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1974-05-09 第72回国会 参議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月九日(木曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         初村滝一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高橋雄之助君                 足鹿  覺君                 鶴園 哲夫君     委 員                 亀井 善彰君                 佐藤  隆君                 田口長治郎君                 温水 三郎君                 平泉  渉君                 堀本 宜実君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 杉原 一雄君                 沢田  実君                 塚田 大願君    衆議院議員        農林水産委員長        代理       坂村 吉正君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        水産庁長官    内村 良英君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○沿岸漁場整備開発法案内閣提出、衆議院送  付) ○農林水産政策に関する調査  (水産業振興に関する決議) ○農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案沿岸漁場整備開発法案、以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、三法案質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、一昨日広範にわたって、沿岸漁場整備開発法案重要性を認識するがゆえに、その背景とか、国際情勢とか、そういう面に主として焦点を置いてお尋ねをいたしましたので、いささか冗長に流れた点もあったと思います。そこできょうは、各論的に二、三お尋ねをして、あと鶴園委員にお願いいたしたいと思っております。  沿岸漁業におきまして、昨年の六月から八月にかけて発生しました水銀PCB汚染問題に見られますように、沿岸海域海洋汚染状況はますます深刻化しておるのであります。沿岸漁業生産を大きく圧迫しておることは言うまでもないことでありますが、それを私どもの見たところでは、現在の沿岸漁業収穫高といいますか、生産量といいますか、それは二百五十万トン台で伸び悩んでおる。いまだ戦前の水準の三百三十万トンには大きく差があるのではないか、こういうふうに考えております。で、具体的にいってこの法案が成立をし、いろいろの施策が積極的に推進をされ、特に赤潮対策の問題だとか、企業の、沿岸海水汚染対策成果があがるとか、いろいろなことが総合的に力を発揮してきました場合は、水産庁としてはどの程度のものを想定しておられるのか。  従来私の見たところでは、前の大和田君も、清水港の海水汚染の問題につきましても、実に、何かよそ事のような答弁をして、私もずいぶんここで、この場で追及をしたことがあります。が、私がもっと申し上げたいことは、水産庁自体として水銀PCB汚染、その他の海洋汚染の問題をどういうふうに把握し、自分たちのほうで指導権を持って、推進力になってこの問題等を処理して関係省へ強力に働きかけて行かざれば、どのような法律をつくっても成果はあがらないじゃないか。そういう点でまあ世上いろいろと、水産庁性格について、酷評が生まれてくるゆえんだろうと思う。その点について、農林大臣もいろいろと御尽力になっておると思いますが、最近の状況とにらみ合わせて今後の御所信を承れたらと思います。
  4. 内村良英

    政府委員内村良英君) まず最初に、今後、沿岸漁業生産量をどの程度伸ばすのかという点でございますが、今後の水産物のまず需要の面を考えてみますと、国民生活水準の上昇に伴いまして、今後水産物需要はますます高度化、多元化して増大する傾向にあるというふうに考えておるわけでございます。そこで、食用の魚介類の年間の需要量は四十七年には七百万トン程度でございますが、十年後の五十七年を試算してみますと、約九百万トンになるというふうに私どもはみているわけでございます。これに対しまして、生産をそれに見合うように伸ばしていかなきゃならないわけでございますが、先生案内のように、漁業の場合は他産業と異なりまして、海況や資源の変動、あるいは海洋漁業につきましては、国際情勢などの影響もございまして、的確な見通しを立てることには若干の制約があるわけでございます。が、われわれといたしましては、需要量に見合うものは、何とかわが国水産業の力でこれを確保していきたいと考えておるわけでございます。  そこで、ただいまも先生から御指摘がございましたけれども、今日一千万トンの漁業生産のうち二百五十万トン程度沿岸生産でございます。そこで今後、需要多様化高度化ということを考えてまいりますと、そういった魚類は沿岸漁業によって供給されるものが多いわけでございますから、沿岸漁業を伸ばしたい。そこで私どものめどといたしましては、この十年間に三十万トンないし五十万トン程度沿岸漁業生産を伸ばしたいと、こう思っておるわけでございます。  なお、具体的な計数につきましては、現在四十九年度に予算を配りまして、県にいろいろな計画を出させましてから、漁場整備計画をつくろうと思っておりますので、そういったものを見て具体的な数値はつくっていきたい。現在の心づもりといたしましては、その程度のものを沿岸で確保していかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  それから、確かに先生指摘のように、海域汚染というものが、沿岸漁業漁場を狭めておることは事実でございます。これに対しましては、私どもといたしましては、水産業、特に沿岸漁業の維持のために、そういった汚染に対しまして、漁場を守っていかなきゃならぬということは申すまでもないことでございまして、その心づもりで問題に取り組んでいるわけでございます。  ただ、この問題は、水産行政だけではもちろん片づかない問題でございまして、海洋汚染防止法あるいは水質汚濁防止法瀬戸内海環境保全臨時措置法公有水面埋立法等のいろいろな法律ができ、また、法律改正がございまして、最近一般的な傾向といたしましては、そういった法律の厳格な運用をはかっていこうということで、政府部内でもそういった機運で仕事をしているわけでございます。が、   〔委員長退席理事梶木又三君着席水産庁といたしましては、そういった法律所管官庁に対しまして厳正な運営を要請すると同時に、水産庁自体といたしましても、汚染状況調査あるいは公害防止資機材設置公害防止調査指導体制整備、海底の堆積物除去等につきまして水産庁自身でまた予算を取り、そういった面について水産庁としても積極的に取り組んでいくという姿勢で仕事を進めておるわけでございます。
  5. 足鹿覺

    足鹿覺君 従来の水産庁海水汚染沿岸海域汚染問題に対する取り組みが私は、弱かったと思うのです。   〔理事梶木又三君退席委員長着席〕 むしろこれは水産庁自身が農民の立場に立ち、消費者立場に立って推進指導立場にならなければ、問題はそう簡単に解決はつかない。  で、二、三年前に、私は赤潮対策質問をいたしましたが、科学技術庁は、データだけを示して何らこれに対する結論はない、こう言っております。それでは、水産庁として赤潮対策に対してどのような原因対策を見きわめておるか、それもわれわれは不敏にして聞いておりません。瀬戸内海の浄化問題にしましても、特別対策は進んでおりましても、一向に遅々としてはかどらない。田子ノ浦のごときは第二次汚染を引き起こすからといって、このことは事実心配されますけれども、それなるがゆえに現状でおっていいのかという問題もあります。岳南排水路の問題も、われわれは現地調査にも数年前に行きまして、また、大昭和製紙の、相当金額をかけてつくったという放出水浄化装置も見ましたが、これは全く児戯に類すると言えば語弊がありますが、大きな汚染防止の一環ではありますが、とうていそれらに期待することはできない。最近行っておりませんが、瀬戸内海といい、赤瀬対策といい、代表的な田子ノ浦の問題といい、一つも問題が前進しておらないじゃありませんか。私は、これは農林省または水産庁だけを責めるのではなくして、さっきから言いますように、こういう沿岸漁業振興開発をやって、今後大きくこの問題と取り組もうという立場にあっては、やはりそれだけの過去の状況を踏まえて一つのエポックを画するような、法の運用を期せられなければ私は、法はつくられましてもなかなか成果があがらないのではないか。  伝え聞くところによりますと、二十三日にはまた、全国漁民が集まって政府施策の手ぬるさ、企業の無責任を追及する全国漁民大会が武道館で開かれるという状態。これは大臣、何を意味しておるかと言えば、やはり去年の六—八月のあの深刻な漁民の姿というものをお互いが見たときに、それがいまだ解決の緒についてないと。したがってまた立ち上がらざるを得ないということになりつつあるのではないかと思う。そこら辺に、私は、何か総合一貫した——沿岸海域海洋汚染というものに対する総合一貫的な力強い施策遅々として進んでいないから、こういうことになるのではないか。この問題が解決しない限り私は、この法律に期待するところ大であっても、事実上運用面で行き詰まらざるを得ない。そういう点を非常に心配をいたしております。  そういう点について特にきょうは関係省も呼んでおりませんし、やはり水産庁自体農林省自体として私は、もう少しく漁民立場なり、最近の食糧の事情のもとで力強い対策を打ち出される必要がある。その中心に立っていくという御決意がない限り、私は、成果が期待できないじゃないかと、かように思うんですが、いかがでしょうか。
  6. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農林省中心になってやらなければならないという点につきましては、私どももそのように考えております。そしてまた、一番被害があらわに出てまいりますものの一つは、魚介類に対する公害でございまして、いまわが国全体の水産政策の中で、いよいよ重点を置いてやろうとしております沿岸にも、特段の関係があることでございますので、私ども関係省と緊密な連格をとりながらやってはおりますが、いまお話のございました昨年の問題、これは当時、私個人は農林省にはおりませんでしたけれども、当時の農林大臣及び通産大臣環境庁長官、それから厚生省、そういう関係省庁に集まっていただきまして、種々打ち合わせをいたしました結果、水産庁におきましては、いわゆる九水域、問題視されておりました九水域魚介類について、きわめて詳細な研究調査をいたしまして——その結果は一般に公表いたしておりますが、そういう中でも、そういう調査研究検討の間に水俣は御存じのようなことでございますが、そのほか、徳山湾等におきましても、私どもは、それぞれに関係省連絡をいたしまして、漁業保護のために、この徳山湾沿岸における公害排出者に対する措置等をいたしまして、現在は、そういうことによって、通産関係会社等も私どもの要望に沿うてやっておるわけであります。  で、御指摘のございましたように、私どもといたしましては、今後とも、いま私が申し上げましたことと足鹿さん憂うておられましたことと、最後のおことばのところは全く同感でございますので、私どもといたしましては、関係省とさらに密接な連絡をとりつつ水産保護に全力をあげなければならない、また、そういう気持ちで現実にも水産庁はやっておる次第でございます。
  7. 足鹿覺

    足鹿覺君 まあ、この間だいぶん触れておりますからもう一、二点で終わりますが、過去の経過を踏まえて、たとえば沿岸漁業等振興法による構造改善事業については、私は、衆議院時代に自民党の水産通であり長老である田口先生等の御指導を受けまして、相当情熱を傾けてやりました。しかし性格は違いますけれども農業構造改善事業に比較して、沿岸漁業構造改善事業というものは、これを同じ立場で比較することは無理でしょうけれども、若干の開きどころか、とてもその予算の面においても不十分ですね。それはもうちゃんとあと鶴園さんが触れるでしょうが、これはもう全く意気は壮としますけれどもなかなか……。問題は、沿岸漁業等振興法のその後の点検で何をなり、どういう成果があがったか、この点検された結果が私はほしい。点検なしに、今回の新しい法案成果を発揮していくことはできないと私は思うのですね。やはり沿岸漁業振興法による構造改善事業その他、行なったことに対する点検をされたならばその点検の中身を文書等でけっこうですが承りたい。  それから海洋水産資源開発促進法という法律が制定され、四十六年十月六日、政府海洋水産資源開発基本方針を公表しまして、五十年を目標年度としまして百四十一カ所の沿岸水産資源開発区域指定し、魚介類三十一万トンの増産計画を発表いたしました。しかし、私どもの知るところにおきましては、百四十一指定水域計画がたった六つしか実施されておらないではないか、こういうふうに聞いておるんです。これは私が間違っておるならばそれを是正して、いやそれはそうではないんだと、こういう実績を上げておるんだと、また将来こうなるんだという年次計画でもあれば、それを。五十年といえばもう来年ですから、そういうもののやはり点検した結果、どこに欠陥があって進行しておらないのか。金だけの問題ではなさそうです。そういう問題がありますので、指定水域のこれは北海道だけだと私どもは聞いておりますが、ちょっと手ぬるいではないか。要するに、過去における沿岸漁業振興のための関連する法律運用点検の、反省の上に立って、今後のこの法案運用を全きを期していかなければならぬ、こういう考え方に立っておるわけであります。  で、あと鶴園委員にバトンをタッチいたしますが、私が一昨日来触れましたことをもう一応今度は詰めて法案の面で二、三指摘しておきたいと思う。御意見があれば承りたいが、第二条関係沿岸漁場整備開発事業実施主体の問題です。  沿岸漁業育成事業団という事業団を構想しておられるようでありますが、これはどういう立場に立つのでありますか。その構成、その他運用というようなことについて他の同僚からすでにお尋ねになったとは思いますが、この点。  それから公害除去は、公害発生企業負担という、全額負担ということが言われておるんでありますけれども、これは他省等にまたがる問題でありましてなかなか容易なことではないと私は思っております。ただ、やはり先般日本海でも、この冬ありましたが、公害による漁業被害救済のための、原因者不明の場合の損失補償制度というものが私は、全くないと思うのです。重油を流しっぱなしにしまして、ノリを全く腐らしちまう。しかし、その国籍や船もわからねば、原因もわからずじまい。そういう、うやむやのうちに泣き寝入りになっておるという事実はもう相当あると思うのです。こういう問題を漁業災害補償法で救おうとしても、それは救われない。そういう場合に、原因者不明の場合は、何か国家が、損失を補償していくというようなことをしなければ、特に油濁汚染というような場合は。海上交通のため、運輸省が法律をつくって、東京湾等の、ひんぱんな交通の整理をしたことはけっこうであります。けれども、そのために漁船は右往左往して——タンカーとの衝突はない、漁船はおそろしいから命を大事にして逃げていく。しかし、タンカー同士がぶつかり合うという事例は一向に減らない。それによって受ける被害というものは大きい。こういった点については、私は、無過失責任賠償補償制度というものがやはり基本的になければ問題は解決しないのじゃないか。  今度の漁業災害補償法というものは、これは農業災害補償法に準じた一つ制度でありまして、漁業の場合には、この漁業災害補償法対象にならない、しかも大規模な突発的な被害が大きい。その救済対策がないというのが今日、沿岸漁民の悩みの種になっておる。これに対して、私はこの際、もう少し水産庁としてはお考えにならなければならないのではないか。われわれ国会としても、これらの問題に対して、適切な対策を講じていくべきではないか、かように思うのであります。しかし、今度提案をされております漁業災害補償法にこれを盛り込むということはきわめて困難である。これは別途に他省との関係も考えられて、できれば無過失責任損害賠償制度漁業版とでも言いますか、特にこの原因者不明の場合における措置等については、格段の何らかの応急措置を講じながら基本的な対策がなければいかぬのではないか。こういうふうに思っておりますが、この点を御推進になる決意がありますか。何か御用意があれば承りまして、きょうはこの程度で私の質疑を終わりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  8. 内村良英

    政府委員内村良英君) まず第一に、構造改善事業を過去において推進してきたその成果にのっとっていろいろなことを検討し、今度の法律提案になっているかという点でございますが、先生案内のように、昭和三十七年度から四十六年度まで十カ年にわたりまして、いわゆる第一次沿岸漁業構造改善事業というものを事業費約百八十億、補助金六十億を投じましてこの事業推進したわけでございます。そこで事業といたしましては養殖漁場造成事業養殖及び蓄養施設設置事業、それから漁船漁業近代化施設設置事業、それから加工処理施設設置事業流通改善事業等を行なったわけでございます。これによりまして、大体生産量は約一割から一割五分上がったというふうに私どもは確信しております。ただ、第一次構造改善事業運用経緯を顧みますと、やはりいわゆる漁場整備よりも上物整備と私ども言っているわけでございますけれども加工施設等整備にあるいは保管施設等整備相当主力が置かれたという面がございます。その第一次構造改善事業が終わりましてから、先生案内のように、四十六年以降八年計画で百八の地区につきまして現在第二次構造改善事業を進めているわけであります。こういった事業の内容と、今後私どもが考えております漁場整備事業とダブる面がございます。しかしながら、上物については全然今度の法律に基づく事業として考えておりませんので、構造改善事業ではやはり二次港でもつくってきている計画を見ますと、かなり上物重点が置かれている面もございますので、そういった構造改善事業推進とあわせて沿岸漁場整備を行なっていこうと。したがいまして、それによってかなり沿岸生産力は上がり、漁価の所得は上がるということが期待されるわけでございます。  それから法律の二条の御質問でございまして、二条の「政令で定める者が実施する」と、この中に事業団を考えているのではないかという御質問がございましたけれども、私どもは県、市町村あるいは漁協を事業主体といたしまして非常に大規模なもの等で必要があれば国がこれを行なうということを考えておりまして、事業団をつくるという構想は私ども持っておりません。  なお、油濁問題につきましては、大きな政策問題でございますから、大臣から……。
  9. 足鹿覺

    足鹿覺君 もう一つ、きみのほうで、例の海洋水産資源開発促進法に基づく百四十一水域中の指定水域の問題。
  10. 内村良英

    政府委員内村良英君) 昭和四十六年五月に海洋水産資源開発促進法が制定されて以来、同年六月には海洋水産資源開発をはかるための調査等を行なう海洋水産資源開発センターが発足するとともに、沖合いの優良漁場としての指定海域については昭和四十七年五月に同法施行令によりまして三十一海域指定され、その後それぞれの運用も健全かつ円滑に行なわれているわけでございます。そこで問題の沿岸水域資源開発区域指定でございますが、その区域につきましては都道府県知事が策定いたしまして、関係市町村意見を聞くとともに、農林大臣協議することになっております。農林大臣がその協議に応じようとするときには、先生案内のように、関係行政機関の長の意見を聞かなければならないということが法律上の仕組みになっております。現在、知事から農林大臣協議のある具体的な指定対象水域は一道三県の十三区域でございます。県から出ているのは十三区域でございます。このうち北海道の六区域につきましては、ただいま先生からお話がございましたけれども農林大臣関係各省との調整が終わりまして、指定を完了しております。残りの七区域につきましては現在関係省協議中でございまして、近く石川県の三区域についてはこれを指定する方針でございまして、熊本県の三地区についても年内にはもちろん指定できるものというふうに考えております。
  11. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 最近の沿岸地帯工業化都市化に伴いまして、それから海上交通ふくそう等に伴いまして、公害による漁業被害が増大いたしておることは御指摘のとおりでございまして、その実態は昭和四十七年の都道府県被害報告によりますというと、突発的漁業被害と、継続的漁業被害を合計いたしますと、約三百六十億円にも達しております。これらの被害原因タンカー等船舶衝突座礁事故による油の流出のように明確なものもございますけれども、長年にわたる産業排水、それから都市排水の流入、それから農薬、家畜ふん尿等水域汚染等特定できないものが大半を占めておりますので、原因者が明確な事例につきましては、原因者負担の原則に従いまして、相当因果関係の存する範囲内で損害がてん補されるようなように関係者指導いたしておりますが、原因者が特定できない場合の漁業者救済対策お話のように非常な困難な面があるわけでございます。  そこで、この被害が多くて、被害の態様が比較的きまっております赤潮につきまして赤潮特約制度を設けておりますことは御存じのとおりでありますが、原因者不明の油濁事故につきましての救済対策、これは放置しておくわけにはいきませんので、その対策をどのようにいたすべきであるかということについて鋭意検討をただいまいたしておるところでございます。
  12. 足鹿覺

    足鹿覺君 まあ、これで鶴園さんにやってもらいます、あまり私ばかりしてもいけませんから。失礼しました。
  13. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まず、漁業近代化資金助成法、それと中小漁業融資保証法の一部改正、この二つにつきましてお尋ねをしたいわけであります。  漁業近代化資金助成法は四十四年にできたわけです。当時私もこの委員会におりましたですけれども、四十四年にできた。農業近代化資金は三十六年にできておりまして、八年おくれて漁業近代化資金というのができました。で、初年度は百億の融資ワク——百億だったですね。そして四十五年が二百五十億の融資ワクになって、それから毎年百億ずつふやして、ことしは法の改正も行なうということで百五十億ふやしまして、七百億という融資ワクになっておるわけであります。消化率はたいへんいいわけで、まあ九割台という消化率ですからたいへんいい。農業が三千億円の融資ワクに対して六〇%台という消化率で、たいへん低いわけですが、それに対しまして漁業のほうは九〇%台という高い消化率をもっております。御承知のとおりです。  今回の改正で、この貸し付けの対象者の範囲を拡大をする、非常に大きく拡大をするわけでありますが、法人で漁業をやっておるもの合計総トン数二千トンまでであったのを、三千トンまでというふうに拡大をする。あるいは水産加工業について四十人以下の企業だったんですが、これを百人以下の企業に拡大をする。さらに融資限度額を、これを約三倍程度に大幅に引き上げるとか、こういうことになるわけです。  そこで伺いたいんですけれども、この近代化資金の七〇%以上というのは漁船に対する融資になっております。漁船に対する融資が七〇%をこすというのです。だから、近代化資金といったら漁船員に対する融資と言ってもいいほど、漁船に対する融資が大きいわけですけれども、これを見ますと、二十トン未満の漁船、これは件数が一万二千件ぐらいあって、金額としては、漁船融資ワクの大体四三%ぐらいを占めているということであります。二十トンから七十トン未満、これが件数としては八千件をこすぐらいです。で、ワクといたしましてといいますか、構成比としては、融資額の構成の中では二〇%ぐらいを占めているわけです。まあ、三〇%ぐらいを占めていますが、問題はこの七十トン以上の大臣の特認ですね。これが四十六年から出てきて、急にこれがふえるわけですね、大臣の特認。これは件数としては非常に少ない。四十六年は二十八件。件数は非常に少ないんですが、金額はたいへん大きい。四十七年にこの件数は百七十二件というふうに、件数もこれは非常に少ないんです。非常に少ないですが、金額としてはほぼ一〇%近く、融資の中の割合としては一〇%近くを占めておるということになるんですけれども。  そこで今度七十トン以上の大臣の特認、あるいはその融資ワク対象を三千トンに拡大するということによって、この漁船に対する融資というのは非常にふえてくるんじゃないだろうか。だから、経営体数としては——二千トンから三千トンに拡大したということによって経営体数としては二十七企業体なんでして、非常に小ちゃなものですけれども、金額としてはこれは非常に大きくなるのじゃないかという私は感じを持つわけです。で、それは、四十六年にいま申し上げましたように七十トン以上の大臣の特認が出てきて、そして急にこれが七倍も八倍もふえてきておるわけですね。今回さらにこのワクを広げますから、ですから大型船に対する——七十トン以上の大きな船、あるいは三百トン、五百トンというような大きな船に対する融資というのが非常に拡大をするんではないかということを考えるわけなんです。で、そういう点についてのどの程度のことを四十九年度は考えていらっしゃるか、見通していらっしゃるか、  これをまず聞きたいんです。
  14. 内村良英

    政府委員内村良英君) ただいま先生から御指摘がございましたように、漁業近代化資金の貸し付け対象者を、漁業を営む法人につきましては、使用する漁船の合計総トン数三千トン以下に引き上げることといたしましたのは、昭和四十六年の水産業協同組合法の改正により漁協等の組合員資格が拡大されたことに伴いまして、漁業近代化資金制度につきましても、漁協等の組合員資格を有するすべての漁業者等に、借り受け資格を与えようとするものでございまして、漁協系統の貯金を原資として運用されております漁業近代化資金性格が、これによって変わることはないという点をまず申し上げたいと思います。  それからどの程度の資金量の増加——二十七経営体でございますが、どの程度の資金量が予想されるかという点でございますが、私どもの計算によりますと、限度額が一億二千万円で一件切っておりますので、それに二十七経営体を見まして、過去の経営体に対する貸し付け率等をかけて推定いたしますと、約三億程度資金需要がふえるのではないかというふうに……。
  15. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 三億……。
  16. 内村良英

    政府委員内村良英君) はあ三億でございます。
  17. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 間違いないですか。
  18. 内村良英

    政府委員内村良英君) 間違いございません。そういうふうに見ております。
  19. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 三億、そんなばかなことがあるか。
  20. 内村良英

    政府委員内村良英君) 算出の基礎は、限度額が一億二千万円というのがございますから、それに経営体に対する貸し付け比率というものを見ますと、三億という数字になります。
  21. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃ聞いておきますよ、三億とね。これ一年たってみたらわかる。三億なんておかしなことありますか。——それはよかろう。それでいいです。  それで、この水産加工業者は四十人以下というものを百人以下に拡大しましたね。これで入ってくる、対象になる企業体というのはどの程度あるのですか。
  22. 内村良英

    政府委員内村良英君) 経営体数は六百十一でございます。
  23. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 見通しはどう見ていますか。
  24. 内村良英

    政府委員内村良英君) 十二億というふうに見通しをつけております。
  25. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、先ほど二十トン未満については一万二千件ぐらいの件数になっている。それから二十トンから七十トンについては八千三百件ぐらいになっている。それから七十トン以上の大臣の特認、これは四十六年から出てきた。それは初めは小さな——小さなといいますか、金額に対するパーセントとしては一・何%くらいの小さなものであったけれども、四十七年になりますと、これは件数としては小さいですけれども、ワクとしては一割近いワクを占めてくるでしょう。これから大臣の特認になり、それから三千トンに拡大するということによってわずか三億しかふえないという勘定ですか。
  26. 内村良英

    政府委員内村良英君) 三億と申しますのは、新しく貸し付け対象者の拡大に伴いまして二十七経営体が入ってくるわけでございますから、それに伴う資金需要の増加が三億程度であろうということで、七十トン以上の資金ワクが三億というわけではございません。  それから、過去において七十トン以上の資金ワクが非常にふえているじゃないかと。先生指摘のとおり、四十七年はそれが九・四%になっております。この場合におきましては消化率が非常に高いわけでございますが、なお資金的な余裕がございましたので、そういったものについても特認したわけでございます。したがいまして、近代化資金の性格から見まして、私どもとしては、なるべく零細は漁業者を優先するのは当然でございまして、特認でございますから、特認の場合につきましては、資金需要を見ながら遺憾ないような運用をしなければならぬというふうに考えております。
  27. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 三億というと何隻つくるのですか、三億という金は。二、三隻しかできないじゃないですか。二隻ぐらいできますか。
  28. 内村良英

    政府委員内村良英君) 二十七経営体が新しく資格ができるわけでございますけれども、それが全部、船の更新をやるわけではございません。そこで、過去のそういった経営体の船の更新でも、船の更新の場合に、これ全部近代化資金に依存するわけじゃございませんので、その率をある程度想定いたしまして計算したのが三億でございます。
  29. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃもう一ぺん伺いますが、七十トン以上の大臣の特認を含めて、それからいま三千トンまで拡大したことによって、七十トン以上の船に対する融資ワクというのはどの程度だと見ておりますか。四十八年は幾らですか、大臣特認のやつは。
  30. 内村良英

    政府委員内村良英君) 四十八年の数字はちょっとただいま持っておりません。まだ集計ができておりません。それからこれは大臣の特認でございますから、あくまで資金ワクを見ながら、本来、近代化資金を借り受けるべき人たちに対する融資を優先いたしまして、——資金ワクを見て、七十トン以上の貸し付けというものを特認としてやっているわけでございますから、本来、近代化資金を借り受ける人たちの融資には支障のないような運用はできるわけでございます。
  31. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、私が言っているのは、四十六年に大臣の特認ができたと。それで七十トン以上のものが首を出してきた、四十六年に出してきたと。そのときは件数としては二十八件ですね。金額としては、いまここにちょっと出してもいいですが、割合としては一・四%だったと。で、翌年の四十七年になると件数が一挙に百七十二件となっている。金額としてはこれは七倍ぐらいにふえる。一割を占めてくるということになるわけですよ。で、四十八年はどうなったか、まだ集計わからぬとおっしゃる。で、これから、四十九年はさらに今度はそのワクを広げるわけです。ですからどの程度かということを聞きたいわけなんです。私の考えているのは、言いたいことは、これは近代化資金というのは御承知のとおり、水協系の範疇に入るもの、それを中心にして考えてきたわけなんです。ところが、いま言うように、特認ができてきた。さらに今度はそのワクを広げますから、その金額は相当なウエートを占めてくるんじゃないか。それではこれは十分注意しないと、近代化資金の本来の趣旨と違ったものになってきはしないかという心配をするわけです。特に、これから沿岸漁業というものを根本的に改革していかなければならないというまあ考え方すら出ているわけですからね。その場合に心配はないのかということを私は聞いているわけです。
  32. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先ほどから申し上げておりますように、確かに先生指摘のように、四十七年度におきましては、七十トン以上の特認のワクが非常にふえたわけでございます。その場合には、やはり近代化資金として資金的な余裕があったためにそういった特認を認めたわけでございまして、今後におきましても、原則として七十トンという線は変わらないわけでございますから、私どもといたしましては、本来、近代化資金を必要とする小さな漁業者の資金需要というものに支障がないような運用は当然しなければならないというふうに考えておりますし、そのように運営するつもりでございます。
  33. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま長官のお話のように私は懸念をしているから、ひとつ、本来の趣旨に沿うように配慮をしていってもらいたいということをひとつ結論として話しておきます。  次に、この七百億円のワクですがね、これはまあ全漁連がたいへん熱心な努力をしまして、御承知のようにたいへんな貯蓄運動を進めておりますですね。第一次、第二次、第三次、いま第四次という貯蓄運動を進めている。で、この四十九年の二月末で全漁連の発表によりますというと、約四千四百億円程度の貯蓄になっているわけですね。で、それに対しまして七百億円というワクなんですね。で、農業の場合は、約十兆円の農協としては貯蓄を持っている。それに対しまして三千億円というワクですね。−十兆よりもっと多くなっておりますが。ですから、二%ちょっとぐらいの割合になるわけです。漁業の場合は一五%ぐらいのワクになるわけですよね、金額としては。このことは、農業の場合は農協の貯蓄に対して二%ちょっとぐらいのワクになり、漁協の場合は、いま言いましたように一四%をこすワクになるということは、これは、七百億円というワクはどうか、ということが一つあるのではないかと思いますけれども、過重だというふうにはお考えになりませんですか、どうか。全漁連は、一年繰り上げて四十九年度末に、四十九年度に五千億という貯蓄を達成しようということで、異常な熱意でやっています。ですから、その点も考えると、まだまだ実はもう少し減るかもしれませんが、一四%というこの比率は非常に高いという感じを受けるわけですけれども、どういうふうに見ておられますか。
  34. 内村良英

    政府委員内村良英君) 確かに先生指摘のように、漁業の場合には農業に比べますと系統の資金の中における近代化資金の比率が高いわけでございます。と申しますのは、農業のことに触れることはどうかということもございますかもしれませんけれども、私の見ているところでは農業の場合には、やはり土地代金の流入という農外の資金の流入が非常に多いわけでございます。ところが、漁業のほうはそういった資金の流入がなくて、やはり漁業の中でつちかってきた資金だというふうに考えているわけでございます。  そこで、問題はやはりこれは過重であるかどうかということにつきましては、いま漁業者の要望があるかどうかという点と、それから漁協の経営の問題がどうかという問題だと思います。それで、近代化資金につきましては、先生案内のように、非常に漁業者からの要望がある、経営の問題になりますと、基準金利をどう考えるかということによって漁協の経営に非常に影響が出てまいります。そこで、現在の九分という基準金利は少し低過ぎるという声が非常に出ております。それで、こういった九分というような基準金利で近代化資金を一五%も出していくことはつらいということがございまして、私どもはそのことをよく承知しております。しかし、この基準金利の問題は、全体の制度金融の問題とも密接な関係がある問題でございまして、現在のところ、私どもの計算では、九分の基準金利でとんとんぐらいのかっこうになっておりますけれども、これ以上金利が上がっていくということになりますと、その辺のところについては根本的な再検討を加わえなければならないのではないかということが考えられるわけでございます。なお、四十九年度につきましては、漁業系統金融についてはいろいろな新制度の啓蒙、その他の経費で系統金融については若干の助成金を出すということで、政府としても系統金融の援助ということはやっているわけでございます。
  35. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、農協の場合は、先ほど申し上げたように、三千億の農業近代化資金。農協の貯蓄に対しまして三%切るぐらいのものなんですけれども、漁協の場合は一四%という非常に高い率を占めている。これはその貯金に対する比率ですけれども、貸し付けの比率を見ますというと、これは非常なウェートを占めている。漁協の貸し付けに対する近代化資金の占めている割合というものは、非常に高い率を占めている。農協の場合は九%という基準金利でも、農協の金融業務に対しましてそう大きな負担にはならぬという点も考えられますが、漁連の場合は、これは九%という基準金利は比重が高いだけに、漁連の信用業務に対しては大きな圧迫になっておるのではないか。もっと詳細に申し上げるといいのですけれども。圧迫になっているのではないかという点を私は心配しておる。ですから、九分という基準金利について、漁業近代化資金の場合は検討する必要があると私は思っておるわけです。そこで、まあこういう貯金との割合、信用貸し付け金との割合等を出して言っておるわけです。その点はどうですか。
  36. 内村良英

    政府委員内村良英君) 私どもも、漁業の系統金融の関係者から、基準金利九分では非常に経営がつらいという話は聞いております。そこで、私どもの調べましたところでは、現在の漁協系統機関の資金のコストの面から見ますと、資金原価プラス貸し付け経費とほぼ見合う水準に九分がなっておりますので、とんとんぐらいでかなり苦しいということは私どもわかります。  ただ、この基準金利の問題を、それでは直ちに改定するかどうかという問題でございますけれども、これは農業の基準金利の問題、その他制度金融の根本問題にもつながる問題でございますので、そういったことの関連で検討しなければならないのじゃないか。ただ、今後預金金利がさらに上がるというようなことになってまいりますと、もういまの九分ではとても経営が持たないということは事実でございまして、私どもといたしましては、そういったことも勘案しながら、今後どういうふうにこの基準金利の問題を考えるかという点については、内部的にはいろいろ検討しておりますけれども、現在の資金需要からいけば、コストプラス貸し付け経費ということが大体とんとんぐらいというふうな計算になっております。
  37. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、農業とか、その他の制度金融との関連で九%という基準金利について水産庁としてもまあ順応しておるといいますか、という話なんですが、私は、先ほども申し上げたように、農業の近代化資金というのは、三十六年にできたじゃないかと、八年おくれて漁業近代化資金というのができたじゃないかと。今回また、政府の助成を行なうのも、これは農業の場合は、もう三十六年当時からできたものですから、それから考えれば、まさに十何年おくれて助成が出てくるわけですね。それは一体どういうところにそういう原因があるのかという点も聞きたいし、論議もしたいわけなんですけれども、あまり時間がありませんので。いずれにいたしましても、そういうことから考えてみてたいへんおくれてきておるわけですよ。ものすごくおくれてきておる。  その場合に、さっき言ったように、比率も非常に高いのだから、農協の場合は、これは七倍ぐらい高いでしょう、五倍ぐらい高いでしょう、貯金に対する割合というものは。漁連の貸し出し、漁業の貸し出しの割合については、おそらく三割ぐらいを占めているのじゃないか。農協の場合と違うのです、漁連の場合。非常にそのウェートが高いとか、それがいまおっしゃるように、とんとんだというお話なんですけれども、とんとんだといたしましても、これは漁連の信用業務に対してぼくは非常に圧迫になっておるのじゃないかと思う。資金の需要があるのかどうかということとは別問題です。まあ漁連としては、できるだけその需要に応じようということで精一ぱいの貯蓄運動を始めている。一次、二次、三次、四次と積極的なたいへんな運動をしている。それがないとワクが広がらぬから。ワクが広がったけれども、そのことはいま申し上げたように、非常に圧迫になっておるのじゃないかと。だから、私としては、この基準金利について、漁業近代化資金の場合には考える必要があるということを言っているわけです。しかし長官のお話では、いや、農業との関係もあったり、その他の近代化資金との、制度金融との関係もあって、九分というものをなかなか動かすわけにはいかないのだという答弁なんです。私は、先ほど来言うように、こんな高い割合になっておるのですから、これはたいへんだと思いますね。大臣、これは検討する必要があるのじゃないでしょうか、九分という基準金利は。
  38. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いま政府委員からお答えいたしましたように、制度金融、その他のものに関係もございますし、私どもも四十九年度予算編成に当たりまして、現在の漁連等の事情をよく農林省も承知いたしておりますので、これについていろいろ折衝いたした過程はございます。けれども、結論として、他の金融機関の金利等の関係で、これを特別な扱いはむずかしいということで現在のようになっておるわけでありまして、予算編成当時から私どもといたしましても、何かこれは検討する必要があるんではないかと思っておったわけでございます。漁業全体の状況と農業全体の状況をごらんになさいますというとおわかりのとおりに、そういう経営面から考えてみますと、確かに漁業については農業に比べて弱い点があることは私どもも承知いたしております。なお、これを時局柄漁業を取り巻くもろもろの問題を勘案いたしますと、さらに大いにがんばってもらわなければならない産業でありますので、なおそういう点については、配慮いたしてまいる必要があるという点におきましては、私ども検討いたしておる次第であります。
  39. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この漁業近代化資金に対しまして、都道府県が三分または二分の援助をする。それに対して、政府が二分の一の援助をするということになるわけですが、その点を考えたらどうですか。基準金利がどうだというなら、その割合を引き上げたらどうですか。三分または二分となっているのだから、それに対して二分の一を政府が助成するというのですから、その割合を若干ふやせばいいわけですよ。いまの市中金利はどうなんですか、九分ですか、長期のものについて。  ぼくは率直に言って、漁協がああいうふうに、全漁連のほうが一期、二期、三期、四期とたいへんな貯蓄運動を展開をして努力している。それに相応して資金ワクというのがふえていく。それで、貯金の割合は非常にウェートが高くなってきている。特に貸し出しの総ワクに対して、近代化資金のワクというものがたいへん高くなっている。農業の場合とは非常に違う。その意味で基準金利というのを考える必要があるんじゃないか。経営を圧迫するという感じを非常に強く持つものですから、基準金利はどうだというお話があれば、それじゃ都道府県が出している三分または二分、それに対する政府の二分の一の補助という問題について検討する必要はないのかということです。基準金利は、市中の銀行の、長期の貸し出し金利は一体幾らなのか。
  40. 内村良英

    政府委員内村良英君) これは非常にむずかしい問題を内在しているわけでございます。と申しますのは、現在三分の利子補給で末端金利が六分と、そうするとそれを三分を三分五厘なり何なりに補助をふやそうということになりますと、一体、制度金融の金利水準というものは何が正しいのかという議論になってくるわけです。現在の六分を前提にいたしましてすべて制度ができ上がっておりますので、その助成の問題をふやそうということになりますと、制度金融の金利水準自体をどう考えるかという根本問題を見直さなければならぬという問題にぶつかるわけでございます。そこで、これは単に漁業だけではなしに、農業とも関係がございますし、制度金融の金利水準の問題で、そうなりますと、公庫資金の問題ともまた関係があります。そこで、かなり根本的な検討を要する問題になってくるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  それから現在の市中金利でございますけれども、農林中金で九・六%、長期の貸し付けについては九・六%になっております。
  41. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 ぼくは、これから漁業政策の問題について、全般にわたっていろいろきつい注文をつけたいと思っております。まず近代化資金についてきつい注文をつけたわけです。  これは一体長官、全漁連に、いま私が申し上げたようなことについて十分配慮を払っておるのですか。どうも私は、さっき言ったように、農業で三十六年に農業近代化資金が出てきた。それを八年後に安易にまねてつくった。そしてまた今度はそれから五年たってこの国の助成というのを始めた。農業から言えばまさに十三年おくれている。これへ右へならえしてきたというような感じがするわけです。もっと漁業そのものの立場に立ってお考えになったらどうだというのが私の基本的な姿勢なんですよ。ところが、いま長官おっしゃるように制度金融がどうだとかというような立場からのみお考えになる姿勢というのは、どうも漁業というのは、これからもいろいろ申し上げたいのですが、何か農業のあとをついていけばいいという、五年おくれか十何年おくれか、おくれてついていきゃいいというような安易な姿勢があるんじゃないかというような気がしてしようがないものですから、少しちょいとばかりいやみみたいな主張をしたのですけれども。もっとだから、いま私が申し上げた点も、十分配慮して、十分頭の中に入れてひとつ推進をしていってもらいたいことをひとつ申し上げておきます。  次に、漁業信用基金協会に対して政府が助成をするのですが、先ほど私が申し上げた今度新しくおつくりになるこの制度というのは、国が助成をするという制度というのは、農業の場合は三十六年当時、農業近代化資金ができたときにできておるわけですよね。それからこういうふうにたいへんおくれて今度できてきたという理由ですね。十三年おくれているということになるが、その理由について聞きたいですね、どうしてこういうことになったのか。
  42. 内村良英

    政府委員内村良英君) ただいま近代化資金の県の漁業信用基金協会に対する出資への国の助成が農業より非常におくれているではないかという御指摘がございました。その点はそのとおりでございます。ところが一方、振り返ってみますと、漁業の場合にはいわゆる融資保証制度が農業よりも早くスタートしておるわけでございます。二十七年からスタートしておるわけでございます。そこで、ああいった制度がございましたので、それとのバランス等もございまして、あちらのほうを拡充するということで今日まで信用基金に対する出資への国の助成がおくれていたわけでございますが、今般ようやく四十九年度からそれができると、こういうことになったわけでございます。
  43. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今度設けられた理由は何ですか。それについていったらいいじゃないですか、中小漁業融資保証法でいったらいいですよ。今度新しく農業と同じ制度漁業に持ち込んだ理由はどうなんですか。
  44. 内村良英

    政府委員内村良英君) 最近資金ワクが非常に増加してまいりましたし、今後こういった信用基金の拡充ということについて必要だという立場からやったわけでございます。
  45. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうじゃないでしょう。これは協会が保証つきの融資というのが非常にふえてきたからでしょう。だから、協会自身としてはやりにくくなってきているし、政府として助成をするという必要が出てきたんですよ。協会が行なっているところの保証つきの融資というものが非常にふえてきた。だから四十九年度で見れば、おそらく半分を越すくらいになるんじゃないか。それなら政府も積極的に助成しなければいかぬだろうということじゃないですか。
  46. 内村良英

    政府委員内村良英君) ただいま資金ワクが増大してきたということの中には、そういうことも入っております。同時に、近代化資金制度の拡充と合わせまして、こういった信用基金の仕事というものもふえているわけでございますから、それに合わして必要な助成をするということでございます。
  47. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この漁業信用基金協会の保証つきの融資というものがたいへんふえてきたということが、私は、最も大きな理由だろうと思いますけれどもね。  そこで、次に伺いたいのは、今度新しくできます中央漁業信用基金ですね、まあ略して中央基金。新しくできるこの中央基金、これについて伺いたいのですけれどもね。これはいまの中小漁業融資保証法によりますと、金融機関が中小の漁業者に対して融資をする、それについて漁業基金協会が保証をする。その保証について政府の特別会計が保険すると、こういう制度になっておるわけですね。で、今回、農業と同じような、類似したといいますか、同じような制度を今度漁業に取り入れるわけですが、その場合に、農業と違って新しい機関をつくった。これはどういうことですか。中央基金というものを新しくつくったということ、それについて説明を聞きたいのです。
  48. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生案内のように、現在、特別会計で行なっております保証保険の制度は、国が全面的に保険責任を負うということが制度として担保されているわけでございます。ところが、融資保険につきましては、その対象が、農林中金の中小漁業者に対する資金の貸し付けのみでございます。そこで、国の特別会計で実施する場合には、農林中金が国へ出資することはできないため、国が特定個人のために全額国庫負担で保険を行なうということになるわけでございます。そういうことは適当でないということで、融資保険についてそういった保証制度を設けるという立場から、この中央漁業信用基金を設けるわけでございまして、さらに今後、低利の融資事業、これは農業のほうでも行なっているわけでございますが、融資事業を行なうわけでございます。  これについて特別会計でやったらいいではないかと、現に漁業の場合には特別会計があるんだからということでの議論もあるかと思いますけれども、特別会計でこういった低利融資を実施する場合には、国の財政会計法規が適用されるために、融資業務の機動的運用が困難となるおそれがございます。さらに私どもが調べたところでは、国の特別会計でそういった低利融資を行なっているケースは全然ないわけではございませんけれども、私どもの承知しているところでは、相手方が地方公共団体であり、かつ貸し付け期間も長期にわたるものというものを国の特別会計がやっているわけでございまして、そういった趣旨から、どうもこの二つの業務については、特別会計で行なうのは適当ではないのではないか、ということで、新たに中央漁業信用基金を設けることといたしたわけでございます。
  49. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうすると、いまあります特別会計、これは収支はほぼ整っておるようですし、資金としても小さいですね。八億ぐらいの小さなものですね。そうすると、いまあります特別会計の将来はどうなるんですか。
  50. 内村良英

    政府委員内村良英君) この点につきましては、農業と同じように特別会計をやめて中央漁業信用基金へ、現在特別会計でやっている業務を移譲したらどうかという議論もないわけではございません。しかし私ども検討では、特別会計で行なっている保証保険の場合には、先ほど申しましたように、国が全面的に保険責任を負うことで、国がかなり強くそれを担保しているようなかっこうになっておるわけでございます。それでいまの漁業の情勢等を考えますと、この国の特別会計を農業のように民間でやらせるということになりますと、それを移譲するためにかなり資金的なてこ入れをしなきゃならぬという問題がございます。そこで、そういったことを考えますと、いますぐ特別会計を民間に移譲するのは時期尚早であるということが専門家の検討会でも言われておりますし、私どもといたしましても、そのように考えております。しかし、将来の問題といたしましては、この問題はどうするかということは検討課題になってくる問題だというふうに考えております。
  51. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう一つあります社団法人漁業信用基金中央会、これは従来基金協会を会員として全国的な連絡、調整というために中央会というのが設けられておるわけですね。そこで、そうなるというと、特別会計、中央会——従来ある社団法人中央会、新しくできる中央基金、こういうような形になるんですね。これはどうなさるおつもりですか。特別会計は残していくんだと、いま新しくできる中央基金、それに従来からある社団法人の中央会、この三つはこれからどうなさるおつもりですか。
  52. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生案内のように、漁業信用基金中央会の業務は、定款上金融保証業務の調査研究、会員の指導というようなことになっております。そこで一方、新しくできます中央基金は、法律上融資保険及び低利融資を行なうものでございまして、その業務が異なっております。したがいまして、並存することは何ら差しつかえないわけでございますけれども、ただいま御指摘がございましたように、特別会計、中央会、中央基金ということではあまりにも制度が複雑ではないかという問題確かにあると思います。したがいまして、私どもといたしましては、今後この制度運用を見ながら将来どういうふうにするかについては、考えなければならぬというふうに考えておりますが、現在のところは、中央会と中央基金との並列ということで当面はいきたいと思っているわけでございます。
  53. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、新しく基金をおつくりになる、従来から社団法人としての基金の全国機関としての中央会がある、それにもう一つ特別会計もある。こういうやり方ですね。まあ小さな金なんですね。小さな金というと恐縮なんですけれどもね。だが、まあいまは間に合わなかった、いまは間に合わなかったが将来はこれをすっきりしたいということなのか。どうもそのようにもとれるし、これから検討してひとつやりたいというふうにもとれるし、何かたいへん複雑ですね。新しくできる中央基金に、いま社団法人の中央会が持っている任務というものを付加するということは検討なさらないのですか。これは付加していいのではないかというふうに思うのですね。そうするといまの社団法人は吸収できる。そうして法律的にも基金に対するところの調査あるいは指導、監督ということもできる。これは基金としてはこれから協会に対しまして金を貸したり援助していかなければならない。その場合の指導、監督というのは当然出てくる。不振の基金協会というものもある。それに対するやっぱり指導というか、あるいは援助というものをやっていかなければならないということになりますと、困るんじゃないかと思うんですね。そういうお考えはお持ちにならないのか。中央会が法律的な権能としては協会に対するあれはないわけですからね。そういう点はどういうふうにお考えになりますか。
  54. 内村良英

    政府委員内村良英君) ただいま先生から御指摘がございました点は確かに大きな問題点だと思います。ただ、この問題につきましては、県の基金等、いろいろ関係者があるわけでございます。そこで、この制度をつくります場合に、いろいろ関係者の意向等も聞いたわけでございますが、現在のところでは、やはり中央会というものができていて、そこで指導連絡をやっておると。そういうものと、新しくできる中央基金の業務とはちょっと性質が違うんじゃないかというような議論がございまして、並存でいったらいいじゃないかということになっておりますけれども。やはり将来の問題といたしましては、今後基金がいろいろ経営指導その他をやっていかなければならぬわけでございますから、それと中央会の行なう会員に対する指導連絡というものとどう調整するかというような問題出てくると思います。したがいまして、先ほどから繰り返して申し上げておりますけれども、特別会計と中央会と中央基金との関係につきましては、ある時期に関係者の意向等も十分に聞きながら検討を加えなければならぬというふうに考えているわけでございます。
  55. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、不振基金協会——不振なといいますか、経営が苦しいといいますか、非常に困っているこの基金協会に対する対策を伺いたいわけです。  御承知のように、四十六年には、中小漁業融資保証制度問題検討会というのが設けられて、二年たって、昨年の四十八年の二月に意見が出ましたですね。その意見に基づいて、ほぼその意見は今度の改正の中に織り込まれている。ただ、この不振な協会に対する意見というものがどうも具体的に出ていないように思うのです。代位弁済もたいへん多額になってくる。そこで、基金協会としては、その出資金を食いつぶしてやる。やらざるを得ない。そうなるというと、今度は保証する金額は減ってくる、経営を圧迫するというようなことで、不振な基金協会というものが相当にあるというふうに、少なからずあるという言い方をしていますね。どの程度あるんですか。  それともう一つ、その不振な協会に対して、どのような再建策というものを考えていらっしゃるのか。いま新しくこういう制度ができるのですから、その際にやはり意見書に出ている不振な協会に対する再建策というものをはっきり立てて、建て直していくという措置が私は、必要だと思うのですけれども、それはどうも見当らぬものですから、どうなさるのかということですね。
  56. 内村良英

    政府委員内村良英君) まず不振協会の数でございますけれども、不振協会というのはどういうような協会を言うのかという問題がございます。そこで、四十七年度の決算についてみますと、決損を計上している協会はございません。ただ、代位弁済が先ほども先生からも御指摘がございましたように、非常に多額になりまして、その資金に充当するため出資金の一部を取りくずしている協会がございます。その数は九でございます。そこで、これらの協会に対して一体どうやって経営の健全化をはかっていくかという問題でございますけれども、私どもといたしましては、保証額の伸長あるいは事故防止対策等について指導を行なうとともに、今度の制度改正によりまして、中央基金から基金協会に対して低利融資の貸しつけができることになりました。そこでその低利融資の貸しつけ額をきめますときに、こういった出資金の一部を取りくずしているような協会については、ある程度の配慮をして、資金的な余裕をあとでつけてやるようにしたいというふうに考えております。
  57. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 暫時休憩いたします。    午後零時三分休憩      —————・—————    午前一時十五分開会
  58. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  59. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 沿岸漁場整備関発法案中心にしまして伺いたいんですが、この十年、日本の水産業はたいへんなといいますか、著しい伸長をして、まあ三十五年から四十年にかけて六百万トンという水準だったんですが、それがまあ毎年のように百万トンくらいずつふえてきて一千万トンという生産高になったわけです。が、しかし、御承知のように、水産業をめぐる内外の情勢はたいへんきびしい状況になって、水産業存亡の危機だというふうに言われていることは御承知のとおりであります。  そこで、まず沿岸漁業ですが、沿岸漁業がいま、この間の発表ですと百九十万トンくらい——まあ二百万トンをだいぶ維持していたんですが、少し下がって百九十万トンという数字で停滞をしておるわけです。大正十年に日本の水産高が二百万トンになった、五十年前ですが。まあそのときは、ほとんどこれは沿岸漁業といっていいと思うんです。無動力船が圧倒的に多かったし、動力船がたいへん少なかったわけですから、まあ大正十年に沿岸、そしてその沿岸に近い沖合いで二百万トンの水産高があったと。まあ、そういう二百万トンという状況なわけでありますが、したがって今日この比率はどんどん下がってきている。一貫して低下をしてきているという状況です。漁業生産高全体に占めている沿岸漁業生産高というものの比率は年々低下の一途をたどっておるという状況になるわけですが、そこで、この沿岸漁業振興については、御承知のように沿岸漁業振興法がありますし、さらに、海洋水産資源開発促進法があるし、水産資源保護法がありますし、今回また、この新しい沿岸漁場整備開発法案というものが出てきておるわけです。  そこで、まず第一にお伺いをいたしたいのは、この沿岸漁業について一番私大きな問題の一つだと思っておりますのは、この十年にわたります埋め立てですね、海岸の埋め立てと、それに伴う公害、これが沿岸漁業にとりましては非常に大きな問題の一つであると思っておりまして、そこでお尋ねをしたいのですが、近年におきます沿岸の埋め立て状況、どの程度の面積が埋め立てられたのか。この間の火曜日に、運輸省の人が、足鹿委員の質問に対しまして答えておりましたが、十一万二千ヘクタールということを言いましたですが、水産庁としては一体、この沿岸漁業にたいへん大きな問題を持っている埋め立てについてどの程度の海岸が埋め立てられたのか。あるいはそういう調査をなさっていらっしゃるのか。去年私が、農林省設置法が内閣委員会にかかりまして、これは水産庁の機構整備法律でありましたけれども。その際に伺ったときには、たいへんあいまいな答弁でありました。それから、その埋め立てによって一体どの程度被害を受けているのか、あるいはそれによって生ずる公害等によって、どれだけの被害を受けているのかという点についても、当時の水産庁長官の答弁というのは、たいへんあいまいなものでありました。この二つにつきまして近年におきます沿岸の埋め立て、それからそれに関連して生じておる損失、どれだけの損失を生じているかという点についてお尋ねいたしたいと思います。
  60. 内村良英

    政府委員内村良英君) 公有水面の埋め立て面積でございますけれども、建設省、運輸省の調査結果によりますと、昭和二十年から昭和四十八年の一月までの埋め立て全面積は七万六千四百十七ヘクタールでございます。その内訳は、海面の埋め立て面積が五万五千三百七十七ヘクタール、内水面の埋め立て面積が二万一千四十ヘクタールになっております。そこで、これはまあ公有水面全体の埋め立て面積でございますけれども漁場の埋め立て面積がどれくらいになっているかということにつきましては、第四次農業センサスの調査結果がございます。それによりますと、昭和三十八年から昭和四十二年まででございますが、二万一千五百九十ヘクタールということになっております。さらに、全漁連が調査したものでございますけれども、全漁連の調査によります漁場価値消滅面積は昭和四十五年八月までで十九万八千二百ヘクタールというような数字でございます。  数字的な面につきましては大体このようになっておりますけれども、それでは、これによる被害がどれくらいの価額になるかということにつきましては、現在のところ調査数字がございません。
  61. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまの長官の説明を聞いておりますというと——火曜日に見えた運輸省の説明では、私は十一万二千ヘクタールというふうに聞いておったんです。いまいろいろ数字が出ましたですけれども、センサスはこれは三十八年から四十二年の間ですね。私は、少なくとも水産庁としまして、沿岸漁業にとって非常に重要な海岸の埋め立てですね、それは決定的に重要な問題なんだから、それらについての数字というものはある程度つかめていなければならないというふうに思いますね。これは建設省なり運輸省なり等々は、それはそれなりの数字をつかんでいると思いますけれども水産庁としても、沿岸漁業のことを言う場合に、漁場がどれだけ埋め立てられている、それから、どれだけ埋め立てられつつあるのかという点等についての数字というものは、やはりしっかりしておくべきだと思いますね。これは沿岸漁民にとってはたいへんな問題なんですから。漁場が埋め立てられるということは、これはもうたいへんな問題ですわね、これ。その数字があいまいで、さて沿岸漁業振興しようというような話では、これはいただけない点が非常に大きい。しかも、どれだけの被害を受けているかということについても、これは私は去年の記憶ですけれども、全漁連の発表では、二千何百億という数字を出しておりますね。去年も水産庁は、被害額がわからぬというようなことを言った——たしか、公害によって受けている数字は百六十億か、百八十億ぐらいだと言っていますね。あいまいですね。なぜ、そういうことになるのかという点を考えてもらいたいと思うんですね。  農業で農地がつぶれるということについてはこれは握っていますよ、これだけの農地がつぶれているということについては。で、この漁場は、農地と同じだと思うんです、生産側にとっては。これは農地以上に私は、重要だと思いますね。そこに卵を生みつけ、そこでちっちゃな幼魚が育って出ていくわけですから、そこを埋め立てられるということは、これは沿岸漁業にとってはたいへんな大きな問題だと思うのですね。ですから、もう少しそういう問題についての、その被害の問題なりあるいは面積の問題なりについて水産庁として、正確なやはり数字を持っていることが、沿岸漁業振興する上について説得力を持つというふうに私は思うわけですけれども、それはそれだけに一応いたしまして……。  そこで、そういう漁業に最も適した沿岸が、あるいは漁場が次から次に埋め立てられていく。そこでそれと沿岸漁業振興政策との問題なんですけれども、どうも私の見るところでは、そういう埋め立てられようとしているところ、あるいはこれから三年後なり四年後に埋め立てられるという計画があるところ、そういうところについては、沿岸漁業構造改善事業とか、あるいはそれに類する沿岸漁業振興政策というものは避けて通っているという印象を強く受けているわけです。そういうことはないのか。  私の県の例を申し上げますと、鹿児島の沿岸は一区、二区、三区、四区と分けている。で、一区、二区のほうは、これは漁業構造改善事業というのが進められている。で、三区のほうはこれは志布志湾を中心にいたしましてあすこの十三キロにわたる沿岸を埋めるという計画があって、そこにたいへんな大きな石油コンビナートをつくろうという計画がありました、いま中座いたしておりますが。それに伴って志布志湾から内之浦、佐多岬半島、それから錦江湾にかけての沿岸漁業構造改善事業とか沿岸漁業振興というものは行なわれない。これは埋め立てる場合に、賠償金の問題も出るでしょうし、せっかく金をつぎ込んでみても、これは埋め立てるのだとか、あるいはそれによる被害があって沿岸漁業として成り立たないだろうとか、あるいは被害を受けるだろうというようなことがあって、おそらくおやりにならないのではないかという私は印象を受けているわけです。四区は離島です。いま、御承知のように、離島のほうに石油基地をつくろうという、あるいはコンビナートをつくろうという計画が進められております。奄美本島の枝手久島です。そういうことで、三区なり四区というところは、そういう沿岸振興政策というのがどうも水産庁としてはあすこはもう埋め立てるであろうからひとつよけて通れというような感じがしてしょうがない。そういうことで、私の推測では、全国的に言ってそういう傾向というのが相当強いのじゃないか。これは言うならば、やはり奪い合いですから、水産庁としては積極的に出ていかなければならないと私は思うのです。火曜日も、足鹿委員のほうから、いろいろ建設省や運輸省や通産省に質疑がありましたけれども、私は積極的にやはりやっていくべきだと思うのです。何かそういう印象を受けているのですが、そういうことはないのかどうかという点についてお尋ねをいたします。
  62. 内村良英

    政府委員内村良英君) 漁業構造改善事業推進につきまして水産庁といたしましては、工場誘致の計画があるところでは、そういう事業をしない、というようなことは全く考えておりません。  そこで先生から御指摘がございました鹿児島県の場合でございますが、御案内のように、昭和四十五年に北薩地域を指定しまして、続いて昭和四十六年には南薩地域を指定し、現在事業に入っております。これはまず鹿児島県の中で漁業のウエートの多いところから逐次手をつけていくという考え方でございまして、その二地区についてはすでに指定したわけでございますが、残りの大隅地区——この中には鹿児島湾は含むわけでございますが、及びお話しのございました島嶼部、すなわち奄美大島、種子島、屋久島等の島嶼部につきましても、それぞれ今後、指定をいたしまして、百八の構造改善事業推進地区の中に入れて事業を進めるつもりでございます。
  63. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは、そういう考えで進めてもらいたいと思いますね。そうでありませんと、これはあっちこっちすき間を見て沿岸漁業振興をやらなければならなくなってしまうという心配もしなければなりませんし、そこまでいってないでしょうけれども、そういう心配もするぐらいに考えております。たとえばいまおっしゃった沿岸漁業が盛んなところからという話ですけれども、これは大隅半島——三区というのは大隅半島です。非常に漁獲高の高いところです。それで、そのままになっているのです。おそらくこれはなかなかむずかしいんじゃないでしょうかね。いまおっしゃったですけれども、それで、そのままになっているのです。最も沿岸漁業振興をやらなければならないところがやられない。志布志湾なんて、鹿児島では沿岸漁業で一番有名なところです。今日でも有名なところです。それが十二キロにわたって埋め立てられる可能性があるというようなところから、これがずっと今日までのけものにされている。あるいはあすこに小港がありますよ。これは漁港にしてくれと、熱心な要望ですが、なかなか漁港にならない。波見港といいますがね。ぜひあすこは漁港にしなければならぬとみんな言っている。漁民も一生懸命言っている。けれども、いつまでも波に洗われるままほうったらかされている。これは埋め立てる必要があるだろう、あるいは埋め立てられる運命にあるからほうってあるのだろうということすら言っているのですよ、みんな漁民の人たちは。まあそういうことで、いま長官のおっしゃるように、これはぜひそういうことで進めていっていただきたいと思います。  次にお伺いしますのは、臨海工場地帯が至るところにできたわけですね。日本は独得の臨海工場地帯、つまり石油と鉄鉱石の上にこの高度経済成長政策ができたわけですから、石油は全部持ってくるし鉄鉱石も全部持ってくるわけですから、できたものを輸出するという関係で、どうしても臨海工場地帯をつくらざるを得ない。そうするというと、海岸部をどんどん埋め立てる。それでまあ臨海工場地帯という独得な形態が日本列島の中にずっとできちゃった。そういうことで沿岸がどんどんどんどん埋め立てられていく、そういう漁場が埋め立てられるということについて従来水産庁としてはどういう態度をとってこられたのか。沿岸漁民の、この十年なり十五年の歴史というのは、これは埋め立てに対する戦いであったり、公害に対する戦い、苦難の戦いですよ。戦いと言っていいと思うんですね。そういうものに対して水産庁がどういう指導をしてきたのか。私は何にもやってきてないじゃないかというような感じすら受けるのです。やっているのは漁民漁民は必死になってやっている。水産庁は一体この十数年にわたる埋め立てについてどういうような態度をとってこられたか。あるいは免許を与える都道府県知事に対してどういう指導をやってこられたのかという点を伺いたい。
  64. 内村良英

    政府委員内村良英君) 公有水面の埋め立てにつきましては、公有水面埋立法によります埋め立て免許が必要でございまして、これは知事の権限になっているわけでございます。  そこで、私どもといたしまして、これまで一番問題だと思っておりましたのは、県の中に、御案内のように、開発を担当する部局と水産担当の部局とあるわけでございますが、これまでの各県の動きを見ておりますと、開発担当の部局が走ると申しますか、先にどんどん話を進めまして、そこで、その話がどんどん、現実的には漁業権の問題、補償の問題その他が進んで、その辺で県の水産担当者のところに話がくる。一ぺん話が進んでから、今度は県の中の話ではなしに、外のほうから水産部局のほうに言ってくるというケースも多々ございましたので、私どもといたしましては、水産部局が、そういった問題に対して十分関心を持ち、できれば開発のほうから計画を進めるような場合においては、水産部局の意見も十分聞いてくれというような態勢で、事を進めるように知事にお願いをするつもりでおります。そうしなければ、これはなかなか、県の中の話でございまして、水産庁としては知り得ないというようなこともございますので、まず県の水産部局を十分指導いたしまして、今後、埋め立てと漁場の維持という問題については、十分な調整をはかりながらやらなければいかんというふうに考えておるわけでございます。
  65. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 埋め立てについては確かに知事の権限に属しているのですが、問題はその埋め立てるにあたって漁業権の問題があるわけですね。それで、その漁業権の取り扱いについて、水産庁としては、従来からきちっとした態度をおとりにならなかったのではないかという考えを私は持ってるわけなんです。まあ現実に私も志布志湾の問題については、二年にわたりまして漁民と接触をしていろいろやってきました。いままた、あっちこっちの埋め立ての問題についても、いろいろ漁民とあるいは漁協と接触をしながらやってきている。そういう中で私が感じますことは、この埋め立てが、長年にわたってたいへんな勢いで怒濤のように日本の漁場を埋めていくという場合に、水産庁が、その漁業権の問題について、明確なはっきりした考え方をとっていらっしゃらなかったのではないか、という印象を強く受けるわけです。  そこで、お尋ねをしたいのですが、御承知の大分県の風成の裁判がありましたですね。それで漁民が勝利を占めた。で、二審もまた勝利を占めた。そこで風成の裁判が終わってから、水産庁がこの漁業権の問題について、都道府県知事に対して指示をし通達を出したというふうに言われているのですね。で、私か見たところによりますと、——初めて出したというのですね、水産庁が。ですから、これは四十八年になりますね。四十八年ですね。だから、埋め立てについて漁業法の八条も適用してやるべきであるという指示をしたというふうに聞いてるのですけれども、書いたのを見たのですがね。これはそうなのか、そうおやりになったのかという点を伺います。この裁判には、御承知のように、水産庁からも担当官が出ているのですね。この指示をおやりになったのかどうか。
  66. 内村良英

    政府委員内村良英君) 昭和四十七年の九月二十二日に、漁業権の放棄または変更をする場合には漁業権行使規則の改廃手続をすべきである、という意味の通達を出しております。ちょっと御説明申し上げますと、「漁業権を放棄または変更する場合において、組合総会の特別議決のほかに沿岸漁民の書面同意を要するかどうかについては、訴訟問題となっており、現在、地裁段階での裁判所の判断が分かれているところである。  このことについては、漁業権を放棄しまたは変更することによって、必然的に漁業権行使規則に基づく漁業行使権者の漁業の行使に実質的な影響を及ぼすものであるから、書面同意制度の趣旨をふえんして漁業権自体の処分の前に必らず漁業権行使規則の廃止または変更の手続をとり知事に認可申請をするよう関係者指導されたい。  なお、埋立事業等に伴う漁業補償契約の締結にあたっては、組合は関係する組合員全員の同意をとって臨むようあわせて指導されたい。」という通達を出しております。これは漁政部長名で出しております。
  67. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 弱いね、長官が出さなくちゃ。  この八条を適用してという、いまおっしゃったことは、長々だらだら読まれたから、ちょっとつかみにくい点もあったですけれども、私は中身は了解しておるつもりです。わかっております。  そこで、この通達どおりにいきますと、これはなかなか漁民としては非常に喜ばしいことなんですよ、たいへん喜ばしいことです。まあ十数年にわたって沈黙を守っておった水産庁が、風成の裁判の一審の判決が出てこういう指示をなさった。これは水産庁長官の名前で、がちっと私は出すべきだと思う。これはたいへんよろこばしいことだと思っているのですけれども。それで、これはちょっとこまかい問題になりますけれども、これは埋め立てにあっている漁民にとってはたいへんな問題ですが、漁業権と入漁権ですね。これといまさっきお読みになりました行使規則、この漁業権とそれから入漁権とそれからもう一つ行使規則と法律の規定に差がありますね。これがどうも私は解せないのですけれどもね、漁民がぶつかっているわけですね。そこで、いま局長がお読みになりました漁政部長の名前で指示なさった、そのことで漁民はいま助かっているわけですよ。そこでどういうことになるのですかね。漁業権と入漁権ですね、これは水協法の五十条によって組合員の過半数か出席をして——正組合員ですね。準組合員は除いて、正組合員の過半数が出席して三分の二以上の賛成があれば、漁業権の放棄ができる、入漁権の放棄ができると、こうなっているのですね。ところが、この漁業権と入漁権に当然一体としてある行使規則、これはいまと同じような三分の二以上の賛成が要るというほかに、もう一つ漁業法の八条によってもう一つブレーキがかかっている。そのブレーキは、廃止変更する漁場で、漁業権の行使権を持っている漁民の、書面による三分の二以上の賛成が要ると、こうなっているのですね。ですから、漁業行使規則については、これを変更したり消滅するときには、水協法によって正組合員の過半数が出席をして三分の二以上の賛成が得られなければできない。もう一つ漁業法八条によって実際漁業に従事している者三分の二以上が書面で同意をしなければならない。二つの歯どめがかかっている。漁業法八条のほうがもっと強い歯どめがかかっている。漁業権と入漁権についてはそういう歯どめはかかっていないわけですよ。そこで、今回漁政部長の通知で漁業法八条の趣旨といいますか、漁業権についてもふえんをしてやるように指示なさったわけでしょう、どうですか。
  68. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生案内のように、漁業法第八条は、漁業権行使規則の設定、変更及び廃止の手続を定めたものでございまして、漁業権の消滅については八条で手続を定めておりません。そこで廃止につきましては、漁業権の放棄は水協法五十条の特別議決で足りるということに法律上なっておりますけれども、いろいろ問題がございますので先ほど読み上げました通達を出しまして、実際上は関係漁民の同意を得てやるようにというふうに指導しているわけでございます。
  69. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そのことは、私はもう一ぺんお聞きしますよ。行使規則の変更なりなんとかについては水協法の五十条の適用もあるが、もう一つ漁業法八条の適用があるのでしょう。ところが、漁業権については水協法の五十条しかないんでしょう。そして今回の通達というか、指示によりまして、漁業権の問題についても行使規則の廃止なり変更等に伴うと同じような趣旨でやれという指示をなさったんでしょう、どうですか。
  70. 内村良英

    政府委員内村良英君) そのとおりでございまして、漁業権の放棄は水協法五十条の特別議決で足りるわけでございます。そこで、確かに八条の漁業権行使規則の設定、変更及び廃止の手続に比べまして、手続上弱いと申しますか、面もございますので、ただいま読み上げました漁政部長通達で、漁業権の、もう一ぺん読みますと、「漁業権を放棄しまたは変更することによって、必然的に漁業権行使規則に基づく漁業行使権者の漁業の行使に実質的な影響を及ぼすものであるから、書面同意制度の趣旨をふえんとして漁業権自体の処分の前に必らず漁業権行使規則の廃止または変更の手続をとり知事に認可申請をするよう関係者指導されたい。」というふうに指導しているわけでございます。
  71. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それはたいへん、さっきから言っているようにけっこうな指示でありまして、初めて水産庁が目がさめたというんですかな、漁場の埋め立てについて、初めて十数年ぶりに目がさめたわけです。それも風成の漁民の奥さん方というか、漁民のおかみさんたちが、それこそたいへんな闘争をやって、そして裁判をやって裁判で勝った。そういうことを踏まえてのことだろうと思うのです、その後にお出しになったという話ですから。たいへんけっこうなことだと、私は喜んでおるわけです。これがいま埋め立ての、あちこちの埋め立てについての漁業権の場合に、それは効果があるわけですよ。で、たいへん喜んでいます。  そこで私は、これはちょっと蛇足になるのですか、私の希望ですけれども——その漁業権と入漁権よりも、漁業の行使規則のほうが二重に歯どめがかかっておる。入漁権なり漁業権には一重の歯どめしかかかっていないというのが、ちょっと私けげんなんです。本来、行使規則というのは、入漁権あるいは漁業権とそれは不離一体のものです。ついているものだと思うのです。ところが、その根元の漁業権なり入漁権なりについての歯どめが、法律上はいまはないわけです。おたくの通達、指示でやっていらっしゃるけれども。だから、これは漁業法の八条を改正をして、漁業権について、あるいは入漁権について、行使規則の場合と同じような歯どめをかける必要があるのではないかというのが私の考え方です。そこで、そういう必要があるかないかということについてはどうですか。私は、必要があると思うのです。ただ、いまお話の、風成の裁判で漁民が勝ったから、一応判例としてはできている。おたくの通知が、指示が出ているが、その漁政部長の指示というもので指導できますか。漁業権の放棄なり入漁権の放棄について、漁業法八条の趣旨をふえんした形で指導できますか。指示したんだから指導できるとお思いになるでしょうけれども、ぴしっと指導してもらわなければ困るわけです。これは、どの程度の力があるものだろうか、というふうに思うわけですよ。私も、長いこと役所におったのですけれども、役所の仕事をあまりしなかったものですから、ちょっと不案内のところがありまして、そこで、どの程度の力になるものかという点ですね。
  72. 内村良英

    政府委員内村良英君) まず第一に、そういった指導者なしにはっきり漁業法を改正して、そういった手続をきめるべきではないかという御意見でございますが、実は水産庁の中に、四十八年度から——漁業法ができましてもう二十年以上の歳月が経過しているわけでございますので、漁業法自体の検討を含めて現在検討会を持っております。それは単に漁業法だけではなしに、漁業制度全般に関することを検討しているわけでございますが、その検討会で検討する事項の一つに、この問題も考えなければならないというふうに私どもは考えております。  それから、指導でやれるのかということでございますけれども法律の解釈の問題は、最終的には裁判で争われることになるわけでございますが、現在のいろいろな動きから見ますと、私どものこの通達で十分指導ができるというふうに考えております。
  73. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この四十八年の指示はたいへん喜んでおるですね、水産庁がいいことをしてくれたと。これはやっぱりこういう趣旨だと思うんですよね。やってもらわなきゃ困るわけですよ。なお、念のために私は漁業法の八条を改正をしておやりになったらどうかという希望を持っているわけです。それについては、漁業法はじめ全体の検討中だということでありますから、ぜひひとつこれを入れるようにしてもらいたいと思うんです。  埋め立てのときの、実際、漁業協同組合の漁業権放棄の何といいますか、総会なんというのは、相当なものですね、これは相当なものだ。風成の裁判でも出ましたですけれども、相当なことできめちゃうんですね。いいからかげんと言っちゃまずいですけれども、まあいいかげんできめちゃうんだ。問題にならないのだ。  ただ、ここで私、念のために、いまいろいろ問題になっておるから申し上げたい、伺いたいのですけれども、水協法の五十条、組合員——准組合員を除いて組合員の過半数が出席した総会において三分二以上の議決によって漁業権を放棄する、というのが五十条に載っておるわけですね。その五十条にいう正組合員の組合員というのは、水協法の十八条に組合員の定義が指定してあって、漁業を行なっている者、そしてまたは、一年間に九十日から百二十日漁業に従事する者と、こうなっていますね。いま盛んに問題になっておりますのは、この正組合員というのが問題だと。というのは一ぺん組合員になって、というのは、三分の二とるかどうかの問題ですからね、これは。ところが、漁協の場合は、組合員、正組合員だと言っても、給油所のだんなであったり、理髪屋のだんなであったり、もう漁業から足を洗っている人が相当入っているわけですね。これはもうこの十年の間にたいへん漁業者もおかに上がりましたから。ところが、一ぺん正組合員になるというと、その辞退の届けを出さない以上、それは正組合員としてずっと残っているというんですね。それで、一たび埋め立ての問題が出ますと、これはそういう漁業に全然従事していない人は、それは海を埋め立てられようとたいしたことはないというやっぱり感じがあるんですね。いつも激しい問題になるわけです。それで、漁業協同組合の中の正組合員というものの中に、相当数漁業に全く従事していないという人が正組合員として入っている。ところによりますと、埋め立ての話が出ますと、とたんに、その組合員が倍にふえたというところも出ているのです。それは漁業補償をねらって倍にふえると。どうも組合員の、正組合員というものについての考え方ははっきりしなきゃいけないんじゃないかというように思うんですけれども。  鹿児島の例で申しますと、鹿児島では八十一か二の漁業協同組合があります。そして、正組合員というのが二万七千ぐらいだというのですね。組合員というのは二万七千ぐらいだ。ところが、農林省の統計調査部で出しておりますのによると、漁業に従事している者あるいは漁業をやっている者の兼業、専業含めてうんと少ないんです。一万ぐらい少ないんです。ここら辺、三分の二というときに非常に問題になりまして、困っておるんですがね。これは、漁業協同組合の正組合員というものについてどういう考え方を持っていらっしゃるのか。特にこの十年の間に非常なる変貌を遂げておりますから、正組合員についてどういうような考えをお持ちになっていらっしゃるのかという点をお尋ねしたいと思います。
  74. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先生案内のように、今日の法制下では、農業協同組合あるいは漁業協同組合は、本来自主的な運営をすることがたてまえになっておりまして、水協法も行政権の介入と申しますか、そういうものを極力排除するというような法制的には体系になっております。そこで、法律にははっきり九十日ないし百二十日以上漁業に従事しなきゃならぬということが書いてあるわけでございますが、その判定の問題になってくるわけでございます。  そこで、ある人が九十日漁業に従事しているかどうかということになってまいりますと、これは組合で判定していただくより以外に方法ないわけでございまして、行政庁といたしましては、そういった組合の判定を尊重してやっているわけでございます。私どももただいま先生からお話がございましたように、補償の問題が起こると、急にいままでやっていなかった人が、小さな船に乗ってやっておるというような話を聞きますけれども、いずれにいたしましても、漁業に従事していたか従事していなかったかという問題は、かりに組合の関係者が、たしか十分の一でしたかが要求して、県の検査を求めまして、組合の運営その他の検査をしたといたしましても、その人が漁業に従事しているか従事していないかということにつきましては、とてもそういった行政庁の検査で判定できる問題ではないので、組合の判定というものを尊重してやらなきゃならぬということに相なっているわけでございます。
  75. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 法律では十八条に、漁業に従事している者、その地区内に住所を有し、かつ漁業を営み、またはこれに従事する日数が九十日から百二十日と、そして定款の定めるところと、こうなっておりますね。ここに明らかに法律に書いてあるんだが、それと違ったものについての、行政庁としては法律とは違ったものが、これに全く反しているものがあってもそれはわれ知らずと、行政庁では知らぬということですか。
  76. 内村良英

    政府委員内村良英君) かりにそういう人がございまして、他の組合員から、あの人は正組合員として資格がおかしいんじゃないか、ということで、行政庁の監査を請求しまして監査をした場合において、組合の現事者が、いやあの人は九十日以上——定款が九十日であれば九十日以上漁業に従事しているんだ、ということを判定しておる場合に、それに対する反論をあげて、いやあの人は九十日やっておらぬということを行政庁がやるということはなかなか現実問題として、そこに検査官が常々いるわけでもございませんし、むずかしいのではないかと。だから、私どもといたしましては、やはり組合の判定というものを尊重せざるを得ないということに結果的には相なるわけでございます。
  77. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この漁協の組合員は、いろんな形になって、この十年の間に、たいへん変わっていますよ。それでその漁業に従事していない人たちというのは、地先の海というのは所有権みたいに考えているんですね。漁民はそうじゃないですよ。漁民はその沿岸の海にあって漁業をやること、それが漁業権なんだと。漁業をやっておることを。ところが、そう考えないんですね、漁民でない漁業者というのは。所有権のように考えておる。だから田畑を切り売りするように売っちまってもいいじゃないかというような考え方になってくるんですね。ですから、埋め立てと非常に関係してくるわけですよね。  私のところで具体的に志布志の問題もありましたし、いままた喜入漁協と岩本漁協との間の紛争にもなっているのですね。県全体の問題になっているのですね。ですから、私はそういう法律に規定してある正組合員というものが守られるように、はっきり反しているものはないように、これは通達を出したらどうだ、指示をしたらどうだと。先ほどの漁政部長の指示と同じように。これは非常に重要な問題だと思いますよ。漁民は決してそこを自分の所有権みたいに考えてないですよ。やっぱり公有水面だ、その公有水面の中にあって、それを活用して漁業しているということが漁業権だと思っている。海から上がっている人はそう思わない。賠償金もらうということしか考えていない。まるで所有権みたいに売っ払おう売っ払おうという考え方になっている。一般の今度は漁業関係のない者はどう思っているかというと、その漁民が売るだけで海が埋め立てられるということは困る。それは沿岸というものは、これは国民全体のものじゃないか、そこで海水浴もしなきゃならぬし、またながめもいいし、いこいの場所でもあるし、これからたいへん重要な問題なんだ。それを漁民漁業権を切り売りするように売っちまって、それで埋め立てしまう、これは反対だと、おかしいじゃないか、こういう意見もあるのですよ。  ですから、埋め立てをめぐっていま非常に私は重要な段階にきていると思うのですよ、漁民の側から言っても、それから漁民でない側から言いましてもね。そこら辺については私は政府として、水産庁だけではなくて運輸省も、それから建設省もはっきりとした考え方を出さなきゃならぬときだと思うのですけどね。ですが、いま水産庁の問題についていいますというと、正組合員の問題について法律ではっきりしてあるんだから、これがひとつ守られるようにという指示をする、指導するというようなことをおやりになれば、それは県の漁連としてはずっとやりいいですよ。何らかの検討なさったらどうでしょう。これは漁協は御承知のように、学識経験者というようなものが入ることになっているのですよね。ですから、弁護士さんが入ったり、お医者さんが入ったり、商店のだんなさんが入ったりしているのですよね。そういう人たちが理事やったりなんかやっているところもあるのですよ。だから、これは漁業やってない人が漁協を牛耳っているという場合も至るところにあるのですよ。でしょう。——どうもそこら辺に埋め立てという問題が出てきて、漁場喪失という問題が出てきて非常な問題になっている。これは厳重に検討なさる必要がある。すみやかに検討して、そして指示をするという程度指導をなさるべきではないかと私は思っているのですけれども
  78. 内村良英

    政府委員内村良英君) 漁協の組合員資格はこれは定款できめてあるわけでございますから、組合として定款を順守して業務を執行すべきことは当然でございます。したがいまして、私どもといにしましても、その点について組合員資格を定款を順守してやるようにという指導はもちろんいたします。ただ問題は、認定はやはり組合の理事者なら理事者の認定に待たなければいかぬ。九十日以上やっておるかやってないかという話になりますと、そこまで、あの組合員は九十日やってないじゃないかということを、行政庁が何か挙証してやるというところまではなかなかできないのじゃないか。そこはあくまで漁協は自主的な機関でございますから、尊重してやりたい。そこで九十日そこへ住んでおりまして、過去において漁業やっていた。しかし、現在もうほとんどやっていないというような人はやはり定款に従って準組合員なら準組合員にするということはもう当然のことでございます。したがいまして、私どもといたしましては、そういう指導を一そうやるということは、そのようにしたいと思います。
  79. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 おっしゃるとおり私は、定款の中に入ってどうこうというのではなくて、十八条の趣旨というものが行なわれるようにということ。というのは、この十年の間に非常に変貌してきている。いろんな変貌の形が出ておりますから、しかしそれがいま埋め立てを中心にして大きな問題になってきている。その場合に、水協法の十八条の趣旨というものを守られるようにという指導をなさるということが、これはいまの漁協がきちっとした形になっていくというふうに思うのです。その意味で私は主張をしておるわけです。ですから、いま長官のおっしゃるように、そういう指導をすみやかにやってもらいたいと思うのですね。そのことによってこの十年の間に非常に変貌してきた漁協というものが、すっきりとした漁協の方向へ建て直ってくる。現状に合った漁業協同組合というものになってくるというふうに思いますね。ぜひそういう指導をしていただくように要望いたしておきたい。  この問題は、ちょっとこまかちところをやりたい点もありますけれども、時間が無理ですから、次に移りまして、今度は三十八年にできました沿岸漁業振興会と今度新しくできます整備開発法ですね。この関係については先ほど足鹿委員のほうからも質問があったんですが、沿岸漁業振興法に基づいて漁業構造改善事業というのが行なわれてきた。これ一覧表を見てみますと、たいへんこまかい金なんですね。第一次が、一ヵ所が百万円単位なんですね。第二次になって平均二百五十万円ぐらいになっておりますね。これはだから、漁業構造改善事業というのは、相当な問題があるんじゃないかと思いますね。実施の期間の問題、それから金額の問題。金額が小ちゃい。一件当たり百万円ぐらいでしょう、第一次の場合ね。これは国の経費ですよ、補助金ですよ、小さいですね。いまやっております第二次の漁業構造改善事業は、一件当たり二百五十万円ぐらいの金になる。これはもっとでっかくやったらどうですかね。きっちりやらなければ——こんなちょびちょびしたんじゃ、海に洗われちゃうでしょう、これは。砂に埋まっちゃうでしょう、これ。目薬みたいな形になっているのだな。何とかこれははっきりしないと、いま沿岸漁業を根本的に建て直す絶好の機会に来ているんですよ。どんなことから言ったって、だれが見たって、沿岸漁業というものを見直して再建しなければならない絶好の機会に来ているのだから、この際こういう問題については思い切ってやるべきですね。それには、ぼくがさっきから言っているように、海がどのくらい埋まったかわからない。わからないと言っちゃまずいですが、水産庁の正確な調査がない——どれだけの沿岸漁業被害を受けているかという調査がないというのじゃ、世間さまに対してあるいは財政当局に対して説得力にならぬというのですよ。だから、こんな目薬みたいなもので、三年計画、五年計画、十年計画でやられたんじゃ、砂に埋まっちゃうというような感じがするのだな。だから、そういう点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。  それと、今度整備開発法ができますけども、この際に沿岸漁業構造改善事業というものも根本的に洗い直す必要があるんじゃないか。従来のようなやり方じゃなくて、思い切って洗い直して見直すという態度が必要じゃないかと私は思うんですけれども、そういう点についての長官のお考え方を伺いたい。
  80. 内村良英

    政府委員内村良英君) 構造改善事業予算お話が出たわけでございますが、一地区平均では大体一億五千万ぐらいの金を使ってやっておるわけであります。部分的には、あるところの漁場改良というものについて、かなり小規模になってしまうということはございますけれども、一地区平均の事業量といたしましては相当な国費を使ってこれをやっておるというかっこうになっております。  そこで、先ほど足鹿委員の御質問に御答弁申し上げましたように、構造改善事業は、第一次十ヵ年やりまして、いま第二次に入っておるところでございますが、いろんな問題がここでできるようになっております。そこで、地域の実態に応じまして、下物の整備あるいは上物整備重点を置いているというような形でいろいろやっているわけでございますけれども、従来の実績等を見ますると、やはり上物整備のほうにかなりウエートがかかっているということで、基本的な漁業整備は、もちろんやっているとこころもございますけれども、漁礁等も必ずしも非常に大きなものをやっているというわけでもないというところで、今度この法律に基づきます漁場整備開発によりまして、もっと大きなもの、根本的な漁場整備をやりたい。そこで、それと地域でやっております二次構というものとを結びつけて沿岸漁業振興をはかってまいりますと、相当の生産力の拡大、それに伴います漁家所得の向上ということが期待できるのではないかということで、かなり意欲を持って私どもは今後この問題に取り組みたい、こう思っているわけでございます。
  81. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 従来、この十ヵ年でおやりになった第一次構造改善事業、これはいろんな批判がありましたですね。そういった批判を受けとめて第二次構造改善事業というものが始まっている。しかし、その第二次構造改善事業もまた非常に小さなものじゃないですかと。ですから、いまや沿岸漁業というのは、絶対これは見直して再建しなきゃならない絶好の機会に来ているんです。だから、いまこういう新しい整備開発法というものが出てきたこの際に、構造改善事業というものをもっと思い切っておやりになったらどうかと。金額は一地区幾ら私のところへ来ましたのは件数で書いてありますよ、件数で。たとえて言いますと、第一次構造改善事業というのは大分でいうと、これは件数でいきますと二百何件というようなあれですよ。金額でも小ちゃいですよ。一件当たりなんというのは小ちゃなものですよ。百万円ぐらいです。ですが、これはまあせっかくこういう沿岸漁業整備開発というようなものが出てきておるわけですから、ぜひ第二次構造改善事業というものももっともっと大型のものにしてやってもらいたいということを申し上げます。  もう一つ構造改善事業というのは、漁協を単位にやっていらっしゃるのですか。
  82. 内村良英

    政府委員内村良英君) 一例をあげますと、大型漁礁は県単位でやっております。それから地域の構造改善事業については、漁協がやっているものもございますし、市町村がやっているものもございます。
  83. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、先ほど申し上げました沿岸漁業振興の問題については、海洋水産資源開発促進法というのが四十六年にやはり成立いたしておりますね。これは、この目的の前段のほうは、沿岸漁業の問題について盛んに強調しておりますし、後段のほうは、先ほどのお話にも出ましたセンターの問題が出てくるわけですね。海洋水産資源開発センターが後段の目的になっておるわけですね。前段のほうで、その沿岸の問題について強調いたしておりますが、先ほど足鹿委員の質問に対しまして、北海道の六地区と、それからまああと六つぐらいあって、全体として十二ヵ所ぐらいが指定されたと。で法律が制定されて三年になっている。で、まあ指定は受けたが、事業はやるかやるまいかというようなところに来ているんじゃないでしょうか。これね、一体これはどういうふうにこれからおやりになるつもりなのか。目的の前段に出ている、この沿岸海域にある水産動植物の増殖及び養殖計画計画的に推進するとなっておりますが、これはどういうふうにこれから推進なさるおつもりなのか。
  84. 内村良英

    政府委員内村良英君) 海洋水産資源開発促進法沿岸漁業整備開発法案とは、増養殖推進によりまして沿岸漁業生産の拡大をはかろうというねらいについては共通しているわけでございます。そこで、今度の法案というのは、そう考えてくると重複するのではないかということでございますが、先生案内のように、これは仕組みを異にしておりまして、私どもといたしましては、それぞれ相まって運用されることによってはじめて効果的な漁場整備開発ができるのではないかと思っております。  そこで、具体的にどういうことかと申しますと、たとえば促進法は、開発区域指定によりまして、海底の掘さく等漁業以外の海面利用を規制しよう、これは届け出制あるいは届け出勧告制等をとっておるわけでございますが、そういったことで増養殖適地を将来にわたって確保することをねらいにしているわけでございます。それで、確保しまして、そこへ大型漁礁をつくるとか、あるいは漁場整備をやるということで、今度の法案に基づきましていろいろな事業をやっていくということで、両者相まって仕事を進めていけば、沿岸漁業振興に非常に役に立つというふうに確信しておりますし。そういった運用をしたいと思っております。
  85. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃ、この資源開発促進法にいう海域指定することになっていますね。開発地域を指定するとなっているでしょう。それがいま十三か幾らか指定したというのでしょう。百幾つ指定する予定でしょう、計画としては。そうじゃないんですか。その中のいま十二か十三が三年たって指定したと。指定しっぱなしでいいんですか。何もやらぬでそのままでいいんですか。ですから、三年たっているんだが、十三か指定をしたと。これからどうこれを推進なさるおつもりかということを聞いているわけです。
  86. 内村良英

    政府委員内村良英君) 沿岸水産資源開発区域指定につきましては、これは都道府県知事計画を策定いたしまして上に上げていくことになっております。先ほど足鹿委員の御質問に御答弁申し上げましたように、現在知事から農林大臣協議のある具体的な指定対象水域は一道三県の十三区域でございます。そのうち北海道の六区域につきましては、すでに農林大臣関係の各省と調整をいたしまして現実的に指定をいたしました。残りの七地区につきましては、現在関係各省、まあ運輸省、建設省等意見調整中でございまして、私どもの見ているところでは、大体年内には残りの地域の六つはもう必ず指定できるというふうなことでやらなければならないし、石川県の三地区につきましてはもう近く指定するつもりでおります。そこで、確かに計画の場合には百以上あったわけでございます。私どもといたしましては、今後沿岸振興につきましてこの両制度を相まって運用するということは重要でございますので、今後も関係都道府県知事に要請いたしまして、もっともっと指定地域をふやすようにしなければならないというふうに考えておるわけでございますが、今日までの運営は遺憾ながらそのようなことになっておるわけでございます。
  87. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 百をこすような地域を想定をしておって、三年たってみて、まあ六つは実際指定できたが、あとはまだ相談中である。それがことし中にできても十三地域しかない。じゃ、あとどうなさるんだと、三年以上たっているじゃないですかと、一方、下段の目的の、センターのほうは活発に動いておるじゃありませんかと。前半の沿岸漁業の問題については、これはおっしゃるように都道府県知事が申請をしてくることになっているのだけれども、それを何か漫然として待っているんじゃないかというような印象すら受けるですよ。これはもちろん水産庁として都道府県と相談の上いろいろ協議をなさって積極的に指導し、進めていかなければならない問題だと思うのですよ。それを何かそうじゃなくて、都道府県知事が黙っているから、おれのほうは黙っているんだと言わんばかりのような印象を受ける。これは私は、とんでもない話じゃないかと思う。後段の久宗センターのほうは盛んに動いていますよ。前段のほうはさっぱり動いてない。動いてない。おそろしく動いてない。で、そうしておって、一方じゃ、今度は沿岸漁場整備開発法というようなりっぱな法案が出てくる。そしてまた、先ほども申し上げた沿岸漁業振興法に基づく構造改善事業というのも、どうも私の印象ではすっきりしない。ちょっぴりしか金はないというような話では、一体どういうことなのかということを私は聞きたいわけなんです。  ですから、これは百幾つを目標にしてこれから積極的にお進めになるのかならないのか。三年たって一割ぐらいしかできぬようじゃ、これはどうにもならぬ。どうも水産庁はきちっとしないですね。きちっとしないじゃないか、という気がしてしようがないですね。これはいまの水産庁長官の責任じゃないのだけれども、前々の長官にも責任があると私は思うんですけれども、どういうふうにお考えですか。
  88. 内村良英

    政府委員内村良英君) 先ほどから御答弁申し上げておりますように、今後の沿岸漁業振興ののためには、この二つの法律をそれぞれ有機的に活用してやっていくことが非常に大事だと思います。そこで、今度の沿岸漁場整備開発法案の付則にも両者調整をとってやるようにという規定がございます。  そこで、いま、非常に指定がおくれておるじゃないかということでございますけれども北海道につきましては六地区指定したわけでございます。今後、石川につきまして三地区、なるべく近い将来すぐ、あんまり遠くない時期に指定いたしますので、これによって内地の場合のそういった指定地域のパターンがある程度できますから、そういうものを参考にしながら関係都道府県知事指導して、もっと指定の数をふやしていきたい、これは私どもも常々そう考えているわけでございまして、大体先生の御指摘の御趣旨に沿って運用をやりたいというふうに思っております。
  89. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、沿岸漁業の場合に問題になる遊漁問題ですね、これどうなさるおつもりか。どういうふうな考えを持っていらっしゃるのか。これは四十三年と四十四年にこの調査を行なわれたわけですね。もうだいぶ前の話、五、六年前の話なんですが、この五、六年前のときの調査で、遊漁者の総数というのが千七百万で、そしてそれに対して、そのための船というのが二万隻以上ある。漁船も加えると四万六千隻というのが遊漁に使われている。また、そういうことをやっている漁協が、約千七百の漁協がやっているという状況ですね。これは五、六年前の数字ですけれども、いまはどういうような状況になっているのか。もっとこれはふえているんじゃないかと思いますし、いろんな意味で、この問題は沿岸漁業との関係漁業の再生産あるいは漁場の秩序という点等からいいまして、また、一般国民の保健、休養、そういう問題からいいましても、何かここで水産庁としては、はっきりした考え方をお出しになる必要があるんじゃないだろうかという私は考えなんですけれども。たいへんですね、いま。私のほうの鹿児島あたりで、地方区なものですからあっちこっち回るのですが、正月の元旦あたりからあっちこっち自動車がとまっているのですね、とんでもない所に。何でこんなところに車があっちこっちとまっておるのかと思うと、みんな下で釣りをやっておるわけですね。それで、漁協に行きますと、漁業なんかやらないで漁民の人は待っていますよ、船着き場に。そうしてみんなきれいな船が、ちっちゃな船が一ぱいありまして、鹿児島でも、大阪や名古屋あたりからたくさん来まして、で、そういう船に、漁民は、それに乗せていって、どこかに置いてそして帰ってくると、それだけでけっこう一日三千円、五千円、六千円というお金が入るという形になっていますね、いま。ですから私は、いま二千万という数字だろうと思うのですよ、あるいは二千万をこすだろうと思うのですね。たいへんな数字になっておるのですけれども、これと沿岸漁業との関係についてどういうふうにお考えになっておられるのか、伺っておきたいと思うのです。
  90. 内村良英

    政府委員内村良英君) 私どもも遊漁者と漁業者のトラブルにつきましては、いろんな話を聞いております。  そこで、水産庁として、どういうことをやっておるかということでございますが、各地域の実情に即しつつ遊漁問題の現実的な解決をはかりますために、各県に漁場利用調整協議会というものを設けまして、そこでいろいろ漁業者と遊漁者との紛争の防止等の仕事をやらしているわけでございます。中央にもまた同じような協議会がつくってございます。そこで、中央協議会の審議結果に基づきまして、昭和四十七年の五月でございますが、次のような通達を出しております。都道府県海面漁業調整規則により調整を行なうのが適当な事項としては、遊漁者の漁具・漁法の制限、遊漁船の届け出制、アクアラングを使用して動物を採捕する者の許可制、などがある。それから次に、海区漁業調整委員会の指示により調整を行なうのが適当な事項としては、漁業調整規則により遊漁者が使用可能とされている漁具・漁法についての一時的、地域的規制を行なうこととしている。それから、指導により調整を行なうのが適当な事項としては、遊漁者の安全対策、人身事故対策等について行なうこととしている、というようなことで、かなりきめのこまかい指導を県にしているわけでございます。  ところが、いろいろな紛争が最近ますますふえているというようなこともございますので、先ほど申し上げました漁業制度検討会をいまやっているわけでございますが、この中で、場合によっては、法律をつくって、この調整をやるかというようなところまで踏み込んで検討しよう、という姿勢でいろいろ検討している段階でございます。
  91. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今度は、先ほど言いました海洋水産資源開発センター、これについて伺いたいのですけれども、これは四十六年の七月に発足をしたのですね。私の聞きたいのは、これは、沖合い、それから遠洋漁業の新漁場開発調査のため海洋水産資源開発センターをつくる。そして企業ぺ−スで漁業生産活動を行なう必要のある条件。漁場の条件とか、漁獲の方法とか、いろんなことを調査されるわけですが、私は、これと水産研究所との関係について聞きたいわけなんですよ。これを見ますというと、非常に広範な——私のところにありますのは、開発センターのしおりがきておりまして、それからあと、四十七年にどういうことをやり、四十七年にどういう計画だというのがきているのです。これは、日本のこの薩摩沖から始まって、世界の各地域にまたがっていろいろ調査をやってらっしゃるわけですね。これと農林省が持っております水産研究所の、特に静岡の清水にあります遠洋水産研究所との関係。それから、ここの水産センターですね、いまのこの水産センターに農林省の職員が、水産庁の職員が行っておるのか行ってないのか。それから、そのセンターは、職員が非常に少ないんですね。職員は、初めは十一名で発足している。いま部長二人、課長四人ですか、それ以外に職員は合わせて二十名ぐらい。そしていま申し上げたように、世界の七つの海にまたがって調査をやっている、というように出ているんです。ですから、いま私が申し上げたような点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  92. 内村良英

    政府委員内村良英君) 海洋水産資源センターは、先生案内のように、漁場として未利用、または低利用の段階にありながら、潜在的に相当量の有用水産資源が存在すると推定される海域におきまして、それらの漁場で、企業的な漁業操業ができるかどうかということの可能性を調査するのが海洋水産資源センターの設立の大きなねらいでございます。すなわち、基礎的な研究ではなしに、ある程度もう資源がそこにあると、そこでその資源を利用して、はたして採算が成り立つかどうかということを調査するのが、海洋水産資源開発センターの仕事でございます。それに対しまして、水産庁水産研究所のやっております仕事は、基礎的な資源調査、あるいは養殖等の技術的な調査——そういった基礎的な調査水産庁の研究所でやっておりまして、前のセンターの調査というのは、企業化が可能であるかどうかという調査でございますから、役所がやるのにはどうもふさわしくない調査でございます。  そこで一それじゃセンターに水産庁の人間が出向しているのかということでございますが、出向はしておりません。ただし、水産庁をやめていった者はもちろん相当おりますけれども、出向はいたしておりません。  それからその開発センターの調査船に水産庁の研究員が乗っているんじゃないかということでございますが、たとえば東海水研に漁具、漁法の研究部門がございます。現実に、水産試験研究所の予算等も制約がございまして、独自の船を出してやるということはなかなかできないというような場合に、その船に乗りまして、もちろん経費その他はこちらで持っているわけでございますが、乗りまして漁具、漁法等の試験をそこでやってみるというようなことはやっておりますけれども開発センターの試験そのものを水産庁が入って一緒にやっているということにはなっておりません。その船を利用いたしまして、水産研究所の試験研究をやっておるというようなかっこうになっておるわけでございます。
  93. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、いまおっしゃった、これは企業ベースでやれるかやれないかという点を中心にしておやりになる、これは承知している。問題は、資源があるかどうか、潜在的な資源があるかどうかということは、これは水産庁が持っております。静岡にある遠洋水研がおやりになるんでしょう。そしてそれが採算がとれるかとれないか、あるいはどうかということについては、このセンターでおやりになるんでしょう。というふうに私は理解をしているわけですよ、間違いないですか。  そこで、私の疑問に思いますことは、あとでも問題にしたいんですけれども、静岡の清水にある遠洋水産研究所、これは昭和四十二年にできたんですね。つい最近できたんです。これができたばっかりの小っちゃな——小っちゃなといったら恐縮なんですが、この遠洋水産研究所に、私、農林省の名簿を持ってきてますから、どういう職務の者がどういうふうにおるということは、これは一目りょう然なんです。これは職名書いてありますし、名前もちゃんと載ってますからね、どういう仕事をしているかということはもう明らかで、一目りょう然です。人間がどれだけ配置してあるかということもきちっとわかっている。この四十二年にできた遠洋水産研究所で七つの海を調査できるのかどうか。——できないでしょう。やれるわけないじゃないですかと私は思うんですね。そうするというと、さっきおっしゃったけれども、このセンターとの関係について問題がありませんか、と言っているんです、考えておるわけです。もちろん、センターの船に、水産庁の方がお乗りになると、あるいは水産研究所の人が乗って研究をなさると、あるいはそこで集めたデータを水産研究所が分析をするというようなことをやっていらっしゃるわけでしょう。しかしどうも私はすっきりしないんだなあ、そういうふうにお感じになりませんですか。  私が一番心配していますのは二つあるんですけれども一つはもうやめにしまして、一つは、たいへんに遠洋なり、沖合い漁業というのが発展をしてきた。それに対して水産庁の研究体制というものが非常に即応できてないのじゃないかと。いま、日本の漁船はこまかいな、といっても、七つの海に出かけているのです。ですから、それに対して四十二年に海洋水産研究所というものができて、七つの海の資源調査やなんかおやりになるんだろうと思うのですけれども、非常に不備じゃありませんかと。その不備な点をこのセンターが、政府の機関でない、四十六年にできたセンターというものが相当補なってやっておるのじゃないか、ということを考えているわけです。これじゃ困る。その点についていかがです。
  94. 内村良英

    政府委員内村良英君) 私もしろうとでございまして、必ずしも詳しいことは申し上げることができないわけでございますが、資源調査の場合には、やはり十分たくさんの資料を集めまして、その資料を分析するということが大事な仕事でございます。  そこで、資料の収集につきましては、遠洋水研は、都道府県及び大学の公庁船、これはマグロ三十一隻、サケ・マス二十二隻あるわけでございますが、そういったものが取ってきます調査資料及び最近は漁船がかなり正確な漁獲統計を出しますので、そういったものも全部集めまして、もちろん、その中には場合によっては、先ほどお話に出ました開発センターの漁獲統計等も使うわけでございますが、そういう資料を十分集めまして、そこでポピュレーション・ダイナミックスというのですか、何か分析の方法がございまして、その資源分析をやるということになっておるわけでございます。したがいまして、スタッフが大きいに越したことはございませんけれども、やはり十分なる資料を集める体制が必要でございます。と申しますのは、自分たちがやるということはどうしても限界がございますから、いろんな機関の資料を広範に集めまして、そういったものを分析して資源評価をやるというかっこうになるわけでございます。  そこで、現在そういうことで、遠洋水研は、いろいろ資料の収集をやっておるわけでございますが、と同時に、オホーツク海、カムチャッカ半島周辺の海域のニシン、カニ、ツブ、スケソウダラ等の資源研究は北海道の水研が遠洋水研に協力しておりますし、東海・黄海の底魚、アジ、サバ等の資源研究は、西海区の水研及び日本海区水研が共同してやるということで、重要な魚種につきましてはそういうようなこともやっております。したがいまして、人数を確かにもっとふやすほうがいいことは、先生の御指摘のとおりでございます。しかし、と同時に、十分なる資料の収集が必要だということで、その点についても非常に遠洋水研は努力をしているところでございまして、スタッフが多いに越したことはございませんけれども、自分で調査することには限界がございますから、資源評価についてはいろんな機関の資料を十分活用するということが大事なのではないかと思っております。
  95. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それはもうおっしゃる、そのとおりですよ。ただ、いま日本の漁業のたいへん大きな変化の中で、やっと四十二年に遠洋水研というのができておる。その遠洋水研が、私に言わすならば、七つの海、これをいろいろしなきゃならない。そのために、漁船の資料も活用する、あるいは大学なり水産高校の船の資料も利用する、あるいは水産センターですね、このセンターの資料も利用する。これは当然のことです。それにしても、この遠洋水研というのは貧弱じゃありませんか、ものすごく貧弱です。あとで試験研究機関の問題について全体についてお尋ねをしたいと思いますが、私は、水産行政がいろいろな意味でいまのたいへんな変化の情勢の中で、即応できないでいる一つに、水産試験場を考え、水産研究所を指摘したいと思っているわけなんです。あとほどこれはまた伺いたいと思います。  次に、海外漁業協力財団ですね、これについて伺いたいのですが、これは開発途上国を中心とした領海あるいは漁業水域の拡大の動き、そういう動きが深まる中で、わが国漁場の確保あるいは海外の漁業協力等を一体的に推進するために四十八年、去年の六月につくったわけですね。そこでこの四十八年度予算を見ますと、補助金が十二億、それ以外に農林省が出している補助金が四十九年でいいますと二十六億、それから外務省が出している出資が十億ということになっているわけなんですが、これは私は、これから非常に大きな役割りを果たしていくのだろうと思うのですけれども、これは予算規模はどの程度のものですか、この財団の予算規模ですね。
  96. 内村良英

    政府委員内村良英君) 予算はほとんど補助金によってまかなわれておりまして、ただいま先生から御指摘がございましたように、四十九年の予算は総額二十六億一千五百万円になっております。そのうち、貸し付け資金の造成費が二十五億、外人招聘費が六百万、海外派遣専門家の補助確保養成費が千九百万円、海外研修生受け入れ事業費が千四百万円、そのほかにこの事業と関連いたしまして政府の無償援助の中で、水産ワクとして十億円外務省の予算に計上してございます。
  97. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それで、これは、融資をすることになっておりますね。その融資が、無利子の融資とそれからもう一つは、三分五厘の融資と二つに分かれていますね。漁業を営む法人、日本の。これが外国の漁業と合弁をするとか、あるいはいろいろなことをやる上において、無利子の融資をなさる、あるいは三分三厘のたいへん低利の融資をなさる、けっこうなことだと思うのです。ですが、日本の漁業に対する融資には、無利子の融資というのがあるのですか。ないでしょう。農業にはありますね。ことしは、無利子の農業改良資金二百十億ですね、四十九年は。これはもうおそらく二十年ぐらい続いているのじゃないですか。農業にはいま言うように無利子の融資というものがあって、ことしは二百十億、しかもこれは約二十年にわたって行なわれておる。ところが、日本の漁業については何もない。無利子の融資なんてありはしない。これはどういうことなんだ。そして今度は新しくこういう財団ができて、そして外国の漁業についての協力関係については無利子の融資をすると、三分五厘という非常に低利の融資もする。日本の漁業は一体どうするのか、だれでも聞きたくなるのです、なぜこうなっているのか。日本の漁業だって無利子の融資をしたらどうか、農業だってやっているのだから。二十年にわたってやっている。農業よりもっと漁業については無利子の融資があってしかるべきだ。  いままで農業を見習って、見習ってというふうに来ているのだから、どうですか、無利子の融資をするというその程度のことを、そのぐらいのことをお考えになったらどうか。あるいは三分五厘というような、安い利子で貸し付けるというものがあってしかるべきだと私は思うのです。また、長官に言わせれば、いま検討会を開いているから、その中で検討しておりますということになるかもしれないけれども、答弁は。私は、どうもその点は水産庁としては、この姿勢は根本的に考えないといけないと思いますね、いかがですか。
  98. 内村良英

    政府委員内村良英君) 農業に改良資金があって漁業にはないじゃないか。さらに、海外協力財団で無利子の貸し付けを、海外の日本の漁業の活動に出すのはおかしいのではないかという……。
  99. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いやおかしくない、けっこうだと。漁業もやれと言うのだ。
  100. 内村良英

    政府委員内村良英君) そこで、私どもといたしまして考えますことは、農業について改良資金制度ができて相当年月がたっているわけでございますが、私の承知しているところでは、これは農業の改良普及員の活動と結びつきまして改良資金ができたわけでございます。水産業の場合にも、先生案内のように、改良普及制度があるわけでございますけれども指導の形態等が違ったというようなことがあるのではないかというふうに思います。したがいまして、無利子の融資ということがあることは望ましいわけでございますけれども、農業の場合には、普及員の活動として、非常に小さな事業もやってみるというような場合の、資金措置ということで、普及改良資金ができたのかと思いますけれども漁業の場合の改良普及の指導というのは、そういうようなものとちょっと違った、やっぱり漁船業が主体であったわけでございますから、違っていたのではないかというふうに考えます。が、これは、今後養殖のようなものが出てきて、改良普及員の活動する場面がどんどん広がってきているわけでございますから、特に後継者の養成というようなことを考えた場合に、そういった制度を考える必要があるかと思います。したがいまして、将来の課題として、そこは検討しなければならぬというふうに私も思っております。  それから海外について無利子あるいは非常に安い三分五厘の金利のものでやっているのはどういうことかということでございますが、この点につきましては、やはりほかの国とのいろんな制度、特に西独等が最近非常に漁業協力やっておりますけれども、そういったものとの均衡といいますか、バランス等もあって、無利子ないし三分五厘というような金利でやっておるわけでありまして、国内のものとは金利体系は、別な角度から決定されているということでございます。なお、水産の改良資金につきましても今後十分検討しなければならぬというふうに思っております。
  101. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、この財団が、海外の漁業協力の場合に、無利子のことをおやりになる、あるいは三分五厘という低利でおやりになるという、そのことを否定しているのではないのです。けっこうな話だと言っているのです、けっこうだと。しかし、日本の漁業についても、お考えになったらどうですか、三分五厘という低利のものを考えたり、あるいは無利子のものをお考えになったらどうかと。現に農業は二十年前からやっておるじゃありませんか。そして現在は、二百十億という無利子のワクを持っているじゃありませんか。漁業はいままで何もありません、それじゃ済まぬじゃないかと。今後ぜひこれをお考えいただきたいと言っておるわけです。何も否定しているのではない、けっこうだということです。ですが、日本の漁業についてもお考えになってくださいと、こういうことを言っているわけです。  大臣、私は、こういう点を、ぜひ改めてもらいたいと思うのです、農業にはあるんですから。いま二百十億の無利子の融資を行なっております。これは、いま後継者養成ということになっております。前は、そうじゃないんですけれども、いまは後継者ということで、二百十億の無利子の融資を行なっております。漁業についても、やはり考えるべきだと思う。いま長官も検討事項だというような御答弁ですけれども、ぜひ大臣のほうも、そういうことで御努力を願いたい。大臣のひとつ考えを聞きたい。
  102. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 大事な問題でありますので、全体の金融制度との関連もございますが、十分検討してまいるつもりでおります。
  103. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣大臣の答弁は少し薄まっちゃっているですよ。薄くなっちゃっているです。それで大臣、いま沿岸漁業は、これはもう再建の絶好のチャンスですよ、どんな立場から言ってみても。ですから、農業は、もう二十年も前からやっているので、日本の漁業に対しても、これはぜひ無利子のそういう資金というものを創設してもらいたいということを重ねて要望いたしておきます。  そこで、海外漁業協力財団、これは何か急にでかくなるようですね、百億ぐらいの規模になるんだそうですね。二、三年のうちに百億ぐらいになるのでしょう、いまは二十六億ですけれどもね。わあっと大きくなるのでしょうね。そこで、この財団は、外国との交渉もやるのですか。貸し付けだけですか。貸し付けあるいは技術者の派遣あるいは養成もやるのですか。交渉はどうなんですか。たとえば大きな企業が、大手の水産会社が向こうと、ある国の漁業者との間で合弁会社をつくるとか、あるいは協力関係を結ぶとかというような場合に、この財団というのはそういうことに対して金を貸すだけではなくて、そういう折衝なり交渉なり等についてもタッチしていくのか。金貸すんだから、貸すという立場から、これは交渉にも乗り込んでいくというふうに、私は思うのですけれども、どうでしょう。
  104. 内村良英

    政府委員内村良英君) 交渉の隣りの部屋におりまして、援助するわけでございます。交渉をやっているところでいろいろ話をしておる。その場合、隣室におりまして、それじゃ幾ら金が必要らしいと、貸してくれるか、というような場合に、それは貸すとか、貸さないとかいうようなことで、側面的に援助する。こういう機能を付与されているわけでございます。
  105. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 わかりました。  実際上、交渉に入るのでしょうからね、おそらくね。そこで、本邦法人と書いてありますが、本邦法人に対して、外国との漁業協定なり漁業協力なり、合弁会社をつくる。そういう場合に、無利子の金を貸す、あるいは三分五厘の金を貸すというふうになっているですね。この法人という中には全漁連は入るのですか。
  106. 内村良英

    政府委員内村良英君) 全漁連も入ります。日鰹連も入ります。日鰹連は現に具体的な話がございます。
  107. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そこで、カツオ・マグロ、いわゆる日鰹連、その日鰹連が他の国と、途上国との間に漁業協定を結ぶ、あるいは現地合弁会社をつくるというふうな場合に、日鰹連に入っていないカツオ漁業者は相当あるのじゃないでしょうか。日鰹連に入っていないものですね。たとえば、私のほうの鹿児島の枕崎の漁協というのがあります。この枕崎の漁協は漁協として五隻の自営船を持っております。三百トン五隻を。これはこの日鰹連に入っていないです。こういう日鰹連に入っていない漁協、あるいは漁協の自営船というものは相当あると思う。さらに、そういう業種別の漁協に入っていない小さな中小の漁業者、タイをとるとか、イカをとるとか、というようなものが相当領海に入り、二百海里の中に入って操業していることも御承知のとおり。そういう人たちはこれは一体どうなるのか。これは全部全漁連に入っているわけですね。全漁連はそういうものをまとめて、そうして、この財団の協力を得て金を借りて、向こうでいろんな協力協定を結ぶとか、あるいは現地、合弁会社をつくるとかいうようなことも考えていらっしゃるのかどうか。すぐ起こる問題ですね、これ。どうでしょう。
  108. 内村良英

    政府委員内村良英君) まあ相手国の、二百海里の経済水域ができるかどうかは別にいたしまして、現実問題といたしまして、二百海里の中で操業する中小漁業の中ではマグロが一番多いわけでございます。そこで、今後、日鰹連あるいは全漁連等が相手国と協定を結びまして、これらの水域で、わが国のマグロ漁船の安全操業を確保するということが必要になることが考えられるわけでございます。すでに、日本とインドネシアの漁業取りきめでは、日鰹連及び全漁連の代表者とインドネシア政府代表との間で協定ができておるわけでございますが、この場合に、いわゆるアウトサイダーの安全も確保されているわけでございます。そこで、アウトサイダーがどれぐらいあるかと、要するに、日鰹連にも全漁連にも入っていないものがどれぐらいあるかと申しますと、私ども調査では、ほとんどございません。いずれかに入っております。したがいまして、日鰹連、全漁連が共同して今後いろいろな開発途上国とそのような協定をやるということでまいりますと、すべての日本のマグロ漁船の安全操業は確保できるんじゃないかというふうに考えております。もちろんその日鰹連に入っていないマグロ船があることは事実でございますが、それも全漁連のほうには入っておるわけでございます。
  109. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま非常に混乱しておる途上なもんですからね、いろんな疑問が出てくるわけですよね。この間、大日本水産会の方が、ここで参考人としてお述べになったときに、業種別の漁連で途上国との間に協定なり協力関係なりあるいは合弁なりというものを考えていく必要があるというようなお話があった。そのとき私は、ははあそれじゃ、日鰹連に入っていないカツオ・マグロ漁船というのは相当あると。それは一体どうするんだと。あるいはまた、これは漁連には入っているけれども日鰹連には入っていない。また、業種別の漁連に入っていない、タイをとるとか、アラをとるとかいう小さなものも領海の中に入ってやっておるわけですよ。領海の中に入ってやっておるんだが、そういうものは一体どうなるんだろうというような疑問があったし、それから現地でもやっぱり心配をしておるんですね。ですが、いまお話のように、これは全漁連がそういうものを取りまとめて、漁連に入っておるわけですから、全漁連が法人としてそういうような取り扱いをなさっていくということであれば、これはけっこうだと思いますね。ぜひそういうことで水産庁としても指導をし、奨励をしやってもらいたいということを申し上げてこの問題は終わりたいと思います。  もう一つ、いま漁業は、たいへん内外の情勢の中で非常にきびしい状況にあるわけですが、もう一つこの石油の問題についてですね。これがたいへん三倍にも上がり四倍にも上がってきた。ところがそれは上がったんだけれども、それを製造工場みたいに、なかなか価格の中にこれを埋められないといいますか、転嫁できないといいますか、悪いことばで言えば、転嫁できない。ある意味では漁業というのは、最も自由競争といいますか、独占的でありませんから最も自由競争で、しかも流通過程が非常におくれていますね。特に漁業の流通過程というのはおくれていますね。  私が一番痛感しましたのは、農林省で野菜や生鮮食料品の流通過程の調査をやりましたですね。それに基づいていまの流通局ができたわけですが、それで野菜なり生鮮食料品の流通過程の白書というのができたんです。これぐらいのりっぱな、二五〇ページぐらいのが、印刷になった。それから一カ月ぐらいおくれて水産庁が、水産の流通過程についての白書を出そうということで調査をなさったんですよ。その野菜をやった同じメンバーで、そのままのメンバーでやったんです。それで、できたか、と言って、くれと言ったんですよ。で、持ってきたのを見たら、四ページぐらいのガリ版刷りですよ。だから同じメンバーで、大学の先生はじめとして同じメンバー二十名ぐらいで生鮮食料品の野菜の流通過程の調査をやった。それがりっぱな印刷になった。それだけの人間がそのまま水産の流通過程についての調査をやった。出てきたものが四ページぐらいで、ガリ版刷りで、こんなもの何だと言ったんです。どだい水産庁の流通過程というのはだれがどうしてわからないのか、たった四ページぐらいのものですよ、ガリ版刷りだ、何を一体水産庁やっているのかというのが私のそのときの率直な意見です、考えです。それじゃこれは問題の流通過程なんというのはどうにもならない。何があってそんなことになっているのかということも聞きたいのですけれども、これは時間もありませんから。ただ、たいへんお粗末である。それだけにこの流通過程というのは全くこれはものすごい自由競争ですよ。だから、重油が三倍上がった、四倍上がった、そのために生産費は高くついているけれども、なかなかとってきた魚を売る価格というものはどうにもならぬわけですね。  そこで、今度のいまの附帯決議の中でも、経営に見合った魚価を保障する、あるいは確保するという努力をしてもらいたいという附帯決議をつけるということでいまやっている最中だと思っておりますが、これはどういうふうにお考えになりますですかね。冷蔵庫がどうだとか、流通過程がどうだとか、いろいろ書いてありますよ。いつまでたっても効果あがらないですよ、これ。そこで、どうなさるおつもりかということと、もう一つ、重油について。私はこれは畜産のえさ以上の重要性を持っていると思うのですよ。えさに対してはこれを下げるためのいろんな補助金もお出しになった、重油に対して補助金をお出しになったらどうですか。三倍ですよ、四倍ですよ。えさは二倍に上がったんですがね。一方のほうは四倍に上がっている。それに対して重油を下げるための何らかの措置をおとりになっていただきたい。補助金出してもらいたい。去年えさに出したじゃないか、漁業に出せないかということです。それについての見解を聞きたい。
  110. 内村良英

    政府委員内村良英君) A重油の値上がり、漁網の値上がり等によりまして経費が非常に上がってきている。一方、魚価になかなか転嫁できないというお話があったのですが、そこで漁業経営が非常にむずかしくなってくるのではないかという点は私ども非常に心配しておるところでございます。そこで、今後この問題について、どうなっていくかということは窮極的には魚価の安定と申しますか、経費を償える魚価を確保しなきゃならぬわけでございます。そこで、農業の場合には、いろいろな価格支持政策がございますが、水産の場合にそれがないわけでございます。ないのは、やはり非常に魚に種類がたくさんあるということと、それからやはり何と申しましても生鮮食品でございますから、同じ五キロなら五キロのマグロでも非常に品質の違いがある、値段の非常な違いがあるということでなかなか簡単に農業のような価格支持政策ができないという技術的な問題がございます。そこで、従来私どもといたしましては、そういった商品の特性にかんがみまして、一方、冷凍冷蔵技術が非常に発達してまいりましたから、産地、消費地あるいは中継基地に冷蔵庫をつくりまして出荷調整ということをやって価格の安定をはかるということに努力してきたわけでございます。私どもといたしましては、オーソドックスと申しますか、水産物の場合の最もまともな取り組み方は、それをどんどん進めていって、できれば系統組織による出荷体制をつくっていくということではないかと思います。それと関連いたしまして、サンマの生産調整の関連で魚価安定基金というものがございました。これはいろんな事情から、つくりまして四、五年でやめてしまったという制度でございますが、ああいったのをもう一ぺんこの際見直して考えてみなけりゃならない。これは必ずそうなるかどうかわかりませんけれども検討してみなきゃならぬ問題がそこにあるのじゃないか。と申しますのは、魚価安定の問題というのは非常に重要な問題になってくる。特に私は、ことしの夏から秋ぐらいにかけて非常に大きな問題になってくるおそれがございますので、検討しなきゃならない。その間にそれじゃ経営をどうつないでいくかということにつきましては、現在畜産でやりましたような、何らかの融資措置というものができないかということで検討しております。  さらに重油について補助金を出したらどうかということでございますが、これはA重油を使っておりますのは漁業だけじゃないわけでございます。ということもございまして、ストレートの補助金を出すということは現実問題として非常にむずかしい問題がある。私どもも、いろいろ検討をしていないわけじゃございませんけれども、現実問題として、A重油について補助金という形で対処するのは非常にむずかしい問題があるんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  111. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 サンマについて安定基金があって、しかし御承知のように、もう五、六年前に廃止になったわけですけれども、しかし、いまさっき種類が多いとかなんとかおっしゃったけれども、農産物だって種類が多いんですよ。米だって同じ米だというけれども、これはピンからキリまであるでしょう。それを五段階にきちっと分けてやっているのです。品種だって一ぱいあるのです、米だって。だから、そういうような言い方は、私は、流通業者に水産庁が踊らされていると思うぐらいですよ。これは米だって、流通業者の言うとおり言うなら、品種は二百何種類ありますよ。食糧庁は、一等米から五等米、それからあと、きちっと分けて、きちっきちっと、こうやっている。だから、そんなことは話にならぬ。問題は、やっぱりそういうお話のように、安定基金というものをぜひ検討してもらいたい。  もう一つ、重油について補助金が出せないとおっしゃるけれども、これはほかの業種も使っている。えさは畜産だけだというようなお考えでお話になるんだろうと思いますが、先ほど私が言っているように、製造工業の場合は、その他の場合は価格に転嫁できるというのです。漁業の場合は、先ほど申し上げたように全くの自由競争ですよ。自由競争もひどいですよ。だから、さっきのように、五、六ページしかできないと言うのです、流通過程の調査なんというものは。やみからやみにと言ってもいいくらいの状態になっておるのですよ。その場合に、そういう特殊な条件の中にある漁業について、それが使う重油について補助金が考えられないというのはどういうわけですか。考えるべきですよ。考えてしかるべし。電気屋はちゃんと電気料金を上げるのだ。自動車だってちゃんと上げるんですよ。漁業はそれはできない、いまの流通状態の中では。だから困っている。必死の考え方じゃないでしょうか、いまの漁業者の考え方としては。だから、えさについてと同じように補助金をなぜ出せないのか。一方は、二倍しか上がらなかった。一方は、四倍上がっている。その場合に補助金を出せないのかどうか、私はこれを言っている。検討すべきですよ。長官検討しなさい。
  112. 内村良英

    政府委員内村良英君) 私どものほうでもいろいろ検討いたしたわけでございます。ただ、実際問題として非常にむずかしい問題がございまして、引き続き検討はいたしますけれども、なかなかストレートの補助金ということは、制度的に仕組みにくいということでございます。
  113. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、日本の水産が、国内外のたいへんきびしい情勢の中で、異常な状態にある。しかし、水産というのは、どうしても食料の点からいっても何からいってもぜひとも、やはり生産高を上げていかなければならぬという状況にあるし、沿岸漁業というものは、これまた、振興していかなければならない。特にまた私は、沿岸漁業というものはこの際建て直すべき絶好の機会に来ているという点から、それに対して水産庁のいまの行政機構なり、研究体制というのがたいへんおくれているんじゃないかという心配をしております。その点について二つほど伺いたいわけです。  一つは、先ほど出しました水産研究所の体制です。これから十年、二十年ということを考えてみた場合に、いまのような情勢というのは、やっぱり続くと見なければなりませんが、そういうふうに即応した形の研究体制というものにはなっていないのではないか。水産庁北海道水産研究所、それから東北の宮城にある水産研究所、東京にある東海水産研究所、それに瀬戸内海にある水産研究所、それから日本海における、新潟にある水産研究所、それから長崎にある水産研究所。それに淡水をやる、内水面のことをやる淡水区水産研究所、もう一つ、清水にあります遠洋水研と、それと真珠研究所。五つの海区と淡水と、それから遠洋水研と真珠研究所という八つの研究所を持っていらっしゃるわけです。  そこで、先ほど問題にした点に入りたいのですが、その前に、この水産庁の試験研究費ですね。これがえらく少ないじゃないか、はなはだしく冷遇されてやせぬかという点を伺いたいんですよ。それで、水産庁のこの予算を見ますと、四十九年で二十四億五千万ですね。日本は世界一の最大の漁業国なんだけれども、この水産研究所の、八つあるんだけれども、その研究費は二十四億五千万。その中の七割は人件費でしょう、これは。七割近いものは人件費でしょう。まあいずれにいたしましても、二十四億五千万。これには単独の研究費が幾らかあるようであります。  そこで、これは参議院の調査室に計算してもらったんですが、水産庁のこの予算の伸び方ですね。水産庁予算の伸び率、それから研究所の経費の伸び率というものを見ますとはなはだしく落ちるんですね。たとえば四十九年は水産庁予算の伸びというのは前年に比べて一四・七%です。非公共の予算というのは三四%伸びておるんです。で、研究費は非公共に入るわけですね。で、非公共の予算というのは三四%伸びておるんだが、研究費は一四%しか伸びてないという状況ですね。それから前年度、四十八年をとりますと、水産庁全体の予算は三〇%伸びている。で、非公共は三六・六%伸びている。その三六・六%の中に含まれる研究費は幾ら伸びたかというと一一%、三分の一以下ですよ。まあその前の年もとっていいですけれども、二年あげて、いかにこの水産庁予算の中でこの研究費の伸び方というのはみじめなものか。まあ五%や三%違ったなら言いませんが、三分の一以下の伸びしかしないという、この水産研究費というのはどういうことなのかと  いうことなんですよ。たいへん低いじゃないですか。著しいというものじゃないですよ、ものすごい低い伸び率しか示さないじゃないですか。それから農業と比べてみまして、これは四十七年の数字しか出ないんですが、四十七年の農業総生産高、これは五兆円ちょっとですね。それに対する農業試験研究費というのは百七十億です。ですからその割合は〇・三四%、水産の四十七年度の総生産高というのは一兆二千億円です。それに対するこの研究所の経費というのは十九億です。割合は〇・一六%。農業の場合の二分の一以下ですよ。  これは、若干のそごがありますけれども、正確だとは言い切れませんが、ある程度これはこういうふうに推定をしていいと。農業に比べてみても二分の一以下という状態じゃありませんかと。だから、その水産研究というものがこのような状態の中で、一体こういうような小さな金で、伸び率もはなはだしく低い、農業に比べても二分の一ぐらいしかないじゃないかという点等について水産庁長官としてどういうふうにお考えになるか。これ、農林大臣いなくなったね。都合の悪いときいなくなっちゃう。これはもう一ぺん大臣来たとき説明しなきゃいかぬですよ。頭にたたき込んでおいてもらわねばいかぬ。とてもいかぬですよ、これじゃ。まあ長官のひとつ意見を。これはどうにもいけませんですよ。
  114. 内村良英

    政府委員内村良英君) 私どもといたしましても、水産研究所の予算の増加については、今後一そう努力しなければならないと思っているわけでございます。ただ、農業との比較の問題がございましたのでちょっと申し上げさせていただきますと、農業の場合には、やはり国か——農業生産の、要するに農業には大企業みたいなものがないわけです。そこで農業については、国が大きな責任を持っているわけでございますが、水産の場合、沿岸漁業につきましては、農業と同じ問題でございますけれども、漁獲高の六割ぐらいを占めております遠洋漁業の面につきましては、まあ大きな企業がやっておるというようなこともございますので。これは農業と比較して、だから水産が、非常に農林省の中で冷遇されているということにはならないんではないかと。しかし、いずれにいたしましても、研究ということは重要なことでございますから、今後予算の増加には大いに努力しなければならないというふうに思っているところでございます。
  115. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 水産庁長官、それは考え違いですよ、いまの農業との比較の問題については。それはいまブロイラーの半分は、たいへんな伸び方をしておりますけれども、半分は企業です。言うなれば、あれはブロイラー小作です農民は。ブロイラーの総生産高の半分というのはこれは資本がやっているのです。商社、企業がやっているんですよ。鶏卵の続生産高の一割五分ぐらいがこれはやはり同じように企業がやっているのです。それから機械の研究、肥料の研究やっていますよ、農業試験場では。肥料は大企業ですよ。農業機械だって大企業がやっている。決してそうじゃないですよ。漁業だってそうでしょう。いま漁協だって三百トンぐらいの船一ぱい持っていますよ。どんどん行っているのです。そういうような船だって遠洋まで行ってやっておるんですよ。大企業だとかいう話じゃこれは通用しないですよ、思い違いだと私思う。  大臣、いま大臣が留守の間に、大切なときに大臣がいないなんて言ってぼくは文句言ったわけです。大臣の頭に入れておいてもらいたいのですけれども水産研究の費用が非常に少ないのです。どうも水産庁というのは日陰みたいな形ですね。たいへん少ないですね。たとえば、いま例を申し上げたのですけれども、四十九年度予算で、水産庁予算というのは一四・七%前年度より伸びております。これは伸び方少ないです。これは総需要抑制で公共事業がうんと押えられたからです。水産庁予算の半分以上は漁港ですから、港をつくっておるわけですから、それで公共事業を押えられましたから、だから一四・七%の伸び方です。ですけれども、非公共は三四%伸びておる。農業の場合でもそうですね、たいへん伸びておる。三六%伸びておる。大臣もそれを得意になってお話しになった。水産庁の場合も非公共は三四%伸びている。その非公共の中に含まれている水産研究所、その予算の伸びは一四%、非常に低い。前年の四十八年は、これは水産庁全体の予算は三〇%伸びている。非公共の場合は三六%伸びている。ところが水産の研究所は一一%、非常に低い。ですから、この水産の研究は非常に小さいと私は思うのですよ。これは、これからまあ沿岸漁業の問題にいたしましても、何にいたしましても、ぜひひとつこの研究というものをやってもらいたいと思うのですけれども、非常に低い。ぜひ次の予算の場合には大いにひとつ努力をしてもらいたい。長官も、いま低いと、努力しなければいけないというお話は当然なことだと思いますけれども大臣としても努力をしてもらいたい。  そこで、次にお伺いをしたいのですが、中身に入りまして、私は、水産庁の職員録を持ってきているんですよ。あれもやっている、これもやっているというふうにお話しになると困りますから、そこで水産の研究所の名簿を持ってまいりました。ちゃんと分けてあるんですよ。部長から係長、室長から全部書いてある。何をやっているかということは一目りょう然です。これで見ますというと、第一いま、これからたいへん必要になりますところの養殖漁業についての研究というのは非常におくれている。農林省は栽培漁業だ、養殖漁業だということを一生懸命おっしゃるけれども、これはそういう面の研究の体制が非常に取り残されている。まあ私に言わせると、やってないんじゃないかと言いたいぐらいに小さいですね、これ。それから八つ研究所を持っていらっしゃるわけですが、その中の一つが遠洋の研究所です。それは四十二年に初めてできたのです。その一つの遠洋研究所が、七つの海をいろいろやらなければならないわけですが、これはもう非常に話にならないですね。不足ではないですか。さらに公害等に対する研究その他についても非常に立ちおくれている。ですから、総体といたしまして水産庁の研究費がはなはだ劣勢である。中身を見てみますというと、この数年来の状況に即応したような形になってない面が非常に目立つ。それは遠洋漁業の問題もう一つ公害に対する問題、それからもう一つ養殖漁業の問題、そういう点についての体制が取り残されているという点を痛切に感じますので、それらについて長官の説明を承りたい。
  116. 内村良英

    政府委員内村良英君) 確かに水産研究所の現状につきましては、現実の漁業にうまく適応しているかどうかということについて、私どもといたしましても、なお検討をしなければならない問題が多々あるというふうに感じているところでございます。ただ、最近の漁業の動向に応じまして、やはり研究もそのように即応しているかことは、研究所の研究分野別の研究員の配置からうかがえますので、若干数字を申し上げてお話し申し上げたいと思います。  まず第一に、人数そのものが少ないじゃないかという点は確かに問題がございますが、たとえば増殖につきまして、研究員の配置は、四十四年の七月には海面が三十四人であったものが三十七人になっています。それから環境保全、これは今後非常に漁場保全の問題等で大きな問題になってくるわけでございますが、そういった面を研究している研究員は、四十四年の七月には九名でございましたのが、四十八年の五月には十七名、まあ倍近くになっております。ということで、新しい分野と申しますか、そういった分野についての研究の努力というものは増加しているわけでございます。これをまあ金額であらわせないかと思っていろいろ検討してみたわけでございますが、共通経費の配分その他の問題がございまして、金額ではなかなか出にくい問題もございますので、研究員で申し上げましたが、そのような状況になっております。  それから遠洋水研でございますが、非常に人間が少ないじゃないかというお話がございました。そこで、遠洋水研は、現在職員数が九十一名おります。そのうち研究者が五十一人おりまして、資源関係が三十九人、海洋関係が六人、所長及び企画室が六人、こういうことになっております。そこで、北海道水研の資源部というのが同じような仕事をやっておりまして、先ほど申しましたように北洋の資源については遠洋水研と協力してやっておるわけでございますが、資源部の研究員の数は北海道水研が十四人でございます。したがいまして、そういったものと比べてみましても、遠洋水研のスタッフが必ずしも少ないということは言えないんじゃないかと思います。それから東海・黄海の資源につきましては西海区水研がやっておりますが、西海区の水研を参考までに申し上げますと、職員数が七十九人で、遠洋水研よりも少ないわけでございます。うち研究者の数が三十七人ということになっております。私どもといたしましては、限られた水産庁の研究者を極力うまく配分いたしまして試験研究に遺憾のないようにしようということで、遠洋水研には現在五十一人の研究者を配しているわけでございます。
  117. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、私は、その二十三億、二十四億という研究費ですよ。それで、水産の、久宗さんなんかがやっている久宗センター、私はそう呼んでおるのですけれども。久宗さんがやっておられるこの海洋資源開発センターにどれだけの予算をお使いになっておるか。——まあそれはいいですよ。それはとても、この水産庁の研究費の二十四億では。この二十四億の中で、遠洋水研が七つの海の資源調査しようという、この遠洋水研に幾らあるのだと。これは、一隻船を動かしたらもう動かないでしょう。だって、この人件費が六割以上を占めているでしょう。一隻船を動かしたら帰ってきたときには金がないというようなものでしょう。そんなに貧弱なんですよ、大臣。お恥ずかしい話と私は思っておるのですよ。これはもっと考えてもらわなければ困りますね。私は、その清水の水研に行ったことはないのです。あれは四十二年にできたものですから行ったことはないのですけれども、ですけれども、私の感じでは、もうこれは、遠洋水研というのは、一隻、船を出しちゃったら動きがとれないということになるのじゃないですか。ですから、これは人間が足らぬとか研究費が足らぬとかいう問題は、えらい深刻なんじゃないですか。だから、予算のワク内でやっとやってるということなんじゃないですかね。たった二十四億ですよ。まあそれはいいですよ。  ですが、水産庁として今度はひとつ、目をぱっちりあけて、養殖研究所をおやりになるという話、養殖研究所を新しくおやりになるということ、いいことです、これ。養殖研究所というのをつくってやらにゃいかんですよ。あるいはまた、漁礁の問題やら何やかんやありますね。そういうような問題について工学をやるところの研究所をおつくりになるという話、そういう計画をお持ちになってるという話——いままでは農業土木試験場の手伝いをいただいて細々とやっておいでになったのだけれども、そうじゃなくて、漁協の問題もあるし、あるいは漁業開発の問題について、沿岸漁業開発の問題については、これはどうしても工学的にやらなきゃならないというようなところから、水産の工学研究所もおつくりになるというお考えがあるというふうに聞いてるのですけれども、これはもうおそきに失するですね、もっと早くつくらなきゃいかんです、こんなものは。どういうふうにお建てになるのですか、いつ完成する予定ですか。
  118. 内村良英

    政府委員内村良英君) まず最初に、淡水研を拡大いたしまして、単に内水面だけではなしに、海面を通じて病理、生理、育種等の共通の研究分野をつくるために、現在の日野にございます淡水研の移転問題でございますが、この問題につきましては、淡水及び海水の両者について研究上必要な条件を満たし得るような立地を調査中でございまして、立地の決定を待って、内水面、海面を通ずる新たな増養殖中心とする専門研究機関の設立をはかろうということで立地を調査中でございます。  次に、先生指摘のございました水産工学の研究所の設置でございますが、御案内のように、漁業労働力の減少に伴いまして、漁船漁業水産養殖漁業において体系的な機械化、省力化を進める必要があるわけでございます。さらに水産養殖を発展させる上で、種苗生産等の生物学的な研究と並行いたしまして、放流した生物を適切に管理するための新しい理工学的手法の開発漁業環境を改良するための土木工学的な手法の開発が必要になってくるわけでございます。ただいま先生から御指摘がございましたように、この点につきましては、非常に水産関係は弱いわけでございます。従来も、国の水産関係研究機関で、漁港、漁場漁船、漁具その他養殖施設等の研究をやってきたわけでございますが、個々に工学的な手法が導入されている程度で、関係の研究者、研究施設等が分散されているわけでございます。そこで、これらの分野を総合した水産側の中核的な研究体制を整備したいということで、水産工学研究所の設立を考えておるわけでございますが、現在のところ、その立地、研究施設、組織等について鋭意検討している段階でございます。
  119. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあその養殖、増殖ですね、その研究所をおつくりになる。これは当然つくっていただかなきゃならない。それから水産工学研究所、とれも一番弱かったわけですから、ぜひつくっていただかなきゃならない。何年後のことになるのですか。三年後になるのか、四年後になるのか。そういうところに、私は、水産庁の取り組む体制というのが非常におくれている。その一つとして、私はこれを言っているわけなんです。これから、取る魚から栽培する魚へ、というわけで盛んに宣伝したのは水産庁でしょう。あれから何年たっているか。瀬戸内海につくってから、もう十年たつでしょう。そしていまや、この養殖漁業というのは非常に大きな力になってきている。それなのに、水産庁の研究というのは、いまだにそういう関係の研究所というのができない。あっちこっちで細々やっていますけれどもね。海区の研究でやっていらっしゃるけれども。まとまってつくってやるということが一番必要です、これ。そういうものについての取り組みが非常におくれている。水産工学系の研究所についても同じで、非常におくれている。いつ完成するのか。来年から調査に入るのか。できるのは、三、四後の五十三年、五十四年ごろになるのか。そのころは、養殖なんていうのは、死の海になっちゃって、なことになるかもしれませんよ。これは、よっぽどしっかりしてくれなきゃ。  そこで、もう一つ。その点についての答弁をいただくと同時に、淡水研をやめて——日野にある淡水研、いわゆる内水面に対する研究所をやめて、そして新しくできるここへ吸収しようというわけですね。海と内水面とを一緒にやろうというわけですね。これは、とてもそういう話は伺えませんですね。いま、日本のたくさんある河川、そして湖沼、こういうものを、自然環境やその他から見直そうという考え方がはっきり出てきている。もちろん、そこには十万トンをこす水産高をあげておるわけですが、そこにおける内水面の養殖、あるいは漁業というものを見直さなきゃならぬときになって、水産庁がなぜそういうものから退却をしなきゃならぬのか、これは退却ですよ。新しく見直さなきゃならぬときになって、せっかくある淡水研というものを、そういうものを海のほうに吸収してしまうという、退却をするということは解せませんね。これは、場所が、都会のまん中になっちゃったと。日野にありますから、住宅街ができてしまって、いろいろ障害があるということはわかります。それだからといって、海のものと一緒になってしまってやるということは、これはいただけません。いろんな意味で、これは退却ですよ。これはいけません。その点についての見解を聞きたい。  もう一つ。時間の関係もありますからもう一つ北海道にあります農林省の研究所、これは余市にある。ウイスキーで有名な余市にある。これを今度は釧路に持っていこうという、移転をなさるということ、これは、私は解せないんですね。確かに建物は、昭和の初めにできたやつでたいへん古くなっております。北海道水産試験場と一緒にある。その意味で建物は非常に古くなっている。その建物をどうしてもつくらなければならぬときにきていることはもうそのとおりであります。だ・からといって、これを釧路に持っていくということについては私は異論があると思うんですね。数億の金をかかえて動くんですよ。水産庁の試験研究費というのは年間に二十四億ぐらいです。その中でたいへんな金をかけて移転しなければならない理由はないじゃないかと。むしろいまある余市の水産研究施設というものを拡充する、それだけの金があるならば拡充するという考え方のほうが正しいんじゃないでしょうか。いま、時間の関係もあって盛りだくさん伺ったんですが、ゆっくりでいいですから、一つ一つについてひとつ御答弁をいただきたいと思うんです。
  120. 内村良英

    政府委員内村良英君) まず淡水研の移転の問題でございますが、これにつきましてはすでに四十八年、四十九年と予算措置がとってございまして、四十八年四百十八万、四十九年八百二十四万で、先ほど御答弁申し上げましたように、現在立地について鋭意検討中でございます。そこで立地がきまればすみやかにこの研究所をつくりたい。そこで、淡水研がそれに合併されるんではないかというお話でございましたけれども、私どもは、淡水と海と両方共通できるような研究所をつくりたいということで、決して淡水研がそういう研究所に吸収されるということじゃなしに、発展的に拡大するとお考えいただければいいんじゃないかと思います。それから現在、淡水研は上田と日光に施設を持っております。これはそのまま残しまして、今後いろいろ内水面の研究をやる、淡水の研究はさらに拡充したいと思っておりますので。別に後退するということでなしに、ただいま先生が御指摘ございましたように、最近は日野では水が十分使えませんので、そういった事情もあり、さらに今後の増養殖ということを考えた場合に、海と淡水と結びつけてやるような研究所を新しくつくりたいということでございまして、別に吸収されるというようなかっこうではございません。  次に、北水研の移転の問題でございますが、先生案内のように現在、余市にあるわけでございます。これは昭和四年にこの研究所ができたわけでございまして、当時は余市のあの辺、小樽のあたりはニシンを中心とする沿岸漁業中心であったわけでございます。そこで、あそこに昭和四年には北海道水産試験所の所在地として選定されたわけでございますが、戦後、国の水産研究体制整備の一環として、いまのところに北水研と道立の水産試験所が併置されまして庁舎を共用して今日に至っているわけでございます。そこで、いまの場所というのは、先ほども申しましたように、昭和四年当時ニシンを中心とする沿岸漁業北海道漁業中心でございましたので、あそこにできたわけでございますが、その後、御案内のように、わが国漁業は北方海域に大いに発展いたしまして、道東の沖合いからベーリング海にかけて漁業が発展しているわけでございます。またコンブ、ホタテガイ等の増養殖につきましても、道東の沿岸海域中心として発展しておりますので、水産庁としては、こういった漁業事情の変化と、道立水研がそこにあるわけでございますから、道立水研との研究分担等を考慮いたしまして、北水研を、北海道周辺海域からカムチャッカ半島周辺海域にかけましての漁業資源調査研究、寒流系の重要魚類、藻類の大規模増殖技術の研究開発を進める拠点といたしまして大体、現状では、釧路がいいのではないか、ということで釧路に移すことにきめたわけでございます。したがいまして、漁業事情の変化に合わして立地も変えたということでございます。
  121. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 余市にある——昭和二十五年か六年ですか、余市にいまの水産庁北海道の研究所ができた。そして、カムチャッカ流域についての研究もやっていらっしゃるが、何も変わっていない。何かあるのなら、釧路のほうに支場を設けたらいい。そして、いま余市にあるそれを拡充したらいいじゃないですか、という私は考え方なんです。釧路に支場を置かれたらどうですか。何せ数億という金が、六億ぐらいの金が要るんでしょう。水産庁の試験場研究費というのは二十五億ですよ。一水産研究所におそらく三億か四億ぐらいのものじゃないですか、配賦される金というのは。しかも、その中の七割近いものは人件費ですから。にかかわらず、数億の土地をこれから新しく買って、たいへんな金をかけて、六億ぐらいの金をかけて、新しくそんなところへ持っていく必要ないんじゃないかと思う。いまある施設を拡充し、建物を新しくして研究したらどうです。支場を設けるなら釧路にお設けになったらどうですか。逆になってやせぬか。余市に支場が置かれるようになるんでしょう。余市にはある程度のものが残って、本場は釧路に置くということになるんでしょう。逆になったらどうですか。  それからもう一つ、淡水研が、新しくできる養殖研究所と一緒になるような形になるんでしょう。海のものと、それから内水面の川とか湖水を一緒にやる。こんなのはありますかね。後退も後退、退却ですよ。だから、これは、つくるのは別々におつくりになったらどうですか。何も一緒に−海のものも山のものもごちゃごちゃという話があるけれども、海のものと川のものと一緒になってつくるということはありませんよ。あるんだから、いませっかくあるものを一緒になってやる必要ないですよ。
  122. 内村良英

    政府委員内村良英君) まず最初に、北水研の移転の問題でございますけれども水産庁といたしましては、先ほど先生から御指摘がございましたように、研究員も少ない、予算も少ないということでございますので、できるだけ効率的な研究をしなきゃならない。現在かなりいろんな研究の拠点が釧路に移っているわけでございます、すでに。そうなりますと、余市というものの立地が非常に不便だと、さらに今後、北海道でも大いに養殖をやらなきゃいかぬわけでございますけれども、たとえばサロマ湖の養殖というものが最近非常に発展しているわけでございます。そういった、今後養殖が道東に非常に広がるだろうということもございまして、研究の拠点が向こうに移りつつあるわけでございますから、やはり本所を向こうに移したほうが、長い目で見れば、経費その他の効率的な運用ができるという考え方をとっているわけでございます。  それから、なお研究分野の調整につきましては、北海道の試験場はあそこに残るわけでございますから、北海道の試験場とよく連絡をとりながらやれば、研究上そう支障があることもないのではないかというふうに考えているわけでございます。  それから、淡水研が海のものとひっついたらおよそ淡水研の意味がなくなるじゃないかというお話でございますけれども、淡水の研究ももちろんやりまして、同時に、一定距離のところで、海のあれもやれるというようなところを考えているわけでございます。と申しますのは、今後、養殖を大いに進展させなきゃならぬという場合には、魚類の生態から、一定期間、海にいて一定期間は淡水で暮らすというようなものもこれからやっていかなきゃならぬという問題も出てくるんじゃないかというようなことも考えまして、そういったような立地ということを考えているわけでございまして、決して淡水研の縮小とか、そういうことを考えているわけではございません。
  123. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この問題はひとつこの程度にしておきましょう。  最後に、これから外国との漁業協定、漁業交渉はたいへんだろうと思うんですね。先ほど来伺ってきたんですが、これは企業が合弁をつくる、あるいは途上国との間の協定を結ぶ、あるいは協力協定を結ぶとかたいへんだろうと思うんですね。そのために財団もできているわけですが、それに対して水産庁の機構というのは即応できていないんじゃないか。そういうものを取り扱う組織というのが非常に弱いんじゃないか。去年、一応体制を整えようということで国際課というのをおつくりになったわけだけれども、これはたいへん弱いなという印象ですけれどもね。  私は、水産庁というのは、どうも何かふらふらしているような役所に見えてしょうがないんです。たとえて言いますと、水産庁の次長を廃止するといって内閣委に提案したことがありますよ、次長をなくするといって。そのときに私は、水産庁の次長を置かないと困るだろうと。そのとき、アメリカとの交渉もあるし、ソビエトとの交渉もあるし、あるいは豪州との交渉もある、カナダとの交渉もあるから、どうしても次長を置かなければ長官だけじゃ困るだろうと言ったら、いや要らぬというんですね。そして次長を削ったんですよ。なくしたんです。そうしたら、八ヵ月たたぬうちに、また次長を復活するというんですな。新しく次長をつくるというまた法案を出してきたんです。これはどうもおかしな話だと。私、そのとき、大臣は赤城農林大臣でしたが、前は、要るだろう要るだろうと言ったら、いや要らぬ要らぬと言って、やめたじゃないか、次長を廃止したじゃないかと。それから八ヵ月もたたぬうちに、また次長置きますとは何事だ、と言ってだいぶ文句つけたんですよ。  そういう意味で、私は、何か水産庁というのは、ふらふらしているような感じがしてしょうがないんですけれども。これから二百海里説、まあ二百海里説がどう荒れて、来年どうなろうと、こうなろうと、それは途上国はそれぞれ締めてくると思うんですよ。その事前に、いろんな漁業交渉なり漁業協定なりを結ばなければいけない。たいへんだろうと思うんですね。その場合に、いま水産庁の国際課というものがありますけれども、こういうことで一体やれますか。外務省というのは、これは御承知のとおり、漁業交渉なんて弱いですからね。外務省というのは、昔から伝統的な外務省で、経済外交なんというのは、みなほかのほうへやらなければならなくなっている。これはたいへんですね。その場合に、水産庁のいまの体制というのでいいかどうかという点ですね。こまかく突っ込んで論議をするといいんですけれども、そこまでこまかく突っ込まないで論議しますが、全体としていまの水産庁の体制でいいかどうかという点ですね。
  124. 内村良英

    政府委員内村良英君) ただいま先生から御指摘がございましたように、最近、国際関係仕事が非常にふえているわけでございます。現に、つい最近まで海洋漁業部長はモスクワに行っておりましたし、あわせて次長が北京に行っていました。また、近く次長が北京に行くというようなかっこうになっております。  そこで、御案内のように、昨年の六月の水産庁の機構改革で、生産部を海洋漁業部にいたしまして、同時に、国際問題担当の審議官を置いたわけでございます。現在そのスタッフで一生懸命やっているわけでございますが、今後、海洋法会議以降の情勢によっては、また水産庁の機構についてさらに、国際関係の体制を充実強化する必要があるかと思いますけれども、現在のところでは、現在のスタッフで、鋭意一生懸命やってやれないことはないというふうに私は考えております。
  125. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それでは、これで。
  126. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  127. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 速記を起こして。  他に御発言もないようですから質疑は終局したものと認めます。  これより三法案の討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。別に御発言もないようですから、これより三法案の採決を行ないます。  まず、漁業災害補償法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。〔賛成者挙手〕
  128. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  ただいま可決されました漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案が、先ほどの理事会においてまとまっておりますので、便宜私から提案いたします。案文を朗読いたします。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は本法の施行にあたり、左記事項の実現に努めるべきである。      記  一 本制度における共済限度額及び共済価額については、情勢の変化に即応して適切な措置を講ずるとともに、二十トン以上漁船漁業及び養殖業にも義務加入制の適用を検討する等制度全般の拡充強化を図ること。  二 補助限度率を撤廃するとともに、純共済掛金の国庫補助率を引き上げる等国の助成をさらに強化すること。  三 赤潮特約については、被共済者に一切負担をかけることのないように措置すること。  四 養殖共済の未対象種目であるたい等の養殖業について、速やかに必要な調査を実施し、対象に取り入れること。  五 漁業共済基金については、その資金貸付及び債務保証の、今後における見通しに対処して、国の追加出資等の対策を講ずること。  六 漁業関係の共済制度、保険制度の統合、一元化について検討すること。   右決議する。  以上であります。  それでは、本附帯決議案の採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  129. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  130. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまの決議につきましては、御趣旨を尊重して今後検討してまいりたいと存じます。
  131. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  132. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  ただいま可決されました漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案が、先ほどの理事会においてまとまっておりますので、便宜私から提案いたします。案文を朗読いたします。  漁業近代化資金助成法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたり、左記事項の実現に努めるべきである。      記  一、漁業近代化資金の基準金利については、漁協系統金融機関の経営安定のため、適正な水準に設定するとともに、政府の助成強化等の措置を講ずること。  二、都道府県の行う漁業近代化資金に係る漁業信用基金協会に対する出資についての政府の助成を、次年度以降も継続すること。  三、中央漁業信用基金のあり方について、中小漁業融資保証保険特別会計及び漁業信用基金中央会との関係を含め検討するとともに、同基金の資本金を充実させるため、政府の出資を次年度以降も継続すること。  四、中央漁業信用基金を農林年金制度対象団体とすることについて、農林水産業における同種団体の取扱いと関連し、検討すること。   右決議する。  以上であります。  本決議案の採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  133. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  134. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまの決議につきましては、御趣旨を尊重し、今後検討してまいりたいと存じます。
  135. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、沿岸漁場整備開発法案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  136. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  ただいま可決されました沿岸漁場整備開発法案に対する附帯決議案が先ほどの理事会においてまとまっておりますので、便宜私から提案いたします。  案文を朗読いたします。    沿岸漁場整備開発法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたり従前の国際公海漁業における増産政策を反省し、沿岸漁業重要性を再認識して食糧自給率の向上、自然環境の保全等の観点に立つた抜本的な総合施策を講ずるとともに、左記事項の実現を図るべきである。      記  一、沿岸漁場整備開発計画の策定にあたつては、関連する諸制度との秩序ある連けいを図るとともに、本法の目的達成に必要な技術の開発及び事業量の確保に万全を期すること。  二、国は、立地条件、事業規模等からみて、地方公共団体等による沿岸漁場整備開発事業の実施が困難な海域において積極的に本事業推進するための措置を検討するとともに、地方公共団体等に対する指導助成に遺憾なきを期すること。  三、水産動植物の種苗生産施設の全国的な普及を計画的に推進するとともに、施設の拡充及び運営、種苗生産技術の開発等に対し指導助成を図ること。  四、養殖業、栽培漁業の発展による、沿岸漁場の沖合への拡大等に伴い、経営資金が増大する傾向にあるので、金融対策に遺憾なきを期するとともに、零細経営の共同化等を推進して、それらの保護育成に万全の対策を講ずること。  五、工場排水の規制にあたつては、水産資源保護を十分考慮して、総量規制方式を瀬戸内海のみに限らず全国的に速やかに実施するよう努めること。  六、二次汚染防止技術を早急に開発し、汚染漁場復旧事業を速やかに本格実施するとともに、事業の実施に伴う関係漁民の休漁等に対して救済等十分な措置を講ずること。  七、沿岸漁場に対する漁民の権利を確認し、その保全を行うとともに、海洋開発は、水産資源確保のための開発を優先させること。    右決議する。  以上であります。  それでは、本附帯決議案の採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  137. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって、本附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  138. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまの決議につきましては、御趣旨を尊重し、今後検討してまいりたいと存じます。
  139. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) なお、三案の審査報告書の作成は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  141. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、決議案についておはかりをいたします。  当委員会は本日まで五回にわたって三件の漁業関係法律案について審査を行なってまいったのでありますが、その間の質疑や答弁、あるいは漁場制限、漁業用資材の値上がり等、現下の水産業の直面する諸問題の重大性にかんがみ、理事会において協議いたしました結果、この際、水産業振興に関する決議を行なう必要があるとの結論に至りました。  案文がまとまっておりますので、便宜私から提案いたします。  案文を朗読いたします。    水産業振興に関する決議(案)  世界的に食置危機が叫ばれているなかにあつて、わが国漁業をとりまく諸情勢は、国際的には、国連海洋法会議を前にした広範な領海・経済水域設定の主張の強まり、漁獲規制の強化等、また国内的には,公害による沿岸漁場のかい廃、石油及び資材価格の高騰、労働力の不足等年々その厳しさを増している。  よって、政府は、水産業が国民に動物性たん白質食料を供給する重要な産業であることを深く認識し、これを基礎的産業として位置づけ、食糧の自給率を向上せしめ、水産業振興と発展を図るため、この困難な局面に対処して、左記事項の実現を期すべきである。     記 一、国連海洋法会議においては、関係漁業諸団体の理解と協力を得て、強力な外交を展開すること。 二、わが国の海外における水産活動が.関係諸国との協調の下に順調に行われるよう、海外漁業協力財団等の活用によつて積極的に技術・経済協力を進めるとともに、海洋水産資源開発センターによる新漁場及び未利用資源開発、研究機関等による未利用資源の利用方法の開発等を強力に推進すること。 三、栽培漁業及び養殖関係の技術者及び研究者の養成を促進すること。 四、沿岸漁業と遊魚との調整を図るため、適切な措置を検討すること。 五、最近における沿岸漁業をとりまく厳しい諸情勢に対処するため.長期的.総合的に、沿岸漁業関係諸法令全般にわたつて速やかに検討を加え、所要の措置を講ずるよう努めること。 六、農林漁業金融公庫融資等政策的金融は、水産業における内外の動向に即応できるよう融資条件の緩和、融資枠の拡大等の措置を弾力的に講ずること。 七、漁業用石油及び漁網綱をはじめとする漁業生産諸資材の価格の急騰等が、漁業経営に対して圧迫を加えている現状にかんがみ、価格の安定、必要量の確保等早期にこれが対策の徹底を期すること。   さらに、当面の緊急措置として、国の助成による低利資金の融資、既融資の条件の緩和等の金融対策を講ずること。 八、漁業経営に見合う魚価が確保されるよう水産物の保管施設の整備充実、流通の近代化、加工利用対策の拡充等に努め、水産物価格安定対策に万全を期するとともに価格支持制度検討を急ぐこと。 九、現行の漁業許可制度の盲点をついて行われる、いわゆる便宜置籍船の急増とそれによる輸入の増大が、わが国漁業秩序及び魚価形成に重大な影響を及ぼすにいたつている現状にかんがみ、調整措置を講ずる等適切な対策を樹立すること。 十、水産業における教育・研修を充実し、漁業労働環境及び労働条件の改善を積極的に推進するとともに、漁業の実態に即した漁業者年金制度の創設についての検討を含め、社会保障制度整備充実を図り、後継者の育成確保に万全を期すること。 十一、養殖業等の発展に資するため、速やかに総合的な魚病対策を確立するよう努めること。   右決議する。  以上であります。  それでは本決議案の採決を行ないます。  本決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  142. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 総員挙手と認めます。よって本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣
  143. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまの決議につきましては、御趣旨を尊重し今後検討してまいりたいと存じます。     —————————————
  144. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、農業者年金基金法の一部を改正する法律案及び農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から両案の趣旨説明を聴取いたします。倉石農林大臣
  145. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農業者年金制度は、御承知のとおり、農業者の経営移譲及び老齢について必要な年金の給付等を行なうことによって、農業経営の近代化及び農地保有の合理化に寄与するとともに、農業者の老後の生活の安定及び福祉の向上に資することを目的として、昭和四十六年一月に発足したものであります。  このように発足以来すでに三年余を経過し、昭和五十一年一月からは経営移譲年金の給付が開始されようとしているところでありますが、昨年厚生年金保険をはじめとする公的年金各制度の改善が行なわれたこともあり、本制度につきましても年金給付の水準の引き上げ等が必要となっているほか、本制度の実施過程において改善を要すべき問題も出て参っておりますので、これらを踏まえて本制度改正を行なうこととし、この法律案提出いたした次第であります。  次にこの法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  まず第一は、年金額の引き上げであります。経営移譲年金及び農業者老齢年金の年金額につきましては、農業所得の推移と公的年金各制度特に厚生年金保険における給付水準の改善の状況を総合的に勘案して、現行の二・二倍に引き上げることとし、これにより農業者年金制度がそのねらいとする政策的効果をあげ得るようにいたしております。  第二に、年金給付の額の実質価値の維持をはかるため、厚生年金保険や国民年金の場合と同様に、物価の変動に応ずる自動的な改定措置を新たに導入することといたしております。  第三に、農業者が出かせぎ等に出て被用者年金に加入いたしますと農業者年金を脱退することとなり、このため、農業者年金の年金給付を受けられない者が出てまいりますので、これらの者について、年金受給ができるようにする等所要の改善措置を講ずることといたしております。  第四は、昭和五十年における保険料の額でありまして、年金額の引き上げに伴い保険料も相当の引き上げを必要とするのでありますが、農家の負担能力等を勘案いたしまして、昭和五十年は、年金給付の水準と同様に二・二倍引き上げて、一月につき千六百五十円といたしております。  第五は、国庫助成の強化でありまして、被保険者期間が二十年未満で支給される経過的な経営移譲年金のうち加算部分の給付費用につきまして、新たにその四分の一を国庫負担することといたしております。これにより、加算部分につきましては、従来の国庫負担とあわせて、その二分の一を国庫が負担することとなります。  なお、保険料の納付時に、国庫が、農業者年金基金に対し、納付保険料の額の七分の三に相当する額を当分の間補助することといたしております。  以上がこの法律案提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  次に、農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農林漁業団体職員共済組合制度は、農林漁業団体職員の福利厚生の向上をはかり、農林漁業団体の事実の円滑な運営に資するための制度として実施され、その給付内容も逐年改善をみてまいりました。  今回の改正は、その給付に関しまして、国家公務員共済組合制度その他の共済組合制度の改善に準じて、主として次の五点につき改善をはかるため、これらに関係する農林漁業団体職員共済組合法等について所要の改正を行なおうとするものであります。  改正の第一点は、掛金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額の下限及び上限の引き上げであります。  改正の第二点は、平均標準給与の算定方法の改善であります。これは、給付の額の算定の基礎となる平均標準給与につきまして、退職等の給付事由発生時前一年間の標準給与を基礎として算定しようとするものであります。  改正の第三点は、低額の年金についての改善であります。これは、退職年金等の額の算定に当たっては、従来の算定方式に加えて、通算退職年金の額の算定方式に準ずる新たな算定方式を導入しようとするものであります。  改正の第四点は、既裁定年金の額の引き上げであります。これは、既裁定年金の額の算定の基礎となった平均標準給与を、二三・八%を限度として引き上げることにより、年金額の引き上げを行ないますとともに、通算退職年金についても、退職年金に準じてその額を引き上げようとするものであります。  改正の第五点は、いわゆる絶対保障額の引き上げであります。これは、退職年金、障害年金及び遺族年金について、その最低保障額を引き上げようとするものであります。  その他、遺族年金についての扶養加算制度の創設、老齢者等の退職年金等の年金額の計算の特例等の改善措置を講じようとするものであります。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  146. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に、両案は衆議院においてそれぞれ修正されておりますので、衆議院における修正部分の説明を聴取いたします。坂村衆議院農林水産委員長代理。
  147. 坂村吉正

    衆議院議員(坂村吉正君) まず、農業者年金基金法の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正の趣旨について御説明申し上げます。  御承知のとおり、現行の農業者年金の保険財政方式は、完全積み立て方式を採用しており、改正案においてもこの方式を踏襲しているため、今回年金額が二・二倍に引き上げられたことに伴い、保険料については、約二・七倍程度まで引き上げなければならないこととなっております。  このため、政府案においては、この保険料の額を、昭和五十年一月から同年十二月までは現行保険料の、二・二倍にあたる一月につき千六百五十円とし、五十一年一月以後は政令で順次必要な引き上げ措置を講ずることとしております。  しかしながら、本制度は発足早々であり、なお積極的な加入促進をはかるべき段階にあること、また、農業をめぐる諸情勢にかんがみ農家負担が過重とならないよう配慮すべきこと等から、この際、保険料の額の引き上げにあたっては、慎重を期することが特に必要と考えるところであります。  そこで、本修正は、この保険料の額について、昭和五十年一月以後一月につき千六百五十円とするとともに、昭和五十一年一月以後次の財政再計算期までの間において保険料を改定するにあたっては、政令によらず、農業者年金基金法改正する法律によってこれを行なうことができるようにしようとするものであります。  なお、この修正は、農林水産委員長提案により、全会一致で行なわれたものであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。  次に、農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正の趣旨を御説明申し上げます。  修正内容は、農林中央金庫及び農業信用保険協会を本年十月一日以降本法の適用対象団体とするとともに、これら団体の職員についてその者が有していた厚生年金被保険者期間で当該団体の職員であった期間を、本共済組合の組合員期間とみなし、これを通算する特例措置を認めようとするものであります。  このような修正を行なうことといたしましたのは、まず、農林中央金庫につきましては、昨年の法律改正によって、存立期間に関する制限が撤廃される等その農林漁業団体の恒久的な全国金融機関としての基本的な性格が一段と明確になりましたので、金庫の役職員を他の農林漁業団体と同じ年金制度に加入させ、より充実した老後保障のもとで、系統金融業務に精進できる体制を整備いたしますことは、農林漁業団体としての一体感の強化、今後の業務遂行上ますますその必要性が要請される相互の人事交流の円滑化等に資することになると考え、この際その加入を認めることとした次第であります。  次に、農業信用保険協会につきましては、その会員である農業信用基金協会はすでに本年金制度に加入しており、また、本年金制度に加入していた中央開拓融資保証協会との統合により、その職員を引き継ぐこととなっておりますので、これらの事情を考慮してその加入を認めることとした次第であります。  また、これら団体の加入と同時に加入前の厚生年金被保険者期間で当該団体の職員であった期間について、これを本共済組合の組合員期間とみなすことといたしましたのは、加入だけを認めたのでは、厚生年金との通算年金となるため、現在在職しているものについてはかえって不利となるおそれがあり、老後保障の充実の趣旨にもとると考えたからであります。  なお、この組合員期間の通算方式は、昭和四十七年度改定法の修正の際に行なった全国農業共済協会、中央畜産会及び中央酪農会議の通算措置の例にならったものであります。  したがって、この通算措置に伴い、厚生保険特別会計から本共済組合への交付金、みなし組合員期間のうち、本共済組合発足後のものについてのいわゆる掛け金不足額等の納付金、その納付金についての社会保険料控除の適用等について必要な規定を設けております。  なお、この修正は、農林水産委員長提案により、全会一致で行なわれたものであります。  以上が、修正の趣旨であります。  何とぞ、委員各位の御賛同を賜わりますようお願い申し上げます。
  148. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 次に両案の補足説明を聴取いたします。大山構造改善局長
  149. 大山一生

    政府委員(大山一生君) 農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  第一に年金額の引き上げであります。  まず、経営移譲年金の額につきましては、保険料納付済期間一月につき、現行は六十歳から六十四歳までが八百円、六十五歳以後は八十円でありますが、これをそれぞれ、千七百六十円と百七十六円にいたしております。これにより、六十歳から六十四歳までの間に支給される経営移譲年金の額は、五年加入の場合には月額八千円から月額一万七千六百円に、二十七年加入の場合には月額二万一千六百円から月額四万七千五百二十円に引き上げられることとなります。  次に、農業者老齢年金の額につきましても、保険料納付済期間一月につき、現行は二百円でありますが、これを四百四十円にいたしております。これにより、農業者老齢年金の額は、五年加入の場合には月額千円から月額二千二百円に、二十七年加入の場合には月額五千四百円から月額一万一千八百八十円に引き上げられることとなります。  第二は、年金給付の額の自動的改定措置の導入であります。年金給付の額につきましては、消費者物価指数が一年度または継続する二年度以上の期間に百分の五をこえて変動した場合は、その変動した比率を基準として、政令で定めるところにより、年金給付の額を改定することといたしております。これとあわせて、財政再計算期に従来どおり国民の生活水準その他の諸事情を勘案してその改定措置を講ずることにより、将来にわたり適正な年金額の水準の確保をはかってまいる所存であります。  第三に、出かせぎ等に出て被用者年金に短期間加入した者にかかる改善措置の導入であります。農業者が出かせぎ等に出て被用者年金に加入した場合には、保険料納付済期間と被用者年金に加入した期間のうち一定の要件に適合する期間を合算した期間が年金給付の受給資格期間を満たしているときは、保険料納付済期間の長さに応じて年金を支給することといたしているほか、これとの関連で、加入資格期間の算定に関する規定、任意継続加入に関する規定、すでに農業者年金の加入資格を喪失している者についての再加入に関する規定等を整備いたしております。  第四に、保険料でありまして、昭和五十年における保険料は、すでに提案理由において申し述べましたところでありますが、昭和五十一年以降の保険料につきましては、農業者年金基金法第六十五条第五項の規定に基づく政令により必要な引き上げをはかることといたしております。  なお、この保険料につきましては、昭和五十年一月以後の保険料の額を一月につき千六百五十円とするとともに、昭和五十一年一月以後においては法律に定めるところによりこの額に所要の改定が加えられるものとするよう、衆議院において修正されております。  第五に、脱退一時金及び死亡一時金の額につきましても、二・二倍に引き上げるほか、今回の制度改正前の保険料を納付している者にかかるこれらの一時金の額の特例を設けております。  このほか、未納保険料について特例納付の道を開き、また、保険料について前納割引制を導入する等所要の措置を講ずることといたしております。  最後に、この制度改正の実施時期につきましては、昭和五十年一月一日からといたしております。  以上をもちまして農業者年金基金法の一部を改正する法律案提案理由の補足説明を終わります。
  150. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 岡安農林経済局長
  151. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  まず第一は、掛け金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額の下限及び上限の引き上げであります。これは、当該標準給与の月額の下限を二万六千円から三万九千円に、上限を二十二万円から二十四万五千円にそれぞれ引き上げることといたしております。  第二は、平均標準給与の算定方法の改善であります。これは、給付の額の算定の基礎となる平均標準給与につきまして、現行では、退職等の給付事由発生時前三年間の標準給与を基礎として算定されておりますものを、退職等の給付事由発生時前一年間の標準給与を基礎として算定することといたしております。  第三は、低額の年金についての改善であります。これは、厚生年金保険の年金受給者との均衡等を考慮し、退職年金等の額の算定にあたっては、通算退職年金の額の算定方式に準ずる新たな算定方式を導入し、この算定方式により算定した額と現行の算定方式により算定した額とを比較し、いずれか大きい額を年金額とすることといたしております。  第四は、既裁定年金の引き上げであります。これは、農林漁業団体職員共済組合法の規定に基づく退職年金、減額退職年金、障害年金及び遺族年金についで、その年金額の算定の基礎となった平均標準給与を、給付事由の発生時期に応じて一五・三%から二三・八%までの率で引き上げることにより、昭和四十九年十月分から年金額の引き上げを行なうとともに、通算退職年金についても、退職年金の引き上げに準じて昭和四十九年十一月分からその額を引き上げることといたしております。  第五は、いわゆる絶対保障額の引き上げであります。これは、退職年金、障害年金及び遺族年金について、年齢及び組合員期間の区分を設け、その最低保障額を引き上げることといたしております。  なお、遺族年金につきましては、新たに扶養加算制度を創設し、遺族である子の数に応じて加算を行なうこととしておりまして、その場合における加算額は、二人までは一人につき年額九千六百円、その他の子は一人につき年額四千八百円といたしております。  また、老齢者等の退職年金等の年金額の特例につきましては、旧法組合員期間を有する七十歳以上の者等に支給する年金について、その基礎となった組合員期間が二十年をこえる場合には、そのこえる年数に応じて加算する額に割り増しをして支給することとし、その改善をはかることといたしております。  以上がこの法律案のおもな内容であります。  なお、この法律案に対しまして、衆議院において修正が行なわれ、農林中央金庫及び農業信用保険協会を新たに本法の適用対象団体とすることとされるとともに、これらの団体の職員の厚生年金保険の被保険者期間で当該団体の職員であった期間を通算する特例措置に関する規定が設けられたことを申し添えます。  以上であります。
  152. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 両案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十二分散会      —————・—————