運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1975-02-19 第75回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月十九日(水曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小林 正巳君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 山田 久就君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 正森 成二君       加藤 紘一君    竹内 黎一君       土井たか子君    三宅 正一君       渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     大高 時男君         法務省入国管理         局入国審査課長 小林 俊二君         外務大臣官房審         議官      杉原 真一君         水産庁漁政部沿         岸漁業課長   平井 義徳君         通商産業省機械         情報産業局通商         課長      上田 利英君         海上保安庁警備         救難部長    山本 了三君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     毛利 松平君 同月十九日  理事石原慎太郎君同月十八日委員辞任につき、  その補欠として毛利松平君が理事に当選した。 同日  山田久就君同日理事辞任につき、その補欠とし  て小林正巳君が理事に当選した。     ————————————— 二月十八日  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間の延長に  関する議定書締結について承認を求めるの件  (条約第三号)  関税及び貿易に関する一般協定譲許表の変更  に関する第二確認書締結について承認を求め  るの件(条約第四号) 同月十五日  日中平和友好条約締結促進に関する請願(小  沢貞孝君紹介)(第五八三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  3. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣に、現下の外交関係の諸問題について、二、三許された時間で質問をしたいと存じますので、答弁を願いたいのであります。  第一番目の問題は、民青学連事件というものに連座をしたというわけで、過去十カ月間拘留されておって、一審でも二審でも有罪が確定して二十年間の投獄をされる、こういう判決最高裁上告をされておった早川太刀川の二人の学生が十七日わが国に帰ってきた、こういうことでありますが、この二人の学生記者会見をしております。そしてその記者会見で、民青学連事件でっち上げである、われわれは、韓国官憲のそうしたでっち上げの工作によってああいう事態になったんだ、こういうことを言っておるのでありますが、この連座しました二人の学生が言っておるでっち上げだという彼らの発言を、日本政府はどのように受け取っておられるのでありましょうか、まず、この点を承りたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二人の学生帰国をいたしましたことは、まことに喜ばしいことでございます。事件につきまして二人の学生がどのように述べておりますか、私つまびらかには存じませんけれども韓国の法律により、それに従いまして裁判を受けたものというふうに考えております。この事件内容がどのようなものであったかについて、外国で起こったことでございますので、私どもつまびらかにいたすことができません。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣がそういう答弁をされる気持ちはわかるわけでありますが、それは余りにも外務大臣としてちょっと私は承ることができない答弁だと思うのです。なるほど、早川太刀川の二人の学生記者会見でどんなことをしゃべっておるかわからぬとおっしゃる。それはそうだと思う。しかし第一、あなたが毎日、外務大臣として政治家として、新聞をお読みにならぬなんということはこれはあり得ないのでありまして、そんなことは私はとても承服できないのです。そこで、でっち上げだと言っておるが、これをどうお考えになりますか。率直に御答弁願ったらいいと思う。もう一度御答弁を願いたい。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二人の学生とも、長い間自由を拘束された状態にあって、それを解きほごされたわけでございますから、非常に平静な客観的な心境にあの直後におったとも必ずしも思われないことでございますし、そういうこともございまして、私、両学生の述べておられることは確かに新聞等でも読んでおりますけれども、その真意がどのようなものであったかについては、やはりある程度平静を取り戻した時点で、両学生判断を聞きますならば、またどのようなものであったか、そういうことも考えておかなければならないという意味で申したわけでございます。そのよう事態においてもなお両学生がそういうふうに言われるといたしましても、これはいわば被告立場にあったわけでございますから、それとしての主張というものは当然にあり得るということをもう一つ考えておかなければなりませんし、さらに、それを考えました上でも、なおよその国の中で起こりましたことでございますので、私どもとしては、韓国政府が法に従ってこの事件を処理してこられたというふうに信ずる、こういう立場をとるべきであろうと考えておるのでございます。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも私、納得できないのであります。いずれにしても、私も新聞を通じたことしか知らぬわけでありますが、たとえばこの早川太刀川日本人学生二人でありますけれども、他の被告といいますか、拘留されておった韓国人諸君、たとえば有名な金芝河という詩人等をも含めてたくさんの人が釈放されておる。そして韓国諸君は、早川太刀川という人が非常に甘かった、そういう言葉、あるいは軽率であった、だからわれわれがいろいろな迷惑を受けたんだというよう——これは新聞報道ですよ、そういうことも書かれておるわけでありますが、二人は、われわれがもし向こうの検察官の言うよう答弁をしないと、あるいは供述書を書いてこれを認めないと、おまえたちは死刑にしてやる場合もあるのだとか、いろいろ恫喝をされて、やむを得ず一審でも認めたんだ、こういうようなこと。そして上告のときはそれを翻すような文章を書いて上告をしたとか、いろいろなことが報道されておるわけでありますが、やはりでっち上げだとするならば——あなたはいろいろ言って逃げておられますけれども、私はでっち上げだと思うのでありますが、これは仮定論ですけれどもでっち上げだとするならば、二人が釈放されて日本へ帰ってくる、これは当然のことであります。当然だけではなしに、何もそうした事実がないにもかかわらず長い間拘留して、そして裁判と言えぬよう裁判のやり方をして二人を長い間拘留しておったということに対して、日本政府は当然抗議を申し入れるべきであると私は思いますが、そう思わないのでありますか。これも承っておきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般論といたしまして、一つ事件でっち上げであったかなかったかというようなことについて考えますと、これはわが国におきましても戦前、かつて有名なある事件は世間に大きく報道され、長いこと議論されましたけれども、最終的にはでっち上げであったというような、そのよう印象を持って終わった事件が、いま具体的な事件の名前を私は申し上げませんが、堂森委員恐らくすぐに御想像のおできになるよう事件が過去にございましたりいたしました。  したがって、自分の国で、しかも厳正な法のもとに行われたと考えられる事件でも、見ようによりましてはそのような批評を受けることがあるわけでございます。いわんやその国におきまして起こりました出来事、それを、しかも一応被告にあった人の立場からこうであったということがございましても、自分の国におきましてもわからぬことがあるわけでございますので、それがいわんや外国のことになりますと、なかなかそこには私は判断はできがたい。外国の法に従いまして適法に裁判が行われた、こう考えることが、私はまず第一義的にわれわれのとるべき態度ではないかと存じます。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、私は、韓国で起きたこの事件に、韓国人たちのみが連座したと言われて、そうした今日までの経過があったとするならば、われわれは、これは人道上非常にけしからぬといって憤慨もするし、批判もするわけです。しかし、外務大臣がこれに対して抗議を申し込むか、申し込まないかというようなことまで私はあなたに要求をしておるんじゃないのですが、これは日本人としての二人の学生がこの事件連座した、こういうわけで拘留されたわけでしょう。そして二十年という長期の懲役の判決を受けて、いまは最高裁上告中であった、そして釈放された、こういうことでありますが、しかしこの二人が日本人であるという場合、しかもこの二人は帰ってきて記者会見で言っておるのです。大使館日本外務省もわれわれに対して十分親切であったとは思っていない、これは新聞報道でございますよ。そういうことを記者会見等で言っておる。こういうのでありまして、まあ本人たちがどういう受け取り方をしたか、これは別にしまして、あなたは日本人の権利、そうした自由というものを守っていく最高の責任者である外務大臣であります。その外務大臣が、本人たちでっち上げだと言っておる、また私もそう思うのです。大部分の日本人もそう思っておられると思うのです。しかるに外務大臣であるあなたが、それはよそのことだからどうこうというような御答弁では、私はどうも納得できないのでありますが、それじゃ、抗議を申し込むことは全くないんでございますね。ほっておくんでございますね。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御本人方は一応被告立場にあった方でございますから、自分たち立場をディフェンドしよう、守ろうということは、私は当然のことだと考えるのでございます。むしろ、そうでございますがゆえに、その立場だけを聞いておってそれが全部であると考えるわけにはまいらないであろうというふうに私は思っております。  それで、日本の多くの人がそのよう印象を受けておると仰せられましたが、実はこの事件が何であったかということについてはわが国でもほとんど知らされていないわけでございますので、そのよう判断をいたします場合に、出来事が何であったかということを余りに知らないままで一般的なそういう印象がつくられている。私はそれを間違いだと申すわけじゃございません。合っているとも申しません、間違いだとも申しません。しかし、ほとんど事件を知らされていないわけでございますから、一般にそういう印象があるというようなことが、果たしてどのような根拠に基づくものであろうかと考えたりもいたします。  いずれにいたしましても私どもは、そうでないということがはっきりいたしません限りは、他国の法のもとに適正な法の運用が行われたと考えるべきだと考えておりますので、ただいまのところ、堂森委員の仰せられましたようなことを私といたしましては考えておりません。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは変えてお尋ねしますが、わが国大使館ソウルにあるわけでしょう。だから、この事件に対しては逐一本省に向かって報告されていなければならぬし、またそうであると思うのです。それではソウル日本大使館から外務省本省に対して、この事件は実際はこうなんだという、そういう的確な連絡はないのでございますか。あなたはわからぬというようなことをおっしゃいますが、御答弁願います。
  12. 高島益郎

    高島政府委員 わが方大使館といたしまして、事件真相そのものについてこれを究明するという立場にはございません。いままで被告でございましたこの二人の学生につきましてのいろいろな家族との面会、それから弁護士との連絡館員面会、こういった問題につきまして、終始誠意をもって処理に当たってまいったわけでございますが、事件そのものにつきましては、裁判への傍聴という形をとりまして、いろいろ事件経過裁判の過程を通じまして承知している。その内容につきましては詳しく報告が参っております。
  13. 堂森芳夫

    堂森委員 これも新聞報道でありますが、大使館からは、獄中にある、未決の中におる被告たちに対して、韓国けんかをするな、けんかをするなという連絡があった。けんかをすると、自分たちはまたどんな無理な判決等があるかもしれぬという不安からだと思うのですが、けんかをするな、けんかをするなという大使館からの連絡等もあったので、われわれはこの韓国側検察官が書いた供述調書というものを認めていかざるを得ないよう心境にもなった、こういう意味です。このとおりじゃないですが、そういうことを言っておるのですが、高島さん、いかがでございますか。
  14. 高島益郎

    高島政府委員 そのよう趣旨のことを二人の日本人が言われたということは新聞承知いたしております。しかし、私どもそういう趣旨の訓令を出したこともございませんし、また大使館館員のいずれも、そういうふうなことを申したことは全然ございません。それは事実に反することでございます。
  15. 堂森芳夫

    堂森委員 じゃもう一遍重ねてお尋ねしておきますが、この事件でっち上げでないという判断でございますか、あるいはわからぬのでございますか。高島さん、あなたは局長として……。
  16. 高島益郎

    高島政府委員 先ほど来大臣からるるお話ございましたとおり、私ども立場として、この事件真相を究明できる立場にないということでございます。
  17. 堂森芳夫

    堂森委員 あなたはそれでいいんですか。外務省大臣として、局長として、真相を究明することができない立場にある。そうすると、日本人生命財産と自由は守る義務はないのでありますか。それはおかしいじゃありませんか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の国民が、明らかに不当に外国によりまして生命の安全あるいは財産を侵されました場合には、これはわが国として保護をいたさなければならないことであると考えております。ただいまの事件の場合、これは検察側には検察主張があり、被告には被告主張があり、その上で裁判が行われておるわけでございますから、真相と申しても、検察側考えておる真相被告主張しております真相とは明らかに異なりますので裁判になるわけでございますから、その上で適正な裁判が行われた。適正な裁判が行われていないということでございますと、これは別でございますけれども真相というものが両方に分かれておるわけでございますから、少なくとも主張によりますと。したがいまして、その上での裁判が適正に行われていると考えます限り、私どもとしてそれをでっち上げだと断ずるわけにはいかない。そういう意味では、真相を知れと言われましても、真相両方に分かれて主張されておるということでございますから、よその国のことでもあり、真相の把握をするということは私どもとしてでき得ない立場にある、こう考えるわけでございます。
  19. 堂森芳夫

    堂森委員 あなた方そういうことで、私は非常に残念に思うのです。そんな答弁本当のことを言っていないわけなんです。実際はこの二人は、私の考えでは——これは私の考えですよ。太刀川という人はおそらく雑誌記者として取材に行っておったと思うのですね。そうして早川さんが通訳をしたとか、そういうことが本当じゃないかと思うのですが、とにかくあなた方は、韓国との関係というものについて余りに考慮といいますか、自分たちの国の主体性といいますか、主権といいますか、そういう問題について非常に遺憾な態度からの答弁だというふうに私は理解しまして、非常に遺憾と思うのです。  そこで、このたびの早川太刀川両氏釈放日韓関係がだんだん正常化するつの起一点になったというふうに解釈しておられますか、いや、まだそうではないんだ、こういうことでございますか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国といたしましては、二人の学生釈放されることを両国善隣関係の上から希望をいたしておったわけでございますので、ともかくもそのことが実現いたしましたことによりまして、従来ございましたわだかまりの一つが解消をしたという判断をいたしております。
  21. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまの答弁、なかなか考え答弁をしておられるわけでありますが、外務大臣、昨年の八月でございますか、金大中氏の事件について、これは日本側官憲が自信を持って、金東雲一等書記官がこれは連座関係しておったんだ、こういう立場から韓国側に強い要求をしたわけであります。昨年の八月、一方的に韓国から、これはもう打ち切りなんだ、こういうよう連絡があったのでございますが、いまも申されたように、この二人の学生釈放によって、日韓両国正常化への一つの問題がと、こう言って非常に考えて御答弁になっておられますが、この際、さらにこの金東雲一等書記官の問題についての確たる、わが日本官憲が納得できるような、あるいは日本の国が納得できるよう回答を求めるというようなことを改めてされなければいかぬと思うのですが、そういう態度に出られるのでございますか、そうでないのでありますか、これも承っておきたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、御指摘のとおり、昨年八月に韓国側から、金東雲氏について十分な容疑を確認することがその段階までできない、一応捜査を打ち切るという知らせがございましたが、同時に、なお新しい事実があればそれに基づいて調べを再開することがあり得るということであったわけでございます。  わが国といたしましては、わが国捜査当局が集めました資料より判断をいたしますと、韓国側捜査当局のそのよう結論に釈然といたさないものがございまして、したがいまして、御指摘ように、昨年も一度その点につきましてさらに回答をその後に求めておりますし、今年の先月の末、ごく最近でございますが、改めまして、わが国捜査当局の確認し得ました事実に徴しますと、韓国側のそのよう結論にはわれわれは納得をしていないということを申しまして、現在回答を求めておるという、これは先月の末でございますけれども、さらにそういう処置に出ております。
  23. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、先般そういう申し入れをいたしておるので、今回の両学生釈放になった状態において、さらにもう一度そうした回答を求めるよう要求をすることはしない、こういうことでございますか、するのでございますか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は一月の三十一日であったと思いますが、そのよう回答を求める照会をいたしたところでございます。
  25. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、前外務大臣の木村さんの当時、私が外務委員会で、昨年の秋、十月であったと思うのでありますが、質問しましたときに、日韓閣僚会議国内事情もあって、もちろん両学生事件もあったり、金大中氏の事件等もまだ解決していないということもあって、いまのところ近い時期にやることにはならぬというふうに考えておるということでございましたが、宮澤外務大臣は、日韓閣僚会議というものは、今回の両学生帰国問題等に関連して、わりあい早くなると考えられておりますか。あるいは従来のとおり、閣僚会議はまだやらぬというふうにお考えでございますか。いかがですか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日韓閣僚会議は一九六七年ごろであったと思いますが、開かれまして以来、数年間毎年続けて開かれてまいりました。韓国側としては、今回は韓国で開く番であるので、なるべく早く開きたいという希望を持っておられるよう承知をいたしておりますが、たまたまいろいろな不幸なことが両国間に起こりまして、開くに至っていないというのが今日までの事実でございますけれども、私自身これを再開する、開くということは、まあ過ぎ去ったいろいろな不幸な出来事に終止符を打って、そうして将来に向かって本当の理解と親善を深めていき得る、また、いわば再出発の契機になるようなそういう雰囲気の中で開きたいと考えておりまして、先般の二学生釈放というのは、先ほども申し上げましたように、確かに一つのわだかまりを除いたことになりまして、そういう意味では環境が改善されたことは私は認めておりますものの、さて、先ほど申しましたよう日韓閣僚会議を再び開くような、そうして、それにそのような大きな意味を持たせるよう環境が整備されておるかということになりますと、これはやはりもう少し事態の進展を見ておく必要があるのではないかというふうに思っております。
  27. 堂森芳夫

    堂森委員 ちょっと質問がまた戻るのでありますが、さっき私聞き漏らしたものです。それは、金大中氏の問題でありますが、今日、金大中氏は韓国において普通の意味における自由な身柄と申しますか、自由な行動ができる、たとえば出国の問題も含めて、そういうよう立場におるというふうに判断をしておられるのでありましょうか。あるいはまだ本当意味で自由でない、これは日韓関係にとって重要な問題でありますから、もう一遍聞いておきたいと思います。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私ども韓国に対しまして、金大中氏が政治活動の点についてもあるいは出入国等につきましても一般市民から差別を受けない、一般市民と同等の自由を与えられることを希望いたしておるわけでございます。そこで、これも他国の内部のことでございますので確とは申し上げかねますけれども、最近の金大中氏がいわゆる体制批判についてかなりの活動をしておられるというよう報道をしばしば耳にし、目にいたしますので、政治活動の面においては少なくとも、これはまあ他国のことでしかとは申し上げかねますし、その自由という場合にもわが国考えております自由とはおのずから違ったものであろうと思いますが、一般市民と同じだけの政治活動上の自由は与えられておられるのではなかろうかと、確とは申し上げられませんが、報道等からはさよう考えてよろしいのではないだろうか。しかし、その自由はわが国ような自由とは違うではないかと言われれば、これはもう恐らくさようでございましょうけれども韓国一般市民に与えられておる自由、それだけのものが政治活動の面では与えられておるということではなかろうか。  出国外国旅行のことでございますけれども韓国一般市民に、外国渡航をする自由がわが国におけるほど与えられておるとは、実は考えにくいわけでございます。それは外貨保有等の観点から考えましても、わが国ように自由であるとは思われませんので、したがいまして、その点になりますと、韓国の一般的な出国の自由、海外渡航の自由というものはどのようなものであるか、必ずしも私ははっきりいたさないような気がいたしますが、金大中氏の場合には、たまたま御承知よう選挙違反事件、そして裁判官の忌避が成立するというようなことがございまして、この事件が係属中であるということがございますために、御本人出国希望しておられるのかどうかということとまた別にそのよう事件があるということで、それは事実のようでございますので、その決着をまちませんと、その点の問題については、私ども条件が十分熟したというような状況にないのではないかというふうに聞いておるわけでございます。
  29. 堂森芳夫

    堂森委員 まああなた、そういうふうな非常に慎重といいますか答弁をしておられますが、私はやはり、幾ら韓国日本は違うと言っても、金大中氏は海外への旅行というものを強く希望しておるように私は了解をしております。それができないということであれば、本当意味での自由というものは金大中氏に関してはやはり与えられていないというふうに判断すべきだ。これはまあ私の考えであります。  そこで、日韓閣僚会議というものはまだ早急には開かれるような情勢だとは判断しない、こういうふうな御答弁と解釈していいですね、いかがでございますか。外務大臣日韓閣僚会議はいまの情勢ではわりあい早い時期には開かれることはないだろう、こういうことでございますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国希望しておられることは間違いないのだと思いますけれども、開くとすれば、私としては先ほど申し上げましたよう意味合いを持ったものにいたしたいと考えておりますので、そういうことから判断いたしますと、もう少し事態の進展を見るほうがよろしいのではないかと思っておるわけでございます。
  31. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは、日韓閣僚会議が開かれる当時になっても、相変わらず金大中氏に関する事件が何ら進展を見ない、その後のこちらの要求回答を求めたことについて返答がないとか、あるいは金大中氏の自由等がいまのままの状態であるとするならば、金大中氏の問題について閣僚会議外務大臣はいろいろ話をされる、向こうにいろいろ回答を求めるというようなことをされる意思はありますか。そういうことは触れないということでございますか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、金大中氏のいわゆる選挙違反事件なるものが、裁判官忌避が成立したということもあって、どのくらい時間がかかりますのか、私ども判断がつきません。で、これがあるということは事実なのでございましょうから、したがってその決着がついてみませんと、金大中氏のいわゆる一般市民並みの自由というものが実現されるのかされないのかという判断ができないという、いま状況になってきております。したがって、私はその問題、その選挙違反の決着をまって云々と、そういうことを日韓閣僚会議とひっかけて考えるということは適当なことではないと思いますので、両方のことは関係がないというふうに考えざるを得ないと思いますけれども、それが考え方の基本でございます。選挙違反の事件が片づきませんと、金大中氏の取り扱いについてわれわれが希望しておりますところが実現されたのかされないのかという判断がやはりできにくいであろう、こういうふうに考えております。
  33. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がもう余りありませんので残念でありますが、これはいずれ——きょうも早川太刀川両君を参考人あるいは証人として呼んでもらいたいということを理事会に申し出ておりまして、何らかの決定がされると思いますが、もっとさらにこの問題について政府態度を追及したい、こう思うのであります。  ほかの問題に移りたいと思います。  ただいま新聞等報道されております日中の平和友好条約というものは、外務大臣、いまの内閣でこの国会中に条約の批准を求めることになるような見通しでありますか、あるいはそれはさらに延びるというふうな見通しでありますか、あるいはどういうふうな考え方でありますか、承っておきたいと思います。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三回ほど両国間で協議が行われておりまして、具体的に申し上げるのを控えさせていただきますけれども、一、二問題が出ておるわけでございます。そこで、この問題につきまして中国側がわれわれの主張に同意をされる、これらの問題について同意をされるということであれば、交渉はかなり急速に進む可能性がございます。その場合には、できますればこの国会において御審議をいただきたい、そういうことを考えつつただいま交渉をいたしております。
  35. 堂森芳夫

    堂森委員 自民党の、与党の一部の中には平和は取るのだ、こういうような、われわれとしては納得ができないような議論も行われておりますが、そういうことはなされないのでございましょうね。平和友好条約
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、日中正常化が行われました年の十一月に、本院におきましても平和友好条約を速やかに締結すべしという御決議が、全会一致で成立いたしておりますことにもかんがみ、過般三木総理大臣から他の委員会におきまして、長い間戦争に悩まされておった両国の将来を考え、平和友好条約という国会の御決議どおりの名を冠したものにいたしたい、こういう所信の表明がございまして、私どもそれに従いまして交渉を進めていきたいと考えております。
  37. 堂森芳夫

    堂森委員 いま両国で折衝中の条約でありますから、内容等についていま私がどうこう言うことはもちろん差し控えたいと思うのであります。そのように、本国会において批准を求められるように、重ねて要望しておきたいと思います。  もう一つの問題でありますが、近く海洋法会議が行われるわけでありますが、そこで、世界の大勢は、領海は十二海里説になってきておる。もちろんわが日本の国は三海里説を従来から主張してきた。日本だけではなしに、他の、俗に先進国といわれるような国の多くは三海里説をとってきた。しかし新聞等報道されておるところで見ますると、安倍農林大臣は参議院の農林水産委員会で、十二海里が望ましいというよう答弁をいたしておるのでありますが、しかし、今回の第三次海洋法会議において、この十二海里が果たして可決されるであろうかという不安もやはりあると思うのでありまして、十二海里説が合意に達しないときには従来どおり三海里説を主張して、通らぬときには三海里説でいくのかどうか。これは大変大きな問題だと思うのです。たとえばわが国の漁獲物は、わが国国民に供給しているたん白源としては、酪農等による動物のたん白供給源より多いわけです。大変に大きな問題でありますが、十二海里になるか三海里か、相変わらず三海里で参るのかあるいは十二海里になるのか、経済水域が二百海里で決められるのか、わが国の漁業に関連してもいろいろ大きな問題でありますが、その見通し等について、外務大臣から、あるいは政府委員でも結構ですから、答弁を願っておきたいと思います。
  38. 杉原真一

    ○杉原説明員 お答えいたします。  現在行われております第三次海洋法会議では、発展途上国側は二百海里の経済水域ができるならば、十二海里の領海をのんでもいい。それからこれに対しまして、先進海運国側は、海峡の自由通航が確保されるということが不可欠の条件であるというふうにして対抗いたしておるわけでございます。今度の海洋法会議は、海洋に関するすべての問題を網羅的に一括して解決しようという意図を持っておりまして、この三つの領海と経済水域とそれから海峡の通航権というものがかなめになって恐らくでき上がることになろうと思います。したがいまして、もうすでに発展途上国側といたしましては、経済水域の二百海里を早く確立したいということに焦りを感じておりますし、また先進国の一部にも、早く海洋の新秩序をつくらなければならないという意向がございますので、先ほど申し上げました三つを軸といたします海洋法の全体が、一括して解決される時期というふうなものは、恐らくこの次のジュネーブ会期、あるいはそれに続いてそれの取りまとめを行われることになる次の会期等で、恐らく一般的な合意ができ上がろうかと考えます。したがいましてわが国としては、こういった諸問題が全体として妥当な解決に至るということを基礎といたしまして、十二海里に領海を変えるということを考えたい、そういうふうな立場に立っております。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんので急ぎますが、そうしますと十二海里の領海説といいますか、そういうものは次の海洋法会議で決まるという見通しでございますか。その点はっきりしなかったんです。
  40. 杉原真一

    ○杉原説明員 次のジュネーブ会期で細かい条文に至りますまで、十二海里、経済水域及び海峡をかなめといたします海洋法全体、おそらく三、四百条の大きな条約になろうかと思いますが、決定がなされるということは物理的に不可能だと思います。ただし先ほど申し上げました基本的な線についての一般的な合意というものは、いまの国際情勢から見まして恐らくジュネーブ会期で大筋での合意ができようかと予想をいたしております。
  41. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、ソ連の漁船が三海里の領海のちょっと外側で、大型の漁船が来てスケソウダラとかあるいはサバ等を大量にとっておるという事件、そういう事態が各地にあって、日本側の漁業者からいろいろな陳情があるわけですが、こういうことに対して、わが政府としてソ連政府にどのような形の話し合いをしておるのか、放置してあるのか、今後どうなっていくのか、この点御答弁を願っておきたいと思います。
  42. 橘正忠

    ○橘政府委員 ソ連船によります日本近海の操業に関しましては、かねてその事実を踏まえまして、ソ連側に再三わが方の立場を申し入れております。損害が生じました場合にも、水産庁からの連絡を受けましてソ連側に申し入れております。現地からの陳情も非常に受けておりまして、実情につきましては、私どもも水産庁と協力してこれを把握しております。  ただ、ソ連との間につきましては、かねてこの問題について、こういう紛争を防止すること、それから紛争が起こったときにこれを解決することにつきましての委員会ようなものをつくろうという合意もできて、専門家の間の会議も開いております。本年宮澤大臣がモスクワを訪問されました際にも、本件につきましてソ連のグロムイコ外務大臣に対してわが方の立場を強く主張されました。グロムイコ外務大臣も先方の漁業関係の方にこれを必ずよく連絡をするということを確約されております。なおその後におきましてもこういうケースが起こっておりますので、わが方のモスクワにおける大使館及び東京におけるソ連の大使館双方を通じまして、わが方の立場を申し入れておりまして、十二海里の公海の問題と別に、当面起こっておる問題についてのわが方の立場を強く、重ねて再三ソ連側には申し入れております。  なお、昨年の十二月に、ソ連は、日本の漁船と競合する水域については、ソ連の漁船が操業をよく注意するようにということを訓達したということでございました。去る二月七日に、わが方ではこのソ連側の内部の指令を徹底してくれということを重ねて言いまして、ソ連側もよくその指令を末端まで徹底するように、さらに措置をとりましょうということを言っておるのが実情でございます。
  43. 堂森芳夫

    堂森委員 さらに政府は、ソ連政府に向かって、今後も根強い折衝を持つことを要望しておきたいと思います。  最後に、海上保安庁おられますね。——去る十四日に韓国の密漁船が日本の専管水域の方へ来て拿捕された。これが密漁船である。私の聞いておるところでは密漁船が、これはたくさん出るのだ、こういっておるようでありますが、ちょうど十年前でありますか、日韓漁業協定が発効して以来初めてだという話であります。もう密漁船はうんとたくさん来るというふうに聞いておるのでありますが、政府はこの漁船に対して、あるいはそうした密漁船に対してどういう措置をとっておられるのでありますか、これを御答弁願いたいと思います。
  44. 山本了三

    ○山本説明員 先生いま御指摘のとおり、韓国の漁船が厳原周辺におきまして、わが方の漁業の専管水域を侵犯するという事件が四十年以降続発いたしております。この件数につきましては、四十三年をピークといたしまして、自後漸減いたしております。ところが四十九年に至りまして急増いたしました。そういった関係から、私ども外務省、水産庁と協議いたしまして、この警備を強化する、そういう措置を考えました。従来出しておりました巡視船等も増強いたしまして、非常な悪質なものにつきましては検挙を辞さない、そういう姿勢でもって警戒を強化いたしておる、そういう次第でございます。御承知のとおり、二月十四日に巡視船がパトロールいたしておりましたところ、専管水域を侵しておる漁船があった、その漁船を捕捉いたしまして、検挙して地検に送った、そういうことであります。地検の方では、略式でもって罰金を申し渡し、その金額が納められたので、当該船は韓国の方に帰っております。こういう状態でございますが、今後とも水産庁あるいは外務省とよく連絡をとりまして、こういった侵犯船については必要な警戒措置をとってまいりたい、そういうふうに考えております。
  45. 栗原祐幸

    栗原委員長 河上君。
  46. 河上民雄

    ○河上委員 非常に時間も短いわけでございますけれども、いま堂森委員から御質問がありました太刀川早川両君の釈放の問題につきまして、いま少し詳しく伺いたいと思います。  今回の釈放は、法律的に見てどういう性格を持っているというふうに判断しておられますか。恩赦なのか、仮釈放なのか、刑の執行停止なのか、単なる拘束の執行停止なのか、その点どういうように理解されておりますか。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  48. 高島益郎

    高島政府委員 今般釈放された韓国人並びに早川太刀川両氏につきまして、二つのカテゴリーがございまして、一つは、刑の確定している者、刑が確定して刑に服していた者につきましては、これは刑の執行停止、それからまだ大法院等に上告中で刑が確定していない者につきましては、拘束の執行停止ということだそうでございます。これは韓国の刑事訴訟法第百一条第一項という規定がございまして、こういうことができることになっておるということでございまして、これはいま先生のおっしゃったよう意味での恩赦とか減刑とかいうことではございませんで、要するに釈放ということでございまして、これによって完全に無罪になるとかいうふうなことではないように承っております。  それで、わが方の二人の釈放につきましては、これは後者の方の拘束の執行停止ということでございますが、この十五日、先週土曜日にこの発表をされた際の韓国政府のスポークスマンの説明によりますと、要するに二人の日本人につきましては、日韓友好関係を考慮し釈放するということを言っておりますので、ほかの一般の韓国人の場合と若干特別な扱いがされているというふうに考えております。  いずれにいたしましても、そういうことでございますので、昨日も韓国の法務大臣から、何か話があったように思いますが、場合によりましては、釈放中の韓国学生等につきましては、再逮捕、再拘束というふうな可能性もあり得るということがございますので、そういう観点から想像いたしまして、恩赦とか減刑とかいうこととは法的には違うというふうに承っております。
  49. 河上民雄

    ○河上委員 いま局長の御答弁のとおりであろうと思うのでありますが、恩赦であり、減刑でありますと、犯罪というものが消滅したということになると思うのですけれども、いまのようなことでありますと、判決の有効性というものはまだ残っているというふうに解釈されるおそれがありますけれども、いかがでございますか。
  50. 高島益郎

    高島政府委員 早川太刀川両氏に限って申しますと、現在大法院に上告中でございまして、刑は確定しておりません。そういう状況のもとで釈放が行われたということでございますので、その後の韓国内部におきます法的手続については、まだ詳しく存じませんけれども、いずれにしても、そういうことで、刑の確定を待たないまま拘束の執行を停止されておるということが法的な韓国の説明でございます。
  51. 河上民雄

    ○河上委員 いわゆる三権分立ということが韓国で行われているかどうか、そこら辺はあれですけれども、もし三権分立が行われているといたしますならば、いまこれは大法院に上告中ですから、裁判はまだ係属しているということでして、裁判が行われている最中に今度は行政権で釈放というのは、普通から言うとおかしいわけだと思うのですが、韓国日本と法律が違うかもしれませんけれども、国際的に見まして、国際法ということではございませんが、法律に関する国際的な一種の通念という点から見まして、その点どうお考えにないますか。そしてこういう場合には、消滅すべき犯罪もまだ確定していないということになりますると、両君の場合は一体どういうふうに解釈したらいいのか。また政府ではどういうふうに解釈するのか。たとえば韓国人の場合は再逮捕の危険がある、これはきょうの新聞で向こうの法務大臣が言っておりますので、明らかでありますけれども日本人の両君につきましては、そういうことは全くないというふうに日本政府判断しているのかどうか、その点をつけ加えて伺いたい。
  52. 高島益郎

    高島政府委員 この二人の日本人につきましては、現に日本におるわけでございます。日本の法権のもとにあるわけでございます。先ほど申しましたとおり、釈放の理由といたしまして、日韓友好関係を考慮し釈放するという趣旨もございますし、両方の理由によりまして、私どもといたしましては、この二人の人が再逮捕というようなことは全くあり得ないというふうに考えております。
  53. 河上民雄

    ○河上委員 この二人の釈放について、韓国政府の方から、二人の言動について、日本政府の方でどうこうせいというような注文は一切ついておりませんね。
  54. 高島益郎

    高島政府委員 そういうようなことも含めて一切何らの条件もついておりません。
  55. 河上民雄

    ○河上委員 今後韓国政府の方から何らかの問い合せがありましても、これは日本政府としては全く関知するところでないという態度で一貫されるおつもりですか。
  56. 高島益郎

    高島政府委員 照会という趣旨がよくわかりませんが、照会の内容いかんによって対処したいと思います。
  57. 河上民雄

    ○河上委員 一般的には釈放といいますと、保護観察というようなことがついて回る可能性が非常にありますが、この両君の場合は、向こうの法律に照らしても非常に特殊なケースであります。  なお、韓国新聞によりますると、今回の韓国人釈放に際しましても、KCIAその他から、出たあと政府の悪口を言わぬとかなんとかいうよう意味の誓約書は取られていないというふうに報道されておるのでありますけれども、もちろん両君の場合も、そういうことは全くない、これははっきり政府として自信を持っておっしゃれますね。
  58. 高島益郎

    高島政府委員 私ども承知しておる限りにおきまして、何にもそういう事実はございません。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 それから私伺いたいのでありますが、早川さんもあるいは太刀川さんも、ことに早川さんの場合は、韓国語の言葉の研究に非常に情熱を傾けておられるわけでありますし、太刀川さんの場合は、海外における事件報道ということについて、非常に情熱を傾けておられるわけでありますけれども、あるいは日本における行動については、もちろん関与いたさないと思いますが、もし韓国に入国した場合の行動について、何らかの懸念があるかどうかということです。これがもしあるといたしますと、両君にとりましては、単なる一旅行者として行ったわけではございません。両君のすべての生涯がかかっている問題でございますので、その点はいかがでございますか。
  60. 高島益郎

    高島政府委員 ただいま日本に帰ってきたばかりの状況でございますし、将来お二人がまた再び韓国に入国するという可能性もないわけでないと思いますが、その場合のことにつきましては、韓国政府との間に、いろいろな法的な、今回の措置の法的効果等も含めて、十分に詰めていきたいというふうに思っております。
  61. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、その件については、まだはっきりした答弁はここでできない、こういうことでございますね。こういう問題は、また後ほどあるいは論議になると思うのでありますが、大臣、いまのやりとりをお聞きになっておわかりと思うのでございますけれども、かなり政治的な配慮という要素があって、先方は、先ほど来大臣がおっしゃっております日韓関係を、日韓閣僚会議を開催するにふさわしい環境をつくるためにとった処置であるというような含みもあるというふうにお考えていらっしゃいますかどうか。そして現実に今回の政治的な釈放に当たりまして、韓国の方では、これをきっかけに、日本の対韓経済援助が開始せられる、すでに額なども二億ドルというようなことを向こうで報道しているようでございますけれども大臣としては、こういうような問題について、どういうようにお考えになっておりますか、伺いたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二学生釈放されるという決定が行われました際、韓国側のスポークスマンの補足説明によりますと、二人の被告については、いわば日韓の友好親善関係を考慮したという説明があった由でございますので、その点から判断いたしますと、河上委員の前段の御質問には肯定的にお答えすべきであろうかと思います。  後段の問題でございますが、申すまでもなく、経済協力というようなことは、韓国の人々の民生の安定と向上というのがその主たる目的でございますので、私どもできるだけそれに役立つことは、環境がよほどそのことを不可能にするということでない限りはいたしてまいりたい、こういう事件そのものと直接に関係なくいたしてまいりたいということを従来から考えてきておりますので、その方針に基本的には変わりがございません。今度の釈放によって環境が、少なくとも一つのわだかまりが除かれたという判断は先ほど申し上げましたので、両方のことは関係はございませんけれども環境としてはよくなりつつあるというふうに思っております。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 もう時間が参りましたので、私は大臣に御質問してお答えをいただくことができないのでありますけれども、二つほど大臣にちょっと注文の意味で申し上げたいのであります。  先ほどの堂森委員の御質問、つまりでっち上げという早川太刀川両君の発言に対して大臣が御答弁なすった中に、お二人が被告立場であるということも考慮しなければならぬというようなことをおっしゃいましたけれども、これは韓国の事情のみならず、一般的に政治裁判の場合は、ある意味においては被告こそ最も有力な弁護士であるという一面もあるわけでございまして、被管だからその言うことは当てにならぬのだというふうにとられるようなお答えは、私は非常に納得しがたいといいますか、むしろ宮澤さんのために惜しみたい発言だと思うのであります。  それからもう一つは、韓国の民主化を求める人たちがいつも言いますことは、というより民主化を求める人たちにとって一番つらいことは、日本政府が、せっかく闘っている相手の韓国政府に対して、経済援助という形でこれを政治的にも助けてしまうことであるというようなことをいつも漏らしておるわけでございますし、そういうことのないように、この前も大臣とお話をいたしましたけれども、経済援助というのはあくまでも中立的な性格を持ったものだ、こう言われますけれども、そういうふうに受け取られるという点も十分お考えいただかなければいけないのじゃないかと思うわけでございまして、きょうは時間がございませんので、この問題はまた後日、さらに追及さしていただくことにいたしまして、私の質問はきょうは終わりたいと思います。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段の点でございますけれども被告であった者の主張であるから信憑性がないと申し上げるつもりで申し上げたわけではございませんでして、被告側、検察側両方ともおのおの真実であるという主張の隔たりがございますから、その間どれをもって真実とすべきかは非常に判断がむずかしいという趣旨のことを申し上げようといたしました。誤解がありましたらお許しを  いただきたいと思います。
  65. 栗原祐幸

  66. 山田久就

    山田(久)委員 ただいま堂森、河上両委員から日韓問題についてのお話がございましたので、便宜、日韓関係の問題からひとつ御質問申し上げたい、こう思います。  韓国関係についての問題は日本で非常に関心が深い。これは隣邦であるから当然と言えば当然、また、いままでのいろいろな関係から言って関心が高いのは当然かと思いますけれども、いろいろそういう問題を見てみますと、この日韓関係というものは、根本的に大局から見て、一体どういうふうに持っていくかというような見地からのいろいろな議論ということよりも、どちらかと言えば、第二義的な、あるいはいままでの植民地時代から持っていた日本のいろいろな感情的な問題というものが非常に絡んでおるようなことが多い。これはむしろ非常に残念なことじゃないか、こう思うのです。  われわれが朝鮮半島の歴史というものをずっと振り返ってみますと、あの半島を支配する政権、これが日本に対してどのよう態度、つまり友好的であったかどうか、あるいはその政権が安定しておったかどうかというような点、これは日本の平和と安全ということに非常に大きな関係を持ってきたことは大臣も御承知のとおりでございまして、そういう見地があればこそ、われわれが韓国問題というものをそういう角度から、これに対する援助、協力あるいは批判というものを行ってきておるし、またそうでなければならないと考えておるのでございますけれども、どちらかと言うと、大局的な判断とか認識というものが、日本韓国問題についての議論、評論あるいは国会においての議論等も足りない点があるのじゃないか、こう思うのです。言葉をかえて言うならば、政府のそういう原点に立ち返ってのいろいろの説明、説得力、こういう点に不足している点があるので、こういう点ではもっともっと努力してもらわなければいかぬ、こう考えておりますが、外務大臣のこの点についての御所見をまず承っておきたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常に広範な内容を含むお尋ねでございますので、十分山田委員の願意にお答えすることができるかどうかわかりませんが、私といたしましては、両国が過去において特殊な関係にございましたために非常な近い関係にある。近い関係にございますだけに、お互い時として主権国家同士であるということをちょっと忘れがちである場合があるのではないか。むしろ近いがゆえにこうもあってほしい、ああもあってほしいというようなことを、お互いに他の国とはもう少し違った形で思い過ぎる、考え過ぎるということがあったのではないかというふうに思います。  わが国の場合、今日程度の民主化に進みますのにも非常な苦労をしてきたわけでございます。韓国わが国のところまで来ていないということはおそらく事実であろうと思いますものの、であるからと言って、主権国家に対してわれわれがいわば注文をつける、あるいは口を出すというようなことについてはおのずから限度があるべきでありまして、そういう意味では、他の主権国家とそこを余り分けて考えますと、われわれの誠実な気持ち、こうあれかしという韓国に対する親愛の気持ちというのがかえって逆に受け取られる場合があるのではないか。御質問の一端にお答えしただけでございますけれども、そういう感じを持っております。
  68. 山田久就

    山田(久)委員 私が申し上げたかったのは、長いわれわれの歴史的な経験から言って、いまの韓国、つまり半島を支配しておる韓国というものがやはりしっかりした国、政府として育っていってくれなければ困る。しかもそれが日本と友好的な関係を持っていってくれるものでない場合に、いつもこれが極東の平和を非常に阻害する要因になっているし、それが日本自身の大きな利害になっている。そういう立場があればこそ、われわれが今日、韓国というものを育てて、そうして安定させているということで一生懸命になってやろうとしておる。しかしまた、その必要ということが余り理解されないで、第二義的に、あいつは生意気じゃないかとか、こうやっているじゃないかとか、つまりそういうふうな角度からのみ韓国の問題が評価されているということは、私はむしろ非常に残念なことだ。そういう意味において、その本体をよく国民が理解するように、もう少し努力する必要があるんじゃないかということで実は申し上げたような次第でございます。  ちょうど昨年、金大中、そしてまた朴大統領狙撃事件というようなことに絡みまして、大変日韓関係がぎくしゃくした関係でまいっておったわけですけれども、その後、韓国側もいろいろ正常化ということの努力をやってきておるよう承知しております。  今度日本人の両君の釈放というのも、日韓関係をよくするためにやろうということなんだ、そういう趣旨であろうと考えておるんだと思いまするが、最近そういうような角度で、この一片の声明ということだけじゃなくて、もっと具体的に日韓関係を改善しようという努力のあらわれとして特に見るべきものが何かあるかどうか、この点ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  69. 高島益郎

    高島政府委員 私ども、いろいろ不幸な事件がここ二年以来日韓間に続きまして非常に残念に思っております。そういう状況のもとにあるにもかかわらず、日韓関係の相互の信頼感を基本的に揺るがすようなことにならないように極力努力していきたいということで、事務的に申しますと、たとえば終戦後長い間日本に置かれておりました韓国人の遺骨の問題がございまして、この遺骨の問題を厚生省当局と慎重に検討した結果、昨年暮れその大部分を韓国の方に引き渡すことができました。そういうことは一つの例でございますけれども、そういうように、日韓関係を基本から揺るがすようなことにならないように極力努力するという意味で、事務的な努力は続けてまいっております。
  70. 山田久就

    山田(久)委員 私がいま申し上げたのは、韓国側の方でそういう意味において努力をしておるという、つまり韓国側の努力で特に見るべきものが何かその後あるかどうかということを、もしあるならばどんなものがあるかということを尋ねたわけです。
  71. 高島益郎

    高島政府委員 ちょっとお答えしにくいわけですけれども、これは日韓双方の努力でございまして、単に日本側のみ、あるいは韓国側のみということではございませんで、大変お答えが一般的になりますけれども韓国韓国なりに、日韓関係は非常に大事であるという基本を踏まえまして、そういう観点からわれわれに接触しておりまして、そういう点では日本側の努力に劣るということではないというふうに思います。
  72. 山田久就

    山田(久)委員 韓国側の方の努力の具体的な証左を先に聞いて、それから日本側としてどうやっているかということを聞こうと思ったんですけれども、この問題はこの程度にいたしておきましょう。  次に日中平和友好条約問題、このことでちょっとお尋ねをしてみたいと思います。  先ほどもこの問題については触れられたところでございまして、政府といたしましては、一連の実務条約のあとに平和友好条約をできるだけスムーズにやっていこうという方針には、現在においては変わりがない。先ほどもそういう点大臣からもお話があったので、そういうように了解しておりまするが、現在は、いろいろ伝えられるところ、漏れ承るところによるというと、これを友好条約としての実質内容ということでやっていこうという基本的な了解というものはそのままいっておる。  ただ、例の共同声明の第七項の問題で多少問題があるということを聞いているわけです。この取り扱いというものを中国側が主張してくるということになってまいりますると、これは対ソ関係というような考慮も入ってまいりまするから、なかなかデリケートな対処を要するように思われるわけです。そこで、これについてはどのようなふうにして処理されていくか、外務大臣のほうとしてもいろいろなことを考えておられるんだと思うのですけれども、まあ事柄というのは声明の中に入っているのなら差し支えないけれども条約に入れるとなると角が立つというようなものはよくあるわけで、たとえば協議条項というようなものでも、これは現にソ印条約なんかにありまするけれども、何か紛争が起きたときに両国が協議するということは、何かしら形の変わった援助条約みたいな印象を与えるというようなことで、これはなかなかむずかしい問題じゃないか、こう思います。こういう点について、どのようにこの問題に今後対処していこうとされておるか。なかなかデリケートな問題ですから、お答えしにくければ特に具体的なことを要求いたしませんけれども、しかしながらお考えを伺うことができるならばひとつお漏らしをいただきたい、こう考えております。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 山田委員のただいま御指摘になりました諸点、御懸念等々は、まさしく私もそのよう考えておりますので、交渉を続けてまいります上で十分に参考にさしていただきたいと思います。願わくば相手方がその点を十分に了とされて、そしていわゆる一、二の懸案になっておりますことで、わが国立場を了承されるならば、できるだけ早くこの交渉をまとめ上げたいと考えておりますが、それに際しまして、ただいま御指摘になりましたことは、十分私ども参考にし配慮をさしていただきたいと考えております。
  74. 山田久就

    山田(久)委員 なおこの問題に関連して、これは中ソ関係というようなこととも密接に絡んでいるような点がむろんあるわけですけれども、ソ連の中においてもブレジネフ政権というものの実情、これはなかなかわからないけれども、何か多少あるのじゃないかということが言われておる。また、中国側においてもなかなかデリケートな内部関係が存在しているのじゃないかというようなことが疑われているわけですけれども、昨今のそういう一つの変化というか、状況というか、これに関連して、この中ソ関係というものの現状あるいは今後の見通しというようなことについて、特に何か変化というようなものが認められているかどうか、もしあるとするならばどういう点か、何かそういうことで特に承り得るようなことがあるならば、ひとつここでお話しいただきたいと思います。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本来でありますと詳しい政府委員から申し上げるべきでありますけれども、ただいまちょっと席を外しております。  先月私が訪ソいたしました際に、グロムイコ外相からそのような問題についてもいろいろ話がございまして、グロムイコ外相としては、中国との間にいろいろな点で話し合いを進めていきたいというのがソ連の立場であるけれども、なかなかそのようなことになってこないというよう意味の発言がございました。しかし、最近また国境問題についてソ連の担当の次官が北京に帰られたことも聞いておりますので、両国間がこれ以上関係が悪くならないようにというような配慮は、恐らく両者においてしようとしておるのではないか。さりとて、にわかに改善いたすとも考えられませんけれども、少なくともそのような抑制が両者に働いておるのではないかというふうに判断しております。
  76. 山田久就

    山田(久)委員 それではもう短時間のことでありますので、問題を次に移しまして、ちょっと核拡散条約のことについてお尋ねいたします。  この核拡散条約というものを推進すべきか、推進すべきでないか、この前から、これに伴う条件が整備しているかどうか、あるいはまたこれを締結した場合にどのようなデメリットというものが考えられるかというようなことについては、党内でもいろいろ議論が出ておることは御承知のとおりであります。しかしながらこれをやらないで続けていった場合の、つまり大局、小局、そういう意味でのデメリットというものをどういうふうに考えられるかという点は、やはりこれは日本立場にとっては非常に重要な問題だ、こう考えるわけです。  日本としては、とにもかくにも戦争防止、平和の維持ということが生存と繁栄の基礎条件ということになってみると、全部がだんだん核兵器を持つということになってくることから起こり得る非常な危険性ということを考えてみると、そういう角度では相当突っ込んでデメリットというものを検討される必要があると私は思う。その点ではまだ私は説明がいろいろ不十分なのだと思うので、この点ひとつどういうふうに考えておられるか。きょう十分できないとしても、そういう点での検討というのが特に重大だという見地でさらにお考えをいただいて御説明をいただきたい、こう考えているわけです。とりあえずそういう点で御説明いただける点をここでひとつお話を承りたいと思います。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約の問題は、御承知ように私は二つに分かれると思います。一つわが国の安全の問題であり、もう一つは原子力の平和利用に関する問題でございます。  後者から先に申し上げますと、このたび保障措置協定が、かなり満足な形で実態の交渉がまとまりましたこともございまして、原子力の平和利用という面から考えますと、この条約を御承認いただくことがメリットが大きいと考えております。すなわち、現在受けておりますような査察よりははるかに査察の内容わが国の国益にかなうものになるわけでありますし、また将来の核燃料、原料の供給もこれによって容易になる、むずかしい事態を避けられるというその両点から考えまして、この点についてのメリットはかなりはっきりしておるというふうに私は考えます。  次に問題は第一の点、わが国の安全との関連でございますが、確かにこの条約を署名いたしましたときに、政府が申しました非核保有国の安全及び国際的な軍縮の進行という中で、国際的な軍縮の進行というのは、われわれが期待するよりは遅々としたものでございます。しかしながら、もともとそのこと自身が三年とか五年とかいうことでなく、かなり長期の問題としてとらえられるべきであって、長期の視野の中で前進しつつあるということは、それは申してもよろしいことであるというふうに私は考えるものでございます。  御指摘ように、わが国がこの条約に加盟することによって、十分な核保有の経済的、技術的な実力を有しておるわが国が、西ドイツとともにはっきりこの条約に加盟をしていくということは、世界的に核軍縮へのいわば先達となる、そういう動きをさらに推進し助長するものであるというふうに考えまして、このことが即長い将来にわたっての核軍縮にもつながり、わが国の安全にもつながることになろうと思うのであります。  反面、もしわが国がこの条約を批准しないということになりますと、わが国自身が技術的にも経済的にも核兵器を保有し得る国であるということは認められておりますだけに、その反作用というものは相当やはり心配すべきものである。むしろわが国がこれを批准しないことによって、その他の非核保有国を核保有に走らせる結果になるのではないか。すでにそういう動きがこの一、二年見えておるところへ、さらにそれに拍車をかけまして、日本自身すらついにコミットしなかったということで、かえってそれらの新しい核兵器開発への動きを、現在の非核保有国の中から拍車をかけて、そういう動きに持っていくことになるのではないだろうか。わが国が批准いたしませんでした場合のデメリットというものは非常に大きなものである。もしわが国が何かのことで、将来自分で核兵器をつくりあるいは保有しようということでございますと、これは別問題でございますが、政府がそのようなことは考えておりませんことはもちろん、そのようなことはわが国にとって決して国益に沿うものではないというふうに政府考えておりますので、これを批准しないということから来るデメリットが非常に大きいというふうに考えておるわけでございます。  なお、これらの点につきまして私ども、国民に対して啓蒙の努力が必ずしも十分でないという御指摘につきましては、よく自戒をいたしまして、  これらの点をさらに詳しく国民各位にも周知をしていただくように努力をいたさなければならないと思います。
  78. 山田久就

    山田(久)委員 そのデメリットの点、ひとつもっともっと突っ込んで御検討いただきたいと思います。具体的に言えば、さらに中国、韓国あるいはソ連、いろいろなそういうわれらを取り巻く国、無論アメリカもあるわけですけれども、あるいはアジア方面の反応というようなものはやはりかなり具体的につかんで見ながら、ひとつ御検討をいただきたいと思います。  それでは、もう時間もなくなってまいりましたので、最後は中東問題について。  御承知ように、いまキッシンジャーとグロムイコがこの問題についていろいろ話し合いをやっているわけで、この話し合いにはそれぞれの思惑がいろいろあるわけですけれども、今度の会談から、この中東紛争の早期解決というようなこととの関連で、特に注目を要するような点が何かあるかどうか。あるならば、それがどんな点かという点、これを一つ最後に御説明いただきたいと思います。
  79. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 最近のキッシンジャー・グロムイコ会談はコミュニケが出されたばかりのところでございますけれども、中東問題に特別の注意を払うということがうたわれている点が、新しいといえば新しい点かと思います。それからあとは、問題解決のためにあらゆる努力をするというのは従来と同じでございますが、ジュネーブの和平会談を早い時期に開催すべきであるというようなことについて合意を見たというふうにされておりまして、この点、字句の細かい点で実質的な意味はないかと思いますけれども、いずれにしましても全体といたしまして、ウラジオストクでの前回の会談以後、依然として中東問題により大きな関心を払い、なおかつジュネーブの和平会談をできるだけ早く開こうということで両者が合意を見ている。これは同地域の和平問題について非常に関係の強い両大国がともに積極的熱意を持っておるということで、中東和平の促進の上にはもちろん好ましいことであると思います。  ジュネーブの和平会談について、米ソの間に多少の意見の相違があるというふうに伝えられてきているわけでございますけれども、ジュネーブの和平会談をやる、状況がくればやるということについて、両者に大きな懸隔はないだろうと思うわけですが、問題は手順とかタイミングとかというようなことで、そういう点ではニュアンスの違いはあるのかもしれませんけれども、基本的には両方ともジュネーブの和平会談の有用性、必要性というものを認めておるのでございましょうし、そういう意味でも中東和平実現にとってはエンカレッジングなことであろうと思います。
  80. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森君。
  81. 正森成二

    ○正森委員 早川君、太刀川君の問題につきましては、当委員会理事会で、委員会に参考人として呼ぶかどうかというような話も起こっておりますので、もしそういう機会がありましたら、詳しく私は質問することにして、きょうはその背景的ないろんな問題について質問をさせていただきたい、こう思います。  ここ二、三年日韓関係が非常に緊迫しましたのは、言うまでもなく金大中事件に始まっておりますが、私は金大中事件というよりは金東雲事件と呼ぶべきであるというように思っております。わが国捜査機関が犯行現場で指紋を発見した、当時韓国大使館一等書記官であった金東雲について、八月十四日に韓国側から捜査を打ち切ったというような報告があったかと思いますが、その後、捜査状況についてわが国捜査機関に誠意のある回答がありましたか。それが一点。もしなかったとすれば、わが国捜査機関はどのように要請を続けてきたか。それをまず承りたいと思います。
  82. 大高時男

    ○大高説明員 八月十四日に金大中事件捜査の打ち切りの通報がございまして以降、韓国側からは特に新しい通報といったものは現在のところ参っておりません。警察の方といたしましては、現在のところ警視庁に依然として捜査本部を維持いたしまして捜査を続けておるわけでございますけれども、何と申しましても、この捜査につきましては、被害者、それから重要参考人、こういったものが韓国におりますので、やはりこの方々の状況というものを知らしていただかないことには、当方としても新しい展開が望めない、こういう見地から、韓国側の協力というものを必要のある都度再々お願いをしてきておる、これはすべて外務省を通じてお願いするという形をとっております。
  83. 正森成二

    ○正森委員 八月十四日以降も外務省を通じて正式に要請されましたか。それは何回ぐらいですか。
  84. 大高時男

    ○大高説明員 八月十四日以後も要請をやっておりますが、その必要の都度、外務省に対してお願いをいたしております。
  85. 正森成二

    ○正森委員 それでは外務省に伺いますが、去年の十月十六日にも、ソウル発として、金外相は金大中事件について八月十四日、事件捜査を中断したことを日本側に通告しており、根本的には金鍾泌首相が訪日した際一段落したもので、この問題で非協力と言うのは理解できない、こういうように言うております。しかも、最近報道されているところでは、金大中事件、言葉を変えて言えば金東雲事件ですが、それについて一番よいのは忘れることだというようなことさえ新聞紙上に報道されております。これは金鍾泌首相が十一月二日でしたか来られて話し合いをした精神からも大きく反すると思うのですが、外務大臣に、この点について、もう日本政府は忘れるべきだというよう考え、あるいは金鍾泌首相が言っている日本政府が非協力と言うのは理解できないというよう考えに御同意なさるのかどうか、承りたいと思います。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年八月に韓国側調査の打ち切りをいたしました際も、後にわが国に対して新しい事実があれば調査を再開することもあると言っておるわけでございますから、わが国捜査当局として、韓国に対してさらに照会あるいは協力等を必要とすると考えられる都度、私どもはそれを韓国にお取り次ぎをし、照会をいたしておるようなわけでございます。  金鍾泌首相がそういうことを言われましたかどうか、確認をいたしておりませんが、恐らくは高い政治的な立場からそういうことを言っておられるのではないだろうか。韓国としてもこの一、二年いろいろ不幸な目にも遭っておられる点もございます。それらのことを含めてそう言われたのではないだろうか、私としてはそんな解釈をいたしております。ただいまのお尋ねに対してはそのような解釈をいたしますけれども、なお捜査そのものは、わが国捜査当局が十分に満足をできるという状況には現在いまだにございませんので、先ほども申し上げましたように、やはり照会すべきものはしていくという態度は続けるつもりでございます。
  87. 正森成二

    ○正森委員 金東雲事件というのは、これは忘れるのが一番いいことだというような性質の問題ではなしに、一国の外交官が、わが国内において警察権を侵害して、一人の人間を逮捕して国外に略取誘拐するという事件であります。金大中事件本当に納得のいく筋の通った解決ができたかどうかということを考えるためには、その略取誘拐が何ぴとによってどういうことでなされたかということが明らかにならなければ、これは正当な最終的な判断ができないのは明らかです。したがって、金大中事件というのはこれは金東雲事件であって、金東雲事件が明らかにならなければ、金大中事件についても忘れることはもちろんできないし、正当な解決もできないわけですね。  ですから、こういう問題について、私は外務大臣にお伺いしたいと思いますが、きのう、きょうの新聞を見ておりますと、日韓会談を五月に開くとか、二学生釈放されたからそういう雰囲気ができつつあるというようなことを言われておりますが、私は、少なくとも金東雲事件について納得のいく捜査状況が報告されない限りはそういう雰囲気にはなかなかまいらないと思いますが、いかがです。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、韓国の首脳部が忘れることだと言われましたかどうかはつまびらかでありませんけれども、恐らくそういうことを言っておられる気持ちの中に、たとえば朴大統領の夫人が狙撃をされて亡くなられたというよう出来事は、少なくともその狙撃に使われたピストルがわが国において奪い去られて、そしてそれが凶器として使われたと考えられる、そのような事実を言われないままに、これも韓国としては忘れられない出来事でございましょうと思いますが、そのようなことをいろいろ考えながら大局的に発言をされたのであろうと思いますので、仮にそれを言われましたといたしましても、私は別にそれについて反論をしたいという気持ちはございません。  この金東雲氏の問題は、確かに捜査当局のお立場からして、もう少し解明をしておくべきだとわが国捜査当局考えられることはもっともでございますから、そういう意味での韓国側の協力は、やはり私としては協力あらんことを促したいという気持ちでございます。それはそのよう考えておるわけですが、他方で日韓閣僚会議をどうするかということは、先ほどの御質問にもすでにお答えをいたしておりますように、本当にこれからの両国の親善関係をもう一遍完全なものに取り戻すための契機になるようなものにしたいと私考えておりますので、先般の二学生釈放などは、一つのわだかまりを解消してくれたことにはなりましたものの、もう少し両国間のさまざまな出来事の進展を見てから判断をいたしたいと考えておるわけでございます。
  89. 正森成二

    ○正森委員 きょうは松永条約局長がお見えになっておりますが、私は、金大中事件が起こりました直後の九月十一日に、当時法務委員会質問をいたしました。そこで改めて松永条約局長及び高島アジア局長にも伺っておきたいと思うのですが、金東雲氏が関与したということになれば、現在の国際法の解釈から言えば、政府の職員が関与したということでありますから、これは国際違法行為を当然構成する。そして多くの学説によれば、政府の職員が関与したという場合には、それが政府の上部の命令に基づいて職務行為として行われたかどうかにかかわらず、国家は無過失責任を負わなければならない。だから、それは当然国際違法行為を構成し、その責任を解除されるためには、これは謝罪だとか責任者の処罰とか再発の防止、損害賠償及び原状回復、つまり金大中氏が再び日本へやってくるというような、もろもろの解決が必要であるという意味質問をして、その大筋については松永さんも、職務行為と言えるかどうかというようなことについて若干留保を述べられましたが、しかし、無過失責任を負うというような点については反論をなさらなかったと思うのですね。そうだとすると、金東雲事件がこれ以上韓国側捜査で進展すればもちろんのこと、進展しない場合でも、わが捜査機関が握っている証拠だけで韓国側は国際違法行為があり、その責任を負うべきである。そうすると、金大中氏の出国及びわが国へ帰ってくるということは、韓国人として一般の自由が許されておるかどうかというような問題ではなしに、国際違法行為を行われたその対象人物として、原状回復ができるかどうかの問題であります。したがって、韓国人と同じ自由がいまあるかどうかというような問題とは次元を異にした問題であり、わが政府としてはそれをもう少し強力に主張すべきだと思いますが、いかがです。
  90. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 一般国際法の問題といたしまして、政府の職員なり機関の行為について、一定の場合に国家が無過失的に責任を負わなければならないということは、私もそのとうりだと存じます。ただし、いま先生も御指摘になられましたけれども金東雲の行為について、直ちに韓国なり韓国政府に国際違法行為があったというふうには断定できないというふうに考えていることもまた前に申し上げたとおりでございます。  もし仮に国際違法行為があったとすれば、それに対する救済ないし国際法上の国際責任の解除について、両国政府間で話し合いを行わなければならないということも、これまた当然なことでございますけれども、現在政府のとっております立場は、国際違法行為がこの金大中事件についてあったという立場ではございませんで、したがってその観点からする問題の検討ということはいたしておらないわけでございます。
  91. 正森成二

    ○正森委員 私は、一昨年の九月十一日も言いましたが、松永条約局長の、金大中事件について国際違法行為がまだ存在していないという解釈には、もろもろの国際法の通説から見て、明確な誤りがあるという点を指摘しておきたいと思います。  きょうは時間がありませんからさらに進ませていただきますが、あの朴大統領の狙撃事件と言われているものについて、椎名氏が訪韓をされて朴大統領に親書を渡しましたが、そのときに口頭説明をしております。その口頭説明の性質についてはいろいろ言われておりますが、その第五項で、  韓国政府の転覆を意図する犯罪行為、あるいは要人の生命をねらうテロ活動などについては、朝鮮総連などの団体構成員によると否とを問わず、犯罪行為を取り締まる方針である。  こういうぐあいに言われておるのですね。  そこで二つの問題についてお聞きしたいと思います。その当時政府は、この犯罪行為というのはわが国の現在の国内法から見て犯罪行為になるものに限るのだという解釈をとられましたが、現在でもそうお考えになっておりますか。それが第一点です。
  92. 高島益郎

    高島政府委員 椎名特使が親書の内容につきまして説明した中で、いま正森先生がおっしゃったことの意味は、先生のおっしゃったとおり、現に日本の法令に違反する犯罪行為は取り締まりますという当然のことを申し上げただけでございます。
  93. 正森成二

    ○正森委員 ところが、そうであればいいのですけれども、どうもそう解釈されていない。韓国ではもちろんのこと、わが国内でもそう解釈していない人が政治に責任を持つ方々の中であるということは非常に残念なことなんですね。たとえば本年の一月二十二日、二十三日、韓日議員懇親会第四次総会というのが開かれました。そこで韓国側が四十数名、日本側が十数名の衆参両院議員が参加して、共同声明を出しておられるのですね。その共同声明の政治・外交問題の第四項を見ますと、こう書いておるのです。「日本国内において大韓民国を転覆しようとする朝鮮総連等の活動を規制する等、椎名特使書簡および口上説明が早急にかつ誠実に履行されるべきことに意見を同じくした。」こうなっているのですね。そのほかに双方の代表がいろいろ演説しておられますが、これらは椎名口上説明書というものがまだ早急にかつ誠実に履行されていないという観点に立って行われております。つまり、この観点は、わが国の現行法のもとでまだ取り締まりが行われていないということだけでなしに、新しい規制し得る法律をつくって規制することも必要であるということを非常に強いニュアンスとして持っておるのですね。そうだとすると、そういう考え方がどちらかの側あるいは両方の一部にあるといたしますと、これは椎名口上書というのは非常に不明確なものであって、両国間に非常に疑惑を残すことになる、こう思いますが、改めて明確な答弁をお願いしたいと思います。
  94. 高島益郎

    高島政府委員 椎名特使の口上書——口上書と申しますか、口頭説明の内容につきましては、政府内部で十分に法律的にも検討した結果の発言でございまして、いやしくも政府といたしまして、現に法律でないものを想定したような、そういう発言ができる性質のものではございません。そういうことでございますので、私、先ほど申しましたとおり、あそこで椎名特使が申し上げたことは、まさに、現に法令に違反するような犯罪行為は取り締まりますという、当然のことを申し上げたということでございまして、政府以外の人がどのような解釈をするかということについては、私ども責任を持ち得ないわけでございます。
  95. 正森成二

    ○正森委員 与党の衆参両院の議員も参加した共同声明でございますから、宮澤外務大臣に改めてその点を明確にする答弁をお願いしたいと思います。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実はその内容をよく拝見をいたさなければなりませんけれども、それがどう表現されておりましょうと、政府として、それは犯罪が行われようとしている段階が仮にあるといたしますと、十分にこれは注意をしなければならぬことは明らかでございますけれども、法律によらずしてそのようなことができるはずはございません。またしたがって、その意思もないとつけ加えることすらよけいなことでございます。そういうことはできないことでございます。
  97. 正森成二

    ○正森委員 法律にないことができないのはあたりまえですが、韓国側は、法律を制定する義務を日本側が椎名口上書で負ったものである、こう見ておる向きがあるのです。そして今度の共同声明と言われるものは、そういう解釈に日本側の一部議員も立っているのではないかと思わせられる表現があるわけです。したがって、新しい法律制定の義務を椎名口上書で負ったものではないということも明言していただけますか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。政府はそのよう考えておりませんし、また、そのような御提案も現にいたしておりません。
  99. 正森成二

    ○正森委員 この間の予算委員会の総括の中で、朝鮮民主主義人民共和国との人的交流というものを、人間論争というのがございましたけれども、盛んにしていくということが同僚議員の発言の中であったと思うのですね。  そこで、これは非常に大切なことだと思うのですが、まず外務大臣に伺う前に事務当局に、昭和四十四年から現在までの間に、朝鮮民主主義人民共和国から入国を認めた事例というのが、年度別に何人ぐらいあるか。それから在日朝鮮人が朝鮮民主主義人民共和国に墓参、貿易その他で帰られて、また再入国を認められたという例がどのくらいあるか、それについてお答えを願いたいと思います。
  100. 小林俊二

    小林説明員 お答えいたします。  北朝鮮からのわが国への入国を認めた事例は、四十五年に四名、四十六年に三十一名、四十七年に六十九名、四十八年に三管十五名、四十九年に百六十一名となっております。四十八年は芸能目的の公演のための一行が大挙してわが国を訪れておりますので、その数を引きますと七十九名となりまして、以上の傾向を通算いたしますと、年々着実にふえているということが申せるわけでございます。  それから再入国許可を取りつけて在日朝鮮人が北朝鮮へ参りました事例は、四十四年はございませんでしたけれども、四十五年が六名、四十六年が二十七名、四十七年が百四十二名、四十八年が四百五十六名、四十九年が七百十名と、これも特に最近数年間着実に増加しているということが申せます。
  101. 正森成二

    ○正森委員 なお、言い忘れましたが、日本人が朝鮮民主主義人民共和国に向け渡航いたした例は、どういうぐあいになっておるか、それもお答え願います。
  102. 小林俊二

    小林説明員 日本人の北朝鮮渡航もここ数年間着実にふえておりまして、昭和四十四年に五名であったものが昨年は八百四十二名と、非常な増加ぶりを示しておりまして、その間も毎年着実に増加してきておるわけでございます。
  103. 正森成二

    ○正森委員 いま私も手元に資料をいただきましてそういうことを確認しているわけですが、たとえば朝鮮民主主義人民共和国からの入国を認めた事例の中身をさらに見ますと、国際会議というのが四十四年、四十五年はゼロでありましたが、四十六年は五名、四十七年は六名、それから四十九年になりますと二十二名というぐあいにふえているわけであります。国際会議というのは必ずしも全部が全部政治的な会議とは限りませんけれども、政治に何らかの形で関係のある会議だ、こう言えると思うのです。  そこで、別に人間論争をするわけではありませんけれども、中国との関係でも、いろいろな文化人あるいは芸術家、学者それから政治家、実業家というような方々の交流というのが、両国関係の国交回復、親善のために非常に効果があったと思うのですが、宮澤外相も、三木総理大臣の言明のように、両国間の交流をあらゆる階層の中で深めていくということに御異議がございませんか。その点を承りたいと思います。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本の方針として、異存ございません。
  105. 正森成二

    ○正森委員 そこで、もしおわかりになればお答え願いたいのですが、五十年の夏に平壌で見本市が開かれることになっており、五十一年には東京で開かれることになっていると伺っておりますが、それについても関係省庁で、中国の広州の見本市が非常に有益であったという前例にかんがみて、その問題についてのお互いの交流、人員の交流等についても配慮なさるおつもりかどうか、伺いたいと思います。
  106. 高島益郎

    高島政府委員 見本市を相互に開催することにつきましては、よく承知しております。したがいまして、この話が民間レベルで煮詰まりますれば、私どもといたしまして前向きに検討したいというふうに考えております。
  107. 正森成二

    ○正森委員 それから、時間がなくなってまいりましたのでもう一、二点伺いたいと思いますが、この韓日議員懇親会総会での声明によりますと、「両国議員団は、両国間の懸案である経済協力問題について広範に討議し、諸問題の早急な解決と大韓民国議員団が提議した農業開発基金設置の実現のため政治的努力を傾注することに合意した。」これは経済問題の第三項にこういうぐあいに書かれておるわけですね。そしてまた新聞によりますと、毎年五千万ドル十年間援助をするんだとか、あるいは両国間の貿易は無関税としたいというような提案まで日韓協力委員会では行われているというよう報道されているのですね。  そこで、政府としてはこういうようなことを実際に考えておるのか、特に両国間の貿易を無関税にするというようなことは相当大きな問題だと思いますが、それについて何か具体的に考えているのですか。
  108. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 先生御指摘の日韓の会合というのは、日韓協力委員会だろうと思います。これは民間の委員会でございまして、本年は一月ソウルで開催されたわけでございますが、この委員会で、先生がいま御指摘になりました五億ドルの農業開発基金について韓国側から話があったということは私ども聞いております。しかし、この問題についていままで韓国側から政府レベルで何らの要求も出ておりません。また先ほどの関税の問題につきましても韓国側から正式な要請が参っておりません。
  109. 正森成二

    ○正森委員 いま政府側から政府レベルとしては出ておりませんという答弁がございましたが、二つの問題は非常に重要なんですね。そういうことが新聞にも出ておりますし、共同声明で出されたり協力委員会で出ているということにかんがみて、政府としてはどういう態度をとるのか、それを答えていただきたいと思います。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もともと韓国に経済援助をいたしますときに、農業開発でございますとかあるいは一種のその他の社会開発と申しますか、それが一番民生に直接にいい影響があるのでございましょうから、私どもそういうことをなるべく重点に考えるのがよかろうという気持ちは持っておるのでございます。しかし、わが国の援助の資金量も限られておりますから、どういうものに優先順位をつけるかということは、やはりこちらの考えもございますが、先方の政府考えを第一義的には尊重いたすべきだと思いますので、民間にそういう声があるということは聞いておりますけれども、やはりプライオリティーといいますか優先順位は、韓国政府がどう考えられるかということを第一に考えてまいらなければならないのではないか。そういう意味で、韓国政府考え方を待ちまして私どもの方針を決めるべきだと思うのでございます。  それから両国間の関税を全部やめてしまうというようなことは、韓国から話もございませんけれども、これはなかなか大きな問題でございまして、話がございません段階でございますが、ちょっと伺っただけでもこれはなかなか決心のできそうな問題ではないと思います。
  111. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  112. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部君。
  113. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、前回の外務委員会に引き続きまして、まず最初に武器輸出の問題についてお伺いしておきたいと存じます。  前回の委員会におきましてアラブ及び紛争地帯に対する武器輸出は、その事実があるかどうか、またそれに対して紛争当事国を初めとする、三つの武器禁輸に関する原則があるが、それをどういうふうに適用されているかお伺いをいたしました。関係当局からのそれに対する御答弁を求めます。
  114. 上田利英

    ○上田説明員 お答えいたします。  わが方の武器輸出につきましては、国際紛争を助長することは厳に避けるという基本的な考え方に立ちまして、共産圏諸国向けの輸出それから国連決議により武器等の輸出が禁止されている諸国に対する輸出、それから国際紛争またそのおそれのある国に対する輸出、いわゆる武器輸出三原則、この原則に基づいて武器輸出についての運用をしております。
  115. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そんなことはわかっているよ。そうじゃなくて、この間聞いたのは、アラブ諸国に対してはその原則が当てはまっているんですかと聞いたら、わかりませんと君らの方は答えたから、きょうは君の方はその先を答弁するんだよ。
  116. 上田利英

    ○上田説明員 したがいまして、現実にアラブ諸国につきましてはいままで武器輸出の実績は全くございません。われわれといたしましてはケースが起こりましたときに、ケース・バイ・ケースで処理していくという原則を……。
  117. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 起こりませんて、どことどことどこの国になかったのですか。
  118. 上田利英

    ○上田説明員 私ども手元の資料で、四十七年、四十八年には武器輸出は全くございません。四十九年度にはベルギー向けに二丁サンプル輸出としてあっただけでございます。
  119. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなた、はっきり言ってもらいたいのだ。いまのは答弁にならぬじゃないか。ベルギーに二丁って、何が二丁なんですか。大砲が二丁なんですか、ミサイルが二丁なんですか、ピストルが二丁なんですか。そして四十七年、四十八年、四十九年にどこに輸出がされてなかったのですか。そんなばかな問答をしていると時間がなくなっちゃうじゃないですか。
  120. 上田利英

    ○上田説明員 武器輸出等の実績、四十七年には一切の武器輸出の実績はございません。四十八年度にも一切の武器輸出の実績はございません。四十九年度にベルギー向けに小銃がサンプル用として二丁輸出されております。
  121. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、あなたはこれはすべての国に対してそうだと言われるのですか。それともアラブ関係諸国に関してのみそうだと言われているのですか。アラブ関係諸国についてはどれとどれとどれを挙げているのですか。
  122. 上田利英

    ○上田説明員 お答えします。  全世界に向かって武器輸出の実績はただいま申し上げたとおりでございます。したがいまして、アラブ諸国に対しても全くございません。
  123. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、アラブ関係諸国の問題は抜きにして、それじゃいままでの、武器禁輸に関する三原則ができて以来の武器輸出に関するすべてのリストを出してください。  それからもう一つは、あなたはそれじゃ、これから今後アラブ関係諸国に武器輸出が行われようとしたら、どの国に向かって許可をし、どの国に向かって許可をしないのか、それを答えてください。
  124. 上田利英

    ○上田説明員 お答えします。  国際情勢は常に流動的に動いておりますので、申請があった場合にケース・バイ・ケースに外務省とも相談して慎重に処理していきたいと思っております。
  125. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そこで外務省、本日の時点においてアラブ関係諸国に対して武器輸出の許可申請が行われた場合、どことどこに許可をし、どことどこを許可しないのか、御答弁いただきたい。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御協議がありましたら考えますけれども、いまのような情勢で武器輸出をすることはどうも適当でないと思います。
  127. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、それは全国に対して、アラブ関係諸国には全部紛争当事国として禁輸するよう考えるという意味ですか。それとも別の判断でそうおっしゃるのですか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は貿管令の主管大臣でございませんので、そういう立場から申し上げられませんけれどもわが国の産業も、世界から疑惑を受けるような武器を、疑惑を受けるようなところへ出さなければならないほどみみっちいものではないわけでございますので、なるべくそういうことはしない方がいいというのが私は基本にある考え方だと思うのでございます。いわんやその紛争当事国であればなおさらでございます。
  129. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、紛争当事国に類似するものとして、アラブ関係諸国に対しては武器輸出をしない、国務大臣としてそれをお答えになる、こういう意味ですね。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その前の方は申し上げていないわけでございます。つまり、紛争当事国である、紛争のおそれのある国であるというような認定をいたしますと、これはもう貿管令で、よく法制局とも相談してしなければならぬことでございますから、私は所管大臣でないので、それを申し上げておるのではないので、少なくとも、きな臭いような疑いを受けるということは余りいいことでないというのが、私は政府の基本の政治姿勢であろうと思うのでございます。
  131. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、アラブ諸国は全部きな臭いとあなたは判断されているわけですね。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それについて私は判断をしていないということを申し上げておるわけです、これは貿管令の所管大臣判断をなさるべきことなんでございますから。
  133. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣、そこで私は伺うのですけれども、あなたの御答弁を聞いていて、そういう言い方では理解できる人もいないと思うのですね。武器輸出をしたがっているのか、したがっていないのかわからない。  要するにあなたのいま言われたのは、所管大臣でないということだけです。所管大臣としてではなくて、あなたは閣議の出席者として、そういうものに対して見解を表明する責任がありましょう。そうでなければ、一々所管大臣をこの場に呼びつけてこの議論をしなければならない。したがって、私は非常にわかりにくい。私はその問題について、所管大臣を今度呼び出してそれじゃ伺いましよう。  では、今度は所管のことについて伺います。  あなたは日中平和友好条約について、あるいは核拡散防止条約について、あるいは大陸だな条約について、非常に不明確であります。一切わからない。あなたから、この委員会の席上で日中平和友好条約を進めるという意見が出たその次の日には、自民党の有力幹部たちが、あれは進めないということを公式に表明しておる。  きのうでもそうです。NPTについて、いまあなたは非常に前向きな意見をるる述べられました。ところが自民党の有力幹部たちは、きのうは、NPTは見送りだと明快な発言をいたしております。事もあろうに、総理と副総理の間にも話が行われて、核拡散防止条約は今回出さないというふうに表明されたと伺っております。私たちは、したがってさっぱりわからないのです。何を言われているのか不明確です。  それどころではない。自民党と政府とは二つのパートをお互いに協議しながら、まるで政府の方はやる姿勢を見せながら、国民に対してはそういう弁解をしておる。そうして自民党の方では、ひたすらそういう国民にとって重大な問題について裏で暗闘を続けていく、こういう感じを抱かざるを得ない。やるのかやらないのか、一回も本気の話を聞いたことがない。われわれがわからないどころではない。最近に至っては自民党の議員までわからなくなって、われわれに聞きに来るような妙なことさえ起こる。  あなたは自由民主党の党員でありそして外務大臣です。だから私、その両方をひっくるめて、外務大臣としてだけではなくて、あなたの所管に関することで伺うわけですが、NPTは一体どうなさるおつもりですか。平和条約は進めるのですか、進めないのですか。平和条約はずっと後ろへ引き延ばして引き延ばして引き延ばすということによって、ソビエト政府への顔を立てようとなさるのか。またNPTについては、ここのところで前向きの発言を外務大臣としてはするが、党内事情を加算して後ろへ引き延ばすことによって、自民党内のタカ派、またはワシ派とでも言うべき諸君の顔を立てようとなさっているのか、あなたは一体どっちへ向かってどうなさろうとしているのか、ここでお話しをいただきたい。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 自民党の中におきましてはいろいろな議論があると思いますけれども、私が国会のこの席で申し上げますことが、政府としての考え方でございます。  そこで日中平和友好条約につきましては、もうすでに先ほど他の委員のお尋ねに申し上げたわけでございますけれども、一、二両国間で意見の一致していない問題がございます。この問題について、幸いにして中国側がわが国立場に同意をされるのならば、できるだけ早く交渉をまとめ上げたいと考えておりまして、それが私ども希望のとおりにいきますならば、できますればこの国会に御審議を仰ぎたいというふうに考えつつ、いま交渉をいたしておる最中でございます。  それから核拡散防止条約につきましては、これは先般も申し上げましたが、いわゆる保障措置協定というものはほぼ実体が固まったわけでございますけれども、大体こういうものでございますというだけでは、委員会条約の御審議をいただくわけにまいらないと思いますので、かなりきちんとしたものに仕上げなければならないと思っておりますが、本体だけでも条文が百条に近うございますので、実はこの準備に手間を取っておるというのが実情でございます。基本的に御審議を願いたい、そして批准の手続を進めたいというのが私の基本の考えでございますことは、先ほどこれも他の委員にお答えを申し上げたとおりでございます。  日韓大陸だな条約につきましては、すでに御審議をいただきます事務的な手続は全部そろっておりますので、ひとつ御審議をいただきまして、お認めをいただいて批准をいたしたい、こう考えております。
  135. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それではあなたに最後にもう一つ私は念を押しておきたいのですけれども、あなたのおっしゃることが政府立場だと申されました。しかし政府立場が、自民党の中の多少の派閥的な交渉の結果、右に左に毎日のように揺れておる。強くない内閣である、弱い内閣である。クリーン三木からウィーク三木なんという言葉が最近出てき始めました。そしてあなたは微笑とほほ笑みで、それをいつも押しまくっていこうとする。私は、それは内閣としてのそれこそもう主体性のなさというか、内閣の成立の基礎を疑うものではないかと思っておるのです。  現実に言うならば、交渉される人々は、おそらくNPTの保障協定のために行かれた外交官であっても、あるいは日中平和友好条約の交渉官であっても、はしごを外されないかという不安におびえながら、後ろを見ながら交渉するしかない。交渉員たちは交渉するのではなくて、自民党の中と外務大臣の顔色を毎日顕微鏡でながめながら交渉しなければならない。これでいいのか、悪いのか。怒られるのか、怒られないのか。それでは交渉にならないじゃないですか。あなたの姿勢が今日までその点について明快でない。私は外務大臣に対して申し上げるのは過酷かもしれませんけれども、あなたがここで美しい言葉で幾ら話そうとも、だれもがそれを本気で思えないような内部情勢というものに対して、あなたはやはり厳格に見つめて、少なくとも外務官僚がちゃんとした立場で交渉ができるようにしなければならないし、私はその辺を御配慮いただくことが大臣としての責任ではなかろうか、実はそう思っておるわけなんです。  私もつい言葉が過ぎておるわけでありまして、その点はおわびをしたいと思いますけれども、あなたにもう少ししっかりしてもらいたいのです。日中平和友好じゃなくて、もう日中ぐにゃぐにゃ協定みたいな感じがするのです。NPTのごときに至れば、どこで暗礁に乗り上げるかわからない。きょう、きのうの新聞は、ことごとく核防条約は後ろへ下がると報道されておるではありませんか。あなたはそれに対して、核防条約は下がらないと押し返すためだったら、もっと明快な言動が要ります。日本の全マスコミが、NPTに関する自民党の態度は後ろへ後退したと報じております。そしてあなたは、党側に対して、それを何とかと要請したと述べたとここに報道されております。まさか新聞をごらんにならぬわけはないと思うのです。そしてあなたの先ほどからの同僚議員に対するNPTの論争は非常に迫力がなくて、そしていわゆる事務手続の問題に終始されております。それでは私はどちらを受け取ったらいいんでしょうか。わからないと申し上げたのはそこなんです。  だから、いま私が伺っているのは、あなたは保障措置協定その他を終わって、百条からあるので準備中であると申された。それはそうなんでしょう。私はそれは疑っていない。めんどうな手続が大変多いというのは私も漏れ伺っておる。しかしあなたにやる気があるのか。自民党が何かごたごた言ってもそれを押して出す力があるのか、それを伺っておるのです。日中友好平和条約についても、一、二の点でもめておる。ヘゲモニーの問題その他でもめておるというのは私たちも推察することができる。それはそれで十分おやりになったら結構だし、友好の基礎というものは十分の話し合いのもとに築かれるべきです。しかし、あなたが本当にやる気でいるのかどうか。自民党の多少の何かの意見、それはあって結構、ない政党は逆におかしいでしょう。それでもあなたがそれを押してやると決めているのか、三木さんを含めてあなたはやるのか、やる実力があるのか、私たち聞いているのです。それに大臣お答えにならなければ、私の質疑は意味がなくなってしまうじゃありませんか。だからその決意を私は伺っておる。むしろそういう決意を固めてもらいたいとこの二条約に関しては思っておるというのが私の気持ちなんです。お答えをいただきたい。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろ御心配いただく意味合いは私にもよく実はわかっておるわけでございますが、核防条約、あるいは日中平和友好条約、いずれも非常に長い将来にわたりましてわが国の姿勢を決める条約でございますから、各方面にいろいろな御議論がありますことはむしろ当然であって、そして、その御議論の中からコンセンサスが生まれてくるということが、本当条約が国民的な支援を得るゆえんであるというふうに考えております。したがって問題はコンセンサスのつくり方、これをどのようなやり方でするかということは、やはりおのおの情勢により、人によりいろいろなやり方があろうと私は考えておりますので、私が、もう少し強い言葉でしょっちゅうこの委員会で申し上げることも、これも一つのやり方であろうと思いますが、またそうでないやり方もあろうとその辺は私もあれこれ、ふつつかですが考えております。この五つの条約につきましての政府態度は、先ほど三つにつきまして申し上げましたとおりでございまして、それに違いはございません。
  137. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣は私の質問にはお答えになりませんが、私の意のあるところはお察しいただいたと思いますから、またしかるべき席上で、さしでお伺いをしたいと私は思います。先ほどの理事会において理事懇話会を提唱したのもその理由であります。卒直にお話しをいただかなければいけない。そうしなければ、私が手も足も出ないじゃありませんか。やはりすべての人に理解を求めていくという精神でひとつやっていただかなければいかぬと私は思います。  次に、私は対ソ外交について、時間があまりありませんが、お伺いしたい。というよりも、むしろ非常に心配をいたしております。  なぜかと言えば、外務大臣のソビエトに行かれての御報告をまだわれわれは正式に承っておりませんから、そこから伺うのが筋ですが、時間がありませんから、ちょっとその先まで一緒に申し上げますが、最近ソビエトの外交官が政府首脳部に対して熱心な働きかけを行っておる、あるいは善隣条約についての働きかけを行っておる。それに対する明確、きっぱり拒否の御回答が行われておるなどということを新聞においてわれわれは伺っておる。ところが、日中関係の改善というものが、ソビエト関係の改善とあわせて考えられながら、少なくともある意味の調整をしながら行っていくことが、わが国外交にとっては一つの基本的態度であろうかと思います。少なくとも一方を敵にし、一方を味方にしというだけのやり方では、わが国の実力をもってしてはとうていやり得ないものではないか。むしろ砲艦外交に堕してはいないか。われわれとしては、あらゆる面を調整しながら押していかなければいけないのではないかという立場から見て、ソビエト側の善隣条約に対する拒否というものは、当然別のことも考慮されての上でそういう態度をおとりになっているのか、いないのか、私はその辺も含めて実は心配をいたしております。つまり、外務省は直線状に日中平和友好条約だけを上げるとか、そういう国際間に一国だけのことを考えて直進していい問題があるはずはないのであって、多面的な問題を調整しながらいくことは当然であります。その意味で私は、外務大臣が先日ソビエトを訪問された、それで非常にがんばられたという風聞は伺っておるが、外務大臣はソビエトの交渉にどういう態度で臨まれたのか、どんなことを向こうでお話しになったのか、また領土問題についてはどういうふうにお話しになったのか、そうした点を含めて、まずお答えいただきたい。
  138. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ごく概略を申し上げますと、領土問題につきましては、歯舞、色丹、国後、択捉の四島はかつてわが国以外の領土であったことはないのみならず、一八五五年の日露友好条約におきまして、わが国の領土であることを両者で平和裏に確認をいたしておるわけでございますから、現在の状態というのは不法な状態である、したがってこれはわが国に返還をせらるべきものである、日ソ両国の間には一九五六年に一応戦争の終結が宣言されたわけでございますけれども、この領土の問題が平和条約の形で処理されなければ、真のわだかまりのない平和とは言いがたいということが私ども主張であります。  それに対しましてソ連側は、いろいろな配慮があろうと思いますが、第二次大戦後の現状をいわば肯定するがごとき態度であって、それを現実的な処理と述べるわけでございますが、そういうことを繰り返しておりまして意見の一致を見るに至りません。しかしこのことは、今年グロムイコ外相がわが国を訪日されるときに、さらに続いて交渉しようではないかという合意が事実上できておるものと考えております。それに対しましてソ連側は、別途に日ソの友好善隣と申しますか、そのよう条約を結ぼうではないかということを提案をしておるわけでして、これに対しては私は、領土問題が処理されるということでなければ、この次の段階の友好善隣条約というようなものは論理上も考えることができないということを申しておるわけでございます。  その他、領土以外の問題、いろいろ交渉の中にございますけれども、これは御質問の性格上省略させていただきます。  現在東京でソ連大使が各方面にいわゆる友好善隣条約を働きかけておられるやにつきましては、私のグロムイコ外相に対する答えは、ソ連大使もその場におられたことでもありよく知っておられるはずでありまして、しかし、ソ連自身の外交努力の一端として、駐日ソ連大使がそのような外交活動をしておられるのであろうと私は想像をしております。これは一向に、まあ大変平たい言葉で悪うございますけれども、われわれお勧めもいたしませんが、えらい邪魔になるとも考えておりません。正常な外交活動をその大使としてされることの範囲であろうと私は考えております。  その間にもし誤解があるといたしますと、それは恐らくは、たとえば日中平和友好条約ができるのならば、日ソ平和友好条約もできてしかるべきではないかというよう考え方であろうと思いますけれども、日中間には領土をめぐりまして紛議紛争はないわけでございます。交渉中の日中平和友好条約につきましても、問題がございませんので、したがってそのようなことを取り扱う気持ちは私どもはないわけでございます。しかし、日ソ間には領土問題があるわけでございますから、両方条約というものは本質的に異なっておって、日中平和友好条約ができるのならば、日ソ間にも同じものができていいではないかというソ連の考え方は、それは私どもはそういうふうに考えていないということは、モスクワでもすでに私が申したことであり、ソ連大使も御存じのことであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  139. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 時間が余りありませんから、最近に至るソビエトの漁船団と日本の漁船団との紛争について、関係者の御報告をまず求めます。
  140. 平井義徳

    ○平井説明員 お答えいたします。  ソ連漁船団が日本の近海に参りまして、各地で被害を与えております。ソ連の漁船は北海道の苫小牧沖に三十六隻、それから福島の沖に十隻、それから千葉の沖に二隻というのが、十八日現在の状況でございます。それで被害の総額は、ことしになりましてから全体で一億一千万、四十六年ごろから二億一千万というような概況でございます。
  141. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 現在、申し述べられたようにソビエト漁船団の本土沿岸に対する接近、そしてそれに対する漁業紛争の勃発というようなものも、またこれらの日ソ関係の問題が惹起してきた場合に、あわせて紛争の種になろうかと私は思います。それもしかるべき外交ルートをもって片づけていかなければならない問題でありますし、また日米安保条約締結の際、歯舞、色丹、国後、択捉の返還に対して、ソビエト側が厳しい態度で、安保廃棄の以後でなければこれらの返還を認めないと述べたことは、御承知のとおりであります。しかりとすれば、こうした問題、いま簡単に報告していただきましたけれども、こうした問題も含めて、対ソ関係についてガードをかたくするというだけでなく、新たな展開が必要だろうと私は思います。その意味で、大臣はどうお考えになっておられるのか。私は善隣条約に関する外務大臣立場というものをとやかくここで批評している立場ではありませんが、少なくとも対ソ関係で効果的な手が何一つ打たれていないで、駐日大使の外交活動を評価するだけであるとしたら、それは余りにもソビエトの実力に対して軽視し過ぎたやり方ではなかろうかと私は思います。その辺、大臣に最後にお述べをいただきまして、この問題はまたじっくりと当委員会で議論さしていただきたいとは思っておりますが、ひとつ最後にまとめて御返事をいただきたい、こう思っております。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはなかなかむずかしい問題なのでございますけれども、実はいまの日本近海におけるソ連漁業の活動につきましては、私もグロムイコ外相に御注意を喚起して善処を要望したわけでございます。と申しますのは、活動範囲がたとえ公海でございましても、わが国の漁船、わが国の漁業者の持っております漁具等々にいろいろな損害を与える。ただいま御説明のあったとおりでございますし、そればかりでなく、産卵場におきましてわが国の漁業者がトロールを控えておるのに、そこへトロールが入ってくるというようなことになりますと、魚族の保護に非常に差しさわりがございますので、こういうような問題を含めて、先ほど政府委員が申し上げましたように、専門家の会議が実はあるわけでございます。そして取り決めをしようということになっておるのでございますけれども、その取り決めがはかばかしくいかないということを私はグロムイコ外相に申しまして、このようなことはたとえ公海であっても日本国民の対ソ感情を非常に妨げるので、そういう観点から、外交当局としてひとつ考えてもらいたいということを申しました。グロムイコ外相はそれに対して、漁業当局に自分からも十分話をいたします、そればかりでなく専門家による取り決めについて、ソ連も前向きに対処をするつもりがあるのだというところまで言っておられるわけでございますので、ソ連としてはこの問題について、少なくとも外交当局はかなり気にしておられる、好ましいことではないということを考えておられるのだろうというふうに私は思うのでございます。  ただいま申し上げましたわが国の漁業者及びその漁業者の財産に対する損害及び産卵場の保護というようなことについて、できるだけ早く専門家の間で取り決めができますように、私どもとしても努力をいたしますし、先ほど政府委員から申し上げましたように、ソ連が下部にいたしました通達が実際になかなか浸透していないので、もう少し浸透さしてほしいというようなことも、つい先般申したようなことでございます。
  143. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま漁業のことについてはお答えいただきましたが、ソビエトに対する外交として、これから先言うべきを言うという点では、これからもうんと言っていただかなければならない。それと同時に、現在のソビエトの懸念を晴らすために、日中友好平和条約というものの対ソ的な敵性というものを向こうが判断している以上、それに対してどういうよう立場をもって取り組んでいかれるか、私はそれを基礎的な方針として最後にお伺いしたいと思います。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その最後の点は、先ほど山田委員からも御質疑のあった点に関連しておると思いますが、先ほども申し上げましたように、そのような誤解を招く種類の部分が日中平和友好条約に盛り込まれますことは、わが国にとって最も好ましくないことでございます。そのことは中国側にもぜひ理解をしてもらわなければならないところであると考えておりまして、そのような中国側の理解を促しつつ、ただいま交渉を続けておるということでございます。      ————◇—————
  145. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日の質疑はこの程度にいたしまして、次に理事辞任についてお諮りいたします。  理事山田久就君から理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  146. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  引き続き、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの山田久就君辞任による欠員のほか、理事でありました石原慎太郎君が委員辞任されましたので、現在理事が二名欠員になっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  147. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事に      小林 正巳君  毛利 松平君を指名いたします。  次回は、来たる二十一日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十八分散会