○高橋(俊)
政府委員 その
責任は、行政上の失策といいますか誤った行政
施策を実行しておるという
責任であろうと思います。ですから、それは公務員として問題にされる。公務員としてのそういう不適当なことを指導したということになりますね、かりに指導してやみカルテルを行なわした場合。
そのついでに、ですから和田さんは先ほどお聞きしたところ、行政指導を大いにやるべきだというふうの御意見の持ち主。それに対して行政指導は困るという意見もございます。私はどちらかというと
価格の形式というものが——これは法律論です、しゃくし定木に私は運用しませんけれ
ども、
価格の形成というものは、国がやる場合、元来法律によらなければいけないわけですね。国が公権力を用いて
価格を設定するということは、これはちょっと大げさと言ってはなんですが、法律の根拠を求めれば憲法二十九条にある財産権ですね。財産権はこれを侵害してはならぬ、しかし財産権の内容は公共の福祉に適合するようにこれを法律で定める、となっていますから、法律で定める分には制限していいわけです。ですから、これ以上の高値で売ってはいかぬとか、あるいは公共事業の場合だったら法律がございますから、電気料金の場合にはこのものずばりで売られなければいかぬ、上でも下でもいかぬ、こういうきめ方がございます。それから最高
価格をきめて、標準
価格もおそらく最高
価格と思いますけれ
ども、あるいはいわゆるマル公
価格の場合もそうですね。それ以下で売ったからといってとがめられないけれ
ども、それ以上は一応いかぬ。そういうことはいってみれば財産権の侵害といいますか、公共の福祉によってそれは法律で定めるということでありますが、行政指導はいかなる根拠に基づくかということですね。行政指導によって
価格の設定は行なわれないのではないか。これは私の見解でございます。他に異論を唱える人もございます。学者によって違います。私と全く同じ説を唱える人もございます。かなり高名な者でも同じ意見のもございますが、行政指導による
価格設定というものはあり得ないのだ。それは、その場合にも
価格をきめるのは本来の原則に戻って事業者自身がきめるものですね。事業者自身がきめるのがたてまえでして、それは市場の情勢、需給
状況等その他の
状況によって
価格というものはきまるのだ。それを押えつけようとすれば、行政指導でもって押えることはできないので、その指導に基づいて、いまその点はちゃんとおわかりでございますが、業者がそれに従うかどうか。つまり、そういうことでいこう、もうきめようかということですね。これを談合すれば、そこに一体、カルテルは存在するのではないかという疑いは生じますね。だから行政指導で
価格が設定できるのなら、法律は要らないわけですから、これは初めから問題になりません。
それから、要するに違反カルテルがあるかないかということは、当然法律で適用除外をきめた場合ならいいのです。
価格についても適用除外とするということがあればいいのですね。それが
価格についてはない。数量はいいとかいうこともありましょう。現に一番いい例は数量でございますが、勧告操短は認めないという
立場をとっているわけです。勧告操短の場合は先に勧告があるわけですね。行政官庁の指導勧告があるわけです。それは業者と
話し合いでしょうけれ
ども、実態はともかく、勧告に基づいて操短いたしました、これは数量制限です。不当な取引制限になるわけです。それはかつて十年ぐらい前ですか、それまでは半分見のがしたような形になっておった。それがある時点からそれはいけないということになったわけです。勧告操短というものはそのままずばりやみカルテルになるのだ。としますと、勧告
価格は私はそれ以上にもっとおかしなものだと思うのですね。勧告操短、数量制限のほうはどっちかというと、法律のたてまえが、不況カルテルの場合に先ほど申しましたように若干ゆるく書いてある。
価格は非常に厳格に書いてある。とすると、勧告操短が違法であるのに勧告
価格が違法でないという論拠はどっちからも出てこないのではないかというふうに私は思うのでございます。
ただし、いま私
どもがたとえば摘発したとか、あるいは摘発しなくてもべらぼうな値上がりをしたものに対して厚生省やその他のところが一律に何%下げなさいというふうな指導をしている。そういうことについては、前にも私はお答えをしたことがありますけれ
ども、しゃくし定木にそういう私のいまの論議で、それはいかぬのだ、こういうことをいったのでは全く実際上しようがありませんから、不当な
価格引き上げをやったものに対して引き下げしなさいよ。しかし実際下げておるかどうかわかりませんでしょう。これは従わなくたって罰則はないわけですから。ただ、よくある、いまおっしゃいました江戸のかたきを長崎で討つみたいに、行政官庁はほかの権限を握っておる。そこで
価格について行政指導で注文をつけたとしますね。そうすると、従わざるを得ないわけですね。実態的には業者のほうが、事業者のほうが泣く子と地頭には勝てぬということで、これはもう従いましょう、こうなる。だからそこに何か不可抗力的な力が働いて、それに従ったのだから違法性がないんじゃないかという実態的な反対論があります。私は、それを言いますと、しかし先ほど申しましたようにすべて
価格は行政指導できめる、そうすればそれは独禁法の適用除外になるのだ、こうなっちゃいますから、ちょっと公取
委員会の
立場としては表向きにそういうたてまえはとれない。しかし実際上行なわれておるものについて、引き下げを目的としてやっている行為をわれわれが一々違法だとか何とかいう、そういうもののわからぬ態度はとりたくないというのが私の見解でございますので……。