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1974-05-16 第72回国会 参議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十六日(木曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員異動  五月十五日     辞任         補欠選任      高橋 邦雄君     山下 春江君      堀本 宜実君     塩見 俊二君      佐藤  隆君     平井 卓志君      河本嘉久蔵君     橋本 繁蔵君  五月十六日     辞任         補欠選任      大松 博文君     長田 裕二君      平井 卓志君     西村 尚治君      山下 春江君     吉武 恵市君      橋本 繁蔵君     棚辺 四郎君      柏原 ヤス君     内田 善利君      沓脱タケ子君     小笠原貞子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山崎  昇君     理 事                 玉置 和郎君                 須原 昭二君                 小平 芳平君     委 員                 小川 半次君                 長田 裕二君                 鹿島 俊雄君                 川野辺 静君                 斎藤 十朗君                 棚辺 四郎君                 西村 尚治君                 山下 春江君                 吉武 恵市君                 田中寿美子君                 藤原 道子君                 矢山 有作君                 柏原 ヤス君                 中沢伊登子君                 沓脱タケ子君    衆議院議員        社会労働委員長        代理理事     大野  明君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        労 働 大 臣  長谷川 峻君    政府委員        農林省構造改善        局長       大山 一生君        労働大臣官房長  北川 俊夫君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  大坪健一郎君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        労働省職業訓練        局長       久野木行美君        建設政務次官   内海 英男君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        警察庁警備局警        備課長      山田 英雄君        行政管理庁行政        管理局審議官   平井  進君        農林大臣官房審        議官       白根 健也君        労働省職業安定        局失業保険課長  関  英夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○雇用保険法案内閣提出衆議院送付) ○雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出衆議院送付) ○勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○労働問題に関する調査  (労働基準行政に関する件)  (光文社の労働争議に関する件)     —————————————
  2. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十五日高橋邦雄君、堀本宜実君、佐藤隆君及び河本嘉久蔵君が委員辞任され、その補欠として山下春江君、塩見俊二君、平井卓志君及び橋本繁蔵君が選任されました。     —————————————
  3. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 次に、雇用保険法案雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題とし、趣旨説明及び衆議院における修正部分説明を順次聴取いたします。長谷川労働大臣
  4. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ただいま議題となりました雇用保険法案及び雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  現行失業保険法は、第二次大戦直後の経済混乱背景に深刻な失業問題に対処するため昭和二十二年に公布、施行されて以来、わが国雇用失業対策の柱として重要な役割りを果たしてまいりました。しかしながら、この間に、わが国雇用失業情勢は、若年者中心に急速に労働力不足の傾向が進むなど基本的変化を遂げるに至っております。今後におきましても、長期的に見て、若年労働力中心労働力不足基調は続くものと予想され、このような状況背景に質的な意味での完全雇用実現課題となっております。  他方、その中にあって、わが国人口構造高齢化が進み、いわゆる高齢者社会へと移行するものと考えられますが、高年齢者の再就職問題の改善は容易ではありません。その他の心身障害者等特別の配慮を必要とする人たち就職難も依然として残されております。  また、昨年秋にはアラブ諸国石油供給削減の問題が突発いたしましたが、このようなエネルギー問題その他国際経済上の諸問題に起因して経済面の急激な悪化を見るようなことがあれば、雇用面においても深刻な事態を招く場合が生じましょうし、また、このようなエネルギー問題を契機に産業構造は一段と資源節約化知識集約化の方向への転換が促進され、この面からも雇用に少なからぬ影響が生じるものと考えられます。  また、昨今、現行失業保険制度をめぐって、とみに、各種の問題が顕在化し、国民各層からざまざまな批判と要望が寄せられるに至っております。  このような経済社会動向に適切に対処するため、現行失業保険制度のあり方について抜本的に見直すことが必要であると考えられましたので、昨年五月学識経験者失業保険制度研究委員に委嘱し、客観的、かつ、専門的な立場からの調査研究を依頼いたしました。同年十二月その結果が報告されましたので、その趣旨を全面的に尊重して雇用保険法要綱をまとめ、中央職業安定審議会中央職業訓練審議会及び社会保障制度審議会に、それぞれ諮問いたしました。  この雇用保険法案要綱におきましては、前述のような今後の経済社会動向を前提として、社会的公平の見地に立脚し、真に対策を必要とする人たちに思い切って手厚い措置を講ずることが必要であるとの考えに立って、すべての雇用労働者適用対象とし、高齢者等就職の困難な層や低所得者に対し、就職援護施策の充実、全国的不況時における失業保障機能の強化、給付面における不均衡是正等給付内容改善整備を行なうとともに、雇用状態改善能力開発推進などにより、質量両面にわたる完全雇用実現への要請に積極的にこたえることができるよう、失業保険制度改善発展させ、雇用に関する総合的機能を持った雇用保険制度を創設することといたしております。  各審議会におきましては、この雇用保険法案要綱について慎重な審議が行なわれ、それぞれ答申をいただきましたので、政府といたしましては、その御意見を尊重しつつ成案を固め、ここに雇用保険法案及び雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案を提案した次第であります。  まず、雇用保険法案内容概要を御説明申し上げます。  第一に、この法律は、労働者失業した場合に必要な給付を行なうことにより、労働者生活の安定をはかるとともに求職活動を容易にする等その就職促進し、あわせて、労働者職業の安定に資するため、雇用構造改善労働者能力開発及び向上その他労働者福祉増進をはかることを目的とするものであります。  第二に、雇用保険は、この目的を達成するため、失業給付を行なうほか、雇用改善事業能力開発事業及び雇用福祉事業を行なうことといたしております。  第三に、この法律は、零細企業労働者はもちろん、従来から課題とされていた農林水産業労働者をも含めて、すべての労働者適用することといたしております。  第四に、これからの高齢者社会への移行等に即応して中高年齢者心身障害者等就職困難な人たちに、より手厚く、きめ細かな対策をとることにいたしております。このため、給付日数についても、従来、被保険者期間の長短によっていた点を改め、年齢等事情による就職難易度により定めることとしており、また、保険給付の額については、従来、一律に前職賃金の六割としていた点を改め、低所得者層に配慮して上薄下厚給付率を採用することといたしております。さらに、女子受給者等が出産、育児その他のやむを得ない事情により求職活動ができない場合には、受給期間を延長することといたしております。  第五に、全国的に失業情勢が悪化した場合には、一律に給付日数を延長する等失業保障機能を強化することといたしております。  第六に、農林水産業適用に伴って、従来、問題とされてきた季節、短期雇用労働者については、給付負担の過度の不均衡を是正し、これらの労働者実態に即した制度とするため、失業保険金を三十日分の一時金にするとともに、これらの労働者を多数雇用する業種については、特別の保険料率適用することといたしております。  第七に、日雇い労働保険者については、その賃金分布実態を勘案して、その給付及び保険料について、現行の二段階制を改め、三段階制とすることといたしております。  第八に、現行就職支度金にかえて、一定常用就職の困難な人の常用就職促進するため、三十日分の常用就職支度金を支給する制度を設けることといたしております。  第九に、以上のほか、高年齢者雇用促進不況の際の一時休業に対する援助によって失業を防止するなど積極的に雇用改善をはかるための事業、生涯教育訓練推進有給教育訓練休暇制度援助などによる労働者能力開発事業及び労働者福祉のための事業を行なうことといたしております。  第十に、保険料については、一般保険料率現行の千分の十三の率を据え置きとしつつ、千分の十の部分労使が折半して負担して失業給付に充てるものとし、千分の三の部分使用者負担として雇用改善事業能力開発事業雇用福祉事業に充てることといたしております。また、高年齢者就職促進福祉増進のために、高年齢者に関し、労使保険料負担を免除することといたしております。  次に、雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案概要について御説明申し上げます。  この法律案は、ただいま御説明申し上げました雇用保険法案成立施行に伴って必要とされる労働保険保険料徴収等に関する法律労働保険特別会計法職業訓練法船員保険法国家公務員等退職手当法その他の関係法律規定整備及び経過措置を定めるものであります。  これらは、いずれも雇用保険法案附則的事項でありますが、立法技術一つ法律案として整理することといたした次第であります。  以上、二法律案提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 山崎昇

  6. 大野明

    衆議院議員大野明君) 雇用保険法案に対する衆議院修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  その要旨は、第一に、基本手当給付率改善し、賃金日額が千五百円以上三千円以下の受給資格者については、百分の八十から百分の六十までの範囲で逓減した率とし、三千円をこえ、七千五百円以下の受給資格者については百分の六十とすること、  第二に、三十歳未満受給資格者所定給付日数六十日を九十日に、雇用期間が一年以上の受給資格者であって四十五歳以上五十五歳未満の者及び四十五歳未満就職困難な者の所定給付日数二百十日を二百四十日にそれぞれ引き上げること、  第三に、短期雇用特例保険者に支給する特例一時金三十日分を五十日分に引き上げること、  第四に、短期雇用特例保険者にかかわる被保険者期間計算方法は、当分の間、従前のとおりとすること。  第五に、施行日の前後に継続して雇用されていた短期雇用保険者が離職した場合は、特例一時金を支給せず、一般保険者求職者給付を支給するものとし、この場合の所定給付日数は旧法の規定を有効とした場合の日数とすること。  第六に、日雇労働求職者給付金日額は第一級二千七百円、第二級千七百七十円、第三級千百六十円とすること。  第七に、以上の修正に伴い、関係条文について所要の整理を行なうこと等であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。  次に、雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案に対する衆議院修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  その要旨は、第一に、農林水産業建設業清酒製造業その他短期雇用特例保険者を多数雇用する産業にかかわる雇用保険率千分の十八を千分の十五とすること。  第二に、印紙保険料の額は、日雇い労働求職者給付金日額修正に伴い、第一級六十三円、第二級四十一円、第三級二十七円とすること。  第三に、雇用保険法案に対する修正及び以上の修正に伴い、船員保険法の一部改正その他の関係条文について、所要整備を行なうこと等であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  7. 山崎昇

  8. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ただいま議題となりました勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  いまや国民の大部分を占めるに至っている勤労者とその家族の生活動向は、わが国経済社会の将来に深く関連する問題でありますが、勤労者生活の現状を見ますと、賃金水準は近年における経済成長に伴って年々大幅に改善されてきているものの、貯蓄住宅等の資産の保有の面ではなおいまだ相当の立ちおくれが見られるところであります。  このような勤労者生活実情にかんがみ、勤労者財産形成促進してその生活の一そうの安定をはかるため、昭和四十六年に勤労者財産形成促進法が制定され、勤労者財産形成貯蓄について税制上の優遇措置が講じられるとともに、財産形成貯蓄の一部を原資として勤労者のための持ち家分譲融資制度が設けられたところでありますが、制度発足後二年間で財産形成貯蓄を行なっている勤労者数は早くも二百七十万人に達し、その貯蓄額は千六百億円をこえるに至っており、勤労者財産形成促進制度に対する期待がいかに大きいものであるかがうかがわれるのであります。  しかしながら、このような勤労者期待とその努力にこたえ、その生活を真に豊かで安定したものとするためには現行財産形成促進制度内容は、まだ必ずしも十分とは申せません。  政府は、このような観点から勤労者財産形成促進制度を大幅に拡充したいと考え、そのための案を勤労者財産形成審議会に諮問し、その答申をいただきましたので、ここに勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案として提出した次第であります。なお、本法案のほか、財産形成促進制度改善措置のうち、財産形成貯蓄利子非課税限度額引き上げ並びに持家取得目的とする財産形成貯蓄積立期間七年以上のものについての税額控除率引き上げ及びその要件緩和等税制上の援助措置を充実する措置につきましては、すでに租税特別措置法の一部を改正する法律案に盛り込んで御審議をいただいてその成立を見たところであります。  次に、この勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案内容につきまして概要を御説明申し上げます。  第一は、勤労者財産形成貯蓄制度改善であります。  すなわち、日本住宅公団宅地開発公団法案により新設が提案されております宅地開発公団等が発行する宅地債券等購入等またはその購入等のために預け入れ等を行なう預貯金等一定要件を満たすものを、新たに勤労者財産形成貯蓄に含めることといたしております。  また、勤労者財産形成貯蓄を行なっている勤労者転職をした場合に転職後も従前勤労者財産形成貯蓄契約に基づいて引き続き貯蓄をすることができるようにするため、勤労者財産形成貯蓄要件整備を行なうことといたしております。  第二は、勤労者財産形成基金制度及び勤労者財産形成受益金制度新設であります。  勤労者財産形成を一そう促進するため、事業主は、その事業場労使合意に基づき財産形成貯蓄を行なっている従業員加入員として勤労者財産形成基金を設立することができるものとし、基金事業主から加入員一人当たりおおむね均等の拠出金を受け入れ、金融機関等との信託契約等に基づいてこれを運用し、七年ごとにその受益金加入従業員に分配することとし、その従業員が分配を受けた受益金について課税上特別の措置を講ずることといたしております。  さらに中小企業等財産形成基金を設立することが困難であるものについては、事業主労使合意に基づいて直接金融機関等勤労者財産形成基金と同様の機能を有する勤労者財産形成受益金契約を締結することができることといたしております。  第三は、勤労者財産形成貯蓄付加金制度新設であります。  事業主財産形成貯蓄を行なう従業員に対して、その貯蓄援助するため、労使合意に基づき金融機関等財産形成貯蓄付加金契約を締結し、従業員の年間の財産形成貯蓄額一定率に相当する付加金を拠出したときは、その従業員が受ける付加金及びその運用収益について、課税上特別の措置を講ずることといたしております。  第四は、長期財形住宅貯蓄契約者に対する住宅金融公庫等住宅資金貸し付けについての特別措置新設であります。  積立期間七年以上の長期財形住宅貯蓄契約に基づいて七年以上積み立てを行なった勤労者に対しては、住宅金融公庫等が行なう住宅資金賃し付けについて、通常の貸し付け限度額当該勤労者が行なった長期財形住宅貯蓄預貯金等の総額の二倍に相当する金額を加えた金額まで割り増しして貸し付けることができることといたしております。  また、これに関連して、雇用促進事業団が行なう住宅分譲貸し付けまたは住宅金融公庫等が行なう割り増し貸し付けに必要な資金を円滑に調達するため、勤労者財産形成貯蓄契約を締結した金融機関等に対し、事業団及び公庫の資金調達への協力を義務づけることといたしております。  その他、この法律案におきましては、その附則において、所得税法法人税法租税特別措置法地方税法及び住宅金融公庫法等関係法律所要整備を行なうことといたしております。  以上、この法律案提案理由及びその内容概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  9. 山崎昇

  10. 大野明

    衆議院議員大野明君) 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案に対する衆議院修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  その要旨は、勤労者財産形成基金契約勤労者財産形成受益金契約及び勤労者財産形成貯蓄付加金契約を締結できる金融機関等生命共済事業を行なう農業協同組合連合会を加えることであります。何とぞ、委員各位の御質同をお願い申し上げます。
  11. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 以上で三案の説明聴取は終わりました。  三案に対する質疑は後刻に行ないます。     —————————————
  12. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 労働問題に関する調査議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 矢山有作

    矢山有作君 きょうは労働基準法関係の問題について少しお伺いをしておきたいと思います。  まず最初に、今日労働基準法の問題をめぐりまして労働側、財界など各方面からさまざまな意見が寄せられておるわけでありますが、そこで現行の労基法につきましていろいろな角度から労働省の見解なり今後の方針などこの際ただしておきたいわけであります。  まず第一点としてお尋ねしたいのは、労働基準法のいわゆる基本的理念というものをどういうふうに労働大臣は理解されておるか承りたいと存じます。
  14. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 現行労働基準法につきましては、制定後二十五年有余を経過して、その間の諸事情変化等もかなりあり、いろいろな意見が出されているところでありまして、そこで労働基準法施行実情及び問題点については現在学識経験者による労働基準法研究会調査研究をお願いしているところであります。その研究会は現在までに安全衛生関係については昭和四十六年七月に報告を行ない、これに基づきまして労働安全衛生法が制定されたところであります。残る問題につきましては鋭意御検討を進めているところでありますが、労働省といたしましては、労働基準法研究会検討の結果を待ちながら、また、今後各方面意見を聞いて検討してまいりたいと思っております。
  15. 矢山有作

    矢山有作君 私がお伺いいたしましたのは、労働基準法というものの基本的理念は何だろうかということをお伺いしたわけであります。
  16. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) これは労働基準法の第一条にある労働条件の原則、これは労働者人たるに値する生活を営むための必要を満たすものでなければならない、この観念をずっとやっぱり推進していきたい、こう思っております。
  17. 矢山有作

    矢山有作君 当然労働基準法基本的理念というのは憲法第二十五条で定めております健康で文化的な最低限度生活保障というものとの関連を持ってくるだろうと思うのです。ところが、人たるに値する生活といい、あるいは健康にして文化的な最低限度生活といい、それはどういうものであるかという具体的な内容につきましては、これはそれぞれいろいろな解釈が成り立つと思うのです。しかし私は少なくともその中身というのはそのときの経済、文化の状況に照らし合わせて具体的に定められるべきものだと、こういうふうに思っておるんですが、そういう点からするなら、現在の労働基準法が定めておる中身というのは、こういう基本理念から見て、かなり劣っておるところがたくさんあるのではないか、こういうふうに考えておりますが、その点いかがでしょう。
  18. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 私どもも基準法一条に定めますところの「人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」というのは、そのときどきの経済社会事情の中できまってくるものだと、かように考えておるところでございます。で、現在の労働基準法は終戦後の昭和二十二年に制定されまして、その後大きな変化はないのでございますが、基準法は当時の情勢の中で、当時はまだ日本経済的にも社会的にも非常に混乱状態にあったわけでありますが、一つの戦後の民主的な労働関係、こういう長期観点に立った一つ理念、こういうものを踏まえながらつくられたのでありまして、そういう意味において非常に画期的なものであったわけでございますが、戦後の混乱した情勢のもとにおいては必ずしもなかなかそれが順守されるに至らず、われわれといたしましてはその順守を確保するために非常に努力して今日に及んでおるわけでございます。で、その後日本経済が非常な成長を遂げてまいりましたことは申すまでもないところでございますけれども、日本経済成長してまいりましても、企業によりましてやはり大企業、それからなかなか全体の経済成長の中に、そこまでに及ばない中小零細企業等々もあるわけでございまして、そういう意味において、今日の日本経済社会情勢全体の中でこの基準法がどういう位置にあるか、こういう点につきましてはいろいろの見方、意見があるわけでございます。そこで先ほど大臣が申し上げましたように、それらの基準法施行実情問題点をどのように把握するべきかという点について、ただいま学識経験者研究会等に調査研究をお願いしているところでございます。
  19. 矢山有作

    矢山有作君 私も戦後、昭和二十二年に制定されたままで、ほとんど内容について根本的な検討がなされてないわけですからね、戦後の民主的な労働関係を打ち立てるという意味ではそれなりの役割りを果たしたと思うんです。しかし、おっしゃるように、今日の経済、文化の状況なり、さらに国際的な労働水準の状況から見るならば、これはやはり中身については相当抜本的な検討をしていかなきゃならぬのじゃないか、その上で改善していかなきゃならぬのじゃないかと思っております。  そこで、それらの問題に少し立ち入ってお話を聞いてみたいんですが、まず、大ざっぱな聞き方をしてみたいと思うんですが、現在、この労基法の問題について、労働組合側のほうといいますか、労働者側のほうですね、これは国際的な労働基準から見て、わが国労働条件は非常に低い、こういうきびしい批判がある。ところが、一方、財界のほうから見ると、労働基準法の違反の多い実態の中から、むしろ女子の保護規定などを中心に現実に合わせるように法律を変えたほうがいいんじゃないか、こういう意見も具体的に出てきております。したがって、労働省はこういう何というのか、両極端に私はある意見だと思うんですが、そういう意見が出されておる中で、一体今後基本的にはどういう考え方をもってこれらに対処しようとするのか。労働基準法研究会を設けて研究さしておられるということでありますが、しかし、その研究の成果を踏まえて具体化していくのは労働省でありますから、その労働省の基本的な考え方によって私は内容というものは非常に変わってくると思うんです。そこで労働省の基本的な考え方を聞いておきたい。
  20. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先生御指摘のように、基準法の現在の問題につきましては、組合側などから、これは総評系も同盟系もこれを改善すべきであるという全般的な意見を出しておられます。また経営者の一部などからは、現状に合わない点等についての改正意見なども出ております。その他いろいろな意見が各方面から出されておるわけでございます。これをわが国の現在の社会経済情勢の中で、施行の現状がどういうことになっておって、それがどういう問題をはらんでおるか、この辺をやはり中立的、客観的に把握していただいて、その上でそれをどう考えていくべきかということを検討する必要があると考えまして、学識経験者からなる基準法研究会にその施行実情、それが今日の社会経済情勢の中でどういう問題をはらんでいるかという点の御検討を、御研究をお願いをいたしておるところでありまして、労働省といたしましては、そういう中立的学識経験者の立場からする御結論をいただいた上で、また、各方面のその後も出ておりますいろいろな御意見、こういうものを十分参酌した上で、どういう態度をとるかということを考えてみたいと、かように考えておるわけでございます。
  21. 矢山有作

    矢山有作君 それは私の質問に対する御答弁にはならぬでしてね、前の答弁の繰り返しなんです。私は、そういうような基準法研究会でいろいろやっておられる、その現状を踏まえながら、報告ですか答申ですか、それを得て、それをどう扱っていくかというのは労働省中心でやるんだろうから、したがって、いまの労働側から出ておる意見、それから財界側から出ておる意見等で、両極端にあるんですから、一体労働省はどういう基本的な考え方で対処するのかという姿勢の問題ですね、これが非常に重要になってくるわけです。そのことを聞いているわけです。むしろ財界のほうは、いまの労働の実態というものを固定をさせようという考え方で意見書が最初出てきているわけですよ。私は、いまの国際労働水準の状況なりILOの条約等から照らして、いまの日本労働条件というのが、たとえば労働時間の問題にしたって、休日の問題にしたって、賃金の問題にしたって、国際水準に達しているとは思ってないのです。それを財界側からは現状に固定させようという意見、そういう意見に耳を傾ける態度で対処するか、それともそういうような低水準の労働水準では今後はだめなんだ、だからこれを抜本的に国際水準にまで近づける、あるいは国際水準と同等にする、あるいは国際水準以上にする方向で努力するんだという基本姿勢をとるのか、そこのところが肝心だからお伺いしたわけです。
  22. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 原則論でございまして、私は、終戦後こういう法律ができたあとでは、一部から、労働三法の何か非常に貧困な時代にこういうきびしい法律が出て、これが日本のいまから伸びる労働情勢にはそぐわないじゃないかというふうな御意見などもありました。しかしながら、今日これが定着して、そうして労働省とすればやはり労働者を守ることであり、人に値するところの生活を守るというところの観念で、いまやこの労働基準法をやめろなんていう、そういう乱暴な議論をする者はなくなっていることは御承知のとおり。だからその内容を充実させながら、やはり国際水準か、あるいはそれ以上ということを国情に合わせながら、その事態事態に合わせながら、そういうふうないろんな意見のあるところを調整しながら守っていきたいという感じであることを申し上げておきます。
  23. 矢山有作

    矢山有作君 労働省は、最近、法律の大改正をやったり、あるいは新法の制定をやるのに、やたらと大臣の私的諮問機関を設立して、そこで実質的な法律改正案等のたたき台をつくらせて、それを形式的に関係審議会にかけておる、こういう実態じゃないかと思うんです。たとえば今回提案されました雇用保険法案にいたしましても、これは失業保険制度研究会というものをつくられて、ここでやられた。こういうように、せっかく労働者側、使用者側、学識経験者の三者構成の審議会があるのに、それに対して諮問をして、そこで十分な研究調査をやってもらって、それに答申を求めないで、なぜこういうような私的諮問機関というような研究会をつくって、そこでそういうことをやらせるのか、そこのところが私はちょっとうなずけぬのです。どういうことなんですかね。
  24. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) もちろん法律に基づく三者構成の審議会がございますわけでございますから、法律改正というような重要施策をとろうという場合には、法律で定められましたその審議会に御審議を願うわけでございますが、そこまでいくかどうかというような、行政機関としての勉強をいたします際に、いろいろな多方面意見がある、またいろいろな角度からの見方がある、あるいは法律的にも非常に専門的に検討すべき問題があるような場合に学識経験者の御意見を十分に伺わしていただくと、こういうことは行政としてあって何ら差しつかえないのではないかと、かように考えるのでございまして、そういう意味でこの基準法研究会学識経験者の方のそれらの問題についてのわれわれの勉強の一つの手段として御研究を願い、御意見を聞かしていただいておるわけでございます。
  25. 矢山有作

    矢山有作君 それももっともらしく聞こえるんですが、私は学識経験者だけ寄せて意見を聞いてみたところで、それは往々にして机上の空論的な意見は聞かれると思うんですよ。しかしやはり一番その職場の実態、いまの労働者が置かれておる実態を知っておるのは労働者であり、また、そしてそういう職場をつくって労働者を働かしておる使用者なんだ、むしろ。だからむしろ私はそういう現場の実態を机上の空論でなしに十分はだ身をもって知っておる労働者なりまたそれの反対側に立っておる使用者なりそういう者の意見をこそ私は積極的に吸収すべきだと思うんですよ。それにあわせて学識経験者意見も聞きましょうというならわかる。ところが、どうも労働省のこれがよさそうだと思うような学識経験者だけを選んできて、そこで調査、研究しろと、私はそんなことを言うたら学識経験者におこられるかもしれませんが、労働省がやっておられるその研究会にはそんな方はおらぬと思うが、しかし往々にして専門ばかということばもあるので、私はそういうような研究会だけでやろうというのは間違いだと思うんですよ。せっかく中央労働基準審議会ですか、正式名称は。そういったものがあって、労・使・学識経験者で構成されているわけでしょう。そこらあたりで、どうして徹底的な調査をやり、研究をやり、論議をやってもらって、その結果を得てやろうとなさらないのか。私は、これはちょっと労働省のてまえがって過ぎるし、もっと、ひがんで言うわけじゃないけれども、労働省が意図するようなものをつくり上げるために、まあ御用学者といってことばが適当でなかったら申しわけありませんが、そういう連中だけ集めて意見を聞いて、私どもはこういう民主的な過程を経て結論を出したんですと。そしてこういうようなのつくりました、ひとつどうぞ審議会のほうでも御審議くださいと持っていく、これは審議会というのは存在価値ないですよ、これは。審議会は、ただ審議会を通じないとぐあいが悪いから、ちゃんと法制的な組織だからそこを通じただけの話、そんなやり方は私はないと思う。だから、そういう研究会なんていうやり方は私はやめてもらいたい。そして、審議会で徹底的な審議をやってもらいたい。第一、労働省審議会、せっかく正規のものがあるのにそれを信頼していないんですか。信頼していないからそんなことをやるんですか。  それともう一つは、研究会なるものの構成メンバーを一ぺん聞きたいんですがね。
  26. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 法律によって設けられております中央労働基準審議会、これは労使の御推薦を得た委員と労働基準関係のその道の専門家といわれる公益委員とでできておるのでございまして、私どもは現在の中央労働基準審議会、きわめて権威のある審議会だと、かように考えておりますし、いままで法律はもちろん、政省令あるいはその他の運営の重要事項についてはすべて中央労働基準審議会におはかりして、その御意見を尊重しながら行政運営をいたしておるわけでございまして、私どもそれを信頼してないというようなことは毛頭ないのでございますが、先ほど申しましたような観点から、われわれ労働省として勉強する一つの御意見を聞かしていただくという意味で、学識者の基準法研究会基準法運営の実情とそれが現在の状態の中でどういう問題点をはらんでいるか、そういう点の御研究を願っておるのでございまして、現在委員の数は十八名でございます。労働法を専門とされる法律学者あるいはそのほかに安全衛生だとかあるいは婦人労働問題の専門家であるとか、それから労働委員会等に関与されて労使関係にもお詳しい方だとか、そういうような方々がその十八名の委員になっておられるわけでございます。
  27. 矢山有作

    矢山有作君 いま局長がおっしゃったように、この法律で定められた審議会、これをきわめて権威あるものだとおっしゃっているのなら、私は権威があるような扱いをすべきだと思うんです。そういう扱いをしないでおいて権威ある審議会だということば弄するのは、これはまさに、何といいましょうか、いんぎん無礼ということになってしまうんで、私は今度の雇用保険法案を提出される経過を見ましても、記憶間違いではないと思いますが、長い間失業保険制度研究会で研究をしてもらって、その報告に基づいて、そして労働省が成案を得たものを、二月でしょう、たしかことしの、中央労働基準審議会に諮問されたのは。だから中央労働基準審議会に諮問したといっても単なる形式的な諮問なんですよ。ことしの二月にたしか諮問をしておいて、そして法案を提出したのはいつですか、三月か、四月ですね。これではとてもじゃないが審議会で慎重な調査研究検討をやるなんというひまはないんですよ。だからまさに審議会軽視もはなはだしい。この点私は厳に戒めてもらいたいと思うんですよ。私言ったことに間違いないでしょうね。
  28. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 私、雇用保険の関係は所管でございませんので、正確なことは存じませんが、おそらく先生の御指摘のとおりであろうと存じます。ただ、私どものほうの場合で申し上げますと、この基準法研究会から御報告をいただきまして立法いたしましたものに労働安全衛生法がございます。しかし、この場合は、四十六年のたしか夏に基準法研究会の中の第三部会の安全衛生関係をやっておりました小委員会から安全衛生規定を充実するために安全衛生の総合立法をしたほうがいいという御研究の結果をいただきました。これが四十六年の七月でございます。で、すぐにその夏からこれらの問題はそういう報告があったということは中央労働基準審議会に御報告をし、秋の間ずっとそれについて御審議をわずらわし、そしてたしか十一月ごろだったと思います。ちょっといま正確な時日は調べておりますが、労働省といたしまして研究会の御報告などを参考にしながら安全衛生法の労働省の案をつくりまして、中央労働基準審議会に御諮問をし、そして翌年の、四十七年の二月に中央労働基準審議会から御答申を得て法案を作成し今国会に提出したというような経過がございまして、したがいまして、基準法研究会から御報告をいただきました後に半年以上にわたりまして基準審議会等でこの問題が十分に審議、論議されたわけでございまして、決して中央労働基準審議会を軽視してそれに形式的にかけたといったようなことでない形で労働安全衛生法を制定したという経過もあるわけでございまして、私ども中央労働基準審議会は十分にその任務というものを尊重して今後とも対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  29. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、いろいろ言われますが、要するに調査、研究、検討中心研究会にあったわけですね。いまあなたがおっしゃった労働安全衛生法の問題について見ましても、やはり調査、研究、検討、この中心研究会にあったわけですね。あんた方が重視しているのは審議会ではなくて研究会研究会に対してはうんと長い期間をもって十分論議をさせ、そして、出てきたものを中央労働基準審議会に六カ月やらした。ウエートの置きどころが違うわけですよ、審議会研究会と。だからそういうようなやり方は私はいかぬと言う。ましていわんや今回の雇用保険法案のごときについては、これは言語道断な扱いなんです。だから、そういうふうに研究会などというものをでたらめにつくっていくと、どうしてもそこのほうへその主力がいく。というのは労働省お気に入りの人だけを集めてやるわけだから、そのほうへ労働省としても身びいきでも主力がいく。むずかしい中央労働基準審議会なんかでけんけんがくがくやられたんじゃたまらぬと、こうなっちゃう。だから、そういうような扱いをしてもらっちゃ困るんです。だから、権威ある機関であるというなら中央労働基準審議会というものを法律上の機関なんだから、ここに小委員会を設けるなり何なりして、ここで調査、研究、検討を徹底的にやってもらう、そして、その答申を尊重してやっていくというのが、これがあんた、審議会をつくった趣旨でしょうがな。それを逸脱するようなことはいかぬと言うんです。  それから、長くなりますから、この研究会ですね、労働基準法研究会のメンバーは、これは名簿を御提出してください。いいですか。
  30. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 名簿は後刻御提出申し上げます。
  31. 矢山有作

    矢山有作君 労働基準法研究会は実質的な中央労働基準審議会役割りを果たしておると言って過言でないんです。それは先ほどあなた自身もお話しになりましたが、すでに第三小委員会では労働安全衛生関係の報告書を出して、その報告に基づいて労働安全衛生法労働基準法から分離して、四十七年に制定をされたわけです。さらに第二小委員会の労働時間関係の報告が出され、そして第一小委員会の権利関係の報告書も近く出されると聞いております。  そこで、一点は、この第一小委員会の報告書がいつごろ出されるのか、これが一点。  さらに労働者にとって今後の労働条件の決定というのは重要な問題で関心を持たざるを得ないわけです。そこで中央労働基準審議会の中に私はあらためて三者構成による小委員会でも専門委員会という名前でもいいからそこでもって徹底的な研究をやってもらう方向というのが打ち出せないのかどうか。その二点をお伺いしたいと思います。
  32. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 基準法研究会の第一小委員会の結論がいつごろ出るかというお話でございますが、第一小委員会は、第三の安全衛生、それから第二が時間と女子年少者問題、それを除きました労働契約、就業規則、賃金、労災補償、いろいろな非常に広範な問題を取り扱っておられまして、事項別に論議をし、逐次とりまとめをしていこうということで論議をされております。いまのところ、ちょっとしたがいまして、いつごろ最終的な報告が出るかということはまだ私ども明確にお答えするまでいっておらないわけでございます。  それから基準審議会の中に小委員会でもつくってこれに検討させる考えはないかということでございますが、私どもまだ安全衛生法できめました以外の問題につきましてこれを法律の改正を行なうべきかいなかというような問題についてわれわれまだまとまった考えを持っておりませんので、そういう形でいますぐ基準審議会に御検討をお願いするというまでの準備はないわけでございます。ただ、中央労働基準審議会におきましても、日常からいろいろな問題は小委員会等もつくって、部会などもつくって常時検討をしておられるわけでございまして、たとえて申しますと、災害防止部会というようなもの、あるいは労働時間部会といったような問題は従来からございまして、それらの部会におきましても基準法の運用、あるいはそのほか現実のいろいろな問題の実情の把握等々について部会で自主的に御検討は進めておられるわけでございます。
  33. 矢山有作

    矢山有作君 次に進めますが、このような研究会が大臣の私的諮問機関として実質的な法律改正作業などに関連してその答申をつくるというような仕事をやっておることを、これは政府部内でも疑問視する見解が私はあったと思うんです。昭和三十六年の四月十二日に行政管理庁の、これはたしか行政管理局長だったと思いますが、のほうから「懇談会等行政運営上の会合の開催について」という通達が各省に出ているはずです。この通達を一体労働省はどう受けとめておるのかということを聞きたいんです。
  34. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 三十六年に行管からそういった趣旨の通達が出ていることは先生御指摘のとおりでございます。それについては諮問的な機関、たとえば審議会とは別にそういったようなものを懇談会等でつくる場合には云々というようなことになっているわけでございますが、私どもといたしましては、これは審議会はりっぱにあるわけでございまして、二重に審議会をつくる、審議会的なものをつくるという考えではなしに基準法運営の実情問題点調査研究を願うということで、われわれの労働省といたしましての勉強の一つの参考にさしていただく研究を願っておると、こういうことでお願いをしておるわけでございます。
  35. 矢山有作

    矢山有作君 これは、行管の局長にお聞きしたいんですが、この通達によりますと、「国家行政組織法第八条の審議会、協議会は合議制の行政機関として委員個々の意見とは別個独立な機関意思を決定することが所掌事項として定められているものであるのに対して、いわゆる懇談会等は個々の個人の意見を聞くのみで行政機関として意思の決定を行わないものである」というのがこれは政府の国会答弁の要旨であったと思います。そこで、大臣の私的諮問機関の性格というのは、ここでいう懇談会に相当すると見るのが妥当ではないかと私は思いますけれども、通達を出された行管のほうはどう理解しておられますか。
  36. 平井進

    説明員平井進君) お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり昭和三十六年に行政管理局長名をもって各省に通達を出したわけでございますが、その趣旨はいま先生がお述べになりましたとおりでございまして、そのいわゆる懇談会と称しておりますものと、それから国家行政組織法の第八条に基づきます審議会との区別の根拠をそこに明らかにしているわけでございまして、法令に基づきましてできました審議会一定の定足数、議決方法等議事手続を明確に定めまして、構成員でございます委員の個々の意見とは別個に当該審議会という一つの行政機関の機関意思を決定すると、そして、それを答申するということに特色があるわけでございます。ところがいわゆる懇談会等と称しておりますものは国の行政機関が当面いたします問題につきましていろいろ関係各界の方々から有益な御意見を伺うということは日常あるわけでございますが、その会合の開催方法につきましていろいろその組織法第八条に基づきます委員会と混同される、あるいは疑惑を招くという点の御指摘がございまして、その辺を明確にするためにこの通達を出したわけでございますが、これらのいわゆる懇談会と申しますのは民間各界の方々の個々の御意見をいろいろお伺いしましてそれを国の機関が取り入れまして、いろいろ行政遂行上の参考にするということで、あくまでその懇談会においでをいただく各界の方々の個個の機関意思を尊重する、したがいまして、一つの合議体としての機関意思を決定するものではない、そこに明らかに組織法八条の合議体である審議会との差があるわけで、その辺のことをしっかり徹底させるために出したのがこの通達でございます。
  37. 矢山有作

    矢山有作君 だから、労働省がつくっておるこの研究会というのは、ここでいわれておる、行管の通達でいうこれは「懇談会等」と理解していいんだろうかどうだろうかということです。
  38. 平井進

    説明員平井進君) まだ労働省で具体的におきめになりました内容についていまとっさでございましてまだお話を伺っておりませんが、その趣旨が先生方の個々の御意見を伺うと、それは口頭であれ書面であれどちらでもけっこうでございますが、個々の御意見を伺うと、それを行政遂行上の参考にするということであればまさにこの局長通達の趣旨に沿ったものであると考えております。
  39. 矢山有作

    矢山有作君 労働省にお聞きしたいんですが、この研究会はどういうものなんですか、いま行政管理庁のほうの見解は示されたわけですが。
  40. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先ほど申しましたように基準法の運営の実情問題点調査研究を願うということでございまして、それはあくまでも個々の委員の方が調査研究をされると、それをみんなの場で討議してやられるというだけでございまして、別に機関意思といった、たとえば多数決でそれを、採否をきめるとか、そういった性格のものではないと、こういうふうに私ども解しておるわけでございます。
  41. 矢山有作

    矢山有作君 討議をして何をやらしておるんですか、最終的には何をやるんですか、討議をして。
  42. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) お願いをいたしました基準法運営の実情問題点を研究をしていただいておるわけでございます。
  43. 矢山有作

    矢山有作君 いやいや研究をして個々の委員がそれぞれ意見を述べるだけなのか、あるいは個々の委員がそれぞれ意見を述べたものを全部羅列しておるのか、そして羅列したとするならその文書をどう扱っておるのか、個々の個人が意見を述べた、その述べる形はどういうふうになっておるのか。いわゆる意見を述べるのは述べるんですよ、個々の委員意見を述べる。述べたものを耳で聞くだけで、労働大臣なら労働ま臣、担当局長なら担当局長が耳で聞くだけになっておるのか。文書にまとめて、その文書のまとめ方は個々人の意見が全部羅列されたものを見せてもらっておるのか、それとも何らかの討議の結果、全体的なものをまとめをしたものを報告書とか答申という形で出してもらっておるのか、そこらの辺はどうなっておるんですか。
  44. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 各委員意見を述べられ、調査されたことについて討議をされまして、討議して御意見が皆さん御一致になればそれは報告書といったような形で出されるわけでございますが、必ずしもそれも多数決できめたとかそういうことではなくて、いろいろな意見があればいろいろな意見が書かれることもあるわけでございます。
  45. 矢山有作

    矢山有作君 結局、まあ、いろいろことばのあやで、なるべく研究会の果たしている役割りを軽く見せよう軽く見せよう、それはまあ行管のほうからもそこへ来ておられるし、行管の通達の手前もあるから、そういう努力をして答弁をなさっておるようですが、実際問題としてはただその委員意見を個々に聞くとか、個々の委員意見がそのまま羅列されたものを見せてもらうとかいうんでなしに、あなた自身がおっしゃったように、討議をさせて、そうして討議したものをまとめて報告書という形で受けているわけでしょう。これはやっぱり審議会と同じ役割りを実質的に果たしているわけですよ。こういうものを乱設するということは私はいかぬと言うのです。成規の法律で定められた審議会があるんだから、しかもそれはあなたがおっしゃったような権威ある機関だ。その権威ある機関で能力のある人がそろっている。権威ある機関というのは無能力な者はそろってないんですから、きわめて能力の高い人がそろっている。その権威ある機関で研究をし、調査をし、討議をしてもらうというのが筋じゃありませんか。それをわざわざ避けて何のためにこういう研究会をつくるのか。そうして中身を聞いてみると、いろいろことばのあやで言っておられるけれども、やっておることは実質的な答申作業をやらしておる。それが間違いだというのです。労働大臣、こういうふうなものをあんまり乱設されるというのは私はよくないと思うんです。すでに三十六年にこれはもう非常に問題になった問題なんです。だから行管も通達を出さざるを得なくなって通達を出しているんですから。どうお考えになりますか。
  46. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私も労働省に行きましてからいろんな方々の意見を聞くことを一生懸命やっております。そうして調査会、こういう方々はいわゆる社会でわりに権威があって尊敬されて良識のある方々、そして学問としていろんな勉強をされているが、いまこの動く実態というものがときにはおわかりにならないこともある。そういう方に現場に行ってひとつ学問と実態とをあわせて、その上でどうお考えになりますかというふうなことでお帰りになったあとでお伺いしておる。しかし、ただいま先生のおっしゃったように行政組織法との関係等々となれば、これは法律論でございますが、いままで私が調査会、研究会等々で接触した限りにおいては非常に参考になっておる、こういうふうに感じております。
  47. 矢山有作

    矢山有作君 参考になるのはいいんです。いいんですが、そういう私的諮問機関と称する研究会でやっておることが実質的に法律に基づく審議会役割りを果たしておって、そうして法律に基づく審議会が形骸化されておるということを私はいま問題にしているわけですから、したがって、大臣もあらためて労働省にある研究会が実質的に何をやっておるのかということを御検討願いたいと思うんです。それで実質的に御検討になれば、私が言ったように審議会のなすべきことをやっておるに相違ない。審議会のなすべきことを研究会でやらして、そうして国会に法案を提出するという手続上の問題がありますから、形式的に法律できめられた審議会審議にかけて出す、その手段として使っておるにすぎない、そういうふうな形になっていると思います。この点はあらためて大臣のほうで自分の所掌の省でありますから、十分その研究会がどういう運営をされておるのか、どういうことをやっているのかということをお調べになっていただきたいと思います。  それから行管にお尋ねしたいのは、私はこういう何というのか、あなたのところで通達で取り上げられたような懇談会等というものが最近非常にふえておると思うんです。その実態を把握しておられますか。
  48. 平井進

    説明員平井進君) この通達にも明記されておりますとおり、こういったものにつきまして、そういう会合を閣議にかけて開催する場合には行政管理庁に協議をして、行政管理庁と相談をした上で閣議にかけてほしいということになっておりますが、各省がそれぞれの当面する問題について自主的におやりになることにつきましては、これは各省の行政運営上の問題でございまして、そこまでは行政管理庁は介入をしないというたてまえが一応とられているわけでございまして、各省限りでもって個々の御意見をお伺いになるものを全部行政管理庁に現在事前に協議していただくというたてまえにはなっておりませんが、いろいろ担当が日常接する範囲におきましてはいろいろお話は承っているということは事実でございます。
  49. 矢山有作

    矢山有作君 行政管理庁、いまの答弁はおかしいですよ。それだったらあなた、何のためにこんなぎょうぎょうしい通達を出したんですか。三十六年当時、国会でもたいへん問題になって、政府答弁が出て、これじゃいかぬというので、そういうような懇談会等の乱設を避けようと。そして、法律に基づいてつくられた審議会というものが有効な実質的な役割りを果たすようにせにゃいかぬというふうな反省があったからこの通達を出したんでしょう。それであったら、いまのような答弁にはならぬわけですよ。言われたから通達だけ出しておけば行政管理庁の責任が済んだんだと、あとは野となれ山となれ、これでは話にならぬですよ。やはり通達を出した趣旨が生かされておるのか生かされていないのかということを事後においてあなた方検証しなければ、行政管理庁なんていうものは存在価値なくなりますよ、通達の出しっぱなしの機関なら要らぬのですから。
  50. 平井進

    説明員平井進君) お答えいたします。  ことばが足りなかった点はおわびいたしますが、行政管理庁におきましては、各省それぞれ管理官が担当いたしておりまして、日常の接触があるわけでございまして、その場合、事実上の御相談にはいろいろお見えになります。そこで、この通達は各省も承知をしておりますし、行管としては守る立場でございますから、この精神、趣旨が尊重されますように、事実上の話し相手になりまして、また相談をいたしまして、事実上の指導を申し上げる、そういうことは日常の業務としてやっているわけでございますが、それが対外的にどういう権限をもってするかということになりますと、これはややあれでございますが、この通達の趣旨を生かすような日常の、いわゆる行政指導ということばは適当かどうかわかりませんが、日常の接触の中でそういう相談を受けまして事実上御指導申し上げているということは確かにございます。
  51. 矢山有作

    矢山有作君 でありますから、それなら現在の実態を知るのに御苦労はなさらぬでしょうから、三十六年に国会で問題になり、政府答弁に基づいてこれだけの通達が出されたわけであります。したがって、現在、各省庁がこの通達に基づいて、どういう実態にあるのか。これはぜひ調査をして、そして運営の中身まで見て、この通達の趣旨に反することがあるなら、あらためて行政管理庁としての責任を果たす措置をとっていただかなければいかぬ。この点、お約束できますか。そして、そして調査をされたら、その実態については委員会のほうへ御報告願えますか。
  52. 平井進

    説明員平井進君) ただいまの点につきましては、各省につきまして調査をいたしまして、その調査の結果を取りまとめました上で御報告をいたしたいと思います。
  53. 矢山有作

    矢山有作君 御報告いただく時期は、なるべく早くお願いいたします。委員会で審議された後二カ月も三カ月もかかるというのでは、これは困りますから。  聞くところによりますと、労働省は、労働基準法研究会中心となって着々と労働基準法の本格的な改正作業を進めておるといわれております。間もなく研究会の報告書も出そろうんだろうと思いますが、そのあとどういうような手続で、大体いつごろまでに基準法改正に結論を出す予定なのか、今後の見通しを明確にしていただきたいと思います。
  54. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 基準法研究会も、第三小委員会がやっておりました安全衛生法については御報告をいただいたわけでございますが、第二小委員会のほうは、四十六年の暮れに労働時間関係の中間報告がございました。しかし、同小委員会は、女子年少者問題も扱っておられるわけでありますが、女子年少者問題については、やはり医学的、科学的、そういうような専門的な問題があるのではないかということで、さらにその下に専門家を御委嘱になりまして、女子保護問題等についての医学的、科学的な専門家の御意見を聞いておられるのでございます。  それから第一小委員会のほうは、先ほども申しましたとおり、それ以外の広範な問題を事項別に取り上げておられるのでございまして、いま直ちにそれらの研究会の小委員会でやっておられる研究結果が、いつ結論が出るかというようなことをまだ申し上げるところまでいっておらないわけでございます。  また労働省といたしましても、いつまでに結論を出して、いつ基準法改正の問題を取り上げるんだという御質問でございますが、別に基準法改正をやるということをまだきめておるわけではございませんで、研究会の研究の結果などを承り、また各方面のいろいろな出ております御意見を今後とも慎重に検討してまいりたいと考えておるわけでございまして、いつまでに改正問題について結論を出して、いつ審議会にかけるのかというところまで具体的な案をいま考えておりません。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 労働基準法とILO条約の関係についてお尋ねしたいんでありますが、昭和四十七年にILOが国際競争の公正化という観点から、国際公正競争基準をつくるというふうな発表をしたと記憶しております。その際に、ILO事務局では、一つには、ILO条約のうち、国際競争力に関係する条約を抜き出して加盟国間で批准件数を比較する、こういうことを考えておるようでありますし、二つ目には、輸出産業労働条件を他の国内産業労働条件と比べる、こういうことも考えておるといわれておりました。その後、この国際公正競争基準づくりというのがILOでどういうふうな進行状態にあるのか、もしおわかりになっておったらお知らせをいただきたいと思います。
  56. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 国際労働関係の担当ではございませんので、詳細を承知いたしておりませんけれども、ILOで公正労働基準ということが前に何回か議論になったということは承知いたしております。しかし国際公正労働基準というようなものをどういうものと考えるかというような点については、いろいろILOの中でも議論があって、別にまとまった国際公正労働基準というようなものができておるわけではなく、むしろ、いままでILOで採択された条約などの批准の促進をしていこうということに現在までなっておると、かように承知をいたしておるところでございます。
  57. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  58. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 速記を起こしてください。
  59. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) いま先生御指摘の公正労働基準につきましては、ILOで話題になりまして十一月の理事会で審議をいたしましたけれども、まだ結論が出ておりませんで、なお検討を続けると、こういうふうに聞いております。
  60. 矢山有作

    矢山有作君 ILOの中で、こういうような労働条件の国際基準をつくろうとする背景というのは、まあ正確かどうかはわかりませんが、漏れ聞くところによりますと、わが国労働条件が国際的な水準から見て非常に劣悪だ、低賃金、長時間労働、それに公害たれ流しだと。そういう中で国際競争力が強いんだと、こういうふうに見られておるところから、ILOの中でもこういう問題が起こったんだというふうに聞かされておるわけでありますが、そこで政府は、ILOがこういう方針を出して動き出したとするならば、私はこのままで放置できないだろうと思うんですよ、いまの国際労働情勢状態から見るなら、そしてまた現在の国際経済状態から見るならば。そこで、労働省はこれに対してどういうふうに対処するつもりでおられるのか、お伺いしたいんです。
  61. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) いま先生御指摘のように、最近のわが国の国際的地位の向上という面、あるいはわが国がILOの常任理事国であるという立場から、政府といたしましてはILOの条約につきましては積極的にこれを批准をする、こういう方針をとっておるところでございます。現在、批准条約数と申しますものはようやく加盟国の平均の三十二に達しようとしておるというところでございまして、まだ十分ではございませんけれども、この数年について申しますと、毎年二件ないしは三件というふうに、件数は少のうございますけれども、毎国会批准の承認案件の審議を国会でお願いをしておる、こういう態度にも見られようかと思います。  なお、一番問題は、いま先生おっしゃいました公正競争という面から、労働基準部門の条約の批准の促進ということがたいへん重要かと思います。その点につきましては、先ほども基準局長から御説明がございましたように、現在基準法につきましてはいろいろ問題点検討研究会で行なっております。その際の検討一つ課題としましては、ILO条約の批准という問題もあわせて考えられておるわけでございますので、その結論を待ちまして、労働基準部門の条約の批准促進ということに進んでいきたいと考えております。  なお、公正労働基準のILOでの取り上げの一つの動機として、日本の低賃金、長時間労働という御指摘がございましたけれども、最近におけるわが国労働条件の向上というのは、先生御承知のとおりたいへん目ざましいものがございまして、賃金水準だけについてものが言えるものではございませんけれども、すでに先進諸国の中の一番トップグループに属しておるということも事実でございます。その点については、従来、十数年前、あるいはそれ以前の国際的評価といまとはかなりの違いがあるんではないかと私たちは考えております。
  62. 矢山有作

    矢山有作君 批准の件数がふえつつあるということは私ども労を多といたしますし、けっこうなことだと思います。どしどしILO条約を批准をして、そして国内の労働水準を国際的な水準にまで高めていくということに努力願いたい。  ただ問題は、いま言った一番肝心かなめの労働基準に関するものは、これはなかなか批准できるような法律にもなってないし、現状にもなってないからこれは批准できないんだ、いつまでたってもなかなかね。そして比較的やりやすいものだけを批准をして、批准の数だけをふやしゃあいいというんじゃ困ります。これは根本的に反省してもらわなきゃいかぬと思う。一番問題になっておるのは、労働条件、労働基準の問題ですからね。特に労働時間だとか、あるいは休日の問題だとかが非常に問題になっているんだから、ここのところの批准が早くできるように国内においての法律整備し、実態を整えていかぬことには話にならぬです、批准の数だけふえても。したがって、その点は私は強く御指摘申し上げておきたいんです。  そして、参考のために、いまILO関係の条約の批准の状況というものを私どもに一覧表にしてお教えを願いたいと思います。  それから、これは何もことばを返してあなたと議論をしようというんじゃありませんが、賃金等について目ざましい上昇があった——これはそのとおりだと思います。しかし一番悪いことは何かというと、たとえば月収百万ある者も、月収五万、七万しかない者も全部ならしにして平均を出して、これで平均がこうですと、よくなりましたと、これじゃ困るんです。  私は、かつて欧州に社会党の農業調査団で出かけたことがありますが、農業問題についていろいろ聞いてみました。この地域では農民所得は平均どのぐらいですかとか、平均反収はどのぐらいですかとか、生活レベルは大体どのぐらいの平均ですかと。全然答えがないんです。平均などというような質問に答えはできません、それぞれの条件がみな違うんですと、そのそれぞれの条件を見てその水準がいいのか、悪いのかという判断をすべきなんであって、全部引っくるめて、高いところも低いところもまるでごっちゃにして平均なんて、そんなものの考え方はだめだという指摘を受けた記憶があります。  私は、日本はまさにそれをやっているんだと思う。非常に賃金の高いものから非常に低いものまでもまるごと一緒にして、平均して、これで国際水準になった、これじゃだめなんだ。水準以下の低賃金の人がたくさんある。しかも、その低賃金の人は低賃金で食えぬから、規定の労働時間以外にたいへんな時間外労働をやって何とか食っておるという実態もある。このことを私は踏まえておいていただかぬと、今後の労働行政を推進される上に非常に誤りをおかすと思いますから、これは御注意申し上げておきたいと思うんです。  ただいま要求いたしました資料の点についていかがでしょう。
  63. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 条約の批准の現状につきましての資料は早急に委員会に提出をしたいと思います。  それから条約の批准の方針としまして、数ももちろんのことながら、質的に重要な部門について批准をするようにという御指摘は、全く同感でございまして、今後そういう方向で検討いたしたいと思います。  なお、労働条件につきまして、平均でなくて、いわゆる底辺層の労働者に対する対策の重要性、これも御指摘のとおりかと思います。また、最近の、たとえば本年三〇%の賃上げといわれております大幅賃上げの中で、中小企業が追いつけないのではないかというような懸念をわれわれ持っておりましたけれども、現在までのところのあれでは、こうした非常に困難な経済情勢の中でも、中小企業が大企業以上のアップ率の賃上げをやっておるという事実もございます。ただ、そういう労働組合によっての賃上げができる階層、それ以下の底辺層の労働者につきましては、労働基準行政の一番大事な対象として私たち真剣に取り組みたいと考えます。
  64. 矢山有作

    矢山有作君 ILOの条約の批准の問題について少し具体的にお聞きしてみたいのですが、先ほどもお話がありましたように、この批准の一番おくれておるのは、労働時間や休日など労働基準に関する問題でありますが、そこでも非常に重要だといわれておるILO第一号条約が批准をされてない、いまだに。この批准をされてないという具体的な理由は一体何なのかお聞かせ願いたいのであります。
  65. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 一号条約は、労働時間につきまして一日八時間労働の原則をうたったものでございます。ただたいへん硬式、いわゆるかたい労働時間制を明示をしておりまして、不可抗力による場合、あるいは災害発生の場合というような限定をした場合以外には労働時間の延長を認めない、こういう考え方でございまして、わが国の場合には、御承知のように、時間外労働につきましては、労使の協定がございますれば時間外労働ができる、こういう実態になっております。したがいまして、その点から批准が困難である、こういうのが現状でございます。  なお、いまのわが国の労働時間制、いわゆる軟式労働時間制について、この際検討をすべきという点につきましては種々御指摘がございます。われわれもそういう方向に進むべく検討はいたしておりますけれども、先ほど先生御指摘のように、底辺層の労働者が働いておるいわゆる零細中小企業におきまして、日本の二重構造といいますか、そういう底辺の企業におきまして、このような厳密な労働時間制をいま直ちに行なうということは、私たちはたいへん困難があるのではないか、こう考えております。
  66. 矢山有作

    矢山有作君 私は、批准できない最大の理由というのは、いまのILO第一号条約の水準があまり高過ぎるということにあるのじゃない。ILOの場合の例外というのは、これはごく限られておるわけでしょう、いま御説明いただいたように。ところが、日本の場合は、これは労使が協定しさえすれば、五十時間だろうが、百時間だろうが、百二十時間だろうが、時間外労働を許しているのですからね。これが一番穴なんですよ。こんなでたらめな話はない。まるでしり抜けになっておるのですよ、時間規制というのがね。しかも、その一日八時間、一週四十八時間という原則に対する例外というのが非常に大幅ですわね。こういうところが一番問題なんでしょう。だから、ILO一号条約が特別な例外を設けておるそのものが多いとか少ないの議論よりも、国内の労働条件がさっぱり批准などといえるところにいってないからやれないと、こういうふうに率直にやっぱり認識をしていただいて、その点を改める努力を願いたいと思いのですがね。
  67. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 御指摘のように、いまのわが国の労働時間制は、時間外労働については労使の協定によってできることになっておりまして、特に女子年小者以外には例外がないわけでございます。ただ、先ほども申しましたように、日本のいまの産業構造実態からしますと、時間外労働を原則として、いわゆる災害、不可抗力以外認めない、あるいは変形労働時間制についても非常に厳格な規定をしておるという一号条約の水準にいますぐに持っていくということは、たいへん困難かと思います。ただ、一号条約の方向に向かって、われわれとしては今後労働条件の向上、相まって法制の整備ということをはかっていかなければならないと考えております。
  68. 矢山有作

    矢山有作君 まさに日本実態は、いまお話しになったほど非常に労働条件というのは悪いわけです。したがって、いつまでもその状態のままではおれぬわけですから、一号条約が一日でも早く批准できるように精力的に、その労働条件改善等のために努力をしていただかなきゃならぬと思います。これは、ただ単なる労働の問題だけでとらえるのでなしに、政府としての経済政策全体にも関連をしてくるでしょうが、これはやはり政府の責任として私は対処していただかなければならぬと思います。そうなってくると、大臣のほうにやっぱり決意を伺わなければならぬと思います。
  69. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ILOにつきましては、先ほどから政府委員が御答弁申し上げているように、私たちはやっぱり前向きの姿勢でやっておるわけであります。ただいまの一号条約、その姿勢も同様でございますが、いままで資料を見ていますと、姿勢として一生懸命やらなきゃなりませんが、やっぱりそれぞれの国にはそれぞれの事情があるらしくて、アメリカとソ連も西ドイツもイギリスなどもまだ批准をしてないんですね。そういうふうなことなどもありますし、やっているところが三十三ヵ国、それは私は、いま政府委員が答弁したようなこともありますし、先生の御指摘などもありますし、さらにまた、労働者の地位の向上が私たちの仕事でございますから、懸命な努力をすることでありますが、こういう全体の事情等々もあわせて研究してみたいと、こう思っております。
  70. 矢山有作

    矢山有作君 いま大臣がおあげになった国々は、ILO条約よりももっといいんですよ。もっと労働条件がいいんです。日本なんかと比べたらうんといいんです。だから、ここではILO条約批准というのはあんまり問題にならない。日本のように非常に労働基準の低いところにおいてこそILO条約を批准をして、その目標に早く持っていくという努力が要るんですから、その点ひとつ誤解のないようにしていただきたいと思います。そういういまおあげになったような国々がまだ批准をしてないから、日本も批准をしなくてもいいんじゃないか、批准がおそくてもいいんじゃないかというのは困りますのでね。  それから、政府の発表を見ますと、年々わが国において、週休二日制が促進されておるといわれております。そこで、ここ数年の週休二日制の実施の動向について御説明願いたい。と同時に、その週休二日制というものは、労働時間の短縮と結びついておるのかどうか、この点伺いたいと思います。
  71. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 週休二日制につきましては、かねてから労働省でその推進をはかっておりますことは御承知だと思うわけでございまして、最近のその進展の状況というお尋ねでございますので、最近の数字を申し上げますと、週休二日制、これは完全週休二日制のほかに、隔週であるとか月一回であるとかいろいろな形がございますが、それを含めまして、何らかの週休二日制を採用しておる企業の割合は、これは三十人以上の企業について調べましたところによりますと、四十六年は六・五%でありましたが、四十七年は一三・三%、四十八年は三〇%と、かように進展してきております。それから、何からの週休二日制の適用を受けている労働者の数の割合で申しますと、同じく三十人以上の企業に働く労働者につきまして、四十六年は二四%、四十七年は三五・九%、四十八年は五四・九%が何らかの週休二日制の適用を受けているという状況に相なっております。  なお、私どもが従来調べておるところによりますと、週休二日制を採用したところでは、大部分が週の労働時間は総体として短縮になっておるわけでございます。
  72. 矢山有作

    矢山有作君 週休二日制を取り入れて、あなたの御答弁でも察知されますように、労働時間の短縮に結びつかないやつがありますから、これは週休二日制とは言えぬのでして、こういう点、やっぱりできるだけ改善をされるような指導というのが強力になされなければならぬと思うのです。だから、基本的に言うなら、週休二日制というのは、一週当たりの条件としては四十時間、こういうことにならなければうそなんで、そこへ持っていくような私は努力をしていただきたいと思うのです。  そこで、これは私のほうから申し上げていいと思うのですが、労働時間の最近の動向を調べてみますと、間違っておったら指摘してください。昭和三十五年から十年間に、年間百八十時間の労働時間が短縮されておる。たとえば三十五年の一ヵ月間で二百二・七時間短縮になっておる、年間で二千四百三十二時間短縮になっておる、一週にすれば四十六・八時間だ、それが四十五年には一ヵ月百八十七・七時間、年間で二千二百五十二時間、一週で四十三・三時間、四十七年について見ると、一ヵ月で百八十三・八時間、年間で二千二百五時間、週四十・八三時間、こういうふうな状態が出ておるようでありますが、これ、大体間違いないでしょうかね。
  73. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先生のあげられましたのは、傾向としてはそのとおりだと思うわけでございますが、数字は、私どもいまここに持っておりますのは、労働省の毎月勤労統計の月間労働時間の数字を持っておりますが、数字自身は若干先生のいまお読みになりました数字と違っておりますので、後ほどよく先生の御数字を見させていただきたいと存じます。
  74. 矢山有作

    矢山有作君 傾向としては労働時間は短縮されるという傾向が出ておると思うのです。それで、いま申し上げましたような、一週四十・八三時間、これが正確な数字かどうかは別として、大体こういうところ前後ではないかと思うのですが、そういうふうになっておるとするなら、統計で見る限りは、私はILO条約批准に踏み切って、むしろそれによって労働時間の問題を誘導するように、労働時間の短縮を誘導するようにしたほうがいいんじゃないかという気もするのですが、この辺のお考えはどうでしょうか。
  75. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 総体としての平均の労働時間は、おっしゃるとおり現在四十八年の労働時間制度調査で週四十三時間十五分ということに相なっております。しかしながら、これを規模別に見ますると、かなりの違いがあるのでございまして、規模三十人前後ぐらいになりますと、まだ四十八時間限度一ぱいというものが半数近くございますし、さらに三十人未満の零細規模になりますと、まだまだ四十八時間以下というのがむしろ非常に少ない部分になるような状況もございまして、やはり法律で強制をいたします場合には、それらいろいろな企業の実行可能性、それらの点も十分に検討する必要があるのではないかと存じます。
  76. 矢山有作

    矢山有作君 私自身が、平均してものを言うのは間違いであるという指摘をしておきながら、いまのような平均してものを言う言い方をしたわけです。まさにそれに対しての御答弁で明らかになりましたように、実態というのは日本の労働時間は非常に国際的に長過ぎるわけですから、したがって、早急にこの問題は解決に私は努力をしてほしいと、そういうことを重ねて要望するという意味でも申し上げましたので、これは十分ひとつ頭に置いていただきたいと思います。  それから年次有給休暇の関係でちょっとお伺いしたいのですが、ILO五十二号条約は、年次有給休暇に関する条約でありますが、この条約の主要な内容と、今日批准できないでいる最大の理由、これは何かお聞かせ願いたい。
  77. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 年次有給休暇につきましては、五十二号条約のあとに最近百三十二号条約というのが最近の年休条約でございまして、これがいまの国際基準として示されておりますので、これにつきまして御説明をいたしますと、年次有給休暇は一年勤務につきまして三労働週以上、三週間以上与えると、こういう内容と、分割をして与える場合には、その最低の単位を二労働週、二週間以下にしてはいけない、こういう内容になっております。
  78. 矢山有作

    矢山有作君 おっしゃるとおり、五十二号条約よりもさらに新しく出た百三十二号条約のほうが内容は前進しているわけです。まあ別々にお聞きするつもりでおりましたが、百三十二号のほうをお答えいただきましたので、それをもとにしながらお尋ねをさしていただきたい。  そういう百三十二号という五十二号条約よりもまだまだ前進した、程度の高い労働基準が示されておるときに、五十二号条約もまだ日本は批准しないわけですね。要するに、この有給休暇のこれらILO条約を批准できないその理由というのは一体どういうふうに把握しておられるのかということです。
  79. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) いまの基準法では年次有給休暇につきましては、一年勤務をいたしましたものに対して六労働日というふうに与えることを義務づけておるにすぎないわけです。さらにその方法につきましても、一労働日まで分割ができると、こういう内容でございまして、その点が百三十二号条約とははなはだ距離があるわけでございまして、批准ができないわけでございます。特に年次有給休暇も一括長期間与えるという方式につきましては、最近の労働福祉観点から私たちは十分検討をすべきと、こう考えておりますけれども、御承知のようにいまの日本の労働慣行からいたしまして、この条約でいっております二労働週以上それ以下に分割せずに与えるという点につきましては、まだまだ法制の問題というよりも実態の問題として問題があるんではないか、その辺の検討を進めたいと思っております。
  80. 矢山有作

    矢山有作君 柳川和夫という人の「ILO条約と勧告」という本がありますが、それによると、三労働週の休暇を与えている国が三十カ国以上にもなっておると、こういうふうなことを言っておられます。これはおそらく事実だろうと思いますが、こういうように、もう世界ではすでに一年に三労働週の休暇を労働者に与えるということが常識になっておる、まあ、なりつつある、こう思うんです。ところが、私は年次有給休暇に対する国内の現状というのは非常にお粗末な状態じゃないかと、——具体的にお教えいただきたいんでありますが、現在わが国の年次有給休暇の取得状況というのは一体どうなっておるのか、もしおわかりになるなら具体的に産業別にあるいは企業規模別に説明をしていただきたい。
  81. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 手元に企業規模別の消化率はあるわけでございますが、平均がございませんので、非常に詳細な御説明になってまことに恐縮ではございますが、ちょっと申し上げますと、千人以上の規模の企業につきましては、消化率二〇%未満というのが三・九、二〇をこえ四〇%未満というのが一〇・二、四〇%をこえ六〇%未満というのが二一・二、六〇%をこえ八〇%未満の消化率が二一%、八〇%以上の消化率が一三・五%、消化率不明が三〇・二%、こういう数字に相なっております。  それから一番規模の下の三十人ないし九十九人の規模の事業所について申しますと、消化率二〇%未満というのが三・六、二〇%以上四〇未満が一〇・三、四〇ないし六〇%未満が二〇・七、六〇をこえ八〇未満が一八・二、八〇%以上の消化率が一八・四、不明が二八・八と、かように相なっております。  そのほかの中間の規模につきましては、多岐にわたりますので省略をさしていただきます。
  82. 矢山有作

    矢山有作君 大体いまお聞かせ願ったところで、わが国におきましては年次有給休暇の取得状況がいかに悪いかということが証明をされたわけでありますが、こういうように有給休暇を取れないという状態というのは、私は世界各国の中でも非常に珍しいんじゃないかと思うんです。そこで、こんなにわが国労働者が年次有給休暇を取れない原因というのは一体どこにあるとお考えになっておいでになりますか。
  83. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) まあ、外国では年次有給休暇、慣行といたしまして夏のバカンスなどにまとめて二十日とか一ヵ月とかいうことで消化される例が多い、したがって非常に消化率が高いというふうに聞いておりますが、日本の場合でございますと、まとめて有給休暇を消化するというのがむしろ少なくて、そのときどき、必要のつどに一日とか二日ずつ取っておる。そして、したがいまして、緊急の必要ができた場合等のために残しておくというまあ気分が労働者に多いというようなことも一因であるように聞いておりますが、そのほかに、やはり何といいましても、年次有給休暇は全部取って消化するのが当然なんだという、何といいますか、職場の意識と申しますか、そういうものが日本ではまだ慣行的にできてないのではないか、かように考えるわけでございます。  そこで、私どもも年次有給休暇をできるだけ完全に消化させるようにということで昨年も通達をいたしまして、職場でもし取りにくいような雰囲気があるとすれば、これは当然労働者に付与すべきものであり労働者の権利であるのだと、こういう意識を職場に十分に浸透するようにということ、それから日本でも夏季等にできるだけ連続して取ると、こういう慣行をひとつ推奨するようにと、まあ、こういうような指導もいたしておるところでございます。
  84. 矢山有作

    矢山有作君 私は、日本で年次有給休暇の消化率が非常に悪いという原因を、職場における意識の問題だとか日本の労働慣習だけでは片づけられない問題がある、こういうことをやはり重視しなければならぬと思うんです。もっとも、いま若い人はわりあいこれ取っておるようでありますが、その私が重視しなければならぬと言った最大のものは何かといいますと、年休を取った場合に、その取った日を成績評価なり人事考課の上で欠勤とみなして、賞与の算定や昇給昇格の面で不利益に扱うということを認めたような行政解釈があるはずであります。そういうものがあるから、私は年休が取りにくいと思う。ただでさえ日本の給与水準低いんですから、それで賞与なんかのときに、ボーナスのときにばかっとそんな年休を取ったもののお返しに賞与を減らされたりなんかしたんじゃ、これはたまらぬ話ですよね。それから、昇給昇格まで年休の取得状況が響くというんだったら、これは取れなくなっちまう。だから、職場の労働者の意識や労働慣習でなくて、そういうふうに年休を取られないような、そういう形が経営者の中で行なわれておる、これを認めるような行政解釈を労働省がしておる。この二つが私は問題だと思う。その点いかがですか。
  85. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) そういうような、まあ就業規則、最近では必ずしも多くないと存じますけれども、あった場合に、それが基準法違反になるかどうかということになりますと、法律解釈としては直ちに違反になるということまでは言えないと思うのでありますが、私ども、そういうような規定基準法趣旨からいって好ましくないものだと、かように考えておりますし、先ほどもお答え申し上げましたように、年次有給休暇につきましては、そういう取りにくいような職場の零囲気、慣行、そういうものは除去して、これが企業内で取得しやすい機運の醸成をはかるように行政指導をせいということを昨年以来努力をいたしておるわけでございまして、したがいまして、もしそういうような就業規則をいまなお残しておるところがあるとすれば適当でないと存じますので、これはまさに取りにくい機運を醸成することになると思いますので、そういうようなことはやめさせるような方向で行政指導をしたいと存じます。
  86. 矢山有作

    矢山有作君 ただ、私はこういう法律の解釈運用をやっていく場合ね、肝心なことは、第何条にどうどうどういう条文が具体的に示されておって、それに明確に違反したと、その場合に違反と、法律違反だと、こういう私は狭い解釈だけではいけないと思うんです。法律解釈というのは、ただ単に個々の条文に照らして、具体的にこれが違反かどうかということの議論と同時に、その法律の精神に照らして、それが違法なのか、違法でないのかという解釈も同時にあるわけですから、そうするなら、私は法律解釈として国内の労働基準の実態をながめ、しかも国際的な労働基準の実態をながめたときに、それに合わせて日本労働基準法の意図するところが何か、それから、さらに憲法の意図するところが何か、そういうことを考えたときに、そういう立場からそういうような年次有給休暇を取ったならば、それに対して賞与を減らすとか、あるいは昇給昇格に影響を与えるとかというようなことをやることが、これは違法なのかどうか、そういうふうな私は解釈をやっていただかぬとね、私は日本のような労働条件の国で改善はなかなかむずかしいと思いますよ。この点どうお考えになりますか。
  87. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先ほどから申し上げますとおり、私どもはそういう労働基準法で定められた年次有給休暇を取りにくいような機運に導くような措置は適当でないと考えております。ただ、法律解釈ということになりますと、基準法は罰則をもって強制をいたしております法規でございますので、まあ罪刑法定主義等の問題もございまして、法律解釈が単に好ましくないということだけで違反だということがいえるかどうか、これは、まあ、いろいろ法律論として議論があるところと存じますが、私どもは実際の行政指導としては、今後そういうような取りきめをしておるところがあるとすれば好ましくないことでございますので、そういうような規定はやめさせるような方向で行政指導を進めたいと存じております。
  88. 矢山有作

    矢山有作君 だから三十九条違反になるわけです。三十九条が関連を持ってくるわけですね、この場合。だから私は三十九条違反であるという解釈指導をすべきだと言うんです。私は何も罰則が、きちっとその罰則と法律との関係を全然無視をしてものを言っておるんじゃないんで、三十九条という規定がある。あって、しかも年次休暇を取るのにいま言ったようなことが行なわれておるとするなら、三十九条違反ですと、こういう私は行政指導をやりなさいと言うんですよ。その結果ですよ、その結果訴訟が起こるなら、むしろそのほうが労働基準を高めていくのに役に立つんですよ。いまの情勢なら。いまの国内の経済状況なり、文化的な状況なり、そして先ほど言った国際的な労働水準なり、それから照らし合せてものを考えた場合には、三十九条違反ですよという指導をなさって、それはけしからぬと。それだったら、違反であるか違反でないか裁判で争うようなことになったときに、そのほうがむしろいいんです、そのほうが。労働省はそのくらいの法律解釈の運営について、労働者を守るという立場から踏み切ってごらんなさい、一ぺん。そのことをやれば、これはかえって困っちゃうのは経営者のほうが困っちゃうんですよ、今度は、いまの情勢の中で。そういう、労働者を守るためには勇敢に法律適用をやるんだという姿勢が労働省にないところに最大の問題があるんです。どうなんですか、その点は。
  89. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 先ほど先生がおあげになりました通達というのは、三十年当時、そういうことが三十九条違反になるかどうかという法律解釈として聞いてまいりましたものに対しまして、直ちに違反にはならないというふうに答えた行政通達を出しておるわけでございますが、これは三十九条違反だということになって、是正勧告をして聞かなければこれは基準法施行の任に当たる監督官としては送検をする、こういう問題になるわけでございますが、法律解釈としてそこまでいけるかどうかということでこういう通達が出ておるわけでございます。しかし私どもは、先ほどから申しますとおり、三十九条の趣旨から見ればそういうものは好ましくないと、こういうことでいまそういうことはなるべくやめさせるということで指導をいたしておるわけでございます。
  90. 矢山有作

    矢山有作君 問題は、こういう行政解釈がいま残っておるということがね、経営者側に対しては、それをよりどころにして動いていくことになりますからね。だからこういう行政解釈が出ていることがたいへんじゃまなんですよ、これは。こんなものがなければですね、なければまたないほうがいい。なければいいんです。ないほうがいいんです、こんなものは。だから労働省として、そのいまおっしゃったようなへっぴり腰でなしに、三十九条違反で一ぺんやってごらんなさい、ばさっと。やるのですよ。そして訴訟に持っていかれたら、そのとき、労働省はあなた方がつかんでおる日本の労働実態からとうとうと弁じ立ててですね、そんなばかな、年次有給休暇を取ることを抑制するような、金でしっぺ返ししたり、それから処遇でしっぺ返しするような卑屈なやり方というのはやめさせにゃいかぬですよ。これはもうぜひ再検討していただきたい。大臣どう思われますか。そんな卑屈なやり方ないでしょう。私はこういうような卑屈なやり方大きらいなんだ。どうですか。
  91. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) まあ、先ほど以来の答弁あるいは御質問をお伺いしますと、なかなか法律問題としてなじまない点があろうかと思いますので、せっかくのことですから、行政指導としてやってみたいと、こういうふうに考えております。  もう一つは、日本労働者といいますか、働く諸君というのは、やっぱり企業内においてなかなか競争などが激しいために、二週間三週間の休暇があってもですね、私の知っている限りにおいては、一、二の例ですけれども、そんなに休んでいると自分のポストにだれかが入ってしまうということでね、そういう休暇を取らないでがんばっているというふうな、そういう企業内の事情等もあることも知っているわけであります。
  92. 矢山有作

    矢山有作君 労働大臣、それはね、それはそんなばかなことはないですよ、そういうような扱いをしよるのは経営者なんですから。そういう扱いをしちゃいかぬですよ。いま労働争議の問題とは別なんですから。年次有給休暇の取得の問題を議論しておるわけなんですからね。それと労働争議の問題とをからみ合わせた議論というのはここでは言いません。それは労働争議の問題として別個に議論すればいいんです。私は年次有給休暇というものは、それを労働者が取るのを金の面で押えたり処遇の面で押えるという卑屈なやり方はいかぬというのです、これは。年次有給休暇は法律で保障されておるのだから、それを取るためにそういう抑制策を企業がやってはいかぬと、このことを言っておるわけですから、その点は、——まあ、もう答弁求めませんがね、誤解のないようにしていただきたい。  それからね、さらにもう一つお聞かせ願いたいのでありますが、年次有給休暇を取った場合にね、毎月の皆勤手当をもらえない企業が非常に多いというて、これはジュリストで、「産業構造変化と労働法」という中に花見忠とおっしゃる上智大学の教授の発言が載っておるのですけれどもね。これ実態はこのとおりですか。そういった実態把握しておられますか。
  93. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 特に精勤手当、皆勤手当等について調査をした例はございませんので、実態がどういう割合になっておるかということはちょっとわかりかねるわけでございます。しかしながら、私ども先ほど申しましたように年次有給休暇が取りにくいような機運を醸成するような措置は好ましくないということで考えておりますので、当然の権利としての年次有給休暇がそのために取りにくいというようなことがないように行政指導をしてまいりたいと存じます。
  94. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、これはね、資料として御提出願いたいと言ったところでたいへんな調査でしょうから、そこまでは私は要求いたしませんがね、きょうの段階では、一体その年次有給休暇を取ることについて経営者がどういう態度をとっておるのか。いま申し上げましたような物質面からこれを押えつけるというようなことが行なわれておるのかいないのか、これは実態はひとつお調べを願いたいと思うのです。そういう実態を御承知になってからでないと、いわゆる効果のある現実的な行政指導はできませんからね。机上の空論じゃどうにもならないわけですから。  それから年休の未消化分が先ほどおっしゃったように非常に多いわけでありますが、一体企業においてはこの年休の未消化分をどういうふうに処理しておるんでしょうか。これについて労働省調査をしておいでになるならばお知らせをいただきたいし、そしてまた、その調査結果について労働省のお考え方からどういう指導をしておられるのか、それもあわせて伺いたいと思います。
  95. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 繰り越しをどのように取り扱っているかという調査はございません。しかし、私どもといたしましては、未消化分につきましては、繰り越しを認める、二年間は繰り越した使い残しの有給休暇について労働者は請求し得るということで行政指導をしているわけでございます。
  96. 矢山有作

    矢山有作君 その実態は御承知になっていませんね。
  97. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) そこまでの調査はございません。
  98. 矢山有作

    矢山有作君 それからここに年次有給休暇をどういうふうに処理しているかということで、年次有給休暇の買い上げの問題について調査した資料があるんですよ。年次有給休暇を買い上げておるという産業が全産業で調べたら、調べた企業の数は三百三十一ですか、その中を調べたら、その年次有給休暇を買い上げておるというのが十九、買い上げていないというのが三百十、不明が二となっているんですがね、この年次有給休暇をどう扱うかというのは、買い上げておるのか買い上げないのかということも一つの問題なんですけれども、これはこういう状況なんですか。
  99. 渡邊健二

    政府委員渡邊健二君) 年次有給休暇の買い上げにつきましては、先ほど先生がおあげになりました同じ通達で、年次有給休暇の買い上げの予約をし、これに基づいて基準法第三十九条の規定によって請求し得る年次有給休暇の日数を減じて請求された日数を与えないことは三十九条の違反である、こういう私どもは解釈で買い上げを認めておりません。したがいまして、もし買い上げをしているところがあるといたしますれば、やみで隠れてやっておるんだろうと思われるのでありまして、私どものほうでそういう数字は把握しておりません。
  100. 矢山有作

    矢山有作君 それでは時間の関係ありますから、飛ばして次に移ります。  東京商工会議所が昭和四十五年の十月の八日に「労働基準法に関する意見」をまとめて労働大臣に提出をしております。先ほど来言っておりますように、最近欧米各国からわが国に対してソーシャルダンピング論が強まっておりまして、ILOでも公正な国際競争の立場から賃金や労働時間、休日などの労働条件が問題になっている時期でもありますので、この意見書の内容について、まあ時間の関係がありますから詳細は後日に譲るといたしまして、簡単に一、二お聞かせ願いたいと思うんであります。まず、意見書の内容概要というものを御説明をいただきまして、この意見書についてどういうように取り扱ってきたのか、さらに労働基準法の改正をやろうとするならば、この意見書の内容というのはあなた方にとって参考になるようなものがあるのかないのか、こういう点もあわせて聞かしてください。
  101. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 御指摘の東京商工会議所からの意見書の内容をざっとしたことを申し上げますと、一つには、労働時間関係でございまして、女子の時間外労働の制限、現行法で制限が設けられておりますが、その制限の内容をもっと緩和するようにという趣旨が一点でございます。それから、やはり労働時間にかかわることといたしましては、女子の深夜労働に関しまして、これは原則的に禁止されているわけでございますが、その禁止の緩和、これが要望されております。それから、さらに女子の生理休暇についての規定現行法にございますが、この規定については原則的には削除の方向で要請が出ております。それからもう一点は、現行法に基づきまして、女子につきましては一定の危険有害業務についてその就業を禁止いたしておるところでございますが、その就業制限について緩和するようにと、そのように要請されております。大体その四つの大きな柱であるかと思います。
  102. 矢山有作

    矢山有作君 第二点の労働基準法改正について、そんな意見が参考になりますか。その意見書をどういうふうに扱っておりますか。
  103. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 基準法の問題につきましては、各方面からいろいろな意見が寄せられているわけでございまして、口頭による御意見、あるいはまた、文書による御意見等が経営者のほうからも、あるいは組合のほうからも随時寄せられているところでございます。それらの意見は、それぞれ私どもの行政を進める上の参考の資料という扱いになってまいっているわけでございます。
  104. 矢山有作

    矢山有作君 次に質問を移しましょう。  この意見書をいまお聞きしておって一口で要約すると、これまで労働基準法によって母体保護という観点から、女子労働者に与えられておった保護の権利を極端に制限しようとするものだという私は印象を受けるのです。たとえば労働基準法六十一条の制限の緩和をあげているわけであります。これらにしても私は、現在の日本の全体的な労働の実態、特に女子労働の実態等について十分な認識がない、ただ安く動員できる労働力として女子を動員しようというような考え方から出ておる規定にすぎないというような気がするんですが、担当局長としてはこんな労基法六十一条の制限緩和というような意見をどういうふうに受け取っておられますか。
  105. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 先ほど申し上げましたように、基準法に関しましては各方面からいろいろな御意見が出ているわけでございまして、私どもといたしましては、この商工会議所の御意見もそれらの一つというように考えているわけでございますので’特にこれについて意見を開陳するというような立場にはないと思うのでございます。
  106. 矢山有作

    矢山有作君 いやいや、労働大臣あてにそういう意見が出ているんですから、労働大臣がそんなことをどう受け取るかということは労働大臣からも聞きたいわけですが、あなたも直接の担当局長として、六十一条の女子労働時間なり休日の制限を緩和しろというような意見を、あなたとしてどういうふうにお考えになるのかということなんです。もし、あなたでどうしても東京商工会議所の意見具申だからちょっと言うわけにはいかぬとおっしゃるなら、大臣のほうから言っていただいてもいいです。
  107. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 少しことばが足りなかったかもしれませんが、意見につきましては、各種各様の意見が出ているということでございます。そして、この基準法の問題自体につきましては、先ほど来いろいろと御質疑に対してお答えとして申し上げられたところでございますように、労働基準法研究会におきまして、現行法律施行実情及び問題点について専門的なお立場の研究がされていると、こういう段階でございますので、その研究結果を待って行政としても取り組んでいくと、こういう段階でございます。
  108. 矢山有作

    矢山有作君 研究会は御案内のように、労働省のほうで都合のいい方を選ばれて委員に任命されてやっておられるので、この研究会には労働者という立場の人はだれもおらぬのですね。そういうところで研究をやった結果のものを待って意見を言うのか、考えたいというのかということなんですがね。しかし、東京商工会議所というような、私はたいへんなこれは力を持っておるだろうと思うんです。そういうところがこういう意見書を出して本格的に動く、そういう情勢の中で、研究会のメンバーというのは労働者代表はだれもおらぬ。そこで研究の結果が出てくる。私は、その研究の結果は非常に不安なんですよ。東京商工会議所という大きな力、財界がバックでありましょうが、こういうところがバックになって、それはもう安い女子労働を動員しろということで、それはもう制限緩和だ制限緩和だといってやかましく圧力をかけてくれば、労働者代表というのが一人もおらぬ研究会ですから、それでしかも現場の実態を御存じない、みんな。学者で理屈は知っておられるかもしれぬけれども、学識経験者で現場の実態を御存じない方ばかりですから、これはその結論というのはきわめてあぶないんです。それよりも、私は、局長は婦人労働の実態をその研究会のメンバーの諸君よりもっともっとよく御存じだと信頼しておる。そのあなたにこういう東京商工会議所のような意見に対してどういうお考えですかということをお伺いするんで、これは別に東京商工会議所に遠慮なさることはないんで、行政官としてどんどんおっしゃっていただいてけっこうだと思うんですよ。
  109. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 一般的に申しまして、婦人労働の問題につきましては、母性の保護と申しますか、その面の要請が非常に強くございます。また一面におきましては、男女の平等といいますか、機会の平等という要請も非常に強くあるわけでございまして、この二つの要請がいわば二律背反的な様相を呈するということは、これはまさに婦人労働問題の基本的なところではないかと思います。各国ともそのような問題に取り組んでまいっておりますし、またILO等もその二つの要請の調整をどのようにとるかということでいろいろな国際文書等をつくっているわけでございますが、私どもといたしましても、やはり婦人労働行政の一番の大きな課題というのは母性の保護というものと、それから女子の雇用機会の拡大と申しますか、あるいは男女の平等の確立と、この二つの調整をどこに求めるかということだろうと思っております。しかもその調整といいますか、かね合いの接点というのは、これは時代が動き、また社会の情勢が動くのに伴いまして、かなり動く流動的なものではないかと思っております。そういう意見で、やはり硬直的な考え方でなくて、各方面の御意見あるいは実態等に即して冷静にそのかね合いというものを見つけていかなくてはならないと思いますが、行政の基本的な考え方といたしましては母性保護というものはあくまで厚く考えてまいりたい。と同時に、女子の雇用機会というものは広く、そして男女の平等の確保ということを目標にしてまいりたい、その二つのかね合いというものをはかってまいりたい、このように考えております。
  110. 矢山有作

    矢山有作君 母性保護を最大の問題として考えていきたいと言っていただいて、あとのことばは要らぬのです。母性保護の上に立っての雇用拡大であり、母性保護の上に立っての男女平等なんです。女性が持っておる使命というのは私が言わぬでも女性のあなたのほうがよく御存じなんです。その母性を保護しなきゃならぬというのは大前提でしょう、これは、いろんな条件から考えて。その上に立って男女平等を実現するんです。その上に立って雇用機会の拡大を実現するんです。だから、大前提は母性の保護、その立場から労働基準というものは考えなきゃいけないんです。それを対等に並べてものをお考えになると、力関係でついに雇用機会の拡大だとかいうようなうまいことばにごまかされたり、男女平等だというようなうまいことばにごまかされちゃって、実情ですら女性の労働条件というものが非常に低い、母性保護ということは労基法の中でかっこうはつけられておるけれども、十分な母性保護になっておらない実態を持っておるし、法律もそうなっておる中で、いまのようなことをおっしゃって母性保護とその雇用機会の拡大と男女平等を同列に置いてものをお考えになるのは間違いである、このことを私は強く指摘しておきたいと思うんです。  それから、きょう女性議員の方もおられますから、それに関連しては女性の立場からの関連質問もおありのようでありますから、私はこの問題はこれで終えておきますが、もう一つだけ、労基法の六十二条、これは深夜業についての規定でありますが、この六十二条ですらILOの条約に比べるなら、これはずっと水準の下のものですね。これすら無視して、女性の深夜労働の禁止を緩和しろとかどうとかいうような意見が出てきておる。これについても私は言うところは同じだと思うんです、ILOの基準のほうが高いんですから。しかもILOの基準というのはこれは国際的に見ての最低基準なんですから、それよりもさらに日本の女子の深夜労働禁止の規定というのは低いんです、程度が。それをもしまだ緩和させようというような、こういうような感覚であるからソシアルダンピングだなんだといって国際的な非難を受けるんですよ。いま、少なくとも日本が国際社会に一人前の顔をして手を振って歩こうと思うなら、やっぱり人並みのことをやらなければいかぬ。人並みのことのできぬものが国際社会で人並みの顔をして通ろうというのは無理なんですから、そのことを私は十分政府には認識をしていただきたいということを強く申し上げて、この問題についてはまあ似たような御答弁でありましょうから、あえて御答弁は要りません。  ただ、私がきょう申し上げましたことをまとめて言うならば、最近欧米各国のわが国に対するソシアルダンピング論が強まっており、ILOにおいても国際競争の公正の論議というものが賃金や労働時間、休日などの労働時間をめぐってきびしくなり、まさに国際的な労働条件比べに発展するといわれておるときであります。こういうときにわが国がやらなければならぬのは、これらの労働条件に関するILO条約の批准を急いで、労基法の改正によって早急に労働基準のレベルアップをはかる、そして国際水準にまで高めていくということでありまして、東京商工会議所の意見に見られるように基準を引き下げる、そして、いま非常に悪い水準にあるその水準で労働条件を固定させようなどというようなふらちな考え方はこれは間違いです、そのことを私は強調したい。最後ですからこれは労働大臣に私はお考えを聞いて、この問題については一応終りないと思います。
  111. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) わが国労働者福祉向上ということは、ずっと常に考えなければならぬことであります。そしてまた、世界的にソシアルダンピングという話などがありますが、けさどの新聞でしたかアメリカの記事が出ておりましたが、最近の日本はソシアルダンピングじゃない、そういう中からアメリカの企業としても考えなければならぬという話などもあり、日本のいろんな評判の悪いものはお互いでやっぱり払拭していかなければならぬ、こういうふうな感じ方で、ただいま商工会議所の要望等もございますが、これは一つのただ出されたものを、いろんな問題から出されたものをお受けしたということでして、それによって左右されるとかなんとかというものじゃないということをあらためて申し上げて御理解いただきたいと思います。
  112. 田中寿美子

    田中寿美子君 ちょっと関連。矢山委員がこんなに婦人労働者の問題を一生懸命におっしゃるとはちょっと知らなかったものですから、(笑声)私も一言なからざるべからずと思いましたので……。  労働基準法の中で、女子労働に関する部門についての将来の改正を考えての研究会の小委員会がずっと長く持たれているという状態は私ども知っているわけなんです。いま婦人少年局長が母性保護の問題と、それから男女の平等の両方を調節しなければならないというような非常に抽象的なことばで言われたんですけれども、いま矢山委員は母性保護を根本的にもっと進めるということを基本にして、それですべて平等にしていかなければいけないのだという、またこれは非常に重要な発言もしていらっしゃるわけなんです。私は女子労働者を守る立場にある婦人少年局は、その母性保護と男女の平等が二律背反するという考え方はやめてもらいたいと思います。母性保護を基本に置いて、母性保護を徹底することが男女の平等をこわすことではないという立場をとってもらいたい、そのことを一言、これはお答え要りませんが要望しておきます。  それからお伺いしたいのは、きのうからけさにかけての新聞紙上で拝見しましたが、あの全繊同盟のほうから報告されておりますように、ILOに対して、日本の女子労働者は過保護であるというような資料の提出がされているということが発表されております。これは英文で発表されているということなんですが、労働省が、このILOに提出する資料に関して、全然知らなかったというふうに私は思えないんです。このことに関しては、一体どういうふうに労働省では把握していらっしゃるのか、寝耳に水で、全然知らなかったかのようなことを労働省当局は言っていらっしゃるようですけれども、この間の事情がわかりましたら、一体どこからそういう資料が出ていって、日本の女子労働者はもう守られ過ぎているから、ILOの場で、これはむしろ引き下げていく必要があるということを主張しているような文書を出すということは、たいへんふらちだと思いますので、労働省側の意見も聞いたのかどうか、一体どういうふうにしてその資料が出たのか、この点について伺いたいと思います。
  113. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 私から経緯について申し上げます。  ただいま御指摘になられたように、婦人労働問題コンサルタント会議というのが、この五月末にジューブで開かれることになって、——ILO主催の専門家会議でございますが、開かれることになっておりまして、そのコンサルタント会議に全繊の多田婦人部長が御出席になる。わが国では、現在、コンサルタントはこの多田さんが任命されているわけでございますが、この方がお出になることになって、それでそのコンサルタントのもとに、この会議用の資料が送られてきたわけでございますが、その資料の中に、いま田中先生が御指摘のようなステートメントが入っていたわけでございまして、まことに申しわけございませんが、私どもも多田さんからそれを拝見するまでは、全くそのことについて関知しなかったわけでございます。で、ILOがコンサルタントである多田さんに直接にその資料をお送りになられました。そして、それにいたしましても、その内容が不穏当でございますので、一体どこからそのような情報と申しますか、そのステートメントのもとになるデータが提出されたものであるかということについて、私ども、各方面を徹底的に究明いたしたわけでございますが、労働省はもとより、たとえばILO支局等からも、そのような情報を求められたこともないし、また提出したこともないと、このようなことでございまして、たいへんに不可解なことであるということでございます。が、いずれにいたしましても、この資料の性格といたしましては、これは討議用のテキストだと、こう言ってはおりますが、しかし、これは来年の総会にかけられる一つの資料の、そのたたき台的なものであると思いますので、私どもといたしましては、政府には全然それは送付されてこないのでございます。私どもに送付されてこないのでございますが、しかし、そのような不穏当な部分があることにつきましては、非常に心外でございますので、さっそくジュネーブの私どもの出先を通しまして、訂正方の申し入れをいたした、そのようなところでございます。
  114. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、どこから一体そういう資料が行き、どういう経緯でそういうものが出るようになったかということを、どうぞ徹底的に調べて御報告をお願いしたいと思います。  委員長、お願いします。
  115. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 婦人少年局長、報告できますか。
  116. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 鋭意調べて見まして、結果がわかりましたら報告させていただきます。
  117. 矢山有作

    矢山有作君 きょう、警察庁なり法務省からおいでいただきましたのは、この間、問題として取り上げました光文社の労使間の問題でありますが、その際、私は、警備会社が、五十人からの警備員を、会社側が警備会社に頼んで、五十人からの警備員を入れて、そして暴行傷害事件が起こったということで、取り上げたわけでありますが、警察庁のほうでは、それに対して、おそらくその後調査もなさり、それぞれ注意すべきことは注意し、処理すべきことは処理していただいたろうと思うんでありますけれども、また、実は五月の十三日になりまして、このガードマンによる傷害事件が起こっております。重軽傷を含めて十人、重傷者が三名ほどおるようでありますが、この実態について、おそらくもう報告がきて御承知だと思いますが、どういうふうに承知をしておいでになりますか、お伺いしたいと思います。
  118. 山田英雄

    説明員(山田英雄君) 光文社におきましては、ただいま御質問にございましたように、四月下旬以降、就労要求をいたしまして、立ち入ろうとします労組員と、これをせきとめようとする会社側との間に、会社の入り口で対峙する状態が生まれておるわけでございます。五月十三日にも、そうした対峙状態の間において、もみ合いから負傷者が出ておる、そういうケースがございました。  午前、午後二回でございましたが、私どもで把握しております状況を申し上げますと、午前十一時三十分ごろに、一一〇番で、もみ合いでけが人が出たという通報を受けました。管轄の大塚警察署から、私服警察官を急派いたしまして、事情を確めたわけでございますが、大きなガラス戸が割れまして、会社側の六人の人がその破片で負傷しているという実態がわかったわけでございます。負傷者につきましては、事情聴取して、供述調書も作成いたしましたし、実況見分もいたしまして、捜査を開始しております。ただ、組合の関係者の方の協力が得られないために、事実関係はつまびらかでございませんし、被疑者の特定にも至っておりません。引き続き捜査中でございます。  午後は、一時十分ごろ、同じく一一〇番で、やはりもみ合いでけが人が出ておるということの通報を受けまして、これも現場に急行いたしましたところ、やはり大きなガラス戸が割れて、けが人が出ておったと、それは労組員の三人の方が負傷しておりまして、ついに救急車で病院に収容しておるということでございます。事情を確めようといたしましたが、御協力がいただけない、したがいまして、午後の分についても、事実関係はつまびらかでございませんし、被疑者の特定にも至っておりません。しかし、いずれにしましても、ガラスの破片でけがをするというような傷害事案が起きておるわけでございます。  したがいまして、こうした暴力事案が従来にもございましたし、今後、引き続かないということの保証もございませんので、大塚警察署長としては、当日夕刻、労組の委員長、また、会社側の常務の方を、それぞれ呼び出しまして、やはり平和的な、ルールにのっとった話し合いのうちにその労働争議を解決する、そうした方向で行動するように、厳重に警告し、その自粛を求めておるわけでございます。  警察としましても、やはり四十五年以降、たいへん長期にわたる争議でございますし、その間、いろいろな事案も発生してきております。当事者の自粛と、関係者の方々の適切な御配慮で、平和裏に争議解決がはかられることを期待しておるわけでございます。
  119. 矢山有作

    矢山有作君 私は、こういう事件が起きて、通報があり、現場にお出かけになったときに、一体、この事件がどういう形で、どちら側から起こってきたんだろうかということについて、偏見があったならば、これは公正な解釈は非常にできにくいと思うんです。これは現地を一度、課長にも御視察を願えれば、一番よくわかると思いますが、組合側のほうは、なるほど判決は確定しておらぬけれども、地位保全の訴訟には勝っておるわけですね。したがって、ストライキじゃないんです。いまは就労さしてくれと、そのための団交をやらしてくれと言って要求をしていっているわけですね、そうしてその要求に基づいて社内に入ろうとする、そうすると、いわゆる暴力ガードマンの諸君が前面に出てくる、そして、ただ単に押し出すだけならいいが、押し出すふりをしながら、中へ引きずり込んで、そこでリンチを加える、そこで押し合い、へし合いをやって、ガラスがこわれる。そのこわれたガラスの破片を持ってなぐりつける。そこに今度の問題があるわけなんです。だから、そこらを私はよく含んでおいていただいて、現場にのぞんでの処理をしていただかないと、もし——そんなことはないと思いますが、もし会社側の立場になられて、組合のほうが無理な要求をしてがたがたやるから事件が起こるんだと、こういう認識で処理をされようとしますと、私は問題の処理はむずかしくなる。この点をひとつ御指摘したい。  それからもう一つは、ガードマンの諸君のここに写っている写真を見ましても、(写真提示)——これはガードマンとしてのまじめな職をつとめておる職員の服装じゃないですね。まさにヨタモノです、この服装は。まさにヨタモノの服装です。ガードマンというのは、私の承知しておるところによりますと、少なくともガードマンにふさわしい教育、訓練を受けるということになっているはずです。ところが、教育、訓練を受けてガードマンにふさわしいようなことであるなら、そういうかっこうにはならぬ。この間お見せした写真には社内をはだしで歩いている写真も写っておったはずです、上着をぬいじまってね。そこの写真にはまたはだをくつろげてやっている写真が写っているんです。そういうようなのは私はガードマンじゃないというんです、これは。ガードマンの名をかたる暴力団、チンピラ暴力団、そういう者がそういうガードマンと称して送り込まれておるという実態を、私は警備上の立場からも真剣に考えてもらいたい、こう思うわけです。  それで、しかも彼らがどういう連中かということをもう一つ参考までに申し上げますと、四月の二十七日の午後九時三十分です。池袋駅の改札口で某大学の応援部とこの光文社の警備に行っておるガードマンの諸君がガードマンとしての制服を着たままで大乱闘をやっております。そのために改札口は一時ストップした。そのときに参加しておったその光文社におるガードマンの諸君の名前もわかっております。これは三浦という人だそうですが、これは警備保障会社の社員であり、分隊長だそうです。あと井上、高橋、その他十五、六名の者が制服姿で乱闘に参加しておる。そして、そのとき鉄道公安官がまず出た。鉄道公安官じゃ手がつかない。そほどやっているわけですね。そこでけが人も出たようです。ところが、池袋警察署がかけつけたときには、もう逃げちまっておらなかった。この現状は何かというと、光文社の組合員の諸君が目撃しておるわけです。というのは、この諸君五十人の警備員は光文社へ来ておるんですからみな顔を知っているわけです、名前を知っておるし。そういう諸君、そういうような暴力常習犯と見られるような諸君が警備会社に雇われて、臨時警備員という形で雇われて、そしてその光文社にも雇用されて行っているわけなんですね。こういう状態というのが私は放置されておってはたいへんだと思うんですよ。これはもう大塚署にまかされるというんでなしに、課長が出かけて行かれて、現場をごらんになって、私はむしろ課長が実際を承知していただきたいと思うんですよ。そんな臨時警備員の名前で暴力団まがいの者を警備会社に雇って、それを今度は会社側から雇われて労働争議の場に行かして、そして就労を要求し、団交を要求する諸君に、入ろうとすれば押し合い、へし合いになり、そしてたくさんの負傷者を出すという状態というのは私は許せないと思うんです。これは大塚署長がたまたまその組合の委員長なり、会社側を呼ばれて、こういう事件を起こしちゃいかぬ、平和的に話し合いをしろという警告もなさったそうですが、そうであるとするなら、私は警備員を引き揚げるべきだと思うんですよ、これは。警備員を引き揚げさせるべきだと思う。何か聞くところによりますと、この間の委員会のときにも出たと思いますが、この警備会社が入るときに、大塚署に行って絶対暴力行為はやらぬという誓約書を出したという話も聞いておりますが、たしかそうだったと思いますね。そういうようにしておいて、なおかつこういうような状態であるということになれば、一体大塚の署長さんは何のために警告書と誓約書を取ったんかということになりますし、警察自体が威信を問われることにもなると思うんです。この点は十分ひとつ実情を御認識をいただいて、今後こういう不祥事件が起こることのないように、しかも警備保障会社の名によって、こういう暴力団がのさばるというようなことであっては私はならぬと思うんです。その点について御見解を承りながら、今後の処理についてきちっとした処理をしていただきたい。特に労働争議に介入することは絶対やめてもらいたいということを申し上げたいんであります。
  120. 山田英雄

    説明員(山田英雄君) 御質問の第一点でございますが、私どももちろん偏見を持っていることは毛頭ございません。公平厳正な立場で暴力事案の捜査を推進しておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、組合関係者の方々の御協力が得られないために実態が解明されていないという状況にあるわけでございます。御指摘の池袋駅周辺における事案につきましても、警察といたしましては事実を把握しておりません。したがいまして、そういう暴力事案につきましては、被害を受けたとか、現認された方は警察に告発されるなり、申告されるなりしていただきたいと思うわけでございます。  十三日の暴力事案につきましても、警察が現場に参りましたときには事態は終わっていたということもございますので、事実関係についての捜査を推進中でございますので、ぜひその御協力をお願いいたしたい。そういう組合関係者の方のお話も承った上で事実関係を厳正に把握しまして被疑者の確定につとめてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  また、労働争議背景その他についても、警視庁においても十分関心をもって勉強しておりますし、事態の推移というものについては私どもも大きな関心を払っておるわけでございます。御指摘のとおり、今後ともその点についても私自身も十分に勉強してまいりたいと思っておりますが、公平な立場で捜査をしておるという点については御理解を賜わりたいと思います。
  121. 矢山有作

    矢山有作君 私は課長さんなんかは非常に公平に公正にやろうとつとめられておるし、やっておられると思うのです。しかし、光文社の争議は、あなたもお話になりましたような五年来の経過の中でいろいろな警察との問題もあったんです、具体的にきょう申し上げませんが。そういう中からやはり警察と会社当局と第二組合とがまさに一体になったと、そこに対してさらにずっと二年ほど前の段階で暴力団までまた入ってきたと、こういう見方をされる向きもあって、それでその当時にもいろいろ問題になったんです。これは私のほうからこの場では取り上げませんでしたが、警備局長にお会いして、こういう状態だからこれはきちんと公正な処理をしてもらいたいということを話したこともあります。だから、主観的にはあなたは非常に公正につとめておられると思います。しかし、いままでの背景なり、あるいは現在の状態からして、第一線においては必ずしもそういうふうに全部が全部首肯できない問題もあって、今日いろいろな問題が派生しておると思います。たとえば協力云々の問題につきましてもあると思いますので、この辺は公正厳正にやろうとしておられるあなたの意思がやはり末端に通ずるように、そして労働争議にはその警備会社は介入しないのだという原則が守られるようにひとつ極力努力をしていただきたいと思います。そしてまた、こういう実態は、もう再度申し上げたわけでありますから、法務省のほうもそれぞれ自分の所管のことについてその責任を果されるように要望したいと思いますし、それからまた労働省も、きょうは基準局長だけで労政局長おいでになりませんが、大臣なり官房長がおられるわけでありますから、これはもう答弁を求めようとは思いません。そういう状態をいつまでも放置しておいてよいものではない。警備員を入れて暴力事犯が起こる、そういう中で労使間の正常な状態における話し合いなんというのは不可能なんでありますから、こういう点における労働省としての御指導なり御助言なり、そういうことも十分果たしていただくようにお願いをしておきたいと思います。
  122. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十九分休憩      —————・—————    午後一時五十分開会
  123. 山崎昇

    委員長山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前中に趣旨説明を聴取いたしました雇用保険法案雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案、以上、三案を再び一括議題とし、質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  124. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、雇用保険法案提案理由についてお伺いしたいと思うのであります。  まず、労働省が今回提案した雇用保険法案失業保険の給付のみならず、法案に盛られた雇用促進能力開発、あるいは労働者福祉といった、いわゆる三事業についても重大な問題点を抱えており、全く無視できない法律案であります。そこで、私は女性問題を主としてお伺いしたいのでございますが、まず最初に、雇用失業情勢の現状及び失業保険の受給者の状況はどういう状態でございますか。
  125. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 藤原先生から御指摘のございました現行失業保険法を、今回の雇用保険法に改める、その理由について御指摘ございましたが、現行失業保険法は昭和二十二年に制定されまして、四半世紀を経て今日に至っております。この失業保険法は昭和二十二年当時、敗戦後の混乱した、失業者がちまたにあふれているような状態の中で制定されまして、この失業者の対策としての柱として、非常に大きな役割りを果たしてまいりました。その後十数年を経まして、最近におきましては労働力不足が非常に逼迫してまいりました。特に若年労働者中心として、需給状況が非常に好転をしてまいっております。量的にはいわゆる完全雇用に近い状態だといわれるようになってまいりまして、失業保険の機能そのものもこの現状と非常にマッチしなくなった面が多くなってまいりました。そこで、今回この失業保険法の持っております失業保障の機能を、今後の雇用情勢に対応して、より充実強化をいたしますと同時に、従来からいろいろと御指摘のありました失業保険制度の中で付帯的に行なわれてまいりました、いわゆる福祉施設、保健施設的なものを、あらためて明確な制度としてワクづけをしようということで、失業保障の機能の充実とあわせて、付帯的に、積極的により失業を事前に予防するような措置制度的に取り入れよう、これが雇用改善事業であり、能力開発事業であり、また労働者福祉のための諸事業、こういうことでございまして、従来の保健施設で行なわれておりました福祉施設をこういう形で制度化して、従来、当委員会におきましていろいろと御批判のありました点を十分取り入れまして、制度化をいたしたわけでございます。  そこで最近の失業情勢という御指摘でございますが、ただいま申し上げましたように、労働力需給としては一般的に逼迫しておりまして、求人と求職の状況は、昨年の十一月で二・一倍、昭和二十二年、この法律施行されまして以来、最高の数字を示すに至っております。ただ問題は、その中で、全体としては求人状況が非常に好転しておりまして、就職率も高くなっておりますけれども、年齢別あるいは地域別に見ますと、必ずしもそこに問題がないわけではございません。いろいろと相当なアンバランスがございまして、若年労働者は非常に金の卵といわれますように、各職種、各地域を通じて求人倍率も高くなっております。しかしながら、その反面、中高年齢者、四十五歳以上、なかんずく五十五歳以上の年齢層になりますと、一般的な労働力の逼迫の中で、なお依然としてきわめて就職は容易ではない状態が続いております。しかもこれから年齢がますます高齢化をしてまいりますと、昭和五十五年には、全労働人口の三分の一近くが中高年齢層になるであろう、こういう予想さえ行なわれておりまして、こういうことに対する今後の対策というものがこれからの一番大きな問題になろうと、かように考えられるわけでございます。また同時に、地域的に見ましても、いわゆる大都市中心労働力の需要の強い地域と、いわゆる過疎地域といわれておりますようなところとではかなり大きな差がございます。こういった面に対する政策的な配慮も当然行なわれなければならない、こういった点を十分いろいろ加味いたしまして、この失業保障機能の充実強化という考え方をこの制度の中に取り入れることにいたしたわけでございます。  で、次に失業保険の受給者の状況につきましては数字をあげてこまかく御説明申し上げたいと思います。
  126. 関英夫

    説明員(関英夫君) 最近の失業保険の受給状況を申し上げますと、受給実人員、受給をしている人の実人員でございます。これは月別に、季節的に非常に変動がございますので、まず実数を申し上げ、前年同月との比率を申し上げたいと思いますが、ことしに入りまして、一月で六十四万四千、それから二月が六十九万八千、三月が七十五万三千というような数字を示しております。非常にふえているように見えますが、これは季節的な変動でございまして、前年と比べますと、一月が前年の受給実人員との比較では九五・一%、二月が九七・四%、三月が九七・五%こんな数字になっております。
  127. 藤原道子

    ○藤原道子君 そので、雇用保険制度の実施した場合における保険財政の収支の見通しはどうですか。
  128. 関英夫

    説明員(関英夫君) 五十年度の雇用保険になりました場合の収支につきましては、失業率がどういうふうに変化するか、失業率が五十年度はどういうふうに推移するか、それからあるいは賃金額がどの程度上がっていくかとか、いろいろの不安定要素がございまして、現時点で正確な推計は非常に困難でございます。いろいろな条件を過去の平均ぐらいで延ばして一応の推計をしてみる以外に現時点では手はないわけでございますが、一応の推計をいたしますと、規模の総合計で六千六百七十一億、失業給付の合計が四千六百四十五億、それから三つの付帯的な事業が千二百四十九億というような、残りが予備費というようなことで一応の予想をいたしておりますが、正確にはもう少し今後の景気の動向、そういうものを見守りまして来年度の予算をきめていく、こういうことになると思います。
  129. 藤原道子

    ○藤原道子君 いまどのくらい残っていますか、保険料
  130. 関英夫

    説明員(関英夫君) 現在の失業保険の保険料の率は賃金の総額の千分の十三ということになっております。先生の御質問がおそらく積み立て金の、失業保険で非常に失業情勢が悪化した場合に備えまして積み立て金をいたしておる積み立て金の総額の御質問かと思いますので、あわせてその辺をお答えさしていただきたいと思いますが、約四千二百億の積み立て金がございます。
  131. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、社会保障制度審議会答申も、「これら保険事故でもないものを含めて、ことさらに「雇用保険」と称することは、社会保険の概念を拡張しすぎるものであり、それぞれの事業の責任の所在を不明確にする。」と述べております。さらに、「また、これら三事業の中には、その事業の性格上国が自ら行うべきものもあり、事業主的立場から国、地方公共団体等の負担を加えることが適当なものも含まれている。」と指摘しておりますが、政府の基本的な考え方をまずお伺いしたい。
  132. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 社会保障制度審議会におきまして「能力開発事業雇用改善事業あるいは労働者福祉事業、こういったものを一つの保険法体系の中に包含することについてはきわめて問題であると、こういう御意見がございました。藤原先生のいまお述べになりましたとおりでございます。私どもは、従来、現行失業保険制度におきまして保険施設、福祉施設という形でいろいろな労働者福祉のための事業を行なっております。この点につきまして、衆参両院の社会労働委員会におきましてたびたび御指摘を受け、御意見を承ってまいったわけでございます。いわゆる労使の拠出した保険料でこういった福祉施設を安易に行なうことについてはきわめて問題がある、この点を制度的に明確にする必要があるという御指摘を受けてまいったわけでございます。こういったいわゆる本来の保険事故に対する付帯事業としていろいろな各種の事業を行ないますことは、これは各社会保険においても従来ある一定のワクで認められておるわけでございますが、その点についての御指摘もございますことですし、また先ほど申し上げましたように、本来の失業保障の機能を充実いたしますと同時に、これを失業という事故を積極的に予防するための付帯的な事業という形で整理をいたしますと同時に、その必要な経費を従来のような労使負担する保険料でなくて、いわば使用者の、企業の社会的な責任、使用者の連帯責任においてこれを実施するという形で取りまとめたわけでございます。そういう意味におきまして、この雇用政策として行なうべき雇用改善事業あるいは能力開発事業、こういったものが国の責任において行なわれるべきである。確かにこういった事業の中で国が一般会計で実施すべきものと、いま申し上げました使用者の社会的責任という観点から使用者負担において行なうべきものと、この二通りに類別できるではなかろうかと私ども考えております。その後者の使用者の責任において実施すべきものをこの新しい雇用保険法体系の中で本来の保険事故に対する付帯的事業として制度に組み入れたわけでございます。このことは、従来当委員会において御指摘を受けてまいりましたことに対するそのお答えとして私どもとしてはこの制度の適正化をはかったつもりでございまして、国の一般会計で何でもやれという審議会等での御指摘もございましたけれども、国の責任、国の一般会計の支弁ということになりますと、先生御承知のように、一般会計はその大きな部分勤労者の所得税でまかなわれるわけでございます。ということは、逆に労働者負担において実施すべきであるということにも通ずるわけでございます。私どもは、むしろ国の一般会計でやるものと使用者の責任において実施すべきものとを明確に区別して、その使用者の責任において実施すべきものをこの雇用保険体系の中に組み入れることにいたしたと、かようなわけでございます。
  133. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこで私は、この法案にかかわる女子労働者に限定して政府の考え方を明確にさせていきたいと思うんです。  まず、この法案が提出された理由をいまお伺いしたわけでございますけれども、雇用保険法提案理由を一口で表現するならば、最近の雇用情勢変化に対処するために現行失業保険法がかかえている問題点を改正するということにあり、雇用促進が前面に出ていることがはっきりしております。  そこで、現行失業保険法についてあなた方はどのような問題点があると考えているのか、その点を明確にして具体的に説明してもらいたいと思います。
  134. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 現行保険法では、大臣の提案理由説明にもございましたように、確かに過去におきまして失業対策の柱として大きな役目を果たしてまいりましたけれども、ここ数年来次第に労働力需給が逼迫してまいっております。非常な改善が行なわれてまいりました。その中でも、先ほど私からお答え申し上げましたように、年齢別に見ましても、あるいは地域的に見ましても、その他の社会的要因によっていろいろと就職もきわめて困難な人たちが依然として今後も引き続いてそういう階層が残っていくであろう、こういうことが考えられるわけでございます。そういう事態に対しまして、現行失業保険法におきましてはほんとうに就職がむずかしい人たちに対して必ずしもそれに必要な適切な給付が行なわれ得ない、逆にきわめて就職の容易な階層に対して必要以上な給付が行なわれ得るような制度になってきております。で、そういった点をもっと適切に、具体的な実態に適した制度に改める必要がある、そうしてほんとうに必要な人たちにできるだけ手厚くきめこまかな対策を考えなければならぬ。その一つの例が中高年齢者であり、あるいは身体障害者とか、その他社会的な事情就職に困難な人たちに対して現行法以上に手厚くする必要がある。同時に、また地域的に見ますと、全国的な失業率が非常に高くなったというような状態のときは、これはもちろんでございますけれども、そうでなくても、地域的に見ますと東京、大阪とか、そういった既成工業地帯でなくて、たとえば石炭合理化によって産炭地域なんかが非常に失業者が滞留している、そういう失業率が高い地域についてはより給付を厚くするというふうなことも十分措置する必要がある、こういった点に配慮しながら現行失業保険法体系をできるだけそういう方向に沿って改善することにいたしたわけでございます。
  135. 藤原道子

    ○藤原道子君 あなた方から見た問題点は逆に労働者から見れば貴重な権利につながる問題である。たとえば出かせぎ農民に対する給付日数の削減、保険料引き上げ、若年女子労働者を含む若年労働者がこの給付日数の制限による失業保険からの締め出し、さらには生活保障として重要な役割りを果たしてきた就職支度金、扶養手当の廃止があげられます。しかし、このような労働者への給付面での引き締めとは逆に、事業主へは若干の保険料引き上げと引きかえに交付金の拡大——雇用促進能力開発福祉事業——によって、全く労働行政が企業優先の癒着行政としか考えられない構想を導入しております。  そこで、失業保険制度本来の趣旨をねじ曲げるこうした一般労働政策の施策を失業保険制度の中に混合させる合理的な理由がどこにあるのか、納得のいく説明をお願いしたいと思います。
  136. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先生、敗戦直後の国会にずっとお出ましいただいて、あの当時のことを思いますと、産業基盤はほとんど壊滅され、そして失業者はちまたに満ちておりました。そのときにこの失業保険制度ができまして役割りを果たしてきました今日、いま局長からも説明がありましたように、失業率は石油危機といわれながらも一・四%、求人は何と中学校、高等学校卒業生なら二十人の申し込みがあるわけです、一人に対して。そこが金の卵といわれ、そしていまでも求人倍率は一律に一人に対して二人の求人がある、こういうときでございますから、しかもそこまでの失業率、求人倍率のときでありますから、いまから先はいろんなところで産業が伸びもし、あるいは機械が非常に進歩しますから、これにやっぱりずっと労働者能力開発して、それに対応することが、収入がよくなり、生活がよくなることであります。そういうふうな変化に備えることが一つと、もう一つは、御承知のとおり中高年齢層という社会に日本も入っていきます。この方々がやはり就職できるように開発をしていくということが大事じゃなかろうか。そういうことからしますというと、これは私たちはいまの時代に沿うて労働者諸君が伸びられるような姿に持っていこうということでありまして、三事業の金というものは事業主から全部拠出してもらう、雇用福祉あるいは能力開発、そういうものがですね。そういうふうな観点から事業主のみの負担で行なわれる。先生、一つ一つあとでまた局長から御説明させますけれども、出かせぎの問題にし、あるいは若年、女の問題にいたしましても、締め出しをするとか、いじめるとかいうふうなことはいたさないようにしておりまして、具体的なことは局長からも御説明させますけれども、どうぞ、そういう意味合いにおきまして、新しい時代に即応したものをこういう国会で御議論いただき、審議会なり、学者なりから長い間御研究いただいたものを集大成して御提案申し上げて、御審議をいただいているということを御理解いただきたいと思います。
  137. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいま藤原先生の御指摘の中で、特に出かせぎ労働者の問題それから女子、若年者の受給について御指摘がございましたが、確かに、今回の雇用保険法におきまして現行失業保険法と大きく変わっております点は、この出かせぎの問題と若年の問題かと思います。  まず第一点の出かせぎ労働者の問題につきましては、従来から、先生御承知の五年前の四十四年の法律改正におきましても、この点が非常に大きな問題としてお取り上げいただいたわけでございます。今回の改正の考え方は、端的に申し上げますと、従来の失業保険法改正におきましてこの問題を取り上げます際の考え方は、確かに出かせぎ受給者のように一年間一定の期間出かせぎに出て働く。それから出かせぎを終わって帰りますと、積雪寒冷地帯のような場合は不就業、働かない。その働かない不就業の事態に対して失業保険金を支給し、これによってささえていく。こういう定められた就業と不就業を繰り返して、その不就業に対して保険給付が行なわれる。こういうあり方に対しましていろいろと御批判や御意見があったわけでございます。この予定された不就業に対する失業保険の支給の実績は、先生御承知のように、実は失業保険給付全体の約三分の一をこえるような状態になっております。で、出かせぎの受給者の方々の数は全体の三%でございます。で、三%の人が全体の給付の三分の一以上を占めておる。こういう事態に対しまして、本来失業保険という制度の中で予定されていない、あるいはこの制度本来の趣旨からいって当然別個に扱われるべきこの出かせぎの問題を、一体どうしたらいいのかということがしばしば問題になったわけでございます。  四十四年の改正におきましては、こういった出かせぎの受給というものをどういうふうに規制をしたらいいかという考え方からいろいろと御意見がかわされたと私どもは記憶いたしております。今回の改正におきましては、こういった出かせぎ受給者につきまして、そういう考え方から一転いたしまして、この出かせぎ労働問題を根本的に考えます場合に、日本の農村の実態、この出かせぎに出られる方々の実情から考えますと、私どもは出かせぎ労働という労働形態が決して好ましいものだとは考えておりません。しかしながら、実情から言いますと、この出かせぎに出る人にとっても出かせぎという労働形態をとらざるを得ない。今後ともやはりこういう状態が続くであろう。同時に日本経済全体からいたしましても、この出かせぎ労働形態というものが、いまの時点においてはやはり必要欠くべからざる労働力として要請をされている。こういう実態からいたしますと、従来のような出かせぎという形で保険の受給が行なわれている、この問題を何らかの形で規制するという考え方ではもうとうてい今後対処できないんではないか。こういうふうに考え方を変えまして、この出かせぎ労働者の保険受給という実態実態として踏まえた上で、この出かせぎ受給者の実態に即して、これを新しい雇用保険体系の中でその実態をそのまま組み入れていこう、制度的に定着さしていこう、こういう考え方でこの出かせぎ問題の解決に当たろうとしたわけでございます。  そこで、この出かせぎの受給者の方々は、先ほど申し上げましたように、予定された就業と不就業を繰り返して、その不就業に対して失業者である、同時に求職の申し込みをして就職をする必要がある、こういう現行失業保険法の考え方にいわゆる擬制いたしまして、その擬制によって保険金が支給される、こういう考え方でございますが、出かせぎの実態がそうでない以上は、その実態に即した形でこれを保険制度の中に組み込む。そのためには、働けば保険金がもらえないし、働かなければもらえると、こういうことでは本来の保険制度の中に組み込むことば非常にむずかしいわけでございます。そこで、その予定された不就業に対して、保険制度一つ特例として、出かせぎから帰った人にはその不就業の期間に対して一時金が支給されると、こういう形に改めてしまったわけでございます。それが今回の雇用保険の出かせぎ者に対する特例一時金の制度でございます。こうすることによって、いままでの出かせぎ受給者に対するいろいろな御批判に今後はもうピリオドを打ちたい、そうしてこの出かせぎ受給という問題を保険法体系の中にはっきり定着をさせることにいたしたい、こういう趣旨で改正を行なったわけでございます。  それから第二点の、若年労働者の問題でございますが、これは先ほど雇用失業情勢の数字で御説明申し上げましたように、三十歳以下につきましては、この求人倍率はきわめて高い率を示しております。各職種を通じてこの三十歳以下の若年の方々につきましてはきわめて就職率も高いし、これは地域的に見ましても同じようなことが言えるわけでございます。こういう人たちの従来の失業保険の受給実績を見ましても、平均が六十日から六十三日程度になっております。男子の場合は四十五日、女子の場合は七十日、平均いたしますと六十三日、こういうことになっておりまして、こういうきわめて離転職の容易でありかつ各職種を通じて再就職の容易な方々について、必要にしてかつ十分な給付を確保するためには、私どもの原案の六十日程度でよろしいのではないか、こういう考え方によりまして改正案を御提案申し上げたわけでございますが、衆議院におきましていろいろな見地から御検討いただきました結果、現行どおり最低を九十日に改めるべきである、こういう御指摘によりまして修正が行なわれたわけでございまして、私どもはこの修正によりまして、なおさらこういった若年労働者失業中の給付については万全を期し得ることになったと、かように考えておる次第でございます。
  138. 藤原道子

    ○藤原道子君 平均すれば六十日というけれども、いまおっしゃったように女子の場合と男子の場合は違うのですね。それと同時に職業は、就職できるというけれども、本人の希望する職業につきたいわけですね。ところがなかなかそれがむずかしいというところに問題があるので、私はこのやり方に対しては賛成するわけにはいかないわけなんです。  それで、私は、これまで二十七年近くも国会議員としての仕事をして法案審議に参加してきましたけれども、今回の雇用保険法案のような悪法が提案されたことは社会保障関係法案の中では全くめずらしいとしか私は思えない。言うまでもなく、現行失業保険法の第一条には、「失業保険は、被保険者失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ることを目的とする。」と書いてあって、わが国の社会保障制度の有力な一翼をになっていることは多言を要しないことは言うまでもありません。しかし、これを雇用保険法案の中では、失業保険法を廃止して、失業保険給付事業と並列して、雇用促進能力開発労働者福祉といった本来異質な事業を混同して行なうようにしております。この合理的な根拠がどこにあるのか、再度納得のいくような説明をしてもらいたいと思います。
  139. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 現行失業保険法の第一条でこの法律目的が掲げてございまして、ただいま藤原先生お読みになりましたとおりでございます。失業した人に対して失業の期間中、失業保険金を支給して、その生活の安定をはかると、こういうことでございます。このことは、新しい雇用保険法におきましても全くその目的趣旨は変わっておりません。雇用保険法の第一条におきましても、「労働者失業した場合に必要な給付を行うことにより、労働者生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職促進し、」と、こうなっております。生活の安定をはかるということは、職業の安定、就職をしてもらって、安定した職業につくことによって生活の安定がはかられる、これが私は前提だと思っております。この点は、現行失業保険法におきましても、失業保険金を支給しながら、なるべく早く就職をしてもらうように安定所が就職のあっせん、お世話をする、したがいまして、前提としては、失業保険金の支給を受けるためには、安定所に求職の申し込みをして、その就職あっせんによって就職をされるまでの間保険金が支給される、こういうたてまえになっておりまして、その点は現行法も雇用保険法も全く変わっておりません。  そこで、問題の三事業につきましては、先ほど大臣から御説明ございましたように、これは全く使用者の責任において、使用者の経費全額負担において、付帯的にこういった雇用改善なり、能力開発なり、雇用促進事業を行なうことによって、失業を未然に、できるだけ予防するという措置を講じておるわけでございまして、これが失業という保険事故そのものを阻害するというようなわけでは決してございません。その意味におきましても、現行失業保険と、雇用保険失業に対する保障機能が阻害されるようなことは万あり得ない、私どもはかように考えているわけでございます。
  140. 藤原道子

    ○藤原道子君 時間の関係もあるからよけいなことは言えないのですが、わが国の独占企業の集団である日経連が昭和四十五年九月十七日に政府に対して、「労働力不足対策に関する政府への要望」というのを出しているはずであります。これについて、その内容について説明してもらいたい。  さらに、この要望について労働省はどのように検討し、労働政策として実行しようとし、またしているか、この点についても明確にしてもらいたいと思います。
  141. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 実は、この雇用保険法案審議にあたりまして、衆議院社会労働委員会におきまして、ただいま藤原先生御指摘の昭和四十五年九月の日経連の要望書について御指摘ございました。で、御指摘ございますまで、私は、実はこういった日経連から要望書が出ておることも全く承知いたしておりませんでした。どういう内容のものが出されたのか、その後その御指摘を受けまして、実は取り寄せてみた次第でございます。いま手元に持ってまいりましたけれども、日経連からは、「労働力不足対策に関する政府への要望」ということで、たくさんの項目が掲げられておりまして、第一が労働力の円滑な流動性の維持。第二に、失業保険制度の改革。——その中で、一、季節的労働者の別ワク扱い、二は、女子不正受給の防止、三、失業保険制度のあり方の再検討。それから第三が労働力の適正配置の促進。第四が工場の地方進出の促進。第五が中高年齢者、心身障害者の活用促進。第六が公共職業訓練施設の充実と再配置。第七、女子のための訓練施設、託児所等の拡充。第八、高校教育のあり方、再検討。第九、外国人研修生の受け入れ体制。こういう九つの項目につきまして政府に対する要望が出ているようでございます。実は、先ほど申し上げましたように、私はこの要望というものを承知いたしておりませんで、この要望に沿ってこれを具体化するために今回の雇用保険法をつくったのではないかという御指摘がございましたけれども、私、この雇用保険法の立案にあたりまして、この要望書の存在すら感知いたしておりませんでした。御指摘を受けて初めてその内容を見たような次第でございます。私どもはこの日経連の要望を具体化するために法案をつくったというようなものでは決してございませんことを御理解いただきたいと思います。
  142. 藤原道子

    ○藤原道子君 要望書が出たのに、あなたが知らなかった、見なかったというのはおかしいですね。だれが受け取ったのですか。だから、われわれから見ると、この今回の雇用保険法案とは、この要望書と有機的に関連があると思うのです。それをあなたは答弁がしにくいものだから、知らなかったなんていうのは私納得できない。この要望書によると、「失業保険制度を抜本的に改正し、出かせぎ労働者などの季節的労働者はこれを別枠に扱い、また就職の意思のない女子結婚退職による不正受給等を防止するなど、失業保険制度の健全化に抜本的措置を講ぜられたい。とくに完全雇用下の失業の概念が著しく変化していることにかんがみ、失業保険制度がともすれば惰民を養成し、労働力活用を阻害する弊を伴うことも考えられるので、失業の認定の厳正化、運営の正常化はもとより失業保険制度そのもののあり方についても再検討を加えられたい。」としているのですね。それを知らなかったなんておっしゃらないで、ほんとうの答弁をしてください。この報告内容の底を流れる考え方は、全く今回の雇用保険法案と一致しているんですよ。したがって、日経連の政府への要望、これを受けた労働者が大臣の私的諮問機関である失業保険制度研究会の実質的な法案作成作業法案の国会提出といった一連のロジックが成り立ったと思うのだが、一体どうなんですか。
  143. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 四十五年の九月の日経連の要望書を知らなかったというのはうそだという御指摘でございますけれども、私はここでその御指摘に対しましてうそを申し上げるつもりは全くございません。四十五年当時は私はどこにおりましたがか、実は昨年の八月に現職に参りまして、今回のこの法案の立案に当たりました事務当局は、関係者全員が四十五年当時この職にございませんで、もちろん、労働大臣、事務次官もその当時とはかわっておりまして、こうういう要望書があったことすら実は私、当然承知しておるべきかもわかりませんけれども、全く承知いたしておりませんでした。衆議院社会労働委員会において御指摘を受けまして、初めてそういうものがあることをさがさして承知いたしたわけでございます。きょうは先生から御指摘があるということで、現物も持ってまいりましたけれども、その内容は、実はつい先般まで私は全く承知いたしておりませんでしたことをあらためて申し上げさしていただきたいと思います。  そこで、この雇用保険法案の立案にあたりましては、私が現職に就任いたします前の昨年の五月九日に、有沢先生を会長とする失業保険制度研究会が設けられまして、そこで、失業保険法全般についての検討会が行なわれたわけでございます。私は八月の冒頭からこの仕事を引き継ぎまして、昨年の暮れに報告をちょうだいいたしまして、それをもとにしてこの法案の立案に当たった次第でございます。全く日経連の要望とは無関係であることを重ねて申し上げたいと思うわけでございます。
  144. 藤原道子

    ○藤原道子君 じゃ、一体要望書というものはだれが読むのよ、出ていることは事実でしょうが。出た要望書はだれが読むのですか。
  145. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) おそらく当時の担当者がこの要望書を受け取っておったのだろうと思います。
  146. 藤原道子

    ○藤原道子君 だれですか。——だれですか。
  147. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) いま明確ではございませんけれども、たしか四十五年当時は職業安定局長は住榮作氏であったのではないかと思います。
  148. 田中寿美子

    田中寿美子君 関連。安定局長はどこにいらっしゃったのですか。
  149. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私はその当時総務課長から失業対策部長にかわった直後であるか、総務課長当時であったと思います。
  150. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は労働省に申し上げたいのです、伺いたいのですが、労働省設置法の中に第三条で、「労働省は、労働者福祉職業の確保とを図り、もつて経済の興隆と国民生活の安定とに寄与するために、左に掲げる国の行政事務及び事業を一体的に遂行する責任を負う行政機関とする。」と、こうなっているんですね。労働者の立場から、これを守るために労働省はできているはずなんですね。また、「婦人の地位の向上その他婦人問題の調査及び連絡調整」、「職業の紹介、指導その他労務需給の調整」、「失業保険事業」、こういうことが労働省の使命だと、これには規定してある。しかもそれに出た企業からの要望書ですか、それに似たものがこれにできているから私たちは納得ができない。ところが、その要望書を読んでないと言うから、よけい私は納得ができない。大臣、いいんですか、要望書はそんなふうに無視することになっているんですか。
  151. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) いろんな方々からいろんな要望書は役所のほうに出てくることは当然であり、またそれを私たちも受け取りながら話を聞いたりいたします。しかし、いま局長が御答弁申し上げたとおり、この問題について四十五年に、九月十七日に日経連からこうした要望書が出たという話は、私も実は衆議院で野党の皆さん方の御質問の中で初めて知ったわけであります。しかし、いろんな方々から要望書が出ましても、そのとおりやるのは労働者の立場じゃありませんで、先生がいま読み上げましたとおり、日本の今日の発展はいろんなこともありますけれども、勤労者に一生懸命働いていただく、また、それを労働省法律等々でお守りしながらやってもらっている、こういう中で私は日本の発展があると、こう思っております。そういうことでして、まさにどんな要望書が出たからといって、それ全体に何もかにも左右されるものじゃないということだけはひとつ御理解いただきたいと思っているわけであります。
  152. 藤原道子

    ○藤原道子君 要望書全体をやれと言っているんじゃないのよ。要望書が方々から出ますね、その要望書は一応読むことは必要じゃないですか。しかも今度の法案を見ると、日経連から出した要望書を基本にしたような改正だとわれわれはとるんですよ。ところが、それを聞いたら、知らなかった、読まなかった、大臣も知らなかった、そんなことを一々聞いていたら時間がなくなるけれども、ひどいですよ、そんなこと。ほんとうに知らなかったということですね。私はあらためてまた何かの機会に質問いたしますけれども、時間を限られているものだからね。
  153. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいまの問題は、私、全く承知いたしておりませんでしたことをあらためて、繰り返して釈明さしていただきます。と同時に、外部から各種の団体、関係の方々からいろいろな意見や要望が提出された、それをそういうふうに無責任に処理するのかというおしかりのようでございますが、私、過去二十数年職責にありまして、いろいろな方から御要望や御意見やあるいは陳情を承っておりますが、その問題につきまして、もちろん私どもの力で及ばざる点もございますけれども、最大限に努力をいたしまして、それなりに処理をいたしてきておるつもりでございます。無責任に聞きっぱなしというようなことをするつもりは毛頭ございませんし、今後ともそういう点は十分注意してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  154. 田中寿美子

    田中寿美子君 関連。さっき職業安定局長の御説明の中に、昭和四十四年のときの改正の考え方と変わって、今度は出かせぎ者にいままで失業保険を与えていたのを追認するような形で位置づけたのだという説明があった。つまり四十四年のときと違った方向が出されているわけですね。日経連から出ているのは四十五年なんですね。それで労働省職業安定当局というのは、そのころからもうすでにそういう方針を考えてこの法案をつくり出していらっしゃるわけですからね。ですから、あなたが職業安定局長になったのは昨年の何月かわかりませんが、前任者から、あるいは職業安定行政全体に対しての方針というのは受け継いでいるはずだし、ですから、たまたま日経連の要望書に目は通していなかったかもしれないけれども、労働省職業安定行政がこの方向に向かってきていたということについては、お調べになればわかるのじゃないですか。職業安定局全体がそういう方向にきている、安定行政全体が。それも何にも知らないできておられるということは、ちょっと認められない。
  155. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 実はただいま申し上げましたように、日経連の要望書について御指摘ございましたので、そういうものがいつの時点で、どういう内容のものがあったか調べさせた結果、私、いま手元に持ってまいったわけでございます。今回の雇用保険法案の立案当初からこの問題について全く私、承知いたしていなかったことは、まぎれもない事実でございます。ただ、四十四年の改正当時の考え方と今回の雇用保険法における出かせぎに対する考え方が根本的に違っておると、先ほど申し上げたとおりでございますが、したがって、四十四年当時からそういう考え方があったのじゃないかという御指摘でございますが、それは全くそうではございません。
  156. 田中寿美子

    田中寿美子君 そう言っていません。四十四年以後変わってきた……
  157. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ではございませんで、実は四十四年当時、私はたしか総務課長で国会に詰めておった次第でございます。その当時、四十四年の失業保険法改正について、総務課長として、この法律の取り扱いについて私もタッチいたしておりましたので、その関係で、当時の、四十四年の改正の内容、その当時の国会における委員会で御修正になりました考え方等をつぶさに承知いたしておったわけでございます。で、今回の雇用保険につきましては、昨年の八月に私が引き継ぎましたときに、どういう考え方で、あるいはどういう方向でこの問題を解決するか、対処するか、そういった考え方は全く引き継いでおりませんで、実は先ほど申し上げました失業保険制度研究会で、白紙で検討が開始されました。その検討結果に基づいて立案をいたしたわけでございまして、従来からどういう考え方でやるかといったような考え方はないままに研究会に研究をお願いをいたしたわけでございます。したがいまして、四十四年の改正以後、この問題についてのいろいろな考え方が整理されて、それが引き継がれて今回の法案になったというわけではないことを申し上げたいと思います。
  158. 藤原道子

    ○藤原道子君 どうも答弁が、きょうは納得がいかない。いま、失業保険制度研究会の話が出ましたが、その研究会の報告書を読むと、女子労働者をはじめ、出かせぎ農民、若年労働者失業保険金を受給することを単に非難するだけでなく、罪悪視しているように思えてならない。さらに中央職業安定審議会の某私立大学の教授は、女子の結婚退職に関連して、この雇用保険法案に賛成しないのは反国民的だと大いに暴言を吐いているという報告もございます。  そこで、尋ねますが、確かに失業保険目当ての退職仕度金目当てで退職する女子労働者が絶対にいないとは申しません。若干いるかもわからない。だが、すべての女子労働者、全部がそうではないことをはっきり知ってほしい。こうした発言が許されるということは、女子労働者に対する侮辱であり、合理的な根拠をもって反対するわれわれをも侮辱したものと受け取らざるを得ないのです。労働省はこれについて、どのような見解を持っているのか。  さらに、研究会なり中央職業安定審議会の中立委員である学識経験者の選定基準はどうなっているのか説明してほしい。
  159. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 職業安定審議会におきまして、ただいま藤原先生が御指摘になりましたような発言があったことは事実でございます。この問題につきまして、審議会におきましていろいろと御議論が行なわれました。審議会の会長から、その結果について、労使関係各委員に御了解求められまして、その発言が適当でなかったということについて御処置をいただいたように承知いたしております。私どもはいま御指摘になりました女子結婚退職者の場合が一部にそういう不正受給といわれるような事実もあることも承知いたしております。だからといって私どもはそれが、全体がそうであるというようなことを考えては毛頭おりませんし、そういうことによって今回の法案の取り扱いを処理しようとしているわけでは決してございません。私どもは、先ほども申し上げておりますように、今後の失業情勢を十分検討いたしまして、その今後の雇用失業情勢に十分対応できるような失業保障機能をいかに設定したらいいかという観点からこの問題に対処してまいったわけでございまして、したがいまして、三十歳未満の若年労働者給付日数の問題につきましていろいろ御指摘がございましたが、私どもはその御意見を十分に尊重しながら、できるだけよりよい制度をつくるために努力をいたしてまいったわけでございます。  それから、審議会学識経験者委員の選定にあたりましては、法律規定で、全体の七名の公益委員の中で女子の委員が一名という法律規定になっておりまして、労働大臣がこの学識経験者委員を選考し、任命されることになっております。この学識経験者の選定にあたりましては、私ども実事上の扱いといたしまして、労使各側の御意見も求めながら学識経験者の選定に当たっているわけでございます。
  160. 藤原道子

    ○藤原道子君 どうも、審議会よりもあなた方は研究会のほうを重視しているということをいろいろ批判する面もございます。  そこで、今日までわが国の高度経済成長をささえてきたものに女子の労働力があり、逆にこれを度外視しては高度成長は不可能だったと言っても過言ではないと私は思います。そこで、現在の女子労働者の数、そのうち失業保険に加入している労働者の割合、さらにこの法案によって五人未満事業所への適用拡大——五十年一月末ですか、——された場合の女子労働者の加入増加の見込みはどの程度になってますか。
  161. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 女子の雇用者の数につきましては、これは御案内のように、年々増加の傾向が続いております。近年やや増加の率が鈍化する傾向はございますが、しかし長期的に見ますと増大が続いております。現在は約千二百万の女子が全国的にいろいろな職場で働いている状態でございます。
  162. 関英夫

    説明員(関英夫君) 四十七年の失業保険の統計で申し上げますと、被保険者総数二千二百三十七万中、女子が七百三十一万で、全体の被保険者に占める比率が三三%ということになっております。
  163. 藤原道子

    ○藤原道子君 女子労働者の場合、三十歳未満で離職する者が多いことは事実でありますが、その際に現行失業保険法からこの法案に流れている女子の扱い方についてであります。失業保険における失業の認定、失業保険の給付にあたって結婚、妊娠、出産、育児を理由とした女子の離職者が労働の権利を実質的に阻害されたケースが多くあります。私は、これらによる離職は社会的に強制された失職と見るが、どうでございましょうか。
  164. 関英夫

    説明員(関英夫君) 女子の離職した人の失業の認定の問題が前段だと思いますが、失業の認定の問題につきましては、現行失業保険法と雇用保険法案では全く考え方を同一にいたしておりまして変える考え方はございません。女子が結婚、妊娠、出産、育児、そういったために退職される場合には、育児とかあるいは出産等のために退職されるということであれば、その時点では失業保険法の上でいきますと、労働の意思、能力がないものというふうに考えられますが、またその時期を過ぎまして就職し得る状態、そういうことになれば、その状態になったときにまた労働の意思、能力が回復してくると、こういうふうなことになると思いますが、その辺の失業の認定の取り扱いにつきましては現行法と新しい雇用保険法案において全く考え方は同じでございます。  それからなお、後段で女子の離職に非常に社会的な要因に基づくものが多いのではないかという御指摘でございますが、確かに現在の企業内におきますいろいろな福祉施設その他が必ずしも十分でないことから、本来ならば継続して働きたいけれども退職せざるを得ないといった場合もあろうかと思います。
  165. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこで、現在の失業保険法では、受給資格者の認定にあたって結婚、出産、妊娠、育児、老人病者の看護その他の家事のために退職した女子労働者は、離職の事由そのものから一応労働の意思を失ったものと推定されて処理されている。しかし、その中には、労働の意思を持ちながら職場の事情から、家庭の事情でやむを得ず離職せざるを得ない状態に追い込まれた者も現実には数多くいるのでございます。そのことについてあなた方はどの程度理解をしておりますか。
  166. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 先生おっしゃるとおりでございまして、現に現在の失業保険法におきまして保険金の支給を受けておられる若い女子の中には、結婚することによって退職をして保険金の支給を受けておられる方、あるいは妊娠のために離職をして保険金の支給を受けておられる方、こういう方々がたくさんおられるわけでございまして、そういう方を一がいに就職の意思がない、労働の意思、能力がないものとしてもしそういう扱いをしておるならば、現行法の中ではおそらく保険給付を受けておられる方はないはずでございますけれども、現に非常に多くの方々が保険金の支給を受けておられる。そういう事実からも、私どもはそういう人たちを一がいに労働の意思、能力がないものとして扱っておるわけではございませんで、結婚するために家庭に入ってもう就職をすることを考えないという場合は、これはもちろん労働の意思がないものとしてそれは保険の対象になりませんけれども、結婚をして職を変えざるを得ないような事情にある方、あるいは妊娠して、そういった職務にどうしても従事できないからあるいはもっと軽い職につきたい、かわりたい、こういうことで退職をして新たに職を求められる方はたくさんいらっしゃると思います。そういう方々は当然保険の対象になるわけでございますし、また事実そういう方がたくさん保険の支給を受けておるということでございます。先生の御指摘のとおりだと思います。
  167. 藤原道子

    ○藤原道子君 特に出産、育児を理由に離職する女子労働者対策として、保育所等の社会施設の充実が必要であることは言うまでもないと思う。ところがこれらの施設が貧困なるがゆえに、つまり女子労働者に対する社会的配慮が、不足が原因で多くの女子労働者が今日不本意ながら労働力能力者というレッテルを張られているのである。あなた方は雇用保険法案が改悪ではなくて改正というのなら、現行失業保険法の「労働の意思及び能力」の確認に関する条文——第三条ですか、「(失業の意義)」、これをそのまま雇用保険法案に受け継ぐのではなく、真の意味の改正に手を加えるべきではなかったかと思いますが、この点はどうでしょうか。    〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕
  168. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 失業された場合に、その失業の期間中保険給付を行なうとで、この失業ということばの定義、これは現行失業保険法と雇用保険法におきまして全く変わっておりません。で、失業という事故に対して保険給付を行ないます場合に、労働の意思と能力ということについては、これはわが国失業保険法、新しい雇用保険法だけでなくて、ILOの失業保険に関する考え方も当然同じ考え方がとられておりまして、私どもは最低限の必要な条項を設けたものでございまして、あらためてこの問題について先生が御懸念になりますように、そういった妊娠、出産、育児あるいは結婚といったような退職をされた人についてこれを規制をしようと、あるいは一部新聞等でよく御批判が出ますように非情な取り扱いをするというようなことは、もちろん厳に戒めなければなりませんけれども、制度的にはそのようなことは厳にないように私どもは措置してまいりたいと、かように考えているわけでございます。
  169. 藤原道子

    ○藤原道子君 最近、政府関係の調査によっても、女子労働者の側につとめをできるだけ長く続けたいという意識が急速に高まっている。四十七年十月に総理府、大臣官房広報室が実施した「婦人に関する意識調査」によると、現在雇用労働者として働いている女子の七五%、——管理、専門、技術職では八四%、事務職では七二%、それから労務職では七六%。学歴別では中卒が七九%、高卒が七二%、大学卒か七九%——が職業を継続したいとしております。一方、同様に総理府統計局の「就業構造基本調査」によると、無職の主婦の四一%が何らかの就職を希望している。こうした実情から見ると、従来、女子労働をとかく腰かけ的に考えていた婦人労働行政を根本的に改める必要があるのではないかと思います。現行失業保険法雇用保険法案も女子労働力を腰かけ的発想でもって見ているのではないかと思います。女子労働を無視ないし軽視して法案がつくられ、運用がなされようとしておりますが、これらについてはどうお考えでございましょうか。
  170. 関英夫

    説明員(関英夫君) 先ほど来局長からもお答え申し上げておりますように、雇用保険法案におきまして、女子ができるだけ長くつとめるのをかえって阻害するような考え方を持っているつもりはございませんで、一例でございますけれども、新しく事業主負担で行ないます三事業のうちの雇用改善事業の中でも、女子ができるだけ長くつとめられるようなものを、そういう事業の中でたとえば託児施設、そういったものに対する援助なんかも、そういう中に考えろというような御意見もありますし、あるいは今後、育児休業に関する研究結果の結論が出ました場合にも、そういうものに従って雇用保険法の中で考え得るものがあれば考えていこうというようなこともございまして、私どもとしては社会的にできる限り希望する女子がおりますれば、そういった女子の方が永続的に職業につき得るように、この雇用保険法の面からもできるだけ援助してまいりたいと考えているところでございます。
  171. 藤原道子

    ○藤原道子君 いろいろ都合のいい御返事になりますが、次に大きな問題の一つにさきにも若干触れましたが、女子労働者失業認定をめぐる職業安定所の窓口でのトラブルであります。遠藤局長、あなたは職安行政の最高責任者として、職安の窓口での職員に対してどのような教育、研修をやっておられるか、日ごろの訓辞をここで御披露していただきたい。
  172. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私は、ちょうどいまから十五年ほど前に、初めて職業安定行政の人事担当責任者という立場でこの行政に携わったことございます。その当時から、私どもはできるだけ第一線の安定所の窓口を回りまして、安定所のあり方について指導してまいったつもりでおります。まあ端的に申し上げますと、私、当時各安定所、全国約三分の一ぐらい回ったわけでございますが、回りますと、確かに公共職業安定所というのは形式的にはお役所でございますけれども、私は安定所はお役所であってはいけない、安定所に来られる方々は、まあ事業主の代理の方もおられますけれども、大部分失業者であり、職を求めて来られる方々、そういう方々に、非常に言ってみれば職が見つかるまで暗い気持ちでおられる方に対して、こういう方に不親切であったりあるいはいわゆるお役所的な扱いをすべきではないということを、私は繰り返し繰り返し指導してきたつもりでおります。  で、最近におきましても、ときおり、だいぶ少なくはなりましたけれども、ときおり新聞の投書欄なんかに、安定所で非常に窓口が不親切な取り扱いをしたというような批判を受けることがございます。私どもは、こういう際には、常日ごろそういうことのないように指導はしてまいっております。どんな人に対しても、できるだけ親切に、丁寧にお話をすると同時に、就職のあっせんについてもその人に向いた指導なり援助なりをすべきであると、こういうふうに思っております。そのことが、窓口の職員が来所された方々に面接をし、お話を承る際に、とにかく安定所というのはいやなところだと、就職をしたいために、就職が見つかるまで非常に不安なあるいは暗い気持ちで来られた方に、なお一そういやな思いをさせるようなことがあってはならないということを指導しておりますけれども、数多い職員の中には、間々そういった御批判を受けるようなこともございますので、そのつど、そういったことについてはもう厳重に私どもは訓戒いたしまして、そういうことを繰り返すことのないように指導してまいっておるつもりでございます。
  173. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はいろいろなところでいろいろ耳にするんです。で、失業した人の多くが職業安定所の窓口に行って、失業保険金をもらおうとしたときに屈辱的な気持ちにさせられる。これはときどき、新聞の投書にもあなたのおっしゃるように出ているけれども、こうした国民の苦情についてどのように対処しておられるか。あなたのほうで失業保険制度をめぐる新聞論調及び新聞投書に見られる意見、これ出ていますね。これは去年の、四十八年の五月七日ですか、「私も六年間保険料を払いつづけ、失業した今、いやな思いで職安に行かねばならない一人です。  カードの中に適当な会社が見つからなかったら「あなたの見方が悪い」と、いやでも就職試験に行かねばならない言い方をされました。また就職試験に二歳の子供を連れて行ったことがわかり、支払い停止処分になりました。」——子供を連れて行ったということで支払い停止になった。「就職が決れば子供は預けるつもりでしたが、失業中でも預けていなければ失業保険受給資格者に反するというのです。職場に保育所がなくては人が集まらない時代です。失業中に高い保育料が払えるとでもいうのでしょうか。  病気やけがですぐ就職できない人や産前産後の人は失業保険を受けられないようですが、働く意思があっても働けない人になぜ支払えないのでしょう。保険の名が泣きます。また自己退職の場合、一−二カ月間保険金が支給されないのも納得できません。三カ月たって一円も受取れない私です。」と、こういう記事が、これは去年の五月七日の朝日新聞に載っていたんです。  それからまた、朝日新聞四月二十三日に、「先月末、一年あまりアルバイトとして働いていた会社をやめ、こんどは正社員になろうと今、職安で仕事をさがしていますが、失業保険制度に疑問を感じます。  事情があって働きたくても働けない人には、保険金が支給されないのです。私の後に並んでいた中年の女性は、おしゅうとめさんが病気で看病しなくてはならないので働けないといったら、保険金は支給されませんと追返されていました。  また、窓口が不親切なことも納得できません。私は認定日にさんざん待たされたあと、呼出されて話すことといったら保険金のことばかり。仕事は、と聞けば、あそこに置いてあるカードの中から適当なのを選んで持ってきて下さいという。適当な会社を選び、仕事の内容について質問しても誠意のない返事。お役所仕事とは、こんなものかと不愉快になりました。」と。  私の育てております子供がやはり安定所へ行ったんですけれども、そのことばが非常にきびしくって、もういやだから、私はもうもらわぬでもいいですと言ってやめてしまった。私は安定所の人たち失業した人がどんなつらい気持ちでいるか、これをまず考えて、そうしてやさしく指導するという方法はできないんでしょうか。あるいはまた、就職先へ子供を連れていったからといって、もう打ち切りになった。二つの子供を置いていけるでしょうか。保育所へ預けて、保育所の費用がどのくらいかかるかということもあなた方は御承知だろうと思うんです。こういう点で、この安定所のやり方がもっとやさしく親切にしてもらわなければ、どれだけ多くの女性が泣いているかということを申し上げてお考えを聞きたいと思います。
  174. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 全く藤原先生の御指摘のとおりでございまして、かりそめにも安定所の窓口でおいでになった失業者の方々、失業保険金の支給を受けるために見えた方に対して、そういう不当なあるいは心証を害するような言動があってはならないと私どもはかように考えております。できるだけ親切に、御要望に沿って就職のあっせんをする、こういう態度はぜひとも全職員に持ってもらいたいということを私はもう常々機会あるごとにそういう指導をしてきておるつもりでございます。ただ、先生御指摘のような新聞投書にありますようなことが間々出てまいりますことは私どもきわめて遺憾に、残念に思うわけでございます。この保険の受給者に関しまして不当な扱いがございますれば、法的には確かに不服申し立ての審査官制度がございますけれども、それに至りません場合におきましても新聞で投書等にそういった事実がありました際には当該安定所、当該関係職員に事実をただすように、もし不当なものがあればそれを改めるということで措置をしてまいります。あわせて、そういう機会にさらに繰り返し繰り返し窓口の職員のあり方、安定所のあり方について私どもは指導してまいっておるわけでございます。今後ともそういったような不当な批判を受けることのないように十分注意をしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。    〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕
  175. 藤原道子

    ○藤原道子君 もう一つの投書ちょっといま見つからないのですが、一人の人は、妊娠してあれしたらば、働きたいのに、なぜ子供を産むんだ、なぜ子供をつくるんだ、こういうことを言っている。そんなばかなことがありますか。  それで、先ほど田中さんから御質問いたしましたアメリカのあれですね、日本婦人労働者は過保護であると。この記事なんです。どこを見たら過保護と言えるか。外国には保育所は十分ございます。産前産後の休暇は八週間以上になっておる。国によっては、子供が病気のときには看病する期間は有給休暇が与えられる。あるいは妊娠中には六時間労働にして、しかも妊娠中の食事が与えられる。あるいは出産後一年間は六時間労働で、それで、やはり八時間労働の給与、育児休暇が与えられている。こういう国もある。ところが、日本には保育所がない。こういうことをあなた方は承知だろうと思う。どうして、なぜ子供を産むんですかと、こういうことを言うということが許されるでしょうか。私は、この保育所であるとか、あるいは妊娠中・産後の休養等についてあなた方の考え方を聞かしてもらいたい。
  176. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) そのような投書の事実がありましたことも私承知いたしております。いかなることがあろうともさような言動は厳に慎しむべきでございまして、失業者の人たちに対して、かりそめにも、そういうことで不安におとしいれることがあってはならないと、私どもかように考えております。今後とも、そういう安定所の窓口におきます失業者に対する対処のしかたについては厳重に私どもは指導してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  177. 藤原道子

    ○藤原道子君 いまさっきないと言いましたが、ここに出ているんだけれども、「生活できないのに何で子供をつくったか」と、こういうことを言っている。これは、朝日新聞の去年の五月二十二日の新聞に出ているんです。こういう安定所の存在に対して、私は徹底的な教育をしてほしい。大臣、いいですか、安定所がこんなことを言っても。
  178. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 人生で悲しいことは失業することであります。職業安定所の諸君は、ほんとうに困っている人が来たときにやさしいことば、あるいはやわらかい表情、そのことがときには非常に救いになることでありまして、私なども、ひまがあれば、そういうことで安定所などをたずねていき、直接私として職員諸君にお話をし、あるいはまた失業者の求職のカードをもらう姿などをずっと見て歩いている次第でありまして、大ぜいの職員の中にそういうふうな投書されるような事態の起こっていることを知って非常に遺憾に思いますので、役人が、何かしら権柄づくなような形で、自分の金じゃない失業保険金を与えてやるというふうな形からそういう冷い仕打ちをすることが、ときに相手を非常に困らせるということは許せないことでして、いまから先も厳重に、私直接、機会あるごとにこういう所管行政の親切なあり方というものを一そう推進してまいりたいと、こう思っております。
  179. 藤原道子

    ○藤原道子君 私がいま申し上げましたのは、全部の安定所がそうだと言うんじゃない。安定所によればやさしいところもあります。けれども、こういうつらい思いをした人は訴えてくるわけです。ことに、私の育てる子供から泣かれました。こういうことはぜひ教育をしていただきたいということを強く要求いたしておきます。  さらに、失業保険の認定で労働省の見解を尋ねたいのです。三十九年の八月二十二日の例の悪名高い失業保険給付の適正化通達というのがあります。その中にすでに触れたが、結婚、妊娠、出産、育児、老病者の看護その他家事、家業等の手伝いのために退職した者は、一般的には労働の意思及び能力がないと推定され、この推定をくつがえすに足りるだけの事実の立証により失業状態にあることについてのあかしが得られない限り、受給資格の決定を行なわないこととなっております。あなた方は具体的にここにある、失業状態にあることについてのあかしとはどのような内容のものをさしていらっしゃるのか、わかりやすく説明してもらいたい。
  180. 関英夫

    説明員(関英夫君) 女子が結婚とか妊娠、出産、育児あるいは老病者の看護のためにやむを得ず退職するということは、一般的にはそういうことに専念するために職をおやめになるというふうに思われますので、その通達では一般的にいえば労働の意思または能力がないと推定せざるを得ないと、こういうことを申しているわけでございますが、先ほど来先生のお話にありますように、本人は別の条件があれば働くことが可能であると、だからいまの会社はやめて可能なところにいきたいのだ、こういうことが何らかの形でわかれば、これは労働の意思能力ありと、こういうふうになるわけでございます。したがいまして、私ども御指摘の通達もそういう趣旨で書いているつもりでございますが、今後とも窓口においてはそういう場合に一律に機械的な取り扱いをするのではなく、個々の実情に即して適切な判断をするように運営してまいりたいと思います。ただ、やはりこれは非常に微妙な判断を含むむずかしい問題でございます。一例を申し上げておしかりを受けるかもしれませんが、女性週刊誌で失業保険のじょうずなもらい方という特集が出るように、でき得れば失業保険をもらいたいという方もお見えになることも事実でございます。その辺から、安定所の職員の中には非常に一律の機械的な取り扱いをする者があって、間々先ほど来の投書となってあらわれてくるのだろうと思いますが、そういう場合に、頭から一律機械的にいらした方を保険金だけ目当てに来たのだというのではなく、十分に事情を聞いて、個々のケースに即して適切な判断をするように、特に今度の雇用保険施行にあたってはあらためて注意をいたしたいと思います。と申し上げますのは、この雇用保険法案の中に結婚、妊娠、出産等やむを得ない事情で働き得ず、しばらくの期間は働き得ない状態にある人が申し出たならば失業保険を受けられる期間、受給期間をいまの離職後一年間という短い期間から、最高四年まで本人の申し出によって延ばそう、こういう規定がございます。と申しますのも、妊娠、出産、育児あるいは看病といったようなことでほんとうに働けない事情が一年以上継続いたしますと、現行法ではその前何年つとめておっても受給資格はなくなってしまうわけでございます。真にそういう状態で働き得ない人たちが、そういう状態がやんだ後に今度は働きたい、こういう場合を救済するためにこの雇用保険法案では、そういった場合、本人の申し出に基づいて最高四年まで延長できるようにしているわけでございます。そういう意味で、ほんとうに働けない人は、そういう事情がやんだ後に、そうして働き得るようになったら求職申し込みに来ていただく、こういうふうにすれば、現在のごく一部見られる現象ではございましょうが、働く気持ちは全くなくとも失業保険もらいたいといって安定所にあらわれる方も、いまよりは少なくなるわけです。そういう意味で、窓口も、求職者が来れば疑いの目をもって見るような一律機械的な取り扱いをせずとも済むようになるのではないかと、こんなふうにも考えております。そんな意味もありまして、今後雇用保険法施行することになりました場合には、さらに一そう、そういう面も含めまして、個々の実情に即した適切な判断をするような指導を一そう強めていきたい、こういうふうに考えております。
  181. 藤原道子

    ○藤原道子君 御答弁を、間違えないように実行してもらわなければ困る。さっき申し上げましたように、六年保険料を納めておいて、それで子供を連れて就職先へ行ったからといって、打ち切られて一文ももらわない、こういうことが現実にあるのですから、実際を生かすようにしていただきたいことを強く要望しておきます。  そこで、ここでいう労働の意思と能力を立証する資料として、あなた方は「労働の意思能力検討要領」なるものを作成して末端の職安の窓口で実施しておりますが、そこで尋ねるが、その中に結婚退職をした場合に、配偶者の就職同意書というのがある。つまり夫が妻の就職を同意したという書類であります。こうした書類をつくらせる理由はどこにあるのか。さらに、この同意書の性格についても、わかりやすく説明してもらいたい。つまり、夫が妻の就職を同意する書類には次のような内容を記載するとあります。就職先があればいつからでも就職できることについての同意、さらに就職を必要と認める理由、及び就職する場合に配偶者——夫の同意条件——勤務時間、収入、就職希望地、これらを夫である配偶者が作成、署名捺印したものでなければならないと。そこで、夫が妻の労働の同意書を作成して、それを職安に届け出て妻の労働の意思と能力を認定してもらう仕組みになっておりますが、こうした妻の扱い方はあまりにも屈辱的ではないでしょうか。女性を独立した人格として扱っていない、これをいかにお考えになっておりますか。男女同権なんです。夫のあれがなければだめだというのはどういうわけなんですか。
  182. 関英夫

    説明員(関英夫君) ただいま先生読み上げられましたもの自体は、私ども労働省が地方に示しているものではないと思います。労働省といたしまして地方に指導いたしておりますものは、女子の結婚退職のところを申し上げますと、女子が結婚のために退職した場合につきましては、結婚して家庭生活に専念するためにやめる場合と、それから働く意思、能力はもちろんあるのだけれども、いろいろな事情で、たとえば結婚後夫と一緒に住む家が現在の会社に通勤できない地域にあれば、それはどんなに働く意思、能力があっても、その会社に継続勤務することは不可能でございます。そういうようなことで、働く意思、能力がありながら結婚のために遠方に住居移転を余儀なくされる場合と、やむを得ず現在の職業を変えることを要する場合と二つある。こういうことを示しまして、女子が結婚のために退職した場合、家庭生活に専念する場合については、これは労働の意思、能力がないと。しかし、結婚のためにいろんな事情でいまの会社をやめざるを得ないと、しかしながら、どうしても共かせぎをせにゃならぬ、こういう事情の場合には労働の意思、能力あり、その辺はひとつ十分判断しろ、こういうことを言っているわけでございます。で、家庭生活に専念する場合に、そういった方が安定定所へ来られて、実は働きたいんだと、こういうふうなお話も実に数多くあるのもまた事実でございます。そういった場合に、安定所で、いま申しましたようなものをあるいは要求する場合もあろうかと思いますが、具体的にそこまで、同意書とかいうようなことを、本省で全部あらゆるケースについてとるようにとかいうような指導まではいたしておりません。安定所によってはそういうことで処理している場合もあろうかと思いますが、本省で示しておりますのは、結婚して家庭に入った女子が働きたいという場合には、その働きたいというほんとうの意思が十分確認できるようにしなさい、こういうことだけを言っているわけでございます。で、先ほど来、私御答弁申し上げましたように、この問題につきましては、一部に、非常に安易な考え方だと思いますが、たまたまつとめておるときに失業保険料を納めておったんだから、結婚してやめて家庭生活に入るにしても、しばらくは働く意思がないにしても、もらわなければ損だ、じょうずにもらうためにはどうしたらいいかというようなパンフレットもあるわけでございまして、そういうようなトラブルが安定所の窓口にあることも事実でございます。そのようなところから、一部の安定所あるいは一部の職員に、女子の若い求職者が来ると、すべて何か失業保険だけを目当てに来たというようなふうに思い込んで、先ほどのようなお取り扱いをする場合もあろうかと思いますが、今後におきましては、厳にそのようなことのないように留意してまいりたいと思います。
  183. 藤原道子

    ○藤原道子君 そこが問題なんですよ。それは働いていても、場所が遠過ぎるとかなんとかということで、近くで働きたい、仕事も、やはり好きな仕事と好きでない仕事があるからかわりたいというような人があったって、それはしかたがないでしょう。夫婦であろうと、やはり何であろうと、働きたいという女性に、こういうむずかしいことを一々、まあ場所によればあると言うのは、やはりそういう方針だからそういう答弁しているのです。そういうことのないようにしてほしい、いかかですか。
  184. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 先ほど藤原先生から御指摘ございました、現行法の三条に労働の意思と能力という規定がある、それについてももっと緩和すべきじゃないかという御指摘でございましたけれども、私どもは、失業に対する保険給付ということを考えます場合に、労働の意思と能力というのが失業という問題については、これは切り離せない条件であることはもう先生御承知のとおりだと思います。ただ、現行法におきましては、失業という——労働の意思と能力を判定するための措置として、原則として週二回安定所において失業認定を行なうことになっております。先生の御指摘になりましたような御趣旨で、今回の雇用保険法案におきましては週二回の失業認定を四週一回に改めることに、二週一回を四週一回に改めることにいたしております。そうして、失業認定は四週に一回、つまり月に一回やることにいたしまして、その間にできるだけ本人の御希望を十分聞いて本人の御就職をあっせんするというような体制にいたすことにいたしておりまして、今回の雇用保険法案成立いたしましたならば、一部にそういった行き過ぎ的な取り扱いがあるようでございますので、そういった点も十分私ども戒心いたしまして、そういうことのないようにこの機会に改めていきたい、かように考えております。十分注意してまいりたいと思います。
  185. 藤原道子

    ○藤原道子君 くどいようですけれど、労働大臣も職安局長も大学で法律を専攻してこられたんですね。そうですね……。  そこで尋ねますが、旧民法の総則にある第十四条には何と規定されておったか御説明を願いたい。
  186. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) まことに申しわけございませんが、民法の十四条は記憶いたしておりませんので、申しわけございません、お教えいただきたいと思います。
  187. 藤原道子

    ○藤原道子君 だれか知った人がいるでしょう……。
  188. 田中寿美子

    田中寿美子君 ちょっと関連。つまり、いま考えていらっしゃる考え方が旧民法思想だということです。  さっき藤原先生が指摘されましたことなんですけれども、そちらの御答弁では、何か出先側が悪いとか、窓口の職員だけに何か責任をかぶせているみたいなんですけれども、さっきの三十九年の「失業保険給付の適正化について」という通達、さらに「失業の適正な認定について」という職業安定局長通達がいまも生きているわけですね。その通達の中に、労働能力があるとか、意思があるとかないとかいうことを判定するしかたがいろいろ指導してあって、そしてその中に、手引き第何号というのが一ぱい入ってくるわけです。その「手引」というものがどういうのか私らもほしいわけですが、これは委員長、要求して取ってもらいたいと思います。つまり窓口の職員が持っている「手引」だろう、とらの巻だろうと思います。ですから、知らぬのであって、出先がかってにやっているんじゃないかという答えとは合いません。本省が指導していらっしゃるというふうに私は思います。なぜならば何回も手引き第何何という番号が出ていますからね。その「手引」のうちの一つがさっきの「労働の意思能力検討要領」の中身だと思いますですね。その中には結婚を理由にして退職している者が求職に窓口へやってきたときには、働く意思があるか、能力があるかを判定するためにこういうことを考えなさいというのが書いてあるわけですね。その一つが、いま藤原先生のおっしゃった「配偶者の就職同意書」と、その中には、就職先があればいつからでも就職できるということについての配偶者の同意ですね、それから就職を必要と認める理由及び就職する場台に配偶者の同意条件——勤務時間、収入、就職希望地、——配偶者が作成、署名、捺印したもの、これを出せ、というんですね。だから、配偶者が妻の就職について同意書まで出すというようなこと、これは旧民法思想です。旧民法十四条ですね、「妻カ左ニ掲ケタル行為ヲ為スニハ夫ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス」ということが書いてあるわけなんです。その中の第三項に、「身體に覇絆ヲ受クヘキ契約ヲナスコト」と、これはつまり雇用契約——からだを拘束するような契約をすること、そういうような就職するときに夫の同意が要った、あるいは戸主の同意を必要としたなんというのは旧民法思想でございます。そんなものを求職にやってきた女性に対して窓口で、窓口規制の一つのめどとして、とらの巻ができているというのは、これは私はたいへんけしからぬことだと思う。さっきたいへんきれいなことをおっしゃって、自分たちは女子労働者のためにいろいろ考えていて、それで結婚退職した人でも再就職するときのためにたいへん役に立つと、いい面だけおっしゃったけれども、現実の現行法において、すでにこういうことをやってきたので、それで今後そういうことをやらないという約束はほとんど私はできないんじゃないかと思いますが、この際、それをはっきり約束していただきたいと思います。憲法の十四条で、法のもとの平等、男女の性別による差別をしてはいけないということがあるから、新しい民法、戦後の民法からはこの旧民法の十四条はそっくり削除されているわけですから、その思想を職業安定所の窓口規制に使っていらっしゃること、これは重大なことだと思います。職業安定局長、それを知らないとおっしゃることはできないと思う、とらの巻が回っているのですから。それで、そのとらの巻を提出さしていただきたいと思います。
  189. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいま御指摘のもの、資料として提出いたします。と同時に、ただいま御指摘になりましたような、かりそめにもそういう不当な取り扱いが今後行なわれることのないように、私どもは今回の雇用保険の実施にあたりまして厳正な措置を講じてまいりたい、そういう御批判を受けるようなことのないようにいたしてまいりたいとはっきりお約束申し上げます。
  190. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃ、そういう指導を撤回して、そういうことをさせないということを約束していただけるでしょうか。
  191. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 「手引」はただいま申し上げましたように提出いたしますが、先ほど来お読み上げになりましたような、そういう取り扱い要領というのを地方で、私どもの「手引」に基づいて各具体措置としてそういうことをやっているのがあるんだろうと思います、お読み上げになりましたので。実は私どももいまちょっと調べておりますが、私どものほうで労働省から地方にそういう示達をいたした事実はございませんけれども、「手引」をもとにして、それをさらに具体化して窓口職員が取り扱いに区々にならないようにそういったものをきめておるところがあるんではないかと思います。したがいまして、そういうことは、私はただいま御指摘になりましたように行き過ぎの面があると思いますので、今後そういうことのないように厳に注意いたしてまいりたいと思います。
  192. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、いまの「手引」の中にまだひどいのがありますね。「結婚証明書」というのがある。これは個人のプライバシーに関することだと思う。結婚関係、つまり内縁関係にあるような人の場合を防ぐためだろうと思うんですけれども、結婚しているという相手からの証明書を持ってこいというようなことも中に入っていますよね。これはたいへん微に入り細にわたって項目が出ております。そのほかでいろいろたいへん、子供のある女性の場合には育児の証明書を持ってこい。これは実際保育所もちゃんとない、それでも子供をかかえているからこそ働かなきゃならない。だから、就職ができたら子供をどっかに預ける道を考え出すこともできる。それなのに反対に、子供はちゃんと預かる人がありますよという証明書を持ってこなければ求職をしたものと認めないとか、労働能力があると認めないなんて、こういうのはもうほんとうにひど過ぎると思います。それから、これはかってに地方の安定所でつくったかもしれないなんておっしゃるけれども、さっきのこの通達の中にもずいぶん相当のことが書いてありますね。たとえば、妊娠中らしい女性が来たときにはその判定はなかなかむずかしいと、「受給中妊娠したものについては、気がつかぬ儘、惰性で給付がなされ易いので留意し、外見上妊娠と判明するに到った場合は身体的異常、精神的状況等を聴取して紹介係との連けいにより労働の意志能力を適切に把握し失業の認定を行うものとする。」と、だから新聞の投書にありますように、頭のてっぺんから足の先までじろっと安定所の窓口ではよく見なさいよと、妊娠しかかっているかな、どうかちょっとよく見なさいというようなことになるんだと思うんですね。窓口に行く人はみんなほんとうにいやだと言いますよ。これ大臣ね、根本的に解決してください。
  193. 山崎昇

    委員長山崎昇君) どうですか大臣、答弁……。
  194. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) いま聞いた話は初めてのものがだいぶあります……。
  195. 田中寿美子

    田中寿美子君 だからほんとうに窓口見て……。
  196. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) よく研究してみましょう。
  197. 藤原道子

    ○藤原道子君 まあ、いま田中さんから質問がありましたので、私も少し抜きますけれどもね、たとえば、配偶者の就職同意書によって、妻の労働の意思、能力を確認するだけでなくて、疑わしい場合には同居の家族など第三者による証言等により確実に記録し云々ということになっている。さらに、「家族の構成状況について例えば受給資格者との続柄、年令、職業等を聴取し記録しておくこと。」と書かれているんですね。  そこで尋ねるが、職安はいつから警察まがいの仕事をするようになったのか。何で家族の構成まで調査する必要があるのか。こうした行政の姿勢は、失業保険の受給者を犯罪人のように見ている証拠ではないか。どんな法律の根拠によってこのようなプライバシーを侵す危険のあることをしているのか。さらに、調査資料は何に活用しているのか。この際、これらの点について明確にしてもらいたいと思います。
  198. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 先ほど来御指摘になすっておりますいろいろな諸事項は、おそらくは三十九年の八月の「失業保険給付の適正化について」という通達に基づく措置かと私どもも推察いたしますけれども、この通達に基づいて失業保険の受給にあたっての失業の認定の取り扱いにつきましては、先ほど田中先生から御指摘のありました「手引」に収録されておりまして、それ以前のそういったたぐいのものは現在残っておりません。したがいまして、いま実は藤原先生お読み上げになりましたそういった家族調査とか、そういったものがどういう形で残っておりますのか、私どもつまびらかにいたしませんけれども……
  199. 藤原道子

    ○藤原道子君 おかしいよ。
  200. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私ども調べました上で、もちろん適切な処理をいたしますが、先ほど大臣からお答えございましたように、また私から申し上げましたように、今後の取り扱いにつきましては、そういった行き過ぎ、不当な取り扱いのかりそめにもないように厳に注意をいたしてまいりたいと、かように考えております。
  201. 藤原道子

    ○藤原道子君 局長が知らないなんておかしいですよ。納得がまいりません。
  202. 矢山有作

    矢山有作君 知らない知らないで法律つくられたんじゃたまらぬな。
  203. 藤原道子

    ○藤原道子君 たまらぬですよ。
  204. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいまの点、調査いたしまして、そういうものがどこでどういう形で出ておりますのか調査いたしました上で、そういったものは今後ないように取り計らってまいります。
  205. 藤原道子

    ○藤原道子君 納得のいく答弁じゃございませんけれども、十分に検討して、これをわれわれが納得のいくように改正してもらわなければならないと思います。  それで、配偶者の就職同意書の内容についてさらに尋ねたい。  検討要領によると、「同意書に記入された事項について、就職のあっせんが困難と認められる条件を提示した場合は同意者を出頭せしめ、求職者と同意者の前で求職条件の緩和を行ない、同意事項の訂正を求めその経過を明確にしておくこと。」とも述べている。そこで、まず「就職のあっせんが困難と認められる条件」とあるが、何を基準にして困難と認めるのか。基準がなければ職安の係官の主観的な裁量に大きく支配される危険があります。そこで、基準を出してもらいたい。  さらに、求職者(妻)と同意者(夫)がなぜ職安に出頭しなければならないのか。ここでも女性を無能力的な扱いにしている問題が露呈しており、まことに非民主的であると思いますが、これはどうでしょうか。
  206. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいまお読み上げになりました点、たいへんごもっともだと思います。先ほど申し上げましたように、そういった具体的な取り扱いについてのこまかな処理のしかたがどういう形でどこで実施いたしておりますのか、至急私どもも調査いたしまして、先生の御納得のいくような処理をさしていただきたい。  今後は、その取り扱いにつきましては、基本的には、先ほど申し上げましたように、失業の認定の回数も四週に一回ということに改めることになっております。今回の雇用保険法の取り扱いにつきまして、先ほど来御指摘のような行き過ぎ、不当な取り扱いの行なわれることのないように、厳重に私ども処置をしてまいる覚悟でございます。
  207. 藤原道子

    ○藤原道子君 それは強く要望しておきます。  次に、結婚退職をした女子労働者が住民票とか抄本を提出できなかった場合について、検討要領では「未入籍の旨を記録し、受給中に新戸籍が成立した場合の届出についての指導を行なっておくこと。」というものもあるんです。失業保険受給者が入籍しようがしまいが個人の自由ではないでしょうか。これこそおせっかい行政ではないのか。職安の職員の不足が問題となっているが、こうした蛇足行政をまず整理する必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  208. 関英夫

    説明員(関英夫君) そういった取り扱いが行なわれているとすれば、確かに職業安定所の業務が失業保険に非常に片寄って、肝心の職業紹介、そういったものがおろそかになるわけでございますので、私どもとしては今後この雇用保険法施行にあたりましては、できる限り失業保険の業務を簡素化して、そして職業紹介に力が入るようにいたしたいとも思っておりますので、そういうことをもあわせまして、総合的に職業安定行政がほんとうに求職者にお役に立つような行政になるように改めたいというふうに考えております。
  209. 藤原道子

    ○藤原道子君 最後に、私の質問の結論部分について触れて、労働省の責任ある明確な答弁を求めたいと思います。  現行失業保険法は、給付日数の区分を勤務年数によって行なっております。だが、今回の雇用保険法案によると、給付日数就職の困難な度合い、さらに年齢によって区分される仕組みになっております。その結果、給付内容が変わることになる。そこで、もしかりにこの法案が国会を通過した場合には、現在の失業保険給付適正化通達によって職安の窓口で行なっている失業保険給付の規制実施はどうなるのか、この関係についてどうなるのか、はっきりした今後の方針を尋ねたいと思います。
  210. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいま藤原先生の御質問の最大の問題は、三十九年のいわゆる適正化通達を廃止するのかどうかということだと思います。これはもちろん廃止いたします。  で、あらためて、先ほど来御指摘になりましたような窓口の取り扱いについては、私どもは求職者、新しく雇用保険失業給付の受給者の方々が十分御納得、御理解いただけるような、そしてまた職安がいわゆるお役所でなくて、失業して求職に来られた方々がほんとうに安心して就職活動をしていただけるような、またごあっせんできるような、そういう安定所に体質を改善してまいりたい、同時にこの雇用保険法施行にあたりましては、そういった取り扱いの点について十分私どもは留意いたしまして、御指摘を受けることのないように万全を期してまいりたい、このように覚悟いたしておるわけでございます。
  211. 藤原道子

    ○藤原道子君 労働省が少なくとも失業保険の改善の方向に持っていこうとするのなら、私がいままで追及してきた給付制限の締めつけ、新聞に掲載された投書にもあらわれているような事例の問題は二度と起こらないようにすること、さらに末端の窓口でトラブルが起こらないようにすることを責任を持って実行できるか。それには給付適正化通達と、それを実行する手段としての各種の「手引」を廃止すべきであると思いますが、これをはっきりしてもらいたいと思います。
  212. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) いままでいろいろ御議論をお伺いしておりましたが、局長からお話のあったように、いまの適正化の通達は廃止するということをまず御理解いただきます。新しく今度、このたび雇用保険法案が通過いたしますれば、皆さん方にお配りする、それと同じようにわかりやすいものを、地方で配るものを議員の皆さん方にも御配付申し上げて御理解をいただきたい。そういう雇用保険の新しい手引きをわかりやすく、そして窓口においては親切にやるようにということで万全の対策をとっていきたい、こう思っております。
  213. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、これで質問を終わりますけれども、何となしに納得できないんです。  そこで、またさっきの、日本の婦人労働者は過保護であると出てる。——とんでもないことです。あんた方が何か向こうへ話し合いをしてるんじゃないでしょうか。保育所の問題にしろ、あるいは労働、休日の問題にしろ、産前産後の休暇の問題にしろ、就職の問題にしろ賃金の問題にしろ、まだまだ婦人労働者に対しては真剣に労働省では考えてもらいたい。これで、ILOの発表の中にこういう記事が出ておるが、これに対して労働省はこのまんま放置されるんでしょうか。
  214. 高橋展子

    政府委員高橋展子君) 午前中もお答えしたところでございますが、今回ILOの事務局でまとめられた文書の中に、日本の婦人労働に関した部分がございまして、その部分が全くどのようにして書かれたかわからないわけでございまして、で、しかしその内容が事実に反しておりますし、不穏当でございますので、労働省としましてはとりあえず訂正方を申し入れたと、このような経緯でございます。
  215. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) よその国に自分の国の恥ずかしいことを出さないというのがお互いの心がまえ、いわんや、先ほどの委員会においても御質問があり、お答えしたことでございますが、お昼、食事のする間にも労働省の幹部を全部呼びまして、どういう経路でこういう資料が向こうに行った形跡があるかどうか、私は確かめたところであります。しかし、労働省としては一切そういう資料を出した覚えがない、こんなことでして、どこから、どういう人がどういう経路で、あるいはどういう手紙でか何かわかりませんが、大ぜいの人々の中ですから、日本人の中に。ということで、いまその経路を探してるわけであります。しかしながら役所としてできますことは、労働省の立場から、その文章を参考にしまして所管の機関に対して、日本の場合にはこんなものではないということを、説明の資料をお送りするというかっこうをいまとっております。
  216. 藤原道子

    ○藤原道子君 それは御報告をそのまま聞いておきます。いずれまた……。  だけれども、過保護と書かれるには日本の現実はあまりにひどいんです。だから、過保護までいかなくとも、せめてもう少し婦人労働に対してそれこそ男女同権が実施されるように、特にお骨折りを願いたいということを強く要望して、大臣を私は信頼しておりますから、労働問題を真剣に取っ組んでほしいことを申し上げまして、私の質問を終わります。     —————————————
  217. 山崎昇

    委員長山崎昇君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、柏原ヤス君、沓脱タケ子君、大松博文君、平井卓志君が委員辞任され、その補欠として内田善利君、小笠原貞子君、長田裕二君、西村尚治君が選任されました。     —————————————
  218. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほど来の労働大臣、また局長の答弁を聞いておりますと、新しい時代に沿った雇用政策としてこの雇用保険法案が必要なんだと、あるいはこの雇用保険法が実施された暁においては窓口についても云々というふうな答弁を繰り返しておられます。で、衆議院では本会議でも田中総理から、また労働大臣から答弁がなされております。それを見ましても、まさに労働省はいまこの時期に新しい雇用保険法をつくるんだということを繰り返しております。  で、私はそうは考えておらないわけです。確かに内容的にも問題がありますが、まず、その内容に入る前に、時期としていまがほんとうにいいのかどうか。一方ではインフレが高進する、物価は狂乱物価といわれる、そういう生活不安が襲いかかっている。さらに一方では総需要抑制という名のもとに操業短縮、臨時社員の解雇、そういうこと、あるいは中小企業の倒産、こういう労働不安に襲われている。こういう時期になぜ従来の失業保険をやめて、それで全く質の変わった雇用保険法案をなぜこの時期に何でもかでも成立させなければならないという判断に立たれるのか。そこが納得いかない。いかがですか。
  219. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 石油危機、こういうときでもありますが、日本が労働情勢として失業率が一・四%にとどまっている、そういう特殊の事情もありますし、いままでの失業保険制度を質と内容を充実させた積極的な面からやっていく。そして一方、若い諸君は就職は非常に簡単ですけれども、高年齢者の方々はこういうときであるけれども、労働の需給が逼迫しているときといえどもなかなか就職はむずかしい。そうすれば、そこに能力開発などをしながらいろいろな機械化に相応じていくような姿も必要じゃなかろうかということを考えますと、私は三事業を合わせつつ、そして失業保険の現行制度のやつをさらにそのまま継続してやっていって、積極的な雇用の質と量ともどもの、やはり充実というところが非常に大事じゃなかろうかと思っておるのであります。何といたしましても失業は人生最大の不幸でもありますし、その失業を防止しつつ、失業者の早期再就職促進することはいまから先もきわめて重要な課題でもあります。また、中小企業労働者、高年齢労働者などに十分配慮して、一方また、ときに離職者が出た場合には、これを受けざらとして、この雇用保険制度を受けざらとしてそういう方々が離職しないように、あるいは早く再就職ができるようにしようというところにもこの法案の実は御審議いただいているゆえんがあるのであります。
  220. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは、私個人の見解というよりも、遠藤局長も、社会保障制度審議会で一月、二月ころ審議が行なわれた、で、その審議会の席上では、ある委員の方から、幾ら人が言っても労働省というところは聞き入れないと、で、休日まで返上して制度審議会委員が一生懸命審議しているのに、何べん言っても聞かないんだったらもうやらないぞとまで言ってやった社会保障制度審議会答申でも、「諸物価の上昇しているこの時期に改正を予定している点に問題があり、——内外の経済情勢の急転が雇用面に与える影響が予測できない今日、これに対応できるものかどうか疑わしい」、こういう意見についてはどう判断したんですか。
  221. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 小平先生御指摘ございましたように、社会保障制度審議会の御審議の過程でも、昨年の十一月以来の石油危機に伴う経済不安あるいはそれに伴って起こるであろう失業情勢の悪化、加えて物価の高騰と、こういった諸情勢の中でなぜやらなきゃいけないのか、こういう御質疑もございました。で、この雇用保険法案の立案にあたって、そういう情勢がまだあらわれる前であって、雇用保険法案を立案する前提となった情勢情勢の大きな変化があるので、もう一ぺん検討し直したらどうだ、こういう御意見であったように思います。私どもは、その際に、実は五月以来今回の雇用保険法案検討に着手しました際に、当然今後の経済情勢変化、あるいは雇用失業情勢の見込み、見通し、こういったものを大前提といたしましていろいろ検討が加えられた結果、この法案の提案に至ったわけでございますが、その際に、今後日本経済が従来のような高度成長経済というものを今後継続的に維持できるものではないし、当然国内的あるいは国際的な要因によって大きな経済変動というものが予想されるであろうし、それに伴って雇用失業情勢労働力需給の逼迫という点におきましては、大局的には今後こういった情勢が引き続き進行する、その中でやはり経済変動に伴って深刻な失業情勢というものを当然予測しながらそれになおかつ対応できるような十分な失業保障機能を持った制度を立案、確立する必要がある、あわせて今後の情勢変化に対応しながら積極的に雇用改善を進めてこういった失業を予防するような措置制度の中で考える必要がある、こういうのがこの雇用保険法案の立案にあたっての研究委員の方々の考え方であり、私どもの立案の基点になった考え方でございます。その点 御説明申し上げたわけでございますけれども、審議会におきましてはこの点についていろいろと御議論ございまして、私どもの説明不十分でなかなか御納得いただけなかったわけでございますが、今回の雇用保険法案の中に盛られました失業給付の諸条項、また先ほど来御指摘になっております雇用改善事業能力開発事業雇用福祉事業の三事業につきましても、そういった趣旨を十分私どもは考えながらこの制度化をいたしたという点を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  222. 小平芳平

    ○小平芳平君 その審議会答申はこの労働大臣の諮問を了承するとはいっていないわけでしょう。当審議会意見は次のとおりであるといって、ずっと批判しているだけでしょう。ですから幾らそういう意見が出ても、研究会ですか、夏行なった。その研究会でそういう学者の意見が出た以上どこまでもやり通すんだということならまさしく労働省はがんこそのものであって、一たんきめたら最後もう右にも左にも行かないというふうにしかとれないわけです。特に、まだこの社会保障制度審議会の段階では一月、二月ですから、この物価上昇あるいは内外経済情勢の急転、こういうものがその段階での議論でありましたが、その後数ヵ月経ております。その後の変化に応じていまどういうふうにその点を判断されますか。
  223. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 中央職業安定審議会あるいは社会保障制度審議会におきまして、それぞれこの法案の各部分についていろいろと御意見を拝聴いたしたわけでございます。私どもも審議会の御意見の中で法案提出までに事務的に処理いたすことが可能なものにつきましては、たとえば保険料率の千分の四十三を千分の十八に手直しいたしますとか、あるいは受給資格の点について御指摘の点を修正を加えるといったようなことで事務的な処理の可能なものにつきましては処理をいたした上で法案を提出いたしたわけでございます。なお、そのほか、かなり重要な点で両審議会におきまして御意見を賜わった点がございます。衆議院社会労働委員会におきまして、そういった点を特に重点的に御議論いただきまして、先刻御説明ございましたような修正が行なわれたわけでございます。その中で、たとえば給付率の問題にいたしましても上薄下厚で、六割を基準として五割から七割ということで比較的中以下の所得層につきまして給付率を七割まで引き上げるという原案に対しまして、これを八割まで引き上げるという修正が行なわれたわけでございまして、そういった先生御指摘のような、今後の失業情勢ないしは現下の情勢に何がしか対応できるような、御意見による修正が加えられまして、私どもとしましては、当初申し上げておりましたように、各審議会あるいは国会の御意見によりまして、できるだけよりよい制度をつくっていきたい、こういう方向で私どもは考えてまいりたいと、かように存じておるわけでございます。
  224. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、基本的には出かせぎ労働者生活基盤をささえる農業政策等のおくれや建設業界等における通年雇用をはばむ諸事情があるという、こういう日本経済社会情勢のゆがみですね。一方では農業だけでは生活が成り立たない、そこで出かせぎに行く、出かせぎに行かざるを得ない、その点についてはなお詳しく質問いたしますが、とともにまた、一方では、受け入れる建設業界では、そういう不安定労働者を実に悪い条件で次々と受け入れる、また途中で、農繁期が迫ると退職して帰っていく、そういうことを毎年繰り返さなければならないような現在の日本のこの産業構造、社会情勢はどう改善の方向へ進んでおりますか。
  225. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 出かせぎの問題一つとりましても、ほかの、たとえば農政との関係のあることは御承知おきのとおりですが、出かせぎがいままで約六十万といわれ、その諸君が大都会において建設業に従事して今日の経済発展の大きな力になっておったことも私は率直に評価するものであります。私自体も出かせぎ地帯に選挙区を持っておりますので、そういうことがわかるわけであります。何といっても、出かせぎの場合は地元で就労する機会をぜひ早く持たせたい、そのことが一番大事でありますが、さらにまた、通年雇用促進をはかることも必要でございましょう。出かせぎ者が出る場合に一番私たちが心配することは、やはり正常な就労経路をたどってくるということ、そしてまた、雇用関係を明確に指導することにつとめるほか、就労前の健康診断、あるいはまた講習会の実施、そしてまた、就労地におけるところの福祉センターの設置などの対策を進めていくということが、従来やってきたことでありますが、このたびの雇用保険法案におきましては、先生がおっしゃったように、東京で働いて、田植えのときは自分の家へ帰って何ヘクタールかの本職であるところの農業に従事する。——失業といえば普通は事業所の都合によって離職することであります。しかしながら、私たちの地方の者は、東京に出てきて自分の都合で失業したということで本職のほうに帰っていく、これがずうっと繰り、返されてきたことは御承知のとおり。そうすると、これは失業保険というもの、そのものになじまないという御批判、これも長いことあったことも御承知のとおり。そうすると、これを一ぺんきりっと、堂々と胸を張って、制度としてその金を当然もらえるという姿のほうが、働く諸君は一番いいんじゃなかろうかということからして、今度は特例制度として一時金というものが生まれたわけであります。また、審議会の御答申などを無視したという話がありますけれども、いま局長がお話しされましたように、実は審議会の中において、率の問題とか、いろいろな問題について事務的に訂正したものもありますし、国会の審議を通じていろいろまた改正などを行ない、先ほど衆議院から修正案のここで御披露があったようなことでございまして、全体的には、私は、審議会答申を無視したということじゃなくして、一つのたたき台として原案をつくったのを皆さん方の御意見によってここまで持ってきて、そして雇用政策というものを充実していくというところに今日来ているということを御理解いただきたいと思います。
  226. 小平芳平

    ○小平芳平君 農林省、大臣が間もなく来られるそうですので、その前提として、農林省として出かせぎに対する対策をどう進めていかれるか、それからまた、出かせぎをしなくても生活できる農業にするためにはどうしていけばいいか、具体的に、たとえば岩手県、青森県等で農業、漁業、林業をやっているその年間総収入の平均と、実際に出かせぎに出て行かれる人の、——出かせぎに出て行かれる人は、おもに土工、あるいは技術者といっても大工さん、そういう人が多いですが、そういう人の年間収入の総平均と比較してみたことがありますか、ありましたらお答えいただきたい。
  227. 白根健也

    説明員(白根健也君) 出かせぎ状況、まず、一般状況を概略御説明申し上げますと、現在われわれのほうで調査をしております出かせぎ農業者といいますのは、これは一ヵ月以上一年未満のものでございますけれども、約三十四万、そのうち、大体六割が東北地方でございます。その理由をある程度聞き取りをしておりますと、やはり理由の中の八割ぐあいは一般家計費の補助、こういうことになっておるわけでございます。先生御承知のように、現在の農家戸数が五百七十万戸でございます。それから農地が五百六十万ヘクタールでございまして、平均的にしましても一・一ヘクタール弱、非常に小さいスケールでございます。また、現在の状況で、農業でいわば専業という形でおりますのは、全農家のうち、約二〇%から二五%でございます。したがいまして、残りの方々は兼業でございますとか、ほかに職業を持ちまして農業がある程度従でございますとか、あるいはいま申し上げたような出かせぎ、こういう状況で生計費をまかなっているような状況でございます。  なお、耕作反別といわば全体の総収入、必ずしも十分な統計ではございませんけれども、農家所得といたしましては、大体バランスがとれている、四十七年ベースで約百三、四十万と、こういうことが大体東北の平均かと、こういうふうに承知しておるわけでございます。そういうふうな状況でございますので、いわばこの方々を今後どうするかというのは非常にむずかしい問題でございますし、また農政上も非常に重要な問題でございます。それで、出かせぎ者の方々の御意向を聞いてまいりますと、ある程度反復して出かせぎに行きたいという方々も相当ございますけれども、さらに二、三割の方々は農業に専業したい、あるいはそれより少数になりますけれども、大体同じぐらいの形で地元に就業機会があればそちらに当然参りたい、こういう人が相当多うございます。一部には一割ぐらいでございますけれども、ほかに転業したい、こういう御意向を持っておられる方々があるわけでございます。したがいまして、現在、私どものほうの対策といたしましては、基本的には農政上の問題といたしまして、出かせぎのないことが非常に望ましいわけでございます。現状直ちに、特に東北地方の水田単作地帯、こういうような経済条件のもとで、いわば耕作反別が五反前後ですとか、そういう方々につきましては、早急に出かせぎを解消するといいましてもなかなかむずかしい問題でございますので、現在さしあたり私どもがやっておりますのは、一つは留守家族の方々の営農指導、こういうことをひとつ重点にしてやっておるわけでございます。同時に、四十九年度予算に計上しているわけでございますけれども、それぞれの地域によりまして、いわば地場におきまして農業的なもの、そういうものでどういう可能性があるか、これは一つ調査をいたしております。こういうことで、さしあたりの問題としては、そういう対応をしておるわけでございますけれども、基本的には、先ほど申し上げましたように、出かせぎのない経営というのが望ましいわけでございまして、一つには専業いたしたいと、こういう希望の方々に対しましては、これはいわば兼業農家というのは相当多いわけでございますので、そういう方々の農地を借りまして、いわば経営規模を拡大すると、そういう形をとりながら農業所得だけで生活ができる、こういう方策を一つ考えておるわけでございます。で、そういう方々に対しては、基盤整備でございますとか、いわば農業機械の導入でございますとか、いわば団地形成でございますとか、そういう形の企画というものを、従来からもやっておりますし、今後とも推進してまいりたい。  なお、現在国会に提出いたしまして御審議していただこうと思っております農業振興地域の整備に関する法律の一部改正、こういうところで、いわば借地による経営規模の拡大、こういうような構想も一つ出しておりまして、農林省といたしましては、そういう、いわば専業経営、農業だけで生活ができる、こういう方々をよりつくり出す、こういうことをまず一つ考えているわけでございます。  なお、先ほど労働省からのお話にございましたけれども、出かせぎ解消ということで、これは四十六年以降、地元に農村工業というものを導入いたしまして、そこで地場で、外に行かずに、地場で安定兼業ができる、こういう形のものの実施というものを現在しておるわけでございます。三カ年でございますので、現在のところ全国で二百四十一企業が操業しておりますけれども、実績からいたしましても、地場の雇用が大体六割程度あるようでございますので、こういう面の政策というものを、今後十分推進してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  228. 小平芳平

    ○小平芳平君 何ですか、年間農家の収入が平均百三十万ですか、一戸当たり。それはどこの平均ですか。
  229. 白根健也

    説明員(白根健也君) これはちょっと調査の時点が古うございますけれども、昭和四十六年度の数値でございますので、その後上がっておると思いますが、約百三十万でございまして、これは出かせぎ農家の平均でございます、東北地方の。これが百三十万ございます。そのうち農業所得が七十四万、農外所得が五十三万、農家所得が百三十万、こういう数字でございます。
  230. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうことをお尋ねしているんではなくて、たとえば地元の市町村で、東北地方のある県の地元の市町村で、農業、漁業、林業、これは地元で働いているわけです。そういう農業、漁業、林業による収入の平均と、それから出かせぎに行った人たちの年間収入の平均とを比べたらどうですかと言っているんです。——それは考えておいてください。  で、労働大臣、これは九戸地区といいますか、岩手県の九戸地区の教頭研究大会、これは小中学校の教頭の研究大会で、管内十校、千八百五十七名の出かせぎ家庭の調査をした。で、父母の出かせぎに対して、不満であるという答えと、不満はないという答えで、不満はないという答えも相当数あるわけです。それは生活のためにやむを得ないということではなかろうかと思います。この教頭研究会では、具体的ないろんなことを発表しておられますが、学校生活での不安の傾向、学校生活では次のような不安な傾向がある。一つは、出かせぎ家庭の子供さんは孤独感を持っている。第二には、自暴自棄の傾向が見え、放浪、非行におちいる危険がある。第三には、PTA活動の不振。第四には、家庭と学校間の連絡の不徹底、その他いろいろのこまかい調査を発表しておられます。したがいまして、少なくとも子供さんに与える影響も深刻なものがあるわけですから、できたらそういう出かぜぎしなくてもいいような農業、あるいは労働行政がいまこそ緊急な課題だと、必要なときだと痛感いたしますが、大臣いかがですか。
  231. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 出かせぎ地帯は、私たちとするとまさに先生のおっしゃるとおりでございます。数年前は都会の子供はかぎっ子ということで問題になりました。白い避の中に子供が一人、おとうさん、おかあさんが共かせぎしてたった一人残っている、この問題が非常な問題でした。いま東北あるいは北海道のような出かせぎ地帯は、まさに子供と親が晩めしを一緒に食えないというさびしさ、その中からくるところのいろんな影響、これは、私は農業技術だけの問題にあらず、将来の大きな問題だということを、実は憂えている一人でございまして、まさにそうした面からすると、出かせぎがしないで済むような、多少貧乏しても収入は少なくともいいから、自分の地方で一緒に子供とめしを食いながら働きたいというのが、地方の方々の願いでございます。まさに必要悪であるところの出かせぎ、これがなくして、地方において、やはり農林省から話があった一地方一町村一工場、そういうふうなものなどによって、これが解消できることが何よりも望ましい。私は、よその、たとえば中京地方の農村見れば、安城におけるような農業で出かせぎありません。それは気候にもよるでしょう。そういう地域の差というものが、いかにお互いの生活の上に響いてくるか、こういうことを皆さん方からお考えいただくということは、非常に私はありがたく思う次第でございます。
  232. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、建設省は建設業界が、要するに高度経済成長の働き手として、あるいは大都市周辺地域でいろんな土木工事を、公共事業を、あるいは超高層ビルの建設に、そうしたところに多数のそういう労働者を必要としてきた点、しかし、ここで根本的な雇用失業保険の改正なり、あるいは農業政策の転換なりが行なわれていくということになると、建設業界がいままでのように、そういう悪い労働条件で、多くの低賃金労働者を使うということができなくなるのは当然だと思うんですが、その辺はどう対処しておられますか。
  233. 内海英男

    政府委員(内海英男君) 建設業に就労いたしております出かせぎ労働者は、全建設労働者のうちの約一割程度でございまして、依存度は比較的高くないのが現状でございます。出かせぎ労働の季節変動という特殊性に原因いたしまして、建設労働力の安定的確保という立場から、御指摘のような点があると思います。このために建設省といたしましては、業界において常用化の推進をはかるように指導いたしておりまするし、近年常用化の傾向が比較的拡大をいたしております。今後とも建設労働者の定着確保、安定的確保をはかるために、建設省といたしましても入職経路の明確化、労働福祉政策の改善職業訓練の充実等を推進してまいる考え方で臨んでおるわけでございます。
  234. 小平芳平

    ○小平芳平君 農林省わかりましたですか、私の質問したような答弁ができますか。
  235. 白根健也

    説明員(白根健也君) これの結果、農家経済調査ということで私どもやっております中で、東北六県の集計しまして、その中で、いわば出かせぎ農家の集計、いわば平均的なもの、そういうような形で出してあるものでございます。そういう前提がつきますけれども、それで出てまいりますと、出かせぎ農家、これの農家総所得——農業所得、農外所得、その他全部入れました総所得が、四十七年、約百八十九万です、こういう数字でございます。そのうち、出かせぎ収入といたしましては、約三十七万です。それから非出かせぎ農家の平均が、総農家所得百九十三万でございます。
  236. 小平芳平

    ○小平芳平君 私の質問している趣旨がおわかりになりませんですがね、地元で、たとえば青森県五所川原市というところで、岩手県久慈市というところで、そういう地域が出かせぎの多いといわれる地域ですが、そこで、農業、漁業、林業をやっている人の年間収入はどのくらいになるか、そういう農外収入を除いてですね、それは出ませんか。
  237. 白根健也

    説明員(白根健也君) はなはだあれなんでございますが、特別の地区をとらえまして、この中で、出かせぎの多い地区をとらえましてどうこうという計算、実は私のほうはしておらないわけでございます。ただいま申し上げました数字は、特に出かせぎの多いと思われます秋田、青森、岩手、山形、福島、新潟と、六県分の中で再集計いたしまして、その中でのいわば全農家の平均というものと、いわば出かせぎ農家だけを抽出いたしまして、それの数字を出したと、こういう数字がいまの数字でございまして、個別の地区をつかまえまして、農業、漁業、林業、これがどうかと、こういう数字は、ちょっと、私どもいまのところ手持ちございませんのです。
  238. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃあ、やってみてくださいよ、また何かの機会に。  じゃあ労働大臣、結局、よほど資産でもある家は別としまして、要するに、気候、風土のということを大臣もおっしゃったですが、どうしても米単作地帯であり、あるいは豪雪寒冷地帯であり、したがって、その地域でよほど苦労しても、働いても、なかなか収入が思うように上がらないわけです。したがって、漁業といいましても、漁業によって相当の収入のある人というのはもう限られちゃうのでありまして、したがいまして、地元で青年が働いていたのでは、とてもとても嫁の来てもないと、そこで大都市、都会へ就職して行けば、あるいは出かせぎに行けば、自家用車を買って、乗って帰ってこられるというようなのが現状じゃありませんか。私があるところで計算してもらったところによりますと、そういう地域で、第一次産業による収入と、出かせぎに行って得られる年間収入を比較した場合、まず地元では半額、出かせぎでは平均して倍くらいというような計算を、私はしてもらって持っておりますが、そういうような実情ではございませんか。
  239. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) それぞれの地方がみんな違うものですから、一がいに言えませんけれども、先生のいまおあげになった五所川原一つとりましても、これは先日、あすこの青森新聞の社長さん、——東奥日報の社長さんが話しておりましたが、ここは全国でも、内地としては珍しく、高等学校の進学率は、先日までは二四%、いま日本は八六ぐらいでしょう、東京は九八でしょう、それが最近、ようやく、定時制を入れて五五%になりました。これは多少、やはりあそこは、五所川原は開発が進んでいる、それと同時にまた出かせぎというふうなことなどがありまして、私の地方なんか見ますと、やはり東京で出かせぎすると、一カ月に七万円、八万円になると、その中から五万円でも送ってやれるというふうな、やっぱり喜びがあるわけですね。そういうことからしますと、やはり何といっても、先ほどから申し上げたように、地元において、就労の機会とその拡大ということが一番大事なことじゃなかろうか、といって、いますぐどうといって、出かせぎが全部なくなると、これは日本全体の需要というものがあるものですから、就労の機会があるにかかわらず出かせぎに来ないということは、人間の欲として、やめるわけにいきませんので、これはしばらく私は続くと思いますから、全体的にはやはり開発という、調和のとれた開発などをしながら、地元の就労が一番大事だというふうに感じております。     —————————————
  240. 山崎昇

    委員長山崎昇君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、山下春江君が委員辞任され、その補欠として吉武恵市君が選任されました。     —————————————
  241. 小平芳平

    ○小平芳平君 農林省、いま、労働大臣がおっしゃったようなことを、あなたのほうもしっかり調べてくれないと困るじゃないですか。それで抽象的にさっき、最初、答弁されたように、これこそしかじかの対策を進めておりますというだけでは進んでないですよ。要するに、この雇用保険法案が提出されるその背景として、きわめて一つの大きな問題点として、短期雇用労働者というものが取り上げられている。そうすると、国の行政として、政治として、全体的にこれは取り組まなければ、一労働省だけの問題では済まされないわけです、そうじゃないですか、農林省、いかがですか。
  242. 白根健也

    説明員(白根健也君) ただいま労働大臣からお話しのございました、地場におきまして就労の機会を増大させると、こういう認識は、当然私どもも同様でございまして、従来から一つの、先ほど申し上げました例でございますけれども、町村におきます農村工業の導入、これは労働省と共管でやっておりますし、その他、職業転換でございますとか、あるいは就職のあっせんにつきましても、職業安定所の活動に並行いたしまして、農業委員会の組織を使うというふうに、その点につきましては、十分労働省と協議してやっておるところでございますし、今後ともそういう点につきましては、十分御相談しながらやってまいりたい、こう考えております。
  243. 小平芳平

    ○小平芳平君 農村工業の導入というふうに、大臣も衆議院で答弁しておられますが、たとえば先ほどあげました岩手県の久慈市の山根町上戸鎖というところです。この部落は十八世帯あったんです。十八世帯あったのが、この十年くらいで十三世帯が引っ越していっちゃった。残ったのは五世帯だけ。しかも、その十三世帯のいなくなったあとの家屋が、そのまま草ぼうほうの中に建っているわけです。したがって、屋根から、板壁から自然に腐ってくずれ落ちているんです。自然に腐ってくずれ落ちるのを待っている、そういう荒れほうだいの家屋が、十数戸、現にあるわけです。そういう実情で、農村工業の導入なんと言っても一体いつのことかって、いうことになるわけですよ。  それから同じく、これは久慈市で聞いた、お会いした、ある一人の婦人ですが、要するに出かせぎの悲劇を一身に背負ったような婦人ということで紹介されたんですが、御主人が出かせぎで行くえ不明になった、で、その婦人は、二人の子供をかかえて病気で倒れた。その病の中で二人の子供を育ててきた。男の子が大きくなり、出かせぎに行って、また行くえ不明。この婦人の弟も出かせぎに行って行くえ不明。妹の子供さんが同じ地方で世帯を持っておりましたが、去年のお盆のときに出かせぎから家へ帰ってきて一週間日に死んでしまったと。したがって、あとには若い奥さんと生後間もない幼い子供が残されましたが、離職したあとの死亡ですから、労災補償等の補償も何らあるわけはないし、これからどう生活していったらいいかということになるわけです。で、市の生活者相談員の方からもいろいろお話を聞いてみますと、こういう例はざらにあるようですね。で、特に労働省に伺いますが、まあ、そういう行くえ不明になる場合は、これはいろんな個人的な関係もからまってきますが、要するに、その出かせぎに出るときには、なるべく条件のいいところを選ぶ。そして残業、休日出勤、そういうことが十分できるようなところをまず選ぶ。そこで何カ月か働いて、家へ帰ろうという直前になると、やはりなるべく収入をふやして多く持って帰りたいというところから無理をする。そして、したがって、からだをこわして帰る。あるいは帰って間もなく病気になる、あるいは死亡する。そういう例がきわめて多いように聞いてきましたが、そういう実情は把握しておられますか、対策はどうですか。
  244. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) まあ、出かせぎ地帯でいろいろ問題がありますが、一番問題になるのはやはり蒸発です。御主人が都会へ働きに行っておって蒸発されるときの奥さんの悩み、ですから地方では、農協あるいは青年団あるいは町村が一年に一ぺんぐらいそういう人々がみんなで金を出し合って、その奥さんまで東京へ連れてきて、出かせぎ者の奥さんをそして会わせる。そういうことなどをしながら蒸発しないような手配などもとっていることでありまして、まさに一つ一つのケースを見ますというと、それぞれの人々はそれぞれの運命をしょっておるのでしょうけれども、たいへんな問題であるということを感ずるものであります。
  245. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう少しこの屋外労働者雇用安定対策といいますか、たとえば港湾労働者に対して港湾労働法が制定されたように、屋外労働者に対する屋外労働者福祉法というようなことが労働省として考えられませんか。
  246. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 先ほど来小平先生いろいろと御指摘になりましたように、出かせぎ労働につきましてはいろいろと大きな問題ございます。私どもはこの出かせぎ労働問題につきまして根本的に検討をいたしまして、その具体的な対策推進をはかってまいりたいと、かような覚悟で目下中央職業安定審議会の専門部会におきまして、その具体的な検討に着手いたしているわけでございます。で、そこで問題は、第一は、こういった出かせぎにどうしても出ざるを得ない人たち労働条件のよりいい職場で健康で働いてもらいたいということでございますので、まず、その出かせぎに出られる場合に就労経路を明らかにする。これはもちろん公共職業安定所だけでは十分ではございませんので、公共職業安定所なり、あるいは市町村なり、農業団体なり、そういった関係団体が連携をしながら、そういった公的な機関を通して就労していただく、出かせぎに出ていただくと、同時に出かせぎに出られる前にそういった蒸発とか、あるいは病気とか、いろいろな問題が伴ってまいりますので、出かせぎに出る前に健康診断を必ず受けていただく、同時に出かせぎに出る際のその職場における必要最小限度の何と申しますか、職業講習というか、そういったことによりまして、出かせぎ先で不慮の事故等にあうことのないような措置をまず講じていきたい。で、その出かせぎに出られましたあと、安全対策の問題でございますとか、あるいは労働条件の契約内容が不明確なことによっていろいろとトラブルを起こすことのないように、労働契約、雇用契約を明確にする、こういったことがございますし、あるいは賃金不払いの問題とか、いろいろの問題がございますので、こういった問題を私どもは実情に即して、実情を十分把握して、問題点を明らかにした上で、それぞれの項目につきまして、あるいはいろいろな法律的な措置を必要とするもの、あるいは行政措置で十分対処できるもの、あるいは予算措置によって福祉対策の向上をはかっていくというようないろいろな対策のしかたがあると思いますが、そういった点を今後早急に検討いたしまして、その検討の結果に基づいて具体策の推進に当たってまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  247. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは次に法案内容について若干質問いたしますので、衆議院修正を含んで質問いたしますので、修正を踏まえて御答弁願いたい。  じゃあ、農林大臣、お待ちしておりましたので、さっそくで恐縮ですが、雇用保険法案というのが提出されまして衆議院修正され、それで当委員会で審議がきょうから始まった次第です。衆議院では農林大臣も本会議で答弁をしておられますので、まあ、いきなりでも十分だと思いますので……。  要するに、雇用保険法ということで労働省失業保険制度を変えようとしている、しかしこの雇用問題は労働省だけで解決のつかない点が多々ございます。いま私が出かせぎ農民の問題についてずっと、これでもう四十分ほど質疑をかわしてまいったわけです。この出かせぎ農民の悲惨な実情、あるいは地元での御意見あるいは生活実態等を、いま私がるる御説明をし、また労働大臣からもお話があったわけです。したがって、農林省としましては、出かせぎしなくてもいい農業経営ということが一つあると思うんです。それから、大臣は衆議院では農村に工場を誘致するというふうに答弁しておられますが、それはもうきわめて限られたことであって、私がいま具体的に説明したような地域では、とてもとても工場導入なんて言ったっていつのことかわからないわけです。ちょっとまあ便利なところだったら大企業が土地を買い占めるとか、ゴルフ場ができるとかいうことなんでしょうけれども、この狭いといわれる日本の国土の中にも、一つの部落で十八世帯が五世帯に減ってしまって荒廃にまかされているというような現状があるわけです。まあ、どちらかというと、食糧あるいは飼料は安い外国から買えと、そして日本のそういう農業あるいは畜産は荒廃の一途をたどったというようなことをまざまざと見せつけられる地域について、私はいま説明をしていたんです。そういう点について農林大臣の御見解を承りたい。
  248. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいま農政全般にわたるようなお話がございまして、たてまえとして、私は、このたび労働省から提案しております雇用保険法案というのはぜひ通していただきたい法律だと思っております。その中で、ただいまお話しのように出かせぎの問題が出てきておるわけであります。この出かせぎについての取り扱いにつきましては、いろいろ意見がありますが、私どものほうといたしましても、こちらの希望を申し述べまして、そういうことをかなり取り入れていただいておるわけであります。  小平さん御存じのように、東北地方のような単作地帯は、やはりだんだん米作の技術が進んでまいりますにつれまして、実際の稼働日数がどんどん減ってきておるわけであります。全国平均いたしますと、一年に百七、八十日で足りるわけであります。そこで、あとの余剰の労働力につきまして出かせぎという現象が行なわれておる。ほかの地域ですと、単作地帯でございません場合には、それぞれほかのこともありましょうけれども、東北地方においては特に米が主でありますので、そういう現実の姿であります。  そこで私どもは、いまもちょっとお話がございましたように、農村地帯にも公害を伴わないような工業をできるだけ誘致すべきである。このために先年農村工業導入に関する法律、これを制定していただきました。現在で六百二十ほど予定をされており、そのうち三百近くは実現しておりますが、これはいま申し上げましたようなことでありますので、一番多いのは組み立て工場、精密機械、それから繊維工業、そういうものがおもでありますが、私は、現実にこの出かせぎの問題を考えてみますときに、やはりそれらの方々は、まず第一に農業の経営規模がどのくらいであるかということにも非常に影響がありますけれども、資料を調べてみますというと、たいへん私どもは奇異に感ずるわけでありますが、〇・五ヘクタールぐらいな耕地面積しかお持ちにならない農家の方と、それから二ヘクタール以上の耕地をお持ちになっでいらっしゃる方でもかなり出かせぎをしていらっしゃる。これは農業経営規模の零細である、ないにほとんど関係なく、こういうふうに出かせぎが行なわれておるのが実情のようであります。これはいま私が申し上げましたように、東北地帯におきましては、特に単作でございますので、百八十日、大体一年の半分でありますが、一年の半分の労働力で所定の収穫を得られるわけでありますから、あとの余剰の労働力をどのように使うかということ、それがほかの地方において仕事のあります方面との連絡がついて、出かせぎというような形になってきて、地域によりましては出かせぎの方々のために寄宿舎などをつくって、そして農繁期に国へ帰ろうとするときに、「行ってらっしゃい」といったようなことばで送り出すといったような、そういう、何といいますか、非常に通常の作業のような形になってきている。しかし、反面において、私どもはまた農家の御主人公が外に出ておられるということの家庭の環境、社会環境等考えてみますというと、そういうことはそれでいいんだなあと言っておるわけにもいきません。したがって、農業のサイドから考えますというと、私どもはそういう出かせぎというふうなことをせずに済むようなふうに持っていきたいと、これが私どもの本心でございます。  そこで、御存じのように、私どもが農政の中でやっております第一は、やはり規模を拡大して中核的な農業を中核にして、その周辺に小さな零細な方々を集めてできるだけ経営規模を広げていく、そういうことをまず第一に考えます。  もう一つは、ただいま国会に提出して御審議を願っております農振法、農業振興地域の法律、これを改正しようとしておりますが、この改正によりまして、小平さんも御存じのように、日本の農村の人々というのは、これは日本人全体の風習かもしれませんが、先祖からもらった土地に対する執着というのが非常にあるわけでありまして、規模が小さいから、それだけでは農業としての産業としてその生活をやっていくには足りない零細な規模の方々は、お持ちになっている農地を規模拡大するところに譲渡していただいて、規模を広げていくことができればそれに越したことはないのでありますが、譲渡はいやだと。貸すというと、やっぱり小作権が強くあって、返してもらえない心配があるというふうなことで、規模拡大がとかくおくれがちでありますので、今度の法律では農地法に対する観念を若干修正することにいたしまして、いわゆる都道府県知事の認定によりまして利用権を設定するというようなことをいたしました。そういうことになりますと、規模を広げていくのに非常に便利でありますので、そういうようなことをして、いまの零細な農家の方々のお持ちになっておる農地を効率的に運営して農業を他産業に比較して劣らない産業として育成していこうと、こういうようなことに力を入れておるわけであります。  したがって、私どもはいわゆる出かせぎをせずに済むような農業をやってまいりたいというのは、そういうふうに農業が他産業に比較して産業として成り立ち得るような農業を育成していく、それがまた自給率の向上にもつながるわけでありますので、そういう方向で逐次施策を進めておるわけでありますが、その間においていま申し上げましたような出かせぎの問題がございますので、この出かせぎの問題につきましては、労働省でもたいへんいろいろ心配していただきまして、その待遇であるとか、あるいはまた社会保険等のことについてもできるだけの措置を講ずるようにいたしておりますが、なお私どもといたしましても、そういう方面に力を入れてまいりたいと、こういうふうに考えておるわけであります。  それで、今後の法律改正にあたりましても、雇用保険法案の御提案にあたりましても、やはり出かせぎの方々ができるだけその均てんに浴するように最善の努力をいたしておる、こういう事情でございます。
  249. 小平芳平

    ○小平芳平君 農林大臣が最初に、基本的には雇用保険法案は必要なものだというふうに述べられましたが、それは私は非常に問題があるということでいま問題提起をしている。その問題があるということの一つは、第一次産業に対する取り組みがはたしてこれでいいのかどうかということを私は非常に疑問に思っております。  で、これは北海道の農林漁業団体失業保険対策協議会というところから来た要請書ですが、同じような要請は各地の農業委員会等から参っております。これらの方に共通する内容としましては、日本の国の発展のにない手であった第一次産業に対して、この失業保険の面で格差をつけられることはもってのほかだということ、これは一つ衆議院修正もございましたが、しかし、もう一つは、また、一体第一次産業をこれからどう持っていかれるつもりなのかということが非常に問題で不安の種でもあろうと思います。農林省としてはいまるるお話がありましたのでもう私はけっこうですが、第一次産業に対する国の取り組みということをひとつもっと徹底していただきたい。農業の基本問題だと大臣おっしゃいましたですが、食糧、飼料等が安いから外国から買うと、そうして休耕その他、あるいは私が先ほど説明したところでは部落そのものが総壊滅しようというような山間部落ができているというようなことはもう少し、ただ国の開発というだけではなくて、農業、漁業、そういう面からも手を指し伸べることができませんか。この点はいかがですか。
  250. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) これも今回の国会で成立いたしました法律で、一つは農用地開発公団という考え方がございます。これは私どもの立場では、ただいま小平さん御指摘のように、国際的に考えてみましても、世界の食糧事情というのはかなり逼迫しております。また、ずっと遠い将来のことを考えてみましても、なおさらこの問題は重大であります。まあ、そういう非常に長期のことは別といたしましても、私どもは昭和五十七年をめどに、わが国の農産物の自給率の維持、向上につとめ、それの長期見通しを発表いたしておりますが、それによりましても、やっぱり未利用地、低位利用の土地をできるだけ開発をいたしまして、そして、そういう地域を農用地として、今回とりあえず全国で現在やっておりますものを加えて五カ所ほど大規模のものをやりますが、そのほかに全国で二十七カ所ほど畜産基地を設定いたすというふうなことでございまして、私はわが国の農政の目標といたしましては、いま申し上げましたように五十七年をめどに、米は一〇〇%、あるいはくだもの、野菜、肉類、牛乳、酪農製品等は八〇%ないし九〇%の自給度を維持してまいるという方向で、したがって、そういう方向のために、ブロイラーなどは御存じのように土地をあまり必要といたしませんけれども、大農畜などは土地を非常に必要といたします。それから野菜もそのとおり。したがって、御指摘のありましたように地域が荒廃してしまうということにつきましてはたいへん私どもは困ることでありまして、一方において乱開発を防止すると同時に、さらに新しい農用地を開発してまいる。そういう計画を年次的に行なって、毎年予算にも計上いたしまして、そうやっていく方向でやっているんでありますけれども、部分的に見ますと、やはり里山などでだんだん荒らされておるところもございます。先般参議院でも成立さしていただきました林野の三法律等によりまして、これらのものも乱開発を厳に、きびしくするというための法律でございまして、お説のように私どもはこの狭隘な国土の中で、一億以上の人口をかかえております国で、しかも環境破壊というふうなことから考えましても、やっぱり緑地は守らなければならぬ。森林を守るほかに一次産業を一番重要視していく必要があるということにつきましては御意見のとおりでありまして、政府はそういう方針でやってまいるつもりでございます。     —————————————
  251. 山崎昇

    委員長山崎昇君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、橋本繁蔵君が委員辞任され、その補欠として棚辺四郎君が選任されました。     —————————————
  252. 小平芳平

    ○小平芳平君 では次に、法案内容についてひとつ労働省から簡潔に御答弁をいただきたい、ちょっと時間を取り過ぎましたので。  現行失業保険法では勤続年数によって給付日数をきめておりますが、今回この雇用法案では主として年齢によって段階を設けたという、その理由についてお尋ねしたい。お尋ねしたい点は、新たな不均衡が生ずるのではないかという点が一つ、第二には外国にそういう年齢別の段階制度がありますかどうか、それが第二。第三には、三十歳以下を一律にすることは特に問題が起きはしませんか。たとえば十八、九歳の人が失業した場合、二十八、九歳の人が失業した場合、そういうことを考えたならば、家庭的にも社会的にも相当環境の違った人が同列に扱われるということに対してはどうお考えですか。
  253. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 先生御承知のように、現行失業保険法におきましては原則として百八十日、で、被保険者期間の長短に応じて九十日から最高三百日、こういうことに定められておりますが、従来のこの被保険者期間の長短によって給付日数を定めるという方式に相なりますと、先ほど来申し上げておりますように、最近の労働力需給の状況が好転してまいりまして、全体としては非常に逼迫の状況にありまして、特にその中で新規学卒を中心に三十歳未満につきましては求人倍率がきわめて高い数字を示しております。で、失業保険受給者の三十歳未満の保険金の受給実績を見てまいりましても、その就職までの期間というのは平均六十三日、こういうことに相なっておりまして、その反面、中高年齢層になりますと非常に就職が困難でございまして、給付日数を完全に受給し終わってもなおかつ就職できないというような状態すら見受けられるわけでございます。特に被保険者期間の長短ということになりますと、中高年齢、四十五歳あるいは五十五歳以上の人で定年退職をした、あるいは四十五歳以上で何かの理由によって中途で離職をして再就職をしなければならないというような場合に、必ずしもそれに必要な給付期間が確保できるわけじゃございませんで、したがって、給付期間が満了してなおかつ就職できないというような状態中高年齢者の場合は非常に多い、こういう状態でございます。そこで、今後のこういった失業情勢の年齢別あるいは地域別の不均衡ということを前提にいたしまして、そういった実態により適合するような失業保険機能をどういう形で制度化すればいいかということを考えますと、労使負担による保険料をもとにいたしまして失業期間の生活の安定を得させる、こういうことを中心にして考えますと、その失業期間の長短あるいは言いかえますと就職難易度によって給付日数を定めるということがより保険の目的に沿った効率的な合理的な制度である、こういうふうに考えたわけでございます。そこで、その就職難易度の基準といたしまして、一つを年齢別に求めた、なお、年齢のほかに身体に障害のあることによって就職がむずかしい人とか、あるいは社会的にいろいろな理由によって就職の困難な人、こういう基準を定めたわけでございます。年齢によってその就職難易度を判定する際に、三十歳、四十五歳、五十五歳以上、こういう段階を設けましたのは、その年齢区分によって求人倍率あるいは就職率、現行失業保険の給付実績、こういったデータからその給付日数を定める根拠にいたしたわけでございます。三十歳未満が当初の原案では六十日でございましたが、いま申し上げましたように平均が六十三日でございますし、中でも男子は四十五日でございますが、女子の場合は七十日、こういうことから、現行制度の最低限の九十日に引き上げるべきであるということで、三十歳未満九十日、それから四十五歳から五十五歳の中年に属する人々につきましては二百四十日、こういうことに修正が行なわれたわけでございます。それから就職難易度を年齢に基準を求めておりますが、こういった例は外国の例にはございません。わが国雇用情勢実情に即してこういう制度を考えたわけでございます。
  254. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、この給付率を六割から八割というふうに修正されておりますが、これは他の保険に対する影響はどう考えますか。
  255. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 私ども当初原案におきましては、前職賃金の六〇%を基準にいたしまして、いわゆる上薄下厚、賃金の比較的低い層につきましては、六〇%から七〇%に逓増した率、それから賃金の高い層、この法案によりますと日額六千円以上につきましては、六割から五割に逓減した率ということで、比較的賃金の低い階層の人につきまして、より手厚くしようという、こういう考え方でございまして、それが今回の修正によりまして、賃金の低い層は八〇%、あとは六〇%ということでございますので、この修正によります考え方は保険給付失業給付基本手当日額は前職賃金の六割を基準にする、そうすることによって算定されますが、その際に比較的賃金の低い階層については六割から八割に逓増した率で付加的に給付を手厚くする、こういう考え方に改められたわけでございます。基本的には六割という原則は従来と変わりございませんで、低所得層についてより手厚く措置を講じたということになるわけでございます。
  256. 小平芳平

    ○小平芳平君 その説明はいいですが、他の保険に対してどういう影響がありますか。
  257. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 他の社会保険におきましても、一般的に保険給付の平均基準は六割という数字がおおむね適用されておりますが、他の社会保険と現行失業保険法、今回の雇用保険法案との違いは、他の社会保険におきましては平均賃金あるいは標準報酬に対する六割、こういう考え方がとられております。私どもの雇用保険におきましては総賃金の六〇%ないし部分的に八〇%、こういう考え方でございますので、その点におきましても他の社会保険と若干質的な差異はございます。しかしながら、ILO条約等に示されております、六割程度の給付率という点におきましては、他の社会保険と今回の雇用保険も軌を一にするものであると、かように考えておる次第でございます。
  258. 小平芳平

    ○小平芳平君 あまり軌を一にしてもいないと思いますが、次に行きます。  短例雇用者の特例給付は九十日分が五十日分に切り下がることになりますが、修正後においても。これはどの程度の実際は切り下げになりますか、実際は切り下げになるから九十日から五十日になるわけですが、実情はどうですか。
  259. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 今回の修正によりまして、特例一時金の額が原案の三十日から五十日分に改められたわけでございます。現行失業保険法によります短期被保険者の受給の実績は平均日数にいたしまして五十三日でございます。いわゆる東北、北海道の出かせぎ労働者の方々の受給実績は平均五十三日になっておりまして、その受給実額は十二万六千円という実績が出ております。この十二万六千円は四十七年度の平均でございますので、これを四十八年、四十九年、要するに一年半ぐらいになりますが、この法律が、雇用保険法施行されます五十年三月の時点で十二万六千円の実額がどのくらいに伸びるかということを試算いたしますと、約十五万五、六千円から十六万円に近い金額になろうかと推計されます。そこで、今回の五十日分が幾らになるかということでございますが、最高が七千五百円の六割でございますので、四千五百円になります。もし最高の四千五百円の人であれば五十日分で二十二万五千円ということになります。それから出かせぎ労働者の現在の時点での平均賃金日額、この保険給付の算定の基礎となります賃金日額が大体五千円から六千円というふうに考えられます。それで五千円から六千円といく場合に、六千円の場合は三千六百円になりますので、五十日分であれば十八万円、五千円の場合は十五万円になります。したがいまして、平均的に見ますと十五万円ないし十六万円という数字が出てまいります。最高二十二万五千円、こういうことでございますので、現行制度で最高九十日分を受給できるとした場合に、五十年の三月の時点での受給の推計額は、ただいま申し上げましたように十五、六万円程度であるというふうに考えられます。それに対して、新しい雇用保険法案によります五十日分の実額は平均的に十五万ないし十八万円、最高で二十二万五千円ということになりますので、大臣が委員会あるいは衆議院の本会議において現実に出かせぎの方々が受け取られております実績を下回らないように、——あるいは東北、北海道地区の各団体、地方公共団体の方々から陳情がございました激変を与えないようにという強い要請に対しても十分こたえ得る制度になったと私どもはかように考えているわけでございます。
  260. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、九十日分が五十日分になったために失業保険が切れた。急いで短期的な職をさがす。したがって、そこの労働市場で便乗的な賃金切り下げが行なわれるというおそれはないというふうに理解してよろしいですか。
  261. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) さようなことにはならないと私どもは確信いたしております。
  262. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、第十八条「(基本手当日額の自動的変更)」、これは二〇%をこえたとき自動的にスライドするということでは現状に合わない、これはそのとおりですね。
  263. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 現行失業保険法におきましても、失業保険金日額の自動スライドの規定がございまして、それをそのまま雇用保険法案におきましても取り入れているわけでございます。この自動スライドの条項はこの社会保険に例のない、非常に進歩的な制度でございますけれども、ただ最近の保険におきましてもスライド条項が取り入れられております。その際考えていただきたいと思いますのは、失業保険におきましては他の年金その他の長期保険の場合と違いまして、失業保険あるいは今回の雇用保険失業給付基本手当日額は、失業直前の賃金がそのまま反映される仕組みになっておりまして、こういう短期保険におきましては長期保険の場合と異なって、その賃金事情はそのつど直接的に反映される、こういうことでございますので、私どもは毎月勤労統計の賃金の変動によってスライドをさせる、その際の賃金の上昇の幅が二〇%ということにつきましては、私はこれで十分ではないか、かように考えている次第でございます。
  264. 小平芳平

    ○小平芳平君 しかし、この審議会等でも妊娠、出産、育児等の場合は受給期間を四年まで延長するという新しい制度が発足するならば、検討すべきであるという意見が出ているじゃないですか。
  265. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) その点につきましては中央職業安定審議会におきましてもこの法案を提出後に、同様な検討の必要があるという御意見がございまして、私どもはこの受給期間の延長措置に伴いまして、実際どれくらいの方々がこの条項によって救済されるのか、そういった実績も施行後見ました上でこの問題については審議会におきまして十分御検討いただきたい、かように考えている次第でございます。
  266. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、さっきのように十分であるというのじゃなくて、十分検討の必要があるということだと思います。  それから第二十三条「(個別延長給付)」、第二十五条「(広域延長給付)」、第二十七条「(全国延長給付)」、これは政令で日数を定めるということですが、もう一つ具体的に解説していただきたい。  それから、特に全国の失業率が基礎となるというような場合、何らかの基準といいますか、指標が必要ではありませんか。
  267. 関英夫

    説明員(関英夫君) 個別延長給付につきましては、審議会等の段階で説明の資料をお出しいたしまして、法案成立後制定する政令の考え方を各審議会でも御説明申し上げておりますが、まず、個別延長給付日数については、六十日というふうにきめたいと思っております。それから、その対象といたしましては、たとえば中高年齢者等求職手帳の所持者、これは中高年齢者等で就職が特に困難な者でございますが、そういった者、あるいは身体障害者雇用促進法上の身体障害者に準ずる程度の、身体に欠陥があるために就職が困難な者、あるいは四十五歳以上の者、四十五歳以上の身障者とか刑余者、あるいは社会的事情により就職が著しく阻害されている者、こういったような者を一応想定いたしておるわけでございます。  それから全国延長のお話がございましたが、全国延長につきましては九十日延長するということにいたしたいと思っております。発動基準につきましては、失業保険の受給率が五%をこえる月が連続して四カ月をこえる、かつ初回受給率についても減少が見られない場合というようなことを審議会段階で説明させていただいております。
  268. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、高齢者に対する給付では、厚生年金との関係をどう見るか。現状としては関係なしに受け取れるわけだと思うのですが、そういう点をどう考えられますか。
  269. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 厚生年金の支給を受けておられる方につきましても、この雇用保険失業給付は関係なしに支給されることになりますので、いわば併給ということになるわけでございます。
  270. 小平芳平

    ○小平芳平君 第五十七条「(常用就職支度金)」、現行就職支度金を昨年十一月一日の通達で変更された。で、現在はどのように運営されておりますか。それが一点。  それから第二点は、今回常用就職支度金として身障者、高齢者というふうに、特定な人にしか支給、給付しないことにしようというお考えは、悪用されたということを言われるのかと思いますが、しかし、善意な人まで打ち切ってしまうということは、あまりにも急激な変更になりませんか。
  271. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 現行就職支度金制度につきましては、いろいろと関係者の間から、特に労使関係者から御批判がございまして、この就職支度金制度が当初設けられましたときには、できるだけ早く安定した職業につかれるということが望ましい、そのために、失業保険の所定給付日数を半分以上余して早期に就職された場合には就職支度金が支給される、そのことによって就職促進すべきであると、こういう御趣旨で、当時炭鉱離職真臨時措置法、それから駐留軍関係離職者等臨時措置法等におきましてこういう制度が設けられておる、その例にならって設けられた制度でございます。ところが、先ほど来申し上げておりますように、求人倍率が高くなり、労働力需給が逼迫してまいりまして、比較的年齢の若い方々については就職がきわめて容易になる。その反面、四十五歳以上の中高年齢者につきましては就職がなかなか困難である。そこで、この就職支度金制度が設けられました意図、目標が必ずしも十分に達せられないような運用実績になってまいっておるわけでございまして、ほんとうに就職のむずかしい人がやっとの思いで就職をしたいということになりますと、所定給付日数がもう残り少なくなっている、あるいはもう完了してしまっているということによって、そういう人たち就職支度金はもらえない。二十歳、三十歳以下のきわめて容易な人は次から次に、二度でも三度でも繰り返して就職支度金がもらえる。こういうことによりまして、この制度目的が全く達せられないような実績が出てまいっております。逆に、比較的年齢の若い層、あるいは一つの例でございますが、タクシーの業界のようなところでは人の引き抜きに使われる。こういうことから、特に労使関係者からこの制度改善が強く望まれておりまして、そういうことから、今回ほんとうに就職のむずかしい人たち就職した場合に、残りの給付日数のいかんにかかわらず就職支度金を差し上げる、こういう制度に改めたわけでございます。
  272. 関英夫

    説明員(関英夫君) 昨年秋の就職支度金制度の取扱いの改正点でございますが、従来支給されていた者のうち、以前に就職支度金を受給した者が短期間で自己の都合による退職等の理由でやめて、その雇用されていた業種と同一の業種に、同一の職種で再雇用された場合、こういう場合は支度金を支給しませんという取扱いに改めました。具体的に申し上げますと、その新しい再雇用が、自分が前につとめていた業種と同一の業種であること、それから携わっていた職種も同じであること、それから自分の都合によって前の事業所をやめている、解雇されたのではなくて自分の都合でやめていること、それから二年前に就職支度金を受給して再就職していること。こういうようなことで、要するに、短期間に同一職種で自己都合で転々と離職を繰り返すと、こういう場合には支給しないということに取扱いを改めております。
  273. 小平芳平

    ○小平芳平君 その御趣旨、御説明はわかりますが、むしろ就職支度金をむしろ支払ったほうがいい、そういう場合の人もいるわけです。で、今回のように、特定の人以外は支度金がなくなるということになりますと、給付が満期になるまで、——とにかく年齢によって違いますが、給付が満期になるまで、給付を受けてからでなくてはまず就職しないというふうなことも起きませんか。
  274. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 確かに小平先生の御指摘になりますように、就職支度金制度がなくなりますと、就職促進の効果が、この制度があるよりは確かに問題が残るかと思います。しかしながら、そういった支度金がないから、就職することがきまったけれども、残りの給付日数全部もらい終わるまで少し就職は待っていようというような心得違いの方もいらっしゃるかもわかりませんけれども、だれしも失業していれば一日も早く安定した職場につきたい、これは人情だろうと思います。私ども、そういうふうに御指導申し上げ、適正な運用をはかっていきたい、かように考えております。同時に、今回の雇用保険法案におきまして従来の失業の認定の回数を減らしまして、原則として四週に一回ということで、失業の認定の問題につきましては、できるだけ簡素化をいたしますと同時に、その余力で各人各ケースごとに、できるだけ一日も早く本人の希望した職場につけるように、就職の指導なりあっせんにつとめてまいりたい、こういう措置をとることにいたしておりますので、先生のような御懸念をされますような、あるいは常識的に考えて不心得の人もあるかもわかりませんけれども、私は、これはやむを得ないと考えておる次第でございます。
  275. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、この雇用改善等の三事業について、これは労働大臣局長もまさしく今回の改正点の目玉みたいに説明されますが、また一方では、そういう保険事故でないものを保険事故と称してそういう保険を拡大解釈するのはおかしいじゃないかという意見も十分あることは御承知だと思うのですが、いかがですか。
  276. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 社会保障制度審議会におきましても、先生のただいま御指摘になりましたような御意見があったことは確かでございます。で、私どもは、その際にも御説明申し上げたわけでございますが、雇用改善能力開発雇用福祉の三事業が保険事故だという御指摘でございます。当時各審議会委員の方々から保険事故として考えるのはおかしいという御指摘でございましたが、私どもはこれは保険事故と考えているわけではございませんで、この雇用保険法案の中で、失業給付事業がこれが保険事故に対する給付事業でございます。それに対する、いわゆる保健施設的な付帯的な事業としてこの三事業を設定いたしたわけでございます。しかもなおかつ、この付帯的に行ないます三事業につきましては、それを通常の労使負担の本来の保険事故に対する保険料負担でなくて、全額使用者の、いわゆる使用者の社会的責任という観点から使用者の全額負担による保険料でこれをまかなうということにいたしたわけでございまして、保険事故の概念を混乱させるような考え方でこの制度をつくったわけじゃ決してございませんことを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  277. 小平芳平

    ○小平芳平君 たとえば「(雇用福祉事業)」、第六十四条、これは従来も失業保険の特別会計の資金をもって、ビルを建てたり、住宅を建設したりしてきた。で、そうした福祉事業に使った金額と、それから失業保険の会計としては、財産は幾らあるか、積み立て金は幾らあるか、それはどうですか。
  278. 関英夫

    説明員(関英夫君) 積み立て金は、四十八年度末で約四千二百億だったと存じます。  それから、福祉施設として支出いたしましたのは、四十七年で千三十八億でございます。
  279. 小平芳平

    ○小平芳平君 事業団への出資金というのはどちらへ入りますか。
  280. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 現行失業保険法におきましては、二十七条の二で「福祉施設」の規定がございまして、これによってただいま先生のお話の事業団の出資金、あるいは交付金等が支弁されておるわけでございます。その出資金の累計額をお尋ねでございましょうか。
  281. 小平芳平

    ○小平芳平君 はい、そうです。
  282. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ちょっといま数字を……。
  283. 関英夫

    説明員(関英夫君) 累計がちょっと出ませんが、四十八年度予算で申し上げますと、事業団への出資金は三百八億でございます。
  284. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは、本来の失業給付に振り向けるべき資金が、その資金が余ったからといって、そういう福祉事業と称して住宅を建て、ビルを建てるのはおかしいじゃないかと、もっと給付の充実こそ先決ではないかという意見に対してはいかがですか。
  285. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいま申し上げましたように、失業保険法の二十七条の二で、労働者福祉のために被保険者あるいは被保険者に準ずる人のために、この保険料を財源として福祉施設を措置することができるという条項が設けられております。他の社会保険におきましても、保険施設という形で各種の事業が行なわれていることは、もう先生御承知のとおりでございます。ただ、現行失業保険法のこういった施設のあり方につきまして、従来当委員会におきましても、いろいろと御指摘をいただいてきたところでございます。また、こういうものが今後拡充されなければならないという御意見もございます。その際に、労使負担する保険料でこういうものがどこまで支弁されていいのかという、いろいろな問題もございますので、今回、この雇用保険法案におきましては、こういった各種の福祉施設を含めまして、さらに三事業という形で整理をいたしまして、この分につきましては、本来的な保険事故に対する労使保険料でなくて、使用者負担する保険料によって全額支弁することにいたしたわけでございます。この点につきましては、従来の当委員会の御指摘の線に沿って制度を確立することにいたした次第でございます。
  286. 小平芳平

    ○小平芳平君 たとえば、移転就職者用宿舎ですね、この移転就職者用宿舎は、私がいただいた資料でしたら、昭和三十五年に三百九十二戸、三十六年九百四十八戸、累計して九万七千五百三十八戸ということでよろしいですか。当初からこの移転就職者用宿舎は、たとえば北海道、あるいは九州の炭鉱で離職された方が、東京、横浜、名古屋、大阪等で就職する場合のそれこそ離職者用宿舎として建設されたものと私は承知しております。ところが、その空室ができるんですね。相当地域によっては空室ができる。あるいは契約は最初一年で契約をして入居して、さあ一年で出て行けといったって、行き先があろうはずがないということ、そういうところから、ずいぶんこの運営も現在は変わってきているではございませんか、いかがですか。
  287. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) この移転就職者用宿舎は、当初、先生のただいま御指摘になりましたような趣旨から設けられたわけでございまして、その後、逐年建設を続けてまいっておりますが、当初から目的になりました、就職をするために移転を必要とする、その際に住宅がないために就職がむずかしい、こういう人たちのための暫定的な住宅として建設をいたしておりまして、その目的は現在も変わっておりません。ただ、一応暫定的な住宅でございますので、その後いわゆる企業の給与住宅なりあるいは公営住宅なりあるいは労働者個人で住宅を建てるなり、そういったことによって一定の期間後は引き移っていただくという一応の前提になっておりますけれども、現在の住宅事情ではなかなかそういうふうに事がうまく運ぶわけにまいりません。そこで二年なり三年なり、住宅事情がよくなると申しますか、移転先が確定するまでは引き続きその住宅に居住していただくと、こういう制度になっておりますために、かなり長期にわたって居住される方がふえてきていることも事実でございます。
  288. 小平芳平

    ○小平芳平君 と同時に、以前は他地域、ほかの地域から移転してきた人が入居したわけですか。現在はその地に住みついている人でも入居できるんではないですか。
  289. 関英夫

    説明員(関英夫君) 本来、移転就職者のための宿舎として建てるわけでございますが、たとえば工場の進出が予定どおり進まなかったというような理由で、どうしても空室ができる場合がございます。その空室を、従来はそういう他地域から、遠方から移転してきた人に限るということで、入居させずにあけておきましたことが国会の場で問題になったことがございまして、そこで、その空室の利用として改正をいたしまして、「移転就職者以外の労働者で、住居の移転を余儀なくされたこと等に伴い職業の安定を図るために宿舎の確保を図ることが必要であると公共職業安定所長が認めるものに、移転就職者の利用に支障がない限り、貸与することができる。」ということで、一部近くのほうから移転を余儀なくされた者も含めて、従来はより遠方の広域紹介、こういうものだけに限っておりましたものを、やや広げておりますが、これはあくまでそういった広域紹介の計画、そういうものを見まして、そういう人たちの利用に支障がない限りの空室の利用という限定された範囲内での改正でございます。
  290. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、建設省、たいへんお待たせしましたですが、建設省が建てようとする公営住宅と、この移転就職者用宿舎と、まあ実態は変わらなくなっちゃっているわけですよね、実態は。ですから、ただ、国の公営住宅として建てる場合と、それから失業保険の資金で建てるという場合と、その資金の出どころが違うだけで、実態は変わりない。建設省はどのように考えますか。
  291. 内海英男

    政府委員(内海英男君) 労働省の関係の雇用促進事業団としてやっております移転就職者用宿舎は、先生が御指摘のような内容のものだと思いますが、建設省が行なっております公営住宅というものは、御承知のとおり、都道府県または市町村が、住宅に非常に困窮をしておる低所得者を対象といたしまして、国の補助を受けて建設する低廉な家賃の賃貸住宅という性格を持っておるものでございます。都道府県及び市町村がその地域の住宅事情を勘案して隔年ごとに建設計画を定めて建設をしておるというのが実情でございまして、しかしながら、公営住宅ではただいま先生からも御指摘がございましたとおり、炭鉱離職者向きの住宅等につきましては、特定のそういった目的を持った公営住宅として特にその建設につとめておるところでございますが、今後とも離職者のうち、公営住宅により措置しなければならない住宅困窮者に対しては、公営住宅の供給という面で促進をはかってまいりたいと、こういうのが建設省の基本的な考えでございます。
  292. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまおっしゃるように、建設省としてはその離職者が就職してくるような場合も頭に入れて公営住宅の建設につとめたいと、こういう御趣旨ですか。
  293. 内海英男

    政府委員(内海英男君) ただいまの特に特定の目的を持って公営住宅が一部やっておりますのは炭鉱離職者向けの公営住宅、こういうようなものはございます。
  294. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうすると、労働大臣まさしく同じことを、——ただ建設省のほうの資金が十分あれば、建設が順調に進みさえすれば何も失業保険のお金を住宅建設に使う必要ないわけです。福祉ならもっと別の福祉を考えようがあると思うんです。住宅政策がおくれているというその埋め合わせにこうした離職者用住宅をつくっているという。しかも、これからは千分の一ですか、千分の一は恒常的にずっと福祉関係として使っていこうということになりますと、いつまで、離職者用の住宅をどこまで限度なくつくっていくかですね。いかがでしょうか。
  295. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 労働省の住宅は、御承知のように、先ほどから炭鉱離職者の場合、具体的な例が出ましたように、よそからこちらのほうに移る人、その人たちのために建ててやる、そして、その中から一割というのはいつでもあけておく、いつでもだれかが入ってきてもいいように。そして、そこで一年間なら一年間こちらのほうの期間きめた間に自分で家を見つけることもあるでしょうし、あるいは建設省の公営住宅にお世話になって入るというふうなこともありまして、私のほうのやつは、自分のほうで、役所の雇用促進事業団で土地から何から全部買って、そして二DKぐらいで七千五百円ぐらいで、とにかく入ってくる人ですから、必ず家があるということがまず就職の最大の条件になりますから、そういうふうに受けざらをきちっとつくって働く諸君を安心させるということでありますから、私は、これはやはりずっと、先ほどから言われたように、雇用をあらゆる面に伸ばしていく場合には、ますます量と質の問題で、ことに今度はいまから先は質の問題が出てくると思うんです、労働者の希望というものは非常にふくらんできましたから。そういう問題で充実していかなきゃならぬ問題と、こう思っております。
  296. 小平芳平

    ○小平芳平君 その御趣旨は賛成ですが、その量と質を改善し、いつでも受けざらをつくるという御趣旨は賛成ですが、先ほど来申し上げます私の言わんとするところもおわかりだと思うんですね。結果としては、まあA市ならA市に住宅が何戸建設されるか。それで限度があるわけですから、昭和四十九年度建設される戸数が何戸かによって建設省のほうの、——まあ建設省のほうと言ってはなんですが、県営住宅なり市営住宅が十分あれば、労働省の移転宿舎はそこへは建てる必要ないわけでしょう、十分あれば。それがこの昭和三十年代、特に住宅が少なくて、住宅不足で、しかも炭鉱離職者等の大量の移動があった、その急場の対応策として私はこの事業は始まったように思うんですがね。恒久的にずっとこれからも建設していきますか、いまやがて十万戸になりますが。恒久的につくっていくとすれば、あとどのくらいつくりますか。
  297. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 先ほど建設政務次官から御説明がございましたように、私どものほうのこの暫定的な、就職後の暫定期間の住宅確保のためのいわゆる移転就職者用宿舎でございます。たてまえは一応一年でございますが、二年、三年、あとの住宅の確保ができるまでは入居していただく、こういうことにいたしております。で、この移転就職者用宿舎から公営住宅なりあるいは企業の給与住宅なりに移っていただく。こういうたてまえになっておりまして、したがってそれぞれの地域に工場が新設される、あるいは雇用量がふえることによって住宅が必要になる。その際、公営住宅は当該市町村なり当該地域住民のための住宅ということで、新しく入ってくる者を予定して公営住宅が建てられるわけではございませんで、一応移転就職者のための必要な住宅という形で確保されてまいります。そのあとの引き継ぎとして公営住宅の確保を建設省にお願いしておるわけでございます。したがいまして、当初炭鉱離職者が大量に移動いたしました際には、愛知県とか大阪府とか東京都とか、こういう大都市周辺にこの雇用促進住宅、移転就職者用の宿舎が大量に建設されましたが、その後全国的な広域職業紹介によります移転をして就職をするという人たちのために、あるいは過疎地域に新しく工場が建設される、その必要な労働力の移動のための住宅確保という見地から、全国的にこの住宅が建設されておりまして、ここ数年来、大体平均的に一万一戸、——八千戸なり七千戸建設してまいりましたが、本年度は約六割程度に減少いたしております。まあ、その地域その地域の労働力の移動状況、新しい雇用の増大の見通し、こういったことによりまして、地域の実情に応じてこの建設をやってまいるわけでございますので、今後無計画にこういった住宅を建設するつもりはございませんで、それぞれの地域の雇用実情とにらみ合わせながら……
  298. 小平芳平

    ○小平芳平君 何がございません……。
  299. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 無計画にこの建設をするつもりはございませんで、それぞれの地域の実態に応じて、雇用増の見込みに応じて、必要な限度において建設をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  300. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、必要な限度の移転就職してくる人が、公営住宅もたくさんできて、そうした離職者用住宅がそれほど必要なくなったと、雇用福祉事業の千分の一の収入が余ってきたというときはどうしますか。
  301. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 今回の雇用保険法案の千分の十三のうちの千分の三が雇用改善事業能力開発事業雇用福祉事業に充当されることになっております。その千分の三のうちの一部分がこの雇用促進住宅に充てられるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、大臣からお話しございましたように、今後は必ずしも量ではなくて、質と量ということで、必要な量であると同時に、労働者の希望に応ずるような質的な改善もはかってまいるわけでございますが、終局的に、この住宅建設に必要な経費が不要になるということになりましても、一般的な労働者福祉のための諸事業は今後一そう労働者の希望に応じて充実してまいらなければならないと、かように考えております。同時に、雇用改善事業なり、あるいは能力開発事業も今後いろいろと需要、要望もございますので、必ずしも、この住宅の建設経費が今後減少したからといって、千分の三の経費が過大に余剰を来たすというようなことにはならないと私ども考えておるわけでございます。
  302. 小平芳平

    ○小平芳平君 それじゃ建設省には、そういう失業保険の資金で住宅を建てなくてもいいように充実していただきたいことをお願いいたします。——けっこうです。
  303. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 建設省けっこうです。
  304. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、能力開発事業職業訓練がほとんどを占めておりますね。能力開発事業事業主の行なう職業訓練に対する援助、それから被保険者等の公共職業訓練の充実という二つの項目でよろしゅうございますか、その二つのこと。
  305. 久野木行美

    政府委員久野木行美君) 大筋はその二つでけっこうでございますが、それ以外に被保険者の自発的な能力開発、向上の援助というのもございますし、それから、さらにこまかく申しますと、技能評価の問題等もございます。
  306. 小平芳平

    ○小平芳平君 職業訓練は、労働省からいただいているほかの資料を見ましても、たしか四十八年の調査か何かで、企業内訓練を希望するという者が四〇%、公共訓練を希望するという者が二〇%という資料をいただいておりますが、全体として公共訓練は人気がないですか、いかがですか。
  307. 久野木行美

    政府委員久野木行美君) ただいまの先生の御指摘の数字は、私の記憶に間違いなければ労働者教育訓練に対する意識調査だったと存じます。確かに先生の御指摘のような数字ございまして、はなはだ残念ではございますけれども、公共職業訓練というものについて十分な周知という点に欠けておったようにも思えます。私どもとしては、現在の公共職業訓練で万全だとは存じておりませんし、今回のこの雇用保険法案の通過によりまして、能力開発事業を一本の柱としていただきまして、その中で今後公共職業訓練も、また事業内の訓練も、双方相まって労働者の皆さんの能力を向上させるために十分に総合的に進めてまいりたいと、こういうように考えております。
  308. 小平芳平

    ○小平芳平君 こういうことがいわれていることは御存じですか。「公共職業訓練よさようなら、企業内訓練よこんにちは」、そういうことがいわれているのだそうですが、現場では。そういう場合、能力開発事業の先ほど指摘しました事業主の行なうものと、公共訓練と、それが雇用保険法案に基づく三事業としてやった場合には、事業主のほうに重点がかかってまいりますか、いかがですか。
  309. 久野木行美

    政府委員久野木行美君) 確かに先ほど先生のおっしゃいました「公共職業訓練よさようなら、事業内訓練こんにちは」ですか、そういうことがどこかでいわれたというようなことは私も聞いております。しかしながら、問題は私どもとしては決して公共職業、——今度のたとえば雇用開発事業、なるほど事業内訓練も一つの柱ではございます。しかしながら、それによりまして公共職業訓練のほうを力を抜こうとか、軽視する、そういうようなつもりはさらさらございません。で、事業内訓練につきましても、現状お許しを得まして若干説明させていただきますと、最近の進学率の急速なる上昇によりまして、中卒の方々も約十四万人ばかりが要するに進学は断念いたしますものの、約十万余が職場へ入ってしまう、私どものほうの公共職業訓練校へ参ります方々が約三万有余というような数字になっております。で、このたとえば中卒の方々にも、できるだけ社会に通用するような基礎的な技能と知識というものを付与するのにはどうしたらばいいかということがやはり問題かと存じます。その場合、もちろん三万数千人の公共職業訓練校へ来る訓練生につきましては、当然のことながら公共職業訓練校におきまして訓練いたします。では、あとの十万人の職場へ入った方々、この方々にいかにして基礎的な訓練、世の中に通用する訓練を付与するか、そこにやはり私ども問題があると思います。そこで、たとえば中卒のその方々に対しましても、基礎的な訓練をするのにはどうしたらいいかということでやはり考えられますことは、一つ事業内におきまして訓練をしていただく、ただしその訓練は決して使用者のみの恣意的な企業のためだけというような訓練ではなく、私どもの申しますのは、むしろ公共職業訓練校において行なわれております訓練と同内容、同基準にのっとった企業内訓練をやっていただくことだと存じます。そこで、そういう私どもとしては公共職業訓練校で付与しております訓練の基準と全く同一の基準をもちまして、事業内において使用者の御協力を得て、事業内訓練、それは中小企業等におきましては共同でやっていただく、そういうことによりまして公共性のある、私どもあえて言わせていただければ公共職業訓練校でやっておる訓練と全く同一の基礎的な技能と、それから知識というものを事業内においてやっていただきたい。そういう意味におきまして、そういうことに御協力いただく使用者に対しましては、いろいろの基準を設けまして、その基準にのっとり、そのやっていただく方々に対しましては、それらの補助、助成をいたして、そして公共的な訓練をやっていただこう、こういう趣旨で考えております。  それから、もう一つは、やはり事業内だけではできない訓練もあるかと存じます。そういうものにつきましては、今後は公共職業訓練校の中に事業内ではできない訓練につきまして、使用者側からの委託を受けまして、私どもはこれを受託訓練と呼んでおりますけれども現在労働者になって、もうすでに就職している方々に対しまして、公共職業訓練校で引き受けて訓練をいたす、そういう受託訓練の面を拡大いたしたい。それから、さらには事業内に入りました新規学卒のみではなくて、成人の方々に対しましても公共職業訓練校において受けざらをつくりたい、そういう趣旨で、たとえばこの法律においてもお願いいたしました技能開発センターというようなものをつくりまして、そこで受託訓練、——従来の訓練校でもやりますが、そういう技能開発センターで在職者についても十分訓練をする。そういうことによりまして、公共職業訓練と事業内の訓練、両々相まって社会的に通用するような公共的な訓練というものを働く方々にすべて徹底したい、こういうのが趣旨でございます。そういうのをこの雇用保険法案の中の能力開発事業でお願いしたと、こういう次第でございます。  それから、あえてもう一つつけ加えさせていただきますと、自発的に教育訓練を受けたいという方々もございます。そういう方々につきましては、有給訓練休暇というようなものにつきまして、使用者が何らかの形で、たとえば労働協約なり就業規則でそういうのを制度化している場合には、それに対しましても助成をするというようなことによって、労働者の皆さんが気がねなしに有給訓練休暇が取れるような形にする、こういうことによって訓練をしていこう。そういうことをするために使用者側に金が出るという形にはなりますけれども、つまるところは労働者の皆さんの技能を高めるために使用者からさらにその同額くらいの金を出していただいて役立てたい、こういう趣旨でございます。
  310. 小平芳平

    ○小平芳平君 だいぶもう時間になりますので、もう一つ、そういう趣旨の訓練とか、あるいはこれからの雇用改善事業等にあたりましては、国及び地方公共団体も使用者として千分の三に当たる分の負担をする必要がありはしないか、それが一つです。  それから、次に、雇用改善事業のほうは雇用保険法に基づく試算額を見ますと十倍にふえます。で、特に雇用改善事業は十倍くらいに予算がふえている資料をいただいておりますが、これはほとんど助成金に、——交付金ですね、交付金に充てられる。特に三番目の、産業間の雇用改善、特定産業雇用促進交付金、社会福祉事業雇用促進交付金、これを特定産業としているのですが、こういうのは交付金などではたして雇用改善ができるかどうか。要するに、それだけの資格を持った者が養成されてこないことにはできないのじゃないですか。
  311. 関英夫

    説明員(関英夫君) 社会福祉施設等の労働力の不足問題、非常に深刻な問題でございまして、単に先生のおっしゃるとおりに、雇用奨励のための交付金を出すということだけで問題が片づくとは思いませんが、従来そういうものもございませんで、従来ありましたものは炭鉱離職者のようにたくさんの離職者が滞留しているものを雇っていただいた場合の雇用奨励だけでございましたが、今後はこれからの福祉社会のために必要な社会福祉施設等の労働力不足解消のためにも、その一助としてそういうものを考えていきたい。もちろん基本的には、そういった資格を持っている人を十分に養成すること、そうして、そういう人の労働条件改善していくこと、そういう施策が相まって行なわれなければならないことは、先生のお説のとおりだと思います。
  312. 小平芳平

    ○小平芳平君 国、地方公共団体……
  313. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 国、地方公共団体につきましては、これは理論的には確かに先生のおっしゃるとおりでございますが、ただ一般民間労働者と違っております点は、国、地方公共団体に雇用されております者はいわゆる国家公務員、地方公務員ということで身分的に保障されておるわけでございまして、したがいまして、雇用改善事業等の対象とはやや趣を異にいたしておるわけでございます。三事業の中で、雇用福祉事業につきましては、確かに福祉施設、福祉対策という点は軌を一にいたしますけれども、これは国なり地方公共団体がそれぞれ独自の立場でその雇用する国家公務員、地方公務員について各種の施設を行なっております。そういう関係で、今回の雇用保険法案につきましては、適用の面でも特例が設けられております。そういった関係から、この三事業につきましては、この制度の中では国家公務員、地方公務員は除外いたすことにいたしております。ただこの点につきまして、従来から国家公務員等につきましても失業保険の対象に当然すべきであるという御意見もございますし、今回の雇用保険につきましても、その点が再度御指摘がございましたわけでございますが、この点につきましては、中央職業安定審議会にもその意見を御報告申し上げておる次第でございます。
  314. 小平芳平

    ○小平芳平君 終わります。
  315. 山崎昇

    委員長山崎昇君) 三案に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。   午後五時五十三分散会      —————・—————