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政府委員(遠藤政夫君) ただいま藤原先生の御指摘の中で、特に出かせぎ
労働者の問題それから女子、
若年者の受給について御指摘がございましたが、確かに、今回の
雇用保険法におきまして
現行の
失業保険法と大きく変わっております点は、この出かせぎの問題と若年の問題かと思います。
まず第一点の出かせぎ
労働者の問題につきましては、従来から、先生御承知の五年前の四十四年の
法律改正におきましても、この点が非常に大きな問題としてお取り上げいただいたわけでございます。今回の改正の考え方は、端的に申し上げますと、従来の
失業保険法改正におきましてこの問題を取り上げます際の考え方は、確かに出かせぎ受給者のように一年間
一定の期間出かせぎに出て働く。それから出かせぎを終わって帰りますと、積雪寒冷地帯のような場合は不就業、働かない。その働かない不就業の事態に対して
失業保険金を支給し、これによってささえていく。こういう定められた就業と不就業を繰り返して、その不就業に対して
保険給付が行なわれる。こういうあり方に対しましていろいろと御批判や御
意見があったわけでございます。この予定された不就業に対する
失業保険の支給の実績は、先生御承知のように、実は
失業保険給付全体の約三分の一をこえるような
状態になっております。で、出かせぎの受給者の方々の数は全体の三%でございます。で、三%の人が全体の
給付の三分の一以上を占めておる。こういう事態に対しまして、本来
失業保険という
制度の中で予定されていない、あるいはこの
制度本来の
趣旨からいって当然別個に扱われるべきこの出かせぎの問題を、一体どうしたらいいのかということがしばしば問題になったわけでございます。
四十四年の改正におきましては、こういった出かせぎの受給というものをどういうふうに規制をしたらいいかという考え方からいろいろと御
意見がかわされたと私どもは記憶いたしております。今回の改正におきましては、こういった出かせぎ受給者につきまして、そういう考え方から一転いたしまして、この出かせぎ労働問題を根本的に考えます場合に、
日本の農村の
実態、この出かせぎに出られる方々の
実情から考えますと、私どもは出かせぎ労働という労働形態が決して好ましいものだとは考えておりません。しかしながら、
実情から言いますと、この出かせぎに出る人にとっても出かせぎという労働形態をとらざるを得ない。今後ともやはりこういう
状態が続くであろう。同時に
日本経済全体からいたしましても、この出かせぎ労働形態というものが、いまの時点においてはやはり必要欠くべからざる
労働力として要請をされている。こういう
実態からいたしますと、従来のような出かせぎという形で保険の受給が行なわれている、この問題を何らかの形で規制するという考え方ではもうとうてい今後対処できないんではないか。こういうふうに考え方を変えまして、この出かせぎ
労働者の保険受給という
実態を
実態として踏まえた上で、この出かせぎ受給者の
実態に即して、これを新しい
雇用保険体系の中でその
実態をそのまま組み入れていこう、
制度的に定着さしていこう、こういう考え方でこの出かせぎ問題の解決に当たろうとしたわけでございます。
そこで、この出かせぎの受給者の方々は、先ほど申し上げましたように、予定された就業と不就業を繰り返して、その不就業に対して
失業者である、同時に求職の申し込みをして
就職をする必要がある、こういう
現行の
失業保険法の考え方にいわゆる擬制いたしまして、その擬制によって保険金が支給される、こういう考え方でございますが、出かせぎの
実態がそうでない以上は、その
実態に即した形でこれを保険
制度の中に組み込む。そのためには、働けば保険金がもらえないし、働かなければもらえると、こういうことでは本来の保険
制度の中に組み込むことば非常にむずかしいわけでございます。そこで、その予定された不就業に対して、保険
制度の
一つの
特例として、出かせぎから帰った人にはその不就業の期間に対して一時金が支給されると、こういう形に改めてしまったわけでございます。それが今回の
雇用保険の出かせぎ者に対する
特例一時金の
制度でございます。こうすることによって、いままでの出かせぎ受給者に対するいろいろな御批判に今後はもうピリオドを打ちたい、そうしてこの出かせぎ受給という問題を保険法体系の中にはっきり定着をさせることにいたしたい、こういう
趣旨で改正を行なったわけでございます。
それから第二点の、若年
労働者の問題でございますが、これは先ほど
雇用失業情勢の数字で御
説明申し上げましたように、三十歳以下につきましては、この求人倍率はきわめて高い率を示しております。各職種を通じてこの三十歳以下の若年の方々につきましてはきわめて
就職率も高いし、これは地域的に見ましても同じようなことが言えるわけでございます。こういう
人たちの従来の
失業保険の受給実績を見ましても、平均が六十日から六十三日程度になっております。男子の場合は四十五日、女子の場合は七十日、平均いたしますと六十三日、こういうことになっておりまして、こういうきわめて離
転職の容易でありかつ各職種を通じて再
就職の容易な方々について、必要にしてかつ十分な
給付を確保するためには、私どもの原案の六十日程度でよろしいのではないか、こういう考え方によりまして改正案を御提案申し上げたわけでございますが、
衆議院におきましていろいろな見地から御
検討いただきました結果、
現行どおり最低を九十日に改めるべきである、こういう御指摘によりまして
修正が行なわれたわけでございまして、私どもはこの
修正によりまして、なおさらこういった若年
労働者の
失業中の
給付については万全を期し得ることになったと、かように考えておる次第でございます。