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1974-02-26 第72回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十六日(火曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————    委員異動  二月二十一日     辞任         補欠選任      沢田  実君     宮崎 正義君  二月二十二日     辞任         補欠選任      志村 愛子君     源田  実君      西村 尚治君     田中 茂穂君      川野辺 静君     郡  祐一君      今泉 正二君     今  春聴君      安田 隆明君     中山 太郎君      加藤  進君     岩間 正男君  二月二十六日     辞任         補欠選任      今  春聴君     黒住 忠行君      田中 茂穂君     今泉 正二君      源田  実君     高橋 邦雄君      岩間 正男君     春日 正一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺本 広作君     理 事                 岩動 道行君                 岡本  悟君                 山崎  昇君     委 員                 今泉 正二君                 黒住 忠行君                 高橋 邦雄君                 長屋  茂君                 星野 重次君                 上田  哲君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 春日 正一君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務大臣官房長  鹿取 泰衛君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君        大蔵省国際金融        局次長      藤岡眞佐夫君        文化庁次長    清水 成之君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        外務大臣官房領        事移住部長    穂崎  巧君        外務省情報文化        局文化事業部長  堀  新助君        通商産業省通商        政策局通商調査        課長       鯨井こう一君        通商産業省通商        政策局経済協力        部長       森山 信吾君     —————————————   本日の会議に付した案件外務省設置法の一部を改正する法律案(第七十  一回国会内閣提出衆議院送付)(継続案件)     —————————————
  2. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十一日、沢田実君が委員辞任され、その補欠として宮崎正義君が、二十二日、志村愛子君、西村尚治君、川野辺静君、今泉正二君、安田隆明君、加藤進君が委員辞任され、その補欠として源田実君、田中茂穂君、郡祐一君、今春聴君中山太郎君、岩間正男君がそれぞれ選任されました。  また、本日、今春聴君田中茂穂君が委員辞任され、その補欠として黒住忠行君、今泉正二君が選任されました。     —————————————
  3. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、外務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務省設置法の一部を改正する法律案について、提案理由をすでにお聞きいたしましたが、内容はアジア局事務量の増大、局内幹部仕事が多端をきわめているので、アジア局所管事務の円滑をはかるため、アジア局局長を補佐する次長一人を置き、そして局務を整理せしめるというような理由でありますが、この提案理由関連して大平さんに承りたいのは、日本に一番近いアジア諸国との関係というものが日本外交にとってはきわめて重要であるということは、いま始まったことではないと思うのであります。政府といたしましては、日中国交正常化に伴い、対中国関係を安定した基礎の上に発展せしめることが大切であり、その上に立ってアジア諸国に対する経済協力等の積極的な外交を展開させねばならないという姿勢を示しておりますが、この変化は、ニクソンショックによる、ニクソンが東西の接近をはかるために中国やソ連を訪問して以来、日本外交姿勢を確立することが問題になり、さらに昨年の石油ショックによって、政府アラブ寄り外交への急転換をはかったというようなできごとがあった後のことでありますので、この際、日本人は非常にテンション民族で、ショックに敏感だといいますが、ショックだけで動くのでは腰のすわった外交というものはできないと思うのですが、この際大平さんから日本外交姿勢基本的な態度というものを一応承りたいと思います。
  5. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 申すまでもなく、わが国外交わが国の名誉と生存と安全を守っていくことが任務だと思っております。その意味から申しまして、過去の経緯に徴するまでもなく、朝鮮半島、中国との関連わが国にとって非常にむずかしい問題でございましたし、今日もそうでございますし、将来もそうであろうと思うわけでございます。したがって、わが国外交は、現象的に申しますと、アジアに始まってアジアに返ってくるというものであると思います。われわれが対米外交を展開する場合も、欧州外交を考え、対ソ外交を考える場合におきましても、このアジアとの関連という点にいつも視点を置いて考えてまいらなければならぬと思っておるわけでございます。そういう意味で、現在及び将来を踏まえまして、アジアにおいて安定した永続的な平和を創造してまいるようにわれわれは常に最大限の努力を払っていかなければならぬと考えております。  それからいま戸叶先生は、わが国外交ショックに弱いという仰せでございました。確かに資源小国でございまする日本といたしまして、足場の弱い資源の上に高密度の経済文化をささえておるわけでございますので、ショックに弱い立場にあることは仰せのとおりだと思うのであります。しかしながら、ショックが起こるたびごとに右往左往いたしておっては、わが国国際信用を守る道ではないと思うのであります。われわれがアラブ外交を考えるにあたりましても、石油資源外交世間でいわれておりますものに対処するにおきましても、これはショックに対する対応策というものとして考えてまいりますと間違いを起こすおそれがあると思いますので、根本はやっぱり資源保有国との永続的な間柄たんねんに築いてまいるというところに基礎を置かなければならぬと考えてまいったわけでございます。いろいろ特使を派遣したり、そういう国々との間柄関係を調整いたしておりますゆえんのものも、資源を確保したいという念願もありまするけれども、根本はやっぱりそういう国々との間の信頼関係根底に置いて築いていかなければならぬという趣旨のものであると御理解を賜わりたいと思うのでございます。  それからわが国といたしまして、外交基本として、体制、信条のいかんにかかわらず、すべての国と友好関係を結ぶということを基本にいたしておるわけでございまして、このことはなかなか言うはやすく行なうはむずかしいのでございますけれども、われわれは、わが国平和国家として再生いたしたわけでございますし、わが国の善意を各国に御理解をいただいて、われわれは曇りない気持ちであらゆる国との間に信頼友好を、交流を続けてまいることを基本にして、たんねんにじみちに外交を展開してまいりたいと心がけておるわけでございます。そういう点に足らないところがありとすれば、われわれの努力が足らないわけでございますので、いろいろ御指摘をいただきまして、なお足らないところは補いながら展開してまいりたいと考えております。
  6. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本外交のいままで一番欠けている点は、みずからの主体性を確立した上において、多極化されたこのグローバルな時代における外交に対処しなければならないという基本的姿勢が要請されておったのにもかかわらず、日本外交というものは、長い間アメリカ占領政策になれてアメリカ一辺倒的な外交体質から抜け切れないでいたことと、もう一つは、日本外務省の伝統的な流れというものは、イギリス流外交というものが身にしみておって、陸軍のプロシア的な一つシステムに呼応しながら、日本外交はやはりモナーキーな国家であるイギリス日本国家体質は同じような錯覚の上に立って、イギリス外交の伝統を模範とするような傾向が非常に強かったのですが、私は最近における、たとえば田中内閣における一連のそこつな発言の発生というのは、これは田中さんの責任大平さんの責任中曽根さんの責任一つ一つをきめつけるわけではありませんが、その根底にある日本国家性格はいかなるものか、日本外交はいかなる基本姿勢を持たなければならないか、そういう明確な理念というものが統一されていない結果、思いつきの勇み足というものが出てくるのではないかと思うのです。  やはり、近代国家においてきわめて大切なことは、官僚組織というものはわれわれは活用しなけりゃならないが、やはり頭脳的な仕事をする行政官僚外務官僚もしかりでありますが、その人たちが忠実にやはり仕事をやっていれば身の安全が保障されるような安定性を与えられなければ、たとえば最近における法眼君の処置のごときは、私は、一部の人たちが何か田中内閣を倒閣する目的で、まず大平をつぶせというような戦術、戦略から動いているような印象は、これは問題にするわけではありませんけれども、少なくとも一国の外交上における失策の責任というものは外務大臣なり総理大臣が負うべきであって、事務官僚罷免ではないと言うが、事実上罷免のような印象を与えるような、不明朗な進退を与えるということは、今後における外務官僚地位というものを脅かすことになるんじゃないかと思いますが、大平さんはこの問題に対しては非常に苦慮しているようですけれども、将来に悪例を残さないために、その点をもう少し明快にしておいてもらいたいと思いますが。
  7. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私も外務省に対して責任を持っておる国務大臣でございますので、外務省人事につきましては一〇〇%私の責任で対処いたして、よきにつけあしきにつけ、私の責めに帰するものと考えております。現在、外務省を預かって見ておりますと、私自身、外務省諸君がこの多難な局面に処して日夜懸命の努力を惜しまず、骨身を惜しまずやっていただいていることに対して、ごうまつの不安も不満も私は持っておりません。むしろたいへん感謝をいたしておるわけでございます。そして仰せのように、一人一人がモラルが確立いたしまして、職責を果たしていただく気風が横溢してまいらなければならぬことも仰せのとおりでございます。私は、今日もまた将来も、この職にある限り、そういう意味におきまして、外務省の士気の鼓舞につとめて人事の公正を期してまいらなけりゃならぬと考えております。  前次官のことについてのお尋ねでございますが、前次官に欠陥があったとか、前次官不満を持っていたとかいうことは、先ほど申しましたように釐毫もないわけでございます。非常に清廉なそして献身的によく私を補佐していただいてきたわけでございまして、何らの彼を処分するとかなんとかいうようなことは、ごうまつもないわけでございます。ただ、外務省にいろいろな問題が起こりまして、この問題がどういう問題であるかという評価は別にいたしまして、いろいろな問題が起きている、世の中のいろいろな批判を受けていることは間違いないことでございまして、この際やっぱり人心を新たにいたしまして、この難局にみんなが当たらなければならぬ時期であることも間違いないと思うのでございます。法眼君の場合の進退につきましては、一切私におまかせいただいておったわけでございまして、私といたしましては、この際一ペん気分を一新いたしまして、みんな新たな勇気をもって難局に当たるという意味合いにおきまして、法眼君の辞意を認めて、新たな次官のもとで心機を新たにいたしまして、モラルの確立と事務の遂行に遺憾のないようにしてもらいたいということを考えたにすぎないわけでございます。たまたまこういうことが、いろいろなことが、私のワシントン記者会見事件なんかが起きた前後でございましたために、この事案が何か政治的な色彩を持ったかのような誤解を世間に与えたとすれば、これは私の不明のいたすところでございますが、趣旨はそういうものでなかったということは御了承いただきたいと思います。
  8. 戸叶武

    ○戸叶武君 法眼事務次官進退をあなたにおまかせしていたということは、これはわかりますが、外務大臣が、いまのたるんでいる外務省のかまえをもっと引き締めて、人心を新たにするために法眼次官責任をとらせられたという印象はぬぐうことはできないのですが、しからば安川駐米大使は、世上においてあなたと安川第五郎氏との関係もあり、あるいはアメリカ政府に与える影響というものも考慮し、そういう形から安川氏に責任をとらせるわけにはいかぬから、法眼君が責任を……。それからいま外務大臣地位というものはきわめて重要な立場に、デリケートな立場に置かれているんで、田中さんがあなたに責任をとれというようなことはできないという要請もあったというふうに世上は伝えておりますが、私はいろんなことをせんさくしようとするのではない。ただ、この際、もう覆水盆に返らずと思いますが、政治的な責任を、事務官僚のトップをいく次官に負わせて責任をとらせるというやり方は、今後においても、それは責任を政治的な立場に置かれてない者に押しつけるという悪例を残すことになるので、今後はこういうことはできるだけ私はやはり慎んでもらわないと、日本官僚の行き過ぎもいろいろありますが、まじめな官僚立場というものが私は非常な不安定なところに置かれると思うので……。  日本官僚システムは、大体ナポレオンを破った後における破竹の勢いで台頭したプロシアを中心としたドイツ的な官僚システムを入れたので、どちらかといえばミリタリーシステムで上から下へと、いま、事務次官進退の一切を大臣にまかせたというような、こういう前時代的なシステムになっておって、近代国家運営の上における一番重要なファンクショナルシステム、その頂点に立つ者の指導性責任感というものが明確化されてない点と、もう一つはチームワークが十分とられていない。サッカーにおけるアソシエーショナルムーブメントと同じように、日本サッカーのいままでの弱さは、キックのほうは相当なものだが、パスボールが拙劣だ、国際社会に入って試合をやった結果、最近においてはそのアソシエーショナルな運動という、サッカーにおけるポジションを守って、そうしてそのファンクションを十分に尽くしていくというようなものが運動の中でも確立しているのに、スポーツのほうは国際的な試合において練磨されたが、日本官僚システムは旧態依然として古風なミリタリーシステムになっている。  この際、私は、今度のことで——私は前に社会党の政治制度改革特別委員長並びに行政改革特別委員長をやった時代に、臨時行政調査会と取っ組んだことがありますが、あの時分、やはり三井から入った佐藤喜一郎さんですか、あの人の意見というものが非常に傾聴に値したのは、日本官僚システムというものが非常に動脈硬化になって、近代産業におけるシステムから見ると時代おくれのちょんまげである、こういう非能率で、ファンクショナルシステムができていない前時代的な行政を、非能率スポイルシステムを変えなければならない、ところによってはアイドルシステムになっている。というような思い切った提言をしておるのでありますが、これはこの機会に、外務大臣の意図するところは人心を新たにするということに重点があるのでしょうから、この次長を設けることも必要だし、外務省仕事がこれほどグローバルな時代に、世界相手にどんどん仕事の量がふえているときに、外務省だけが非常な——大蔵省と同じように秀才が集まっているが、秀才というのは概して冷たい、ボス的性格がない、子分はつくらない、人のめんどうは見ない、自分だけ出世すればいいと。このりこう者の集まりに、予算を取ることはへただし、それから人をふやすこともへたで、俗にいえば、おざなりにその日を過ごして、早くエスカレーターの先のほうへ乗っていきたい。こういう習性があるがために、いままで日本に線の太い外交官ができない。スマートなカクテルパーティーや、ダンスパーティーや、あるいは通訳外交には持ってこいの人がいるけれども、国難にあって、責任をもってそこに挺身するという気概が、——イギリス外交官なんか違います。そういうところがやはり秀才外交のひよわな、もやし外交になっているので、私はこのもやし外交から脱皮させる絶好の機会だと思うので、それには私は、必要なときには遠慮なしに——今度は福田さんに遠慮しなくちゃならない。どうも田中さんも大平さんも中曽根さんも大きな顔はできない。何でもいいから、締めつけられればそのとおり、ここはがまんしなくちゃならないと思うかしらないが、外交は予見を必要とし、先取りを必要とするときです。全部が萎縮したときでも、日本のような資源のない国、外国相手外交を展開しなければならないというときに、自由にして潤達な、創意に満ちた外交が躍動しなければ萎縮するだけであります。  この参考資料を私は見て驚いたのですが、一体外務省の構成は、各省と比較して非常に少ないじゃないですか。昭和十三年に四千六百九十八人いたのが、昭和四十八年には二千八百七十一人。これに反して大蔵省は、昭和十三年に六万九千四百八十二人いたのが、いま四十八年には六万七千三百二十八人。文部省に至っては、昭和十三年二万八千五百九十二人が、昭和四十八年には十一万三千六百八十四人。厚生省は昭和十三年に一万八千十七人が、昭和四十八年には五万三千七百三十九人。農林省昭和十三年には一万六千五百五十五人が五万五千六十八人というふうになっているんですが、何だか外務省はいじけているような感じがします。大平さんは、率直に言ってどうですか、この現状でもって多極化されたところの外交、それ、アメリカからショックが起こった、中国と今度は取り組まなければならない、今度はアラブだ。いなかの消防ポンプみたいに、あっちこっち火事が消えたときでもう間に合わないというような走り方をやっていたのでは、機動力を発揮することはできないのじゃないかと思うんですが、この点はどうでしょうか。
  9. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一に、人が多いのが少ないよりいいかというと、いい人が多ければいいんでございますけれども、必ずしも人の多きをもってよしとしないと私は思います。また役所システムは、戸叶さんも御承知のとおり、まあパーキンソンの法則じゃございませんけれども、人間が多くなると、その人間の世話をする人間がまた要り、その人間を世話する人間がまた要るというような絶対消耗的な性格を持っておりまして、私は役所はできるだけ簡素な仕組みがいいと思います。ただ、ほかの省がこれじゃ多過ぎるとかなんとかいう私はコメントする立場にはございませんけれども、外務省は確かに御指摘のように、戦前に比べても少ないし、各省に比べても少ない。また諸外国の、いま参考資料で差し上げてありますように、国々に比べましても圧倒的に少ないわけでございます。したがって、御指摘のように、これは総体的にどうも少ないじゃないかという御判断は私も同様な判断を持つものでございます。したがって、もう少し充実をさしていただく必要がありはしないかとまず考えております。  ただ、戦後の行政組織がだんだんと膨張してまいることを防ぐために総定員法というのができて、全体を縛っておるわけでございまして、このフレームからなかなかわれわれは踏み出すことができない不自由さを感じておりますけれども、しかし、御指摘のように、外務省はどうも少ないじゃないかということは財政当局のほうも行管当局も一応認めていただいておりまして、毎年の定員の査定におきましては漸進的にほかの省よりも若干比率にいたしまして優遇した措置を講じていただいておるわけでございます。また、予算でございますけれども、予算は飛躍せずということをよくいわれますが、まあ思い切った飛躍というのはなかなか困難でございますけれども、これまた御理解をいただきまして、一般の増率よりは相当高目増率を認めていただいておるので、私といたしましては、今日の状況におきまして一応各方面の御理解に対して感謝をいたしております。そして、この総体的に少ないとも言える中で外務省諸君よくやっていただいておることにむしろ感謝をいたしておる次第でございます。今後は仰せのように非常に外交が多極化され、また外交事務が年々歳々複雑になり、多岐になり、分量もふえてまいるわけでございますので、その責任にこたえる上から申しましても、漸進的に機構、予算等充実を鋭意はかってまいりたいと考えております。しかし、冒頭に申しましたように、それにいたしましても、できるだけ有為な人材を充てて御期待にこたえなければならぬと思っております。
  10. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務省から提出してもらった諸外国との比較においても、アメリカイギリス日本の四倍以上の定員を持っております。フランスやイタリアも二倍以上であります。西ドイツやカナダよりも日本ははるかに低いわけです。こういうところを見ると、少数精鋭と言えばよろしゅうございますが、至るところに穴があって失敗を繰り返しているのは、やはり大平さんが不徳——弁明で問に合うんじゃなくて、全体、網が大網になっていて、目がこまかく張られていないから、この情報時代において世の中流れからは迂遠であるし、起きたできごとについて機動力を持って対処することもできないし、そういう点において私は日本外交には非常に弱点があるのじゃないか。  それから外交官、私は去年の十月から十一月にかけて五回目の世界一周をやりましたが、至るところにおいて、たとえばジェトロの人なんかは、どちらかといえば一匹オオカミで、少数精鋭で、外務省人たちとは違った動きをしているが、なかなかいろいろな面と接触しているから幅広くものを見る習慣がついている。それから同じ大使館なり総領事館に置かれるような場合でも、他省から来た人は、それぞれの専門分野中心としているせいかもしれませんが、やはりあるゆとりを、持って、その国の国情を正確に把握している、あるいは人々との交際をしているというが、外務省の出先の人たちは忙しくて忙しくて、ほんとうに、大体本人よりも、外交官の奥さんになるものじゃないといってこぼすのが大部分だと思うんですが、それと同時に子供のめんどうなんか見られない。学校は日本でやる。二重三重の生活をやるというような形で、非常に表面ははなやかだけれども、身辺多事で落ち着かないやはり生活をやらせられているという点があるんじゃないか。これにはやはり日本外交というものを、もっと私はその国々に接近し、接触して情報なり見通しなりを見失わないだけの体制がないと、この間東南アジア五カ国を歩いて田中さん大恥をかいた。田中さんの不徳と言えばそれまでだが、やっぱりこれは情報の面において、外務省情報というものが、よく言えば甘い、悪く言えばうかつな面があったんじゃないか。戦時中だからものにならない、誤解されたけれども、私の朝日新聞の先輩であった緒方竹虎さんと共同通信、時事通信の先輩であった古野猪之助氏とが、大使館にやはりもっと情報関係の人を置かないと——それはスパイというような意味じゃない、的確にこの民間人的感覚をもって、お役人的感覚でなくて、十分な柔軟な触覚をもって接触しないと情報キャッチができないという点で提案したが、当時戦争中のことで誤解を受けてこれはつぶれたのですが、やはり外務省情報専門家を置くことをこの機会に考慮してしかるべきです。外務省定員だけで十分なあれができないとするならば、いわゆるエコノミカルアニマルというような大企業にだけ引きずり回されて、そのあげくには、どろを日本外務省がかぶせられるようなことでなく、正確なやはり情報をキャッチできるような機関なり何なりというものも設ける必要があるんじゃないか。この機会にそういうことを模索しているかどうか、大平さんにお聞きしたいと思います。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外交仕事一つの重要な柱は、仰せのとおり情報の収集、解明、判断だと思うのでございます。その点につきまして、私は、現在の中央、現地を通じまして、外務省情報機能はりっぱに間然するところなく動いておるとは決して考えていないのでありまして、仰せのような方向でさらに努力をいたさなければならないと考えております。また、せっかく集めた情報が時を移さず中枢のほうに伝達される通信網の整備ということもあわせて考えなければならぬわけでございまして、そういう点につきましては予算面で特に御配慮をいただいておるわけでございます。両々相まちまして、仰せのとおり、この情報の収集、解明ということにつきましては層一そう努力を傾けなければならない。現状は決して満足すべきものでないと私も考えております。
  12. 戸叶武

    ○戸叶武君 アジア局にしぼって問題をお伺いしますが、アジア局組織及び定員についても、局長一人、次長一人、外務参事官一人、調査官二人というぐあいになり、今度次長を設けるというようなことになっておりますが、この参考資料を見ればわかりまするように、アジア関係の大使館が十九、総領事館が九、アジア諸国関係国際機関が二十六で、これはアジア地域機関が十二、国連関係機関が十三、アジア・アフリカ等多地域間会議というふうにあって、もう国際的な一つ流れの中において、諸外国あるいは世界的な角度で接触しなければならない面が非常に多くなったと思うのです。特にアジアは東西南北の十字路になっておるので、日本はその十字路に立つ灯台のような期待をされておるが、さっぱり光がはっきりしない、ぼやけている。それはやはりかなめが私はしっかりとした姿勢を持ってないからじゃないかと思うのです。やはりこの多極化された東西南北間のいろいろな流れがぶつかり合っているところにおいて、その十字路に立って、これを対処するという形においては、日本外交におけるアジア局がかなめであって、そのアジア局においてもっとこれに対処できるような私は機能の整備、人員の配置なりをすべきだと思うのです。  これは私だけでなく、ある著名な大学の総長がやはり外国を歩いて、中近東に行ったら、外交官人たちがフリーな形で話し合うときには、どうもえらいところへ島流しになってしまって、やっぱりアメリカやヨーロッパに行ったほうがいい、これは人情の常だから、全部こぼしているというのはこれは正直な話で、ごく少数の人以外には、どうもこちらへ左遷されてまいりましたねという、このくさってしまうような形というものは、やはり私はうまいことは言っているけれども、そのむずかしい難局に当たっている人たちが感激をしてやれるような体制を上がとってないからじゃないかと思いますが、大平さんは私の不徳のせいだなんという逃げ口上をしないで、あなたが捨て身でやらないと、いつまでたっても日本外交に目玉が入らない、へそも入らないと思うのです。へそと目玉ぐらい入れなければこれはお化けになってしまうから、特にアジア局次長を設けるという形において、中心の心棒が一人だけじゃ、とてもこの忙しさに目を回すという意味で、局長にかわり得る人をそこに配置するんだと思いますが、この点はどのようにお考えですか。     —————————————
  13. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、岩間正男君が委員辞任され、その補欠として春日正一君が選任されました。     —————————————
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども冒頭にお答え申し上げましたように、日本外交アジアに出発してアジアに返るという、いわばほかの地域の外交アジアをにらみながらやらなければいけない。そういう外交だと思うのでありまして、アジア局並びにアジアの在外公館の任務というのは非常に大事だと思います。同時に、欧米各国にある在外公館といたしましても、アジアという問題意識を常に持ちながらやっていただかなければいかぬ性質のものを持っておると思うのであります。したがって、そういう全体がアジア外交とも言えるものだと思うのであります。で、いま現にありまするアジア局、任務が重過ぎるわけでございますので、これを二つにすればもっと充実した仕事ができるんじゃないかという考え方もありますけれども、対アジア外交を統一的に把握して実施するほうが私としては望ましいのではないかということでございますので、今度御提案申し上げておるように、いまあるアジア局を少し充実した形にさしていただきたいというのがわれわれの願いでございます。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務大臣は少し充実したと言うが、少しどころかちょっぴり、ほんのかすかに——充実とは言えないと思います。これは私は、大平さんがアジアに出発してアジアに返るという名文句のもとに、日本外交の重点はアジアにあるんだと言っているが、ことばだけが空転しているだけであって、実際はそうなってないのが今日の外務省姿勢だと思います。私は、日本なくしてアジアの進歩なく、中国を除いてアジア問題の解決なしという信念のもとに戦後外交問題と取っ組んできたのでありますが、アジアにおける日本の役割りというものは、日本がいろいろな失敗はしたけれども、間違いもおかしたけれども、この百年間における近代国家として成長をしたことに対して外国は大きな関心を払っておるのであります。私たちはその長所を生かして、その欠点を直してやらなければならないのですが、問題は、私たちの外交の主体性を確立するにあたって日本の国の位置づけを考えなければならないので、大平さんはいみじくも日本のこれからの外交資源外交だとまで言いましたが、とにかく日本資源に恵まれてないということは弱点です。しかしながら、一億の民族エネルギーが教育の力によってもっと質を向上させ、生活の安定によってまた変な教育ママが血眼にならなくてもよいような、金がかかるのは教育と政治だといわれるような、教育の場と政治の場を荒廃させさえしなければ、日本の国は資源が少ないからといって何も驚くことはない。その一番大切なところを忘れているのが今日のダンプカー政治であって、やはり私たちは民族のエネルギーの源泉を枯渇さして、自然を破壊し、人間の心を荒廃させ、そして排気ガスだけを、土煙だけをもってこの国を破壊していく、このことをやはり反省しないと——。  きのうも私はノルウェーの友人が十五年ぶりでたずねてきました。あのノーベル賞の作家を亡命させるためにノルウェーの文化人は、どれだけソ連のメンツを傷つけないで、そして安全に脱出させるかということを考えていままで苦心した。ソ連の中でも国家体制を質的転換するのには非常に骨が折れるようだが、現にブレジネフのむすこさんですらもこのことに対しては満腔の同情をもって当たっているというぐらいに、窮屈な体制の中においても新しい自由を求める流れというものは、むしろ一見窮屈に見えているような、われわれから見ると困ったものだと見えているようなソ連や中国の中からでも芽ばえが出ているのに、日本においてはそういうところがない。一番大切な教育の場の荒廃と政治の場の荒廃、権力と金に弱くて、そしてマンモス以上の猛獣がきばをとがらかせて名誉と利権を追っている、こんなぶざまなとにかく国家体制はだれがつくったのか。日本のやはり政治家と日本のエリートと称せられる官僚とが冷酷非常の国家体制をつくり上げた。これをやはり外交の面からでも私は転換しないと、教育の面からでも直していかないとえらいことになると思う。  大体、日本の国は、大平大臣も御承知のように、私はいつもイギリス日本のことを——イギリスは大西洋のヨーロッパ寄りの島国だし、日本は太平洋のまん中のアジア寄りの島国ですが、島国という点において四通発達で強みを持つ。イギリスのように鉄や石炭はない。けれども、日本の国はイギリスと違って気候が温暖である。豊葦原の瑞穂の国といって、いまの冷酷非情な政治がお百姓をいじめなければ五穀豊穣の天地である。こういう食糧をやれば恵まれるような国で食糧はつくらせない、そして自然は破壊していく、逆なことをやっている。やはりいま一番大切なのは、私は資源確保の問題と同時に食糧自給の体制というものはくずさないでいくことと、これは日本だけでなく、アジアの貧困を直すために日本が貢献しなければならない、日本が先進国としての自分たちのやはり経験を基礎として、教育、文化の普及なり、あるいは手工業から繊維工業なり——。いま田中内閣なり歴代内閣がやっているような大企業と結託して鉄工場をつくる、製鉄所をつくる、石油精製所をつくるというような形に、おいて金をもうけ、よその国の要求とは合致しないで、強引に一部の者と組んでまかり通るというやり方が、私はタイやインドネシアにおける抵抗になるのじゃないかと思いますが、これは私の私見じゃいけないが、大平さん、その点には考えが及んでないでしょうか。経済援助、経済協力の実態を、私たちはどういう点において反省しなければならないかということを、少し具体的に私はあなたから承っておきます。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 南北問題が問われかけてから久しゅうございますけれども、年々歳々南北の格差が拡大しているという悲しい現実がわれわれの前にあるわけでございます。手近な石油をとってみましても、過去二十年間、われわれはきわめて安定した価格で原油を確保することが商業的手段でできたわけでございますが、その上でわれわれの経済がたいへんな異常な発展を記録することができたわけでございまして、これはやはり資源保有国側の安定供給という基盤の上でもたらし得た結果であると思うのでありますが、それにかかわらず、格差がますます拡大しておるということでございますので、東南アジアにおける対日批判の根底には、やはりこの抜きがたい格差の拡大ということが根底にあると思うんであります。発展途上国側の旺盛なアスピレーションにかかわらず、現実のいかにも貧しさというものと、われわれの資源を踏み台にいたしまして異常な発展を遂げた日本その他先進国に対する抜きがたいジェラシーというものが根底にあると思うんでございまして、われわれはまず第一に、開発途上国の立場、その持つアスピレーションというものに深厚な理解と共感をまず持つことが第一だと思うんでございます。そういう反省が今日まで足らなかったということが一つの大きな原因であろうと思うのでございます。商業的手段によって、いつでも、そしてどこでも必要砥分量、資源を確保できたという条件の上で、われわれが安易に今日まで成長を続けてきたということを、この際根本からもう一度反省し直すということが根本になければならぬと思うのでございます。  第二は、やっぱりわが国は外に向かって経済的な進出をしなければやっていけない国でございますので、今後もいろんなところで、いろんな摩擦が起こり得ると思うのであります。友好国でありましても摩擦がないとは言えないわけであろうと思うので、そういうものが全然ない世界というのは考えられませんけれども、起こるべき摩擦というものは、そういう理解と共感の上に立ったものでなければならぬはずでございますが、今日までそういう反省に根ざしたものでなかったということを、この際十分考えておかなければならぬと思います。  それから同時に、わが国の国民性といたしまして、仰せのように非常にバイタリティーに富んだ国民でございますし、なりふりかまわず非常に活動的な国民でございますが、それがいかにも異様な姿で他民族に映るということも避けがたいことと思うのでありますが、それはそれといたしましても、その経済的な進出活動、経済的営為というものは、先方の社会の中で、その商慣習あるいは一般的な社会的な慣習にメローした姿において行なわれれば問題は少なかったと思うのでございますけれども、そういうことの理解が乏しかったことも、われわれの反省の資にしなければならぬと考えております。  しかしながら、同時に対日批判というものを、全部日本側の責任ということに見ることも私はオーバーに過ぎるんじゃないかと思うのでございます。現地における政治、社会、経済のいろいろな条件の中に生まれた不満というようなものが、そこに一つのはけ口を見出した面がないとは言えないわけでございます。非常に対日批判というのは検討してみればみるほど複雑なものでございます。われわれが反省すべきものはうんと反省せにゃなりませんが、しかし、その解明と判断は一面的であってはならないんで、十分現地の事情もわれわれはわきまえてかからなければいけないと思うのでございまして、将来ともこういう問題が全然ないなんという世界はないと思いますけれども、少なくともこの起こる摩擦が、かつて日米間にありたように、日米間にもずいぶん摩擦があったわけでございますけれども、東南アジアにおける摩擦はちょっと性質が違うことでございますので、これはよほどわれわれが十分な反省の上に立って、マナーを直した上で、しかも起こる摩擦に処していかないといけないのではないかという感じがいたしておるわけでございます。われわれは謙遜でなければならぬと思いますが、同時にこれはまた、しり込みしてもいかぬと思うのでございまして、そこらあたりのかね合いはたいへんむずかしゅうございますけれども、これからのわれわれの課題として、今回の総理東南アジア御訪問に伴う教訓は、いろんな面から検討して、将来の指針にしなければならない要素をたくさん持っておると考えております。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 東南アジア経済外交という点で経済進出、主として民間側の大企業の進出なり投資、あるいはいろいろな形の経済援助なり経済協力、これが多岐にわたって、一般の人にはなかなか理解が困難なような状態ですが、きょうは高島アジア局長、御巫経済協力局長及び大蔵省の藤岡国際金融局の次長、通産省の森山経済協力部長農林省の岡安農林経済局長にも御出席を願ったんですが、これはなかなか多岐にわたって、これをどういうふうにまとめ上げてやっているのか、何かスーパーマーケットに品物がいろいろこう並べられたような形で、これが有機的にどういう形において結びついているのか、これは仏さまでもわかりますまいというほど、ふかしぎなひとつのヤマタノオロチになっているのですが、各省間における、各担当者の間におけるこの調整、話し合い、責任分担、そういうようなことは一応はできているんでしょうが、うまくいっていますか、大平さん。だんだん各省のセクショナリズムで外務省が切り取られてしまったような感じで、古色蒼然として外務省が骨がらみになっているような感じすら与えられる面があるんですが、どうですか、孤影しょう然ですか。何かこれは経済の問題はおれのほうのなわ張りだ、おれがやるんだという形で、どこにこの中心があるのか。実際どこに目がつき、どこに鼻がついているか、あるにはあるけれども、とにかくこれが全体の統一がついていないような感じがするんですが、それはあなたのことだから適当にやっているんだと思いますが、どういうふうにやっていますか。今度の事業団の統合の問題でも、なかなか苦心をして——その一半の苦労のことはわかりましたから、あとでそれは承りますが、どういうふうにしてやらなくちゃならないか、きめ手はないにしても、あなたたちが苦悩し、模索している面を一言承りたいと思います。経済外交というくらいじゃ、なかなか実績があがらないのじゃないかと思うんですが、そこに何か私はぼろも出てくるんじゃないかと思いますが、あまり長い時間がありませんから、むしろこれは大臣よりは御巫経済協力局長なり、あるいは大蔵省の藤岡国際金融局次長なり、その辺からひとつお答え願いたいと思います。
  18. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 戸叶先生指摘のように、経済協力につきましては、関係いたします省の数、機関の数が多岐にわたっておりまして、一見非常に把握しにくいような実情でございます。しかし、簡単に御説明申し上げますと、資金協力の面と技術協力の面とに分けて大ざっぱに見ることができると思います。  資金協力の面におきましては、私どもの外務省大蔵省、通産省、経済企画庁、これらの四つ、通常、経済協力四省庁と、こう申しておりますが、これら。それからそれぞれのプロジェクトに関係のある省というものが常時協議いたしておりまして、その協議して得ました結論をもって外務省が相手国と折衝して、相手国と合意が得られましたならば、外交上の様式を踏んで協定をつくっていくという、協定と申しますか交換公文をつくっていくというふうな仕組みになっております。  技術協力につきましては、今度の国際協力事業団のことは別といたしまして、従来海外技術協力事業団というものがございまして、これが政府資金によります技術協力を一手にやってまいりまして、これを外務省が監督してまいりましたので、たとえば農業の分野であるとか、その他特別な分野に、それぞれの分野につきましては関係各省と御協議申し上げて、その上で外務省から技術協力事業団に指令をして技術協力を実行させるというふうな仕組みになっておりまして、そういった面で、そういう協議をいろいろとしなければならないということで時間がかかるということはあるいはあるかもしれませんが、必ずしも無統制、無統一というようなことではなく実施してまいってきておるつもりでございます。
  19. 戸叶武

    ○戸叶武君 大蔵省のほう……。
  20. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) ただいま外務省のほうからお答え申し上げましたように、経済協力は財政金融、通商政策、その他いろんな面に関係しておりますので、私ども大蔵省のほかに通産省その他各省が密接に協議をしてきめておるわけでございます。ことに大蔵省について申し上げますと、財政負担がどうしても要るわけでございますので、財政の面、それからもう一つは、これは国際収支に及ぼす影響がございますので、国際収支の面からも見ておるわけでございます。  なお、大蔵省の特殊な問題かと思いますが、二国間の経済協力のほかに、世銀とかアジア開銀のような国際金融機関というのがございまして、そこの総務は大蔵大臣が任命されておりますので、そういう形におきまして、そういった国際機関の業務にもタッチしておりますということでございます。
  21. 戸叶武

    ○戸叶武君 通産省の森山経済協力部長、どうですか。
  22. 森山信吾

    説明員(森山信吾君) 経済協力のメカニズムにつきましては、先ほど外務省及び大蔵省から御指摘があったとおりでございまして、通産省も通商経済上の観点から、その一環といたしまして経済協力の業務を推進いたしておるわけでございますが、そのほかに一点申し上げておきたいことは、先ほど戸叶先生から御指摘のございました、日本の民間企業の進出が相手国におきまして摩擦を生ずるという現象は、残念ながら各地で間々見られることでございますので、通産省におきましては、海外貿易開発協会という財団法人を結成いたしまして、日本の企業が経済的に成功する反面、社会的にも成功をおさめていただきたいということで、関連の周辺インフラに対しましてソフトなローンをするという制度を始めておったわけでございます。これが相手国企業あるいは相手国の地域住民におきましても、かなり好感を持って受け入れられたところでございます。この制度はぜひ経済協力の一環といたしまして、今後も続けさしていただきたいということでございまして、ただ、財団法人組織でございますと、必ずしも資金面あるいはその構造につきまして、十分な対応のできかねるという問題もございますので、今回新たに創設が予定されております国際協力事業団の一環にこれを取り込みまして、新たなる観点からこの事業を推進さしていただきたい、かように存じておるわけでございます。
  23. 戸叶武

    ○戸叶武君 東南アジアには農林省関係が手をつけているところがたくさんありますが、特にインドネシアにおける、いわゆる三井物産とコスゴローとの結びつきのミツゴローですか、飼料確保のためにどの程度に成績をあげつつあるんですか、農林省のほうでは……。
  24. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 農林省といたしましても、先ほど関係各省が御説明申し上げましたように、特に技術協力を中心といたしまして私どもは協力をいたしているわけでございます。協力の段階につきましては、政府ベースの援助のほかに、民間べースにつきましても、私どもは技術等の協力の御要請があれば政府べースとは別に技術協力をいたしております。  御指摘のインドネシアの南スマトラ・ランポン州におきます三井物産と現地法人でありますコスゴローとの合併会社であるミツゴローの事業の実績でございますけれども、これは大体メーズの生産と、その収買並びに輸出等を目的といたします法人でございます。で、この法人の目標としましては、大体四千ヘクタール程度の直営工場を持ちまして、年間生産量としまして約二万トンのメーズを生産をする、さらに周辺の農場から十万トン程度のメーズを収買をし、これを輸出その他に充てるという計画になっておるわけでございます。四十四年に投融資の許可が出まして、さらに会社が設立されて、事業は開始されているわけでございますが、現在までに大体二千ヘクタール余りの直営農場が実際稼働いたしております。実績を申し上げますと、生産量としまして大体現状では約四千トン余り、それから周辺の農場からの収買量が約三千トン、それから輸出量が約五千トン程度の実績を示しておりまして、今後さらに先ほど申し上げました計画に沿って事業は伸展をする、こういうふうに考えておるわけでございます。
  25. 戸叶武

    ○戸叶武君 田中総理大臣が身をもってタイなりインドネシアで学生集団の激しい抗議を受けたので、先ほど若干の弁解もありましたが、一つは、学生集団の新しい目ざめというのは、自国における政治腐敗とまっこうからぶつかっていけないから、敵は本能寺にありで、これを政治腐敗の根源は日本経済進出にあり、日本の帝国主義の復活だという形において田中さんにぶつかった面も確かにあると思いますが、このことを私は軽視してはいけないと思うのであります。  ちょうど一九一七年に、ロシア革命が起きたあの年に、中国の周恩来氏は二十でございました。日本にあこがれて留学したのです。一年半滞在しました。私は、ちょうど一九六〇年安保闘争のさなかに、安保条約阻止国民会議の訪中代表団の団長として北京に行きまして、田中さんがつくり上げた日中国交正常化基本となるような共同声明をつくり上げましたが、中国の考え方と若干調整しなければならない点もありましたので、十一月三日人民大会堂で午後八時の調印を、朝の二時までがんばって合意を得たのですが、そのとき人民大会堂で周恩来さんが、私と廖承志氏と三人で印刷ができるまで待ちながら話したとき、あのときわれわれは日本にあこがれて行ったのだ、ところが日本は、二十一カ条によって、第一次戦争のどさくさにイギリスやドイツがやったような形において祖国中国の分割を企てた、帝国主義的侵略である。これに対してわれわれは抵抗を行なった。そして来たらんとするベルサイユ会議に呼応して、中国における民族的自覚の先頭切って留学生が東京やパリで騒ぎ出した。警視庁の弾圧によって、ちょうど西神田の蓬莱軒で会合したときだと思います。検挙されたり、ぶたれたりして屈辱を受けて、そうして泣く泣く祖国へみんな集団的に帰った。そして周恩来は天津、また湖南の毛沢東は図書館の雇いをしながら北京に、こういう連中が起こしたのが五・四運動で、あれから五十年の間に中国革命のにない手はその五・四運動の中から発生したと言ってもいいようなことなんです。  今度のインドネシアの学生の集団的な抵抗、政治家も軍隊も、国の中枢にいる者がみな腐敗してしまってどうにもならぬから、われわれが民族の憂いを代表して抵抗しようというところに、タイでもインドネシアの学生運動でもあの弾圧の中をくぐってだから、日本のかっこうのいい、あるいはニヒリスチックな抵抗運動と違って、民族的な目ざめの先頭に立って戦っているという印象を、素朴ながら私たちは受けざるを得ないのです。しかし、日本は金がある、留学生のめんどうを見よう、船に乗せてやろう、いろいろないいことをやっているようだが、新しい祖国の近代化のにない手になろうという青年たちに、ほんとうに魂を与えているであろうか、あたたかい気持ちで遇しているであろうか、私はこの留学生の支配復活を、経済セクショナリズム——これは文部省だ、あれはこっちだ、経済関係の協力の問題もばらばらだが、留学生の取り扱いもヤマタノオロチです。みんな役所のセクショナリズムで、そうして中心がない。こんな形で、ほんとうに日本に学び、日本人を尊敬し、日本人と親しみ、そうして帰っていくであろうか。中国の留学生、朝鮮の留学生は憤りをもって——もちろんそれが新しい祖国の復活の原動力になったということにおいては、皮肉にも日本が養成機関であるからそれはそれでいいとして、それと同じような結果を生んだらどうか。  イギリスにおける留学生に対する配慮というものは、各家庭において、たとえば、たいしたごちそうはしないが、午後三時なり四時のティータイムには家庭に留学生を呼んで、そうして軽いティーパーティーをやる。テニスをやって、そしてテニスの後のお茶をやり、ダンスをやる。そういう形においていろいろな家庭でもって一受けとめて、ああイギリスに留学してよかったという、ひとつの感謝なりプライドを持って学生生活をエンジョイすることができるような関係になっているが、日本に来て、軽べつされ差別されていって、魂を与えられないで、船に乗せてやる、りっぱな建物に入れてやるというけれども、そこに籠城して抵抗しなければならないような状態がいつ生まれないともわからないようなものなんじゃないか。お役所仕事というのは万事こうだ。そうかといって、請負仕事になれば、ボスがそれを食いものにする。こういう点に、何か心なきひとつの日本の教育に対する取り組み方というものを——このことは、外国の事情はよくわかっているのだから、外務省あたりの人がほんとうに骨を折ってもらいたい。それから外務省の先輩というものが、相当の能力があっても若くしていろいろな企業に吸収されたり、もう外務省はばかばかしいというのでいろいろにしたり、あるいはゆうゆう自適する人がいろいろあるけれども、もっと国際的な話し合いのできる場をつくっていく。現役から離れると収入はないけれども、そういうものにやっぱり経済的援功なり何なりして、やはり私は人間を育てる教育技術の場をつくり上げてもらわないと困るのじゃないか。  それと同時に、私はデンマークに行きまして、コペンハーゲンの東海大学の文化センターが意外な効果をあげているのも、あそこに茶室をつくり、やっぱり役所仕事でなくて、窮屈でなくて、そして自然な形で人々を迎える態勢をつくっているからである。ソ連圏の模範生であるブルガリアのソフィアに行ったら、日本の教育に学びたいというと、古い体制人たちはあの教育勅語だ、そんなばかげた錯覚じゃないのだ。近代化に行く過程の日本努力を新しい意義づけにおいて学びたいというのが、イデオロギーの違う、国家体制の違う国においても、後進性のある発展途上国のブルガリアやトルコにおいても盛んであります。そういうものを受けとめて、日本でいまさら教会をつくり、大学をつくり——なかなか骨折れると思うけれども、やはり外務省外務省の中に有能な人もいるし、非常な秀才な人の集りでもあるし、またそういうことに非常に関心を持っている者もあるのだから、どういう形でもいいが、この機会に私は教育文化センターみたいなものを一つ一つどういう形においてもつくって、そういう活動の中からさらに人材をつくるというのでなければ、お役所仕事だけで、エスカレーターに乗ってデパートを見物してくるというやり方では、私はほんとうの外交官をつくれないんじゃないかと思うのです。これは今度の特に——私はもう時間がありませんから結論にしますが、やはり日本憲法を十分理解した上で、われわれは武力によって、暴力革命によって変革を企てようとするのではない。激動変革の時代にわれわれは軍国主義の復活を阻止し、そして平和憲法にのっとって、われわれは日本の持っているものを世界の人々に貢献するのだ。ギブ・アンド・テークで、われわれもいただくものはいただきたいが、幾らでも役に立つことは役に立ちたいのだと、大平さんは先ほど言いましたが、それをもっと具体的に実践してもらいたいので、よその国に行って要らぬことを言って、イランの王国と日本の王制は同じだ——ばかな。だれがいったってそんな非近代的な、国家性格を誤解させるような発言は一国の大臣がやってはいけない。大臣あたりでは、中曽根君あたりは未熟者だからまあいいとして、それを吉國君あたりが、一部の憲法学者がこう言っているなんて参考意見で助け船を出すと、いきなり田中さんが、無教養のいたすところか知らぬが、それにかぶりついて、日本は王制だと、こういう憲法解釈の問題においても一国の総理大臣の言動というものは軽率であってはいけない。ほんとうを言えば、あそこから引きずりおろして、日本憲法を理解しないこの大ばかものめぐらいのことを言ってやっても、懲罰になってもそのほうが薬になるので、私の先輩田中正造が生きていれば、中曽根田中、何を言うか、といって必ず私は罵声を浴びせて引きずりおろしたと思う。  田中正造は、ちょうど明治三十六年二月十二日、私の生まれた翌日に牢屋から出て、牢屋に入ったのは直訴したためじゃない、直訴は半分精神病者だといって、まあ侮辱した話だけれども、牢屋に入れなかった。ただあとで、田中正造は牢屋には入れなかったが、渡良瀬川の農民が鉱毒問題で戦ったときに、みんなふん縛られて牢獄に入れられたので、それを弁護しようと思って裁判所に行ったら、金ぴかの紋章の中で、天皇の名によって冷酷な裁判官が人民を裁いている。その現状を見て痛憤にたえなくて、うっかりしたことを言うと不敬罪に問われるから、田中正造はうまく生理的な現象として両手を高くあげて、わあっとあくびをやった。あくび事件という、それで牢屋に入れられた。あくびもうっかりやれなかった。生理的現象で、おならなら取り締まられないが、あくびなら取り締まられるというので牢屋に入れられて、牢屋から出たとき彼は痛憤して、バイブルを読んで、日本の国だけでなく世界は軍備を全部なくさなければだめだ、陸海空を廃棄しなければだめだ、それでなければ道義的な国家というものはつくれないという、反戦反軍備のいまの憲法のような発言を予言者ヨハネのような声でもって叫び上げたのですが、私はいま日本において、いいかげんなごまかしで、なしくずしにおいて憲法をくずしてみたり、政治責任を持てない形において責任をとらせないように民族統合の象徴としたのは、聖徳太子の十七条憲法以来の政治を執行する者は責任をとらなくちゃならない、だれだって。天皇でも殺された人はずいぶんいる。イギリスでもチャールズ一世は断頭台に上げられた。フランスでも、ロシアでも。そういうことのないように平和憲法はつくり上げられているのに、明治憲法の弱点を知らないで、自衛隊を復活するのには、天皇制を復活して統帥権を置かないとまずいといって、カイゼルに指導せられて伊藤博文という学のない政治家が、世界の大勢を知らない政治家がつくり上げた明治憲法への思慕を依然として残していこうというような体制は許しがたい。これは私は今後における国会において、物価の問題だけで、現象面だけで戦うのでなくて、日本の国民が武力でなくて、ほんとうにわれわれは教育の力、経済的な運用、技術協力、マクロをもって世界の人々に当たっていくのだということを、特にまあ通産大臣ぐらいはしかたがないとして、外務大臣なり一国の総理大臣たる資格を持つ者は、あなたもそろそろ資格も持つのだが、やはりそういうことを堅持しないと今度のような、もう幾ら失敗をやったかわかりゃしない、軽率では済まないことになるから、もし政治的な利用と思われるような印象のもとにおいて、天皇がアメリカに行って万一のことでも起きたときに、だれが一体責任を持つのだ、そういう責任の所在も明らかでなくて、私の不徳のいたすところでは済まぬ。こういうふうに憲法における解釈と運用の問題がきわめてデリケートな段階において、こういうものに触れるとあぶないというタブー化されてきている間に、おそろしい底流が日本の中に生まれないとも限らないので、軽々率々に私は軽率のことわりでは済まないような言動は慎んでもらいたい。  ちょうど時間ですから集約してくださいということですので、これをもって私は結ぶ次第でございます。
  26. 宮崎正義

    宮崎正義君 大臣、私はすわったままで質問いたしますので、どうかそのままで御答弁願えればけっこうでございますので、どうぞよろしく。  いま、戸叶委員のほうから、歴史的な面から、あるいは憲法上の面から、また外交姿勢のあり方について、るるとお話や質問等で、御意見等を交えてお話がございました。これは私も同感でございますし、国際友好親善を促進するための基本的な考えをどこに置くのか。こういうふうに、これは現在の日本外交の面から考えましても、だれでもがそういうふうに考えていると私は思うわけです。と同時に、先ほど来大臣がおっしゃったように、永続的平和に対して最大の努力をしていくのだと、そうして切り文句的に申し上げてたいへん失礼でございますけれども、大臣のおっしゃったこの真意というものをとらえて私はいま申し上げているわけですが、信頼友好、これを中心にしてじみちな外交を進めていくのだというお話もございましたし、アジアに入ってアジアに返るというふうな話も御答弁の中にございました。信頼友好をもってじみちに外交を続けていきたいという、その信頼友好ということに対して、はたして今日までそういう姿勢で来たかどうかということを私は心配するものでございます。  と申し上げるのは、昨年の八月の八日に発生した金大中事件の誘拐事件等に見られる日本の今日にわたる軟弱外交と私は言いたいと思うのですが、この問題につきましても、外交的な決着的な、自主的な部分はまだこうであるというふうにもとらえていられないと私は見ています。さらには昨年の十月十日に田中総理が訪ソいたしましたときの共同声明文が、北洋安全操業問題などについて重要部分が欠落した問題、四十一カ所ある。こういったような問題。また同じ十月の第四次中東戦争によって起こされた石油危機問題、これに対する中近東の外交姿勢のあり方、これらについても問題点がいまだに残されている。さらには総理が東南アジア諸国を歴訪した際に見られた予想外の抗日、一月十五日のインドネシアあるいはタイで起こった反日学生デモを招いたあの日本外交といいますか、アジアに対する考え方の甘さ、こういった見通しの暗さ。またさらには天皇御訪米の時期をめぐる安川駐米大使の錯覚発言に伴うと思われる二月十九日の法眼外務次官の唐突とも言える更迭事件。これらを考えてみましても、いま申し上げました中にもありましたけど、田中首相が昨秋訪ソの際に、日ソ共同声明の北洋安全操業などの重要部分の欠落したそのことの責任問題等が尾を引いたものと見られているということも言えると思うのでありますが、こうした一連の失敗外交を、外務省の締め直しをするとも言われたこの突然の唐突とも言える人事更迭ということになっておりますが、むしろこの責任は総理や外務大臣にあるんじゃないか、これが国民の思っていることじゃなかろうかと、こういうように私は思うわけです。  まず、法案に入る前に、これらを通してのこれからの基本的な外交のあり方といいますか、さらに抜本的に変えていかなきゃならない、根本的に日本外交というものを考え直さなければならない重大な乾坤一てきに来ているという立場の上に立って、ひとつこの際、責任ある外務大臣の今日までの未処理の事件を通して御答弁を願いたいと、こう思うわけであります。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども申し上げましたように、たいへんむずかしい世界情勢になってまいりまして、この中で、わが国の名誉、生存、安全を守ってまいるということは容易ならぬ仕事でございます。外に問題を起こさないということで消極的姿勢に終始しておってはいけないので、われわれといたしましては、対米外交も対中外交対ソ外交も対西欧外交も対東南アジア外交も、乏しいながらやっぱり積極的に進めていかなければならぬと心得て、総理にも御出馬いただき、外務省全員が険しい局面の外交にさおさしていったわけでございます。その道程におきまして、いま宮崎委員から御指摘のように、世間から御指摘を受けておる数々の問題が出てきたわけでございます。これは、もとより御指摘を待つまでもなく、外交を預かっておる国務大臣である私の責任でございまして、事務当局の責任などという性質のものではないと思っておるわけでございます。これからさらに険しい事態に対処していかけなればいかぬわけでございますので、私は私の責任におきまして、外務省諸君、今日まで一生懸命にやってくれておりましたけれども、なお一そうたがを締めて、モラルを確立してやっていただきたいという趣旨で当たっていかなければならぬと考えておるわけでございます。そういう意味合いで、仕事の上におきましても、人事の上におきましても、私の責任で処置いたしてまいりましたし、今後も処置してまいる所存でございます。乏しい人間の集まりでございますから、間々間違いが起きたり、手抜かりが起こり得ないという保証はございませんけれども、そういうことのないように十分戒めてかかる決意で当たってまいる所存でございます。
  28. 宮崎正義

    宮崎正義君 先ほど来やりとりをしておりますそのことを私は伺っておりまして、同じような御答弁でございますし、大臣の、一人一人のモラールが旺盛になっていくことを考えていくようにしたい、そしてその人事のことについては一〇〇%自分が責任があるのだということ、そういう自分みずからをきびしく見詰められておる大臣とすれば、今回アジア局次長一人を配置をしたいという法律案をお考えになっておりますけれども、いま言いました一連のこの問題の終着点をつけるために、職員を罷免をして、それでこと足れりというようなことが、従来もこれからもあるんじゃ、これはたいへんなことだ、幾ら局をふやし組織の拡充をやり、また人的配置をどのようにつくり上げようとも、この一点がまず何よりも大事なことだと思うわけです。したがいまして、いまの大臣の御答弁が、外務省の今後の一貫した姿勢として十分に、二度とこういうふうな結末をつけないような行き方を考えるべきであり、大臣みずからの責任であるという御答弁がありましたように、責任をとっていくという、そこまで踏み切っていかなければ私はならないんじゃないかと思います。そして新たな日本外交姿勢というものを確立をしていかなければ、真の日本外交というものは立てられないんじゃないか、こう思うわけなんです。重ねてそのことのお考えをお聞きして、次に移っていきたいと思います。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、まず私自身が戒めてかからなければならぬわけでございますし、かりそめにも責任を回避してはならないわけでございますし、私の責任事務当局に転嫁するというようなことがみじんもあってはならないことは、仰せのとおりでございまして、そういう御趣旨、私全く同感でございまして、御趣旨のラインに沿いまして事に当たってまいるつもりでございます。
  30. 宮崎正義

    宮崎正義君 いま私が取り上げました個々の事件のことにつきましては、また後日委員会で取り上げることができますと思いますので、この法律案にかかわります。関係のある質問をしていきたいと思いますが、外務省設置法の一部を改正する法律案提案理由の説明にもありますように、対中国関係を安定的な基礎の上に発展せしめるとともに、その他のアジア諸国に対する経済協力等の広範囲な分野において積極的な対アジア外交を進める背景として、アジア局次長一人を置き、局長を、補佐し局務を整理するためと言われていまするが、この組織のことにつきましては、先ほど質問等がございましたので私は重複を避けまして、この局をつくるといいましても、何といっても人間関係の誠意といいますか、先ほど大臣の言われた信頼友好という、そういう面の上から考えていきまして、前回、これは四十七年度でしたか、国際交流基金法というものが施行されまして、これらの点からも国際友好を促進するための法律もできておりますので、この点の中からでも、問題点もずいぶんいろいろあると思うのです。いずれにしましても、いまの外交問題の中に商社の利害関係というものが相当諸外国の中に大きく影響性をもたらしてきているということは、今日の物価問題等でも明らかでございますが、いずれにしましても、いま申し上げました国際交流基金法の一つを取り上げてみましても、問題点を幾つかあげて、そしてお伺いをしてみたいと思います。  まず最初に、いまの福田大蔵大臣外務大臣時代に、ジャパンファンドの一億円の基金としたいと、経済界から出資するようにしたいと、こうも言われたと私は記憶しているんですが、こういう前外務大臣であった福田現大蔵大臣がおっしゃったその考え方というものと、大平外務大臣との考え方はどうなんでしょうか。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま宮崎先生、あの一億円は一億ドルの間違いじゃございませんか。  福田さんの構想を私は受けまして、そのラインに沿いまして、交流基金の整備と充実にいませっかく努力をいたしておるわけでございまして、福田さんと私との間に考え方の相違は全然ございません。
  32. 宮崎正義

    宮崎正義君 一億ドル、私の言い間違いでございました。  ところが、現在の状態はどういうふうになっているか、現在の基金の資金というものがどんなふうになっているか、御説明願いたいと思います。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 現在百五十億円政府が出資いたしておりまして、来年度百億円これにプラスしていただく計画で進めております。そうしてさらに残余の五十億円は再来年度に期待しておると。で、政府出資だけで三百億円、あなたの言われる一億ドルは調達いたしたいということで進めております。
  34. 宮崎正義

    宮崎正義君 そこで、経済界から、民間から出資させたいというふうに言っておられますが、今日の状態はどんなですか。どの程度の出資額をしているか。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいままで民間出資金というのはたいへん少のうございまして、六百十万円でございます。しかし、別途交流基金に対して寄付金収入というのがございまして、昭和四十七年度は七千九百六十万五千円、それから四十八年度、つまり四十九年二月現在、今日まで四億五千百四万円、合わせて五億三千六十四万五千円、これが寄付金として交流基金が民間から受け入れております。
  36. 宮崎正義

    宮崎正義君 そこで、通産省の方が見えていますのでお伺いをしたいのですが、商社の産業別連合会の寄付金の点ですね。どなたですか。この寄付金の産業別連合会の、いま大臣から御答弁がありました四十八年度四億五千百四万円という、この内訳もさりながら、商社がどの程度の貿易取引高を持っているか。アジア方面あるいは中南米方面等で、詳細に貿易取引額、そういうものをひとつお答え願いたいと思います。
  37. 鯨井こう一

    説明員(鯨井こう一君) 通産省の行なっております貿易業態統計の昭和四十七年度の数字で申し上げますと、商社の取り扱い高につきましては、全世界合計で七十二兆三千八百億円。で、これを地域別に申しますと、東南アジアが十八兆三千二百億円、中近東二兆七千九百億円、西ヨーロッパ九兆三千億円、北アメリカ二十三兆八百億円、中南米四兆九千二百億円、アフリカ六兆三千百億円、太洋州二兆七千七百億円、共産圏四兆八千五百億円。以上でございます。
  38. 宮崎正義

    宮崎正義君 わが国のこれは世界の合計の分でしょう。日本の出ている分ですね。
  39. 鯨井こう一

    説明員(鯨井こう一君) 日本の輸出でございます。  次に、輸入を申し上げますと、トータルで五十七兆二百億円、うち……。
  40. 宮崎正義

    宮崎正義君 発言中ですけど、あとでこの資料を出していただけばけっこうです。時間がございませんので。進めていく関係がございますので、あとで資料をひとつ委員長、お願いしたいと思います。そしてこれはまた別な角度で質問してみたいと思いますので。  きょうは、いまお話しのありました東南アジア十八兆三千二百億ですね、十八兆三千二百億の商社の貿易高があり、これの利潤というもの等がどういうふうになっているのか、それらもわかりますか。
  41. 鯨井こう一

    説明員(鯨井こう一君) その数字は現在持っておりません。
  42. 宮崎正義

    宮崎正義君 なぜこういうことを聞くかといいますと、外務大臣ね、この商社、民間側に出資をさせる、一億ドルの目標をきめて。そしてやっていきたいんだというお考えですね。そのお考えであるその中から、その立場から考えて、商社に出資させていくという強い外務省の考え方というものをわからしていかなけりゃいけないんじゃないでしょうか。いまちょっとお伺いしただけでも、東南アジアで十八兆三千二百億からの貿易取引額があるわけなんですね。これは収支決算等を見なきゃわかりませんけれども、この取引額の大きさから見ていきましても、当然もう少し強い立場で、しかも私から言わせれば、言い過ぎかもわかりませんけれども、商社は外務省の、早く言えば大使館とか総領事館とか、そういう政府の出先機関を利用してもうけさしてもらっているんじゃないかとも一面は言えると思うんです。いろんな面から考えまして。そうなれば、もっと積極的に基金を取っていくということだって、この考え方はあると思うんですがね。それがまたいいほうに使われなきゃ何にもなりません。そこで、この法律案に基づくところの外交的な経済的な発展というか、経済的な援助といいますか、そういうふうなものも加味していけるんじゃないかと思うんですがね、どうなんでしょうか。
  43. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ、商社、総合商社というのは、世界的に申しますと、日本に非常に特有の企業体でございまして、これはこれなりの大きな役割りを果たしておると思います。それで、おそらく年間数十億円の利益は大商社はあげておると思いますが、商社の立場から見ると、そのうち地方税、国税等の姿で半分以上はまあ税金を納めるわけでございますので、本来まあ文化外交というのは政府がやる仕事であって、われわれはちゃんと税金の姿で納めておるという言い分が一つあると思います。  それから第二に、しかし、交流基金として民間が自発的に拠出をいただくということはわれわれも期待いたしておるわけでございますし、これには免税特権を与えてございますので、それだけ利益から控除されて、あと課税されるということになるわけでございますから、そういう道も開かれてあるわけでございますので、宮崎さんおっしゃるように、そういう方面に自発的な拠金をお願いしたいというのがわれわれの立場で、その立場は変わっていないわけでございます。しかし、この商社といえども一つの企業でございまして、得することもあれば損することもあるし、全く拠金をするというのは自発的なことでございますから、こっちから強要するわけにもまいらないわけでございまして、精一ぱいPRいたしまして御理解を求めていきたいと考えております。先ほど御答弁申し上げましたように、出資金、寄付金収入というのが、まあこの程度にとどまっておるということは、たいへん当初の期待から申しますと、まことに乏しいわけでございまして、なお一そうPRにつとめまして、充実をはかってまいりたいと考えております。一応、一億ドル目標というのは政府資金で用意するつもりでございますけれども、われわれといたしましては、それは第一段の目標でございまして、文化外交を欧米各国並みに展開してまいりますのにはとてもこういう金額ではいけませんので、将来、政府からはもとよりでございますけれども、民間からももっと大口の出資ないし寄付金を期待しなければならぬと考えております。
  44. 宮崎正義

    宮崎正義君 自民党の先生のほうにも、大臣のほうにも、相当の政治献金等があるような面も論議をさんざんされているわけです。そういうふうな面から考えますと、大体この考え方を方向転換をしていかなきゃいけないんじゃないかと私は思うから申し上げているわけで、まず、いまお話がありましたように、私も申し上げましたように、企業ですから損得はあるでありましょう。しかしながら、総理がタイに行ったときでも同じでございますが、結局東南アジア諸国民を無視したエコノミックアニマル的な行動、それらのようなことが、その国々の方々に、東南アジアの方々に反日思想というものをもたらしてきているというこの面なんかも論議をされてきているわけであります。こういった形をさせないように、そしてしかもこの流用していく当基金の寄付金は免税についてという、この法律の中にも明確になっておりますし、こういったところに、少しでも基金のほうに基金をもたらしていくという考え方というものがほんとの考え方だと思うんです。ですから、政治献金というような問題点が取り上げられ、云々されているという点、こういう点から考えていきましても、どうなんですか、お考えは。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま申し上げましたように、もっともっと民間に期待したいと考えておりますし、これはわれわれのほうのPRの努力が必要なわけでございまして、一そうこの趣旨を申し上げて御理解を得て、民間からの拠金をもっと大幅に仰ぐよう努力いたしたいと考えます。
  46. 宮崎正義

    宮崎正義君 一億ドルが目標である、それでもまだ少ないという御答弁もございましたけれども、確かにそうだと思います。しかし、現在のこの資金の運用については、非常に先進国のほうに多く支出されて、後進国のほうにはその支出額が少ない、このように思うわけです。こういう点から考えまして、一つの例をとってみますと、田中総理は訪米したおりアメリカの大学十校ですか、あれに一千万ドル出すようにしていった。これなんかも、アメリカのほうに基金が相当出ておりながら、さらに、かつなお出しているという面から考えていきますと、アフリカだとか中東方面の諸国の後進国のほうに、どのような後進国に対して基金を支出してやるか、こういう点が非常に間違った行き方のように私は思えてならないのですがね。こういう点はどうなんでしょうか。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 総理がアメリカに参りましたときに、確かに御指摘のように一千万ドルの日本語あるいは日本研究基金としてこれまで貢献された十大学を選定いたしまして、百万ドルずつの基金を寄付いたしましたことは事実でございます。で、過去百年間ずいぶん日本アメリカからいろんな形で援助してもらったわけでございまして、アメリカに対して今回措置をとったことは、いわば反対給付としてはまだ私はずいぶん足らないとさえ思っておるんでございまして、その点は御理解いただけると思いますが、交流基金の使途についてのお尋ねでございますが、本年度の交流基金の使途は、御指摘アジアについて四六%、アメリカについて二〇%という振り分けになっておりまして、特にアメリカに重点を置いているわけではございませんで、仰せのように、アジアの各大学で日本研究に従事しておるところに対しまして、通常予算の中から拠出をいたして、これを支援するという体制をとっております。
  48. 宮崎正義

    宮崎正義君 私が申し上げていることは、アジアには四六%とおっしゃいますけれども、アメリカのいままでの支出している面から、いろんな面からこう考えてみまして、経済大国の先進国のほうにはかなり厚く出ているわけです。後進国のほうには少ないんですね。だから、アメリカに一千万ドル出す考え方を、後進国のほうに出していけるような考え方を持たなきゃいけないんじゃないかと、こう言っているわけなんですよ。かりにアフリカヘ行った場合とか、あるいは中東方面へ行った場合、アジアの方面へ行った場合に、思い切って、米国へ行ったら米国でいいかっこうして一千万ドル出そう、それは少ない、それは確かに少ないかもわかりませんけれども、いまの立場から見れば少ないかもわかりませんけれども、そういった考え方を後進国のほうに思い切って向けるべきじゃないかということを言っているわけなんですが。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それはおっしゃることも理解できますが、アメリカの十大学に一千万ドル出したというのは、これらの大学の日本研究あるいは日本語研究というものの財政的な問題が、ごたぶんに漏れず各大学とも非常な財政難におちいっておりまして、そういうものを続けてまいることがたいへん危ぶまれてまいりましたということも配慮いたしまして、これを基金として与えることによって、そういう体制を過去ずっと続けてきたものが途中で挫折しないようにしていただこうという趣旨も含めてやったものでございます。いま新しく白紙に絵をかく場合には、宮崎先生おっしゃるように、金持ちの国、先進国あるいは開発途上国、むしろ開発途上国にこそ力点を置いてやるべきじゃないかという点につきましては、私もあなたと同感でございまして、そういうライン、そういう方向でやはり考えていくべきじゃないかと、せっかく文化交流基金を使うという場合におきまして、そういう配慮は私はぜひ必要だと思います。
  50. 宮崎正義

    宮崎正義君 大学ばっかりじゃないんでございます。御存じのように、それこそ国際文化交流の、大学だけに充てられた金じゃないわけです。そういうふうな面が大きく占めているということであって、ですから、相手国によってはみな違うと思います。大学のないところもあるでしょうし、また大学がありながらも続けていくことができないかできるか、そういうことも危ぶまれるところもあるでありましょうし、それはみな違うと思います。ですから、これは大学だけに出しているのじゃないのだということ、文化交流の中に出ているものの中に考え方というものをきめていかなければいけないのじゃないか、基本的な考え方をしていかなければいけないのじゃないかということを言っているわけです。だから、先進国よりも後進国のほうに考え方を重点にもっていったらいいんじゃないかと、こう私は申し上げておるわけです。それは御理解できますですね。  そこで、わが国の、先ほど御答弁がございましたように二百五十億円ですか、今年度百億ふやして、それに補助金を七億二千五百万ですか、それらが加味されて基金となっていくわけであります。あと民間の寄付金によってできるわけですが、そこで、じゃ各国の、欧米諸国の文化交流に対する予算わが国との比較、それをちなみに私資料のほうで見てみますのですが、これは邦貨換算になっておりますが、米国では百六十三億二千四百万円、これは一九七三年の七月から一九七四年六月の要求額、英国が百五十三億九千四百万円、フランスが五百九十億三千九百万円、ドイツが三百七十九億八千三百万円、イタリアが九十四億四千四百万円、日本がいま申し上げましたように、この補助金を入れて二十四億円でございますね。各国との財政規模、これはアメリカ、英国は別として、わが国との財政規模という面から見て、大臣、どんなふうにお考えになりますか。わが国の国際交流基金百億円を除いているんでしょう。除いておりますけれども、この運用できる問題の面から考えてみて、どうお考えになっておりますか。
  51. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 各国の軍事費の比較の場合でも、宮崎先生御承知のように、各国の予算の立て方が違いますから、一がいにフラットに出した金額だけで多い少ないの比較ができないように、文化予算もどういう根拠でどういう数字を拾っていまあげられたような金額を出したか、これ、よく吟味しないといけないと思います。しかし、それにしても、日本文化外交に使っておる予算が希薄であるということは、もう御指摘のとおりだと思うんです。それで日本もいままで政治だとか経済とかいうような外交に力点が置かれて、文化外交というのは等閑に付しておったきらいが確かにあるわけでございまして、ほんとうは、これからは実のある文化外交というのが、ほんとうのもう外交として一番気をつけにゃいかぬ部面でないかとわれわれも考えまして、まあ福田さんがこういう基金を考えつかれたということも、そういう趣旨と思います。それでわれわれもこのラインでもっともっと充実さしていって、先進国並みにはなるべく早く追いつきたいものと考えております。     —————————————
  52. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、源田実君が委員辞任され、その補欠として高橋邦雄君が選任されました。     —————————————
  53. 宮崎正義

    宮崎正義君 いま大臣から御答弁ございました中に、どういう面をとらえてこの予算を立てているかわからぬとおっしゃられましたですね。私もそれはわかりませんけれども、このいま申し上げた出所は外務省文化事業部の資料として出ているわけです。したがいまして、とらえた面というのは、この外務省文化事業部がとらえているんですから、この諸外国の問題を、どこをとらえたかというようなことはわかっていると思うのですがね。
  54. 堀新助

    説明員(堀新助君) 私、文化事業部長でございますので、御説明させていただきます。  いま大臣が申しました趣旨は、お手元の資料は各国の文化交流事業予算として全体をまとめたものでございます。ところが、わが国におきましては、先ほどから申されております数字は国際交流基金の予算でございまして、これ以外にわが国文化活動をやっておるものが多々ございます。政府におきましても、文化庁の予算はその先ほどから申されました数字には含まれておりませんので、そういう点で予算の立て方が違うであろうという趣旨でございますので、御了解いただきたいと存じます。
  55. 宮崎正義

    宮崎正義君 そこで、国際交流基金法が発足しても、いまお話がありましたように、文化庁も大臣、金を出しているのですね、国際友好親善をはかるために。それからさらには、今度は文部省が独自で日本語の普及のあれをやっている。で、その窓口が一ぱいあるわけですよ。ですから、諸外国に対する窓口が幾つもあるわけですね。ですから、これらも、この法律ができる前でもやはり窓口が多くて事務的処理が非常にめんどうくさかったということもありますし、また現地の人から受け取れば、もらうところは違うわけなんです。だけども、日本政府なんです。窓口が違っても。こういったような関係で、いまお話が出ましたから私聞くんですが、これは思い切って一元化して、そして国際交流基金というせっかくの法があるのですから、それに統合していくということが日本政府としてのやり方じゃないでしょうか、どうなんでしょうか。
  56. 堀新助

    説明員(堀新助君) 国際文化交流と申しましても、御高承のとおり、いろいろな面があるわけでございますので、これを直ちに一つの機関に統合するということはきわめて困難かと存じます。まあ外国の例を引くのはどうかと存じますけれども、外国におきましてもやはり分野におきまして交流に携わる機関が分かれております。ただ、分かれておりますけれども、私たちは文化庁、それからそれ以外の文部省の部門もございますが、常にきわめて密接な協議を行なっておりまして、予算要求の段階におきましても、また予算の執行の段階におきましても、きわめて密接に協力しておりますので、目的が多元にわたるというようなことはないと存じます。また、窓口といたしましては外務省が対外的には一本となっておるわけでございまして、たとえば、あのモナリザが近く参るわけでございますが、これのフランス側との折衝はすべて外務省がやる。ただし、これは国内において行なう展覧会でございますので、その予算は文部省で取っていただくと、そういうふうにやっておるわけでございます。
  57. 宮崎正義

    宮崎正義君 それはわからないわけじゃないんですよ。しかし、国際交流基金の設立から見た各国への支出の中にやはり日本研究の援助、日本語の普及というのが入ってるわけです。文部省にも入ってるわけですよ。こういったような出し方というふうなものなんかを——外務省が一本でやってると、外にはやってるとおっしゃいますけれども、そのやはり考え方を、セクショナリズムのような考え方を捨ててしまって、だんだんと一元化していくほうがいいんじゃないでしょうか。今回また考えられてる法律案でも、移民問題だとか技術事業団の問題だとか、今度ひとつ統合してやっていこうというのも、そういう法律も今後出てまいりますけれども、そういう面から考えていっても、これはだんだんとそうあるべきじゃないかと私は思うわけです。そうすれば、予算の何というんですか、悪いことばで言えばぶんどりみたいなことじゃなくて、総体的な外務省としての諸外国に対する日本語普及なら日本語普及という一本にせめて統合したものを予算化していくというようなことになれば、将来はいいんじゃないかというふうに私は思うんです。そういう面から申し上げてるわけなんです。  いまモナリザの件が出ましたけれども、私ども行きましても、向こうに、日本日本紹介という問題点等にいろいろあると思うんですが、歌舞伎だとか、あるいは絵画だとかお茶の湯とか、あるいはいけ花の会だとか、美芸術品等々の文化交流というもの、これはそれぞれの大きなぼくはメリットがあると思いますが、この点も民衆レベルといいますか、国民レベルのほうに文化交流をしていくような、特定な姿からそういう国民的な交流のレベルにもう変えていかなければならないんじゃないかと思うんです。いまモナリザの件が出ましたから、将来の考え方について大臣に伺っておきたいと思います。どうでしょう。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたの言われること、私もよく理解できるわけでございますけれども、私は日本人みんながそれぞれりっぱな国際人としての日本人になっていただき、国際的感覚を十分身につけ、国際的マナーを十分身につけていただくことが一番望ましいと思うんでございます。したがって、文部省におかれても国際的な関心も持たれ、国際的なポリシーも持たれてやられることはそれ自体けっこうだと思うんでございますが、文化事業部長も言われましたように、そういうものが外に向かってばらばらで対処するということになりますと困りますので、その点につきましては、外務省でひとつ調整さしていただいて乱雑にならぬようにいたすべきではないかと考えております。交流基金に全部ファンドをまとめて、そこで一元化するというのも一つの方法でございますけれども、必ずしもそうならなくても、別な機関でやられておりましても、われわれのほうで十分調整をすることによって秩序を保っていくというように現在いたしておるわけでございますが、そういう方法によっても目的は達せられるわけだし、またそれなりのメリットはあるように思うわけでございまして、これは考え方といたしまして、確かに二つの考え方はあり得るわけだと思いますが、いずれを選択するかということになりますと、現在先生がおっしゃるように必ずしもなっていないわけでございますが、先生のおっしゃる意味の、外に対して無秩序にならぬようにという歯どめは、外務省がちゃんと処置していくべきものと私は思います。
  59. 宮崎正義

    宮崎正義君 時間がございませんから、しぼって質問をいたしますが、この国際交流基金へ文化事業の予算が大部分こう移っていった関係で、現地の大使館とか総領事館とか領事館とか、予算上の問題で、この文化交流、広報宣伝、そういったようなもので非常に予算が少なくて困っていると、こういう声をずいぶん私は聞いてまいりましたけれども、人員、定員の不足といいますか、定員の問題につきましては、在外公館別の実員数というこの数字をいただいて、資料をもらっておりますが、この資料の員数ではたしていいのか悪いのかということです。それからさらには、昭和十四年度以降の定員の増減の経過表というものも見ております。先ほども質問の中に、昭和十三年と今日との差額の人数なんかの御答弁ございましたけれども、考えてみれば、国連の発足当時は五十カ国ぐらいでしたですか、現在では百三十五カ国ですか、こういったような関係になって、急激に大使館あるいは総領事館、領事館とか、あるいは政府代表部等の建物等も急激に用意しなきゃならない。また人員もふやしていかなきゃならない。とうてい現在の定員数では間に合わないということも聞いております。私どもが中南米に行きましたときでも、この問題はうんと言われました。どうにもならない。公邸を買っても、日本の体面を保つ、ある程度までの備品も什器もほしいんだけれども、それすらないから、自分たちの持っている物でこの什器、備品をかろうじて備えているとか、あるいはボーイが、ある大使館では二名、女中が一名、これでは掃除するのも、お客さんが来た場合でもどうにもならない。こういったような声もありますし、ペルーあたりの問題でも、こういうことが非常に問題として取り上げられておりました。  それから年間の文化広報関係予算というものは三百五十ドルというのです。三百五十ドル、年間予算が。日本を紹介するためのテレビのフィルムを制作して、一本——まあ本国から送られるものがありますけれども、制作してその宣伝する費用だってね、これじやどうにもならない。ほんとうの意味日本の紹介というものはできっこないと、こういう点も一つも改良されてないんだというようなことを言っておられました。こういう面から考えまして、今度アジア局次長一名増員するとか言いますけれども、私は国際交流基金の問題点から取り上げてみて、その一部分の大学の助成のほうに多くお金が出ていく面を、もう少し全体的な立場の上から考えていって、どうあるべきかということが、次長をふやしていく一つのやはりポイントにもなるのじゃなかろうかとも思います。  まあ、こういうふうな点を一例をあげながら取り上げてみましたのですが、大体三百五十ドルで一年間の広報宣伝をやれなんて、そんなような調子のことでは、ほんとうの意味の、先ほど大臣がおっしゃった国際交流の友善関係とか、あるいは信頼関係とか信用関係とか、そういったようなものをどうやって現地の職員が果たしていけるのかと、こういう点なんかもどうお考えになっているのかですね、お伺いしておきたいと思うのです。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いままでの外交が、先ほど申し上げましたように、政治外交経済外交偏重になっておりまして、文化外交を等閑に付しておったことは仰せのとおりだと思うのでございます。われわれといたしまして、ほんとうの意味の魂の触れ合う外交ということから申しまして、また政治外交経済外交をほんとうに生かす基礎をつちかう外交といたしましても、文化外交という点については、いまのような姿ではとてもいけないと考えておるのでありまして、仰せのようなラインに沿いまして一そう努力をしてまいりたいと思います。  また、限られた予算でございますけれども、その配分等につきましては十分配慮して、役に立たないような予算の配分になっておる個所がかりにありとすれば、それは十分是正しなけりゃいかぬことと思って十分注意いたしたいと思います。
  61. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  62. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記を起こしてください。
  63. 宮崎正義

    宮崎正義君 先ほど、世界の商社の取り扱い高ですね、七十二兆三千八百億、これに対する場所と、それから取引額の、商社と、それから額と、この三年間くらいでけっこうですから、資料を出していただきたいと思います。この次の機会に研究していきたいと思いますから。
  64. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 通産省当局に申し上げます。  宮崎委員から要請のありました貿易に関する資料は、委員会として要請いたしますので、次回御提出をいただきたいと思います。
  65. 山崎昇

    ○山崎昇君 ほとんど時間がありませんから、端的に二、三お聞きをしておきたいと思います。  去年私は議運の理事であったものですから、河野議長と一緒に約三週間ばかり回りまして、その際、大使館並びに領事館あるいは民間商社の方々とできるだけ多くの交流を持って、いろいろ意見を聞いてまいりましたんで、本来ならいろんなことを聞きたいのですけれども、二、三点にしぼってお聞きをしておきたいと思います。  その一つは、先ほど大臣もわが党の戸叶委員の質問に、外務省人間が足りないということはあなたもお認めになっているんだが、私どもも外国へ行ってみまして、実際大使館の職員、あれだけでどれだけの仕事ができるんだろうかという疑問を持ちます。たとえて言えば、スペインの大使館は大使以下七名だと、一体七名でどれだけスペインの事情がわかって、そして分析をされるんだろうか、私ども疑問に思うんですね。そこへ日本からもたくさんおいでになる。商社の方々も行く、旅行者もおる。そういう世話等もやったら、一体大使館の本来の仕事はどれだけできるんだろうかというふうに私ども疑問を持ちます。そういう意味で、現地の大使館あるいは総領事館、領事館というのはきわめて私は貧弱でないかと思うんです。これについてやっぱり大臣からお聞きをしたい。  それからもう一つは、その国の習慣がずいぶん違う。私は、まあスペインが特殊な事情だったものですからよく聞いてまいりましたが、簡単に言えば、あそこの公務員の勤務時間は朝九時半から午後一時半まで、そして午後は三時間休んで、四時半から六時半まで勤務で、あとは勤務がない。土曜日、日曜日はもちろん休みである。そして昼間の昼食時間が二時間で、夜のめしの時間が二時間だと、こういう慣習のところに日本流で勤務せいったってできるわけでもない。そういうこと等もかみ合わせて私は考えますと、現地の大使館とか総領事館とか領事館の体制というのがほんとうになっとらぬじゃないだろうかと、少し極端な言い方をすれば。そういう意味で、総体的には定員の問題と関連をしますけれども、一体大臣は現地の機関のこういう強化というものについてどう考えられるか。  それからあわせて、下級の三等書記官とかあるいは理事官とか、こういう方々から私どもに主として意見がありましたのは、ほとんど、一たん赴任するというと、いま三年に一ぺんぐらいになっているそうでありますが、本国に帰郷もできない、こういう実情にあるようですね。したがって、やはり外国勤務をやるわけでありますから、そうしょっちゅう帰れないにいたしましても、もう少しそういう面の配慮があって私はいいのではないか。  それから日本と違って、外国の場合にはほとんど自分の家へ呼んで交流をするという。上級職については多少食糧費なり交際費があるかもしれない。しかし、下級職については、外務公務員としての手当は幾らかもらうかもしれぬけれども、そういうものについてはほとんど見られていない。こういう実情からいくと、私はほんとうの情勢をつかむのはそういう諸君ではないかと思う。そういう意味で言うと、私は外国に勤務される大使館員等の扱いというものをもう少しめんどうを見る必要があるんじゃないかと思うんだが、まず、その点お聞きをしておきたいと思う。
  66. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一つ定員の問題、一つは処遇の問題のお尋ねでございます。  わが国は九十三の大使館を持ち、四十一の総領事館を持っておるわけでございますけれども、一応形はできておるわけでございますけれども、仰せのように、配置した人員が非常に菲薄でございまして、どれだけ実のある仕事ができておるかということにつきましては、私も同じ憂いを持っているわけでございます。  定員の問題につきましては、先ほど戸叶さんからの御質問にもお答え申し上げましたように、総定員法に縛られておるわけでございまして、その中で可能な限りつとめておるわけでございまして、四十九年度の予算案におきましては百名の増員をお認めいただいたわけでございます。現地雇い等によりまして若干の補充はいたしておりまするけれども、もっともっと充実した活動を期待いたしますには、現在の体制仰せのようにまことに不完全なものであることは十分承知いたしておるわけでございまして、その充実に向かって一そう精力的に努力しなければならぬと考えております。  それから第二の処遇の点でございますが、この点につきましては、ちょうどいま多少予算と制度にかかわってまいりますので、官房長から説明させたいと思いますが、現地の慣習とマッチさせなければいかぬという点、あるいは休暇制度、帰郷制度、そういったものを考えろという御指摘で、確かに問題点であると承知いたしておりますが、現在どういう考えでどのようにやっておるかという実情につきまして、官房長からひとつ御説明をさせていただきます。
  67. 鹿取泰衛

    政府委員(鹿取泰衛君) 在外公館につとめます館員の手当の改善につきましては、四十九年度の予算と、それに伴います法律の改正をいまお願いしているわけでございますけれども、二点、簡単に申しますとございまして、一つは、委員の先生も御承知のとおり、国際的に為替相場がいま急激に変動しております。また世界的なインフレでございます。そういう急激な変化に迅速に対処するために、従来、在勤手当をすべて法律で定めておりましたのを、これをやや弾力的に運用できるようにしたいと考えまして、在勤基本手当につきましては法律で基準額を定める、定額でなくて基準額を定めるということにいたしまして、その上下二五%の範囲内で政令で支給額を設定するということにいたしたいと考えておるわけでございます。  それから実態的な額の増加につきましては、四十九年度の予算でお願いいたしておりますのを平均いたしますと、実質改善は約一〇%、そのうち基本手当は平均約八・五%でございまして、住居手当のほうは平均一二・五%、これをさらに実質平均いたしますと、すべて取りまぜまして約一〇%という感じの要求をいたしております。
  68. 山崎昇

    ○山崎昇君 こまかなことは、ほんとうは一ぱい聞きたいんですが、時間がありませんから、この程度でこの問題はやめますが、最近は特に一般旅行者が多くなって、大使館だとかあるいは領事館の職員に対していろんなことが持ち込まれてくる。それを処理するだけでもたいへんだということを私も聞いてまいりました。あわせまして、各商社がたいへんな人を派遣をしていろんな買い付け等をやっているわけです。ところが、大使館あるいは領事館には専門官が少ないというんですね。ですから、一人の人間でいろんなことをやる。とてもいまのような世の中ではできるものでないというんですね。とりわけ開発途上国の場合なんかは、アフリカへ行ってみますと、一人で南へ飛んだり東へ飛んだりしていろんなことをやったって、できるものではないという。もう少し専門官というものも派遣をしてもらいたいという意見もありました。したがって、きょうは詰めることはできませんが、これは私ども現地で見てきた目でありますから、ひとつ要望として大臣に申し上げておきたいと思うんです。  それからもう一つ、現地でいろいろ私ども要望されました中に、海外に勤務する一もちろん在外公館の公務員もそうでありますが、民間から行っている商社員等の子弟の教育の問題がたいへん私どもに要望されました。スペインのラスパルマスでも今度日本人学校ができました。あるいは香港でも、あるいは南アフリカ共和国のプレトリアでも、いろんな懇談をやりました際に異口同音に出てまいりますのが海外勤務者の子弟の教育なんですね。  これは時間がありませんから私のほうから具体的に聞きますが、一体、海外勤務者の子弟の特に義務教育でありますが、これは国が責任を持ってやるんですか。あるいは、そこにいる邦人に自主的にやらせて、ただ国はそれに対して多少補助をするというやり方をとっておるのか。まず、この海外勤務者の子弟の教育について、基本的な考え方をお聞きをしておきたい。これは文部大臣とそれから——きょう大臣おりませんから、文部省と外務省が共管のようでもありますから、両方から聞いておきたいと思います。
  69. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) まず、第一点の義務教育の問題でございますけれども、日本で義務教育といわれておりますのは、日本の国内法によりまして、日本の国内におる日本人に対する教育を国は義務教育として無償でやっておるわけでございます。御指摘の海外の子女の問題につきましては、これはきわめて法的な言い方をいたしますと、日本政府とかかわりのないという問題ではございますけれども、現実の問題としまして、これらの子女が日本で教育を受け、海外に参りまして再び日本に帰ってきます場合、いろんな教育上の障害があるということでございまして、そのために、昭和三十年代の初めごろだと思いますが、ごく一部の地域に、現地の日本人の発意によりましてそういう学校ができまして、それが一つの母体という先例になりまして、順次各地に学校ができていった。特に昭和四十年代に入りましてから急激にふえまして、四十年までは五つしかございませんでした学校が、現在四十近くになっておるわけでございます。  海外子女の教育に対する国の態度は、こういうふうな歴史的な経緯と、それからやはり国が先生を送るとか、教科書を送るとか、あるいは教材も送ってやる、あるいは校舎の借料も払うというような実質的な援助がない限り、やはり現地の日本の方々の負担は相当大きくなるということから、昭和三十年代の中ごろから、すでにそういう学校に対します援助を始めておるわけでございます。したがいまして、現状は、これらの学校は現地の日本人が運営するというたてまえでつくられまして、ただ国は、これに対しまして、いま申し上げましたような、先生、校舎、教材等につきまして相当の援助を行なっているということでございます。いわば官民相協力してやるというのが現在の海外子女教育の現状でございます。
  70. 清水成之

    政府委員(清水成之君) ただいまの点でございますが、外務省の領事部長からお答えのあったとこるでございますが、私どもといたしましても同様の考え方でございまして、御案内のとおり、国内におきます義務教育というものを実現するにつきましては、憲法、教育基本法とあるわけでございますが、具体的には、学校教育法によりまして、保護者に就学義務を課すと同時に、市町村に小中学校の設置義務を課しまして、それに対して国が助成をし、義務教育を実現をしておる、こういう体制でございますが、いまお話がございましたように、外国のことでございまして、直ちにこれらの法令が適用になるかどうか、こういう点につきましては問題がございます。しかし、日本人の子弟であり、日本人としての教育をし、かつまた戻ってこられる方々でございますので、義務教育の趣旨にのっとりまして、できるだけのことを進めてまいっておるところでございますが、なお日が浅くして非常に御不満の点等あるわけでございますが、外務省とともども、これの充実にただいま努力をしておるという段階でございます。
  71. 山崎昇

    ○山崎昇君 私、ちょっといまの答弁、ふに落ちない。日本国内にいようが外国にいようが、これは国の要請に基づいて外国に勤務するんでしょう。私は民間の人だって、大きく言えばそうだと思う。それにかかわらず、日本国内ならば義務教育は、これ、ただにしなければいけませんね。しかし、外国にいるからただ援助すればいいんだという考え方は、私は誤りだと思うんですよ。ただ、散らばっていますから、全世界に。ですから、日本国内にいるように同じ扱いはできぬかもしれない。しかし、少なくとも国の責任でこれは義務教育はすべきものだと思うんですよ。そういう観点からいきますと、かりに国内ならば、各市町村が設置責任者ならば、海外の場合、それができないなら国が設置責任者になってやるとか、法的に私は特例を設けるなり何なりして、国が責任を持って子弟の教育はすべきものじゃないですか。そうでなければ、安心して、あなた、国を代表して在外公館に勤務するとか、あるいは民間の諸君であれば、これはなるほど企業の代表ではあるけれども、やはり資源の買い付けあるいは商品の買い付け等で行くわけでありますから、そういうことに私はすべきものだと思うんです。いま法が不備ならば改めてしかるべきだと私は思うんだが、どうですかね。  それから私ども聞いてみますというと、たとえば香港で聞いたら月約一万一千円ぐらいかかる、ラスパルマスで聞きましたら年間十五万ぐらいかかるというから、大体平均月一万一千円から一万二千円ぐらいかかっている。なぜ海外におる者だけ、これだけの義務教育に金をかけなきゃならぬのか。これは根本的に私は外務省も文部省もひとつ考えを改めてもらいたいと思う。  それからあわせて、ここに行っている先生でありますが、これもきょうは香港の例、あるいはラスパルマスの例、あるいはプレトリアの例、いろいろあります。しかし、いずれにしても、行っている先生は、やめて行くか、休職で行くか、あるいは何とかという休暇で行くか、研修という名目で行くか、まちまちです。扱いが。そして行った先生方は、たとえばやめて行った方々については、奥さんをこっちに残して行っているとか、あるいは休職で行けば、帰ってきてからはその休職期間中は年金通算になりませんから、したがって、私が帰ったら、一体戻ったときの身分はどうなるんだとか、絶えずそういう心配ばかりまといついて、ほんとうの教育というものがなかなかできない状況にある。特にある校長先生なんかは、日本に置いてきた家族のことを考えればノイローゼになると言った先生もおる。こういうことを考えれば、私はやっぱりこういう義務教育の特に先生なんかの場合には、各府県から募集するのはいいとしても、国の責任で身分を国に移すなり、あるいはその府県のそのままの身分でやるなり、そういう形で、外地におもむく先生に負担をかけないように、あるいは心配をさせないように、そういう配慮があって私はいいのではないかと思うんだが、一体どうなりますか、これも。  そして、ことしの一月十八日の毎日新聞でありますけれども、この報道によれば、何か文部大臣大平外務大臣と会って、海外勤務者の帰国後の子女の教育のあり方、海外における日本人学校のあり方、国外での履修と国内での履修の交換性だとか話し合われたと書いてある。それに基づいて両方の事務当局でいろんなことを打ち合わせするということになっておるようでありますが、さてどういうふうになっているのか、あわせてこれも聞きたいと思うんです。  したがって、いまいろんなことを申し上げましたが、この義務教育に従っておる先生方の扱いについて聞いておきたいと思うんです。
  72. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) まず最初の、義務教育を海外で行なうのかどうかという問題についてお答えいたします。  ちょっとおことばを返すようでございますが、先ほども申し上げましたように、日本の国内法というものはあくまで日本の国にのみ適用されるのが原則でございまして、したがいまして、日本政府が海外において日本国の責任において義務教育を行なう立場にはないということでございます。これはたとえて申しますれば、かりに日本政府がある国に日本政府の名において学校をつくるということは、いわば向こうの国の主権を害するおそれがあるわけでございまして、したがいまして、現在海外にあります学校もみなそういう——先ほど申し上げましたように、日本人が、現地の日本人会なり何なりがつくりまして、それを政府が実質的に応援していこうということでございます。それで、先生のおっしゃっている御趣旨はまことによくわかるわけでございまして、われわれとしましては、これらの学校に年々相当の金を使いまして、まあだんだん内容をよくしていこうということで努力しているわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたような理屈から申しますと、義務教育ということではないにしても、義務教育に劣らない内容を持った教育を現地において実現するように努力しているわけでございます。  それから第二番目の学費の点でございますが、先ほど御指摘のありました香港それからラスパルマスはごく最近できたわけでございまして、これは実は学費の非常に高い場所でございます。通常は大体一人当たり月間三千円から五、六千円という程度におさまっているわけでございます。で、これらの学校は、どうして香港が高いのか私は実情はつまびらかにいたしませんけれども、その場所によりましていろいろ差がございまして、たとえば教材その他についても十分なことをするというような学校では、あるいはそういう学費が高くなっている点があるかと存じます。通常はいま申し上げましたような金額でございますが、これらにつきましても、われわれとしましては、現地の経費をできるだけ少なくするようにいろいろくふうをしておるわけでございまして、将来そういう御要望に沿えるような時期が来ることを希望しておる次第でございます。  それから三番目、最後におっしゃいました、この一月十八日の毎日の記事でございますが、これはわれわれ事務当局としましては、前々から文部省とは常時密接な連絡をしているわけでございまして、そのとき文部大臣がおっしゃったことが、たまたまそのときから始めるという意味ではございません。一番われわれが連絡しておりますことは、海外におきまして、いまの全日制の学校、その他補習校もございますし、通信教育もございますし、そういうものにつきまして、別途海外子女教育振興財団というものもございますので、そういう団体、外務省、文部省が一体となっていつもやっていることでございます。それ以上のことをちょっと私いま存じませんので、また御質問に応じてお答えしたいと思います。
  73. 山崎昇

    ○山崎昇君 もう時間がありませんから、これ以上私は言いませんがね。なぜ海外勤務者の子弟は義務教育ができないんですか。なるほど、その国の主権を侵してまでやれなんということを言ってませんよ。しかし、日本人自体がやったにしても、国が責任を持ってやっぱり義務教育はやらせるべきものじゃないですか。たとえばいまラスパルマスの例、私が行きましたから聞きました。授業料月一万五千円だと、そのほかにスクールバス二百五十万、あるいはいま裏にグラウンドをつくっておりましたから、それの改修費、あるいは校舎を今度持ちましたから、これの借り上げ料が月十五万だと、そういうものも、一気にいかぬにしても、それやこれや全部やると、ほとんど商社員の方々の寄付による、あるいは毎月子供をやってる方々の親が、月一万五千円から二万円ぐらい負担しなければ教育ができないという、こういう状況にあるんですよ。  それから学校の先生もここは三名行ってました。一人は沖縄から、一人は大阪から、一人はその他から。扱いが全部まちまちです。一人は退職して行っている。一人は休職で行っている。一人は職免で行っている。香港、またそうです。なぜ海外にある学校で自分の子供をやって教育を受けるのに、そこへ来る先生が、派遣される府県によってその扱いが違うんだろうか。疑問を持ちませんか。もしそういう扱いが違うなら、そうしてまた国がある程度のことをするというならば、私はいまある法律が不備なら特例を設けてもいいではないかと言うんです。たとえば府県の身分から文部省の身分に移すなら、国家公務員に移して派遣をするなら派遣をする。あるいはすべて研修なら研修でやるとか、なぜ府県ごとにこんなに身分が違うんですか。そして、たとえば日本国内におれば奥さんも先生をやっておったとする、しかし、奥さんは行かれないから、奥さんは日本におってだんなさんだけが向こうへ行く。それもやめて行ってしまえば、もし二年なり三年なりして帰ったときに一体その先生はどうなるんだろう、そんなことばかり絶えず考えているんですよ。休職で行った先生は、私の退職年金は一体どうなるんだろうかということを考えている。行った先生は、若い人もおるけれどもかなりの年配の人もおる。こういうことで、海外における勤務者の子弟の教育が満足にできると思いますか、あなた方。だから、私は府県ごとにまちまちな扱いをさせないように、法が不備ならば整備をしなさい。全部、扱いが研修なら研修、職免なら職免、そういう形にあなた方すべきものじゃないですか、これは。ただ、いまの法律がこうでございます。そんなことは私も承知していますよ。ですから、これ以上申し上げませんが、この海外に勤務する者の、一体、特に義務教育にあるような方々の教育については、それは表面に出るか裏でやるかは別にいたしましても、国がやはり、国内と同様に、全責任を負って子供の教育というものは行なうべきものなんだという前提のもとにこれからひとつやってもらいたいと思うのですが、これはあらためて私は文部大臣にまた聞きますが、きょうは外務大臣おいでですから、ひとつ所管をする外務大臣としての見解を聞いておきたいと思う。  それからもう一つ、私ども言われた中に、高級学年といいますか、高校ぐらいの方々も絶えず迷っておりました。特に私は南アフリカ連邦に行ったときに、あそこはビザは五年しか出さないという。五年以上になると市民権を与えなければならないから、五年で全部切られるというのですね。そうすると、最大限いても五年で帰ってこなければならない。そうすると、子供はちょうど中学生から高校生に移るんだとか、あるいは高校在学中の者は、向こうでも高校の資格をとれないもののこっちへ帰ったらどうなるかという心配もあるという。言うならば、教育の問題というものは、在外に勤務する者にとりましてはきわめて重要な課題になっているんですね。やはり私は政府はこれにこたえなければならぬと思う。特に民間の人でありましても私はこたえなければならぬと思うんだが、これについて外務大臣からひとつ最後にお聞きをしたいと思う。  ゆうベテレビを見ておりましたら、田中総理と山岡荘八さんですか、対談をやっておりました。私もこれを見ておりました。田中総理は、ある意味で言うならば、小中学校の先生は裁判官より重要だと言う。それだけ小中学校の先生が重要ならば、いまの扱いは一体どうだろうか、さらに私は疑問を持った。そしてそういう休職で絶えず心配事を持っている先生から習う子供は一体どうなってくるんだろうか、小中学校の教育が重要だというならば、それをやる先生の身分や給与というものはもっとやっぱり重要だと思う。特に外国の場合は取り返しがつかない、国内のようにすぐどうでもこうでもできないのですから。そういう意味では私はひとつ慎重にやってもらいたい。法改正等も含めまして、外務大臣の見解を聞いておきたいと思う。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 義務教育制度を海外に実行するという問題、これは法律問題、立法政策上の問題でございまして、私もにわかに確たる御返答はできませんけれども、実態は、国内で義務教育無償の原則で実行しておるように、実態的に、海外における子女に対しましても国が実質的には同じような責任を持ってやるべきじゃないかという趣旨と拝するのであります。そういうラインに沿ってわれわれといたしましても今日まで努力してまいりましたけれども、その改善につきまして、一そう文部当局とも御相談いたしまして努力してまいりたいと思います。  制度改正の問題につきましては、なお政府として検討さしていただきます。  それから教員の問題でございますが、これは教員制度、給与制度にからんで、内地との関連においてどのように調整して差し上げるのが一番勤務の安定に役立つのか、その辺の事情は文部省を中心にお考え願えると思いますけれども、なお、いま御指摘になられました問題点につきましては、政府といたしまして検討さしていただきます。
  75. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終了したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決を行ないます。  外務省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  76. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 速記を起こしてください。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十分散会