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1973-03-10 第71回国会 衆議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月十日(土曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 仮谷 忠男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 谷口善太郎君    理事 山田 太郎君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       伊能繁次郎君    臼井 莊一君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       小平 久雄君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    野田 卯一君       野原 正勝君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       大原  亨君    北山 愛郎君       小林  進君    田中 武夫君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       細谷 治嘉君    美濃 政市君       安井 吉典君    神崎 敏雄君       土橋 一吉君    中島 武敏君       新井 彬之君    林  孝矩君       安里積千代君    小平  忠君       塚本 三郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         建 設 大 臣 金丸  信君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         公正取引委員会         事務局取引部長 熊田淳一郎君         首都圏整備委員         会事務局長   小林 忠雄君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         国税庁次長   江口 健司君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 加藤 威二君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   中野 和仁君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業省通商         局長      小松勇五郎君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省繊維         雑貨局長    齋藤 英雄君         中小企業庁長官 莊   清君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 富田 泰夫君         自治大臣官房審         議官      山下  稔君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月十日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     美濃 政市君   大原  亨君     阿部 助哉君   津金 佑近君     土橋 一吉君   不破 哲三君     神崎 敏雄君   岡本 富夫君     林  孝矩君   矢野 絢也君     新井 彬之君   安里積千代君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   阿部 助哉君     大原  亨君   美濃 政市君     阿部 昭吾君   神崎 敏雄君     不破 哲三君   土橋 一吉君     津金 佑近君   新井 彬之君     矢野 絢也君   林  孝矩君     岡本 富夫君   塚本 三郎君     安里積千代君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    根本委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、当面する円対策商品投機及び土地問題に関して、昨日に引き続き質疑を行ないます。塚本三郎君。
  3. 塚本三郎

    塚本委員 私は、許されます時間内におきまして、円とドルと金の問題に焦点を当ててお尋ねをしてみたいと思っております。しかしその前に、私は、一つ総理にお聞きしておきたいことがございます。  それは昨今の国鉄の乱れでございます。実はきのう、私はどうしても所用がありまして、名古屋まで八時三十分発という新幹線「ひかり」に乗りました。発車するときから十八分おくれますと、こういうふうで、その三十分になって、すでにおくれる時間までちゃんと予告をされております。発車したら名古屋到着は三十分おくれの十一時でございますと、おくれる時間を予告しておるのでございます。ダイヤを調べてみて、新幹線は、そんなおそくに前に詰まっておるはずは何にもないのでございます。にもかかわらず、十一時というおくれできちっと名古屋駅に到着をしております。けさは、どうしてもということで、この時間に間に合うようにと思って、一番の七時八分の「こだま」に乗りました。地震関係で、これは新聞の報道によると、マグニチュード二ですか、岐阜県にあったと報道されております。地震関係到着が少々おくれてまいりますということで、十分おくれ程度でございますという放送名古屋駅でありました。十分おくれでございました。すでに十分おくれで、いわゆるそれならば十分を回復する努力がなされるのかというと、到着見込みは三十分ほどのおくれでございますと、こうなんでございます。  ところが、おそらくこれは東京で自動的に操作しておるのでしょう、あるいはわざわざサボタージュをされると困ると思って、東京において早く進めるような指令が出されておるのでしょう、びゅうっとスピードを追いつくように走っていきます。専門家に聞いてみますると、走っておる間は、いわゆる運転士は操作することができないと聞いております。回復に向かっておりました。そして熱海を通過するころになったら、ああ十分ぐらいのおくれでいくな、回復したなと思っておったら、アナウンスがありまして、三十五分から四十分おくれる見込みでございます、こうなんですね。熱海を通過して三十分か三十五分で東京に着くのが定例で、私もしょっちゅう、新幹線代議士といわれるほどに乗せていただいておりますから承知しております。にもかかわらずおくれの時間がそれだけですという予告でございました。しかしそういっても、このスピードならば十分おくれぐらいで楽に十時には間に合うであろうと思っておりました。事実、私は国会対策委員会もありますから、もう時計をにらんでおりまして、十分おくれで入り込むなと思ったら、国会の見える有楽町のところでとまってしまうわけでございます。これはわざわざでないかもしれません。それは入ってくるホームが詰まっておるからという放送がありました。そこで十分ほど、国会を目の前に見てとまった。国会対策に、私は責任ある立場から出席したいと思っておりましても、どうすることもできません。もはや乗客は、このことはあきらめきっておるという状態です。  一体総理、これはいつまで続くんでございましょうか。もうすでにこのことにつきましては多く論じ尽くされております。私は、一昨々日と記憶しておりますけれども、すでに国鉄の総裁に対して、あなたは管理能力がもはやないといわなければならないと断定いたしますと、こう申し上げたのでございます。官房長官を通じて総理にもわが党からこのことは申し入れをいたしたはずです。運輸大臣にもそのことは、二、三日前に申し入れをいたしました。国民の怒りが頂点に達しておって、このことはもはや国鉄という一企業の問題ではないことは、もうお気づきだと思っております。物価高だけではないのです。もはや国鉄に関する限り無政府状態になっており、そして職場の現場長はもはや意欲を失っておるのです。マル生運動といわれて、この問題で悪名をとりながら、ともかく信用回復しようとした現場長がほとんど左遷をされてしまって、三十年国鉄に生涯をかけた諸君意欲をなくし、その現場から離れさせられつつあるという実態。総理、これを一体どう解決なさるおつもりでしょうか。私は、この姿は私だけでなく、国民一人一人の胸の中に大きなわだかまりとなって累積されておるといわなければなりません。これに対する御決意だけ・最初にお聞きしたいと思います。
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 順法闘争という名における国鉄の混乱、非常に憂慮にたえないことでございまして、一日も早くこの問題が解決をし、国民要請にこたえ得る国鉄の真の姿を取り戻すことが望ましいと考えております。  この問題につきましては、いま御指摘ございましたように、国民批判も非常にきびしい状態であることは申すまでもないことでございますし、報道されるところによると、たまりかねた乗客が駅においてふんまんをぶちまけるということで、暴力をふるうというような状態さえも出ておるわけであります。世界に冠たる国鉄のよさは、定時に運行されるという百年に近い歴史を持っておるわけでありますが、そういう状態が根底からくずれておるということに対しては、政府もただ国鉄労使の問題として看過をしておるわけにはまいらない問題でございます。政府にも相当な責任が存在をいたしますので、政府としましても、これが正常化のために努力を続けてまいりたい、こう考えるわけでございます。  いずれにしても、国有鉄道というものの持つ公的使命の重大さは、これはもう私が申し上げるまでもないのでありますし、現在、物価高その他でもってこうして特別な審議さえ始めておる段階において、生活必需品そのものの輸送に支障を来たしておるということも報道せられておるのは事実でございます。また、そういう事態から考えてみても、国有鉄道が負わなければならない公的使命ということに対しては、国鉄労使双方とも十分自覚をすべきであろう、こう思うわけでございます。  この問題の解決に対しては、労使の話し合い、また公労委に対する提訴というような手続が行なわれながら、しかも中途はんぱな状態になっておって、いつ解決のめどもつかないというようなことは、国民自体批判をし評価をするんだというようなことで、政府国鉄責任が免れるものではないと考えております。私も、そういう意味で、運輸大臣、また運輸省の幹部、国鉄当事者等を督励しまして、本件解決のために努力を続けてまいりたい、こう考えます。
  5. 塚本三郎

    塚本委員 現在の法律は、法治国として厳に守らしていかなければなりません。しかし、それだけで問題が解決できる段階でなくなったことは、すでに総理も御承知だと思っております。すでにスト権を取り上げられた労働組合立場からは、その奪還の闘争が行なわれておること、これはひとり国鉄だけの問題ではないと思っております。そういう政治的な問題も含めて解決をしていかなければなりません。しかし、それはそれとして法治国として、いわゆる秩序秩序として、これもきちっと守っていかなければなりません。そのとき、法律の中だけで解決しようとする国鉄労働組合の問題ではもはや手に余る状態になったことをお認めいただくならば、これはすみやかに政府自身が広い範囲で解決に乗り出していただかなければならぬと判断をいたしております。私も、昭和十年代の後半から数年間でありますけれども、国鉄職員として禄をはんだ立場から見て、当時の諸君はほとんど現場責任者になっております。もはや今日の国鉄に対しては情熱を失ったと、まじめな現場長諸君がささやいていることばを総理自身にお伝えいたしまして、次の問題に移っていきたいと思っております。  実は、円とドルと金の問題につきまして、私は専門家ではありませんから、素朴な国民立場に立って、ひねった質問はしないつもりでおりますし、すなおにお聞きしたいと思いますので、ひとつすなおにお受け取りいただいて、お答えをいただきたいと思っております。  いま、国際通貨危機根本は、ドル信用喪失にあると判断されます。通貨信用が第一であります。通貨信用は、何らかの裏づけがあってこそ通貨としての流通性が保たれておることでありましょう。ドル基軸通貨として出発をしたときは、世界じゅうの持てる金の七割ないし八割をアメリカが持っておって、いついかなるときでも、昭和九年から十年代の一オンス三十五ドルで交換いたしましょうというその約束がなされだからこそ、ただ一国の通貨であったドルをして国際通貨たらしめたのであって、そこに原因があると思っております。にもかかわらず、その金との交換性が破棄せられて、今日、一体日本政府ドルの何を信用して受け取り、そしてまた商いをしてきたのでございましょうか。それはアメリカという国を信用してでありましうょか、あるいは国際的に基軸通貨という約束があるから、それを守っておるのでございましょうか、あるいはそれしか方法がないからでございましょうか。日本政府ドルに対する信用を何に求めておいでになるのでしょうか、お尋ねしましょう。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまいろいろ具体的に理由をおあげになりましたが、総合的にそういったようなことが政府としての考えと通ずるところが大いにあるように思いますが、具体的に申しますと、国際的な関係から申しまして、ドルがいわゆる唯一の基準通貨である、そして、そこに至る経過は、やはり交換性ということが前提になっておったという考え方、それをよりどころにいたしまして、日本のみならず世界的にドル基準通貨として動いてきたわけでございまして、それが今日のような事態になっていることは、その肝心のドル信認が十分確保されていない、低下しているということが今日の大問題であって、そこを新たなる起点として、これからどうしたらいいか、当面の措置と恒久的な措置を考えなければならない、こういう事態に相なっておるというふうに認識しております。
  7. 塚本三郎

    塚本委員 当面の処置は、いろいろとあらためて検討していただかなければなりませんけれども、すでに通貨不安がささやかれてから今日まで久しいと思うのです。もはや、日本政府としてドルというものを受け取る以上は、たとえばアメリカという国を信用してついていこうではないかとか、あるいはまた何らかの基準を置いていかないと、そのどれもでありますということは、何もないのです、惰性だからやってきたんですと悪くとられても、抗弁のしようのないような状態でありまして、主体性がないといわざるを得ないのではございませんか。当面としてはそうするよりしかたがないと私も思っております。しかしながら、すでにドル信用喪失は、ドゴールのあのゴールドラッシュ以来続いてきております。長期政権自民党政権においては、ドルに対するいわゆる信用、これからも交換性を求めていく、あるいはまた通貨としてこれ以外にないと思うならば、何らか日本政府としては、これに対する信用裏づけをこれに求めようとか、あるいはこれ以外にないという一本きちっとした土性骨を通した見解を持って立ち向かうことが必要ではないかというふうに思いますが、いかがでしょう。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 したがって、当面最も緊急な考え方日本としての主張は、ドル交換性回復することと、それからアメリカとしての資本規制をやらせるといいますか、やってもらうことと、それからアメリカ金融政策におきましても、国際協調の線にアメリカ自身金融政策も転換してもらわなければならない、この三つの考え方を中心にして、あらゆる機会に主張もし、協力を要請しておる、これが現状でございます。
  9. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣ドル交換性回復するということを目ざしておるとおっしゃったが、一体はたしてほんとうに自信がおありですか。これからドルを金との交換性に持ち込む見通しが立つのでしょうか、どうでしょう。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは当面の対策と将来にわたる長期的な対策とおおよそ二つに分けて考えなければならないと思います。終局的には兌換性というものが、交換性というものが確立されるということが望ましいという線に沿うて、当面のところは交換性回復ということについて、方法論としてはいろいろのバリエーションが考えられると思います。たとえば即時、全面的ということは非常にむずかしいでございましょうけれども、暫定的な措置が必要でございましょう。しかし、いずれにしても、基本的にはドル基準通貨にしていくという国際的な合意であるのならば、ドル自身がそれにふさわしいビヘービアをとってもらう、アメリカ自身としてドル信認回復についていろいろの方法をとってもらうということが当面の必要な措置ではないか、・こういうふうに考えているわけでございます。  たとえば、交換性という中には、必ずしも金との交換性だけでなくともよろしいと思います。SDRとの関係をもっと具体的に、建設的に考えるということも必要でございましょうし、あるいは当面の緊急措置としては、スワップを活用するというようなことも考えられましょうが、要するに、恒久的にそういう方向でいくということならば、それにふさわしい基本的の態度の上に立った具体的な当面の措置を緊急にとってもらうということが、日本としての要請でもございますし、おそらくはこれは関係主要国の共通の考え方ではなかろうかと想像するわけであります。
  11. 塚本三郎

    塚本委員 それは当面としての課題としてはそうなんですけれども、とにかくいま日本は二百億ドルをこえるドルを握っておる、あるいは握らさせられておるのですね。そのとき、そのドルを握っておる日本の国が、世界から冷たい目で悪者扱い報道さえなされておる。この中において、日本ドルに対してどう取り組むのかという長期的な展望を持つ必要を私は痛感いたしております。  一体、アメリカ世界にたれ流しておるドルが、今日どれだけになっておりましょうか、ちょっと数字を教えていただけませんか。
  12. 林大造

    ○林(大)政府委員 いまおっしゃいました、アメリカがたれ流しているドルというものの定義は非常にむずかしいわけでございますけれども、現在、私どもが国際流動性という概念で把握しております金、SDR、それからIMFにおきますポジション、それから外貨、この外貨の大部分がドルとかあるいはポンドといういわゆる基軸通貨ないしは準基軸通貨でございますが、昨年の九月末現在で、その外貨が全体で九百五十九億ドルあるといわれております。そのうち米ドルが六百億ドルでございまして、そのほか英ポンドが八十一億ドル、それからユーロダラーその他のもので内訳が把握しにくい分が二百七十七億ドルあるといわれております。これはいずれもドル調整前の昨年の九月の数字でございます。
  13. 塚本三郎

    塚本委員 半年も昔のことを言わずに、せめて先月くらいのものはないですか。去年の九月なんというような話でなくて、それ以上わからぬのですか、大蔵省は。こんなことでどうしてわれわれ、いわゆる取り組み方ができるのですか。半年昔の金で商売しようなんということは、日本の商売を考えてみても間に合わぬし、電話一本で世界じゅう通ずるじゃありませんかまっと一番近い数字を教えてちょうだい。
  14. 林大造

    ○林(大)政府委員 国際流動性概念は、統計上非常に把握しにくい……(塚本委員ドルだけでいいのです」と呼ぶ)ところが、たとえばある国が外貨準備を持っております場合に、ドル建てマルク建てとあるいはスイスフラン建てというのを、いかなる割合で持っているかというのは発表しないのが通例なのでございます。したがいまして、外貨準備高のうちドル建てが幾らあるかというのは非常に把握しにくいわけでございまして、ただいま申し上げました計数も、国際流動性統計の中では一番新しい数字を申し上げたわけでございます。  外貨準備ということでございますと、もう少し新しい数字が申し上げられるわけでございます。
  15. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣アメリカに、一体あなたのところはどれだけドルを発行して世界に出しておるかということを、日本立場から聞くことはできませんか。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 聞くことはできませんかというよりは、お互いに知り合っている仲でございますし、アメリカ一国の、たとえば国際収支とか資本の流出の状況とかいうものは大体において掌握されておりますが、同時にそれについては、たとえばユーロダラーとか、米系といわれている多国籍企業がどれだけ海外に出しているかというようなことになってまいりますと、いろいろの情報的な数字は流れておりますけれども、的確にこれをアメリカ政府として掌握して、他国にも公表できるというようなものは、これはなかなかそれぞれの国からいたしましても、そういったような推計に基づくものは公には言いにくい、あるいは実際掌握ができていない、こういうものも相当あるように見受けられる次第でございます。
  17. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣日本の国は債権国として、いただいたところのお札を不渡りにされておるのです。だから債務国である、不渡り国であるアメリカに対して、あなたが振り出したところの不渡りの、実は手形というと小切手よりももっと確実であったはずの、それを不渡りにしたあなたのところは、立て直しをする必要があります。だからこそ日本やドイツに言われる前に、ニクソンさんは一昨年の夏みずからドル防衛の演説をなさって、外国に対してすまぬ、そのかわりに国内においても七つ、八つの経済再建の方策を国民に示して、立て直しの道を開かれたはずでございます。それならば日本も協力しましょうという態度になったはずです。そのときにどれだけ、いわゆる不渡りの札が流れておるかということをつかまなければ、お互いにたな上げをしたり、あるいはまたあるだけのものは払いなさいとかいう話を詰めるにいたしましても、やはりその出されたところの不渡りの札がどれだけ出されておるかということぐらいはおおよそつかまなくて、協力のしようがあるでしょうか。そんなことを言ったら商売ができないから、もうわざわざ、いわゆる知りたいけれども黙ってついていくとでもおっしゃるのでしょうか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはそういうふうな話し合いのときなどは、必ずしも正確なアメリカ政府の公表する資料以外でも、こちらとして主張の根拠になし得るような交渉のしかたといいますか、話し合いのしかたもあるわけで、これはいままでも十分にそういう点については着目してやっております。ただ、同時に不渡り手形である、破産した会社であるというふうにきめつけるのはまたいかがかと思います。特に日米間におきましては、貿易収支も貿易外収支も相当はっきりした数字は双方で持っておりますし、これについては意見の相違もないわけです。その上に即した日米間の交渉というものは、従来から熱心にやられております。  ただ、今日のように国際的な過剰流動資金、それからユーロダラーとか、あるいは多国籍資金とかいうことになりますと、これはなかなか正確な数字が捕捉しがたい。これはアメリカ政府でもそうであろうと私は思います。そういう点は事柄の性質上、突き詰めてこれが幾らだ、どうだということは、なかなか困難だと思います。しかし同時に、これは各国とも非常に関心の的でございますから、御案内のように、OECDにおきましても、たとえば多国籍企業については非常に関心を深くし、あるいは共同調査をし、あるいはそれに対する具体的な対策をどう考えたらいいかということは、OECDというような国際機関におきましても、その実態の掌握につとめ、そしてその上に立った国際的な対策ということも、積極的に取り上げられておりますことは御承知のとおりでございます。それから日本のほうでも、たとえば大蔵省立場におきましても、OECDの調査などと相即応して、多国籍企業の実態の掌握のためにわざわざ調査団を外国にも派遣して、一生懸命その実態の掌握につとめていることも、御承知のとおりと思います。
  19. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣日本の持っておるドルというのは、大蔵大臣愛知揆一の個人的所有じゃないからどうなってもかまわぬというような立場ではなくして、とにかく国家の財産であり、国民一人一人の財産なんです。それが金との交換が停止せられたら不渡りじゃございませんか。私は中小企業の皆さん方に、一体ドルのあの交換停止から、あのニクソン演説はどういうものですかといって解説を聞かれると、不渡りでございます、相手は破産したのでございます、だから、これからはそれはたな上げにするとしましても、その不渡りの札は向こうに返してあげなければなりません、それには向こうのものをうんと、ただでやるわけにいきませんから、向こうのものを買ってあげなければなりません、そして売ることを控えて、アメリカを強くするまでは、われわれはがまん強く協力をしてあげなければなりません、こう説明する以外にないじゃございませんか。一体、自分の金だという立場になって考えてみられたら、これが一片の紙くずでございますというわけにいかないでしょう。だから、不渡りであり、そしてまた破産したのです、だからこそ、田中総理がニクソンとお会いになるときも、佐藤さんのときにはワシントンまで飛んでいかれたけれども、向こうからわざわざ一日前にニクソンさんがハワイまでお出かけいただいて、そして田中総理おいでいただけませんかという低い姿勢になったのは、それは債務者が債権者の親方に対して会うときの礼儀でございます、それは田中総理の個人の人格識見とともに、日本国の地位が変わったのです、天皇陛下が一昨年ヨーロッパにおいでになったとき、アンカレッジにお寄りになったときでも、わざわざニクソンが大統領専用の自動車をもってお出迎えいただいたのも、実は債務者としての立場では、当然世界における債権国の二番目の親方である天皇さまが、たった一時間お寄りになるのでも、儀仗兵まで連れて大統領専用の自動車でもってお出迎えになるということは、債務者としての当然の礼儀でございます、それだけ皆さま方の努力が実ったのです、こう言って説明してはっきり、ああそうかと言って喜んでくれるのですよ。そうじゃありませんか。  そのことなくして、日米間における経済問題の、お世話になったということ、MSAの問題もあるでしょう、ガリオア、エロアの問題もあるでしょう、これから御恩返しをしなければならぬのです、そして将来に対する日本立場も、アメリカなくしては、経済ではここ十年間は無理だと思います、だから協力してあげましょうという説明がなければ、一体日本の国の国民は、このドルをつかまされて、どう腹の中におさめるのでしょうか。そういう取り組みがなければならぬと思います。そういう立場でものごとを判断したとき、たれ流しのドルは一体アメリカさんどれだけになっておるのでしょうか、記録のあるだけ教えていただけませんか、そして日本国として協力させていただきまするその立場というものを国会で皆さま方に相談いたしましょうとおっしゃるのが、愛知さん、あなたの立場じゃありませんか。どうでしょう。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですからますます、当面の対策としても、ドルというものが信認回復する保証がなければならない。これは一口にいえば交換性ということばで表現されると思います。そして、これは金との兌換性ということが一番はっきりしているところでございますから、これで塚本さんのおっしゃる不渡り手形でないそのあかしといいますか、保証をはっきりさせるということが、日本としても一番徹底した主張であると思いますから、これを貫いていきたい。  それから、たれ流しのドルということでございますが、要するにこれは日本の場合は非常にはっきりしておるわけでございます。したがって、投機的な資金が、過剰流動的な国際的な資金というものが入ってこないように、これは為替管理で押えますが、これとても完ぺきとはいえませんでしょうから、したがって、国際状況の変化に応じては為替市場をときに閉鎖をする現状のような自衛手段も講じておるわけでございます。  それから、不渡りというお話については、ドルはしかし現実には支払い手段として国際的に通用しているわけでございます。減価しているにしても、これは十分使える金でございますから、日本としてはその支払い能力のあるこのドル、現状におきましてもこれを活用して輸入に大いに使っていく。あるいは外貨それ自体を投資その他の形で有効に使って、その経済的の価値というものを減価しておってもフルに活用していこうという努力を一方においてやっておりますことも、あえて申し上げるまでもない。これは紙くずなどというものではないと私は考えます。
  21. 塚本三郎

    塚本委員 紙くずなんて言っていないですよ。つぶれた会社だって再建して取引を再開するときには、どれだけをたな上げにして、どれだけを生かしていくかということなんか当然考えるのですよ。だから私は、何も紙くずだとは言っておらないつもりでございます。しかし、その議論をしておりますると時間がなくなります。  一昨年の八月十五日、ニクソンがドル防衛の演説をなさって、そして世界的に大きなショックを与えたドル・ショック以後、どれだけ新たにアメリカドル世界に流したのでございましょうか。それ以後の節度というものは、これは当然あってしかるべきだと思いますが、どれだけよけいそれ以後流されたか、その数字を教えていただきたいと思います。
  22. 林大造

    ○林(大)政府委員 手元にございます資料が、八月十五日というので正確に区切ってございませんので、恐縮でございますが、一九七一年、一昨年の六月末には、アメリカの公的なドルの債務残高は約三百四十億ドルでございました。九月末にはそれが四百五十億ドルになっております。この間百十億ドルほどふえているわけでございますが、これは御指摘のニクソン・ショックのとき以後にふえた分が多いと存じます。したがいまして、四百億ドル前後のものであった。それが昨年の十月には六百億ドルをこしております。一番最近の数字、これは二月のIMFの統計でございますが、アメリカについてだけは、新しい数字が六百八億ドルという数字がございます。したがいまして、その間、約四百億前後から六百億ドル前後ということで、米国の対外的な公的な債務は、約二百億ドルふえているという状況でございます。
  23. 塚本三郎

    塚本委員 この数字を聞いてみますると、アメリカ自身、あるいはニクソン自身と申し上げましょうか、その後あれだけ国民に対しても悲壮に、アメリカ自身、強いアメリカ、豊かなアメリカを訴えて、そして世界にも、だから一時はがまんしていただきましょうと演説したそれ以後のニクソンとしては、それに対するだけの節度がなかったと見なければなりません。にもかかわらず、日本はすなおに今日までおっしゃるとおりについてまいったと思います。  大蔵大臣アメリカは、いま持っております金というものは一体どれだけあるのでございましょうか。日本の金と比べてみて格段に多いはずでございます。大蔵大臣は、不渡りでもありませんと、物も買えますと、そして商売もしておりますと、おっしゃるとおりです。ならば、アメリカが現在保有しておる金はどれだけですか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 アメリカの金の保有高は百億ドルちょっとと記憶いたしております。
  25. 塚本三郎

    塚本委員 日本の国が持っておる金と比較してけた違いに大きいはずです。アメリカ世界に出すべき金がなくなって交換をがまんしてちょうだいというならば、それならば話がわかるのですけれども、庶民の感覚からいいますと、不渡りを食らわした取引相手が百億をこえるお金を持っておって、こちらが十億を下回るだけの金で、手形かあるいは小切手か、そんなものを持って、そしてストップを食わされて、指をくわえてという表現はいかがかと思いまするけれども、庶民感情に合わぬとお思いになりませんか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいろいろの問題を含んでいると思いますけれども、まず第一に、そういう状況でありますから、ドル交換性回復ということが、これはもう日本は当然ですけれども、たとえば西ドイツの最近の例をごらんいただきましても、わずか数日のうちに六十億ドルというような巨額なドルが乱入している。こういう状況を見ましても、どうしてもこのドルに対して、ドルの国であるところのアメリカが、よほど真剣に考えてもらわなければならないということは、私は当然であると思うのです。  ですから、今回の会議はもちろんでありますが、いわゆるC20国におきましても、非常に積極的な各国のこの問題についての建設的な意見が出ているわけですが、一つは、基準通貨としてのドルをどうやって交換性回復させるかということ、ところがこれは同時にアメリカ通貨でございますから、アメリカ自身の経済政策を転換してもらわなければならないということ、この二つが相互に相関連して今日の大問題になっておる。  それから、日本の金の保有量が八億ドル余り、確かに御指摘のとおり百億に比べて八億というものは少ないことは申すまでもないところでございますが、日本の、たとえば外貨準備を最近数年間の足取りをごらんいただいてもよくおわかりいただけますように、もうほんのわずか、ここ二、三年の間に急にドルがふえたわけでございます。その前におきましては、いわゆる外準、外貨準備にいたしましても、これは外貨として運用するということもございまして、その当時の外貨準備の額らか申しますと、金を買うというような余裕のあるような外貨準備高ではなかったわけでございます。ところが、日本外貨準備の余裕ができてきたころには、金に対して世界的な交換性というものが薄らいでまいりまして、そして最近の一両年の間には、金というものに対して外貨準備として補充をするというようなことが非常にできにくくなった、あるいはこれは、国際協調ということからいっても、日本としての態度を自粛しなければならぬという考え方もあったと思いますが、そういうことで、金の準備というものが八億ドルちょっとにとどまっておるというのが現状でございます。これは急激な外準の増加ということと関連し、あるいは国際的な金に対するいろいろの考え方の変転ということに関連して、過去においてはそういう状況であった。これは、私の想像をまじえて、当時の政府の処理は無理からぬことであったと、かように考えております。
  27. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣の御答弁が長いものだから、時間がなくなって、進めぬのですけれども、通産大臣、素朴に考えて、先ほど私がお聞きいたしましたように、不渡りという言い方が語弊があるようでございますけれども、いずれにしても、金と交換していただける兌換券と信じて受け取った日本の国、そしていまや交換が停止せられた立場に立っております。しかも、そのアメリカドルを握った日本の国が八億ドルで、いついかなるときでも金とかえますと約束をした、あの不渡り宣言を出された当時の日本は、ないといっても八十億から百億近くあって、そして宣言でだあっと流れ込んできて百五、六十億になったと記憶いたしております。いずれにいたしましても、そういうふうにして日本の国が債権者の立場に立っておるとき、債務者といわれなければならぬアメリカが百億をこえる現金を持っておって、債権者が八億ドルで、一般の商売の取引の場合、現金ちょうだいよと言うのが、これは普通の商取引ではありませんか。商売のことを、これからも取引を願わなければならぬという、そのこともあります。しかし当面とって、いま得たものだけはとりあえずいわゆる現物あるいはまた、金にかえていこう、現金にかえるということが当然の経済の筋道だと思います。商売の一番の責任者である通産大臣の立場で、日本の国はもっと、いわゆるこれからのことやこれからの交換性のことをきめる前に、とりあえず、あなたのところはなくなったんじゃないから、世界経済のために五十億は必要ですというんなら、それだけは残しましょう、残っておる五十億だけは日本とドイツに分けて、とりあえずその不渡りのドルだけでも回収なさったらどうでしょうかと、普通の場合ならば言うと思いますが、どうでしょうか、通産大臣。
  28. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 個人商店の取引のような場合には、経済原則でそういうことがあり得ると思いますが、しかし、その場合でも、やはり会社を再建させて再び生産性を上げ、利潤を生むようにあらゆる指導援助をするというのがまた通例でもあります。だから、何でも金で引き揚げればそれで済むというものでもないようです。いわんや国際関係においては、これは経済関係、政治関係、資源関係、あるいは安全保障関係、非常に複雑なメカニズムで結びついておるものでございますから、単に経済関係だけを考えるわけにはいかない。経済関係をささえているもの自体が、ある場合には政治関係であり、安全保障関係であることもあり得るわけです。  そういう意味で、単に金の保有量だけでその国に対する信認が一元的にきめられるというものでもない。いま世界の情勢を見ると、やはりドルを再建して、再びこれを水準を下げた基軸通貨としてみんなで協力して再建をさしてあげよう、こういう善意でC20とかG10とか、そういう国々で集まっているわけです。ドルをやめちまおうというのじゃないのです。病気になったから少し健全を回復するために猶予を与えたり協力しよう、そういう善意で集まっているのですから。  では、ほかに基軸通貨なるものがいまあるかといえば、現にないわけで、日本のような場合には膨大なドルで取引している国ですから、やはりドルを健全に回復するということが国益にも合うはずです。これがほんとうに紙きれになっちまったら日本はたいへんなことになるわけです。そういう意味からも、再びドルを健康体にするように回復するということは、商社としての日本としてもいまとり得るうまい方法ではないかとも私は思うのです。やはりそういう総合的な国家利益を考えて、この際判定すべきであると思います。
  29. 塚本三郎

    塚本委員 防衛庁長官を経験なさった通産大臣にすれば、それは政治や軍事のことも勘定に入れた御答弁をなさらなければならぬでしょうけれども、私はゼロにしようと言っているのじゃないのです。どうせいわゆる弱小国の中には、いまだドルが一番強い通貨として、いわゆるドルをほしがっている国がもうたくさんあることも知っております。だからこそ、私のいわゆるしろうと的な判断から言うならば、少なくとも持っておる半分は、弱小国や後進国のためにもさいていただかなければならぬでしょう。そして新たに出発するときには、日本、ドイツを含めた世界じゅうが、きのうから行なわれておりますように再建策を講じるでしょう。しかし、それにもかかわらず、先ほどのお話のように、いわゆるドル防衛の演説をなさってから二百億ドルをこえるところのドルを出して、相手さんはちっともそれに対する取り締まりをなさろうという態度が見えておらないのです。それで金だけはかかえて、そしておまえたちが悪いのだと言う。もっと日本の国が金にかえて、そしてドルが少なかったら、ドルを持っている黒字国日本なんて悪口を言われずに済んだかもしれません。むしろわれわれが、アメリカにイエスマン過ぎたものでドルがふえてしまったということになって、かえってそのドルを持っておる日本が悪者になっておるじゃありませんか。  それでは、日本のいま持っている外貨の保有高がどれだけになっておるか、具体的に数字で教えていただきたい。ドルでどれだけ、金でどれだけ、あるいはまた預金や貸しておるものがどれだけ、そうしてドル以外の外貨がどれだけ、これを数字で具体的に教えていただけませんか。
  30. 林大造

    ○林(大)政府委員 お答え申し上げます。  二月末の日本外貨準備は百九十億六千七百万ドルでございます。それで、そのうち金が八億九千百万ドル。これは従来は八億ドルと申しておりました、アメリカの平価が一割切り下げられました、それを計算に入れております。それからSDRが五億一千二百万ドル、これはIMFの特別引き出し権でございます。ゴールドトランシュが、これはIMFに対する一種の貸し金でございまして金価値保証がついております。SDRも金価値保証がついております。これが六億四百万ドルでございます。それから外貨が百七十億六千万ドルでございます。この外貨のほとんど全部がドルであるというふうにお考えおきいただいてけっこうでございます。若干のマルクその他を含んでおりますけれども、これは相手方の国がその通貨を持つことをきらいますので、したがいまして、マルクとかスイスフランはなかなか国際的な関係で持ち得ないわけでございます。以上で合わせまして百九十億六千七百万ドルでございます。
  31. 塚本三郎

    塚本委員 ほかにどういうものがあるのでしょうか、日本が持っております外貨は。
  32. 林大造

    ○林(大)政府委員 政府の持っております外貨建ての対外資産といたしましては、政府及び日本銀行合わせまして、いわゆる通貨当局でございますが、このほかに若干の中期の債券を持っております。この中期の債券をなぜ外貨準備に計上していないかと申しますと、これは直ちに換金して、そうして対外支払いの準備に充て得る性質のものではございません。先ほどお話がございましたとおり、海外から請求を受けまして、それに対して直ちに決済に充てられる、そういう性質のものが、それは対外的な最終の準備として役に立つものでございますが、それが若干ございます。
  33. 塚本三郎

    塚本委員 それを数字をちょっと教えてください。
  34. 林大造

    ○林(大)政府委員 これは対外的な中長期の債券すべて合わせまして、外貨準備非計上の分が一月末で十七億ドルございます。
  35. 塚本三郎

    塚本委員 そのほかにはどういうものがあるのですか。
  36. 林大造

    ○林(大)政府委員 対外的な債権はございません。御質問の御趣旨は、たとえば外貨預託だとかあるいはスワップのようなことをおさしだと存じますけれども、外貨預託は日本の銀行に対する外貨建ての債権でございまして、日本の銀行が金繰りがつきませんと、政府外貨準備の中から買い取って返さなければいけない性質のものでございます。したがいまして、これを外貨準備類似のものといたしますと二重計上になりますので、そういうものは外貨準備に計上しないのが通例でございます。  それから、いわゆるスワップでございますけれども、このスワップと申しますのは、やはり国内の銀行に対してドルを買い取る義務を負っているわけでございまして、これもやはり国内の銀行に対する外貨買い取りの先物契約用の債権でございますから、同様に外貨準備としての性格は持っていない性質のものでございます。これらのものがしばしば、何と申しますか、隠された外貨というふうにいわれておりますのは、これによりまして外貨準備の増加を食いとめている作用がございますので、そういうふうなことがしばしばいわれる次第でございます。
  37. 塚本三郎

    塚本委員 その隠していることを私は追及するのじゃないのです。実際国民がかせいで持っておる国家の金がどれだけあるかがまず知りたかったのです。だから、そういうものをどこの勘定に入れたからけしからぬと私は責めるだけの専門家じゃございませんから、あとどれだけの金があるのかということを教えてもらいたい、いまそういう金が。
  38. 林大造

    ○林(大)政府委員 お答え申し上げます。  その意味で、対外的な外貨建て債権はただいま申し上げました以外にはございません。
  39. 塚本三郎

    塚本委員 いや、いま言われた、日本が持っております、いわゆる所有しておる外貨の総計がどれだけになるかということで、二百億しか国民の中には発表されていないのですけれども、頭隠してしり隠さずで、外国ではみんな二百五十億とか三百億とか堂々といわれておるのですが、それはインチキなんですか、外国の報道が。国民だけは知らされずに、外国はみんな知っているから、そう隠さなくてもいいじゃないですか。
  40. 林大造

    ○林(大)政府委員 それは外国の報道の中に一部そういうものがあるかと存じます、隠された外貨があると。しかし、それはただいま申し上げましたように、国内にいわゆる円シフトというのを起こして外貨の増加を防ぐためにとられましたいろいろな措置、国内の銀行に対する外貨債権その他でございまして、外貨準備ないしは外貨というのに値しないようなものをそういうふうに言っているのだというふうに御了解いただいてけっこうでございます。
  41. 塚本三郎

    塚本委員 国民の知る権利を私はもう少しこの場で活用したいと思ったのですけれども、こんなことをやっているうちに時間が来てしまいますから、私、もうこの問題はあきらめて次へ進みます。  一九六八年と記憶いたしておりますが、ゴールドラッシュが起こったときに、各党の書記長が本予算委員会で、可能な限り金にかえておくべきだ、それでなければドルはあぶない、政府ドルに対する過信が強過ぎるというふうに、盛んにこの席で政府に対して、責めるというよりも、忠告をしたことを記憶いたしております。わが党の佐々木書記長も、そのことをこの席で強く政府にすすめたことを私は記憶いたしております。先ほどの大蔵大臣のお話では、持てるほどのものはなかったとおっしゃるが、もちろん、いまほどの三けたのドルではなかったはずです。しかし、それにもかかわらず、五億や十億ドルはそのときに金にかえることの能力はあったはずですし、その後漸増しておるドルに対して、知らなくてこうなったならばいざ知らず、野党各党がそのことを、時の大蔵大臣水田さんに対して再三繰り返し繰り返し、国家と国民が握っておるその財産が減っていくんだ、危険にさらされておるんだと言った。現にドゴールはそのことを叫び続けて、ロンドンとチューリッヒになぐり込みをかけたという表現までしましたけれども、泰然として政府は、このドルを持っておることによって流通が拡大するんです、生産が拡大するんです。そのことは間違いだと私たちは言ったこともないし、思ってもおりませんでした。そのことのために今日の経済の拡大もあったことも認めましょう。しかし、野党の書記長さんがこの席で、かわるがわる時の水田大蔵大臣に言った、金と可能な限りかえておけという叫びを実は思い出すとき、あのとき金とできるだけかえておけばよかったという反省の心は大蔵大臣としておありになりませんか。人はかわっておるでしょうけれども。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、先ほど私は率直に申し上げたのでありますけれども、あの当時はやはり外貨の保有高というものが十分な余裕を持つという程度ではなかった。したがって、やはり直ちに流通性があると申しますか、要するにあの規模の中では、外貨で準備を保有しておくことが当然であるという考え方で、率直にいって、金保有に向けるだけの余裕のない規模であったということが一つの根拠であったと思います。そして、そういう環境でございましたから、これはむしろ小さな理由かもしれませんけれども、無理をして金を保有しても、これは寝かすだけのことになるのではないかというようなことも考えられたのではなかろうかと思います。そして余裕が若干生じたようなときには、国際的な環境が、通貨を金に結びつける交換性というものに対して消極的と申しますか、そういう風潮になってきて、国際協調という点から考えて、日本が積極的にドルを外準の中に入れる努力をするというのには適しない環境になってきた。これが率直な経過であったと私は思いますし、当時の政府のとった態度は、私はそういう意味で、それなりに当時としては無理からぬところであった、よく理解できるところである。私は当時を振り返りながら、その当時の政府のとりました、あるいは大蔵省、日銀のとった態度というものは是認される、かように考える次第でございます。
  43. 塚本三郎

    塚本委員 そのことを私は否定しているわけじゃないのです。しかしそれとともに、ようございますか、所得倍増という形だけで進んできて、金はたまるけれども国民生活は置いてきぼりを食うのです。物価が高くなり、生活は依然として楽にならずに、勘定だけが大きくなっていくのです。だから、金の保有も必要なんですという実質的な立場から、野党の書記長さんたちが叫ばれたはずなんです。だから、それ以外にしょうがなかったというのではなくして、それも一つの方法でしょうが、しかしながら、余裕のある限り、あるいは多少無理をしてでも、国民生活を向上するために持ちなさいという声というものを、どうしてすなおにお受けにならぬでしょうか。全然そういう余裕がなかったということじゃなかったはずです。余裕がなければ、そんなばかなことを各党の責任者がおっしゃるはずがないし、その当時を見ても、二十億ドルの上下という状態からやっと三十億ドルに手が届いた。二十一億から二十二億になれば、御承知のとおり金融をゆるめて、十七、八億になって締めるというような、二十億台の上下のときから三十億に至らんとする状態であったのです。だからこそ少しは金にかえておきなさいということを叫んだ。その声を無視して、無理からぬことであったと言う。やはりその御反省がなければ、これからのドルを握るところの政府立場で対処のしようがないからお聞きしているのです。もう一ぺんお答えいただきます。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、私はその当時を振り返って、当時としては、せっかくの御要請ではあったけれども踏み切りがつかなかった状況であった、当時の政府としては無理からぬところであったと理解しておりますが、当時、野党の御提案になったことは、現在の時点から見れば見識のある御意見であったと思います。
  45. 塚本三郎

    塚本委員 すなおに答えていただきました。このことを踏んまえてみますと、これからもまたそういう態度を持っていただきたいということが、私どもの政府に対する希望であり、かつまた素朴な国民の要求だから、そのように申し上げるわけでございます。  一体、日本がこれから一億の国民の生活と産業をささえるために必要な外貨の適正量というものは、どれだけあったならば商売としてほぼ満足なのか、この外貨保有の適正量がどれくらいかということをお聞きしてみましょう。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在において、百億ドルが適正とか五十億ドルがいいとか、これはにわかに判定しがたい問題であると思います。先ほど来お話の昭和三十六年当時でございますか、あの当時の二十億ドル台の状況では、当時の貿易の規模等が現在からは比較にならず少なかったわけでありますけれども、しかし当時としては、外貨準備が十分ではなかったという判断に立っていたわけでございまして、今日のような状況からすれば、それを前提にすれば、金をもっと持っておけばよかったかなという点において見識のある御意見であったということを申し上げたのでありますが、これはやはり、あの当時の状況でいえば、適正外貨保有量としては足りなかった。あるいは先ほども申し上げましたけれども、ちょうど多少余裕ができたと思われるころには、むしろ各国の通貨で金買いをやるということは、お互いに自制し合うべきであるということが同時に国際間で申し合わせられたというか、了解し合われた。ちょうどこの時期がずれたような関係もございまして、対内的、国際的に、せっかくの御提案ではあったけれども、当時としては実際問題としてもできにくかったのである、こういうことを申し上げたわけです。  そこで、現在のような貿易の規模で、輸出三百億ドル、輸入が二百何十億ドルという時代において、適正な外貨の準備がどのくらいあればいいかということは、これは幾らならいいかということはなかなか言い切れない。これは学説も御承知のようにいろいろございますし、そういうようなときに、なかなか微妙な問題でもあって、私としては、はっきりと何億ドルなら十分であるということは申し上げかねます。
  47. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣、勘違いしておいでになる。三十六のことを私、申し上げておるんではないのです。一九六八年、四十二、三年のころのことを申し上げておるので、すでに所得倍増がある程度の実験済みで、生産はふえたけれども国民生活は依然としてそれに見合うだけのレベルがアップできなかった、そういうときのことで、三十五、六年はやはり二十億ドルですよ。しかし、私の言っている六八年当時は、もう三十億ドルに迫ろうとしておるような、たしか当時だと思っております。だからその当時のことを私は申し上げておるのです。  しかしまあいいです。そのことをこれ以上論じようとは思いませんけれども、それではドルというものは一体何でしょうか。これは日本にとっては通貨なのですか。貿易の決済手段として必要な量がどれかと聞いてみたら、一がいに申し上げられませんという話でしたが、ドルを財産としても勘定しておいでになるのでしょうか。一体ドルというものは、日本の国家と国民にとってどういう品物でしょうか。どういう物体でしょうか。大蔵大臣立場からお答えいただきましょう。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、先ほど申し上げましたように、通貨としてその価値、信認については問題が非常に起こっておるわけでございますけれども、国際的な決済の手段としての、通貨としての役割りはりっぱに存在しておる。そしてこれが信認回復されなければ国際的な不安が続くだけだということで、この信認回復にはアメリカ自身もうんと頭を切りかえて努力すべきである、それから各国もこれに対しては協力を惜しむべきでない、こういう国際的な一生懸命な会議が行なわれているというようなことも、これはとりもなおさず、ドルというものが現に国際的な唯一の基準的な決済の手段であるからこそ、こういう努力が払われているわけでございますから、りっぱなこれは通貨であり、かつ、国際的な決済手段であって、十分な役割りを持っておるものである、こういうふうに考えます。
  49. 塚本三郎

    塚本委員 通貨であり決済手段であることは、再三、もう一時間近くお聞きいたしました。私も寸分もそのことは疑っておりません。だからこそ、資源のない一億の国民が、満足とはいかないまでもある程度の生活がささえられておることも、このドルによってでございます。しかし、通貨であり決済手段ならば、通貨であり決済手段の範囲内で持っておればいいことではございませんか。それを余分に日本がどかっとため込んでおるから、通貨としての機能が麻痺しておるのじゃございませんか。日本とドイツこそが、通貨であり決済手段であるのにかかわらず、財産のようなつもりになってがっちりとこれを押えて動かなくなっておるからこそ、ニクソンはおこって、逆に不渡り手形のドルのたれ流しを無責任にやってよこすという形になるのじゃありませんか。必要以上のドルというものはアメリカに返してやって何らかの物にかえていくなり財産として持っておって、いわゆる通貨としての機能は通貨の機能として生かしてやることが、日本の国際的な責任じゃないでしょうか。それを生かしてやらずに、日本とドイツだけがため込んでおるところに、実はニクソンの怒りがあり、結局は上を向いて吐いたつばで、日本とドイツが困っている形になるのじゃないでしょうか。ドルとは通貨であり決済手段なんだ、それならそれで、財産ではないというようにはっきりと割り切ってこれに取り組む必要があると思いますが、総理、どうでしょうか。
  50. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 やはり日本が持っておるドル国民の財産であるということは、もうこれは当然のことでございます。これはもう汗の結晶であります。ですから、観念的な問題をちょっと申し上げたいと思いますが、第二次大戦前までは非常に富の偏在があったわけでございます。あなたが先ほど御指摘になったように、アメリカには世界の保有の金の七割以上が集まったわけであります。だからアメリカも、各国が協力をしなければわれわれもしかるべき手をとりますよということを言っているわけです。アメリカアメリカモンロー主義に閉じこもったときには、金の七割を保有するようになったわけでありますから、アメリカが縮小均衡路線というものを前提として、アメリカは域内経済で鎖国政策をとりますよということになったら、これはアメリカドルが還流し、必ずドル価格は上がるということは事実でございます。しかし、それは世界の平和維持のためにもならないし、第一、南北問題解決ということは、全くそこでもってすべてゼロになってしまうわけでございます。  また、特に西ドイツや日本のように、対米貿易が大きいのでありますから、アメリカ日本商品に対して課徴金のうんと高いものをつくったりすれば、ドル信認は上がりますし、日本が持っているドルも価値は上がりますけれども、しかし、日本が望ましい国際経済の拡大均衡を保持してはいけないわけでありますから、やはりアメリカに対して、赤字国としての責任を負わなければならぬと同時に、黒字国である日本やその他の国々も、ドルをささえるためにお互いに協力をしましょうと、こういう持ち合いになっていることは事実でございます。  これは、地球上に住む人間はどんどんふえていくわけでありますから、地球上でもって動く貨物は多くなってまいります。少なくはなりません。そうすれば、一定の産金量しかない金が決済手段になるはずはない。ですから、一九四五年、いわゆる二次戦争を終わったことを契機にしてIMFがつくられ、世銀がつくられ、第二世銀がつくられて、そのときに、基軸通貨として、決済手段として世界に通用できるものは何かというと、ドルしかなかったわけであります。ドルとポンドがございましたが、イギリス経済のその後の状態において、いま流通するものはほとんどドルだけになってしまった。しかもその基軸通貨にかわるものというのが、十年前からいろんなことをいわれておって、ドルだけに要求をしておられても困るので、何らかのことを考えようというのでつくられたのがSDRの制度であることもまた事実でございます。だから、基軸通貨というものをつくりながら国際流動性を確保しなければ、好むと好まざるとにかかわらず世界の貿易は縮小均衡に向かう、そうすれば平和は維持できないじゃないか、こういうことであったわけでありますが、しかし、長いこと一オンス三十五ドルという金価格の兌換を停止をしたというところに問題があります。問題がありますが、それかといって、いま申し上げたように、アメリカだけにその責任を負わせておると、アメリカはみずから門戸を締めれば自動的にドルの価値は上がりますが、困る国はたくさんあります。日本は課徴金を取られるだけでももうたいへんなことでございますから、そういう意味で、しかも日本だけではなく、世界の国々全体がやはり基軸通貨として、金との交換性はなくなったけれども、しかし基軸通貨としての作用はなしておるわけであります。  だから、そういう意味で、黒字国の責任だけを追及しないためには、一部でもドルの金との兌換をはかるようにしてもらいたいということが、きのうあたりのヨーロッパの会議でも要求されているわけです。しかし、アメリカとしては、ドルを守ることは、アメリカだけではなく君たちも全部お互いが共通の利益を守ることであるんだから、という政治的かけ引きがあると思います。ありますけれども、私は結論的には、アメリカというものは必ずある部分の金の交換というものを行なうと思います。行なうかわりには、アメリカ責任だけではなく、やはり主要工業国、特にドルを保有するような、工業力の非常に強い、生産力の強い国々も全部相談に応じて、そして基軸通貨としてのドルを守るような具体的な政策を立てるということに、必ずまとまっていくと私は思うのです。  ですからそういう意味で、金にかえなかったというけれども、それは愛知大蔵大臣が述べましたけれども、やはり日本状態としては、ドル価値を維持するということに対して世界の国々が協力をしていく、そしてアメリカに対しても基軸通貨としての本来の使命を回復させるように、両方で努力をしていくことによって、新ラウンドも守れるし、日本の利益も守れていくのである。だからどんな場合でも、今度の一〇%切り下げや変動相場制移行ということが、ドルが紙くずになったんだというような議論というものはなすべきではないのではないか。そうでなければ、何で一体ドルにかわる基軸通貨をつくるのかと……。
  51. 塚本三郎

    塚本委員 りっぱな財産ですと総理はおっしゃったのですが、りっぱな財産だと私も承知しております。そのりっぱな財産を守らなければならぬ責任総理御自身にあると思うのです。汚職や疑獄や強盗に取られたよりも、けた違いの多くの財産がごそりごそりと減っていってしまって、財産を守らなければならぬ立場総理大蔵大臣、夜も眠られず身の細る思いであると思いますが、そうお思いになりませんか。
  52. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御承知のとおり、金との兌換をドルはこの間停止しただけでございますが、日本はもう戦後ずっと金兌換を停止しておるわけであります。日本の円は、結局金兌換を停止しております。しかし、日本の円も国際通貨としてだんだんと流通をするようになりました。それはどういうことかというと、兌換券ではありませんが、国際的に見た国際競争力、日本の生産力というものが円の裏づけになっておるわけでございます。ドル裏づけというのはどういうことかというと、アメリカ経済が日本経済のように、まあ私の考えたところからいうと、非常に強い経済になりつつあるし、アメリカの実態というものは、私は批判しておるようなものではないし、ニクソン大統領が言ったように、国際的なシェアよりも国内的なウエートを高めればドルの価値は直ちに維持できる。私は、十年前にケネディ大統領がIMFの総会で演説したことは、失礼な演説だなと思いながら聞いていましたが、しかし、ドルはお互いが守らなければならないのだ、アメリカだけに守れというなら直ちに守るが、しかし、それは他の国に相当影響がありますよということを述べたのでありますが、そういうことが今日ぶつかっておるわけでありますので、やはり日本も、みずから保有しておるドルを守るというだけではなく、やはりこのドルの価値維持をはかっていくということが、日本のこれからの経済的発展や、これからの国際的な発展をはかるためにも、どうしても不可欠の問題であるということを考えておるわけであります。
  53. 塚本三郎

    塚本委員 もちろん、私はドルと金と円の三つだけに取り組んで話を進めておりますので、別に価値を守れということだけに力点を置くわけじゃございません。そういうお札の価値がごそりごそりと減っていっても、国民はあれよあれよとして見ておるだけで、総理大臣としては、国家と国民の財産を守る立場で、身の細る思いがしませんかと私は聞いておるのです。もっとどんと物を買ってあげて、そしてドル世界じゅうに、にせの通貨とはいわぬでしょうけれども、裏づけのない通貨を乱発して生活しておるアメリカが、日本に対して債務国ですよ、そのアメリカが、道楽むすこのような状態で、そして世界一豊かな、世界一強い、そして世界一やりたいことをしておって、債権者である日本国民がどんな生活をしておるか比べてごらんなさい。にもかかわらず、そのドルというものを国民生活に使っていただけばともかく、持っているうちにごそりごそりと減ってしまったならば、その日本の財産を守る総理大臣として、当然痛さを感じていただかなければなりません。  だから何も金にというだけではありません。しかし、しいて言うならば、かつてドゴールが、御承知のとおり、シムカやあるいはまたマシンブルを取られたときに、おこってジョンソンとけんかをしたことがあったはずです。そのとき、いつでも金とかえますと言ったから、彼はそのときからゴールドラッシュをやって、国家の財産といわゆる国民の財産を擁護するために体当たりで、北京やモスクワと結んでまでして国民の財産を守ることに狂奔したのです。そういうドゴールの姿勢と、いま田中総理の姿勢と比べたら、当面これから商売がうまくいかなくなることは困る、これはだんなさんの立場です。しかし、奥さまの立場になってみるならば、一家にたとえて言うならば、まず、もうけてかせいできてくれたところのその財産を金にすることができないならば、何か財産にかえておかなきゃという気持ちになるのは当然じゃありませんか。そういうような素朴な国民感情というものが、ともかく土地に移ってしまい、株に移ってしまい、商品投機に移り、そしていまや書画、骨とうにまで移ってきてしまっておるという状態になっております。その根本は、商社がけしからぬとおっしゃる前に、抱かれておるところのドル自身をやせ細らせてしまって打つ手がなく、これからの商売だけを考えておるときに、世の奥さまたちが、財産保全の道に狂奔するのはあたりまえだと思うのです。同じように、総理がそういう立場だからこそ、国民が、お金というもの、円やドルに対しては信用がならないとして、換物思想に走っておるんじゃありませんか。そのことは、私は決して別々ではないと思います。  もともと、一オンス三十五ドルできめたときには、金との交換性約束せられていた。金みたいなものは、御承知のとおり、ないわけはないのです。世界じゅうどこを見てもあるのです。ただ、一オンス三十五ドルでは、コストが高くなるからできないだけのことです。太平洋や大西洋の砂だって、そこから幾らでも金はとれるはず。無尽蔵にあるけれども、コストが高いからつくらないだけでございませんか。百ドルもかけるなら、アメリカの国力からするならば、幾らでも金をつくることはできるはずです。そういう立場に立ったら、アメリカに対してもそのことを堂々と、責任を果たしなさい、そのかわり日本も、ため込んでおったドル、財産として通貨をしまい込んでしまい殺したことは、日本としても反省をいたしましょう、うんと物を買ってあげましょう、こういう態度で、通貨通貨、財産は財産とはっきり区別する。だからこそ日本の適正外貨保有量はどれだけかと私は聞いておるのです。そのことをはっきりとけじめをつけていかなければ、ドル通貨として世界に回ってきませんよ。だからこそ、自分のところでやけくそで、インチキ通貨といわれるようなドルを印刷をしてシムカやマシンブルを買うものだから、金の裏づけなきお札でもって大事なドゴールの誇るフランスの企業を買い取るから、彼はおこって金にかえた。これがゴールドラッシュでしょうが。  そう考えてみたときに、日本はいかにも、国家と国民の財産を守る立場から、私は一つの金のことだけを言っているのではなくして、やはり一国の国民の財産というものが減っていく姿に痛みを感じていただかなければならぬと思います。どうでしょう。
  54. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も、大ざっぱな考えでありますが、輸入代金の三カ月分というと七十億ドルぐらいになる。外貨債務が、外国の銀行から借りているものが九十億ドルぐらいあります。これは全部返せというわけじゃないでしょうから、半分に、三分の一にしてもらう。まあ百億ドルぐらいあればいいなというのが、しろうと勘定では大体言えるわけですが、二百億ドルあるというのですから、半分で間に合うということも言えるわけであります。だから、あなたが言うとおり、特定の国にドルが過剰というような状態で保有されることは国際流動性が阻害されることであって、開発途上国などは非常に困るわけであります。  そういう意味で、まず一つには、国内でこれだけ国民努力をしてためた外貨でございますから、国内の生活優先ということにまずやらなきゃいかぬ。物価を下げなきゃならぬというのでありますから、国内的にはいろいろな問題はありますが、しかし必要なものは備蓄をするとか、国際変動というものはこれから非常に大きくなりますから、そういう意味でまず物を買う。物価対策としても、備蓄すれば倉庫料もかかるしというような勘定ではなく、これはもうやはり思い切ったことをしなければならぬと思います。  もう一つは、国際機関に対する協力ということで、いま世銀、年間二十億ドルの貸し付けに対して約四分の一は日本が引き受けておるわけでございますから、こういう国際機関に対しての協力を大幅に拡大をしていくということが必要であります。  もう一つは、開発途上国に対して、これは日本に対する原料供給国でもあり、生活レベルが上がれば日本からの工業輸入国にもなるわけでありますし、そうしなければならぬわけでありますから、そういう国々に対する援助を拡大していくということで、何しろ二年前は四十五億ドルしかなかったのが急に二百億ドルになったというので、どうも持ったこともなかったものを二十五年ぶりで持ったというところにも問題があるのですから、そういう意味で、これからは、日本が国際的にほめられるような状態、信頼される日本、こういうことでひとつこれらの問題に対しては積極的に対処をしていく好機である、こう思います。
  55. 塚本三郎

    塚本委員 それがすなおに私は聞きたかったのです。それが国家と国民のために総理から私は聞きたかったのです。大蔵大臣がおっしゃた、これから金との交換、極力強力にやっていただかなければなりません。そして、国民の持っておる財産、国家の財産を減らさないように努力をしていただかなければなりません。そういう形で将来に向かって、アメリカ信用回復と言いますけれども、現在、資源輸出国アメリカでさえも赤字が続いておるとき、十年先にはばく大な資源輸入国に変わるアメリカ信用を置くことができるでしょうか。そういう状態だからこそ、ニクソンはいら立ちの気持ちから八つ当たりにやっているじゃありませんか。そのとき日本、幸い持っておりますところの膨大なドルというもの、これを日本国民の産業と生活の中に、長期的展望でもって、毎年の売り買いじゃなくて、少なくとも百億ドルぐらいはアメリカに渡して、そのかわりこれに見合うだけの日本にないものをくださいといって十年間ぐらい先まで約束をするくらいの勇気があって、そのかわり十年間はこれを保証しましょうという形にしておかなければ、ドルだけがどんどんと価値が減らされて、これから毎年買うごとに何十%かが木材によらず、原料炭によらず値上げされていってしまったら、せっかくのこれは一銭の利息もつかずに、向こうさまだけがどんどんと上げられて、これは全くやられっぱなしになるのです。だから、そういうふうに、いま総理のおっしゃったことをもっと具体的に強力に進めて、そうしてドル世界通貨として還流をしていただくということと、幸い資源のない日本の国がそれを補うということと、両々相まっていかなければならぬと私は思います。  いま御承知のとおり、四月一日から金が自由化されるということで、日本の商社はロンドンやチューリッヒにわんさと押しかけておると週刊誌などは報道いたしております。おそらく九十ドルぐらいだといわれております。少なくとも一オンス三十五ドルで買えたときのあの一昨年の八月十五日までと比べていうなら、三十五ドルで買えたものが四月一日からは、ロンドンに九十ドルぐらいで買い付けに行くというようなすさまじい姿だと報道されております。一体、それだけでも国家の持っております財産がどれだけ目減りしたかということはおわかりいただけると思うのです。将来に向かっての総理の展望はよろしい。しかし、国民の財産は減らしてすまなかったということばはまだ聞いておりません。いかがでしょう。
  56. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは先般も申し述べましたが、数字の上、計算の上では、確かに減っておるのです。減っておりますけれども、円価値がそれだけ上がっておるということは事実なんです。先ほども申し上げましたが、兌換券でない円というものがわずか一年ばかり、一年二カ月ばかり前には三百六十円払わなければならなかったものが、少なくとも三分の二で入ってくるのですから、ですからそういうものを、あなたも御指摘になったように活用しなければ、物価も下がらないし、日本は好むと好まざるとにかかわらず原料輸入国なんです。これは全く原料の輸入国であって、原料を持つ国と持たざる日本が自由の市場で競争しなければならぬというのが宿命であります。ですから、そういう意味から考えてみて、これからいかに持てる外貨を有効に活用するかということで、これは国民に対して、国民がほんとうに働いたものを十分恩恵を受けられるようなことができるわけでありますので、そういう意味で、ドルが一〇%切り下げられた、それから変動相場制に移ったということが、これが罪悪であって、たいへんな損害をもたらしたものだ、どこかの島を一つ取られてしまったのだというようなものとお考えにならないでいただきたい。影響するところはありますから……。
  57. 塚本三郎

    塚本委員 総理、違いますよ、それは。確かにドルとの換算においてはそうです。現物で買うときドルで実は高くなった。円に換算したって高くなってくるんですよ。たとえば、いつか元国務大臣をしておられた方がルノワールの絵を一枚盗まれたという話をされたとき、その一枚の絵が一千万円と報道されて国民は驚いたことがあったんです。いま御承知のように、デパートに行ってごらんなさい。一枚一千万円以上の日本の絵が、一けたじゃないんです、二けたですよ。一枚ともかく一千万円以上する絵をかく画家は、日本にざらにいるんですよ。これで円の価値が上がったといえるでしょうか。円の価値は下がっておるんです。だから、ドルとの関係が上がっただけじゃなくして、円自身だって物というものと比べてみたときに、それは下がっておると見るのがほんとうじゃありませんか。
  58. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 まあ反論するわけではありませんが、やはりものを分けて考えていただきたい。これは西ドイツにおいてもドルはあのぐらいたまっておりますけれども、インフレ傾向にある。年率七%ないし八%ということ。それは国内の問題であって、しかも国民の持つ力や財産やいろいろなものもあります。また政策的に見て、換物思想というものがびまんしていく過程において、そういう現象が起こるということはこれはあります。いま日本において起こっておること、何でもかんでも売り出せば、古本でも何でも何万円、何十万円するのだというような、そういう絵画を買いあさっておるというようなこと、また国際的に見て金の価格ということになると、確かに御指摘のような面があるかもしれませんが、経済活動の面でドルが依然として世界基軸通貨の役割りを果たしておる限りにおいて、少なくとも円価値が上がったということに対して、日本国民全体としては優位な立場になるということはもう申すまでもないことであります。  これは、あなたですからざっくばらんにひとつ聞いていただきたいのですが、日本の円が戦後ほんとうに三百六十円のときに、実勢六百円というようなときでありました。そのころのインフレの上昇傾向というものがどういう状態であったかということ。ほんとうにやはりいまの状態から、これから五年、十年というものを展望したときに、これは政策が悪ければ別であります。これは政府が行なう政策というものに非常にウエートがかかるわけでございますが、これはアメリカのように、ドルが切り下げられる場合はアメリカとしてはたいへんでございます。しかし、少なくともいまドルと円との関係においては、日本がこれを活用しないで死蔵しておるという先ほどのあなたの言になると、これはたいへんなんですが、活用、運用の妙を得れば、これは国民は必ずプラスの面というものが確保されるわけでありますので、かかって政府の政策いかんだといわれるかもしれませんが、政策は国民に迷惑をかけないように、国民がほんとうに働いてこれだけ国際競争力を培養し、円の価値を強めてくれたわけでありますから、そういう面に対しては、その恩恵があまねく全国民に及ぶように努力を続けてまいりたい、こう思います。
  59. 塚本三郎

    塚本委員 それは、おっしゃるそのことはもう私は全部認めておるんです。認めておるにもかかわらず、いわゆる通貨としての必要以上のものは、やはりこれは死蔵しておるような形になっておる。そのことを、だんだんと目減りしていくその姿を見たときに、一刻も早く将来に向かってこれを使っていかなければ、国民の気風が、そういう形でお札というものは、円によらずドルによらず、たよりにならないものなんだというような形になっていってしまっておるということだから、私はそのことを厳に注意していただきたい。  時間がなくなりましたので、このことを強く要望いたしまして、最後に、私は商品の問題で一つだけ痛切に感じたことを申し上げて、所信をただしてみたいと思います。  急激に特定の商品が暴騰を来たしたとき、民社党はいち早く政府に対してこのことを、抑制の政策をとれと官房長官を通じて総理申し入れをいたしたはずでございます。申し入れをしただけではなくして、これは商社のいわゆる買いだめや売り惜しみに一番のポイントがあるのではないかということを見定めまして、かつて民社党としては例がないほど、三十数名の国会議員が六つの商社に、それは二時間ずつ二日間にわたりまして実情め調査に出かけました。そしてこれに対して、立法措置をもあえて辞さないという政府の態度を受けて、われわれもともかく早くやってちょうだいということで督励をしたことも、大蔵大臣は御承知のはずでございます。  そこで、私どもが調査をしました、その心の中にぴんときたことを一つだけ申し上げてみますると、きのうもここで取り上げられた包帯をはじめとする特定の品目は別にして、今度の暴騰の一番大きな原因は、何といいましても政府が需要に対する見通しを誤ったということ、このことが一番大きな原因で、やはり自由経済におきましては、いわゆる需要に対する見通しを立てて、それに必要な生産と輸入の指導を行ない、そして流通に対する調整を行なう、この三つの機能が有効に働いてこそ、自由経済というものはすくすくと伸びるものだと思います。この点が完全に失速状態になった。木材を調べてみると、商社の諸君が言います。こんなに急に需要がふえるとは思いませんでした。そしてあわてて手を打って、船を用船して持ってこようとしても半年かかるのです。こういう状態で、民間の建設は五〇%ふえてしまっておるんです。ところが、動いておりまする長期契約八〇%、二〇%ぐらいが自由に売り買いのできて市場に流れておるもののときに、総需要の五〇%もふえてしまえば、当然のごとくにこの機能を失なってしまうわけでございます。そのとき、にたりと笑って各商社が、どこの段階を問わず末端まで悪乗りをして、こういうような形で、何倍という価格になってしまっておる。商社の諸君に言わせるなら、おれたち損したって政府は何も補償してくれやせぬのだ、だから自分たちサイドで、ドル・ショックでこうなってきたんだから、下がったというより、そういう見通しでしか輸入はできないんでございますというふうなことや、需要の約束を取りつけておいてからしか実は輸入ができない、こうなんでございます。そのとき政府だけがいつもに似合わず、商社が悪いと、こうきたものでございます。いつもならば逃げ回ってなかなか回答を出していただけませんが、今度に限ってはばかに手回しよく、商社をいわゆる各党一致して攻めたとき、政府だけは逃げを打たれるかと思ったら、意外に積極的に、議員立法でやりましょうやと、こうきたものでございます。  しかし、つついてずっと調べてみたならば、住宅に対しましても、銀行からのいわゆる住宅ローンだけでも二五%ふえているんだから、当然こんなことは見通しを立てていかなければなりません。政府だって、ドル・ショック以来の景気を回復するために、当然のごとく大型予算を組んで、公共事業のおくれをこの際一挙にといって、公債まで発行せられたその気持ちは十分理解すべきでしょう。しかし、それならばそれで、鉄の値段やセメントの値段が暴騰するならば、早くあの、御承知の独禁法における適用を一刻も早く除外して、早く増産体制にかかれということの御指導があってしかるべきじゃありませんか。そういう政府の需要に対する見通しと、そして供給に対する指導を誤った。このことをすなおに御反省なさって次の対策を立てなかったら、このままの状態でいきますならば、自由主義経済は自殺行為、そういうところまで行ってしまうと思います。  私は、今度の商品高騰、特定の品物に対してはもちろん買い占め、売り惜しみのけしからぬ行為、こういうものが随所に出ていることは、週刊誌がいま痛烈にこれをあばいております。しかし、底に流れる大きなものは、狭くなったところに悪乗りをしておる、こういう形が各級の流通機構の中にいわれるわけです。だから、私はこの点の政府責任がきわめて重大だ、このことをいたく胸に秘めて将来に対処していただかなければならぬ。このことが私は一番大きな柱だと思います。総理及び大蔵大臣、そしてまた担当の大臣から御所見を承って私の質問を終わります。
  60. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私からまとめてお答えをいたしますが、過剰流動性というような反社会的行動に走るようなおそれのあるものに対しては、数字を見てからなどということではなく、政治の責任で締めるところはぴしっと締めてまいりたい、こう思います。同時に、それが中小企業やまた政策的に必要なところまで締まるというようなことがあっては困りますから、こういう問題に対しては十分な配慮をしてまいりたい、こう思います。また生活必需物資や、当然予算や金融措置によって考え得るものがあるわけでございますから、そういうものに対しては行政指導を十分やってまいりまして、少なくとも国民の間に物は上がるんだ、買いだめをしておけばいいんだというような考えじゃなく、買いだめをしておればドルも下がり円も上がったんだから、必ず下がるんだ、こういう観念に切りかえてもらうように、政府も十分な施策をやってまいりたい、こう考えます。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 多くを申し上げませんが、ただいま総理のお考えのような方向で具体的に、金融政策はもちろんでありますが、たとえば関税政策あるいは財政措置、あらゆる面におきまして実効のあがるようにいたしたいと思いますが、特に御指摘がございました、物の需給関係などについての見通しが甘いという御指摘につきましては、大蔵省立場でも今後ますます産業官庁と、いままでも緊密にやってまいったつもりではございますが、御指摘の点については十分協力関係を緊密にいたして、各省の施策が総合一体的になるように、一そうの努力をいたしたいと思います。
  62. 塚本三郎

    塚本委員 強力に実行していただくように希望いたしまして、時間が来ましたから終わります。
  63. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、美濃政市君。
  64. 美濃政市

    美濃委員 私は、円対策商品投機、最近差し迫っておりますえさ対策などにつきまして、若干の質問をいたしたいと思います。  まず、最初に総理大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、農林省が出しております「農産物需給の展望と生産目標の試案」この中身は、総理、全部御存じですか。
  65. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 詳細にはここで私が申し上げるほどは承知をいたしておりませんが、所管大臣からしかるべき報告は受けております。
  66. 美濃政市

    美濃委員 最近、円対策から、総理は農産物の自由化あるいは輸入量の増大を検討せよ、所管大臣は所信表明の中でこれは反対だ、こういう表明が行なわれておるわけですが、そこで私どもは、この農林省の出した「農産物需給の展望と生産目標の試案」というものは、中身の精細にわたれば多少異論はありますけれども、大綱としては支持できる案なんですけれども、どうも閣内不統一ではないか。同じ国会で、場所が違えば総理の言うことと農林大臣の所信表明とが食い違っておる。これはどういうことなんですか。
  67. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 農林大臣は、現時点においての所管の事項に対しての所信を述べるわけでございます。私も連帯して国会責任を負うておるわけでございますから、農林大臣が発言をしておることは理解をいたしております。しかし、私自身の考え方というものが最終的にきまるのは、閣議で正式にきまるわけでございますが、その過程においては、自由化ということに対して国外からもいろいろなことを求められておりますし、国益を守るという立場から考えてしかるべき国内対策ができて、しかも生活必需物資であるというようなものに対して安定的供給を消費者にはかるためには、自由化もやむを得ないという考えを私は持っておりますから、そういうことに対してすなおにここで答弁をするのは、これもまた当然だと思うのです。ただ、最終的に内閣として決定をするという段階におきましては、これは所定の手続を経るわけでございますから、その間において閣内不統一ということはないわけでございます。ものがきまらないうちには、この航空路線はこれでいきたいと思うというような考え方を私が持っておっても、所管大臣としては、きまっております方針からいうと、まだ航空路よりも鉄道でやるべきだと私は思いますというような、過程における議論というものは、それは当然食い違っておるというような感じでおとりになる場合があるかもしれませんが、ほんとうにそういうことになると、きまったものでないと全く申し上げられないということになるわけでございます。  御質問の中では、個人的意見でもいいから述べなさい、こういう御質問もあるわけでありますので、一次産品に対するこれからの考え方ということに対して、これは第一次、第二次、第三次の円対策においても、もう閣議が決定しておることもございます。もうすでに何回も何回も決定しておることもございますが、しかし、国内的な体制ができない、また理解が得られないというような状態で、この方針が実行に移されないという場合もありますので、これは、私と農林大臣の発言というものを不統一というふうには御理解いただかないでお願いしたい、こう思います。
  68. 美濃政市

    美濃委員 ただいま総理の説明のような時点がある程度の期間ですね、短い期間、総理の見解と農林大臣の言うことが食い違っておる、こういう点が一時的な期間に、いろいろ国際情勢や何かで起こることがあり得るとしても、そう長くそういう精神分裂のような内閣では困ると思うわけですね。まず農民が不安で、最近、総理は御存じだと思いますけれども、全国的に農業危機大会というのが開かれております。こういう状況を見ても、総理考え方に対する農民の不安というものが、もう再生産の意欲を失っていくわけですね。いつ自由化されるか、輸入量が増大され、需給上どんと輸入されたりあるいは自由化されて、また国内でかなり厚い、それの影響を受けないような内政で措置をするということになれば、円対策にならないでしょう。いわゆる自由化はしたけれども、入ってくることを規制すれば同じじゃないですか。ですから、結局意図するところは円対策として、いわゆる日本国際収支に対して、相手方の国に対して物を買いますという中から、日本の農業を破壊するような物が入るということが一番問題なわけです。自由化だとかそういうものは手段であって、問題はそこにあるわけです。それは、そういうふうに大切な国民食糧の国内自給というものを不安におとしいれないように、言うならばこれを煮詰めた、私どもも、これも先ほど申し上げたように、中身には多少の異論はありますけれども、大綱としては、まあまあこういう試案を出して農政を展開していくということはいいことではないか。大綱はこれを認めておるわけですね。これを閣議で決定して、いつまでも、私は私の意見で言っておる、所管大臣は所管大臣の意見でしょう、決着をつけるのは閣議でやります。決着をつけるのは、その大綱を早く決着をつけて、いつまでも農民を不安におとしいれないようにするのが政府責任だと思う。どうですか。
  69. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 自由化は国際的世論でございまして、日本も例外たり得ないことはもう申すまでもないことでございますが、しかも、元も子もなくしてしまうようなことはできるわけはございません。やはり国民生活、国民というものを主体的に考えなければならぬことは申すまでもないわけでございまして、私が間々申し上げておりますのも、国内的な対策が十分できてそうして農民の理解も得られるような状態ということができれば、自由化方針も進めざるを得ないと思います。  いま、タイで反日感情というのがございますが、これは十数年来、タピオカの問題でもってタイと日本の問でやっておるわけであります。ですからそういう問題、そうでなかったら、向こうからもらうものはないのだ、こういうことでございますし、中国大陸から入る生糸があまり安く入ってきては困るというので、特別な立法措置も行なわれたわけでございますが、しかし、生糸の取引所を停止しなければならないような状態にありましたので、きのうは関税の引き下げを閣議で決定をいたしたわけでございます。でありますので、生産農民というものは十分守らなければならないし、しかも、同時に長期的展望に立っても、ここまでは政府はしかるべき処置をいたします。いわば理解が求められないで一方的にやってしまうなどということが、現在できる状態でないということは、御理解いただきたいと思います。
  70. 美濃政市

    美濃委員 いまのお話をこれは繰り返しますが、非常に生産意欲が減退してきておりますから、国内自給の生産が減退するということは、日本経済にゆゆしき問題でありますから、もう一歩進んで、不安が起きないだけの農政の基本というものを、やはり田中内閣としてきちっと確立する必要がある、こう思います。ですから、その点をいずれ別の機会に所管大臣に伺うけれども、所管大臣は、この間のお話では三月中にと言う。大臣がそう言ったので、私のほうからは、三月中に田中内閣としての農産物需給に対する将来の方向というものを明示するものを出してくれ、こう要求しておるわけであります。ですから、総理大臣もそれを踏まえて、今月中に、農民が安心できる、これだけの量は国内の農民に生産を頼むから励んでくれと、こういう農政を展開することをここでもう一歩進んで、ひとつ総理の御意見を承りたいと思います。
  71. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私も豪雪、単作で農業以外では生きられない地帯の農民のせがれであります。私のところからあなたの選挙区へもたくさん移っておりますが、これは全部米をやっておるわけであります。そういう意味で農民が大切である、農は国の大本であるという考え方というものは、私も失っておりません。また、農業地帯、一次産品地帯がほんとうに日本の緑や自然を守る唯一のものであるとも考えておりますし、ほんとうに心のふるさとであり、魂の安息所である、こういう考え方、農政というものに対して国民に不安を抱かせるような政治というものはいい政治ではないという考え方を、政治の基本といたしておりますので、私自身もできるだけ早い機会に確固とした、農民に不安をもたらさないというような状態を早く決定いたしたい、こう考えます。
  72. 美濃政市

    美濃委員 次に、お尋ねいたしますが、総理は、たしか総理大臣になる前だと思いますが、農地法は廃止したほうがいいのじゃないかという意見を出されたことを私は聞いておるように思うのですが、あるいは間違いかもしれません。しかし、起きてきた現象は、一例をモチ米にたとえて申し上げます。投機の関係で、あらゆるものに非常に悪質な投機が伸びてきておることは、この委員会でも繰り返し質疑が行なわれておると思うのですが、その中で、たとえばモチ米については食管制度からこれをはずして、政府の管理流通から買い手市場に移したわけですね。買い手市場制度の軌道に乗せますから、社会党はずいぶん抵抗しましたが、これを物統令からはずして、消費者に選択権を与えるという名目で胸を張って自主流通というのを始めた。しかし、結果はどうですか。今日あらわれておる現象全部が投機だとは申しませんが、一部モチ米には買い占め、投機が働いて、いま市場で六十キロ一万四千円、一万五千円でしょう。土地については、やはり農地法をゆるめて、今日私の推定ですけれども、全国で百万ヘクタールくらい原野、それから里山、開拓すれば草地にもできるような条件の農地に接続しておる山です。農地法に拘束されておる農地にはちょっと手を出せませんが、そういうものが買い占められておる。私の推定ですが、北海道で大体七万ヘクタールくらい買い占められたんだ。この間宮城県へ行ってちょっと聞いたら、二万ヘクタールくらい宮城県で買い占められた、こう言っている。全国はよくわかりませんが、そこらをずっと全国の地積に並べると、百万ヘクタールくらいの買い占めが起きたのだ。  そうすると、この買い占めは、まともに林業の生産をしたり、あるいは農地開発の橋頭堡にはできません。総理は御存じだと思いますけれども、たとえば米価の中で補償しておる地代ですね、これを逆算して地価を算定すると全国平均七万円ですよ。地代が五千円ですから、十アール七万円です。米価で補償しておる地代というもの、それから今度地価を逆算すると七万円。畑作物は全国平均二万五千円で地代補償が行なわれておる。国民の大切な食物を安定的に供給するためには、やはりあの自作農特別措置法で農地解放をやったときの原則に従って、農地というものは生産手段資産でありますから、原始価格でなければならぬ。それがくずれると、もう農業コストの一部がくずれていく。国際競争だ何だといったって、そこで大きな問題が起きてきておるわけですね。  そうすると、農地法をゆるめた、あるいは管理流通から消費者の選択にすることがいいのだ、時代に適応するのだといって、これはもう進めたわけです。今日あらわれておる現象というものは、失敗であるか成功と考えるか、こういう現象があらわれるのがあたりまえだと考えておるのか、どういうふうにお考えになっておりますか。
  73. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 方向としては、国民の嗜好に合うような選択的な拡大ということのために物統令からはずしたという方向は、私は間違っていないと思います。あと残っているものが一体何かということをお考えになればおわかりになると思うわけでございまして、方向としては間違っていないと思うわけでありますが、しかし、現時点におけるモチ米の不足などというものに対して、やはり食管会計の赤字ということだけで、もうぎりぎり一ぱい手持ち量があれば端境期には食いつないでいけるのだという考え方、一時食管会計の赤字というものが目のかたきのように論争されたこともございますが、私はやはり備蓄というものに対しては、食管の中でもっと考えなければならなかった問題だと思います。今度二万トンの食管の手持ちだけでもって一体いいのかというと、タイから一万五千トン入れなければいかぬというような問題、少なくとも私たちは農民の子でありますから、モチ米というようなものは、子供のときから、どこのうちでも二年、三年と持っておったわけでありますが、このごろの、やはりそういう安いものは外国から入れればいいんだというような単純な考えは、やはりとれないものであるということは、外国によっては、持っておっても出さない場合もあります。  そういう意味で、やはり主食、米に対しては、現在は食管制度でもって守っていきますし、欠配などが起こらないような状態であることは事実でありますが、モチ米の例をとってみても、いやしくも食管でもって、食管制度が厳然としてあるという限りにおいては、こんな問題が起こらないようにしなければならないということに対しては、もうじきに植えつけも始まるわけでありますから、そういう状態で、まずまず現状は十分把握をして、そして流通を円滑にするために最善の努力をすると同時に、来年からこんなことのないように、しかるべき措置をすべきだと考えております。
  74. 美濃政市

    美濃委員 失敗か成功かということについては論を避けておるわけです。少なくとも起きておる現象は好ましいとは考えていないと思うのです。ですからこういうことが起こらぬようにと、こう言うのでありますが、しからば、モチ米は単に例にとっただけですが、物統令からはずさぬで、管理制度を存続しておればこの現象は起きないと思う。どうですか、起きなかったと私は予測します。総理はどう考えますか。食管制度でやっておっても、こういう一万五千円だなどという騰貴が、一部介入した価格が出てくるとお考えになるか。食管制度であればなかったと私は思うのです。どうですか。
  75. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それはなかったと思います。なかったと思いますが、災いを転じて福となすということにはしなければいかぬと思いますし、やはり世論というものがありますから。先ほど私はちょっと申しましたが、全くこれだけ戦前、戦中、戦後、ほんとうに今日の日本の繁栄は、農民の犠牲の上にあるとさえ私たちも考えてまいったわけでありますが、それがあの当時、食管の赤字がちょっとふえるだけであのくらい論じられたわけであります。それで米がなくて画一、一律的なもの、選択の自由さえない、こういうような連日の世論に対して、あのようなことをもって報いたわけであります。  いずれにしても、方向としては私は誤ってはおらぬと思います。思いますが、しかし、きのうからも指摘がありますように、標準米が店頭にないとかいろいろな問題が起こっておることでもありますし、モチ米の問題は現に御指摘の状態があるわけでありますから、そういうものは、これから備蓄に対しての観念をもっと完ぺきなものにするということで、そういうことをすることによって食管の赤字が幾らかふえても、それは世論に耐え得るものだし、世論の理解も得られるものだ、そう思いますので、これは仮定の問題として万全の体制をとってまいりたい、こう考えます。
  76. 美濃政市

    美濃委員 万全の対策という表現ですが、モチ米は私は一例を申し上げておるのです。総理みずからも、食管だったらこういうことは起きなかった。これは改悪じゃないですか。食管であればこういう国民経済上好ましくない事象が起きるということはなかった、こうなるわけでありますから。ですから、これは単にモチ米は例にとっておるのでありまして、問題はモチ米だけでないわけですね。あらゆる起きておる事象に対して、投機が介入しない自給に対する政策を確立して、この自給に対する責任、投機が介入できない流通の体系、機構をすみやかに検討する必要があると思います。単に投機抑制の法律をつくって、法律で罰則を設けて取り締まるだけが政府のやる仕事ではないと思います。こういう問題が起きるとそういうことも必要ではあります。当然必要です。必要ですが、それのみで円滑にいくものではないと思います。ですから、すみやかに対策を立てるという基本的な方向をお伺いしたいと思います。どういうふうに投機介入が抑制できるのか。どういう新たな展望に立った政策をお考えになっておるか。
  77. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは、四十八年度におきましては、これから植えつけも始まるわけでありますから、少なくともモチ米というような、少数のもので投機におちいりやすいというようなものに対しては、食管で買い入れるもの、政府が保管し、常にいつでも機動的に放出できる量というものを拡大をするということで対処したい、こう思います。
  78. 美濃政市

    美濃委員 モチ米以外のものはどうですか。投機が介入してものすごく価格変動、国民経済上好ましくない事象、その他の流通に対してはどうです。モチ米はわかりましたから、モチ米以外の一般投機対象になっておる、投機が行なわれておる関係ですね。新たな投機の介入できない秩序があると思うのです。私は投機の介入できない方法総理になければ申し上げたいのですが、時間がなくてきょうは申し上げられませんが、それをやらなければならぬ。その方向はどうお考えになっていますか。
  79. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 米に対しては、投機が介入できないように現在なっておりますから、それに対しては十分対処できると思います。しかし、大豆とかいまいろんな問題が起こっておる問題に対して言及されておるのだと思いますが、これは国民生活の必需物資ということであります。こういうものに対して備蓄問題がいろいろあったわけでございますが、これは、これから自由化対策をもし行なうとすればという、そういう研究課題の中には、これは特別勘定を設けたり、不足払いを行なったりというだけではなく、やはり国内産のものは買い上げるとか、それから備蓄を行なうとかということでなければ投機の対象になり得るわけでありますから、そういうものもあわせて考えなければならない。やはり一定量の備蓄ということが考えられないと、これはもういま国鉄状態からいうと、石油がどうにもならないということでもございますし、それから海運ストが続けばこれはえらいことになるわけであります。そういうような外国で起こる状態によって、日本経済が混乱をさせられるというような問題がありますので、石油の備蓄その他十分考えておりますが、いままでは利息がかかるとかいろんなことでございましたが、そうではなく、やはり長期契約を行なうとかいろんな問題が考えられなければならない、こう思います。
  80. 美濃政市

    美濃委員 いまの総理の構想が、現実に具体化するのはいつですか。ことしの予算にもないし、法案も出ておりません。たとえば重要農産物はさらに政府の買い入れなり備蓄量を持つ制度にしたい、こういう予算も法案もこの国会ではちょっと見当たらぬわけですが、それはいつまでに構想をまとめて、どういう時期にやりますか。
  81. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日々検討しなければならぬ問題でございます。四十九年度予算というものも当然考えなければならぬわけでありますから、これからも、現に起こっている事態、また起こり得る事態も予想されるわけでありますので、そういう問題を参考にしながら万般の施策を考究してまいりたい、こう考えます。
  82. 美濃政市

    美濃委員 緊急を要するものについては、物価安定で国民のためになることであれば、補正もやむを得ないと私は思うのです。あるいはいま出ていなくても、四十八年度において対策をしなければならぬのは、予算を補正してでも緊急を要するものについては手を打つというお考えですか。あくまで四十九年度以降というお考えですか。
  83. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは補正をしなくとも、御承知のとおり、この予算を早く通していただければ、予備費の制度もあるわけでございますし、また制度上借り入れ金その他でまかなえるものもございますし、この間から商社にも述べておるわけでありますが、少し評判が悪いから、まあ商社だけの問題ではないけれども、商社法をつくろうなどという議論さえもあるわけでありますから、何かひとつほめられるようなことをやってもらえないか、こういうことを商社の首脳にも述べております。何か御協力いたしましょうと、こういう話もございますし、直ちに補正をという問題とはつながらなくとも対処できる、このように考えます。
  84. 美濃政市

    美濃委員 土地買い占めはどうですか。これは農業の基盤、国民生活の基盤として非常に憂うべき現象が起きているわけなのです。土地の買い占めについてのどういう政策的な手段を講じようとするのか。
  85. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは、画期的だと思う法律案をいま提案をいたす予定にしておるわけであります。これは知事、市町村等がみずからの県はどうあるべきであるということをきめて特定地域に指定できるわけでありますし、いままで農林省は農林省、建設省は建設省ということで、この間も、道路の計画が十九兆五千億になれば、おおよそ農地はどのくらいつぶれるのかという御質問に対して正確な答えをここでできなかったわけでありますが、それじゃいかぬと思って、私もしみじみと感じました。これは法線がきまらなければ、また道路がこれから何年後には、いままで一車線だったものが二車線になるということで、なかなかきまらないことはわかりますが、しかし、やはり政府としてはそういう数字を持たなければいかぬ。私はやはり経済社会基本計画というものが出た以上、九十兆円の公共投資というものをやる場合には、どうなるのだというようなものの見通しくらいは必要だと思うのです。これから政府を督励してそういうことをいたします。  そういう意味からいうと、私たちのところでは、まあ十俵はとれないで七俵ぐらいしかとれないけれども、水はあるし非常にうまい米であるというような山田は全部廃田しているわけであります。そういうような、私自身が、八十歳の母親がまだ農民として登録をし、米の生産をやっているわけですが、そういうような状態で望ましい農地というようなもの、これは虫食いにならないように、いま農都市の再開発法ができたり、農地法そのものも自作農維持創設というような時代につくられた農地法でありますが、私は、やはり新しい国土計画というものに適合した、相当長期間安心してできるような農地ということが望ましいということで、農地法の廃止ということは何でもかんでもというのでなく、農地法はもう四半世紀もたっておるわけでありますから、そういう立場から、ほんとうに農地や緑地というものが合理的に行なわれるというようなものが望ましいということで、農地の買い占めはあまり行なわれておらないようでございますが、しかし、土地の買い占めというものはこれは非常に強く抑制をしておりますし、今度県や市町村が宅地供給もできるようになりますし、農地のレンタル制度も行なうようになりますが、これがばらばらに行なわれないように、やはり計画的なものでなければならない、このように考えております。
  86. 美濃政市

    美濃委員 この土地買い占めは、その画期的な法律を検討しておると言いますが、その中には、すでに投機手段として買い占めた土地で、それは開発をすればりっぱな農地なり草地なりに使えるというものは、再び何らかの手段で、投機手段で取得されたものが、農業の用途や国民生活用途に十分供給される体系まで、これを拘束するような中身で、画期的な法律をつくろうとか言っておるんですか、どうですか。画期的な法律をつくろうという大体の構想はどうですか。
  87. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 都市周辺の農地が当然宅地化されるという面もございますから、宅地化される面をどこで一体固定をするのか。しかし、現行の中では転作を奨励しておるものもございますし、また休耕制度をことし一ぱいとっているわけでございますから、こういうような全く暫定的な措置ということではなく、やはり十年、十五年、二十年というものを展望し、少なくとも六十年展望のちょうど主食の自給度というものとあわせて、いままでのように量的な拡大だけではなく、質という面にも移っておりますし、やはり現在は流通の実績も出てまいりましたから、どのようなものがどのような量だけ必要である、また備蓄は幾らにしなければならないというような問題は十分——十分と言えないかもしれませんが、少なくともモチ米はもっとつくらなければいかぬのだということも御指摘があったわけでありますから、そういうような意味で、基準的に確保しなければならないもの、また備蓄をしなければならないものというようなものもわかっておるわけでありますし、ばらばらではなく、国土総合開発法というのが出ておりまして、相当長い間の日本の計画が定められるようになっておりますので、その中で農地は十分確保していかなければならない、こう考えます。
  88. 美濃政市

    美濃委員 次に、飼料対策についてでありますが、現在飼料が暴騰いたしまして、家畜の生産が非常に停滞をしてきております。減退をしてきておる。停滞から減退に移ってきた。一部すでにもう子豚には投機の買い占めが入ってきた、こういう状況が出てきております。しかし、このままえさ対策を放置すれば生産が減退して自給量が不足する、そこにまた投機的手段が介入する。肉が倍になる、卵が倍になる、これは近く出てくる現象でないかと私は察知しております。どうしてもこのえさ対策をやらなければ全国の畜産が崩壊する、この現況に立ち至っておると思うのです。抜本的なこのえさ対策を緊急に、抜本といってみても、これはいま国際的な穀物の供給不足という問題が出てきております。去年はよくなかったわけですが、ことしまた国際的な作況が、時間の関係でその現象は申し上げませんけれども、国際的緩和ができれば、この高値が続くとは考えておりません。ですから、緊急対策として価格政策でやるのか。たとえば豚価なりこれからきめる保証乳価なり、政府は価格政策でこれをやるか、えさ対策に思い切って、たとえばそれぞれ乳価なり豚価なりを計算するときには、購入飼料代何ぼと計算されておるわけですが、政府の政策で保証しておる価格を上回っておる部分は、どんなことがあろうともここで一時的な政策手段を講じて、その高値分をえさ対策として、価格政策に見合うだけえさに保証して、消費者価格、この畜産物の価格安定をはかるか、それとも補給金なり価格政策で再生産を確保するのか、どちらをお考えになっておるか。どちらもやらぬというのだったら、これはたいへんなことが起きると思うのです。どうですか、どちらに政策の重点を緊急対策として置くのか。これは来年も必要だということにはならぬのでないかとも思います、ことしあらわれておる現象でありますから。とりあえずことしです。ことしの対策はどうするのか。
  89. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 具体的な問題は農林大臣からお答えいたしますが、ことしは外国各地とも非常に農産物の不作ということであります。特にシベリアなどは雪が降らなかったということで、ことしの見通しもあまりよくないということであります。大陸においてもそうであります。アメリカ、カナダは比較的に雑穀は生産が可能であります。カナダなどは昨年小麦の植えつけを非常に減少させたわけでございますが、そういうわけで来年から、新年度分からはということはみんないうのでありますが、どうもことしの買い付けということは、たいへん量を拡大するにはむずかしいような状態にあって、農業団体も困っておるわけであります。そのために、農業団体の首脳部がアメリカまで出かけていって、現地で緊急輸入の交渉をしておるといったような状態でございますが、そういうことに対処して、米の五十万トン四月から六月に対する放出とか、その後も必要があればということも考えなければならぬわけであります。  そういう意味で、とにかく集められるものだけ集める。しかし、例年のように、ことしはこれによって鶏をうんとふやしたり畜産の数をふやすということよりも、いまおるものをひぼしにしないようにまずしなければならぬと考えております。  もう一つは、えさ代が上がれば当然物価に反映をするわけでありますから、そういう状態ですからえさに対する政策を考えるとともに、必要な国民食糧としては、やはり輸入をしなければならぬものもあるわけであります。そういう問題は、いま農林省を中心にして農業団体とも話し合いをしながら、実際に即応できるような体制をとるために努力を続けておるわけでございます。どっちに一体やるのかということに対しては、農林大臣からお答えをいたします。
  90. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 総理のお答えを補足いたします。  どっちをやるかとこう言われまするならば、ずばりと申し上げて両方とも適切にやっていかなければならないと思うのであります。  そこで、飼料のほうにおきましては、ただいま総理が申し上げました以外に、すでに御承知のように麦類も集中的に出したい、それから、この際値上がりの分の資金を二年ぐらいの問に低利で供給をしたい、こういうこともございますし、また全農、全酪、商系等の安定基金の供給にこと欠かさないようにいたす予定でございます。また、今後の豚価あるいは乳価につきましては、その際に適切に考慮をいたしたい、かように存じます。
  91. 美濃政市

    美濃委員 それでは、ただいまのような答弁では、これは緊急なことは救われないと思うのですね。ですからこれは時間の関係がございましてぶっつけに条件を申し上げますが、とりあえず政府の手持ち飼料あるいは古米、それは半額以下で緊急放出をやる。これは財政負担も必要となると思いますが。それから飼料の安定基金、それだけでは幾らの値下がり要因にもなりませんから、飼料安定基金に融資をして、利子程度を補給するというのじゃなくて、思い切った助成措置を講じて、とりあえず値上がりしておる部分を飼料政策で補って価格にはね返らぬようにする、この緊急対策をどうしてもやらなければならぬ。これに対する見解を求めたいと思います。特に、大蔵大臣からも、財政の問題がありますから。
  92. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 四分の二百二十億円の資金を出しまして、この際の値上がりに対応していくということで、いずれ今回のドル切り下げの措置等によりまして、アメリカ等の輸入というものが適切に行なわれてくるならば、それによって緩和する要素もあるわけでございまして、そういう点で、いまずばりと、飼料の補給金を出したらどうかというような点につきましては、なおしばらく検討さしていただきたいと思います。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 飼料の問題につきましては、大蔵省といたしましてもたいへん関心を持っております。そして、食管物資でありまする麦その他につきましては、すでに適宜の処置をとっておるつもりでございますが、なお、農林省と十分に協議いたしまして善処したいと思っております。  ただ、御案内のように、財政法というような基本がございますから、そういう点を十分考えて、一方、輸入飼料等につきましての価格の見通しなども十分つけて、それらを織り込んで善処いたしたいと考えております。
  94. 美濃政市

    美濃委員 もう時間がありませんから、いずれ別の機会で根本的に、早期に検討するという答弁もございましたので、これは緊急の検討を要する事項であるということを申し上げ、さらに別の機会でこれを十分煮詰めたいと思いますので、万遺憾ない体制をつくっていただきたいと思います。  関連質問がございますので、以上で終わります。
  95. 根本龍太郎

    根本委員長 安宅常彦君から関連質疑の申し出があります。美濃君の持ち時間の範囲内でこれを許します。安宅常彦君。
  96. 安宅常彦

    ○安宅委員 時間もありませんから、私は簡単な質問をいたしますが、この質問は、私は非常に重要な問題だと思っているのです。いままで日本政府が、アメリカの圧力に屈し続けて、そして今日の本予算案に盛られている内容などをつぶさに見るとき、政府の農業政策というものは、ついには将来、食糧自給率を極度に低下させてしまう。私は、朝鮮問題を専門にいまやっておりますが、隣の韓国の農業を見たときにりつ然たる思いがするのです。主食をもって諸外国から干渉される、そういう国になるのではないかという、日本の将来というものを憂えて、私はそういう意味で質問をさせていただきたい。  この根本は、この間の第四分科会で、食糧自給率の問題あるいは米の投機の問題、農地法の、現在の農地法では農業政策全般を将来にわたって遂行していくために、たいへん大きな支障があるのではないかという質問に対して、そのとおりだと認めざるを得ない農林省の立場というものが暴露されました。特に、米の投機については、いま盛んに首相はモチ米の話ばかりしておりますけれども、そうではないということも私どもから追及され、その投機の状況というものは情報が入っておるかということを二月六日のこの予算委員会で私が質問したときに、農林大臣は、そういう情報は入っておりません。「食糧は政府において管理をしておりまするので、所要のものの確保については万遺漏なきを期しておりますし、その点で問題がないと、こう思います。余り米などについて流動性がございますが、量はたいしたことございませんので、それが現在、投機に向かっておるというふうには見ておりません。」こういう答弁なんです。余り米というのは何か。これは非常に重要なことなんですよ。私は時間がないから簡単に言いますけれども、大体四〇%ぐらいが銘柄米以外の政府米として売られている。現実にそれの販売は、それの四五%の半分以下しか売れていないのです。売れていないから余り米になって、それを今度米屋さんは自主流通米やそういうものに化けさせて全部売っている。そういうことが実際なんですよ。二兆円動くという日本の米の流通性、その中で、大体八割はもうすでに政府の手から離れているのが現状なんです。モチ米だけじゃありませんよ。余ったもの、売れないものは、すべて自主流通米にしたりいろいろなことをしてまぜて売ってもいいという指導をしておるのですから、現実にはそういうことになっているのですよ。これは国民は知らないのですから、ぜひ知らせなければならない。  だから、米の投機というのは必ず起きるということ、しかも、物統令が廃止されて、食管制はもうすでに骨抜きにされて、必ずそういう時期が来るということで、一流商社を含めてすべてその中に飛び込んでおるのです。それを一国の農林大臣が、二月六日の質問のときに、そういう事態は報告を受けていません、情報は入っていませんと言うのでは、でくの坊の農林大臣だということを、私は分科会でこれを追及したのです。この問題についてどういうように考えるか、まずひとつ、これは農林大臣に聞いておかなければならない。  特に総理に聞いておきたいことは、こういうことをあなたは知らないのではないか。知っているのですか。知っているのだったらえらいことですよ。安宅君、そういうようになっていないと言うなら別です。たった全流通量の二割しか政府の手は及ばない。あとは全部米は余り米としてまぜられて、自主流通米の価格で、千六百円ではなくて二千二百円から二千六百円で売られている。横流しをいま徹底的に追及してみたところで、物統令で取り締まることはできないと警察庁は私に答弁しておる。そのとおりですよ。ところが、横流しをした連中でさえも、一俵から五百円くらいしかいまもうけていないのですよ。ところが、考えてみなさい、政府が十キロで五百円くらい高い値段で売れるように直接指導していったならば、政府自体が横流しをしているといわれても、これは絶対に過言ではないではありませんか。こういうことをやっておるのが今日の状態。その中で、物統令は間違っていない、そして今度はまた、あなたは食糧の自由化をアメリカに対してやると言う。農林大臣はやらないと言う。閣内不一致じゃないですか。このことについては総理大臣に聞きたい。こういうことが第一番目であります。  それから第二番目は、先ほど申し上げました農地の買い占めですね。まあここに入る前に、私は具体的な問題でちょっとうっかりしましたが、ただしておかなくてはならない。分科会のときの問題ですが、ただしておかなければならない。その中で、政府でさえも親方日の丸でやっているので、それでやっておるのかもしれませんけれども、政府任命の米価審議会の委員をしておる男が、しかも、この人は全国食糧事業協同組合連合会の専務であり、山形県米穀商業協同組合理事長である。この人が社長なんですが、山形県食糧株式会社というのがあります。金山国次郎という人ですが、四十七年の十二月に突如としてやめた。そのおいがいま社長です。この会社が一万数千俵の横流しをしておるのですね。こういうことについて見るとき、あるいは新潟県の北蒲原郡の農協などは、政府に売るよりもこっちのほうに売ったほうがいいという直接指導を農協の幹部がしておる。きょうは茨城県の問題が毎日新聞に出ておるのを私は見た。  これは政府に対して、もう自由になる、物統令はない、食管制はくずれるであろうという期待、見通しというものをあなたの政治の中から見出して、そうしてすでに投機に入っておるのを農林大臣は知らないということなんです。これは重要なことです。米価審議会の委員たる者がやっておる。四期も連続してその任にある者がやっておる。もはや世も末じゃありませんか。農林大臣、あなたはこういう者はやめさせるべきだと私は思う。そうして農林大臣は、これらの問題について、二月六日に情報が入っていないと言い、その後四の五の分科会で私に対して言ったことについては、あれはほんとうに国民に対して不明をわびるべきだと私は思う。  時間がないからずっと続けていきます。さらに今度は、先ほど入ろうとした土地の買い占めであります。いまの農地法では、農地のままでさえも農民の手から農地が離れていくことができる。たとえば生産法人の例ですが、いい生産法人もありますよ。悪いやつは悪いことをしているのです。そういうことは分科会で詳細述べましたから、きょうは言いません。  それからまた、先ほど美濃さんが言ったように、山林原野に至っては、もう虫食いどころの状態じゃないです。蚕が桑の葉をぺろっと食ったみたいになっているじゃありませんか。農地はすでに虫食い状態になっている。周辺にはバイパスができる、高速道路ができる。登記こそしていないけれども、仮登記のままやっているのもおるようですが、すでに、農民の名義にはなっているけれどもそうではないものが、ばく大な土地があるはずです。そういう工業用地や遊戯場、ボウリング場に至るまで、もはや農民の手から離れていることは皆さん御承知のはずなんです。山林原野ではない、農地なんですよ。そのために現在の農地法では、農地のままでも農民の手から離れていく。転用制限という条文はあるけれども、これは空文になっているのではないか。したがって、農業政策は将来について、たとえばあなたのほうの農林省が十月につくったところの計画がございましたですね。農産物の需給の展望と生産目標というのを出しました。こういう農業政策全般について、将来の政策について遂行するためにこれは非常に支障があるのではないか、いまの農地法でさえも支障があるのではないか、こういう質問に対し、そのとおりだということを構造改善局長が述べている。  こういうことで、あなたは、米で食わなければならないところの生まれでございますと言って、生まればっかり幾ら宣伝したってですよ、田中さん、とんでもないことになってしまう。日本列島改造論には農地はやらないと書いてある。これを見越して、この人たちはすでにそうなるであろうというので、そうしてすでに、米の投機と同じように農地も全部買い占めている、こういう状態なのでありますが、これに対する分科会の答弁がまことに不十分だったので、きょうは関連質問に立っておる、こういうことであります。すべて私の話の中には答弁を要求することばがたくさんありますから、最後のことだけ答弁だと思わないで答弁をしてもらいたい。これは時間がないからそう言うのです。時間のないというのは哀れなものです。私はこれはやはり考えなければならないと思っているのです、国民に知らせるために。特に日本の農業というもののその危機を把握して、これを憂えて、日本の農業を何とかしなきゃならないと言っているまじめな農村青年や、そういう人人に希望を与えるためには、あなた方はでたらめな、農業を廃棄していく、崩壊させていく、韓国の農業のようにしてしまう、そういう政策は断固としていま改めなければならない。これは田中内閣の崩壊につながるだけではない。日本の百年の大計を誤ることになるからであります。  以上を申し上げまして、関係者の答弁を願います。
  97. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私からまずお答え申し上げます。  先般の本委員会における私の答弁が、御指摘のとおりにまことに不十分で、申しわけなかったと思います。当時モチ米が相当騰貴をいたしておりまして、不規則流通の状況も起こりつつあるということを答弁の中で私は落としました。たいへん恐縮に思っておる次第でございます。  現在、一部の人気銘柄米、モチ米その他一般の米について不正規流通や、酒米の大手商社等による代行買い付けがふえていることは事実でございます。また、特にモチ米については、昨年の減産による需給の不均衡に加えて、輸入玉の手当てが予定よりおくれたことも影響いたしまして、二月に入って価格が上昇し、これ工と並んで、不正規ルートに回ったものが相当ふえたことが事実でございまして、いま農林の責任の衝にある私といたしましては、今度の新法もさることながら、食管法に基づきまして流通規制を十分行なってまいりたいと思う次第でございます。  なお、農地の問題についてのお尋ねでございました。特に分科会で問題になりましたのは、農業生産法人の現状というものが、これが悪用されておるのではないか、あるいは農地についてしり抜けになっておるのではないか、こういう御指摘でございました。したがいまして、今後そのような事態があるといたしますならば、きわめて遺憾なことでありまするので、私としては、農業生産法人の社員及び役員の構成、土地の取得及び処分、農業経営及び土地利用の内容、農作業の従事者の身分の安定等を重点といたしまして、常時、指導監督を行ない、いやしくも御指摘のような事態の起こらないように努力をいたしたいと思います。
  98. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、国民の主食である米の確保ということに対しては、万全の体制をとらなければならない、こう基本的に考えております。これが投機に至るような事態があってはたいへんでありまして、来年度の四十八年度の植えつけもこれからでございますし、そういう問題が起こらないような万全な食管制度の運営をはかってまいろう、こう考えておるわけでございます。  また、農地法の問題その他につきましては、これは農林省でも検討を十分させますが、優良農地は確保しなければならないということも当然でございますし、これからの国土の総合開発法の中でも、各都道府県知事、まあ二年などといわないでもっと短い時間に、農地に関するような計画は今年一ぱいに立てるとか、いずれにしても万全の体制をつくってまいりたい、こう存じます。
  99. 安宅常彦

    ○安宅委員 私はそんなことを聞いているのじゃないのです。農林大臣も知っているように、分科会における詰めのためにもやっていますが、たとえば生産法人の倒産したときの措置であるとか、いろいろなそういう問題については、政府委員からでいいからあとで答弁さしていただきます。  ただ、時間がなくなりますからね。私が再度質問できないというおそれがある。それで言っておきますが、あなたに言われてあわてて、実はいままで米の買い占め、主食の買い占めに対しては、勧告だけしておったけれども、今度は調査に踏み切りましたというのがあなた方の考え、態度。調査をした結果、相当逃げられたらしいですね。だけれども、とっつかまったのもあるそうです。その状態、資料というものを、あなた方は資料として出してもらいたい、こういうことが一つであります。  さらに、先ほど私が言いましたが、現実にいま流通をしておる米は、大体四五%が銘柄米でない政府米、それはなかなか売れない。したがって、余ったやつは指定銘柄米なりあるいは自主流通米なり、そういうものに化けてやることを政府はいいといっているのですから、全流通量の八割というものは投機の対象になる。モチ米だけではないのです、田中さん、あなた。いいですか、一部の優良銘柄米だけだという農林省の考え方も誤っている。そういう一部に米が偏在したときには、必ずその他の米不足ができて、米騒動みたいな大きな状態にまで、そのままでいけば爆発するというのが現実なんです。そういうふうに流通はそんなになっていないというあなた方の反論があったならば、ひとつやってもらいたいし、先ほど申し上げました農林省における政府委員諸君から、構造改善のほうの関係でけっこうですから、現在の農地法は、虫食い状態でざる法で、ガラス窓の穴ほど大きなざる法だと言ったら、そのとおりだと言っているのですから、それを、現在の農地法でさえも容易じゃないのですから、こういうものによって、農地以外の転用を含め、あるいは農地のまま実質的には農民の手から農地が離れているということに対する対策、これは詳細にひとつ、私の質疑の性質上ぜひ答弁を願いたい。
  100. 小沼勇

    ○小沼政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のような事例もございますので、農業生産法人につきまして調査をいたしまして、農業者、非農業者の参加の状況等、役員の構成とか土地の取得とか、そういう点につきましては十分調査をいたしまして指導をいたしたい、かように思いますが、また農業生産法人が農地を取得する際の許可につきましては、これは農業委員会あるいは都道府県知事でございますが、地方農政局に意見を求めさせるという監督をしてまいりたい。この辺もくふういたしたいと思っております。なお、本来農民の経営組織として育成すべき農業生産法人でございますので、これにつきましては従来もやっておりますが、構造改善事業における補助、総合資金あるいは農地取得資金等によって育成をはかってまいりたいと思います。  また、農業生産法人がその要件を欠いて解散するとかいろいろな場合がございます。そういう場合は、農地は国が農地法に基づきまして買収するという規定がございます。そういう法律の適切な運用、指導によって対処をしてまいりたい、かように考えております。またそういう場合に、農地保有合理化法人が買うという場合も考えられるわけでございます。なお農地の売買につきましては、やみで動く場合についてはなかなかつかみがたいのでございますが、これにつきましては、地方農政局、都道府県農業委員会等の組織を活用いたしまして、土地が大量に買い入れに動く、あるいはその仮登記の状況なども、情報として収集交換を行ないまして、投機あるいは農地法違反のおそれがある行為につきましては、通報に基づきましてこれを防止するということをいたしたいと思っております。  また、農地法の許可にあたりましては、厳正な判断をするように指導いたしたいと思いますし、農地保有合理化法人による土地の買い入れを積極的にやりたいというふうに思っております。農地転用につきましては、農業との調整を十分行ないまして、国の計画的、効率的な利用と関連いたしまして、優良農地を確保するよう、転用許可についても慎重な取り扱いをいたしたいと思っております。  最後に、農地法自体につきましては、目下農地制度研究会におきましてそのあり方を検討しておるところでございますが、今後の農業施策あるいは御指摘ございました土地の投機の防止、優良農地の確保という機能につきまして、十分それを発揮させるような観点から、有効適切な措置について今後検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  101. 安宅常彦

    ○安宅委員 答弁漏れがあります。それから総理大臣が農産物の自由化はやると言い、農林大臣はやらないと言い、これは完全な不一致ではないかということについては答弁がないのじゃないですか。この二つだけ言ってください。あとはやめますよ。
  102. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 まず、資料のことでございまするが、きわめて近い機会に、整い次第提出をいたします。  なお、米価審議会委員の不祥事件関連につきましては、きわめて遺憾なことに存じております。すでに委員から辞意の表明が出ておりまするので、これが措置につきましては、御賢察のほどをお願いいたします。
  103. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて美濃君の質疑は終了いたしました。  午後一時二十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後一時二十四分開議
  104. 根本龍太郎

    根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。阿部哉君
  105. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私、まず総理にお尋ねをいたしますが、たいへん時間が限られておりますので、簡潔にお答え願いたいのであります。  いま国際通貨の問題、円問題に関して、総理大臣は外圧論、そういうことでもっぱら国際会議にゆだねておるようでありますが、私は、この際、総理の目を国内情勢に向けてもらいたいと思うのであります。  今日の日本列島はきわめて異常な事態だ、こう私は思う。庶民大衆は物価の騰貴におびえております。物価の上昇は、政府見通しをだれ一人信ずる者はいないのではないか、おそらく総理もこの物価見通しを信じておらないのではないか、こう思うのであります。皆さんがGNP世界第二位だといって誇っておるこの世の中に、ちょうど終戦直後を思わせるように物の買いだめ、売り惜しみというものが行なわれ、小学校の生徒までがノートを買いあさるというような状態が行なわれておる。特に大企業の投機、株へあるいは土地へ、これはもう狂乱と言っても私は過言ではないのではないか。そしてギャンブルは盛んだ。こういう世の中になっておる。  いま、政府はこの防止法を準備しておるようでありますが、商社首脳はあざ笑っておるのです。総理、これは二十四日の毎日新聞でありますけれども、商社の幹部、首脳はこう言っておるのです。「どこまでやれますかね。ほんとに政府が商社を取締まるつもりなら、われわれは新潟県下で政府のある首脳が土地買占めをやっている実態をばらす」こう一流新聞に発表しておるのであります。私は、これに対して政府の皆さんから抗議が申し込まれたという話も聞かないのであります。国民は政治の中枢までがいかれておるのではないだろうか、こう心配をしておるのでありますが、総理はこの事態を異常な事態とお考えにならないのかどうか、総理の御所見をお伺いしたいのであります。
  106. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 物価は五・五%に押えるべく全力を傾けておるわけでございます。一部において商品市場等が混乱におちいっておることははなはだ遺憾でございまして、これに対しては適当な措置を講ずべく、立法手段にも訴えて御審議をいただこうということにしておるわけでございます。また、過剰流動性の吸収、土地問題に対しては税制上の措置及び土地の投機規制、国土の総合的利用開発というものに対しては知事の許可権限、また特定地域内においては移動の禁止、売り渡しの強制というようなことまで考えながら立法を行なっておるわけでございまして、このような事態が起こること自体が望ましくないことでありますので、今後十分な配慮を続けてまいりたい、こう思います。  しかし円平価の、ドルの切り下げ、変動相場制移行という事態は、申すまでもなく、これがうまく運用されれば物価抑制に働くわけでありますし、デフレ要因に働かなければならないわけでありますから、諸般のバランスのとれた政策をやってまいりたい。  いま御指摘になった新聞の記事、私はちょっと見落としたわけでありますが、その事実は、私はそういう事実を持っておりませんから、調べて適当な処置を講じたいと思います。
  107. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうも私の質問と総理の御答弁とは次元が違うようであります。もっと私、高い次元の御答弁がいただけるものと期待したわけであります。私に言わせれば、いまお札の信用がなくなったということ、ここに一番問題があると思うのであります。お札は、大資本あるいは大資産家にとっては金もうけの道具とこれは受け取られるだろうけれども、勤労大衆にとってみれば、これは汗の結晶であります。お札に対する信用がなくなれば、資本主義社会において何をたよりにやっていくのか。これは生活だけじゃなしに、道徳の基礎も法律の基礎も吹っ飛んでしまう、私はこう考えるのであります。今日の異常事態の原因はここにある。そうして、こう価値をなくしていったのは一体何なんだというところに、一番メスを入れなければならない根本問題があると私は思うのですが、もう一度総理の御所見を承りたいと思います。
  108. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本の円の価値が下がっておるということでございますが、国際的には上がっておるわけでございます。国内的には、投機が行なわれておるというような事態が起こっておりますが、しかし、国民生活そのものの内容を充実せしめていかなければならない、過渡期における一つの現象としてこのようなものが起こっておるわけであります。それは間々申し上げておりますとおり、僅々この一年の間に外貨が急増した。その外貨裏づけになっておる円というものが、企業の手元資金を潤沢にしたというような問題があったわけでございまして、これらに対して十分な吸収措置を講じなければならなかったというようなことは、御指摘もございますし、私もきのう申し上げたとおり、そういう問題に対しては、第一次の円平価調整後の不況下の中小企業対策というような観点から、公定歩合を引き下げなければならなかったような事態でありましたので、そのような認識が甘かったといえば、私はそれなりに理由のないことではないと思います。まあおそまきながら、企業の名前を明示して融資の抑制を行なったり、手形買い取りの抑制を行なったりいたしておるわけでございますし、それだけではなく、いま投機に対しては立法措置に訴えるという手段も講じておるわけでありますので、できるだけ早い機会に、このような投機が行なわれるというようなことではないようにしなければならないし、日本の円価値が国際的に上がったということは、国際競争力がついたことであり、ほんとうに国民の汗と努力の結果そうなったわけでありますから、みずから日本国民も国内においてその恩恵を受けられるように努力を続けてまいりたい、こう思います。
  109. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま投機の問題をお話しになりましたが、いま行なわれておる土地投機等の特徴は、単に売買のさやかせぎというものではなくして、庶民大衆から土地という生産手段を奪い取ってしまう、そうして金を握らせてみたってその金はまた価値をなくしている、こういう事態だと思うのであります。  そこで私は、総理にひとつ決意をお伺いしたいのでありますけれども、もし田中内閣の閣僚の中から、あるいはあなたが総裁としておられる党の幹部の中から、投機を行ない、またこれに関与した人物が出た場合に、あなたはこれを直ちに罷免されるという決意があるのかどうか、お伺いをしたいのであります。
  110. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういう問題は、具体的な問題を御提示にならなければわからない問題でございますし、私がにわかに答え得る問題ではないわけであります。
  111. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、これは総理として当然それくらいの決意が表明されてしかるべきものだ、こう考えるのですが、総理はそうでないのですか。
  112. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 具体的な事例をお示しにならないで、私に答弁を求められるということ自体、無理な話でございます。これは社会的に内閣が非難をされるような事態が起これば、適切な処置が求められることは当然でございまして、事実の指摘もなくして、ただ投機という、その投機ということ自体がたいへんむずかしい問題ではありますし、社会的な通念において認められるものでなければならないわけでありまして、事実があったら御指摘いただきたい。
  113. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、だから決意をお伺いしておるわけで、これは当然のことだと思うのであります。  私は、いままで自民党・政府が一貫してとってまいりました高度成長政策が、国内で物価を引き上げ、貨幣価値を低落させるこの原因だった、こう思うのであります。そしてこの基礎には、労働者に正当な金を支払っていない、要するに低賃金というのが第一。第二には、大資本、大資産に対する税制の不公平、こういうものが土台にあり、そうしてそれに基づいた財政運営が一番基礎だったと私は思う。この点に目をつぶって今日の物価問題の解決はないと思うのでありますが、総理の御所見をもう一度お伺いをして、次に移りたいと思うのです。
  114. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 大企業と言われますが、日本の戦後の政策はゼロから始まったわけでございまして、いつでも申し上げておりますとおり、荒廃した中から今日を築いてまいったわけであります。しかも、原材料を持たない日本が、原材料を持てる国と、同じ自由市場において競争に打ち勝たなければならない民族的な宿命をにないながら、今日まで営々として努力をしてまいったわけであります。その過程において、国際競争力をつけるために、輸出を振興するために、諸般の政策を付加することは、これはもう当然のことであったと思うのでございます。しかしその後、力がついた日本の産業というものが、国際的に輸出が強大になり、国際収支のアンバランス問題が起き、現在各国から指摘をせられておるような状態になったのは、この二年間でございます。いつでも申し上げておりますように、まる二年前は四十五億ドルしかなかったわけであります。輸出政策にほんとうに全力をあげなければならぬというのが国策の焦点であったことは、事実であります。  その第一の目標は、二十五年間の国民努力によって今日を築いたわけでありますから、政策的効果があがったということは間違いではありません。開発途上国は、営々として努力を続けながら、今日主食を主要工業国に仰がなければならないという実態にあることと比較してみれば、日本人が築いてきた二十五年の歴史は輝かしい歴史であると私は思います。それで、その結果得た力を国内的にどうするのか。これは輸出優先主義から成長活用型に転換をいたしてまいります。重化学工業中心から知識集約産業にだんだんと移してまいります。しかも政策の主点は、社会資本の整備や生活環境の整備や社会保障の拡大に向かって全力を傾けてまいります。あと残るのは何かというと、当面する物価の問題を解決しなければなりません。外に強い日本の円が、国内的に強くならないはずはないわけでございます。そういう意味で、国内に対しても物価の安定をはかり、みずからが築いたこの国際競争力を、みずからの生活向上のために恩恵を受けるような政策を進めてまいります、こう述べておるのであります。
  115. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまお伺いしておると、ゼロから出発した、そのとおりであります。しかし、今日のこの経済をもたらした、これは大資本だけの問題じゃない。勤労者の汗の結晶でもある。そういうことを考えていけば、私は、今日の税制あるいは諸政策があまりにも片寄っておる、こう指摘せざるを得ないのであります。どうも総理の答弁を聞いておりますと、何か国民大衆が無視されておる、そういう感じを受けざるを得ないのであります。いまヨーロッパで国際通貨の問題で会議を行なっております。しかし、どうも考えてみますと、これは勤労者にとって重大な問題であるけれども、なかなか勤労者にはわかりにくい。私はある意味では当然のことだと思うのであります。アメリカは、大体、第二次大戦後、強大な軍事力、財力を使って侵略的な戦争をし、ドルのたれ流しをした。日本はまた、アメリカドルのかさ、そして核のかさで高度成長をやってきた。ヨーロッパの先進各国も、大なり小なりこれは同じようなことをしてきた。こういう人たちが集まってこの会議をしておるのであります。私たちにとってみれば、円が切り上げをされれば、そのまた切り上げによって労働強化、合理化というものがおいかぶさってくるということに、われわれは重大な関心を払わなければならぬということなんでありまして、どうも総理の答弁を聞いておりますと、労働者の汗の結晶、そうして努力というものが、たいへん軽視をされておるような気がしてならないのであります。しかし、総理との話をしておると肝心のところへ入れませんので、私は具体的な問題についてお伺いをしたいと思うのであります。  四十六年、例のニクソンショックがありました際、商社がいわゆる円投機に狂奔してたいへんな利益をあげた、こういわれておる。当時、国民大衆からはまさに怨嗟の的になったのは、御承知のとおりであります。かつて金解禁の前後、あの昭和初頭において、三井がドル買いをやり、そして国民のたいへんな指弾を受けた。今度もまた、国民大衆は、この円投機に対してたいへんな不満と批判をした。しかし私は、この投機による利益に対して、当然それなりの税金がかかってくるだろう、こう思ったのでありまするけれども、調べてみますと、この有価証券報告書、これを見てまいりますと、三井物産は半期で百九億の経常利益をあげたけれども、法人税はたった五千万円納めただけであります。これはわずかに〇・五%しか法人税は納めていないのであります。なぜこうなったのか、大蔵大臣、御承知でありますか。
  116. 愛知揆一

    愛知国務大臣 特定の会社のこと、具体的なお尋ねでございますから、もしここに資料を持ち合わせておりましたら、事務当局から御答弁いたさせます。
  117. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいまお尋ねの三井物産につきましては、資料をいま持ち合わせておりませんので正確には申し上げられませんが、昨年の秋、九月期の各貿易関係企業、特に外貨建ての債権を持っている企業につきましては、総じて為替差損、差益の関係が税務計算上あるいは企業会計上あらわれてきておりますので、通常の期におきますところの利益の状態とはたいへん違った決算が出ております。法人税の額も、企業によりまして違いますが、いつもの期とはたいへん違った様相を呈しておりますので、あるいは三井物産の場合もその一環ではないかと、いま御質問を承りまして想像いたす次第であります。
  118. 阿部助哉

    阿部(助)委員 なぜこのようなことになったか、これは、皆さんが債権債務から発生する差損の計上を特に大商仕向けに認めたから、このような結果になったのですね。そうでしょう。
  119. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この為替差損、差益等の取り扱いについては、御案内のように、法人税法としては第二十二条に根拠があって、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算」するわけであります。ところが、一昨年あるいは昨年の例は、これまでにあまりに例のなかったことでございますから、そこで、大蔵省設置法の中にきめられてあります企業会計審議会で、こうした場合の会計処理の基準を十分に公正に考えてもらって、そうしてその審議会の意見を取り入れて徴税の基準にしたというのが、当時の扱い方であると私は承知いたしております。
  120. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まず大蔵大臣にお伺いしますが、いずれにせよ、当然これだけの利益をあげておれば一これは商社大半そうなんです。いま一社だけ言いましたけれども、ここにもう一つ三菱の関係もございますので申し上げてもいいのですけれども、いずれにせよ、この措置によって商社はたいへんな減税をさせてもらったと、こういうことは間違いありませんね。
  121. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外国為替相場についての利益、損失等は、いま申しました基準で取り扱ったはずでございますし、これは大企業であると中小企業であるとを問わず、この基準によって徴税をいたしたはずでございます。それから、これは法人税法で規定されております取るべき基準としては、公正妥当なものと考えるわけでございまして、これがいわゆる減税というふうに取り上げるべき性質のものであるか。こうした為替相場の変動によって起こりました事態の取り扱いとしてさような取り扱いが公正である、こう考えたわけでございますから、税額として減っていることは事実でございましょう。しかし、それが通例の場合の減税というふうに見るべきかどうか。特に法律によって減税をすべきものであると規定したわけではなくて、企業の経理としてのよるべき基準によって算定したものに対して徴税をしたわけでございますから、法律によってかくかくのものは減税せよというような政策に、よってやったものではない。そういう意味において、減税というものとは性質が違うものである、かように考えます。
  122. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まだ私、聞いていないところばかり答弁されるのですが、私は、この措置がなかりせば当然納めなければならない税金が、この措置によってたいへん税金を納める金額が減ったんでしょうねと、こう聞いておるのです。ここだけはっきりしてください。
  123. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この会計経理の基準によってかように算定いたしましたから、為替相場の変動ということがなかりせば受けたろうという取り扱いと結果において違った、その税金の額が、なかりせばこうであった場合よりは減ったということに相なるわけでございまして、その基準は、要するに為替相場の変動によりましてその会社の経理上の差損が出た、損失が出た、これを公正な基準によって計算した、それを徴税の基礎にした、こういうわけでございます。
  124. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは大臣がおっしゃったように、この措置は、企業会計審議会の意見書が出た。意見書が出たというよりも、この企業会計審議会というメンバーをひとつごらんになればおわかりのように、皆さんにおなじみのある学者、それから経済界の経団連の理事であるとか、関西経済界の人であるとか、役人であるとかいう人たちでこれは構成をされておる。そこで出した意見、だれが一体公正妥当と判断をされたのです。国民怨嗟の的であっときに、一体何を聞いて、公正妥当という判断をだれがしたのです。
  125. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 現在、法人税法の二十二条というところで、各事業年度の所得の金額の計算は、こういうふうにやるという基本原則が定められております。二十二条の四項に、「事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額」損金の額「は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される」ということになっておりますが、この場合に、為替の損益だけでなくて、一般にどういうものを所得とし、損失とするかということについては、特に定めのないものを除きまして、企業会計審議会の御意見に従って計算しているということでございます。
  126. 阿部助哉

    阿部(助)委員 答弁にならないですよ。だれが一体公正妥当と判断をしたのです。大体この規定の中には、為替の変動制などというものを想定しておったわけじゃない。日本には前例がないのです。外国では、為替の変動の場合にはその期における欠損は認めるけれども、将来どの程度なるかわからない不確定のものは、これは認めていないのが通例であります。日本の場合、一体公正妥当とだれが判断したか、明確にそれを御答弁願いたい。
  127. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、法人税法の二十二条、先ほど申しましたように第四項で、特に規定がない場合には、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算をいたしたわけでございます。そして、この「会計処理の基準に従って計算」というものにつきましては、先ほどから申し上げておりますように、企業会計審議会の意見によって算定の基準といたしたわけでございます。  それから、企業会計審議会の委員等につきましては、御承知のとおり、ここにリストも持っております。
  128. 阿部助哉

    阿部(助)委員 企業会計審議会というのは、企業会計というものの原則と税制の原則とは明らかに違うのですね。企業会計は、この会長でありますか、委員長でありますか、やっております黒沢さんの本に書いてありますように、資本充実が企業会計の原則なんです。税制はそうではないでしょう。税制は何よりもまず公平の大原則というものが前提にならなければならない。それを、企業会計がこうだと言えば全部公正妥当だということになれば、もう国会の審議も税制も何も要らないじゃないですか。一体、企業会計審議会は、税制を立てる国会の権能を上回るのですか。もう一ぺん答弁願いたい。
  129. 愛知揆一

    愛知国務大臣 法人税に関する法令自体が、非常に複雑多岐な法人企業のあらゆる経済取引に関する所得の算式というものを規定することは、私は不可能に近いと思います。そこで、いろいろの場合を規定しておりますが、特にそういう規定のない場合において、補完的に二十二条の第四項というのがございまして、ただいま御指摘のように、一般に公正妥当と認められる基準に従って計算するというのが法律要請されておるところでございます。そして徴税当局としては、公正妥当と認められる会計処理の基準というものについて、ただいましばしば申し上げております審議会の研究、答申、意見、これを基準にして徴税の基準といたしたわけでございます。
  130. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、会計審議会で意見を出せば、みんなこうやって減税が行なわれるということになるのですか。それならば、まあこの問題はあとで論議するにして、この措置によって減税をした金額は幾らですか。その資料、出してもらいたい。
  131. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申しましたように、減税ということばでいうことが適当かどうかわかりません。ということは、企業会計上の損益の計算の基準でございますから、これはこうした変動がありました場合に、その起こりました損失をいかなる基準で算定するか、結果において、さような相場の変動がなかりせばどうであったかという場合と比較をして、お望みのような、御満足をいただけるような資料ができるかどうかわかりませんが、これはせっかくの御要求でございますから、なるべく努力をいたしまして考えてみたいと思います。(発言する者あり)資料を出すことを検討いたします。——資料を出すことを検討いたします。それが御満足のいくようなものが出せるかどうかはわかりませんが……。   〔発言する者あり〕
  132. 根本龍太郎

    根本委員長 御静粛に願います。
  133. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御満足がいくかどうかわかりませんが……。   〔発言する者あり〕
  134. 根本龍太郎

    根本委員長 発言者以外の方は御静粛にお願いいたします。
  135. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御趣旨に沿うように努力をいたします。
  136. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さんは、いままでも特別措置による減税見込みは毎年お出しになりますけれども、その決算はお出しになったことがないのです。いろいろなあれだけある租税特別措置、これによる、ことしはこれぐらい減税になるだろうという見込みは出される。しかし、決算はお出しになったことはない、大蔵省は。決算なしに見込みが立つのかどうか私は疑問だと思うけれども、この場合も当然それぐらいの数字は、皆さん、あるはずなんであります。ただ、われわれが要求をしても、大企業にこういう恩典を与えたときは、皆さんは資料をお出しにならない。私の手元には、日本銀行の調査局発表「主要企業分析」というところに、これはどの程度正確かは私はわかりません、おそらく皆さんの資料に基づいて日本銀行が集計したものと思うけれども、これがあるのです。また、三菱の総合研究所、ここでもこれを発表しておるのです。もう一つは、和光証券もこれを発表しておるのです。それにかかわらず、われわれ国会で大蔵委員として請求をしましても、皆さんは資料が出てきませんと言う。なぜ出てこないか、まずそれを出してから論議しましょう。
  137. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 租税特別措置につきましては、御存じのように、たとえば特別償却でありますと、特別償却を企業がこれだけすることができるということは法律できまっておりますが、それに基づいて企業が特別償却いしました場合には、普通償却分と特別償却を合わせた分が会社の決算として出てくるわけでございます。したがって、決算的に特別措置による減収というものは計算が不可能でございまして、出すとか出さないとかいう問題でなしに、計算が不可能でございます。   〔「大臣は出すと言ったじゃないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  138. 根本龍太郎

    根本委員長 発言者以外の方、御静粛にお願いいたします。
  139. 阿部助哉

    阿部(助)委員 答弁者に少し注意をしてもらいたい。焦点を合わせて答弁するようにしてもらわぬと、時間がむだになってしようがないですから。  問題は、この資料を出すか出さぬか、なぜ出さないのだ、これを出してくれ、こういうことです。
  140. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、私は正確にお答えをいたしたわけでございまして、これは減税というものではないのです。経理の基準なんです。そしてこれと徴税とはまた別の観点に立つものでございますから、先ほど申しましたように、御満足のいただけるような資料を出せるかどうかはわかりませんが、私といたしましては努力をすることを申し上げたわけでございまして、場合によりましたら、数字の資料というよりはこのやり方等について、資料といいますか、やり方等について詳しく説明書などをお読みいただければ、事態がもっと明確におわかりいただけるのではないかと思いますから、そういうことを含めて、御疑問を抱くことを解明していただく意味におきまして、資料というものは提出するように努力をいたしますと私は申し上げたわけでございます。的確にあなたの御要求になったものとぴったり合うようなものは非常にできにくいことである、かようなことを御理解いただきたいと思います。
  141. 阿部助哉

    阿部(助)委員 たとえば、日本銀行の調査による十九の大手商社、これはこの期で五百三十七億円の利益をあげた。ところが、これが法人税、地方税を合算した税負担は百八億、負担率は、地方税をひっくるめてわずか二〇%である、こう出ておるわけであります。これくらいのものを、これだけ重大な問題を皆さんは資料として出さない。また、皆さんいろいろおっしゃって、減税であるとかないとか言うけれども、明らかにこれは商社にとってみれば、納めるべき税金を納めないで済んだということだけは間違いがないのです。その通達はこれなんですね。国税庁長官の一片の通達でこれだけ恩典を与えておる。その通達は国会に、大蔵委員にも示していない。私は幾たびか要求したけれども、皆さんなかなかお出しにならない。今度私が理事になったから、理事だから何かこわいと思って出したのか、ようやくこれを手に入れたのであって、おそらく国会議員でこれを手に持っておる人はいないんじゃないですか。それくらいないしょにしてある。ないしょにしてあるじやないですか。なぜこれだけの大きな減税措置を、皆さん減税でないと言われるけれども、いま、商社が金がだぶついておる、それに一役買っておるこの措置を、なぜ国会に報告しないのか。当然これは国会にかけるべき問題であって、さっきの問題は私は本格的に論議をしますけれども、まずその数字を出してから論議しましょう。
  142. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国税庁長官の通達等につきましては、これは従来も出しておると思いますけれども、まだ足りないものがございましたら、当然国会の御審議の参考にしていただきたい。  それから、数字については、ただいま申しましたように、阿部さんのポイントとされるようなものに当たるようなものが出せるかどうかは、私はわかりませんと申し上げておる。それは基本が違いますから。しかし、できるだけ御説明につとめます、こう申し上げておるわけでございます。
  143. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私の要求する数字がわからないというなら、問題点がわからぬというなら申し上げますが、この問題は、そう中小企業に適用していないのです。多少はあるかもわからぬが、大体これは商社関係ですから、十九の大手商社にこの措置によってどれだけの利益を与えたかという数字を出してください。これは当然あるはずなんですよ、そんなものは。
  144. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 従来から外国に対して、一億ドルなら一億ドルの債権を持っていたという場合に、その一億ドルを幾らと国内の帳面につけるかということでございますから、それは為替が落ちれば当然円で表示する額は落ちるわけでございまして、それだけ与えたとか与えないとかいう関係にはないわけでございます。したがって、私どもといたしましては、減税というふうには観念いたしておりませんから、そういうふうな資料は、日ごろから提出を求めるということもいたしていないわけでございまして、それは単純な評価の問題というふうに考えておりますために、私どもとしてはそれだけを集めて、そして集計するということをいたしておらないわけでございます。
  145. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは、たとえば有価証券報告書を見ますと、ちゃんとみな書いてあるのですよ。これは特別措置によるなにだとか、為替変動準備金の設定にどうだとか、海外投資損失準備金で幾ら損金に落としたとかやっておる。そして為替の差損として、ここでは五十一億落ちておる。このうち、なるほど為替の変動によって、この期において欠損の生じたものも何ぼかあるんですよ。しかしまだ不確定な、これから五年後、八年後、毎年延べ払いの場合には金が入ってくる。そのたびごとに欠損が生ずるのは、これは当然わかるのですよ。これは認めるのはあたりまえです。しかし、まだわからないところの欠損をここでばっさり落としてしまう、それによって利益があがっておるのを帳消しにして税金を免れるという措置は、これは何としても公正妥当とはいえないわけでありまして、この数字は当然皆さんは把握されておらなければおかしい。そんな怠慢でこれだけの大きな減税措置、皆さんは減税でないと言われるけれども、明らかにこれは減税です。特別償却と同じような性格のものです。これを一片の通達でやるということならば、当然皆さんこの数字を出して検討を願うべきです。どうです。
  146. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 長期債権と短期債権によって違いますけれども、短期債権につきましては、間もなく期末になりましても、たとえば三百八円しか入ってまいらないわけでございますし、長期の場合には、何年か先のことでございますからということで、企業会計原則のほうでその扱いをいろいろきめております。いろいろきめておりますが、そのきめたことが各企業を通じて公正妥当な扱いであり、それに基づいて企業が経理しておればそれでよろしいという基準が、公認会計士に向かって示されておるのが企業会計原則であると承知いたしております。私どもも、その上に乗って、経理がそれでよろしいということを前提になされて世の中の慣行が進んでおるわけでございますから、税としてもそれと同じにいたしておりますということが一般の原則でございまして、その限りにおいては、企業会計原則どおりに税務も乗っていく分については、何ら減税とかなんとかという概念とは考えていないわけでございます。
  147. 阿部助哉

    阿部(助)委員 主税局長がそんな感覚でおっては困ると思うのです。というのは、企業会計の紙の上の操作で幾らでも損金にも落とせれば、利益にもあげることができるというふうになったら、税法はずたずたです。そんなことで租税法律主義というたてまえを貫けるのかどうか。これからだってそうです。この帳面のつけ方いかんで幾らでも税金が免除されるということになるならばたいへんなことです。そんなものが企業会計審議会に権限があるならば、法律根拠をお示しいただきたい。
  148. 坂野常和

    ○坂野政府委員 企業会計は、ただいまお話しのように、企業会計審議会においてその準則を定め、その諮問を受けてそういう作業をいたしておりますが、これは企業に対してある種の経理の基準を示すものであって、その基準どおり守れば、その企業に対しまして監査証明は適正と与えられる、こういうことになっております。そこで……(「根拠を言え」と呼ぶ者あり)根拠は大蔵省設置法であります。それからそれに基づく……(「権限は」と呼ぶ者あり)権限は企業会計の基準の設定、企業会計の監査基準の設定、原価計算の統一、その他企業会計制度の整備改善云々ということになっております。
  149. 根本龍太郎

    根本委員長 阿部君の質疑に関連して、辻原君から関連質問が出ております。阿部君の時間の範囲内でこれを許します。辻原君。
  150. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま阿部委員から具体的な資料の提出を求めております。その求めている資料について、阿部君が主張されている資料と、それから大蔵大臣はじめ関係局長がいま答弁をしたものとは、これははなはだしく食い違っているわけです。問題の所在は、これは明らかです。政府阿部君がたびたび資料を要求したが、一向に出てこないというその資料とは、ここにも一つ、さっき阿部君が指摘をいたしましたように、有価証券のそれぞれの報告書、証券会社その他がこれを分析、検討した上公表している。その資料によれば、たとえば三井物産の場合、四十六年上期における決算においては五十一億円落としておる。それをだんだん調べてみると、経理の損金算入の基準を、新たに国税庁長官の通達によって、いわゆる経理決算の基準を示した。その基準の中にいわゆる損金算入のやり方を示しておるわけです。その基準によってこれだけの金を落とした。結果として出てくるものは何かというと、それぞれの期末における決算は、いわゆる大幅な為替差損による損金の算入が行なわれて、先ほど大蔵大臣が述べたように、それなかりせば当然非常に大きな税金を納めなければならぬのに、それあるがためにきわめてわずかの税金になっているではないか。これは素朴な国民の大きな疑問であります。  しかも、一方において商社は、これは先般も当委員会で問題になりましたが、いわゆる円投機の思惑をやってばく大にもうける。土地投機もやっている。にもかかわらず、結果として納めている税金はどうしてこんなに安くなるのだろう、これはだれでもしろうとは疑問に思います。こんなばかなことはあり得ないじゃないか。だから、大蔵大臣がいま答弁をした減税じゃありませんというのは、これは私に言わせればいわゆる三百代言。国民は、何によろうと、結果において納税額が減れば減税と見るんですよ。そのことを言っている。  そこで、要求する資料は、各商社のいわゆる損金に計上した、通常これなかりせばあり得た課税対象金額から、これあるために落とした損金の一覧表を出しなさい。出しなさい。そんなものは出せますよ。損金算入をちゃんとやっているんですから。それを出しなさい。(「休憩、休憩」と呼ぶ者あり)
  151. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御要求のございました資料並びに国税庁長官の通達は、すみやかに御提出申し上げます。
  152. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その資料が出てからまた質問をさしていただくことにして、質問を保留したいと思います。
  153. 根本龍太郎

    根本委員長 阿部君の残余の時間につきましては、大蔵省からただいま請求になりました資料が出されて後、質問をやっていただくことにします。  次に、神崎敏雄君。
  154. 神崎敏雄

    神崎委員 私は、初めに一言、総理大臣並びに各閣僚の皆さんに申しておきたいのは、時間が限定されておりますので、質問は非常に簡明にいたしますから、答弁も、尋ねていることに率直に明快に御答弁を願う、そういう形で進行していただきたい、このことを初めに申しておきます。  そこで、今回の円ドル問題が、わが国民にとってはむろんのこと、中でもこの問題から直撃を受けた中小企業とその下請業者にとって、その被害がまことに甚大であること、また事の重大性、これにつきまして私は各地の現状を調査いたしました結果、ここに多数のものを持っておりますけれども、時間の制約からその幾つかを取り上げまして、各地の現状を具体的に申し上げ、しかも業界別要求、これに対する政府の具体的な対策国民の前に明らかにしていただきたい。  まず第一に、金融問題でお尋ねいたしますが、大阪の東住吉区の鏡業者の実態と要求は次のようなものであります。今回は、前のショックのときの借り入れ金がまだ返済期に入っておらない、あるいは入る前、こういう時期であります。そして、四十三年から四十四年にかけて、その間に一〇%程度材料が高くなって、現在すでに採算がとれない。したがって、二月以降は二五%ぐらい値上げを考えておったやさきに、こういうような事態に立ち至った。したがって、このままではもう立ち直れない。そこで、現在のこの業界の要求は、無利子の長期融資を緊急にしてほしい、これが切実な要求であります。  さらにもう一つは、河内の長野市のつまようじ業者であります。この業者は全国の九〇%を生産しております。そしてその中で四〇%を輸出しておる。ところが、昨年十一月から材料であるシラカバが七〇%値上げをした上に、これは主としてソビエトからでございますが、最近はこれが入らなくなった。現在、これが北海道の付近で原木のままで買い占められておる。そこで、もう無担保、無保証、無利子しか借りる力がない、こういうような切実な訴えであります。  これに対して政府当局はどのような対策をお立てになるか、簡単にイエスかノーかで明らかにしてもらいたい、こう思います。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一般の金融機関並びに政府系金融機関に対しまして、それぞれ事態に応じて適切な処置をするように指示しております。したがいまして、県の商工指導部あるいはそれらの政府系三金融機関について御連絡いただけば、その業態に応じていろいろ御指摘申し上げ、また金融について御相談申し上げる手はずになっております。  ただ、この場合無担保、無保証、無利子ということを全部貫くことは、現在の状態ではむずかしいのではないかと思っております。廃業するとかあるいは事業転換をするという場合には、無利子というようなやり方もございますし、いろんな措置も講じてございますけれども、いろいろの滞貨金融であるとかというような場合につきましては、いまのところはそういうことはむずかしい状態になっております。いずれにせよ、三金融機関並びに県の商工指導部に御連絡くだされば、われわれのほうでも指導できるようにしてあります。
  156. 神崎敏雄

    神崎委員 この業者が、無利子であるというのがこの際の特徴なんです。これは、各地どの府県へ回っていろいろの業界を調べましても、大体共通しているのは、もう金を借りるなら長期無利子だというのが特徴なんです。この業界が無利子で融資をしてくれというこの要求は、決してむちゃな要求ではございません。なぜかというたら、このような深刻な状態に立ち至らしたのは、実は中小企業責任ではない。これはあげて政府の誤った円対策の結果ではないのか。政府が円の事実上の再切り上げをやったこと、このことについてほんとうに政府責任を感ずるなら、利子補給などもちろん努力すべきである、これは当然だと私は思うのですが、総理いかがですか。
  157. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ただいま申し上げましたように、その業態、業態及び地域、地域に応じてきめのこまかい指導をするように、われわれのほうの通産局にも指示がしてございまして、県当局とも連絡をとっております。なお、近く県の商工関係の部長さん及び通産局の商工部長等も集めて、さらに念のためにそういうことを指示することにしてあります。
  158. 神崎敏雄

    神崎委員 総理に答えてほしいのですが、いま通産大臣のおっしゃったことは商工委員会でも聞いておるし、もう通達は、口と紙はよく出ておるということは私も知っておりますが、業界は口や紙だけを期待しているのじゃないのです。一万円札を期待しているのです。  そこで総理に聞きたいのは、自民党の今日の政治のやり方の中で、無利子制度というような金融制度はどこにもないのか、あるのか、これをひとつ明らかにしていただきたい。——総理、答えなさい。総理に聞いているのです。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ただいま申し上げましたように、業務を廃止するというような場合には、特別の考慮でいろいろそういう措置をしていることも含まれております。
  160. 神崎敏雄

    神崎委員 業務を廃止するときにだけ無利子で融資をするというように言われましたが、しからば伺いますが、ここにあるいわゆる中小小売商業振興法による近代化資金、これはすでに四十八年度予算で無利子でやろうとしておるじゃないか。また、ここにある中小企業振興事業団業務方法書、これにも全部これは無利子でやるとなっておるじゃないですか。すでに現在、無利子制度というのは、廃業以外に全部無利子でやるということになっておるじゃないですか。これから近代化したりあるいは事業を積極的にやろうとするところは無利子で、自民党・政府の失政の結果としての現在の重要な円ドル問題で、いまや生死の境目にさらされている中小企業については、なぜ無利子にすることができないのか。責任ある答弁を一ぺん、総理しなさい。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いままでの借りている人々でお困りの方々については、返済猶予という制度もございます。その返済猶予をかけた上に、さらにいまのように低利、あるいは先ほど申し上げたような場合には、無利子のお金を用意しておる。それから、小売り関係の、これはことしから新しくやろうという問題については、無利子、無担保、無保証、そういう問題がございます。これは小売り商業振興のために、特別な配慮で実施しようとしておるものでございます。
  162. 神崎敏雄

    神崎委員 中曽根通産大臣は、きのうやきょうの通産大臣ではないと思うのですが、しかしあなたは御存じない。これからやろうというのではなしに、これは昭和四十二年九月二十日の日付で出ているのです。いいですか、四十二年の九月二十日に出ている。これからやろうとするものではない。ドル・ショックやらそういうものがまだ起こっていないときでも無利子という制度があったんだ。たくさん無利子の制度があるのです。これは私がつくってきた資料じゃないのですよ。おたくが出した資料です。中小企業がいまや死ぬか生きるかというこの重大なときに、特別にこういう委員会を二回にわたってやっているのは、主としてこの問題については、あげて中小企業の金融というようなことが中心になっている。この具体的な実例について何と考えるか。ふしぎなことには、田中総理はなぜ答弁に立たないのか。そのことを聞きたいのです。
  163. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 所管大臣が答弁してから……。
  164. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 商店街を新しくつくって改装する、そういうような場合には、アーケードやそういう問題もございまして、無利子の制度があるよしであります。それから、いま申し上げたように廃業する、そういう場合にはあるよしであります。しかし、それ以外には、やはり利子をもらうということは、一般の原則としてそういうことでやっていただくことになっております。
  165. 神崎敏雄

    神崎委員 総理が立つと言っているのなら、立たしてください。
  166. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 無利子、無担保、無保証の制度は、四十八年度予算の中で創設をすることにしておるわけでございますが、いま御指摘になったような事案に対して無利子、無担保、無保証というような制度が現にないわけでございます。それは、左の条件に該当するものということでやっておるわけでございますが、いま御指摘になったものはそういう条件ではなく、いま非常に困っておる、こういうことでありますから、困っておるというものに対しては、いままで制度がないわけでありますので、実情の把握ということがまず一番問題だと思います。そしてこれが手配をするなら手配をするようなことになりますし、また無担保、無保証で貸しても再起の見込みがないということになれば、廃業資金ということで補助金になるわけでありますし、金融制度の中で一体なじむものかなじまないものかという問題もありますので、こういう問題は実情を十分把握してから検討をしなければならぬ問題だと思います。
  167. 神崎敏雄

    神崎委員 時間の都合で続けて最後に集約的に聞きますが、これは東京大田区品川の、あるいは秋田のクリスマスの電球、このうちの一例をあげます。  品川の製造業者は、ことしの輸出見込みを五十億円、一ドル三百円としていたために、差損金は約四億円となる。このままではクリスマス電球産業は成り立たない。前回のドル・ショックのときの借金も返していないのに、新しく融資など受けられない。それよりもいま借りている分を一年ぐらいたな上げにして、その間の利子をただにしてほしい。これは先ほどと違って、一年間たな上げをした上で利子をただにしてくれ、こういう要求ですが、これはどうしますか。
  168. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう御要求があるかもしれませんが、やはりこれは金融制度のワク内において一応処理するという方針でやっております。したがいまして、県の商工指導部のほうに御連絡願えれば、いかようにも御相談に応ずるようにしてあります。
  169. 神崎敏雄

    神崎委員 一時のたな上げもせない。無利子もせない。そして総理が所信演説で、円の問題については特に被害は中小企業に及ぶことをよく言われたあげく、これに対しては万全の対策を立てると言われたのは一体どういうことなのか。万全の対策という中身はこれほどたよりないものであって、これほど国民を愚弄するものであったのか、こういうことになるわけです。  さらに申し上げたいのは、神奈川県、特に横浜のスカーフ、これは全国で百三十二社のうち、七十四社を占めております。これは関連従業者数が約四万人から五万人おる。しかも対米依存率は全生産の四〇%。前回のドル・ショックでアメリカ、西アフリカが激減した、非常に少なくなった。特にアメリカ向けは、金額にいたしまして、四十六年が五十五億円、四十七年が四十一億円、したがいまして対アメリカだけの減額が十四億円になっておる。この七十四社の生産は全国の九〇%を占めている。また、この輸出全体は全国で年間百三十億円から百五十億円だ。ところが、前回のドル・ショック以来九十億円台に大幅に減少した。この業者は、対米繊維輸出規制の際に約二億二千万円の据え置きの融資を受けたので、これがいま返済期に来ておる。さらに、ことしに入ってから羊毛が約三倍の値上げになっているので、ウールのスカーフはコスト高になって採算上もうできない。これが今日のこの業界の実態です。そうしてこの業界の要求は、緊急融資として、いまの業者全体に約三億円を、組合という組織を保証で借りたい。担保は前回借りるときに出してしまって、もうないんだ。だから組織を保証してやってくれ。もし転業せよというなら、現在約二十億円の融資が要る。少なくともこの二十億円を五年の据え置きで借りなければ整理がつかない、こう言っているのです。  そこで中曽根通産大臣に聞きますが、あなたは二月二十日の予算委員会で、わが党の荒木議員の質問に対して、「要求があればどしどし出すように指示してあります。それで要求があって足りない場合には、足りないときの措置もわれわれは考えております。」こういうふうに答えておられる。これは速記録どおり。そうしていま伺うと、やれ地元の支部へ言えとか商工部へ言えとか、そういう答弁ばかり繰り返されておるが、この横浜スカーフの、二十億を融資してもらいたい、四万から五万の下請関連その他の従事者に対する処置を知りたい、こういうふうな要求について、先般の二十日の中曽根さんの発言と関連して答えていただきたい。
  170. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほどから申し上げますように、中小企業振興事業団による共同転換事業というものについては、十六年間二・七%で融資する制度ができております。双眼鏡ケースや燕の洋食器等ではこれを検討中でございます。  それから、中小企業振興事業団による設備共同廃棄事業、これは無利子で十六年間、これは福井県のサイジング業、岡山県バンコック帽体事業等が実施する予定です。こういうように制度はありまして、県の指導部あるいは通産局の商工部にいろいろ用意しておりますから、そこで御相談に応じますから、そこへよこしてください。やはりこういうものは手続をしなければできないので、手続のときにはいろいろ御相談に応じて御指導申し上げる、こういうことになっておる次第でございます。
  171. 神崎敏雄

    神崎委員 そうすると大臣、この横浜のスカーフは、手続をしたら二十億をお貸しになりますか。
  172. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは全額お貸しするかどうかは、これはわかりません。しかし、ともかく親切に親身をもっていろいろ御相談に応ずるようにはしてあります。
  173. 神崎敏雄

    神崎委員 言うてくれば金はどんどんほしいだけ出す、それでも足りなかったらなおさらまだつけてでも出す、こういう姿勢は一貫しているのですね。どうですか。
  174. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 できるだけその困難を救うように、御要望に応ずるように、そういうふうに指示してあります。でありますから、御相談に応じさせますから、お申し出くださればいいと思います。
  175. 神崎敏雄

    神崎委員 では中曽根さん、この横浜のスカーフはどこのだれと相談をして、中曽根通産大臣は、相談に来たらできるだけあなた方の要求をいれるようにいたしますと国会で答弁しておりますから、そういうふうに言うていったらいいんですね。
  176. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 県の商工部へ行っていただいて、あるいは通産局へ来ていただいてもけっこうです。ただし、これはやはり公の金、国民の税金を使うわけでありますから、むだなことやあるいはやって意味のないと思うことに貸すわけにはまいりません。その困難を救うために必要なものはいろいろめんどうを見るように、そういうことで御了承願います。
  177. 神崎敏雄

    神崎委員 それでは、少し私の聞くことからも言わしてもらいたい、いまの問題と関連がありますから。先ほどここで三井物産の差損金の問題で混乱が起こった。一方ではそういうことで混乱が起こるようなことをやりながら、中小企業がいまやまさに政府責任においてこういう事態にさらされているときに、手続がどうだとか、それが正確であったらどうだとか、いろいろな選別条件やいろいろなことをとやかく言う中でしか救済をされないというのが、あらゆる万全を期す政策の中身なんですか、総理大臣。
  178. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国民の税金、あるいは公のお金をお使いするということですからね。だから、何も権利みたいに、牛乳屋が牛乳を配達するようにものが来ると考えては間違いであります。やはり、そういう公の金を借りるということで、手続に来てもらわなければ、そういうことはうまく進まないということは当然だろうと私は思います。
  179. 神崎敏雄

    神崎委員 あなたがそういう姿勢で私に反論的なことを言うなら、私もひとつ言わしていただきますが、だれが牛乳の配達の質問をしているのか、国会議員をあまりにもばかにせぬようにしていただきたい。それは私がいま言うたのは、横浜のスカーフが、四十六年は五十五億で、四十七年は四十一億になって、対米だけでも十四億の差損になっておるんだ、しかも前回はこれだけの、二億二千万円の金も借りているんだ、それも返済期を迎えているんだ、こういう事態に追いやったのは横浜のこのスカーフ業界のやったことではないんだ、政府円対策の失政がこの業界をここまで追い込んだのだ。またこの業界ではなしに、三十何カ所調べてきましたが、全部同じような状態にさらされているのに、堂々と円対策に対する中小企業に対しては、万全を期して政治生命をかけてでもやるような姿勢を一方ではゼスチュア的に言いながら、中身はそういうことなのか、こういう点で伺っておるのであって、それを、じっと待っておったら牛乳が配達されてくるように金が来るのとは違いますとは、一体どういうことなのか、責任ある答弁をもう一ぺんしなさい。許されないです、そういう答弁は。
  180. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ともかく公の金を使うということでありますから、正規の手続をしてそして協議をしながら進めていきましょう、御相談には応じます、そういう意味であります。
  181. 神崎敏雄

    神崎委員 いまの答弁を聞かれて総理大臣、どうですか。
  182. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 中小企業や零細企業対策に対しては努力をいたしてまいったことは、理解がいただけると思います。また、第一回の円平価の調整に対して中小企業が受けた、また受けるであろう被害に対しても、立法をお願いしたり、金融措置をやったり、税制上の措置をやったり、いろいろなことをやってきたことは、これも御承知いただける事実でございます。  今度も、変動相場制に移っておりますから、特に対米貿易にウエートを置いておる中小企業がたいへん困難な状態であるということは、これは私もよく承知しております。私の出身県である新潟県には、その七、八〇%を対米貿易のシェアを持つ燕の洋食器工場があるわけでございまして、その三分の一は転廃業をしなければならないような状態にあるということで、非常にこれが対策に腐心をいたしておるわけであります。県も、国も、また業界も、お互いが共同でこれらの事態に対処をしようということで、いま努力を続けておるわけでございます。  いろいろ御指摘になっておられる企業も例外ではないと思っておるわけでございまして、政府としては転廃業をしなければならないような場合にはこういたします、またどうしても税金を納められないというものには繰り延べ処置もいたします。先ほど大商社に対しての要求がございましたが、これは中小企業といえどもみな平価調整による損失計上は会計処理上認めておるわけでございます。そういういろいろなことをやっておりますが、いまのあなたの御指摘になられた企業はたいへん困難な状態になっておるということはわかります。わかりますが、その実態がどのようになっておるかは、私もまださだかに承知をしておるわけじゃありませんし、一体その再建をするのか、廃業をするのか、その一部をどうするのかというような問題は、問題が具体的にきまればそれに対応する処置はあるわけであります。しかしそうではなく、政府の施策よろしきを得ないために変動相場制になったんだから、困難なものに対しては無条件に、無利子、無担保、無保証で出せとこう端的に言われても、それは出しますということを、私が言える立場にないということもおわかりだと思う。私も、やはり法律に基づいて国民の利益を守らなければならない公の立場にあるわけであります。中曽根通産大臣もそのとおりでございますから、やはりいまの制度の中で、ひとつできるだけのことが行なえるように連絡をしていただきたい。どうしても制度上できないという場合、しかしお互い国民共同の責任でもって処理しなければならないという事態が判明すれば、それに対しては新しい施策で対処しなければならないということは言うまでもないわけであります。短い時間ですから、あなたもイエスかノーか、こういうお気持ちはわかります。その熱意もわかりますが、中曽根通産大臣が言っておりますのも、現行制度の中でも相当救済できるようになっておりますから、どうぞ御相談ください、こう言っておるのでございますから、そういうところはひとつ分けてお考えいただいて、御理解がいただきたいと思います。
  183. 神崎敏雄

    神崎委員 総理ドル・ショック以前ですら無利子制度というものをつくっているのです、中小企業に。また、四十八年度予算の中でもそういう制度があるのです。その過程でこういうような大きな問題が政府責任において起こって、いまや倒産するかしないか、路頭に迷っているのです。もっと卑俗なことばで言うならば、前のショックで中小企業は首をつらされて右足を引っぱられて、今度は左足を引っぱられて、いわゆる自民党の政治で、中小企業というものは安楽死の方向に向かって進められようとしており、それを今度はギロチンにかけようとしている、それが現実なんですよ。だからこういう要求が出てくるのです。何もこのときに無理子で無担保で、そうしていい金を借りたいというのじゃなしに、生死の線上にさまようているからこういう切実な要求がある。  総理大臣はあまり知らないと言うなら、あなたは施政方針とはだいぶん変わっているのですが、あなたが知らないと言うなら、私はこれを差し上げてもいい。これは各府県で調べてきた具体的なデータです。中曽根通産大臣の持っておられるのは中金のデータだと思うのですが、あれは印刷したやつですから、私も知っていますよ。その違うところを全部調べてきた。だから具体的なことを言っているのです。これは時間がないということをあなたも言われたように、非常に残念ですが、わが国の全中小企業を代表しての現在の実情を、政府に向かって言うことができない。  したがって次に進みますが、これはまた愛知の瀬戸の陶磁器の問題ですが、現在すでにこれも採算割れだ。前回の特別融資を返済しようとしたが、これもやさきだった。そこへ今回のいわゆるショックで、実に被害は甚大です。ここは輸出価格の二五%を引き上げてもらおうと要求しようとしておったときなんだ。ここも諸物価が上がるし、いろいろなことで。しかしながら、こういうことになってから、いわゆる新規契約は当分の問は全部ストップ。ちょうど季節的にいうたら春と秋にバイヤーが来る時期をいま迎えているのです。ところが業者は、レートで見込みが立たないので商談ができない。そこで円の切り上げに対しての差損額は国が補償してくれと言う。いいですか、一番初めは無利子の要求だ、次は一年たな上げしてくれということ、そうしてもっと安くしてくれという要求で、今度は差損額は国が補償してくれと言う。これは横浜と神戸のスカーフの業者二十社ですが、前回のときの差損金は七千八百万円の差損金を受けているのです。これの全額を補償してやる用意があるのかどうか、これを伺いたい。
  184. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 差損金を全額補てんしてやるという制度は、いまのところはできておりませんが、税法上そのほかあらゆる面におきまして、最大限めんどうを見られるように努力してあげたいと思っております。
  185. 神崎敏雄

    神崎委員 私たちは、その最大限めんどうを見ますというような表現は、どうも業者と対話をするときに、通産大臣は最大限めんどうを見てやると言っておりますでは話は通じないのです。国会の中では通ずるかしらないが、業者と直接話をするときには、そういう抽象論はあかぬのです。あなたの業界には何月何日ごろ、どのような形で現在の緊急対策を通産省は打つと言うておるから、それまでの間の食いつなぎはこういうふうに考えたらどうかということなら話はわかるのですが、そういうような答弁では業界で話が通じないのですが、中曽根さん、もっと具体的な答弁はできませんか。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど来申し上げますように、その県の商工部の指導所がございますから、そこへいらしていただくか、あるいは通産局の商工部へいらしていただいて、いろいろその事態に応ずる相談に応じさせていただく、こういうことをお願いいたします。
  187. 神崎敏雄

    神崎委員 それでは重ねて聞きますが、あげて県の商工部、県の出張所へ行けと言われましたが、すでにフロートになって相当期間もたちますが、この間、たとえば東京で、大阪で、京都で、岡山県でどれほどの相談があって、その相談には、その出先通産局はどのような成果をあげ、業者はどのようにそれを享受しておるか、具体的事例があったらここで披露していただきたい。
  188. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先般実施しました為替の予約制度等については、もう相当数の予約の成立があります。たしか一億数千万ドルくらいできたと記憶しております。そのほか、いろいろ業界によって御相談に来られた向きにつきましては、それぞれ御相談して、いま協議しておるところもございます。  具体的には、中小企業庁長官から御説明申し上げます。
  189. 莊清

    ○莊政府委員 業界で一番要望されておりますのは、とりあえず前回融資いたしました緊急融資の繰り延べの問題でございます。これにつきましては、ほとんどあらゆる産地組合等から、中小企業の三金融機関のほうにも直接話が来ておるようでございます。さらに、産地を所管しております県の担当の商工部のほうにも同様な話が来ております。これにつきましては、ほとんどの組合からそれぞれの所属の県のほうに申し出が来ております。なお、前向きの金融についても要望が来ておる点は、全く同様でございます。
  190. 神崎敏雄

    神崎委員 何県のどこで、たとえばと、こちらから、東京では、京都では、岡山では、大阪ではと、ぼくは大阪出身ですから大阪のことはよく知っていますが、岡山ではどうかとこちらから幅を狭めて質問してあげておるのに、それも答えられないということは、何にも万全を期しておらぬということじゃないか。
  191. 莊清

    ○莊政府委員 今回のショックを著しく受けました輸出産地というものは、先生御指摘のような共通の要望を持っておるわけでございます。そこで、具体的な数字をあげまして、各金融機関のほうにも申し出をいたしておりまするし、県の担当の商工部のほうにも全部申し出をいたしております。
  192. 神崎敏雄

    神崎委員 もう一ぺん言いますが、京都や岡山ではどうなっておるのと聞いておるのに、あなた一つも岡山、京都という発言をせないのは、わからないということですか。わからないならわからないでいいんですよ。わからぬからけしからぬと言うのはその次だから。
  193. 莊清

    ○莊政府委員 京都、岡山の関係の分も、それぞれ所管の通産局のほうで取りまとめをいたしまして私どものヒヤリングの際に、全国の事情聴取の中に込めて私ども承知いたしておる状況でございます。全部そういうものを積み上げまして、私どもは所管の通産局から事情聴取をいたしたわけでございます。したがいまして、岡山や京都について特別に御指摘がございましたけれども、そういう分も報告の中に入っておる、かように承知いたしております。
  194. 神崎敏雄

    神崎委員 それを聞いているのです。数字がまだまとまっていないのかね。知らないのかね。
  195. 莊清

    ○莊政府委員 個別の組合、産地からの要望金額あるいは繰り延べ要望金額等については、いま手元に資料があるわけではございませんが、ヒヤリングの中にすべてそういうものは個々に具体的に入っておりまして、それについて調査をしたわけでございます。
  196. 神崎敏雄

    神崎委員 調査をした結果を聞いているのですよ。調査をしておりますというのは、もういやになるほど聞いたんだ。調査をした結果、五なら五、三なら三、五百なら五百という数字を言いなさい。それが言えないということは、していないということと理解していいのですか。
  197. 莊清

    ○莊政府委員 具体的に業界の要望というものを詳細に現地で調査いたしまして、それを私どもヒヤリングをしたわけでございますが、個々の具体的な組合からどうであったかということは、私、現在ここに資料を持参しておりませんので、そのことを先ほど来申し上げております。ただ、通産局を使い、全国の主要な産地の調査をした際には、少なくとも、先ほど来御指摘のありましたような問題の産地につきましては、もちろん個々に調査をしておるということを、先ほどから繰り返し申し上げておるわけでございます。
  198. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私の手元にある資料を見ますと、先生の御郷里の大阪府下の資料が一つございますが、輸出敷物製造業、これについて日本輸出敷物工業組合から陳情がございまして、内容は、長期低利の融資、それから滞貨資金、減産資金、転業資金、肩がわり資金、この要望が来ております。第二に、前回融資の据え置き期間と返済期間の延長、第三に、上記に対する借り入れ利率の引き下げ。  それから堺市周辺の敷物関係の製造業から同じように出てきております。これも大体同じようなものでございます。
  199. 神崎敏雄

    神崎委員 それは中金の資料でよく知っているやつです。だから違うところを調べたのです。  時間が進みますので、次に為替予約の問題ですが、中小企業庁のこのパンフは、為替予約を受け付けるというふうにここに書いておりますが、この予約の現状について、いまどうなっておるか、具体的に聞かしていただきたい。
  200. 莊清

    ○莊政府委員 今回の為替予約でございますが、先月の二十日の閣議了解で実施する旨が決定されました。実行されたのはたしか二十七日からであると記憶いたしております。その後間もなく市場が閉鎖になりました。現在は動いていないものと了解いたしております。その問約一億五千万ドル程度の外貨預託が実施され、先物の予約が行なわれ、新規の契約が行なわれたという状況でございます。
  201. 神崎敏雄

    神崎委員 この問題についての中心的な質問はあとに譲りますが、先ほどから言われている総理大臣や中曽根さんの決意とか、万全を期すとか、言うてくれば何でも聞いてやるというようなこととの関連から見て、総理、ひとつあとでこのパンフを中小企業庁から取り寄せて、二ページのまん中ぐらいを一ぺん読んでほしいのです。これはこう書いてある。「この小冊子は、緊急にお知らせするのを旨としていますので、部数が不足する場合は、恐縮ですがコピーして戴いて中小企業の方々に幅広く配布して下さい。」こんなパンフを、十四兆も予算を組んで、ありとあらゆることについて、日本列島改造では九千キロも新幹線を敷くというようなことをやっているのに、こういう、いま重要な中小企業に向けて知らすパンフを、部数が不足する場合は、恐縮ですが、ひとつコピーをしていただいて、中小企業の方々に幅広く配付してください、これでいいでしょうか。選挙のときは田中さんのだいぶ大きなポスターを全国的に見ましたけれども、こういう大事なものを、コピーして業者の間に回さなければいかぬのですか。もっと大量に刷って、できたら町々に、中小企業はこの際こういうことをやりますというようなことの大宣伝をしたらどうですか。こんなものを、業者がコピーをして再び配らなければいかぬようなことをやっているなら、これが中小企業対策か、これが万全を期している中身か。私は中小企業を代表して心の底から怒りを持ちますよ、これを読んだときに。これが自民党の中小企業対策なんです。こんな紙一枚でも中小企業対策については惜しんでいるのかどうか。どうですか。
  202. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは政府のだと思いますね。そうでしょう。これはすみやかにそういう制度があることを組合員の皆さんにお知らせする必要があるので、とりあえず急いで刷って、そうしてそれを商工会議所とか商工会とかあるいは組合とか、そういうところへお届けして、大体そういうところにはゼロックスやコピーがありますから、そこでまた急いで配ってもらう、手続を早くやってもらうために、とりあえず中身の大事なことをお知らせする、そういう意味であると御了承願いたいと思います。
  203. 神崎敏雄

    神崎委員 これがいまの通産相やら、いわゆるいま自民党総裁田中さんの顔というのだったら、こういうものを非常に幅広く、ほんとうにあちらこちらに展示する。そうして中小企業は、できるできないはあとにしても、周知徹底さすというような姿勢は、万全のほんの一つの側面だと思うのです。それもやらないで、コピーでやれというようなことを言っているのですね。  さらに、いま中小企業庁長官が言われたが、この問題はなるほど二十七日に始まったのですが、一月の二十六日、これは日銀から大手十六銀行に一億ドル、いわゆる為替取引の円滑化のためにやられた。ところがここの一億ドルというのは二日間でなくなったのです、預託外貨ドルは。そうして二十八日に五千万ドルを追加したのです。これも一日でなくなってしまったのです。そうして三月一日にさらに五千万ドルを追加しようとしたときに、外為市場が閉鎖されてストップになった。この間でも、まだその市場が閉鎖される以前でも、予約者は予約のために門前市をなしたのです。ところが、もう二、三日待ってくれ、ドルが来ないからという形で待たされているうちに閉鎖になってしまった。大蔵大臣はこういう現状を御存じですか。
  204. 愛知揆一

    愛知国務大臣 正確には一億四千七百万ドルだったかと思います、一日現在の額が。これは先ほど中小企業庁から説明がありましたように、できるだけ中小企業輸出関連の方々のお役に立ちたいと思いまして、外貨預託を実行いたしました。私の受けている報告では、これはなかなか好評であった。しかし、これもそう無制限にというわけにもいきませんので、大体この程度で相当のお役に立ったと考えております。
  205. 神崎敏雄

    神崎委員 相当にお役に立ったと思っているというようなことだから、万全を期したということの中身が、いかに希薄なもので薄弱なものだかというのは、初めから言っている。ちょうど公営住宅の抽せんみたいに、待たされて待たされているうちに閉鎖されて、希望者はいまだにこれはどうにもならぬようになっている。あらゆることをいたしますと言っているのでしょう。万全を期すと言っているのですから、私はどうしても、この外為市場閉鎖中といえども中小企業に格段の配慮をするという立場からも、この問題についてさらに積極的な姿勢をここでひとつ示してほしいということと、この間に、外為市場閉鎖中でも、中小企業には格段の配慮をするようにという大蔵省の政務次官の通達を出したということを聞いておりますが、これは事実ですか。
  206. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、輸入金融あるいは輸出金融等については、市場閉鎖等にかかわらず、できるだけの措置を講ずるようにという考え方をもって、そういうふうに指導しておることは事実でございます。
  207. 神崎敏雄

    神崎委員 この通達をお出しになったのは事実かと言っているのです、指導じゃなしに。出されたその全文をここで読んでください。どんな全文か。
  208. 吉田文剛

    吉田(太)政府委員 これは昭和四十八年三月六日に、大蔵省に各銀行の責任者を集めまして、事務次官が要望いたしました。その場合に手交したメッセージだろうと思います。
  209. 神崎敏雄

    神崎委員 その中身を読んでくれと言うた。
  210. 吉田文剛

    吉田(太)政府委員 「今回の世界的な通貨危機に際し、各国当局は、協力してその収拾に努力しておりますが、きたる三月九日には、パリにおいて十か国蔵相会議のメンバーも参集して、協議することになりました。今や、世界が投機と戦って、国際通貨秩序の確立に努力する態勢をとりつつあります。このような通貨不安の状況にかんがみ、東京市場も今週一杯は閉鎖される見込みであります。しかしながら、市場閉鎖期間中最も懸念されるのは、中小企業の経営に及ぼす障害であります。円レート・フロート中における中小企業対策につきまして、すでに政府は逐次所要の措置をとって参りましたが、この閉鎖期間中におきましても、中小企業金融に支障をきたさないよう、各位の格別の御配慮をお願いする次第であります。また、市場再開の後にも、なお投機的な動きが残る可能性もありますが、各位におかれましては、外国為替公認銀行として、為替管理関係の法令を遵守することはもとより、節度をもって事態に対処されることを要望する次第であります。」  以上であります。
  211. 神崎敏雄

    神崎委員 そういう要望を出されてからは、具体的にどういう成果があがりましたか。
  212. 吉田文剛

    吉田(太)政府委員 御承知かと思いますが、現在窓口においては顧客に対して支障のないように仮レートをもって仕切るということ、あるいは融資にあたってはできるだけめんどうを見るというようなことで各金融機関がやっており、現在のところ、それほど大きな支障が起こっておるということは、私のところにはまだ届いておりません。
  213. 神崎敏雄

    神崎委員 こういう場所ですから名前は申しませんが、これは大手の銀行の話です。支障がきておりませんどころか、これが閉鎖されたために非常に困っておる業者、またそれを扱っている外為十六銀行も非常にこのことについていま困っておるというのが現実なんです。それを支障を来たしておりませんなどと言っているところに問題があるのですね。  そこで、私はあらためて田中総理大臣に伺いたいが、問題の第一は、この外為が閉鎖される寸前までに予約を申し込んでおる業者には、その閉鎖以前のレートですぐ受け付けられるかどうか、受け付けをやらすかどうか。第二は、今後も、閉鎖中でも予約を受けられるようなつもりはあるか、またそういうことを実施されるか、この二点についてお伺いしたい。
  214. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先物予約ということを考えて外貨預託をいたしましたことは御承知のとおりで、これを閉鎖中に続けてやるということには、率直に申しまして非常な困難がございます。しかし、業務が閉鎖されておりますのは、インターバンク、つまり銀行間の取引でございますから、顧客と為替銀行との間の関係におきましては、ただいま銀行局長から御説明したような状況でございます。  それから、外貨預託を過去にのぼってこれを拡大するということは、これもできかねると思いますが、しかし閉鎖ということは、前々から申しておりますように、ヨーロッパの状況が御承知のような状況でございまして、異例なことでありますが、同時に、不測の事態が起こることを防衛するための自主的な措置でもございますから、そういう点を考え合わせまして、閉鎖中におきましても為替予約とか、あるいは特別に中小金融に対してインターバンクの取引を回復といいますか、機能を存続するということは、これはできかねることでございますから、それにかわるような措置については、知恵をしぼって対処したいと思っております。  それから、ただいま通牒というお話がございましたが、私から一言申し添えます、が、これは実は国会に予算案を御審議願っておる非常に大事な時期でございますから、本来は私が為替銀行の最高首脳者を呼んでいろいろ相談もし、アピールもしたかったのでありますけれども、時間的にこれができませんでしたので、吉國次官から、私の気持ちをこのメッセージにあらわしまして、次官から各銀行最高首脳者に伝えたわけでございます。それがいまのメッセージでございます。
  215. 神崎敏雄

    神崎委員 それが二日間で一億五千万ドル、そして三日目にまた五千万ドルを補足しようとしたときに市場がとまった。ところが銀行の前には、机の上には予約の希望者が山積しておる。これはいわゆる需要と供給の見通しが非常に甘かったというか、無責任であったか、どちらかなんですね。  先ほどから一貫して聞いておりますけれども、総理、結局は、施政方針演説やらいろいろな中で、中小企業に対する対策を万全を期すると言うている中身と、具体的にその万全を期すということについてどのようなことをきょうまでやってきたのか、これからどのようにやろうとされているのか、端的に聞かしてください。
  216. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 いままでやってまいりましたことは、第一に実情の調査でございます。これは全国の通産局に指示いたしまして、県庁と連絡をとって全国の地域別、業種別の実態を調査いたしました。これは大体本省にすべて到達して、その資料になっているわけであります。  それから第二に、大蔵省と連携いたしまして、一般の金融機関に対して融資に関する協力方を強く要請いたしました。これは全国銀行協会等を通じて全国に流れて、その方向でいま融資の準備あるいは協力をやっているところでございます。それから、政府関係金融機関に対しまして、これは通産省及び大蔵省両方とも同じように指示いたしまして、そうして適切な金融協力を行なうように、そういうことをやりました。それから為替予約については、先ほど申し上げたとおりでございます。  大体そういうことをやっているほかは、保険関係措置でございますね。これも利率を下げ、及びワクを拡充しよう、そういう方向で目下準備をしている。いままでのものはいままで動いておりますけれども、それよりさらに拡大しよう、こういうことでいま準備している、こういうことでございます。(神崎委員「総額でどのくらいになりますか」と呼ぶ)具体的なことは長官から説明させます。
  217. 莊清

    ○莊政府委員 現在利用可能なのは、保険のワクというのがございまして、個々の企業ごとに、制度ごとにきめてございます。それを今回また同額、つまり倍額まで利用可能なように目下検討中でございます。
  218. 神崎敏雄

    神崎委員 では最後ですが、総額による相当な額になると思うのですね、いま中曽根さんが言われても。ほんとうにそれをやる気ならば、やはり相当な総額になると思うのですね。そうなりますと、今回の予算の根底というものも再検討しなければならぬところにくるわけです。ところが、それをさわらないでこのままでいこうというなら、いま言われたことも、結局、その場限り、出たとこ勝負の、まことに無責任きわまることだといわざるを得ない。  そこで、すでにわが党は、この前も、津川あるいは増本、荒木の各議員が、この円問題について質問いたしました。この中でもいろいろと具体的な問題が明らかになった。そうしてきょうも私は一時間にわたってお伺いした。しかし第一に、田中内閣は口ではいろいろ言いますけれども、結論から言ったら、きわめて無責任な態度であるということははっきりしている。総理は昨年の秋には、円再切り上げはしない、円再切り上げをすれば相当の政治責任が生まれると言った。国民田中総理のこの発言で、円再切り上げはないとして安心をした。ところが、円はフロートに追い込まれ、同時に円がフロートになった責任アメリカやヨーロッパの責任にして、日本政府円対策責任をごまかし続けている。そうして万全の努力をすると言うが、先ほどからも明らかになったように、非常に抽象的であって、具体的には何ら私を納得さすことができなかった。したがって、万全の努力というのは、まことに穴だらけで無責任だ。国民立場や、なかんずく中小企業立場からこれを知った場合、国民は聞いているのですから、心の底から怒りを持って許さない。また、輸出関連の中小企業の要求を見ても、金融措置だけではだめだと言っているでしょう。これははっきりしているのです。もっと一般会計から緊急対策費を出して、そうして本気で現状を打開するためには、現在の予算を再検討してまじめに緊急対策を立てるべきである。  総理は口を開けば、四十八年度の予算は福祉中心型だとか、あるいはそれに転換をしたというふうに質問者には答えているけれども、依然として低福祉であり、低賃金であり、大資本家奉仕である。先ほども問題になったように、大資本奉仕はまことに明らかなものである。総理は、低福祉、低賃金、大資本本位をやめて、経済の政策を転換すること、これがわが党の強く要求するものであります。転換とは目標を変えることなんです。こういうことについて、口先だけの転換では転換にはならないということをはっきりしておきたい。そうして、先ほどからの質疑の中でも依然として旧態たるものであって、何ら責任をとろうとする態度でない。  したがって私は、当予算は、円ドル問題を中心とした国民生活全般、なかんずく中小企業対策に対してきわめて無責任なものであり、根本的に当予算を再検討してやりなさい、そういうことを言って私の質問を終わります。
  219. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて神崎君の質疑は終了いたしました。  次に、新井彬之君。
  220. 新井彬之

    新井委員 私は、土地問題にしぼりまして質問をしてまいりたいと思います。  現在、食料品から繊維製品に至るまで、あらゆるものが投機の対象になってまいっておりますけれども、その一番の発端となったのがこの土地問題ではないかと思います。公明党の去年の八月におきます大企業の買い占めの実態調査を調べてみましても、北海道から九州まで、あるいは沖繩まで買い占められている。  その中で、東京都なら東京都の中の実情というものを見ましたときに、一般庶民が一生働いて家も建てられない、そうして都営住宅というような公営住宅にもなかなか入れない、こういうような現状に立ち至っているわけでございます。それはもうデータをあげて言うまでもなく、いままで再三言われてまいったわけでございますが、日本列島改造論、これを総理が発表いたしましてから、特にそういうような急上昇ということが出ておるわけでございます。  そこで今回、新税、そういうものが出てまいりましたけれども、規制面、あるいはまた活用面、あるいはまた税制面、あるいはまた金融面、総合的な状態においてこの土地問題というものは解決してまいらなければならないと思いますけれども、総理は、その問題に対して、ほんとうに解決していく決意があるかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  221. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本列島改造論というのは、土地問題を解決するにはこれ以外にないという自信を持って私は書いたわけでございまして、この土地問題を解決をしようということは、これは私は、自民党の都市政策大綱の中には現在まだ具体化されておりませんが、都市の問題もみな書いてあります。今日のままで自然発生的に大都会に集まることを是認していく場合には、公害と土地の値上がりと公共投資の不効率化でもって爆発的になってしまう、だから日本列島改造を進めなければならない、こう言っておるのでありまして、しかも、それに対する具体的政策を提案し御審議をいただこうとしておるのでございますし、もう税制に対しては御審議をいただいておるわけでございますから、この熱意というものに対しては、これはひとつ理解をいただきたい、こう思います。
  222. 新井彬之

    新井委員 現状の認識からひとつはっきり言っていただきたいと思うのですが、いまものすごく土地がどんどん上がっておるわけです。日本列島改造論からどんどん上がっておるわけです。そんなことはもう何回も論議されたわけです。  そこで、じゃひとつ具体的な問題から政府の土地問題に対する姿勢をお伺いしたいと思うのでございますけれども、去年の七月二十七日、二十六日だったかもわかりませんけれども、日赤に非常に赤字等がありまして、自分のところでは日赤の新しい病院が建てられないということで土地を売るという話が出ましたときに、総理政府・自民党首脳会議で、これを国で買って公園にできないか、病院改築資金も出したらどうか、こういう提案をされておるわけでございます。その結果どのようになったか御存じでございますか。
  223. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日赤は御承知のとおり、国有地を日赤に提供したわけでございます。その後、日赤は非常に老朽をしておりますので、どうしてもその一部を売却し、その資金をもって病院の近代化をはかり、財政的再建をはかろうと考えたようでございます。そういうふうな風評を聞きましたので、私は、国が提供したものであっても、これを適正な価格で買い上げて、それを何かに使うというなら別でありますが、緑地として保護をし、そして都民のためになるならば理解が得られることであるので、何とかそういうことができないかということで、これは党で話をしただけではなく、大蔵省当局にも検討を命じましたし、また日赤側等にも間接的にその意向を伝えたわけであります。その後、東元都知事でございますか、日赤を代表せられて、その他の方々等も来られまして、せっかくのお話でございますが、日赤の財政再建ということ等話が進み過ぎておりますので、国、が買い上げるというようなことよりも、何とかひとつこういう方法でやりたいということで御了解願いたい。これはまあ、善意の私の発言に対して、善意な意味でそういう通告をしてこられたわけでございます。  で、その後いろんな問題があったようでございますが、どうしても売らなければならないというときでも、あの狭いところへいろんなものが建つということは、もうほんとうに残された幾つかしかないところでありますから、まわりもよほどのことでもって計画をしないと、車が多くなったりたいへんなことになりますから、やはり建てられるものとか分譲されるものとかいうものに対しては、まあ坪一円でも高く売らなければならないという気持ちはわかりますが、これは、日赤という公的な立場、この土地が国有財産として提供されたものであるということを考えられて、真に私が考えておるような目的に沿うように、環境が保全せられるようにせられたいということを述べておきました。その後、払い下げを受けた企業の代表も参りまして、まわりの整備をいたしてほんとうにあの公園のような環境を保持いたしたいということ、これも善意な話でございましたが、そういうような事情がございまして現在に至っておるということでございます。
  224. 新井彬之

    新井委員 この問題は、厚生省と日赤という関係があると思います。総理は自分で、その土地を買って公園にしようということまで指示されておるわけでございますけれども、厚生省としては、いままでの経過はどのようになっていますか。
  225. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 今日までの経過を申し上げますと、一応古い病院でございますので何とか建て直さなければならぬ、それには膨大な金がかかるというようなことで、だいぶ前から計画はいたしておったようでございます。  そこで、最初、昨年の五月に二十二社に対しまして入札の案内をいたし、その後六月になりまして、こういう会社の方々がグループを組みまして、大体十五のグループに組みまして昨年の六月第一回の入札を行ない、そしてさらに八月になりまして、こうした十五のグループを七グループにしぼりまして、日赤側としてはいろんな条件を示したようでございます。先ほど総理からお話のありましたように、住居地のいいところでありますから、緑地帯をできるだけ広くとるようにとか、建蔽率とか、いろいろな条件をつけまして七グループと話をし、さらに昨年の八月の末、専門家の意見も聞きまして選考に入り、十月に住友グループに内定し、さらに十月に日赤の理事会で議決をしてきめた、こういういきさつになっております。厚生省としては、すでに御承知のように、日赤はあくまでもこういう特殊なあれでございますから、自主性を尊重しなければならない、こういう基本的態度に立って今日まで見てまいった次第でございます。  なお、その土地につきましては、一応いまの計画によりますと、高層集合住宅四棟を建てるということになっておりまして、建蔽率は八・四%と非常に低くしておりまして、できるだけ多くの緑地帯をその中に整備しよう、こういう計画になっていると承っております。
  226. 新井彬之

    新井委員 この土地については、東京都としても、一万八千坪にわたります土地でありますので、非常にほしいということで、これも公共的に利用しよう、公園でもつくったほうがいいんじゃないかということで日赤と交渉したようでございます。そのときに日赤側が、これは入札を行なうということで応募したらどうか。しかしながら、都としてはそういう回答をもらったのですが、民間業者と競争になれば非常に高額になってくる、そういうことが予想されたので、ほんとうにほしかったけれども、取りやめたということがあるわけです。  それから総理も、先ほど、公園をつくる、そういうことが理想的じゃないか、こういうぐあいに言われておるわけですね。これは私は、道義的に見て、いまのこの土地問題から考えて、一般国民の方の非常に納得を得られない問題になるんじゃないかと思うのです。  ということは、少なくとも大蔵省が日赤に国有財産として払い下げた。御存じのように日赤というのは、それこそ国家ができないようなことまでもいろいろやっておられる、そういう法人でございますから、これはまあ何も問題ありません。しかし、その一つの建物を老朽化していますから建て直さなければいけない、これは当然のことだと思いますけれども、そのときに、払い下げられた国有地を半分売ってしまう。それで片方では、先買い権だとかそういうことを発動して、私権の制限までしなければいけないと総理が言うぐらいのことにまでなっているときに、そういう土地自体が結局は、建蔽率だとか、公園をある程度つくると言いますけれども、これが一般の者が入れるかというと、なかなかそんな値段では入らないと思うのですね。そういうようなことから考えまして、私は、そういう国有地、これがそのままそういうような大企業には入らなかったと思うのです。ワンクッション置いてという事情はあったにしろ、これは当然国がいろいろ理を尽くして買い上げまして、公園にするとか、あるいはまた、現在住宅等で困っておりますから、そういうようなことも考えるというような、そのくらいの決意でやらなければ、片方で幾ら規制してみたって、これは始まらないのじゃないか。こういうことについてどうですか。
  227. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いまも申し述べましたように、もうこれは去年の五月にはスタートしておったようでございます。私が総理大臣になりましたのは七月でございます。それでもなおおそくない、おそいかもしらぬけれども、できれば日赤の建設費を何とかする道もあるじゃないか、また一部には、競輪とかいろいろなものの中からでも何とか出せないかと、いろいろなことを考えたわけでありますが、結局、厚生省にも検討してもらい、大蔵省にも検討してもらい、いろいろやったわけでございますが、もうスタートをしておったものだということで、日赤が、いま報告したようになったわけでございます。  しかしこれは、国有財産を売り払った場合、五カ年間でありますか十カ年間か何かあるわけです。それからは別な用に供するということもできるようになっているわけです。これは十年ぐらい前に法律の改正をしまして、そうしてそういうような制限をつけたのだと思います。それまでは制限がなかったと思います。制限がなかったと思いますが、昭和四十年ころだと思いますが、昭和三十九年か四十年にそういう制限をつけて現行法になっているわけでございますが、これはNHKの問題もそうでありますし、同じようなケースだと思うのです。まあNHKよりも、建てるもの、それから周辺の環境整備というような問題が、相当厳重にやられておるようでございます。  これから公有地、国有地というものの活用をどうするのかというような問題、また公有地と国有地だけで片づく問題じゃありません。学校を統合した場合のあと地をどうするとか、それからやはり区画整理によってやらなければ、とてもいま残っておるところだけで緑地や空地を求められるというわけではありません。とにかく災害が起こった場合のことを考えると、東京には現在の面積の三分の一ぐらいを緑地にしなければならないというぐらいな単純計算もできるわけでございますから、そういう広範な都市計画の中で慎重に考えていくべき問題だと思います。
  228. 新井彬之

    新井委員 この土地の売買につきましては、日赤本社のそういう自主性というものを重んずる、これは当然だと思います。しかし、それは総理は確かに、この話が出てから総理になられたので、そういうことが言えると思いますけれども、厚生省として、この問題についてはもう四、五年前から、何とか再建をしなければならない、そうして日赤としては現在もう赤字でどうしようもないような状態になっているから、どうしたらいいだろうということで審議会をつくって、そうしてその審議会の中で、土地を半分売らなければしようがないじゃないかということになってまいっておるわけです。そのあとは、いよいよ建てるという段階で、今度は厚生省からも役人の方が入りまして、そうして内容をどういうようににするのかということでいろいろと検討に加わっていますけれども、そういう段階で、実際問題として日赤と直接関係はないといえども、いままで国有地であったものを、そういうぐあいにして日赤が売り払ってまでしなければならない。これはほかに財政で援助する方法もあるでしょう。あるいはまたその土地を、厚生省としても、建設省とでもどことでも相談をしてやる方法があったと思うのですが、そういうことは何にも検討されてこなかったのですか。
  229. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お答えをいたしますが、日赤としては、明治二十二年という古い病院でございましたので、何とかしなくちゃならぬというので非常に苦労をして今日まで来ておったようでございます。厚生省におきましても、日赤に対しましては、ガンの医療施設だとかいろいろなものの補助をいたしてもおりました。しかし、なかなかそれだけでは赤字は解消しない、それからまた、厚生年金事業団のほうから金を借りてやるという道もどうであろうかというふうなことも考えてみましたが、この膨大な病院の建設となりますと、なかなかこれは容易ではないというようなことで、やはり一部を売る気がないかなというようなことで、だんだん計画が進んできたものと承知をいたしております。  しかし、これを売るにあたりましては、先ほども申し上げましたが、いろいろな条件をつけておりまして、転売を禁止するとか、緑地化を広くしなくちゃならぬとか、道路の舗装をどうしなくちゃならぬとか、いろいろな条件をつけておりますので、なるべく環境をこわさないように、今後とも連絡をとっていくようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  230. 新井彬之

    新井委員 現在、建設省あたりでもいろいろ検討しておりますけれども、日本の国には公園が少ない、社会資本が非常に少ないわけです。そういうようなことで、公園の緑地というものを一つ求めるにしても、なかなかそれを求めることができない。そういうことで、おくればせ、おくればせになって、中途はんぱになっている。それからまた住宅にしましても、本年度、東京都の都営住宅というのは、一万九千戸ぐらいの予算を組んでいると思いますけれども、三月にできるのはたった三千戸でしょう。そうして今度は、埼玉だとか、あるいは千葉、神奈川、そういうようなところへ行った場合は、もうそういう住宅お断わりだ、そうして自分の県内に住んでいる者なら入れることはできるけれども、よそからわざわざ来て入ってもらっちゃ困るというような制限づきになっていることも、総理よく御存じのとおりです。  そういう中で去年も、公有地の先買いということで公有地拡大法案、まあこれはこの前にもちょっと資料をとったんでございますけれども、申し出件数八百五十三件、その中で買い取り協議件数百八十四件、それから買い取り件数が十九件。まあこの買い取り協議件数というのは、これはもうほしいと思ったことには間違いないと思うのですね。しかしながら値段が合わなかったために、その成立したのが十九件というような現状になっているわけです。  それで、これは今後のことがありますから、ひとつお話をしておきたいと思いますけれども、こういう形で先買い権というものがもっと強化されて、そうして買っていかなければ、むつ小川原のような、まず初めに、大企業とかあるいは大手不動産業者が、直接でなくてもダミーをつくってどんどん向こうで買ってしまう、おくればせながら公社か何かつくってそこで高い値段で買う、こういうパターンでいままで来ているわけです。  したがって私は、今後、確かに国有財産法からいけば、大蔵省の財産を払い下げた場合に、十年間たてばそれをどのように売却するということについてのあれはないとは思いますけれども、そういうものの活用を考える。いま日本の国において土地の面積というものはきまっておるわけです。その中で、これからどのように土地を利用していくかということが出てくるわけです。したがって、少なくてもいまあるそういう国有地ですね、そういうようなものを払い下げた場合とか、あるいはまた払い下げているものにおいても、少なくとも国がそれは買い取っていくんだという、そういう精神がなければ、私はやはりほかに強く言えるような筋合いのものは何にもないと思います。そういうことで、その点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  231. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国有地の活用、公有地の活用ということは非常に重要でございますから、これが払い下げその他に対しての活用は慎重でなければいかぬし、長期的見通しに立って行なわなければならない、これはもう当然のことでございます。  ただ、すべてを公有地にしようという考え方には、遺憾ながら賛成しないんです。これはやっぱり土地というものに対しては、個人は住居の面積だけを提供されればいいじゃないかということにはなかなかならないんです。これはやっぱり、まあ職住の近接という意味で、若いときに職場と近いほうがいいということになりますと、これはもう借家でもしようがないということになりますが、日本人の観念からいうと、やはり土地まで持ちたいというところに重点がありますから、やはりある時期には狭いながらでも楽しいわが家、しかも土地も家もということがどうしても日本人からは抜けない。これは一つの国民性でございますので、やはり土地というものは、すべてを公営住宅にしてしまうというわけにはいかないと思うのです。現行公営住宅法は、ちょうど縁があって私が議員立法の代表者として二十一年前に成立をしたわけでございますが、このときには反対論が非常に多かったのです、学者は。これは特定の人に、特定の人の利益を守るために財政を使ってはならない、こういうことでもって、この法律を通すためには相当な努力を必要としたわけでございますが、しかしまあそのときには、やはり国民全体が焼け果てておって、舞鶴の引き揚げ者収容住宅と同じような理由で、この法律を時限法とすべきだという議論もありましたが、現行の公営住宅法としてすでに二十年の歳月を経ておるわけであります。ですから、やっぱり住宅というものに対しては、都市における住宅という問題とそれから日本全体における住宅という問題とは区別をして考えなければいかぬと思うのです。どうしても都市においては、土地までということよりも、土地を持っている人にいかにして公的使命を果たさせるかという、土地の利用ということに重点を置かなければならぬ。それは世界先進工業国はすべて義務を課しておるわけでございますし、そして個人が自由意思によって求め得るものに対しては、できるだけ利便をはかるというような政策でなければならないと私は思います。  今度の国会でもって御審議を願う法律は、今度、いままでは値上がりするだろうと思って買ったわけでありますが、買ったところは、早く売れば別でございますが、売らないでおると知事がそこを指定して特定地域にすれば、その基準に合うように工事は行なわなければならないようになりますし、しかも、特定地域に指定された地域内は、移動も禁止されますし、買い取り請求権というものもきめておるわけでございますから、言うなれば相当画期的な法律である。これはもうこの法律というものを実際に施行していく過程においては、相当きついものであって、いままで値上がりなどを見越して買った者に対しては、ある意味で懲罰的な効果を持つものであるというふうに考えます。
  232. 新井彬之

    新井委員 まあいま総理がいろいろ言われたが、総理は非常に甘いと思いますね。総理が公園にしたらいいじゃないかということを言われたことそのこと自体から考えても、やはり一番妥当な線というのは、これはやはりいままで国有財産だったのだ、だから国が買い上げて公園にしてあげたらいいんじゃないか。ただそれが、もう初めに話が出ていたからそれはできなかった、そういうような答弁だったわけですね。だから私は、やっぱりこのことについては、当然国が買い上げてやったほうがいいということは総理と一緒なんです、気持ちとしては。そして、たとえていえば、それは確かにいろいろの状況がございます。いろいろの地域がありますし、国で必要のないところもあるし、地方公共団体でも必要のないところもある。したがいまして、全部が全部公営住宅をつくれとかなんとかと、そんな大げさなことを言っているわけじゃないのですけれども、いまの東京都なら東京都という一つの状況を見たときに、私がさっき説明したように、公園だって足らないじゃないですか。さっき総理は、公園法のあれをつくったのは私だというふうに言われましたけれども、この中でいわれておる、「一の市町村の区域内の都市公園の住民一人当りの敷地面積の標準は、六平方メートル以上とし、」あるいはまた、「市街地の住民一人当りの敷地面積の標準は、三平方メートル以上とする。」まだできていないのですよ、これは。こういう一つのきめられた、こういうことが望ましいということだそうですけれどもね、それすらまだできていない。この前の公園五カ年計画という一つの中にあっても、まあここまではいかなくても、たとえ一歩でも前進だ、ようやく公園に目が向いてきたというようなことで審議がされているような実情から見まして、私はやはり、いま一番おくれているのがそういう公共施設なんだ、社会資本なんだ、そういうもののために全力をあげて使わなければならぬということを言っているわけです。  だから、いま言われているその土地についても、売られてしまってそしてマンションが建つ。これはもう一般庶民の困っている人からは遠い話になったわけですね。よしんば、それを今度国が必要として買いかえるときには、いまの値段で買えるわけはないのです。ものすごい高い金を出さなければいけない。そういうようなこともはっきりしているわけです。したがって私は、そういう面については、いろいろな状況はあるけれども、極力そういうものはよく検討をして、そうして買い戻すというようなことでなければならないということを言っておるわけです。もう一度お願いします。
  233. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 質問されるものがまだ日赤にからんでおるようでありますから申し上げますが、これは日赤に対しては常識的にはよくよく理解できるのです。理解できるのですが、適法な行為である。しかも私がいろいろなことを申し述べたのであります。これは予算でもって日赤をつくってあげてもいい、それから法律を出しても日赤なら理解が得られるんじゃないか、それから競輪や特別なものでもってできないか、少なくともあそこは空地にしておきたい、それは都のものとか国のものにしなくとも、へいを取っ払って、外国はへいはないのですから、だからへいさえ取り除けば、そのまま日赤の所有地であっても都民のいこいの場にもなるわけでありますから、何とかできないかと言ったんですが、結局向こうは二つの問題があったわけです。一つは病院を建てかえたいということと、もう一つは日赤全体の財政再建を同時に行ないたいという二つの目標があったので、どうしても折り合わなかったわけであります。これは大蔵省に対しても、それはただでやったようなものであっても、時価で買っても、相手が日赤であるということになれば理解が得られるんじゃないかというようなところまで根回しをしながらやったんですが、先ほど申したとおり、なかなかそうはいかなかった。総理大臣はオールマイティーじゃありません。やはり適法なものに対して誠意をもって話をして、それで向こうが応じないということなら、これはどうにもならぬじゃありませんか。NHKに対してもそうでしょう。NHKは、もっともっと国会は強い力を持っています。これは予算の審議権を持っているんですから。そういう問題でさえも同じ問題が起こったじゃありませんか。それは適法に処分されたものである。それで、向こうがもうすでに私が話を出したときにはスタートをしておって、中途の状態から入ったということで、いかんともなしがたい。  そうすれば、これからこの種の問題に対してはどうするかという問題のやはり資料にせざるを得ない。これはだれが考えてもそうだと思うのです。やはりそういうことを私はすなおに申し上げておるのであって、せめてあの環境が保全されるようなということを、これはもう普通からいったら総理大臣の越権行為であるというふうにいわれるかもしれませんが、これはやはり少しでも東京都をよくしたい。私も都民の一人でもありますので、そういう考え方から述べたり、何日かかかったわけでございまして、これからの公有地の利用その他に対しては、やはりこういう問題も十分参考にしながらやっていかなければならぬだろう、こう思います。
  234. 新井彬之

    新井委員 いまの話はよくわかります。何も違法行為でどうのこうの言っているわけではありません。政府がそういう問題に対してどういう態度で臨むか、それをきちっとしなければ、こういうケースは今後も幾らでも出てくる。買いかえるということはもう不可能である。そういうような意味から言っているわけです。  もう一つは、国民感情から考えましても、まあこれは元御料地であって、それを日赤がずっと借り受けておった。そしてそのまま、土地としては大蔵省の国有財産になって、それを日赤だからということで、これはだれでも認めることだと思います。しかし、そういう一つのいきさつというものから考えて、マイホームで困っているたくさんの方々から見れば、何でそれが半分売られて、それを都有地、都の住宅だとか、あるいは公園だとか、そういうものがいわれながら、総理は口を開けば福祉だとか、または社会資本を充実して住みやすい環境だと言いながら、そういうものですら、別に法律的な違反というわけじゃないのですが、感情として、とにかくそういうことで、三十一階ものマンションが建っているじゃないか、そしてわれわれには手が届かない、こういうことであってはならないということを私は強調しておるわけでございます。  これとともに四十七年の十月に行管からは、いろいろと国有財産の利用状況ということについての指摘がございます。時間もありませんから具体的に指摘することはできませんけれども、非常に非効率に国有地を使っている、だからそこにもつともっと有効的な使い方というのはたくさんあるということが指摘されております。あるいはまた、未利用地で内容も検討されていないものもある、こういうことで出ておりますけれども、そういうことについてどのように考え、どのように実行されようとしておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  235. 愛知揆一

    愛知国務大臣 二つの点から私は基本的に考えております。一つは、国有地の利用ということは、これは、たとえばその払い下げであるとか利用先であるとかいうことについては、国有財産なんでありますから、いやが上にもりっぱな使途にしなければならないということが一つと、それから特に土地問題というものが現下の大きな問題でございますから、これに焦点を合わせまして、ますますもって現下の国民的な要請にこたえるということを旨としてまいりたい。  それから、国有財産法等につきましても所要の改善を加えたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、現にただいまも日赤の問題で御指摘があるように、いろいろの点で過去の経緯がございました問題がいろいろある。その処理等につきましても、十分国民的に説明ができるようにいたしたいと考えております。
  236. 新井彬之

    新井委員 この前、建設大臣が遷都論ということについて構想を発表しておるわけでございます。これは建設大臣の個人の見解かどうかわかりませんが、第一期と第二期に分けまして遷都するということで、予算も二兆円をこすというようなことが出ております。こういう考え方について総理はどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  237. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 遷都論というのは非常に長いこと議論されておるわけでございます。遷都ということが一つございます。遷都とは皇居を移すことであるということがいわれておるわけでございますが、皇居の問題を離れて——皇居というのはいろいろなあれがございますが、東京都民の感情からいって、皇居の移転ということに対してはなかなか賛成が得られないということは、長い経緯に徴してもなかなかむずかしい問題でございますが、行政都市、いわゆる国会を移してはどうか、それから行政官庁だけ移してはどうかという議論もある。国会が移れば行政官庁は移れるわけです。  そういう意味で、とにかく二つの案がありまして、私も十年ぐらい前から五年ぐらい前にかけて、全国でそのような土地があるのかということで、十カ所ないし十一カ所ぐらいの候補地を調査をしてもらったこともございます。中には二十年遷都論というのもございます。これは百年もやると膨大もなくなってしまうので、二十年、二十年でやればいいじゃないか。これは二十年遷宮論と同じように二十年遷都論というのも学問的にはございます。いま予算では八百万円ばかりの調査費をつけて調査を行ない、検討をしておるわけでございますが、これがいますぐどうこうなるという問題ではございません。しかし、ニューヨークとワシントンが分けられましたように、いまブラジリアの建設が行なわれておるというような事態、そういうことを考えると、やはり真剣に検討しなければならない問題ではあろう。しかし、これは国民的合意ということが前提にならなければならぬ問題でもございますし、やはりいま遷都論というよりも、行政都市を東京から分離できるかどうか、そういうことになりますと、行政都市なら道州制をしけばいいんだ、こういう議論にもつながってまいりますし、せっかく調査費もついておるのでございますから、国民世論を背景にしながら調査を進めてまいらなければならないだろう、こう考えます。
  238. 新井彬之

    新井委員 自治大臣にお伺いしますけれども、これから東京なら東京を住みやすいところにしていくということについては、東京都と都民の声も全部反映をしていくというような形で進められていかなければならぬ、このように思うのですけれども、たとえていうと、政府の方針とその地域の方々の意見が違った場合、どういう形をとるかということをちょっとお伺いしたいのです。  一つの例をあげますと、田中総理が、とにかく高層建築をすればこれは解決をするのだというような一つの提案みたいなことを言っております。そこで東京都としては、日照権の問題とかいろいろ考えて、既成地域には低層のほうがいいんだというようなことに出ておりますけれども、こういうような問題を自治大臣としてどのように扱いますか。
  239. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 事業が幅が広くなれば広くなるほど、国の方針と地方公共団体の方針とが食い違うということも、これは私は出てくる問題だと思います。もとより民主政治というものは地方住民の声を尊重して国が方針をきめていく、こういう形になるわけですが、これは極端に方針が違いまする場合には、たとえばいまのような建築の問題であれば建設省、病院等の経営の問題であれば厚生省、そして私ども自治省をはじめ関係省庁が間をとる。直接的には、建物のそういう建築基準に関するような問題なら建設省がその調整をはかる。そして国の方針がときに指導的に優先する場合もないわけではないと思います。しかし、極力話し合いによって解決をしていくということが望ましい、こういうふうに考えております。
  240. 新井彬之

    新井委員 総理は一緒でよろしいですか。
  241. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 この問題は、国会でもほんとうに私は考えてもらわなければならない問題だと思うのです。これは今度四月一日から、私と東京都の意見が対立をしております。これはある面においては、理想は一つでありますが、具体的な問題に対しては対立しております。それはどういうことかというと、建築基準法の問題に対しては府県知事にまかしておるわけであります。それが今度区にまかそうというわけであります。そこで、その区は高さ制限をしようということでございますが、これは確かに高温多湿の日本でありますから、木造平家建て、真壁しっくい塗りというのが一番健康的にいいことは、長い歴史が証明してきたのでありますから、それはもういいにきまっていると思うのです。思いますが、しかし、いま三つの問題が議論されています。  一つは、災害が起こったら一体どうなるのかという問題、これは私が申し上げなくともたいへんなことになるだろう。東京大震災と同じ地震がいま関東を襲った場合は一体どのような状態になるのか、こういうことでございます。これは一つの調査でありますが、東京下町のある区の人間の生存可能率は三%であろうというのが公式なデータとして議論されておるのでございますから、いかにこれが重要な問題であるかは言うまでもありません。  もう一つは、いまの状態でもってこの東京都の交通が一体確保できるかという問題であります。一年間に三百万台ずつふえておるのでございますから。そうして、東京都の道路面積は全市街地面積の一二・五%であります。ニューヨークは三五%であります。三階にするか三倍にしなければニューヨーク並みの交通量は確保できないというのは動かすことのできない事実でございます。ですから、六キロか七キロに対して一時間かかるような状態は、十年後ではなく、わずか一年後か二年後であるという問題がある。  もう一つは住宅問題があるのです。住宅問題があって、東京には千百万人の人が住みながら、その平均階数はわずか一・九階である。五年前は一・七階であった。そういう状態において、ますます平面都市化してきまして、しかも平面都市化すれば、千葉県は入れません、埼玉県は入れません、そして列島改造にも反対だということになると、一体東京都の住宅問題は解決できるのかどうかという、これは数字の問題であります。議論の問題じゃありません。だから、いまの二階が六階になれば、現在の住居面積を三倍にできると同時に、空地は少なくともいまよりも二倍になるわけであります。ですから、世界の都市が、都市全体をしなくとも、少なくとも特定街区をつくって高層建築を行なっておる。ちょうど日本の三十一メートル、九階ないし十階ということで永久に変更しないといったパリも、特定街区を設けて超高層に踏み切らざるを得ない、こういう事態がございます。  この三つの問題を考えて立体化を行なわないと、父祖伝来のものでありますから、平屋建てである——皮肉にも四十何階建ての隣には木造平屋のお汁粉屋がある。これは世界でも珍しい例でございまして、このような状態を野放しにしておって、都民千百万にほんとうに住宅を与えることが可能であるかどうか。第一もう近隣の県は東京都民の転出を拒否しておるじゃありませんか。そういう面から考えると、いまの六割という建蔽率を三〇%にし、二〇%にしながら立体化していく。立体化していっても、建物の間隔があることによって、自然の通風、採光は十分法律どおり確保できるということを考える都市の全面的な再開発を行なう以外にはない。しかも、私はここで一言だけ申し上げたいのは、現在のままでもってちょうど木造の限界が来ておりますので、木造に対して税法上の特例を行なえば、いますぐでもできるのでございますが、小さな鉄筋コンクリート、不燃化のビルができてくると、イタリアのローマと同じように都市改造は不可能になる、こういう岐路に立っておるという真剣な考え方であります。
  242. 新井彬之

    新井委員 いまの議論は、本でも読ましていただきましたし、もう何回も聞かされまして暗記しておりますが、またここで聞かされまして、ほんとうにあれですけれども、とにかく、この税制の問題については、いままで、地価公示法にしましても、あるいはまた四十四年の税制にしましても、いろいろのことをやってきましたけれども、全部失敗に終わりまして、現在のような状態になっておるわけです。  そこで、経企庁長官に最後に一言聞いておきたいのですが、今回の経済社会基本計画、この中で公共投資としては九十兆ということが出ておりますけれども、その九十兆の中で、大体土地の値上がり分というのは何%ぐらい見ておるのですか、それだけ最後にちょっと聞いておきます。
  243. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 従来のわが国の経済成長と土地の値上がり率というものは、大体並行していっておったわけです。したがって、九%台の成長であれば、土地もそのくらいであろうというのが正常な状態における値上がりでございます。  ところが、最近の情勢は御承知のようなことでございまして、私どもはそれに対してまつ正面から立ち向かおうという考えであります。これはマクロで見ますると、いまの日本全体の国土は三千七百万ヘクタールでございますが、その中で宅地が五十万ヘクタール、それから工場等の用地が十万ヘクタールでございまして、そこに五千万人の人が住んでおる。これが今後三千五百万人ふえるといたしましても、そう大きな宅地は必要でないのでございます。それが非常に局部的に、土地の値上がりが必至だというようなことで、いわばインフレマインドみたいなもので上がっておるというのが実情であると思いまして、私どもそういう観点から、先ほど総理もおっしゃいましたが、国土総合開発法というのをつくりまして、その中で特定地域あるいは特別規制地域というようなものをつくりまして規制してまいろう、こう思っております。この点については、また今後の問題でございますが、一応いまのところは、冒頭に申し上げたような、平均的なGNPの成長に見合う土地の値上がりということを考えておるわけでございます。
  244. 新井彬之

    新井委員 終わります。
  245. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて新井君の質疑は終了いたしました。  以上で、当面する円対策商品投機及び土地問題に関する質疑は終了いたしました。  次回は、来たる十二日午前十時より開会し、締めくくり総括質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十七分散会