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吉國政府
委員 ただいまの御
質問で、法制局長官の関与の程度あるいは法制局長官の権威の度合いというようなことでありますが、長官ということで、法制局の長でございます。長官の権限ということでお取り上げになりましたけれ
ども、御
承知のようにわが国の官僚
組織は、法制局でございましても長官が統括をいたしまして、長官のもとにこれを補佐いたします内閣法制次長というものがおります。内閣法制次長は、各省の事務次官と全く同格でございます。その下に
部長が四人おります。第一
部長から第四
部長まで、この
部長は各省の局長と同格でございます。その下に各部に数名の参事官がおります。この参事官が各省の課長と同格でございます。
そこで、
法律の審査あるいは政令の審査にいたしましても、参事官がいわば担当の責任者になりまして、その参事官が各省の立案の責任者と相互に協議をいたしまして
法案が成立をいたします。あるいはまた
法律、政令の解釈の問題でございますならば、その参事官が当面の責任者になりまして、各省の法令執行の責任者と協議して、最終的な意見をきめます。参事官が意見を内定をいたしますと、内定と申しますか、参事官として確信を持ちますと、これを
部長に上げ、
部長が次長に話をし、次長から私のところへ上がってまいりまして、最終的な決定をいたします。これは
法律案、政令案の立案審査のことにつきましても、またでき上がっております現行の
法律、政令等の——
法律、政令ばかりじゃございません。それから省令等もございますから、法令の解釈につきましても同様でございます。
それだけをまず申し上げておきまして、
法律案の審査、たとえば今回の
国立学校設置法等の一部を改正する
法律案でございますと、担当の
文部省におきまして、
文部省の
大学学術局の
大学課でございますか、そこでまず政策決定をいたすわけでございます。
その政策を
実現するには法令上いかなる手段を要するか、
法律上こういう手段を要する、あるいは政令以下の命令の段階で、こういう手段を講ずるということもございましょう。今回の場合は、
国立学校設置法その他この
法案にあがっておりますような
法律の改正が問題になりまして、そこでその政策を
実現するための
法律の改正を立案をいたします。
立案をいたしますと、
文部省内部でも当然法令審査がございますので、
大学課から局長のところで審査をしたものをまた官房で審査をいたしまして、
文部省としての案を作成をいたします。
文部省の案が作成をせられますと、私
どものほうで、担当は第二部でありますので、第二部のところで、まず
部長と担当の参事官あるいはまた手があいております場合にはその他の各省の担当の参事官も参加をいたしまして、手順といたしましては、まず第一読会の前に概要説明というものをいたします。そこで
法律案の基礎的な
考え方を十分に検討をいたしまして、大きな問題があればそこで提示をいたしまして再検討を請う。そういうことがなければ、第一読会、第二読会、第三読会と順次やってまいりまして、大きな
法案になりますと十数カ月を経過してやっと最終案に到達するというような事情でございます。その間——今度の
法律についてそういうことはございませんけれ
ども、昔の例で申し上げまするならば、ガリ版で印刷をされました
法律案、何々
法案、第一条から始まって数十条並んでおりまして、
最後に附則ということになりますが、極端な場合には題名と附則という字だけ残ったというような例もあるくらい、実に詳細に検討いたしまして、
法案としての完ぺきを期しております。今回の
筑波大学関係のこの
法案、
国立学校設置法等について、具体的にそこまでの問題はもちろんございませんでしたけれ
ども、これにつきましては、いろいろ問題として、おそらくこの
委員会においても御
審議の際にテーマになったような問題が、おそらく法制局の内部の審査でも同じように問題になっていると思います。
そこで、第二部でいろいろ検討をいたしまして、第二部として決しかねる問題は、次長から私のところまで上がってまいりまして、最終的な決定をいたします。そのようなやり方は、
法律、法令の解釈についても同様でございます。
そういうようなかっこうで
国立学校設置法等の一部を改正する
法律案が最終的に案が固まりますと、便宜この最終的な案を閣議請議案といたしまして、決を請うという文書をつけたものが内閣に回ります。
内閣官房から法制局に回されまして、法制局ではそれをさらに読み合わせをして、最終段階で、また次長や長官の段階で手直しが出ることもございますので、そういう部分は、いわゆる付せんというものを張りまして、訂正をした上で、これで閣議に
提出されてよいと認めるという承認をいたしまして、私の
名前で内閣官房に回付をいたします。
これについて閣議でもちろん検討審査をするわけでございますが、閣議の前の段階において次官
会議というものがございます。火曜日と金曜日の閣議の前日に、月曜と木曜日には次官
会議がございまして、正確には事務次官等
会議と称しておりますが、その事務次官等
会議におきまして、各省から関係の次官が意見を申すことがございます。その場合の意見は、ほとんど法制的な問題じゃございませんで、政策論が出ることがございます。そこで保留をされますと、さらに手直しをいたしまして閣議にかけるということになります。閣議で問題が出るということもなきにしもあらずでございまして、年に一ぺんか二へんくらいはあるかと思いますが、最終的には各省の意見が十分調整をせられまして、法制的には、
内閣法制局として、
法律案として十分であるという確証を得たもののみが閣議に付議せられるわけでございます。その結果として閣議で承認になれば、それが内閣
提出案として
提出をされることになります。
法律の解釈につきまして、非常に重要な問題で閣議にかかったという例も、私の経験では過去十数年間に何回かはあったかと思いますが、通常の法令の解釈につきましては、各省から
内閣法制局に照会がございまして、それに対して、重要なものであれば文書をもって
回答するし、文書をもって
回答するに至らないものは、口頭照会に対する
回答というかっこうで処理をいたしております。
この
法律案なり政令案の審査立案の問題及び法令の解釈についての法制局の権威の程度は、どの程度であるかという第二の御
質問でございますが、私は別といたしまして、従来の、現在の
人事院総裁である佐藤達夫長官、それからその次の林修三長官、さらに先般やめました高辻長官、この三代の長官は、いずれも長年法制事務に従事をいたしまして、十分
法律問題に関する識見があるということで
内閣法制局長官に任ぜられたものと思います。したがって、その処理をいたしましたものについては、内閣総理
大臣をはじめ各省
大臣から御信頼をいただきまして、法制局の
法律的見解に対して、法制局がいままでそれを特に政治的な問題として偏向したというようなことはございません。私も従来の長官にできるだけ近づくように
努力をいたしておりますが、はたしてそれだけの権威があるかどうかは、私自身としては何とも申し上げようがございません。