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山原委員 次に理科の問題。簡単に申し上げます。これはたくさんの
教科書の中からの問題ですから、ほんとうに簡単な
指摘にとどめますが、「新しい理科」の四年生の上です。これは東京書籍ですが、この中に「川原と水の流れ」というのがございます。これは川を流れる岩が川の流れによって次第に小さな丸い石になっていくという、このことを
子供たちに知らせるということで、ここでどういう実験をさすかと、実験が出てくるのです。それは水を入れたかんの中に砕いた小石を入れまして、そして二千回くらいこれを振るというのです。「水のにごりかたにも、注意しよう。」「小石を
一つだけかんに入れてふっても、まるくなるだろうか。」こういう設問がございます。そこで、いま
学校では四年生は一時間が四十五分でしょう。かんに入れて二千回振るわけですよ。実際振ってみた。そうしたら一分間にそんなに振れないのですよ。シェーカーを振るように、こういうようにやるわけですけれ
ども、これは
子供がみながちゃがちゃ——実験せよと書いてあるものですから、忠実な
先生なら一生懸命やるわけですね。おとながやっても二千回振るのに二十分かかるのです。こういう実験が出てくるのです。これなんかも私は頭の中から出てきておる
教科書の側面を出しておると思うのですよ。川の流れというのは洪水もあれば、その中で丸い石になってくる、こういうことですね。「君が代」にいうさざれ石が巌となるなんということはないので、岩がさざれ石になるので、あれは全く非科学的になるのですけれ
ども、そういう実験を
子供に教える場合に、かんに入れてがちゃがちゃ二千回やるなんてとんでもないことが、これはまじめにやれば、このとおり
指導要領によって
先生はやらなければいかぬわけですが、こんなことが出ているわけですね。もうちょっとこれなんかもほんと考える必要がありますね。これを
一つ指摘しておきます。こんなことをするから理科のきらいな子が出てくるわけです。二千回もがちゃがちゃやられたら、
先生ものぼせてしまいますね。これなんかもやはり頭で出てきた
教科書ではなかろうかと思いますが、その点も
指摘しておきます。
これらのことを考えますと、やはり時間配当がありますから、
教科書は済まさなければいかぬという
先生の気持ち、しかも
学校によってはすし詰め
学校、それで
理解がしにくいというようなところから、もうそれについていけない
子供の非行化の問題も出てまいりますね。それからほんとうに
学校を楽しく、明るく、よくわかる
学校にすべきだという点からもいまのような問題を
指摘したわけでございます。
学校教育法十八条によりますと、
国語といえば「日常
生活に必要な
国語を、正しく
理解し、使用する
能力を養うこと。」
算数といえば「日常
生活に必要な数量的な関係を、正しく
理解し、処理する
能力を養うこと。」理科といえば「日常
生活における自然現象を科学的に観察し、処理する
能力を養うこと。」こうなっていますね。やはりすべて
教科書にしましても日常
生活に必要なものから発足しているわけでして、そういうことを忘れて
教科書がつくられても、これは
子供たちに適合するものではないのではないかという点を
指摘しておきたいと思います。
次に
中学校社会を取り上げてみたいと思います。実はこれは「中学社会」、大阪書籍の場合ですが、この一五ページあたりを読みますと、簡単に申し上げますが、相続のことですね。父親が死んだときの相続のことについては実に詳しく書いてある。財産分配ですね。これは均分相続制ですね。これについては実に詳しく書いて、母親がどうなるとか、兄がどうなるとか、私がどうなるという財産配分については非常に綿密に記載されております。ところが、
子供が両親を扶養する義務の問題については、これはもうきわめて簡単な一行しかないわけです。この辺がやはり——徳やせだ、親孝行せよとこう言っているわけですけれ
ども、実際
教科書の面から見ますと、どの
教科書を見ましても、相続、財産分配には相当力を注ぐような
教科書ですが、実際に親を扶養するという、そういうところ、これは非常に抜けています。私はこれをおかしいなと思って見ておりますと、最近の新聞の投書の中にも、「相続されないのか扶養義務」などという投書が出まして、自殺者も出ているわけです。八十三歳の母親が命をみずから断ったということ。財産問題と扶養の問題ですね。現在、親孝行の中で親に対する扶養の問題というのは非常に大きな問題ですね。その点の記述が欠けているのです。ここらも実際に親孝行せよなどと申しますけれ
ども、
教科書の面ではその辺が抜けている面があります。これらも私は、悪く言えば、親孝行と口で言っておるけれ
ども、
文部省は親孝行するなということをむしろ
指導しているのじゃないかと言われかねないような
教科書になっているわけですよ。ここらの問題も
かなりの人が
指摘しておりますし、はっきりさすべきだと思います。これは
教科書を言っておきますから、ごらんになっていただきたいと思います。
〔
委員長退席、森(喜)
委員長代理着席〕
もう時間もそうありませんからこの辺でおきますけれ
ども、社会科の本を見ましても、たとえば家の家業が出てくるわけですね。魚屋さん、八百屋さん、洋品屋さん、出てきます。これを読んでみますと、どうもほんとうに流通機構の中で持たされている商人のいわゆる商人道といいますか、道と言ったらおかしいですが、商人としてのその地域社会の人たちに関係した任務とか仕事といいますか、そういうものは全く強調されないで、どの
教科書を読みましても、ただもうけ主義なんです。たくさん売ってもうければいいという思想につながりそうな記述が全部出てくるのですね。これなんかも、いま悪徳商人の見本などというのが出てきておりますけれ
ども、こういうところを、たくさん売るくふうだけでなくして、やはり
子供たちに職業の尊厳さというものを教えていくという考え方が
教科書になければ、
子供のときからただもうければいいというような、そういうふうに読み取れるようなことではだめだと私は思っております。「しょうがくしゃかい2」「新しい社会3上」「しゃかいか2」、たくさんあるのですけれ
ども、これを三冊持ってきておりますから、こういう点を
指摘をしておきたいと思うのです。
それからもう
一つは「現代の社会」、これは中教出版の場合ですが、これにはたとえば労働というものに対してどう書いているかといいますと、こういうふうに書いてある。一四五ページですが、「労働者の保護」という項目がありまして、そこには、「労働者が、長時間労働と低賃金のために、病気になり、働くことができなくなれば、国や使用者にとっても損失である。そこで、国が労働者を保護する政策をおこなうようになった。」こう書いてあるのです。これはもう明らかに間違いですね。労働者を保護するのは、国や使用者にとって損失であるから保護するというこの思想なんか一体どこから出てくるのか。労働基準法第一条、労働法から見ても、これは明らかに間違いなんですよ。しかも
先生方はこの
教科書を教えようとすると、教えている
子供さんたちの親はみな働くサラリーマンであり、労働者ですね。それに対して、おまえの親を大事にするのは、おまえの親が低賃金や長時間労働でくたびれて仕事ができなくなったら会社の損失になるから大事にするのだなどと教えることができますか。労働に対する基本的な考え方もこの
教科書は誤っていると私は思うのです。
こういう一連の
指摘をいたしましたが、もちろん
部分的な面もありますけれ
ども、私の
指摘はどうですか、ひとつ感想を聞かしていただきたい。