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嶋崎均君 皆さんからだいぶ議論が出ましたので、ごく集約的に二、三点お伺いをしたいと思います。第一点は、現在
金融が第四次の
引き締めということで、
日銀当局、
政府をあげて努力をされておるわけでございますが、非常に心配されることには、スタグフレーションというような問題が一部で言われておるわけでございます。特に、最近この景気と
物価のジレンマといいますか、デマンドプルに対して、総
需要抑制政策をとっていく場合に、この総
需要抑制政策の
効果が、景気の面と
物価の面に跛行的にあらわれる可能性が非常に多いんじゃないかということを心配しておるわけでございます。特に、わが国の場合に、高度の経済成長が非常に長く続いておるという背景のもとに、フィリップス曲線が上方にシフトするというようなかっこうにだんだんなっておる。ことに、いまのような極端な
物価の上がりかたが長続きをするということになりますと、そういう
関係から、結局景気への
影響というものが非常に先にあらわれて、その
物価への
影響というのがおくれてくるんじゃないか。あるいは完全雇用経済ということを目ざして、われわれ努力をしてきたわけですが、そういう完全雇用経済というものを前提にしていくならば、かりに景気を
引き締めて失業率が上がってきましても、どうもそれが
物価の予想
上昇率に
影響しないというのですか、そういうかっこうで、
物価高だけは残って、そして
引き締め効果が景気だけに及んでいくというような形にどうもなるんではないか。そこでわれわれ常に反省をさせられるわけですが、去年の経済白書には、
三つのギャップということがうたわれている。今度の白書では、
政策ラグとして、認知ラグ、決定ラグ、
効果ラグというようなことが言われておるわけです。いま進んでおるいろんな
政策というものですね、これをとらえる経済指標というものは、非常にわれわれおそくつかむわけです。まあ一昨年来のいろんな景気の情勢というものを
考えてみると、御承知のように、去年の八月ぐらいまでわれわれが景気指標を見る限りにおいて、ここで、こういう、それ以後の経済の状態になるだろうかとだれも予測をしなかったはずだと思うんです。さすればこそ補正予算も組み、景気刺激策をやらなきゃならぬ。かたがた、何というか、どうにもならない
一つのしんばり棒として、為替の問題というものを念頭において
政策をやっていく。そういうことのあらわれが、実はことしに入ってからの為替の変動制への移行と、再びそういう問題が出てきて、先ほど先生がおっしゃられましたが、そのときに、もう少し
引き締めればいいじゃないかと、為替がもう自由化されているんだから。われわれはしかし逆に、それを読んで、前のときはともかく三百八円まで
——これも相当の額だと思いますけれ
ども、切り上げた。今度のときは、限界部分にくるんだから、ますますたいへんじゃないかということで、先行的な意識をもって、どちらかというと予算はうまく組んだと、こう予算を組んだときは思った。組んだ直前、審議の過程では、しかしいろんな問題が意識されてきました。どうもそういう
意味で、経済指標を通して経済の状態をどう認識をし、それに対してどういう
政策を決定をし、そしてそれに対して
効果をどう期待するかということのズレが、非常に極端に反省をしなければならない、そういうケースを私はこの一年経験をしておるというふうに思うんです。私は、そういう
意味で、いまとられている
政策というものが、
ほんとうにどういう結果を生むんだろうかということを非常に心配をしている。特に、スタグフレーションの可能というのは、人によれば、来年の春ごろだという説ですけれ
ども、もっと早くそういうことが出てくる可能性もあるのではないか。特に、年末への繁忙期に対してどういうぐあいの対処をするのかということが非常に重要な問題だと思う。そういうことについての見通しに誤りなきを期さなきゃならぬということは、与党議員として当然心配をしていることですから、その点について、まずどういうぐあいの
考えを持っておられるかということが一点。
それからもう
一つは、そうは言っても、現在の
物価上昇の姿というのは、卸売り
物価で一七%もいく、あるいは消費者
物価で一二%をこえるというような
物価上昇というのは、やはりいかに
海外要因があり、
需給要因がありましても、いかにも私は異常だと思うんです。したがって、それを断ち切る覚悟というものが、もう
ほんとうに必要な段階にきておるので、
政策ラグ、あるいは
効果ラグがあっても、しんぼうをある程度しなきゃならぬというふうに思うわけです。われわれ政治家は、常にそういう
政策決定の
影響というのが中小
企業に及ぶということを心配をするわけでございます。したがって、その手当てはもちろん間違いなしにやらなければなりませんけれ
ども、そのために全体の
政策が振り回されるというようなことがあってはならぬ。どうも私は、いまの情勢から言いますと、
日銀は相当の覚悟を持って臨んでおられると思いますけれ
ども、その点をひとつ、スタグフレーションという問題が当然予想されると思うし、しかし、思うけれ
ども、ある程度心理的な
影響というものが断ち切られるまではしんぼうしなければならないというふうに思いますが、その点についての御
意見はいかがかというのが第二点でございます。
第三番目は、そういうぐあいにスタグフレーションの問題は、総
需要抑制政策からいくと、そういうズレで非常にあらわれてくると思うのですが、反面それを緩和する方法として、やっぱり何か
所得政策的なものの
考え方というか、経済全体の姿から
考えて、
ほんとうにことしの春の春闘の結果のように、二〇%も賃金が上がる、それはある程度
物価が上がったことの結果であるかもしれませんけれ
ども、しかし、それはいかにも異常な姿であるということも否定できないと思うのです。いままで館先生の御
指摘にありますように、結果的に見れば労働の分配率なり、あるいは付加価値率なりというようなものを、事後的に
企業経理の中から見ていくならば、あらかじめ予想したかどうかは
——結果的にはおさまっておるというふうに思われます。しかし逆に、そういう
考え方からずっといきますと、まさしくいまの経済というのは、経営者の側にとってみれば、賃金が上がれば、それを
物価に転嫁する。
物価が上がって分配率が変わらないということなら、これも労働者のほうは、来春もひとつ同じような形で春闘というものを繰り返す。持たれ合いの形で、結果、
物価上昇という形になっていくのではないか。その
物価上昇が、そういうことで結果的におさまったからそれでいいじゃないかとは決して言えないので、その過程で、社会的に各層間に非常にアンバランス、不公平を生むというところに、インフレーションの問題点があるように思うのです。さすれば、私は、やはり経済の全体的なマクロの婆というものを予定をして、そういう予定の中に、ある程度常識的に所得の配分なり、あるいは利潤の問題なりというものが予定をされ、そういうことを一般に認識をしてもらうという
意味での、広い
意味での
所得政策というものをとらなければいけないのではないか。これも、さっき出た話ではないけれ
ども、認知ラグ、決定ラグ、
効果ラグで、気がついた時分には非常に激しい
政策をとらなければならぬ。たとえば、
物価のストップであるとか、あるいは賃金のストップであるとかというような、極端な
政策をとらなければならない破局へ行かないために、ぜひとも必要なことじゃないかというふうに思いますが、その点をどう思うか。最後にもう一点お伺いしたいのですが、現在日本の経済というのは、私は非常に大きな転換期にあると思います。四十年当時転換期と言われましたけれ
ども、私は非常に、現在の
物価上昇という形を通して、日本が新たな経済の均衡を求めて大きな変動の中にあるのじゃないか。そういう長期の日本経済の姿というものを
考えて、そしていまわれわれは何をしなければならぬのかということを真剣に
考えなければならないような段階にあるような、これは感じでございますが、そういうものを感じてしかたがないわけでございます。それはある
意味で、局限された土地の
対策であるとか、あるいは資源の問題であるとか、あるいは資本係数が非常に上がってくる問題、あるいは公害
対策の費用負担の問題というような、そういうものを通して幾つかの価値の転換を非常に求められ、またそのたびに政治と経済との間の問題として、非常にわれわれ
考えなければならない分野が多いように思いますが、これらの点について何か御
意見がありましたらお聞かせを願いたい。ただ単に、目先の景気
対策も大事だけれ
ども、長期の視点の中でわれわれは何を
考えていくべきかといりふうな点について、御示唆いただければありがたいと思います。いままでの質問は館先生にお答えを願いたいと思います。