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1973-07-10 第71回国会 参議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十日(火曜日)    午前十時二十分開会     —————————————    委員異動  七月九日     辞任         補欠選任      玉置 猛夫君     林田悠紀夫君  七月十日     辞任         補欠選任      林田悠紀夫君     玉置 猛夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         佐田 一郎君     理 事                 剱木 亨弘君                 若林 正武君                 大矢  正君                 藤井 恒男君     委 員                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                 川上 為治君                 林田悠紀夫君                 細川 護熙君                 安田 隆明君                 阿具根 登君                 小野  明君                 林  虎雄君                 中尾 辰義君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   中曽根康弘君    政府委員        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        通商産業政務次        官        矢野  登君        通商産業省企業        局長       山下 英明君        通商産業省企業        局参事官     三枝 英夫君        通商産業省公害        保安局長     林 信太郎君        通商産業省公害        保安局参事官   田中 芳秋君        通商産業省化学        工業局長     齋藤 太一君        通商産業省公益        事業局長     井上  保君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (出光石油化学株式会社徳山工場における爆発  火災事故に関する件) ○工場立地調査等に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨九日、玉置猛夫君が委員辞任され、その補欠として林田悠紀夫君が選任されました。     —————————————
  3. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査のうち、出光石油化学株式会社徳山工場における爆発火災事故に関する件を議題といたします。  本件に関し、まず政府側から説明を聴取いたします。中曾根通商産業大臣
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 去る七月七日、出光石油化学徳山工場の第二エチレンプラント火災事故発生いたしまして、付近住民をはじめ各方面に多大の不安と御迷惑をおかけいたしましたことはきわめて遺憾に存じます。  事故の概況について御報告申し上げます。  七日午後六時五十分ごろ、計器に異常が起こったため、エチレンプラントシャットダウンし、点検を行ない、その後再び装置を稼働させましたところ、午後十時十五分ごろに至って、第二エチレンプラント内のアセチレン水添装置火災事故発生した次第であります。  直ちに工場側は全系列のシャットダウンを行なうとともに、消防機関の協力を得て消火につとめた結果、第二次引火のおそれはなくなり、八日午前六時二十分窒素ガスの張り込みを完了いたしました。現在のところ、プラント内の残留ガスについて爆発を防ぐためにプラントを冷やしつつ、燃え尽きるまで燃焼を続けさせているところであります。  なお、今回の事故により付近住民に少なからぬ不安を与えましたが、山口県庁からの連絡によりますと、幸いにして工場外第三者被害は生じていないもようであります。ただ、同工場従業員一名がいまもって行くえ不明になっております。  事故原因といたしましては、計器作動不良等により水素供給量が過大となり、プラント内が異常に高温高圧となって火災に至ったものと推定されておりますが、通商産業省といたしましては、とりあえず二基のエチレンプラントについて、山口県知事名高圧ガス取締法に基づく緊急停止を命ずるとともに、今後に備え、関係各省防災専門家学識経験者を含めた事故調査委員会を早急に発足させ、事故原因の究明と対策の検討を行なわせ、こうした事故再発防止に万全を期する所存であります。  さらに、他のコンビナートエチレンプラントにつきましても、関係府県等と協力し重点的な施設の総点検を実施し、九月末までに報告書を取りまとめたいと思っております。  また、今回の事故にかんがみまして、高圧ガスを取り扱う事業所に対しまして計器装置類の整備に心がけるとともに、現場作業員に対する教育訓練を徹底するよう強力に指導してまいる所存であります。  なお、今回の事故によりましてエチレン需給に影響がないよう、同業他社による融通など極力応急措置を講じまして、供給不足を来たさないよう努力してまいりたいと思っております。
  5. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ただいまの報告に対しこれより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 大矢正

    大矢正君 この事故発生をいたしまして後、通産省は、直ちに関係課長現地に急行せしめて詳しく当時の状況を調べてきておるはずでありますので、いま大臣から御報告がありました内容以外に、実際上現地に行ってまいりました係官の、当時の状況とそれから原因と覚しきもの、あるいは防災体制等に対する当時の手の打ち方等々についてこの際お答えをいただきたいと思います。
  7. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) 今回の事故につきましては、私、事務方担当者でございますので、国民代表者でおられます皆さま方に心からおわびを申し上げる次第でございます。  ただいまの大矢先生の御質問でございますが、土曜日の夕方六時五十分に計器作動ハンチングを始めまして、正常な計器動き方でございませんので、工場側では直ちに操業を停止いたしております。同時に、新しいガス注入を全部シャットダウンいたしまして、その後、計器作動ハンチング原因担当者が調べまして、かつ、非番の職員を直ちに動員いたしまして、通常十五名で担当しておりますのを約四十名ぐらい動員してその原因を調べております。その結果どういう点検がなされたかは、かなり現場が動揺いたしておりますので、詳細はまだわかっておりませんが、九時十五分に、だいじょうぶだという判断のもとに操業開始に着手いたしております。  方法といたしましては、スチームを送りまして、反応塔温度を上げる。大体プラントは七百五十度で操業することになっております。一時間に大体三十度程度温度上昇ということで徐々に上げるわけでございますが、そのスチーム操業開始後一時間後、十時十五分にアセチレンガス水添塔のタワーからガスが漏れまして、それが引火いたして爆発という現象に至ったわけでございます。  先ほど大臣報告にございましたように、アセチレンガスは不純物でございますので、これを除くために水素を添加するわけでございます。この作業はかなり危険でございますので、大体三重ぐらいの安全装置がついております。で、ガスの中におきますアセチレンの量の変化に自動的に連動いたしまして水素注入量がきまる、こういう形になっております。さらにその塔の温度が上がりますと、上中下三段に分かれた装置がついておりまして、その装置が自動的に警笛を鳴らす仕組みになっております。その警笛を受けまして二つの操作が行なわれます。一つは、オペレーターが手動水素注入を調整する、もう一つは、それがバルブの開閉を自動的に調整する、こういう形になっております。この辺のところが、どの程度的確に手動もしくは自動的に行なわれたかというふうな点が一つ原因として問題になる点かと思われます。さらにガス圧が高くなりますと、フレアスタックという残留ガス調整装置がございますが、そちらのほうに連動いたしましてアジャストすることになっているわけでございます。まだ火が残っておりますような現状でございますので、原因と思われますところはその反応塔でございますが、その反応塔異常高温異常高圧になって火災に至りました事情につきましては、至急に今後検討してまいりたいと思っております。  それから、現地防災体制でございますが、徳山南陽地区コンビナート保安防災協議会という組織が、コンビナート関係のございますパイプで結ばれた企業集団の中ですでにできておりまして、それに対して直ちに連絡がなされております。もちろん消防警察等にもすぐ連絡がまいっております。警察のほうでは、一部の地区につきまして避難の指導をしたようでございますが、消防のほうでは、火災状況を調べました上で、避難の必要はないというふうな誘導広報をいたしたように県当局から聞いております。  大臣報告申し上げました点につけ加えて申し上げました次第でございます。
  8. 大矢正

    大矢正君 まず、事実関係についてお尋ねをいたしますが、私が新聞等の報道を通じて知り得た限りにおけるこの事故状況は、七時前に黒い煙が、写真にも写っておりましたが相当量排出され、故障であるということが明らかになり、消防本部等にも連絡がされたと。しかし、その後、単なる電気系統故障であるということで、九時十五分ですか、操業再開をした、ところがまた異常を認めて十時に点検を始めておるさなか、十五分後に爆発をしたというのが新聞等で報ぜられておりますおもな内容でありますね。おそらくこれは多少の時間的なズレはあったといたしましても、さほど本質的な問題ではないと。  問題は、私が考えまするに、操業再開をしたときの時点、すなわち、黒煙が上がって故障であるということが判明をし、係員がおそらく現場調査をし対策を立てたんでしょうが、その結果正常に戻ったということで操業再開をして、一時間たたないうちに再び異常が発生をしたということが問題でありますがね。この操業再開に踏み切ったときに、一体何で踏み切ったのか。コンピューターシステムによる自動制御方式でありまするから、それが正常に戻ったから、だから結局操業再開をしたのであるということでありといたしますれば、これはコンビナートの中における、特にこの種の石油化学についての工場の全部に今回のような危険が内在をすることを明らかに示しているということになりますね。いや、そうではなくて、そういう計器類とかシステムが狂ったというよりも、人間判断力における誤りがあってこの種のような事故になったのだということでありといたしますれば、またそれなりの対応策なり対処策なりというものが考えられなければならぬわけであります。その辺は現地にも係官が行ったのでありますから、結論としてはどういう判断なんでありましようか。
  9. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) ただいまの大矢先生の御指摘になりました原因に関するところでございますが、実は今回の事故の一番核心になるところでございます。で、原因計器にあったのか、あるいは計器操作する人間側にあったのかという点でございますが、この原因につきましては、今後の周到な調査に待たなければ、いまここではまだお答え申し上げられない状況でございます。目下、現地と共同して調べておる段階でございます。  で、先ほど大矢先生から御指摘がございました七時前にフレアスタックで黒い煙が上がりました。これはちょうど六時五十分に計器動き方ハンチングを始めたときでございます。このことは明らかに装置の中のどこかに異常がございまして、その異常がこの計器に連動しておるということの証左かと思われます。問題は、その後二時間半後に再開しておりますが、この再開に至るまでの点検が完ぺきに行なわれたかどうか、あるいは再開が始まりまして一時間後に引火しておりますが、その再開の手続に周到さを欠いたのではなかろうかというふうな点が、原因を追及する際の一つ問題点ではなかろうかと思っております。したがいまして、いまの段階で、大矢先生から御指摘の、コンピューター稼働そのものが信頼できないのではないかという点につきましては、私どもは、その異常を当初検知してハンチングを始めたところに、やはり計器としては一応の正常な作動をしたということは言えようかと思っております。ただ、その後の二時間半の点検、さらに作業開始のための爆発に至るまでの、引火に至りますまでの一時間の点検あるいは操作、あるいは機械動き方というふうなところに原因があろうかと思います一その辺の原因は、機械計器それから作動、そういったところを含めて、総合的に今後早急に調査してまいりたいというふうに考えております。
  10. 大矢正

    大矢正君 あなたの御答弁、私どうもふしぎな気がするのですがね。この種の石油化学工業というものは全体を通してそうでありますが、手でもって操作をするなどというところはないのですよね。全部それはもう自動制御装置でございますから、自動的にこれは危険性があれば制御できるようなシステムになっておりまするし、それからちゃんとそれはもう正常な状態には計器にあらわれてまいりまするし、人間の手でもってたとえばバルブを締めたりあけたりしてそれで調節するような、そういう石油化学工業なんというものはいまどき私はないと確信をいたしております。  そうすると、あなたのいま言われる内容でぼくはふしぎでならないのは、コンピューターに狂いが生じたのか、あるいはコンピューターそれ自身があらわすいろんな計器類を見る人間誤りなのかわからぬということでありますがね、そんなばかなことは私はないと思うんですね。コンピューターが正常に作動をしたから再開をしたということをはっきりこれは新聞記者の方に語っているんですね。これは新聞内容ですから、私が聞いたわけじゃありませんからわかりませんけれども新聞を見ますると、この工場のこれに関係をしている人たちは、コンピューターが正常に作動し、平常に戻ったので自分たちとしては操業再開をしたのだと、こう答えているわけですね。私はそれは当然だと思うのですよ。それは、さっきから何回も言うように、自分の手でもってものを動かす、そうしてやるというものではなくて、自動的に作用するものでありまするからして、そこに人間判断誤りというものは入る余地がないのではないかと思うのです。そういたしますると、もうコンピューターシステムそれ自身に大きな問題が残されたんじゃないかということを考えざるを得ませんが、これは大臣どうですか。  私は、単に技術的な問題というよりも、これは判断の問題だと思いますね。大臣新聞等もずいぶんお読みになっただろうし、また経過も係官からお聞きになったろうと思いますが、ポイント一つは、コンピューターシステムというものにあまりにも依存し過ぎるいまの石油化学工業、そしてコンピューターシステムに依存さえしていればこれはもう絶対に安全であるという、そのものの考え方に一つ欠陥がなかったのかどうか。それから同時に、もしそういうことが事実あったということでありといたしますれば、これはやはり全国的な問題になってくるし、おそらく大臣が、この事故発生してから全国のコンビナートの総点検を直ちに行なうということを述べられたということを見ましても、私は、やはりコンピューターにすべてを依存している、最も近代的だと思われるこの産業それ自身に盲点があるということを認識してかからなければいかぬのではないかというように思いますが、いかがなもんでしょう。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま御指摘の点は、まさにこの問題の核心に触れる重要なポイントであると思います。私は、現場に派遣しました課長二名、両方とも技術屋であります。それからきのうは出光の社長、責任者通産省に来てもらって、直接いろいろ話も聞いてみました。その点についてやはり先生と同じような考えを持っておりましたから詳しく質問をしたわけです。前にこういう同種の故障が起きたことがあるかどうか、もしあったとすれば、どういう措置がそのときは行なわれたかというようなことから始めて、またそのときに、この問の六時何分にどういう人が点検に行ったか、どの程度技術力を持っておる人間が行ったか、ふだんはそういう場合にはどの程度人間がいるのか、そういうようなポイントからもいろいろ質問をいたしました。大体、課長クラスがそういうときには行くそうで、今回もそのはずだと、そう言っておりました。課長クラスであればかなり技術力の高い者であると、それから前に故障が起きたことはあるけれども、あの部分で起きたことはない、そういうことでありました。約五年ぐらい稼働しておる装置のようであります。  そこで、そういう故障が起きたときに、先ほど局長が申し上げましたように、故障を直すために手動水素の添加を調節するというやり方と、それから自動的にコンピューターで調節するというやり方と二つあって、コンピューターのほうがだめな場合には、手動でもその危機に対応するという意味で、手動装置装置としてついているのだそうであります。その辺の作動状況がどうであったかということが、まだ詳しく正確に私のところへ報告がきておらないのであります。おそらく、この問題は事件の核心でありますから、警察やあるいはそのほかの方面でも厳重に調査して、それが将来のいろいろな問題に影響してくるキーポイントであるので、非常に慎重に調査して、将来、これがあとでくつがえされることがないような正確さを持った報告をわれわれのところにしなければならぬというので、慎重にしているのだろうと私思います。これはある程度わかることであります。  われわれのほうも、いまのポイントがほかの石油化学系統の将来のために非常に大事なポイントでありますから、純科学的な正確な資料を至急に得まして、それに対応する策をとりたいと思っておるところでございますが、その実相につきましては、もうしばらく御猶了願いたいと思う次第でございます。
  12. 大矢正

    大矢正君 ある新聞を読みますと、通産省見解と申しますか、見解という大げさなものではないと思いますが、このたびの事故発生いたしました徳山工場というものは、保安面から見た場合に実際はどうなんだろうと、現存するこれら石油化学工場の中でどういうような位置にあるのだろうか、防災保安面において、ということを尋ねたところが、通産省見解として、ここの工場はこれら化学工場の中では保安設備は良好の部類である、言ってみればもう大体Aクラスである、こういう答弁がなされておりますね。これはもう新聞にはっきり載っております。新聞の名前まで申し上げると差しさわりがありますから申しませんが、載っております。  このようにAクラス保安設備を設置し、防災体制を講じていると思われるこの工場においてすらこの種の爆発事故発生し、しかも一たん爆発いたしますれば、何らなすすべもなく、一切のガスが燃焼してしまってもう燃えるものがなくなるまで、それはもう二昼夜でも三昼夜でもじっと見ていなければならぬという状態、これでAクラスなら、一体これはBクラスCクラス工場というものはどういうことになるんだろうという疑点がわいてきますがね。私のただいまの疑点に対して、政府としてどのように考えておられますか、お答えをいただきたいと思います。
  13. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) いまの大矢先生の御質問でございますが、実は保安上、工場保安体制クラスを分けておりまして、事故のございました徳山工場は、実は第二級事業所になっております。第二級事業所というのは、保安体制が優秀と認められるもの、こういう形になっております。この保安体制の特に優秀である一級、優秀と見られる第二級、その他の第三級の事業所それぞれに適合した自主保安あるいは保安の監督あるいはその立ち入り検査報告の聴取といったような保安措置を講じてまいっておるわけでございます。  それからもう一点御指摘の長く燃え続けるようでは国民に対する不安がたいへんではないかという御指摘でございますが、私どもも全く同様でございます。ただ、その装置の性質上、装置の中に一たん入ってしまいましたガスはそのまま置いておくわけにまいりませんので、どうしてもそれを出してしまわないと、またその装置の中で別の反応を起こす危険があるわけでございます。したがいまして、火災が、事故が起きますと、新しいこの原料ガス注入を全部遮断いたしまして、すでに装置内に入っておるものは安全な形で外に出してしまう。で、その一番安全な方法として燃してしまうわけでございますが、その燃しますのに、装置が大きいと、御指摘のように、今回の場合のように二日以上もかかるというふうな事態になるわけでございます。  以上でございます。
  14. 大矢正

    大矢正君 大臣、いま話がありましたとおり、やっぱり新聞に書いていることが事実のようで、これは全く保安に関してはAクラス工場なのですね。そのAクラス工場でこの種の事故が起こるとすれば、それじゃそのいま言った工場徳山工場以外のもっとこれよりもまあ実際の設備その他の面において劣る工場は、いつこれは事故が起きるかわからぬといっても差しつかえないんじゃないかという心配すら出てきますね。いかがなものでしょう。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も出光のこの工場は、保安設備等についてはAの部類に入るということをその直後にも聞きまして、大矢先生と同じような心配を実は持ったわけであります。  そこで、全部の石油化学施設について総点検をやろうという決心をしましたのは、そういう事実に基づいてやったのでございまして、出光のようなそういう施設でああいう事故が起こるということでは、ほかの施設については、さらに厳重な点検及び操作の習熟を必要とする、特に関係従業員がマンネリズムにおちいって、小さなミスでも看過してはいけない、そういう点を、計器装置作動することと同時に、従業員に対する教育をもっと徹底しなければならぬ、そういうことを強く指示した次第であります。
  16. 大矢正

    大矢正君 私は実は、以前といってもそう古い時期じゃございませんが、ある石油化学工場に行きましたら、ちょうど四月で、新しく大学を卒業した、あるいは高校を卒業した人たち社員が、何というのですか、教育を受けているわけですね。それを黙って一回見ておったら、消防ホースをかつぎまして、その大学出、高校出人たちがワッショワッショと言って走って、それを消火せんにつないで、それで一生懸命消防みたいに水をかける訓練をやっておるのですよ。これは私は去年の四月だったか、とにかく四月だったことは間違いない。そういう訓練を、現に石油化学工業の相当優秀な工場でもそういうことを一生懸命やらしておるわけですね。  ところが、今度の事故を見ると、これはもう全然そんなものは問題外なんですね、これは。消防も手がつかない、どこも手がつかない。結局、一たんこの種の事故が起きたら、完全にガスがもう——バルブが幸いにしてそれは締まったからその部分だけでとどまるけれども、そうでなけりゃ次から次へ誘爆でしょう。それはもうどうしようもなくなってしまう。これを消す手段、方法というものはいまの中にはないと、その防災体制なんというけれども、それは私がいま申し上げたように、消防ホースを何のことはない、社員がかついで走って歩いて水をかける程度の現状でしかない。そんなことをやったって、これはもうだめであるということは、今度の事故がはっきりしているわけです。規模の大きな消防自身ですら、化学消防が出動したって結局どうにもならないという、この種の事故防災体制というものは、一体どういうふうにやるおつもりなんでしょうかね。
  17. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) 化学工場、特にコンビナートの場合には、御指摘のように、きわめて危険な物資が大量にあるわけでございます。したがいまして、全社がこの全社員工場関係のない社員まで含めましてこの防災保安に徹底をするというふうな方針をとっておるようでございまして、ただいま新入生の訓練のお話がございましたが、これは一般の職員のそういった保安意識高揚の訓練ではなかろうかと思います。  実際の防災保安ということになりますと、ただいま大矢先生から御指摘がございましたように、きわめて高度の技術あるいは事前の準備あるいはその予行演習を周到にしておいてやらなければ、手の打てないものでございます。したがいまして、コンビナートのような大規模な工場集団の場合には地域ぐるみの共同防災体制が、すでに四十三年から私どものほうの強力な指導によりまして、具体的な項目の細部にわたりまして指導してまいっております。  まず、このコンビナート事業所内及び事業所間におきまして、この防災連絡機関をつくる。それからこの連絡方法を、いろいろなケースを考えて的確にしておく。それから指揮系統、特に事故のある場合、さらにこの事業所間で相互の援助協定をつくっておきまして、いざというときにこの化学消防車その他の動員あるいは協力、保安要員の協力の方法を定めております。さらに、年に一回以上想定事故によります実際的な訓練もやるようになっております。さらに保安主任者につきましては、高圧ガス取締法に基づきます諸規則によりまして高度の資格が要請されておりまして、そういった人員の養成と、それの平素からの訓練といったような方法を講じておりまして、こういう形でいま大矢先生指摘の、コンビナート保安体制に万全を期す努力を続けてまいっておる次第でございます。
  18. 大矢正

    大矢正君 大臣、お尋ねをいたしますが、この今度の徳山工場事故の際には、かなり住宅区域に近い地点にあったということ、しかし、幸いにして類焼を免れ、また被害が及ぶのが未然に防がれたということで、不幸中の幸いといえばいえると思うのですね。新聞等でも盛んにいわれているのですが、結局問題は、この種のガス類あるいはガスだけではなくて油等ももちろんあるでしょうが、危険物質を扱う工場等の周辺というものは、かなりの地域をやはりあけて、この種の事故発生した際においても、市街地域あるいは住宅地域に被害を及ぼさないという意味における措置が、申し上げたとおり世界各地ではとられておるが、日本の場合には非常にそれが甘過ぎて、ために非常に不安が現にある。いままでは絶対にこの種の事故は起こり得ないという、安全装置は二重にも三重にもできておるからそんなことは絶対にないのだといわれてきたやつが、現に起きたわけでありますから、これから一体どうされるおつもりか。  工場事故がなければそれで幸いでございます。しかし、現にあったわけでありまするから、今後も絶対ないということは断言できないわけですから、その問題点一つは、やはりこの種の事故発生をしても、それが市街地あるいは住宅地域に重大な被害を及ぼすことのないような配慮がなければならないと思いますし、それにはこの既存の工場とその周辺の問題、それからもう一つは、新たにつくられるであろうこういうコンビナートとその周辺の問題、こういう二つの問題があると思いますね。これらの点について行政官庁としてどういう方針をもって臨まれるのか、お答えをいただきたいと思います。
  19. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回、事故を起こしましたエチレンプラントの場合には、二級事業所であるため、高圧ガス取締法によりまして事業所の境界線から二十メーター以上の距離を保有することが義務づけられています。一般の事業所の場合には、学校、旅館等の第一種保安物件に対して三十メーター、一般住宅に対しては二十メーターの保安距離の保有を義務づけてあります。法定の距離を維持していれば、通常の場合は爆発等の直接的影響によって人命等に被害が生ずることは考えられませんが、コンビナート等危険物が大量に集積されているものについては、法定の保安距離以上の距離を保有するよう行政指導しておりまして、現に事故のあったプラントは、住宅から約三百五十メーター離れておる所にあります。  そこで、既存のコンビナートにつきまして民家との距離について調べさせましたところ、おおむね工場の境界から民家までの間及び高圧ガス設備のあるところから民家までの間と両方調べさせてみましたが、工場設備高圧ガス設備のあるところから民家までの間については大体千メーターとか四百五十メーターとか、川崎の東燃の場合には二千三百メーターとかありますが、日石化学が一つ五十メーターというのがございます。  それから、工場境界から民家までの間、つまり工場のへいから民家までの間、それは施設は別であります。それで近接しているものは、さっきの日石化学の場合と四日市の三菱油化が五十メーターというのがございます。工場のへいから民家までの間、工場のへいと施設の間はまだかなりあるわけであります。三菱油化の場合は、高圧ガス設備と民家との間は二百五十メーターございます。しかしこれは、五十メーターというのは一つのわりあいに距離の短いところであります。それから、三井石油化学の大竹の場合は工場のへいまで二十八メーター、民家まで百三メーター、岩国の場合は工場のへいまで六十三メーター、それから民家まで百八メーター、こういうのが注目すべきケースで、それ以外は大体八百メーターとかおおむね五百メーター前後以上のような情勢でありまして、これらの狭いと思われるものにつきましては至急点検をして、もし必要ある場合には適当な措置を講じなければいかぬと、そういうふうに点検を命じておるところでございます。
  20. 大矢正

    大矢正君 大臣、今回爆発した徳山工場装置だけの爆発であり、それからガスの燃焼でありますから、あの程度でとどまったと思うんでありますが、それでも新聞等を見ますると、八百メートル離れた地点においてもなお熱風を感じたと言われておるわけですね。もしかりにこれが温度がもっと上がって、この周辺にあります可燃性ガスやあるいは可燃性の液体その他に火が及んで、これまた爆発するような事態、燃焼するような事態になりましたら、これはたいへんなことに私はなったと思うし、いま大臣が読まれたような五十メートル、百メートル、二百メートル、三百メートルなんというようなものでは、とうていこれは距離的に被害を防ぐことには私はならぬと思う。たまたまこの装置だけで終わっておりますからいいんでありますがね。  そこで、時間もありませんので、大臣に私は特に希望をいたしたいと思うんでありますが、いかがでしょう、いま大臣が言われたように、一部工場とそれから住宅区域等の調査をおやりになってはおりますが、これは徹底的にこういう高圧ガスその他可燃性のガスや液体を扱う工場、特にコンビナート等の周辺における民家、市街地との関係というものについてやはり抜本的に考えを変えて、法律その他必要とするものがあるといたしますれば、法律をもってしてもこの種の事故によって災害が他に及ぶことを未然に防ぐような措置を私は講ずべきではないかということが第一点の問題。  それから、いわれておりまするように、防災体制というものは現実にいろいろなことがいわれてはおるが、実際はいまの段階ではない。この問題についてどうするかという問題も私は残ると思いますね。したがって、高圧ガス取締法で民家までの距離が三十メートルあればいいんだということで、この法律をよりどころにして問題を考えるのではなしに、やはりこの事故を契機として新たに法律を設けるか、あるいはこの種のコンビナート高圧ガス取締法でやはり今後もやるといたしますれば、この内容をすみやかに改善をして他に波及をすることを防ぐという問題を考えなければならないんじゃないだろうか。  それからもう一つ考えられることは、この種の危険物の取り扱いのことに関連をして、それを取り締まる所管官庁、たとえば高圧ガス取り締まりあるいは毒物、劇物あるいはまた圧力容器の問題、それから高圧ガス以外の可燃性物質を取り扱う問題等々所管省がずいぶん分かれておりまするために、一貫した防災体制というものを、それから消火体制といいましょうか、そういうものもなかなかやりにくいという問題も出る懸念がありますが、こういう問題について今後どうお考えになられるか。  それから最後に、これは実は、きょうから審議に入ろうといたしております工場立地法でございます。先ほども理事会で私から提起をいたしたのでありまするが、従来のこの法律工場立地調査法、すなわち、工場立地が適正であるかどうかということの調査をすることを目的とした法律でありまするが、今度はそれを明確に工場立地をするにはこれだけの条件が必要であるということを取りきめる法律でありますね。したがって、この事故発生をいたしたのでありまするからして、工場立地法それ自身もこの際、やはり検討し直す必要性があるのではないかという感じがいたします。いずれにしても、これは午後からでも法案の審議に入りますれば言われることであろうと思いまするが、当面この災害に関連をした質問一つとしてお尋ねをしておきたいと思います。  まとめてお尋ねをいたしましたので、お答えをいただきたいと思います。
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず第一に、この法律あるいは規則の改正、改善の問題でございますが、今度のコンビナートの総点検の結果に基づきまして、もし必要がある場合には法改正をお願いをいたすこともございますし、また行政指導の内容もさらに強化いたしたいと思います。  第二に防災の問題でございますが、取り締まり官庁とともに、それは主として高圧ガス取締法に基づいて通産省が責任を持つべきものであると私は感じます。あと消防関係とか環境衛生とかそういうものがございますけれども、やはり何といっても高圧ガスを扱っているものを監督するというそういう面で事故を起こさせないということが非常に大事でございますから、これは通産省の監督をさらに厳重にして、定期検査その他についてわれわれが直すべき点があればこの点も反省をして改革いたしたいと思います。  それから工場立地法との関連でございますが、工場立地法は、主として公害の問題を対象にしてあの法律の改正をお願いしておるわけでありまして、今度のようなこういう事故という問題については、やはり当該法規である高圧ガス取締法を改正すべきものは改正し、改善すべきものは改善して、この問題を焦点にしてやはり厳重取り締まりを行なわなければならぬと思っております。工場立地法のほうは公害関係の規制というものを中心にして立法措置、改正をお願いをしておるわけでございますから、その方面にはもちろん注意をする必要はございますけれども、ここで修正して提出するという考えはいまのところ持っておりません。
  22. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連して一問だけ御質問申し上げますが、私は、この種の問題とかあるいは炭鉱とか水俣病というような場合にいつも疑問を感ずるわけなんです。それは何かと申し上げますと、たとえば今度の出光の問題でも、出光の技術者というのは相当の専門家がおられると思うのです。そして大学を出て専門的に何十年とこれに取り組んでおられる。ところが監視、監督の任にある役所のお役人の方々は、確かに勉強もされておるけれども、ずいぶん差があると思うんです。だから総合点検もけっこうだけれども——これはやってもらわなきゃなりません。ところが、点検に行く方のほうが技術が未熟なんです。経験がないんです。されるところのほうが経験はうんとある。学校を出てから相当年月もたっておる。役人さんのほうがお若い。そして机の上で勉強されておる。うんと差があるわけですから、せっかく点検されても、結局は会社側の言うのが正しいんだというような結果になってきはしないか、私はこう思うんです。  水俣病の問題はこの前説明いたしましたからやめますが、たとえば炭鉱の場合でも、大学を出てから二十年もおれは鉱内で炭掘ってんだぞと、おまえは大学出てからまだ十年しかなってないのに、やあ課長さんじゃ何だといってえらい人来られたけれども、技術面じゃどちらが上なんだと、おれが教えてやろうかいという気持ちがあるわけなんです。特にこういう化学の問題になってきますと、専門的にうんとやっておられるから、これは役所から行って調査されることはおもしろくもないでしょうが——まあ効果がないとは申し上げませんよ。しかし、専門にやっておる人から見れば、何だ、君らが何を知っているんだと、おれらはこれでこんだけ苦労してきてやってきて専門的にもやってきている、君たちがちょこちょこっと役所であっちかわりこっちかわりしてやってきて、何が、君たちにこれがわかるかという気持ちがあると思うんです。また行く人たちも、大学はこの人は私よりも五年も先に出ているんだと、学部はどこどこだという、いろんな学閥の問題まであってほんとうにやられるだろうかと。だから、一応形式的には調査をされるだろうし勧告もされるでしょう。しかし、向こうの人たちがもっと専門家だから、結果は会社の言うようになってきたんではないかと、こういうことを考えるわけなんです。  だから、先般シンクタンクというのが、法律案が成立いたしましたけれども、ああいうように、こういう問題ならば日本の頭脳の集まったところで、やっぱり一つの公正な立場から見なければ、厚生省が役所だといって行っても、向こうはそれは頭は下げましょう、敬意は表しましょう、しかし、ほんとうの力、技術面、専門的な力量というものは向こうが上なんです。とすると、結局は役所の調査だあるいは勧告だということになってくるんじゃないかと、こういうふうに思うわけなんですが、これに何か抜本的なお考えがあったら教えてもらいたいと思います。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 確かにお説のように、現場で長い間実地の修練を経た技術者のほうは技術的にも高いし、目の肥えているところもあると思います。しかし、官庁から点検に行く者はそのデータを収集してきて、そして今回の事故につきましては、通産省の内部に、学識経験者等を網羅しました事故調査委員会を設けまして、そのデータを中心に専門家にも鑑定してもらう、そういう考えに立って、全国に及んでいるこういうコンビナートの問題のそのような事故の問題について安心感を与えるような措置を権威者を網羅してやりたいと、そう考えましていまつくろうとしておるところでございます。なるほど行く者は、現場の高度の技術者から比べればあるいは落ちるかもしれませんけれども問題点の把握とそれから材料の収集と、そういうものを正確にやってきてはカルテをつくってもらって、中央の名医に見てもらうと、そういうようなことで解決する以外にちょっとそういう点がむずかしいと思いまして、調査委員会をつくっておる次第でございます。
  24. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、先般のシンクタンク、シンクタンクというのは、もう御承知のように役所のものでもない、民間のものでもないというようなものなんですけれども、公正に正しくこれは結論を出すんだと、その結論をまあ通産省なり政府がどう取り上げようとそれは自由だけれども、研究としてはこれが正しいのだというものを出す機関を今度つくりましたですね。そのほかにまたこういう問題が起これば通産省が何か委託をする、私はそれも悪いとは思わないんです。しかし、そうじゃなくて、通産省からこういう問題についてはどうでしょうかということをお尋ねするのじゃなくて、独自に公正にこれを見るやっぱり機関、シンクタンクみたいなのがあれば一番いいんじゃないかと、こう思うわけなんです。たとえば工場立地法が次に出るでしょうけれども、結局いろんな意見が入ってきます。そうするとやはり工場側というのですか、そういうほうに利益なようになってくるというのが今日までの状況なんです。だからもっと技術的にりっぱな方がたくさんおられるし、まあシンクタンクなんかも日本で初めて今度できたのですから、民間でたくさんあったけれども、それじゃだめだから、わざわざ三十億お金を国が出してそうしてつくるんですからね、そういうやつを利用するという方法はないんですか。
  25. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いずれシンクタンクができましたら、その事件の内容によりましてシンクタンクに御検討をお願いすることも十分あり得ると思いますが、今回の場合は急を要しますので、とりあえず、いまの調査委員会によりまして究明していきたいと思っております。
  26. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は今回の事故につきまして、先ほどからの大臣答弁を聞いておりますが、どうも納得しにくい点もあるようであります。  まず、出光徳山工場は、これは二十四時間の操業をしている。それからこの事故の経過をこう見てみましても、六時五十分に異常な黒煙がもうもうとして上がっているんですね。これはまあ市民がキャッチしている。それからこの経過は、これは新聞でちょっと見てみますと、七時五十分に工場から消防本部に「第二エチレン装置計器の電気関係故障らしい」と、こういう報告がいったんですな。それから八時五十五分、詳細が不明であると、こういうように連絡がいって、それから五分後、再び、「故障が直ったので、運転を開始する」と、これが九時十五分です。それから一時間後にぽんと爆発していると、まあこういうような経過になっているわけですがね。これはどうも二十四時間フル運転でやっている、あるいはまたこの徳山工場は模範工場であるという、そういう設備等に対する自信あるいは監視体制のなれ合いといいますかね、そういう点が非常に災いしているような気がいたしますよ。ですから、いますぐここで原因がわからない、まあいま答弁はできないでしょうけれども、これは保留しておきますが、そこでやはり模範工場というのはどういう点が模範工場なのか、機械設備だけは模範工場であるけれども防災訓練が、あるいは保安その他監視体制等は模範ではなかったと、こういうことも私は言えるのじゃないかと思ったりするわけですけれどもね、その点いかがですか。
  27. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) コンビナート防災対策につきましては、一たん事故発生いたしますと、当該事業所のみならず他の事業所、さらには周辺にも大きな被害を及ぼすおそれがあるわけでございます。したがいまして、通商産業省といたしましては、高圧ガス取締法に基づきまして、コンビナートを構成いたしております各事業所ごとに規制基準をつくり、その順守の徹底をはかりますとともに、さらにこれを上回ります、それよりも高い保安設備の整備、それから保安関係者及び一般従業員保安教育の実施などの自主保安活動を強力に推進しているわけでございます。で、このコンビナート地域の総合的な保安の確保の見地から、すでに四十一二年に通達を出しまして、各コンビナートにおきます事業所間の共同保安組織の整備、相互応援体制保安技術の共同研究、それから共同防災訓練といった点を指導してまいっております。  御指摘の、保安が的確かどうかという点でございますが、この点につきましては、高圧ガス取締法に基づきまして、製造、販売、貯蔵、消費といった各段階ごとに許可制をしいております。さらに一定の資格を有する保安主任者、これを常置して作業の安全監督を義務づけております。さらに設備そのものにつきまして、都道府県知事、これが直接の監督責任者でございますが、この知事によります検査の実施、こういったきつい基準を定めております。これに基づきまして、具体的にこの技術基準、それから危害防止のための細則、それから具体的な主任者の資格なり訓練といった点をそれぞれ定めております。したがいまして、ただいま申し上げましたような点を定期検査を実施いたしまして、その結果によりまして、先ほど申し上げましたように保安体制が特に優秀なもの、それから優秀なもの、それからその他のものというふうな形で分類をいたしまして、その実態に応じた周到な監督をするというふうにいたしておる次第でございます。
  28. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 いまの答弁わかりましたよ。わかりましたが、結局はあなたがおっしゃっておるように、具体的にそれが実施をされておったのかどうか、その問題が今日の爆発の結果によってはっきりとわかってくるわけでしょう。結果から見れば、これはどうもあなたのほうの、これはいまおっしゃいましたね、通産省化学工業局長よりの通達「コンビナート地域の自主保安管理体制の整備について」、これについて一応はそういうふうに体制ができたとしても、訓練等が不十分であったんじゃないか、こういうふうに思いますよ、結果から見てですね。ですから、書類で報告を受けてみたところで、必ずしもそれは十分であるとは言えないわけで、やはり管理体制をチェックしていかなければ、油断するとどうしてもこういうことになりますから。その点をひとつ御検討願いたいと思います。  それで、先ほどからも大矢君の質問にもありました、いまだに依然としてこれは燃えておるわけですよね。それで消火体制というようなもの、これはいろいろの新聞等の批判を見ますというと、これはもうほとんど初歩的なものじゃないかと。ガスがこういうふうに爆発した場合にどういうような消火体制——これは実際いまお手上げというような状態でしょう。今後も起こるかもしれませんが、これは大臣、今後どういうような体制をとられるのか、また、工業技術院あたりではこういうものは研究しているのか、研究していればどうなっているのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  29. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは装置産業に関するいろいろな制御装置あるいは防火防災体制、おのおの規則に応じて規制されておるわけでございます。おそらく今度のような場合にもバルブシャットダウンするとか、あるいは回りの施設に対してスプリンクラーや水をかけて冷却させるとか、あるいは化学消防車で窒素を中に充てんさせるとか、いろいろなそういうマニュアルがあって、それをそのとおり励行させたものだろうと思います。今回のそういう防火体制についていろいろ私も質問しましたところ、全部予定どおり作動したと、そういうことでありました。まあいまのところは、科学的に考えてこれが可能だと思われるような体制は全部とっておると思いますけれども、しかし、この上ともに、今回のああいう事故を見ますというと、かなり大きな炎は上がりますし影響も大きいと思われますので、さらに注意をした防火体制あるいは防災体制をいかにしてとるかということについて検討を加えてみたいと思います。
  30. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 もう一つ、ちょっと飛躍したことを聞きますけれども、かりにあの辺に航空機が事故で墜落をしたような場合、あるいは地震等が起こったような場合、あれは今度の事故でもよくわかりますけれども、あの辺のコンビナートはものすごいこれはたいへんな事故になりはせぬかと思うのですがね。そういうような防備体制も考えていらっしゃるのかどうか。
  31. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) コンビナートのたとえば地震対策、地震等そういった異常な事態にどう対策をどうとっているのかという御質問でございまするが、コンビナートの地震対策といたしましては、コンビナート保安対策の中の重要な問題点ということで取り扱ってまいっております。この点、まず基本的には、四十三年の化学工業局長通達によりますコンビナート地域の保安に関する基準の中で十分そういった配慮をいたしておりまして、コンビナート保安防災協議会を中核にいたします自主保安活動体制を推進し、その中で自主基準、設備の適正配置、あるいは保安技術の共同研究、それから災害防止のための相互援助、それから保安教育訓練といった点などを実施しておるわけでございます。  特に、御指摘の地震そのものに着目いたしました保安対策につきましては、四十六年以来コンビナート保安システム開発調査を行なっておりまして、耐震設計、防災体制につきまして学識経験者防災の専門家その他の権威者を集めまして、目下鋭意検討しておる段階でございます。で、この結果に基づきまして、コンビナート装置設備につきましての耐震設計の指針を作成してまいりたいと考えております。それから特に、危険物が貯蔵されておりますLPGタンク——球形タンクでございますが、これの事故も同様にたいへんでございますので、これの耐震性に関する研究も四十六年以降科学技術庁と共同いたしまして、工業技術院の公害資源研究所において実施しておる状況でございます。
  32. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 つい先ごろ新潟で地震に伴う石油タンクの爆発がありまして、大火災を起こしたわけです。そのおりも、石油タンクの安全性ということについては、二重にも三重にもチェック機能が作動するんだということであったんだけど、現実には地震という予測し得ない問題があったにせよ、あのような火災がありました。今回これは原因をよく探らなければいけないわけですが、いまのところ想像できる点としては、やはり操作ミスじゃなかろうかというふうに私は思うんだけど、この種の爆発事故を起こしたわけです。そうなってまいりますと、幾重にも安全設備というものが作動して、普通、常識で考えられる安全性というものは備えられておるという前提に立ってコンビナートというシステムが確立しておるわけだけど、このように事故が続発してくると、いままでかなりな自信を持って安全であると言われておったものが、安全じゃないという結論をここに引き起こしたと私は思うわけなんです。そういった意味において、私は、この種のコンビナートの持つ安全性というものを一度根本的に洗い直してみる必要があるというふうに思うんです。極論するなら、一度、現在十二カ所あるコンビナート全部の立ち入り検査を行なって、場合によってはシャットダウンして一ぺん洗い直すというぐらいの勇断が必要であろうと私は思うのだけど、その辺について最初に大臣の御所見を承りたい。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安全であると思われておりました出光のような石油化学がああいうような事故を起こしたわけでございますから、これは全国のコンビナートについて総点検をやらせまして、しさいにチェックを行なって、そして安全を確認しようとしていまやっておるわけでございます。操業をとめるということは、現在の物資需給からいたしまして、日本の重要な産業がほとんどストップしてしまう危険性も出てまいることでございますので、それはちょっと無理であると思いますが、出光を除いて操業を継続しておる中で、いろいろな計器あるいは防除体制そのほかについて厳重なチェックを行なって、事故の再発を防ごうと思っております。
  34. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 現在全国にあります石油コンビナートの中で、ざっくばらんに申し上げて、通産省がごらんになって安全性におけるランクがあろうと思うんです。立地条件あるいはコンビナートの規模あるいはいままでの操業の歴史、しかも、石油コンビナートではいままで爆発は一再ならずあったわけです、過去にも。それがたまたま大災害が起きておらないわけだけど、爆発というものは現に幾つもあった。そういうものに照らして、非常に問題のあるという個所などについては、私はいま言ったような需給関係というものもあろうけど、しかし、この種の大事故というものを事前に防ぐ意味から、あるいはまたどちらかと言えばマンネリ化してきた装置産業というものに、一つのやっぱり新風を吹き込む意味からも、一度思い切って操業をとめてでも安全チェックをやるぐらいの決意が必要だと思うのだけど、その辺どうか。先ほど申しましたように、いまランクづけをすればどのようにランクづけられるか、あるいは要注意個所というものを現に持っておるのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  35. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) 他のエチレンプラントは全部で十七カ所あるわけでございますが、それにつきましては、先ほど冒頭に大臣の御報告にもございましたように、早急に重点的に総点検をいたすことにしております。九月末までにその報告をまとめるべく鋭意急いでおります。  それから、現在の十七カ所につきましてランクづけがどうなっておるかということでございますが、冒頭に先ほど御説明申し上げましたように、その各事業所の持っております、やっております保安体制状況によりまして三種類に分けてございます。二、三とランクの低いところにつきましては、このエチレンの総点検の際に特に周到に点検をいたしたいと思っております。  また、過去に七件コンビナート事故が起きております。その事故を振り返ってみますと、パイプそれから容器等の事故が、あるいは溶接部の剥脱とかこういった事故もございますし、一部建設時のバルブなり計器類の装着のミスと、特にアメリカから技術導入しましたような高度の最新の技術の場合でも、そういった建設施工の際のミスがやがて事故を起こしたというような例もございますので、そういった点にも着目いたしまして、重点的なエチレン総点検の際の重要な着眼点にしてまいりたいと考えております。  なお、コンビナート全体につきましては、定期検査をそれぞれのランクに従いまして実施しておりますので、その定期検査も一そう厳重に実施するようにしてまいりたいと考えております。
  36. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 いまおっしゃった三ですか、一番何といいますかランクの低い、それはどこですか。
  37. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) 詳細のデータがいま持ち合わせておりませんので、恐縮でございますが、後刻資料を提出したいと思います。たぶん、先ほど大臣からもお話がございましたごく当初にできましたもの、それから民家との距離の近いプラント、そういったものであろうかと思います。詳しくは、正確には後刻資料を提出いたしたいと思います。
  38. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 じゃ、その資料をまた後ほどいただきたいと思うわけです。  少しこまかい点をお聞きいたしますが、今度のこの出光石油の徳山工場従業員が何名おるのか。その種の装置産業はどこでもそうですが、二十四時間のフル操業をやっている。フル操業をやっている場合には、シフト勤務を組んでおるのが常です。勤務体制はおそらく四組三交替だと思うのだけど、この事故発生した時限は、日勤者が全部帰って、残っているのは午後勤もしくは夜勤勤務者だと思うのだけど、その人数が何人、そうしてその夜勤勤務者の人数のうち、いわゆるオペレーターと保安要員はどのように分離されているのか、その数字を聞きたいと思います。
  39. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) コンビナートは二十四時間操業でございますので、当然御指摘のとおり三シフトでやっております。シフトは、人員によりまして三直の場合と四直の場合と両方併用いたしております。このときのシフトに当たりました人員は十五名と聞いております。六時五十分に計器ハンチングがございました直後に、連絡がつく限り作業員保安要員含めまして招集をかけて、行方不明になっております野田さんという職員は実は非番でございまして、まっ先にかけつけて、そこで当直になっております管理者から現場の確認の指示を受けて、それで現場に行った職員だと聞いております。なお、十五人の中のオペレーターと保安要員の区分は、ちょっといま資料がございませんのでわかりません。
  40. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 日勤のときには何人いるのですか。
  41. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) ちょっと数字はいま手元に持っておりませんので、恐縮でございます。
  42. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは企業でございますからね、コンピューターシステムによるからという問題もありましょうけど、やはり省力化ということをどの企業も競ってこれやるわけなんです。したがって、夜勤をやれば夜勤手当もつくし人件費もかさむ。だからおおむね日勤のときには、たとえば百人ぐらいの規模であってもそれが午後勤、夜勤にいくと、ルーチンワークだからというものの、それがいま言うように、たとえばここであれば十五名ぐらいに圧縮されてしまう。そうなってくると日勤のときは手がある。だけど午後勤、夜勤になるとぐっと人数が圧縮されてしまって、そして監視作業だということで人は全部現場から離れてしまうというようなことになりかねないのが、このコンビナートというこういった装置産業の常ですね。この辺のところをやっぱり私は考えなきゃいかぬのじゃないだろうかという気がして、いまその人数を聞いてみたわけなんです。  だから、その辺のところを全然調べずにやっておったんでは、私は何を調べてきたのかわからぬと思いますよ。だから日勤時間にどれぐらい人数がおって、そして夜勤には何人おるんだと、そのうちほんとうの純然たる保安要員というものは配置しておるのかどうか。配置していないということになれば、これはたいへんな私問題だろうと思う。現に二十四時間高圧ガスはタンクに一ぱい入ってそこに位置してあるわけですからね。これはどんな事態が起きるかわからない。それからまた夜勤、午後勤の場合など交代勤務に従事する者は大体主任がキャップ。日勤であれば、工場長もおれば製造部長もおれば製造部の次長もおれば課長もおるという状況であるんだけど、一たん夜勤に移れば全部それが帰っちゃって、そして主任ぐらいがいわゆる工場全体の管理運営をやるというのが一般的なやり方なんだ。そうなってくると、私はやっぱりこの種の問題が起きたときの的確なる措置、あるいはそういった場合の保安対策というようなものにどうしても後手後手になると思うんだけど、その辺の行政指導はやっておるのかどうか、現状はどうなのか、もう一ぺんお聞きしたいと思います。
  43. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) 保安管理体制につきましては、先ほど申し上げましたように、技術基準と並びまして詳細な規定を各事業所ごとにつくらせております。その中で保安主任者の数、資格それから訓練等こまかく規定し、かつそれの励行を監督いたしておるわけでございます。で、ただいま御指摘保安要員を昼間を多くして夜間減らすかどうかという点でございますが、保安要員に関します限り昼間も夜間も同じ人員になっておりまして……。
  44. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 何名ですか。
  45. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) 数はちょっといま確認いたしておりません。恐縮でございます。保安規定では、昼夜の差別なくその規定に従って所要の人員を配置するということにいたしております。
  46. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 一度それ調べてください、その人数などですね。
  47. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) はい。
  48. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 たいへん私は重要な問題だと思うし、やはり役所としては横にそれを並べてみて、現在の装置産業における人員のバランスというものを一ぺん見てみる必要があるんじゃないだろうかという気がします。  それからその次に、取り締まり法規としては高圧ガス取締法というもの一本でこれは取り締まっておるわけなんだけど、たとえば小さな酸素充てん工場の場合も、この種のいわゆる大企業ですね、大企業においても高圧ガス取締法一本で取り締まり、いわゆる製造から貯蔵、輸送、販売などに至る許認可を与えておるということについて、これは矛盾がないのかどうかですね。たとえば町のプロパンならプロパンを充てんしている工場でも、高圧ガス取締法一本でしょう。この徳山工場でも高圧ガス取締法一本ですわね。それが卑近な例でいうと、民家から三十メートル離れておったらいいとこういうことになるわけなんだけど、これでいいのかどうか、一ぺんお聞きしておきたいと思います。
  49. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) 町の中の酸素工場あるいは火薬を使います小規模の町工場などと比べまして、コンビナートの場合は危険物が広域にわたって大量に貯蔵あるいはそれが操作されておるということでございます。ただ、監督体制といたしましては、そういった危険物が動いてまいりますプロセス、材料としてそれが製造される過程、それが貯蔵される過程、さらにそれが輸送される過程、さらに使われる過程と、こういう過程は大小にかかわらず同様でございまして、高圧ガス取締法規ではその全過程にわたりまして、ただいま先生も御指摘のように許可制をしいております。問題は、そういった小規模のところと大規模のところの差は、具体的な技術基準の中身あるいはそれのシビアさというところに出てまいります。さらに危害防止の観点から申し上げますと、小規模の場合と広範なコンビナートのような場合には、累積して災害が大きくなりかつ広がるという問題もございます。そこで、先ほど申し上げましたようなコンビナートにおきます自主保安体制を、四十三年に特別通達によりましてコンビナートに対して特に実施させるというふうなやり方をとってきたわけでございます。したがいまして、規模の大小にはそういった技術基準危害防止細則、あるいはそれを担当いたします保安担当者の資格なりあるいは数なりというふうな形で保安の確保をはかっておる現状でございます。
  50. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これはまた別な時期に私は一度お尋ねしたいと思うんだけど、やはり高圧ガス取締法という法規が現にあるわけだけど、いわゆる累積された形のコンビナート、これは誘爆を起こしていくわけだから、こういうものを取り締まる方法というものをやっぱり考えるべきじゃなかろうか。だから工程におけるシビアさだけで問題を、工程を一つ一つ輪切りにしてシビアさを求めていっても、結果的にこの種の爆発事故というものが起きたときには、私は用をなさぬというふうに思うんで、これはまた後ほどしかるべきときを見て御質問したいと思うし、また御見解も承りたいと思います。  それから、これは大臣にもお聞きしたいんだけど、どちらかといえば石油化学コンビナートのいままでの状況を見ると、幸いなことにいろいろ爆発事故があったにしろ、それはそんなに大きなものじゃなかった。どちらかといえば大気汚染などによる公害、四日市ぜんそくあるいはついその先にありますところの川崎ぜんそく、こういったぐあいに大気に公害をまき散らすという見詰め方をされてきたと思うんです。だからグリーンベルト一つをとってみても、これはもちろん爆発の問題もありましょうけど、それよりも大気をグリーンベルトで吸収して民家へ及ぼさないという効果を求めて、コンビナートはベルトをつくっておるというのが大体の常だと思う。だからそういう面からいって、防災という面が私は公害というものに比して相対的に立ちおくれておったと思うんだけど、これはまあそこの川崎のこともあるし市原の問題もありますし、いろんな問題あるわけだけど、大臣、その辺をどういうふうに考えておりますか。
  51. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近にできたコンビナートは、わりあいに距離も長くとってグリーンベルトもありまして、これは防災も考えてやっておるんだろうと思いますが、古いものは四日市とかあるいは日石の分とか川崎の分とか、あるいは岩国、大竹、ああいうところにある古いものがそういう点でまだ考慮が欠けているような要素があるように見受けられます。これらの問題についてはいまの総点検の結果によりまして、必要に応じていろいろ行政指導したいと思っております。
  52. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 それから、既存のコンビナートの中で機械の増設あるいは機械の更新ですね、より高性能なもの、増産に向く意味からの機械の更新というものは当然行なわれていくし、あるいは増設というものが行なわれていく。そうなってくると、従来あったコンビナートの規模というものが、何年かたつとそれが非常に変化してきておるというふうに思うわけです。塔一つ建てても、非常に高生産のものを持ってくると、裏を返していえば、それだけこういった災害が起きたときには大きさを増していくことになるのだけど、こういう面はチェックしておるのかどうかですね。  それからあわせてお聞きしますが、現在エチレンの増設にあたっては、官民協調による通産省と業界による石油化学協調懇談会というところが審議をしておると思うわけだけど、これは需給関係に照らして増設の規模をきめ、それを各社へ割り振るという役目しか私は持っておらぬと思うのです。この辺のところに、たとえば増設するにあたってどういった地域に進出していくのか、そうしてその地域でのコンビナートというものの規模をどのようにしていくのか、そういったことをあわせてこの協調懇の中で論議するようなこと、そこに一つのものができてしまってからの行政指導じゃなくて、できる以前に行政指導をそこにかましていくというようなことは考えられるのかどうか、どうですか、大臣
  53. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) エチレンプラントの増設あるいは機械の更新でございますが、こういう施設の変化がございましたときには、必ず届け出まして許可を受けることになっております。許可をするかどうかは、ちょうど設備が初めて完成いたしましたときに、やはり完成検査というのを相当長期間かけて専門家を動員してやることにいたしておりまして、同様な手続をこの増設されました設備機械について検査をいたしております。
  54. 齋藤太一

    政府委員(齋藤太一君) いわゆるナフサセンターの将来の増設につきましては、御指摘石油化学協調懇談会におきまして、五年先までの需要見通しを検討いたしまして、そこで、将来どれぐらいのそういったセンターの増設が必要であるかという、能力としての不足量の見通しを立てることにいたしております。そこでさらに新増設する場合の投資基準というものをきめるようにいたしておりますが、その投資基準の中におきましては、一つは、その立地の場所の選定の場合の公害防止の観点からの問題、もう一つは原料の入手の可能性の問題、そういう辺が一つの大きな要素になっておりまして、どういった地点を選定するかにつきましては、当然公害防止上そういった地点が望ましいかどうかという考え方も盛り込んでおります。ただ、御指摘爆発防止といった安全の問題につきましては、設備の新増設はすべて高圧ガス取締法によりまして許可制がとられておりまして、また、動きますときには事前に完成検査等等高圧ガス取締法に基づきます一連の規制を受けております。
  55. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 十二時までで終わらなければいかぬので、あと二問で終わりますが、やはりせっかく官民協調という形でいまの協調懇というのを持たれておる。その目的は、需給を調べて増設の割り振りをするのだということだけど、これはみんながうまくいくようにという、いわゆる生産し企業利益を確保するということに私は作用していくと思うのですよ。だから、やっぱり取り締まり法があるのだから、あるいは都道府県を通じて年に一回チェック機能が働くのだからというだけじゃなく、最も危険なこの種のコンビナートを持っておるところと官庁が、やはり定期的にこの協調懇のごとき形で、安全面について、防災について話し合いの場を設定するということが私は必要だろう、これについて大臣にお聞きしておきたい。  それから、いま一つついでに一緒に申し上げますが、合成繊維、それから合成樹脂、合成ゴムなどの原料が不足しておるわけなんです。徳山が操業ストップになっておるし、当分このストップの状態が続くだろうと思うのだけど、そうなってくると、この原料不足に拍車がかかる、勢い原料高になってくる、それがまた製品高を呼び起こすということに循環していくと思うのだけど、それをどのように大臣は規制なさろうとするか、それをお聞きしておきたい。  いま一つ。今度の事故が起きて、直接、不幸にしていま行くえ不明の従業員がいらっしゃるようです。また、コンビナートのそれぞれの帝人だとかいろいろなところに間接的な被害があることは事実で、それはコンビナートの中で処理される問題だけど、それ以外間接的にたとえば国道二号線がストップする、あるいは山陽線の列車がストップする、あるいは全日空がストップする。こういったような被害が現に出ますね、この種の爆発事故があると。今後直接的に民家が倒壊するとかあるいは人畜に被害があるというようなときは、これは計算もしやすいわけだけど、いま言ったような社会に対する被害を及ぼしたようなとき、企業は一体どのような責任を持つのか、その社会的責任をどういうふうに見詰めていったらいいのか。  以上三点を大臣にお聞きしたい。
  56. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままで業界内部におきましては、原料や製品の融通あるいは生産量等についての懇談会がございましたが、今度の事故にもかんがみまして、この懇談会も活用して、いまのような事故防止についてお互いによく研究し合うそういう場にも活用していきたいと思います。  それから原料の手当ての問題でございますが、岩国地帯においては、あのコンビナート、一連の工場について非常に深刻な原料不足が起こりつつあるようであります。この点については、ほかの場所からエチレンを輸送する、そういう手配をいまやらしておりますが、大体三百トンぐらいの輸送の船がなかなか手配がつかないようです。みんな各所に配置されて機能しておるわけですから、それを割愛するということはなかなかむずかしいようです。しかし、それも業界の協調によってそれをやらせるようにいま努力していると同時に、いま休止点検を命じた十万トンの施設について、昼夜兼行で再点検を精密に早くやって、その十万トンの工場点検が済み次第早期に機能を開始させようと、こういうふうに考えております。  それから、社会的被害に対する問題につきましては、これは法律的にどういうふうな、相当因果関係があるかということは、それぞれそれぞれの法規その他によって処理されると思いますけれども、一般的なそういうものについては、これは会社の良識に従って、見舞い金とか、あるいはそのほかの良識的な措置でその一般的被害に対して陳謝の意を表明し、あるいは会社の感謝の意を表明するということが望ましいと思います。
  57. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ほかに御発言もなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。  それでは、午後二時まで休憩をいたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後二時六分開会
  58. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ただいまから商工委員会再開いたします。  委員異動について御報告いたします。本日、林田悠紀夫君委員辞任され、その補欠として玉置猛夫君が選任されました。     —————————————
  59. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) 工場立地調査等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。本案についての趣旨説明はすでに聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  60. 小野明

    ○小野明君 工場立地法について質問をいたしたいと思います。  これは従来工場立地調査と、こういう法律案であったわけですが、環境の保全というような修正にも見られますように、公害防止という観点から工場立地法になったようでございます。それで、衆議院でも今回の法改正について大臣も説明をなさっておるようでございます。冒頭に、いかなる点におもなねらいがあるのかという点をあらためてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 最近の日本の経済構造あるいは政治の目標等の再検討のときにあたりまして、いわゆる社会福祉優先という方向に政治全般が切りかわりつつあるときでございます。特に公害問題については厳重な規制を行なおうというときでございまして、われわれもその一環として通産政策を全面的に検討し直して、社会福祉優先、福祉優先の通産政策及び産業構造に転換しつつあるわけでございます。その一環といたしまして、工場立地に関しましてこれを単に国民経済の健全な発展というだけでなくして、今日の要望である国民の福祉の向上という点を特に付加いたしまして、そのほか各条文条文ごとに環境施設の問題、あるいは環境保全の問題等の観点からいろいろな具体的な規制を加えることにいたしまして、工場の内外における環境保全及び福祉保全のための政策をここに打って出たわけでございます。従来のように調査に関するというだけでなくして、具体的に措置も行なう、そういう意味で名称も工場立地法と変えまして、工場立地を規制するという形に直接に施策をもって臨んできた、こういうわけでございます。
  62. 小野明

    ○小野明君 国民福祉に向けて産業政策の転換をはからなければならないと、こういう御説明であったと思います。従来のこの法律案が、工場立地調査等に関する法律という名前にもありますように、企業の利益を進めるために、立地を推進をするための調査と、立地を促進をすると、こういう立場のものであったと思うんです。それが私はいまおっしゃられた大臣の観点からいきますならば、大まかに言ってやはり工場立地をいかに規制をするかと、むしろ立地促進ではなくて、規制に重点を置いて産業政策というものが推進をされなければならぬと、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 確かに工場立地の規制という面が強く出てまいりまして、しかもその規制の基準を公害防止、環境保全という面からいろいろ手を入れてきたわけでございます。準則をつくったり公表したり、また、その準則に従うようにいろいろ規制をいたしまして、緑地とかあるいは隣接地域との環境的調和とか、そういう問題についていろいろ手を入れておるわけでございます。
  64. 小野明

    ○小野明君 そういたしますと、この工場立地法、この法律をもって全般的な工場立地法を規制をする、産業政策の転換をこれにかけるというのは、ちょっとこれは無理な話でもあろうかと思います。今後工場立地を規制をするならば、公害防止の観点もあるでありましょうし、さらに産業政策転換と、こういった場合に、今後のこの工場立地法以後の構想といいますか、というものがございましたら、大臣の展望といったものをひとつお聞かせをいただきたいと思うんです。
  65. 山下英明

    政府委員(山下英明君) この工場立地そのものが、産業転換政策を促進する効果がございますことは、私ども一つの政策の一環として考えておりまして、先生もいま御指摘いただいたと思います。しかし、それでは不十分である。まず第一に、一九六〇年代に私どもが主力を注いでまいりました太平洋ベルト地帯の工業開発は一段落をいたしまして、むしろ七〇年代には過密地域から過疎地域の開発へ移行すると、これがこの法律の大きな筋になっておりまして、その際に、過疎地域に行きますときに建てる工場は、無公害かつ緑地等をしつらえて、環境、住民と融和して、その環境に溶け込んだ工場をつくるべきであると、こういうことでございます。  そうすると、まず第一には、今後、内陸型の機械関係あるいは食品工業等、内陸型の工場移転あるいはそういう工場を過疎地域に建てることによってその地域の新都市開発等に役立てていくということでございまして、その意味から、七〇年代には新しい産業分野というものが発達することになろうと思います。しかしながら、それだけでは不十分でございまして、日本全国を見ました場合には、さらに大規模な工業地帯が新しい観点から、といいますのは、環境保全、国民の福祉という観点から、どの地帯に可能であるかということを考えますと、そうたくさんはございませんので、残るところは開発しますが、それでは今後は海外立地ということをどういうぐあいに考えるのか。それから一九七一年五月に中間答申をいただいておりますが、産業構造審議会の結論に沿いまして、知識集約産業を七〇年代に発達させるためにどういう政府の施策が必要であるか、またどういう誘導目標を立てるべきであるか、こういうことが現在、わが通産省でも検討されておりますけれども政府全体としてそういう施策をあわせ行ないながら産業転換が進められていくと存じます。
  66. 小野明

    ○小野明君 産業政策の転換という問題は、これはあとで触れるといたしまして、その前に、やはり四十四年の五月に策定をされております新全国総合開発計画、これの位置づけを一体どう見るのかと、これをどう見ていくのか、今後どう扱っていこうとするのかと、これが大きな問題として考えられなければならぬと思います。  それで、これは政府がすでに閣議決定をされておるのでありますが、大規模工業基地ということで、すでに北東地域あるいは西南地域、苫小牧東部、むつ小川原、秋田湾、周防灘、志布志湾、宿毛湾現地住民との間に、開発かあるいは地域住民の福祉か、公害か環境保全かと、こういう大きな二者択一が迫られていると思います。この新全総を一体どうされるのか、その辺を大臣にお尋ねをしたいと思うんです。
  67. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 四十四年の新全総は、たしか新しい社会経済発展計画というものに発展的解消したと思います。それで、新社会経済発展計画におきましては、福祉優先という思想でいままでの成長本位的な考え方を克服して、新しくアイデアを盛りましていろんな施策が考えられておるわけであります。その中にいまおっしゃいましたような地域開発の問題が含まれておりますが、その間に公害問題が出ましたりいろいろ諸般の社会経済的な矛盾やら撞着やらも出まして、それを整理、解消しながら新しい体系に取りまとめて新しい経済社会発展計画ができたと思います。その間に公害諸立法あるいは工場規制の諸立法、これもそれの一つでございますけれども、そういうものが整備され、また公害を克服する科学技術の面における開発も進められ、各工場等におきましても公害問題に正面から真剣に取り組むという体制になりました。  そこで、いまお取り上げになりました地域開発の問題も、結局は住民の皆さんの御意思に従ってそれは開発さるべきものでございますから、そういういろいろな中央政府の政策転換並びに工場の公害規制あるいは地域における公害規制等をにらみながら、いま府県並びにその地域の皆さま方自分の土地をどうするかということを自主的に判断する過程にあるものであるだろうと思います。これはあくまでやはり地方の住民の皆さんの意思を尊重して進めていくべきものであって、政府としては、判断に必要な資料を十分提供しなければならぬと思っております。具体的には下河辺君が来ておりますからお答え申し上げます。
  68. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) ただいまお尋ねいただきました点に関して、通産大臣からお答えしたとおりでありますが、新全国総合開発計画の取り扱いについてお尋ねがございましたので、現在考えておりますところを簡単に御説明申し上げます。  新全国総合開発計画は、御承知のように、昭和四十四年に閣議決定したものでございます。で、実際には四十二年、三年と、二、三年かかりまして作業したものでございますが、この当時は御承知のように、GNPが年間一二・三%成長するというさなかにありましてつくりましたものでございますから、計画自身は、環境問題について相当重要視したつもりではございますけれども、その後の動きその他を見てまいります際に、非常に不十分な点が環境問題に対して多いということから、現在政府といたしましては、この四十四年の新全国総合開発計画の総点検を始めております。わりに近いうちにこの総点検に関します中間的な報告を国土総合開発審議会に御説明を申し上げ、御意見を承ることを予定しておりますが、長期の予定といたしましては、来年ぐらいをかけまして完全に総点検を終わりたいという作業をしておるわけでございまして、新たに全国総合開発計画を策定することについては、五十年を初年度とする新たな計画を策定して現在の新全国総合開発計画からその計画へ切りかえてまいりたいということで作業をしているわけでございます。
  69. 小野明

    ○小野明君 そういたしますと、新全総というのはいまお話しがありましたように、GNPあるいは工業出荷額等の目標が据えられておりまして、そしてそれに沿って大規模工業基地開発というものが行なわれてきた。これが生きております限りは、やはり工業立地法とかいうような小さなものでいきましても、環境保全あるいは国民経済の転換といっても、何らその意味は私はないと思います。それが再検討ということにいま御説明がありましたが、そうすると、すでにいろいろなトラブルを起こしておりますむつ小川原あるいは志布志の問題、これらの扱いについては一体どうなるのか、大規模工業基地がそれぞれ策定をされてたいへんな土地の値上がりあるいは漁業権、国民の生活権に関する問題がまだあるわけです。これは一体どういうふうにされるのか、この辺をひとつ再度説明をいただきたいと思います。
  70. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 全国総合開発計画におきまして、全国的な立場からどの程度の工業基地の建設を予定する必要があるかということは、今後も通産省その他関係省庁と相談して、ある一つの目安を得なくてはいけないということは今後も同じであろうかと思いますけれども、その必要性があるから環境問題を無視したり、あるいは地域住民の意向を無視して開発してよろしいということには結びつかないということは、十分私ども心しなければならないというふうに思っております。  そこで、現在、御指摘いただきましたような幾つかの候補地につきまして地域の方々とのお話し合いも始めておりますし、私どもといたしましては、その地域におきます環境上の問題のかなり基礎的な調査も進めておりまして、全国的な角度から必要であるということではなくて一むしろその地域の方々との話し合いの成果であるとか、あるいはその地域の環境上の調査の成果を見定めた上で積み上げて、また一方で、どのくらいの基地をわが国において確保することが将来可能になるであろうかということも十分踏まえて、全国的な観点と地域からの観点とを十分調整して今後の開発を進めてまいりたいというのが、一つの私どもの考え方でございますので、いま御指摘いただきました地域については、それぞれ地域の事情を異にしてございますから、その地域ごとに適切な判断を加えて適切な処置をしでまいりたいという考え方でございます。
  71. 小野明

    ○小野明君 大規模工業基地というものが田中総理の列島改造論というものに拍車をかけられて、たいへんな辺地にまで土地の値上がりというものを招来をしております。このままではもうとてもこれは中小企業なんというのは立地をすることができない。それのみではないいろいろないま述べられたような弊害がある。そうすると、この大規模工業基地というのは列島改造論にあおられておる現状ですから、これはもう再検討というのではなくてむしろ中止をすべきではないか、私はこういうふうに思っておる。あなたのほうはいろいろな言い回しをしておるようですが、その辺はいかがですか。
  72. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 一つの見方といたしまして、先ほど通産省から御説明ございましたが、一九六〇年代におきまして、東京湾、瀬戸内海を中心といたします重化学工業基地の建設が進んでおりましたことはよく先生も御承知のことだろうと思いますが、いま私どもといたしましては、東京湾、瀬戸内海等におきます工業基地の拡大については非常に大きな問題を持っているという認識がございますし、場合によっては、一部の工業についてスクラップダウンをすべきではないかということにまで検討を及ぼす必要があるというふうに考えております。最近になりましてかなりの新増設の動きもあるようでございますが、環境問題からいえば、極力新増設を押えてまいりたいということが太平洋ベルト地帯の環境問題としていえるのではないかというふうに考えておりまして、日本の国土の中で、太平洋ベルト地帯以外のところでどのような地点でどのような規模の開発が可能であるかということについては、日本の国土全体の環境問題からいいまして、私どもとしてはかなり緊急を要する問題ではないかということを一方では感じております。  しかし、御指摘いただいておりますように、一方ではまだ工業開発にとっては処女地であります全国の地域にとりまして、公害問題その他に十分手だてがない限り非常に危険であるという御指摘もごもっともなわけでございますから、その両者をどのように調整して日本の国土の環境問題に取り組むかということについては、実は、直ちに中止するということではなくて、さらに突っ込んだ議論をして慎重を期したいという考え方でございます。
  73. 小野明

    ○小野明君 その中で具体的にお尋ねをいたしますが、周防灘の開発の問題、これは本年の二月に大分の宇佐市役所で開かれた周防灘地域総合開発促進協議会の理事会でも、周防灘の埋め立て開発は当分たな上げし、内陸開発に取り組む——事実上の計画を断念をした。これは大分県ですね。それから七月八日、これは最近の毎日新聞。運輸省の第四港湾建設局が東京の地域開発センターに委託をしておった西瀬戸地域海岸線利用計画調査報告書、これによりますと、産業廃棄物処理が現状のまま行なわれる限り、周防灘に汚染、汚濁物質を出す工業の新規立地は適さない、周防開発は当分無理と、現状でも海の汚染がきわめてひどい、こういうふうに報道されておるわけです。これらについては、もう経済企画庁のほうでも掌握をされておる点だと思いますが、こういうふうにあらゆるデータが、報告がそろっております。これはもう再検討という段階を越えておるのではないかと思います。これはいかがですか。
  74. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 周防灘についての具体的な御質問お答えするわけでございますが、実は周防灘につきましては、新全総が昭和四十四年に定められます前、昭和四十年に入りましたころから、周防灘一円が非常に遠浅の地域でありまして、しゅんせつ船によります埋め立てにはきわめて好適地であるということ、あるいは北九州あるいは山口県海岸の臨海工業地帯と隣接しておって、工業の立地条件としても非常に適当であるという判断から、周防灘全体を大規模に埋め立てまして工業開発をするという構想が一部提案されたことがございます。そしてその後、私どもといたしましては、新全国総合開発計画の中で、そういった計画を含めて周防灘について一つの候補地であることを明らかにしまして、その後調査を続行しておりまして、いま御指摘いただきましたように、私どものほうも運輸省のほうへお願いいたしまして周防灘の環境調査をしておりまして、いま新聞で御指摘いただきました点は、間もなく私どものほうへも報告書が提出されてくることであるというふうに考えております。  実は私、まだその報告を受け取るところまで来ておらないんですが、おおよそ調査の途中で聞いておりますところでは、周防灘におきまして遠浅の海を全面的に埋め立てることの危険については、相当の明快な御指摘をいただいているというふうに考えておりまして、大規模な埋め立ては、今日周防灘において適当ではないという考え方を持っております。しかし、周防灘がいまの現状のままでよろしいというふうには実は考えておりませんで、環境条件の上から一体どの程度の開発が許されるのであろうかということについて、さらに厳密な調査を進めたいというふうに考えておりまして、地域開発センターにおきましても、いろいろな学識経験者の方々によりまして、周防灘の海岸線をかなりこまかく地域区分いたしまして、その地域ごとに開発の可能性についての検討をしていただいておりますので、私どもそういった調査報告書を十分生かしながら、周防灘におきます開発の限界を求めて、その範囲内で開発を進めていくということにさせていただきたいという考え方でございます。
  75. 小野明

    ○小野明君 そうすると、大規模工業基地としての周防灘開発というのは断念をするが、部分的に小さく汚染度を検討して、なるべく平たく言えば小さい地域でも工場立地を行なっていく、こういうことですか。
  76. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 実は、大規模工業基地という意味が一つの御議論ではなかろうかと存じますけれども、私ども現在では、一つの団地の中に超大型のコンビナートを隣接してつくるということについては、御指摘いただきましたように今日非常に否定的でございます。むしろ工業につきまして、通産省の御所管でありますけれども、工業の生産のプロセスで関連部門というものがあるということは否定できないと思いますが、その関連部門をどのような規模でどのように配置するかということについては、環境問題の視点からいろいろとくふうの要るところではないかというふうに考えております。特に今度、今日御審議いただいております法案の中でも、緑地の取り方あるいは敷地等、設備といいますか、建物とのバランスというようなことにまで通産省で御配慮いただくことによりまして、そういった規模及び配置について検討を加えたいというふうに考えておるわけでございまして、そういうレイアウトをしたもの全体を大規模工業基地と言うか言わないかということは、これは名称の問題でございますから、何らかの時点できめたらよろしいかと思いますが、そういう意味では、環境問題を踏まえて、内容が変化してきているということで御指摘があるとしますれば、そういう変化が周防灘についてあるというようにお考えいただいてけっこうだろうと思います。
  77. 小野明

    ○小野明君 そうしますと、当初新全総に予定をされておりましたような周防灘開発ということは、もうできないということですね。
  78. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 実は新全国総合開発計画をつくります前に、非常に大型の埋め立て計画があったことは私も存じております。新全総を閣議決定いたします際に、新全総の計画の前にきまっていた大型埋め立てを新全総がそのまま肯定したものというふうには実は考えておりませんで、新全総の中でもごらんいただくとわかりますが、十分調査検討の上きめたいということにしておりまして、そういう意味では、その後の調査検討によりまして周防灘開発の計画を定めたいということでございますから、形式的なことになるかもしれませんが、新全国総合開発計画の変更というふうには考えておりませんで、その後の調査検討の成果であるというふうに私どもは理解さしていただきたいと思っております。
  79. 小野明

    ○小野明君 どうもその辺がすっきり私もしないわけですが、これには四十四年、四十五年、四十六年と各省かなりの調整費という名前の経費が投ぜられておりますね。それに調整費を投ずるという以上、ここに出ているような青写真というものが、構想というものが書かれているはずですよ。周防灘について書かれている。ですから、年を追って調べておるうちにだんだんこの計画に変更をせざるを得ないようになったと、こういう意味をあなたはおっしゃっているわけですか。
  80. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 閣議決定しました全国総合開発計画においては、その大型埋め立てをそのまま決定したというつもりはございませんで、調査検討を進めながらきめていくということにしたと思いますが、実際のいま御指摘いただきましたような調査にあたりましては、この調査の前提といたしまして、大型の埋め立てをした場合にはどういうことになるかということを調査したことは事実でございまして、その結果、やはりそう超大型の埋め立てというものが周防灘に適さないということから、徐々に計画を縮小しながら調査を進めているというところでございます。
  81. 小野明

    ○小野明君 そうすると周防灘開発というのは、これは結局この新聞で見る限りは、毎日新聞によると、開発予定区域の海岸線を五キロメートルごとに分析をして適否を検討しておるわけです。そこで、これはもう汚染度が一ぱいになっておる、だから立地はだめだと、開発は無理だと、こういうふうに結論を出しておるわけですが、このことはもうすでに御存じだろうと思いますが、ということは、即もう周防灘開発ということはできないんだと、こういうふうにわれわれとしてはとらざるを得ぬのですがね。一体、いまおっしゃるようなことではどういうことになるんですかな。
  82. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 地域開発センターの報告書を十分検討した上でお答えするほうがより正確であると存じますけれども、現在私が中間的に聞いております知識だけで申し上げることにさせていただきますとしますと、いま御指摘いただきましたように、五キロごとに海岸線を切って三十六地区に分けて、かなり詳細な調査をしていただいているというふうに伺っておりまして、その中から約六カ所ぐらいのこの地区については開発の可能性が高いのではないかということが、まず第一弾御調査として出てまいりまして、その六地区の中でさらに三地区については、ある程度の規模のものであれば開発をすることが可能ではないだろうかということを前提にいろいろな御調査をしていただいたというふうに伺っております。  その調査の成果につきましては、まだ少し調査の課題を残しているということも含めて、この各委員の方々のお考え方を報告書としていただけるものというふうに考えておりまして、そういった報告書をいただきました上で、相当膨大な報告書でありますようでございますから、中身を当事者であります運輸省ともよく相談して判断をしてまいりたいと存じます。
  83. 小野明

    ○小野明君 まあその調査なり、どういう規模で進められるかわかりませんが、その際もこれは大臣からも言われておりますように、地域住民の声というものを十分尊重をしていくと、こういうことに変わりはないわけですね。
  84. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 新全総開発計画をつくりましたあと、いろいろな開発プロジェクトにつきまして地域の方々とお話し合いをしております。私どもといたしましては地域の方々、特に県、市町村という地方公共団体もございますし、農業関係あるいは漁業関係の団体の方もおられて、そういう方々と十分お話し合いをした上で進めたいという基本的態度は通産大臣からお答えしたとおりでございます。そのことを実はもっとはっきりしたルールにする必要があるのではないかということで、このたび新しい国土総合開発法の中でそういうルールを一応政府として定めまして、現在新国土総合開発法として御審議をいただいているところでございます。
  85. 小野明

    ○小野明君 ここで周防灘の一つの拠点として豊前火力発電所、これが九州電力の手で建設をされようとしておりますね。これは昨日の電調審で審議をされるやに承っておりましたが、昨日は議題として上程をされなかったと、このように承っております。この間の経緯を簡潔にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  86. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 二点申し上げておきます。  一つは、電源開発調整審議会における基本計画の決定の問題でございますが、昨日の審議会におきまして四十八年度計画の決定が行なわれたわけでございます。御承知のとおり、電源立地につきましては、最近非常にきびしい地元の情勢がございまして、なかなか基本計画で想定をいたします達成電力量と申しますか、計画量に達しないという状況でございます。したがいまして、私どもといたしましては、関係各省あるいは電力事業者等につきましてもできるだけそういった面について御努力を願いまして、審議会の決定に上げ得る地点をふやしてもらいたいということでお願いをしておるわけでございますが、特にいま御指摘の豊前火力につきましては、相当地元における電力会社その他と地元の方々とのお話し合い等も進んでまいったということで、県知事からもいろいろと御努力をいただいたというようなこともございまして、たいへんに条件が整ってきつつあると、こういう判断で、なお一歩の努力をひとつお願いをしておったわけでございますが、結局、最終段階になりまして漁業関係等で若干やはり問題が残ったという感じでございまして、関係の水産庁あるいは環境庁等にも若干慎重に扱ってはどうかという御意見もございましたので、昨日の審議会においてはこれは一応かけないことにいたした次第でございます。  なお、第二点として申し上げておきたいと思いますのは、いまいろいろ御審議がございました大規模開発プロジェクトの周防灘の計画との関係でございますが、私どもこの豊前火力につきましては、これは埋め立て地区も小そうございますし、地元における当面の電力需用という問題を解決するためにということで出されておる計画でございますので、大規模な周防灘計画の一環であるというふうには必ずしも考えておりません。これは単独の計画としてひとつ検討していっていいのではないか、こういう判断で考えておる次第でございます。
  87. 小野明

    ○小野明君 その椎田漁協に若干の問題が残ったということでございますが、それは一体どういうところに問題が残っておるわけですか。どういう問題なんですか。
  88. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) この漁業関係の問題につきましては、水産庁を通じて間接的に聞いておりますので、私どもも正確にどういう問題が問題になったのかということまで詳しく存じておりません。しかし、四十七年の十一月にこの十八漁業組合のうち椎田漁協というところで反対の決議が行なわれたようでございまして、これについて、反対では困りますので、何とかこれは話がつかないかということでいろいろやっておったわけでございますが、七月三日の臨時総会においてこの問題についての御議論が行なわれたようでございます。  その詳細な内容等は、議事録等見ておりませんのでわかりませんが、とにかく、補償交渉に応ずることはよろしいということは決議されたようでございますが、ただし、従前の反対決議は撤回をするということに対しては、これはやらないということになったようでございます。したがいまして、反対の決議が残ったまま補償交渉をやっていくと、こういうことに私ども理解をいたしておるわけでございますが、そういったことで、その辺の事情をさらに詳しくひとつ調べて、また、漁業組合としての意見等もはっきり聞いた上でやってもいいのではないか、こういうことでいろいろ議論が出た、こういう状況でございました。
  89. 小野明

    ○小野明君 椎田漁協にいまおっしゃるような問題点がある限り、この電調審にかけるというふうな措置をなさらぬようにお願いをしたいと思います。その点はいかがでしょうか。
  90. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) この電調審に、基本計画でございますから、かけるルールといいますか、一応扱いといたしましては、もちろんこの関係大臣、これは委員でございますから、この各大臣の御同意が得られなければだめであるということはもちろんでありますが、その中に環境庁長官もおられますし、水産庁を所管する農林大臣もおられるということでございます。それから二の地元の関係につきましては、都道府県知事の同意意見書というものをいただくことになっております。その際に、そういった地元の事情等も十分踏まえて意見を出していただくと、こういうことで私ども指導いたしておりますので、こういった問題が残っておる分につきましては、県も力をいたして、そうしてそういうことを解決していくということが望ましいわけでございます。しかし、一応形式的に申しますと、同意意見書はもう出ておるわけでございまして、私どもとしましては、関係各省のほうでいろいろ御意見もあるわけでございますから、御指導を進めていただきまして、県ともお打ち合わせを願い、そうしてこういった問題について円満に解決されることを望んでおる次第でございます。
  91. 小野明

    ○小野明君 ここに亀井知事が出したという同意の意見書、これを私も持っておりますが、最後の解釈が誤っておるというので、椎田漁協からそれぞれ計画局長のところにも、あるいは環境庁長官にも、通産大臣にも陳情が電報でなされておる、こういうふうに私はお聞きをしております。こういうふうに問題が残っておる限り、この現地の知事が、完全にこれは同意でございますと言うこと自体に私は問題があると思うのです。その辺をはっきりしない限り、これの建設にオーケーを与えると、こういうことをしないようにはっきりしてもらいたいと思うのです。
  92. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) お持ちのようでございますから繰り返しませんが、主文は、「建設に異議ありません。」というのが主文でございまして、はっきりした同意意見書でございます。しかし、いま御指摘のように、地元の漁協等において確かに一部問題があるわけでございますから、そういうことについては解決をはかるようにさらに努力をしてもらいたい、こう思っております。
  93. 小野明

    ○小野明君 環境庁にお尋ねをしたいと思うのです。  この豊前火力発電所の問題については、環境庁もそれぞれ専門的な分野から検討をされておると思います。特に発電の場合は、温排水に問題があるように伺っております。私も専門家ではございませんので、その辺のことははっきりわかりませんけれども、この豊前火力発電所の場合は、どういう環境庁の御見解であるのか伺いたいと思います。
  94. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 火力発電の場合に環境に及ぼす影響ということになりますと、大気の問題とそれから温排水の問題、この二つあるわけでございます。私どもはやはり火力発電の建設にあたりましては、大気並びに水質に及ぼす影響につきまして厳重に事前にチェックをいたしまして、環境がそこなわれないように、そういうような条件が満たされているかどうかというものを私どもは検討いたしまして、先ほどお話しの電調審におきまして私どもの意見を申し上げるということにいたしているわけでございます。この豊前火力につきましては、私ども前々から県のほうからもいろいろデータをいただきまして検討いたしております。ただ、まだ最終的な結論は得ておりませんけれども、私どもは何せこれが瀬戸内海沿岸におきます火力発電の建設でもございますので、慎重に検討いたして結論を出したい、かように考えております。
  95. 小野明

    ○小野明君 大臣が退席をなさるようでございますので、大臣に一、二お尋ねをしておきたいと思います。  この工場立地法で問題なのは、私は住民参加の点が非常に問題である、このように見ておるわけです。工業基地開発についても、住民の賛否を問いながら進めていく、こういう方向でもありましたし、その点は私は、特にこの工場立地においては住民の声を聞くと、この点についてどのような配慮をされておるのか、その点をひとつ承りたいと思います。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 住民参加の問題につきましては、衆議院段階におきましても各党からそのような御指摘がございました。確かに現代的必要性を感じておるわけでございます。しかし、この法案の中身におきましても、審議会には地方団体の代表である知事さんや市町村長さん等が入ることになっておりまして、その地方団体の代表を通じて住民の皆さんの御意見をよく承るなり、あるいは地方団体におきまして住民の皆さんの御意見を承る方法をまた独自にお立てになるという余地もあるわけであります。なおまた、権限の相当部分を知事さんに委譲いたします。そういう意味において、地方において自主的に御判断なさる部面もあるわけでございまして、そういうことによって住民の意思をくみ取ってやっていただきたいと念願しているわけでございます。
  97. 小野明

    ○小野明君 私は、衆議院段階での大臣の御答弁の中で、地方住民の声を聞くというのは市町村議会あるいは県議会、それらがあるからいいではないかと、制度的にはもうきちっとしておると、あるいはいまおっしゃったように審議会というものがあるから、それで地域住民の声はそういう制度の中でもう反映できるようになっておるんだと、こう御答弁をされておるわけであります。  そこで、それではそういった制度の中で生かされるのかと、こういいますと、今日の電源立地の問題にいたしましてもあるいは大規模工業基地開発の問題でも、そういう制度の中ではなかなか解釈しきれない問題が私は起こっていると思います。それが住民パワーになって反発をしてきている。それだけにどう住民の声を聞いていくかということは、それはいま知事のほうで今後すべきという若干の、衆議院の段階でもなかったような御答弁があったようでございますが、これは同時に、私は企業の側でも専門家、地域住民あるいはそれぞれの地域の代表と、こういうくふうをした中でこの住民の声が反映するようにできなければならぬと、こう思います。住民の声を聞くということで何か大臣のほうでさらにお考えになっておるようなことがございますか。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、衆議院におきまする附帯決議の中にもたしか御指摘になっていたと思います。われわれといたしましては、御意見を体しまして、行政措置等によって地方団体等とよく相談をしまして、地方団体が主となって住民の意見をくみ上げるということが一応好ましいと、要するに、地方の住民の賛成がなければできないことでもありますから、単に議会ということだけにとらわれないで、広く皆さん方の意見を徴する方法を講じて、また議会の意見も十分そしゃくして行なえるような方法をいろいろ行政的に考えてみたいと思っております。
  99. 小野明

    ○小野明君 わかりました。それで一方的に審議会だと、あるいは県議会だと、こういうことではなくて、こういう形式化した考えでは電力会社と住民パワーとの調整という役目は私はなかなか果たし得ないと思うんですよ。ですからひとつその辺を、この工場立地法を運用するにあたって一番のポイントが私はそこだと思いますから、十分ひとつ御配慮を要望しておきたいと思います。
  100. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御趣旨を体しまして、いろいろ行政的にくふうをしてみたいと思います。
  101. 小野明

    ○小野明君 それで、住民参加の問題を取り上げましたので、大臣もいろいろくふうをされると、こう言っておりますが、いままで通産省がやってきておりますのは、北海道の伊達火力発電所のように住民の意思を無視して、工場立地の準則にかなっておるということで工場建設を強行しておる、こういうことのないようにひとつ十分な配慮をしてもらいたいと思いますが、この点はいかがですか。
  102. 井上保

    政府委員(井上保君) 今後とも地方の住民の方方の同意を得るように極力努力をしていく方針でございます。
  103. 小野明

    ○小野明君 いま大臣は、いろいろ住民参加のルールについてはいわば地方自治体の中でくふうをしてもらうんだ、こういうふうにおっしゃいました。そこで公益事業局長のほうはどういう住民参加の方法があるのかと、その点についてお考えになっておる点がありましたら、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  104. 井上保

    政府委員(井上保君) 現在、各電力会社と都道府県あるいは市町村との間におきまして公害防止協定、これは環境庁の基準の上乗せ協定になるような場合もございますが、そういう防止協定をつくっておりますが、その中におきましては、いろいろと立ち入り検査の問題あるいは緊急時におけるいろんな措置であるとか、非常に地元の御要望を入れた協定をつくっております。そういう線をさらに拡充していきたいと、こういうふうに考えています。
  105. 小野明

    ○小野明君 まあ公害防止協定というお話でございますが、私の地元は福岡県ですが、福岡県、北九州市、これら自治体とそれぞれの企業との間には公害防止協定なるものが結ばれております。あるいは問題になっております豊前火力に関しましても知事との間に協定が結ばれておる。おりますが、肝心なところは抜けておる、ざるの協定が多いわけです。ですから、これをもって地域住民の声がその協定の中に入っておると、こういうふうにお考えになるのはこれはたいへん甘いと思います。その辺ひとつしっかりよく問題の底にあるものを局長としても見てもらわなければならぬと思うのです。で、これは私のほうからいろいろな例を申し上げるということよりも、あなたがその仕事のポストにあるわけですから、あなたのほうでひとついろいろ考えてもらわなければならぬと思うのです。  たとえば、東京都でも何ですか公害問題懇談会というような声で、そういう制度で、公害監視委員会というようなものもつくっておられるようである。あなたはいま防止協定、こういうふうにおっしゃったけれども、きわめて私はそれは甘い、こう申し上げなければならぬと思います。新しく地方自治体など工場立地にあたって指導をなさる場合に、いかなる方法がいいのかというのはさらにくふうをしてもらいたいと思います。お考えがあれば承りたい。
  106. 井上保

    政府委員(井上保君) 現在、特に御披露申し上げるような考えはございませんが、大臣の御答弁にございましたような趣旨を体しまして、今後検討さしていただきたいと思います。
  107. 小野明

    ○小野明君 この法律の中で、住民の声を聞くところがないですね、工場立地法のこの中で。一体これはどこで住民の声というものを聞こうとされておるのか、この法律についてひとつ聞かしていただきたいと思います。
  108. 山下英明

    政府委員(山下英明君) そもそも、先ほど申し上げましたように、今後の工場を新設いたします場合には、そこの環境を保全すること、周辺の生活環境を尊重しそれに溶け込むこと、そして緑地の多い無公害工場を建ててくれと、こういう趣旨の法律でございますので、全編を通じてそれが基本になっておると思いますが、字句で特に申し上げますと、たとえば第九条の第二項第一号をごらんいただきますと、この条文は、そもそも届け出を当時者に出してもらいまして、そしてその届け出た内容政府が発表しました準則に合っているかどうか、もし合ってなければそこで勧告をしなければならない、その勧告はやがて変更命令になり、罰則になるわけでございますので、非常に大事な判断をすべき条文でございますが、そこで「第四条第一項の規定により公表された準則に適合せず、特定工場の周辺の地域における生活環境の保持に支障を及ぼすおそれがあると認められるとき。」と、ここで周辺地域の生活環境との融和についての大事な判断をいたします。  これは従来と違いまして生活環境でございますから、より詳しく申せば、先ほど先生も御指摘ありましたように、従来の立地法ですれば立地条件、つまり、用水とか交通事情とか港湾事情とかそういう周辺条件が主でございましたが、今回は生活環境でございますので、周辺住民の意見というものが最も重要な要素になると思います。この種の条文はほかにも見受けられますが、こういつた実態的な面で住民意見の尊重すべき方向が出ておりますので、さらにあるいは先生のお尋ねは審議会の規定なり、あるいは住民代表が意見を具申する法文上の規定がどこにあるかという御質問であれば、それはこういった内容を前提としまして特に規定を置いておりません。特に規定を置いてないということは、もちろん審議会は方々にございまして、これは実際上従来の工場立地及び工業用水審議会を改組して運用していく方針でございますが、その審議会に先ほど大臣の申し上げました市民代表が数名入る、それから従来の市町村、県知事のルートを通じて意見を聞く。そのほかかりにそれが市議会あるいは市当局でなくても、一部住民代表の意見を十分吸い上げていけるようなくふうをして運用をしていくと、こういう実際上の運用でやっていくことになろうと思います。
  109. 小野明

    ○小野明君 準則の公表と、そうしてそれに基づいて届け出がされるわけですわね。そうしますと、準則に合わないような届け出というのは私はないと思うんです。全部準則に合わして私は今後の工場立地というものは届け出がされると思いますよ。そうしなければ、勧告をもらいあるいは命令をもらうと、軽いけれども処分、処罰があると、こういう運びになっておるんですから、私はこの届け出、勧告——勧告以降は、これは法律上の効果というのはないんじゃないかと思います。その点はいかがですか。
  110. 山下英明

    政府委員(山下英明君) そこのところは、この法律一つの組み立てますときの大事なポイントだったわけでございますが、準則を必ず守らなければならないようなきついものにするか、そうなればこれはやはり全国一本の方針でございますので、相当レベルが低くなるおそれがある。それよりもむしろ、準則はできるだけ公害防止、環境保全、周囲との調和という観点から言えば高いものにしよう。これは多少具体的にお話ししたほうがいいと思いますが、資料としてお配りしておりますように、私どもはこの法律が通った場合には、たとえば生産用地比率というものは、今後業種によって違いますが、一〇ないし四〇%というぐあいにきめていくわけでございます。かりにA業種について三〇%ときまったとしますと、従来は建築基準法における建蔽率が工場地帯は六割ということでございますので、今後新増設する方は非常に強い制限になろうと思います。実際の生産施設は、一定の土地を求めましても半分しか建てられないということになろうかと思います。で、さらにその周辺にはこういう緑地を置かなければいけないということになりますと、それもまた現在、実績では工場地帯における緑地比率というものはまだ日本では低うございますから、一つのきつい目標を与えられることになります。私どもは可能な限り理想的な、実現はできるが、できるだけ理想的な準則をつくっていこうと存じます。  で、その準則を公表いたしまして、そうしてそこから先、ただいま御質問ありましたように届け出が出て、ところが、届け出はやはりその環境、その地域の実情に合わして判断すべきものと思います。準則にはまず適合してもらわなければならないが、それが比較的密集した住宅地に近い場合、あるいは森林、農園等に囲まれている場合では、その場合の判断が違ってくると思います。したがいまして、そこから先は個々の届け出の内容の審査によりまして、先ほど御紹介しました第九条の判断をすべきことになろうと思います。したがいまして、私どもは何件届け出があった場合どのくらいに勧告を出すかというような数字的にはまだ見通しを持っておりませんが、相当数の勧告ケースも出てくるであろうと、そして勧告によって誘導していこう、どうしてもそれに承知していただけなければ変更命令も出そうというつもりでおります。
  111. 小野明

    ○小野明君 そこで私は、この法律の筋がやっぱり抜けておるというふうに感ずるんです。というのは、準則を公表する、そうすると面積比なんかありますけれども、かなり高いものを出しましてもそれに合わしてもらわなきゃならぬ、届け出をするわけですからね。それから重合汚染の未然防止の計画も出して届け出をすると。そうしますと、これがはたして公害を蔓延させる工場になるかならないか、この辺の判断をやはりそれぞれの専門家といいますか、地域住民の声を聞くような審議会制度を入れて、そこで許可をするという許可制を入れる、ここに。それのほうが私はずるずるにならぬでいいんじゃないか。きっちりここで許可をしていく、こういう仕組みがどうしてとられないのか、その辺でこの立地法もざるになっていくような心配があります。この点はいかがでしょうか。
  112. 山下英明

    政府委員(山下英明君) 許可制ももとより案としては考えたわけでございますが、その際に私どもが大きく判断要素としてとらまえましたのは、やはり今回の準則の内容が、生産施設比率ですとか緑地をつくりなさいとか、あるいは公害防止施設をこういうぐあいに配置しなさいということでございまして、それは従来自由でありました私有地の中の使用権を相当強く制限する、また工場レイアウト等について政府が介入するということになります。もちろん公害防止、環境保全のためにそういうことは踏み切ろうということでやったわけでございますが、許可制のように、まず工場の新増設を全面禁止しておいて、そして政府の出した準則に沿えば許可するというたてまえにするか、それよりもむしろ比較的高い準則を公表して、まず誘導行政を主眼に置いて、そしてワクにはまらなければ勧告をし、変更命令、罰則に持っていく。したがって、個々の届け出で、その現地の実情に合うものであれば従来の自由度をできるだけ尊重しようと。しかし、合わなければそのケースについては許可制と全く変わりのない効果を発揮させようという、この環境保全と私有土地の制限という両方の要素の調和点から現在のこういう原案になったわけでございます。
  113. 小野明

    ○小野明君 勧告が行なわれますのは、これは現行法でいきますと、一つは、他の工場の立地条件を著しく悪化するおそれがある場合、一部改正による今回の法律でいきますと、面積配置等の準則に適合しないで、周辺の環境の維持に支障を及ぼすおそれがある、あるいは公害の場合には、同地区の他工場の汚染物質と重合し、大気または水質にかかる公害防止に支障がある、この場合に勧告が据えてあるわけですね。そうすると、これは届け出のときにもう当然わかっておらなければならぬ問題です。したがって、届け出、勧告命令と、違反した場合には勧告がある、命令がありますよと、こういうシステムよりも、届け出の際にこれらの準則に適合する、あるいはコンビナートですから、同地区の他工場との重合汚染というものも当然これは計測できるはずですね。届け出の際にそれらをきちっとさせて、そうして許可制にしておく、そうしたほうがむしろ企業に対しては親切なのではないかと、こう思いますが、いかがですか。
  114. 山下英明

    政府委員(山下英明君) おっしゃるとおり、今回の法律は公害防止環境保全等の目的でございますが、そもそも工場を立地する段階でそういうことをしよう、立地する段階で複合汚染を防止し、将来の環境を保全しようということでございまして、そういう意味では、届け出を出してもらって、それを受理しましたときに政府がすべての判断をしなければならないということでございます。  それではなぜ許可制にしなかったかということですが、私どもは、先ほど申し上げましたように、準則に合っているものはもちろん、届け出は受理するが、そのままどうぞ自由に工場をお建てください、それから準則にこの面では多少合っていない、たとえば一例でございますが、周辺に一割五分の緑地を私有地内につくるべしという準則であるにもかかわらず、実はその周辺が将来住宅も建てられないような森林地帯である、緑地であるというような場合に、それがある事情で緑地を一割三分、一三%分でうちはやりたいと思います、そのときに、あと二%の緑地をこれは準則違反だからつくりなさいというか、その特殊事情から判断してそのままにしておくか、もし総合判断でそのままでいいという場合には、勧告をしないで済ますという程度の自由度を認めていったほうがいいんではないかということでございます。
  115. 小野明

    ○小野明君 論の分かれるところでしょうが、私はやはりこの際許可制にする、そして届け出の際にすべての条件を明確にさせる、特に公害防止という観点からするならば、あとの重合汚染が届け出のあとになってわかってきたから勧告をしたというような甘い公害規制の行政では、とても私は問題にならぬのじゃないかと思いますよ。重合汚染というのは、もう届け出の際に既存の工場の数量というものは、データというものはあるわけですからね。だから、私はあくまでもこの点については許可制を入れ、それについては地域住民の声を審議会等を通じて吸い上げていく、こういう制度にすべきであるという意見を申し上げておきたいと思います。  その際、やはり問題になりますのは、既存の工場の取り扱いになってくると思います。この法律案は、既存の工場をもちろん対象としておらぬわけですが、既存の工場の環境整備、こういうことがなければ目的を達することはできないわけなんで、この既存工場の取り扱いについてはどのようにお考えであるのか、お尋ねをいたします。
  116. 山下英明

    政府委員(山下英明君) そもそも、この法律をこの時期に急いでといいますか、私どもとしてはできるだけ早くということで御審議願い、立法を発案いたしました発端のいきさつは四日市裁判でございまして、あのときの総合汚染ということを一つの大きな要素として、その反省を含めて今回立法をお願いしているわけでございます。そういう意味からいいますと、四日市ですとか川崎、あるいはまだほかにも多々、特に太平洋岸には工場の密集地帯がございまして、この環境改善問題と私どもとしては取り組まざるを得ないわけでございます。なぜそういったところの既存工場を除いたのか。私どももできるならば同じものさし、あるいは違ったものさしでもいいからこういう新しい工場の配置計画、緑地計画等に改善をしたいと思っておりますので、そのできませんでした理由は、一にも二にも準則というようなものを公表して、画一的に現在かつ急速にやっていくことが非現実的である、こう判断をしたからでございます。  業種によりましても地域によりましても、各工場の現状は種々さまざまでございまして、特に同じ公害業種の中でも中小企業になりますと、その敷地関係は比較的条件が悪いのが多うございます。そういう現存の実情に対して、一挙に新しいものさしで、かりに三年の経過期間をとったと仮定しましても、一律改善をはかることは無理だと判断したわけでございまして、もちろん既存の工場でも、あき地のあるところに新しく建て増しをする、あるいは新しい大規模立地でも、鹿島のようなところでも第二工場、第二溶鉱炉を建てるというような場合には当然この法律は適用されます。さらに、この法律の直接の規制対象にはなりませんけれども、私どもといたしましては準則が発表、公表されましたあとは、工場過密地帯あるいは既存工場に対しましても、そこの府県、市町村自治体を通じ、行政指導によって、何らかのチャンスのあるたびにその準則に近い方向に既存工場を持っていってもらうべく、これはこの法律そのものの手だてではございませんが、ほかのいろいろな各種の工場に必要な諸条件に関する手だてを用いまして誘導していきたいと、こう考えております。
  117. 小野明

    ○小野明君 準則が公表されれば、それを漸次押し及ぼしていきたいと、こういうお考えですが、それもかなり時間のかかる問題だと思いますが、なさらないよりは私はいいと思います。しかし、既存の工場を整備する、環境整備をやる、現在それをやらなければ、公害防止ということは当然目的を達しないわけですが、この法律でいう緑地による公害防除あるいは植樹による公害防除等もあるようですが、いかなる制度、法律によって既存の工場というものは整備をされようとするのか。この準則の適用ということだけではなくて、他に法律制度というものがあると思いますが、それはどのようにお考えでしょうか。
  118. 山下英明

    政府委員(山下英明君) 公害防止だけでございましたならば、もちろんここ二、三年来国会で立法していただきました二十にのぼる公害規制立法で、直接的に着地濃度なり排出基準なりでやっていけると思いますが、さらに進んで工場の敷地の広さとか緑地の面積とか、あるいは密集地帯における数工場をまとめたレイアウト、そういう問題になりますと、既存工場に対して直接法律に基づいていますぐやれる手段というものはございません。ございませんが、ほかの法律の施行に合わせ、たとえば工業再配置促進法の施行に合わせ、あるいはまた工業用水の制限ですとか、あるいは地方の条例によっております都市の工場立地に関する諸規制を施行していきますのに合わせて誘導、行政指導していけるだろうと思います。
  119. 小野明

    ○小野明君 まあコンビナート、鹿島についても同じですが、いわゆる無公害コンビナートとして建設をされてきた。ところが、もうそれが完成しないうちに公害が発生をしておるのが現状です。この鹿島にいたしましても、事前調査がなされたときと現在では、あなたのほうは環境基準量に変更があったと、したがってやむを得ないんだと、こういうふうにおっしゃるかもしれないが、まあ時とともにそれが変化をしてくる、これでよろしいといったものが変わってくるというのが現状なんで、事前調査というものが私は非常に重大だと思います。で、この事前調査というものがどれくらいの安全度を見て、あるいは環境容量というものが算出をされておるのか。この辺が非常に私は問題のところだと思います。また答えにくいところかと思いますが、この点をひとつこれはお答えをいただきたい。  それと、いま公害がたくさん発生をしておるのは、三十七年度以降の埋め立て地については移転促進地域、工業再配置促進法によって移転促進地域の対象からはずされておる。しかもこれらの地域は、鉄鋼とか石油とか公害型工場が集中をしておる地域が多い。こういう地域も当然、ですから移転促進地域に私は入れるべきであると思います。そうしてこの重合汚染というものを防ぐべきであると思いますが、この点をあわせてひとつお答えをいただきたいと思うんです。
  120. 林信太郎

    政府委員林信太郎君) ただいまの御質問でございますが、鹿島あるいはその他、昭和四十年以来四十七年までに大気及び水につきまして五十カ地点の事前調査をやってまいっております。このやり方は御案内のとおり、現地調査をいたしまして、地形、気象、海象等の資料を集め、さらにそれを風洞実験あるいは水理模型、それにコンピューターを併用いたしまして、ひとつの拡散理論と申しますか、予測調査をいたします。その結果、各工場から排出されます汚染物質の最大汚染量を算定いたします。で、他方、公害基本法によります環境基準から当然公害地域全体として許容されます最大汚染の負荷量の全体が出てまいります。その全体の中にその地域全体としていろんな形で出てまいります汚染物質の総量を押え、かつ、ただいま先生から御指摘がございましたように、その後におきます工場の発展その他の変化を入れておかなければ、結局事前調査をやってこれでだいじょうぶだと申し上げましても、数年たってそうでなかったということに相なるわけでございます。  全体として、許容されます汚染負荷量をどうやってうまく配分するかということでございますが、まず既存の家庭の暖厨房、それから自動車等の移動発生源、それから中小企業等、こういったものがどうしても必要でございます。かつ、それらは将来いろいろ変化してまいります。さらに集中的に大規模な工場地帯に工場が建っていくわけでございますので、そこから出てまいります汚染負荷の最大量、そういうものを足したものがその地域として環境基準を基礎にして割り出されました負荷量と同じにしてしまいますと、いわゆる安全率ゼロということになるわけでございます。そこで将来のいろんな変化を見越しまして、その算定されたものが全体に許容されます汚染負荷量の以下に押えるということになるわけでございまして、いままでやりました事前調査におきましても、多くの学識経験者の知恵をかりまして安全率をとってまいっております。  具体的には、たとえば大気につきましては、排煙の最大着地濃度をきめる場合に、環境基準から算定されます汚染最大負荷量に比べまして、先ほどのような基礎控除と申しますか、そういうものを除きまして、大体一、二割の安全率を見ております。それから水につきましても、希釈率の計算におきまして同様な安全率をとっております。ただ、これはただいま先生も御指摘のように、非常にむずかしい計算でございますし、したがいまして、もっと的確にこの辺の安全率を算定する必要があるという見地から、環境庁とも協力いたしまして、環境保全をそこなわないという見地から的確な安全率の算定に努力いたしたいと考えている状況でございます。
  121. 山下英明

    政府委員(山下英明君) 第二の移転促進地域指定の御質問でございますが、これは工業再配置促進法に基づいて昨年の秋指定をいたしましたことに関しての御質問だと思います。これは御承知のように、首都圏の既成市街地や近畿圏の工場等制限区域及び名古屋の類地の地域の三カ所を移転促進地域に指定いたしました。そのときになぜもっと広範に密集地帯を指定しなかったかということでございますが、まず第一に、この指定の際はできるだけ地元市町村の意見、住民及び当事者たる工場を含めてこれを尊重する方針にいたしました。それから、これは制度としましてもとより環境保全が最終目標でございますが、実際には法律によってその促進地域から過疎地帯に移転したいという工場に対して政府が助成、補助金、免税、融資等を援助する仕組みでございまして、したがって、広くすればするほどそういう国家財政の負担というものも出てくるわけでございますが、また当時、移転促進地域に指定されると、そこに工場が残っておることあるいは事務所があることによって、過密地域に課税されるのではないかというおそれも地元の方々にございました。私どもは、最終的にはそういう徴税はしないという方針で、そのことを地元にもよく御説明しましたけれども、なお来年はそういう課税があるのではないか、近い将来にあるのではないかというような不安も一部に残られまして、案外に移転促進地域への指定を地元が喜ばれなかったという事情もございます。私どもとしては、最終結論として、超密集しております、しかも、この地域に関しては別の法体系によって工場を新設いたしますことが制限されておる区域でもありますので、ほかと飛び離れてきわ立った対象であるということで、この三カ所をまず指定したわけでございます。
  122. 小野明

    ○小野明君 指定の事情をお聞きをしたかったのではなくて、三十七年度以降の埋め立て地も、移点促進地域に指定をしていくということで既存工場の公害を防止していく、あるいは環境を整備していく、こういう強力な措置はとれないのかということをお聞きしたがったんです。
  123. 山下英明

    政府委員(山下英明君) 埋め立て地ともう一つ例外がございますが、それは促進地域内の中小企業を主とした団地でございますが、この二つをなぜ除いたかといいますのは、これは従来の政策との矛盾点を調和したということでございまして、もう少し詳しく申し上げれば、従来同じ東京、大阪等の過密地帯の中でも、町工場をある一カ所に団地として移す、そうしてそこで地域内の環境整備を国も中小企業政策として進めましたし、地方自治体も進めてまいりました。それから特に東京・川崎あるいは大阪・堺、こういう方面では、同じような趣旨から海岸を埋め立てまして、そこにむしろ地域内の工場を誘致する、あるいは新しく新増設するものはその埋め立て地にやってもらうということで、政策的に指導してきたわけでございまして、そういう部面は今回の移転促進地域から除こうと、こういうことで、その部面ならば環境はまあまあ保全されておるという趣旨でございます。したがいまして、埋め立て地と申しましても、昔、戦前に埋め立てたようなところは除いてございます。昭和三十七年の一月一日以降の過去十年間政策的につくってきた埋め立て地を除外したわけでございます。
  124. 小野明

    ○小野明君 時間もありませんから、最後に環境庁にお尋ねをしておきますが、従来、企業に公権力が介入をするというようなことは、企業活動の自由を脅かすから、企業活動の自由を認めていかなければならないというような消極的な考え方が公害を蔓延さしてくる原因をつくってきたと思います。これは通産省にも言えることでありますが、今日、企業が土地を買い占めるあるいは生活の主要物資を買い占める等の問題が指摘をされてまいりました。これらについて企業の社会的責任というものを私ども追及しなければならぬ時期が来ておると思うし、通産省も、もっと大胆に私は公権力を使って企業に社会的責任を自覚させると、こういう措置が必要である。公害行政も環境庁もやはりそういった点を、四日市判決後この法律がつくられておるというのですから、その反省をもとにして立法されておるというのですから、手きびしくやってもらわぬといかぬと思うのですよ。そういう点からいろいろな点を申し上げましたが、最後に、大臣がおればいいですがおられませんから、両責任者からその辺の御見解を承りたいと思います。
  125. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いま先生おっしゃるとおり、最近の状態は、やはりいささか手おくれの感がある程度に環境が汚染をされているわけでございます。やはり従来の経済の状態というものが現在のような環境汚染をもたらしたということを、私どもは深く反省をいたしておるわけでございまして、四日市裁判その他の公害裁判におきましてもその点は強く指摘をされているわけでございます。政府といたしましても、先般、公害の基本法の中で、経済との調和条項というものも削除をするということになっておりますし、何よりも人の健康並びに環境保全を優先して考えるというような姿勢でもってすべての行政をしなければならないというふうに実は考えておるわけでございます。また、中央公害対策審議会から先般出ました長期ビジョンの中間報告におきましても、今後政府が経済政策その他の施策を樹立する場合には、やはり環境に対する影響というものを強く考えまして、それが盛り込まれた政策でなければならないというようなことも指摘をされております。私どもそういうような方向で今後関係の省庁とも十分連携をとりながら、現在の事態に即応するような施策を進めてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  126. 矢野登

    政府委員(矢野登君) 本法の施行によりまして、従来の産業と公害の結びつきにかなり大きく解消対策ができるのではないかと考えられるわけでございますが、なお、既存の工場の増設というような問題を考えるときに、その規制、指導等幾多の問題が残るのではないかと心配をいたします。したがいまして、通産省はもちろんのこと、地方公共団体とも十分に綿密な連絡をとりまして、立地対策に万全を期していきたい、こういうふうに存じています。
  127. 佐田一郎

    委員長佐田一郎君) ほかに御発言もなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時散会