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1975-06-11 第75回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月十一日(水曜日)     午後一時二十八分開議  出席委員    委員長 八木  昇君    理事 伊藤宗一郎君 理事 田川 誠一君    理事 竹中 修一君 理事 前田 正男君   理事 石野 久男君 理事 米内山義一郎君    理事 瀬崎 博義君       中尾 栄一君    羽田  孜君       藤波 孝生君    近江巳記夫君       内海  清君  出席政府委員         科学技術政務次         官       片山 正英君         科学技術庁長官         官房長     片山 石郎君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君  委員外出席者         原子力委員会委         員       井上 五郎君         参  考  人         (全国電力労働         組合連合会会         長)      稲垣 武臣君         参  考  人         (東京大学教授小野  周君         参  考  人         (日本科学者会         議参与)    中島篤之助君         参  考  人         (日本原子力産         業会議常任理事         ・事務局長)  森  一久君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(原子力開発に関  する問題)      ————◇—————
  2. 八木昇

    八木委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れの件についてお諮りいたします。  現在、内閣委員会において審査中の科学技術庁設置法の一部を改正する法律案について、同委員会連合審査会開会申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八木昇

    八木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  開会日時等につきましては、内閣委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  4. 八木昇

    八木委員長 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  本日、原子力開発に関する問題調査のため、全国電力労働組合連合会会長稲垣武臣君、東京大学教授小野周君、日本科学者会議参与中島篤之助君及び日本原子力産業会議常任理事事務局長森一久君、以上四名の方々参考人として御出席願っております。  また、原子力委員会から、委員会がまとめた「原子力行政上の問題点とその改革案」について説明を求めるため、井上原子力委員出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございます。どうかそれぞれの立場から、忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、参考人の御意見の開陳はお一人十分程度にお願いすることとし、後刻各委員からの質疑の際、十分お答えくださるようお願いいたします。  それでは、最初に、稲垣参考人よりお願いいたします。
  5. 稲垣武臣

    稲垣参考人 それでは、電労連原子力に対する考え方をかいつまんで申し上げたいと思います。  電労連は、原子力開発当初の第一次提言から、原子力発電所とこれを取り巻く諸問題につきまして、四回にわたる提言を行ってまいりました。今回、第五次提言は、第四次までの提言を振り返りながら、現在における問題点について電労連考え方を明らかにしたものであります。  今日、わが国エネルギー需要を考えますとき、エネルギー源を多様化し、石油の依存度を軽減し、自給率をどう高めていくかということが一番大きな問題であります。そのためには、水力、地熱など国内資源開発、活用がございますけれども、大きく期待することはできません。したがって、原子力発電しかその役割りを果たすものがないという現実でありまして、電労連もその基本認識に立っておるわけでございます。  原子力発電は、現状技術水準からいたしますと、軽水炉を中核とせざるを得ない実態でありまして、その軽水炉商業用として実用はされておりますけれども、技術的にはアメリカへの依存度が非常に高く、自主技術として今後とも研究開発をしなければならない分野が非常に多くございます。また、廃棄物処理核燃料サイクル原子力ビッグサイエンスの側面から見まして、官民が一体となった体制で今後開発を進めていくということがぜひ必要であろうかと思います。  第五次提言の内容は、一つには現在の原子力行政改革二つには開発研究体制見直し三つには放射線下労働者安全対策について、四番目には国民合意を求めるためにという四項目に集約いたしておるわけでございます。それぞれについて簡単に御説明をいたしたいと思います。  原子力行政改革につきましては、「むつ」問題から原子力行政が非常に問題になりました。私どもも現在の原子力行政一貫化、なかんずく、安全対策についての一貫した審査あるいはその後のいわゆるフォローというものをどうしてやっていくのか、そのためにはどういう方法がいいのかということについて考えました。現在の原子力委員会は、安全と推進ということの両面かけてやられているわけですが、それでは国民安全面についてどうしても納得できないのではないかということから、原子力委員会を解散いたしまして、原子力委員会の中を、現在の原子力委員会と安全を中心とする規制委員会、この二つにしたらどうであろうかという考え方であります。  それから、開発研究体制見直しにつきましては、現在軽水炉中心として運転いたしております電力会社も、あるいはこれをつくりますメーカーも一体になりまして、軽水炉についての安全と、それから周辺におけるいわゆる工学的な問題等については、研究体制をもっと強化すべきではないか。また、基礎的な問題につきましては、国としてもっと金もかけ、人も入れ、集約した形で基礎的な問題を研究すべきではなかろうかというふうに考えております。  三番目に、放射線下労働対策につきましては、私どもは、労使でそれぞれ発電所における個人被曝、いわゆる個人個人の量については非常に厳しい制限をいたしております。ところが、発電所運転が長くなるにつれまして、総体の量というものが、従来ある一定限でとまるものというふうに考えられておりましたのが、総量が大変大きくふえてまいりました。これを現在は、主として一人一人の規制を非常に厳しく行っておりますので、人海戦術といいますか、多数の人を用いてこれらの定検あるいは補修をやらなければならない。ということは、今後そう長続きするものではないし、労働組合側から見ましても大変大きな問題がありますので、点検やり方あるいは点検に使う周辺の工具の開発というようなものについて、より研究対策を立てなければならないであろう。同時に、現在相当厳しい管理はいたしておりますけれども請負関係につきましてはその経路が非常にはっきりいたしませんので、総量規制が非常にしづらい面もございますので、国として労働安全面についてもう少しはっきりとした政策が必要ではないかというふうに考えております。  最後に、国民合意を求めるためにということでありますが、これは確かに日本の場合には、核アレルギーと言われるようなものが非常に強くて、反対運動も、そういう意味合いでは外国に例を見ないほど厳しいものがあるわけですけれども、ともすると建設側の方は、安全というものに対する不信を、核アレルギーからくるものだというふうに簡単に片づけるきらいもございます。安全につきましては、ALAPの精神どおり放射線低減のために最大の努力をするのは当然であります。したがって、そういうことについてはっきりとした態度を打ち出し、従来の火力発電所の延長線上で原子力発電というものを建設運転するのでなくて、原子力発電所安全性、あるいは未知の部分についてもまだたくさんあるわけですから、そういう意味合いで、イージーな考え方でやるべきではなかろうと思います。  そのためには、現在行われております公聴会というものを二つに分けたらどうであろうか。一つは、中央でやる公聴会は、主として安全面について徹底した公聴会を行う。そういうことをすることによりまして、原子力委員会で行われております安全審査をもう一度チェックすることができるのではなかろうか。地方で行います公聴会は、むしろ環境地方振興、いわゆる経済とどう結びつけるのかということについて、地域住民方々とひざを突き合わせた話し合いができるような公聴会にすべきであろう。この二つ公聴会を行いますことによって、安全の面、地域社会における皆さんの考え方というものを十分に取り入れた建設が行えるのではないかというふうに考えて、その四点について提言を行ったわけでございます。  詳しいことは、また後で御質問があれば、その項目項目についてお答えすることにいたしまして、最初陳述はこれで終わりたいと思います。
  6. 八木昇

    八木委員長 ありがとうございました。  次に、小野参考人にお願いいたします。
  7. 小野周

    小野参考人 原子力船むつ」の放射線漏れ事件を契機にしまして、原子力平和利用に関する安全性について、これを根本的に再検討しようという機運になったということは、大変私は評価したいと思っております。ただ、その中で、私は安全性中心的な問題になっております安全審査あり方に関する事柄を、ここで少し述べさせていただきたいと思っておるわけです。  私、実は二年ほど前に、やはりこの問題につきまして国会お話をいたしましたし、その後何度も繰り返しておりますが、その当時私たちが言っておりました幾つかの事柄につきまして、次第にいろいろなところで御理解になってきまして、たとえば、原子力産業会議等原子力に関する基本的な提言等に関して、私たちが前から言っておりますことをいろいろと取り上げていただいてきたことについては、これは私は評価をしたいと思っているわけです。  そういうこともございますが、私が本日ここで申し上げたいと思っておりますことは、先ほどの参考人の方からもお話があったわけですが、まず第一に、原子力委員会というものが開発推進を進めるということと同時に、安全性に関する種々の審査等を行っているということに非常に問題があるわけで、私は、やはりこの二つは完全に分離されなければならないと思う。ただ、分離しただけでは問題がありまして、現在の原子力委員会というものは必ずしも行政委員会ではなくて、したがって、行政委員会としての独立の権限を持っているわけではありません。安全性の問題につきましては、やはり原子力委員会行政委員会としての地位を高め、同時に、その安全審査を行うためのスタッフとそれから予算その他を十分持っていて、しかも、一応政府とは独立安全審査の業務を行えることがどうしても私は必要ではないかと思います。このことは、私はかなり根本的なことであると思います。  その次に、現在の安全性に関する政府責任体制の問題でありますけれども、これは「むつ」の場合に、はからずもかなり一般に知られたことでありますけれども、設計の段階の審査原子炉安全専門審査会で行い、しかも建設あるいは運転等については、これは発電所の場合には通産省、あるいは船の場合には運輸省という形で行われている。こういう一貫性がないというふうな形で行われておりますし、しかも、その場合の責任の所在がどこにあるかわからないという状態になっている。これが私は現在の原子力安全問題に関する非常に大きな問題であると思います。  それから三番目に大切なことは、審査資料公開の問題であろうと思います。この資料公開の問題と同時に、先ほどの参考人お話のように公聴会問題等がございますが、これにつきましては、特に少し時間をかけまして後で申したいと思います。  むしろ実例を申し上げた方がよろしいかと思うのですが、現在の安全審査あり方についての問題でありますが、大分前のことですが、美浜原子力発電所安全審査議事録というものがありまして、これは昭和四十一年の六月三十日に原子炉安全専門審査会で第一回の審査をして、その後三回目の九月二十八日には大筋ではすでに結論を出され、そして十一月十六日には答申をすることをまとめているというような状態になっている。そういうわずか半年ぐらいで審査をされた結果、何が起こっているかと申しますと、美浜の一号炉は、御存じのように昭和四十七年六月十三日に蒸器発生器細管放射能漏洩事故を起こしまして、その後約二〇%以上の蒸気発生器細管に栓をいたしまして使っていたのですけれども、何度も同じ事故を繰り返して、現状では、何とも運転ができないような状態になっているということになっている。こういうふうなことが起こったということは、やはり私は安全審査ということが、非常に不完全に行われていたということと無縁ではないと思います。  実は今回、東京電力が柏崎原子力発電所設置許可申請を出しまして、これについては十分な年月をかけて審査をするというお話が出ておりますけれども、実は、これは言うまでもないことでありますけれども年月をかけるだけで十分な審査が行われるかというと、決してそうではなくて、審査の基本的な姿勢あり方にむしろかかわっている。  その審査の基本的な姿勢あり方として実例を申しますと、最近訴訟の問題でいろいろ言われております四国伊方原子力発電所安全審査の例でありますが、これは昭和四十七年の五月十一日に申請が出されまして、やはり半年ちょっとたちました十一月十七日にこれについての許可が出ているわけですが、これと先ほどの美浜原子力発電所の問題とは無関係ではございませんで、この審査の期間に美浜原子力発電所の一号炉細管漏洩事故が起こっているわけです。本来ならば、審査の過程でそういう——実は四国伊方原子力発電所の場合には、美浜の一号炉と同じ加圧水型の軽水炉でありますから、当然同じような問題があるはずなんですけれども、そういうものは全然無視されてしまって、十一月十七日には審査の結果が出ている。こういうふうな基本的な姿勢あり方でありますと、二年かけて、三年かけて審査をされていても、決して国民納得するような審査が行われるとは私は考えられません。さらに、伊方の問題につきましては、最近も資料の問題でいろいろ問題が起こっているわけであります。  結局、国民納得が得られる審査とはどういうものか。それはもちろん慎重に審査がやられるということが大事でありますし、それについては今後いろいろな検討がされると思うのですが、ただ、先ほどの柏崎以後を慎重にやるというだけではこれは意味がなくて、いままでむしろかなり慎重でなかった審査が行われてきた歴然とした事実は「むつ」の場合でありますけれども、そういう慎重でない審査が行われてきた、そういうものを、やはり本来ならばもう一度見直すための再度の審査というものが、その議論から言えばなされてしかるべきではないか。つまり、いままではなはだ慎重でなかった審査というのが行われていて、そういうものについての再度の審査というものをやはり行うということが、元来必要と考えられるのではないかというふうに私は考えます。  それからもう一つは、審査公開の問題でありますが、審査公開につきましては、たびたびいろいろなことが言われているわけですが、審査公開というのは非常に大事なことでありまして、もちろん審査議事録公開されることが必要であると思います。それから資料公開が必要である。資料公開ということをいたしませんと、安全専門審査会でどのような審査がやられたということについては、結果が出るだけであって、その結果に至るまでの道筋というものは、これは元来技術的な問題でありますから、それが、審査会以外の人にフォローされる必要がある。ところが、審査資料公開されておりませんと、結局、それは十分にやったと言っても、本来の意味で十分にやったとは私は言いがたいと思います。ですから、もし公聴会を行うといたしますと、公聴会を行う場合にも、やはりその資料公開されていなければ、本来の意味質疑応答をして公聴会の実を上げることは不可能でありますから、当然、国民納得がいくという形で審査が行われるためには、資料は全部公開されるべきである。  ちょっとこれに関連いたしますが、先日の「むつ」の放射線漏れ事故調査報告書を見ますと、この報告書は、もちろん作成された方は非常に苦心なさったと思うのですけれども、これはやはり科学技術的な文献として見ますときには非常に価値が乏しいという面があります。というのは、どういう点かと申しますと、あの報告書にはレファレンスが一つもついていない。つまり参考文献資料の目録が何一つついていないので、こういうことを委員の方がお考えになって書かれたというだけにすぎない形になっている。これがやはり今後の安全審査のいろいろな問題にも関連するわけでありますが、やはりそれに使われた資料というものは全部明示して、それを全部公開して、だれでも見ることができるということになっていないと、やはり私は国民の一人としても納得ができないのではないかと考えているわけです。  私は、三つの点について述べたわけでありますが、今後原子力行政等についていろいろ検討されていくと思いますけれども、やはりこの公開の原則というのは、私はこの中で一番根幹になる問題じゃないかと考えております。  以上、意見陳述を終わりたいと思います。
  8. 八木昇

    八木委員長 ありがとうございました。  次に、中島参考人にお願いいたします。
  9. 中島篤之助

    中島参考人 中島でございます。私、きょうは科学者会議参与ということで出席させていただいておりますので、最初に、日本科学者会議がいままで原子力開発の問題について述べてまいりましたことをちょっと御紹介して、それから話に入りたいというふうに思います。  原子力開発をめぐるいろいろな問題を考えます場合に、次に申し上げるような六つ項目点検基準に照らして考えなければいけないということを、かねてから日本科学者会議は言ってきたわけであります。  その第一の点検基準は、それが自国に根差した自主的なエネルギー開発であるかどうかという点であります。それから第二の点検基準と申しますのは、それが安全確保優先開発であるか、経済優先開発であるかという点を吟味しなければいけない。それから第三の点検基準は、自主的、民主的な地域開発が保障されるかどうかという点であります。それから第四の点検基準は、軍事的利用への歯どめが保障されているかどうかという点であります。第五の点検基準は、原子力施設に働く労働者地域住民の生活、生命の安全を保障し、環境を保全するに十分な歯どめが、次が重要でありますが、どれほどの科学的な実証性をもって裏づけられているかという点であります。第六の点検基準は、以上五つの基準が本当に支えられるためには、その前提として、民主的な行政実態として確立していなければいけない、こういうことであります。  いま申し上げましたこの六つ点検基準なるものは、一九七二年の十二月八日、いまから約二年半ほど前でありますが、日本学術会議が主催いたしました原子力発電安全性をめぐるシンポジウムにおきまして発表されたものであります。皆様がよく御存じのように、一九七二年と申しますのは、原子力委員会昭和六十年度には六千万キロワットの原発建設するということを中心的な眼目とされた新しい原子力開発利用長期計画というものを発表された年であります。  それから、いま申し上げましたこの六つ基準は、たしか七十一国会のこの委員会、当時の委員長は社会党の石野先生であったと思いますが、その五月九日に、原子力安全性確保に関する問題ということで、やはり参考人を多数呼ばれまして議論をいたしました。そのときに、科学者会議安齋育郎から御紹介をしてあるはずでございます。このときには私と安齋とで、特に第五の点検基準であります安全性確保の問題に関しまして、トータルシステムとしての安全性が必ず確保されなければいけないということを、核燃料の再処理工場環境安全を例として詳しく申し上げたわけであります。  それ以来、私ども提言は、地域住民を初めとする国民方々にはかなり広く理解されたのではないかというふうに確信しておるのでありますけれども、一方、政府行政当局に十分反映されたというふうに考えられないのは大変残念であると思っております。  皆様もよく御存じのように、昨年、一九七四年には日本分析化学研究所データ捏造事件、それから田島英三氏の原子力委員辞任事件、それに「むつ」の事件、いずれもわが国原子力行政の根本にかかわる重大な諸事件が相次いで発生しております。それだけではありません。実証炉であるはずの軽水炉は相次いでトラブルを起こしまして、商業的に言って満足に運転されているアメリカ型の原発というのは、実は一つもないと申し上げても言い過ぎではない、そういう状況にあるということも、皆様すでに御承知のとおりであります。  わが国原子力開発現状は、そういう意味でまことに憂慮すべき状況にありまして、原子力は出直さなければいけないという主張が国民的な世論になっているということは、そういう意味では当然であろうと思います。  こういう事態に際しまして、「むつ事件が起きましてから、政府の方では原子力行政懇談会というのを設置されまして、原子力委員会あり方を初めとする原子力行政の抜本的な見直しを行っているというふうに漏れ聞いておるわけであります。大変残念なことに、いま小野先生も言われたことでありますけれども、この懇談会議事非公開になっているというふうに私どもは聞いております。もちろん、一定の審議が終わった後はその成果が公表されるであろうと思いますが、これが非公開で審議されているということ自体が、原子力基本法精神に反しているのではないかというふうに思って、大変遺憾に思います。大変残念なことに、実は、学術会議を代表しているのかどうか知りませんが、学術会議の副会長である伏見氏も参加しておられますので、その点は大変困るのですけれども、やはり公開すべき筋合いのものではないかというふうに私は考えております。  それから、さらに重大な問題は、行政懇談会を一方で開かれながら、一方では新しい原子力発電所建設を進めたり、あるいは問題があるとされておる安全審査を従前と同じやり方で続けておられるという事実であります。これは、最近も伊方の二号炉ですか、それの新しい部会が設置されたそうでありますし、幾つかの例があります。  今日、こういう状態になりまして、国民合意を得なければ原子力開発というのは一歩といえども進めることができないというのは、これは原子力産業会議の御提言の第一項目にそう書いてありますし、ただいまの電労連稲垣さんのお話でも、第四項目にそういうことが書いてありまして、これはもう一つのコンセンサスが得られた事柄であろうと思うのですが、一方において破綻が明らかになって国民不信が集中している従来どおり安全審査等々を従来どおりおやりになる、一方において、原子力行政抜本的改革をやるというふうにおっしゃいましても、これでは国民的合意はどうやってできるのかということが、私は大変疑問であろうと思います。  政府原子力委員会が、本当に今日の原子力開発危機的状況を理解しあるいは反省されて、原子力行政抜本的改善を図り、それから原子力開発における国民的合意を得ようとしておられるなら——と言うのは大変失礼な言い方でありますが、そうでなければならないと思いますけれども、このような二律背反的な行政姿勢というものを、まず改められる必要があるのではないかというふうに思います。  すなわち、行政懇談会一定改革の結論を答申し、それに基づいて必要な改革が行われるまで、少なくとも新規の原発建設は中止すべきでありましょうし、安全審査もしばらくは見合わすというのが当然ではないかというふうに私は考えます。もっと積極的には、現在稼働中のすべての原子力発電所を初め建設中の原子力発電所あるいは再処理工場等々について、安全確保のために再検討する、安全の再審査をやるということが必要なのではないかというふうに思います。  「むつ」の問題につきましても同様でありまして、大山先生を委員長とする「むつ」の放射線漏れ問題調査委員会というものがその報告書を発表するより前に、新しい母港をお探しになっておられる。こういう感覚はどういうことかというのは、私どもにはとうてい理解しにくいものでありまして、これでは科学技術庁や原子力委員会が、果たしてわが国原子力船開発というものを科学的実験としてちゃんとやる気があるのかどうかということを、私どもは疑いたくなるというふうに思います。  時間がありませんから、わが国原子力行政抜本的改善のためにはどういうことをしなければならないかということについて、簡単に私の意見を申し上げます。  第一に必要なことは、これは非常にごくあたりまえのことでありますけれども国民の生命と健康、安全を守ることが出発点にならなければいけない、そういうことであります。この点に関しましては、日本学術会議が昨年六十五回総会において、「ふたたび原子力平和利用三原則について」と題する対政府勧告を採択しております。お手元に資料としてお配りしてございますので、ぜひごらんになっていただきたいと思いますが、この勧告はそういう精神から出発して出されたものであります。詳しいことは、後の質疑でいろいろ聞いていただければ幸いかと存じます。それから、さらに昨年秋には、「むつ事件をも踏まえまして、「原子力安全の全般的な課題解決のために」という勧告を出しております。これも資料としてお配りしておきましたので、ごらんいただきたいと思います。  さて、新聞等で拝見しておりますと、原子力行政の抜本的な改善のためということで、原子力委員会の機能を、先ほどからも出た話でありますが、開発規制に分離すべきかどうかといったことが議論されておるようでありますし、あるいはそういう行政組織上の機構いじりよりも行政姿勢が問題なんだという御意見もあるようでありますし、あるいは権限を持った行政委員会にすべきであるという意見があるかと思えば、一方、審議機関にとどめるべきであるという御意見もあるというふうにいろいろ聞いております。  私は、こういうようなことはやはり検討に値する問題であるとは思いますけれども、最も肝心なことは、安全行政を実体として確立することが必要である。つまり、十分な安全研究が体制、人員、予算等々の面で保障され、必要な安全基準が衆知を集めて確立される必要があります。そうして、こういうものを一元的に掌握できる行政組織が民主的に運営される必要がある。それを、たとえば原子力規制委員会と呼ぼうが、安全委員会と呼ぼうが、それは同じでありまして、この点については、各方面の御提言はかなり一致しているのではないかというふうに私は見ております。  後でまた機会を得て述べたいと思いますけれども、私どものように原子力研究所におるというか、現場におります立場から見ておりますと、いままでの正しくない行政、はっきり申し上げると誤った行政のために、どれだけ安全研究が阻害されているかというふうに言わなければならないのは大変残念であると思います。また、最近にわかに、科学者や技術者の意見を聞くことなしに、安全研究という名目でもって膨大な予算が原研などにつけられました。現場の研究者は、考える暇もなくそれを消化しなければいかぬというような状況にありますけれども、これは決して健全な状態とは考えられません。このような当面を糊塗するようなやり方が、わが国原子力研究の健全な発展に寄与しないであろうということは、余りにも明らかではないかというふうに私は考えております。この点についても、具体的な実態については、後ほど時間があれば述べさしていただきたいというふうに考えております。  時間が過ぎましたので、一応この辺で私の冒頭の陳述を終わらせていただきたいと思います。
  10. 八木昇

    八木委員長 ありがとうございました。  次に、森参考人にお願いいたします。
  11. 森一久

    ○森参考人 原子力産業会議の森でございます。原子力産業会議では、昨年の終わりに原子力開発をどう進めるべきかという提言をいたしまして、先生方のところにもお送り申し上げてありますので、あるいはごらんいただいておると思いますけれども、これを中心に、本日は、少し体制問題に関連したことを申し上げたいと思います。  原子力の重要性は、皆さん参考人の方からも一致しておっしゃっておるように、いまさら申し上げる必要はないと思います。原子力開発国民生活の将来にとって非常に大事な問題であるということは、申し上げるまでもないと思いますけれども、これがエネルギー資源の非常に乏しい日本において、ヨーロッパやアメリカと比べましても、非常に軌道に乗ることがおくれておるということは、一体どうしたことであろうかとわれわれ考えるわけでございます。  これは、結局原子力についての進め方に問題があるということだろうと考えます。特に、いま原子力開発の場合は、皆さん御承知のようにいろいろな問題を先取りしております。何年先になるとこういうことがこれだけたまって、こういう危険性があるという問題はすべて先取りをされて、先ほどいろいろ御意見もありましたけれども、ほかの産業に比べますと非常に事態がはっきり表に出ておるわけでございます。こういうことに対して、こういうふうにそういう問題については解決していくのだという計画が国民の前に示されていないということが、やはり国民的な合意を妨げておる一番大きな理由ではないか、かように考えるわけでございます。  そういう意味で、まず一番問題になりますのは原子力委員会あり方だと思いますが、これは皆さんも御存じのように、二十年前に原子力基本法という、これは世界に誇っていい法律だと思いますけれども、原爆の恐ろしさを体験した国民の悲願に立脚いたしまして、原子力平和利用開発を民主的に間違いなく進めるための基本法として原子力基本法が生まれたわけでございます。私どもこの実行計画委員会でも、いろいろもう一度検討いたしたわけでございますけれども、やはり問題は、この原子力基本法どおりに物事が進んでいないということにむしろ問題があるのではないかと考えたわけでございます。  原子力委員会は、国民にかわって、平和利用が確保されておるかどうか、あるいは国民の安全が保たれておるかどうか、また国民の将来のために、エネルギーとして正常に発展しておるかどうかを監視する組織だろうと考えます。これは法律の趣旨からいってそう明記してあるわけでございますが、これはやはり、いわゆるそのときの政府に従属した形の行政とは独立に、国民にかわってこれを監視すべき役割りにあるものだと考えます。  しかしながら、非常に残念なことに、特に最近は、原子力委員会があたかも一つの省庁の諮問機関であるかのごとき活動しかできないというところに非常な問題がある。ですから、むしろ原子力委員会は、この際、本来の高い立場に立ち戻りまして、その総合的、中立的な、あるいは客観的な立場に立てるように立場をはっきりして、それだけの必要な力をつけるべきだというのが基本的なわれわれの考え方でございます。行政委員会にすべきであるとか、あるいは原子力委員会二つに割るべきであるとかいう御意見もいろいろあるようでございますけれども原子力委員会のむしろ基本的に一番大事な問題、責務は、やはり原子力平和利用が保たれるか、つまり、軍事利用に走るおそれがないかを、国民にかわって監視するという立場にあると同時に、国民の安全を監視するという二つの大きな役割りがあろうと思います。そういう意味で、行政委員会ということになりますと、一つの組織として権限がはっきりするかわりに、限られたものになるわけでございます。そういう意味では、原子力委員会は総理大臣の諮問機関として何でも口が出せるような形になっておりますし、御存じのように、原子力委員会の決定は総理大臣はこれを尊重しなければならぬと書いてあるわけでございます。  そういった点に返りまして、現在の安全問題についての信頼性がないのは、開発規制が一緒だからというようなことだけに余り問題をしぼって考えますと、むしろ将来を誤るのではないかと考えられるわけでございます。しかし、原子力行政の問題、行政機関のところにまいりますと、やはりこの体制は非常に不十分である。先ほどいろいろな例が出ましたけれども、各省庁の責任が非常にはっきりしていない。これは現在、先ほどもお話がございました、科学技術庁に安全局を創立するなど、そういった責任体制をはっきりする、行政機関においては開発規制についての責任関係をはっきりするというふうに進めるべきだろうと考えます。安全審査は、従来は一年に一つとか二つとかといった程度の非常に少ない量でありましたからやってこれたのかもしれませんけれども、多くの大学の先生方に非常勤で、手弁当でお願いしておりますような原子力審査機構だけに頼っておるような姿では、原子力開発を本格的に進めることはむしろ非常に不可能ではないかと考えるわけです。そういう意味では、やはり技術的な能力を十分持ったスタッフを増強すべきであろうと考えます。  しかし、いま日本の場合非常に困ったこととも考えられるのでございますけれども、こういう安全審査機構を、いわゆる行政の官庁だけでやるということにはやはり限界があるのではないかということが検討の結果出てまいりました。つまり、一つの仕事を十年、二十年それに打ち込んでおることによって、社会的にも評価を受け技術も上がっていくという、そういう組織が官庁の中でなかなか育ちにくいという日本状況を考えますと、やはりそういう行政機関での一元化というか、責任体制をはっきりさせると同時に、これを裏づけます専門機関をつくる必要があるのではないかと考えます。  御承知と思いますけれども、たとえばドイツは原子炉安全研究協会という、直訳すればそんな名前になりますけれども、そういったところで、政府安全審査申請があった場合に、まずそこにあらかたの技術的な検討を委託するという組織がございます。これは船などで申しますとロイド機関のようなものでございまして、技術的には非常に権威のある機関でございます。そういったものに約百人の専門家を擁しておりまして、年間十億近い予算を使ってそういう仕事を実体的にやるということは、非常にドイツらしい実際的なやり方だと思うのでございますが、そういったような組織を裏づけとして、官庁のそういう安全審査に対するバックアップ組織として引っ張っていく必要があろう、こう考えるわけでございます。  それから国際協力の問題でございますけれども、これは核燃料の問題その他いろいろ、国際協力を抜きにして原子力開発は進められないと言っていいと思うのでございますが、やはりその前提といたしまして、核兵器不拡散条約、NPTに対する批准問題は、これは早急に進めるべきである。これは核燃料の確保がむずかしくなるといったような問題よりも、やはり日本のエネルギーの面における政策の国際的な信頼性を確立するということだと思いますし、また国民に対しても、原子力基本法による三原則のみならず、国際的にそういう約束をはっきりすることによって、むしろ原子力平和利用に対する信頼も高まるということではないかと思います。  それから立地問題でございますけれども、これははっきり申しまして、従来はいささか虫食いと申しますか、非常に計画的でなかった。やはり今後は、国土の総合利用といった全体的な観点との調整を考えながら、計画的にかつオープンな手続のもとに進めるべきであろうと考えます。  公聴会の問題もそうでございますけれども安全性に関する資料とか実績の公開等を含めて、いわゆる国民的な信頼を得るための方策を強化する必要があろう、こう考えておるわけでございます。  それから安全研究の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、事前にこういったことをやっておくべきだということの問題は最初から指摘されておるわけでございます。現在それを進める責任体制がはっきりしていない。安全研究の中には、安全審査を行うための必要な安全研究というのがございましょうし、また民間が自分で信頼性のある機器を開発するための安全研究というのがございましょうし、またその中間の両方に役に立つような安全研究ということもあろうかと思います。前者の安全審査に必要な研究、これは原研等を中心にして国の責任において進めるべきだろうと考えますし、二番目の民間の問題は、これは民間で責任を持って進めるべきであろう。その中間について、やはりはっきりした推進体制を固める必要があろうと考えるわけでございます。  それから、先ほどもございましたモニタリングの問題でございますが、これも現在は施設者が、自分の責任においてモニターした結果を国なりに報告するという形になっておりまして、これだけでは地域住民の信頼を確立できないということから、地方自治体の責任をはっきりさせるという必要があろうと考えます。  これに関連をいたしまして、温排水の問題でございますが、温排水の長期的な研究について、やはりこれを計画的に進める組織が必要ではないかと考えまして、最近原産でも関係方面にいろいろ御意見を承っておるのですけれども、大方の考えとしましては、やはりこれは海洋を所管しております水産庁のイニシアチブによって、独立した温排水の研究を行う温排水研究所といったようなものを設立すべきであろう、かように考えております。そしてこれは、もしそれに対して原子力産業側も協力を求められるならば、いろいろな面で協力をすべきであろうと考えます。しかし、あくまでもこの研究の内容は水産技術者あるいは漁業者の側において進めていくという、こういう体制を固める必要があろうかと考えております。  廃棄物処理の問題につきましても同様でございまして、国の方針がはっきりしていないということが非常に心配を生んでおるわけでございますので、これはすでに数年来科学技術庁において提案しておられますような、放射性廃棄物処理処分センターを設立してそれの実施に当たるべきであろうと考えます。しかしながら、それに伴う必要な費用、実際の現場における費用は、やはりPPPと申しますか、原子力事業者がこれを負担すべきであろうと考えております。ただ、それに伴う研究開発とかあるいは海洋投棄に伴う国際的な処置、そういった問題は国の責任において推進することによって、国民も安心してこういうところに任せられるということになってくるのではないかと考えております。  それから、先ほど核防条約のことを申し上げましたけれども、核防条約に伴います核物質の保障措置の問題は、これは単に一省庁の問題ではございませんで、これは日本といたしまして、もしNPTがなくても核燃料その他が平和利用にだけ使われておるということを保障するためのシステムは確立しなければならないものでございますし、また、最近ユーラトム並みの保障措置協定をIAEAとの間に結べるという見込みがつきましたのも、日本が少なくともユーラトム並みの保障措置体制を組むということが前提になっておりますので、これについても、核防条約の批准あるいはそれに伴う保障措置協定の国会審議に並行いたしまして、核物質の保障管理体制の確立を、これはぜひ進めていただかなければならない、かように考えるわけでございます。  それから、この全体に関係がある問題でございますけれども、六十年六千万キロワットの問題がございます。これは数年前に原産でも検討いたしまして、そういったことが一つのきっかけになりまして、原子力委員会でもいわゆる六十年六千万キロワットの計画が出たわけでございますけれども、ここ数年の状況は、これをそのまま放置するわけにいかない状況になっております。現に、たとえば昭和五十五年をとりましても、これはすでに現在着工しております原子力発電所を合計いたしてもわかりますとおり、やはり二千万キロワット以下、いわゆる長期計画に言っております三千万キロはとうてい事実上できないという状況になっておりますし、経済自体の伸びも最近数%ということで、安定成長あるいは低成長ということにコンセンサスも固まってきております。  このような状況を踏まえまして、原産では今月から発電開発規模の見直しに着手をいたすことに決定をいたしております。これにつきましては、もちろん経済全体、エネルギー全体からの要請もございますけれども原子力の側で持っております問題、たとえば最近いろいろ起きております原子力発電所の故障の問題などをどう評価するか、非常に一時的な問題と考えるか、あるいは長期的に解決を要する問題と考えるかということもございましょうし、あるいは再処理とか廃棄物との関連において、そういったある規模の発電規模を実際に問題なくやれるかどうかという検討も必要でしょうし、また原子力発電コストの問題も、ウラン鉱山から廃棄物まで入れまして、石油のコストと本当に安いかどうかという確認も要ろうかと思います。  そういった原子力開発の抱えておる問題の解決可能性とのフィードバックと、それから経済全体からの要請のにらみ合わせで決まってこようかと思いますけれども、いずれにいたしましても、ここ二、三カ月のうちに一応原産としての望ましい開発規模、一つの線に出るかどうかわかりませんけれども、これは検討を終わる予定で現在準備に入っておるわけでございます。  非常に要点だけ申し上げましたけれども、後でまた御質問でもいただきましたらお答えいたしたいと思います。
  12. 八木昇

    八木委員長 ありがとうございました。  以上で、各参考人意見開陳は終わりました。     —————————————
  13. 八木昇

    八木委員長 引き続き井上原子力委員より説明を求めることといたします。井上原子力委員
  14. 井上五郎

    井上説明員 ただいま委員長から御指摘がございまして、私、説明員として参りましたということは、原子力委員会委員長代理を仰せつかっておるという立場で申し上げることと存じます。したがいまして、「むつ」問題その他最近の情勢につきまして、原子力委員会内部におきましても、自分自身のあり方を含めまして、原子力体制をいかにすべきかということをしばしば論議をいたしまして、本日、私はさような意味におきまして、原子力委員会の最大公約数的な見解という意味で申し述べさせていただきたいと存じます。もっとも、原子力委員長はこの中には御参加になっておりません。あらかじめ御了承をちょうだいしておきます。  そこで、基本的の考え方といたしましては、油の危機が起こる起こらないにかかわらず、次の代を担う日本のエネルギーの主力は原子力である。先刻どなたかからもお話がございましたけれども原子力基本法昭和三十年にできまして、その第一条には原子力開発の目的が書いてあるわけでございますが、その第一条に書いてありますのは、「この法律は、原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、」というのがこの法律の冒頭でございますが、その将来においてのエネルギー資源を確保しということが今日の問題になった。しかし、法律そのものはまことに結構なものであるのですけれども、二十年の間に将来の問題が今日になったということにおいて、若干ながら不備あるいは補正をすべき問題があるのかと思います。  そこで、基本的には、日本のエネルギー政策が、今日考えられておったより以上に原子力に依存せざるを得ないということにおきましては、原子力委員会はさように一致をいたしておる次第でございまして、これも先ほどどなたかからお話がございましたが、かつて原子力委員会は、昭和五十五年度において三千二百万キロワット、昭和六十年度において六千万キロワットの開発が必要であるということを決定いたしております。しかしながら、実際問題といたしまして、昭和五十五年に三千二百万キロということは時間的には無理であるということで、これはたしか当委員会で稲葉私案という形で申し上げたかと存じますが、五十五年の三千二百万キロは残念ながらあるいは実現困難である。しかし、六十年度の六千万キロワットは、今日は原子力委員会としては変えておりません。非常に困難であるということは認めざるを得ないのでございますが、絶対に不可能であるかどうかということにつきましては、私どもは必ずしもさよう考えておりません。  さような意味において、これはまだ変更いたしておりませんけれども、しかし、これに伴う行政問題その他いろいろな問題は、やはりこの際変えなければならない。その前提に立ちまして、ただいま多くの参考人方々から御指摘がありましたのは、やはり原子力開発体制そのものに一つ問題点があるのではないか。私どももそれは、今日のあり方が最善であるとのみは必ずしも言えないと考えております。  そこで、原子力委員会あり方を含めまして、一体原子力行政体制そのものをどうすればよろしいか。そのどうすればよろしいかということの最大の眼目は、何といいましても、原子力開発に対して国民の信頼をかち得る体制は果たしていかなるものであるかということがその根本であるということは、もう間違いないと思いますが、その国民の信頼を得るということの最大の眼目は、原子力は安全なものである、これについての国民の信頼を得る方法はどういう体制によって行政が行われることであるかということに焦点がしぼられるのではないかと思うのであります。  「むつ」問題以来起こりましたいろいろの問題、これに対しまする新聞その他多くの意見というものをいろいろ拝見いたしますと、やはり安全問題に対する行政あり方あるいは国の責任のとり方、こういったようなことにつきまして疑義がある、あるいは御不満がある、こういうことではないかと思うのでありますが、これをせんじ詰めますると、二点または三点にしぼられるかと思います。  一つは、原子力委員会というものの制度が、今日、一方において開発推進をつかさどりながら、一方において安全規制をつかさどっておるではないか、これはやや二律背反的なもので、これを一つ委員会でやっておるということは、どうも一方が不十分ではないか。もっとはっきり言えば、開発に重点が置かれて安全の方がおろそかになるのではないだろうかといった御疑問が一点あるかと思います。  それから第二点といたしまして、安全に対する審査体制というか、あるいは国の許認可の体制一貫性がないのではないか。原子力委員会は基本的な審査をいたしまして、こういう基準に沿うであろうならばこれは設置をしてよろしいといいながら、実際に建設をしあるいは運転をする場合に、これを国として管理をしていく体制は、原子力委員会の直接の機関ではない他の省庁に移っておるではないか、この間に何か責任体制一貫性が欠けておるのではないかといったような御疑念が一つあるのではないかと思います。  それから、第三点と言えるかどうか知りませんけれども、いま一つの問題は、原子力委員会は八条機関であって、内閣総理大臣に対して意見を具申するけれども、何一つ行政権限は持っておらないのではないか、果たしてこれで十分な国民の信頼にこたえ得る行政的措置ができるのか、あるいは責任体制が確立しておるのか、こういった問題点であろうかと思います。  これにつきまして私どもの見解を述べてみたいと思うのでございまするが、確かに推進体制と安全規制体制を分けろということは、一つの世論と申しますか、意見でございまするし、世界各国を見ましても、そういう体制をとっておるところもかなりございます。それのいい悪いということは、最終的には一つの政治判断であると存じまするけれども、実体的に考えてみますと、私は、原子力委員会という機関が推進規制というものを分けるということには、若干の疑問を持っております。確かにそれは一つ考え方ではありまするけれども原子力委員会が安全と推進二つの機能を分けたらば、それで十分国民が信頼し得る本当の安全が確立するかということは、少し疑問を持たざるを得ない。  原子力というものそれ自体は、安全ということを前提にしなければ推進も何もあり得ないのでありまして、いやしくも原子力というものをやる以上は、安全というものが前提なのであります。それで、安全のない原子力開発というものは、それ自体ナンセンスと申しますか、あり得ないことなんでありまして、言いかえますれば、原子力推進するということは安全が伴うからこそできるわけで、それを二つに分けるということは、必ずしも意味があるとは考えません。  ただし、お断りを申し上げておきますが、それは、原子力政策を最高に審議して内閣総理大臣に答申するという重責を持った委員会としての立場でありまして、やはり行政的にはこれを分けるということが、国民の信頼から言えばよりよい形である。たとえば、アメリカにおきましては先般これを分けましたけれども、分ける前におきまして、いわゆるAEC、原子力委員会と言った当時から、安全をつかさどる部門とその他の原子力行政をつかさどる部門とは、同じワシントンにあるというのではなく、片一方はワシントンの市内にございまするし、片一方は他の州にあるというほど、截然と内部的には分かれておったのでありまして、しかし、それを一つ原子力委員会が統括をしておったわけであります。  さような意味で、原子力委員会を二分するということは必ずしも当を得た措置ではない。ただし、行政責任をはっきりする意味におきましては、安全局というものを分離した方が、より多く国民の信頼をかち得る方法である、かように考えております。  それから、第二の点でございまするが、行政安全審査体制に対して一貫性がないではないか、なかんずく「むつ」の問題を契機にいたしまして、当委員会におきましても私ども再々、さような意味の御質問をちょうだいをいたしております。十分であったかどうかということにつきましては、いろいろ御批判があると考えますし、どうしても安全性に対しては、今日あるより以上に一貫的な審査が行われ、これが国民の信頼にこたえ得るような体制にしなければならないということにおきまして、私ども全く同感でございます。  しかしながら、それでは日本行政体制におきまして、原子力だけが唯一の独立的な機関であるか。原子力行政に関しまする省庁は大体十二ございます。一番関係が深いのは通産省、あるいは原子力船と言えば運輸省であるかもしれませんけれども、やはり環境庁の問題もあれば、農林省である水産庁の問題もあれば、もし輸送の問題になれば運輸省の輸送の問題もありますし、万が一将来、より多くフィジカルプロテクションということを考えなければならないとするならば、警察当局の問題もあるわけでございまして、また、先刻ある参考人からお話がございましたように、関係労務者の保健という問題になれば労働省、厚生省等の問題もあるわけでございます。これを全部一つの機関でやるということは、実際問題としては言うべくしてできない問題でございます。  とするならば、安全に対する審査体制一貫性というものが今日より以上に国民の信頼をかち得る体制にすべきであるという、これは私、全くさように考えますが、実際問題としてそれはどうすればいいのか。これはやはり連絡を密にして、もっと審査一貫性が現実にできるようにする。行政面におけると同時に、先ほど参考人方々からお話が出ましたような技術的な面、あるいは行政的な扱いの面、あるいは官と民との分担の問題、あるいはそれの審査機関の問題等々ございまして、いま原子力委員会におきましては安全会議というものを開いて、そのいかにあるべきかということを研究いたしておりまするが、現在の体制において一貫した審査ができないかといえば、運用におきましてある程度改善ができるというふうに私どもは考えております。  それから第三の点は、原子力委員会行政機関であるのがいいか、あるいは審議機関と申しますか、八条機関である方がいいかといったような問題、またこれと関連いたしまして、原子力委員長というものが行政大臣であることの方がいいのか、政府とは全く独立した中立的機関である方がいいのか、こういったような問題があると思います。  これにつきまして結論を先に申しますると、やはり私は、原子力推進ということが国としての最重要の問題点一つであるとするならば、原子力委員長が行政大臣であることは少しも差し支えない、と申しまするか、原子力委員会が単なる諮問機関であって、財政面について何らの直接の発言権を持たないということでは、意見は言うけれども、また尊重はされるけれども、国として最重要なことはやはり予算であると思いますので、さような意味におきまして、予算について閣内において発言をし得る機関であるという一面を失うということは、やはり原子力推進体制上疑問を持たざるを得ない。しかし、実際の審査におきましては、どこまでも原子力委員会の中立性を守るべきである、こういうふうに考えます。  その中立性を守るためには、これもどなたか参考人からお話が出ましたけれども、いま原子力委員会というものは、私ども自身の微力ということは別といたしまして、体制そのものが弱体である。原子力委員会自体事務局を持っておらない。また原子炉安全専門審査会というものは三十名はおりますけれども、これは全部無給の中立者である、こういう審査体制は弱体である、どうしてもこれを強化していただかなければならないのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  時間でございますから、また後ほどお答えいたします。     —————————————
  15. 八木昇

    八木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田正男君。
  16. 前田正男

    ○前田(正)委員 ただいま参考人及び原子力委員の皆さん方から、非常にうんちくのあるお話を伺いまして大変参考になったと思います。  実は、この原子力の問題につきましては、われわれもかねてから大変心配をしておりまして、参考人お話の中には「むつ」以来というお言葉がございましたけれども、われわれは決して「むつ」以来ではありません。現在の原子力の問題につきましては、各地でいろいろと御意見もございますし、またいろいろの機会に参考人方々からも、またこの国会でもお話を伺うことができましたし、それに基づきまして、国会側といたしましても、また私たち政府・与党といたしましても、すでにこの問題についてはいろいろと検討いたしてまいっておりまして、「むつ」の問題がきっかけではございません。そして、私も個人的にはすでに何回か政府に対しまして、文書でもって原子力の再検討の問題につきましては申し入れをいたしてございまして、それはいろいろと皆さん方も前々から御研究になっておりますとおり、この原子力の問題につきましては、常にわれわれが国家的な立場に立って、十分な検討を進める必要があるということは、皆さんも御同感の至りだと思うのであります。  そこで、私も実は一番初めに原子力基本法を起草いたしますのに参加いたしまして、それ以来ずっと長らく原子力問題と取り組んでまいっておりまして、それに伴いまして、かねてから基本的な見直しをしなければならぬということは考えておりましたが、いま申しましたとおりいろいろと経過がありまして、なかなかその機運が熟してきませんでした。しかし、ここで基本的な見直しをしようということに政府も踏み切りまして、それがための調査会を設ける、こういうふうなことになりましたことは、非常に世論のおかげの前進だと思っておるわけでございます。  しかしながら、実はこの間から、私からもこの委員会にお願いをしておるのでありますけれども、これを基本的に見直すということになりますと、実は現在あります原子力関係のいろいろな法律、基本法を初めいろいろな機関の設置の法律、規制法その他いろいろと法律がございまして、その法律の改正を要する事項が相当多いわけでございます。基本的に見直すならばどうせ法律改正というものをしなければならぬ。したがいまして、これは単に政府の基本的な検討をする調査会に任しておくわけにはいかないであろう。与野党の意見が一致するとは必ずしも言えませんけれども、しかし、大体の方向に沿ったある程度の考え方というものを、国会の場でもお互いに議論する必要があるのではないかと考えておるわけでございます。  特に、私たち原子力に取り組むに当たりまして、初めて基本法というものをやりました場合は、歴史的には、皆さんすでに御承知のとおり、各党から一人ずつ正式にジュネーブの原子力平和利用会議に派遣されまして、私も、そのときは自由党でありましたけれども、自由党の代表として派遣されて行きました。そして各党が超党派的にこの原子力基本法を初め各原子力開発体制というものを進めてまいったわけでございます。  したがいまして、ここで原子力というものを基本的に見直すということになるならば、法律上の改正があるというだけじゃなしに、その出発の当初に行われましたとおり、やはり各党がお互いに国会の場においてできるだけ議論して、お互いに共通点の見出せるものはなるべく共通点を見出していく、またお互いの立場を明らかにして、そして基本的な体制の取り組みということを始める必要があるのではないだろうか。そういうことから、実は私からも、現在この委員会におきまして、原子力問題の取り組み方につきましてもお願いをしておるようなわけでございます。また、私たちの党におきましても、その問題については、いろいろと幹部とも相談いたしまして、同じやるならば抜本的な考え方でやらなければいけないのではないか、こういう気持ちで臨んでおるようなわけでございます。  したがいまして、いままで各方面でいろいろこの問題について御提言を願っておるのでございまして、しかも、それは皆、いま申しましたとおり国会に関係があるといいますか、法律改正に関係のある御提言をしておられるわけでございますから、ぜひひとつ国会に来ていただきまして皆さん方の御意見を承ろうじゃないか、こういうことで、きょう参考人として、また委員長代理としてお話を伺うわけでございまして、われわれといたしましても、今後取り組む上において大いに参考になると私は思って、大変感謝をいたしておるわけでございます。  そこで、まず最初一つお聞きをしたいと思うのでございますけれども、先ほど来のお話の中で、今後の日本のエネルギーのつなぎというものでは、原子力が主力にならざるを得ないだろうというお話は、稲垣さんも、また産業会議事務局長もそういう立場でお話がございましたけれども、まず最初小野参考人にお聞きしたいのでございますけれども委員会のことについて改革の御意見を述べておられましたのでありますから、当然これからの日本のエネルギーについては、つなぎとしては原子力が主であるという認識の上でそういういろいろな、先ほどのようなお話があったものと思うのでありますけれども、この点、やはり一応はっきりしておく必要があると思いますので、小野参考人は、日本のこれからのエネルギーのつなぎの主力は原子力であるかどうかということについてのお考えを、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  17. 小野周

    小野参考人 ただいまお尋ねのありましたことは、原子力というものが日本のエネルギーの将来についてどういうふうな役割りをするかということであります。  現在、エネルギーについては、石油資源というのがどこかで枯渇するということについて、これは世界じゅうのほとんどの人がそう思っておりますし、私もそう思っておるわけであります。それからもう一つは、核融合が将来のエネルギー源としては非常に有望なものであるということが言われておりますけれども、これについては私は多少まだ意見がございまして、これが五十年先に実現するかどうかということについては、かなり問題があると思います。  そこで、そのつなぎとして核分裂によるエネルギーをどこかで使わなければならない時期が来るかどうかということにつきましては、これはそういうような事態が来るということは、これは絶対にそうであるかどうかということはわかりませんが、それは来る可能性があると思います。ただ、私が問題にしておりますのは、エネルギー源の問題として現在の軽水炉というものが非常に適当であるかどうかということについては、私はかなり疑問に思っているわけです。エネルギーの問題は非常にむずかしい問題でありますが、私が考えておりますことは以上のとおりでございます。
  18. 前田正男

    ○前田(正)委員 その委員会やり方とか、どういう原子炉を使うかということは別問題といたしまして、そういうつなぎとしてのエネルギーの主力としては、原子力に頼らざるを得ないだろうということについて、それではやはり同じく中島参考人からも、その点について御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  19. 中島篤之助

    中島参考人 大変むずかしい御質問でありますけれども、実はいま小野先生も言われましたように、一つは、原子力と申します場合に核融合の問題がございます。それで、これは私のいま所属しております学術会議で、昨年、エネルギー問題に対する勧告を政府に対していたしたわけでありますけれども、そのときに、やはりそのことが当然大変議論になりました。それをちょっと御紹介申し上げると御参考になるかと思うのです。  それは、核融合の研究者はこういうふうに申します。つまり、二十一世紀の初めごろには核融合が実現するだろう、そうすれば、クリーンで無限のエネルギーが出てくるという話をするわけです。そういたしますとどういうことが起こるかというと、その討議を聞いておりました社会科学の方々、まあ経済学者でありますけれども、そうするとあと二十五年しかないじゃないか、そうすると、核分裂の方はいろいろ問題があるようだ、それならば石油をたいて二十五年間もたせればいいじゃないかという話になってしまうわけです。私は、実はそうは考えていないのだということを御説明しております。結果としてどういうことになったかと申しますと、実は現在の軽水炉に代表される原子力エネルギーが、もうすでに実用化の段階に入っているという認識の会員の方もいらっしゃるわけですが、私はそうではなくて、これが最も有望な新しいエネルギー源として鋭意、なるべく早く使えるように研究開発をすべきものであるということで、実は学術会議としてはそういうことで意見をまとめて、そういう勧告を昨年の秋にいたしました。  それで、この核融合の問題につきましては、実はいま私が御紹介したような議論が、同じようにアメリカで行われておるわけでありまして、有名なネーダーがやはりそういうことを言っております。原子力委員会の学者が二十一世紀になったら核融合ができると言っているのに、なぜ急いで核分裂をやるのかということで、これは反対の根拠としては大変説得力のある説明でありましょうけれども、実はそういうふうに考えるべきものではなくて、私は、核融合が実現すれば、実現した暁には、それなりに大きな技術的な問題が発生するというふうに考えるのが当然ではないか。たとえば、いまからでも予想できることは、核融合炉は恐らくは一千万キロワットを下回ることはないだろうというふうに予想されておりますので、そうしますと、その熱公害というようなものは、いまの技術ではちょっと扱いかねるような、非常に大きな問題を引き起こすに相違ないということが予想されるわけであります。  実は、核分裂の問題につきましても、前田先生が原子力をやらなければいかぬとおっしゃったころは、いまの核融合よりももっと魅力的な話であったに相違ないのでありまして、問題は、その二十年間に、やはり基本法に言っている自主開発という精神を貫いてきちんとやってきたかどうかというのが、どうもそうではなかったという感じがいたします。私も原子力研究所におりまして、大変申しわけないというふうに感ずるわけですけれども、むしろそこに問題があるというふうに考えざるを得ないと思います。  そういうことを申し上げておかなければいけないのは、たとえば高速増殖炉であるとか、あるいは新型転換炉、あるいは高温ガス炉といったような新しいガス炉なんというのは、核融合が二〇〇〇年にできていまが七五年だということになると、どっかへ消えてしまって寿命がないというような話に、実は議論をしてまいりますと必ずなってしまうわけですね。こういう非常に簡単な議論はおかしいので、やはりもっと突っ込んだことを考えていかなければいけない、そのように私は考えておるということを申し上げたいと思います。  それからもう一つ、立ったついでに申し上げますと、原子力の問題は、第一に、私がさっき申しましたように、安全を優先しなければいけない。たとえば、廃棄物処理の問題というのはきょうに始まった問題ではなくて、実は原子力の始まったときから、その廃棄物処理をどうにかしなければ本当にエネルギーとしては使えないということはもう言われておったのでありまして、それがどうしていままで何もしないのかということの方が、実は問題ではなかろうかというふうに私は考えております。
  20. 前田正男

    ○前田(正)委員 お話を伺っておりまして、実は将来核融合その他の確率というものはまだ問題があると思いますけれども、それまでの間、とりあえず原子力の現在やっておりますあり方というものが、ある程度つなぎのエネルギーの主力であるという点については、大体皆さん方そういうたてまえのお話のようでございますから、これは私たちもその線に沿うて進みたい。これから実は基本的に掘り下げてやるというのに、将来の核融合なんかは別といたしまして、将来エネルギーがはっきりするまでの間のつなぎとして、現在やっております核分裂等によるところのこの原子力というものが、日本のエネルギーとしてのつなぎの主力であるということがはっきりしないなら、それは国会で基本的にこの際取り上げてやるほどの値打ちがないわけです。やはりここで国が取り上げて本当に基本的にやろう、やり直そうという以上は、これはやはり原子力の現在のやり方というものがつなぎのエネルギーとして国家的に必要である、こういう認識をお互いに持たなければ、これは話し合っていても実はむだなことだと思いまして、大体皆さんのお話でわかることだったのですけれども、改めて最初にそのことをお聞きさせていただいたようなわけでございます。  そこで、稲垣さんからは、電労連としてもたびたびの御提言がございまして、実際に仕事に携わっておられる方たちの御提言でございますので、われわれも非常に参考になりますし、またこれを大いに留意して努力しなければならぬと思うのでございますけれども、ただ、さっきのお話の中で、原子力委員会二つに分けて、一つはいまのままでいいというようなお話であったように思うのでございますけれども、そのいまのままというのがちょっとはっきりしないので、そこのところをお聞きしたいのです。  要するに、いまのままというもののうちの、安全は分けられるということになりますと、残ったものは、さっきから話が出ておりますように、原子力基本法の三原則の監視の機関であるという、これは非常に大きな性格を持っておると思うわけでございますし、同時にまた、それは行政的に原子力推進する機関、公平に推進する機関でもあるということで、大臣を委員長にするような諮問機関という、法律上は諮問機関のたてまえ、八条機関でありますけれども、しかし、普通の八条機関と違って、原子力委員会の決定を得なければならぬ、同意を得なければならぬという、行政を行うについて、普通の行政を科学技術庁が行うに当たりまして、その諮問機関の同意を得なければならぬ、決定を得なければならぬ、そういうような機関になっておるのでありまして、行政組織上は八条機関でありますけれども、いわゆる諮問機関とはちょっと性格を異にしておるということであります。したがいまして、残った原子力委員会というものをそういう意味原子力委員会として、安全を除いて残しておくべきであるかどうかということについて、先ほどそのままにというお話でございましたが、そこをもうちょっと詳しく稲垣さんから御意見を承りたいと思います。
  21. 稲垣武臣

    稲垣参考人 私どもは、原子力委員会というのを原子力安全面を除いて平和利用の担保として、また、各省庁間の研究開発の調整促進、こういうふうな役割り中心に現在どおりで残したらどうか、そして安全問題、特に安全環境審査、設置の認可、建設運転、諸検査、それからモニタリングというようなことを一貫して原子力規制委員会で行ったらどうかと考えております。  ここで、ついでにと言っては悪いのですけれども、私どものサイドから見ますと、現在の審査あるいは安全に対するいろいろな問題は、科学技術庁と通産省にまたがっているわけで、それが非常に行政上複雑になりますし、またそれぞれ省の考え方もございまして、現場の方ではちょっと混乱してしまうというようなこともたびたび聞いております。したがって、そういう面についての一貫性というものを規制委員会でやったらどうかというふうに考えているのがわれわれの考え方でございます。
  22. 前田正男

    ○前田(正)委員 実は、森参考人にちょっとお伺いしたいのですが、産業会議としてもう少し具体的な御研究、御意見があるかどうかということなんですけれども、いまのこの安全審査委員会の問題その他は、これはまた十分に検討しなければならぬと思いますけれども、実は審査を一貫して運用できるという先ほどの井上委員長代理のお話もありますし、あるいは独立した委員会にするということがありましても、実際問題としては、行政官庁としてはどうもこの行政事務を扱うのは通産省、科学技術庁というものが行政権限を持っておるものですから、これは非常に問題があると思っております。  そこで、産業会議で掘り下げて御研究願いたいと思っておるのは、この安全審査一つ委員会でやるか、それは別としまして、行政事務が分かれている以上は、やはり一貫性というものはなかなか十分でないのではないか。そこで、安全審査どおりに現在実施されておるかどうかということを、責任を持った監視、審査をするということが私は必要じゃないかと実は思っておるのです。そういうことを新しい安全局とか、あるいはこれからの、さっきお話がありました核防条約等に伴う査察システムをつくりますから、そういうようなところに持たさないと、行政権限は委員会で一本でありましても、実務的には二つに分かれておりますから、実際そのとおりに、安全審査したとおりにいっているのかどうか、あるいは運転状況が安全であるのかどうか、こういうことを本当に監視して、あるいは査察できるような体制というものを整える必要があるのではないか。行政責任においてというか、あるいはおのおのの行政官庁がダブってやれる、科学技術庁もやれる、通産省もやれる、あるいは船については運輸省もやれるとかいうふうに、審査についてはダブってやれるというふうなことが必要である。あるいは新しい安全局が、審査は通産省がやったものでも、査察監視には行けるというふうにしたらどうかと思うのですけれども、そういう問題について産業会議の立場の方から、そういうふうな現在もやっております安全の状況その他等について、こういう一貫した審査を受けるということについて、何か産業会議等で研究したりあるいは検討されたり、あるいは御意見があるかどうかということを、森参考人から伺いたいと思います。
  23. 森一久

    ○森参考人 安全審査の一貫的な問題でございますけれども安全審査は法律的に言えば、結局設置許可ということになろうかと思うのですけれども、やはり最近少し話が混乱しておるのではないかという気がいたします。  一つは、住民の安全と申しますか、国民の安全という意味からの審査あるいは検査でございますね、そういうことと、それからいわゆる産業機器としての安全と申しますか、保守といいますか、そういった点の安全問題とが二重にあるわけでございます。そういう意味で、私どもやはり一貫的にはっきりしなければいけないのは、住民に対する安全と申しますか、公衆安全の問題だろうと思います。そういった点についても、現在通産省と科学技術庁の間、あるいは運輸省と科学技術庁の間で権限あるいは責任がはっきりしていないという点は、この際ひとつ一本化をする必要があろうかと思います。  しかし、産業機器としての保守といいますか、そういう意味でのことは、現在の行政機構が縦割りになっている中で、無理に原子力だけを横にしようと思っても実際はできないと思いますし、またそういったいわゆる原子炉の機器の保安上の問題と、それが周辺に影響を与えるかどうかという問題が、最近むしろ非常に混乱されて取り上げられることも、いまのようなはっきりしない点に問題があるのではないか、かように考えます。  そういった点でも、なおはっきり一貫性を保てないところを原子力委員会国民の立場でチェックをする。具体的に申しますと、これは私の個人の考えですけれども、たとえば設置許可の段階では原子力委員会の承認を得ること、それからいまの設置許可基準についても原子力委員会の決定に従って行うこと、それから、たとえば工事が終わって運転に入る前の検査も場合によっては原子力委員会がチェックをする必要がありましょうし、あるいは何年に一回かの定検の時期にも、いまの国民の安全の確保という観点からチェックをする。そういう意味から、少なくとも国民の安全ということにかかわる部面については、原子力委員会がそういったチェックをすることによる一貫性の確保という点がなお一層強まるように持っていく、こういうふうにすべきではないかというのが、昨年の検討の一応の皆さんの意見が一致したところでございます。
  24. 前田正男

    ○前田(正)委員 先ほどもありましたが、実は燃料サイクル全体の問題につきましてどうも不十分ではないかというお話がございましたが、この問題について井上委員長代理にちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。  実は私たちが基本法を制定しましたときは、こういう燃料問題、それに伴ういろいろの問題が出てくる、それをもっと国が基本的に掘り下げて努力しなければいけないというので、あの当時大分と官庁の中で反対があったのでございますが、原子燃料公社というものをつくったわけでございます。政府責任でやらなければいけないというのでつくった。ところが、公社をいまごろつくるというのは大変けしからぬ、公社というのは電電公社とか国鉄とか、そういったものだけでいい、新しく公社をつくるのはけしからぬという、大分と反対があったのを、原子力というのは国会が協力してスタートしたことだからといって、新しい公社をつくったわけなんです。その後の情勢で、井上さんが理事長をやっていらっしゃいました動燃事業団の発足に伴って、この公社をやめて実は動燃事業団に改組されたのでございます。  しかし、最近ちょっと問題になっておりますようにサイクル、廃棄物の処理、再処理の問題、こういったものについてもっと政府が力を入れてやらなければいけないのじゃないか。われわれは廃止も当初実は考えましたが、燃料の所有まで公社は国有だったものですから、原子力発電会社の方から多少異論が出て事業団になったのでございますけれども、しかし、燃料サイクル全体についての責任というものはもっと政府が乗り出すべきじゃないか、あるいはもっと政府責任で処理しなければならぬ問題が出てくるんじゃないか。現に廃棄物処理処分センターなんというのも出ておりますけれども、こういう問題について、原子力委員会としてはサイクル全体についてどういうふうに積極的に取り組もうというふうな御検討とかお考えが現在あるのか、ちょっとその辺をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  25. 井上五郎

    井上説明員 大変ごもっともな御質問でございまして、昭和三十年に原子力基本法ができました時点にああした法律をつくられたということについて、まことに私どもは敬意を表していいと思いまするが、今日考えてみまして、いま御指摘のように、原子力原子力発電所であるというふうに考えることはもう許されない時代である。原子力に伴いまするアップストリームの問題といたしまして、核燃料の確保というものは、ただいま御指摘の原子燃料公社というものができましたにかかわらず、日本でずいぶん探してみましたけれども、まず一万トンはむずかしい。とするならば、これを海外に依存せざるを得ないのでありまするけれども、最近の資源ナショナリズム的な考え方から申しますると、これはなかなかむずかしい。これを民間だけの手にゆだねていいのかどうか、あるいは金探と称しておりまする通産省の助成機関のようなものだけでいいのかどうか、そういったようなことが一つ問題でございます。  それから、その次の問題は濃縮の問題でございまして、もう皆様御承知と思いますから詳しいことは申しませんが、そうしたアップストリーム、それに対しまして再処理、廃棄物処理以下のダウンストリームの問題、この問題につきましては、原則的にはやはり多くの事業というものは民間にゆだねられるべきであり、できる限り事業というものは民営でやる。まあ古い言葉でございまするけれども、チープガバメントの方が国民としてはいいのだと思いまするけれども、ある種の、非常に高いレベルの、しかも半減期が非常に長いといったような廃棄物については国家が責任を持つ。そうしてそのかわりこれに対する費用は、PPP原則と申しまするか、汚染者がペイすればいいのでありまして、ある国家が持つべき限界というものは当然起こるものと思っております。  そういう燃料サイクルを込めました将来の原子力開発がいかにあるべきかということにつきまして、実は先般の原子力委員会でも大体の方針を決めまして、考えようによればいまさらとおっしゃるかもしれませんけれども、私どもといたしましては、ここで一つ見直しをすべき段階に来ておる。もっと具体的に申しますると、原子力の長期計画というものは昭和四十七年に決定をいたしておりまして、その中で、原子力開発については第一段階は、これはもうとうてい民間に任せておいたんではペイしないというものは国の費用においてやる。それは公社がいいかどうかには議論がございましょうけれども、どうしても国の費用でやる。しかし第二段階、あるいはそれが商業採算に乗るであろうならば、民間に期待すると考えておったものが多分にあったのでありますが、今日の事情から言いますると、必ずしもそれだけでいいかどうかは、目下検討中でございます。
  26. 前田正男

    ○前田(正)委員 最後にひとつ、中島さんは原研におられますので、ちょっと研究のことについて聞きたいのです。  研究も初めは、原子力は一本でというつもりでわれわれやっておったのですけれども、こういうふうにだんだんと開発研究、それからいま安全の研究、この安全研究の中に、先ほど稲垣さんが提案されました従業者の安全研究というものも含むかどうか、これはあるいは別なのか問題ですけれども、とにかくそういう原子炉自身の安全の問題、そこに働く方たちの安全の問題それからいろいろと原子炉の開発の研究、基礎的な研究、こういうふうに研究がだんだんと分かれてきているように思うのです。これはひとつ研究体制というものを分けていった方がいいのか、安全研究所というものを別にした方がいいのか、開発研究所というものを別にした方がいいのか、こういうような問題で、原研におられて率直に感じたことを、ひとつお話し願えればありがたいと思います。
  27. 中島篤之助

    中島参考人 大変ホットな問題でありまして、率直に申し上げたいと思います。  たとえば、原研におりましていま非常に問題になりますことは、一つは核融合の部門を分けるかどうかという問題があるわけです。これは、たとえば新しく人員がふえた部門も、ほとんどそこへ集中せざるを得ないというようなことがあるわけでございます。次に、これは科学者の方から言っているというよりも、いろいろ原子力開発状況を考えると、安全研究を強化しなければいけないだろうと言われております。原研で安全研究と申しますのは、実は主として炉に非常に密接に関係した事柄だけに限られているわけでありますけれども、そういう部門をやはり分ける必要があるのではないかということが起きております。  実は私は、安全だけの研究というのは技術屋の立場からいくとあり得ないのでありまして、たとえば、しばしばアメリカのNRCのことが議論になりますけれども、それはやはり自主開発をやっている、自分で技術を手がけてやっている人が審査をするから技術的に信頼のできる審査ができるのであって、そこが基本であろうと思います。ですから、安全研究所と開発をやるところが完全に離れてしまうということは、原子炉の開発研究というのは実は安全を確保するための研究でありますから、これはそういう意味では分けるべきものではないということが言えますけれども、おっしゃるように、非常に問題が原子炉の周りで具体的に出てまいりますと、いわゆる安全研究と呼ばれるような部門を別にして研究を進めるということが合理的である場合もある、私はそう思っております。  私が非常に心配しておりますのは、核融合を分け、安全研究所を分けるというようなことをやっていきますと、さなきだに少ない部門で、将来のための芽になるような基礎部門といいますか、そういうところについてはどなたも考えてくださらないというか、これはわれわれが考えなければいけないのかもしれませんけれども、そこが大変弱くなる。これはたしか動燃事業団が発足した昭和四十三年ごろにやはり学術会議が、開発基礎研究所というものをそれならば考えてくれないかという意見を申したことがあるはずでありますけれども、私は、いま体制問題が問題になっているときに、そういう昔からのいろいろな経過を総ざらいいたしまして相当慎重に考えないと、目の前のことだけで安全研究所をつくればよいと言いましても、NRCのように二千人というようなことはとても不可能であろうと思います。そうすると、核融合にも数百人が要るのだというと、これはもうどうにもならぬということになってしまうので、これはむしろ委員会をどうするかということよりも実体的には非常に重大なことである、私が冒頭で申しましたのは、実はそういうことを一つ申し上げたわけであります。  そのほかにも、いわゆるソフトの研究と申しますか、環境の安全の問題でありますとか、温排水問題でありますとか、あるいは立地の問題であるとかいうふうな、これはいろいろな分野の科学者が協力してやらなければならない研究が、全然組織されていないということを申し上げておきたいと思います。どうもお答えになったかどうかわかりませんが……。
  28. 前田正男

    ○前田(正)委員 それでは私は終わります。
  29. 八木昇

    八木委員長 次に、石野久男君。
  30. 石野久男

    石野委員 最初稲垣参考人にお尋ねいたします。  現場で働いておる労働者に対する個人個人規制は非常によく行き届いているが、その結果として今度は総量規制をするときになると、結果的には人が足りなくてどうにも動きがとれなくなってきているという実情が、皆さんの資料によって私ども非常によく理解することができました。この状況というのは、軽水炉の現在の状況で、どのようにしたら排除していけるだろうかということが、私たちにとって非常にむずかしい問題なんですが、そういう点について、現場におります皆さんのお考えはどういうものであるか、ひとつ聞かしていただきたい。
  31. 稲垣武臣

    稲垣参考人 現在、著しく被曝する作業というのは、制御棒の取りかえ作業、それから炉内核計装装置とかいろいろなことがございますけれども、そういうものに対する取りかえ作業、それから燃料の冷却液系統の作業とか、原子炉浄化系統の作業、燃料取りかえ作業、それから一次冷却水ポンプの補修、点検、熱交換器の点検、修理、安全弁などの弁に関する点検、それから再循環系ポンプに関する点検、修理というようなことが被曝上著しく問題のある作業であります。  この中で、人の手を借りずにやれるもの、あるいはそういうような補修の方法を私ども提言しましてから、すでに開発にかかっておる部面もあります。それから、どうしても人の手を借りなければならぬとしても、なるべく被曝量を減らすために作業上どういうふうなことをやったらいいのかという作業手続の問題、それからもう一つは、そういう作業はどうしても相当熟練者がやりませんと、作業時間が非常に長くなってくるということによって被曝量もふえてまいりますから、それはいわゆる作業員の再教育というようなことで、私どももできる限りの処置は労使で協議してやっているわけです。したがって、被曝量自身に対して、一時から比べますと相当作業改善が進んでいるというふうに私は判断をいたしております。  と同時に、事故の防止と密接に関係がありますから、やはり人為的に事故を起こさないように、いわゆる従業員の再教育というのはもう常時やられておりまして、これらの問題についてもより積極的にやっていくということで、これは相当大きな金がかかるわけですけれども、それをやらしております。  それから、原子力発電所を持っております電力会社は、ほとんどが被曝管理をしております。請負も含めまして本店、中央でコンピューターに入れまして、現場の保健所と本店でコンピューターによる被曝管理をしていくということで、私ども自身としてやれる限度いっぱいをやっておるわけですけれども、できれば炉周辺の作業機械の開発、ロボット化というようなことについて研究し、あるいはそれが開発されればより完全なものになるのではないかと思うのです。
  32. 石野久男

    石野委員 なるべく現場で仕事をする人員を合理化して、特にいま最後におっしゃられたロボット化の方向に進んでいけば、非常にいいに違いありません。そういうことをやる可能性が、たとえば現在の炉についてあるのだろうかどうだろうかという問題、そういう点が私はわからないけれども、皆さんの立場ではどうなんでしょう。
  33. 稲垣武臣

    稲垣参考人 現在の経済性の追求ということに関係するのでしょうけれども、現在の炉というのは、どちらかと言いますと、建物、家屋が非常に狭いということから作業を困難にしている部面もあります。また、建物をある程度広げればそういう作業工具が非常に使いやすくなってくるということになりますので、むしろ審査の過程で私どもこれをフォローしておるのですが、今後やっていきたいと思うのは、やはり従業員の安全のために、従来の火力発電所と同じようなものの考え方ですべてを設計するのじゃなくて、むしろそこらあたりに重点を置いた審査というものも、大変重要になってきたのではないかというふうに考えております。
  34. 石野久男

    石野委員 もう一点稲垣さんに、私わからないからお聞きするのですが、炉の中が非常に狭く、非常に経済的効率を高めた設計で施設がつくられている。今度は、ロボットを入れるについては、どういう形のものになるか知りませんが、少しは間隔を広くして作業場をつくらなければいかぬ。そうなるとやはりコストの面に響いてくるだろう。炉自体のコストが一つあることと、それからまたロボット化することについての研究なりなんなりというものが、まあ人件費よりもロボットの方が安くつくのかどうかわかりませんけれども、そういうような問題等を含めまして、皆さんの計算なり、あるいは経営者側とのいろいろの御相談の結果、コストに余り響かないで——響かないと言うよりも、より高くならないでやれる可能性は見込まれるでしょうか、そういうところがちょっとわからないのだが……。
  35. 稲垣武臣

    稲垣参考人 現在、原子力発電所のコストは御承知のとおりずいぶんと上がっているわけですけれども、建屋を広げるということは、原子力発電所の場合には当然のことなんです。定期点検しましても、器具あるいはそれに使った道具、そういうすべてのものは外へ出すことができないわけですから、建屋としては相当なスペースが要ることは間違いございません。したがって、現在の建屋を、いわゆる作業環境の面から少々広げたって、それが直接的にコストにはね返ってくるというようなことはないと私は信じております。  それからロボット化ということになりますが、ロボットの開発も今後やっていかなければなりませんけれども、そう数多く要るものではございませんので、そういう非常に被曝量の多い、できれば作業と人間の手は離したいという部分だけでございますので、恐らくそれとて大きくコストにはね返ってくるというようなことは、私はあり得ないと思います。
  36. 石野久男

    石野委員 現場の作業者の被曝量が非常に多い、何とかせなければならぬという問題は、炉の安全の問題について非常に重要なことなんだと思います。そういう点について、いろいろわからないところがありますが、稲垣さんから御所見を承ったのですが、この機会に中島参考人小野参考人から、こういう問題について何か御意見がありましたら、皆さんの立場としてお聞かせいただきたいと思います。
  37. 中島篤之助

    中島参考人 特に用意をしてまいりませんので、思いついたことだけを申し上げるわけでございますけれども、いま稲垣さんが指摘されたことは大変大事でありまして、実はそういう角度でいまの原子炉は設計されていないと言うか、いなかった。これは、ある方面の方に伺いますと、たとえばアメリカ型の軽水炉にしましても、もっと具体的に言いますと、福島の一号炉と三号炉とではもうその辺の設計は多少改善されているというような点はございます。ですから、それはそういうことをやる気になってやればかなりの改善が可能だということは言えます。  一方、これは私の考えですけれども軽水炉と、たとえば非常に古い型の炉ですけれども、東海村に動いておりますコールダーホール型のガス炉と比べますと、どうも軽水炉というのは放射能が非常にあちこちにはまり込むといいますか、何となくいやらしい原子炉であると言われておりまして、これは水炉の宿命かもしれませんけれども、その点についても再検討する必要があるのではないか。いま先生がおっしゃったような周辺機器の検討というのは、これは軽水炉としてそういうことをおっしゃっているわけですが、私は、軽水炉に余りこだわる必要はないのではないか、もっとそういうことも十分考えた原子炉を考えなければいけないのではないかというふうに思っております。
  38. 小野周

    小野参考人 ただいま稲垣参考人からお話を承りまして、私、大変いろいろ教えられることが多かったと思いますが、実はこのことについて私も用意してきたわけではございませんけれども、やはりよく原子力発電所火力発電所を一緒にされて発言される向きがときどきあるわけですが、たとえば蒸気発生器の問題にしても、穴一つあいても、これは火力発電所のときは、もともとそういうことがありましても補修が、簡単とは申せませんができるわけですが、原子力発電所の場合には、これが放射性の物質でもって汚されているということがあって、普通の火力発電所で起こるようないろいろな問題がすべていまの従業者の被曝という問題にかかわってくるということが一つあるわけで、その辺の根本的な考え方を、やはりひとつ改めないといけないのではないか。  それからついでに、いま蒸気発生器の問題が出ましたけれども、実はやはり問題になりますのは、美浜原子力発電所蒸気発生器事故のような場合は、これを修理するときに、これは非常に時間を短くしなければならないために、爆発で盲栓をするということをしているわけです。このときに、やはり政府側の資料によりますと、二・三レムか二・八レムの被曝をしたというふうなことがあるわけです。こういうときにやはり一つ問題になるのは、ああいうものの運転を無理をしてやることによって、やはり従業者の被曝を生ずるというふうなことがありますので、ただ補修をしながら運転をしていくというのは、そういう意味でもやはり非常に従業者の犠牲においてなされているというような形になっている。そういう点をちょっとここで指摘しておきたいと思います。
  39. 石野久男

    石野委員 現場の労働者の問題はそうでございますが、炉自体の問題について稲垣参考人から、未知の部分が非常に多いのでなかなか安易には考えられないというお話がございました。私ども素人なんですけれども、たとえば美浜の問題 一、二号炉の問題とか、あるいはまた福島の一号炉で、今度またECCSのいろいろな問題が出ておりまして、こういうふうに炉自体における故障なり事故なりが出てくるというような問題が、現場に働いておる者にとっても、そういうものがあるからまたこういう作業をせにゃならぬという頻度が多くなるのだと思いますが、そういう観点で、炉に対する問題提起と申しますか、最初に、エネルギーの多様化の中で原子力に依存しなくちゃいけないという話は聞いておりまして、そういう観点にしましても、やはり原子力に依存するというのは、原子力が安全なものだということが前提でなければならないのだという井上さんからのお話があったわけです。私どもも、原子力は安全だという前提に立たなければ、原子力平和利用というものは進まないということはわかるのですが、その原子力は安全だということを、いま無条件で言えるのかどうかというところに問題があるのだと思うんですよ。  そういう点で、先ほど井上さんからお話のありました原子力平和利用について、原子力は安全だということをまず前提にして、そういう中で、あるいは行政あり方だとか国の責任のとり方に不満があるのだというこの考え方について、私はなかなか簡単にちょっと理解しにくい問題がありますので、参考人でおいでになっておりまする小野さんなりあるいは中島さん、それにまた稲垣さんからも、そういう問題について、原子力は安全だということについてのその条件の問題をどう考えるかということが、いまこそ一番非常に大事なんじゃないだろうか、私はこういうふうに思うのですが、ひとつこの点についての御所見をいただいて、後でまた井上さんから御意見がありましたら御意見をいただきたいと思います。
  40. 稲垣武臣

    稲垣参考人 確かに、現在起こっております炉の故障は、主として基礎工学的な問題に端を発していると思います。だから、むしろ材料的にどうなのかということがよほど研究されなければならないのではないか。それからもう一つは、現在の炉の型というものが非常に統一されていないということからくるいわゆる補修あるいは審査、いろいろな問題が出てまいりますので、近い将来、私どもとしては炉を標準化いたしまして、そうしてその標準炉でそういうようなものについての徹底した、現在の故障をフィードバックさせまして、標準炉で今後安全に運転していくということを考えたらどうかというふうな考え方をとっておるわけであります。  ただ、皆さん方の方からおっしゃられると、非常に危険なものを運転するのはどうかという意見もございますが、現場の労働者の方にすれば、たとえば美浜の一号でも、現場の労働者としてやはり自信のある部面もずいぶんあるようであります。だから、できれば運転させていただけぬかということを、個人的ではありますけれども美浜の私どもの組合から私どもの方へ、一遍、運転できるのだからさせたらどうかというような意見もずいぶん聞いております。しかし、それはやはり絶対的に安全だということがもう少し確認されてからにした方がいいのではないかというので、むしろ私どもの方がなだめておるような状態であります。
  41. 小野周

    小野参考人 先ほどエネルギーの問題についてお尋ねがありましたが、実は私は将来の問題として、恐らく好むと好まざるを問わず、核分裂というものにやはり頼らざるを得ないような面が出るのではないかと、個人的に一応考えておりますが、現在の段階で言いますと、決して原子力というものが安全であるということを前提にしては進められないのではないか。  現在の軽水炉につきましては、これはしばしば問題になることでございますけれども、一次冷却水の破断があって、それでECCSが働くか働かないかという問題についても、いまだに議論がある段階で、これについてすべての人が安全だと言うわけではなく、むしろこれについては非常に疑問視している向きもあるというわけです。ですから、原子力は安全だという前提に立って進められるという姿勢にむしろ問題があるわけで、私は原子力、まあ軽水炉についてはいろいろ問題がありますが、とにかく現在のところは、むしろ原子力発電所についてはできるだけ安全を見て、すでにあるものの安全を見て運転をして、新しく設置するということについては、やはり十分な経験を積んでから進めるというふうな体制をとるべきであって、むしろ現在は実験的な段階であると考えて、新しい設置等は見合わせて、できるだけデータを取っていくというふうにしてやるべきではないかというふうに考えておるわけです。
  42. 中島篤之助

    中島参考人 小野さんが言われたことは省きますけれども、たとえば軽水炉のもう一つの非常に大きな問題として、いわゆるSCCと申しまして、ストレス・コロージョン・クラッキングという問題がございます。これは応力腐食割れと言いまして、ステンレス、さっき非常に被曝量がふえるという、たとえばバイパス管の材料といったものでありますけれども、これが現在の応力腐食割れの学問から見て防げるのかどうかといったことが、われわれ学者にとっては関心の的になるわけですけれども、これはただ、応力腐食割れを防ぐのならばこうすればいいということでたとえば出てまいりますのは、温度が不適当であるという話になるのです。そうすると、これは原子力発電を設計している方から言いますと、いま大体BWRで二百八十三度、Pで三百度ぐらいですが、その辺が一番実は起こりやすいのだということをそちらの専門家は指摘するわけです。現在のオーステナイト系を使うならそうなるのだと。だから、その温度をちょっと変えればそれは防げると言われても、現在の軽水炉技術ではそれはできないということになっておるわけです。ですから、私どもがプルーブンでないということを言ってまいりましたのは、実はそういうことが本当に設計にフィードバックしていない段階であるということだと思います。  それから、日本の場合におきましては、もっと大事なことは、いまここでほんの一部の問題を二、三申し上げているわけですけれども、こういう問題について専門家同士が意見を交換する機会がないということを申し上げたいと思います。つまりうかつに批判をすると、けしからぬというような時代がつい二、三年前まであったのでありまして、プルーブンでない原子炉を、私のように原子力研究所におって批判するというような立場をとると、けしからぬということがあったのがむしろ一番困ったことでありまして、そうではなくて、こういう技術的な問題は、よく考えれば日本にいろんな方面の専門家がおります。原子力の専門家ではないけれども、材料の専門家はおられるわけでありまして、そういう方々を集めて十分突っ込んだ議論をして明らかにするということが、まず必要であるというふうに私は考えております。この問題に関しては、非常に多くの問題があろうかというふうに思います。
  43. 石野久男

    石野委員 廃棄物の処理の問題につきましては、森さんから、国の方針をしっかりしてセンターのようなものを設立したらいいんじゃないか、こういうお話がありましたのですが、実はその廃棄物の処理自体について国がどうするこうする前に、世界じゅうでどうするかという問題が一つございますね。その問題について、産業会議の皆さんはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  44. 森一久

    ○森参考人 廃棄物の問題は、御承知のように二つあると思います。  一つは、低レベルの廃棄物でございますね。私が先ほど申し上げたことの重点はむしろそっちにあったのですけれども日本の場合は環境に対する放出を非常に厳密に、外国以上に管理しておるがために、外国以上に低レベルの廃棄物がたくさん出ておるわけでございます。従来日本の方針も、いずれ十分な海洋調査と国際協力、国際的な理解が得られれば、海洋に投棄するという方針で進んでおるわけでございます。現にヨーロッパの諸国はいままで五回、実際にスペイン沖に投棄をしておりますし、またことしの六月にさらに第六回目を、四千五百トンの投棄を国際協力でやることになっております。これも非常に十分な調査を行った上です。私のところなどへも手紙が参りまして、OECDのNEA、原子力機関では、こういう計画で低レベルの廃棄物を四千五百トン捨てます、日本でも何か反響があったらぜひ知らせてほしいということを言ってきております。ところが日本の場合は、そういったことを実施する責任機関がないために、ずいぶん研究は進んでおりますし、原子力委員会の専門部会等も答申は出ておるわけでございますけれども、なかなか作業は進まない。そういう意味で、早く体制をしっかりしていただきたいと申し上げたわけでございます。  それから、もう一つは高レベルの廃棄物で、御承知のように再処理工場が来年ぐらいから、小さいパイロットプラントですけれども動く予定になっております。こういうものができてまいりまして、高レベルの廃棄物についてのガラス化あるいはずっと先の将来にはもう少し基本的な、科学的な対策についての研究を進める必要がある。これはかなり長期的な研究になりますので、原子力研究所あるいはいま申し上げましたセンター、それぞれの一つの総合研究として、これも先ほど中島さんから御指摘があったように、いろんな部面の専門の方が協力して計画的に進められる体制をつくる必要がある、こういうことを申し上げたわけでございます。そして、先ほど申し上げた低レベルの廃棄物についての直接の費用は、これはやはり企業者の負担にまつべきであろう、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  45. 石野久男

    石野委員 公聴会の問題が稲垣さんから提起されました。そのほかの参考人の皆さんからもお話がありましたけれども、私どももその公聴会をやる場合には、資料の提出ということがどうしても必要だということをかねてから言っているわけでございます。公聴会というのはいままで福島でやっただけでございますが、この資料の活用の問題等について、現在までの経験からして、それから政府のとっている態度、そういうようなものについて、皆さんの御意見をこの際ちょっと私は聞かしてもらいたいと思います。井上さんはちょっと言いにくいかもしれませんから、その他の四人の参考人方々から、公聴会資料の問題についての所見をこの際ちょっと聞かしてください。
  46. 稲垣武臣

    稲垣参考人 公聴会は、私ども二つに分けろという考え方をとっておるわけですが、やはり安全的なものについては非常に技術的なものがどうしても必要になりますから、資料としては、公開でき得るものではなくて全部公開すべきだと思うのです。そうしてそこで安全について十分に論議をしていただくということになれば、資料非公開だとか、あるいはああいうことを隠しておるのではなかろうかとか、いや、これもどうやらおかしいのじゃないかというようなことはなくなると思うのです。電力会社の方も資料公開しないというような態度はとるべきじゃないと思います。やはりできる限り皆さんに知っていただくというための努力はやらなければならぬと思います。
  47. 小野周

    小野参考人 原則的には、ただいま稲垣参考人がおっしゃったとおりであると思いますが、まず公聴会につきましては、公聴会というのは、たとえば安全性の問題とその地域の問題と分けた方がいいかどうかということについては、ちょっと私はどちらがいいかわかりませんから、それについては意見を述べませんが、安全性の問題について、もし公聴会を開いていろいろ質問をし、かつ関係者から答えを得るということでありましたら、質問をするために、少なくとも審査に使われた資料は全部公開されてないと、本当の実のある議論はできないと思います。それでたびたび国会においても公開の問題が出まして、そのときに企業機密であるから公開をしないというふうなお答えがあったわけですけれども、企業機密よりはやはり安全性の問題というのが優先されるべきでありますし、それから、これは公開の原則から言って、やはり資料公開は、公開の中で一番大切なことだと思います。  それから、安全審査をされましたときに、先ほどの「むつ」の報告書や何かでもそうなんですが、どういう資料に基づいて、どういう資料を使ってこういう結論が出たかということが明らかになっておりませんと、たとえば外の者が、これは全く技術的な問題である限りは、だれが判断しても結論は同じところに行くか、あるいは確率的な見方が違ってくるというだけだと思いますから、その科学的、技術的な立場から議論するためには、共通の資料をもとにして議論をしていく、そういう形で進めていくことが現在最も大切なことではないかと私は思います。
  48. 中島篤之助

    中島参考人 お手元に配付しました「ふたたび原子力平和利用三原則について」のところで、その資料公開が企業機密に名をかりて拒否されることは許されないというふうに述べてあります。これは実はそれに至るまでに大変激しい議論がございました。と申しますのは、一般的な営業機密あるいは企業機密全部を認めないのかというところが議論になりまして、そこの前文にありますように、少なくとも健康とか安全に関する資料の提出を拒否することは許されるべきではないということで勧告をすることになりました。  そういうことを言わなければいけないというのは、これは実際に秘密があるかどうかということよりも、何か資料を進んで公開しようとしない一つ行政姿勢と申しますか、態度と申しますか、そういうものとどうも大変かかわり合いがある。たとえば国会等で、原子力基本法には「その成果を公開し、」というふうに書いてあるから、成果を公開するのだからその経過は公開しないんだというような御答弁が、政府とか何かからなされるというようなことになりますと、これは非常に問題であります。あるいは私どものところの理事長から、そういうことを書いて発表されるというようなことになりますと、あらぬ誤解を実は招くということになります。  それから、もっと卑近な例を申し上げますと、たとえば原子力施設事故例というのは、原研の一般に頒布している研究報告があったのですけれども、最近原発問題が急に問題になりましたら、どこかになくなりまして、ただ一部ある。それで買いに来られると、ゼロックスで一万円でございますというようなことを言うと、事実上頒布できない。そういうことをどうしてやるのか、その精神が私は理解できないのですけれども、そういうことを現実問題としておやりになるわけです。こういうことが非常に国民の理解を妨げているのではないかというふうに、大変ぼくは残念に思っている。  それから、原子力委員会にしましても、あれは二、三年前ですが、せっかく資料室をおつくりになりまして、われわれが見に行けばとにかく安全審査資料が一応見られるようになって大変進歩したと思っていたら、昨年はすっかりそれが閉鎖されてしまって、行っても何にも見られない、こういうことになるわけですね。そうすると、これは一回もやらなかったよりもっと悪いのでありまして、こういうことは今後おやりになっていただきたくないと、私は非常に具体的に申し上げておきたいと思います。
  49. 森一久

    ○森参考人 公開の問題でございますけれども、いままでの原子力資料公開をするかしないかという問題は、少し率直に申しまして、企業機密というような言葉の壁をお互いに設けて、本当の話をしていないのじゃないかという感じが私はしております。と申しますのは、資料を出す側から見ますと、出した資料がどういうふうに利用されるかということがまた心配だ。これは率直に申してそう思うと思いますし、また見る方は、これではまだほかにあるんじゃないか、こういう話になってくるのではないかと思います。そういう意味で、法律論のような形で、いや、企業機密だから出せないというような形で議論がますます、かえって相互の不信感を増しておるのではないかと思います。  私はやはり、原子力安全性を高めるために関係した科学者が衆知を持ち寄るということで役立てるという前提に立つならば、必ず解決策はあると思いますし、また実際にそれで企業機密が害された場合は、国がちゃんと補償すればいいことではないか、こういうふうに考えております。
  50. 石野久男

    石野委員 最後に一問だけ。原子力開発規模の問題で、いわゆる長期計画の点につきまして、井上さんからは六十年六千万キロワットはこれは不動のものとして現在ある、こういうお話がありました。森参考人からは、六十年六千万キロワットは、現在の開発規模の実情から見ましても、これを一応見直しをしなくちゃいかぬというお話がございました。政府の方針なり原子力委員会の方針をここではなにしませんが、森参考人に、この見直しをせにゃいかぬだろうと思っていらっしゃる原産会議の皆さんのお考え、まだ確実には固まっていないのでございましょうけれども考え方、それの見方というようなものは大体どういう内容なのか、お話をしていただけたらちょっと聞かせていただきたいと思います。
  51. 森一久

    ○森参考人 先ほど申し上げた以上余りないのでございますけれども、とにかく原子力のようなものを計画的に進めてまいります場合は、先ほど来御指摘がございますように、廃棄物の問題とか燃料に対する諸対策とかいろいろな制度とか考えます上で、やはりだれもが妥当と考える一つの目標がございませんと、ただ単に六十年六千万キロは課題であるとか、従来の経済優先考え方の産物であるという批判をし合っているだけでは、やはり本当に計画的な原子力開発はできない。そういう意味で、これは一本の線では出ないと思いますけれども原子力の持っておるいろいろな問題解決の可能性との、それから経済全体の要請との兼ね合いにおいて常識的に考えられる、なるべく多くの人が妥当と考える目標をつくらなければいけない、かように考えておるわけでございます。  それで結局、先ほど来出ておりますような技術問題についても、こういったことにまで影響する問題と考えるか、あるいはここ一、二年の軽水炉の初期であるがために一時的に非常に集中的に出ておる問題と考えるかということも、十分この際やはり謙虚に考えてみるべきだと思いますし、廃棄物の問題にいたしましても、やはり将来の規模に応じて打つべき対策も変わってくるべきだろうと思います。いわんや濃縮、再処理はもちろんのことでございますし、またコストの問題も最近非常にエスカレーションが激しいために、電力会社によっては十年先の原子力発電のコストは幾ら幾らになるという発表をいたします。これはその電力会社から見ますと、やはり早く資金調達だとか社債の発行を認めてもらいたい一心で少し高い数字を出したいということで出すわけでございますが、そういう数字を出しますと、そら原子力は高いじゃないか、安全でない上に高いじゃないか、こういう話になってくるわけであります。十年先の火力発電のコストと並べて発表するのではなくて、原子力だけそういうふうにやりますものですから、そういう、恐らく誤解だろうと思いますけれども、それが誤解かどうか、原子力最初思ったよりはいろいろお金がかかってくるわけですから、そういった廃棄物の処理までも含めたトータルコストをやはりこの際はっきり出して、そのためにどういったお金が要るか、それが民間で調達できるのかできないのか、そういうことを踏まえていきたいと思っております。いま私がここで申し上げているようにすらすらといくかどうかはなかなかむずかしいと思いますがそういう方針で検討いたしたい、こう考えております。
  52. 石野久男

    石野委員 ありがとうございました。
  53. 八木昇

    八木委員長 次に、米内山君。
  54. 米内山義一郎

    ○米内山委員 時間も短いですから、きわめて簡潔にお尋ねしたいと思います。  まず第一に、「むつ」問題についての大山さんの報告書に、原子力発電は実用化の段階に入っている、こういう表現があるわけです。ところが、世界的に見ましても稼働率というものは六〇%以下だということも聞いておりますし、さらにトラブル、故障の回数とかあるいは性質等から考えてみましても、こういう状態で実用化の段階に入ったということはどういう意味だろうか。たとえばジェット機でも、一定の故障率があり一定の稼働率があるし、危険性もないわけじゃない。すべてのものにそういうことがあるわけですが、原子力発電の場合に実用化の段階に入ったと言える実情なり根拠なりをお尋ねしたいと思うのです。これは稲垣さんのお言葉にも先ほどあったのですが、その点についてあなたの御見解をお尋ねしたい。
  55. 稲垣武臣

    稲垣参考人 私どもは、電力会社あるいはそこらで、商業炉ということでもう実際に商売になる炉なんだというふうに言っておるのですが、私どもが言っているいわゆる実用炉というのは、まだなお十分に検討する余地がある、またそれに対して今後やらなければならぬいろいろな技術的な開発もあるという意味合いで、商業炉として完全に信頼するということはできないのではないかという意味合いで、私どもは実用炉だという言葉を使っているわけです。
  56. 米内山義一郎

    ○米内山委員 同じことについて森参考人から御意見を承りたい。
  57. 森一久

    ○森参考人 実用化という言葉の問題は非常にむずかしいのでございますが、御存じのように、現在世界で約六千万キロの原子力発電所がすでに運転をしております。それから実際に建設をしておりますのが恐らく三億キロワット、日本の全電力の四倍ぐらいの量が建設に着手をしておるという状況から言えば、確かに実用の段階に来ておるという言い方はできると思います。  しかし、御承知のように新しい技術であるために、実際に大きなものを動かしてみて初めてわかるような幾つかの困難な問題に逢着しているという意味では、まだまだ試験的な要素が非常に強いという意味で、やはり原子力のような新しい技術については、むしろ今後十年も二十年もまだ試験段階だというぐらいのつもりでやはり開発に取り組むべきだろうと思います。  そういう意味では、規模としては確かに実用段階に来ておるけれども、技術的にはまだまだいろいろ解決する問題がある、こういうことが正直なところだと思います。
  58. 米内山義一郎

    ○米内山委員 次の質問をしたいと思います。  この報告書の結論みたいなところに、「さらに重要なことは、今後、ことにあたる責任者が地元の住民とも責任をもって話合いをし、情報を正確に伝え、理解を得る努力をすべきことである。」こういう報告もなされているわけです。しかし、この報告をするに当たって、先ほど井上先生ですか、おっしゃったとおり、ほとんどデータがないわけです。「「むつ」は、全体としてはかなりの水準に達しており、」というようなことがあるわけですが、何を根拠にしてこういう結論を出されたのかということはわからぬわけです。それからもう一つの場所に、放射線漏れは非常に根深いものがある、こういうこともあるわけです。一つの問題は科学技術の問題だ、もう一つの問題は行政の問題じゃないか。したがって、これは安全審査の段階において、どういう状態で「むつ」の安全審査を問うたかということが明確にされない限り、国民または住民の不安は晴れないわけです。これは、確かに原子力行政上の根深い問題で、非常に心配にたえないところです。  そこで、小野先生にお尋ねしたいのですが、この問題をわれわれが判断する上に、科学技術上の基礎資料として、どういうものが最小限度必要でしょうか。今後われわれがこの問題を考える場合に必要だと思いますので、先生のお考えをお知らせ願いたい。
  59. 小野周

    小野参考人 ただいまの御質問に対しまして、私がいますぐここでお答えすることは困難だと思います。私が先ほど、報告書を見ましたときも、資料なりそれに使われたレファレンスが全然ついていないと申しました。ですから、なるほどこういうことが書いてあるなということしか、あれを見ただけではわからないわけです。先ほど御質問にございましたように、安全審査の段階でどういう資料を見、それから一番問題になりました中性子の漏れ等については、どのぐらいの審査が実際にされたかという記録がないと、あの中にいろいろなことが書いてありますけれども、やはりわからない。信憑性がないのではないか。  それから、どういう資料が要るかということをおっしゃったんですが、非常にたくさんの資料があると思いますけれども、第一に、どういう資料が実際に使われていたかということをどうしても聞く必要があると私は思うのです。さらに気がつきましたことで言えば、たとえば三菱原子力との関係等について、どういう契約がなされてどういう仕様を出したかとか、あるいは、これは当然のことでありますけれども原子力委員会に提出されました安全許可申請とかその添付書類、これはもうすでにいろいろなところで手に入ると思いますけれども、その他契約上のものとか、いま申しました仕様に関するもの、設計に関するかなり基礎的なもの、あるいは発注以後いろいろな変更があったであろうと思いますけれども、そういうような諸記録を全部出していただかないと、いま先生のおっしゃったようなことを実際に考えていくことは、非常に困難ではないかと私は思います。
  60. 米内山義一郎

    ○米内山委員 根深い問題について井上さんにお尋ねしたいのですが、これは行政上の問題だと思いますし、その点でいまの安全審査の段階におけるいろいろな資料というものは、過去の問題として当然あるべきはずです。この問題を国会審査する上に、この事情がわからない限り、われわれはどうしても一段階進んだ考えに立つわけにはいかないわけですから、これを公開するというお考えがございませんか。
  61. 井上五郎

    井上説明員 私ども大山委員会報告書を拝見いたしておりますが、根深いという表現をどこで使っておられたか、私はいまはっきり記憶がございません。ただ、いま御指摘がございましたように、あの開発体制あるいは取り組み方についていろいろ不備があった、こういうことにつきまして、私どもも参考として、また反省をいたしておる次第でございますけれども、結論的には、あるレベルには達しておるし、それで実際に起こった放射能漏れは、わずかであるから修理、改善は可能である、しかし技術的な点検をしろ、こういう御指摘が六項目にわたって前提として書かれております。  原子力委員会は、実は「むつ」問題につきまして当然、当時いろいろと研究をいたしました。しかし、特に政府においては、在来原子力船に関係があった人を除外して、強いて言えば第三者的な中立な方々中心にあの御審議をお願いしたわけでございますから、今日まで原子力委員会としては特に見解を発表することを差し控えておった次第でございますけれども、大山委員会の御意見が発表になりました。つきましては、原子力委員会といたしましては、この機会に「むつ」の修理はかくかくにすべきである、またこれに伴います将来の原子力船問題、それに関連をいたしましては、現在の原子力船事業団法をいかにするか、あるいは新定係港をいかにするか、いろいろ問題があると存じます。その後段の問題につきましては、目下原子力船懇談会というのを開いておりまして、今日も実は私、それに出る約束をしておったのでございますが、こちらへ参りましたので、その方はどういうふうに進行しておりますか存じませんが、それはそれとして、少なくとも原子力船むつ」の改修といいますか、修理と申しますか、これは大山委員会の勧告にもあるような線において私どもは改修が可能である、また改修すべきであると思います。  ただいまちょっと、安全についての考え方が同じような問題であるといったような御指摘があったかと存じます。あるいは私の聞き間違いであるかもしれませんが、「むつ」の問題は、普通の陸上炉で、言うなればアメリカで発達をいたしました軽水炉をそのまま持ってきたというのに対しまして、舶用炉というものは諸外国におきましては軍事機密にも関係をいたしております。これにつきましては、私どもは、自主開発が必要であるというふうに当時考えられたと思うのでありますが、その時点から自主的な開発をいたしてきておりまして、その結果、若干の設計ミスと申しますか、製作ミスがあったということは否めない事実であると思いますけれども、大山委員会の勧告の線と大体似たような形においてこれは改修すべきものであり、またそれはできるものである、ただその前提といたしましては、ただいま御指摘のような技術的な点検をするということは必要だと考えております。
  62. 米内山義一郎

    ○米内山委員 まさかあなたは大山報告を全面的に否定する御意思はなかろうと思いますが、私がいまお尋ねしているのは、これからは「情報を正確に伝え、理解を得る努力をすべきことである。」この点です。これはかなり強いことです。  そこで、ビッグサイエンスといいますか、こういうものを一般国民最初から理解するということはむずかしい。だますつもりの報告なら別です。まず最初に学者、技術者、専門家が公開された資料に基づいていろいろな角度からこれを検討し、批判を加えた上に国民が理解し得る段階になるのです。これを否定するということはこの提言を無視するということにもなるわけです。そういうふうな考えで、当然のこととして今後は、原子力に関する科学的な情報というものは、基本法にあるとおり、原則として公開するということが出発点にならなければならぬと私は考えるのですが、あなたはその点でどうお考えになりますか。
  63. 井上五郎

    井上説明員 私、ちょっといま御質問の意味がわからないのでありますが、私、もし大山委員会意見を否定したような発言にお聞き取りをいただきましたのならば、それは私の言葉遣いがまずかったかしれませんが、さように申し上げたつもりはないのでございます。  それから、第二段の問題で、公開を否定するとおっしゃるのですけれども、私どもは法律に従って行動をいたしております。
  64. 米内山義一郎

    ○米内山委員 それじゃ重ねてお尋ねしますが、この報告書にまことに大事なことも書いてある。「社会的道義的責任を自覚すべきである。」その前段は、「企業秘密の殻に閉じこもることなく、それぞれの技術を結集して適切な作業を進めて行くという社会的道義」こう書いてある。これはきわめて重大です。いま秘密性といいますか、公開しないというのはこの点にあるのじゃないですか。社会的な道義に背を向けながら原子力開発をやっているといういまの姿勢にあるのじゃないですか。この点は、私は大山報告が具体的に指摘していることだと思う。この点についてあなたはどう考えますか。
  65. 井上五郎

    井上説明員 先ほどある参考人から御発言があったのでありまするが、ただいま、たとえば故障とか事故とかいうものにつきましても考え方が分かれておると申しますか、若干混同がある。たとえば人畜に被害がある、あるいは物的損害がある、あるいは電力会社が発電上十分な発電をできなかったから電力会社としての損失がある、いろいろな意味においての事故という考え方があると思いまするが、ただいま大山委員会で御指摘の、重要な問題につきましてそうした商業機密という問題で秘密を守るということを考えておるわけではございません。しかし、たとえばあの問題につきましては、アメリカのウエスチングハウス会社に一つの技術審査を依頼しておったわけでございまするけれどもアメリカから答えられた結果は、必ずしもアメリカが軍事用に開発した点まで触れておったかどうかには若干の疑問がある。  さような意味におきまして、一口に商業機密と申しまするけれども、やはり商業機密という一つの私権というものは、守ってやれる限度において守ることは当然であると思いますけれども、しかし、また国の立場あるいは大きな意味においての国家の安全上必要である場合には、そのからに閉じこもるべきではないという御指摘についても、私どもは個々のケースとしては考えなければならないと考えております。
  66. 米内山義一郎

    ○米内山委員 石油が不足だとかエネルギーの問題が大変だ、だからこれを充足しなければならないというのは、これは経済と政治の問題なんだ。安全性の問題は人道の問題でもあるし、同時に科学技術の問題である。原子力開発が必要だ、だから何をやってもいいということには当然ならぬと思うのですが、どうです。そのウエートの問題をどっちに置くのですか、原子力開発の上で。
  67. 井上五郎

    井上説明員 私、冒頭にそのことを申し上げたと思うのでありまするが、原子力開発推進と安全規制というものを分けるか分けないかということの問題を申し上げたときに、原子力開発は安全問題を前提にしてできるのだということを申し上げたと思います。同じことを二度申し上げる必要はないと思います。
  68. 米内山義一郎

    ○米内山委員 同じことを二度聞いて大変失礼しました。  それじゃ具体的な例で申し上げたい。青森県の陸奥湾ですが、その背後に、太平洋側に、東通という村に、東京電力と東北電力が、それぞれ一千万キロずつ、合計二千万キロの原子力発電基地をつくるという計画を政府に出したのです。農林大臣はこれに対して農地転用の許可の処分をしています。ところが、このことを先般のこの委員会で大臣に聞きましたら、大臣は、わしは知らぬ、聞いてもおらぬ。大臣は就任浅いから知らないこともあり得るが、局長さん知っているかと言ったら、私も聞いたことないと言うのです。こういうふうにして、行政の統一もなく、安全審査の予備審査もなしに進められている。これが陸奥湾海戦の一つのあの背景にもなるわけです。  そこで私は、幸いにきょう中島先生もお見えになっておりますが、これはきわめて簡単で結構です、専門的でなくても結構です、国民の常識に照らして先生の御見解をお尋ねしたいと思う。  大体、一つでも原子炉というものは危険だ、百分の三危険だ、百万キロの炉を二十並べたら三掛ける二十ということになるのはこれは算術なんだ。しかも、そういう炉の放射線漏れとか放射能漏れとかいうことを考えなくとも、原子力発電につきもののものは、例の冷却水、大量の排水、これだって一つなら問題はないとしても、二千万キロという、世界のどこにもないようなものが一カ所に集積されたとき、これは公害とかいうものじゃなく、気候まで変わるとわれわれは考えるのです。この問題について、専門家としての中島先生から、よく国民にわかるように、常識的にお答えすることはきわめて簡単だと思いますから、お願いします。
  69. 中島篤之助

    中島参考人 私、必ずしもそういう方面の専門家ではございませんけれども、二千万キロワットの軽水型炉を現在つくるということになりますと、大体百万キロが二十基であれば、冷却水の総量は大体千四百トン・パー秒くらい、一秒当たり千四百トンくらいになるだろうと思います。これは大体石狩川の水量が四百トンくらいだと言われておりますから、これはあの地方にそういう川が三つ以上できるというようなことになるわけで、しかもその温度が、これは海水を取って海に捨てるということになるわけですけれども、実はそういうことがどういうふうになるかということ、いわゆる温排水の問題なんですけれども、これの研究が、まあわれわれが指摘して以来やっと始まったというのが率直に申し上げて現状でありますから、これについては科学者の立場から言うとわからない。このわからないというのは非常に困るのでありまして、わからないと言うと大丈夫なんだろうというふうにとられますから、あえて注釈をつけますと、どんなことが起こるかわからない、慎重に考えておかなければいけないというふうに申し上げておきたいと思います。  それで、集中立地問題は、これは立地が困難だということのためにどうも傾向として集中立地する。だから、一カ所確保されるとそこへ、いま千万キロという計画で始めたのなら、恐らく千万キロでとまらないかもしれませんね。福島が現にその例でありまして、最初は二百万キロワットぐらいの予定が、四百万キロワットを超えているというようなことになりますので、もっと大きな問題になる可能性があるんじゃないか。  ですから、科学者として言っておかなければいけないのは、そういうことについての予備的な調査、あるいは二千万キロワットを置くことがいいかどうかというようなことについては、何も検討がされておらないということであろうと思います。
  70. 米内山義一郎

    ○米内山委員 農林省に出した計画書によると、百万キロの炉を背中合せにくっつけて、一カ所に二百万、三百五十メートルの距離でまた二つ、こういうことだそうです。ですから、これは原子力委員会、科学技術庁は知らないと言うのですが、原子力産業会議などで両電力にこういう計画があるというようなことを御存じでしょうか。
  71. 森一久

    ○森参考人 そういう計画があることは存じておりません。また、そういう計画がすらすらいくぐらいなら、六千万キロの再検討も必要ないと思うのでございます。そういうことでございます。
  72. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうしますと、この二千万キロ計画というのは、皆さんがいままでいろいろ苦労して策定されている現在の六千万キロワットの計画には、入っていないということですか。
  73. 森一久

    ○森参考人 私もちょっと資料を持ってきておりませんけれども、入っていないと思います。
  74. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうしますと、六千万キロが充足されて次は五千万キロになるか、そういうものになる段階はいつごろになるでしょう。
  75. 森一久

    ○森参考人 これは、先ほど来申し上げておりますような温排水についての研究の進め方とか、先ほど先生がおっしゃっておるような、地元に資料公開して納得を得る得方とか、そういうことにかかっておると思います。
  76. 米内山義一郎

    ○米内山委員 実はこの計画書を見ますと、昭和四十七年度に第一号炉建設にかかるという理由で、四十六年に農地転用の許可処分をとっているわけです。そうしますと、原子力行政や計画の上から見ると、これはまるで用地を取得するための架空のものだと考えざるを得ないのです。これはあなたから答弁を求める筋合いのものではありませんが、原子力委員会の方でも、こういう乱暴なごり押し的な開発が電力資本によって進められているということを、十分御承知の上この問題に御対処願いたいと思います。この問題は、いずれこの委員会で今後も議論したいと思います。  きょうはこれで終わります。
  77. 八木昇

    八木委員長 次に、瀬崎博義君。
  78. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まず、出席をいただきました参考人の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。  先ほどの冒頭の御意見発表の中に、たしか中島参考人お話だったと思うのですが、今日原子力行政改革問題が現実の問題として論議され、俎上に上っている。たとえば原子力行政懇談会で検討中であり、あるいはまた「むつ」問題をめぐってはせんだって大山委員会報告書が一応出ましたけれども、それぞれこれは政府が任命してつくられていろいろと問題を検討しておる。こういうことが片一方にありながら、一方では新しく柏崎であるとか、伊方安全審査が始まってくる、片一方で「むつ」の母港探しが進められる、これは大変矛盾ではないかというお話だったと思うのですね。私も、かねがねこういう点は本末転倒ではないかと政府に申してきたことなんですけれども、この原子力行政改革するという問題も、これまた現実の原子力行政の重要な一環だと私は思うのですね。  ですから、この改革の過程そのものが非常に大事である。先ほど井上原子力委員長代理もいいことをおっしゃって、安全問題に対する国の責任のとり方に不備があった、だからこれからは国民の信頼をかち取り得る体制はどうあるべきか、これを検討するのが課題だ、このようにおっしゃっていると思うのですね。そうであればあるほど、この改革過程というものが非常に大事だ。やり方によっては信頼されるし、やり方によっては逆により信頼されにくくなる、そういうように思うのですね。  こういう点で、少なくとも一方で安全審査体制そのものが欠陥ありとして爼上に上っているんですから、この間さらに新しい安全審査を開始するとか、あるいはまた「むつ」の安全性そのものが、あるいはまたああいう欠陥原子力船を生み出した体制そのものに検討が加えられている段階において、新しい母港探しをするなんというようなことは差し控えるのが正しい原子力行政改革への道ではないかと思うので、この点について、ひとつ森参考人の御意見稲垣参考人の御意見を承りたいと思うのです。
  79. 森一久

    ○森参考人 私がお答えできる問題でないと思いますけれども、現在原子力行政懇談会並びに各種の方面でそういった再検討が行われておることは事実でございますけれども、これに対して、現存安全審査申請が出ておるものに対して安全審査を進めるべきか、あるいはそういった体制を整えるべきかをお考えになるのは、原子力委員会だと思いますので、われわれ民間人がとやかく申すべきではないと思います。特に意見はございません。
  80. 稲垣武臣

    稲垣参考人 これは私どもの方から見ますと、現在の原子力開発並びに建設運転、それについては全体的に非常に人材が足りないのではないかということが言われております。また電力会社の方も、そういう意味合いでは、現在原子力は次々に運転要員、建設要員を養成しているさなかであります。しかも、その建設期間が非常に長いというのがこれまた特徴であります。したがって、そういう意味では、需給関係を見て手がけましても七年ないし八年かかりますから、そういう意味合いでは相当長期的なものだけに、なるべく早く手を打たなければならぬというのは、これは私どもが考えても、電気事業者からして当然じゃないかと思うのです。  ただ、行政上いま問題になっているのにどうだこうだと言えるのは、これは政治的な課題ですから、それはむしろ政治の場でどういうふうにするかということは、お考え願って結構じゃないかと思います。
  81. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 重ねてお聞きして恐縮なんですけれども、私が特にお伺いしておりますのは、国民に信頼されるような原子力行政に変えなくちゃいけない、こういう一つの大きな命題に照らしてみて、そこへ近づけようとしている過程にありながら、そこで一番爼上に上げられている安全審査体制に、いま新しく大きな原子力発電所安全審査がかけられる、あるいはまた「むつ」が安全かどうか、ああいうことになった原因はどこにあったのかということがいろいろ検討されている最中に新しい母港を探して、果たして受け入れ地に当たっている住民が大丈夫だと考え得るかどうかという点を、ひとつ余りむずかしく考えないで、国民サイドで見てどうなるだろうかという点で御意見を賜れたらと思うのです。よろしくお願いしたいと思います。
  82. 森一久

    ○森参考人 いまの安全審査の問題でございますけれども、当然先生がおっしゃるとおりに、現在いろいろ批判されておる点を十分考慮して今度の安全審査が行われるだろうと思いますし、たとえば原子力行政懇談会の結論が出るより前にいまの安全審査の結論が出るとは、私はちょっと想像しておりません。  それから「むつ」の問題でございますけれども、先ほど来お話がございますように、やはり「むつ」自身のこの間の事故がどういうものであったかということの評価と、それからそれに対してどう修繕できるのかあるいはできないのか、そういったことをまず国民の前に示すことが前提だと思います。その上で、こういうふうにして実験用の原子力船としてちゃんとできるのだという前提があって初めて新しい港も探せるのではないか、これは私の個人の意見でございますが、こう考えております。
  83. 稲垣武臣

    稲垣参考人 「むつ」の問題と原子力発電所の問題を同じように取り扱われるということについては、実際に建設もし、運転もしております私どもとしては心外な点があるわけです。  原子力発電所の場合には、確かにいまいろいろな問題が起きておりますけれども、たとえば一番新しく建設いたしました中国の島根は、稼働率も七〇%、ほとんどトラブルも起きずに現在運転しております。そういう意味で、やはり故障の一つ一つがフィードバックされていますし、そういうものに対して次々技術開発もやっていくということでやっておりますので、「むつ」の問題と原子力発電所を一緒にされるのは心外です。  「むつ」の問題については、私も森参考人と同じ意見でございます。あの報告書も読ましていただきましたけれども、言われるとおりにどこに責任があるのやら、どういう欠陥があったのか、まさしく報告書自体がどこにも責任の重点が置かれていない報告書になっていますから、したがって、そういう意味では、「むつ」の報告書については私ども納得できない点がたくさんございます。
  84. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは、先ほど中島さんがおっしゃったお話の内容にかかわりますので伺いますが、「むつ」と原発とを同列に扱うのは心外であるといういまの御発言、さらには安全審査体制が整う以前に、柏崎とか伊方など新しく安全審査に入ったものの結論が出ることはないであろう、こういう御発言で先生はよいとお考えなのかどうか、ひとつお願いをしたいと思います。
  85. 中島篤之助

    中島参考人 いまの御質問には二つの問題があるわけですけれども、後の私がさっき申したことに関連して申します。  たとえば、非常に望ましい形としては、これは現にスウェーデンなんかでやっているのですけれども一定の問題が出てきた段階で一応モラトリアムということが現実に行われて、その間に十分科学者が議論することもできるし、国民にもその問題が明らかにされるという期間が、どうも日本原子力開発を再建するためにはむしろ必要ではないかというふうに考えて、実は私はさっきああいうことを申し上げたのです。  それで、森さんがおっしゃるように、今度は安全審査会の委員の方がよくその教訓を取り入れておやりになるだろうというのは、まあ森さんの立場としてはそうおっしゃらなければならないでしょうけれども、これは柏崎の人がそういうことを信用するでしょうかね。私はまず信用しないだろうと思います。  と申しますのは、内田先生のことを私、直接非難するつもりはありませんけれども、たとえばこの国会で、「むつ」の問題は、あの安全審査というのは基本設計のことだけしかやらないのだ、発電所の場合は通産の発電技術顧問会の方で合同審査をやっているからそう大きなぼろが出なかったのだ、これはいまの稲垣さんのお話に多少関連があるかと思いますが、出なかったのだ、ところが、向こうの場合は相手が運輸省だったからうまくいかなかったのだというようなことをおっしゃっておられるようですけれども、これはとんでもない間違いでありまして、「むつ」の遮蔽の問題というのは基本設計の問題でありますから、これが施工の問題ではないということは明瞭ですね。だからそういうことを国会がお見逃しになったというのはやはり追及が足りないのじゃないかと私は思うのでありまして、これは明らかに基本設計そのものの問題ですよ。ですから、そういう方がまだ依然として安全審査会の専門部会の部会長として審査をおやりになるというのだったら、私が第一これはおかしいと言わなければなりませんし、それではだめです。それから、今度は伊方の問題にしましても、最近できた部会では、これは私どもの同僚ですけれども、原研の村主君が部会長をやる。しかし、原子力発電は安全であって問題はないと言っていた人が部会長をやるのですから、しかも、その見解を変えたということは私、不幸にして聞いておりませんから、これは森さんやなんかがさんざん苦労された合意を得なければならぬというお話にはそぐわないだろうと思うのです。私は、むしろ何とかしなければならぬから、さっき言ったようなことを申し上げたのだということを繰り返しておきたいと思います。
  86. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 「むつ」と同列ではというお話はどうでしょうか。
  87. 中島篤之助

    中島参考人 その「むつ」の問題といいますか、これはいろいろな例が引けますけれども国民の気分というか、感覚とすれば、これは大山委員会もあの「むつ」の問題の後では、たとえば原子炉の中には放射能の量にすれば五百キュリーぐらいしかないだろう、これは私どもは実は三百キュリーぐらいしかないだろうと、もっと少なく見積もったのですけれども、そういうことになったわけですね。それからその後、田島先生や服部君が行きまして、やはり放射能の量はそのぐらいだろう、だから制御棒を入れておけば大丈夫だろうという形で「むつ」は港へ帰ったという経過がございます。  そういたしますと、問題になっているのは、放射能の量は発電所に比べればけた違いに少ない。しかし、問題のなり方はずっと「むつ」の方が大きかった。これはやはり基礎にあるのが原子力行政あり方に対する国民不信感ですね。つまり、全然放射線は漏れないのだ、放射線は漏れるはずがない、権威のある審査会でもって十分審査をしたから大丈夫なんだと言っていたことが覆ったということが根本です。  その問題について言えば、原子力発電についても全く同様でありまして、これはプルーブンである、実証済みである。でありますから、たとえば原子力研究所の安全研究にしましても、かつて私どもが炉心の状態を調べるためにこういう研究をしたいということを原子力委員会に申し上げたときは、よけいなことをするなというごあいさつであったわけでありますから、これはつまり、実証済み炉についてよけいなことをやってもらったら問題が起きるのだという、こういう考え方がむしろ今日の事態を招いていると思うのでありまして、これは全く根は同じであると私は考えております。
  88. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私どもはできれば、いまの中島参考人の原則的な見地が貫かれるなら結構だと思うのですが、百歩譲りまして、先ほどからの森参考人稲垣参考人お話でいけば、少なくとも安全審査体制改革強化が行われる以前に、新規の安全審査の結論が出されることはないであろうというお話一つ出ました。それから「むつ」については、少なくとも現在のあの報告書の限りにおいて、なお「むつ」の新母港が探し得る、あるいはまた探して受け入れられるような状況にはなっていないと思う、こういうお話もありました。  佐々木長官がおられると大変結構なんですが、この間から禅問答のようなことを何遍かやってこられたわけですけれども、かわって政務次官か局長に、いまの参考人お話を聞いて、さて今後政府はどう処するのか、いまのお話は忠実に守りますかどうか、これを聞いておきたいと思うのです。
  89. 生田豊朗

    ○生田政府委員 参考人の方によりましていろいろ御意見が違いますので、どれを守るかとおっしゃいましても非常に困るわけでございますけれども、私どもは「むつ」の問題につきましては、先生御承知のように現在でもいろいろ検討あるいは改革を進めているわけでございますが、その問題があるからと申しまして、現在の安全審査を全部ストップするという考え方は毛頭ございません。  これは現在の安全審査でも、私どもは「むつ」につきましても、安全審査が必ずしも間違っていたということは確認しておりません。これは安全審査が間違っていなかったということを確認したわけでもございません、検討中でございますけれども。そうかといって、安全審査の制度自身を、全部その活動をストップいたしまして、完全な制度の改革を待ってから新しく始めなければいけないというようには一切考えておりません。
  90. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 「むつ」の母港探しは……。
  91. 生田豊朗

    ○生田政府委員 母港探しの問題でございますが、これは先生御承知の、昨年「むつ」が大湊港へ入港いたします際の四者協定を忠実に履行するためにやっているわけでございます。
  92. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは参考人の皆さん方も、いまの答弁をお聞きになっておわかりになったと思うのです。「むつ」の新母港探しができるような条件にないにかかわらず、四者協定の約束があるから探しているんだ。あるいはまた逆に言えば、ああいう四者協定で火ぶたを切ったこと自身にもそもそも矛盾があったのではないかとも言えると思うのです。そういう点が非常にごまかされるわけですね。こういうふうな点で、私は非常に不信がつのりこそすれ、決して減らない。こういう点については、非常にいまの原子力行政の欠陥が根深いものだという、そういう点の御認識をこんな場所でしていただくのは恐縮でありますけれども一つお願いしておきたいと思うのです。  第二点目の問題といたしまして、では、現在の原子力委員会をどうするかという問題について、大きく分けますと、その性格、たとえば審議機関としての性格などは、あるいは規制推進を分けるというふうなことはしないで、機構、スタッフの強化を図ればよいのではないかという御意見が、原産、原子力委員会の御意見のように私は聞きました。それからこれを規制推進に分けて、それぞれ別の委員会にしたらよいのではないか、特に規制の方は行政権限を持たせるというふうな御意見電労連の方から出ておったと思うのですね。  そこで、これを二つ委員会に分けようという御意見稲垣参考人にお伺いしたいのですが、なぜ、現在の性格のまま、ただ機構やスタッフを強化しただけではいかぬ、これは二つ委員会に分けなければいかぬというお考えになったのか、簡単にちょっとその根拠をお話し願いたいと思うのです。
  93. 稲垣武臣

    稲垣参考人 私どもが検討いたしましたときには、安全審査あるいは安全規制というものは、いまの国民の目から見ると、原子力委員会推進、安全とやっている限り、やはり不信感というものは取り除くことができないだろう。しかもまた、相当専門的なスタッフをそろえてやることがこの問題を完璧にすることであるから、したがって規制委員会というものをはっきりつくって、スタッフも大きい、権威あるものとしてやっていくということが非常に大切ではないかというふうに考えたので、二つに分けたわけです。
  94. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは今度は、現在の原子力委員会のままで強化しようという御意見の森参考人にお伺いしたいのですが、先ほどの御説明では、原子力委員会というのは平和利用と安全を国民にかわって監視する役割りをするところだ、こうおっしゃいましたね。そのためには、行政に従属しないことが重要であるというお話だったのですが、それではまず第一点は、安全審査責任一体どの機関が持つべきであるとお考えなのか。  第二点目は、現在の原子力委員会では長官が委員長を兼任しております。また科技庁がその事務局をつかさどっております。あるいはまた、井上さんを前に置いてこう言っては失礼なんですが、この原子力委員方々あるいは安全専門審査会のメンバーの方々国会等での御発言が、ほぼ政府側の代弁、あるいは場合によっては、先ほどちょっと中島さんが御紹介になっておりましたが、政府側よりもなお悪い場合もないとは言えない。こういうところから、行政に従属しないどころか従属し過ぎているという、こういう点でも非常に大きな批判が出ていると思うのです。ですから、こういう点は、もし現在の性格を大きく変えないとするならば、どのようにしたら本当に行政に従属しない姿になるのか、その二点についてお答えをいただきたいと思います。
  95. 森一久

    ○森参考人 私が申し上げましたのは、原子力委員会がいまのままでいいと申し上げたのではなくて、原子力委員会原子力基本法に定められているような本来の原子力委員会の姿に戻すべきだということを申し上げたわけです。  いままさに先生が御指摘の二つの点、一つは、事務局を持っていないということ。ここから先は私の私案になりますけれども、たとえば総理府に原子力委員会直属の事務局を持つこと。それから委員長の問題ですけれども、これは一番議論したところでございますが、先生のところにお送りしてある報告書にも書いてありますように、現在のように原子力委員長が国務大臣を兼ねることでいいかどうかは慎重に検討する必要があるというところなんで、慎重にというのは、全く五分五分でございまして、先ほど来御指摘のように、閣僚としてある程度予算に権限その他のある方が委員長になるのがいいか、それとももう少し将来を見通した学識経験者の方がよろしいかという点は、一利一害と思いまして、この点はまだ結論はそこでは出ておりませんけれども、私の個人の感じでは、やはり国務大臣ではなくて、学識経験者である方がベターではないか、かように考えております。  それから、先ほどの話で、ちょっと議論を戻して恐縮でございますけれども、私が先ほど申し上げましたのは、総理大臣の諮問機関である原子力行政懇談会の結論が出る前に、いまの安全審査の結論が出ることはないと思いますと、こう申し上げたのでありまして、安全審査体制が抜本的に変わるのは、やはりこれは法律問題もございましょうし、かなり時間も要すると思います。しかし、いまのような原子力行政懇談会の結論が出ますれば、これは当然いまの体制の中でも、その趣旨を生かして十分運営をさるべきだと思いますので、そういう意味で申し上げましたので、訂正ではございませんで、私は同じことを二度申し上げただけでございます。もし誤解があるといけませんので。
  96. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 お聞きしておりますと、この原子力委員会が最大公約数で出されたという御意見と、原産の方の御意見とがだんだん、よく似ているように思うのですけれども、そうじゃないですか。  その長官の兼任の問題で、先ほど井上さんも、予算獲得上はどうも閣僚の方がいいのだというようなお話がありましたね。しかし、公取の場合は何かそうなっていないのですが、これはひとつ中島先生と小野先生に、また後でいろいろ御質問しますから、この面に限っての見解をお伺いしたいと思うのです。
  97. 中島篤之助

    中島参考人 これは私の個人的な意見としては、大臣が兼務しているかどうかが問題なんではなくて、結局、現在の政府姿勢の問題が一つやはりあるわけです。だから、慎重にという森君の意見に賛成するわけではないですけれども、これは制度そのものとして、やはり日本現状では、国務大臣があって発言権が強い方が望ましいという面は確かにあるわけです。ところが一方、それがあるために、そのときそのときの内閣の都合で原子力政策が左右されるということが実は困るという、実態としてはそういうことであろうと思うのです。ですから、最初つくったときは、国務大臣にすることがむしろ一つの非常に大事な眼目であったようなことではなかったか。ですから、その制度そのものに問題があるのではなくて、私は、それを運営してきた現在までの政府の運営の仕方にむしろ問題があったと、率直に申し上げればそういうことではなかろうかというふうに考えております。  ですから、独立性を保つということで分離いたしますと、これは私がいま所属しております。小野先生もそうですけれども日本学術会議のようなことになるわけでありまして、総理府に所属して独立性は保たれる、しかし、政府一つも予算はくれないなんということになるのもどうかなということになりますので……。
  98. 小野周

    小野参考人 私は先ほどの意見陳述でも、安全規制に関する部分はやはり独立委員会にして権限を持たせるべきであるということを申し上げたのですが、それは確かに委員長が国務大臣であることは、予算の獲得あるいはそのときのいろいろな政府に対する働きかけ等において、あるいは委員会意見を強く反映することもできるわけですが、逆に言いますと、政府意見委員会の中で強く反映される結果になります。安全規制の問題は、私は政策ではなくて、やはり科学技術的な根拠に基づいてなされるべきであるという原則に立ちますと、やはり委員長は国務大臣でなくて、それから委員会自身の性格も、できるだけ政策とは独立安全審査ができるということが一番大切ではないか。その意味では、私は先ほど行政委員会、たとえば公正取引委員会のこともちょっと考えたわけですけれども、やはり、そういうふうに現在の政府の政策からは独立した行政委員会にするというのが適当ではないかというふうに考えて申し上げたわけでございます。  なお、その事務局につきましても、やはり他の省庁が事務局になるというのでは本来の仕事は達成できませんので、やはり固有の事務局と、それから先ほど森参考人が、日本では固有の事務局と同時にスタッフを置くことが非常に困難であるということを言われたわけですが、その点については、確かに森参考人が言われるような面があるとは思いますが、原則としては、私は独立な事務局を持って独立的なスタッフを使えるような形にしておくべきではないかと思います。
  99. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほど、この原子力委員会を結局どうするかについては、井上さんは、最大公約数としては諮問機関的性格を残し、分離しない方向だというふうにお聞きしましたが、しかし、最終的には政治判断によって決まることだ、こうおっしゃいましたね。その政治判断によって決まるとは一体どういう内容を意味しているのか、これを聞きたいのが一点。  私が新聞紙上で拝見しましたところでは、井上さんの御意見という形で、やはり規制推進の分離案を発表されたように記憶しておるのでありますが、それときょうお話との関係は一体どうなっているのか、これもお聞きしたいと思うのです。
  100. 井上五郎

    井上説明員 冒頭にお断わりを申し上げたとおりなのでありまして、私は本日は参考人として参っておりませんので、原子力委員長代理という資格において多分お呼び出しを受けておるとすれば、私は、原子力委員会としての最大公約数的な集約意見を申し上げる立場であるという前提で申し上げました。その意味で、私は分離論に対しては、慎重論というよりは、現状に近い体制においてこれが進むならば、分離をすることは一長一短というよりは、むしろ弊害が多いのではないかといったような発言をいたしました。  ただし、ただいま御指摘がありましたように、私は昨年、必ずしも昨年とは申しませんが、ことに「むつ問題等が起こりまして、この事態をこのまま推移するということはどうも実情に即しない、私個人といたしましていささか改革案といったようなものをつくりまして、これをある程度の方に御意見を伺ったのでございます。その中で私が申し上げていることは、委員会とは別に、私個人としては、日本において将来一番大きな問題、したがって、当然政治上に最も大きく取り上げられるべき問題は食糧政策とエネルギー政策である、かつて日本の産業政策の全部が農商務省という形において一括されておったのが、農林行政が非常に重要であるという意味においてそれが分離をされたわけでございまするが、今日商工行政と一口に申しますけれども、エネルギー問題、言うなれば資源をあわせたそうした問題は、国として最も大きな問題であるので、エネルギー政策というものは一括した省になるぐらい重要な問題であるというのが私の基本的な考えでございます。もしそういうような抜本的な大きな政策をとるであろうならば、その役所が仮にできたといたしますならば、規制という問題についてはやはり別個に機関がある方が国民納得が得やすいのではないか、そういう暁におきましては、私は、分離をするということは、政治的な御判断においてあるべきであるということを申し上げております。  その場合に、それが八条機関であるか、公取の問題がただいま出ておりますが、公取は八条機関ではございませんが、そういうようないろいろな細かい問題は別といたしまして、要は、仮にエネルギーがそうなりまして、国民納得を得る上においては、そうした場合において分離するということは考えてみる必要があるのではないか、これは私の私見としてさような意見を申し述べた次第でございます。
  101. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 わかりました。ずいぶん長期の展望も含めてのお話だと承りましたが、そのこと自身については、私どもも非常に傾聴に値すべき見解だと思うし、われわれもいろいろ検討中の事項も含まれていると思うのです。  ただ、そこへ至る過程において、とりわけ安全審査体制一貫性というものは、多くの参考人方々の御意見の中にも出ておったし、また質問者の中にもあったわけなんですが、われわれは、少なくとも原子炉を建設するに当たっての全工程検査、運転安全審査、それからいろんな規則の制定、それから立ち入り調査、検査、運転停止、改善、使用制限の命令等は行えるような行政権限が付与された、そういう規制委員会ぐらいは必要だと思うのですが、こういう点で、先ほど、これも聞きようによってはどうともとれる御発言だったと思うのですが、十二省庁にまたがる規制の権限を原子力委員会で一手に引き受けてということを言われても無理なんだというお話がありましたが、われわれはそんな漠としたことを言っているのではなくて、少なくとも先ほど申し上げましたような範囲内くらいは一貫性を持たせるべきだと考えるのですが、この点についても、なおやはり井上さんは反対の御意見ですか。これは当座の話です。
  102. 井上五郎

    井上説明員 これも先ほど触れた問題でございますが、言葉が足りなかったと思いますので補って申し上げます。  現在の原子力委員会の設置法から申しますると、原子力委員会は各省庁とは別の立場において、総括的な一つの監督権と申しますか、意見陳述し得るようになっておるわけでございまして、諮問権と申しますか、勧告権といったようなものが原子力委員会設置法にあるわけでございます。したがいまして、原子力委員会が大変私どもの力が足りませんで国民の御納得がいかなかった点を深く反省をいたしておりますが、逆に申しまして、そういう現在の法律の中でも改善の余地はある。先刻来、改善が唱えられておるのを片目に見ながら次々と認可をしていくのはおかしいではないかというような意味の御発言があったかと思いまするが、私は、百点かしからずんば零点であるということはなかなか実際問題としてはないので、現在のものが八十点であるか六十点であるか知りませんけれども、それをベターなものにしようという努力は当然なされるべきでありますけれども、それが百点でなければ零点であるから全部ストップしてしまえということは、現実の行政としてはなかなかむずかしい。原子力委員会が十分な活動をしておらないではないかという意味のおしかりあるいは御指摘であるならば、私どもも十分反省をしなければならぬと考えております。
  103. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いろいろとまだ少し私の方も反論もあるのですが、それは零点か百点かとかいう論議を私はしているのではなくて、やはりその中に合格点のラインがあるのですから、これに達しているかどうかということが、これはやはり原子力委員会に問われていると思うのです。  しかし、時間もせかれておりますから、また後日に譲りまして、これも中島参考人小野参考人などからも御指摘がありました資料公開と企業機密の問題ですね。いろいろの議論があるけれども、少なくとも政府があるいは総理大臣が任命してつくった原子力行政改革のための、あるいはまた「むつ」の原因調査のためのそういうふうな委員会が開かれて、そこに出されている程度の資料国会に出されない、あるいは国民に知らされない、学者に知らされないということは、これはきわめて問題だと思うのですね。だから全部の資料公開される、されないという問題に行きつく以前として、とりあえず現在原子力行政懇談会が一方で開かれていて、ここにそのメンバーの方々の要請で新しい資料が出されておったとするならば、これは国民に開かれたものにしなくちゃいけない。できればこの議事録も、本来は、少なくとも必要なら国会等には報告されてしかるべきだと私は思います。また、例の大山委員会報告書には当然付随して資料がついていてあたりまえだという小野先生お話がありましたね。これなんかも、私は最低限の資料公開の要請じゃないかと思うのですね。この点では、先ほど多少前向きな御発言をいただいております森参考人と、それから稲垣参考人に、いまの二点の、二つ懇談会委員会に出されている資料ぐらいはまず出すべきだという私の問いに、ひとつお答えをいただけたらと思うのです。
  104. 森一久

    ○森参考人 私、原子力行政懇談会にどういう資料が出ておるか存じませんので、ちょっとそれについてお答えいたしかねますけれども、私の伺っておるところでは、あそこに出された資料が特にマル秘であるというふうには伺っておりませんのですけれども、その点はちょっと私も存じ上げませんので、お答えいたしかねるということでございます。
  105. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この「むつ」問題の、そういう性格の委員会に出されている資料公開されるべきではないかという、その一定基準ですね。
  106. 森一久

    ○森参考人 それは少なくとも私が申し上げましたように、公開を求められておる方は、別にその設計図を見てまたこっそり船をつくろうと言っておるわけではございませんので、つまり安全性を判定するために専門家として知りたいという資料の範囲では、企業機密ということとは両立した形で公開ができるのではないかと私は考えております。  しかし、そのためにはそういった資料を見た場合のプロパティーをどうするとかいう規定をつくるなり、やはり原子力委員会できちんとした方針を決められて、それにのっとって発表される、こういうふうにされた方がいいと思うのでございます。ただ、いまそういう制度なしに出せ、出さないという議論だけになっているように、ちょっとわれわれ印象を感じるわけでございます。
  107. 稲垣武臣

    稲垣参考人 私は行政懇に出ておりますが、私どもが「むつ」問題でもらいましたのもその報告書だけなんで、したがって、行政懇でもその報告書だけいただいております。  それから、その他いろんな資料が出てますが、その資料は特段秘密のものであるというふうには私は受け取れません。
  108. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 議事録公開問題はどうでしょうか。
  109. 稲垣武臣

    稲垣参考人 議事録公開ということになりますと、私はどうしても人間としての発言に非常に規制というか、自分自身が規制してしまうというようなことにもなりますので、むしろ私は中間報告か何かで、こういう検討の段階であります、こういう意見もありますというようなことで公開する方が、議事の運営を取りまとめたものとしてなおわかりやすいのではないか、むしろその方が、公開とするなら親切ではないかというふうに考えます。
  110. 八木昇

    八木委員長 ちょっと原子力局長に伺いますが、たとえば「むつ」の調査委員会調査に当たっていろんな資料も検討したのでしょうが、こういった一冊の調査報告書だけですよね。そういった資料なんかは全然ついていないのですよ。これは一切公開しないという考えですか。
  111. 生田豊朗

    ○生田政府委員 一切公開しないということではございませんし、大部分のものは現に公開しているわけでございます。この大山委員会にも「むつ」の安全審査の関係の参考資料、これはかなり膨大なものでございますが、これを提出してございます。したがいまして、先ほどどなたかが何も参考資料なしでわからないではないかという御意見があったように思いますが、これは膨大な資料を提出してそれによって御審議をいただいておりますし、原子炉の実物もごらんをいただいているわけでございます。  国会との関係でございますが、参議院の科技特委員会にはもうすでに理事会に、この大山委員会に出しましたものと同じ「むつ」の参考資料の目録を、これは膨大でございますので、目録を理事の先生方皆様にお渡ししてございます。それから、資料の写しは理事会に一部、これは大部でございますので、お出ししておりますので、当委員会におきましても、審議の必要上御要求がございましたら同じようにさせていただきたい、かように考えております。
  112. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、ぜひそれは委員長さんの方から要求をしていただいて、全理事に出していただきたい。当然来週その関係参考人においでいただくわけでございますから、できるだけ早くもらって検討しておきたいと思いますから、よろしくお願いいたします。  それから、開発体制の問題で一言だけお伺いしておきたいのでありますが、中島参考人の方からお配りいただいております日本学術会議資料によりますと、第六十五回総会で勧告をつくっていらっしゃいます。そこには、「私企業による原子力発電所等の建設が、上述の要求を満たし得ない場合にはその開発体制そのものを改善すべきである。」こういうことなんですが、これは一体具体的にはどういうことを意味していらっしゃるのか、その点の説明をお願いしたいのです。
  113. 中島篤之助

    中島参考人 いまの御質問の点でありますけれども、これはかなり大きな問題でありまして、学術会議でもかなりの時間をかけて議論したことでございますから、むしろ具体的な例で申し上げた方がよろしいかと思うのです。  これは先ほど井上委員長代理もちょっと触れられましたように、いわゆる電気事業連合会方面では、たとえばアップストリームとかダウンストリームとかいう言葉をお使いになりまして、われわれの言葉で申しますとトータルシステムの問題具体的には再処理の問題とか、廃棄物処理の問題だとか、あるいは輸送の問題、こういった問題があるわけでございますね。これがどう考えても、電力会社というのは本来電気を出せばそれで社会的責任は終わる会社でありまして、そこが膨大な廃棄物を抱え込んで、それが結局どこへ行くのかというのもはっきりしない。本当はそういうことを解決しなければ安全審査はできないはずだと私は思うのですけれども、それでやられているということであります。技術的な問題に引き直せばそういう問題になります。  そういうことで、適当な例かどうかわかりませんが、私が関係しておりますことで一つ申しますと、皆さんも御存じのように四国電力が伊方発電所をつくっておりますけれども、これは佐田岬という細長い岬の瀬戸内海を向いた狭いサイトに五十万キロワット二基を建設中であります。これがもしでき上がりまして、とにかく動いて何年かたつと、いわゆる使用済みの核燃料というものができてまいります。これをどうやってそれではどこへ運ぶのかというのを、どなたに聞いてみても実はわからない。安全審査報告書では東海の再処理工場に持っていくということにしないといけないからそうなっておりますけれども、果たしてそうなるかどうかもわからない。仮にその東海村のいま建設中の、パイロットプラントだそうでありますけれども、そこへ運ぶとすると、これは瀬戸内海を通らなければいけない。御存じのようにわずか二トンほどの燃料を運ぶのに、約百トン以上のキャスクが要るだろうと思いますが、それを船に積んで瀬戸内海を通すのかどうかということは、私、大変な問題だろうと思うのです。ところがそのことを聞いてもだれもそれは知らないとおっしゃるのか、またそのときになったらきっと大問題になるのかわかりませんけれども、どうも森さんがおっしゃっておるようには、事前によく計画され、審査されておるとはとうてい思えないのですね、科学者から考えれば。それはなぜかというと、敷地の選定が私は間違っていたと思うのですよ。しかし、これは現在の安全審査体制では完全にそれは抜けている。  まあ、ちょっと話が脱線しましたけれども、私が申しましたように、その私企業による開発体制というのはどうしてもそういう無理があって、どうしても手落ちが起こる。だから、これは少なくとも実験段階においては、もし本当に、学術会議の表現は、電力会社責任を持って最後までやるというならば、それで国民の福祉を守れるようにするというならば、それはそれでよいけれども、もしそれが非常に無理だというなら、それは開発体制の方に問題があるのだから、そこを再検討すべきではないかという趣旨であります。  ですから、いま言ったのは一つの例でありますけれども、そういう問題が無数にあろうかというふうに私は考えておるわけです。私企業でやると、どうしても利潤追求というようなことのために、あるいは経済的な理由のために、いま言ったようなことは見逃されやすい。どこかがやってくれるだろうということになって、そのことがやはりまた国民不信感を増大させるということになっているのではないかというふうな意味で、そういう勧告を出したということでございます。
  114. 八木昇

    八木委員長 約束した時間をちょっと過ぎておりますから、あと一問くらいに。
  115. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いまの開発体制の問題で、再度中島参考人にお伺いして恐縮なんですが、結局こういうことですか。民間企業による原子力発電所建設運転等を否定はしないけれども、これが非常に問題を伴うというふうな事態にあっては、民間系以外ということになれば、公的要素を入れるということになると思うのですが、そういうふうな理解でよいかどうかということが中島さんへのお尋ねです。  そういうふうな学術会議の御意見に対して、開発体制の方ですね、これはひとつ稲垣参考人と森参考人にお伺いして、私は終わりたいと思うのです。
  116. 中島篤之助

    中島参考人 おっしゃるとおり、現在の実験段階においては特に公的な要素を強くすべきであります。これは稲垣さんがお答えになる前に、第一、電力業界自身が原子力発電会社というものをおつくりになって、これは当然パイロットプラントということでおつくりになったはずであります。ところが、最近見ていますと、そのおつくりになる百万キロワットの原子炉と、東京電力会社の百万キロワットの原子炉と同じ原子炉をおつくりになる。これではどっちかをつぶさなければつじつまが合わないはずでありまして、原子力発電会社は、御存じのように電源開発を通じて多少の公的規制が入り得るはずですけれども、実際は余り入っておらないと思いますけれども、やはり私は、これは全部国営にしろというようなことは、具体的に学術会議の中でもまだ検討しておりませんから申し上げられませんが、少なくとももっと公共の福祉の立場で、これは規制ができるようにすべきであるという趣旨だということを申し上げたいと思います。
  117. 稲垣武臣

    稲垣参考人 確かに原子力の問題は、廃棄物の処理、燃料サイクル、こういう点について、いまなおまだ検討中であるとか、あるいは再処理についてもはっきりした方針が出ていないというのが現状だと思うのです。そういう意味合いで、官民協力ということを私どもよく申し上げるわけです。  ただ、開発の方法としまして、いま中島先生もおっしゃったように、立地点ということになりますと、昨今非常にむずかしくなってしまっている。原子力に対して一番好条件だと言われる所でも、立地できないというのが現状だと思うのです。どうしても立地点というのは、原子力の場合には大変遠隔地へ出ていかなければならぬし、過疎地帯へ出ていかなければならぬ。今度は、むしろ私どもの労働条件の方で問題が出てくるわけですけれども。したがって、そういう意味合いでは電力というのは、やはり公共の福祉という面で見ますと、なるべく効率的に開発するのが当然でありましょうし、そのことは逆に言えば、電気料金というものをなるべく安定さすことになるので、そのことも非常に重要だと思うのです。  同時に、もう一方では公害、環境というものをどうして破壊しないようにしていくかということになりますと、やはり現在の電力会社の枠内だけで物を考えずに、たとえば共同で開発していくとかというようなことが、当然要請されてしかるべきだと思います。
  118. 森一久

    ○森参考人 申すまでもございませんけれども原子力エネルギーは何も電力会社のためにあるわけじゃございませんで、やはり国民のために最も手ぎれいで、最も安いエネルギーをどういう組織が生産できるかということだと思います。そういう意味で率直に申しまして、二十年前に関係者が取り組んだ気持ちの中には、少し安易な問題があったということは事実だと思います。そういう意味で、私どもも果たしていまの体制で十分やっていけるか、国民に対して最もきれいで安いエネルギーを供給できるかどうかという点は、一番まじめに考えなければいけない問題だと思います。  そういう意味で、先生方も最近新聞でごらんになったかもしれませんけれども、電力の首脳の間にもそういった形での反省と申しますか、再検討が始まりつつあるような状況にございます。  ただ、残念なことに、先ほどから私も申しておりますように、国と民間の体制がはっきりしていないわけでございますね。廃棄物の問題を初めといたしまして、非常にはっきりしていない問題がたくさんございます。そういう状況のままで官民協力ということを言いますことは、ともすれば安易な、物事は全部官民協力でやるのだというふうな、責任体制がはっきりしないという傾向を現在までに生んできたために、重要な問題の解決がおくれておるということが、非常に困ったことだと思います。  そういう意味で、先ほど来私のお話も、こういうことはだれがやるべきだというような形でうちの委員会で検討した範囲で申し上げたのでございますが、その分担をはっきりさせることによって、現在のままでよいか、あるいは電力会社の間でこういう問題を協力することでやれるのか、あるいはこれだけはどうしても国でやれないのか、そこまで国で頼むのならば、もっと基本的な問題を考えなければいけないのかというふうに物事が発展していくのではないか、かように考えております。
  119. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 どうも延びて済みませんでした。
  120. 八木昇

    八木委員長 次に、近江巳記夫君。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 井上さんにお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、石野委員長代理着席〕  今後はやはり原子力に依存せざるを得ない、エネルギーの将来というものについてそうしたお話があったわけです。それで昭和五十五年に三千二百万、六十年に六千万キロワット、実際には時間的に無理があるだろう、中間はおくれるであろう、しかし、昭和六十年六千万キロワットというものは、原子力委員会としては変わっていないということをおっしゃったわけでありますが、この中間、昭和五十五年のおくれることは、これはもうだれしもそういう感じで見ておると思いますが、昭和六十年六千万キロワット、これをいわゆる数値を置いておかれる理由ですね、またこういう数値を置いておかれるというところに、いろいろなそういう改革もなしにやはり推進をしていく、そういう無理も私は生じてきておるのじゃないか、このように思うのですが、この計画の見通しにつきまして、この数値は当然ダウンすべきじゃないかと私は思うのですが、井上さんのお考えを聞きたいと思います。
  122. 井上五郎

    井上説明員 昨年委員会の稲葉私案というものを申し上げましたときに、五十五年は当時三千二百万キロと決めたのでありますが、二千七百万か八百万キロが限界であろうといった案を出したと記憶いたしております。今日考えますと、それさえも相当むずかしい段階ではないかと考えます。それにならいまして、したがってまた六十年六千万キロもむずかしいのではないか。先刻申しましたように、私はそれは非常にむずかしいことであるということは申し上げたつもりでございます。ただし、それが不可能であるとは考えないというふうに発言いたしたと記憶いたしております。  それに対しまして、先般内閣におきましてエネルギー問題閣僚調査会ですか、正確な名前をちょっと記憶いたしておりませんが、そういった意味の会合が総理大臣を首班といたしまして組織されまして、そのことは私ども大賛成でございまして、日本のエネルギー政策というものを内閣において一つの最高問題として決定をするというほど重要な問題である、かように考えます。  そこで、その会議において原子力発電役割りと申しますか、シェアがどのくらいであるべきかということの決定をいただきますならば、原子力委員会は、少なくともそうしたことについての努力を惜しまないつもりでございます。  しかしながら、いま各国の情勢を見てみますると、たとえば石油危機以来、フランスは当初の計画よりも非常に原子力発電を増進して、六十年において五千万ないし五千五百万キロと言っております。ドイツも同様でありまして、四千五百万キロワット内外を考えております。さような意味で、各国ともむしろ石油危機以来原子力発電のシェアを増すといったような傾向にあるわけであります。     〔石野委員長代理退席、委員長着席〕 原子力委員会も、でき得べくんばむしろ原子力のシェアを増すことが、日本の全体的の外貨バランスその他の経済活動からいっては望ましいことではないかと考えるのでございますけれども、現実にはなかなかそれは困難であるということで、昭和四十七年に決めた六千万キロワットというものを今日は変えておりませんということを申し上げたのでありまするが、仮に内閣の今度の決定においてこれが五千万キロワットがいい、いや、ないしは七千万キロにすべきであると言うならば、その線に沿ってわれわれは検討を当然すべきものである、こういうふうに考えております。
  123. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした原子力行政がいかに今後改革されるか、こういうところに私は大きなかぎがかかっていると思うのです。西ドイツあるいはフランス等がこうだからという、いたずらにそういう数値の競争ということは、多くの問題を残したままさらにそういうひずみというものは大きくなってくるわけですね。こういう点におきまして、やはり主体性を持ち、一番わかっておられるのは原子力委員会なんですから、不可能ではないとおっしゃっている根拠というものは一体何ですか。いまのような状態なら、私たちは常識的に考えて無理だと思うのですよ。これは不可能ではないとおっしゃっているその根拠というものについてお聞きしたいと思います。
  124. 井上五郎

    井上説明員 日本の国力からいってできることだと思っております。たとえばいま原子力についていろいろと困難を感じておるのは、ひとり日本だけではございません。しかし、いま申しましたように、近江先生は減らすべきであるという前提で御発言であったかと思いますが、私は何も競争で言ったのではございません。増しておる国もあるという例として申し上げたのでありまして、他の国が増すから日本が増せということを発言した覚えはございません。私は、内閣が決定して、これをもっと少なくてよろしいと言うならば、そういたしますということを申し上げたのであります。  それで、各国が必ずしもそれはできないと考えておるのには、たとえばフランスは、先刻瀬崎先生の御発言の中には体制問題も絡むというような御発言もございましたし、私、さようでないとかあるとかいうことではございませんけれども、フランスは電力は国営でございますが、やはり地域に対しては相当の反対がある。そこで、必ずしもフランスの現在計画ができるかどうかはわかりません。またある国につきましては、原子力開発推進すべきであるけれども、自国の製造能力がそれほどはない。またある国では、原子力はやりたいけれども、一般火力に比べて非常に建設費が高い、資金面からの制約でこれの実現が困難である、こういったようないろいろ国々の事情がございます。  したがいまして、日本日本的な判断において原子力のシェアがいかにあるべきかということを内閣の最高方針として決定すべきで、原子力委員会は最高権威だからとおっしゃいますけれども原子力委員会原子力に関する限りにおいての責任を持ちたいと思いますけれども日本の国是と申しますか、日本国全体からの判断において、さて、原子力がいかにあるべきかということは、やはりこれは国としての最高機関において決定をせられるべきものの一つではないかと考えております。
  125. 近江巳記夫

    ○近江委員 今日、エネルギー問題というものは非常に大きな問題でありますから、国の最高方針として、そうした計画は決めるべきだ、井上さんのそうしたお説は理解できるわけです。しかし、いまのような、このような大きな安全性の問題初め種々の問題を抱えておるわけでありますし、このままの推移でいけば非常にむずかしいという見通しは先ほどおっしゃっておられたわけですが、原子力委員会としては、この数値六千万というものを、内閣から方針が出ない限りは変えないとおっしゃっておることは、あくまでもそれを目指したい、こういうお気持ちだと思うのですね。  そうしますと、それを推進していくという点におきまして、どういう点を改革しなければならないか。いまのままではとうていできないわけでしょう。それはどういうようにお考えなんですか。
  126. 井上五郎

    井上説明員 御指摘のとおり、現在のままの形でそのままほうっておけば、それまでに六千万キロは自然とできるであろうといったような楽観を私どもはいたしておりません。非常に困難であるということは、先ほどから再々御指摘がありまする原子力の国としての行政体制、国としての責任の持ち方等について改革をする必要がある。それからまた電力会社の資金問題が相当困難であります。ほうっておいて、いまのままで、日本の一般電力会社だけでそれだけのものができるかどうかは疑問がございます。  したがいまして、日本の電力業界に資金的に何らかの援助をする。たとえば日本の電気事業法を改正して、社債枠を現行の資本金の倍という制約をはずすとか、いろいろな方策を講じなければならぬと思います。またサイトがむずかしい。これは最もむずかしい問題の一つと私は思いますが、しかし、これにつきましては、先般の国会におきまして電源三法が通りました。これは一つの前進ではありまするけれども、これだけで解決するとは思っておりません。したがいまして、サイトの問題につきましては、先刻来ここでもしばしば御指摘がありましたように、もっと地元の方との了解、したがって話し合いと申しますか、そうした方策を講じてサイトの問題を解決していく。そうして根本的には、一番冒頭に申しましたように、やはり原子力が必要であり、またその必要に対して国民が信頼感をもって協力をしていただくという体制をつくるということによって、初めてこれができる。  こうしたことのどれもができないで、現体制のままで、自然的にこうしたことができるというふうに申し上げたのではございません。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 この長期計画の六千万キロワットですが、この同じ問題で中島先生はどのようにお考えになっておりますか。
  128. 中島篤之助

    中島参考人 この六千万キロワットの計画が出されたのは、さっき申しましたように一九七二年の六月一日でありまして、その直後に、私ども学術会議のメンバーと原子力委員会とお目にかかったことがございます。そのときに、実は六千万キロというのは無理ではないかということを申し上げましたわけです。それからもう一つは、この六千万キロワットがどういう根拠で算定されたかということをお伺いしたわけでありますが、たしかそのときのお答えは、井上さんはいらっしゃらなかったかと思いますが、要するにこれは政府の電源開発調整審議会の方が算定したものから来たのだ、だから原子力委員会として独自に策定したものではないという御返事でありました。  ですから、私どもの方としては、やはり何とか独立の部局をお持ちになって、原子力委員会としても独自にやはり日本のエネルギー問題を考え、その中で原子力発電の占める役割りをむしろ提言なさるべきではないかということが第一点。  それからもう一つは、仮に電力会社あるいはエネルギー関係の方から原子力に非常に期待することがあっても、この原子力委員会としては、同時に、現在の原子力の技術の開発状況を踏まえて、このぐらいしかできないということをむしろはっきり申し上げる立場にあるのではないかということを申し上げた記憶がございます。  私どもは、私どもの方の当時の委員長、現在でも学術会議原子力特別委員長であります三宅氏は、千八百万キロワットくらいができればいい方だろうというような、大変原子力委員会には失礼なことを申し上げたのですけれども、残念ながらどうもそれも危ないかもしれないというような状況がありますね。それはどうしてかというと、やはり私がいま申し上げた点、その技術開発現状について、きちっと独自に認識されるということがなくて、アメリカがあれだけつくっていくんだから、輸入してつくれば安易にできるというふうにお考えになったところに間違いのもとがあったと、私は言わざるを得ないと思います。  ですから、現在その規模を何ぼにするかという点、これは実は非常にむずかしい問題であります。これは森さんがおっしゃるように大変やはりむずかしい問題であります。と申しますのは、その規模に応じて原子力産業の規模が決まる。しかも大変遺憾なことに、原子力産業で使ういろいろな部品なり何なりは、他の産業とは必ずしも共用できないものもあるということがございまして、この規模が非常に小さければ、これは非常にその産業の維持自体が困難になるという問題があることは、私はよく承知しておりますけれども、だからといって、国民の安全を無視して原発がふえればいいということには決してならない。だから、私どもが口を酸っぱくして言っておりますのは、たとえば軽水炉であれば、私はこれを買うなと言っておるのではなくて、百万キロは一つもあればいいし、五十万キロの炉が五つか六つあれば、十分工業実験はできるということを踏んだ上で、どういうことが起こるかを十分見きわめるべきだというふうにむしろ考えているのでありまして、そうしませんと、たった三年たって、原子力委員会がせっかくおつくりになったナショナルプロジェクトであるのか、プランニングであるのか、プロスペクトであるのかわかりませんけれども、そういう計画をお出しになったら、国民不信感はふえるばかりだということを申し上げたいと思います。
  129. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど井上さんのお話にもありましたように、内閣で決めてくれればやるんだ、こうしたお話もあったわけですが、いわゆる内閣が決定するにしても、一切の根拠というものは、やはり原子力委員会でこれは積み上げていく必要があるわけですね。そうなった場合、いわゆる発電システム全体の、たとえば温排水の問題であるとか、廃棄物であるとか、あるいは原子力行政体制の問題であるとか、すべての計画というものもきちっと積み上げをし、こうこういう根拠に基づいてこうだという、そういう資料もお出しになって、それに基づいて内閣が決定する。内閣は何の積み上げもなしに五千万やれ、七千万やれ、こういうかっこうでは、私どもどうしようもないと思うのですね。それを私は申し上げたいわけです。この六千万だって、結局、そういうような積み上げもなくただ出てきておる。そこに私は大きな問題があると思うのです。その点は、ひとつ原子力委員会としてももっと努力していただいて、今日国民が要望しております数々のこうした問題点をきちっと内閣にも示し、また、そうした方式も計画も示し、やはりそういう煮詰めることが必要じゃないかと思うのです。この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  130. 井上五郎

    井上説明員 大変ごもっともな御指摘でございまして、ただいま参考人のお一人からお話がございましたように、私どもが六千万キロを決めました根拠は、通産省のエネ調で将来日本が必要とするであろうエネルギーが何がしであり、その中で原子力が受け持つべきものが六千万キロワットであるのが妥当である、こういう判断をしたわけでございます。  その当時は、石油危機がまだ起こっておらない時点でございまして、したがって、日本経済成長率は一〇数%。当時、私の記憶では、石油の年間輸入量が二億六千万キロリットルぐらいであったかと思いますし、それが二億九千万キロリットルぐらいまで伸びまして、昨年これが減ったことは御承知でございますが、その前のそうした状態が起こらない前には、日本の石油輸入量は四億キロリットルには少なくとも近いうちになる、やがてはそれは六億キロリットルになるであろうという想定が立てられておった。私どもは、そういうことは非常な危険である。現に石油の輸入量が二億六千万キロリットルぐらいに現在減っておると思うのでありますが、三カ月の間に石油輸送船が十二回も海を汚しておるというのが事実でございます。  さような意味から言えば、原子力に絶対に一つ事故がないとは申しませんけれども、結局、人間の必要があって、あるエネルギーを必要とする場合どちらかを選ぶかということは、日本人が選ぶべき問題なんでありまするが、その選択を内閣において決定せられる。われわれもかつて、六千万キロはかような形においてできるであろうという、一つ原子力開発長期計画というものを発表したわけでございます。  ある程度の具体性は持った調査をしております。  ただ、その中で不備な点は、ある程度のものは政府がやる、しかし、第二プランと申しますか、プロジェクトは、民間に期待するといったような点が若干残っております。これらは、いま御指摘のとおり、もっと詰めをしなければならぬと思っております。  さような意味で、昨年、森山さんが大臣のとまに一つの私案をつくりましたけれども、その程度のものではまだ不十分でございます。したがいまして、これは私ども今後勉強いたしまして、少なくとも実現可能である、こうしなければならないという点は、先ほど申しましたような、ひとり原子力発電電力会社がつくるだけではない、それのウラン資源の獲得から廃棄物の再処理を込めたるシステム的な開発ということについての、より具体的な検討を加えるということは私ども責任である、かように考えております。
  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 稲垣さんは、原発の共同開発ということはいままでにも発言されてきておるわけですが、森さんは、この共同開発という点についてはどのようにお考えですか。
  132. 森一久

    ○森参考人 これは実際に、先ほどの企業の体制の問題にも関係がございますけれども、当初の計画は、電力会社が比較的ばらばらに取り組んだために、いろいろな問題が処理しにくくなっていることは事実だと思います。  そういう意味で当然、原子力発電所の共同開発という方法は、従来よりベターという意味でも、大いに検討されるべき問題だろうと思いますし、いわんや、廃棄物の処理とか再処理、そういった問題になりますと、これはもう電力会社全体が一緒になって取り組むことで、やれるかどうかは別といたしましても、まずそれがもう大前提になるのではないか、かように考えております。
  133. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど、中島さんの方から「むつ」の問題につきまして、この遮蔽について明らかに設計ミスである、こうしたお話があったわけですが、設計ミスということは、結局、審査体制に大きな欠陥があるということでないかと私は思うのですが、そういう体制の改まらない中で、伊方の二号炉あるいは柏崎等どんどん審査もやっていく、これは他の委員も指摘した点であります。この審査態度ですね、基本的な姿勢につきまして、井上さんからひとつお伺いしたいと思うのです。
  134. 井上五郎

    井上説明員 先ほどから何度か御発言があるのでありまするが、「むつ」というのは舶用炉であり、したがって、容積的な非常な制約を受けておる。遮蔽効果に対しまして、当時原子力研究所にJRR4という一つの水炉をつくりまして、遮蔽の研究はいたしております。その資料は、先ほど御要求もございましたし、非常に厚い調書がございますが、これはごらん願いたいと存じます。実は大山委員会の指摘にもございますように、当時の技術でそれが十分解明できなかったということは、ミスでございます。ミスでないと決して強弁いたしませんけれども、若干当時としてやむを得なかった。しかも、先ほど申しましたように、アメリカにこれの審査を頼んだけれども、軍機に関するということで十分なる回答を得られなかった。  そういったような問題と、実用炉であるか実用炉でないかといったようなことにつきまして、先ほどからもうさんざん議論がございましたけれども、名前は別といたしまして、これだけのものが現実にもう世界では動いておるというものの、審査をより十分しろという御指摘について何らの異論はございません。しかし、「むつ」と同じように危ないではないかというふうには、私は考えておりません。
  135. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、井上さんの発言の中で、現在の安全審査体制が非常に弱体じゃないかというような意味の発言がありました。あるいは井上さんじゃなかったかもしれませんが、三十名ですか、審査する委員が無給であるというような話もありましたね。こうした現況というものにつきまして、どのように思っておられますか。
  136. 井上五郎

    井上説明員 私は、現在の原子力委員会がそれぞれの機関、すなわち科学技術庁の現在の案、原子力局というものを、もしできれば原子力局と安全局に分けていただきたいと思いますが、そうした機関、あるいは通産省のエネルギー庁における審査というものに対しまして、原子力委員会が、より高いという言葉は妥当かどうか知りませんが、少し別の立場からこれを十分審査するとするならば、現在の非常勤三十名以内という限定されたる形においてこれを審査することは、まだ必ずしも十分ではない。やはり原子力委員会には委員会専属の事務局と、また審査体制に十分なスタッフがつけられるべきである。  ただし、これは先ほど森参考人から指摘があったのであって、私も大体同様に考えるのでありまするが、日本行政体制と申しますか、はっきり言って官僚組織と申したらいいのかしれませんけれども一つの仕事に十年、二十年というふうに定着をして、仕事に専属するということは実際にはなかなかできにくいのであります。アメリカ原子力委員会、先般変わりましたけれども、私が第一回目にアメリカ原子力委員会を訪ねましたのは少なくとも十五年くらい前ですが、そのときに規制を担当しておった男がこの間来まして久しぶりに会いましたけれども、同じ職分をやっておるのであります。そういう体制がもし日本行政体制上とられ得るならば、それも結構でありますが、もしとられないとするならば、先刻森参考人が言われましたような一つのロイド機関的、信用ある財団法人的な機関にするか、それは実際問題として検討をする必要があると思います。思いますけれども、いまの非常勤委員だけでもって審査をするという体制は強化する必要がある、こういうふうな意見を先般私は、有沢委員会と申しますか、今度内閣でつくられました委員会で申し述べたわけであります。
  137. 近江巳記夫

    ○近江委員 この原発に伴いまして、さまざまな問題が今日提起されているわけですね。たとえば温排水の問題一つをとりましてもそうですか、小野先生が前に言っておられたことだと思うのですが、この温排水の問題は安全審査事項に入ってない、いわゆる電気事業法に基づいて規制されておるのが現行法のたてまえである、そういうことでこの原子炉の現在の安全審査、これは不備であるということ、非常に弱体であるということは、先ほど井上さんからもお話があったわけです。また、審査していくべきその中身におきましても、こうした問題もたしか指摘されておるように私は思ったのです。  この温排水という問題につきまして、小野先生からひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  138. 小野周

    小野参考人 私がこの前申しましたのは、現在の安全専門審査会審査の中では温排水の問題は行われていないので、別途、現在資源エネルギー庁で環境調査一つとして温排水の問題がやられていると思います。これは私、ちょっときょうは資料を持ってきませんでしたけれども、イギリスの「エコロジスト」という雑誌で「ブルー・プリント・フォー・サーバイバル」という本を出しておりますが、この中でも、これは日本だけではなくて、発電所等の温排水というものが、自然環境に影響を与えるという目安がどこでできるかといいますと、自然のいろいろな水量、たとえば一年間の降水量が日本では約六千億トンと言われておるわけでございますけれども、それに比べて、その半分であるとか三分の二とかいうふうな量になると、これは当然日本周辺のいろいろな環境に影響を及ぼすし、そういうものは一朝一夕にはわからないし、それから、そういうものに対する基礎的な研究ということは現在私は行われていないと思います。これはイギリスの「エコロジスト」が指摘している点も同じなんであります。  ですから、やはり非常に大規模になってきて環境の破壊が行われ出しますと、私は環境学者じゃございませんけれども、こういう生態系をやっておられる方の御意見を伺いますと、一たん壊れ出すとなかなかもとへ戻らない、これはいろいろな場合に出てきておるわけです。ですから、いろいろ現在研究がされているようでありますけれども、基礎的な研究がなされていない。  しかも、その温排水につきまして、先ほどむつの話が出ましたけれども、たとえば二千万キロワットなどとなりますと、むつだけで一年間に数百億トンの温排水が出るということになるので、そういうものが自然環境に非常に多大な影響を及ぼすということは、これはかなり多くの生物学者及び生態学者が考えていることなんですが、それに対することを全然考えないで、現在そういう大規模開発が行われたり、日本では火力も含めまして非常に多量の発電が考えられているということで、このままいきますと、結局取り返しのつかないことになってきて、気がついたときにはどうにもならなくなるのではないかということを、私は非常におそれているわけであります。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんからあと一問だけ聞きますが、いま内閣の方に安全局設置の法案が出ておるわけですが、この安全局設置につきまして、どういうように評価されるか、中島さんから最後にお伺いして私の質問は終わります。
  140. 中島篤之助

    中島参考人 安全局をおつくりになること自体は確かに前進であり、評価すべきことであると思いますけれども、それは実態がなければ何もならない。それで、その困難な点はいま井上さんが申されたり、森さんが申されたりしたのですけれども、安全局だけで、現在の日本の官庁組織の中で、仮に初年度で何十人かの専門スタッフが認められたとしても、毎年毎年そのスタッフがふえていったとして、何年たったら千人になるのかというようなことを考えますと、これは事実上意味がない。ですから、それではだめで、恐らくその下に安全の研究所といいますか、具体的な仕事をするところをどうしてもつくる必要があるだろう。  私が冒頭で申したのは実はそういうことでありまして、一番大事なことは、そういう実態を持った研究所といいますか、研究スタッフを持って、それと、原子力委員会といいますか、規制委員会といいますか、安全委員会といいますか、とにかくそういうものとの一元的なつながりをきちっとすることが、一番大事だというふうに申し上げたわけでございまして、安全局ができたという、それだけでは、別の言い方をしますと意味がない、その内容が問題だろうというふうに私は考えております。
  141. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  142. 八木昇

    八木委員長 次に、内海清君。
  143. 内海清

    ○内海(清)委員 かなり時間がたって、参考人の皆さんはお疲れだと思いますが、もうしばらくごしんぼういただきたいと思います。  実は、いままで原子力開発について提言がございました。これは原子力産業会議、それから社会経済国民会議、それからいわゆる井上私案と言われたものが発表されました。それと電労連の第五次提言、この四つがいままで発表されたわけでございます。みなそれぞれ原子力開発についての非常な熱意を持って御意見を述べておられるのでありまして、これをひとつ十分お聞きしよう、十分理解しようということできょうの参考人においで願うということでございました。なおそのほかに、本日は小野参考人中島参考人においで願ったわけでございます。  私は、この四つの提言について実はいろいろ分類してみました。大きく分けると、原子力行政原子力規制の問題に分けられます。ところが、この四つの提言の中にはかなり共通した面もございますし、提言の異なった面もございますが、時間がたっておりますから、私はこれをよく理解する意味で簡単に御質問申し上げ、お教え願いたい、かように思います。なお、小野中島参考人につきましてはきょうお話をお聞きいたしましたので、それについての私の感じと申しますか、そういうものについてお尋ねいたしたい。ついては、大体きょう意見をお述べいただきました順序に従って質問申し上げたいと思います。  稲垣参考人にお尋ねいたしたいのでありますが、電労連提言につきましては、私どもは常に電労連といろいろな関係で連絡をとらしていただいております。したがって、この提言の内容は、私なりにある程度理解しておると思うのでありますが、それの中につきまして、この際二点ばかりお尋ねしておいたらと思うのであります。  その第一は、あの提言を見ますと、「今後の開発については、現在より更にリスクが多いという視点から、各社」つまり電力会社が、「バラバラでなく、全体として開発体制の抜本的再検討を行なうべきである」。こういう一つ提言がございます。そこで、これは具体的にどういうふうなものをお考えになっておるのか、どうしたらよいのか、こういうことをまず一つお尋ねいたしたいと思います。
  144. 稲垣武臣

    稲垣参考人 諸先生方も十分御存じかと思いますけれども、電力というのは競争と協調というものが非常に大切であります。それで、従来まではそれぞれ九電力会社が、サービス、開発、技術導入ということに対してお互いに競争しながら、電気料金というものもある程度安定してきた。  ところが今日、一つは電源開発の立地点というものが、それぞれの電力会社の供給区域内では非常にむずかしいところと、供給区域外に出なければならぬところがたくさん出てまいりました。そうなりますと、国民の皆さんにエネルギー問題で節約をしてくださいと言うのと同時に、電力事業自体がやはり最も効率的な電力を興す、また効率的に運搬するということは、日本のエネルギー状態から見て至上の命題だと私は思います。  そういう命題を踏まえますと、従来行われておりました競争部分を、電源側についてはなるべく協調して設備投資の効率化、それから電源開発のいわゆる環境の問題、そういうものを考えますと、私どもは、非常に抽象的でありますけれども、できれば電力会社の枠を乗り越えて、原子力に限っても共同開発というふうな方へ踏み切るべきだろう。また、原子力発電所自身がいまいろいろ指摘されておりますように、故障あるいはトラブルというものを、お互いの電力会社間でフィードバックさせ合って、そしてPについてはどういうところに問題があった、あるいはBについてはどういうところに問題があったというような技術交流、その技術交流がメーカーの方へフィードバックして、次の炉に対して大きく参考になってくるというようなことも、当然やられるべき問題ではないかと思うのです。  そういう意味合いで、共同開発と、それから電源が遠隔地へ出ますと、消費地に対してはどうしてもロスの多い送電線を長距離にわたって建設しなければなりませんから、やはりなるべくロスを少なくするために、あるいは五十万高圧に上げて、それも各電力会社それぞれが送電線を引っ張るというんじゃなくて、共同で送電線を建設していくというようなことによって、当面は、私どもは従来どおりの効率ある発電ができるのではないか。  ただ、再処理とか廃棄物の問題につきましては、当然、言われたように一電力会社の手に負えるものではございません。したがって九電力会社とそれから国とがお互いの責任を明確にしながら、この問題には取り組んでいくということが大切だろうと思います。
  145. 内海清

    ○内海(清)委員 従来の火力によるものどかあるいは水力によるものとかというふうなものにつきましては、いまお話しのような競争という面を強調して、それが大きな効果を上げてきたと思うのであります。この原子力発電ということを考えますと、まさにいまお話しのような点がうかがえるわけであります。現在の原子力発電所状況を見ましても、やはりその効率が余りよくない問題もあります。今後これをいろいろ進めていく上につきましてはきわめて重要なことだと思うのであります。  ただ、原子力発電に限って見ましても、今後のものはこういう強調といいますか、こういう面でいけると思いますが、従来の各社でやっておったものに対してはどういうふうなお考えであるか。
  146. 稲垣武臣

    稲垣参考人 従来の原子力発電所というのは、すでに建設されております。しかも建設されて、それぞれの電力は変電所へすでに送り込んでいるわけですから、従来のものを共同でするとかいう必要性はもうないのではないか。ただ、従来のものに対していま一番大切なのは、その運転中におけるいろんな問題点についての共同研究ということは、非常に大切でないかと思います。そういう意味合いで、むしろ技術的な交流と協調というものを、従来の発電所でもっと真剣にやるべきだろうというふうに考えております。
  147. 内海清

    ○内海(清)委員 わかりました。  次は、これは提言をよく読めばわかることだと思いますけれども、被曝問題です。さっきもいろいろお話が出ました。こういうことについては、その提言されておる趣旨につきましていろいろな誤解が生まれてまいりましたり、解釈の違いが生まれてきたり、まあいままで私どもも、マスコミの人からそういうことについていろいろ聞かれた場合もあるわけで、そこで、これを一遍はっきりさしておいていただきたいということであります。  この被曝問題について述べておられますが、これは国民の遺伝線量の立場で問題にしておるのか、あるいはこのままでは作業の手がなくなって行き詰まりを来すじゃないか、そういうふうな考えで言っておるのか、あるいはまた個々人の安全上の問題だということでこれを提言しておられるのか、そのあたりの電労連の本当の意図というものを、この際ひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  148. 稲垣武臣

    稲垣参考人 私どもが申し上げている被曝というのは、従業員に対する被曝問題でありまして、しかもそれは、現在五レムというのが出ておりますけれども、それぞれ労使で大体三レムで被曝は協定いたしております。その範囲を超えさすということは、労働組合としては個人については絶対許しておりません。  そうなりますと、どうしても原子力発電所というものの定期検査、あるいはトラブルの修理ということになりますと多量の人間が必要になってまいります。しかも、その多量の人間というのは、きのうきょうどこからか来てそれに対して一応の手当てができるというものではなくて、原子力発電所運転をするのに大体一人前になるというのは、少なくとも火力発電所の経験を積んで十五年ないし二十年間、相当のベテランがやっているわけであります。そういう意味で人材が非常にたくさんかかるということは、かえって電力のコストを上げてしまうというようなことになりますから、私どもとしては、そういう被曝量の多い周辺のいわゆる器具の開発をすることによって、安定した運転ができるのではないかという考え方であります。
  149. 内海清

    ○内海(清)委員 いまので大体はっきりいたしましたので、電労連提言については大体この二つぐらいで、またわからぬところがございますればこれはいつでもお尋ねできますので、このくらいにさせていただきたい。  いまのに関連しまして、私、ちょっと原子力局長にこの際お尋ねをしたいと思うのです。  と申しますのは、これはかなり古い話で、二月二十日の予算委員会で、私どもの党の折小野委員が実はいまのに関連したことで質問をいたしております。それに対して答弁しておられる中で、定検のあり方等を含む被曝低減対策について、検討を今後重ねるという答弁をされておるのであります。これはどういうふうにフォローしておられますか。  それといま一つ、従業員の災害補償問題については、いまどのような検討状況にあるか。この二つを、この際関連してお尋ねしておきたいと思います。
  150. 生田豊朗

    ○生田政府委員 第一の点でございますけれども、定期検査のあり方について検討すべきだという問題点の指摘が電労連提言にもございます。私どもきわめて当然の御指摘だと思いますので、先生御承知のように定期検査は通産省がやっておりますので、通産省と協議中でございます。電労連の御趣旨に沿えるように定期検査をなるべくやり方を改善いたしまして、極力被曝量を少なくするようにいたしたいという方向でただいま協議中でございます。  第二点の従業員災害補償でございますが、これは大変おくれて申しわけない次第でございますが、専門部会の結論が近々出る予定になっております。その結論を待ちましてなるべく早く法制化いたしたい、かように考えております。
  151. 内海清

    ○内海(清)委員 この点はもうかなり日にちもたっておることでございますので、できるだけ早くひとつ結論を両方とも出していただきたい。この際要望しておきたいと思います。  次に、時間がありませんので、私、ごく簡単に御質問申し上げますので、また皆さんの方でも簡単にお答えいただきたいと思います。  小野参考人中島参考人にお尋ねするわけでありますが、小野参考人安全審査の仕方で、審査の内容、あるいはその姿勢の問題、これらについていろいろお話がございました。さらに仕方の前提として、資料公開というようなこともお話があったわけであります。また中島参考人も、科学者会議点検項目によって審査はすべきである、特に国民の健康と申しますか、安全、これが優先か、あるいは開発が優先か、まあ経済あるいは営利と言っていいかもしれませんが、こういう姿勢がいまなおある、原子力行政懇談会の結論が出る前に、いままでのやり方でもって建設が行われたり許認可が行われておるのじゃないかというふうな意味お話があったと思うのであります。  そこで私は、この際お二人に同じようなことをお尋ねいたしたいと思うのですが、御意見は十分理解いたしたわけであります。それで、御承知のとおりにいま石油ショック以来世界の趨勢としては、石油の代替エネルギー源として原子力開発推進していく、これが大体趨勢だと思うのであります。ところが、この原子力に対する技術というものは、これはまあ材料にも非常に大きな問題があるかもしれませんが、技術が十分に確立していないのだ、このことは私どもよく知っております。これは確かに電労連の四次の提言でございますか、これの中にもあったと思うのであります。  そこで、ひとつ端的にお伺いしたいと思いますのは、技術がまだ確立していないから、それが確立するまでは原子力開発をやめろという御趣旨か、あるいは技術の未熟は認めざるを得ないといたしましても、開発の仕方というものあるいは開発姿勢というもの、そういうふうなものがいままでは悪いので、それを直したらよいのじゃないかということか、その点の見解をひとつ小野参考人中島参考人にお伺いいたしたいと思います。
  152. 小野周

    小野参考人 私がちょっと申し上げたいと思いますことは、原子力の場合の技術の未熟ということにつきましては、原子炉の事故による災害というものの予測が現在できていない。これについていろいろな議論がある段階でありますから、そのことを考えますと、よほど慎重にとにかくやっていかなければならない。  ですから、私は現段階では、原子炉を全部とめろと言っているわけではございませんで、現在運転中のものについてはできるだけ試験的な形で運転をし、それによってむしろ技術を向上するということを考えて、現在の段階で非常にたくさんの大きな軽水炉を設置していくということは、現在ではまずしばらく待つべきではないかというふうに私は考えております。
  153. 中島篤之助

    中島参考人 原子力開発と申しますと、実は、アメリカから軽水炉を買ってきてつくると、それが原子力開発になるのだという考え方に根本的な誤りがあるのでございまして、私は、先ほどから申しておりますように、現在の原子力発電を全部とめろということを申しているのではなくて、少なくとも工業実験としてはっきり位置づけて、これはさっきも申しましたように、かなり大規模なものを経験しないとわからないという点が残念ながらございますので、そのために、もちろん安全を確保するような体制は十分とらなければいけませんが、そういう形で得られた経験を将来に向けて蓄積していくということをやるのが、いま一番大切だというふうに私は考えております。
  154. 内海清

    ○内海(清)委員 要するに開発の仕方の問題だ、かように理解してよろしゅうございましょうか。——それでは、そういうふうに理解させていただきたいと思います。  そこで、いま安全審査がいろいろ問題になっている。この安全審査は、規制法の二十四条によっていま行われておることは御承知のとおりでございます。ところが、たとえばSGの破損があっても、安全審査の二十四条によりますと、公衆の害全が守られているかどうかということ、これが審査の基本であると私は解釈いたしておるのであります。したがって、SGそのものに破損が生ずるかどうかということを審査するのではない、こういうふうに承知いたしておる。すなわち、公衆の安全が守られるか守られないか、この点がこの二十四条による審査中心である、基本であると私は考えておるのであります。  そういうことから考えますと、安全審査がいま非常にずさんと申しますか、そういうふうなことは言い得ないのじゃなかろうか。そこらが非常に微妙なところだと思いますが、この規制法の二十四条から考えてみますと、そういうふうに解釈すべきではないかというふうに私は承知しておるわけであります。それに対しまする小野先生中島先生の御意見がございましたらお伺いいたしたい。まず小野先生からお伺いします。
  155. 小野周

    小野参考人 SGの問題につきましては、現在それによって多量の放射性の物質が出たということはもちろんないわけでございますけれども、しかし、やはり安全審査の段階であのように非常に多数のSGの細管が腐食されるということは、恐らく考えられなかったということと、それからSGの細管の腐食が進みますと、他の原因、たとえば地震があるとかあるいはその他の原因でもって非常に破損が容易になる。そういう意味では危険の方に近づいているということですが、安全審査の段階で、SGに腐食があるということを考慮に入れて私は審査はされていないと思うのです。そういう意味で、SGの問題については、やはり原子炉の安全性というものについては、私は非常に大きな問題ではないかと思っております。
  156. 中島篤之助

    中島参考人 規制法で、おっしゃるような意味安全性をとらえるなら、おっしゃるとおりになるかもしれませんけれども、実は、いまの原子力開発がこれまでこじれてきた大きな原因というのは、安全性考え方、つまり政府あるいは原子力委員会でおやりになっている安全審査というのは、はっきり申しますと、ある原子力施設があって、それが環境に放射能を放出することがあるというわけですけれども、あった場合に、それが、法律で決められた値よりも下回っていればそれは安全である、こういう考え方ですね。しかし、これは住民なり公衆にとってみればそれでは絶対に安心できないという、非常に単純な事柄です。  たとえば、温排水の問題でありますとか、それからそのほかの社会的生活をしている人間がいろいろなインパクトを受ける、あるいはインフルエンスを受けるということについて不安を感ずる。この問題が十分解明されなかったことが、安全審査の不備な点であるとして、われわれがいままで指摘してきた点でありまして、最近それが少しずつ改善されて、環境審査をやらなければいけないとか、あるいは審査の工学的安全性の内容そのものについてももっと検討を加えなければいけないとかいうふうになってきていることは、確かに認めますけれども、だからいままでの審査がよかったとは、決して申し上げられないというふうに私は考えております。
  157. 内海清

    ○内海(清)委員 これはいまお話しのように、審査の二十四条から言えば、私はいま申し上げたような解釈と承知いたしておるのでありますが、もちろんこれをやる場合には、いまお話しのようなあらゆる面を勘案して審査をしなければならぬ。しかし、二十四条から言いますと、大体公衆の安全という、それに対してはいろいろな面が考慮されると思います。このSGの破損が出てきたから安全がずさんであるということは、私は直接的に言い得ないのではなかろうか、かように考えるのであります。いかがですか。
  158. 小野周

    小野参考人 私がいま申しましたことは、やはり安全審査に当たっては、いろいろわからない面もあるし、いろいろ問題になることがあるわけですけれども、それがやはり十分検討された上でされるべきであると思うのですが、SGの問題については、実はその点の検討は、少なくとも審査報告その他については見られませんので、やはりあらゆる問題が出てきて原子炉の運転に差し支える、まあ今度の場合は、幸いにして何も大事故にはつながっておりませんけれども、そういうものは、すべて何かのときには大事故につながるものでありますから、十分な検討がなされるべきであったのになされていない、そういう意味でずさんであったと私は申しておるわけです。
  159. 内海清

    ○内海(清)委員 これはいろいろ議論の分かれるところだと思いますが、いまの安全審査は、確かに規制法の二十四条に準拠してやられておると思います。この方法が悪ければ、やはり規制法を再検討する要が出てくるのではなかろうかと思いますが、現段階では、これがある以上これに準拠して大体行われておる、こういうふうに考えるのであります。御意見わかりました。  それでは次に、森参考人にお尋ねいたしたいと思いますが、安全規制について一元化せよ、こういうふうに言っておられる。現在、安全の問題は、もちろんまず原子力委員会でもって基本設計の段階の安全審査があるわけです。ところが、これが発電所の場合と、それから船の場合と、それから再処理工場の場合、これの安全審査は科学技術庁がやります原子炉等規制法によるものは皆同様であります。これによってやる。ところが、建設運転中の規制につきましては、これが一元化されてない。御承知のとおりで、発電所の場合は電気事業法、つまり通産省、それから船の場合は船舶安全法、これは運輸省、こうなっているわけです。再処理工場の場合はこれはございません。  そこで一元化せよと言っておられる意味安全審査の方は一致しております。全部科学技術庁ですね。ところが、建設運転中の規制については通産省と運輸省に分かれておる。縦のこれを一元化せよと言われるのか。横で見ますと、科学技術庁と通産省なり運輸省に分かれておる。この両方を一元化せよと言われるのか、その意味がちょっとわかりかねます。その点についてお尋ねいたしたい。
  160. 森一久

    ○森参考人 先ほど申し上げましたけれども、先生のおっしゃっている公衆の安全という点からの審査を一元化していだきたい、こういうことでございます。  具体的に申しますと、設置許可は科学技術庁あるいは原子力委員会でやっておる。それ以降については通産省、運輸省でやることになっておるといいますけれども、原子炉規制法には、これは科学技術庁も原子炉の使用前検査あるいは定期検査等も当然一緒にやっておるわけでございます。ただ、設計段階での審査と、それから後の工事段階以降のそういった審査とが、公衆の安全という観点からどの程度かかわりがあるかという点が、初期に考えていたことと少し違ってきているんではないかと思うのです。先生がおっしゃるように、現在のところ幸いにして公衆の安全にかかわるような事故は起きておりませんけれども、そういう可能性を心配するという点から言えば、工事認可以降についても、やはり要所要所については一元化されて、そういう目で見ておるというところがなければならない。  そういう意味で、それは国民の立場と申しますと原子力委員会であり、役所としては今度できる安全局が、公衆安全という観点から主として設置許可の段階ですけれども、その後以降の要所要所については、やはり十分の検査、査察をする、こういうことであるべきだ、こういう意味でございます。
  161. 内海清

    ○内海(清)委員 わかりました。  なるべく急ぎますが、次にやはり森さんですが、立地についてオープンの手順、安全資料公開、この安全資料公開というのは、商業機密の関係がどうなっておるのかちょっとわかりませんけれども、そういうことを提言しておられるのですね。いま産業界から見て、どこが悪くてどんなふうにすればよいというお考えか、それをひとつお話しいただきたい。
  162. 森一久

    ○森参考人 先ほども申し上げましたとおり、立地の問題については、従来の産業の取り組み方にも問題があったことは事実でございますけれども、きょうの主題でございます体制の問題といたしましては、そこに書いてございますように、進め方自身が非常に密室で行われているような印象を与えている点が問題があろうかと思います。  たとえば、安全審査の段階におきましても、私も細かく全部は知りませんけれども、決して電力会社安全審査を出したままが通っておるわけではございません。その中では非常に激しい議論がありまして、こういう設備を追加しろ、それは必要ないというような議論がいろいろあった末、結局安全審査会の意見電力会社が従ったという形になっているわけでございますけれども許可が出た形を見ますと電力会社申請どおりそのまま判こを押されたようなかっこうをとっておる。こういうことは行政一つの体質かもしれませんけれども、こういった面がオープンな場で行われるということが、やはり何よりも一番信頼性を増すことであり、結局立地問題を解決する上の一番の決め手になるのではないか、こう考えるわけでございます。
  163. 内海清

    ○内海(清)委員 委員長にちょっとお願いしますが、時間が大体もう来たようですけれども、せっかくのあれで、またできませんので、少し時間をちょうだいしたいと思います。  それで、この安全資料公開というのは産業機密についてはどういうふうにお考えですか。
  164. 森一久

    ○森参考人 どうも同じことばかりで申しわけないのですけれども、安全資料の信頼を得るための公開ということと、それから産業機密の保護ということは両立し得る体系を考えることができると思うのでございます。いま出ておる安全審査、これだけの厚さがあるから全部出せということでいいかどうか、それはちょっとわかりませんけれども安全審査というか、安全を考える上での必要な資料という点でコマーシャルシークレットに本当にかかわる分があるかどうか、そこまで詰めてやはり議論をいたさなければならないと思いますし、そういった点のシステムをきちんと決めれば、一方的な議論といいますか、出す出さないの議論には決してならない、かように考えるわけでございます。
  165. 内海清

    ○内海(清)委員 安全資料公開というのは、小野先生お話しになりましたし、これは非常に重要な問題だと思うのです。結局、いままでは商業機密の関係がいつもひっかかっていたわけです。だから、これは今後十分解明すべき問題じゃないかというふうに考えておるわけであります。  それから、次は安全の確証研究、これに関しては国の研究機関をつくれ、こういうことになっておるようであります。現在はこれは大体原研でやっておると思うのでありますが、現在の原研でやっておるのではどこが不備か、あるいはまたそれならどんなものを考えておられるのか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  166. 森一久

    ○森参考人 そこに申し上げております安全の確証研究というのは、非常にルーチンな、たとえば耐震台をつくって何度も揺すってみるとか、必ずしも科学的に研究論文が出るようなものではないわけでございますね。ですから、原子力研究所のような、中にはそういうところでやるいろいろな仕事もございますけれども、新しい現象を解明したり新しい開発を行うということと体質的にそぐわない面があるのではないかと考えまして、できればそういうルーチンな試験研究を行う組織をつくるべきではないかという提言をしたわけでございます。  しかし、その後原子力研究所も、もう少しその考え方を広げられまして、その中に原子力の安全研究をセンターのような形で独立をさせて、そのようなルーチンな安全研究にも取り組もうという姿勢でことしから始めておられますので、われわれの言っております目的は、それでかなり達成されるのではないかと思うのでございますが、ただ、その中に入らないもう少しルーチンな仕事につきましては、委託費で行うなりあるいは別な民間組織を活用するなりという方法を考えなければいけないのではないか。研究として見ると非常に退屈と申しますか、いわゆる研究室の研究ではございませんので、非常に恒常的な研究が多いわけでございますね。そういう意味で、原研の中で行うにしても、ある程度独立した組織をつくる必要があるだろうと思いますが、その方向に進んでおると思います。
  167. 内海清

    ○内海(清)委員 まあいろいろ議論を闘わすと時間がありませんので、お考えをひとつお聞きしてまいりたいと思います。  それから次は、あの提言の中にも、法的にオーソライズされた審査、検査の機関をつくれ、こういうことがございますね。これはきょうもお話がございましたが、例のイギリスのロイド協会的なものを指しておられると思いますが、考えられておる内容というのは全くあれと同様な考えか、その点をちょっとお伺いいたしたいと思います。
  168. 森一久

    ○森参考人 非常に似通っておると思いますけれども、先ほども井上先生から、非常にあの考えについて賛成だということをおっしゃっていただきましたけれども、この問題は確かに役所の体質にそぐいにくいということもありますけれども、同時に、やはり研究部門との交流が自由に行われることが必要です。たとえば、大学の先生がそちらへ行って審査をした上に、また研究部門へ戻って体験を積んでいく、そういう自由な交流が必要だ、こういうことから、日本の場合はそういう民間組織を育てるということが必要ではないか。ドイツは現にやっております。先ほど申し上げましたように、百人ほどの専門家を擁して年間四、五億のお金を使って、非常に信頼される組織がございますので、そういったことも一つの参考になろうかと考えておるわけでございます。
  169. 内海清

    ○内海(清)委員 わかりました。  大体以上ですが、ちょうどいま時期的にいいと思いますので、一遍原産の御意見をお聞きしておきたいと思いますが、と申しますのは、例の核防条約、これが外務委員会にかかっているわけです。この委員会と連合審査があるだろうと思いますので、これについての産業界の御意見を一遍伺っておきたいと思います。  もともと産業界は、商業機密の関係あるいは査察が非常にやっかいだというふうなことで反対しておられたと思うのです。ところが、約三年くらい前から、国際協力の関係、つまり資源とか技術等の問題もあるでしょうが、そういうことから、大体賛成というふうに回られた。ことに、ユーラトム並みの自由査察が認められたというようなことで、一層こういうことに相なっておるのだと思うのです。そういうことから最近は特に批准を早めるというふうな御意見もあるように思うのであります。そこらについての御意見を、この際ひとつお聞かせ願っておきたいと思います。
  170. 森一久

    ○森参考人 いまおっしゃったとおりでございまして、核防条約については、数年前、査察その他の問題から、非常に不当であるということで、むしろ産業界は反対だったのでございますけれども日本政府を初めとする皆さんの非常な御努力によりまして、やっと完全と言っていいくらいにユーラトムを初めとする諸国との平等性も確保されたと考えるわけでございます。しかも、この核防条約につきましては、その内容あるいは五年ごとの再検討とか、いろいろなことにつきまして、日本は非常に多くの主張をしましたし、これが全部受け入れられたわけでございます。これ以上批准を延ばしておくことは、一体日本がいままでいろいろなことを注文をつけてきたことが、果たして本当に批准をするつもりで注文をつけておったのか、あるいは全く別な意図があって批准をおくらすために文句を言っておったのかというような声さえ聞かれる状況になってきております。  ですから、これは決して核燃料の入手が容易になるとかいうような問題ではございませんで、核燃料の入手が容易になるのではなくて、核燃料その他の入手の問題がほかの国と平等になるというだけのことでございまして、もしこの問題の批准がおくれるようでございますと、やはり日本自身の孤立政策、日本はそういった意味での孤立政策をとっていくのかというふうに諸外国から見られて、原子力のみならずエネルギー政策全体に大きなマイナスになる。そういった点で非常に憂慮いたしまして、なるべく早期の批准をお願いしておるわけでございます。ひとつよろしくお願いいたします。
  171. 内海清

    ○内海(清)委員 お考えはわかりましたので、一応お伺いしておきます。  次は、井上委員にお尋ねしたいと思います。提言の中で、原子力委員会、これは国民の信頼を得るような体制をつくれ、こういうことの問題、将来的には推進規制を分ける、こういうふうに言っておられるように思うのですが、この原子力委員会あり方を含めましてどういう形のものを考えておられるのか、その点をまずお伺いいたします。
  172. 井上五郎

    井上説明員 冒頭に述べましたように、私は本日原子力委員会の最大公約数的意見をここで申し上げたわけでございます。しかし、私が私見として申し上げましたことは、実は昨年の「むつ」以来、すでに昨年のうちに執筆をいたしたものでございまして、本年の一月、それをきわめて限られた方に御配付したにすぎないのでございます。  その考え方は、一つの基本的構想と申しますか、あるいは抜本的改革案、しかしその抜本的改革案をするには非常に大きな行政改革をしなければならないし、これは現実の問題としては若干時間をかけざるを得ない。とするならば、暫定でも一歩前進しなければならない、こういう意味でやや二段的な意見を述べておるわけでございます。  その抜本的改革案というのは、先ほど申しましたように、日本においてぜひ皆様方に政治的に大きく取り上げていただきたい問題は、食糧政策とエネルギー政策であるし、そういう観点からいって、資源エネルギー省というものを独立するぐらい今日は重要である。しかし、もしもエネルギー政策というものが一つの省庁の専管になるとするならば、国民的信頼を得るためには一つのチェック機関が要る。そういうときには原子力委員会というものが規制委員会になって、原子力の安全というものだけを専管するというものになれば、それで原子力政策全体はもう一つの省としてまとまってやればよろしい、こういう考えを持っているわけであります。  しかしながら、エネルギー省をつくるとか資源エネルギー省をつくるということは、現実の問題として、私はきわめて短期間にできるかどうかには若干疑問を持っております。といたしますならば、今日の状態だけではいけない。どうしても前進しなければいけない。先ほど御議論がございましたが、百点でないから零点であるとは思いませんが、しかし、少なくとも現在の審査体制について国民の信頼を得るという上においては、安全に対する体制に批判がある。その批判は、一つ推進と安全規制一つ委員会でつかさどられておる、いま一つ一貫性がない、いま一つ政府との中立性が足りないと申しますか、現職の科学技術大臣が委員長をしておるではないか、こういったような批判がある。しかし、これについては、単に分離をすればそれだけで国民の安全がかち得られる、言いかえれば行政いじりをするだけで国民が信頼をするというふうに安易には私には考えられない。たとえば安全委員会というものを別につくってみても、現在せいぜい数十人、どんなに集めても百人にはならないのでありますが、アメリカの今度できましたNRCという機関は、現在大体千五百人ぐらいの専門家を擁しておる。そういったようなものを一足飛びにつくるということはできないのでありまして、やはり審査体制あり方行政的の運用というものを十分国民が信頼をするという運用にすることの方が、現実には国民の信頼を得られる方法である、こういう意味で二段的な提案をしておるわけであります。
  173. 内海清

    ○内海(清)委員 きょうは原子力委員会の最大公約数でおいでになったということですが、原子力委員会のあれはいつでもお聞きできるので、むしろ井上私案というものについてお聞きした方がいいと私は考えるのであります。  それで、当面の問題として、原子力委員会は自主性、中立性に留意して、安全規制に重点を置いて進める、こういうふうなことでありますが、そうすると重要なことは、各省庁の連絡調整を十分にやるということ、それから安全審査会の審査を十分活用する、こういうことだと思うのですが、ここで特にこの際御意見を聞きたいと思うのは、今度できます安全局の充実ですね。安全局の充実ということが、原子力発電などの安全規制にどういうふうに結びつくのだろうかという、私は一つの疑問を持っておるわけです。環境放射能などのチェックの業務があることは私も承知いたしておる。しかし、安全規制という面で最も基本となる安全審査については安全審査会、これは外部の学者の皆さんが実質的にやっておるわけです。したがって、科技庁のお役人は直接には審査業務をしていないのです。また、建設運転段階の重要な安全規制ということになれば、電力でいえば、実質的に通産省がやっている、こういう状態なんですね。だから、ここで安全局の充実というけれども、それが果たしていま申しましたような安全規制にどう結びつくか、こういうことが私、ちょっとよくわかりませんので、その点の御意見を一遍お伺いいたしたいと思います。
  174. 井上五郎

    井上説明員 ただいまのお言葉でございますが、原子力局は安全について審査しておられない、原子力委員会に付属する原子炉安全専門審査会審査するというのは、実態はそうではなくて、やはり法の精神から申しまして、原子力局というものが内閣から回ってまいりました電気事業者の申請書を審査をいたしまして、それを原子炉安全専門審査会にかけまして、審査会が承認をされたものを原子力委員会に答申を受けまして、委員会がさらにその内容を聞きまして、それを内閣に答申をする。したがいまして、やはり非常勤の三十名だけの原子炉安全専門審査会だけで安全を審査するというのでは不十分であります。  私は、やはり安全というものは行政庁の責任においてまず審査をする、しかしそれだけでは不十分であるから、原子力委員会に付属をする安全審査会が審議をいたしまして、それを受けまして私どもが最終決定をして内閣に答申する、こういう段取りをとっておるわけでございます。ただいま御指摘のように、何となく原子力委員会が安全を審査し、原子力委員会は事、原子力に関する限りはすべての責任を持っておるかのごとき印象があるいはあるかと思うのでありますし、また、私どもは何もそれを逃れるとか、責任回避するとかいう意味ではございません。ございませんけれども、やはりすべての官庁、先ほど申しましたように十二の省庁にも関係するようなことを全部ひとりでやるということは、現実には不可能でございます。  たとえば、温排水の問題が先ほどからいろいろ出ておりますが、温排水につきましての専門家が原子力委員になっておるわけではございません。したがいまして、私は、行政的には原子力局と原子力安全局というものを分離した方が、一般の信頼をかち得る上においても数等まさっておりますと同時に、実際の行政事務を混同しないためにもそれが必要である。しかしながら、それを最終的に判断をするものは、原子力委員会設置法にありますように、原子力の計画的推進について内閣総理大臣に答申をするという一つの職責を持っておる委員会が、ただ二つに分かれればそれで国民の信頼を得る、あるいは日本が必要とするような原子力推進政策の全きを得るかどうかということについては疑問がある、そういうふうに私は申し上げたつもりでございいます。
  175. 八木昇

    八木委員長 内海さん、ずいぶん時間がたっておりますから……。
  176. 内海清

    ○内海(清)委員 時間がたったということで委員長から催促がありましたから、余り議論をしませんが、私はいまの井上さんの御説明についてはなお氷解いたしません。いずれまた、これは時を変えて議論したいと思います。やはりこの安全局の充実ということが原子力発電などの安全規制に直接結びつくかどうかということは、私は疑問に思っています。ですから、これはまたのことにいたしたいと思います。  次に、公開の原則と私権との関係をどう考えておられるか、また現在の公聴会、福島の公聴会では井上さんも非常に御苦労になったわけでございますが、公聴会制度についてはどう考えておられるか、それを簡単にひとつ伺いたいと思います。
  177. 井上五郎

    井上説明員 公開の原則は、原子力法第二条にうたってある非常に重要な問題でありまして、私はできるだけ公開すべきである。しかしながら、それと私権と申しますか、ことに商業機密との問題をどこで分けるかということは、これは抽象的に言葉で表現しても、一方においてなかなか御満足がいかないし、一方においてはそれすら困るという御議論も実業界方面からは出るわけでございます。しかしながら、事、人命の安全と申しますか、そういうことに関する限りは、これは商業機密に優先してでも公開してもらう、少なくとも審査には提出してもらわなければならないと考えております。  それから、公聴会の持ち方につきましては、先般の福島でやりました公聴会が、必ずしも私どもが予期をした結果を得られたとは申しません。しかしながら、私どもはあれは決して聞きっ放しのものではない。私どもは、公聴会結果報告書という相当分厚なものを提出しておりますし、これを提出いたしますにつきましては、関係省庁、各方面の意見を徴しました結果でございます。なお、これはその当時から申しましたように、あの公聴会の目的は地元の意見を聞くということに主眼を置いたのでございますが、先刻来公聴会あり方二つに分けろとかいろいろ御議論もございます。今後の問題につきましては、もう少し私どもも検討いたしたいと考えております。
  178. 内海清

    ○内海(清)委員 商業機密、私権の問題につきましては、先ほど森さんからもお話がございました。森さんの方では、やり方によっては両立できるだろうというお話もございましたが、これは今後の原子力行政を進める上において、私としては非常に重要なポイントになると思いますから、ひとつ御研究を願いたい。  公聴会につきましては、電労連からも提言がありますように、形式的なものであってはならぬ、本当にそれによって、地元を中心にすれば住民が納得できるものでなければいかぬというふうに考えます。これも今後の問題だと思います。  最後にお尋ねしておきたいと思いますことは、私案によりますと、住民パワーの問題、これとの関係で仲裁機関とかあるいは住民投票的なことについて検討したらどうかというふうなことがあったと思います。この点についての所見を一応お伺いして終わりにしたいと思いますが、これは柏崎地区であるとか赤住地区であるとか、いままでいろいろ問題があるところでございます。ひとつ御所見をお伺いして終わりにしたいと思います。
  179. 井上五郎

    井上説明員 私、行政上の問題全く素人でございますが、いまのような地方行政あり方でもって現実に国が必要な施策というものをやる場合に、どうやって民意を決定するか。公聴会をやりましても意見は必ずしも一致しないかもしれない。しかし、それを何らかの判断をするのはやはり民主的にされるべきである。その方法がどうであるかということは、私自身わからないのであります。わからないのでありますが、たとえばレフェレンダムという方法はアメリカでもとられておりますし、ドイツでもとられております。それはいけないのか、いいのかということは、私はわかりません。わかりませんけれども、何らかそうした方法で決定をすることが望ましいということを私は私見に述べておるわけでございます。
  180. 内海清

    ○内海(清)委員 以上で終わりますが、大変遅くまでありがとうございました。大変有益であった、勉強をさせていただきました。今後ともどうぞひとつ一層の御支援をお願い申し上げます。
  181. 八木昇

    八木委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のため大変参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。      ————◇—————
  182. 八木昇

    八木委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  原子力船むつ」の放射線漏れに関する問題調査のため、参考人の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 八木昇

    八木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、参考人の人選、出頭の日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 八木昇

    八木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、来る十八日水曜日午前十時理事会、十時十五分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十三分散会