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1973-06-27 第71回国会 衆議院 文教委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十七日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 内海 英男君 理事 塩崎  潤君    理事 西岡 武夫君 理事 松永  光君    理事 森  喜朗君 理事 木島喜兵衞君    理事 長谷川正三君 理事 山原健二郎君       有田 喜一君    上田 茂行君       坂田 道太君    染谷  誠君       中尾  宏君    野田  毅君       林  大幹君    深谷 隆司君       三塚  博君    山崎  拓君       小林 信一君    嶋崎  譲君       山口 鶴男君    山中 吾郎君       栗田  翠君    有島 重武君       高橋  繁君    安里積千代君  出席国務大臣         文 部 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第二         部長      林  信一君         文部政務次官  河野 洋平君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省大学学術         部長      木田  宏君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      青木 英世君         文部省大学学術         大学課長    大崎  仁君         会計検査院事務         総局第二局長  柴崎 敏郎君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君 委員の異動 六月二十三日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     成田 知巳君 同日  辞任         補欠選任   成田 知巳君     山口 鶴男君 同月二十六日  辞任         補欠選任   深谷 隆司君     赤城 宗徳君   山口 鶴男君     井上  泉君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     深谷 隆司君   井上  泉君     山口 鶴男君 同月二十七日  辞任         補欠選任   深谷 隆司君     野田  毅君 同日  辞任         補欠選任   野田  毅君     深谷 隆司君     ————————————— 六月二十二日  国立学校設置法の一部を改正する法律案(安永  英雄君外四名提出参法第一九号)(予)  学校教育法及び学校図書館法の一部を改正する  法律案小林武君外一名提出参法第二〇号)  (予) 同日  国立学校設置法等の一部を改正する法律案撤回  に関する請願外一件(木島喜兵衞紹介)(第  七四七二号)  同外二件(山中吾郎紹介)(第七四七三号)  同(新井彬之君紹介)(第七五二三号)  同(梅田勝紹介)(第七五二四号)  同(谷口善太郎紹介)(第七五二五号)  同(長谷川正三紹介)(第七五二六号)  同(嶋崎譲紹介)(第七五七九号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第七五八〇号)  同(大野潔紹介)(第七六一九号)  同(高橋繁紹介)(第七六二〇号)  同(木下元二紹介)(第七六五九号)  同(平田藤吉紹介)(第七六六〇号)  同(山中吾郎紹介)(第七六六一号)  学校教育水準維持向上のための義務教育諸  学校教育職員人材確保に関する特別措置法  案撤回に関する請願木島喜兵衞紹介)(第  七四七四号)  同(山中吾郎紹介)(第七四七五号)  同(長谷川正三紹介)(第七五二八号)  同(紺野与次郎紹介)(第七六六二号)  同(庄司幸助紹介)(第七六六三号)  同(田邊誠紹介)(第七六六四号)  同(広瀬秀吉紹介)(第七六六五号)  国立学校設置法等の一部を改正する法律案等反  対に関する請願外三件(日野吉夫紹介)(第  七五二七号)  国立学校設置法等の一部を改正する法律案の分  割審議に関する請願庄司幸助紹介)(第七  五八一号)  同(山原健二郎紹介)(第七五八二号)  病虚弱養護学校設置促進等に関する請願(臼  井莊一君紹介)(第七六二一号)  私学に対する公費助成増額等に関する請願外二  件(浅井美幸紹介)(第七六五八号) 同月二十六日  公立幼稚園教育の充実に関する請願辻原弘市  君紹介)(第七七三八号)  国立学教設置法等の一部を改正する法律案撤回  に関する請願浦井洋紹介)(第七七三九  号)  同(木下元二紹介)(第七七四〇号)  同(辻原弘市君紹介)(第七七四一号)  同(土橋一吉紹介)(第七七四二号)  同(古川喜一紹介)(第七七四三号)  同(村上弘紹介)(第七七四四号)  同(森井忠良紹介)(第七七四五号)  同(浦井洋紹介)(第七七九一号)  同(木下元二紹介)(第七七九二号)  同(栗田翠紹介)(第七七九三号)  同(嶋崎譲紹介)(第七七九四号)  同(瀬崎博義紹介)(第七七九五号)  同(津金佑近君紹介)(第七七九六号)  同(塚田庄平紹介)(第七七九七号)  同(土井たか子紹介)(第七七九八号)  同(中澤茂一紹介)(第七七九九号)  同(成田知巳紹介)(第七八〇〇号)  同(野間友一紹介)(第七八〇一号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第七八〇二  号)  同(松浦利尚君紹介)(第七八〇三号)  同(山原健二郎紹介)(第七入〇四号)  同(金子満広紹介)(第七八四四号)  同外三件(木島喜兵衞紹介)(第七八四五  号)  同外一件(竹村幸雄紹介)(第七入四六号)  同(美濃政市紹介)(第七入四七号)  同(金丸徳重紹介)(第七九〇三号)  同外三件(木島喜兵衞紹介)(第七九〇四  号)  同(谷口善太郎紹介)(第七九〇五号)  同(土井たか子紹介)(第七九〇六号)  同(野坂浩賢紹介)(第七九〇七号)  学校教育水準維持向上のための義務教育諸  学校教育職員人材確保に関する特別措置法  案撤回に関する請願青柳盛雄紹介)(第七  七四六号)  同(諫山博紹介)(第七七四七号)  同(浦井洋紹介)(第七七四八号)  同(神崎敏雄紹介)(第七七四九号)  同(栗田翠紹介)(第七七五〇号)  同(小林政子紹介)(第七七五一号)  同(紺野与次郎紹介)(第七七五二号)  同(辻原弘市君紹介)(第七七五三号)  同(正森成二君紹介)(第七七五四号)  同(山原健二郎紹介)(第七七五五号)  同(米原昶紹介)(第七七五六号)  同外一件(島田琢郎紹介)(第七八〇五号)  同(芳賀貢紹介)(第七八〇六号)  同(馬場昇紹介)(第七八〇七号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第七八〇八  号)  同外一件(松浦利尚君紹介)(第七八〇九号)  同(武藤山治紹介)(第七八一〇号)  同(太田一夫紹介)(第七八四八号)  同外二件(木島喜兵衞紹介)(第七八四九  号)  同外四件(三宅正一紹介)(第七八五〇号)  同外一件(木島喜兵衞紹介)(第七九〇八  号)  同(谷口善太郎紹介)(第七九〇九号)  同(中村重光紹介)(第七九一〇号)  同(野坂浩賢紹介)(第七九二号)  公立高等学校事務長の職制及び職務の法制化に  関する請願西岡武夫紹介)(第七七八九  号)  同(福田篤泰紹介)(第七七九〇号)  同(久野忠治紹介)(第七八三三号)  同(塩崎潤紹介)(第七八三四号)  同(森喜朗紹介)(第七八三五号)  公立学校女子事務職員産休補助職員確保に関  する請願久野忠治紹介)(第七八三六号)  同(塩崎潤紹介)(第七八三七号)  同(西岡武夫紹介)(第七八三八号)  同(森喜朗紹介)(第七八三九号)  公立高等学校事務職員定数増加に関する請願  (久野忠治紹介)(第七八四〇号)  同(塩崎潤紹介)(第七八四一号)  同(西岡武夫紹介)(第七八四二号)  同(森喜朗紹介)(第七八四三号)  病虚弱養護学校設置促進等に関する請願(伊  東正義紹介)(第七九一二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国立学校設置法等の一部を改正する法律案に関  する件      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  この際、委員長から一言申し上げます。  去る二十二日の国立学校設置法等の一部を改正する法律案採決について申し上げます。  議案の採決については、本来、各党、各委員理解と納得のもとに行なうのが本来でありますが、先般はかくのごとくならなかったことについては、まことに残念かつ遺憾でありました。  今後はかくのごときことを招来しないよう、委員長自身努力いたしますが、各党、各委員の御協力を切にお願い申し上げます。  国立学校設置法等の一部を改正する法律案について発言を求められておりますので、順次これを許します。小林信一君。
  3. 小林信一

    小林(信)委員 いま委員長から前の委員会経緯について、その所信のほどが述べられたわけでありますが、理事会でどういう話がきまったのかまだ承っておりませんが、私の一番心配するものは、一応差し戻しというような声を聞いておりますので、そのとおりにこれから委員会審議が行なわれますかどうか、委員長にまずお伺いをいたします。
  4. 田中正巳

    田中委員長 本案につきましては、先般議長裁定が出まして、議長裁定については、本案の取り扱いについてはすでにもう皆さん承知のとおり、この委員会で二日間この法案に関連して補足質問があるということでありますし、最後にはこれについて採決の確認をいたすというふうに承っておりまして、各党これについて御了承をいたしたというふうに聞いておりますので、その線に沿うて議事運営をいたしたい所存でございます。
  5. 小林信一

    小林(信)委員 委員長の先ほどのお話は、先日とられました委員会運営についてはまことによくなかったというような、きわめて謙虚な御反省のように承っておるのでございますが、こうやって見ますというと、先日あたりは与党席はかなり満員であったようでございますが、きょうはりょうりょうたるものであり、何となくいまの委員長の御回答も歯切れの悪い、差し戻しであるから補足というようなことを言われますというと、私はこの問題については初めて質問をするものでございまして、非常に意気軒高たるものがあるわけでありまして、文部大臣にこの筑波大学内容というものをこれからお聞きしようと思うようなほど熱意ほんとうに燃えておるのですが、補足というようなことを言われますと、何かもう非常にこれは時間ふさぎのような感がするわけであります。私は、委員長に一委員としての考えを申し上げるのですが、ほかの委員会においても同じでありますが、特に事、文教の、これからの人間をつくるという、そのための仕事をしておる委員会委員長が、いまのような発言をしなければならぬような委員会運営があったということは、ただこの委員会の中に一つの汚点を残したということでなく、行く行く筑波大学というものが実現をするならば、そこに勉強する者たちに、この法律はこういう経緯の中から生まれてきたんだというような印象を与えたら大きな損失じゃないか、こういう点から私は非常に遺憾に思うのでありますが、委員長も賢明な委員長でございますので、十分いろんな点は御理解になっておられると思いまして、委員長だけの責任を私は問うておるものではない。こういう事態に追い込んだ、あまりに功を急ぐというのか、何でも法案さえ通せばいいというような意向のあったことがこういう結果を招来したんだと思うわけですが、事、教育の問題については、われわれは今後あらゆる法案審議にあたりまして慎重を期さなければならねという、私個人の意向を申し上げまして、ひとつ御理解を願いたいと思います。  そこで、一名筑波大学法という法案名前の問題につきましてこれからお聞きしてまいりますが、いままでの審議の中で私どもが受けた文部大臣のこの法案に対する考え方は、大学というものはこういう行き方もあるのだ、そういう一つのモデル的なものである、こういうことを終始言っておられました。そして、何かその中には、大学改革というものを非常に欲求しておられる。この法案をつくり、この大学をつくることによって、その大臣の欲求というもの、希望というものを促進をさしていきたいのだ、だが、あくまでもこういう行き方もあるのだというだけでございまして、別にこれをほかの大学に強要するという意図はございませんというような、穏やかな中にも、いまの大学は放置できないというようなものが、かすかにうかがわれるわけでございますが、この「筑波大学理解のために」というふうな資料を見ますと、もっとそれが明白にわかるわけでございまして、過去の大学に対しては、少し言い過ぎかもしれませんが、否定的なものが非常に強いような気がいたします。過去の大学に対して、そういう観点からいたしますと、大臣がどういうものを持っておられるか、ここで、もう審議も二日しかないそうでございますが、総括して、まとめて既成大学に対する大臣考え方をお述べになっていただきたいと思うのです。
  6. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 現在の大学組織は、御承知のように学部組織しか認められていないわけでございます。この学部組織の中でも、今日の時代に対応できるような各大学が積極的に改革を試みていかなければならない、またそう努力していただいていると思うのでございますけれども、しかし、学部組織の中では、どうしても自分たちの考える理想は実現できない、それが東京教育大学の新しい構想だと考えるわけでございます。それを実現させようとして、法案皆さん方に御審議いただいているわけでございます。  学部組織のままではどうしてもうまくいかないと言われる中には、いろいろございますが、たとえば研究一つとりましても、学部学部にまたがる分野学問、これはどんどん発展を見つつあるわけでございます。そうしますと、学部間、常に協力をして、研究を進めていかなければならないけれども、どうもいまの大挙のあり方は、研究の面においても単部割拠になっている。同時に、大規模研究に取り組まなければならないときには、やはり特別なプロジェクトチームをつくって、その問題に大学としては総力をあげる、そういう弾力的な運用をする場合にもたいへん支障になっているようでございます。これは学問研究分野においてはそういう問題がございます。あるいはまた、研究分野におきましても、学部ごと研究教育一体として行なっているわけでございますので、まあ研究に携わっている方が教育に当たってくださることはけっこうでございますけれども、それがどうも批判を受けることが少ない。自然、研究のほうはどんどん深みに入っていく必要がございます。そんな態度をそのまま教育に持っていきますと、いまの学生諸君はそれについてはなかなか満足をしない。もっと広く教養を得たい、こういう気持ちもあるわけでございまして、また、大学はいろいろな変化に対応できるような人間をつくるわけでございますので、教養の面から考えますと、やはり広い教官を受けるという必要もあろうかと思うのでございます。  そう考えてまいりますと、どうも学部学部教育のことを扱っている、そのことが必ずしも現代に対応できるような教育が行なわれていかないというようなことがございます。そういうことから、教育研究とを分けてしまおう、分けますけれども学部ごと教育研究とを一体として扱うというその式はとらないが、大学全体としては教育研究一体として行なうわけでございます。言いかえれば、学部の壁を取り除くことによって、研究教育時代の要請に適合できるような努力をしていきたい。そうでなければ努力できない。これは基本的な考え方だと思います。  これが基礎になりまして、人事の問題に対しましても、したがって、学部教授会できめておったのが、学部がなくなりますので、研究分野からも教育分野からも人を出してもらって人事委員会を構成する。そして広い見地から、どちらかと言われれば閉鎖的な人事を打破する体制もそういうものでつくっていきたい、こう考えられてまいったと思うのでございます。私はこういう点が一番基本の点だと思います。  さらに広く言いますと、やはり大学人社会の声に耳を傾けていかなければならない。また耳を傾けていけるようにするためには、組織の上でもそれを明確にする。そういう意味において、学外者参与会を構成してもらう。この参与会が学長に対して助言、勧告をする任務を持ってもらう、こう考えられておるわけでございまして、これはまあ新しい大学をつくるにあたっての意気込みを示している、こう考えるわけでございます。決して大学が象牙の塔にこもってよいわけのものではございません。積極的に社会に対応しようとする姿勢を示している。私は、そういう意味において評価をすべきじゃないか、こう考えているわけでございます。  いろいろな点においては十分御理解をいただいておると思いますので、くどくどしく申し上げることは避けますが、基本的な点は私はこういうところにあると理解をいたしております。
  7. 田中正巳

    田中委員長 山中君。いや、小林君。
  8. 小林信一

    小林(信)委員 委員長名前を忘れられるぐらい発言機会が与えられておらないので、ほんとうに残念でございます。  大臣は、いままでの審議の中で、いまおっしゃったような点を通して強調されたような気がいたします。そして、私どもも確かに学部というものについてのあり方は、大臣が説明されるような問題点があるような気がいたします。しかし、その学部一つとらえて大学全体を、何か既成のものは否定をして、そしていま文部省は、東京教育大学のつくった構想に一応協力しながら筑波大学実現するのだとは言いますが、印象からすれば、それをきっかけに、文部省の考えているものをここに強く打ち出して改革をしよう。今度の大学あり方について、いまいろいろお話があったのですが、今度はそういう学部あり方に名をかりて、機構というものが非常に整備をされます。そこにたくさん問題があるのではないかと思いますが、それはこれから順次私申し上げて、御回答を願いたいと思います。  いまのおっしゃった点は、この資料の問3の「筑波大学では、学部の代りに学群学系という組織を置いて教育研究を分離するということですが、うまくいくのでしょうか。」という問いを出して、以下答えを出しておりますが、その中を見ますと、それだけでも既成大学は根本的に改革しなければならぬということがうかがわれるわけでありますが、さらにこの筑波大学の特色という名目で、その内容というものがこの資料に書いてありますが、そこら辺を読みましても、今度の筑波大学は、こういういいところを持っておるのだ、ということは、結局いままでの大学にはそれが足りないのだというふうに私は受け取って、ここにも一つ既成大学に対する否定がなされているな、こう思っておったのです。たとえば、今度の筑波大学は、学問総合性というものがこの大学からは実現をする、あるいは幅の広い教育がなされる。実際的な能力を身につけることができる。大規模総合研究がなされる。機能的な大学運営がなされる。全学的な意思疎通がなされる。大学の開放がなされる。最後に、理想的な学園が建設できるのだというふうに、こう書いてあります。  私は、これは大学に対する一つの夢であると同時に、こういうことが既成大学にはなされなかったじゃないか、少なくとも足りなかったじゃないかということを言っておられるように思うのです。  私はこの話を深めるまず最初に、そういう既成大学に対する不満というものは、不満ということよりも、足りないものをどうするのですか。もう筑波大学のほう一点ばりになって、そういう既成大学の不足の分、不満の分は、そのまま置いていくのですか。どういうふうにこれは処置されますか。
  9. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 この東京教育大学の新しい構想実現機会に、各大学大学改革に取り組む熱意というものは一そう強まるのじゃないか、そういうことを期待いたしておるわけでございます。どのような新しい構想ができますか。現在の学部組織についても私は改革しなくちゃならぬものをたくさん抱えているのじゃないかと思うのでございます。また、学部の壁を破ろうとしますと、これは法律改正を要しますので御審議をいただくわけでございますが、いずれにいたしましても、各大学で新しい構想を確立される場合には、積極的に文部省もお手伝いをしていきたい。学部の壁を置いておく場合でも、あるいは学部の壁を破る場合でも、どちらでも、各大学構想実現に対して積極的な協力を続けていきたい、かように考えておるわけでございます。  また同時に、そういう熱意をもう一そう振い起こしていただきたい。そして教育者研究者、あるいはまた学生、あるいは社会の期待にこたえられる大学であってもらわなければならない、こう考えているわけであります。
  10. 田中正巳

  11. 小林信一

    小林(信)委員 今度ははっきりしていただきましてありがとうございます。そういう、どうも委員長の感情的なものが、この委員会運営を多少、こうゆがめるような気がいたしますので、これは感想でございますので、委員長に私の気持ちを申し上げます。
  12. 田中正巳

    田中委員長 ただいま私が申し上げたのは、決して感情的に申し上げたわけではございませんで、ややユーモアを加えまして申し上げたわけですから、誤解のないようにお願いをいたします。
  13. 小林信一

    小林(信)委員 ユーモアというものも生きる場合と死ぬ場合がありますので、いまのようなものは、私の率直に受けた印象からすれば、あまりいいユーモアにならないので、今後御研究を願いたいと思います。  大臣の、既成大学に対してどうするかというお説を承ったのですが、これをつくるから各大学に積極的な意欲が出て、おれの大学もこういうふうに改革しようというものが出るだろう、それを待っておいでになるような意向でございますが、少なくとも筑波大学構想して、既成大学に対して、こういうふうなものが不足しておった、こういう点がもの足りない、それでは時代に沿わないというようなものが感ぜられるならば、筑波大学をつくると同時に、各大学に対してそういうものも燃やすように、積極的な努力をするように、文部省がし向けなければならなかったのじゃないか。こういう大学構想するということは、すでに何か文部省にもいままでの教育行政の上に私は反省すべきものがあったのではないか、こういうものをこの際考える必要があると思うのです。  学問総合性とか幅の広い教育とかあるいは機能的な大学運営だとか、全学の意思疎通をはかるとか、こういうものは学部があったから実現できなかったのだというような結論になりそうなんですが、私はそれは学部という名をかりて、大学に対するいままでの文部省行政が不足しておった、何か考えなければならぬ問題があったのではないかというように警告をしたいのです。これはこの委員会の中で、たしか山中委員だったと思いましたが、国士舘大学が突如問題を起こしましたので質問をしたことがあります。これに対して大臣に善処をすべきであると言ったら、大臣は、そういう権限は文部省にございません。確かに指導、助言という形であって、何かその義務づけるとか強制づけるということはしてはいけないと思いますが、私はそれだけで行政は終わるものではない、あらゆる努力がもっとなされれば、もっと人間的な気持ちの交流で大学とも話が十分できるのじゃないか、何かそういう点でお互いいままでの大学あり方について、大学自体も、あるいは文部省も怠っておったような気がいたします。  そういう点はとにかくといたしまして、私の言いたいことは、この筑波大学に金を出すように、もっと金を出したら、問題がもっと文部省の希望するような方向に行きはしなかったか、こんなふうにも考えます。おそらく、この院生に協力する場合に費用を出すなんということが話の中にありましたが、いままではそんなことはなかったのですか、既成大学になかったのですか。大学院生に協力する場合には筑波大学では費用を出して、そして教授と学生とのこん然一体となった中での研究を進めるというふうな話があったと思うのですが、なかったですか。
  14. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘になりました、この大学院生に対してどういう資金的な措置を考えるかということは、筑波大学につきましてすでに計画がきまっておるわけではございません。大学院生に対する処遇をどうするかということは、他の大学大学院生の場合とも同じように考えなければならぬことでございまするから、これはそれら関連の問題として、筑波の教育運営に即応するような要請も考えながら、全体の問題として考えてみたいと思っております。
  15. 小林信一

    小林(信)委員 まあそのことは一つの例を取り上げたのですが、もう一つ例を取り上げれば、どこかこの資料の中に、宿舎は困らないくらいに用意をするというふうなことが書いてありますが、そのとおりですか。
  16. 木田宏

    ○木田政府委員 御案内のように、筑波の地は、従来そこに都市があったわけではございませんから、学生、教官等、生活基盤を十分に整備するということは格別に大切でございます。その意味におきましては、既設の都市の中に新しい大学ができたという場合とは異なりまして、学生につきましては学生総数の六割に宿舎を提供する、職員の宿舎についても都市の中の宿舎と同じようなものということでなくて、筑波の地に必要な宿舎をじゅうぶん提供する、これは大学が成り立っていく場合の前提条件だろうと考えておる次第でございます。
  17. 小林信一

    小林(信)委員 その宿舎というのは、国が何かアパートのようなものを建ててそこに入れるのですか、あるいは民間にそういうものを委託して宿舎を充足するわけですか、どちらです。
  18. 木田宏

    ○木田政府委員 学生数の六割につきましては、国で宿舎を建てるという計画でございます。
  19. 小林信一

    小林(信)委員 最近の教員養成機関、新しい教員養成機関には、寮生活をさせるというふうなことをかつて聞いたことがありますが、それと大体同じような傾向のものですか。
  20. 木田宏

    ○木田政府委員 教員養成の大学につきまして、学生を多数学寮に入れての教育という御意見があることは聞いておるわけでございますが、筑波は、御案内のような、従来都市のなかったところでございますから、二十四時間、学生教育するという意味ではなくて、学生の生活基盤を整備するという意味で、多数の学生に対して学寮を用意する必要がある、こう考える次第でございます。六割と申しましたのは、全体計画の中で六割ということでございまして、初年度等は、学生の全部が希望すれば入れるだけの学寮を整備したいというふうに考えております。
  21. 小林信一

    小林(信)委員 そこで本論へ返りますが、先ほど、全然人家のないところに新しい学校をつくるんだから宿舎を国が提供する、六割も確保する、こういう御説明でありますが、この都会の中にある、東京の中にある大学は、確かにたくさん人間が住んでおりますから宿舎に不自由はないかもしれませんが、この東京の中で学生諸君が住むところを見つけるということは、私は、原っぱの中に大学が建てられる、それと同じような苦しみをしながら学生諸君が生活をする場所をさがしたと思います。しかも、さがしたものが、おそらく今度の筑波の宿舎は国が経営するんですから安いと思いますよ、だが、この都内の学生諸君というものが、三畳とかあるいは四畳半とか狭いところでもって、それもせっかく見つけましても高い料金を取られる。しかたがない、少なくとも下宿料ぐいはアルイバトでかせがなければならぬ。私は、何も筑波大学学生だけが困るからという文部省考え方には賛成できないと思います。そういう配慮があるなら、いままででも都内でどれくらい学生諸君が生活するところに困ったかということを考えれば、筑波大学にそういう配慮をすることが必要であるとするならば、既成大学にもそういう配慮がなければならなかったじゃないか。要するに、もっと文部省がいままでの大学にいろいろな不満があるとするならば、それは大学の中の一つの機構の問題だけでなくて、もっと全体から問題を考えていかなければ、何かこの筑波大学というものを無理に一般国民に、いい大学である、新しい大学であるという印象を植えつけるための措置のような気がしてならないわけでありますが、そういうように、私はいろいろな点から、いままでの既成大学に対する文部省あり方というふうなものをやはり検討しなければ、そして今後こういうふうにしますということを言わなければ、この筑波大学に対する理解というものは、私は促進できないような気がいたします。  そこで、いまの学部あり方について、私も、大臣学部あり方問題点を持っておる点は、同じように考えているわけなんですが、しかし、一がいにこの学部というものを、簡単にいまのような形でもってなくなすということには、非常に私には異議があるわけなんですが、その手始めとしてこの「筑波大学はどのような特色を持つ大学ですか。」という設定した問いに対して、第二に、「新しい大学自治の確立を目ざし、」こういうことばが出ております。この「新しい大学自治」というのは、どういう意味でこういうことばをお使いになられましたか。
  22. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 大学自治の内容、いろいろなものがあるわけでございますけれども、私が特に「新しい大学自治」ということばを使います場合には、学部割拠の現在の大学自治のあり方に対して、全学的な大学自治をねらっていきたいのだ、こういう気持ちで述べておるものでございます。
  23. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、大臣大学自治というのは形の上に非常に問題点を持っておるように承りますが、どうですか。
  24. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 研究の問題にいたしましても、学部割拠の研究じゃなくて、全学的な体制で研究の重点を見つけながら取り組んでいく。教育の問題につきましても、全学的に協力をし合って学生の要望にこたえられるような教育を行なっていくというように、いろいろな問題がございます。あるいは社会に開かれた大学としてのあり方についてもいろいろございますが、一つ一つ学部割拠じゃなしに全学的な体制のもとに大学自治を推し進めていく。それが大切だ。それがいまの大学においてはしばしば欠けていると見られる点ではなかろうか、こう考えて申し上げておるわけでございます。
  25. 小林信一

    小林(信)委員 それは非常に人とか運営とかいうふうなことが私はもっと根本的な問題になるような気がいたしますが、この資料の七一ページ、四番、「教員人事に関する問題」という項目がございます。つまりこれは人事委員会がこれから筑波大学人事に関しては一切扱うということでございましょうが、その中ごろに、「しかしその反面、」という条項があります。   〔委員長退席、森(喜)委員長代理着席〕 「しかしその反面、従来の教授会人事が、人事の実質的権限を教員みずからの手に留保することによって、大学の自治ないしは学問の自由を守る究極の保障としての機能を果たしていたことを考えると、」こういうことばが出ております。私は、この考え方がいままでの学部を中心とした大学経営の本髄ではなかったかと思うのですが、こういう見方もあるという点からすれば、これは国大協の意見であり、国大協はこれをいままで支持してやってきた、こういうふうにいっておりますが、これに対してはどういうふうにお考えになりますか。
  26. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 人事委員会をどう構成するか、これも大学自治でございますので、新しい筑波大学がおきめになればいい、こう考えるわけでございます。その人事委員会の構成が明確になっておりませんと、やはり先生の手から先生方の人事問題が離れるんじゃないかという心配を抱かれるんじゃないか。でありますから、やはり筑波大学が生まれまして、その中で筑波大学の今後の行き方を、学則ですか、筑波大学のいろいろな規則を制定しながら、あるいはまた慣行を積み重ねながらつくられていく。その全体を見なければ、不安はあるいは解消しないのかもしれません。いずれにいたしましても、人事委員会も先生方でございまして、研究分野から、あるいは教育分野から、それぞれの先生方を出し合って人事委員会を構成していただくわけでございますので、大学人事が教員の手から離れるということはあり得ないわけでございます。またできる限りそういうことが確保されてまいりますように、筑波大学も必ずやりっぱな慣行と学則で制度を確立していただけるものと、こう思っておるものでございます。
  27. 小林信一

    小林(信)委員 いま大臣の、あとのほうの、必ずや何とかという、つまりそれはこれからの人間と運用のいかんによってということになるのですが、しかし、大臣が前段言われたことは、この資料の中にも書いてあります。一つの講座の中で、上の人がたとえ年が一つ違っておっても、一つ年の上の人が上の座につく。しかし、一つ下の人がその座につくためには、上の人が交通事故か何かで死ななければその座につくことができない、こういう矛盾を持った人事というものがいわゆるいままでの学部あり方からは生まれておる、そういうものを一掃するということが出ておるわけなんですが、また大臣にはよく国大協の意向というものはつかめておらないようですが、人事委員会に教官の代表も出るだろうし、あるいはそこに自分たち意向を申し出ることもできるというような、人事委員会運営にも、大臣は問題がないじゃないかというふうにお触れになられましたが、ここに書いてあることはもう少し違っているんじゃないかと思います。要するに「人事の実質的権限を教員みずからの手に留保することによって、大学の自治ないしは学問の自由を守る究極の保障としての機能」を果たすことができる。確かに、人事委員会に代表を出して、そしてそこでもって人事をやってもらうんではなくて、ほんとにいままでの教授会というようなものの中で人事が扱われる場合には、自分みずからが不当な支配、権力的な支配というふうなものがあった場合にはどこまでも抵抗できる。その権利を留保されておるために大学の自治、学問の自由というものは守られるんだと。この原則というものは、私はとうといものだと思うのです。人事委員会がつくられて、それで自分たちの意見も出すことができるからいいじゃないかというふうなことでは、この精神というものは失われてくるような気がいたしますが、どうですかね。
  28. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 大学の最高責任者は学長だと思います。この学長がどうして選ばれるかということにつきましては、他の大学と何ら変わりがございません。また学長の選任について文部大臣は拒否権は持っていないんだということも申し上げてきているわけでございます。違法な場合あるいは大学の設置の目的に照らし明らかに客観的に適当でない場合、それ以外について適、不適では拒否はできませんと、こう申し上げてきているわけでございます。その学長を最高点にして、学校で今後の大学人事あり方研究あり方、そういうことを確立していっていただくわけでございます。たまたま教授会ということばでなしに人事委員会という表現になってきておりますので、何か先生から違ったものが人事委員会として生まれるんじゃないかという誤解があるようでございます。しかし、これもみな教授には違いないわけでございます。副学長が入ったりするものでございますから、よそから副学長を迎えるんじゃないかという心配もされておるようでございますけれども、この副学長も、法律に書いてございますように、評議会の定める基準により学長が文部大臣に申し出るわけでございまして、これも御承知のとおり文部大臣が任命することになっているわけでございます。拒否権はございません。そういう性格のものでございますので、多少、新しい人事委員会という名前からいろいろな憶測が生まれて、先生方の手から人事が離れるんじゃないかなという誤解があったんじゃないか、こんな感じも私は抱いているわけでございます。いずれにいたしましても、人事の問題につきましては、これは大学自治の範囲内の問題でございますだけに、私は、教授の手から放すようなことはされないだろう、こう考えておるわけでございます。
  29. 小林信一

    小林(信)委員 いま、学長の問題も副学長の問題もお話に触れました。こういうものが教授の中から人選をされるだろうし、しかも、これを文部大臣が認可するという形をとっておるんだから、何ら問題ないじゃないかというんですが、それがいままで往々にして、日本の教育の中では、そういうところに何か思わしくない教官の行き方を排除しようという傾向を、自分たちの思うように持っていこうというふうなものが働く場合には、奥野文部大臣にはそういうことはないかもしれませんけれども、学長とかあるいは副学長とか、そういうものがあればあるほど権力的な介入というものが可能になってくるんだ。私は、文部省はどういうふうにとらえているか知りませんが、この教授会あるいは評議会というふうなものでもって大学運営さしておった、これは確かに文部大臣が指摘をするように、問題が多いのですね。問題が多いけれども、いかにして大学というところはほんとう学問の自由なりあるいは大学の自治なり、それは大学そのものの自治でなくて、人間本来の自主性あるいは本来の学問の自由、そういうものを発見をするためにとった制度だと私は思うのですよ。ただ、大学の先生の学問の自由とかあるいは大学の自治とかということでなくて、ほんとう人間の自主性というふうなものを、あそこでほんとうにつくってもらいたいというような大胆な気持ちから、いまの大学の制度というものはつくられたような気がいたします。それには文部省といえども関与してはいけない、干渉してはいけない。何か大臣は、その反面の一人一人の教授というものが、自分だけにこだわってしまって、全学的な視野というものに欠けるじゃないかと言いますが、それはやはり不完全な人間形成の場合では自分だけにおちいるかもしれませんけれども、しかし自分を守るためには、自分の研究の自由を確保するためにも、自分が全学的な視野に立たなければならぬということがその中から生まれてくる。そういう構想で大胆にいままでの大学あり方というものは生まれてきたんだと思うのです。それを最もその簡便な方法として機構をいじって、そうしてこういうふうに発言の場所もありますといって、参与会というふうなものをつくって外部の意見も入れる。そうして副学長とかあるいは学長とかというふうな段階的な機構をつくって運営をする。確かに機構をつくれば間違いありません。間違いはないだけに、今度は一人一人の自主性とかあるいは責任性とか良識とかというふうなものは失われて、大学になければならないほんとう学問の自由とかあるいは大学の自治とかというものが失われてくるような気がするわけでありますが、私のこの意見をどうお考えになりますか。
  30. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 もう小林さん十分御理解していただいているところを重ねて申し上げて恐縮でございますけれども、今回審議をお願いしておりますのは、東京教育大学の新しい構想からでき上がってまいります筑波大学、それについてだけ学部組織はとらない、したがってまた人事委員会を設ける、参与会を設けるということでございます。他の大学には一切このような仕組みを求めているわけではございません。そこをよく御理解いただきたいのでございます。何年来大学が紛争に巻き込まれまして、長い間教育も行なわないできているわけでございます。そのような中から東京教育大学が新しい構想を打ち出された、これを実現させようと思って御審議をお願いしているわけでございます。これが一〇〇%あらゆる大学について適合するんだというようなことは少しも考えておりません。しかし、これはやはりぜひ実現させてあげたいし、同時にまた他の大学でも積極的に改革案に取り組んでもらいたいものだ、こういう熱望も強く持っておるわけでございます。
  31. 小林信一

    小林(信)委員 大臣の今度のこの審議の中で一番悪いくせは、何か文部省へ問題を持っていくということ、これは東京教育大学構想でございまして、それを何とか文部省としても理解協力をしてあげなければいけない、何か責任のがれをするときがたまたまあるのですよ。しかし、たとえ筑波大学一つであっても、これは日本全体の大学一つであることには間違いないわけなんです。だから筑波大学だけだとか、あるいは教育大学構想の中から出たものであったとかというふうなことを言うことは、これは非常に問題をずらすことになるわけで、私はその点はいままでたびたび感じておったんです。  それから、いま紛争ということを言われました。確かに各大学が紛争という問題では苦しみました。しかし、私は最初大学の自治、学問の自由、こういうものが大学の大きな基本的なものであるということで出発しましたが、これはきわめて観念的なものであって、それをいかに実現するかということがいままでの大学の仕事だったと思いますよ。そしてそれははたして二十五年や三十年でもって実現するものかどうかわからない。あるいは大学の永久の仕事かもしらぬ。それをお菓子をこしらえるように、文部省はいま大学の自治、学問の自由をつくってやろうなんとお考えになっていたら大きな間違いである。長い試練の中で苦しむという中で、試行錯誤の中で大学の自治、学問の自由というものがつくられていく。あるいは後退するでしょう。ときには前進するでしょう。それを文部省というものが、教育行政官というものが大きい大胆な気持ちでもって見ていくことが、ほんとう大学の自治、学問の自由をつくることではなかったかと思うのですよ。紛争というふうなものは、その当時それは世間を騒がしてお互いに苦しんだ問題でありますが、それも一つの私は試練だったじゃないかと思うのです。  OECDから日本に二、三年前に、あれは教育調査団ですか、来たことがありますね。御存じですか。そのときにイギリスの新聞記者がその中に一人加わっておりました。その人の話に、こういうことを言ったことがありますよ。いまの日本の学生というのは、親から金をもらって自由な立場にある、その金を使ってあの大学紛争をやっている、彼らにだって何か国家観もあるだろう、人生観もあるだろう、だからあの人たちに日本の将来というのをまかしたらどうかという極端なことを言った人もあります。その当時の教育使節団を通じての統一した考え方というものは、日本のこの経済成長はきわめて危険である、この経済成長の中で民主主義を失うというふうなことがあったらたいへんだ、いわゆる精神面をここでもってほんとうに日本が重視しなければならぬというようなことが最後の警告だったと思うのですが、その警告のことばの中に、OECDからの派遣ですから自由に来た新聞記者じゃありませんよ。その人が、あの人たちは人から金をもらっているのじゃない、親から金をもらっているんだから考え方は自由なのだ、自由だからといってむちゃくちゃかといえば、やはり人間である以上は人生観も出てくるだろう、国家観も出てくるだろう、だからあの人間たちにまかしたほうがいい。極端に申し上げれば、こんなに企業を中心に日本の政治というものが動いてきて、きょうも魚の問題でもって、食ってもいいのか、食えなくなったらどうなるのか、日本国じゅうが大騒ぎでしょう。これがだんだんだんだん深刻になっていく。そういう日本よりも、あの若い人たちにまかしたらどうだと、そのときにその新聞記者の意見が言っているんじゃないかと私は思ったのですが、私はそこまで大胆にまかせることはできないにしても、そういうふうなものをただ因る困るでなくて、それが大学の自治の中に、学問の自由の中にどういうふうに反映をしていくかという見方を考えていかなければいけない。文部省のやったことは、そのときは何ですか。(発言する者あり)紛争をしているような学校には——いま私にやじを飛ばした前の大臣がやったのですが、紛争をしておる学校には補助金をやらない、こういうことでもって紛争校に対処をしたなんということは、私は最も大胆でない役人根性の文部省というものがある限りは、何かこの際世話をやかなければいけないんじゃないか、何か対策を講じなければいけないんじゃないかというようなことで、ああいうへまなことをやるわけなんです。そのとき副学長の問題なんかも出て、またそれをここに生かそうとするのですが、文部省というものは、大学の先生たちにほんとうに責任感を感じさせ、良識を出し、全学的な考え方の中で、一つの部面、部面をりっぱに担当していく、そういうことが私はほんとう大学の自治を見つけていく道ではないか、こう考えてまいりますと、大臣が盛んに、今度は学長が、あるいは副学長が、あるいは参与会がというような機構の問題をこの審議の中で出されて、そこに新しい大学の自治が生まれ、あるいは希望が生まれてくるようなことをおっしゃっておりますが、何となく私にはそれがすなおに受け取れないのですよ。その点をひとつ大臣の御所見を承りたいと思います。
  32. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 小林さんの言っておられることと、私の考えていることとの間にあまり差はないような気がいたします。私の言っていることも、小林さんの言っておられることも、どうも大差はないんじゃないか、こう思うのであります。私がたびたび申し上げるとをことばをかえて申し上げますと、東京教育大学構想実現させてあげる、これが大学の自治を守る基本的な政府の姿勢ではないか、こう思っているということでございます。同時に、また各大学にいろいろな紛争がございます。すべて紛争は解決したわけじゃございません。やはり根本的に大学あり方を改めない限りは、紛争は私は続いていく面が非常に多いと考えておるわけでありまして、そういう意味で、大学の人たちにもつと責任を感じてもらいたいという気持ちを強く抱いております。今度の東京教育大学の新しい構想実現することによってそういうものへの刺激、これを期待しているわけでございまして、私は決して筑波方式が次々に他の大学へ移っていくんだというようなことは毛頭考えておりませんが、もっといろいろな構想が生まれてくることを期待いたしておるわけでございます。右に行ったり左に行ったりしながら改革が行なわれていくんじゃないかと思います。  同時にまた、改革というのは日本だけがやっているわけじゃありませんで、世界の先進国がみな改革と取り組んでおるわけでございます。多くの国においても、新しい構想大学が発足しておるわけでございます。わが国は今度初めてでございます。  同時にまた、学問研究、この自由を守っていく、これは大切でございますし、そういう意味において大学の自治を守っているんだ、こう考えているわけでございまして、私自身も学問研究の自由を保障していく、そして大学の中において活発に研究教育をやってもらう、その中から新しい未来が築かれていくんだ、そういうような考え方を持って私たちは大らかに大学の自治というものを守っていかなければならない。東京教育大学構想実現させることがまさに大学の自治を守る政府の基本的な姿勢であるはずだ、こういう気持ちを持っておりますことをぜひ御理解賜わりたいと思います。
  33. 小林信一

    小林(信)委員 私の発言の中で大臣がそういうふうに受け取って、東京教育大学意向文部省が積極的に協力をする、それが大学の自治を守る一つじゃないか。確かにこれは私、申しわけありません。そういう点は確かに大学の自治に協力したことになるでしょうが、しかし、へたを協力しますと、これは決して大学の自治を守ったことにならないのです。私はこの東京教育大学の問題で、もう十年か十二、三年前に、文教委員会の中で扱ったことがあります。そのときに、参考人を呼んだ。その参考人の中に、東京教育大学を卒業した財界の大物が来ておりましたよね。そのときに、どうしたらいいかという場合に、その人が、こんなものはもう大学をほかへ移す以外にないんだ、きわめて、大学あり方とかというふうなものでなく、どうしようもないんだ、だからこんなものは移してしまう以外にないんだということばを聞いたのがまだ残っております。大臣がいままじめな東京教育大学の先生方の希望を実現させてやる。それが大学の自治を守ることであって、そういう点にもっと文部省を高く評価せよというお話がありましたが、その点を私は確かにおっしゃるとおりだと思いますが、そういう発端を、問題の出発を考えますときに、もうこの大学というのは移らなければならない大学になっておったんだ、そういう財界の支配なんというものが非常に強かったんだ。それにただ文部省は巻き込まれたにすぎないんじゃないかというくらいに極論をしたくなる。私には、かつての東京教育大学に対するこの委員会で論議をしたことを思い出すと、こう思わざるを得ないものがあるわけなんで、大臣大学の自治に協力した、こうおっしゃっておりますが、必ずしもそう一がいにわれわれは高く評価することができないと思います。  それから大臣は、世界の各大学ではもう盛んに改革の道を開いているんだ、日本では初めてだ、こうおっしゃいました。こんなことを自民党が、あるいは自民党の文部大臣が言うなら、私は教育行政がなってなかったということをみずから言っている証拠だと思うのですよ。何にもしておらないようでも、腹の中では、気持ちの中では常に大学改革というものは望んでおる。そのうちに先生たちがああいう事態の中からこういう考えを起こしてくるだろう、そういう見守る大きな気持ちの中で、ほんとう学問の自由を育てるような気持ちの中で私どもは今日まで見ておりました。世界の大学にはおくれるかもしれませんけれども、しかし、もっと根強い大学改革というものがなされる、そういう自信を持ったところから答弁が出るならば、私はあなたをりっぱな大臣だと評価いたしますが、初めてだなんということは、いままでの日本の文教行政というのは、じゃあ何をしておったかということをあなたみずから告白したようなことになりますよ。  ぼくはそういう問題と同時に、私がいま問題にしているのは、東京教育大学考え方実現させてやる、そういうところに大学の自治があったとか、これから各大学にもそれを及ぼしていくのだというような御意見がありましたが、私が問題にしておりますのは、大臣に根強く申し上げておりますのは、機構を整備したから大学の自治というものが確立できるという、そこに私はどうも印象が、私にはそういう印象が出てきているのですが、必ずしも前の学部あり方、あるいは教授会というふうなもので既成大学運営されておったということに、私は必ずしも問題がないとは言いません。しかし、そういう中で一人一人の教授の責任感、自分たちの身分というものを、自分みずから留保しておる、それだけに全学的な視野にも立たなければならぬし、教官としての良識を強く持っていかなければならぬ、研究を熱心にやらなければならぬというものが出てくる。そういう前の機構、前のあり方と、今度の筑波大学は、盛んにいわれる学長がどうの、副学長がどうの、あるいは参与会がどうの、人事委員会がどうの、あるいは財政何とかというのがどうのというような、機構の点だけでもってあなたは非常に大学を強調される向きがありますが、ここは非常に急所でございますから、お答え願いたいと思います。
  34. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 おっしゃっていること、よくわかります。大学の中身の問題、学問研究そしてまた教育の実態、これが大切だということ、私もそのとおりと思うわけでございます。ただ、法律学部組織を強要するかっこうになりますので、この壁を破らなければ、東京教育大学が考えているような構想研究教育内容を持っていきたい、それができないわけでございますので、あえてその点に法律的に触れざるを得ないわけでございます。触れますと、おのずから、じゃ学部教授会人事をやっておった、学部がなくなったからどうするのだということになりまして、人事委員会も法定をせざるを得ない、こうなってきておるわけでございまして、そして開かれた大学として参与会を設けたい、全学的にいろいろくふうをしていかなければなりませんので、学長の補佐機関、これはやはり人をふやしてあげませんとやっていけませんので、ふやす道も開いておきたい、こういうことでございまして、組織でものは解決するものと私は一つも思っておりません。場合によっては、組織が、せっかく改革しようと思いましても、どうにもならない場合がございまして、今回の場合はまさにそれに当たるのじゃないだろうか、こう思っておるわけでございます。
  35. 小林信一

    小林(信)委員 大臣は、考え方が違ってないじゃないかとおっしゃいますが、考えることは同じだと思いますよ。しかし、いまほんとうに一致したところは、仕組みをどう直そうが、あるいは機構をどういうふうにつくろうが、そんなことは決してそれがもうすでに目的を達したなんということに考えられてはならない。要はやはり人間だと思います。これは参考人の人たちも盛んに言っていましたけれども、結論としては人間だ。ところが、その文部省のこの資料を見ますというと、そうじゃない。そういう個々の人間というふうなものでなく、宣伝をするために、今度の大学にはこういう特色があります、こういう機構でやりますというようなところにだいぶ重点が置かれておるので、私どもは、文部省ともあろうものがそんな考え方ではいけないというふうに思うわけで、思うところは同じなんですが、どうもその印象というのが、そういう印象を受けるわけであります。  そこで、今度はこの資料の二五ページ、「問15筑波大学には教授会が置かれないと聞いていますが、本当ですか。」ということは、この問いを文部省が設定する場合には、何かやはり教授会というものがなくなるということでは国民が満足しないだろう、だからなくなりはしませんというようなことを言いたくてこんなことを書いたと思うのですよ。そういうふうに書いてあるんでしょう。
  36. 木田宏

    ○木田政府委員 「大学には、重要な事項を審議するため、教授会」を置くという学校教育法の定めになっておりまして、筑波大学におきましても、それぞれの学群学系等基礎的な組織に教授会が置かれるということになる次第でございます。
  37. 小林信一

    小林(信)委員 これは質疑の中で聞こうと思ったのですが、いま局長がおっしゃった「重要な事項」というのは、この法案にも出ておりますね。出ているでしょう。内容はどういう内容ですか。何にもそれは示していない。ただ「重要な事項」と書いてある。その「重要な事項」というのは何をさしているのですか。
  38. 木田宏

    ○木田政府委員 個々の大学でそれぞれお考えになることだと考えます。
  39. 小林信一

    小林(信)委員 そういう法律の出し方、確かにあると思うのですが、私はすでにこの教授会は——ここにはまだ教授会もありますよ、残っていますよ、ないわけじゃありませんよというふうに書いてありますが、しかし今度の機構の中での教授会というものは、従来あった教授会——教授会自体が人事権を持っておる、その人事権を持っておるところに権力の介入、支配というものを排除して、ほんとう大学の自治、学問の自由というものを守る形があったと私は思うのですが、そういうものは先ほど申し上げたところでもう完全になくなっておる。人事委員会というようなものが出てきて、従来あった教授会の任務は全部なくなっておるわけであります。そういうふうに、教授会というものをなくしては印象が悪いだろう、だからありますよ、しかし、中身は全然変わっております。これがこの筑波大学の説明の真相だと思うのです。新しい大学をつくるというふうな場合に、理想を持っておるものであるというならば、こんな矛盾したものは私は出していただきたくないと思うのです。しかも、いまの重要事項というのは、各大学がきめるものである。これは非常に無責任な法律制定だと私は思いますが、それでいいんですかね。
  40. 木田宏

    ○木田政府委員 現在教授会は、大学学部あるいは独立の研究所等がございます場合には研究所に、それぞれの教育研究の基礎的な組織単位に教授会が置かれておるというふうに承知をいたしております。これは国公私立の大学を通じて大体同様であろうかと思います。研究所に置かれました教授会は、研究所の重要事項を取り扱うことになると思います。置かれた基礎的な組織の持っております権能というものについて、教授会がその中で関係者の重要と考えられるものを処理をするということになろうかと思うのでございます。  筑波の場合には、教育組織研究組織を機能上別立てに考えてみたいということでございまして、そこで教官の人事学系の系列だけできめてしまうわけにもいかない、学群の系列だけできめてしまうわけにもまいりませんから、両方からの発議を受けて、人事委員会というような全学的な調整の機能を設けた、こういう次第でございます。
  41. 小林信一

    小林(信)委員 重要事項というのはその大学大学でもって考えることである。それならば従来の教授会がやってきたというようなことは別問題で、今度その大学の——これはいまのところ筑波大学だけですが、筑波大学で教授会というものを見るとき、もうほかのいろいろな組織、仕組み、そういうものでもって全部用は足りている。しかし、教授会があるからには、教授会にも仕事をさせなければならぬ。その場合に、あってもなくても、やってもやらなくてもいいことだというようなものでも、その大学の重要事項だと判定をすれば、それが教授会の仕事になる、こういうふうに私は受け取りまして、何か教授会というものをなくなしては問題があるだろうから残しておけという、そんなこそくな考え方で生まれてはいはしないか、こう思います。  私のいまの段階で申し上げましたものは、大学の自治とかあるいは学問の自由とか、これはやはりいつになっても教育の中の課題だと思いますよ。その課題をいかに解決し結論を出していくかということについて、いままでの学部あるいは教授会、そういう仕組みでもってやった。形には問題があるかもしれませんが、その一人一人の教師が、自分たちの身分に対しては自分みずから権利を留保する、そういう中で学問の自由あるいは大学の自治がつくられてきたものを、機構がいろいろ出て、それにはみんな属するものがありますから、全学的な立場でもって協議をされますからとは言いますけれども、その機構の中に、わけのわからぬ文部大臣が出てくれば、どうも最近のあの大学行き方は思想的にどうだとか、あるいはあれが思わしくないとかいうような簡単なものでもって、その大学を左右するような機会が与えられてきて、かえって危険ではないか。そういうことで、もしこれを了としておられるような、完全だというような考え方文部大臣がおるならば、それだけでいっては危険だ。そういうものがこの筑波大学には多分に考えられておる点で、この大学法案は私は問題だと思うのです。  その次に、開かれた大学という問題で少しお聞きしたいと思います。  この説明を見ますと、まず第一番に、外部から良識ある意見を大学運営に適切に反映せしめるという意味で外部から人を入れる。しかも、これは学長の諮問機関でございますから、ただ意見を具申するんでなくて、相当力を持った、権力を持った機関だと思います。これを開かれた大学一つの条件にしております。  その次には、社会への大学開放を積極的に推進する、こういうふうに書いてあって、修士課程に云々とか、あるいは各種の公開講座にどうだとかいうことが書いてありますが、これだけでもし開かれた大学だと文部省がお考えになっておると、私は少し残念な気持ちがするのです。私のほうから説明をします。ということは、もういまや大学の先生たちが、研究者が、自分みずから社会へ出ていかなければならない。そういう機能が発揮できるような学校が、大学が、ほんとうに開かれた大学だと思います。いまの二つを否定するわけじゃありませんよ。しかし、何かその二つだけの視野から開かれた大学というふうなことを皆さんがお考えになっているとするなら、非常に時代というもの、日本のいまの置かれている立場というようなものを忘れているんじゃないか。たとえば公害等の問題では、私はいまよりももっと学者、研究者というような者が、社会へ直接出ていって活動しなければならぬような事態が来ると思います。そういう問題も考慮されておるかどうか。   〔森(喜)委員長代理退席、委員長着席〕 私は今度の有明海の調査に行きまして、熊本大学の医学部の先生たちの活動を見てまいりましたが、公害の中では学者の研究というふうなものは、そのときにはちょっと評価いたしますが、その学者がどういう苦労をなさってあの仕事を仕上げたかというふうなことについて理解のない点が残念ですが、少なくとも教育に関係するものは、そういう点を意識していかなければならぬということをわれわれは痛感してきたわけです。つまり公害などが多くなっていくいまの社会情勢の中では、開かれた大学はどうであらねばならぬかという考え方大臣からお伺いしたいと思います。
  42. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 参与会の構成につきまして東京教育大学で考えておられる問題は、参与の中にやはり地元の代表的な人に加わってもらおう、そして筑波大学の体育施設なり大学会館なりその他の施設を、地元の人たちにも積極的に利用してもらいたい。あるいはまた高等学校等の代表者に参与になってもらいたい。大学の入学試験についての高等学校側からの意見もあるだろうし、また高等学校で育ててきた人たちを大学に送っているわけだから、高等学校とのあり方において大学教育への注文もあるだろう、そういうものも聞きたい。あるいはまた同窓生の代表者に参与になってもらう、そして先輩から母校をながめた場合に、もっとこうあってほしいといういろいろな希望、意見があるのじゃないだろうか、それに耳を傾けられるようにしたい。あるいはほかの大学の関係者にも加わってもらって、そして他の大学からながめた場合に筑波大学がこうあるべきだ、いろいろな評価もあるだろうから、そういうことにも耳を傾けていきたい。いろいろな人たちに参与になってもらうことを考えておられるようでございます。  このような参与会につきまして、大学の他の先生の中には、学外者をもって参与会を構成する、これは大学の自治を破壊するんだ、こういうような意見を私のところに寄せてきておられるのがございます。私は大学の自治というものは学問研究の自由を保障する、そのための大学の自治であって、それ以上の大学の自治ではないと考えておるわけでございます。大学社会から孤立した存在になっていっていいものではない。それは私は独善というものだろうと思うのでございまして、そういうような誤解さえもある際に、東京教育大学がみずから身を社会の声にさらしていこうとする、その気がまえというものは非常に高く評価すべきものではないだろうか、こう考えておるわけでございまして、その中で、いまもおっしゃいましたように、公開講座を開きたいとか、あるいは修士課程につきましても、社会の需要に対応できるようにしていきたいというようなことも考えられているようでございます。  いずれにいたしましても、社会において大学教育分野を受け持っておるわけでございますので、その社会の必要に十分に対応できる教育が行なわれていかなければならない、こう考えるわけでございまして、そういうような仕組みとして一つ参与会構想を打ち立てられた、こう私は理解をいたしておるわけでございます。
  43. 小林信一

    小林(信)委員 大臣、間違わないでください。筑波大学に対するあなたのお考え方というものは、各大学に共通しなければならぬ問題でございますので、だから筑波大学だけにこだわって話をしておるのと違いますから、筑波大学にあなた方がしむけられた考え方なり、あるいは金の出し方なり、あらゆる関係のしかたというものは、ほかの大学にも共通だという立場でお伺いしているわけでございますから、筑波大学の周辺の高等学校の先生もあるいはだれもというふうなお考えでありますが、いま私は公害という問題から申し上げたのです。あすこには鹿島臨海工業地帯があります、あるいは東海の原子力研究をするところがありますね。ああいうような危険なところがたくさんあるとするならば、やはりそういうものにおそらく先生たちが動員される場合があると思うのですよ。そういう場合に、万全を期せなければいけないということは、私の感じてきたものを申し上げますと、こういうことですよ。私はあそこへ視察に参りましたが、ほかの人と一緒にいろいろな視察をしましたが、特にその間に熊本大学の武内教授にこの研究についてのいろいろな苦心談を聞かしてもらったのです。ということは、御承知のようにあの人が発表したために、有明海、八代海、あそこの漁民はいま全部手をあげております。学者が研究してその研究を発表したために、どのくらいの数か知りませんけれども、漁民は魚をとることが不可能になってきておる。患者は診察をされたのですから、自分の病状を調べてもらったのですからいいかもしれませんが、しかし、一漁民は言っております。私どもは後悔しております。身体検査も検診もしてもらうのじゃなかった、こう言っております。そんな複雑な中で学者というものは、これが真実であると自分が信じても、それを発表するということは、非常に私は勇気があることだと思うのです。特に漁民が仕事ができないばかりではない。発生源である企業等から、そういう発表は控えてくれとか、あるいは県当局とかいうふうなものが自分を取り巻いておる中で、研究者としての良識であの人は仕事を進めたということを私に述べられております。私は、大学の中がうまくいくとかいかぬという問題よりも、学者が一つの仕事に取り組んで、企業のほうから圧力がかかろうが、これを発表することによって個々の漁民は生活の道を断たれる、そういう事情があっても、学者としての良識の中で研究していく。私は、何かいまの日本の大学の中で、学問の自由や大学の自治というものは、ただ観念的なもので、いつになって実現するかわからぬというふうな見方をする人もありますが、あそこの熊本の武内教授をはじめ医学部の人たちのやった仕事を見ますと、やはりその中には何があったかといえば、学問の自由があったからだ、こう思うのです。そういうものがだんだんつちかわれていくわけであって、既成大学の中にそういうものは実現できないのだというふうにあきらめてはならないと思う。こういう機構を持った筑波大学だけに学問の自由や自治があるというような認識を持ったら、私は大間違いだと思うのですよ。そういう点を、これから新大学あるいは筑波大学について、開かれた大学とすれば、考えていかなければならぬと思うのですが、どうですか。
  44. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 御意見全く同感でございます。そういう意味で今日大学学問研究に期待されておるところ非常に大きなものがあると思っております。御指摘になりました公害防止や環境の保全もありますし、あるいは人間工学、情報科学といったような問題もありますし、物価や国際金融の問題も、非常に大きな課題をかかえておると思います。いろいろなそういうような問題につきまして、積極的に大学が取り組んでもらわなければならない。また取り組んでいけますように、環境の整備に文部省としては最善を尽くしていかなければならない、こう思うわけでございます。そういう気持ちもございまして、先般公害対策、そういうことについて大学が積極的に現実に取り組んでもらう予算も、こういうふうに各大学に配付いたしましたといったようなことを、閣議で報告したことがございます。そのときに総理からは、さらにそういうような学科を積極的に大学が設置していく、それを文部省が援助する、そういうふうな注文もあったりいたしまして、四十九年度の予算にあたっては、そういう角度から大学側が積極的に予算要求をしてくださいよ、こういうように事務的にも連絡をいたしておるところでございます。おっしゃっておるとおり、大学が積極的に社会の要請にこたえ得るような研究体制を整備していかなければなりませんし、文部省がそれをささえる役割りを積極的に努力していかなければならない、かように考えるわけでございまして、そのような気がまえでいきたい、かように思います。
  45. 小林信一

    小林(信)委員 大臣、いまお話を聞いておりますと、公害なんというものはもうとつくから出ておって、相当世間の問題になっているのですが、その研究の面では、責任を持つ文部省が、いまからだというふうな印象を受けて私は非常に残念に思うのですが、総理大臣が何と言ったか知りませんが、既成大学では学部ですが、何かの学部の中で公害問題を研究するという消極的なものでなく、独立した公害を取り扱う学部をつくれというふうな声があったことを大臣は聞いたことございませんか。それくらいこれからの研究人の要望というものは強くなってきておると私は思います。何か大臣お話では、総理大臣が初めてそんな要望をして来年度予算を組むというふうな印象ですが、そんなことですか。
  46. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 公害の問題は、古くからいろいろな方面で大学としても取り組んでおる。その一つの例として、先ほど熊本大学の水俣病と取り組んでいることを小林さんからお話がございまして、私もこの熊本大学の今日までの業績を高く評価している一人でございます。ことしどうしたかということを例として申し上げたわけでございまして、ことし初めてそうするのだというふうに皮肉におとりにならないようにお願いをしておきたいと思います。  同時に、公害の問題は一学部の問題じゃございませんで、多くの学部にまたがって研究をし努力していかなければならないことでございます。そういう式の学際領域の学問というものがどんどん大切になってきておるわけでございます。そういうことでありますと、こういう問題は各学部間が協力し合わなければならない。だから臨時にプロジェクトチームをつくって大がかりにそういう問題と取り組んで、そして大規模研究を完成していくという体制が必要になってきておるわけでございまして、そういうような機運がだんだん高まってまいっておりますし、またそういうものについての援助も積極的にやっていきたい、こう考えておるわけでございます。
  47. 小林信一

    小林(信)委員 私は、話の終わりにはそういうことを言おうと思ったのですが、あなたも大々的なプロジェクトチームでもって研究する。この筑波大学構想の中にはありますね。しかし、筑波大学だけがするのじゃない。各大学がやらなければならないことなんです。今度の熊本大学の取り組み方にも、私はあの科学人には敬意を表してまいりましたが、残念ながらいまのような仕組みでない点が非常に残念でした。医学部だけでなくて、海洋を研究する人とか、地質を研究する人とか、そういうような大きな組織の中でなぜ取り組んでくれなかったかということは、文部省は何をしておったと言いたくなることなんですよ。まあそれは大学自体がやることで、文部省は関知しないといえばそれまでなんですが、それくらいのことは、いまの時節でございますので、大臣研究をしておるというような話を聞くならば、一体その仕組みはどうだ、金はどうだ、金だって前に武内教授その他には出してありますね。私もそれは聞きました。しかし、この研究調査のためには熊本県から一千三百六十万出してもらった。それだけで研究がなされておる。文部省はこれに対してはちっとも関知しておらない。要求しないから金をやらなかったというようにも聞いておりますけれども、もし関心があるのなら、いま大臣がおっしゃったような気持ちを常時文部省が持っておるなら、その研究組織はもっと拡大して、ほかの部も入れるべきである。そして大々的に研究しなさい、そのための費用は文部省が出しますよ、というような態度がなかったことは私は残念に思うわけであります。それがただ熊本大学の問題じゃない。筑波大学にもそういうような構想があるかどうか、筑波大学だけでなく、今度は全大学にそういうものを文部省は考えておるかどうかということを実は言いたかったわけでありますが、その辺の経緯がもし説明されるならば説明をしていただきましょう。
  48. 木田宏

    ○木田政府委員 熊本大学が関係いたしました水俣病の研究は、昭和三十一年度、当時の学部長尾崎教授のころから始まっておるわけでございまして、三十一年度三百五十万ほどの金を特別に、熊本大学のこういう事態が発生しているという要請に対応いたしまして、既定経費の中から熊本大学に回しました。自来、昭和三十二年から四十八年度まで総計いたしまして、この水俣病関係で、熊本大学を中心に計上いたしました科学研究費は六千万にのぼっておる次第でございます。その他県あるいは環境庁等も、その間千八百万ほどの研究費等を投入しておられるようでございますが、熊本大学の関係者がかなり積極的な役割りを果たしているというふうに承知をいたしております。  またこれらの科学研究費につきましては、ちょうど昭和三十何年になりましたか、当時の主任教授でありました内田教授が有機水銀の病害であるという断定をされたのでございますが、そのときにこうした裁定、決定について協力をされましたのは東大の教授でございまして、関係者が大学をこえて、初めてぶつかったむずかしい問題を解明するために協力をされたという次第でございます。  今日まで、昭和三十年代からいわゆる重金属関係のいろいろな病害等に対しまして特別の科学研究費を、件数にいたしますと非常にたくさん計上してまいりました。昭和四十八年度だけでも三十二件ほど科学研究費を全国的にあちらこちら研究者を中心にいたしまして支出をいたしておる次第でございまして、こうした問題の研究は、一大学、一部局にとどまるわけではございませんので、全国的な研究者組織を激励をする、そういう形で取り組んでまいりたい。これは公害のみならず、ガンあるいは環境問題全般につきましても同様でございまして、文部省は、百十八億、四十八年度に計上していただいております科学研究費のうち、こうした社会的に問題の大きい分野に対しまして、重点的に研究費の配分を相談をいたしまして支援をしておるという次第でございます。
  49. 小林信一

    小林(信)委員 私は全然ほっておかれて、熊本大学の先生の自主的なものだけでもってあの研究がなされたくらいに思っておったわけですが、武内教授からも年々この研究の基礎となるいろいろな研究費は文部省からもらっておりましたということと、それから文部省を私は疑ったわけじゃないですが、一体これに対して文部省はどんな態度をとっておりましたかということも聞いたのですが、ただ一言、文部省は従来から大学研究に口をはさむようなことはありません。きわめてりっぱなことばがありました。だから全面的に文部省を悪く言っているわけじゃないですが、いま局長からこれこれの金を出しております、督励をしておりますというふうなことを聞きましたが、あの段階であれに積極的に督励をするような態度のなかったことは、私はとにかく残念だと思いますよ。  特に知っていただきたいのは、私は金を出すとか督励をするとかいう問題でなくて、武内教授が、水俣病の有機水銀説をとった私としては、この結末をつけなければならないという気持ちから、いろいろな学内にも問題があった、政治問題も出てきた、あるいはこれを発表した結果、会社にどういう影響があるか、漁民にどういう影響があるか、そういうようなことも非常に悩んだけれども一つの真理を追求するために私はやったという、その武内教授のりっぱさ、学者としての態度ということよりも、私はそういう学問の自由、これを曲げてはならないという、学問の自由を非常に皆さんと一緒に高く評価したいと思いますが、何か筑波大学でなければほんとう学問の自由、大学の自治は生まれないなんという考え方をしておるのではたいへんだと思うので、ひとつ例をあげて御参考に供したいと思うのです。  重ね重ね申し上げますが、どんなにりっぱな機構をつくってもだめです。やはり一人一人の人間が、どういうふうな場合にこの気持ちになることができるかということを私は考えていかなければいけない。そういう意味では、筑波大学の機構いじりでもって新大学、新大学と言う文部省の態度には、いささか問題があるような気がいたします。  時間が、私はだれかがやったように、十時間ぐらいさしてもらいたいと思うのですが、どうも許されそうもない。(「うそばっかり」と呼ぶ者あり)うそばっかりじゃない、ほんとうだよ。(「質問することないんだ」と呼ぶ者あり)じゃ、少し質問を申し上げます。
  50. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  51. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  52. 小林信一

    小林(信)委員 どうもきょうの委員会というのは、つけ足しの委員会の感じがいたしてなりませんが、実はこの法案の中には、旭川の医科大学その他医学部を設置する問題も入っておりますし、そしてこの筑波大学にも、何か新しい、夢のような、医学専門学群がつくられるというようなお話でございますが、それについて少しお聞きしたいと思います。  大臣、今度の水俣病で、私は行ってみまして一番痛感したものは、お医者さんの機動隊でもつくらなければいけないと思うのですよ。開業医を動員したりあるいは病院のお医者を動員する程度では——とにかく健康診断をあの有明海全体の、全地域の人たちの健康診断をしなければならぬような情勢にもなる。あるいは認定患者になりたい、だから申請をいたします。ところが、医者がやっぱり足りない。だから、もう申請をして三年もたちますけれども、私はまだ認定がおりてきませんという人もある。いままでの普通の状態の医者の不足なんという問題じゃない。厚生省は簡単に、医者を動員いたしまして、直ちに健康診断をいたしますなんと言うけれども、もちろん健康診断は少なくとも三段階に分かれるわけですよ。口頭でもっていろいろ聞く、それから次には少し進んだ程度の健診をする、そして最後は最も重大な健診をするわけでしょうが、一人一人についても三度ぐらいの健診をしなければならぬ。ほんとうに人命尊重の政治をとるならば、医者をいかに補給するかということが問題だと思うのですよ。それを申し上げながら、文部省のはっきりした態度というものはまだ出しておられませんが、全国の各国立大学に医学部をやがては完全に設置をするというようなことを聞くのですが、まずこの問題の御意見をひとつ承りたいと思います。
  53. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 無医大県、医大も医学部もない県、これを解消するようにしたい、そういう目途で大学を整備していきたい、こう考えておるわけでございます。来年以降に設置を予定して、準備調査費を計上さしていただいているのが若干ございますけれども、それが済みますと九つの府県が、なお医大ないし医学部がないということになるわけでございます。こういうところにつきまして国立または公立の医大または医学部を設置する、そういう目標で努力をしていこう、こういう考え方でおるわけであります。
  54. 小林信一

    小林(信)委員 そうでなければ、健康管理という面で非常に不公平が出てくるような気がいたしまして、私はこれはなかなか金のかかることでございますから、すぐということはできなくても、公平の原則から、各府県、医科大学や医学部のないところには設置をするということを希望してやまないものでありますが、それらに御答弁を受けましたからまず安心いたしますが、公害の問題だけを考えても、今度あそこの有明海で患者が出ておりますが、いまあそこに建っております、仕事をしております水銀を使っておる会社から出たものの被害というように簡単に判断しておりますが、いまたれ流しになっておるものが人間のからだへ入って——OECDの公害局長が日本へ参りまして、衆議院の公害対策委員の人たちと話をしたときに、PCBの人体にあらわれる最盛期は二十五年後でございますということを聞いたことがございます。それくらいいろいろなものを経由して人体に入って、それが一つの病状を呈することは、相当長期間かかるというような、医学の非常にむずかしい問題を考えますときに、常時そういうふうに地域住民の健康管理をする機能を設置するということは、非常に大事なことであって、これは厚生省の仕事かもしれませんけれども、そのもとはやはり文部省がつくらなければならないわけで、私はそういうことを非常に心配をするものでありますが、しかも、工場が建って、その工場から廃液が流れ出すということは歴然としておりますが、農薬を使ったものが地面に散布されて、それが地下水にしみて、それがいろいろな植物に吸収され、そして人体に入って一つの病状を呈するというような、私もむずかしいことでございますからわかりませんが、そういうようなものを考えますと、全く医学の施設、設備というものは、文部省は非常に努力をしなければならぬかもしれませんが、早く完成をしていただきたいと思うのです。  そこで、この筑波大学のことしの予算を見ますと、先ほど局長が言われたように六年間の間に完成するのだ、その間にやればいいんだというふうなことで、予算も少ないこともわかりますが、私はある私立大学、そう言えばわかると思いますが、最も近代的な施設をした大学へ行きまして、そこの医学部長さんと話をしたのですが、私のところで入学者から寄付金をどんなに高くとっても文部省は文句を言いません、はっきり言わないということではなくて、言えないくらいに文部省は私どものこの設備に対して敬意を表しております。こうでなければだめです。そこも、確かにいままでの何々外科だとか何々眼科だとかいうふうなものを廃した新しい仕組みになっております。必ずしも筑波大学の形式であるわけじゃないのですが、というような形をとって、そして研究人も新しい体制で施設も非常に整備をされております。その医学部長の見解でございますが、文部省は金がないから、ことし三年間とか五年間とか長期の予定をつくるけれども、思い切って一年の間に建ててしまう、そういうつくり方をしなければだめですよ。どうも予算の分配から、秋田の大学が仕上がらぬからあそこへもやれ、今度は山形へもやれとか、愛媛へもやれとかいうように、わずかな予算をちびちび分けておるのでは、設備も完全なものはできないし、とにかくそういう構想を持つということは不可能なんだ。私は、いまの文部省のやり方には非常に異議があります。やはり思い切って金を出さして施設を整備してもらいたいんだという話がございましたが、私もそういう感じがしてならないのですが、筑波大学の医事部——専門学群ですか、これはどんな構想でおやりになるのですか。
  55. 木田宏

    ○木田政府委員 規模といたしましては、学生の入学定員百名を予定いたしまして、とりあえず付属病院、当初六百床の規模で、しかし将来拡大することを念頭に置きながら整備を進めてまいりたいというふうに考えております。国立大学の医学部だけでございませんが、医学部は大きいものでございますから、国立大学の整備につきましては、他の公私立の大学と異なりまして、年次を追って施設、設備を整備するということを進めておりまして、筑波大学の場合に四カ年の計画で校舎及び付属病院等の整備を進めてまいりたい。もともと研究学園都市の医学センターという構想で発足をしたものでございます。でございますから、地域の他の研究機関との連携、あるいは筑波地区の地域におきます医療体制というものを考え合わせながら、今後の整備をいたしてまいりたい、このように考えております。  また、医学教育あり方につきましては、新しい学系を基礎医学系、臨床医学系社会学系という三つの系列で考えておりまして、筑波全体の教育のシステムにマッチした新しい医学の教育研究の体制は進めていきたい、このように思っております。
  56. 小林信一

    小林(信)委員 いろいろ聞きたいことはありますが、いま入学という問題がありましたが、ここの入学試験は何か変わった方法をとろうというのですか。というのは、入学してからでも学類を変えることができる、学群を変えることもできる、そういうことは自由にさせるというふうなことがこの資料に書いてありますが、それでは何か入学試験でちょっと特色が出てくるのですか。
  57. 木田宏

    ○木田政府委員 入試のやり方につきましては、現実に大学の設置を見ましたあと、関係者ができるだけ早目に具体の措置を検討されることになるのでございますが、いままで準備の段階で相談されておりますところは、第一次、第二次の二期に分けて試験をしている、こういう入試のやり方そのものにつきましても反省を加えるべき点を是正してみよう、こういう関係者の考えでございます。また、入りましたあと、それぞれの学類あるいは学群ごとに学生が入学をいたすわけでございますが、その教育の過程で将来の進路を変えようという学生に対して、適切な弾力性のあるガイダンスができるようにというのは、筑波大学全体を通じての関係者の意向でございますから、これは運営上、これまた新大学の関係者が具体的な措置を立てられることになるわけでございますけれども、カリキュラムもできるだけ出発当初幅の広いカリキュラムでスタートして、専門の領域につきましての将来の進路の是正ということが、学生にとってもしやすいように、必要なガイダンスを加えてまいる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  58. 小林信一

    小林(信)委員 この資料の中に、入学試験のときにはある学類を選んだけれども、それから気が変わったからほかの学類に変更することもできる、学群を変えることもできるということを書いた以上は、入学試験というものに何か特色を持つとか、こういう原則から見て変えても差しつかえないとかいうものを私は聞きたかったのですが、大学のこれからの運営の中でというようなことがだいぶ多いようでございまして、非常に残念でございます。  とにかくそういう宣伝が非常に多くて、内容を聞いてまいりますと、まだ内容は不確定、ただ世間の興味、関心を引きさえすればいいというような構想であることはいなめない問題だと思います。  以上です。
  59. 田中正巳

    田中委員長 午後一時半に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————    午後一時四十分開議
  60. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国立学校設置法等の一部を改正する法律案について、順次発言を許します。山原健二郎君。
  61. 山原健二郎

    ○山原委員 幾つかの点について、確認をしながら質問をしていきます。  一つは教授会、それから評議会、参与会人事委員会、そして副学長、筑波大学組織に関する問題です。  最初に、先ほどの小林委員質問に対して、文部大臣からも、教授会は存在をするというお話が出されましたが、筑波大学における教授会と、現在各大学に存在をしておる教授会との違い、これは全く同じものであるか、あるいは相違があるのか、この点について具体的に伺っておきたいのです。   〔委員長退席、森(喜)委員長代理着席〕 これは各大学におきまして非常に危惧の念を持っておる一つの原因になっておりますから、この点は明らかにしておきたいと思いますので御答弁をお願いします。
  62. 木田宏

    ○木田政府委員 筑波大学におきましても、学校教育法に定めます教授会が置かれるわけでございまして、教授会といたしまして、他の大学に置かれる教授会と同じでございます。ただ、置かれる基本的な組織が違いますために、その組織の違いから来る差異というのがおのずからあろうかと思いますが、教授会の性格としては同じものでございます。
  63. 山原健二郎

    ○山原委員 従来、教授会は大学の重要な事項について審議をしていくということですし、また教育公務員特例法によって人事権を持っているわけですね。それがあるのですか。
  64. 木田宏

    ○木田政府委員 教授会が、その教授会の置かれた組織の重要事項について審議をするという点につきましても、同様でございます。ただ、教育公務員特例法上は、筑波の場合に学群学系だけで人事をきめるということができませんから、別に人事委員会を設けて、その間の調整をはかるという特例を設けておる次第でございます。
  65. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、かりに人事の問題をとりますと、従来の教授会と、筑波における教員会議皆さんが呼んでおるもの、教員会議という名前について私ども反対しておるわけではないのですが、性格は違うわけですね。
  66. 木田宏

    ○木田政府委員 大学の各学部あるいは研究所等に置かれる教授会と、筑波の学群学系に置かれる教授会は、教授会としては同じものでございます。ただ、教育公務員特例法に今回の場合あわせて除外規定を御提案さしていただいておるわけでございまして、特例法に定めております教授会を経てという案件が、筑波の場合には特例法に規定してあります部分だけ他と違うということは御指摘のとおりだと考えます。
  67. 山原健二郎

    ○山原委員 現在教授会が持っておる、慣行上もありますところの重要な事項というのは、教授会の権限に属するわけですが、たとえば学科課程に関すること、あるいは学生の入学試験及び卒業に関すること、学位称号に関すること、教員の任免その他人事に関すること、学部内の規制に関すること、その他学長が諮問した事項、こうなっております。さらにまた教特法上の権限としては教員の採用及び昇任の議決、一個の学部を置く大学における教員選考の基準の議決、学部長の選考の議決、教員及び学部長の勤務評定及びその結果に応じた措置についての議決、こういうものがあるわけですね。ところが筑波の場合には学系学群と分かれるという組織上の問題から、基本組織である教員会議の持っておる権限というのは、まさにこれらの一項目、一項目が羽がはえてどこかへ飛んでいったように権限が失われていく。少なくとも決定権はない。慣行上の決定権も幾つかの組織に吸収されていく、こういう点で、全くいままでの各大学における教授会と、筑波大学における教授会とは、異質のものとなっているということがはっきりしておると思うのです。この点認めますか。
  68. 木田宏

    ○木田政府委員 いま教授会の役割り、職責としてお読み上げになりました研究所に置かれる教授会につきましては、学生教育問題というのは起こり得ないことは当然だと思うのでございます。教授会の一般的な権能と申しましても、その教授会が置かれておる組織が持っております基本的な役割りというものを教授会として取り扱っていくということになろうかと思います。その教授会が置かれた組織の基本的な課題を教授会として取り上げるという点につきましては、筑波の場合に置かれる教授会も、現在の一般の大学に置かれております教授会も同じでございます。ただ、いまお読み上げになりました単科の大学の場合には、特例法の規定によりまして教授会が評議会の役割りをするとか、その置かれた組織の実態に応じていろいろな特例が設けられております。筑波の場合には教育組織研究組織が分かれますから、人事の扱いにつきまして人事委員会という別の調整機関を置いた、こういう次第でございまして、特例法に規定してある部分が違うということは御指摘のとおりかと考えます。
  69. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣の答弁によりましても、また本会議の答弁によりましても、また東京教育大学の宮島学長の今日まで発表してきました資料によりましても、大学における人の重要さということですね。しかもそれは、人というものが大学の自治にとってきわめて重要なものであるということは、しばしばいわれてきております。たとえば宮島学長の出しておりますところの最終的な筑波新大学に関する基本計画案でも、最後のところで宮島学長はしきりにその点を強調しております。「人です。人材の結集、それから各関係者の熱意、さらに和です。私たちはこれまでに、」と書きまして、さらに「それを実現するかなめは人です。人のほか何ものでもありません。」こういうことが書かれておるわけですね。   〔森(喜)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、この人の問題について教授会が決定権を持たないということは、いわゆる大学の自治の基本部分がこの教授会から離れていくということだと私は思うのです。そういう重要な問題がありますから、筑波におけるいわゆる教員会議と、それから今日までの現行の教授会とは、非常に大きな相違点が存在をしておるというふうに把握をしなければならぬと思うのです。  それからさらに学生の入退学の問題につきましては、筑波大学においてはどこで決定をするわけですか。
  70. 木田宏

    ○木田政府委員 学生の入退学の問題は、各学群の教授会が決定をいたすわけでございます。現在まで、教授会が大学に置かれるというふうに法律の規定ではなっておりますが、実態的には、御案内のように大学の基礎組織であります学部研究所等、教育研究の基礎となる組織に教授会が置かれておるわけでございます。その教授会で教官の人事をやるという趣意は、教育研究に携わる職員を人選いたしますにつきまして、教育研究を行なう者みずからの手によって行なうというところにその真の意図があろうかと思います。これが学問の府として自主的に行なえるような体制をつくる基本の考え方であろうかと思うのでございます。筑波におきまして人事委員会を設けましても、教官の選考を教育者研究者の手によって行なうという、学問を守っていく基本姿勢において、ごうも変わるところはございません。でございますから、いま御意見がございました、教授会を中心にした教官の人選という基本姿勢は、筑波大学におきましても、研究者の自主的な手によって教官の選考を全学的に行なうという意味において、全く貫かれておる、このように考えておる次第でございます。
  71. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省が出しました「第一次まとめ改訂案」には、人事委員会総会が決定をするとなっているのじゃないですか。
  72. 木田宏

    ○木田政府委員 御提案申し上げております法律案でごらんいただきますように、教授会にかわりまして人事委員会の議を経てきめるということになっておる次第でございます。
  73. 山原健二郎

    ○山原委員 人事委員会はいままでないわけでしょう。現行の大学にはないわけでしょう。これはあとで人事委員会のところで質問をいたしますけれども人事に関する教授会の権限の重要な部分が、人事委員会の総会において決定をされるということになりますと、いままでの教授会の権限というのは、その面では縮小した形になっているわけでしょう。
  74. 木田宏

    ○木田政府委員 今日までの大学におきまして学部を単位に、あるいは研究所という組織を単位に教官の人事を行なってまいります、そういう仕組みと違うという意味におきましては、学部教授会が今日まで行なっておりました教官の人選の職責と、それから学群あるいは学系に置かれることになります教授会の人事に関与する職責との間に差異が起こる。これはその差異が起こるように法律案を御提案申し上げておるわけでございます。その意味で、その部分において差異があるということは当然でございます。これはしかし、教授会の基本姿勢をそこなうことでも何でもございません。教授会は、それぞれの置かれた組織の基本的な重要問題を取り扱うということでございまして、人事につきましても教授会ですべてをきめ得るわけではない。事柄によりましては、評議会できめる、評議会で処理するというふうに、それぞれの扱う教官のポストあるいはその事柄によりまして、教育公務員特例法上教授会にゆだねておる場合もあれば、評議会その他にゆだねておる場合もあるわけでございます。でございますから、教授会としての性格は同じものである。どういうふうに扱うかという点につきましては、今日の教授会にも差異がございますように、筑波の場合には人事委員会というものを加えまして、そして全学的な教官の人事選考の体制を整えておる、こういう次第でございます。
  75. 山原健二郎

    ○山原委員 まさにこの筑波大学の性格が、ずばりそこにあると私は思うのです。いろいろな言い回し方をしておられますけれども、あなた方が出されたこの「第一次まとめ改訂案」の四五ページに、人事委員会「総会は、次に掲げる事項を行なう。」1.教員人事の方針に関する企画、立案。2.専門委員会の議を経て行なう教員の採用、昇任にかかる選考その他教員の人事に関すること。」と明確にあなた方は書いているわけですからね。だから、筑波における組織、すなわち学系学群という研究教育の分離ということがあるから、教授会の人事の問題が変化があるのだと組織上の問題から言われておるけれども、裏を返すならば、今日まで持ってきたところの各大学における教授会の人事権をここでゆがめ、変質をさせる、あるいはその最終決定権を奪うということでしょう。いままで慣行として、東京大学においてもあるいは京都大学においても、どこにおいても教授会における権限があるわけです。それが木田局長が御答弁なさったように、明らかに変質をしているということは、これはもう侵すことのできない事実なんです。それを説明するにあたっては、組織が変わったんだからそうなるんだということですけれども、基本組織としての教授会あるいは筑波における教員会議の性格は変わっている、これははっきりさせておかなければならぬと思うのです。そういう点でいまの御答弁でその点が明らかになりました。この問題は、あとで人事の問題についてなお詳しく説明を求めたいと思っております。  次に、評議会の問題です。評議会を法定をしておるわけでございますけれども、もし法律によって評議会を決定をするならば、なぜいままでの大学の慣行に基づいて、評議会を最高の意思決定機関としなかったかということなんです。これはもうすでに、大学における意思決定機関としての評議会の存在というものは、慣行上明らかでございます。だから、その点で筑波において評議会を法定をする場合には、その点をなぜ明確にしなかったのか、伺っておきたいのです。
  76. 木田宏

    ○木田政府委員 今日におきましても、評議会が意思決定機関ということではございません。いま御説明がございましたように、慣行上評議会の意向というものは、非常に重視されてきておるということは事実でございます。しかし、大学教育研究の場としての一つの主体的な活動を営むところでございまして、国や地方自治体、行政当局のように、議決機関、執行機関というふうに事柄がさい然と分かれておるものではございません。でございますから、国の施設として法令上の位置づけをいたします場合には、責任者としての学長がある。その学長に対して重要な審議機関として評議会が置かれておる。教授会におきましてもそうでございます。特例法上特別に議決を明確に認めておるもの以外は意見を申し述べる審議機関でございまして、決定機関ではございません。その点は間違いのないように御理解を願いたいと考えます。
  77. 山原健二郎

    ○山原委員 評議会は、人事の基準に関する事項を取り扱っているわけですね。今度の筑波の場合には、これは先ほど読み上げました人事委員会の総会には人事の基準に関することというのが法律にはないのですけれども、「まとめ」の中にはあります。だから、あなた方が想定されておる筑波大学においては、評議会の性格というものも変質をして、人事の基準に関する事項もまた人事委員会総会にゆだねられておるというふうに解釈すべきだと思うのですね。そうでしょう。  それでもう一つ伺いたいのは、教育審議会、研究審議会というのが図面の上では教授会の上に存在をしているわけですが、この教育審議会、研究審議会というのは一体何ですか。これは副学長の諮問機関として想定されておるわけですか。性格は何ですか。
  78. 木田宏

    ○木田政府委員 筑波大学の評議会は、今日他の国立大学に置かれております評議会と全く同じ内容を備えた、また権能、職責を持ったものでございます。教育公務員特例法上評議会の権能とされております部分は、筑波大学にありましても筑波大学の評議会が処理するわけでございます。したがいまして、学長の選考基準あるいは部局長の選考基準等すべての人事上の重要な事項につきましては、これまでの評議会と同様に、人事上の職責を果たすということに相なっておる次第でございます。  教育審議会、研究審議会等、機能別に全学的な調整をほかるための審議機関が、準備調査会の論議の過程でいろいろと用意をされておるわけでございます。今日の大学におきましても、いろいろな委員会が、学部を越えて、学内の共通問題について、教育研究あるいは学生の厚生補導等について設けられておるわけでございますが、それを筑波大学におきましても明確にしていくということでございます。教育審議会、研究審議会等は、担当副学長が主宰をするということになっておりますが、事柄の性質上はやはり一つの学内の意見を取りまとめ調整していく機関でございまして、その意見がある場合に評議会に反映し、そしてまた学長の大学運営に反映していく、こういう位置づけのものであろうかと考えます。
  79. 山原健二郎

    ○山原委員 御答弁を聞いておりますと、どうも教育審議会、研究審議会の性格が不明確なんですね。今日でもあると言いますけれども、教授会がある。その教授会は今日は慣行上も教特法によっても権限を持っている。人事の決定権を持っている。それがそういう人事の問題は人事委員会のほうにゆだねられていく、あるいはその権限の問題が。その教授会の上に今度は教育審議会、研究審議会がある。それで副学長が主宰をする審議会がここにできておる。お話では、それはそういう話が出たという程度であって、この辺になってくると私どもにわからぬわけです。これはどういう性格のものなのか。副学長の諮問機関なのか、副学長が議長として——この副学長というのは、あとで出しますけれども、いろいろなところに議長として出ていくわけです。副学長の諮問機関なのか何かわからない。それが教授会の上にまたある。その上に評議会がある。こういうふうに屋上屋を重ねていく形態をとっているわけですね。しかも、その審議会というのが、教育審議会、研究審議会にしても木田局長の答弁では何かその辺がぼやっとしている。いま各大学において、教授会のもとでいろいろな調整をはかる、いろいろな意見を出して話し合いをする。それとは性格が違うのですよ。管理者であるところの副学長が主宰する教育審議会、研究審議会というのは、現在各大学でやっているいろいろな問題が起こったときに調整する機関とは明らかに違いますよ、これはあなた方のこの「まとめ」の中に一つの機関として存在しているのですから。だから、法律にないものがぽかっと出てくる。それは一体何かというと、審議の過程の中で出てきたものだ、こういうふうなおっしゃり方をすると、私ども筑波大学の管理のイメージがどうなっているのかわからないのです。その点は副学長の諮問機関なのか、何なんですか。機構上としてはこれは一体何なんですか、それを伺っておきます。
  80. 木田宏

    ○木田政府委員 副学長は、学長を補佐する機関でございます。それぞれ教育あるいは研究と事項を担当いたしまして、全学的な調整をとるための補佐機関でございます。教育審議会、研究審議会は学内の教育問題、研究問題の調整をはかる全学的な組織でございます。副学長を主宰者というふうに関係者は予定をいたしておるわけでございますが、法理上あえて言えば、やはり学長の諮問機関ということになろうかと思います。副学長の諮問機関という位置づけのものというかどうか、そういう見方もあろうかと思いますけれども、全体として全学的な調整を行なって学長を助けるための機関である、このように考えております。
  81. 山原健二郎

    ○山原委員 全学的調整機関というのはずいぶんたくさん出てくるのです。評議会も出てきますね。だからわからないのですよ。そう言われたところで、これはどこで最終的に性格づけは決定するわけですか。ただ、私どもここで法律審議をしている場合に、それは将来どうなるかわからぬ、あるいは副学長が議長をつとめるかもわからぬし、あるいは副学長の諮問機関かもしれない。これは大事な機構の問題ですから、その辺はまだはっきりとした形態をとっていない審議会なのですか。
  82. 木田宏

    ○木田政府委員 法律の規定の上では副学長を置くことができるというふうに一般的に許容をいただきまして、筑波大学には予算上も副学長を置くことを予定をいたしておるわけでございます。そのほか法律上の機関といたしましては、参与会と評議会と人事委員会とを法律上の組織として書かしていただいておるわけでございます。残余の組織は学内の運営にすべてゆだねられておるわけでございます。今日の学内のいろいろな委員会その他の運営と同様であろうかと思うのでございます。でございますから、どこがどうきめるかというのは筑波大学ができました際に、こうした法定されました評議会、人事委員会と位置づけを勘案して、学内規則で明確になることだと考える次第でございます。
  83. 山原健二郎

    ○山原委員 では、ここの「まとめ」に出ておりますところの創設準備会ですね。創設準備会の、この私どもにいただいた資料というのはまだ未確定なものであって、これはほとんど全部筑波大学が開学をして教授陣その他が決定をした暁においては、これはかなり変化があるわけでね。どういうふうになるかわからぬわけですね。だから私ちょっとわからぬのですよ。筑波大学構想が、私どもの頭の中に出てこない。これはいろいろ審議過程において出てきた案だということになってきますと、いま筑波大学に対する賛否が行なわれて、賛成者もおかしければ反対者もおかしいという結果になってくるわけですね。いま何かわからない胎動があるだけであって、アマノヌボコをぐるぐる回して淡路島ができたという、そのどろの状態がこの「まとめ」なんですね。だから、私ども実は審議に困るのです。その点明確にしておいていただきたい。どうなんですか。
  84. 木田宏

    ○木田政府委員 学内の運営組織をどうするかという点につきましては、できるだけ大幅に、個々の大学運営にゆだねたほうがよろしかろうと考えておる次第でございます。この筑波大学は、東京教育大学の実質的な発展、こういう内容を持っておりますために、東京教育大学の関係者が中心になりまして、こういう運営のものを考えたいという構想があり、それを予算上も裏づけられるような準備をいたしますために、いろいろの構想を創設準備会でつくってまいりました。しかし、これは現実に大学ができましたときには、その大学によって採用されなければならぬものでございまして、大学によって、またいま御指摘がございましたように、運営上変化発展があり得るということは当然あってしかるべきだというふうに思うのでございます。私どもその筑波大学をお世話いたしますために、どういう運営のものとして一応の想定をしながら準備をしていけばいいかというのが、創設準備会で関係者におまとめをいただいております案でございまして、それを受けて、おそらくは新大学の学長その他のスタッフが、東京教育大学内容を生かすものとして運営されるであろうというふうに思うわけでございます。大学組織上の規定といたしましては法定したもの以外は、大学がそれぞれおきめになるということでよろしいと、こう考えておるわけでございます。
  85. 山原健二郎

    ○山原委員 この東京教育大学と創設準備会の「まとめ」との違いというのは、嶋崎委員からも、あるいは栗田委員からも、高橋委員からも、発言者のたびに出ております。私もその点については幾つか例をあげてその相違を明らかにしたいと思っているんですけれども、たとえばそうしますと、教育審議会あるいは研究審議会というのは、筑波大学開学の暁にはなくなる可能性だってあり得るわけですね。
  86. 木田宏

    ○木田政府委員 理論上の問題としては、そういうこともあり得るかと思います。しかし、現実的な問題としては、筑波大学教育大学の実質的な発展であり、連続であり、この案を練られた方々が中心になって大学運営されると思いますから、現実の問題としてはそういうことは起こり得ないであろうと考えております。
  87. 山原健二郎

    ○山原委員 東京教育大学では、実際には教育審議会、研究審議会というのはないわけでございますし、また東京教育大学の一部の方たちが参加をして、そして文部省でつくられたものがこれでございますから、場合によっては理論上は教育審議会とか、あるいは研究審議会というのは、なくなる可能性を持っている。またその性格もまだ不明確で、副学長が主宰をする、あるいは副学長の諮問機関であるかどうかという不明確な機関が、教授会の上に存在をしておるということなども、私ども審議としてはやりにくいのですよ。  そのことはまたあとで出てまいりますが、それからもう一つ、評議会のことで、なぜ慣行を尊重しないかということを私は言ったわけですけれども、いままでの評議会の任務は評議会規則に列挙される——これは皆さんが出されたところの評議会規定でありますけれども、評議会規則に列挙される所掌審議事項は以下のとおりである。「学則その他重要な規則の制定改廃に関する事項」、これがまず第一番目に出てまいりますね。  ところが、今度東京教育大学におきましては、学則の変更を宮島学長が行なわれた。それはこの筑波大学法案が通過成立をすることを想定をして、学長が個人で学則を変えたという問題が起こって、そこから直接的には五学部のうち四学部が宮島評議会議長を不信任をするという事件が起こっているわけです。  それからさらに二番目には、「予算概算の方針に関する事項」、これは評議会にゆだねられておりましたが、今度の場合には、この予算の問題については財務委員会というのがまた存在するわけですね。財務委員会というのができてくる。評議会の権限の一部、全部ではないかもしれません、今日まで持ってきた慣行として、しかも所掌事項として持っておった評議会の予算上の問題、これも財務委員会にゆだねられていく、こういう状態でしょう。  三番目は、「学部、学科その他重要な施設の設置廃止に関する事項」。  四、「人事の基準に関する事項」、人事の基準に陶する事項に至っては、人事委員会総会、教員人事の基本に関する企画、立案、こういう形でいままで慣行として、あるいは皆さんの指導として行なわれてきておった評議会の権限も、また人事委員会あるいは人事委員会総会というものにゆだねられていく、こういう形態をとっているわけですね。だから慣行上評議会が持っておったところの、しかも全学の意思決定機関としての役割りを今日まで果たしてきた評議会権限も、ちょうどカニの手足をもぐように奪われていく。教授会の場合もそうだ。こうなってきますと、いままで日本の大学の基礎になっておりましたところの教授会、評議会というものの性格が、筑波大学においてはがらりと一変をするという形があらわれてきているわけで、大事な部分がなくなるのですよ。そうじゃないですか。
  88. 木田宏

    ○木田政府委員 現在御提案申し上げております筑波大学の評議会は、「大学運営に関する重要事項について審議し、並びにこの法律及び教育公務員特例法の規定によりその権限に属させられた事項を行なう。」こう書いてございます。その実体的な内容は、先ほどお読み上げになりました評議会の暫定規則に定めております評議会の所掌事項と同じような内容になるものとこう考える次第でございまして、評議会の権能が一つも減るというふうには考えておりません。
  89. 山原健二郎

    ○山原委員 この「まとめ」に書いてある人事委員会総会の持っておる事項の「1.教員の人事の方針に関する企画、立案。」これと、今日まで評議会が持ってまいりました「人事の基準に関する事項」と違うのですか。これはこっちが間違いなんですか、「まとめ」のほうが間違いなんですか。
  90. 木田宏

    ○木田政府委員 評議会も人事の基準に関することを定め縛るわけでございます。また教育公務員特例法上も、評議会できめる人事選考の基準等いろいろと定められておるわけでございます。このことは、一つも変わるわけではございません。ただ、人事委員会は、学内の各部局の人事を通じまして、全般的な調整を評議会の意を受けて取り進めるということに相なろうかと思います。法令の規定の上で、人事委員会と評議会と同じように御提案申し上げておりますけれども、学内の位置づけからしますと、評議会のほうが人事委員会を包む総括的な機関だ、評議会で論じます人事、財務あるいは教育研究、それぞれの分野につきまして、具体的な検討、調整をするための専門機関が設けられる、こういうことになってくると考える次第でございます。
  91. 山原健二郎

    ○山原委員 かなり混乱をしますね。評議会が人事に関する基準をきめる、また人事委員会人事に関する基本計画、立案をきめるということでしょう。一つ大学に二つの人事原則をつくる機関が存在をする。そうしてあなたはいま、人事委員会のほうは全学的な調整をはかるという、評議会はどうですか、評議会はいま私わざと読まなかったんですけれども、御承知のようにこの七番目の所掌事項に、「学部その他の機関の連絡調整に関する事項」、こうはっきり出ているわけでしょう。だから評議会も全学的な調整をはかる、人事委員会もまた調整をはかる、こういう状態ですね。しかも評議会というのは五十名によって構成されるとあなた方は言っているわけでしょう。その中には副学長も入る、人事委員会にも副学長も入る、幾つもの機関が、たとえば人事の問題に関して言うならば、同じことを決定をする機関が二つもあるのですか、この筑波大学には。どっちが上なんですか。どっちがどういう基準を出して、どっちがどうするのですか。
  92. 木田宏

    ○木田政府委員 大学における機関といたしましては、評議会がより全般的な全学的な調整機関である。そうして、関係者がいままでも慣行上大学の全体的な意思を実質的に固めていく機関であると考えてまいりました。そのことは筑波の評議会にあっても全く同様でございます。その場合に、それぞれ専門事項につきまして、専門領域ごとに評議会のその権能を助ける専門的な調整機関が設けられる、これまた今日多く行なわれておるところでございまして、ごうも怪しむことのない問題だと思っております。ただ、事柄によりましては、教育公務員特例法で、ある場合に評議会がきめることを明定をいたしております。ある場合には教授会がきめることを明定しておる事項もございます。教授会がきめておりますところを人事委員会がきめるというふうに今回整理をさしていただいておるわけでございます。それぞれ取り扱う事項によって教授会がきめること、評議会がきめること、また人事委員会がきめることはございますが、全般的に申しますならば、全学的な大学意思を取りまとめる機関というのが評議会である、これはひとつも変わっておりません。
  93. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっと説明しにくいでしょう。私聞いておってわからぬのですよ。いろいろに分けるんですか。評議会も、人事委員会も、人事の基本に関することをきめると書いてあるのですよ。その基本に関することの一部分をこっちへ分けたり、こっちへ分けたりするのですか。しかも、あなた方のこの図式によれば、評議会は、人事委員会とはこれは同列に並んでいるんです。評議会が上になっていないんですよ。こんな点、全く明確にしてもらわないと、一つ大学人事の基本に関することを二つの機関が、しかもそのいずれも副学長が入っておるという機関、それが決定するなんということは不可能なことじゃないですか。見解を統一していただかないと困りますよ。
  94. 木田宏

    ○木田政府委員 人事委員会は教員人事の方針に関する事項について審議をいたします。教育公務員特例法の規定によって、その権限に属させられた事項を行なうということになっております。評議会は、この法律の規定の上では、「大学運営に関する重要事項について審議し、並びにこの法律及び教育公務員特例法の規定によりその権限に属させられた事項を行なう。」というふうに規定をしてございます。さらに学内人事を含めまして財務も、全般的なことについて評議会が、学内の総合的な意見を取りまとめる機関であるということと、個々の領域別にそれぞれ専門の調整機関があることとは、何ら矛盾することはないというふうに考えます。そしてその両者の関係をどのようにするかというのは、まさに大学の関係者の運営にゆだねられるべきものだというふうに思います。一般的な大学の位置づけといたしましては、評議会が学内の全体的な調整を行なう機関でございますから、それぞれ事項ごとに、専門の委員会が学長を補佐するために出しましたことを財政的に取りきめていく場合に評議会にかかる、こういう関係になるであろうというふうに考えます。(「明快だ」と呼ぶ者あり)
  95. 山原健二郎

    ○山原委員 何が明快ですか。であろうなどという局長の見解で、塩崎さん、明快だと言われるとちょっと困るので、その点明らかにしておきましょう。  それじゃ、こういうことですか。評議会の受け持つ人事の基準に関することというのは、これは職員の場合、それから教員の人事に関する基本計画の立案というのは人事委員会が行なう、そういうふうに木田大学局長は頭の中で区分けをしてお考えになっているわけですか。
  96. 木田宏

    ○木田政府委員 同じことにつきまして、評議会がより包括的な権能を持つということは、十分あり得ることだと思うのでございます。役所の仕事で考えてみましても、次官も全般的な調整をいたしますし、私も大学局の担当のことについていろいろと担当いたします。私が担当するから次官が担当しないということにはならないと思うのでございます。ですから、事柄によりましては私限りできめ得ることもございましょうし、他の上位の機関に持っていくということもございましょう。同じように、職員の人事を扱いましても、その扱い方が違うということもございましょう。ですから、評議会が学内の人事一般につきましての基本線を打ち出すということと、それから教官の人事につきまして専門的に人事委員会が学内の調整を行ない、また特定の人事の決定、選考を進めていくということとは何ら矛盾をしないと考えております。
  97. 山原健二郎

    ○山原委員 うしろにおられる文部省の人たちも笑っておりますが、それで理解ができますかね。いいですか、もう一回言いますよ。評議会は人事の基準に関する事項、これは明確に出ているわけでしょう。それは教員の場合も、そして職員の場合もそうですわね。その基準が決定される。現在は、その基準に基づいて教授会が決定をしていく権限を持っているわけです。だから教員の人事の基準に関することを評議会がやる。ところが、人事委員会もそれをやるわけですからね。あなたの先ほどの説明では、教授会がやるけれども、——教員会議ですわね、あなた方言われる学系学群の教員会議がやった上を、全学的調整をはかる機関として人事委員会がある、同じく全学的調整をはかる機関として評議会がある、これはいささかも矛盾をしない。その例として木田大学学術局長と村山文部次官との関係を言われましたけれども、これはそんな個人的な問題でなく、学校運営の管理組織ですからね。文部次官がやらなかったこともあるいは大学局長がやりますとか、おのずから分明があるとかいうような、そんないわば雑な答弁ではだめですよ。機関ですからね。しかも法律上明記された評議会の決定、所掌事項、それにまたずばっと人事委員会が入ってきて同じことを取り扱う。図面を見ると、みごとに財務委員会人事委員会、評議会が同列に並んでいるんです。だから全く同列な機関、しかも副学長がそれぞれ入っておる機関、同じ権能を持つ機関が幾つも存在をしておるという状態でしょう。これは課長でもいいですよ。その辺はどういうふうに考えているんですか。
  98. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私からお答えさしていただきまして、あと大学課長からこまかく申し上げさしていただきたいと思います。  国立学校設置法第七条の四に評議会のことを書いております。そして七条の五に人事委員会のことを書いております。第七条の五の第三項で「人事委員会は、教員人事の方針に関する事項について審議」すると、こう書いておりまして、教員人事の方針について人事委員会の権限を明確にしているわけでございます。しかし、すべての大学人事でないことは申し上げるまでもございません。  同時にまた、教育公務員特例法の第二十五条を見てまいりますと、学長と副学長の選考に関しましては評議会の定める基準によるというような表現を使っておりまして、その他の問題につきましては教授会という表現を使っております。この教授会というのは人事委員会と読みかえられているわけでございます。したがいまして、教育公務員特例法によりまして、人事委員会ではなしに評議会の権限にしておるものがございます。その他の教員人事につきましては人事委員会だ、こう書いておるわけでございます。  でございますので、先ほど来局長はそういう意味でお答えをしているんだと思うのでございますが、全学的な問題に関しますることについては評議会を置いているわけでございまして、人事につきましては、いま私がちょっと申し上げましたように教育人事の方針については人事委員会なんだけれども、学長、副学長等の問題については、教育公務員特例法に基づきまして評議会の定める基準によってきめるんですよ、その他の教員の人事につきましては人事委員会によるんですよ、こう書いておるわけでございます。  なお、詳細のことにつきましては課長のほうからお答えをさせていただきます。
  99. 大崎仁

    ○大崎説明員 法律上申し上げますと、ただいま大臣からの御答弁にございましたように評議会の権限といたしましては、現在御審議いただいております筑波大学の評議会につきましては、「大学運営に関する重要事項について審議し、並びにこの法律及び教育公務員特例法の規定によりその権限に属させられた事項を行なう。」というふうに規定をしておるわけでございます。  で、先生御指摘の人事の基準というのは、既存の大学につきましての現行の評議会に関する暫定規則という文部省令に、人事の基準という一項目があるということで御指摘になっておられるわけでございますが、それは一応別といたしまして、筑波大学の評議会の権限をこの項目からどう読むかということになる一わけでございます。  そのうち、「教育公務員特例法の規定によりその権限に属させられた事項」ということで、現在の教育公務員特例法にございます教員人事の基準をきめるという四条二項の規定でございますとか、それから御審議いただいております今回の改正案で、従来協議会が持っておりました権限を評議会に移しますので、それからまいりますたとえば学長選考の基準を定めるというようなこと、あるいは学部長以外の部局長の選考の基準を定めるというような各種の人事上の基準を定める固有の権限が評議会にはあるわけでございます。  で、そういう教育公務員特例法上の固有の権限以外に、人事について評議会がものを申せないかということになりますと、これは条文上は「大学運営に関する重要事項」ということで、これまでの評議会の伝統的な位置づけというようなことから解釈をいたしますと、やはり評議会というのは大学における包括的な最高の審議機関であろう。そういう立場で、「大学運営に関する重要事項」については、一般的、包括的な意味では審議事項に入り得るんだというふうに解してよろしいんじゃなかろうか。ただ、人事委員会につきましては、固有の権限としまして教員人事の方針に関する事項を審議するという権限がございますから、この人事委員会審議の結果というものも含めて、評議会が全学的、大綱的な見地から審議することを必ずしも排除するものではなかろうという考え方でおるわけでございます。
  100. 山原健二郎

    ○山原委員 非常に複雑になっておりますが、ではその評議会における人事の基準に関する事項というのは、学部長を除く部局長の基準をきめるということだけになって、そして教員人事の基準に関する事項というのは人事委員会が行なう、あなたの説明ではそういうことになるのですか。包括的だとこう言われると、これはみんな包括的になって、何か副学長だって評議会だって参与会だって今度は持つわけですから、そういうことで言われるとちょっと困るのですよ。   〔委員長退席、内海(英)委員長代理着席〕
  101. 木田宏

    ○木田政府委員 現在の教育公務員特例法の四条二項に、途中を省略して読みますが、教員については、読みかえを含めますと、評議会の定める基準により学長が選考をしろという規定が現行規定にあるわけでございます。この部分につきましては、今回の法案で改正をするという内容になっておりませんので、この部分にそのまま残ります。したがいまして、教育公務員特例法の第四条第二項に基づく教員の選考にあたって、教員の採用、昇任等について学長が選考するにあたって、どういう基準で選考するかということについては評議会が定めるという部分がそのまま残りますので、学長、部局長以外にも、教員に関しましてもその限りで基準を定める権限は評議会に残るわけでございます。
  102. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、またもとへ戻りまして、先ほど言いました人事委員会総会の「まとめ」の説明はどういうことになるのですか。だから、人事委員会総会は教員人事の方針に関する企画、立案を行ない、また評議会も従来ありました教育公務員特例法の四条二項はそのまま生きておるということで、筑波大学においては教員人事の基本に関する、あるいは基準に関する問題は、評議会とまた同時に人事委員会とが行なう、二つが行なうということになるわけですね、この「まとめ」が生きるとすればですよ。「まとめ」を削除すれば別ですよ。私たちがいただいているのはこれしかないわけですから。だから、その点に関しては、筑波大学に同じ権限を持った二つのものが存在するということになるわけですか。
  103. 木田宏

    ○木田政府委員 その点に限定をいたしますと、評議会が定める基準というのは、これは法律に基ずく基準でございますので、学長の選考を拘束をするわけでございます。ただ、評議会で定めるという性格からいたしまして、おそらく大綱的なかつ全学的に共通な基準という形で定められるのが通常であろうかと存じますが、人事委員会はそういう評議会が定められた基準を前提としまして、具体的な人事の選考にあたりましての方針というものをそれぞれの時点、あるいはそれぞれの分野について、企画、立案のために御審議になるという関係にこの部分に関しては立つのではなかろうかということでございます。
  104. 山原健二郎

    ○山原委員 その説明は、ちょっと私には理解しがたいですね。だから、それならこの教員の人事については、採用、昇任にかかる選考その他教員の人事に関することというのは、人事委員会のもう一つの任務として書かれているわけですね。そうして、その基礎となる部分もまた人事委員会に存在する。この二項にわたって「まとめ」は出しておりますからね。  そうすると、結局あなたの言われるのは、評議会は人事のもとのもとになるところをつくって、それから今度は、人事委員会はもとの次のもとをつくるということになるわけですか。大もとをつくってその次に小もとをつくって、それから個別人事をやる、そういうのですか。
  105. 木田宏

    ○木田政府委員 大もとと小もとということで、いま具体的にどの程度のことをお考えか、ちょっと推察ができかねるのですが……。
  106. 山原健二郎

    ○山原委員 こっちがわからぬのですよ、だから聞いているのです。
  107. 木田宏

    ○木田政府委員 基本的には、先ほど申し上げましたように、評議会が基準というか大綱を定める、その大綱の運用にあたって必要な方針というものを人事委員会審議をしていくという関係に立つという意味では、おっしゃいます大もとと小もとの関係になろうかと存じます。
  108. 山原健二郎

    ○山原委員 大綱と方針、これは教員人事の方針に関する企画ですからね。人事委員会、これは根元なんですよね。これはどこの官庁でも企画といえば大もとをつくるわけですね。方針の企画でしょう。こまかい企画ではない、人事に関する方針の企画ですからね。だから、まさにこの評議会の基準に関することということと合致する。私は大学のことをよくわかりませんけれども大学で具体的にどうやるのですか。評議会がどこまで決定するのですか。  それからしかも、おそらくあなたも関係されてつくられたと思うが、この図面、線引きによりますと、評議会と人事委員会と財務委員会は同列に並んだ場所に実線をもって置かれているわけですよね。だから、どうもその辺の権限関係がわかりませんし、だから、この人事委員会というものは要らぬのですよね。評議会と教員会議とがあれば人事は決定できるわけです。その間にこの人事委員会というものが横から手を出してきているというかっこうになっていますね。その辺どうですか。
  109. 木田宏

    ○木田政府委員 いまお手元でお持ちの機構図でございますが、学長と評議会とは二重ワクで一体的に考えられるような別の取り扱いになっておりまして、決して人事委員会と財務委員会と評議会とを同列に図示しておるつもりでもございません。ただ、人事委員会、財務委員会は非常に重要な全学的な機関であるという位置づけが、この図示の中にはやはりこもっておるかと思いますけれども、評議会は決して同格に扱っておるわけではなくて、二重ワクの中に別ワクで学長と一体の全学的なものというふうに取り扱っておるわけでございます。そうして全学的な調整機関がすべてにわたっていろいろと調整できるということと、個々の事項につきまして専門別に、できるだけ権限を与え、特定の専門機関に自由に処理させるということとは、運営上非常に大事なことだと思うのでございますが、最終的に調整の権能を持つから、他の専門分野の機関に一つも与えないということでは、組織運営はうまくまいりません。できるだけ専門機関を設けまして、専門の機関に大幅に処理をゆだねるということが運営上望ましいこと、スムーズに円滑にいくことになろかうと思います。でございますから、人事の問題につきましても、評議会が大綱にわたる基準を定め、人事委員会はその評議会の基準に基づきまして運営上のいろいろな方針を人事委員会として処理をしていく、やはり全学的な方針を示していくということは当然のことであろうかと思います。ただ、法律上、従来教授会が法定の権限を持っておりました事項につきまして、人事委員会が法定の権限を持ち、また評議会に法律上属せしめられた事項につきましては、今回も同様その権限を評議会に扱わせるというふうに、法定の権限は独立に処理するわけでございますが、それ以外のものにつきましては、評議会が全学的な立場に立ち、人事委員会はその評議会の意を受けて、専門分野につきましての方針、運営をつかさどる、こういう関係に相なろうと考えます。
  110. 山原健二郎

    ○山原委員 相なることはどこへ書いてありますか。
  111. 木田宏

    ○木田政府委員 それが大学運営にゆだねられたことだと考えるわけでございます。
  112. 山原健二郎

    ○山原委員 評議会の大綱に基づいて人事委員会が具体的なこともやるという、端的にいえばそういう説明にずっと変化しているのですよ、皆さんの答弁は。変化しているのですよ。最初は人事委員会も——私もこれを読み上げたから……。人事委員会の方針の企画ですよ。方針というのは、人事に関して一番のもとでしょう。その上に何が大綱があるのですか。評議会は大綱をきめる、人事委員会は方針を立案する、こういうことになるわけですよね。だから、その関係が私はわからぬというのですよ、幾ら説明されたって。わからぬままで済まさなければ、時間だって無限にあるわけではありませんから。実際に私は「まとめ」が間違っているんじゃないかと思うのですよ。方針ですよ。方針というのは、人事に関する方針。教員人事に関する方針というのは、一番基礎になるものです。その上の大綱とは一体何ですかね。だから、説明がつかないわけですよ。聞かれても私には説明できないです。皆さん三人たかっていろいろ言われるけれども、きぱっとした明確なお答えにはならぬでしょう、実際問題として。こういう形でやっぱり評議会の権限はあるんだと言っておるけれども、評議会と同じことを取り扱う機関というものが、また、人事委員会ができるわけですよ。しかも、その中には副学長五名がばっと入っているわけでしょう。あなた方の計算では十五名、十五名のうちの三分の一が副学長が入っているのです。これはいままでの民主的に構成される機関とは全然違いますよ、その性格が。やっぱり管理機関がこの人事委員会の中へ入っているわけですからね。そういう相当の権限を持ったスタッフがばっと入っていくこの人事委員会、それによって構成される人事委員会が、評議会と——評議会もまた構成はいままでと違います。すなわちいままで教授会によって構成された、いわば下から積み上げられた評議会とは性格が変わっています。この評議会にもまた副学長も入るわけですからね。性格は、管理的に非常に変わっておるのです。変わっておるが、二つとも強大な管理機能を持ったものが同じことをやる。同じことをやるわけでしょう。メンバーも、そのうちの何分の一かは、同じメンバーが入っているわけです。それが同じことをやる。人事の基準に関すること、人事の方針の企画、立案、同じことをやるのです。そんな複雑な大学を、何であなた方、つくらなければいかぬのですか。
  113. 木田宏

    ○木田政府委員 たとえでお答えをするようで恐縮でございますが、文部省設置法で文部省の権限になっておりますこととまた同じような表現が、大学局の権限として大学局の所掌については書かれております。そしてまた同じようなことが、私どもの局内の課の所管事項について同じように書かれております。課で書いてあることは、局でやらぬというわけのものではございません。ですから評議会で人事を扱えるということと、人事委員会が専門の事項を取り扱うということと、同じように事柄が書いてございましても、何ら奇異に考えるところはないことだと考えます。
  114. 山原健二郎

    ○山原委員 詭弁だよ、そんなことは。何という答弁をするのですか。たとえば、社会教育課があるでしょう。社会教育の面について社会教育課の上部関係はどうなっておるか知りませんけれども文部大臣まで社会教育のことについて職能を持っておるということはあたりまえのことなんです。これは人事に関することですよ。人をどうするかこうするかという問題で、同じ権能を持ったものが二つ、一つ大学の中に存在することと、あなた方の職責の問題とは違いますよ。そんなごまかしの論法でもってここで切り抜けようとすることは、全く不届きしごくな話ですよ。だから私は言うのです。評議会がいままで日本の大学において持ってきた慣行としても、また教育公務員特例法の中でも出てきておる、あるいは皆さん方の暫定基準によっても、規則によっても出てきておる、そういう権能を持って大学の評議会というものは、今日まで運営されてきた。その慣行というものをいま無視して、そして同じ権能を持ったものを、またメンバーも、相者部分が一定の者をここへ置くという必要があるのですか、一つ大学の中に。それは文部省の事務分掌とは違うのですよ。人事の問題を取り扱う同じものが二つもできるなどということが、これはいいことですか。とんでもない話ですよ。
  115. 木田宏

    ○木田政府委員 いま人事につきましても、文部省人事を担当するセクションもございます。でございますから、会計につきまして会計を担当するセクションがあり、法令上の規定によりまして会計課長が独立して職権を行なえるようなこともあるわけでございます。(山原委員組織ですよ」と呼ぶ)組織でございます。組織でいろいろと機能が重なっておるということは、当然にあり得ることでございます。評議会というのが人事だけをやる機関であって、別に人事委員会が同じようにつくられるというならば、御指摘の御意見はわからないではございません。しかし、評議会は全学的なすべての問題について学長と一体的に大学意向をとりまとめる重要な機関でございます。それと別に、人事につきまして専門の機関があるということは、何らおかしいことではないと考えます。
  116. 山原健二郎

    ○山原委員 皆さんがつくられるこの人事委員会は、ではこういうことですか。人事委員会は狭いセクションにおける人事問題を取り扱う、こういうふうに思っておられるわけですか。あなた方が出しておる資料、ちょっとどこへ行ったかわかりませんが、そういうことではないでしょう。全学的な円滑な人事を行なうために人事委員会をつくったわけでしょう。そういうことをPR資料にも出しているでしょう。どうなるのですか。全学的な調整をはかる評議会、これは人事の大綱、法的にいえば基準、それから人事委員会はやはり全学的な調整をはかる教員人事に関する方針の企画立案ですね、同じじゃないですか。人事委員会はそれをもっと狭いものとして解釈したらいいんですか。もっと狭い、もっとどこかのセクションについての人事だけをやるというふうなあなた方の説明ですか。それならこの「まとめ」に書いてある、こういう方針の企画、立案というのは、消してもらわないと混乱をしてわかりませんよ。同じことをやるものが幾つあったってかまわぬのだという乱暴な論理を、私たちの目の前で木田局長に展開されてはたまりませんからね。
  117. 大崎仁

    ○大崎説明員 権限の分担の一例を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、教育公務員特例法上の固有の権限として評議会が持っております基準の制定ということにつきましては、その基準によりまして学長が個別の教員の採用、昇任等をその基準に準拠してやるという、個々の人事の選考基準という色彩が強い基準になろうかと思いますが、人事委員会審議の事項というようなことで御論議がございました一つの例としましては、たとえば教員の配置方針、配置計画、つまりいかなる分野にどの程度の教員を配置したらいいかといったような、全体計画といったようなものも含めて、むしろ具体の定員管理的な仕事もそこでやりたいというような議論を経まして、お目通しのような表現になっているわけでございます。
  118. 山原健二郎

    ○山原委員 結局色彩によって違うというのですね。感じですね、問題は。だから評議会の取り扱う人事の基準に関することと、人事委員会が取り扱うところの教員人事の方針の企画、立案ということは、ここでずっとお聞きしておりますけれども、具体的にはちょっとわからない。要するに色彩的、感覚的な違い、そういうもので多少の違いがあるのだというようなことなんでしょうね。大綱と方針というのは同じことですからね。私、そういう感じで受け取っていいですか。
  119. 大崎仁

    ○大崎説明員 評議会の固有の権限としましての基準と申しますのは、あくまで一般的、抽象的な性格を有するものかと存じますし、人事委員会のお定めになる方針というのは、性格上、一般的、抽象的な基準のもとにおいて、多分に具体性あるいは特定の時点、年度というようなことも意識した方針というようなことも一つはあろうかと存じます。
  120. 山原健二郎

    ○山原委員 それでは、方針の企画、立案ということばは消されたらいいんですよ。これはどなたが見たって、一般的に読みました場合、方針といえば人事の方針ですから、このまとめの中にあるこれははっきりお消しになったほうがいいと思いますね。その点どうですか。
  121. 大崎仁

    ○大崎説明員 表現等については、御指摘をまた準備会等に持ち帰りまして、さらに検討させていただきたいと思います。
  122. 山原健二郎

    ○山原委員 この人事委員会の問題について、私まだ少し疑念が晴れませんので、あとで申し上げたいのですが、次に、参与会の問題について伺っておきたいのです。  参与会をなぜ法律できめなければならないのですか、この点を伺っておきます。これは基本に関することですから、大臣に伺ったほうがいいと思います。なぜ法律できめなければならないのでしょうか。
  123. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 おっしゃいますように、あえて法律に書かなければならないという性格のものでないかもしれませんけれども東京教育大学が、今後の大学あり方として、基本的な姿勢として社会の声に耳を傾けていきたい、こういう態度をとっておられるわけでございますので、そのような特色のある性格、それはやはり法定をしたほうがより明確になるだろう、こういう判断のもとに法定させていただいておるわけでございます。
  124. 山原健二郎

    ○山原委員 東京教育大学は、法律的にそれを決定するということよりも——中身の問題についてまたあとでちょっと触れたいと思いますが、東京教育大学の創設準備室に関係しておる方々の発言というのはそれぞれ違うわけでして、けさの小林先生に対する答弁でも言われておりますけれども東京教育大学の中にも賛否両論がありますし、その賛成者の中から文部省の創設準備会に参画をされた方々の発言も、それぞれ違うわけですね。だから、そのことは一つ指摘をしておきたいと思いますが、かりに筑波大学学外者の意見を聞き、それを大学運営やあるいは研究教育資料として使いたいならば、それは別に法律できめなくても、自由にやらせたほうがいいんじゃないですかね。学外者の意見を聞くという場合に、ほんとうに地域の人とかあるいは学者の方とか、またたとえば財界の方であってもいいと思いますが、そういう方たちの意見、あるいは水俣病のお話が出ましたけれども、実際の被害者の方々の意見とかいうようなものを聞こうとするならば、方法は幾らでもあるわけですね。実際にそういう姿勢をとるかとらないかが問題なのでございまして、特定の人員というものを決定して法律できめなければならないほどのものであろうか。私はその点について、いま文部大臣がより特色を明らかにするために法定したほうがいいんだと言う、それだけの理由ではちょっと納得できません。ことに学外のさまざまな力が大学運営やあるいは教育研究に介入してくることに対しては、ほんとうにいままで大学人が論議してきたところですから、その点は一番警戒をしておる問題で、それをわざわざ法律できめなければならぬと決意をした文部省の見解というものは、やはりはっきりさせてもらいたいですね。
  125. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 やはり山原さんと基本的に考え方が違うのじゃないかと思うのであります。学外者が介入してくるというおことばでございました。私たちは、大学の自治は守っていきたい、また大学学外者の声に積極的に耳を傾けて、大学あり方についてもあるいは講座のあり方についても、社会の要請に積極的に対応できるように持っていきたい、こういうふうに考えておられるわけでございまして、そういう特色を出す、そのためには、やはり筑波大学の中に参与会を置いておくことによって、将来にわたって筑波大学のある姿勢が明確になっていくのじゃないか、こう考えるわけでございます。学外者の声に積極的に耳を傾ける、それは社会における大学の役割りを積極的に果たし得ることになるのじゃないだろうか。社会の声が入ってくることが介入だということじゃなくて、積極的に取り入れやすいような仕組みをとっていく、それが私はいままでの大学あり方に対する東京教育大学に生まれた反省ではなかろうか、こういう気持ちで考えておるわけでございます。
  126. 山原健二郎

    ○山原委員 答えが違うのですね。私はいままでの大学の問題について、大学の自治の観点から、学外者の介入といいますか、そういうことについて、これは一般的に文部省だってそういうことを言ってきたときもあるわけですから、そういう警戒あるいは論議が行なわれておるさなかに、もし筑波大学の学長の諮問機関として学外者の意見をお聞きになるとするならば、法律できめなくともできるのですよ。あるいは費用弁償とか、出席をされたときの旅費であるとかというようなこと、あるいはまた手当の問題など、それは財政的な多少の措置をすればできることでございますから、できるわけですよ。大学の学長の諮問機関であるならば、それは大学において自由にさせてあげたほうがいいわけです。それをなぜ法律できめなければならないのか、その根拠を示しなさいというのが私の考え方ですから、それを学外者の政治的介入だとかというふうに先取りされては困る。一般的にそういう論議があったわけですね。  だから、もう一回申します。大学の学長の諮問機関であるならば、そういう人たちの意見を聞くためなら、大学の自由にさせてあげて、そして法律上の決定をする必要はないのではないか。あえて法律で決定をするというところに、言いかえるならばこの筑波大学の性格に文部省的見解というものがずばりと出てきているのではないか、そういう疑念があるわけですから、なぜ法律できめるのか、その根拠を明らかにしなさいと聞くのは当然のことです。
  127. 木田宏

    ○木田政府委員 大臣もお答え申し上げましたように、大学が積極的に学外の関係者、大学に関心をお持ちの方々の意見を聞いて取り入れていこうとする姿勢、これは、いままでの大学がからの中に入り過ぎているのじゃないかというような批判も受けておったときでございますから、筑波大学の基本的な姿勢として、積極的に学外のいろんな関係者の意見を聞きながら大学運営に当たる、またその意見によって考える点は考える、こういう大学の姿勢を示そうという考え方でございます。御指摘のように参与会だけでもございません。評議会でも、学内の諮問機関でございますから、何も法律できめなければならぬということでないといえばそうかもしれません。しかし、やはりその機関の持っておる、筑波大学における重要性とその特質というものを御審議いただきますために、こうして参与会、評議会、人事委員会の三つの機関について法律上の機関として御審議をいただいておるわけでございます。これはやはり大学の基本的な性格ということにかかわるもの、こう考えておるからでございます。  また、お話しのように、個々の案件につきましていろんな学外者からの意見を聞くということは当然あり得るだろうと思います。それは個別にいろいろな具体の事案につきまして、専門の関係者、学外のいろいろな関係者と大学が連絡をとる。先ほどの公害のことでも申し上げましたように、いろいろ連絡、協力をするということももちろんあり得ると思います。しかし、大学全体としてこういう体制を整えて総括的な姿勢を示すということは、御審議をいただく意味があろうと考えて御提案を申し上げておる次第でございます。
  128. 山原健二郎

    ○山原委員 いま大学の学長さんたち、ずいぶん苦労しておるのですよ。だから、私どもの存じ上げておる学長さんたちも、いろいろの会合にも出られますし、それからまたいろいろの方たちともお会いしております。それから、たとえば漁業協同組合だとかいうようなところで問題が起こった場合に、大学の先生方が協力し、相互にいろいろの意見を交換してやっておられる。これはあなた方は閉ざされた大学だなどという一面的なことをいっておられますけれども、そうではないのですよ。  そうしてもし筑波大学が積極的に外部の意見をお聞きになりたいのならば、なぜ筑波大学の学長が、その諮問機関としての参与の人たちをみずから自主的に任命をすることができないのですか。なぜ文部大臣の権限をそこへ入れていくのですか。だから、あなた方の言うことは、参与というものを、意見を聞くという——私は法律がなくてもできると思うのです。かりに皆さんがどうしてもつくらなければいかぬ、それで特色を出すんだというならば、その学長の諮問機関である参与の人は、なぜ学長みずからが決定できるということにしないのですか。なぜ文部大臣がその中に入っていくのですか。ここに筑波大学の性格がずばり出ておるわけですよ。だから、皆さんが心配している。なぜ学長の権限事項にしないのですか。なぜ文部大臣が入るのですか。それをはっきり聞きたい。
  129. 木田宏

    ○木田政府委員 参与は「学長の申出を受けて文部大臣が任命する。」学長の意向を無視して文部大臣が参与を発令して、この意見を聞けというふうに押しつけるものじゃございません。
  130. 山原健二郎

    ○山原委員 あとで山中先生のほうから、おそらく拒否権問題についての法制局長官に対する質問が出ると思いますけれども、いま言われたように「学長の申出を受けて」でしょう。学長の申し出を受けるなんというのは、法律用語を調べてみましたけれども、これはまさに文部大臣に権限がより多くあるわけですよ。だから、すでに副学長問題などでこれも木島先生が問題にされましたし、おそらくあとで問題になると思いますけれども筑波大学学外者の意見を聞きたい、また学長の諮問機関としてそういう機関をつくりたいといわれ、それに文部省がおこたえになるならば、なぜ学長の権限で大学自体がそういう人々を選考することができる状態をつくらないのですか。文部大臣が入る必要ないでしょう。何で文部大臣が入らなければならぬのですか。こういうところに今度の筑波大学に対する疑念というものが出てくるのはあたりまえです。出てこないのがおかしいのです。堂々たる大学が出てこないとか、劣等感を持っておる大学から出てくるんだとかいうような問題じゃないのですよ。そういう大学局長などの見解の中から、一般の人たちが疑念を持つのは当然のことだ。私も非常におかしいと思っているのです。参与は非常勤の国家公務員、こういうわけですね。非常勤の方々に対する任命権は、法的に学長にはないのですか。
  131. 木田宏

    ○木田政府委員 国家公務員の任命権で文部省所管のものについては、一応文部大臣が任命権を持っておるわけでございます。それは実際の運営をどうするかという点で、非常勤職員について、あるいは常勤職員でありましても、学内の一部の職員につきまして学長に権限をかわって行使させる、このような権限委任ということはいたしておりますが、国家公務員法上は、所管大臣が任命権を持っておる次第でございます。
  132. 山原健二郎

    ○山原委員 普通の大学における非常勤講師の場合は、学長が任命しておるじゃないですか。全部文部大臣が権限を持っていますか。
  133. 木田宏

    ○木田政府委員 文部大臣が学長に権限を委任いたしておるわけでございます。運用上の問題でございます。
  134. 山原健二郎

    ○山原委員 それができるならば、なぜ学長に任命をまかせないのですか、参与の場合ですね。なぜ学長に任命をまかせないのですか。
  135. 木田宏

    ○木田政府委員 運用上の問題はいろいろあろうかと思いますが、法律の位置づけといたしまして、参与会の重要性にかんがみ「学長の申出を受けて文部大臣が任命する。」こういう規定を設けさせていただいております。これは非常勤職員に対する任命権者としての文部大臣の立場を、同時に明確にしたものでございます。
  136. 山原健二郎

    ○山原委員 非常勤の職員の方たちが、たくさん大学におられます。これは一つの大問題になっているわけですが、全部文部大臣が学長の申し出に基づいてやっておるのですか。
  137. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 これは、どのような形式でもとれると思います。問題は、学外の声に積極的に耳を傾けるような大学の性格を浮き彫りにしていくか、できるだけそういうものを排除して、そういうものは介入だということで退けていこうとするか、これは考え方の違いから出てくるのだと思うのであります。おっしゃるとおりどちらでもできます。しかし、東京教育大学では、積極的に社会に身をさらしていきたいと考えておられる。私はその姿勢をとっていきたい。そのために参与会につきましても、ことさらに法律に掲げますし、学長、評議員等と同じように、文部大臣の任命というものを法律の上でも明らかにしていこうということでございまして、これはどのような方式でもとれるものであります。問題は考え方の違いじゃないだろうか、こう思っております。
  138. 山原健二郎

    ○山原委員 考え方の違いなどということでごまかさないでください。私は、そんなことを言ってないのですよ。何を言っておるのですか。東京教育大学は、学外の方たちの意見を積極的にお聞きになりたいということにこたえて——だから私は、そういうことは法律でなくともできる。それはいろいろのやり方があると思うのですよ。そのことを私は否定しておるのじゃないのです。だから、これを法律化したことに問題を感じていますが、そのことは質問の過程でもう過去になっておりますから……。  では、その参与という非常勤のものですね。この非常勤のものは、小西甚一さんに言わせると、年に二回か三回しか会議を開かないというのですね。しかもこの勧告、助言の権限についても、あなた方のこの企画に参画をされた小西甚一さん、すなわち東京教育大学から参画をされた方の発言によれば、助言、勧告についても限定をされておるといわれています。これは法律にないわけですから、その辺の見解もまた伺いたいのでございますけれども、そういう方たちの任命ということについては、どのようにでも形式的にできるというならば、これは新しくできる筑波大学の自主性を尊重する、そういう意味大臣が何も人事に介入をしなくても、学長にその権限を委譲したらいいじゃないですか。そのことが大学の民主的運営に、より寄与する道ではないですかということを私は申しているのです。何で文部大臣がここに入らなければならぬのか、だれが考えてもわからぬ。東京教育大学学外者の意見を聞きたい、そうするならその学外者の方たちを新筑波大学がお選びになったらいいんじゃないですか。なぜ文部大臣が入らなければならないのか。しかも学長の申し出を受けて文部大臣が任命をするということになりますと、これは問題があるわけですね。
  139. 木田宏

    ○木田政府委員 御指摘の学長の立場を非常に大事に考えまして、「学長の申出を受けて文部大臣が任命する。」ということに御提案申し上げておる次第でございまして、御提案申し上げておる趣旨は、いまおっしゃっておりますことと大差がないように考える次第でございます。  また、これを正規の大学組織として位置づけてまいりますならば、国家公務員法の規定によりまして所管大臣が非常勤職員でありましても任命権者になるという原則にのっとっておるわけですから、その原則にのっとりまして任命の規定を設けておるわけでございまして、その任命の際に学長の申し出を受けるという学長の立場を明確にしておくことがこの際やはり必要なことであり大事なことである、御趣旨の線を受けてこういう規定にいたしておる次第でございます。
  140. 山原健二郎

    ○山原委員 そんなことは答弁になりませんよ。大学の自主性を守るということは、あなた方も言っておられるわけでしょう。だから、その原理に立つならば、あるいは筑波大学学長が積極的に学外者の御意見を聞きたいということならば、それは何も文部大臣が任命をするという形態をとらなくてもいいんじゃないか。いま中央教育審議会あるいは大学設置審議会などは、これは大臣が入っておる、任命することになっておるかもしれません。けれども大学でしょう。しかも、筑波にできる新しい大学、そして皆さんもこの大学ができたならば、新しく民主的に大学の自治を守って前進をしていきたいと思っているのでしょう。それならば、なぜ参与の人選について学長に、しかも学長の諮問機関ですから、学長にその任命権を委譲しないのですか。学長の申し出に基づいて大臣が任命をするということは、明らかにこれは拒否権を持っていますよ。なぜそういう政治的な権力が介入するかのごとき法律をつくるのですか。このことを私はお尋ねしているわけですから、この点については、ここを消したらどうですか。ちょっともおかしくないでしょう。大臣が何でここへのこのこ出ていって拒否権まで持って、一つ大学の参与まで任命をしなければならぬのですか。特色を出すとかなんとかいうことは理由になりませんよ。それはそれなりの体制をとってあげたらいくわけですからね。
  141. 木田宏

    ○木田政府委員 参与につきましての御意見でございますが、評議会につきましても同様に、今度は「学長の申出に基づいて文部大臣が任命する。」という任命の規定を入れておるわけでございます。いろいろな組織をつくりました場合に、その組織の構成員をだれがどういう手続で任命するかということを明確にするのは、習いでございます。ですから参与会の場合にも、参与につきまして「学長の申出を受けて文部大臣が任命をする。」というふうに関係規定を明確にさしていただいた、そういう次第でございます。
  142. 山原健二郎

    ○山原委員 どういうものにも任命権者を明らかにするのはなんて、そんなことありますか。評議会も大臣が介入していく、参与会にも大臣が出ていく。たった一つ筑波大学に、それほど大臣が頭を使わなければならぬのですか、実際には大臣たくさんの仕事があるわけですからね。大学の自主性にまかしたらいいんじゃないですか。そのほうがより学外者の方たちの意見を自由に、しかも豊富に聞くことのできる体制じゃないんですかね。大臣に任命された参与、それが大学の中に大きな権限を持って存在する。助言、勧告権を持つ、こういう体質、体制、これが筑波大学。あなた方が言い張れば言い張るほど、筑波大学はまさに文部省直轄大学の性格を明らかにしつつあるわけですよ。だから皆さんが、国大協の方たちだって賛成だと言われているけれども、私はあの国大協声明は賛成ではないと思います。これらの問題については、国大協の方たちも批判的な態度をとっておられるわけでしょう。あたりまえのことなんです。だから文部省ほんとう大学の自治というものをお考えになるならば、文部大臣の任命などということはおやめになって、そして筑波大学学長がこれをみずから自主的に決定できるような法律に変えるべきではないか、これを私は国民の多くは要求していると思います。その点、どうですか。法律を変えたらどうですか。
  143. 木田宏

    ○木田政府委員 評議会も参与会も、大学の重要な組織であると考えております。よって、その評議員についても、文部大臣が任命し、参与会の参与につきましても、文部大臣が任命するという関係規定を入れておるわけでございます。評議会につきまして、今日でも各大学の評議会は、文部大臣が任命をいたしておるわけでありますが、大学から何らの御意見を伺っておりません。これは人事手続上当然のことであろうかと考えております。また、それだけ評議会の地位を重からしめる、また参与会というものにかける大学考え方を重からしめる、こういうことに相なろうかと思うのでございます。
  144. 山原健二郎

    ○山原委員 これはまさに権力の考え方ですね。文部大臣が任命するということになれば、その権威を高からしめるという考え方、これがまさに戦前の教育の行なってきたところなんですよ。戦後それを反省をして、大学の自治ということが出てきたわけでしょう。まさにいま私の質問の中で、大学の自治、学問の自由の問題と、あなた方の考え方大臣が任命するならばその権威は高まるという権力思想、そういうものがだんだん浮き彫りになってきておるわけですよ。私は、そういうことに対して、いま国民の多くの方たちあるいは大学人が、いろいろな意見を出されるのは当然だと思うわけです。だから私は、この参与会については法定をやめるということ、そして同時に、参与会委員の方々の人選については大学の自主性にまかすということ、これが必要だと思います。それができるならば、いま多くの反対をし批判を持っておる方々の理解を、ある程度高めることができる、私はこう思うのです。まさにその点では、いまの文部省考え方は、権力主義的な考え方である、そう断ぜざるを得ないのです。このことについて、文部大臣の見解を伺っておきます。
  145. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 やはりこれが山原さんとの考え方の違いではないだろうか、こう思っておるわけでございます。まず、法定をやめろ、こうおっしゃった。私たちは法定をすることによってこれからの大学あり方社会に開かれた大学という性格を、もっと強く持つべきではないかという考え方を持っておるし、東京教育大学が強くそれを意識されて、参与会を設けたい、こういっておられるわけでございますので、筑波大学の中に、あわせて参与会も規定することによって、より以上に筑波大学の性格を明確にしたい、こう考えておるわけでございますので、法定をすることに意義がある、こう考えておるわけでございます。  それからもう一つは、大臣の任命はやめたらいいじゃないか、こうおっしゃっておられる。私どもは、参与会というものを、筑波大学における重要な機関だと考えております。評議会の評議員が、大臣の任命、参与会の参与が、大臣の任命、やはりはずを合わせていきたい。決してこれが大学の自治を破壊するものでも何でもない、だからあえて助言、勧告の機関にしているわけでございまして、決議機関ではございません。意思決定の機関ではございません。そこは大学人もわきまえて、当然に対処される、またそれだけの元気、勇気のある信念のある大学人、教授陣でなければならない、こう考えるわけでございまして、やはり大学におけるいろんな機関とはずを合わせて、任命形式の決定につきましても明確にすることによって、参与会の意義が一そう明らかになっていくのじゃないだろうか、私はこう考えておるわけでございます。
  146. 山原健二郎

    ○山原委員 私は参与会の問題について、もう少しお聞きしたいのですが、大蔵省主計官時間がないそうですから、先に大蔵省と会計検査院のほうへちょっと伺ってお帰りいただきたいと思っています。  まず、大蔵省のほうへお聞きしたいのですが、今度の筑波大学の場合の予算の配分ですね。この間私どもは、参考人の方々に来ていただきまして、その中で参考人の高柳先生のほうからは、いま大学に対する予算の配分というのは、たとえば学部、そして学科、講座というふうにくるわけです、だからいわば一面非常に窮屈な形で予算が配分をされておるというお話がありました。それから、今度は文部省のほうで出しておりますところの考え方といたしましては、また参考人の中にも筑波大学に賛成をしておられる人のお話によりますと、筑波大学においてはいわばどんぶり勘定のような形で予算がぱっと出てくる。そしてその配分その他については、学内においてかなり自由に行なうことができるというお話がございまして、そして高柳先生のほうは、それはたいへんうらやましいことだ、われわれもそれをやってもらいたいというお話が出たのでございますが、大蔵省の予算の積算、その決定は、筑波大学の場合と他の大学の場合と違う方式を検討されておるのかどうか伺っておきたいのです。
  147. 青木英世

    ○青木説明員 お答え申し上げます。  最初に、大学の予算の編成の一般の問題についてちょっと触れたいわけでございますが、実は大蔵省におきましては、東京大学が幾らとかあるいは大阪大学が幾らとかいう個別の積算を一般的には行なっておりませんで、全体の教官の数に、先ほど先生ちょっとおっしゃっておりました一人当たりの研究費とか、あるいは研究旅費とか、あるいは学生一人当たりの校費とかいうものを積算しておるわけでございます。ただ、そのほか特殊な設備につきましては、お金の多くかかるような設備については個別に積算をしておる、こういうことになっております。  なお、筑波大学につきましては、四十八年度におきましては創設準備ということでございますので、特にほかの大学と区別をした計上をしてはいない次第でございます。四十九年度以降、実は筑波大学では講座制とかあるいは学科目制をとっておりませんので、この積算をどうするかは文部省の概算要求を待ってあらためて検討したい、このように考えております。
  148. 山原健二郎

    ○山原委員 いま各大学とも財政自主権というものを非常に期待しておるわけですね。だから筑波大学でそういう方式をとられるなら、われわれの大学でもやってもらいたいという要求は非常に強いわけです。それがどうなるかということについて、文部省のほうはどういうお考えですか。他の大学と筑波の場合は違う形態をとってやるというお考えですか。まだ未定ですか。
  149. 木田宏

    ○木田政府委員 大学に対します予算の配分、執行等について、文部省が特別に筑波とほかとを区別するという問題はなかろうと思います。ただ、学内におきます執行運営の問題になりますと、その組織あり方によりまして、執行運営がそれぞれ違ってくる。筑波のように包括的な組織になっております場合に、配当された大学の資金の運営がやりやすい面が起こってくる、このことは参考人の人も言っておられたことではなかろうかと思うのでございます。また、筑波大学の場合の積算をどのように、基礎的な単価の積算その他をどうするかというのは、先ほど青木主計官も答弁いたしましたように、四十九年度の予算の問題として相談をいたしたいと考えております。
  150. 山原健二郎

    ○山原委員 要するに、まだ未定だということですが、会計検査院のほうに伺いたいのですが、この筑波の場合は、学系学群には出納官を置かないような状態になっております。そうしますと、研究費あるいは教育費あるいは学生補導費とかいうようなものなどの会計検査というのはどういう方式でやられるのか。それは、たとえば一括的なやり方でやって、他の大学の場合と違った検査をやられるのか、その点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  151. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 ただいま文部当局、それから大蔵省のほうからも御説明がございましたとおり、具体的にどのような形で予算の執行、積算が行なわれていくかということにつきまして、まだはっきりと固まっていないということでございます。私どものほうでも、正式にこれについての御説明を受けておりませんので、あくまでも予想の問題としてお答えいたしたいと思います。  ただいまも先生おっしゃいましたとおり、従来の大学でありますれば、学部単位というようなことで予算のワクの配賦がありまして、事務局の会計機関においてこれを執行していく、こういう形がとられているわけでございます。筑波新大学がどういう形で会計機関等の設置、制度を今後考えられていくかということに関連するわけでございますが、私の予想によりますれば、筑波新大学にも事務局は当然置かれるということであり、予算の執行上の機関としての会計機関も当然配置されるということでございますので、それらの会計機関単位に検査を執行していく、こういうことに相なろうかと思います。  なお、従来私どもの検査におきましては、予算の執行の実態を把握するためには、研究費でありますれば当然先生方のところへも参りまして、その研究費の使い方の実態についてまで入って検査をいたしております。そういう意味で、学系とかあるいは学群とか、そういうような構想のように伺っておりますけれども、要は最前線の研究者で一ある先生方あるいは学生の段階、そういうところで実際にはお金が使われるわけでございますので、その段階にまで私どもといたしましては、新大学におきましても、それらの実態について検査をいたしていくということに相なろうかと思います。
  152. 山原健二郎

    ○山原委員 順序を変えましたので、資料がちょっと見つかりにくかったのですが、これは「筑波大学批判にこたえる」、筑波新大学創設準備室が出しております資料によりますと、予算の問題についてはこういうふうに出ているわけですね。「このことは大学財政全体についても同様なことがいえる。筑波大学では大学が予算を自主的に配分し、使用し得るワクを拡大しようとするものである。この意味大学の自治という点から見れば現行制度のほうがはるかに問題である。たとえば研究プロジェクトの財政的基盤を考えてみても、現行制度では講座費として経常費に支給される研究費と文部省の科学研究費の二つの道しか考えられないが、筑波大学では研究プロジェクトの予算を大学として掌握し、その研究プロジェクトの必要性に応じて、全学的に調整しつつ民主的な方法でその配分を決定して行なうべきものである。」こういう表現になっているわけですね。  ところが、まだ文部省としてはそういう点については決定をしていない。大蔵省もまだこれから話し合う問題だというようなお話。会計検査院のほうも当然いまのお答えのような結論だと私は思うのです。ところがすでにあなた方が積極的に出しておられる筑波大学理解上の問題として、非常に幻想を抱かしめるような宣伝が先行してなされるわけですね。筑波大学には財政自主権というのはあるのだ。これはいま全大学が非常に期待しておるところです。そういうものが未決定であるにもかかわらず、ばらまかれていく。こういうことがこの筑波大学問題については随所にあらわれてきておるわけですね。文部省は、そういう宣伝をしているわけですか。もっとも筑波新大学の創設準備室は、おれのところと違うのだと言われるかもしれませんが、そういうふうな印象を与えるようなことをいままでしておるわけですか。
  153. 木田宏

    ○木田政府委員 現在大学に配当されます予算経費でございますが、積算は教官当たり幾ら幾らという積算校費、あるいは講座当たりの積算校費、学生当たりの積算校費ということで積算をいたしております。しかし、それらの一般的な校費を、大学でどのように運営されるかはそれぞれの大学の御自由なわけでございます。ただ、たまたま現在の予算の積算が講座当たり、教官当たりということで積算をされておりますために、そして今日の大学の内部組織学部、学科、講座というような縦割りに細分されておりますために、予算を末端の個々の組織が幾ら幾らというふうに運用しよう、そこまでそれぞれ細分した予算として運用するという慣行になっておるわけでございます。したがいまして、筑波のように学部、学科、講座という組織をとらないで、学群学系というまとめ方をいたしました場合には、予算の運用上、包括的な処理ができやすくなる。またこれまでは、研究所というところに配分しておりました予算も、研究プロジェクトの経費として計上するということになりますならば、それらも含めて運用ができるようになるであろうという考え方は、これは当然あり得ることだと思うのであります。今日でも、大学に配当されました予算は、大学内でいかように運営されようとも差しつかえございません。費目間の特別の流用その他、予算上の原則に抵触しない限り自由に運営ができるわけでございますが、いままでの大学が講座、学科、そういう区分によって予算をこまかく分けてくるというやり方をとっておりますために、事実上その運営ができない。今度は教育研究組織を包括的に組み直すことによって、その予算の運営がやりやすくなる。これは当然今日の段階においても説明できることだと考えております。
  154. 山原健二郎

    ○山原委員 しかし、未決定のものをいかにも決定したかのごとく宣伝するということもおかしいですよ。この点では、これ以上時間の関係もありますから申し上げません。大蔵省の方、会計検査院の方、どうもありがとうございました。  続きまして、人事委員会の問題について質問をしていきます。人事委員会に副学長をなぜ入れたのですか。
  155. 木田宏

    ○木田政府委員 副学長は、全学的な見地から調整をはかり、学長を助ける重要なポストでございます。全学的な見地から人事を取り進めるという観点から、これらの副学長に人事委員会の構成メンバーになっていただいているわけでございます。
  156. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省は先日、私の党の栗田議員に対しましても答弁をなさっておりましたが、教育公務員特例法の趣旨からいっても、学外者がその選考に入ることは好ましくないというのが学術局長の答弁であったように思います。副学長は学外者で構成される可能性もあるわけですね。だからいわば研究教育のしろうとなんです。この間の答弁によりますと、学生、職員など研究教育に従事していない者は、教員人事に参加するのはいけない。これがあなた方の一貫して答弁されてきたところであります。ところが、副学長は学外者であり得るわけですね。しかも、場合によっては学生や職員よりもはるかに学外者なんです。学生や職員の場合は、少なくとも大学を構成するメンバーでございます。しかも、この副学長というのは、教育研究のしろうとであっても、人事委員会に入って人事委員会の構成メンバーとして直接人事に関係できるわけでしょう。決定権すら持つわけですね。こういう矛盾というものをどういうふうに説明をしておられるのですか。
  157. 木田宏

    ○木田政府委員 副学長は、申し上げるまでもないことでございますけれども、学内の組織でございまして、学外の人間ではございません。学内の重要な組織の構成員でございます。
  158. 山原健二郎

    ○山原委員 学内の重要な構成員になるのは、副学長になってからでしょうね。しかし、副学長は学外者からも選出することはできるわけでしょう。
  159. 木田宏

    ○木田政府委員 学長も教官も、学外者から選出されることもたくさんあるわけでございまして、副学長と何ら異なるところはございません。
  160. 山原健二郎

    ○山原委員 国立大学において全く教育者でない、あるいは研究者でない者が、教官や学長にいまなっておりますか。
  161. 木田宏

    ○木田政府委員 学長をどういう方をお迎えするかというのは、法律の定めに従って広く選考されてしかるべきでございまして、格段の制約があるわけではございません。教官につきましては、大学設置基準を満たしておればいいわけでございまして、学内、学外の人を問わないわけでございます。また副学長につきましては、その選考基準を評議会がきめるわけでございますから、その選考基準に従って人選をする、学内者からも学外者からも副学長は人選される、こういうことになろうかと考えます。
  162. 山原健二郎

    ○山原委員 研究教育の全くのしろうとであっても、副学長になり得るわけですね。
  163. 木田宏

    ○木田政府委員 今日、国立大学の学長になりましても、いろいろな前歴の方々が選ばれるというケースはございます。しかし、それらが多くの場合、研究者であり、教育者である、あるいはそういうキャリアを歩むことの多かった人である、あるいは何らかの専門を持った方である、あるいは学長としての適切な識見その他を買われた方々である、そういう適任者を広く求めて、国立大学の学長として迎えられておるというふうに考えます。
  164. 山原健二郎

    ○山原委員 それは当然でしょうね。しかし、この副学長制度というのは、これは全くのしろうとであってもいいわけです。なり得る可能性を持った状態になっているわけですからね。いわゆる研究教育のしろうとだってなれるわけです。そのなれる者全員が、あなた方の見解では人事委員会を構成するメンバーに入るわけです。なぜそういう個別の人事案件については、教員組織学系の教員組織になると思いますけれども、そこに決定権をゆだねないのか。人事委員会で副学長を決定すれば、それは学内者になるという見解でしょうけれども、実際には全くのしろうとであってもなり得る可能性を持っておるわけですね。その可能性を持っておる者全員をなぜ人事委員会に入れるのですか。それよりもむしろ人事を円滑に行なうためには、あるいは教員会議というもの、そういう教育研究というものに対して専念をしてきている人にゆだねないで、なぜ今回そういう措置をとったのですか。重要な人物であるから入れたのだということは、これは教員の人事の問題ですから、論理としてはあまり受け取ることはできませんよ。
  165. 木田宏

    ○木田政府委員 今日、大学の学長が、それぞれ適任の方々が選ばれておりますように、大学の評議会の定めた基準に従いまして学長から申請のございます副学長、これが教育研究に十分適任の方が選ばれるものというふうに私ども考える次第でございます。でございますから、大学の副学長の選考につきまして、私どもやはり大学に信用を置いて信頼を申し上げていきたい、そういう大学関係者によって信頼された重要なポストの方々が、大事な人事委員会の構成員になるというのは、これはしごく当然のことだと考える次第でございます。
  166. 山原健二郎

    ○山原委員 もうすでに副学長の問題では、いろいろな黒いうわさが立っていることはあなた方も御承知でしょう。たとえば数学の先生を例にとりますけれども、数学の先生を採用する場合に、なぜ数学系の教員会議のほうにまかしてはいけないのですか。
  167. 木田宏

    ○木田政府委員 人事委員会の運用上は、それぞれ専門の教官につきましては、その専門の教官を選考するにふさわしい選考委員会が設けられる、それを含めて人事委員会としての運営を適切にしていく、その人事委員会に幅広い識見を持った研究者教育者等が参画をするというのはしごく当然だと考える次第でございます。
  168. 山原健二郎

    ○山原委員 学部にかわる基本組織という学系の教員会議ですからね。学部にかわる基本組織ということですから、学系の教授会、教員会議ですか、それに人事の決定権を持たすのが教特法の精神ではないのですか。教特法の精神は、そういうところにあるのではないですか。
  169. 木田宏

    ○木田政府委員 教官の欠員が起こりました場合に、学系から発議があり、御意見が出てくるということは当然だと思います。それはまた研究上の立場からも、こういう人がいいという意見も出得ることだと思います。しかし、また同じ欠員が起こりました場合に、教育上の要請からは、こういう専門領域の方を迎えたいという学群上の要請も起こってくるかと思うのでございます。したがいまして、学系の関係者の意見と、学群の関係者の意見とが、調整できるような人事委員会組織ということを考えておる次第でございます。
  170. 山原健二郎

    ○山原委員 いままでは発議ではなくして、教授会の議に基づきということが大学自治の観点から、昭和二十四年以来文部省も主張してきたところなんですね。だから、いわゆる学系というものが学部にかわるということならば、学系の教授会が人事決定権を持つということ、それが教特法の精神である。また必要に応じて専門委員会を設けたならば、学系の下に専門委員会を設けて、それに基づいて学系教授会できめていけばいいわけですね。それはどの大学でもいまやっているわけですから、それをいけないということですと、文部省としては、先生方の手で人事を行なうということは、原則としてよいことだと思っていないというふうに理解してよろしいですか。
  171. 木田宏

    ○木田政府委員 今日でも、学部の教官の人事につきましては、学部にもたくさんの学科、専攻がございますから、その教官の専攻分野に近いところで非常に幅広い人事上の識見を持っておられる専門委員の方々が相談される次第でございます。そして教官の人事選考委員会が専門領域について設けられる。その結果を数十名、場合によりますと二百名にも及ぶような教授会でもって確認をされる、決定をして人事を運ばれるというルールになろうかと思います。その人事の運びの一部につきましては、あまりにも専門分野に片寄り過ぎるとか、もう少し広い立場から人事が行なわれたほうがいいのではないかという専門領域の閉鎖性に対する反省すら出ておるわけでございます。国大協の意見の中にも、そのことははっきりと述べられております。私が前回来申し上げておりますのは、教育研究者の人選は、教育研究者の手によって進める、これが大学の基本的な姿勢だというふうに申し上げてまいりました。人事委員会も、大学教育研究者によって構成されるわけでございまして、人事委員会の制度をとったからといって、ごうも今日の基本精神を曲げるものではございません。
  172. 山原健二郎

    ○山原委員 それもまた詭弁ですよね。あなたは、いままでの大学教授会の持っておる権限を先ほども言ったけれども御存じでしょう。知っておりながら、そういう言い方をするというのは間違いですよ、そうでしょう。あなた方は、この「理解のために」の二二ページのところで、「大学の自治ということは、大学教育研究に関することは、すべてその専門的な担い手である大学の先生方におまかせするということです。筑波大学でもこの考え方に少しの変わりもありません。」こういっているわけですね。だから、それがたとえばそういうことであるならば、こういうPRをしておるのであるならば、学系の教授会、そこで個別の人事を決定するということ、それが原則だと私は思うのです。  たとえば数学の先生を採用する場合に、数学の専門家は学系のほうに全部そろっているわけですから、数学系の教授会できめるのが最適ではないですか。たとえば「第一次まとめ改訂案」によりますと、あなた方は、そうでなくて人事委員会できめる。そして人事委員会というのは十六人程度で構成するというわけですね。しかも、その中には五名の副学長が入っておりまして、数学の専門家というのは専門委員長たった一人です。極端な場合はあとの十五人は数学のことはわからない。そこで一体どういうことを議論をして具体的に何をきめるというのですか。だから、そういうことをすれば、個々の案件については専門委員会にまかしていくという立場をとるのが、あなた方がここでPRしている立場、考え方に合致することではないだろうか、私はそう思うのです。副学長というのは、少なくとも副学長に決定したときから学外者でなくて学内者になるということはわかりますよ。しかし、この副学長五名は、五名ともたとえば教育研究の専門家でなくてもいいということはあり得るわけですからね。そういう可能性を持っておるわけですから、その副学長、十五名の中に三分の一近くを入れて、しかも数学の専門家は専門委員会から出てくる委員長一人でしょう。そこで何を決定するのですか。数学の教員を採用するときに、数学の専門家が集まって論議をして、この先生にはどういう業績がある、どういう数学上の権威がある、それが論議されるならばわかりますけれども、全く数学に関係のない十五名の方が一体何を論議するのか。そうなってくると、その先生の人柄だとか、数学とは関係のない事柄を論議されてくる、場合によっては思想問題が論議されてくる、そういう可能性がないという保証はないわけですね。   〔内海(英)委員長代理退席、森(喜)委員長代理着席〕 なぜ、数学の先生を採用する場合に、その数学の先生が一番集まっておる学系教授会で決定するという、そういう教育公務員特例法の原則的な立場をおとりにならないのか、このことをあらためて伺っておきたいのです。
  173. 木田宏

    ○木田政府委員 今日学部の教授会で決定いたします場合にも、数学の先生を数学の先生だけできめておるわけではございません。理学部の教官の中には生物学の教官も、他の専門領域の教官もたくさんおられるわけでございます。よって、数学の教官を選びます場合には、専門の数学関係者を中心にした選考委員会が設けられて、その選考委員会の決定を学部全体の教授会として尊重される、こういう運びになっておると考えられるのでございます。人事委員会を設けました場合に、学系から御意見が出てくるということは当然だと思います。またそういう系列に近い専門の方々によって専門委員会が設けられまして、そこで実質的な討議が慎重に行なわれるということも当然ございましょう。そうして、その慎重な討議の結果が、人事委員会で尊重されるということになるのが一番よろしいかと思うのでございます。ある場合には、新たな学系を起こさなければならぬという場合も起こってまいります。既存の学系があるという前提でなければ、人事を考えるわけにはまいりません。でございますから、人事委員会で、全学的な見地から必要な選考委員会を設けるという形のほうが、より適切な人事が行ない得るというふうに考える次第でございます。
  174. 山原健二郎

    ○山原委員 いままでは教授会が決定をしておるわけですね。今度の場合は発議があるのですね。発議はあるけれども、決定権は人事委員会総会にあるわけでしょう。どう考えても不合理じゃないですか。全学的な調整ということで、数学の専門家は一人しか入ってない。あと十五名がしろうとである。これは比重からしてもこの人事委員会の構成はおかしいとお思いになりませんか。  それからもう一つは、五名の副学長が入るというのが皆さんの見解ですけれども、五名の副学長というものはこれは管理者です、管理権能を持った組織としてあなた方は考えておられるわけですから。それが三分の一を占めておる。そして数学の教師が採用される。そんなことよりも、なぜ数学の専門家が集まっているところの学系において、あるいは物理やその他の方々を、そのつど適切な方法でお集めになって、そして数学の教員の採用を決定する、それが民主的じゃないですか。教授会に発議権だけ持たして、決定権は人事委員会の十六名、そのうち三分の一は副学長、管理者が持っている。ここまでくると、いわゆる大学の自治を基礎とするところの人事としては、これはもうたいへんな変化です。百八十度の変化です。  ところが、皆さんが出された「筑波大学理解のために」では、小西さんが言っておりますけれども、いままでの教授会のやり方と全く変わりはないんだという宣伝をしておられる。こういうふうに、実情とは違うPRがどんどんなされていく。小西さんが書いているわけでしょう。「いまの制度では学部などの教授会であるけれど、筑波大学ではそれが人事委員会になる点だけである。」「いまの大学でやっているのと、ほとんど変わりがない。」こういうことが文部省が著作権を持っておるPR資料の中に出てくるわけです。  ところが実態はどうかというと、教授会は発議権を持っておるだけで、決定権は人事委員会が持っている。全く違うじゃないですか。しかも、その副学長の中には、これも全くの教育研究のしろうとが入る。数学の問題については、これはほとんどの人がしろうとで数学の先生の採用が決定される。そこで論議されることは一体何ですか。私も国語の教師でしたけれども大学においてたとえば国語の教師をきめる場合に、ほとんどしろうとばっかりが集まってどういう論議をするのですか。国語上の権威を持っておる、あるいは数学上の権威を持っておる方々に対して、どういう論議をしろうとがするというのか。そしてそれが決定権を持っている。これでは筑波大学人事問題はいままでの大学考え方とは全く違う。それでも同じだとあなた方は言い張るわけですか。
  175. 木田宏

    ○木田政府委員 先ほども申し上げましたけれども、今日理学部で数学の教官を選考いたします場合に、生物の教官が選考に当たるわけではないと思うのでございます。しかし、数学の教官の選考について、専門委員会を設けて選考されました者を、生物の教官も地質の教官も加わった理学部教授会でサンクションをされる、こういう手続になっております。これを全学的な人事委員会という組織で、そして選考分野別に専門の委員会を設けて専門の方方が選考した者について、全学的な人事委員会が最終的な選考をするということは、何ら本質的に今日の実態と変わっておるものとは考えません。国立大学協会の意見にもございますように、むしろ政治的には、この制度は運用よろしきを得れば、従来の教授会人事に伴う弊害として指摘されてきた閉鎖的人事や、人事の停滞を打破する上に効果があるであろうということすら、明確に言っておられるわけでございます。  そして、副学長ということについて、非常に御懸念があるようでございますけれども、私は大学というものに信頼を置きたいと思います。学長に適任者を選ぶと同じように、副学長にも適任者が選ばれるであろう、そういう適任者を加えて人事委員会が構成されるということは、まことに望ましいことだというふうに考えます。
  176. 山原健二郎

    ○山原委員 何ら異なるところはないなんて言いなさんな。教授会では、教授会の議に基づく人選、人事を行なってきたわけでしょう。それが今度は、学系教授会はその権限はない、発議権がある、そして人事委員会で決定する。いままでと違うでしょうがな。私は事実を言っているのですよ。しかも、専門委員会とは何ですか。法律的に専門委員会というのがどこにありますか。
  177. 木田宏

    ○木田政府委員 人事委員会運営を適切にいたしますために、専門の方々で専門の選考委員会を設けるという運営上のくふうが相談されておるわけでございます。現在、学部教授会できめるというふうになっておりますが、学部教授会の最初からきめるものではございません。現在でも専門領域ごとに選考委員会が設けられる、そして学部教授会では、いろいろな専門の方々が一緒になった学部教授会で最終的に決定をする、こういう手順になっておりますから、人事委員会が専門の方々を中心にした選考委員会をもちまして、それを中心にして人事委員会としての最終的な決定をする。その人事委員会の構成は、研究者であり、教育者であり、学内の重要なスタッフであるという点から考えますならば、今日の人事選考と一つも基本において変わるところはない、むしろ全学的により適切に人事が行なわれ得る、こう考える次第でございます。
  178. 山原健二郎

    ○山原委員 教授会が人事の決定権を持つ、教授会の議に基づく決定をされるということは変わらないわけですね。筑波大学における学系教授会は、人事の決定権を持っていますか。いいですか、決定権を持っていますか。
  179. 木田宏

    ○木田政府委員 筑波大学におきましては、人事委員会が選考をすることになっております。
  180. 山原健二郎

    ○山原委員 そうでしょう。何ら変わりはないということは取り消しなさい。変わっているでしょう。
  181. 木田宏

    ○木田政府委員 今日、学部教授会人事を選考するということと、人事委員会人事を選考するということと、その教官の人事学問研究の立場から慎重に行なっていくという意味において何ら変わりがない、より適切に行ない得るものである、こう御答弁申し上げた次第でございます。
  182. 山原健二郎

    ○山原委員 あなた、感想を述べてはいかぬですよ。人事学部教授会の議を経てでしょう、それは変わったでしょう。決定権は人事委員会に移るわけでしょう。それが何ら変わりないとはどういうことですか。いままでは人事委員会なんかなかったのだから、変わっているでしょう。変わっていないのですか。では、いままでどおり教授会の議に基づいて人事は行なわれるわけですか。
  183. 木田宏

    ○木田政府委員 いままで学部教授会が果たしておりました機能と、今回人事委員会が果たす機能と、全く同じだということを申し上げておるわけでございます。
  184. 山原健二郎

    ○山原委員 だから、それは全く変わっていないということですか。学部教授会の立場から見るならば、私は、学系には専門家が集まっておいでになるのだから、数学なら数学の教員の採用、決定をする場合には、学系の教授におまかせしたらどうですかと言っているわけですよ。それは学部教員会議というけれども、これは教授会のことですからね。だから、いままでは教授会が構成をされ、そうしてそこの議に基づいて人選が行なわれておったわけです。それがいま人事委員会に移ったわけでしょう。そのことは変わっているでしょう。そんな何ら変わりはないという答弁は、あなた何ですか、あまりばかにしなさんな。変わっているでしょう。それでも変わっていないのですか。変わっていなければ、いままでどおり筑波大学はいくわけですよ。人事委員会も要らないわけですよ。変わっているんでしょう。しかも、専門委員会のごときは、全くあなた方の想像だけのことであって、法案上もどこにも出てこない。変わっているんでしょう。変わっていないのですか。——いやいや木田さんにお聞きしている。木田さん、ごまかされるといかぬ。何も変わるところがないと言うんだから……。変わるところがないのですか。そういうごまかしをしたら困るのです。
  185. 木田宏

    ○木田政府委員 先ほど来、山原委員学系の教官が、専門の間で人事をきめる。現在学部教授会できめるというのは、その学系の教官が専門家としてきめるというのとは違うのでございます。   〔森(喜)委員長代理退席、委員長着席〕 数学の教官を、数学の教官だけで選んでいるというのであれば、理学部教授会で、数学の教官をきめるということとは違うのです。数学の教官は数学の関係者が選考して、他の専門領域の人も含めた幅広い理学部教授会で理学部の職員なるがゆえに人事をきめておる、こういう考え方。それに対して、今回数学の教官を数学の関係者が中心になって選ぶ。そしてこれを全学的な立場から、理学部という一領域だけでなくて、全学的な立場から教育研究者組織として設けられた人事委員会がきめるという点では、全く同じことだということを申し上げておるわけでございます。
  186. 山原健二郎

    ○山原委員 委員長に、木田大学局長に注意してもらいたい。私はそんなことを聞いてないのですよ。何ら変わるところがないと言い張っているから、変わっているでしょう。具体的に組織も変わっているでしょう。学部教授会がいままで議に基づいて決定をしておったものを、今度は専門委員会か何かあなたは——専門委員会について私どもはわからない、法案にないんだから。それがある。人事委員会ができるんでしょう。そして人事委員会が決定権を持ったんでしょう。これはここに書いてあります。だから、そういう構造上の面からいっても、学部教授会の権限上の問題からいっても、変化はあるわけでしょう。何ら変わるところがないという答弁は、私に対する侮辱ですよ。何ら変わるところがないんですか。その一言だけ答えてください。いいですか。いろいろつべこべ言う必要ないです。何ら変わるところがないと言うが、変わっているんじゃないかと私は聞いているのです。そのことだけ答弁をしてもらわぬと困る。
  187. 木田宏

    ○木田政府委員 学部教授会が、人事委員会に変わったというところだけが変わっておるわけでございます。
  188. 山原健二郎

    ○山原委員 何ら変わるところがないなどという言い方を、何べんも何べんも繰り返しておるのですよ。  いま法制局長官がお見えになったそうですから、委員長、ちょっと質問を中断いたします。
  189. 田中正巳

  190. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私の質問の中で、大学の自治の本質に触れて、一番大事な解釈だけは、権威的に統一しておいていただく必要があるので、これは今後の日本の大学全体に及ぼすことでありますから、特に内閣法制局長官においで願ったのでありますから、簡明にひとつお答え願いたいと思うのであります。  その前に、内閣における内閣法制局長官の地位は、どういう地位になっておるのかお聞きしたいと思います。
  191. 吉國一郎

    吉國政府委員 お答え申し上げます。  内閣法制局の職務につきましては、内閣法制局設置法という昭和二十七年に制定をせられました法律に明定されておりまして、ただいま条文を持っておりませんけれども、その職務は第一には内閣提出法律案につきまして閣議に提出せられる前にこれを審査をいたすこと。それから内閣制定の政令  政令は内閣が制定するわけでございますから、その政令について審査をいたすこと。それから第三は、国会の御承認を得る条約案について審査をすること。第四に、内閣総理大臣及び各省大臣に対して法律問題に関し意見を述べ、あるいは内閣総理大臣あるいは各省大臣の諮問に応じて意見を申し述べるというような仕事がございます。さらに、最後には、内外国際法制について調査研究をすること。  大略そういうような仕事でございます。
  192. 山中吾郎

    山中(吾)委員 設置法の第三条、私、持っておるのです。これは、このとおり私も読んであるのですが、具体的に聞かないと、せっかく長官から答えられたやつがまた政治的にうやむやになるのではないかと思ってお聞きしたので、この法案に関連して、だからぜひお聞きしたいのは、政府提案の法案の出し方については、その過程において、法制局長官がどの程度に参加されて、法案の提案形式にどれだけの責任をお持ちになるのか、それからその法案の個々の条文の解釈について、これも参加されたと思うので、法制局長官は、どの程度の解釈についての責任と権限をお持ちになるのか。もう少し具体的に言いますと、法制局長官の法律的意見は閣議を拘束するのか、あるいは閣議で違った決定をされれば、法制局長官の法的解釈は無効になるのか、こういうことを聞きたいので、抽象的にいまおっしゃったとおり私も読んでおります。  それだけでは、私が質問することについては具体的に回答にならぬものですから、具体的にひとつ政府提案の法律の、提案のしかたそのものについての法制局長官の参加の程度及びその責任と、それから個々の提案された法律の解釈についての長官のこれに対する権限というのですか、その意見の権威の程度ですね、それをお聞きしておきたい。
  193. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの御質問で、法制局長官の関与の程度あるいは法制局長官の権威の度合いというようなことでありますが、長官ということで、法制局の長でございます。長官の権限ということでお取り上げになりましたけれども、御承知のようにわが国の官僚組織は、法制局でございましても長官が統括をいたしまして、長官のもとにこれを補佐いたします内閣法制次長というものがおります。内閣法制次長は、各省の事務次官と全く同格でございます。その下に部長が四人おります。第一部長から第四部長まで、この部長は各省の局長と同格でございます。その下に各部に数名の参事官がおります。この参事官が各省の課長と同格でございます。  そこで、法律の審査あるいは政令の審査にいたしましても、参事官がいわば担当の責任者になりまして、その参事官が各省の立案の責任者と相互に協議をいたしまして法案が成立をいたします。あるいはまた法律、政令の解釈の問題でございますならば、その参事官が当面の責任者になりまして、各省の法令執行の責任者と協議して、最終的な意見をきめます。参事官が意見を内定をいたしますと、内定と申しますか、参事官として確信を持ちますと、これを部長に上げ、部長が次長に話をし、次長から私のところへ上がってまいりまして、最終的な決定をいたします。これは法律案、政令案の立案審査のことにつきましても、またでき上がっております現行の法律、政令等の——法律、政令ばかりじゃございません。それから省令等もございますから、法令の解釈につきましても同様でございます。  それだけをまず申し上げておきまして、法律案の審査、たとえば今回の国立学校設置法等の一部を改正する法律案でございますと、担当の文部省におきまして、文部省大学学術局の大学課でございますか、そこでまず政策決定をいたすわけでございます。  その政策を実現するには法令上いかなる手段を要するか、法律上こういう手段を要する、あるいは政令以下の命令の段階で、こういう手段を講ずるということもございましょう。今回の場合は、国立学校設置法その他この法案にあがっておりますような法律の改正が問題になりまして、そこでその政策を実現するための法律の改正を立案をいたします。  立案をいたしますと、文部省内部でも当然法令審査がございますので、大学課から局長のところで審査をしたものをまた官房で審査をいたしまして、文部省としての案を作成をいたします。  文部省の案が作成をせられますと、私どものほうで、担当は第二部でありますので、第二部のところで、まず部長と担当の参事官あるいはまた手があいております場合にはその他の各省の担当の参事官も参加をいたしまして、手順といたしましては、まず第一読会の前に概要説明というものをいたします。そこで法律案の基礎的な考え方を十分に検討をいたしまして、大きな問題があればそこで提示をいたしまして再検討を請う。そういうことがなければ、第一読会、第二読会、第三読会と順次やってまいりまして、大きな法案になりますと十数カ月を経過してやっと最終案に到達するというような事情でございます。その間——今度の法律についてそういうことはございませんけれども、昔の例で申し上げまするならば、ガリ版で印刷をされました法律案、何々法案、第一条から始まって数十条並んでおりまして、最後に附則ということになりますが、極端な場合には題名と附則という字だけ残ったというような例もあるくらい、実に詳細に検討いたしまして、法案としての完ぺきを期しております。今回の筑波大学関係のこの法案国立学校設置法等について、具体的にそこまでの問題はもちろんございませんでしたけれども、これにつきましては、いろいろ問題として、おそらくこの委員会においても御審議の際にテーマになったような問題が、おそらく法制局の内部の審査でも同じように問題になっていると思います。  そこで、第二部でいろいろ検討をいたしまして、第二部として決しかねる問題は、次長から私のところまで上がってまいりまして、最終的な決定をいたします。そのようなやり方は、法律、法令の解釈についても同様でございます。  そういうようなかっこうで国立学校設置法等の一部を改正する法律案が最終的に案が固まりますと、便宜この最終的な案を閣議請議案といたしまして、決を請うという文書をつけたものが内閣に回ります。  内閣官房から法制局に回されまして、法制局ではそれをさらに読み合わせをして、最終段階で、また次長や長官の段階で手直しが出ることもございますので、そういう部分は、いわゆる付せんというものを張りまして、訂正をした上で、これで閣議に提出されてよいと認めるという承認をいたしまして、私の名前で内閣官房に回付をいたします。  これについて閣議でもちろん検討審査をするわけでございますが、閣議の前の段階において次官会議というものがございます。火曜日と金曜日の閣議の前日に、月曜と木曜日には次官会議がございまして、正確には事務次官等会議と称しておりますが、その事務次官等会議におきまして、各省から関係の次官が意見を申すことがございます。その場合の意見は、ほとんど法制的な問題じゃございませんで、政策論が出ることがございます。そこで保留をされますと、さらに手直しをいたしまして閣議にかけるということになります。閣議で問題が出るということもなきにしもあらずでございまして、年に一ぺんか二へんくらいはあるかと思いますが、最終的には各省の意見が十分調整をせられまして、法制的には、内閣法制局として、法律案として十分であるという確証を得たもののみが閣議に付議せられるわけでございます。その結果として閣議で承認になれば、それが内閣提出案として提出をされることになります。  法律の解釈につきまして、非常に重要な問題で閣議にかかったという例も、私の経験では過去十数年間に何回かはあったかと思いますが、通常の法令の解釈につきましては、各省から内閣法制局に照会がございまして、それに対して、重要なものであれば文書をもって回答するし、文書をもって回答するに至らないものは、口頭照会に対する回答というかっこうで処理をいたしております。  この法律案なり政令案の審査立案の問題及び法令の解釈についての法制局の権威の程度は、どの程度であるかという第二の御質問でございますが、私は別といたしまして、従来の、現在の人事院総裁である佐藤達夫長官、それからその次の林修三長官、さらに先般やめました高辻長官、この三代の長官は、いずれも長年法制事務に従事をいたしまして、十分法律問題に関する識見があるということで内閣法制局長官に任ぜられたものと思います。したがって、その処理をいたしましたものについては、内閣総理大臣をはじめ各省大臣から御信頼をいただきまして、法制局の法律的見解に対して、法制局がいままでそれを特に政治的な問題として偏向したというようなことはございません。私も従来の長官にできるだけ近づくように努力をいたしておりますが、はたしてそれだけの権威があるかどうかは、私自身としては何とも申し上げようがございません。
  194. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あまり懇切丁寧に説明されたので、結局わからなくなったのですが、まずこれを論議するとまた長くなるので、お聞きだけしておきます。権威のある法制局長官として、法的に御回答願って、力関係とか、一人一人の個人的権威とか、そういうことを離れて私お聞きしていきまずから、この問題はこれで具体的にお聞きしたいと思うのですが、私の聞きたいことは三つあるのです。  一つは、文部大臣の任命権は形式的任命権で、実質的な拒否権はあるかないかということが一つ。それからこのいわゆる筑波法案の提案のしかたについて、いままでも論議がありましたので、この法案の今度は審議のしかたについても、矛盾をした提案の形式でありますので、いまなお矛盾を感じて、そのことがこの法案についての混乱とかいうふうなものがいろいろ起こっておる一つの原因でありますから、将来の法案の提案のしかたについても、こういう法案の出し方について反省すべきものがあるのではないかと思うので、そのことについて。それからこの法案の中の一部条文の法律解釈について、法律的に長官としての御意見をお聞きいたしたい。この法案が成立するしないにかかわらず、立法機関としての審議をする立場から非常に重要な問題であると思いますので、お聞きをするわけであります。  まず第一に、この法案の提案のしかたでありますが、提案のしかたについては非常に不適当だと私は思います。しかしこれは、この過程の中で、いわゆる多数決において、分離提案について否決になっておりますので、これは繰り返しません。この提案をされた法案審議のしかたについて、長官の御意見をお聞きしたいと思うのですが、これは国立学校設置法等の一部を改正する法律案としての内容は、一番最初は国立学校設置法の一部改正、そうしてその次に学校教育法の一部改正、そうしてまた二つ目に国立学校設置法の一部改正、そしてそのあとに教育公務員特例法の一部改正、こういう四つの構成で出ておるわけであります。  そこで、第一の国立学校設置法については、新しい大学及び学部の設置、現在の学校教育法を前提とした設置でありますので、いわゆる教育機会均等という立場から全野党が一致して賛成をしておる内容である。ここには一応筑波大学の設置というのは入っていない。次の学校教育法を改正して、この改正がこの国会で成立しない限りまた次の国立学校設置法の一部改正の筑波大学審議できないかっこうになっている。またこの筑波大学法に関する設置が採決をされたあとになると、副学長があるので教育公務員特例法を今度は採決をしなければつじつまが合わなくなってきた。こういう法案の出し方からいいますと、一番最初の国立学校設置法採決をして、今度は学校教育法の改正でいいか悪いかを論議をして、それが論議をされない限りは次の設置法の内容というのは審議に入れないんじゃないか、この法案の出し方から脅えば。わかりますか。そうして今度は筑波大学の設置が認められたあと、はじめて次の教育公務員特例法の改正が必要なんで、国立学校設置法が認められなければあとの法案審議は何も必要でない。これを一括審議をすること自体に矛盾を感ずるのですが、この法案を出すことについて法制局長官はどんな意見を述べられたのか。これを出されたことについての審議のしかたについては、一番最初言った国立学校設置法の旭川医科大学の部分をまず審議をして、今度はまた学校教育法の一部改正を審議をして、これでよろしいといったあとでなければ筑波大学の設置法の審議はできないでしょう、この法律を見ますと。一括には審議できないんじゃないか。その辺は専門家のあなたでありますから、過程の中でずいぶん意見が述べられたと思うのでありますから、将来の法案の提案のしかたについてお聞きしておきたい。そうでないとわれわれの審議権が拘束される、審議否定が入っていると思うのですね。いかがでしょう。
  195. 吉國一郎

    吉國政府委員 二つの法律の改正を、一本の法律案のかっこうで提案をいたしまして、過去にも何回か、どうしてこれは一本になっているか、国会の審議権に対してやや問題があるのではないかというような御質問を受けたことは、私自身の経験としてもございます。昭和三十四年の、これは衆議院の商工委員会であったかと思いますが、商工組合中央金庫法、中小企業金融公庫法、それから中小企業信用保険法であったかと思いますが、この中小企業者の定義が共通部分がございまして、そのほかそれ以外の改正もございましたけれども、たしかその三本を一本にまとめて提案をいたしました。そうすると、一つだけ賛成で、あと二つには反対であるとか、二つには賛成であるけれども一つには反対であるという場合にはどうするんだという御質問があったことがございます。その場合には、もちろんこれは国会の御審議の方法でございますから、内閣法制局でとやかく申し上げることではございませんけれども、かりに第一条、第二条、第三条ででき上がっている法律について、第二条については御賛成がなくて、第一条と第三条だけが合理的であると御判断になれば、これは御修正になりまして、第二条は削除して第三条を第二条に上げるということも可能でしょうというようなことを申し上げておしかりをこうむったこともございました。それが第一の経験です。  それから昭和二十八年から九年にかけましてILO八十七号条約の批准に関連をいたしまして、また法案を何本か合一するか、別々に出すかということが問題になったことがございます。  それから一昨年の沖繩関係法案について非常に問題がございまして、やはりなぜ一本にしたかというようなことの御質問があって、当時衆参両院の議院運営委員会理事会に非公式に出席をさせていただきまして、御説明申し上げたような経験もございます。  今度の国立学校設置法の改正につきましては、まずただいま審議の方法というようなお話がございましたが、これも当委員会の内部の御審議の問題でございますので、私がとやかく申し上げる限りではございませんが、これは国立学校設置法等の一部を改正する法律案という、いわば議決対象としては一本のものでございます。したがって、その一本のものに対して、内容的にどのように御審議になるかということであろうと思います。  その場合に、ただいま委員の御指摘のように、第一条をまず審議してからでなければ第二条に入れない、あるいは第二条を審議して、そして意見がきまってからでなければ第三条に入れない、それはその過程としてはまさにそのとおりであろうかと思います。ただ御審議の方法として一条一条を分けて御採決になるということは、もちろん国会の内部の問題でございますから、私どうこう言うことはございませんけれども、結局これはわかりやすくするために、国立学校設置法が第一条と第三条と第四条でございますか、分かれている。それで昔はこういうのを国立学校設置法の一部を改正する、こういたしまして、これを全部一本に書いたものでございます。一本に書きまして、今度施行期日が、中身が違うものでございますから、附則の中で施行期日を書きますときに、国立学校設置法の一部を改正する部分について、この法律は昭和何年何月から施行する、ただし同法第何条、第何条及び第何条の改正規定については何年何月から、また第何条、第何条、第何条の改正規定については何月何日からとやるものでございますから、国立学校設置法の改正がずらっと条項がたくさん並んでまいります。そのうちここでしるしをつけまして、これは何月何日施行だ、何月何日施行だということを区分しなければならないようなことがございますので、これは昭和三十六、七年であったかと思いますが、厚生省設置法の一部改正でやりましたのでありますが、厚生省設置法の一部を改正する法律案という中で、第一条が厚生省設置法の一部を改正する法律案、第二条がまた厚生省設置法の一部改正というかっこうで区分して立案をいたしまして、区分して施行されるものが順にこうなっていくということが、一見してわかるようにしたことがございます。特に第一条で改正したあとで、また第二条で追っかけて改正するというようなものを、一個の法律案の中で処理をいたします場合には、そういう方法をとらなければとてもわかりにくくなります。附則で読みかえの規定を置くというようなことになりますと、非常にわかりにくくなります。  そういうことで、この国立学校設置法の一部を改正する部分は、昔のやり方でございますと一条、三条、四条が一本になって、そのあとにこの学校教育法の一部改正が出てまいったんだろうと思います。それを今度はやや改善をいたしましたかっこうで、国立学校設置法の一部改正、それから今度学校教育法の一部改正をして、筑波大学ばかりでなくて一般的に大学学部制度の例外を設けるというような改正をやって、そのあとでまた今度筑波大学の中身を規定するというていさいをとったものと思います。  ただ、山中委員御指摘のように、これを一個に抱き合わせたではないかという御疑問もあるかと思いますけれども、私ども考えましたのは、国立学校設置法というのは、もともと大学ばかりじゃなくて、国立学校の設置の根拠並びにその組織及び運営に関する基本的事項について、統一的に定めることを目的とするものだ。したがって、国立学校一つとして設置される筑波大学についても、同法の改正によって所要の規定を設けるものでありますし、筑波大学の設立と同じように、今年度の予算において旭川医科大学以下の改正をやっておりますが、これが一緒に国立学校の設置法の改正として求められるほうが最も合理的ではないかということを考えたわけでございます。  なお、この点は前に官房長官が参りましてお話し申し上げたと思いますが、昭和三十七、八年から内閣提出法律案の件数が非常に多過ぎるということもございまして、できるだけ件数の整理をいたし合併をするということで閣議決定をいたしました。これはもちろん内閣の部内の問題でございますから、国会にこれをもってこうなっているからということを申し上げることは適当ではないかもしれませんが、少なくとも内閣提出法律案につきましては、内容において密接な関連がある二以上の法律案はできるだけまとめるということで、今国会におきましても相当多数の法律案が、その中身において二以上の法律の改正を一本にして提出をしております。ただ、立法論といたしましても絶対にこれを二つに分けることができないかということでございますならば、二つに分けることも法制的には不可能ではない。だが、どちらがベターかと言えば、今回の場合は先ほど申し上げましたような理由で、国立学校設置法の改正として今年度実現するものを一本にまとめるというほうが、よりよいのではないかというのが法制局の審査いたしました結論でございます。
  196. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あまり詳しく説明されると、なおわからなくなりますから、結論だけでいいのですが、もう一度この法案を長官、見てください。  第一条の国立学校設置法に基づく内容は、現在の学校教育基本法を前提としての設置で、その次に今度は学校教育法というものの改正内容が出て、これを改正しなければ筑波大学を設置できない。第三条に出ておるわけなんですよ。それで、審議をする立法府の立場からいえば、第一条の設置についてまずきめて、それから学校教育法の改正に賛成か反対かを審議したあとでないと国立学校設置法審議に入れない内容になっている。そこで沖繩とか、ああいうときのいろいろの法案をずっとという、それはわかるのです。いま説明された例には当たらない。これは初めてではないかと思うので、この法案の出し方からいえば、私たちの審議の立場というものが制限されてくる。いいですか、もう一度言いますよ。簡単でいいのだ。まず第一条の国立学校設置法について、旭川医科大学以下をわれわれは賛成する。ところが次の筑波大学についてはできないのだ。学校教育法を改正しなければ審議ができない。そこで第二条の学校教育法の賛成か反対かをきめたあとでないと、国立学校設置法審議に入れない内容だとぼくは思うのですね。それを一緒に出してきたから、とにかく筑波大学に入らないのはけしからぬという批判も一方では出る。そして入る前にはその母法である学校教育法審議して賛成か反対かをしなければ入れない。こういう法案を出されるのは迷惑千万なんです。この法案に賛成、反対は別にして、ほんとうに迷惑千万である。こういう政府提案をされる過程において、法制局長官もずいぶん参画されておると思うので、これは法制局の立場では不適当だという意見を出して、そんなわけのわからぬ法案を出さないようにしてもらいたい。これはいま出ているのだから、将来の問題として、国会議員の立場において私は明確にしなければならぬと思うので申し上げているのですが、御意見だけでいい、いろいろむずかしい過去のことを言わなくていいですから……。
  197. 吉國一郎

    吉國政府委員 第一条の点は別といたしまして、第二条の学校教育法の一部改正と、第三条の国立学校設置法の一部改正、いわゆる筑波の部分でございますが、学校教育法の一部改正が決定しなければ第三条の審議に入れないというようなお話でございましたけれども、この学校教育法の一部改正は、もちろん論理的には大学の従来の学部という制度が、今度はこの筑波にございますように、学群とか学系とか学類とかいう組織になりますから、それは例外であろうことは確かだと思います。ただこれは、法律同士の問題でございますから、極端に申せば学校教育法を改正しないでも、国立学校設置法改正のこの筑波大学の部分で、学校教育法第五十三条の規定にかかわらずとやってもいいわけでございます。ただ場合によりましては、この学校教育法はむしろこの法律では附則に入れまして、そこで附則として学校教育法の改正をやって、その附則からはね返って本則の国立学校設置法とマッチするというようなやり方をする場合さえもございます。今回の場合は、学校教育法の一部改正が、この学校教育法の体系としてはなかなか重要であるという認識をいたしまして、本則の第二条としてやっただけでございまして、第二条が審議されて、それが結論が論定されなければ第三条の審議に入れないといういまのお話でございますけれども、これは学校教育法の一部改正で、学部以外の組織を設けることができるということと一緒に、筑波大学ではこういう学群学系及び学類という組織になるのだということを頭の中にお入れになりまして、一緒に同時に御審議になって、両方ともだめであればだめであるし、両方ともよければ両方ともいいというような御審議もあり得ると思いますので、別々に御審議になって御決定にならなければならないということはないのではないかとそんたくをいたしますけれども、これは先ほど申し上げましたように、国会の内部の御審議の問題でございますので、私どものやり方をそのまま申し上げるわけにもいきませんと思いますが、論理的には絶対にそうならなければならないというものではないというふうに存じております。
  198. 山中吾郎

    山中(吾)委員 第一条の国立学校設置法だけまず審議をする。これはわかるのだ、母法が現在の現行法の上に立った設置だから。少なくともそれと第二条と第三条を一つにしてもいいから、第二条と第三条は二段階に分けて審議をしなければどうにもならぬじゃないですか。そういう、もうあなたが参画をして提案をされた法案であるから、これは不適当だと答えることはできないと思うのですが、今後政治的にいろいろな法案の出し方を考えるのにも、われわれの立場からいえば政治的にも限度があると思うのです。この法案の作成過程に法制局長官が参画するなら、その辺は法制局長官としての限界を考えてやはり正当な意見を述べるべきではないか。あまり政治家にならないで、法制局長官というのは政治家になったら長官でなくなるのですよ、失格ですよ。限界があると思うので、将来の問題としてやはりもう少し姿勢を正していただきたい。希望を申し上げます。御意見を聞いて……。
  199. 吉國一郎

    吉國政府委員 本件につきましても、先ほど来るる申し上げておりますように、これはより適当な形であると私ども認定をいたしまして、内閣提出法律案として閣議決定になることを妥当であると認めたつもりでございます。  なお、将来とも法案の実質的内容のみならず、法案の形式につきましても、この民主主義のもとにおきまして、最も適正な形を期するように努力をしてまいりたいと思います。
  200. 山中吾郎

    山中(吾)委員 よりいいものだと考えているということについては、どうもおかしいと思うのだが、これはこういうことであまり論議を長くしたくないので次の項目に移ります。  第二条の五十三条「大学には、学部を置くことを常例とする。ただし、当該大学教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては、学部以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる。」というこの法文解釈をお聞きしたいのです、これもどうせ参加されたはずでありますから。  この条文に基づいて想定される日本の大学は、学部だけ持っておる大学、これは常例としてある。それから、筑波大学のほうがいま論議されておるのですが、学部をなくして学系学群、ここにいう学部以外の教育研究上の基本となる組織だけを持っておる大学。それから、学部も持ち、同時に学部以外の教育研究上の基本となる組織を持つ型の大学。五十三条においてはこの三つの大学の形態をこの法文のもとに置けるというふうに私はこの文章を読んだときに解釈できるので、日本文としてはもうそのとおりだと思うのですが、この法文をつくるときに、どういう論議をされて、どう解釈されておるのか、これは非常に大事な問題でありますので、権威的解釈をお聞きしておきたい。
  201. 林信一

    ○林(信)政府委員 お答えいたします。  五十三条の本文とただし書きの関係でございますが、ただし書きで一定の場合においては「学部以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる。」、これは文章の上におきましては学部学部以外のものをあわせて設置するということができるようにも読めると存じますが、実体が適当であるかどうかという問題は別であると存じます。
  202. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私の言うのは、たとえば東大のような非常に広大な総合大学がある。学部はあるが、学部学部の関係においてやはり研究組織を持たないと新しい学問研究には適応できない、学部はそのままにして、同時に学内においてそれの研究組織を持つ場合はまた法律改正せなければならぬのか。これに基づいて、学部も持ち、学部以外の研究組織教育組織を持つ大学もこの文章でできるのか。これを読むと、日本文としてはもうこれはそう解釈できると私は思う。それを端的に聞いているのです。
  203. 林信一

    ○林(信)政府委員 国立大学におきましては、現行の法制のもとでは、学部法律で設置するということになっておりますものですから、学部以外の学部に相当するような組織をつくるということはやはり法律が要るであろう。それからさらに学部学部以外のそういった組織との関係、全学的にどう運営していくかといったような問題も生ずると思いますので、ちょうど筑波大学において、今回手当てされておりますような何らかの措置がそこで必要になるのではなかろうか。その面については、特に規定はございませんから、国立学校につきましては、何か規定が要るのじゃないかというふうに存じます。
  204. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私、ちょっとわかりにくいのですが、この今度の法律の改正に基づいて、いわゆる学部だけの大学と、学部のない学系学群だけの筑波大学と、それからまた学部を持っておるが、別の組織も持つ大学と、この三つの大学が、この法文のもとに、今度は学校教育法を改正しなくとも各大学改革案によってできるのではないか、そういう文章だと思うのだがどうだと端的に聞いているのです。
  205. 吉國一郎

    吉國政府委員 いま第二部長がお答え申し上げましたのは、国立学校でございますと、その組織について、この筑波大学の例にございますように法律事項になっておりますから、そこでそういうことを申し上げたのですが、かりに私立大学に例をとって申し上げますれば、ただいま山中委員御指摘のように、学部のみのもの、それから学部以外の組織のみのもの、学部学部以外の組織と混合したもの、その三種類が五十三条からは読み取れるということでけっこうでございます。
  206. 山中吾郎

    山中(吾)委員 初めて法制局長官の明快な答弁をいただいたのだが、これは私は筑波大学はうかうかすると、こういうことでやれば失敗すると思っているのだ。わざわざ医学専門学群なんというのをつくっているが、医学部でいいんじゃないかという感じがするし、あそこに体育専門学群とかあるいは芸術専門学群、そしてわざわざ全部学部をなくしているのだが、ああいうところまで学部をなくするというのは大体おかしい。だから筑波大学においても、検討すると、これはたぶんうまくいかなくなると私は思うのです。そうして学部も置き学群学系も置くというふうな論があると、そのときまた学校教育法を改正せねばならぬのかどうかということを確かめておきたいから聞いたのです。日本の大学制度、重要なんですから、そう簡単に適当でいいじゃないかという問題ではないので、その点明確にしておかないと、せっかく国民の税金をばく大に使って、どうにもならぬ、また法改正だというふうなことがあるのではたいへんだと思って、一応参考に聞いておいたのです。間違いないでしょうね。  次に、文部大臣の任命権のことについてお聞きしておきたいのですが、これはなぜこういうことを申し上げるかというと、二つ理由があるのです。  一つは、これはもう事実として、終戦直後から政府の解釈は動揺してきたことは間違いない。一番最初、端的に拒否権はないと言い、あると言い、またごく狭いけれどもあると言い、この間、この筑波大学法案に関連して奥野大臣は、端的にないという方向で答えられておる。非常に動揺しているのです。決して私は一つであると思っておりません。その点について明確にしておかないと、依然としてそのときどきの政治感覚、政治勢力あるいは閣僚の個人の思想において変動する。荒木文部大臣、坂田文部大臣奥野文部大臣、少しずつニュアンスが変わってくる。それでは大学学問の自由その他に対して非常に不安定なものを与えるのでお聞きをいたしたいのです。  同時に、この筑波大学は、先ほど山原委員が盛んに論議をしたように、学外人によって組織する参与制度も入ってきておる。そして文部大臣の任命権がその分だけ拡大をされてきておるので、海のものか山のものかわからない姿のままに、国立大学が一方に学外からの勧告権の形においてあるいは大学に干渉されるというふうな予想せざるいろいろのデメリットが出てくるであろう。一方に依然として文部大臣の任命権がある。そして一方に学外からの参与制によっていろいろのことができる体制もできた。副学長という新しい制度もここで入っておる。このときに文部大臣の任命権に拒否権があるというふうなことがまた論議をされることになればこの大学は、上からと横からと下からと、もみくちゃにされる可能性がある。そういうことを考えて、この機会にその点は明確にしておかなければならぬと思うので、お聞きしておるのであります。長官の法制局としての従来の解釈をお聞きしておきます。
  207. 吉國一郎

    吉國政府委員 教育公務員特例法の第十条の規定による大学管理機関の申し出がありました場合におきまして、その申し出に違法がある場合、大学の目的に照らして明らかに不適当と客観的に認められる場合は別といたしまして、それ以外に任命権者である文部大臣が、単に適当だとか不適当だとかいうような主観的な判断によって拒否することはできないというのが法制局の従来一貫してとってきた解釈でございます。この考え方は表現において若干のそごはあったかもしれませんけれども、荒木大臣以来政府がとっている一貫した見解でございまして、先日奥野文部大臣が答弁をいたしましたのも同じ趣旨であったかと思います。
  208. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その中で、違法の場合の次に、大学の目的が入っております。これがどうも主観がどんどん入ってくる要素のように私は思うのであります。荒木文部大臣当時から一貫をしておるというのでありますから、これは私が直接質問に立って荒木さんの答弁をいただいたことから、これは正確にしておかなければいかぬので、これは昭和三十八年六月十四日の文教委員会の議事録です。ちょっとそのところだけ読んでみますと、これは私の質問です。「先般の文教委員会で私質問して、文部大臣の任免権の中に学長の拒否権はあるかないかという質問に対して、拒否権は現行法上もある。」「学長に対する任免については拒否権があるということは、前の答弁どおりにいまもお考えになっておられますか。」前にそう言ったから念を押して聞いたんです。これは国立大学総長の任免、給与等の特例に関する法律案審議のときです。  荒木文部大臣は「そのとおりに考えております。幾らか補足さしていただけば、もちろん大学における学問の自由あるいはそれに関連する大学の自治ということのゆえに、すでに御案内のごとく大学の管理機関の申し出に基づいて任免権を行使するという制度に相なっておるわけであります。」これはこのとおりなんです。「したがいまして大学管理機関の申し出がないのに任免ということは、これは制度上あり得ない。拒否権ありといたしましても、大学の管理機関の申し出にノーと言う場合があり得るということであって、管理機関の申し出以外のものを拒否すると同時に任免するという権限は認められていない。」こういう認識なんですよ。申し出の学長候補AならAというものを、申し出もないのに文部大臣が発議をして任命することはできないだけなんだ。申し出た者に対しては拒否するのは当然だという答弁をしているのですよ。いいですか。これはあとずっと読んでもいいのですが、おかしい、おかしいと幾ら言っても、そうではない、そうではないという繰り返しである。そして、しかもこれは総長になると認証官でありますから、閣議に移るんですよ。文部大臣のように拒否権があるという解釈でいけば、閣議というのは全員一致でなければ閣議が成り立たないのだから、文部大臣以外の閣僚でも反対をすればどうだ、そうしたらだめだ、こういう変遷がある。長官、荒木文部大臣当時と少しも変わっていないというのはおかしいのじゃないですか。だからはっきりしてもらいたい。
  209. 吉國一郎

    吉國政府委員 昭和三十八年の六月十四日に、そういう、いま御指摘のような質疑応答があったことは私も承知をいたしております。ただ、その二ページあとでございますが、そこでそのいわゆる荒木大臣の使用した拒否権ということばについての説明がございまして「大学なるがゆえに管理機関の申し出に基づかなければならない、そうでないならば行政長官たる文部大臣が申し出と別個の者を任免することは断じて許さない、あくまでも管理機関の申し出に基づく者でなければならぬ、そうして国民的立場において万に一つもノーと言わねばならないケースがあった場合にはノーと言うことがあり徹るという概念を文部大臣に与えられました任免権の中に当然含まないならば、いわば国民の基本的人権の暢達される窓口がふさがれることになるであろう。」ということを答弁の中で言っております。その拒否権といっても、先ほどの御指摘になりました答弁では、大学の管理機関の申し出に基づいてノーという場合があり得るということを非常に強調をして、そこの面ばかりを答弁の中でうたってございます。それに対していま指摘申し上げました部分においては、そのあとのほうに、「現実には万が一つのことであろうといたしましても、そのレア・ケースの妥当にあらざる結果については国は国民に責任を負わなければならない。」として、憲法の第二十三条と十条との関係をいろいろるる述べて、その調整の結果として、先ほど私が法制局の従来の見解でございますと申し上げたようなことを、荒木大臣としては表現されたつもりであると思います。  その後二十四日の答弁におきましても、これは用語がその当時不適切であるというようなこともあったかと思いますけれども、「一種の緊急避難的な」「だれが見ても、もっともだと思われるようなレア・ケースにおいて、きわめてまれなときに憲法十五条の主権者たる国民の公務員選定権というものを一〇〇%保障する意味合いにおいてまれにはあり得る、そのことを申しておるのであります。」というような答弁がございます。  これは先ほど私が申し上げましたように、大学の目的に照らして明らかに不適当と客観的に認められる場合という表現を使っております。これは当時、それより前に法制局に文部省から照会がありまして、いろいろ検討いたしました結果を回答いたしましたのに基づいて荒木大臣、その後の坂田大臣、現在の奥野大臣の答弁も述べられておるものと思います。したがって、その当時それぞれの御質疑のニュアンスに応じまして答弁のほうもある場合にはこの点を強調し、ある場合にはこの点を強調するというようなことがございますので、やや違ったかのような形を呈するわけでございますが、しさいに点検をいたしますと、荒木文部大臣の答弁においても、きわめてまれな場合には憲法十五条の国民の公務員の選定の権利というものに基づいて、いかにも客観的に明らかに不適当と認められるような場合には、拒否できるのだというようなことであると思います。  その次の坂田文部大臣の答弁も、明らかに「はなはだしく、著しく不適当であるということが客観的に明らかに認められる場合においては拒否権はあり得る、」拒否権ということばを使うことが妥当であるかどうかは別といたしまして、その場合には任命を拒否することもあり得るということを表現し、そのあとで「非常に幅が狭い、狭いけれどもゼロではない。このことだけははっきりいたしておるわけでございます。」という答弁になっております。  それから、奥野大臣の答弁は五月九日の当委員会におきまして、上田委員の御質問に対して、その速記録の一六ページでございますが、「違法な者をこれは任命できませんけれども、」これはいま私が申し上げましたように、手続に違法がある場合「これは任命できませんけれども大学の目的に照らし明らかに客観的に不適当だと認められない限りは、」認められれば別だということにして、「認められない限りは、適当だ、不適当だということで拒否することはできない、」それは主観的な判断で拒否することはできないということで、これは奥野大臣に直接確かめてみましたら、観念的には三つに分けて、違法なものと、それから大学の目的に照らして明らかに客観的に不適当という場合と、それからそれ以外の場合。違法なものはもちろん任命できない。「大学の目的に照らし明らかに客観的に不適当だと認められない限りは、」ということは、認められれば任命しないこともあり得るということを表現して、最後に残りの場合は、適当だ不適当だという主観的な判断で任命を拒否することはできないということを言われたということでありました。  それは、先ほど私が法制局の見解として申し上げました、申し出に違法がある場合、これが第一、大学の目的に照らして明らかに不適当と客観的に認められる場合、これが第二、その二つの場合は別といたしまして、それ以外の場合には任命権者である文部大臣が単に適当だとか不適当だとかいうような主観的な判断によって拒否することはできないというのと同じ見解であると存じます。
  210. 山中吾郎

    山中(吾)委員 実際の荒木さんは、そんなつもりではなかったことはもうわかっているんだが、いまそういうふうに解釈をされて、一分後そういう解釈だということでありますから、あまりそれはもう根掘り葉掘りいたしません。私は面と向かってかつてやったことですから一番よくわかっている。長官よりわかっている。  そこで、大学の目的というのは、これがはっきりしなければならぬ。非常に政治的に拡大、縮小どうにもなることですから、あとで大臣にも聞きたいと思うのですが、なお念のため、今後また同じことを質問するのはいやですから、過去のことをちょっと引き出して長官に意見を聞きたいのですが、坂田文部大臣のときはどういうときに聞いたかというと、九大の井上正治学長事務取り扱いを発令するかしないで政治問題になったときに聞いたのです。そのときに、こういう形で聞いたのですよ。   これは四十四年三月二十五日の読売の夕刊の記事ですが、閣議におけるいろいろのやりとりをここに書いておるのですが、「佐藤首相は二十五日の閣議で「警察は敵」と発言した井上正治九大法学部長の学長代行就任上申に関連して「文相がどんな場合に拒否できるかを法律的に十分検討するよう」高辻内閣法制局長官に指示した。高辻長官は一両日中にも文部省から事情を詳細に聴取、国家公務員法、教育公務員特例法、人事院規則との関連を整理して、早急に結論を出す方針である。この日の閣議で、荒木国家公安委員長が国立大学二期校の入試阻止妨害と警察官警備状況を報告したあと、斎藤厚相が「九州大学井上学部長が学長代行に選ばれたというが、そんな発言(警察は敵、墜落したジェット機の所有権はアメリカ側にあるのだからほしければ取りにこい)をしたものがどうして選ばれるのか」と質問、坂田文相は「学長代行は順番で選ばれる仕組みになっている」と説明した。」これは拒否権に関係ないという説明でしょう。 これは、ぼくのことばなんです。  「また、学長任命権者である文相の拒否権について「思想問題で拒否するようなことはしたくない。ただ、言動が国家公務員としてはなはだしく不適格なら拒否できるだろう。しかし、こんど(井上学部長の場合)は不適格かどうかわからない。」」 これは、坂田さんのそのときの発言。  これは思想いかんによって拒否権があるというように書いておる。「これについて荒木国家公安委員長は「文相はどんな場合に拒否できるかの基準をはっきりさせるべきだ」と発言、佐藤首相は「法律的に十分研究してほしい」と高辻長官に指示した。」非常に政治的である。 これは私のことばをちょっと入れてある。「これをめぐって原田運輸、野田自治、大平通産の各相などから意見が出、井上学部長の発言については慎重な配慮をすべきだ——などの見解が表明されたが、荒木国家公安委員長は  「国立大学の学長は(職務の内容から見て)学者というよりも行政長官だ。学問の自由を享受する学者としての立場と行政長官としての立場をはっきりさせるべきだ」と強調した。これに関連して床次総務長官も「総理府人事局で国家公務員全般を管理しているので、教育公務員についても十分検討したい」と述べた。内閣法制局としては「教育公務員特例法第十条は、学長を文相の職権で任命することは否定しているが、大学から申し出があったものについて任命を拒否できることを否定していない」との原則的な立場に立ちながらも「憲法で学問の自由は保障されていることから、文相の拒否権は大学の自治にもかかわり乱用すべきではない」としている。しかし、教育公務員特例法の解釈問題と同時に、学長の職務の実質的内容に着目すれば、国家公務員法でいう一般の行政職としての職務が期待されているという面があることから、将来政府が中教審の答申を待ってきめる大学問題の具体策の中心になるので大学内部の実情、諸外国の例などを十分考慮しながら立法論としても検討する構えである。」現行法におきましては、閣議でこういうさまざまな論議が出ておるのが新聞記事に出ておる。 それを取り上げて、非常に危険なものがあるのだというので、私がこれに対して  現行法としてはやはり形式的、純形式的任命権であって、実質的に任命権があるという解釈は下しがたいものだから、政治的、政策的にあらゆる拡張解釈をしながら、ここに一つの悩みが出ておる。それでいままでの二十数年間、戦後の文部省の権威解釈は拒否権なしと明確に言ってきたはずである。それをそういう政治的便宜によって途中から変更し、そしてこういう席上でいつの間にか権限がないと考えてきたのがだんだんとここにあるように、思想的な問題を含んで拒否ができるような方向に動きつつあるというので、質問をしておるのですよ。だから、内閣法制局長官も動揺し、井上学長事務取り扱いのときにこういう論議がされる現実があって私が取り上げたことなので、いまなお将来に向かって動揺をしていくだろう。こういう新しい大学方式、筑波大学方式が出てきたときに、この機会に決定的に、文部大臣の任命権は違法のとき以外は拒否はできないという明確なる解釈をしないと、どんなにそれ以外のことをこの筑波法案について論議をしても、一番かなめのところがくずれてしまうのだ。そうすると、現在の内閣全体もそうなるということを心配をするので、特に取り上げて法制局長官に聞いているのですから、それは明確にしなければいかぬと思うのです。それが法制局長官、責任を持って閣議の決定にあやふやなことのないように、その職務を果たすべきであるので、私お聞きしているのです。これは速記録、事実書いてあるとおりですよ、私が読んだのは。閣議は動揺しておったということは間違いないでしょう。もう一度答弁してください。
  211. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど申し上げましたように、荒木文部大臣以後につきましてはその表現においてややそごする点はあったかと思いますけれども、最終的な見解といたしましては、荒木大臣、坂田大臣奥野大臣との間にそごするところはなくて、先ほど私が法制局の見解として申し上げたところと実質的には同じ見解を答弁において述べたものと思います。これは昭和三十七年に、先ほど申し上げましたように、文部省から法制局に解釈の照会がございまして、それに対して文部省回答をいたしましたものを台本と申しますか、それを基本といたしまして、歴代の文部大臣が答弁をされておるはずでございますから、違うはずはございません。ただ、そのときどきの御質疑の重点に応じて、答弁のほうの重点の置き方も違ったかと思いますけれども、たとえば坂田国務大臣も、さっきも申し上げましたけれども、いまの山中委員の御質疑に対して一ぺん答弁をしたあとで、さらにもう一ぺん私は最終的に、非常に幅の狭いものであっても、それはゼロではない、特にはなはだしく不適当であるということが客観的に認められた場合は、拒否することもあり得るということのほうが、現憲法下において正しい解釈であるということでございまして、荒木大臣が非常に広くて、坂田大臣が非常に狭くなっているということは、全体を通じてごらんいただけば、ないと存じます。
  212. 山中吾郎

    山中(吾)委員 全体を見れば荒木さんは狭くなったんだ。いまのような問題を取り上げた私の坂田文部大臣に対する質問にこれは答えておるのです。「大学管理機関の議を経て文部大臣が任命をする、こういうたてまえになっております。その際といえども、はなはだしく不適当であることが客観的に認められるような場合には拒否することもあり得る、任命しないこともあり得る、こういうことがこの十年来一貫したわれわれの法解釈でございます。」これが坂田文部大臣。私が念を押して、「最も簡明にいいますと、拒否権があるということですね。」坂田文部大臣が、「はなはだしく、著しく不適当であるということが客観的に明らかに認められる場合においては拒否権はあり得る、こう解釈すべきであると思います。」だから狭く、しかし拒否権はあるんだということを何回も何回も言っておるので、荒木さんよりは非常に狭い解釈、しかし拒否権は否定をしない。そこでこれに対して、「これは重大なる御答弁だと思うのです。はなはだしくとか言ったって、文部大臣自身が認定をされるのでしょう。ほかに認定する人は何もない。あなたがはなはだしく不適当と思えばそれまでなんだ。こういう法案を出しておって、一方に形式的な任命権を、そういう実質的な任命権として拡張解釈をされて、それを前提としてこの法案をおつくりになっておるならば、」大学の自治は次第に奪われていくのではないかという意見を何回か繰り返して、そしてこの論議を終わっておるのであります。  そこで、あなたが同じと言うのは、そうでない。そういうことは、将来の問題を中心に言っておるのですから、かれこれあげ足を取りませんが、この間九大の井上学長事務取扱問題の東京地裁の判決請求棄却があり、裁判で一つの結論が出ましたね。それには、私が論議をした井上学長事務取扱の中で、拒否権がある、ないという論議をしたのです。同じ問題で、文相には拒否権がないと判決を下した。これについては長官はそのまま認めますか。
  213. 吉國一郎

    吉國政府委員 本年五月一日の東京地方裁判所の判決の九州大学井上学長代行名誉棄損事件の判決でございますが、その第二十六丁の終わりのほうでございますが、「そして、原告に関する上申書の提出、換言すれば教特法一〇条にいう「申出」については、明らかな手続違背等の形式的要件の不備を認めるに足る証左はなく、」手続的、形式的不備を認めるあれはない。「また原告自身について、公務員の欠格条項に該当し、」その次でございますが、「該当し、または同条項に比肩すべき明らかな不適格性を窺うに足る資料もないのであるから、文部大臣は、上申書の受理後、相当の期間内に原告を九州大学学長事務取扱として発令しなければならない職務上の義務を負担するに至ったといわねばならない。」といっております。したがいまして、「公務員の欠格条項に該当し、」とか「または同条項に比肩すべき明らかな不適格性」という文言を使っておりますそのことから申しましても、この判決は全体としては政府と申しますか、文部省が勝ってまた負けたという事件かと思いますけれども、そこの中でも「同条項に比肩すベき明らかな不適格性」ということばを使いまして、東京地方裁判所の判決でも不適格の場合には拒否できるのだということを言っております。ただこの判決では、教育公務員特例法十条が適用になるという前提で議論が進められておりますけれども、私どもの見解では、井上正治教授の場合は、学長そのものではございませんで、学長代行のいわば職務指定の問題でございますので、教育公務員特例法十条の問題ではないという考え方を法制局としては持っております。
  214. 山中吾郎

    山中(吾)委員 判決では、「任命行為」だとはっきり言われておるので、あなたの意見は否定をされている。それはそれであなたは認めなければいかぬですよ。判決で学長事務取扱は「任命行為」だと言われているのです。あなたは反対するのですか。
  215. 吉國一郎

    吉國政府委員 これは井上教授から名誉毀損として訴えられまして、そこで名誉毀損の損害賠償の請求になりましたけれども、結論としては文部省が勝訴したようなかっこうになっております。したがって、上訴できないわけでございます。そこで、下級審のまま地方裁判所の判決として確定いたしましたけれども、この内容については先ほど申しましたようにそういう議論がございます。最高裁判所において確定いたしました判決については、もちろんのことでございますが、この場合には訴訟技術として、この内容に政府側として不服でございましても、訴訟としては勝ったわけでございますから、そこで、上訴をしておりませんので確定をしたということでございます。
  216. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あまりそんないろいろなことを考えないで、法律論で、単純でいいのですから。皆さんのほうでは職務命令、任命行為でないということでいわゆる拒否権に関係ないという立場を貫くと言われたのでしょう。だから、これは職務行為か任命行為かということについて関係なく、判決では学長事務取扱の発令は単なる職務の問題じゃなくて一定の仕事を前提とした任命行為だというのをすなおに受けたらいいじゃないですか。このことについて、かれこれそんな変なところで肩をいからす必要はない。しかし、ここには直接問題はない。判決には教育公務員特例法第十条によって大学の学長、教員及び部局長の任命については、大学の申し出どおりに文部大臣が任命すべきで、国側に選択の余地や拒否の権利はないという文章がある、任命行為を前提として。井上氏の場合についてはいろいろなそのときの状態があったので、文部大臣がその事情をいろいろと調査する必要があるから二カ月引き伸ばした。文部大臣の発令そのものは違法と考えないと言うだけですよ、判決は。まず二カ月の引き伸ばし云々と書いておるのであって、これも三カ月になったら、その引き伸ばしは同時に拒否とみなすという判決を裁判が下せば、この点においても判決は否決される思想なんです。このことを全体含んで、判決全体としては、違法の場合が——拒否権がないということが明確に出ているじゃないですか。これに皆さんが違法及び大学の目的にという抽象的ことばをもって一つの拒否権があるとしてきたことに対して、判決はノーと言っておると思う。こういう判決が出たことについても、やはりすなおにそれを検討して、その線に沿うて、憲法の学問の自由、そこから流れてくる大学の自治、そして現在の法体系全体を考え、この判決の出た上に立って、法制局長官が、将来に向かって、まず拒否権はない、違法の状況以外にはないという解釈を下すべきではないか。どうです、それは。
  217. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど申し上げましたように、その申し出について、この判決では、「公務員の欠格条項に該当し、または同条項に比肩すべき明らかな不適格性を窺うに足る資料もないので」云々といっております。というのは、公務員の欠格条項に該当するのに比肩するような明らかな不適格性があれば、拒否ができるということを——拒否できると申しますか、その申し出どおり任命しないことがあり得ると暗にいっていると思います。それを「窺うに足る資料もないので」云々といっておりますのは、そういうことであろうと思います。ただ、この判決につきましては、さっきも申し上げましたように、「教特法一〇条の類推適用があるべきである。」という判決が結論を出しておりますけれども、この昭和四十四年当時には、私どもは、少なくとも法制局といたしましては、学長事務取扱なりあるいは学長代行なりについては、職務指定をやって、教育公務員特例法の十条の直接の適用はないということでいっておりましたので、その前提が違いますけれども、少なくとも、そういうことにいたしましても、この判決では、明らかな不適格性があれば任命しないこともあり得るということをいっておるものと思います。
  218. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そのことがいわゆる違法の場合と私はもう九九%一致する解釈と考えるのですが、いかがです。
  219. 吉國一郎

    吉國政府委員 繰り返しになりますが、「明らかな手続違背等の形式的要件の不備を認めるに足る証左はなく、」これは違法な場合にはだめだという、先ほどの議論と同じでございます。「また原告自身について、公務員の欠格条項に該当し、または同条項に比肩すべき明らかな不適格性を窺うに足る資料もないので」ということは、たとえば坂田文部大臣であれば、「はなはだしく、著しく不適当であるということが客観的に明らかに認められる場合」に相当するわけでございます。その場合には任命しないことができるということをいっているものと思いますので、やはり、先ほど法制局の見解として申し上げましたように、不適当であることが客観的に明らかに認められる場合においては任命しないこともあり得るということにならざるを得ないと思います。
  220. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この裁判は、文部者が二カ月発令を延期したことに対しての判決なんですよ。だから、二カ月の延期については、当時はやむを得ない。拒否権があるという判決じゃないのですよ。あなた間違ってないですか。二カ月延期したことについては、やむを得ないということでこの判決を下しておるのであって、これについて永久に拒否するということを認めておる何の意味もそこに入っていないのじゃないですか。
  221. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど来何べんも申し上げましたように、原告に関する上申書の提出——上申書の提出というのは、この井上正治教授を学長代行に任命してもらいたいということを文部大臣に対して上申した書類の提出については「明らかな手続違背等の形式的要件の不備を認めるに足る証左はなく、また原告自身について、公務員の欠格条項に該当し、または同条項に比肩すべき明らかな不適格性を窺うに足る資料もないのであるから、文部大臣は、上申書の受理後、相当の期間内に原告を九州大学学長事務取扱として発令しなければならない職務上の義務を負担するに至った」といっております。と申しますことは、「同条項に比肩すべき明らかな不適格性を窺うに足る資料もないので」義務を負うに至った、うかがうに足る資料があれば義務を負うに至ったという結論にはならないわけでございます。その点を申し上げまして、先ほど法制局見解として、明らかに客観的に不適当であると認められる場合には任命しないこともあり得るということを申したつもりでございます。
  222. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あなたの解釈を聞いておると、どうもこの判決の解釈、それから教特法をすなおに読んだときの解釈からは、だいぶ広いように思うのです。あなたのような解釈の中から、ああいうふうな、警察は敵だと言ったから不適格だといって、拒否権を発動するようなことが閣議で問題になっている。思想というものが必ず入ってきて、実質的な、その当時の閣僚、文部大臣あるいは政府の偏見あるいは思想によって自主的に拒否するというふうな方向に行く可能性が残ってくるのが、あなたのいまのような拡大解釈だと思うのです。  別なことばで言いましょう。法律的手続の違法ですね、評議会の議を経ていないとか、評議会のあり方はどうも有効でなかったとか、教授会の行き方について、どうも手続上おかしかったとか、あるいは欠格条項、これは当然違法でしょう。その次に、はなはだしく不適格というか、それをあなたは拡大して言いたいんでしょう。そのはなはだしく不適格というのは思想その他の関係が入っていない、——何が入っているのですか。これは一番大事なんです。私は、政治の力関係において、幾らでも拡大できるような解釈を法制局長官はしてはならぬと思うのです。先ほど私が読んだように、ああいうちょっとしたことばだけで拒否権というのは閣議で論議をされてきたのじゃないですか。心配ないですか。ないならないことを証明してください。
  223. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど申し上げましたように、申し出に違法がある場合には任命しないことがあり得る。第二に、大学の目的に照らして明らかに不適当と客観的に認められる場合という文言を用いております。これは具体的にはどういう場合であるか、これはたまたま荒木文部大臣時代にもありますように、ほんとうにまれな場合であろうと思いますので、個々の具体的な事案によって違ってまいると思いますので、具体的にどういう場合ということは申し上げるわけにはまいりません。まさに大学の目的に照らして明らかに不適当と客観的に認められる場合には任命しないこともあり得るのではないか。その点は文言は違いますけれども、先ほどおあげになりました東京地方裁判所の判決においても、公務員の欠格条項にも比肩すべき明らかな不適格性ということを言っております。公務員の欠格条項は、国家公務員法の三十七条にあったかと思いますが、それにも比肩すべき明らかな不適格性があれば、この井上正治教授を任命すべき拘束は受けないということに相なると思います。この判決をお読みになれば、それは「明らかな手続違背等の形式的要件の不備を認めるに足る証左はなく、」ということが一つ出てまいります。これも「明らかな手続違背等の形式的要件の不備」があれば任命しない、しないこともあり得るという第一の場合でございますね。  それから、その次に、「原告自身について、公務員の欠格条項に該当し、または同条項に比肩すべき明らかな不適格性を窺うに足る資料もないので」と書いてございます。ということは、資料があれば、そういう資料があれば拒否できるということになることは、論理上当然であろうと思います。  それを先ほど来申し上げておるわけでございまして、こういう二つの証拠がないので、文部大臣は「原告を九州大学学長事務取扱として発令しなければならない職務上の義務を負担するに至った」と書いてございます。ということは、このような証左があれば発令しなければならない職務上の義務を負担するに至らないということに相なることは、ほぼ明らかではないかと思います。  その点を私どもの表現では、先ほど申し上げましたように、教育公務員特例法第十条の規定による大学管理機関の申し出があった場合において、その申し出に違法がある場合、大学の目的に照らして明らかに不適当であると客観的に認められる場合は別として、それ以外に任命権者である文部大臣が、単に適当だとか不適当だとかいうような主観的な判断により拒否することはできないということを、はっきり申し上げているつもりでございます。このような解釈を法制局から文書で文部省に渡してございますけれども、それにのっとって、文部省はその後、どの程度この事例があるかわかりませんけれども、第十条の任命をやってまいったものと思います。その間に、そのときの政治的な勢力によってよごされるというようなことは、歴代の文部大臣のお人柄、識見から申しまして、絶対にあり得なかったであろうと思いますし、今後もそういうことはないことであるというふうに申し上げてよろしいと思います。
  224. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それなら別な角度ではっきりするように、もう一度別な表現でお聞きいたしますが、判決に、手続上の違背、それから公務員法の欠格事項、これに合わないならやはり違法的条件ですからね、そういう判決のことばと、あなたが文書で言った、違法または大学の目的に反するという表現と内容的には一つですか、違うのですか、これははっきりしてください。
  225. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど指摘申し上げましたのは、公務員の欠格条項に該当するというものに準ずるような、要するにこの判決文では、「同条項に比肩すべき明らかな不適格性」と書いてございます。これは、違法性ではなくて、まさに私どもの申しております、大学の目的に照らして明らかに不適当と客観的に認められる場合に、これはほぼ同じ内容を示しているものではないかと思います。「不適格性」と申しますのは、要するに資格を欠いているという、学長としての十分なる、適正な資格を有していないという意味でございましょうから、違法の問題ではなくて、適、不適の問題であろうと思います。それを、むしろ私どものほうの表現の、大学の目的に照らして明らかに不適当と客観的に認められる場合というほうが、限定的な感じはいたします。
  226. 山中吾郎

    山中(吾)委員 だから、いま一度言いますよ。判決文のあの文章と、あなたの違法または大学の目的と言っておるのは、表現は違うけれども内容は同じ、それは同じですと言うのか、そうではありませんとか、それだけでけっこうです。いま一度言ってください。
  227. 吉國一郎

    吉國政府委員 教育公務員特別法十条の規定による……(山中(吾)委員「もうそんな答弁は要らぬ」と呼ぶ)大学管理機関の申し出があった場合に、そのとおり任命しないことがあり得る場合を表現したものとしては、足せば結果としては同じ結果に相なるのではないかと思います。
  228. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それはぼくに言わせると、またごまかしに聞こえるのです。それでは日本語として、大学の目的とは何です。幾らでも解釈できるじゃないですか。そんな答弁するならまた入っていかなければならぬ。
  229. 吉國一郎

    吉國政府委員 学校教育法の第五十二条にあるとおりでございます。
  230. 山中吾郎

    山中(吾)委員 読んでください。
  231. 吉國一郎

    吉國政府委員 第五十二条には、「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」とございます。
  232. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それはどういうふうにでも主観的に解釈できると思う。それはどうにも拡大できるから、だから判決もそういうことをいっていない。手続上の違法、公務員法の欠格条項に反するという内容で、はなはだしく不適格というふうなことばはもっともっと狭いはずです。その表現なればどうにでもなるでしょう。だから私は、そういう日本語を不適当だ、どうだということは別にして、この大学の目的ということばだけで教育権の論議をすれば幾らでも拡大できるから、その論議は、日本語の適、不適はそれは別にしましょう。だから端的に、この間下した判決のとおりわれわれは解釈をし、その判決の文章をいままでの解釈と同じようにして、今後そういうことで進んでいこうということなのかどうか、それを長官にもう一度聞きましょう。説明要らないから……。
  233. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど申し上げましたように、この判決については、基本問題において私ども意見を異にする点がございます。ただ、この判決においてさえも、こういうことをいっているという証左として申し上げただけでございまして、この判決どおりに解釈するということは申し上げかねる次第でございます。
  234. 山中吾郎

    山中(吾)委員 判決どおり解釈すると言われたんですか、いま一度言ってください。
  235. 吉國一郎

    吉國政府委員 この判決の文言によって処理をするということを申し上げることはできないということを申し上げたわけでございます。
  236. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは重大だと思うのです。現在目の前にその判決が出て、そして現在の教育公務員特例法その他からいって、あの判決が出、しかも先ほど私が質疑に出したときと同じ事件なんです。その判決にあなたは違背するのですか。反対するのですか。反対するなら最高裁判所でやりますか。それでは筑波法案なんというものも、筑波大学なんていうものはどうなるかわからぬ。
  237. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど申し上げましたように、この東京地方裁判所の判決は、形式上は国が勝ったわけでございます。したがって、異議を申し立てることはできなかったわけでございます。そこで、もしこれが、当事者たる文部省が敗訴をしておりまするならば、上訴をして最後まで意見をまとめることになったと思いますけれども、これは、形式上は文部省側が勝って、原告が敗訴をしたわけでございます。したがって、そのまま確定してしまったものであるということでございます。
  238. 山中吾郎

    山中(吾)委員 判決には従わないのですね。政府は判決に従わないのですね。
  239. 吉國一郎

    吉國政府委員 法制局の先ほど申し上げた答弁と、この判決でこういう場合には任命しないこともできるといっている幅が同じかどうかというお話でございましたので、その点は、同じであると解釈することができましょう。同じであると申し上げたわけでございます。ただ、その任命権者としての文部大臣の態度と申しますか、教育公務員特例法第十条を適用する者の指針といたしまして、先ほど申し上げました文言によって処理することが、行政府としては正しい態度であるということで申し上げたわけでございます。
  240. 山中吾郎

    山中(吾)委員 ぼく頭が悪いのか、どうもわからないんだな。現在の判決そのものは認めるが……認めないというのですか。
  241. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど来申し上げておりますように、教育公務員特例法第十条の解釈といたしまして、文部大臣が任命権を行使する場合の指針として、どういう文言が適当であるかということを行政府としては模索するわけでございます。その場合に、先ほど法制局の見解として申し上げた、またその法制局の見解と同時に、歴代の文部大臣もそういう見解であったとして御披露申し上げましたように、教育公務員特例法第十条の申し出があった場合において、その申し出に違法がある場合、それから大学の目的に照らして明らかに不適当と客観的に認められる場合は別といたしまして、それ以外に、任命権者である文部大臣が、単に適当だとか不適当だとかという主観的な判断によって拒否することはできないということを、教育公務員特例法第十条の適用者としての文部大臣が、指針として今後行政をやっていくということを申し上げたつもりでございます。  なお、東京地方裁判所の判決に従わないのかというようなお話もございましたけれども、判決と申しますものは、法律的な拘束力がございますのは主文でございます。これは理由として中に述べられてあるだけでございまして、判決の理由の中に述べられておることがすべて法律現象を支配するわけではございません。判決の拘束力は主文のみでございます。
  242. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あなたを拘束しておるかどうか、だれも聞いていないのですよ。そうでなくて、判決に出ておるこの思想、文章が、法制局長官のいままで使ってきた文章とは違う。だから、表現はいますぐ改められないのでしょうが、あの判決に書いておる拒否権に関する内容と、内容的には一つか、一つでないか、そう聞いているんだ。だから、一つです、そうじゃありません、あなたのほうは内容を拡大されて、もっと広く拒否権を行使できるというふうに考えておるのか、どっちなのか聞いているのです。はっきりしなさい。
  243. 吉國一郎

    吉國政府委員 判決文では立て方が違っております。それで、拒否することができる場合——拒否することができると申しますか、その申し出どおりに任命しないことができる場合、これを足せばほぼ同じになるでございましょうと申したつもりでございます。私どもの表現としては、申し出に違法がある場合と、大学の目的に照らして明らかに不適当と客観的に認められる場合、この二つの場合は別としてと申し上げましたのは、任命権者である文部大臣が、このような場合は申し出どおり任命しないことがあり得るということでございます。この判決のほうでは「明らかな手続違背等の形式的要件の不備を認めるに足る証左はなく、」ということで、一つが明らかな手続違背等の形式的要件の不備がある場合、それから「原告自身について」ということで、「公務員の欠格条項に該当し、または同条項に比肩すべき明らかな不適格性を窺うに足る資料もない」という立て方をしておりますので、足せばほぼ同じになるのではないかということを申し上げたつもりでございます。
  244. 山中吾郎

    山中(吾)委員 長官の答弁があいまいで、まだ危険が残っておるようでありますけれども、私はこの問題はこれで終わりにいたしません。いまのようなことを言っているとまた必ず問題が出てくる。  そこで、なぜこういう問題を特に私が強調しているかということだけは明確にしておかなければならぬと思うのですが、筑波大学のように新しい大学形態というものが出てくる。そして学外からの参与制が出てくる。副学長が出てくる。文部大臣の任命する対象が拡大をされてくる。しかも、学内の権力は学長室に集中されてくる。そのときに、いままでのような解釈のしかたで、文部大臣が、そのときどきの政治的な力によって拒否権の範囲が拡大されたり、縮小されたり、絶えず動揺するようなことでは、大学の自治というものは事実上空洞化していくのではないか。この機会に、こういう問題は筑波法案に関連をしてこそ——与党の委員が二人奥野文部大臣質問したときに、拒否はできないということばを使った。これはなかなか使わない。初めてこのことばを使った。そういうことも考えて、この法案審議する上で一番大事な、学問の自由を保持するためのかなめだと思うので、私はこの問題を特に取り上げた。実際は、こういう問題は閣議の決定まで取り上げなければならぬと思っておるのでありますが、とりあえず法制局長官をお呼びしたのでありまして、いまのようなあいまいな答弁ではまた何か起こるんじゃないかということで非常に心配をいたしております。  私は、現行法のもとにおいては、ほぼ違法といっていいと思うのです。欠格条項ということばを使って、それを含んで言うならば、違法の場合以外に拒否権はない。ただ、疑問のあるときには、任命について、直ちに発令をしないで検討するというふうなことだけが残っておるんだ、そういうふうに解釈をしておるのでありますが、この判決について、法制局長官が内容的にそのとおりですと答えない限り、私はこの問題を終わりにするわけにまいりません。せっかく判決が出ておる。そこで、この問題をこれ以上続けるつもりはありませんけれども、次の問題が具体的に出たときに——大学の目的というものはおそらくだんだん拡大されていくでしょう。これを明確にするまでに、日本には大学がたくさんあるのですから、またいろいろ問題が出るので、私は今後の問題として残しておきたいと思います。  そこで、この法案の全体の構造の中でいまのような問題をどうしても取り上げねばならぬので、私は問題にしたわけでありますけれども最後に、奥野文部大臣文部大臣の任命権の運用その他の精神についていま私と長官と論議をしておったわけですが、もう一度明快なるあなたの御意見を聞いて終わりたいと思います。
  245. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 これまで申し上げてまいりましたことと、少しも変わりはないわけでございます。拒否権ということばは、人によっていろいろとられるものでございますので、私は三つに分けていままでお答えをしてまいりまして、そして適、不適ということで拒否することはできない。一般的にこういうことを拒否権があるないということで議論されているんだから、私は拒否権はありません、こういうお答えのしかたをするのです、こう申し上げてまいったわけでございます。またこれまでも、大挙の申し出を、政府が拒否した例はないわけでございます。将来もまた、私はそうなければならない。違法なものでありますとか、あるいは明らかに客観的に不適当だというようなものを申し出ることも、私はあり得ないと思うのであります。これまで拒否いたしませんでしたと同じように、将来も拒否しない姿が続いていくものだ、かように確信しております。
  246. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕   〔委員長退席、塩崎委員長代理着席〕
  247. 塩崎潤

    塩崎委員長代理 速記を始めて。  山原君。
  248. 山原健二郎

    ○山原委員 一点だけ、ちょっと確認したいのですが、先ほど大学課長のほうで、教特法の四条二項による教員の人事は評議会でやると言いましたか。私の聞き間違いかな。
  249. 大崎仁

    ○大崎説明員 現行の教育公務員特例法の四条の二項では「前項の選考は、」これは教員の採用、昇任等は大学管理機関が行なうと書いてございますが、これを学長と読みかえておるわけでございます。それを受けまして「前項の選考は、」と、こうございまして、ごらんの法令集でまいりますと二項の六行目に「教員及び学部長以外の部局長については、大学管理機関の定める基準により、行わなければならない。」というふうに書いてございます。その「教員及び学部長以外の部局長については、大学管理機関の定める基準」と申します大学管理機関は、二十五条の第一項の三号で、「評議会」というふうに読みかえてございまして、これが御指摘の評議会が定める人事に関する基準の一つの場合であろうという意味でお答えを申し上げたわけでございます。
  250. 山原健二郎

    ○山原委員 その点についてあとで……。  先ほど筑波大学における人事委員会の問題について質問をしておって、途中で中止をしておるわけですが、私の主張しておりますのは、人事委員会は不必要だということなんです。特に数学の例を出しましたけれども学系教員会議にはそれなりの専門家が集まっているわけですから、そこでやっていくというのが教特法の精神でもあるし、その原則を守るべきだというふうに主張して、その点では主張は食い違っておるわけです。特に、木田大学局長のお話でも、たとえば数学について物理、理科関係あるいは医学関係で、そういう点では話し合いをするという話がありましたが、これは数学についてのそれぞれ権威とか、あるいは数学に持っておるところのその先生の経歴とか業績とかいうものに対する評定をする資格を持っておる方、評定し得る可能性を持っている人がやっているわけですから、それと筑波における人事委員会と混同されては困る。筑波の人事委員会総会には、先ほども言いましたように、十五名というわけですが、この十五、六名というのも多少問題がある。たとえば、教育審議会、研究審議会というようなところから、皆さん資料では五名ずつ出るわけですね。副学長五名、教育審議会から五名、それから研究審議会から五名、それから専門委員会から委員長一名、これで十六名というのが皆さんの案ですから、だから数学なら数学という科目でとってみるならば、十六名の人事委員会の、一名だけしかその専門家はいないというところで人事の決定がなされるということに対して、私は、それは教育公務員特例法の精神からいっても間違いではないかということを主張してきております。その点では意見の食い違いがあるままで先へ進まざるを得ないわけです。  ところで、そういう性格を持った人事委員会を、教特法の改正で一般化させるというのが、今度のいわゆる国立学校設置法の一部改正の法律案の中身になっています。教特法二十五条の一項一号及び五号の読みかえ規定の改正で、「筑波大学にあっては、人事委員会」と書いていないわけですね。わざわざそう書かないで「国立学校設置法第二章の二の規定によりその組織が定められた大学にあっては、人事委員会」と書いているわけですね。私はこの趣旨について、まず伺っておきたいのです。   〔塩崎委員長代理退席、委員長着席〕
  251. 木田宏

    ○木田政府委員 筑波大学が、御指摘のように、国立学校設置法に「第二章の二」という新たな章を起こしまして、そこに規定されることになったわけでございますから、教育公務員特例法でこれを受けます際に、その「第二章の二」という特定の章名をつけまして、それで引用したわけでございまして、筑波大学以外のことを意図しておるものではございません。変わりはないと考えております。
  252. 山原健二郎

    ○山原委員 政府は、この法案筑波大学だけの問題だということを、しばしば強調してまいっております。これを拡大するとかいうようなことについては、極力否定的な発言をしているわけですね。どうして筑波大学に限定しなかったのか。「国立学校設置法第二章の二の規定によりその組織が定められた大学にあっては、人事委員会」、こういう表現のしかた、これは近い将来、人事委員会を設ける大学がほかにもあると想定をして、こういう法文上の文言になっているのか、そういう疑問がありますので、これについて答えていただきたいのです。
  253. 木田宏

    ○木田政府委員 「国立学校設置法第二章の二」というのは、「筑波大学組織」という章名の規定でございまするから、特例法で第二章の二の大学というのは、筑波大学のことだというふうに考えております。
  254. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、「国立学校設置法第二章の二の規定によりその組織が定められた大学」とは、具体的には筑波大学だけなんですか。
  255. 木田宏

    ○木田政府委員 御提案申し上げておりますように、第二章の二には、具体的に筑波大学だけを書いておるわけでご、さいます。
  256. 山原健二郎

    ○山原委員 この二章の二の規定は「筑波大学組織」という表題になっているわけですね。そしてそれには、学群学系参与会、評議会、人事委員会が一括して書かれております。とすると、二章の二の規定によって組織が定められた大学というのは、これらの組織、すなわちいま言いました学群学系参与会、評議会、そして人事委員会、こういう組織を一括して持っている大学というわけですね。それ以外にはないわけですね。一括してこの組織を持っている大学、それが二章の二に該当する大学、そういうふうに理解してよろしいですか。
  257. 木田宏

    ○木田政府委員 第二章の二に「筑波大学組織」といたしまして、学群学系のことと評議会のこと、人事委員会のことをあわせて書いておるわけでございますから、それらを一括して持っておる筑波大学のことに相なるわけでございます。
  258. 山原健二郎

    ○山原委員 たとえば、ある大学学群学系に賛成をした場合ですね、たとえば教育研究を分離するということに賛成をした場合、その際に、しかし参与会についてはどうも賛成できない、こういう例が今後出ました場合に、この大学というのは、二章の二の大学になるか、あるいはそれはそうではなくて、二章の三というふうに新しい規定を設けてくるのか、それはどうですか。
  259. 木田宏

    ○木田政府委員 将来そのような大学が出てまいりました場合に、まだ具体のものとして想定いたしかねますが、出てきた段階でよく検討して、法制局とも相談をし、どういう規定にするかも、なお、今後とも検討したいと思います。
  260. 山原健二郎

    ○山原委員 法制局に伺いたいのですが、二章の二の大学というのは、いま私が読み事げましたからおわかりだと思いますが、たとえば学群学系参与会、評議会、人事委員会、これはワンセットになっているわけですね、この場合には。では、その中で、たとえば学群学系については賛成をするが、参与会あるいは人事委員会には反対だとか、さまざまな形態が出てくると思うのですが、もしそういう改革案を持った大学が出てまいりました場合には、法制局の見解としては、これはどういうふうになるわけですか。
  261. 林信一

    ○林(信)政府委員 ただいま大学局長の申されましたように、ただいまのところはそういうものを予定しておらないということでございますから、仮定のお答えになるかと思いますが、かりにいま仰せのような例が出てまいりました場合には、この国立学校設置法をまず改正いたさなければならないわけでございます。国立学校設置法をどういうふうに改正するかというのは、その際のテクニックの問題でございまして、第二章の二の中にうまく入れるかどうかというのは、実は出てきてみないとわからないわけでございまして、第二章の二の中に入ってしまえば、この教育公務員特例法の規定は改正する必要はないわけでございますが、かりに第二章の二の規定に入らないというような、第二章の三というような別な大学ができますれば、教育公務員特例法も改正せざるを得ないということに相なると思います。
  262. 山原健二郎

    ○山原委員 学群学系を認めた場合、そして参与会、あるいは人事委員会については反対である、あるいは参与会には反対だが人事委員会はやむを得ないだろうというような改革案を持つ大学が発生をしました場合、これはないとは言えないわけでございますから、それは、政府はどう取り扱うつもりですか。
  263. 木田宏

    ○木田政府委員 具体の問題として、どこかの大学から御相談がありましたならば、できるだけその大学の御趣旨は生きるように考えてまいりたいと思います。ただ、学群学系というお考え方をとりたいという大学の場合に、人事の問題につきましては、筑波と同様に人事委員会という問題が必然的に必要になってくるのではないかというふうに考える次第でございますが、これは次の大学の問題として御提案がありました際に、よく御意見を聞きながら検討してみたいというふうに考えます。
  264. 山原健二郎

    ○山原委員 研究教育の分離をしました場合ですね、それを認めて、しかし、人事委員会には反対であるという可能性はあるわけですよね。あるわけですが、それは二章の二に該当するか該当しないか、それは現在は不明だということですね。そういう学系学群を認めて、人事委員会を認めないという改革案を持った大学が出た場合に、その大学人事は、やはりこれは教授会が行なうという形で残るわけですね。あなたの言われるのは、学系学群を分けた場合には、人事委員会は要るだろう。そうすると、参与会を別にしまして、学系学群人事委員会はセットになってお考えになっているわけですか。
  265. 木田宏

    ○木田政府委員 筑波につきましてはそのとおりでございます。
  266. 山原健二郎

    ○山原委員 あなた方は、いま大学に対してさまざまな改革案がある、それに対応できる状態をつくりたいということで、この二章の二の項目もできているわけですね。だから、それぞれの大学でさまざまな形態があるわけですよね。だから、筑波大学と似たところは、学系学群は認めるけれども人事委員会はいやだというのが出てきた場合には、これをどうするのか。その大学人事におきましては、当然教授会の人事権というものが、いままでどおり確立をされるというのがあたりまえだと思いますが、その点いかがですか。
  267. 木田宏

    ○木田政府委員 学系学群というふうに、教育研究の機能を組織的に分けるという考え方をとりました場合に、人事につきましては、両者の調整をとる必要が必然的に起こってくるであろうというふうに考えます。でございますから、学系学群というような考え方をとりながら、人事学系の教授会、学群の教授会が同じ人間について別々に処理をするというというふうな処理のしかたは、不可能ではなかろうかと考えるのでございますが、いろいろと学系学群という考え方をとるかどうかも、これから出てまいります大学改革意見としてはわからないわけでございまして、もっと幅広い改革意見もあるかもしれません。個々の大学改革構想に即して、その教育研究の機能に適合した管理運営組織を考えていかなければならない、こう考えております。
  268. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、大体としては学系学群に分かれる形態をとった場合には、人事委員会は必然的に要るだろうということが、文部省の主流的考え方と受け取ってよろしいですか。
  269. 木田宏

    ○木田政府委員 そのとおりでございます。
  270. 山原健二郎

    ○山原委員 参与会はどうですか。
  271. 木田宏

    ○木田政府委員 参与会は、教官の人事の問題とは別個の問題でございますから、これはこれ自体のこととして考えられると思います。
  272. 山原健二郎

    ○山原委員 それが二章の二に入るかどうかということについては、今後検討しなければならないことですが、要するにいまわかりましたのは、学系学群、すなわち教育研究の分離を行なった場合には、人事委員会を必然的につくるという政府の考え方、必然的につくるのだが、必要でないという大学意向がありました場合に、学系学群、そしてそれは賛成だが人事委員会はつくらないとい、可能性はあるのですが、人事委員会をつくらなければ、大半として必然的にできるだろうというのですが、できなくともいい場合もありますか。
  273. 木田宏

    ○木田政府委員 今後の大学改革構想、それぞれいろいろなことがあり得るのではないかと思いますから、学系学群というような考え方をとるにいたしましても、大学によっては、筑波と同じような組織で考えるということでない、やはり違ったお知恵も出てくることがあり得るのではなかろうかと思います。そうであれば、それに即した管理運営組織がくふうされてくることになるであろうというふうに考える次第でございますから、今後そうした改革案が生まれてくるとしますならば、その大学のお考えというものに対応して、十分私どもも検討しなければならないというふうに考えております。今後の大学改革が、すべて学系学群だけであるというふうに割り切っておるわけではございません。
  274. 山原健二郎

    ○山原委員 私は学系学群と分けた場合のこと、教育研究の分離を認めた大学の場合を言っているわけですが、もう一回伺いますけれども学系学群を認めた大学改革案が出てきた場合には、少なくとも、参与会は別として、人事委員会一つのセットになっておるという考え方でしょうか、もう一回確認しておきたいのですが。
  275. 木田宏

    ○木田政府委員 学系学群という筑波の考え方をとりました場合には、人事委員会という組織が必要になってくる、このように考えております。
  276. 山原健二郎

    ○山原委員 それで逆に考えると、学部教授会の解体ということが、学系学群分離によって生じてくるわけですね。そのことは同時に、ほぼ必然的に教授会、筑波においては学系教員会議ですが、その人事権というものは人事委員会に移行する、こういうことになりますね。だから、学系学群に分けるということは、すなわち人事権の最終決定権は人事委員会総会にゆだねられるということになりますから、結局、学部の解体ということは、教員会議から人事権を他の機関にゆだねるということになりますね。そうでしょう。
  277. 木田宏

    ○木田政府委員 たとえで申しまして多少誤解が出ても恐縮なんでございますけれども、たとえば単科の大学教育学部という学部がございますが、これを学系学群に分けて組織をするという考え方をとりますと、一つ学部が二つの組織に分かれる。そして学系にも学群にも教授会ができる。それをあわせて一つ人事を行ないますために人事委員会というのが設けられる。その意味で、先ほど申し上げましたように人事委員会というのは、現在の学部の教授会と似たような働きをするものでございますと、こう申し上げたわけでございます。ですから、学系学群という、教育研究の機能に、いま単科大学学部が二つに割れた場合に、一人の人間人事をするのに、別々のところで別々に議決をするわけにはまいりませんから、その両者の調整をとった一つのものが必要になってくる、こういう考え方でございます。
  278. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、まず学系学群という状態ができれば、ほぼ、人事の問題については人事委員会を持たざるを得ないということになるわけですね。私はその点を一つのセットになっておると思うのですが、そうすると、幾つもの改革案が各大学によって異なってくる。あるいは学系学群の形態をとらない大学というのはどういう大学か、私もよくわかりませんが、さらに学系学群の形態をとっても、参与会は要らない、あるいは人事委員会は要らない。あるいは参与会はいいが、人事委員会は要らないというような、さまざまな形態が出てくるたびに、〇〇大学は二章の二に、〇〇大学は二章の三、二章の四というふうに、そういう法律をこれからつくっていくわけですか。それが今度の国立学校設置法の一部改正案の趣旨ですか。
  279. 木田宏

    ○木田政府委員 できるだけ大学の個々の御事情とお考え、それを生かしていけるものならば尊重できるようにして、法律上の規定もそれに適合するようにくふうをいたしたいと考えます。
  280. 山原健二郎

    ○山原委員 その点少しおきまして、この筑波大学法案構想の「まとめ」の関係について、私もいままで少し触れてまいりましたけれども、この「第一次まとめ改訂案」、これも私ども今度の法案審議にあたって最初の質問資料として求めて出てきたのでありますが、これは結局筑波新大学創設備準会としは第二次、第三次というものが出るものですか。それともこれが大体最終案ですか。
  281. 大崎仁

    ○大崎説明員 審議の経過から見まして、基本的な骨格はほぼこの線で固まるのではなかろうかと存じておりますが、なお細部にわたりましては今後手直しがあろうかと存じます。  なお、準備会自体、一応存続期限としましては九月一ぱいということを予定しておるわけでございます。
  282. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると最終的に筑波の——細部といわれましたけれども、先ほどの質問では、かなり重要な部分である教育審議会、研究審議会等につきましても、まだその性格、あるいは副学長の諮問機関であるのかいなかという問題あるいは主宰者はだれかというような問題あるいは持つ権限の問題、これは非常に重要な組織ですよね。人事委員会にもそこから五名ずつ。十六名といえば筑波大学の教員千五百名の中のわずかの人数ですね。それを選ぶ機関としての教育審議会、研究審議会の構想もまだ十分に煮詰まっていないように思うのです。骨格といいますけれども、骨格の部分についてもまだ煮詰まっていないので、そうすると、大体九月末の創設備準会が解散をする時期には、このすべてが最終案といいますか、そういうものができるという見通しですか。現在私たちはこれでやっているわけですからね。これはまだかなり変化するわけでしょう。
  283. 大崎仁

    ○大崎説明員 先ほどの審議会の点で、あるいは性格が不明確ではないかというような印象をお持ちになられたかとも存じますが、若干その点補足すると、こういうことでございます。  教育大学の基本計画案では、教育審議会、研究審議会等は副学長の諮問機関ということで位置づけたいというお話でございまして、新大学創設準備調査会のあの黄色いほうの報告書では、副学長は学長の補佐機関であるから、補佐機関が諮問機関を持つのはおかしいのではないか、形式的には学長の諮問機関としたほうがよろしいのではないかということで、学長の諮問機関というふうに、その時点で教育大学側の案と調査会側の案が若干形式面で食い違いを見せておったわけでございます。  その後準備会の議論としましては、教育大学側の委員から、学長の諮問機関というよりは、実質をとればやはり副学長が学長を助けるにあたって学内の御意見を的確に反映できるような仕組みということに重点を置きたいというお話がございまして、大体性格としては副学長を議長とする、副学長と一体となって担当事項の審議をし、審議成果は副学長を通じて学長の職務に、反映をされるというようなものとして位置づけられておるということでございます。ただ、副学長の諮問機関ということが若干いわゆる通常の諮問機関という場合のイメージと違うものでございますから、そういう言い方をいまとるかどうかというところまで確定していないという意味でございまして、審議会自体の位置づけとしては大体いま申し上げたようなことで準備会の御意向が固まっておるわけでございます。  それからこの「第一次まとめ」自体の運びでございますが、これは国会での御審議の結果を受けまして、最終的に創設準備会が解散される前に、創設準備会の審議成果をおまとめいただくということに当然なろうかと存じますが、そのまとめの内容につきまして、細部というとどこまでが細部かというような御疑問もあろうかと存じますが、法案に直接関連をいたします部分につきましては、ほぼお目通しをいただいております「改訂案」どおりで、動くことはないと存じますし、その他具体的な事項につきましては表現、たとえば学系の内訳の類の種類が、その後大学側で検討した結果、別の類を加えてほしいとかというようなことがあるいはあろうかとも存じますけれども、基本的には大体この線で御報告いただけるのではなかろうかというふうに存じておるわけでございます。
  284. 山原健二郎

    ○山原委員 私ども法案という簡単な法律と、それから資料として見るのはこの「まとめ」と、それから「理解のために」というもの以外にはないわけでございますから、これに基づいて筑波大学がいいのか悪いのかという論議をしているわけで、これはかなり重要な資料ですね。それがまだ煮詰まっていない。この衆参両議院、国会で成立をした後、九月の段階といえば——成立するかどうかまだわかりませんけれども、成立をした後でかなり変更が生ずる可能性を持っているように思うのですよ。また変わるかもしれないということで、いささか不安を持ちながら審議をしておるわけです。  たとえば教育課程の問題とか、それから入学試験の問題とか、どういう要綱で入学試験が行なわれるのかというようなこと、こういうものはまだはっきりしていないように思うのです。管理機構についてはかなり明確になっておりますけれども一体筑波大学にはどういう先生が行って大体どういう教育が行なわれるのか、あるいは入学試験の要綱はどういうものなのか、そういう全貌というものがちょっとつかめないままで審議をしておるというのが現在の実情です。  さらにまた、この「まとめ」で書かれていることが、法案との関係で筑波大学はこの「まとめ」にどの程度拘束されるのかということもわかりかねるわけですね。だから、筑波大学ができまして教授会その他ができた場合に大いに変化をするかもしれない、それは自主的に決定される部分が多いわけですからね。その際に、この「まとめ」との関係は、どの程度振幅があるのかというような問題もわからないままに現在審議をしているわけです。この前も私が指摘をいたしましたように、私立大学の場合には、一年前の六月一日ですか、それには文部省に相当細部のものが提出される、教育課程も出されますし……。そういうのと比べますとたいへんまだ煮詰まっていないままの審議をしておるというのが実情ではないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  285. 大崎仁

    ○大崎説明員 この「まとめ」の内容が、どういう形で生かされるかという点でございますが、私どもとしては、このように理解しておるわけでございます。準備会の審議の性格としまして、特に準備調査会から準備会に移りまして以後の考え方としましては、東京教育大学筑波大学において実施されようとする具体的な計画を、他の学識経験者のお力をかりてさらによいものにしていくために御審議をいただくということじゃなかろうかと思っておるわけでありまして、その意味で「第一次まとめ改訂案」の内容につきましては、教育大学から御参加の委員を通じまして、教育大学側のいわば共通了解の事項になり、教育大学側の御計画にこれが定着をしていく。筑波大学の教員の中核となりますのは、特に移転と申しますか、創設直後の中心となりますのは教育大学の先生方でもございますので、そういう教育大学の先生方の手によりまして、新しい筑波大学準備会でおきめいただきました案が生かしていかれる、そういう過程をとる性格のものではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから入学試験の問題につきましては、これも「第一次まとめ」の中に出しております。二六ページに「入学者選抜方法」というのがございますが、教育大学の内部の御検討では、ほぼここに出ておる方法でやるということで関係の委員会ではおきめになられたようでございます。準備会として、大学側のいわば原案という形ではわかったけれども、なお入学試験の問題は重要な問題でもあるので、もう少し議論をしたいということで、一応二六ページの一の「基本方針」に掲げてある第一次試験で基礎的な能力、適正の程度を判定する。それを全学共通にやりまして、第二次試験で学群、学類ごとに特色のある試験をやりたいというような方針、それから入学定員の一部について推薦入学を考えたいというような方針、こういう基本的なところは大体了承されたわけでございますが、それ以下の部分については、もう少し審議をしたいというような御意見が出ているという段階でございます。  それから教育課程につきましては二一ページ以下に記載があるわけでございます。授業科目の区分を、ここに書いてございますように、学生の専攻というものを軸にしまして、有機的に統合できやすいような科目の区分にしたいということで、この区分のしかた、それからそれぞれの区分ごとに全学共通の最低必要とする履修単位の数というようなものについては、教育大学においても一応合意ができております。そういうワクで、個々の専門分野等についてどういうカリキュラムを組むかということについて、委員会において作業が進められておると承っております。  その一例が、たとえば国語学の例につきましては、お手元の資料の二四ページ等にも出ておりまして、そこにございますように、たとえば国語学と申しましても狭い意味での国語学はそのまん中にある専攻科目というところの部分でございますが、それにとどまらず、その上にございます基礎科目ということで言語学一般の教育の充実をはかる。さらにはそれにとどまらず、関連科目ということで歴史、哲学、人類学というような面についての教育も充実をさせる。しかも、一学年から各専門、それから従来一般教育といわれておりました科目、ともに教育を組んでいきたいというような一つの案として、こういう案も御検討になっておられる、こういう状況でございます。
  286. 山原健二郎

    ○山原委員 時間の関係で細部はけっこうですが、筑波大学の評議会ができるのは大体いつごろと思っていますか。
  287. 木田宏

    ○木田政府委員 法案が成立いたしました場合に、十月一日に筑波大学の開学を法律上お願いをしておるわけでございますが、本年度は準備要員を中心にいたしまして、四十九年度の学生を迎え入れる事前の準備をいたすわけでございます。学長その他主要な教官は整ってまいりますが、この法律の規定にのっとります正規の評議会を構成するに至るまでの人員は、四十八年度中はまだ整わないかと思う次第でございます。早ければ四十九年に第一学群と体育、それから医学の専門学群の第一学年の受け入れに必要な教官、研究者の陣容が整うわけでございます。この段階でも、本来のあり方から予定いたしております評議会の構成には少し足らないものがあると思うのでございます。通例の場合でございますと、大学四カ年で整備をいたしますので、最初の二カ年間を経た段階で、陣容が実質的に整うというような手順になってまいります。しかし、その段階におきましても、評議会そのものを構成しながら運営していくという必要はあるわけでございますから、不十分な形ではございまするけれども大学の機関としての整備を四十八年の発足後逐次進めていく。そして四十九年に学生を迎え入れる段階で、ある整った形を想定し、第二学群を迎え入れ得る時期になりまして、かなりの整った体制でこの法律案の評議会が完成する、こういうふうに考える次第でございます。
  288. 山原健二郎

    ○山原委員 私が聞きたいのは、たとえば人事委員会の人選というものは、法案では評議会がきめることになっていますね。そうすると、筑波の評議会ができましてから、人事委員会を三十名にする——現在皆さんの「まとめ」では十六名ですが、三十名にするとか、あるいは教授会から直接選ぶとかいうような筑波大学の評議会の決定がなされた場合には、この「まとめ」というものは拘束力はないわけでしょう。それはもうすべて自主的に決定できるわけですか。筑波大学評議会が自由にきめてよいわけですね。
  289. 木田宏

    ○木田政府委員 御意見のとおりでございます。
  290. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、現在準備されております改訂案の「まとめ」などというものは、いわば意味がないと言えばこれはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども筑波大学の評議会の自主性にまかすということを確認してよろしいですね。
  291. 木田宏

    ○木田政府委員 結論的にはそのとおりでございます。ただ、私ども筑波大学の準備をいたしますのに、この創設準備会でまとめられました御意見に沿って予算の内容その他を構成をいたしまして、その体制を整えておるわけでございます。ですから、十月に発足をいたしました際に、また四十九年度を迎えまして、第一学群等の学群の整備が行なわれます際に、こういう方向で事柄が進んでいけるような事前の準備というものが政府の準備として進んでおる、こういうことは御理解いただきたいと思いますし、また、その準備を受けて構成された人たちが運営してくださるであろうということも考える次第でございますが、論理的には山原委員御指摘のように、大学が発足したあと、大学自体できめるべき性質のことだというふうになっておる次第でございます。
  292. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、結局筑波大学における評議会の自主的な決定ということになりますと、これは希望的観測は別としまして、形式的にも、またいままでの大学の慣行その他を考えますと、この準備会の出しておる「まとめ」というのは、いわば今日まで準備をしてきたものの希望にすぎない、それ以上は筑波大学の決定にまかすということですね。——それは確認いたしておきます。  ところが、それはそれでいいのですが、いままで筑波大学に関しまして、東京教育大学のこのプランに参加した人々が実は非常にいろいろなことを言っておるわけですね。これはこの「まとめ」にいたしましても、筑波大学のプランをつくる場合にいたしましても、有力な発言をしておる方々、そしてこの文部省の出しました「筑波大学理解のために」にも出ておりますが、その方々の幾つかの例をあげてみますと、たとえば小西甚一さんの場合には、人事委員会につきまして、個別人事は専門委員会がやる、こういうふうにはっきり言っておられるわけです。これは四七ページでございます。それから今度の「改訂案」のほうに至りますと、個別人事は、その選考は総会が行なうというふうになっているわけですね。だから、東京教育大学名前がしばしば出ますけれども、こういう重要な部分について非常な食い違いがある。たとえば皆さんの出されておるPR資料とこちらの「まとめ」の違いと、これもずいぶんわれわれを迷わすわけなんですよ。ところが、小西さんの言っておられる専門委員会というのは、これはまだ海のものとも山のものともわからない状態です。そういう状態がございます。  それから、副学長の問題につきましては、同じく小西さんの御発言ですと、副学長がラインかスタッフかというものについては、スタッフであるというふうに言われているわけです。これは点線であるんだからスタッフであるというふうに言っておるわけですね。ところが、改訂案の四二、四三ページを見ますと、これは実線になっている。これはラインになっているのですね。そういう違いもあるのです。  それからさらに、このプランづくりに参加をされました鈴木博雄氏の場合ですが、副学長の問題についてここではラインだと言っておられるのですね。副学長は学長を代行する、これは五八ページにあります。  それからさらに鈴木さんの毎日新聞に出しております御自身の投書がございます。それは先ほど私がちょっと触れましたけれども参与会についてであります。参与会は「任期も短く、助言、勧告事項も限定されています」、こう出ています。ところが、「改訂案」の場合には、四四ページを見ますと、参与会の任期はございません。やることも限定されていません。結局評議会と同じ性格を持って、重要な事項について審議をし、そして助言、勧告するということになっております。だから、この点も全く食い違いがあります。しかも、公然と皆さんのPR資料にも出ておりますし、投書にも出ておるという状態です。  それから「筑波大学批判にこたえる」、これは筑波大学創設準備室、三輪室長がおられるわけですが、ここでは参与会は年に二回ないし三回、そして任期は二年で、学長が招集する、こう書いてあります。これは「改訂案」にはございません。  さらに財政につきましても、先ほど私が指摘しましたように全学的に掌握して包括的にお金を使えるようにするということが出ております。これは先ほど大学財政自治権の問題で申し上げましたが、こういう問題があるわけです。  こういうような幾つかの問題を考えてみますと、まだずいぶんばらばらなことが言われているのだなという感じもするわけでして、一口に東京教育大学というふうに文部省のほうでは言われておりますけれども、実際にはこの参加した人たちの見解あるいは考え方というものと「改訂案」の考え方、これがいろいろ複雑な様相をつくっているわけです。小西甚一さんのいわゆる芸者置き屋論というのは、塩崎さんがこの前の質問の中で「筑波大学三国志」というものを読み上げましたから私も使うわけではありませんけれども、こういう人々が創設プラン協力者であり、マスタープラン委員であるというような点から考えまして、筑波大学の今後の中身につきましては、まだまとまっていないものがかなり存在をしておる。そして宮島学長の言によれば、筑波大学はこれからだ、これから新大学においていろいろな慣行をつくっていくのだというようなこともございます。そうすると、この改訂案の「まとめ」というものを、どの程度に私どもは信用していいのかということも出てくるわけです。  こういう一連の問題がございまして、この法案については非常に審議のしにくい状態があるわけです。これを一つ一つ説明していただきますと時間がございませんので、一つ一つの解明はここでは不必要で、これは参議院のほうでやっていただけると思うわけですけれども、こういう状態で私たちはこの数カ月間審議をさせられてきたようなかっこうになっているわけです。実際は、こんな点は、一つ一つ皆さんが質疑の中で明らかにしなければならないわけですけれども、残念ながらそういう状態にはないということですね。これは非常に遺憾なことだと私は思っています。第一、法案法案であるわけですけれども、その法案の背景をなすものがこういう複雑な状態にある。まだ煮詰まっていないとかいうような問題がありまして、大体筑波大学というのはこれからどういう構想のものができるのかということにつきましては、まだ相当の紆余曲折があるのではなかろうかということを考えるわけですが、この点についてはどう考えておられますか。いろいろ人は言っておるけれども、そんなことはもう関係ないのだ、「まとめ」だけを信用してつくればいいのだ、こういうお考えかどうか、伺っておきたいのです。
  293. 木田宏

    ○木田政府委員 先ほど山原委員も御確認されましたように、実際に大学ができましてから、大学組織として学内の体制を、責任を持って整えていくということになるわけでございます。また法律でおきめいただきましたものの運用その他は、やはり大学の一日一日の運営によって積み重ねられていく。その運営をスムースに発足させるようにいたしますために、創設準備会でできるだけ事前の討議をいたしまして、必要な予算上の体制もこの論議の過程に沿って用意をして、発足後すみやかに大学が適切な運営ができるようにしていきたいというのがこの「改訂案」をまとめておる私どもの態度でございます。  個々の点についてはお答えは要らないということでございましたが、人事委員会につきましては、人事委員会を、先ほど来御心配いただいておりますように、専門の教官を専門の方々によって選ぶという体制と、全体としての調整をはかるという意味から、人事委員会の中に総会と専門委員会とを設けるという構想にしてございまして、個別の案件について、専門委員会が教員の採用、昇任等の審議を行なうという点だけは、関係者の間でかなり固まった考え方でございます。それを小西甚一さんなども、総会の場で、この専門委員会考え方否定されるということはほぼなかろうというような御意見を書いておられるわけでございます。こうした運営につきまして事前の論議を積み重ねておきますことが、発足後の大学の体制を円滑ならしめるという意味で、準備をいたしております。今日、たとえば、どの大学でもそうでございますけれども、東大のような大学をとりましても、学部教授会人事運営はみんな学部によって違います。その内容、その運びは、やはりそれぞれ大学関係者が一日一日の運営を積み重ねていって築き上げていくものだ、こう考えておる次第でございます。
  294. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つ筑波大学には副学長を置くという規定はありませんね。
  295. 木田宏

    ○木田政府委員 今回御提案申し上げております法律案には、副学長を置くという規定を筑波大学については書いてございません。これは学校教育法に一般的に「副学長を置くことができる。」という規定を用意をいたしてございまして、そして、予算上筑波大学に副学長が置けるような準備はさしていただいておるわけでございます。もし法律が通りましたならば、筑波に副学長を置くということにつきましては、国立学校設置法の施行規則で明確にしていくという考え方でございます。
  296. 山原健二郎

    ○山原委員 おさらいとしてお聞きしますけれども筑波大学組織の中には副学長という組織はない。いまお話があったように、五十八条二項によって「置くことができる。」という一般的な条項だけなんですね。したがって、端的に伺いますが、副学長を置くとか置かないとかいうことは、それぞれの大学において自主的に決定し得ることなんでしょう。そうでしょう。
  297. 木田宏

    ○木田政府委員 今日、国立大学に置かれる職員の種類につきましては、法律の委任を受けまして、国立学校設置法施行規則で書いてございます。施行規則の第一条に、「国立大学及び国立短期大学の職員の種類は、次のとおりとする。」ということで、「学長、教授、助教授、講師」云々と、こう書いてございます。この点にならいまして、筑波大学に副学長を置くというような関係規定は整備することになろうかと思います。副学長を置くか置かぬかは、筑波の場合に置くのでございまして、筑波以外の大学におきましては、希望が今後ありますならば、それによって御相談を進めるということになる次第でございます。
  298. 山原健二郎

    ○山原委員 筑波大学においては、副学長というものは、全く必置の条件であるかのごとき状態で論議されてきた面もあるわけですよ。その点ではすべての大学と一様の状態に筑波大学は置かれているわけですね。だから、筑波大学に副学長というのは、これはもちろん附則のところで副学長という名前は出てきますし、それから人事委員会のところにも出てくるわけですが、しかし、その副学長をかりに置くとした大学が生じてきました場合に、これは筑波でなくても、東京大学でも京都大学でもいいわけですね。その副学長を置くとした場合に、その人数あるいは任期あるいは選考の基準というのは、評議会がきめるのがこれは筋だと思うのですね。だから、評議会はいまだ筑波の場合もできておりません。そうすると筑波大学も同じく学校教育法教育公務員特例法の適用を受けますから、筑波に副学長を置くか置かないかということは、これは筑波大学自体の発足後に決定をすべきことであり、同時に、置くといたしましても、何人置くとか、あるいはその選考はどうするかということは、新しく筑波大学ができたときに、そこの先生が自主的に決定をするものだというふうに理解をしてよろしいわけですね。
  299. 木田宏

    ○木田政府委員 ただいま法案で御審議をいただいておりますように、筑波大学につきましては、副学長が置かれるという前提で組織が規定されてございます。でございますから、何名、どういうふうに置くかということは、御指摘のように、筑波大学自体の問題ではございまするけれども、しかしこれは大学の重要な職員として、できるだけすみやかに、学長の意見も聞きながら、副学長の任命ということも取り進めてしかるべきであろうかと考えております。
  300. 山原健二郎

    ○山原委員 まだ、筑波の学校組織ができていない、あるいは教授の陣容も整っていない。ましていわんや、評議会もできていない筑波大学において、筑波大学が自主的にどういう決定をするかわからないときに、副学長制度をここへ持ち込むということは、明らかにこれは法律違反ですよ。しかも、法案の中にも、筑波大学に副学長をつくるということはないわけですからね。五十八条二項によって、どこの大学でもつくれるということだけなんです。その学校教育法の適用を、筑波大学もひとしく受けるだけのことであって、これは明らかに筑波大学の評議会の決定する問題なんです。つくる、つくらないということも、筑波大学が決定する問題なんです。だれがそんなことを、筑波大学意思もないのに、意思も不明なのにきめるのですか。
  301. 木田宏

    ○木田政府委員 筑波大学には副学長が置かれる予定であるという前提のもとに、評議会の構成につきましても、人事委員会の構成につきましても、筑波大学に副学長があるということを前提にした関係規定がありまして、先ほど来いろいろと御質問も賜わっておりますように、創設準備会の関係者の準備の段階でも副学長五人を予定して、学内の管理運営の体制を事前に準備をいたしておるところでございます。したがいまして、法律上の規定といたしましては、学校教育法の、副学長が置けるという規定を受け、また事前の準備の体制で御審議いただきました予算では、五人の副学長をすでにお認めをいただきまして、この法律ができましたならば、国立学校設置法の施行規則で副学長という職を置き、その最初の任命につきましては御提案申し上げております法律の附則におきましても、最初に任命すべき学長、副学長についての規定を挿入をいたしておりまして、筑波大学は副学長を置くことになるという前提で仕事を進めておる次第でございます。
  302. 山原健二郎

    ○山原委員 それこそ文部省のかってなつくり方じゃないですか。明らかに法律の精神——法律は、筑波大学自体が副学長を置くか置かないかを決定することなんです。予算できまったって、予算など不執行の予算だってあるわけですから、そんなことは関係ないです。明らかに筑波大学自体が決定をするのが副学長問題ですよ。それをあらかじめあなた方がきめて押しつける、これこそ文部省筑波大学に対する押しつけですよ。法律はそうなっていないのですから、法律のとおりやるならば、筑波大学が構成された上で、筑波大学の評議会あるいは筑波大学における自主的な決定、それによって副学長を置くか置かないかということが決定されるわけです。それに従わずして副学長を筑波大学に置け——筑波大学組織の中には副学長はないわけです。五十八条の二項しかないわけですから、これはいまや副学長問題では、他の大学筑波大学は全く同列に置かれているわけです。だから、筑波大学の自主的な決定なくして副学長を置けなどということを、できもしていない大学に押しつけるなどということは、全く法律違反ですよ。筑波大学自体が決定するわけでしょう。
  303. 木田宏

    ○木田政府委員 筑波大学は、実質的に東京教育大学が発展をしようとする大学でございまして、東京教育大学の関係者が長い間その構想を練ってきたものでございます。それが創設準備会の中に案として盛られておるわけでございますから、私どもは、筑波大学ができました際に、いままで東京教育大学構想し、創設準備会で関係者の意見を加えてまとめ上げたもの、これが筑波大学において実現されるということは当然のことである、またそこに東京教育大学の意図を受けた筑波大学の連続性というものを考えることができるというふうに思っておる次第でございます。法律上もそのことを明確にいたしまして、筑波大学に副学長があるという前提で法令の規定も整備をしておる次第でございます。
  304. 山原健二郎

    ○山原委員 それは手続上の問題であって、現在の東京教育大学の希望的観測とか、あるいはそれもまだいろいろな意見が出ておることを私は知っておりますけれども、同時に、文部省につくられた創設準備会というものがきめたことなので、そういうことは予想されるからと、この準備資料として副学長問題が出ることは、それはわかるとしても、法律のたてまえからいうならば、あくまでも筑波大学自体が自主的に決定をするのが副学長問題です。この原則を踏みはずして大学の自治というものもないわけでしょう。だから、法律は御承知のように四条二項によって、これは筑波大学自体が決定をするものなんだ。置くか置かないかもそうなんです。置くか置かないかも大学がきめること。そして置くとするならば、筑波大学自体が副学長を置きますときめるならば、人員選考、そういうものについても筑波大学がきめることなんです。手続上の問題と法律上の問題と混同してはいかぬですよ。法律上は明らかにそうじゃないですか。だれもそれに対して、くちばしをいれたりすることはできないわけでしょう。準備の関係とかいうようなことは問題にならないですよ、筑波大学には副学長制度は規定されていないのですから。
  305. 木田宏

    ○木田政府委員 国立大学に置きます職は、大学の希望を受けまして文部省が設置をするわけでございまして、大学だけで職を設置するわけではございません。でございますから、筑波大学に副学長を置くかどうかという問題は、やはり筑波大学をつくっていこうとする東京教育大学の関係者、創設準備の関係者の意見を受けまして、文部省筑波大学に副学長という職を置くということを決定をいたすわけでございます。そのことを予定して、筑波大学組織法案も御審議をいただいております。文部省が決定をいたすにつきましては、大学関係者の意向を十分尊重する。これは他のいろんな職種につきましても同様でございます。しかし、職を設置するのは文部省である、国立学校設置法施行規則をもって設置するということは御理解を賜わりたいと思います。
  306. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、法律上の問題を言っているわけですから、これは筑波大学——あなたの言い方からするならば、大学を設置するのは文部省だ、文部省がどこへでも副学長制度を置くのだ、東京大学に置くのだということをやればいいのだということで、それこそたいへんな乱暴な論理ですよ。  副学長というのは何ですか。
  307. 木田宏

    ○木田政府委員 学長を補佐する大学の職員の職種の一つでございます。
  308. 山原健二郎

    ○山原委員 部局長でしょう。部局長に該当するのですか。
  309. 木田宏

    ○木田政府委員 それは教育公務員特例法の上で人事の取り扱いをいたします場合に、部局長と同じ扱いをするという特例法上の問題でございます。特例法上部局長というふうに、副学長も含めて人事の扱い規定を定めておくという趣旨でございます。その意味では、特例法上の部局長ということになっておりますが、学長の補佐機関である、学校教育法の規定に書いてあるとおりでございます。
  310. 山原健二郎

    ○山原委員 部局長の評議会の議に基づき学長が決定するわけですね。だから、あなたは特例法をいま出されておるわけですけれども、あなたの論理は何の法律ですか。どういう条項によって、副学長を筑波大学に置くという決定をされておるのですか。これはだれの意思ですか。文部省意思だけですか。東京教育大学意思文部省意思だ、こういう言い方でしょうけれども筑波大学意思ではないですね。部局長は筑波大学の評議会が決定するのだ。だれも決定することができないのですよ。それが教特法じゃないですか。どうでもこうでも法律を解釈して、文部省だから何でもやれるのだ、そういう論理ではだめですよ。
  311. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 山原さん誤解されているわけじゃないと思うのですけれども、あるいは誤解されているところがあったらいけませんので、一言私からお答えをさしていただきます。  法律の中では第七条の五の「筑波大学人事委員会を置く。」二項で「人事委員会は、副学長及び評議会が定めるところにより選出される教員で組織する。」ここで法律の上で副学長を御審議いただいているわけでございます。同時にまた附則の四項で、「第一項第一号に掲げる規定の施行後最初に任命すべき筑波大学の学長及び副学長は、文部大臣東京教育大学の学長の意見を聞いて任命する。」こういうことで御審議をいただいているわけでございます。東京教育大学が新しい構想を打ち出された。学群学系組織をつくり、人事委員会を設ける、参与会を設ける、副学長を置く、こういう一連の構想でございまして、その構想実現させたい、こう考えて御審議をいただいておるわけでございます。その際に学校教育法を改正をいたしまして、副学長を置きたいところへは置けるようにしてあげよう、こう考えておるわけでございますので、誤解はないと思いますが、一言つけ加えさせていただきます。
  312. 山原健二郎

    ○山原委員 それは答弁になっていないのです。それは、人事委員会あるいは附則四項、そこには副学長の名前は出ておりますけれども、それは単なる一般的手続の問題なんです。筑波大学は他の大学と違って、そういう特別な取り扱いをする法律も何もないのです、法のたてまえからいうならば。これはむずかしいことをこね回しておるようにお聞きになるかもしれませんが、そうじゃないのですよ。筑波大学の副学長を制度化するかどうかということは、筑波大学の評議会の考えに基づかなければならないのです。そうなんですよ。あなたのほうは、どの法律によってやっているのですか。
  313. 木田宏

    ○木田政府委員 国立学校設置法に第十条という規定がございまして、「各国立大学に置かれる職の種類は、文部省令で定める。」という委任の規定になっておるわけでございます。この規定を受けまして、先ほど申し上げました国立学校設置法施行規則の第一条が、国立大学の職員の種類は次のとおりとするということで、学長以下の職員の種類をいろいろと規定をいたしておるのでございます。副学長を置く場合に、筑波大学に副学長を置くということをこの施行規則で書かななければいけません。その上で評議会の選考基準によるということは、これは選考の場合の基準を評議会がきめて、学長はその基準によって副学長を選考するということでございまして、筑波に副学長を置くか置かないかという、このこと自体は、国立学校設置法十条の規定に基づく文部省令できまってくることでございます。
  314. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省令で書いてあるのですか。
  315. 木田宏

    ○木田政府委員 今回の法律が成立いたしましたならば、そのように省令をつくりたいと思っております。
  316. 山原健二郎

    ○山原委員 だから違うでしょう。副学長を置くか置かないかということは、筑波大学意思によって決定できるわけです。そうですよ。奥野さん、何を首を振っているのですか。五十八条の二項というのは全大学に適用されるのですよ。これは筑波大学が特別なものじゃないですよ。筑波大学に副学長を置くということは、どこで決定しているのですか。首振ったってだめですよ。東京大学だって、あるいは京都大学だって、五十八条の二項の適用を受ける。筑波大学だって、学校教育法教育公務員特例法の適用を受ける大学ですよ。特殊な大学じゃないですよ。だから、その規定によって、たとえば京都大学が副学長を置きたいというならば、京都大学における評議会の決定によるということなんですよ。だから、それなしに、だれが決定できるのですか、法律的に。
  317. 木田宏

    ○木田政府委員 学校教育法で、一般的に「副学長を置くことができる。」こう規定してございます。副学長を置くか置かないかは、学校の設置者がきめることでございます。国立学校の場合は、国立学校設置法に基づきまして文部省令できめるというふうになっておるわけでございます。その際に、私ども大学意向を無視してきめるということは、したくないということを先ほど来申し上げたわけでございます。京都大学の評議会でおきめになりましても、評議会できめたら、副学長が自動的にできるということではございません。評議会がその希望をおきめになりまして、私どもへの御要請があって、予算も用意し、国立学校設置法施行規則でその要請を生かすように設置の規定をしたときに、副学長というものが京都大学に置かれることになる次第でございます。
  318. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、あなた方は、こういう解釈ですね。五十八条二項によって、あなた方がお考えになるならば、設置者である文部省が考えるならば、どこの国立大学でも恣意的に副学長を置くことができるという解釈をしておるわけですか。どこにでも置けるわけですね、あなた方がお考えになりさえすれば。
  319. 木田宏

    ○木田政府委員 大学の構成は、設置者がきめ得るわけでございます。国立学校の場合には、国立学校設置法の規定によって、どういう組織をつくり、どういう職員を置くかということをおきめ願っておるわけでございます。あるものは法律で書き、あるものは省令で書くという書き方になっておるわけであります。その際私どもは、大学意向を無視して設置を文部省限りで進めようという考え方はとっておりません。大学意向を尊重して、それが実現するように、法律上、施行規則の上でもお世話をしていきたい、こういう考えを御説明申し上げている次第でございます。
  320. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、たとえば京都大学あるいは東北大学という大学に、あなた方が恣意的につくるということはしない、それは大学の自主的な見解に基づいてやる、筑波も同じでしょう。筑波大学、新しい大学ですよ。東京教育大学の移転を契機としてとはなっておるけれども、新構想大学ですよ、これは。しかも五十八条二項は、全大学にひとしく適用されるものですから、その筑波大学に副学長を置くということは、あなたがいま東北大学、京都大学にかってにつくるのじゃないということと同じように、筑波大学意思というものがなければいかぬじゃないですか、そうでしょう。
  321. 木田宏

    ○木田政府委員 筑波大学は、実質的に東京教育大学の発展だというふうに私どもは考えておるわけでございますから、筑波大学の構成、その内容につきまして、東京教育大学の御意向というものを基調にしながら、それを尊重して仕事をさしていただいておる次第でございます。
  322. 山原健二郎

    ○山原委員 その辺が、ときには東京教育大学を使い、いろいろな使い分けをしておられるのですけれども、それではかりに筑波大学東京教育大学意思に基づいて副学長制度を置くということにいたしましても、その副学長というものは——人員あるいは選考というものについては筑波大学の評議会ですね。これは筑波大学の自主的な決定に所属する仕事でしょう。それまであなた方はきめるわけですか。
  323. 木田宏

    ○木田政府委員 大学の教官の人事につきましては、先般来御指摘がございますような、大学の主体的な活動というものに基づいて文部大臣が措置をとるということになっておるわけでございます。ただ、設立当初の新大学の場合に、まだ何らの教授会もない、評議会もないときに、学長、副学長の人事をして大学を構成しなければなりません。この設立当初の人事については、特例法の規定の運用を期待すべき評議会も教授会もございませんので、文部大臣が任命をするということになる次第でございます。
  324. 山原健二郎

    ○山原委員 附則四項のことを言っておられるのだと思いますけれども、これは明らかに筑波大学で決定すべきことで、それはどういう法律に基づいてやるのですか。学長の場合はわかりますけれども、副学長というのは部局長でしょう。部局長の選考というのは教育公務員特例法によって、明らかに評議会の決定ということになるわけでしょう。だから、それをなぜしないのですか。初代といったって、大学ができてから副学長の構成——どうしても筑波大学に副学長をつくるというならば、その構成や人選というのは、当然大学内で行なっていいじゃないですか。学長の場合は別にして、初代副学長を政府が任命する、これは全く奇怪なことなんですよ。これはどの法律に基づいてやるのですか。どの法律に基づいて副学長を大臣が任命するのですか。ないでしょう、そういう法律は。
  325. 木田宏

    ○木田政府委員 学長も副学長も、国家公務員法及び教育公務員特例法の規定をもちまして任命をいたしていくわけでございます。最初の任命につきましては、特例法規定の関係機関が十分に整備されてございません。したがいまして、その場合には、特例法の規定の働く余地がございませんので、文部大臣が国家公務員法の規定によって任命をする、こういうことに相なるわけでございます。
  326. 山原健二郎

    ○山原委員 筑波大学の学長、これは東京教育大学の推薦によってやるということになる規定ですけれども、副学長の場合は、明らかに教育公務員特例法によってやらなければならぬのじゃないですかね。だから、筑波大学ができてからだって、大学の構成が成立をして、そして自主的に副学長が選考されるという過程を踏むのがあたりまえであって、それを文部大臣が任命をするという形態は、法律的に見ても非常におかしいと私は思うのです。相当無理な法律の解釈といいますか、実際上はできないことをあえてやろうとしておるというふうな解釈しかできないわけでございます。その点をいまお聞きしておるわけでございます。だから法律上の手続とか大学評議会の決定というようなことを無視して、政府が一方的に副学長制度を制度化できるということになると、これはたいへんなことでございますから、そういう意味で言っているわけなんですよ。  だから、どの法律に基づいてやろうとしているのか、これははっきりさせてもらいたい。部局長選任ということの大学のいままでの経過から申しまして、どの法律に基づいて文部大臣が副学長を任命するのかということを聞きたいのです。
  327. 木田宏

    ○木田政府委員 今回御提案を申し上げております国立学校設置法の一部を改正する法律附則第四項に関係規定もございますし、国家公務員法の規定もあり、教育公務員特例法の規定もあり、それらの関係規定によって学長、副学長の任命をいたす次第でございます。
  328. 山原健二郎

    ○山原委員 法制局に伺いますが、筑波大学の副学長は、教特法に基づきまして、筑波大学大学管理機関が決定しなければ、法律上まだ存在していません。その副学長を任命できるという法理があるのかどうか、法制局の見解を伺っておきたいのです。
  329. 林信一

    ○林(信)政府委員 おおむねただい木田大学局長が申し上げたのと大差ないのでございますが、もう少し条文に即して御説明申し上げます。  まず、副学長という職の設置というのは、国立大学組織の問題でございますが、その根拠は、先ほど御答弁のありました国立学校設置法第十条に基づいて文部省令で定めるということでございます。それから教育公務員特例法の関係でございますが、これは教育公務員特例法の第一条にございますように、途中飛ばしますが、この法律は、「教育公務員の任免、分限、懲戒、服務及び研修について規定する。」こういう法律でございます。したがいまして、組織国立学校設置法の規定に基づき、それから人事の関係では教育公務員特例法が働く、かような関係に相なるわけでございますが、国立学校の職員は、同時に国家公務員でございますから、これは当然に国家公務員法の規定をかぶります。そういたしまして、国家公務員法の任免に関する一番もとになる規定は五十五条というのがございまして、国家公務員法の五十五条では「任命権は、法律に別段の定のある場合を除いては、内閣、各大臣」その他に属するものとするということでございまして、法律に別段の定めがあればそれによるが、それがなければ大臣が任命権を有する。地方公務員法にも大体類似の規定がございます。  そこで、この「法律に別段の定のある場合」、これに当たるのが教育公務員特例法でございますが、ただいま木田局長が申し上げましたように、大学の設立当初におきましては、残念ながら教授もおりません。職員も全然おらないわけでございます。しかし、学長を欠くわけにいかないというような場合に、従来いかにはかっておったか、私存じませんが、おそらく今度の筑波と同じような問題があったはずでございます。その際に、教育公務員特例法がまともに働き得るかといいますと、遺憾ながらそういう組織がございませんので、その限りにおきましては働く余地がないであろう。働く余地がある規定は働いてもいいのでございますが、そういう組織がないので残念ながら働かないということになりますと、この「別段の定のある場合」に当たらないという関係から、国家公務員法に戻りまして、五十五条に基づいて文部大臣が任命する。ただし、その任命のしかたにつきましては、当然に、大学自治といったような原則からいたしまして、大学側あるいはその大学の候補者、職員の候補者、あるいは今度の例で申し上げれば東京教育大学というような実体がございますれば、その意向を尊重するということは、これは法律の要請ではございませんが、運用上はもう当然そうあるべきであろう、かように存じます。
  330. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題、ちょっときょうは終わらないかもしれませんが、この法案で、参与会人事委員会、これは筑波大学組織として法律にちゃんと書いてある。ところが、副学長の問題は書いておりません。しかも参与会人事委員会は、筑波大学に置かなければならないわけです。筑波大学に副学長を置くという規定はないのですよ。だから、そういう規定があれば、筑波大学の副学長は法律的に規定されるわけですが、しかしそれがない以上、一般法の手続に従って評議会が議決をする、これが法律のたてまえでしょう、副学長は。そうですね。それ以外に何もないじゃないですか。副学長なんというのは、開学したときに副学長ができておらなければならないという法律は何もないわけです。副学長というのは、大学ができてから、評議会ができてから選考されたってかまわぬわけですから、何も無理をして大臣の任命にするなんということはないのです。置くか置かないかの決定は、一般法に基づいて大学自体が決定することなんです。その一般法しかないわけですよ。にもかかわらず、それを筑波に対しては特別な扱いをして副学長を置くんだ。こういうやり方が、法律上おかしいではないかと私は言っているのです。どうですか。
  331. 林信一

    ○林(信)政府委員 ただいま申し上げましたように、副学長の設置自体は文部省令で定めるという現行の制度になっておりますので、これは文部大臣の権限でございます。いまお尋ねは、いつ置くかということでございますが、これは法律上最初でなければいけないとか、あとでなければいけないとかいうことはございませんで、もっぱら政府の、国のほうの御方針と申しますか、政策の問題であると存じます。私たちの立場から、法律上当初に置くのは違法であるというような評価は出てまいらないということでございます。
  332. 山原健二郎

    ○山原委員 だから、政府が考えれば、どこへでも置けるということになるかもしらぬですよ。あなたの論法からいけば、それはそうですよ。政府が、設置者がきめることができるといえば、設置法の第十条によって、どこへでもつくれるということになるんですよ。しかし、副学長という部局長は、評議会の議を経なければならないという教育公務員特例法の規定がありますから、副学長をつくるとかつくらないとかいうことは大学自体の決定すること、ある法律というのは今度五十八条の二項を変えただけで、これはすべての大学に適用できる法律ができただけなんです。何も筑波大学だけ特別につくる法律ではないわけです。だから、筑波大学につくるんだったら、筑波大学の評議会の決定ということが先行しなければ、できるかできないかまだわからないものなんです。筑波大学意向というものは、まだないわけですから……。それを、文部省の一方的な解釈によって、ここへつくるんだということになるわけですね。そこに私は問題があるんだ、こういうことを言っているのです。だから、いいですか、副学長というのは、何も文部大臣が任命しなくても、大学ができてから、その大学がどんな大学になるかまだわかりませんけれども、その大学において自主的に決定をしていく、こういうことでいいのじゃないですかということを言っているわけです。無理に何も文部大臣が任命しなくても、大学の自主性にまかしたらどうですか。筑波大学学校教育法の適用を受ける大学ですから、そういう手順を踏んだらどうですかということを言っているわけです。
  333. 木田宏

    ○木田政府委員 職を設置するということと任命するということとは別のことでございます。筑波大学に副学長を置くということは、先ほど来御答弁申し上げておりますように、文部省の省令で、国立学校設置法施行規則で法律の委任を受けて置くわけでございます。筑波大学意向を聞かないでという御意見がございますが、しかし、筑波大、学全体の構想そのものが新しい大学でございまして、この構想は、東京教育大学の発展ということで、東京教育大学の意見を生かしながら筑波大学構想をまとめてきておるわけでございます。東京教育大学構想の中に学群学系という構想とともに、副学長を置こうという構想が出ておるわけでございまして、これを予算でも用意し、法令の規定の上でも、副学長が置かるべきだというふうに予定をいたしまして御提案申し上げ、発足と同時に副学長も任命できるように関係規定も整備をさせていただいた、こういう次第でございます。
  334. 山原健二郎

    ○山原委員 これ以上申し上げませんが、こういうことですね。(「同じことを言うな」と呼ぶ者あり)同じことを言っているわけではない。  副学長というのは学外者であってもいいわけですよね。そうしてあなた方は五名と言っておられる。ところが、筑波大学が設立をされて、筑波大学の評議会が三名に——事実東京教育大学三名案が出ておるわけですよ。「等」ということばはついておりますけれども、三名案が出ておるわけですからね。だから、筑波大学が自主的に三名だと決定した場合に、あなた方は五名任命しているわけでしょう。二人の方は、学外者であった場合に、首切りでしょう。そういう問題が起こる。だから、筑波大学ができてから、副学長をつくったらいいじゃないか、そういう、自主的に、筑波大学の副学長は三名でもよろしい、二名でもいい、あるいは一名でも、学長を補佐する意味で置いていいという意見も出るかもしれませんよ。そういう自主決定権というものは筑波大学評議会が持っているはずなんです。それを無視して、あなた方は、五名だ、こう押しつけていく。任命をしていく。筑波大学意思はここで無視されるわけです。  しかも、副学長というのは、相当強大な権限を持っている人たちでしょう。第一、いま東京教育大学のあの準備室、室長だけしかきまっていない。室員がきまっていない。うわさによれば、これが副学長になるとか、そういううわさまで飛んで、その間にいろいろな暗躍がなされているわけでしょう。だから、そういう権限を持った重要なポスト、それを筑波大学になぜ決定をさせないのか。それをあなた方は五名だという。人員も何もかも決定をしていくという。こういうところに今度の筑波大学の体質というもの、いわば文部省が相当の権限をこの中に持つという体質があらわれてきておるのではないか。  筑波大学ができましてから、あわてなくてもいいのです。筑波大学構想の中に、皆さんが寄り集まって、新しい先生方も来られるでしょう、あるいは教育大学から行く方もおられるでしょう。そういう新しい、みんなが希望を持った大学をつくるとするならば、その中で皆さんが話し合って、そして副学長を私たちは何名にするとか——置くか置かぬかは別にして、何名にするとか、こういう性格のものにするとか、あるいはこういう選考をするとかいうことをきめていくのが、ほんとう意味での大学の自治なんです。それをあなた方は五名だ、こう切りつけていく。こういうところに問題があるんだということを私は指摘をしておるのでございますから、その点、副学長問題については、またあとで話が出ると思いますが、本日は私の質疑を、中途でありますけれども、おそくなりましたから、これで終わらしていただきます。
  335. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 山原さん、ほんとうに押しつけておるというふうに誤解しておられるようですけれども、三名は、医学専門学群のないときの三名でございまして、医学専門学群ができましてから五名ほしいということになってきておるわけでございます。  同時に、十月開学でございまして、たいへんな準備が要るのでございまして、学長一人でいいじゃないか、そういうことをおっしゃらないで、やはり学長を補佐する機関が十分ありませんと、万全を期し得ないのでございまして、それもひとつ誤解のないように申し上げておきたいと思います。
  336. 山原健二郎

    ○山原委員 そういう答弁をするなら私はやりますよ。それが押しつけなんです。あなたの主観的な考え方なんです。筑波大学は、筑波大学のみずから決定できる権限は法律上あるのです。あなたのかってにすぎないのですよ。それをあなたたちの主観で、筑波大学は五名だ、こういう考え方ですね。押しつけでないと言われても、そういう新しい構想大学にあなた方は五名副学長を置くんだという形で出ておるわけでしょう。押しつけとか押しつけでないとかいうことは、ここで言いませんけれども、それがそうなるのですよ。明らかにそうなるのですよ。筑波大学自体が、みずから決定できるわけですからね。そのことを言っておるのですから。まああとでまた論争いたしましょう。
  337. 田中正巳

    田中委員長 次回は明二十八日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十六分散会