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1974-02-05 第72回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月五日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 櫻内 義雄君    理事 澁谷 直藏君 理事 正示啓次郎君    理事 細田 吉藏君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    植木庚子郎君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       塩谷 一夫君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    田中 正巳君       塚原 俊郎君    灘尾 弘吉君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    前田 正男君       松浦周太郎君    松岡 松平君       松野 頼三君    湊  徹郎君       渡辺 栄一君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    赤松  勇君       岡田 春夫君    多賀谷真稔君       辻原 弘市君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    八木 一男君       湯山  勇君    青柳 盛雄君       田代 文久君    不破 哲三君       松本 善明君    岡本 富夫君       坂口  力君    安里積千代君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 奧野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         郵 政 大 臣 原田  憲君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       町村 金五君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小坂徳三郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      内田 常雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         防衛庁参事官  岡太  直君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         大蔵省主計局長 橋口  收君         大蔵省理財局長 竹内 道雄君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         食糧庁長官   三善 信二君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業大臣官         房会計課長   大永 勇作君         通商産業省産業         政策局長    小松勇五郎君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         工業技術院長  松本 敬信君         資源エネルギー         庁長官     山形 栄治君         中小企業庁次長 原山 義央君         建設省河川局長 松村 賢吉君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         参考人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   青柳 盛雄君     不破 哲三君     ――――――――――――― 昭和四十八年十二月十九日  昭和四十九年度予算編成に関する陳情書  (第五〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十九年度一般会計予算  昭和四十九年度特別会計予算  昭和四十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計予算昭和四十九年度特別会計予算及び昭和四十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。  昨日に引き続き赤松君の質疑を許します。赤松勇君。
  3. 赤松勇

    赤松委員 昨日の論戦を一応整理いたしますと、一月の二十八日、私は社会党を代表しまして、総理以下、関係閣僚に対しまして、いかなる隠匿物資調査を行なっておるかということを尋ねました。  その際に、中曽根通産大臣は、第五条調査をしておる、つまり強制立ち入り権行使して調査をしている、こういう答弁でありました。倉石農林大臣は、農林省はまだ五条三条発動しておりません、任意でただいま調査をしております、こういう答弁でした。運輸大臣答弁は聞きませんでしたが、運輸大臣は、私の資料要求に対しまして、二月一日、物価対策特別委員会運輸省海運局が行なった倉庫点検の結果を報告しております。これも私には大いに文句のあるところでありますけれども、これは一応おきましょう。これは任意調査をした結果の報告であるというのでありますから、私は、主として第五条に基づいて調査をしておる結果を報告しなさい、こう言ったのでありますから、この点では、わが予算委員会を軽視したという点において、大いに文句のあるところでありますけれども、これはしばらくおきましょう。  つまり、私が要求しましたのは、整理をいたしますと、第一点は任意調査、第二点は第三条に基づくところの机上調査、それから三条五条をからみ合わせながら調査をしておるかということが第三点、第四点は、第五条に基づくところの公権力によるところの立ち入り検査、これらの調査結果を要求したわけであります。  その結果、政府のほうは、中間報告として、二月の末に全結果を発表することになっておるが、とりあえず当予算委員会には二月の一日、つまり一月の三十日まで調査したその調査の結果を報告いたします、こういうことで、私は昨日政府調査結果をもらいまして、そしてこれをつぶさに検討したのであります。  ところが、政府の言う第三条及び第五条に基づく調査あるいは三条五条をからめての調査、こういうものは全然やっておりません。つまり、任意調査であります。このことは、昨日も申し上げましたように、私は、政府のほうからたぶんそういう答弁があるだろうということを予測いたしまして、すでに通産省調査官等に会いまして、つぶさにその実情を調べてまいりました。  それによりますと、上司からの五条に基づく調査命令はなかった、私ども任意調査であります、それで十分やれるのであります、こういうことでありました。ところが、二月二日の日でありますけれども、二月二日の午前九時五十五分にわが党の楢崎委員のところに、あるしょうゆ会社営業マンから電話がかかってまいりました。その電話によりますと、農林省任意調査をしておるが、あらかじめ四、五日前に通報がくる、そういたしますと、その通報に基づいて、しょうゆ会社、名前は秘しておきますけれども、そのしょうゆ会社しょうゆびん詰めを全部移動してしまうそうです。移動が終わった段階で農林省調査官がのこのこやってまいりまして、そして点検をする、倉庫はからっぽであった、こういう調査結果が報告される。そういうものがまとめられて、本委員会経企庁から報告をされておるわけです。  私は、以上申し上げましたように、私どもの昨日までの社会党質問というものは、決して無理な質問はしておりません。度はずれな、常識外質問はしておりません。総理は何と言いましたか。あらゆる法律を駆使して、そして全力をあげて隠匿物資調査をやるということをしばしばこの委員会で言明した。これは社会党だけに言明したんではないんです。共産党に対しましても、公明党に対しましても、民社党に対しましても、そういう言明をしばしば行なってまいりました。ところが、実態調査状況は全く違うのであります。こういうことで、隠匿されておるところの物資をほんとうに捕捉することができるか。おそらく不可能であると思うのであります。  けさも辻原委員のところに一消費者から電話がかかってまいりまして、この便乗値上げ隠匿物資によるところの便乗値上げで、国民はたいへんな損害をこうむった、この損害政府は一体どうしてくれるんだ、いまからではおそい、これを徹底的に予算委員会で追及してくれ、こういう電話がかかってまいりました。  私はこの際、経企庁にお尋ねしますが、あなたたちが調べられましたその結果の報告はありますけれども、それによって、指定品目のうちどれだけの数をいわゆる隠匿物資として認定し、これを摘発したかということの御報告を願いたいと思います。
  4. 内田常雄

    内田国務大臣 先般、とりあえず、当委員会の御要請によりまして、一月末日までの総検査の全国的な計数等を取りまとめたものを御報告いたしておりましたけれども、その中身の実態につきましては、まだ全面的に御報告をいたすような資料を全国的には取りまとめておりません。幸い、中曽根通産大臣が、御所管の通産物資につきましての今度の一斉検査につきましての報告の要点をお持ちでございますので、私の口から御報告を申し上げますよりも、中曽根大臣から御報告をしていただくようにお願いをいたしたいと思います。
  5. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通産省実施いたしました結果は、いま取りまとめておるところでございますが、合成洗剤、塩化ビニール、トイレットペーパー印刷用紙灯油LPG等につきまして、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、四国、福岡、沖繩の各通産局、通産省支分部局等におきまして、五百三十五カ所、総勢千百九十八人を動員いたしまして調査をいたしました。  数量が何ぼ隠匿物資があったかという、そういう正確なものはございませんが、幾つかの、約三十件以上の具体的なケースを抜き書きしてまいりまして、ここに持っておるわけでございます。これは、トイレットペーパーあるいは洗剤印刷用紙灯油液化ガス、それから揮発油、軽油、合成洗剤等につきましてやった具体的ケースでございますが、あとでこの資料はお届けしてもけっこうでございます。
  6. 赤松勇

    赤松委員 昨日、本委員会が中断をいたしましたのは、政府がさきに、中曽根通産大臣は、第五条に基づいて調査をしております、こういう返事でありました。ところが、調査結果が私の手元に報告されてまいりましたけれども、そこには第五条に基づく検査は、調査は全然ないわけであります。(「一つもない」と呼ぶ者あり)一つもないのであります。したがって、そのことを私は問題にしました。そうしたら、経企庁長官及び物価局長が、三条五条にまたがってやっておるというようなうその答弁をしましたので、重ねて私は、政府のそれが誤りであったならば、誤りであるということを率直に言わしめるというつもりで質問をしましたら、全然それが出てこない。三条から五条にかけてやっておりますと、こういう答弁でありました。はなはだしきに至っては、物価局長のごときは大臣答弁を訂正するような、一行政官僚がのこのこ出てまいりまして……(「問題はそこだ」と呼ぶ者あり)そうして、私は三条から五条にかけての調査ということは取り消しますと言う。そうすると、経企庁長官はぼやっとそれを見ているわけですね。一体どっちが大臣なんだ。小島物価局長大臣なのか、内田さんが大臣なのか。下克上じゃないか。こんなことで本気の調査がどうしてできる。私は、三条五条の問題は、これはあと物価対策特別委員会でも相当問題になると思いますので、この際、法律論として明確にしておきたい。  それは、議事録によりますと、二十八日の私の質問に対しまして、田中内閣総理大臣は「いま御指摘になりましたとおり、国民の生活安定に対する法律の第三条机上調査でございます。それから第五条は臨検を行なう、帳簿、書類調査することができるということになっているわけです。そうしますと、現在第三条に基づく書類調査、それから物価動向等は、これは調査をしていることは当然でございます。しかし、現場に踏み込んで調査をしておりますということでございますから、これは五条に基づいて行なわなければできない行為でございますから、五条調査も行なっております、こう述べているわけです。」こういうように総理答弁されている。これはたいへんな問題だと思うのです。  この生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律でありますけれども、これは第三条調査と、それから第五条の、いうところの立ち入り検査は、その性格は根本的に異なっておると思います。これは法律解釈上、非常に重要な問題であります。ここに法制局長官もおりますけれども、あなた、法律家としてそうでないとは言えないでしょう。それが混合されておる。行政府答弁も混合されて答弁されている。ごちゃごちゃになっている。この際、これを明確に整理をする必要がある。  すなわち、私の考えを申し上げますと、この法律の第三条調査は一般的な任務規定だ。通常入手し得る資料等によって、一般的な価格需給動向を把握するものであって、日常の机上調査原則とするというように解すべきである、こういうように思います。本来の、公権力の伴う立ち入り調査とは違うのであります。かりに第三条立ち入り調査ができるとしても、あらかじめこの場合は相手同意が必要です。同意なしに立ち入りすることはできません。これはよく総理が、統制経済に移行することをおそれる、おそれる、こう言います。官僚統制になることをおそれると、こう言いますけれども、これをいいかげんに解釈しますと、まさにそういう弊害が生まれてくる。第三条は一般的な任務規定、第五条公権力の伴う立ち入り検査権。そこで、第五条立ち入り検査等は第四条に定めた売り渡し命令などを実施するために行なう強制的なものであって、いま申し上げましたように、第三条とは質的に違います。  したがって、任意立ち入り調査から、現場価格調査官が第五条立ち入り検査等に直ちに切りかえるということは、第三条調査と第五条立ち入り検査の本質を全く無視するものであって、これは法律論として成り立たないと思うのです。二十八日以来の政府答弁によると、公権力の伴う立ち入り検査権、これは御承知のように身分証明書、これは政府が提示しました身分証明書、これを携えて、そして相手倉庫その他を調査するわけです。ところが、第三条通告をして、いつ幾日に調査をいたしますというと、この場合は、隠匿物資が流れてしまうおそれがある。まあそれは別としましても、通告をしておいて、そうして今度は現場に行って、おかしいなと思ったら、急に第五条に切りかえる。どうして切りかえるのですか。その身分証明書を見せて、おい、第五条に切りかえたよ、こんなばかなことができますか。こんなふうにずさんに法律解釈をすべきではない。つくった法律運用については、これはやはり厳格に守っていく必要がある。こういうことをルーズにやっておりますと、知らず知らずに公権力の無原則な、無制限の発動になってくるのです。この辺のところは、第三条と第五条にまたがって行使をしております、そういういいかげんな答弁はやめてもらいたいと思います。  この点、総理がわからなければ、法制局長官でいいですから、念のため明らかにしておいていただきたい。これは、ちょっと法制局長官あと物特やその他で問題になりますよ。この際明確にしておいてください。
  7. 吉國一郎

    吉國政府委員 この生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律の第三条と第五条に関するただいまの赤松委員の御説明は、まことにそのとおりであろうと思います。  第三条は、まさに、行政が本来行なうべき一般業務一般事務といたしまして、特定物資につきましての価格動向及び需給状況に関し、常時行政のため必要な調査を行なうという、行政機関任務をいわば規定したものでございまして、第三条調査と第五条調査とを同一、平面に置いて論ずることすらおかしいというべきかもしれません。第五条は、まさに赤松委員指摘のとおり行政上の強制手段といたしまして、罰則をもって間接に強制しつつ立ち入り検査質問等行政機関が行なうための根拠規定でございます。  で、二十八日以来の通商産業省あるいは経済企画庁説明でことばが足りない点があったかもしれませんが、事の実態はかようなことであろうと思います。と申しますのは、生活物資につきまして……(赤松委員「もういい、それはいい」と呼ぶ)それはよろしゅうございますか。それじゃ、第三条と第五条法律解釈として、それだけ申し上げておきます。
  8. 赤松勇

    赤松委員 法制局長官のただいまの答弁によって、法律上の根拠が明らかになりました。  内田長官は、三条五条にかけてやっている、こういう答弁をしているんです。この際、内田長官からこの点について明確にしていただきたい。
  9. 内田常雄

    内田国務大臣 先日の委員会で、現在執行中の緊急在庫調査法的性格に関する政府側説明には、表現上不備な点がありまして、誤解を与えましたことはまことに遺憾に存じます。
  10. 赤松勇

    赤松委員 まことに遺憾でありますで済むのですか。この間のあなたの答弁によると、三条でもって調査をして、そうして現場に行って、おかしいと思ったら急に第五条公権力行使に切りかえると、こう言った。これは重大ですよ。たとえば犯人を逮捕する場合でも、刑事訴訟法によれば、裁判所の令状が必要なんです。ましてや、この法律懲役刑が科せられる、罰金刑が科せられる。それを、現場に行って調査官がかってに、三条じゃだめだ、五条に切りかえると言って切りかえられたのでは、国民人権、どうなりますか。人権無視もはなはだしいじゃありませんか。  したがって、私は、何も強制的な公権力の伴う立ち入り検査をやるなと言っているのじゃない。大いにやれと言っている。しかし、やる場合においては、法律運用あるいは実施等について厳格にやりなさい、こういうことを言うんです。これは当然国会として、立法府として、この点を明確にしておかなければならぬと思いますので、ただ遺憾でありますという答弁じゃ承知できません。重ねて答弁を要求します。
  11. 内田常雄

    内田国務大臣 法制局長官が先ほど、途中でちょん切られてしまったことを私が言うようなかっこうになりますけれども、現在実施中の緊急立ち入り調査は、私の気持ちといたしましては、これは法第五条による強権立ち入り調査をやってもらうという趣旨で、実は総理指示もあって始めましたけれども、また、そのために証票も持たして出てもらうことにいたしておりますけれども掛場において、当該業者の前向きの了解がある場合には、それはその五条強権発動という形でなしに実際五条と同じ目的に沿った立ち入り調査をする、こういうことでございまして、したがって、もし前向きの了解相手方からない場合には、もちろん第五条強権調査でやる、こういうことでやっておるわけであります。
  12. 赤松勇

    赤松委員 いまの答弁の中で二つ重大な問題がある。一つは、第五条に基づいてやれと、総理からの指示があった、こう言う。だが、下のほうはそれをやってくれない、こう言う。やっていないと言う。それからもう一つは、三条五条の問題は、この問題は重要ですけれども物価対策特別委員会同僚議員やその他におまかせしましょう。  私がいま聞きたいのは、総理が第五条でやれと命令したと言う。私は総理指示を受け継いで、そうしてそういうように第五条調査しろと言った。ところが、現実になされていない。これは一体どういうことですか。これは通産大臣、どう思いますか。
  13. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 総理指示に基づきまして、通産省では、一月二十一日に通商産業局長に通牒を発しまして、そうして、ちょっと前文は略しますが「法第五条第三項の規定による証明書を携行し、下記の場合には任意調査から強権調査に切りかえてさしつかえないこととしたので貴通商産業局長の判断により適宜措置されたい。」こういうことで、通商産業局長に対して、それをやるべしと、そういう権限を委任しまして、通商産業局長は、その調査官に対してこのとおり指示しておるところでございます。  それで係官は、あとで例を申し上げますが、大体電話通報があったり、あるいは私書箱一号で通報があったり、あるいは近所の人から連絡があっ、たという場合に、やはり突如と行っておるようです。ところが、その相手のほうが、調査すると言うと、協力しますと、そう言って拒否をしない、そういう場合が全部であったので強権調査をやる必要がない、そういうことで強権調査はやっておらなかったというのは事実のようでございます。  しかし、いずれにせよ、私が御答弁申し上げました中で、五条でやっておりますと申し上げましたのは、舌足らずでございまして、現場におきましては五条発動していなかったということでございましたので、この説明不足のことによりまして混乱を起こしましたことは、遺憾の意を表する次第でございます。
  14. 赤松勇

    赤松委員 経企庁長官も遺憾の意を表し、通産大臣も遺憾の意を表しておりますけれども、遺憾の意で済む問題ではありません。  これだけは明確になってまいりました。総理は第五条検査をしろという命令を出した。これはいいですね。これはいまそういう答弁でしたね。第五条に基づいて調査をしなさいという命令を出した。それを通産大臣は受けて、通商産業局長命令を出した。ここまでいいですね。ここまでは第五条であれしたんですよ。ところが、通産局長から下に参りますと、業者が快く検査に応じてくれるので、公的権力の発動をしなくともスムーズに調査ができた、こういう話なんです。スムーズに調査できますよ、全部荷物は移動されてしまうのですから。そのからっぽのところに行って調査をして、そして調査件数幾ら、こういうように報告する。通産大臣は、ああそうか、よく調査したけっこう、けっこうこういうことでごまかされてきたんです。  きのう総理は、経済懇談会で何と言いましたか。物価値上げの原因が買い占めに多くある、だから、この際買い占めはやめてもらいたいということを財界に懇請したじゃありませんか。懇請したということは、いままで現に買い占めが行なわれてきたということです。あったからです。通産大臣の話では、なかった、快く応じてくれた、だからそういう公的権力を発動する必要はなかった、こう言う。総理は財界に、持っている物をこれからどんどん出してくださいということを重ねて要請している。この辺のところを通産大臣はどう考えますか。
  15. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通産省といたしましては、ともかく総理大臣命令でありますから、係官に対しても局長等から指示をいたしまして、そして強権調査の用意をして実は行っているわけです。しかしその前に、事前に通報して内通しているようなことはございません。これはいままでの報告を見ましても、電話による情報であるとか、あるいは私書箱一号であるとか、そういうようなケースがほとんど大部分でございます。あるいは、政党の皆さん方から言ってくだすったのもございますそういうことによって、おっ取り刀でかけつけたというのが大部分でございまして、内通しているというようなことはないと確信しております。
  16. 赤松勇

    赤松委員 第五条以外、たとえば任意調査する場合、そういう場合には相手同意が要るのですよ。相手同意なしにできるのは第五条なんです。この法律ができたゆえんなるものは、同意を得て調査したのでは全部品物が逃げてしまう、この際、ひとつ国会でもってつくろうじゃないか。そこで、自民党も社会党も共産党も公明党も民社党もみんなでこの法律——もっとも野党四党から対案が出ておりますけれども、とにかくこれをつくってすみやかに発動するということについては、おおむね反対はなかったと私は思うのであります。  いまの通産大臣のお話では、何もこの法律をつくる必要がないじゃないですか。何のためにこの法律をつくったのですか。第五条以外は相手同意を必要としますよ。同意を必要とする以上は、前もって、通報でなくて、相手同意を得る手続をしなくちゃならぬじゃないですか。そのことが客観的には通報になるのですよ。あなたは、第五条発動した例をあげてください、通産大臣
  17. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一月十八日に、盛岡市周辺のボウリング場にトイレットペーパー洗剤等が多量に保管されているとの情報に基づいて立ち入り調査実施した。ちり紙百八十ケースの在庫を確認したが、付近の卸商の通常在庫と判明、こういうように情報がございまして、すぐかけつけた。そして立ち入り調査を実はやっておる。それに対して先方は協力して見せてくれた、そういうことなのであります。
  18. 赤松勇

    赤松委員 任意調査によるところの件数は、何件になっておりますか。指定品目全体で何件になっておりますか。——いいですよ、ゆっくりやってください。ぼくもゆっくりやりますから。
  19. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一月二十六日までの実施状況を見ますと、これは在庫調査実施した件数でございますが、札幌通産局管内におきまして四十九カ所、これは合成洗剤、塩化ビニール、トイレットペーパー印刷用紙灯油、LPGです。仙台通産局で二十三カ所、東京通産局で百三十一カ所、名古屋通産局で九十二カ所、大阪通産局で百三カ所、 広島通産局で三十一カ所、四国通産局で三十八カ所、福岡で四十八カ所、沖繩の通産商業部で二十カ所、計五百三十五カ所という報告でございます。
  20. 赤松勇

    赤松委員 五百三十五カ所ですか。五百三十五カ所を調べたのが、全部任意調査。いまお示しになった盛岡のこの調査は、これは通報によって、やむを得ず五条発動したと思うのです。これが一件ですよ。五百三十五件以外に一件なんです。これで完全な調査をしたといえますか。  いま国民の間にみなぎっておるのは、どういうあれがあるかといえば、さっきも電話のそれがあったように——この法律はいつできましたか。この法律が公布されたのは七月じゃありませんか。七月でしょう。いま同月ですか。いま二月ですよ。七カ月というと、半年以上ですよ。政府はそれまで何をやっておったんだ。国民の怒りはここにあるのです。その間に、隠匿してうんと業者をもうけさせて、物価をつり上げておいて、そしていまごろ財界の諸君を集めて協力を要請する。何のためにこの買占め売惜しみの防止法をつくったのですか。その立法した法律の目的というものは、どこに達成されているのです。七カ月の間に物価はぐんと上がっちゃったじゃないですか。これをわれわれ社会党の言うとおりに即時実施をして、第五条公権力の伴う調査をやっておれば、何もトイレットペーパーを買うために、洗剤を買うために朝早くから行列をして、この寒空に並ぶ必要はなかったのです。なぜこれをやらなかったのですか。総理はどうですか。
  21. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 顧みて、御指摘を受けるまでもなく、この法律の権限発動ということは、いろいろな理由があるにせよ、多少おくれておったという事実はそのまま認めます。それは国民の必要とする物品名を選定しなければならない、その製造過程、在庫の過程、消費の状態等を十分調査をしなければならないという問題もございましたし、また、陣容をどうするというような問題もあったわけでございます。しかし、いろいろな事情はありとしても、物価高というような実際の状態が起こったわけでございますし、国民に不安な状態を与えたという時期もあったわけでございますから、この法律の実際的な発動はおそきに失したということは、私もすなおに認めます。  しかし、いままでだけではなく、現在もそうでございますし、あしたからもそうでございますから、この法律の企図する使命を十分果たし得るように、政府は最善の努力をしてまいりたい、こう思います。
  22. 赤松勇

    赤松委員 多少なんて、あいまいなことばを使ってもらっては困ります。  それから、指定品目を選ぶのに手間がかかったというのでありますけれども指定品目をつくるのに、どうしてそんなに手間がかかるのですか。こんなものは二、三日あればできるじゃありませんか。問題は、政府にやる気がないからなんだ。業者と癒着をして、大企業べったりの姿勢で、一般国民の苦痛をよそに調査をサボってきた、これが田中内閣の正体なんだ。いまごろになって、財界の諸君を集めて懇請をする。国民はおこっています。  ここで私は総理に聞きたいが、それなれば、これからどうするんだ。きのう財界との懇談会で、あなたは、言うことを聞いてくれなければ、やむを得ず公権力発動せざるを得ないということを言っている。これからどうするのですか。これを明確に答えていただきたい。
  23. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 物価抑制のためにあらゆる手段を講じてまいります。その中には、買占め売惜しみの法律の適用ももとよりでございますし、国民生活安定法など石油二法、その他の法律も現にたくさん政府に与えられておるわけでありますから、あらゆる法律を駆使して、物価安定に最善の努力を行なうということでございます。  なお新しい必要な問題ありとすれば、金融、財政その他各般にわたっての措置もあわせて行なってまいるということであります。
  24. 赤松勇

    赤松委員 そういうあいまいな答弁では、私は質問できませんよ。わが党の辻原君はこの前、消防法を適用しろ、これで一斉に調査をやれという提案をしたのですが、その点についてはどうですか。これはすぐできるのです。新しく調査官を設けなくても、消防職員はおるのですから、すぐできるのです。これを使えば一ぺんにできますよ。これはどうですか。
  25. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 自治大臣述べましたとおり、消防法は、消防法の目的をもってつくられた法律でございます。でありますから、この物資不足というような問題を目標として消防法を適用するということは、法の乱用にわたるということでございます。  ただ、消防法の命ずる法律の目的達成のために、火災予防その他の目的をもって消防法を適用し、その結果、隠匿物資その他が摘発されるという付随的な事項は、それは当然考えられることでございますが、消防法というものを、買占め売惜しみの法律がある現在、時を同じくして消防の検査もあわせて行なわれたら、結果としては成果があったということはあり得ても、消防法でなくとも買占め売惜しみの法律によって調査官を拡大し、一斉臨検もできるわけでございますから、この法律の定めに従ってやる。ただ、いろんな法律も時を同じくして行なえば、その結果として一斉点検ができるということは考えられますが……(発言する者あり)消防法を拡大解釈して、特定の目的のためにこれを使うということは、それは、いろんな不規則発言ありますが、そういうわけにいきません。
  26. 赤松勇

    赤松委員 現にガソリン等については、消防法を適用して摘発しているじゃないですか。あなたは、あらゆる法律を駆使してやる、こう言っている。しからば、どの法律でやるのです。この際、これを明確にしていただきたい。どの法律で一斉調査をやるのか。いままでこの七カ月間、いわゆる三条とか任意調査によってはだめだったということが明らかになったじゃありませんか。まだ責任を感じないのですか。これから何をもってやろうとしているのですか。答弁してください。
  27. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 買い占め売惜しみの法律がございますから、この法律がまず最も中心になるべきであるということは事実でございます。しかも、倉庫を臨検するには倉庫法がございます。それからまた、通関その他の実績を見るには大蔵省所管の法律もございます。農林省所管にはいろんなものもございます。厚生省は厚生省で倉庫を臨検することができるような法律もありますから、そういうものをあわせて、効力のあるものはすべて行なう、こういうことでございます。
  28. 赤松勇

    赤松委員 総理大臣命令して、通産大臣がそれを受けて通商産業局長指示をした、それが現に実施されてないじゃないですか。いまのようなあいまいな答弁では不満です。  七カ月間何をやってきたのか、その責任を政府は何と考えますか、次にはどの法律をもって至急に隠匿物資を摘発しょうとしているか、この二点を明らかにしてください。
  29. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 買占め売惜しみの法律を提出いたしまして御審議をいただき、成立を見てから施行し、実効をあげるまでには時間がかかり過ぎた、政府の動きは、緩慢であった、言うなれば怠慢であったという御指摘に対しては、顧みて行動がおそかったという事実は、すなおに認めておるわけでございます。  そして、これらが非常に大きな問題になってきたのは、トイレットペーパーの問題、洗剤の問題ということが最も大きくなってきたわけです。その前までは、議論としては何があったかというと、土地問題が一番大きな問題だったわけです。セメントであり鋼材であったわけでございます。それで、国民生活に直接影響のあるような問題、洗剤とか、とにかく婦人が家庭で使うというような問題がばたばたと、こう問題になってきたのは、石油問題が起こってきてからでございます。ですから七月に、もう七カ月前に法律ができているのだから、少なくともそれまでには準備万端整えておいて、石油問題が起こる、その日からでも活動すべきだったという御指摘に対しては、それは行政的にも至らないところがございましたので、今度はしっかりやりますと、こう述べているのですから、これはひとつ御理解いただけると思うのです。
  30. 赤松勇

    赤松委員 今度はしっかりやるというのは、どの法律を駆使してしっかりやるというのですか。今度はしっかりやるとおっしゃるが、どの法律に基づいてしっかりおやりになるのかということを私は聞いているのです。
  31. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 さっきから何度も申し上げておりますように、買占め売惜しみの法律によって体制もできましたので、通達ももうちゃんとしてあります。地方の委任も行ないました。二月一日から地方庁は発動できる体制になったわけであります。証票の印刷もみんな終わったし……。ですから、この法律を中心にし、あわせて各省所管の法律もあるわけでありますから、そういうものをあわせながら、まず効果をあげるためには、期日を期して一斉にやれるようでなければならないということで、この品物はみんな国外に持ち出されておるわけじゃありませんから、一斉にやれば品物の所在はつかめるはずであります。ですから買占め売惜しみの法律等あわせて、現に存在する効果をあげ得る法律は駆使しながら、物の存在というものを確認をしてまいる。  ですから、そういう問題に対しては、まずいままで中間経路等に滞留してあると思われる物の在庫の確認を急いで、それを正常な流通経路に乗せれば目的は達するわけでございます。また、それだけではなく、きのう産業界に要請をしましたのは、一、二月の短い間にどうしても必要である、少しぐらい在庫をしてもいいし、また損をしてもいい、物価抑制のためには、もう増産をしたら、在庫はまだ相当あった、その意味で損をするかもしらぬが、一、二月には、これから上がるともう指摘されているようなものもあるわけで、この次には粉ミルクだといっているのですから、その次には何かといったら化粧石けんだ、こういって、もう新聞や雑誌に出ているのですから、そういうものぐらいに対して増産をして完ぺきな需給の調整をはかっていく、こういうことを要請したわけでございます。
  32. 赤松勇

    赤松委員 何度も申し上げておる。あなたはわからない人だと言わんばかりなのですが、私は何度も申し上げておる。総理、ちっともわかってない。わかっておってもわからないような顔をしている。非常にずるい。私がさっきから聞いているのは、何条をいつから発動するか。つまり、第五条をいつからやるのだ。七カ月間放置してきた、たいへん申しわけない、遺憾であります、さっき総理は陳謝した。ところが、その第五条はいつからやるのかということなんです。総理、どうですか。
  33. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 通産大臣は、先ほど申し上げましたとおり、一月の二十一日付だと思いますが、五条発動をするようにという通達を出しております。それから、地方との関係は、二月の一日から実施ができるようになりましたので、体制は整いました。また価格調査官の専任も置きましたし、いろいろな体制が、それは完ぺきでないにしても、一応の体制はできたわけでございますから、今度は、最も重要なる品物に対して検査を行なうという状態はできたわけでありますので、これからはいつでも行なえるわけであります。  ただ、通産局長まかせなのか、知事まかせなのかというわけにはまいりませんから、これはやはり主管官庁、また関係官庁で話し合いをしながら、これが漏れちゃ困りますから、こういう問題に対しては、ひとつ何月何日一斉にやってくれ。漏れないようにするには、一番いいのは知事に委任したら、知事が独自にやってもらえば一番いいことであります。大阪でも東京でも、通達をしなくても知事はいつでも活動できるような状態になっているわけですから、そういう意味では、そこらはひとつ十分行政上遺漏のないような措置をとってまいりたい、こう考えます。
  34. 赤松勇

    赤松委員 知事の問題については、私は場所を改めて、また他の同僚議員からも質問しますが、三月までの予備費の配分、それから四十九年度予算に計上されておるところの五十億の地方自治体に交付する調査費、これらの配分その他についていろいろ意見がありますが、それをやると論点がはずれますから、それはまた別な機会にやります。  そこで、七カ月間国民に損失を与えてきたこの損害については、どのように補償していきますか。
  35. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 臨機応変、スピーディーにやれなかった、十分な効果をあげるには、どうも体制を整えるに時間を要し過ぎたという御指摘に対しては、これはこたえていかなければならないということは、これから物価の安定、物価の引き下げということにこの法律が遺憾なく働くように、政府行政上最善の努力を行なうということで責めを負ってまいりたい、こう思います。
  36. 赤松勇

    赤松委員 通産大臣は、その責任を十分感じていますか。
  37. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 過去の行政におきまして、必ずしも十分でなかったことを反省しております。専任の価格調査官もきめ、また増員もいたしまして、これから鋭意努力いたしまして御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  38. 赤松勇

    赤松委員 必ずしも十分でなかったなんて、あいまいな中曽根さんは言い方をしないで、かってあなた、この予算委員会で、吉田総理を向こうに回してやったじゃないですか、川崎秀二君と一緒に。あの当時の歯切れのいい答弁しなさいよ。昔を忘れちゃだめだ、あなた。あなたが歯切れの悪い答弁をすると、中曽根派に一番献金が多かったから歯切れが悪いのじゃないかというふうに、疑惑を持たれる。もう一ぺんその責任を、どのように感じておるか、これはあとの問題もございますので、この際明確にしておいてください。
  39. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いままでこの法律発動に対して、俊敏に行なえなかったということに対しては、その事実をすなおに認めておるわけでございます。そういう立場から、今後御指摘を受けることのないように、この法律の適用をきびしくやってまいりたい。  そうすると、結局、具体的には五条発動をどうするのか、こういうことになるのだと思いますが、これは適時適切、随時機に応じて正しくこれが発動をしてまいりたい、こう考えます。
  40. 赤松勇

    赤松委員 通産大臣の御発言に私は非常な不満がありますし、なお、田中内閣総理大臣も、法律が公布されてから七カ月間無為に過ごしてきたという責任は免れません。やがて私どもは、総理及び通産大臣の責任をさらに明らかにする手段を将来とりたいとも考えておりますので、いま理事からいろいろ相談がありますから、ちょっと委員長待ってください。——総理以下各閣僚の答弁は了承できません。どのように隠匿物資を摘発していくか、一日も早く国民の台所にこれらの物資を届けるという点等については、全然不明確です。また七カ月間、法律が公布されてからも、その忠実なる実施をサボタージュしてまいりました政府の責任は重大だし、これによって国民はたいへんな損害を受けている。もし、これが実施をされて、そして全国のあらゆる貯蔵所が摘発されて、そしてかっての、隠退蔵物資昭和二十二年行なわれたあのような一斉点検が行なわれたならば、トイレットペーパー、あるいは洗剤、あるいは灯油等のあの悲劇は起こらなかったと思う。中には、プロパンガスがないために自殺をした運転手もあるじゃありませんか。国民の中には自殺者も出ている。それを七カ月間実施を怠っていて、申しわけありませんという一片の総理の陳謝では了承できません
  41. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 七カ月間もこの問題をほうっておったんじゃありませんから、そこに明確にいたしておきます。  それは、これが発動に対して俊敏を欠いておるということは認めておりますが、この買だめ売惜しみ法律は、何によって一体できたかというと、いまの合成洗剤やちり紙問題よりも、とうふの問題、大豆、大豆油、大豆油かす、丸太、製材、合板、綿糸、医療用のガーゼ、こういうようなものからできたのでございまして、この間の問題に対しては、行政的にも措置すべきものは措置をし、努力するものは努力しております。  しかし、これが調査官の任命その他に対して時間的に敏速を欠いたということは、すなおに認めておるのでありますから、事実は理解をしていただきたい。(発言する者多し)
  42. 赤松勇

    赤松委員 全然総理は反省していない。まさに挑戦じゃないか。予算委員に対する挑戦じゃないか。居直っておるじゃないか。それが反省と言えるか。何を言っているの。   〔発言する者多し〕
  43. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 午後零時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時三十九分休憩      ————◇—————    午後三時十三分開議
  44. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  中曽根通産大臣より発言を求められておりますので、この際、これを許します。中曽根通産大臣
  45. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほどよりいろいろ申し上げておりますが、あらためて申し上げます。  いわゆる買占め売惜しみ防止法第五条調査について、先日の答弁は不十分であり、事実と相違する点がありましたことは、まことに遺憾であります。  今後は、第五条による立ち入り調査をびしびし行なうようにいたしたいと存じます。
  46. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、田中内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許します。田中内閣総理大臣
  47. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 午前中の最後の私の発言は、途中でもあり、真意を伝えておりませんので、これを取り消します。  法律の適用について、政府がなまぬるかったと御指摘を受けました。従来の措置には遺憾な点も認められます。自今、国民のため誠意をもって対処したいと考えます。
  48. 荒舩清十郎

  49. 赤松勇

    赤松委員 ただいま総理並びに通産大臣から、隠匿物資の摘発及び放出の行政措置について遺憾の意が表明されましたが、買占め売惜しみ防止法の公布後、七カ月間にわたり十分なる措置を講じなかったことに対し、社会党は断じて了承することはできません。  したがって、わが党は、あらゆる審議の機会を通じ、政府の責任を追及するとともに、一日も早く物価を引き下げ、物資国民の手元に届くよう政府を監視するとともに、さらに、政府の怠慢による国民の受けた甚大な損失に対し、これを償う具体的な措置を政府に強く要求して、私の質問を終わります。
  50. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  51. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、参考人出頭要求に関する件につきましておはかりいたします。  本日、日本銀行総裁の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  53. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、中澤茂一君。
  54. 中澤茂一

    ○中澤委員 冒頭、田中総理が少し興奮するようだから、三木副総理に若干お伺いしたい。  ということは、このごろ三木副総理がアラブの産油諸国をお歩きになった。こういう緊迫した事態の中で、政府の外交政策の不手ぎわからたいへん御苦労なことであったとは思いますが、それらを歩いてどのような感じを持ったか、まあ、できるならば、日本の外交政策というものが、いまの形でいいのかどうか、このことについても、副総理として御意見があったら聞かしてもらいたい。
  55. 三木武夫

    ○三木国務大臣 野党の立場にある中澤委員から、私の中東訪問に対しての労苦に対して、いろいろ御発言があったことを多といたします。  中東を訪問して、日本の外交というものに対していろいろ考えさせられるものがあった。それは、日本は約八一%の石油を中東から仰いでいる。しかし、石油というものが、これは買い手市場であった、金さえ持っていけば幾らでも買えた時代である。その安易さになれて、日本の中東外交が手薄であったという反省はしなければならぬと思ったのであります。  中東諸国は、砂漠地帯のきびしい風土の中に石油という資源だけを持っているわけですから、しかも、その石油というものは、せいぜい三十年か五十年の寿命である。その石油という資源がなくならないうちに、まあ工業開発や社会開発をやって、子孫が食べていけるような中東をつくりたいと考えることは、指導者として当然のことである。  そういう点から、日本に対しても、これだけの日本の経済発展というものは石油によるところが多いのだから、今度は、中東の社会開発や工業開発に対して、日本の経済協力、技術協力を受けたいいう、ときには過大評価と思われるくらいの期待が大きい。こういうものに対して、われわれは、どうもいままで十分だとはいえない、石油が買い手市場であったですからね。どうしても、経済といいますか、国際関係は、お互いに相互の立場を理解し合って、有無相通じ、そしてギブ・アンド・テークということでしょう。これは国際関係の原則である。そういう点から、日本は、これからアラブ諸国の新しい国づくりという点に、日本のできる面からできるだけの協力をして、中東諸国と日本との外交的基盤をもっと強化しなければいかぬ、そういうことを非常に強く感じた次第でございます。これは何も自民党に限らず、まず、やはり超党派的にこういう問題を推進していく必要があるということを強く感じた次第でございます。
  56. 中澤茂一

    ○中澤委員 そこで、あなたが行って、パレスチナ難民の小学校を視察されたところが新聞に写真も出ていました。油ばかり考えずに、パレスチナ難民をどうするかというのが基本的な問題。いま一つは、シリアとまたゴラン高原で戦闘を開始しおる。けさの新聞などで通産大臣が簡単に油をゆるめるようなことを言っておりますが、一体、この情勢というものはどう展開していくか、はっきり見通しを持っているのでしょうか。  その点については、基本的なアラブ問題はどうすべきかということと、それからヤマニ石油相がこの間来たとき、総理も会い、それから中曽根さん、大平さんも会い、あなたも会っているのだけれども、いままでのヤマニ石油相の発言からいえば、むしろこの消費国会議というものは、また一つの問題を起こしはしないかということを私はたいへん心配しているのですよ。しかも、ヤマニ石油相の、日本で油の値段を下げるというような情報が出たとか出ないとかで、ヤマニ石油相をやめさせようというような国王の意見があるというようなことも新聞に書いてあるわけですね。  その辺、政府はアメリカの消費国会議に臨むに自信があるのかどうか。臨むが、こういう理解をしてくれということをヤマニ石油相から取りつけているのかどうか。あなたも最後に一時間半くらいヤマニさんと会っているが、その辺は確信を持っておるのでしょうか。パレスチナ難民問題とアラブの基本的な外交問題、これを考えて、ヤマニ石油相から、そういう確約というか、消費国会議に日本が参加するという了承を取りつけているのかどうか。これは重大な問題になると思うのです。レイモン・アロン提案というのが、御承知のようにありますが、これさえもサウジアラビアは批判しているのですから。そこへ、けさの新聞を見ると、通産大臣が、じきに油をゆるめますなんと言っているが、一体、政府は確信を持っているのかどうか。再び日本に大混乱を起こす可能性がありはしないかと私は危惧しておる。その点は三木副総理も、この前の訪問からだいぶヤマニさんと話し合いをしたようですが、その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  57. 三木武夫

    ○三木国務大臣 最初パレスチナ問題から中東の基本的な問題に対して御質問があった。今度の石油の削減措置も、アラブ諸国の指導者は、中東の和平を促進するための戦略として石油の削減措置をとったのだ、こう言っておるわけです。また事実、一九六七年ですから六年前に、いわゆる六日戦争でイスラエル軍がシナイ半島の全部、あるいはゴラン高原、あるいはヨルダン川の西岸と、相当膨大な地域を占領したわけですから、国連においても、イスラエル軍は占領地を撤退しなければばならぬ、そのほかに、中東の和平を達成するための諸原則というものを安保理事会できめたわけです。有名な二四二号の決議。そのときは日本は安保理事会のメンバーでした。非常任国のメンバーであって、その決議を強力に支持したわけです。だから、日本もまた中東の和平に対しては責任を持っておる一国である。安保理事会のメンバーだった。   〔委員長退席、井原委員長代理着席〕  そこで、やはり中東の和平を達成することが世界の平和に対しても必要だし、油の安定的供給のためにも、根本はやはり中東の和平を達成するということが一番必要でありますから、私も今度の旅行を通じて、アラブの指導者と、中東の和平問題に対して日本がどのように貢献できるかということを、旅行の大きな目的として話し合ったわけであります。  そういうことで、中東の和平については、イスラエルというものを説得しなければならぬから、当然のアラブ旅行の延長としてアメリカに行き、キッシンジャー国務長官、また大きな役割りを演ずるワルトハイム国連事務総長とも私が会談した理由は、そこにあるのであります。この二人が、中東和平のために一番努力をしておるわけであります。この二人の努力というものに期待をするということは、中東和平促進のために一番必要なことで、私は、行って非常に有益であったと考えております。  だから、パレスチナの問題も、行ったらほんとうにかわいそうなんです。この問題を根本的に解決するためには、中東の和平を達成しなければいけませんから、日本も、難民のために、今年は六百万ドルだと思いますが、いま御審議を願っておる今年度の予算案の中に、その国連の基金も入っておるわけであります。しかし、それはやはり難民の救済である。難民の救済でなしに、パレスチナ人が安定して住めるような条件というものをつくることが必要であって、そのためには中東の和平を達成するということが根本である。  そこで、外務大臣からもお答えになると思いますが、石油の消費国会議ですね。これは私は、一月九日にキッシンジャー国務長官と会った。あくる日はニクソン大統領から、その二月十一日の招集の提案を行なうのだということで説明を受けました。そのときも私が懸念を表明したのは、日本はやはり産油国と共存共栄でなければやっていけない、よその国はこれにかわるべきエネルギーのもとを持っておるわけです。日本はいろいろな新しいエネルギーの開発をするといっても、ここ当分の間、石油にかわるような新しいエネルギーができるとは思えませんから、どうしても石油への依存度というものは、世界で一番高いわけです。だから、産油国と仲よくしなければ日本はやっていけないわけですから、アメリカとは立場が違うわけで、そういうことで、アメリカの善意はわかるにしても、やはり日本とは立場が違うわけでありますから、その会議というものは、対決の会議に持っていってもらったら困る、産油国と消費国とがお互いに協力の道を発見できる会議でなければ困るということを繰り返し述べた。キッシンジャー国務長官も、その考え方で招集するのだ、最初は消費国の会議だけれども、やがて産油国も入れた国際会議に持っていくのだということを説明いたしました。  しかし、最初に申しまたしように、やはり善意は信ずるにしても、日本とアメリカとは立場が違うわけでありますから、その善意と立場の相違というものを埋めるのは、外交の役目といわなければならぬわけでありますので、これは大平大臣御出発前に、内閣においても方針をきめる方針でありますから、その会議において、誤りなく大平大臣が日本の立場を表明されんことを、私は強く望んでおる一人でございます。
  58. 中澤茂一

    ○中澤委員 きのうからの混乱、あるいは国民大衆がこの寒空に連日並んでちり紙を買わなければいかぬ、洗剤を買わなければいかぬ、この原因はいままでの日本の外交政策、ここに基本的に問題があったと私は思うのです。  それで、大平外務大臣に伺うが、去年の四月十七日のワシントン・ポストは、アメリカにおけるヤマニ石油相の発言として、「アメリカ政府がイスラエル援助政策を変更しなければ、サウジアラビアは石油増産は行なわない」ということをはっきりと言っておるわけですね、四月十七日に。それから次いで五月二十八日に、サウジアラビアのサカフ外務担当国務相がブラジルを訪問しているその記者会見でこういうことをはっきり言っているわけです。「サウジアラビアは、アラブの敵を援助する西側諸国に対しては石油供給を取り消すであろう。アラブ諸国は、石油の供給について道義的責任を感じているが、これにはおのずから限界がある。われわれは、過去七年間理性的になるようにつとめてきたが、忍耐ももはや限度だ。われわれ、決定するまでに半年は待つことができる。」こういうことをブラジルの記者会見ではっきり五月に言っておるのですよ。これは御存じですか。
  59. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その当時、承知いたしております。
  60. 中澤茂一

    ○中澤委員 承知して、なぜこのときから手を打てなかったのですか。去年の五月ですよ。どうして直ちに中近東の大使でも全部集めて、すぐ手を打てなかったのですか。だから、この混乱の根源は、一番の責任は外務省にあるんですよ。去年の四月、五月にこれだけのことをはっきりサウジアラビアの責任者が言っておるのを、どうして手を打たなかったのです。
  61. 大平正芳

    ○大平国務大臣 七月にアラブ関係諸国の大使会議を開きまして、われわれの間で情勢の検討を行ないましたことは事実でございますが、そこに言われましたアラブ側の戦術が、このような姿で早急に実現の運びになってまいりますということにつきまして、私どもは予想しきれなかったことは、御指摘のとおり、私どもの不明のいたすところでございまして、もろもろの情報の収集、評価につきましては、細心の注意を常に怠ってはならないと考えます。
  62. 中澤茂一

    ○中澤委員 他人ごとみたいなことをあなた言っていちゃだめですよ。中近東会議のときもちゃんと結論は出たのでしょう、大使会議で。その記録は外務省の文書に載っていたのですが、七月九日にやっていますわね。そのとき田中局長が、「経済と外交」という本に、このときのことを書いているのですが、「最近問題となっているのは、アラブ産油国が相手国の外交姿勢ないし政策というものをとりあげていることである。中東紛争について、単に紛争当事国のみならずアラブ世界が一緒にイスラエルと戦うことを宣明している現状において、この石油を政治的武器に使うことが現実の問題となってきているのである。」このときも、現実の問題になってきておると、はっきり大使会議で言っているじゃないですか。「これまで各国は石油については、政経分離の政策をとってきたのであるが、最近の膠着状態から脱却するためにその政策を変更せざるをえなくなりつつあるのは事実であろう。」「われわれにとって石油の安定供給確保ということが至上命令であるならば、やはり産油国との関係をより緊密にする努力が必要である。」と、この会議で結論が出ているのでしょう。それで問題の発端になるまでに十分手が打てたはずです。一体大使というものは何をやっているのですか。国会議員の旅行の案内が専門ですか。まさにこの問題は、石油問題の今度の責任は、私はあなたにあると見ているんですよ。四月、五月のときから、はっきりサウジアラビアの責任者がこういうことを言っておるんでしょう。何でそのときからすぐ手を打たなかったのです。何であなたがすぐ中近東に飛ばなかったのです。
  63. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように、産油国がその有限な貴重な資源を中近東問題の解決のための政治的武器として利用せざるを得ない、そして、また、そういう過程を通じて、先進国諸国の中近東問題への関心を喚起しなければならないという立場にありましたことは、私どもよく承知いたしておるわけでございます。  したがって、問題は、中近東問題の解決ということが問題の中心にすわっておるわけでございまして、それに対しまして、日本がどういう立場をとるかということが、まず第一の課題であったわけでございます。  従来、この問題につきましては、わが国といたしましては、先ほど副総理からも述べられたように、国連決議を堅持して、それを踏まえた上で中近東外交に対処してまいり、国連外交に対処してまいったことは中澤さんも御承知のとおりでございます。しかし、二四二号を支持するということはほとんど全部の国がいっていることでございまして、一つ一つのセンテンスにつきましての具体性を欠いておるということにつきましては、そういう批判もあり、また、われわれ自身の反省もあったわけでございますので、去年の秋、この解釈を明らかにするような措置を講じたわけでございます。  その後、石油供給制限というものは十一月、十二月と続いてまいったわけでございますけれどもわが国は、わが国の中東政策のゆえんをもちまして、特に不当な扱いを受けたとは考えていないわけでございまして、私ども精一ぱい努力をいたしたつもりでございまするし、また、アラブ諸国におかれましても、わが国の態度につきまして、それなりの評価はしていただいておるわけでございまして、石油危機の過程を踏まえてみましても、日本だけが、日本外交のゆえんをもちまして、とりわけ不当な扱いを受けておるというようには私ども考えていないわけでございます。
  64. 中澤茂一

    ○中澤委員 基本的に日本の外交というものをどうするかという、いまやまさに、私は歴史の流れの中で一番大きな転換期だと思っておるのです。日中問題にしても、こういうふうに解決をしている。全部が世界が大きな一つの流れの中に動いている中で、いまのような外交政策を漫然と続けていって、一体いいのですか。  これは理由があるんですよ、あなたがいかに弁解なさっても。そうでしょう。あの戦争直後の第五回繁急特別総会で日本はアラブ側に立ち、非同盟決議案に賛成して、これが否決された。イスラエル側の決議案が表決に付されると、これにも替成したんですよ。両方賛成したのです。  そこで、外務省の「国連情報」は何と書いているかというと、「わが国国連代表団は半ば「ハムレット」的心境で表決に臨み、」これが日本外交の姿ですよ。いつもハムレットなんですよ。わが国の投票態度については、外国のまじめな国から批判を受けた。「かかる破目に二度と陥らざる様、常に長期的、具体的対策を講じておくことが極めて肝要であると思われる。」と、こうはっきり述べているのですよ。その年の十一月二十二日に二四二号が決議されたわけですね。すべて日本の外交態度はこうでしょう。  これだけじゃないでしょう。そのあとまた同じことやっているでしょう。そういう外交姿勢が、外国の不信を招いておる理由なんですよ。そのあと七〇年の十一月四日、また同じことをやったでしょう。それでアラブに、信用しろ、あるいはほかの国に信用しろといっても、だれが信用しますか。このときも、アラブ側の非同盟決議案とイスラエル側の決議案の双方に賛成したでしょう。この賛成の総数百二十七カ国のうち、両方に賛成投票したのは、日本と台湾とマダガスカルとシエラレオネ、これはおそらくアフリカの国でしょう。私もよく存じません。この四カ国ですよ。どういうことなんです、これ。こういう外交姿勢が今度の石油問題の根源になっているのですよ。少なくとも日本の外交に主体性があって、き然として、まさにあの中東戦争というものは、イスラエルの不正なんですから、しかもパレスチナに四百万の難民をいまでも荒野にさまよわしている。人道的立場からいって、日本ははっきりすべきだったんですよ。  それならばまだいいけれども、例の岡本公三が、これはよそから聞いた話だが、岡本公三がテルアビブでもってだいぶ殺人をやった。福永健司君があわててお見舞いを持って飛んでいった。そうしたら今度はアラブ側がおこった。そこで、アラブの大使だか公使だか知らぬが、イスラエルに謝罪したことをまた謝罪して歩いたといううわさを聞いておるんですよ。あんな慰謝料をイスラエルにやるべきじゃなかったが、まあしかたない、ひとつあなたのほうへもおわびするから、そういう外交をやっておるのじゃないですか。  過去のことを幾ら言ってもしかたありませんがとにもかくにも、日本の外交姿勢というものは、いま世界の歴史の流れの中でどういうふうに軌道修正するのか、この基本を考えない限りは、今後もこういう事態は続発するでしょう。いつも、あっちへもよろしゅうございます。こっちへもよろしゅうございます、そういう主体性のない外交方針というものを、この際大きく軌道修正する必要がある。そのことが日本の国家のために、また民族の将来のために、正しい歴史の流れに沿うた方向だと私は考えておる。そういう大きな角度で、外務大臣、ものを考えられないのですか。
  65. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中澤さんおっしゃることは、主体的な外交政策が確立されなければならぬということでございまして、私は、その限りにおいてあなたと同感でございます。主体的な外交政策がなければならぬと思うのでございますが、同時に、わが国の置かれた条件というものも踏まえてかからなければならぬわけでございます。  釈迦に説法でございますけれども、わが国のように資源小国の立場におきまして、重要な資源ばかりでなく、食糧までも海外に仰がなければならぬという立場におきまして、広く深く、グローバルな立場におきまして、わが国の国益をどう守っていくかということにつきましては、細心、周到な配慮が外交に要請されるわけでございまして、そういう中において、われわれはどういう主体性を探求していくかということを考えてまいっておる次第でございます。  第二に、あなたが言われるように、しかしながら世界には大きな歴史的な潮流がございまして、明日を指向して大きな潮が流れておるというようなことにつきましても、もとより目を閉じていけないことも、私も乏しいながら感じておるわけでございまして、そういう中にあって、わが国の立場、諸条件、国益というものをしっかりと踏まえた上で、あなたの言われる方向に、可能な限り努力をしてまいるということが、私どもの責任であろうと感じております。
  66. 中澤茂一

    ○中澤委員 私、さっき三木副総理に聞いた問題ですね。これは、一体消費国会議をアラブがどう受けとめるかということは、きちっと読んでおるのですか。あるいは、ヤマニ石油相とあなたが、日本は消費国会議に参加する、それについては御意見はいかがかと、意見交換しているのですか。これは非常に私は問題になる危険性がある。しかも、フランスが、何か秘密の文書を流したというようなことも新聞に書いてあるが、この原案を見ると、レイモン・アロン提案を基礎にしておるのですね、今度の消費国会議の中身は。そうすると、このレイモン・アロン提案というのは、私はほかの文書でちょっと見たのですが、これは非常に私は問題のある文書だと思うんです。しかもレイモン・アロンがそれを前提に言っておるんですね。そのあとをとって、今度の消費国会議になるわけですね。  どういうことをレイモン・アロンが言っているかというと、こういうことを言っているんですね。「日米欧の統一行動を、アラブに対するまっこうからの挑戦と受け取られるおそれがある。それが一種の宣戦布告にもひとしいものであっても、消費国に対する石油供給制限のアラブ意図をくじくどころか、アラブ諸国はかえって硬直化し、場合によっては全面禁輸に走らせる逆効果をもたらすかもしれないという懸念がある。」こういうことをレイモン・アロンが今度の消費国会議提案の前に言っておるのですね。その内容は、まさにレイモン・アロン提案を今度の消費国会議の課題にしているわけです。これを起案したレイモン・アロンが、こういうことを言っておるんですよ。  ヤマニ石油相と、その点についてどこまで話が詰まっているのですか。参加するが、御理解願うという話になっておるのですか。その辺はっきりしないと、これはたいへんな問題になってきますよ。レイモン・アロンの危惧がそのまま出たら、再びアラブを硬化させたら、どうなりますか、これ。たいへんな問題になると思うんですよ。それは三木さんがニクソンやキッシンジャーと話してきたと言うけれども、アラブはどうとるかという確実な情報を持っておるのですか。アラブはどう出るか。アラブもやるでしょう、会議を。
  67. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アラブ関係国のワシントン消費国会議に対しましては、その消費国会議にわが国が参加することにつきまして、公式の反応はございません。  ただ最近来日されましたヤマニ大臣にいたしましても、アブデッサラム大臣にいたしましても、わが国はこういう経緯で、こういう考えでこれに参加するつもりであるということは先方に伝えまして、先方は、この消費国会議に、確かに自分たちも若干の懸念を持っておるということは表明されたわけでございますけれども、日本の参加ということについて、警告をするというような場面は全然ありませんでした。  問題は、この会議におきまして取り上げられるいろいろな問題があるようでございまするけれども、たとえば代替エネルギーの研究開発というようなことをやっていただくのは、大いに賛成だということも付言されておったわけでございまするし、今度の会議におきまして、消費国間におきましていろいろな消費規制の問題、あるいは緊急時の融通スキームの問題、そういった問題は、産油国、消費国の間の対立という要素はないわけでございまして、そういうことを討議するということは、別に私は緊張を呼ぶ性質のものであるとは思いません。  ただ、あなたが御心配のように、そして多くの識者が懸念いたしておりますように、この会議が産油国と消費国との間の対立を来たす契機をつくる、あるいはその緊張を高めているというようなことになりますと、これは確かに重大な問題でございますので、その点につきましては、神経質なまでに、私ども会議の進行に参加いたす者として、終始注意を怠らないで対処いたしたいと考えております。
  68. 中澤茂一

    ○中澤委員 その中で、私は三項が一番問題になる危険があると見ているのです。それにはあなたも承知のように、石油ボイコットを受けそうな国には、消費国全体で救済の手を差し伸べる。これはやはり私は相当刺激すると思うのです。そして備蓄をお互いに強化していこうじゃないか。そのあなたの言う新しいエネルギー開発とかそういうことは、私は問題ないと思うのです。だから、この議事の内容によっては、私は相当アラブ側を刺激すると考えるのですよ。それじゃ、消費国が共同連帯でアラブと対抗しようとする姿勢が出てきますからね。だから、一体日本政府としては、この五つのどの辺を賛成し、どの辺はがんとして反対するのかという態度を明確にきめていかないと、これはたいへんなことになるということを私は心配しているのですよ。これはどこまでも、全消費国が言っても日本は反対だ、そういう項目整理をしていかぬと、また問題が日本へも波及してくる、そういう危険を私は感じておるわけです。  ですから、その辺については、これ以上国民に迷惑かけたら、大平大臣、あんたやめてもらわなければだめですよ。これだけ迷惑かけた元凶はあなたですから。もっと外交が先手先手打っていれば、こんなあほうなことにならなかったのです。いつもわけのわからない外交をやっているから、こういうことになってしまうわけです。  それで、総理、あなたちっとは冷静になったかな。冷静になったら、あなたにもちょっと聞くが、このごろ東南アジアを歩いて、ASEAN諸国を歩いてどういうことを感じたですか。
  69. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ASEAN五カ国を訪問してまいったわけでございますが、まあASEAN五カ国と日本との間には相互補完関係が非常に強い間柄である、こういうことでございます。日本はASEANの国々から資源の供給を受けておりますし、またASEANの諸国は、工業化を進める過程において、日本から工業原材料や機械その他を受けておるわけでございます。  いずれにしても、これらの国々の日本に対する信頼、期待というものは、日本で考えておるようなものではなく、非常に強く、関心が高いのでございまして、日本はこれにこたえなければならない。また、ASEAN諸国との間の友好緊密な関係をより以上に強化してまいらなければならない、こう感じたわけでございます。
  70. 中澤茂一

    ○中澤委員 私もバンコクに行って、あれでタイの国民が憤慨しなければ、全くあれはおかしいですよ。ちょうど終戦直後の日本の立川や横須賀の軍事基地のようですよ。バンコクは全く東京にいる感じですよ。ネオンといえば、ネオンが全部日本の広告ネオンでしょう。自動車だ、電機だ。ちょうど私は終戦後立川に行って、何と情けない国になったものだなと思った。全部看板は英語、いる人間はアメリカ人。バンコクのあの夜の光景というものは何ですか。あれでタイの国民がおこらなかったらおかしいですよ。だから、ああいう商社活動というものを厳重に規制しなければだめですよ。それには、今度の政府の出した、あなたの行く前に外務省があわててまとめた、こういうなまぬるいものでは——これは原則として私、否認はしませんが、こういうなまぬるいものではどうにもなりませんよ、東南アジアの基本五原則というもの。こんなものは、普通のことを普通に言っているだけでしょう。  第一に、東南アジア諸国との間における平和と繁栄とを分かち合うよき隣人関係の促進、こんなことは当然ですよ。第二も、東南アジア諸国の自主性の尊重、主権尊重なんて、こんなものは当然のこと。わが国と東南アジア諸国との間における相互理解の促進、これも月並みのことをいって、何も原則じゃないのです。東南アジア諸国の経済的自立を脅かさず、その発展に貢献する、これが若干意義があるといえば意義がある原則です。それからあとは、東南アジア諸国が自主的に行なっている地域協力の尊重、これも当然のことです。こんな原則でもってASEAN諸国問題を解決しようなんていっても、解決できませんよ。  私は、実は戦争中三年間、シンガポールを拠点に東南アジアの農民と直接接触して、コプラ集荷という仕事をやっていたのです。東南アジアの情勢はどうなっているかということは、私が一番知っている。農民なんか、まさに農奴ですよ。農家へ行ったって、ただ家族の食器があるだけです。たなさえないんですよ。そういう状態なんですよ。これは時間がないからよしますが……。  そこで、私は三年前ですか、オーストラリアの国会招待に行った帰りに、ずっと東南アジアを回ってきた。二十何年ぶりでシンガポールへ行ったら、私の管理していた工場があって、そこへ訪問したら、私が使っていた人たちがまだ四人いたです。二十何年ぶり、久しぶりだな。クラン工場というのも管理していた。ここに三人いた。その七人をホテルに呼んで私は話を聞いた。日本は一体どこが悪いのだろう。彼らはこう言うのです。彼らはほんとうの大衆ですよ。このまま日本がこういうばかなことをやっていたら、いま、アメリカ人が通れば、みな横を向いてつばきを吐くように、やがて日本人が通れば、東南アジアでは全部横を向いてつばきを吐くでしょう、いまに、アメリカのようにきらわれるでしょうと。三年間同じかまのめしを食っていた諸君だから、忌禅なく言ってくれ。そこで問題は四つ、五つ出ました。こういうことが悪い、ああいうことが悪と。これは時間がないからよしますが……。  東南アジア政策というものは、私は基本的に考え直さなければならぬ問題があると思うのです。これは現地の社会機構とかそういうものにも問題があるが、こういう抽象的な問題で今後東南アジア政策を進めたら、これはまさに、いま三年もたって田中総理が行ったら、今度は焼打ちを食うでしょうね。もっとも、三年はやっていないでしょうけれど。そういう危険さえあるのですよ。だからもっと具体的に、日本は一体基本的にどうすべきかということを、外務省は考えなければだめですよ。基本的にどうすべきか。  そこで、時間がないから……。ここに東南アジア政策研究会の提言もありますよ。しかし、この提言はあるけれども、これは東大の隅谷さんが中心になって、東南アジア政策の研究をやっているのですが、私はこれを見ても、あまりぴんとこないのです、私は現地を知っいてるだけに。われわれの関係しておる現代総合研究集団というものをつくっているわけです。新進気鋭の学者が二十人ばかり参加して、われわれも参加しているわけです。  ここがこのごろ提言をやっているわけです。この提言を、あなた、一度しっかり考えてみる必要がある。「日本企業の海外進出に関する提言」これは私らも参加して討論したのですよ。だから、これをいま一度外務省は東南アジア政策について……この五原則を、私は何でも否定するのではありませんよ。その中で一番問題点だけ指摘すると、現地の資本の欠乏なんです。資本がないのです。そうすると、日本は形だけは、行って合弁でつくるのです。百万の会社なら五十万、五十万。一番問題のあるのは、この五十万を一、二年たてば増資するのです。最初は対等だが、この増資するとき、現地資本はないのです。そうすると、日本の会社はこれを二百万に増資をして、百五十万を日本が押える。そこまではいいのです、資本の論理だから。ところが、すぐ始めるのは、重役の追い出しなんです。これはもう現地の、私が三年同じかまのめしを食った諸君も、こんなことをやっちゃだめだと言う。そこで現地の重役を追い出し始めるわけです。資本がこっちは百五十万で、おまえら五十万じゃないか、だから当然、重役はおれのほうが三分の二持つんだ、ここに問題があるのですよ。  だから、基本的にこれをどうやるか。帰りにマニラでアジア銀行の渡邊総裁のところをたずねて、ひとつアジ銀から何とか現地資本の欠乏を補ってやることはできないか。これはできないのは承知していますよ、いまの形では。私は、日本独自のアジア援助基金というものを設けるべきだと思っているのです。そうして現地資本の足りない分を、いつも日本の政府機関資本でカバーしてやる。たとえば二百万円にするとき、向こうが五十万なら、五十万そこから貸してやる。そうすると百万で、対等になっていく。この提言の中でも、これが一番重要な問題にしているわけです。というのは、資本が一番問題なんですから、移譲方式をとったらどうだ。最高限度二十年ぐらいにして、その間にだんだんと日本の資本を向こうへ移譲していったらどうだ。資本移譲をやっていく。たとえばその中から利益が出た場合、資本移譲の材料に使ってもいいだろうし、そういうことによって、最低限度対等よりか上に持っていって、現地人というものを最重点に置いて今後やらない限りは、この問題はだめなんです。これは、必要なら、われわれも参加している研究集団だから、あとであなたにあげてもいいが、ポイントは一つそこにあるということです。  それで、たいへん時間がないもので、もっともっと、特に私は三年間アジアに、タイ、ビルマ、ジャワにずっといただけに、アジアの実際の情勢はどうなっているのかというのは、詳しく、はだで知っているわけです。だから、そういうものを取り上げて、そして新しいアジア政策というものを、この抽象的な基本論じゃなくして立てなければいかぬ。それも早急に立てなければいかぬ、この問題は。このままいったら、これはたいへんな事態になります。彼らが言うたように、ちょうどベトナム戦の最中でしたから、アメリカ人が通ると、シビリアンが通っても、現地人は横を向いてぱっとつばを吐くのです。われわれも目撃していますよ。日本もそうなりますよと言うのです。だから、この問題は、田中さんが、現地語を覚えてしっかり話ししろなんて、そんな変な問題じゃないのですよ。もっともっと基本的に、アジア政策をどうするか。さもなければ、これもまた全部そっぽを向かれます。金さえやればいいという時代は過ぎたのですよ。大衆がそれだけ英知を持ってきているのです。  だから、日本の基本的な原則というものをどこに踏まえるのか、このことを政府は真剣に考えなさい。しかも、時間を置かずに。知恵が要るなら、私も幾らでも貸してやりますよ。特に、われわれが学者諸公とまとめた、この研究集団の提言というものは、時間があれば、私はこれをずっと言いますけれども、時間がありませんから、これをひとつ本気に考えなさいよ。ただ予算委員会答弁をうまくやっていれば、それで済んだという問題じゃないのですよ。いつも警告したことがあとになって出てくるじゃないですか。  そこで、次に来年度予算の問題に入りますが、これは福田さんにちょっと伺いますが、一体、この四十九年度の予算のもとになっている経済見通しというものは、これはどうなんですか。いまの卸売り物価消費者物価の高騰で、これの基礎で組んだ四十九年度予算というものは、はたして可能性があるのですか。
  71. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 来年度の経済見通しは、非常にむずかしい要素がたくさんあるわけでありますが、とにかく見通し得るあらゆる資料を総合いたしまして、最初に閣議で了解いたしました見通しは改定されまして、その改定された経済見通しと予算案は、これは慎重に対比してみましたが、当初閣議了解の見通し、それに基づいて編成いたしました概算、それを修正する必要はない、そういう結論に到達いたしたわけであります。これは、よく経済見通しと照らし合わせまして検討いたしております。
  72. 中澤茂一

    ○中澤委員 これはきのうの何の新聞だか、新聞は書いてないのだが、きのう、中旬の物価が発表されたわけですよ。この中旬の物価発表で、上旬よりか一・一上がっている、こういうふうに書いているのです。「一月に入っても家電、自動車、大企業中心製品値上げが続き、卸売り物価諸指数はウナギ登り。中旬は前旬より一・一%上昇、このままでは一月、月間の上昇率は五%を突破することは確実だ。」上旬が二・六でしたね。「五%を突破することは確実だ。昨年十二月、月間の七・一というまさに狂乱状態からは若干鎮静したろうが、五%というものを年率でとれば七九・六上昇になる。」ずっとそのカーブで追えばですね、一体これは、政府見通しの四十八年度二〇・二なんていうものはもうこえちゃっているのじゃないですか、この計数からいけば。四十八年見通しの上に四十九年予算を組んでいるんですからね。もう明らかにこえちゃっているのですよ。そうすると、この二〇・二という政府のこれは全然架空なものになってしまうわけです。どう思いますか。
  73. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 予算は、昨年というか、四十八年の卸売り物価の上昇の、平均といいますか、それと、四十九年度の卸売り物価の上昇の平均とを比較するわけでありまして、それによりますと、一四・六%ですかの上昇に相なる、こういうことでございまして、その程度の卸売り物価の上昇でありますれば、これは予算でいま御審議を願っておる諸計画は消化可能である、そういうふうな検討の結果の結論でございます。
  74. 中澤茂一

    ○中澤委員 ぼくは、各研究機関やあるいは個人意見、これは十七、ずっと全部とっているわけですよ。これを見ても、政府の一四・六なんていうものは、少しはあるけれどもあまりないのです。まあ、一六、一五、一八、一六、一七、一七。これを単純平均でとっても、これは一六・五ぐらいになっているのですよ。だから、これは大蔵大臣は、おそらく私がだんだん言っていけば、ああ、これは見通しだからと言って、必ず逃げるということは承知しているんで、見通しだけれども、政策努力でいきましょうというようなことが落ちだと思うが、こういう基本的に狂ってきたものでこの予算が実施できるなんて私は思わないのですがね。基本的に見通しが狂ってきちゃっているのです。  だから、卸売り物価の見通しが狂ってくると、当然これは消費者物価が狂ってくるわけです。卸売り物価は上がったが、消費者物価が下がったなんて、そんなばかなことは世界じゅうにないのですし、タイムラグがこのごろうんと早くなって、もう早いのは、石油危機なんか二カ月でぽんと消費者物価へ響いてきているでしょう。これは政策努力でやりますとあなたが言うこともわかっているのだ。しかし、そういう幽霊みたいな基礎でこの予算を組んでもこれはだめですよ。だから、その卸売り物価は、それが直ちに今度は外貨問題にからんでくるわけです。上がるから輸出がどうなってくるかという問題にからんでくるわけです。消費者物価のほうは、これは成長率全体の問題にもひっかかってくるわけです、消費者物価がうんと上がってくれば。そうすると、四十九年見通しというものは、事実上これは幽霊見通しである、私はこう断定しておきます。あなたはそうじゃないという御答弁でしょうが……。
  75. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 御明察のとおり、そういうふうなお答えは申し上げませんです。いま一月の卸売り物価が、あるいは十二月の消費者物価が、去年の一月なり十二月に比べて何%上がりましたというのは、月と月の比較なんです。平均的にこの一年間、どういうふうな推移をたどれるであろうかという比較になりますと、私どもは、卸売り物価については一四・六%、この辺が実現し得る、こういうふうな見通しを持っております。
  76. 中澤茂一

    ○中澤委員 それはあなた一人思っているだけでこの各研究機関や個人もこれは出ておりますが、一四・六、通年なんというものはどこにもないですよ。大体、低いのは下村治さん。これは政府の高度成長をささえてきた人で、これはいまさら破綻してしまったからといって投げやりなことを言っているような感じなんです。これ一〇%だった。あとは一九、一五、高いのは二〇ですね、卸売り物価の通年平均が。これを単純平均でとってみると一六・五ぐらいになっている。だから、あなたの通年の一四・六というのは、これはあなた一人がそう言っているだけで、ほかのこれだけの十七のセクターやいろいろな個人意見は、だれもそう見ていないのですよ。  だから、いまの物価上昇で、じゃ具体的に石油がいよいよこれで次の値上げがくるわけですが、そうすると、あなたは石油に関連する日本の全産業生産というものをどう見ていますか。
  77. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 石油の価格のアラビアの決定の影響は、もうぼつぼつ出てくる時期に回ってくるんじゃあるまいか、そういうふうに見ております。しかし、世間でもいうとおり、見越しの値上げだとか便乗値上げだとか、そういう事実も多々あるこういうふうに見ておるわけであります。  そういうことを考えますと、コスト要因としては、これは相当重要な影響を油の価格の上昇は与えますが、物価全体として見ますると、またかなり違った動きを示してくるんじゃあるまいか、そういうふうに私は見ておるわけであります。つまり、いまの価格体系というものは、これは便乗値上げだ、そういうようなことで水ぶくれである。私どもがいまとろうとしておる政策が逐次その効を発揮いたしまして、そしてこの水ぶくれの水をそぐという効果が強く打ち出されてくる。その結果、石油価格の上昇——まあ電力みたいにもろにそれをかぶるという企業につきましては、なかなかそういうふうにいきませんでしょうが、さあ石油が足らなくなりそうだ、この際値上げをしておけという、そういう企業におきましての価格というものは、この水ぶくれのその水をとるという作業の過程において相当部分が吸収される、こういうふうに見ております。
  78. 中澤茂一

    ○中澤委員 いや、それはあなたと幾ら言ったってかみ合わない議論ですが、しかし、私は、石油が、産油国がどうきめるか知らぬが、十一ドル六十五セントなんて言っていますわな。だから、そういうことになったら、これはとても収拾のつかない混乱が起きてきますよ。それは、この予算なんというものは全部吹っ飛んでしまう。収拾つかなくなりますよ。それはまさに破局的段階が日本経済に来ますよ。  だから、そういう点において、これも早急に手を打たないと、いつも後手後手やっているのがいまの政府なんです。時間があれば私はもっとみっしりこの予算問題で議論したいのですが、何しろ時間がないので……。  これもこの提言を、民間のいうことも聞きなさいよ、ただ政府の独善じゃなくして。これはちゃんと社会経済国民会議という、中山伊知郎さんがやっているところが提言しているでしょう。これをばっちりやったら、何とか起死回生の道があると私は見ている。おもなものを拾えば、総需要抑制、金融政策では、債務者である企業の利得だけを助長する低金利政策から脱却して、先進国並みの二たけたの高金利とすべきである。早く金利を上げなさいという提言をしているのです。これは企業も入っているんですよ。たとえば木川田経済同友会代表幹事というのが入ってきめておるのですよ、金利を早く上げろと。それから公定歩合の再引き上げを検討する、公定歩合ももっと上げろと。それから財政の縮小が必要であるから、公共投資を事態終息まで停止しろと言っているのですよ、この中で。この決断をやらなければだめですよ。これをやれば、何とか起死回生の道はあるんじゃないかと私は思う。  それから第二項では、預金金利の引き上げと貯蓄安定国債の発行、これは若干私は疑問があるんだ。西ドイツでは債券発行をやって過剰流動をいま吸収していますよ。安定国債がいいか、西ドイツのような債券発行で短期間吸収がいいかは、これは私は若干検討を要すると思うのですが、とにかくこの提言では、貯蓄安定国債を発行し、一定の期限を切って、預金金利を一〇%以上に引き上げてやる。それで一〇%以上にして貯蓄安定国債を一年間発行する。この国債で集めた資金は、インフレが収束するまで凍結してしまう。この資金はもう出さない。インフレが収束するまでは日本銀行なり特別会計で凍結してしまう、そうして将来、この資金は雇用と福祉政策に使えばいいじゃないか、こういう提言をしているのですね。これは社会党とか共産党じゃないのです。あなた方はすぐひが目で見るが、木川田さんという人も入ってやっているのですよ。  それから第三には、臨時利得税を徴収しろと、はっきり言っているのですよ。所得政策に踏み出す以前に、企業は超過利潤をインフレ克服の財源として放出すべきである。財界の人が入って提言しているのですよ。  それから石油については、石油管理特別会計をつくれ。一応ここで、ほかの産業から原油は遮断していこうという考えですね。特別会計をつくる。そうすると、これは非常事態がおさまるまで、時限立法として石油管理特別会計を設置する。石油は政府が為替割り当てをして数量調整をする。同時に、どうしてもいけない場合は、必要に応じて政府がその一部を買い取って価格調整をやれ。これはまさに、これを実行したら、完全に私は事態は終息すると思うのです。  これから同時に、中小企業対策、福祉政策に配慮し、中小企業機関には特別ワクをつくって大幅な日銀ワクを設けるなど、インフレによってしわの寄る弱いところへは十分な配慮をしなさい。何か日銀総裁、きょう御用があるというんだけれども、私はあとであなたに集中しようと思ったのですが、こういう提言があるわけですね。  それに対して、公定歩合の引き上げというものは、きょうも午前中政策委員会をやったときに少しは議論はなさったのですか、一〇%以上に引き上げろという提言。私も、思い切ってこれは一〇ないし一一にいま一度ここで引き上げる必要があると思うのです。どうお考えですか、日銀総裁。
  79. 佐々木直

    ○佐々木参考人 公定歩合につきましては、御承知のように、昨年十二月二十一日に二%引き上げまして、九%まで持ってまいりました。もちろんいまの状態でいいというふうに考えているわけではございませんで、今後の経済情勢の推移によりましては、さらに一段と引き締めを強化することも考えなければならないと思います。  ただ、現在のところは、マネーサプライその他の点につきまして、引き締めの効果が相当はっきり急速に出てきております。したがって、いまの時点では、公定歩合の問題を具体的にすぐどうするということは考えておらないのでございます。  それから、なお、私、時間まだございますからどうぞ。
  80. 中澤茂一

    ○中澤委員 大蔵大臣、どうです、いまの提言。これはあなたは本気でやりなさいよ。これをやれば、何とか事態は終息しますよ。  それから石油というものは、私は、やはり国家調整機関でこれはしばらく介入すべき必要があると思うのですよ、原油は。いま米が、自由化しよう自由化しようとしたが、農民団体やわれわれ社会党が反対して、自由化しなくてよかったでしょう。米を自由化していたらいまどういうことにななっていました。米がないよという流言が出たら、六十万トンの手持ちなんというものは、二千何百万戸の消費者が少しずつ持ったら、こんなもんはパアになっちゃうのですよ。まさに、米という国民の生命を維特するものを、食糧管理特別会計で国がきちっと数量を握っているから問題が出ないのですよ。私は、石油もこれと同じ形をここしばらくの間早急に考えるべきではないか、原油だけはですよ。国が調整する、国がある程度のチェック機能を持つ。これは金を出したっていいじゃないですか、保証があるならば。そういうことをやらないと、このごろからの議論を聞いていても、何が何だかわけがわからないでしょう。私は一つの政策として、もっと政策能力というものを生かすべきだと思うのです。  たとえば、この事態を機に、何も田中さん、力んで、この法律、この法律なんて、やりもしないことを言っているよりか、ある程度緊急の事態が起きる前に、国民がどうしても必要な物資、これだけは国がチェック機能を政策的にやるべきなんですよ。たとえば二割なら二割、国がある程度のチェックをしていく、そのかわり倉庫料やそういうものは、この緊急事態の間、国が見ればいいのですよ。そのかわり、ちり紙でも洗剤でもその二割は、国の指令以外には動かさない。それで大阪にちり紙がないといったら、そのチェックをしておる二割の中からさっと大阪へ送ってやる、こういう機動的な政策能力というものが政府に欠けておる。だから、法律でばかり取り締まるのじゃないのです。だから、食糧管理法というものは、いかにありがたいものであるかということは、今度の騒動で一番わかったと思うのです。そういうことについて、この提言の中で、ぼくは特に、石油はこの際、原油に対してのチェックをすべきである。これはやろうと思えばできるでしょう。為替でやってもできるし、いろいろな手はあると思うのです。だから、そういうことを、この提言を具体的に——まあ日銀総裁は公定歩合は、いまのところ上げる気はない。また、ここで上げますなんて言ったら、これは大問題になるからそれは言えないはずですがね。だからどうです、大臣、この提言を……。
  81. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま、中澤さんのお話しの提案というのも、私も非常に興味を持って読んでおります。それで気持ちは、全く私とこの提言とは同じでございます。  つまり、この異常な事態を一刻も早く解決しなければならぬ、こういうことで、これは全く一致しておるわけですが、その手段、方法が多少違いがあるということかと思います。  私は、とにかくこの異常な事態を克服するためのレールを敷いた、こういうふうに考えておるわけでありまして、つまり総需要抑制政策、財政金融政策におきましてそういう施策を強力に進める一方、物資三法、これを政府は活用して、その総需要政策の足らざるところを補う。私は、これを堂々と進めていきますれば、もうそう遠くない時期に世の中の様相というものは変わってくる、そういうことを確信しておるわけです。  ただ、あなたが特別この提言の中で関心を示されました石油管理特別会計、これも私も関心は持っておるのです。持っておりますけれども、とにかく私は、この異常な事態を一刻も早く解決しなければならぬ、そういう際にこういう基本的な改革をやること、それが相当のまた混乱を伴うわけです。そういうことが、はたしていいのかというようなことを考えますと、いま直ちにこれを採用するという結論は、私は出てこない。しかし、これは一つの議論として傾聴すべき考え方ではあるまいか、そういうふうに考えております。
  82. 中澤茂一

    ○中澤委員 福田さん、議論しているんじゃないんだよ。もっと政策先取りを考えなさいと言うんですよ。ただ、あなたも少しこのごろ、わしと同じことで、動脈硬化を起こして頭が硬化しておるが、その硬化した頭では処理できない段階がいまなんですよ。だから、政策能力というものをもっと発揮しなさいよ。向こうを見通しての先取りをしていかなければだめですよ。さっき大平さんが言った、今度の消費国会議がどうなるか知らないが、これがへたになったら、またへたになってきますよ。だから、そういう政策を、法律で取り締まるのではなくて、政策でどうやってカバーしていくかということをいつも考えていなくてはだめじゃないですか。政策でカバーしていくのだ。それには、いま言った食管法に見習って、国民の絶対必要物資は、一割でも二割でもいいから政府がチェックする、そういう体制をつくらないと、問題は今後だってまだ出てきますよ。これでおさまったわけじゃないですよ。  だから、そういうふうに政策能力というものをもっと持たなければだめだ。消費者物価なんて、もうすごいでしょう。この年率でいけば、大体四〇をこえることはもう確実でしょう。政府のそんな九・六だなんて、九・六で何でとまりますか。そんなことはもう常識外ですよ。それが九・六でとまる。そんなことはないというのなら、根拠を示しなさい。どうしてとまりますか、九・六で。
  83. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 中澤さんが四〇%とかなんとか言われるのは、たとえば昨年の十二月の時点の消費者物価を一昨年の十二月に比べて高くなったからという、その高くなった率を話しておられるわけですが、消費者物価九・六、こういうふうに私どもが申し上げておりますのは、四十八年の経済見通し上の平均指数、それが四十九年の経済見通し上の指数と対比してどうなるかということなんで、これは全然見方というのか、立場が違うのです。私どもは、何といたしましても九・六%、そういう見通しを持っておりますので、そういうふうになるような政策を進めていく、こういうことでございます。
  84. 中澤茂一

    ○中澤委員 福田さん、それは幾らやったって四十九年度の三月にならなければ証拠が出ないが、もし証拠が出て九・六でとまらなかったら、あなたはやめる、責任を持ちますか。そういうことを言ったって、国民だれも納得していませんよ。  このごろ農村の人が持ってきて、一体これを先生どうしてくれるのだと、私に居直っているんですよ。これは私のほうでつくっている、エノキダケというキノコを冬季間副業栽培をやっているのだ。これはその袋だ。石油製品ですよ。このエノキダケというやつで、農協が中心でやっているのです。この袋が、何と驚くなかれ、去年までは一枚七十五銭だったんですよ。七十五銭ですよ。それが十二月の末から一枚二円十六銭でなければ売らないと言ってきたんですよ。毎日キノコを出しているのだから、売らないといったって買わざるを得ないでしょう。これに入れなければ、トラックへ積んで輸送できないのですから。二円十六銭でなければ売らないと言うので、万やむを得ず、これをいま二円十六銭で買っているのですよ。このごろおこってきたのは、これを今度は三円に上げると言ってきているので、農民の人たちがおこって私のところに来て、どうしてくれるのだ。二円十六銭でも二・八八倍ですよ。七十五銭の約三倍ですよ。これを今度は三円に上げる、こう言ってきているのです。これが消費者物価実態なんですよ。七十五銭が三円になるのが、四倍になるのですよ。それをあなたが九・六でおさまりますなんて言ったって、だれが信用しますか。農業生産物資材というものは、全部、低いもので二倍、高いもので三倍に上がっているのですよ。しかし、農民は出荷しなければならない、使わなければならない。幾らと吹っかけられてもしょうがない。これはいま二円十六銭で買っておるのですよ、七十五銭のを。これが、消費者物価実態なんですよ。こういう農民に、九・六しか上がりませんなんて、だれが納得しますか。消費者物価実態というのはそういうところになっているのですよ。  きのうもいろいろな例を申し述べたけれども、そういうことを言っても、だれも信用しないということですよ。これはたいへんな事態に末端はなっている。だから、あなたの総需要引き締め政策でこれが簡単におさまるなんて、われわれは全然判断できない。これが、あなたの言う率でいえば、七十五銭がせいぜい八十銭から八十四、五銭で、これが下がるということになるわけですよ。この袋が、二円十六銭のが下がりますか。ガリバルティック寡占で、こんなもの下がるわけないですよ。これをつくっているところが、これまた中小企業で困っているのです。つくっているところのおやじも私のところへ来ると言ったけれども、いま忙しいというので、これを農民が五、六人で持ってきて、どうしてくれるんだと私に居直っているわけですよ。これが実態なんですよ。たいへんな事態になっているんですよ。われわれがここで議論している問題以上に深刻な問題に、末端消費者価格というものがすべてなっている。  大体、経済企画庁のとっている統計四百何品目というものは、こんなものは、いつかも私は問題にしたように、統計の中に入っていないものがどんどん上がっているんですよ、二倍、三倍に。だから、あの統計なんというものは、消費者から見たら問題じゃないのですよ。それを政府が九・六でございますなんて、何で国民大衆は信用しますか。政府統計の中に入っていないものは二倍、三倍に全部上がっているじゃないですか。二倍、三倍ですよ。九・六とか一〇・五とかという話じゃないのですよ。  そこで、基本論に入りますけれども総理、一体どこにこの原因はあったと思うのです。いままでのあなたの答弁を聞いていると、これは海外の石油があれだから悪い。石油も確かに引き金であったことは私は否定しません。もっと基本的に問題があったでしょう、総理。——総理、あなた答弁してください。基本的にどこに問題があったのか、このインフレのくるずっと経過。石油が引き金なことは否定しませんよ。どこに問題があったのか。
  85. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いつも申し上げておりますとおり申し上げるわけでございますので、同じことを言うなと言われそうな顔をしておったものだから、ちょっと慎重にかまえておったわけでございます。  卸売り物価は、いつも申し上げておりますとおり、先進工業国が十カ年平均三・五ないし四・五というときに、日本は十カ年平均は一・三でありましたから、非常に低かったということは事実であります。それは、大体国際的な価格も安定をしておったということも一つの大きな原因でございましょうし、日本の年々上がる賃金その他を吸収できるような状態に、企業の合理化、機械化、コンベア化、オートメーション化が進んでおったということも事実でございます。  それが、第一には不作により、殻物が国際的にうんと上がったという問題、それから、ドルの切り下げということで国際的な物価高、これはあなたもよくおわかりになると思うのですが、これは現実問題として数字が示しておるわけです。二、三年前には、ほとんど外貨の手持ちがなくてどうにもならなかったというような、まあ大問題であった資源国、開発途上国が、その後急速に、二年ぐらいの間に相当大きな外貨準備を持っているわけです。そういうことで国際物価が高騰してきた。そうすると、日本はほとんどの原材料は、米と労働力を除くと、全部といっていいくらい外国から入れなければならないというところに、物価の先高観というのが動いたということが大きな原因だと思います。そこに、国内的には過剰流動性その他いろいろな問題が複合して、大都市における複合公害というような状態で拍車がかかってきた。それで最後に、引き金ではなく、一番大きく作用したのは石油問題である、こういうふうに考えざるを得ない、こう思います。
  86. 中澤茂一

    ○中澤委員 大蔵大臣、これ、どう思う。こういうたいへんな破局的事態に来た原因はどこにあったの。その石油の引き金を別に除いて考えた場合、どこにこれは問題があったのですか。
  87. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 しばしば申し上げておるように、これは国際要因もある。しかし、同時に国内要因もある。国内要因としては、財政金融政策の運営という問題だろうと思います。総理も率直に認めておられますが、国内要因についてはその対策の進め方が手おくれであった、こういうふうに申しておるわけでありますが、私もさように考えます、
  88. 中澤茂一

    ○中澤委員 この問題の基本は四十六年からなんです。四十六年から日本の財政膨張、企業信用膨張、土地の価格暴騰、この三つがこの事態を持ってきているのです。  まず第一に、財政膨張ですよ。これは明らかに、田中さんが総理になったとき直ちに引き締めに転ずべきときであったので、これが誤っている。  その前に、基本的にこの日本のインフレを破局的に持ち込んだのは、やはり国債ですよ。私が、四十一年の国債発行のとき、ここであなたと大論争をやった。この国債はやがてたいへん危険なインフレをはらむぞ。ところがあなたは、そういうことはございません、これは適度に発行しておれば、適当にいきます。そうじゃないのですよ。日銀の収支じりが、国債の為替の収支じりを除けば、国債の発行から日銀券増発が出ている。あのとき宇佐美さんをここに呼んで、私が、引き受けませんねと言ったら、一年は引き受けません。翌年からどんどん引き受けているじゃないですか。いま総裁が金利を上げるのをたいへんちゅうちょしている。なぜちゅうちょしているか、ぼくはわかっている。あなたの心情には、またことし出る国債、この物価支持政策をやらなければならぬというのがあなたあるでしょう。それには、金利を上げてしまったら、国債がどうなるかというジレンマにおちいっているのでしょう。わかっているのですよ。しかし、それを断固としてやらなければ、これは収拾つかないのですよ。だから、私はちゃんと四十一年の国債発行のとき、二時間、あなたとここで、危険になるぞという大論争をした。  その速記録をこのごろ私ちょっと調べてみた。私はこういう警告をしているのですよ。これは、あなたは、公債の範囲、要するに公共債、公共の国債を出すのだから、国の財産になって裏づけがあるから、幾ら出してもいいような話をした。その中で私は、こう警告しているのですよ。これは公債の範囲も明確でない、まだずっとふえるものであるということを私は確信しておる、同時に、財政の歯どめがそういう考え方では非常に危険であることを警告しておきますよと、四十一年に私は警告しているのですよ、あなたに。そこであなたは、このときの論争でこういうことを言っているのですよ。国債は、国の財産になるものだから、発行しても裏づけがあるからいい、こう言っているのですよ。  そこで、公共債の範囲が私との論争で問題になったわけなんです。ところが、国の財産になるものだからいいのだというあなたの言ったものは、結果的にどうなっていますか、ことしの予算を見ても。昨年は二兆三千四百億。当時は七千三百億でしたからね。これを見ても、あらゆるものに拡大しちゃったじゃないですか。私、ちょっとこのごろ、四十一年の七千三百億のときを見てみたら、それはなるほどきちっと事業費で押えていた。ところが昨年から、田中さん、あなたもう全部拡大させてしまった、二兆三千四百億と。これはずっと調べてみると、これがインフレの原因になっているのです。日銀総裁がいかに抵抗しょうと思っても、抵抗できない財政全融の仕組みに日本経済がなっちゃった。抵抗できない。そこに問題があるのです。だから、この公債政策というものを、私はこういう危険を予知したから警告をしておいたのです。  同時に、あの四十年の予算委員会で、私は、いまのうちに土地騰貴を押えないと、これが擬制資本になって膨大化してくると言った。これが現に私の言ったとおりになっている。土地の暴騰が、これが企業資産のふくらましになり、そしてこれが銀行へ担保に入り、その土地評価で金を貸す。だからそういうふうな土地騰貴というものも、日本のインフレの根源になっているのです。だから四十年に、土地騰貴規制をやりなさいと言ったのです。当時は瀬戸山さんが建設大臣だったでしょう。佐藤内閣のときです。当時瀬戸山さんが建設大臣で名言を吐いたんだ。土地は商品にあらず、いまこそ土地を規制しなければいかぬと言って吐いたのです。ところが、あなたが幹事長で、事実かどうか知らぬが、あなたが瀬戸山構想をつぶしたといううわさを、当時新聞記者諸君から私は聞いておる。それは真偽は知りませんよ。だからあのとき瀬戸山さんが土地は商品にあらずと言ったとき、ぴしっと土地価格規制というものをやるべきだったのです。しかも、あなたのところの土地政策大綱では、国あるいは公共機関以外には土地は売らないという原案があったじゃないですか、売らせないという原案が。これもつぶしてしまった。このときこれをやっていれば、日本の擬制資本というものはいまのようなことにならない。六十八兆でしょう。これをどうしますか。こんなもの、どうにもならないですよ。  だから福田さん、あのとき私が警告したように、ことしの公債だって、あなた急に大蔵大臣になったから、切れと言ったってなかなか切れない時間的な問題があったと思うが、これはもう国債を減らさぬ限りはどうにもならぬです。マネーサプライというもの、通貨供給量というものは、はっきこの表に出ているように、国債と比例して出てきておるのだ、通貨供給量というものは、ずっとこの表を調べてみると。  昭和二十四年には、日本の長い間のインフレが完全収束したのです。このときは、御承知のように、司令部から九原則吉田内閣は突きつけられた。この九原則実施しろ。そこで、司令部の命令吉田内閣は実施せざるを得ない。そして実施して、昭和二十四年に、日本の長い戦時中からのインフレというものは、ドッジ博士が来て完全収束したわけです。このときは、国の財政黒字は一千億出したのですよ。司令部は一千億出せとは言ってなかったようですけれども、とにかく財政黒字をつくらぬ限りはどうにもならぬです、このインフレは。これは命令でよこしているのですよ、九項目原則というのは。その前のほうの三項目というのが急所をついた命令なんだ。これを実施したから、初めて昭和二十四年に、終戦後のあの猛烈なインフレが収束しているんですよ。だから、国の健全財収というものが、いかにインフレというものに大きな影響を与えているか、このことを福田さん、あなたはわかっているだろうが、わかっていてもやめられないというのが、いまの国債になってしまったのだ。わかっていてもやめられない。これはひどいじゃないですか、この四十五年からの日銀券の増発量というものは四十八年の年末なんて十兆一千億の日銀券を出している。十兆一千億。通年にして七兆二百三十八億だ。どのくらい去年よりふえているかといえば一兆四千八百九十六億通貨がふえているんですよ。これは公債が一つの原因になっている、国債が。その前の年も、田中さんが内閣をとってから四千九百五十二億の通貨増、通年ですよ。年末のピークには一兆九千億の通貨増発を前年よりやっている。これだけの通貨を出してインフレにならないわけがないですよ。完全になりますよ。  だからこそ、いま欧州でも、EC会議でもってこういうことをきめたでしょう、EC蔵相会議が。これはルクセンブルク会議でこういうことをEC諸国の蔵相が決定しているじゃないですか。EC諸国のマネーサプライの増加率は、予想されるその国の実質成長率プラス許容できる消費者物価の上昇率の範囲内に限られるべきであるという決議をしています。実質経済成長率プラス許容される物価上昇率。では、許容される物価上昇率というものはどのくらいかといえば、EC会議では四%ときめている。これが大衆も許容される上昇率だ。だから四%プラス自国の実質成長率、たとえば、来年二・五なら二・五プラス、EC諸国で許容されるのは四%、これ以上の物価上昇は許容されないというのだ。だから、そこに焦点をしぼろうじゃないかというので、ルクセンブルクのEC蔵相会議でこれを決議しているんですよ。いかにこのマネーサプライというものが、いまの世界のインフレを高進させているかということで、欧州諸国でもここへ着目して、こういう蔵相会議決議でやっているんですよ。だから、通貨増発というものは、インフレにどういう大きな影響を与えているか。  ところが、日本銀行の総裁に伺いますが、この公債発行のとき、宇佐美さんはこういうことを言ったのです。いまの貸し出し制度をオペレーション方式に変えたい、それには国債でオペレーションをやるのだ、オペレーションを含めて考えておるのだ、こういう答弁を宇佐美さんはしておるのです、この速記録で調べたら。あなたのほうでオペレーションでやろうと思うものは、結果的にどうなりますか、ちょっと答弁してください。
  89. 佐々木直

    ○佐々木参考人 私どものほうは、昭和三十七年から貸し出しによる資金の供給にワクをかけまして、それで、それ以外の資金の需給の調節につきましてはオペレーション方式を入れたわけでございます。これが中で新金融調節方式と呼ばれましたが、その後、したがいまして貸し出しにつきましては最高限度をつくり、しかも、その後だんだん下げてきておりますから、貸し出しへの依存度は、総体の資金供給量の中でずっと減っております。  ただ、オペレーションにつきましては国債も使っておりますが、現在では手形のオペレーションを相当多額にやっておりまして、そういう意味で、オペレーションの材料と申しますか、たまと申しますか、そういうものは前よりもだいぶ多様化しておるのが現状でございます。
  90. 中澤茂一

    ○中澤委員 総裁、私は、これはもうちょっと時間があればあなたのほうから内容分析してもらいたかったのだけれども、あなたのほうで、政府の国債発行のうち、保有額はいまどのくらい持っておりますか。政府の国債ですよ、その保有額、どのくらい持っておりますか。  いま一つ聞いておきますが、政府の短期証券だね。これは四十八年のはまだ出ていないが、四十七年のは出ておるが、四十七年で三兆五千四百十億円短期証券を持っているのですね。たいへんな政府のものをあなた方かぶって、これが日銀券の増発になっているんですよ。四十七年のあなたのほうの内国債の保有高は一兆一千八百五十九億だ。四十七年ですよ。合わせて四兆七千億の政府証券というのは、日銀券の増発に結びついているじゃないですか。宇佐美さんは、国債は買いません、こう言ったけれども、その国債は事実上あなたのほうで、かつての戦時中の臨時軍事費のような形に、一年をおいてこうなってきているじゃないですか。いまの保有額はどのくらいありますか、短期と両方で。
  91. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいま手元にあります一番新しい数字では、日本銀行の所有しております国債は五千百十四億でございまして、その中で短期国債が四十八億円、したがって、まず五千億円が日本銀行が所有しております長期国債でございます。(「たいしたことないな」と呼ぶ者あり)
  92. 中澤茂一

    ○中澤委員 いやいや、これはそうじゃないんだ。政保債その他、そういうものは、いま現況でどうなっているか。
  93. 佐々木直

    ○佐々木参考人 これは、いま国債以外の債券を二千八百億円持っておりますので、その中にどういうものが入っておりますか、ちょっといま……また調べて御答弁申し上げます。
  94. 中澤茂一

    ○中澤委員 短期証券はあなたのほうで全然持ってない、四十八年度……佐々木参考人「四十八億」と呼ぶ一四十八億、それは数字、間違っているんじゃないの。これはこのごろちょっとよそで調べてもらったんですが、四十八年十二月末、内国債の発行総額で、あなたのほうの手持ちが七千四百六億、それから短期証券が——短期証券といっても、私は政保債を含めてこれ調べろと言ったのですが、この内容はちょっと、ゆうべ持ってきたんでわからぬが、三兆七千八百六十一億という数字は、これは何ですか。
  95. 佐々木直

    ○佐々木参考人 その二兆八千億というものは、ちょっと私ども見当つきませんが、ただいま日本銀行の財産全体の中でどういうものがあるかと申し上げますと、ただいま申し上げましたように、国債が約五千億、それから、いま申し上げました債券として二千八百億円ございますが、これは大部分が政保債でございます。そのほかに大きいのは、海外資産が約三兆四千億ございます。それから買い入れ手形が三兆九千億ございます。それから貸し出しが二兆二千億、こういう内訳になっておりまして、したがいまして、その総体の資産の中で国債と政保債の占める割合は、非常に低いものに現状ではなっておるのでございます。
  96. 中澤茂一

    ○中澤委員 それは、今度の金融引き締めにおいて、オペレーションで過剰流動引き揚げに相当出したのですか。売り出したわけですか、少なくなっているのは。
  97. 佐々木直

    ○佐々木参考人 相当たくさん売却しておりまして、残高がいま五千億円になっておるということでございます。
  98. 中澤茂一

    ○中澤委員 そこで、大蔵大臣、この通貨供給量というものをEC蔵相会議がきめたように、これは本気に考えないと、これだけの通貨の膨張をしてくれば、結局物価は上がるということは、日銀券の、管理通貨の価値がどんどん下がっているから物価が上がっていくんですからね。だから、ある意味でいえば、日銀券という、札というものをある程度規制すれば物価は下がるのですよ。だから、ケインズ経済ばかりもう言ってたってだめなんです。近ごろ学者の中で、欧州の学者諸君も、通貨量制限という問題をいま大きく取り上げているのです。通貨量制限をやらなければいかぬ。それがEC蔵相会議にもなっているわけです。  そこで、時間がないから、西ドイツがいまやっているような方法で通貨を徹底的に締めていかたければいかぬ。それはあなた、国債を今度千四古億減らしたじゃないかなんて言うけれども、そんなもの、そのぐらい減らしたってどうにもならぬのですよ。私は別にあなただけ悪いと言うのじゃない。これ、原因は田中さんにあるのですがね。西ドイツはどういうことをやっているかというと、マネーサプライを減らすために、法人税の増徴、さっきの提言を西ドイツはもう現にやっているんだよ。法人税の大増徴をやっているわけです。それから所得税の特別付加税創設を西ドイツはやって、取っているのですよ。それから国債収入の中央銀行凍結をいま始めているのです。入ってきた国債の金を中央銀行が凍結していく、しばらくの間、おさまるまで。これを西ドイツは現にやっている。それから金融政策では、対内、対外債務に対する準備率の引き上げ、公定歩合の引き上げ、これは日本もやっている。それから再割引を停止に近い線までいま削減をやっているのです、西ドイツは。だから、国際物価指数をずっと各国のを見ても、西ドイツは一番上がっていないですよ、やはり物価が。八・二くらいです。ほかはみんな一〇、十三くらい上がっている。それが八・二くらいです。それから不動産金融に対して金融統制を始めているのですね。不動産金融が、要するに地価というものは擬制資本だから、擬制資本が次から次と通貨増発になっていく、だから、どうしても不動産金融というものをここで徹底的に締めなければいかぬ、こういうことで西ドイツでは不動産金融の金融統制を、不動産金融というものはなるべく出さない、こういう方針で中央銀行がいまやっているのですね。これは異常事態ですから、総裁、もう常識で問題を考えていてもだめなんです。異常事態にはドラスチックな方法で思い切ったことをやらない限りは、いまの情性で日銀が走っていったならば、どうにもならなくなってくる。だから、マネーサプライを制限するということについては全力をあげなければいかぬ。私はこのように思うわけです。  そこで総裁、忙しいというから、私はこの前も宇佐美さんに警告したのですが、日銀というものの本質的なものは一体何なんだ。この役割りというものは、通貨価値の維持なんだ。通貨価値を維持するための保証人として日銀があるのだ。その日銀が、国債を次から次、一年たてば引き受けては通貨増発をやっていったんではだめではないかということで、宇佐美総裁にも私は当時警告している、だめになりますぞと。  私は、ドイツ人というのはたいへんえらいと思うのですよ。たとえば、私は「健全通貨」という本を見て非常に感心したのですが、学ばなければならぬことは金融マンとしてたいへんありますわ。その中で、西独のレンダーバンクの総裁になって、いまおやめになったけれども、フォッケ博士がこういうことを言っているのですね。「中央銀行は、一体インフレーションを防止する力を持っているのであろうか。しかりと私は答える。そのことは同時に、国家財政が秩序正しく良心的に実施される限り」前提があるのですよ。ただ日銀総裁にばかり言ったってだめなんですよ。「国家財政が秩序正しく良心的に実施される限り、中央銀行はその力を持っております。」インフレーションを防ぐ力を持っております。フォッケ博士はこう言っているのですよ。「西独は幸いに、諸外国とは反対に、脅威を感ずるほどの多額の国債を有しておらない。秩序正しい財政と、規律を守る大蔵大臣とにも恵まれておる。」大蔵大臣にもフォッケ博士は恵まれておる。これは終戦後、ドイツのインフレを切って再建をやったレンダーバンクの総裁ですね、御承知のように。そういう大蔵大臣を持っている。そして、「大蔵大臣は中央銀行をあやまって利用することは考えていない。」「われわれはありがたいことには」今度は大蔵大臣が国会で演説をしているわけです。「われわれはありがたいことには、唯々諾々としてすぐ外部の要求に応ずるような中央銀行は持っていない。」外部が何だと言ったってそういうことをしない、大蔵大臣は衆議院の公聴会でこう証言しているのですよ。われわれの言うことなんか聞きませんよ、だからわれわれはありがたいんだと言っておるんだ。全く名コンビですよね。公聴会でそういう証言をしておる。「通貨価値の維持の保証人としての独立性を付与されておる中央銀行は、通貨価値維持がわれわれの任務なんだ。」   〔井原委員長代理退席、委員長着席〕 「その中央銀行は、政府に対してさえ独立性を保障されているからである。政府が何と言ったってわれわれは聞かないんだ。通貨価値の維持だけがわれわれなんだ。だから通貨価値の維持が可能なのである。」こういうことを言っておるんですね。これは政治家もえらいが、やはりフォッケ博士も私はえらいと思う。  なお、参考のために……。これはよく考えなければ問題ですよ。抽象論であるが、基本的な問題ですよ。こういうことも言っておるのです。「通貨価値の安定は俗受けのする手段によって果たすことはできない。」俗受けのする人気取りや圧力に屈しては、通貨価値の維持はできないんだ。そして、「強固な安定した通貨維持のためには、軟弱な手段によっては保持ないし防衛することができない。」軟弱なことでは強固な通貨価値は維持されないんだ。こういうことも言っておる。  それから、またほかのある会合では、これもまた私は考えなければいかぬ問題だと思うのですよ。「通貨は経済のためにあるのであって、経済が通貨のためにあるのではないんだ。」いいですか、ここに通貨の主体制があるんですよ。「経済のためにある通貨とは安定通貨であり、健全通貨でなければならない。そうでなければ、長期的に見て経済の成長というものはあり得ない。」通貨が健全でなければ、長期的に見て経済の成長はあり得ない。こういうことをフォッケ博士が言っておるんですね。  私はこの前の国債発行のときも、これは大変な事態が来ますよ、だから、あなたは通貨価値を維持するのを唯一の生命にして、政府がへたな財政政策をやるなら忠告しなさい、こうまで宇佐美総裁に言った経過があるのです。ドイツのヒトラーがあれだけの猛威をふるったとき、当時はこのフォッケも理事の一人であった。そこで彼は、これ以上政府が小切手をよこして軍事国債をやったらドイツ通貨は崩壊する。そこで覚書をヒトラーに送った。ヒトラーは頭にきて、おこってしまった。そして直ちに連銀の総裁以下全員罷免しておるのですよ。そこまでフォッケ博士という人は、通貨の番人としてそれを進言しておるのです。  だから、これをあなたが総裁として守らぬ限りは、日本のインフレーションというものはどうにもおさまらない。このごろ、補正予算のとき聞いておれば、政府と仲よく肩を組んでやっていますなんて、あなたが政府と肩を組むからこういう事態が来るのですよ。時間がありませんから、これは参考のために申し上げておくが、基本的な精神の問題ですから、よく考えておいてください。  そこで、こういうように事態がだんだん悪化してきてしまった。この原因は、先ほど言ったように三つある。  その第一の失敗は、要するに四十六年度のニクソン・ショックのとき市場閉鎖をやらなかった。これがもう決定的な致命傷になった。これが日本のインフレの出足ですよ。あのとき十日間というものを漫然と閉鎖せずに送った。そして約五十億ドル近いドルを買わざるを得なかった、閉鎖しないのだから。その損害が、あなたのほうでまだその損金が残っておるでしょう、四千五百八億という。これはだれがもうけました。大体、日本の商社はじめ十大会社でしょう。為替のしりで約五千億損しておるでしょう。これが一斉に土地と株へ、投機に飛び込んでいったわけです。これがまず四十六年度の第一の失敗。あのとき十日間閉鎖していれば、こういう事態出ていないですよ。これがまず第一の失敗。  第二の失敗は、田中さんが総理になって失敗している。これはあなたが明らかに失敗しているんだ。あなたがなったとき、あのとき引き締めに転じなければいけなかったのです。あのときばっと締めれば、こんな事態になっていないんだ。それを漫然として、去年の八月になってようやく経済閣僚会議で八項目、しかも月賦販売を何とかしよう。私は、あれを見て何と情けないことをやっているんだと思った。もうあの前に強硬手段で引き締めに転じていれば、こんな事態にならなかったはずです。これがまず第二の失敗ですよ。明らかにこれは政策ミスですよ。そういう失敗を繰り返して、そしていまのような事態になってきたわけですよ。  総理、私はいよいよ時間がありませんから——あなたはいつもすぐ政治責任、政治責任ということを言うんだよ。しかし、いまこれだけ破局的な事態が来ても、あなたは責任ということを感じ主せんか。あなたが総理になったとき、非常に高邁な理想で、「新しい時代の創造は、大きな困難と苦痛を伴う」「私は、あえて困難に挑戦し、」「国民のための政治を決断し、実行いたします。」これが去年の一月二十七日の特別国会のときのあなたの施政方針演説だった。  そこで、だんだんインフレが悪化してきた。参議院でわが党の羽生三七さんがあなたに、いまのようなインフレ、投機が続くようなら、責任をとるべきではないかという質問をしているわけです、ところが、あたなはこう言っておる。そのような相当な経済状態、これは相当というのはどういう意味で言ったのか私もわからぬが、それが生じた場合は、政府が責任を負うのは当然であると言っておるのですよ。言った覚えがあるでしょう。速記録に書いてあるのですから。これだけ破局的事態が来て、そうしてなおあなたは責任を感じないというのは、私は全くおかしいと思うのですよ。これはやはり政治家の道徳の問題だと思う。いまどういう心境ですか。まさにこれは破局状態です。このままいったならば、福田さんああ言っておるけれども、石油の価格が上がったら、またたいへんな事態が出てきますよ。どういうふうに考えていますか。明らかにあなたは、相当な経済状態が、インフレが悪化すれば責任をとると、羽生三七氏に答弁しておる。どうなんですか。
  99. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 物価を抑制しなければならぬ重大な責めを負っておるものでございまして、今日のような異常の状態の終息に全力を傾けなければならない、こう考えております。あなたが端的に言われることは、私も政治家として理解をいたします。私はそういう意味で、経済的な問題に対しても、政治がその責任を明らかにしなければないという政治理念を強く述べたつもりでございます。私は、いまでもそう思っております。  しかし、半年、一年の間にそういう問題が起こったから、投げ出して責任をとるということが正しいのだというふうには考えていないのです。せめてこれだけの厚みのある、これだけの幅の広い、しかも国際的な中でのことでございますから、だから当然のこととして全力を傾け、また必要な施策を的確に遂行していくということで、ある程度の時間的余裕というものは見ていただいて、そういう中で政治目標の達成を行なう、それで政治の責任というものを明らかにしていくということでなければならない、こう思うわけでございます。ですから、あなたが、そういうことを述べておりながら、一年たってこんな状態、半年たってこういう状態というあなたのお立場での御指摘は、よく理解をいたしております。  しかし、現在私が政治責任を果たすゆえんのものは、全精力を傾けることによって、この国民的な課題をまず解決するということに、政治責任が存在するものだと考えております。
  100. 中澤茂一

    ○中澤委員 私は、ほんとうに政治家は、一たん言ったことに対してはやはり責任を持つのが、政治家の道義だと思うのですよ。私は、何もあなたに個人的に恩怨はありませんよ。しかし、これだけ物価が破局的段階まで来て責任をとりますということが、そのまま漫然と過ごされて一体いいものだろうかという疑問を私は持っておるのです。私がもしあなたの立場なら、これは明らかに政策の失敗なんですから、こういう国民に迷惑をかけ、そして、この事態がまだいつおさまるか見当もつかない、こういう事態になれば、やはり政治家というものは出処進退を明らかにするのが、良心ある政治家の態度でなければならぬ、私はそう信じておる。  あなたは、土地問題でも責任をとると言っておるのですよ、速記録を調べてみると。もしこの土地問題が一、二年に解決しなければ、私は政治責任をとると言っておる。こういうこともあなた言っておるのですよ、木材問題のときに。これは新聞も書いていたのですが、あの木材騰貴のときには、経済閣僚会議で、この木材の騰貴を防げないような局長は、端から首にすると言ったのですよ。今日のこの事態は、もうこれは通産省局長さんは全部やめてもらわなければいけないのだ。あなたがほんとうに決断を持っているなら、端からやめてもらえばいいのです。かって、新潟の豪雪をついに道路局長が片づけ得ないで、一週間も交通どめしたというので、河野さんがおこって、道路局長を首にしたか左遷したということがあったね。  少なくともいまの日本の政治の最大の欠陥は、責任がないということですよ。だれも責任がないということなんです。いままで三日間の論議を聞いていても、全部責任がないのだよ。ほんとうに責任を持って国民のために命がけでやろうというとき、きのうおとといのあの論争は何ですか。あなたにだれも協力していないじゃないですか。あなたが命令して、五条でやれと言った。通産大臣もやっていない、それから経済企画庁もどこもやっていないのですよ、あなたが命令しても。あなたに閣僚が協力していないのだよ。そうでしょう。  その証拠には、わが党の辻原君が学校の用品の問題を取り上げれば、翌日すぐ文部省は、学校用品一〇%下げろなんて業者を集めてやっておる。ここで問題にしなければやらないという姿勢は何ですか。それからまた、公明党の矢野君が、あのこまかい原価計算を出したら、通産大臣は業界を呼んで、ちょっと上げ過ぎるから一〇%下げろ。何ですか、この態度は。国会がここで問題にしなければ、何も下げないじゃないですか。そんなものが一体責任ある政治ですか。  われわれは、国民のために、ここで政治家は命をかけても、この物価を押えなければならぬという心境にならない限りは、この物価は何でおさまります。それを、担当大臣が、あなたが指令したって、五条発動やらぬじゃないですか。あなたが指令したときに、なぜすぐ五条発動しなかったのです。全然してないじゃないですか。そういう無責任政治体制というものが、いま田中内閣の政治体制なんです。あなたがいかに頭へきても、閣僚はやってないのだ。それはあなたの責任は大きいのですよ。いまからでもおそくはないと香椎浩平が言った。もうおそいのだ。もうけるやつは全部隠匿してしまう。もうけるやつは全部もうけちゃっている。この事態の政治責任だって、これは重大ですよ。  だから、そういう点において、あらゆる法律を駆使するとあなた言っている。福田さんが命令したかどうか知らぬが、税関をきのうやったらあの騒ぎじゃないですか。冷凍食品が六十万トン、しかも大手商社が一年も貯蔵している。冗談じゃないですよ。何でこれ、できないのですか。もしあなたのほうでもほんとうにやる気があったら、やったらいいでしょう、日本じゅうの税関を洗え、そして保管している品目を洗えと。こんなもの全部わかるのだから。そして、長期保管しているのは、先高、値上げを見越しているのですから、国民のために放出しろ。そのためにあの法律ができたのじゃないですか。  全閣僚が自分の所管に対して、全部が責任をもってやるという体制がいまの政府にないのだ。そこに基本的に問題がある。そして、国会の答弁さえ何とか逃げていけばそれでいいのだ。われわれは何も物価問題に対して、野党だから協力しないなんて言っているのじゃないのですよ。現にわが党は全力をあげて、倉庫検査まで議員を総動員してやっているじゃないですか。あらゆることを努力しているのだ。しかし、権力を持ったあなた方がやらないから問題がある。だから、私は大きい声を出したくないが、いまや、ほんとうに国民は混乱の渦中にあるのですよ。どうやっていいんだろうか、政府の言うことは全然信用にならぬ、じゃ、自己防衛するよりしようがないというのが、買いだめになってきているのですよ。向こうへいって上がるなら、いまのうちに、政府は当てにならぬ、自己防衛しておこう、それが買いだめになっているのですよ。だから、根源は全部いまの田中内閣の責任にあるということです。  われわれ政治家というものは、ほんとうに責任と道徳と倫理観念がない者は、もう政治家の資格はありません。私はそう断言します。  あなたは少なくても総理大臣です。このきのうおとといからの答弁を聞いていて、あなた、どう思いますか。やってないじゃないですか、あなた指令したって。そういういまの無責任政治というものを、この際あなたは一身に負うて責任をとるのが、あなたの道であると私は断言して、私の質問を終わりにいたします。
  101. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて中澤君の質疑は終了いたしました。  この際、森山科学技術庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。森山科学庁長官
  102. 森山欽司

    ○森山国務大臣 去る一月二十九日、本予算委員会におきまして、不破委員から御指摘のありました、昭和四十七年度における原子力軍艦寄港時の放射能調査問題につきまして、今日まで明らかになりましたところと、その対策について報告をいたしたいと存じます。なお、今後とも引き続き必要事項について調査を進め、所要の対策を講じてまいりたいと思います。  同日、委員会終了後、直ちに日本分析化学研究所に対し、放射能分析の専門家二名を含む五名による予備的立ち入り検査を行ない、また、翌一月三十日には、専門家七名を含む二十八名による立ち入り検査を行ないましたところ、原子力軍艦寄港地で採取された試料の機器分析に関しては、実際の試料を測定しないで、既存の波形図をコピーしていたものが約三六%もある事実が明らかになりました。  さらに、化学分析につきましても、測定を行なわないで最終報告値をつくり上げたものが、少なくとも四割はあることが明らかになりました。昨年九月、衆議院の科学技術振興対策特別委員会において山原議員の指摘を受け、立ち入り検査実施した際、これらのことを明らかにし得なかったことは、まことに遺憾であります。  これら不正事実は、研究者として当然有すべき倫理性が全く欠如していたことをあらわすものであり、この不正事実により、原子力軍艦の放射能監視体制の信頼性について、国民に多大の疑惑を抱かしめたことは、まことに残念しごくなことでございます。  今後、かかる事態が二度と再び生じることのないよう、従来日本分析化学研究所に委託していた核種分析については、理化学研究所等、他の適当な機関に委託がえするとともに、あらためて早急に科学技術庁、海上保安庁等による現地におけるサンプル調査実施するなど、放射能監視について万全の体制をとることといたしております。  このほか、日本分析化学研究所に対し、委託費の返還、設立許可の取り消し、または解散等の措置を含めた厳重な処置をとることとし、また、科学技術庁における人事を含めた執務体制全般にわたる刷新をはかる考えであります。  もちろん、原子力軍艦の寄港時には、海上保安庁、県または市の協力により、空中及び水中の放射能測定が厳重に実施されており、昭和四十三年以降異常放射能は、全く検出されておりませんし、また、海上保安庁及び水産庁におきましても、従来から並行して放射能測定を行なってきているので、国民の安全は十分確保されていると考えております。  なお、今回の事柄にかんがみ、この際、現地における監視システムの総点検を行ない、その完全を期する所存でございます。
  103. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 去る一月二十九日の不破君の保留分の質疑を許します。不破哲三君。
  104. 不破哲三

    不破委員 初めに総理に、ただいま森山長官が読み上げました報告、これがだれの責任で出された報告なのかということを伺いたいと思います。これは、内閣の責任で出された報告なのか、それとも科学技術庁長官の責任において出された報告なのか、その点を伺いたいと思います。
  105. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 内閣は連帯して国会に責任を負っているわけでございますが、専門的な問題であり、科学技術庁所管の問題でございますので科学技術庁長官として事実を御報告申し上げたわけでございます。  この国会に対する報告の前に、今朝行なわれました閣議の席上において、このような事実が存在し、はなはだ遺憾であるという旨の報告がございました。でございますので、科学技術庁が行なったものは、内閣の答弁ということでございますから、これは内閣の国会に対する報告、こう受け取っていただいてけっこうであります。
  106. 不破哲三

    不破委員 いま伺いました報告について、私はかなり多くの点で重大な疑義を持っております。  まず第一に、先日の予算委員会で私が提起しました日本分析化学研究所のデータの捏造という問題については、機器分析についても化学分析についても、これは事実であったということが報告されております。ですから、私はこれについてあえて詳しく、まだ何があるということを申し上げようとは思いません。  ただ、一言つけ加えておきますと、それ以後資料要求いたしましたが、いまだにそれに関する資料が到着しておりませんので、私の手元では、先日予算委員会で問題提起したときの材料しかありませんけれども、その後もそれについていろいろ専門家の協力も得ながら分析をしてみますと、たとえば、化学分析についても、原潜の監視については放射性の亜鉛と放射性コバルトという放射性金属の監視が非常に重要で、これがいわば原子力軍艦の監視のかなめともいうべき問題でありますけれども、科学技術庁から提出された測定原票を見る限り、亜鉛やコバルトについては、まともに分析を行なった、まともに測定を行なった形跡が全くない、こういうことがいろいろな角度からおおよそ言える。これは私は、ただ一般的に四〇%捏造があったとかいうことではなしに、一番肝心な問題について、核監視と測定の体制が放棄されていたという問題として、非常に重要であると考えております。これらの問題については、きょう限られた時間でここで詳しくやることもありませんし、それからまた、政府のほうでもさらに突っ込んだ調査をやられるつもりでありましょうから私はあえてこれ以上言いません。  ただ、もう一つ言わしていただきますと、巷間伝えられる報道の中で、今度の不正行為に関して、いわば末端の技術者に、一部に責任を負わせるというような動きがあるようなことが、新聞その他で報道されておりますけれども、かりに今回の調査があいまいなままに終わった結果、そのようなことが放置されるとしたら、これは非常に重大だ。ですから、この点でも私は、真相をあいまいにすることなく、政府が責任を負える形で、政府としても完全に調査をするということを果たしてもらいたいと思います。  ただ、私が問題にしたいのは、その次の問題であります。というのは、そういう重大な事態がありながら、この報告には、今後の対策なるものがきわめて安易に述べられているわけであります。もし科学技術庁長官がほんとうに事態の重大性を認識して、原子力軍艦の監視体制、調査体制というものがどのような経過のもとにつくり上げられて、今日、この事件によってどのようなひびが入ったのかということを認識しているのであるならば、このような安易な対策というものは、この場で簡単に国会に報告できないはずであります。これが私の第一の疑点であります。  その点でまず伺いますが、長官は、「従来日本分析化学研究所に委託していた核種分析については、理化学研究所等、他の適当な機関に委託がえする」と述べておりますけれども、理化学研究所には、こういう分析を引き受けるだけの能力があるのでしょうか。
  107. 森山欽司

    ○森山国務大臣 きわめて重要な事項でございますから、政府の関係職員をして答えさせます。
  108. 伊原義徳

    ○伊原説明員 お答えいたします。  理化学研究所は、従来からこの関係の核種分析について、高い研究のレベルを持っております。したがいまして、この核種分析の全部をいま直ちに引き受けるだけの余力はございませんが、その一部を引き受けるということで、いま関係方面と打ち合わせをいたしまして、直ちに実施するという体制をとっております。
  109. 不破哲三

    不破委員 お聞きのように、打ち合わせ中だということであります。ところが、ここにはこういうやり方で切りかえると書いてあります。私もその報告をいただきましたから、理化学研究所に問い合わせて調べてみました。今回の日本分析化学研究所の立ち入り調査に参加した理研の所員の放射線室の岡野さんという方に、直接われわれのほうから電話をして尋ねてみましたが、まあ、波形の分析については余力はあるだろう、しかし、化学分析のほうはそれだけの余力がないので、とても引き受けられない、お断わりするほかないというのが、理化学研究所の回答でありました。  これは一例ですけれども、このように現在の事態がきわめて重大で、いままであの分析化学研究所に全部委託していた、それが一ぺんでひっくり返ったときに、あいた穴というのはたいへん深刻な事態なんです。どこの研究所も測定装置は持っているだろうが、遊んでいるわけじゃないのです。それを、いとも簡単に右から左へ、ここが悪くなればどこかさがしてやりましょうということを、国会に平然と報告して平気でいる。私は、一体、長官が科学技術の問題というものを理解しているかどうか、きわめて疑問に思うわけであります。その点について見解を伺いたいと思います。
  110. 森山欽司

    ○森山国務大臣 まことに重大な事項について御質疑をいただきまして、恐縮に存じております。  確かに、従来日本分析化学研究所がやっておりました事柄を、そのまま直ちに安易に右から左にやるというようなことは、なかなか容易ではございません。したがいまして、理化学研究所につきましては、昭和四十九年度から、こういう仕事をやっていただこうというような考えで、かねがね計画しておったようでございますから、現在においては、先生のおっしゃるとおり、能力が不足かもしれませんが、何とか充実いたしまして、分析化学研究所の一部の仕事をそちらのほうに回す等のことを、目下検討中でございます。  御案内のとおり、二十九日、先生から御質疑をいただきまして本日でございますものですから、まだ必ずしも十分な体制が確立しておるわけではございません。ただ、今後の方向といたしまして、先ほど申し上げましたような御報告を申し上げ、引き続き調査を進め、所要の対策を講じていきたい、そういうことでございますので、何とぞ御了解をお願いいたしたいと思います。
  111. 不破哲三

    不破委員 そのように、ぼくも一週間でこれにかわる体制が報告されようとは思っていないのです。私が求めたのは、白か黒かをはっきりしろということであります。ところが、長官は、それに加えて、今後はこういう体制でやりますから、安心をしてくださいということを報告されたわけであります。そこに、私は官僚のいいかげんさがあると言うのです。国会に報告するときに、黒を黒と認めて、それについて事態の深刻さを明らかにして、そして、それに対して、ほんとうに内閣として責任のある対策をとるというのが、こういう事態に直面した政府のとるべき態度でありませんか。それを、さもいかにも体制ができておるような顔をして、その研究所がどういう能力を持っておるかを調べもしないで、まあ理化学研究所は、田中総理に非常に関係の深い研究所だということからヒントを得たのかもしれませんけれども、その名前だけをあげて、いかにもあるかのような取りつくろいをする、こういうやり方が、私は科学技術行政を腐らしていると思うのです。  それから、続けて言います。この原子力軍艦の放射能調査体制というのは、ただ長官が一ぺん考えて、これが間に合うからそれでいいという形で済むものでないはずであります。森山長官は、同時に原子力委員会委員長でしょう。一九六八年に佐世保で原潜ソードフィッシュ号の事件があった。そのときに原子力委員会は、いままでの調査体制が不完全であるということを認めて、そのときの五月に、不完全なままではアメリカの原子力軍艦を受け入れるわけにはいかないということを政府に申し入れた。そして政府も、それを受け入れて、アメリカの原潜の受け入れを中止した。その間に、科学技術庁が、相当それは念を入れてつくり上げたのだと思いますが、私がいただいておりますこの「原子力軍艦放射能調査指針大綱」、さらに、分析のやり方から何から厳密に書いた詳しいものもあります。これを科学技術庁がつくり上げて、これを原子力委員会が、その年の九月に承認をして、このとおりやるということで、アメリカの原潜の受け入れが再開されたというのが、その歴史であります。ここには、どこの研究所にどういう手段で材料を送って、どういう分析器で分析させる、それからまた、その分析方法はこれだけの時間でやる、この詳しいほうには全部厳密に書かれているわけです。この基準が正確なものであるかどうか、これで足りるかどうか、それには多くの学者の批判があるでしょう。  しかし問題は、政府が一たんこれをきめて、この方法でやることを天下に約束をして、原子力委員会も決定してやってきたのが、この「原子力軍艦放射能調査指針大綱」ではありませんか。ところが、それを一ぺんで投げ捨てて、分析研に預けてあったものを、今度はこの部分は理化学研に渡す、この部分はまだ名前不詳の某研究所に渡す、この部分はまだわからない研究所に渡す、そういうことで、原子力委員会の長としての責任——これを承認し決定し、六年前には政府にそこまで申し入れて決定させた原子力委員会の長としての責任を果たせるのですか。その点はいかが考えておりますか。
  112. 森山欽司

    ○森山国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、日本分析化学研究所の不祥事態に対する応急の措置を、目下講じつつあるという段階でございます。そして、そのことによって、国の各方面の力を結集いたしまして、今後の措置として万遺憾なきよう努力を尽くしておるところでございますので、何とぞ御了解をお願いいたしたいと思います。
  113. 不破哲三

    不破委員 この報告には、応急の措置なんて書いてないのです。読み上げますと、「従来この研究所に委託していた核種分析については、理化学研究所等、他の適当な機関に委託がえするとともに、あらためて早急に科学技術庁、海上保安庁等による現地におけるサンプル調査実施する等、放射能監視について万全の体制をとることとしております。」これが万全の体制といってあなた提案しているのですよ。ここには原子力委員会の長として責任を負うべき、この文書をどうするかという問題意識さえないのです。そうでしょう。  だから、このような無責任な文書のこういう部分は、われわれは国会に報告すべき性質のものじゃない。ほんとうに万全の体制だと、法的にも制度的にも実際的にも責任の負えるものが出てきたら報告すればよろしい。こういう無責任な部分は、報告の中から削除してもらいたいと思います。
  114. 森山欽司

    ○森山国務大臣 お話のございました「原子力軍艦放射能調査指針大綱」につきましては、先ほど申し上げましたような措置と相呼応いたしまして改正する所存でございます。
  115. 不破哲三

    不破委員 相呼応するように改正されたらたいへんなんです。あの分析研の穴を、あちこちへばらばらに委託することと、海上保安庁がサンプル調査すること、それで済ますような調査指針大網に変えられちゃったら、これはたいへんですよ。あなた、そのことわかりますか。科学技術庁の長官であり、原子力委員会の責任者であるあなたがあまり重大過ぎてわからないですか。
  116. 森山欽司

    ○森山国務大臣 先ほど申し上げましたようなことで当面処置をいたすつもりでございますし、それで処置できると考えております。  なお、科学技術庁の技術職員から、その間の事情についてお話をさしていただきます。
  117. 伊原義徳

    ○伊原説明員 お答え申し上げます。  昭和四十八年度の原子力軍艦寄港に関係いたしまして採取いたしました試料の分析につきましてなお残っております分につきまして、緊急の措置といたしまして、理化学研究所ほかに委託がえをいたしまして分析を行なうということで、ただいま関係機関と折衝し、その方向で合意を得ておりますので、四十八年度については、支障なくやれると考えております。(不破委員「それが万全ですか」と呼ぶ)四十九年度につきましては、さらに各種の措置を講じまして、さらに万全を期したいと思うております。
  118. 不破哲三

    不破委員 万全というのは万全なんで、さらに万全というのはあり得ないのですよ。さらにが出てくる限りは万全じゃないのです。  次にいきましょう。もっと重大な問題がある。この捏造が明らかになったにもかかわらず、原子力潜水艦の安全はだいじょうぶだとあなたが言っているところなんです。  これは、すでにやめられた原子力局長が、この前、私が質問したときに、もう条件反射のように、ほかでやっているからだいじょうぶだという答弁をしました。それと同じことが、この文書に書かれている。「もちろん、原子力軍艦の寄港時には、海上保安庁、県または市の協力により、空中及び水中の放射能測定が厳重に実施されており、昭和四十三年以降異常放射能は、全く検出されておらず、また、海上保安庁及び水産庁においても従来から並行して放射能測定を行なってきているので、国民の安全は十分確保されていると考えております。」これなら、なぜ大きな金を払って、分析化学研究所にあんな調査をやらしたのですか。あれが全然だめでも、全部万全ならば、わざわざ何億円もの金をつぎ込んで、分析化学研究所にああいうややこしい分析をやらせる必要ないじゃありませんか。ほんとうにあなたは、あの研究所のやったデータが全部バツとなっても、過去十年間万全の監視体制がとられたと考えているんですか。そのことを伺いたいと思います。
  119. 伊原義徳

    ○伊原説明員 お答えいたします。  現在、原子力潜水艦の寄港に関しましての放射線監視体制の基本的考え方は、いわゆる多重防護でございまして、俗語で申しますと、念には念を入れてと、こういう体制になっております。したがいまして、核種分析につきましても、いわゆるクロスチェックという方針をとっておりまして、単一の機関のみでやるだけではなくて、ある部分については、ほかの機関にも同じ試料の一部を渡しまして、それで分析値が間違いがないということを確認する、こういう方法をとっております。  なお、現地、すなわち横須賀、佐世保及び沖繩の港におきましてのモニタリングシステムを簡単に御説明申し上げますと、モニタリングポスト、それからモニタリングボート等の施設がございまして、四六時中、水中及び空中放射能を連続測定いたしておりまして、異常値が出れば直ちに警報が鳴る、鳴りますと、直ちにサンプリングをいたしまして、これを波高分析器にかけて分析をする、こういう体制になっております。したがいまして、普通ならばそれだけでいいのではないかというところを、さらに念には念を入れて多重防護をいたしておる、こういうことでございます。
  120. 不破哲三

    不破委員 空中及び水中ではかっているのは、何をはかっていますか。
  121. 伊原義徳

    ○伊原説明員 ガンマ線の放射線の総量をはかっております。
  122. 不破哲三

    不破委員 原子力潜水艦で一番問題なのは、第一次冷却水から出る放射性の亜鉛とコバルトだということを私は先ほど申し上げました。  この放射性の亜鉛とコバルトというのは、エネルギーが非常に低いのです。しかし、エネルギーが低くても危険なんです。だから、これに対して特別な核種分析をやる必要もあり、それからまた、特別な分析をやる必要がある。微量でもこれは危険なんです。ところが、あなたが言った、それからこの前も原子力局長が言いました、それから森山長官もここで繰り返した、空中と水中ではかっているからだいじょうぶだというのは、ベータ線やガンマ線の総量なんです。これは、全体として高いエネルギーの放射線が出たときにはひっかかりますけれども、亜鉛やコバルトのような原子力潜水艦に固有の微量の放射能を発見するためには、全く役に立たないものなんです。それを、念には念を入れて、それが核種分析だと言われるのですか、あなたは。もし、ほんとうにそんなことを言われるのだとしたら、あなたも失格ですね。  一体、核種分析をやる装置はどこにあるのか、言ってください。
  123. 伊原義徳

    ○伊原説明員 お答え申し上げます。  各寄港地におきまして、波高分析器がございまして、異常値が出ます場合には、直ちにその波高分析器にかけて核種分析をいたしております。
  124. 不破哲三

    不破委員 あなたの説明のとおり、総エネルギーで異常値が出たときだけはかるというのでしょう。だから、ベータ線やガンマ線で、総エネルギーで異常値が出るというのはたいへんな事態なんです。そのときにだけ波高分析器を使う。そうすると、日常、寄港時とか非寄港時とか定期調査とか、そういうときに核種分析を厳密にやっているのはどこですか。より重要な問題には直接は答えられませんか。はっきり答えてください。
  125. 伊原義徳

    ○伊原説明員 お答え申し上げます。  先生の御指摘のように、潜水艦の一次冷却水の問題につきましては、最終的には核種分析で確認するということでございます。いままで、その関係の分析の相当部分が日本分析化学研究所に委託されておりましたことは事実でございます。しかし、そのほかにクロスチェックということで、ほかの政府機関にも……(不破委員「どこですか」と呼ぶ)海上保安庁水路部及び水産庁におきまして、ただし水産庁は全べ−タ測定でございますが、そこで測定をいたしております。ただし、これは年四回の定期調査でございます。
  126. 不破哲三

    不破委員 結局、政府機関いろいろあるようでしたが、水産庁はだめだった。そうすると、海上保安庁の水路部だけでしょう。海上保安庁の水路部では、やはり定期調査だけやっているのじゃないですか。原潜寄港時の調査をやっていますか。
  127. 伊原義徳

    ○伊原説明員 お答え申し上げます。  御指摘のように、海上保安庁水路部におきましては、寄港時の核種分析をやっておるわけではございません。しかし、四半期ごとの調査によりまして、一般的なバックグラウンド及びいささかでも異常があれば、その異常はトレースできる、こういうことになっております。
  128. 不破哲三

    不破委員 だんだん、そうやって事実が明らかになりますけれども、これが問題なんですよ。私、海上保安庁の水路部にも問い合わせてみましたが、あそこでは定期調査しかやっていない。原潜が寄港したときには、一切やっていないのです。原潜が寄港したときの調査は全部、海底土の分析も海水の分析も、日本分析化学研究所に行っているのです。それから、水産庁で採取して水産庁の責任で行なわれるものも、全部日本分析化学研究所に送って、それが水産庁のデータとして返ってくるのです。  実際にデータの数をあげてみますと、四十七年度で、海上保安庁で分析したのは二百四十八検体です。ところが、分析化学研究所でやった寄港地の分析の数は、合わせると三千七百十一なんです。海上保安庁では定期調査を、しかも二百四十ちょっとしかやっていない。ところが分析化学研究所のほうは、寄港時も非寄港時も定期調査も全部やって、数からいえば三千七百十一検体やっている。  この大きな穴があいたのを、長官が言っているように、空中及び水中の放射能測定をやっているからだいじょうぶだとか、並行して水産庁や海上保安庁がやっているからだいじょうぶだとか。一体、こういううそがどうして平気で言えるのですか。長官、どうですか。
  129. 伊原義徳

    ○伊原説明員 お答え申し上げます。  先生の御指摘がございましたが、原子力軍艦寄港に関しまする国民の健康と安全を、私どもは万全の措置をもって確保するという任務を持っております。そういう観点であらゆる手段を通じまして、いわゆる多重防護をやっておるわけでございます。したがいまして、多重防護の一つに疑義が出てまいりましても、全体のシステムの完全性と申しますか、信頼性というものは保たれると考えております。
  130. 不破哲三

    不破委員 これは驚いた答弁ですよ。田中総理もおわかりだと思うのですけれども、原子力潜水艦の亜鉛やコバルトというものの核種分析をやっているのは、寄港時には日本分析化学研究所しかないのですよ。それなのに、そこがなくなっても多重防護をやっていますからだいじょうぶだ、一番の本丸を抜かれても、遠くに外堀があるからだいじょうぶだ、こういうような議論ですよ。そんなものが——一体あなた、国民の安全に責任を負う科学技術庁として答弁するのですか。  それからまた、はっきり言いますと、六八年のときには、いままでやっていた体制がだめだからということで、これをきめたのです。ところが、あなたがいま言っている話は——いまの体制から日本分析研を抜いてごらんなさい。六八年のときの体制どころか、はるかに、その何分の一にも満たないような、まことに貧弱な——原潜が寄港したときにははからないというのですから、いないときだけはかるのいうのですから、そういう体制で、国民に安心しろと一体言えるというのですか。私は、このような無責任な報告は絶対に受け付けるわけにいかない。  ですから、総理に申し上げたいのですけれども、先ほど総理は、内閣の連帯責任として出したと言いましたけれども、この無責任な対策の問題、それから、いままでの原潜監視体制の一つが抜けてもだいじょうぶだ、あなた方がお聞きになってもでたらめなこの答弁にかかわる問題、こういう問題については、国会の報告から私は削除していただきたい、そう考えますが、いかがでしょうか。
  131. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 森山科学技術庁長官。(「総理に聞いているんじゃないか」と呼ぶ者あり)委員長は森山君を指名しております。
  132. 森山欽司

    ○森山国務大臣 今回報告をいたしましたように私どもは考えておるわけでございまして、どうか事態の改善のために誠心誠意努力するつもりでございますので、御了解を願いたいと思います。
  133. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 原潜寄港の問題は、非常に重要な問題でございますし、また、特に有力な検査機関であった日本分析化学研究所の問題も、御指摘のような事実があったわけでありますから、政府は、急遽、万全の体制をとるにはどうすればいいか、また、どこを指摘すればいいかというような問題に対しては、すみやかに結論を出さなければならないわけでございます。  そのような処置ができた段階において、またそういう構想がはっきりと確定をすれば、また国会で正規に御報告をいたしたいと存じます。
  134. 不破哲三

    不破委員 すると、いまの問題は、これが政府の最終見解でない、いままで万全だったとか、この対策で終わりだということじゃないというように理解していいですね。  じゃ、次に伺いますが、この問題の責任の問題であります。結果的に言えば、この問題は、原潜の問題や公害の問題、原発の問題など含めて、いわば十年にわたって国民がだまされていた。結果的には、政府の発表した数字はうそだったということになるわけですから、それだけでも重大であります。  しかし問題は、一般的に結果論に尽きるものじゃなくて、第一に、この研究所は、科学技術庁原子力局の指導のもとに財団法人として設立した研究所であります。たしか、そのときの長官は、二階堂長官だったと思いますけれども、二階堂長官の時代に、これが政府の指導のもとに設立された。しかも、その一番のお得意は、大部分が政府機関であります。この点でも政府の責任はいなめない。  第二には、はしょって言いますが、これを監督すべき監督庁が、先ほども自己批判をしておりましたように、何らの監督の責任を果たさなかった。ある新聞は、こんなでたらめをやられて気がつかないのは、目が節穴か、それともぐるでないかと書いた新聞がありましたが、私自身、どっちなのか判定に苦しむような状況であります。  たとえば、この分析量にしても、もうあれだけの試料を、この研究所に渡して、わずかの人数で分析をさせる、計算をしてみましたら、一年三百日、一日も休まないで、もう分析機械から手を離さないで機器分析では十九時間働く、化学分析では十三時間働かないと、これだけのものが全部こなせない。単純に計算が出るような量があそこへつぎ込まれている。ちょっと考えてみればわかるはずであります。その最低限の責任さえ果たさないで、政府は、これにあらゆる重大な仕事を与えてきた、この責任がある。  第三には、この研究所を、政府は、多くの自治体にりっぱな研究所として推薦して、全国の自治体の多数の公害調査の大部分をこの研究所に集中したわけであります。  私、先日、富山のほうへ問い合わせてみましたら、富山県では、この研究所に二千何百万円ものお金をつぎ込んでおりますが、初めのきっかけは、厚生省の推薦によるということだったそうであります。大阪府に問い合わせてみましたところ、環境庁からPCB汚染の調査の依頼があった。しかし、この安い単価では、とてもどこでも引き受けてくれないと言ったら、安くやってくれるところがあるといって、科学技術庁が推薦してくれたのがこの研究所だというのです。聞いてみましたら、ほかの研究所ではカドミウム検査が単価五千円なのに、ここだけは半値でやってくれる。だから、一般の研究所はダンピングで困るという非難がごうごうだった。ところが、各自治体で調べてみると、あまりにもデータがあぶないというのが、いまでも調べてみればどんどん出てまいります。それを、検査もしないで各自治体に押しつけてきた。  さらには、第四には、去年の汚職にあらわれたように、そういう経過から見ても明らかですけれども政府の機関とこの研究所とのきたない癒着関係が、もう歴然としております。  今日の事態を光に照らしてみれば、去年の汚職も、国民の財産を、国民の血税を食ってしまったという単なる汚職ではなしに、まさに国民の命と安全を十年にわたって、政府の機関と研究所が癒着をして食ってきた、まさにこう言っても差しつかえないような状態であります。  きょう、原子力局長や一部の人事の更迭があったようでありますが、去年の汚職は原子力局長の更迭で済んだかもしれない。しかし、この重大な事態を前にして、去年と同じ程度のことで政府の責任が果たせると、よもや考えてはいないと思いますが、この問題について、内閣として明確に責任をとるつもりがあるかどうか、具体的な内容はともかく、内閣としてこの事態にふさわしい責任をとるつもりがあるかどうか、総理に伺いたいと思います。
  135. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 内閣は、事の重大性を十分考え、現実を直視し、国民の健康を守り得るような体制を早急に、万全に確保することが使命だと考えております。
  136. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 不破君に申し上げます。お約束の時間がずいぶんなにしておりますから、どうぞ簡潔に願います。
  137. 不破哲三

    不破委員 そういういままでの政府答弁を前提にして、私は、田中総理に四つの問題を提起したいと思うのです。  一つは、先ほどから議論をしておりましたように、原子力艦船の放射能の監視という問題は、きわめて重大な問題で、科学技術庁が作成し、一九六八年に原子力委員会が承認をして、これで執行してきたという問題であります。ところが、そこの内容に重大な問題点が生まれた。当然、この体制そのものを再検討する必要がある。田中総理が言われたように、新しい監視体制を作成し、それからまた、国民の信頼にこたえ得るような新しい調査指針大綱を国民に示す義務がある、これが第一の問題であります。  第二の問題は、六八年の先ほどの経過から明らかなように、この完全な監視体制という問題は、原子力軍艦の入港受け入れの前提であることを、政府と原子力委員会がみずから承認された問題であります。ですから、私は、政府が早急にこの体制と大綱の策定に努力されることを期待するとともに、これがほんとうにでき上がって、国民の信頼を求め得るような状態ができるまで、アメリカの原子力軍艦の入港は、政府として当然受け入れを中止すべきである、こう考えます。これが第二の問題であります。  第三の問題は、この研究所は、原潜だけでなく、あの一番問題が出てきました放射能課で、全国各地の原子力発電所の安全性の問題、それに環境諸試料の調査分析を行なってきた研究所であります  ですから、原子力発電所の問題といえば、その建設に際しても、運行に際しても、一番の問題は、国民にとっての安全性の問題であります。従来から、この点については、安全審査の基準やその確認が国民に非公開であったということを含めて、いろいろ批判がありました。しかし、今回は、それらのデータの基礎そのものの信頼性が失われた、こういう事態であります。  私は、この事態に際して、原子力発電所のこういう不安な状態を放置したまま、建設計画をただ強行するのではなく、当然、原子力発電所の安全性についての今日の事態に照らしての新しい基準と体制を確立し、国民に提案すること、それからまた、そういう提案がしっかりできるまでは、いまのように、ただ計画があるから進行させるというのではなしに、これを中止する必要がある、こう考える。これが第三の問題であります。  第四の問題は、今日の事態が明らかにしているように、昨年の汚職の問題を含めて、日本分析化学研究所の問題は、これは、いまの政府の科学技術行政の欠陥の集中的なあらわれであると言ってもいいと思います。この点についてメスを入れなければ、今日のように、公害行政にしても、電力行政にしても、あるいは原潜問題にしても、正確なデータ、これが失われたのでは、政治への信頼が保てないのは当然であります。こういう事態のもとで科学技術行政の根本的な刷新をはかること先ほどの長官のことばのような目先だけの、その場限りの言いのがれではなしに、これなら国民に信頼を政府として問い得るというような刷新の方策を示すこと、これが必要である。  特に、化学分析、機器分析の問題が、これだけ重要な意義を持っている今日では、民間の外郭団体にまかして、これをチェックもしないというような状態ではなしに、政府が責任を持てるように、日本の科学者の英知を結集して、十分なチェック体制の保障もある、そういう総合的な国立の分析機関を設けることが必要だし、その分析の結果については、良心的な多くの科学者が、必要に応じて十分検討できるような、そういう開かれた体制をつくることも必要である。この問題が、今日、緊急に政府の前に問われていると思います。  以上、四つの問題について、私は、念のため文章にまとめてまいりましたが、これを総理にお渡ししたいと思います。  この点について、先ほどの長官のような、この場を糊塗するだけの言いのがれではなしに、内閣として、ほんとうに責任ある方策と見解を、この予算委員会に提示をしていただきたい。そのことを総理に求めたいと思いますが、その点についてて、総理の御見解はいかがでしょうか。
  138. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 その問題につきましては、理事会でよく相談をいたしまして、結果をまとめたいと思います。  これにて不破君の質疑は終了いたしました。次回は、明六日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時五分散会