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1975-05-23 第75回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年五月二十三日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小林 正巳君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 正森 成二君       加藤 紘一君    坂本三十次君       正示啓次郎君    住  栄作君       竹内 黎一君    谷垣 專一君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       勝間田清一君    土井たか子君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         大蔵省関税局企         画課長     松尾 直良君         文部省体育局ス         ポーツ課長   望月 健一君         通商産業省通商         政策局国際経済         部通商関税課長 能登  勇君         通商産業省生活         産業局文化用品         課長      森   孝君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     谷垣 專一君   小坂善太郎君     登坂重次郎君   原 健三郎君     戸井田三郎君   福田 篤泰君     田中  覚君   細田 吉藏君     住  栄作君 同月二十二日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     本名  武君 同日  辞任         補欠選任   本名  武君     加藤 紘一君     ――――――――――――― 五月十二日  千九百七十四年七月五日にローザンヌで作成さ  れた万国郵便連合憲章の第二追加議定書万国  郵便連合一般規則万国郵便条約及び関係諸約  定の締結について承認を求めるの件(条約第一  四号)(予) 同月十六日  ILO強制労働廃止条約第百五号の批准等に関  する請願(田中美智子君外二名紹介)(第二八  七〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 同月二十日  日中平和友好条約締結促進に関する陳情書外九  件(第三二  二号)  日朝国交正常化促進に関する陳情書外一件  (第三二三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の南部共同開発に関する協定の締  結について承認を求めるの件(条約第六号)  船舶料理士資格証明に関する条約(第六十九  号)の締結について承認を求めるの件(条約第  七号)  社会保障最低基準に関する条約(第百二号)  の締結について承認を求めるの件(条約第八  号)  海上航行船舶所有者責任制限に関する国  際条約締結について承認を求めるの件(条約  第九号)  油による汚染損害についての民事責任に関する  国際条約締結について承認を求めるの件(条  約第一〇号)  油による汚染損害補償のための国際基金の設  立に関する国際条約(千九百六十九年の油によ  る汚染損害についての民事責任に関する国際条  約の補足)の締結について承認を求めるの件(  条約第一一号)  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三  十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正  し又は撤回するための欧州経済共同体との交渉  の結果に関する文書締結について承認を求め  るの件(条約第一三号)  核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(条約第一二号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定締結について承認を求めるの件、船舶料理士資格証明に関する条約(第六十九号)の締結について承認を求めるの件、社会保障最低基準に関する条約(第百二号)の締結について承認を求めるの件、海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約締結について承認を求めるの件、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約締結について承認を求めるの件、油による汚染損害補償のための国際基金設立に関する国際条約(千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約補足)の締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正し又は撤回するための欧州経済共同体との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件、及び核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件、以上各件を議題とし、順次政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣宮澤喜一君。     —————————————  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との問の両国に隣接する大陸棚(だな)の   南部共同開発に関する協定締結について   承認を求めるの件  船舶料理士資格証明に関する条約(第六十九   号)の締結について承認を求めるの件  社会保障最低基準に関する条約(第百二号)   の締結について承認を求めるの件  海上航行船舶所有者責任制限に関する国   際条約締結について承認を求めるの件  油による汚染損害についての民事責任に関する   国際条約締結について承認を求めるの件  油による汚染損害補償のための国際基金の設   立に関する国際条約(千九百六十九年の油に   よる汚染損害についての民事責任に関する国   際条約補足)の締結について承認を求める   の件  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三   十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許を修   正し又は撤回するための欧州経済共同体との   交渉の結果に関する文書締結について承認   を求めるの件  核兵器の不拡散に関する条約締結について承   認を求めるの件     —————————————
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、大韓民国政府との間で、かねてより、日韓両国に隣接する大陸だなの北部境界画定及びこの大陸だなの南部における石油資源開発に関する交渉を行ってまいりました結果、最終的合意に達し、昭和四十九年一月三十日にソウルにおいてわが方後宮駐韓国大使韓国側金外務部長官との間で、両国に隣接する大陸棚北部境界画定に関する協定及び両国に隣接する大陸棚南部共同開発に関する協定署名を行った次第であります。  これらの協定は、第七十二回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。  両国に隣接する大陸棚北部境界画定に関する協定は、本文四カ条から成っており、両国に隣接する大陸だなの北部における日本国に属する大陸だなと大韓民国に属する大陸だなとの境界線を定めております。  両国に隣接する大陸棚南部共同開発に関する協定は、本文三十一カ条及び付表から成っており、両国に隣接する大陸だなの南部一定区域両国共同開発区域とすること及び両国開発権者共同開発区域におきまして石油資源を共同して探査し及び採掘することに関する事項について定めております。なお、本協定に基づく日韓両国共同開発区域は、わが国中国との間の等距離中間線わが国側に限定して設置したものであり、中国大陸だなに対する国際法上の権利を損なうことのないよう慎重な配慮が加えられております。  これら両協定締結によりまして、日韓両国に隣接する大陸だなの北部につきましては、両国のそれぞれに属する大陸だなの境界画定されることとなり、その結果、同区域における鉱物資源開発の環境が整備されることが期待され、また、両国に隣接する大陸だなの南部につきましては、同区域をめぐる両国間の紛争が回避され、共同開発区域として同区域石油資源開発が可能となる結果、エネルギー資源事情の改善に資することが期待されます。  よって、ここに、これら両協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、船舶料理士資格証明に関する条約(第六十九号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九四六年に国際労働機関の第二十八回総会で採択されたもので、船舶乗組員に対する衛生的かつ栄養に富んだ食事の供給を確保することを目的としており、船舶料理士資格証明書を有していない者を船舶料理人として従事させてはならないこと、試験の実施及び資格証明書の付与のための一定要件等について規定したものであります。  わが国におきましては、船員法及びこれに基づく省令により、条約趣旨は充足されているところでありますが、この条約締結することは、わが国における船舶乗組員の健康の維持及び増進並びに船内司厨部員の地位の向上を図る上からも、また、労働問題の分野における国際協力の上からも有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  社会保障最低基準に関する条約(第百二号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九五二年に国際労働機関の第三十五回総会で採択されたもので、その内容は、医療、傷病給付失業給付老齢給付業務災害給付家族給付母性給付廃疾給付及び遺族給付の九部門社会保障給付について、給付事由保護対象者の範囲、給付内容資格期間支給期間等について最低基準規定したもので、この条約批准する加盟国は、失業給付老齢給付業務災害給付廃疾給付及び遺族給付のうち少なくとも一部門を含む三部門について義務を受諾することとなっておりまして、わが国は、この条約批准に当たり、傷病給付失業給付老齢給付及び業務災害給付の四部門について義務を受諾することといたしたく、これらの部の規定趣旨は、わが国におきましては、主として健康保険法雇用保険法厚生年金保険法労働者災害補償保険法及びこれらに基づく政省令により充足されているところでありますが、この条約締結することは、わが国における社会保障制度の発展及び社会保障分野における国際協力のため、有意義と考えられます。  なお、当面義務を受諾しないその他の部につきましては、諸条件の成熟を待って受諾することが適当であると認められる時期が参りましたならば、随時、条約第四条1の規定に基づき政府において当該部義務を受諾する通告を行うこととしたい考えでございます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  船舶所有者責任につきましては、各国とも伝統的に責任制限制度を採用してまいりましたが、その方式は国により異なっており、統一条約必要性がつとに指摘されておりました。一九二四年の海上航行船舶所有者責任制限に関するある規則統一のための国際条約はこの統一化を促進するものでありましたが、責任制限方式として複雑である等の欠陥が指摘されたため船主責任制限制度の再検討の機運が生じ、より合理的な新条約作成が望まれるに至りました。これを受けまして一九五七年ブラッセルで第十回海事法外交会議が開催され、わが国を含む三十二カ国の代表による審議の結果、同年十月十日、金額責任主義による船主責任制限を定めた海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約作成されたわけであります。  この条約は、海上航行船舶所有者責任制限制度として、事故ごと責任を定め、トン数に応じ一定の割合で算出される金額責任制限することができることを定めるものであります。わが国商法船舶所有者責任制限について委付主義をとっておりますが、この委付制度につきましては近代化された海運の現状にそぐわないとして従来から問題点が指摘されておりまして、海上航行船舶所有者責任制限に関する国際条約が定めている金額主義による責任制限制度は、責任制限方式としてより合理的であり、かつ船舶事故から生じた被害について妥当な救済を図るものであると考えられます。  多くの海運国がすでにこの条約締約国となっている事実を考慮いたします場合、主要海運国の一つであるわが国が、この条約に参加することによりまして海商法国際的な統一を促進することが期待されます。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一九六七年三月、英仏の近海で起きた大型タンカートリー・キャニヨン号の海難及び油による汚染事故を契機といたしまして、政府間海事協議機関において、タンカー等がもたらす油による汚染損害についての民事責任に関する法的な問題を検討し、これを国際条約化する作業を進めてきました結果、一九六九年五月その最終草案作成され、同年十一月ブラッセルにおいて開催されました海洋汚染損害に関する国際法律会議におきまして、わが国を含む四十八カ国の代表による審議の結果、同月二十九日、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約が採択されました。  この条約は、タンカーからの油の流出または排出による汚染損害被害者に対し適正な賠償が行われることを確保するための統一的な国際的規則及び手続を定めるものであります。わが国がこの条約締約国となりますことは、わが国領域において汚染損害が生じた際の被害者保護に役立つのみならず、わが国世界有数タンカー保有国である事実にかんがみまして国際協力増進見地からもきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。  次に油による汚染損害補償のための国際基金設立に関する国際条約(千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約補足)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一九六九年十一月二十九日にブラッセルにおいて油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約が採択されましたところ、その際、同条約補足するため、同条約に基づいて支払われる賠償が不十分である場合に汚染損害被害者に対して補足的な補償を行うこと、及び同条約によってタンカー所有者に課される経済的な負担を一部肩がわりすることを目的とする国際補償基金設立すべきであることが決議されました。これに基づき、その後、政府間海事協議機関においてこれを国際条約化する作業が進められた結果、一九七一年十一月にブラッセルで開催された油による汚染損害補償のための国際基金設立に関する会議において、十二月十八日に本件国際条約が採択されました。  この条約は、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約補足として、タンカーからの油の流出または排出による汚染損害被害者に十分な補償を行い、かつ、タンカー所有者に課される経済的な負担を軽減することを確保するための国際基金設立し、かかる目的の達成のため、同基金が、各締約国において海上を輸送された油を受け取る者から、拠出金を徴収することを定めるものであります。  わが国がこの条約締約国となりますことは、わが国領域において汚染損害が生じた際の被害者及びタンカー所有者保護に役立つのみならず、わが国世界有数タンカー保有国であり、また、世界有数石油輸入国である事実にかんがみまして、国際協力増進見地からもきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正し又は撤回するための欧州経済共同体との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  最近、イタリアフランス等におきましてスキーぐつの製法材質の転換により技術開発が進み、プラスチック製スキーぐつのわが国に対する輸入急増し、国内スキーぐつ産業の存立に重大な影響が生じていることにかんがみまして、わが国は、当該産業近代化のための国内諸対策の実施円滑化を図るためにプラスチック製スキーぐつの関税引き上げることとし、昨年十一月より、関税及び貿易に関する一般協定ガット)に基づき欧州経済共同体交渉を行ってまいりました。その結果、ガットに付属する日本国譲許表に掲げるはき物のうちプラスチック製スキーぐつについてのわが国譲許税率一〇%を二七%に引き上げるとともに、その代償として他の品目譲許税率引き下げを行うことにつき、本年四月に合意に達した次第でございます。  この交渉は、関税譲許修正または撤回に関する手続を定めておりますガット第二十八条の規定に基づいて行われたものでありますが、これは、プラスチック製スキーぐつが昭和三十九年から昭和四十二年まで行われたケネディラウンドの際に行いました関税譲許品目の一部であり、また、本品目に関する主要供給国は、欧州経済共同体であったためでございます。  プラスチック製スキーぐつについての従来の譲許税率引き上げに対する代償といたしましては、大理石、トラクター用内燃機関吹奏楽器等十三品目につきまして従来のわが国譲許税率引き下げが行われることとなっております。  本件文書は、このような交渉結果を収録したものでありまして、国会承認を得た後、政府ガット事務局長に対して行う通告によって効力を生じ、実施されることとなっております。  よって、ここに、この文書締結について御承認を求める次第であります。  最後に、核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  核兵器の不拡散に関する条約作成につきましては、一九五八年の第十三回国連総会においてその重要性が指摘されて以来、国連及び十八カ国軍縮委員会において審議が行われましたが、一九六八年の第二十二回国連総会は、軍縮委員会より送付された条約案審議し、改定を加えた後、この条約を推奨する決議を採択いたしました。その結果この条約は、一九六八年七月一日ロンドン、モスクワ及びワシントンで署名のために開放され、わが国は、一九七〇年二月三日、右の三都市において署名いたしました。この条約は、一九七〇年三月五日に効力を生じ、本年四月一日現在締約国は八十四カ国となっております。  この条約は、核兵器国核兵器その他の核爆発装置またはその管理をいかなる者にも移譲しないこと、非核兵器国核兵器その他の核爆発装置またはその管理を受領せず、また、核兵器その他の核爆発装置を製造またはその他の方法により取得しないこと、すべての締約国原子力平和的利用分野における国際協力を進めること等を主な内容とするものでございます。  わが国がこの条約締結することは、核拡散防止体制の強化を図り、軍縮分野におけるわが国の主張をさらに進め、また、わが国における原子力平和的利用を推進する見地からきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上各件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて提案理由説明は終わりました。
  5. 栗原祐幸

    栗原委員長 ただいま議題となっております各件のうち、関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正し又は撤回するための欧州経済共同体との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  6. 土井たか子

    土井委員 今回問題になっておりますプラスチック製スキーぐつ、このプラスチック製スキーぐつ以外にも、たとえば繊維関係品目であるとか、それからグローブであるとかミットであるとか等々、多くの譲許税率引き上げを要する品目がほかにもあろうと思うのでございますが、今回、特にこのプラスチック製スキーぐつについてこれを選択された政策理由をまず御説明賜りたいと思います。
  7. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 スキーぐつに関しましては、譲許を行いましたときに予見できなかったような材質であるとか技術であるとかいうようなものが開発されまして、従来、皮のスキーぐつが主流であったものが、プラスチックスキーぐつが主流になってまいったということ、かつ輸入急増の傾向が非常に顕著でございまして、昨年におきましてはプラスチック製スキーぐつは大体国内需要の五割以上を占めるようになったということ、それからまた本件につきましては、関連産業合理化につきましてすでにいろいろな施策が実施されておりまして、その合理化の過程におきまして、輸入急増によってこれが妨げられないために関税引き上げる必要が生じたということ、これらいずれもプラスチックスキーぐつという特殊なケースにつきまして、たまたまそういうような事情が重なり合いましたために、この関税引き上げの措置に踏み切ろうという次第でございまして、その他の品目につきましては、必ずしも現在そのような全く同じような事情が存在しているというところまでには至っていないかと存じます。御案内のとおり、わが国といたしましては、やはり貿易立国という経済を持っておりますので、できる限り関税あるいはその他の非関税貿易障壁をほかの国と共同して引き下げていくという方向で対処しているわけでございまして、このような関税引き上げはきわめて例外的にのみ実施されるべきものかと考えております。
  8. 土井たか子

    土井委員 そういたしますと、特にスキーぐつに対して、わが国国内生産をいたしております企業を守るということ、とりわけ皮でつくられるスキーぐつの生産をいたしております国内企業を守るというところに主眼があるというふうに考えてようございますか。
  9. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 先ほども申し上げましたように、スキーぐつは皮製品が主流でございました。ただ、技術革新によりまして、フランスイタリア等でこのプラスチック製スキーぐつが非常に一般消費者需要に合っているという状況になりまして、わが国におきましても皮製スキーぐつからプラスチック製のスキーぐつの生産の方に転換し、かつそういうかっこうで産業自体を合理化していきたいという計画で行われているわけでございます。したがいまして、皮製スキーぐつそのものを保護するというよりも、従来皮製スキーぐつをつくっていた方々がプラスチック製スキーぐつに転換して、うまく合理化をやっていくという計画を促進、補助するという趣旨関税引き上げをいたしたいと考えている次第でございます。
  10. 土井たか子

    土井委員 そういたしますと、従来皮製スキーぐつ生産いたしておりました企業も、この節、プラスチック製スキーぐつ生産することに転換していくことをひとつ政策面でも進めたいという御趣旨のほどをいま披瀝なすったわけですね。国内スキーぐつ産業近代化政策というのが五十年度から実施されるというふうに聞いていたわけです。ところが、いまそういうふうな御趣旨の御説明が御答弁の中から聞かれたわけでありますが、いままでこれを放置してきたという理由はどの辺にあるわけですか。
  11. 森孝

    ○森説明員 お答え申し上げます。  先ほど御答弁申し上げましたように、スキーぐつはかっては皮製でつくられておりましたが、その後ヨーロッパに始まりまして大きな変革がございまして、第一は材料が皮革製からプラスチック製に変わった。当初の変革は素材の変革だけでございまして、皮革がビニール製のシートに変わって、製法は従来どおり縫い合わせる、縫製でつくっておりました。こういう変革が昭和四十年ごろにヨーロッパで起こりまして、わが国でも数年前にこの変革が行われておりまして、それに対応いたしまして、底づけと申しておりますが、スキーぐつの底のつくり方等も機械で自動的につけるというような変革が数年前にございました。これにつきましては、中小企業の設備近代化資金を活用いたしまして、そういう変革に対応するように業界も努力いたしまして、奈良県からもそれに必要な設備近代化資金の融資を行っております。  ただもう一つ、素材と変わりまして、二、三年前より製法が変わりまして、従来の製法に変わりまして一体成形と称しておりますが、新しい製法に変わりまして、これに現在のところわが国業界はまだ十分に対応し切れてないということで、素材及び製法両方の急激なる変換にわが国業界は努力してまいりましたけれども、残念ながら一歩立ちおくれている、こういう実情でございます。
  12. 土井たか子

    土井委員 一歩立ちおくれておるところを取り返して、この近代化計画というものの整備段階を終了して、その効果を発揮し得る時期というのは、一体いつごろをお考えになって、今回その近代化計画というものを推進しようとなすっていらっしゃるのか、大変これは気にかかる問題です。一体いつごろそうなるのですか。それから、その場合におけるプラステックスキーぐつ国内生産状況と輸入の抑止効果の予測というものを当然なすって今回こういう措置をおとりになっておると思うのだけれども、その辺もあわせて聞かせていただきたいのです。
  13. 森孝

    ○森説明員 今回の関税引き上げとともに、国内近代化計画は昭和五十年度から五十四年度までの五年間について実施するということで本年度から着手いたしております。私どもの見通しでは、五年の間に生産の集中化等によりまして、ほぼ内外の競争力格差を解消できるものというふうに見ております。需要の五十四年度の見通しにつきましては、こういう非常に流行性の強い商品でございまして、確たる数字の見通しはなかなかむずかしいのでございますが、国内のシェアは現在よりも回復するというふうに考えております。
  14. 土井たか子

    土井委員 回復するというふうに考えております、そのとおりになればいいのですが、いまの御答弁は心もとない御答弁で、そのとおりになるかどうかというのは、どうもこれ自身余り期待をかけるわけにいかないような側面もございます。  さて、一つ聞きたいことがあるのですが、スキーぐつという問題を考える場合に、一体何が一番大事だとお考えですか。買う人がたくさんあるから売ればよいというような問題ではなかろうと私は思うのであります。色がきれいだからよいというようなものじゃないと思うのです。それがはやりで流行だから、そういう方向を追っかけろというようなものではないと思うのです。スキーぐつを履いてスキーをする人たちを考えてみると、スキーぐつというものは本来何を重点に置いて考えるべきでしょうか。いかがです。文部省の方、きょう御出席をいただいておるはずでございますが、文部省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  15. 望月健一

    ○望月説明員 およそスポーツをするときには二つの考え方があると思います。第一点は、初心者がまず安全に用具を使いこなせるという点が一つ、技術が向上すればその用具を使ってより高度の技術を発揮できる、その二点があると思います。スキーのくつにおいても同様のことが言えると思います。
  16. 土井たか子

    土井委員 大変明快。  私、きょうはここにプラスチック製スキーぐつを持ってまいりました。これなんですが、これは日本がただいま輸入をいたしております国、つまり三国あるうちの一国、イタリー製のスキーぐつであります。これはただいまお答えいただきました文部省の方に特にひとつ御意見を賜りたいと思うのですが、そもそもこのプラスチック製スキーぐつというのもいろいろございます。最近はもっと丈の高いものも出回っております。しかし、総じて色が鮮やかです。ファッションという点から言ったら、若い人たちは飛びついて買いたくなるスキーぐつだということは一応言えると思うのです。このスキーぐつは安全性の点から考えていかがなんですか。
  17. 望月健一

    ○望月説明員 先ほど申し上げましたように、二つの点から申し上げますと、確かにそういうプラスチック製のくつは足に密着し、それからいわゆるスキーの板といいますか、それと非常に密着している。したがって、非常に上手な方にとってはすばらしいことがやれる。それからもう一つは、初心者にとりましてはギブスがはまったようなかっこうになりますので、必ずしもそれは向くというふうに私たちは初心者指導はしておりません。技術に見合う筋力も、バランスをとることもまだ十分でない場合に、ギブスのはまったような形になると時々骨折をするということもありますので、そういう点は私たちの講習会その他を通じて日ごろ指導をしているところでございます。
  18. 土井たか子

    土井委員 いま御答弁の中でもおっしゃいましたとおり、聞くところによりますと、スピード競技用の選手を対象にそもそも開発されたスキーぐつだということを私たち聞いております。中身も年を追ってだんだん改良、改善を重ねられつつはありますけれども、なおかついま御答弁のとおりで、初心者向き、素人向きというくつでは現在もございません。いま文部省も各講習会を通じて、初心者に使用される場合、いろいろ講習をしたり指導をしたりしているという旨をおっしゃっておりますけれども、これはいままでに実態に即応して調査をなすっていらっしゃるかどうかをひとつお伺いしたい。と申しますのは、皮製スキーぐつで、足のくるぶしのところまでしかなかったあのスキーぐつ時代には捻挫がたくさんあったのですね。ところが、このごろふえているのはすねの上、すねの下、大変広範囲にわたる部分を複雑骨折やるのです。その件数が非常にふえているのですよ。このスキーぐつを使用した際に、一体どういう骨折が何件くらいあるかという実態調査をなさっていらっしゃいますか。
  19. 望月健一

    ○望月説明員 骨折その他事故のもとの大きな原因は用具にもありますけれども、もう一つは、技術の未熟な者がリフトでどんどん高いところに上がってしまいまして、そして自分の技術を抜きにして高いところからおりてくる。そして、いまのように初心者が固定されたことで、いわゆるでこぼことか新雪に突っ込んでけがをするというようなことがございます。一つは、リフトで余り高いところに上がるなというのも指導の内容にしておりますし、技術に見合ったスロープでやれということもあります。それから、用具もそれぞれ指導の内容にしているところでございます。  それから、先ほどのどのくらいということでございますが、全国的な調査はございませんけれども、ここに二、三ありまして、そのくつ自体ということではございませんけれども、ちょっと古くて恐縮でございますが、四十六年にスキー連盟が調べた青森県の五つのスキー場で一シーズン四十一万一千人ぐらいが滑った。そのうちけがをした人が五百五十七人、そのうちで骨折が二四・八%、一番多いのがやはり捻挫でございまして三三%、それから切り傷、その次に骨折というようなことであります。別の資料で、伯耆大山のスキー場で、これも四十六、七年の調査で恐縮でございますけれども、これはどのくらいの人員が滑ったかは調査ができておりませんけれども、五百四十二人けがをしておりますが、そのうちで骨折が二番目ぐらいの率。そして、どういう人がそういう骨折あるいはけがをしているかというと、初心者が非常に多いのでございます。両スキー場とも、一年から二年ぐらいまでの経験者が半数以上を占めております。  したがって、初心者指導については、私たちの方でも、用具の点も、それから技術の未熟なときに余り高いところに上がって、あるいは急スロープに行ったというような問題については取り上げておりますが、そのくつ自体でどうだということについてはまだ調査しておりません。
  20. 土井たか子

    土井委員 このくつ自身をお考えになることはかなり重要な問題だということをスキーヤーの方数人に聞いてみると同様におっしゃるのですよ。  いま体育の教科の中にもスキーを取り入れている場所がございますね、それから文部省がいろいろ奨励なすっている講習会が全国各地にございますね、そういうところでひとつ虚心坦懐にお考えをいただきたい、そしてお答えをいただきたいと思うのですが、こういうプラスチック製スキーぐつを初心者が使用することは好ましいとお考えですか、好ましくないとお考えですか、いかがですか。
  21. 望月健一

    ○望月説明員 私の方で申し上げておりますのは、プラスチックであろうが何であろうが、できたものよりも、むしろ初心者の場合には、先ほども申し上げましたように、まだフォームもできておりませんので、自分の力で前傾姿勢がとれるという形にまずしたい、それから後に固定したような形のくつに入って、そしてなおかつその中で力を十分発揮できるようにしたいというふうに考えますので、プラスチックがいいとか悪いとかいう問題よりも、まだごく初心者のうちには、自分で自分がコントロールできるくつの方がよろしい、こういう指導をしております。
  22. 土井たか子

    土井委員 自分でコントロールできる用具の方がよろしいというのはしごく当然でございまして、そういうのは御指導をいただかなくてもだれでも考えるところだと思うわけであります。  もう一つ、御指導という点から言うと、より適切な用具を指導の段階で考えていただくということじゃないでしょうか。私はそれが大事なポイントだと思うのですけれども、そういう点からいきますと、いままでスキーぐつそのものに対しては、スキーを講習する現場であるいは学校の教科の中にスキーが取り入れられております現場で、余りお考えになった向きはないようであります。しかし、これはひとつ文部省さんとされては考えていただく余地が私は十分にあると思うのですよ。  行政面にわたって申しますと、とかく縦割り行政の弊害がございまして、文部省さんがお考えになることは必ずしも通産サイドで、いろいろ近代化計画の整備段階の中に生かされるという点がそう十分保障されているわけではありません。けれども、つくればよい、売ればよい、買う人がたくさんある限りはもっとつくればよい、そして国内生産生産者を擁護していくということにそれがなるんだというふうな安易な考えじゃ、これは困ると私は思うのです。やはりプラスチック製スキーぐつに転換を奨励するというふうなことになってきたら、これ自身が先行ぎが非常に見通しが明るい、大丈夫これでやっていけるという見通しかなければ、それに対しては転換というものをやはり政策面で近代化計画としてお進めになることについては、私は十分な責任を持って政策を実行していただいていると言うわけにはいかないと思いますから、だからそういう点からすると、なおかつこれはいろいろ難点、問題点がありますよ、聞いてみますと。したがいまして、この点も十分に研究をしていただいた上での近代化計画というものを進めていただく必要があるようであります。通産省さんとされては、その点考えていらっしゃるのですか。
  23. 森孝

    ○森説明員 スキーぐつの安全性の問題につきましては、先ほど御質疑がございましたように、消費者団体等からも事故例が若干私の方にも参っておりますが、スキーの事故はなかなか技術との関係が深いために、スギーぐつに問題があるか、スキーに問題があるか、あるいはとめ金、ビンディングに問題があるか、いろいろな問題があろうかと思いますが、私の方では、現在のところとりあえず、従来から安全性に関係が最も深いと言っておりますくつと、スキーをとめるとめ金のビンディングにつきまして、現在規格もありませんので、JISを制定して規格化する、安全性を織り込んだ規格をつくるということに着手をしたばかりでございまして、スキーぐつ等についてどうするか、現在まだ具体的にそこまでいっておりませんけれども、今後そういうことも含めて考えていきたいという考えは持っております。
  24. 土井たか子

    土井委員 それは、考えを持っておりますでなくて、ぜひ実行していただかなければ困る部面だと私は思います。  それで、文部省さんも、スキー指導に当たっては、やはり学童それから生徒、それから初心者等々に対して、スキーぐつというものがより安全なものであってほしい、これはだれしも考えるところでありますから、ひとつそういう点での指導というものにもう少し留意していただきたいと思いますが、それもお約束いただけますか、いかがですか。
  25. 望月健一

    ○望月説明員 当初申し上げましたように、講習会の折、その他の折にも、用具の安全、これはスポーツ全部に通じますが、そういうことは十分注意して進めていきたいと考えております。
  26. 土井たか子

    土井委員 あと二点私はお伺いします。時間の制約がありますから簡単に。  実は、今回こういうふうに譲許税率引き上げられますと、従前に比べて、国内で販売される場合にも価格が上がるというのは、当然のことなんですね。そこで、輸入業者が駆け込み買いだめをやるという気配がありはしないかというのは、これはだれにも気にかかる問題なんです。やがて七月、最も多いのは九月と言われておりますが、だんだんスキーぐつを買う人たちがふえるに先立って、やはり大量に輸入をしておきたい、そして少し価格を引き下げた程度の値段にして売るということ、そのためには大量に輸入の買いだめを急ごうというふうな気配がありはしないか、これは大変気にかかることですが、通産省さんとされてはこれは当然チェックなすっているでしょうね。それに対してそうはさせないという措置も講じていらっしゃると思います。その事柄をひとつお聞かせいただきたい。  それからあともう一点は、これはもう時間の制約がありますから、あとこの一点を聞いて、私は質問を終わりにしたいと思うのですが、このスキーぐつ譲許税率一七%引き上げ代償として、ここに明記されておりますとおり十三品目譲許税率引き下げられることとなっております。この代償品目数が多いということも大変気にかかるところでありますが、その中の一つに、無税になる大理石の問題があるのです。「大理石等及びその製品三品目」というのが書いてあります。この大理石を輸入をしております相手国を見た場合に、イタリアなんというのは非常に大きいところでありますが、ECということでも置きかえられて表示はされておりますが、片やもう一国、韓国という国がある。イタリア及び韓国で「大理石等及びその製品三品目」について、日本に対して輸出しているそれぞれの企業の名前をひとつ知らせていただきたい。この事柄を申し上げます。  以上二問。
  27. 森孝

    ○森説明員 駆け込み輸入の心配はないかという点についてお答え申し上げます。  スキーぐつにつきましては、通常夏から秋にかけて輸入が行われるというのが従来のパターンでございます。大体、非常に流行性の強いものでございまして、色とか形も毎年若干変わっておりまして、その主体は、毎年二、三月に行われますヨーロッパのスキーフェアによって、大体のその冬の流行が決まるということになっております。したがいまして、私どもとしては、わが国輸入業者がその流行を見きわめて、それを国内の卸売、小売に流しまして注文をとって輸入するという段階を考えますと、六月の終わりないし七月ごろにならないと技術的に大量の輸入を行うことはなかなかむずかしかろうと思っておりますが、さらに、万一そういうことがあっては困るということで、先般も輸入業者にお集まりいただきまして、現在国会審議中であるので、駆け込みというような行為をとらないようにということで通産省からも要請をしてございます。
  28. 能登勇

    ○能登説明員 大理石関連の三品目についてお答えいたします。  大理石関連の三品目につきましては、譲許税率を無税に引き下げるものでございますけれども、これらについては、輸入の過半数は韓国、台湾等から行われておりまして、そういった国々につきましては、現在特恵制度のもとにおいて無税輸入が適用されております。したがいまして、ある意味では、実行税率はそれほど——イタリアからの製品についてのみ事実上は引き下げがある、こういうことになっております。  それから輸出企業名については、承知しておりません。
  29. 土井たか子

    土井委員 時間が参りましたから、これで私は質問を終えなければならないことになっておりますが、私は、この条約に対して不賛成の立場ではありません。けれども、時間制約をして、その時間の限りで質問をすることしか許されないというのは、本来条約審議の場合には認められなかったことなんですね。時間が無制限というところがやっぱり条約審議の本来あるべき姿だと私は思いますから、あとこの問題から派生する、幾らか残ったことは、その都度何らかの機会に、関連して質問することにいたしまして、不本意ながらこれで私は、この質問を終わりにしたいと思います。
  30. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森成二君。
  31. 正森成二

    ○正森委員 簡単に二、三点だけ伺います。  プラスチックスキーぐつ関税を二七%に引き上げ代償として、いま同僚議員も言いましたように、十三品目譲許税率引き下げもしくは無税にするということですが、そのことによってわが国国内産業に悪い影響がないかどうか、各品目ごとにごく簡単で結構ですから、一応説明してください。
  32. 能登勇

    ○能登説明員 資料にございますように、プラスチック製スキーぐつ関税引き上げます代償といたしまして、十三品目について譲許税率引き下げを行うわけでございますが、どういう観点からこの十三品目を選んだかという点を申し上げますと、ECが交渉相手でございますので、わが国輸入しております数量の中で、ECの占めるウェートの高いものをまず選びまして、それからさらに、その中から国内産業に影響のないものというのを選んで、代償品目十三品目が決まったわけでございます。  簡単に御説明いたしますと、ここにございますメリヤス製品につきましては、現在全体といたしましてはまだ輸出の方がはるかに輸入を上回っておりまして、こういった高級品のヨーロッパから入ってきているものだけを選んで対象といたしました。  それから大理石につきましては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、現在、実際に事実上特恵適用の関係で無税になっているものということでございます。  それから、その他ここら辺にございますあとの数品目につきましても、従来の日本側の企業の体制その他から申しまして、弊害のないものというのを選んでございます。例示いたしますと、家具にいたしましても、問題のございますスチール製の家具、木製の家具というのは除きまして、それ以外のその他のものといったようなものを選んでございます。また、ライターにいたしましても、金張りのライターというのは輸入品との競争に問題がございますので、金張りのものは除きまして、銀張りあるいは普通の安いライターというものに限定してございます。
  33. 正森成二

    ○正森委員 また、譲許税率引き下げたように見えましても、実際は実行税率に合わしたにすぎないというようなことになっておるのですか。
  34. 能登勇

    ○能登説明員 御指摘のとおりでございまして、十三品目ございますうち、十品目につきましては現行の実行税率のとおりでございます。正確に申しますと、十品目のうちのトラクター用のエンジンにつきましては、現行税率は六%でございますが、新しく引き下げます譲許税率は一五%でございまして、まだ差があるということでございます。  それから、実行税率の引き下げになりましたものは大理石関係の三品目でございますが、これは現在の実行税率は二%でございます。これがゼロになるわけでございますが、特恵の適用との関係から申しますと、これもむしろ実質的には実行税率の引き下げにはなっていないというふうに考えております。
  35. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、国内産業に影響はほとんどないし、かつ選ばれた品目から見て、消費者にも非常に過重な負担をかけるものではない、こう理解してよろしいですね。
  36. 能登勇

    ○能登説明員 そのように考えております。
  37. 正森成二

    ○正森委員 私はあと一点だけ伺いたいと思います。  私は、昭和四十九年九月調査にかかる奈良県商工労働部商工課の資料を取り寄せて詳細に拝見をいたしました。それで見ますと、五十四年までの構造改善の期間、保護のために関税引き上げてほしいということで資料が書かれておりますが、これを見ますと、たとえばイタリアなどでは年間二百万足もつくるとか、一つの企業の従業員が五百人であるというのに対して、わが国では全部合わせても数十万足で、一番大きな企業でも従業員が五十人前後であるというようになっております。そしてその価格を見ますと、これは昭和五十年をとりますと、輸入品はCIFで一万一千八百円でありますが、それに対してわが国は、小売価格によりますと、最高が七万一千五百円、最低一万五千四百円、平均二万五千三百円、こうなっております。卸と比較しなければならないということで、卸と比較しても、最高が四万九千四百円、最低一万八百円、平均一万七千六百円、こういうぐあいになっているのですね。なぜこういうぐあいに最高と最低でこれほど大きな価格差があるのか、そして、これでいまの税率の引き上げ保護することができるのか、そこら辺をごく簡単に説明してください。
  38. 森孝

    ○森説明員 いま御指摘のございました価格差が大きいという点でございますが、スキーぐつについては、初級者用から高級者用あるいは一般用ということで、品種及びランクづけが非常にたくさんございまして、価格のばらつきがあるということでございまして、同じものが安く売られたり高く売られたりということではございません。私ども、今回の関税引き上げに関しまして考えておりますのは、いま御指摘がございました二万円ないし二万五千円前後の、一般水準のものということを頭に置きまして比較してございまして、現在日本に着きますCIF価格と国内メーカーの工場出し値を考えますと、約三割ぐらいの開きがあるので、今度引き上げていただきました後の関税が二七%でございますので、ほぼ近いところまでいける、あとは国内近代化で十分これに対抗していけるのではないか、こういうふうに考えております。
  39. 正森成二

    ○正森委員 資料を見ますと、大体四つのグループに集約をして近代化を図るというようになっておりますが、これは必要ではあろうと思いますけれども、資料を見ますと、一人から九人の零細企業が十四社とか、十人から四十九人までが十九社というように、非常に零細で、しかもそれに下請があるということになっておるのですね。その場合に、零細な企業が不当なしわ寄せを受けないように十分に心して、近代化あるいは構造改善をやってもらいたいと思うのです。それについて配慮されるようになっておりますか。
  40. 森孝

    ○森説明員 現在奈良県に三十四社ある企業を四グループに集約化したいということでございますが、これにはそれぞれ御指摘のように下請がございまして、三十四社段階では、最終仕上げと申しますか、アセンブルの段階でございまして、それぞれの一体成形でつくりましても、その中に中ぐっというものが必要でございまして、こういうものはやはり手加工が必要でございます。こういうものは従来の下請を極力活用してやっていくという体制で、量産化する部分だけ共同生産するという方針で臨むことになっております。
  41. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  42. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部一郎君。
  43. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 早速お伺いいたしますが、このプラスチック製スキーぐつ譲許税率を、一〇%から二七%へ大幅な引き上げをしたわけでありますが、この代償品目の設定において、日本とEC諸国との協議の際、特にEC側が強く要請した品目といいますか種目といいますか、それは何であったのか、それをひとつ明らかにしていただきたいと存じます。特にそのEC側の強い関心品目におけるわが国輸入状況等をあわせて御報告いただきたいと存じます。
  44. 能登勇

    ○能登説明員 交渉内容につきましては、細かい御説明は申し上げられないわけでございますけれども、先ほど申しましたように、ECからの輸入比率の高いものという品目をピックアップいたしておりますので、最終的にはこれで向こう側と、結局どちらが先に言い出したということもなく、両方十三品目について、向こう側の希望と、日本側からのこれなら出せるというのが合致したということでございます。
  45. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この譲許表修正に関し、どういう原則で交渉が取り運ばれたのかという問題についてもう一回お伺いしたい。というのは、譲許税率引き上げに伴うところの等価値の代償品目の交換という原則については、何をもとにして等価値と認めたか、かなり論点のあるところで、詳しく言うとかなり詳しい議論になろうかと思います。どういう点を基準にして等価値と考えられたわけですか、将来のためにちょっとお伺いしたいと思います。
  46. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 何をもって等価値とみなすかということにつきましては、ガットの規約上は明示されておりません。ただ、いままで何回かにわたります関税交渉におきまして、やはり貿易の額、それから関税引き下げの幅、それから将来の貿易の伸び、こういったようなものを勘案いたしまして、結局交渉両当事者の間で合意したところということでございます。ですから、原則論と申しますと、その中の要素としましては、カバレージと申します貿易額、それから引き下げの幅、それからその引き下げの結果貿易が伸びると思われる予想値、あるいは関税徴収額、こういったようなものが取り上げられるわけでございます。しかし、これは何を何十%というような数量的な基準はございません。
  47. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 確かにいまおっしゃった内容は大事な内容なんで、それに対する考え方がちょっとあいまいな感じがするわけですね。その辺はもう少し詰めておかれた方がいいのじゃないかと私思っております。  その中で、数値的に出る関税収入の増減については、タックスバランスについてはどういう見通しを持っておられるのか。これは数値をもって挙げられると思うのですが。それから貿易量としてわが国の輸出、輸入に対してどういうこの影響の見通しを持っておられるか。その二つ、あわせて御返事をいただきたい。
  48. 松尾直良

    ○松尾説明員 今回の交渉引き上げ品目代償としての引き下げ品目関税収入額あるいは貿易額がどういう数字であるかというお尋ねでございますが、一九七一年から七三年までの三年間の平均で見てみますと、まず関税徴収額の方でございますが、日本とECとの関係、つまりECから輸入される商品だけをとりましての話でございますが、引き上げスキーぐつにつきましては、この間におきます関税徴収額は一億八千万円、それから代償として提供いたしました十三品目につきましては約一億六千万円となっております。それから貿易額の方でございますが、スキーぐつのこの三年間平均におきますECからの輸入額は十億七千万円、それから十三品目輸入額が四十四億八千万円、こういう数字になっております。
  49. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はそれにどういう見通しがあるか伺ったわけでありまして、いままでの数値を挙げられましたが、これから先、この変更によってどういうふうになりそうだという見通しをお持ちであるか、それを伺っているわけであります。
  50. 能登勇

    ○能登説明員 今後の関税引き下げました十三品目輸入量の増加と、それからスキーぐつ輸入量の減少によります関税収入の減少、関税収入は減少いたしまして、それに関税率が引き上げになるというかなり複雑な予測になりますので、いまのところ余り詳細な見通しは持っておりません。
  51. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはいけないと思うのですね。それでは見通しがなくて交渉したかと言われてしまう。恐らくいま数値を持ち合わせられてないのでそう述べられたのだろうと思うので、まさか交渉のときに将来数値の予測なしに交渉したとは私は思えない。ですからそうしたただいま私の言った数値に対して、表にして後ほど委員会に提出していただきたいと思うのですが、どうでしょうか、委員長
  52. 栗原祐幸

    栗原委員長 よろしいですか。答弁してください。
  53. 能登勇

    ○能登説明員 見通しというのはかなりの前提を置かなければなりませんが、いろいろ検討いたしまして資料を提出したいと思います。
  54. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それから、今回の譲許税率引き上げ引き下げの問題につきまして、オーストラリアを初めとする各国が国際収支の不均衡の点から非常に保護主義的傾向を強めておるこうした時期に当たりまして、こうした世界的な保護主義的風潮をエンカレッジすることになるのではないかという心配が多少あるわけであります。その点についてはどうお考えでありましたか。特に新国際ラウンドも実質交渉段階に入り、先行き非常に難航を伝えられておる。その東京ラウンドとしての提唱国になる日本が、譲許税率引き下げもしたけれども引き上げする部分もあったということは、何かとそうした点で問題点を残すのではないか、こういう心配もあるわけであります。その点の心配に対してはどういうお考えを持っておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  55. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 御指摘のとおり日本は新しい国際ラウンドの提唱国の一つでございますし、かつまた、日本の経済の状況からいたしまして、やはり世界全体で貿易障壁が軽減、撤廃される方向に動くことが望ましいということは申すまでもないわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように非常に例外的な場合に、本件は、材質技術が変わってきたというために国内関係業界が非常に困っている、輸入が非常にふえたというようないろんな要素を考えまして、例外的に関税引き上げを行うということはやむを得ないと考えまして、かつ、その手続といたしましても、ガットに定められております二十八条というものを援用いたしまして、等価と申しますが、等価については先ほど申し上げましたように非常にはっきりとした基準はございませんけれども、等価と両当事国が納得するような代償を提供いたしましてこの交渉をまとめたわけでございますので、いわば非常にやむを得ざる場合に限り、しかるべき手続を経まして合意の上にこの引き上げを行うということでございますので、こういうような例が非常に頻発いたしますとあるいは問題になるかと存じますが、このスキーぐつの問題だけに限りますと、一応納得の上でこういうことをやったわけでございますから、特に保護主義的な傾向に拍車を加えるというようなことはないというふうに考えておる次第でございます。
  56. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その予想が当たっていただきたいと私も思っているのですが、この交渉を通して、スキーぐつに対しては非常に敏活な措置がとられた。従来の政府の姿勢になかったほどみごとな対応のしぶりであった。私は多少皮肉っぽく申し上げたように聞こえるかもしれませんが……。ところが同様のアイテムが発生した場合、同様の措置が敏活に採用されるかどうか、その辺もちょっと伺っておきたいと思うのです。日本の中には、貿易で少なくとも日本の国を立てておるというたてまえから、同じようにある種の業種がせん滅的な打撃を受けるということはしょっちゅうあることであります。したがって、同様のアイテムが発生した、こういう事態においては、同様の措置を敏活に行う能力、決意等がおありかどうか、その辺を伺いたい。
  57. 能登勇

    ○能登説明員 先ほども御答弁いたしましたように、本件につきまして引き上げをとりました一番大きな理由は、もともと革製のスキーぐつについては二七%の関税であるという点でございます。それが材質の変化によりまして、プラスチック製スキーぐつということで税目が変わりまして、一〇%に関税が下がってしまった。それと、たまたまヨーロッパにおいて製法において技術革新が行われた。その二つによりまして輸入急増した。この二つが結びつきました非常に特殊なケースでございまして、もちろん輸入急増品目については別途検討いたしますけれども、これと全く同様のケースというのはちょっと起こらないんじゃないか、こういうふうに考えております。つまり、材質が変わったことによって関税率がその結果下がってしまった、こういうケースはちょっと起きないのではないかというふうに考えております。
  58. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このスキーぐつ業界の近代化計画、特に高価格の射出成形機等に対して、通産省はいろいろな計画をお立てと承りますが、最後にその問題について御説明をいただきたい。
  59. 森孝

    ○森説明員 現在わが国スキーぐつメーカー、約四十社弱ございますが、その八割強が奈良県にございまして、親メーカーで三十四社ございます。それで、これを昭和五十年度から五十四年度までの五年間に三十四社を四グループに集約化する、それによりまして一体成形でくつの成形部分を共同化するということを考えております。現在一部のグループではすでにスタートしたものもございますが、大部分は五十年ないし五十一年度の間にその集約化を行うということでございます。このために相当多額な資金が必要だと考えられておりまして、現在の見通しで約十億を超える資金が必要かと考えております。とりあえず昭和五十年度につきましては、奈良県及び国両方共同で資金手当てをするということになってございまして、三億数千万円の予算も準備をして、その一体成形機の導入に支障がないように考えております。五十年、五十一年度にそういう機械導入等の設備近代化を進めまして、その後におきまして、さらに技術の問題とかあるいはデザインの問題、そういう面についても、いわゆるソフト面についても水準を上げるような計画を現在奈良県が中心になって検討中でございます。
  60. 栗原祐幸

    栗原委員長 永末君。
  61. 永末英一

    ○永末委員 今回の関税率の引き上げというのは、スキーぐつ業界の保護ということが目的だと思いますが、通産省の方来ておられると思いますけれども、一体どういう業界振興策をお持ちですか。
  62. 森孝

    ○森説明員 今回のスキーぐつ問題の発端は、素材及び製法の転換に立ちおくれたという点に基本的に問題があって、大量生産を達成しなければ国際競争力を持ち得ないというふうに考えておりまして、第一のポイントは、現在ある中小零細企業を集約化して量産体制をとるということで、主として奈良県のメーカーを四グループに集約化して、一体成形機を導入する、五十年度から五十四年度までの五年間にこれを達成したい。さらに、将来の計画といたしましては、販売面、たとえば現在中小零細メーカーがそれぞれ自分のブランドをつけて売っておりまして、販売面でもかなり弱体な面がございますので、生産面の集約化とともに、将来は販売面あるいは技術、デザイン面というような点についても共同してやっていくように推進したい、こういうふうに考えております。
  63. 永末英一

    ○永末委員 一体成形装置を導入して新しい生産方法をとるとともに、零細業者を集めてやるというのですが、一応関税がこれだけ、二七%に上がるのでありますけれども、今後それで十分戦い得るというお見通しですか。
  64. 森孝

    ○森説明員 私どもの試算では、大体標準の商品につきましては、価格はほぼ競争できる水準にくるかと考えておりますが、ただ、スキーぐつにつきましては、価格のみならず、非常に需要層が若年層といいますか若い層に多いということもありまして、価格のみが需要動機ではなくて、流行とかデザインとかいうものが非常に大きなウエートを占めておりますので、さらに価格に加えましてそういう点についての今後の国内業界の努力が十分行われるということをあわせ考えて、将来十分やっていける、こういうふうに考えております。
  65. 永末英一

    ○永末委員 グループ化するというお話でございましたが、それは協同組合をつくらすのですか、それともどういう方法を使われるのですか。
  66. 森孝

    ○森説明員 何らかの組合、公認された組合の形をとってやる方向で考えておりまして、現在すでにスタートしております一グループは協同組合の形をとっております。
  67. 永末英一

    ○永末委員 もともとそれぞれの零細業者が自分の方の売れ行きが下がったということが発想の根源ではございましょうが、協同組合をつくったり、その他公的に認められているグルーピングをやろうということになりますと、商標権問題等々ございますから、慎重にひとつやっていただきたいと思います。  それから、従来革製品のくつをつくっておった者が新しいプラスチック製のくつをつくる装置を導入するのですから、仕事の内容もきわめて変わってこようと思いますが、この皮革業界とスキーぐつ業界との関係はどのように調整されるつもりですか。
  68. 森孝

    ○森説明員 スキーぐつの転換の中には、素材の転換と製法の転換がございまして、皮革から皮革以外への転換はすでに昭和四十年ごろから始まっておりまして、皮革のかわりにビニールのレザーのようなものを使っておりまして、すでに昭和四十年ごろから過去十年ぐらいにほぼ転換が終わったような状況でございます。ここ二、三年最も問題になっておりますのは素材プラス製法の転換ということでございますので、素材転換については特に問題はないものと考えております。
  69. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  70. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  71. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表(日本国譲許表)に掲げる譲許修正し又は撤回するための欧州経済共同体との交渉の結果に関する文書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  72. 栗原祐幸

    栗原委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  73. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  74. 栗原祐幸

    栗原委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  75. 石井一

    ○石井委員 マヤゲス号事件について、アメリカ当局は、これはいわゆる自衛権の行使である、こういうふうに国連事務総長に対しての書簡の中で主張をいたしておるわけでございますが、この見解についてはきょうは時間がありませんのでお伺いはいたしませんけれども、これに関連いたしましてわが国に最も関連の深いのは、この戦いに沖繩から海兵隊が出動した、こういうことでございますけれども、この行動は安保条約の事前協議の対象にならないのかどうか、国民の中に大きな疑問があると思いますので、大臣としての御所見をまずお伺いしたいと思います。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しく要すれば事務当局から申し上げますが、沖繩から輸送機によりまして海外の他の基地に海兵隊が移動した、海外というのは恐らくタイであったろうかと思われますが、そういうことであったわけでございます。したがいまして、従来、伝統的にわが国から直接戦闘行動に発出するというケースには明らかに該当いたさない、従来からわれわれがとっております事前協議の立場から申しますと、本件は事前協議を要しない事項である、こういうふうに考えております。
  77. 石井一

    ○石井委員 最近アメリカの上院軍事委員会が勧告を出しておる中に、沖繩海兵隊の配置がやはり事前協議その他の配慮が必要ではなかろうか、こういうふうな指摘がなされておるわけでございまして、いまの大臣の御答弁だと、事前協議に関係がないと言われますが、あちらの方がかえってこういう問題を先に懸念しておるということでございますから、今後これは重要な一つの問題だと思うのでありますが、これに関してどういう御所見を持っておられるのか。  それと、先ほどの御答弁の中で、タイから行っておるのだから関係がないということのようにお伺いいたしましたが、そうすると、沖繩から行ったのであれば当然事前協議の対象になる、こういうお考えになるのか。この二点をお伺いしたいと思います。
  78. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 最後に言われました点を先にお答え申し上げますと、もしこの沖繩におります海兵隊が沖繩から直接戦闘作戦行動の任務を帯びて戦場に行くということでございますれば、日本の施設区域を基地として使用しておることになりますので、これは事前協議の対象となると考えます。  ただ今回の場合は、この海兵隊の一個大隊が沖縄から海外の基地へ警戒態勢をとって移動した、いろいろな事態に備えて移動したということでございますので、われわれは事前協議の対象とならないというふうに考えておる次第でございます。  次に、海兵隊の問題を含めて在日米軍の問題に関しまして、米上院軍事委員会の勧告が発表されましたことは承知いたしております。われわれもいまテキストを入手したばかりでございますが、この問題に関しましてはまだアメリカ政府の意向も明らかにされておりません。これはアメリカ政府に対する議会の勧告でございます。したがいまして、われわれとしてはコメントは差し控えさせていただきたい次第でございます。
  79. 石井一

    ○石井委員 そういたしますと、経由地があった場合には事前協議の対象にならないが、直接出動した場合には事前協議の対象になる、こういうふうなお考えが統一見解だというふうに理解をいたしたいと思うのでございますけれども、今後一番問題になってくると考えられますのは、これは将来のことですから非常に問題がある発言かもわかりませんが、ベトナムの次は朝鮮半島がやはり非常に危険な状態にあるということが現在言われておるわけでございまして、こういうふうなとき、わが国からどこをも経由せずに、直接に米軍の海兵隊が移動するという場合に、これは事前協議の対象になり得る、そういう今度は解釈になるわけでございますか。
  80. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど申し上げましたように、日本から直接戦闘作戦行動のために発進する、そういう場合は事前協議の対象となるということでございます。そして、その際のその任務あるいは態様から見て、われわれとしてはそれは判断できると考えておる次第でございまして、直接日本の基地から発進して戦場に赴くような場合に事前協議の対象になるということでございます。
  81. 石井一

    ○石井委員 過去一回でも事前協議のこの条項の発動があったのかどうか、いかがですか。
  82. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 過去におきまして事前協議が行われた事例はございません。
  83. 石井一

    ○石井委員 そこで大臣、朝鮮半島の情勢でございますけれども、韓国条項がうたわれた時期から二転、三転情勢が動いておるように感ずるわけでございます。その次には、いわゆる南北の協調対話という時期がございまして、一時外務大臣は、朝鮮半島全体の平和というものが日本にとって重要だということもありましたけれども、昨今、南北が非常に対立を強めておるという感じがいたすわけでございます。この間、金鍾泌国務総理なり丁一権議長も来られまして、こういう北の脅威というふうな問題についていろいろとお話しになったと思うのでありますが、朝鮮半島の情勢というものに対してそういう厳しさというものをお感じになっておりますか、いかがですか。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに昭和二十五年、かつてございました南北の大きな戦乱状態というものは、その後ああいう状態に戻りまして、南北統一を目指す会談すら行われたわけでございましたが、その会談がなかなか成就いたしませんで、またその後いろいろな事件が起こりまして、会談にかけました期待が大きかっただけに、事態はやや逆戻りをしたというふうに推移をしておったと思います。その後ベトナムからの米国の撤退があり、また北鮮の金日成氏が中国を訪問することもございました。真相をむろんはっきりは把握ができませんけれども、先だって来わが国を訪問しておられる韓国の首脳部がほぼ一致して言っておられますことは、米国がベトナムから引いたことによって、北側に何らかの将来に対しての過大な誤算という言葉を使っておられますが、誤算を与えるようなことになれば、それはきわめて不幸な事態に発展するおそれがある。したがって、そのような誤算を北側が持たないように自分たちとしては十分注意をしなければならないし、アメリカにもそういうことは自分たちからしばしば申しておるところである、こういうほぼ一致してそのような見方をしておられるように存じております。
  85. 石井一

    ○石井委員 最近、たとえば日本政府の政策転換とも見えるようなこと、たとえば朝鮮総連の二十周年にやってくる代表団に対する規制問題とか、昨日報道されておりました北朝鮮の輸銀使用、保険の問題に対する停止の問題だとか、そういう会談を踏まえて、朝鮮半島に対する政策というものを徐々に変えようとしておるのが日本の姿勢なのか、それとも従来から一貫した姿勢でやっておられようとしておるのか、この点はいかがですか。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、特にこの際わが国の韓国あるいは朝鮮半島に対する姿勢を意識をして変えよう、あるいは変えるべきであるというふうには考えておりません。  ただいま具体的な案件についての御指摘があったわけでございますけれども、最初にお挙げになりました例について考えますと、私どもは、朝鮮半島というのはやはり南と北が統一しようというああいう雰囲気のもとに会談が行われたごとく、やはり終局的な目標をそこに置いて平和的に推移することが望ましい、現在の朝鮮半島におきますバランスを崩すようなことにはなるべく私どもとしては加担すべきでないという考えを持っておりまして、そういうことから申しますと、たとえば、ただいま朝鮮総連というようなお話がございましたが、これが余りに政治的な動きをするということはやはりバランスを崩すことにもなりかねませんし、また、その種をわが国に持ち込まれるということにもなりかねないというような感じを従来から一貫して持っております。  輸出保険についてのお尋ねがございましたが、これは実は純然たる保険の問題でございまして、昨年もそのような状態でないときにおきまして、北鮮に一、二件の輸銀使用を認めた例がございますので、保険の問題は、これは純然たる保険会計の問題として私どもは考えております。したがいまして、その間、今回特に私どもが朝鮮半島に対する物の考え方を変えなければならない、あるいは変えようとしておるというような事実はないと存じております。
  87. 石井一

    ○石井委員 大臣は近くOECDの閣僚会議ですか御出席になるという御予定のようですが、はっきりしておるのかどうか私存じませんが、当然そのときにはキッシンジャー長官にも会見をされることにもなるだろうと思うのであります。最近アメリカサイドから、日韓両国を結びつけた防衛上の発言というものが非常に多くなってきております。たとえばこの間のマヤゲス号に関連いたしましてキッシンジャーが、日韓両国の安全は非常に共通しておって重要だというふうな発言もございますし、アメリカの国防長官もしばしばいろいろな形で共同防衛上の役割りというふうなことを言っておりますが、私は、ちょっとアメリカはコミットし過ぎておるきらいが韓国に対してあるのではないか。私が一番最初に提起いたしました事前協議制の問題、それからいわゆるアジア情勢の大きな変化の問題、そうして朝鮮半島における非常に緊迫した情勢、その中における日本の安全保障体制というものを一度洗い直すと申しますか、真剣に考えるべき時期が来ておるような感じがいたすわけでございます。  きょうの私の持ち時間は間もなく終わろうといたしておりますので、この問題については別の機会に十分お話をいたしたいと思いますが、私がいま申しましたようなことにおいて、キッシンジャー会談をこういう形でおやりになったときにお持ちになるのかどうか、また私が御指摘いたしておりますような問題点について、大臣として、ここで一応いま申しましたような諸点について考えをひとつ整理統合する必要があるとお考えになるかどうか、基本的な問題ですけれども、お伺いして質問を終わりたいと思います。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ベトナムの事態はあのような形で終局をいたしまして、これはいわば済んだことである、そういうふうに考えておくべきではないかと思います。その結果として、アメリカのコミットメントがあちらこちらで疑われる、あるいは過度に疑われた結果、こういう一種の破局的なあるいはややドラマチックな出来事の直後には、それが過度に、事実以上に疑わしく思われるということはあり得ることでございますので、したがって、そういうことからあちこちに誤算を生んで不測の事態になってはいけない。いましばらくの間そういうことに関係者が、アメリカにいたしましても韓国にいたしましても特に気をつけなければいけないと考えていることは理解のできるところでございますけれども、しかし事態が落ちつきましたら、ベトナムというものは済んだことであって、そしてこのショックからそういう関係者が立ち直ってまいりますと、いままでの大きな意味でのデタントというものはやはり変わるものでないと、そういうところにまた問題は帰ってくるであろう。そういうことを考えますと、いまわが国が、この際の米国なり韓国なりのそのような心理的な動揺というのは理解はできますけれども、だからといって、わが国がそれに対して何か対応しなければならないといったように私は考えておらないわけでございます。
  89. 石井一

    ○石井委員 キッシンジャーはどうなんですか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 したがいまして、キッシンジャー氏からそのような問題について質問でもございますれば、私はいま申したように答えるつもりでございますし、私の方からその問題を提起しなければならないとは存じておりません。
  91. 栗原祐幸

  92. 土井たか子

    土井委員 先般起こりましたマヤゲス号事件についてまずお尋ねをいたしたいと存じます。  まずカンボジア海軍がマヤゲス号を拿捕した行為というのがございますが、これは国際法上不法行為なんでございましょうか、それとも国際法上は許される行為というふうにお考えでいらっしゃいましょうか、この点について外務省の御認識をまず承りたいのです。
  93. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 私どもが承知しております事実に立脚いたしまして申し上げますならば、一般国際法上、武力行使を伴う商船等の拿捕は違法であるということであろうと思います。
  94. 土井たか子

    土井委員 それは当然、違法であるとおっしゃるだけの裏づけをお持ちで違法であるとおっしゃっているわけですね。それならば、どういう意味で違法というふうに認識なすったかの具体的な中身をひとつ先にお聞かせいただきたいと思います。
  95. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 事実関係について私どもが承知しておりますところと申しますのは、アメリカ政府の発表しておりますところによれば、マヤゲス号はシャム湾の公海上の海域を航行していたところを強制的に停止させられ、拿捕されたということでございます。その地点は、私どもが考えましても公海上の地点でございますから、これを強制的に停止したり拿捕したりする理由がカンボジア側にはないと考えざるを得ないわけでございます。
  96. 土井たか子

    土井委員 それでは、アメリカがカンボジア船を撃沈したりコータン島に上陸したという行為は、国際法上考えまして不法行為なのでございますか、どうなのでしょう。これについての外務省のお考えをお聞かせください。
  97. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 いまお示しになりましたアメリカの行動は、一般国際法上当然合法化されたもの、すなわち、正当なものでなければならないということは当然でございます。アメリカ政府説明によりますれば、アメリカ政府のとりました行動は、国連憲章第五十一条にいう自衛権の発動によるものであるということでございます。自衛権の発動による行動が一般国際法上正当化されるものであるということは申すまでもないところでございます。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっとここで、お尋ねが先に進みます前に私から申し上げておきますが、この点は、せんだって私が本会議で申し上げましたので、条約局長はそれを踏まえて御答弁をいたしておるわけでございますが、この問題につきまして、アメリカ側とは当然に国交がございますので、十分にアメリカ側の説明というものを私どもは聞いておりますけれども、カンボジア側の説明というものを直接に聴取し得る機会がない。わが国のみならず、世界のほとんどすべての国がそれを聴取し得る情勢にございません。したがいまして、私どもはそういう現実のもとにこの事件についての見解を申し上げておる。両者の見解が公になっておりますと、推定でなく、もっといろいろ申し上げることができると思いますけれども、カンボジア側からアメリカ側の見解に反論らしいものも無論ございませんし、そもそもカンボジア側からほとんどこの事件についての説明がなされていないということは、これは前提として申し上げておく必要があろうと思います。
  99. 土井たか子

    土井委員 いまの外務大臣の御答弁でございますが、カンボジアからはそもそも情報らしいものが入らない、そういう御答弁なんですね。ただ私たちは、新聞上からでさえ、カンボジア側が今回の事件に対して、マヤゲス号という船が一体どういうふうな任務で、どこの地点を航行している際にカンボジア海軍がこの拿捕をするという結果になったかという点は、まさしくアメリカ側の発表とは全然違う発表をいたしていることは御存じだと思います。したがいまして、何らかの情報もカンボジア側からは得ることができないとおっしゃるその御答弁というのは、私はいただけないと思うわけでありますが、この点に対して、知ろうとなさる御努力をなすっていらっしゃるのですか、いかがです。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が申し上げておりますのは、新聞報道によって事を判断するわけにはいかないということだけでございます。
  101. 土井たか子

    土井委員 したがいまして、そういう報道が入手できるという限りにおいては、やはり真偽のほどを確かめるという努力があってしかるべきではありませんか。そのことに対して努力をなすっていらっしゃいますか、どうですかということを、ただいま私はお尋ねを申し上げております。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはせんだっても申し上げたことでございますが、わが国はカンボジアを承認するという意思表示をいたしておるわけでございますが、それ以後、両者の間に外交関係を復活するということについて、先方から何らの意思表示がない、わが国に対してのみではございませんけれども……。そういう現状でありますことは御承知のとおりと思います。
  103. 土井たか子

    土井委員 したがって、現段階では、アメリカ側が言うところのマヤゲス号を拿捕したカンボジア海軍の行為は、国際法に照らして違法行為であり、したがって、アメリカがカンボジア船を撃沈したりコータン島に上陸したという行為は、国際法上、国連憲章五十一条に照らし合わせて正当な行為だ、こう認識されるところに同調されているわけでありますね。日本の外務省も現にそのように認識をされているわけでありますね。いかがですか。
  104. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 私が先ほど申し上げましたごとく、私どもが承知しておりますことを前提として申し上げているわけでございます。でございますから、これにはすべて前提があるわけでございまして、アメリカ軍のとりました砲撃、爆撃あるいは撃沈の行動のすべてが国際法上合法化されるかどうか、それは実は私どもは事実関係も全部は知らないわけでございます。ただ、一般論として私が申し上げましたのは、公海上航行している船舶を理由なくして拿捕するということは国際法上違法であるということ、また、その拿捕が武力行使を伴っている場合には、それに対する自衛権の発動というものは国連憲章五十一条によって合法化されるということを申し上げたわけでございます。
  105. 土井たか子

    土井委員 それは、いまおっしゃるとおり、自衛行為である場合には、不法行為が前提になければそれを正当な自衛行為とみなすわけにはまいりませんね。したがいまして、その前提には、カンボジア海軍がマヤゲス号を拿捕した行為が不法行為であるという認識があったから、国連憲章五十一条に基づくところの、アメリカはカンボジア船を撃沈したり、コー夕ン島に上陸した行為があったというふうに、いま外務省は御認識をなすっているということでなければ、この御答弁の意味がございませんね。  さて、それじゃ、アメリカがタイから出動した行為というのは不法行為なんですか、正当行為なんですか、やむを得ない行為なんですか、いかがでございますか。
  106. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 アメリカ軍がタイから出動したこと自体について、それが不法であった、違法であった、あるいは正当であったということの御質問の趣旨が、私、必ずしもはっきりいたしませんが、日本政府として、それについてどうである、こうであるということを論評すべき立場にはないのじゃないかというふうに考えます。
  107. 土井たか子

    土井委員 それはおかしいことをおっしゃいますね。いままでこの論議の中で、事前協議の対象になるかならないかという論議が繰り返し行われているときに、いまマヤゲス号というこの事件を取り上げたら、タイという地点は非常にクローズアップした地点になっているのじゃありませんか。  それならばお伺いしますが、一体、マヤゲス号作戦のアメリカ海兵隊はどこから出動したのですか。
  108. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 沖繩におります海兵隊一個大隊が海外基地に移動するということについては、わが方は事前連絡を受けた次第でございます。その時点におきましては、わが方はその行き先については承知しておりませんでしたが、その後の状況から見まして、これがタイのウタパオ基地に行ったということは事実のようでございます。それ以外にも、フィリピンからも行ったというニュースもございますけれども、この点についてはわれわれは十分承知しておりません。
  109. 土井たか子

    土井委員 いまの御答弁の中で大変なことをおっしゃいましたよ。作戦行動に従事をする一個大隊が沖繩から出動した、こういう表現です。作戦行動に従事する一個大隊が沖繩から出動した、これははっきりしていただきましょう。
  110. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 私はちょっといま作戦行動ということを申した覚えはないわけでございますが、要するに、いろいろな事態に備えるために警戒態勢をとった一個大隊が沖繩の基地から海外基地、恐らくタイのウタパオ基地に移動したということは事実でございますということを申し上げたわけでございます。
  111. 土井たか子

    土井委員 タイの基地以前は一体どこからその部隊は出動したんですか。確認しておきましょう。
  112. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 大変申しわけありませんけれども、御質問の趣旨がちょっと私わかりかねますが……。
  113. 土井たか子

    土井委員 いま御答弁の中でタイに移動したということをおっしゃいましたね。そのタイに移動する以前、その部隊は一体どこからタイまで出動したのかということを問いただしているわけであります。
  114. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 沖繩におります海兵隊一個大隊に関する限りは、沖繩から移動したということでございます。
  115. 土井たか子

    土井委員 沖繩から移動したという事実ははっきりお認めになる、そして先ほど事前通告があったということもお認めになる、これは事前協議じゃありませんか。はっきり事前協議なんじゃないですか。幾ら日本の外務省サイドが事前通告と言われても、中身は事前協議じゃありませんか。  一体だれからだれに先ほどおっしゃった事前通告があったのか、まずこの点を明らかにしていただきたいと思います。
  116. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 五月十三日のワシントン時間にアメリカ国務省から在米大使館に対して連絡があったわけでございます。これを受けましたのは在米大使館の西田公使でございまして、通報したのは国務省のザヘーレン国務次官補代理でございます。そのときに向こうが申しましたのは、マヤゲス号が享捕された事態にかんがみて、米国政府は、沖繩の海兵隊一個大隊に警戒態勢をとることを命じたこと及び同部隊は輸送機の準備ができ次第、海外基地へ出発させる予定であるということを申したわけでございます。警戒態勢を命じて、そして部隊を移動するということでございますから、これは明らかに事前協議の対象ではないと考えておる次第でございます。
  117. 土井たか子

    土井委員 どうも事前協議の対象ではないと考えておられる根拠があいまいなんです。なぜそういうふうにお考えになっていらっしゃるか。その話し合いの中で、いつ、沖繩のどこから、何名が何の目的で移動するかということも当然事前通告を受けてお話しになったんでしょうね。いかがですか。
  118. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど申し上げましたように、先方から通報してまいりましたのは、要するに沖繩におる海兵隊一個大隊、約千名でございますが、これに警戒態勢をとることを命じたこと及び同部隊は輸送機の準備ができ次第に海外基地へ出発させる予定であるということを申したわけでございまして、それ以上のことはわれわれはその段階においては承知しておりません。
  119. 土井たか子

    土井委員 承知するしないの問題じゃないのです。そういうことをお尋ねになったでしょうねと私は尋ねているのです。向こうから準備ができ次第輸送するということを言ってこられたわけでしょう。したがって、その中身について、いつどこから何名くらいが何の目的でと聞くのは、これは常識じゃありませんか、事前通告を受けて。はあさようでございますかで済んじゃったのですか。はあさようでございますかというので、中身も十分吟味しないでイエスとおっしゃったのですか。どうなんです。その辺、こちらからその中身に対しての問いただしは何らなかったのか、なすったのか、あったとすればどういうことだったのか、その辺を私はいま聞いているのです。だれからだれにお答えをいただきました。その節、いつどこから何名が何の目的でということを問いただされたかどうか、いかがです。
  120. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 元来、部隊の移動でありますれば、安保条約上日本側に通報してくる義務はないわけでございますが、安保条約の円滑な運用を図るという見地から、こういう場合には従来わが方に通報してくる場合が多いわけでございます。そしてわれわれとしては、この問題に関しましては通報を受けたということも知りまして、これが事前協議の対象となるものではないということの確認はいたしておるわけでございます。
  121. 土井たか子

    土井委員 状態が緊迫しているときなんですよ。状態が緊迫しているときに、その状態の中で沖繩の基地から移動すると言われるのは、これは単なる移動とお考えだったのですか。事前協議の対象にこれは当たらないというのはどういう意味で確認なすったのです。事前通告を相手方がしてきたことに対して、中身も十分に吟味しないで事前協議に当たらないとなぜ確認できるのですか。むしろ私たちからすれば、軍事作戦行動に従事する軍隊であってみれば、そういう移動であってみれば明確に言わないのが常識ですよ。これが単なる部隊の移動ならば明確にすべきです。単なる部隊の移動だったら、むしろこっちから積極的に、それならば何月何日に何人くらいが何の目的で移動されますかと聞くのが当然じゃありませんか。単なる事前通告ならばそうですよ。しばしば、こういうことに対してはない場合もあり、ある場合もあるとおっしゃる。単なる事前通告ならば、いまおっしゃったことを確かめていなければならないと私は思います。したがって私は聞いている。そのことに対する確かめがあったんでしょうねと。いかがなんですか。
  122. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 つまり、われわれがそのときに承知しましたことは、在沖繩の海兵隊一個大隊に警戒態勢、アラートの態勢をとるように命じましたということでありまして、アラートと言いますのは、いろいろな事態に備えてのことであると思います。したがいまして、そういうものは直ちにいわゆる戦闘作戦行動というものとは関係のない事態でありまして、いろいろな事態に備えての態勢をとりましたということでございまして、そしてその千名をタイのウタパオ基地に移動させます、こういうことでございまして、そして現に普通の輸送機に乗って出て行ったわけでございまして、われわれとしてはその事実は確かめ、さらにこれは事前協議の対象となるものではないなということは、この東京においてもわれわれは直ちにこのことを、通報を受けまして確かめ、向こう側もそうであるということは確認いたしておるわけでございます。事前協議は御承知のとおり先方からいたしてくるたてまえになっておりますけれども、われわれとしてもその点は確かめておる次第でございます。
  123. 土井たか子

    土井委員 何ら御答弁になっていないのです。アラートという状況と戦闘作戦行動に移るということとの関連性を外務省がお決めになるのですか。何ら関係ございませんといま御答弁なさいましたが、それを外務省がお決めになるのですか。そうじゃないのですよ。アラートという態勢と戦闘作戦行動に移るということはアメリカ軍当局が決めることでしょう。アメリカ大統領が決定することですよ。それについて関係ございませんとおっしゃるのには、関係ございませんとおっしゃる根拠がなきゃならない。お確かめになったんですね、どうなんです。
  124. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 日本とアメリカとの間には、安保条約に基づく信頼関係があるわけでございまして、先方が警戒態勢をとらしたということであれば、まさに警戒態勢をとらしたということでありまして、警戒態勢ということはいろんな事態に備えての態勢でありまして、そういう意味で戦闘作戦行動とは結びつかない態勢であるということでございまして、われわれはそこまで疑ってかかるわけにはまいらないと思います。ただ私たちは、念のためにこれは事前協議の対象となるものではないなということは、東京において早速確かめて、向こうもそのとおりであるということを言っておったわけでございます。
  125. 土井たか子

    土井委員 そういうことを私は聞いているんじゃありません。アラートと戦闘作戦行動が結びつく場合もあれば結びつかない場合もある。結びつかないということを断定的に先ほどおっしゃったから、そんなことは外務省がお決めになることではないという意味で私は申し上げたのです。  さて、これが事前協議の対象になるかならないかという問題で、相手方に事前協議ではありませんねということを御確認なさったのなら——だから私が言っているのですよ。事前協議の対象にならないのなら、いつ、どこから、何名が何の目的でということくらいははっきり言うてしかるべきだ。そういうことに対してお確かめをなすったのでしょうかと聞いているのに、それに対しての御返答はいまだ何もないのです。いかがなんです。
  126. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 いつ、どこから、それから何名ということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、ワシントン時間の十三日、日本時間の十四日の未明に、沖繩の海兵隊の一個大隊約千名が警戒態勢をとった上、輸送機の準備ができ次第、海外基地に出発させるということでございますから、そういう先生のおっしゃる点はカバーした形で通報は受けておるわけでございます。ただ、その段階におきましては、その行き先については向こうはその段階では申し上げかねると申しておったわけです。その後いろんな情報からいたしまして、これがタイのウタパオ基地に行ったということは明らかとなっておる次第でございます。したがいまして、私は必要な情報は十分われわれとしては得ておったと考えております。
  127. 土井たか子

    土井委員 いいかげんなものですね。後に、その沖繩から出動した海兵隊がコータン島上陸作戦にも参加をしているという事実が、すでにアメリカ海兵隊のオースチン大尉の公式声明でもって明らかにされているのですね。これは御承知だと思います。一体、沖繩から海兵隊が移動するということについて、それが戦闘作戦行動かどうかわからぬのでしょう。アラームという状態はあるのですね。それが戦闘作戦行動に結びつくか結びつかないかはわからない。移動すること自身も戦闘作戦行動の一環であるかどうかはわからない。わからないときに受けている事前通告に対して、これは事前協議ではない、こう決めつけてかかるということ自身が私には解せないのですよ。非常に事態は緊迫しているのです。大統領の発言もあるのです。一触即発で大統領の命令ももう秒読みでおりるかもしれないという非常に緊迫した状況の中での事前通告ですよ。それに対して、いつ、どこから、何名が、何の目的でというのをまだ御答弁の中では明確に聞けないというのは、実はこれは言えなかったのじゃないですか。日本側が言われなかったということもある、聞かれなかったということもある。聞いても恐らく言われなかったでしょう。なぜか、戦闘作戦行動の結果から見ても明らかなように、一環だからですよ。事前協議というものは、ことほどさように、いざというときに何の意味も持たないものだということが非常にはっきりしているじゃありませんか。アメリカをいかに信用しようと、安保で結びついた親愛の仲であろうと、安保条約に基づく事前協議になるかならないかということを問題にすること自身が、実際の状況とひっ比べてみた場合に、何と意味のないことかということをいやというほど思い知らされたのがこの事件ですよ。どうお思いになりますか。  外務大臣には、特に先ほど自民党の石井委員の方からも御質問がございましたけれども、朝鮮半島の状況などを考えてまいりますと、沖繩を含めまして、日本にあるアメリカ軍の軍事基地について、この事前協議というものがこれからどういうふうな意味を持つのか、私は、今回の事件を見ていて国民は全く不安な気持ちで一ぱいになっていると思うわけであります。一体、何のための事前協議かということを考えているのがいまの国民の真意だと思いますよ。そういうことからすると、事前協議のあり方についてどういうふうにお考えになっているか。先日は、事前協議については、従前のとおり私は考え続けたいという御答弁でありますが、私はこの事前協議という事柄について、今回の例を見ればまことに頼りにならない、これ自身は何のチェックの意味もない、これ自身は、国民の意見を反映して日本の外交がこの事前協議の段階で国意を具体的にする意味を持たない、そういう中身ではないかということをしきりに痛感するわけであります。  この事前協議のあり方について、外務大臣はもし事前協議を受けた場合、イエスということを今回のような場合にはおっしゃったのか、ノーとおっしゃったのか、これについてまずお聞かせいただくと同時に、今後事前協議について、やはりいままでどおりであってはならないとお考えでいらっしゃるか、また何らかの話し合いを、やがてキッシンジャーともお会いになる機会があるわけでありますから、この事柄についてお話しになる御用意がおありになるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま重ねて政府委員から御説明を申し上げましたとおり、今回の場合は事前協議の対象ではございません。今後事前協議のたてまえを変えるつもりがあるか、そういうつもりはございません。
  129. 土井たか子

    土井委員 キッシンジャーと会われる節にもそのことについては、何らお触れにならないで会談をお進めになるというおつもりでいらっしゃるわけですね。どうなんですか。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 変えるつもりがございませんから、私から問題を提起するつもりはございません。
  131. 土井たか子

    土井委員 これはいいかげんなものですね。本当にしっぽ抜けもいいところだと思います。事前協議のあり方というものについて、いままで国会でどういう状態が事前協議の対象に当たるか当たらないか、重箱のすみをほじくるようなかっこうで審議を繰り返し繰り返し詰めてきて、いざというときには、まさしくこの事前協議というのが何の意味もないということが私は今回の事件で明らかにされていると思うわけであります。にもかかわらず外務大臣は、この事前協議のあり方については何ら変える必要を感じない、従前のままであってよろしい、それに対する話し合いの用意も何らない、この事柄をここで言明されたことをひとつ確認しておきたいと思うのです。確認いたします。ようございますね。  さてその次に、最近韓国から日本に対して相次いで要人が来られているようであります。これは引き続きと申し上げでいい。四月一日には金東作外務部長官、五月の九日には金鍾泌首相、五月の十八日には丁一権韓国国会議長、相次いで続々来られる。国民の目から見ると、一体これは何事かという気持ちになります。何かあるに違いない、どういうわけでこう続々と東京もうでをされるのであろうかというふうな思いで国民はこの状態を見ている。このときに宮澤外務大臣も丁一権韓国国会議長にお会いになりました。その節、韓国に対する経済援助の問題がやはり話の中にあったようであります。これについてはどういうふうな話の向きであったかを簡単にまず御説明をいただきたいと思います。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このところ韓国の首脳部と何度か私お会いをいたしておりますことは仰せのとおりでございますが、これはどなたも日本訪問という目的で、それを主たる目的として来られたのではありませんで、多くの方が外国旅行の帰路であったと思いますが、わが国を通って帰られるそのときに会談を求められたのであります。丁一権議長もその一人でありましたが、経済援助につきましてのお話は全然ございませんでしたと記憶しております。
  133. 土井たか子

    土井委員 伝えられるところによりますと、経済援助については御承知のとおりに、民間ベースから今回やはり政府ベースに主体をもう一度切りかえていく。御承知のとおり、第三次経済開発五カ年計画がことしで終了すれば、民間ベースの協力を主体とする段階に移るというこの共同コミュニケは、第七回日韓定期閣僚会議の席上、一九七三年十二月十六日東京で行われて、当時の大平外務大臣が明らかにされている限りであります。今回は不況で、民間移行という点がどうも望み薄だということもかてて加えて、政府ベースにこれをやはり持っていこうという動きがあるということを私たちは、新聞紙上でも公表されておりますし、見聞をするわけでありますが、その中身についてはどのようにお考えでいらっしゃるのですか。
  134. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 いま先生御指摘のように、おととしの閣僚会議の共同コミュニケにおきまして、現在進行中の第三次五カ年計画が終了した以後につきましては、日韓の経済協力は政府主体であったのを民間の主体に移すということについて書いてあるわけでございます。この問題につきましては、その後も非公式には日韓の間でも意見の交換もございますし、それから非公式には事務的にいろいろ検討しておりますけれども、日本政府の部内におきまして公式にこの問題を取り上げて検討したことはございません。
  135. 土井たか子

    土井委員 それでは、いまどういうおつもりでいらっしゃいますか。
  136. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 先ほど申しましたように、おととしの日韓の経済関係あるいは世界の経済情勢を前提としたときの日韓両閣僚間の判断だったわけでございますけれども、その後国際情勢、特に石油危機以後の経済情勢は変化があるわけでございますし、韓国経済におきましても日本経済におきましても、その影響を受けて変化があるわけでございますので、われわれ事務的にはいろいろ検討すべき問題があるというふうに考えております。われわれといたしましては、これも事務的な話で恐縮でございますけれども、この七月に世銀の主催で韓国に対する経済協力の援助国の会議が行われます。その場合に、世銀とかあるいはIMFの経済の分析がございまして、そこで客観的な経済情勢あるいは韓国への対外経済協力に対する必要度が議論されるわけでございますので、その辺の情勢を踏まえまして今後判断すべき問題と考えておるわけでございます。
  137. 土井たか子

    土井委員 しかしこれ、七月まで待てないのでしょう、もう今年度で大体この五カ年計画が終了するわけでありますから。従来はっきりさせられたこの共同コミュニケに沿っての政策どおりでいくのか、それとも政策変更するのか、これは大きな問題だと思います。そこでそのことに対して、政策は従前どおり、このコミュニケどおりにいきたいということをお考えか、それとも政策変更の余地もあり得るとお考えか、その点を端的におっしゃっていただくと同時に、実は民間での融資というふうな問題ではなく、政府ベースの融資の中から問題になってくるのはやはり不実企業の問題なんですね。これに対してはもう外務省でいろいろなルートを通じて種々調査をなすっているわけでありますし、私はここで不実企業の問題に対してさらに質問を進める時間的余裕を持ちません。そこで、いまから申し上げる資料をひとつぜひ当委員会に対して提出をしていただきたい、これを申し上げたいと思います。  一つは、投資環境調査団が、外務省のアジア局参事官を団長として七〇年の十一月十二日にいらしておりますが、報告書が出ております。これをひとつ……。  それから日本経済調査協議会から出されております韓国の投資環境、これは外務省の韓国の投資環境に関する調査報告書として七一年の三月に出ております。  それから在韓日本大使館報告として、七二年の韓国経済概況というのがございます。  それ以外に、通産省側から、たとえば重工業調査団、団長として通産省の重工業局長が行かれておりますが、これは七〇年の十月二十八日から十一月五日まで、これの報告、さらに韓国鉄鋼調査団、これは団長は通産省の重工業局長でございますが、七二年の十二月十三日から二十三日まで、さらに政府セマウル事業検討調査団が七三年の五月二十八日に行かれて、そして報告書も出していらっしゃるはずであります。  そのほか等々ありますけれども、少なくとも挙げただけでもこれだけある。  いろんな機会に韓国に出かけて、実情に対してはよく御承知の上で、今回政策決定をなさるということを私は念頭に置いてお尋ねをしておるわけですから、たった一言それをおっしゃって、時間がありませんから、あと一問どうしても聞いておきたいことが残っておりますので、これに対して端的にお答えいただいて、先に進みたいのです。お願いします。
  138. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 先ほども申しましたとおり、韓国経済の情勢が非常に急激に変化したことでもございますし、やはり権威のある世銀とかIMFの情勢を踏まえた上で判断するということの方針が正しいと考えておりますし、政府部内でも事務的にはそういうことで話し合っております。
  139. 土井たか子

    土井委員 さて、あと一問は、先ほど、今回のマヤゲス号事件でアメリカ軍が沖繩から移動したという行為について、事前協議に触れない、事前協議の対象外であった、それをまず確認をされたわけでありますが、その節、外務省は東郷事務次官が記者会見をされております。記者会見の中身にはほかにも種々問題点がございますが、一点どうしてもひっかかるのがあるのです。何かと言うと、沖繩米軍基地からの戦闘爆撃機の発進については、直接にはカンボジアにまで足が届かないのではないか、つまり沖繩からカンボジアに対して直接攻撃を加えることは、そういう意味ではできないのだから、沖繩から部隊が出動することに対して当然戦闘作戦行動というふうに認識をするわけにはいかないという趣旨の発言があるのです一ならば、私はぜひこのことに対して確認しておきたいんですが、足が届くんだったらこのことに対しては別の取り扱いがあったんですね。ただ、カンボジアに足が届かないということで事前協議の対象にならないと御認識なすったんですね、いかがなんですか。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 会見をいたしました当人がおりませんので、私からお答えをするのが適当かと思いますが、想像いたしますと、沖繩から直接現地への爆撃が行われるということがあるかないかという質問であったろうと思います。それに対して、そのようなことはもともと不能なことである、こういう答えをしたのであろうと思います。もとより沖繩から直接発進をして爆撃をするということになりますと、これは従来の解釈上直接戦闘行動ということになるわけでございますから、これは明らかに事前協議の対象であると思いますが、それがもともと不能なことであるから、その質問は意味をなさないという答えをしたのであろうと推察をいたします。
  141. 土井たか子

    土井委員 そういう意味だったら、足が短いの長いのという問題は問題になってこないと思うのですよ。足が短いのでということをはっきり言って、そして記者会見の席上でそれが問題になっている旨が各紙一斉にこれは掲載されているわけでありますから、したがって私は大変この問題にひっかかるわけであります。カンボジアにまで足が届くんだったら問題は別だ。カンボジアにまで足が届かないんだから、これは事前協議の対象からは外してよい。これは同じ行動ですよ、結果から言うと。発進をして何をやるかというのは。ただ足が届くの届かないのの一点で、足が届かないからいいじゃないか、足が届いたら問題だ。こんな問題じゃ実は私はないと思うのですよ。足が長ければこれを事前協議の対象とし、足が短ければ事前協議の対象とならないという趣旨も踏まえて、今回この事前協議ということに対して認識をなすっているんですね、ということを確認したいと思うのです。いかがです。
  142. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 東郷次官の記者会見の中身に関しましては、私たちも正確に存じておりませんのですが、ちょっと誤解があるといけませんので申し上げますけれども、カンボジアに対する爆撃という問題でございましたならば、これはわが国、沖繩を含めましてわが国から爆撃とか戦闘機等のそういう航空機が発進したという事実はないわけでございます。この点はわれわれも確認いたしております。  それから、海兵隊が移動したということに関しましては、先ほどから御説明申し上げましたように、沖繩から海兵隊の一個大隊が海外基地に移動する。これは輸送機に乗って移動したわけでございまして、そのときの時点ではわれわれはどこに行くかということは、向こうも言いませんでしたが、後からわかったことは、タイのウタパオに行った、これは輸送機でございますから、沖繩から直接ウタパオに移動したということでございます。
  143. 土井たか子

    土井委員 では、もうこれで私は質問の時間がまいりましたから終わりますが、一つ確認をしておきたいのは、事前通告の中身については、当然確かめなければならないこともこちらからは米国側にお聞きにならない。一体どこに移動したかもよくわからなかったが、後にそういうことであったということが事実を見た場合に初めて判明したという御趣旨の御答弁であります。したがって、向こうがこうですよと言ったら、イエスしかない。そのことに対して中身を確かめなければノーもイエスもあったものじゃありませんから、したがって、黙っているかあるいは答えは——沈黙は金じゃこの場合は私はないと思うわけでありますけれども、返事のないのはよい返事というのがよく通用するのが日本の常例であります。したがって、そういう点からすると、恐らく黙っているか、イエスしかない。中身も十分にお確かめにならない。それがいわゆる事前通告というものだというふうに理解をしておいてようございますね。今回もその中身について、どこに行ったか、何人が何のために移動したかは全然御存じなかったわけでありますから、そのことだけを確認をし、それから、先ほどの質問に対しては全くお答えがございませんでしたから、その事柄のお答えをいただいて私は質問を終わります。
  144. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 土井委員は、われわれは何も聞かなかったというふうにどうも仰せられるようでございますけれども、われわれとしては、その事態においては聞くべきものは聞いたというふうに考えておる次第でございまして、ともかく沖繩にいる海兵隊の一個大隊、約千名ということを向こうは言っておったわけでございまして、そういうものは任務としては警戒態勢をとることを命じた。警戒態勢をとるというのは、アラートにつくということが任務で、しかもその部隊が、輸送機に乗って準備ができ次第海外基地に行く。ただ、その行き先については、その段階では申し上げられないと言ったわけでございまして、そして、ただそういうふうにアラートであって、戦闘作戦行動でないことは向こうの説明によっても明らかでございましたけれども、われわれはその報告を東京で受けまして、直ちに米大使館に対しても、これは当然、われわれは、事前協議の対象となるような行動ではない、つまり戦闘作戦行動ではないということを確かめて、そのとおりでありますということを東京においてわれわれは確かめておるわけでございまして、われわれとしてはその段階においてやるべきことは全部やったつもりでおる次第でございます。
  145. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  146. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森成二君。
  147. 正森成二

    ○正森委員 私はマヤゲス号事件の問題について伺いたいと思いますが、同僚議員が伺いましたことはなるべく避けて、その他の問題について伺いたいと思います。  まず第一に、マヤゲス号がいかなる状況のもとにおいて拿捕されたかという点でありますが、アメリカ側の発表によりますと、公海上であるということになっておりますが、日本政府には国交がございませんから正式に通知がなかったかもしれませんけれども、カンボジア側の情報省、宣伝省の発表によりますと、マヤゲス号はカンボジアの領域であるワイ島の沖合い四・五キロを東に進むのを見て停船を命じて臨検をした、それはスパイ船の疑いがあったからである、こういうことになっておりますね。そうすると、四・五キロ沖合いであるということになりますと、これは公海上ではなしに領海上であります。そうしますと、この事件の本質というのは、ある一国の船舶が拿捕された場合に、それが果たして公海上であったか、あるいは一国の領海上であったかという問題についての一つの国際紛争であったというように解釈すべきであります。外務省はそういうようにはお思いになりませんか。
  148. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 その島の帰属自体についてカンボジア領であるか、ベトナム領であるかということについては紛争があるようでございますけれども、先方が新聞に発表したところでは、カンボジアの領海を通航していたということが出ていると私どもも承知いたしております。これにつきましては、いま先生がおっしゃいましたように、そこが領海であるか公海であるかということについては、それを認識する国及びその国の立場によって紛争になり得る性質のものであるというふうに考えます。  日本政府といたしましては、領海は三海里という立場をとっておりますから、その地点が三海里の外でありますれば日本政府としてはそれは公海であるというふうに考えるわけでございますけれども、御承知のように、いま領海制度については三海里以上の領海をとっておる国もございますから、そういう立場を持っておる国との間ではそのこと自体が紛争になるという性質のものであろうと思います。
  149. 正森成二

    ○正森委員 そうだといたしますと、国際連合憲章の第二条の三によりましても、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」こういうようになっているのですね。そうしますと、まさに条約局長の答弁によりましても、国際紛争の一種であるという性質を持っておるものを、軽々しく国連憲章五十一条を発動して自国に対する武力行使である、それは自分の国の船舶が拿捕されるのも広い意味では武力の行使と言えるかもしれませんけれども、しかしそのもとは国際紛争であるという場合にあのような武力発動を行ったということになれば、これは国際連合憲章の第二条に違反する、そういう行為であるということにあなたの答弁から論理上当然になってまいるのではありませんか。いかがですか、外務大臣。
  150. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 御指摘のとおり、国連加盟国はすべての国際紛争を平和的手段をもって解決しなければならないということが第二条に書いてあるわけでございます。私どもも、当然すべての国際紛争はあらゆる手段を尽くして平和的に解決すべきであるし、各加盟国は、このためにすべての努力を払うべきだろうと考えております。  ただ、いまの問題につきましては二つ問題があると思います。一つは、仮に領海の中であるということの仮定に立った場合に、ただいま先生は、カンボジア側はそれは敵性船舶であるという認識のもとに行動したというふうに仰せられましたけれども、一般領海において商船が通航する際に際しては、無害通航の権利があるということは御承知のとおりでありまして、マヤゲス号はその無害通航の権利を持っていたということを私どもは一応は推定をしなければならないと思います。また、憲章第五十一条の自衛権に基づく措置は、これは現実に武力攻撃が発生した場合に、それに対しては自衛権に基づく措置をとり得るということが第五十一条で確認されているわけでございますから、それに基づく措置は国連憲章によって合法的にとられ得るものであるというふうに考えております。
  151. 正森成二

    ○正森委員 一応無害通航の権利が推定されると言われましたが、カンボジアの情報省の発表によりますと、カンボジアはいわば内戦が終了した直後あるいは当事者はまだ完全には終了していないと思われるような状況であって、タイの船などがスパイを盛んに送り込んでいるという状況があったということを報道しております。したがって、朝鮮民主主義人民共和国に対するプエブロ号事件のときと同じようにこれを敵性船舶である疑いがある、こう見て拿捕したということになれば、それがそうではないという主張も、またそれが領海外であったという主張もこれはともに当事国の認識の相違であって、これこそがまさに国際的紛争であります。そうして、そういう国際的紛争を平和的に解決する義務を課しているのが国連憲章であります。したがって、自国の領土が攻撃されたというような重大な場合でないのに、そういう認識の差からくる国際的紛争について他国の領土を爆撃し、あるいはその領土に上陸を企てるあるいは実行するということは、これは国際連合加盟国として慎まなければならない、こういう性質の行動であると思うのですね。まさにそのような非常に問題のある行動に対して、しかもフィリピンよりはるかに南である、いわゆる極東の範囲ではない、極東の範囲というのは必ずしも地理的ではありませんけれども、そういうようなものにわが国に駐留するアメリカ軍が出動しているということは、これはいかなる意味においても許さるべきことでないのではありませんか。ましてその部隊というのは、タイのククリット首相が明白に抗議しておりますように、タイの明示の意思に反してウタパオ基地から出動しておる。そのためにアメリカ側は謝罪しております。わが国が沖繩からの出動に対して何らの異議をはさまなかったという行為は、結果的にはカンボジアだけでなしに、タイの主権を侵害するということにもなっております。これはきわめて重要であります。こういう点について外務大臣はどういうように思っておられますか。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 伺っておりますと、ちょっと前の方の部分が必ずしもそうと考えかねるところがございます。どっちにいたしましても、私どもにはこの情報がいわば半分しかわからないのでございますから、断定的には申し上げかねることでございますけれども、公海であったかなかったかという問題が一つ。仮にカンボジア側の主張するごとく領海であったといたしましても、この船が無害航行をしておったらしいということは、どうもそうでないという話はどこからも聞こえてこない。そうしますと、その無害航行をしておる船に対して最初に砲撃を加えたのは明らかにカンボジア側であるらしい、らしいとしか申し上げられませんけれども、それが拿捕される、そうしますとそれに対して自国民、自国船の保護のために米側が自衛権、五十一条の権利を発動した、と同時に国連及びその他の方法を使って相手方に対して平和解決を呼びかけた、しかしその呼びかけについて答えが来ない間に自国民の危険がいよいよ高まっていく、こういう状況であったらしい。これは片側の話がございませんから、どうもあったらしいとしか申し上げようがございませんけれども、そういう環境であったのではないだろうか。今日までそれを反証するような話というものはカンボジア側からどうも余りないようでございますから、そういうことであったのではないだろうか。  それから他方で沖繩を発進しました海兵隊が、結果としてタイのウタパオに行ったというふうに考えられるわけですが、それはタイ国と米国との間の問題であって、わが国の安保条約とはかかわり合いのないことであろう、こういうふうに私は思います。
  153. 正森成二

    ○正森委員 いまのようなお答えだったら私はこういうように伺いたいと思いますが、日米安保条約というのは、アメリカ側が安保条約及びそれに関連する取り決めに反するようなことはないという前提の上に成り立っておる諸規定であります。ところがアメリカ側の今回の行動を見ますと、タイ側の明示の意思に反してタイの基地から出動し、そして爆撃もカンボジアに対して行っておる。そのためにタイ側はアメリカ大使の召還を要求し、アメリカ側はこれに応じ、正式に謝罪しておるということになります。してみると、アメリカ側は国連憲章の第二条に明白に規定されておる加盟国というのは相互に主権を有する国で、それを尊重しなければならないという規定に今回の行動については明白に違反していると言わなければなりません。そういうようなことを現に行っているアメリカは、わが国との関係においてもやはりそういうことをする可能性があるのではないか、これは当然われわれとして考えておかなければならない点であります。したがって、こういうタイ側の主権を明白に無視した——これはタイ側が主張し、アメリカ側がそれを認めたわけでありますから疑いのない事実でありますが、そういうこととの関連において外務大臣はどうお考えになりますか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう一つお尋ねの意味が明確でございませんけれども、それはアメリカとタイ国との間に起こったことでありまして、わが国として直接関係のある出来事ではない、こういうふうに思っております。
  155. 正森成二

    ○正森委員 私は、非常に外務大臣というのは日本型モンロー主義をとっておられるなというように思います。あなた方は、地理的に極東の範囲外のことであっても、それがわが国の平和と安全に関係のある場合には、これは極東の平和と安全に関係があるとかなんとかいうように非常に広く解釈されるじゃありませんか。それは、ある国の行動がどういう行動慣習あるいは習癖に基づいて行われておるかということをやはり考えなければわが国の安全は保たれないということであります。私はこれは月の世界のこととかあるいはどこかのことを言っているのではなしに、まさにわが国が安保条約によって同盟関係を結んでいるアメリカが、しかもアジアの国の主権に関連して行った主権侵害について聞いておるのであって、それを日本側と何ら関係のないことだというように澄ましておられたのでは、外務大臣としてはアジア的視野が少し狭いのではないかというように思わざるを得ないのですね。私、あなたの立場としてはなるべくこれには触れたくないという御心境は、赤心を推して人の腹中に置けばこれはわからないでもありませんけれども、しかし、そういう答弁はアジア的視野を持っておる外務大臣としてはこれは必ずしも適当ではない、こう思うのですね。いかがですか。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も米タイ間の本件についてのやりとりがどういうものであったか、公の情報で知っておるわけではありませんけれども、正森委員御指摘のようなことを報道として聞いておりまして、それはもうそういうことはやはりなくて済むにこしたことはないという感じはもとより持っております。
  157. 正森成二

    ○正森委員 時間がありませんので、私は約束を守りたいと思いますので、あと一問だけ伺いますが、実はきのう外務大臣が退席されましてから、沖繩及び北方問題特別委員会でアメリカ局長に伺いました。それは、四月三十日にキャンプ・ハンセンの司令官がいわゆる軍紀粛正の布告なるものを出したのでございますが、それを私が入手しましたところ、その文言というのは非常に不適切で、アメリカ兵の行動というのが適切でないとアメリカ軍の目的を達成することができないのだというような観点であって、書き出しからして、アメリカ側の自由が侵害され、ゲートは閉ざされ、デモ隊がやってきた、こういうことのないようにするにはどうしたらいいかというような、大体平たく言えばそういうようなことなんですね。そこには女子中学生に対する遺憾の意とか、あるいは沖繩県民が人権を持っておる、その人権を侵害してはならないというような意味での綱紀粛正がないわけですね。外務大臣がわざわざアメリカ大使を招致されて軍紀の粛正に言及されたという外務大臣なりの御努力は多としますけれども、この軍紀粛正というのがそういう内容のものになっておるというのであれば、私どもは納得できないと思います。アメリカ局長もそれについて調べた上で何らかの適切な措置をしたいという意味のことを述べられたと記憶しております。そこで、この席で改めて外務大臣から御意向を伺って私の質問を終わります。時間がありませんので、説明ははしょりました。
  158. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先生からいただきました文章は私も早速拝見いたしまして、内容に関しましては、確かにアメリカ側としてはこの事件に対する反省が非常に足りないという感じを深くしたわけでございます。仰せのとおり、沖繩の人権がこれだけ侵害されておる、そういうものについてもっと本当の沖繩の方々の人権を尊重し、慎重な行動をとるべきであるということがまずあるべきであって、その上に立って、君たちは一人一人が大使のつもりで行動しろ、こう来るべき問題でありまして、その点が最初にデモがやってくるとか、そういうようなことが書いてある書き出しははなはだ不謹慎であるというふうに私も感じまして、この点についてはもう一回アメリカ側に対して、こういうふうな感覚で処理してもらっては困る、まず深刻な反省があるべきであり、そして沖繩の人々に対して本当の尊敬を払い、その上に立っての友好関係を維持するべきであるということを申し入れたいと思っております。大臣も同様のお考えであると承知しております。
  159. 正森成二

    ○正森委員 それなら結構です。大臣から一言だけお言葉をいただきたいと思います。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府委員が申しましたことが、私、実はこれをまだ全文読んでおりませんが、そうであれば私もそのようにこれについて反応しなければならないと思っております。
  161. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  162. 水野清

    ○水野委員長代理 渡部一郎君。
  163. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 質問するに先立ちまして、まず各委員の御質問の調整をみごとに委員長としてやっていただきたい。そうでないと、先ほどの私の持ち時間は一分、今回は指定どおりにいけば三分間です。それでは質疑討論になり得ない。この辺いかがですか。
  164. 水野清

    ○水野委員長代理 ただいまの渡部委員のお話のとおり、理事会で約束いたしました各党の質問の時間割りを厳重に守りたいと思っております。今後注意いたしますし、各党にもよく御連絡をいたしますので、御了承をいただきたいと思います。
  165. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 事前協議の、マヤゲス号の拿捕事件に関するアメリカ側の対応及びそれに対する外務省の対応について申し上げたい。  外務大臣は、昨日は沖繩特別委員会において、アメリカ局長の失言といいますか、言い過ぎと言いますか、そうした問題について余り適当な表現でない旨をみずからお認めになり、そして言われたわけでありますが、今度は東郷事務次官が記者会見で言われたことも、これはまた相当な内容を含んでいるのではないか、私はそう思うのです。どうも宮澤大臣になられてから、各局長は伸び伸びと自由放言を続けておるのではないかと私は思うわけでありまして、東郷事務次官が、沖繩において米海兵隊が移動するとの通告が事前にアメリカ側からあった。事前にあった。まず事前が問題になっておる。大臣はどういう御認識でありますか。これは明らかに事後にあった。そしてこれは救助活動であって、米軍の出動ではない、事前協議の対象になるようなものではないと重ねておっしゃっておる。救助活動という考え方に先ほど大臣は非常に慎重に、物事は半分しか情報が入っていないから、明らかに断定するには非常にじみで、推定をするしかないと言われておるわけですね。その立場は大臣としても正しいし、外交の姿勢としても正しい。ところが一方では、人命救助であるとぽんと断定する。そして事前通告があったとすぱっと言う。これはいかなる政治的効果をねらわれたのか。これは大臣が御存じでわざわざ言わせておいたのか、そして後から大臣が否定することによって、大臣は自分の株を高くしようとされているのか。また逆に事務次官が大臣を軽べつして、御自分がこういう問題はおれが発言すべきものとして発言されたのか。非常によくない印象を持っておるわけであります。大臣、この辺はどうお考えですか。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここに会見の要旨というのがございますが、先ほど政府委員から申し上げましたように、ワシントンで日本大使館に対して米国国務省から通知がありましたのは、これは輸送機が立ちます前にあったのでございますから、以前にと申しておることは正確であろうと思います。それから、これは事前通告という性質であるかどうかということについて、これは事前通告という性格のものではないというふうに言っておりまして、これを読んでおります限り、別段支障になるようなことはどうもないように存じます。救助活動であると言いましたのは、恐らくそれまでありますところの情報から言えば、マヤゲス号がああいうことになっておって、自国民の保護あるいは自国船の保護ということが必要で、そのために行動したのであろう、そういう趣旨を申したものと思います。もとより、正確に申せば、あるだけの情報からいえばそういうふうに判断される、そう申しましたか申しませんでしたか、そういう趣旨であろうと存じます。
  167. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣がそういうふうに後から一々まるで解釈を述べるみたいなことを言わなければならないということ自体が、これは恐れ入った話である。人命救助のための出動であり、事前協議の対象にならないと明快に述べたということは、そこの場所に出ていた方々からの証言でも明らかでありますし、また人命救助のための出動という言い方それ自体が、すでに領海外における逮捕ということを事前の前提として行われているものと私は思います。すなわち、カンボジアの領海外で逮捕されたんだからアメリカ国民の生命、財産を守らなければいけないという立場からアメリカ軍は出動した、この名目というものは領海内、領海外ということの判断もまたここに含まっていると私は推察します。これは非常によろしくない。しかもコ一夕ン島において米軍人救出の後、その地域において戦闘行為が行われた。またカンボジアの本土に対してアメリカ軍の爆撃が行われた。こうしたことについては、明らかに単なる救助活動の限界を越えていると思いますが、いかがですか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは念のために申し上げておきますけれども、この会見はその後に起こりました、いまわれわれがお互いに報道で知っておりますような事実の前になされた会見であろうと思います。したがって、アメリカの自国船、自国民が危機に陥っている、それに対して救助活動に出たのではないか、その時点の話であろうと私は思うのでございます。その救助活動というのには、これは公海であるということを前提にしておるではないかというお尋ねでございましたけれども、仮に万一それが領海でありましても、この船が無害航行をしておった限りにおきましては、それを砲撃するような権利は先方にはないはずであって、砲撃を受けましたらこの救助活動をいたしますということは、私はやはり自衛権の範囲の中に入ると思いますので、したがいまして、そのこと自身が公海、領海ということについてのブレジュディス、あるいはその判断を伴っておるというふうに私は考えておりません。
  169. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの御説明のあった点はそのまま伺うとしまして、少なくとも事務次官がお述べになった記者会見というものは、事実が判明する前に少ししゃべり過ぎた、そういう意味で遺憾な点あるいは不十分な点があった、あるいは不正確な点があったという点でお認めになりますか。
  170. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 記者会見というのはなかなかむずかしいものでございますので、故意に何か言ったというふうには私はこの場合実は思っておりませんですが……。
  171. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 少なくとも新聞記事を通して見る限りは、かなりゆがんだ形で物が伝わっているというふうにはお認めになりますでしょう。そうすると、これは後から修正した方がいいとお考えになるのではないでしょうか、大臣どうですか。
  172. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうも詳細を存じませんので、何とも申し上げられませんが、やはり国会委員会のようなことを申し上げておったのではなかなか事はややこしゅうございまして、そこまで正確を期して申さなくても、とがめなければならぬほどのことではないと私は思っておりますけれども……。
  173. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ASEAN諸国との協調が現在うたわれている真っ最中に、外務次官がASEAN諸国の固い姿勢と全く逆の方向を述べられ、かつこの戦訓を通して、アメリカ側は、北鮮の南鮮に対する介入の場合には断固たたいた方がよろしいというような認識を持ったということまで伝えられ、こうした感じというものは必ずしも適切な発言、適切な印象ではないと私は思うわけでありますが、新聞記事に掲載されている。もはやすでに、どういうことを言ったということより、どういうことが書かれておるかということが問題でありましょうが、それが余り適当な表現でない、東郷事務次官談と称するものは余り当省の意向を明快に代弁しておらないと、ここで明快にひとつお述べになったらいかがでしょうか。
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、心情的にアジアの国々によかれかしという気持ちを当然持っております。これはおっしゃるとおりですが、しかし、だからといって、無害航行あるいは公海を航行している船に砲弾を浴びせていいというわけにも実はまいりません。概して東郷事務次官、なかなかいい仕事をしておりますので、別段私はそれについて批評がましい気持ちを正直申して持っておりません。
  175. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 かばわれるのはわかりますけれども、これは大分まずい発言であったと私は思いますし、この責任追及の声はだんだん大きくなろうかと思います。私はそういう意味で、日本の外交の姿勢を基本的に誤らせる雰囲気を持っておったこの発言というものは取り消された上、少なくともタイ政府の毅然たるアメリカに対する姿勢と比べて、日本側の安保条約及びその事前協議事項に対する解釈も含めまして、きわめて遺憾の点が多かったと指摘するにとどめたいと思います。その点、大臣におかれては、今後十分の庁内に対する指導を含めて対処していただきたいと思います。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御感想は御感想として承っておきます。
  177. 水野清

    ○水野委員長代理 永末英一君。
  178. 永末英一

    ○永末委員 先ほどわが方がアメリカ側から、沖縄から海兵一個大隊が出て行くということを通告を受けたのは十四日の日本時間で未明ということでございましたが、正確な時間をお知らせください。
  179. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 在米大使館の西田公使がザヘーレン国務次官補代理から通報を受けましたのは、ワシントン時間の十三日午後一時でございまして、日本時間に直しますと十四日の午前二時でございます。
  180. 永末英一

    ○永末委員 実際に沖繩から海兵隊が出発をいたしましたのは、何日何時でございますか。
  181. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この点に関しましては、嘉手納基地の報道部が発表しておりますところによりますと、日本時間の十四日の午前三時ごろから部隊が移動を始めた、こういうことでございます。何機かに分かれて出て行ったわけでございますが、最初に飛行機が移動を始めたのは午前三時ということでございます。
  182. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、政府としては、アメリカ政府がわが方に通告をした後で事実行為があった、沖繩から実際の海兵隊の発進があったというぐあいに認識しておられるわけですね。
  183. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほども申し上げましたように、アメリカ政府は、沖繩におる海兵隊一個大隊が警戒態勢をとることを命じたこと、及び同部隊は輸送機の準備ができ次第海外基地へ出発させる予定である、こう言っておったわけでございますから、その文言からしても、事前に言ってきたものとわれわれは解しておったわけでございますが、実際問題としましても、部隊が移動を開始しましたのは午前三時でございます。
  184. 永末英一

    ○永末委員 一説には、日本政府通告を受けた時点は、すでに移動が開始されておった後であるという説がありますが、いまあなたは政府代表して、移動は通告の後である、こう言われましたが、もう一度確認をいたしますから正確にお答え願いたい。
  185. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 われわれはそういう説は承知しておらないわけでございまして、アメリカ側の通報からしましても、部隊は輸送機の準備ができ次第海外基地に出発させると言っておったわけでございますから、当然事前連絡のつもりで言っておったろう、実際問題としても、その後の沖繩の部隊の発表によっても午前三時ごろから移動を開始しておるということから見ても、これは向こうの言っていることには間違いないというふうに考えておる次第でございます。
  186. 永末英一

    ○永末委員 あなたの御説明にアメリカ側の通告ということがしょっちゅう出てくるわけです。われわれが問題にしたいのは、緊急を要する場合のアメリカの行動と、そして彼らがわが方に伝える伝え方、その辺に離れがございますところは重大問題になります。したがって、ここのところを伺っておるのである。もしあなたのような御解釈があるとしても、通告を受けた場合には、実際行動がどのように行われるかを確認する取り決めはアメリカ側としておられますか。
  187. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 米軍の部隊の移動に関しましては、事前協議の対象となる場合を除きましては、先方からわが方に通報してくるということは実際問題としてかなり多うございますけれども、これは向こうの義務ではございません。したがいまして、その通報の仕方もまちまちでございます。また米軍の側で、状況に応じて各軍の報道部が発表するという事態もございます。ただ、具体的なそういうふうな通報の仕方、内容その他について取り決めはつくっているわけではございません。
  188. 永末英一

    ○永末委員 あなたの御説明によりますと、要するに、アメリカにございますわが方の大使館にアメリカの国務省から通告をしてきた時間と、それから現地沖繩におけるアメリカの当局が発表した発表というものを本委員会で述べておられるのであって、私が日本政府側に要求したいのは、ともかく兵力が動くというのは、まかり間違えば非常に大きな影響をわが国の安全に及ぼすことになります。したがって、安保条約上、わが方としてその動いているかどうかの事実関係を確かめる取り決めをする必要が私はあると思うのです。ところが、いままでの御説明ではそういうことは全然いいんだ、ただ通告を受ければそれを信ずるだけだ、こういう態度でございますので、外務大臣、そういうことは必要でないでしょうか、重ねてあなたのお考えを承りたい。
  189. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘なすっていらっしゃることが私にわからぬではないのでございますけれども、実際問題としてそういうことをすぐにトレースする能力というのは御承知のようにわが国は持っておりませんし、また、もし具体的にそのような情報が寄せられましたときに、わが国にそのような機密を保持するという体制も実は十分でないという問題も副次的にはございます。したがいまして、仰せられることはわからぬではございません。ございませんが、どのようなことにいたしましたらそういう軍事的な機密を、それも他国の機密になるわけでございますから、私どもが何国たるとを問わずですが、与えられましたときに保持し得るか、それからその真実性を自分の力でどうやってトレースできるかということになりますと、なかなか具体的にはむずかしい問題がありそうに存じます。
  190. 永末英一

    ○永末委員 事実関係を確かめる必要性を私が申し上げているのは、この件に関しましても、ただいま御説明がございましたように、日本時間に直して十四日の午前二時にワシントンで通告を受けているわけです。午前二時なんというのは、普通の時間で申しますと皆ベッドに入っている時間でございまして、そして沖繩における海兵隊は、これは軍隊でございますから、午前三時出動があり得ることはあたりまえの話でございまして、だといたしますと、実態的には、なるほどわが方はアメリカ側から通告を受けたかもしれないけれども、事前通告だということになるのか、それとも外務大臣を初めとして皆さんがこれを知られたのがもし夜が明けてからだとしますと、事後にこれを知ることになりますね。ただ法律的な解釈としては、アメリカの方が実際に行動を起こす前に日本政府には通告をした——何も真珠湾のことを言うわけじゃありませんが、そういう非常に緊急のことがこの問題にはかかっているわけである。したがって、われわれとして実際に動いたということを知り得なければ、あちらの方も時間を計算してくるでしょうし、実際われわれはそれに対して対処の方法を考えようとしても実は時間がなかったということになりますと、そのことによって起こる結果というものについては、これはわが方として一体どういう関係になるか、重大な問題だと思います。  したがって、それならアメリカ局長にお伺いいたしますが、午前二時に通報がきたことを東京の外務省は何時に受けましたか。
  191. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ワシントンにあります大使館は大至急の電報で打ったわけでございまして、われわれはその日の朝にそれは承知いたしました。ただ、現地の大使館としてもこういう問題についての性格は知っておりますから、この問題が要するに部隊の移動であるということは承知しておったわけであります。また、部隊の移動であれば、それは米側としては事前連絡をしてくる義務はないわけでございますが、安保条約の円滑な運用を期するためにしてきたわけでございますから、大至急電で連絡してまいりまして、われわれは朝に至ってそれを承知し、そして先ほども申し上げましたように、その点については早速在京の米大使館にも連絡して、これは事前協議の対象となるような行動ではないなということを、もう一回われわれとしても東京においてコンファームしたという次第でございます。
  192. 永末英一

    ○永末委員 この部隊は、あなたの方も確認されているように、後でコータン島で戦闘に従事したわけですね。ただ、通告があった時点では、アメリカ側の口上には戦闘に従事しますという言葉はなかっただけのことである。したがってわが政府として重要なことは、アメリカ軍が移動する場合に、その目的が何であるかということを知らなくていいのだろうか。事前協議事項というのは、一応交換公文でございますけれども、いやしくもアメリカの軍隊がわが方の基地から移動する場合に、移動しますと言われたら、黙って、そうですがと受け取るだけなのかどうか。まさかアメリカが、これから戦闘に行きますからよろしくというようなケースは、私はほとんどないのではないか。あるかもしれませんよ。  ただ、このマヤゲス号事件ではっきり出てきた問題は、相手方が戦闘とは言わなかったけれども結果的に戦闘になっている。もし相手方に報復能力があるならば、その発進した基地をたたくということはあり得るわけでございますから、そういうことをひとつ考えられて、通告であろうと何であろうと、日本政府はアメリカの軍隊の海外への移動、日本国内は別として、日本の基地以外への、よその国、よその地域への移動に対してアメリカの意図を聞くという意思はございませんか。
  193. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 われわれはこの海兵隊の移動に関しては、その移動の目的をいわば聞いたわけでございまして、先方はこれはアラートであるということを申したわけであります。アラート、つまり警戒態勢をとるということを申したわけでございますから、それはその移動をして、よっていろいろな事態に備えるための警戒態勢であるというふうに、その段階において承知しておった。だから、目的についてはわれわれはその段階において承知しておったと言えると思います。
  194. 永末英一

    ○永末委員 時間が来ておるのですが、アラートというのは、アメリカ軍の場合一体どういう態勢を言っているのですか。戦闘はしないということが前提になっておりますか。
  195. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 アラートと申しますのは、やはり警戒するということでございまして、いろいろな事態に備えて警戒するということでございまして、戦闘作戦行動のために直ちにそういう命令を受けて出ていくということとは異なることである、こういうふうに理解しております。
  196. 永末英一

    ○永末委員 時間がないからこれでやめますが、部隊に対して警戒命令が発せられたら、戦闘を予測していることですよ。警戒と言ったら、直接に言葉で戦闘だと言わなければ戦闘が起こらないかのごとくあなたは御説明されましたが、間違いです。明らかに戦闘を予測しているから警戒態勢をとるのであって、それでなかったら軍隊がなぜ警戒というのをとりますか。アメリカ軍隊が一から五まで警戒態勢を区分しておりますのは、事の緊急度合いに応じて戦闘に移行する準備の程度を言っているわけですね。これは御承知だと思います。  約束の時間でございまして、この件、重大でございますから、日を改めていろいろな角度から御質問いたします。終わります。
  197. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十二分休憩      ————◇————— 〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————