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1974-03-07 第72回国会 参議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月七日(木曜日)    午前十時十七分開会     —————————————    委員の異動  三月七日     辞任         補欠選任      温水 三郎君     山内 一郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         初村滝一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高橋雄之助君                 足鹿  覺君                 鶴園 哲夫君     委 員                 佐藤  隆君                 田口長治郎君                 棚辺 四郎君                 温水 三郎君                 堀本 宜実君                 山内 一郎君                 神沢  浄君                 工藤 良平君                 沢田  実君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        内閣法制局第四        部長       別府 正夫君        公正取引委員会        事務局経済部長  熊田淳一郎君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林水産技術会        議事務局長    小山 義夫君        通商産業政務次        官        楠  正俊君        通商産業大臣官        房審議官     兵藤 節郎君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    参考人        財団法人肥料経        済研究所常務理        事        宮内 正次君        東京大学教授   熊沢喜久雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出)     —————————————
  2. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、参考人意見を聴取いたします。  参考人として財団法人肥料経済研究所常務理事宮内正次君、東京大学教授熊沢喜久雄君の御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会にわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。  参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願いを申し上げます。  なお、議事の進め方といたしましては、最初に参考人からおのおのお一人について十五分間程度の御意見をお述べいただき、引き続いて委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず宮内参考人からお願いをいたします。
  3. 宮内正次

    参考人宮内正次君) 宮内でございます。  はなはだ僣越ではございますが、私の意見を申し述べさせていただきます。  肥料需要季節性につきましては先刻御承知のとおり、肥料流通特殊性とも言われ、肥料消費年間のある時期に片寄ることを言います。換言いたしますと、肥料はその時期だけの商売と言えます。例をあげますと、北米等ではわずか四週間ぐらいとされておりますし、私ども調査いたしました日本の例でも、最盛期は二、三カ月ぐらいと認められます。これに対しまして肥料供給は、装置生産のゆえに一定限度操業度保持を理想といたしまして、人員その他の仕組みも、これに合致するようにはかられております。したがいまして、生産が好むと好まざるとにかかわらず、需要に先行いたします見込み生産の形となります。そして、年間の大部を占める不需要期生産分、それは、流通段階に分散保有されることが望ましいものでありますが、肥料の最近の状況を見ますと、生産量が大きいことも原因しまして、ともすれば工場在庫の形で滞貨する傾向を帯び、そのために、資金回転の不如意または固定化を来たし、やがては再生産の支障ともなりかねないものであります。そして、その装置が大型であればあるほど影響は大きいというべきであります。この辺が肥料流通円滑化確立の至難な面で、それは宿命的課題とさえ考えられます。  現在、わが国窒素肥料年間生産高は、純成分総量で、これは普通Nトンといわれておりますが、二百四十五万メトリックトン以上に及びます。そして、硫安の約五割前後、尿素の七、八割、塩安の七、八割、全体では、六割前後を輸出する情勢と認められます。このことは、わが国窒素肥料工業がすでに国際的規模にあることを意味し、ある時期に輸出に勢いがつき過ぎますと、たちまち内需圧迫というおそれが生ずるものと考えられます。このおそれを常に事前に避けるためには、内需優先確保が絶対に必要であると同時に、内需向け取引の適正・円滑化を進めるためには、価格の安定をはかることが不可欠であると考えられます。これらの目的を果たすために制定されました法律こそ、この肥料価格安定等臨時措置法だと存じますので、その延長はまことに当然であり、絶対にその必要があるものと信じております。  御承知のとおり、世界人口は本年度に三十八億に達し、西暦二〇〇〇年当初には七十億に及ぶものと予想され、食糧増産は目下の急務とされております。アメリカ合衆国におきましても、従来の休耕地四千万エーカーが解除され、また、食糧輸出国として有名なカナダ、オーストラリア等の国々におきましても増産に励んでいると伺っております。そうした時期にも当たりますので、今後、肥料需要の拡大が予想され、いよいよ本延長法案の意義が大きくなるものと考えられます。  蛇足ながら一言付け加えますと、カリ肥料及び燐鉱石——これは燐酸肥料の原材料でございますが、これらにつきましては、全量わが国は輸入に依存しております。そして、その輸出国の窓口について調べてみますと、すべての国が単一もしくは専門輸出機関を設置しておりまして、輸出の調整、内需確保をはかっているように考えられます。それらの事情も大いに参考になるのではないかと考えます。  以上簡単ではございますが、私の意見でございます。
  4. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  次に、熊沢参考人お願いをいたします。
  5. 熊沢喜久雄

    参考人熊沢喜久雄君) 熊沢でございます。  きょうは、地力施肥というようなことに非常に御関心があるというお話がありましたものですから、その点を中心にして意見を述べてみたいと思います。  この地力の問題は単に土壌とか肥料関係者だけではなくて、農業生産における最も基本的な問題であるということは言えるわけで、こういうことについて非常に短い時間でどれだけのことが話せるかということはわからないわけですけれども、非常にアウトラインだけを申し述べて、あといろいろ御質問に応じたいと思います。  まず第一に、地力肥料との関係でありますけれども、よく地力肥力——肥の力ですね、そういうふうに言われていることに関しては非常に不正確でありまして、やはり厳密には、われわれは、肥料というのは地力、つまり土壌肥沃度維持して向上させるために土に与えられるものだということで、対立するようなことで表現されるような性質を持つものではないというふうに考えております。  そこで、肥料をやるという上においては、たえず土の性質を考えなきゃいけないわけですけれども、この土の性質というのはまたいろいろな面がありまして、まあ研究の便宜上は、それを物理性とかあるいは化学性、あるいは生物性、そういういろいろな側面に分けて考えるのがいいというふうに言われているわけであります。  物理性というのは、たとえば士の作土の深さだとか、あるいは下層土の構造だとか、空気や水の流通性、あるいは土の固さ、やわらかさ、まあ耕起しやすさ、しにくさということにも反映しますけれども、そういうようなこと。それから化学性というのは、土の養分含量やあるいは酸性度あるいは燐酸吸収力等々いろいろな値が測定されて示されてくるわけです。しかし、それと同時にまた、生物性というのも非常に重要なものであって、その土の中に住んでいるいろいろな生物、特に微生物の活動などにそれが表現されてくるわけであります。  また一方、作物の側から見て、じゃ、土はどう見られるかといいますと、その性質というのは水、空気それから温度、作物の必要とする養分を十分に供給する、それから作物生育に有害なものがあってはならない、あるいは作土は十分深くなければならないというようないろいろな面から要求が出されているわけです。そういう次第でありますから、その中て肥料をやる——施肥をやるというのはそういう一定人間行動でありますけれども、そういう結果として土の物理性あるいは化学性生物性などにどのような変化を与えるかということは、また、そのために、作物にとって先ほど申し上げましたような、土のいろいろな重要な機能がどういう変化を受けてくるかということは、非常に重要な問題で検討しなきゃいけないわけであります。  それで肥料といいましてもいろいろありまして、有機質肥料無機質肥料というような分け方もありますし、それから速効性肥料と緩効性肥料というような分け方もありますし、酸性とアルカリ性などというようなこともあるわけでありますけれども、そういうような性質というのも、土と作物との関係でいろいろ考えられなければいけないわけであります。  それで、多分ここで最も問題になります無機質化学肥料というものは、そういう以上の諸性質の中で端的に言いますと、土の化学的な性質関係して特に無機養分供給能を高めるというようなところに役立っているわけであります。  そういうわけですが、一般的にいいまして、植物というのは光のエネルギーを利用して、固定して、無機物から有機物をつくる。それで、そのつくった有機物——動物あるいは微生物なと地球上のほとんどあらゆる生物が、それから有機物を受けて生活をしていくというような役割りをしているわけでありますけれども、そういう植物生育させるために、無機養分が十分に与えられるということが重要とされているわけであります。したがって、農業が、これはいろいろ農業発展がありますけれども農業発展に伴って施肥という行動は非常に古くからあったわけです。特に人口増大というのが食糧増大を必要としてきますが、それを大きく見てみますと、統計的に見ても、食糧増大というのは、もちろん耕作面積増加と、それから単位面積当たり収量増大というようなことで果たされているわけであります。これは歴史的に見ても、あるいは地域的に見ても、まず前者、つまり耕作面積増大が先行して、それから後者、つまり単位面積当たり収量増大というのがあとに続いているわけであります。日本北アメリカあるいは西ヨーロッパなどの地域では、現在、食糧生産増加というのは、もっぱら単位面積当たり収量増加によってもたらされているわけであります。耕地の単位面積当たり収量増大というのは、それがつまり地力増大の反映であるというふうに見ることができます。それはまた、直接には施肥量増大というものと結びついているわけであります。  それからまた、施肥されてきた肥料の形というのも歴史的に見て大きく変化していることは周知のとおりであります。初めは山や野原の草木、あるいは魚とか海藻類、それから人や動物排せつ物など、つまり有機物を主体としてそれを土に与えて分解したものを植物が吸って生育をしていく。で、植物動物あるいは微生物土壌の間でそういうような養分循環をしているというふうに見られていたわけであります。したがって、排せつ物を捨てないで全部土に返してやれば、それで十分に植物は育つんではないかというふうにいわれて、実際の農法どもそういう線に沿ったいろいろな農法発展してきたわけでありますけれども、しかしこの物質循環系に対しては、さらにそれ以外に空気つまり大気関係しているわけで、これも申し上げるまでもないんですが、つまり有機物が分解すると炭素は炭酸ガスとして出てくる。それから窒素窒素ガスとしてその一部は大気中に放出されてしまう。炭酸ガスの場合には、光合成によってまた固定されますけれども遊離窒素というか、空気中に出てきた窒素ガスについては、一般的に植物はそれを利用することができない。しかし、そういうわけで物質循環の一環が窒素においては大きくくずれる可能性があったわけでございますけれども、実際に農業維持されてきたということは、これは生物の中に根粒菌とかあるいはアゾトバクター、あるいは藍藻などのように空中窒素ガスを取り込んで自分のからだにするというような能力のあるものが存在していた。それでかろうじてバランスが保たれてきたということがいえます。  しかし、十八世紀以来非常に人口増大してきて、それに対して食糧が追いつかないんじゃないかという疑念が出てきたわけですが、十八世紀の初めごろ、これは特にヨーロッパの人の活躍ですけれども、いろいろな資源が開発されてきた。窒素に関していえば、その大きなものはペルーグアノだとかあるいはチリ硝石が発見されてきたわけです。しかし、これが物質循環系に入ってきて、そのために食糧増大というのがもたらされてきた。しかし、それでしばらくきていましても、ペルーグアノ埋蔵量、あるいはチリ硝石の量などから考えてみて、そのままでは人類の生存があぶないではないかということで、これはきわめて有名な事件でありますけれども、一八九八年にイギリス化学協会の会長が、空気中の窒素ガス固定して利用するという方策を見つけなければ人類食糧危機に陥ってしまうであろうということを非常に切実に訴えた。まあそういう事件があったわけであります。  しかし、途中でいろいろありますけれども、現在は、化学及び化学工業の発達によって空中窒素が十分に固定され、化学肥料として供給されるようになった、こういう面から少なくとも窒素循環に関してはその危機が一応取り除かれてきた。逆にいいますと、化学肥料固定というものが生物圏における植物生産をはじめとする物質循環過程において非常に重要な位置を占めてきている。つまり、自然的な循環過程に対して人間の関与が非常に大きくなってきているというふうな状態になっているわけであります。  で、現在、空中窒素固定される量というのが年間九千二百万トン程度だといたしますと、そのうちの約三分の一というのが工業的な窒素固定によってまかなわれているわけであります。で、年間固定量九千二百万トンの中には、林地だとか、林だとか、その他草原などの固定量が入ってくるので、実際に、耕作地に対しては、その比率というのは三分の一どころではないことは周知のとおりになるわけであります。  で、そういうふうにして、この巨大な量というのが、農耕地に与えられて、そのことによって、食糧生産維持されてきているということが現状であるというふうに思います。これはFAOのだいぶ前の報告でありますけれども化学肥料というのは、農業開発の先兵である、というふうに規定しておりますけれども、この規定の根本精神というのは、現状においてもやはり変わらないではないかというふうに思われます。つまり、その供給量の多寡によって農業生産量というのは大幅に支配されているということは事実であります。また、窒素だけではなくて、燐酸カリなどにつきましても、これは空気中に逃げるということはありませんので、土にとどまっているわけです。その点においては、土のある場所資源のある場所から別の場所への分配の方式というようなところで問題が残ってくるわけでありまして、それを地力ということに関係していいますと、作物生産の場にどのようにして有効な形で窒素燐酸カリ維持して、また、それを増加さしていくかということが問題になってくるわけであります。これは、限られた地球上の資源の問題として、将来ともその地力を考える上において、これは国と国との関係地域地域との関係がありますけれども、長い目で見た場合に、対策が必要になってくる問題ではないかというふうに考えます。  そこで、肥料でありますけれども、しかし、そういうふうに肥料形想は変わってきましたけれども、現在、やはり有機質肥料と、それからそれに対していわゆる化学肥料が次第に変わってきたわけです。しかし、そうはいっても、有機質肥料の持つ、特に堆・厩肥の持つ性質の一部が化学肥料によって置きかえることができるのみであって、それ以外のいろいろな性質がありますけれども、それらのものがどのように置きかえ得るかどうか、あるいはそのうちのあるものについては、化学肥料では——先ほど言いましたように、化学性のみを対象としている化学肥料においては置きかえ得ない重要な役割り有機質、特に堆・厩肥は持っているというふうに思われます。  そこで、現在、やはり肥料施肥という場面においては、有機質施肥、それから無機質施肥をいかに正しく関係づけるかということが重要になってきます。  それで、有機質肥料の中で特に堆・厩肥が問題になるわけでございますけれども、昔からよく知られておりますように、米つくり篤農家技術基本というのは土つくりにあるわけでありまして、土つくりの内容はいろいろ解明されているわけでありますけれども、客土とともにやはり堆・厩肥を非常にたくさん与えるということが基本であるということは間違いのないところであります。で、堆・厩肥は重粘質土壌だとかの改良だとか、あるいは砂質土壌改良などにも当然有効でありますけれども一般論として完熟堆・厩肥というのは地力維持向上に一番役に立っているということは言えるわけであります。  その地力維持ということはどういう面であらわれてくるかといいますと、一つは収量が、高い収量維持できるということでありますけれども、しかしさらに、天候が不順なときなどに非常に安定した収量を与える。これは去年とか、ことしとか、あるいは天候状態収量との関係を見ればすぐわかるわけでありまして、特に過去のいろいろな試験研究データあるいは農家調査などによっても、やはり堆・厩肥を十分に与えて土をつくっているというところでは、冷害にあっても、冷害に対する減収度合いが非常に少ないというようなことなどいろいろあるわけであります。  そのほか、この堆・厩肥の効果についてはいろいろ言われておりますけれども、時間の関係でこれはちょっと省略いたします。いずれにせよ、その堆・厩肥というものが現在施用量が落ちているということはたいへん問題ではないか。  あとその点について一言言いますと、堆・厩肥——有機物というのはいろいろありまして、これは非常に速効性のもの、緩効性のもの、その他性質が違うものがあるわけですが、堆・厩肥関係、つまり粗大有機物というふうにいわれているものの中であっても、完熟堆肥とたとえば、なまわらというのは性質が非常に違うのでありまして、それぞれに応じて、土の種類あるいは気候状態、そういうものに応じて、その施用方法が考案されなければいけないわけであります。つまり、土の性質を十分によく知って、それで対策を講じていくということがなければ、ただ有機物をやればいいというような形では、かえって土を荒らしていくというようなことも言えるわけであります。そういう点については、土壌調査を非常に徹底的に行なう必要があるわけだろうと思います。  それで、一般的に水田に比べて畑に対しては堆・厩肥は絶対的といっていいほど必要になっております。で、ヨーロッパ農業というのが、厩肥生産、つまり畜産の進展とともに発展してきたということは周知のことでありますけれども畑作を考える場合には、日本でもこの面での結合がさらに一そう配慮して強められる必要があるのではないかというふうに考えます。まあ先進的な畑作農家あるいは蔬菜農家などは、畜産農家と相談して、そこへ行ってたとえば片方からはわらを供給している、敷きわらを供給する。それで、その敷きわらを堆・厩肥に、踏んでもらったものを自分が持ってきて、それを腐熟させて、それを十アール当たり反当何トンというくらい大量に入れて、それで十分な収益をあげているという状態は各地に出ているわけであります。しかし、それは力のある農家が行なっているのであって、一般農家は、トラックその他運搬手段、それから時間とかいろいろあると思いますけれども一般に行なわれているわけではないわけであります。しかし、土つくりというのは国の食糧生産の非常に基本であるわけですから、こういうような堆・厩肥をどういうふうに戻していくかというようなことに関しては、やはり国もしくは何らかの形で、個々の農家だけの力によらないで、組織的に行なう道が考えられる必要があるのじゃないかというふうに思います。  で、ちょっと時間が過ぎたので少し先にいきますが、まあそういうわけでありますけれども、一方それに対して、それでは化学肥料とそういう堆・厩肥投与増大という関係はどういうふうになるかということでございますけれども、すでに私どものだいぶ ——三代ぐらい前の教授でございますけれども麻生慶次郎先生という方が述べていらっしゃるわけですが、合理的農業というのは厩肥人造肥料の併用によって完成されるものだということが言われております。また、たとえば米作——米つくり日本一において、そのまとめによりますと、八百キログラム米を生産するのに対して二トンぐらいの堆・厩肥は必要となるだろうと。非常にたくさんの堆・厩肥を与えていたわけであります。  それで、また一方、そういうたくさんの米をつくっている農家化学肥料施肥量を見てみますと、全国平均が九キロぐらいだとした場合に、日本一では二十一キロぐらいの施肥を行なっている。それを両方合わせますと、堆・厩肥を使って地力をつけてやる。地力をつけてやることによって化学肥料施用量増大して、その結果、収量は非常に、普通の農家のたいへんな量になるわけですけれども収量は非常に増大しているという関係があるわけであります。  そういうわけで、堆・厩肥施用中心とした土つくりというのは、化学肥料投与というのと決して矛盾するものではなくて、場合によっては化学肥料の一そうの投与を可能にして、安定多収の道を開くということになるんではないか。これは、なるんではないかというよりも、すでにそうなっているわけであります。  それで、多肥といわれている日本状態でありますけれども、この多肥か多肥でないかということは、その国の食糧生産様式農家形態寸そういうものできまってくるわけでありまして、一がいにには言えないんではないか。ベルギー——ヘクタール当たり平均施用量というのが、窒素だけでいいますと、日本が十五・七キロとした場合に、ベルギーが十九・七キロ、西ドイツが十四キロとか、いろいろ統計値が出ております。施用量の低いインドなどは〇・九キロ、アメリカが四・一キロですか、ちょっと先ほどあれを見たんですが、そういうような結果が出ているわけでありまして、国によって、農業形態によって、非常に施用量は違ってきている。ただ絶対値だけを持ってきて、これは多過ぎる、少な過ぎるというようなことは、実際上意味がないわけであります。それで、問題は、いかにして地力の増強をはかりながら食糧増産ができるかというようなことにあるんではないかというふうに考えております。  ちょっと長くなってしまったので、この辺でやめたいと思うんですけれども、結論として私が申し上げたかったのは、施肥の目的、肥料の目的というのは地力の向上というものを基礎にして食糧生産に貢献することにあるのである。また、地力の向上、つまり土つくり基本というのは客土と堆・厩肥でありますけれども、特に堆・厩肥の施用というのは、これは忘れてはならないことである。しかしながら、土壌性質に応じてその堆・厩肥の施用は考えられなければならない。特に、なまわらなどについては、次善の策といいますか、使い方によっては堆・厩肥よりも——完熟堆・厩肥よりもよい効果が出るということももちろんあるわけでありますけれども、ただ、有機物であれば、土壌投与すればいいということではなくて、良質の有機物土壌に供給する必要がある。その供給そのものは、経営の中においておのずから地力の向上がはかられるような形で供給されるのがよいんではないか。そのためには、畜産との結合というのがやはり一そう考えられなければいけない。作物のほうからいいますと、えさの生産ということで畜産にいきますが、化学肥料性質形態——それから最後に申し述べたかったんですが、ちょっと省略したのは、実際、人口増加というのが三十三年で二倍になるということに対して、現在化学肥料の施用増というのは十年で二倍になるというくらいに、化学肥料の施用率が非常に人口増加率を上回っているわけです。それは端的に言えば、化学肥料の肥効が落ちているということになるわけで、そういう点についてはやはり肥料そのものの形態性質を一そう研究して、施肥技術についても、この際、十分研究が重ねられていかなければいけないんじゃないかということを示していると思います。  そこで、そういう施肥技術とそれから土つくりというものは、すべて一定調査研究をもとにするわけでありますから、そういう点で絶えず地力の診断というか、現在どうなっているか、それは非常に性質は動くものですから、絶えずどうなっているかというのを検討する、そういう調査研究、普及ということが非常に重要になってきていると思います。それで、堆・厩肥をもとにした土つくりと、それから化学肥料を安定供給をして、物質循環の法則を十分に認識した上で、永続的な地力増大方式、維持方式というのが、国家的な見地からさぐられるということが必要ではなかろうかと思います。  ちょっと長くなって恐縮でございます。
  6. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ありがとうございました。  それでは参考人に対し質疑のある方は順次発言を願いますが、宮内参考人の時間の都合もありますので、まず最初に宮内参考人に対して質疑を行なっていただきたいと思います。——ございませんか。  それではひとつ熊沢参考人に対して質問を願います。
  7. 足鹿覺

    足鹿覺君 もっと時間をいただいてお話を聞きたいんですが、審議の都合でやむを得ませんが、現在の地力維持の立場から畜産との結合ということが必要であるというお話、全く同感であります。しかし現実は、結合どころか、逆な方向へ進んでおる。結合どころか、事実畜産のし尿処理が多額な経費をかけて浄化装置によって普及しつつあり、化学肥料の多投下が進めば進むほど、有機質の土地への還元がなされない状態です。これに対して、一方、化学肥料の多使用によって作物が軟弱化し、したがって病害虫の多発によるこれらの防除のための農薬の多投。こういう悪循環が行なわれておるのが日本農業現状ではないかと思うのであります。  これに対して、バランスのとれた有機質肥料化学肥料の施用が必要であるという先生の御説ももっともでありますが、現実はまだバランスのくずれた形において行なわれておる。それを防ぐために、カリ肥料等の増投ということもありますが、それでは追っつきませんので、苦土石灰ないしは硝石灰が代用に使用されておる。特に畑地農業の場合は、酸性土を忌みきらう作物については、特に常識では判断できないような苦土石灰ないしは硝石灰等の酸性中和剤が施されて後、化学肥料を使う。これが毎年毎年繰り返され、最近におきましては、有機質肥料の施用の少ない土地においては畑作物の減収は目立っておる。このままではたいへんな状態が起きるのではないか。こういう状態でありまして、理論的、学問的に御解明になった点と、日本農業の進んでおる方向というものはまさに逆行しておる。  したがって、私がお聞きしたいことは、有機質肥料というものの何らかの形における開発が可能であるかどうか。畜産物のそのし尿をいまのように発酵浄化してこれを投棄してしまう、地力への還元というようなことが行なわれない。これを地力へ、土地への還元のための何らかの科学的な対策によって、有機質肥料を土地へ還元していく方向が考えられないか。その開発技術は可能であるのかないのか。これが私は一つの大きな課題だと思う。  で、東北方面におきましては、出稼ぎを急ぐのあまり、唯一の有機質であるわらすら焼いておる。こういう現状でありまして、今後十年間こういう傾向が続けば、食糧増産を求められる今日、逆に地力の低下が日に日に増大していくのではないか。こういう点が憂えられておりますが、それについての先生のこの現実に対する対応の方法を何か御示唆いただけばと思います。
  8. 熊沢喜久雄

    参考人熊沢喜久雄君) ただいまおっしゃったことは、そのとおりではないかというふうに思うわけでございますけれども、私、何せ実際そういうふうに、石灰がどこでどれだけ使われていたということはわかりませんけれども、しかし有機物を与えないで化学肥料をやっていると、これは技術の進歩というものがありますから、端的に簡単には言えませんけれども一般論で言えば、土地はやはり荒れていくというふうに言っていいと思うんですね。それは非常に熟達した人がいれば、そこの反応なども調和しながら、あまり無理をしない形で持っていくということは、不可能とは言えませんけれども、非常にむずかしい。  特に石灰をやりますと、これは酸性が中和されますが、同時に、土の中の微生物などの活躍が非常に盛んになって、それは有機物の分解を非常に盛んにしていくということで、ますます有機物は減っていくわけですね。ですから、それだけでいくとあと困るだろうと思うのです。  やはり畑に有機物を返さなければいかぬということは、私が先ほど申し上げたとおりでありますけれども、その返す方策なんですが、技術的にはこれはいろいろなことが考えられます。ただ、実際にそれを行ない得るかどうかというのは私どもはちょっとわかりませんが。  で、最も単純なのは、先ほどちょっと言いました、農家の相互の契約でトラックを持っていって、そこの畜産農家の堆肥を持ってくる、厩肥を持ってきて自分のところで発酵させて、ねかして、それを畑に入れてやるというようなことで——これはいろいろだれがお金をどう持つかという問題などもあるでしょうけれども、非常に可能なのです。  それから、もちろん昔からやっているように、農家が、各個人が堆・厩肥をつくってくれればそれにこしたことはないわけですね。しかしそういうことではないとすれば、何らかその間に入って、たとえば農協——これはよくわかりませんが、ある団体が大きな建物をつくって、そこにどこからか堆・厩肥を持ってきて発酵して堆肥をつくる、あるいはわらを持ってきて、そこで堆肥をつくる。これは即製堆肥と、なまわらと、完熟堆肥と、それから堆・厩肥などは、うるさくいえば、それぞれ性質が違うわけですけれども、そういうことは別としまして、とにかくつくるということをする必要があるのじゃないかと思うのです。ただ持ってきてわらを入れるということだけでは、特に畑の場合には問題がある。しかし、それは個々の農家にとってはなかなかたいへんなこともあるのじゃないでしょうか。  それからあともう一つのし尿その他の問題ですけれども、一つは野菜くずの場合にはまず問題がない。つまり野菜というのは人間が食べているものですから、それを適当に堆肥化して持っていく。これは各地の——何カ所かぼくは、あるはずたと思うのですが、コンポストをつくる道具があって、上から野菜くずを入れてやると、下のほうから堆肥になって出てくる。これをしばらく何カ月かねかしておいて、非常にいい堆肥として使われているわけです。これが、ただ、——ここは農林関係ですからあれですけれども、たぶん厚生省の廃物処理、要するに台所かすを焼いて処理するか、あるいは堆肥にするかというような問題の面だけで考えられやすいのじゃないかと思うのですね。  で、しかしそれも、先ほどからの話のように、有効利用というような観点から見れば、単に衛生的な廃物を処理するだけじゃなくて、それを次の生産に生かしていくということになってきますと、コンポストをつくる過程、これはヨーロッパなどでは特に最近着目されているそうですけれども、そういう面をやはり研究される必要があるんじゃないかと思うのです。これは現実に可能だし、事実つくっているわけですね、まあそういうこと。  それからもう一つ——これは野菜のほうで、わりあいと単純なほうですけれども、もう一つ、し尿のほうに関しては、活性汚泥法その他でできます。有機物ができます。しかし、これに関しては、その成分を十分に検討する必要があるのじゃないか。その中に窒素燐酸カリ、石灰、カルシウムというようなものだけだったらかまわないわけですけれども、し尿の処理のしかた、特にそこにたぶん工業関係の廃液ですね、そういうものがまじった形で処理をされてくれば、そこでできてきた活性汚泥は重金属の含量だとか、そういうもので検査されなければ直接に畑に使えないわけです。この点も非常にはっきりしておりまして、やっぱり資源的に将来を考えて、尿の利用をするとすれば一やはり家庭から出てくる排水と、工業から出てくる排水というのは、別に処理しなければ両方とも使えないのじゃないか。いままあそこまで考えなくても、一緒に集めて、しかしこれは農業に戻さないで、埋め立てに使うというような考え方も成立するんじゃないかと思いますけれども、返そうということを前提とすれば、そこの分離処理ということをやはり同時に考えないとあぶないのじゃないか、そんなぐあいです。しかし、それはやろうと思えばできるんじゃないでしょうか、ちょっと私、経費その他はわからないんですが。
  9. 足鹿覺

    足鹿覺君 ありがとうございました。
  10. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 これはいま、お尋ねになった足鹿先生の御質問と同じことなんですが、私は、かつてあなたのところの先輩の教授に、額を書いてください、字を書いてください、と言って頼んだら、いまでも記憶にあるのですが、地力を尽くして食豊かなりと書いていただきました。長らく私は部屋にかけておったが、ある人が来て、あれくれよと言うので、やるとか、やらないとか言わないで持って帰っちゃった。結局、堆・厩肥というものが地力を増進することに大事であって、化学肥料だけを使っておれば略奪農法である。地力の略奪をするという農法である、というふうなことはよくわかっているんですが、最近はその希望している方向よりも、逆なほうへ農業は流れていっておるというのが現状であります。それはよくわかっておるのでしょうが、堆・厩肥をつくるということ、完熟さすということにあまりにも時間がかかり、努力といいますか、その労力、人力でやる割合が強いものですから、それを回避してやらない方向へ向かっていっている、こういうふうに私は思うんです。  そこで、これはまあ役所にもいえることですが、完熟する堆・厩肥をつくりますために、機械化か何かできないものであろうかと私は思うんですが、そういうことの研究なりあるいはごうすれば——先ほどコンポストのお話もございましたが、いろんな利用が、方法がというのがあろうかと思いますが、結局堆肥も御承知の、積んでおいて、重いから畑に持っていく前にかわかして持っていくといえば、今度はその硫安が逃げたあとがまっ白くなる、白くなれば軽くなる。そういうもう肥料としての価値がなくなって後に畑に持っていく、耕地に持っていって還元するというのでは私はいけない。やはり完熟したりっぱなもの、有機質肥料でなければいけない、こういうふうに思いますので、何かそれについて機械を考案しつつあるのか、もうそういうものは絶対不可能で、昔のように人力によらなければならないのか。何かそういうようなアイデアでも研究をされておるものがあればお教えいただきたいと思います。
  11. 熊沢喜久雄

    参考人熊沢喜久雄君) 実際に堆・厩肥というのは、これは非常に大量に使うんで、その点でいま御指摘になりましたような、つくるとか、あるいは運般とか、いろんな問題があると思いますね。完熟堆肥と未熟堆肥ということですけれども、これはなかなか、堆・厩肥の機能というものはいろんな面があるのでむずかしいわけですけれども、単にその窒素含量とかというような点については、相当程度まで化学肥料で現在置きかえているわけなんです。置きかえることができたからこそ、堆・厩肥施用量が減っても収量は減らない。事実見かけ上の収量は減っていない。いま、これから問題にたぶんなってくるのは、先ほどいいました高度の収量の安定性を確保しながら同時に、その収量を高めていくというようなことになってくると思うのですね。そうしますと、堆・厩肥の良質の腐植と、その成分になっている良質の腐植というようなところに多分にしぼられて研究されなければいけないのじゃないかというふうに思うのですけれどもね。私もちょっとその辺、これは土壌学者のほうの専門になると思うのですが、やはりそちらのほうの研究が一そう必要じゃないかと思うのですね。  それから一方、草炭だとか、それから欧米なんかだと、あすこの泥炭関係がありますから、そういうものを加工して、何らかの性質を与えようじゃないかというわけですが、その加工の過程でやはり化学的な操作が入りますから、いろいろその有機物、そういうような性質を持っているというふうにして、製品としてもたしかあると思うのですが、いわゆる堆・厩肥というようなものの性質を代替するには至っていないというふうにいっていいのじゃないか。  あと簡単にできるかというわけですが、それだけの量ですからやはり先ほどちょっと申し上げましたが、実際の農家で、畜産農家というのは土地と結びついていればいいわけですが、結びつかない場合にはたくさんだまっていきますですね。たまったやつをある程度ころがしておいて、適当にたまったら電話か何かして農家に取りに来てくれというのでぽんと持っていく。これは寝かしておくか、寝かしておかないとかいうことはたいへんあとの使い方、それから土に与える影響などでも違ってくるので、どうしてもある一定期間寝かさなければいけないということはあるのですね。ですから、そういう大量のものをうまく処理できれば非常に有効だとは思いますけれども、いまのところはやはり土地を利用して、空間を利用して寝かしておいて、やるというのがいえるのじゃないでしょうか。工業的にうまくいくと——まあちょっとそれは急には考えられないのじゃないですか。
  12. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は、おととい、ここで地力の問題でずいぶん議論したのですけれども、先生のおっしゃることと全く同感ですが、二つばかりちょっとお伺いしたいのです。  土壌の中に含まれている微生物、あるいはバクテリアですね、そういうものがさっきもお話ししたように非常に有効的に活動していって、その肥料の施用の効果——肥効というものを促進していくということになると思うのですけれども、ただ基本的にややもしますと、肥料さえやれが物ができるのだという感覚に現在のところなっているように私は思うのですね。ですから、それをもう一ぺんもとに戻して、やはり基本に戻って考え直すということが必要だという議論をしたわけですが、そこで、私は日本農業のように一年に同じ土地で何作もとるという農業と、アメリカあたりのように一年一作ということで非常に広大な農業経営をやる場合と、おのずから違ってくるだろうと思うのです。ただ、土壌の本質としてその土壌活動というものがきわめて旺盛になる、いわゆる繰り返し繰り返し土地を利用する、こういうことによって、この微生物なりバクテリアの活動というものは、それにあわせてやはり旺盛になるのではないかという気がするのですけれども、そういうことがきちんと位置づけられておれば、やはり日本のように集約的にたくさん物を、一つの面積からつくろうとすれば、それに対するいまのような有機質肥料をしっかりやらなければならぬということが出てくるわけで、ただ休ませておけば、そのバクテリアやそういうものが活動していくのだという感覚になってしまうと非常に大きな問題だと思いますし、その点が化学的にどうかということが一つです。  それからもう一つは、先生さっきおっしゃいましたけれども、やはり土壌については、その土壌性質に合った施肥ということが施肥の原則だと私は思っているのですけれども、おとといも申し上げたのですが、ソビエトに私行って非常に感心したことは、この土壌研究所が至るところにあって、各、全国の農地の、いわゆる国土の土壌分析が緻密にやられているということ。それに基づいてやっぱり計画的な施肥とか、そういうものが行なわれているということ。これはやっぱり私は、いわゆる国土の総合的な有効利用という意味からも、あるいは肥料を有効に吸収させるという意味からも、経済的に非常に大事だと思っておるのです。そういうことから、やっぱり日本農業経営の一つの大きな基本としてそういうものをつくっていくということが必要じゃないのか。これは、先生方の立場からもぜひひとつ御意見を開陳をしておいていただきたいと、このように思うのです。
  13. 熊沢喜久雄

    参考人熊沢喜久雄君) いまの御意見、全く私は同感でございまして、私の言い足りなかったことをちょっとおっしゃっていただいたような点もあると思うのですが。土というのは、ただ休ましておけばそれで肥えてるというようなものではないと思います。畑と水田ということがありまして、水田の場合に、現在ほとんど一毛作ですが、これを二毛作にしたらどうなるかという、その点については、また、ちょっと複雑なことも起きてくるわけです。つまり、湿田を乾田化してくる、あるいは一毛作を二毛作にするということは、それに応じて高度の技術水準というものが維持されてこなければ、決してその水準、いわゆる地力水準を維持することはできない。だから、ただ湿田を乾田にしたから、あるいは一毛作でやったから、二毛作にしたから、これでよりよくなったろうというふうに言われることは——一般論としては、それは土壌から——先ども有機物のときにちょっと申しましたけれども、土の無機成分のほうが今度は溶脱をしていくというようなことで、そういう点では水田作というのは非常に有利な耕作方式ですね。  それはそうでございますけれども、とにかく休ませておけばいいということではなくて、また、使えば使い過ぎるほどだめだということもないわけで、使い方によるのじゃないか。先ほどの微生物の働きなどは全くそのとおりです。特にこれは、私は、そういう意味から言いますと、ほんとうの専門じゃないので何とも申せないのですけれども、土の中にはいろいろな種類の微生物があるわけで、そのいろいろな種類の微生物というのは、単純なものじゃなくて、堆・厩肥のようなものを与えておくと、それぞれの微生物がおのずと調和をとって住んでいるわけですから、それが、だんだんと、えさが少なくなってくると、有機物総量が少なくなってくる。たまたまそういう状態で、病原菌とか、ある種のものが繁殖をしていってしまうということになってくると、たくさんの種類があれば、お互いにチェックし合うのだけれども、全体が衰えていて、そこで植物がはえていって、その植物固有の病原菌が繁殖するということになってくると困るわけですね。そういう点で、微生物関係生物の働きをそちらの病気などとの関連でも評価する必要があると思うのです。  それから、いま、ソビエトにおいでになったそうで、あれですが、ヨーロッパ、それからアメリカもそうですけれども土壌学の研究施設というのは非常に完備しているのですね。先ほどおっしゃったように、すべて土壌調査基本にして、それでそれに応じて対策を練っていけるようになっておるわけです。研究機関だけを申しても、たとえばソビエトの場合には、日本でいうと農学部というふうに、あるいは生物ということになるのですが、生物土壌学部という学部になっているはずですね。土壌学部という一つの名前が出ているぐらいです。その中で、土壌物理、土壌化学というふうに、たしか四講座か五講座はあるわけです。日本の場合にはそれが一講座しかない。それから、土壌研究所というのは独立になって、十分に広い意味での研究をやっている。日本の場合にはありませんですね。そういうようなことはたいへんぼくは、問題ではないかと思いますが、何か機会がありましたら、そちらのほうも充実していくのがほんとうじゃないか。土の問題というのはやはりぼくは国で考えるよりほかにないんじゃないかと思うのですね。個々の農家に土を守れと、これは言うことはできますけれども、やはり国が責任を持つ非常に大きな問題じゃないかというふうに思っているわけです。
  14. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 他に発言もないようですから、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々には御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見を開陳いただきましたことを厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。     —————————————
  15. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) それでは、引き続き本法案に対する質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  16. 沢田実

    ○沢田実君 最初に局長にお尋ねをしたいのですが、あなたもいま一緒に参考人の御意見をお聞きになったわけですが、東京大学の熊沢先生のお話に対して、私も全くそのとおりだと思いました。それについて行政側としてはどういうふうに考えているのか、また、どういう対策をとりつつあるのか、また、将来どういうふうな方向でいこうとしているのか等について、まず述べていただきたいと思います。
  17. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) ただいま参考人意見開陳にもあったわけでございますが、要は化学肥料とそれから有機質肥料、両者がバランスをとって施用されなければならないと、特に、最近の現象では堆・厩肥中心として有機質肥料が減少していると、これが地力に重大な影響を及ぼす問題だという御指摘があったわけでございますが、私どもも全くそう考えておるわけでございます。  そこで、要はいかにすれば有機質肥料、堆・厩肥を土地に還元するように農家の方々にやってもらえるかということだと思うわけでございます。したがいまして、たとえば先ほどもちょっと出ましたが、堆・厩肥をするにはなかなか手間ひまがかかるものでございますから一若干簡便ではございますが、まず、なまわら施用ということにつきましていろいろ指導もいたしました。これにつきましても、たとえば自脱型バインダーにカッターをつけますれば、なまわらを利用し得る。こういう方法もあるわけでございまして、そういうこともやってみたわけでございますが、さらに行政の施策といたしまして、一つは、いわば畜産とそれから畑作経営を結びつけて、それで厩肥畑作に還元する。そのためには地域として結びつけなければならない。つまり個々の経営の内部ではなかなかしがたいわけでございますから、地域として、それを組織化いたしまして進めるというために、たとえば広域の厩肥のそういった実験事業というものを数年前からいたしておりまして、いわばモデル的にそういう施設をいわば展示いたしまして、その波及効果をねらっていく、こういうことも行政施策として進めております。  それから、また、いまのは厩肥畑作でございますが、もう一つは、水田につきまして堆肥をいわば投下する、そのための実験事業、これは本年四十九年度からでございますが、それにつきましては、さっきもちょっとお話に出ましたが、個人の手ではなくて、いわば機能化した簡単な堆肥づくりということ、そのためのいわば機械設備につきまして、モデル的に助成をいたしまして進めるという実験事業を四十九年度予算から打ち出そうということで、予算を計上したわけでございます。が、こういうことで、いろいろ新しい組織づくり、あるいはまた機械設備というものにつきまして助成をして、パイロット的に進めて、その展示効果をねらって、いま言ったような有機質肥料、特に堆・厩肥地力還元を進める方向にいま施策を進めておる次第でございます。
  18. 沢田実

    ○沢田実君 さように、参考人がお話になった地力増大さしていくには、国の外以外にないだろうというような意見もあったわけですが、地力研究所等が日本の国ではないというお話をしてまいりましたが、そのことについてはどういうふうにお考えですか。これは大臣でしょうか、——大臣お聞きになっていないようだから局長
  19. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) ただいま土壌研究所、あるいは大学の学部につきましても土壌の学部があるということがあったわけでございます。ちょっと私その点技術的には不十分でございますが、まあ役所といたしまして、たとえば土壌につきまして、いろいろ診断事業はいたしたわけでございまして、これは研究所ではございませんが、先ほど土壌の診断事業というものが非常に大事であるという御指摘があったわけでございます。そこで、私どもも、たとえば私の局でございますが、土壌につきまして、これは水田、畑地、樹園地、それにつきまして土壌基本調査をいたしておりまして、その地域地域土壌がどういう性質を持っているか、どこに問題があるか、ということをいわば調べまして、それを図化いたしまして、そういった土壌調査事業、これはもう十数年でございましょうか、継続してずっと続けております。  それからまた、その上に立ちまして、今度は土壌診断事業と申しますか、これは診断機を据えつけまして、いわば農家の方々がこの土壌はどうかということを持って来れば、それを分析するということを、これは普及所に——試験場と普及所タイアップいたしまして、そういう機械を試験場に据えつけておきまして、それから普及所を通じまして農家の方々に診断事業の効果を進める、こういう事業をいたしておりまして、まあ先ほどお話出ました大きな研究所とか学部とは若干違いますけれども、やはり、県の試験場とか普及所というのを活用いたしましてそういうこともやっている次第でございまして、今後さらにそれを拡充してまいりたいというふうに存じております。
  20. 沢田実

    ○沢田実君 それでは法案のほうについてお尋ねをしたいわけですが、この法案については、昭和四十五年でしたか、そんな記憶をしているわけですが、一度ここで議論をいたしました。そのときに、その当時の状況としては、肥料生産する工場の大規模化といいますか、そういうようなことが非常に進んでいるときでございました。相当国でも融資等に力を入れて生産体制の整備をはかったわけでございますが、それについて、その効果としてこれだけあがっているんだというような資料をいただいておりませんので、こういうふうに大規模化したためにこれだけの効果があがっているんだ、ということを、これは通産省のほうになるかもしれませんが、説明をいただきたいと思います。
  21. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) ただいま先生御指摘がございましたように、四十三年からアンモニア工業の大型化ということを実行してまいったわけでございまして、これは、アンモニアの製造能力一日当たり千トンということで、いわゆる千トンパーデーという能力のものを七基つくってまいったわけでございまして、これによりまして硫安、尿素等のコストがこの第二次の大型化事業を発足する初年度であります四十三肥年に比べますと、硫安につきましては九・一%、それから尿素につきましては七・八%のコストの低下を見たわけでございます。このような合理化成果というものを国内消費者価格に反映すべきであるというのがもともとこの大型化、合理化事業のねらいであったわけでございまして、具体的に、この硫安、尿素等の価格を取りきめる消費者団体であるところの全農と、それから製造を担当しているメーカーとの間で交渉を行なう際に、こうした構造改善の成果を踏まえたコストの調査結果というものをこの両者に配付しておるわけでございまして、そのような経緯からしまして、四十四年から四十六肥年にかけまして、取りきめ価格もそれぞれ下がっておるわけでございます。具体的に申しますと、硫安は四十四年には一万六千九百六十八円、それが四十七肥年には一万五千六百十八円ということで、八%の低下を見ております。同じように、尿素のほうも三万一千六百七十二円から二万八千七百七十二円ということで九・二%の低下を見ている、こういうことでございます。
  22. 沢田実

    ○沢田実君 このいただきました資料には、そういうことは、ついてないんですが、そういうような資料をあとでいただけますか。
  23. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) ただいまの資料は提出いたします。
  24. 沢田実

    ○沢田実君 このいただきました資料を見ましても、確かにこういう情勢のときに価格が若干四十七年までは下がってきたということについては、これは法律の効果、あるいは皆さまの努力についても私は認めるにやぶさかでないわけでございますが、この資料によりますと、四十八年の七月−十二月の値段まで出ておりますが、四十九年の一−六月についてはどんなふうにきまっているか、これは農林省のほうですか、お答えを願いたいと思います。
  25. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 四十八年の十二月までは、この法律ができましたから一貫してコストも下がり、価格も下がり、この十年間を通算いたしまして硫安の場合では約一五%、尿素の場合は約一八%価格は低下いたしたわけでございますが、本年の一月から値上げを余儀なくされたわけでございます。と申しますのは、昨年末来の石油削減を契機といたしまして、石油関連製品が非常に値上がりをいたしたわけでございまして、御承知のとおり、この硫安、尿素の生産につきましては、そういう原料を使用するものでございますから、そういう原材料の価格の高騰、それからまた包装資材の高騰というのがございましたもんですから、そういう原材料の上昇圧力によって引き上げざるを得ないということで、結果的には約二八・三%の引き上げを余儀なくされたわけでございますが、その場合でも、事前に関係業界を指導いたしまして、やむを得ざる原材料のアップ以外は認めないと。たとえばその他の、申し上げました直接のナフサでございますとか、重油でございますとか、包装材、そういうものに限ると、それ以外の人件費関係、あるいは操業度関係についてのものは一切認めないということで、厳に便乗というのは抑制いたしまして、結果的に一六・三%の引き上げにとどめた次第でございます。
  26. 沢田実

    ○沢田実君 このいただきました資料の二ページには第八回目のが出ているんですが、三ページのほうですね、三ページのほうの国内価格輸出価格については、四十八年の七月−十二月までしか出ていないわけです。これと同じ計算方法をいたしますと、その第八回にきめた分は、国内価格は一体どれだけになるのか、で、輸出価格については現在はどんなで、先の見通しはどうかというようなことをお答え願いたいと思います。
  27. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) この資料に即して御説明申し上げますと、二ページに硫安、尿素の国内価格の推移がございますが、そこで、その一番最後に、「肥料新法時代第八回取決め」四十八年とございまして、これは決定時期は四十八年でございますが、実行が四十九年一月から実施されたわけでございます。したがって、それ以前の第七回取りきめ価格、これが硫安の場合は四十キログラム六百二十四円七十一銭でございますが、それが七百二十六円七十一銭に値上がりをしたと、これが一六・三%に相当しているということを申し上げたわけでございまして、尿素につきましても、第七回取りきめ五百七十五円四十四銭が、第八回取りきめ六百六十九円四十四銭に上昇したと、これが同じく一六・三%に相当していると、国内価格はそういう事情でございます。  それから次の三ページには、国内価格輸出価格でございますが、これは国内価格のはいま申し上げましたとおり、第二ページのとおりでございますが、輸出価格のほうは一月以後まだ実績がございませんもんですから、この資料にはその分は載っていないわけでございます。
  28. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 輸出価格について、いま松元局長のほうからお話がございましたように、まだ実現しているわけではございませんが、見込みとして申し上げたいと思います。  硫安につきましては、この四十九年一月−六月、つまり四十八年肥料年度の下期でございますが、五十ドル七十四セントとなります。これがドル表示で出ておりますから、硫安が五十ドル七十四セントというふうになります。それから尿素のほうは輸出価格が同じような計算で百二ドル三十七セント、こういうふうな見込みでございます。  なお、つけ加えますと、輸出価格のほうが国内価格よりも安いというふうなことがございまして、特に去年の暮れの石油ショックにかんがみましてコストも上がっているということで、輸出先国とその価格の引き上げについていろいろと交渉をやってまいっておるわけでございます。で、大体去年の暮れに、東南アジア諸国に対しましては、従来の価格の三〇%余りというものが値上げとして認められているわけでございます。また、硫安、尿素の輸出の先の大宗である中国に対しましては交渉団が行っておりまして、ごく最近帰ってきて、中国側も輸出価格の調整には同意した、こういうふうなことが伝えられておるわけでございます。
  29. 沢田実

    ○沢田実君 いただいた資料と、あなた方がおっしゃるのが違うもんで、比較のしようがないのですが、農林省のほうですけどね、一六・三%、それはわかった。そうしますと、四十九年の一月−六月の国内は大体六十九ドルぐらいになるんだというふうな計算でよろしいのか、それともこれはまた別な計算があるのか、その辺はどうですか。
  30. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) ちょっと御説明のしかたがまずかったか存じませんが、この二ページの資料で一番最後の欄にございまする第八回……。
  31. 沢田実

    ○沢田実君 二ページはわかった。三ページのドルにすると何ぼになるか。
  32. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) ドル換算でございますか……。
  33. 沢田実

    ○沢田実君 三ページに、ドルが出ておるのだよ、二ページに出ているのは国内価格しか出てないのだから。
  34. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) この円建てにつきましては園芸局長のほうからお話があったとおりでございますが、これをドルに換算すると、その換算する場合にどのレートを使うかということは実は問題でございます。御承知のように、変動相場制でございますので、刻々変わるわけでございますが、一応一ドルを二百八十円べースで計算いたしますと、国内価格は硫安につきましては六十四ドル八十九セント、それから尿素につきましては百十九ドル五十四セント、こういう数字でございます。
  35. 沢田実

    ○沢田実君 それも、尿素と硫安と別々に出ていないのですよ、こっちの表は。一緒になって出ているのですよ。だから、あなた別々に説明されるとこっちは比較できないのだよ。
  36. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) この資料は三ページが硫安になっております。四ページが尿素になっております。
  37. 沢田実

    ○沢田実君 ああ、そうですか。——いまおっしゃったのが国内価格ですね。それで、先ほど、見込の状況は、大体このぐらいじゃないかというお話がございましたが、今後半年なり一年なり、今後の見通しについてはどんなふうに通産省では見ていますか。
  38. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) ただいま申し上げましたのは四十九年の一月から六月までの見込み価格でございまして、ことしの七月から始まる新しい肥料年度にあたりまして、どういう輸出価格が見込まれるであろうかと、こういうことでございますが、今後も国内におきまして、硫安、尿素等の主要原料であるところのナフサ、あるいは重油、あるいはそれの関連資材であるところの包装資材等がなお値上がりの見通しがあるということからしますと、コストが上がっていく、そうすれば、国際市況いかんにもよるわけでございますが、方向としてはなお輸出価格は上がっていくのではなかろうかと、こういうふうに見込まれるわけでございます。最近の事例として、ソビエトが尿素を輸出している例があるわけでございます。これはスポットものでございまして、こういった契約に基づくものと直に比較することは許されませんですが、三百ドルで出している、こういったようなことも言われておりまして、非常に国際市況が高目に推移しているということがそのことからも一応うかがわれるのではなかろうかと思います。
  39. 沢田実

    ○沢田実君 先ほど通産省のお話で、大型化をいたしましてそのために値段の上昇を食いとめることができたんだ、あるいは値下げをさせることができたんだ、こういうお話でございましたが、四十七年、それから四十八年になりますと、いまお話のようにたいへんな上昇をしております。これについてはもう大型化等によってカバーすることはできないような内容なのか、その辺についての通産省の考えはどうですか。
  40. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 大型化メリットにつきましては、先ほど申し上げたような情勢にあるわけでございますが、今後大型化メリット、まあこれ以上の大型化ということはいまの段階ではわれわれ——政府のほうも考えておりませんし、また業界のほうも積極的にさらに大型化を進めていこうと、こういったような機運にはないわけでございますので、今後国内価格に大型化メリットがさらに反映していくということは非常にむずかしいと、こういうふうに率直に申し上げざるを得ないと思うわけでございますが、結局そのコストの中で占めるところの減価償却費がどうなるか、あるいは支払い利子がどうなるかという二点のみがこの大型化メリットを考える場合の問題点になるわけでございますが、そのいずれについても大体定額的に償却するとか、あるいは金利もきまっているというようなことからしまして、大型化メリットを直ちに今後国内価格に反映するということは非常にむずかしいと、こういうふうに判断しております。
  41. 沢田実

    ○沢田実君 それから通産省では、まあ国内価格輸出価格と相当の差があるわけですが、四十六年なんかは輸出価格が半分ぐらいなんですが、これは生産原価というのがあるわけです。適当な利益を加えてどのぐらいが適当な販売価格であろうということもあるんだろうと思いますが、これはどちらが基準になってるんですか。
  42. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 国内価格につきましては、製造コストが基準になって農業団体とメーカー側との話し合いできまるということは申すまでもないわけでございまして、この国内価格とは遮断された形で輸出価格がきまっていくというのが実情でもあり、またこの法律のねらいでもある。つまり、肥料二法時代から、輸出赤字は国内価格に転嫁しちゃいかぬと、こういう原則がありまして肥料二法が成立し、また今日の肥料価格安定等臨時措置法もそういう趣旨のもとにできておるわけでございまして、今後この法律を運営するにあたりましても従来どおり、輸出価格によって出てきたところの赤字、あるいはかりにもし黒字が出るとしても、それを国内価格に反映させるということはむずかしいと、こういうふうに思っているわけでございます。
  43. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、私どもが考えるには、国内価格生産原価にプラス若干の利益というものを基礎にして、要するに、製造側とこれは全農ですか、がおそらく政府の資料を参考にしてきめるんだと思いますが、そしていまのお話ですと大体国内価格というのは製造原価に見合った価格だ。そうなりますと、たとえば四十六年なんかは、硫安にしてみると四十五ドルが二十ドルで約半分以下ですね。それから尿素にしましても八十三ドルが四十九ドルというふうなことで、輸出値が半分以下あるいは半分に近いというようなことで相当の数量が輸出されているわけです。そうしますと、それだけ全部メーカーの赤字になってんだということなんですか。
  44. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) ただいまの御指摘いただきましたように、確かに四十六肥年の輸出価格は国内価格の約半分であると。特に硫安が顕著な数字を示しておるわけでございますが、こういった輸出価格事情を反映しまして、各メーカーとも実に苦しい場面を迎えてきたわけでございますが、メーカーといたしましては、これを先ほど申し上げたように、国内価格に転嫁することはできないと、こういうようなことでございますから、他部門とあわせましてこれを吸収していくと、こういうことに最大限の努力を払ってきまして、現にこれらの硫安メーカーなりあるいは尿素メーカーの経営状況を見ますと、肥料部門の高い企業では無配を続けていると。たとえば今日においても、最近の数字で申しますと、四十八年の上期——まだ下期は出ておりませんので、上期で申しますと、硫安肥料メーカー十八社のうち十社がなお無配を続けている。こういうような状態でございまして、通産省のほうとしましても、こういったものに対して、いかように今後のメーカーがあるべきかということにつきまして苦心してまいったわけでございます。が、四十七年に産業構造審議会、その中に化学工業部会、さらに肥料分科会というものを設けまして、こういった苦しい経営の中にある企業——総合化学企業になっておりますが、そういう企業をどういうふうに持っていったらいいのかというふうなことで、いろいろと御議論願ったわけでございますが、結局はそのときの結論としましては、日本のこういったアンモニア窒素肥料系の工業が過度に輸出に依存している、あまりにも輸出に依存し過ぎる。まあ硫安、尿素についてみますと、生産の七〇%近くが輸出に回っていると、こういうような状況からしまして、その輸出ウエートを下げていくべきだと、無理に量的な生産の拡大をはかるべきではない、また、大型化しないいわゆる能率の低い老朽施設等についてはむしろスクラップをしていくべきであると、こういうふうな考え方を、産業構造審議会のほうから答申としていただいているわけでございまして、この輸出価格が低落してきたことにつきましては、非常な苦慮をしてまいったわけでございますが、幸いにしまして、昨今ほぼ輸出価格が国内価格並みに追いついてきたと。また、今後はあるいは国内価格を上回ることがあるだろうというふうな予想をされることもありまして、正直のところ、われわれといたしましてもほっと一息ついていると、こういうような状態でございます。
  45. 沢田実

    ○沢田実君 あまり具体的には、あなたもここで答弁できないのかもしれませんが、私が申し上げているのは、要するに、四十六年は、国内価格輸出価格を比較すると、硫安の場合なんか半分以下だと。しかも、相当数量輸出されているわけですから、国内で使った余りを若干損しても売るなんという数じゃないんです、数量じゃないんです。尿素の場合の四十八年度をごらんになると、ものすごい、あなたのおっしゃる三倍以上。国内市場の数量の三倍以上を輸出しているわけですから、そういうような状況を見ますと、いわゆる国内価格が、原価にある程度正当な利益をプラスした金額で国内価格がきまってんだとしますと、輸出価格では相当な赤字になると私は思うんです。その赤字になっている企業の赤字はどのぐらいなのかということをお聞きしたんだが、そうしますと、あなたは、肥料をつくっているのは、その企業のわずかな部門だと、占めるパーセントが少なくないんだと、だから、よそでもうけた分を肥料に回しているんだというお話をしながら、しかも無配だとおっしゃるし、いろいろなことおっしゃっているわけです。  要するに、いろいろなものをつくって回しているのはともかくとしまして、これを原価として考えると、輸出の安い分だけはまるまる損になって、いわゆる肥料生産業界では何百億という赤字になっていなくちゃならぬ計算になると私は思うんです。そんなふうにほんとうになっているのかどうかお聞きしたいんですよ。それは別な部門から埋めているんだと、だから実際企業としては、そういう赤字は出ていないんだと、こうおっしゃるなら、そんなふうに埋めることがどんどんできるのかどうかですね——どの辺まで。国内価格だけは高くしているんですから、国内価格が少なくなってきますと、輸出が今度は比率が多くなりますと、埋めなければならぬ金額がよけいになるんですから、四十八年の尿素の場合なんかは、あなたのおっしゃったように七割も輸出しているわけですから、それがまるっ切り損では、たいへんなことだと私は思う。だから、私どものしろうとの考えでは、そんなに損して企業がつくるはずないと思う。その辺のところを解明していただきたいのです。
  46. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 輸出価格と国内価格との比較、これを厳密に申しますと、輸出の場合には輸出メリット、こういうものがございまして、国内価格と比較した場合、大体トン当たり十ドル近くの輸出メリットがあるわけでございます。つまり、その輸出メリットは何かと申しますと、輸出する場合には、大体その肥料工場というものが臨海地帯にございますからそこからすぐ船に積み込むと、こういうことでさしたる運賃がかからない。ところが、国内価格の場合は、農協最寄りの駅まで運んで、そして着駅オンレールということになっているわけでございまして、その間のいわゆる輸出メリットの差というものは約十ドル近くある。こういうふうに見られるわけでございまして、この十ドル近くの輸出メリットというものを勘案しながらその比較をせねばならぬというふうに思うわけでございます。  それから御承知のように、今日の肥料工業というのは多角的な総合企業になっておるわけでございまして、四十七年の実績を見ますと、こういった硫安、尿素をつくっている総合化学企業の総売り上げ高の約八%というものが肥料で占めております。つまり、肥料のウエートが非常に低い。こういうふうなことでございまして、もちろん決してその企業にとって輸出から出てくるところの赤字というものが直ちに吸収し得るようなものではないわけでございますが、さればといって、直ちにこの肥料製造をやめてしまった場合、何といっても、これは装置工業でございますから、一か八かなんですね、つくるかつくらないか、こういうふうな瀬戸際に立たされるわけでございます。それで企業家といたしましてはどうしても装置工業であるからこれを維持していったほうがむしろ相対的に有利である。こういうふうな判断を持つわけでございまして、その一つは、日本の企業というのは大体借り入れ資本が大きいわけでございます、他人資本と申しますか。したがって、借り入れ資本が他の欧米諸国に比べて非常に多いということからしますと、何としても自転車操業でもいいからやることによって装置を動かしていくほうが比較的相対的には有利であるということもございましょうし、また市場の確保というか、従来輸出市場というものが開拓されてあるわけでございますが、そこから手を引くということは、今後の肥料輸出市場の維持というものに問題が出てくる こういうようなこと。それから国内価格との関連で見ますと、大型化メリットというもの、こういうものがあるわけでございまして、この大きな装置を動かすことによって国内に対しても非常に低いコストをもって提供し得る。こういうようなこともあるわけでございまして、いろいろの方面から企業としては苦心惨たんしてこの装置工業というものを四十六年の段階では守り続けてきた、こういうことでございます。
  47. 沢田実

    ○沢田実君 衆議院の予算委員会で議論をされている企業の態度、皆さんもいろいろなことで御存じの現在の体質からして、日本農業のために企業が犠牲になって、そして国内肥料は何とか製造原価にプラス利益にしてくださいと、輸出は損をしても私のほうで何とか埋めていきます、こんなことを考えている企業家は私はいないと思う。ですから、その辺が、納得できるだけの資料を出していただけませんか。いまのあなたのお話ですと、それはわずか八%だと、あとの九二%のほうでもうけて埋めているんだと——そんなに埋めてくれるんだったら国内の肥料も埋めてくださいよ、こんなに高くしないで。たいへんなときなんだから。幾ら言ったって国内の肥料を上げるんでしょう。その辺のところがぼくは納得できないんですよ。だから、通産省や農林省がメーカーとそれから全農とで値段を話し合うところに資料をお出しになる、その資料はわれわれにはいただけますか。
  48. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) いまの資料につきましては、構成比について差し上げたいと思っております。
  49. 沢田実

    ○沢田実君 何ですか、いまおっしゃったのは。
  50. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 肥料のコストの各要因ごとの比例でございますね、パーセントで示してはございますが、それを提出さしていただきたいと思います。
  51. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、硫安なら硫安がつくられるまでの、原料費から、その他いろいろなものを、何%かかっているかということですね。
  52. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) はい。
  53. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、合計の値段を割れば単価が出るという、そういう構成比ですね。
  54. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) はい。
  55. 沢田実

    ○沢田実君 わかりました。  そうしまして、もう一つは、この肥料をつくっているために、これは大体その会社が赤字になっているんだという資料はありませんか。
  56. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 大体総合企業でございますので、肥料単独の部門として経理している会社は非常に少ないようでございまして、農業資材部門という形でまとめているのが普通のようでございます。
  57. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、輸出のほうでは損得はわからないんだ、原価が要するにわからないんだ——そんなら国内価格の資料がわからないじゃないですか。国内価格の計算ができるんだから輸出価格のほうだってわかるわけでしょう。いまあなたがおっしゃるようなことですと、肥料単独では計算できないんですというなら、国内価格をきめているのがおかしいじゃないですか、それなら。
  58. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 私が申し上げましたのは、肥料の製造コストについて申し上げているわけでございます。それについては各企業のほうから報告がございまして、それをまとめているということでございます。
  59. 沢田実

    ○沢田実君 だから、企業で製造コストがわかれば損失もわかるでしょうというんだ。硫安なら硫安、尿素なら尿素についての製造コストは企業で計算しているんでしょう。それを割って輸出しているんでしょう。言いますと半分なんだと、半分の時期があったんだ。その半分のときに文句も言わないで輸出しておったとすれば、これは輸出のほうは損してないで国内でもうけておったとしか思えないんだ、われわれは。あなた方がいろいろな資料を出してくだされば納得しますけれども
  60. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 企業としては、唯々諾々として生産に従事してきたということではなくて、先ほども何度か申し上げましたように、非常な苦衷の中にこの経営を続けてまいっておるわけでございまして、さればこそ、通産省におきましても、産業構造審議会で、こういった大型化生産の中で、しかも需給ギャップが非常に国際的に顕著なとき、どういうふうな今後の事業のあり方に持って行くべきかということを真剣に議論したわけでございます。
  61. 沢田実

    ○沢田実君 あなたのおっしゃる企業が、たいへん苦労しながら、損をしながらやっておったということが信じられないと私は申し上げている。なぜかというと、あなたのほうの資料がないから。あなたのおっしゃるように、国内価格生産コストだったら輸出価格だけ損しているわけだから、各企業が相当の赤字を抱えて、通産省に赤字だ、助けてくれと言ってくるはずでしょう。言わないはずない。言わないとするならば、輸出価格でもまあまあだ、たいした損はしない。国内価格まるまるもうけだということになるんなら、四十九年の肥料は上げないでほしいと、こういうことなんですよ。  私が申し上げたいのは、最近農家で一番困っているのは、また肥料が上がると。肥料が上がると、また米価を上げんならぬし、たいへんなんです。ですから、もう肥料上げたくないということが趣旨なんです。あなた方は、国内価格はこのくらいやむを得ないのだとおっしゃるけれども輸出価格がべらぼうに上がってきたのなら、輸出価格のほうで国内価格をカバーしてくれてもいいのだ、もしそれが可能ならば。だけれども、それは法律の上で、もうあくまで別途だと、輸出が上がった分だけ会社はもうけなんだと、いままでじっとがまんしてきたのだから。——それほどぼくはこの企業について信頼できないのです。あなた方が信頼できているのはおそらく数字を見ていらっしゃるのだと思いますが、その数字を、納得できるような数字をこの委員会に提出をいただけるのかどうかということを申し上げているのです。
  62. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 納得する資料を出せということだ。
  63. 沢田実

    ○沢田実君 これは政務次官だね。
  64. 楠正俊

    政府委員(楠正俊君) 帰りましてよく検討いたしましてお返事申し上げます。
  65. 沢田実

    ○沢田実君 私はきょうで質問を終わるつもりでおりますので、また帰ってから返答と言われると、またこの会を開いてもらわにゃいけませんので、ここで出すなら出すということをはっきりしてください。
  66. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 具体的にその会社の名前をあげてどうこうということはできませんが、大体会社をグループ分けしまして、たとえば配当のあるところ、無配のところ、そういったグループごとの会社の経営状況を、四十六年当時のものを、これを提出いたしたいと思います。
  67. 沢田実

    ○沢田実君 いまおっしゃるのは、配当のあるとか、ないとかなんということは、あなたのほうから借りなくたってわかるのだから、会社の配当あるかないかなんかはね。要するに、なるほどこれは、国内価格がこういうふうに値上がりするのはやむを得ないのだ、とわれわれが納得できる資料をくださいと言うのです。なぜかというと、農林省も、通産省も、これはやむを得ないだろうとおっしゃっているのでしょう。あなた方が納得しているのだから、あなた方資料があるから納得しているのだから。その資料がわれわれにはないからその資料をいただきたい、こういうことなんですよ。政務次官、出すの当然だ、出してくださいよ。
  68. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 四十九年の一−六の値上げについてどういうふうな資料に基づいて判断したか、それは、われわれの資料があるわけでございます。そういうものについて提出いたしたいと思います。
  69. 沢田実

    ○沢田実君 いま申し上げたようなことなんですが、大臣、大臣としては、これだけの値上げはやむを得ないとお思いになるのですか、それともまた今後努力をなさるのですか。
  70. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御存じのように、肥料メーカー、大体肥料部門においてはあんまり利益がありません。それで他の部門と並行してやっておりますので事業が成り立つ、私どもはそういうふうに見ておるわけであります。それで、したがって、肥料に重点をわりあいに置いているような会社の業績というものは上がっておらないというのが従来の経過でございます。私は、この法律にもありますように、全農が取りきめますときに、通産大臣、農林大臣は資料を出すことになっておりますが、そういうものはやはり現在の肥料につきまして、こういうものであるというふうな構成比のようなものを出しておるようでありますが、私はもう一つ考えられますことは、やっぱりスケールメリットと申しますか、国内需要よりも輸出のほうが量が大体多いわけでありますから、そういうことで、輸出があることによって国内の価格もある程度押えていくことができるんではないか、こういうふうに見ております。同時にまた、いまの国際価格を考えてみますと、日本輸出しております肥料、これは非常な国際間に激烈な競争がございますので——こちらのほうの自由な価格でも国際社会では通用いたしませんので、それと、この激烈な競争をして売り込んでおるという点に私ども肥料工業に対する判断の一つの資料として考えなければならないんではないかと、こう思っているわけでありますが、御存じのように、一ころはかなり国内需要と輸出肥料との間の格差はございましたけれども、最近は徐々に詰まってきております。そういうことを考えてみますと、やはり外国でわが国と競争しておる肥料輸出国におきましても、石油事情その他のコスト高によってかなり価格を上げてきておるという状況でございますので、私はまだ詳細な資料を知っておりませんけれども、趨勢としてはそういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  71. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 暫時休憩いたします。    午後零時二分休憩      —————・—————    午後一時二十九分開会
  72. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  73. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は三点ほど質問いたしたいわけです。一つは価格の安定の問題について、もう一つは需給の問題、内需確保の問題、もう一つは今回単純延長したことについてお伺いをしたい。あと若干流通の合理化の問題、それから農林省の資材関係を取り扱う機構の問題等について付加して質問したいと思う。  まず価格安定の問題ですけれども、この法律を見ますというと、特定肥料について硫安と尿素につきまして生産者、メーカーと販売業者が自主的に価格を取りきめる。で、三十九年以降とりきめ八回、尿素が後に加わりまして、尿素の分が四回ということできたわけです。この価格の取りきめについて農林大臣並びに通産大臣はいろいろな権限を持っていらっしゃる。要求に応じて必要な資料を交付するとか、需給見通しを立てなければならぬとか、あるいは勧奨する、助言をする、調停をする、必要があれば倉庫、工場、事務所等に立ち入り検査をするというような権限を持っていらっしゃるわけなんですが、そこで、ことし、つまり四十八肥料年度におきまして、従来の長い間確立しておった肥料年度の当初に価格を取りきめるということに対して、たいへん異例な年度途中において価格を再改定するといいますか、改定するといいますか、引き上げるという措置が行なわれたわけです。取りきめが行なわれたわけですね。で、硫安と尿素について二八・三%引き上げる、あとカリ燐酸等含めて平均すると三一%の引き上げだ、値上げだということですが、そこでまず、平均して三一%なんですけれども燐酸カリはどのぐらいにお引き上げになったのか、これちょっとまず簡単に伺いたい。
  74. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) お答え申し上げます。  硫安と尿素につきましては一六・三%でございますが、燐酸カリ、この代表的なものについて申し上げますと、溶成燐肥につきましては、七月の当初価格に比べまして三七%、それから塩化カリにつきましては二二・五%という上昇になっております。
  75. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そこで、この法律によりまして、特定されている硫安と尿素を一六・三%引き上げたと。この取りきめが行なわれたわけなんですが、いつごろからそういう話があって取りきめの交渉があったのか。そして、いつごろきまったのか。これをまずお伺いをします。
  76. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) この経緯につきましては、十一月の下旬に生産業者のほうから、十一月以降におきまする原材料——ナフサ、重油、包装資材等こういった原材料が大幅に上がったということ等を理由といたしまして、全農に対しまして改定要求の申し入れがあったわけでございます。そういたしまして、その後いろんな経過を経まして、政府に対しまして、法に基づく届け出が行なわれましたのが十二月の十七日でございます。
  77. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そうしますと、十一月の下旬に申し入れがあって、十二月の十五日ごろにはきまったと。そうしますと何ですね、二十日間ぐらいのうちにきめちゃったんですね。そういうことになりますね。
  78. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 約一月弱でございます。
  79. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 一月弱——いや、そういうことにならないですよ。いまの話は十一月の下旬に申し入れがあったと、そして十二月の十七日に農林省に届け出があったというわけですから、二十日間ぐらいの間にきまったんじゃないですか。たいへん短い、そりゃべらぼうに短い時間にきまっちゃったんですね。
  80. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 下旬と荒っぽく申し上げたんで申しわけございませんでしたが、十一月二十二日に申し入れがありまして十二月十七日に・届け出があったわけでございます。二十五日でございます。
  81. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それはあとでまた……。  次にお伺いをしたいのは、まあたいへんこれは異例に、年度途中に改定するということ——いままでは、年度当初にやったら動かさないという約十年近い慣行が確立していると思うんですよ。それを今回急に年度途中でやるということですね。それともう一つ、メーカーのほうは、三五%程度引き上げたいという申し入れをしたというふうに、新聞等に報道されているわけなんですよ。ですから、この二つですね、三五%程度引き上げたいということを申し入れたという話、もう一つは年度途中に引き上げるという異例なことをやってきたと、この二つについて農林大臣はどういう基本的な方針でお臨みになったのか、どういう基本的なお考えでお臨みになったのか、これをお伺いします。
  82. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 肥料価格につきましては、従来御存じのように、非常に安定的に推移してまいりました。ときには下がってまいりましたことも御存じのとおりでありますが、最近の、この石油事情等を背景といたしまして、原料、物価の高騰いたしたことによりまして生産コストが非常に上がってまいったということでございまして、先ほどお話しのような時間で、その要望が、申し入れがございまして、私どもといたしましては、ただいま国際的にも、肥料が非常に要望されておるときでもあり、その生産に支障を来たすことのないようにいたしたいという考え方でありまして、そういう意味で、年度途中では珍しいことでありますけれども、値上げを認めたわけであります。で、もちろん従来ともそういう価格安定のためには、強力な指導はいたしてまいったわけでありますけれども、今日のような状況をやむを得ないと存じまして承認をいたした、こういう経過でございます。
  83. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、いまそういう二点について、異例なことである。いままでは、十年近くにわたって年度当初にきめたら動かさなかった。それを今回は突如として引き上げる、年度途中に引き上げる。私は、年度途中に引き上げる必要はないんじゃないか、そういう基本的なお考えで農林大臣としてはお臨みになるべきではないかというふうに思っております。ところが、大臣どうもそうじゃないですね。生産の話はわかりました、肥料生産の問題について御心配になっているということはわかりました。ですが、その価格を引き上げるということに対して、初めから認めようという腹で臨まれたように受け取った。私はそれはどうしても解せないですね。そこで、年度途中に引き上げた理由というのは、これはもう特にお伺いしなくてもいいですな。いろんな事情でこうなったんでしょうから。  そこでお伺いをしたいのは、どうも肥料側の生産過剰の状態にあって、つまり供給のほうが需要を上回っておったというときから、去年の四十八年の初めごろからだんだん逆転してきて、需要のほうが供給を上回るという、従来の長い間の傾向からいいますと、ここで逆転しちゃった、逆転ということばは、最近はやることばで、まずいんですが、つまり逆転したわけですよね。一方においては、いままでは国内価格のほうが高くて、そして輸出価格は二分の一前後、まあ二分の一ぐらいと言っていいでしょう。安かったんですね。ところが、輸出価格はぐんと上がってくる。そして需要がずっと殺到するという中で、にわかにといいますか、急にこういうような態度を示すということは、私は従来の長い間の肥料法の運営からいいまして不信行為だと思うんですよ。そういうふうにお考えになりませんですか。どうも農林省というのは少し肥料について弱腰ですからね。あとでも私はいろいろ言いたいことがあるんですけれども、どうもにわかに変わっちゃって、年度途中で急に申し入れてくるという態度は従来の長い間のこの肥料法の運営あるいは商慣行というものから言って不信行為だと私は思うんです。大臣は、もともとそうお考えになっていないような感じがするんですね。そういうふうにお考えになりませんかどうか、ちょっと伺っておきます。
  84. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 肥料はもちろん、農業生産のために必要欠くべからざるものでございますし、その供給を確保するということ、それから価格の安定をはかるということは農政にとりましてきわめて重要な問題であることは、もちろん私どももそのように考えておるわけでありますが、この場合、肥料工業の合理化を通じまして、できるだけ低いコストで農業者に一率に供給できるようにいたさなければならぬ。これも私ども肥料について基本的に考えておることでございますが、こういう考え方のもとに、肥料問題に取り組みまして、この法律の適切な運用を従来もいたしてまいったわけでありますけれども、特に、最近の石油事情に起因する問題に対しましても全力をあげて、そういう方針のもとにこの解決に努力いたしておるわけでありますが、もちろん今後とも本法の適用に対しましては、適切な指導を通じて肥料価格の安定供給をはかって遺憾なきを期するということが私どもの任務であろうと思っております。  先ほどもお答えいたしましたけれども、今回の値上げに際しましては、硫安、尿素はもちろん、肥料価格安定等臨時措置法の適切な運用でやってまいるわけでありますが、他の三つの肥料につきましても、それぞれいま申し上げましたような趣旨に沿いまして、強力な指導を行ないまして安定的に供給のできるようにということで最善の努力をいたしてまいるつもりでございます。
  85. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 じゃ、もう少し具体的に申し上げますと、長い間国内価格のほうがはるかに高かった、農民のほうは輸出価格の二倍ぐらいの値段で長いこと買ってきた、それが昨年から急に変っちゃったですね。急にといっても、一昨年から変わり始めたんですが、急に変わってきて、そして国際価格のほうは、国際価格は七割、八割上がっているですよ、去年だけで。四十八肥料年度の前半で七〇%程度上がっているでしょう、前年に比べますと。そして、これからもっと上がるという可能性がはっきりあるわけですよ。しかも、いま硫安と尿素はこれは輸出産業でしょう。といってもいいでしょう。硫安の五割近くは輸出してますし、尿素の七割以上輸出しておるわけですから、輸出産業みたいなものですよ。だから、いままでは国際価格は非常に安かった。ところが、それが急に七割も上がってきた。これからもっと上がる。農家の方々にたいへん高いことでいままで売ってきたけれども、まあ高いといっても、国際価格に対してたいへん高い形で売ってきたけれども、いや、いまや国際価格はどんどん上がっちゃって、七割も上がっちゃった、これからもっと上がりそうだ。それで、ここでわれわれ企業もほっと息がつける、だから、むしろ国内価格はちょっと下げましょうというのがあたりまえじゃないですか。どんどんもうかります、上がりました、国内価格も上げましょうというんじゃ、これは何のことかわからないですよ。これは商行為としておかしいんじゃないですか。しかも、それを年度途中に、私は、十一月に出したというのは許せぬという感じがするんです。あとでこれは申し上げます。逆じゃないですか。いままで農民には高いもの売っておって、半分の値段で輸出していた。それを、こっちのほうはぐっと上がってきたんですから。いまは二倍になっているでしょう。このときだって、十一月現在だって七割上がっているんですよ、国際価格というのは。それだったら、こっちでうんとそれ余裕ができるはずなんだから、いままで高い肥料をやっておりましたと、だからこの際幾らか値下げをしますというぐらいの話をするのが私はたてまえだ、筋だと思うんですよ。それをこっちも上げます、ときたんじゃ、これは何とも私は了解できないです。大臣、それ了解されるんですか。
  86. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) お話よく私どもわかるんでありますが、私どもの感じから申しますというと、国内需要よりもはるかに輸出のほうが多いわけでありますが、こういう規模を大きくして——まあ肥料は御承知のように、それだけということでなくて他のものを併用して製造しておるから、原価においてもそれだけの価値あるかもしれませんが、いずれにいたしましても、規模を大きくして生産をしていることによって従来の価格が保たれてきたと私どもはそのように理解いたしております。そこで国際価格がおっしゃるように、最近は八割近くも上がってきたから格差が縮んでまいった。そこで、さて国内需要に要する肥料価格が上がらなければならないということは、先ほど来お答えいたしておりますように、ナフサ、重油等の原料価格が非常に高騰をいたした、こういう大きなファクターがありまして、値上げのやむを得ざる状況ではありましたが、私どもとしては一六・三%にとどまるように最善の努力をいたし強力な指導もいたしました。  他の肥料につきましても、これは私どもといたしましては、原料の、ことにカリ、硫酸、そういうようなものの輸入価格が、これはもう外国の状況によって左右される原料でございますので、そういう意味においてやはり製造費が高くなるということも、これもやむを得ざる事情でありますけれども、これもやはり強力な指導をいたして安定をする。できるだけ価格を押えるように強力な指導をいたした。  そこで、いまお話のございましたように、肥料につきましては、外国からの要望も多々ますます弁ずるような次第でありますことは御承知のとおりでありますが、われわれは内需優先というたてまえを政府は堅持いたしておりますので、内需に支障を生じないように輸出はもちろんいたすわけでありますが、昨今、開発途上国などでも、だんだんと国民の生活状態が安定してまいりまするにしたがって、肥料を要求するような作物がだんだんと多くなってまいりましたので、各国とも、ことに東南アジアその他開発途上国における肥料需要はきわめて増大してきておることも御存じのとおりであります。そういう意味で輸出品の価格も、先ほども私はここでお答えいたした次第でありますけれども、やはり海外の状況を見ておりますというと、わが国に対する肥料需要はかなりふえておるわけであります。そういう状態でありますので、国際的にも相場がだんだん上がってまいったということでございますので、輸出価格も上昇してきた。私は、これはある意味においてはけっこうなことだと思いますが、しかし、国内における生産費の場合を考えてみますというと、やはり何と申しましても、一番大きな原材料、それから包装資材その他が上昇いたしてきておりますので、価格を上げたいということにつきましては、いろいろ精査いたしまして、もうやむを得ないものではないかと——年度途中ではありますけれども価格を上げることについてはやむを得ないことである、ということでこれを承認いたしたと、こういう次第であります。
  87. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも私は、大臣、長い間農民は輸出価格の二倍ぐらいの値段で買っておったのですよ。長いことそれを買ってきたわけですよ。去年の後半から、四十八年度後半から輸出価格というのが七割上がってきた。そっちのほうが、しかも輸出のほうがはるかにでかいのですから、量としては。その価格が七割、八割上がってきたのだから、この際余裕ができるはずです。何ぼおっしゃっても余裕ができる。それじゃ国内価格をこの際上げる必要はないと私は思います。しかも、年度途中に上げる必要なんかない。私は下ぐべきだという話をしましたけれども、それは長いことたいへんな高い値段で買っておったから、輸出価格より高い値段で買っておったからそう言ったわけで、気持ちはそうだと思うんですよ。だから、少なくとも年度に引き上げる必要はないし、少なくとも相当年数これは据え置いていいと私は思うんです。しかも、これから国際需給というのは、三年や四年はこのままの状態が続くだろうと、だれしも昨年から見通しておるわけです。アメリカ肥料工場はどうだとか、中国はどうだとか、東南アジアはどうだとか、あるいは西欧諸国の肥料工場はどうだということがおわかりなんですから、ですから、これから三年四年というのは今日のような状況が続くと、こういうふうに見ておるわけでしょう。だから、その国際価格は上がっているんだから、そっちのほうに余裕がつくはずです。それなら当分の間、これは据え置くという政策をとるべきじゃないでしょうか。ましてや、年度途中に引き上げるなんというのは、私は理解がつかないのです。これはあとあとで申し上げますけれども、大臣、そうお思いになりませんですか。
  88. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 内需肥料価格が、国際的に比べまして日本だけが非常に高いという状況であったとすれば、私どもはそういう点については一つの疑問が出ます。しかし、御存じのように、国内肥料というのは、国際的に比べてわれわれの使っている肥料それ自体の価格というものは、そんなに高いものではございません。つまり、安く輸出するために国内のやつをいままで上げておったんではないかという、そういう考えには私どもはならないわけでありまして、さっき申し上げましたように、生産規模を大きくして大量に生産することによってコストダウンができて、それで従来の日本肥料というものは内需のものも安定した価格で、ときには下げる場合すらあり得たんです。しかし、今度はやっぱり国際価格が上がってきておりますので、その国際価格につれてわが国輸出も上昇してきた。しかし、そういう状態でありますけれども、なぜそういうふうに上がってきたかと申せば、私先ほど来申し上げておりますように、原料代が非常に高騰してきております。そういうことでありますので、あれこれ判断をいたしまして、やっぱり生産を落とされては困るのでございますから、やむを得ずこれを承認いたした、こういう事情であることをひとつ御了承願いたいと思います。
  89. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私はその点はどうしても理解がつかないのです。それはいま大臣がおっしゃった話、それはそのとおりでいいのですよ。私は、そういうことを考えないんですよ。いままでの国内の状況を言っているわけですよ。いまかりに一六・三%引き上げた。一方、国外のものは八割上がった。いまもっと上がっているでしょう。その八割も上がるなら、それは余裕ができるじゃないかと言っているわけなんですよ。国内の生産費の上がり方というのは、これはおはじきになったように一六%ぐらい、一七%ぐらいしか上がってない。ですが、国外におけるところのものは、これは生産費をこして需要が非常に大きくなったから上がっている面が大きいわけなんです。これはもちろん、石油はどうだという問題はありますよ。ありますけれども需要がふえてそしてその価格が国際的につり上がっているという面が大きいわけです。だから八割も上がるわけです。そっちのほうで余裕ができたじゃないかと。それじゃ長い間高い値段で買ってもらっておったから、——これは生産費との関係は別ですよ。輸出の値段よりも非常に高い値段で買ってもらっておったから、この際は年度途中に引き上げる必要はない。据え置こう、というぐらいの態度があってしかるべきだと思うのです。何でそんな弱腰になられたんですか、私は不可解なんですけれどもね。まああとでいろいろ考えてみたらわかった点もありましたよ。それはあとほど申し上げます。  そこで、次にお伺いをしたいのは、この一六・三%引き上げたんですが、話は十一月の下旬からあったというんですね。さっきの局長の話では、十一月の下旬で、そして十一月の十五日前はもうすでにその取りきめがきまっておるわけです、二十日ぐらいの間にきまっているのですから。そこで、それじゃ十一月に、どの程度そのコストが上がったのか、生産コストが上がったのかといいますと、その生産コストというのはまあ大体二%ちょっとぐらいでしょう。数字は出ています、十一月は。十二月は、当然、十二月の十五日ごろ前にきめたんだから十二月の数字なんかありっこない、ましてや一月の数字ありっこない。にかかわらず、この二八・三%という数字が出てきた、これはわからぬ。これは、先を見通されたわけですか。これから十二月は幾らになるだろう、十二月は生産費は幾らになるだろうという推定をなさってお上げになったんですか。当時これをきめるときは十一月しかわかってないはずだ。十一月は二%ちょっとしか上がってないですよ。それを聞きたいのです。
  90. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 御指摘のとおり、確定実績といたしまして十一月はそうでございますが、当時すでに上がることが明らかであったわけでございます。と申しますことは、私たちが認めましたものはナフサ、重油、包装資材という三本にしぼったわけでございます。これにつきましては、供給側からナフサは幾ら上がるということは通告もございましたし、そういう意味で上昇はもう明らかにわかっておったわけでございます。そういう意味でそれを見込んだわけでございます。
  91. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、おめでたい話で、私さっき言ったように、十一月の末ごろから話が始まっているのです。そして十二月の十五日前にはきまった、一六・三ときまった。そのときに、生産費はどれだけ上がったかという数字は出ていないじゃないですかと、十一月は出ているのですよ、ここにありますよ。ナフサは〇・八%、つまりコストとしては〇・八%上がる、それから重油は一・六%上がっている。ということになりますと二・四%、——二%ちょっとですね、生産費が上がっている。ここはわかっている。十二月はわかってないはずですよ、まだ。それを局長は推定をなさったというのですね、こういうお話ですね。そういうおめでたいことをなさるなら豚の肉もやってもらいたい。そんなおめでたいなら通産省に聞きたいですよこの点は。農産物はそんなことをなさいますか、大臣。そんなことしないでしょう。先の話まで見通しちゃって、上がるだろうと。こういうようなことを先を見通して肥料を上げてしまうと——農産物のほうは何のことはない前月ぐらいまでの数字で精一ぱいですよ。それもこまかい数字を出してきめるんですな。肥料についてこんなことをされたのではかなわないですね。私はだからこの数字はわからないですよ。お考えが、推定の上でなさったとおっしゃる、局長が。
  92. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 私が申し上げましたのは、推定で申しますといわば何と申しますか、一種の見込みといわれると、ちょっと私の舌足らずでございますが、申し上げましたことは、ナフサにしろ、重油にしろ、相手が大口の供給者でございます。そのほうからこれだけ上げるぞよという通告を受け取ったわけでございます。したがって、それを見込んだと、こういう意味で申し上げたわけでございまして、通常の物資別に、いろいろ品目について上昇経過はどうこうではなくて、明らかに上げますぞよという通告を受け取ったと。しかも、ものは限定されておりまして、それはナフサや重油であるということでございますので、いわゆる見込みという意味とはちょっと違いまして、したがって、いやでもおうでも、のまざるを得ない性質のものであったということでございます。
  93. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 なるほどね、やっぱり局長だものだからうまい答弁ですな。うまい答弁ですけれども、それは農産物の価格でも同じじゃないですか、予算についても同じでしょう。通告されているのだ。何の問題でもそうですよ、いま。だから、私は、肥料については認めたくないんですが、肥料を年度途中でお変えになると、肥料価格をお変えになると、それもわずか二十日間ぐらいの間にぽんとこう上げてしまう、それだけの勇気がおありになるなら、これは豚肉の標準価格にしろ、基準価格にしろあるいはいま問題になっている加工原科乳の問題にしても一年に何回でもお上げになったらどうですか。どうなんですかそういう点は。全然わからぬですこれは。豚肉をこの間もぼくは言ったんだ、いますぐでもやってやんなさいと、やっぱり三月末でなけれゃ困りますと。通産省のほうがずっとわかりがいい。これは、さっさっと上げちゃうんだ途中で、そうじゃないですか。まあ私は通産省もけしからぬと思っているんだけれども、農林省もだらしがないですこれ。農業生産資材のほうについてはさっさっと上げてしまう、わずかな間に上げてしまう。一、方、豚肉の問題であんなにぴいぴいみんなが言っているんですいま。その中で平然として三月末だなんていってがんばっておられるその頭がわからぬですねぼくは。おやりになったらどうですか。もっと早くやって二月ごろさっさっと受けとめて、二十日ぐらいでおきめになったらどうですか。そんなことをやらんでおって、肥料だけはさあ危機と同時にぱっと上げている、危機だといわれたとたんに上げているという形になるんですよ、これ。私は便乗値上げだと思っているんですよ。これはナフサがどうだとか、重油がどうだとか、国会でもさんざん問題になりました。私は、この問題は石油危機に便乗した値上げだといっても過言ではないと思う。かけ込み値上げというんですかね、ほかのそれは化学製品が上がるから同時に肥料についても上げようということだろうと思うんです。これ肥料にきている。そういうものについて、長年法律によって規制をしてきて、一年に一回だときめている肥料の事情も御承知のとおりだ。そういう中で、二十日間の間に安易に妥協するとかいう考え方が農林省は私はだらしがないと思う。それだけ農業が弱いといえば弱い、農林大臣は弱いといえば弱いといってもいいです。倉石さんは強いかもしれんけれども、農林大臣としての倉石さんは弱いということになってしまう。話にならないですこれ。  そういう点についてお考えになるような感じはありませんですか。あまりひどすぎるよこれは。豚だってさっさっと上げればいい、えさだって何回にもわたって上げているんですから。肥料だけこういうことをされるということについては、しかも、肥料はさっきも私は何回も言っているように、国外の価格というのはばあっと上がっているんですから、大幅に余裕ができておるに違いない。わからぬですねこれは。これはもう農林省の全体の政策に及ぶ態度ですよ。これだけの問題じゃないです、全部に及んでおる態度だと思うんですけれども。このあたり大臣少し、従来の大臣からいえば蛮勇をふるうぐらいのつもりで、これは米の値段だって、もう早くきめなければいかぬです。それから麦の値段だって、なたねの値段だって早くきめるべきですよ。政治的にどうだとか参議院選挙がどうだとか、つまらぬ話はおやめになったらどうですか。私はこういう点がわからないですね、どうですか大臣、この際、実力者は実力者らしく実力を出さなければいかないですこれは。
  94. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 畜産、酪農に御理解あるお話を承りまして、私どもも非常に力強いんでありますが、その点はまあこれは法律は守らなきゃいけませんので、審議会を開きまして答申を得る、しかし、例年よりも若干早く審議会を開きまして、今月の十一日に審議会を開いて、そして御意見を徴して決定するつもりでおりますが、諸般の状況は念頭に置きまして、再生産確保できるような取り扱いをいたしたいと、こう思っておるわけでありますが、まあ石油のことにつきまして、肥料のことにつきましては、私どもも実はいろいろ悩んだんでありますけれども、何といたしましても、とにかく主たる原料、それからその原料を使ってつくるところの機材が非常な高騰をいたしてまいりましたので、先ほど申し上げましたように生産が間に合わない。消極的になられるようなことになりましたならば、一般の国民の皆さんは、やっぱり一体農林省は何をやってんだと、こういうことになりますので、しかも、需要の、非常に輸出増大される傾向にありますので、諸般の状況を勘案いたしまして、今回はやむを得ない措置であると、こう理解をいたしまして賛成をいたした次第であります。
  95. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあ大臣は半分しか答弁してないけれども、これは大臣ね、フル操業ですよ。生産が減退するなんてことありませんよ。こんなに輸出肥料というのは上がるんですから、そんなのはフル操業ですよ。そんな、生産が減退しちゃってどうだということにならないと私は思うんですよ。  それはそれとしまして、そこでこの二八・三%という引き上げを取りきめたわけなんですが、法律の十六条ですね、それとそれに基づく政令四条によって、農林大臣、通産大臣は、こういう生産費の調査について、工場、倉庫、事務所、そういうところに立ち入り検査をすることができるとなっています。国会でもこれはたいへん問題になったんですが——衆議院のほうで問題になりましたが、従来この十六条と政令四条に基づくそういう検査をおやりになったことがあるかとどうかという点をお尋ねをします。
  96. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) まず従来の生産調査のやり方でございますが、御指摘のように、価格取りきめ交渉に際しまして、農林大臣及び通産大臣は交渉当事者の要求に応じて必要と認める場合に資料を交付するということで、このコスト調査資料につきましては、これは「硫安尿素原価報告書作成規程」というのがございまして、それに基づいて所定の様式によりまして報告をさせているわけでございます。その場合、このコスト調査の正確を期するために、農林省、通産省両省の係官を派遣いたしまして、実地の生産業者の事務所とか工場あるいは倉庫に入りまして、また、帳簿書類等を検査するというやり方で生産調査、コスト調査の正確を期しているわけでございます。従来そのようにいたしております。
  97. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 今度、いま問題になっております一六・三%を引き上げる、その生産調査について、農林大臣並びに通産大臣は工場や帳簿や事務所やそういうところの調査をなさったかどうか。これはいま局長もお話しのように、十一月の分はわかっている、あとは通告だけだ。それを本物と受け取って、ほんとうのものだと受け取って、そして私に言わせれば推定の十一、十二月分をおつくりになった、あるいは一月分を見通しになったわけなんですね。ですから、この価格をきめる生産費が出てきたときに、従来はそういうふうな工場とか、帳簿とか、そういうものを検査をされた、調査をされた。が、今度はなさったかどうか。
  98. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) そこで従来のやり方をまず御説明したわけでございますが、今回につきましては従来とやり方を少し変えております。と申しますことは、生産調査と申しますことは一定の期間があるわけでございまして、従来から四月——三月、こういう会計年度の期間、それを単位に調査をいたしたわけでございます。そのもとの基礎データがあるわけでございます。したがって、大きな生産費の動向は、これは把握されているわけでございます。したがいまして、今回の場合は年度途中のことでございますし、いまのような会計年度単位の調査ということをすることは、これはきわめてむずかしいわけでございますものですから、そういうやり方をとりませんで、まず従来ございました四十七会計年度に調査いたしましたコスト、それを一方把握している。それからもう一つは、今回の場合は、認めましたのは、値上がり要因をきびしく限定いたしまして、ナフサ、重油、包装資材というふうに三本にしぼったわけでございます。したがいまして、それについてのみ値上がり状況を把握しますれば、今回の価格改定には対応できるという判断をいたしましたものでございますから、従来のように一定の期間についての原価生産調査、そのために工場に入るということはいたしません、いま申しました事項につきまして、原材料等の値上がり状況等につきまして生産業者のほうから報告を求める、こういうことで把握をいたしたわけでございます。
  99. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いままでは生産費が出た場合に、それについて検査に行った、帳簿も見た、しかし今回はやらなかった、簡単にいえばやらなかったということなんですね。こういうのが誤解を受けるわけですね。やみくもに、わからぬでやっていたんじゃないですか。それを、十一月に申し込んだ、十二月に上げなければならぬ理由ないでしょう。一カ月待てとか、二カ月待てとか、来年の年度初めまで待て、四十七年の六月まで待て、と。もうそろそろ、なんでしょう、四十九肥料年度の価格をきめるわけでしょう。それまで待てないということはどういうことか。しかも、調査もやらぬで、ごちゃごちゃと何かヒヤリングみたいなものをやってやるなんという、そういう便宜を業者に、メーカーについてはおはかりになるなら、農家に対してもそれぐらいの便宜をはかられたらどうですか。めちゃくちゃですよ。なおナフサがどうだ、石油がどうだと、盛んに国会で問題になっている。その実態調査を、どれだけの倉庫にどれだけあるのか、どれだけの操業度になっているのかというようなことを何も調査しないで、ただヒヤリングだけやって、それでこうでございという話で上げた。しかも、二十日間くらいで上げましたというのじゃ、あまりにもメーカーの立場に片寄り過ぎておるじゃないですか。何のためにこの肥料法案というのはあるんですか。メーカーのことも考えなきゃならない。しかし、農家のことも考えなきゃならないでしょう、これは。あまりにも私は一方的な、十一月にちょっちょっと持ち込まれて、二十日くらいの間にきめてしまって、さて出ているいま最も不安定な生産調査について何もおやりにならないで、聞くだけでおやりになったというのじゃ、これは誤解を招くこと大きいですよ。便乗値上げと言われたらどうします、これ。私は便乗値上げだと思っている。証拠も示さなきゃいけませんけれども、感じとしては、これは便乗値上げであって、これはどうも解せないと思うのですね。
  100. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 重ねて同様の趣旨の答弁であれでございますが、いま申しましたとおり、生産費は四十七会計年度のものは把握いたしたわけでございます。したがいまして、原価構成その他はわかっているわけでございます。その後、それほど期間もたっていない。したがいまして、今度つかまえるべきことは——しかも、値上げを認める要因を三つにしぼったわけでございます。それだけでございますから、そういう方法をとったということでございまして、いわば異常に安直にやったというつもりはございませんで、根っこの生産費構成は把握している。しかも、値上げ要因はナフサ、重油、包装資材の三本である。したがって、その上昇をつかまえればよろしいということでいまのようなやり方をした次第でございます。特に安直にやって手を抜いたというようなことはなかったつもりでございます。
  101. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 結果は安直ですよ。だって、これだけ動揺するんですから。動揺するときにやはり従来のような態度で臨むべきだったと思う。それだけの力が農林省になくてどうするんですか。向こう側の言いなりじゃないか、まさに。わずか二十日くらいの間に値段がきまってしまうというのじゃ、これはできないですね。大臣、こういうことを農産物についておやりくださいよ。こんな調子のいい話はいいですよ。これは、審議会なんかにかけなくていいんだ。これ、つまらない。こういうこともやればいいんだ。この程度の調子でやったらどうですか、大臣。何ですか、審議会にかけてなんて話をしているのですか。やったらいいじゃないですか。これ、結果的には安直ですよ。これだけ動揺しているのだけれども、その中で倉庫の調査もやらないで、何もおやりにならないで、それでわずかの間に、ちょびっとの間でしょう、おそらく。なぜその間にきめなければならないのですか、これ。二十日ぐらいの間に、しかも年度途中ですよ。一方では国際価格がドーンと上がってしまって、当時もう八割も上がってしまっている。八割も上がっておるのだから余裕ができておるはずだ、ゆっくり待て、年度途中だ、例年のとおり年度当初まで持っていきましょうという態度がなけりゃだめですよ。これは、何とも農林省、弱腰であるし、業者のほうがこれはたいへんな高姿勢ですね。そういう力関係をまざまざと私は見ますね。  まあその点を申し上げて、そこで次に聞きたいんですが、さてこれからの国際価格なんですが、肥料の国際価格もそうだし、それから国内における生産費の上がりぐあいなどまああるわけですよ、これ。ナフサも上がっているし、重油も上がっているでしょう。一方においては、操業度がフルになるとか、いろんな利点もあるでしょう。そういう中で、これからの肥料生産費がどうなるというふうにお考えになっていらっしゃいますか。上がったらまたお上げになるんですか。どういうお考えですか。
  102. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 肥料生産にあたりまして、ただいま問題になっておりますナフサ、重油等の値上がりが、去年の暮れ以来かなりの高騰を示しております。たとえば、去年の十月に比べましてこの一月には、ナフサは六七%上がっている、それから重油は五四・二%上がっている。こういうふうな騰勢を示しておるわけでございますが、今後、いま問題にされている石油製品の値上げの問題が大きないわばネックとして前にはだかつておるわけでございまして、こういった石油製品がもし上がるとすれば、同じような形で値上げの要求が当然に出てまいると、こう覚悟せざるを得ないと思うわけでございますが、私ども事務当局といたしましても、その際にはより厳重な調査も行ない、そしてまた将来の価格の見通しをももちまして、ただいまの先生のお話なども十分肝に銘じてやっていきたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  103. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、まあ、年度途中に引き上げているんだから、ですから、——ことしの六月までが年度になるわけですね。その間にまた引き上げるなんということはおやりにならぬだろうと思うんだけれども。これは私は、さっき据え置いてしかるべきだと、数年にわたって据え置いてもいいと、国内のものは。それは、輸出について言いますと、小さくなっておるんですから。ですから、さっき通産省の審議官もおっしゃったけれども化学工場の八%だというんだ、肥料は。その中でまたこれ言ったら二、三%じゃないですか、肥料というのは、国内における肥料というのは。特にいま価格の取りきめの対象になっておる硫安とそれから尿素だけでいいますと、一%ぐらいなもんじゃないですか、国内のやつは。二%もなりますかね。そんなものですよ。とにかく便乗値上げもいいところで、かけ込み値上げですよ、これ。けしからぬと思うんですね。大臣どうですかね、私はそれ据え置いていくべきだと思うんですよ。据え置いていくべきだと思う、国内の農業用のものは。その点についてもう一ぺん聞いておきます。
  104. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど来お話しのお気持ちは、私どもも全くよく理解できるところでありますが、今後さらに石油価格が値上がりいたしたような場合には、肥料価格に及ぼす影響が懸念されるわけでありますが、私どもといたしましては、春耕期の需要向けの出荷の途中にあります価格改定は、末端流通を混乱させることでありますし、今肥料年度には強力な指導をいたしまして、価格の引き上げはやらないように、現行価格維持してまいることにいたしたいと、このように決意しておる次第でございます。
  105. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に価格の取りきめの対象肥料になっております硫安と尿素ですね。まあ硫安から尿素に重点が移ってきて、さらにいま高度化成肥料のほうに重点が移ってきているわけですね。それで農家が使う硫安と、それから同じく農家が使う尿素と、それから農家が使う高度化成と比較しますと、高度化成のほうが大きくなっているんです。ですから、いまアンモニア系窒素肥料の中で、尿素とそれから硫安を押えただけでは、価格の安定取りきめしただけでは、あと大きなものが残っておるわけなんですね。高度化成肥料が残っておるわけなんですね。ですから、私は高度化成肥料もこっちの取りきめの対象の中にお入れになったらどうだというふうに考えているんですけれども、まあ私は法律を単純延長するのに精一ぱいだったというような感じも受けますし、まあ無理かもしれません、いまの状態では。農林省と業界の関係といいますか、通産省と農林省の関係といいますか、無理かもしれぬというふうに思いますけれども、これは政令でできるわけですね。ですから、尿素と硫安だけでは、アンモニア系窒素肥料価格を安定させたことにはいまやならなくなっているんですね。高度化成のほうが多いです、大きいですよ。数字で申し上げますと、硫安が十六万トンですね、これは窒素で換算しまして十六万トン、尿素が十三万トン、ですから二十九万トンになるんですね、農家が使う分は。あと高度化成のほうは、これは三十二万トンなんです。だから、高度化成のほうが大きいです、足したものよりもね。だから、私は肥料価格安定等臨時措置法となっているんだけれども、なに、ちょっぴりしか握っていないですからね。ですから、高度化成のほうも対象にお入れになったらどうだというふうに思うんですよ。その点についての見解をちょっと伺っておきたい。
  106. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御審議願っておりますこの法律は、肥料価格安定をはかると同時に、輸出の調整を通じまして、内需に対する供給確保をはかる。それから内外の肥料政策を一体的に遂行するという、そういう眼目でやっておるわけでありますが、したがって、本法におきましては輸出シェアが高くて、それから内需面におきましても基幹的な性質を持っております肥料として、硫安と尿素を対象といたしておる次第でありますが、いまお話のこれ以外の肥料といたしましては燐酸肥料カリ肥料、それから化成肥料がございますが、この価格の安定をはかることも、もちろん大事な仕事でございますが、御存じのように、これにつきましては需要者団体であります全農が各メーカーと取りきめをいたします。そうして適正な価格形成を行なっておるわけでありますが、燐酸肥料とかカリ肥料は、コストの中で輸入原料が大部分でありまして、これはもう御存じのとおりでございますが、全農が原料の過半を輸入しておるわけでありまして、したがって、全農はそのコストを把握しやすいのでございますから、このような全農と各メーカーとの価格取りきめによって、適正な価格を形成することができるものであると私どもは考えておる次第であります。  それからまた化成肥料は、御指摘のように、内需に占めておるウエートがきわめて高いのでありますけれども、ア系窒素肥料燐酸肥料カリ肥料の複合体でございますので、それぞれの肥料に対する諸措置を適切に行なってまいるよう、いまのやり方でりっぱに対処できるものであると、このように考えているわけであります。
  107. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それでは次に、第二番目の内需確保、まあ需給関係について、だいぶ時間がたちましたので要点だけについてお尋ねをしたいと思うんです。  四十八肥料年度の需給見通しというのがあるわけなんですが、この需給見通しは、おそらく昨年の肥料年度の始まり、四十八年肥料年度の初めにおつくりになったんだと思うし、その後情勢もたいへん変わっているわけです。まあ大体見通せたと思うんですけれども、まあしかし、変わって灯るということになるわけですから、若干のいろいろな修正もなさっていらっしゃると思うのですけれども、いま私の手元にありますこの四十八肥料年度のアンモニア系窒素肥料の需給見通しを見ますというと、非常に内需が、これは確保ができるんだろうかという心配をせざるを得ないわけです。  それで、その内需確保の問題についてお尋ねをしたいんですが、生産量は、これはもう装置そのものが動かないわけですから、フル操業するということでわかりますが、あと国内の需要ですね、この中で工業用の肥料が非常に急速に増大してきておるわけですね。まあ一年に八——十万トンぐらいの割合で急速にふえている。まあ三、四年ぐらい前は十万トンぐらいだったわけですが、いまでは二十四万トン、四十七年度二十三万トン幾らというふうにふえておるわけですね。ですから、工業用のこの需要というものがこの需給見込みに書いてあるようなことでおさまるのかどうかという点について聞きたいんです。  それからもう一つは、この輸出見込みですね。この輸出見込みが百五十三万トンと、これは窒素換算でですね、百五十三万トンと、こう四十八肥料年度はなっています。去年よりも少ないわけですよね。去年は百六十何万トンなんですよね。四十七年度のやつは百六十七万トン。これよりも相当に下回ったものになっておりますし、それから農業の使うもの、これが去年よりも九千トンしかふえていないんですね。農家が使う分は九千トンしかふえていない。それで、四十六肥料年度から四十七肥料年度にかけまして六万トンぐらい農業がふえておるわけです。本年、この四十八肥料年度に一万トン足らず、九千トンぐらいのその需要増加見込みになっているのですね。ことし、休耕農地の半分以上のものが、半分ちょっとこえるものが稲作に転換をするとなっておりますし、麦や大豆、飼料作物を積極的に奨励なさるという考え方なんだし、そうしますと、去年の実績よりも九千トンぐらいの内需というものでいいのかどうか。私は、輸出の力というものとそれから工業用の燃料のものにはさみ打ちになって、農家が使う内需という、農家が使う分というものが非常に圧迫されているんじゃないかという感じがしてしょうがないわけなんです。そこら辺をひとつわかるように説明をしてもらいたいですね。
  108. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 硫安、尿素についての需給見通しにつきましては、毎肥料年度の始まる前に農林省、通産省でつくるわけでございまして、それ以降の生産変化、あるいは需要変化、あるいは輸出変化があった場合には、この当初作成しました需給見通しをさらに見直して修正するということもできるわけでございますが、最近の生産情勢を見ますと、去年の暮れの石油ショック、これによりまして現実に硫安、尿素ともに約一〇%の生産減があったわけでございますが、しかし政府といたしましては、内需確保、あるいは輸出につきましてはすでに諸外国と契約したものを履行する、こういう立場からしまして、ナフサとか、あるいは重油、あるいは電力、こういうものを肥料工業につきましては最優先的に配賦するという措置を一月以来購じてまいりまして、ようやく生産が元どおりに戻ってきているというわけでございます。  それから内需に対する考え方としましては、当初の需給見通しにおきましても、その後修正する需給見通しにおきましても、何よりも内需優先と。特に肥料用の内需を最優先するという考え方で運用しておりまして、この面から、もしも内需が足りないというようなことになれば輸出を切る、あるいは工業用を切ると、こういうかっこうで進んできておるわけでございます。ただいまお話のございました工業用は、特に尿素について多いわけでございますが、工業用の需要は、石油削減の影響も受けていること、あるいは一般的な総需要抑制と、こういったような政策も浸透しておりまして、いま先生が御心配になったような伸びは示しておりません。私どもの見通しでは、四十七肥料年度に比べまして、ことしはほぼ三%程度の伸びであろうと、こういうふうに見ております。  それから輸出につきましては、これは先生がいま御指摘なさったように、四十七肥年のアンモニア系窒素肥料輸出実績は百六十七万九千トン、これに対しまして現在見通している数字は百四十一万八千トンということで、対前年比九三%、七%のダウンになると、こういうふうにいわば輸出のほうにしわ寄せをしている、こういうふうな数字が歴然としておるわけでございます。  このような状態でございますので、内需確保につきましては万々御心配要らない、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
  109. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 内需の数字につきまして、若干補足さしていただくわけでございますが、御指摘のとおり、当初見込みでは四十七肥料年度に比べまして一万トン程度でございますか、ぐらいしか見込んでおりませんでしたが、その後の農業事情を考慮いたしまして、正式の改定手続は目下作業中でございますが、目下の内需の見込みといたしますと、御指摘のように稲作数量の伸びもございますし、そのほかの伸びも考慮いたしまして、対前年で六%程度の伸びを見込もうということで、いま改定作業をいたしておるわけでございます。
  110. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま通産省の審議官のほうから、輸出のダウンの問題、工業用のものが三%程度の伸びになるだろうと。いずれにしろ内需優先、特に農業肥料についてはさらにその中でも優先だと。そして足りない場合にあっては工業面を切るんだと、輸出面を切るんだというお話ですね。——いいですか。私は輸出肥料はいま国内と輸出とほぼ同じぐらいになっている。しかし、中身は輸出のほうがはるかに有利だと思うのですよ。先ほどもおっしゃったが、輸出メリットというのがありますから、国内のやつは、御承知のように、これは最寄り駅のところまで入っていますからね。ところがこっちの輸出用のやつはそうじゃないですから、輸出メリットが一〇%もあるといえば、これは輸出のほうがはるかに高くなっている。従来よりは比較にならない、輸出に対して魅力を持っているわけです。それから工業用の、これは尿素にいたしましても、これは肥料よりも高い、もちろん肥料は中間経費が非常に高いですから、輸送費それから包装費など。ところが、工業用のものはそういうものはほとんどないわけですから、ないと言っていいわけですから、はるかに工業用のほうが高いです、高く売れるわけです。そうしますと、これは工業用に対しても非常に魅力がある、輸出用に対しても非常に魅力があるというふうに見なきゃならぬわけです。そしてこの肥料については、これはもう御承知のような状況です。国際の肥料状況というのは御承知のとおり。田中さんが行っていろいろお約束なさる、あるいは大平外務大臣も一生懸命農業援助をやるんだということで、その中の一つの中心肥料というのが入っているというようなことを考えますと、これはなかなかおっしゃるように簡単ではないんじゃないかと。  そこで、いま局長の答弁になるんですけれども局長は四十八年度の四十八肥料年度−昨年の七月からことしの六月にかけての肥料年度は昨年より一万トン足らずだったと、それがまあ今回修正をして前回よりも六%ふえると、四万ちょっとですよね、窒素で換算すると五万になりますね、五万を切るというわけですね。ところが四十六年から四十七肥料年度に六万トン近くふえているでしょう。これは何も休閑がやまったわけでもなかったんです。それから、麦や大豆や飼料作物を奨励するということでもなかったんですね。ことしは要るんじゃないですか。去年六万トンふえてことし五万トン切れる数字でいいのかどうかという点はどうも納得いかない。だから私は、いま通産省の審議官は私に言わせると若干調子のいい話をなさいましたが、私は農業というのはずうっと押えられているんじゃないか、押えられているんじゃないかという心配をしているわけです、四万トンなんという数字になるとね。休閑を、今度十八万町歩の中の九万町歩は水田つくるんですよ。小麦だって、それから麦類だって大豆だって、飼料作物だってやるんですよ。四万八千トンくらいで足りますか。とんでもないと思うんですよ、ぼくは。まあ、肥料はできるだけ少なくやれということで奨励なさるのかもしれぬ、そんなのはいまのところ間尺に合わないですよ。
  111. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) ちょっと数字のことでございますから、いま精密に積み上げ作業中でございますが、御案内のように肥料は一時減ったわけでございます。四十四、四十五、四十六は減ってまいって、四十七年にそれが増加に転じたわけでございます。そこで、その傾向が続くと、しかも御指摘のとおり、私のほうも積み上げる場合に、米の面積の増加はもちろん考慮いたしました。たとえて申し上げますと、米の面積の増加は約五%程度ぐらいでございます、今回は、まあそういたしまして、肥料の全消費量の中で稲作のウエートというのは約三分の一でございます。そういたしますと、単純にその面だけから見ますと、まあそれほど大きい伸び率ではないわけでございますが、その他もございますということでいろいろ積み上げまして、いま言った約六%ふえると、まあ実量で五万トン程度という見込みを立てておりますが、まずこれで間違いなかろうと思いますけれども、いま言ったように需要に確実に即して内需確保できるように数量を積み上げるということでございます。
  112. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) ただいま工業用の肥料についてお話ございましたが、工業用の価格でございますね。これは昨年の十一月の化学工業統計によりますと、工場出し価格にしまして肥料用よりも約二千五百円ほど低いわけでございます。しかしこれは先生が御指摘のように、肥料用の場合には農協のもより駅まで運送すると、その運送費が大体トン当たり二千五百円かかります。工業用ですと、工場出し価格で、しかもこの工業用の肥料を使う工場はほぼ近くにあるわけでございますから、ほとんど運送費はかからない、こういうことで、ネットで比較しますと、大体工業用と肥料用とは同額である、同額の水準であると、こういうふうなことは申せると思います。  それからその工業用の需要が強まる、あるいは輸出需要が強まってきたら、どうしてもしわ寄せが内需にかかるのではなかろうか、こういうお話でございますが、これは肥料二法ができて以来の伝統的ないわば日本肥料政策でございまして、決して内需には迷惑かけないと。もしも内需に迷惑がかかるようなことがあれば、まず輸出用を切る、輸出用でも切り足りなければ工業用を切る。そうして肥料用の内需は必ず確保すると、こういうふうな原則をもってやってきているわけでございます。
  113. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それじゃ、そういうことですから、安心してよかろうと思うのですね。どうもそのようですよ、調子のいい話ですから。ぼくは、これは肥料法というのは、農林大臣と通産大臣の両大臣の所管なんだから、通産大臣が出てしかるべきだと言ったんですよ。それを一ぺんも顔を見せない。政務次官は見えていますよ。大臣見えている——農林大臣見えているのに、通産大臣見えぬとは何事だと、今度局長でも出てこいと言ったんですよ。そうしたら、いま衆議院で分科会をやっていると。ここで大臣と並べて——通産大臣ですね。いまの審議官のおっしゃったような話をしてもらいたいと思うのですよ。まあしかし代表しておっしゃったんだから——内需を、農業用の内需に迷惑をかけることはしない。そういうことになったときは、国際輸出を切る、あるいは工業用を切るという話ですから、それでいきましょう、けっこうですよ。  次に、時間がだいぶんたちますので、単純延長について伺いたいのですよ。この単純延長について、まず大臣ね、この肥料二法というのは一体農家が使う化学肥料の中でどの程度の比重を占めておるのか。つまり何といいますか、農家が使う化学肥科を、肥科法、いま審議している肥料価格安定のこの法律というのはどの程度価格取りきめをしているのか、おわかりになりますかな。要するにこういうことですわね。まあ肥料は三元素があって、窒素燐酸カリとある。国内で使うものは七十万トン、大体七十万トンから六十万トンですよ、化学肥料、この三つ。その中の窒素だけですから、七十万トンだけです。その七十万トンの中のこの尿素と硫安だけですからね、尿素と硫安だけですよ。ですから、農家が使っている肥料の中の六分の一くらいを価格取りきめで取りきめているのですよ。非常に小ちゃいものになっているのですね。それに何ですね、非常に大きい炭カルとか、石灰とかいう肥料を入れますと、まあ五、六%のものじゃないですか。農家が使っている化学肥料の中で、この法律価格を取りきめる率というものは五、六%のものじゃないでしょうか。非常に小さいのですよ、これ、この二法というのは。これをひとつ簡単に計算すると、農家が使う肥料の中の五、六%というものをこの肥料二法によって扱っていると、価格を取りきめているというふうに言っていいのじゃないでしょうか。  そこでもう一つ次に伺いたいのは、この肥料事情というのが非常に変わってきたときに、これを単純延長したという理由を聞きたいわけなんです。私は、肥料事情というのは、従来と違って市場を取り巻く情勢というものが非情に変わってきたときに単なる単純延長になったということ、これはメーカーのほうは前回も、昭和四十五年のときも自由化という意見が強かった。ですから、通産省の考え方としては、業界の意向に基づけば、この肥料法を残すということについては、どうしても消極的にならざるを得ないと思うんですね。農林省の態度は一体どうだったのかということをいろいろ調べてみたのですけれども、よくわからないんですけれどもね。わからないんですが、結論としては、単純延長になったわけ。で、この肥料事情というものが、これだけ変わっているときに単純延長になった理由ですね、それを聞きたいわけです。
  114. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) いまお話のございました中にもありましたけれども燐酸カリ、それから化成肥料等はほとんど国内需要と、ア系のものが多く輸出にも使われておると、こういう関係でございますので、私どもといたしましては最初申しました三つ、燐酸カリ及び化成は、もう御存じのように需要者である全農とメーカーが直接話をして、そして価格の決定をする。価格決定するということは需要供給の関係をそこでよく理解し合っているということでありますから、そこで他のものは、ことに尿素のごときはその大部分を輸出に向けておる。こういうことでございますので、いまさっきお話のございましたわが国農業を守ってまいりますために必要な肥料は、輸出用それから工業用も含めて、通産省側からもお話のございましたように、内需優先ということでございますので、そういうことを一括して考えてまいりますれば、私はこの法律によって、いろいろ肥料事情等も違っておることはそのとおりでありますけれども、現在の立場におきましては、この法律をそのまま進めてまいることは一向支障がないではないか。こういうことでございますし、また、この法律を持っておることが必要であるという見地に立ちまして、その期限を延長していただくということが、現在の状況に照らして一番妥当な措置ではないかと、このように判断しておるわけであります。
  115. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、四十五年の延長するときに、やはりメーカーのほうは自由化を主張された。今回は条件が非常に変わっておりますから、非常に条件変わっちゃって、輸出は非常に有利になっている。生産過剰じゃなくて、これは逆に需要のほうは大きくなってきているという状況ですから、これはメーカーのほうは自由化を主張するのはちょっとおかしいと思うけれども——従来の経緯から言えばおかしいと思うけれども、それは四十五年当時よりもっと強かっただろうと思うんで、推定せざるを得ないんです。業界の意向としては自由化だというのが強かっただろうと思うのです。それがいま大臣のおっしゃったように、まあ妥当であろうという——もう少し何かちょっとうまい表現をされたですかね、大臣、いま。うまい表現だったと思ったのだが、いずれにせよ単純延長になったわけです。なぜなったのだかと私いろいろ考えたら、結局こういうふうに思ったのですけれどもね、どうですか、大臣。年度途中に改定を認めたというのがやはり一番大きな譲歩じゃないでしょうか。年度途中に改定ができるという慣行ができれば、これはたいしたあれにはならないです、この二法があっても。それをお認めになったから、二十日間のうちに大あわてにあわてて一六・何%、しかも推定値を入れましてですね。お認めになったから、まあこの法案があってもそうその、という感じをメーカーとしてお持ちになったのだろうというふうに思うですね。そのことはこの法案がそれだけ大きくやはり質的に変わったというふうに見なきゃいかぬですよ、運営のやり方について。私はそう思わざるを得ないのです。思いたいわけですよね。ですから、先ほど来内需の問題について、特に価格の問題について、これからのこの法律の運営について、非常に不安を持っているわけなんです。心配要りませんか。——まあもう心配しちゃったんだから、この間上げちゃったから、ばかすか。たちまちのうちに上げちゃったですからね。かけ込み値上げというのか何というのか、とにかくやったですからね。まあいまさらということもありますが、しかし私はこの法律のこれからの運営について、たいへんな譲歩をあの際されたから、今後の運営について心配だというふうに思うのですけれども、それは要らぬというふうに大臣はお考えですか。
  116. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 鶴園さんのお話よくわかりました。そういうことについてならば、私は、先ほど来申し上げておりますように、もう方針といたしましては本事業年度中、肥料年度中は値上げはいたしませんと、こういうことを申し上げておるわけでありますし、もう釈迦に説法みたいなことでありますけれども、今回の石油事情というふうなものは、これはもう世界的に見ても珍しいケースでありまして、その原因がどこにあるにせよ、いずれの国も大きな経済的に影響を持ってきておる異常な状態でございますので、これはやはりもろもろのことを勘案いたしまして、今回はこういう事情でやむを得ない。しかしながら、私どもといたしましては、日本の大事な食糧生産のために必要欠くべからざる肥料のことでありますので、この肥料法律に定めてあります精神をどこまでも貫いて運営をやってまいるつもりでおる、こういう趣旨においては全然変わっておりません。
  117. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 最後に、その他のことで。これは農業資材は非常にまあ従来から重要性を持っておったわけですが、肥料にいたしましても、機械にしても、農薬にいたしましても、あるいはえさにしても、それから重油、さらに石油化学製品、こういう農業資材というものが農業に非常に重要な関係を持ってきたわけなんですけれども、特に昨年以来農業資材の重要性というものは格段に強まっておるというふうに思うのです。ところが、農林省の機構はどうもこれに即応していない面があるのじゃないかということを感じておるわけなんです。特に、本省の場合もそうですが、地方農政局段階になりますと、いま申し上げました格段に重要性を持ってきた農業資材についての取り扱いというのがないような状況と言ってもいいような状況になっておるように思うのです。で、昨年石油の問題が起こったときに、まあ生産者側といいますか、通産省の場合にあっては、これは地方にブロックごとに通産局があって、それぞれきちっとした資材についての関係があるのだが、消費者側というか、農林省側のほうは、それと折衝したり調整をしたりする、そういう機能というものを持ち得ないという状況であって、そこで県なりたいへん不便を感じたし、そしていまでもたいへん不満が残っておる、いまでも不満があるんです。ですから、私は、本省の場合もそうでありますが、地方農政局の場合にも、非常にいま重要性を持ってきているこういう農業資材等についての機関というものを、きちっと充実をする必要があるというふうに思っているんですけれども、すみやかにこの点についての御検討を大臣のほうでやっていただきたいと思っておりますけれども、大臣の見解を聞きたいと思います。
  118. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 現在地方農政局では、この肥料関係は、生産流通部、農産普及課がございまして、流通飼料関係は同部の畜産課がそれぞれ所掌いたしております。そこで、現段階におきましては、この資材関係課を独立させるよりも、農産物なり畜産物の生産対策の一環として、これらの有機的な関連のもとに地域の実情に応じて行政を行なうことのほうがいいんではないかということで、そういうような仕組みで現在運営をいたしておる次第であります。
  119. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、それは承知をしているんです。農政局に行ってごらんになるとわかりますよ、兼務、兼務ですよ。まさに火事場みたいな形だったですね。兼務、兼務でたいへんです。資材の重要性というのは従来からもいわれておりましたけれども、格段に強まっている。今後もこれはえらいですよ、この資材というのは。だから、少なくともブロック段階で通産省とタイアップをして調整をする機能というのを持たなきゃだめですよ、農林省が。生産者側の通産省の側はできるけれども、受け入れ側の農林省というのは、消費者側の農林省というやつは、その機構が兼務兼務で、火事場みたいになっちゃって、これ全部とれないですよ。非常に不便になっています。兼務に非常な不満が、ある。そこら辺をおわかりになっていないのかな。だからすみやかに——それはまずかったんですよ、まずいんです。これからこれは恒常的な問題です。肥料の問題について、これから最も大きな問題として、機構、人という大きな問題が出てきますよ。そういう問題は本省の段階で、これはもうブロックの段階になっているわけです。これからえさの問題やったらたいへんですよ。何の問題だって、資材関係というのは非常に重要性を増しているんですから。そういう意味で、私はいままでのやり方ではまずいと思う。おとりになったことは知っている。だけども、これは検討なさる必要があるんじゃないかと、こう思っているんですから、そういうふうにお尋ねをしている。いままでのことは知っているんです。検討なさらないかと、こう言っているわけです。
  120. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 政府の、こういう今度の石油関係並びにそれに付随いたしました仕事が非常にふえておりますようなことにつきまして、各省とも末端においてもたいへんな努力をしておることを、私どもよく承知いたしておるわけでありますが、たとえば石油のことなどでも、最近はなれてきまして安定いたしておりますが、いろいろなところから苦情がくる。それに応じて対処をしていくというふうなことで、たとえば通産農林両省で相談所を設けるとか、あっせん所を設けるとかといったような、いろんなことをやっていただくわけでありますが、そういうことに対応いたしまして、機材の関係につきましても、おそらく事務はたいへんふくそうしているだろうと思っております。そういうことには本省におきましても十分注意をいたしておるわけでありますが、仕事が円滑にまいりますようにさらに最善の努力をしてまいるようにいたしたいと思います。
  121. 塚田大願

    ○塚田大願君 今回の肥料の値上がりの問題につきましては、いままでだいぶ論議が尽くされまして、やはり今度のこの肥料の一連の値上げが日本農業にどういう大きな重大な影響を持つかということは、もう明らかになったと思うのでございます。  そこで、私はまず問題をしぼりまして、硫安のことについて質問したいと思うわけでありますが、このたびこの硫安は尿素と同じように一六・三%の値上げが行なわれましたが、この硫安の値上げというのは、この肥科法第二条第二項の第一、「農業又は肥料工業の健全な発展に支障を与えるものでないこと。」という、この条項に抵触しないのかどうかという問題であります。つまり、この条項に抵触するならば、大臣はその締結を禁止しなければならないということになっておるわけであります、この第二条は。この禁止される場合の条件がここに五つ出ておるわけでありますが、その第一のこの問題に触れないのかどうか、このことをまずお聞きしたいと思うわけであります。農林省、通産省、この点ではどういうふうに解釈をしていらっしゃるか。
  122. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 触れないと考えております。
  123. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 通産省のほうといたしましても、この値上げにつきましては妥当なものだ、したがって法律の条項には触れないと、こういうふうに考えております。
  124. 塚田大願

    ○塚田大願君 抵触しない、妥当であるというお答えでありますが、しからば、その根拠は一体何ですか。何がゆえに妥当であり、何がゆえにこの条項に触れないのか。法律にはちゃんとここに書いてある。そのためにこういう法律がある。ところが、今回はこういう異常な異例な値上げをしたということは大臣も認めておられるわけでありますけれども、こういう異例なことがこの条項に抵触しないというその根拠は何でありますか。
  125. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 御質問のように、年度途中の改定というのは今回初めてでございました。その意味では異例でございます。異例でございますが、先ほど来るる論議もございましたが、今回の価格の改定は原材料価格の上昇によるやむを得ないものであるということで、もちろん値上げしなければ最もよろしいわけでございますが、そういった事情でやむを得ないということで判断をいたしたわけでございます。
  126. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 今回の値上げは、先ほど来論議がありましたように、ナフサ、あるいは重油、包装材の異常な値上がりに対応するものでございまして、肥料工業といたしても、こういった大きな要素の値上がりに対しまして順応していかねば従来のような生産ができない、こういうふうになっておるものでございますから、この値上げにつきましては、通産省といたしましても、肥料工業の健全な発展に支障を与えるものとは考えておりません。
  127. 塚田大願

    ○塚田大願君 では具体的にお伺いします。いまのお答えですとやむを得なかったのだ、やむを得ないのだ、こういうふうな説明でありますが、では、この法律の施行令第四条、農林大臣及び通産大臣は、次の表の上欄に掲げる者に対し、それぞれ同表の下欄に掲げる事項について報告を求めることができるということがございます。が、これはこれに基づいて今回の値上げに際しましては報告を求められたのかどうか、このことをお伺いします。これはやはり農林、通産ともにお伺いしたいと思うんです。
  128. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 従来は生産調査をいたしまして、したがって報告を求めているわけでございます。ただ先ほども御論議ございましたが、今回の場合にはすでに直近の四十七会計年度のこの四条によります生産費を把握いたしております。そういたしまして、値上がり要因が非常に限定されておりますから、従来と同じようなかっこうの生産費の報告を求めるんではなくて、値上がり要因についていわば説明を求めまして判断をしたと、こういう次第でございまして、一つには直近の四十七会計年度の生産費をこれによって把握をいたしている、もう一つ、値上げ要因が非常に限定されているので、その動向についての資料をとればよろしいということでそういうやり方をいたしたわけでございます。
  129. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 硫安の価格につきましては、尿素に準じたような一六・三%という値上げ幅の届け出がありまして、これを妥当ということで認めたわけでございますが、従来ア系窒素肥料の中では、尿素が窒素換算でしますと六〇%という大宗を占めるわけでございまして、この尿素と硫安との間には従来同じアンモニア系窒素肥料ということで価格上の一定関係があったわけでございますが、今回の値上げにつきましては、年度途中のことでもある、それから硫安と尿素との間の価格変更を、バランスを変えるということは、むしろ生産者、消費者に混乱を生ずると、こういうことから判断しまして、全農とメーカーの届け出をやむを得ないものとして認めたわけでございますが、この一六・三%の値上げにつきまして農林、通産の間で検証したわけでありますが、硫安の場合も、尿素と同じようにアンモニアあるいは硫酸、重油、包装資材、こういうようなものについてのみ値上げを認めた場合には一八%程度になる、こういう試算があるわけでございまして、この一八%内におさまるものだというような判断から、一六・三が至当であるというふうにしたわけでございます。
  130. 塚田大願

    ○塚田大願君 農林省は四十七年度の分でちゃんと調査もしてあるといっております。が、しかし、これは私が質問をしておるのは、第四条、つまり生産費について報告を求めなければならないというこの生産費について調査をされたのかどうかという問題、それから通産省の場合には尿素がこのぐらいで、一六・三%ぐらいで妥当だというふうに考えたので、同じ窒素系の肥料だから硫安もそのぐらいでいいだろうというふうなことできめたというお話でございますけれども、一体私が聞いておるのは、農林省の場合には、生産費がどうだったのかということがここにちゃんと法規に書いてあるのでありますから、それを今回の場合にも調べたのかどうかということを聞いておるんです。  それから通産省の場合には、尿素と硫安を混同しないで話をしていただきたい。私は硫安のことについてお話を聞いているんであって、硫安の生産費がどうだったのか、その報告をちゃんと求めたのかどうか、このことをお伺いしているわけでありますから、もう一回ひとつ答えてください。
  131. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 説明が舌足らずで恐縮でございましたが、もう一度整理して申し上げますと、私が申し上げましたことは、四十七会計年についてはこの調査をいたしておるとまず申し上げたわけでございます。  次に、御指摘の、しからば今回の価格の改定に際して、これと同じ生産調査報告を求めたか、これは先ほど申し上げましたが、求めておりませんと申し上げたわけでございます。それはなぜかと申しますと、価格改定をする場合に当然にいわばその期間に、どの生産費を出すかというのは、これはいわば判断の問題であるわけでございます。したがって、ある時点に価格改定をすれば、その時点からいわば一年間生産調査を必ずしなければならない、ということでは必ずしもないわけでございまして、したがいまして、直近の四十七会計年度のものがベースにあれば、それをもって足りるという判断をいたしましたものでございますから、今回の価格改定について、あらためてこのかっこうの生産調査をいたしたのではないということを申し上げた次第でございます。
  132. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 生産費の調査につきましては、ただいま農林省のほうからの答弁のように私ども考えておるわけでございまして、この施行令の第四条では「報告を求めることができる。」ということでございまして、条文解釈としましては、必ず報告を求めねばならぬ、こういうものではございません。必要ある場合には報告を求めることができる、こういうふうに私どもは解釈しておるわけでございます。
  133. 塚田大願

    ○塚田大願君 そうすると、「求めることができる。」ということだから、求めなかったということですね、単純にいえば。やらなかったということですね。そういうことになりますな。
  134. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 生産調査というものはこれまで年に一回やる。しかも先ほど農林省のほうから説明がございましたように、毎会計年度ごとに四月から三月までの一カ年分について調査を行なう、こういうふうな規則になっておるわけでございます。したがいまして、この年度途上におけるものにつきましては、一年間を満たすものではない、途中のもので非常な撹乱要因があるというふうなことで、生産調査というもの、あるいは報告を求めるということは、個々の要因についてまで全部にわたって調べるということはしなかったわけでございますが、その大きな理由の一つとしましては、今度値上げを認めるにあたりまして要素として考えたものは、先ほど来何回も出ておりますように、ナフサ、重油、包装資材、この三つである。こういう三つにつきまして生産者のほうから個々に報告を求め、また、われわれのほうでも聞き取りもし、あるいはまた、日銀卸売り物価指数とか、その他いろいろな経済指標等も参考にしまして、この程度の値上げ幅について検討を加えていったわけでございます。
  135. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃ通産省に聞きますけれども、いまの調査をされたと、農林省も四十七年度まではちゃんとやっておるんだと、こういうお話ですけれども、それはいわゆる実績原価調査ですか。
  136. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 毎会計年度ごとにやっているのは実績原価調査でございます。
  137. 塚田大願

    ○塚田大願君 私がお聞きしたいのは、生産コストのことを言っているんでありまして、実績原価調査だったらこれは企業側の大体思惑どおりの結果が出るのは、これは当然でありまして、問題はこの一六・三%という値上げを認めるその根拠になった資料がほんとうにあるのか、ないのかということを私ははっきりさせたいと思っているわけであります。で、そうしますといまのお話では、要するに、実績原価調査というものしかない。こういう結論に達するわけでありますが、大臣、こういうことで、いまこれだけの大問題でありまする、この肥料の値上げというものが、認められていいのでしょうかどうでしょうか。これが、今度の肥料法の精神に全く抵触しないというふうに解釈なさるのでしょうか。その点を大臣にも直接お聞きしたいと思うのです。
  138. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 主要な肥料でございます硫安、尿素等につきましては、従来から肥料価格安定等臨時措置法の適切な運用によりまして、その価格の低位安定ということをはかってまいった次第でありますが、先ほど来お話し合いがございましたように、昨年末の価格取りきめ交渉にあたりまして事前にナフサ、重油等の原料、包装資材以外の値上がり要因は認めないという方針で関係業界を強力に指導してその値上がりを抑制することにつとめてまいったわけでありますが、その結果、今般の一六・三%というのはやむを得ないものであるということで承認をいたしておる、こういうことでございます。
  139. 塚田大願

    ○塚田大願君 先ほどからも論議になりましたけれども生産コストがわからないで、この値上げをする、しかも異例な値上げが行なわれる。いままで下がっていた肥料が、今度初めて値上がりをする、十数年の間初めて値上げをする、こういう問題であるだけに、私はこの一六・三%の根拠というものをほんとうに明確にしなければ、これは農民も国民も納得できぬのではないかと思うのです。物価狂乱といわれているこの時勢に、肥料までがこういうべらぼうな値上がりをする、しかもその根拠が非常に不明確である、これはやっぱり問題だと思うわけであります。  御承知のように、この法律が制定されました三十九年の段階におきましては、合成硫安というものが六〇%で、いわゆるこの回生であるとか、副生であるとかというものは非常に少なかった。ところが今日では回生と副生硫安がほとんど圧倒的だ。九八・七%までが回生と副生のものだ。したがって、回収であるとか副生だというものは、要するにおまけについてくるものであって、いわばただみたいなものです。それに値段がついて、しかも今度一六・三%上がる、これはどう考えても理屈に合わないわけであります。回収の場合には合成繊維のカプロラクタムの製造の過程でできるものでありますし、副生の場合はコークス炉から副生する。いわばほんとうに副産物あるいは廃品同様のものでありまして、これがこういうふうに値上がりするというのは、これはやっぱり問題だということは、子供でも私はわかる論議ではないかと思うんです。  そこでお尋ねをするのですけれども、どうもその根拠がはっきりしない。生産原価をほんとうにチェックしていない。いわば、実績価格調査しかしてないということなのですが、私はどうしてもこれは論理的にも合いませんけれども法律的にもどうしてもこれは納得できないわけです。この施行令第四条には「生産費」ということをはっきり書いてある。そして、これを「報告を求めることができる。」ということになっていますけれども、「求めることができる。」ということを書いてあるのは、求めなければならないというふうに書いてない、確かに。書いてないけれども「求めることができる。」と書いてあるのは、やはりこの問題が非常に重要だから、私はこの施行令でわざわざこういうふうに明記したんじゃないかと考えるわけです。  そこで、どうもこの点につきましては、農林省、通産省とも、たいへんその辺の解釈をあいまいにされておるわけでありますが、これは法制局に、法制局はどういう解釈をなさっておられるのか、ひとつその知恵をおかし願いたいと思うわけであります。
  140. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。  ただいま御質問ございましたのは、もっぱら法律の施行令、政令についての御質問であったわけでございますけれども、政令で書いてございますのは、法律十六条一項の規定により報告を求めることができるのはこういうことであるということを、いわば政令で限定しているわけでございます。  法律の十六条に一応戻りまして御説明申し上げますと、法律の第十六条第一項では、「農林大臣又は通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、」と書いてありまして、これはもともと報告、調査、立ち入り検査が、犯罪捜査のためのものと解してはならないということが十六条四項に書いてございますように、行政立ち入り、行政上の必要に基づく報告、検査であるというのが一般的な考えでございます。ということになりますと、この法律で必要だと思われる限度というのは、この法律の前のほうの規定、いま塚田委員からもお話がございましたように、主として二条第二項で届け出られた価格取りきめにつきまして、それが妥当であるかどうかを二条二項各号に照らして判断する場合の、いわば行政当局側の心証を得るためというふうに考えるのが妥当だろうと考えます。そういたしますと、施行令の四条の一項に書いてございます特定肥料生産費販声価格、いま一応コストということで、御質問ございませんが、コストと考えられますものをとるかとらないかは二条二項の各号に適合するかどうか、いま問題になっている点でいえば、二条二項の一号の農業または肥料工業の健全な発達に支障を与えるがどうかという点の判断が、とりました資料でできるかできないかということでございますと考えられますので、もしも、先ほど農林省の担当局長あるいは通産省の担当審議官から御説明ございましたように、必ずしも罰則担保である強制というようなことを加えませんでも、いままであります資料にその後のいわば追加資料を加えまして判断が可能だということであれば、施行令四条一項の生産費の報告について強制的な方法をとる必要性は必ずしもないということが言えるかと思います。  なお、塚田委員の御質問の中に、そういうことでは、たとえば実績原価が四十七年度についてとってあったのでは信憑性が確かでないだろうというような御質問の趣旨かと思いますが、その点につきましてはまだ答弁はそこまでいっておりませんでしたが、私が補足して申し上げますと、施行令の四条の二項で、「特定肥料生産費について、前項の規定により報告を求めた場合」、先ほどの生産費を、実績原価をとりました場合に、その実績原価というのが必ずしもその信憑性がないと考えられるような場合には、工場、事業場に立ち入りまして、帳簿書類等検査をするということで、十分信憑性のある数字まで、いわば確定しまして、先ほどの二条二項の判断をするというような手続を両省ともとっておられるのだろうと考えます。われわれが法律案を審査しました際、あるいは政令案を審査します際にも、そういうふうに考えて審査をしたわけでございます。
  141. 塚田大願

    ○塚田大願君 そのいまのお話で大体わかりましたが、その実績原価とここに書いてあります生産費、これはやはりはっきり違うと思うわけで、この点両省がどこまでそこを詰められてきたのか、その辺をもっと明らかにしていただきませんと、われわれにはどうも何のためにこの法律があるのかということが明確でないので、それでいま法制局の解釈もお聞きしたわけでありますけれども、一言で言いますとやはりこの点では実績原価と生産費とは異なるものだと、いまの両省の答弁ではそこが明確でないと、こういうことになるわけですか。
  142. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。  私の立場から申し上げますと、実績原価が実態に合っているかどうかという点の判断は当局の立場として申し上げかねますが、そういうことがあった場合には、十分、施行令四条二項の立ち入り検査あるいは帳簿書類等の検査で正しいものに修正することは可能だろうということ一を申し上げておきます。
  143. 塚田大願

    ○塚田大願君 ですから、いまのそういう御解釈によりますと、私どもはどうも一六・三%というのがまあ尿素に準じてやったという、いわばどんぶり勘定でありまして、ちっとも科学的な根拠がない。ただみたいなものをこれだけ値上げをするという根拠が一つも明確にされておりませんから私は、この生産費という問題を取り上げたわけでありますけれども、いまの御解釈では、両省としては、さらに立ち入り検査などをして、もっとその生産費を明らかに詰めていくという努力をなさるんですか、なさらないんですか、そこを両省に聞きたいと思うんです。
  144. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 実績原価調査は、先ほど申し上げましたように、毎会計年度のものについて一年を通してやっておるわけでございますが、それはメーカーのほうから報告の来るものをそのまま認めるということではなしに、農林、通産の係官が工場へ出向きまして、その正否を確めた上でそれを実績原価とする、こういうふうなやり方をやっておるわけでございます。
  145. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) もしや先生のおっしゃいます実績原価と生産関係を私が誤解したら申しわけないんでございますが、私はこう理解しているのでございます。生産費をこれは調査するわけでございます。その場合、したがいまして、いわば業者が自分の都合のいいように持ってくるということでは、これは困るわけでございますから、そこで、この調査のために、農林省、通産省共同でもって「硫安、尿素原価報告書作成規程」というのをつくっておりまして、その中でこういうものをこうやって報告せいというふうに方法をきめているわけでございます。その中で、たとえば、原料費はこうだと、人件費はこうだと、これはこうだというふうにきめまして、それに従って報告を求めるというのが第一でございます。  それから第二は、それは、やり方があるわけでございますが、もしや、万一その上がってくる報告が実際と食違うという場合には、もとの帳簿からチェックすればそれはわかるわけでございます。そういうことをしているということ、その二つのことを申し上げたわけでございます。  それから、もちろんその場合、先ほどちょっと先生がおっしゃいましたが、原価の把握につきまして特に費用配賦がなかなかむずかしい問題がございます、費用のアロケーションの問題。たとえば先ほどの例がございます。それ以外に、たとえば本社経費をどう割り振るかなんという原価計算上むずかし、問題がございます。したがいまして、そういうものは、統一できるものは統一する、統一できないものはそれぞれの事情によるということで、全体を通じまして、この「原価報告書作成規程」というのを両省できめまして、それに基づいて生産調査をいたしている次第でございます。
  146. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 私が先ほど申し上げましたことを少しく補足さしていただきたいと思いますが、立ち入り調査ができますのは、メーカーから生産費の報告、いわゆる実績原価ですけれども、この報告を取った後において必要のある場合には立ち入り調査するというふうに先生御指摘の第四条の第二項に明定されておるわけでございます。  それから、もう一つ、先生が硫安の生産形態がかつては合成が本体であった、最近では副生なり、あるいは回収であるというふうなお話があったわけでございますが、まさにそのとおりでございまして、四十七年度の実績を見ますと、回収硫安の割合が七七%、それから副生が二二%、合成がわずかに一%であるわけでございます。が、特に回収硫安の生産の場合、ただ出てくるものをそのまま使っているというふうな、いわば出てくるもの、いわば回収される硫安母液なり、あるいは回収硫酸なり、あるいは回収アンモニアにつきまして、ただで評価すべきであると、こういうふうな御意見のようでございますが、私どもは、いわゆるこういう回収硫安というものはいわば連産品である。したがって、たとえばカプロラクタムをつくる場合に、主製品は確かにカプロラクタムである、しかし、それと同時に回収硫安が出てくる。しかもカプロラクタムの場合には、主製品の一に対しまして硫安のほうは二ないし三、あるいは場合によっては四−四倍の硫安が生産されると、こういうようなことでございまして、非常に微妙な問題でございますが、コストをどういうふうに割り掛けていくか。主製品にも、それから併産品のほうにも割り掛けるのが普通であろうというふうに私どもは考えておるわけです。また、かりに出てきた回収の硫酸なり、あるいは回収のアンモニア等にしましても、その使用価値に着目すれば当然価値があるわけでございまして、それを無価値というふうに私どもは評価することはできない。なかなかむずかしい理論があろうかと思いますが、私どもは、こういう問題につきましては併産品理論というもので正当に評価すべきであると、こういうふうに考えております。
  147. 塚田大願

    ○塚田大願君 私も、その回収や副生の場合でも全くただだとは私は申し上げてない。ただのようなものだということを申し上げておる。実際に副生とか回収というのは、いまおっしゃったように、パーセントからいって、もう九八・七%という大きな比率を占めておるわけであります。こういう硫安が肥料として使われる場合に、しかも日本農業をこれから大きく転換しなければいけない、発展させなければならないという段階での肥料価格をこのようにむぞうさにきめられるということについて私どもは反論を申し上げておるわけであります。全く、先ほども話が出ましたけれども、あっという間に一六・三%がきまる、こういうことであります。そこで、私は、それならば根拠をはっきり示さなければ農民も国民も納得しないではないかということで御質問申し上げておるわけであります。  そこで、いまいろいろ説明がございましたが、要するに突き詰めて言えば、回収硫安のコストというものは実際には非常にむずかしい問題で、理論的には出せるかもしれないけれども、実際には出しにくいものなんたと、——これは三十九年の国会の場合でもこの問題がやはり論議をされて、通産省は専門家にも依頼したけれども実際にむずかしくてできないということでございますという答弁がここにあるわけです。倉八通産省軽工業局長の答弁としてここに記録が残っております。実際に専門家に頼んでもむずかしいんだと、そういうものをあえてあなた方が一六・三%という形でおきめになったところに大きな矛盾があり誤りがあると私どもは考えておるわけであります。もし、ほんとうに上げるんならば、その根拠を明確にすべきであるし、その根拠がどうしても明確にできなければその値上げを認めるべきではないんではないかというのが私どもの考え方なんですが、この点、通産省、ほんとうに出せるものならば、ひとつ出していただきたい、原価計算を。それとも、できなければできないというふうに、はっきり私はけじめをつけていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
  148. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 回収硫安の生産にあたりまして、出てくるところの、いわば回収されるものですね、これにはいろいろのものがあるわけでございますが、まあ一つはカプロラクタムの場合のように、薄い硫安が回収されてくる場合があります。硫安ですから、硫酸とアンモニアが一緒に入っておるわけでございますが、こういう薄い硫安が回収された場合には、アンモニア度が薄いということで、新たに新しいアンモニアを加えて、そして硫安をつくっていく、こういう場合があります。それから今度は酸化チタンのように、硫安を回収する場合に一度使ったところの硫酸が回収されてくる。これは硫酸だけが回収されてきますから、アンモニアが足りないということで、新しいアンモニアを加えていくと、こういう場合があります。それから、副生になりますと、コークス炉ガスから、これはアンモニアが回収されてくる、そこで新しい硫酸を外から加えてやってくるというわけでございますが、いずれの場合にしましても、そこへ出てくるところの回収硫安、これは非常に薄いやつです。私どもは、これを母液と称しております。  そういう硫安母液、それから回収アンモニア、回収硫酸、この三つがおもなものと、こう思うわけでございますが、それぞれの評価はそれぞれの生産工程によっていろいろと違うわけであります。たとえば、カプロラクタムというものは、回収硫安の中でも一番大きい量をあげているわけでございますが、硫安全体で二百万トンほどありますが、その半分の百五万トンがこのカプロラクタムから回収されるわけでございますが、この薄い硫安ですね、これはかなり高度に評価せねばならぬだろうと、こういうふうに思います。それから、先ほど例をあげました酸化チタンの場合などは、一度使った硫酸が出てくると、こういうことで、これは先ほどの硫安母液に比べますと、やや低く認めねばならぬだろうと、それから、副生の場合の回収アンモニアも同じように、母液に比べますとやや低く評価せねばならぬだろうということでございまして、この評価について、母液の場合はこうだと、それから回収硫酸の場合はこうだ、回収アンモニアの場合はこうだと、こういう一定のプリンシプルがないわけでございます。これは、各社がそれぞれ自分のところで評価して持ってくるわけでございまして、私どもといたしましては、この評価について確定したものをつくり上げたいということで、ずっと検討を進めているわけでございます。
  149. 塚田大願

    ○塚田大願君 いま説明されたように、たいへんむずかしいんだと、実際。ですから、理論上いろいろ問題があっても、実際にはこれは出ないものなんだというふうに考えてよろしゅうございますか。
  150. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 出ないというふうにきめつけるわけにはまいりませんので、最大限実際の評価ができるように、各社とも努力しておるわけでございます。私どもも、またそのコンセンサスを得るような努力をやっておるわけでございます。
  151. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃ、これは原価計算を、困難があってもできるということならば、これはけっこうなことなんで、ぜひひとつ出していただきたい。  この間、衆議院の予算委員会で津川委員がこの問題を質問いたしましたときも、中曽根通産大臣は、「原価計算というものをもう一度やれという御指定でありますならば、やること、やぶさかではございません。」とこうも言っておられるし、「判断の基準になりました資料を提出いたします。」ととも言っておられる。ぜひこれは早急にひとつ原価計算を出していただく。でなければ、私どもは一六・三%というものをどうしても認めるわけにはいかない、これはまあ当然のことでありましょう。われわれ国会として責任がございますから、この点はやはりはっきりさしておきたいと思うわけであります。どうもこの原価計算の問題については、もっといろいろ聞きたいんですけれども、時間の関係がありますから、次に移ります。  今度は農林省にちょっとお尋ねします。  農林省の予算書を見ますと、「農業資材の生産及び流通の合理化」という項目でありますが、これを見ますと、1の「肥料及び農薬対策」ですね、四十八年度では六億円、来年度四十九年度では六億六千万円計上してございます。この項をよく見ますと、この六億六千万円の予算の中身としてこういうことが書いてあるんですね。「更に肥料の需給及び価格の安定に資するため、硫安及び尿素の生産調査肥料の需給調整、肥料対策調査等を行う。」と書いてありますが、この「硫安及び尿素の生産調査」とあるのは、これはどういうことを意味しているんですか。
  152. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) これは先ほど来申し上げたわけでございますが、先生御指摘の法文によりまして、この生産費を調査をいたしたわけでございまして、その場合、これは農林省と通商産業省、両省が協同して調査いたしているわけでございますが、その場合のこれは事務的費用を計上いたしているわけでございます。
  153. 塚田大願

    ○塚田大願君 両省の事務的な調査費用ということでありますが、ここにははっきり「生産調査」と書いてあるわけなんです。実績調査とは書いてありません。やっぱりこの実績原価調査ではなくて、生産調査をするということが書いてあるにもかかわらず、そして毎年予算が組まれているにもかかわらず、いまだにその生産費はわからない、実績原価しかわからないということでは、私はたいへんこれは税金をむだ使いするようなことではないかと思うのですが、この点ではどうでしょう。
  154. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 先ほどちょっと触れた問題でございますが、実績原価と生産費との関連、これにつきまして、私先ほど申し上げたのは、目的は生産調査であると、その場合に、それがいわば企業の恣意的なる個別の実績原価ということでは困りますから、両省が協同しまして統一的な原価計算の規程を作成して、それに従ってやらしていると、したがいまして、それに従って出てきたものは生産調査であるというふうに理解いたしているわけでございます。その場合、もう一つ申し上げたいのは、先ほど先生と通産省とのあれにございましたとおり、しからば、生産調査をする場合に、特に共通費用の割り振りの問題、非常にむずかしい問題がある、これについて統一的な基準がぴたりきまっているか、ぴたりきまらないで、いわば暫定と申しては語弊がございますが、いろいろの方法をとっている場合もあると、それが不十分じゃないかという御指摘は、今後さらに検討しなければならぬわけでございますが、私たちがいたしていることは生産調査であり、その手段方法として、いま申しましたとおり統一的なコストの把握の規程をきめて、それに従ってやらしており、さらに生産調査のいわば共通ルールの問題について、確立と検討を進めていると、こういう趣旨であるわけでございます。
  155. 塚田大願

    ○塚田大願君 どうも私は、いまの実績原価という形でこの法できめられておるこの生産費の調査というものをあいまいにしようというような感じを受けるわけでありますが、あくまでもやはり単なる実績調査ではなくて、生産調査に基づいてこそ初めて科学的なこの価格の決定ということができるのでありまして、そういう意味では、私は、こういうやり方は、この法の第二条第二項にやっぱり抵触するのではないかという感じがするのです。こういうずさんなやり方、こういう無責任なやり方は、やはり決して国民のためにも農業のためにもならない、こういうふうに考えるわけなんで、私はこの値上げはやはり撤回すべきだと考えます。  というのは、もう一つ根拠があります。これは昭和三十九年、やはり本法が制定されるときの衆議院の委員会での論議でありますが、赤城さんが当時農林大臣でありました。このときに、ずいぶんやはり論議が行なわれましたが、赤城農林大臣は当時こういうふうに言いました。「政府は生産業者に対していろいろな調査権を持っておりますから、資料は十分備えておるわけであります。」「政府といたしましては、調査権に基づいてその資料を持っておりますから、そういう資料に基づきまして、先ほど申し上げましたように、価格の決定が妥当を欠くという場合には、是正あるいはその他の改善をしていくということによって、価格の上昇を押える、こういう態度で進みたいと思っております。」同じく、バルクラインというものにつきましても、「バルクラインというものも、一つの大きなものさしとして、上げないということはその結果でございます。」と言って、このバルクラインの問題も当時上げないということの一つの根拠として農林大臣が答弁をされておるわけでありますけれども、この点はそうしますと、法律制定のときの大臣の御答弁と今度の値上げの倉石農林大臣の御答弁というのは、たいへん食い違ってくると思うのですけれども、これについては大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  156. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) この法律に基づく硫安、尿素等の肥料価格の取りきめは、販売業者であると同時に、需要者の代表であります全農——全国農業協同組合連合会と生産業者との間の価格交渉によって行なわれておるわけでありまして、需要者である全農は、同時に販売業者でございます。こういう関係とメーカーとの間の話で行なわれておるわけでありますが、政府といたしましても、事前の届け出によりましてその内容を十分に審査して、問題があれば必要な指導を推進してまいるということは当然のことでありまして、そういうことを赤城大臣は言っておられたものだろうと思いますが、また、価格の取りきめにあたりまして、通産農林両大臣は必要な資料の交付などを行なうことになっておりまして、適正な価格決定が行なわれるように、いま申し上げましたメーカーと全農との間の取りきめについて積極的な指導を行なってまいっておる、こういうふうに理解いたしておるわけであります。
  157. 塚田大願

    ○塚田大願君 どうもその辺はあまりはっきり説明がないわけでありますけれども、まあ、この問題を取り上げておりましても、時間がたいへんむだになりますから、次に移りますが、公取委は来ていらっしゃいますか。——公取委にちょっとお伺いしたいんですけれども、どうもいま言ったように、こういう形で値上げが決定をされたということですけれども、これは公取委として、法第十四条で独禁法の適用を除外しているわけでありますから、この精神から見まして、はたしてこういう値上げが妥当なのかどうか、どういうふうにお考えになって、おるのかひとつ御見解を承りたいと思うわけです。
  158. 熊田淳一郎

    政府委員熊田淳一郎君) 今回の値上げにつきましては、通産、農林両省でいろいろ御検討になりまして、その結果、ナフサ、重油、包装資材の上昇率の範囲内であるというところから妥当であるというふうに通産農林両省で考えられたわけでございまして、公正取引委員会といたしましても、その御見解に同意をいたしたわけでございます。
  159. 塚田大願

    ○塚田大願君 そうしますと、この法第十四条第一項ですね、この趣旨に反しないと解釈されるわけでありますか。
  160. 熊田淳一郎

    政府委員熊田淳一郎君) そのとおりでございます。
  161. 塚田大願

    ○塚田大願君 はい、わかりました。  まあ、この問題は、なお私どもも納得しておりません。これは私のみならず、根拠が明らかにされないで値上げをされた、それが妥当であるということは、これは何としても政治的なものであって、何ら科学的な根拠がない。いわゆる石油製品の物隠し、便乗値上げ、これと同じ性質のものでありまして、いわば悪徳商法の一つのやはり型ではないか、そういう意味ではやはりこの問題は私どもこれからもどうしてもこれはもっと追及していきたいというふうに考えます。  そこで次の問題に移りますが、ここに新潟県経済連から出された通達文書が一つございます。これは農業協同組合長あてに出された通達でありまして、日付は四十九年二月五日という日付になっております。こういう通達であります。これは「肥料価格改訂」という題目のついた通達でございます。この通達をいま全部ここで読み上げるわけにはいきませんけれども、まず、この経過が——この価格を改定しなければならないということが書いてございまして、それからその価格改定の内容、それから経過というふうな形で出されておる文書であります。別にこれはマル秘文書でもないと思うのであります、組合長あての文書でありますから。これにメーカー側の主張というのが一つの価格を改定する根拠として示されておるのですけれども、これを見ますと、メーカー側の主張としては、一、「原材料の価格の値上り率がけたはずれで、それに見合う製品価格の値上げが認められなければ、肥料部門の大巾縮小または操業停止まで考えざるを得ない。」二、「石油問題の進展による操業面への影響は、電力・重油の割当削減とあいまって全く予側がたたず企業採算上、高収益部門に傾斜した生産活動をおこなわざるを得ない。」まあ、こういうふうに言っているのですね。要するに、原材料は上がったから操業も停止せざるを得ないようなところに来たと、そしてまた、企業採算上高収益の部門に傾斜した生産活動にならざるを得ない、こういう状態だからこの肥料価格を改定してください。こういう趣旨なんですけれども、こういう企業の、メーカー側の主張というものは、これはどういうふうに通産省はお考えになるかですね、妥当であるというふうにお考えなのかどうか、ひとつ聞かしていただきたいと思うんです。
  162. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) メーカー側が全農に対しまして価格交渉におきましてどういうことを具体的に話したかということは私ども知る由もありませんが、当初メーカー側は全農に対しまして約三五%の値上げというものを要請したというふうに承っております。その三五%というのは、ナフサ、重油、包装資材、こういうものが一月以降上がるであろうと、こういうものを見込んでの要求内容のように聞いておるわけでございます。そういう十一月段階での話で、石油問題がいよいよシビアになってくるということで、やや先行きにつきましてメーカー側は非常な不安を持っていたようでございますし、現実に十二月の生産も、重油あるいはナフサ、電力、こういうもののカットによりまして、硫安、尿素とも約一〇%生産がダウンすると、こういうような現状でございましたので、メーカー側としてはかなりの不安感を持っておったというふうに思います。いま先生が読み上げられた文章を聞きますと、やや形容詞が多いように思いますが、メーカー側としましては非常にせっぱ詰まった気持ちでおったことは確かだというふうに私どもは承っております。
  163. 塚田大願

    ○塚田大願君 どうも通産省の御意見を聞いておりますと、非常に企業サイドの発言のように感じるんですけれども、これは私の思い過ごしであればたいへん幸いです。とにかくこの石油問題が起きましても、企業と通産省の癒着がとかくうわさをされているようなこういう時代でありますから、もっと実際に、じゃ、生産の先行き見通しがなかったのかどうか、原材料の確保はどこまであったのか、在庫がどのぐらいあったのかという、そういう根拠に基づいて私はこの問題を見なければいけないと思うわけでありますけれども、はしなくも、いま通産省がおっしゃいましたいわゆるこの供給量確保の問題がやはりこれは一番前提だったろうと思うわけです。  そこで、ではお聞きいたしますけれども、このころ、いわゆる需給見通しというものはどういうふうに御検討されたのか、また何を基礎に検討されたのか。その需給量の確保という問題について、ひとつこれは農林省にお聞きしたいと思うんですけれども、農林省はこの問題についてはどういうふうにお考えですか。
  164. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) まず、ア系肥料の需給見通しにつきましては、この法律にもございますが、年度当初に需給見通しを作成いたしまして関係者に通知をすることになっておりますが、その需給見通しはあるわけでございます。そこで、その中で肥料年当初の繰り越し在庫は幾らかと、それから内需の見込み量は幾らと、それから輸出見込み量、それから生産量、繰り越し数量と、こういうことについて見込みを立てるわけでございますが、それにつきまして、こういった石油事情になって、その見込みどおりはたしていけるかどうかということは当初懸念いたしたわけでございます。特に私どもといたしますと、内需につきましてこれが十分確保できるかどうか、ただ、御案内のように、ア系肥料の場合には内需のウエートは小そうございますから、輸出関係いかんによってもかなり違ってくるわけでございますから、まずまず内需確保に心配ないとは思いますものの、生産のほうが影響を受けますと、めぐりめぐってア系肥料としては困るということで、この生産確保するように、そのためには肥料工業に対しまするエネルギー源としての電力、石油、これを確保しなければならぬと、それからまた必要な原材料、これも確保しなければならぬということで、これにつきまして通商産業省にも要請をいたしまして所要の生産確保をはかる。当初は、なかなかはたしてエネルギー源もどこまで確保できるか、特に当初はかなりショックも大きかったわけでございますが、その後漸次数字が固まってまいりまして、肥料エネルギーの電力につきましては産業としては一段優先度の高い配慮をするということになりましたし、それから原材料についても、これは供給確保はまず心配ないということで、大体当初のめどはいけるであろうということでございますが、それについてさらに計数をずっと詰め合って、いま改定作業をしている過程でございます。
  165. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) ただいまの問題につきまして、去年の石油ショックがたいへんな問題であったということは、十一月の十六日に閣議決定をもちまして、電力並びに石油の削減をきめたわけでございます。それに基づきまして、肥料産業につきましても、同じようにカットを受ける、こういうようなことになったわけでございますが、そのころは何よりも生活関連が大事であるということで、たとえば燃料用のナフサとか、あるいはタクシー用のナフサ、こういうものにナフサを優先的に配るというような配慮がなされたわけでございますが、残念ながら、直ちに肥料工業のほうに対しまして、電力あるいはナフサ、重油の特配というものは行なわれなかったわけでございます。そこで、私どもといたしましては、十二月の生産は当初見込みに対しまして、約二五%のダウンだろうと、こういうふうに見込んだわけでございますが、各メーカーともいろいろの努力をなさいまして、実績として出てきたものは一〇%のダウンということでとどまったわけでございます。また、そのころ価格の引き上げも、先ほど来御議論いただいたように、動きが出始めた、こういう状態でございました。
  166. 塚田大願

    ○塚田大願君 この十一月、十二月の石油ショックの状態をいまここで私どもが繰り返す必要はないと思うわけでありまして、たいへんいわば騒乱状態になった中で、どの企業でも、これはもう石油製品だけでなくて、トイレットペーパーから、ラーメン、あらゆるものが便乗値上げをしたという事実だけははっきりしているわけであります。そこで、肥料の場合も、いまおっしゃったように、十二月の段階では二〇%ぐらいダウンするだろうというふうに見込んだ、しかし実績からいうと一〇%ぐらいにとまったんだと。大体どこの産業の場合でもやはりみんな結果からいうとそれほど減っていない。にもかかわらず、不足するんだということで、ああいう便乗値上げ、悪徳商法というものが行なわれた。物を隠せと、通産省をごまかせというふうなことをやった企業すらあったわけでありますから、そういう中で、肥料関係でもやはり相当こういう脅迫といいますか、肥料部門の大幅縮小、または操業停止まで考えざるを得ないというようなオーバーなおどかしをかけてくる、あるいは企業採算上高収益部門に傾斜した生産をやらざるを得ない。つまり肥料なんか切ってしまうんだと、こういう言い方をしているのですね。  それで、今度は全農協はもうびっくりして、価格改定を下部に押しつけてくると、こういうまことに情けない状態が生まれたわけですが、ところがこの十二月段階では、では一体十一月、十二月段階で肥料がどの程度あったのかということです、問題は。  私、これ、いただいた資料ですけれども、この資料を見ますと、つまりこの肥料の在庫量ですね。在庫量は、硫安の場合には、昨年の六月の段階で硫安は五万九百窒素トンです。ところが、十一月段階では五万九千七百窒素トンになっておるわけであります。ふえているんです、六月よりも十一月が。で、十二月では五万三千二百窒素トン。大体それほど減ってない。とにかく六月段階に比べますとやはりふえておるわけであります。尿素は、ではどうかと見ますと、この昨年の四十八年の六月には、十五万千七百窒素トンであります。ところが、この十一月段階ではどうなったかといいますと、十一月段階では十五万六千五百窒素トンです。それから十二月段階で十七万五百窒素トン。尿素の場合にははるかに六月に比べて十二月の在庫というものがふえておるんですね。こういう状態だったんです、実際は。ですから、このメーカーがないないなんて言ったのは、これは全くのうそでありまして、また農協がこういうふうに価格改定まで、この段階で押しつけてくるというのはたいへんこれは間違ったやり方であったわけです。で、この点につきましては、こういう数字について農林省、通産省はもちろん知っておられたと思うんですけれども、はたして、しかしなおかつこの先行きについてそのような不安をお持ちだったのかどうか、その点を聞かしていただきたいと思うんです。
  167. 兵藤節郎

    政府委員(兵藤節郎君) 昨年末はやっぱり御承知のようなことで、たいへん生産が不安定であると、また、したがって需給も不安定であるということで、私どもは非常に警戒をして需給状況の推移を見守ったわけでございます。特に十一月末から価格引き上げと、こういうふうな動きがあったわけでございますから、肥料用の内需に対しまして、万々出荷を押えるとか、あるいは控えるとか、こういうことのないように、通産、農林のほうで指導いたしましてきたわけでございますが、その実績から見ますと、内需向けの肥料の出荷状況は前年同月対比で見ますと、十月では一〇〇ないし一一〇%程度、それから石油危機発生後、つまり生産が低下するであろうと、こういうふうに予想された十一月、十二月には各肥料ともむしろ出荷が増加しております。一一〇%ないし一三〇%と、こういうふうになっておるわけでございます。  それから在庫の状況を見ますと、これも大体在庫というのは月によってそれぞれ違うわけでございます。たとえば肥料需要期、二月、三月となりますと在庫がぐっと減っていく。それから需要期でない不需要期、たとえば八月とか九月、あるいは十一月、十二月、こうなるとややふえてくるわけでございますが、そういう季節的な変動はございますが、これも対前年比で、たとえば硫安について見てみますと、十月の在庫、これは実トンで申し上げます。先生は先ほどNトンでお話しなさったようでございますが、四十八年の十月、これは前年が三十六万三千トン、それに対して去年の十月ですが、三十万七千トン、十一月は前年が三十五万一千トンに対して二十八万二千トン、十二月は前年が三十三万一千トンに対しまして二十五万四千トンと、こういうぐあいに在庫がずっと減っているわけでございます。したがいまして、出荷はふえ在庫は減ると、こういうようなパターンが見られるわけでございまして、これは先ほども申しましたように、非常な動乱期にあって、しかも価格高騰と、こういったような動きの出ているさなかにありまして最大限の指導をいたしまして出荷を督励したと、こういうような結果がこうなっているのだと思うわけでございます。
  168. 塚田大願

    ○塚田大願君 いま、いろいろその説明があるんですけれども、まあ、その輸出の面を考えましても、とにかく在庫はこれだけあると。しかもこれは、大体在庫というのは、いわゆるランニングコストですか、在庫は。月末在庫というのは、どのぐらい平均してあるかという点では、大体これはいままでランニングストックというのは硫安、尿素では約一カ月と、一カ月分というふうに言われておったわけでありますから、ところが、いまの数字を見ますと、これはもう硫安では三カ月分、尿素では五カ月分、十二月段階では。それだけあったわけでありますから、かりに輸出関係がありましても、この在庫の既定の量というものはもう十分に確保してあったと思うわけであります。ですから、ちっとも内需の面では心配というものはなかったと思うんでありますけれども、しかし、実際に下のほうにはこういう形で通達が流れると、こういう問題です。ですから、私の申し上げたいのは、とにかくこういう全く行政の側がこの肥料の面を指導する場合にほんとうにこういう的確な資料に基づいておやりにならないと、企業の言いなりに踊らされてしまうと、とどのつまりは癒着しているのではないかというふうに勘ぐられると、こういう結果になると思うんです。その点を私はやはり行政の衝に当たる皆さんにとっては厳重にひとつ注意していただく必要があると、こういうふうに考えるわけです。  さて、時間も迫りましたので、最後にもう一つだけ問題を関連して提起をいたします。  実は、これだけ在庫があったと、ところが、実際にこういういわば脅迫的なおどかしが行なわれて価格改定しなければならないということになったと。では、その価格改定はいつからどうやって価格改定したんだといいますと、これがたいへんおかしいことでありますけれども、御承知のように、肥料は一月から上がるということになっているわけであります。  ところが、この通達が出たのは二月五日でありますけれども、この中身を見ますと、価格改定の中身は十一月まで実出荷されたものは旧価格と。これはよろしゅうございます。それから二番目に十二月中に実出荷されたものは新旧プールの価格によると。つまりある部分は旧価格でよろしいと、しかし、あるものは新価格で値上がりの価格でやってもらうんだと。で、三番目には一月−六月に出荷されるものは新価格で一本価格と、これはこれも当然でありましょうが、問題は二番目です。十二月中に実出荷されたもの、新旧の両プール価格、プール価格というのは妙なことばですけれども、要するに、ある一定のワクだけは旧価格、その他の部分は新価格、こういうことですから、要するに、もう十二月から実際に値上げをしたということなんですね。値上げをするということなんです、この通知は。これは一体どうしたことなのか、しかもこれは新潟経済連の通達でありますけれども、聞くところによりますと、早取り地域ですね。つまり新潟、東北というふうな地域ですね。これには全部こういう形で十二月から値上げが行なわれておると、こういうことなんです。ですから、問題は、この全農の内部でこういうものが出たというだけでは済まないものでありまして、こういうことが行なわれていることに対して、農林省はこの事実を知っておられたのかどうか。また知っておって、知ってたとしたならば、どんなふうにお考えだったのか、こういう一月からと言っているのを十一月から堂々と値上げをしておる。やみ値上げですね。その点をまずお聞きしたいと思うんです。
  169. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) 御指摘のとおり、一月からと申しますのは、これは生産業者と、それから全農の間の基準がそうなっているわけでございます。そこで、私たちもこれが末端の段階でどういうかっこうになるであろうかと、これはまた末端の契約のしかたいかんにもよるわけでございます。そこで、それにつきまして、全農は生産業者の関係ではいま言った一月変わった扱いいたしておりますが、末端の今度は経済連、単協、そこにおいていわば実際にどういう扱いをするであろうかと、と申しますことは、やり方がいろいろございまして、プールという方式もございましょうし、実際出荷時で区分する方法もございましょうし、そこのところは経済連、単協で多少ずつやり方が違う面もあるものでございますから、目下具体的にどういうやり方でやっているかと、現物引き渡し時期に応じて区分しているのか、あるいはプールしているものもあるのかもしれぬと、あるいはまたこれは実際の取引の便宜もございますから、ほかの方法とっているのもあるかもしれぬといって、実は御指摘の問題非常に気になるものですから、私どもも事前に目下全農を通じまして実態を調査中でございます。  ちょっと申しわけないんでございますが、いまの新潟の例は私ちょっと承知いたしておりませんでしたですが、私どももそういうことを懸念いたしまして、目下全農を通じて調べておりますものですから、それに応じまして、かりに便乗とか先取りとか言われることのないように措置をいたしたいと思って、実態を究明中でございます。
  170. 塚田大願

    ○塚田大願君 とにかく事実はこういうことなんです。やはり私は、農林省、通産省は、もちろんですが、考えていただきたいのは、相手が、なるほど法律によると、メーカーと全農ということでありますけれども、この影響を受ける消費者である農民、これがどういう被害を受けるかということを考えて、やはりこういう問題に対する行政指導を厳重に的確にやっていただくということが必要だと思うんです。いままだ事実について十分御存じなければ、これは調査をして、至急こういうやり方はやはり是正されなければいけないんじゃないか。話し合いだからまあ適当にやっていればいいというんだったら、行政も何も必要はないわけでありまして、やはり政府の責任というのはここで明確にしていただかなければいけない。特に私どもが申し上げるのは、先ほど申しましたように、これだけの在庫があると、かりにこれだけの在庫を新しい価格で売ったらどれだけもうかるかということを私試算してみました。これは私の試算ですけれども、たとえばこれだけの硫安と尿素を——十二月段階でですよ、あるものを、新しい価格で売ったといたしますと、硫安で十三億円、尿素で十七億円のもうけが出ます、黙ってて。これだけのものを売るだけで。この新しい価格で、一六・三%の値上がりの価格で売っただけで、こういうことになるんです。しかも一方農民はそのために収奪され、苦しめられる。企業側はたいへんほくほくだと、こういう結果でございますから、こういうやり方はやはり厳重に取り締まっていただかなければいけないということなんです。
  171. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) ただいま御指摘の問題、これ、実は私ども非常に気になりまして、いわば建て値の話し合いがきまったと、実際どういうふうに現物勘定するであろうかと、特に在庫の問題でございます。そこで、この価格改定に関連して、その場合の在庫をどういうふうに扱っているんだろうかということを、実は全農を通じまして調べたわけでございます。そうしますと、ものによって違いますが、価格におきまして在庫分を落としていって価格をきめた例もございます、これは種類によって。それから御指摘の硫安、尿素につきましては、これは全農と生産業者の間では出荷指図制をとっておりまして、十二月中に出荷指図済みのものは、現物はたとえ一月以降であろうとこれは旧価格であると、こういう扱いになっておるわけでございます。つまり出荷指図が事前に行なわれている、十二月中に。現物の取引は一月かもしれぬと。しかし、そういうものは十二月中に出荷指図をしてあればこれは旧価格であるというのが中央の取りきめになっておるわけでございます。したがいまして、そういう在庫による利益は生じないたてまえになっておりますが、その点が第一点。  もう一つは、せっかく中央段階ではそういたしましても、あと流通段階でどうなるかという問題、それが先ほど御指摘の問題でございまして、肥料の場合には、これは全農、経済連、単協という、いわば農協系統が七割のウエートを占めておるものでございますから、万々妙なことはあるまいといままで思っておるわけでございますが、ただ、地域地域やり方が多少違いますものですから、その点を調査しているということを申し上げた次第でございます。
  172. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃもう一つこれはお聞きしたいと思うんです。先ほど大臣も、ことしは、つまり四十八肥料年度においてはもう再び値上げはしないという趣旨のことを言われましたけれども、ところが、この通達によりますと、もう一回やることになっておるのですね、まことにけしからぬ話ですけれども。こういうふうに書いてあるのです。これ何番目ですかな。先ほども申しましたメーカーの主張の三番目ですか、「価格は不確定要素が多い現状から判断して対象期間を一〜3月とし、」対象期間をですよ、「4〜6月価格は改めて決定したい。」と、つまりこれがこの新しい価格ですね。これは、この価格改定は一月から三月までだ、四月以降はまたもう一回あらためて決定をしたいと、これは以降でありますね。こういうことをぬけぬけと言っておるんですよ。  大臣は値上げしないなんて言って、いま言われましたけれども、また上がってから、いやあ、しかたがなかったんだと、妥当なんだ、なんてなことを言われては困りますから、私、ここではっきりさしておきたいんですが、一体こういうこのやり方ですね、はたしてこれが妥当なものとお考えなのかどうか。これひとつ大臣にお聞きしたいんです。
  173. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 政府の方針は先ほどお答えいたしましたとおりであります。  そこで、その地方の農協で、どういう考えでいまお示しのようなものを出しましたか存じませんが、要するに、全農は消費者の団体であります、まあ販売もやっておりますが。したがって、単協、それから経済連、全農、みな一つの系統でありますので、これは私ども方針をきめましたら、そのとおりにやってもらうように、もちろんただいま政府委員もお答えいたしましたように十分指導してまいるつもりであります。
  174. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃあ、こういうことは認められないというふうに受けとめてよろしゅうございますね。
  175. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 政府の方針は先ほど申し上げましたとおりであります。
  176. 塚田大願

    ○塚田大願君 大体私の質問はこれで終わりますけれども、ちょうど時間が参りましたから。いつも私は正確ですから……。  とにかく、この肥料問題というのは、まあ、いろいろるる論議されましたけれども、私の場合でもやっぱりこの一六・三%の根拠について一つも私自身納得できません。科学的な基礎的な数字が何ら示されないという段階では、これは認めるわけにはいきませんし、また同時に、行政面での指導が、やはりたいへん私は通産省でも農林省でも立ちおくれて、いわば企業に引き回されてきた。やはり石油製品の場合と同じような現象が肥料の場合にも起きておる。このことを、やはりこの際、政府としては、はっきりした立場で問題を解決していく、前向きに解決していくと。石油製品の場合には、かなり田中総理を先頭として、とにかくまあ、証人喚問だとかなんとかいうような問題で、参考人なんかの問題でずいぶんいろいろごたごたしましたが、しかし、それなりに一歩何とかして解決しなければならないということになっていると思うんです。けれども、どうも肥料の場合は、何か石油危機の陰に隠れてこっそり値上げがされてしまったという感じがしてしようがないわけです。したがって、それだけにこの肥料の値上げについては、ひとつどうしても、これをもっとわれわれが納得できるような根拠を示していただきたい。このことを最後にもう一つ要望しまして私の質問終わります。     —————————————
  177. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。  ただいま温水三郎君が委員を辞任され、その補欠として山内一郎君が選任されました。     —————————————
  178. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。塚田君。
  179. 塚田大願

    ○塚田大願君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になっております肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案に反対します。  わが党は、現行法が昭和三十九年に国会に提出された際に、現行法に対するわが党の立場を明確に表明しているのでありますが、わが党の反対の立場は一貫しております。  次に一その反対の理由について述べます。  第一点は、現行法は、農業生産上、重要基礎資材である肥料の需給と価格に関して生産農民を犠牲にして、肥料メーカーの利益を保障するものであります。この十年間の推移は、わが党のこの主張の正当さを裏づけています。なぜなら、わずか二十数社の企業で硫安については八〇%、尿素については一〇〇%を独占的に生産している今日、ばく大な国家資金をつぎ込んでの合理化のもとで、その利益は独占メーカーを肥え太らせるのに使われているのが事実であります。当時六割台を占めていた合成硫安は、今日に至っては一・三%を占めるにすぎないことは、合理化、大型化の代表的な結果としてあらわれております。九八・七%を占める回収あるいは副生硫安は、ただみたいな生産費を明らかにしないで、生産農民に高く売りつけてきたのが、この十年間の経過ではありませんか。  さらに許せないことは、今回の値上げです。この値上げは、メーカーの言う十年間のコストダウンを一挙に取り戻し、十年前に逆戻りさせてしまったことです。このことでさらにばく大な利益をメーカーにつぎ込むことには断固として容認することができません。  第二点は、輸出赤字を国内に転嫁してきたという事実であります。国内価格は、輸出価格に比べて、四十六肥年度で二・二四倍、四十七肥年度で一・九五倍、尿素については、同じく四十六肥年度で一・六七倍、四十七年度で一・六四倍と、その格差は一そうひどいものになっております。  したがって、わが党が十年前に指摘していた懸念どおりに事態は進んできているのであります。  第三点は、消費者たる生産農民の利益を反映する道が開かれていないという点であります。メーカーと全農との取りきめ価格が取引価格になるのでありますが、全農は、大型化した商社並みの利益追求のため、販売権を確保するためにメーカーの価格決定の前には妥協してしまい、メーカーの価格決定をのんでしまうというのが、今回の値上げ取りきめに端的にあらわれたものであります。  こうした重大な問題点を含んだ十年間の経過の中で、さらに五カ年の延長提案には、とうてい賛成しかねる提案なのであります。  今日の事態の中で、わが党の立場は、農民保護と、資材の値上がり要因を農産物価格へ転嫁させない立場から、厳正な原価計算に基づく生産費主義に立脚した最高価格販売制度を厳正に実施し、われわれ国民、農民の負担のもとになされた肥料業界の合理化の利点を生産農民に均てんさせるということ、さらに、価格決定に際して、消費者である農民の意見が正確に反映される制度的保障をつくること、こういう条件を満たすことを主張するものであります。  以上をもって反対討論を終わります。
  180. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決を行ないます。肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  181. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 挙手多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。足鹿君。
  182. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、ただいま可決されました肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党の各派共同による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正す    る法律案に対する附帯決議(案)   政府は、現下の厳しい農業情勢にかんがみ、  農業生産資材の供給の確保価格の安定等に関  する諸対策を促進するとともに、本法の単なる  施行に止まらず、肥料対策協議会を新たに設け  る等により、変動する経済、資源事情に対応し  た的確な肥料政策の確立を進め、特に左記事項  を検討し、その達成に努めるべきである。        記  一、肥料価格の低位安定を図るため、年度間一   本価格による取引を堅持するよう極力指導す   るとともにア系窒素肥料価格取決め交渉の   実効を期するよう必要な措置を強化するこ   と。    また、本法の特定肥料に化成肥料を追加す   るよう検討すること。  二、最近における逼迫した肥料需給事情に照ら   し、ア系窒素肥料輸出の承認にあたっては、   国内需要の優先確保等を十分配慮すること。  三、肥料生産、供給に必要な原材料、包装資   材等の価格の安定、優先的な確保に努め、さ   らに、輸送・保管・販売経費の節減等の流通   改善を積極的に指導すること。  四、複合肥料等の銘柄集約化については、農業   生産の実態に対応した整理を一段と進め、流   通、価格の適正化に資するよう指導すること。  五、化学肥料の多投利用等により土地生産力の   低下をきたさないよう、土壌作物生産施   肥の合理化に関する試験研究を充実するとと   もに、有機物土壌への還元、有機質肥料の   開発・施用、土壌改良地力培養技術の向上   等に関する指導、対策を強化すること。  六、燐酸、加里肥料の特殊事情を考慮し、輸入   原料の確保・安定に努め、肥料生産流通   の改善整備を指導すること。   右決議する。  以上であります。
  183. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) ただいま足鹿君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  184. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 挙手多数と認めます。  よって、足鹿君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣。
  185. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまの御決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして対処してまいる所存であります。
  186. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 初村滝一郎

    委員長(初村滝一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回は、三月十四日開会いたします。  なお、三月十二日、森林林業に関する視察を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散会