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1973-06-28 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十八日(木曜日)    午前十時四分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 中山 正暉君    理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    伊能繁次郎君       江藤 隆美君    越智 伊平君       大石 千八君    近藤 鉄雄君       丹羽喬四郎君    旗野 進一君       吉永 治市君    上原 康助君       坂本 恭一君    山崎 始男君       横路 孝弘君    和田 貞夫君       木下 元二君    東中 光雄君       鈴切 康雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         法務政務次官  野呂 恭一君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省矯正局長 長島  敦君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君         法務省入国管理         局長      吉岡  章君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  正田 泰央君         法務大臣官房営         繕課長     水原 敏博君         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         厚生省医務局国         立療養所課長  大谷 藤郎君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 六月二十七日  辞任         補欠選任   伊能繁次郎君     島村 一郎君   越智 伊平君     中村 寅太君   近藤 鉄雄君     小川 平二君   竹中 修一君     天野 公義君 同日  辞任         補欠選任   天野 公義君     竹中 修一君   小川 平二君     近藤 鉄雄君   島村 一郎君     伊能繁次郎君   中村 寅太君     越智 伊平君 六月二十六日  官公労働者ストライキ権回復に関する請願(辻  原弘市君紹介)(第七七二八号)  同外二件(山田芳治紹介)(第七八六八号)  両眼失明度戦傷病者に対する恩給等改善に関  する請願羽生田進紹介)(第七七六九号)  同(宮澤喜一紹介)(第七八二七号)  靖国神社法制定に関する請願外一件(田中龍夫  君紹介)(第七七七〇号)  同外二件(小澤太郎紹介)(第七八六九号)  靖国神社国家管理反対に関する請願河上民  雄君紹介)(第七七七一号)  同(辻原弘市君紹介)(第七七七二号)  同(武藤山治紹介)(第七七七三号)  同(横路孝弘紹介)(第七七七四号)  同(阪上安太郎紹介)(第七八二五号)  同(平田藤吉紹介)(第七八二六号)  同(竹本孫一紹介)(第七八七〇号)  自衛隊機飛行中止等による市民生活安全確  保に関する請願島本虎三紹介)(第七八七一  号)  国税職員給与改善等に関する請願池田禎治  君紹介)(第七八七二号)  同(塚本三郎紹介)(第七八七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二四号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎始男君。
  3. 山崎始男

    山崎(始)委員 きょうは直接、法務省設置法法律案がかかっておりますが、その内容についてお尋ねをするというよりは、実は会社更生法大蔵省銀行に対する指導方針というものをお聞きしたい。その点、設置法内容自体にはあまり触れたくありません。ということは、こんなことを申し上げると言い過ぎかもしれませんが、当委員会にかかっております法務省設置法内容は、そうたいしで反対をするだけの論拠がないということでございますので、その席をかりまして、いま申し上げました会社更生法大蔵省銀行指導に関する問題、そういう趣旨のもとで御質問したいと思います。どうぞ与党の諸君もお許し願いたいと思います。  まず法務大臣にお尋ねするのですが、会社更生法という法律ですね、これはたしか昭和二十七年にできたはずです。できてあまり年数がたっておりませんが、私が考えますと、会社更生法という法律自体に、長所もあれば、欠点というほどじゃございませんが、俗なことばで言いますが、かゆいところへ手の届いたような内容ではないという気がするのであります。そういう立場から、法務大臣自身の、会社更生法そのものに対するあなたの御見解をまず最初にお聞かせ願いたいと思うのであります。
  4. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 ありのままに申し上げますと、先生お説のように、この法律大会社の間に幾らかそぐわぬ点がなくはないという感じでございます。と申しますのは、大会社はこの会社更生法によって相当程度会社更生の目的を達しておる。しかるところ中小会社につきましては、何ぶん銀行関係が、大蔵省所管の話になりますが、大口銀行関係、この協力関係がうまくいかない。銀行債権者としておる大口関係がうまくいかぬ。それぞれの理由はあるわけでありますが、そういうことでございます。しかし、現在のところ、会社更生法をしからば改正して、そうして中小会社の実情に即するように改めていかなければならぬかと申しますと、そこまでどうも所見をまとめるところまではいっていないという事情でございます。現在のところは、裁判所から選ばれました管財人裁判所の御苦心によって、中小会社も相当な更生の成績をぽつぽつあげておる、こういう事情でございますが、大会社の場合と比較をいたしますと幾らかその効果が薄いのではなかろうか、こういうふうに観測をしでおりますので、今後は、裁判所の御尽力にまち、裁判所から選ばれた管財人の御苦心によりまして、この法案を適切に運営していくことが望ましいというふうに考えております。
  5. 山崎始男

    山崎(始)委員 いまの大臣の御答弁は、私が考えておることと全く実は一致しておるのであります。順次、会社更生法並びに金融機関との関係について、これから申し上げますが、いまの更生法自体に対する御所見は、法務大臣と私の考え方はやや一致しておるのであります。全くというくらい一致しておるのであります。  実は私は、名前は言いませんが、いまからちょうど三年前、東京地方裁判所民事八部から私に管財人をやってくれというある要請がありました。私は管財人というようなことをやったことがありません。生まれて初めてです。断わって断わって断わりました。第一、常勤ができないぞということです。そうしたら、管財人代理を選任する権限管財人にあるんだから、おまえさんが常勤できなければ代理を置いたらいいじゃないかと言われました。  それから、なぜ私に東京地裁民事八部から管財人に云々ということになったかという、これはいささか唐突な話のようでありますから、私にそういうことを言われた理由を簡単に申し上げますが、実はその倒産会社というのは、東京にあるかりにAならAという光学機械、要するに、双眼鏡であるとか、顕微鏡であるとか、天体望遠鏡であるとか——これは、あるいはキャノンであるとかニコンであるとかいう大会社とは違いますよ。中以下の光学関係のある程度のしにせの会社だったのであります。当時の資本金は四千万円、それが倒産をして会社更生法申請東京地裁へ出した。地裁はそれを認可した。それから管財人の問題になってきた、こういう経過です。  なぜ私が管財人に云々されたかというのは、これはいまから十年ないし十二年前に、通産省の問題、要するに俗にいう団体法の問題です。通産省が輸出するのにチェックプライス制というのをやったわけです。これより以下でやったらいかぬぞというものですね。しかし、ニコンキャノン高級品というものは、チェックプライス制の対象ではありません。学術用であるとか、あるいは軍事用であるとかという高級品でありますから。ところが、あと光学関係の商品には全部チェックプライス制度があったのであります。驚くなかれ、そのチェックプライス制度通産省が十年間くぎづけにしておったのであります。この自由経済の世の中に、十年間から一つ金額を動かさずに、これ以下では輸出してはならないという問題があったのであります。それがために、輸出業者関連下請工場を持っております。下請工場には従業員がおります。おまんまを食っていかなければいけません。売るわけにはいかない。海外市況は下がっているというので、インボイスあるいはLCの金額は全部チェックプライス制度に合わせたわけです。そして裏金をあとから返還をするということをやった。これが横浜警察にあがり、横浜地検に回り裁判所にかかる、これは全部なんです。これは驚くなかれ、悪法も法なんですね。外為法違反関税法違反にかかったわけですから、悪法も法です。法ですが、全部の業者が全部罪人になるということ自体は、これは当然行政上どこかに欠陥がなければならない。それで、私は陳情を受けて調べてみたところが、いま言うチェックプライス制度を、この自由経済下に、貿易自由化という声もその時分からずっとあったわけですが、そのころに十年間も相場を据え置いておるということ自体が非常な欠陥だ。ちょうど終戦直後に、たしか山口という裁判官が、やみをやってはならぬというので判検事諸君全部やみをやっております、やみ米を買うております終戦直後、餓死した例があります。わしはあくまで法律を守るのだ、やみをやらないのだというて、それがために餓死した。これは当時大きく新聞に出ました。その例を引いて、私は横浜地検にまで行きまして話をしたわけですよ。全部の業者が全部罪人になること自体おかしいじゃないか。悪法も法だからそれはしかたがない、よく調べてくださいと言ったら、経済担当検事通産省大蔵省へやって調べると言った。調べたあげくが、私が言うたことがほんとうであったということがわかったわけですよ。それがために私に横浜地検へ来てくれというので当時行きました。行きまして、それで、調べてみたらあなたが言うとおりだ、それについては通産省が遺憾であったという何か文書をもらえぬか、こう来たのですよ、横浜地検が。それはむずかしいですよ。少なくとも一つの国の省が大臣名前で、行政が遺憾であったというような文書は、私は書くわけにはいかぬだろうと思った。いかぬだろうと思うが、極力何とか考えてみましょうというて、ちょうど前に郵政大臣をやっておりました広瀬さんが政務次官のときに、私は委員会でこの問題を取り上げたのであります。それで熊谷という重工業局長役人一流の、つべこべつべこべ言うわけですよ。十年間くぎづけをしておること自体がどうかという要点なんですよ。行政上遺憾じゃないかといって追及しても、妙な答弁をしたわけですよ。それで私は広瀬政務次官に、あなた政治家じゃないかと言ったのです。私のいままでの話を聞いて、あなたどう思うか、全部の業者が全部罪人になるということは、そういうチェックプライス制度があること自体がそうなるのだが、どう思うか。それでは相談をして善処しますというて、とうとう文書を二十枚書いてくれたのですよ。それは遺憾であるとは書いていない。きょう現在光学関係輸出業者が全部そういうふうな貿管令違反関税法違反にひっかかっておる、こういう事態は何とか地検においても考慮してもらいたい、同時に通産行政については今後改めることも検討しなければならぬと思うと、遺憾という意味を間接的なこういう文章で書いたのです。公文書二十枚。それがため横浜地検にかかっている人は全部無罪放免、不起訴、裁判中の者は無罪裁判確定した者もあったわけですね。警察におる者も全部放免等々。通産省チェックプライス制度というものをそれがためにやめてしまったのです。  そういう事件並びに団体法の問題があった。そういう関係がありましたから、東京在住光学関係者には私の名前を知らぬ人はいないのです。ほんとうをいいますと。ところが大企業一つもないのです。まことに零細企業零細企業、これはもう家内工業的なものもずいぶんある。  それで、前置きが長くなりましたが、そういう関係で、いわゆるAならAという会社が三億余りの借財で倒産をした。それが更生法認可を受けた管財人が必要だというんで、山崎ならばこれを更生してくれるだろう、これが原因なんであります。それがために、地方裁判所から私に管財人と、こう来たわけです。そういう経過がございまして、三年前から管財人を引き受けている。  ところが、私が過去三カ年間の体験を通じてみて、会社更生法は、いま大臣がお話しになったように、大企業にとっては非常に有利な法律です。ところが中小以下の企業にとっては、かゆいところへ手の届かない、いわゆる愛情がまだ足りない面が非常に多い法律であります。これは、いま大臣がおっしゃったとおり、大企業管財人ならばたいがいの場合が、大資本の大商社が金を貸しておるとか、あるいはたとえて言えば姫路の山陽特殊鋼のごとく大きな鉄鋼会社が材料で入れておるとか、あるいは銀行が金を貸しているとか、いろいろあって、金を貸しているものは取り返さなければなりませんから、そこから管財人が選ばれて出てくる。管財人が出ること、すなわち資金ルートたいがいの場合持参金を持ってくるわけです。管財人一つ苦労は要らないのです。  ところが悲しいかな、中小企業以下の管財人というものは、私は過去三カ年間どんなに苦労したか。苦労をするというのは、これは経営者がいないのですよ。というのは、地方裁判所によってそのAならAという会社経営者は全部立ち入り禁止です。そうすると経営者がおらない。私自身管財人経営者兼小使い、走り使い。売ったりもろうたりしなければならないわけですね。  それで、要点に返りますが、ある新しい経営者、スポンサーを見つけたんであります。そして昨年の二月の末に裁判所債権者集会を開きまして更生計画を完了いたしました。返還金は三カ年間で一割七分五厘、八割二分五厘は切り捨てる。これを債権者会議へかけて、その同意を得て、裁判所もそれを認可した。それが去年の二月の末日です。そこまでは解決しました。それからあとがたいへんな問題が起こったのであります。本社社屋というのは鉄筋四階建てで、それは旧社長の個人資産を全部提供するということで更生会社名前に切りかえたという経緯があるのでありますが、それの抵当権者が三行あったわけです。二つは政府関係金融機関です。一つ民間のBならBという相互銀行です。  それで私は、政府関係金融機関へ持っていって、抵当権を設定している、ひとつ年賦払いにさしてくれ。そして御承知のように金融機関というものは、延滞をした場合には日歩五銭とかなんとかいう延滞金利というものがございます。それは元日歩の二銭五厘とか四厘という普通のノーマルな日歩にしてもらいたいという申し入れをいたしました。そうしたらその政府関係金融機関は、最もきびしくなきゃならない政府関係金融機関であり、もとより会計検査も厳重ですが、更生会社のことですから再建してもらわなきゃいけませんので、あなたのおっしゃるとおりに分割払いをいたしましょう、日歩五銭の金利は元日歩にいたしましょう。オーケーですわ。  残った一つがある民間金融機関、これは相互銀行です。そこまでは申し上げます。都市銀行でも地方銀行でもございません、相互銀行です。この相互銀行は、おそらく私の勘では、今日、全国でもおそらく十五番以内に入っておるんじゃないかと思うくらいな相互銀行です。ちっぽけな相互銀行ではございません。それへ持っていって、その本社社屋が五千万円前後の根抵当へ入っておったわけですね。それを競売にかける申請をしておるわけです。競売をされたら、管財人立場としたら、あと債権者へ払う三カ年間に一割七分五厘の金を非常に苦労しなきゃいけない。債権者会議結論として、その建物は絶対に売っちゃ相ならぬ、これは再建をするためメリットがあるものに使うべきだという決定がございます。ところが銀行は、その本社社屋を売って払えとこう言うんです。売って自分のほうが貸しておる五千万余りの金を一ぺんに払ってくれと、こう言うんですわ。それで、売っちゃならぬという債権者会議決定があるから、一ぺんに払うことはできぬと申し上げました。そうしたら、よその銀行で借りかえをして一ぺんに払えとこう言うんです。  大臣、御承知のように、まあ大蔵省の方も来ていらっしゃるんですが、現在たしか大蔵省は、土地、不動産に関しては多額の融資をしちゃならないという指導方針を持っていらっしゃるはずなんですよ。やぶから棒にこれを抵当に入れるから貸してくれというて、ああそうですかと貸す銀行はそうたくさんないと私は思うんです。よしんばあっても私はそんなことをしたくない。ということは、国の法律によって、更生法の適用を受けて、再建をさせなきゃならないという愛情があるから会社更生法というものが片っ方にある。それ認可が完了した、支払い計画も立った、そして毎月百万円ずつ払うから五十五カ月、四年半とちょっとの分割払いにしてもらいたいというのがこちらの要点ですが、全然聞かないのです。そういうふうな銀行というものはあるべきはずのもんじゃないという信念を私は持っているんです。  それがために私は、競売だとおどかすんで調停へかけました。御承知のように調停へかけますと競売はストップされます。それで調停へかけて、いままで九回調停やりましたが、私が行かなかった日は五月の十五日、一ぺんでございます。管財人代理と私の顧問弁護士、それから調停委員が二人、銀行から二人。そのときに私は大げさにしたくなかったのです。それまで胸にこたえて腹が立ってかなわぬけれども、まあまあ調停にかけているのだから、そのうちに銀行のほうから——こちらは出しておるのですから、毎月百万円ずつで五十五カ月。調停委員自身も三人とも、いままで関係した調停委員の人全部弁護士さんですよ。アドバイスをする調停委員が、御承知のように調停裁判ですから、両者の合意が前提でございまして、裁判官が立ち合うわけでもない。調停委員が強制するわけにもいきません。ただアドバイザーの役目だけのはずなんです。調停委員は何べんも銀行当局へ対して、民間銀行といえども社会的な公器の性格を持っておるのだ、A会社更生会社のほうからはそういう具体案を出しているのだ、おたくのほうは一括払いを全部してくれというのはいささかちょっと無理じゃございませんか、何とか妥協案銀行さんも考えられたらどうですか、どうですかと言うてきているわけですね。それが八回も終始一貫、それが驚くなかれ、さきの話に返りますが、五月の十五日の調停の場所で、私が欠席した日ですが、こういうことを銀行から来ておる二人は言っているのです。  こちらは東京地方裁判所管財人として一々月例報告を出さなければならぬ義務がございますので、その一節をちょっと読んでみます。これは四項目書いておるのですが、銀行が言うておるのに、「調停委員からの妥協案を考慮するについての件に関しても一切考慮する余地はない」、こういう発言。これは一切考慮する余地はない。その次は、「そもそも申し立て人からの本事件調停申し立て担保権実行妨害である」と言っておるのです。それは銀行とすれば、抵当権とっているのですから、競売にする法律上の権限がございます。それで調停申し立て担保権実行妨害であるという。これを私は代理から報告を受けて、こういうひどい銀行があるかとつくづく嘆いたわけです。調停という、これも国の制度、それが実行妨害であるということ。その次に、「したがって株式会社A銀行としては、申し立て人会社更生法に基づく再建途上更生会社だとしても、申し立て人更生再建に対する協力とか同情の余地は毛頭ありません」、こういうことを言っているのです。更生会社だからといって同情するとか協力をする気持ちは毛頭ございません、こう言っている。その次、「結論として、一括即時弁済されたい」、これが結論なんです。これが五月の十五日です。これを聞いて調停委員もあきれたり驚いたり、弁護士さんもあきれたり驚いたり。これを聞いて私は一体それは法律——きょうは法律論やるつもりじゃないのですよ。法律的には根抵当としてとっているのですから、競売にする権限あります。  そこで一体私は、大蔵省銀行指導というものはどういうことをやっているのかというところに疑問を持ったわけです。平気でこういうことがまかり通るような銀行だったら、私から言わせれば昔の高利貸し根性としか考えられないのです。というのは相互銀行というのは、大臣承知のように、昭和二十六年にたしか相互銀行法というのができたはずです。昔の無尽会社が寄り集まって、数行集まって相互銀行法による相互銀行というりっぱな名前になったのです。したがって昔の無尽会社の残滓といいますか、その高利貸し根性をもって経営しておる連中が相互銀行にはずいぶんおるのです。それは私もたくさん例を知っておりますけれども、何も言いません。ははあ、この銀行相互銀行高利貸し根性以外の何ものでもないじゃないか、これは一体どういうふうな解決をしたらいいか。競売やられたら、私とすれば百四十人ばかりの債権者に対して返還する義務がございます。それからこの会社がつぶれたために三年前に関連倒産したのが四社あるのです。再建ができて、更生計画再建途上に、また本社社屋競売されたら、またこれは管財人とすれば、今度は破産宣告をやらなければならないような事態にならぬとも限らない。とられてしまいますとメリットがない。ないというよりは少ないのです。営業は続けています。そういう事情をひとつ頭においていただきたいのであります。  そこで、大蔵省、きょう実は大蔵大臣銀行局長政務次官出席要求いたしておきましたが、たまたま同一の時間に大蔵委員会があり、そのほうにぜひ出なければならないというので、遺憾ながら出席ができないということでありますが、まず第一に大蔵省銀行局関係政府委員にお聞きするのですが、最近、銀行大衆化ということが叫ばれております。金融機関大衆化銀行大衆化。これはおそらく大衆化という意味は、日本の国全体が本年度あたりから、国民福祉生活優先、だからいままでのような銀行が大産業中心に金を貸す。かりに百億金を貸しても、中小企業に百万円貸しても、帳簿につけたりする費用や人件費は一緒です。しかし、効率主義利益主義であっては相ならない。銀行といえども社会的な公器なんだから、国民福祉を考えた金融政策をやらなければならないという意味が私は銀行大衆化だと思うのでありますが、たしか大蔵省のほうも、昨年度あたりから銀行大衆化ということをおそらく指導されておるんじゃないかと思うのでありますが、その点どうでしょうか。
  6. 岩瀬義郎

    岩瀬説明員 先ほどからの御質問承っておりましたが、大衆化ということについての御答弁を先にさしていただきますが、やはり御指摘のように、金融機関が従来どちらかといえば自己本位営業に終始しておったという傾向がございますので、そういうものに対しまして、やはり預金者立場に立って、あるいは金を借りる方々の立場に立つという配慮の欠けていた点については、これはやはり銀行行政においても反省すべき点があるということで、最近はそういう点の内容につきましてかなりきめのこまかい指導を行なっております。したがいまして、大衆化ということばが適当かどうかわかりませんが、庶民の立場に立った金融行政ということと、実際の銀行のあり方について、私どもも十分現在では指導いたしておるつもりでございます。
  7. 山崎始男

    山崎(始)委員 いまお聞きしますと、やはり大蔵省金融機関に対する指導方針も、ある程度、従来のような銀行のものの考え方で経営してはいけない、国民福祉を考えた金融政策をやらなければいけないという立場で御指導になっておるようないまの御発言でした。ところが実際はなかなかそうはいかない。現に、たしか四月の中旬でございましたが、全国の銀行協会のほうが住宅ローンの金利を引き上げるという声明をしたはずなんであります。そうしたら会長が、その数日たった後に、引き上げないという取り消しの声明を出したはずです。住宅ローンの金利ですよ。一ぺん引き上げると言うた。おそらくこれは大蔵省指導方針があったのか、同時にまた一般の声、住宅ローンの金利を引き上げるということは何ごとだという反論があったのか、いずれにいたしましても、それを取り消してもとどおりにすると言うたことはいいとしても、そういうことをやったことがある。その時分に銀行大衆化という指導方針があったから、おそらく大蔵省のほうから、住宅ローンの金利を引き上げるなんていうことはいけないというアドバイスされたのかされないのか知りませんけれども、そういう件があった。ところが、金利は引き上げないが、今度は貸すときに選別融資という手段をとってくれるのですよ。いままでのように比較的金融緩慢の時世とはいま違います、一年たった今日。選別融資をずいぶんやるんじゃないかという気がしてならないのです、実際に。金利はそのままにしておくけれども、その反面、選別融資という手段が残っております。そういうことはどうでもよろしいが、これも銀行大衆化を取り消す一端だと私は見ているのです。  そういう大衆化という時代に、先ほど私が申し上げたこのB銀行のこういう言動というものは、昔の高利貸し根性と同じようなことで、大衆化にはほど遠い銀行の金融のあり方がまかり通っている。  それからもう一つ。私は名前は言いません、このBという銀行です。これは朝日新聞その他の広告に、奥さまに対する便利預金というもので、九十万円でしたか、三倍まで貸しますと書いてある。大きな字で書いてある。新聞広告、見出しですね。それにも条件がないのですよ。それで、私の近しい人間が、実はこの銀行の渋谷の支店に金を借りに行ったのですよ。言いかえますと、三十万円定期預金があると九十万円借りられるという錯覚を起こすような新聞広告です。奥さま便利貸し出しとか。行ったところが、新規に三十万円定期預金をせいということなんです。いままであったものではいけないということですね。そんなことは新聞広告にはないのですよ。そうして同じ渋谷でも、桜ケ丘ならよろしいが鴬谷はいけません、こう言う。鴬谷というのは、御承知の岸信介さんの自宅なんかがある南平台といいますか、あのすぐ隣ですね。高級住宅です。どういうわけか知りませんが、鶯谷にはお貸しすることはできない、桜ケ丘ならよろしい、こう言う。借りに行った婦人はたまたま定期預金があったから、それの三倍貸してくれると思って行っているわけです。そうすると、それは違う、新しくしてください。よろしいか。そうして新しく貸すときにはそこでまず審査をする、こうなんですね。審査というのですから選別融資になるでしょう。これは私から言うたら完全な誇大広告ですよ、現にその誇大広告にひっかかって、私の近しいのがいま言うこの銀行に金を借りに行ったのですから。現在の金融機関として、そういふうな誇大広告をすることがあっていいのか悪いのかということです。これに対して大蔵省は一体どういうふうな考え方を持っていらっしゃるか、その点を一ぺんお聞きしたいのであります。
  8. 岩瀬義郎

    岩瀬説明員 きょうは大蔵大臣、参議院大蔵委員会に出ておりますので、私から答弁をさせていただきます。  御指摘の点につきましては、金融機関の公共性という立場から見ますと、誇大広告などによって事業を拡張するようなことがあってはならない性質のものでございます。したがいまして、私どもも行政指導でひんぱんにその点も指導いたしております。先生の御指摘の件につきましても、私どももいち早くその点に気づきまして、その銀行を呼びまして注意を与えております。
  9. 山崎始男

    山崎(始)委員 それはいつごろ。
  10. 岩瀬義郎

    岩瀬説明員 広告が出ましたのがたしか昨年の秋ではなかったかと思います。(山崎(始)委員「いやその後も出しております、広告は」と呼ぶ)それで、条件等について何ら明示がございませんので、そういうことではお客さんに対して親切を欠いておる。それから事実に違反しておる点がありますので、その点は注意いたしておりますが、なお御指摘の点が最近あるといたしますれば、もう一度厳重に注意をいたしたいと考えております。
  11. 山崎始男

    山崎(始)委員 誇大広告に類する広告を出しておるのも、いま言うた一括払いをせいというた相互銀行なんですよ。大臣、そうですよ。  それから大蔵省のほうの政府委員にお聞きいたしますが、私が考えるのに、銀行の過去十カ年間の統計を見てみても、ほかの事業の業者は損をする年もあれば得をする年もある。要するに利益計上ですね。ところが増益、増益を過去十カ年続けておる業界といったら金融業界だと私は見るのですが、どうですか。
  12. 岩瀬義郎

    岩瀬説明員 金融機関が増益と申しますか、収益上ある程度コンスタントな利益をあげておることは確かでございます。これはまた、ある意味におきましては、金融機関は一般の預金者の預金を預っております。したがいまして、その経営は健全でなければならないということがたてまえでございます。赤字経営を続けるような金融機関というものは、私どもから見れば一番不都合な状態に立ち至るわけでございますから、先ほど御指摘の債権管理等につきましても、そういう預金者保護のたてまえから、健全経営に立脚したものとして指導いたしております。したがいまして、配当制限とか、あるいはその他銀行の経営の上におきまして積立金の制限とか、いろいろの点で銀行の健全経営のための条件というものを十分備えるような内容指導をいたしておりますので、金融機関が利益を計上しておるから、それだけではけしからぬということにはならぬので、私どもの指導から見てむしろ赤字を出してもらっては困るというふうに考えておるわけでございます。
  13. 山崎始男

    山崎(始)委員 いまあなたのおっしゃることは、私は百も二百も知っておるのです。銀行というものは大衆の預金を預っておる、その預金が返済できないようなことでは相ならぬというのは、銀行の根本精神のはずでございますから、私は増益をしておること自体を悪いと言っておるのではありません。言うておるのではなくて、そういうふうな増益、増益をやっておるものが、その中の何パーセントかは国民に還元をする。要するに国民福祉ですね。還元をするという姿勢がなければならないということを私は言っておるのです。ただ、私の質問のしかたが舌足らずの面がありましたから、いまあなたのような御答弁になったと思いますけれども、あなたがおっしゃることは百も二百もよくわかっております。  そこで私は、これも名前は言いません。これは信用金庫です。これの最近の決算報告を見てみますと、普通の会社でいえば、これは売り上げ金に相当する金額ですが、貸付金利息等の経常収入が二百十八億で、一方、二百四十三億余りの当座預金を持っておるのですね。当座預金というのは無利息なはずです。利息が一銭もつかない。そしてこの信用金庫は利益金を二十二億計上している。ところが、私が非常に問題に考えなければならぬのじゃないかと思うのは、常勤が十一人、非常勤が六人ほどおりますが、その二十二億のうち千七百万の役員賞与を出しておる。よろしいか。そういたしますと、これは信用金庫ですから株主はおりません。出資に対する配当金は年八%。役員賞与が千七百万です。これは〇・八%に相当します。出資金に対する八%はよいとしても、役員賞与が合計十七人でもって〇・八%とっておる。これは銀行はもうかるはずです。当座預金がいま言う二百四十三億あって、これは無利息の金ですね。これなんかはいわゆる銀行の健全性という立場で、大蔵省のあまりに銀行に対する過保護の点があるのじゃないか。一般大衆の預金を預っておるのだから健全でなければならないという抽象的なことばを私は否定するものじゃございませんよ。そのことばの隠れみのに隠れて、こういうふうな決算報告になっているのじゃないかということ。たまたまある信用金庫の決算報告を私、持っておりまして、疑問に思うからお尋ねするのですが、役員賞与が、株主があるとすれば株主配当と同じ金額、十七人で。そういう役員賞与が多いと思われますか、少ないと思われますか。
  14. 岩瀬義郎

    岩瀬説明員 私もいま初めて伺いましたので、信用金庫の実態をよく調べてみませんと、はたしてそれが過当であるかどうかにわかには判断できませんけれども、信用金庫というものは一般の銀行と違いまして、御承知のように会員組織でございます。したがいまして、信用金庫の一つの特徴は、会員自身の自立と申しますか、そういうものに基づいて経営されておりますので、私どもとしては、信用金庫は健全なる資産内容で、預金者に対して資産内容が十分配慮されているということでございますれば、賞与につきまして得た額が非常に極端に多ければ別でございますけれども、世間一般の常識から見てまず妥当であるかどうか、その辺は実態を調べてみないとわかりませんけれども、その辺を調べた上においてお答えすべき問題ではなかろうかと思います。
  15. 山崎始男

    山崎(始)委員 いまの御答弁は、なるほど私は信用金庫の名前をあえて言うておりませんが、ここに現に私が持っておる決算報告です。うそでも何でもありませんよ。言えばおわかりになると思いますけれども、私は名前を言うのは控えたいのであります。これは事実です。私がお聞きしておるのは、株主はいない、要するに会員組織である。これも百も二百も私は知っています、信用金庫ですから。それが同じように年八分ずつの千七百万円を十七人でもって分け合っているというこの役員賞与というものは、いかに銀行の健全性といえども、会員組織であって、それは会員がきめることだから大蔵省は知らぬぞという筋合いのものではないと私は思うのですよ。信用金庫といえども大蔵省の管理、監督のもとにあるはずなんであります。そういう点は心ある国民が見たら変に思いますよ。銀行の役員というものはいい金をとるもんだな、必ずこういう感じを持ちます。だから私は、名前をいえばおそらくお調べになるに便利だろうと思いますけれども、あえて私は名前を申し上げません。そういう信用金庫があります。東京都内です。これはそれだけ申し上げておきます。  そこで最終結論にぼつぼつ入りますが、法務大臣がおっしゃったように、会社更生法というものは大企業にとっては非常に有利な面がある。ところが中以下の企業更生会社にとってはいささかもの足らない面があるようにと最初おっしゃいました。私が過去三カ年余り体験したと全く同一の考え方なんです。もうその理由を申し上げなくとも、いままでの私が申し上げましたBならBという銀行が、一ぺんに払えとか、その建物はぶち売って払え、即時払えと競売というあいくちを突きつけておどしておる形ですね。われわれのほうからいえば、昔の追いはぎでも着物を脱ぐ間は待つのですよ。いまは着物着ておってもはぎ取るやつもおりますけれども、待つはずなんですよ。言いかえれば、こちらは支払う、すなわち着物を脱いでも銀行へ御迷惑をかけぬように五十五カ月で毎月百万円ずつ支払いますから、いわゆる着物を脱ぐ五十五カ月間待ってください、御損はかけませんと言っているのですね。それに対して更生法自体にはこういう私が申し上げたようなケースに対する法律の保護というものは、ここから先もない。したがって、大企業更生会社は楽をするが、中小企業以下の更生会社というものは非常な苦労がある。いま少し法律愛情というものを加味されまして——いますぐというわけじゃございません。将来、会社更生法を改正する時期が必ず来るだろう。この法律自体昭和二十七年に発足した法律で歴史は浅い。不備な面が点々あると私は思うのであります。そういうときはひとつそういう点を御配慮になって、特に銀行との関連における更生会社ですから、これは金融というものが一番生命です。そういう面における何か法の改正をお考え願いたいということですね。こういう生きた実例を私が体験をしておりますから、私は体験を通して申し上げておるのであって、どうぞその点をよろしく。法務大臣も法学博士、お若いときには非常な御苦労をなさった。要するに苦労人の政治家であるということは百も二百も私は知っております。どうぞ、そういうふうなきめのこまかい、愛情のある法の改正を将来ひとつお考え願いたいということを要望いたしておきます。  それから大蔵省銀行関係の方には、少なくとも、大企業優先であってはならないんだ、これからは福祉優先なんだ、これが国の基本精神のはずなんであります。今日自民党の皆さんもいらっしゃいますけれども、皆さん全部そのはずなんであります。それによって、ひとり銀行だけが特別扱いをされるということはあり得ないのです。国全般が福祉を優先しなければいけない、国民の生活が優先されなければいけないという、くどいようでありますが、この基本精神だけは今後の大蔵省銀行指導方針の中で終始一貫貫いていただきたい。そしていまも言いますように、過去十年間、毎年毎年、去年よりはことしのほうが利益率がまた上がったんだ、また上がったんだということでずっと来ている。赤字を出せと私は言うのじゃありませんよ。銀行業務の上でその中の幾ぶんでも大衆に還元をしてやる。要するに福祉のほうに還元してやるというふうな貸し出しなり金利なりというものを考えていただくのが銀行本来の使命である。この点を特にひとつ。きょう大蔵大臣がおいでになっておれば、これも私は特に強調するはずだったのですが、たまたま同一日に大蔵委員会があるということで、やむを得ませんので、これはお帰りになりましたら、特にしかるべくお伝え願いたいと思うのであります。  委員長、これで終わります。どうもたいへん失礼しました。
  16. 三原朝雄

    三原委員長 坂本恭一君。
  17. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 大臣が退席をされなければならないということでございますので、最初にこれから入管の行政について、若干の質問を申し上げたいと思っております。  御承知のように、出入国関係の数が非常に増加をいたしております。出入国法案については法務委員会で当然論議されると思いますけれども、それも、その一環としてという説明がなされているようであります。最初に大臣の入管行政に関する基本的な考え方とあうものをお聞かせ願いたいと思います。
  18. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 ただいまわが国がお預かりをしております外国人の数、これは臨時の者を除きまして登録しておる者の数でございますが、世界各国から預かっております者が七十三万人に及んでおる。大事なことを申し上げますと、そのうち十一万人を除きます六十二万人が朝鮮半島出身の諸君でございます。これらの諸君の中には、戦前から日本にいて、わが国の国民ないしわが国とたいへん密接な関係におられる諸君が大部分でございます。一口に申しますと、それは六十二万人のうち五十九万人内外に及ぶ。あとの三万人余りは、南北朝鮮の国が独立をして、日本も独立をいたしました以後に、純粋の外国人として日本に入ってこられた者であります。それから、密入国をいたしまして、本来は追い返すべき者でございますが、いろいろな事情から同情をいたしまして、日本国内に特別滞在を許しておったという者を合わせましてわずかに三万前後の者でございますが、この三万人前後の人々は日本国民同様の取り扱いはできぬのではなかろうか。  たとえば、日本の、わが国の国家機関が公に決定をいたしました政策に関して、これを弾劾し、これを糾弾し誹謗する、そういうことを内々おやりになることは御自由であるとしても、白昼公然デモを行なう、白昼公然演説会をする、しかもその演説会の指導者になる、デモのリーダーとなる、みずから弾劾のポスターを張って歩く、ビラを配るなどということはいささか行き過ぎではなかろうか、外国に来てそういうことをやるということは行き過ぎではなかろうか、三万人についてはしぼったところそういうふうに考えられるのでございます。  そこで、これらの人々に対しましては、政治活動をある程度において規制する。一回やったからすぐ帰れということでなしに、全世界に類例のない道でございますが、一つクッションを置きまして、そういう事態があったときに、ちょっと待った、あなたこういうことをおやりになるといけませんよ、国には法律があるのですからお帰りを願わなければならぬことになりますよと注意を与える。注意を聞いてくれればそれでよろしい、おっていただいてよい。注意を聞かず引き続いてやるという場合においては強制送還を命ずる、このくらいなことが日本の主権国でできませんと、そんなことのできない国は世界百四十一カ国のうち一カ国もございません。それができぬというのはそれは日本だけでございます。  そういうように私は考えまして、最初は政治活動の規制、制約を六十二万人について全部やろうという計画が法務省にあったのでございますが、ちょうどその法案は三回出して三回おじゃんになっております。そこへ私が法務省に勤務することになりましたような事情で、私の意見といたしましては、五十九万人は省け、これは日本人同様に扱え、残る三万人余りについて制限をするのはよいが、一つのクッションを置いて注意を与えて、注意を聞けばよいという制度をとれ、それで聞かない場合において初めて強制送還を命ずるという処置を講ずることがよかろう、それならば四回目提出してよろしいという方針をとりまして、ただいま四回目提出をいたしまして、提案理由の説明が終わったという段階でございます。  くどいお話をいたしますこともいかがかと存じますので、急所だけ私の胸に思っておりますところだけを一言申し上げますと、そういううつもりでわが国入管行政を取り扱っていきたい、こう思っております。
  19. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 出入国法案についてはここでやるべきことではなかろうと思います。私のお聞きしたいのは、いわゆる事務量が非常に増加をしておるのではなかろうか、そういう関係について大臣がどういうふうにお考えかということをお聞きしたいと思います。
  20. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 この十年前と比較いたしますと、十年前は日本国に入ってまいります者が一万八千前後ございました。十年後の今日は、驚くべきことでございますが、六十六万人を突破しておる。それから情勢の変わっておりますのは、船で往航しておりました者が多いのでございますが、このごろは飛行機もジャンボで往航をされる人が多くなったというような事情で、入管行政は思い切って大改革を、しかもこれは時を急がなければならぬ、こういう事情に置かれておるということで、いろいろ苦労をしておるわけでございます。  それから、先生申しわけがないのでございますが、委員長の御了承をいただいておりますが、参議院のほうの委員会で私を呼んでおりますので、あとは、しっかりしておりますので政務次官にまかせておきまして、私はお許しをいただきたいと思います。
  21. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 けっこうでございます。  時間的に余裕がなくて、昨日資料をお願いを申し上げてただいまいただいたわけですけれども、若干基礎的な数字をお伺いしたいというふうに思います。きょういただいたのは、十年前、五年前、それと昨年の数字、それぞれ出入国者、船、これをいただきましたが、今年度のことしの一月から十二月までの見込みとしては、四十七年度に比べてどのくらい増減があるのか、その辺のことをちょっとお聞きしたい。
  22. 野呂恭一

    ○野呂政府委員 問もなく入管局長が参りますので具体的な数字についてはあとで申し上げたいと思います。相当増加する、こういう見込みでございます。
  23. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 それでは、こまかい数字については、入管局長がお見えになったら聞きます。  先ほど大臣が最後までお答えをしないで出ていかれたので、これからお聞きしたいのは、審査官、警備官の問題についてなんですが、その点について法務省は基本的にどういうふうな考え方をお持ちなのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  24. 野呂恭一

    ○野呂政府委員 審査官及び警備官、それぞれ職種を異にいたしております。したがいまして、その業務の実態に応じて適正な配置をつけて、業務の運営を円滑に実施いたしたい、こう考えてやっております。
  25. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 ただいま、審査官、警備官それぞれ職種が違うというお話でございます。実態を見ると警備官が審査官を併任しているケースが非常に多いと聞いております。大体どのくらいの人数が併任をされておるのか、その辺のことをお聞かせをいただきたい。
  26. 野呂恭一

    ○野呂政府委員 本年六月一日現在でございますが、警備官の定員は七百二名のうち、入国審査官に併用されております警備官は百四十九名でございます。約二一%でございます。
  27. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そうすると、審査官の数字は六月一日付で何名でございますか。
  28. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 四十七年度入国審査官の数でございますが、五百七十七名でございます。
  29. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 いまお聞きしたのは、ことしの六月一日付で先ほど御答弁がありましたので、六月一日付の審査官の数は幾つでございますか。
  30. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 六月一日付で審査官五百九十八名でございます。
  31. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そうすると、六月一日現在で審査官の業務を行なっている者は、いま御答弁になった五百九十八名と、警備官のうち百四十九名併任されている、その数が審査業務に従事しているということでございますか。
  32. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 そのとおりでございます。
  33. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 私が仄聞したところによると、警備官の八〇%くらいの者が併任をされているんじゃないかということを聞いたんですが、先ほどの百四十九名、二一%という数字には間違いはないわけですね。
  34. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 間違いございません。
  35. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 審査官と警備官、先ほど御答弁がありましたように、いろいろな点で違いがあると思うのですが、勤務の条件といいますか、どういう点が違うのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  36. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 入国審査官及び警備官の職務の違いでございますが、入国審査官の権限は入国管理令第六十二条の二に規定してございまして、具体的に申し上げますと、外国人の上陸審査でございますし、それから外国人の帰国の証印、それから日本人の出国及び帰国の証印、それから在留資格の変更、在留資格の取得、在留期間の変更に関する事務並びに再入国許可に関する事務、それから外国人の違反調査ということになっております。それから人国警備官の権限については、出入国管理令の第六十一条の三に規定してございますが、具体的に申し上げますと、入国、上陸に関する違反事件の調査、在留に関する違反事件の調査、収容令書及び退去強制令書の執行というふうに職務権限の相違がございます。
  37. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 職務権限の違いではなくて、勤務条件、たとえば採用の差異、給与、勤務時間、そういう点についての差異をお聞きしたいのです。
  38. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 まず勤務時間につきましては、警備官は週四十八時間でございますし、審査官は週四十四時間でございます。  それから、採用にあたりましては、審査官の場合には六等級以上ということになっておりまして、警備官のほうが当初採用する際には低い等級になっております。
  39. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 具体的に一つの出張所をとらえてお聞きしたいと思いますが、入管事務所の下関港出張所というのがございます。昨日申し上げておいたのですが、その辺のことをお尋ねしてもよろしゅうございますか。  現在、下関港出張所というのは何名勤務しておりますか。
  40. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 八名勤務いたしております。
  41. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 その警備官、審査官の内訳はどういう数になりますか。
  42. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 審査官三名、それから警備官五名でございます。
  43. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 昨年からことしにかけて、私が調べをしたところによりますと、七名という話だったのですが、八名にふえたのは今年度からですか。
  44. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 今年度予算によりましての配置定員は一名増でございます。
  45. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 昨年の十二月からことしの一月にかけて七名ということでございますね。その七名の審査官、警備官の内訳はおわかりになりますか。
  46. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 審査官三名でございまして、当時おそらく警備官四名、現在五名ということでございます。
  47. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 私の聞いたところによりますと、審査官が二名で警備官が五名だというふうに聞いておったのですが、間違いございませんか。
  48. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 警備官一名増でございますから、三名、五名でございます。
  49. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 下関港の場合には、関釜フェリーとか、あるいは一般の外国船、それから韓国船が非常に多いわけですね。それに基づいていわゆる審査計画表というものも作成されているようですけれども、先ほど申し上げた十二月一日からことしの年始にかけての計画表に基づいてお伺いをしたいというふうに思うわけです。  当時、計画表によると、六名の審査官、警備官が勤務割りをされておるわけです。その勤務割りの中で、数は先ほど言ったようにちょっと違うわけですけれども、一名を除いてあと六名全員がその勤務割り、勤務計画表に入っているわけです。その中で年末年始ということもあったんではないかというふうに思いますけれども、非常に勤務がきついということです。非常に過密な計画がなされているのではないかというふうに一見して思われるのですが、その点についてはどういうふうにお考えでございますか。
  50. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 先生御指摘の勤務計画表が私いま手元にございませんので、はっきりしたことは申し上げかねると思いますが、御承知のとおり、関門地域におきます港におきましては、主として韓国方面から参ります三百トン以下の小型船の出入が非常に激しいということでございまして、そういった関係で特に季節的なものもあろうかと思いますが、そういったことである程度過重な計画になったのではないか、まあこれは私の推測でございます。
  51. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 私のほうで若干その実態というものを御説明を申し上げたいと思うのですが、私のほうで調査をいたしましたのは、昨年の十二月一日からことしの一月七日まで三十八日間の勤務計画表で、普通の公務員であれば年末年始の特別休暇はもちろんあるわけですし、その間、日曜日等もあるわけですが、その中で一番勤務の日数の多かった方は、三十八日間のうち三十四日間、さらに極端な人は、十二月三十日を一日休みになって、それから三十一日からずっと一月の七日までぶっ続けで勤務をする。年末年始の特殊事情はあるとは思いますけれども、非常に勤務条件がきびしいのじゃないかというふうに思われるのです。その点ほかにもいろいろ例はありますけれども、その一つの例を申し上げて御意見をお聞きしたいと思います。
  52. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 下関港出張所の直接の監督は下関の入国管理事務所がいたしておるわけでございますが、当局といたしましては、下関の入国管理事務所または下関港の出張所等から、そういったことに関しまして非常に過重な勤務状況であるということで、これを改善してくれというような要望を受けておりませんので、実は資料も手元に持っておりません。
  53. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 その辺のことはけっこうでございますが、私のほうで資料がある下関港出張所というものを取り上げたわけですが、要するに非常に審査業務が忙しくなってきている。先ほどいただいた表によりましても、出入国の数、人間にしても、船にしても増加の率というのは非常に高いといいますか、早いというか、そういう現状に来ておりますし、先ほど御答弁いただいたように、ことしもさらにふえていくというような予想を持っておられるということです。そういう点で審査官をふやすということをお考えになっているのかどうか、その辺のことをお聞きしたいと思います。
  54. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 御指摘の点につきましては、われわれといたしましても、事務を円滑に進めるという観点から毎年検討いたしておる次第でございますが、何ぶんにも入管行政が発足いたしました時期におきましては、不正規面、いわゆる密入国者が多いという状況でございましたので、先ほど数字をお手元に差し上げましたように、入国警備官が非常に多かったわけでございますが、だんだん落ちついてまいりまして、不正規面が減少し正規面がふえていくという状況でございますから、そういった事態を踏んまえまして、われわれも入国審査官の数をふやす方向で検討いたしております。
  55. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 ふやす方向で検討されるのは当然だろうと思いますが、具体的にどういうふうにされるかという具体的な案は、いままだお持ちではないというのですか。
  56. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 具体的な案につきましては、御承知のとおり、毎年翌年度の予算要求をいたします段階で最終的な詰めをいたしまして、そうしてはじき出した数字を大蔵あるいは行政管理庁当局に要求するということでございますから、現段階においては、まだ今後のやつは具体的に数字をはじいて出ておらないのでございます。
  57. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 それといわゆる警備官が審査官を併任するという、この数は先ほど本年の六月一日現在で百四十九名ということですけれども、若干過去にさかのぼっての数字がおわかりならばお教えいただきたいと思うのです。ふえているのか減っているのか、その程度のところをもしおわかりでしたら御答弁願いたいと思います。
  58. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 いま過去の数字を手元に用意しておりませんが、一応勘といたしましては、減っている方向ではないかと思います。
  59. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 先ほど御答弁をいただきましたように、勤務時間についても週四時間の差がある。また給与表ももちろん公安職と一般職の違いがあるわけですけれども、やはり私どもから見ると、警備官の方は審査官に比べて勤務の条件が非常に悪いのではないかというふうに思うわけです。したがって警備官が審査官を併任するというのはちょっとおかしな感じを受けるわけです。その点をちょっとお聞かせを願いたいと思うのです。
  60. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 御承知のことと思いますが、入管の出張所の中には二人庁が相当数ございまして、これは五割には至りませんが、九十の中の四十幾つございまして、二人庁におきましては入国審査官と入国警備官と一名ずつ配置しておるわけでございますが、その一名ずつ配置いたしました際に、仕事の分量といたしましてどちらが多いかと申しますと、入国審査官の事務のほうが多いということでございまして、比喩的に申し上げますと、二つのうち一・五が審査官の仕事であり、〇・五が警備官の仕事であるというような場合がままございますので、その際には警備官を審査官に併任いたしまして、それで〇・五のギャップを埋めるということでやっておりまして、これは、二人庁というような、そういう小さな役所ではいたし方ないことではないかと考えます。  それからまた、御指摘の下関港出張所等の、関門に面しました出張所等におきましては、小型船舶によります密航者が多数入ってくるというような特殊事情がございまして、それで、船内サーチをやるにつきましては、入国審査官でないとやれないというようなことで、警備官を審査官に併任いたしましてそういった仕事を遂行させておるということでございまして、これは今後、われわれといたしましても何らかの解決の方向を見出していきたいとは存じますが、ただいま申し上げましたような二人庁みたいなところでございますと、ある程度仕事の分担あるいは繁閑というものを平均化していく上においてやむを得ないことではないか、そういうふうに感じております。
  61. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 いまお話しになった二人庁なんかについては、いまの御説明は私ども納得できるわけです。ただ、私が先ほど取り上げました下関港出張所あたりになりますと、警備官も全員が審査勤務の審査計画表に組み込まれている。そうすると、これは数はだいぶ減ってきておるようですけれども、やはり警備官としての仕事もやらなければならない。結局、過重な労働をそこでしいられてくるんじゃないかというふうに考えられるわけです。その辺が非常に問題じゃないかというふうに思うのですが、その点についてはいかがですか。
  62. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 いま御指摘の下関港出張所等につきましては、先ほど申し上げましたように、小型船舶によります密航者等が過去において相当入ってきておるということでございまして、これを船内サーチをいたしますのは審査官の仕事でございますが、一たんその船に密航者が乗っておったということになりまして違反調査ということになりますと、警備官の資格で違反調査ができるということでございまして、一人で二枚鑑札を持っておるということでございますが、法制上は仕事の切れ目がございますけれども、仕事の関係上、本人といたしましては仕事は引き続いて行なうということでございまして、その点かえってはっきりすることによって能率が下がる、あるいは人員の極端な増強を必要とするということでございまして、現時点におきましては、そういったやり方が最も有効的な、能率的な方法ではないかというふうに考えております。
  63. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 非常に便利だという点は、二枚鑑札を持っておればあるのは当然だろうと思うのですけれども、それによって、いわゆる警備官として発令を受けておるものにとっては、審査官を併任するというのは、先ほど申し上げたように、労働時間とかそういう点で非常に不利な取り扱いを受けておるのじゃないかというふうに考えられるわけです。ですから、その点を含めてどういうふうにお考えになっておるのか、もう一度お聞かせ願いたいと思います。
  64. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 御指摘の点につきましては、制度的にいろいろの問題があるかと存じますが、もちろん超過勤務手当等の支給によりまして、同じ職場に働くもの同士でございますから、なるべくその間に差別感を持たれないように、また、そのことによりまして同じ職場内での違和感が生じないようにというふうに考えておりますが、根本的には適正な人員の配分ということになるかと思いますが、これも一挙にできかねるので、徐々に合理化に向かいたいというふうに考えております。
  65. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 いま超勤等でということですけれども、超勤についても一週間四時間の差が出てくるわけですね。ですから、いわば勤務条件の悪いものが勤務条件のいいほうの仕事をさせられる、それの見返りとしての補償がないのではないかというふうに考えられるのですね。しかも超勤についても、予算のワク内という制約が一つあるわけだろうと思うのです。そういうことも含めて、やはり本来審査業務をやる審査官の数をふやしていくべきではないかというふうに考えるわけです。その点について、大臣おられませんので、政務次官、一言答弁をいただきたいと思います。
  66. 野呂恭一

    ○野呂政府委員 先ほどお話がございましたとおり、警備官と審査官それぞれ固有の権限を持っておるわけでございます。しかも併任されております警備官は、本来の仕事をやりながらなるべく簡単なといいますか、出入国の審査あるいは在留資格事務など、そういう簡単なものを担当していただいておるということであります。しかし、事務量はだんだん増加の傾向にございますから、適正配置の面から考えても、今後審査官を相当量ふやしていくということに努力をいたしたいと考えております。
  67. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 行管からお見えでございましょうか。いままでの議論をお聞きいただければ、どういうことかということはおわかりだろうと思うのですが、先ほど勤務日数のことについては申し上げました。そのほか、むしろ交代制をとらなければならないような職場があるんじゃないか。さらには、先ほど申し上げた下関港の場合には、当直の翌日も勤務するというような勤務割りになっておるのですね。そういう点も考慮して、いま政務次官の御答弁がありましたけれども、行管としてどういうふうに取り扱っていくのか、その辺を一言お聞かせいただきたいと思います。
  68. 正田泰央

    ○正田説明員 私どもといたしましては、増員につきましては極力押えていくという基本方針に立っておるわけでございますが、行政需要と申しますか、仕事の変化に対応いたしまして適正に定員を配置してまいりたいという基本方針で行なっておるわけでございます。  特に御指摘のような入国管理事務所につきましては、昨今の航空機、船舶の、それに伴います出入国者の増大という事態に対応いたしまして、ここ数年来特に重点を置いて法務省のほうもお考えでございますし、私どものほうも重点を置いて増員というものを行なってまいった次第でございますが、特に先生御指摘のような交代制の職種につきましても、入管だけでなくて全般につきましても、特に重点を置いて考えておるわけであります。  さらに、いま御指摘のような特殊な併任といったような勤務形態と申しますか、そういったこともいろいろ御指摘がございますので、私どもといたしましては、よく実情を法務省のほうとも御相談を申し上げまして、併任についてはよく再検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  69. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 いまのお話はよくわかるわけですけれども、法務省の中でも、これはもうきょうはやりませんけれども、保護観察所に内勤保護司といいますか、そういうものを置いて常時勤務しておる。さらに法務省と関係ありませんけれども、各国立大学の中では非常に定員外の職員がおる。しかしこれはその人間がいなければその職種が成り立たないわけです。そういうようなケースも非常に多いわけです。定員を減らしていこうという基本的なあれはわかりますけれども、必要な定員というものはぜひともとっていただきたいというふうに要望を申し上げておきたいと思います。  今度は別の問題で私の地元の関係になるわけですが、刑務所の問題についてこれから御質問申し上げたいと思います。  熊本県菊池郡に熊本刑務所菊池医療刑務支所というものがあるわけですが、現在その医療刑務支所に受刑者として入っている者が何名、職員が何名かということをまずお聞かせいただきたいと思います。
  70. 長島敦

    ○長島政府委員 御質問の菊池医療刑務支所には現在三名のハンセン氏病の受刑者が収容されております。職員は全部で十一名でございまして、医師が一名、残りは保安の関係あるいは食事をつくる、清掃する等の職員でございます。
  71. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 その受刑者三名の刑期といいますか、その点についてはおわかりでございますか。
  72. 長島敦

    ○長島政府委員 詳しいことは個々に調べておりませんが、かなり長い刑期でございまして、七年とか八年とかいうかなり重い罪でございます。
  73. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 だいぶ前から入っておられるんだろうと思うのですが、その方たちが出獄する時期をちょっとお聞きしたがったのですが、おわかりになりますか。
  74. 長島敦

    ○長島政府委員 申しわけありませんが、そこまで調べておりませんのですが……。
  75. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これは地元の住民あるいは町当局、こういうところが、三名しかいないのであれば、できれば熊本刑務所にあわせてやっていただいて、そこをあけていただけないかという強い要望があるのでお聞きしているわけですが、そのいなくなる時期がはっきりしなければあれなんですが、現在ハンセン氏病患者で刑事の裁判を受けている者がおわかりになりますか。
  76. 長島敦

    ○長島政府委員 ちょっと調べておりません。私どもの耳には入っておりません。
  77. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 厚生省からお見えになっておられますか。厚生省のほうではおわかりになりませんか。
  78. 大谷藤郎

    ○大谷説明員 承知いたしておりません。
  79. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これは私のほうも、法務省の皆さんに確かめたわけではありませんが、ここにはほかの刑務所から移転をしてくるといううわさがあるということですが、その辺はいかがですか。
  80. 長島敦

    ○長島政府委員 実は移転と申すわけではございませんので、いま先生御指摘のように、ここの刑務所に入っておりますハンセン氏病の受刑者が次第に数が減ってきておりますが、この菊池医療刑務支所の従来の運営につきまして、地元では非常に御理解をいただいて御協力いただいてまいりましたし、これは場所的に申しまして、先生御承知のように、熊本医大に非常に近うございまして、そういう関係で医療的に非常に恵まれておる環境でございますが、一方残念なことに、ただいま九州管内に身体疾患の病気にかかった受刑者の専門の刑務所がございませんので、それを主といたしまして、現地でこの支所を少し増改築したいというのが本音でございます。同時に、ここは、そういうことで一種の医療センターにしていきたいということでございますので、ただいま城野というところに精神疾患を中心にした医療刑務所がございますけれども、そこの一部の精神疾患者も移していくというようなことで増改築を検討している段階でございます。
  81. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 その増改築をただいま検討中ということでございますけれども、大体どの程度の規模に増改築をされようとしているのか、その辺のところをお聞かせください。
  82. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいまの医療刑務支所の収容定員は五十五名でございますが、先ほど申し上げましたように、九州管内の一種の医療センターとしてこれを増築いたします場合には、九州管内で大体百二十名前後の身体疾患の受刑者があるかと思いますが、そのほかに城野のほうから八十名前後移していきたい。そのほかに広島管内の身体障害者の一部ということで、多く見まして三百名程度というところまで増築いたしたいということで検討しております。
  83. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 そうすると、検討中ということですけれども、皆さん方の予定といいますか、その工事に着工するのが大体いつで、完成するのがいつというのはおわかりでございますか。
  84. 長島敦

    ○長島政府委員 実はただいま申し上げましたような構想で、熊本刑務所長その他地元の町長さんなどに御説明を始めておる段階でございますので、まだそこまで具体化しておりません。
  85. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 この付近は、御承知かどうかわかりませんけれども、最近、国立の電波工業高等専門学校ができた。あるいは雇用促進事業団がやっておられる高等職業訓練校ですか、そういうもの、あるいは畜産試験場、農事試験場、それに加えて、最近は熊本市まで大体三十分で行けるという非常に住宅に適した地域になってきているわけです。そういう意味で、町としても、またその地域の住民の方たちも、むしろそこを拡充されるよりもほかに移っていただきたいというのがもともとあったというふうに私は聞いておるのです。そういう点も、ただいま熊本刑務所のほうで町あたりと折衝を始められたということですけれども、これは刑務所のほうから積極的に町のほうに呼びかけてやっているのではないように私は聞いておるのですが、その辺の経緯はおわかりでございますか。
  86. 長島敦

    ○長島政府委員 熊本の刑務所長から受けました報告によりますと、刑務所長が自分で伺っていろいろ御説明をして御協力をお願いしているという趣旨の報告であります。
  87. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 所長が行ってお話をしたというのはごく最近の話だろうと思うのですね。これが拡充されるという話がわかったのは、合志町ですけれども、水道布設工事の計画があって、そのことであれしておったら、今度ここもふえるので水道をふやしてもらいたいんだというような話が職員の方からあって、それでやっとわかったわけです。それで、町もあるいは住民も陳情活動なんかも始められて、その結果、熊本刑務所長さんが出てくるようになったんじゃないかというふうに思うのですが、その辺のことはおわかりになりましょうか。
  88. 長島敦

    ○長島政府委員 その間の事情は私つまびらかにいたしません。営繕課長からお答えいたします。
  89. 水原敏博

    ○水原説明員 この問題は営繕課所管事項でございますので、私から簡単に説明させていただきます。  先ほど矯正局長から答弁申し上げましたとおり、菊池医療刑務支所の増改築につきましては、かねて検討をいたしておりました。しかしこの際に、城野医療刑務所、ここに収容中の一部の精神障害受刑者をも収容したならば、さらに医療センターとしての機能を持った刑務所を充実したものがつくれるであろうという発想が最近になって出てまいりました。しかし、これも、一つの刑務所をもう一つの刑務支所に統合するという問題は、これは地元住民の問題だけでございませんで、やはり刑務所職員の問題もございますし、施設それ自体の問題もございますので、内部で現在調整しておった段階でございます。それが、先生御指摘のとおり、外部に知れましたようでございます。そこで、こうなりましたので、最近に至りまして、局長から地元の各施設の長に、地元の住民の感触をひとつ聞いてほしいという御依頼をいたしたような段階でございます。従前からその問題があって地元民との接触を続けてきたわけではございませんので、その点、御了解願いたいと思います。
  90. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 ちょっと別の問題なんですが、ハンセン氏病専用の医療刑務所として使われてきたわけですね。ほかにこういうハンセン氏病専用の刑務所というのはあるのですか。
  91. 長島敦

    ○長島政府委員 ここだけでございます。
  92. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 私は、この医療刑務所の隣のハンセン氏病の国立療養所である菊池恵楓園、そこにちょくちょく参るわけですけれども、そこの患者さんたちのお話を聞いておりますと、もともとはそこにこういう医療刑務所ができるときに、患者自治会といいますか、患者の皆さんは反対されたといういきさつがあると聞いておるわけです。むしろハンセン氏病だからということで差別をされるということを非常にきらっているというふうに私、受けとめているのですが、厚生省の方、その辺のことおわかりになりますか。
  93. 大谷藤郎

    ○大谷説明員 患者のほうは、そういううわさを聞きまして反対の意向のように伝え聞いておりますけれども、差別問題までいっておるかどうか、その辺、私どもまだ詳しいことは存じておりません。
  94. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 先ほど受刑者がいま三名入っておるということですが、その三名の方が現在保菌者で治療を受けられているのかどうか。あるいはもう無菌者になっておられるのかどうか。その辺のことはおわかりですか。
  95. 長島敦

    ○長島政府委員 医学的な詳しいことは私はよくわかりませんが、いずれも現に治療を受けておる段階でございます。
  96. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 それはその刑務所に配置をされている医師の治療を受けておるということですか。
  97. 長島敦

    ○長島政府委員 さようでございます。
  98. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 隣に国立療養所があるわけですし、保菌者としてならば、むしろそちらのほうに入れなければならないのじゃないかというふうに思うのですけれども、全員三名とも治療中であるということですか。
  99. 長島敦

    ○長島政府委員 三名とも現にここの医師の治療中でございます。
  100. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 大体お聞きしたいことは終わるわけですけれども、最後に大臣にお願い申し上げておきたいと思うのです。  先ほども申し上げましたように、地域住民あるいは町当局も、移転をしていただきたいという方向でいままで考えてこられた。いまお聞きしますと、移転してくれるのじゃなくて拡充だということです。かなり大きなものになる。そういう点を考えて、やはり私どもとしては、現在いる三名の受刑者、その方々は熊本刑務所なり何なりに移っても特段のあれがなければ、むしろ移転をしていただきたいという立場におるわけです。いまお話がありましたように、熊本刑務所長さんとの間で話が進められ始めたようですけれども、これから市街地としてどんどん発展をしていく環境にあるわけですので、地域住民の意見とか町当局の意見等を十分聞いた上で拡充にしろ移転にしろやっていただきたいというふうに思うのです。その点について大臣から最後に御答弁いただいて終わりたいと思います。
  101. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 坂本先生仰せの御心配よくわかります。本来この刑務所の移転とか拡充とかいうことはなかなかむずかしい問題でございまして、法務省の方針といたしましては、極力地元の代表者、自治体の皆さまの御了解をいただきました上で、無理のないように善処をしたいという方針をとらしております。ことに本件問題は、改築ができ上がりました上は、城野から多数の者、その他全九州からたくさんの人が収容され、膨大に数もふえるという事態が結果において出てくるわけでございますから、こういう場合においては、なおさら地元住民の皆さんを代表する自治体の皆さんとの間に十分の懇談を詰めて、そうして御了解をいただき、御協力をいただく上でこの工事を実施したい、そういうふうに努力をすることをお誓い申し上げます。
  102. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これで終わります。
  103. 三原朝雄

    三原委員長 木下元二君。
  104. 木下元二

    ○木下委員 私はまず、田中内閣が強引に推し進めようといたしております日本列島改造計画と、それに伴う法務省での仕事量の増大、労働者への負担のしわ寄せ、こうした事態が起こっておりますので、そうした問題について質問いたしたいと思います。  昨年、田中総理がいわゆる列島改造論を発表しましたのと同時に、全国で土地の買い占め等が異常なまでに進んで、地価の高騰を招いております。共産党が調査をいたしましたところによりますと、日本列島改造のもとで大資本の土地買い占めが異常に進んでおりまして、地方自治体、農業団体、不動産関係者等の協力を得まして、昨年末からことしの五月末までに行なった調査によりますと、大資本に買い占められた土地の面積は四十七万ヘクタール、実に国土総面積の一・二八%を占めております。東京都の総面積の二倍、同じく大阪府の二倍半の面積に相当するのであります。しかもその約九割が未着工のままで値上がりを待っているという状態が起こっております。こういったこととあわせまして、たとえば農地の宅地並み課税等による離農、あるいは公害等による移転など、政府のとり続けております高度経済成長政策のもとで、土地などの移転が非常に多くなっておるのであります。  そこで質問いたしますが、全国で扱う登記件数は昭和四十七年度で何件か、また十年前に比べてどの程度増加しておるか、この点を伺いたいと思います。
  105. 川島一郎

    ○川島政府委員 お答えをいたします。  昨年度、つまり昭和四十七年度における登記件数でございますが、甲号事件、これは登記簿に記入を要する事件でありまして、所有権の移転とか抵当権の設定、こういう種類の事件でございますけれども、その件数が、昨年一年間、全国の登記所の件数を合計いたしますと、二千百二十一万七千九百二十五件二千万件余りとなっております。  次に乙号事件、これは、登記簿の謄抄本の請求でありますとか、あるいは登記簿の閲覧といった関係の事務でございますが、昨年一年間で二億二千二百六十万五千八十六件となっております。  これを十年前と比較いたしますと、甲号事件におきましては、十年前の三十七年度が一千七万五千七百三十一件でございますので、そのほぼ二倍強というところでございます。それから乙号事件のほうは、三十七年度が五千八百八十万六千三百五十件でございますので、おおむね四倍に達しておる、こういう状況でございます。
  106. 木下元二

    ○木下委員 私のほうの調べと若干食い違いがあるのですが、まあけっこうです。相当な伸びを示しておると思います。  いま甲号事件と乙号事件と区別して言われましたけれども、平均いたしますと、これは数字でなくてパーセントで言うと、昭和三十七年度を一〇〇とすると昭和四十七年度は二七一という数字になっておるのですが、おおよそそういうことになりますか。
  107. 川島一郎

    ○川島政府委員 甲号と乙号は事件の性質が違いますので、処理に要する労力、時間もだいぶ差がございます。したがいまして、分けて申し上げたのでございますが、形式的に両方の事件を一括いたしてみますと、昭和三十七年度を一〇〇といたしました場合には、四十七年度におきましてはその約三倍半に達しておるということでございます。
  108. 木下元二

    ○木下委員 相当な伸びを示しておるわけですがそれでは、この登記に従事しておる公務員労働者の数は十年間でどの程度伸びているでしょうか。
  109. 川島一郎

    ○川島政府委員 法務局職員のうち登記事務に従事している職員について申し上げますと、三十七年度の登記従事職員の数は七千三百三十八名、四十七年度が八千六百七十七名でございまして、増加率は一八%となっております。
  110. 木下元二

    ○木下委員 登記件数の伸びは十年間で甲号、乙号平均しますと三五〇%になるのですが、公務員労働者の伸びはわずか一一八%ですね。この実態について大臣はどう思われますか。
  111. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 登記事務が、一口に申しますと、お聞きのように激増しておる状態でございます。しかるに登記関係職員の数は、ごらんのとおりのみじめな状態でございます。年々歳々、このことを具しまして大蔵当局に増員の要求もたいへん力を入れてつとめておるのでございますが、増員関係というものは予算折衝中の難関中の難関に属する問題で、なかなかうまくまいりません。先生に御理解をいただくおことばをちょうだいして、たいへんうれしいのでございますが、今後とも力を入れて人員の確保に最善を尽くしたい、こう考えております。
  112. 木下元二

    ○木下委員 登記所で働く労働者の人たちがたいへんな労働強化をしいられておるということなんで、これは何としても改善しなければならないと思います。  ここに五月十七日付の朝日新聞があります。西日本本社のものでありますが、この記事にはこう書いてあります。「開発のあおり病人続出 事務量ふえ過労に」、これが見出しであります。鹿児島の法務局職員が入院がおくれて死亡したという事件も出ております。そしてこの記事には、「開発、土地ブームのひずみは、所有権移転などの登記手続きを一手に引受ける法務局まで押寄せている。鹿児島地方法務局管内の出張所では、処理件数の異常な増加から職員に入院患者が相次ぎ、手当てが遅れて死んだ人も出ている。ブームのかげで、こうした悲劇はまだまだ続きそう」、こうあるわけであります。この記事の中には「鹿児島市の近郊地をかかえる伊集院出張所長の石井猛さんは、昨年十一月に死んだ。がんだった。自覚症状は四カ月ほど前からあったが、仕事に追われ「あした、あさって」と入院手当てを延ばした。「もっと早く来ておれば何とか……」と医師はいった」、こう出ておるのです。さらに、鹿児島地方法務局管内では、いわゆる列島改造が土地騰貴を招き始めた昨年の秋ごろから入院患者が続出をしておるのであります。労働者の健康を無視した仕事量の押しつけが招いた悲劇が続出をしておるということであります。鹿児島地方法務局の局長自身ことばも出ておりますが、それによりますと、「仕事がふえたから病人がふえたとは断言できないが、最近の仕事量の増加だけは大変なものだ。恐らく昭和二十二、三年ごろの十倍はあるだろう。一方、職員の方は一割程度ふえただけで、しかも最近は減らされる傾向にある」、こう言っております。大臣がいまこうした問題について御理解のある答弁をされましたので、私は繰り返し聞きませんけれども、早急にこうした状態を改善されるように望むものであります。  もう少しこの点はお尋ねしたいのは、法務局の仕事というのは、ただ法務局で働く人たちの問題だけでなくて、影響するところが大きい問題があると思います。そこで伺うのですけれども、この不動産登記法に基づいて仕事をする場合、この登記関係の仕事をする場合に、これは何日以内でやり遂げるのを適当と考えておられますか。これは登記所関係、法務局関係の方でけっこうでございますが、それと実際に事務をやっている場合に、現実には何日くらいかかっているのか伺いたいのです。
  113. 川島一郎

    ○川島政府委員 登記事務の処理に何日くらいを要するかという問題でございますが、登記にもいろいろございまして、不動産登記で申し上げますと、大別して表示に関する登記と権利に関する登記と二つに分かれるわけでございます。表示に関する登記というのは、たとえば土地の分筆であるとか、あるいは家屋の新築であるとか、そういうことがありました場合に、その土地なり建物の現状を調べた上で登記をいたしますので、これには若干の調査を要します。したがって、日数といたしましては数日を要するということはやむを得ないものと思っております。それに反しまして権利に関する登記は、登記簿の上だけで申請書類と突き合わせて処理ができますので、なるべく早いほうが望ましい。われわれは即日処理ということを原則として指導してきておるわけでございます。  実際にどれくらいかかるかということでございますが、表示の登記につきましては、やはりその事件によりまして、数日で片づく場合もございますし、いろいろ問題がありますとさらに十数日を要するというような場合もあろうと思います。権利に関する登記につきましては、全国多数の登記所がございますので、必ずしも同一ではございませんけれども、即日に処理しておりますところも相当ございます。しかしながら、繁忙の登記所におきましては、なかなか即日には処理しかねるということで、場所によりまして、三日とか五日とか、あるいは特に年度末あたり事件のふくそういたします場合には一週間とか、そういう長期の期間を要するという場合も、実際問題としては起こっておるような実情でございます。
  114. 木下元二

    ○木下委員 この登記の業務をする労働者自身があまりに仕事量が増加しておるので、もうそれをはかすために十分な実地調査もすることができない、そのために間違いもふえておるというふうな訴えがあるということを聞いておるのです。またこの即日処理という原則でありますが、これも実際の仕事の上では、何日もおくれるという事態が生まれておるということのようです。この点も一日も早く改めてもらいたいと思います。全法務労働組合というのがつくられておりますけれども、法務省に対しまして今年度は一万人の人員増を要求しておったと思います。ところが法務省としては、人員が不足しておるというので、全面的に組合の要求を認められながらも、千七百人の予算要求をされております。これに対して決定した人員増というのは、もっともっと少ないように聞いておるのですが、定員削減分を除いた純増は何人でしょうか。
  115. 川島一郎

    ○川島政府委員 本年度御決定いただきました四十八年度の予算におきましては、増員が二百九十一名、そのうち定員削減の百五十八名を差し引きました純増が百三十三名でございます。なお、このうち訟務関係、人権関係の増員分を差し引きますと、登記関係では百二十四名でございます。
  116. 木下元二

    ○木下委員 あまりにひどい実態だと思うんです。私は、住民との結びつきの強い、そしてサービス機関である登記所、こういうところでは業務量の増大に伴って当然人をふやしていくべきだと考えます。総定員法そのものに私どもは反対をいたしておりますが、この総定員法をすべてに適用すること自体問題があると思います。この点、大臣はいかがでしょうか。
  117. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 総定員法の問題は、御趣旨のように、事務の内容を検討せずに一律に削減をするという方針が前内閣時代以来の方針でございます。そういう方針でありますので、増員要求に際しましては、削減分は幾らであるけれども、これだけの増員を願いたいということを、事を分けて交渉をするのでありますが、なかなかうまくまいりません。先ほど申し上げましたように、もう難中の難でございます。許されました増員の限度内で最善を尽くせということで激励をしておるわけでございます。
  118. 木下元二

    ○木下委員 繰り返しませんけれども、登記所の人員の問題というのは、登記所で働く人たちの問題であると同時に、この登記事務が停滞する事態を生じるということは、これは国民の、私法上の権利関係に支障を来たすということなんです。登記が一日、二日、三日おくれると、それがたちまち私法上の権利関係にたいへんな影響を及ぼす。そういうことで裁判になったというケースもあるわけなんですから、ひとつこの点は、法務大臣はよく御理解くださるものと思いますので、いろいろ事情はあるでしょうけれども万全を期していただきたい。特に要請いたします。  それから次は、兵庫県尼崎にある拘置所の件で若干質問いたします。  尼崎の拘置所、これが実は改築が行なわれておりまして、木造平屋建てを鉄筋五階建てにするということで工事が進められております。改築をするときに地元住民にどういうふうな話をされたのか、付近の住民全体に行き渡るような説明があったのかどうかということをまず伺いたいと思います。
  119. 水原敏博

    ○水原説明員 この点につきましては、営繕関係の所管でございますので、私から御説明させていただきますが、かねてこの改築問題につきましては地元民から移転の要請がございました。ここで現在地改築されては困りますという御要望が出されたようでございます。しかし、法務省といたしましても適当な移転先候補地が見つかりませんので、地元住民並びに地元の尼崎市長さんとも再三にわたりまして打ち合わせを行なったと聞いております。  そこで、四十八年の一月二十六日に、これはもう何回かにわたる連絡の結果、篠田市長から次の要望を認められるならば現在地改築も了解いたしますという文書法務大臣あてに出されております。その要望の条項ば六つございます。一つは「建築工事中に、騒音、振動による周辺の人家に障害なきよう十分な配慮をすること」ということでございます。二つ目は「拘置所敷地内に自動車駐車場を設置すること」。これは、面会に来ますやくざ、ぐれん隊などが、地域周辺住民の民家の前に駐車することでは迷惑がかかる、だから拘置所内にそういう面会に来る人のための駐車場を設けてほしいということでございます。三番目は「建築による日照権を考慮し、電波障害をなくすること」ということでございます。これは五階建ての建物をつくりますので、高層ビルになりますと周辺の住民に電波障害の起きることは当然予想されることでございますので、その御要望がございました。四番目は「被疑者の逃亡は絶対になきよう厳重なる設備をすること」。それから五番目は「被疑者の収容人員は定員(一五〇名)以上、絶対に収容しないこと」。そのほか六番目といたしまして、「建築物の窓、その他の構造については、充分な配慮をなし、外部を覗き見などないよう遮断する」。この六つの条項を認められるならば現在地改築に応じましょうという文書が参りました。  この件につきまして、法務省といたしまして検討いたしました結果、一月三十日付で官房長名で尼崎市長に御回答いたしております。それは、「本年一月二十六日付貴職から務法大臣あてお申し越しのありました要望事項については、十分これを尊重のうえ工事を実施する所存でございますので、今後とも何卒よろしくご協力を賜わりますよう、お願い申し上げます」ということでございます。この件で尼崎市長、地元の皆さん方の御了解が得られましたので、工事を行なって現在に至っておるというところでございます。
  120. 木下元二

    ○木下委員 経過はわかりました。実は私はその住民の人たちからいろいろな不満を聞いているのです。私は住民の方とも会って話をしましたけれども、いま言われたようなことは初めて聞くわけなんですよ。特にその篠田市長とそういう話がされ、そういうふうな六つの項目にわたりまして話し合いができたということは初めて聞きました。いま住民の人たちと話し合いをということを言われましたけれども、市長は住民代表だからと言われればそれまでですが、地元の住民の人たちと一体話はされたのでしょうか。地元の住民の人たちの中にはそういったことを知らない方々がたくさんいるのですよ。だから聞いているのです。
  121. 水原敏博

    ○水原説明員 実はこの件につきまして、私、過日二十四日、日曜日でございますが、この施設を見せていただきましたおりに、その道すがらでございましたので、工事場を見てまいりました。そのときに案内してもらったのがここの支所長でございます。支所長から、昨年の秋ごろから暮れにかけてはこの近所の人たちもいろいろ言い合いました、いろいろな要望がございまして、再三にわたっていろいろ折衝いたしました結果、いまでは非常に仲よくなりました、施工につきましても、たとえばくい打ちがございます、くい打ちの際にも近所にはたいへん御迷惑をかけますので、いろいろな配慮をいたしました。たとえば天幕でございましょうか、テントの布でございますね、これを敷地周辺に全部張りめぐらしまして、そしてできるだけ騒音などの害がないようにという配慮をいたしました、しかしこれでも音は相当に聞こえます、振動も伝わりましょう、しかしそういうふうな配慮をいたしましたので、地域の近所の人方から、ここまで法務省が研究し努力をしていただいておるんだから、これ以上はもう無理を申しませんというふうに、非常に現在ではなごやかな関係にあります、という話を聞きました。私たいへんうれしく思いましたけれども、そういうわけで、その当時は何回も地元の人たちと直接折衝していたということを聞いております。
  122. 木下元二

    ○木下委員 それは去年の年末ごろでしょう。そのころであって、その後一時そういう話があったということを住民の人たちも聞いておったようですが、その後一体それがどうなったかさっぱりわからぬのですよ。ボス的とは申しませんけれども、一部の人たちと話をされるということで進められたように私は聞いているのです。やはりこういう問題は、その付近の全住民に影響するところが大きいわけですから、できるだけ全住民にわかるような形で進めていただきたい。これは今後の問題がありますので、今後とも移転とかあるいは改築の問題が起こりますので、そういう点を法務省としましてはぜひとも留意をされて進めていただきたいと思います。この鉄筋の高い建物ができますと、日照権の問題、あるいは電波障害、あるいは風紀上の問題、いろいろ問題があるわけですから、この点は特に留意をいただきたいということを要望いたします。  いま市長との約束の中で、日照権の問題、電波障害などをなくすということを言われましたが、これは五階建てのものができるわけなんで、そういう被害の問題が改築された後に現実に起こる可能性があるのですが、そういう問題が起こった場合には、これは当然十分な補償がされるべきだと思いますが、この点は大臣、いかがでしょうか。
  123. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 補償以前に、障害を取り除く設備を行ないまして努力をいたします。それでもなおかつ障害が起こるという場合においては、この補償問題についても、地元の皆さまとの間に地元の代表者だけでなくて、いまおことばのような、地元全体の住民の皆さんとの間に懇談を遂げて解決をしたい、かように考えます。
  124. 木下元二

    ○木下委員 けっこうでございます。  質問を変えますが、法務大臣に伺いたいのですが、法務局または地方法務局に人権侵犯事件が係属をしておる場合に、それに関連した訴訟が提起されます。損害賠償あるいはそのほかの訴訟もありますが、そういうときに、その法務局または地方法務局に係属をしておる人権侵犯事件はどのように取り扱われるのでしょうか。あるいはどのように取り扱われるべきでしょうか。大臣に伺いたいのです。一般的なことです。
  125. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 人権侵犯が起こって、人権局が発動しておるその中途で訴訟が起こって、訴訟事件として裁判所に係属をしたという事態が起こりますと、どのような事情がありましても、即時人権侵犯の取り扱いは停止しなければならぬ、どのような事件があってもこれは急ぎ停止しなければならぬというように理解をしまして、そういう指導を、私になりまして特にしておるわけでございます。  間々ございます。ちょいちょいございます。それは一体どういう理由なのかというと、司法裁判所裁判、審理をしていらっしゃるその同じ事件を、行政府の立場にある法務省人権局が発動すべきものではない。それは、たいへん大げさなことばを使って恐縮でございますが、憲法でいう司法権独立を侵犯する、こう考えられるおそれが出てくるということでございますので、裁判にかかりますと、刑事、民事両方でございますが、刑事、民事両方の裁判にこれがかかりますと、あるいは非訟事件手続法によります裁判がかかりますと、司法裁判所の管轄に着手をされた瞬間以後は調査を打ち切る、こういう方針をとらしておるのでございます。これは厳格にやっておるのでございます。
  126. 木下元二

    ○木下委員 それは一体いつからそういう方針でやられておりますか。
  127. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 ずっと以前からの方針と、私になりましてから、司法権独立のことが非常にやかましい男でございますので、特に力を入れておりますが、ずっと以前からその方針であると理解しております。
  128. 木下元二

    ○木下委員 ずっと以前と言われるのは、いつごろからか、わかりますか。
  129. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 人権擁護局発足以来の方針が大体その方針であるとお聞き取りをいただきたい。
  130. 木下元二

    ○木下委員 人権侵犯事件が係属しておりまして訴訟が起こるケースというのは、いろいろなケースがあると思うのですね。たとえば、甲が被害者として人権侵犯の申告をしておる、そして裁判所にその加害者である乙に対して損害賠償の訴訟を起こす、こういうケースもあるでしょう。あるいは逆に、甲が人権侵犯として申告をしておる場合に、加害者である乙が、そういうふうな人権侵犯はないということを理由に、そういうふうな申告をされたことに対して、それは違法な申告であるということで慰謝料の請求をする、そういうふうに逆に乙のほうから訴訟を起こすというケースも考えられる。そうすると、加害者の態度、加害者の出方によって、その法務省の扱っておる人権侵犯事件がストップする、こういうことにもなるわけです、そういう場合は。  だから、私はいま言われた趣旨は、これはすべてということでなくて、やはりケース・バイ・ケースという意味で言われたのではないかと思うのですが、これはまあ後に——私はそういうふうなケース・バイ・ケースでも問題はあると思うのですけれども、そのことを申したいと思いますけれども、少なくともいま大臣が言われておるのはケース・バイ・ケースであって、すべてもう機械的に、関連して訴訟が起こればストップをするというふうなことではないと思うのですが、いま私が申しましたようなケース、そういう場合でもやはりストップするんでしょうか。
  131. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先生仰せのように、逆手にとりまして、訴訟乱用といったような意味で、責任のあるほうが被害者に対して逆に訴訟を起こすなどということもあろうことかと思います。かりにそういう場合でありましても、司法裁判所事件が係属いたしました以上は、係属の瞬間から遠慮する。これは司法の独立を尊重する意味においてやるべきことでありまして、その訴訟の結果、その訴訟が、取り下げ、判決の確認、それらの方法によって確定をいたしまして裁判所の手が切れるまでは、事件には着手をしない。たとえ道理に合わぬ訴訟を起こした場合であっても、裁判所が判断をなさって縁が切れるまではこれにはタッチをしない。少し矛盾があるように聞こえますが、司法権の独立という立場を考えまして、行政府は司法権のやっておる間は、どう判断をされる事件であろうとも、タッチはすべきものでない、こういうふうに考えております。
  132. 木下元二

    ○木下委員 いまの私が申しましたようなケースは、この人権侵犯として訴えた者の意思に反して、加害者側の態度によってストップされてしまうという、まことに不合理な結果が出る。これは私はおかしいと思うのです。  それからたとえば、いまいろいろあると思いますけれども、被害者が多数の場合、多数人が被害者の場合ですね。その場合、たとえばそのうちの一人が民事事件として訴えを起こす、そういう場合はどうなるんでしょう。法務局がその全体を人権侵犯事件として調査をしておる場合ですよ。その場合でも、たまたまそのうちの一人が訴訟を起こしたということによって、全体がとまるということですか。
  133. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これはたいへんむずかしい問題を御発言になっておるわけでございますが、私の見解でございますが、私はこの司法権の独立ということを憲法上非常に大事に取り扱おうとしておる男でございます。そこで、そういう場合には不合理なように見えるのでありますけれども、その一部の人々が訴訟を起こしたというその訴訟の内容が全体に響くという場合は、やはりこれはこちらのほうは手を引くべきものである。全く独立した関係のものでありますならば、横の連絡のない事件であって、偶然被害者が同等の被害者であったというような場合においては、その訴訟を起こした関係部分だけ手を引く、あとはやっていい。しかし、司法権の判断に影響をもたらされると考えられる関連がある場合におきましては、一人が訴訟を起こしても、全体のその調査から手を引くということをやはりしなければならぬものである、こう考えるのであります。  そこで、ちょっと私の言うておることが理屈に走り過ぎておるようにお聞き取りをいただくかもわかりませんので、一口つけ加えてお耳を汚しますと、司法権、司法権と言うけれども、その司法権の独立を侵犯してはいけないのはだれなのかというと、両院の議長以下国会議員、内閣総理大臣以下行政府の人々、この行政と立法府と両方面だけが窮屈なのでございます。それ以外の言論機関、弁護士、学者、マスコミ方面は、司法権のやっておる事柄についてどんどんいい悪いの判断をしてよろしい。やって困るのは、憲法上いけないといわれるのは、三権分立の思想から来ているものでありますから、立法府と行政府だけが遠慮をしなければならないのだ。この遠慮を、思い切って徹底して遠慮をしなければほんとうの司法権の独立というものは憲法上実現しない、こういうふうに信念を持っておるものでございますから、私はいま言うたような答弁をするのでありまして、その人だけ切り離して、ほかに影響がないという事案でありますと、その部分だけ手を引くがあとの調査は続行する、こういう方式をとらざるを得ないと思います。場面は非常に少ない場面と考えられますが、そう考えます。
  134. 木下元二

    ○木下委員 どうも私は納得できないのです。司法権に影響を与える場合には一人が提訴をしても全体をとめるのだと言われるのですが、その司法権に影響を与えるというのは一体どういう場合のことをいわれるのか。これはたとえば事実関係が共通をしておるということなんですか。あるいは、判断が共通をしておる、事実関係は違っても法的判断が同じであるという場合なんでしょうか。
  135. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 この具体的な場合を申しますと、人権侵犯があったのかなかったのかということを行政権で調査をいたしますね。その調査をいたします場合には、その調査の対象になる人間はどんな人間かというと、いろいろな人間を調査しなければ、侵犯があったのかなかったのか答えは出てこない。そういうことをいたします。そういう調査の対象は、民事事件なり刑事事件が起こっております場合に、民事、刑事、非訟事件手続法等の訴訟関係者の人間とほとんど一致する場合が多いのです。訴訟に関係のないような人間を調べてみたって人権侵犯があったかなかったかわかるものではない。そんなことはむだである。必要なる人間を調べるとそれは訴訟関係者ということにならざるを得ない。そういうところから申しまして、一方裁判所にも呼ばれて調べを受ける、法務局にも呼ばれておる、法務局の人もたずねてくる、こういうような事態があってそこに交差をしては申しわけがない、こういうことです。
  136. 木下元二

    ○木下委員 この人権侵犯事件というのは、申告によって開始をするばかりではなくて、情報あるいは通報によって職権でもって開始する、そういうたてまえになっておりますね。これは人権侵犯事件処理規程というのがありまして、そういうふうにきめられておりますが、特に社会的に影響が大きいような事件、そういう事件で、申告がなくても新聞情報によって職権で開始する、こういう場合もあると思うのですね。当然社会的に及ぶ影響が大きい。人権侵犯の被害者、あるいは被害者のおそれがあるといわれる者も多人数に及ぶ、こういう場合もあると思います。  たとえば適切かどうかわかりませんけれども、学校で校長がその全生徒の人権に悪影響を与える、あるいは侵害するような言動をとったというふうな場合、被害者あるいは被害者になるおそれがある者というのは全生徒なんです。そういう場合には、たまたま一人の生徒が校長を訴えた。その校長の人権侵犯にわたるような言動があったのかなかったのか、これが争点ですね。その場合に、ではその訴訟が起こったからといって、もう法務局のほうで調査を始めておったその人権侵犯事件の調査は一切ストップをするということになるのかどうか。これは不合理だと思うのですよ。それはもう訴訟は訴訟でやっていけばいい。人権侵犯の調査と訴訟とはこれは目的が違うと思うのですよ。だから、こういう私がいま言いましたような場合に、訴訟が起こったからといってストップをするというのは、これは不合理だと思うのです。いかがでしょうか。
  137. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お説はよくわかるのでございますが、私はその場合でも、いまのような先生御設問の場合は全生徒共通のものであると思います。したがって共通の関係がございますから、一人が訴訟を起こした場合でも手を引かなければならぬという私のその理屈になるわけでございます。  それから、そんなに窮屈に考えぬでもいいじゃないかとおっしゃるのでありますけれども、これは窮屈に考えないでルーズにやりますと、裁判所が審理をしていらっしゃる事件行政府の人権局がこれにタッチをしていくという事態が起こりまして、これは何と考えてみても、このことのほうが不合理である。それは憲法上の司法権の独立ということに重点を置いて考えるとそうなるのです。  たとえばここに一つの判決があった。この間の有名な親殺しの二百条の判決、無効であるという判決がありましたね。判決があると同時にハチの巣をつついたように質問が起こってくるわけであります。おまえ一体これはどう思うのか。私はこう思いますということが言えないのです。こういう判決がありましたという、下された判決の内容についての客観的報告、説明はできるのでありますが、この判決は無理ではないか、おかしいじゃないかということは一口だって私がこの国会で言うことはできぬ。立法府でございます。であるが、同時にこれは行政府においてもその態度はとらなければならぬのでありまして、非常に不合理なように見えますけれども、司法権の独立、いやしくも司法権のやっております裁判審理というものに横合いからタッチすべきものではないのだという厳格な考え方から考えますと、私の言うとおりにならなければならぬものだ、こういうふうに考えております。
  138. 木下元二

    ○木下委員 私は、法務大臣がそのように考えておられることを、そんなに窮屈に考えぬでもいいというふうには考えていないのです。私は、そのいまあなたが言われたような、そういうふうな考え自体が根本的に誤っておると思うのです。司法権の独立を侵害してはならない、これは当然のことであります。しかし人権擁護局が人権侵犯事件を調査することと司法権の独立とは別個の問題であります。行政府の行政と司法権の独立とをそのように考えられるとすれば、これはいろいろな問題が起こってきます。  あなたがそんなことを言われるのなら、ではたとえば交通事故の場合どうでしょうか。公安委員会が交通事故が起こった場合に免許の取り消しあるいは免許の停止の処分をいたします。刑事裁判はそのまま進行しておりますね。刑事裁判が起こったからといって、行政機関である公安委員会はその免許の取り消しあるいは停止の処分を停止するでしょうか。停止せずにどんどんやっていきます。刑事裁判のほうで無罪かどうかということが争われる。あるいは民事裁判でも、交通事故の損害賠償請求の訴訟は、そのような公安委員会の処分と無関係に進んでいくわけです。そうでしょう。つまり行政府のそういう問題の扱いというのは、これはもう別々の目的なんだから、司法権の裁判の問題と別個の目的、行政目的をもってそれを進めていくわけなんですよ。これが原則でしょう。あなたが言われるように、幾ら司法権を重大な問題として考えても、そういう解釈は私は一般には通用しないと思うのですよ。あなたがそういうふうに言われるのなら、いまの交通事故の場合に公安委員会がそういうふうな取り扱いをすることを御説明いただきたいと思います。
  139. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これはおことばを返すようでありますが、免許取り消しその他の行政処分は、これは行政処分というものは司法上の審理とは別個のものでないでしょうか。行政処分をやったから司法権の審判に影響するということは言えないのではないでしょうか。そこは先生、理屈を言うて申しわけありませんけれども、こういう議論はしっかりする必要がある。双方遠慮しちゃいかぬのです。遠慮してはものがわからないようになってしまう。  そこで申し上げますと、司法権の独立ということをどういう意味に解釈をするのかということで私は勝負はつくものと思うのですね。何が司法権の独立なんだ、どんなものが司法権の侵害なのかということでございますが、それは一口に申しますと、裁判所以外の行政府、立法府が、裁判所のやっておることに言及、タッチしないという事柄なんです。そういうものを司法権の独立と言うておる。そういうところから申しますと、行政処分は別のものであります。むしろ行政処分というものは、時間的に見るというと、いまの行政処分は、行政処分が先になって、そして司法上の審理はあとになっておるということが通常の例ですね。処分されて取り上げられる、やがて起訴が行なわれる、司法裁判が行なわれるということが順序でありまして、並行はしないものでございますけれども、かりにその時期が接近をしてお沖骨おりましても、行政処分は別個のものであります。行政処分は一向差しっかえないものだ、こう判断いたしております。
  140. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、この地方法務局がやるこの人権侵犯調査に基づいて一定の結論を出す、これは行政処分と違うのでしょうか。これは行政処分でしょう、行政行為でしょう。
  141. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 人権擁護局の行なう処分は、その場合は行なわないのであります。時間的、機械的に申しますと、裁判所が審理にタッチをする、訴訟受理が行なわれたという瞬間にはぷつっと切れるのです。行政処分は起こらないのです。そこでその行政処分を行なうということにならない。途中で切れてしまうわけですね、中止するわけですから。
  142. 木下元二

    ○木下委員 ちょっと、私が聞いているのは、行政処分の場合は別個だ、行政処分は、司法権の行使にもかかわらず、これはどんどんやってもいいんだと言われますから、この法務局のやる人権調査、これに基づいていろいろな処分を行ないます、告発とか勧告とか通告とかですね。こういうことを行ないますけれども、これはやはり一種の広い意味行政処分でしょう。だから、これだけ別だというその理由が私にはわからない。いま言われたように、行政処分は幾らでもやってもいいと言われるなら、この法務局の調査と、それに基づいた処分もやっていいじゃないですか。
  143. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 それは私の言うております意味は、道交法違反で免許の取り消しをするという行政処分は一向差しつかえない、こういうことですね。ところが、発動いたします調査の行為というものは行政処分じゃないのです。行政行為なんですね。いろいろな行政行為が重なっていく。したがって、この人権擁護局の仕事というものは処分というものはないのです。調査があるのです。調査に基づいて結果を得て、そうして本人に反省を求める。人権高揚、基本的人権が必要であるということを示すことが人権擁護局の仕事でありまして、行政上の処分を行う権限はこの人権擁護局にはない、こういうことですね。
  144. 木下元二

    ○木下委員 時間がありませんので、一番大事な点にきたのですが、午後にやります。
  145. 三原朝雄

    三原委員長 午後二時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  146. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。木下元二君。
  147. 木下元二

    ○木下委員 午前中に大臣が言われたことを申しますと、結局、法務局あるいは地方法務局の人権侵犯の調査は、訴え提起があればこれはストップすべきだ、中止処分をする、それは行政庁は司法権に介入すべきではないからだ、こういう趣旨で言われたと思うのです。  そこで私は、たとえばそれでは、公安委員会の交通事故などについての処分、免許の取り消しとか停止とか、そういうふうな処分というものは、裁判が係属してもかまわずやられていく。この法務局の人権侵犯の調査は裁判が起こればストップする。ところが、公安委員会の調査などはストップしない。これは、公安委員会の交通事故の調査と申しますのは、御承知のように、たとえば聴聞をやったり、やはりこれは一定の交通事故の事実関係を調査し、あるいは過失の有無を調査し、そしてその上で免許の取り消し、停止の処分をするわけであります。その場合は刑事あるいは民事裁判が起こりましても中止はしない、法務局の人権侵犯の調査は中止をする。これが私にはわからない。先ほど最後にこの時間前に言われましたのは、行政行為だとか行政処分だとかということを言われました。行政行為あるいは行政処分の場合、にはストップしないのだ、こういうことだと思うのですが、しかし、法務局の人権侵犯の調査も、これはやはり調査をしまして、その上で一定の結論を出して処分をするわけですね。それは人権侵犯事件の処理規定といのがありますして、これに基づいていろいろな処置をとります。勧告とか通告とか、あるいは説示とか、あるいは処置猶予こういうのもあるわけですよ。だから私は、これは私だけの疑問ではないと思うのですが、大臣が初めに言われたのは、司法に影響を与える、行政庁は司法に介入すべきではない、こういう考え方から申しますと、この法務局の人権侵犯の調査の場合であっても、公安委員会の調査、処分の場合であっても同じことだと思うのですよ。ですから私は伺っておるのです。なぜ一方だけストップをし、他方はストップもしないのか、これがわからないのです。
  148. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私が答弁もしていくと、だんだん理屈を言っていくことになって恐縮なんですけれども、お尋ねがあるから申し上げるんですけれども、警察の道交法に関連をする免許の停止その他の行政処分というものは、法規に基づく行政処分でございます。この法規に基づく行政処分、やってよろしい。やっていけないただ一つの場合はどういう場合かというと、最高裁判所が、おまえのやっておる行政処分、行政上の措置は憲法違反であるという最終的な決定を下しまして、違憲の判決が確定をいたしました場合において、初めてその法律に基づく行政処分はやることができなくなる。そういうことがない限りは行政処分、大いにやってよろしい。それは時間的には、先生の仰せになる御心配は、行政処分が先に行なわれて、あとからいろいろな民事訴訟、刑事訴訟が起こってくるという場合が多いのでございましょうけれども、かりに別個の裁判所から別個の違憲判決があった場合もないとは理論的にはいえません。そういう場合には、最高裁の違憲の判決がない限りは法規に基づく行政処分はしっかりやってよろしい、こういうことです。  それからもう一つは、それなら人権擁護の場合はどうかというと、人権擁護局の発動はすべて処分はない。妙な役所であります。行政処分のない役所というものは、私は寡聞でございますが、日本全国の——日本全国というのは話は大げさだが、わが政府の行政機構の中でも行政行為はいろいろある。しかし行政処分というものの権限を持たないという役所は、おそらく人権擁護局だけではなかろうか、ほかにないのではなかろうかと思っておるくらいでありまして、それは、法規に基づく行政処分じゃない行政行為で裁判所のやっておられることにタッチをすることはいけないのだ。それは三権分立の司法権独立というたてまえからこれはいけないのだ。どうしてくどくそんなにいけないということを言うのかといえば、特に司法独立の上で協力をしなければならない行政府と立法府という立場で、裁判所の行なっておられる審査にタッチをしてはいけないのだ、これをやります結果はタッチの結果になるからだ、こういうふうに私は分けて判断をしておるわけでございます。
  149. 木下元二

    ○木下委員 どうもよく私、意味がわかりにくいので伺いたいのですが、法務局のやる人権侵犯の調査に基づいて一定の結論を出して、私が言いましたような通告とか勧告とか、いろいろな処分をする、これは行政処分ではないと言われるんですが、行政行為だ。行政行為で行政処分じゃない。じゃ一体その行政処分とは何なのか。これは法学上いろいろいわれておりますけれども、一体何なのかということ。そしてまた、その行政処分の場合、行政行為にあらざる行政処分の場合に限ってそういうふうな取り扱いをするのは、どういう理由なのかということが問題になるのです。その説明がちっともされていない。初めに大臣が言われたのは、そういうことではなくて、とにかく司法に行政庁がいろいろ影響を与えてはいけない、介入してはいけない、こう言われたのです。そういう趣旨からするならば、法務局の場合、行政行為の人権調査の場合であっても、あるいはそのほかの行政処分なり行政行為なりいろいろあるでしょうけれども、そういう場合であっても私は変わらないと思う。同じことだと思う。  また、ついでに申しますと、少なくとも私のいまの認識で申しますと、行政処分というのは、いわゆる法学上行政行為のことを行政処分というふうに私は理解しておるのですが、行政行為と違って別の行政処分というものを設定されて、それを特別にそういう違った扱いをされる、その理由はちょっと理解しにくいのですよ。結局、行政行為というのは、言うならば、私法上の法律行為というものがあるとするならば、いわゆる公法上と申しますか、行政上の行政官庁におけるそういう法律行為、これを行政行為というのだと思います。行政処分というのも、いろいろ解釈はあるかもわかりませんけれども、これも結局、そういう意味の一定の行政法上の法律効果を生じるところの行為、これが行政処分だ。国民の権利義務に関する行為、処分、これが行政処分だと思うのですけれども、そういうふうに大臣が言われるような区分けをして解釈をされる理由というものは、私は理解しがたいのです。
  150. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 木下先生、私が言うておるのは、司法の独立を尊重するたてまえからは、訴訟が起こったら調査は停止なんだということを単純に申し上げておるのですよ。ところが、先生は頭のいい人だから、それでは道交法の場合に免停があったらどうなんだ、裁判があったって免停はあるじゃないかと仰せられるから、違憲判決だという判決が下らない限りは免停という行政処分は法規に基づいてやってよろしいのです、それとこれとは違うのですということを言うておるのです。  もう一つ要らぬことを申し上げますと、先生の御心配のようなことは事実起こらぬのじゃないでしょうか。それは、先生、行政処分と同じものだと仰せられるが、行政上の行為、一定の権限に基づいて人権擁護局がある種の行為をした、勧奨なら勧奨、説得なら説得をしたといたします。その説得をした時点で訴訟がまだ起こってなかった。説得の時点以後に訴訟が起こったら、これは何も問題は起こりませんね。問題は、訴訟が起こっておるのにそういう行政行為をやるという混乱が起こってきたときに、遠慮せよということが起こるわけですね。ですから、人権擁護局の行なう行政行為というものは、何も衝突が起こらないものは裁判所にこの事件が受理、係属されるまでやってよろしい、係属の瞬間にとめなさい、こういう指導をしておるわけです。人権擁護局成立以来この方針は変わっていない。ことに私になってから特にくどく言うておる。裁判所のじゃまをするのは、どんな事情があってもいかぬぞと言うておるのでしてね。問題がありますのは、裁判所事件が係属して以後において人権擁護局が調査をしていくことがよいのか悪いのかという問題に、単純に考えていいのじゃないでしょうか。それはいけないのだ、こういうのです。私の言うこと、おかしいですか。
  151. 木下元二

    ○木下委員 大臣法律家でありますが、私も法律家であります。法律家として論議をいたしますと、大臣の言われることは私、納得しがたい。裁判が起こった場合には行政庁は遠慮しなさい、私はその論法に問題がある、そのことによって司法権の独立は侵害されない、こう思うのです。しかし、かりに百歩譲って、大臣の論法をとったとすれば、ではほかの場合はどうなのかということを言っておるのです。その例として私は公安委員会の例を持ち出したのです。公安委員会の場合でも、公安委員会で交通事故が起こっていろいろな調査を始めます。聴聞もやります。それをやっているときに裁判にかかるというケースは幾らでもある。それは刑事事件として検事が起訴する場合もあるでしょう、あるいは民事事件として損害賠償訴訟が起こるという場合もあるでしょう。公安委員会の調査が始まって係属中に裁判が起こる。そうしたら大臣の理屈でいえば、遠慮しなさい、行政庁は待ちなさいと、公安委員会はとめなくてはいけない。そうではなくて、私はとめるべきではないと思います。しかし、大臣の初めに言いました論法でいくと、司法の独立、司法に影響してはならない、だから行政庁は裁判が係属した場合には差し控えるべきだ、こういうことを一般論として言うならば、公安委員会の場合だってとめなくてはならない。  そこで私は、人権審判の法務局の場合と、この公安委員会の場合と別々に扱う理由はないではないか。もしあるとすれば、一体それは何なのかということを詰めてお伺いしますと、行政行為だとか行政処分だとかいうことを言われるから、それは行政処分だということで区別をする理由はどこにあるのか。これはお答えできないと思うのです。私は、一般論をずっと論議しましたので、具体的にちょっとお尋ねしていきたいと思います。  実は、こういうふうにお尋ねをいたしましたのは、関西電力の人権侵害事件というのが起こっております。四十六年四月三十日付で兵庫県人権擁護委員協議会あてに起こっております。この事件内容というのは、もう詳しくは申し上げませんけれども、関電の内部で特定社員を会社側がマークいたしまして、警察と連絡をとったり、あるいはそのマークした人たちの身辺を徹底的に監視、尾行をする、いろいろなことが行なわれております。詳しくは申しません。そういう特定の社員をマル特社員というふうに名づけまして、その孤立化をはかっていく、労働組合の活動から締め出していく、こういう人権侵犯事件があったわけであります。四十六年四月三十日に申告がありました。そして人権擁護委員協議会のほうではこの事案をずっと調査いたしました。それから後四十六年十一月ごろ神戸地方裁判所に損害賠償訴訟がこの問題について提起されました。これは人権侵害事件事件として申告をした人たちから、会社とそれからそういうふうな衝に当たった人たちを被告として損害賠償の訴訟が起こったのであります。そうすると、その訴訟が起こったということを理由に、その人権侵害事件の調査あるいは結論というものが中止をされた。  そこで、まずお尋ねをしたいのは、一体私がいま申しましたような事案について、これが中止をされたことは間違いないのかどうか。間違いないとすれば、その時期はいつなのか伺いたいと思います。
  152. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先生お説のような経過を経ておりまして、人権侵犯の申し出によって一昨年の四月に調査に着手をいたしました。しかるところ、先生仰せのごとくに十二月に、人権侵犯を不法行為として、損害の賠償の訴訟、名誉棄損で名誉回復による謝罪広告、その他の民事訴訟が提起されましたので、提起された瞬間に、私が先ほどから申しておりました方針によって調査は打ち切った。  これは、ちょっと一口申し上げておきますと、打ち切って、あとは全くやらぬのかというと、裁判の結果を見たいと思っております。裁判が完結したる状況の時点においてさらに検討してみて、必要あれば、御本人がどうおっしゃろうがおっしゃるまいが、それにこだわることなく方針をあらためてきめて調査を再開するということも起こり得る。この方針はいまだわかっておるところではありませんが、将来の方針としまして、裁判所の手が切れたら同時に必要あれば再開をする、この方針でおります。
  153. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、その時期は、いま瞬間と言われましたけれども、訴え提起のそのときからという意味ですね。
  154. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 はい。
  155. 木下元二

    ○木下委員 実はこの問題、人権侵犯事件として申告をいたしましたのは、実は私も代理人となって申告をしておるのです。神戸法務局のほうで、この問題についてある代理人が行きましていろいろ事情を調査しております。それによりますと、すでに神戸法務局のほうでは調査を完了して、意見を付して本省に送ったということなんです。この点は間違いないのでしょうか。
  156. 萩原直三

    ○萩原政府委員 調査状況をお答え申し上げます。  神戸地方法務局で調査をいたしましたのは、被害者側四名、それから相手方に加えられておりますその直接の上司四名、それから参考人十三名を取り調べました。しかし、先ほど来話がございましたように、訴訟が提起されましたので四十七年三月六日に中止処分にいたしたわけでございまして、調査が完了したという段階にまでは至っていなかったのでございまして、神戸地方法務局といたしましては、ただいま大臣答弁のとおり、判決結果を見て、それをも資料といたしましてさらに調査を重ね、それに基づぐ処分をいたしたい、こういう方針でございます。
  157. 木下元二

    ○木下委員 ちょっといま言われたこと、私、聞き落としたのですが、中止になったのは四十七年三月とか言われた。ちょっともう一ぺん言ってください。
  158. 萩原直三

    ○萩原政府委員 四十七年三月六日に中止の措置をとったのでございます。
  159. 木下元二

    ○木下委員 そうしたら、いま大臣が言われたのと矛盾するじゃないですか。私がいま大臣に聞いた。念を押して聞いたのですよ。損害賠償の訴訟を起こした四十六年十一月ごろと私は言ったのです。たしかその瞬間に中止というふうなことを言われたので、念を押してその訴え提起のときから中止かと聞いたら、そうだ、こう言われたのですね。いまのお話だと翌年の三月六日に中止。これはおかしいじゃないですか。
  160. 萩原直三

    ○萩原政府委員 お答え申し上げます。  大臣のお答えになったとおりでございますけれども、ただ地方法務局の事務の関係では、人権侵犯処理規程の第十一条に基づいて形式的な処理を行なったわけでございます。それがいわゆる十一条に書かれている中止という措置でございます。
  161. 木下元二

    ○木下委員 そういたしますと、もう一ぺん念を押して聞きますが、調査は完了しておるということですか。
  162. 萩原直三

    ○萩原政府委員 まだ完了いたしておりません。
  163. 木下元二

    ○木下委員 完了していない部分というのは、つまり残っている部分というのはどういうことなんでしょうか。
  164. 萩原直三

    ○萩原政府委員 直接の当事者に当たります被害者及び相手方につきましては、先ほど申し上げましたように、事情を聴取しておりますけれども、参考人その他会社関係についてはまだ十分な調査を尽くしていない、こういう状況でございます。
  165. 木下元二

    ○木下委員 どの部分が残っているのでしょうか。
  166. 萩原直三

    ○萩原政府委員 それは、個々の具体的な事実のほかに、それに基づいて申告者が申しているような侵犯事犯があるかないかという判断を下すためには、参考人その他関係者から事情をさらに聴取いたしまして、そのような事実があるかないかという的確な判断を下す必要があるわけでございます。
  167. 木下元二

    ○木下委員 そういたしますと、いろいろな事実関係があると思いますが、そのうちである一定の部分だけ取り残されているということではなくて、大体全般に調査が終わったけれども、なお慎重にもう少し全体として調査をしなければならない、参考人も残っておるということですか。
  168. 萩原直三

    ○萩原政府委員 個々の具体的な事実につきまして、一応関係者の主張を伺っておりますけれども、その主張が食い違っておりまして具体的に確定できないという面が相当数ございます。その段階で訴訟が提起されましたので、判決の結果をしんしゃくしてさらに事実関係も明らかにしよう、その事実関係に基づいて、先ほどお答え申し上げましたような判断についても検討を加える、こういう趣旨でございます。
  169. 木下元二

    ○木下委員 私が初めに質問いたしましたことにはお答えがないのですが、私が聞きましたのは、神戸法務局では調査が完了して、意見を付して本省に送ったというのですけれども、いまのお話では調査はまだ完了していない。これはわかりました。そう聞いておきましょう。しかし、意見を付して本省に送ったという点はどうですか。
  170. 萩原直三

    ○萩原政府委員 神戸地方法務局では、これは中止すべきではなかろうかという意見を付してわれわれのほうに参ったわけでございます。そして先ほど来大臣答弁のような御趣旨に基づいて、中止がけっこうであるという答えをしたわけでございます。
  171. 木下元二

    ○木下委員 そこで、もう少しこの問題に関連してお尋ねしたいのは、この問題も含めて一般論になるわけですが、訴え提起があれば中止をするという法的根拠、これは私はないと思うのです。  もうだいぶ論議が進んでおりますので私のほうから申しますが、人権侵犯事件処理規程というのがあります。この十一条、これには、「法務局長又は地方法務局長は、事件について、関係者の所在不明その他調査を行なうについての著しい障害があって、調査を続行することが相当でないと認めるときは、中止の決定をするものとする。」二項は、「前項の障害がなくなったときは、すみやかに事件の調査を開始するものとする。」こうあるのです。つまり「調査を続行することが相当でないと認めるとき」、この場合に初めて中止の決定をするんだ、こういうたてまえですね。そしてそういうふうに「相当でないと認めるとき」というのはどういう場合かというと、これは、「関係者の所在不明その他調査を行なうについての著しい障害」がある場合、この場合に限って「調査を続行することが相当でないと認めるとき」に当たるんだ。これはもう条文の解釈からして当然そういうことになっているんですよ。だから、「関係者の所在不明」、これは関係者がいないわけですから、調査ができない、しにくい、これは当然です。「関係者の所在不明その他」とあります。これはもう法律の条文の解釈からいって当然ですけれども、関係者の所在不明に準ずるような場合ですね。そういう場合、「調査を行なうについての著しい障害」があるものとして調査を中止する、こういうたてまえなんですね。また、この障害がなくなればすぐ続行する。だから、こういうふうな障害には、いまあなた方が言われている場合は当たらないと思うのですね。  私がいま言いました例の場合、あるいは一般的な場合でもけっこうですが、裁判が起こった場合に中止をするという法的根拠、これはいま私が指摘をしましたこの処理規程にはないわけなんです。その点はどうでしょうか。
  172. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 それは先生、あなたはこの事件の訴訟代理人として御自分が事件を取り扱っていらっしゃって、いろいろその詳しい具体的な内容を御存じですから、私は先生のおっしゃることを聞いておって、ごもっともだ、こう思う。思うのだが、いまおっしゃった処理規程というものは何のための規程かといえば、人権擁護局の行なう調査その他のやり方についての一般的な場合の規程がこの規程なんです。  そんな規程にはよらないで、今度の場合はどんな規程によるのかといえば、三権分立の憲法上の大原則、その憲法の精神にのっとれば、裁判所事件が持ち上がったときには行政の調査は遠慮をするというこの大方針にのっとって、人権擁護局発足以来今日までその方針で遠慮しておる、こういうことなんですね。ですから、その処理規程の適用がないんです。その適用以前の問題なんです、憲法ですもの。憲法の精神というものを尊重して遠慮をしておるというのでありますから、その処理規程以前の問題として根拠を持っておる。根拠はどこにあるのか、こう仰せになると、憲法にございます、憲法の大精神にございます、司法独立の規定にございます、こういうことでございます。
  173. 木下元二

    ○木下委員 憲法を根拠とする、これは非常にけっこうなことですけれども、この処理規程に基づかないというのは、これはとんでもないことだと私は思うのですよ。このいま申しました十一条の規定からは、裁判が起こったからといって中止をするということは出てこない。この規定はそういう場合を除外しておるということはお認めになった発言でありますが、こういう規定は無視をしてもう憲法に基づいてやるんだと言われると、私はこれはちょっと行き過ぎだと思うのですよ。  特に私は、ほかの行政庁、各省各庁と違うと思うのです。法務省なんです。少なくともこの法律を順守して、法律に基づいてあくまでもやられるべきだ。法務省というのは特にそういう役所なんですね。その法務省が、わざわざつくった人権侵犯事件処理規程を無視して、こういうものに基づかずに憲法に基づいてやる。この規程でははっきりと限定してワクはめをしておる。こういう場合に初めて中止ができるんだとワクはめをしておる。それを無視して憲法に基づいて直接やる、これはとんでもない。大臣、いまのは取り消してください。  それは憲法に基づいて、たとえばこの十一条の規定がおかしいと言われるのなら、この十一条を改正して、これを裁判が起こった場合には中止ができるように改めて、この規定に基づいてやる、当然そうでしょう。こんな規定を無視してどんどん憲法に基づいてやる、それではもう法律や政令や規則や、そういうものは意味ないじゃないですか。いまのおことばは取り消してください。
  174. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先生は法律家であらせられて、この事件についてはたいへん無理をおっしゃる、私は感想をありのままに言うと。そういうふうにお考えになったのでは議論が立たぬのです。法規、法規と言うけれども、その法規に基づく以前に憲法の精神にのっとって調査を中止したんだということは、当然のことではないでしょうか。憲法を尊重するのか、法規を尊重するのかといえば、法規を無視せざる限り憲法を尊重するという処置はよいのではないでしょうか。私の言うていることがどこかおかしいですか。何もそれに基づいて中止せんならぬことはないのです。それは中止をする一般論として、一般の場合はこういう場合に中止すべきものだということが書いてある。それが処理規程です。その処理規程適用以前に、いやしくも、裁判所にあなたが訴訟を提起された、それで裁判所事件がハンギングした、ハンギングしたら遠慮すべきものである、司法権独立の憲法の精神を尊重しておりますということは、そんなにおかしいでしょうか。私の言ったことは、取り消さなければならないほどおかしいでしょうかね。いかがでしょう。
  175. 木下元二

    ○木下委員 私、もう論議をやめますが、この処理規程第十一条で中止をする場合を定めたのは一般的な問題で、それに基づかないで直接憲法に基づいて中止ができるんだというのは、私は、法務省としての、あるいは法務大臣としての公式見解としては、どう考えてもおかしいと思うのです。少なくとも、この処理規程というものを法務省でわざわざおつくりになって、人権侵犯の調査を中止できる場合というのはこの場合に限定するんだということを十一条で定めているんですね。そのことはお認めになった。そうすると、この十一条に基づいていろいろな取り扱いがされるべきなんです。この十一条を無視して憲法でやれるんだというのでは、私は、法務省としてはそういう取り扱いは非常な問題だと思うのです。何のため法律があるのか、何のために規則があるのか。憲法に基づいてもう何でもやれるんだ——少なくともその法律やあるいは規則が憲法違反だという理解ならば、それはけっこうですよ。法務省がこの規則は憲法違反と考えているんだ、だからそれに基づかない、それはそれでまた理屈が通るでしょう。しかし、そういう判断にも立たないで、十一条を無視して取り扱いをする、これは私は法務省のとるべき態度でぱないと思います。そういう意味で言っているんです。どうですか。
  176. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私の言うておることを誤解されておる点があろうかと思いますが、私は、憲法の条章に基づいてやっておるということは言ってないので、最初から申し上げておりますように、三権分立の憲法の大精神に基づいて中止をするんだ。その中止を、具体的にどのような条章によって中止をするのかとあえて仰せになるならば、それは十一条を準用しておりますということはちっとも差しつかえないことで、十一条準用であるけれども根本の理由はどこにあるのかといえば、憲法上の司法独立の大精神にのっとっておるのだ、こういっておるので、法務省というところはむしろそういうふうに考えなければいけない役所じゃないでしょうか。自分のつくった十一条を準用して、十一条によって中止をしたんだけれども、根本は何が原因なんだといえば、あなたが起こされた裁判がハンギングをしたから遠慮したんだ、結末がつくまでは遠慮したんだ。何もおかしいことではないように思うのですが、おかしいですかね。
  177. 木下元二

    ○木下委員 いまあなたはことばを変えられました。これを準用するとか準ずるとかいうことを言われましたけれども、それまでは言われてなかったものです。いまお考えが変わったのならそれでけっこうです。これをこの規程に基づくか、もしくはこれを準用するかというならそれはそれで、ちょっと根本的におかしいけれども、一つの理屈は通るんですよ。いま大臣が初め言われたのは、これは速記録を見てもらったらわかるが、そうではなくて、この十一条というものを無視して、これに基づかずに憲法でやるのだということを言われたから私は論議をしたんですよ。これを準用してやる——私はこれは準用はできないと思うのですけれども、いや、準用するんだと言われれば、それはそれでまた一つの理屈だと思います。そういうふうに見解を改められたなら、それはそれでけっこうです。  私がこういうふうにずっと聞きますのは、実はこの裁判が起こりましたのは、さっき申し上げましたように、四十六年の十一月ごろでありますが、裁判が起これば中止をするかもしれない、そういうおそれがある。四十六年四月から調査が始まってもう十一月まで相当進行しておる、その段階で裁判を起こすについては、これはやはり法務省のほうとしてもストップをするかもわからないというおそれがある。そこで、実はわざわざ念のために大阪の法務局に行って——これは私は行っておりません。私は行っておりませんけれども、関係者が行って確かめておるんですよ。そして裁判が起こった場合にはどういう措置をとられますかと確かめておる。裁判を起こしたことを理由に中止することはないか、そういうことはありませんと局長は返事をしておるのです。そこで、だいじょうぶだということで裁判を起こした。裁判を起こしたらストップ、まるで一ぱい食わされているんですよ。だから、私は特にこの問題を出して問題にしているんですけれども、この点、いまおわかりでないかもわかりません。ひとつこの点について、これは実は私は行っておりませんけれども、ほかに関係者の人が何人も行っておりますので、一ぺんよく調査をしていただきたい。大臣のさっきのお話によりましても、これは初めからの方針であって、何か確固不動の方針のように言われましたけれども、これは決してそうじゃないんですよ。  それから、たとえば法務局だけでなくて、御承知のように弁護士会にも人権擁護委員会というのがあるわけですね。弁護士会でやっている人権侵犯の扱いなんか、これは御承知だと思うのですよ。裁判が起こったって継続してやる場合が多い。あるいはケース・バイ・ケースでやらない場合もあるでしょう。そんな、あなたは憲法がどうのこうの、司法の独立がどうのこうのなんて言われますけれども、弁護士会では、裁判が起こったってそんなことにむとんちゃくに審査をやっている、そういう場合が多いのですよ。だから私は言っているのです。ひとつこの問題については抜本的に御検討をいただきたい。いかがでしょうか。
  178. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 司法独立、たいへんくどくなって申しわけないのですけれども、これはどうしても言わなければならぬので申し上げるのですが、弁護士会に人権擁護委員会があって御活躍になる、これは司法独立に関係ない。先ほど言うたように、弁護士、学者、マスコミ、大いにやってよろしいのでございます。憲法上の三権分立の原則の上から、裁判進行中にそのことにタッチをしてはならぬ、タッチのおそれのあることをやってはならぬのは、くどく申し上げたように、両院議長以下の国会と、内閣総理大臣以下の行政府だけがいけないので、三権分立だからなんです。ここはよく御理解をいただきたい。弁護士会がしっかりおやりになる、裁判所が独断専行におちいらないようにしっかりおやりになることはよろしいのであります。裁判がある、裁判の批判、どんどんやってよろしい。やってはいかぬのは国会と行政府だけだ、それは三権分立だからだ、こういうことですね。  そういうふうに御理解をいただいてきたのでありますが、これを検討せよということでございますけれども、議員のおことばでございますから、検討はいたします。これは検討の余地が全くないという独善はまたいかぬわけで、検討はいたします。検討はいたしますが、御理解をいただきたいのは、ただいままでの方針を変更ができませんのは、訴訟が起こると訴訟期間中は手を引くという方針をとっているということは、その変更がむずかしいのではなかろうか。しかし、せっかくの熱心な専門家のおことばでございますから、ひとつ検討してみることにいたします。
  179. 木下元二

    ○木下委員 抜本的な検討をいただくというふうに言われましたので、私はもうこれ以上申し上げませんが、ただ一言つけ加えますと、弁護士会はかまわないといわれますね。たとえば弁護士あるいは学者が個人的にいろいろ調査をするという問題ではなくて、やはり弁護士会という公法人ですね。公的な機関なんです。公的な立場で調査をするということになると、これは行政機関としての法務局の人権擁護委員協議会がやる場合も、それから弁護士会の人権擁護委員会のやる場合も、私は同じことだと思うのですよ。だからそうした問題も含めてひとつよく検討をいただきたいと思います。  最後に、実は四十七年三月二十九日付で法務省の人権擁護局長あてにこの問題について質問書を出しているのです。これは私の名前は出ていないと思います、ほかにたくさん代理人がおりますので。一体いついかなる理由によって中止をしたのかというようなこととか、ほかにいろいろあるのですが、これに対してもナシのつぶてで回答がないのですよ。私は、十分納得するかどうかは別としまして、こういうふうにきちんと文書で、しかもこういう問題について質問があれば、一応回答があってしかるべきだと思うのです。それが民主的な行政機関の姿だと思うのですけれども、何ら回答がない。これは不誠実だと思うのです。回答はいただけないでしょうか。一応私はきょうは話を聞いたけれども、質問をしておるのは別の人たちであります。関係者であります。ひとつ回答をいただきたい。
  180. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 それはまことに不都合なことで、御書面をいただいて回答しないということ、それは申しわけがない。私などは、どんなに忙しくとも、正式書面に対しては事実の回答、自分でできないときには部下に命じて、所管の責任者から必ず文書による回答をさせております。親展の回答をしておる。それは初めて承ったことで、反省を要することと思います。これは回答がおくれてけしからぬというおしかりさえなければ、了解さえいただけば回答させます。
  181. 木下元二

    ○木下委員 いまのは、きょうも御答弁をいただいたのですが、結論はどうなるかは別として、再検討をするということも含めて回答をいただくように特に要請をいたしておきます。
  182. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 誤解があってはいけませんが、裁判の進行中はやりません。裁判が終わりまして、事件裁判所と縁が切れましたら、直ちにその時点における状況を勘案いたしまして、調査に再び着手するかどうかをきめたい。そういう意味で、ここでしり切れトンボでほうってはおかぬということはお誓いをいたします。
  183. 木下元二

    ○木下委員 ちょっといまの点。さっき検討と言われたのは、こういう場合の具体的な、この問題をどういうふうに扱うか、中止をするのをやめるかどうかということではなくて、一般的に、裁判が起こった場合に調査をストップするかしないかということをひとつ検討しましょうというように私は聞いたのですが、そうじゃないのですか。
  184. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 一般的に裁判が起こったときは中止をさすという方針は、先生仰せになるから検討はいたしますが、検討してもこれは動かぬ。いや、あなたお笑いになるけれども、これはまじめな話で、それを動かしてはたいへんなことですよ。それは動かぬけれども、しかし、熱心に専門家として仰せをいただくことに対しては、検討するという考え方がなければいけませんので、なお検討します。何しろ私が答弁をしておることだっていろいろ間違いはございましょうから、ひとつ検討してみる、やってみます。それで御了解をいただきたいと思います。
  185. 木下元二

    ○木下委員 もう終わりますが、結論が動かぬような検討なんというのは、それは何のために言っておるのですか。これだけ問題があるのですよ。これは大臣がいろいろと答弁されましたけれどもきょういろいろ問題になったこの論議を客観的に一ぺんよく御検討いただきたい。私の言っていることが間違っているかどうか、これはまさに検討に値します。だから、結論はきまっているのだけれども、あなたが言うから検討します、そんなことだったら検討要らぬです。検討いただくということは、当然この問題を白紙の立場でよくお考えいただく、これが検討の意味なんです。だから、その結果として結論がどうなるか、これは別問題です。それを、初めから結論は動きません、けれども検討しましょうでは、検討なんかする意味がない。そういう意味でひとつ御理解をいただきたい。
  186. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 ちょっと、もう一言聞いてください。きょうは先生、おっしゃっていることを聞いていると、特にむずかしい話をなさる。ずいぶん無理をおっしゃる。ずいぶんむずかしい理論を展開される。私はまじめなんです。まじめに考えてみて、国務大臣がいやしくも国会の委員会の席上において検討いたしますというと、検討の余地のあることとないことがございましょう。検討の余地のないことはないと申し上げて、それ以外の事柄を検討するということがまじめな答えなんです。したがって、先生いま仰せになるおことばをかりて申しますと、裁判進行中であっても場合によっては調査をするんだという、そういうプロバビリティーが幾らかなければ検討するという私のことばはうそです。この場限りでじょうずに言うておるということになる。そんなことを言うべきものではありません。  そういう点から申しますと、十一条の適用とか、ほかにいろいろの問題において検討するべきことがございましょうし、第一、回答を求めておるのに回答していないということは心外千万だというように私は考える。そういうことは検討しなければならぬ。しかし、検討してみても動かぬものは——私がきめるのです。私が責任者でございますから、私がきめる立場において考えると、裁判進行中に行政官庁が調査をするなどという行き過ぎたことを私が検討する余地はない。これはどんなに検討してみても中止する以外にないという信念を持っておるから、正直に言うておるのです。しかし、先生の仰せになったことは、専門家として仰せになっておるし、私たちがああそうかと思うような深いことを御存じです。自分がタッチしていらっしゃるから深いことを御存じでございますから、そういう事柄については、速記録も調べましてひとつよく検討をしてみよう、これはまじめでございます。
  187. 木下元二

    ○木下委員 わかりました。終わります。
  188. 三原朝雄

  189. 横路孝弘

    横路委員 登記所の統廃合の問題に関連して、若干お尋ねしたいと思います。  統廃合がいま全国的に住民の理解を得ないまま強行されようとしているわけであります。先ほどからいろいろとお話があったわけですが、ひとつ皆さん方にお話をぜひお伺いしていきたいのは、財団法人登記協会というのがございますね。この設立の経過はどういうことですか。
  190. 川島一郎

    ○川島政府委員 財団法人登記協会というのは、昭和四十六年六月二十五日に設立代表者栗本義之助から設立許可の申請がございまして、その申請書類を調査いたしましたところ、適法と認められましたので、同年七月一日付で認可されまして、翌二日にその財団法人の設立登記がなされておるものでございます。  なお、この協会は、登記制度の調査研究あるいは登記制度に関する知識の普及を行ないますとともに、登記制度の円滑な運営に寄与するために謄写印刷等の業務の受託を行なうなど、登記制度の発展に寄与する、利用者の便宜の増進もはかる、こういう目的で設立されたものでございます。
  191. 横路孝弘

    横路委員 いまここには専従の職員というのは何名おりますか。
  192. 川島一郎

    ○川島政府委員 七、八十名であろうというふうに考えております。
  193. 横路孝弘

    横路委員 協会のほうには、何人専従の役員の方たちはおられるのですか。
  194. 川島一郎

    ○川島政府委員 お尋ねは、協会の事務所でございますね。
  195. 横路孝弘

    横路委員 はい。
  196. 川島一郎

    ○川島政府委員 事務局長と庶務課長、それにそれを補助する職員が二、三名でございます。
  197. 横路孝弘

    横路委員 ここの理事長の栗本さんという方ですか、この人はどういう経歴の人なんでしょうか。ここに入る前はどういう……。
  198. 川島一郎

    ○川島政府委員 以前法務局におられまして、法務局を退職されましたときには、名古屋の法務局長をしておられました。その後公証人をされまして、現在は公証人を退職して、たしか弁護士を登録しておられると思います。
  199. 横路孝弘

    横路委員 事務局長はどうですか。
  200. 川島一郎

    ○川島政府委員 やはり法務局関係の職員をかっていたしておりました。
  201. 横路孝弘

    横路委員 ここの四十八年四月二日の契約書ををお見せいただいたのですが、東京都千代田区丸ノ内二丁目一番二号ということで、これは法務省の中ですね。
  202. 川島一郎

    ○川島政府委員 さようではございません。この丸ノ内二丁目一番二号というのは、かっての登記協会の事務局があったところでございます。現在は、これは本年の一月であったと思いますが、この場所を移転いたしまして、神田淡路町のほうに事務所も移っております。
  203. 横路孝弘

    横路委員 一月に移っておってどうして四月の契約書——これは四月の契約書でないですか。そうですね、私のほうへお届けいただいた契約書は。
  204. 川島一郎

    ○川島政府委員 これは印刷したときの間違いでございまして、あとから訂正が出たということでございます。
  205. 横路孝弘

    横路委員 訂正したものを先ほどいただいたんです、ほんの少し前。印刷したのは間違いといっても契約そのものは丸ノ内二丁目一番二号になつ訂正をいたしたそうでございます。
  206. 横路孝弘

    横路委員 ここに対して年間どれくらい皆さんのほうで支払いの金額があるのか。現在、ここの職員がおる法務局ですね、どこどこに何名職員がおって、それに対して年間どれくらい給与が支払われておるのか、お答えいただきたいと思います。
  207. 川島一郎

    ○川島政府委員 総額で申し上げますと、総支払い額が七千百二十一万六千円でございます。個々的にと申しますと、非常に分かれておりますので、ちょっと手元に資料がございません。
  208. 横路孝弘

    横路委員 いまの数字は四十七年度ですか。
  209. 川島一郎

    ○川島政府委員 四十七年度でございます。
  210. 横路孝弘

    横路委員 では、それはあとで各場所ごとに幾ら支払いをしているのか、四十七年度でけっこうですから、数字をお届けいただきたいと思います。よろしいですか。
  211. 川島一郎

    ○川島政府委員 仰せのとおりにいたします。
  212. 横路孝弘

    横路委員 この財団法人の設立の許可書、それから財団法人の登記協会の事業計画書でいろいろな事業をすることになっているのですけれども、ここで登記制度に関する調査研究というのがあります。これは具体的にいまどういうことをやっていますか。
  213. 川島一郎

    ○川島政府委員 財団法人の事業としては、いろいろ考えておるわけでございますが、まだ発足当初でございますので、必ずしも全部について行なっているわけではございません。現在行なっておりますおもな仕事は、図書、印刷物の発行と、乙号の事務請負といっておりますが、登記所のほうから業務の委託を受けまして、謄本作成の手伝いをするというような仕事でございます。
  214. 横路孝弘

    横路委員 印刷物の発行というのは、現にもう行なわれておりますか。
  215. 川島一郎

    ○川島政府委員 若干でございますが、行なわれております。
  216. 横路孝弘

    横路委員 大臣、この登記協会というものが設立をされて、おもに法務局のお役人の方々がみんなほぼ理事を占めておられて、そして一応その事業計画書の中におもにあげているのは、登記制度に関する調査研究というのをまず第一にあげている。それから啓発、宣伝及び図書印刷物の刊行、配布ということになって、登記相談所の設立とかいろいろあるわけですけれども、印刷物といったて、皆さん方がここで御答弁されるに値するような印刷物ではないでしょう。実際に何をやっているかというと、登記簿謄本の作成の業務の受託をやりているだけなんです。  そこで私、契約書、実は三週間ほど前に資料のお願いをしておって、きようぜひ質問をやってくれという要請ですので、先ほど要求しましたらお持ちいただいたんですが、これを見ると、ここでやっているのは何かといったら労働力の提供業務をやっている、職安法違反の疑いが実は非常に強いのじゃないかということで、これは先ほど議論もあったんですけれども、登記所の職員というのは非常に不足をしている。しかも業務そのものは、とりわけ田中さんの列島改造論が出てから、北海道あたりでもぐんぐんふえていっているのです。ふえていっているけれども、職員はたとえば一人庁、一人しか配置していない。これを全部まとめてしまうということになると、今度は住民のほうが一日がかりの仕事になるのです、謄本一つとるために。そこで、本来ならばそういう登記所職員の定員をふやしていかなければならぬのに、それをやらぬで何をやったかというと、こういう財団法人登記協会なるものをつくって、事務局長の方なんかは、おたくのほうの民事局におられて、そういう仕事をやっておられた方ですね。そういう仕事の関係の責任者ですね、そういう人たちが天下りといいますか、こういう組織をつくって、そこで仕事をやっておられるわけですけれども、職安法の関係で若干お尋ねをいたしてみたいと思います。  ここの職員は各登記所に朝出ますね。この仕事についてだれの指揮監督を受けていますか。
  217. 川島一郎

    ○川島政府委員 これは登記協会の職員でございましたら、登記協会の監督を受けるわけでございます。ただ、登記所に行って仕事をするという関係で、事務局と離れたところで仕事をしておりますので、現場において責任者というものをきめまして、その者が監督をするという体制をとっている次第でございます。
  218. 横路孝弘

    横路委員 あなた、そんなことを、御答弁されてよいのですか。実際にはほとんどアルバイト的に来ている女性が多いわけでしょう。だれの指揮監督を受けて仕事をしているかといったら、法務省の皆さん方の指揮監督を受けているのでしょう。たとえば欠勤届けをだれに出しますか。
  219. 川島一郎

    ○川島政府委員 こまかい点になりますので、私も実情をしかと把握しておるわけではございませんが、この問題につきましては、前にもいろいろ国会で御審議がありました。この関係で登記協会の幹部を呼びまして、いろいろこまかい点につきまして配慮するようにということを申し渡しました。その結果、登記協会のほうの話によりますとそういった点につきましては十分留意して担当の責任者をきめておく、また欠席のために当日仕事ができないという職員ができました場合には、事務局のほうへ連絡いたしまして、そして事務局でかわりの職員を出すとかということもやっているというふうに聞いておりますので、必ずしもお尋ねのようなことにはなっていないというふうに理解しております。
  220. 横路孝弘

    横路委員 その事務局に仕事を実際にしにいく職員以外の者は、どこどこに配置になって、何人ずつ配置になっていますか。
  221. 川島一郎

    ○川島政府委員 事務局は、先ほど申し上げました神田淡路町にございまして、そこに事務兼予備の応援の職員という形で兼務している者が、先ほど申し上げましたように二、三名おるというふうに聞いております。
  222. 横路孝弘

    横路委員 それは、名古屋なら名古屋まで東京から出かけていくわけですか。
  223. 川島一郎

    ○川島政府委員 名古屋の場合は遠うございますので、東京から出かけるということは無理でございます。名古屋の場合には、担当の責任者というものがきまっておりまして、その人が責任者として管理しているというのが実情であると聞いております。
  224. 横路孝弘

    横路委員 これはそうじゃないのですよ。認証係長が出退勤の管理、休暇届け出の管理、作業量の管理、確認、これを全部やっているのじゃありませんか、現実に。前にも議論があったことを私も知っております。しかし、現実さっぱり改められていないのですよ。その管理をやっているのは登記協会の人間じゃなくて、法務省の、おたくの人たちが公務外の仕事をやらされているようなものですよむ机から場所から全部法務省で提供しているわけですね。そして管理は、私の調べたところでは、法務省の皆さん方が全部おやりになっている。そして作業区分というものも明確でなくて、もう職員と同じような形で仕事をなさっている。現場の担当責任者なんというものは、皆さんの方ほうで明確にわかりますか。じゃ出退勤の管理をしているのはだれか。登記協会のどこどこの局でだれが管理しているか。
  225. 川島一郎

    ○川島政府委員 私、登記協会の職員にどういう名前のものがおるかということまでは承知しておりません。しかし、登記協会の仕事というのは、現在の乙号業務の請負について申しますならば、これは登記協会と法務局との間の契約によって行なわれているわけでございます。したがって、その契約が履行されたかどうか、特に何枚の作業をしたかということは、これによって国側といたしましてはそれに対する費用というものを払うわけでございますので、やはり確認する必要があるわけでございます。登記協会のほうとしても確認する必要がございますけれども、同時に法務局の側におきましてもそれを確認する必要があるわけでございますので、それは両者が作業量を把握する、当然のことであろうと考えております。
  226. 横路孝弘

    横路委員 職安法の施行規則第四条は御存じですか。
  227. 川島一郎

    ○川島政府委員 職安法の規定も前に見たことがございます。条文までは記憶しておりませんが、見たことがあるはずでございます。
  228. 横路孝弘

    横路委員 ここではこういうぐあいに規定されているのです。「労働者を提供しこれを他人に使用させる者は、たとえその契約の形式が請負契約であっても、次の各号のすべてに該当する場合を除き、法第五条第六項の規定による労働者供給の事業を行う者とする」、こういうぐあいにあるわけですね。そこで、「作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること。」、もう一つは「作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること」。指揮監督権というのがこれはもう明確にきめられているわけです。ところが指揮監督権そのものは協会でなくて皆さんのほうにあるわけですね。これは契約書で明確になっていますね。
  229. 川島一郎

    ○川島政府委員 この契約書にございますのは、たとえばどういう場合には法務局側のほうに届け出ろというような趣旨の規定でございまして、これは必ずしも指揮監督権というものではないわけでございます。むしろ身分的には登記協会の職員でありますから、登記協会との間の雇用関係に基づく指揮監督といいますか、契約上の負担なり義務というものを負っている。これは登記協会に対してその職員が負っているということになるわけでございます。
  230. 横路孝弘

    横路委員 具体的な作業をだれの指示に基づいてやっているか、朝出勤したらどうするか、退勤するときはどうするか、あるいは休暇届けはどうするか、作業量はどれだけやったのかということ、そしてどういう仕事をその日するのかということのチェックが、全部これは法務省のほうからの指示でやっているわけですよ。つまり、そこの職員の指示に基づいてやっているのであって、登記協会の指示に基づいてやっているのじゃないのですよ。それが現実の姿になっているわけですよ。だから、作業についての指揮監督権、これは職安法の問題というのは、実は製鉄関係とか、この間も私はちょっと函館のドックの関係を調べてみましたが、造船関係ですね、これは現実はどういう形でやっているのかというと、かなり微妙なんですが、それでもやはり、現場に現場責任者、親方がおって、皆さん方がそれの指示に基づいてやっておるという形に一応なっておるのですよ。ところが、おたくのほうで登記協会にやっているのは、その指揮監督全部、つまりその人間の労働力掌握をだれがやっておるかというと、法務省のほうでやっている。机からいすから全部提供でしょう。だから場合によってはお茶くみもしてもらう。これはもうそこの一員になっているのですから。だから、そういう意味での指揮監督しているのはだれかというのは、あれは登記協会の職員がやっているわけじゃないでしょう。みんなパート的に来ている女性が多いわけですから。職員の狩り集めでも、浦和あたりではおたくのほうで集めてやったりなんかしておる場合も前にありましたね。そこのところを、もうちょっと実態を調べられたらどうですか。これは決していま御答弁になった形になっていないですよ。
  231. 川島一郎

    ○川島政府委員 たとえば名古屋の場合でございますが、私がお聞きしておるところによりますと、名古屋の場合には、以前は登記協会ではない、別の会社に委託しておったわけでございます。そこの職員が、登記協会ができましたときに登記協会のほうに移りまして、そうしてそのまま同じ仕事をやっているという関係があるのでございまして、その会社がやっておりました当時から主任となる責任者がきまっておりまして、その同じ方が現在も派遣されている、職員の世話をしている、こういう体制をとっているというふうに聞いているわけでございます。  それから、職員の募集の点につきまして法務局がやっているのではないかというお尋ねでございますが、この点は、前に問題になりましたときに、登記協会の幹部を呼びまして、そのようなことがあってはよくない、即刻改めるようにと申しましたところ、まあそういう誤解を生ずるような点があったことは事実である、今後はそういうことは一切しないというふうに申しまして、登記協会がみずから新聞に広告を出して職員の募集を行ない、その職員に作業の修習と申しますか、やり方というようなものを仕込みまして、その上で登記所に派遣している、こういう体制をとっておるということでございます。お疑いがあればさらに登記協会に当たってみることもいたしますけれども、現在、私が聞いておりますところはそういう状態でございます。
  232. 横路孝弘

    横路委員 同じく職安法の規則の四条四号に、「自ら提供する機械、設備、器材若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと」という規定がありますね。実際にやっている作業はコピーすることだけでしょう。
  233. 川島一郎

    ○川島政府委員 仰せのとおりコピーするだけでございます。しかしながら、それは大量の枚数を処理するということは、そう簡単にできるものではございません。したがって、登記所のようなところで大量の枚数をコピーに写しとるというためには、相当の修練、経験を要するというのが実際でございます。
  234. 横路孝弘

    横路委員 大臣、要するに職安法では、単純にその労働力を提供するということですね、供給事業というのはやっちゃいけないことになっているわけです。ところが、登記所の人が足りないものだから、登記協会というものを法務省のお役人の人たちが中心になってつくって、そこに人を出して、何をやっているのかといったら登記所のコピーをとるだけですよ。コピーをとる仕事だけが技術的、専門的な仕事だと思いますか。私はこれはもう、この職安法の施行規則でいっている、完全な肉体的な労働力を提供する仕事だと思うのですよ。大臣、いかがですか、あなた法律に詳しいから。
  235. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 コピーをとる労務の提供という御判断も判断のしようによってはできるのではないかと存じますが、たてまえは、一昨年財団法人設立をいたしましたいきさつから申しましても、登記事務の請負制度といいますか、こういう情勢になってきたものでありますから、一応請負でめんどう見てはどうだろうかという試みを一昨年始めまして、財団法人の設立を認可したのでございます。したがって請負契約をしておるという立場が法務省の立場でございます。請負契約をしておる以上は、請負の仕事の内容というものが完全に行なわれることを確保する必要がある。いいかげんな仕事をしてもらっては困るということから、こうしてもらいたい、ああしてもらいたいという注文をしたり指示をしたりするということも多々あろうと存じます。そういう意味で請負契約をしておる、その請負契約の中身をより完全に実現していただくためにいろいろ指図をする、こういうことで、単純なる労務の提供だという判断はしていないわけでございます。  しかしながら、この問題、どこかに先生仰せのような疑いの起こる素地が幾らかあって、それで、単純労務の提供ではないか、職安法違反ではないかというおことばも出てくるのであろうと存じますので、私は、どういうやり方をしておるのかを、あらためて慎重に調べてみたいと思います。きょう質問が起こりますまでは、こういう財団法人がこういう目的で一昨年設立されたということ以上は知らないのでございます。知らないで答弁することも申しわけないので、おことばをよく胸に置きまして、ひとつ検討をしてみます。何か違法な点があるのじゃないか、法務省が職安法違反をやっておるのじゃないかなどということを言われるようなやり方をしておることはよくありません。これはひとつ検討してみます。
  236. 横路孝弘

    横路委員 職安の規定を逃げるために大体みんな請負契約にするんですよ。ところが、仕事はともかくコピーをとることですから、結局、人手が足りないからこういうものをつくったのでしょう。
  237. 川島一郎

    ○川島政府委員 人手が足りないということは事実でございます。現在、登記所は非常に事務量に追われておりまして、正規の定員でまかなうことがなかなか困難であるというような状況も、もちろん背景としてはあるわけでございます。
  238. 横路孝弘

    横路委員 大臣、これは罰則規定だってあるのですよ。「前項の各号のすべてに該当する場合であっても、それが法第四十四条の規定に違反することを免かれるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が労働力の供給にあるときは、法第五条第六項の規定による労働者供給の事業を行う者であることを免かれることができない。」そしていわゆるピンはねの規定も一方ではあるわけですけれども、ピンはねということは別にして、皆さん方のほうではともかく請負契約という形にはしています。これは契約書をつくるときに、皆さん方は法律の専門家でございますから、たぶんだいぶ苦労されたと思うのですね。皆さん方だって、これをするときに、職安法にひっかかるのではないかということは十分検討されておったのでしょう。だから、この規定もなかなか苦心惨たんしているところがあちこちにうかがわれるのです。ところが、何だかんだといっても、ともかく中身は何かといったら、コピーをする人が足りない。だけれども、それをする人員というものも、大蔵や行管がいろいろあって定員がふえないから、登記協会をつくって、ここから職員を派遣して確保しようということが設立の目的なんです。だから、さっき事業目的のところで聞いたように、いまのコピーをする仕事、これもちょこっと入っていますけれども、ほかの肝心の業務は全然やらない。登記協会でかかえている職員は何をやるかというと、各地の法務局へ派遣されて、コピーの仕事に従事しているのが仕事のほとんどすべてなんですね。  ちょっとお尋ねしますが、この契約は全部、登記簿の謄本一枚について手数料九円二十銭ということになっていますね。これはすぐ御答弁が無理だったらあとで資料として出してもらいたいのですが、職員に支払われた給与、つまり法務局に行ってコピーの仕事をしている職員に払われた給与と皆さんのほうで支払った金額、これがどうなっているかということを、ぜひ各地域ごとに出して明らかにしていただきたい。
  239. 川島一郎

    ○川島政府委員 後刻調査の上提出いたします。
  240. 横路孝弘

    横路委員 これも会計検査院でも問題になって、前から議論されておるわけですけれども、この謄本業務というのは、仕事そのものは一貫した作業なわけです。一貫した作業の中でコピーをする部分だけを登記協会の職員がやる。たとえば登記簿を納めてある倉庫に入らなければならぬわけですけれども、皆さんのほうで内規できめておって、この倉庫にだってだれでも入れるわけじゃないのでしょう。公務員以外はだめなんでしょう。ところが実際にはそういうところに出入りしなければならない。つまり公務員がやるべき仕事を公務員以外の者にやらせるというところに問題があるのです。業務がどんどんふえていって、その中で人手不足を補うために官庁がどういうことをやっておるか。この前議論したのですけれども、経済企画庁のように、国の基本的な経済計画策定作業の中に、いろいろな民間の大企業から正規の職員とほぼ同数の職員を集めてやらせている。そうやらなければ経済計画策定の作業もできない。つまり人が少ないから、そんなことをやって苦心されておる。そんなことを思いついてやっておる官庁もあれば、いまのように民間下請ということで労働者を提供させる。あるいは運輸省の陸運事務所のように、請負契約そのものじゃないけれども、軽自動車協会とかそのほかの協会などの外郭団体から人を出してもらって、陸運事務所で仕事をさせている。官庁が人が足りないから、あれこれ苦労をされておるのもわかるのですけれども、とりわけ法務省が職安法違反で人集めをやっちゃいけないと思うのです。  ともかく、この登記協会のいろいろな事業計画そのほかを見ても、一般に登記について国民に対して知らしめるいろいろな刊行物の刊行とかいろいろな仕事をしているわけですよ。しかし、この業務だけは——きょう突然のことだったので、ほんとうは行管を呼んでやろうと思ったのですが、火曜日にでも時間をいただいて、ちょっと行管を呼んで再度議論してみますけれども、ともかくこんな契約書をつくって人集めをするのは、職安法を免れるための脱法行為ですよ。先ほど大臣のお話で、法務省として検討されるとおっしゃったけれども、これはまさか、さっきの答弁じゃないけれども、結論を出しておいて検討されるのじゃないでしょうね。ちゃんと職安法に基づく検討を十分していただきたい。  これは、さっきの職安法の施行規則の四条二号と四号に明確に違反をしている。これは一号から四号までの要件を全部そろえておっても、なおかつ二項において、免れるための場合はだめだという規定まであって、これは罰則規定まであるわけですから、もし職安法違反だということになれば、だれが責任をとらざるを得ないことになるのかわかりませんけれども、そこまで私は追及しようとは思わぬけれども、しかし、その辺のところを皆さん方として明確にされて、その管理というものをだれが一体やっておるのか。現場において法務省の職員がやっておる一貫の流れ作業の中で、コピーの機械から用紙から全部法務省で提供して、そしてコピーだけやるわけです。ほかのところでいろいろこういう形態がありますけれども、大体は少しくらいは道具を持っていくとか材料を提供するということがあるのですけれども、この場合は、ともかくコピーの用紙から溶液から何から全部法務省備えつけのもの、ただやるのは一枚さっとやるだけの仕事です。これであなた、単純労務作業でなくて一体何というのか。熟練を要するなんておっしゃるけれども、まさに肉体的な労務以外の何ものでもないと思うのです。したがって、その辺のところをこれは前から何回か指摘をされておる点でありますから、ぜひひとつ十分検討していただいて、違反している点があったら、やめるものはやめるという方向でお考えをいただきたいと思います。
  241. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 いろいろ御注意をいただきまして、私の詳しくは存じない点もたくさんございます。これはひとつ検討してみることにいたします。  ただ、言いわけをするわけではございませんが、財団法人をつくりましたときの事情は私も存じておりますので、つくりました以上の運用のやり方について、いろいろ御疑念が起こるようなことがあるのではなかろうかと思えるので、検討をするというのでありますが、単純なる労務と仰せになりますけれども、このコピーをとるやり方というものは、これは間違ってもらっては困る。それからやはりなかなかの技術を要することである。したがって、契約をいたしましても、その契約内容が完全に履行されないと、契約当事者としては困るわけでございますから、勢い注文がある、意見があるということがあろうと思う。必ずしも指揮命令をしておるということに当たらぬのではないかと思いますが、これはひとつ調査いたしました上で、適当な機会に御報告申し上げることにいたします。
  242. 横路孝弘

    横路委員 やはりそこは、大臣、若干詭弁なんです。専門的な技術もしくは専門的な経験を必要とすると言うが、コピーというのはこれはだれでもとれるわけであって、特にそのための技術修練というのが必要な仕事じゃないと思うのです。その辺のところは、もうここで議論したってしかたがありませんから、これは常識的に考えて、コピーをとる仕事は肉体的な労働力の提供、こういうのが普通じゃないでしょうか。それは皆さん方、法律家でございますから、いろいろなこじつけの解釈はすればできるわけでありますけれども、その辺のところは、法律なんというのは常識的に解釈しなければならないわけですから、大臣のお立場もあるでしょうから、ひとつ十分検討していただきたいと思うのです。  そこでともかく人員不足ですね。大体皆さん方毎年どのくらい予算で定員の増を要求しているのですか。
  243. 川島一郎

    ○川島政府委員 近くで昭和四十八年度の要求におきましては、千七百名の要求を当初いたしたわけでございます。その前の年も大体同じくらいの数字を要求しているというふうに記憶しております。
  244. 横路孝弘

    横路委員 それで実際についたのは何人ですか。
  245. 川島一郎

    ○川島政府委員 四十八年度予算におきましては増員二百九十一名でございます。ただし削減もございますので、それを差し引きますと、純増が百三十三名で、登記従事職員はそのうち百二十四名でございます。
  246. 横路孝弘

    横路委員 この委員会は、実はその関係が専門の委員会なものですから、われわれ各省のいろいろな関係を議論していますけれども、千七百名要求をして実増員百三十三名なんという官庁はちょっとないですね。つまり、要求と実際についているのが十分の一以下というようなところはちょっとないんで、皆さん方の力が足りないのか、説得力がないのか、これは問題は行管と大蔵の関係だろうと思うのですが、ほんとうにまじめになって皆さん方のほうでやっているのかどうかだって実は疑わしいわけですよ。大臣、千七百人要求して実員わずか百三十三名、これはちょっと情けない現状じゃありませんか。
  247. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 要求数字と、つきました数字二つだけを比較をなさると、先生の仰せのように、何をしておるのかという数字になるのですね。しかし、大蔵省相手の予算折衝の、各省やっております実情から申しますと、なかなかシビアなものがありまして、ハードきわまるところがありまして、大体各省ともこの程度のものではないでしょうか。しかしながら、ただ私のほうが非常に不足に思っております点は、登記の事務というものが激増をしておるのに、登記に従事をいたします職員の数がわずか一割程度しか増になっていない。日を追うて登記事務を遂行していくことがむずかしくなっておるのでございます。  そういう事情から申しまして、今後も最善を尽くしまして、この増員の方向に向かって努力をしてみたい。私たちの力の足らぬということも確かにございますので、これには大いに力を入れて努力をしてみたい。御声援をお願い申し上げたいと思います。
  248. 横路孝弘

    横路委員 法務局のこういう登記所の仕事だって、本来余裕があれば、供託とか、人権擁護だとか、戸籍事務とか、いろいろやらなければならぬものがまだあるわけでしょう。ともかくいまのところ現実はこれだけで手一ぱいですね。  ですから、ちょっと私、調べていただいた職権更正登記、つまり間違ってしまう件数が最近ものすごく多いのですよ。これは全国でどのくらいになりますか、四十七年度の職権更正登記の件数というのは。
  249. 川島一郎

    ○川島政府委員 調査したものがございませんので、わかりません。
  250. 横路孝弘

    横路委員 私のほうで浦和と千葉と札幌についていただいていますが、これはここだけの調査で、あとはやっていないわけですか。
  251. 川島一郎

    ○川島政府委員 御要求がありましたので、その点を原局に照会いたしまして得た数字でございます。
  252. 横路孝弘

    横路委員 だってあなた方、定員の要求はするのでしょう。要求するとさの基礎資料として、たとえばこんな職権更正登記、つまり登記官が登記を間違えてしまったという件数は、定員要求のときには重要な資料でしょう。  ちょっとだけお話しすると、浦和で、昭和四十三年が年間四百二十二件、それが昭和四十七年には七百九十五件になっているのです。それから千葉の場合は、昭和四十三年が四百八十件が四十七年では八百五十七件。札幌の場合は、四十三年三百八十件が四十七年で四百三十三件。だからこれは全国合わせると、もう膨大な職権による更正登記をやっているわけですよ。これは法務局長の決裁でしょう。だから、局長の仕事といったら何かといえば、この職権更正登記の判をつく仕事に追われているんじゃないですか。しかも、これをやるにはかなりの日数を要するわけですよ。最低十日ぐらいかかるんじゃないでしょうか。私も最近の事情よくわかりませんが、三、四年前弁護士をやっていたころは、大体そのくらいな日にちがかかったわけです。これは非常に迷惑するわけですね、国民の側からいえば。この間違ったというのは、じゃその人間の責任かというと、不注意でやるわけなんでしょうけれども、しかしともかく業務に追われているから、こういう数字が出てくるわけですよ。  大臣、これも、全国的に職権更正登記の件数というのはどのくらいあるのか、調べてください。これはもう一目瞭然ですね。その多いところというのは、いま仕事が集中しているところがきっと圧倒的に多くなっている。特に田中さんが列島改造なんというよけいなことを言いだすものだから、もう登記所のほうも忙しくて、皆さん方その被害者でしよう。
  253. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 調査をいたします。
  254. 横路孝弘

    横路委員 だから、登記官の過誤による国家賠償請求事件なんというのはこれまたけっこうあって、お調べいただいた十年間で十八件あるわけですが、これはもう氷山の一角で、表に出ている数字だけで十八件あるわけですね。過誤によってやられてしまった。この前もどこかで何か判決が一つ出ましたね。そういうケースがやはりどんどん出てきているわけでありますから、皆さん方、その定員要求をする場合、われわれのほうも応援はいたしますけれども、ひとつこういう資料を十分集められて、実情をもべちょっと行管なり大蔵のほうに説明されてやらぬと、ほんとうにまじめに皆さんのほうで定員の要求をしているかどうか、私はどうも話を聞いてみると疑わしいのですね。これは。
  255. 川島一郎

    ○川島政府委員 仰せのよべに、職権更正登記が非常に多い、また登記官の過誤による国家賠償の訴訟が多いということは事実でございまして、これは登記官の事務処理に問題があったわけではありますけれども、その背景として、事件の著しい増加、職員の負担量の過大ということがいえると思います。  仰せのように、登記所の職員の増員という点につきましては、われわれ努力いたしておりますが、まだその努力が十分でない点は仰せのとおりでございますので、今後とも十分に努力してみたいというふうに考えております。
  256. 横路孝弘

    横路委員 一方、そこに働いている職員の問題があるわけです。非常に労働強化をされている。皆さん方のほうでは統廃合をかなり速いピッチで行なおうとしているわけでありますけれども、この統廃合の歴史を見てみると、一度統廃合についての廃止の通達みたいなものを出していることがありますね。高橋法務大臣でしたか。あれはどういうことでストップになったわけですか。
  257. 川島一郎

    ○川島政府委員 登記所の統廃合ということは現在大きな課題となっております。しかし、これは現在に始まった問題ではなくして、昭和三十年代から問題になっておったわけでございまして、登記所の数が非常に多数散在しておる、これをまとめて、そして登記所を近代化したものとして立て直していく、そのためにぜひ必要であるというように考えておるわけでございますが、昭和三十年代にかなりの数の整理をいたしました。その結果、昭和四十年であったと思いますが、統廃合については地元の反対陳情というような問題もいろいろございましたし、明確な基準というものを定めてやるならばともかく、ただ漫然とやったのでは、いろいろ社会的にも問題を起こす可能性があるというようなことであったと思いますが、一時中止するということになったわけでございます。その後また再開いたしまして、現在、登記所の整理統合を推進しておりますことは御承知のとおりでございます。
  258. 横路孝弘

    横路委員 行政の基本は、住民に対するサービスという側面が一つ基本としてあるわけですね。そこで、登記所の適正配置に関する民事行政審議会の答申というのが四十七年に出て、それに基づいて登記所の適正配置全体計画及び実施年次計画策定要領というのがございますね。これに基づく作業というのは、いまどの辺のところまで来ているのですか。
  259. 川島一郎

    ○川島政府委員 登記所の適正配置というのは、先ほど申し上げましたように、前からの懸案だったわけでございますが、昭和四十五年の閣議でもって、登記所に限らず地方支分部局並びに出張所というようなものをもっと整理したいという方針がきまりまして、登記所につきましては、昭和四十六年度から五年間の計画で極力出張所の整理統合を行なうということになったわけでございます。そこで、四十六年から四十七年にかけまして、いまお尋ねのありました民事行政審議会で審議していただきまして、その基準をきめたわけであります。  その基準ができましたので、これに基づいて、全国的に一応基準に当てはめた場合に、どの程度の登記所の整理が可能となるであろうかということをとりあえず照会いたしたわけであります。しかしながら、その数字は一応出たのでありますが、地域、地域の事情によりまして、基準に当てはめた場合、該当するかどうかというのが判定の非常に困難な問題がございます。そういうことで全体計画というものは非常に立てにくい。大体の見当はついたわけでありますけれども、現在のどころ、個々的に妥当であるかということを判断しながら、現地と交渉しながら計画を進めていく、こういうやり方をとっておるわけでございます。
  260. 横路孝弘

    横路委員 機械的に当てはめてやるのではなくて、住民の、つまり地方公共団体のほう、とりわけ中心は町村、ここと十分相談をしながらやるというお話ですね。この資料も、実は午後からあれだということで、前から要求してあったのですが、先ほどいただきまして、十分に検討はしていないのですが、廃止町名という欄が、この登記所適正配置実態調査表、Cの記入要領というところにありますね。というと、皆さん方のほうでは、下のほうの各局のほうからは、廃止町名というのは大体どのくらいでどうなんだということは、それは機械的な当てはめなんでしょうけれども、機械的な当てはめとしてはもう上がってきているわけですね。
  261. 川島一郎

    ○川島政府委員 そのとおりでございます。現地判断による機械的な当てはめというものは、一応資料としてとったわけでございます。
  262. 横路孝弘

    横路委員 その機械的な廃止をするのはどこなのかということは、これは全国的に、どうも皆さんのほう見ていると、明らかにされないで、それぞれ皆さんのほうでは計画をお持ちになりながら、各町村のほうにいきなりぽっと来られて各町村みんな困っているわけですよ。だから、明らかにされたらどうですか、皆さんのほうはどういう全国の計画をお持ちなのか。その機械的なものでけっこうです。機械的なと断わって明らかにされたらどうですか。
  263. 川島一郎

    ○川島政府委員 私どもがとりました報告というのは、早々の間にとったわけでございます。したがって、たとえば二つ登記所が並んであります場合、これを甲を乙に統合するのか、乙を甲に統合するのかといったような問題が起きます。この場合にどちらが適当かということは、非常に問題になる場合が多いわけでございますが、早々の間にとにかく資料をということで集めましたので、現地としてはかなりの研究はしておると思いますけれども、一応期限があるのだということで私のほうへ資料を出してきたわけで、私のほうといたしましては、そういった資料は全部つかんでおりますけれども、これをそのまま発表するということにいたしますと、またそれは問題が出てくる可能性がございます。  そういう意味で、さらに私のほうでも検討するし、またその検討の結果を現地と話し合うということで何度か練り直しまして、その上で地元との交渉に入るというふうにいたしておりますので、いま、最初に集めた結果を直ちに発表したらどうかとおっしゃいますけれども、それはかえって混乱を招くというような理由で発表はいたしておりませんし、今後もいたしません。
  264. 横路孝弘

    横路委員 そこを抜き打ち的にやるわけでしょう。だから各町村みんなびっくりしちゃっているわけですよ。  皆さんのほうで基本は、さっきお話をしたように、最初は機械的に上げてきたものですね、方針に基づいて。これもわけのわからぬあれですが、ともかく適正な基準というやつに基づいて上げてきたわけでしょう。だから各どうするかというのはあるわけですね。北海道なら北海道についてどうするこうするというのは、皆さん方お持ちになっているわけでしょう。ほんとうはそれを地方公共団体に十分に理解してもらわなければだめだ。だから、いまあなた、機械的だということばを使っておられるんでしょう。機械的に上がってきたあとは地方団体との話し合いになると思いますけれども、この辺が対象なんですよということくらい、事前に地方団体、市町村に教えてやるのが行政としては丁寧なやり方じゃないんですか。ぽっとことしはどこどこだと来るから、これは北海道でも——私、実はこの登記所の問題を質問する気になったのは、北海道のほうで登記所統廃合対策協議会というのを、北海道全体の対象になっているような町村が中心になつてつくって、そこから、これどういうことなんでしょうかということで来たから、登記所の問題をいろいろ調べてみたら、根本は、さっき言ったように、人手不足が第一点なんですね。もう一つは住民サービスという点で問題がある。一人庁だってそれ自体一つの問題があると思います。つまりそこで働いている人の問題を考えると、休みだって十分とれない、休んでしまえば住民のほうで困る。だからまず定員をふやすことが基本だと思うのです。その上で統廃合については、なんといっても住民の基本的な理解を得てからやる。そのためには、いきなりこうですよというのじゃなくて、やはりその辺のところは明確にしておかれて、皆さん方定員を要求する場合だって、それがもとになるわけでしょう。われわれも定員の問題については応援するから、皆さん方はどういうお考えなのかということ、全国的にもどういうことになっているかということを明らかにして、われわれにもそういう面での議論の機会というものを与えてもらいたいと思うのですよ。これは何も私だけじゃなくて、だれでも全部、非常に関連のある問題です。  そこらについて、大臣どうですか。皆さん方いつも抜き打ちにやられるから、市町村で困っちゃうんですよ。そうじゃなくて、明確にこうするというふうに、法務省のほうで積極的に説得するつもりなら、やはりそれをちゃんと明確に明示して、そして話し合いをしなければだめでしょう。町村にはいろいろな経過があるのです、あとでちょっとお話ししますけれども。それはいかがですか、大臣
  265. 川島一郎

    ○川島政府委員 本年度はどこというふうにきめて、そして抜き打ち的にやるというお話でございますが、私どもとしては、地元とは十分お話しするという態度でおりまして、本年度地元にお話をしてみるのはこれこれということはきめますけれども、しかし、そのきめたところは、何が何でもその年度内にやってしまうというようなやり方はしておりません。現に四十六年度に折衝したところがまだ残っておるところもございます。四十七年度において地元と交渉したところもまだ多数残っております。これらの地方につきましては、地元の御意見も尊重するし、またこちらの立場も理解していただければ、今年度にあるいは明年度にということで実施していくという考えでございますので、決して無理に、弾圧的に、強行的にやるというような態度でないということをお含みいただきたいと思います。  それから、人員との関係でございますが、よく登記所の整理統合が人員節減のためであろうというふうにおっしゃられるのでありますが、若干の人員を浮かせるために効果があるということは否定できないと思います。しかしながら、現在非常に不足している人員の中で、登記所の整理統合を行なったから、それによって現在の人員の不足が緩和されるというような状態ではないわけです。私どもがねらっておりますのは、むしろ、明治時代に配置されました登記所の状況というものが、その後の交通事情の変化、社会事情の変化によりましてかなり変わってきておる。三十分以内で隣の登記所まで行けるという登記所も相当多数あるわけでございます。そういった登記所をなるべくまとめたい。と申しますのは、出張所で職員が一人しかいないというところが、昭和四十七年の一月現在あたりで五百庁ございました。三人以下の職員がつとめているという登記所が千二百庁あったわけでございます。こういった小規模の登記所におきましては、登記所の近代化と申しますか、そういうことがはかれないわけです。庁舎も悪い、それから設備も、いろいろな機械機能を導入いたすにいたしましても、高性能のものを据えつけるということにはいかない。いろいろ不便な点がございます。それから、登記事務の処理の適正をはかるという面から申しましても、一人、二人のところでは間違いがどうしても多くなる。分業が必要であるし、また牽制する役目を持つ職員がいなければならないといったふうな点もございます。それから、さっきおっしゃいました職員の待遇の問題。倉庫番をしていなければならない、そのために一人の職員が、仕事もやる、土曜、日曜には登記所の倉庫の番もしていなければならぬ、こういった事情もございます。  いろいろな面から考えまして、近代的な登記所というものをつくっていくためにはどうしてもその整理統合が必要である、こういうことでやっているわけでございまして、それを進めるにつきましても、最初に申し上げましたように、地元の御理解を得ながら無理のないような形で進めているということをひとつ御理解いただきたいというふうに思うわけであります。
  266. 横路孝弘

    横路委員 機械的におやりにならないというのは、姿勢としては非常にいいんですよ。そういう方向でやっていただきたいと思うのです。ただ、いつ、どういうぐあいに来るかわからないわけでしょう、市町村のほうでは。私たち話をするとそうなんです。来年は私のところらしい、ことしはこういう話が私のところに来ている、こりいうことなんですね。皆さん方、実態調査をおやりになった。私のほうでは北海道の後志支庁管内の皆さん方にいろいろ資料の提出をお願いした。出てきますね、件数が幾らとかなんとか。この辺のところだって、実は町村のほうに皆さんのほうで十分説明していないわけですよ。そんな数字は地元のほうでは全然わからぬわけです。これは、北海道全町村、全地域にわたってこの統廃合の対策協議会というのができて、そしてわれわれのところに話に来られる。聞くと、みんな町村でそういう不安を持っているのです。それはなぜかというと、大臣、こういうことを皆さんのほうでおやりになっているわけです。  たとえば、一つの例だけお話ししますけれども、後志支庁管内に蘭越という町があって、これは対象になっているようなんです、四十八年度で。ここは、たとえば四十四年の場合、札幌法務局長のほうから、ここは職員住宅や何かがだいぶ古くなってきたのですが、そこで職員住宅と書類を入れておく耐火書庫、これをおまえら建てろ、町村の負担で建てなければこれは廃止してしまうぞ、こう四十四年に札幌法務局長に言われて、貧しい財政の中から二百万円以上の予算を計上して、職員のために職員住宅と耐火書庫を建てて、そしてなおかつ冬になると、皆さんのほうから支給される石炭は少ないものだから、石炭まで与えてやって、そして何とかそこにいでもらおう、こういうところが北海道の中にたくさんあるのですよ、皆さんのほうから言われて。そういうことでおどかされれば、しかたがないから町村のほうで、じゃ職員のために住宅も建てましょう、耐火書庫もつくりましょう、冬なら石炭も渡しましょう、こう言って、町村のほうはともかくいてもらいたいものだから、一生懸命皆さん方の言うことをやってきたわけです。そして今度はこの答申に基づいていきなりでしょう。これでは町村は納得するはずないですよ。そういう経過があるのです。全体の中で、だから、ここはこうです、ここはこうですというぐあいに皆さん方説得されるのなら、そういうものをみんなきちんとやらないと、町村はなかなか理解できないですよ。この間ですけれども、つい四、五年前まで、そうやってわざわざ町議会では予算を計上して住宅までつくって、今度は廃止だ、こういうのですから、みんなおこりだすわけですね。それだけの十分な説得というのはやっていないし、資料、材料の提供を皆さんのほうでやっていない。だから、機械的に上がってきたやつなら上がってきたやつでいいけれども、それを明らかにして、そしてこういう理由なんですよ、この基準にはこういうぐあいに合致しているんですよというやつを、われわれにもわかるように明らかにしてくださいよ。
  267. 川島一郎

    ○川島政府委員 おっしゃったような点は、交渉にあたりましては常に明らかにしておりますし、また民事行政審議会の答申というものは、これは非常に広く関係者の方々にもごらんに入れておるわけでございまして、そういう事情というのはある程度周知徹底されておると思いますけれども、さらに一そう関係者の方に徹底をはかるようにいたしたいと思います。  それから、さっきおっしゃったような、増築とか改築、あるいは新築の関係がございます。これはまあ確かにおっしゃるような面もあるわけでございます。最近、ことに四十年度以降におきましては、登記所の整理統合という問題がかなり間近なものとしてわれわれ考えておりましたので、そういう場合には、市町村のほうに強要するというようなことはもってのほかである、絶対にさせないという方針で臨んできたはずでございます。蘭越の場合がどうなっておるかということは、私、承知いたしませんけれども、したがいまして、地元のほうで、これはぜひ新築を認めてほしい、そのかわり将来統廃合される場合には、この新築したということを理由にして反対しないという一札まで出しておられるところも相当数あるわけでございます。具体的な問題につきましては、わかりませんので調査いたしますけれども、そういう事情にあることも一応御了解いただきたいというふうに考えます。
  268. 横路孝弘

    横路委員 いまの一札の件は初めて聞きましたけれども、わざわざ町村のほうから新築させてくれと願い出て、あなた方のほうでは、新築を理由に統廃合には反対しないという一札をとるあたりが、大体、いわば先行自白でありまして、すべてを明らかにしていると私は思うのですよ。町村の貧しい財政の中から進んで、本来国がやるべきことを新築させてくれ、そのかわりに統廃合には反対しませんと、わざわざ統廃合には反対しませんという一札を入れるあたりが、皆さん方のほうで何か強要してはならないという指示をしたというお話もありましたが、結局は、皆さん方のほうで指示をしなければならぬような状況だったわけですよ。ですから、そういうようないろいろな経過もあるわけです。  しかも、その基準というものは明確だとおっしゃるけれども、たとえば、「その登記所の管轄区域内の各市町村の中心的地区から受入庁までの一般の交通機関による通常の片道所要時間が、おおむね六十分程度の範囲内」ということですが、この後志の話を聞いてみたら、特にこれはこの辺の過密都市は別ですけれども、北海道の場合ですと範囲が広いですから、町の中心に出るまでが実はかなり時間がかかるわけですよ。そこからの所要時間の見当も、話を聞いてみたら、ともかく都合のいいようにバスがさっと来てぱっと行ったら、そこから先バスで行っちゃうことにすると、時間が六十分を超過してしまうものだから、あるところから汽車が通っていると、そこへぱっと都合よく汽車が来て、それでさっと行ってしまう、そういうつじつまを合わせたところの計算をなさって都合よく六十分。聞いてみたらこういう計算なんです。ところが、そういうところはバスが一日に何本通っているかということになりますと、回数は少ないし、まして汽車が何本通っているかというその接続なんか、そんなうまいぐあいにさっといくわけではないので、全く一日仕事になってしまうところがたくさん出てくるわけです。だから、先ほど局長もおっしゃいましたけれども、私のほうは機械的にはやらないということでございますが、ともかくそういう計算をして上げてきているわけですよ、都合のいいところだけぱっととって。  これは、住民のサービスという面と、それだけでなくて職員の待遇という面と、二つの側面を持っているわけです。とりわけ最近、特にここ一、二年、ともかくもう見る間にどんどん業務量がふえていっているというのが実情でありますから、この定員のほうの問題は、われわれもひとつ行管を呼んで議論をしたいと思いますけれども、住民サービスのほうは、ひとつ皆さん方のほうで十分御検討いただいて、大臣のほうからもひとつ御確認いただきたいのですが、機械的に適用してやらぬで、いろいろないきさつその他各町村にあるわけなんで、その辺も検討されてやるということをひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  269. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先生おことばのように、本来この登記所は、地域住民の利便のために、一人庁にしても二人庁にしても、こまかく配置をして設けたのが本来のたてまえでございます。それを国の都合によって——国の都合を言わないのならば、廃止をするかわりに一人庁、二人庁、三人庁にしたらいいじゃないか、これが理屈でございます。私もそう思っておる。それがなかなかできない、人員整理の現状から申しますと。何といっても、この統廃合をいたしますためには、地域の皆さんの入念な御同意、御支持がなければいけない。その御協力のない、承諾のない地域について無理に統廃合を行なうような乱暴なやり方はやってはいけないという指導をいたしておりますのが現状でございますので、おことばのとおり一切無理はしない。  ただいま承ってみると、一時間以内とか二時間以内とかいうようなときに、バスは何回通るか、汽車は一体何回そこを通過しておるのかといったような事柄は念頭に置かずに、機械的な計算をして一時間、二時間と言うておる傾向は、手にとるようにいまのお話でわかったわけでございます。そういう点は十分に勘案をいたしまして、無理のないように、無理押しはやらせないとかたくお誓いを申し上げます。
  270. 横路孝弘

    横路委員 ただ、一人庁は一人庁としての問題がこれはあるわけです。だからその辺のところも、ぜひあわせて検討を続けていただきたいというように思っております。  きょうは突然のことだったものですから、ほんとうは刑務所のことをお尋ねをしたいと思ったのですが、詳しくは火曜日の日にお尋ねしますけれども、大臣、国会で答弁をしたことは、いいかげんなことを言えぬから断固としてやるのだというおことばだったのですが、四十二年に、田中さん法務大臣のときに監獄法の改正ということを提起をされて、私も国会で、この委員会に法務省の設置法が出るたびに、この問題を議論をしてきたのです。実は小林法務大臣のときも、これは断固やるということで、そのあと法務大臣のときも同じような御答弁をいただいている。実はこれは刑法の改正に合わせるというようなことがあるのでしょう。作業がずっと延びてしまってきて、私たちのほうからも、具体的にこの監獄法の改正については内容にわたって提起を、最初に議論したのが昭和四十五年だと思いますけれども、四十五年に行なっているわけなんですが、作業としては、何か矯正局のほうの案を下におろして、これを上げた段階でしょうか。ただ、内容についてもわれわれには実は明確にされないままに、おたくのほうの中だけで、これは刑事局と矯正局のほうとなかなか話がつかないで、何か案だけはときどき出るのだけれども、それがだめになる。国際会議があると、国際会議用に案なんかつくってみて出したりするわけですけれども、それがそのまままたどこかに消えてしまうということなんですね。  これについては、火曜日の日に続けて若干の時間、短い時間しかとれませんけれども、いただいて御質問することにしたいと思うのです。大臣になられて、たぶんあのときのものはどうなったかというのをいろいろ検討されたろうと思うのです。その中で、四十二年の田中法務大臣のこの発言がまだこれは履行されていないものがありますから、ひとつその辺、火曜日までに、どういういきさつになっておるのかよく調べておいていただきたいと思います。
  271. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、明二十九日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時七分散会