○森
参考人 原子力産業会議の森でございます。
原子力産業会議では、昨年の終わりに
原子力開発をどう進めるべきかという
提言をいたしまして、先生方のところにもお送り申し上げてありますので、あるいはごらんいただいておると思いますけれ
ども、これを
中心に、本日は、少し
体制問題に関連したことを申し上げたいと思います。
原子力の重要性は、皆さん
参考人の方からも一致しておっしゃっておるように、いまさら申し上げる必要はないと思います。
原子力の
開発が
国民生活の将来にとって非常に大事な問題であるということは、申し上げるまでもないと思いますけれ
ども、これがエネルギー資源の非常に乏しい
日本において、ヨーロッパや
アメリカと比べましても、非常に軌道に乗ることがおくれておるということは、
一体どうしたことであろうかとわれわれ考えるわけでございます。
これは、結局
原子力についての進め方に問題があるということだろうと考えます。特に、いま
原子力開発の場合は、皆さん御承知のようにいろいろな問題を先取りしております。何年先になるとこういうことがこれだけたまって、こういう危険性があるという問題はすべて先取りをされて、先ほどいろいろ御
意見もありましたけれ
ども、ほかの産業に比べますと非常に事態がはっきり表に出ておるわけでございます。こういうことに対して、こういうふうにそういう問題については解決していくのだという計画が
国民の前に示されていないということが、やはり
国民的な
合意を妨げておる一番大きな理由ではないか、かように考えるわけでございます。
そういう
意味で、まず一番問題になりますのは
原子力委員会の
あり方だと思いますが、これは皆さんも
御存じのように、二十年前に
原子力基本法という、これは世界に誇っていい法律だと思いますけれ
ども、原爆の恐ろしさを体験した
国民の悲願に立脚いたしまして、
原子力の
平和利用開発を民主的に間違いなく進めるための基本法として
原子力基本法が生まれたわけでございます。私
どもこの実行計画
委員会でも、いろいろもう一度検討いたしたわけでございますけれ
ども、やはり問題は、この
原子力基本法どおりに物事が進んでいないということにむしろ問題があるのではないかと考えたわけでございます。
原子力委員会は、
国民にかわって、
平和利用が確保されておるかどうか、あるいは
国民の安全が保たれておるかどうか、また
国民の将来のために、エネルギーとして正常に発展しておるかどうかを監視する組織だろうと考えます。これは法律の趣旨からいってそう明記してあるわけでございますが、これはやはり、いわゆるそのときの
政府に従属した形の
行政とは
独立に、
国民にかわってこれを監視すべき
役割りにあるものだと考えます。
しかしながら、非常に残念なことに、特に最近は、
原子力委員会があたかも
一つの省庁の諮問機関であるかのごとき活動しかできないというところに非常な問題がある。ですから、むしろ
原子力委員会は、この際、本来の高い立場に立ち戻りまして、その総合的、中立的な、あるいは客観的な立場に立てるように立場をはっきりして、それだけの必要な力をつけるべきだというのが基本的なわれわれの
考え方でございます。
行政委員会にすべきであるとか、あるいは
原子力委員会を
二つに割るべきであるとかいう御
意見もいろいろあるようでございますけれ
ども、
原子力委員会のむしろ基本的に一番大事な問題、責務は、やはり
原子力平和利用が保たれるか、つまり、軍事利用に走るおそれがないかを、
国民にかわって監視するという立場にあると同時に、
国民の安全を監視するという
二つの大きな
役割りがあろうと思います。そういう
意味で、
行政委員会ということになりますと、
一つの組織として権限がはっきりするかわりに、限られたものになるわけでございます。そういう
意味では、
原子力委員会は総理大臣の諮問機関として何でも口が出せるような形になっておりますし、
御存じのように、
原子力委員会の決定は総理大臣はこれを尊重しなければならぬと書いてあるわけでございます。
そういった点に返りまして、現在の安全問題についての信頼性がないのは、
開発と
規制が一緒だからというようなことだけに余り問題をしぼって考えますと、むしろ将来を誤るのではないかと考えられるわけでございます。しかし、
原子力行政の問題、
行政機関のところにまいりますと、やはりこの
体制は非常に不十分である。先ほどいろいろな例が出ましたけれ
ども、各省庁の
責任が非常にはっきりしていない。これは現在、先ほ
どもお話がございました、科学技術庁に安全局を創立するなど、そういった
責任体制をはっきりする、
行政機関においては
開発と
規制についての
責任関係をはっきりするというふうに進めるべきだろうと考えます。
安全審査は、従来は一年に
一つとか
二つとかといった程度の非常に少ない量でありましたからやってこれたのかもしれませんけれ
ども、多くの大学の先生方に非常勤で、手弁当でお願いしておりますような
原子力の
審査機構だけに頼っておるような姿では、
原子力開発を本格的に進めることはむしろ非常に不可能ではないかと考えるわけです。そういう
意味では、やはり技術的な能力を十分持ったスタッフを増強すべきであろうと考えます。
しかし、いま
日本の場合非常に困ったこととも考えられるのでございますけれ
ども、こういう
安全審査機構を、いわゆる
行政の官庁だけでやるということにはやはり限界があるのではないかということが検討の結果出てまいりました。つまり、
一つの仕事を十年、二十年それに打ち込んでおることによって、社会的にも評価を受け技術も上がっていくという、そういう組織が官庁の中でなかなか育ちにくいという
日本の
状況を考えますと、やはりそういう
行政機関での一元化というか、
責任体制をはっきりさせると同時に、これを裏づけます専門機関をつくる必要があるのではないかと考えます。
御承知と思いますけれ
ども、たとえばドイツは原子炉安全研究協会という、直訳すればそんな名前になりますけれ
ども、そういったところで、
政府に
安全審査の
申請があった場合に、まずそこにあらかたの技術的な検討を委託するという組織がございます。これは船などで申しますとロイド機関のようなものでございまして、技術的には非常に権威のある機関でございます。そういったものに約百人の専門家を擁しておりまして、年間十億近い予算を使ってそういう仕事を実体的にやるということは、非常にドイツらしい実際的な
やり方だと思うのでございますが、そういったような組織を裏づけとして、官庁のそういう
安全審査に対するバックアップ組織として引っ張っていく必要があろう、こう考えるわけでございます。
それから国際協力の問題でございますけれ
ども、これは
核燃料の問題その他いろいろ、国際協力を抜きにして
原子力開発は進められないと言っていいと思うのでございますが、やはりその前提といたしまして、核兵器不拡散条約、NPTに対する批准問題は、これは早急に進めるべきである。これは
核燃料の確保がむずかしくなるといったような問題よりも、やはり
日本のエネルギーの面における政策の国際的な信頼性を確立するということだと思いますし、また
国民に対しても、
原子力基本法による三原則のみならず、国際的にそういう約束をはっきりすることによって、むしろ
原子力平和利用に対する信頼も高まるということではないかと思います。
それから立地問題でございますけれ
ども、これははっきり申しまして、従来はいささか虫食いと申しますか、非常に計画的でなかった。やはり今後は、国土の総合利用といった全体的な観点との調整を考えながら、計画的にかつオープンな手続のもとに進めるべきであろうと考えます。
公聴会の問題もそうでございますけれ
ども、
安全性に関する
資料とか実績の
公開等を含めて、いわゆる
国民的な信頼を得るための方策を強化する必要があろう、こう考えておるわけでございます。
それから安全研究の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、事前にこういったことをやっておくべきだということの問題は
最初から指摘されておるわけでございます。現在それを進める
責任体制がはっきりしていない。安全研究の中には、
安全審査を行うための必要な安全研究というのがございましょうし、また民間が自分で信頼性のある機器を
開発するための安全研究というのがございましょうし、またその中間の両方に役に立つような安全研究ということもあろうかと思います。前者の
安全審査に必要な研究、これは原研等を
中心にして国の
責任において進めるべきだろうと考えますし、二番目の民間の問題は、これは民間で
責任を持って進めるべきであろう。その中間について、やはりはっきりした
推進体制を固める必要があろうと考えるわけでございます。
それから、先ほ
どもございましたモニタリングの問題でございますが、これも現在は施設者が、自分の
責任においてモニターした結果を国なりに報告するという形になっておりまして、これだけでは
地域住民の信頼を確立できないということから、
地方自治体の
責任をはっきりさせるという必要があろうと考えます。
これに関連をいたしまして、温排水の問題でございますが、温排水の長期的な研究について、やはりこれを計画的に進める組織が必要ではないかと考えまして、最近原産でも関係方面にいろいろ御
意見を承っておるのですけれ
ども、大方の考えとしましては、やはりこれは海洋を所管しております水産庁のイニシアチブによって、
独立した温排水の研究を行う温排水研究所といったようなものを設立すべきであろう、かように考えております。そしてこれは、もしそれに対して
原子力産業側も協力を求められるならば、いろいろな面で協力をすべきであろうと考えます。しかし、あくまでもこの研究の内容は水産技術者あるいは漁業者の側において進めていくという、こういう
体制を固める必要があろうかと考えております。
廃棄物処理の問題につきましても同様でございまして、国の方針がはっきりしていないということが非常に心配を生んでおるわけでございますので、これはすでに数年来科学技術庁において提案しておられますような、放射性
廃棄物処理処分センターを設立してそれの実施に当たるべきであろうと考えます。しかしながら、それに伴う必要な費用、実際の現場における費用は、やはりPPPと申しますか、
原子力事業者がこれを負担すべきであろうと考えております。ただ、それに伴う
研究開発とかあるいは海洋投棄に伴う国際的な処置、そういった問題は国の
責任において
推進することによって、
国民も安心してこういうところに任せられるということになってくるのではないかと考えております。
それから、先ほど核防条約のことを申し上げましたけれ
ども、核防条約に伴います核物質の保障措置の問題は、これは単に一省庁の問題ではございませんで、これは
日本といたしまして、もしNPTがなくても
核燃料その他が
平和利用にだけ使われておるということを保障するためのシステムは確立しなければならないものでございますし、また、最近ユーラトム並みの保障措置協定をIAEAとの間に結べるという見込みがつきましたのも、
日本が少なくともユーラトム並みの保障措置
体制を組むということが前提になっておりますので、これについても、核防条約の批准あるいはそれに伴う保障措置協定の
国会審議に並行いたしまして、核物質の保障管理
体制の確立を、これはぜひ進めていただかなければならない、かように考えるわけでございます。
それから、この全体に関係がある問題でございますけれ
ども、六十年六千万キロワットの問題がございます。これは数年前に原産でも検討いたしまして、そういったことが
一つのきっかけになりまして、
原子力委員会でもいわゆる六十年六千万キロワットの計画が出たわけでございますけれ
ども、ここ数年の
状況は、これをそのまま放置するわけにいかない
状況になっております。現に、たとえば
昭和五十五年をとりましても、これはすでに現在着工しております
原子力発電所を合計いたしてもわかりますとおり、やはり二千万キロワット以下、いわゆる長期計画に言っております三千万キロはとうてい事実上できないという
状況になっておりますし、
経済自体の伸びも最近数%ということで、安定成長あるいは低成長ということにコンセンサスも固まってきております。
このような
状況を踏まえまして、原産では今月から発電
開発規模の
見直しに着手をいたすことに決定をいたしております。これにつきましては、もちろん
経済全体、エネルギー全体からの要請もございますけれ
ども、
原子力の側で持っております問題、たとえば最近いろいろ起きております
原子力発電所の故障の問題などをどう評価するか、非常に一時的な問題と考えるか、あるいは長期的に解決を要する問題と考えるかということもございましょうし、あるいは再処理とか廃棄物との関連において、そういったある規模の発電規模を実際に問題なくやれるかどうかという検討も必要でしょうし、また
原子力発電コストの問題も、ウラン鉱山から廃棄物まで入れまして、石油のコストと本当に安いかどうかという確認も要ろうかと思います。
そういった
原子力開発の抱えておる問題の解決可能性とのフィードバックと、それから
経済全体からの要請のにらみ合わせで決まってこようかと思いますけれ
ども、いずれにいたしましても、ここ二、三カ月のうちに一応原産としての望ましい
開発規模、
一つの線に出るかどうかわかりませんけれ
ども、これは検討を終わる予定で現在準備に入っておるわけでございます。
非常に要点だけ申し上げましたけれ
ども、後でまた御質問でもいただきましたらお答えいたしたいと思います。