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国務大臣(
田中角榮君) 輸入の自由化は、これはもう新しい国際ラウンド推進のためにもどうしても進めなきゃならぬ問題でございますし、
国際収支対策の上からも輸入の自由化は進めなければなりません。まあこの間、五月百から資本の一〇〇%自由化に踏み切ったわけでございます。三十三品目ございました輸入の自由化も、そのときに電卓等一品目やりましたから、現在三十二品目になっております。三十二品目から工業品目を除くと、二十六、七品目はいわゆる農林省所管のものでございます。これがいままあ輸入の自由化の
目標になっておるわけでございますが、この中にはオレンジとかいろいろなものがあります。ありますが、なかなかこれが自由化できないということ、
国内体制というものが完備しないということでございます。そういう
意味で輸入の自由化はできない。輸入の自由化を全部やってもどのくらいの
一体金額になるのかといって計算をしてみましたら、大体五億ドル
程度のものでございます。千三、四百億円のものだと思います。しかし、
一つの自由化ということでこの間からやっておるわけでありますが、これはまあビールの麦芽というようなもの
一つやろうというと、これだけでも四、五百億の
国内的な金を出してもらわないと自由化ができない、こういうことであります。中には、コンニャク玉なんというのは長いこと問題になっておりますが、これは四、五軒でございますが、その部落が全滅をしてしまうというものもございます。まあ雑豆とかいろいろなものもあるんですが、これは北海道はもうどうにもならないと、こういうことでございます。そんなことで、金額にしては千四、五百億、多く見ても千四、五百億のものであって、いまの二百六十五円にすれば千二、三百億というものでありますが、なかなか自由化できない、要請されておってもできないということで、これをせめて三十品目から二十五、六品目にしたいというのが日米間の交渉であり、今度の九月以降に東京で行なわれる新ラウンドの国際会議に対しては、どうしても何とかきめなければならない問題でございますが、そんな不安定な
状態でもっておくこと自体が、
生産農民がもうどうにもならない
状態であるということで、もう自由化できないものはできない、こういう事情でできないんだと、そのかわりにシーリングワクを拡大するとか、いろいろなことをやりますと、こういうことで各国の
理解を求めておるということであって、
政府はいつでも申し上げておりますように、自由化は促進をいたします、こう答えておるわけです。これはまあ各党一致の決議案でもしていただいて、それで
政府を鞭達していただくということになると、これは拘束を受けますから、これはもうぱんとやれるわけですが、どうも、国会は、
政府が出してきますと、総論賛成、各論反対と、こういうことになるんじゃ、なかなかできない問題であります。これは国会や
政府の問題じゃなく、一次産業比率が一六%になっておるその中でもうかわるものがないんだと、それをとにかく自由化されたら村を売らなきゃいかぬのだ、村を離れなきゃいかぬのだと、こういうようにせっぱ詰まった問題もありますので、まあ自由化という世界に向かっておる基本姿勢は変わらないわけでありますが、これは
物価問題とも直接関係がありますし、いろいろございます。ございますけれども、いまよりももっと一次産業比率がうんと高かった三五、六%の
昭和初年には、すべてが自由だったじゃなかったかと。そのかわりに百姓はどのくらい苦難な道を歩いたかという歴史もあるわけでありまして、
中小企業や
零細企業や一次産品の農民というものを
考えないで自由化というわけにも踏み切れないということで、まあ国会の御
意見も聞きながら、また、業界や
生産農民の意向も十分しんしゃくしながら、
政府はほんとうに暮夜眠れずとつおいつしているんだということだけはほんとうに
考えていただきたい。これはあなたがいま言われたように、私がここですぱっと、じゃオーケーをします、やりますと言えるようなケースの問題じゃないわけでありまして、これはたいへんむずかしい問題でありますので、これはまあぜひ私のほうも皆さんの御
意見を聞きながら十分対処してまいりたいということでひとつお許しをいただきたい、こう思います。
牛肉は、
アメリカから牛肉を買え買えと言っておりましたら、今度
アメリカが全然牛肉がなくてどうにもならないという
状態に急変をしておるわけでありまして、今年三月に一万トンの追加割り当てを行ない、四十八年度上期の牛肉の割り当ては前年度同期の三倍、七万トンの輸入ワクを拡大したわけでございますが、そういうような
状態であってもなかなか需要に追いつかない、これは食生活の
内容が変わっておるということだと思います。しかし、そういう
意味でようやく四月をピークにして弱含みに転じまして、キログラム当たり百円
程度の値下りが行なわれたということでございます。私も、実際、牛肉を小さく何軒かで買わして見ているんです。そうしまして、どういう牛肉を買っているかというと、こま切ればかり買っていますとか、ブロイラーいわゆる鶏肉を買っているとか、そういう一般庶民の
状態、そういうことを何とかして牛肉ぐらいうまくいかんかと、こう言って、中国に行ったときに中国側から買えるものは牛肉だ。それで、依然として口蹄疫の問題でがちゃっとかんぬきが入っているわけであります。だから、いろいろな問題がありまして、牛肉というものは、もういまこれはどうしても必要な牛肉は安く手に入るようにしなきゃならないと、こう
考えておりますので、国会のひとつ——ここでまた飼料が上がりますから、飼料は五十万トンなんて言わないで米を出しなさい、牛肉を上げちゃいかぬ、豚肉を上げてはいかぬ、こういう強い指示を
大蔵、農林当局にしておるわけです。そういう
状態でございますが、
国内の自給だけではとても片づかないという問題がございますので、これは国会の御
意見を聞きながら輸入ワクをふやしていくというようなことで対処してまいりたいと、こう
考えます。