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1975-02-21 第75回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十一日(金曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小林 正巳君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 正森 成二君       坂本三十次君    竹内 黎一君       細田 吉藏君    山崎  拓君       綿貫 民輔君    川崎 寛治君       土井たか子君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         厚生省援護局長 八木 哲夫君         運輸省海運局次         長       浜田直太郎君         運輸省航空局次         長       薄木 正明君  委員外出席者         運輸省海運局外         航課長     富田 長治君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   原 健三郎君     綿貫 民輔君   福永 一臣君     山崎  拓君 同日  辞任         補欠選任   山崎  拓君     福永 一臣君   綿貫 民輔君     原 健三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国中華人民共和国との間の海運協定の締  結について承認を求めるの件(条約第二号)  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間の延長に  関する議定書締結について承認を求めるの件  (条約第三号)  関税及び貿易に関する一般協定譲許表の変更  に関する第二確認書締結について承認を求め  るの件(条約第四号)      ――――◇―――――
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  日本国中華人民共和国との間の海運協定締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。正森成二君。
  3. 正森成二

    ○正森委員 大臣が十一時二十分からお見えになるようですけれども、それまでに、条文個々の問題などもありますので、私から、日本共産党革新共同を代表して、質問をさせていただきます。  私どもはこの海運協定には賛成立場でございますが、なお個々条文等について、またその背景的事実について問いただしたいことがありますので、お聞きする次第でございます。  まず第一に、条文の点からまいりますが、第二条を見ますと、「いずれか一方の締約国国旗を掲げる船舶で、当該一方の締約国の権限のある当局自国法令に従つて発給した船舶国籍証明のための書類を備えているものは、当該一方の締約国国籍を有する船舶と認められる。」こう書いてあります。  そこで、この条文の冒頭にある国旗でございますが、中華人民共和国の場合には、先ごろ成立いたしました憲法でも、中華人民共和国国旗は五星紅旗とするという明白な条文があるわけであります。わが国の場合には、憲法上はもちろんございませんが、法律日の丸国旗とするというような項目があったかどうか、その点はいかがですか。
  4. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  日本国旗法律上定義づけた国内法があるかという御質問でございますが、現在におきまして、日本国旗中国のように定めた法律はございません。かつて明治三年でございますか、太政官布告第五十七号というのがございまして、それで日の丸日本船舶に掲げる国旗の様式として指定した経緯がございますが、この太政官布告が現在有効であるかどうかははなはだ疑問でございますし、したがって、新憲法下におきまして現在は日本国旗を定めた法令はないというふうに了解しております。
  5. 正森成二

    ○正森委員 それにもかかわらず第二条に「締約国国旗を掲げる船舶で、」ということを記入なさったのは、中国側との交渉でいろいろあったんだと思いますが、それを条文の中にこういうかっこうで挿入なさったのはどういうわけですか。
  6. 伊達宗起

    伊達政府委員 海運協定等船舶関係規定を置きます場合に、締約国国旗を掲げる船舶で、当該一方の締約国当局が発給した船籍証明書等相互に認める、この「国旗を掲げる船舶で、」というのは、慣用句と申しますか、必ずどこの国との間でも定められているものでございまして、この国旗日本法令によって定められていないということで問題になったということは、交渉経緯においては全くございません。
  7. 正森成二

    ○正森委員 それでは、この国旗日本法令で認められているわけではないということを確認して、私は次に進ましていただきたいと思います。  第三条を見ますと、用船についても、「他方締約国異議を申し立てない限り、1に規定する運送に参加することができる。」こう書いてあります。いま用船については、三光汽船などの便宜置籍船などで事故を起こしたりして非常に問題になっております。そういう関係で「他方締約国異議を申し立てない限り、」こういうぐあいに書いてありますが、これはわが方から見た場合に、どういう場合にこの用船中国船舶とは認められないという異議を言うつもりなのか、また中国の場合は、わが国用船に対してどういう場合に異議を申し立てると予想されているか、それを当局立場から答弁していただきたいと思います。
  8. 伊達宗起

    伊達政府委員 この文言につきましての御質問でございますが、わが国から見ました場合、わが国は海運自由の原則というものを忠実に遵守いたしておりまして、わが国に関する限り、いずれの国の海運企業であろうと、それがいずれかの国の船籍の船を用船してまいった場合に異議を申し立てるということは従来ともいたしておりませんし、今後ともいたさないつもりでございます。中国の場合も、わが国海運企業用船することについて、特に異議を申し立てることはないというように私どもは承知しておりますが、中国側におきましては、やはり中国の港に入港を認められないような船舶というものがあるようでございまして、そういう船を日本企業用船いたしました場合には、中国側としても考えざるを得ないという事情にあるので、この文章が入ったわけでございます。  なお、追加して申し上げますと、中国が最近結びました海運協定ノルウェーでございますとか、その他イタリア等もございますが、そういうところでは、両政府合意によって用船を認めるというような非常に厳しい規定になっておりまして、その限りにおきまして、この場合異議を申し立てない限り、異議というものがない限り、日本船舶会社も自分の欲する国の船舶というものを自由に用船できるということが確保されております。
  9. 正森成二

    ○正森委員 いまのお答えで大体わかりましたが、ずばりと言いますと、これはあり得ないことですが、日本船会社台湾の船を用船するとか、その他中国がどうしても入港することを認められないような国の船舶用船した場合には異議を申し立てられるけれども、それ以外はほぼないと考えられる、こういうように承知してよろしいか。
  10. 伊達宗起

    伊達政府委員 ただいまの先生の御了解で正確であると思います。
  11. 正森成二

    ○正森委員 そうだといたしますと、用船する場合に、ノルウェーなどのように合意ではないにしても、用船の場合には入港の前に通告する必要があるんですか、それともそれはないのですか。
  12. 伊達宗起

    伊達政府委員 用船の場合に、特に入港の前に通告するというような手続は決めてございません。
  13. 正森成二

    ○正森委員 それでは第四条の問題について伺いますけれども、前回の当委員会同僚議員が「すべての開港に出入する権利を有する。」という中で、中国側開港はどれだけあるかということで、私の記憶に誤りがなければ、十九であるというようなお答えをいただいたと思います。  そこで、日本の場合に開港は幾らあるのか、それは非常に多うございますから数だけで結構でございます。それから、もし可能ならば、私どもが大体承知しておりますところでは、去年一年間でわが国船舶中国へ参りました数は百四十五隻ぐらいですか、ちょっと不正確ですけれども中国側からもほぼ同数の数が参っておりますが、中国側船舶日本開港に参りました数ですね、上位十港ぐらいをおっしゃっていただければ結構です。
  14. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  日本開港の数は百九でございます。なお、中国船入港いたしました数につきましては、私、実は資料を持っておりませんので……。(正森委員「百三十四隻」と呼ぶ)百三十四隻でございますか、それがどの港に一番多く入ったか、数の順から十港ぐらいという御質問でございますが、私も資料を持っておりませんので……。  それでは運輸省のほうで御答弁できるそうでございますから。
  15. 浜田直太郎

    浜田政府委員 私ども調査によりますと、一九七四年度の実績で、全国で八十港に対しまして合計一千九十三隻という数字がございます。同じく中国船が入りましたのはその中で二十七港、三百八十八隻でございます。これは私どもの方の直接の調査ではございませんで、法務省の協力を得た数字でございます。
  16. 正森成二

    ○正森委員 いま三百八十八隻で二十七港とおっしゃいましたが、そのうちどの港が多いか、順番は大体わかりますか、全部でなくてもいいですから。それから、一番少ない港。
  17. 富田長治

    富田説明員 海運局外航課長でございます。次長にかわってお答え申し上げます。  ちょっと順番が前後するかもしれませんが、上から、神戸が六十七、その次に横浜が五十八、次に大阪が四十八、北九州が四十五、名古屋が二十六、福山が二十五、水島が二十、宇部が十六、姫路が十二、徳山、下松が十、千葉が七、おおむね多い方はそういう順番になっております。
  18. 正森成二

    ○正森委員 一番少ない方は。
  19. 富田長治

    富田説明員 少ないのは、入っていないのがたくさんございまして、ゼロがずいぶんございまして、清水、小名浜、東京等が一隻でございます。
  20. 正森成二

    ○正森委員 私がなぜそういうことを伺いましたかというと、この間同僚議員質問に対する答弁の中でも、台湾の船が入ってくる、中華人民共和国の船と同じ港に入ってくる場合に、いろいろな問題が起こらないようにバースを異にするとか、そういう配慮をするということを言われました。いまお答えになったうちの神戸とか大阪とか横浜とかというところはバースがたくさんございますし、私が調べたところでは、大体船の航路ごとバースを別にしておるようですから、同時に同じ岸壁に接岸するというようなことがないようになっておりますが、たとえば一つだけ入る清水とか、そういうところになると恐らくそれほどのバースもございませんし、そういう点で、同時間に着くというようなことはないかと思いますけれども、そういう関係で万が一のこともないような、そういう配慮はできるんですか。
  21. 浜田直太郎

    浜田政府委員 港湾管理者が港の秩序の維持のためにいろいろ配慮いたしておりまして、仮定の問題といたしまして、同一の日に中国の船と台湾の船と入るというときには、当然、その船が隣接をするとかあるいは背中合わせになるとかいうようなことのないような配慮をするということでございまして、これは私どもも非公式に従来から指導してまいったところでございます。ただ、仮定の問題といたしまして、中国及び台湾の船が同時に同じ関門に来るというようなことが想定されるわけでございますけれども、そういうときはやはり一般のルールに従いまして先着順というようなことで処理せざるを得ない、かように思っております。
  22. 正森成二

    ○正森委員 非常に微妙な問題ですから、極力、一港一隻しか来ないというような、バース一つしかないというようなところへの配慮というのは今後十分必要だということを指摘しておきたいと思います。  次に、六条の問題ですが、六条の第一項を見ますと、相互船舶乗組員出入国上陸、その他の手続については「第三国船舶の同様の乗組員に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。」というようになっております。これも先日の質問によりますと、わが国の場合には七十二時間ですか、そういうようなことで他の国と同様に行われる。(私語する者あり)不謹慎だぞ、人の質問中に大きな声で笑うとは何事だ、委員長、注意してください。
  23. 栗原祐幸

    栗原委員長 注意してください。
  24. 正森成二

    ○正森委員 大臣が来ないのにあなた方が言うからやっているんじゃないか。その間に不謹慎に笑うとは何事だ。
  25. 栗原祐幸

    栗原委員長 今後そういうことのないように注意してください。
  26. 正森成二

    ○正森委員 六条の一項でそういうようになっておりますが、六条の三項を見ますと、これは「当該船舶船長又は当該船長がその代理人として指定する乗組員は、当該他方締約国において必要とされる手続を完了した後に、当該一方の締約国外交官又は領事官と面会することができる。」、こういうぐあいになっております。第一項では、乗組員は七十二時間とか、中国の場合にはそういう制約はないようですが、当該船の着く地域には上陸できるということになっているのに、第三項でなぜこういう制約を設けたのか、その理由について説明を伺いたいと思います。
  27. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  制約とおっしゃいましたが、私どもはそのように読んでおりません。これは、ただ単に上陸手続を踏むことは当然のことでございますので、その意味におきまして当然のことを念のために規定したものであって、領事官ないしは外交官に面接するためには、上陸手続を踏まなくてもよいというような趣旨ではないという意味で決めた、書き込んだものでございます。
  28. 正森成二

    ○正森委員 あなた方はそうお読みになりますけれども、私どもから読むとそうは読めないのですね。第一項では、普通の船舶乗組員というのは「出入国上陸、税関及び検疫に関する規則及び手続の適用に関し、第三国船舶の同様の乗組員に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。」と、こういうぐあいに書いてあるのですね。だから、不利でない待遇を与えられて上陸して、そしてそこで映画を見に行くなり公園に行くなりあるいは友人に会うなり、そういうことは自由にできるはずであります。ところが、三項において制約されているのは、船長または船長代理人として指定する乗組員だけなんですね。ですから、これは当然普通の乗組員の行う上陸手続を了した後に、なおかつ領事官だとかあるいは外交官に会う場合には特に必要とされる手続を完了しなければならない、こういうぐあいに読むのが法律家の読み方だと思うのですね。つまり、逆に言えば、当該船舶船長またはその代理人というのは、そういう手続をしなければわが国外交官領事官に会えないということではありませんか。だから普通の手続外交官に会う手続とは、これは区別しているのではありませんか。
  29. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  この手続を完了した後にというものは、船長またはその指定する代理人である乗組員外交官領事官に面接をします場合に、上陸手続と異なった手続を踏むものであるという趣旨でもって書き込んだものでないことは、はっきり申し上げられるものでございます。  なお、この第一項におきましては最恵国待遇でございまして、第三国船舶乗組員と同等の取り扱いを受ければよろしいということでございまして、その限りにおきまして非常に意味のある規定でございますけれども、しかし横並び規定ございますので、第三国乗組員を全部上陸を禁止するということになりますれば、当然のことながら、横並びとして日本乗組員上陸も禁止されても何ら差し支えがない規定でございます。ところが第三項に参りますと、これは絶対待遇というふうに称しておりますが「当該一方の締約国外交官又は領事官と面会することができる。」ということをはっきりと定めているわけでございまして、その上陸手続を複雑にして、実態的に外交官または領事官と面会することができないような手続をもし設けるといたしましたならば、これは第三項に定めます絶対待遇の違反になる、このように私どもは解しております。
  30. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、第一項の最恵国待遇を、さらに外交官に会う場合には例外的に絶対待遇を設けたものだ、こうおっしゃるわけですね。
  31. 伊達宗起

    伊達政府委員 そのとおりでございます。
  32. 正森成二

    ○正森委員 それでは、第八条がございますが、これは総論とも関係しますので、大臣がお見えになってから伺いたいと思います。  第九条を見ますと、収入のうち支出を超える部分ですね、「当該海運企業海運業務に関連して当該一方の締約国の領域内で得た収入のうち支出を超える部分を、両締約国が受け入れることができる為替相場により、日本円人民幣又は両国において認められている交換可能な通貨で、当該海運企業の本店に送金する権利を与える。」と、こうなっております。  そこで、日中両国において交換可能な通貨というのは、現在ではどこの通貨のことを言うのか、その場合の為替レートがあると思いますが、東京もしくは北京でどういう取り決めに基づいて送金を行うのか、それについて御答弁を願いたいと思います。
  33. 伊達宗起

    伊達政府委員 交換可能通貨と申しますのは、一般に非居住者の保有する自国通貨を、いずれの他の国の通貨とも自由に交換できることを認めている国の通貨交換通貨というものでございまして、わが国におきましては、すべての交換可能通貨対外取引通貨として使用することができるようになっております。したがって、すべての国の通貨でございまして、別に限定はございません。中国側におきましては、通常使用しております交換可能通貨といたしまして、米ドル、英ポンド、スイスフラン、ドイツマルクフランスフラン、ベルギーフラン、オランダギルダー、イタリーのリラ、香港ドルということになっております。したがいまして、日中間の支払いに用いられる通貨は、いま述べました九通貨日本円人民幣を合わせた十一通貨になると了解しております。  それから両国が受け入れることのできる為替相場ということでございますが、実態的には、わが国について申しますと、外国為替公認銀行の対顧客相場を用いる。それから中国側におきましては、中国人民銀行が公示いたします為替相場を基準といたしまして、中国銀行が適用している相場ということで行われていくものだというふうに考えていただきたいと思います。
  34. 正森成二

    ○正森委員 それは現在でもすでに行われていることですか。それで実際上取引支障は起こっておりませんか。
  35. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  現在も実態的にこういうことで動いているものでございまして、別に支障があるようには聞いておりません。
  36. 正森成二

    ○正森委員 十一条を見ますと、「両締約国は、いずれか一方の締約国の要請がある場合には、この協定実施に関連して生じた問題を処理するため、適当な方法により、両締約国合意する日時及び場所において、協議することができる。」というようになっております。その協議というのは、結局、官庁で言いますとどこが所管するのか、あるいは問題の性質により、ある場合は運輸省、ある場合は外務省というようになるのか、そして窓口は、日中両国双方でどこにすることが予定されているのかについて伺いたいと思います。
  37. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  十一条によります協議は、十一条に定めてございますように、「この協定実施に関連して生じた問題を処理するため、」でございますので、協定実施の問題として、窓口外務省、ただし実質問題に関しましては、運輸省を中心といたしますその他の関係官庁が参加して行うということになると思います。
  38. 正森成二

    ○正森委員 あと数点ありますけれども、約束の十一時二十分に大臣がお見えになりませんから、大臣が来られるまでお待ちしたいと思います。
  39. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  40. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。  正森君。
  41. 正森成二

    ○正森委員 大臣が来られる前に、個々条文の問題について伺っておりましたので、それがあと一、二点を除いて終わりましたので、総論的な部分に関連したことを大臣に伺いたいと思います。  条文を見ますと、第八条におきましては「いずれか一方の締約国船舶他方締約国の沿岸において海難その他の緊急事態に遭遇した場合には、」云々ということで、それに対して保護や援助を与えるということが決まっております。  そこで、海難というのはわかるのですが、緊急事態というのはどういうものを指すのですか。これは武力紛争も含まれるわけですか。
  42. 伊達宗起

    伊達政府委員 緊急事態と申しますのは、暴風雨に遭いますとか、ないしは難破するとか、ないしは座礁するとか、そういう緊急事態に遭遇した場合ということを指しているものでございまして戦争の場合というものは、この条項においては予想しておらないということでございます。
  43. 正森成二

    ○正森委員 しかし、暴風雨とかいうのは海難という言葉の中に十分に含まれるわけで、「海難その他の緊急事態に遭遇した場合には、」というのは、たとえば戦争そのものではないにしても、武力行使に関連して船舶損傷を生じた場合とかいうようなものは当然含まれるのじゃないですか。そうでなしに、そういうような関係船舶損傷して沈没の危険に瀕した、あるいは航行が不能になってきたというような場合には、特にこの第八条から除くということですか。
  44. 伊達宗起

    伊達政府委員 若干言葉足らずでございましたので補足させていただきます。  海難と申しますのは、航海に関連して船舶等に生じた危難でございまして、遭難船舶が自力で脱出し得ないような状態のものを申します。その他の緊急事態と申しますと、たとえば船内において病人が発生したとか、ないしは食料、水が欠乏しているとか台風等による荒天に遭遇する、そのような場合を緊急事態というふうに指しております。したがいまして、戦争状態というものは別に観念はしておりませんけれども、そういう状態によって船舶が危殆に瀕するというような場合は、当然のことながらこの緊急の事態、原因のいかんを問わず、船舶がそういうような状態に陥りました場合を指しているものというふうに御了解いただきたいと思います。
  45. 正森成二

    ○正森委員 ですから、緊急事態というのは武力紛争そのものではありませんけれども、それに関連して、船舶航行上重大な支障を生ずるような損傷をこうむったという場合は含まれると思うのです。いまそういう答弁だったと思います。  そこで私は、外務大臣にお伺いいたしたいわけですが、これはきょうの新聞各紙に報道されているところでございますけれども、この海運協定というのは、言うまでもなく日中共同声明の第九項に基づいて行われているものであります。これは両国友好関係を増進し、経済あるいは人的な交流を一層盛んにするであろうということで期待されておりまして、私どももその趣旨には賛成であります。そこで、こういう個々取り決め一つの基礎としながら、根本的には日中平和友好条約というのがその大もととして結ばれなければならないというのはやはり大方のコンセンサスであろうと思うのですね。  そこで、外務大臣にお伺いいたしたいのですが、きょうの新聞報道を見ますと、鄧小平副首相が来られるとかあるいは外相がおいでになるとかということで、妥結して今国会に提出する見込みが非常に濃いというように報道されているんですね。そこで、外務省といたしましては、そういう目途で努力し、その可能性があるのかどうか、またそのときには中国側要人が調印のために来られるめどがあるのかどうか、伺いたいと思います。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中国側要人のことにつきまして、御指摘のように、今朝、一部報道されておったようでございますけれども、これは私ども、一度も実はそういう話をいたしたことがございませんので、私どもはそういうことを存じておりません。  交渉の問題でございますが、実は一、二、両国の意見が一致しない大切な問題がございまして、その処理をどうするかということがただいま私ども一番の関心を払っておるところでございます。その他の問題につきましてなおむずかしい問題が出てくるかどうかということは、しっかりもう少し交渉を詰めてまいりませんと実はよくわからない、正確に申せばはっきりわからないわけでございますが、仮にただいまの一、二の懸案がわれわれの主張に先方も同調してくれて処理されるということでありますと、交渉はそんなに手間取らないかもしれないという希望を持っております。しかしながら、必ず今国会にというふうにまた考えますと、このような交渉に期限をつけるということは交渉立場を弱くいたしますので、私、そういうことは申しておりません。幸いにして、幾つかの懸案に先方が同調してくれて、比較的早い時間に、しかもその他に問題が格段にはないということでありましたら、あるいは場合によりまして、今国会に御審議をいただくことができるかもしれないと思っておりますけれども、それはそのような幾つかの条件のもとにおいてのことでございます。
  47. 正森成二

    ○正森委員 重ねて伺いたいと思いますが、一、二の懸案があると言われましたその一つが覇権条項問題であるということは当委員会でも言われておりまして、承知しておりますので、その問題はきょうは伺わないことにいたしたいと思うのです。  日中共同声明の第三項の、「台湾中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」ということですね。そして、日本政府はこの立場を「十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」というのは、これは伝えられているところによりますと、条約の前文に記載するということで交渉が早急にまとまる可能性がある、こう言われておりますが、その点についてのお見込みはいかがですか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はまだ双方とも、いわゆる条約案という形で前文なり条文なりを全く書いておりませんので、その辺のことはその段階になりませんと、先方がどのように主張いたしますか、ちょっとただいまのところはっきりまだ見通しを申し上げられないのが現在の段階でございます。
  49. 正森成二

    ○正森委員 いま私が伺った二つの問題についてそういう御答弁ですが、たとえばきょうのある新聞を見ましても、陳楚駐日中国大使が河野参議院議長あるいは保利氏等を招いての会食の際に、鄧小平副首相や喬冠華外相の問題についてお触れになったというように言われているのですね。これは、外務大臣あるいは外務省が直接関与されたことではないにしても、そういう情報は入っておると思いますし、こういう点について何らかの感触を受けておる、そしてまたこういうことを言われるについては、相当覇権問題などを含めて、交渉の進展する可能性があるというように見ていいと思うのですが、重ねて伺います。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中国の大使が、河野参議院議長ほかの方々にそういうことを言われましたかどうか、私、実はまだ確認をいたしておらないわけでございます。考えますと、幾つか問題がある、そうしてそれをどのように解決していくかということは、結局交渉の性格から見まして、最終的には一括してやりとりをするというようなことに、こういうときにはえてしてなりやすいものでございますので、したがいまして、ただいまの段階でその部分だけを切り離してどうであろうかとお答えをすることが、予測のつかないことでございますので、ちょっとむずかしいわけでございます。
  51. 正森成二

    ○正森委員 それでは次の問題を伺いたいと思いますが、日中共同声明の第六項では、「日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。」こうなっております。これは通常言われる平和五原則でありますが、これは共同声明に盛られておりますように当然御賛成だと思いますし、またこういう文言は、通常、平和友好条約という場合には入れられる文言でございますから、日中間についてもこの点については異議がないというように理解してよろしいか。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常に厳格に、一つ一つ、これはどう、あれはどうということまでちょっと申し上げかねますけれども、概してこのようなことが盛られるべき条約だというふうに考えております。
  53. 正森成二

    ○正森委員 そこで、私、この前に引き続いて重ねて伺いたいのですが、わが党の不破書記局長が、昭和五十年一月三十一日に予算委員会の総括質問質問をいたしましたが、それに対して宮澤国務大臣がこう答えておられるのですね。「政府立場は、先ほど申し上げましたとおりでございますが、なお法律的にどうかということであれば、中華人民共和国政府台湾との間に仮に対立があった――紛争が発展する現実の可能性があると私ども思っておりませんが、仮にそういうことがありますと、基本的には、それは中国の国内問題であると解すべきと思います。」これは速記録をそのまま読んだ文言であります。外務大臣としては、そういうお考えには法律的にはお変わりございませんか。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお読み上げになりましたのが私の申し上げたことであると考えますが、そのように思っております。
  55. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと――条約というのはすぐれて法律的なものでございます。したがって、条約の中には日中共同声明の第六項、通常平和五原則と言われている原則は書かれて当然だと私は思いますが、そういたしますと、台湾地域でいろいろな紛争が起こりましたとき、この日中海運協定の第八項にも「海難その他の緊急事態」というのが書いてありまして、その緊急事態一つとしては、これは武力紛争による船舶損傷ということも例外ではないということを伊達参事官が言われたわけですが、そういう点をますます考えますと、日中共同声明を発出し、さらに、いま日中平和友好条約を結ぼうとしているわが国としましては、そして外務大臣が国会でこういう答弁をされ、当委員会でいまそれを確認されたという前提のもとで考えますと、これは中華人民共和国を唯一正統政府であると認めている立場から言いましても、台湾地域でいろいろな問題が起こりました場合に、わが国が何らかの形でこれに関与する、あるいは関与せざるを得なくなるというようなことは、これはあってはならないことはもちろんですけれども法律的、条約的にもそういうことがないように政府として考えるのが当然ではないでしょうか。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま言われます限りにおいて、そのように考えます。
  57. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと、いままで政府のいろいろな答弁もあるわけですけれども、現在わが国は安保条約を結んでおり、安保条約第六条には言うまでもなく極東の平和と安全ということがあり、そして佐藤総理と、当時のアメリカの大統領、一九六九年の共同声明で台湾条項というのがあるわけですけれども、そういう観点から言いますと、安保条約の極東の範囲の中に台湾地域を含めるということは、一たん事があればアメリカ合衆国の軍隊が沖縄その他からそこへ出動する、そしてそれに巻き込まれるというようなことになりますと、これは、いま外務大臣お答えになりましたが、根本的にはそれは中国の国内問題であると解すべき事柄に、わが国に基地を置く軍隊が介入をするということになれば、間接的には、あるいはもっと言えば直接的にもわが国が内政問題に介入するということで、それは避けなきゃならぬという結論になってくるのですね。  そこで私はそういう答弁を前提にして、大臣といたしましては、アメリカ合衆国との関係の中で、日本国政府としては極東の範囲に台湾地域は含まれない、ただ単に事前協議の場合にノーと言うだけではなしに、極東地域に含まれないということをアメリカ合衆国政府に通告して、明白に安保条約の対象外の地域とすべきだ、そしてそれがいまの御答弁経緯から見て当然の外務大臣の態度であると思いますが、いかがですか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 幾つかの点にお触れになっておられるわけでございますが、まずそのうちで当時台湾条項と言われておりましたもの、佐藤元総理大臣、アメリカの大統領、ただいま御指摘のその問題ですが、日中国交が成立いたしました結果、当時の認識と認識が変わったということは、これは申し上げてよろしいことであると思います。  それから第二に、その地域に紛争が起こりましたときに、わが国に基地を持ち施設を持つアメリカが介入をする場合云々と言われましたが、御承知のように安保条約そのものの目的がいわゆる自衛のためでございます。自衛のためということでございますから、したがいまして、わが国あるいは極東の平和と安全が侵されて、そうしてわが国立場が危うくなるということでない限りは、よその地域はおける紛争にこちらから介入するということはそもそも安保条約の精神に反するわけであって、そういうことはございませんと思います。  それからもう一つ、その地域を極東のいわゆる範囲というものから削除すべきではないかということにつきましては、いわゆる台湾条項の認識が当時といまと変わりましたことは申し上げたとおりでございますけれども、しかしその地域が、われわれの考えておるいわゆる極東というものの範囲内であるということは、客観的には、私は事実であろうと思いますので、これを削除するというような問題ではなかろうと考えておるわけでございます。
  59. 正森成二

    ○正森委員 私は何も極東条項を削除せよ、こういうことを言うておるのではないので、安保国会におきましても、当時の岸総理と愛知揆一氏との討議の中でも、極東地域の中には、主として共産主義国という言葉を使っておりますが、そういうところの領土、地域というのは含まれないということも明白に言われているのですね。ただ台湾は、現在中華人民共和国が実効的に支配をしていないということでありますけれども、しかし日本が、日中共同声明で台湾地域というのは中華人民共和国の不可分の領土であるということを認め、そして台湾中華人民共和国との間に何らかの紛争が起これば、それは中国の国内問題であると言われている立場からすれば、これは極東条項の削除とかなんとかいう問題でなしに、日本政府の認識の問題として、そしてアメリカ合衆国も当然日本に対して持つべきである見解として、その地域は極東の範囲から除かれるのだというような共通の認識を持つべきであるし、わが国日中平和友好条約を結ぶこの機会に、非常にいい機会でありますから、念のためにアメリカとそういう点について認識を統一しておくという必要があるのではないでしょうか。重ねて伺います。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 安保条約の目的が、重ねて申し上げますようにあくまで自衛である、どの地域にどういうことが起こりましても、それが極東の安全を脅かす、そしてわれわれの安全を脅かすということでない限り、これは安保条約が目的とする、先ほど介入というお言葉をお使いになりましたけれども、そのような目的には該当しない、自衛をもっぱら考えておるわけでございます。この点は先ほども申し上げたとおりでございます。  次に、確かにあの地域で事が起こりました場合、法律的にはそれは内戦と考えるべきであろうというのは私どもさように思いますけれども、さりとて、その地域がわれわれが考える極東の中にあることはこれは確かでございますから、これを削除するというような問題ではない、客観的にそういう極東の中であるということは事実でございますから、範囲そのものから削除するという問題ではなかろうというふうに私は考えます。
  61. 正森成二

    ○正森委員 私は、きょうは日中海運協定の論議でございますからこれ以上申しませんが、ただ二点だけ指摘しておきたいと思うのですね。  大臣はあの地域はということを言われましたけれども、極東条項の極東というのは、地理的概念ではない。地理的概念とは不可分ではありません、全く関係がないということではもちろんありませんけれども、地理的概念ではないのですね。あの三十五年の安保国会を見ましても、日本が、あるいは場合によってはアメリカが非常に国際的な関心を持っておる地域、わが国の平和と安全のために関心を持っている地域という、すぐれて政治的な概念であります。ですから、そういう点から見ますと、そのすぐれて政治的な概念、わが国が国際法でいうところの非常な関心を持っている地域ということの中には、現在の日中間の情勢の中では含まれないし、含めてはならない。たとえば中国わが国の九州に非常な関心を持つというようなことは許されないのと全く同様に、わが日本といたしましても、台湾を関心を持っておる地域ということで極東の範囲内に入れるということはやはりやめるべきだ。そして自衛権の問題について言いますならば、きょうは私は大きな声は出しませんけれども大臣みずからが内戦とみなすべきであるとおっしゃる以上、これは中国国民自身の問題であって、そこでは第三国が自衛権云々を問題にする余地はないと思うのですね。台湾を基地としてまた沖縄にでも爆撃に来るというようなことになればこれはえらいことですけれども台湾海峡をはさむ中国人民がいろいろなことを、私もそういう事態はないと思いますが、仮にあったとしましても、それは内戦であり、中国人民が解決すべき問題であって、第三国がそのことについて自衛権の行使として出動するというような場合は、理論的にはあり得ないというように考えるわけですね。そこで大臣も、そういうことは予算委員会の総括質問でも、法律的にはそれは中国の国内問題であると解すべきとおっしゃっている以上、百も御承知だと思うのですね。ただ安保条約関係で、アメリカとの関係でそういう御答弁があるんだと思いますが、私は、日中平和友好条約の伸展とともに、台湾地域の問題がいわゆる政治的な関心を持つ地域としての極東には含まれないんだ、いよいよ平和友好条約の成立とともにそうなったんだということを、外交ルートを通じてアメリカに通告をし、ないしは協議すべき時期が来たというように思います。重ねて外務大臣の決意とお考え、見通しをお伺いしたいと思います。これは非常に大事なことです。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このように申し上げるのがよろしいかと思いますが、ある地域である紛争が起こりましたときに、それがわが国の安全に何も関係がないというときにはわが国の自衛の問題は出てまいらない、これは当然でございます。しかし、それがわが国の安全に関係があるというときには、われわれは最小限の自衛をしなければならない。それが安保条約の精神であろうと存じますが、そのことは決して介入とかいう性格のものではなくて、われわれとしてわれわれの安全が脅かされない程度に最小限の措置をとっておく、こういうことではないかと思うのでございます。
  63. 正森成二

    ○正森委員 その答弁には納得できませんけれども、きょうは海運協定の質疑ですから、次に条文上のことを二、三残ったことを聞いて私の質問を終わりたいと思います。  直接条文には規定されておりませんけれども、この海運協定ができました後、海運関係の中で生ずる租税問題については触れられておりませんが、それは別の交換公文等で処置されるおつもりですか、いかがです。
  64. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、この協定自体には海運所得に関します課税問題については何らの規定はございませんが、この協定の発効までには両国間で協議をいたしまして、海運業所得の免除と申しますか、そういう取り決めを実現させたいということで現在交渉中でございます。
  65. 正森成二

    ○正森委員 最後に一つ伺いたいのは、現在日中航路に日本船主が就航する場合には、国際貿促で友好船主という肩書きをもらってから行くというようなことに大体なっていると思うのです。それは海運協定ができましてからもそのままになるのですか、それとも、もう海運協定ができたんだから、そういうことにはならないということになるわけでしょうか。それが一つ。  それから、時間がございませんので……。輸出入の貨物をどれだけ自国船に積むかという積み取り比率の問題ですね。  そういうことについて海運業者の中にはいろいろ意見があるようで、中国との間に海運問題協議機関を設置して、運賃の設定や積み取り比率や配船などについて話し合うことを強く望んでいる空気があるようであります。そこで、これまでの国際貿促を窓口にしたいろいろないきさつもあると思いますが、そういう方向が考えられておるのかどうかということをお伺いして、私の質問を終わります。
  66. 浜田直太郎

    浜田政府委員 お答えを申し上げます。  従来日中間の海運活動は、日本の国際貿易促進協会と中国の国際貿易促進委員会との間で議定書がございまして、その付属文書に基づいて行われておりましたことは先生御指摘のとおりでございます。今回この日中の海運協定ができましたならば、日中間海運業務につきましては政府間の約束ということでありまして、安定的な基礎が置かれるということでありますが、したがって、先ほど申しました民間取り決めというものは、基本的には発展的な解消を遂げるということになろうと思います。しかしながら、今後日中間の海運活動におきまして、積み取り比率をどうするかとか、あるいは運賃をどうするかとか、いろいろなむずかしい問題があろうと思います。それらは民間の業者同士が適当な機関でもって話し合うべき事柄でございますけれども、それに先立ちまして政府間で協議をいたしまして、いつどういう形でどういう者がそういうような事柄を議論したらいいかというようなことを話し合って、その筋道をつけると申しますか、そういうようなことから始めたい、かように思っているわけでございます。
  67. 正森成二

    ○正森委員 終わります。      ――――◇―――――
  68. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の延長に関する議定書締結について承認を求めるの件及び関税及び貿易に関する一般協定譲許表の変更に関する第二確認書締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、順次政府から提案理由の説明を聴取いたします。  外務大臣宮澤喜一君。     ―――――――――――――  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の延長に関する議定書締結について承認を求めるの件  関税及び貿易に関する一般協定譲許表の変更に関する第二確認書締結について承認を求めるの件     ―――――――――――――
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の延長に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この議定書は、千九百七十一年の国際小麦協定有効期間を一年間延長するもので、一九七四年二月ロンドンで開催された関係政府会議において採択されたものであります。  千九百七十一年の国際小麦協定は、小麦貿易規約食糧援助規約との二部から成っており、小麦貿易規約は、小麦の市況の安定化等を規定し、食糧援助規約は、開発途上にある国に対する食糧援助について規定しておりますが、この議定書は、この両規約の内容に変更を加えることなく、その有効期間を一年間延長することを定めており、小麦貿易規約有効期間の延長に関する議定書食糧援助規約有効期間の延長に関する議定書との二部から成っております。  この議定書締結することは、小麦貿易に関する国際協力の促進が期待されること、開発途上にある国の食糧問題の解決に貢献することとなることなどの見地から、わが国にとり有益であると考えられます。なおわが国としては、食糧援助規約有効期間の延長に関する議定書に基づく食糧援助を米または農業物資で行う方針であるので、同議定書にその旨の留保を付しました。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、関税及び貿易に関する一般協定譲許表の変更に関する第二確認書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国の関税定率法の別表は、昭和四十七年四月一日ブラッセル関税品目分類表に合致するよう改正されましたが、右改正前に締結されたガットの諸文書に含まれているわが国のガット上の譲許は、旧品目分類方式に基づいておりますので、同日以降、わが国の税関において関税を課する際に、品目及び相手国により、新旧の異なった品目分類表を用いることとなっており、かかる状態は税関事務の上で支障がございますので、ガット上のわが国の現行の譲許表をすべて新たな品目分類表に基づくものに切りかえることとし、昨年一月九日、そのためのガット上の手続を了しました。  本件確認書は、わが国譲許表の訂正、他の締約国譲許表の訂正及び修正並びに南アフリカ等の総合譲許表を収録するものでありまして、わが国譲許表の訂正については、政府が国会の承認を得た後、ガットの事務局長に対して行う通告によって効力を生ずることとなっております。  よって、ここに、この確認書締結について御承認を求める次第でございます。  以上二件につきまして、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  70. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  両件に対する質疑は後日行うことといたします。      ――――◇―――――
  71. 栗原祐幸

    栗原委員長 引き続き、日本国中華人民共和国との間の海運協定締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部一郎君。
  72. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 本協定締結によりまして、わが国に対しどのようなメリットがあるか、まずその辺からお伺いしたいと存じます。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この協定締結いたしますことによりまして、中国の港においてわが国船舶最恵国待遇を受けることになります。また、海難救助の際の協力、あるいは海運の収益の送金の保証などがございます。また、両国間の海運問題に関してお互いに協議をするルートができるわけでございますけれども、御承知のように、中国では海運業も政府の直接のコントロールのもとにございます。わが国は民間企業であるという、そういう体制の違いがございますので、この条約締結によりまして平等な話し合いを行う基礎ができるという点も一つの意義であると思います。
  74. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 中国日本との間では貿易協定締結されておるわけでありますけれども、それを今度ここに海運協定として締結した理由はどこにあるのですか。
  75. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  海運協定として締結いたしましたのは、主といたしまして、一九七二年九月二十九日の日中共同声明第九項におきまして、海運事項に関する協定締結を目的として交渉を行うということを合意しておりますので、海運協定を結んだということでございます。  また、通商航海条約その他海運事項に限らず、入国、滞在ないしはその他の最恵国待遇を含む通商航海条約というものにつきましては、できれば今後ともそういうものを結べれば結んでいきたいというふうに私どもは考えておりますけれども中国側におきましては、従来の経緯を見ますれば、大体六〇年代の初めごろまでに共産圏と申しますか、東欧圏の五カ国と通商航海条約と称するものを締結しただけでございまして、その後は各国とも通商航海条約を結んでおりませんし、むしろ海運事項等につきましては海運協定を結び、貿易事項につきましては貿易協定を結ぶというようなことで処理しているようにうかがわれます。そういうわけでございまして、日中間では今回は海運協定を結んだということでございます。
  76. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、日中間貿易については、また別個の取り決めその他を補完されるおつもりでありますか。
  77. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  実際問題といたしまして、昨年の国会で御承認を得ました日中間貿易協定というものがございまして、貿易面に関しましては、そこにおいて大部分の問題が最恵国待遇の付与ということで解決されているように思うわけでございます。なお、もし両国間においてそれを補うような必要が将来できてきました場合には、両国間でまた相談をして決めていくということになるだろうと思います。
  78. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この海運協定交渉が非常に長期間にわたり、かついろいろなものの協定交渉の中ではとりわけ長くかかっております理由というのは果たしてどこにあったのか、その辺をひとつお伺いしたいと存じます。
  79. 伊達宗起

    伊達政府委員 確かにこの交渉は一昨年の春でございますか、日中間双方でお互いの案文を交換いたしましてから約一年二、三カ月を経まして、昨年の七月に、実際実質的な交渉が開始されます間、若干時間を要したわけでございますが、これはやはり海運問題ないしは出入港等につきまして、日中双方の制度の違い、法律の違いということのために、これをどのようにお互いに研究し合って調整していくか、また相手国の港湾、海運事情も十分わきまえる必要がございましたので、その点で照会をいたしましたり、ないしは確認をいたしましたり、調査をいたしましたりしたために時間がかかったということでございます。  なおまた、日中航空の問題がその間にございまして、そちらの方に両国が専念をして、日中航空の問題を片づけてきたということも、若干海運協定が後回しになった事情もあると思います。
  80. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このほか、もう一つ問題になっておりますのが、日中漁業協定でありますが、その日中漁業協定交渉は、一時中断されているやに伺っているわけでありますが、これの着手と申しますか、交渉再開と申しますか、その見通しはどうなっておりますか。
  81. 高島益郎

    ○高島政府委員 漁業協定につきましては、来月一日から日中間交渉を始めることに合意ができまして、先方の代表団はこの二十五日に東京に着くということになっております。
  82. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この交渉の際に明らかになりました法令上のさまざまな差異というものが、わが国法令の改正あるいは補正を必要とするのではないかと思われますが、そういった点についての配慮はどのようになっておりますか。
  83. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  この協定をつくります際に、わが国といたしましては、特に法令を改正する必要がないように十分配慮いたしまして、また他方わが国の海運というのは、海運自由の原則ということに基づきまして、非常に束縛のない、何と申しますか、差別のない規定が盛り込まれているためもございまして、この協定のために今度新たに国内法をつくる、ないしは改正するということは生じません。
  84. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日中間に青年の家のような、船舶を利用しての人事交流を盛んにするための政府取り決めを行いたいというお話し合いがあったやに伺っておるわけでありますが、中国側とのお話し合いはどのようになっておりますか。
  85. 伊達宗起

    伊達政府委員 私の承知しておりますところでは、海運協定交渉が始まります前でございますが、中国を訪問いたしました河野参議院議長に対して周恩来総理から、周遊船の往来について取り決めを結んだらどうかという示唆があったように聞いております。しかし、中国側の提案内容はきわめて漠然といいますか、しているものでございまして、貨客、旅客船の往来と相手国の港における待遇といった、本来海運協定というものにおいて処理されるべき事項を多く含んでいる要素があるのではないか。したがって、海運協定交渉が妥結いたしました現在におきましては、周遊船について新たな取り決めを結ぶ必要があるかどうか、周遊船取り決めに含めるべき海運以外の事項というのは、どういうふうな観点から処理したらよいか再検討する必要があるのではないか、そのように考えております。
  86. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまおっしゃったことは、海運協定の中に含まれてしまう、こういう立場で検討する、こういう意味でございますか。
  87. 伊達宗起

    伊達政府委員 海運協定の中に含まれてしまうということではございませんで、周遊船というのは一般の旅客、貨客船と異なりまして、やはりそこに文化交流的要素でございますとか、そういう要素を含んでおりますので、入国、上陸手続等も一般船員並みにはいかないのではないか、むしろそういうことを中国の方では考えておって、そのような取り決めを結ぶとすれば、それはやはり海運協定のうち外にはみ出すものであろうというふうに考えておる次第でございます。  ただし、入港でございますとかその他の点につきましては、この海運協定規定されているところでございますが、周遊船という特殊な性格にかんがみまして、この海運協定以外の面も出てくるのではないか、さように考えております。
  88. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、その問題をもう少し詰めますと、海運協定以外の新しい協定取り決めを必要とする可能性があるかもしれない、それは向こう側とのお話し合いによる、こういう意味でございますか。
  89. 伊達宗起

    伊達政府委員 そういう意味でございます。
  90. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 本協定の中に、第一条でありますが、「「船舶」とは、商業的目的のために旅客又は貨物の海上運送に従事する商船をいう。」となっております。これは社会主義諸国における交渉の際にいずれ問題になると思いますが、商業目的のためと認定されるその認定者及びその基準は、相手国側に対してはどのように判断しておるのか。つまり、商業目的と言いながら商業目的でないという多数のケース、そうしたことが後刻の紛争の種になったケースは幾つもあるように思います。たとえば商業目的であると言いながら、ミサイル発射のための定点観測船であるとか、それから原子力潜水艦の位置を表示するためのレーダー標的船であるとか、あるいはその他の軍事目的の船舶が商業目的と称して出てくる、そして領海のところまで進出してくるというので、アメリカ及びソビエトにおいてはこの種の紛争が絶えないわけであります。これをどう評価されておられますか。
  91. 伊達宗起

    伊達政府委員 この第一条の定義上の商業目的のためにと、旅客または貨物の海上運送に従事するものということでございまして、この場合、条約で「商業的目的のために」と書いてございますのは、真に旅客、貨物を運送いたしまして、その運賃収入というものによりまして営業を営む商船ということでございまして、御指摘のような、商業目的という偽りの口実のもとに、そのような活動を行うものは全くこの協定の対象外であるというふうに了解しております。
  92. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 どうやら詰めてなかったらしいですからもう一回言いますよ。偽りかどうかを、商業目的のためにとはだれが確認して、だれが判定するのか、それが明確でないわけですね。ですから、向こうは商業的目的であると言う、こちらは商業目的でないと言う、そういうような騒動が起こりかねない。だから早い話が、プエブロ号の事件が北朝鮮とアメリカとの間に起こった際、これは非常に特殊な例で言うわけでありますが、明らかな電子偵察船であると評価され、敵意があると見なされた。ところが商品も多少運んでおる。それから確かにお客も運んでおる。営業収入も一部は上がっておる。軍人もいる。ほかの目的も持っておる。観測もやっておる。軍事観測もやっておるとなりましたら、一体この商業的目的というのは、あなたはいま、真に商業的目的、真に運賃収入を営んでいる商業船などというふうに、まるで憲法解釈のごとき言辞を弄されましたけれども、ちょっとそれだけではぐあいが悪くありませんか。そこをどうなさいますか。
  93. 伊達宗起

    伊達政府委員 この協定におきましては、そのようなスパイ行為を行う船舶ということは、もちろん協定の対象外でありますと同時に、日中間におきまして、お互いにそのような行為は行わないという信頼関係の上に立って、この協定を結んでいるものであると私どもは了解しております。
  94. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 逆に日本側の船が逮捕されたとします。そうしてスパイが乗っていたと向こう側が述べたといたします。責任は外務省はどの程度おとりになるおつもりであるか。たとえば一人スパイが乗っていたと向こうから言われてしまったとします。それは商業目的でない、この海運協定の範囲以外である、それはどうぞつかまえてくださいというふうに外務省は言うのか。外務省当局は、大使館を督励して、いや、それは誤解です、これは海運協定の中ですというふうに議論を進めるのか、それはどちらの方向でおやりになるのですか。
  95. 伊達宗起

    伊達政府委員 御指摘のような、いずれの場合におきましても、この海運協定上の問題ではないと思います。もしそのような事態中国側の行動によって起こった場合、つまり日本の船員がスパイであるといってつかまるとかというようなことになりました場合には、当然のことながら外務省といたしましては、その救済に全力を尽くすという覚悟でございます。
  96. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 やはり相互に信頼関係が完全に成立していたら、協定というのはあまり要らないというのが普通ですね。こういう協定が要るということは、信頼関係を欠くような事態のときの防波堤になろうかと思うのです。ですからその辺をもう少し詰めて今後お考えをいただかなければならぬと存じます。  一般に世界の海運国では、二様のタイプがあると言われておりますが、ノルウェーとかギリシアのように、自国貿易を基礎に置かないで、三国間貿易に進出して運賃で外貨をかせぐタイプ、もう一つ自国貿易を基礎にいたしまして、自国船で運ぶことによって海運業を固め、収入を上げていくというタイプであります。いま中国とこの協定を結ぶにあたって、中国をどちらのタイプの海運国と見ておられるのだろうか。その辺がまず問題だと思うのです。これは明らかに多国間貿易でもうけるということを主力にしたのではなく、自国生産品、自国に許されている商品、物に対する考え方というのが主力になってこの海運協定は結ばれたのではないかと思われますが、その辺の御判断はどうですか。
  97. 浜田直太郎

    浜田政府委員 世界の海運国の間に、いわゆる海運自由の原則ということで、これはOECDの自由化規約にもあるところでございますが、そういう原則をとっております国と、それからいわゆる自国自国船主義というようなことで、自国貿易物資のある程度のものは自国の船に積まなければならぬ、そのためには政府が海運活動に介入する、こういうような立場をとっておる国とございます。先生御指摘のとおりであると思います。私どもの知る限りにおきまして、中国はどちらかと言えばそのあとの方の考え方に属する国であろうかと思います。したがいまして、先ほどの正森先生の御質問にありましたように、今後日中の海運活動を両国がどのようなぐあいに協調をしてやっていくかということにつきましては、相当大きい問題があると思いますので、これらを含めて適当な機関で、民間同士の話し合いで十分に相談をしてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  98. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 問題点が浮かんできたようですからもう一つ申し上げますが、そうすると、国連に復帰してから中国の通商相手国というのはAA諸国から中南米まで広がってきた。扱いトン数というのも年間三百万トンクラスにまで広がってきておる。ところが、それがもう一息ふくらんだといたしますと、日本船と競合をする時代というのはたちまちやってくるだろうと思います。従来のような中国船舶に対する考え方ではとても追いつかないであろう、やがてタンカーにも進出するであろう、やがて外航貨物船が膨大に出てくるであろう、あるいはコンテナ船が登場するであろう、こうなってくるわけであります。  その場合に私が心配しているのは、お話の中で、これは海運市況が現在余りよくない時期に当たりましてこの協定が結ばれたわけだけれども、大きな穴がぼこんとあいているのは両者の運賃収入に対する紛争で、これはもうはなから出てくるであろうと思われます。と言いますのは、ソビエト船舶の場合、日本国内に入ってくるソ連船というのは非常に少なくて、問題は依然として少ないままに推移しているわけでありますけれども、最近はまたそうでもないのですが、もし、たとえば海運運賃というものが非常にダンピングされてきた場合どういうようにするか、そういうときの交渉はどうするか、こういうような海運運賃、貨物運賃に対する規定がないということは、紛争要件が非常に大きく残っておることを示しておりますが、その点ではどのようにお考えになりますか。
  99. 浜田直太郎

    浜田政府委員 お答え申し上げます。  中国は、御承知のとおり経済体制、社会体制を異にしておりますので、したがいまして、運賃等につきまして自由主義諸国とその原価計算の方法その他いろいろなことで異なっておりますので、両国船舶が海運活動に従事します場合に、運賃率等についての考え方、あるいは具体的な折衝等におきまして変わった考え方が出てくるということは当然予想されるところでございます。これらの点を含めまして、これは民間の適当なる機関がお互いに誠意を尽くして話をし合うということがまず第一でありまして、現に、中国と経済体制の似ておりますソ連と日本の海運業者の間におきましても、さような交渉をしんぼう強くやっておるわけでございます。  で、今後、中国日本との海運活動が非常に盛んになってまいることが予想されるわけでございまして、本件に関する日本の海運業に与える影響ということも一つ心配されるわけでございますけれども、いまのところは、わが国貿易量におきまして、日本中国との間の貿易量というものはさような打撃を与えるという程度の数字にはまだなっておりませんので、今後両国の経済活動が活発になるに従いまして、あるいは船をつくっていくというようなことになるかもしれませんし、そういうようなときに、それらの問題も含めて話をし合っていく、そのことのためにこの協定の十一条にありますところの政府間の協議をまず始めまして、そうして筋道をつけて民間の話し合いに任せていきたい、かように考えておるわけでございます。
  100. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなたのおっしゃることは少し一般的に過ぎるんじゃないかと私は思います。たとえば、民間の適当な機関同士が話し合うといまおっしゃいました。先ほど外務参事官の方ですでに仰せになりましたように、中国側に民間というものは存在しないわけですね。ですから、こちらの民間会社が話し合うといったって、大体その話し合う相手がおりませんですよ。それから中国とソ連とでは状況が全然違います。ですから紛争が起こった瞬間に――この海運協定協定のかっこうはしておりますけれども、その辺が押えられていない、後に問題を残すという面が非常に大きくあるんじゃないかと私は心配しておるわけです。  したがってこの交渉をするに当たって、ある種の国に行われております運賃に対する協定ですね、運賃協定のごときものも織り込むか、それでなかったら補足的に考えなければ、これはめんどうな話し合いになるのではないか。常時日本船の方が非常に高価格で来る、向こうは低価格で来る、こうならざるを得ないのではないか。それを心配しているわけなんです。その辺はどう思われますか。
  101. 浜田直太郎

    浜田政府委員 日本はいまのところいわゆる海運自由の原則、これは簡単に申しますと、海運活動に対して政府が介入をしない、こういうたてまえの考え方でございます。したがって、運賃等に関しまして政府間が協定を結ぶというようなことは目下考えておりません。  それから先生御質問の第一の、民間同士と申します中国側の民間につきましては、確かに政府のコントロール下にありますところのものでありますが、あるいは中国租船公司でありますとか、あるいは中国遠洋運輸公司でありますとか、いろいろな機関が中国の方にもありまして、そういうような団体と私どもの方の適当なる民間の機関とが話し合いをする、かような意味で申し上げたわけでございます。
  102. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今度は外務大臣に伺いたいのですが、日本の四十八年の海運国際収支というのは、受け取りで約三十億四千万ドル、支払いが四十四億四千万ドル、差し引き合計しまして、現在十四億ドル赤字になっているということであります。四十七年度も赤字で八億四千万ドル程度でありますから、約五〇%近い赤字の拡大が行われた、こういう状況にあるわけですね。  そこへまた、この二月六日付の報道によりますと、ソビエトの新型コンテナ船が、五月から日本と北米大陸を結ぶ太平洋定期航路に就航するということを申し出ているそうであります。ただいま申された海運自由の原則によってこのソビエトのコンテナ船が乗り込んでくる。ソビエトのコンテナ船はいままで非常に能率の悪いものであったから、単価が二割程度安くても問題にはならなかったけれども、ここに入ってくるコンテナ船は大変優秀なものだそうでありまして、七百五十個積みの新鋭コンテナ船で、スピードも非常に早く、ソビエトの極東船舶公社FESCOの改造船であると述べておりまして、日本の大手海運各社との競合というのが心配されているわけであります。  いま日中友好平和条約を初めとする日中関係の拡大がぐいぐい行われていると同時に、片っ方ではこういうことが起こってくる。で、もう一方では、今度は熊野灘にきょうはソビエト漁船団がやってきて魚を大量にとり始めたという報道もある。私は前の委員会でも申し上げましたけれども、ソビエトに対する対策というのはこれでよいのかということです。こういう状況に対して黙っていれば民衆の権益というのがだんだん侵されてくる。わが国企業のいろいろな点が打撃を受けてくる。それをガードしていないというのはどうかと一つ思うわけです。  もう一つは、中国それ自体がソビエトと同じような立場で今後こうした形に進出してきた場合にどういう対策を立てるか。この二つの大きな命題があると思うわけです。私はその意味大臣に、どう判断していただくか、いま対応策についてどうお考えかを伺いたい、こう思っておるわけです。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、わが国貿易外収支は逐年赤字が増大しておりまして、政府見通しによりますと、四十九年度の貿易外収支の赤字はたしか六十億ドルでございます。その中でやはり海運の赤字というのはただいま御指摘のように相当大きなことになりまして、それも逐年増大をいたしております。これは、結局邦船による積み取り比率が低下をしていくということ、しかもわが国貿易量が大きくなってまいりますから、それだけ海運収支の赤字が大きくなってくる、こういうことで、政府におきましても逐年、ずっといわゆる政府の助成による造船等々に努めてまいっておるわけでございますけれども、いろいろな観点、給与の問題もございますが、だんだんわが国の海運業の国際競争力というものがいわゆる追い上げに遭っておるというようなのが実情でございます。これはこれとして海運対策を講じていかなければならぬわけでございますけれども、もう過去十何年この傾向はなかなかとまらないというのが実情でございます。しかし、海運業は先ほどから政府委員からも御答弁がありますように基本的には自由なものでございますから、結局いろいろな方法によって、わが国の競争力を損なわれないようにするというのが基本であろう。よその国が海運業に入ってくるということそれ自身を、何かの方法で防ぐということはそうやさしいことではございませんし、わが国の競争力を伸ばすということに結局尽きるのではないだろうかというふうに考えます。  また、それとの関連で、ソ連の漁業、わが国の近海における沿岸近くの漁業の点のお話がございました。基本的には公海における漁業であるということでございますけれども、しかし、わが国の従来の伝統的な漁場である、あるいは産卵場でありますとなおさらでありますが、そういうところへソ連の漁船がしかもトロールで入ってまいりまして、わが国の漁民に、財産上の損害はもとよりとして、いろいろな好ましからざる紛議のようなものを生むということは、これはもう日ソ両国友好関係からして好ましくないことであると考えまして、先般もソ連の外務大臣にそのことをお話しし、ソ連としても、すでに日本漁船と競合するような地域での出漁を差し控えるようにということを漁業省から現場に通達をした由でございます。でございますが、それがなかなか徹底していないということでございますので、つい先ごろも周知徹底方をソ連側に要望したという事実がございます。及び、このような問題について日ソ間で何かの取り決めをしようということは、すでに従来から基本的にはソ連も合意をいたしておりまして、専門家会議をやっておるわけでございます。先般もグロムイコ外相にこの取り決めを急ぎたいと申しまして、それには異存がないということであったわけでございます。取り決めができますともう少し事態は改善されるのではないだろうか。  渡部委員の基本の御質問は、ソ連という国と領土という問題はあるけれども、これは非常に大事な問題だが、やはりそれはそれとしていろんな問題について十分話し合いをしなければ、いろんな意味わが国に対して経済的になかなか力の強い国でございますから困ることがあるではないか、そういう御主張だろうと思う。それは私もそのように考えていまして、日ソ外相の協議の場というのはそういうことのためにも活用してまいりたいと考えております。
  104. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、いろいろお答えいただいたわけですが、熊野灘におけるソビエト漁船団の操業なんという問題についても、この傾向が明確になりましたら、これについては出漁差し控え、その他いままでソビエト側に申し入れたあれをもう一回ソビエト側に意思表示をされるおつもりがありますか。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はしばしばやっておりまして、ソビエト側が漁業大臣の名で、極東の何と申しましたか何かそういう方のソ連の役所がございまして、そこへ漁業省からそのような通達を出してくれたわけでございます。それは進歩であったわけでございますが、どうもそれが現地の船団にもう一つよく徹底周知されていないという形跡がございますので、二月の初旬でございましたが、もう一遍周知徹底方を実はソ連政府に申し入れまして、また最近申し入れたいと実は思っておるわけでございます。
  106. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このコンテナ船の日本-アメリカ航路就航に対しては、どういう対策が関係当局では考えられますか。これはもうどうしようもないというふうにお考えでございますか。
  107. 浜田直太郎

    浜田政府委員 ソ連のFESCOという会社が、先生先ほどお申しになりましたような船でもって、新しく太平洋のコンテナ輸送に従事するということは私ども承知いたしております。御承知のように、コンテナによる海上輸送につきましては、世界の主要航路におきましては大体同盟というものがありまして、そこで各国が一定の運賃率のもとに海運活動をやっておるわけでございますが、何分FESCOというものの今回の参入は新しく入ってまいったということもありまして盟外活動ということになっております。したがいまして、同盟サイドといたしましては、今後FESC ○の活動をどうするかということについて、実は率直に申しまして頭を痛めておるわけでございますが、日本ももちろんその中の一員でございますけれども、その同盟を構成いたしておりますところの各国とそのFESCOというものとが、今後話し合っていくということになろうと思います。見通しにつきましては、いまのところはっきりしたことはちょっとわからない状況でございます。
  108. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では私の質問は本日はここまでにいたします。
  109. 栗原祐幸

    栗原委員長 永末英一君。
  110. 永末英一

    ○永末委員 今回の日中海運協定の第二条で、お互いの了解として、締約国のどっちか一方の国旗を掲げる船舶でその国の発給した船舶国籍証明の書類を備えているものはその国籍を有する船舶と認める、こういう条項があるのでございますけれども、これは何も日本中国との間に限らず、日本国はどこの国とも、海運協定なり通商航海条約なり結んでおる場合には、こういう考え方でございますか。
  111. 伊達宗起

    伊達政府委員 いずれの海運国との間にもこのような考え方で処理しております。
  112. 永末英一

    ○永末委員 青天白日旗と呼ばれている旗がございますが、この旗を掲げた船はどこの国籍を持つ船でございますか。
  113. 伊達宗起

    伊達政府委員 この協定上、お互いに船籍を認める相互互認の規定でございまして、海運協定を結びますどこの国との間におきましても、国旗を掲げる船舶をお互いにその国の船舶であると認めるということを取り決めているわけでございます。青天白日旗というものを掲げて入ってくる船があるそうでございますが、そういう船につきまして、このような取り決め規定はございません。したがいまして、協定上別にそれを国籍と認めているというようなことはございません。かつまた、日本国法令上は、協定のないところから、協定のある国以外のところから来る船舶にいたしましても、海運自由ということでございまして、別に入港等において差別は一切しておらないというたてまえに立っている次第でございます。
  114. 永末英一

    ○永末委員 青天白日の旗を掲げた船がわが国の港へ入港している実績をひとつ知らせてください。
  115. 浜田直太郎

    浜田政府委員 一九七三年度におきまして、中国及び台湾船舶入港の実績が法務省の調査によってございますが、中国船入港数が三百八十八隻、それから台湾船の入港数が一千九十三隻、こういうことに相なっております。
  116. 永末英一

    ○永末委員 日本開港の数は相当ございますけれども、同じ港に五星紅旗を掲げた船と台湾の旗を掲げた船とが一緒に在泊をしているということはございましたね。
  117. 浜田直太郎

    浜田政府委員 日本の港の二十四港におきましてさような実績がございました。
  118. 永末英一

    ○永末委員 中国の船が入港しようとする場合に、すでに台湾の印をつけた船が在泊をしておる、そのことを認めても別段何も言わずに、それにかかわることなく黙って入港してまいりましたか。
  119. 浜田直太郎

    浜田政府委員 海運の自由の原則と申しますのは、政府が海運活動に関与しないということでございまして、したがって、いかなる国の船舶でありましょうとも、原則といたしまして、入港する場合に差別を設けるということをいたしておりません。これは港湾法の十三条にも明記してあるとおりでございます。したがいまして、台湾の船と中国の船とが同時に港に入るということはあり得るケースでございまして、現に横浜あるいは神戸大阪というような大きい港では、そういう事実がいままであったわけでございます。しかしながら、両方の船にトラブルがあってはいけないということでありますので、先ほどからお答え申しておりますとおり、航路別のバースを設けて、中国及び台湾の船が隣接をするとかあるいは背中合わせになるとかいうようなことを、努めて避けるように配慮してまいったということでございます。
  120. 永末英一

    ○永末委員 私の伺っておるのは、中国の船が入ってこようとする場合に、すでに台湾の船がその港に入っておった、しかし、何も言わずに、それに関することなく入ってきておるのか、それとも何か物を言って入ってきておるのか、そのことを伺いたいのです。
  121. 浜田直太郎

    浜田政府委員 何も言わないで入ってきております。
  122. 永末英一

    ○永末委員 その台湾の船というのは、全部民間の船でございますね。
  123. 浜田直太郎

    浜田政府委員 原則的には民間の船と承知いたしております。
  124. 永末英一

    ○永末委員 さて、いまは海にある港の話でありますが、空港の問題について伺いたいのでありますけれども、かつて昭和四十九年四月二十日の大平外務大臣の談話が発せられるまでは、台湾の中華航空という会社の飛行機がわが国の空港にも着陸をしておりました。この中華航空は民間会社とお認めですか。
  125. 薄木正明

    ○薄木政府委員 民間会社でございます。
  126. 永末英一

    ○永末委員 この中華航空の飛行機の機体に、先ほど申し上げた海の場合に台湾の船がつけている旗と同じ印がついてございましたね。
  127. 薄木正明

    ○薄木政府委員 ついてございます。
  128. 永末英一

    ○永末委員 あの印は、外務大臣、何なんでしょう。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはしばしば御議論になりましたように、わが国は現在、過去と異なりまして、台湾を国であるというふうには考えておりませんので、わが国の認識から申せば、国旗であるということは申せないというのが現状でございます。
  130. 永末英一

    ○永末委員 昨年二月二十七日の本委員会で、大平当時の外務大臣は、私の質問に対して次のように答えました。私の質問は、青天白日旗という旗がございますが――中間を略しますが、それは台湾を中華民国として承認をしておる国やあるいは中華民国といっておる台湾当局にとっては国旗なのかと聞きましたところ、大平外務大臣答弁は、「いうところの青天白日旗が国旗でないなどという潜越なことは私ども申したことはございません。」こういう御答弁でございました。ところが、約一月半たちまして、四十九年の四月二十日の航空運送協定の署名が行われました後の大平外務大臣の談話の中では、このポイントについては次のようになっておるわけでございまして、「日中共同声明が発せられた日以降、台湾の航空機にある旗の標識をいわゆる国旗を示すものとして認めていない」、こう言ったわけです。この二つの表現には外務大臣は違いがあるとお思いですか、思われませんか。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは実は永末委員がよく御承知のとおり、大変むずかしい問題を御提起になっておるわけでございます。つまり、わが国の認識としてはこれを国旗と考えていない、しかしながら、いわゆる台湾を国家として認めている国はたくさんあるわけでございますから、それらの国にとっては台湾は国家であり、そしてそのものは国旗である、こういうことは客観的な事実としてはある、そのことをわれわれは知らないわけではございませんけれどもわが国の主体的な認識から言えば、それは国旗であるとは考えない、こういう趣旨の大平外務大臣答弁であったと記憶をいたします。
  132. 永末英一

    ○永末委員 先ほど船舶の場合には、台湾に所有権があると思われる船舶には旗が立てられて、それが日本の国に入港してくる。もしこれらの船の中で国際司法に関する問題や、あるいは日本の管轄権がこれに及ぶような問題が起こった場合に、一体われわれはどこと交渉するのですか。その船籍のある当局というのは、恐らく私は台湾であろうと思いますけれども、どういう用意を政府はされておりますか、そういう問題が起こった場合。
  133. 伊達宗起

    伊達政府委員 具体的にその台湾籍の船に関しましてどのような問題が起こり得るか、また先生がどのような問題をお考えになっておるかわからないわけでございまして、一般的な御答弁しかできないと思いますけれども、実務上、もし台湾当局と話し合わなければならないような問題が生じた場合には、その台湾当局と連絡をとって処理する以外に方法はないのではないかと思われます。
  134. 永末英一

    ○永末委員 先ほど海の港の場合には、台湾を表示するような印のかいてある旗を立てた船があっても、五星紅旗をつけた船はそういうものに関せずして、何らそれに物を言うことなく入港してくる。外務大臣、空はそういうわけにいかぬのですか。空港の場合には海の場合と同じようにいきませんか。
  135. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは恐らく海の場合には、長いこと、数世紀よりもっと長い期間でございますけれども、長い伝統がございまして、先ほどからしばしばお話の出ますように、だれでもどこの港に入ってもいいという、海運自由というものが本来伝統的に存在しておったというふうに考えるわけでございます。ですから、どういう船籍であろうと、そういうことは問わない、もともと入れるのが本来であるという長い間の伝統、慣習法もあったと思います。ところが航空の場合には、御承知のように、これが比較的最近の出来事でございますために、いわゆる飛行場を設けて、そこへ外国の籍の飛行機が入ってくるというときには、御承知のように航空協定を結ぶ。それによっていわば主権の一部を外国の利用に開放するというように航空というものは観念されておるようでございます。  したがいまして、航空の場合にはいわばナショナルキャリアというようなものすら観念されておる、そういう意味では沿革的に、また過去の歴史から、港というものと飛行場、空港でございますか、海の港と空港というものが違うふうに認識されておるということが私は基本にあるのではないかと思っております。
  136. 永末英一

    ○永末委員 そういうことになりますと、海の船と同じ印をつけている航空機は日本の空港には入り得ない、こういうことを外務大臣は自認をされますか。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中国側と航空協定を結びましたときに、わが国政府の考え方として、いわゆる青天白日という表示をした航空機が、中国の航空機と同じ空港を利用するということはやはり避けた方が適当である、基本的には政府はそのような政策をとったというふうに理解をいたしております。
  138. 永末英一

    ○永末委員 空港の場合には政府政府とが航空協定を結んで、そして日本から言えば、日本の主権行為があってよその国の航空機が入ってくる。その主権行為があるというところがひっかかっているのじゃないかと思いますが、もし台湾の場合、日本の空港設置会社、あるかどうか知りませんが、そういうものがあって、それと台湾の、先ほど民間航空だという話がございましたが、それとの協定が結ばれた場合には、いまのような過去一年やってきた措置について抵触するのですか、しないのですか。
  139. 高島益郎

    ○高島政府委員 外国の航空機が日本入港するに当たりましては、先ほど大臣からお話がありましたとおり、原則としてはその国との間に航空協定締結して、これに基づいて運輸大臣が航空機の入港を認めるということになっておりまして、ただ例外的に、必ずしもそういう国際協定によらないで、航空法の規定に基づく運輸大臣の権限のもとで外国の航空機が日本に入ることはあり得ます。したがいまして、常に必ず政府間の協定がなければ、いかなる国の航空機も日本に入れないということではございません。  しかし、原則はそういう協定に基づく取り決めがまず原則であって、例外的に航空法に基づく運輸大臣の権限のもとで認められることがあるということでございます。
  140. 永末英一

    ○永末委員 いま局長のお話では、航空協定なくしても入り得る面が開かれておるというのですから、すでに海の港が歴史が古いから、そうして空の港は歴史が新しいからということにこだわることなく、未来を見たら同じことですよ、期間はどっちも無窮ですから。永遠の親善をやろうと言っているのですから。そっちへ視点を置いて、でき得る努力をしていただきたいと思います。  もう一つ伺っておきたいのでありますが、昨年の暮れに、モロタイにおりました中村輝夫と呼ばれておった元日本軍人が三十二年ぶりに世の中へ出てまいりまして、これは台湾へ帰還をしていきました。この帰還のために日本政府が払ったものは帰還手当が三万円、それから未支給給与金が三万八千二百七十九円、政府の見舞金が二百万円というのですが、帰還手当とか未支給給与金というのはいかにも常識から考えて少ない。いまの物価水準から見て少ないと思われますが、何を根拠にこれだけの金しか払わなかったのですか。
  141. 八木哲夫

    ○八木政府委員 お答え申し上げます。  一つは、御指摘ございました未支給給与金でございますけれども、これは旧未復員者給与法という法律がございまして、これによりまして未支給の給与の額が法定化されておりますので、これは現在の物価等から申しますと確かに御指摘のような問題あろうかと思いますけれども、法定化されておりますので、法律上はこれ以上はどうしようもないという問題でございます。  それから帰還手当でございますが、これは長年外地等で御苦労されました方がお帰りになりました場合の引き揚げされました方に対します援護措置でございまして、当初はございませんでしたけれども、引き揚げされた場合の当座のお小遣いというようなこともございまして、行政措置で毎年予算措置で額を決めているわけでございます。で、従来一万円、二万円ということで、四十九年度におきましては三万円という額になっておる次第でございます。  なお、中村さんの場合には、日本の方へ直接お帰りになりませんでしたので、本来はこの帰還手当三万円というのも支給対象にするかどうかという問題がございましたけれども、特別の措置ということで支給するということに決定したような次第でございます。
  142. 永末英一

    ○永末委員 その未復員者給付金というのは法定されているんですか。その法定された年月日はいつですか。
  143. 八木哲夫

    ○八木政府委員 法律は昭和二十二年の未復員者給与法でございまして、昭和二十八年にこの法律が廃止になっております。
  144. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、それは、その二十八年現在の金額を援用したんですか。
  145. 八木哲夫

    ○八木政府委員 さようでございます。  なお、二十二年にできました未復員者給与法がその後改正になりまして、在職した期間によって俸給の月額が違っておりまして、たとえば昭和十九年から昭和二十二年までにつきましては、俸給月額九円、それから昭和二十二年から二十四年は百円、二十六年から二十八年は千円ということで、それぞれの在職期間によります金額を合算した数字でございます。
  146. 永末英一

    ○永末委員 そのときの国家公務員の給与ベースは幾らで、いまは幾らですか。
  147. 八木哲夫

    ○八木政府委員 ちょっと現在、調べておりませんので、改めまして後ほど資料等で差し上げたいと思います。
  148. 永末英一

    ○永末委員 このあたりのことは、お答えがなければ質問は留保せざるを得ませんが、大体三十二年たっておるわけであって、その間、公務員の給与ベースは何千倍になっておるでしょうね。そうすれば当然、いま起こっておる現実の問題を処理する場合には――自分の方の俸給は何千万円になっても平気でもらっているわ、出てきた人には二十数年前のベースで払っているというのは、これは……。しかも、いまや日本国政府が保護し得ない地域におる人についてそれを適用してやっておるというのはどうも……。日本法律の国かどうか知りませんが、常識の世界ではうなずけないし、恐らくはこの中村さんの周辺の人々は、日本国政府というのは一体何だろう、こう思っておると私は思います。ある意味では、日本国というのは台湾を植民地にしたことがございますけれども、その植民地におる若い人々を戦争へ駆り出しておいて、それがようやく命長らえて帰ってきたという場合に、二十数年前の法律を適用して、そして現行の貨幣水準からは全くびっくりするようなものを払って責任逃れをしていると思われたら、外交上、外務大臣、大問題ですね。あなたおかしいと思われませんか。
  149. 八木哲夫

    ○八木政府委員 現在、廃止になっております未復員者給与法は、昭和二十八年に廃止になったわけでございます。そこで、その後、未帰還者留守家族等援護法等に引き継がれまして、法律的には、むしろ留守家族の方がおられぬではないかということで、過去七年以内の生存資料がある方、この方々には、留守家族手当ということで、現在も公務扶助料なりあるいは遺族年金の額に見合いました留守家族に対する手当が支給されております。  それから、その後の状況等で生死不明というような方々につきましては、戦時死亡宣告というような制度を設けることによりまして、御遺族ということによります公務扶助料なりあるいは遺族年金の額というのが支給されているというような実情でございまして、これは非常に古い、昔の話になるわけでございますけれども、昭和二十八年当時、そういう措置をとることによりまして、未復員者給与法が廃止されまして、留守家族援護法なりあるいは、これは恩給の問題でございますが、恩給法なりあるいは戦傷病者戦没者遺族等援護法等の年金に引き継がれたというような経過でございます。
  150. 永末英一

    ○永末委員 私の質問に直接お答えがないのでありますけれども、その留守家族援護法でやっているというんだったら、中村さんの留守家族、死亡認定が行われておったようでございますが、その遺族に対する金は払いましたか。
  151. 八木哲夫

    ○八木政府委員 現在の恩給法なりあるいは援護法なりあるいは未帰還者留守家族等援護法、これは日本国籍を持っておる方を対象にしておりますので、中村さんの場合には台湾でございますので、支給されておらないという実情でございます。
  152. 永末英一

    ○永末委員 中村さんは主観的には、今度発見されるまで自分は日本人だと思い、そして日本人としての行動をしてきたわけである。ところが、彼が信じておった日本国政府側は、いやお前はもう前から日本人でなかったのだ。そして、勝手に、法律を廃止したときの二十数年前の基準で金を払って責任を逃れる。これはあっち側には納得できませんでしょうね。政治問題として外務大臣、これくらいの処置で、いまの貨幣水準で二百六万円程度を支払ってそれでチョンということで、台湾の人々がああ、日本国政府というのは公正にして非常にいい政府だ。あるいはそれをつくっておる日本人はいい民族だと思っておると思われますか。
  153. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと私の記憶が多少不正確かもしれませんけれども、実はかつての日華条約では、台湾の人々がわが国に対して持っておるもろもろの請求権について、別途処理をしようということになっておりまして、わが国がその案をたしか当時出したことがあったように思いますが、相手側からそれについての返事がないままに、別途処理というものができない状態がたしか今日まで続いておるということがあったように思います。しかし、それはそれといたしまして、私もどうもいまの中村さんの場合に、永末委員と同じような感じを当然のことながら持ったわけでございます。何かいろいろわけがあるのであろうと思いながら、ついついどういう理由によってということを今日までたださずにまいりました。所管ではございませんけれども、どういうことであるのか、一度私もよく勉強してみたいと思っております。
  154. 永末英一

    ○永末委員 いま、外務大臣は、もうすでに効力はなくなっておりますが、日本と中華民国との間の平和条約の第三条関係について言及されたわけでございまして、われわれいま中国との間に日中友好平和条約をつくろうとしておるのでございますが、この台湾地域の人々の問題は、やがて中国の責任ある政府が引き継いでいくべき問題である。しかし、引き継いでいくまでの期間においても、日本国政府の処置が公正でなければならぬと私は思いますから、この問題を取り上げたのでございますが、いま中村さんの話だけを申し上げましたけれども、昭和四十三年四月二十六日、第五十八国会で、私ども民社党に所属をいたしておりました故岡澤完治議員が、台湾人で、日本の軍人軍属として戦死したり負傷したりした人の補償問題について質問いたしましたところ、外務省の金沢説明員は、これらについて、軍人軍属の俸給の未払い分は四万六千余件、金額にして約六千万円、それから死没された遺族に払うべき弔慰金はいま総数九千九百余人分、その金額約一千百万円、これは東京法務局に供託してある、こう言うのですね。そして、このことについては、日華条約の第三条に基づく特別取り決めで解決したいと思っておるけれども、その当時はできておらぬ、こういうことだ。いまもなおできておらぬままで、この日華条約は効力を失ったわけですね。
  155. 伊達宗起

    伊達政府委員 日華平和条約に定めます特別取り決めというのは、結局両国間で取り決められることなく日華平和条約が終了したということでございます。
  156. 永末英一

    ○永末委員 この条約日本国政府が有効だと思っておる間は、台湾地域内におきます元日本人の人々が日本国に対して持っておる債権、法的請求権というのは、特別取り決めが行われれば、やがてそれの補償は相手方、すなわちこの条約によれば中華民国と言われる政府当局が行うべきものだという予測はされておったと思うのです。ところが、いまその日華条約は効力を失っておりますから、言うならばわれわれ日本国政府、これは大日本帝国政府のあらゆるものを承継しているはずでありますが、その政府は、元日本人であった人々から直接に請求せられる立場に立っておると私は思いますが、どう思われますか。
  157. 伊達宗起

    伊達政府委員 元日本人であった台湾の人々の当時持っておった請求権というものは、日華平和条約が終了したことによって何ら影響を受けるものではございません。したがって、請求権は請求権として残る、そのように了解しております。
  158. 永末英一

    ○永末委員 もう一つ郵便貯金がございまして、郵便貯金も何ぼあるかわかりませんけれども台湾のある人が集めたら二、三カ月で一万余件も集まった、それの台帳は熊本貯金局にちゃんとある、こういう話なんですね。そうしますと、日本国政府は、いまの東京法務局に寄託してある金額あるいはまた熊本貯金局に明示されてある金額、これらはいま台湾におられる人々、元日本人の方方から直接に請求せられ得るもの、それをいま持っておるということですね。
  159. 伊達宗起

    伊達政府委員 ただいま御指摘になりました供託金ないしは郵便貯金と申しますものについての台湾の人の権利と申しますか、それは現在といえども残っておるということでございます。
  160. 永末英一

    ○永末委員 これは請求があった場合、どういう方法で支払ってあげるのですか。
  161. 伊達宗起

    伊達政府委員 その具体的な支払いにつきましては外務省の管轄でございませんので、実は私ども承知いたしておりません。
  162. 永末英一

    ○永末委員 外務省の所管でなかったら、どこの所管なんですか。貯金は郵政省でしょうが、法務局は法務省ですか。
  163. 伊達宗起

    伊達政府委員 貯金は郵政省であると思いますが、法務局の供託金に関しては、ちょっと私、法務省であるとはっきりここで申し上げることは差し控えさせていただきます。
  164. 永末英一

    ○永末委員 しかし、いまや外国人になっておる元日本人が、個人として日本という国家の政府を相手に請求してくる、これは外交問題ですな、いかがですか。
  165. 伊達宗起

    伊達政府委員 私人の持ちます請求権が直ちに外交問題につながるということではないと思います。したがいまして、いまの先生が御提起になっておりますようなケースにつきましては、やはりこれは一般国際法上の問題として解決するたぐいの問題ではなくて、日本国内法の問題によって解決されるべき問題であるというように考えます。
  166. 永末英一

    ○永末委員 国際私法上の問題は外交問題ではないのですか。日本国内法によって解決されると言っても、外国人は日本国内法によってカバーできないから外国人じゃないですか。いかがですか。
  167. 伊達宗起

    伊達政府委員 ただいま問題になっております台湾の人の私的な請求権というものは、国際私法の問題ではないと私は考えます。つまり、渉外事項ではあるかもしれないけれども、国際私法のかかわる問題でなく、むしろ私的な関係におきます――いまのケースで申しますれば、日本国国内法上それが認められる問題であるかどうか、そしてまたそれが認められるとすれば、どのように支払いが行われるものであるか、これはすべて日本国内法によって解決されるべき問題である、そのように考えるわけでございます。
  168. 永末英一

    ○永末委員 いまごろ法律の原論の議論をするつもりはございませんが、日本国内法日本国民に対して妥当する法律体系でございましょうけれども、外国人は、その体系に入る場合には何らかの外交ルートがなければ来られないじゃないですか。それは外交問題ではないのか、こう聞いておる。
  169. 伊達宗起

    伊達政府委員 そのような私的な請求の問題は、日本の裁判所に提起するなり、ないしは公的な救済方法というものはあるわけでございます。その手続を踏んだにもかかわらず何ら解決が行われないという場合に、外交問題として政府間の問題になっていく、そういうように考えております。
  170. 永末英一

    ○永末委員 あなた、政府政府との間の問題だけは外交問題であって、外国の個人と日本国政府との問題は外交問題でない、こう言っておるのですが、もともとこの問題は、相手方に政府があったと日本政府が思っておったときに解決しておかないから、いまやそれを政府と認めなくなって起こっている問題でしょう。ならば外務大臣日中平和友好条約を結ぶ場合には、われわれもまた、われわれと言うよりは日本国政府もまた、この台湾地域の主権は中国政府に属しておるのだということを認めて平和条約が結ばれるわけです。だといたしますと、その中国の版図に入り、中国人民となっていく人々の権利の問題について、そんなことは知らぬのだとは言われないと思います。その時期はわかりませんよ。有効に中国政府の管轄権が台湾地域に及ぶのがいつか私もよくわかりませんが、少なくとも永遠の日中親善、日中友好、平和条約を結ぼうというのなら、この点についての日本政府の腹固めをしておく問題ではなかろうか。戦後処理の問題は一つもございませんと申されましたけれども、いまや相手方の立場に立ってごらんなさいませ。どういう方法で自分の救済を求めるか、救済の道が閉ざされておる。そのことを日本政府は知りながら、何ら救済の道を開こうとしないということであっては、未来永劫にわたってわれわれ日本人は信用されませんよ。いかがですか。
  171. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことに恐れ入りますけれども、この問題は非常にむずかしい問題のように思われますので、私ども少し内部で意見を闘わしまして、できましたら次回までひとつ答弁を留保させていただきたいと思います。
  172. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣から留保の申し出がありますので、これを認めまして、私も留保いたします。  終わります。
  173. 栗原祐幸

    栗原委員長 河上君。
  174. 河上民雄

    ○河上委員 海運協定についてこの前御質問いたしましたので、その続きを少ししたいと思うのですけれども、いま永末委員が、台湾における旧日本兵の問題について提起されまして、いま外務大臣のほうから、この問題はちょっと検討する時間を与えてほしいということでございました。私、これは本論からちょっと離れるかもしれませんけれども、中村さんの場合には、たまたま出てこられたということで日本政府が若干の金を、その許す範囲でということで出されたようですけれども、中村さんが出てこられたときに、台湾の旧日本兵で日本からそういう補償をされた人は一人もいないということが朝日新聞の投書欄に出ていました。つまり、先ほど来お話がありましたように、台湾との間に特別取り決めでやるといったまま、とうとう日華条約が消滅したということで、いまだに実際にはだれもやっていないんで、むしろ中村さんの場合は例外的に行われたというふうに理解しなければいけないんじゃないかと思うのですが、その点だけちょっと確認したいのと、もう一つは、同じように旧日本兵ということでは朝鮮の人もあるわけです。これについては恐らく日韓基本条約取り決められるか、あるいは取り決めを今後協議するということになっていたんじゃないかと思うんですけれども、朝鮮における旧日本兵に対する補償の問題がどうなっているのか。日華条約の場合は、今後取り決めようと思っているうちに条約が消滅してしまったということですけれども、韓国の場合は、まだ現にこの条約が有効と政府は認めておるわけですから、その後、韓国の方で実際にどういうふうにしたのか、そういうふうなこともあわせて御検討いただきたいということを、ちょっとついでのことで恐縮ですけれども伺いたいと思います。
  175. 高島益郎

    ○高島政府委員 台湾地域とのいわゆる特別取り決めは、日華平和条約第三条でそういう合意がございまして、自来、日本政府はしばしば台湾側に督促いたしまして、早く協定締結したいという主張をいたしたわけでございますけれども、先方の方はこれに最後まで応ぜずに、ついに日中正常化を迎えたというのが実態でございます。  それから韓国との間におきましては、日韓基本関係条約等を締結いたしまして、日韓の正常化を図ったあの時点で、韓国との請求権、経済協力協定というものを結びまして、日韓間の一切の請求権の問題はこれで処理されております。その趣旨のことがこの協定に明記されておりますので、韓国に関する限りそういう問題は一切ございません。
  176. 河上民雄

    ○河上委員 恐らく無償三億ドルか何かの中でそれを処理することにしたのではないかと思うんですけれども、実際に一人一人の旧朝鮮における日本兵が、どういうような条件で補償されたかということを政府は確認しているのかどうか、また、朝鮮民主主義人民共和国の中で暮らしている旧日本兵に対してはどういうふうになっているのか、そういうふうなことについても十分にお調べをいただきたいというふうに私は思うのであります。
  177. 高島益郎

    ○高島政府委員 先ほどお答えしましたとおり、韓国との間では請求権協定で一切処理いたしておりますので、そういう支払いの問題は生じておりません。  それから北鮮との間におきましては、現在日本政府との間で白紙の状態にございまして、この方は、いつの時点でかは別といたしまして、将来、何らかの国交正常化ができた段階で考えなければならない問題というふうに思っております。
  178. 河上民雄

    ○河上委員 この問題はこの程度にとどめて、いずれまた改めて少し詳しく、いま大臣の御発言もございましたので、伺いたいと思いますが、きょうは一時半ぐらいまでにということでしたので余り時間がございません。  一つだけ伺いたいと思いますのは、海運協定締結に当たりまして、今後、日中の貨客船の定期航路というものが当然考えられると思うのでありますが、これについてどういうような見通しになっておるか。いろいろ情報によりますと、東邦輪船というところで、これについて中国との間に話し合いをつけたということも報道されておりますが、その実態について当局から少し詳しい御報告をいただきたいと思います。
  179. 浜田直太郎

    浜田政府委員 日中間の定期航路につきましては、旅客の定期航路と貨物の定期航路とございます。御案内のように、現在の海上運送法におきましては、これらの対外の旅客並びに貨物の定期航路につきましては現在届け出制ということになっておりまして、政府の権限が直接に及ぶというたてまえになっておりません。つまり、これらの問題は民間同士の話し合いによって行っていくべきであろうということであると思われます。日中の場合にも、したがって今回この協定ができました後、民間で適当に話し合って解決さるべき問題と思いますが、先生、先ほどの情報の件につきましては、私ちょっと承知しておりませんので、お許しを得まして外航課長をしてお答えせしめたいと思います。
  180. 富田長治

    富田説明員 先ほど先生がおっしゃいましたのは、恐らくこの間の「育華」とかいう船が日本横浜に参りまして、その件に絡んでのことではないかと思います。これはたしかオランダの船であったと思いますが、それを中国が最近購入いたしまして、それを日本へ就航させたということで、あるいは先生御指摘のとおり貨客船でございますが、日中定期航路開設近しというような言葉になったのではないかと思います。それでわれわれ実は中国にいろいろの筋を通して調べましたところ、中国は、本船はあくまで貨物船として日本に配船したんだということで、現に、正確に覚えておりませんが、たしか七人ばかり便乗者を乗せておりましたけれども、正規のお客様を乗せてきておりません。  それで中国が近い将来、旅客船を定期航路として日本に配船する可能性があるかどうかということにつきましても、中国の方にいろいろの筋を通しまして問い合わしているわけでございますが、何せこれからしばらく船員の訓練であるとかいろんなことをやっているので、まだいまのところはっきりした見通しを持っていないというのが中国の考え方のようでございます。
  181. 河上民雄

    ○河上委員 時間が一時半になりましたのできょうは私はやめて、また日を改めたいと思います。
  182. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来る二十六日水曜日、午後一時三十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時三十八分散会      ――――◇―――――