運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-09-11 第71回国会 参議院 大蔵委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十一日(火曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  七月十七日     辞任         補欠選任      山崎 五郎君     長谷川 仁君  七月二十六日     辞任         補欠選任      大松 博文君     中西 一郎君  八月二十七日     辞任         補欠選任      長谷川 仁君     山崎 五郎君  八月二十八日     辞任         補欠選任      嶋崎  均君     鬼丸 勝之君      船田  譲君     玉置 猛夫君      西村 関一君     森 元治郎君  八月二十九日     辞任         補欠選任      鬼丸 勝之君     嶋崎  均君      玉置 猛夫君     船田  譲君      青木 一男君     小枝 一雄君      成瀬 幡治君     戸叶  武君      渡辺  武君     野坂 参三君  八月三十一日     辞任         補欠選任      小枝 一雄君     青木 一男君      戸叶  武君     成瀬 幡治君  九月七日     辞任         補欠選任      森 元治郎君     西村 関一君  九月十日     辞任         補欠選任      野坂 参三君     渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤田 正明君     理 事                 嶋崎  均君                 土屋 義彦君                 成瀬 幡治君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 河本嘉久蔵君                 中西 一郎君                 桧垣徳太郎君                 船田  譲君                 竹田 四郎君                 戸田 菊雄君                 西村 関一君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    政府委員        大蔵政務次官   山本敬三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    参考人        東京大学教授   館 龍一郎君        日本銀行理事   渡邊 孝友君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○租税及び金融等に関する調査(当面の経済情勢  に関する件)     —————————————
  2. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七月二十六日、大松博文君が委員辞任され、その補欠として中西一郎君が選任されました。     —————————————
  3. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 次に、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  嶋崎均君及び成瀬幡治君が一時委員辞任されたことに伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事嶋崎均君及び成瀬幡治君を指名いたします。     —————————————
  5. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 次に、租税及び金融等に関する調査議題といたします。  本日は、さきに決定いたしました参考人出席要求に基づき、当面の経済情勢に関し、参考人として、日本銀行理事渡邊孝友君、東京大学教授館龍一郎君、両君の御出席を願っております。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席いただきましてまことにありがとうございました。特に、館参考人には、先般来本委員会に御出席をお願いしておきながら、本院の都合によりまして、日程の変更を余儀なくされ、御迷惑をおかけいたしましたにもかかわらず、また本日は、他に御用件もおありのところ、快く御出席いただきましたことを特に厚く御礼申し上げます。  本日は、両参考人から忌憚のない御意見を拝聴いたしたいと存じます。  これより御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上、委員質疑にお答えいただくという形式で御意見をお伺いいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。ただし、いろいろ質問なり議題が広範にわたることをおそれまして、この際、政治上も最も重要な物価の問題にしぼっていただきたいと思います。  なお、財政金融物価に対してある限度を感じておる現在、所得政策あるいは労働政策、その他広範な施策もともに行ないながら、物価抑制ということについては当たらなければならぬというふうな現況に相なっているかと思います。それらの所得政策その他につきましても、質疑があろうかと存じますので、参考人にはよろしくその点もお願いを申し上げます。  なお、委員各位に申し上げますが、参考人には午後からほかに御用件がおありでございますので、午後零時三十分には質疑が終了できますよう御協力のほどお願い申し上げます。  それでは、これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これはすわったままでひとつお願いしたいと思いますが、いま委員長からもお話がございましたですが、これだけ物価が上がると申しますか、インフレマインドと申しますか、の中で、日銀等公定歩合窓口規制を、あるいは預金準備率引き上げ等、いろいろと手を打っておみえになりますが、これでほんとうにねらっているところの物価抑制というようなことができるのかできないのか、どの辺に——というのは、時期的な問題でございますけれども、めどを置いて進めておみえになるか。その場合に、ほんとう日銀のそういう金融政策だけではいかぬ、財政のほうは予算の繰り延べというようなことが言われております。それからもう一つは、とはいうけれども、今度は企業が社債を出してみたり、あるいは時価発行する、増資をやるといってやってしまえば、そこに抜け穴があるじゃないか、あるいは物価が高いというのは、やはり何といったって売り惜しみがあるじゃないか。過般私は、愛知でございますから、先生、一ぺん四日市港や名古屋港を中心として倉庫などを調べてごらんなさい。一ぱい物が入っております、倉庫ばかりじゃない、もうはしけまで倉庫代用になってしまっておるのだ、ある人は、そうは言うけれども、一億総買いだめ時代だから逼迫しちまっておるのだ、というような、いろいろなことが言われておるわけなんです。ですから、どこか、日銀なら日銀としていまの金融——いままでやってきたパターンを繰り返しておるわけですからね、公定歩合引き上げなり、あるいは窓口規制準備率引き上げ。それが片方では世界的な、国際的なインフレ傾向の中であるいは前のときは外貨の問題とからんでいろいろなことをやっている、状況が違うのに、同じパターンを繰り返しておる。で、前のときと建っておるのですよ、こうおっしゃるならそうかもしれませんが、ほんとう所期目的を達成することができるのか、どこが一体ネックなのか、どうなんだというようなことについて、いろいろと日銀ほんとうに御苦労願っておると思いますけれども、その辺のことについていろいろお聞かせ願えれば非常に幸いだと思います。何もこのことは、私が口火を切るだけで、あと皆さんから御意見があるようでございますから、ひとつそれについてお答えを願いたい。
  7. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) ただいまお話のございましたように、最近の物価上昇はきわめて顕著なものがございまして、異常なものがございます。したがって、なかなかこれが安定を実現することは容易でないと存じます。そういう意味合いで、日本銀行といたしましては、昨年秋以来警戒してまいりましたが、年初来相次いで金融引き締め措置をとったのでございますが、まあ金融としては、できる限りの最大限の強さの引き締めを実行しているというのが現状だと考えております。ただ、お話しのとおり、金融だけではすべてを解決するわけにはとうていまいらないのでございまして、何といいましても基本は総需要——消費とか財政支出とか、あるいは輸出の需要とか、それに産業投資、そういった総需要の拡大が強い、そこで需給がアンバランスになっているということでございますので、総需要を押えなければならない。そのときには金融面も、産業投資ということを通じて総需要を押えてまいるわけでございますけれども、重要なのは財政であるということで、かねて政府御自身もお考えになっておりましたし、私どももそういう希望を申し述べておりましたが、財政繰り延べということが実現を見てまいりました。この財政金融とが合わさってくれば、かなり物価抑制には力を発揮し得るんではないかと存じます。そのほかに、もちろんいろいろいまの基本的な問題として地価対策どうするとか、あるいは流通対策どうするとか、いろいろな問題ございますので、それぞれそういう適切な措置、また個別物資鉄鋼についてはどうするとかなんということもすでに通産省もやっておられますが、そういう個別措置も必要でございますが、基本はやっぱり財政金融効果を上げ得るんではないか、そう考えておる次第でございます。と申しますのが、現に先日公定歩合を一%引き上げまして、ようやくそれまで連日値上がりを続けておりました鉄鋼だとか、あるいは繊維だとかが反落を示しております。これらは需要が強いと申しましても、いまお話がございましたが、一部に買いだめだとか、あるいは買い急ぎだとか、そういう私どもで言う中間的な仮需要というものがかなりあると思われるのでございます。この引き締め契機としまして、それも財政その他各種の措置——今度はかなり本腰が入ってきていると思いますので、それらが合わさって、もう先行きそう値上がりはないのだということであれば、そういう仮需要がとまってくる。それを契機にいままでの様子とはだいぶ変わってくるのじゃないか。さらにこれが、金融引き締め所期目的のとおり産業投資を押えて、需要抑制になるという効果が回り回っていきますには、やっぱりまだ時間がかかろうかと思いますけれども、そういう本格的効果がそれに続いてくる。問題は、海外物価から来る高騰でございますけれども、これはなかなか——よく言われますのは、為替政策の活用ということになるわけでございますが、そしてこの点は、過去における私ども固定相場時代とはずいぶん違いますけれども、しかし、どうも、よく理論的に言われたように、的確にはこれにも効果がなかったのは実情でございまして、海外物価上昇があれば、なかなかむずかしい問題がそこにまた出てまいりますけれども、ただ最近の国際商品市況、長い将来のことはちょっと何とも申しかねますけれども、この目先ようやく頭打ちになったような感じもいたしますので、いまの財政金融引き締め、その他できるだけの措置を、政府において物価その他の面でもとっていただければ、何とかこの物価抑制はできるものと、そう考えておる次第でございます。
  8. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま渡邊参考人から、財政上の引き締めといいますか、そういうものを合わせて、金融と含めてやる必要があると、こういうことですが、今回政府が、四十八年の八月三十一日ですけれども物価対策閣僚会議、それで物価安定緊急対策要綱を出しました。大綱五項目で、御存じでしょうけれども一つ財政執行繰り延べですね。総需要抑制強化というたてまえで、財投対象事業財政執行繰り延べは、これは八%原則、しかし積雪寒冷地とかあるいは生活環境施設、こういうものについては四%、これでやったのですが、地方の財政についても同様の趣旨でいきなさいという指示をしている。もう一つ金融引き締め公定歩合引き上げ、あるいは日銀窓口規制あるいは準備預金率引き上げ等々やる。もう一つは、民間設備投資及び建築投資抑制、次に消費者信用の調整、それから個別物資対策強化、大体五項目でなっているのですけれども、この緊急対策要綱ずっと内容検討してみますと、どうしてもやっぱり金融引き締め、これが独走体制をとっているのですね。ですから、いま御指摘をされたような財政上のいわば引き締めないし行政指導上の強化、いろいろ言っておりますけれども、これの効果内容を検討しますとあまりないのじゃないか。一貫してやはり金融独走体制といいますか、そういう方向でいっているのじゃないかと思うのですが、これではやっぱり、いままで第三次金融引き締めやってきたのですが、その結果どうにもならぬのですね。それで第四次を打ったわけです。また同じような状況を繰り返していくのじゃないだろうか、こういうふうに考えるのですけれども、まず全般的な物価安定緊急対策内容について、これ十分効果ありと、こう見ているのかどうか、その辺の内容について少し質問しておきたいと思います。
  9. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) 私は、今度とられました政府物価対策、これはかなり真剣に考えられたものだと考えております。特に財政繰り延べ、金額的にもどれだけがいいかということは的確には私ども把握いたしかねますけれども、あれだけの繰り延べをされるということは、やっぱり非常な決意のもとに行なわれたものだと思います。現実にことしの五月ごろから公共事業費支出というのはかなりダウンしてきております。金融でも財政でもある措置をとったからといって、すぐ効果があらわれるわけにはまいりませんけれども、そういうことで繰り延べておって、今度いよいよ八%というものを、はっきりされた目標を出されたということは、財政金融と一体になってこれが物価抑制対策を講じているということと考えてよろしいかと、私はそのように考えております。  なお、そのほかの対策といたしましても、ビルの建築抑制、それから自動車割賦販売信用の条件の強化、これらもかねていろいろ議論があったところでございますが、それを実行に移されたという点も、政府もかなり強い姿勢でこれに臨んでいる。金融としてはできるだけの最大限のことをやっているつもりでございますが、しかし、財政その他の措置もあわせてとっていただいておりますので、金融独走というふうには考えていない次第でございます。
  10. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは日銀見解もお伺いしたいんですけれども、ことに民間設備投資ですけれども通産省は確かに鉄鋼あるいは石油化学あるいは電力等々大体五つの業種ですが、金額にして約一千億円削減ですね、設備投資で。ところが、この内容を検討しますと、資本金百億円クラスで化学会社によると、最近鋼材資材が非常に値上がりしているわけですが、二十億、三十億といった建物がいま押えられている。これは確かなんです。しかし、工場で持っている資材とか鋼材というものの値上がりによって、そんなものは帳消しになっちゃうんですね。各会社の、ことに寡占企業といわれるいま指摘したような——これに自動車とか、そういうものが入りますけれども、これは全然痛くないんですね、実際は。ですから、こういういわば民間設備投資の、これは日経の調査ですけれども、これによりますと、四十七年の実績比較でもって二六・八%、前年同月比、これは八月。それから日銀調査でまいりますと、これは九月五日、これの調査によりますと、前年比で二九・一%増ですよ。それから、開発銀行の九月六日の調査によりますと二六%、製造業で三三・四%。ものすごい異常民間設備投資の増なんですね。だから、金融引き締めを幾らやっても、いわば寡占企業といわれるこういった会社のいわゆる手元資金というものは、もう潤沢で潤沢でしょうがないんです。こういう状況を放置しておって、一方で金融引き締め政策を、一般的なそういうものだけを締めてきても全然効果がない。第四次まで公定歩合引き上げをやったけれども、また窓口規制措置をやったけれども準備預金率を上げたけれども全然効果がない。やはり同じようなことが、私はこのまま放置するならそういう状況になっていくのではないだろうか、こう思うんです。  それから財政投融資で、今回の政府緊急対策——大体財政支出繰り延べ基軸になっているわけですが、財政関係は。これを見ますと、公営事業ですね、これの八%で、額にしますと約七千億ですね。それから建設繰り延べが二千四百億、設備投資繰り延べが約一千億ですから、大体一兆円の需要削減と、こういうことを考えておりますけれどね、しかし、この一兆円の削減というものは、大体財政投融資その他が七兆円近いですから、その一兆円というと、ちょっと大きな額になるようですけれども、これも同じような、いま言った寡占企業手持ち資金等々については何ら支障を与えないという状況、たとえば労力不足とか、各般の生産体制というものは、あるいは資材値上がり、そういったことによって、この程度の二千四百億、まあ大体この建設繰り延べが二千四百億ですか、これはもうほとんど回復措置をとってしまうという状況じゃないか。ですから、こんなちゃちなことでは、財政のいわば繰り延べその他が基軸になっておっても、物価に対する影響というものは一貫して効果のないものではないだろうか、もう少しなんか抜本的に総合的な施策というものをこう打ち出していかないと、ほんとう意味でこの物価安定というものは期せられない。もちろん本質的には私たちの考えからいけば原理、原則の論理はあります。ありますけれども現状政府が出された緊急対策要綱を検討した中でも、そういうことは言えると思うんですね。ですから、この辺の見解についてもう一度ひとつ日銀の。館参考人のほうからもこの点はひとつ見解を示してもらいたい。
  11. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) 大企業などが手持ち資材値上がり引き締めの負担がそこでかわされてしまうじゃないかという御指摘の点ですけれども、これはどうもイタチごっこになりますけれども、いま確かにそういう仮需要、一部には物が非常にないと、入手難だとか言われておりますけれども、一部には余分に持っているというようなことがだいぶあるんだと思われるのでございます。全体の生産量というのは、前年比二割とか二割五分もふえておりますので、まあ特殊な物資は別といたしまして、そう足りないということはないはずでございます。それはやっぱり物価が上がるという思惑でまあ持たれるということ、したがって、物価はそんなに上がらないんだという事実が出てくればそれはおさまると。まあ、イタチごっこの感はございますが、それがおさまれば、その影響というのはかなり大きいんじゃないかと考えるのでございますが、そこで、いままでの金融引き締めが何ら効果が、見るべきものがないじゃないかとおっしゃる点でございますけれども。確かに客観的指標にあらわれたものには、いままでのところまだございませんでした。ただよく言われますように、またこれは事実何べんも経験しているところでございますが金融引き締めにせよ、緩和にせよ、その政策を生み出してから、どうしても半年ぐらいはその効果が出てくるのにかかるのでございます。したがって、この間の第四次の一%の引き上げをしませんでも、効果は多少は出つつあったと、たとえば法人預金の減少が、全国銀行預金が六月、七月、八月と減少したわけでございますけれども、これなどはまことに異例のことでございまして、そういう意味で、法人手元預金が非常にくずされてきているというようなこともございましたし、また八月の最近の通貨の伸び率でございますけれども、マネーサプライとか、前年比の比率は非常に高うございますけれども、しかし、伸び方は確かに鈍化したというようなことが見えつつあったのでございます。しかし、ただいまお話のございましたように、その八月、設備投資調査、私どものも八月中ごろの時点調査しております。その他、開銀さんその他でも大体同様の時期だと存じますが、今回の公定歩合引き上げ前の問題だと思いますが、その時点では、少なくとも設備投資計画を修正減額するというような動きが見られない、まあ相当大幅な設備投資である。そういう状態を見まして、八月末に一%という思い切った大幅な公定歩合引き上げを実施したわけでございまして、その後の空気はだいぶ変わってくることだと存じます。まあ現に仮需要というものがかりにおさまるとすれば、確かにいま企業とすれば、需要ほんとうにあるので、幾らつくっても間に合わないぐらいでどんどんつくるんだと、個々の企業のお立場としてはそうだと思いますが、全体とすれば、その需要というのは重なっておったり、仮需要であったり、そういうものがおさまれば、そんなに設備をつくる必要はないんだというような関係になると思います。  それから、現実金融がぐんぐん締められておりまして、確かに一時は大企業にも過剰流動性がございましたけれども、これはもう急速に減少しつつあると思います。年末などにはかなり詰まるんじゃないかということで、いまから企業経理担当者はそれの用心をすると、あくまで計画に入れて手配をしなければならぬ、そんな状況にございます。そういう在庫の保有ということも容易でなくなりますし、また設備投資所要資金の調達ということも困難になってきて、その設備投資というものは必ずや押えられていくものだと思います。ただ、その中には、公害防止だとか、やむにやまれぬものもございますから、もちろんある程度の設備投資は必要だと思いますけれども、いまの仮需要ほんとう需要と見誤っての設備投資というものが、少なくとも押えられていかなければならないと思いますし、押えられていくものだと考えております。
  12. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 私、一応今度の物価上昇について基本的な要因として三点あるというように思っております。一つは、海外要因からくる物価上昇というのが一つであります。それからもう一つは、需給ギャップから起こってきている物価上昇、それからいま一つは、インフレマインドと申しますか、インフレ心理が定着したことからくる物価上昇という三つ要因が大きな要因であるというように思っております。  そこで、今度のような金融引き締め政策とそれから公共投資削減という政策をとった場合に、やがてその三つ要因の中の需給ギャップ、それからインフレマインドというこの二つの点に対しては、ある程度の効果をやがては持ってくるというように考えております。ただ、非常に迅速な効果をそれによって期待できるかと言えば、すぐに物価が下がってくるというような形では効果はあらわれてこないというように思います。それから景気そのものに対しても、現在の措置は、これも早晩影響をあらわしてくるというように考えられるわけであります。で、確かにいま御指摘がありましたように、金融引き締め政策をとっても、手元に過剰な流動性といいますか、大量の資金を、余裕資金を持っているような企業には、直接にはすぐに効果が及んでいかないという問題があることは事実だと思うのです。しかし、金融引き締め政策が浸透していく場合には、間接的にほかの部門で、資金余裕がないところの企業などに影響が及んで、その結果需要が減退して、もともと設備をやろうと思っていた資金余裕を持っている企業にも設備を押えようという意欲が起こってくるというように、間接的に効果は波及していくと、ただ、効果の波及が間接的でありますから、ますます効果が迅速にあらわれてこないという面があるわけであります。ただ、それでは、それじゃもう緊急にすぐ効果があらわれるというような、それほど思い切った対策をとればいいではないかという御意見もあろうかと思います。しかし、一方から申しますと、非常にきびしい政策をとって、なるほどわりあいと短い期間に効果はあらわれてまいりますが、先ほど渡邊参考人からも話がありましたように、金融政策ほんとう効果を発揮してくるのは、一定の時間を経過した後に一番効果が強くあらわれてくるわけでありますから、現時点ですぐに効果があらわれるほどの引き締め政策をとるということになりますと、後に意外な逆効果を生じてしまう危険がありますので、あまり即効をねらった政策をとるということは、経済政策の運営のしかたとしては適当ではないんじゃないかというように私は思うわけです。ただ、私が一番最初に申しましたように、これで物価ほんとうに安定することになるかどうかと申しますと、やはり海外要因という問題もあります。したがって、これですぐに物価が安定するというようには思いません。一方で景気がむしろ鎮静化してくると、場合によれば、来年になってスタグフレーションと言われるような事態が起こることも憂慮しなければならないと、それを回避するためには、直接的な物価対策としても重要でありますが、スタグフレーションを回避するためにも、独禁政策強化するということがきわめて重要であるというように私は考えております。
  13. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 渡邊参考人にちょっとお聞きしたいのですが、この間の政府財政面からの公共投資繰り延べですね、八%の繰り述べですが、これは、率直に言ってあまり効果をそう期待することはできないのじゃないだろうか。たとえばことしの公共事業の予算現計から見ていくと約七兆弱ですね。そのうち昨年度の繰り越し分が約七千億入っているわけですよね。そうしてみると、ことし八%減にするということを考えてみましても、六、七千億円ということになるわけですね。そうするとえらく、今度のそうした繰り延べ措置は、私はそんなに大きな効果を期待することはできないのじゃないかという気がまずします。  それからもう一つ、そうした公共事業の中で、内容的にもう少し考えてみないといけないのじゃないか。たとえば電電公社の公共事業の予算が一兆二千億ぐらいあると、それから国鉄、公社と鉄建公団というのを見て合わせてみますと、これもやっぱり一兆くらいの予算になっております。それから道路関係を見ますと、これが一兆六千億くらいのものになっていると思うんですがね、これで合わせますと、大体四兆に近いものになると思います。しかし、そういうものの契約ぺース——九月末契約ペースをかなり落としましたけれども、しかし、これらを見ましても、ほとんど平均より上です。特に電電公社の工事のぺースというのを見ますと、もういままでと同じぐらいのペースになるわけですね。当初は七二%、それが六六%ぐらいに減らしている。こういうところがそんなに減っていないということになると、これが非常に私は需要を喚起している大きなものだと思うんですがね。ですから、政府公共投資内容を私はもっと変えていかなければいけないのじゃないか。まあ先日、セメントが足りないときに、私ども物価のほうでセメント業界を呼びました。そのときの話を聞いてみますと、高速道路のほうにはセメントは余っているのですよね。その横で去年の災害復旧をやる、これは中小の建設会社になるんですが、そこはセメントがなくってとにかく仕事ができないというものすごいアンバランスが出ている。それから、最近の大都市周辺の人口急増に伴うところの学校建設なんかを見ましても、もうすでにことしの学校建設の資材がないということ、金額が予算よりもうんとのぼってしまうということで、建設の請負手がない。横浜市なんか見ますと、大体中、小学校の建設が五カ月おくれている。ものすごいアンバランスがある。ですからただ単に、一般的に、財政面からの引き締めということを一般論としてやっても、意味がないじゃないか。もっと内容的に財政需要を非常に強く起こすもの、景気過熱へ連なるような、そうした公共投資をここでぎゅっと締めていくというような質的な内容というものをもう少し政府が検討しなければ、せっかくこれだけの措置をとっても、私は、一般論としては意味がないじゃないか、平均的にやっては意味がないじゃないか、こういう感じが実はするのですがね。まあその辺はお二方の参考人の方々に、いまのようなことが非常にりっぱなことだと、いままでやれやれと言われていた立場から見れば、あるいはかなりりっぱかもしれませんけれども、もう少し内容を質的にやっぱり考えていかないと、私は、効果があらわれるのはなかなかあらわれてこないという気がするのですが、どうでしょう。
  14. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) いま御指摘がありました点でございますが、私、最初に多少発言いたしましたときに、誤解を招くような点があったかもしれませんが、私、いまのやり方がたいへんりっぱであるというようには実は考えておらないわけでありまして、そうせざるを得なくなったというように思っているわけであります。同時に、このやり方のすべてが適当であったというように思っているわけではありません。もし公共投資についてあらかじめ公共投資の優先順位というものをきめておくことができるならば、公共投資の優先順位に従って優先順位の低いものから削減していくというのが望ましいというように考えます。しかし、実際に工事が始められた過程において、どれを切るということは非常にむずかしくなってしまうという現実的な問題があるのではないかというように考えます。ただ、一律にと言うのは、そういういわば実行上の便宜からくる問題ではないかというように私考えておりまして、望ましいのは、いま御指摘がありましたように、質の面を考慮して削減するということだと思っております。ただその場合に、物価の面だけを中心にして質々考慮するか、それとも福祉政策という点を重視して質を考慮するかということになりますと、私自身は、その場合に生活関連とか、そういう福祉面を重視して、それを優先させるという順序で削減をするのが適当であるというように考えております。
  15. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 渡邊さんに……。
  16. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) 私はできればいま先生のおっしゃったような質的な観点が取り入れられればと思いますが、私どもとしては、とにかく公共事業費等の繰り延べ八%をできるだけやっていただきたいと、その具体的な方法は、いろいろ事情もあることと思いますし、当局でいろいろお考えになったんだと思いますが、とにかくできるだけの繰り延べをやっていただきたいということで、まあこれは簡単に、いわゆるモデルでそういう財政支出を幾ら減らせば、GNPは幾ら落ちるかというような、まあそれにある程度の乗数効果がかかりまして、そういう効果は確かにあるんだと思いますから、金額だけでもそれなりの効果はありますが、それをもっと合理的にするには、いまのようなお話の観点がとれるものならば、それは望ましいと存じます。そこで、これは全く私の個人的な見解なんでございますが、経済社会基本計画なんかの立案にも参画させていただいたことがあるんですが、要するに、福祉重点ということで財政を大いに伸ばさなければならないということはよくわかるんでございますが、それがまた民間投資を誘発するといり関係もありますので、財政民間投資のバランスはよく事前にできるだけ考えておくことが必要じゃないか、それから、非常にむずかしいことかと思いますけれども、そこの中で使用される重要基礎資材などは、大体、需給がバランスとれるものかということの見当をよくつけた上でやるということは必要なんじゃないかと、政府でも、今度だんだんその方向でお考えいただいていくように聞いておりますが、実際上、むずかしいことであることも確かだと思いますけれども、できるだけこういうことも研究し、努力するということは必要じゃないかと、そう考えている次第でございます。
  17. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連してお伺いしたいんですが、朗参考人が、書かれた文がございますが、これを見ると、今回の政府金融引き締め等の物価対策について時期がおそかったということが述べられておるわけです。その時期が、円の変動制移行のあととか、そういう段階のところで思い切ったことをやるべきであったという、こういう意見が述べられておりますが、政府がそれを行なえなかったのは、どういうことに原因があったんだろうか、それが一つの大きな焦点であろうと思います。やはり相当甘く政府がものを見ていたんだろうと思いますけれども、その点についての御意見と、それから、同じ論文の中に、先生が、民間部門との競合からくる物価上昇を避けるための租税政策の活用が必要だと、こういうように租税政策の弾力的な活用ということをうたっておられるわけです、物価対策として。その租税政策の活用ということの具体的なことをぜひともお伺いをいたしたいと思っておりますが、その点をあわせてお願いをいたしたいと思います。  それから、先ほどの渡邊参考人の答弁の中で、通貨発行量が非常に対前年同月比伸びていたと、二八%ぐらいいっているんだと思いますけれども、そういうようにずっときていたのが、若干、ここのところで通貨の発行量の増加が減っているというような御意見があったんですが、ちょうど一年前のときには、外貨がどんどん流入していたときで、そういうときには、外貨が流入するから通貨が膨張をしたと、そうして過剰流動性がうんと増したんだというようなのが日銀の説明でもあり、政府の説明でもあったんです。いま、毎月十億ドルずつ連続四カ月も五カ月も減少してきて、外貨の手持ちが百五十億ドルを切るだろうといわれておりますが、そういうようになっているのに、相変わらず通貨発行だけは高いということ、先ほどは設備投資の拡張とかいろいろ言いましたけれども、そうすると、それはもう完全に経済成長が高度成長に戻ったということが原因なのか、その辺の、非常に矛盾があるわけでございます。もはや十億ドルずつの赤字になれば、過剰流動性は急速に吸収されなけりゃならない。通貨発行高の増加率が下がらなけりゃならない。それが相変わらず上がったということは、何かそこに原因があるわけですね。それはインフレというか、経済成長が高度成長に戻ってしまったということをおっしゃるのか、それとも何か質的な変化がそこに始まったというようにお考えなのか、この点を渡邊参考人にお伺いをしたいと思うんです。なお、そのうしろの経済の質的変化があったかどうかは、館参考人からもお伺いしたいと思います。  それからいま一つは、ついででありますから、政府物価対策の中で貯蓄の奨励が出ている。こんなインフレのときに、貯蓄を奨励してもとてもこれはいくわけじゃありません。それで実質価値がものすごく下がっていて、経済白書でも四十七年上半期だけで二兆五千億も個人預金の実質、いわゆる損失があったということがいわれている時代ですから、だから、やはりそれだけ預金金利の引き上げということは早急にしなければならないという感じだと思うんですが、どういうふうに考えておられるのか、それを伺いたい。
  18. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 御質問、私に対して二点、最初にございましたので、その点についてお答えしたいと思います。  引き締め政策のタイミングがおそ過ぎたという点につきましては、タイミングとしては、私は、いま御指摘のありました私の文章の中でも書きましたように、レートが変動性に移行した段階で、もっと思い切った引き締め政策をとるという必要があったのではないかというように思っておるわけでありまして、その点は、その前の予算編成の過程でもすでに問題になっていたわけでありますが、まさに、国内の物価安定と、対外均衡とを同時にどうやって達成するかという問題があって、その際に、国際収支を改善しなければならないという問題があるために、十分の物価対策がとれないという状況がその前の段階にあったわけでございますから、したがって、レートが変動した際には、これからは国内優先の政策財政金融政策としてはとれるという状況に立ち至ったわけでありますから、したがって、その時点で当然もっと思い切った物価対策をとるべきであったというように思っておるわけでございます。  で、なぜそれが行なわれなかったのかという点でございますが、いろいろの政治的状況もあるとは思います。しかし、そういう点については、私の専門でございませんので、私の専門の中で申しますと、一つは、変動制に移行すれば、当然円の切り上げ、実質切り上げということになって、その切り上げがデフレ圧力を加えるのではないだろうかということから、ある意味で見通し難があったというように思います。ただ、すでに前の円切り上げの際の効果考えてみますと、デフレ圧力がそれほど大きくないということはわかっているわけでありますから、したがって、私としては、この時点でもっと思い切った政策をとるべきであったというように考えておる次第でございます。  それから二番目の、公共部門と民間部門との競合というのが、福祉優先政策に転換してくれば、当然起こってくる。したがって、公共部門へ資源をスムーズに配分し、物価上昇を避けていくためには、租税政策を活用すべきであるということでございますが、その点は、租税政策としては資源の競合が起こります点は、何といいましても、民間投資との間に資源の競合が起こるわけでありますから、したがって、民間投資の盛り上がりを押えるという意味で、法人税を引き上げるという政策をとるということが必要であった。あるいは、もし法人税の引き上げを行なわないならば、その場合には、各種の特別措置の思い切った廃止を行なうべきであったというように考えているわけでございます。ただ、残念ながら、確かに特別措置の廃止のステップはとられたわけでありますが、段階的な廃止ということになってしまったために、課税の基準となるタックスベースそのものは若干は広がり、負担は若干は増加したわけでございますが、しかし、最初に予想されたようなタックスベースの拡張にならず、片方、法人税の引き上げも行なわれなかったということは、やはり今日のような物価上昇の激化する一つ要因になっておるというように考えておるわけでありまして、今後は租税政策の運用をもう少し真剣に考える必要があるのではないかというように思うわけであります。  なお、物価上昇ということから、消費抑制という考え方が非常に一部で強くあらわれてきておるわけでありますが、私は、消費は投資の結果としていわば自動的に起こってくるものであり、景気を変動させる主要な主導的な役割りを演ずるのは投資であるというように考えております。したがって、最近、消費の中に望ましくない消費傾向が見られるという、多少道徳的な観点から、消費抑制という考え方がありますが、こういう考え方には賛成ではありません。もし現在の消費態度に問題があるとすれば、それは広告等によってつくり出された消費であるというところに問題があるわけでありますから、したがって、そういう消費態度そのものを問題とするならば、広告等を問題にすべきであるということになります。おそらく、消費として問題になる唯一のものは、社用消費であるというように私は考えておりまして、したがって、総需要対策考えていくときにも、押えるべき中心は民間投資であるということを間違いないようにしていただきたいというのが私の意見でございます。
  19. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) いまの日銀政府対策か出おくれたんではないかと。タイミングがおくれていたという点につきましては、館先生のような御意見がございまして、私ども傾聴し、反省すベきところは反省しなければならないと存じますけれども、ただ、当局の立場としてどういうふうに考えておったかという点につきましては、ただいま館先生からの御推測としてお話がございましたが、大体そういう点もございまして、要するに、私どもとしては、昨年前半、とにかく不況を防止し、景気を回復し、そして同時に、国際収支の黒字をできるだけ小さくしていくんだと、この二つの目的の達成のために、昨年前半金融緩和を進めてまいったのでございます。  私どもとしては、秋ごろからこれは警戒を要すると考えたのでございますけれども、特に、注意を要すると考えましたのが、年末あたりからでございまして、したがって、年初から、まず預金準備率引き上げをいたしまして引き締めに転じたのでございます。それと同時に、銀行貸し出しの抑制、いわゆる窓口指導も始めたといいますか、強めたということでございますが、確かに、その期間において常に私ども頭にありますのは、景気はもう十分回復したと、この目的だけは達したのでございますが、まだ昨年中を見ますと、国際収支の黒字というのはちっとも減らないという状況でございます。そして国際通貨不安、動揺がございまして、ことしの二月と三月には、外国為替市場を閉鎖するというようなことが二度もあったような状態でございました。ですが、ただいま館先生のお話にもありましたように、いよいよ変動相場制をとるということできまりまして、その実施の状況、まあ変動相場制になったらどうなるかということもはっきり確定的な見通しは立たなかったわけでございますが、比較的落ちついた動きを示しましたので、それからいよいよ公定歩合引き上げに踏み切ったというような次第でございます。  それから、通貨の問題でございますが、通貨発行高の伸びが非常に顕著に鈍化したということはまだ言えないのでございます。が、ただ、第四次の公定歩合引き上げ前においても、多少その傾向があらわれていたという例証にあげたいのでございますが、銀行券につきましては、月中の平均発行残高の前年に対する伸び率は、ことしの四月から二七・五%前後ということでずっと続いております。これは、いままでのように、どんどん前年との間に開きが開いていくということではなくなったということになります。それから、これは統計的に確立されておりませんが、毎月の前月比増発率というものを季節調整して私ども内部的に見ておりますけれども、その季節調整によれば、多少ずつ増発率が落ちているということが言えようかと思います。  さらに、これを、いわゆるマネーサプライということで、銀行券を中心とします現金通貨と、御承知と存じますが、要求払い預金というものを加えて通貨ということで見ますと、これは、この一−三月が二七%の前年比増加で、六月はまだ三一%の増と、むしろ六月までは開いております、新しい数字が。それから、七月も三二・七%とむしろ開いているかっこうでございますが、さらにこれに定期性預金を入れました、まあこれ準通貨、——ただいま申しました通貨をM1としますと、これはM2と私ども整理しておりますが、準通貨を含めました総通貨ということで見ますと、前年比で申しましてことしの一−三が月平均二六・六%ぐらいの伸び、それから四月には二七・三ぐらいの開きでございましたが、これが七月には二二・八ということになっております。かなり顕著な低下でございまするが、これをそのままダウンカーブをとったんだといま即断するのは適当でないと思いますけれども、とにかくこの伸びが多少変わってきたと、まあそういうふうに——たださっきのM1といいますと、どうもいろいろ定期預金金利の改定などございましたので、要求払い預金から定期預金への移動があったりしましたので、M1の伸びが特に高くなったんだと思います。それらを含めたM2全体で見ますと、いま申しましたような傾向を持っている。ただ、M2というものは、定期預金を含んでいるわけでございますから、これを全部通貨と見るかどうか。日本では、定期預金というものの貯蓄性ということから考えますと、その点にはまだ問題もあろうかと思います。  それで、通貨と経済取引との関係でございますが、一昨年大量の外貨が流入して、その結果銀行券がふえたり通貨がふえたというふうに解されておりますが、確かに、そういう外貨の流入が信用膨張の原因になったということは否定できないのでございますけれども、しかし、私ども考え方としましては、一昨年から昨年にかけての通貨膨張、これはやはり金融緩和ということによるものであって、あの外貨の流入額がそのまま通貨になって出たんではないというふうに考えております。したがって、確かにあの外貨流入を放置していたら、それがそのまま通貨膨張になったということであれば、いま外貨はむしろ政府から市場に売っているわけですから、もう自動的に通貨は収縮するわけでございますけれども、そういう関係にはならない。通貨の膨張は、やはり景気の回復、結局経済成長の伸びというようなことと、そこにまあ、ことに残念なことですが、物価騰貴というようなものが加わった名目GNPの伸びに大体照応していると。で、ふえてきている。そうしますと、今後これを減らすためには、あるいは伸びをとめますには、そういう名目GNPの伸びをできるだけ低くしていく、つまり総需要の伸びを低くし、物価を落ちつかせるということになれば、それに伴って、ようやく通貨は、それができる度合いに応じて、徐々にといいますか、なるべく早いほうがいいと思いますけれども、それに照応して減っていくんだと、そういうふうに考えている次第でございます。  それから、最後に貯蓄の問題でございますが、確かに、こういう時期に貯蓄心が失われては事重大だと思います。まあ幸いにして、貯蓄は比較的順調だと思います。それだからいいというわけではございません。問題は、こういう物価騰貴が長期間いつまでも続くんだということになると、確かに非常に貯蓄心というものが破壊されるかと思いますけれども、幸いにしてまだそこには至ってない、この間に何よりも物価を安定させるということが基本だろうと思います。なお、貯蓄の将来のためにいろんなことも検討はされております。預金金利などもこの際どう考えるか、引き上げることも検討されてしかるべきだと、そういうふうに考えております。
  20. 桧垣徳太郎

    桧垣徳太郎君 初めのうち出席いたしておりませんで、あるいは重複をするようなことがあるかと思いますが、それともう一つお断わりいたしたいのは、少し失礼にわたるような話になるかもしれませんので、それもお許しをいただきたいと思います。  館参考人からいままでとられました物価抑制の方策が、タイミングを失したと、それから、いま政府で実行に入っております緊急対策についても、必ずしも十全なものではないと思うというお話がございました。それにつきまして、実は基本的に私は非常によくわからない点があるんですが、それは、物価問題ということは、ことばをかえて言えば、通貨価値が下落をするということでありますので、元来日本銀行という中央銀行としては、もちろんいろいろな役割りを背負っておりますが、ぎりぎりになれば、通貨価値の維持をどうしてやるということが最大の役割りではないかというふうに思うわけでございます。で、ございますから、経済の成長過程における通貨政策ということでございますれば、政府のそういう経済拡大政策に対応した通貨政策をおやりになるということも当然でございますが、今日国民経済で最も心配をされ、また先行き不安を持っておりますインフレ問題というものに対処するということになれば、私は、当然日銀は、中央銀行として通貨価値の維持の責任を持っておる、独自の機能を果たされなければならぬ。多少私の思い過ぎ、あるいは誤解かもしれませんが、いままでの動きを見ますと、先ほどの公定歩合引き上げのタイミングの問題にいたしましても、あるいはこの前のドル・ショックのときの対処のしかた等にいたしましても、言うなれば政府、詰めて言えば財政当局の政策に連動をしてやると、もちろん連動してやらなきゃいけないわけですけれども、そういうような受け身では、もういかぬ時期ではないかという感じがするわけであります。中央銀行として、その通貨価値維持の独自の責任というものを果たそうという意気込みでお取り組みになっておるのかどうか、これはちょっと渡邊参考人には失礼な質問かもしれませんが、確かに私は、国民の中にそういう疑問もあると思いますのでお伺いをいたしたい。また、それについて館参考人としては、経済理論家としてどういうふうにごらんになっておられるか。また、私の言うようなことが必要なことであるのかどうかという御意見をお伺いしたいと思うわけであります。  もちろん日銀としては、通貨価値の維持のために一生懸命にやっておるんだというお答えが出るだろうと思うんですが、そういうことでございますと、日銀が固有に取り得る分野と、それから財政だとか、あるいは税制だとかいうような政府側に要請をしなければ、みずから独自にできないという分野もあるわけでございますので、いまの物価対策について、結果においてあまり効果が出ない。正常が期待できないというようなことになりましたときに、どういう点に重点を置いて、みずから物価対策、通貨価値の維持のために措置をされるお考えがあるのか、また、政府に対しては、何を要請をされようとするか、そういう点について、いま税制の問題なり貯蓄奨励の問題なり、私は、いまの変動為替相場制自身も、これはそれなりに意味があるし、また、一つの安定点を見出しておるということを認めますが、日本のいまのインフレ的傾向の中で、はたして単にいつまでも変動為替相場制だけでよろしいのであろうかどうかというようなことにも多少疑問がございますけれども、私見は別にいたしまして、ひとつこの辺のお考えをざっくばらんにお話しいただければと思います。
  21. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) お話しのとおり、日本銀行は通貨価値の安定を使命としておりますので、私どもは、この問題に非常に責任を感じている次第でございます。したがって、私どもとしては、できるだけ機動的に、かつ自主的に政策を運営してきたつもりでございますが、先ほども申し上げましたように、通貨価値の安定と申しましても、一昨年から昨年にかけては、国際収支の黒字の縮小、これは一つは、通貨の対外価値の安定ということにかかってくるわけでございます。その両面かね合わせて考えなければならなかったという点があったのでございますけれども、事態が昨年末から今日のような状況になりますれば、何をおいても国内物価の安定ということに全力をあげなければならないと、そういう意味合いで、ただいま私どもとしてはできるだけのことをやっておるつもりでございます。  なお、常に政府と、受け身じゃないかというお話しでございますが、確かに第何次対策というようなことで、一緒に打ち合わせてやったこともございます。それは日本銀行独自にもやる場合もございますが、政府と打ち合わせて一緒に、同時にいろんな引き締め対策を講ずるということも適当なことだというようなことで、同調してやるということもしばしばあるわけであります。できれば、政府もわれわれも同じ考え方に立って、同じ方向で努力するということのほうが望ましいというふうには思っている次第でございます。したがって、日本銀行政府との間では、いろんな段階で、いろんなしょっちゅう打ち合わせがございますので、私どももできるだけ財政支出の規模の適正化とかというようなことを中心に、いろいろお願いもし、意見も申し上げ、要請もしておったという次第でございまして、この点は、今後ともいまのような状況が続く限り、財政についてはそういうふうに希望してまいりたいと、また、これは専門ではございませんけれども、その他効率的な物価対策につきましても、気がつきましたことは、すべて企画庁とかあるいは通産省などにもお願いするというふうにしている次第でございます。
  22. 渡辺武

    渡辺武君 先ほど渡邊参考人のほうから、物価対策としては総需要抑制が非常に重要だということを強調されて、中でも財政引き締めについて特に強調されたと思うんです。私は、いまの財政引き締めなきゃならぬということについては賛成なんですけれども、しかし、だからといって、日本銀行金融政策が妥当だというふうには言うことはできないんじゃないかという感じが非常に強いんです。それは、ここに資金需給実績というのが、あなたのところで出された経済統計月報に出ておりますが、これは財政金融当局の対民間資金需給実績であるわけでして、したがって、市中銀行などの状況は出ておりませんけれども、しかし、この統計を見ましても、私は、日本銀行の信用創造というのが、現在の物価上昇一つの大きな原因になっている、しかも、かなり大きな原因になっているということが数字上も非常にはっきりあらわれているんじゃないかという気がするんです。たとえば、財政資金の問題をとってみますと、四月まではこれは散布超過ですが、五月からは、五月は二千四百九十億円、六月が七千九百六十五億円、七月に至っては一兆一千四百六十四億円の引き揚げ超過になっているんですよ。  それからもう一つ、先ほど問題になりました外貨流出に伴う外為会計の資金の吸収、これは四月以来、四月が二千九百二十六億円、それ以来ずっと二千億円台の資金の揚げ超になっておって、七月も二千二百六十七億円の揚げ超、こういうことになっているんですね。つまりここでは資金がかえって吸収されている。ところがただ一つ日本銀行の信用についてだけは、これは五月以来一貫して散布超過になっている。五月が千四百二十四億円、六月は一兆五千百四十九億円、七月は一兆二千九百億円、こういうことなんですね。いまやはり通貨の増発ということがインフレの一つの大きな原因じゃないかということが論じられているわけでありまして、私は日本銀行の信用創造、したがって、また資金の散布超過、これが現在の物価値上がりの大きな原因じゃないかというふうに考えざるを得ないと思うんですね。ことしに入りましてから窓口指導も強化される、あるいは公定歩合引き上げる、特に、預金準備率引き上げ、かなり引き締めた、引き締めたと言われているわけですが、外から見ますと、金融政策独走というようなことも表面的には言えるかと思いますけれども現実の事態は、金融政策引き締めが独走しているというような事態ではなくして、むしろ日本銀行は、一方でそういうことをやりながら、他方で資金を散布超過しているということだと思うんですね。特に、もう秋になるわけでして、財政資金の散布超過の時期に入るわけですね。それに依然としてこういう日本銀行が放漫な金融政策を続けるということで、どうして物価問題の解決ができるんだろうか、非常に疑問に思うわけです。はたして十分なものと言えるかどうか、日本銀行金融政策。この点まず伺いたい。
  23. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) いまの資金需給関係の数字は、もう先生の御指摘のとおりで、事実でございますが、ただこれを、日本銀行はしたがいまして、たとえばこのところ六月とか七月、一兆円をこえる信用を市場に供給しているわけでございます。ただこれを放漫な金融政策であるとか、これがインフレの原因であるか、物価上昇の原因であるかということになりますと、私どもとしては全然見解を異にするものでございまして、金融側から物価上昇の原因をつくるとすれば、またつくったとすれば、それは市中銀行が企業に余分な貸し出しをして、あるいは企業に余分な金が入ったのを、そのまま企業がどんどん使っていくということであれば、その段階のところで着目していただかなければならないんだと思います。したがって、いまインフレを抑制する、物価抑制するために銀行の企業に対する貸し出しを極力押える、そこで防ぎとめようとしているわけでございます。  いま先生の御指摘資金需給という関係になりますと、これは日本銀行金融市場、金融機関との関係でございまして、通貨は一定量、もうすでに出たものはその水準で、たとえば名目GNPが二四、五%伸びているならば、それだけの通貨はどうしてもなくてはならない、それにいわゆる多少とも経済が成長していくとすれば、成長に必要な通貨はそれに加わっていく、通貨供給が必要である。ところが、一方で財政は市場から非常に資金を引き揚げているとなりますと、その間の補てんは日本銀行としてはどうしてもしなければならないと。これはまあ俗な表現で恐縮でございますけれども、いわゆる日本銀行にきたときは、一種のいままでの取引のしりが、つけが回ってきたというような関係でございまして、問題は、その前の取引を適正な規模におさめていくというところで勝負しなければならぬといいますか、そこできまってくるのでありまして、銀行が企業に、あるいは個人を含めて、融資活動をどうやっているか、それをどの程度押えるかというところ、それによって全体の経済活動がスローダウンするとかいうようなことで、だんだん通貨の出が少なくなっていくということをそこから期待し、またそのプロセスを通らなければ、通貨の減少にはならないわけでございますから、銀行がそういう預金を集め、企業に金を貸すということをしているかたわらで、というか、同時に、財政資金が、外為会計とか租税とかいうようなことで、大幅にあがってくるというときには、そこに穴のあいた現金というものは、どうしても日本銀行としては補給をしなければならない。その補給は、できるだけ渋目に、そう簡単にいつでも融資するということはありませんと、それから現実に貸し出しは限度を置きまして、その限度を越えてはもう絶対ふえないというふうに、上位の大きな銀行にはやっているわけでございまして、このごろは主として市場からの手形買い入れという、いわゆるオペレーションで資金供給している部分が大部分でございますけれども、それももうぎりぎりにしぼって、しかし、どうしても金融市場として穴のあくものを補てんしていくという関係でございまして、これは私どもとしては決して放漫にやっているというつもりでは毛頭ございません。
  24. 渡辺武

    渡辺武君 そういうお立場では私は困ると思うんですよ。しかし、これは関連質問ですから、なおあとで具体的な数字をあげて伺いたいと思います。しかし、一言だけ申し上げておかなければなりませんのは、銀行が資金需要に応じて金を貸している。そこのところが問題だとおっしゃるわけですね。そうおっしゃりながら、他方で、そういうことをやった銀行が、税金で資金を吸収され、あるいは外貨の流出で資金が乏しくなった。その穴を日本銀行として埋めなければならぬ、こういうことを言っていたんでは、結局のところ、穴ができれば日本銀行がどんどんどんどん供給してやるということであって、これじゃやはり物価問題、インフレというものの解決はできない。結局、こういうことで、日本銀行の信用創造がやはり通貨の増発の要因になっているということになるんじゃないですかね。それはまたあらためてあとでやりますけれども、しかし、その前に、一つ伺いたいことがあるんです。  それは、以前、日本銀行金融を締めるのか、ゆるめるのかということのメルクマールは外貨問題であったんですね。外貨がずっと流出が進むと、これはいかぬということで、締めるというような形になっておりましたが、外貨問題が一応そう問題にしなくてもいいという状況になってからは、物価金融政策のメルクマールだというふうに言われてきております。私その点で佐々木総裁に何回も質問をしましたところが、物価といっても、消費者物価じゃないんだ、卸売り物価が大事だということを盛んに言われる。ところが、その卸売り物価指数は一体どういうことになっているのかと言えば、昨年の末ごろから急上昇に転じているんです。この八月には一五・七%、朝鮮戦争以来の急速な上昇だというふうな状況になっている。それにもかかわらず、いまおっしゃったような論理で、日本銀行資金の供給をどんどんどんどんやっている。一体、本気になって物価問題を解決しようと考えているのかどうか、非常に疑問ですよ、これは。  先ほど館先生からのお話ですと、いまの物価問題には三つ要因があって、一つ海外要因一つ需給ギャップ一つインフレマインドというお話がございました。私は、その全部をあながち否定するものではりあません。やはりそういう要因もあろうというふうに思いますけれども、しかし、これらを通じて一番大事な問題は、やはり通貨が過剰に出されているというところに、つまり通貨の問題ですね。ここに最大の原因がありはせぬかというふうに考えているわけです。なぜかと申しますと、現在の日本銀行券あるいはそれを中心とした預金通貨など、信用貨幣ですね。これは金と兌換のできないものであって、いわば国家紙幣と同じような性格を持っておるわけですから、これが過剰に出されれば、通貨価値が下がって、逆にいえば物価が上がるということは、これは経済学のイロハだろうというように思うんです。ですから、まさにそこに問題があるところへ、日本銀行がこういう放漫な金融政策をとって、穴があいだがらといってどんどん資金を供給するというようなことでは、これはインフレーションが高進するのは当然だろうというふうに思うんですね。その点について館先生からも、それから渡邊理事さんからも御見解を伺いたいというふうに思います。
  25. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ちょっとお待ちください。渡邊君、いまは関連質問だから、後ほど自分の持ち時間で質問ということがございましたが、もうこのまま関連質問で終始しますから、十二時半まで。ですから、持ち時間といふものは一応各党なくりますので、その点御了承願いたい。
  26. 渡辺武

    渡辺武君 あと続けていいですか。
  27. 藤田正明

    委員長藤田正明君) いや、あとの発言の希望がございますので、一応その順番をお譲り願いたいと思います。それからまた後ほどお願いします。  それから館参考人に一言お願いいたしますが、先ほど桧垣委員のほうから、貨幣価値の維持についての日銀の機能、これを教授としての館参考人の御答弁抜けておりましたので、あわせて御答弁をお願いいたします。
  28. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) それではお答えいたします。  最初に、通貨価値維持についての日本銀行の責任という先ほどの御質問の点でございますが、利が一つことばの使い方であるいは誤解を招いた点があるかもしれませんので、それを最初にお断わりしておきたいと思いますが、私、政府政策といいますときに、日本銀行政府部門の中に含めていつも考えるという習慣がございますので、政府政策のタイミングというときには、両方を含めていつも考えてタイミングということを申し上げておるわけでございます。  それから、日本銀行の態度がいつも受け身ではないか、もっと独立に行動すべきではないかという点でございますが、私は、経済政策をやる場合、日本銀行政府とがやはりいつも協力の関係において実施されるというのが望ましい姿であって、もしそこで外にあらわれるような形で意見の対立が生ずるということになりますと、これは経済政策そのものが混乱するということになりますので、決して望ましい状態ではないと思うわけでございます。そういう意味で、日本銀行はその責任として通貨価値の維持があるわけでございますから、その点について問題があるというように考えられる場合には、積極的に、しかも、強力にその主張を打ち出されるべきであるというように思いますが、必ずしもこれが外部にあらわれるような形で、政策の分裂が生ずるということは望ましくないというように考えております。  以上でその点についてお答え終わらせていただきまして、次に、総需要が増大して、需給ギャップが生じているという点を物価上昇一つの原因として申し上げたわけでございますが、その総需要が増加する一つ要因として、通貨の供給量増大ということがあるわけでございまして、私は、通貨の供給量の増大も総需要の増加の原因の一つとして考えておるわけでございます。ただ、それでは通貨の供給がふえれば、必ず物価上昇するのかといいますと、私はそのようには考えておりませんで、通貨の供給量の増加は、物価上昇のための必要な条件ではあるけれども、十分な条件ではない。つまりバンドをゆるめなければ一定以上に人は太れませんけれども、バンドをゆるめたらすぐに人間が太り始めるかというと、そうではなくて、確かに通貨の供給量がふえなければ、一定以上に物価が上がり得ないということは事実であります。したがって、こういう状況のもとで通貨の供給の増加率が、昨年からことしにかけての状況を見ていて高過ぎるということは否定できない点でございます。  ただ、その場合に、通貨というのは何かということでございますが、私どもは、通貨という場合に、現金通貨と預金通貨の両方を含めて通貨というように考えておりまして、かりに現金通貨がふえても、預金通貨のほうは減るというようなことになれば、その場合には、通貨がふえたということにはなりません。したがって、それが物価上昇を加速するというようなことはないのではないかというように思っております。そういう意味で、日本銀行券の発行高がふえたということが、すぐに金融がゆるんでいるということではなくて、預金通貨を含めての通貨量がふえているというところに問題があるというように考えております。  で、現在の時点に来て、なお、先ほど日銀信用がふえているという問題ありましたけれども、私は、現在の時点に立ってみますと、日本銀行がおっしゃるようにやむを得ないような面もある。政策効果が浸透して現金通貨の増加率がおさまってくるまでにはどうしても時間がかかるわけであります。そういう意味では、先ほどからも申しておりますように、私は、この引き締めのタイミングがおくれたために、現在依然としてそういう状況が続いているんではないかというように考えておる次第でございます。
  29. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) 通貨と物価との関係でございますが、ただいま館先生のお話しのとおりで、通貨が物価関係ないというようなことは言えない。むしろ関係があるというのが常識で、当然だと思いますが、そのときの通貨というのは、預金通貨を含めた全体の通貨であって、その一部をなす現金通貨は、簡単にいうと、少し簡単に言い過ぎることになるかもしれませんが、それはむしろ結果を示す。まずできた預金通貨などが引き出されたりした、で、現金となるというのは、もうその結果であって、問題は、いまの物価と重要な関係があるというようなことは、まず預金通貨を含めた総通貨の供給量を調節していかなきゃならないということであろうと思います。日本銀行勘定との関係では、これは現金通貨というのは、日本銀行の勘定に出てきますのは現金通貨の部分だけのことで、直接にはそういう関係でございまして、先ほど穴を埋めるというようなことを申し上げたのがちょっと表現が悪かったかと思いますけれども日本銀行勘定で日銀信用を、日銀資金供給をできるだけ低くするということはどういうことかと、われわれは低くするように努力しておりますけれども、その努力の対象は、銀行券の増発という部分であって、その銀行券の増発、成長するなり、成長に応じて必要な通貨を供給していくというようなことをいま言われておりましたが、それ以上に物価が上がっていくような現金通貨が出ることをできるだけ押えること、それだけが日銀の信用供給を減らすということになる、それ以外の要素の税金の一時的な大幅な引き上げだとか、外貨の売りによる外為会計の引き揚げだとか、こういうものはもう取引機構としていったら、金融取引は成り立たないという関係にあるものでございまして、その銀行券を減らす、あまりふやさぬようにするというためには、結局公定歩合とかなんとかということで、市中の金融をまず引き締めて、経済の伸びをスローダウンさせるというプロセスを通るものだと、そういうふうに考えている次第でございます。
  30. 藤田正明

    委員長藤田正明君) いまから五十分しかございませんが、質疑の希望が五、六人まだございます。できましたら、まことに恐縮ですが、質問と答弁をそれぞれ簡潔にお願いをいたしまして、一人十分ということでお願いをいたしたいと思います。
  31. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ことしの初めころから日銀預金準備率引き上げを実はやったわけですけれども、そのころ日銀総裁としては、金融政策の限界ということを言われたわけですが、大蔵省の全部か一部か知りませんけれども、大蔵省筋では、日銀がなぜもっと預金準備率を大幅に引き上げないかという議論がたいへんありました。私も、その辺もう少し当初から預金準備率引き上げることによって過剰流動性を吸収していくということがまず非常に必要だったんじゃないか。その辺がどうも預金準備率を、何といいますか、金融政策一つのていさいとして、少しずつ出してきたというような姿があったのじゃないか、その辺の事情は、一体なぜもう少し大幅に準備率引き上げなかったかという点、たいへんいまも疑問に思っております。この点をひとつ渡邊参考人のほうから御解明いただきたい。  それから第二の問題は、昨年来の外貨の流入、あるいはそれに伴うところの外為会計からの散布資金というものが銀行にすなおに吸収されていかなかったという面がかなり私はあると思います。通産省の一部の人から聞きますと、銀行がそういうものを吸収したがらなかった。銀行に集まった金の投資先が、当時は景気がまだ全面的に回復という事態でないから、投資先が少ないというようなことで、銀行が預かることを希望しなかった。そういうところに商品投機あるいは株投機、いろいろないわゆる投機という現象が広範に起こってきたというような点で、銀行の蓄積というのも、都市銀行あたりを考えてみますと、相当な蓄積が実はあるわけです。そういうふうに考えてみますと、金融機関の公共性というものがよく言われるわけでありますけれども、こうした際の、特に都市銀行あるいは地方銀行でも大きなところ、こういうところの銀行のビヘービアに私はかなり問題があるのじゃないか。もう少し公共性というものを貫くような銀行のビヘービアというものが要求されていいんではないか、こういう点で、これはむしろ館参考人から、銀行のビヘービアというものはどうあるべきか、その辺の御見解をひとつお聞かせをいただきたいと思います。  それから、今後の問題としまして、よくこのまま続いていくならばスタグフレーションになるのではないかとか、あるいはオーバーキルという現先が出るのではないかと、こういうふうにかなり言われているわけです。したがいまして、そうした関連から、たとえば所得政策、先ほど館参考人からは消費は結果であるというようなお話があったんですけれども、特に七三春闘での賃上げというのは大幅過ぎた、だから、コストプッシュの形がこれから出てくるんではないかというようなことから、盛んに所得政策というような意見がかなり出てきているわけでありますけれども、この所得政策については一体どうなのか。そういう事態というものがあり得るのかどうか、この辺について特に館参考人からお伺いをいたしたい。  それからもう一つは、金融政策を進めていく過程で、大企業と中小企業、この金融関係というのが、非常に、何といいますか、アンバランスができているように思うわけです。で、特に大企業では金融引き締めという問題が出てきているから、自分の流動性をなるべく確保しておきたいというようなことで、下請代金の手形サイトなんかも最近は非常に延びてきている。そういうことが、流動性の少ない中小企業にとっては、たいへん金融圧迫という形が、最近はきわめて露骨に出てきている。拘束預金なんかの取りくずしなんかも、今度は中小の金融機関ではそれをさせないというような、さらに滞貨をしてきているということで、これからますます年末にかけて、大企業と中小企業との資金の量の差というものがかなり極端にあらわれてくるんではないだろうかというふうに考えられるわけでありますけれども日本銀行としては、そうした中小企業金融というもののあり方、こうした、特にこれから金融引き締めの時期には、いままでも大体そうだったと思います。しかし、そういうようなことがだんだん許されなくなってきていると思うのです。そういうことについて、日銀としてはどうお考えになっているか。  以上四点でございますけれども、簡単でけっこうでございますからお答えいただきたいと思います。
  32. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) まず最初の準備率引き上げについてでございますが、準備率は、私ども金融引き締め手段として一つの重要な手段だと考えております。ただ、その上げ幅をどう考えるかというような点につきましては、いろいろ意見のあるところでございますが、先ほどちょうど渡邊先生のお話にありましたように、金融市場というものは決して過剰流動性はない。もう資金財政でどんどん引き揚げられているというような状況で、もう財政だけでもかなりこのところは引き揚げ超過になっている。そういう状況でございますので、条件に応じて、日銀は一方では信用追加をしなければならないという状況でございますので、そこで、準備率引き上げにはおのずから限度があると、そういうふうに考えている次第でございます。  それから、大企業、中小企業の問題ですけれども、これはもうかねがね私ども中小企業には十分配慮するように支店等を通じて、本店でもさようでございますが、取引先銀行によく常々指導しているわけでございますが、特に今回の状況を見ますと、少なくとも現時点までは、むしろ引き締めは大企業重点で行なわれているということ、それから、したがって、中小企業金融機関のほうが貸し出しの伸びは大きゅうございまして、都銀の中小企業向け貸し出しの割合も決して落ちていないというようなこと、それから、中小企業自体の力も非常についているという点は期待が持てると思うんでございます。現にこの八月にも、経済短期観測というものをとって、中小企業の先行き見通しなどとっております。今後とも十分注意してまいることは必要かと存じますけれども、現時点でそう問題が起こっているとは思っておりません。
  33. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) 簡単にお答えいたします。  第一の銀行の行動、良識の点でございますが、たとえば、昨年金融が緩和して、手元資金余裕が生じてきた場合ですね、銀行が返済を望まず、そして昨年中における貸し出しが非常に増大したということは、これは否定できない事実だと思います。で、それがある程度その後の物価上昇の原因になっているということも事実だと思う。ただ銀行に対して道徳的説得をしたからといって、そういうものは改まるわけのものではないというように考えております。したがって、いろいろな制度面といいますか、もしそういう状況が望ましくないならば、たとえば、貸し出し準備制度とか、そういうような制度的な面でのチェックを導入していくということが必要になってくるだろうというように考えます。  それから二番目の所得政策についてでございますが、最近、所得政策という意味は、非常に広く使われている場合もあるようでございまして、そういう広い意味での所得政策ということになりますと、これは総需要政策と変わらないということになりますので、そういう意味での総需要政策が必要であるということは、前々から申し上げているとおりでございます。狭い意味での所得政策について言いますと、私は、現在の賃金上昇は、少なくとも現段階に至るまではすべて物価上昇であるとか、そういう経済そのものの変動によって説明される範囲のもの、つまり私どもは、内生変数としてきまってくると、経済の中できまってくる値であって、外から突き上げられるといいますか、オートノマス——自主的にというように私ども言いますが、自主的にコストプッシュが起こって、それが物価上昇になっているというような段階には、少なくとも現段階では達してないというように思うわけでありまして、物価上昇率が低下すると、そういうことになれば、妥当な水準に落ちつく可能性があるというように考えておりますので、したがって、狭い意味での所得政策を導入しなければならないと私は考えております。
  34. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、館参考人に三点御質問したいと思う。  第一点は、先ほども質疑がございましたが、預貯金金利の引き上げ問題でございます。館先生も、八月二十九日ごろの文章に、インフレの被害者の一人は預金者である。で、金融市場が完全に競争的であれば、物価上昇の期待が生ずる場合、預金金利を含めて一切の金利が上昇するはずなんだから、当然、預金利子も引き上げられるべきである。あるいは、預金者が、インフレヘッジを行ない得ない低所得者層に多いことを考えるならば、社会的公平の上からもこれは当然だと、あるいは換物運動を阻止する役割りも果たし得ると、こういう理由でおっしゃっておられるわけです。それで、八月三十一日の政府の、いわゆる五項目物価対策の中にも何だか、急遽、貯蓄の奨励ということをうたったらしいんでございますが、その点からいえば、私たちも当然先生のおっしゃるように、預貯金金利の引き上げを早急になすべきだと思います。ところが、やはりいま考えられているのは、せいぜい〇・二五%ぐらいの引き上げということらしくて、これでは効果が全然ないと思います。ある人は、金融政策の根幹に触れる問題ではあるけれども、やはり一連の銀行定期預金ならば一〇%ぐらいにしてもいいんじゃないかと、こういうことをおっしゃる人もいるぐらいでございますが、先生は、どの程度の金利の引き上げ考えておられるのか、これが一点でございます。  それから第二点は、先ほど館先生は、租税政策ということで、ほんとう法人税あるいは租税特別措置なんかもことしじゅうに大幅に法人税の引き上げ租税特別措置の改廃をやるべきだったけれども、これがなされなかったために、非常に残念だという意味のお答えをなすっておりましたけれども、西ドイツなんかでは、もう民間設備投資抑制のために、投資抑止税を創設しておるというようなことであります。こういった点は、先生は、どう考えておられるのかですね。民間設備投資抑制のための投資抑制税の創設、あるいは、私たちは反対でありますけれども、過剰資金吸収の景気安定国債、これはもう政府筋なんかでも言っているらしいんですが、こういったことはどうお考えなのか、これが第二点でございます。  第三点は、政府の八月三十一日の五項目物価対策の中に、何だか個別物資対策強化というのが五項目目にあるわけでございますが、その中で、内外需の適切な調和というような項目がありまして、経企庁の幹部は、これは鉄鋼とか、塩化ビニールなどの需給逼迫物資の輸出を業界の自主的な形で調整するんだと、早くいえばアメリカが大豆の輸出規制をやったように、日本も輸出の規制分を国内用に回すべきだというようなこと、これをはっきり外交上言えませんので、こういったことばにしたということでございますが、こういったことは、やはり相当他国を刺激することでございますけれども、わが国として考えればまあやってもらいたいというようなことでございますが、その点は先生はどうお考えになるか、この三点をお尋ねします。
  35. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) お答えいたします。  第一に、預金金利の引き上げという点でございますが、預金金利をこの際引き上げるのは当然であるというように、私、考えておるわけでありますが、それではどのぐらい引き上げるかという問題でございます。ただ、金利の問題を考えますときには、ほかの金利との均衡ということもどうしても同時に考えていかなければなりませんので、物価だけとの関係で、全く抽象的に考えられるような状態で、適当な預貯金金利の水準というのはきめにくいという点が、現実の日本の金融市場の構造からくるそういう制約があるということを申し上げておきたいと思います。したがいまして、ここでどのぐらいの引き上げが最も適当であるかという点については、ちょっと私自身申し上げかねますので、御了承いただきたいと思います。それから二番目の租税政策でございますが、投資抑制税といったような特別な措置でございますか、私は、まあ投資抑制税という特別な税を導入しなくても、たとえば、減価償却期間の調整と、短縮したり延長したりするというような、減価償却期間を調整することによって、投資抑制効果を持ち得るので、やはり将来の安定政策の中には、そういう減価償却期間を調整する仕組みを何らかり形で導入してくるということが必要なのではないかというように考えております。それから三番目の、たとえば、個別物価対策としての輸出を、場合によれば抑制するというような措置もとるべきではないかと、事実、そういう考え方があるんだからという話でございますが、もちろん、緊急対策として、ある場合にそういうことを行なうのは絶対に認められないとまでは考えませんけれども、私は、やはり物価対策も、一般に経済政策はなるべく正道に従って、あまり小手先の政策をとらないで、金融政策なり、租税政策なり、あるいは財政支出政策なり、それから独禁政策なり、そういう正道の政策手段を使ってやっていくのが望ましいというように考えております。
  36. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 お二人の参考人にお伺いしたいと思うんですけれども物価が上がっている原因ということで考えますと、先ほど来御指摘もあったようですけれども、あえて三つあげてみますと、海外からの輸入品の値上がり、もう一つ需要に起因する値上がり、もう一つがコストプッシュによる値上がり、よくこの三つが引き合いに出されますし、私も、大きくはこの三つがからみ合って今日の物価高をもたらしているんではなかろうかと思うんです。しからば、いかなる対策をとっていくかということになるんですけれども、いま申し上げた三つの原因がどのくらいの大きさできいているんだろうか、この辺の感触をまず館参考人渡邊参考人にお伺いしたいと思います。  先日、これは三和銀行だったと思いますけれども、そこの調査では、海外の輸入品の値上がりが四〇%である——ラウンドにくくっての数字ですけれども。それから需要に起因する高騰部分が三〇ぐらい、コストプッシュが二〇ぐらい、ほかはその他であるというような数字を掲げておりましたけれども、それが合っているかどうかは別にしまして、どういう感触でごらんになっておりますでしょうか。まず、これをひとつお伺いしたいと思います。  続けてお伺いしたいのは、しからば三つの原因があるとして、どういう対策をわれわれはその個々について考えていったらいいんだろうか。まず、海外輸入品の高騰、これは主として原材料だと思いますけれども、これに対して、現在フロートしている国際通貨制度なるものが、有効に、価格抑制約に働くだろうかと考えますと、これはちょっと望み薄である。結局、海外からの輸入原材料というのは、フロートの中で実質的に価値を高めてまいりますし、先進国では価値を低める。昨今では、開発途上諸国の外貨準備高が、海外輸入品の高騰を背景にしてたいへん好調になってきたということもその一つのあらわれだと思います。ただそれがリーズナブルなものであるかどうか、確かにここに一つ問題がありますから、日本の国際通貨制度に対するより範囲の大きい対策考えられなければなりませんけれども、国内にしぼっていきますと、ある程度前提として値上がりを覚悟せざるを得ない。そうなると、消費減的な対策をどう進めるのか。これはなかなかかけ声だけではどうにもなりませんので、結局プライスメカニズムにたよらざるを得ない。非常に冷酷に言えば、物価値上がりを放置することが、結局は消費減的な対策を促進するということになるかもしれません、と、これは考えざるを得ないんだろうかということが、まず、海外輸入品の高騰については言えるんじゃないか。  では二番目の、需要に起因する物価高にどう対応するかということになりますと、総需要抑制ということは確かによくわかるんですけれども、一面では供給対策をどうするのか。これは、昨今ではたいへん重要な問題になりましたし、最も典型的なのは、供給の増加がほとんど期待できない土地問題に集約的に物価上昇があらわれてきた。先ほど館参考人は、現在の需要というのは、広告によってつくられた需要であるか。あるいは社用消費である云々というお話がありました。私は否定はいたしません。ただ深刻なのは、生活基礎物資にかかわり合いがある部分について、供給との見合いで上がってきている問題をどうしたらいいんだろうか。そうなりますと、片方では総需要抑制というマクロの対策は私は必要だと思いますけれども、片方では物の使い方ということについて、公的介入がいまや不可避ではないんだろうかと思いますが、この点のお感じをお伺いしたいと思います。たとえば、住宅ということを考えますと、現在セメントが足りない、ビニールパイプが足りない云々ということになります。これは、広告をどう押え、あるいは社用消費をどう押えたところで、必要不可欠の部分ですから、やはりふえてまいります。そういう中で取り組みを考えてまいりますと、釈迦に説法でございますけれども、現在の五カ年計画では、七百五十万戸の建設が予定される、二十年に置き直しますと、何と三千万戸になんなんとする住宅をつくってしまうのだ。なぜそんなにつくるかといいいますと、現在われわれがつくっている住宅というのは、残念ながら長もちがしない。つくれどもつくれども間に合わないという悪循環の中で、しかも、建築資材はこれから将来はもう確保はなかなかむずかしいんだということになれば、どういう建物をつくるのか、どんな材料でどう使うのかというところまで介入していかないと、物価対策ができない。総需要抑制の半面として、そういう公的管理の介入ということがどうしても必要になるのではないかと思いますがこの点の御見解もお伺いしたい。  最後に、コストプッシュということですけれども、先ほどは、従来までの賃金上昇というのは、経済変動によって説明される範囲内であるというお話がございました。大きくマクロにくくってみると、あるいはそういう見解もできるのかもしれません。しかし、個々の物価ということになりますと、必ずしもそうは言い切ってしまえない面があるんではないだろうか。そこで、あらためて所得政策のこともお伺いするわけですけれども、広義と狭義と簡単に分けて言うにしては、所得政策の概念というのは、今日あまりにもはっきりしておりません。ただ、言えることは、何らかのそういう発想というものを政治だけではなくて、経済、労働界なり、国民のあらゆるところに浸透させていかなければいけないというものの考え方みたいなものだろうと思います。そういったものを積極的に啓蒙しながら進めていく必要があるんではないでしょうか。  以上について、お二人からお伺いしたいと思います。
  37. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) ただいまのお話し、非常に大きな問題を含んでいると思いますが、最初の海外からくる影響、これは、私どもとして考えましても、なかなかうまいきめ手がないように存じます。確かに、為替平価の調整でおさまる理屈でございますけれども、事実がそうでないという点で、先生のおっしゃるとおり、これは消費減というようなことも、これから大いに問題になってくるんだと存じます。  それから、まあ総需要抑制に関連しまして、供給対策考えるべきではないかというお話し、これもごもっともだと存じます。で、まあ投資抑制と申しましても、全部押えるということではなくして、相当な投資は行なわれていくわけです。そこで、余分な投資を押えようというのが主眼でございまして、ほんとうは必要な投資が行なわれ、いまやらなくてもいいような投資が押えられるというふうにするのが一番望ましいのでございますけれども、まあそういうことは行政指導で多少の誘導ができる。また、金融機関の判断である程度そういう役割りができればと考えている次第でございますが、その中で、特に土地問題とおっしゃったのは、これは、私もまことに重要な問題だと存じています。それには各方面の専門の万々、いろいろお考えだと存じますので、門外漢として、まあ私見はございますけれども、差し控えさせていただいて、まあ土地問題が非常に重要だ、物価問題としても非常に重要だというふうに考える次第でございます。それからコストプッシュ問題、これは所得政策——所得というのが、賃金だけの問題ではなくて、賃金と利潤の配分の問題であるというふうなことも含めまして、まあそれを配分の問題があるという前提で一応賃金のことを問題にしますと、これはコスト面からも問題になって、現時点では確かに異常な生産の伸びでございますので、生産性の範囲内ということが言えるかもしれませんが、この生産といいますか、経済の伸びというものは、もう少しストローダウンしなければならないんだとしますと、この間からのベースアップは、コストプッシュ要因にはなっているんじゃないかというふうに考えられますのと、また、それが同時に、消費購買力となってふえるという点も、実質生産の増加がそれに伴わなければ、その面からもデマンドプルにもなり得るという、そういう意味所得政策的なお考え方、そういうものは検討に値すると思います。ただ、まあ各国でやっておりますけれども、必ず成功しているとも思えませんし、これには非常に国民全体のコンセンサスも要るということもよく言われているとおりでございまして、まあ私見ではございますけれども、研究はする必要があるというふうに考えている次第でございます。
  38. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) たいへんむずかしい問題を出されまして、全部に的確にお答えすることがはたしてできるかどうかわかりませんが、一応お答えしてみたいと思います。  まず最初に、現在の物価上昇を、海外要因と、それから需給ギャップと、コストプッシュの三つに分けた場合、どのくらいの割合というように考えているかという点でございますが、事後的に見た場合、いま御指摘があったように、海外要因が一番高く、そして次いで需要なりコストプッシュという要因が働いておる。先ほどの御指摘のあった数字に非常に近い割合だろうというふうに考えておる。ただし、これは事後的に実際に上がってしまった数字について見たときにそうなるということでございます。  そこで、海外要因物価上昇の原因の一つになっているとするならば、これに対する対策というのは、為替レートをフロートするというようなことでは対応できないのではないか。確かにそれだけでは対応できないというように思いますし、おそらく物価上昇の中で一番扱いがむずかしいのはこの点だというように思います。日本だけではなくて、各国が協力しない限り、なかなか海外要因からくる物価上昇というのを押えることはむずかしいと思います。しかし、一方からいいますと、国内の総需要政策が適当にとられた場合、海外要因からくる物価上昇の結果として、あるものの価格が上がったとしても、ほかのものが下がる、下がり得るということであれば、器に相対価格が変動するというだけの結果になる場合もあり得るわけでございます。非常に実際問題としてはむずかしいわけですけれども、しかし、総需要政策のいかんによって、その影響の程度は違ってくるわけでございますから、先ほど申しましたように、四〇%とか、それよりちょっと高いというような数字は、すべて事後的な数字というように申し上げたのはその意味でございます。  それから二番目に、総需要抑制するといっても、長期的に供給が不足してきているというような問題についてはどういうように考えるのか。この点は実はもともとインフレーションというのはそういう性質のものだというように思っているわけで、どんどん景気がよくなり、完全雇用になれば、まず、労働が不足する。これも広い意味での資源の一つでございますから、そういう資源の制約が、完全雇用になり、経済が成長していけば当然出てくる。したがって、そういう状況のもとでは、どうしても成長率を落とさなければならないということになってくるわけでありまして、インフレを避けながら、しかも、資源の制約が現実の問題としてあらわれつつあるような状況では、成長率を下げていくということが今後どうしても必要になってくるというふうに考える次第でございます。  それから、三番目のコストプッシュの問題でございますが、コストプッシュについても、労働そのものはやはり広い意味での資源であるといういま申し上げたような関係に立っておるわけでございますから、したがって、成長率をある程度押え、物価上昇率を押えることに成功するならば、それほど賃金が生産性の上昇を上回って、その要因物価引き上げていくという、少なくともマクロ的に見たときに、そういう問題が今日予想されるほど大きな問題になるということはないのではないかというように思うわけでございます。
  39. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 当面の具体的政策についての対策について三点ほど館先生にお伺いをしたい。  その一つは、租税政策で、二人の委員からも具体的な意見が出ましたけれども、私は、やはり現行の制度を洗い直すという角度で、十分点検すれば、一定の効用は出てくるんではないかと理解をしているんですが、ことに法人税問題については、根本的にやはり発想の転換の上に立って総洗いをして、それでまあわれわれ四〇%以上ということで言っているんですけれども、その辺まで引き上げる必要があるんじゃないだろうか、あるいは租税特別措置の各種減価償却その他いろいろございますが、これは正確な資料を持ってきておりませんが、私の記憶ですと、おおむね実効税率が二〇%見当、百億以上の企業の場合ですと、非常に低廉に置かれているわけなんです。これは単に税制上の不公平、そういう問題だけではなくして、非常に問題があると思うのであります。ですから、こういうのは、やはり洗い直す。税制上のたてまえで言うならば、われわれは廃止しろということを要求しておりますが、いまの先生の御意見ですと、調整してはどうか、こういう御意見でしたけれども、調整の範囲をどの辺までと一体考えておられるのか。  もう一つは、交際費課税ですね、いま資本金四百万円をこえるものですね、一定率で課税しておりますけれども、こういう問題について一〇〇%課税をしたらどうか、こういう考えを持っているんですが、この辺の見解をひとつお伺いしたいと思います。  もう一つは、公害たれ流し、この問題について社会費用、これを企業に負担させてはどうか、こういう考えを持っているんです。たとえば、自動車のガソリンの鉛公害、有毒排気ガス、こういったものを浄化装置をつけるために一台十万円くらい経費がかかっているんですね、いまの実情ですと。こういうものは企業に課してやる、負担し九さい、こういうことをやってはどうか、こういうふうに考えるんですけれども、その辺の租税政策についてどういうふうにお考えになられるでしょうか、これが一点。  それからもう一つは、いま先生がお話されました海外要因、これからインフレ、物価上昇、スタグフレーション等の危険もある、こういうことを言われました。したがって、独禁政策強化ということを言われておりますね、現実にあがってきているのは二つ、大綱で言うならば四項と五項だろうと思うんですが、その第一点は、割賦規制の問題で、自動車関係ですね、従来二〇%のものを二〇%に頭金を引き上げる、それから割賦の月割りを十五カ月に短縮する、従来二十カ月のものを。これを自動車の値段を一台六十万円として計算をしてみますと、たとえば、頭金二〇%の場合ですと、月払いにして二万七千六百円、ところが今度頭金を三〇%に上げて十五カ月に短縮するんですから、結果的には二万二千円見当安くなるんですね、確かに月払いで四千円見当上がります。上がりますけれども、相体的には安くなる。そういうことから、通産省がやった今回の割賦規制等の問題については、効果がないと私は見ているんです。これは全く名目的だと思うんですが、こういうことでは、これはほんとうの緊急対策にはならぬのじゃないか。もっとやはり基本的な問題について追及して、いまの社会費用ですね、こういう部面でもびしびしかけていく、こういうのが非常に効果的ではないだろうかというふうに思うんです。それからもう一つは、独禁体制の投機防止法ですね、確かに生活関連物資の買い占め及び売り惜しみに対する緊急措置、いわば投機防止法をつくったんですが、この内容なんというのは、たとえば買い占め、売り惜しみの定義、これが明らかでない。それから、規制対象の異常な物価上昇の、異常の判断がきわめて不明確、あるいは対象品目に今回灯油を加えて十五品目にまで拡大しましたけれども、こういうことでやっておりますか、これは全く企画庁自身が一番内容を知っているように、全く名目なんですね。調査権があって、立ち入り検査をやっても、これは罰則がないんですから、全くザル法です。そういう状況の中で、いまの独禁政策強化ないしは流通体制の改善策、こういうことはとうてい考えられない、こういう問題について先生どういうふうに一体御判断なさっているんですか。さっきもいろいろ意見が出ましたように、金融財政、税制、独禁体制ないし流通体制の総合政策でいかなければいかぬ、こういう見解が十分出されているわけですから、そういう意味合いで、その辺の見解についてひとつお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、日銀のほうにお伺いするんですけれども金融引き締め政策、第四次公定歩合引き上げ窓口規制、いろいろやりました。一体この物価安定の金融引き締め政策のめどですね、これはどこに置いてあるのか。たとえば、四十八年度の予算当初においては五・五%押えますよと。しかし、この永続的に、たとえば、国鉄運賃値上げも、十年計画でいった場合には何を基準にしますと、こう言いますと、大臣は、これは社会発展経済計画、経済発展社会計画というものを土台にいたします、五%。こうやってくるんです。しかし、これは当たったためしがないんですね。当面、この金融引き締め政策で、日銀として一体物価安定のめどというものをどの辺に置いているのか。これ具体的にひとつお示し願いたいと思う。さっき館先生が指摘をされましたように、言ってみれば、タイミングが非常に対策としておくれた。私もそうだと思う。この間、日銀総裁が来られたときも、そういうことを明快にそれらしいことをやっぱり言っておられる。これはまさに私は、大蔵大臣以上にはっきりしたものの言い方だと思って感心して聞いておったんです。しかし、われわれが理解するのには、一つは、やっぱりスミソニアン体制ですね、国際通貨の。あの合意以降の、円切り上げのおそれがあったから、インフレに対する非常な緩慢さがあったわけでしょう。あるいはこの日経連や財界の不況説に同調して、大型補正予算を組んで景気に刺激を与えた等の対策が今日の物価上昇を招来した。あるいはこの昨秋の総選挙のあれがありましたから、政治的配慮があったとか、幾つかの要因はこうあげられますよ。だから、そういう意味合いでは、私は、どうしても政治妨害というものが入ってくるから、日銀の場合はそういうことにとらわれずに、やっぱり純粋な経済理論から言ってこうだということを政府に対してぴっちりした態度を示すべきじゃないか。こういうふうに考えるんですけれども、そういう面に対するところの対策というものを今後どうするのか、見通しはどうなっているのか。この辺ちょっとお聞かせ願いたいと思う。  以上で、時間ありませんからやめます。
  40. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) それではお答えいたします。  まず最初に、租税政策としての法人税についてでございますが、私、長期的な税制の姿として、法人税というものが税として非常にいい税であるかどうかということになりますと、必ずしも法人税というのは非常にいい税であるというようには実は考えておらないわけで、と申しますのは、大部分法人税というのは、長期的に見れば転嫁されていってしまうという性質を持っておりますから、法人税が必ずしも長期的な観点から見たときに、望ましい税であると言えるかどうかには多少の疑問を感じております。しかし、資源の民間部門から公共部門への転換というようなことをはかっていくのには、法人税を使うことができる。それから、たとえば減価償却のさっき申しました期間の弾力的な調整というような形で、これを利用することができる。そういう意味で、法人税を活用していくということが、政策上望まれるのではないかというように考えておるわけであります。  特別措置については、特別措置そのものは、私は全廃していくのが望ましいというように考えておりまして、残しておくという考え方ではございません。  それから、交際費課税につきましては、現在のような交際費課税が望ましいというように考えておりませんで、もっと課税を強化してしかるべき、これだけは特別措置なんでございますが、賛成するほうの特別措置でありまして、それを強化するという方向で考えるべきじゃないかというように思っております。税制については大体私は、いま問題にされました点では、そういうところが主たるところでございます。  それから、独禁政策強化というように言っても、実際に独禁政策強化するというのは、非常にむずかしいじゃないかと、いろいろな政策を、たとえば、投機防止というようなことでも、あまり最初に考えられたほど有効な形にはならないというような意味で、独禁政策強化ということは、言うはやすくして、行なうはかたいという御指摘であるといたしますと、私も、実際には非常にむずかしいだろうというようには思っております。しかし、ほんとう物価を安定させていくということを真剣に考えるならば、分割規定の復活というぐらいのことは考えるべきじゃないかというように思っておる次第であります。
  41. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) 物価安定のめどをどこに置くかというお話でございますけれども、これはなかなか具体的に何%というようなことは申し上げられないように存じます。毎年政府が経済見通しとして、あるいは長期計画に基づきまして卸売り物価幾ら物価、消費者幾らというような目標は立てておられますけれども、あの辺が大方のコンセンサスであろうかと思いますけれども、私どもとすれば、やっぱりできるだけそれ以下にでも安定させてまいりたいということで、当面といたしましては、とにかくいまのこの上がるという勢いを、できるだけ押えて、もうほとんど上がらないのだというとこまで持っていきたい。そう考えている次第でございます。  海外物価等の割合と、国内要因というようなことでございますけれども、今度の物価上昇のきっかけは、昨年の十一月ごろの輸入木材とか羊毛の値上がりということが非常に大きかったんですけれども、それに乗っかって、ほかのものが、それが口実というか原因になって、ずうっと上がっていくというようなことであったと思いますが、海外物価も安定することを期待していますけれども、かりに上がっても、いまの館先生もおっしゃるように、一方でそれを相殺するような、あるいは少なくともそれに乗っかるというような動きはなくしていく。ここで落ちついたというところに持ってまいりたいと思います。  なお、私どもの判断の、タイミングというお話がございましたが、これは内外の関係という、そういうことを総合的に常に判断しまして、現時点では物価安定ということにもう最大の眼目を置きまして、できるだけ機動的に対処してまいりたいと、こう考えております。
  42. 嶋崎均

    嶋崎均君 皆さんからだいぶ議論が出ましたので、ごく集約的に二、三点お伺いをしたいと思います。第一点は、現在金融が第四次の引き締めということで、日銀当局、政府をあげて努力をされておるわけでございますが、非常に心配されることには、スタグフレーションというような問題が一部で言われておるわけでございます。特に、最近この景気と物価のジレンマといいますか、デマンドプルに対して、総需要抑制政策をとっていく場合に、この総需要抑制政策効果が、景気の面と物価の面に跛行的にあらわれる可能性が非常に多いんじゃないかということを心配しておるわけでございます。特に、わが国の場合に、高度の経済成長が非常に長く続いておるという背景のもとに、フィリップス曲線が上方にシフトするというようなかっこうにだんだんなっておる。ことに、いまのような極端な物価の上がりかたが長続きをするということになりますと、そういう関係から、結局景気への影響というものが非常に先にあらわれて、その物価への影響というのがおくれてくるんじゃないか。あるいは完全雇用経済ということを目ざして、われわれ努力をしてきたわけですが、そういう完全雇用経済というものを前提にしていくならば、かりに景気を引き締めて失業率が上がってきましても、どうもそれが物価の予想上昇率に影響しないというのですか、そういうかっこうで、物価高だけは残って、そして引き締め効果が景気だけに及んでいくというような形にどうもなるんではないか。そこでわれわれ常に反省をさせられるわけですが、去年の経済白書には、三つのギャップということがうたわれている。今度の白書では、政策ラグとして、認知ラグ、決定ラグ、効果ラグというようなことが言われておるわけです。いま進んでおるいろんな政策というものですね、これをとらえる経済指標というものは、非常にわれわれおそくつかむわけです。まあ一昨年来のいろんな景気の情勢というものを考えてみると、御承知のように、去年の八月ぐらいまでわれわれが景気指標を見る限りにおいて、ここで、こういう、それ以後の経済の状態になるだろうかとだれも予測をしなかったはずだと思うんです。さすればこそ補正予算も組み、景気刺激策をやらなきゃならぬ。かたがた、何というか、どうにもならない一つのしんばり棒として、為替の問題というものを念頭において政策をやっていく。そういうことのあらわれが、実はことしに入ってからの為替の変動制への移行と、再びそういう問題が出てきて、先ほど先生がおっしゃられましたが、そのときに、もう少し引き締めればいいじゃないかと、為替がもう自由化されているんだから。われわれはしかし逆に、それを読んで、前のときはともかく三百八円まで——これも相当の額だと思いますけれども、切り上げた。今度のときは、限界部分にくるんだから、ますますたいへんじゃないかということで、先行的な意識をもって、どちらかというと予算はうまく組んだと、こう予算を組んだときは思った。組んだ直前、審議の過程では、しかしいろんな問題が意識されてきました。どうもそういう意味で、経済指標を通して経済の状態をどう認識をし、それに対してどういう政策を決定をし、そしてそれに対して効果をどう期待するかということのズレが、非常に極端に反省をしなければならない、そういうケースを私はこの一年経験をしておるというふうに思うんです。私は、そういう意味で、いまとられている政策というものが、ほんとうにどういう結果を生むんだろうかということを非常に心配をしている。特に、スタグフレーションの可能というのは、人によれば、来年の春ごろだという説ですけれども、もっと早くそういうことが出てくる可能性もあるのではないか。特に、年末への繁忙期に対してどういうぐあいの対処をするのかということが非常に重要な問題だと思う。そういうことについての見通しに誤りなきを期さなきゃならぬということは、与党議員として当然心配をしていることですから、その点について、まずどういうぐあいの考えを持っておられるかということが一点。  それからもう一つは、そうは言っても、現在の物価上昇の姿というのは、卸売り物価で一七%もいく、あるいは消費者物価で一二%をこえるというような物価上昇というのは、やはりいかに海外要因があり、需給要因がありましても、いかにも私は異常だと思うんです。したがって、それを断ち切る覚悟というものが、もうほんとうに必要な段階にきておるので、政策ラグ、あるいは効果ラグがあっても、しんぼうをある程度しなきゃならぬというふうに思うわけです。われわれ政治家は、常にそういう政策決定の影響というのが中小企業に及ぶということを心配をするわけでございます。したがって、その手当てはもちろん間違いなしにやらなければなりませんけれども、そのために全体の政策が振り回されるというようなことがあってはならぬ。どうも私は、いまの情勢から言いますと、日銀は相当の覚悟を持って臨んでおられると思いますけれども、その点をひとつ、スタグフレーションという問題が当然予想されると思うし、しかし、思うけれども、ある程度心理的な影響というものが断ち切られるまではしんぼうしなければならないというふうに思いますが、その点についての御意見はいかがかというのが第二点でございます。  第三番目は、そういうぐあいにスタグフレーションの問題は、総需要抑制政策からいくと、そういうズレで非常にあらわれてくると思うのですが、反面それを緩和する方法として、やっぱり何か所得政策的なものの考え方というか、経済全体の姿から考えて、ほんとうにことしの春の春闘の結果のように、二〇%も賃金が上がる、それはある程度物価が上がったことの結果であるかもしれませんけれども、しかし、それはいかにも異常な姿であるということも否定できないと思うのです。いままで館先生の御指摘にありますように、結果的に見れば労働の分配率なり、あるいは付加価値率なりというようなものを、事後的に企業経理の中から見ていくならば、あらかじめ予想したかどうかは——結果的にはおさまっておるというふうに思われます。しかし逆に、そういう考え方からずっといきますと、まさしくいまの経済というのは、経営者の側にとってみれば、賃金が上がれば、それを物価に転嫁する。物価が上がって分配率が変わらないということなら、これも労働者のほうは、来春もひとつ同じような形で春闘というものを繰り返す。持たれ合いの形で、結果、物価上昇という形になっていくのではないか。その物価上昇が、そういうことで結果的におさまったからそれでいいじゃないかとは決して言えないので、その過程で、社会的に各層間に非常にアンバランス、不公平を生むというところに、インフレーションの問題点があるように思うのです。さすれば、私は、やはり経済の全体的なマクロの婆というものを予定をして、そういう予定の中に、ある程度常識的に所得の配分なり、あるいは利潤の問題なりというものが予定をされ、そういうことを一般に認識をしてもらうという意味での、広い意味での所得政策というものをとらなければいけないのではないか。これも、さっき出た話ではないけれども、認知ラグ、決定ラグ、効果ラグで、気がついた時分には非常に激しい政策をとらなければならぬ。たとえば、物価のストップであるとか、あるいは賃金のストップであるとかというような、極端な政策をとらなければならない破局へ行かないために、ぜひとも必要なことじゃないかというふうに思いますが、その点をどう思うか。最後にもう一点お伺いしたいのですが、現在日本の経済というのは、私は非常に大きな転換期にあると思います。四十年当時転換期と言われましたけれども、私は非常に、現在の物価上昇という形を通して、日本が新たな経済の均衡を求めて大きな変動の中にあるのじゃないか。そういう長期の日本経済の姿というものを考えて、そしていまわれわれは何をしなければならぬのかということを真剣に考えなければならないような段階にあるような、これは感じでございますが、そういうものを感じてしかたがないわけでございます。それはある意味で、局限された土地の対策であるとか、あるいは資源の問題であるとか、あるいは資本係数が非常に上がってくる問題、あるいは公害対策の費用負担の問題というような、そういうものを通して幾つかの価値の転換を非常に求められ、またそのたびに政治と経済との間の問題として、非常にわれわれ考えなければならない分野が多いように思いますが、これらの点について何か御意見がありましたらお聞かせを願いたい。ただ単に、目先の景気対策も大事だけれども、長期の視点の中でわれわれは何を考えていくべきかといりふうな点について、御示唆いただければありがたいと思います。いままでの質問は館先生にお答えを願いたいと思います。
  43. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) たいへんむずかしい問題を出されましたので、これもはたしてうまくお答えできるかどうかわからないのですが、まず最初に、今度の引き締め措置の結果、景気のほうに影響が強くあらわれて、物価のほうにはそれほど影響があらわれないという意味で、効果に跛行性かあった。その結果、スタグフレーションが起こる危険があるんではないだろうかという点でございますが、この点につきましては、一番最初に私申し上げたのも、ほぼそういう趣旨でございまして、景気のほうはやがて鎮静化するということになる。しかし、物価のほうにはその効果はすぐにはあらわれないために、スタグフレーションの危険というのを考えなければならない。そういう状況のもとでは、政策があまり強過ぎるということは、どうしてもタイミングがおくれますと、強い政策をとらざるを得ないような感じになってくるわけでありますが、しかし、あまり強い政策をとりますと、先ほども申しましたように、先へ行ってスタグフレーションが起こってしまう危険があるんではないかというように思うわけですね。したがって、政策全体を考えていくときには、そういう長期的な観点といいますか、中期的な観点と申しますか、そういうことを考慮しながら、政策の強度を考えるということが必要ではないか。で、一方でそのスタグフレーションを排除するためには、価格の下方硬直性というのが、管理価格みたいなもので起こっているとするならば、その下方硬直性をできるだけ取り除くという政策をとっておくということが、スタグフレーションを回避するために重要なんではないだろうかというように考えているわけでございます。  それから次に、物価の安定ということを最優先に考えるならば、たとえスタグフレーションが起こっても、ともかくインフレマインドを取り除くということがこの際必要なんではないかという御指摘の点でございます。私は、いま申しました点と直接関連するわけでございますが、できるだけ物価の下方硬直性、管理価格のようなものを排除して、スタグフレーションという状態を生じないように、その政策をやっていただきたいと、この際、強くお願いをしておきたいというように思うわけでありまして、やはりスタグフレーションが生じて、その結果かりにインフレ心理が除却されるにしても、スタグフレーションという状態は決して望ましい状態ではございません。物価上昇と失業とどちらを選ぶかという選択を私に迫られるならば、私は物価上昇を選択するほうでございまして、失業を選択はいたしません。そういう意味で、やはりスタグフレーションは絶対に避けるということが必要ではないかというように考えております。  それから三番目に、所得政策でございますが、私が先ほども申し上げましたけれども、マクロの政策が適当に行なわれていくならば、いま一般に憂慮されているようなコストプッシュ型の物価上昇というのは起こらないのじゃないかと、依然として考えているわけであります。そういう状態のもとで、非常に高い成長を実現しようとしますと、そのときにはコストプッシュ型の物価上昇が起こる。ですから、西欧諸国でコストプッシュ型の成長が起こってくるということの一つは、完全雇用に達しながら、なお相当高い成長を目標にしていて、いままで低かったものを上げようというような政策を追求すると、そういう状態がコストプッシュをもたらしてくるということになるのじゃないかと思います。ですから、それぞれ資源の状況に合った適当な成長政策、つまりマクロの総需要政策を適当に運営していくならば、一般に憂慮されているような事態には少なくともここ当面ならないのではないかというように私は考えております。全く違う意見の方がおられることも承知しておりますが、私はそのように考えております。  あと、価値の転換というような非常に大きな問題になりますと、これはここですぐに申し上げられるというようなことはございませんので、以上で一応……。
  44. 嶋崎均

    嶋崎均君 一点だけ。  御意見よくわかりましたのですが、価格の下方硬直性という問題、要するに管理価格を中心として独禁政策の運用、かねて先生の御持論であるということは私はよく承知をしておりますけれども、日本の経済というものは、過去においては、どちらかというと寡占体制への過程にあったというのですか、そういうことで非常に柔軟性に富んだ対応のしかたをしておるし、過去の景気変動と、物価の形を見ましても、要するに、下方硬直性という点では、わりあいそれが景気には弱くてくずれておる。しかし、物価が上がるときには、そういう大勢が出ていると遠慮なしに上がっていく。そういう上のほうへは非常に強く働いておったというのが過去の例ではなかろうか。独禁政策も、私は、必要なことであるということを決して否定するわけではないのですけれども、どうも日本の経済の過去の動きから見まして、それがほんとうに、万能薬としての効果を持っておるのかどうか、言われることはよくわかりますけれども、疑問に思っておるわけです。いずれにしても、これはもう見解の相違だろうと思いますので、よけい言わないつもりでございますが、卸売り物価と消費者物価、これを対比しますと、従来は、消費者物価のほうがよけい上がり、卸売り物価が低かったと、逆転した形になっているわけですね。その逆転の乖離の中でいろいろ考えてみますと、相当に日本の、何というか、経済、今度の物価上昇、それと海外との関係、そういう意味で、非常にやっぱり性質がどうも変わってきたように思うものですから、最後の点について何か御意見があったならということを申し上げた次第でございます。もう答弁は要りませんけれども、その辺のところが非常に問題じゃないかということを御指摘だけしておきたいと思います。
  45. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  46. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記を始めて。
  47. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 時間が参りましたから……。  金融財政租税、流通機構、日銀のあり方なり所得政策なり、土地、スタグフレーション、いろいろ問題が出てまいりましたですが、一番問題は、やっぱり経済政策と申しますか、景気政策と申しますか、そういうものが動いてまいりますと、国民の間に非常に不均衡が出てくる。で、今度のは何なんだと言ったら、結局タイミングを誤ったんじゃないかということになると思う。いま嶋崎委員からも反省というようなことばで、当時の大型予算を組んだときのいきさつ、それは至上命令としての為替の問題があった、円の切り上げがあったと、こういうことなんです。あるいは経済指標というものをとってみて、あんなことはできなかったと、そこでタイミングを誤らずにやるということは、どうやったらできるんでしょうかね。私たちも実は議員として、予算なりいろいろなところに参画した一員として、私も実は反省をしている一員なんですが、これは野党としての反省なんです。もっと政府を責めればよかったと思っているんですが、しかし、あの当時実はそれだけの迫力がなかったということなんです。ですから、どうやったらいいかということについて御意見を承りたいと思います。
  48. 館龍一郎

    参考人館龍一郎君) これも非常にむずかしい問題でございまして、だれでも景気の先行きがどうなるかについて、たとえばいまから一年後について断定的なことを言えと言われて、自信を持って言えるという人はないと思います。特に経済の転換のような時期に、ますますその判断がむずかしくなる。確信を持って断言できるような時期もございます。しかし、非常にむずかしいというときが、まさに政策の転換を必要とするような時期、そういう時期にいろいろな経済指標が実際に得られるのがおくれるということから、非常にむずかしい問題だというように思っております。ですから、もういつも言われることでありますが、一番望ましいことは、できるだけ先行指標にせよ、そういう経済指標が早く手に入るようにするということが、さしあたりまず第一に必要だと思うんですが、しかし、私がここで何かを申し上げるとすれば、そういう指標が得られた後に、なおいろいろな政治的な考慮が加わったりすることによって政策の実行がおくれると、そういう意味でのラグだけはできるだけ、これは短縮が可能だと思いますので、できるだけ短縮していただきたいということでございます。それ以外に適当な方策というものはあり得ないんではないだろうかというように私は考えております。
  49. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  50. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 速記を始めて。
  51. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 日銀が弱いとか強いとかという、そういうことじゃなくて、やはり政治の圧力というものが、私は正しい指標が出るか出ないかが一つ問題だと思うんです。たとえば指標のつくり方なんかでも、消費者物価の指標のとり方なんかも実は問題があると思っているんですよ。物価全体の上がりから見たときに非常に問題があると思うんですが、ですから、日銀がつくる経済指標を先につかんでいただかなければならぬと、しかし、それはやはりタイミング、おくれてくるということは私たちわかる、わかるのだけれども、やはりとってもらわなければどうにもならぬと思う。その出た資料をみんなして討論をして、誤りない早いタイミングでやっていく必要があると思う。そういうことがなぜ行なわれてこないのか、どういうところに、その日銀から歯がゆく思われる点が多々あるのじゃないかと思うのですが、そういうような点について、渡邊さんとしては、どこかを批判せんならぬので言いにくいことかもしれませんが、ざっくばらんにひとつお聞かせ願えれば非常に幸いだと思います。
  52. 渡邊孝友

    参考人渡邊孝友君) どうも結局タイミングのおくれということが問題になっておりますが、そういう御批判は御批判として十分承っていかなければならないと存じますが、私どもとしては、今回はタイミングのおくれというよりは、まあ私どもの信ずるところで判断をしながらやってまいったというつもりでございます。その判断というのには、先ほども申し上げましたように、国際収支に、黒字の調整と、それから物価の安定ということを、まあ両方を常に考えながらということであったということで、それが結果的にタイミングがおくれたとごらんになる方にはそういうふうにとられる面があるのではなかろうかというふうに存じますが、確かにわれわれもこの最近の物価上昇、まことに予想をこえる異常なものでございまして、どうしてこういうことになったか予見できなかった点はございます。特に、海外のあれをきっかけとしているというようなこともありますので、この辺は今後も資料の収集、分析、十分勉強していかなければならないかと存じますが、タイミングの点については、そういうふうなことで私ども日本銀行として考え、必要な措置を常にすぐ政府と打ち合わせやっていくということでやってまいったように思います。ただ、まあ歯がゆいとかいうようなことが全くなかったわけでもございませんが、それはまあその他の総合政策を常に同時にと言っていいか、早くやっていただきたいというふうには思っておりました。それにつきましての、いろいろ御事情もあるのだろうと思いますが、ここでようやくそろったというふうな感じがしますが、まだまだいろいろ個別対策などは、私専門外でございますけれども、それぞれの部署でできるだけ研究され、進めていかれるように希望はいたしたいと存じます。
  53. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人には、御多忙中のところ長時間にわたり有益な御意見をいただきましてたいへんありがとうございました。  次回の委員会は、十八日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。    午後零時五十六分散会      —————・—————