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1973-06-29 第71回国会 衆議院 社会労働委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十九日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長代理理事 橋本龍太郎君    理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹内 黎一君 理事 山下 徳夫君    理事 川俣健二郎君 理事 八木 一男君    理事 寺前  巖君       加藤 紘一君    瓦   力君       小林 正巳君    斉藤滋与史君       志賀  節君    住  栄作君       田中  覚君    高橋 千寿君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       中村 拓道君    増岡 博之君       粟山 ひで君    枝村 要作君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    多賀谷真稔君       村山 富市君    石母田 達君       田中美智子君    大橋 敏雄君       坂口  力君    小宮 武喜君       和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 加藤常太郎君  出席政府委員         労働大臣官房長 藤繩 正勝君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         労働省職業安定         局失業対策部長 桑原 敬一君         労働省職業訓練         局長      遠藤 政夫君  委員外出席者         農林省農林経済         局統計情報部経         済統計課長   遠藤  肇君         通商産業省企業         局工業配置課         長       志賀  学君         労働省職業安定         局失業保険課長 岩田 照良君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  雇用対策及び雇用促進事業団法の一部を改正す  る法律案内閣提出第八九号)      ————◇—————
  2. 橋本龍太郎

    橋本(龍)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、指定により私が委員長の職務を行ないます。  雇用対策法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 薬も量を間違えば、良薬になったりあるいは毒薬になるのです。政策も時期を失したりそのときを間違えると、いい政策が非常に悪い政策になっていく。この典型的なものが政府提出工場配置法であり、国土総合開発法であろうと思います。私どもも昭和三十年くらいから、いわば産業雇用適正配置という面からいろいろ政策を立案をいたしました。ことにビバリッジが、戦後の雇用問題は要するに一般的量雇用の問題ではなくて、欧州はほとんど完全雇用に近い状態になるだろう。しかし部分的に見ると、産業構造の変革によって非常に深刻な地域的失業が起こる。こういう面から一九四五年に工場配置法イギリスにおいて誕生した。もっともイギリスは、石炭とかあるいは鉄鋼のように単一産業で立っておる地域は、いわばその産業が壊滅することによって非常な失業者が出るというので、一九三四年に特定地域開発法案あるいは一九三六年に改良法案と出してきた。そして第二次世界大戦に入ったものですからその法律の効果は十分あらわれませんでしたけれども、そういうものの考え方、その萌芽が一九四五年の工場配置法になっておる。さらにそれは一九六〇年の地方雇用法と変えられたわけです。要するにその考え方は、失業者のおる地域に新しい産業をという考え方である。     〔橋本(龍)委員長代理退席竹内(黎)委員長     代理着席〕 そうしてまたフランスにおいても、御存じのように総合開発法ができて、失業者の多い地域産業をパリから離脱をさせるという法案が出され、計画が実施をされておる。アメリカのようなところでも、たとえば兵器の変更あるいはまた繊維産業の壊滅、まあ炭鉱の廃鉱という問題もありましたけれども、そういうところから慢性不況地域開発法案提出をされた。こういうとぎに日本においては、すでにそういう先進国経験をした幾多の問題を知っておったわけですから、当然産業雇用適正配置ということをうたうべきであった。ところが残念ながら、政府はそれを知っておって、いわば企業の自由ということで民族大移動を行なった。そしてわれわれの雇用のあるところに産業をという政策には見向きもしなかった、一顧だにしなかった。そして今日資本の要求によって過密になって、水も足らない、そうして労働力もなかなか集まらない、公害は出るというので分散体制を整えた。でありますから、率直にいいますと、今日みんな企業を悪だと思っているんですね。企業というのは悪だ。どんないなかでも、企業が来ることを好まなくなってきた。これは率直にいいますと、田中内閣の大失政であると私は思う。少なくともあなた方は資本主義を標榜しておられる。その資本主義の中で企業は悪だという印象を与えたことは、これはあなた方の立場に立ってみると、私は政治にたいへん大きな禍根を残したと思うのですよ。これについて一体労働大臣は、閣僚の一人としてどういうようにお考えになっておるか、これをお聞かせ願いたい。
  4. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 日本全体の産業あり方雇用関係の情勢、なかなか高邁な御意見で、われわれ、政府並びに労働省の行政を担当しておる私といたしましても、傾聴に値する貴重な議論であります。日本が戦後敗戦国家として、原料はない、資材はない、荒廃化した産業を早く振興しなければならぬという見地から、いまの工業的な立地条件工業の設置の状態雇用関係、これに矛盾を来たしておるという御指摘の点は、否定することのできない点も大いにあると思います。それがゆえに、おそきに失した感はありますけれども、雇用関係産業の、工場あり方、また公害問題その他に対しまして、雇用対策基本法その他いろいろな問題でこれがひずみを是正し、また国民立場から見ると所得の格差の問題、いろいろな関係につきまして、最近においては御指摘のような問題を抜本的に解決すべく、政府といたしましても勇断をもって対処いたしておる現状であります。しかし、工場の再配置問題がどうだこうだという問題もありましょうけれども、労働省としては工場雇用関係並びに現在の日本現状から見まして、若年者求人難老齢者就職難、こういうような関係でありますので、今回の法案提出もその点を何とか改善したい、こういうような方向で対処いたしております。御意見をよく尊重いたしまして産業の問題、雇用関係を今後改善するように努力いたす政府の所存であります。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は年齢のところまでいっていないのです。地域の話をしておるのです。ですから地域の話でお答えを願いたいと思います。  産業政策をする際にも、よその国は雇用関係中心として重点政策を行なうんですよ。要するに、失業率の高いところに投資を行なおうという姿勢なんですよ。やはり人間中心として考えているのです。ですからたとえばアメリカのような資本主義自由主義の国でも、慢性不況地域の再開発法案を見ると、失業率がどのくらいであるかということを中心投資が行なわれておる。イギリスだってそうでしょう。日本は一体そういうものがありますか。失業率がどれくらいであるから産業を誘致するのだとか、投資を多くするのだというものがあったら、ひとつお聞かせ願いたい。
  6. 道正邦彦

    道正政府委員 先生御承知のとおり、たとえば産炭地振興計画でございますとか、あるいは農村工業の導入でございますとか、あるいは工場配置、これは御指摘のようにおそきに失したきらいがあるかも存じませんけれども、雇用のあるところに事業場配置しようという一つ政策のあらわれだというふうに了解して間違いはないのではないかと思います。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これだけ広範になってくると、一産業の問題でなくて、たとえば繊維工場だとか、繊維工場地帯だとか、普遍的になってくると普遍的な政策が必要なんですよ。ですからそれは産業別にものを考えているでしょう。ですからそれは、結論においてはそう違わないかもしれないというけれども、ものの考え方が違う。大体それも労働省でつくったんじゃないでしょう。それも石炭会計でやっているのですよ。石炭をつぶすからそのかわり若干でも雇用のふえる企業をやろう。ものの考え方が全然違うのですよ。産業中心で動いておるわけですよ。ですから雇用中心人間中心政治が行なわれていないのです、日本政治というのは全部。それが私は根本問題だと思うのですよね。どこだってみんな失業率中心ですよ、その地域における投資重点政策は。日本のはそんなことはないのです。みんな産業中心にして、その地域、こういうものの考え方がある。これは大臣、どうですかね。私は、国務大臣としてひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  8. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 数年前は大体御指摘のような方向が強かったと思いますが、最近において、おそきに失する感がありますが、雇用関係労働力人間の問題を中心にして、いまは業界、事業界経済界政府もその方向転換いたしております。これが工場のいろいろな配置転換の問題を閣議でも大問題で取り上げておりますが、ただ、公害問題よりもやはり労働力の集まっておるところ、余っておるところとか、これを中心として今後考えなくてはならぬという方向で、政府の方針は最近は、おそきに失した感がありますが、そういうふうに転換する方策で対処しております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 急激にやったら、まただめなんですよ。田中さんのはまた急激でしょう。瀬戸内海戦艦大和が急転回をするようなことをやっている。ですから漁村はみな大津波が起こって、みんな土地が上がるのですよ。そういうやり方がそもそも間違っているでしょう。ですから全部土地を上げたでしょう。そういうやり方がどうにもこうにもならなくなった。産業だって同じですよ。瀬戸内海経済イギリス経済と同じなんですよ。瀬戸内海沿岸経済イギリス経済と同じ重化学工業、そんなむちゃなことをするからです。ですから私は、今度の国土総合開発法だってそうですよ。大急転をするのです。いままでの歴史とか、いままでのいろいろな周辺の整備をしないで、一度にやろうとする。それがやはり逆の裏目に出ておるということを考えなければならぬでしょう。私はそう思います。ですから、現実にいまから労働力がふえるのはいなかと思いますが、都市と思いますか、労働力の豊富な地域は。
  10. 道正邦彦

    道正政府委員 労働力流動化は非常に複雑な様相を示しているというふうに申していいと思います。いままでは何と申しましても地方から中央へという、いなかから工業地帯へという傾向が主体であったというふうに申して過言ではないと存じます。しかしながら最近におきましては、県外への流出率あるいは一たん県外に出た者のUターン現象、これもそう断定的に今後そういう傾向が強まっていくというふうに必ずしもいまの段階では申すことはできないと思いますけれども、いままでに比べますると、かなりいわゆるUターン現象あるいはJターン、途中まで戻るというような現象が出てきておると思います。それから労働者意識におきましても、いままでのように何でも東京へ出る、大阪へ出るという意識が少しずつ変わってきている。中には地方にとどまるというような意識の変化も出てきておるように私は思います。いずれにいたしましても、労働力流動化は非常にデリケートな段階にございます。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現時点では地域別求人倍率を見ましても、北海道が〇・九、東北が〇・五、関東一・七、中部二・〇、近畿一・六、中国一・四、四国〇・九、九州〇・六ですから、これは求人率を見ましても地域格差がある。しかし長期的に見ると、労働力都市なんです。都市労働力供給源に今後はなるのですね。というのは、若い者はみな都会に集まっておるのですから、子供を生むのはやはり都会です。そのことを考えると、異常の状態なんですよ、次の世代の労働力移動というのは。  それで、都会からいなかに行くことがいかにむずかしいか。いなかから都会に来ることは、困難はありますけれども、若い層はわりあいに来る。ところが都会からいなかにやろうとすると、これはたいへんです。ここに明電舎移転のアンケートをとったのがあります。これは明電舎大崎工場の例ですが、なかなか困難ですね。要するに、いなかに行くことに応じられるというのは現業で九・一%しかいない。非現業で一〇・五%、結局八七・四%の人は、東京からいなか工場移転をしても応じられない、こういっている。そして、どんなよい条件が出されても行けないというのが五七・六%いるわけです。いろいろな理由があるわけですけれども、どうして行けないのですか、こういう理由の中には、数量的に大きいものが、親、兄弟と同居してめんどうを見ている、だから家族が絶対反対だ。ですから、移転をすれば単身者赴任にならざるを得ないというのがある。それから子供教育が心配だというのが、これがまた非常に多い。それから若い層は夜学に行っておる。それから脱東京はいやだ。さらに大きいのは共働きですよ。要するに家内の就職場がない。ですから一応いなかから東京に集めたりあるいは大阪に集めた労働者を、今度は外に出そうとすると、ほとんどもう困難である。ことに中高年は家を持っておる、子供が学校に行っておる、あるいは子供が手がかからなくなったから、経費が要るから、妻がつとめておる、いなかは妻のつとめ場所がない、こういうことで、田中総理幾らラッパを吹いても、労働者はそう動くものではない。非常に大きな犠牲がそこにあるわけです。日本列島改造案ではそういう点に全然触れてない。要するに人間の問題に触れていないのですよ。ですから、口ではそういうように簡単に都会からいなか分散をするというけれども、労働者の問題は一体どうするのだ、どう考えておるのだ、今後の労働力配置について、どう考えているのだ、ひとつ労働省の見解を承りたい。
  12. 道正邦彦

    道正政府委員 昨年、工場配置法が国会で審議されました際に、その問題が非常に大きな問題として論議せられました。工場移転ということが先行して、労働者に対する配慮が足りないではないかというおしかりもございました。そういう経過を踏まえまして、私ども、工場配置に伴います従業員対策ということについて予算その他でできる限りの努力をしたつもりでございます。御指摘のように、いろいろの事情によりまして、工場地方移転いたしましても従業員はなかなか移転できないということはまぎれもない事実であろうと思います。先生はただいま、中高年のほうが移転がむずかしいというお話がございましたけれども、中高年終身雇用制がとられておりますので行く、逆に若い女子従業員なんかは絶対行かないというような例もあるようでございます。いずれにいたしましても、雇用機会中央幾らでもあるというふうに申していいわけでございますので、何を好きこのんでということになる。あるいは教育の問題も非常に大きな阻害要因のようでございます。  いずれにいたしましても、従業員の納得を得られるかどうかということが、現実の問題として工場地方分散ができるかどうかというきめ手になっているようでございます。その点につきましては、基本的には労使が話し合いを煮詰めておられるようでございまして、そういうことを基本にいたしまして、政府として側面からお手伝いすることはお手伝い申し上げるということで、従業員が納得して地方に行っていただければいいわけでありますけれども、どうしても行けないという方々については、再就職の問題が出るわけでございます。そういう点については、比較的都会地でございますので、就職機会地方に比べればあるわけでございますけれども、そういう点について重点的にあっせんをする、これはもちろんでございます。  また、移転をされる従業員につきましても、基本的には事業場で措置すべきことではございますけれども、必ずしも事業主努力だけでは十分でない面もございますので、たとえば住宅であるとか福祉施設等について、国としてすべき施策は講じていくべきでありますし、今後努力してまいりたい、こういうように考えております。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 人間、すなわち雇用の面から見ると、田中さんの日本列島改造案というのはくずれると思うのですよ、その面から。第一、あんな短期間に大移動できるわけがないですよ。いままでのように、いなかから都会に集めたようなスピードで都会の者をいなかに出すことはできないのですよ。そのものの発想が間違っている。大体、人間を知らないでやっていると私は言わざるを得ない。  そこで、この問題が一つと、もう一つ私はふしぎに思うのは、雇用対策基本計画というものを出している。これは、かつて池田内閣以来、産業の二重構造とかあるいは雇用の二重構造の解消という、あれだけうたったのに、この問題に触れていないというのは一体どういうわけですか。もう解消したと見ているのですか。この雇用対策基本計画に、その雇用構造の、日本のいびつな、世界に独得な二重構造が全然触れられていない。私は、これは一番大きな問題だと思うのですよ。それはもう忘れたわけですか。
  14. 道正邦彦

    道正政府委員 いろいろ御指摘がございましたので、必ずしも正確なお答えになるかどうかわかりませんが、先ほど来御指摘地域雇用対策でございますならば、新しい地域雇用対策推進ということでうたっております。またいろいろ特別に配慮を要する方々に対する対策でございますならば、特別に配慮をしようとする形での対策の充実と、それからまた中小企業対策についても触れておるわけでございます。その触れ方が十分であるかどうか、突っ込みが十分であるかどうか、これは御批判のあるところであろうかと思いますけれども、問題意識としては十分持っておるつもりであります。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その質の転換について全然意識がないでしょう。雇用の量じゃなくて質の転換について全然意識がないでしょう。
  16. 道正邦彦

    道正政府委員 その点につきましても、たとえば職業生活の各段階に対応した雇用対策推進ということで、特別のパラグラフを起こしてうたっております。要するにこれは生涯にわたって教育あるいは訓練等を受け、常にそれぞれの人生の段階に応じて豊かな職業生活を送っていただくための、生涯訓練体制の確立が必要であるという基本的な発想からそういうこともうたっておるわけでございます。     〔竹内(黎)委員長代理退席伊東委員長代理     着席〕 そういう意味の質の問題、いままでは御指摘のように、とにかくどこかで働けばいいという量の問題が重点であったと思いますけれども、今後は名実ともに豊かな勤労者生活でなければいかぬということで、質の面にむしろ基本を置いて全体を考えたというふうに申し上げていいと思います。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 わかりました。役所がそういう考え方だから……。OECDの対日労働報告書でも的確にそれに触れてない、若干遠慮しながら触れていますよ。大体大臣高度成長の秘密というのは何ですか、労働面から見て。なぜ日本競争力があるのですか。端的に言ってください。なぜこんなに安く品物ができるのですか。
  18. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この点は日本の優秀な国民、類のない諸条件がありますが、国民全体の英知、企業努力労働者の勤勉その他の諸条件で、日本がかように生産が向上し経済大国となったことは、これは労働者貢献もあり、またあわせて全体の高邁な技能、技術、精神、総合的な結果かように日本経済的に発展したこともいなめないわけで、いろいろの関係から見ると、これは低賃金であるとかそういうこともいいますけれども、賃金問題は相当改善改善を重ねまして、先進国の、アメリカに比べますとなかなか及びませんが、欧米諸国に比べまして、大体フランスを抜きつつあり、イギリスに迫っております。労働者貢献もありますけれども、やはり各方面の、国民全体の優秀な性格がここにあらわれたと考えておる次第であります。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 各国の調査団日本高度成長に脅威を抱いて調査に来て、よくわからなかったといっておるのが率直な報告ですね。イギリス鉄鋼界もそういって書いている。教えないからわからないのですよ。要するに日本のコストが安くなるのは、結局本工員よりも下請が多いということでしょう、社外工が。労働者災害の多いのにびっくりしたわけでしょう。ですからこの前労働安全法をつくったわけでしょう。災害でいうならば造船だってそうでしょう。本工員下請親会社下請災害度数率で見ると、実に二・三五倍ですし、下請が多いのです。強度率で見ると三・九三倍。化学で、度数率で二・五九倍、強度率で二・二倍。鉄鋼度数率で二・五倍、強度率で二・一倍。要するに賃金は六割なんですよ。災害は二倍半から三倍なんですよ。この労働者の数が、下請のほうが多いということなんですよ。ですから、日本労務費を見るとものすごく低いのですよ。というのは、本工員しか労務費は出てこないのです。下請労務費に出てこないのです、日本の原価計算見たら。そういう、実に日本はいびつな雇用構造の中に高度成長が行なわれたわけですよ。いかに日本経済経済力の発展のエネルギーがあるといっても、こんなに伸びるはずがないのです。結局造船だって鉄鋼だって本工員よりも非常に多い下請企業という、そういう形の上に成り立っておるわけです。しかも賃金は六割です。災害は三倍です。こんなばかげたことないのですよ。このいびつな雇用構造にこの労働基本計画は何ら触れていないという、これはあなた方は隠して通せるものなら通してごらんなさい。これはILOや何かで、OECDででももし問題にされたらたいへんですよ。日本政府は全く、どうにも答弁できませんよ。幸いにしてこの資料はみんなあまり持っていっていないわけです。会社もみんな隠しておるわけですよ。昔は造船だって、人数を示せといえば示しましたよ。いまごろはみんな各社は隠しておる。調査をするのも容易でない。そうしてひた隠しに隠しておるのですよ。それなのに、この雇用対策基本法の中に一言も触れていないという、これは労働省としては怠慢じゃないですか。
  20. 道正邦彦

    道正政府委員 この雇用対策基本計画雇用審議会の場で御審議をいただいたわけでございます。その際、今後の大きな問題として先生指摘のような問題点が残る。特に建設業がやはり下請二重構造の典型的な産業である。それで建設業について雇用審議会としてまず検討を始めていく。これは若干時間がかかると思いまするけれども、まず建設業から取り上げていこうということで、すでに作業を一年近く進めておられます。そういうところから日本のいわゆる二重構造の問題を解決していくべき時期に、私は率直にいって来ているというふうに存じます。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、きょうは厚生大臣が残念ながら来ておられぬから言いにくいんだけれども、彼が職安局長時代に今日の根源をつくったわけだ。要するに、職業安定法を改正しないで規則を改正して、戦後、中間搾取を排除する法律体系になっておったにもかかわらず、現実に骨抜きにした。そうしていままではそれは、たとえば資材は持たなければならぬ、ある程度の施設を持たなければならぬ、専門的な技術、こういうのがあったのを、いままでの経験だけで、資材親会社から借りる、そうして施設もそのまま使わしてもらう、ただ経験があればいいということでこの下請を認めたのです。そうして、造船鉄鋼がまずいち早くやった。炭鉱なんかはあれだけ組夫がおりましたけれども、戦後ずっとなかったわけですよ。きれいに掃除された。そうして不況になってから組夫というのが入ってきたわけです。しかし。造船鉄鋼はいち早くやったわけですね。今日鉄鋼あたりは、本工員というのは管理部門だけですよ。ほとんど下請が仕事をしているのですよ。ですから私は、こういう点を見のがして、あなた方が雇用政策幾らやろうといったって、基本的な問題が一番抜けておる、こう言わざるを得ないわけです。雇用審議会なんといっても、あなた方が起案するのでしょう。ぼくはよく知っておる。役所が起案して、たまたま集まった先生が、いいとか悪いとかその原案を見るわけですからね。ですから、原案にないことはあまりだれも気がつかぬのですよ。ですから、やはり私は労働省の姿勢だと思いますが、これ以上、関係大臣もみないませんからね、通産大臣もいないし経済企画庁長官もいませんから、問題点だけ提起しておきますけれども、大臣の所信を承りたい。
  22. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いま御指摘のような造船とか、また局長から話があったように建設の関係は、二重構造であることは間違いありませんが、生産のほうの全体から見ますと、必ずしも御指摘のとおりでありませんけれども……。(多賀谷委員「いや、全部そうです」と呼ぶ)全部でもありません。それはいろいろ……。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 第一、一番いかぬのは役所です。役所がそうだ。役所がそういういびつな雇用をいまどんどんつくっておる。役所自身が、地方公営企業だって、いままでは料金の徴収は職員がしておったでしょう。これはもう請負にせい、こう法律できめた。この前厚生大臣に対して質問しましたけれども、その請負というのは委託契約ですよ。その委託労働者事業主ですよ。毎日集金に歩く人が事業主。ですから、全部社会保険の外にある。今度労災法の改正がありますが、職務中に交通事故でけがして、死亡してごらんなさい。一銭だってもらえませんよ。それは第三者がぶつけたとかなんとかいう場合は別としてね。事業主ですから。今日は、通勤時でも一応業務上と同じような扱いをするという時期に来ておるのです。本人が職務中にやったのが、全然労災の恩恵を受けないという労働者が出てきておるのです。それは政府がやらしておるのです。最近の国鉄だってそうでしょう。全部下請です。そして今度は首を切った人に共済から金をやって、前の賃金の差額だけ払っておるのですよ。ですから国鉄の共済はパンクしそうなんです。そういうことをやっておるのでしょう。それから厚生省は福祉関係の職員をどんどんつくっている。ホームヘルパーもそうです。婦人相談員もそうです。みんなこれは常用でない方針です。通達が出ておる。要するに婦人相談員なんか毎日来なくてもいいというのです。そうすると、この婦人相談員は毎日来なくたっていいといったって生活ができないでしょう。こういういびつな雇用関係をつくりつつある。役所がやっておるのです。一体労働省は何しているんですか。
  24. 道正邦彦

    道正政府委員 いろいろ御質問がございましたが、たとえば相談員は私どもの行政にもございます。これはわれわれの考え方といたしましては、たとえば学校の先生で停年で退職をされた方とか、あるいは安定所の職員で要するに定年で退職されたような方が、いままでの経験を生かして、むしろ常勤では困る場合があるわけでございますから、そういう方を中心に委嘱をして、本来役所がやるようなことを相談員にお願いするということは、われわれの行政ではやっておらないつもりでございます。ただ先生指摘のように本来その企業労働者として雇うべきものをいろいろな事情から、めちゃくちゃに下請に出すということはこれは私は好ましくないことだと思います。要するに、下請へ出す場合に下請へ出す合理的な根拠があるのかないのかということで判断をすべきでございまするし、もしそういう判断から見て適当でないものがあれば、これは是正に努力するのが当然だろうと思います。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 厚生省がおらぬのに厚生省のお話をしてもなんですが、家庭児童相談室の運営に対する国庫補助についての通達とか、婦人相談員の通達とか、みんなこれは非常勤でいけと書いてあります。労働省は、ぼくは非常にうれしく思うのは、エレベーターにお年寄りとか障害者を使っておるのですね。あれは非常にいいと思うのですよ。しかし、全部がそうなってないのですよ。日本でいま非常勤なんといったら全く社会保険の外にあるのです。そうして、市役所あたりでやろうとしても、本庁のほうからそういう通達が出てきておるからできないという。これをあげますと枚挙にいとまがありませんけれども、そもそもこういうことに対する労働省の姿勢が問題なんですよ。これは一つ一番大きな点が抜けていることだけを指摘をして、また別の機会に質問をしたいと思います。問題点があまりにも多過ぎる。  そこで次に、私は定年制について質問をしたい。本法は定年制についていろいろな施策をやろうとする大きな柱になっておりますから。この定年制についてはいろいろの考え方があると思うのですが、まず第一に、性別で区別するのと同じように、年齢別で労働条件を区別するのは、本来基本的人権の違反ではないか、こういう議論がある。これはILO条約の男女別の賃金格差を設けるとか、その他差別はならぬというときにかなり論議があって、これは性別と年齢別とは同じじゃないかという議論がなされておるのです。要するに、あなたは体力がないからというんじゃないですよ。あなたは五十五になったから首を切るんだ、やめてもらいたい、あるいは、四十歳だから当社の採用条件に合いませんというような考え方ですね。これは本来基本的な人権に違反しておるんじゃないかという議論が基本的にある。ILOではそれは論議されましたけれども、採択はされませんでした。しかしアメリカの連邦法ではそれが出てきたわけです。最初は州法でありましたが、連邦法で出てきた。要するに、年齢によって雇用の差別をしてはならぬという法律が一九六七年に制定された。一体この法律に対して、何でもアメリカのことを見習う日本政府はどういう考え方を持っておるか、ひとつ労働省考え方をお聞きしたい。
  26. 道正邦彦

    道正政府委員 数年前に日米経済閣僚会議の議題といたしまして、日米両国政府間でそれぞれの雇用政策の検討をするプログラムがございました。私も日本側の代表の一員としてアメリカにも直接参りまして、向こうの担当者からアメリカ雇用政策についていろいろ伺ったわけでございます。その結果は正式にリポートとして日米両国政府から発表されております。そのアメリカ雇用政策についていろいろ参考になる点があったわけでございますが、ただいま御指摘の一九六七年の年齢による雇用差別禁止法、これは日本にない制度であり、最近におけるアメリカ雇用政策の非常に大きな柱だというふうに感じたわけでございます。これは非常に徹底いたしておりまして、求人について新聞広告いたします場合に、何歳以下ということを新聞広告に出すことを禁止しているわけでございます。したがいまして、アメリカにおきましては年齢による雇用、労働条件等の差別、これは原則的に禁止になっております。若干の例外がございますけれどもそういうたてまえでございまして、これには罰則もついているというようなことでございまして、非常に徹底したものであります。ただ日本の場合に、基本的な考え方はよくわかるわけでございますけれども、年功序列あるいは終身雇用という日本独特の賃金雇用慣行が定着をいたしております。そういうことを勘案して考えますならば、いま直ちにこういう立法を日本において行なう、あるいは政策的にそれを進めていくということには若干無理があるのではないかというふうに考えるわけでございます。しかしながら、日本におきましても、御承知のように能率給であるとか業績給であるとか、そういう年齢とか性の差別によらない労働の質そのものに着目しての賃金であるとかあるいは雇用関係というものも徐々にふえてきているのが現実でございます。今後におきましてもアメリカのこういう斬新な法律の施行状況、これにつきましては絶えず情報も集め、私どもが雇用政策を進める場合の参考にしていきたいというふうに考えているわけでございます。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 アメリカの場合は四十歳以上六十五歳以下の人々が対象になる。ですから、あなたは四十五歳ですから当社は雇いませんという、こういう職業紹介をできない、こういうことになっておるわけです。もっとも二十五人以上であるとか、アメリカ独特の州際商工業ということになるわけでしょうけれども。  そこで私はまず、産炭地等で一番就職の問題は、すぐ年齢を言うのですね。ですから、みんな職安の窓口に求人をしてくるわけですが、すぐ年齢を言うのですね。何歳以下の方だとか、私はそんなのは少なくとも職安で受け付けるべきでないと思う。それは特殊の肉体労働とかいう場合なら別として、まず役所のほうから、そういうものは行政指導で、受け付けられません、それはその人を見て、ああこの人はとてもうちの会社には使えぬというなら別ですけれども、もう初めから年齢でぴしっとくるのです。ですから、私はアメリカ法律日本法律にそのままやれとは言いませんよ。言いませんが、少なくとも私が質問をした趣旨は、労働省としては行政においてそのことを、その精神を見習うことができるのじゃないか。まず職業紹介の面で、この職種は何も四十歳未満でなくてもいいというような職種に四十歳未満ということを条件に職業紹介を求めてくる、そういうのは役所としてはできるのじゃありませんか、どうですか。
  28. 道正邦彦

    道正政府委員 一律に窓口で、年齢制限を設けている求人をお断わりするというわけにはどうも一挙にいかないと思いますが、私どももおっしゃる趣旨はそのとおりだと思っておりまして、かねてより、たとえば三十歳まで、しかし三十歳過ぎの人なら求職者がいるというような場合があり得るわけでございますので、求人条件の緩和を求人者に呼びかける、個別にお話し合いするということはこれは現にやっております。したがって、そういう方向を今後ますます強めていかなければならないわけでございますので、行政運営のあり方としては先生指摘のような方向を今後一そう強化してまいりたいと思います。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 このアメリカ法というのは、結局題名にあるように、雇用における年齢差別を禁止する法律ですから、あなたは何歳になったからおやめなさいというのは、少なくとも六十五歳まではできない。もっとも先任権とかいろいろな問題はありますけれども。ですから私はこれは一つのものの考え方と思うのですよ。やはり大きな政策だと思うのですね。ですから、いまの日本でそれをすぐやりなさいということも無理でしょうけれども、やはりこういうものの考え方発想法律にしても、基本的人権をいうアメリカでは、本来人間の問題としてはそのくらい企業を規制してもいいんだという考え方がある。これはひとつ十分今後の行政においてこのものの考え方を取り入れてもらいたい。ひとつ要望しておきます。  それに比べますと、今度の法律というのはきわめてみみっちいのですけれども、しかし初めて法律で定年制の問題に触れたということに敬意を表したい、こういうように思うわけですが、それにしてもいろいろな政策をするのに、あなたのところは金を出さないで、人のふんどしでやるというのはどういうわけですか。
  30. 道正邦彦

    道正政府委員 御質問の趣旨は、いろいろの援助措置の財源を失業保険に依存しておるのは適当でないのじゃないか、こういうお尋ねだろうと思います。先生も御専門でいらっしゃいますからよく御存じでございますけれども、失業保険法の二十七条の二という規定がございまして、被保険者あるいは被保険者であった者の福祉の増進のために失業保険金を使うことは法律が認めておるわけでございます。特に今回の援助措置、これはほっておけば定年によって離職して失業者になられる方、これが定年延長によって失業を免れるということでございますので、その二十七条の二にございます「失業の予防、就職の促進その他被保険者及び保険者であった者の福祉の増進」というこの二十七条の二の立法趣旨にまさに合致するものでございます。たださりながらこの失業保険の制度自体の基本的な目的は、失業中の生活保障ということにあるわけでございますので、この福祉施設の金が失業保険会計全体の中でやみくもにふえていく、これは適当でないと思いますけれども、今回の援助に対して失業保険金を、失業保険財政でまかなう、それから支出するということについては、法律的には立法趣旨に合致したもので適当であるというふうに私は考えるわけでございます。ただいろいろ御批判があるところでございますので、今後の課題としては検討さしていただきたいと思います。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 失業保険金の流用をする資金というのは、政府の補助金は入っていますか。
  32. 道正邦彦

    道正政府委員 国庫の負担は失業給付について出ておるわけでございます。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 四分の一の国庫補助金が入るわけです。国民年金のような場合は最初の保険料に見合う分を政府が出しますから、初めから特別会計に入ってくるわけですね、基金の中に。ですから国民年金の基金は、これは政府の負担金が初めから入っている。ところが厚生年金は労使だけで給付時に払うのですから、これは入ってない。失業保険も給付時に払うのですから入っていないのです。ですから政府の金は全然入ってないのです。労使だけの金ですよ。あなた方がいまから政策をずっとやろうとするのは、労使だけの金です。政府が少しは入れて、おれのほうも分け前があるのだということじゃないですよ。全然ない。そこはちょっと問題じゃないですか。ですから、われわれが労働政策費を見ると、何と少ないこと、ですよ、日本の労働政策費は。日本の労働政策費は、失対事業が三百九十八億、特会が三十五億、それから給付費の失業保険が六百六十四億ですか、この程度、あとは何もない。訓練費だって二十九億ですからね。これだけ産業構造が大きく転換するというときに、たった二十九億ですよ。これは私はちょっと問題じゃないかと思うのですよ、政府が一銭も出さぬ。基金から一般行政をやろうという、これはどうしてこういうことが起こったのですかね。大蔵省が認めぬのですか。労働省が安易に流れたのですか。     〔伊東委員長代理退席、山下(徳)委員長代理      着席
  34. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘のように、労働省の一般会計の総額あるいは改善の伸び率、これは他省庁に比べて必ずしも高いとはいえません。その原因でございますけれども、これは私どもの企画する政策の内容にもよりまするし、また大蔵省との折衝の問題もございます。いずれにいたしましても一般会計で本来組むべきものを失業保険に安易に依存する、こういうことはあってはならないわけでございますので、今後とも一般会計で要求すべきものは一般会計でまかなうように努力をしていきたいと思います。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣大臣折衝のときはあなたは大蔵大臣に会う必要はないでしょう。普通ずっと主計官、課長から局長と、それから次官が行って、大臣。これは労働省というのは何も大臣折衝することはないでしょう。やったことありますか。この前やられたですか。
  36. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御指摘のような話になりますと、特会の問題は自分でやったらいいと言いますけれども、特会の問題も大蔵省が握っておりますので、それは大臣折衝の場合にも、私就任いたしました当初でありますけれども、御指摘のとおり失業保険の問題で、福祉の問題その他支度金の問題、給付金の問題、被保険者のいろいろな問題、これを人のふんどしで相撲をとらすということでありますが、それはいまの特会の法律のたてまえからいきましても、必ずしもそう無理にこればかりにたよっておりませんけれども、一般会計の予算が少な過ぎるという御指摘は、これはもうしろうとが考えても当然でありますので、本年度の場合にもこの点に重点を置いて——局長、事務次官の話がありましたが、君たちが折衝していたことでは納得せぬ、わしはわしの独自の立場でいくと、こう言ってがんばってきたのでありますが、それでも所期の目的は達成できなかった点を遺憾に思っておるのでありまして、これから来年度の予算の関係もありますけれども、私も同感な点もあります。そういう意味で今後なお一般会計の予算の増額に対しまして、大臣といたしまして最大限の努力をいたしますことは、これはお誓いいたします。来年の予算のときにおるかおらぬかは、これはわかりませんけれども、私が就任いたしまして感じたことは、御指摘の点を特に私も感じましたので、よく説明を聞くと、従来からこうであって、決して無理でないという説明がありますが、私は必ずしもその説ばかりに賛成はしなかったのでありますが、そのときにも相当、大臣折衝の場合にもがんばってきた所存であります。従来の慣行、従来の予算の決定の経過その他もありますので、遺憾ながら私も希望通りでなかった点は残念に思っておりますが、今後どの大臣であろうが、御指摘のような点について推進することは、これは当然の権利であり、当然の主張であると私も考えております。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それはいま幸いにして失業者が少ないから、こんなことができるのですけれども、しかしこれは労使の金ですから、政府だって一つも入れてないのですから、この金を一般行政に使うというのはもってのほかです。第一、失業保険法は、それは若干使うようには道は広げてあるけれども、第一条を見ると、やはり「失業保険は、被保険者が失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ることを目的とする。」と書いてあるのです。基本的には違反しておるのですよ。それはそういう道はあるけれども、一般全部の行政がほとんどそこにおんぶするということが、そもそも間違いじゃないか。  そこで私は、この際、積み立て金も累計で相当あるようですから、給付を改善したらどうかと思うのです。いま一体、積み立て金はどのくらいの累計がありますか。
  38. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 あとから政府委員が御答弁いたしますが、いまこの法案、失業保険法を見まして——また、積み立て金の額でありますが、正確な数字は、私の頭に残っておりませんが、三千九百億であったと思います。(多賀谷委員「それはいつ」と呼ぶ)四十六年。それで毎年大体、額は違いますけれども、三千何百億集まりまして、そのうちで三百七十億が四十六年だったと思いますが、ときによっては四百、五百億となりますけれども、それが累計いたしまして三千九百億であります。一年にたまったというのではなくして、そのうちで相当なものはこれを活用いたしておりますが、今後この問題に対しましても、現在の失業保険法でいくと、倍までは、これは認めておりますけれども、私、これは大蔵省と折衝いたしましたときにも、平たいことばでこんなことでは困る、タコが足を食うようなものだから、一般会計のほうの率が少ないのでは、これは納得できぬ、先ほどの話でも申し上げましたが、主張したのでありまして、今後この問題に対しましては、いろいろの支出をやるそれだけの力があれば、保険料率もずっと引下げをやったらどうか、こういう意見も各方面から出ておりますので、十分諸般のことを考えまして、御趣旨に沿うよう今後対処する方針でおりますから、いまさっそく法律の改正のところまでは行っていませんが、この問題に対しまして研究会でも研究いたしておりますので、労働省もその方針でいきたいという所存であります。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 わが党は、八割給付を主張しておる、いま法律を出しておる。それから期間の延長も出しておるわけですね。産業構造が変わって、そして訓練をするという場合に、私は、やはり失業保険を延長して、本格的に訓練をしたらどうかと思うのです。いま、中高年齢で訓練をしていますけれども、訓練所へ行って訓練をした人が、訓練科目に従って就職した例はごく少ない。現実に総訓等で訓練をするわけでしょうが、しかし中高年になって訓練をしても、これは次の就職に役立つという訓練はできないですよ。それは、第一、期間も短い。運転免許のことを考えたらわかるでしょう。若い諸君と、もう中年になったのが運転免許へ行くと、三倍も四倍もよけい自動車学校へ払わなければならぬですよ。ですから、やはりこの産業構造が変わっていくときに、訓練をするなら、せっかくまだ人生は長いですから、本格的訓練をしてあげたい。それには失業保険があまりにも短いですよ。それから訓練期間が短いですよ。若い連中とやる場合には、少なくとも二倍ぐらいの訓練期間を設けないと、私はなかなか困難だと思う。あなたのほうで一体、訓練科目に従って就職をした人がどのくらいあるか。いま、中高年の総訓その他の例があるでしょう。これは職種によって違いますが、わかりますか。
  40. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 多賀谷先生、確かに御指摘のとおり、中高年の転職訓練につきましては、訓練期間が短い、こういう御指摘はごもっともだと思います。具体的な例を一つあげますと、炭鉱離職者の訓練につきましては、一般的に、原則は六カ月、半年という訓練期間でございますけれども、本人の技能の上達程度、あるいは就職する場合のことを考えまして、ケース・バイ・ケースで期間を延長いたしたり、そういった措置をとりまして、就職を容易ならしめるような措置をとってまいっております。  いま御指摘の訓練科目に応じた就職という点につきましては、いまここに数字のデータを持っておりませんけれども、いままでのこういった転職をする人たちの訓練につきましては、これは中高年だけに限りませんけれども、大部分はその職種に就職いたしております。先生の御指摘の点とは若干違っておるのじゃないか、かように考えます。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 局長、あなたはよく現地を知っておってそういう答弁をされるなら許しませんよ。そんな状態じゃないでしょう。現実に職種訓練をした職種で就職した人は何割おりますか。訓練所へなぜ行くかというと、これは失業保険が延長されるからだという率直な気持ちですよ、言うならば。結局、今度メタルマイニングがいろいろつぶれて私も行きました。いろいろ質問を受けたから言いました。まあそう言わないで、失業保険がそれだけ長く延びると思って、職業訓練所へ行ってくれ、ぼくはそう言った。そんなものなんですよ、事実上は。若い諸君だって、あのくらいの期間では、それでとても職場に出るのはおっかない。ですから、ましてや中年ですから、そういう恥ずかしさとか、いろいろあるわけです。そうして頭だけは先へ進んでおるけれども、技術は追っつかない。ですから、とても一人前のような顔をして職種につけないという形なんですよ。それは結局失業手当や訓練手当を長くもらえるというのが一番のメリットなんですよ、言いにくいけれども。そこで私は、失業保険金が余っておるなら、むしろ延ばして、そして訓練を長くして、もう少し本格的な、まあ七割か八割ぐらいの、一人前とは言えませんけれども、訓練をつけてあげたいと思うのですが、どうですか。これは職業訓練局長に伺います。
  42. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 確かに先生の御指摘のような点もございます。実は炭鉱閉山なんかの場合に大量の離職者が出ました。訓練受講希望者は、これは確かに多うございます。先生のおっしゃるように、この訓練を受ければその期間は失業保険金が延長になる、そういうことが魅力になっておるのも事実であろうと思います。ところが事実は、実際の入校になりますと、本人の希望する職種上それから受け入れる職種の定員とが食い違う場合が多々ございます。そこで、入校を希望しても入れないという事態がございますので、そういった入校希望者の希望職種に応じて増設をするなり、あるいは委託を行なうというようなことで、入校希望者を完全に受け入れるような体制をできるだけとってきておるわけでございます。今後もそういうつもりでおります。そういった点を考えましても、その受講をいたしました職種で就職をした者は、これは具体的な数字はまた後ほど御提出してもよろしいと思いますが、必ずしも先生おっしゃるように、非常に少ないという数字ではないと私確信しております。確かに全部が全部、一〇〇%受けた職種によって就職しておるとは申し切れませんけれども、大部分の人がそういった入校のときから希望していた職種で就職しておることは事実でございます。と同時に、訓練の期間につきましては、先ほど出し上げましたように、必ずしも六カ月で十分だとは申し上げるわけにはまいりませんけれども、やはり希望に応じて、その人の技能の上達程度に応じて延長する必要は、これはやはりあるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなたのほうからも資料をとってもらってもいいけれども、私のほうにもわりあい地域に近いところに訓練所がありますから、とってお見せしてもいいと思うのですけれどもね。そうして、現実はやっぱりきびしいということですよ。なかなかきびしいですよ。しかし、私は総合訓練所があって訓練をされておるということは非常にいいことだと思うのですよ。しかし、実際はなかなかそれで就職をするかてになるような訓練までは行き渡らないというのがその現実ではないかと思います。第一、訓練局長はそう言うけれども、局長のいすを与えるほど一般会計から訓練費は出ておらぬよ。二十九億くらいしか出ておらぬよ、ことしの予算は、大臣、ちょっと局長がかわいそうじゃないですか、一般会計からたった二十九億くらいの予算で局長が一人というのは。これは一番金のかかる局ですよ。それにたった二十九億ですよ。それから施設費は三億五千万円。こんなことじゃだめですよ。これは大臣、そういう方向でやっていただきたいと思うのです。  そこで少し質問を進めていきたいと思いますが例の身体障害者の雇用状況ですね。これは一体国の機関、民間ともども法律及び政令に規定しておる率だけ達成していますか。
  44. 道正邦彦

    道正政府委員 御承知のように、国あるいは特殊法人あるいは民間ということで雇用率をそれぞれ別個に定めております。御承知と思いますけれども、一般の官公庁の法定雇用率は一・七%、現業部門は一・六%というふうになっております。これは全体としてはいずれも法定雇用率は達成しております。ただ個々の機関によりましては、一部未達成の部門もございますが、これは全体の傾向としては逐年雇用率が上回ってきておりますので、今後とも雇用率未達成の部門につきましては、勧告を行なう等の措置をいたしまして、雇用率を達成いたしたいと思います。これは諸外国に比べて必ずしも高い率ではございませんので、官公庁が雇用率を達成しないということでは民間に対する影響も非常に悪いわけでございますので、そういう意味で、率先垂範という意味で強力に呼びかけてまいりたいというふうに考えております。  民間事業場につきましては一・三%でございます。これの雇用達成状況は一・二九%でほぼ達成しているというような状況でございます。事業場数で申しますと三六%が未達成でございます。特に大企業が悪いわけでございます。一、二例を申し上げますならば、五百人以上の事業場では一・一七%、中小企業、規模が小さくなればなるに従って雇用率が上回るというような状況になっております。これは企業の社会的責任という立場から見まして遺憾な事態でございます。特に大企業が率先して雇用率を達成すべきものというふうに考えます。総体的に求人難でございますけれども、大企業にやはり人が集まりやすいというような事情が背景にはあるわけでございますが、企業なかんずく大企業の社会的責任を全うしてもらうという立場から、今後強力に大企業中心雇用率の未達成の解消に努力したいと考えております。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いま大体、労働力の増加に比べて身障者の人々の増加率はどういうような状態になっておりますか。要するに交通事故とか、最近の公害をはじめとするいろいろな病源がふえつつあるわけです。この法律をつくった当時と今日とでは、私は身障者の増加率は高くなっておると思うのです、ウエートが。     〔山下(徳)委員長代理退席竹内(黎)委員長代理着席
  46. 道正邦彦

    道正政府委員 四十年と四十五年の比較で申し上げたいと思います。  いろいろ身体障害者の障害原因があるわけでございますが、一番多いのから申しますと、疾病でございます。これが四十年におきましては五九・四%、四十五年におきましては五六・三%で若干減っております。その次多いのが先天的な障害でございます。これが四十年におきましては一〇・四%、これが四十五年におきましては八・六%というようになっております。それから交通事故、これは四十年が三・二%四十五年は四・五%というふうにふえております。そのほか業務上災害によるものが八・六%が八・九%になっておるということでございます。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は身障者の構成のパーセントを聞いておるのじゃないのですよ。要するに、全労働力の伸びと身障者の伸び、どうも私の勘では交通事故等がひんぱんであるから、むしろ身障者の伸びが大きいのじゃないか。というのは、もう少し言うならば、この昭和三十五年の法律ができたときの比率では、身障者の関係からいっても改定すべきではないかということです。今日労働力が一部で不足しておるというような状態と、さらに福祉政策重点という内閣の姿勢を考えるならば、身障者の雇用義務率を高くすべきではないか、こういう意味で質問しているわけです。
  48. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘のように、四十年と四十五年の身体障害者の総実数のふえ方、これは二割五分でございます。それで四十年から四十五年、五年間の労働力全体の伸び率はそこまでいっておりませんから、身体障害者の伸び率のほうが高い、これは御指摘のとおりでございます。そういうことも踏まえて考えますならば、一・三%という民間の雇用率がいいかどうか、これは御指摘のとおり私は問題があると思います。諸外国の例を見ましても、一・三%というのは非常に低いわけでございます。たとえば西ドイツ等におきましては六%であることは御承知のとおりでございます。そういうことから見まして、雇用率の引き上げについては今後の課題として十分検討をしてまいりたい、こう思います。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはやはりそのときの情勢をにらんで雇用率を設定をすべきですね。私は四十年と四十五年というのじゃなくて、三十五年と四十五年の比較をぜひ出してもらいたかったのですが、残念ながら出ませんけれども、私はやはり役所がそういう点は注意をして、雇用率を変えていくという姿勢が必要じゃないか。それから特殊法人の事務所が少ないのですね。それからもう一つは、何をいっても大企業が非常に少ない。やはり私は大企業にノルマ程度はぜひ守ってもらいたい。一体大企業に、加藤大臣だけではなくて、歴代の大臣はその雇用率について勧告か強制かしたことがありますか。
  50. 道正邦彦

    道正政府委員 かねてより、身体障害者の雇用促進あるいは心身障害者の雇用促進、これは職安行政の最重点施策の一つにいたしております。昭和二十四年だったと思いますけれども、ヘレン・ケラー女史の来日を契機に、身体障害者雇用促進週間というのを始め、現在におきましては、毎年九月を身体障害者の雇用促進月間ということに定めまして、心身障害者の雇用促進の一大キャンペーンを行なっておるわけでございます。何も九月だけではございませんで、年間通じまして心身障害者の雇用促進、これを職安行政の最大の努力目標に掲げて懸命の努力をしておるわけでございます。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その努力をしておっても実績があがらぬじゃないですか。大臣、大企業に社会的責任を感ずるように言ってくださいよ。とにかく一・一七ですよ。中小企業等は相当無理をして、たとえば七十七人から九十九人は一・六四、しかし大企業は一・一七、ぼくは大企業は社会的な責任を果たしていないと思うのですよ、こういう点においても。ですから、大臣としては大企業に対して勧告をする、この程度のことはぜひやってもらいたいと思います。
  52. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題は大企業が少し認識の足らない点がある、私もそう感じておる点がありますので、これは厳重に勧告し、またそれ以上にいろいろな点につきましても、来年度の予算の編成その他でいま新政策を研究中でありますので、その中にもこの問題は取り入れて、御趣旨のような点を生かすように検討する、ただ検討でなく、本腰でそれに対処することをここでお誓いします。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ひとつ期待をしておきます。  そこで、時間もありませんので、最後に雇用促進事業団の住宅について質問しておきたいと思います。  工業配置法に基づく宿舎、この問題については、先ほどから申しましたように、工業配置が今日逆の状態になっておるということで、その面においてわれわれは必ずしも賛成がなかなかしかねる、こういう状態です。そこで、従来の雇用促進事業団の宿舎についてお聞かせ願いたいと思いますが、この前、おととしの夏か去年の夏か、新聞では行政管理庁から雇用促進事業団の宿舎について勧告があった、聞いてみると勧告まではいかなかったという話でしたけれども、少なくとも九州における宿舎についていろいろ調べがあったわけです。そしてこれはずいぶん長くいるではないかとか、ある会社の社宅のようになっているじゃないかとか、いろいろ注意を受けたわけであります。もっとも、その行政管理庁の調査というものは実態にそぐわない点もかなりあったと私は思います。それは、貸与期間というものがそもそも問題なんで、一年未満なんということを基本に置いておること自体が、今日私は問題だと思う。われわれが雇用促進事業団の入居要件の一年未満ということについて了承を与えたのは、当時政府はこう答弁したんです。とても一年未満なんかでは他に転宅できないではないかと言ったら、いや、それは公営住宅等を最優先に借用するようになっておるんです、こう言ったけれども、それはないわけですね。公営住宅が建てられても、雇用促進事業団のものに住んでいる者をわざわざ最優先にするなんということは現実問題としてはないわけですよ。それで行くところがないわけです。行くところがないから、結局入居者はそこに居すわるということになっておる。ところが、期間が来るたびに書類が来るわけです。あなたは期限が来ておりますから出て行ってください。これはとても不愉快だ。ですから、この時期に来たら、はっきり業務方法書を変えるべきですよ。実に不安な、不安定な入居条件になっているわけです。どことなく不安な気持ちがある。それはすぐには追い出さないでしょうけれども、管理人が一応言い渡したり、あるいは書いた紙を入れたり、いろいろあるのです。ですから、一年未満という原則をこの際変えたらどうか、業務方法書を変えるべきではないかと私は思うのですが、どういうふうにお考えですか。
  54. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御指摘のとおりで、いま一年でありますけれども、大体広義に解釈いたしまして二年程度はという方向でいま進んでおりますが、これでもいま言ったように公営住宅に、これはなかなかむずかしい、マイホームの問題も御承知のとおりでありますので、恒久的なホームというわけにもいきません、暫定的であることはいたし方ないと思いますが、万やむを得ない場合には三年程度にするとかいうことも、ここでさっそくお答えすることはできませんけれども、これは本気で前向きに御趣旨のように対処いたしまして、それが実現する方向に持っていきます。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 第二の人生を歩む人というのは、蓄積もなく非常に気の毒な人なんですよ。ですから再就職をしてその地に来るわけでしょう。そしてその人が一年以内に他に住居を求めるような情勢にないですよ。しかも従来はどちらかといえば、いわゆる過密都市に来たわけでしょう。それはできないことを言っているわけですよ。できないならできるように業務方法書を変えるべきですよ。労働省が積極的に業務方法書を変えるべきです。二年なんてだめですよ。二年で住居を求められるなんて、とてもできないでしょう。ですから思い切って変えてやるべきだ、こういうように私は思います。そしておる人の不安をなくすることが第一じゃありませんか。
  56. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題は、私この間雇用促進事業団に行きまして関係者を呼んで、理事長と——多賀谷議員から御質問があるのを前提として話をしたのではありませんが、これはやれと言っておきました。いろいろ理由も言っておりましたが、現在の情勢から見ましてやりなさいと言っておきました。こういう方面で私の意見を聞いて、そういうように対処しますという、やや内部では——行きましたのは十日ぐらい前であります。その席上でこれが特に問題になって、私の信念で、二年というのではちょっと少ないぞ、もう少し本気で考えろ、これは恒久的でないということはわかるけれども、いまの事情から見るとこれは無理だから、もう少し検討せいというので、大体御趣旨のような方向にいけると思います。これはそのとき話がなかったら私も自信がありませんが、多賀谷さんのお話の前に私も感じまして相談し、指示し、懇談し、その方向に進ますように対処いたしております。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 要するにいまは貸与期間二年ということで、それを過ぎると、いつまでに退去しますという覚え書きを取るわけです。こんなのはやはりひどいですよ。これはひとつ改めてもらいたい。  それから、いままでは要するに首を切られた人が再就職をした、そこに雇用促進事業団のアパートがあって入るという仕組みですが、今度は首を切られない人が工場配置によって移転をして、それに雇用促進事業団の宿舎を使わすという、ちょっとこれは問題じゃないですか。これは社宅になるのじゃないですか。その人は大体首を切られていないのですよ。会社が連れていくわけでしょう。会社が連れていくなら連れていくだけの施設を会社はしたらいいじゃないですか。会社は、そこへ行ってもう従業員の宿舎があるということになると、これは社宅化しますよ。まして私がいま言うように、期間を延長せいと一方で言っているわけですから、会社はそこへ入れてしまったらもう社宅なんか建てようとしませんよ。努力もしませんよ。市町村も努力しない。問題は、誘致をするときの条件が問題でしょう。ですから私はこれは必ずしも親切心だけではないと思うのですよ。これは必ず禍根を残しますよ。会社にサボられたら人間を動かすことはできないでしょう。これは最初が肝心なんです。これについてどういうようにお考えですか。
  58. 道正邦彦

    道正政府委員 移転就職者用の宿舎自体につきましても、基本的にはそういう問題があり得るわけでございます。移転して就職した就職先の事業主が、本来社宅その他従業員の住宅について配慮を加えまして住宅の確保をはかるのが筋でありますけれども、たまたま移転就職者が宿舎に入っておるということのためにどうもそちらに依存するという傾向はあり得るわけでございますが、特に工場配置等に伴いまして離職者でない方について移転就職者用宿舎に入居を認める場合には、一そうその傾向が強くなると思います、その点は御指摘のとおりでございますので、事業場に対しまして、これはあくまで暫定的なものであり、本来事業主において従業員の住宅について配慮すべきものであるということは十分に指導いたしまして、事業場の社宅のかわりになるというような弊害が出ないように十分指導してまいりたいと思います。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 再就職をしてくる場合は、それはどちらかといえば不特定多数で、一工場といことはわりに少ないのですよ、特殊な米原の三菱電機のような例もありますけれども。しかし今度は工場移転するわけですからね。その工場移転をしたら、その近くにあった宿舎はすぐ満員になるわけです。私は非常に状態が違うと思うのですよ。そしてもう、工場は憎いけれども、入ってきた労働者については雇用促進事業団がいびるわけにはがないのですよ。ですから、このことは、長い目で見るとちょっと困った状態になるのじゃないか。というのは、その工場がまた拡大をするというようなことで、他から失業した人が入りたいというときは、もういまままでの人で満員だ。要するに基幹労働者ですね、主として工場が連れてくる基幹労働者で占められてしまうということになるのですよ。私は、それを排除することは、入居さしたらほとんどできないだろう、こう考えるわけですよ。ですから、あなた方は安易にこの扱いをすると間違いが起こると思うのですがね。
  60. 道正邦彦

    道正政府委員 今回の法律改正の趣旨は、工場配置のためだけに従業員の住宅として移転就職者の宿舎をつくるとか活用するとか、あくまでそういうことではないわけでございまして、たまたまあいている場合に入れる。特に私どもが今回御提案申し上げた趣旨は、大企業は住宅について十分配慮していくと思いますけれども、中小企業になりますと必ずしもそこまで手が回らないという場合もあり得ると思います。一方において移転就職者用宿舎にあきがある、この場合でも入れないということは社会的にいって不合理ではないかということでございますので、企業従業員に対する住宅対策というものを十分調査いたしました上、先生指摘のような弊害が生じないように行政指導をしてまいりたいというふうに考えます。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 要するに、一つ工場移転する場合には下請移転する。ですから、工場としては下請移転することを考えて移転をすべきだ、工場はそのくらいの社会的責任があると思うのですよ。そういう下請工場等についても十分配慮をする必要がある。それを本工場だけがぽんと移転して、下請はもうかってに動け、そこでつぶれるものはつぶれい、こういう態度は許すべきでないと思うのです。そして下請の分は全部政府がめんどうを見ろ、こういうようなことは私は許されるべきじゃないと思うのです。ひとつ大臣の決意を促したいと同時に、やはり宿舎自体が狭過ぎるのですね。いままでないものですからがまんをしておりましたけれども、やはり狭過ぎる。これもひとつ十分考慮してもらいたい。この二点について最後に大臣から答弁を伺って質問を終わりたいと思います。
  62. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御趣旨のとおりであります。これは労働省のほうも下請関係ももう少し考慮しなければならぬのが、どうも行き届いておらない点もありますから、御趣旨のように、今後この問題に対処するときにはその方針で指導をするかたい決意であります。
  63. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほど多賀谷先生に対する御答弁の中で、身体障害者の雇用率につきまして、官公庁の法定雇用率で現業部門が一・六、非現業が一・七でございますが、これを逆に御答弁申し上げたそうでございますので、訂正させていただきます。
  64. 竹内黎一

  65. 川俣健二郎

    ○川俣委員 身障者のモデル工場なんですが、これは事業団法の一部改正でいわゆる貸し付けすることができるというあたりで事が足りるかなと思って検討させてもらいました。そして、政令で定めるといううたい方が方々考え方としてあるわけです。それでこれは幾ら法律をつくったって、身障者を雇ってくれる経営者が理解してくれなければならぬということで、いま雇用促進協会という団体もつくっております。私も地元で、カバ細工に非常に適しているのじゃないかということでやってみているのです。  そこで、これは事業団に一切業務をまかせるのか、労働省である程度メジャーをつくって事業団にやらせようとしておるのか、それが一つ。  それからもう一つ、前の質問者でもかなり深まっておりますから、私が用意しておったあれは省きますけれども、それじゃこの法案が通ったら——いま予算に六億円載っておりますが、一体どのような構想で全国的にモデル工場を建てようとしておるのか。まあ政令が用意されておると思うのですが、少しその構想を聞かしてもらいたいと思います。その工場を建てた場合の融資だけで、監査その他人事的な拘束も——これは拘束があったほうがいいのか、野放しにしておいたほうがいいのか、私もわからぬですけれども、身障者を雇用しておるだけに、ある程度政府が、国が干渉したほうがありがたい場合がある、税法その他で。その辺の構想を、これは作業を進めた人が一番いいと思うのですが、事務当局からひとつ忌憚のないところをいま少し詳しく聞かしてもらいたいと思います。
  66. 道正邦彦

    道正政府委員 心身障害者の雇用促進問題につきましては、昨年身体障害者雇用審議会の場におきまして非常に御熱心な御討議がございまして、昨年末中間答申をいただいたわけでございます。その中で一番審議会として重視されましたのが、このモデル工場の設置の問題でございます。そういう審議会の御答申もございましたので、私どもといたしましては心身障害者の雇用促進のうちの最大の目玉施策といたしまして、モデル工場に対する助成ということに重点を置いて予算を編成したわけでございます。モデル工場の設置ということは政策的に非常に大きな効果があるということでございますので、計画はもちろん、実施の段階で、いろいろ事業場の希望等が出てまいるわけでございますが、それについての判断、そういうものはすべて労働省におきまして政策的な配慮を十分加えて決定をし、実施を雇用促進事業団の融資という形で行なっていきたいと存じております。  なお、事業場に対して規制を加えたほうがいいではないかというふうに拝聴した御質問があったわけでございますけれども、この点は、心身障害者を多数雇用しょうという事業場は、心身障害者の雇用問題につきまして経験もあり見識もお持ちの場合が多いわけでございますので、国がやたらに口を出しまして指導を加えますことは、かえって自主的な努力を阻害するおそれもございます。しかしながらモデル工場でございますので、その辺は、政策目的と違ったような方向に運営されても困ることも御指摘のとおりでございます。その点は十分事業場と相談の上、実施に移してまいりたいというふうに考えております。
  67. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、労働省がある程度もくろみをつくって、事業団を通して金を貸す、こういうことですね。そしてあまりとやかくは言わぬ。その場合に、県、市、自治体を通してやるのか。この種の工場はかなり地場産業だと思います。重工業だとかそういうものはとてもできるわけがないですからね。そういう意味で私はさっき、たとえば東北のこけしとかカバ細工——これをぼつぼつやっておりますから、そうなると、その辺もう少し、これを考えたときに、あるのではないですか。
  68. 道正邦彦

    道正政府委員 これは雇用促進事業団からの融資でございますので、県あるいは市町村がいろいろな形で指導なり援助をしていただくことを拒むものではございませんけれども、制度自体はあくまで雇用促進事業団の融資によって事業場が行なうというたてまえになっております。しかしながら、モデル工場を設置して融資を受けたいという場合に、いきなり労働省へ出てくるわけでございませんで、ほかの融資の場合もそうでございますけれども、県を経由して出てくるわけでございます。で、当該県が県の立場で、適不適、規模がいいかどうか、そういう点は十分県として指導を加えた案が私どものほうへ回ってくるわけでございます。そういう意味では県の意見を十分承りながら融資をきめてまいりたいということでございます。  なお、金額は当初予算六億でございますけれども、これは他の経費との流用が可能な経費でございますので、希望がまあかなり出てきておりますけれども、非常にいい施策と考えておりますので、予算のワクを突破してほかから持ってこなければいかぬというような事態になることを、われわれとしては実は希望しているわけでございます。  いずれにいたしましても、当該事業所はもちろん、都道府県の意見も十分尊重して決定していきたいと考えます。
  69. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私も施策はいいと思うのだけれども、ただそうすると、法律ができた、世に公布する、そうして事業団に直接申し込ませる、それを審査する。そうすると当然、相手がむずかしいことだ、こうなる。そうすると、貸し付け基準みたいなものはどうなの。
  70. 道正邦彦

    道正政府委員 前後して申しわけございませんが、貸し付けの対象は、従業員のうち心身障害者を常時五〇%以上かつ十人以上雇用する中小企業の事業所の施設または設備の設置等に要する資金でございます。それから貸し付け額は貸し付け対象の八〇%以内の額とし、その限度は一億五千万円とする。ただし、労働大臣の承認がある場合には限度二億円まで用立てすることができる。利率は、心身障害者の雇用にかかわる施設または設備につきましては年四・六%でございます。それから償還期間につきましては、まあ二十年にするか、私どもはなるべく長い償還期間にしたいと思っておりますけれども、その辺は建物の種類等によって若干変わってまいりますので、これは細部現在検討中でございます。
  71. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この法案はどうですか、大蔵省ともいろいろ折衝したと思うのだけれども、大蔵省はきょう来ていないのですね。何か労働省専属の大蔵省がいないのだそうでびっくりしましたが、この金額はいろいろ折衝しただろうが、このモデル工場に対する将来の展望ですね、これは非常にいい施策だと思うので、こういった施策と大蔵省折衝——それから、これはかなり地域的な理解が必要だと思います。身障者の集まりの工場であるだけに、いろいろ労働条件等の問題もあるので広範囲の理解の上に立たないといかぬと思うのですが、こういった面に対して、大臣、どう考えますか。
  72. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 このモデル工場の融資は、厚生省管轄の福祉工場と違いまして、先ほどお尋ねのように大体労働省がこれを、事業団の八〇%を出す。福祉のほうは四分の一と、県が出しますから県のほうのウエートが強いのでありますけれども、この問題は労働省独自の立場で——厚生省管轄の問題は重障者で一般の方とは一緒に働くことができない方々、私のほうは、大体重障者でも意欲の旺盛な方で、重度であってもひとつ健常者に伍してやろう、こういうような対象が労働者のモデル工場の骨子でありますので、着手した当初でありますけれども、ただいろいろな社会保障的なことよりは、やはり生きがいのある身体障害者のやり方をしてもらいたい、また本人も、やったらそのやっただけ自分のいろいろな労働条件なりその他興味もわいてくるし、力もわいてきますので、まだ着手した当初でありますが、今後この問題に相当重点を置いて大いに推進したい労働省の所信であります。
  73. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは最初の試みの案ですから、まず一応法律ができて、工場ができてまたいろいろと審議の対象となることと思いますが、一応施策としてはこれはぜひ促進方をお願いしておきたいと思います。  私は質問は二つですが、もう一つが本論的になっておりますが、定年延長です。まあ社会的に寿命の延長その他で定年延長というのが非常に叫ばれておるわけですが、定年延長させなければ罰則を加えるという世代でもまだないだろうし、いろいろと考えたら、定年延長をした会社に、特に中小企業の場合にはあえて報奨金的な制度に落ちつかせよう、こういうことだと思いますね。ところが、その定年延長の法案を出すということを去年からここで論議しておったわけですが、予算化はさっぱり顔を出さない。法案はできておるが予算はない、どういうものだろうかと思ったら、いや、それは失業保険の余りを使うのだ、こういうことですね。そうすると、失業保険が余っておるから少しそっちへ報奨金を回そうということになると、失業保険金を納めている者の利害関係が当然出てくるわけですね。  それじゃ一体、失業保険のいまの実態というのはどうなっておるのか。収入、支出、剰余金等々、少し金額的に説明願いたいと思うのです。
  74. 道正邦彦

    道正政府委員 四十八年度の予算で申し上げますと、収入は四千四百八十五億円、うち保険料の収入は三千八百二十三億円でございます。支出は三千九百七十四億、差し引き残りの剰余金の見こみは五百十億円でございます。また四十六年度末までにおきまする積み立て金の累計額は三千九百八十九億円でございまして、これは確定いたしております。四十七年度末におきましては四千百七十八億円でございますので、四十八年度の予算上残が五百十億それにプラスされるわけでございますから、四十八年度残は合計四千六百八十億円になる見込みでごがいます。
  75. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、四十八年度は一年間に保険料収入、国庫負担金を合わせた総収入よりも多い四千六、七百億というのが残になっておる。これだけ余っておるのだからひとつ使ってやろうということなんだろうと思うのですが、これは二十七条の二で使うのだから法律改正は何ら必要ない、これを使うということについては国会で審議しなくたってよろしいという考え方に立ったわけだな。どうなんですか、これは。
  76. 道正邦彦

    道正政府委員 積み立て金は確かに先生指摘のように、保険料収入を上回っております。最近の例で申しますと、大体一・四から一・五でございます。これは法律に規定がございまして、積み立て金は保険料の一倍と二倍の間になければならないということになっております。それが前後いたします場合に自動的に保険料率を変えるという自動変更の規定が現行法にございます。そういう意味から申しますと、ちょうどまん中ぐらいの積み立て金でございますので、問題はいまのところないわけでございます。外国の例で申しますと、たとえば西ドイツにおきましてはこれが三八倍、アメリカにおきましても二・一倍、多いところにおきましてはスウェーデンが八・三倍、スイスが一六・九倍というふうに非常に多額の積み立て金を用意している国がございます。そういう現状にございますから、先生ただいま御指摘の今回定年延長に伴いまして支給する給付金は、この積み立て金とは直接関係がないわけでございまして……(川俣委員「何で関係ない」と呼ぶ)四十八年度の収入を前提にし、そのうちの支出の一部として支給するわけでございます。したがいまして、積み立て金とは直接関係がないわけでございます。二十七条の二の運用について問題があるというお尋ねの趣旨かと思いますが、これは先ほど多賀谷委員にもお答えいたしましたように、失業の予防のために出すわけでございますので、まさに二十七条の二の立法目的にそのまま合致する支出でございますので、私は現行法に関する限り問題はないものと考えておりますが、この点について各方面の御意見があることも十分承知いたしておりまますので、今後の検討課題として十分検討はしてまいりたいというふうに考えます。
  77. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大ありなんですよ、積み立て金の残余と。そうでしょう。結局支出が多くなるわけでしょう。そうすると積み立て金に回る残余金が少なくなるわけだろう。だから大ありなんだ。それは関係なくない。冗談じゃないですよ。  そこで、国庫負担金を入れた保険料収入を保険金として給付する額と、福祉施設に回す分と、さらに加えて今度定年延長の奨励金に回る分とに分けられるわけだが、そうしますと、いまの法律では給付総額と福祉施設に回る充当分との金額比率は規定されていない、幾らでも使っていいというように考えているわけだな。
  78. 道正邦彦

    道正政府委員 福祉施設に支出すること自体は、先ほどお答え申し上げましたように、現行法の二十七条の二の規定によって行なうわけでございますが、現行法の適用に関する限り基本的に問題はないというふうに考えておるわけでございますけれども、しかしながら福祉施設はあくまで、本来の給付に比べますならば、従たるものでなければならないことも当然かと存じます。したがって、その間におのずから節度がなければならないということは御指摘のとおりであろうと思います。現在の支出額が適当かどうかということについては御批判があろうかと思いますけれども、私どもといたしましては現在の失業保険会計の現状からみまして、また今回支出いたします給付金の性質から見まして、適当ではないかというふうに考えて予算化したわけでございます。
  79. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういう意味においては抵触しないんですよ。ただ方々から意見があるというのですが、私も大いに意見があるのですよ。保険を納めておる者の考え方として、いまものすごく窓口規制をやっているわけですね。この前も局長とここで質疑応答をやったんだけれども、なぜあの窓口規制をやるのかということなんですね。そして職安では断わるほうも、くれというほうも汗だくになって、大臣、毎日のように職安の中というのは喧騒状態になっているわけですね。その中の一群は、この前にお話ししたように季節労働者の一群なんです。出かせぎなんです。この窓口規制をなぜああやらなければならないのかということなんです。それはとりもなおさず、金額的にかなり苦しいということであるならわかる。法律的に窓口規制されなければならないという理由もいまのところない。金額的にも金はある、奨励金に回すくらいの金があるんだから。そうなると窓口規制されて泣き寝入りしている人方から言わせると、そんな金を奨励金に回すというのはどういうわけだ、おもしろくない、こうなる。失業保険は納めておるだけに、国民的なコンセンサスが必要であるから、この辺は当局側はどう思いますか。
  80. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘の具体的な内容は、いわゆる季節移動労働者、出かせぎ労働者の皆さんに対する問題だろうというふうに考えるわけでございます。季節循環的に離職をし、保険の支給を受けるという、こういう仕組みは基本的に失業保険制度になじむかどうかという問題があるわけでございます。そういうことから見まして私どもといたしましては大きな問題として検討しなければならないというふうに考えておりますけれども、しかしながら現実に出かせぎに行かれ、就労が終わって帰農され、失業保険を受けられる方々がかなりおられるという現実も無視できません。そういうことで失業保険制度の趣旨について給付者に十分に理解を得るように、窓口指導はやっているつもりでございます。一律に機械的処理を行たりというようなことをいたしませんで、各地方の労働市場に応じ、また個別の労働者の実情に応じ、適切な就職指導を加えるように窓口には十分指導しているつもりでございます。特に冬場と夏場におきましても若干取り扱いが異なってこようかと思います。現実の問題といたしまして、積雪寒冷地帯の冬場におきまして就職機会というものは非常に狭められるわけでございますので、そういう場合の扱いと、同じ積雪寒冷地帯でありましても、夏場におきましては就職機会は冬に比べればはるかに多いわけでございます。そういう場合には極力就職をしていただくように窓口でごあっせんするのも、これも当然かと思うわけでございます。いずれにいたしましても、一律機械的に締めつけを行なうというようなことのないように今後とも十分指導してまいりたい、かように考えるわけでございます。
  81. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題は、失業保険の問題の場合に、出すほうは役所でどうも手間がかかる。不親切だから、締めつけをしておるのじゃないか、一方ではいま言ったように福祉施設の問題、いろいろに金を出す。奨励金、助成金、全部失業保険の特会で出しておる。片一方で余っておるのに、片一方は出し渋るじゃないかという御批判は、これは相当あると思います。やはりこのごろ労働省のほうも各方面から、出かせぎの場合にも宿泊設備をせいとか、週休二日制になった場合には余暇対策等をせい、これは一般会計から出したいのでありますけれども、なかなか、やりたいわ、大蔵省ががんとしてきかぬわ、先ほど多賀谷先生からも御指摘のあったように、今後これらの問題に対して適当な、納得するような基準をひとつ設けたいという方針で、今年度は研究会もつくってこれに対処いたしておりますが、いまの出かせぎの方であろうがだれであろうが、これは当然公正にかつ迅速適正にやらなければならぬのは当然でありますので、今後離職者の方々の窓口行政を根本的に親切に、懇切に指導するようにしたい。この間県職安の責任者も呼んで、同時に身体障害者の問題に対してはもう少し親切にせい、その他出かせぎの問題に対しましても、関係者がよく話をいたしたのでありますが、いま川俣委員からの御趣旨の点も体しまして、一そうこれが改善されるように指示いたしますし、また、きょうの委員会の模様も、私の名前というのもどうかと思いますので、局長名でもって通達を出しまして、出かせぎの就労の安定の関係、また失業関係のほんとうに親切な取り扱い、また、ほかのほうに今後そういう福祉施設をやるんだったら、こっちのほうもちょっと、家族の場合の宿泊設備もやってくれという話も出てくると思いますから、これらもいろいろな問題を含めて、この間責任者も呼びましたが、なお一そう趣旨を徹底するように対処いたしたいと思います。
  82. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これはあまり締めつけると、年金と同じように資金運用の民主化という声が出てくるよ。人が出した金を福祉にそう使うのは、私は邪道だと思うんだ。これは二十七条があるから私も黙っているんだけれどもね。いいですか、局長。失業保険が出かせぎ労務者になじまないというのはそれなんだよ、この前から気になるのは。どういうわけでなじまないのか。
  83. 道正邦彦

    道正政府委員 失業保険も名前のとおり保険制度でございますので、保険事故というのは不特定のものでなければならない。そういう保険の基本から考えますと、失業が予定される場合に、これが保険制度本来の趣旨から見てどうか、こういう問題になるわけでございます。そういう保険の基本論がありまして、問題があるというふうに考えて、先ほどそういうふうにお答えしたわけでございます。ただ、現実の問題といたしまして、現行法の適用を受けておられる出かせぎの皆さんに対して、そういう原則論で対処するわけにはまいりませんので、先ほど大臣お答えいたしましたようなことで、窓口でのトラブルを避けるように、また個々の受給者の方々に御納得いただけるように懇切、親切な指導を加えてまいりたいというふうに考えております。
  84. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これは私も感じておるのでありまして、労災のほうは事業主のほうの関係でありますが、こっちは折半で、やはり権利を全部持っておりますから、自分が出したものを自分が取るのにうるさいじゃないか、そんなうるさいことを言うな、こういうふうな御不満がよく各地であることも聞いております。今後、いままでもやったつもりでありますけれども、なお一そう御趣旨の点を体して改善するように——いろいろ施設ができると、余ってつくるのだったら、われわれのほうをぐずぐず言うなというようなお気持ちも、これは当然出ると思いますので、なお一そう、現在の世相、現在の失業保険の加入者の世論というのも考えまして、特に、いま申し上げましたように必ず改善するように指示いたしたいと思います。
  85. 川俣健二郎

    ○川俣委員 局長、保険事故だから不特定というか、予定されてない、いわゆる失業を予定されているような場合はやらないという考え方はやめなさいというんですよ。林野の労働者はどうだというんだ。二万人には必ず秋十一月になれば失業保険をやるのだ。毎年やるのだ。二十五年やれば長官表彰するのだ。三カ月首切られて九カ月働きに来た、よく来たという表彰なんです。繰り返し雇用。あのやり方は繰り返し首切りだ。それに必ず失業保険が使われておる。だからその論争はやめなさいというのだ。  それじゃ、出かせぎの位置づけということになると、これは農林省のほうになるのだが、課長が来ておりますから農林省のほうに参考までに聞きたいのですが、統計的に見て、昔は出かせぎというのは、北海道では出面取りといったのだが、ほんの小づかい取りぐらいなものだったが、いまの農業所得と農外所得の関係とを少しお聞かせ願えませんか。
  86. 遠藤肇

    遠藤説明員 去る六月二十六日に、農林省かち昭和四十七年度の農家経済を公表いたしました。その結果によりますと、全国農家の一戸当たり平均の農家総所得が二百十一万七千円でございます。  その内訳を大きく三つに分けられると思います。その第一は、農業経営の収入から支出を差し引きました農業所得でございます。これが五十八万二千円でございます。農家総所得に占める比率が二八%弱でございます。それから第二には、農外所得と私ども申しておりますが、これが百二十五万二千円でございます。この農外所得と申しますのは、自宅から通勤で働きに出ておるものの労賃なり俸給なりそういうものの収入とか、あるいは都市近郊農家におきまするところのアパート収入とか、そういういわゆる兼業関係の所得でございます。それから第三には、被贈扶助収入ということばを使っておりますけれども、この主体になりますのが米の奨励金とかあるいは出かせぎ者が出かせぎ先から送金いたします送金額、あるいは持ち帰ってきた収入、そういうものを含めまして二十八万三千円でございます。総所得に占める比率が二・四%になっております。  近年の傾向を申し上げますと、私がただいま申し上げました中で、農外関係の所得の比率というものが非常に高まっておるということは、先生御案内のとおりでございます。ただ四十七年の場合には米の作柄の回復なんかがございましてかなり農業所得が回復したという事情がございまして、四十六年と四十七年を比較いたします限りにおきましては、農業所得の依存度がやや高まったという状態でございます。
  87. 川俣健二郎

    ○川俣委員 四十七年度はちょっと高まったと言うけれども、それは別のファクターだな。米の値段は確か五%上がったが、そんなに北海道などは——北海道くらいのものだろう。下北から北海道、確かに作柄はよかったけれども、それは別のあれですよ、そのあれは。いずれにしても、このように農外所得が非常に多くなった。そこで失業保険の窓口が締められておる、苦しめられておる、いじめられておる。典型的な労働者は十一月の十五日に出てきます。収穫を全部終わって、囲い終わって、つけもの終わって、じいちゃん、ばあちゃんに子供を預けて、家内と一緒に東京へ出てくる、こういう状態ですね。それで家内と一緒に出てくるのは東北では一割、あと九割は単身。単身で三カ月に一ぺん、だから正月は一回帰る、一回だけは帰る、こういう状態これが一カ月に収入が十三万円。それで四月の十五日になると失業がつくから上野駅は満員、代議士も切符が買えないという時期が四月の十日から十五日まで。山形、青森、新潟、岩手、福島、ずっと帰る。それが八十万人。そうすると夏場になる。これを締めつけようと考えて失業保険が改正になった。それで、それが五十一年の二月一日から適用になる。それによると、十四日働かなければいけません。いままでは一カ月十一日、六カ月働けばくれるものを、一カ月十四日働けばくれる、こういうわけなんです。それじゃ一カ月十四日働けばいいのかというと、そうではない。三十日おって十四日働かなければならない。そうなると農林省、おたく直接じゃないが、こういうことなんです。十一月の十五日に出かけてきた人は、五月の十五日までいなければ失業保険の対象にならない。この場合は種まきはあきらめざるを得ない。今度は四月十五日に帰って種つけをするためには十月十四日、五日ごろ東京へ出てこなければならない。この場合は収穫をあきらめることだ。たんぼづくりをやめる、米づくりをやめる。百姓をやめろということです、あの法律は。そうなると、そのような法案を六年間凍結させておいて、完全に、だれが何と言ったて締めつけには違いないのだ、労働省方向は。通達を出しておるから、通達をぼくもちらっと見たけれども、あまり安易にくれるな——通達を出しておるけれども、それはどの局長だ。そういうような状態にしておいて、こっちのほうで、福祉ですから二十七条の二が適用になるからこれを使わしてもらおうといったって、これは失業保険を出しておる人はおこるよ。これはどうです、局長
  88. 道正邦彦

    道正政府委員 先生のお気持ちはよくわかるつもりでございますが、保険制度のたてまえもあるわけでございまして、その点も先生に御理解賜わりたいと思うわけでございます。先ほど来お答えいたしておりますように、出かせぎである方々の生活問題に直結する重要な問題でございますので、あくまで窓口で制度の趣旨を十分徹底しご了承を得るような親切な扱いを今後とも続けてまいりたいと考えます。  若干ふえんして申し上げさせていただきますならば、保険全体の公平な運用という見地から見ますると、特定の産業あるいは特定の都道府県に集中的に保険料が支払われる、逆にその分をかぶっておる県のほうから見ますならば、あるいは産業から見ますならば、またこれが問題ではないかという批判が逆に出てくるわけでございます。その辺が私どもの非常に苦労のあるところでございます。  それから、保険料を払っておるではないかということでございますけれども、現在出かせぎの方方には九十日分の保険金が支払われておるわけでございますが、六カ月間にお支払いいただく保険料は労使の分を合わせましても四日分でございます。そういう保険料と保険金とのアンバランス、これも一つの問題ではないかというふうに考えます。いずれにいたしましても、この問題、非常に重要な保険の根幹に触れる問題でございますので、先生指摘のように五十一年一月末までには抜本的な検討をするという法律的な義務づけが私どもに課せられておりますので、現在研究会も発足させまして検討を始めておるわけでございますが、その場等を通じまして十分検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  89. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この前の質問のときも、五十一年二月一日から使われるものをたなからおろして再検討、こういうことで二、三日後に大改正ということになったが、それはその点で大体納得できると思う。ただ現実の問題、大騒ぎだということですよ。窓口は大騒ぎ。そこで適切な労働指導をやる三者協定の四十八年度の基準単価は二千四百八十円。二千四百八十円のうち、それじゃ——基準単価どおり東北ではくれぬから、その団体は最低一日二千円はということで要求しておるわけだ。ところが、その二千円で仕事があると思うか。局長どうです、あると思うか。二千円であると思うかね。二千円であると思うのかというのと、東北一帯のあの帰っていった労働者の失業保険というのは、くれるのが目的ではなく、仕事をあずけるのが目的だから、それでは一体、八十万人のうち半分の四十万人が東北へ行って、冬型とすれば、夏の仕事が二千円前後であるということが保証できますかね。あるんだったら失業保険をやらぬでもいいよ。ないから失業保険になるんじゃないの。そうすると、運のいい人とか、何かの調子の人がもらえるので、調子が悪いともらえない。こういう状態は労働行政としてはまずいですよ。いま四日分ということをおっしゃるなら、それはやるなら——私の言うのは、やらないならだれにもやるなと言うのです。やらないならやるな。失業保険をやらないということになったら、どうなるか。出かせぎ労働者いなかったら、地下鉄も霞ケ関のビルもおそらくなかったかもしれない。失業保険をやらなければ、労働の安定は全然ない。毎日のように飯場を歩く労働者になってしまう。それは失業保険というものがあるから定着性があるのだというのです、私の言うのは。だから、国全体の労働行政から失業保険を考えなければならぬのだから、局長その辺どうなんです。
  90. 道正邦彦

    道正政府委員 全く御指摘のとおりだと私は思います。失業保険は非常に大きな問題でございますけれども、いわゆる出かせぎ対策という見地から見ますならば一つの問題でありまして、基本的な問題、ほかにあるわけでございます。就労経路の確保の問題であるとか就労時におきます労働条件の問題であるとかいろいろあるわけでございますので、そういう点も失業保険法の検討とあわせまして、私ども出かせぎ対策を現在抜本的に検討をいたしております。そういうこととあわせまして、総合的に解決すべきはもう当然でございます。
  91. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、最後に詰めますけれどもその抜本的な大改正の中に、五十一年二月一日から使われるであろう六年凍結のたなに上がっているものも検討するということはいいですね。約束できますね。
  92. 道正邦彦

    道正政府委員 たなに上がっているというのは、中身は十四日の問題だと思いますが、この問題は四十四年の法律改正のときに、先ほど申し上げております出かせぎ労働者と申しますか、季節循環的に保険の受給を繰り返す方々に対する保険受給の問題をどう考え、どういうふうに法律制度化していくかということで、少なくとも現在の措置、十一日働けば一カ月とみなすという規定は、終戦直後の混乱期の産物であるので、十四日程度までは上げてしかるべきではないかということで国会で議決をされたものというふうに理解しておるわけでございますので、抜本的な検討をするわけでございますが、それは検討外だというふうなところまでは私申し上げませんけれども、まあ非常に合理性がある改正ではなかったか。と申しますのは、たとえば日雇いの失業保険につきましても月十四日、二月で二十八日という制度がすでにあるわけでございます。そういうこととの対比から見ましても、一般の被保険者の場合に、十四日程度の就労をもって一カ月とするというのは、それなりに私は合理性があると思っておりますが、先生の再三にわたる国会の場での御質疑もございましたので、慎重に検討すべく、この問題は研究会でも検討をわずらわせたいというふうに考えております。
  93. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一カ月に十一日じゃなくて十四日くらい働くのは当然じゃないかという言い方なら、これは当然だ、私のほうだってそのくらいは働かせなければならぬと思う。問題はそうじゃないのです。では、五月の十四日まで働いて五月分、一カ月とみなしてくれないのでしょう。どうなんですか。それをみなしてくれるのですか。違うのだよ。だから問題なんだよ。それじゃ五月一日から十四日まで働いていいのか。
  94. 遠藤肇

    ○岩田説明員 現在の規定によりますと、受給要件を満たす場合の期間につきましては退職日ごとにさかのぼっていきまして、退職日ごとの六カ月間ということになっています。
  95. 川俣健二郎

    ○川俣委員 したがって五月分は、一日から十四日までびっしり働けば一カ月分とみなすかな。
  96. 遠藤肇

    ○岩田説明員 その場合には、一カ月と見る場合十四日というものにはなりますけれども、離職日からさかのぼって一カ月、たとえば五月十五日にやめますと、さかのぼって四月の十五日を一カ月ということになっています。
  97. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうだろう。したがって妻子と別れて暮らす者にとっては、五月の十四日帰るためには、満たす一カ月というのは四月十六日からが一カ月なんだ。したがって、五月の十四、十五日帰るためにはどうなんですか。
  98. 遠藤肇

    ○岩田説明員 その場合、十五日以上ある場合にはそれを半月ということで計算するという計算方法は規定してございます。
  99. 川俣健二郎

    ○川俣委員 したがってさっき私が説明したように、十一月十五日がぎりぎり東京へ出てこられる農民なんです。出かせぎ労務者なんです。十一月の十五日、六日上野に来る人は失業保険をもらうためには何月までいなければならないか。いまは四月十四、五日なんです。
  100. 遠藤肇

    ○岩田説明員 十一月十五日にかりに就職したといたしますと、その方たちが離職して失業保険の受給要件を満たすためには、五月の十五日ということになろうと思います。
  101. 川俣健二郎

    ○川俣委員 したがっていまより一カ月多くいなければならない、種まきをあきらめなければならないということになる。これは先輩委員がこの委員会でかなりやったことと思いますよ。だから、一カ月に十一日じゃなくて十四日くらい働かしたっていいじゃないかというのは、局長、労働大臣、何も知らない人には悪いよ。もう一ぺんそれを答弁してください。
  102. 道正邦彦

    道正政府委員 出かせぎの方々が六カ月近い間現実に家族と別居して働いておられる、その期間がさらに長くなる。これは御指摘の問題に関する限りは、問題だと思います。ただ、それと失業保険制度とのかみ合わせをどう考えていくかというところが非常にむずかしく、私どもも苦労しておる点でございます。そういう意味で現在失業保険制度の抜本的な見直し作業に着手しておりますので、その検討の場におきまして慎重に検討させていただきたいというふうに思うわけでございます。
  103. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういう検討をするということであればいいです。  最後に、さっきの身障者のモデル工場も、きわめてりっぱな、労働施策としては港湾労働なんかに比べると雲泥の差のいい施策だと思います。加えて、定年延長の奨励金に失業保険を使うか使わないかという問題は、いろいろ異論を差しはさむだろうけれども、利害関係者としてはそういう要求があるのだ、だから失業保険の五十一年の二月一日までたなに上がっているものをさらに検討を加えてくれという要求があるのだから、この施策が悪いというのじゃないのですから……。
  104. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いまの局長、課長に対する御質疑の中でだいぶ私も勉強になりましたが、その問題は、ここでさっそくどうこうと言うことはできませんが、局長は慎重ということばを使いました。これは慎重だけでなく、十分考えて抜本的にやるのでありますから、いろいろの点を考えて善処します。
  105. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いまの、善処します、で私の質問を終わります。
  106. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後一時十分休憩      ————◇—————     午後四時五十五分開議
  107. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。石母田達君。
  108. 石母田達

    ○石母田委員 きょうは簡単にやりますので、単刀直入に幾つかの問題点について聞きますから、簡潔に答えてください。  今度の改正案で私が一番問題にしている点は、政令で定年をきめることになりはしないか、そういう問題なんです。この改正案に「労働省令で定める年齢未満の年齢を定年としている事業所」に対するというのがありますね。この省令できめるという問題は、たしかこの間の安定局長の答弁でも六十歳を五年の間に目標とするというようなことになりますと、省令で六十ということをきめることになる、そういうことでしょうか。
  109. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この再就職援助計画の問題でありますが、これは定年延長をやる過渡的な状況に対する措置でありまして、当然この援助計画は、当面の目標である六十歳に見合って、六十歳未満の年齢を定年とする事業所の事業主を対象とするものでありまして、本年一月に閣議で決定いたしました経済社会基本計画雇用対策基本計画にもはっきりと明記いたしておりますので、労働大臣が恣意的に時期をきめるとか定年制をきめるとかいうようなことは決してありません。目標は五カ年計画で六十歳でありますので、将来当然この六十歳に合わせて引き上げる考えでありますから、定年引き上げの目標年齢は、省令で定めるといっても六十歳以下になることは、もうありません。恣意的に省令でこうだというようなことは、実際は決してないのであります。
  110. 石母田達

    ○石母田委員 いまのことは定年制を省令できめるものじゃないのだというようなお話に聞いたのですけれども、そうじゃないのですね。
  111. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 一定の年齢の問題です。
  112. 石母田達

    ○石母田委員 年齢の問題ですね。そうすると、やはり定年の延長をはかるわけでしょう。いま六十ということになれば、これは動くこともある。そうすると、いまの大臣のお話ですと、六十より下がることはない、これは六十五にもなるのだということ、そういうふうに考えれば、何かの労働力需給の関係で下がることもあり得る。いま五十五歳が五十八%あるわけでしょう。五十九歳以下というと七七%ありますね。そうすると、当面五十五歳を六十にするということを目標にして省令で六十というものをきめる、こういうことですね。そうすると、結局、いまは六十ときめるけれども、あるときにはまた何歳かということで定年制を延長する。目標というものは絶えず——絶えずというか、変わることができるかどうか。
  113. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 一定年齢ということは、六十歳よりは下がることはありませんが、将来理想としては六十五歳ということも考えておりますから、上がることはあっても下がることはない、こういう意味でございます。
  114. 道正邦彦

    道正政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げたとおりでございますけれども、厳密に申し上げますと、労働省令で定める年齢というのは、直接定年を定めるわけじゃございませんので、六十歳の定年を五年以内に実現したいということに合わせまして、当面再就職援助計画を作成させる等の措置をとらせる事業主の範囲をきめる場合に、当該事業場において、六十歳未満の年齢を定年としている事業場、その事業場に対していろいろの援助計画等の措置をとらせる、そういう趣旨でございます。
  115. 石母田達

    ○石母田委員 もう少しちょっと核心に触れて答えてくださいよ。私の心配しているのは、省令で定年をきめるということになりますと、これは労働大臣ですね、この省令、しかもここで法的に保証されるわけですよ。そういう仕組みをつくってしまうということは、この間、これも答弁の中で言ったけれども、そういう定年の年齢というものは、本来労使の問題である、こういうふうに言われていたですね。それで一方では、答弁の中でも、今度定年の延長については、行政措置あるいは指導を非常に強めて、この定年の延長をはかりたい、こう一方では言われておるわけですよ。そこへもってきて、省令で当面六十歳ということで再就職の援助計画ということになると、これは当然定年の問題で出てくるのですから六十歳を省令できめれば、ある場合にはこれはまた変わる、いま当面の目標として六十歳なんだから。あるいは六十五歳になることもあるし、あるいは六十三歳になることもあるし、あるいは五十九歳、そのならないという保証は、法的にはどこにあるのか、ならないというならば。そういう、変わることがあるのじゃないかということを私は聞いているのだけれども、あるのじゃないですか。
  116. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これは法令ではありませんけれども、閣議ではっきりと二回決定いたしておりますので、労働省の省議でも決定いたしておりますし、一定年齢の問題は、省令で定めるときに、六十歳以下ということはありません。それが六十五歳、六十三歳になるということはありますけれども、六十歳以下になるということは——これはもう既定方針で決定いたしておりますので、法律でそれが明記になっておらぬ、省令ではたよりないといわれますと、そうなりますが、現在では六十歳以下のことは毛頭——これは世界の趨勢も大体週休二日制、定年延長と前進しているのでありますから、それが今度下がることは、これはあり得べきことではないことでありまして、それは確信をもって六十歳以下になるということはないとお答えできると思います。     〔竹内(黎)委員長代理退席橋本(龍)委員長     代理着席
  117. 石母田達

    ○石母田委員 ちょっと法律論になりますけれども、政策上の問題と仕組みの問題は明確に区別してもらいたいのです。私の質問しているのは、こういう仕組みをつくれば、そういう仕組みとしては変えることもできる。いま政策上の問題として定年延長をとっているから、当面は六十歳以下にはしないということは、内閣として、政府としてきめていても、御承知のように、戦前の労働者保険は、年金が五十五歳支給開始だった。それで五十五の定年が多かったし、そういうこともありまして、労働力の需要供給の関係で、そのときの定年という問題も、早くなったりおそくなったりすることが政策上あるのですよ。人が一ぱい余っているときはやはり、あるいはまた社会保障がうんと充実して、年をとってまで働かなくてもいいという場合は、定年制を下げてもいいこともあるかもしれない。そういう定年制というものは何歳がいいのだ、では七十、八十のほうがいいかということになりますと、定年制そのものというのははたしていいかどうかということは、これはまた論議の一つになるのです。ただ、日本の場合のように、社会保障が、公的年金制度も含めて、非常に不十分な場合に、この定年制というものをきめることがいいかどうかということもなおさら一そう問題になるのです。  そういうときに、私は今度の中で、仕組みとして、労働省の省令で労働大臣が、一応審議会にかけるけれども、そういうことをきめ得るという仕組みをつくるということについては、やはり労使の問題できめるべき問題に対して、省令できめるという仕組みをつくることについて非常に疑問を持っている。それがはたして正しいことかどうかということなんです。ですから、私は、六十歳にきめる年齢そのものについて、いま六十五歳にしろとか、あるいは五十八がいいのじゃないか、こういうことを言っているのじゃない。こういう仕組みをつくることについて、非常に法的に疑問がある、そういうことでございます。
  118. 道正邦彦

    道正政府委員 厳密に法律的に申し上げますと、ここできめます年齢というのは、定年をきめることではございません。なぜ六十ということをここできめるかと申しますと、われわれの当面の目標であります、五年以内に日本における六十歳未満の定年を六十歳まで持っていこう、引き上げようということを政府全体として閣議できめております。そういう方針がございますので、積極的に事業主に働きかけて定年引き上げを促進するわけでございますが、この対象の事業主は、当該事業場において六十歳未満の定年を定めている事業場、それを重点的に対象にして引き上げをはかっていただく、いろいろ援助もする、こういうことでございますので、厳密にここでは労働省令で定年そのものをきめるわけではないわけでございます。
  119. 石母田達

    ○石母田委員 しかしここでいっているのは、再就職援助計画というのは定年に達するということが前提になっているわけでしょう。法律に書いてあるように「定年に達する労働者の職業の安定を図るため必要があると認めるときは、」こうでしょう。ですから、定年と関係のない再就職援助計画じゃないわけです。しかもこの法律自体が、あなた方も言われているように、定年の延長ということを一つの目的にしているわけでしょう。それをいま省令で六十歳ということで当面きめようというわけでしょう。そうしますと、当然これは六十歳のほうに延長するように、足りないものを行政措置やいろいろな指導でやっていくというわけでしょう。これは一つのいまの段階での定年のめどになるわけです。そうでしょう、政府としては。ならざるを得ないでしょう。もちろん法律で定年をここできめてしまうのじゃないといっても、結果からいって。そうしなければ何のためにきめるかということになるわけなんです。そういう点で必然的に、私が先ほど言うように、そういう当面の政府としての目標というものを省令という、しかも労働大臣が変えることが可能な仕組みをつくることについては依然として疑問を持っているのです。それは先ほど言ったように、定年制そのものについても私どもは大きな意見を持っておりますので、そういうことについて省令できめることができることについては、皆さん方は政策上絶対に定年制の延長は前提であるし、六十歳以上、下げないということを田中内閣としては二度もきめたかもしらぬけれども、しかし、いままで長い歴史の中で労働者の余った時代はどういう時代であったか、いろいろな労働力の需給によって今後高作齢者層を自動的に排除するために、たとえば定年が五十五で年金のほうは六十でしょう。この間の五年間というのは、結局は高年齢層から見れば自動的に排除されるような結果を生み出す。たとえば最近の労働政策を見ましても、高年齢層というのは非常にいま日の当たらないところに置かれている面もあるわけですね。  ですからそういう点の中で、依然としてこの省令でこういう仕組みをつくっていくということは、皆さん方はだいじょうぶだと盛んに私どもに言いますけれども、いまもしたとえ一歩譲ってそういうことはあるまいと私は思っても、やはり法律というのは、これを決定してしまえば一つの独自のものとして歩み出すわけですから、その政策上、解釈上の問題で、いまそういう政策をとっていないからといっても、われわれはこの仕組みにいま賛成した場合に、あとはもし皆さん方と違った内閣が出てきて、そうしてそれの労働政策関係で定年制が、たとえば労働者不況でうんと余ってきたという場合に、これがどうなるかということを考えますと、私は決してこういう仕組みをつくることについていま賛成することはできない、こういう考えなんですよ。そういう私の懸念に対してもう一度……。
  120. 道正邦彦

    道正政府委員 政府がいろいろ助長政策をやる場合に基準をきめる場合がございますが、その場合に省令あるいは通牒で実施する場合がございます。この場合に、再就職の援助計画の作成等を義務づける基準といたしまして、六十歳以下の定年をきめている事業場を対象にして行政を進めていくということをきめておるわけでございますので、先生御懸念のような心配はないと私は思います。
  121. 石母田達

    ○石母田委員 この点は、あなたはそこのところを切り離してやりますけれども、さっきから何べんも繰り返すように、再就職援助計画というものは定年制の延長という問題で出てくる問題です。単に再就職援助計画を事業所にやる、その年齢を六十にきめて、それに行政措置をするというのではなくて、これは定年と一体のものですから、定年の延長から再就職援助計画が出ておるわけですから。あなたがそういう立場でおっしゃられるなら、私はこれ以上追及いたしませんけれども、私としては、そういう仕組みの問題として、省令でこういうことをきめ得るという余地を残すということについては賛成できない。この点が一つの大きな問題点であります。  それから第二の問題点は、いま再就職援助計画を出させますね。その事業所に担当者といいますか責任者というものを法的にきめることになるわけですけれども、これも労働省令ですかで再就職援助計画を作成し、安定所長に提出する。「その雇用する者のうちから、再就職援助担当者を選任し、その者に、」云々、こういうふうに書いてありますけれども、これは身分上では会社の機構の中にできるわけですね。
  122. 道正邦彦

    道正政府委員 そのとおりでございます。
  123. 石母田達

    ○石母田委員 その身分というものは大体どういう人ですか。たとえば人事係だとか、大体そういう関係の職制の方がなられるということですか。
  124. 道正邦彦

    道正政府委員 おおむねそういうことになると思います。
  125. 石母田達

    ○石母田委員 そうしますと、いまいろいろ労務政策で問題が出ているわけですけれども、政府がいままで職業安定所、失業対策ということをやってきたこの業務が、さらに今度事前に、まだ就職しているけれども定年になるだろうということを予想して、出張していって——出張というとおかしいけれども、形の上からいうと、そこの任務を担当する人が会社の職制の中にできる。これが職業安定所長にいろいろな計画を出したり、援助も受けたり指導も受けたりする、こういう機構になるわけですよ。そうしますと、会社の中にまた一つの公的な権限を持つ、そして法的に保障された担当者が、さらに職制の中に、同じ人でもそういう人が加わるということになるわけです。そうしますと、労働者の側から見ると、労務管理政策というか、そういうものからいうと、よくいわれる締めつけというか、そういう点がもう一つ、単に労使関係だけではなく、そこに公的な権限、公的な援助を受ける、人間は同じだけれども、そういうものが新しく加わるという形になるのじゃないでしょうか。     〔橋本(龍)委員長代理退席竹内(黎)委員長     代理着席〕 その点の労使の問題なんかについて、問題は起きませんか。
  126. 道正邦彦

    道正政府委員 担当者が選任されましても、それはあくまで企業従業員でございまして、事業場がいわば当然に行なうべき定年延長の仕事を責任を持って果たしていくというだけでございます。何か特別な権限が付与されるわけでもございませんし、労働者なり労働組合に対して一段上の立場からどうこうするということはあり得ないものというふうに考えます。
  127. 石母田達

    ○石母田委員 それじゃ、たとえば定年になる人が再就職する場合に、いろいろな条件でそこへ再雇用される場合がある。それから、会社があっせんしてどこかへ行くということで、下請なんかに行ったりする。それから、職業安定所へ行って、そこを通じて再就職する。再就職する場合には大体この三つの場合が考えられますが、どうでしょうか。
  128. 道正邦彦

    道正政府委員 理想的な形は六十歳までとにかく定年を延ばしてもらうということであろうと思いますが、過渡的にはやむを得ず定年退職する方を出さざるを得ない。その場合に、いままででしたら、企業によりましては、再就職に非常に熱心に努力をする企業もあったわけでございますけれども、中にはそうでないところもあったわけでございます。それを、全事業場に対しまして担当者を原則としてきめていただきまして、責任を持って当たっていただこうということでございます。
  129. 石母田達

    ○石母田委員 私は三つの可能性を言ったけれども、それでいいならそれでいいと、私の質問に答えてください。
  130. 道正邦彦

    道正政府委員 その場合に出てくる形としては、先生おっしゃるような類型が考えられると思います。
  131. 石母田達

    ○石母田委員 そこで、何の権限もないと言うけれども、いま見ると、退職して九〇%以上は再就職するようになりますよ。定年になって隠居して余生を楽しむというような年じゃないですから、いまの世の中じゃ。そうしますと、生活がかかっておる。どこへ再就職するか。それを世話する職業安定所と会社側が一緒にいるわけですが、そういう労働者自体が定年に達した場合、自分をいいところへ世話してくれるだろうかどうか、ちょっとオーバーに言えば、生殺与奪の権をその人たちは、まあ客観的には握れるわけなんです。その人たちが選んで、どういうところへあっせんするかという計画をきめるわけですから。しかも、職業安定所と会社が一緒になった機構が同じ会社の中に出てくるわけです。そういういままで職業安定所でやった機能を担当する人が職制の中へ出てきて、その会社の中では、職制的な仕事とそういう公的な権限を持つ職業安定所の仕事をやり得る。こういうことになりますと、これはあなたの言うように権限が変わらないとか責任は変わらないとは言えないです。  労使問題からいうと、労働大臣、あなたは専門ということをよく言うが、労働者の側から見ると違うでしょう。自分の生殺与奪の権、再就職のところを決定したり相談に乗ってもらう職業安定所のような機能と、それから会社の職制の機能と声あわせ持った人が、会社の中に機構として出てくるわけでしょう。そうした場合にはやはり労働者としては、そこには頭が上がらないですよ。そうでしょう。皆さん公務員の方だってそうでしょう。あまり卑近な例を出すとあれなんだけれども、実際そういうことはあると思うんですよ。
  132. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これは新しい今回の改正案でありまして、私と打ち合わせを政府委員としたものではありませんが、大体老人の雇用の問題、定年の延長の問題、再就職の問題、訓練の問題、どうも職業安定所だけでは役人的なもので困る、やはり事業主がその認識をすることが一番大事であるというので、担当の人はきめますけれども、事業主自体が世話するように、かわってやるものだと私はこの法案の内容を見たときから——その人が権限を持つというよりは、やはりよく自分の従来員のいろいろの性格その他を知っておりますから事業主がやれば当然なんでありますが、事業主はいろいろな会社全体のこともありますので、事業主にかわって担当の方がきまるというので、そうそう生殺与奪というか、安定所の下請のお役人になったということにはまあならぬので、事業主は適当な、それに向くような方を選任するということになるから、そう御心配は——これは古い話になりますけれども、手配師とか港湾の関係のようなそれとはちょっと違うので、私はなかなかいい案だと思うのであります。私のいろいろな体験から考えて、これはなかなかよくできておる、こういう感じがいたすのでありますが、どうも石母田委員と意見が食い違いますけれども、なお詳細はちょっとこちらから……。
  133. 石母田達

    ○石母田委員 私はたまたまそういう職業安定所の法的に保障された人が、こういう業務をやる人が大会社の職制の中に出てくる。その職制の人がいいとか悪いとかそういう人間的なことは別ですよ。ただ、こういうふうに仕組みをつくった場合に、その人の権限というのはいままでよりは大きくなる。たとえば学生なんか、まだ就職しない前に青田刈りをやられる。大体何カ月前にどこの会社へ行く、その会社の権限を持った者が先に乗り込んできて職制と一緒になってあいつはいい、こいつはいいなどとスカウトしてごらんなさい。みんなそれはいいところへ入ろうと思う。学生でも何でもそうだと思う。いまの労働者が定年退職して再就職していいところへ行きたい、何とかして賃金が下がらないで、しかも楽なところをさがすのはあたりまえです。そういう場合に仕事をあっせんしてやる仕事の人が、職業安定所で仕事をやっていただけじゃなくて、指導を受け、ある程度の権限の委譲を受けた人が、この会社の機構の中に出てくる。たまたまそれは会社の人事課長とか、そういう職制の機構だけれども、それと一緒になって指導、援助を受けて、どこへ再就職するかということを、それ以前にまだ就職している労働者が、その事業所で働いているそういう事態から、その職業安定所が機能を発揮している職制を通じてやるわけですから、労働者から見ていままでと違った形になってより大きな権限と力を持った職制、機構ができるということは当然考えられると思うのだけれども、それはどうして否定なさらなければならないのか。法的なものからいうとそういうふうになるのじゃないのか、そういう面も出てくる。どうですか。
  134. 道正邦彦

    道正政府委員 どうも先生のおっしゃることがよく私ぴんとこないのでございますけれども、権限よりも、私は、むしろ義務を負うことになりまして、たいへんなことだと思います。先生のおっしゃるように労働者の意向を無視してかってにやるということはいかぬわけでございます。しかるがゆえに、安定所と協力をして、計画も安定所に出していただく。相携えて、安定所も義務を負って、担当者も義務を負っていただいて、労働者意見も聞き、少しでもいい条件のところへ行っていただこう、こういうことでございますから、権限じゃなくて義務を負うので、たいへんな仕事をやっていただくわけでございますから、そういう先生の御指摘のようなことは、私は万あり得ないのじゃないかというふうに思います。
  135. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これはこの間全国の職安の連中を呼んだときにも私は立ち会ったのでありますが、この法案を説明したときに、これは職安のあなた方の仕事を代行してやる機関でないぞ、結局出先機関だというような考え方をして、きみたち忙しいからそれを下請させたようなことでない性格のものだ、こういうことはもう省議でもきまっておりますし、職安の連中もあれですが、どこへ行ってどうだということが、いままで行っても、もう一つ相手方のほうが、勧誘に行くような調子でひとつお願いいたしますというようなかっこうで求職の関係をお願いしておるものを、法律的にそれを書いて義務づけてお世話さす下請だという関係はないし、権限もないので、どっちかといえばことによったら少しこれはもう御迷惑しごくな話で、下請的な機関は行政措置としては毛頭やる気持ちはございません。
  136. 石母田達

    ○石母田委員 ですから、そういう意図がありませんとか意思がありませんと言われるとあれですけれども、私実際に常識的に考えたら、定年退職した人は再雇用か、そこの会社に残るか、それを別にしますと、あっせんしてどこかへ行くわけです。いい会社へ行く人もある、悪い会社へ行く行もある。しかしここに統計が出ているように、みんな生活に困るから定年後も働きたいわけでしょう。そういった場合に、いままで、職業安定所へ行く。悪い仕事だったら断わることもできるのです。断わる自由もある。選ぶ自由がまだある。会社へ行ってあっせんする。いま会社へ行ったって職業安定所へ行ったっていい仕事はあります、こうなる。いままでだったら会社の仕事をあっせんされて、あまりよくなかったら言うことを聞かなかったらいい。労働者は何も職制にぺこぺこすることはない、やめてからおれはいいところへ行く、こういうぐあいになります。ところが今度職安の機構と援助指導を受けた人が職制で来るわけです。そうすると会社の中の時代からあなたは定年に達して再就職して、たとえば会社からあっせんして行かれるにしても、職業安定所へ行くにしても、職制の言っていることは職業安定所とも十分連絡をとって、指導を受けてあなたに言っていることだ、この会社にあなたは行きなさい、行ったらどうですか。そういった場合に労働者は、前みたいに何を言ってやがんだい、こうはね飛ばしにくい状況がある。おまえは安定所へ行っていいところでやれるからと思うかもしれないけれども、そんなに甘くないぞ。これはちゃんと安定所の所長さんから指導、援助を受けて、これがおまえには一番いい仕事だといってやっているんだということになれば、労働者から見れば、これはもうその事業所につとめている職制の問題とその言うことも聞かなければならない。それから職業安定所に出てからお世話にならなければならない。話も事前にそういう労働者従業員という身分の中で出されてくるわけですから、当然そこには労務管理、労使関係の形ではそれに大きな影響を受けざるを得ない、こういうものは労使問題を扱っても当然に考えられることなんだけれども、あなたたちは首をひねってそんなことはしませんだとか、義務が多くなる。これは私は職制の人にはあると思いますよ。ますますおっつけられて職制の人は仕事が多くなった、そういうことはあるかもしれないけれども、全体の労務管理、労使関係から見ればそういう問題は起きてくるのが当然だ、そういう仕組みをつくってしまうことになりはしないかということを私は心配しているのであります。
  137. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これはほんとうに掛け値なしにそういうことは全然頭になかった、私もなかった、役所もなかった。職安の連中もなかったのでありますが、石母田議員の話を聞きますと、そういうこともそれはという感じがいたしますので、これは法律でまた明記もできませんので、行政的な措置あるいはことによったら省議でも、御趣旨をよく体した方向、担当官を、御趣旨に沿うような方向に何か省議できめて、職安にそれを通達する、こういうような方向で、そういうような弊害はないように、これは全然局長も考えなかった、私も考えなかった、職安も考えなかったことをよく言われますが、ああなるほどそういうことも考えられるなというような感じでありまして、今後さようなことがないように、行政的な措置をさせたいと思います。
  138. 石母田達

    ○石母田委員 そういうことをよく考えていかないと、やはり労働者立場に立った行政はできませんので、検討していただきたいというふうに思います。  第三番目の問題は、いわゆる失業保険会計の運用の問題なんです。これは先ほどから質疑応答されておりますから、私は重複を避けますけれども、先ほどの答弁でも、違法ではないから——確かに違法ではないかもしれません。しかしだれが考えても、そういう失業保険という失業者の社会福祉施設というものの会計が定年制の延長の奨励金だとかいろいろなところに使われるということについては、やはり先ほどの質問にもありましたように、これは正しくない。先ほど私聞き違いかどうか知りませんけれども、局長がこれは法に合った非常に合理的な使い方だというところまで言っていたようですけれども、その根拠をもう一回言ってくれませんか。
  139. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 それはあとで……。またちょっと出過ぎるかもしれませんけれども、これはよく研究いたしまして、第一条にははっきりと、御存じのとおり「目的とする。」となっておりますが、これは失業保険の大筋の第一条に書いてありますが、いろいろ内容を私もきのう朝四時半まで読んだところが、なかなか含みのあることがいろいろありまして、二十七条の二その他、もう理屈になりますから言いませんけれども、失業保険以外のほうのところにも、局長から話があったようにこれは法律の趣旨には違反いたしておりません。しかしこの点については、また局長から話もいたしますが、先ほど言ったように、やはり労使で折半で出したものが、片っ方のほうでは失業保険を取りにいきますとなかなか手間がかかる。それ以外にいろいろな福祉の問題だ、奨励金の問題だ、金がどんどん出る。それだったらひとつ失業保険を改定してくれ、こういうような御意見が各方面から出るのは当然であります。私も多少これは考えなくてはならぬ、こういう意味で八月から予算の編成にも入りますが、これに対しましてこの問題も大いに検討せい、こういうので当然失業保険制度研究会並びに中央職業安定審議会の諮問も経るのでありますけれども、この両機関にはかってこの問題に対してひとつ基準を設けて、いろいろ金を出す前に——ただ雇用促進事業団だとか役所だけでかってなことはできぬというようなことで、私はひとつ基準は、これはつくらなかったら納得せぬと思います。そういう意味で福祉施設の問題その他今後この運用のあり方などについて、いろいろ本日の審議の過程も見まして研究課題として考えなくてはならない。だんだんとそういうような世論が立ちますと、一方で福祉施設が、これは意味がないことになる。やはり法律の運用では最近は、福祉施設はやれ一般会計から出せ、しかしなかなか出ぬ、労働省としてやろうとすると失対のほうの特会から出す、こういうようにルーズになっても困りますから、この問題に対しましては今後、ただ慎重でなくして私は相当の基準をつくりたいというかたい決意を持っております。
  140. 石母田達

    ○石母田委員 それで、先ほど局長のことばがそうだとすれば、たしか失業の予防ということでの発言だと思いますけれども、しかし私は、いま大臣が言われたように本来の目的はそうなんだ、それが本来の目的なんだ。ですから違法でないからといってそのほうが合理的で法に合った使い方だということまでいくと、皆さんも御承知のように、ことし二月の中央職業安定審議会の建議の中でも定年延長奨励金などを失業保険の福祉施設として行なうことについては、当審議会における失業保険の福祉施設に関する従来の論議の経過から見て問題がある、こういうものに対して問題があると指摘されたことに対して、これこそが合理的で法に合ったものだと言うことは、まさに審議会のこういう建議に対する、極端なことをいえば挑戦じゃないか、そういうふうに受け取っていいのかどうか。よくあなたたちが言われる、審議会のことをよく尊重してやるということになれば、先ほどの局長の発言は適当でないというふうに私は思いますけれども、この点について大臣の見解もお伺いしたいと思います。
  141. 道正邦彦

    道正政府委員 私は先ほど、失業保険法の二十七条の二の規定によれば、失業の予防その他労働者の福祉に失業保険会計から支出することは法律上問題がないというふうに申し上げたわけでございますけれども、ただ同時に、本来の目的は失業の予防にあるわけでございますから、やはり全体とのかね合いが要るということはあわせて申し上げたつもりでございます。その基準をしからばどこに求めるかということにつきましては、ただいま労働大臣からお答えもございましたように、また安定審議会からもかねがね御意見をいただいておりますので、失業保険制度研究会なり中央職業安定審議会、にはかりまして、労使の御納得のいく合理的な基準を定めまして、そのもとで運用していくということは私は当然だと思いますので、今後そういう方向努力をしていきたいと思います。
  142. 石母田達

    ○石母田委員 もう少し端的に言ってください。先ほどの発言からいくと、そんな検討する必要はない、建議でも問題があるといっておるけれども、こういう使い方こそ合理的で法に合ったものだという積極的なものとして聞いたから私は再確認したら、あなたはそう言われた。そういうことになれば、労働大臣の発言は、今回こういう措置をとったけれども一般会計かう——まあそこまでは言わないけれども、いろいろなことを含めて検討しなければならぬ、こういう内容で問題があるということ、これは建議の方向だと思います。それがあなたの発言を聞いていると逆なんだな。こういう使い方こそが積極的、合理的で合法的なんだ、ここまでくると、私はやはり先ほどの発言はそういう部分は不適当だ、こういうふうに思います。
  143. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 まあ局長の発言は、決してこれは当然だと思うのでなくして、一方は、いろいろそういう要求がだんだん各方面から熾烈になってくるから、まあ二十七条の二その他のいろいろな関係から見ると妥当——妥当というのでなしに、やってもいいといったことで、それが当然でどんどんやったらいいという意味では決してありません。これは私がいろいろ、ちょっとでっかいことをやろうと言ったときに局長から、大臣、それはいいことであってもなかなかむずかしいというので、私と同意見であります。これは私大臣就任のときに、先ほどもちょっとお答えいたしましたが、労働省大臣は、大蔵省へ行ったって、結局特会の問題までも、いろいろむずかしくなかなか困難だ、特会は自分の手足を食うようなものだからそれはあなた方の方針は違っておる、こういうのが私の就任当時からのしろうとの考え方で、だいぶん勉強いたしましても現在その方針は変わっておりません。そういう意味で、しかし福祉の重要性その他奨励金、いろいろなことを考えますと、多少これに応ずるような施策も講じなくちゃならぬというジレンマもあります。しかしこれが野放図になって、だんだんとそのほうが重点になって本来の姿を忘れる、こうなったらたいへんでありますから、この問題につきましては局長意見も私の意見も決して変わっておりませんが、今後御趣旨を体しますし、私の信念の向かうところに従っていろいろ研究しました基準もつくって、現在の労働行政に合致した方向推進いたしたいと思います。
  144. 石母田達

    ○石母田委員 局長、いまの労働大臣方向で、さっきのあなたの発言、あとで議事録を調べてそれに触れる部分についてはやっぱり取り消しというか、あなたのほうから改めていただきたい、こういうふうに思います。よろしゅうございますか。
  145. 道正邦彦

    道正政府委員 ただいま大臣からお答えがございましたように私もそのとおり考えます。乱にわたってはいけないというふうに思います。
  146. 石母田達

    ○石母田委員 もう一つ、今度の工業配置促進法との関係の問題なんです。御承知のように、これは日本列島改造計画に基づいて田中内閣が全国に工業を再配置するということでいま非常に国会の中でも論議の問題になっているわけですし、特にこの工業配置促進法に該当するであろう工場では移転問題が非常に大きな問題になっているのです。先ほどの質問にもありましたように、いま都会からわざわざいなかに行くというのは非常に問題があるわけですね。しかもそこにはいろいろな交通上の問題、住宅の問題、それから特に中高年齢層の人たちには子供たちの学校の問題とか、たくさん問題がありまして、なかなか計画どおりには動いていないと思うのですけれども、この工業配置促進法の移転の際で、失業保険から出される部分があるんじゃないですか。失業保険の会計から出るのは移転給付金というのですか。
  147. 道正邦彦

    道正政府委員 従業員移転対策は種々用意しておるわけでございますが、移転に伴う移転給付金、これは引っ越し代あるいは都会地から移転先へ行く旅費、これを移転給付金として出しております。これは特別会計から出ます。
  148. 石母田達

    ○石母田委員 こうなりますと、先ほどから言うように非常にはっきりするのですよ。失業保険というのは失業したときのお金でしょう。移転給付金というのは、失業とは関係ないですよ。予防にもならないんだな。どうなっているのか。工業配置で、これは就職している状態でしょう。これは移転給付金という五千七百六十万というやつでしょう。それは在職していて、移転の求職活動の内容でしょう。そうすれば、失業保険の会計の目的からいうと、さっき言った問題が出てくるのじゃないかと思いますけれども、これはいいです。この問題は切りましょう。あなたのほうとあまり詰めてもあれですから、それは検討してください。  私がいま言ったのは、工業配置促進法の問題なんですけれども、きょう通産省の方見えておると思いますので、工業配置促進法で該当になる工場の面積とか規模だとか、該当する促進地域と、それからどういう工場、たとえば何坪以上とか何平方メートルとか、それをちょっとこまかいことを教えてください。
  149. 志賀学

    志賀説明員 御説明いたします。ただいま先生からいろいろ御質問ございまして、中にはわからぬ問題もございます。  まず地域でございますけれども、地域は、工業配置促進法の第二条に基づきまして、「移転促進地域」とそれから「誘導地域」、この二種類の地域を指定しております。お尋ねの御趣旨から申しますと、移転促進地域のほうのお尋ねでございますのでお答えいたしますが、移転促進地域は、これは昨年の十月二十四日に政令によって指定されております。それで具体的に指定されておりますのは首都圏の既成市街地、これは大体東京都の特別区の全部、それから武蔵野市、三鷹市、横浜、川崎、川口、この辺の一部でございます。それから近畿圏の工場等制限区域というのがございますけれども、その区域、これは具体的には大阪市あるいは布施、堺、守口、神戸、こういったところの地域でございます。それから名古屋市、大体名古屋市とお考えいただいてもけっこうでございますけれども、この三地域が指定されております。ただ一部、たとえば昭和三十七年の一月一日以降に完成いたしました中小企業のための団地であるとかあるいは埋め立て地であるとか、そういったものについては若干の例外がございます。大体移転促進地域の範囲はそういうことできめられております。  この移転促進地域の中に工場がどれくらいあるかということでございますが、ちょっとこれは私、工場数でははっきり、いま手元に資料はございませんけれども、これは製造業である限り例外はございません。中小企業全部もちろん対象でございます。と申しますのは、現在の工場配置対策というのは、助成を与えて、要するに移転を促進していこうということで、規制はやっておりません。そういうことから中小企業も含めて助成の対象として取り上げております。この移転促進地域の中で生産されております製造工業のウエートでございますけれども、これは大体全国の三割、製造工業の製品出荷額のうちの約三割が移転促進地域の中で生産されておる、こういうような感じでございます。
  150. 石母田達

    ○石母田委員 規模も面積も制限なしですか。何か私二百坪か三百坪か、何十人とか二十人とかいうふうに聞いたんだけれども、それはないですか。
  151. 志賀学

    志賀説明員 これは先生御承知だと思いますけれども、昨年工業配置促進税制というような税制も検討したことがございますが、そのときには中小企業を除こうというようなことを考えたことがございますけれども、先ほど申し上げましたように、現在の工業配置対策というのは、移転する企業に対して助成をして移転を円滑にしていこう、こういう趣旨の対策でございますので、中小企業も含めて対象にする、むしろ対象にしないと助成から落ちる、こういう形になっております。
  152. 石母田達

    ○石母田委員 その中に助成するという法的な保証というのですか、移転の中小企業だとかあるいは労働者の住宅だとか、そういうものについては保証するような法的な処置というのがあるのですか。法律の中か施行規則だとか何か……。
  153. 志賀学

    志賀説明員 法律上の助成措置といたしましては、法律上はっきり書いてございますのは、税制上の措置がございます。これは移転企業移転計画の認定を受けて、これは適当な計画である、たとえば従業員との間で十分な検討が進められて、雇用上全く問題がないとか、あるいは下請企業との関係も問題がないとか、あるいは行った先で環境破壊を起こさないとか、そういったいろいろなチェックをいたしまして計画認定をいたします。そういたしますと、加速償却、これは残っております旧工場移転する旧工場の設備が、償却期間がまだあるというのを早く償却させる、加速償却制度といっておりますけれども、そういう制度の恩典がございます。あるいは地方公共団体のほうで固定資産税を減免する場合には、その分を交付税で補てんをする。こういったような措置、これが工業配置促進法の中に書いてございます。  なお、その計画の認定の際の要件は施行令できめられておりまして、ただいま私が申し上げたような要件が入る。そういう意味では法律的にギャラントされておるわけでございます。  それからそのほかの対策といたしましては、工業配置・産炭地域振興公団という公団から、移転あと地見返り融資というような融資制度がございます。これは移転企業に対して設備資金あるいは運転資金が融資される、こういう制度でございます。これはもちろん企業の規模は問わないということになっております。そのほか工業配置促進補助金であるとか、そういった措置がございますけれども、いずれにいたしましてもこれは製造業である限り規模の大小は問わない、こういうことになっております。
  154. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると労働者自体に対する援助というのは直接的にはない。いま間接的に……。
  155. 志賀学

    志賀説明員 従業員の方に対する助成措置、これは私どもの省としては直接はしておりません。これはむしろ労働省のほうでいろいろ御検討いただいて対策を講じていただいておるところでございますが、ただ先ほど申し上げました工業配置・産炭地域振興公団の融資、この中にはいろいろ労働者の方が、たとえば向こうで住宅を建てるとか、企業従業員のための住宅を建てるその資金であるとか、あるいは従業員の方の移転のための一時金とかいろいろございますけれども、そういった資金需要、これは当然融資の対象に入ってまいります。
  156. 石母田達

    ○石母田委員 そうしますと第二条の五の今度の改正は、「工業配置促進法第二条第一項に規定する移転促進地域から同条第二項に規定する誘導地域への工場移転に伴い住居を移転するために宿舎の確保を図ることが必要であると公共職業安定所長が認めるものに、移転就職者の利用に支障がない限り、貸与することができる。」ということは、この工業配置促進法で動く、移転する労働者に限るということですね、これは。
  157. 道正邦彦

    道正政府委員 そのとおりでございます。
  158. 石母田達

    ○石母田委員 そうしますと、先ほどから問題になっております促進地域のほうから誘導地域というのは、まあいなかですね、都会から見れば。非常に不便なところへ行く。そこにおける住宅問題で、そうしたところに建てられている宿舎というものは、これが利用できる相手のほうの宿舎というのは、誘導地域にどのくらいあって、それがどのくらいの部屋があいているものか。それについて、こまかい数字でなくてもいいのですけれども、大ざっぱでもいいですから教えてください。
  159. 道正邦彦

    道正政府委員 現在誘導地域に建っております雇用促進住宅は二万二千戸でございます。この全体の入居率は、平均でございますけれども八二%程度でございます。
  160. 石母田達

    ○石母田委員 こういう利用率ではほとんどふさがっていると見ていいのじゃないでしょうか。その誘導地域の場合はいなかだからあいているのが多いのかどうか知りませんけれども、私の見た数字では一番低くても七〇%くらいあったのじゃないかな。
  161. 道正邦彦

    道正政府委員 雇用促進住宅は、設置の趣旨から申しましてある程度のあきが必要でございますが、われわれの指導方針といたしましては、一〇%程度は常時あいているのが望ましいというふうに考えております。そういう九〇%という率から見ますと、全体として八二%だからそう問題にする必要はないのじゃないかという御指摘だろうと思いますけれども、地域によりましては大幅に下回っているところがあるわけでございます。しかも諸般の事情から、近い将来に移転就職者が入居するという見通しもないというところもあるわけでございます。そういう場合には例外的に工業配置に伴って移転した従業員に貸与することを認めても、それはいいじゃないかということで、こういう法律がございませんと、移転就職者つまり離職者でないわけでございますから入れないわけでございます。そういう点を法律的に整備いたしまして、移転就職者宿舎の設置目的に反しない限度において入居を認めようとするものでございます。
  162. 石母田達

    ○石母田委員 きょうはなるべく時間的に協力して、あと二十五分あるのですが終わりますけれども、私はこの点について、問題点としては、一つは事業団の宿舎、これは失業者就職ですね、広域に移動する場合の宿舎なんです。それを今度は、いわゆる工業配置促進法に基づく企業がよそに法によって移転しなければならぬ、在職している労働者がこれを利用する、こういうことですね。これは事業団で、いまあれは一年以内になっているでしょう。たしか短期になっているでしょう。しかし皆さんも行った方があるように、いまの住宅難ですから、実際にはそこに居つくといったらおかしいけれども、長期になる人が多いのです。そういうことですし、特に誘導地域でちょうどうまくこういう宿舎があるところへまた工場が行くとは限らないわけでしょう、先ほどの数から見ても。これはお聞きしたんだけれども、そのほうは建設省で何か一万戸か建てる計画があるのだといって、労働省としては人頼みとなりますが、私はそういう失業者が再就職のために使う宿舎を、今度在職の者で法のために移転をやむなくされる、そういう人たちに使うということ自体がひとつ問題があるのじゃないか。もちろん困っている者は相見互いということもありますけれども、そういう問題についても工業配置促進法をつくった、それをやらせる責任がある者がきちんと保証する、そういうことなしに、こういう法律をかってにつくって、そして労働者に行け事業者に行けといったって、これはほんとうに無責任きわまるものだと私は思うのです。それをもう建設省がやってくれるだろうと思って労働省が引き受けてやるということは、私は工業配置促進法に労働省はどういう態度なのか、そのしわ寄せは全部引き受けてやるといったのかどうか知らぬけれども、これは重大問題ですよ。  それから私は、工業配置促進法そのものに共産党は反対だった。それはもうここでは多くを語りませんけれども、私はこの雇用対策の問題からいったって、もしこれが法どおり実施されたらたいへんなことになるのです。労働省の方にちょっと聞いたんだけれども、この移転の対象になって問題になるときに、私が心配した中高年齢層は案外ついてくるというのです。それ以外に行くところがないから、どんなにひどくても一番困難な人がついてくるというのです。むしろ若い人は、おれはどこに行ったっていいのだといって集団的にやめていくというのです。それはそうでしょう。そうなってさましたら、あなたたちがこの基本計画だとかなんとかいってやっているこれは、雇用対策全体から見たって非常に重大な問題になりますよ。これを見込んで今度の改正をなされたかというと、ちょっとこの工業配置促進法はぽかっと出て、そのしりぬぐいは何も法律労働者のことはあまりきめてないから、何かちゃんときめなければいけない。あき部屋があるかどうかなんということは、これは私はさっきの利用率から見てもなかなかむずかしいと思いますね。こういうこそくな手段でもって工業配置促進法を進めることに何か手を貸すということについては、私は工業配置促進法に反対している者として、これはとても賛成できない問題だ。しかしもう法律が実施されているわけですから、そのことによって出てくるそういう労働者移転だとかいうことについては、別なところできちんと保証すべきだ。こういうことは労働者に責任はないわけですから。そしてそういう問題をこういうふうな中にすべり込ませるというようなことは、この法自体が非常に間違ったものに解釈される危険性があるし、私としては同意できない一つの大きな理由になっているわけです。そういう点についてぜひこの点についての検討を深めていただきたい。これを労働大臣にお聞きしたいと思います。
  163. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 これはいわゆる政府がやっております工業配置を、労働省がその肩を持つというよりは、労働省立場で、お困りの方の、工場移転して住むところがなくて困るという者に対する臨時的な、移転就職者の方の暫定的な住宅でありますので、いま石母田議員からこの問題と再配置問題のいろいろな矛盾の御指摘もありますので、十分——要は事業主工場関係、このための便利ということは、これは建設省なり通産省がおやりになってけっこうだと思いますけれども、われわれの主たる目的は、労働者立場の、お困りの、一時の、二カ月間なり三カ月間なりのために、万やむを得ず行かれる方のための助成というか対策でありますので、よく御趣旨の点も体しまして、まだこの戸数が多数でありませんけれども、やはり今後勤労者というか労働者の住宅関係労働省が考えなくてはならぬので、本年度これに対する予算の請求なり予算の編成にも着手いたしておりますので、その中で御趣旨をよくかみしめて、この問題に対するあらゆる対策も考慮いたしたいと思うのであります。
  164. 石母田達

    ○石母田委員 それからもう一つ私申し添えておきますけれども、この第二条のもう一つの項目の改正点であります。  心身障害者のモデル工場をつくる点については賛成でございます。ただ、こういうものは、私の考えでは、当然もう少し厚生省がやるべきだと思うけれども、何かモデルについては労働省がやったほうがいいというような一つの問題があることも、きのう陳情団体の話も聞きまして理解できますので、これは今後、このモデル工場を出てからいろいろまた検討すべき問題は改善していくということで、この趣旨には私は賛成であります。  そういう点で、私どもは雇用対策法が出たときに、やはり現在の高度経済成長政策の中で、労働力の再編成がどうしても大企業に若年労働者を集中し、そして中高年齢層、年齢の高齢化といいますか、高齢人口が増大するという中で、高齢人口を新たに労働力の中に入れていくという中で、どうしてもそうしたものが中小企業の中に多くなっていくということで、結果として私どもが指摘したようにいまなっているわけです。それがさらに日本列島改造計画、またこの工業配置促進法などを通じまして、新たなそうした労働力の再編成というような問題の中で、先ほど指摘したような徴候がなお一そう強くなっていくんじゃないかという懸念を今回の改正の中で強く感ずるわけです。  以上、私はあとで討論の中で述べますけれども、幾つかの問題点がございますので、この点をきょう皆さん方にお伺いして、そして党としての態度をきめていきたい、こういうことを表明いたしまして私の質問を終わります。
  165. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 大橋敏雄君。
  166. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 最近急速な老齢化社会への進展核家族化といいますか、家族制度の崩壊に基づいてこうした核家族化等が進展している中で、近年老人問題が非常に大きな社会問題になってきたわけでございますが、最近、年金の大改革をやるべし、つまり老後の生活を年金でもって保障せよという非常に強い声とともに、その実現の働きがなされてきているわけでございますけれども、お年寄りのほんとうの生きがいというものは、決してお金だけで解決されるものではないと思うのであります。     〔竹内(黎)委員長代理退席、塩谷委員長代理着     席〕 すなわち、健康で、職業について、安定した収入それによる安定した生活が確立されることであろうと私は思うのでございますが、そういう意味からいきまして、現在の高齢者の雇用対策推進というものは、現下の最も重要な課題の一つであろうと思います。  ところが先般、行政管理庁から労働省に対して行なわれた「老齢者対策に関する行政監察」に基づく勧告が出されておりますけれども、中身をみますと、職業紹介等の体制及び運営面に非常に不十分な面がある、種々改善の必要性が指摘されているわけでございますが、労働省といたしましてこの勧告についてどのように対処をなさる考えがあるのか、まず最初に労働大臣に御見解を承りたいと思います。  私はこの勧告の内容は新聞記事の内容程度しか知りませんけれども、その記事の中から捨ってみますと、特に就職の問題ですけれども、「働く意欲も能力もあるのに、だいたい五十五歳で定年となるわが国では、定年退職者の再就職問題が重要な政策課題だが、勧告は職業紹介のあり方が不十分だと指摘する。四十三カ所の公共職業安定所について高齢者の勤め先探しをどの程度やっているか調べたところ、十六カ所が事業主訪問による求人開拓をしていなかった。行管庁が直接高齢者向きの職場と思われる社会福祉施設、病院などを調査した結果でも、求人開拓は十分行われていなかった。」つまり、職業紹介所のやるべき仕事がなされていなかった、怠慢であるということを指摘しております。「また、職安による職業紹介の実情を見ると、月給三万−五万円が五二%、三万円未満が二五%と低額なうえ、単純労働や雑役が多いため、二、三カ月で離職する例が多い。このため勧告は、高齢者の場合は一般の求職者と比べキメ細かな配慮が必要だとし、職安で即日紹介できないときは、後日求人があった際に呼出し、紹介するよう労働省は職安を指導すべきだとしている。」こういう記事を見たときに、確かにこれは指摘されているとおりであろう。つまり労働省の、特に職安の怠慢が指摘されていると私は見ているわけでござますが、これに対する労働省の考えを聞きたいと思います。
  167. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題でありますが、私も新聞を見て驚きまして、内容を検討し——行管の勧告の内容もよく読んだのであります。局長その他省員も心配いたしまして、ほめていただいておるところもある、ところが、ところによったら悪いところもあったというので、新聞のほうは悪い面ばかり書いて、という話でありますけれども、行管からさようなことがあった場合には、これは大橋議員から御指摘のように、いま労働行政といったって、どちらかといえば、若年者はもう事業主のほうから手をつけて、職安のほうが苦労せぬでも、これはもう羽がはえて飛ぶのであります。この高年齢者、中高年齢者の雇用対策が職業安定の根幹であって、これがもう一番最重要、これは疑いの余地がありません。それに対して、少数、一部にしたところで、勧告を受けたことはもってのほかだというので、私こういうざっくばらんの男でありますから、省議を開いてしかりつけたのであります。そうすると、これは四十六年度の調査だ。四十六年度であろうが何であろうが、これはぐあい悪い、さっそく全国の職安の責任者を呼べ。これはいままで大臣が呼んだことないそうでありますが、何カ月かかると言うから、そんなことはいかぬ、ここ何月以内にやれ、大臣が出たことないけれども、わしがみずから担当して、わしがみずから訓示するというので、さっそく二十五日に緊急に呼びまして、ほかの者にしゃべらさぬで私が四十五分もやってだいぶしかりつけて、あまりしかって横を向いても困りますからと思いまして、これに対してよく現場の立場——録音もとっておりますが、お役所仕事というものはわしはよくわかる。よく努力いたしておって感謝したいけれども、初めて会ったときに言うことは言わなければならぬ。何でこの会議を開いたかということをよく話をいたしまして、十分末端の連中に、これは本省が何ぼがんばったって末端でありますから、そういう意味でこのごろは求人開拓をせなくちゃならぬ。そして、ただ来たやつだけをやるのではいかぬ。あんた方の県の責任者、所長、それが陣頭に立って事業所をたずねてよくお願いもする、そして事業主の協力を得る、ただ窓口だけにすわって、県の責任者、所長が大臣と同じような大きな部屋を持っておったって、これではいかぬ、こういうように話して、だいぶんやかましく言いまして大いにこれは刷新をはかったのでありますが、そのときに文句があったらそちらからいろいろ意見を言え。なかなかむずかしゅうございまして、こうやっておりますと言うけれども、そういうことではいかぬ、何とかせいと厳重に警告いたしまして、今後私は変わると思います。そして国会済みましたら、ただそれだけでは実が入りませんので、できるだけ多くの職安をたずねて現場を叱咤激励する。これは私は言い出したらきかぬ男でありますから。そして第一線からは、このごろはいろいろのことを聞くのであります。これはここでは申し上げにくいけれども、変なことも聞きますから、さようなことはいかぬ。こういうようなつもりで今後第一線に立って職業紹介、訓練、そして親切にやらなければいかぬ、こう言うのであります。ただ、机の上だけで、書類だけではいかぬ、親切にせい、これが今後の出先機関の重大な使命である、こう言って、私は局長なり皆が聞いたらはらはらするようなことも言いましたが、わしは信念に基づいてやるんだ、こういう意味で、職安の会議大臣がやったのは初めてだそうでありますけれども、こんなことはちょっと言いにくいのでありますけれども、これは徹底するように今後やる所存であります。なかなか加藤大臣一人ではやりにくい点もありますけれども、私はいままでの老人対策、職業紹介なり訓練なり現場の対策は、これは今後はもう役人根性を離れて、まずおまえたちが親切にやって陣頭指揮せい、大臣も必ず行く、私は行く所存であります。全国全部行きませんけれども、相当の個所をぐるぐる回って叱咤激励いたしたい。これをひとつ何とか大臣の在職中これだけでも改革したいという私のかたい信念でありますので、大橋議員からお尋ねくださって、どうだといって私自慢しているような気持ちで今後意を体して御趣旨の点を尊重して督励いたしまして、今後はさような行管の勧告があるようなことは絶対にさせぬ、こういうかたい決意でありますので、もういろいろ理屈は申しません。これはいろいろなことは申しませんが、当然これは、老人の問題はいまの雇用対策の根幹であることはもう間違いありませんので、これに重大決意をもって対処いたしますことをここでかたくお誓いいたします。
  168. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣の決意はようくわかりました。そのとおりにやってほしいのですけれども、局長、初めて職安の関係者を全国から集めて訓示なさったそうでございますが、これはすばらしいことであるとともに、職安行政の恥でもあったと私は思うのです。どの程度おきゅうがすわったか、局長の決意を聞かしてください。
  169. 道正邦彦

    道正政府委員 私も大臣の熱意に非常な感銘を受けました。おそらく会議に参りました県の担当課長も、私以上に感銘を受けたことを思います。大臣のただいまの御発言の趣旨を十分体しまして私も陣頭指揮をするつもりで、県あるいは安定所の職員を督励いたしまして、高齢者の就職促進に今後できるだけの努力をしていきたいというふうに考えます。
  170. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣みずから言っていましたように、問題は末端であるということです。そういうことで大臣みずから第一線に立って指導、督励をなさるということでございますが、全国至るところというわけにはいかぬとおっしゃっていましたが、少なくとも大都市はまっ先に行かれるであろう。特に大都市もですけれども、こうした高齢者が困っているのは要するにすみずみですからね。そのことも十分踏まえた上で対処していただきたい。  今回の法案を見てまいりますと、高齢者雇用対策について二つの柱が立てられているように思います。その一つは定年の延長問題、もう一つは定年に達しようとする労働者の再就職対策の促進である、こう思うわけでありますが、これまで労働省は、定年の問題を尋ねますと、それは労使協議の問題であってわれわれ労働省が直接担当する問題ではないといっていつも逃げられてきた。それが今度は積極的に定年の引き上げを促進するため云々と、こうはっきり述べられているわけですね。一体定年の延長はどの程度に指導なさろうとしているのか。先ほどの質問者に対して答えていらっしゃったのを聞くと、六十歳というような話が出ていたようでございますけれども、六十歳どまりなのかそれともどうなのか、この定年延長に対する労働省の考えをまず聞いておきたいと思います。
  171. 道正邦彦

    道正政府委員 理想的に申しますならば、私は六十五歳が至当であろうというふうに考えます。ただ、先生も十分御承知のように、日本現状におきましてはいまなお五十五歳定年制をとっている企業が非常に多いわけでございます。したがいまして、当面の目標といたしましては六十までとりあえず引き上げる、それが達成した暁には六十五歳まで第二段階の目標として努力をするということで行政を進めるのが現実的ではないかということで、今回の法案、あるいはそれの前提になりまする経済社会基本計画並びに雇用対策基本計画におきましては、いずれも今後五年以内に六十歳の定年を達成する、これを目途にして閣議決定をしておるわけでございます。
  172. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、二十条の三にある、公共職業安定所長は、一定年齢未満の年齢を定年としている事業所の云々とありますが、その一定年齢未満の年齢というのは一応六十歳というふうに見ても差しつかえないですね。
  173. 道正邦彦

    道正政府委員 今後五年間におきましては六十歳、われわれといたしましては是が非でもこの五年以内に六十歳定年を実現いたしまして、引き続き五年後には第二段階として六十五歳の年齢をこの省令できめまして、六十五歳まで持っていくというふうに努力したいと思います。
  174. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 今回の法案は先ほど言いましたように二つの柱が立っているわけでございますが、定年延長の問題はこれはもう当然の重要政策だと思いますが、定年に達しようとする労働者の再就職の促進のことについては、これはきめこまかに対策を講じていくことが必要だ。この意味からいえば今回の法案というものは非常にねらいとしては私はいいと思います、評価いたしますが、問題はその内容だろうと思うのです。要するに、ほんとうに再就職の促進に役立つ対策がなされるのかどうか。いわゆる対策の方法、実施面に問題はないか、こういう点で不安を私は感ずるわけでございますが、いわゆる定年に達する労働者の再就職の促進のために講ずる具体的な対策について説明をお願いしたいと思います。
  175. 道正邦彦

    道正政府委員 原則としては定年の延長を促進するということでございまして、具体的には六十歳未満の定年を定めておりまする事業主を対象に、定年の六十歳までの引き上げを強力に促進をするということが基本でございます。  もう一つは、そうは申しましても、現実の問題として一挙に六十歳まで持っていけないという事業所も現実的に出てまいると思います。そういう事業所に対しましては、現実の問題として六十歳未満の定年で退職する従業員の再就職の問題、これが非常に大きな問題になりますので、計画も定め、担当者も選任していただきまして、安定所と協力いたしまして少しでもいい条件の職場にごあっせんをするということを考えておるわけでございます。定年延長の促進のためには、中小企業に限定いたしますけれども、一人一年二万五千円の助成金を差し上げて、定年延長に伴いまするいろいろの計画立案、促進に資していただく。それからやむを得ず六十歳未満で定年でやめられて再就職される方々に対しましては、職業訓練であるとか、あるいはお年寄りでございますから、いわゆる訓練法に基づく訓練が必ずしも適当でない場合もございます。そういう方に対しましては講習、これは各種学校の受講も含みますけれども、弾力的な運用をいたしまして訓練あるいは講習、いずれにいたしましても本人の希望をよく承りまして、少しでも有利な条件で再就職していただくような各種の措置を講じておるわけでございます。
  176. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私もこの法案について多少勉強してみたのですが、今回の具体的な措置としまして、高年齢者雇用対策としまして職業講習の委託というのがありますね。予算として三億五千四百四十一万円が組まれているように思うのですが、これには通学制と通信制がございますね。いま局長さんは、月、一人当たり平均二万五千円とかおっしゃったのですが、平均すると二万一千三百円程度じゃないですか、それをまず確認しましょう。
  177. 道正邦彦

    道正政府委員 二万五千円と申しましたのは、定年を延長していただいた事業主に対して、一人二万五千円を支給するというものでございますので、先生のいまの後段の御質問は、今度は職業講習関係のケースでございます。それは別であります。
  178. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 その点はわかりましたが、それではたとえば委託費というのがどこにいくのか、ちょっと私自身理解に苦しんでいるわけです。たとえば私がAという会社につとめているとしますね。いよいよ定年間近になった。そこで次のある会社に移ろうと思ったけれども、そこにいくためにはある程度の専門的な知識を必要とする。そのためにどこかに職業訓練にいくわけですね。その場合委託費というのはどこに出るのですか、ちょっとそれを教えてください。
  179. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 職業講習の例をとりますと、いま先生のお話のように通学制と通信制とございますが、その場合に委託をいたします各種学校とかいろいろ教育施設がございますが、そこに出しますいわゆる給付金と、それから定年でやめられる予定の方がその講習を受けられます、いわゆる授業料と申しますか、そういうようなものと二つに分かれてございます。
  180. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それではその各種学校みたいなところに委託して頂ける分と、それからそれに通う人のいわゆる手当が出るというわけですね。そうしますとその訓練を受けにいっている間のその人自身の賃金そのものは、先ほど言った私の働いている会社から当然出るわけですね。そのほかにいまの手当というのがついでの講習になるわけですね。
  181. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 定年退職予定者でございますから、その会社にまだ在籍しておられるわけですね。だから賃金をその会社のほうから出していただくように私どもとしては指導いたしたいと思います。したがってそれのほかに受講者に対する給付金を差し上げたい、こういうふうに思っております。ただ通学制等ではなかなか問題がございますので、通信制とか、あるいは夜間の講習というようなものを組み合わせてやってまいりたいと思っております。
  182. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 受講給付金の支給について、たしか予算としては五億八百九万円ですか、職業訓練受講費、月額七千九百七十五円というふうに私は理解しているのですけれども、この点はどうですか。
  183. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 ただいまの先生のおっしゃるとおりでございます。
  184. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ちょっと疑問でならないのですけれども、先ほど局長のおっしゃった二万五千円との関連はどうなるのですか。いま月七千九百七十五円だとおっしゃるのですが、先ほどのも受講者の関係だというのですが、ちょっと混同しているようですけれども……。
  185. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 局長が申し上げました二万五千円というのは、定年を延長しましたそれに対する奨励金でございます。定年がございまして、それでやめていかれる方に対する講習のいろいろな金の額が、先ほどお話しになりました本人に七千九百七十五円、こういうふうなわけでございます。
  186. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いずれにしましても、こうした職業講習を民間に委託してやろうという計画のようでございますけれども、これは職業訓練の立場からいった場合、職業訓練行政の不備ではないか、私はこう思うのですけれども、この点についての職練局長の見解を聞いておきたいと思います。
  187. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 もちろん定年で退職される方々が在職中に、退職前に訓練を受ける、これは職業訓練校におきまして設置されております科目を受講される場合は当然訓練校で行なうわけでございます。しかし御本人の希望がありまして全く職業訓練校にない科目、職種を選ばれる場合にはできるだけ本人の希望に応ずるように委託訓練制度を考えておるわけでございますが、できるだけ職業訓練の科目につきましても新しい時代の要請に応じた科目に切りかえ、あるいは増設をしていくことを考えておりますけれども、個々の受講希望者につきましてそれを一々全部いれるというわけにはまいりませんので、できるだけ本人の希望をいれるためにこういうような制度をとっておるわけでございます。
  188. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの職業訓練所の仕事の内容を見てまいりますと非常に大ざっぱで不備な点ばかりであろう、私はこのように感じております。諸外国の例からいきますと、わが国の職業訓練、公的な国の職業訓練という姿は非常に立ちおくれていると思うのですね。きょう午前中の多賀谷委員の質問にもありましたように職業訓練に対する労働省の姿勢そのもの、予算規模から見ても指摘されておったように少ないし、これは問題だと思うのですね。もっと職業訓練の職種、内容等を充実していくべきであろう、こう思うのでありますが、これに対する大臣の考えを聞かしてください。
  189. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 私も最近省内のいろいろの問題を研究いたしましたが、御指摘のとおり訓練の問題もなお一そう研究しなければならぬという点も痛感いたしております。やはり老齢者対策にしましても、また日本の生産の向上、あらゆる点から見まして、職業訓練の重要性は今後ますますその度を加えると思います。そういう意味で今回も、これは御質問はありませんけれども、ILOで、有給の訓練をやったらどうか、こういう話が出ましたが、さっそくいろいろ説明を聞いたり、各方面で、これはなかなかいいアイデアだ、しかし新しいことより現在の訓練の問題もよく内容を検討しなくてはならぬということを感じておりますので、よく御趣旨も体しましてなお一そうの充実と整備と、そしてこれはやはり近代的なことにせぬと、世上、工場関係その他は科学なり技術の進歩で毎年進歩しておるのでございますから、その進歩に伴ったような訓練方法をやらなくてはならぬ、こういうことは御指摘のとおりでありますので、これに対しまして十分留意いたしますことを通して、今後、本年度も、この問題に対しましては予算の獲得その他につきましてもひとつ積極的にやりたい、こういう方針であります。
  190. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく、わが国の職業訓練は大きく立ちおくれているということを深く自覚してもらいたいということです。  そこで、今回のこの雇用対策法とこれまでありましたいわゆる各離職者対策法、炭鉱離職者あるいは駐留軍離職者、こういうのとの関係性はどうなるのですか。
  191. 道正邦彦

    道正政府委員 雇用対策基本にわたる事項を雇用対策法で定めておるわけでございまして、その雇対法を基本といたしまして、安定所におきます基本的な業務を推進するための職業安定法、それから特別の問題をかえている分野につきまして、それぞれ石炭、駐留軍あるいは身障等々の特別措置法があわせ制定されているというふうに、体系的に説明すればなります。
  192. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに、こうですね。これまでの離職者対策法というのは、いわゆる失業者に対する再就職への道だったのですね。今回は失業じゃなくて定年間近になった、ですからいずれは定年退職するであろうから、これから訓練をして、あるいは講習をやって就職なさいということで、ここに大きな違いがあると思うのです。そこで定年退職前の職業講習だとかあるいは職業訓練に重点が置かれていると思うわけでございますけれども、離職する立場からは、こうした退職前に計画的に措置をされ、いろいろと対策を講じられるということはある意味ではありがたいことであると思うのですが、逆に事業主側から見ますと、遠からずして退職していく人であるとは見るものの、まだまだ自分のところの労働者である、そういう立場から、再就職のための準備といいますか、こうした講習について快く思わない事業主などが出てくるのではないか、私はこのように心配するわけでございます。要するに定年が近づいてきた、講習を受けに行こうという労働者が気持ちよくそういう対策に乗れないというような雰囲気を事業主側がつくるのではないだろうかという心配を私は持っているのですけれども、その点はどうでしょう。
  193. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほど先生から御指摘がございましたように、従来は、定年制の延長は労使の問題であるということを申しまして、国が積極的にこの問題を取り上げるということから見ますとやや消極的な態度であったのは、御指摘のとおりでございます。しかしながら御指摘のように、人口の老齢化あるいは高齢化あるいは平均寿命の延長、そのほか社会的なあるいは経済的な事情も急速に変わってきております。こういう現状を踏まえまして、いままでのような消極的な態度ではいかぬということで、今回初めて法律に定年延長を促進するということをうたったわけでございます。基本的には私は、いわゆる定年年齢と公的な年金の開始年齢との間にギャップがあるということは大問題であり、これは当然企業の責任において埋めていただかなければならない。つまり年金の支給開始年齢までは企業でとっていただくということが、企業の当然の社会的責務であろうと考えます。なかんずく若年定年をきめているのは大企業に多いわけでございますので、これはなおさらのこと一刻も早く直していただかなければいかぬというふうに思うわけでございます。しかしながらそういう機運は、政府内部だけでなく一般の業界におきましても漸次あるいは急速に高まってきておりますので、大部分の企業におきましては私どもの考えに同調して協力していただけるものと考えておりますけれども、御指摘のようにいろいろ困難な問題が同時にございますので、そういうことに籍口いたしまして協力しないというような事業場もあるいはあり得ると思います。そういう事業場に対しましては定年延長の趣旨、必要性というものを私どもとしては十分に説明いたしまして、漏れなく協力いただくように、行政の最大施策の一つとして推進してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  194. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 定年退職前の職業講習あるいは職業訓練が効果的に行なえるためには、いま言ったように事業主の積極的な協力がなければならない。この事業主の協力の有無ということが、今回の法律のかぎを握っていると私は思うのでございます。いま局長さんはその協力方を十分とお願いしていくという答弁でありましたけれども、これが単なることばに終わらないように、行政面に力強く反映していくように強く要望いたしておきます。  それで、またちょっと前に戻るのですけれども、定年延長の奨励金でございます。この財源は、先ほどから問題になっておりますように、失業保険の会計から流用されることになっているわけですね。この財源を失保会計に求めているということは、私はやはり筋違いではないかということを指摘したいのであります。要するに、労使によって積み立てられておりますこの失保会計のお金を、奨励金として安易に利用するのは政府の無責任さをあらわしているのではないかと思うのでございます。むしろ、先ほどからも話がありますように、この失保会計に十分な余裕があるというならば、失業保険の支給額の引き上げあるいは支給期間の延長こそはかるべきである、私はこう思うのでございますけれども、これは本題からちょっと離れますが、この失業保険のいわゆる改善の問題についてその意思があるかどうか、具体的に答弁願いたいと思います。
  195. 道正邦彦

    道正政府委員 先ほど来、福祉施設あり方について各先生方から御質疑をいただいたわけでございます。私ども現在、失業保険のあり方につきまして抜本的な検討を加えつつございますので、その中の大きなテーマとして福祉のあり方についても検討してまいりたいと存じます。また、御指摘のように、失業保険の本来の目的であります給付内容の改善について努力することも、これまた当然のことでございます。制度の基本問題の検討に際しましては、当然のことながら、給付の改善につきましても最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  196. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 今回の雇用対策法に関連する費用というものは、このように失業保険会計から出ているのですが、半永久的に続くのですか。それとも何年問だけはこういうことで、将来はこうなるのだという計画があるのかどうか、その点を明らかにしていただきたい。
  197. 道正邦彦

    道正政府委員 五年以内に六十歳定年を実現するということでございますので、経過的な問題と御理解いただいていいと思います。
  198. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 今回の定年延長の考え方なんですけれども、労働力の不足を背景とした政府の場当たり的な対策ではないか、私はこのように思うのでございます。なぜならば、ほんとうの意味の定年延長というのは、身分保障はもちろんのこと、生活安定保障というのが確保さるれべきである。要するに、定年延長というものは、再就職の道とあわせて、きちっとそういういま申し上げたような内容が確保されなければならないと思うのでございますけれども、先ほどからもやはりお話があっておりますように、延長、延長といいましても、再雇用で、同じ会社が再び雇ってあげようというような延長もあろうし、あるいは下請会社に紹介をするとか、あるいは職業のあっせんをするとか、いろいろと延長のあり方、とらえ方があると思うのですけれども、いずれにいたしましても、このような延長のあり方の内容で共通している問題点は、離職するときの賃金よりも、必ずといっていいほど賃金が低くなるわけですね。こういうことは、私は定年延長というただ名前だけの、単なる延長するだけのことであって、中身から見た、ほんとうの意味の定年延長ではない、このような感じを持つわけでございますが、その点についての御見解をいただきたいと思います。
  199. 道正邦彦

    道正政府委員 今回の推進しようとしております定年の延長、これは文字どおりの定年の延長をねらっているわけでございまして、再雇用であるとか、要するに一たん解雇して再び同じ企業に雇う再雇用、これは本来の定年延長ではない。やむを得ずそういう場合もあり得ると思いますけれども、それは本来の姿の定年延長でない。われわれといたしましては、本来の姿の、給与その他の低下を伴わない定年の延長、こういうものを促進してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  200. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間もだいぶ追ってきましたので次に移りますけれども、今回の法案を総括的にながめてまいりますと、どうも労働者側が非常に受け身になっているような感じを持つのです。特に職業講習だとか職業訓練を受けることについて、もっぱら事業主の好意にたよっているような印象を受けてならないのであります。私は今後においては、先ほど大臣ちらっと言っていたように思うのですけれども、教育訓練のための休暇制度、これをつくっていく必要がある、ほんとうにそう思います。これは、退職まぎわになって訓練をやろうとか、あるいは講習をやろうとかいうのではなくて、若いころから、つまり有給で休暇を与えて職業を身につけさしていく、これこそ肝心な対策ではなかろうか、私はこう思うのでございます。事実、今月開かれたILO総会におきましても、この有給教育休暇に関する勧告案が議題になっていると思うのでございますが、総会におけるこの議論あるいはその結果についてどのようなことになったのか、御報告を願いたいと思います。
  201. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 ただいま御指摘の有給教育休暇につきましては、今回のILO総会で審議を見たわけでございます。この問題につきましては、事務局の原案では勧告という形をとっておりましたのですけれども、審議の過程で労働者側の主張あるいは一部使用者側の主張もございまして、条約という形、それと勧告という二本立ての形になるというようなことが行なわれまして、内容的には原案の内容を大きく変えるものはございません、ただそういう形式に分離をするということが行なわれました。わが国の政府としましては、ただいま先生御主張のような観点で、私どもも技術革新の進展に伴って労働者ができるだけそういった機会を確保するということについてはたいへん望ましいことではなかろうかというふうに思って、基本的には趣旨に賛同いたしております。ただそういった国際文書の採択の形式その他につきまして若干の意見がございましたので、それは発言をいたしたわけでございます。  いずれにいたしましても、ILOの国際文書の採択の慣例といたしましては、二年審議をやるわけであります。ことしは第一次の討議、そこでその討議の結果をそういうぐあいに二つに分けまして整理をいたしまして、来年の総会でもう一回議論がなされるということでございますので、その結果を見まして、また来年度われわれとしても討議に参加する態度をきめたいというふうに考えております。
  202. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 有給教育休暇というこの制度は、諸外国にもあまり例がない。いまのお話がありましたように、いわゆるはしりですね。はしりですけれども、私はこれは非常に大事な問題であろう。むずかしい問題でもあろうと思いますけれども、今後政府として積極的に取り組んでいくきわめて重要な政策である、こう思うのでございますが、大事な問題ですから大臣から決意をお伺いしておきたいと思います。
  203. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 先ほどちらっと職業訓練のときに私触れましたが、いろいろ内容を聞きまして、いま官房長から話があったように、ILOの討議の関係は本年第一回でありますが、やはりいいことは取り入れてもいいと思いますので、前向きにこの問題には対処する所存であります。詳細については専門家の訓練局長から補足して説明させます。
  204. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ILOのこの問題についての討議の経過は、ただいま官房長からも御答弁申し上げたとおりでございます。その問題がどうなるかは別といたしまして、私どもは職業訓練行政の上で、生涯訓練体制推進していこう、こういうことでいろいろな施策を昨年からやっております。私どもはこの教育訓練休暇の問題は、職業訓練の面だけから考えましても、いろいろ新しい生産手段が出てくる、技術革新が行なわれる、こういったことで新しい生産技術が導入される、こういうことで労働者が同じ職場におりましてもそれに即応していける体制をとりますためには、常時何らかの機会に訓練を受けるような体制を進めていくことが必要であろうと思います。  そういう意味におきまして、訓練休暇の問題は私どもは積極的に取り組んでいかなければならない、これは大臣からいまお話し申し上げたとおりでございますが、御承知のとおり、各国でも大橋先生もおっしゃるようにまだはしりでございます。具体的に制度的にきちんとやっているところはきわめて少のうございますので、その意味でも私どもはこの条約が採択される経過を見ながら、これをどういう形で取り入れていくか、どういう形で奨励していったらいいか、具体的に、積極的に検討を進めてまいりたいと思います。
  205. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これは国民のほとんどの方が期待の目を寄せていると思いますので、真剣に取り組んでもらいたいことをつけ加えておきます。  では次に参りますけれども、雇用対策問題と関連いたしまして、外国人労働者雇用についてちょっと触れてみたいと思うのです。  雇用対策基本計画におきまして、労働力人口の増勢鈍化が指摘されていると思うのですが、その反面、看護婦さんだとか保母さん等の国民生活関連部門においては、労働力の不足が著しくなってきておるわけでございます。当面高齢者の雇用問題なども横たわっているわけですけれども、この外国人労働者を受け入れないという方針は理解できないわけでございませんけれども、将来ともこの方針を堅持していく考えであるのかどうか。これも大事な問題ですから、大臣からお伺いしておきます。
  206. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題は、最近だいぶん各方面から外国人の労働者を導入したらどうかという意見も出ております。特に御指摘のように看護婦、朝鮮の方を入れたらどうか、特にまた沖繩の海洋博で人が足らない、台湾、朝鮮から入れてこれを補ったらどうか、若年者が不足しておるんだから、もう日本の現在の労働の需給関係からいって考慮すべき時期だ、こういう意見も相当出ております。しかし総体的な需給の関係、労働人口の関係から見ますと、この法案審議いたしております中高年齢者、こういう点はまだ求職難というので——またこれがただ労働力の問題だけであればいいけれども、これは言いにくいことでありますけれども、目的が違って、東南アジア方面は賃金格差も相当ありますので、そういうようないかがわしいような議論から隠れみのの中に出てきておる議論もありますし、私の所存といたしまして、本年初頭、雇用対策基本計画をきめるときに、外国人労働者はまだ入れない、入れる段階でない、こういう確固たる方針を言明いたしました。中には、当面困っておる問題解決のためにどうだというようなことを言われる方面の方もありました。ドイツはある程度入れておりますけれども、当面は、日本としては、賃金関係労働者立場、いろいろな点から考えまして、まだ当分はこれは変更する意思は毛頭ありません。しかし時代の進展でありますから、将来どうかということに対しましては、まだ私から申し上げる段階でないと思います。
  207. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの段階ではまだ無理だというような御返事のようでございますけれども、現実問題としまして、この外国人労働者の受け入れは、大臣がおっしゃるように、まだ正面から認められていないだろうと思うのですけれども、技術研修生という名目で受け入れを行なっている事例を私はあちこちに見るわけでございます。この技術研修生の受け入れについて、労働省としてどのような方針に基づいて行なっているのか、この点についてはっきりした御見解を承っておきたいと思います。
  208. 道正邦彦

    道正政府委員 一般的な労働力としての外国人労働力は受け入れておりませんけれども、御指摘技術あるいは技能の研修生の受け入れば行なっております。  外国から技術、技能の研修生の入国希望がございます場合には、法務省から協議がございます。われわれといたしましては、研修実施の目的あるいは受け入れ企業の研修施設、設備、指導体制等が整備されているかどうか、また、研修の内容が適当であるかどうか、あるいは災害補償措置が十分であるか等の諸条件を十分に審査して可否をきめ、法務省に通知をし、その結果入国が認められるということになっております。
  209. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これはわが国の労働行政の上で大きな問題であろうかと思います。これも真剣に対策に取り組んでいただきたい。  時間もございませんのではしょっていきますけれども、先ほど石母田委員からも質問が出ておりましたけれども、工場移転労働者の住居についての問題ですが、「工業の再配置に伴う労働者移転の円滑化を図るための施策」云々とありますね。これは列島改造に基づいた内容だと思うのです。工業の再配置なり「工場移転に伴い住居を移転するために宿舎の確保を図ることが必要である」云々とありますね。私たちはこの列島改造論が出た当初は、ある意味では聞かされた部分もあったのですけれども、時間がたつにつれ、歳月が流れるにつれて、これはとんでもない内容であった。要するにこれは、時間がたつにつれて問題があらわれてきております。ということで、そういう方針のもとになされる住宅の改善問題ならば、われわれは賛成できないです。そうでないとおっしゃるなら、この文言を消すべきである。私は修正を申し上げたいと思うのです。大臣、どうですか。工業配置に基づくだけのことなんですか、それとも労働行政全般を見た、いわゆる労働者の宿舎の問題の改善のための対策として出されるのか、どっちなんですか、これは。
  210. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 工業配置の問題も重要でありますから、日本列島改造の問題と、これはやはり政府の方針で掲げておりますが、この法案の内容の工業配置は、やはり移転した方の臨時の住宅を確保するという問題で、さような企業家とかいろいろな考慮で、改造とかいうような見地でなく、労働者立場で、当然これは資本の追求の意味で工場移転する場合もありますが、これは労働行政の立場で出た真に移転の問題に対する応急措置の住宅であります。
  211. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それならば、これは改めなければならぬですよ。はっきり書いてあるじゃないですか。「工業の再配置に伴う工場移転に伴い住居を移転するために宿舎の確保を図ることが必要である」云々とあるでしょう。
  212. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 私の言ったのも工場配置のための意味で、労働者立場でそれが必要だという意味で、それが妙なほうへくっつけられると私はいかぬと思うのです。
  213. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これはいわゆる列島改造論に基づいた中身であると解せられますよ。ことばがそうなっているんですもの。違うならば、このことばを改めなさいというのです。修正すべきだ。
  214. 道正邦彦

    道正政府委員 工業配置促進法におきましては、この目的規定におきまして雇用の安定に配慮しつつ行なうということがうたわれております。それから、移転計画が出るわけでございますけれども、その計画労働者雇用の安定に配慮されたものであるかどうかということを認定の要件にいたしております。  それから、昨年、工業配置法の国会での御審議の過程におきまして、労働行政の立場から見て住宅について十分配慮すべきである、この点が欠けておるという御指摘もございました。しかしながら 工場の再配置を行なう場合に、当然のことながら、従業員の宿舎についても配慮しつつ行なわれるべきは当然でございますから、事業主あるいは受け入れ事業を所管する市町村なり都道府県が基本的には検討すべき問題であろうと思います。ここに御提案申し上げております趣旨は、あくまで移転就職者用宿舎を移転就職者のために建てるというたてまえはくずしておらないわけでございます。しかしながら、地方によりましてはかなりあきがあるところがございます。そういう現状を踏まえまして、そういう場合に例外的に労働者を入れる。それが移転就職者の利用に支障がないならば、これはあけておくことはないわけでございますから、適当であろう。その場合に、工業配置促進法の立法趣旨にもかんがみまして貸与することを認めようということでございまして、この規定をもちまして工業配置関係の住宅対策をやろうというような趣旨のものでは毛頭ないわけでございます。
  215. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 誤解があっては困りますけれども、労働大臣国務大臣であって、政府の方針の国土総合開発は、私それは大橋委員と意見が多少食い違うかわかりませんが、この問題をそこへくっつけられると、何だか私は遺憾にたえないので、当然移転は文字のとおり移転するんだから、工場移転といったらそれは日本列島改造だと言われますけれども、私は都会の、東京現状その他から見まして、閣議などでも国土総合開発の問題に対しましては賛成でありますが、この問題とその問題と無理にくっつけるというのは私ども遺憾にたえないのでありますので、この点は御了解を願いたいと思います。
  216. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これは御了解できませんからね。いまあなたにすぐ、じゃ改めますと返事をさせるわけにもいかぬと思う。だけれども、よく考えなさいよ。いままでの答弁は確かにわれわれが考えているような中身でありますけれども、この文言からいきますと非常にひっかかるわけですから、これはあとでゆっくり冷静に検討を進めてもらいたいところです。じゃ、もうだいぶ時間も迫りましたからこの辺で次に移りますけれども、しっかり考えてくださいよ。  最後に、モデル工場に対する特別融資制度というのが今度できるわけでございますけれども、この心身障害者の雇用機会の拡大をはかるための対策としては、私はこれは効果が不十分ではないか、こう感ずるのです。なぜならば、あくまでも融資でしょう。利子は安いかもしれませんけれども、融資というのは必ず返さなければならぬのです。返済しなければならぬ。私は補助金というような立場をとるべきだ、こういうふうに思うのでございますが、この点について特に局長に聞きたいところは、身体障害者の対策にはもうものすごい熱意を燃やしておると聞いておりますので、この点をはっきりと聞いてみたいと思います。
  217. 道正邦彦

    道正政府委員 私、職安行政を担当いたしまして、何が安定行政の重点であるかと考えました場合に、御指摘の心身障害者の対策と、法案を御審議いただいております定年延長を含む高齢者の対策、この二つであろうというふうに考えまして、これを行政の重点として推進してまいったつもりでございます。特に心身障害者の対策については、昨年の暮れに身体障害者雇用審議会から中間建議をいただきました。その中にいろいろ書いてございますけれども、最大の施策としてモデル工場をぜひつくるべきであるという強い建議が出たわけでございます。私も全くそのとおりだと思います。このモデル工場をつくる趣旨でございますけれども、心身障害者対策、いろいろございます。お医者さんの手を離れた方々は、私は、健常者の間に伍して働いていただくのがほんとうの生きがいをもたらしますし、ほんとうの対策である。そういう方々を国の恩恵的な対策の対象者にして特別扱いにするということは、決して身障者の方々の生きがいをもたらすゆえんのものではないというふうに確信するわけでございます。しかしながら心身障害者を雇用する場合には、健常者を雇用する場合と違いまして、いろいろハンディキャップがございます。それは補完をする必要があるということで、モデル工場につきましては、あくまで事業主のほうも経済ベースで事業を運営していただく、そこに働く心身障害者の方々も健常者と同じに社会人として働くんだというたてまえを貫きたいというふうに思います。そのためには、しかしながら補助はいたしませんけれども、いろいろな便宜をはかる。そのために減税であるとかあるいは長期低利の融資であるとか、そういうことを今回御提案申し上げたわけでございます。  要はそういう補完的な手当てはいたしますけれども、基本的に一般の事業者と同じように事業主企業経営をし、そこで働く労働者方々も健常者と同じだという見識で働いていただく。そのモデル工場をつくることによりまして、ああいう形であれば心身障害者を雇用できるという実例を示すこと、これが一番心身障害者の雇用促進に役に立つものと考えるわけでございます。
  218. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 厚生省のほうでは社会福祉法人という立場で、身体障害者に対して授産所などをよくやっておりますね。こちらのほうにはよく補助金というのが渡されて大きく活動しているわけでございますが、いまの局長さんの御見解を承っておりますと、ちょっとやはり立場が違うようでございますね。労働省の考えとしての考えも一理あろうと思いますので、その立場で大いに推進してもらいたいのでございますが、このモデル工場に対する特別融資を行なおうという企業は具体的にどの程度あるのか、これをお示し願います。
  219. 道正邦彦

    道正政府委員 これは心身障害者の方々からぜひ少しでも多くやってもらいたいという希望が出ておるわけでございますけれども、二、三の例を申し上げますならば、広島のひかり電気工業であるとか、神奈川の日本センター・インダストリーズであるとか、東京のフロンティアであるとか、あるいは静岡のムサシノ電子工業であるとか、あるいは神奈川の光生リハビリーリネン工場等々からすでに申請が参っております。あるいは相談が参っております。仄聞するところによりますと、そのほかにも希望があるようでございます。
  220. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いずれにいたしましても、労働省として身体障害者に対するいわゆるあたたかい施策の一環としての行政であろうと思いますので、私は期待の目をもってこれをながめておきます。  そこで、もう時間が来ましたのでやめますが、大臣、先ほど言いました工場配置のあの点はほんとうに考えてもらわないと、私はこの法案に対する賛否の態度がそこにかかっているような感じがするのですよ。いいですね。これを申し添えまして、私の質問を終わります。
  221. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 次回は、来たる七月三日火曜日、午前十時より理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後七時十二分散