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1974-02-14 第72回国会 参議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十四日(木曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員異動  二月七日     辞任         補欠選任      春日 正一君     渡辺  武君  二月十三日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     塚田 大願君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 河本嘉久蔵君                 藤田 正明君                 成瀬 幡治君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 嶋崎  均君                 中西 一郎君                 桧垣徳太郎君                茜ヶ久保重光君                 田中寿美子君                 辻  一彦君                 戸田 菊雄君                 鈴木 一弘君                 塚田 大願君                 野末 和彦君    衆議院議員        大蔵委員長代理        理事       松本 十郎君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        大蔵省主計局次        長        長岡  實君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       松川 道哉君        国税庁次長    吉田冨士雄君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        経済企画庁長官        官房参事官    平   弘君        経済企画庁物価        局物価政策課長  垣水 孝一君        農林大臣官房企        画室長      森実 孝郎君        農林農蚕園芸        局稲作対策室長  松山 光治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本施策に関する件) ○昭和四十八年度の米生産調整奨励補助金等につ  いての所得税及び法人税臨時特例に関する法  律案衆議院提出)     —————————————
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  去る二月七日、春日正一君が委員辞任され、その補欠として渡辺武君が選任され、また、昨十三日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として塚田大願君が選任されました。     —————————————
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  前回の委員会において福田大蔵大臣から聴取いたしました財政及び金融等基本施策に対し、これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 昨日、衆議院でも大蔵委員会がありまして、物価の大体安定と申しますか、そういうような見通しを述べられておりますが、新聞紙上等に出ておりますが、大臣の言われる物価安定とは、どのぐらいのところを大体目標にしておみえになるのか。それから、いままでいろいろと施策をやっておみえになったと思います。しかし、それに対しては予期してなかったこともあったと、だから、想定をしておったものに対して若干狂ってきたこともあるだろうと思います。しかし、そういうものを克服して、なおいろいろと施策を講ぜられて、そしてこの辺のところに、このぐらいで大体物価を落ちつかせるという目標というものがあると思います。まず、その目標がどのぐらいで、いつごろかということをお聞かせ願いたいと思います。
  5. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今日の物価は、私は、物価というよりは、もう相場だという表現のほうがむしろぴたりとくることかと思うのです。つまり、投機的要素による水ぶくれが非常にある。私は、その水ぶくれをとにかくまずそぎとらなければならない、そういうふうに考えておりますが、そのためには、総需要抑制政策物資三法の着実な実行、こういうことを両翼としての施策を進める、こういう考えであったわけであります。  ところが、そういう考え方をとりましてから問題が起きておりますのは、石油の問題、特に価格の問題でございます。これがわが国物価体系に相当大きな影響を及ぼす。それからもう一つは、円相場の下落の問題があります。これも若干の影響を及ぼすであろう、こういうふうに考えておるわけです。そういう物価の今後に対するマイナス要因と、総需要抑制政策物資三法の着実施行というプラス要因と、これを総合して、これからの物価水準が一体どういう高さになるかということを考えるというのが、私の頭の中の動き方でございます。  そこで、十月前の水準までこれを戻すのかというような質問をよく受けますが、私は、それは困難である、こういうふうに思います。つまり、その後に石油問題為替問題等が起きてきておるわけであります。特にその中でも、石油価格の問題というのが非常に大きな影響を及ぼす。それで、とにかくそういう考え方のもとに、ただいま総需要抑制政策と、物資三法の着実なる実行という過程に突入しておるわけでありますが、これから先を展望しますと、私は、両三月の間に、今日までの卸売り物価消費者物価ともどもの非常な勢いでの騰勢というものにかなり大きな変化が出てくる、そういうふうに見ております。  その変化はどういうものであるかというと、石油価格の問題もあります。為替相場の問題もありまするけれども、それを乗り切って、総需要抑制政策、それから物資三法のそういう効果がなおより以上にあらわれてくる、こういうふうに見ておるのであります。そういういままでの物価の異常な上昇勢いというものが、両三月中には様相がかなり変わってくる。つまり鎮静化方向に行くと、こういうふうに見ておるわけでありまして、その方向をずっと進め、上半期中あるいは真夏ごろまで、おそくもそのころまでには、新しい価格水準というものができ上がって、その辺でいままでの物価騰勢というこの勢いは一応停止される、こういうふうに考えておるわけでございます。
  6. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 昨年十月水準まで戻すことは容易じゃない、それを期待することは困難だというお話なんですが、とすると、どのぐらいのそれじゃ数字になるのか、いつごろが基準——たとえば水準というのは、一つ基準を、あなたがおっしゃるのは昨年の十月水準までは困難であろう、こうおっしゃるなら、具体的に言うとどういうことになりますか。
  7. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 具体的にこれを言うことが非常にむずかしいのは、いま石油価格引き上げ影響、これが一番大きな不安定要因になってくるわけでありますが、これが第一次の引き上げ影響はすでにかなり出ておると、こういうふうに見ておるのです。ところが、第二次引き上げ影響というものは、今月半ばごろからもう出てくる。これが出終わるのが一体どの辺までいくかと、こういうことかと思うのであります。そういう影響というものが、どういう数字になって産業各界に波及するか、その辺なかなか測定困難なんでありますが、いずれにいたしましても、そういうネガティブな影響はありまするけれども、総需要抑制政策物資三法の適用、そういう効果は、それを乗り越えまして、そして、いままでの物価騰勢、これは両三月中に鎮静化に向かう、そうして、自後、若干の時間はかかりましょう、しかし、だんだん新価格体系というもとに安定していくのではあるまいか、そういうふうに見ておるわけであります。十月前のというのは、これはとうてい私はむずかしい問題だと思いますが、水準とすれば高位安定じゃない、現状是認じゃない、現状よりは若干下がったところでこれは安定点を求めなければならぬじゃないか、またそうぜひしてみたいものだと、かように考えております。
  8. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 十二月にしろ、あるいは一月にしろ、この二月がどうなるかということも、いろいろと予測されておると思いますが、非常にむずかしい問題であり、だと思いますから、私もとやかく言いませんが、不安定要素として石油の問題と、それから為替の問題をあげられましたが、そういうこともさることながら、ここまで来た一つ反省として、高度成長に対する総需要抑制という大きな私は反省の上に一つのものがあったと思います。もっと言えば、七一年のニクソン・ショック以来、いろいろと財界なり、あるいはそういう人たちの言い分を聞いて、不況ムードが出てくるという、そういうものを予測されたから、それに対する対処のしかたというようなことが、今日の大きな原因になっておるじゃないかというのが一つと、それからもう一つは、債務者利得と申しましょうか、とにかく借金をした者が得をするという、そういう、逆に言えばインフレマインド、あなたがこのごろは物価じゃなくて相場だと、こうおっしゃいますが、まさにそういう、物にしたほうが得じゃないかというものが国民の間にある。あるとともに、一つは、そういう過剰流動性のものを七一年以降生み出してしまったから、それが仮需要を生んだり、あるいは売り惜しんだり、いろいろなことをしておると思いますが、そこで、石油——不安定だとおっしゃいますけれども、実際、石油なんかは、私は、つくられた不安定だと思っておりますけれども、結果的に言うと。あまり実は輸入が減ってなかったわけですけれども、そういうようなことは別として、金融の問題でしぼって、ですから、債務者利得をするということが、借金をした者がもうかるという、そういうことをやってきたことが悪いことだという、そういう反省というものが私はあっていいじゃないかと思う。いわゆる低金利政策というものがいけなかったのだ、金利を上げると、それが物価にはね返るから、金利は上げちゃいかぬという、そういう理屈があると思います。  それから、この前も、元金が損をするのだから、預金をした者が損をするのだから、目減りがあるから、それに対してスライド制がどうだと、こういう話をしましたら、それは敗北主義であって、あなたは、それがかえって物価高を生むのだというようなお話でございました。しかし、金利物価にはね返るというよりも、いま言ったように、過剰流動性物価を刺激し、上げているほうが大きいと思う。そこで、預金をしたらいいという、物に対するよりも、物にかえるよりも、預金をしたほうが得なんだという、そういう体制を、私は、金融政策上つくる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  9. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ経済政策運営かなめとして、物価上昇預金金利を上回るというような状態は、私は、これはよろしくない、こういうふうに考えております。ところが、いま非常に異常な事態でありまして、消費者物価が年に二〇%上がります、卸売り物価が三十数%上がります、こういうような状態、それに対しまして、そういう同じ考え方を適用するということになりますると、預金金利を二〇%だ三〇%だというふうに持っていかなければならぬような、極端に言うと、そういうことになってくる。そういうことになりますると、これはもう日本経済全体のインフレ基調というものをさらに底上げをする、こういうことになりますので、私はそういうことはなかなかできないことだ。しかし、成瀬さんの御指摘のように、目減りをする人の立場というようなこと、これはもう特に大蔵省といたしましては、考えなければならぬ立場にあるわけであります。したがいまして、そういう方々に対して、どういうふうにするか、インフレ克服対策とのつり合いというようなものを考えながら、できる限りの配慮をしてきたわけでありまするし、また今後もそういう問題は頭にこびりついて離れないというような立場の問題と、さように心得ておるわけなんであります。  いままでこういう事態がどうしてできてきたのだと、こう言うと、いろいろあると思うのです。結局やはり物価先高基調国内経済、そこへ持っていって、海外要因等もあって、過剰流動性が極端に多量に発生した。それが相寄り相重なって、今日のようなムードをかもし出したというふうに考える。その辺につきましては、私ども十分反省いたし、その上に立って、施策を構じておるわけですが、やっぱり私は、何と言っても、こういうようなムード短期のうちに一変をするということが、一番のかなめじゃないか。それに矛盾するような施策は、この際はなるべくこらえていくと、こういう考え方に立たなければならぬのじゃないかと、こういうふうに考え、いわゆる短期決戦論、この道をばく進をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  10. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私も、預金金利引き上げなり、あるいは公定歩合を、物価が二〇%、三〇%上がったから二二%上げなさい、そういう極論を言うわけじゃございません。そうじゃなくて、いまはあまりにも預金金利が安いと思います。諸外国等に比較しても、公定歩合その他から見ても二けた台だと、日本は一けた台だと、そういう問題等がございますから、一つは、宝くじつき預金考えようじゃないかというのも一つの案だろうと思います。と思いますが、それをもう少し進めて、もっと進めて、ほんとうに過剰流動性というものをチェックすると申しますか、それを吸い上げるためには、やはり物にするよりも、預金にしておくという、そういうふうに国民が思わなければなってこないと思うんですよ。いまは預金しておくよりも、物にしておいたほうがいいと思うから、せい一ぱいトイレットペーパー買い占めをやってみたり、あるいは洗剤の買い占めというところにいくと思うのです。もっとある人は、土地やいろいろのところに行くと思うのです。ですから、そういうことを防ぐためにも、この際、あなたがおっしゃる短期決戦というなら、ある一定の期間を切って、何か預金金利というものをこの際検討してみる必要があるじゃないか、大臣としては、片方宝くじつき預金の法案を提案をしてみえる、そこへまた別なひとつ預金金利を上回った預金のことを考えようじゃないかというとですね、何かこう、アブハチとらずのようなことになって、言いにくいかもしれませんと思うんですが、しかし、宝くじつきのほうは、それはそれとして、もう少しあれなんかで言うと、はずれたものが金利がただになったり、あるいは一分ついたり二分ついたりすることになっている。これははずれたらどうなるんやということになって、まあ一つはギャンブルのほうのかっこうを見れば、非常に魅力がありそうで見えるし、またそういうことを考えるとなかなか乗っていかぬという点も心配なんですから、そういう人たちまで救い、預金に持ってくるようなことが考えられぬものだろうか。まあ、その貨幣価値の維持というものは日銀が責任を負うと、こう言いますけれども、あるいは政策委員会が云々と、こういうことになっておりますけれども、現実には、大蔵省日銀との相談であり、いやもっと言えば、大蔵省政治的発言のほうが力が強くて、貨幣価値の安定ということがおろそかがちになっているというのが実態だと思う。しかし、だからそういうことをせないためにも、この際預金金利引き上げていこう、公定歩合引き上げていこうというのが一つということだと思うんですね。これは対策一つだと思う。ですから、それが行なわれない限りにおいては、私はそう、その大臣の熱意とかなんとかいう、そういうものを疑うわけじゃございませんけれども、もっとそういうようなところに真剣に取り組んでいかれる必要があるじゃないか。それとともに、金融面のことについて資本金の二〇%とかなんとかいうような貸し出し制限の問題も、ずっと以前に中小企業金融との関係で、当委員会等でも議論したことがございますけれども、こういうようなこともやれば、何かまたそれに対するしわ寄せと申しますか、悪い点が出てくることはあると思います。ちょうど薬と一緒みたいに、片方にきくかもしれぬけれども片方には害をと申しますか、そういうところがあると思う。そのときに、害のほうをあまりに大きく言ってしまうと、せっかくきく薬を使わずに、みすみす対策がおくれてしまって後手後手となると思いますので、重ねて大臣にその決意と申しましょうか、まあそれじゃあしたからとは言えないですけれども、しかし、早急に手を打っていかないと、両三ヵ月とおっしゃるけれども、私はそう簡単なものじゃないじゃないかと、このごろの卸の上がりを見ておると心配でございますから。  それからもう一つは、片方の三法の問題について、実際は通産行政なり、あるいは経済企画庁等がやるべき相場にひとしい物価の問題については、相当立ち入り調査等の、強権を伴った立ち入り調査をやってもらわなければだめだと思いますし、また、公正取引委員会——資本主義のよさというものは買い手市場だからいいわけです。ところが、いまは売り手市場なんですね。それは公正取引委員会は働きが鈍いと申しますか、売り手市場にしてしまったことは、独禁法が事実骨抜きになってしまった。資本主義経済が、買い手市場だから自由な競争、公正な競争があるといったのが、いまはそうじゃなくて、売り手市場だから、自由な公正な競争じゃなくて、庶民はメーカーから押しつけられておるという形になってしまっているわけです。ここらあたりにもメスを入れていただかなけりゃなりませんが、大蔵委員会として議論すべき点は、金利政策だと思っていますから、そういう点についての大臣の、私は、前向きなひとつお考えが承りたいと思います。
  11. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、いまの金利お話につきましては、私もこれは頭にしょっちゅうこびりついて離れない問題ではあるんです。ただ、この問題は、金利体系全般との、整合という問題がありますので、なかなか実際問題とすると簡単な問題じゃないわけなんで、たとえば預貯金金利引き上げるということをいたしました場合に、これはその財源を一体だれが負担をするか。金融機関負担をいたしますれば、それは結局金融機関貸し出し金利引き上げということになり、また、そのコスト引き上げ要因になってくる。それじゃ政府負担したらいいじゃないかということになると、非常にこれは膨大なものになってくるですね。またこの預貯金金利引き上げということになりますれば、国債だとかその他の有価証券金利水準利回り水準というものがやっぱりそれと調和をとれなければ売れないと、こういうようなことにもなり、まあそういう際に、その一般の社債だとかなんとかの負担はまた企業が負って、それがコスト要因になってくるとか、あるいは国債が利上げになれば、また財政負担というような問題もあり、その財政のしりが、結局公債の増発と、こういうことになるわけですから、それが物価問題とどういうつり合いになるか、なかなかこれは容易ならざるいろんな問題があるわけでございまするけれど、しかし、情勢の推移によりましては、そういうことを言っておれないことがあるかもしれない。まあいまとにかく総需要抑制政策物資三法の着実実行、こういう施策を進めておりまするけれども、なおこの金利問題につきましては、この上とも重大な関心を払っていきたい、かように考えます。
  12. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大臣、私が、いままでは施策というものが後手後手できたというのが——まあいいことはみんないろいろと話はしてみますが、一つものごとをやれば必ず影が映ってくる、その影におびえちまって、後手後手にきたというのが一番いけなかったことじゃないかと思いますから、まあ批評はいろいろとあると思うんですよ。その影のことを言って少し走り過ぎたとか、いろいろなことが言われておりますが、とにかく早急に何らかの形で手を打って、いままでの形のもので、あなたがおっしゃる総需要抑制物資三法でぐっと押していくと、これで事が解決するというふうにはどうも思えないんですよ。ですからここで、そこで公定歩合引き上げを含めた預金金利を、預金金利を先行させて、それが公定歩合にいくことはあるかもしれませんが、とにかくそのことを早くひとつ打って、水をぶっかけていくという姿勢がより緊急じゃないかと思っておりますので、あなたは関心を持っておると言うかもしれませんが、やるというぐらいのことを言うだけでも、私は、一つの水になると思っておる。いかがですか。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私も、今日の事態は異常でありかつ非常であると、こういうふうに考えておるわけなんです。そういう際に、尋常の手段考えておったんじゃいかぬ。やっぱり非常の手段でという考え方でなければいかぬ。で、まあ平時におきましては、考えられないようなことでも、こういう際は思い切ってやらなければならぬ、こういうふうに考え、まあそういう考えを逐次具体化しておるわけでありますが、とにかくそういう決意でやります。しかし、今日この段階で、金利水準をどういうふうにするかというようなことにつきましては、まだお答えするような段階には立ち至っておらない、かように御理解願います。
  14. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大蔵大臣の先日所信表明をなさいましたのですが、その中で、今後のわが国の長期的なあり方について述べられております。特にその中で、第二に、心のゆとりと落ちつきを取り戻し、金では買えないものの価値を再認識し、社会的な連帯の中でみずからの幸いを感ずるような、人間主義にあふれた公正な社会実現であると、こういうふうに述べられておりますが、この人間主義にあふれた公正な社会実現というのは、一体どういう社会大蔵大臣考えておられるのか。いつごろの時期を目途にされているのか。まあそれは具体的なものはむずかしいかもしれませんけれども、そういうことについて……。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういう社会を目ざして、いまからもうすでにその布石をしなきゃならぬ。こういうことを申し上げておるわけなんですが、私の考えておる、今日この異常な事態を克服した後の日本社会、それは再びこの混乱前の状態に復元をするということであっては断じて相ならぬ、こういうことであります。その混乱前の状態の特徴的なものは何だというと、自己中心主義——社会だとか、連帯だとか、そういうものは考えない、自分さえよければという思想であり、またそれとうらはらをなすかのように、物と金が社会を支配するという体勢である。そうじゃなくって、人間というものはやっぱり相寄り、相助けて、そして自分が完成されていくんだと、自分が金を持つ、物を持つという喜びじゃなくって、他人のために、他人のしあわせのために、他人喜びのために何がしかの貢献をするというところに喜びを感ずるような、そういう社会風潮ですね、そういうものが基調をなすような日本社会、そういう社会情勢を創造しながら、それにふさわしい財政金融という施策でなければならぬ、こういうふうに考えておるわけなんです。  そういう社会がいつ、いかなる時点にということになると、むずかしい話でありますが、もう今日からそのための布石を打っていかなきゃならぬし、まして私ども短期決戦と言っておる、その短期決戦をした後の日本社会あり方というものにつきましては、いままでのような高度成長ということでなくて、人間のしあわせを中心とした社会建設というところに焦点をしぼった政策運営を計画的に進めていかなきゃならぬ。こういうことを申し上げておるわけであります。
  16. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは大臣のいつもの抱負、前から言われている安定成長という路線とこれは同じことになるわけですか。——だろうと思いますが……。  それで、いまの答弁の中で、混乱前の状態に戻るというだけでは満足できない、まあそういうことであってはならないと思っているというお話がありました。ですが、今回の国会での財政演説、あるいは今回の所信表明、こういうものを伺っていて、非常に物価問題等については異常な決意短期決戦ということをおっしゃっております。政治生命までその物価問題にはかけているのではないかというふうにまで思うのでありますけれども、残念ながら日銀の発表そのほかいろいろ見ると、卸売り物価が、前年比三五%というような記録的な問題が出てきている、高騰が続いている。これの影響で、どうしても消費者物価にはこれから半年後までこの現状——たとえここでもって下がってきたとしても、半年後までは響いてくることは、タイムラグがありますから、しようがないだろうと思います。そうなりますと、一体この物価の鎮静のめどはいつごろつけられるというような気持ちでいまやっていらっしゃるのかが一つ。  それから、いま大臣の言われたことから言うわけじゃありませんけれども、前の状態に戻っただけではいけないということは、この間、田中総理が衆議院大蔵委員会で、去年の十一月からのどさくさがありました。その十一月から十二月にかけてのどさくさ騒ぎ以前にさかのぼって適正な価格を探求するということをおっしゃっているわけです。そうなると、物価自体はもう十月以前の水準に戻すというのか、それともそれよりさらにもうちょっと引き下がったところまで卸売り物価についても考えていきたい、あるいは消費者物価についても鎮静をはかりたい、こういうことなのか、その辺のところをちょっとお伺いしたいと思います。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、昨年の十月以前の状態に今日の物価を引き戻すということはこれは非常にむずかしいと思います。つまり、その後に石油問題、特にその価格の問題でありますが、出ておる、それから為替相場の変動というような問題もあり、また、これからのことを考えますと、春闘がどういう決着になるかというような問題もあり、なかなか私は十月前の状態に返すということはむずかしいと思うんですが、しかし他方、今日の物価というものは尋常の物価ではない、これはもう多分に先取りでありますとか、便乗でありますとか、投機的要素を含んでおる物価である、つまり水ぶくれ部分というものがあるんです。その水ぶくれをそぐことは、総需要抑制政策並びに物資三法の適用等を中心といたしますればかなりの程度のことが私は実現できると、こういうふうに考えるのです。そういう物価抑制努力と、それからこれを阻害する要因とを彼此捨象して考えまするときに、私は、まあ十月前まではとても復元することはできませんけれども、今日の物価水準というものはかなりこれを抑制し得ると、かように考えておる次第でございます。  で、その時期いかんという話でございますが、私は、両三月中にはかなりそういう方向へ向かっての変化が出てくるということを確信をいたしておるわけです。また、両三月中にそういう傾向が出ないというようなことでありますれば、まだその総需要抑制政策あるいは物資三法の適用、そういうものの強化ということも考えなきゃなりませんが、とにかくこの両三月中にはこの流れが変化してくると、こういうふうに思っております。その流れの変化一つの体系をつくる時期というものは、これはまあこの上半期中、おそくも夏ごろまでにはそういう新しい価格体系というものができ上がって、そしてそれが安定した形で動いていく、こういうふうにいたしたいと、かような見解でございます。
  18. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまのお話で両三月中という話がありました。これを伺ってわかることですけれども、ものによっては、——これは先日日銀総裁が、さらに二%と、公定歩合の引い上げがですね、石油事情が若干ゆるんだということで、もし多少でも成長路線のほうへいくようなことがあれば、直ちに適用したいというようなことがありました、二%の引き上げをまた考えたいということがありました。そういうことも全部を含めて、いま言ったような路線に持っていこうとしてらっしゃるのか。というのは、実はこの前も私はここで中小企業のことを申し上げたんでありますけれども、繊維業など見ますと、小売り店には需要がゼロというようなところもあるようであります。そういうので、どうしても定価三万円のオーバーを第一次卸が千円で売ったというような話が聞こえてきたり、あるいは鉄関係でも、すでに一トン十三万円までという異常に上がった例の建設用の、鉄筋コンクリート用の丸棒、小形棒綱がトン八万円に下がって投げ売りされているものもある。そういうような傾向が出ているということですから、でき得ればそんな、さらに二%なんということは、これは日銀のやることだと言われればそれまででありますけれども政府の方針としてもとるべきじゃないというような感じを非常に強く持つわけです。その点いかがでございましょう。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公定歩合の問題は、これは日本銀行の専管事項でありますのでとやかくも言えませんけれども、とにかくこれからの数カ月というものは、わが国日本経済の非常に重大な時期に突入する、こういうふうに思うんです。そういう中におきまして、とにかく、まあ先ほどからいろいろ話もありまするけれども、この物価高による預金目減りだとかなんとかいろいろの問題が起きる。起きますけれども、いまそういうそれらの問題を含めての国民の非常に日々の生活におきましても事業活動におきましても不安で不安でしょうがないと思うんです。それから、そういう間におきまして社会不公正というような現象も進んでいくと、こういうことなんで、一刻も早くこの物価の異常事態を断ち切らなきゃならぬ、そういうふうに考えておりますので、そういう考え方に立って、状況の推移をじいっと見ておりますが、このじいっと見たその結果、このまだ政策が浸透しないというようなことがあれば、政策をさらに強化しなけりゃならぬと、こういう問題も出てくる。金融政策におきましても、財政政策におきましてもそういう問題が起きてくる、こういうふうに思います。また、物資三法の法の適用につきましても、まだまだ施策が足らぬというような事態が見えますれば、さらにこれを強化するということも考えなきゃならぬ。いずれにいたしましても、短期決戦ということをにらみながら、これに適応した着実な手段を機動的にとっていくというかまえでございます。
  20. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次は、大蔵省当局の発表によりますと、輸銀関係の財投資金の貸し付け残高が四十八年九月現在で、製造業で船舶関係企業に千九百三十八億円、卸売り業に千六百四十九億円の残高がある。この卸売り業者の中に、問題の大手商社が入っていて、巨額の企業融資が行なわれているようでありますけれども、この内容ですけれども、千九百三十八億円という船舶関係企業というのは、これは何社ぐらいなのか。社名までは無理かもしりませんけれども、できれば言っていただければありがたいんです。そして、卸売り業の中で一番大きいのはどのぐらいなのか。一体何億くらい借りているのか、残高があるのか、その点をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  21. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 最初の船舶のほうは、いましばらく時間をいただきまして資料を調べさせていただきますが、商社——おそらく卸売り業と申しますのは商社でございまして、商社の貸し付け額の大きなのは、一番大きなのが大体四百億から五百億の間ということになっております。なお、十大商社全体といたしましては、大体金額にいたしまして、ちょっと古い四十八年の九月ぐらいまでで大体千億足らずという形でございます。なお、四十八年の九月の数字——失礼いたしました。卸売り業の一番大きな、先ほど申し上げましたのは年度の貸し付け額でございまして、残高で申しますと、商社の一番大きなのが千六百五十億程度ということでございます。  それから、造船業の一番大きなのが千九百億という貸し付け残高を持っております。
  22. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 この卸売り業、商社の千六百五十億円という大きい残高ですね、これはどこでございますか。
  23. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これの企業の名前につきましては、従来の慣行からいたしまして、ひとつこの席で申し上げることを控えさせていただきたいと思います。
  24. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 残高中の割合だというと、千六百五十億円というと何%ぐらいになりますか、卸売り業の中で。
  25. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) これの残高に対する割合は、いますぐ計算いたしますが、商社全体が輸銀の残高の大体二七%ぐらいであると承知しております。十大商社全体でございます。
  26. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 こういう点で、これは私も、庶民の郵便貯金あるいは厚生年金の金、こういったようなことから、そういう財投の資金が出ていくということでありますけれども、大手商社などのいわゆる巨額な、特に巨額な残高、つまり貸し付けがされている。そういう一方で、こういうことを言うのはあれかもしれませんけれども、中小企業、零細企業金融の引き締めというのはかなりきびしい。そういう中で特別な融資も押えられる、あるいは建設業等になれば、いわゆる官公庁の事業を請負っているところは、九千五百万で小学校の建設を引き受けて、でき上がったときは一億三千万かかっているというのがありますね。そういうようなことで、しかし、それでも融資を特別受けられないというようにきびしく制限されている中で、金利も市中金利の半分に近いような低金利政府資金というものが貸し出されて、二倍、三倍、四倍、五倍というような巨額な利益、便乗利益をあげる。どうしても国民的感情としては、大臣の言われた社会的公正とはちょっと違ってくるような気がいたします。輸出を大いに振興しなければならない時代と、いまとではちょっと変わってきているということもございますが、そういう点で、これは真に国民のために利用されているということがはっきりしていけばいいのですけれども、いまのような一つの商社だけで千六百五十億円、政府の金ということになれば、これは無尽蔵ではありませんけれども、驚くべき、民間の金に比べればあるわけであります。そういうものがそういうふうに使われていくという点は、ちょっとこれはこれから先は何か方法を考えなければならぬのじゃないかという感じがしてならないわけですけれども大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  27. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 輸銀は、これは一般の金融では対処できない輸出金融をまかなう、輸入のほうもありますけれども、主として輸出でございます。そこで、商社なんかがプラントの輸出をしますとか、あるいは商品の輸出をします。それが延べ払いと、こういうような際に特に発動する。こういうことになるわけですが、これは対外輸出活動、これはやはり大事な問題で、ことに今日になりますると、輸出入のバランスというものが非常に悪化してきておる。そういう際に、他国との競争というようなことを考えると、この輸銀の商社に対する金融というものは、そういう性格のものとしてこれは御理解いただけるんじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。これは誤解があってはならない問題でございますが、商社の経営の全体を見て、そうして幾ら資金が足らないから、その資金の穴埋めをする、こういうような性格のものはこれは一切ありません。もうみんな特定の計画がありまして、プラントあるいは商品、そういうものにつきまして融資するというので、その融資したものは何に使われるかと言えば、国内の事業家に対する支払いというようなことになり、そしてその事業家から受け取った品物が輸出される、その代金がまた返ってくる、そうつながっていくわけでございます。これが買いだめだとか、そういう方向へ発動されるという性格は、一切これは持っておらぬ、こういう問題でございます。輸銀の資金はもとより政府資金でありますので、これが運用につきましては、十分注意をしておる、ことに選別的な立場におきましてその配慮はしなければならぬと思いますけれども、これが国際競争上の立場から申しまして、どうもそういう方面を制限しなければならぬというふうな考え方はとりたくない、かように考えます。
  28. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま金融問題もちょっと出ましたので、これはぜひ大臣に伺っておきたいと思うのですけれども、今回のいわゆるマル優の問題であります。預金のマル優の問題ですけれども国債とか、あるいは銀行預金それから郵便貯金、これが引き上げになるということになってきていますけれども、実際に私がお伺いしたいのは、地方債をたとえば取得した場合には、これは銀行預金の三百万なら三百万というその中でしか処理をされないわけです。いまのような時代で、これは自治体の問題でありますけれども、地方債を発行したときほとんどが銀行引き受けになっておる。今回八%ぐらいに利子もなったようでありますけれども、そういうようになっておりますが、そういう地方債を個人がどうしても引き受ける場合も、これは土地を売った場合いろんな場合出てまいります。そうでなくても、ぜひともやりたい、買いたいというのも、今後は出てくるだろうと想像できるわけです。国債については優遇措置があるけれども、地方債についてはこれは別ワクはございません。こういう点はこれは考えるべきではないかという点でありますが、その点はいかがお考えでしょうか。
  29. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 地方債にも観念的にはそういう問題があろうかと思うんでありますが、いま実際問題といたしますと、地方債は、個人消化はほとんどやっておらぬ、こういう状態でありますので、その実態に着目をいたしまして国債だけにいまマル優の制度はある、こういうふうに御理解願います。
  30. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 実際は土地代金等についてはほとんど地方債でもって払われているわけですね。そういうことがあります。そういう点がありますので、やはり将来はこれは考えてもらわなければならないんじゃないか。実際個人個人で受け取っておりながら、国債でもって引き受けた人はいいでしょうけれども、そうでない人は、地方債でいただいたほうは、きちっとマル優がないということは、これはやはり法の上では差別があり過ぎる。地方債だけでもらっているところもあるようでありますけれども、その点は考えていただきたいと思います。  その次に、国際通貨の問題ですけれども、先月二十三日ですか、東京の外為市場で直物に七億四千万ドルをこすドル買いが殺到した。先物相場でも一日十円もはね上がるという荒れ方で、結局円安、ドル高というふうになってきた。この点について、いままでもあったと思いますが、当然政府日銀の政策介入というのが考えられるんですけれども、そういう点で私伺いたいのは、自由変動相場制、そういうフロートの中での市場への介入、そうするとフロートはフロートでない、固定フロート制だということになるわけなんですけれども、そういう市場介入についての本意というものはどういうものなのか。フロート制というものについて非常にふしぎなのは、前のときのあの値段でも、政府が介入していたんではないかという気がいたします。はずしたとたんに、円安傾向になった。ある程度までいってまた今度は介入をして固定をさせる。つまりフロートといいながら、市場の実勢相場にまかせないで固定相場制みたいなことになっている。こういうふうになりますので、その点がわれわれはちょっと見当がつかない。変動相場といいながら、私たち国民にとっては、実際に円の値打ちは幾らなのか、ドルの値打ちはどうなのかという強さというものがよくわからないということが言えるわけです。その点はいかがお考えですか。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 変動為替制でまいりますれば、これを純粋に運用するという場合におきましては、これはお話のとおり、もう政府は介入をいたしません、日銀は介入いたしません、こういうことになるわけでございますが、これを、たとえば今日の石油問題というのが起こってきた。そしてこれが各国の経済に非常に大きな影響を与えておる。そういう環境の中で、そのとおりにしておきますると、どういう相場が、実勢相場が出てくるかもしらぬと、こういう問題があります。それは二つの面において支障がある。一つは商売、これのやり方が非常にむずかしくなるという問題があります。それからもう一つは、主要国の中に為替相場下落競争といいますか、切り下げ競争といいますか、そういう現象が起こってくる。そこで、これはいままで言わず語らずの間に先進諸国の間ではそういうような事態があっては相ならぬと、こういうので、変動為替制ではありまするけれども、同時にある程度の節度を持ってこの変動制を運用していこうということになってきておるのです。今日はさらにそれが一段と進みまして、何らかの変動為替制につきましても、国際的なルールが必要じゃないか、それを検討しようというところまできておるわけなんですが、市場の実勢と、政府が維持せんとするそういう価格とが非常な乖離を生ずるということになれば問題でありまするけれども、それが政策目標を上下いたしまして、若干のフレがあるというような状態でありますれば、大体その相場というものをある安定点にしておきまして、そして商売上も、また同時に、国際社会に対しましても、不安を生ぜしめないという態度をとるということが妥当である、こういうふうに考えておるわけであります。いま非常に為替相場は落ちついてまいりましたので、さほど心配を要するような事態ではございませんけれども、また国際社会でどういう変動が起こるかもしらぬ。そういう変動が起こった際におきましては、ただいま申し上げましたような考え方で対処していきたい、かように考えます。
  32. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その節度ある介入ということは、これはもう当然必要だということはわかっているわけです。野放しにしろということじゃありませんけれども、どうもこの間じゅうのは少し過度に入ったのじゃないかという心配をしたわけであります。そういう点がなければこれは安心でありますけれども大臣の所信のいまのお話しのとおりの運営でいっていただきたいと思うのです。  それからもう一つ、先日外為市場でのドル買い問題ですね。最も量が多かったという東銀、第一勧銀、住友、この三つの銀行が日銀貸し出しの一部を回収されるというような制裁を受けた。これは当然なことなんですけれども、そのほかに石油関連企業とか、あるいは商社とか、またそういうところが、円が先行き安くなるのではないか、こういうことを見込んで実需以上のいわゆるドル買いを行なったとか、投機買いした、こういう点もあったのではないかと、これはわれわれの推測かもわかりませんけれども考えられるわけです。政府が実際手持ち外貨がなくなってきそうだとか、国際収支の赤字に悩んでいるときに、そういうような為銀から石油企業、商社、そういういわゆるお金を持っているところといいますか、そういうところがばく大な金を動かしてドル買いに走るということは、幾ら自由企業ということだって少々問題があり過ぎると思う。過剰流動の手持ち資金、こういうものが一向に吸収されていないからだろうという感じもあるわけです。この点についてはどうお考えですか。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 過剰流動性対策はかなり浸透してきたと、こういうふうに見えておるわけです。政府日銀調査したところによりますと、企業の手持ち資金、これは全体として見ますると、過去数回の引き締め政策、そのときの状態をはるかに越した深刻な手詰まり状態、こういうふうになってきておるわけであります。ただ、まだ偏在現象というのが若干残っておるのじゃないか。そこで、それに対してどういうふうに対処していくかという問題があるわけなんですけれども、そこで選別融資というような方針を示しまして、商社とか不動産の売買だとか、その他投機、そういうものに対する金融、これを抑制いたしますとか、いろいろな選別的な融資の方針を具体化するという態度をとっておるわけです。まあ大体総体とすれば、まずまずこの過剰流動性という問題は先が見えてきた、こういうふうに考えておりまするが、なお、その偏在を一体どうするかということにつきましては、これからさらに特段のくふうを傾けてまいる、かように考えます。
  34. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それじゃ、これで終わりますが、この国際通貨の問題で、若干安定したように見えていても、大臣も御承知のように、フランスのいわゆるEC共同フロートから出たとか、アラブが石油のあれだけの値上げから——それだけてなくても、もともとアラブにはオイル・ダラーが山ほどあるわけだし、そういったものをどう活用していくか、一ヵ所に集中すれば世界的な経済の混乱が起きることがもう目に見えているわけですから、そういう点で、わが国に対してのそういうオイル・ダラーというものの流入の見通しや、いろいろあると思います。あるいは円相場水準というものは一体どこに置いておくのかという問題も出てくると思うんです。その点についても、今後の国際通貨の見通しとか、そういったことについての御腹案や見通し等がございますれば伺いたい。
  35. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国際通貨の問題につきましては、非常に長期的な問題があるわけです。つまり、ドルを基軸通貨としての決済体制を、新しい決済機関に置きかえる、こういう問題がありまして、これは一月のローマにおける二十ヵ国蔵相会議におきましても、主要な討議テーマであったわけです。これはまだ本格化するまでは時間がかかるだろうと思いますが、おおよその方針は、六月中旬に再び開かれるところの二十ヵ国蔵相会議で方向が打ち出されていくであろう、こういうふうに見ております。しかし、その方向が打ち出されてはみるものの、これが実際具体化されて、そして各国の通貨が固定為替制に復元をする、そういうことになりますると、かなりまだ時間が必要じゃないか、その新しい決済手段というものができてくるというまでの間は、おそらく見通しとすると、変動為替制を世界各国が採用する、こういうことになると思うんです。ただ、変動為替制というのは、先ほど申し上げましたとおり、非常に不安定な制度であります。そこで、その間に、この変動為替制をどういうふうに運用するかというルールをひとつ設定しようじゃないかという動きが出てくる、そういうふうに思います。現に多少の動きがありまして、そのルールをどうするかということをIMF当局で草案を検討しておる、こういうような状態でありますが、私は、ぜひそういうルールを主要先進国の間でつくるべきである、これを推進したいと、こういうふうに考えております。  その間、わが国の円をどういうふうに擁護するかという基本の問題につきましては、これは非常に私は、憂慮すべき問題があると思うんです。つまり、これは国際収支の赤字問題であります。とにかく去年一年間で百億ドルの赤字を出しました。全くこれも物価と並んで異常な事態であります。これをどういうふうに克服するか、こういう問題があります。これにつきましては、一番大きな問題は、何といっても国内の経済の過熱体制というものを鎮静化させるということであろうと思います。そうすれば、輸入が減り輸出がふえていく、こういうことになると思います。同時に、赤字の要因の非常に大きな部分であるところの長期資本ですね、これの面に相当大きなメスを入れなければならぬ。いま長期資本収支において赤字が出てきたのはどういうことかというと、どうも、外貨減らし政策というので、どんどん海外に対しては物を買いなさい、しかし、外国から外貨が入ってくることは防ぎとめましょうという方針だったのですが、それを全く裏返しをした政策というものが必要であろうというふうに考えまして、これは逐次その方向で動いてきております。一年間に百億ドルになるという赤字ですから、これをことし一ぱいで解消するというふうなことは、これはとうてい不可能であります。不可能でありまするが、これは、着実にそういう国際収支対策を進めますので、傾向といたしましては、世界各国も円の将来に対して安心されるような状態が出てくる、こういうふうに確信しておりますが、その辺が円防衛対策として、最大のきめ手になっていく、こういうぐあいに考えております。
  36. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 前委員の質問については聞いておりませんでしたものですから、どうしても別な用件があって出席できませんものでしたから、あるいは場合によっては重複する点もあるかもしれませんが、その点はあらかじめお断わりしておきたいと思います。  私は、主として、大臣がこの前、参議院大蔵委員会所信表明をやりました内容を中心に質問をしてまいりたいと思います。  その第一点は、大臣が再三言われておるんですか、短期決戦物価抑制——これはいろいろと予算委員会等を通じまして答弁なされておるのでありますけれども、時期的に、二月という説あり、三月という説あり、まあ六月と、こういうことなんですけれども、大体の時期的なめどをどの辺に置かれておりますか、これをまず……。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体、この両三月の間に流れが変わってくる、つまり、いままでの物価押し上げの勢いというものが、これが鎮静化する。そうしてその間に、他方におきましては石油価格引き上げによる影響、そういうものも出てくると思います。そういうようなことで、新しい価格水準というものがほのぼのと見通されるというような時期が次にやってくる、こういうふうに考えておりますが、そういう時期を大体この上半期中——ということは上半期の末ころ、おそくも夏ころまでにはそういう新しい価格水準というものに日本経済全体として移行するんじゃあるまいか、かように考えます。
  38. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 非常にけっこうな話で、ぜひ、そういう時期でひとつこの大物価高騰を鎮静化方向に努力していただきたいと思うのですけれども、そこで問題は、短期決戦ですね。物価抑制の対象はどこに置いているのですか。たとえば、卸売り物価あり、消費者物価があるのですが、どちらにウエートを置いて、大臣としては今後推し進めようという考えですか。
  39. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) やっぱり終局的には消費者物価が非常に大事な問題だと思いますけれども、前提としてはどうしたって卸売り物価を安定させなきゃならぬ、こういうことになるわけです。  そこで、総需要抑制政策をとりますと、これは消費者物価にももちろん影響がないとはいえませんけれども、まず政府投資あるいは民間の投資、で、その対象となる主要資材の価格影響変化が出てくるであろう、こういうふうに見るわけでありまして、そういうものは、どっちかといえば、卸売り物価のほうに対するウエートが高いものでありまするので、まず卸売り物価変化が出てくると、こういうふうに見るわけです。同時に、しかし、消費者物価のほうの詰めもしなければならぬという問題がありますが、これは総需要抑制政策影響もありまするけれども、これだけでは救い切れません。そこで、特に物資三法、こういうものの働きにこれを待つ、こういう分野が多くなる、かように考えておるわけであります。
  40. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いま大臣が言われましたように、ウエートは卸売り物価のほうにどうしてもかかるだろうと、こういうお話しのように聞いたのですけれども、過去の実績をずっと見ますると、卸売り物価を抑制をいたしまして、それで消費者物価の抑制対策に入るまで、やや、半年ないし一年かかるというのが過去の実例だと私は思うのです。そういうことになりますと、いまおおむね上半期体制で、物価鎮静体制でいきたい、こういうお答えですけれども、実質的にはあるいは卸売り物価は、現行の横ばい状況になるかもしれませんが、これはいわば企業間の取り引き物価ですから、それは企業安定ということになるかもしれません。しかし、それで消費者物価がその影響を受けて鎮静化するということになると、ずっと時期的にはもっと先に延びていくんじゃないだろうかという一つ考えが持たれますし、それから、卸売り物価もどの程度下がるのか、これは確かに予算の見通しにおいて、四十九年度編成時でそれぞれここまでという目標を与えておりますけれども、はたしてそういうことで押え込みができるのかどうか。この辺はどうでしょう。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはなかなかむずかしい問題でありますが、とにかく経済見通しでは何%に見ておりましたか、四月から来年の三月まで、たしか五%ぐらいの……。
  42. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 九・六%が消費者物価です。卸売り物価が一四・六……。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 上昇と見ておるわけですね。大体その辺を目標にいたしましてやっていきたいと、かようにいま考えておるわけです。お話のように、消費者物価のほうは多少おくれると、こういう性格を持つわけです。そこで、物資三法、これがどういうふうに作用していくか、これが重大な問題になってくるわけですが、極力その方面の作用、副作用、これに期待をいたしまして、消費者物価につきましても早く安定する、こういう努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  44. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 大蔵省の統計をいただいたんですが、四十五年以降の物価上昇率ですね、卸売り物価の場合には四十五年度が政府見通し一・九%に対して二・三%、四十六年は一・一%に対して〇・八%、これはマイナスになっていますが。四十七年度は政府見通しゼロに対して実績三・二%、四十八年度が二・〇%に、実績が実に二〇・二%になっているわけですね。そして四十九年度の卸売り物価の見通しは一四・六%となっている。消費者物価は四十五年度が政府見通しで四・八%、実績は七・三%、それから四十六年度が政府見通し五・五%で実績が五・七%、四十七年度が政府見通し五・三%で実績が五・二%、四十八年度が見通し五・五%に対して一四%、そして四十九年度の見通しは九・六%で押えようと、こういう実績と見通しになっておるわけです。これを見ますと、まさに田中内閣が誕生した以降、極端に上がっているんですね。この状況はまさにいわゆる卸売り物価先導型といわれる欧米の先進諸国の状況とやや同じ状況に日本が追いついているんじゃないだろうか。したがって、これは悪性インフレということで欧米諸国の先生方も言われておるようですけれども、こういう問題に対して大臣はどういう御理解を持っておられますか。
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、インフレであるかどうかなんという議論がありますけれども、とにかく、いま、ほんとうにたいへんな状態だと思うんです。この状態を放置しておくということになると、ほんとうに生活のほうも、事業活動のほうも全くその日暮らし、そういうことになっちゃう。先に望みが持てない、こういうような状態が出てくるわけです。そこへもっていって、さらに社会的不公正というものがどんどんどんどん進む。そこで少し乱暴というか、反動的な影響が出てくるかもしれませんけれども、少しきびし過ぎるというくらいな政策をとって、そして、短期にこの状態にピリオドを打つという必要があるんじゃないか、そういうふうに考えております。もう、こういう際には、なだらかな、そよ風の吹くような、そういうような形の政策をとって、そして、影響そうなしに、時間をかけてという考えはあるかもしれませんけれども、そういう時間的余裕をもう許さないような状態だという思い詰めた気持ちなんです。ぜひひとつ、早くこの状態にピリオドを打ちたい、こういうことで、それに全力を傾けて督励してまいる。多少の摩擦があるかもしれない。しかし、それに対しては適時適切な対策はとります。とりまするけれども、流れが変わり、先ほど申し上げましたように、夏ごろまでには新しい水準というものが大体定着するというような事態実現するまでは、いまのきびしい姿勢というものは変更すべきものではない、かように考えております。
  46. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そこで問題は、いま、政府物価上昇の実績と見通しを読み上げたんですけれども卸売り物価が四十七年比較で四十八年二〇・二%。それから四十九年が一四・六%、消費者物価九・六%、これに押え込むわけですね。したがって、この押え込む具体策の中身を実は大臣に聞きたいんです、その中身を。
  47. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) とにかく、主軸になる政策は、総需要抑制政策物資三法の活用と、この二つであります。これが車の両輪として働く。私は、予算につきましては、四十九年度、特に物の需要を喚起する費用につきましては、これは四十七年度の水準をかなり割り込む、こういうことを目標として編成されておるわけです。かなり需要が減ってくる、こういうふうに思います。それから、民間設備投資につきましても、これも、いま、金融引き締め政策をとっておりますので、それ以上の抑制影響というものが出てくるだろう。そういうことになりますると、それらの政府、民間の投資対象になるところの物の価格、土地の価格、そういうものは様相を一変をしてくると、こういうふうに見ておるわけです。しかし、この総需要抑制政策というのは、いかにもきめの荒い政策です。金融財政を通じてふんわりと日本経済の向きを変えようと、こういう政策でありますので、その網の目の荒いところをこまかく詰めをするという作用は、これは、物資三法を発動させる以外にはなかろうかと、こういうふうに考えておるわけであります。大体、そういうことで所期の目的に到達し得るのではないか、かように考えております。
  48. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 物資三法と総需要抑制で、ぜひ、その九・六%ないし一四・何パーセントに押え込みたい、こういうお考えですけれども、その総需要抑制ですね、これは、端的に言うと、不景気政策だろうと思うんですが、そういう不景気政策をとられるということになりますると、私考えるのには、一つは失業者が出るんじゃないかと。どのくらい出るだろうかということが一つ心配になります。もう一つは、企業の倒産はないだろうか。これが必ず出てくるんじゃないだろうか。もう一つは、いま問題になっている春闘等で大幅賃上げということをやっておりますけれども、この労働者の賃金の動向は一体どうなるんですか。まあ、田中総理の言をかりれば、本会議等の答弁で、所得政策はとりませんと、こう言っているんですけれども、この辺の賃金動向はどういう方向に行くんだろうか。あるいは民間設備投資、こういう問題についてどうなっていくんでしょうか。こういう、いわば具体的内容についてどういう態様になってくるんだろうかということを私は非常に心配をするわけなんです。その点は、大臣も、一月二十一日の本会議のいわゆる財政方針の中でも、いま答弁の中にございましたけれども、若干の摩擦はあっても、総需要抑制、それから物資三法の政策を徹底していくんだと、こういうことを言われることは、その摩擦の範囲はこういうところに出てくるんじゃないだろうかということが心配されるんですけれども、なかなか大臣として、いや、失業者は出しますとか、いや賃金は上げませんとか、あるいは倒産は出ますよというようなことは、とてもこれは回答としてはできないだろうと思うんですが、その辺の政策の全般について、もし具体的な中身について答弁があればお答えを願いたいと思います。
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 失業問題と企業の倒産という問題、これは多分にうらはらをなした問題だろうと思うんですが、そういう現象が起こり得る可能性というものはあるんです。  そこで、失業というか、そっちの面だけについて言いますると、今日なお労働の需給は非常に固いと、こういう状態でありますので、そう大きな失業というような事態は、私どもとしては予想はしておらないんです。おりませんけれども、こういう政策をとるということになると、一体いかなる事態が起きてくるかもしらぬというふうに考えますので、そのときは、それに備えまして、公共事業費の活用を弾力的にやるとか、あるいは財政投融資計画による事業というものを弾力的にやりますとか、いろいろ機動的な財政上の運用のことも考えておるわけです。  それから、失業が出るというようなことと関連いたしまして、倒産だとか、そういうようなものがなしとしない。しかし、倒産というようなことはなるべく政策のゆえにという立場からいたしますると、これは避けなきゃならぬ。それに対しましては中小企業金融政府三機関においてその資金量の充実をはかっておりますとか、あるいは無担保、無保証の融資ワクを拡大をいたしますとか、あるいは市中金融機関におきまして、自発的に三千億の資金を別除をいたしまして、そうしてそういう中小企業対策に充てるという動きがあるとか、いろんな施策が講ぜられておるわけです。ですから、そういういわゆるきしみ現象に対しましては、機動的にあらゆる施策をとります。とりまするけれども、政策の基本体制につきましては、これは所期の目的を到達するまでは、これは変更しないというのが考え方であります。
  50. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 たとえば、四十九年度の予算説明書の中で、きしみの具体的な中身について、いわゆるひずみですね。この中身を見ますると、失業保険の受給者が五十五万一千人——これは見込みでありますけれども、これは四十八年と同数ですね、予算説明書の一九ページにありますが。それから失業対策事業、これは九万九千人、これも四十八年同数です。ですから、いろいろと総理なり大臣が言われているように、そういう社会保障制度的なものについて、福祉関係についてそのきしみ是正という、こういう問題は、あまり四十九年予算の大綱を見まするとやられていないんじゃないだろうか、こういう印象を受けるんですけれども、この辺の考えはいかがでしょうか。  それから、予算上の対策ですね。いま大臣も答弁があったんですけど、中小企業等の倒産については、中小三庫の政府関係の金融機関あたりから全部融資をして弾力的に、そういうものをひとつ倒産しないように対応措置をとっていくと、こういうことを言っていますが、現実はもうすでに倒産が続発をしている、こういう現状がございます。  具体的な問題は避けまするけれども、そういう上に立って、どうしても最終的に労働者の賃金カットやら失業者や、あるいは中小企業の倒産や、そういういわば弱い、経済的弱者という、そういうものが一面に被害をこうむるような、そういう中でのみいま大臣がおっしゃられたような総需要抑制体制、物資三法、こういうものが推し進められるのではないかという印象をとても受けるんです。そういう心配は当然あるんだろうと思うんですが、ですから、こういう問題について、具体的に予算の内容等も含めまして、どうも政府施策、いままで言っているようなことが、具体的な裏づけとしてないんじゃないだろうかというふうに考えるんですけど、これはどう一体お考えですか。
  51. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今度の予算の一つの特色といたしましては、機動性ということなんでありますが、これは経済のこれからの動きに応じまして、まだ過熱の勢いが続くというような際におきましては、公共事業を中心とした執行の問題、こういうものを考えなければならぬ。  それから、四十八年度から四十九年度に繰り越されることになるであろう公共事業費がかなりあるんです。そういうものにつきましてもいろんな配慮をしなければならぬ。逆に今度は、そういう繰り越しもありまするし、それから四十九年度につきましては、かなり抑制的に予算を組んであるとは申しながら、多額の公共事業費もあるわけでございまするから、それを、状況が非常に失業等の面から見て問題があるという際におきましては、きわめて局部的な問題でありまするけれども、これを機動的に活用するというようなことを考えるとか、それから予備費につきましても、かなり多額のものを四十九年度におきましては用意をしておるんです。そういうようなことを総合いたしまして、起こり得べきあらゆる事態に臨機に対応できる、こういうふうに考えております。
  52. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ことに大臣は主張しておる点なんですが、安定成長政策、これをさらに大臣は主張されておるわけですが、この安定成長政策を今後もとっていくのかどうかこれが一つです。  それからもう一つは、前佐藤内閣のときに、佐藤総理が実現するときには、やはり安定成長、これを高々と取り上げて総裁選挙なんかもやったと思う。それで大臣が、四十一年に大蔵大臣に就任された、数多い政治家の中でも大蔵大臣をやっておられる方は六人くらいなんです、わずかに。ほんとうに限られておる。その主要な大臣大臣がやられておるわけですけれども、結局私は、高成長にいってしまったと思うんですよ、安定成長で出発しても。  ですから、これはむしろ私は提案したいのでありますけれども、そういう中で、やっぱり安定成長を大臣が主張する実体を政策上遂行していくと  いうことになれば、どうしても列島改造という政策は、これと絶縁しなければいけないではないか、一つは。  もう一つは、民間設備投資ですね、これをやはり徹底して抑制する。たとえば四十八年度は二十一兆九千億ですね、二八・六%前年度増。四十九年度で二十四兆一千五百億で前年比一〇・三%増ということで考えておられる。これは大蔵省からもらった資料ですけれども、そのくらやはりどんどん民間設備投資というものは増大をしておるという状況ですね。これを拡大していきゃ、私は、いつかやはりまた、この高成長政策に乗り移っていくんじゃないだろうか、こういう心配が非常にするわけです。  それからもう一つは、公共事業投資です。これは経済社会発展計画で九十兆円を考えておるわけですから、これは膨大なもんだと思うんですね。こういった削減をやはり徹底してやらなければ、昨年度において約八%公共事業の削減をやったけれども、これが約千八百億見当ですかね、そういう状況になっておりまするけれども、この三つの大綱の基本政策というものを実行しなければ、私は、どうしても大臣が主張するような安定成長政策にはなっていかないんじゃないか、こういうふうに考えるんですけれども、その考えについてひとつ御回答を願います。
  53. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、日本列島改造計画を切り捨てなけりゃならぬだろうと、こういうお話でございますが、日本列島改造計画というのは、まだ日本政府の政策として正式に取り上げられておるというんじゃないんです。これに似たような性格を持った計画といたしましては、新全国総合開発計画というのがあります、昭和六十年を目標にした。それから、また、経済社会発展計画というのがあるわけであります。これは五ヵ年計画でございます。その他、それの中に、あるいは道路の長期計画だ、河川の計画だとか、住宅だとか、いろんな行政レベルの長期計画があるわけですが、それらの計画について、私は、この異常な事態はどういうふうなおさまりをするか、そのおさまり方の上に立って全部見直しをするという必要があるだろうと思います。いままでのそういう諸計画をずっと追っていくということになりますれば、結局、経済全体が非常なふくらみを持つ。ふくらみを持つだけじゃなくて、それが国際収支の関係におきましても、あるいは物価とのつり合いにおきましても、あるいは資源との整合というような点におきましても、あるいは公害という問題から見ましても、いろんな破綻が出てくるというふうに思いますので、それはいま非常な事態でありますが、非常な事態が終わったその後におきましては、特に再び物価をこういうふうにしてはならぬ。これ、物価問題。それから国際収支が一年間に百億の赤字を出す、こういうふうなことは絶対避けなければならぬ、そういうような問題。それから資源、もういままでのような気持ちで資源問題に取り組むことは許されません。資源は有限であるということが新しい世界の課題になってきた。その中において資源小国である日本の経済運営をどうするべきかという観点。それから公害列島というようなことが言われるまでになってきた公害、自然環境とのいろいろ経済発展との調整をどうするか、そういう問題との調整が、可能な限度の成長の高さというものを考え、その成長の高さの中におきましては、したがって、成長中心主義の考え方じゃない、成長政策の本来の目的であるところの国の調和ある建設をどういうふうにしていくかという、いわば福祉社会建設ということを中心にした考え方施策を進めていかなけりゃならぬだろうと、こういうふうに考えております。  民間設備投資は、したがって、そういう中においては、これはもうずっといままでと調子を変えていかなけりゃならない、成長がそういうふうに鈍化するのでありますから、したがって、民間設備投資をそういう生産第一主義というのでなくて、公害防除のための設備投資でありますとか、そういう方向へ大きく振りかえを必要とする、そういうことになりますれば、国の総生産も、したがって、これは非常に少なくなってくる。いま四十九年度におきましては二・五%の成長ということを見込んでおるわけでありますが、この二・五%が昭和五十年以降どうなるか、そういうことにつきましては、国際社会がどういうふうな経済発展を示すだろうかというようなことともにらみ合わせながら、まあきめなければならぬ問題でありまするけれども、いずれにいたしましても、一〇%をこえるというようなそういう事態はもう終わった。これからは国際水準ということを目ざす成長政策へ切りかえなけりゃならぬと、かように考えております。
  54. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 経済企画庁から生活局長来ておると思いますが、インフレで損をする者、得をする者が出ておるわけですね。その損をするいわゆる債権者の損失額ですね、このインフレによって、ことに四十八年以降田中内閣が誕生して以来、今日まで一年間ぐらいが急激にひどいのですけれども、その内容については調べておられましょうか。もし調べておればその内容を教えていただきたいし、それからもう一つは得をする者ですね、いわば企業法人、こういった関係が相当やはり暴利をむさぼっておるという実態があるわけですけれども、そういうものの内容についてもおわかりになれば、あわせてひとつ数字的に教えていただきたい。具体的に、たとえばいま郵便貯金がどのくらい積まっておって、それでどのくらいの損失があるか、あるいは定期貯金の場合ですね、総額どのくらいあって、どのくらい損失しているか、あるいは年金積立金でどのくらいか、あるいは生命保険の契約高でいってどのくらいかというような、具体的な内容について。  それからもう一つは、得するほうの企業あるいは会社ですね、こういった問題については、現行四十九年度見通しで、他人資本はどのくらいあって、自己資本はどのくらい、運転資金及び借入金、どのくらい持っておるのか、設備投資でどのくらい総額持っておるのか、それは四十八年と四十九年度でいいですから、もしわかれば数字的に、いま言った内容でけっこうですから教えていただきたい。
  55. 平弘

    説明員(平弘君) 生活局長、からだをこわしまして、かわりまして参事官、平でございます。  先生がいまおっしゃいました問題につきましては、かねて実態はつかまえたいと考えておりますが、いまのところでき上がった資料は実はございません。現在の物価の非常な上昇によります影響というものが、従来でございますと、どうしても平均的、全体的にとられがちである、このことによってその非常に複雑な影響というものをつかまえ切れないということに相なりますので、国民各層に与えるこの物価の異常な上昇影響というようなものにつきまして、特に焦点を置いて分析に取りかかりたいと思っておったところでございます。  先生御承知の国民生活白書、これを例年大体夏から秋にかけて公表いたしますが、その素材といたしまして、現在特に各層に対する影響という形で、いま御指摘のありました点も含めました資料を作成してまいりたい。こういうふうに考えております。
  56. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それは企画庁自身で調査をしますか、それとも委託調査にしますか。それから見通しは、いつごろできますか。
  57. 平弘

    説明員(平弘君) この全体の白書は例年でございますと、大体これ、夏になるわけでございますが、現在スケルトン、どのような政策課題をそこに整理していくかということを検討しておるところでございます。  それからこの調査につきましては、白書をつくるためにはその部品として、かねて委託したものを調査するというものもあるいはございましょうけれども、大体は既存の統計資料の加工分析というものを中心といたしましてこれを作成する。それからなお貨幣的に表示されないような国民物価あるいは生活に対する意識等につきましては、必要に応じましてさらに企画庁として直接あるいは委託を行なって調査をするということを考えています。
  58. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ついでですから、この間、連合審査の際、課徴金徴収のその調査官の配置状況ということで、小島局長が、年内、予算編成が確定したときにおそらくきまるだろうということであって、そのときに資料を提供いたしますと、こういうことだったんですけれども、その中身と資料、できておれば、これあとで資料で出してください。時間があまりありませんから、内容の質問は省略しておきますから、それはいかがですか。
  59. 垣水孝一

    説明員垣水孝一君) 大体まとまっておりますので、そういうふうに資料として出さしていただきたいと思います。
  60. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それじゃ、委員長、いまの資料請求は、ひとつ、そのように取り扱いをお願いいたします。  それで、問題は、内容がないと言うから、私がいろいろと調査をした内容、四十六年度ですけれども、これをちょっと発表しますと、郵便貯金の場合で七兆六千億、それから定期貯金の場合三十五兆円、それから年金積立金は九兆円、生命保険契約金額九十八兆、締めて百四十九兆六千億円あるわけですね。これ、かりに物価が二〇%上がるということになると、こう計算しただけでももう三十兆円をこすのですね、損失が、寝せておくと。これは自動的に国民の損失ということになると思う、算術計算でいっても。それから、片面の得するほうは、いま他人資本は大体八五%、借入金ですね、これは運転資金を含めて。自己資本の場合ですと、これは株、積立金等でありますが、一五%、こういう状況になっていると思う。ことに企業全体の借金というのが百三十九兆円もあるわけですね。かりにこの設備投資の長期借金が約四十二兆円、この設備投資資金の四十二兆円を考えただけでも、この会社や企業は、自動的に四・二兆円ぐらいもうかってしまうという勘定になるわけですね。だから、こういう状態が二〇%というと、これは八兆四千億です。そのくらいもうかる勘定ですね。こういうふうにインフレの損得を与える影響というものは非常に私は大きいと思うのですけれども大臣、この損するほうの問題について、さしあたってどういう対策をお考えになっているのか、これやらなくちゃいかぬと思うのですね。いま国民考えというのは、もうもうけた、超過利得をした者からずばり取って、それを国民に還元しろと、こういうのがやっぱり国民の声だろうと思う。ですから、いろいろ新聞などを見ますると、政府としても超過利潤税ですか、そういうものを創設して引き揚げるというようなことを、大蔵省等の考えはまとまったという話を聞くんですけれども、そういう問題について実行して、一方はこの超過利得に対する適切な処置をとる。損したほうは一体どうするか、こういう問題について非常にいま国民関心を持っているところだと思いますけれども大臣の御見解をひとつ……。
  61. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほどから私も申し上げているのですが、こう物価が異常に上がる、こういう状態だと、非常に社会的不公正という問題が起きてくる。これはいろんな面で起きてきますが、いま戸田さんの御指摘の、金を借りた者と預けた者との間の問題という問題もまたその一つである、こういうふうに思うのです。しかし、そういう問題をきれいに、何とか対策をとり、ふさぐべきところはふさいでいくという詰め方をすることは、これはもう非常にむずかしい問題です。結局、これは、もう一刻も早く物価の上がるこの異常な状態というものを断ち切るという考え方をとるほかはないと思うんです。しかし、そういう基本的な考え方ではありまするけれども実行し得る問題がありますれば、これはやっていかなければならぬ、そういうふうに考えまして、たとえば、一番これはインフレ、物価高の被害者は何といっても低額所得者です。年金の受給者でありますとか、そういう低額の所得で暮らすというような立場の人であるとか、また施設にやっかいになっておるというような低所得者、そういうような人の問題、それらの社会保障的な施策というものは、これはどうしても強化しなけりゃならぬと、こういうので、予算案におきましても、一方において公共事業のほうは、前年度以下にこれを押えると、こういうふうにする半面におきまして、社会保障費のほうは三七%近くこれをふやすというような考え方をとったのは、そういう考え方を具体化したわけなんです。  それから、いまお話の出ました超過利潤をどうするかという問題。これはとにかく国民が、これだけあげて物価の問題を心配しておるという際に、不当な利得を上げる——売り惜しみ、買い占めといったような、あるいは便乗値上げでありますとか、先取り価格の設定でありますとか、そういう行為によって不当な利得を得る者、それからはその利得を徴収しなければならない、これは私は国民感情だと思うんです。この国民感情をどういうふうに具体化するかということにつきましては、ただいま各党間で話し合いをしてみたいと、こういうような動きになってきておりますので、その動きが結実するということを私、期待をいたしておると、こういうふうに考えますが、思い当たる実行可能な施策につきましては、これはもうどんどんこれを採用し進めていくというふうにいたしまするけれども、これはもう、このむずかしい異常物価高に対する対応の施策というものは、とてもそれは個々の施策だけでは解決できないんです。結局、これは一刻も早く、このインフレ、異常事態を克服するということをしない限り、この問題の解決というものはできない、そういうふうに考えまして、その方向で全力を尽くしてみたいと、かような考え方でおります。
  62. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間が参りましたから、これ一点で終わりますけれども、最後に減税問題ですけれども大臣財政方針の中で四十九年度一兆五千億減税をやる。これを私は否定するわけじゃないんですけれども、やはりいまの税制は非常に不公平なのですから、今度のやっぱり減税も、いろいろこう当たってみますると、どうしてもやはり五百万円以上の高額者が相当数恵まれた状況にあるようです。どうしてもやはり五百万円以下、それがとうもやはり増税——増税とは言いませんけれども軽減がきわめて少ない、こういう状況になっていると思います。これは私案ですけれども一つは五百万円をめどにして下を少し軽減措置をはかったらどうかという考え一つあるわけなんです。それからもう一つは、この超過累進税率の徹底がやっぱり必要じゃないか。いま逆進性が非常に強いですから、そういうものを徹底化させる。それからもう一つは、総合課税の累進税率、これの徹底化をはかることだと思うのですね。この三本柱をやはりいまの税機構の中に取り入れて、そして不公平を是正した上に立って、いま言った五百万円をめどにした、高額者についてはそれ相当の増税体制をとって、以下はやはり軽減措置をはかっていく、こういうことになれば、相当大衆重課の姿というものはもっと軽減された形になるのじゃないか、国民の重税感というものはもう少し払拭できるのじゃないか、こういうふうに考えるのですけれども、この辺のやはり税の仕組みですね、これはどうしてもやはり実行しなければいけないのじゃないだろうかと思うのですけれども、その辺の考えについてぜひひとつお伺いをして、時間が参りましたから終わりたいと思います。
  63. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま御指摘の問題は、俗なことばでは、今度の税制改正は重役減税じゃないかと、こういうふうなことばでも言われるものに通ずるお話のようでございますが、この御批判ですね、これは税制調査会におきましても当初はずいぶんあったんです。ところが、だんだんだんだん税はどうあるべきかという根本的な話し合い、つまり今度はとにかく一兆五千億円の大減税だと、所得税大減税だと、こういうことです。この機会に税のいままでのゆがみを是正して、均衡のとれたものにしなきゃならぬと、そのためにはどうあるべきかという議論が、ずいぶん長い間繰り返されたわけです。結論といたしますと、ただいま御指摘のありましたような、この税率の調整の問題、あるいは必要経費の天井取っ払いの問題、そういう問題についてだんだんだんだんやはりこの際はそういうことを加味しなきゃならぬだろうかなと、こういう意見になりまして、そして最終段階になりますと、これはもうほとんど満場一致という形で、あの税制調査会の四十九年度税制改正案というものがまとまったんです。それを土台といたしまして、いま御提案をいたしておる税制改正案ということになったわけでございますが、まあいろいろ御議論があるんですが、やっぱり税制調査会のその推移に見られるように、この際、やはりある程度税率の調整もしなきゃならぬと、それもある程度物価が上がってきたというような今日の情勢から見まして、高額のところまで及ぼさなきゃならぬじゃないかと、また勤労者の必要経費という問題につきましても、いままでのような考え方でなくて、この際にこれが是正をしなきゃならぬだろうということは、事業所得者との均衡という問題があるんです。そういうようなことを一方においてにらみながら考えますと、天井に制限を置くと、そういう考え方でなくて、天井なしにするという考え方のほうがむしろつり合いのとれた考え方ではあるまいか、そういうようなことが考えられ、それがまあ結論的には大勢を占めると、こういうことになった次第であります。まあやっぱり税制調査会があれほどまでに検討に検討した結果でありまするから、これを尊重するという考え方が私は妥当であるというふうに考えます。
  64. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 最後に一点。  ちょっと先ほど四十九年度所得税の一般減税の総額一兆五千億と言いましたが、これは一兆四千五百億円ですから、訂正しておきますから。  それからもう一つは、大臣もおそらくこの点はおわかりだろうと思いますが、東京都の減税方式、御検討なされたでしょうか。確かに税調ではいろいろやられてきておりますけれども、この東京がいまやっておる減税方式を見ますと、非常にいま言ったような内容が逆になっているわけですね。確かに五百万円以下は非常に減税されて、高額所得者が非常に割合としては多くなるように仕組まれている。これはやれば私はできると思うんです。これはやっぱり政治決断じゃないかと思うんですが、そういう東京都方式というやつも、最近は全国にいろいろといい影響を与えていると聞いておりますから、こういう面についてもやはりもう少し御検討していただいたらどうかと、こう考えてます。
  65. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ東京都の方式というのを見ておりませんけれども、見た上またお答えをいたしたいと、かように思います。
  66. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 重複する点が多いかと思いますけれども、大体物価問題を中心にお伺いしたいと思います。  先ほど大臣が、昨年十月の価格水準に戻ることは、これはきわめて困難だ、しかし、両三月のうちに新しい価格水準に落ちついていくのではあるまいかというお話がございました。で、ひとつ大臣の、どういう問題意識をお持ちかということでお伺いしたいんですけれども一つ価格水準から、ある価格水準に変わっていく、それほどにもすさまじい物価上昇だということが背景にありますけれども価格の相対的な関係も含めて大きく変わっていくという、これを前提として見た場合に、先ほど来議論があるわけですけれども社会的に見て、その価格水準変化が債権者に及ぼす影響、あるいは債務者に及ぼす影響、それぞれ異なっておる。社会の相対的な関係が、価格水準が動くことによってやっぱり変わってきてしまう。それを素朴に不公平が拡大したとわれわれは感ずるわけですけれども、そういうものについて、何らかの是正する対策というものを基本的にとらなければいけないのではないか。先ほどは母子家庭とか、そういう経済的に弱い立場にある人について特に考えるんだというお話がありましたけれども、そういう局部的、例外的な処置ではなくて、基本的な対策として、価格水準の変更が及ぼす社会的な悪影響を減殺する処置をとるべきではないか。まあこんなところから、金利政策に言及される場合が多いと思うんですけれども、重ねてお伺いしておきたいと思います。
  67. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そこまでのことはただいまの段階ではまだ率直に申し上げまして考えておらないのです。まあとにかく、今日異常な状態だと、その異常な状態に水をかけ、その火の手を消さなきゃならぬと、これに精一ぱいでありまして、そのあと、第二段階といいますか、新しい価格水準というもので出てくる、それを踏まえてどういう体制をとるか、またどういう政策をとるか、その辺につきましては、いまどういうふうにしたらいいだろうということを思いめぐらしておると、こういうのが率直ないま私の現在の立場なんです。これはよく、いま栗林さんから御指摘の点、これは一つの問題だろうと思いますので、そういう点につきましても考えてみたいと、かように考えます。
  68. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これは、そこまでいく過程のつなぎではないんですけれども、橋渡しのような意味で、預金金利について、これもまた検討せざるを得ないという方向の記事を散見するのですけれども、それも含めて、きょう現在の対策としてお考え中であると理解してよろしいですか。
  69. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 預金金利の問題は、まあ皆さんからいろいろ御意見を承るのでありまするが、これは預金金利だけで片づかない問題なんです。つまり、金利水準全体の問題ということになってくるわけです。それとの整合性ということで考えていかなければならぬ問題なんで、そこで、そういうものとの整合の見地から、こういう措置が考えられるということになりますれば、そういうことを考えるのも私は一つ考え方じゃあるまいかと、こういうふうに考えますが、まあまだ具体的にどういうふうにするという考え方は固めておりませんけれども、それらも含めてあれやこれや考えておると、こういうことが現状でございます。
  70. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 では、その問題はまた続けてお伺いするとして、先ほど物価水準が上がっていく理由として、石油価格の問題であるとか、あるいは為替相場の問題であるとか、二点をおあげになったわけですけれども、確かに石油価格も昨年に比べてバーレル三ドル二十五セント前後から、今日では十ドル前後と、確かに上がりつつあるわけですけれども、この石油価格影響が、物価上昇として何%ぐらいにきいてくるんだと、あるいは為替相場上昇というものが何%ぐらいにきくんだろうかという点についてはどの程度に見ておいでになりますか。
  71. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ為替の点は、私はそうたいしたことはないと思うのです。これはしかし、影響はあるにしても、そうたいしたとはないと思いますが、とにかく石油価格が昨年に比べて四倍にも上がりますと、こういういうことになりますると、これはかなり物価影響してくる。まあ石油を使って電力をつくると、電力会社のコストがずいぶん上がっていくわけです。そうなりました場合に、一体どういう価格水準をつくらなきゃならぬかというような問題も起こってきますので、いまそういう問題がどういうふうなかっこうになっているだろうか。いまこれから起こり得るのは、第二次石油価格引き上げ影響が出てくるわけですが、それが出てきたあとの諸物価への影響というものはどんなふうになってくるだろうかという、いま鋭意勉強している最中でございますから、また勉強が進みましたならば御報告申し上げたいと、かように考えております。
  72. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これは、政府の部内で研究しながらこういう数字が出ましたという中を拝見しますと、三ドル二十五から十ドルに上がったとして、まあ相当な値上がりになるわけです。一般物価——石油に直接関係する製品ではなくて、いろいろこれは電力価格にもはねかえれば云々ということで、産業連関的な見方をしなければいけないわけでしょうけれども、その他の一般物価で見ると、三%と上がらない。そこで、この三%しか上がらないという数字が合っているかどうかということは、これは別におきます。それ以外に、やっぱりいろんな物価上昇の原因があるんじゃないか。一つ先ほど投機ということもおっしゃいました。そこに行く前に一つ例をあげてお尋ねしたいと思うんですけれども、一月二十一日でしたか、アルミ地金がトン当たり一万円値下げをいたしました。理由とすると、石油電力の削減二〇%というものが一五%の削減率に緩和された、したがって、操業度も落とさなくて済むから、トン当たり一万円是正をするのですという発表だったと記憶しております。  そこで、大臣にお伺いしたいのは、その操業減というものが、コストアップになることはよくわかります、原価計算ですから。そのことと価格がどうして直結するんだ、本来価格形成というのは、別な舞台でやるたてまえになっている、操業が何%か落ちた、したがって、割高について原価が上がるということはわかりますけれども、それと価格というのは本来別だと考えていかなければいけないんじゃないか、なぜこれがこう直結するんだ、こういう問題についてはいかがお考えになりますか。
  73. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、物価というものは、いまは異常です。これは私先ほど申し上げたとおり、私は、物価というに値しない、相場であると、こういうふうにまあ見ておりますが、普通物価といえば、やっぱりこれは生産費ですね、それと需給と、この両面からきまってくるわけです。まずコストということが問題になる。それを需給で、そのコスト中心価格をある程度上下すると、こういう状態が普通ノーマルな状態じゃあるまいかと、こういうふうに考えておるのですが、今日はそういうこととはもうかけ離れちゃって、先へ行けば高くなる、そういうようなことで、この投機的行動というものが非常にまあ価格に反映してきておると、こういうふうにまあ見ておるんです。つまり、水ぶくれである。ですから、その水ぶくれの水をそぐということが非常に大事な問題になってきておるんじゃないか。そこで、その水ぶくれの水をそぐために、総需要抑制政策とか、あるいは物資三法と、こういうような施策を進めておるというのが現段階でございます。  まあ、いまアルミのお話がありましたが、そういう問題もやはりそういう水ぶくれ現象の中の一こまじゃあるまいかというような感じを持ちながらお聞きしておったわけでございます。
  74. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 一番最後にお触れになったことを実はお伺いしたいと思ったんですけども、おそらくこういうお答えがくるんだろうと思ったんです。原価がこれだけ高くなった、したがって、売り値をこう上げたいということは、見方を変えてみると、やっぱり売り手市場、総需要抑制政策というものを、もっときかせていかないと、簡単に価格に原価要因が転嫁されて値段が下がってこない、総需要抑制政策というものをもっと強化しなければいけないんだというお答えかしらと思ったんです。  それはそれとしまして、ただお伺いしたいのは、操業が落ちると、いまみたいにすぐコストアップになって価格にはね返ってくる。片方ではもちろん総需要抑制という問題があります。これをお伺いするつもりで聞くんですけども、ただ、日本企業の場合、損益分岐点が非常に高くなっている。高くなっているということは、操業が落ちるとすぐ赤字だからという形で価格にはね返す、言うなれば、操業減に対する抵抗力が非常に弱い体質じゃないか。なおかつ、しかし、物価は下げなきゃいかぬということになりますと、赤字覚悟、先ほど来出ておりますきしみ覚悟の総需要抑制策というものを強行していかざるを得ない。これが多少の問題が出てもということだと思うんです。で、そのお覚悟で、今後おいでになるんですねということをひとつお伺いしたいんですけれども、ただそうやって、損益分岐点が高い、操業減に対する抵抗力が薄いところにもってきて、春季賃金交渉が始まってまいります。日本企業ならほとんどこれは固定費に繰り入れになる。ますますもってきて操業減に弱い。じゃ、伸ばせるかというと、大臣先ほど御指摘のように、物資も足りなくなりました。目先の問題考えてみても、第一電力が足りません。公害対策の問題もあります。加えて、新規設備投資は抑制しなければなりません。当然です。片方では、外貨事情の問題があります。と、この面からも相当操業は減ってこざるを得ない。しかも、片方では春の賃金交渉がある。しかも、一月現在では、原価の上昇価格にはね返せるような、まだどちらかというと水ぶくれの幅がある総需要抑制策という中で、もっとこれをきびしく総需要抑制を進めておいでになりますか。その場合に、当然倒産は覚悟の上で、また、そういう企業体質なんですから、解雇もまた当然であるという覚悟でお進みになりますか。
  75. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまの、非常に考え方を変えなけりゃならぬ時期に来ておると思うんですが、それは、いままでは日本経済は非常な高いスピードで発展してきた。そこで、賃金でありますとか、まあいろいろなコスト要因というものを、事業の量の拡大ということによってこれを吸収するという結果になっておったんです。ところが、あらゆる角度から検討してみまして、これからはいままでのような高成長はとてもやっていけない。そこで、私が考え方の転換を要すると申しましたのは、よほどこれは企業の中でも合理化というような考え方を取り入れないとやっていけないんじゃないか。まあマイナス成長というごとは私はないと思いまするけれども、しかし、それにしても、いままでのような一〇%をこえるような成長、それに比べると、もういままでかつて経験したことのないような成長経済に移るわけですから、その影響というものは、各企業にどういうふうに吸収されていかなきゃならぬかということを、よほどこれは考え方を変えた立場で立ち向かっていかなきゃならぬ、そういう時期に来ておると思うんです。これはまあ操業度が落ちたと、落ちたというか、まあ伸び悩んだというようなことだとか、あるいはいままでのような勢いで賃金が上がっていったらどうなるだろうかというような問題とか、いろいろ問題がありますが、しかし、基本としましては、企業のいままでの運営の態度と、考え方というものを基本的に変えていかなきゃならぬ。そこで、まあそういうことを前提といたしまして、総需要抑制政策というものも進めていくわけでございますが、この総需要抑制政策は、これはとにかく経済、いまのこの物価高の流れ、これに一大変化が起こると、そして、それがもう変化後安定という形で定着するというまでは進めていかなきゃならぬ。むしろ企業にお願いしたいのは、そういう政策に順応した体制をとってもらいたいと、こういうことでございます。
  76. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間がありませんからあと一問だけで終わりますけれども、ただ、いま大臣お答えになったそういうものに順応する姿勢をどう企業にとらせるのか。これは言っているだけではやはりだめなんです。どうやってやるのか、もうやはり発想を転換して考えていかないとだめなんではないか。そういった意味で、最後に関連して一つだけお伺いするんですが、とにかくいまの物価というのは、物価じゃなくて投機なんだ、相場なんだ、おっしゃるとおりだと思います。ただ、これが短期的に見て安定する状況が期待できるんだろうかと考えますと、物価問題というのは、突き詰めていくと配分の問題だと思います。世界的に見て南北間の配分がいま大きく激動しようとしております。この配分関係の変化というものが、東西諸国間の相対的経済関係にも及ぶでしょうし、西側諸国問の関係にも及ぶでしょうし、そういう国際環境下において、さて短期に安定するかということになると、なかなかもってむずかしいと言わざるを得ません。そうなると、可能な限り筋が通った価格形成をどうやってつくっていくのかに最大の努力を傾けざるを得ないと思うんですけれども、それが何かというと、投機をどうやって排除するか、さしあたって。これはそういったものはけしからぬという修身ではなかなか動かない。総需要抑制政策という網をかけただけでもなかなかだめだ。そうなりますと、個々の銀行貸し出しに立ち入って、投機資金を絶対貸さぬ、投機資金に使ったらただおかぬぞというような管理をやはりしていかなきゃいけないんじゃないか。現在でも窓口規制は日銀経理で強化はされておりますけれども、もっと立ち入った行政介入を銀行貸し出しについてしていかないと、この投機というのはなくならないんじゃないか。本来投機行為そのものが、経済社会を伸ばしていく活力でもあったわけですから、これをやめるというのは、よほどの、いま異常事態だと大臣がおっしゃったことを踏まえながら、銀行貸し出しに入っていかざるを得ない。それは銀行の良識に期待するというにしては、先般の外為市場における為替銀行のあの態度というのはとうてい理解できない。よってもって、銀行の貸し出しの中に強力に行政介入していくべきだと私思うんですがいかがでしょうか。
  77. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話のとおり、これは金融あり方というものが、これからの経済運営にも非常に大きな関係を持つわけです。  そこで、先般選別融資方針というものをきめまして、その中には、投機と見られるような金融をしては相ならぬ、こういうふうなこともしておるわけであります。そういう点につきましては、これはなかなかむずかしい問題でありまするけれども、なお厳重にその方針を貫いてまいりたいと、かように考えております。
  78. 野末和彦

    ○野末和彦君 先ほども出ましたけれども、いわゆる貯蓄奨励のようなことですね。貯蓄心理がゆらいでいまして、国民の。貯金したら損するんじゃないかということなんですけれども、そこで、新聞など見ますと、割増金つきとか、あるいは預金金利引き上げるとか、いろいろ大臣もいまお話しになりましたが、そういう貯蓄奨励のような政策を検討中ということを聞いたんですが、このほんとうのねらいですね、貯蓄を奨励しようという、これはあれですか、貯金をしている者を保護しようと、あるいは目減りの分を救済してやろうというねらいと、国民の金を吸い上げて需要を抑制していこうという、もちろんそういうねらいもあるわけですが、この二つのうち当面どちらを大臣は優先目的として考えて検討なさっているか、どうでしょう。
  79. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ率直に申し上げまして、両方のことを考えながらやっておるわけです。どっちということでなくって、両方をにらみながら金利政策というものは考えなきゃならぬというふうに考えます。
  80. 野末和彦

    ○野末和彦君 そう答えられると思ったんですけれども、だけども、だいぶ違うですよね、両方と言われても。片方は、抑制するというのは、国民に金使うなということですからね。それからもう一つの救済しようというのは、損した分はめんどう見るよということで、両方うまくいきゃもちろん文句ないんですが、まず、じゃ抑制のほうから考えますと、金をとにかく貯蓄奨励で集めますね。えさつけて集めて、かなり集まると思うんですが、その集めた金を今度金融機関が運用するということになりますと、国民需要は押えたけれども、別の需要が当然起こるわけでしょう。それで、特に金融機関は、さっきも話出ましたけれども、結局選別とかなんとかいっても、景気がよくてもうかりそうなところには、やっぱりどんどん貸すわけですよ。それじゃなければ商売にならないわけですからね。栗林委員のように、貸し出しの中身にまで介入していくならともかく、良識に期待する程度のいまの考え方だったら、やっぱり別の、国民が使うよりもっと悪い需要が起きて、結局また国民はインフレに泣かされるという結果になるんです。その心配はありませんか。
  81. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 結論から申し上げますとその心配はないんです。つまり、金融引き締め政策というものをとっておるんです。ですから、貯金がいかに集まるかという問題とは別に、貸し出しのほうは抑制方針をとっておるわけです。預金がその間においてふえるということになりますれば、日本銀行に対する借り入れを返済するとか、あるいは日本銀行のオペレーションに応ずるとか、そういうようなことになるわけでありまして、預金がいろいろな増強工作によってよけいに集まった、だから、よけいに貸し出しが行なわれるという状態にはならないわけです。
  82. 野末和彦

    ○野末和彦君 そうですがね。そんなにうまくいくかどうかぼくはわかりませんけれども、しかし、いずれにしても、国民需要を押えようという目的で集めた金を、やっぱり別のところにまた貸すというのはそもそもおかしいんじゃないかと、幾ら別の方針をとっているとはおっしゃっても、やっぱり総量を押えても、さっき言ったように景気のいいところは使うわけですから、どうもぼくはそこのところわからないんですが。  もう一つの救済のほうですが、今度救済はどの程度できるかということですね。そうすると、かりに金利が上がったところで、物価上昇分に見合うはずがないわけですから、何か金利を上げるということでもって、国民のいま迷っている貯蓄心理というものを何とか正常にしようというのはぼくは無理だ。あるいは割増金つきはもっとひどいということで、金利を上げることももちろん大切でけっこうなことなんですが、それよりも、やっぱり保険とか、年金の問題とか、性格はそれぞれ違いますけれども、すべてにおいてやはり本体の値打ちを確保するということの方向考えてもらったほうが先じゃないかという気がするんですが、そういうことは全然無理ですか。
  83. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 野末さんのお話は、スライド制でもとったらどうかと、こういうことですか。
  84. 野末和彦

    ○野末和彦君 ええ、そうです。
  85. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) スライド制ということになりますと、国民経済を動かす貯蓄について、その利子をスライドで支払うということになれば、それはあらゆる問題にスライド制だと、こういうようなことになり、これはなかなか経済全体の秩序という問題から見まして非常に大きな問題になると、そういうふうに思います。それから同時に、スライド制にした場合には、そのスライドのできるようにするための財源を一体どうするかと、こういう問題があるわけです。貯金にいたしましても、年金にいたしましてもそうでありますが、貯金の場合、スライドの財源をこれを金融機関に持たせるということになれば、金融機関は貸し出しの金利を上げますということになる。それが一体物価問題とどういうふうにかみ合うかということになると、コストアップというので非常に大きな物価問題へのダメージと、こういうことになりまするし、それじゃ政府がこれを負担せいというようなことを言う人もありまするけれども、そんなたいへんな金を必要とする。そうすると、どうしたって公債を多額に発行しなきゃならぬ。その公債を発行することが、インフレ問題とどういうふうにかみ合うか、こういう問題もあって、なかなかむずかしいんです。そういうものをいろいろ考えまして、とにかく物価というものを一日も早くこう、下がる方向に動きだしたぞということにするほかは、この問題の完全解決というものはないんじゃないか。まあ、いろいろ考えておるんですが、そういう結論になってこざるを得ないんです。
  86. 野末和彦

    ○野末和彦君 もちろんそんな簡単にスライドできるとは思いませんが、でも全部考えてむずかしいといったら、もういつまでもむずかしいわけですから、たとえば保険なら保険は、三十年ぐらいかけて、まるでただみたいな金をもらっているというのを防ぐには、やはりそんなにめちゃくちゃにむずかしいとも思えないんですよ。ですから、そういうことに手をつけていくほうが、まあいわゆるいま迷っている国民の貯蓄心理というものを正常に戻すには効果的なんだ。もちろん物価の問題が解決したら問題ありませんけれども物価は解決すると思っている国民はいないと思うんですね。むしろ自分の貯金が減っていくのを何とかならないか。氷を抱いているようなものですからね。ぼくはどうもいまの大臣お話を聞いても、むずかしいというよりも、手をつけられるところはどこかということをもう一度考えた場合に、スライド制を、たとえばまず保険にやれるかどうかということを考えれば、そのほうがいいんじゃないかという気もしますが、それも無理ですかね、ここで検討するのは。
  87. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) スライド制は、これはある一つの貯蓄手段にこれを採用するということになると、これはたいへんなまた影響があるわけなんです。つまり、その貯蓄手段スライド制になった貯蓄手段に貯蓄が全部集中しちゃう、そういうことになる。いま保険の話がありましたが、保険はうんとできるでしょう。できるでしょうが、ほかのものは、しぼんじゃうというようなことになる。その辺これはスライド制にするというと、総合的整合性を持ったものでやっていくほかはないのですが、そういうことを、また、そういうことにつきましては、先ほど申し上げましたようにいろいろな欠陥がありましてまあできない。で、要するに、このスライド制というのはもう物価安定ということをあきらめたと、もうこれはとてもできないのだという前提のもとでなら考えられないことはないのですが、私どもはそういう考え方じゃないのです。物価は一日も早く安定すると、安定させると、こういう考え方で、それが一番国民を安心させる道であると、こういうふうな見解でございます。
  88. 野末和彦

    ○野末和彦君 まあ安定できればけっこうな話です。結局できないできないで、まあできることはじゃとりあえず割増金のほうですか。ぼくはどうも、さっきから聞くと、そんなに簡単に金集めて、それは、それと融資のほうは別だから、金を幾ら集めてもインフレをまた押し上げることにはならないと言うのですが、ぼくは全然そういうふうにも思えなくて、しろうと考えかもしれませんけれども、結局、金集めないほうがいいんだと、国民が金使ったところで、銀行通してほかのところでまた別の需要を起こすよりは、こっちのほうがまだましだというふうにしか考えられないので、まあくじをつけて貯蓄を奨励するようなけちなまねをしたら、ますます政治は不信を持たれる、やめたほうがいいなと思いますがね。
  89. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 集まった金を、これを、またそれだけよけいに使っちゃおうということになったら、お話のとおりの結果になるわけです。そうじゃない。金は集まるのは集まればいい。ということは、出すほうのやつは、また別にそのワクをきめまして、これを規制をしておると、こういうようなことでありまするので、御心配のような点はまあないわけであります。したがって、割増金つき定期預金ということでかなり金が集まると思います。この集まった金は、これは結局日本銀行からの借り入れが少なくなっていくとか、あるいはオペレーションに応ずる余力がつきますとか、そういういろんな金の量が、世の中に流通する量が少なくなるという方向への作用こそあれ、決して乱れた形をつくり出すというために働くという懸念はないと、こういうふうに考えております。
  90. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 本件に対する質疑はこの程度といたします。  午後一時三十分再開することとし、休憩をいたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  91. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  昭和四十八年度の米生産調整奨励補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案を議題といたします。  まず、衆議院大蔵委員長代理理事松本十郎君から趣旨説明を聴取いたします。松本十郎君。
  92. 松本十郎

    衆議院議員(松本十郎君) ただいま議題となりました昭和四十八年度の米生産調整奨励補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案につきまして、提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。  この法律案は、去る二月十三日衆議院大蔵委員会において全会一致をもって起草、提出いたしたものであります。  御承知のとおり、政府は、昭和四十八年度におきまして米の生産調整奨励のために、稲作の転換または、休耕を行なう者に対して、補助金または特別交付金を交付することといたしておりますが、本案は、これらの補助金等にかかる所得税及び法人税について、その負担の軽減をはかるため、おおむね次のような特例措置を講じようとするものであります。  すなわち、同補助金等のうち、個人が交付を受けるものについては、これを一時所得とみなすとともに、農業生産法人が交付を受けるものについては、交付を受けた後二年以内に固定資産の取得または改良に充てた場合には、圧縮記帳の特例を認めることといたしております。  したがいまして、個人の場合は、その所得の計算にあたり、四十万円までの特別控除が認められ、これをこえる部分の金額につきましても、その半額が課税対象から除かれることになります。また、法人の場合には、取得した固定資産の帳簿価額から、その取得に充てた補助金等の額を減額することにより、その減額分が損金と認められ、補助金等を受けたことに伴い直ちに課税関係が発生しないことになるのであります。  なお、本案による国税の減収額は、昭和四十八年度において約五億円と見積られるのでありまして、衆議院大蔵委員会におきましては、本案の提案を決定するに際しまして、政府の意見を求めましたところ、中川大蔵政務次官より米の生産調整対策の必要性に顧み、あえて反対しない旨の意見が開陳されました。  以上が、この法律案の提案の趣旨とその概要であります。  何とぞすみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  93. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  94. 辻一彦

    ○辻一彦君 私、本案について若干の質問を行ないたいと思います。この法律案は、すでに各党の合意が長年にわたって続けられていると、そういう点から、中身に異論があるというわけではない。しかし、これに関連して二、三点お伺いをいたしたいと思います。  第一は、ことしもこれを一年に限定していただいておりますが、毎年一年に限定しているその理由というのはどういうわけでございますか、それをひとつ御説明願いたいと思います。
  95. 松本十郎

    衆議院議員(松本十郎君) まあ、この法律案につきまして、かねてから継続的なものにしてはどうかという意見もあったわけでございまして、衆議院大蔵委員会におきましても各党理事の間で寄り寄り協議いたした際に、そういう意見もございましたが、しかし、これまでも従来も一年ごとにやってまいりましたし、米の生産調整というものの実態から見てこの際も一年限りにするのが妥当ではなかろうか、こういうことで一年限りにしたようなわけであります。
  96. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、大体議事録見ますと、例年似た御答弁がされておりますが、そこで、四十九年度の場合は——四十八年度はそれとして、四十九年度の場合には、米の生産調整の中身は、転作が中心になって中身が変わっていく、しかし、生産調整だということは事実です。そういう点で、ことしの問題ではありませんが、四十九年度においても中身は若干変わっておりますが、同じ生産調整が続けられておる、これに対して出される奨励金に対して——転作奨励金ですね、同様の取り扱いを大体考えておられるか、この点いかがですか。
  97. 松本十郎

    衆議院議員(松本十郎君) 四十九年産米につきましてはどのようにいたしますか、かねてからの各委員の御意見など体しながら、衆議院大蔵委員会で各党代表の理事の方々とよく協議して進めたいと思っておりますので、いまここでこういった形にいたしますということはまだ申しかねるところでございます。
  98. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは政務次官のほうはどう考えておりますか。
  99. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) 本件につきましては、従来畑作農民とのバランスの問題がありまして、政府提案としては望ましくないということから、議員提案になりましたものに対して反対ではないという意思表示をしてまいっておりますが、四十九年度の分につきましても、政府として、政府立法としてこれをいま考えてはいないのでございまして、後日皆さま方の御意見もあろうかと思いますから、それによって検討が必要と認めれば検討したいと思っております。いまそういう四十九年度分について政府提案で減税措置をする意思はございません。
  100. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは議員提案によって四十九年度も十分各党の意思を総合して考えたいと、こういう方向として確認してよろしいですね。それはまあ確認します。  そこで、四十九年度にわたりますが、食糧の自給を高めるべきであるという論議が最近非常にいろんな角度からなされて、その一環として麦と大豆を増産をしなくちゃならない。これに対して奨励金が予算案の中で計上されている。この辺についてこれからどう考えていくのかということについて私は二、三伺いたいと思うんです。  まず最初に、農林省にお伺いしますが、今日は石油の危機ということが言われて、事実それが大きな最大の問題になっている。しかし同時に、次には、食糧の危機がくるのではないかということがいろいろな角度から論議をされ、懸念をされている。そういう国際的な食糧需給の逼迫といいますか、こういうものをどういうように見ておられるか、この点を述べていただきたいと思います。
  101. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) 先生御案内のように、一昨年のソ連の大干ばつが契機となりまして、ソ連が二千数百万トンにのぼる穀物を大量買い付けに向かったと、これが中国、アラブ等にも波及したことは御案内のとおりでございます。そういう事情から、一昨年から穀物の国際市況がさま変わりとなったことは否定できないと思います。ただ昨年は、そういった高価格を前提にいたしまして、アメリカ、カナダ、豪州あるいはソ連でもかなりの増産が行なわれております。しかし、遺憾ながら一昨年から昨年にかけての在庫の食いつぶしが非常に大きかった。たとえば小麦について言うならば、五千万トンあった輸出国の在庫が、三千万トンを切るところまでいっている。それからアラブ諸国あるいは中進国の穀物に対する輸入需要がかなり根強いと、そういうところがございまして、なかなか需給が緩和するというところまで至っていないというのが現在の状況だろうと思います。  ただ商品によって若干事情が違いまして、まあ大豆、トウモロコシ等は幾らか総体的には緩和のきざしがある。まあ優等材である米とか小麦は、なお逼迫基調、高値の不安定が続いているというのが現在の姿だろうと思います。  ことしにつきましては、まだ冬作以外は報告は各国とも出ておりませんわけでございますが、昨年に比べてさらにアメリカ、カナダ等も増産を考えておりますので、ことしのニュークロップ以降においては、全体としては若干は緩和の方向に向かうのではないかと想定されておりますが、これは何と申しましても今後の問題でございますので、断定はできないと思います。
  102. 辻一彦

    ○辻一彦君 最近の新聞の報ずるところでは、アメリカの小麦は史上最高の作である、こう言われながら、さっきの在庫の関係から、輸出規制をあるいはやるのじゃないかというようなことも報ぜられておりますが、アメリカにおける在庫と、それらの見通しについてはどう見ておりますか。
  103. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) 昨年の夏、御案内のように、大豆及び大豆かすについて、短期間でございますが、オールドクロップの輸出規制を行なった時期がございます。しかし、この政策は、アメリカの現在の政府筋は必ずしも成功でなかったということを公式の場所等においても認めておりまして、またその後生産が相当大幅に回復しているわけでございます。たとえばアメリカは、昨年と一昨年を比較いたしますと、小麦が一二%、それからトウモロコシは四%、大豆は実に二四%というふうな増産があったわけでございまして、まあいろいろ在庫のショート等もございますが、一部に伝えられるように輸出規制ということはまず考えられないのではないだろうか。ただわが国といたしましては、従来からアメリカ、カナダ、豪州等に対して、わが国の必要輸入量を確保させるように、各般の形で交渉しておりますので、多少状況の変化があっても、必要輸入量の確保に少なくとも支障を来たすことばないのではないだろうか、かように存じております。
  104. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ大豆等は若干状況が変わったけれども、小麦とこのトウモロコシや、広範なえさ等を見れば、必ずしも需給はそう緩和するということはなかなか考えられないと、こういう御答弁のことですが、まあかなりな期間に基調の動き、あるいはこの国際的な需給関係はかなり窮屈な状況にあると、こういうことがまあいまの答弁からも確認できると思うのです。そこで、価格——需給関係は当然価格に反映するわけですが、米、小麦、トウモロコシ、マイロ、大豆等は昨年に比べて現在どのくらい値上がりをしておるのか。その数字を簡単でけっこうですがお伺いをいたしたい。
  105. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) まず、最近の数字を申し上げたいと思います。ちょっと手元に、いまここにございますのは、小麦と大豆と米でございますが、小麦は、この一月に入りまして食糧庁が買い付けました価格は、大体八万円前後になっております、トン当たり。これは食糧庁の買い付け価格でございますが、フレートとかインシュアランスとか、それから日本の陸揚げのチャージ等も全部含めてでございます。それから大豆は、大体十万円を若干切るか切らないかというところで、トン当たりの輸入価格になっております。米は実は小麦、大豆等のように、国際商品としては多少性格が違いまして、スポットの売買しきゃございませんので比較できませんが、米国産の精米の非常に上質のものでございますが、少量貨物でございますが、カンボジアへ輸出した最近の例で申し上げますと、十七万円ぐらいになっております。  これは、市況が平静であった時期に比べて、どの程度の値上がりかということでございますが、御案内のように、いまの輸入価格は大体小麦で申しますとブッシェル六ドル、それから大豆についてはブッシェル六ドル二十ぐらい、米については大体トン当たり五百ドルぐらいの価格を頭において出た数字でございますが、一昨年夏までの安定時期におきましては、大体小麦がブッシェル一ドル六十セント程度で、大体大豆が二ドル五十セント程度、米が大体二百ドル程度というのが比較的長期にわたった過剰時代の価格だと、こう思います。
  106. 辻一彦

    ○辻一彦君 こういう穀物の騰勢といいますか、値上がりの状況、高価格というのは当分続くと見られるかどうか。
  107. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) 小麦については、ことしのニュークロップが出ます、大体アメリカが八月の下旬ぐらい、豪州が十一月ぐらいになりますが、この時期まではやはりいまのブッシェル六ドルに近い水準でもみ合いが続くのではないかというのが、大かたの見方ではないかと思います。大豆、トウモロコシにつきましては、いろいろな見方がございますが、現在の水準、あるいは若干これを下回るぐらいの水準で、やはりニュークロップまで大豆は続くのではないか。トウモロコシ、これはマイロ等との競合もございまして、なかなかむずかしい問題もございますが、やはりこれも大豆同様ニュークロップの時期まで現在の水準、またはそれに近いところで続くのではないか、こういう見方がおおよその見方でございます。ただ、米につきましては、タイが逐次輸出規制を緩和してきておりますので、なお四月、五月の状況を見ないとどうなるかはちょっと判断がつかない、こういう状況だと思います。
  108. 辻一彦

    ○辻一彦君 以前のように、安い外国の食糧を幾らでも買えるというような時期は過ぎたというように考えますが、これはどう考えておられますか。いまのようなかなりな値段が続くと、しかし、将来また前のようなうんと安い値段に下がって、安い食糧がふんだんに買えるようになるのか、あるいはそういうのは過去のことであって、これからはなかなか安い食糧をどんどん手にするということは容易ではない、こう見られるか、そこらはどうですか。
  109. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) 価格水準自体といたしましては、たとえば小麦の従来の一ドル六十セント、ブッシェル当たり。というふうな低い価格実現するということは、ここ当面望めないと思います。ただ、いまの六ドルというふうな異常な相場かどうかということについては、ことしのニュークロップのできいかんによっては、当然低落も期待できるのではないか。だから、六ドルという水準で維持されるかどうかについては、まあオールドクロップの時期は、これに近い水準ではないかという懸念をしておりますが、ニュークロップが出てくればそれは修正があるのではないかと思っております。従来のような低い価格ということはまず当面は期待できない、このように思っております。ただ、量的な確保につきましては、価格効果もあって、アメリカ、カナダ等の大増産がことしも大幅に期待されておりますし、輸入需要は旺盛といっても、政府間の取りきめ、あるいは早目の手を打つということで、量的な必要量の確保はまず支障なくできるのではないか、こう思っております。
  110. 辻一彦

    ○辻一彦君 ちょっと参考に、トウモロコシやマイロ、これはえさの中心でございますが、その点はどうですか。
  111. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) トウモロコシの最近の価格は、大体いまの時点ではブッシェル当たり二ドル五、六十セントの水準で、比較的高い水準で低迷しているというのが現状でございます。マイロは、大体トウモロコシとの代替関係がありまして、それに近い、品質差を加えた価格程度というのが大体の価格でございます。
  112. 辻一彦

    ○辻一彦君 いまの高水準がそのまま続くとは考えぬにしても、かなり高い価格水準が大体見通しとして先に続いていくということは大体見ておられる、こういうように思います。  そこで、大蔵省にお伺いしますが、四十八年度の外貨収支が大体いまどういうふうになるか。それから四十九年度どういうふうに見ておられるか、大まかでけっこうでありますが、聞かしていただきたい。
  113. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) お尋ねの四十八年度につきましては、貿易収支におきまして三十億ドルの黒字、これに貿易外収支、移転収支その他の赤字要因がございますので、経常収支で九億ドルの赤字、さらに長期資本収支で七十八億ドルの赤字と見込まれますので、全部合計いたしまして基礎収支で八十七億ドルの赤字を見込んでおります。
  114. 辻一彦

    ○辻一彦君 四十九年度は……。
  115. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 四十九年度につきましては、貿易収支におきまして三十四億ドルの黒字、経常収支におきまして四億五千万ドルの赤字、長期資本収支におきまして四十四億ドルの赤字、合計いたしまして四十八億五千万ドルの赤字を見込んでおります。
  116. 辻一彦

    ○辻一彦君 外貨の手持ちは、そういう場合に四十九年度の大体見通しの中ではどのぐらいになる予定ですか。
  117. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 外貨の手持ちということになりますと、ただいま申し上げました貿易関係ないし貿易に関連いたします貿易外収支、移転収支の関係、さらには長期資本収支の関係、これらの要素のほかにまたいろいろの要素が加わってまいります。端的に申し上げまして、短期資本収支というものがございます。これは短期的な資本があるいは強くなりそうな所へ投機的に動いてくることもございますし、通常の取引に関連して起こってくることもございます。また統計上の技術的な問題ではございますが、誤差脱漏というものがございます。これが年によって大きくなったり小さくなったりいたしますが、これも非常に見込みにくいものでございます。したがいまして、私どもの来年度の国際収支の見込みを立てます上におきましては、これらは一応わからないということで、ゼロということで、総合収支は基礎収支と同じく四十八億五千万ドルの赤字というものを見込んでおります。  ところが、この総合収支の赤字が、即、日本の外貨準備の減少につながるかと申しますと、ここにまた一つ別な要素が入ってまいります。たとえば輸入がふえることによって赤字が起こる、こういうような場合には、輸入は通常三ヵ月とか四ヵ月とか——ユーザンスと呼ばれておりますが、特別な金融がついております。そういたしますと、この金融をつけますために、金融機関が赤字を大きくする。すなわち、国際収支の上では赤字になりますが、そのうちのある部分は、そういった金融機関が借り入れをすることによってまかなわれますので、その分を差し引きしたものが外貨準備の増減という形であらわれてまいります。  来年度を達観いたしましても、基礎収支は確かに四十八億ドルの赤字ではございますけれども、このうちの相当部分は、これらの輸入金融——と申しますゆえんは、来年度におきましては本年度輸入三百五十八億ドルであったものが、四百三十七億ドルと、非常に大きい伸びを見込んでおります。ということであれば、これに関連いたしますインポートユーザンス——輸入金融が相当つくのではないか。ということであれば、この総合収支の赤字も、相当部分はそちらでファイナンスされて、外貨準備の増減に影響を及ぼすのは、そのうちの一部ではなかろうか、このように考えております。
  118. 辻一彦

    ○辻一彦君 きょうは収支の見通し等は詳しくやる機会ではないと思いますから、一応伺うだけにいたしますが、ごく大まかに言って、この原油等の値上がりによって、競争力等もかなり低下をせざるを得ない。そういう中で、貿易における黒字等というものは、前のように期待はなかなかできないというのが、大きな方向としては言えると思うのですね。そういう中で、外貨の収支というものがかなり窮屈になってくる。片方では、国際情勢において、食糧の値段というものは前のように安いということはなかなか期待はできない、こういうふうになると、以前のように外貨がふんだんにあって、そうして外には安い食糧が十分にある、だから幾らでも買えるという、そういう時期とは少し、かなり様子が私は変わってきたと、こういうように思います。そこで、四十八年度の輸入の中で、石油関係、それから鉱物資源、それから農産物、この三つに大別しておよそどのくらいの輸入額があったのか、これをちょっと御報告いただきたい。
  119. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 石油につきましては、先生御案内のとおり、ただいま非常に問題になっておる項目でございますので、来年度の見通しを立てます上におきましても、これは抜き出しましていろいろ推算をいたしました。  そこで、私ども国際金融上の統計に用います数字は、いわゆるFOBの数字でございますが、これが四十七年度におきましては三十四億ドルでございましたものが、四十八年度におきましては七十億ドル台程度に上がるのではないか、さらに四十九年度におきましては、百五十億ドル程度に上がるのではないかと、このような推算をいたしております。  そのほかの項目につきましては、私どもが国際収支の見込みを立てますときには、マクロの計量経済学的な手法をもって計量いいたしますので、ただいま御指摘の品目につきまして、それがどの程度ふえたという数字は、見通しの内訳としては持っておりません。ただ、手元に通関ベースの数字を念のため持ってまいりましたので、もしおよろしければ、これで四十八暦年の数字はわかります。
  120. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃその通関ベースによって四十八年度の数字をちょっと。
  121. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) これは関税局の通関統計の数字でございますが、四十八年の実績は、原粗油で六十億ドル、鉱物資源で五十三億八千七百万ドル、農産物で三十七億六千万ドル、このようになっております。なお、農産物のこまかい内訳もございますが、よろしゅうございましょうか。
  122. 辻一彦

    ○辻一彦君 農産物というのはあれですね、木材や——いまのは食糧だけですね、農産物の中の。
  123. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま読み上げました農産物の内訳を申し上げます。小麦が六億六千万ドル、飼料——えさのためのトウモロコシが五億五千二百万ドル、同じくえさ用のコウリャンが三億三百万ドル、バナナが一億二千四百万ドル、砂糖が四億三千四百万ドル、コーヒー、ココアが二億七百万ドル、綿花が七億八百万ドル、大豆が七億七千二百万ドル、このようになっておりまして、したがいまして、御指摘のように木材は含んでおりません。
  124. 辻一彦

    ○辻一彦君 わが国の中でいろんなものが輸入をしなくちゃいけないと、これは当然ですが、特に石油と、それから鉱物資源、鉄鉱石がありますが鉱物資源、それから食糧というのはこれは日本の経済、国民生活に何はおいても欠くことができない。そこで、外貨をめぐる状況というものが、かなり窮屈になっているというそういう状況の中で、地下資源のないわが国は、石油とそして鉱物資源はどうしても海外に依存せざるを得ない。しかし、食糧というものは、自給をしようとすればかなりな自給ができるわけですが、そういうこれからの日本の国際収支とか、外貨の動き等見て、いわゆるそういうサイドから見ての食糧の自給の必要度ということを大蔵サイドでどういうようにお考えになるか、これひとつ次官からお伺いいたしたい。
  125. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) 現在のところ農林省が立てております食糧自給計画に基づいて、大蔵省は予算を編成いたしておりまして、ことさらに昨年度の暮れから農畜産物が値上がりをしたのに対しまして、わが国の自給度をふやすという計画はただいまのところ持っておりません。
  126. 辻一彦

    ○辻一彦君 それじゃ、それは私いま計画を持っておられなくても、これからの国際収支等を見て、食糧自給度を向上さす必要があるとお考えになりませんか。いかがですか。
  127. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) 観念的には御説のとおりにやはり国内の自給度をふやさなければならないと考えておりますけれども、食糧並びにいわゆる農畜産物そのものは、気候、風土あるいは地理的な条件もございまして、急激に輸入にとってかわるほどのものが増産できるという体制には直ちになり得ないのでございますから、その適地適作という意味と、食糧の自給率をふやすという面から、今後の政策を進めていかなければならないと思います。
  128. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、ちょっと角度を変えて農林省にお伺いしますが、石油と鉱物資源と食糧というものを海外に依存をしている、一国の安全、セキュリティーというような点から考えた場合に、どうしてもない地下資源は、これは海外に依存せざるを得ない、やむを得ないことです。しかし、食糧はかなり生産をすれば自給度を上げることができる、かつて大豆でわが国が振り回されて、いままた油でそういう状況になっている。資源ナショナリズムの動きを見ると、これから鉄鉱石やボーキサイトという鉱物資源、こういうものでも同様な懸念がないとは言えないのではないか。その中でせめて一つ、食糧だけはそういう広い意味の、国の自主性や安全という点からも、最大限の自給を高めて確保するということがどうしても大事じゃないか、こういうように考えますが、この点についてどうお考えになっていますか。
  129. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) 辻先生御指摘のように、事情が許す限り、食糧については国内で自給できる体制が好ましいことは申すまでもございません。私ども農林省といたしましても、昭和五十七年の生産目標というものをつくりまして、米とか野菜、くだもの、鶏卵あるいは肉類、牛乳、乳製品等は完全自給あるいは八割以上の自給ということを目標に計画をつくり、政策の展開をはかっているところでございます。ただ砂糖、大豆等については、これは完全自給といってもなかなかできる問題ではないという問題もございますし、麦作も現在の膨大な需要を前提にすれば、おのずから自給率にも限界があります。それからまたトウモロコシ、マイロ等の飼料資源については、これはやはり大幅に輸入に依存せざるを得ない事情があると思います。そういう意味で、やはり基本としては、極力事情の許す限り自給政策を進めながら、国内で生産が技術的あるいはまた事実上困難なものについては、安定輸入を考えるということ以外にないと考えております。そういう意味においては、必ずしも輸出国は一国に集中しているわけではございませんから、これからも輸入先の多元化の問題あるいはある程度協定輸入の問題、さらに中南米その他発展途上国と提携しまして、経済協力の形で行なう開発輸入の問題、こういった問題にはやはり並行して現実には取り組んでいかざるを得ないだろう、かように存じております。
  130. 辻一彦

    ○辻一彦君 この論議はここでそう深くも入れないと思いますから切り上げますが、今度の麦と大豆に対する奨励金が予算案についていますね。これは将来における麦や大豆の自給度を目ざすような目標引き上げるために、長期の展望の中でこの奨励金をつけて増産、生産を刺激をしてやっていこうという、そういう中に位置づけられる奨励金であるのかどうか、この点はどうですか。
  131. 森実孝郎

    説明員森実孝郎君) 御案内のように、麦作、それから表作としての大豆作は経営規模も小さい、収益力も低いという関係があって減退していることは事実でございます。先ほど申し上げたように、麦、大豆について大幅な国内自給が困難であることは認めざるを得ませんけれども、私どもとしても、一定の範囲までは国内で自給していきたい、そのためには、現在の農家の経営状況ではなかなか増産をはかることは困難だ。ある程度底をつきました、底になった大豆と麦作というものを上向きにさせるという意味で、当分の間の措置として、奨励金を交付していきたいということを考えたわけでございまして、その意味においては、やはり長期目標実現と結びついたものと御理解いただいて差しつかえないと思います。ただ、これを何年続けるかというふうなことについては、予算委員会等でもお議論ございましたが、まだ政府としてはきめておりません。ただ当分の間はやはり続けざるを得ないと、かように思っております。
  132. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこで、麦と大豆の奨励金の性格は、いま御答弁がありましたですが、米の生産調整、あるいはその米の転作、そういうものに出される奨励金と、今度大豆や麦に出される奨励金、食糧の全般的な需給を安定をさせようというねらいにおいては、これは、私は、似通ったものでないかと、似たような性格のものでないかと、こう思いますね。そうなりますと、米の転作奨励金あるいは米の生産調整、これには減税措置を毎年度とっておられる。これは四十九年度ですから、年度としては来年度の問題でありますが、大豆や麦についてどう考えられるのか。いま私は、麦や大豆というものは、ほとんどなくなった状況からこれを引き上げていくにはかなりな努力をしなければいかない。したがって、農民の中に、そういう生産を刺激するような意欲がほんとうに起きなければなかなかできないと思いますが、そういう点で、この大豆、麦の奨励金に対しても減税の措置としては同様のものを四十九年度に考えるべきであると思いますが、これについての御見解いかがですか。
  133. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) ただいま、るる背景から御質問があり、お答えがありましたように、麦なり大豆なりの増産ということが非常に重要であるということは私どもよくわかるわけでございます。ただ、税のほうの立場で申しますと、米の生産調整のための奨励金にいたしましても、また麦、大豆につきましての増産の奨励金にいたしましても、本来いわゆる所得税法上の事業所得の収入となるべきものでございます。さればこそ、ただいま御審議の対象になっております四十八年産米についての奨励金につきましても、国会の御意見に対しまして、あえて反対はしないという意思表示はいたしておりますものの、本来的にはかなり疑問がある、税制上は疑問がある制度だと考えておるわけでございます。ただ、ずっと、言ってみれば、先祖伝来の土地がそこにあって、そこで代々農家が農業をやり、米をつくっておられるという場合に、農家側の事情においては、何も生産を減らさなくてもよろしいと、あるいは転換する必要がないということがありますのに、国といいますか、国民全体といいますか、そういう立場で、いわば無理無理休耕をするという非常に特殊な事情がありますので、そういう特殊事情にかんがみまして、国会のほうでこれは特別な扱いをしようではないかということで、一時所得としてはどうかという御意向でございますから、あえて反対をしないということであるわけでございます。  そこで、小麦なり大豆なりの増産奨励も、また別の意味におきまして非常に重要なことであり、したがって、さればこそいろいろ奨励金が支出されるという事情はわかるわけでございますが、いままでも、農業はもちろん、その他の産業につきましても、いろいろと生産奨励のために国庫から、あるいは地方公共団体等から補助金が支出される場合がございますが、それらは原則としてと申しますか、ほとんどすべての場合にその事業所得の収入金として考えるのがたてまえでございます。そういたしませんと、奨励金を受け取った納税者と、奨励金を受け取らない納税者とのバランスの問題であるとか、それから奨励金の額にもいろいろな金額の大きさの問題もございますので、むしろそれが、この特例を設けますことが公平を維持できるのか、特例を設けませんほうがかえってよろしいのかというような問題がありまして、従来からは、ごくごく特別の場合を除きましては、この種の奨励金については特例措置はとられていないわけでございます。今後とも、しかしこの問題はよく研究しなければならぬ。ただいま御指摘のように背景のある問題でございますから、税のほうといたしましてもいろいろ検討をいたすべきものとは考えておりますけれども、現段階では、この米につきましての生産調整のための奨励金について、一時所得の特例制度があるからということを一つの根拠にして、小麦なり大豆についての増産奨励金についてもこれにならってということについては、私ども必ずしも賛成いたしかねるという立場をとらざるを得ないということを御了解願いたいと存じます。
  134. 辻一彦

    ○辻一彦君 先ほど政務次官、税のバランス、公平ということをお話しになりました。昨年の議事録を拝見しても、やはり同様な問題が出ている。その場合に、米作農民と畑作農民の不公平さということが論拠としてありますね。もし、この小麦や大豆は、ほとんど畑作地帯にこれはやはり奨励をして生産をしていかなければならないと、こうなれば、むしろいままで不公平であった面をカバーする点において、この畑作地帯の農民がつくるところの麦や大豆の奨励金に、このように減税措置を同様にとるということは、税の公平という点からいっても論理は私はつながると思うのですが、その点、どうお考えになりますか。
  135. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) ちょっと技術的なことでありますので、私から先にお答え申し上げますが、従来から米の生産調整奨励金について政府のほうでなぜこれを一時所得扱いにしないのか、国会のほうでお出しになる場合に、立案なさる場合に、あえて反対をしないという程度の消極的な意思表示しかしていないのはどういうわけだという御議論がございました。そのときに私ども政府として説明してまいりました一つの説明のしかたは、先ほど政務次官からも御答弁申し上げ、昨年もこの場においてお答え申し上げておりますように、一般的に申しまして、畑作農家と稲作農家の経済状態といいますか、収入の状態といいますか、所得の状態といいますか、そういうものを大ざっぱに申しますと、稲作農家のほうが相対的にはよろしいと、畑作農家のほうがどちらかというと収入の面におきましても、所得の面におきましても恵まれておらぬと、そういう状態にあるときに、なるほど無理無理生産をやめるために、もらえる補助金であるかもしれないけれども、畑作農民のことを考えれば、稲作農民が受領するところの奨励金について一時所得にするのはどうであろうかという意味で申し上げているわけでございます。  ところで、ただいまの御質問は、今度は逆に、一般的には稲作農民よりも、畑作農民のほうが所得、収入が低いのだから、それについては税制上の特例措置があってもいいではないかという御指摘でございますが、まさに先ほどの私ども説明いたしております論理の展開からいたしますれば、そういうふうな論理の展開ができるわけでございます。ただ、現実には、北海道その他の非常に耕作面積の大きい農家につきましては、畑作農民の場合でも、現在納税者になっておられる方がありますし、また、果樹、それから畜産農家で経営規模の大きい農家については、納税者になっておられる方もおられますが、総じて申しますと、畑作農家の場合には、現在のいわゆる課税最低限以下のところにとまっておる農家が一般的でございます。でございますから、一般的な税制論の問題として、そこのバランスをどう考えるかということは、すでに現行の税制の上である程度もうとれておるということが言えるのではないかと思います。  そこで、いまの御質問は、畑作農家の中の問題でございますが、今度は畑作農家の中で、この種の小麦なり大豆なりの奨励金を受け取られた農家、受け取られない農家という間においてどのようなバランスをとるべきか、いずれにしても、所得収入が少ない農家の方なんだから、恩典を及ぼしてもいいではないかという御意見もございましょう。しかし、私ども考え方からいたしまするならば、そこまでは税でとてもこまかいバランスがとれませんものですから、どういう収入、ああいう収入というたびごとに、こういう収入は一時所得にするとか、ああいう収入は非課税にするとか、また、こういう収入は普通に課税するとかいうきめのこまかいことはなかなかできかねるということがございますので、そういう意味から申しまして、一般的に言って、畑作農家の収入なり、所得なりが、決して豊かではないということは、平均的なものとしては存じておりますけれども、そのこと一事のみをもって、この種奨励金を、今度の米の場合と同じように扱うべしということには直ちに論理的にも、また、政策論としてもつながり得ないのではないか、しかし、非常にむずかしい問題である、よく検討すべき問題であるというふうに考えます。
  136. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ事務当局としては無理からぬ御答弁であると思いますが、次官、その政治的判断において、やはり麦や大豆がもう壊滅的状況になっている、こういう中で、何とかしてこれをかなりなところまで引き上げぬ限りというような懸念が将来考えられる、そういう点で奨励金が出ている、それも畑作に多いわけですから、それについて私は、米と同じような措置が、これは来年のことですが、いま結論出す問題ではありませんが、そういう方向で検討すべきものでないかと考えますが、いま局長でも検討を必要とするという御答弁でありましたが、次官としてもその点一言伺っておきたいと、こう思います。
  137. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) 税制の見地からの見解は、いま局長が答弁したとおりでございます。食糧自給政策なり、あるいは農業政策なりの見地から、これをいかなる課税をすることが適正であるかということについては、さらに国の大きな問題の一つとして今後検討をさしていただきたいと思います。
  138. 辻一彦

    ○辻一彦君 これで終わりますが、食糧の状況は、エネルギーの次に食糧危機でないかと、こういう懸念をされる、そういう状況の中で、どうしても麦、大豆に限らず、えさも含めてわが国の自給度を高くするということがいろんな角度から必要である、それをひとつ指摘をし、効果的ならしめるために、私は、いま御答弁のあった内容をぜひ検討されるように強く望んで質問を終わります。
  139. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、まとめて一点質問したいと思います。  毎年、この法案が衆議院から送られてくるわけですが、去年も松本委員長代理に来ていただいて、毎年言われることは、これは各党一致の賛成法案でございますから、内容については賛成でありますけれども、法案の組み立て方とか、あるいは法案の提出のしかた等においていろいろ毎年論議を呼ぶわけです。一時所得か、事業所得か、あるいは政府提案をどうしてやらないのかというような問題が論ぜられてきましたけれども、まあ来年から休耕奨励金が打ち切られて、稲作転換だけになるというような姿になっております。  それで、去年のことは蒸し返すのはやめまして、一、二点だけお聞きしておきたいと思います。  主税局長にお尋ねしたいんですけれども、来年四十九年度に休耕奨励金が打ち切られて、稲作転換だけのいわゆる生産調整のような姿になっても、政府提案としてこの法案がなじまないものであるかどうかですね、それをまずお伺いしたい。  それから、農林——政務次官でおわかりでしたら、四十八年度及び四十九年度の米の総生産量、それから調整数量ですね、それから四十八年度末の在庫、それから四十九年度末の在庫目標、昨年もいろいろモチ米の買い占め問題とか、あるいは年度末の在庫がこういう世界的な食糧不足のおりから心配なんじゃないかと、こういうふうな意見も出されましたけれども、それに関連して、ひとついまの質問に対してお答え願います。
  140. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) さきのほうのお尋ねにお答えをいたしますが、四十九年からは、御指摘のように休耕がなくなって、転作だけの問題になるということでございます。で、転作の場合にも、やはりこれは、この休耕とはだいぶ性格が違ってくることは事実でございます。休耕の奨励金の持つ意味と、転作の奨励金の持つ意味はかなり違ってまいることは事実でございます。しかし、転作は転作なりに、その奨励金と、それから転作物の売り上げ収入があるわけでございますから、その合計から転作作物の経費を引いたものが、まあ所得を本来形成するべきものでございまして、現行の所得税法のたてまえからいえば、あくまで所得税法上の事業所得でございまして、一時所得と観念することは、ちょっと本来むずかしい性質のものであると考えます。その意味で、私どもといたしましては、これを現在のところ政府提案の形で一時所得としてするということは、極度に困難であるというふうに考えるわけでございます。ただ、先ほども政務次官が答弁申し上げましたように、また、衆議院のほうから御答弁がございましたように、来年度これをどういうふうに扱われますかは、国会のほうの御意向の問題として、また、それを出されました場合に、政府側の意見をどう立てるかということにつきましては、なお検討さしていただきますが、従来長く全体として五年間の政策として進められてきておるものの一環であるということは、十分理解の上で対処すべきものというふうに考えております。
  141. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) 米の生産調整並びに在庫等につきましては、ここにいま資料を持っておりませんので、後日御報告さしていただきたいと思います。
  142. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ、いまその数字につきましては農林省が来るそうですから、その間に御質問したいんですけれども、まあ農林省としては昭和四十六年から五十年までの、いわゆる稲作調整の、生産調整の五ヵ年計画でやってきたわけでございますけれども、来年度から、こういう休耕奨励金の打ち切りということになりましても、やはり昭和五十年までは同じ五ヵ年計画の一環としてやっていかれるのかどうか。
  143. 高木文雄

    政府委員(高木文雄君) この現在の制度がスタートいたしましたのは、四十六年の二月に大体この方針が閣議で了解をされております。で、それによりますと、稲から他作物への作付転換は、四十六年度から五十年度まで五ヵ年間実施する。そのうち休耕にかかる奨励金については、四十六年から三ヵ年であるということでずっと計画的にまいっておりますので、四十九年度の計画におきましても、若干最近の米の事情等から、数量等については調整が加えられておりますが、基本的な考え方は、継続されることになったわけでございまして、私ども承知いたしております限りでは、五十年までという計画はほぼ予定どおり実施することになるものと聞いております。
  144. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほどお尋ねしました昭和四十八年度の、去年お答えいただいた目標では、総生産量が千三百八十万トン、それに対して総需要量が千百五十万トン、余剰数量が二百三十万トンの予定でありましたけれども、持ち越し在庫の調整数量として二十五万トンとりまして、目標数量が二百五万トンということになっていたわけです。補助金が千七百五十八億円、協力特別交付金が二百億円、こういう予算要求でございました。その四十八年度の結果がどうなったのか、それから、四十八年度の年度末の持ち越し在庫数量はどの程度になっているのか。本来ならば七十五万トンになっているはずでありますけれども、それはどうなのか。  それから、四十九年度は、この前の発表では、休耕奨励金の打ち切りと、そして稲作転換を進めまして、米どころではほとんど四十八年度と比べますと二〇%か三〇%ぐらいしか米作調整は行なわれないわけです。それで約七十万トン減らして、百三十五万トンの生産調整と、このような発表がなされておりますけれども、四十九年度末の在庫目標はどの程度に置いているのか、その辺ひとつお伺いしておきたい。
  145. 柳田桃太郎

    政府委員柳田桃太郎君) 農林省の政府委員がいま席をはずしておりますから、詳しいことは参りまして、後刻答弁をさせますが、四十八年度末の在庫は九十万トン、四十九年度末の在庫は百五十万トンという予定になっております。詳しい数字につきましては、後刻御報告させていただきます。
  146. 松山光治

    説明員(松山光治君) たいへん失礼いたしました。  四十八、四十九米穀年度末の在庫のお尋ねのようでございますが、四十八米穀年度末の古米の持ち越し在庫につきましては六十万トン。四十九米穀年度末、本年の十月末でございますけれども、それにつきましては百十万トン。で、本年の生産調整、稲作転換の目標数量を定めるにあたりましては、先ほど来いろいろ御議論のございました需給事情の問題等を念頭に置きまして、さらにそれに在庫の積み増しをやっていく、その上で、五十年の十月末でございますけれども、そのときの古米在庫につきましては百五十万トンを目途とする、こういうようなことを考えております。
  147. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 他に御発言もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、順次御発言を願います。——別に御発言もないようでございますから、これより直ちに採決に入ります。  昭和四十八年度の米生産調整奨励補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  149. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十六分散会      —————・—————