞任         補欠選任   中村 梅吉君     正示啓次郎君   原 健三郎君     谷垣 專一君   勝間田清一君     石野 久男君 同日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     中村 梅吉君   谷垣 專一君     原 健三郎君   石野 久男君     勝間田清一君     ————————————— 七月四日  一、核兵器の不拡散に関する条約締結につい    て承認を求めるの件(条約第一二号)  二、日本国大韓民国との間の両国に隣接する    大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する    協定及び日本国大韓民国との間の両国に    隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発    に関する協定締結について承認を求める    の件(条約第六号)  三、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  3. 堂森芳夫

    堂森委員 まず、外務大臣一つの問題についてお尋ねをしたいのであります。  きょうの新聞報道によりますと、自由民主党宇都宮徳馬氏が金日成北朝鮮主席会談をされてお帰りになった。そして、新聞報道によりますと、その会談内容を詳細にわたって総理報告をされた、そして総理も熱心にその報告を耳を傾けて聞かれた。それに関連をして、金日成主席米朝平和協定といいますか、そういうような協定の促進に非常な熱意を示しておるということも宇都宮氏が話をしておられる。そして、近く総理日米会談のために訪米をされるわけでありますが、この一連のきょうの新聞報道関連しまして、北朝鮮主席がそういう意向宇都宮氏に伝えておる、この問題について日米会談総理米側にそうした意味事柄について話をされるようなことがあるのでありましょうか、そういうことはないのでありましょうか、外務大臣はどのような判断をしておられるか、まずこの点につきまして伺っておきたい、こう思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 宇都宮議員が昨晩海外から帰られて総理大臣報告をされた由でございますけれども、その内容を私、実はただいま現在承っておりません。したがいまして、その詳細につきまして御紹介をすることが私にはできないわけでございますが、総理大臣として宇都宮氏からいろいろ話を聞かれまして、恐らくそれを情勢分析判断として頭に持って日米会談に臨まれるということは確かであろうと存じます。ただ、宇都宮氏がどのような報告をされましたか、またそれがどのような背景のもとに報告としてなされたものでございますか、その辺私ただいま存じませんので、これ以上のことを申し上げることがちょっとむずかしゅうございます。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすれば、外務大臣としては、あなたは、宇都宮氏が総理報告したということについては、何らその点については外務当局からも報告を受けておられぬ、こういうことでございますか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま現在ではさようでございます。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、具体的には私がいま質問したようなことについては答弁をしてもらうということは不可能なことでございますね、どうでございますか。もう一遍お聞きしておきたい。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうお尋ねもあるいはあろうかと存じまして、けさ官房長官にちょっとお話を、電話で連絡をしたわけでございますけれども官房長官自身もつまびらかにしておられませんので、ただいま現在申し上げることができないような状況でございます。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 しかし、外務大臣として、この宇都宮氏が金日成主席と会ってこられて総理と懇談をしておられるという事柄について、これから三木総理訪米される前に、これに関連して何らかの外務大臣としての意向をお伝えになっていろいろ御相談になるという予定は全然いまのところないのでございますか。いかがでございましょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は日米会談が開かれますまでの段階で、宇都宮議員がどのような所見を持って帰られましたかということ、それから、それについて日米会談との関連でどのように対処していくべきかということは、それまでに私も承知しておきたいと実は考えております。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 もうこの問題についてさらにお尋ねすることは控えたいと思いますが、私は朝鮮半島における平和あるいは安全、よい状態が生まれてくることは、日本にとってもまことに好ましいことであることは当然でありますので、そういう意味で私は大いにそういうことがあるならば推進してもらう、積極的に総理大臣がそういうことを発言していかれるように、外務大臣としてもそのような態度をとってもらいたいということを私は要望しておきます。  それでは、次の問題について質問を続行したいと思います。  去る二十四日でございますか発表されました、韓国外務部からわが国へ提示されました口上書によって、金大中事件に関する金東雲の問題は最終的な決着がついたとして、外務大臣としてのあなたは閣議に二十五日報告され、これが了承され、そして訪韓後の記者会見でもこの点を強調しておられるのでありますが、大臣としてはこの口上書内容について満足すべきものとお考えになっておられるのでありましょうか。また、この口上書の性格をどのように理解をしておられるのでありますか。まずこの点から伺っておきたい、こう思うのであります。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 口上書内容、及びその出発点になりました一昨年十一月に日本韓国金鍾泌首相が訪問をされて、事件について深甚なる遺憾の意を表されたということ、それらのことを総合して考えまして、あの口上書を受領することによって、金東雲氏の事件についての一応終結を図るということがやむを得ないことであろうというふうに判断をいたしたわけでございます。  口上書内容についてというお話でございますが、私ども判断では、韓国司法手続上、金東雲書記官を起訴するに至らなかった、しかし行政上の手段をもって官を免じた、免ずることに関しての多少の理由口上書は述べておるわけでございます。韓国としては、与えられた状況のもとで、まず善意を尽くされたものというふうに判断をいたしております。
  13. 堂森芳夫

    堂森委員 金東雲氏の問題につきましては、すでに昨年の八月の十四日でありますか、捜査打ち切り韓国政府から伝達されたのであります。これに対して政府は非常な不満である、遺憾である、こういうような態度を堅持されまして、韓国政府に向かって再度の捜査要求をしておられるのであります。  これは私が考えるのでありますが、現場での金東雲一等書記官の指紋の証明あるいは目撃者の証言といいますか、目撃者問題等から勘案をして、これは条理を貫こうという立場から政府韓国政府要求をされたと思うのであります。あなたも国会では、この耳で聞いておるのでありますが、国民が納得するような説明を求める旨を答弁をしておられるのであります。この口上書のどこに国民が納得するような内容があるのでありましょうか。あなたは、内容をどう考えるか、どのように認識しておられるかという質問に対して、何も答弁をしておられぬのでありますが、この点についてはいかように御答弁になるのでありますか、承りたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の八月十四日に韓国側から捜査の結果について通報があったわけでございますが、その通報は、わが国捜査当局がそれまでに調査をいたしましたこととは異なっておったわけでございますから、したがって、わが国としては、韓国側のそのような八月十四日の回答には納得ができないということで、わが国のそのような意思表示を昨年の十月に韓国にいたして、さらに捜査の続行を求めたわけでございます。  今回の口上書はそれにこたえたものでございまして、すなわち、その後捜査を行ったけれども、起訴するに足るだけの証拠を確認することができなかったということを述べております。このことは、恐らく司法手続の上で公訴を維持するに足る十分な確証を得られなかったということであろうと考えますが、まあいわば検察というものが、わが国においてもさようでございますが一つ独立的な体制を持っておるということから言えば、これは韓国のそのようないわゆる狭い意味での行政というものと司法手続というものとの独立関係というものは、これはわが国でも理解のできることでございますから、いわんやそれは実は他国において起こっておることでございます。そして、他方で行政の面では、金東雲一等書記官に対してかくかくの理由を持ってかくかくの処置をとったということでございました。すべてのことがそのような意味では他国主権のもとに起こっておることであり、しかも司法手続については、これはまたそれなりの独立性を持っておるということを考えますと、わが国としては、主権国家である韓国というものが最終的にそのような判断をし、そのような処置をとったということは、これはいい悪いということではなく、それはそれとして受け取らなければならない出来事である、こう考えまして、しかもそれがわが国の昨年の十月、再度の捜査の要請に対して、捜査をした結果が、調査をした結果がそうであるということであれば、これはやはりそこで本件は打ち切らざるを得ないというふうに政府としては判断をいたしたわけでございます。
  15. 堂森芳夫

    堂森委員 あなたの答弁でありますが、私は納得できません。  たとえば去年の八月の十四日でございますか、捜査打ち切り韓国政府からの通告といいますか、その当時と今度の口上書でどこに内容が変わっておるでしょうか、同じことであります。たとえば外務大臣が再調査を、再捜査要求したということは、日本側警察当局の確たる証拠があるから再捜査をしろという要求をされたのであります。ところがこのたびの口上書の中には、日韓両国捜査上における差異というものは何も書いてありません。どういうわけで捜査が打ち切られたのか。日本側捜査向こう側捜査との差異が書かれていなければならぬと私は思っております。そうしなければ当然国民は納得しないと思うのです。われわれも納得できません。  それからまた、私は思うのでありますが、今度のこのたびの口上書について、あなたが口上書を評価して金大中事件金東雲事件については終結を図ったと言われますが、当時法務大臣であった田中氏は、韓国の機関のやったことであるということを明らかに国会の席で答弁をしておられるのであります。したがって、日本主権侵害したということは、当時国民のだれもが疑わなかったところであります。したがって、わが国の大切な主権の問題というもの、あるいはまた金大中氏の事件の真相を明らかにするためにも、金大中氏がもとの姿に復帰する、すなわち日本への再来日ということが実現しなければ、私はこの金大中氏の事件は明らかにならぬと思うのであります。主権の問題、金大中氏という人に関することはもちろんでありますが、基本的な人権の問題等についての説明口上書のどこに書いてあるんでありましょうか、何も書いてないと思うのであります。これで日本政府は、外務大臣終結を図っていいという、どういうところにそういう根拠があるのでありましょうか。またこれも御答弁を願いたい、こう思うのであります。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず金東雲一等書記官についての捜査でございますけれども堂森委員が御指摘のように、わが国で行われました捜査の結果と韓国で行われました捜査の結果とは異なっておったということは、まず御指摘のとおりであろうと私は考えます。しかしそういう場合に、一つ主権のもとに行われました調査と、他の主権国のもとに行われました調査とが、捜査とが異なった場合に、これを外交的に決着する方法は遺憾ながらないわけでございます、そう申し上げることが正確であろうと思います。  それから次に金大中氏の問題でございますが、これは一昨年の十一月に韓国首相が来られましてわが国首相と会われました際に、金大中氏については、出国の問題を含めて、本人がそれを希望されるならば、韓国市民並みの自由を与えるということが約束をされておるわけでございますが、その後、御承知のように、選挙違反事件というようなものがあって、公判が係属中でございますから、韓国としては当初の立場どおり公判がきれいになった場合には、韓国首相から日本総理大臣に対して一昨年の十一月に与えました約束、それは実行するということを、今回も七月の二十二日西山大使に対して、韓国政府から正式にそのような言明がなされております。したがいまして、との点は、当初からの韓国側のそのような意思表明が今日もそのとおり有効であり、そうして条件が具備いたしますればそのとおりに行うということが、今日も確認をされておるわけでございます。  最後に残りました問題は、主権侵害があったかないかということでございます。この点については、捜査の結果がそのようなことであったこともありまして、主権侵害を認定するに至っておりません。おりませんが、しかしそれらの不確定な要素をいろいろ含めまして、一昨年の十一月に韓国首相来日をされて深甚な遺憾の意を表明されたということは、これはまたお互いに政治に関係する者としては軽々しく考えていいことではないと存じます。そういう意味で、この問題は、事態が不明確なまま、しかし韓国からそのような意思表示があったということをもってわれわれとしては決着すべきではないかと考えたわけでございます。
  17. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、せっかくの外務大臣のそういう答弁でございますが、納得できないのであります。なるほど韓国総理が来たとか、あるいはあなたが韓国を訪問して外務大臣に会ったとかいろいろなことが言われますが、たとえば当人の金大中氏はどう言っておるでしょうか。金大中氏は、日本の筋を通す外交というものはこういうものでしょうかという意味談話すら発表しておるのであります。当然でないでしょうか。それから金大中氏が、選挙違反事件が済めば、希望するならば外国に出るということも可能である。こんなことあたりまえのことであります。何も事新しく説明をするような必要のある問題ではありません。この口上書の中に一言も金大中氏の問題について、あるいは金東雲という一等書記官捜査の経過、抽象的には何か書いてありますが、具体的に何か書いてあるでありましょうか。国民が納得するようなそのような内容には全然なっていないのでありますが、どういうわけで、この口上書によって金東雲事件終結をしたという判断をされたのか、私はどうしても納得できない。恐らく国民の多くもそういう気持ちを持っておるのではないか、こう思うのであります。あなたは記者会見で、批判は甘んじて受けますというような態度に出ておられるようでありますが、私はきわめて遺憾だと思うのであります。口をきわめて言いますならば、国民は信用しない。恐らく韓国の心ある人たちも今度の終結については信用していないと思うのです。そういうことで日韓両国のよい関係親善関係というものが進むというふうにあなたはお考えでございましょうか。ある意味では茶番劇だ、そういう言葉も使っていいようなやり方ではないかと私は思うのであります。  私は、自由民主党政府であるいまの三木内閣が、あるいは前内閣におきましてもそうだと思うのでありますが、朝鮮半島の安全あるいは平和ということが日本安全等に重大な関係があることは、私もそんなことはよく理解しているつもりであります。しかし、自由民主党政府考えておるこの朝鮮半島の安全ということ、平和ということのやり方は、われわれは納得することができません。しかし、それはいまここで議論するための席ではございませんから、質問でありますから、この議論とかそういうものをしているのではないのであります。  今度のこういう茶番劇のような終結を図ったという裏には、あなた方の朝鮮半島に対するところの外交政策の基本がそうだからであります。すなわち、軍事的に、経済的に日本韓国アメリカの三国は緊密化を図る、そういうことが朝鮮半島の平和、安全に貢献するという判断だと思うのであります。これは私はいま議論をしているわけではありません。しかしながら、両国政府だけが、総理大臣がおわびに来たから、またこうだからこれはもうこの辺で、向こうでは独立国家であるから司法権行政権は完全にお互い独立であるから、これ以上はもう行政面からどうこうというようなことでは説明ができないと思うのでありますが、なぜこんなに急いで終結を図られたのであるか、この点を伺っておきたい、こう思うのであります。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いささかその点所見を異にいたしますことは残念でございますが、当時金東雲という人は外交官の身分を持っておりました。したがいまして、その点は事実として認めてかからなければなりません。しかもその後に金東雲氏は自分の本国に帰りまして、そこで韓国主権に基づく捜査が行われた。われわれとしてその捜査の結果がわれわれの考えておりますところと同じでない、異にしたということは、これはことにわが国捜査当局から申せば遺憾なことであろうと存じますけれども、しかし独立国家である韓国がいたしました捜査あるいはそれに基づく処置、処分というものについてわれわれが介入できるかどうかということについては、きわめて限度がありますことは申すまでもないことであろうと思います。わが国韓国とは歴史的にも地理的にも特殊な関係にあるので、このような出来事茶番劇であるというような批判が間々あるのを私も存じておりますけれども、しかし韓国独立した主権国家であるということは、他の独立国家とそういう意味では同じことでありまして、主権国家がすることについてわれわれが口をはさむのにはおのずから限度があるということは、これは事実として私は認めざるを得ないというふうに考えます。  なお、この事件終結政府は別に急いでおったわけではございません。昨年の十月二十何日かに出しました口上書についての答えという形で韓国から口上書が寄せられたのでございますけれども、恐らくは、私どもとしても三木総理大臣が間もなく訪米をされますので、最近の韓国の事情というものを知っておきたかったという気持ちはございましたが、それよりもその機会に、やはりインドシナ以後の問題がいろいろに話されるということは、これは韓国も非常に関心を持っておることでございましたので、そのようなこともありまして、今回の機会回答が寄せられたものであろうかというふうに存じております。  このような外交やり方は、国民善意友好に基づくものではない、政府だけの一つ終結であって、国民的な基盤に立っていないではないかと言われることにつきまして、私ども両国国民が広い国民的な基盤友好関係を推進していくことを望んでおりますが、しかしその際に、政府間でわだかまりがある、ぎくしゃくしたものでございますれば、これはやはり国民的な大きな基盤に立っての友好というものは展開をしないのでございますから、政府がやったからすべてそれで広い国民的な友好関係ができるというものではありませんけれども政府間にそういうぎくしゃくした関係があるということは、広い国民的な友好の増進を妨げる要素であることは間違いがございませんので、したがいまして、このたびのことによりまして、再び広い国民的な基盤に立った両国友好関係が増進していく、そういう一つのこれはよすがになるというふうに考えておるわけでございます。
  19. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは、この口上書日本政府に伝達されたのはいつでございますか、大臣でなくても結構ですが。
  20. 高島益郎

    高島説明員 七月二十二日の午後三時、ソウルにおいてでございます。
  21. 堂森芳夫

    堂森委員 そこでこの口上書というものは、外務大臣は、会談前には公表しなかったのは外交的な慣例等からいってもあるいは両国約束があったかどうかわかりませんが、そんなこともあったんではないか。それで後から発表しても国民からわかってもらえると思うというような談話も何かどこかで行われておるようでありますが、会談前に、国民の前に明らかにする方が、国民の皆さんに理解を求める方法としてはよいのではないかと私は思いますが、外務大臣はどう思っておられますか、御答弁を願いたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は両国の合意によりまして発表を二日間延期をいたしたわけでございます。私が考えましたのは、この口上書につきましては、少なくとも両国の国内においていろいろの議論があるところであろう。先ほどから堂森委員の言われますように、わが国にとりましては必ずしもすっきりしたものにはなっておりません。また韓国につきましては、恐らくは何も犯罪事実がないという場合に、特定の官吏を罷免するということについての、これは韓国なりのまた受け取り方があるであろう。またこのこととは直接関係がない出来事でございますけれども韓国におきましてはいろいろな経緯から、いわゆるもう一つ文世光事件というものとこの問題とがどうも二重写しになっているような、そういう受け取り方がある。これは私は正しい受け取り方とは思いませんけれども、やはり自分の国の大統領婦人が暗殺をされたということ、それについて、もちろん日本人ではございませんけれども日本にかなり長く在住しておった韓国人、しかもその犯罪に使われた凶器が、わが国の警察官の所持しておった物であるといったようなことが、これは全くいまの出来事関係のないことでございますけれども韓国民の心情の中には、何か両方が二重写しになっておるように見えるところがある。したがいまして、この口上書を普通でございますれば受領とともに公表するのが、これが筋でございます。が、わが国で公表いたしますれば、直ちにそれは韓国に伝わります。韓国ジャーナリズム韓国ジャーナリズムとして、この問題については非常にまた敏感でございますから、そうなりますと、両国外相会談を開く場というものはかなり騒々しいものになる。よかれあしかれ、正解に基づくものであれ誤解に基づくものであれ、そういうことになるということは、外相会談を開くのに不適当なことではないかというふうに私としては判断をいたしました。韓国がどのように判断をされましたかはついぞ聞く機会を持ちませんでしたが、ともかく両国がそのような合意をいたしまして、それに基づきまして発表を二日間延期をいたしたのであります。
  23. 堂森芳夫

    堂森委員 私はこの口上書を読んでおりまして、いま御答弁になったことと関連してこういう考え、印象を持ったのであります。  大統領狙撃事件というもの、これは不幸な事件でありましょう。この事件について、あたかもわが国の責任を追及する、そして日本は何か誠心誠意捜査をやるというようなことを言っておる。今度は、金東雲の問題については打ち切りである。非常に、あなたがおっしゃるように二重写しといいますか、絡ませるというか、そういう態度韓国政府口上書わが国に伝達しておるというふうに考えるのであります。この大統領狙撃事件というものは、わが国の責任がどこにあるのでしょうか、私は理解ができません。いろいろな揣摩憶測、流言飛語も飛んでおるのでありますが、この問題は全然別個な問題でありまして、一方では何かこの事件に難癖をつけて、そして金東雲の問題を帳消しにしようというような、通俗の言葉で言いますとそういうふうな印象を受けるのであります。私は、非常な大きな不満の気持ちをこの口上書を見ておりまして感じたのであります。  そこで、時間がありませんので先に移りますが、外相会談韓国側から、第三次五カ年計画後ですか、日本からの経済援助は民間ベースになるという話し合いであったのが、そうではなしに、政府間ベースの援助にしてくれろという要求があったというふうに新聞には報道されておりますが、そうでございますか。  もう一つ、日韓閣僚会議は早急に開こうというような話し合いができたということも伝えられておるのでありますが、一体いつこれが開かれる予定でありますか。  時間がありませんので、あわせて答弁を願っておきたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一昨年の暮れに日韓閣僚会議が開かれましたときに、ちなみにこの時点は、いわゆる石油危機というものの影響がこれほど深刻になるとは予測し得なかった時期であったわけでございますが、この閣僚会議の席におきまして、韓国経済も大分いわゆるテークオフの体制に入ってきたのであるから、従来のような政府ベースの大きな援助はだんだん民間に切りかえていくべきではないかという話が出ておりまして、これはそのとき初めて出た話ではなくて、韓国経済が実際そのように強くなってきておりましたので、ごく常識的にそういう判断が出得るような体制であったわけであります。そういうことがございました。非常に厳密な意味ではありませんが、そうであろうかというような雰囲気であったようでございます。しかし、その後に石油危機の影響というものがかくのごとく深刻なものであるということがはっきりいたしてまいりました。ことに韓国につきましては相当深刻のようでございます。  そのような認識に立ちまして今年、韓国の援助を担当しておりますところの国際的なグループ、IECOKと呼んでありますグループでございます。これは世銀のかさのもとにあるわけでございますけれども、ここで石油危機以後の韓国経済の現状というものの分析がございまして、まあ当分、毎年二十億ドル程度の長期の資本を必要とするのではないかというような判断が国際的な場でなされております。  そういうこともございまして、韓国側から、ただいま堂森委員の御指摘になりましたような、純粋に民間ベースの援助だけではちょっとここ何年か経済運営が非常に困難であるというお話がございました。それに対して私は、IECOKの結論もあることであるので、韓国側のそういう御主張は全く身勝手なものとは思わない、確かにそういう状況はあるであろう、しかし、かと申して、わが国が具体的にそれではどうしましょうというようなことは約束はいたさずに帰ってまいったわけでございます。  それから閣僚会議につきましては、韓国側はなるべく早い機会、できれば九月の初旬ないし中旬ということを、今回は韓国側で開かれますので、招請国としてわが国に、そういう招請が私に対してなされたわけでございますが、私としましては、いろいろ閣僚の海外出張、あるいは事によりますと臨時国会ということもあり得るのかもしれない等々も考えまして、日本政府で協議の上、いずれ外交ルートを通じてお返事をいたしますということを申しまして帰りましたような次第であります。
  25. 堂森芳夫

    堂森委員 もう終わりますが、そうしますと、閣僚会議の時期は全く未定であり、そう早くないということでございますか。もう一遍だけ。私たちは反対でありますから……。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私としては、できれば招請国のそのような意思にできるだけ応じたいとは考えておりますけれども、実はただいまのところ全く未定でございます。
  27. 堂森芳夫

    堂森委員 終わります。
  28. 栗原祐幸

    栗原委員長 石井一君。
  29. 石井一

    ○石井委員 金大中事件口上書の問題が論議されておりますので、少しその問題を先にやらしていただきまして、その後、朝鮮問題全般について質問をさせていただきたいと思います。  私たちもこの事件の結末というものを注意深く見ておったわけでございますが、どうも問題点を残したような感じでこれが終わろうとしておるわけであります。そこで指摘したいことは、いまの大臣答弁を伺っておりますと、結局ベトナム以降のこの厳しいアジア情勢の中で、日韓の関係というものをひとつ新しい角度で整理しなければいかぬ、こういう政治判断のもとにこれを評価し、結末をつけたのだ、こういうふうに私は理解したのでございます。私はやはりそこにアクセントがあると思うのでございますが、この点はいかがでございますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐らくそのような念願は韓国側におきましてより強かったのではないかと思いますけれども、むろん私どももそう考えないわけではない。ただ、そうかと申して、全く筋道のない決着をつけるわけにもいかないといったような考えで、今回のようなことになったわけだと思います。
  31. 石井一

    ○石井委員 それじゃちょっとここで、警察庁からお見えいただいております警備局長に御見解をお伺いしたいと思うのでありますが、昨年十月に日本側韓国側捜査経過の通報についての要請をしております。そのわが国の問い合わせの内容から見た場合、この口上書をどういうふうに評価されるであろうか。
  32. 三井脩

    ○三井説明員 昨年十月二十五日の口上書による照会というのは数点あるわけでございますけれども、それに対する回答としての今回の口上書には捜査のプロセスというのは載っておりません。捜査したけれども起訴するだけのものはなかった、こういう意味考えるわけでございます。したがいまして、私たちの捜査に必要な韓国側からの資料という点は含まれておらないということでありますので、われわれのやる捜査についてはそれだけのハンディキャップというようなものが残ってくるということになろうかと思うわけであります。
  33. 石井一

    ○石井委員 そういたしますと、警察庁としての立場から今回の結末というのを見ると、評価すべきところは何もない、こちらの問いに対しては何ら答えられておらない、そういうふうに私はいまの答弁をお伺いいたしましたが、それでよろしゅうございますか。
  34. 三井脩

    ○三井説明員 警察におきましては、捜査を行って事案の真相を解明をするというのが目標でございますが、それにはおのずからいろいろの条件、状況というものがあろうかと思うわけであります。したがいまして、私たちとしては現にある、あるいは与えられた条件、状況の中でベストを尽くすというのがわれわれの仕事でありますから、要望したことについての十分な回答はなかったという結果でありますけれども、これをどのように外交的に処理をされるかというのはまた政府、外務省の仕事だと思いますが、そういうような中でベストを尽くして、事案の真相解明に迫っていくというのが私たちの態度でございます。
  35. 石井一

    ○石井委員 そういたしますと、今度の政治的な解決でもう捜査を打ち切ろうとされておるのか、それとも警察庁の立場としてはまだ問題が残っておる、そういうような観点から今後も継続して捜査をしていこう、こういうお考えか、この点はどうですか。
  36. 三井脩

    ○三井説明員 警察といたしましては、この捜査を継続をして事件解明のために最善を尽くすということであります。韓国側からの回答がないということはそれだけの状況、条件としては十分でありませんけれども、その他いろいろやるべきことがありますので、その点について、そういうものを手がかりにして捜査を深めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  37. 石井一

    ○石井委員 したがって、大臣、これはやはり一つ国際情勢を踏まえた政治的判断だというふうに私は理解をし、それもまた国益を守るために必要であるかもしれない、そういう考え方の方がある意味では国民を説得するのに、もう少しわかりやすいのではないかというような感じさえ私にはするわけでございますけれども、ただ口上書がソウルで受け取られてから、訪問をされて、その後に公表をされた。いまも御指摘がございましたけれども、私はその間に何らかの政治的なもっと突っ込んだ話し合いあるいはまた補足メモとか、そういうふうなものがあってもいいのじゃないかな、そういうケースが考えられるのじゃないかなと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 捜査当局が独自の立場から与えられた任務を完結しよう、しなければならないと考えておられることは、これは十分に了解のできることでございます。私が口上書を受け取りまして、これを読みまして考えましたことは、これで外交的には韓国としては少なくともまず善意を尽くしたもの、したがって決着をつけたいと考えました。そういう立場から、韓国を訪問いたしました際に私はこの問題について一言も発言をいたしておりません。先方からも発言がございません。この問題は口上書をもって終結をしたものというたてまえで私は会談に臨みましたので、したがいまして、ただいま言われましたようなメモあるいは補足といったようなものは一切ございませんでした。
  39. 石井一

    ○石井委員 それでは重ねてお伺いをいたしますが、警察当局は今後継続して捜査をするということ、これは政府の決着と関係ないのですか。これはどういう関係になるのでしょうか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐らくわが国警察当局として、わが国としてなし得ることが残っておるとすれば、それを完結をさせたいと考えておられることと思います。しかし、そこに先ほど言われましたようなハンディキャップと申しますか、そういったようなものがあるということも事実であろう。でございますから、警察は与えられた警察の任務を今後も遂行したいと考えておられることは私は当然のことであろうと思います。
  41. 石井一

    ○石井委員 それでは次に朝鮮半島の問題についてお伺いをしますが、その前に、韓国が国連へ加盟を申請をしたという、それに対してわが国は基本的にこれを支持する、こういうふうなことが伝えられておりますけれども、この問題に対して政府の御所見大臣にお伺いしたいと思います。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国連加盟の問題につきましてのわが国の基本的な態度は、いわゆる国連の普遍性から考えまして一国でも多くが加盟をすることが望ましい、そしてああいう場でお互いに話し合うことが望ましいということでございます。したがいまして、ただいまのお尋ねを純粋にとらえてお答えいたしますならば、何国といえども国連に加盟をしたいということについては、わが国は原則として前向きに対処をするということでございます。
  43. 石井一

    ○石井委員 ただ、そのことによりまして、朝鮮半島の二つある政府というふうなものを、朝鮮半島自体を分断するという、そういうことがわが国の国益にとってプラスにならない、こういう見地もあるわけでありまして、ベトナムにおいても東西ドイツにおきましても、やはり緊張の緩和というものの状態ができてからこれを認めております。そういうことを配慮した場合に、まず基本的なイロハとしてはいまの御答弁で結構でございますけれども、そういう情勢を配慮した場合に、外務大臣としてはこの問題にどう対処されるだろうか、もう少し突っ込んでお伺いをしたいと思います。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 純粋にと申し上げました意味は、まさしくいま石井委員の言われましたようなことを含んでおるわけでございます。つまり、わが国としては一番望ましい姿は、南北両方が一九七二年の時点で表明をしておりますように、両方で円満に話し合いが行われるということでございます。したがって、それの阻害要因になるというようなことは、わが国にとりましてもあるいは南北両者にとりましても好ましくないことであるという要素がまた別にございますから、したがいまして、ただいまの韓国の問題も、そういう観点も考え考えていかなければならない。北において北側も加盟をしようということでございますれば、これはまずまず両方の普遍性の原則と、それから両者の和解と申しますか、関係の平和的な処理、両方が成り立つわけでございますけれども、その辺のことがまだはっきりいたしません。もう少し様子を見なければならないと思っております。
  45. 石井一

    ○石井委員 そういたしますと、これを確実に支持するかどうかは、政府の決定というのはもう少し慎重にやりたい、私はそういうふうに受けとめまして先へ進みたいと思うのであります。  最近、私自身朝鮮民主主義人民共和国を訪問をいたしまして、主席会談等を経て、北側の考え方というふうなものについてもそれなりの理解をしてまいったわけでございますけれども、私は、ここでいまの国連の問題にもかんがみまして、何とか朝鮮半島の平和的統一というものを考えないとやはり基本的な問題というものは解決をしない、こういうふうに考える、そういう結論に達したわけでありますけれども、そういうことから、金日成主席も、たとえば国交がないにしても、余り偏った外交をやってもらったのでは、朝鮮民族全体に対して非常に大きな禍根を残す日本外交姿勢であるというふうなことを強く強調しておりましたが、この辺でもう少し、等距離外交とまでは申しませんけれども、一連のわが国韓国一辺倒のその姿勢というふうなものに対して、慎重に検討をするべき時期が来ておるのじゃないかな、こういう感じがいたすわけですが、この点については外務大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、一九七二年の時点において、南北は一つの対話を開こうということで意思の一致を見たわけでございますので、私どもとしてはその延長において問題が展開をしていくことが最も望ましいことである。ことに金日成主席が南を侵攻するという意思がないということを言っておられる由でございますので、しかりとすれば、ますます一九七二年の対話というものが進展をしていくべきものではないだろうか。私どもそれに役立つことはしなければなりませんし、それを阻害するようなことはなるべくしてはならない、こういう態度でございます。
  47. 石井一

    ○石井委員 そこで、今回の御訪問で韓国外務大臣等々とも長いこと会談をされて、そういう問題について触れられたと思うのでありますが、私は金日成主席自身より南進をしないという、また本当に国を見てみた場合にはそういうふうに感じられないかということを、もう繰り返し繰り返し訴えられました。短期間ですから、それがそのままどうであるかということに対しましては多少の疑問があるにいたしましても、その南進の問題、北の脅威という問題に関して外務大臣は今回どういう話し合いをされたか、また直接どういうふうにお感じになっただろうか、この点はいかがですか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国政府首脳の語られるところによれば、韓国は北進をするという意思はないということであります。しかし、北側の意図については、韓国政府としましてはいろいろな疑惑を持っておるということでございます。両方の話を総合いたしますならば、南側は北進をする意思はない、北側は南進をする意思がないということであれば、事柄はきわめてわかりやすいことになってまいりますが、願わくは、そのようなことが両者の行為によって示されるということがお互いを納得させるゆえんではないかと思います。
  49. 石井一

    ○石井委員 そういう両者の意向が正式に表明をされておる。七二年の時点の共同声明のときに帰れる余地というものも十分にある場合に、わが国は、そこでやはり朝鮮政策に対する転換というものが必要な時期が来ておるというふうな感じが私はするのでございますけれども、この点ひとつ再度お伺いしたいと思います。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま石井委員の言われましたことは私はそのとおりであると思うのでございます。そこで、本当に北は南進をする意思がなく、南は北進をする意思がないということであれば、そのことを言葉だけでなく行為によって示すことによって、七二年の対話というものが再開されるのではないかというふうに考えます。
  51. 石井一

    ○石井委員 国連軍解体の決議案が今度国連総会に出てくるというふうな情勢でございますけれども、北の主張はいわゆる休戦協定でなくアメリカと平和協定を結びたい、そういう意向を強く表明しておるわけです。それで三木総理外務大臣訪米というときに、この機会に何とか朝鮮半島の問題を解決するために、米朝の仲介役ということを考えられる必要もあるのじゃなかろうかと思いますが、この点は大臣どうお考えでございますか。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点が先ほど堂森委員にも申し上げたことでありますが、金日成主席がどのような理由のもとにそういうことを言われたのか私直接に承っておりませんので、わが国としてそれにどのように対処するかということをただいま申し上げることができません。もう少し正確に金日成氏の言われましたこと、あるいはその背景というものの把握をまずいたしてみたいと思っております。
  53. 石井一

    ○石井委員 私は希望を込めて申し上げておきたいと思うのでございますけれども、非常に流動をいたしておりますし、われわれもある片一方の意向だけを聞いて政策を進めていくということができない、こういうふうな情勢に相なっておる。しかも今回の訪米という時期に、日韓米という関係の中で新しい前進というものを求めてくることによって、この国連問題も朝鮮問題もやはり解決していく道があるのではなかろうか。これは大臣として非常に大きなりっぱな足跡になるということを私は確信をいたしておるわけでありまして、いまの御答弁の中からも何となく意欲的なところが出ておるわけでありますけれども、それにしても慎重に考慮する、こういうふうなお考えに聞けるわけでありますけれども、私は、この辺で手をこまねいていないで、これまでのようないわゆる冷戦構造の中にある一つ考え方というふうなものから一歩出ていくということをどうしても考えなければいかぬ時期が来ておる、こういう認識をいたしておるわけでございまして、その点についての何か総括的な御所見があればお伺いをしたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在世界全体を見まして、紛争の可能性をはらんでおる地域の幾つかのうち、一つはやはり中東であり、一つ朝鮮半島であるということは、一般にそのように言われておるわけでございますから、ことに朝鮮半島の場合には、わが国に全く近接をしております。したがいましてこの地域がそのような紛争の可能性というものを全く解消するということは、わが国にとりましても世界平和にとりましてもきわめて望ましいことでございます。でございますから、ことに仮に南北ベトナムの国連加盟というふうなことがございますと、いわゆる分裂国家の形をなしておるものの中では、この朝鮮半島の二国だけが国連から取り除かれるということになってしまう点もございます。したがいましてこの地域から本当に紛争の要因を一掃するためにわれわれとしては全力を尽くさなければならない。それは同時にわが国の国益でもあるということは仰せのとおりであると思います。
  55. 栗原祐幸

    栗原委員長 河上民雄君。
  56. 河上民雄

    ○河上委員 いま日韓関係あるいは日朝関係についてお話が続いておりますが、私はここでいわゆる日台航空路線の再開の問題に関連して、日中関係について伺いたいと思います。いわゆる日台航空路線の第一便が九月に出るやに聞いておりますけれども、そのとおりでございますか。
  57. 高島益郎

    高島説明員 いわゆる日台航空路線の再開問題につきましては、現在民間団体でございます交流協会及び亜東関係協会との間で具体的な詰めをいたしておりまして、現実にいつになって再開されるのかという点につきましては、まだ合意はできておりません。
  58. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣お尋ねいたしますけれども、いわゆる日台航空路線の再開という問題は、日中平和友好条約交渉に影響がないだろうかどうか。特に、先般来、青天白日旗に対する外務大臣のお考えがいろいろ波紋を呼んでおりますときに、交渉に全く影響がないかどうか。私の感ずるところ、日中航空協定にも非常な危険な影響が及ぶのではないか、下手をすればでありますが、そういう心配を持っているわけであります。このようなことの取り扱いいかんによりましては、条約交渉がますますおくれるのではないかということを心配しておりますけれども外務大臣はこの問題について本当に自信がおありなのかどうか。いまのところは現実に開設されておりませんけれども、もし実際に日台路線が開設されたときに、非常に重大な状況が生まれてくるのではないかということを心配しておりますけれども宮澤外務大臣におかれては、その点十分な自信を持っていまやっておられるのかどうか、私はまずそのことを伺いたいと思います。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日台航空路線の再開の問題が交流協会、亜東協会の間で商議をされておるようでございますけれども、これについての政府の基本的な立場は、一九七二年九月の日中共同声明の枠内において、共同声明並びにその後になされました了解事項の枠内において厳格に処理をされなければならない、これが政府の基本的な立場であります。また、そのような立場から今回の問題は処理をいたさなければなりません。したがいまして、これが日中平和友好条約交渉の障害になるとは考えておりませんし、また、なるようなものであってはならないというのが政府立場でございます。
  60. 河上民雄

    ○河上委員 いま問題になっておりますけれども、七月一日参議院の外務委員会における秦野章委員質問に対する宮澤外務大臣答弁でありますけれども、私ここで二つの点が非常に重要だと思うのでありますが、まず第一に、「昨年の春のわが方の青天白日旗に対する言及が誤解を招いたことはまことに不幸なことであったと存じます。」というふうに述べている点、それからもう一つは、いわゆる台湾を承認しているような国でありますが、「それらの国が青天白日旗を国旗として認識しているという事実は、わが国を含めて何人も否定し得ないところでございます。」単に客観的事実だけはなくて、「わが国を含めて」ということを特に強調されておるのでありますけれども、この二点が実は非常に重要であろうと思うのであります。昭和四十九年四月二十日でありますかの大平談話の中の一体どこが誤解を招いたのか。  もう一つは、「わが国を含めて」とは一体どういうことを意味しているのか、この二点について外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましての政府立場というものは、一九七二年の九月の日中共同声明発出以来一貫をいたしておりまして、その間変化をしたわけではございません。  ただ、せんだって七月の前国会の終了前でございましたか、参議院の外務委員会において、この問題についてのお尋ねがございまして、私としては従来から申し上げておりますことを繰り返し申し上げたつもりでございます。ただ、いまの時点で同じことを申し上げておるつもりでございますけれども受け取り方がいろいろに受け取られるという危険性がございますので、したがって、きわめて慎重に申し上げざるを得ない。  私が申し上げたいと申しますのは、本件につきまして、当委員会におきまして今年二月二十一日であったと思いますが、永末委員から御質問がございました。それに対しまして私がお答えを申し上げておりますが、これは外務委員会の速記録にそのまま登載をされております。これをもって、政府の従来から変わらない本件についての見解であるというふうにお考えをいただきたいと思います。
  62. 河上民雄

    ○河上委員 大臣、いまの御答弁によりますと、衆議院の外務委員会二月二十一日における永末委員質問に対する大臣の答えをもって政府の不変の態度である、こういうふうに言いたい、七月一日の参議院外務委員会における答弁については、それこそいろいろ誤解を招きやすいので、この際、前の方をもって不変の態度であるというふうに御理解いただきたい、こういうことでございますね。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そう申しておるのではございませんで、私は、参議院の外務委員会におきましてのお尋ねに対しましても全く同じ趣旨で、本委員会に今年の二月に申し上げましたのと同じ趣旨で実はお答えをいたしたつもりでございますし、今日もそう考えておりますけれども、それが必ずしもそのように解釈されないということであったようにも思われます。それは私の意図ではございませんで、本委員会に対しまして申し上げたこと、これはそのまま今日も政府の見解であるというふうに申し上げておるわけでございます。
  64. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣の表現はいつも正確なようでいてあいまいなんですけれども、お気持ちは、ひとつ永末議員の質問に対する答弁理解してほしいということのように承るのです。  そこで、この大平談話が出ましたときに、台湾はいわゆる日台航空路線を停止いたしました。そのときの理由に、その発表によれば、中華民国の尊厳と利益を損ねたということを主たる理由としておるわけでございますけれども、今回再開に踏み切ったのは、その尊厳と利益が回復されたというふうに考えておるのか。また、そういうふうなことを日本側として何らコメントするはずはないと思うのでありますけれども、一体この点はどういうふうにお考えになっておられますか。台湾が勝手にそういうふうに判断しておるというふうにお考えでいらっしゃいますか。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 台湾側の判断をつまびらかにいたしませんけれども、少なくとも大平外務大臣が当時国会に申し上げましたことが、いわゆる尊厳と利益を損ねるというような意図でなかったことははっきりしておると私は思います。それはまた今日政府の意図でもないわけでございます。
  66. 河上民雄

    ○河上委員 いまの場合、日中関係との関係考えますときに、青天白日旗を国旗とみなす国がどこかよそにあろうとも、日本政府として、それに日本を含めてというような判断が出てきますと、これはやはり非常に大きな問題であろう。実はそれが非常に大きな波紋を北京で呼んでおるわけであります。  もう一つは、尊厳が回復されたと台湾が判断したのかどうか、私はその点だろうと思うのでありますけれども、そういたしますと、日本政府としては、一貫して自分の方は態度は変わらぬけれども、台湾側の判断が変わってきたのだ、こういうふうに見ているわけでございますか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、わが国は何人の尊厳も利益もあえて損なうというような外交方針を持っておりません。したがいまして、大平外務大臣もそのような何人の利益あるいは尊厳を損なうというような意図での発言をいたしたとは考えられません。私もそのような意図はございません。その点は日本政府は一貫をいたしておるつもりでございまして、それが第三者によってどのように解釈されたかということについては、私どもつまびらかにいたしません。
  68. 河上民雄

    ○河上委員 条約局長にちょっとお伺いいたしますけれども、国際民間航空条約の第二十条でございますか、これによりますと「国際航空に従事するすべての航空機は、その適正な国籍及び登録の記号を掲げなければならない。」こう書いてあります。いわゆる日台路線の再開に伴って入ってまいります台湾の航空機については、国籍はどこにあるというふうに判断したらよろしいですか。
  69. 松永信雄

    ○松永説明員 ただいま御質問がありました国際民間航空条約、これには現在の台湾は加盟国と申しますか、当事国にはなっておりません。ただ、条約には御指摘のありました条項があることは、私どもも承知いたしているわけでございます。航空機の国籍を表示する、あるいはその所属する籍を表示する、登録の記号を掲げるというのは、国際航空交通の便宜上の問題としてそういうことが出てきているんだろうと思いますが、台湾の飛行機にどういう記号あるいはどういう表示をするかということは、台湾が現在国際民間航空条約の当事国でございませんから、その関係から出てくるという問題ではないというふうに心得ております。
  70. 河上民雄

    ○河上委員 念のため伺いますが、そうするとこの二十条は、乗り込んでくる飛行機の国が負うべき義務であって、受け入れの方には何ら関係がないということでございますか。
  71. 松永信雄

    ○松永説明員 直接の関係はないと考えます。
  72. 河上民雄

    ○河上委員 そうすると台湾はこれに入っていない。日本は入っているわけですね。
  73. 松永信雄

    ○松永説明員 日本は当事国でございます。
  74. 河上民雄

    ○河上委員 高島アジア局長は、航空協定によらない飛行機が入ってくることも許されるというような答弁をこの前なすっておられるわけでございますけれども、それはたとえばオリンピックをやるとか、あるいは万博をやるとかいうようなときに入ってくる航空路線について言うのではないかと思うのでありまして、このような恒常的なパーマネントな路線についておたくの言うような解釈が許されるのかどうか、私は非常に疑問に思っておるのでありますけれども、その点はいかがでございますか。
  75. 高島益郎

    高島説明員 これは国内法のいわゆる航空法の解釈の問題に関係すると思いますが、通常の例といたしましては、当然いま先生のおっしゃったとおり、まず国家と国家との間の航空協定ができまして、これに基づいて、航空法による運輸大臣の許可によって相手国の航空機が乗り入れるというのが普通の例でございますけれども、そうでなければならないというような規定にはなっておりませんので、私どもそういう航空法の規定からいたしまして、必ずしも国家間の航空協定がなくとも、実際上の乗り入れということは可能であり、またそういう先例もあるというふうに考えております。
  76. 河上民雄

    ○河上委員 その先例というのはどこでございますか。
  77. 松永信雄

    ○松永説明員 私の記憶で申し上げますので、もし不正確でございましたら後に訂正させていただきたいと思います。  たとえば、現在はギリシャとの間で航空協定締結されておりますけれども、その航空協定締結される前の時点においてしばらくの間ギリシャ航空——あれはたしかエアオリンピアといったと思いますが、日本への定期的な航空の乗り入れをいたしておりました。そのときには航空協定というものはなくして、定期航空の乗り入れを日本が認めていたというのがございます。また現在の例といたしましては、たしかナウル航空が定期的に乗り入れておりますけれども、ナウルとの間で航空協定締結されておりません。  したがって、航空協定が必ずしもなくても、日本政府が定期的な乗り入れを認めているという先例は幾つかあると考えております。
  78. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣にきょうは余り時間もございませんので一言だけ申し上げますが、この問題の取り扱いは、もし仮に九月というようなことを予定されるといたしますと、開設の時期が非常に重要な問題で、波紋を呼び起こすおそれが私は十分にあると思うのでございます。日中間には御承知のとおり、一九七二年の日中共同声明によって不動の一つの体制ができていると思うのであります。しかしそれだからといって、これでもう日中間は不動のものになったからということで共同声明の一つの枠に甘えて、この日台路線のことを、関西弁で言えばいらうことは、私は非常に危険なことだと思うのであります。私はその懸念を——廖承志さんの発言、いろいろございますが大臣もよく御存じと思います。時間がありませんので一一引用いたしませんけれども、私は強くそのことを申し上げまして、次に、あと少し許されました時間を日韓関係について二、三項目的に質問をさしていただいて簡潔にお答えいただきたいのであります。  訪韓をされましたけれども、そこで経済援助のことが当然日本の役割りとして出ているんじゃないか。これは日米会談の中でも当然そういうことが問題になるはずでありますが、ことしで請求権に基づく経済協力というものが一応時期的に切れる。今後どうするのか。その都度毎年やるのか。あるいは、請求権に基づく経済協力のような長期的な計画で当たるのかどうか。これが第一点でございます。  それから第二点。金大中事件について政治的な決着を図った。先ほどるる御説明がありましたが、毎日新聞の記事だったと思いますけれども、福田自治大臣は、これに伴って捜査打ち切りだということを七月二十五日の閣議で報告したというふうに聞いております。しかしいま当面の担当者であります警察庁は、非常にハンディキャップを負うけれども、さらに独自の捜査を続けていきたい、こういうような答えであります。政府は一体どちらの態度であるのか。  それから、口上書によれば金東雲氏のことしか書いてありませんけれども、あの事件は複数でやったことはもう明らかなんであります。金東雲氏以外の犯人あるいは容疑者がもし出てきた場合、あるいは、金東雲氏についていまわかっている指紋以外の新しい事実が捜査当局の聞き込みその他の努力によって出てきた場合には、日本政府としてはどうするのか。  私はその点をまず伺いまして、もうそろそろ時間がありませんので、お答えいただきたいと思います。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず経済協力の点でございますけれども、請求権に伴いますものは確かに今回をもって終了いたします。それにかわりますようなことを私どもがその延長線の上で考えるかといえば、そういうつもりはございません。今回経済問題、主として韓国の南副総理お話しになったわけでございますが、先ほど申し上げましたいわゆる国際機関による、IECOKによる所見もございますので、韓国の経済がなおしばらくの間、年間二十億ドル程度の外部からの資本の導入を必要とするであろうということは私もわからないわけではない。しかしそのことを請求権との延長の関連考えるというつもりはございません。  それから捜査の点でございますけれども、公安委員長がそのように言われましたということを実は私はつまびらかにいたしておりません。  なお、金東雲氏以外の問題をどうするかということにつきましては、警察庁の方からお答えを願いたいと思います。
  80. 三井脩

    ○三井説明員 新聞等で伝えられました、国家公安委員長が閣議の際、捜査はこれによって打ち切る、こう言った、こういうふうに伝えられておるわけでありますけれども、この点大臣に確かめましたが、そのようなことは言っておらないということでありますし、また捜査を警察として継続するということは、この口上書の来る前、来てから後一貫して変わっておりません。したがいまして、捜査を打ち切るということはないということでございます。  また新たな事実が出てきた場合のことでありますが、これは目下捜査継続中でございますので、どのような事実が出てまいりますか、その事実によって考えたいというように考えます。
  81. 河上民雄

    ○河上委員 もう一つ金東雲の問題についてですが、口上書によりますと、不起訴処分になったということでありますが、これは当然裁判所でやられたと思いますけれども、そのときの彼の職は何であったのか、いつ解職したのか、そういうことはおわかりになっておられますか。
  82. 高島益郎

    高島説明員 行政処分として公務員の職を剥奪されましたのは昨年の暮れ、十二月三十一日でございまして、実際に不起訴の処分になりましたのは口上書を受け取る一日前の七月二十一日でございます。その処分というのは検察庁のなす処分でございまして、いわゆる司法手続ではございますけれども、裁判所のではございません。
  83. 河上民雄

    ○河上委員 首になったときのポストはどういう……。
  84. 高島益郎

    高島説明員 先ほども申しました理由によって職はないわけでございます。
  85. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣、この問題につきましては、歴代外務大臣が一貫して、内外の納得のいく解決を図りたいということを繰り返し言われたわけでありますけれども、今回の解決は、大臣自身があいまいな点もあるけれどもということを言われておるように、非常にだれも納得のできないことでありまして、歴史的な重大な汚点を残したというふうに私は思うのであります。これは金大中氏だけではなくて、それ以外の多数の在日朝鮮人の問題にも関係してくるわけでございますので、大臣は、今後こういうことをやったということがどのような結果を招くかということについては、十分に批判を覚悟でというふうに記者会見をされたそうでありますけれども、お考えをいただきたいと思うのであります。  最後に一つだけ、在韓米軍の問題、国連軍の解体の問題につきまして、宇都宮議員のいろいろのことについて先ほどお話がございましたけれども、この問題を今度の日米会談の中で取り上げられるのかどうか、それからまた米朝間で直接かなりの話し合いが進んでいるというような情報をつかんでおられるのかどうか。米中接近の場合は発表の直前まで日本総理大臣は知らされなかったわけでありますけれども、それと同じようなことを繰り返すおそれはないかどうか、この点について最後に外務大臣の御所見を承りまして私の質問を終わりたいと思います。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 第一の口上書の問題でございますが、二つの主権国家の間に起こりましたこの問題について、今回私どもとしては最善を尽くしたつもりでございます。しかし、これについての御批判はやはり甘受しなければならないと思っております。  第二の御質問は、国連軍の解体の問題について、日米間の話題になるかということと了解をいたしてお答えをいたします。  わが国は、この関係の決議案の共同提案国でございますので、これにつきまして日米会談の話題になることはあり得ることであろうと考えております。  第三に、米朝間の接触でございますが、これにつきましては私どもそのような情報を持っておりません。
  87. 河上民雄

    ○河上委員 時間が参りましたのでこれで終わります。
  88. 栗原祐幸

  89. 土井たか子

    ○土井委員 実は、けさ日本社会党の金大中事件調査特別委員会の方から公表いたしました文書がございます。この文書は七月の中旬に入手いたしました資料でございまして、全文非常に短い文章ですが、ハングル文字で書かれております。発信者は韓国の野党の一議員でございます。ただ、この情報を海外に伝えたということが暴露されますと、御承知のとおり身辺が危険になるおそれもございますので、名前は一切私はここで申し上げるわけにはまいりません。ただし、金大中氏自身ではないということだけを一つ明らかにしておきたいと存じます。  この短文のハングル文字を日本語に訳しますと、表題は「金大中事件真相」と書かれてございまして、金大中氏拉致の役割り分担及び関与者十二人の氏名が明記されて、ここに列記をされているわけでございます。中身は、社会党の調査特別委員会がただいまに至るまで事件について調査を進めてまいりましたことと照合いたしますと、かなり信憑性が高い資料であるということを言わざるを得ません。この信憑性の高いということに対してのいろいろな理由は、本日は時間がございませんから具体的に一々明らかにするわけにはまいりませんが、その一つだけを申し上げますと、事件当時駐日大使館公使だった金在権氏の名前が、実は本名が金基完氏であることなどを明確に指摘しているわけであります。実は本名がこういうふうに指摘できるというのは、韓国政府内部の方でなくしては十分にわからないことがあるわけでありまして、こういうことが具体的に書かれているということから推しても、この文書に対しての信憑性は非常にあるのではないかというふうなことを指摘することができます。  この中に下手人というところがございまして、この下手人の中には、名前が列記されているところを見ますと、日本捜査当局が、犯行現場に残された指紋を証拠にいたしまして、犯人グループの一人と断定をされている金東雲氏ももちろん入っておりますし、それから、拉致に使われました車の所有者であるというふうに考えられております劉永福元韓国横浜副総領事らの名前もこのところに入っているわけであります。そのほかには、尹英老参事官であるとか、洪性採一等書記官であるとか、あるいは柳春国氏であるとかいう名前が出ているわけでありますけれども、お伺いしたいのは、いままで警察当局が容疑濃厚であるとしていろいろ調査を進められたこの事件について、新たな事実が出るならば、それに基づく捜査もさらに続行しようという旨を先ほどお答えになっていらっしゃいます。今回この社会党の、金大中事件真相について、調査特別委員会の名で出されております資料が指摘する事実に対して、これは新しい事実として捜査をお進めになる御用意があるかどうか、これをひとつまずお伺いしたいと思います。
  90. 三井脩

    ○三井説明員 捜査に参考になる資料はどんなものでもいただきたいという気持ちでございますので、御提供いただきまして、よく検討いたしたいと思います。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、この資料は早速そちらの方に提供いたしますから、これに基づく捜査を、調査を即刻お始めになっていただきたいということを、まず要望したいと思います。  外務省はこういう問題に対してどういうふうに対応なさるか。これは警察の方の分野でございますから、警察当局がこういうことについて真相究明のために調査を続行される。また新たな事実に対しての調査ということに対しても、これは調査を進められるということに対して、外務省当局、特に外務大臣御出席でございますから、このことに対してどういうふうな対応をされる御用意があるかということを、ひとつ承ります。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと御質問意味がわかりかねますけれども捜査当局において、資料に基づいて独自の行動をとられるものと考えております。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 もう時間ですから、私はそれだけをきょうは質問の中身として申し上げるにとどめたいと思いますが、この下手人の名前に載っております方々は一人残らず、事件直後再入国の申請をせずに出国をされた駐日韓国大使館のリストにこれは全部合致するわけでありまして、そういうこともひとつ御留意の上、捜査を進められるように要望して、質問にしたいと思います。それ、結構ですね、後、この資料に基づいての捜査というのは……。  以上で終わります。
  94. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森成二君。
  95. 正森成二

    ○正森委員 私は、いま同僚議員からも金大中事件について新たな事実が出ましたけれども、それに伴って外務大臣関係当局に質問をいたしたいと思います。  まず第一に、政府はいままで金大中事件について、あるいは金東雲事件といってもいいわけですが、真相を究明して、筋の通った、内外に納得のいく解決ということを繰り返し繰り返し言ってこられました。しかし、今回われわれが手元にいただいた口上書の要旨なるものを見ますと、どう考えてもその要件に合致しておるとは私どもからは見ることができない。宮澤外務大臣はこれを、真相を究明し、筋の通った、内外に納得のいく解決と思っておられるかどうか、まず所見を承りたい。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二つの主権国家の間に起こりました事件の処理として、最善を尽くしたつもりであります。
  97. 正森成二

    ○正森委員 いまのお答えは、問わず語りに、最善は尽くしたが真相も究明されておらず、筋も通っておらず、内外の納得も得なかったということを間接的に認められた答弁である、こういうように理解せざるを得ないと思うのですね。それは大臣、お認めになりますか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最善を尽くしたと申し上げておるのです。
  99. 正森成二

    ○正森委員 再度非常に声を大きくして、最善を尽くしたということは、最善は尽くしたがこれらの目標は達成されなかったというように、通常日本語では了解される答弁であるというように私は思います。以下、その理由を簡単に申し上げてみたいと思うのです。  まず第一に、十一月二日に金鍾泌首相がわざわざ日本に来訪されました。私は、そのときの日本の主な新聞を全部ここに持ってきておりますが、そのときのトップの見出しは、いずれも「金書記官を免職 犯行容疑認める」と、こういうぐあいになっております。  その中で注目すべきことは、「高島外務省アジア局長は記者会見で「韓国は公権力の介入を否定している。金書記官を処分したことで、同書記官の犯行が政府の指示によるものでないことを意味することは明らかで、“個人の資格での犯行”ということだ。日本側としては、主権侵害の事実を現段階で立証することは不可能」と述べた。」こう書いてあります。  つまりこの段階で、外務省当局は公権力の行使ということは十分立証できなかったが、金東雲書記官の個人としての犯行であるということは明らかに認めたのだという見解のようであります。そしてすべての日本の新聞は、「金書記官を免職個人で関与、日本に陳謝」というように書かれております。あるいは新聞報道で書かれたことは政府は責任を負わない、こう言われるかもしれませんが、一昨年の十一月二日、すでに免職になっておった人物が、今回再び、同僚議員の発言によりますと昨年の十二月の末に再び免職になっておるというのは、幾ら法律制度が異なるにせよ、奇怪至極なことであります。  そこで、十一月二日の免職なる事実と、四十九年十二月の免職なる事実の関係を御説明願いたい。
  100. 高島益郎

    高島説明員 その点確かめてございますけれども、一昨年の段階での職を免じたということは、在日大使館一等書記官としてのその職を免じたということであって、依然として公務員の地位はそのまま残っていたということでございまして、今般その公務員の地位も失わしめたということでございまして、日本で言います職と官の関係だろうと思いますが、職は一昨年の段階で失って、今回官も失ったということでございます。
  101. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁があるだろうと思って、韓国の国家公務員法、これは外務省が仮訳をしたものでありますが、それを持ってまいりましたら、なるほど日本の公務員法と違って、七十条には「職権免職」、七十三条の二には「職位の解除および解任」、こういう規定があります。韓国ではこういうことができるようであります。しかし、その七十三条の二の職位の解除という点を見ますと、五項目ありまして、そのうち一項目は削除されており、四項は「刑事事件で起訴された者。」ですから、それに当たらないことは確実であります。残る三つのうちの一体どれに当たって職位を解除されておったのか、そして今回どの条、項に基づいて七十条で免職されたのか、それを明らかにされたい。
  102. 高島益郎

    高島説明員 先ほど私が御説明いたしましたこと以上には、私は承知いたしておりませんし、韓国の国内法上の手続でございますので、一々国家公務員法第何条の第何項に基づいてどうこうということまでは聞く限りでないというふうに考えております。
  103. 正森成二

    ○正森委員 私は、外務当局に申し上げたいのですが、こういうように両国政府間で主権侵害が絡んで重大な問題になりましたことについて、私たち外務委員でさえ本日の質問のために口上書二通の全文を入手したい、こう言いましたにもかかわらず、諸新聞に報道されておる要旨以外には入手しておりません。外務大臣韓国訪問の前に実際上は口上書は手交されているのに、訪問が終わってから発表されたことといい、きわめて不明朗ではありませんか。なぜこういう問題について、口上書の全文が国会に対してさえ明らかにされないのか、その理由を明らかにされたい。どうしてですか。事は主権関係しているのですよ。そして同僚議員が聞いたら、初めて解職された日付だとか不起訴処分にされた日付などを言う。口上書を全部発表すればいいじゃないですか。
  104. 高島益郎

    高島説明員 一般に、外交交渉の過程で交換されます口上書内容を公開するという習慣は、国際間にございません。ただ、今回の問題は非常に関心を集めている重要な問題でございますので、その要旨を日韓双方の合意のもとに発表したわけでございまして、全文を発表するということは、いかなる場合にも私どもいたしておりません。
  105. 正森成二

    ○正森委員 私はそういう説明には全く納得できません。日本政府は、本件の真相を究明し、筋の通った、内外に納得のいく解決をする、これは形式じゃなしに、内容についてそう言っていたのです。まして形式について、向こうから言ってきたことの全文ぐらい明らかにするのが、内外を納得させる最小限の要請じゃありませんか。政府は、真相を究明すると言っていたのですよ。筋を通すと言っていたのです。内外に納得のいく解決をすると言っていたのです。われわれが百歩下がって、真相は究明されていない、筋は通っていない、この二つを認めるとしても、向こうから言うてこられた内容もわからない、そんなことで一国の国内で警察権を行使された、そういう重大な疑いのある主権侵害行為について、当外務委員会がああそうでございますかと言えると思っているのですか。そういう感覚で韓国へ行って、向こうの外相やあるいは大統領とお会いして、その結果に基づいてフォード大統領と会うとすれば、これが日本の国益に恐らく合致するものでないというように国民考えるのは当然だし、前内閣だって考えるでしょう。三木内閣は一体どういう内閣ですか。全文を発表していただきたい。
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般に口上書というものは、申し上げるまでもなく、協定あるいは条約とは異なりまして、公表しないのが国際間の外交の慣例であります。このことはよく御承知のとおりだと思います。しかし、今回の場合には両国国民、ことにわが国国民にとって関心の大きな問題でございましたから、特に両国間で合意をいたしまして、口上書の実体となる部分を公表をいたしたのであります。そもそもこれは例外的な取り扱いでございます。正森委員がただいまの御質問の中で、何かこれ以外に政府が隠しておることがあるのではないか、実体問題があるのではないかというお疑いをおっしゃったのでありますれば、そのようなことはございません。
  107. 正森成二

    ○正森委員 いま宮澤外務大臣が非常に法理的に物をおっしゃいましたが、それは口上書についての法律的な解釈であります。ここは国会の場であって、しからばこう聞かなければなりません。口上書がそういうものであるならば、そのような口上書で解決するように決定した、その政治的責任はどうするのか。何も国家間の問題は口上書だけで解決しなければならないことはない。現に金鍾泌氏は十一月二日にわざわざ来日して、事実上の陳謝をされております。国家間の主権侵害が問題となるようなことについて、必ず口上書で解決しなければならないという取り決めなんか何もない。日本側が満足しなければ、真相を究明し、筋の通った、内外に納得のいくような、少なくとも国会で納得のいくような、そういう形式を選べばいいじゃないですか。そういう形式を選ばずにおいて、口上書とはこういう性格のものでございます。そう言っても、それは一法律家の答弁としては承ることができるかもしれないけれども、国務大臣としての外務大臣答弁としてはわれわれは了承することができない。このことをまず最初に申し上げておきたいと思います。  それから、高島アジア局長に伺いたい。私は韓国の国家公務員法を取り寄せるように言いましたが、それを見ますと、幾つかの解職——免職じゃありません。解職については、そのうちの二つの項目については、六カ月たってもそのままであるならば当然免職になるという規定があります。そうだとすると、すでに十一月二日現在では解職になっていたものが、一年以上たった昨年の十二月末に免職になったとすれば、当然この六カ月で免職になるという規定でなしに、その他の規定を適用されたのか、あるいは一たんは解職になっていたのが、職に復して、その上で改めて免職になったのか、その二つのうちのどちらかしか法律的にありません。もし後の場合であるとするならば、言語道断であります。したがって、どのような条文に基づいて免職になったのか、それぐらい知るのは、主権侵害された疑いのある国家の外務当局として当然じゃないですか。その点も確かめなかったのですか。
  108. 高島益郎

    高島説明員 先ほど申しましたとおり、国家公務員法第何条の第何項、第何号に基づいて公務員の地位を失ったということは聞いておりません。しかし、条理上、ただいまの国家公務員法第七十条の規定が唯一のそういう規定でございますので、当然第七十条によってやったものであろうという想像はいたしますけれども、これは私の方の想像だけでございまして、そういうことを聞いて解釈しているわけではございません。
  109. 正森成二

    ○正森委員 どうもそういう点について、当然国民が疑問に思うことさえ、事前にいろいろ折衝があったろうと思われるのに、詰めもせずに、口上書の手交をもって事件を解決しようとしたということは、国民として実に納得ができないということになるだろうと思います。この点を指摘しておきます。  もう一つ、きょうは法務省も来ておりますね。法務省に伺いたいと思いますが、先ほど同僚議員も質問しましたが、七月二十六日の毎日新聞には、七月二十五日の閣議で捜査打ち切りが一応了承された。その中で、報道によりますと、稻葉法務大臣は、「わが国には疑惑を示す証拠があり、現に事件があった。今後も捜査を続けるのか、どのようなアクションをとるのかなど(外相と)話し合う必要がある」こう言って、外相も法相との話し合いを了承した。ところが、これに対して福田国家公安委員長が「「韓国側捜査当局捜査打切り、行政処分ということで決着をつけた。それをわが国も国家権力の決定として了承したのだから、捜査も当然もうしないことになる」と説明。法相も「そういうことならわかった」と了承したという。」こういう経過になっております。  一体国家公安委員長は、第一線の警備局長がああいうことを言っているのに、もう捜査はしない、こんなことを閣議でむしろ積極的に自分の方から言い、稻葉法務大臣は、一たんはもっと疑念を晴らすべきだ、外相と相談すべきだと言ったのに、福田国家公安委員長のこういう消極的な意見で一体了承したのかどうか、それについて伺いたい。
  110. 三井脩

    ○三井説明員 国家公安委員長が閣議で捜査打ち切りと言ったという点については、先ほども他の委員にお答えいたしましたけれども、そのような事実はございません。捜査を継続するということについては、大臣はかねがね知っておりますし、この口上書が出た後におきましても捜査を継続するということについて方針は変わっておりません。
  111. 正森成二

    ○正森委員 私は、金大中事件については法務委員のときからも質問をしてまいりましたが、金大中氏が再び来日されること、つまり原状回復ということは、金大中氏の選挙違反が済んできれいになるという言葉を使っておられますが、きれいになるという意味はどうかわかりませんが、そういうことと関係なしに、一般市民同様の権利、自由として日本に来るということじゃないのです。金大中氏は韓国の一般国民じゃないのです。日本国におったのが不法に連れ去られたという特別の韓国人なんです。そういう人が、一般の韓国人と同じ扱いを受けるから、はい結構でございます。そんなばかな外交がありますか。わが国としては、金大中氏が日本へ帰ってこられる、その上で自分の意思で再び韓国へ戻られるなり善処されることまで要望するのは当然なんです。外相は、選挙違反できれいな身になったらと言われましたが、きれいな身になったらというのはどういう意味でしょうか。選挙違反が有罪であれ何であれ、決着がついたらという意味でしょうか。それとも、無罪になったらということまできれいになったらという言葉には含むのでしょうか。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国において金大中氏がなした行為についての責任ということが、わが国韓国との関連の問題であります。したがって、韓国において金大中氏が犯したかもしれない犯罪について、われわれは別にとやかく申すべきでない、また関心もございません。
  113. 正森成二

    ○正森委員 それじゃ、どうしてきれいなという言葉を使われたんでしょうか。きれいなというのはどういう意味でしょうか。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私がきれいなといういわば俗語で申しております意味は、問題は一般市民並みの自由、出国を含めましてということでありますから、いわゆる一般市民としての市民権を回復するという意味で、厳格な言葉ではございませんけれども、きれいになったらと申し上げておるわけです。
  115. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんので、別の質問に移ります。  外相は、韓国へ行かれまして、私の目から見て重大な発言をされております。それは、日米韓の三国の防衛協力について、日韓間に軍事的関係はないが、韓国の平和と安全が日本の平和と安全に緊要であるということが対韓関係に関する基本的政策である、そして韓国条項については、確認の必要がないくらい明白なために、三木訪米の際に確認をしないのだ、こういう意味のことを記者会見で言われたようであります。さようでございましょうか。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは前国会において三木総理大臣がしばしば答弁をしておられますように、韓国条項があろうとなかろうと、日韓というものは歴史的に、地理的に、このような関係にあるのであるから、韓国の平和と安全がわが国の平和と安全にとって緊要であるということは申すまでもないことでありますという答弁をしておられますので、その趣旨を私は繰り返し申したわけでございます。
  117. 正森成二

    ○正森委員 しかし、外務大臣はそのおつもりでございましょうとも、世間のあるいは他国外交官受け取り方は、必ずしも同一じゃないと思います。といいますのは、たとえば韓国の安全と平和が日本の平和と安全にとって必要だというのは、わが国韓国についての一つの情勢についての認識だというように考えられがちでありますが、われわれが理解しておるところの韓国条項というのは、単なる認識の問題ではなしに、韓国の安全がいわゆる脅かされるという事態になった場合に、日本国がどういう行動、アクションをとるかという、まさに態度の問題が韓国条項として重要であります。そうではなしに、日本政府はただそう認識するというだけでは、これほど重大な問題に韓国条項はなっておりません。したがって、外務大臣がたとえば四月十一日でございましたか、訪米されましたときに、新聞記者からの質問に対して、いろいろまあ考えていることはあったけれども、結論としてイエスというぐあいに言ったんだと言われました。また今度、韓国条項というのは確認する必要もないくらい明白なためだということをおっしゃいました。それが事実だとすれば、それは認識だけではなしに、韓国で事が起こった場合の態度の問題として、日本政府がとるべきアクションの問題として、それはやはり確認した、あるいは言う必要のないくらい明白なことだ、こう言われたんだと思うのですね。そうだといたしますと、これはやはり外交上一定の問題を持ってくると思いますが、外務大臣は三木訪米に同行されて、そういう態度でフォード大統領と会談し、見解を述べられ、あるいはコミュニケを出されるおつもりでございましょうか。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和四十四年の佐藤・ニクソン共同声明の第四項でございますか、このことを私は韓国条項と言って質問をワシントンで受け、これを確認したということでございます。この認識自身は今日も変わっていないと私は思いますし、そのことば総理大臣が前国会でも述べられたところでございます。このことは、したがって、日米の会談においてもう一度確認するしないといったような、会談そのものがそういう性格でございませんし、わが国としてはこう思っているということは、国会を通じまして総理大臣の口から内外に明らかになっておりますので、特段にこれを確認しなければならないといったような問題は、日米首脳会談では別段起こってこないのではないかというふうに私は思っております。
  119. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう御答弁でございましたが、世上言われております韓国条項というのは、佐藤氏とニクソン氏の共同声明だけでなしに、ナショナル・プレスクラブでの「日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」これを含んで通常言われております。もちろん、この演説に対しましては、四十六年十一月十一日の沖繩返還協定特別委員会で、佐藤総理が、前向きにという点については若干補足説明をしておられます。しかし、いずれにせよ、こういうことを含めて韓国条項と言うというように世間には理解されておりますし、私もこれまで理解をしてまいりました。  そこで、そういう前提に立って、フォード大統領との会見で、外務大臣三木総理のお供をされてどういう態度をおとりになるのか、もう一度伺っておきたいと思います。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも前国会において総理大臣がしばしば答えをしておられますとおり、当時の佐藤総理大臣自身が、プレスクラブの発言について、多少誤解を招くところもあったというようなことで、その後ただいま御指摘のように、四十六年でございますか、改めて答弁をしておられるようなことも踏まえまして、三木総理大臣から前国会において、いわゆるイエスもありノーもあるというお答えをいたしました。それが政府立場でございます。
  121. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、イエスもあればノーもあるということで、韓国の安全というのは日本の安全にとってエッセンシャルだという認識があるとすれば、これはいままでの外務大臣の御答弁から考えても、イエスというように傾く可能性が非常に強い。韓国の安全は日本の安全にとってエッセンシャルだということが大前提になっておりますから、そういうように理解せざるを得ないのですね。  そうしますと、最近フォード大統領やあるいはシュレジンジャー国防長官が、ベトナム後で大事なのは西欧と韓国だ、それに関連して日本だ、そして韓国で事が起こったならば、先に核兵器を使用するというオプションも排除されないということをしばしば言っておられますが、そういうような状況のもとで、なおかつ日本政府態度は変わらないという前提でフォード大統領と会談をしてくる、こういうように理解してもよろしいのですか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 イエスもありノーもあるということは、終始総理大臣答弁でございますが、それはイエスの方に傾くであろうとおっしゃいますのは、正森委員の御解釈でありまして、総理大臣答弁は、具体的な事態にかんがみて、そのときに日本政府の事前協議に対する態度を決める、文字どおりそのような意味としてお考えを願いたいと思います。
  123. 正森成二

    ○正森委員 私の解釈だと言われましたが、たとえば他のアジアの地域については、中国について、台湾海峡について一定の発言がありましたが、それは事実上空洞化されたとかいろいろの言明もございます。そうしますと、他の地域についてはその国の平和と安全がイコール日本の平和と安全だというような、態度の前提になる認識をコメントしているところはないのですね。そうすると、韓国で事が起こった場合には、事前協議でイエスと言う場合がきわめて多いというのは常識なんですね。だからこそ韓国条項だとこう言われているのです。だから、私の解釈は誤っておらないと思いますが、しかし、宮澤外務大臣がそういうぐあいにおっしゃるとすれば、それは外務大臣の御見解として承っておきたい、これは外務大臣の御見解としてであります。承っておきたいというように思います。  そこで、時間がございませんから、もう一、二点申し上げたいと思いますが、これは韓国の安全という場合には、たとえば南進か北進かわかりませんが、そういう戦争が起こった場合だけを考えているのですか。それとも韓国で何らかの民主回復の要望があって、そしていまの朴政権が危険に瀕する、そういう事態もやはり韓国の安全というように御解釈になるのですか。いかがでしょう。
  124. 高島益郎

    高島説明員 通常、安全と申します場合に、私ども、いわゆる安全保障等の観念で考えておりまして、外からの攻撃とかそういうものに対する安全というふうに考えるのが常識じゃないかと思います。したがいまして、韓国の国内の政治その他は、この際無関係ではないかと思います。
  125. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと、ある報道によると、日本政府は、釜山に赤旗が立ってもかまわないのか、こう言われて何かもたもたした、しないとかいうようなことが載っておりますが、国内の政変として、仮に赤旗が好きであるというような政府が出ても、それは韓国条項の対象にならない、こう日本政府理解しておる、こういうことですか。
  126. 高島益郎

    高島説明員 それは、いわゆる国際法上の国内事項ではないかと思います。全く外部からの干渉なしに韓国国民がそういう政府を選ぶということ、これは仮定の問題でございますけれども、そういうことがあったとした場合に、これに対してとやかく言うべき筋合いのものではない。全く仮定の問題でございます。
  127. 正森成二

    ○正森委員 仮定の問題であっても、責任ある政府の当局がそういう答弁をされたということは記憶にとどめさせていただきたい、こういうように思います。  もう一つ外務大臣に伺いますが、外務大臣は、私が前国会で日韓閣僚会議を開くことについていろいろお伺いしましたときに、そういう雰囲気にはまだなっていないんじゃないか、こう言われて、そして金大中事件もそのうちの一つであるという意味のことを、私の記憶に誤りがなければ言われたと思うのです。ところが今回の口上書を見まして、最善を尽くしたという御答弁ですから、私はこれ以上その評価に対して批評をしようとは思いませんが、去年の八月十四日に金東雲が不起訴処分で嫌疑なし、こういうことになりましたときに、わが国警察当局はもちろんのこと、外務省も反発をいたしまして、そして再度捜査を求めた、そういう事実があるから結局日韓閣僚会議を開く雰囲気にはまだ至っていない、こういうことであったと思うのですね。それと今度の口上書を見比べますと、これはさしたる進歩はない。また免職の点についても、わが国の報道機関が一昨年の十一月二日に一斉に免職と書いたように、韓国の公務員法を見ますと、なるほど免職と解職とは若干違うようでありますが、わが国朝野の受け取り方は当然免職であると思っていたのですから大して進歩はない。そうなりますと、何が宮澤外務大臣をして雰囲気が変わったというように認識なさる理由になったんでしょうか。それはあるいはフォード大統領と三木総理との会談前に外務大臣間で接触をしておかなければ、フォード・三木会談の前提としてうまくいかないという政治的配慮があったればこそ、ならぬ堪忍するが堪忍、雰囲気ができておらないけれども、できておるというようなお気持ちになられたんではなかろうかというように推測するわけですが、その点についての御答弁をお願いしたい。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の八月にそういう答えがございましてから十カ月でございますが、その間、韓国がさらに捜査をして、しかも結果は公訴を維持することはできないという判断であったといたしますれば、これはこれで韓国側の努力は認めなければならない。その結果がわれわれに満足であるか不満足であるかということは、これはまたございますけれども、しかしそれだけの捜査をさらに進めたということ、そしてその結果について回答してきたということ、また金東雲氏の免官をしたということ、これは行政処置としてはなし得る最大のことをいたしたと考えるわけでございます。及び金大中氏について、これは従来からの約束の継続でございますけれども、それを再確認しているということ等々、まず主権国家間で最善を尽くしたと考えておりますので、これ以上何ができるであろうかということを考えますと、このあたりをもってこの件を終局せしめるべきであろうという判断をいたしました。もとより、先ほどから申し上げておりますように、わが国自身の気持ちから申しますれば、あれもこれもということがないわけではない。しかし、これは主権国家間において申し得ることにはおのずから限度があるというふうに私は判断をいたしたわけでございます。
  129. 正森成二

    ○正森委員 最後に一つだけ伺います。  きょうの新聞には、三木総理が、日中平和友好条約について覇権を本文に明記することを決意して、今度の訪米で、フォード大統領との会談あるいはコミュニケの中に覇権という文字をそのまま入れるかどうかはわからないけれども、キッシンジャー氏発言などを引用するような形でこの問題に側面から援助をするというか援護するというか、そういうことも考えておるということが広く報道されております。三木総理に同行される外務大臣として、日中平和友好条約の現状を何らかの形で変更するといいますか打開するという意味で、これらの点についてお考えを持っておられるのかどうか。その点について御質問して、私の質問を終わります。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日中平和友好条約の交渉はむずかしいところになっておりますけれども、何とかしてわれわれの誠意を披瀝してこの困難を乗り越えてまいりたいと考えております。しかし、来るべき日米会談の場をそれに何らかの意味関係させるという意思はございません。
  131. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  132. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部一郎君。
  133. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、韓国外務部から在韓日本国大使館にあてられた昭和五十年七月二十二日付口上書の要旨に基づきまして、いわゆる金大中金東雲事件に関しましてお伺いしたいと思います。  まず、これは口上書の要旨でありまして内容が判然としないのが第一の不満であります。「金東雲については、事件後取敢えずその職を解き捜査を行ったが、思わしい結果が得られず昨年八月十四日捜査を一時中断した。」「その後も秘かに捜査を続行したが、嫌疑事実を立証するに足る確証を見出し得ず不起訴処分となった。」こうなっております。この辺、もう少し御説明を詳しくお願いしたい。  まず事件後いつ職を解かれたのか。いつ韓国へ行ったのか。その前に、事件の後いつ日本を脱出したのか。そしてその結果、何月から何月まで捜査をしたのか。そして捜査を一時中断してその後捜査をしたというけれども、中断し、再開したのはいつなのか。捜査をやめたのはいつなのか。不起訴処分をやったのはいつなのか。そして不起訴処分をした当事者はだれなのか。そういったことはこの要旨と称するものでは一切不明でありますからお伺いをさせていただきます。
  134. 高島益郎

    高島説明員 金東雲一等書記官日本を現実に出国いたしましたのは一昨年の八月十九日でございまして、韓国側で職を解いて捜査を行ったという場合のその職を解いたと申しますのは十月二十三日でございます。これは、先ほど申しましたとおり、駐日大使館一等書記官としての職を解いたということであって、公務員としての職までもやめさしたということではないわけでございまして、この点は今回、公務員としての地位までも失わしめたということでございます。  お尋ねはいろいろございましたけれども、要するに、韓国側での金東雲ほか五名の捜査結果につきまして、犯罪を立証し得るような証拠を挙げられないということが昨年の八月十四日の段階における日本政府に対する回答でございまして、この回答を受けまして、十月二十五日に警察と協議の上で、そのような回答では納得できないので、もう少し詳細な捜査の結果を通知してもらいたいという口上書を出したわけでございます。昨年十月二十五日の口上書に対する回答としてまいりましたのが今回の回答でございまして、つまり、金大中事件につきましての韓国側捜査の結果というのは、昨年の八月十四日の回答とさらに今回の回答と合わせて捜査通報に当たるわけでございまして、今回のものは昨年の八月十四日の捜査の結果をさらに補足したものとわれわれは了解いたしております。したがいまして。金東雲書記官につきましては、今回の回答で具体的な処分が通報されておりますけれども、その他の捜査の結果につきましては、昨年の八月十四日の捜査の結果がそのままいまでもあるわけでございまして、その後の詳しい内容は今回はいただいておりません。
  135. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、今回のこの口上書回答は前回の分と異なり、捜査内容については述べられていない、こういうことでございますか。
  136. 高島益郎

    高島説明員 その要旨に書いてございますとおり、金東雲書記官についての捜査内容ではなくて、捜査の結果行った処分について書いてあるわけでございます。
  137. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 「嫌疑事実を立証するに足る確証を見出し得ず」と、ここにあっさり書いてありますが、日本側で採取いたしました金東雲氏の指紋は照合されたのかどうか、また金東雲氏の目撃者があったと承っておりますが、こうした数々の証拠に対して一つずつそれに対する回答はなかった、こういうふうに理解してよろしいのでありましょうか。
  138. 高島益郎

    高島説明員 そのような捜査内容については何ら通報はなかったということでございます。ただ、金東雲書記官を目撃したという問題につきましては、昨年八月十四日の回答の中にございまして、金大中氏を含めて目撃の事実はないということを回答してきているわけでございます。
  139. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 目撃者については別ですけれども、指紋のような明確な証拠に対して韓国側が答えられていないということは、日本捜査当局をして怒らせるに十分なテーマであろうと思います。  もう一つ伺いますが、不起訴処分にしたのは韓国のどこの当局であり、いつのことでございますか。
  140. 高島益郎

    高島説明員 先ほどお答えいたしましたとおり今月二十一日でございまして、その処分を行ったのは韓国の検察当局というふうに思っております。
  141. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、「本件捜査の結果判明した本人の東京における言動は、」とありますが、言動のどの部分が国家公務員の資質を欠き、品位にもとり、公務員としての地位を喪失させたのか。その「東京における言動」のどの部分がというのは、聞いちゃ悪いことなんでしょうけれども国民の名において聞かなければなりませんのであえて伺うのですが、どの部分の言動なんですか。
  142. 高島益郎

    高島説明員 具体的に聞いておりません。
  143. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、指紋も明快でない。向こう側の検察当局の判断も明快ではない。本人の問題になった東京の言動も、どういう点が問題になったのか明快でない。つまり、この口上書内容は、局長も言えない部分があって、いま言われているのは百も承知で私は伺っておるわけでありますが、その言葉の端々から推測されることは、これは明らかに政治的妥協の文書であって、こういうような言い方をすれば日本側としては顔が立つという、そうしたメンツが十分に配慮された文書ではないかとしか考えられない。そうでないと、言われている事実は説明がきわめて不十分、重大な証拠については何一つ雷かれていないということになるわけですね。この辺は、もしお答えになるのでしたらお答えいただきたい。
  144. 高島益郎

    高島説明員 口上書の要旨をお手元にお配りしてございますが、この内容口上書そのものとほとんど変わりございませんので、そのとおり御理解していただいて結構でございます。それ以上特につけ加えることはございません。
  145. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ますます重大な御発言があったわけですが、ほとんど口上書内容と変わらないというお話ですから、これはますます中身がなかったということを示しています。そうすると、捜査当局が非常に御不満をお持ちになるのも無理はないと私は思うわけです。  ところが、大変問題なことがここにあるわけなんですが、これは日本捜査当局が不満を持たれるというだけではなくて、総理も御不満だろうと思います。私はいま昭和四十八年十一月二日付の新聞を手にしておりますが、これはほぼ同じような記事でありますので、一つの新聞のコピーを持ってまいりました。これをちょっと読み上げてみますと、十一月二日の午前に閣議がありました。当時は田中内閣であります。そのときに、三木副総理が発言をされております。「閣議では、政治解決と事件の真相究明をめぐって三木副総理、田中法相らが「真相を究明するという筋は通すべきだ」と発言した。まず三木副総理は「この事件は滞日中の金大中氏を韓国関係者が不当に連れ去ったのが原点である。従って、政府としては、金大中氏の再来日金東雲書記官に対する日本での取り調べという基本方針を貫くべきだ」と述べた。」このように明快になっております。これに対してどうお考えになりますか。
  146. 高島益郎

    高島説明員 当時の内閣における三木副総理の感想につきましてただいま伺いましたが、私どももこの事件につきましては過去二年来そのような気持ちで一貫して処理してまいったつもりでございますけれども韓国韓国としての国内の事情もあり、今回のような形でもって決着をせざるを得なかったという点につきましては御理解いただけるのではないかと思いますが、私ども特に金東雲書記官につきまして、わが方警察当局の持っておりました証拠につきましては韓国側にも十分に通報の上で、これについて捜査をさらに継続してわが方の納得し得るような回答を得たいということでございましたけれども、これに対します韓国側回答が今般のようなものであったという点が、先ほど大臣がおっしゃいましたとおり、韓国としては一応最善の措置を講じた結果であろうというふうに考えているわけでございます。
  147. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 局長はいま非常に苦しい答弁をされましたが、少なくとも三木副総理という方は、総理になられる前と後とにおいてかなり不連続なところがある、別人かと思うようであります。この辺をちょっと外務大臣に御感想を伺いたい。金大中氏を連れ去ったのが原点だとはっきりおっしゃっているわけですね。その原状回復ができなかったし、金東雲というまさにこちらから見れば犯人を逃がしてしまって、そして取り調べることができないわけですから、金東雲書記官を呼んで取り調べる、金大中氏をもう一回来日させるという明快な基本方針を述べておられるわけです。はっきりしていることについては最近に例を見ないのですね。ところが非常にあいまいなことになっておるわけですけれども、これはどうお考えですか。恐らく大臣も非常に御苦労なさっているのはわかっていますが、これはちょっと筋が通らなさ過ぎるのじゃないか。この口上書での妥協が少し甘きに過ぎているのじゃないかという印象をこの言葉からしてもちょっと持たれるものですから、御説明をいただきたい。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当時三木副総理がどのように言われましたか私つまびらかにはしておりませんが、このような主張は私は当時あり得たであろうと思います。思いますが、それはわが国としての主張、あるいはわが国の一部のと申しますか、わが国の人々の主張であって、その主張を主権国家間で話し合いによって解決しなければならないというのがわが国の憲法の精神であり、基本的な立場でございますから、主張は主張としてそれが全部通るとは主権国家の間では決まらない、現実には私はそういうことであろうと思うのでございます。でございますから、確かにこういう主張は当時あったとして、そのとおりの結末にはなっていないということは、それは主張をした立場から言えば残念なことではございますけれども両国間で最善の努力を尽くしてこういう結果になった、それが不十分であるという御批判はこれは私は甘受をいたします。いたしますが、二つの主権国家の間でこれだけ時間をかけまして、こういう解決が精いっぱいであったというふうに私としてはやはり考えておるわけでございます。
  149. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 確かにわが国の主張はそのまま通るとは想像できない、そういう一般論で言えば私もおっしゃるとおりだろうと思います。しかし、わが方の主張が通らなさ過ぎたんじゃないかという批判はそれこそ受け入れなければならないだろうと思います。というのは、わが国において、わが国におられる人々を国籍のいかんは別として、暴力で連れ去られたのを回復することはできなかった、西ドイツでは回復ができたというような単純な比較はどうかと思いますけれども、そういうふうに比較されたとしてもこれは問題ではなかろうかと思いますし、なぜ韓国に対してそれほどまで甘くしなければならないかという、説明のしょうがないものをわれわれは感じているわけです。恐らく外務大臣もそこで御答弁にはなっておられるでしょうけれども、同じようなお気持ちであろうかと思うのです。ですからこの問題はこれで、この口上書で決着をつける、こういうふうにいま思っておられるのか、なおかつ後においてこの問題はもう一回巻き返して、何らかの納得のいく結果をもたらしたいと思っておられるのか、その辺はいかがでしょうか。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今後時間をかけましても、私は、この種類の問題は今回よりもよりいい結果がどの時点で得られるかという確たる見通しが立ちにくい性格のものではないかと考えました。したがいまして、この口上書をもって、私は本件の外交関連の面は、これをもって終局とするというふうに考えております。
  151. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外交関連とおっしゃいますのは、先ほどの警察の方々が言っておられた、問題、材料があれば調べるという方針と反しないのですか、それとも外務省関連事項としては取り上げないという意味でしょうか。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一昨年の八月以来、両国間の非常にぎくしゃくした問題として存在しておりましたこの問題、日韓両国外交面におけるこの問題というものは、一応口上書をもって終局をしたというふうに考えております。
  153. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると警察当局が先ほど述べられましたことは、警察当局の当局として、日本を代表する意思としてではなく、当局の自発的な単なる行動であって、日本国の方針として対韓外交に影響を与えるような事項を選び出すつもりはない、つまり警察は言っているだけであって、実際は捜査を効果的なものにする意思はない、こういう意味でございますか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が警察当局を主管する大臣としてこれを申し上げることはもちろんできないわけでございますけれども両国間のわだかまりになっておった、これは一つ外交の懸案であったわけでございます。両国間に関する限り、口上書をもってこれは終局したものと、外務大臣としては考えております。もちろん、警察当局としては独自の立場から今後ともこの事件を究明されるということは、これは私は当然あり得ることであろうと考えておりますけれども、それは両国間の外交関係とは別の、警察の独自の立場におけるお仕事であろうというふうに考えます。
  155. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると警察当局の御調査は、われわれの考えているような解決策ではない、こういうことですね。そして少なくとも私たち国民に対しては非常な大きな不満が残ってこの問題は終わっていく、こういうことだろうと私は理解をいたしております。  もう一つ最後に伺いますが、金大中さんが日本をもう一回訪問される、日本政府要求する形でなく、そういう形が自然にできてくるように韓国政府は配慮する旨の了解を、明示的にせよ暗黙的にせよ、おとりになりましたか。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点はいわゆる係争中の公判がきれいになれば、本人が希望すれば、出国の自由を含めて韓国人市民一般並みの自由は与えるということでございますので、そういう条件が具備いたしますと、金大中氏自身の意思によって金大中氏は自由に行動し得るということになるわけでございます。
  157. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはいつごろになりそうな見通しでございますか。
  158. 高島益郎

    高島説明員 これは韓国司法手続の問題でございますので、私ども見通しについて申し上げる立場にございません。
  159. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、私は対韓外交あるいは対北鮮外交につきましてお伺いしたいと思ったのですが、もう時間がなくなってまいりましたので、先ほども理事会で申し上げましたけれども、これは改めて緊急に、今度は総理もお迎えした席上でしかと承りたい、これは委員長にお願いいたします。  そこで、残っている時間がちょっとございますから、日中関係の問題と今度の訪米関係が絡んでどうも議論されている節がございますので伺いますが、日中間の平和友好条約締結に関しまして、その交渉の最大の問題点であった覇権問題、その覇権問題の内容訪米の際、アメリカ政府と合意することによってこれを中国側に持っていこう、まさにアメリカの手によって自民党内のタカ派を抑え、アメリカ意向によってソビエト政府の反発を回避しようというような作戦を立てているかのごとき報道が行われております。またそうした問題は単なる記事としてでなく、私も二、三伺っていることもありまして、こういう際ですから明快に承っておきたいと思うのであります。  私の意見な先に申し上げますが、少なくとも訪米の際にそうした路線を引くということは、まさにアメリカの干渉を日本のアジア外交にわざわざ招き込むようなものであって、決していい方法ではないと私は信じておりますが、この辺についてまず御見解を承りたい。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先刻もお答えを申し上げたところでございますけれども、日中平和友好条約、何とか努力をいたしまして打開をしていかなければならないと考えております。しかしこれはわが国自身の問題でありまして、この問題を日米の首脳会談等に関連づけて解決を図ろうという気持ちを私は持っておりません。
  161. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 関連づけてといまおっしゃいましたけれども、それはお話がテーマとして出ないという意味ではないんでございましょう。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先方からどういう現状になっておるかという質問でもあれば、なるべく現状を説明しておきたいと思いますけれどもわが国から何かこの問題を持ち出して日米の場で物を考えようという気持ちはございません。
  163. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これは仮定の質問でありますが、行かれる前でありますから特にお伺いするのですけれどもアメリカ政府側が覇権の問題についてこれは大いにやるべきじゃないかとか、あるいは覇権という用語を使うのはまずいじゃないかというようなどちらの意見が出るかわかりませんけれども、そういうお話が出たときにはどういうふうに反応なさるおつもりでしょうか。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことがあろうとは私想像いたしませんが、これはわが国と中国の問題でございますから、別段アメリカのアドバイスを受けなければならない種類の問題ではないと私は思います。
  165. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この間外務大臣に中国問題を丁寧に一遍伺ったことがございましたが、そのときに覇権の考え方について、総理のお考え方は非常にいいお考えである旨外務大臣はここで言われました、そして基本的な原則であるとまで申されました。それは私の耳に鮮やかに残っているわけでありますが、その覇権に対する考え方、その後進展されたあり方を伺いたいのですが、覇権という用語を用いることによって、ソビエト政府が大きに懸念をしているような事態に対してはどういうふうにお考えでございますか。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは仮にそういうことになりますのでしたら、内外に誤解を生じないように、わが国としては覇権というものをどう考えておるのかということをはっきりさせておかなければならないと思います。そうなりますかどうかはただいま申し上げておるのではありませんが、仮定の、そのような状況において他国がそれに対して持つであろう危惧、これはわが国の責任において解消するための方法をはっきりさせておかなければならないと思います。
  167. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは覇権という用語を使うという意思表示としていま言われたのか、覇権という用語を使って、誤解があったら解こうという態度でいかれるのか、覇権という用語は誤解が多いから、できたら別の用語でいくという意味でおっしゃっておられるのか、これも言いにくいことでしょうけれども、どちらの方に重点をかけておっしゃいましたか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仮定のお尋ねでございましたから、そうなるにせよならないにせよ、いずれにしてもそのような印象を与えるというようなことは、わが国として避けなければならない、その避ける方法考えなければならない、仮定の問題としてはそういうふうにお答えを申し上げます。
  169. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 当然、ソビエトとしては日本の周辺の問題として、アジア安保というような問題を既定の事実として秋になると取り上げてくるだろうと思われます。そういう際に、日本政府はどういう態度をおとりになるのか、まさにこの交渉とも絡んでくる問題だろうと思います。ヨーロッパ安保はいまいよいよ最終点を迎えておりますが、アジア安保という構想でわが国に働きかけてくるとしたら、わが国は基本的にはそのアジア安保構想をどういうふうにお考えになりますか。これは短い時間でとてもお話しにくいとは思いますが、基礎的なことを聞かせていただきたい。
  170. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは一つは検証という問題が非常に厄介な問題であろうと思うのでございます。これはヨーロッパ安保でも無論そういう問題がないわけではございませんと思いますが、わが国自身は余りたくさんの検証の手段を持っておりません。つまり、たとえば人工衛星によるものであるとかその他の情報活動によるものであるとか、約束したことが守られておるかおらないかということを検証することは非常に必要であると思いますけれどもわが国の場合そういう手段をほとんど持っておりませんから、これを考えておかなければならないと思いますが、その前にと申しますか、いま構想と言われるものが中国をどのように考えるかという点は、非常に大きな問題であろうと思うのでございますが、現在の中ソ両国関係から判断をいたしますと、その間にそのような合意が成り立つものであろうかどうであろうかという、申し上げるまでもなくよく御存じの問題がございますので、したがいまして、どのような構想が果たして可能であるのか、実際に打ち出されるものであろうかどうであろうかということ、これについてやはり相当大きな問題があろうと思います。世間で、ヨーロッパが一つのああいう結論になったので、今度はアジアであろう、そういう声はよく聞きますけれども、さてそれがいかなる具体的な形で整合性のあるものが打ち出されるのであろうかということについては、私自身実は相当問題はむずかしいのではないだろうかというふうにいまは思っております。
  171. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、時間が参りましたので終わります。
  172. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十一分散会