○安里
委員 ただいま議題となっております
国立学校設置法等の一部を改正する
法律案に対します修正案について、御説明を申し上げます。
案文はすでにお手元に配付されておりますので、朗読を省略させていただきます。
政府の提案にかかります本改正案につきましては、多くの疑問点があり、たとえば設置法になじまない
ところの異質の内容を持ちます
筑波大学の組織を抱き合わせた立法手続にも疑義がありまして、野党からその分離の
審議を求めたのでありますが、否決になりましたので、原案をもとに本修正案を提出するものであります。
本改正案の全体を通じてどうしても同意できない点の第一は、
筑波大学という新しい
大学構想だとはいえ、
大学の管理
体制があまりにも強化されていることからして、
大学における研究の自由、
教育の自主性をそこなうおそれが濃厚であるということであります。
特に、
政府が実施にあたりまして予定しております
具体的な構想によりますと、副
学長が実務的な面での管理に当たり、しかも五名もの副
学長を設けることになっておりまして、このような強力な管理
体制下で、
教育担当及び研究担当の副
学長を専任させることは、ただいま申し上げました
教育研究の自由をそこなうことになると思いますので、本修正案では、
教育研究担当の副
学長を置かないという趣旨から、
筑波大学の副
学長を三名以内として、これを法定せんとするものであります。
第二に、自主性が要請されます
ところの
大学の評議員に対し、
文部大臣がこれを任命するというのは、常識の域を脱しておると思いますので、この
規定を削除することにいたしております。
第三に、現在の諸
大学では、
社会に開かれた
大学の役割りは十分果たされておりませんから、新構想
大学としての
筑波大学にあっては、この趣旨が十分生かされるべきだと思うのであります。
このためには、地域住民の
大学に対します要求あるいは住民の
意見が反映されることこそが先決でありますから、
学長の諮問
機関たる
参与会に地域住民の代表が必ず任命されるべきだとの趣旨からいたしまして、これを
法律において
規定することといたしているのであります。
第四の理由は、
大学は単に教える者と教えられる者との場と見ることは適当でないのでありまして、学問を修め、
社会に出て貢献する人物を養成する場と考えるべきであります。そこに学ぶ学生は
大学という
社会で正しく位置づけられるべきであります。すなわち、
大学においての学生の人格的存在を評価することであります。
過去数年間にわたり激しく展開され、現在もなおやむことのない
大学紛争、そして学生問題の根底にある重要な一面は、学生の人格的存在が認められていない
大学社会に対する反抗と見るべきであります。
かつて東京
大学の
教授でありましたエドモンド・ブランデン氏は、学生に対し、諸君は青年紳士なりと言われ、学生の人格を尊重されたことは有名であります。したがいまして、氏に対する深い尊敬の念は、いまなお氏の教え子である
方々が堅持する
ところと聞いております。
この
意味から申しましても、
大学における学生数が多くなった現在は、それだけに
教授等の
個人的な方針や
態度だけでは補い得ないものがありますから、全学生の加入する学生協議会を法的根拠のもとに設け、
大学の管理運営等一切の
事項に対し
意見を表明し、または建議することができるようにすべきであります。
もちろん、学生協議会は、学生の総意に基づき運営されるようにするため、協議会代表の選考方法、
会議の運営、協議会の財政その他必要な
事項が民主的ルールによって行なわれるような制度を
大学全体の良識をもって設けることといたしまして、本修正案のうち最も重要な修正
事項として提案いたしているのであります。
最後の修正案は、このような民主的なルールによって選出された学生協議会の代表が、
大学の管理運営に全責任を持つ
学長、また一面から申しますならば、その
大学の象徴ともいうべき
学長の選考に参加することは、民主主義の原理に照らしてけだし当然のことだと考えるのであります。
したがいまして、本修正案では、このような学生参加の方法を明らかにして、
政府案によります
学長選考権者のほかに、学生協議会の代表を新たに加えることによりまして、全体の四分の一を下らない選考権を学生協議会に与えようとするものであります。
以上、きわめて要点のみにしぼって提案の理由を説明申し上げた次第でありますが、
筑波大学が真にわが国の
大学教育に新機軸を開くのか、それとも
政府原案によって世上の非難するような
大学とするのか、重大な岐路に立っていることを思いますときに、高いステーツマンシップに立って慎重な御
審議を賜わり、
委員各位の御賛成を
お願いして、提案の説明にかえます。