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1974-05-21 第72回国会 参議院 農林水産委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十一日(火曜日)    午後一時十八分開会     —————————————    委員異動  五月二十日     辞任         補欠選任      足鹿  覺君     森 元治郎君      杉原 一雄君     辻  一彦君  五月二十一日     辞任         補欠選任      亀井 善彰君     柴立 芳文君      佐藤  隆君     大松 博文君      神沢  浄君     鈴木  強君      森 元治郎君     足鹿  覺君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         初村滝一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高橋雄之助君                 足鹿  覺君                 鶴園 哲夫君     委 員                 佐藤  隆君                 柴立 芳文君                 田口長治郎君                 棚辺 四郎君                 温水 三郎君                 平泉  渉君                 堀本 宜実君                 工藤 良平君                 辻  一彦君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        大蔵省主計局主        計官       梅澤 節男君        厚生省公衆衛生        局結核成人病課        長        島田  晋君        厚生省年金局企        画課長      持永 和見君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十日、足鹿覺君及び杉原一雄君が委員辞任され、その補欠として森元治郎君及び辻一彦君が選任されました。  また本日、神沢浄君及び森元治郎君が委員辞任され、その補欠として鈴木強君及び足鹿覺君が選任されました。     —————————————
  3. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動によりまして、理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは理事足鹿覺君を指名いたします。     —————————————
  5. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 農業者年金基金法の一部を改正する法律案農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案(閣法第七八号)、以上二法案を一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、主として農業者年金基金法について少しばかりお尋ねをいたします。  この法律、すなわち九十六条によりますと、主務大臣が定義されておりまして、この制度を実質的に監督するのは厚生農林大臣となっておるわけであります。この制度の持つ性格につきまして両大臣関係省に伺いたいのでありますが、他の同僚議員にも発言の機会をなるべく与えるために、私も、大部分関連、他の大臣関連することは全部とはいきませんが、大幅に削りたいと思います。  そこで、厚生省に伺いますが、国民年金は、昨年の改正で、給付面掛け金改正をしましたが、それらの点を具体的にちょっとお聞かせいただきたい。
  7. 持永和見

    説明員持永和見君) 昨年度行ないました国民年金改正でございますけれども、昨年度、厚生年金とあわせまして国民年金改正国会でお願いしたわけでございますが、その内容といたしましては、国民年金につきましては、——年金水準でございますが、従来被保険者期間一年につき三百二十円でございますが、それを八百円に引き上げたわけであります。それによりまして、二十五年加入の方で、付加年金を含めまして夫婦月額五万円の水準引き上げたわけでございます。これは、厚生年金のほうが、在職者の賃金の標準報酬であらわしておりますけれども、それの六割程度を確保する。こういうことを目標におきまして、厚生年金で新たに出てくる人たちの平均的な年金額、この平均的な年金額水準の大体五万円というふうに算定されておりますが、それをにらみまして、国民年金につきましても夫婦で合わせまして五万円の年金水準を確保することといたしたわけでございます。  それから第二の点につきましては、国民年金拠出制国民年金につきまして、厚生年金と並べまして物価スライド制を導入したということでございます。この点は、従来、国民年金、それから厚生年金についてもなかったわけでございますが、全国消費者物価指数年度平均をとりまして、それが五%以上変動いたしました場合には、その全国消費者物価指数を基礎にいたしまして、毎年度年金額を自動的に引き上げていく、というような自動物価スライド制を導入いたしたわけでございます。  次に、保険料関係でございますけれども保険料につきましては、昨年の改正前、五百五十円でございましたものを、本年の一月から九百円というふうに改正をいたしたわけでございます。拠出制国民年金に関します点につきましての大まかの点は以上のとおりでございます。
  8. 足鹿覺

    足鹿覺君 そこで農林省、いま厚生省の御説明はお聞きのとおりでありますが、このたびの農業者年金改正で、給付面掛け金面改定提案をしておられるわけです。給付面については、衆議院修正をされたわけでありますから、これはしばらくおくとしまして、掛け金面改定をどのようにお考えになっていまの提案となったわけでありますか。厚生省国民年金との関連年金である本年金は、著しく掛け金率が高過ぎるということは、ただいまの厚生省の御説明でおわかりだろうと思うのですが、いかがですか。
  9. 大山一生

    政府委員大山一生君) 国民年金の場合に、保険料が、給付面の非常に上がったということとの関連におきまして、保険料が五百五十円から九百円になりました。それで、今度また二百円上げるという線が、いま国会提出されているわけでございます。  そこで、農業者年金の場合でございますけれども給付水準を二・二倍に引き上げる、こういうことになってまいりますと、それとの関連保険料のほうは過去の積み不足ということも考慮いたしますと、二・七倍まで上げないと、需給が均衡しない、収支が均衡しない。こういうことで、本来ですと、二・七倍上げた二千三十円と、こういうふうなベースが出てくるわけでございます。しかしながら、そうはいいましても、一挙に二千三十円まで上げるということも、これは農家の負担能力等からみて非常に困難であるというようなことからいたしまして、当初一年目につきましては、現行の二・二倍の千六百五十円にとどめる、こういうような配慮をいたしたわけでございます。  そこで、保険料につきまして、国年が一・七倍程度アップ、それに対して私のほうが二・二倍以上、こういうふうなことになるわけでございますが、その点はどうだと、こういう御指摘でございます。確かに両年金を直に比較すると、私のほうのアップ率が高くなるわけでございますけれども農業者年金というものの構成というものが、非常に老齢者に満ちている、こういうふうなこともございます。そうして、将来の給付といいますか、将来のこの年金の姿というようなものを見てまいりますと、いわば受給権者に対します被保険者の比率というものが、国民年金等に比べて非常に高いといったような事情がこの農業者年金というものの特徴としてあるわけでございまして、そういう点からいえばやはり農業者年金については国年とは違った結果をとらざるを得なかった、こういうことでございます。両年金がそれぞれ構成が異なっているという意味からいたしまして、両年金アップ率を直に比較するわけにはまいらぬ、こういうふうな考え方で、現在とりあえず初年度は二・二倍の引き上げ、こういうことにいたしているわけでございます。
  10. 足鹿覺

    足鹿覺君 厚生省ですね、あなた方の所管で、参考のためいろいろと資料が多いと思いますので聞かせてもらいたいと思いますが、年金制度で、この制度が抜本的に改正されるようなときは、これは別でありますが、保険料なり掛け金を一度に二倍以上に引き上げた例があるでしょうか。私もあまり、忙しいし、十分勉強も足りませんが、あまり世界各国でも例のない、ことではなかろうかと思うのです。全く別の制度に切りかえた場合は、これはまあ、ないとはいえないと思います。たとえば、恩給共済に切りかえた場合というようなことは過去にあったと聞いております。少なくとも同じ制度で、国民年金の上乗せだという性格を持ち、一方には経営委譲促進をするという政策年金的な、政府みずからが、みずからの負担においてやらねばならないこと。あるいはある程度政府もこれに大幅の助成をして経営移譲規模拡大をはかることを、農民掛け金でまかなう年金でやる、などということ自体がおかしいというふうに私、この法案を審議した際に疑問を持っておって、いまだに解消しておりませんが、そういう性格があるにもかかわらず、幸いにして衆議院給付率は二倍になったと。わが参議院でもこれは二・二倍の部分を、世界に類例のないことは、のむわけにはまいらぬのじゃないか。衆議院が大体やってきてくれれば一番よかったと思うんですけれども、やりいいところだけとって、むずかしいところを残してしまった。これは、なかなか問題があって、そう簡単にはいかないと思うんですけれども、二・二倍は私はひど過ぎると思うのです。そういう例があればひとつお聞かせを願いたいし、御意見があれば……。国民年金というのは、厚生省所管ですからね、あまりそれと差があり過ぎるのも困るのですが。
  11. 持永和見

    説明員持永和見君) 先生お尋ね保険料引き上げの問題でございますけれども国民年金について見ますと、実は、四十二年の一月に保険料改定しておりますが、そのとき——従来は一つにつきまして、この段階では国民年金段階保険料をとっておりました。年齢によりまして二段階保険料でございまして、三十五歳未満は百円、三十五歳以上百五十円というような保険料でございました。これを四十二年の一月からそれぞれ三十五歳未満につきましては百円から二百円、それから三十五歳以上につきましては百五十円から二百五十円という改定をいたしました例はございます。  またもう一つ厚生年金について御参考までに申し上げますと、厚生年金は御承知のとおり、標準報酬月額保険料率を掛けて保険料をきめておりますけれども、昨年の改正におきましては、保険料率を千分の六十四から千分の七十六に引き上げておりますが、これとあわせまして標準報酬上限につきまして十三万四千円から二十万円に引き上げております。で、これによりまして、したがって、標準報酬上限の一番高くなった人について申し上げますと、標準報酬が昨年の改正で十三万四千円から二十万円というふうになった人につきましては、本人負担分保険料の額は改正前が四千二百八十八円でございましたが、これが改正後は七千六百円ということになりまして、この倍率は約一・八倍ぐらいになっております。また、昭和四十年に厚生年金改正がございましたが、このときは、男子の保険料率を千分の三十五から千分の五十五に引き上げております。で、この場合に、あわせまして標準報酬上限を三万六千円から六万円に引き上げております。したがいまして、標準報酬月額はそれによりまして六万円になりました。そういった人について見ますと、本人負担分保険料が六百三十円から千六百五十円というふうに二・六倍に上がった例はございます。
  12. 足鹿覺

    足鹿覺君 どうもありがとうございました。  いずれにしましても、これは最高の掛け金率引き上げですわね。先般も衆議院は、現在加入者の組織である全農協労連の副委員長意見を聞かれましたし、参考人意見を聞かれました。私どもは、現に年金給付を受けておる人の意見を聞いたわけであります。その場合にも、いろいろと意見があったわけでありますが、このような大幅な掛け金率引き上げということは、福祉優先だとか、あるいはこの制度ができたときには、佐藤内閣のときでありましたが、農民にも恩給を、というキャッチフレーズでおやりになったことであります。  私は、弱者救済が叫ばれて、このインフレの中で非常に苦しんでおる年金生活者や、あるいは中小零細企業者や、あるいは原始産業で苦しんでおる農林漁業人たちのことが心配されておるときでありますだけに、一種の私は、農業者からの収奪ではないかとすら思うわけであります。で、加入者意見をどのようにお聞きになって、こういうことになりましたか。聞けば、何か審議会だか、研究会だか、というものをおつくりになって、この今度の改正法案検討されたと聞いておりますが、その審議会か、研究会でこういう議論が出て、それに基づいたものでありますか。そのときの加入者代表はだれでありますか。その経緯を、その相談にあずかった会の構成答申、その他の経緯を明らかにしていただきたい。
  13. 大山一生

    政府委員大山一生君) この本制度改正をいたすに当たりまして、われわれのほうで、いろいろと研究会等で御意見を賜わったわけでございます。一つは、農業者年金制度研究会でございます。これは、農業団体代表を含みます学識経験者からなっておりまして、したがいまして、団体代表といたしましては、全国農業会議所あるいは農業者年金基金理事あるいは協同組合経営研究所あるいは全国農協中央会、こういう方々も入っていただきました農業者年金制度研究会において検討をいたしていただいたわけでございます。  それから、一方、国民年金審議会のほうにも農業者年金小委員会を設けていただきまして、そうしてこの検討をいたしていただいたわけでございますが、そちらのほうにおきましても、農協労働問題研究所といったようなところの方にも入っていただきまして、そうして検討していただいたわけでございます。  また、農業者年金基金評議員会、これは過半が農業者であるわけでございまして、会長は、国民年金審議会委員をしておられる平川守先生でございますが、そこにおきましても意見を賜わっている。こういうような経過を経まして、そして今度の制度改正に踏み切ったわけでございます。  二・二倍の引き上げという点につきましては、二・二倍引き上げた場合に、本人負担分だけで、いわば国民年金のほうと合わせてみた場合に、今度の国民年金定額分が二百円、今度国会改正があったといたしますと、本人負担分が三千百五十円になってまいる。これは発足当初の千五百五十円から見れば二倍になる、こういうようなこと。  それから、この改正をするに当たりまして、四十九年度における農業所得を推定いたしたわけでございますけれども、その推定されます月額あるいは四十七年におきます農業所得、こういったようなものの中で占めておりますウエート、こういったような点が他の公的年金本人負担保険料率と比較してみまして、そう高いものではない、というようなことを含めました検討をいたしていただきました。そうして、その結果といたしまして、初年度は二・二倍に引き上げる、こういうふうにいたしたわけでございます。  この年金基金法におきますと、年金額というものは政令で定めるようになっておるわけでございますけれども衆議院修正によりまして、次期再計算期までの間は、これが最近発足したばかりであり、というような事態の中におきまして、法律でもって年金修正をいたす、こういうふうな修正衆議院においてなされたわけでございます。
  14. 足鹿覺

    足鹿覺君 いまの審議会構成答申資料として御提示願います。——持ってきて見せていただきたい。よくわかりません。    〔資料提示〕 これは相当大部な答申でありますから、いま私が見せてもらいました農業者年金制度研究会国民年金審議会農業者年金小委員会委員構成と、それから「昭和四十八年四月二十三日農業者年金制度研究会検討結果」という印刷物を至急に資料として御提出を願いたいと思います。時間がありませんから先に進みますが、いただけますね。
  15. 大山一生

    政府委員大山一生君) 提出いたします。
  16. 足鹿覺

    足鹿覺君 そこで、伺いますが、この農業者年金は、私は、将来は、その加入者がだんだん減ってくると思うんですよ。そうでしょう。そういう見通しのもとに、保険設計が必要になるでしょう。それは認めますね。
  17. 大山一生

    政府委員大山一生君) いまのあれでございますと、たしか昭和九十年だったと思いますけれども昭和九十年度に約九十万程度になるというふうに推計しているわけでございます。
  18. 足鹿覺

    足鹿覺君 しかも、現在加入者が非常に少ないということもこれは事実であります。  で、私は、触れまいと思っておったんですけれども農林大臣にもちょっとこれは非常に大きな政策上の問題でありますから一点だけ事例を申し上げておきますが、この石炭鉱業経営主補給金というものが政府から出されておりまして——石炭出炭奨励の名目で補助金が出ております。この補助金の中から、石炭鉱業年金基金掛け金が払われる仕組みになっております。全額国庫負担であります。これは、厚生省も、通産省も、よく御承知であろうと思います。国から受けた補助金の中から、年金基金掛け金負担をする。それで費用をまかなっているのでありますから、全額国庫負担とみなしても私はよいと思う。事業主は、単に中間的な中継者にすぎないということになると思うんです。こういうやり方だって、石炭産業が不振になって、最近は見直されたとは言うものの、一時悲惨な状態に追い込まれたときには、このような方法でやはり救済に当たっておられる。いまの農民にこれをまともで適用しなさいなどと私は申し上げておるのではありません。要は、石炭鉱業年金基金についてもこういう事実があり、坑内労働者老後保障が手厚くしてある。これからますます石炭が脚光を浴びてくればこの制度は重きをなしてくると思いますが、そういう点を考えたときに、安心して農業者老後を楽しむような、農民にも年金を、というキャッチフレーズの中身にはあまりにも私は遠いものであり、掛け金も一ぺんに二倍以上に引き上げるというようなことは、石炭鉱業年金基金の場合と比べてみまして、あまりにもこの政策差が大き過ぎると私は思う。  いま食糧をこれから国内で自給自足していかなければいけないというときに、四十年先にならなければ年金はもらえません。経営移譲したときに若干年限が縮まるだけのことであります。私は、それは、あまりにも差があり過ぎまして——いやそれはそれ、これはこれだと言って農林省は比較検討する余地はない、とお考えになりますかどうか。その点が私は、事務官僚というものは案外これはきわめて事務的に割り切りますが、少なくともわれわれ政治をやっておるものとしては、農業者自体が利潤のない、しかも危険率の多い仕事を今日までやってきて、その老後保障も十二分にないという状態の中で、後継者がこのような高額な負担をするということについて、あまりにも私は残酷だと思うんです。農林大臣政治家として私は、妥当性がない政策でないかと言わざるを得ません。これはいかがでしょうか。
  19. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農業者年金制度は、農業者老後生活の安定をはかるということと、経営移譲促進という農政上の要請にこたえようとするものでございまして、このために経営移譲支給条件として、仕組まれておることは御存じのとおりでございます。支給されます年金は、厚生年金並み水準を確保するということにいたしておりまして、また、今回の改正におきましても給付水準の大幅引き上げ年金額実質価値を維持するためのスライド制の導入をはじめといたしまして、出かせぎ者に対する改善等、大幅な改善をはかることといたしておるのでありまして、農業者の要望に十分こたえるものであると考えておる次第であります。なお、このように農業者年金制度は、老後保障のほかに、農政上の要請にこたえることを目的といたしまして経営移譲年金に重点を置いておりますが、適期にこの経営移譲をいたさない者につきましても、六十五歳以後、国民年金とあわせて農業者老齢年金を支給することにいたしておりまして、農業者老後生活に資するものであると考えております。また、保険料につきましては、この制度におきまして、その政策的な要請も考慮いたしまして、他の公的年金制度に比べてかなり高率な国庫補助を行なっておりまして、農業者負担軽減をはかっているつもりであります。  それからまた、今回の改正にあたりましても、標準的な保険料納付済み期間を満たすことができない期間短縮者に対する経営移譲年金加算部分につきましては、給付費用の四分の一を新たに国庫負担をいたしまして助成の強化につとめておる次第であります。  なお、こういう制度につきましては、他の同種のものとともにやはり漸次事情が許すようになりますれば改善をいたしてまいりたいことは当然のことでございます。
  20. 足鹿覺

    足鹿覺君 大臣ね、いま大山局長も言ったように、将来は百九十万人ぐらいになるだろうと言っているんですね。そうだったですね。
  21. 大山一生

    政府委員大山一生君) 九十万人。
  22. 足鹿覺

    足鹿覺君 九十万人ぐらいになるだろうというんですね。  そうすると、加入者が減れば、掛け金負担はそれだけ増高することになりますね、結果として。そういう弱い面を持っておりますし、いまも大臣も言われたように、政策面も持っておるわけでありますから、私どもとしては、衆議院給付を二倍に引き上げたということと、保険料の問題を切り離して、あそこだけに手をつけたという以上は、掛け金率についても、大体相対的にこれも改めるべきであったと思うんです。そうしないと、この、農業者年金というものの持つ意義が、現在掛ける人にとって非常に酷なことになると私は思います。  したがって、大臣に申し上げておきますが、もとの案は、政令で二百円ずつ上げるようになっておったのを、衆議院修正をしまして法律事項にこれを規定して、政令でかってに気ままにやらせないように歯どめをかけたと、こういうことなんです。やはり衆議院もこの掛け金の問題については相当検討したけれども、やはり財政当局等との関係もあって、ついにその掛け金率については手を下し得なかったと思うのです。われわれも、事今日に至って、これを一方的に修正いたしましても、衆議院に送り戻すとかなんとかいたしますと間に合いませんから、私はそういことをいま言ったり、強要——皆さんにお願いをする気はありません。ありませんけどれも、先ほど述べましたような他の年金のせいもありますし、次の機会にはぜひひとつ再検討していただいて、適正な掛け金率に引き下げていただきたい、かように思うのです。いかがでしょうか。
  23. 大山一生

    政府委員大山一生君) 給付のあり方と、それをまかなう掛け金並びに国庫補助のあり方、これにつきまして、石炭鉱業年金制度等を参考にされていろいろと御指摘があったわけでございます。衆議院におきましても、附帯決議におきまして、国庫助成の方法についてさらに強化する方向で検討しろ、こういうふうな御提言があったわけでございます。われわれといたしましては、やはり年金というものが、これは長い寿命を持つものとしてそれが健全に運用されなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。また、これを負担する農民の立場も当然考え、また受ける農民の立場というものも、また、ほかの年金との均衡等も考えながらやってまいらなければならぬ。こういうふうな過程の中におきまして、それら三つのあり方の問題につきましては、先生の御指摘もあったことでございますし、今後とも慎重に検討を続けてまいるつもりでございます。
  24. 足鹿覺

    足鹿覺君 掛け金率の問題についていま一つ伺っておきますが、徴収方法——納付の方法の実態を説明していただきたい。
  25. 大山一生

    政府委員大山一生君) 掛け金の徴収につきましては、農協にお願いすることになっているわけでございます。そこで、農協が農業者年金基金の業務の受託——受けることができるように、模範定款例の改正をしたことによりましていたしたわけでございます。そこでその結果といたしまして、今度は農協が個人から掛け金を徴収する場合におきまして、ときには、肥料代金と同じように、農協の貯金口座から自動的に引き落として徴収する。こういう場合があるわけでございますけどれも、この場合におきましては、被保険者と農協との間で契約を締結する、あるいは被保険者からその旨の依頼書を受理する。こういうようなかっこうで保険料の自動的引き落としをいたしているわけでございます。ともにそういうかっこうで、農協が徴収をするたびに農協から被保険者に当てまして領収証書を送付する、こういうふうなかっこうで掛け金の徴収をいたしているわけでございます。
  26. 足鹿覺

    足鹿覺君 お聞きのとおりですがね。みんな農協の口座落としなんです。で、従来の倍になるわけですから、夫婦で、大体五万円ぐらい年に掛けることになりますね。たいへんな掛け金ですよ。これは百姓が、農業者が一たん財布の中にしまったものを、今度は納付令書でこれを農協に納める。こういうことになったら、この掛け金は、農民としては、なかなかうんと言わぬ掛け金です、これは。まあ考えてもみなさい。千六百五十円というものは倍になる、そして年額五万円。いま農民にそれだけのものを、口座落としで取っていらっしゃるから、農民の間には、自分が何ぼ掛けておるのか知らない人が多いんです。  私は、昭和四十五年に、この問題が大きな問題になったときに、農協から口座落としをやらせることは、年金基金加入した意識を持たせる上からいっても、よくないと。それで、制度そのものに関心を持たせていき、自分が、どれだけの掛け金負担をし、何年から幾らもらえるという、こういう保険のシステムを、よく理解して掛け金を払い込むようにさせることが必要であるということを……。何かわけのわからないうちに口座落としで、領収書だけが幾ばくか過ぎてから——農協の場合は、一週間も十日もたっている。場合によっては、一月もたって回ってきますからね。私どもも、農協——の組合員ですが、ですから、まあ紙くず同様に思っているですよ。それが、五万円の領収書であっても、五万円を出したという実感がないです。ですから、これは比較的おさまっておる、私はそう思うんです。こういう一種のチェックオフですな、こういうことは私は、あまりいいやり方ではないと思う。  これは、農林省が指導なさったわけです。「昭和四十五年十月二十一日農政局長通知」をもって「業務委託の定款上の取扱いについて」というので、模範定款例を農協に指導させて、そしてこういう制度をおつくりになったんです。そして、一人当たり一・五人分ですか、一組合。いま何人分補助金を出していらっしゃるか知りませんが、補助金を出している。農協も、上からの命令だから、しぶしぶ定款を変えて、そして現在に至っておる。農業者年金が安閑として加入者から批判を受けない理由はそこにあるんです。もしこの実態が、民保と同じように、一々掛け金を掛けるような仕組みであったならば、農民は黙っておらぬと私は思うんです。こういうやり方について私は——非常に権力的な、そして非民主的な、農協にその責任を負わせて、当事者は全くの手をおろさずに運営ができるなんという機構は改められるべきである。私は、当時からそう思っておりました。  ただし、まあ事今日に至っておるわけでありますから、いま直ちにどうこうということもできますまいが、近く訪れるであろうこの種の年金制度は、この間も大蔵当局は、再検討して一ぺん全部を洗ってみたいということを梅沢主計官が述べておられましたから、いずれその時期が来ると思いますが、私は、農林当局としては御反省になるべき点ではないかと思います。  で、この石炭鉱業年金の取り扱いについては非常に手厚いということを申し上げましたが、これについて、倉石農林大臣、やはりもう少し補助率の問題や掛け金の問題や、少なくとも衆議院修正を受けたことを機会に、次の機会に再検討を私はしてもらいたいと思うんです、このままでなしに。いかがでしょうか。
  27. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) この制度を創設いたしましたときの農林省の責任者は私でありまして、私ども、やはりいろいろな角度からこういう制度が必要であると考え、また、国会でも御承認をいただいて制度が確立したわけであります。が、石炭の場合は御存じのように、いまは若干石油問題等で情勢が変化してきておりますが、あの当時の国の方針として、石炭鉱業というのは、一応撤退作戦をとっておった時代であります、御存じのとおりでありますが。まあかなりあとで考えてみますと、十分配慮をいたしたやり方であると思っておりますが、先ほどもちょっとお答え申し上げましたように、私どもも、他の年金制度と並行いたしまして、そのときどきの情勢を勘案いたしまして、どのように改善すべきであるかという点については、もちろん常に検討を怠らないようにいたすべきであると、そのように考えております。
  28. 足鹿覺

    足鹿覺君 まあ御検討をいただきたいと思うんですが、それにしてみてもこの政策年金としての経営移譲政策的な意図を持っておる年金ですから、私は、この経営移譲年金部分だけについてでも全額国庫負担するのが筋ではないかと思うんです。どうですか、局長さん、あんた事務的に見てどうお考えですか。少なくとも、経営移譲年金部分についてだけは、全額国庫負担等にしていくべきではないか。
  29. 大山一生

    政府委員大山一生君) 経営移譲年金——農業者年金が、経営移譲を支給要件として組み立てられている年金であることは御存じのとおりでございます。で、経営移譲ということを支給要件として組み立てた年金というものをつくりましたゆえんのものは、先生の言われますように、まさに政策年金といいますか、農業の構造を改善する、そして優秀な経営者を育成し、規模拡大をはかり農地の流動化をはかる。こういった構造政策の目的の一つとしてこれが出されてきたわけでございます。ただ、この年金制度というかっこうになってまいりますと、その問題がすぐに農業者老後生活ということと密接に結びつくものであるわけでございまして、そういう意味からいたしまして、国が全額を持つというかっこうにおいて行なうというのは、これはやはり適当ではないのであろう。これが、当初からのこの年金に対する考え方でございまして、現在われわれといたしましても、そういった考え方のもとに立ってこの年金制度に対処しているわけでございます。  ただ、国の助成のあり方という問題ににつきましては、先ほど来申し上げているように、各般の事情をそのときどきの事情に応じて考慮してまいらぬばならぬと思いますけどれも、国が全額を持ってやるべき筋のものというふうには理解していないわけでございます。
  30. 足鹿覺

    足鹿覺君 じゃあ必要ないと言うのですか。必要を認めないのですか。
  31. 大山一生

    政府委員大山一生君) 政策年金ということでございますので、他の年金に比べますとかなり高率の国費負担をいたしているわけでございます。端的に申し上げますと、農業者年金の場合にはいままで四二・二%の国庫補助でございました。今度のこの御提案申し上げておりますものでは四二・九%の国庫補助、こういうことになっておりまして、他の年金等が一八%あるいは二〇%といったような中におきまして、かなり高率の補助をしておりますのも、こういった政策年金であるゆえんであるわけでございます。ただ、私が先ほど申し上げましたのは、全額国で持つということは、この政策そのものが、老後生活とからむという意味におきまして、全額を持ってやるというのは、この考え方の当初からないことである、こういうことを申し上げたわけでございます。
  32. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、あくまでも経営移譲部分の問題については掛け金を取るべきではない、そういう主張は堅持していくべきだと思います。  そこで、厚生省に伺いますが、今回の改正による経営移譲年金相当部分保険料は幾らになるでしょうか。
  33. 持永和見

    説明員持永和見君) 先生のお尋ねは、費用としてどのくらい経営移譲年金に財政再計算をしているか、という御指摘だろうと思いますが、現在の再計算でやりました結果について申し上げますと、財源としての所要額、これを一人当たりの加入員に割ってみますと、全体として三千五百五十五円でございます。このうち経営移譲年金相当分が千七百三十二円という計算になっております。
  34. 足鹿覺

    足鹿覺君 千七百三十二円。大山さん、いまお聞きのとおりですよ。大体半分ですね。あなた四八%だとさっき言ったが、それを上回っているんだ、いまの厚生省の計算によれば。この種のものに私は保険料を取ること自体は誤りであって、経営移譲ということは、規模拡大に通じて、従来からの国策の一つですよ。それを年金になぞらえて、これに抱き合わせて掛け金を取るなどということは、私はこの政策政策だけに妥当ではない、これは改めるべきである。こういう見解を堅持して、ぜひともこの政策は改めてもらいたいと思います。  最後に、厚生省農林省、大蔵省に——大蔵省来ていますか。——まあいい。それなら厚生省農林省だけでもいい。  厚生農林当局に伺いますが、国年スライド制——さっき厚生省がおっしゃったとおり。政府原案によれば、年金分の、年金額の自動スライドについて、物価指数をスライドの指標にしておるようですが、恩給共済年金は公務員賃金にスライドさせると言っておりますね。この違いは一体どういうふうに理解したらいいでしょうか。
  35. 大山一生

    政府委員大山一生君) 農業者年金の場合におきまして、この制度発足以来、厚生年金並み水準年金給付すると、こういうふうな趣旨から設けられているわけでございます。そこで、今回のスライド制の導入にあたりましても、厚生年金におきまして、年金額実質価値を維持するために物価スライド制を導入されたというようなこともありますので、農業者年金につきまして物価スライド制をとったわけでございます。それで、他の年金におきましては、たとえば恩給にスライドして毎年改正する、こういうかっこうの年金もあるわけでございますけれども農業者年金の場合は、先ほど申し上げました厚生年金並み水準の維持というようなことから、厚生年金と同じ考え方に立って物価スライド制を導入していく、こういうふうな考え方になるわけでございます。  ただ、物価以外の、その他の賃金だとか、あるいは生活水準、こういったような動向との関連におきましては、これは少なくとも五年に一ぺんの財政再計算期の際において考慮されて、そして、その際に、年金額水準の再検討をする。こういうかっこうで進めてまいるということで、一応他の年金との考え方を統一しているわけでございます。
  36. 足鹿覺

    足鹿覺君 よく理解できませんが、時間が来ましたから、最後に所見を申し上げてこの質問を終わりたいと思います。これは、何ぼやっておっても、歯車がかみ合わぬようです。ですから、またの機会にしたいと思いますけもれど、このような残酷なやり方というものはないと、私は、このことだけは強調して——来年度必ずこれを改めてもらいたいということを強く最後まで主張しておきます。  で、今回の改正案を策定するにあたられまして、この法律の成立時につけられました衆参両院の附帯決議をどのように尊重して、その趣旨がどこに生かされているか、私は説明を聞きたい。ないなら、ない。どこをどういうふうに生かしたということを御説明願いたい。改正法案をざっと読んでみた限りにおいては、附帯決議の内容は、どこにもないように私には感じられる。あなた方は、国会を軽視していらっしゃる。少なくとも、与野党の意見の一致した問題を、一べつも与えないなどということはわれわれは納得できません。  まず、昭和四十六年一月、制度が発足したときに、五十五歳以上六十歳未満の者はこの制度の対象外に置かれており、何らの改善も受けられないこととなって出発したんであります。わずかに、離農した場合に涙金が離農給付金として支給されるにすぎなかったんであります。——これは後ほど議論することにいたしたいと思いますが、きょうはできぬかもしれませんし、他の同僚議員によっても追及されるかもしれませんが、四十六年一月に五十五歳の人は、現在五十八歳になっております。この年代の農業者こそ、日本の農業を今日までささえてきた一番大事な人間ではありませんか。第二次大戦の戦中戦後、食糧危機に直面をし、食糧増産にからだを張って協力をし、ジープとピストルとで自分たちの食う米までもみな政府に供出させられた、そういう人々ではありませんか。営々と二十有余年にわたって日本の農業のために献身をしてきたこの人々に対して、こうした農業政策上の年金制度改正する際に、取りこぼしていいとあなた方はお考えですか。一般国民を対象とした国民年金でさえ、老齢福祉年金という無拠出者に対しての終身年金を支給する配慮がなされておるではありませんか。農業政策上の年金制度が最も重視しなければならないのは、この年代の人たちをないがしろにしない、——若い者から掛け金を取ろうとする考え方に私どもは矛盾があるからだと思います。いやしくも公的年金で、かつ政策年金であれば、年金が一番必要な人に手厚くするのが本来的なあり方ではありませんか。そのために、検討時期には、この人たち救済する方法を考えようというのが附帯決議の趣旨であったはずです。どこに検討の余地がありますか。さらに膨大な研究機関を設け検討しても、何ら、どこにも、そういういまここで老後を豊かにしてあげなければならない人々に報いておらぬじゃありませんか。私は、この点だけは明確に指摘をし、少なくとも来たるべき機会に、日本が、戦中、戦後最も食糧に困ったときに、身を粉にして国民にこたえた人々に報いることを御検討いただきたい、実現をしていただきたい。このことを強く御要請申し上げて、私はもう時間もきましたし、何ぼ言っても本気で答えてくれませんから、私の意見だけを申し上げて、これで質問を打ち切ります。  どうもおじゃまをいたしました。
  37. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、この農業者年金につきましてまず基本的なことについて伺いたいわけです。  この制度は、社会保障的な面と経営規模の拡大、構造改善という両方の目的を持っておる特殊なと言いますか、たいへん特色のある制度だと思うのです。現在の基金法の第一条にも、目的が書いてありますが、農業者年金事業、農地等の買い入れ及び売り渡し事業、農地などの取得資金の貸し付け事業、離農給付金の支給事業、そして福祉施設の設置及び運営事業、こういうふうに、目的の中にも、確かに社会保障的な面と経営規模拡大をする、構造改善を進めていくという、その二つの面を持っていると思うのです。このことは、農民年金問題研究会、この報告の中にもこの二つの要請にこたえることが適切であると、こういうようにはっきりといっておりますし、また、国民年金審議会の専門部会におきましても、農業者年金制度だけを離して発足させるのでは所期の目的は達成できない。この制度は、農地の流動化対策、離農対策等の実施と相まって行なうべきである、こういう言い方をしておるわけです。ですから、私が言うまでもなく、経営規模拡大をする、農地の流動化を進めていく。そういう農業政策的な面と、もう一つは、農家の、農民の社会保障的な面と、両面を持っているわけなんですけれども、まず大臣お尋ねをしたいのは、この法の目的といいますか、ねらいといいますか、それから言いましてどちらのほうに重点があるのか。これは、この間も工藤委員のほうから質問があったように記憶いたしておりますけれども、私は、別のほうからいろいろ論議をしたいと思っておりますので、大臣にこの二つの、両面を持っておるのだけれども、どちらのほうに重点を置いているのかということが一つであります。  もう一つは、実施いたしましてから三年余たっているわけでありますが、やってみて一体結論はどうなのか。農業政策の面といいますか、そのほうが重点が大きかったのか、あるいは社会保障的な面が大きかったのか、三年半やってみて結論は一体どうなのかという点がもう一点であります。  もう一つは、この法の運営について、これからどういうふうに運営をされるのか。ということは、どちらのほうに重点を置いていかれるのか、両々相まっていくというお考えなのかどうか。この三点について、法の目的と、三年たった経過の結論と、それからこれからの運営についての考え方、この三つについてまずお尋ねをいたします。
  38. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 専門家の方々に理屈を申さないで、簡明率直に申し上げたいと思うのです。  先ほどもちょっと申し上げましたように、この前私が農林省におりますときに、この制度を初めてつくりました。こういうやり方は、やり方それぞれ少し違いますけれども、私どもが発明したわけではございません。ヨーロッパなどでも、すでに行なっている。それぞれ形は違いますがやっております。しかも私ども、当時、この法律制度考えましたときには、たとえば一緒の小学校で学んだ同級生が、われわれがいなかに帰って、同級生会みたいなものをやりましても、農業をやっていらっしゃる方には、同じ年配でも、たいへんお年寄りに見えるようなお方もある。これは、やはり農業というものはかなり肉体的労働をおやりになるものだからと。そういう面につきましては、機械力等の発明によりまして、このごろはもう田植えでも腰を曲げずにおやりになれるようなふうにはなってまいりましたけれども、やはりそういうとにかく農業を、肉体的にたいへん苦労をされるお仕事でありますので、これはやはり一方において、いや御指摘のありましたように、農政の方向として規模を拡大し、そのために流動性を持たせるということが一つであり、またもう一つには、やっぱり経営者は、毎年「朝日新聞」とか、「NHK」とかが、われわれの後援のもとに、全国の若い御夫婦たちで農業に特段のくふうをこらしていらっしゃるような方々を東京へ招きまして、その体験談など発表してもらっておりますときにも、やはり親子でありますので、父親の事業を批評するわけではないが、やっぱり私どもが出てくれば、こういうような方向で営農したいというふうな、そういう発明くふうをこらされる若者が非常に多いことを私は、日本の農業にとってたいへん頼もしいことだと常々思っているわけでありますが、急速に経済成長がいたされました結果、農業は土地の価格が高騰したり、いろいろなことで、みんなが予期いたしておったようには経営規模の拡大も行なわれておりませんし、自立経営農家の数も所期いたしておったよりは伸びておりませんけれども、しかし、方向はやはりそういう方向をとるべきであるということで、一方におきましては、老後考えてあげるということと、もう一つは、いわゆる政策面から農政に協力をしてもらうということで、そういう二つの考え方でスタートをいたしたことは間違いないことであります。  しかしながら、いま申し上げましたように、一つの大きなファクターとしては、日本の経済が伸びてまいりましたこの過程において、思うようにわれわれの計画が進んでおらないということも事実でございますが、とにかくそういう中にありましても、本年の農業白書でも、率直に農林省が申しておりますように、われわれはこの農業というものの位置づけが非常に重要な立場を持っておるわけでありますので、そういう方向に向かって、なお気持ちを変えずに、さらに努力をしてまいりたい。その努力をしてまいる過程におきましては、やはり将来に楽しみをもって営農していただくことが必要でありますので、制度等につきましては、十分に情勢に応じて改善を加えてまいりたい、こういうふうには考えておるわけであります。
  39. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、大臣、私がお尋ねをしましたのは、法の目的ははっきりしている。が、しかし、目的ははっきりしたって、二つの面の要請に応じなければならない。ですが、一体どちらのほうに重点があったのか。三年たってみて——三年半ぐらいになりますが、いまになってみて、一体どちらのほうに重点がかかってきているのか。さて、これからこの法を運営をしていく上について、どういうふうに考えていくのか。一そう一方に片寄った形に行かれるのかどうか、あるいは両々相まってやっていこうとされるのか、という点を実は伺いたかったわけなんであります。ですが、これは、もう少し中身に入りまして進んだところで、重ねて大臣のひとつ私の質問に対するすっきりとした答弁をいただきたいと思います。  この法律が発足しますときに、四十五年度から発足したわけですが——四十六年の一月一日から事業を開始するわけですけれども、四十五年度に発足するときに、加入者の予算的な見込みとして二百万人というのを想定されております。それが四十六年になりますと、というのは翌年になりますが、一つ減らして百八十五万人という加入見込みの予算的な措置をお考えになった。そして四十九年度——本年は、さらに二十万人ほど減らして百六十五万が加入見込みの数というふうにしていらっしゃるわけです。ですから、二百万から百六十五万に四年の間に減ったわけですが、こういうふうに三段階にわたって、大きくダウンしてきたその理由を聞きたいわけです。もちろん、これは四年の間に農業者がどしどし離農をしていったという——離農をさせられたというほうがいいでしょうか。日本の経済運営という大きな政策の中で、離農させられたと言ったほうが正確だと思うんですけれども、あるいはせざるを得なかったということが正確だと思うんですけれども、そのことがあって、こういうふうに三段階にわたって大幅にダウンしてきたということになるのかどうか。理由はどうですかということをお聞きしたい。
  40. 大山一生

    政府委員大山一生君) 当初、この制度が発足いたしました当時、加入見込み者といたしまして二百万人を見たわけでございます。これは、年金の被保険者調査というのを実施いたしました。そして、その結果といたしまして、当然加入が百七十六万、それから任意加入を二十四万というふうに見て発足したことは確かでございます。四十七年になりまして、農業者年金保険者調査をいたしました。で、そこにおきまして、この年金加入資格者がどの程度になるかというものをさらに調査いたしたわけでございます。その結果といたしまして、総農家五百三十万の中でまず免責要件がございます。それから御存じのように、年齢要件があるわけでございます。さらに国民年金加入しているかどうかという要件があるわけでございまして、こうした要件別に分析しました結果といたしましては、当然加入者が百三十二万、それから任意加入が八十八万、合わせて二百二十万の加入資格者があるということに現段階においてはなっているわけでございます。で、われわれといたしましては、この二百二十万ということを最終目標にいたしまして年金を運用してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。  ところで、現在加入しておりますのは、これも、この間御答弁いたしましたように、二百二十万の中で現在加入しておるのは百五万五千でございます。で、これの中でさらに分けて見ますと、当然加入が八十七万、それから任意加入が十八万ということに相なりまして、当然加入の百三十二万に対しまして八十七万。これは六六・二%という加入率になっているわけでございます。この加入につきましては、われわれといたしましては、まず当然加入の資格者につきましては、五十年までには全員に入ってもらうように努力してまいりたい。そしてその後、あるいは並行いたしまして任意加入で入るべき方——特に後継者の方でごさいますが、そういうほうに精力を注いでまいりたい。こういうふうなことから、当面当然加入を五十年までに全部入ってもらうという前提で現在、加入促進をいたしているわけでございます。当然加入者でございますから、強制的に加入さしちゃう、そうして強制徴収するという方法もありますけれども、こういうふうな年金性格からいたしまして、やはり加入される人のコンセンサスを得た上で加入してもらうということでやっているわけでございまして、四十九年度予算におきまして百六十五万という見方をいたしておりますのも、当然加入をまず優先して加入してもらうという段階的な過程の問題として百六十五万という数字をつかんだわけでございます。で、最終的な方向といたしましては、加入資格者全員の二百二十万ということで年金構成考えてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。  だんだんこう減っていっているではないかと。これは、二百万がだんだん下がって百六十五万になったということではなくて、現在進んでおる過程の中におけるコンセンサスを得たかっこうでの加入の確実性を見て、予算を計上してまいっておる、こういうことでございます。
  41. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまの局長のお話はわかりました、よくわかりました。  あとで私申し上げたいのですけれども、いまお話しになりました当然加入の資格ある者が百三十二万ですね、そして任意加入の資格者と見られるのが八十八万というお話ですね。私は、この程度の割合で加入しておれば、この法律の目的に沿っている——この法律に賛成であるか反対であるかはともかくとして、法の目的に沿っているというふうに言えると思うのです。ところが、いまお話しのように、当然加入のほうは八十七万入っているけれども、任意加入のほうは十八万しか入ってないと。非常に低いわけですね。これは、割合で言いますと、入っている者の八三%は当然加入者だ、一七%ぐらいは任意加入者だということだと思うのです。私は、ここに法の目的から言って大きな問題があるというふうに考えているわけです。そのことはあとでお尋ねいたしますけれども。こういうふうに、全体の平均としましては四七%程度加入率でしょう。つまり四十七年の農林統計調査部の調査では、加入資格者としては二百二十万あるんです。それに対して、加入している者は百五万ぐらいだと。そうしますと、加入率は四七%ぐらいになるでしょう。私は、なぜ四七%という、半分を割るような、たいへん低い加入率なのか、という点をひとつ伺いたい。  もう一つは、任意加入というのがたいへんに低い、著しく低いということについての理由ですね、考え方を聞きたい。
  42. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先ほど申し上げました四十七年の農業者年金の被保険者調査の際に、当然加入資格者の中で、未加入の理由は何だ、ということをそのときあわせ調査しておりますが、そのときの結果といたしまして一番大きくウエートを占めましたのは、制度及び制度の内容を知らないというのが四五%を占めておったという事実がございます。確かに末端におきます農業委員会あるいは農協にお願いすることにつきまして時間のかかったこともございまして、そして四十七年の調査段階において制度並びに制度の内容を知らないというのが五割近くあったという事実は、これはそれなりに理由があるといいますか、やむを得なかったことであろうというふうに考えるわけでございまして、やはり制度の内容ということをよく説明する、そうして、農業者の方々に理解してもらう。これがきわめて必要であるということで、その後、急速にその問題についての各般の施策を進めているわけでございます。現在低い理由は、当初そういうことで、末端の整備ができなかったこと、あるいは農民の、制度に対する認識がなかった、あるいは内容を知らなかったということが、先ほど先生の指摘されましたように四七%程度加入率になっているゆえんであると、こういうふうに考えるわけでございまして、この点につきましては、ちょっと先生と御意見は逆になりますけれども、われわれといたしましては、まず当然加入さるべき者に優先して加入してもらう、ということで進めてまいらねばならぬだろうと、こういうふうに考えるわけでございます。  それから第二点の、任意加入が特に低い理由ということになりますと、われわれが、当然加入のほうにまず精力を注いでいるということもございますけれども、任意加入の対象者となります中の、いわば生産法人の従業者あるいは後継者という方々、こういう方々は、どちらかというと相当長期にわたって、後継者の場合で言いますならばば、相当長期にわたって入ってもらう方でございます。あるいは五反未満の方と、この三つが、任意加入の対象になるわけでございますが、そういう任意加入の中の後継者等ということについては、これはやはり当然入ってもらわねばならぬと思いますが、先ほど申し上げましたこの任意加入の中の、先生はおそらく任意加入イコール五反未満と、こういうふうに——でないようでございますが、任意加入が、いま申し上げましたように後継者なり生産法人というようなことが大きく打っているようなこともございます。で、まあそういうことから、当然加入にわれわれとしては、まず精力を注ぎたい、そして任意加入に後ほどいきたい。こういうふうなことで進めているような次第でございます。
  43. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、いま局長のおっしゃった、当然加入を優先的にどんどんそっちへ入れていくんだ、任意加入というのは、二の次になってやっているんだと。それは私は、根本的に間違いだと思うんですね。法の目的から言っても間違いだと思うんです。だから、三反から五反の任意加入者、それから生産法人の従業員、それと五十アール以上の後継者、これが任意加入の資格者ですよね。もちろん、国民年金に入っているということもあるんでしょうが。しかしその中で三十アールから五十アールのところの加入者というのは、これはほんとうに、ちっちゃいですね。もう入っていないのと同じぐらいの数字じゃないですか。二万ぐらいでしょう。二万ちょっとでしょう。後継者が圧倒的に多い。五十アール以上の後継者が圧倒的に多い。  それで、局長、法の趣旨としては——賛成するか賛成しないかは別だ、この法律に。法の趣旨としては、これは任意加入、特に三十アールから五十アールのところは任意加入してもらって、そこが離農をしていく。それを規模の大きいところに、規模拡大の方向へ持っていこうという考え方が基本なんでしょう。法の趣旨としては基本なんでしょう。ところが、局長は、いや当然加入が優先的で、任意加入のほうは二次的であるという話。これは通用しませんな。まあそういうことになったんでしょう、結論は、局長のおっしゃるようなことになったんだろうと思うんですよ。したがって、結論で言えば、この法律のねらいとする経営の規模を拡大するとか、農地の流動化をはかろうというものには完全に失敗をしたというふうに言っていいんじゃないか。もちろん、この失敗の理由にはいろいろあります、それは。これだけの問題じゃありませんよ。たくさんの理由があります。構造改善が進まなかったこと、経営規模の拡大が進まなかったことなどいろんな理由がありますが、しかしこの法律が目的にしておる任意加入の点から言うと、これは、完全というと語弊がありますが——まあ二万七千戸くらい入っているわけですからね。十五万戸というのはこれは五反歩以上の後継者ですよ。だから、私は局長のおっしゃるのは違ってやしないか。それじゃ法の趣旨に沿いませんよと。私はこの法律に、そういう意味の法律に賛成しているわけじゃないんですけれども法律の趣旨からいったらそれはおかしいじゃありませんかと。  そこで、それについて局長のほうからもいろいろ御意見があると思いますが、これは、加入しなかった、加入が非常に低いと、四七%の加入だと、今後もこれはそんなにふえることはない、という感じを私はもっているんですけれども、しかしその低かった理由に、調査をしてみたところが、四十七年に調査をしてみたところが、内容を知らぬという人が四五%ぐらいあったと、知っているものはまあ入ったという形なんでしょう。ですが、私は、これは四五%のものが知らなかったという理由は一体どこにあるのか。それは先ほど足鹿さんのほうから質疑がありましたけれども、末端において農家と接触をしているこの年金の執務体制といいますか、それが非常に変わっているんじゃないか。農協と農業委員会がタッチしている。国民年金は町村役場だ。農業委員会と農協がタッチしているという点が、内容がいつまでたってもわからなかったということ、そのことが入らなかったという一つの理由になっているんではないかと。もう一つは、この内容そのものが、農業者年金の内容そのものにたいへん魅力がない。たとえば経営を移譲した場合に、いままでは月に八千円なんですね。六十歳から六十四歳までですか、八千円。そして六十五歳以上の者については八百円ですか、幾らですかね、八百円ぐらいですかね。これは経営移譲をする人をばかにしているですよ。農家が経営移譲をするということは異常なことです、これは。私も親戚が、おじや、おばが百姓をやってますから、わかりますけれども、これは経営移譲するということはたいへんなことですよ。その経営移譲をするのに八千円だというんじゃ話にならないですよ。しかも、それが六十歳から六十四歳でですよ。六十五歳といったら、八百円だというんじゃ、これは魅力がないですよよ。魅力があるわけがない。そういう魅力がないということ、それといま言った執務を、農家と直接接触をしているところが、国民年金と違って農協であり、農業委員会であるということ。農業委員会がいま町村の中でどの程度の力を持っているのか、宣伝啓蒙にどの程度の力を持っているのか。——農地は取り扱っていますよ。まあ、先ほどの足鹿先生の農協の仕事にしてみても、私は、非常に問題があると思うんですね。そういう意味から、加入者が四七%という非常な低さにあるんではないかと私は思うわけです。それで、先ほど申し上げました点と、いま申し上げました点、その二つについて、局長のひとつ御答弁をいただきたい。
  44. 大山一生

    政府委員大山一生君) 農業者年金の末端業務、これは当初から農協なり、農業委員会に委託すると、こういうふうな方針がきまっているわけでございますが、われわれのほうの考え方といたしましては、金銭関係の業務ということになれば、大体、農民は農協には口座を持っているというようなこともございますので、最もふさわしい団体ではないだろうかと。それからまた、農業委員会につきましては、権利関係等、いわばこの届け出に基づきます加入資格の認定といいましたような資格認定業務、こういうことについては、農業委員会というのが最も適当なんではないだろうか。こういうふうなことで、末端業務を農協、あるいは農業委員会にお願いしているわけでございます。  で、われわれといたしましては、確かに、他の年金が市町村であるということから申しますならば、その点、農業者年金だけが別の末端組織を持っている、こういうふうなかっこうになるわけでございますけれども、やはりこれが一つの構造政策を推進しようとする、いわば何といいますか、農政上の一つの目的、そのための経営移譲ということを支給要件として組み立てられた年金であるということからするならば、やはり農協なり、農業委員会というのが適当であり、また、その農協なり、農業委員会におかれましても、できる限りの、われわれといたしましては委託費等を支給する中で、将来とも、これのPR等についてもまた、やっていただくことを期待いたしたいと、こういうふうに考えるわけでございます。  確かに、年金給付水準、先生御指摘のように、六十歳から六十四歳までの間は、経営移譲いたしましても、現行では保険加入が五年であるならば八千円であることはたしかでございます。しかし、その五年程度保険料納付の方につきましても今度一万七千六百円で二・二倍に上げるわけでございますし、これが正常の事態になりまして二十五年というような事態になりますと、今度改正になれば四万四千円の月額経営移譲年金が支給されてくると、こういうことになるわけでございます。現在は、経営移譲年金というのが支給されるのが、とにもかくにも五十一年の一月であって、いまやっております仕事は、離農給付金の交付とか、あるいは掛け金をいただく仕事であるとか、あるいは農民から預かっております金の中で、一部を農地の売買等に使うとか、こういった本来業務でない、と言っちゃ語弊がありますけれども、いわば経営移譲という、年金の支給という事態にまでまだきてない段階にあるということが、やはり農民の関心を少なくしている原因であろうと。  われわれといたしましては、それまでにこの三年の経験にかんがみまして、たとえばスライド制を導入する、あるいは出かせぎ者に対する取り扱いを改正すると、こういったような手続上の改正をする中で、とにもかくにも、五十一年一月からの本格的実施を目ざして末端まで含めて努力してまいりたい。その実際の支給が始まりますならば、これに対する農民の関心ということもまた、きわめて大きくなり、また、その段階で飛躍的な加入ということも期待できるんではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。しかし、金が五十一年まではこの調子でいいんだ、ということではございませんで、われわれとしては、今後とも努力してまいりたいと、こう思うわ
  45. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほどお話の、実際、この農業者年金の実務というところが農協にあり、そして農業委員会にあると。それで農協については、これは掛け金を徴収するには最も安易であるし、農業委員会は農地の権利義務の関係について取り扱っておるところですから、資格その他の認定についてよろしいと。さらにまた、これは農政上の一つ政策として行なっているんだから、したがって農業委員会、農協にやることがいいと。その意味では私もそうだと思います。ぜひ、こういうことでこれを軌道に乗せてもらいたいと思うのです。ただし、それだけで済まなかったんじゃないかと、それだけでは済まないんじゃないかと思うのですよ。ただ、金を徴収するには農協がいいとか、権利義務の関係では農業委員会がいいというだけでは、この発足した農業者年金を、農家に対して積極的に宣伝啓蒙し、入ってもらうことを勧誘していくという制度には非常に不備だと、たいへん不備だというふうに言わざるを得ないと思うのです。  それからもう一つ、私は、五年掛け金でもいいです、五年掛け金を例にとって、いま、私が先ほど申し上げたように、六十歳から六十四歳で経営を移譲すると、それで八千円だと。六十五歳以上で経営を移譲した場合は八百円だと。これは私は、農業政策上やる政策としては、はなはだ小さなものだと思う。こんなものは政策と言えないんじゃないでしょうか、掛け金も払って。しかも経営を移譲するということは、私は先ほど申し上げましたけれども、これはたいへんですよ。農家が経営を移譲してしまうということは、息子に経営を移譲するとか、だれかに移譲するということは、これはもう非常にさびしい話です。これは容易じゃないですよ。それが掛け金を払って八百円だとか——これは経営を移譲するといったら、どうしたってやっぱり六十五歳以上ですよ、農家の実情は。若いところももちろんありますけれども、実情としては六十五歳以上です。これはもう常識です。そういうものを考えた場合に、八百円かと、これはそんなもので奨励にはならないですよ。ですから、私は、そういうところに一つの大きな問題があったんじゃないかと思うんです。  先ほど足鹿委員のほうから話がありましたけれども、この年金が二つの側面を持っていると。農業政策上の側面を持っているというなら、それにふさわしいやはり国の負担というものをふやしていかなければ、とてもこんなものは魅力ない。いま五十一年の一月一日から一万七千円になるし、それから六十五歳以上でいうと、千七百円でしょう。月に千七百円をもらって経営を移譲しまして隠居しますかね。考えられぬですよ、そういうことは。二けたも違う、それは。これは霞が関農政ですよ。私はそう思いますね。私のおやじのことを考えてみたって、たった千七百円もらって六十五歳で経営をお前に移譲するなんて言わぬですよ。権利一切を譲り渡すなんて言わぬですよ。そんな者はないです。これはやっぱり少ないですよ。ふやせばいい、それなら賛成。こんなもの意味ないです。
  46. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先ほど先生の言われましたことに対する答弁で言わなかったんですが、農業者年金の現在の加入率は、確かに五割切っておる、という中で、地帯別に見た場合に、たとえば北海道でありますとか、あるいは東北でありますとか、九州でありますとか、いわば農業地帯におきましては、加入率が相対的にはいいという事実があるわけでございます。それでいわゆる都市周辺といいますか、そちらにおいて低いと。こういうふうな地域別の差という問題が現実にあることは否定できないわけでございまして、その問題が、先生の指摘されましたように、移譲ということに対するなかなかむずかしい情勢、特に地価の問題といったような問題とからんでのお話であるとしてわれわれもよく理解されるわけでございますけれども、確かに六十歳から六十四歳まで経営移譲いたしますと五年納付の場合に一万七千六百円。それで六十五歳以降経営移譲年金分としては千七百六十円でございますけれども、あわして老齢年金部分あるいは国年付加年金部分あるいは定額分、こういうのがまいるわけでございまして、その結果といたしましては六十五歳以上は約二万円の支給を受ける。  ですから、五年の納付期間を、ある方について言うならば、六十歳になっていわば厚生年金並みに出るような事態がまいりますと、六十四歳までは一万七千六百円——月額です。それから六十五歳以上は約二万円の年金が出るということでございますので、当初のような八千円あるいは六十五歳以上は八千七百円といったような額とは違って二・二倍に引き上げます結果としては、かなりのそれなりの農家へのメリットは出てくるのではないだろうか、こういうふうに実は考えるわけでございます。この問題に関連いたしまして国庫負担の問題が出てまいりましたけれども、確かに他の公的年金に比較すれば、こういう政策年金であるということで、他に類を見ないかなりの高率の負担をしているということもひとつ御了承いただきたいというふうに考えるわけでございます。
  47. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、局長のおっしゃるのは、それは国民年金も加えてですから、経営移譲年金としてはこれは八百円には変わりはない。これが千七百円になるだけの話。大体六十五歳をこして譲るんですよ。圧倒的にそうだと思うのですよ。六十五歳こして経営移譲年金にした場合に、たった千七百六十円だ。それも五年後だというんじゃ、これはあんたね、そんなものは奨励金にも何にもならぬ。ぼくはだめだと思うのですよ。まあ、それはいいことにしましょう、せっかくやっていらっしゃるわけだから。  そこで、次に、階層別の加入者の数が出ていますね、この農林省のいただいた資料によりますと。この階層別の三反から五反の人がどれだけ入っている、あるいは三町以上が幾ら入っているというのを見ますと、これは経営規模のでっかいほど加入率が高いのです。ですから、経営規模が高いほど加入率が高くなる。三町以上になるというと、大部分の人が入っているという形ですね。それで三十アールから五十アールという任意加入のところ、これは先ほど申し上げたように二万七千戸しか入っていない。この階層というのは百万をこす階層なんですよ。百五十万ぐらいの階層です、ここは。そこのところはもちろん条件もいろいろありますが、条件もありましょうが、それにしてもここのところが非常に小さい。  だから、私先ほど申し上げましたが、局長、答弁をしていただきたいのですけれども、特に三十アールから五十アール、この小さな規模のところ、任意加入のところ、これはもう少し大きく入ってもらって——そこは、経営を他人に移譲していくというところで、農地が流動化し、そうしてそれが経営の拡大に、規模の拡大につながっていくということなんでしょう。ところが、そこのところがきわめてちっちゃいわけだ。かたわもひどい、これ、ちんばも、ひどいちんばになっておるわけですよ。そこのところが少ないから農地の流動化しようがない。で、われわれは経営をだれかに移譲して経営を拡大する。どこか大きなものに移譲する、そして拡大をしていくという方向が出っこないんじゃないですか、という私は考えなんですよ。だから、私は、局長の答弁を聞いておって、局長の話からすると、これは法の目的からして、運営としては、おれは経営規模拡大の方向というのはあきらめたと、若返りだけだと、こういう私は印象を受けたわけです。この若返り論についてはもう一ぺんやりたいと思います。たいへん外回りだけの話ですけれども、基本的なもので、私も初めてこの農業者年金というのを見てみたわけですよ。それで、いま疑問を提示しておるわけです、どうだということで。そこのところを答弁してもらいたいですね。非常な片ちんばになっている。ちんばというよりも一方の足がないですよ、これ。この一方の足を切って、こっちを継ぎ足そうということだったんですよ。これないんだから、しょうがないですよ。
  48. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先生御指摘のように、経営規模別の被保険者加入の実績、こういうことで見てまいりますと、確かに経営規模の大きい農家が多く入っている、これは御指摘のとおりだと思います。確かに一方、経営規模の大きな農家ほど後継者をたくさん持っているといいますか、持っている農家が多い。こういうこともまた事実であると思っております。経営移譲の中に、後継者に対する経営移譲というのが、一つ農業者年金のシステムの中に入っているということから、いわば後継者保有割合が高い大規模農家が、よけい入っているということは、これは事実であり、またやむを得ないことだと思っております。  ただ、先生の御指摘のように、いわば農業の構造改善のために、零細な農家が、その農業から他産業といいますか、いわば経営規模拡大に、そういう方に協力してもらうという意味では、第三者経営移譲という意味では、確かに零細農の方に、いわばこれの御利益が及ぶようにしなければならぬということはまことに御指摘のとおりだと思っております。われわれ、年金というものだけで、経営移譲といいますか、規模の拡大あるいは流動化というものがこれだけでできるとは思っておりませんけれども、いわばそういう過程の一環の、一つとして、きわめて大事なものだというふうに考えます。  ただ、まだ発足して三年という段階においては先ほど申し上げましたような結果が出てもやむを得ないと思いますけれども、極力早い機会に任意加入の方々の加入促進して、そしてこれが将来他の構造諸施策と相まちまして、経営規模の拡大なり、そういった構造改善に寄与するような方向に進めていかなければならぬ、という御指摘につきましては全くそのとおりにわれわれとしても考えますので、そういう方向へ将来進めてまいりたいというふうに考えるわけであります。
  49. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、こっちのほうの当然加入の足と、それから任意加入の足とある程度つり合わなくてもいいが、ある程度合って——法の趣旨としてはですよ、法の趣旨としては五反以上の階層の足と、小さな三反から五反の任意加入と両方合って、こっちへ経営を移譲して、どこかへ出ていくときには、こっちのほうに加えていこうという考えだと思うんですよ。ところが、こっちのほうの足がないんですものね、ちょっぴりしかない。こっちへ持ってきようがない。そのことに私が賛成するかしないかは別ですよ。別ですけれども、法の趣旨からいえばこれは先を見通されるじゃないですか。二万七千しか入ってない。一方は八十何万戸入っている、これどうなさるか。これは先を見通されますよ。この点、そういう意味で、この年金が持っておった経営を拡大するという、農地を流動化するという法律一つの大きな目的というものは、これは無意味になっているというふうに私は言いたいわけなんです。先を見通されますよ。  次にもう一つ伺います。今度の加入の状況について、先ほど経営の規模が大きいほど加入をしている。三町歩以上になりますと相当数のものが入っている、五町歩以上になるというとほとんどのものが入っている、経営規模が大きいほど入っている。そういう意味では、この年金というのは私は自立経営農家の年金であり、もう少し広げて、最近いわれている中核農家の年金である、そういうふうに言いたい。それだけの年金だと言っても言い過ぎではない。そうしてその自立経営農家に該当するもの三町歩以上あるいは中核農家に該当するものが、親が子供に経営を移譲していくということはこれは自然の流れです。政策の問題ではない、自然の流れです。どこに政策を持ち込もうとなさるのか。その場合に六十歳から六十五歳の間に経営移譲した者は奨励をするとおっしゃるのだけれども、そんなものは農民の現状とは非常にかけ離れている。そうしますとこれは一体どういう意味があるのだ。自然の流れじゃないですか。三町歩持っている者がその子供に経営を移譲していくということは自然の流れですよ。どこにも政策の入る余地なし。それを少しばかり早めようと、その早めようとなさることはこれは意味がありますけれども、これまた農家の実情に合っていないというふうに私は見ている。  さて、私がいま申し上げた点について、局長意見があるならひとつ承っておきたい。
  50. 大山一生

    政府委員大山一生君) 先生の御指摘の問題これはわれわれといたしましては、先般、農業会議所が全国の農業委員会を動員いたしまして調べました若い青年の意欲といったような調査もあるわけでございます。確かに相当の高年齢になっても、非常に意欲的な農業をやっておられる方があることは否定できません。しかしながら、やはり若い青年が、若いエネルギーを持って規模拡大をはかりたい、という意欲は非常に強いというふうにわれわれとしては意識し、また、それに応ずるような諸般の施策を講じなければならぬ。こういうふうに考えるわけでございまして、そういう意味からいいましても若返りといいますか、優秀な経営者を育成するということもこれはきわめて大事なことだと思っております。  ただ、それだけではなくて、第三者への移譲というかっこうでのいわば農地の流動化ないしは規模の拡大ということもこれはきわめて大事でございまして、そういう点については諸般の施策を、地価の高騰、農家の土地の資産的保有の傾向、こういうことはあるにいたしましても、やはりわれわれとしては、あらゆる方法を使ってやっていかなければならぬだろう。そういうものの一環といたしまして農振法の改正も実は提言しているような次第でございます。  確かに三反から五反という場合の加入率が非常に低いという点については、われわれといたしましても、反省することはして、これの加入に努力しなければならぬと思いますけれども、いま言われました問題というのは、やはり三反から五反までの任意加入と当然加入というものだけではなくて、さらに当然加入の中にも、階層制の導入というような問題も、この年金の将来の課題としては、結局そこまで問題はいくのじゃなかろうかというふうにも私は考えるわけでございまして、それらの問題につきましても、これはすでに衆議院における御指摘もございますし、われわれとしてはさらに検討を進めてまいり、そして改善してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  51. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私の伺っている点と食い違っている面がありますが、次にお伺いをしたいのは、これは私が先ほども言いましたが、この年金加入して、さて六十歳になったら経営を移譲しよう、六十五歳になったら経営を移譲しよう——経営をまかすということと経営を移譲するということは違うのですね。だから、経営を移譲するのに、六十三になったらやろうか六十四になったらやろうかと、そんなことを悩みながらいくと思うのですよ。しかし実際は、農家の移譲というのはなかなかそんなものにはなっていかないと思いますね。あとでこの問題もう少しやります。  そこで今度は問題を転じまして、農林省は、六十歳というところを農業者の定年みたいに考えていらっしゃるのではないかということなんです。それを、いま先ほどから局長おっしゃるように、また、この法律の中にもありますように、六十歳になって経営移譲なさると、これこれの年金が出ますよ、ということで、定年といいますか、経営移譲を勧奨しておるわけですね。いま、国家公務員に対して勧奨退職というのをやっていますよ。五十八ぐらいになると、肩たたいてやめたらどうだ、というのを勧奨退職といっているのですけれども。農家に対して、この農林年金というのが、六十歳になったら、おやめになったらどうですかか、ということで、勧奨退職をすすめておるわけですよね。ですから、六十歳というところが、農民の定年だというような考え方を持っていらしっしゃるのではないか。  この間の白書の中に、「中核農家」という名前が出てきた。定義らしいものも出ております。基幹労働者として男子が専従しておって、五十九歳まで。六十歳は入らない、「中核農家」には。五十九歳までです。これを「中核農家」というと。これが、これからの日本の農業を背負っていくものである、積極的にこれを育成し、そして育てていかなければならぬという考え方ですよね。だから、どうも農林省は、六十歳で勧奨退職をやる、勧奨移譲をやる、農民の定年というものを考えているのではないかというふうに私は思うわけなんです。だから、問題は、五十九歳までは「中核農家」であるから、これからの日本の農業を背負っていくのだと盛んに言って、一つ年をこすと、おまえは、と肩たたいて、やめろと、こういう話です。これは、どういうわけだという私は感じを持つわけです。  そこで、農家の定年というのは、私の言う勧奨定年というのか。それについてどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  52. 大山一生

    政府委員大山一生君) 農業者年金というのが、厚生年金並み水準年金を確保しようと、こういうふうな趣旨から設けられているわけでございます。そこで、経営移譲年金の支給開始年齢と申しますか、につきましては、厚生年金のほうがいわば支給開始年齢を六十歳にしている、こういうふうなこともありますので、そういったようなことを勘案して六十歳ということにいたしているわけでございます。そして六十四歳までの間に経営移譲すれば経営移譲年金を支給すると、こういうふうな考え方でございます。  定年というふうに考えるかと、こういう御指摘でございますけれども、この制度は、いわば農業者自身の自主的な意向によってやることにまかされているわけでございまして、かりに経営移譲というものを六十四歳までにやられなかった場合でも、持ち出しにならぬ程度の老齢年金を支給するる、こういうふうなかっこうになっているわけでございます。何といたしましても、経営移譲というものが、加入者の自主的意向によって行なわれているというようなこと。それから経営移譲されてから後、公務員の定年と同じように、役所に出て来ちゃいかぬ、ということではなくて、農業後継者なりなんかが営んでおります農業経営に従事することを妨げるものではございません。  それで、そういうようなことからいたしまして、われわれといたしましては、農民の定年を六十歳というふうには考えていないわけでございます。ただ、この年金制度ということであるならば、やはり厚生年金の支給開始年齢等を考慮して、六十歳というのがいいのではないだろうか。五十九歳ではいかぬ、あるいは六十一歳でという話になりますと、そこはやはり厚生年金並みというようなことから、六十歳という支点を制度化した、こういうことでございます。
  53. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 こういう問題で長く論議しておってもしようがないんですけれども、ただ、先ほど私が申し上げたように、「中核農家」ということばを出された。その「中核農家」というのは五十九歳までだ。妙な数字で五十九歳と書いてあるのです。それまでは「中核農家」であって、それが、これから日本の農業を背負って立つものだ、というふうに、大きくそれを打ち出したわけです。そして、六十歳以上でやめるものについては、いま言ったように、五十一年からは、一年に一万七千幾ら出しますよ、六十五歳からおやめになりますと千七百円ですよと。これは奨励です、勧奨です。それじゃ、一体、六十歳以上の基幹労働者というのは、農業に従事している基幹従業者というのは、幾らあるんだということを見ますと、農林省の統計で明らかなように、農業に従事している男子の基幹従事者の数というのは、割合というもの、構成というものは六十歳以上は、どんどんふえているんですよ、もう。いま三〇%をこしているんですよ。これは農業の実情じゃないでしょうか。三〇%をこしておるんですから。それがどんどんふえておるんですね。そこら辺に私は、いま、まあこの農業者年金というのが、厚生年金国民年金の中間をねらって出ざるを得なかったという宿命も感じます。承知をしております。ですけれども、どうもこういうものがあるために、妙なことになっておるんじゃないかと。農家の実情なり農村の実際のあり方というものとは相当矛盾したものを持っておるんじゃないかという感じを私は持つんですけどね。まあ、それは答弁しいて要らないですよ。  ただ、いま言ったように六十歳以上の農業の基幹従事者というものは、これは年々ふえてきている、そして構成比がいま言ったように三〇%をこすようになっていると。それで、六十歳が、何か勧奨退職みたいな、勧奨移譲みたいな形のものが出てくる。それから今度は五十九歳までが「中核農家」だということばが出てくるという点に私は、大きな問題があると思う。まあ、これは年金があるからでしょう、しいて五十九歳にしたのは。だけど、農業政策考える場合に、こういうものでは私はおかしいと思うんですね。これはそれまででおきます、時間たちますから。  そこで、もう一つの事業——いまのは農業者年金です。農業者年金は同時に、離農給付金の支給事業というのをやっておるわけですね。これは発足当時、五十五歳以上で加入できなかった者について、離農を援助促進する、そして、その離農者が手放した農地というものを、規模拡大に役立たせると。そのために、離農者に対して給付金を出してやるという、そういう事業をやっていらっしゃるわけです、この年金は。御存じのとおり、この法案一つの目的になっております。これが、こういうふうに五十五歳以上で加盟できなかった者で、できるだけ離農するように援助をする、奨励をしていく。そしてその離農した農地というものを、経営規模を拡大するように、そっちへつけ足していくというために、三十五万円と十五万円ですか、三十五万円と十五万円の二種類の離農給付金を出している。ところが、この事業は非常に件数が小さいですね。まあ、三年やってみて——これは十年間で終わることになっておりますが、三年やってみて、これがわずかに八千件なんです。三年間で八千件ですね。この中に——農家の離農というのは年に九万戸、これは三年たちますと二十七万戸というものが離農していることになる。その中が全部、経営移譲ということになりませんが、ですが、その中でわずかに八千戸しか離農給付金というのは支給できない、できなかったんです。これは一体どういう理由か。その理由を一つ聞くのと、この八千件というのは、政府の事業として、国の事業としてやる価値があるかどうか、政策的な価値があるかどうかという点。この二つについて伺いたい。
  54. 大山一生

    政府委員大山一生君) 離農給付制度、これは五十五歳にすでになっておられるような方で、いわばもう加入するにも加入できない人に対する一つの施策といいますか、こういうふうなことがございまして——国会における御指摘もあったような次第でございます。で、離農給付金につきましては、そういうような趣旨から、そしてまた一方では、構造政策を推進するというかっこうからいたしまして、いわば全額国費でもってこれを実施しているわけでございます。  確かに御指摘のように、当初予定しましたよりははるかに少ない、毎年の実績が三千件程度に推移しているというわけでございますけれども、やはり何と申しましても、最近におきます地価の上昇でありますとか、あるいは農地の資産的保育の傾向と、こういうようなことからいたしまして、これが影響を受けているというふうに考えるわけでございます。で、離農給付金というのは、御存じのように、年齢制限で入り得ない方の後継者に移譲という問題が対象になっていない、ということがこの実績の少ない一つの原因であるというふうに考えるわけでございます。
  55. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いずれにしましても、この法律が二つの面を持っておって、一つは社会保障的な面と、もう一つは、農業政策の面、規模拡大、そして農地の流動化という二つの面を持っておるわけで、その一つの重要な仕事として、この離農者に対して全部国が負担をして、そして離農を援助する、奨励をしていく。そしてその土地というものが経営規模拡大に資せられるような施策を行なうということで、全部国庫負担で離農の給付金というものを支給した。しかし、それが三年運営をしてみて八千件であると、これは国の政策として遂行する意味があるのかどうか、私はたいへん大きな疑問だと思う。それはいろんな理由があります。何がゆえにこうなったかということについてはいろんな理由がありますけれども、少なくとも八千件程度のもの、年間に三千件ですよ。それが一体政策として意味を持つのかどうかという点に大きな疑問を持つという点を指摘をしておきたいと思います。  次にお伺いをしたいのは、私はここのところでも言いたいんですが、これ離農に対してこういうふうに全額国が国庫負担してやるんならば、移譲年金によって経営が若返るということに対して、国が負担をしていくということだっていいと思うんです、これは。政策なんですから、国の政策なんですから。年金じゃないんですよ、これ。国の政策なんですから。ですから、先ほど足鹿委員が言われたように、これは国が負担もしていいというふうに私は思うんです。その程度の決意がない限りは、先ほど私が申し上げたようなことにしかならないんですよ。自然の流れにしかまかせる以外にない。自然の流れですよ、いまは。中核農家、自立経営農家が、年とったら若い者に譲っていくというのは、これは自然の流れであって、どこにも政策の入る余地はない。政策を入れるんならば、それは年金という形よりももっと違った形で入れる。年金でもいいですけれども、全部国が負担するというぐらいな、この離農給付金と同じようなシステムをとってやる必要があると私は思うんです。けれども、まあしかし、それは先ほど答弁がありましたから、これぐらいにいたします。  次にお伺いしたいのは、もう一つ問題は、この法律がやるもう一つのこの規模拡大には、農地の買い入れ及び売り渡しの事業、売り払いの事業というのがありますね。農地を買って、そしてそれを経営規模の拡大のために売るという政策ですよ。これは言うなれば、確かに農家が掛け金をかけていくわけだから、その掛け金でもって農地を買って、そしてそれを経営規模を拡大する者に売渡していくという政策、この政策がもう一つの柱になっている。ところがこの面積はどうですか——三年たってみて、七十件ですよ。面積は幾らかというと九百四十一ヘクタール。特に四十八年はもう三件しかない、四十八年はわずか三件なんです。だから三年合わしてみて七十件ですよ。まあ県がやる政策としてはうなずけますよ。国がやる政策としてこういうものが政策の意味を持つのかどうか、価値があるのかどうかという点ですね、私は、これはもう価値ないと思うんです、こんなものは。まあこう言うと、農業者年金をぶっつぶすようなことになるんだけれども、しかし、要らぬものは捨てたほうがいいですよ。たった三年やっておいて七十件です。これで農地を買って、そしてその経営規模拡大のためにこれを売り払うんだというような仕事、これが七十件、面積が九百四十一ヘクタールじゃ、しかも四十八年はもう三件ですよ。四十九年は二件ぐらいになっちゃうんじゃないですか。一件になるのかな——というぐらいな感じを受けますよ。一体これは政策としてどういう意味を持っているのか。私は、もう意味はないと。まあ村がやるんならまだ意味がある、市町村がやるなら。国がやるには、政策の意味はないと思う。
  56. 大山一生

    政府委員大山一生君) 農地の買い入れ、売り渡しの実績、これは御指摘のように四十八年十一月現在で九百四十一ヘクタール、まあ買い入れが九百四十一ヘクタール、売り渡しが五百二十九ヘクタールと、こういうふうな非常に少ない数字になっていることは御指摘のとおりでございます。離農給付金でもそうでございますけれども、やはり何と申しますか、地価上昇、これは地帯別に見ますと、地価上昇によって総体的に低い。農業的な色彩の強い地域においてこれが集中して起こっている、こういうふうなこともございます。これと同じようなことが、この農地等の売買売り渡しにつきましても言えるわけでございまして、やはり何と申しましても、農家の場合における農地の移動というのが、相互の間で直接行なわれる傾向が強い。それで、自分の自己資金だけではなかなか対処できないような大面積の移動がある場合に、この制度が活用されている、というのが現在の実態であるわけでございます。したがって、端的に申し上げまして、この買い入れ、売り渡しの実績が出ておりますのは、もう北海道に集中しているというのが現状であるわけでございます。  で、釈明するわけではございませんけれども、先ほどのように、離農給付金のほうにもいわば第三者移譲というのを今度対象にするというようなこと、第三者移譲の中で、いわば使用収益権の設定というのも対象にするというようなこともしているわけでございますけれども、こちらのほうにつきましても、いわば経営移譲年金というものが支給を開始されるというような五十一年以降になりますと、これは相当大幅にこれが活用されるようになってくるのではないだろうかと、こういうふうに考えているような次第でございます。農地保有合理化法人とも競合する面なしにあらずというような問題はございますけれども、やはりこの買い入れ、売り渡しというものの今後の政策的意味ということになりますと、やはりこの制度が完全に本格化する五十一年一月以降に期待したいと、こういうふうに考えるわけでございます。
  57. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 局長のおっしゃるように、五十一年の一月一日から具体的に経営移譲年金というのは始まるわけだから、その後の買い入れ、売り払いに対して期待をしたいということでありますが、私は大きな疑問を持っているということを申し上げておきたいと思います。  いまお話のございました農地保有合理化法人ですか、四十件ほどありますね。これはちょうどこの農業者年金が発足するころに発足したわけですね、いま四十件になっている。この買い入れは相当進んでいますね。私、それで、計算させてみたら約三万二千ヘクタールぐらいです、約三年ぐらいの間に。一方の、農林年金基金のほうは、けたが三つぐらい違っちゃっている、九百四十一ヘクタールですから。ですから、いま農地保有合理化法人ですか、これと、いまの基金のやっていらっしゃるこれとの相互関係については、検討する必要があるというふうに私は思いますが、それを一つ申し上げて。もう一つ、この基金がやっているもう一つの柱、それは、農地の取得のための融資事業をやっていらっしゃるわけですね、経営規模を拡大するために。経営規模を拡大するために、農地の取得のための融資の事業をやっていらっしゃる。ところが、これもあまりにもまた小さいんですね。三年間に三百六件ですよ、三百六件。あまりにも小さい。それで、これを県別に見ますと、関東の六県は三年間ゼロ。近畿から中国、四国あたりになりますと、もうゼロのところが、ばらっとですね。九州も、何か一件あるところが三つぐらいあるのかな。ゼロというところが相当件数ありますよ。これも私は、全国、国の政策としてやるというのはどうかと思うのですね、こういうものを。  これも先ほど局長がおっしゃったように、五十一年の一月一日から事業を開始する、その基金が始まるので、そのころになったら、これがまた効果を発揮するという御答弁になるし、期待をしているのかもしれません。しかし、どうもわずかに三百六件で、そして県別に見ますと関東諸県は三年間に一件もないわけですよ。それから東海三県はこれも一件もない。近畿も六県のうち和歌山だけがある、あと五県はゼロ、三年間何にもなしと、この意味ですね。これは私はたいへんだと思うですね、これ。ですから、もし、先ほどおっしゃったように、五十一年の一月一日から移譲年金が始まるのでこれもそのときに期待できるということであればそれはまたそれとして承っておきたいと思います。
  58. 大山一生

    政府委員大山一生君) この農地等の取得資金の融資実績でございますが、先生御指摘のように、確かに北海道、九州等の農業的色彩の強いところに集中している、これは確かでございます。この融資業務というのが、被保険者が離農農地を一括取得する場合に活用すると、こういうこと。逆に言いますと、挙家離村の多いところが中心になってこの制度が活用されている。こういうことでございまして、これにつきましては、先生御指摘のように、件数は少ないとかの話でございますが、四十八年の十一月までの実績では、確かに四十八年は昨年の半分以下と、こういうことでございますけれども、現在の見通しといたしましては——四十七年が十四億ですか、四十八年は二十億という融資ワクを持っているわけでございますが、この点につきましては、年内には満額消化されるような見通しであるということが言えるんではないだろうかと、こういうふうに考えている次第でございます。
  59. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 四十六年と四十七年と四十八年の十一月一ぱいで三百六件で、融資額は八億、八億九千万円。局長のおっしゃったのはそのワクじゃないですか、ワクの総計じゃないですか。
  60. 大山一生

    政府委員大山一生君) 四十六年が二百万円、四十七年が十三億六千四百万円、四十八年の十一月までで七億四千九百万ということでございます。
  61. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 はいわかりました。いずれにしましても、私は、いまこの法律の成立過程から見て、この法律の目的である二つの面、つまり年金の面、社会保障的な面と、もう一つ農業政策の面、この二つの目的を持って発足したこの農林年金というものが、三年運営をしてみて一体どういうところにいまあるのかということを見た場合に、どうも私は非常な、まあ私に言わせれば非常な時代にあるんじゃないかというふうに思うんですよ。これは逆の方向からいいますと、いまの農地を取得するための融資の状況にいたしましても、国の政策としては、わずかに三年間に三百六件というのでは、県がやるにしても、これはもう政策としてはあまり意味がないというふうに思わざるを得ないし、それからあるいは農地の売り渡し、買い入れの需要にいたしましても、これもどうも小さなものであって、まことに微々たるものであって、これももう話にならぬじゃないかということになりますし、それからもう一つ加入の状況から見て、たいへんいびつな状態になっている。いまや、言うならば自立経営農家と中核の農家を圧倒的な中心にした年金になっている。そして、それが年とったら経営移譲をしていくという自然の流れの中にしかないんじゃないか。したがって、農業政策の面というのは——農政の面というものは、非常に小さなものになっちまっている。  そこで、大臣お尋ねをしたい。ごきげんよく私の意見を聞いていらっしゃったわけです、ごきげんよく聞いていらっしゃったから。そこで、一体いまの農林年金の実情はどうなんだと。二つの目的を持って発足して三年たったけれども、いまの農林年金というものは農業政策の面というのがこれは消えうせようとしている、こういう状態にあるのではないか。もしここで、そうではなくて、法の本来のたてまえからいって、社会保障の面と農業政策の面と二つ兼ね備えてこの年金が運営されるというのであれば、私は、それに賛成するとか反対するとか別にして、国の政策としての負担というものを、ふさわしく持たなければ意味がなくなっている、意味ないという事態になっている、ということを私はいままで論証をしてきたわけであります。これについて、まず、局長に答弁をしてもらって、大臣は、その答弁を受けて大臣が答弁をするのがいいでしょう。
  62. 大山一生

    政府委員大山一生君) 基本的な考え方といたしまして、国民の老後生活を安定させねばならぬというのは、確かに国全体の施策であり、将来の方向だと思っております。この点につきましては、これはすべての国民を通じてそういうことへの寄与というかっこうで進むべきものであろうというふうに考えるわけでございまして、そういう中において仕組まれます農業者年金ということになりますと、やはり構造政策ということを推進する中で、経営移譲というものを支給要件とする年金と、こういうふうなことであろう、こういうことで当初から発足したわけでございます。まあ発足後もう三年——まだ三年と言いますか、とにかく三年たったわけでございまして、加入者の数にいたしましても、当然加入は六六%、全体としてはまだ満足すべき加入状態にはなっておりません。したがいまして、この点については、われわれはあらゆる努力を払って、農民のコンセンサスを得る中でそれの加入率の増加ということにつとめねばならぬというふうに考えます。  それから、まあ確かに離農給付金の実績なり、あるいは農地の売買あるいは融資業務というようなことにつきましても、それ自体から出る限りにおいては、先生が高く評価されるほどの実績になってないことも事実だと思います。しかし、われわれといたしましては、やはり問題といたしましては、他の構造諸施策の推進と相まつ中でこれらの問題について対処してまいりたい、というふうに考えるわけでございますけれども、何と申しましても、やはりいまの時点でこの年金についての評価をすべきではないだろう。やはり五十一年時点になって、経営移譲年金が支給を開始されるようなことになって、われわれとしては、相当の効果が発揮されるものと期待している、こういうふうなわけでございます。まあ、しかしながら、農業者年金だけで構造政策が遂行できるわけではございませんので、他の諸施策と相まちまして、これの、構造政策の推進について努力してまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  63. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農業者年金制度は、優秀な経営担当者の確保、それから経営移譲促進、それから経営規模の拡大等、まあ、そういう農業者老後生活の安定を密接に関連いたしておる点に着目いたしまして、年金制度という形を踏まえながら、そういう手段を通じてこの農業経営の近代化、農地保有の合理化をはかろうといたしておることは先ほど来お答えいたしておるところであります。したがって、この制度におきましては、経営移譲を支給要件といたしまして、厚生年金制度並みの水準経営移譲年金を支給することによりまして、いわゆる適期に、この経営移譲をしない者についても六十五歳以後、国民年金をあわせて農業者老齢年金を支給するということにいたしておりまして、農業者老後生活に資するものであると考えておる次第であります。  それから農業者年金制度は、創設後、先ほど来お答えいたしておりますように、日が浅いために、本制度政策効果を現時点で判断をいたしますということはちょっと困難でありますが、昭和五十一年からは経営移譲年金の支給が開始されることになりますれば、相当にこの効果が発揮されるものとわれわれは期待をいたしておる次第であります。  なお、農業者年金制度が所期の目的を達成いたしますためには、各種の構造政策と密接に関連づけながらこれを実施、運営してまいるということが必要であると考えております。
  64. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、いままでの経過から論じまして、重ねて申し上げておきたいんですけれども、二つの目的を持ってこの農業者年金というのは運営されてきていると思う。しかし、加入の状況から見れば、経営を拡大するという方向ではないというふうに言っていい。さらに、離農を進めるということでお始めになったこの離農給付金、これもまことに貧弱なもので、国の政策としてはいかがなものかと思う。さらに、農地を買い、そして農地を売り渡し、そして経営を拡大をするというこの政策もまことにみじめなものである。政策とは言いがたい。さらに、金を貸して、そして融資をして、そのことによって規模を拡大しようということも、これもまことにお恥ずかしい話である。したがって、この農業者年金というのは、農業政策の面というもの、年金の半面である農業政策の面というのは、これは異常な事態にあるというふうに見なければならないと思う。したがって、これを本来の法の趣旨に従って運営しようとなさるならば、これは国の出費というものをもう少し投ぜられる必要があると思う。そうでない限りにおいては、この農政の面というものは、これははなはだ異常な、いびつな状態になっちまって、単に中核農家や自立経営農家の経営を若返らせる、その点だけのみにこれから役立つにすぎない。金を投じない以上、そうだと思う。しかも経営が若返るそのことも問題がある、大きな問題があるというふうに私は考えております。  以上をもちまして、この農業者年金は、時間の関係もありまして終わりたいと思いますが、もう一つ、実は、きょう水産庁長官においでをいただいて、漁業者年金というものを少し詰めたいというふうに思っておったわけです。ですが、時間の関係もありまして……。この農業者年金に対して漁業者年金というものも考えられるべきであるという附帯決議を、この間、水産三法が通りますときに水産振興の決議案として出してありますが、ぜひこの問題の検討もすみやかに進めていただいて、適当な時期に水産庁長官もおいでいただいて、農林大臣と並んで、この問題についての論議をやりたい。こう思っております点をつけ加えまして終わりたいと思います。——大臣、何か答弁ごさいましたら、いただいておきます。
  65. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) これは、先般、水産三法のときの御決議でございまして、私のほうも、その御趣旨を尊重して検討いたします、とお答えいたしておる次第であります。農業者のほうとは、御存じのように、いろいろ仕事の面において違うものもあるのですが、私どもといたしましても、こういう方々のためになることでありますならば、十分これは検討してまいりたいと思っております。
  66. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、農林年金についてお伺いをいたしますが、この農林年金について、まず財政の問題について足鹿委員が詳細にわたりまして論議をされて、また、附帯決議にもなっておりますので、この点は省略をいたしまして、ただ、二、三点お尋ねをしたいわけでありますが、それはこの農林年金を私に言わせますというと、その目的を果たしていない面があるという点を非常に痛感するわけですが、それは掛け金がたいへん高い、千分の九十六という掛け金になっておるわけですが、同じ共済年金にいたしましても、国家公務員の共済年金は八十八というのでありますが、非常な高さですね。私学共済が千分の七十六というんでありますから、これと比べましてもたいへんな高さにある。にかかわらず今度は給付がこれまた一番低い、共済年金の中では一番低い、目立って低いということなんですね。これは掛け金が一番高くて、そして給付はまた一番低い。これは一体どうなさるおつもりかという点なんですよ。これは国の補助の問題やらいろんな問題とからみますけれども、これを見て聞きたくなる。どうなさるおつもりか。
  67. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 確かに先生御指摘のとおり、農林年金掛け金率は国鉄共済を除きますと最高に高いということになっております。また、給付のほうは異常に低いとおっしゃいましたけれども、確かに受け取る年金額そのものを比べた場合には必ずしも高いとは言えないわけでございます。ただ、先生これはおそらく仕組みを十分御承知の上でおっしゃっていると思いますけれども、多少申し上げますと、このようなことになっております原因は、やはり農林年金を組織しております農林漁業団体職員の給与といいますか、それが残念ながら他の共済組合の組合員の給与と比べた場合に、これは低い。したがって、そういう低い給与を基準といたしましていろいろ計算をされる結果、受け取るべき年金の額が低くなるということだろうと思っております。これも蛇足かと思いますけれども制度そのものは必ずしも悪い制度ではございません。むしろ厚生年金等から比べますと、給付内容はより充実をしているといって過言ではなかろうというふうに考えているわけでございまして、問題はやはり農林漁業団体職員の給与の改善ということが受け取るべき年金額の増額につながるというふうに考えているわけでございます。
  68. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 賃金が低い。したがって、その掛け金はべらぼうに高い、そして給付はまたこれべらぼうに低い。一番高くて一番少ない給付、こういう状況なんですね。しかし、これを見て何とかしなきゃならぬというふうにお考えにならないのもおかしい。何とかすると、こういうふうにする、というふうにおっしゃってもらいたいわけですよ。私は、この間、これは工藤委員だったと思うんですが、質問をしましたときに私学共済の問題出ましたですね。そのときに、局長の答弁聞いておりましてね、これは地方自治体が、公立学校として地方自治体がやる面もあって、こういうふうにしているんだというふうな話をなさったですけどね。私は農業諸団体にいたしましても、農林漁業団体にいたしましても、そういう意味合いは持っておると思いますよ。むしろこの私立学校共済に対して都道府県が援助しているのは、公立学校に対して私立学校の給与が二割五分ぐらい低い。私は賃金の専門家だから、長年やっておりましたから知っているのです、これ。二割五分ぐらい低いですよ。いまもう少しちぢまったかもしれませんがね。二割五分ぐらい低い。非常に低い。したがって、掛け金も高くなるし、給付は安い、低いということになるだろうと思うのですよ。せめて掛け金でも安くしようということでしょう。だから都道府県が出すということにしたんでしょう。その点を踏まえるなら私は、農林漁業団体にいたしましても同じことだと思うのです。学校の先生よりももっと賃金が低い、掛け金は二〇%高いですよ。千分の九十六と千分の七十六で二十違うんですよ。二十も違ったらたいへんです、これ。いま千分の二上げるとか、千分の三上げればたいへんな話です。それが二十も違っているのです。これに対して何らかのやっぱり考え方を持つという基本的な姿勢を出してもらいたいと思うのですよ。これがないのだから、それはきまっちゃっているから、大蔵省と折衝なさったり、いろいろ関係方面と折衝なさって、こういうことになったから、したがって、それにつじつまを合わしてやるために、お話をなさっていると思うけれども、しかし、やりたいのだ、こうやってきたのだ、これから何としてもやるのだ、という形を出してもらわないと、ここで論議する意味はないですよ。きまったことをそれきり話されたんじゃ意味がない。その点についての考え方を……。
  69. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農林年金につきましては、組合員の掛け金負担の軽減をはかりたいと思いまして、私学共済と同様に都道府県の助成を導入することにつきまして、農林省では、関係省としばしば協議を行なってまいったのであります。私学共済につきまして都道府県助成が行なわれていることの理由として、公共団体が行なう教育を私学が肩がわりしていることに着目いたしまして、施設費、それから人件費の補助として行なわれているものであるとされております。農林漁業団体について、都道府県助成を導入することにつきましていかなる理由づけをするか、また、補助に伴う都道府県の財源措置をどのようにするか、などの問題がありまして、残念ながら今回の協議がととのわなかったのでありますが、今後とも、この問題については関係省庁とも十分協議し、検討いたしてまいりたいと思っております。
  70. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この問題に対しましては国の問題もありますし、都道府県の問題もありますし、同時に、人材確保という面からいって、これは農林漁業団体の経営者当局の負担の問題についてもいろいろ考え検討していかなければならぬ問題があると思っておりますので、そういう方向で今後とも大臣の御尽力を要望いたしたいと思っております。  それから、先ほど申し上げました、局長から答弁がありました農林漁業団体の賃金が非常に安いという点について、安いというのが二通りありまして、一つは、全体として低いということと、もう一つは、中央段階と県段階と町村段階。農協でいいますと、単協と県連と全国連、この差が非常にあり過ぎるという問題ですね、これが一つあるわけですよ。これはいずれいろいろな機会がありますので論議をしたいと思いますけれども、全国段階を一〇〇といたしますと、県段階は大体八〇ぐらい、そうして単協が六〇ぐらい、六〇ちょっとというふうに見ていいんじゃないでしょうか。ですから、私は、農協というのは、原点は単協にあると。何といっても、農協というのは原点は単協で、その単協に対してサービスをするために県連ができている。県連をはじめ単協のサービスのために全国連ができている、というふうに思うのです。にかかわらず、賃金が、こういうふうに中央と、県の段階と、町村の段階との間にたいへんな格差があるということは、非常に大きな問題だと思う。私は、これは学歴の差だというふうな考え方もあって、若干検討してみました。これは学歴の差ではないですね。つまり、女性をとってみるとすぐはっきりわかる。女性の場合というのはそれほど学歴の差は出てない。女性をとってみてもほぼ同じような段階になっています。  ですから、この問題が一つと、もう一つは三年前でしたか、私は農協問題についてやりましたときに、農協の労働基準法違反というのが非常に多くて、農林省としても労働基準法違反について全国的に調査なさったこともある。これはあるいは労働基本権に対するこういう理事者側といいますか、経営者側の姿勢という問題にもたくさんの問題がある。ですから、それらを含めてこれは論議しないというといけないと思うのですけれども、この問題はいずれまた機会をみまして、この賃金の問題については考えたいと思うのですが、ただ、今度の春闘の妥結状況といいますかを見ますと、やはり単協の値上がりというのは非常に小さいのですね、非常に小さい。だから、今度の春闘を見てもたいへん小さい。単協の場合、平均して一万八千円ぐらいの賃金になりますね。ですから非常に低いのですね。ですから、こういう問題について、私がいま申し上げた中央と全国連と県連と単協との間にたいへんな格差があるという問題と、それから労働基本権なり労働基準法違反についての問題と、それから、こういう賃金の低さという問題について、農林省としてはどういう考え方を持っていらっしゃるのか、その点だけを伺っておきます。
  71. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 一般的に農林団体の職員の給与というものは、ほかに比べて必ずしも高いといえない段階でございます。また、御指摘のとおり農林漁業団体職員の給与につきましても、市町村段階、府県段階、全国段階を比べますと市町村段階を一〇〇にした場合、府県段階が大体一三〇、全国段階が二八〇というような格差、これはあまり変わっておらないようでございます。  ただ、こういうような格差があるということについて、まあどれぐらいの——全国一律であるということがいいかどうか、これも問題がございますが、地域的に物価その他が違いますから問題がございますが、じゃ、どのくらいの格差が適当であるかという問題につきましてはなかなかむずかしいことでございますが、一応、公務員と、それぞれの市町村段階、府県段階、全国段階の公務員の給与と比べた場合、全国段階ではほぼ拮抗するような水準になっているといえるのではあるまいかと思います。むしろ格差が開いておりますのは府県段階でございまして、府県段階の場合には、団体職員と地方公務員の職員の給与とは公務員のほうがはるかに高い段階でございます。市町村段階にいきますと、その格差は大体一〇%から二〇%の間ぐらいというふうに私どもは見ております。で、私どもやはりこういう格差があるということ、これは事実でございますので、なるべく早い機会に格差を縮めるように努力はしなければならないと思っております。  で、趨勢も若干申し上げますと、四十年以来の団体職員の給与の改善によりまして、若干ではございますが、格差は縮まる方向にあるということはいえると思いますが、なお現状でも差がございますので、私どもといたしましては、農林漁業団体職員の賃金のあり方等につきまして、なかなかむずかしい問題ではございますけれども、あらゆる機会を通じましてそういうような方向で努力をいたしておるわけでございます。しかし、いま先生御承知のとおり、農林漁業団体職員の賃金を確保するというものは、その支払い財源の確保というのが第一に必要でございますが、これはやはり農林漁業団体みずからの自主的な努力というものが第一でございます。これはやはり国なり、都道府県、その他からの援助をまず第一に期待すべきものではなかろうというふうに考えるので、私どもは、やはりそういう農林漁業団体の経営基盤の確立といいますか、そのためにはあらゆる努力は惜しまないつもりでございます。
  72. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それにはまず、農業政策を転換しなければならない面が非常に大きいと私は思っておりますが、だから、その意味では農林省も大きな責任を負っている。政府も大きな責任を負っておるというふうに思っておるのです。  あと労働基準法違反の問題はどうですか。いずれあらためてやりますが、考え方を聞いておきたい。
  73. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 基準法違反の問題につきましては、しばしば国会の場におきましても御指摘があるわけでございまして、私どもは、農協が、その仕事の内容、職員の勤務状態等によりましてなかなかむずかしい状態にあるということは承知いたしておりますけれども、だからといって、基準法違反の状態があっていいわけのものではございません。そこで、あらゆる機会を通じまして、私どもは、こういうような状態の解消に努力をいたしてきておるわけでございまして、全国段階、特に指導的に地位にある全国団体に対しましては、あらゆる機会を利用いたしまして末端の団体の管理者、責任者に対します研修を充実するようにということをお願いをいたしておりまして、全中それから共済連等を中心としまして、そのような指導が現に行なわれているわけでございます。ただ、現状におきましても、いろいろ聞くところによりますと、なお違反の状態があるやに聞いておりますので、最近でございますけれども、地方農政局を通じまして、農業協同組合の労働基準法の順守状況の実情把握をいたしたいということで、いまその指示をいたしておるわけでございます。その結果を待ちまして、さらに必要な措置を至急したいというふうに考えるわけであります。
  74. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これ局長にお伺いしたいのですけれども、例を取り上げて説明をしてもらいたいのですけれども、二十年農協におって——まあ単協でいいです、単協に二十年おって年金がついています。そうして、すぐほかの農林漁業団体に就職をした。局長じゃなくてもいいですよ。実務の人、課長でいいです。二十年つとめて、年金を受けられるのだけれども、やめて、五十五、六で、定年みたいなものですから、やめて、定年のない農林漁業団体に就職をした、というときの年金の受給はどうなのか。それからその先はどうなのか。そうして五年なら五年つとめてやめた場合の年金はどうなのか。もう一つは、同じ農協なら農協に二十年おって、やめて、そして民間団体、民間の会社に入った場合、厚生年金が受けられるその団体に入って五年つとめてやめた場合、そのときの年金の状況、その二つについて説明を聞きたい。これは実務者でいいですよ、局長や審議官知らぬだろうから課長でいい。
  75. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まず最初の例について申し上げますが、最初の例は、農林漁業団体に二十年以上つとめて、やめられて、それから別の農林漁業団体に就職をされたという場合の年金給付関係でございますが、最初の団体に二十年以上おられたわけですから、当然これは年金をもらわれるわけでございます。ところが、別の農林漁業団体農林漁業職員共済組合ですか、の所属団体である農林漁業団体に所属いたしますと、これまた組合員になるわけです。組合員になりますと、この年金の支給は停止されます。これは年金受給者というのは組合員をやめたとき、組合員以外の者に対して授給されるという関係がございますので停止されます。しかし、またその団体をおやめになるというときには、前の勤務年限に後の勤務年限を加算をいたしまして、合計の勤務年限に相応する年金が支給されるという関係になります。それからあとの、農林漁業団体で二十年以上つとめまして、やめて、農林漁業団体以外の会社等につとめられた場合、これは前の農林漁業団体の勤務年限に相応する年金を受けられます。なお、会社につとめておられても一年金は支給されます。で、会社をそのときにやめられた場合には、おそらく厚生年金に入るか入らないかはあれですけれども、入った場合でも、二十年以上勤続ということはないでしょうから、そのときには、脱退手当金をもらわれると。その間、農林年金の受給は継続をしているという関係になると思います。
  76. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 その場合にどっちが有利です。つまり農協なら農協に二十年つとめて、やめて、そして民間の会社に入って厚生年金に入る。そして五年たったら五年の通算老齢年金をもらうと、二つもらうことになります。一方、農協に二十年おって、やめて、農林漁業団体に入った場合には、年金はあるんだけれども、同じ組合員であるから受けられないと。そして五年たってやめた場合には通算をしてもらうというのと。
  77. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まあ、どちらが有利かというのは、具体的な計算をしてみればわかる点もありますが、またわからない点もございます。と申しますのは、やはりその間物価がどうなるか、その他のことがございますので——先生御承知のとおり、ベースの改定その他が入ってまいりますと、非常に複雑な関係になりますが、それを抜けば、これはやはり平均標準給与に掛ける年数ということになりまして、頭打ちはございますけれども、二十年をこえた場合には金額が上がっていくという関係にもございますので、普通一般常識的には、やはり最終的におやめになるときにすべてを通算をしてもらうというのが有利ではなかろうかというふうに考えております。
  78. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、農協に二十年つとめて課長になって、十万円なら十万円でやめたと、そしてほかの農林漁業団体に行ったと、そこでは月収七万円だと、それで五年たってやめたということを想定した場合と、それから一方は、先ほど申し上げましたように、二十年おって十万円でやめたと、そして民間団体に行って七万円という月給をもらって五年たってやめたという場合にどうかということです。これは、一般には何でしょう、こういうことでいきますと、これは農林漁業団体にとどまらないですよ。どうしてもこれは外へ出てしまうですよ。それではどうも問題があるのではないかと。だから、この農林年金の趣旨というのが、御承知のように、一つは人材確保といいますか、職務管理といいますか、という面があるわけです。それで、こういう制度があるために、やめてしまったら、これは外へ、村を出て行くというか、村から別の、町から別の会社に入るというのがもう一般になってしまった。しかし、定年のない農林漁業団体だってあるんだから、そこへ行って働いても十分働ける、能力も十分あるというんだけれども、そうならないというのが現状じゃないでしょうか。そこらあたりのことを考えないというと、この法の趣旨というものにそぐわない面が出てくる。そういう点についてどうお考えか。
  79. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 確かに先生の御説明のように、第二の職場である農林漁業団体の給与が、前の場合に比べまして低いという場合には、確かに最終時の平均標準給与というものが、まあ今回一年にしますけれども、三年平均よりもいずれが高いかどうか比べることにしますけれども、まあ三年平均した場合に、さらに低くなる場合には受け取るべき年金が低くなるというようなことになっております。まあ相当高年齢でおやめになりまして、さらに別の農林漁業団体にとどまられるという方には、現在の制度としましては、若干問題があることはいなめません。まあ将来の研究課題であろうというふうに考えております。
  80. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは、私は、農村においては、実際問題として深刻な問題だと思うのですね。ですから、すみやかに検討をして解決をしてもらいたい。そうでないというと、二十年たって、あるいは五十五になって——大体五十五ぐらいですよね、農協の場合は。そうしますと、あと農林漁業団体に定年制の六十歳までのところがありますしね、行きたいと思っても、十万円のものが七万円に下がってしまうのだったら、これはもう外へ出て民間会社につとめたほうがいいということになる。二十年の年金はもらいながら民間の会社の月給をもらって、五年たってやめるときにはこれまた、そこで年金ももらえるというような形になっておるわけですから。これじゃ人材が農村にとどまるはずないですよ。逆に農林年金というものは人材を追い出していると、五十五歳こすというと追い出してしまうということになっておるといってもいいでしょう。ですから、これはすみやかに検討をして結論を出してもらいたいということを要望しておきます。  大臣、このことどうですか。やってください、いいですか。早うやらなければいかぬです、これ。追い出しちゃうんです、これ。にこにこして聞いておっただけじゃだめですよ。すみやかにやるように大臣にもひとつ要望しておきましょう。
  81. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 検討いたしてみたいと思います。
  82. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 時間の関係もありますので……。  大蔵省見えていますか、——見えていなければ、あとでもいいです。
  83. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  84. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 速記を起こして。
  85. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ちょっと、二つだけにしぼってお伺いしたいのですが、厚生年金国民年金がそれぞれ三カ月、四カ月繰り上がってやることになったんですが、恩給とそれから共済年金について同じようにやはり繰り上げるべきではないかという点です。まあ制度としてはいろいろ差がありますが、しかし、厚生年金並びに国民年金の繰り上げについて、私どもが理解している最も大きな理由は、やはりいまの異常な物価高に対する、異常な事態に対する措置だというふうに思っております。それから言うならば、恩給についても、共済年金についても、国家公務員、地方公務員を問わず、いま問題になっております農林年金についても同じでありますが、やはり繰り上げて実施すべきではないかという点。  それから、もう一つは、これは参考人意見を聞きましたときに出たんですが、従来からも問題になっているんですが、公務員のベースアップにスライドする、それが一年半おくれの状態になっているというのが実情でありますが、これをできるだけ圧縮する、できるだけ早く年金にも反映するように措置をすべきではないか、この二つの点ですね。
  86. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) まず、前段の問題でございますけれども、ただいま御指摘になりましたように、厚生年金国民年金につきましては、最近の異常な物価の動向等を考えまして、先般衆議院におきまして、四十九年度限りの特例の処置として厚生年金国民年金の物価スライドの時期を繰り上げるという修正がなされたと承知をいたしております。御案内のように、厚生年金国民年金というのは、年金改定の仕組みが共済と若干異なっておりまして、厚生年金なり国民年金はベースとなります年金改定が毎年行なわれるわけではございませんので、財政再計算期と申しますか、一定の間隔を置いてベースになる年金改定する。その間隔の期間は、物価の上昇に応じて物価スライドでつないでいく、そういうことで、年金の実質的価値を維持するというたてまえになっております。ところが、共済年金なり恩給につきましては、従来の改定経緯を十分御承知のことと思いますけれども、毎年度年金額改定いたしておるわけでございます。その場合に、私ども改定の指標にとっておりますものは、これは法律に書いてございますが、「国民の生活水準」云々ということばがございますけれども、端的に申しますれば、御案内のように、国家公務員の給与改定率、これは公正な第三者機関である人事院の勧告に基づきまして政府が実施するベースアップ率でございますけれども、こういう改定率等を勘案いたしまして、毎年度の年金改定をやっておるということでございまして、簡単に申し上げますれば、厚生年金なり国民年金は物価であると、共済なり恩給というのは給与であると指標が。ということで、前者の二つの年金の物価スライドの繰り上げ時期が四十九年度の特例の処置として繰り上げられたということで、それと連動して直ちに共済なり恩給を繰り上げるべきであるという議論にはならないのではないか。  具体的な改定幅で申し上げますと、厚年なり国年は、先般確定いたしました四十八年度のCPIの上昇率一六・一%でございますけれども共済恩給につきましては、四十八年度の給与改善——公務員の給与改定率のほかに過去の水準差の補てん部分。それから、その他共済につきましては、年金改定の基礎になる給与の算定方式の改善、あるいは最低保障の大幅な引き上げ等々を行なっておりまして、それぞれ年金あるいは恩給によって上昇率は違いますけれども、たとえば恩給を例にとりますと、全般的に二七%のアップ率になっておりますし、受給者の層によりましては三〇%、五〇%上がる層がございます。それから、一方、農林共済につきましても、そういう基礎的な二二・八%のアップ率のほかにいま申しましたもろもろの制度改善の結果、やはり四〇%をこえる改善率ということになっておりますので、そういう比較から見ても、厚年、国年の物価スライドをやったから、直ちに共済なり恩給改定期を繰り上げるべきである、という議論にはならないのではないか、というのが私ども財政当局の率直な見解でございます。  それから、第二点の、従来の公務員のベアの改定期に比べまして翌年度、つまり十月からでございますから、まさに御指摘のように一年半の時間的おくれと言いますか、タイム・ラグがあるという議論は、従来からあることは私ども十分承知いたしております。ただ、この問題につきましては、共済なり恩給というものは一連の改定時期でもって動くべき性質のものと考えられますので、かりに一カ月繰り上げるといたしましても、相当膨大な財源を必要といたしますので、五十年度以降これをどういうふうに考えていくのかということは、御指摘のように一つ検討課題であると、将来の検討課題であるということは否定はいたしませんけれども、いま直ちにどうするかということについては、現時点で具体的な方向をお示しすることはできないというのが現状でございます。
  87. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 前者のほうの答えですが、国民年金あるいは厚生年金共済年金との関係についての差があることは承知いたしております。しかしし、その差があるから、ということが理由で繰り上げたわけではなくて、年金受給者というものが、異常なインフレの中で一番いためつけられておるというのが根本的な理由だと思うのです。その根本的な理由から言えば同じです。だから月の差はあったとしても、一方は三カ月、一方は四カ月という差があったとしても、これは共済年金についても考えるべき筋合いのものだと私は思います。差は承知しております。一方は物価であり、一方は賃金に対するスライドであるという差があることも承知しておる。内部において若干の差があることも承知しております。ただ、いま言ったように厚生年金国民年金を繰り上げたということは、これは言うまでもなく、年金受給者が、異常なインフレ下にあって、これが最も犠牲を受けているというところからだと思うのです。その点に問題をしぼれば、当然恩給にしても、共済年金にしても、これは何らかの措置を、本年限りといえどもとる筋合いのものではないかと、こう私は思っております。  それから、後者のほうのお答えでありますが、これはやはり長い間の経緯がありますが、やはり解決すべき課題として財政当局のほうでもすみやかに検討をしてもらいたいということを要望をいたしておきます。この点についてどうですか。
  88. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 厚年、国年の物価スライドと共済なり恩給改定時期は連動して行なわれるべきではないかという点につきましては、私どもは、必ずしも連動して考えるべき筋合いのものではないということでございまして、その論旨は先ほどの繰り返しになるので省略させていただきます。  それから後者の問題につきましては、五十年度以降の一つ検討課題として受けとめておくという率直な感じを現在事務当局としては持っております。
  89. 辻一彦

    辻一彦君 私、農業者年金法の改正案の審議にあたって農村の主婦の加入問題について二、三点お伺いいたしたいと思います。四十分ぐらいの時間でありますから、要点を二、三お伺いします。  その前に、まず第一に、農村の主婦の健康管理について少しお伺いをいたしたいと思います。産業構造や農業構造がずっと変わって兼業農家がたいへんふえて、成壮年の男子のほうは出かせぎ、あるいは職場につくということが多くなって、いま農業労働の中心は主婦の肩にかかっているという状況がかなり大きいと思います。特に、米作地帯等を見ても、そういう状況が非常に大きいわけでありますが、農林省として、主婦が農業労働の中に占める位置というものをどういうように把握をしておられるか、これをまずお伺いいたしたいと思います。
  90. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 御指摘のように、農業就業人口の減少傾向、それからまた、兼業化の進展ということに伴いまして主婦労働に対する依存度は、これは強まっているわけでございまして、これはまあ、たとえば基幹的労働者の中におきまする女子の比率でございますとか、その他いろいろな指標を見てまいりますと、まあ大体半分ぐらいが女子労働であるということでございまして、時系列的に計数的に非常に女子がウエートが高くなったということでは必ずしもございませんが、その態様は、主婦労働に対する依存度を強めているという実態にある。したがいまして、いわば営農面と生活面と両面において主婦労働というのは非常に、過重と申しますか、むずかしい問題をかかえているというふうに考えているわけでございす。
  91. 辻一彦

    辻一彦君 この主婦というものは、農業労働においてもおもないま、にない手になっておりますが、最近では、同時に、通勤の範囲内で出かせぎ、日かせぎといいますか、あるいは職場につとめるとか、こういう形が非常に多くなっている。そこで、農作業をやり、それからかせぎに行き、帰ってからまた農作業をやる。そして、それに家事、育児とこう加わって、主婦の状況を見ますと、非常に働き疲れて過労状況というものがあるように考えられる。こういうような農家の主婦の農外就労について、その健康と生活状態について、政府として調査をしたような資料があればお伺いをいたしたいと思います。
  92. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 主婦のいわば農業への就業あるいは他産業への就業、その態様はいろいろあるわけでございまして、たとえば水田のような場合でございますと、男子はたとえば兼業に出て、主婦が一人になっている。こういう形態もございます。それから、その他のたとえばかなり労働を要るようなもの、畜産でございますとか、果樹のように両者が農業労働を担当しているというのもございます。それからまた、主婦が農業もやると同時に、自分も兼業に出ていくというのもございます。いろいろな態様があるわけでございますが、いずれにいたしましても、主婦といたしますと、農業への従事、それから一部他産業への従事、それから家事労働、合わせまして労働過重になっているわけでございます。  そこで、これに対しまして、私どもは、一つの面では、これは農業の面ではいろんな対策を講ずる——たとえば、いわば省力化というようなことで対策を講ずるわけでございますが、同時に、生活面におきましても、御案内のように、私ども生活改善事業というのを持っておりまして、これを通じまして——いわば労働の適正配分と申しますか、そういうこと、営農と生活、家事労働への適正な労働配分ということ、あるいはまたそれに見合った正しい食生活でございますとか、こういうのにつきまして、生活改良普及事業を通じましていろいろ調査や指導をいたしておるわけでございます。特にその場合、これはモデル的でございますから、必ずしもこれをもって全般的というわけではございませんが、一つの調査の例としまして、私ども、四十年以降この健康管理の問題につきまして農山漁家健康管理特別事業というのをずっとやっておるわけでございます。  それからまた、四十三年から家族労働適正化特別事業というのを実施しておりまして、農業者の方、特に主婦の方の健康状態あるいは生活状態というのを調査しておりまして、これによりましてある程度健康管理の実態も把握しておりまして、それに対するいわば適正指導と申しますか、そういうのをモデル的に行なっておりまして、その普及効果をねらっているわけでございます。この調査はモデル調査でございますから、これをもって直ちに全国的にそうであるという断定はしがたいわけでございますが、この調査を通じますと、農家の方、特に主婦の方が何らかの健康状態の異常を訴えておるとか、特にいわゆる農婦症でございますか、そういうのにかなりかかっているというような徴候が見られました。これはもちろん、直ちに治療を要するというわけじゃございませんが。これは、いわば営農状態生活状態、こういうのを改善するということを通じまして、この主婦の労働に対して対応していく、という意味でそれを行なっておるわけでございまして、私どもの把握しておるものでは、こういったモデル的な特別事業で、そういった実態を把握したものでございます。
  93. 辻一彦

    辻一彦君 まだ、全国的な調査をして、つかまえていないようでありますが、それは、これからぜひやってもらわなければいけないことでありますから、その調査に待つとして、私も、この全国的な調査がなければ、お話しのように一つのモデルといいますか、地域の調査を見る以外にない。  そういう点で、たとえばこの福井県の農協婦人部が、十三市町村十五地区の調査を、去年の四十八年九月に行なっている。これをざっと項目を見てみると、ちょっと指摘をしてみますと、第一に、農外就労している主婦の数は五七%、約六〇%です。それからこの年齢を見ると、三十一歳から四十歳が四二%、四十一歳から五十歳が三五%、合わせて七七%。大体子供さんへの手が要らなくなったこの層に農外の就労が非常に多い。それからつとめ先は土木、建設等の現場といいますか、こういうところが三〇%を占めている。福井県は繊維関係が多いのでこれは三四%ありますが、これはかなり特殊な例だと思います。土木関係といいますか、建設関係に働く割合が全国的に非常に多いのじゃないか。それからつとめ人をするようになったその動機は、やはり経営規模が狭くなったというのが二七%、一番多い。子供が大きくなったという点もあります。それから収入の使途は、やはり生活費に回すというものが五二・五%で一番多い。  問題は、そのつとめの前後に朝晩に農業をやっているかと、こういう調査をしますと、二時間以内働いているのが五二・八%、二時間以上働いているのが一三・四%、言うならば六六・二%——六六%の農外就労をやってる主婦が、帰ってきてからまたその農業の作業についている、こういうことが言える。そこで、つとめて一番困ることは何か、という項目がずっとありますが、一つは、家事がおろそかになって困るというのが二三・二%ありますが、もう一つ過労になるというのが二一・五%、約二二%の主婦は、みずから過労状況にあるということを訴えているということが言えると私は思うのです。しかも、これを、先ほど御答弁の農婦症というような中身について調べてみると、肉体的な疲労を訴える者が六六・六%、精神的な疲労を訴える者が四九・四%、神経的な疲労が七〇・三%。こういうように見ると、この多数の主婦が、農外に就労し、あるいは帰ってきて、うちで働いて、そういう中で日々疲労が重なりつつあると。こういうことが、私は、かなり言えるのじゃないか。こういうものが蓄積をすれば、やはり重要な農村のにない手である主婦の健康にいろんな問題が、大事な問題が出てくると思います。  そこで、全国的に、これはまだ一つの、一地域の調査にすぎませんが、こういう健康管理のために健康の集団検診、そういうことをずっとやって健康管理をやっているわけでありますが、これが全国的にどういうように行なわれておるか、この点をひとつお伺いしたい。
  94. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) まあ私ども、実はこの仕事は、生活改善事業の一環としてやっているわけでございまして、そこでこの問題は、おそらく労働省の面もございましょうし、厚生省の面もあろうかと思いまして、私どもは、この健康管理特別事業という中で健康診断をしながら、いわばその一つの手段として健康状況、それから疲労状況、それから先ほど農婦症ということばが出ましたが、そういう状況というのを調べたわけでございます。したがいまして、まあおのずからどうしても対象がモデル的と申しますか、限定されるものでございますから、同じような手法をもって直ちに生活改良普及事業として、全部実態を把握するのはなかなかむずかしい点がございますので、やはり拠点的なモデル事業を通じてそういう中で健康、疲労、それから病気というものを把握していこうというふうに考えておるわけでございます。
  95. 辻一彦

    辻一彦君 それは、具体的に、たとえば主婦の健康の問題で血圧、あるいは血液の比重、さらに心臓病、婦人病、農婦症、こういうものについて、かなり調べられたデータが政府間にありますか、いかがですか。
  96. 島田晋

    説明員(島田晋君) お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘にございました農婦症、貧血でございますが、農婦症の研究につきましては、四十六年から、農業機械化による健康障害に関する研究ということで、日本農村医学会に委託いたしまして、農婦症等の研究を行なっております。また、貧血でございますが、四十七年から、農村における貧血の疫学的臨床学的研究ということで、これも日本農村医学会に委託して研究を行なっております。
  97. 辻一彦

    辻一彦君 この問題で四十分ぐらい聞きたいと思ったんですが、ちょっと時間が、全般の中で迫っておるようですから、省略して要点だけ、ポイントを二、三お伺いすることにします。  で、私もいろいろこの調査を見てみますと、懸念されるのは、主婦の血液を調べると、せっかく献血しても役に立たないというか、濃度が薄いというんですね。このパーセントが、たとえば男女の平均では四一・三%血液比重が軽い人があるんですが、このうちで女子は特に四八・八%、約半分が血液比重が軽いといわれる。これは明らかに過労状況をあらわしておると思う。それから心臓病、婦人病、それから農婦症等ずっとありますが、私はデータを紹介したりすることはもう省略しまが、全般的に見て、家の中で働き、それから外にいて働き、また、帰ってきて働く。こういうことで、過労状況はたいへん多いと、重いと私は思うわけですね。そこで、特に要望したいのは、この主婦のこういう過労状況については、十分な対策を立てて、集団検診、それから健康の管理等に注意してぜひとも十分に対処してほしい。これはひとつ要望しておきます。  そこで、あとの農業者年金の問題でありますが、こういう主婦の過労状況ということで、農村の婦人の中に、男子と同じように農業者年金の中に加入ができる道を開いてほしい、という声が非常にいままで強かったわけです。これは私も、昨年の八月二十八日であったか、農民年金法案の審査の中で、この問題を強く要請をしておきましたが、審議の機会要請しておきましたが、今度の改正案の中で、これは使用収益権の設定という点を通して道が若干開かれておりますが、ごく簡潔でけっこうですから、この主婦の要請がどうまず道が開かれようとしているか、簡潔にちょっと御答弁いただきたい。
  98. 大山一生

    政府委員大山一生君) 兼業農家が中心になると思いますけれども、妻につきまして本制度加入させろ、という御要請が非常に強いと。こういうような事態がございますので、今回の制度改正機会といたしまして、実質的に妻がその経営を主宰しているということでありますならば、夫からの使用収益権の設定を受けるというかっこうで加入するように措置してまいりたいと、こういうふうに考えるわけでございますが、基本的な考え方としては、先生御存じのように、この制度というものが、農業経営主として土地を処分する権限を持っている者、こういうことに着目してやっておりますので、妻であるからということだけでは困る。つまり実質的に妻が経営を主宰しているということでありますならば、夫との間に使用収益権を設定する中におきまして加入する措置を認めてまいりたい、こういうことでございます。
  99. 辻一彦

    辻一彦君 私は、そういうことによって主婦の一部が、使用収益権の設定によって加入の道が開かれたということは、半歩か一歩の前進であると思います。しかし、それは第二種兼業農家のいわゆる夫、御主人のほうは、これはある職場に行って、年金等の制度がありますからそちらでやれる。だから、実際的に、経営の中心である主婦が、その道が開かれないというのはおかしいと。こういうことで使用収益権を設定すれば、第二種兼業農家の妻については私は、それは可能になると思う。しかし、第二種兼業農家の主婦、妻と同じように苦労している専業農家やあるいは第一種兼業農家の妻、これにはこの道は私は開かれないと思うんですね。そうしますと、同じように苦労している、からだをすりへらして——その実態を詳しく御紹介はできなかったんですが、苦労している主婦に、片やその道が開け、片やその道が開かれないということは、私は一つの差別になると思うんですね。そういう点で残った主婦の問題をどうお考えになるか。
  100. 大山一生

    政府委員大山一生君) 確かに、先生の御指摘のような問題が、日本の農業経営の場合において、ある意味において、家というかっこうで経営が行なわれているという問題の一つとして、確かにその問題はあると思っております。ただ、こういう年金制度ということになりますと、やはり処分権者といいますか、処分し得る権能を持っているということに着目せざるを得ないということでございます。で、第二種兼業農家でない、いわば一種兼業農家なんかの場合におきましても、実質的に妻がやっておられるということであるならば、これは、妻にいわば使用収益権を設定するというかっこうをとるならば、これは加入することができるであろう。ただ、その場合に、夫というものは一体、農業経営上どういう位置を占めるのかということで非常にむずかしい問題があろうというふうに考えるわけでございます。いま、われわれといたしましては、年金というのが、一つの権能とのからみ合わせにおいて存在するという限りにおいて、結局、妻の問題に対する御要望に対処するには、それ以外の方法はないんだろうと、こういうふうに思うわけでございますけれども、将来の問題といたしましては、衆議院の決議にもございました農業従事者確保の観点から、この問題については今後とも検討課題としていきたいと、こういうふうに考えるわけでございます。
  101. 辻一彦

    辻一彦君 大臣にお伺いしますが、先ほどから何回か同僚委員からも、先輩からも御発言がありましたが、昭和四十五年四月十日、参議院の本会議において、本案が、代表質問によって、また、答弁によって、この性格が明らかにされております。すでに、きょうも御答弁がありましたが、その参議院本会議における御答弁でも、当時の倉石農林大臣から、この農業者年金法案は、一つは、政策年金としての性格があり、一つは、福祉老齢年金性格があると、こういう答弁がされているし、きょうも確認をされておったと思います。  そこで、政策年金としての意味は、私は、経営移譲年金の問題でありますから、だから、これは、一家に夫か妻か、どちらかが所有者であるか、あるいは使用収益権を設定することによって該当者になる、これは私はやむを得ないと。しかし、第二の柱の、いわゆる老齢福祉年金という点を、もう一つの大きな柱として考えるならば、この残された主婦の問題を、私は、当然解決する何らかの道を開く必要があると、こう思います。この法案の、もともと政策年金と福祉老齢年金の二つの性格を持った点から、あとのほうから見た場合に、この主婦の問題は、このままに放任できない問題であると私は思いますが、いかがですか。
  102. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) その点は、いま政府委員からもお答えいたしましたことと同じことだと思いますが、私どもとしても、この年金制度は、いまお話のございましたように、一方においては、政策的な意味がある、もう一つは、老後保障ということ。で御存じのように、六十五歳になれば国民年金に皆入ってまいります。その上に、老齢年金というのは入るわけであります。そこで、いまお話のものは、経営移譲等に関係のないものも含めておると。そういう点につきましては、将来ひとつだんだん検討してまいる必要があるんではないかと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  103. 辻一彦

    辻一彦君 もう一度確認しますが、経営移譲年金の問題のほうは、これは私は一家に一人だと思うのですね。しかし、主婦のほうは、第二種兼業農家の妻ならば、使用収益権の設定によってかわることができるけれども、第一次兼業農家の妻や、あるいは専業農家の妻の場合には、そういうわけにはいかないと。そうすれば、老齢年金のほうにこれからひとつウエートを置いていくとすれば、当然、私は、この残された主婦といいすまか、妻についての道を開くということが大事だろうと思う。それに対して大臣は、この問題については具体的に何らかの検討をするという御発言でありますが、どういう場所で、いつを目ざして御検討になるか、これをひとつお伺いしたい。
  104. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いま、お答えいたしましたように、これは移譲年金のものはそれでよろしゅうございます。わかりました。その点はもう問題ないと思います。で、その他の家族というのは、国民年金に一様に入れるわけでありますから……。で、この年金は、いま、しばしば申し上げておりますように、五年早く入るわけでありますから、当然国民年金に入っていくときには、いま申し上げましたように、その上に移譲年金が加わっていくわけでありますから、それはそれでいいといたしまして、他の者のことをいま御指摘なさっていらっしゃるのだと思います。それは私どもとしては、現段階においては国民年金というものに当然入っていかれるわけでありますので、これは一般の他の仕事に従事しておられる国民全体が入る国民年金でありますので、そこで、たぶん辻さんの御指摘の点は、私どもも、先ほどこの制度をつくりますときにも考えました、要するに、農業という特別な勤労、筋肉労働の加わるものに従事しておられる方々の将来についてどうしたらいいかというふうなこともいろいろ考えたと申し上げましたが、そういう点について一体どうあるべきであるかということになりますと、ほかの公的年金との関係もございますけれども、特殊な意味で、私どもはさらに勉強してみる必要があるんではないかと、こう考えておるわけであります。
  105. 辻一彦

    辻一彦君 時間的にちょっと十分論議ができぬのですが、この使用収益権を設定せざる妻、主婦についても、何らかの対策を今後検討し、考えていかなくてはならない、こういう御発言と受け取っていいですか。
  106. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) はい。
  107. 辻一彦

    辻一彦君 これは、ぜひ私は具体的に検討していただきたい。全国の農村婦人のたいへん大きな声だと私は思います。  最後にもう一つ、農業労働者災害の問題について。昨年の九月二十日に、前櫻内農林大臣が、この委員会の論議の中で、かなりな質疑のあと、農業機械の安全法規とあわせて農業労働災害のこの新しい法制化について検討する、ということを明確に御答弁になりましたが、その後、農林省としては、一体これについて、どういう検討を加えられ、あるいはこれからどうされる考えか。これをひとつお伺いして、私、終わりたいと思います。
  108. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農業者のみを対象といたします災害補償制度を創設することにつきましては、一つには商業者、それから左官、大工さんとか、農業者と同様な労働形態を有する業種がございますが、これらの業種について特別な制度はつくられておらないわけであります。そこで、生命保険等、民間共済制度によりましてカバーされておるわけでありますが、農業者だけ特別に取り扱うかどうかの問題があると思います。先ほどの主婦の問題も同様でありますが、また、もう一つは農作業事故の実態が把握されまして、事故率の高いものにつきましては、すでに労働者災害補償保険法の特別加入の道が開かれております。その他の農作業事故につきましては、事故の態様、それから事故率等がまだ十分に把握されていないという実情にございます。そこで、こういうむずかしい問題がございますが、四十九年度におきまして全国的に精密な事故実態調査を実施することにいたしておりますので、この成果を待ちまして、さらに検討を進めたいと思っております。
  109. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 他に発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めます。     —————————————
  110. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、亀井善彰君が委員辞任され、その補欠として柴立芳文君が委員選任されました。     —————————————
  111. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) それではこれより本案の討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより両案の採決を行ないます。  まず、農業者年金基金法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  112. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  ただいま可決されました農業者年金基金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案が先ほどの理事会においてまとまっておりますので、便宜私から提案いたします。  案文を朗読いたします。    農業者年金基金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、食料自給度の向上の担い手として重要な使命を有する農業者老後生活の安定と農業経営の近代化に果たす本制度の役割の重要性にかんがみ、年金給付の充実と加入促進を図るとともに、本法の施行に当っては、左記事項の実現に努めるべきである。        記  一、農業者老後生活の安定と後継者の確保に資するため、農業者老齢年金水準を更に一層引き上げるよう努めること。  二、本制度に期待される役割を十分実現するため、農業者保険料負担をできるだけ緩和するよう今後一層国庫助成の引上げに努めること。  三、兼業農家の妻等で実質的な農業経営主である者について年金加入の途を開くこと。  四、農業者年金について、所得等に応じ、充実した年金給付が行われるような措置を検討すること。  五、農業者年金加入要件たる下限面積について、実態に即するよう改善すること。  六、農業者年金制度における短期間の年金受給者の遺族について掛け捨て防止的な観点から、特別の措置を講ずること。  七、農業者年金基金の積立金の運用に当っては、農業者への還元を旨とし、融資の円滑化に努めること。   右決議する。  以上であります。  それでは本附帯決議案の採決を行ないます。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  113. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  114. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するようつとめてまいりたいと存じます。
  115. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案(閣法第七八号)を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  116. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  ただいま可決されました農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案(閣法第七八号)に対する附帯決議案が先ほどの理事会においてまとまっておりますので、便宜私から提案いたします。  案文を朗読いたします。        記  一、現行掛金率が他制度に比して高水準である現状にかんがみ、給付に要する費用に対する国庫補助率を百分の二十以上に引き上げるとともに、財源調整費については、特にその増額を期すること。  二、年金財政の健全性を保持するため、前記補助のほか私学共済の例に準じた都道府県補助その他の公的財政援助措置の強化につき検討すること。  三、掛金の負担割合については、組合員の負担軽減を図る方向で検討すること。    農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、農林漁業団体職員の身分の安定、老後保障等を促進するため、職員の給与等、待遇の改善について指導に努め、本制度については、農林漁業団体の特性をふまえた職域年金としての制度改善給付内容の充実、次期財政再計算期に備え年金財政基盤の確立を期するよう、左記事項を検討し、その実現を図るべきである。  四、既裁定年金改定にあたっては、賃金変動に対応した自動スライド制を創設すること。  五、旧法年金の一層の改善措置が必要であることにかんがみ、その給付改善に万全を期するものとし、特に最低保障額については、本制度厚生年金から分離したことを配慮し、新法の水準を考慮して是正すること。  六、制度改善については、年金受給者の意向を反映するため必要な指導を行うよう努めること。   右決議する。  以上であります。  それでは本附帯決議案の採決を行ないます。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  117. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  118. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまの附帯決議につきましては、御趣旨を十分尊重し、今後検討の上善処をしてまいりたいと存じます。
  119. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) なお、両案の審査報告書の作成はこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時八分散会