○山原
委員 政治屋という
ことばも、ちょっと私は広辞林を調べてみたのですよ、どういうことかと思いましてね。政治家というのは、政治を施行する任にある人、政治に長じまた適した人と、ごうなっています。政治屋というのはどうかといいますと、その専門家の意をあらわす、多少軽べつの
気持ちが含まれていると、広辞林はおもしろいことを書いていますけれ
どもね。こういういかにも
文部大臣らしからぬ
発言がぽんぽんと口をついて出るということも、これは一面こっけいとも思いますけれ
ども、こんなことを言っておるだけでなくて、私は御
発言の中の誤りを指摘していきたいと思うのです。
一つ一つ煮詰めるというような時間がありません。
たとえば
教員の場合、「
非現業であるはずの
先生方を一片の通達で
現業の
公務員として扱うんだという
文書が出されている。」これも誤りです。これはどんなに調べましてもそういう事実はないのです。
それからその次に出ております「明治以来
先生方に
スト権が与えられたというのは、この二年足らずの間だけである。私は、この
措置は実は間違った
措置だったと思っているが、人によっていろいろな考えがあるかもしれない。」こういっています。明治以来、明治
憲法のもとで、
教員というものがどういう立場に置かれてきたか。これは
ほんとうにいわゆる
教育勅語のもとで官吏服務規程というものがありまして、これは政治的、身分的な権利の面においてはどれほど非人間的な
状態に置かれておったか。そういう
状態に置かれてきたこの明治以来の
教員に対する争議権その他の
基本的な権利というものはなかったことを容認した形の
発言をあなたはしているわけです、よく見ると。しかも、二年間だけ
スト権を与えられたのではありません。少なくとも
憲法、それから労働
調整法、それから引き続いてくるところの政令二百一号、それに基づくところの
法律というこの
関係を考えてみますと、これも正確な表現ではないわけでございます。
それから、「
憲法に基づく
法律によって
公務員の
争議行為は禁止されている」という問題についても、これは正確ではありません。
さらにまた、全部を申し上げる余裕はありませんが、次にこういうふうに述べております。「一般の私企業では、労使間の交渉で給与をきめ、利益の分配を行っている。しかし
公務員の給与は税金でまかなわれており、
国民は代表を議会に送って、民主的なルールに従って議会で給与を決めているのであるから、議会に対して
ストライキをもって圧力を加えるようなことが適当でないことは
理解してもらえると思う。」こういうふうに述べております。それは政治活動の問題とおのずから
関係をしてくるわけでございますが、この点につきましても非常に問題があります。その点は
一つだけ指摘をしておきたいと思います。
政府機関である人事院職員局参事官亀山さんの書きました「新職員団体制度の解説」というのを読みますと、あなたの見解と違います。
たとえば、あなたは、勤務条件あるいは勤務条件の維持ということのみを主張されておりますけれ
ども、では政治活動については
日本の人事院がどういう
態度をとっておるか。そこのところだけ読み上げてみます。こういうふうに述べております。「一方、職員の職務は、法令の実施にあり、しかもその勤務条件や服務上の諸現制は法令によって定まるのであるから、職員がそれらの法令の改廃等に関心を寄せるのも無理からぬところであり、職員団体の闘争が法令の改廃等を求めるという
意味での
法律闘争ないしは権利闘争の形をとることが多いのもやむをえまい。この結果は、
法律の内容を左右する政治勢力の動向への関心を生ぜしめ、それらの政治勢力のいずれかと親しむ機会を与えることとなる。いずれにせよ、勤務条件法定主義下の
公務員が、その勤務条件を左右する
法律について、種々あげつらうのは避けられないところである。その一例としては、米国の連邦政府の
公務員の団体は、常にロビイングという形で連邦議会と接触するのは当然のこととされており、たとえばアメリカ政府職員連合の場合その議長などは、連邦議会に机を与えられ、あるいはその全国大会には各州選出議員の出席を求めて連邦職員に関連ある法案についての賛否を明らかにせしめるというように、連邦議会との活撥な接触活動を行なっている。」こういうふうに、これは政府機関そのものが述べておるのでございます。
あなたはいま、三つの
教育法案について
日教組が反対をしているのは政治活動である、けしからぬというふうな御
発言もありましたけれ
ども、たとえば教頭法制化の問題にしましても、あるいは
人材確保の法案にしましても、あるいは筑波
大学法案にしましても、法案をつくるということに対して教職員が関心を持ち、それに対して圧力をかけ、またいろいろな政治行動を行なっていくということは、これはもうあなた方の機関そのものも認めているわけですね。しかも、それが世界的な動向であるということは、しばしば申してきましたけれ
ども、たとえばこれは御
承知のように、さわりのところだけ読みますけれ
ども、教師の地位に関する
勧告で、「勤務条件から生じた
教員と使用者との間の紛争を
処理するため、適切な合同機構が設けられるものとする。この目的のために設けられた手段及び手続が尽くされた場合又は当事者間の交渉が決裂した場合には、
教員団体は、正当な利益を守るために通常他の団体に開かれているような他の手段を執る権利を有するものとする。」これが国際的な通念だと思うのです。
それからまた、先ほど
長谷川先生も言われましたけれ
ども、今度の
文部大臣発言をめぐりまして各
新聞の主張も出ているわけでございます。その主張の基盤をなすものは、ほぼ
日本国民の常識的な見解というものが出されておると私は思っているわけです。これに照らしましても、あなたのこのストに対する見解というのは非常に問題があるわけでございます。
たとえば朝日
新聞の九月十一日の主張でありますけれ
ども、これは「
日教組対策の転換を望む」という見出しになっておりますが、その下段のところに出ております。「第三に、保守的な人々が強く反対してきた問題の
スト権についても、一九七〇年の春に開かれたILOとユネスコの合同専門家
会議の最終
報告は、
教員団体にも、その正当な利益の擁護のために、他の団体に通常許されているストのような手段をもつ権利を保障すべきであるとしている。この
報告と、これに関連する処分の問題を、前向きに解決するときがきている。」こういうふうにこの主張も述べております。また、「ILOやユネスコのような国際機構の
勧告は、
日本の実情にあわず、
日本は独自な道をゆくのがよいとする論をなすものがあるが、これに対する有力な反証としては、ほかならぬ総理府が去る七月に発表した「世界青年意識
調査報告書」がある。同
報告書によると、少なくとも十八歳から二十四歳という若い層に関するかぎり、不満の解決にあたって間接民主主義が不十分であると考えられた場合、法に認められた範囲で、スト、デモなどの直接民主主義によるのがよいとする
日本人の比率三六・六%は、イギリス、西ドイツ、フランス、スウェーデンのそれと、ほぼ同じである。国際機構の
勧告と、国内の変化にてらして、
文部省が
日教組に対する政策の転換にふみ切ることを切望する。」と書いてあります。
これら内外のいろいろな情勢を見ました場合に、これは
文部大臣も、きょうの閣議で
発言をしたような強気一点ばりの
態度ではなくして、内外の諸情勢を判断するだけの柔軟な頭脳構造を持っていく必要が今日あるのではないでしょうか。そのことを私は指摘をしたいと思いますが、この点についてはとうですか。いままでどおり、おれはもうわが道を行くんだということでやられる
気持ちでありますか。