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1973-07-11 第71回国会 衆議院 外務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十一日(水曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 西銘 順治君    理事 福永 一臣君 理事 岡田 春夫君       加藤 紘一君    小林 正巳君       竹内 黎一君    深谷 隆司君       山田 久就君    河上 民雄君       三宅 正一君    柴田 睦夫君       渡部 一郎君    永末 英一君       瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務政務次官  水野  清君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省条約局外         務参事官    松永 信雄君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君  委員外出席者         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 七月五日  辞任         補欠選任   深谷 隆司君     石田 博英君   山田 久就君     中村 寅太君 同日  辞任         補欠選任   石田 博英君     深谷 隆司君   中村 寅太君     山田 久就君 同月六日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     丹羽喬四郎君   小林 正巳君     赤城 宗徳君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     小林 正巳君   丹羽喬四郎君     加藤 紘一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。瀬長亀次郎君。
  3. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 二日の当委員会外務大臣核実験についての抗議の問題で質問しましたら、外務大臣が、「いままで行なわれた核実験について、私が申し上げましたように抗議を続けておりますが、その事例につきましては取り調べまして御報告します。」ということになっておりましたので、外務省当局に、とりわけアメリカ核実験とそれに対する抗議の問題、資料を出してもらうように再三申し入れたんですが、アメリカを除くフランス中国ソ連イギリス、この四カ国についての資料は集まっておるのですが、アメリカに対する資料は、地下核実験、これは七一年以降の地下核実験だけしか資料を出していない。これはどういうことで資料を出していないのか、核保有国の五カ国のうち、四カ国は全部出しておるにもかかわらず、アメリカだけはいま申し上げました七一年以前のものは出し得ない状態があるのか、ここら辺を政府委員から御答弁願いたいと思うのです。
  4. 影井梅夫

    影井政府委員 本件は実は省内でアメリカ局が主管しておりまして、本日ここに伺うはずでございますが、ちょっとおくれております。そのうちに参ると思います。
  5. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 資料はきょう出せるということですか。いま中国ソ連フランス、英国、これ全部出ていまして、実験をやった回数と年月日と抗議内容、これなんかは出ておるのですが、ところで米国実験に対しては、私覚えているだけでも五回にわたって外務省に折衝したのですが、しかもこれは次の委員会質問の要点になるのでということで、何回も何回もやっても出さない。そしてきょうを迎えた。これは少し責任を持ってもらわなければいかぬと思うのですよ。この問題は、大臣があらゆる国に対して、いつ、どこで、どういう種類、すなわち大気圏であれ、地下実験であれ抗議したという答弁があったので、では、事例を出してくれと言ったら、調査して出しますと、ところが出ていない。この問題なんです。どういうことで、たぶん、私推量ですが、抗議したことないのですよ。そういった意味で、たぶん公にするとまた対米従属とか言われるかもしらぬということで出し得ないのか、ここら辺をはっきりしてもらわぬと、これは大臣事例を調べて報告するということだったので、その点を要求したわけです。
  6. 角谷清

    角谷説明員 過般先生から御質問のございました一つは、エニウェトック島の地下核実験に対していかなる抗議がなされたかという問題がございまして、これは国連局長から御答弁申し上げたと思います。それから米国の、それを含めまして一体どのような実験が行なわれたかという御質問でございますが、本年に入りまして米側が、抗議をいたしております実験といたしましては、三月の八日、四月の二十五日、四月の二十六日、それから六月の五日、六日、それから二十八日、すなわち合計六回にわたりましてネバダ地下核実験を行なったということになっております。
  7. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 私申し上げますのは、二日の質問で、日本政府アメリカ政府核実験について抗議したということは、どういう核実験について、いつ、どのような抗議をしたのか説明してもらいたいということに対する外務大臣答弁が「いままで行なわれた核実験について、私が申し上げましたように抗議を続けておりますが、その事例につきましては取り調べまして御報告します」これを聞いておるんですよ。そのためにきょうまで五回にわたって実は、国連局長ですか、電話連絡とっておりますが、ほかの四カ国のものは出ております。なぜ一体アメリカのを出し切らぬのか、出し得ないのか、まあ抗議していないから無理もないとは思うのですがね。それは大臣が来られてからこの前の答弁に対する責任追及するつもりですが、ただ外務省としてそういう約束をしたものを出し得ないということになりますと責任問題になりますよ。ほかの国は出している。もちろん抗議していないから出せないといえばそれまでです。それでいいのです。
  8. 角谷清

    角谷説明員 アメリカ核実験に対します日本政府の対米申し入れにつきましては、資料を直ちに御提出いたします。
  9. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 地下核実験七一年六月十六日からこれはネバダで、それ以後現在まで二十三回やっていることになっておりますが、その前の実験何回くらいやっているのですか。わかりますか。
  10. 角谷清

    角谷説明員 アメリカ核実験につきまして日本側が対米申し入れをいたしましたものといたしまして、古くは一九五四年にビキニから始まりまして、エニウエトック一九五六年の五月、それからネバダ、これは一九五七年の五月、これは地下核実験でございます。それからエニウエトック一九五八年の四月、それからジョンストン島というところにおきまして一九五八年の七月、それから一時アメリカ核実験が中断いたしまして、さらに一九六一年九月に再開をいたしましてこれはネバダです。それから六二年の四月にクリスマス島というところで行なっております。それから七月にジョンストン島、さらに引き続きまして六九年にアムチトカ島で地下核実験、それから七一年にもアムチトカ島で核実験をいたしておりまして、七一年の際には四回にわたって対米申し入れを行なったということは御報告申し上げたとおりでございます。それからそれに続きまして七二年の四月十九日、五月十七日、五月十九日、七月二十日、九月二十一日、九月二十六日、十二月二十一日、これはいずれもネバダにおきまして地下核実験を行なっております。それから七三年に至りましては、先ほどお答え申し上げましたとおり合計六回にわたりましてネバダ核地下実験を行なっております。
  11. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 いま御答弁の中でビキニで行なわれた水爆実験抗議をやったんだとかいったようなととがありましたね。これは事実ですか。
  12. 角谷清

    角谷説明員 一九五四年ビキニ実験がございまして、これにつきましては一九五四年の十月五日に外務大臣から書簡をもちまして、当時のアリソン在京大使にまず実験場を他に移すこと、それから二番目に万全の予防措置と事前の通報を行なうこと、三番目にあらゆる損害についての補償措置を講ずること、この三点につきまして書簡をもって申し入れてございます。それから五五年の十二月六日にはやはり在米の大使館より米国務省に対しまして口上書でただいま申し上げました内容と同様の申し入れをいたしております。
  13. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 実は私は抗議の問題を言っているのであって、損害補償せよということは言っていないのですよ。これはビキニの場合には岡崎外務大臣がはっきり原爆実験に協力するんだ、むしろ逆ですよ。ただ損害があった場合には補償してくれる、こういう損害賠償に対する権利を保留するということですが、これは特に参議院外務委員会あるいは参議院会議、三月の二十六日から始まって四月の十二日まで本会議外務委員会、ともに参議院です。そのことに対しまして岡崎外相日米協会で演説して、原爆実験に協力するのだと、とんでもないことを言った。それで、これは加藤勘十さんや曽祢益さんに対する答えとして言っておりますが、ここに、これは昭和二十九年四月十二日の参議院会議でのもので、なお原爆実験に対して協力するということを私は日米協会において演説をしましたが、それはそのとおりでございます、と言いまして、何と言っているかというと、「元来、本参議院の本会議における原子力禁止等決議を見ますれば、その中には「原子力の有効な国際管理の確立、原子兵器禁止並びに原子兵器実験による被害防止を実現し、」と書いてあるわけであります。」云々と書いて、最後に、原子兵器実験が行なわれるということを前提としてのみ被害防止ということになるのだということで、ソ連側実験禁止されるまでは、アメリカ側実験に対してこれを妨害しないという意向を明らかにしております。これは外務大臣です。時の副総理緒方竹虎さんは、「政府といたしましても同感でありまして、この原子爆弾原子力実験そのものに対しましては、あえて干渉せず、」時の政府姿勢はむしろアメリカ核実験に対しては協力するという態度がちゃんと議事録に載っておるのですよ。ですからあなたの言ったことは、どこどこでどういう実験をやったので損害賠償その他の申し入れをしたということですが、私が聞きましたのは、抗議の問題を言っているので、この点については大臣お見えになりましたから、最初原点に立ち返って、時間もありませんので大臣にお聞きしたいと思いますが、いま核兵器世界からなくするという問題、これはやはり原点に立ち返らなければいかないのじゃないか。原点といいますと、アメリカが広島、長崎に原爆を落とし、さらに十一年前ですか、水爆をまたビキニ実験する。ですから、こういったものがないように、すべて核兵器世界からないようにするためには、二日の外務委員会で提起しましたが、核兵器製造あるいはその実験、さらに貯蔵使用、この全面禁止国連の場で提起することが必要ではないかといったことに対して、最後大平外務大臣はこれに対して、御提言として承っておきますということでしたが、二日と現在では情勢が違っております。九日、すなわち一週間後にはちゃんと参議院決議され、これはアメリカ中国核実験抗議し、フランスをはじめあらゆる国の核実験反対する決議が行なわれて、その最後に、政府は本院の趣旨を体し、すべての国の核兵器製造実験貯蔵使用反対し、全面的な禁止協定が締結されるようつとめるとともにと、はっきりと打ち込まれておりますね。ですから、いま一番核兵器をなくするという問題で原点というのは、いま参議院も、不十分な点もあるにしても切実な国民の願いを国会の場で反映させておる、いわゆるつくること、あるいは実験すること、またこれを持つということ、使用する、これを全面的に禁止するということは、むしろ今度の国連総会核保有国あるいは非核保有国を問わず日本政府が呼びかけ、申し出て、ぜひこの際この国会決議を実践していく、すなわち現在までの核問題についてのいろいろな問題を整理し結論づけて、この結論がこういった全面禁止というところまできていると思います。したがって、二日の委員会は私個人の提言としてお聞きになったかもしれませんが、現在一週間後の今日、すでに参議院会議で、全会一致決議としてこの全面禁止の問題を提言してほしい、また、そういう措置政府に要請する、これに対する明確な政府答弁大平大臣からお願いしたいのです。
  14. 影井梅夫

    影井政府委員 核兵器の絶滅ということを究極の目標といたしまして、それに至るためにわが政府といたしましてどのような努力をしておるかということを私から最初に簡単に……
  15. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 委員長、時間がありませんから、大臣にしてもらってください。あと十五分しかない。
  16. 影井梅夫

    影井政府委員 簡単に申し上げます。  一番最近の例といたしましては、現在ジュネーヴで開かれております軍縮委員会、この場におきまして、日本提案によりまして、いわゆる専門家、主として地震学専門家でございますが、約七、八カ国からの専門家、それから軍縮委員会各国代表、現在一堂に会しまして、いかにして地下核実験の事実をとらえるかということを——実はこれは昨日、日本でございますが、日本から提案をいたしまして、現在その討議が進行中でございます。これは日本が払っております努力の一例といたしまして申し上げた次第でございます。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 核兵器の廃止問題につきましては原点に立ち返ってやらなければならぬという御趣旨は全く同感でございまして、さればこそ政府といたしましても、国のいかんを問わず、また理由のいかんを問わず、核兵器実験につきましては終始反対態度をとってきたわけでございまして、今後もそういう努力を続けてまいるつもりでございます。また、核兵器製造保有使用はもちろんでございますけれども、持ち込み、その他一切のことにつきまして、国会の御決議趣旨を体しまして政府努力しなければならぬことは当然でございまして、その御決議にこたえて政府の所信を私から申し上げておきましたことも御案内のとおりでございます。問題は、実験反対をいたしましてどこまで実際上できるかという問題でございますが、日本影響のある大きな核実験あるいは日本がわかったもの、そういったものにつきましては、できるだけ精力的にやってまいらなければいかぬと考えます。それから国連その他におきましてのわが国努力につきましては、いま政府委員から答えたとおりでございます。
  18. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 いまの御答弁は二日の委員会での御答弁とあまり違わないですよ。私申し上げましたのは、あの時点では国会決議していなかった、全面禁止協定を結ぶように政府努力すべきである、ここまで新しい段階を迎えているわけです。したがって、どこの国よりもこの全面禁止協定を結ぶという提言、さらに各国政府にこれを申し出る、やろうじゃないか、実行的な、実際できればやるんだとかいうのではなしに、これはできるように各国政府を動かす、動かして、そして全国禁止協定を結ばすというふうな姿勢がないといけないのではないかということを聞いているわけなんですよ。これはどんなものですか。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 従来も仰せのような決意で当たってきているわけでございまして、今後も一そうそういう方針で努力を続けてまいる所存でございます。
  20. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 締めくくりはあとにいたしまして、この前の委員会大平国務大臣は、いずれの国による核実験であろうと、いつ、どこで行なわれる核実験であろうと、日本政府としては終始これに抗議を続けてまいりました、今度またそういうことでまいるということなんですが、事実はアメリカ抗議したことはないのですね。これは外務省からもらった資料ですが、このあなた方の資料によりますと、七一年六月十六日のネバダ以下七三年の六月二十八日まで、合計二十三回やっている、この二十三回の間のうち、アムチトカ島における実験については、抗議ではなくて遺憾でありますという形で出しております。このくらいのものだ。ところが、中国、それからソ連フランスイギリス、とりわけ中国核実験につきましては十一回まではことばづかいも、こうこうこういうことで抗議するとともに、中共の要路に要請するという文言が使われております。十二回以後は中華人民共和国の名で、抗議が消えて、一応要請するということになっております。最後のものは抗議ということになっておりますが、アメリカに対して非常に姿勢が違っておるわけなんですよ。これはこの前大臣が言われた、いま申し上げたいずれの国であろうと、いつ、どこで行なわれようと、あらゆる核実験に対して抗議をしていく——していないのですよ、抗議を。あなた方が出したこの中にある。なぜそんな事実に反する御答弁をなさったか、この点を明らかにしてもらわなければいかぬと思うのですよ。私はうそを言っておられるというのではない。事実に反しておりますから、その点を明らかにしてほしい。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 政府米国政府に対しても全面的な核実験停止を実現するよう働きかけますとともに、米国核実験につきましては人道的な観点から、さらには日本国民利益擁護という観点から、終始一貫して反対立場米国政府に表明してきております。米国政府日本政府のかかる基本的立場は十分承知しておると思います。
  22. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 これも事実に反するのですよ。たとえば、いまのビキニ、三月一日ビキニデー、あれ以来大きく原水禁運動が盛り上がっているのは御承知のとおりだと思う。あのときには、岡崎外務大臣は、むしろ原爆実験に協力する、これは問題になりましたよ。そして、日米協会で、昭和二十九年四月十日の朝日新聞の——九日に出されたのが十日にはもうすでに衆議院の外務委員会で問題になっている。問題になったので、結局どうしたか。岡崎外務大臣は、その参議院の場で、そのとおりと言った、そのとおりである。この前私が——当時の岡崎外務大臣は、この実験世界平和のために寄与するものと信ずる、あるいは、米国実験を悪いものとの印象を与えたり、実験を阻止するような態度はとりたくないということは、これは外務並びに参議院の本会議の記録の中からとったのです。そのようにして、政府はずっと引き続きアメリカ核実験には抗議したのだといったような立場、これはとられていない。その後どう変わったのか、時間があればそこまで全部追及しなければいかぬと思うのですが、この追及政府追及という意味じゃないのです。事実原水爆を全部なくするためには、いままでとったいろいろな対策を整理して、いまどういう時点か、全面禁止だ。この時点に立っておる。ですから、あなたいかにここでいろいろ日本語を並べようが、事実はそれに反するのです。協力したり賛成したりしている事実はぬぐえないのですよ。また、これに出されたものでも、これは外務省から出ている、二十三回。七一年六月十六日、二十キロトン以下、ネバダ。この七一年には十回、七二年に七回。そして七三年の六月二十八日までに——七三年が六回で、合計二十三回行なわれておる。その中でわずかにアムチトカ島、これに対して、抗議ではなくて、遺憾であります、さらに補償という問題について要求する権利を保留するのだといったような形で出されているだけなんだ。一貫して、いかなる国、どこであろうがあらゆる実験に対して抗議している——していないのです。これは事実なんです。事実に反しますよ。これは政府が、岡崎外務大臣のとき、副総理もちゃんと、緒方竹虎総理国務大臣もそれをはっきり裏づけて、アメリカ核実験は現在の時点で有益だ。だからそういった一貫をしていないわけなんだ。それでまた最近になって、七一年以降も抗議らしい抗議はやっていない。その点は事実に反しますから、明らかにしてほしいのです。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国といたしましては、わが国にとって特に影響の大きい核実験に対しましては、そのつど文書をもちまして、厳重に抗議してまいりました。
  24. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 これ厳重に抗議してまいりましたと繰り返しておるのですが、厳重に抗議していないという証拠が出ているのですよ。厳重に抗議したのであれば、厳重に抗議した文書を出せと言ったら出し切れぬでしょう。あなたもアメリカのものは出し切れないが、中国ソ連イギリスフランス、これに対しては逐一やっぱり出しておりますよ。ところがアメリカのものは抗議というものはないものだから、出し切れぬ。これはあなた幾ら繰り返しても事実に反する。こういうことをなぜ私は大平外務大臣に繰り返し言うかと申し上げますと、せっかく参議院全会一致で、つくらない、さらに実験しない、さらに保有しないのだ、貯蔵しないのだ、そしてこれを使用しない、全面禁止協定日本国はやはり各国申し入れて、国連の場で、この協定が結ばれるように、要請しているわけです。これが言を左右にして、やるとも言わぬしやらぬとも言わぬ。まあ申し入れをしたんだ、軍縮会議でどうだああだというふうなことの御答弁では、国民は承知しないと思うのですよ。事実国会全会一致でやったんだから。これに対して前向きに、よし今度の国連の場で各国に呼びかけて申し入れをして、それが実現するように努力するというふうなことぐらいは、私、大平大臣から聞くことができるのじゃないかと思って、きょう、期待して来たのです。どうなんでしょうかね。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国はこの問題につきまして先頭に立って努力いたしておるつもりでございます。国連における軍縮委員会を中心にいたしまして、わが国のイニシアチブで各国の参加を得て探知の問題等につきまして討議をやっておりますことも、先ほど政府委員から御報告申し上げたとおりでございまして、わが国の、あなたのいわゆる原点に立っての精力的な努力ということにつきましては、私ども一点のゆるみもなく今後続けてまいるつもりであります。
  26. 瀬長亀次郎

    瀬長委員 時間がありませんので、この問題は一時間でも足らぬと思うのですが、一応結論として、今度の国連総会で、国会全会一致決議である全面禁止協定を、日本がどこの政府よりも、むしろ権利として主張すべき重要な問題なんです。ぜひそういった締結をするように各国申し入れるという姿勢をとってほしいという要望をすると同時に、もう一つ残っているのは、あらゆる国に対して、いつ、どこでやられようが、あらゆる実験に対して反対し、抗議したということはうそです。もしそれがうそでないとすれば、次の委員会までに、たとえばいま申し上げました米国地下核実験米国が公表したというものに対する二十三回にわたるデータです。一ぺんも抗議をやっていない。これだけでもわかる。もしやったとすれば、私がいま申し上げましたように、これだけそろっておるのですね、イギリスフランス中国ソ連、どういう実験をやった、それで実験をやったときにこうこういう抗議をした、そこはちゃんと四カ国分はある。アメリカだけはない。これはいまビキニにおける水爆実験に対する時の政府、特に岡崎外務大臣あるいは緒方竹虎総理などが、世界平和のために貢献するものであるから協力するのだということを、国会だけではなしに、日米協会あたりでも、ちゃんと公然とやっている。  そういった歴史的事実から見るならば、日本政府は一貫して、これは安保条約の問題に縛られているということもわかります。そういった中で、一貫して協力している。国民世論が盛り上がると、抗議じゃないがそれに似たような、遺憾でありますとか、そういうものを出さざるを得なくなって、このアムチトカ島における実験に対してだけはやっている。あのときひどい国民運動が発展する、世論か巻き起こっている状態だ。ですからこの点につきましては、後ほど資料を提出してもらって事実に反する御答弁がはっきりあらわれたら、その時点で取り消しをされるか、責任をとられるか、いずれにしてもその点は残しておきまして、きょうは時間が参りましたので締めることにいたします。
  27. 藤井勝志

    藤井委員長 石井一君。
  28. 石井一

    ○石井委員 まず最初に、去る七月八日南ベトナムの臨時革命政府、これは民間の代表ではございますが、それと北ベトナムからの友好協会の代表団が日本にやって参りました。これらに対しまして政府御当局は非公式な接触をお持ちになるというお考えがあるかどうか、まずこの点大臣から。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう考えは持っておりません。
  30. 石井一

    ○石井委員 一応現在のアジア情勢を考えましたときに、大臣みずからが接触を持たれるという必要はないかもわかりませんが、やはりこれはある意味で連携をとっていく必要があるし、また戦後の復興というふうな問題でも意見を交換するというようなことは、私は有意義なことだという見解を持っているものですが、さらに具体的な一つの問題といたしまして、これは国会でもかなり問題になったことでございますが、いわゆる日本の報道人、フジテレビの記者、カメラマンをはじめ七名の日本人がベトナム、カンボジア領域で行くえ不明になってからすでに三年近くの年月が今日まで経過いたしております。これまで政府はいろいろな形で南ベトナムの政府国連の事務総長その他にもその行くえを捜査する意味での努力をされましたし、民間ではやはり調査委員会というものを設けまして、あらゆる形でこれらに対する安否を気づかっての努力をしておるわけでございますけれども、現在に至ってまだその行くえがわからないというのが現在の姿であります。非公式な調査ではございますが、日本人の報道関係者七名、外人十名の十七名が一挙に不明になったのは、いわゆる一九七〇年四月の初頭にベトナムとカンボジアの国境で行くえ不明になったわけでございまして、一番確実な情報としてはやはりベトコンのグループにとらわれておる、そういうことが伝えられておるわけでございますが、これらと一番関係があるというのは私は南の臨時革命政府のグループではなかろうか。結局私たちが正常な関係を持っておる政府に接触をいたしましても彼らの行くえというものはわからない。一番行くえがわかるのは南ベトナムの臨時革命政府のグループだという感じがいたすわけでございまして、せっかく友好の芽が広がってきて民間人であっても代表者が訪日をしておるという機会に、私は何らかの形で日本人の行くえを問いただすあるいは要望するという行為もあっていいのじゃなかろうか、こういう感じがいたすわけでございますが、これに対して大臣の御意見がありましたらひとつお伺いをしてみたいと思います。
  31. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 現在フジテレビの方以下七名の方が行くえ不明になっておるということに関しまして私たちも非常に心配をいたしまして、いま先生御指摘のように赤十字、国際連合のほう、それからアメリカ、ベトナム、ハノイそれからカンボジア政府、あらゆるルートを通じましてこの消息を探知しようと努力いたしてまいりましたし、現在もなおしているわけでございますが、ハノイのほうに私たちが連絡いたしましたときもリストも渡しましたし、先方も自分のほうと緊密な連絡のある勢力に対して直ちに連絡をとってさがしましょうというところまではきておるわけでございますが、遺憾ながら今日までまだいいニュースが入っておらないということになっておるわけでございます。  大体の想像といたしましてはやはりカンボジア地区で行くえ不明になられたようでございまして、私たちはやはり重点的にカンボジアのほうの周辺のいろいろな、現在戦闘をしておる勢力に対しましてハノイを通じてもやりましたし、赤十字を通じて連絡をとっておる。南ベトナム政府にはもちろん連絡をとっておりますが、公算といたしましてはカンボジアのほうがやはり中心ではなかろうか。パリ協定ができましてから相互に関係の外国人のリストを交換することになりまして、これを相互に帰そうということになっておるわけでございますが、いままで何回か見たりストの中にこれらの人の名前が南ベトナムのほうにおきましてもカンボジアのほうにおきましても発見されておらない。なお米側のほうに、また関係の方面に対しましてもう少し正確な調査をしてもらうように現在せっかく努力中でございます。
  32. 石井一

    ○石井委員 過去の経過も大体承知をしておりますし、政府側として御努力をされておることも承知いたしておるわけでございますが、私最初に指摘いたしましたように要するにカンボジア政府なり、非公式に外務省の三宅さんが行かれたときの北ベトナム政府なりあるいは南ベトナム政府に対する接触あるいは国際機関、赤十字に対する接触は非常にけっこうなんでございますけれども、千と二十日を経過しておるのにそこからもその所在が確認できないという事実は非常にむずかしいケースだ。そうして御指摘になったようにカンボジアが中心だということでございますが、パリ協定以来ベトナムなりラオスでは停戦状態が比較的安定してきておる。カンボジアだけがまだ非常に問題だ。臨時革命政府の人々はカンボジア領域内に入っておるということを認めてはおりませんが、現実にはやはりその地域で激しい問題がいまだに残っておる。そうしてその人々の間でやはり行くえ不明になった直接の原因があるのではないかという危惧が一番疑問として深い。それでなければこれまでに行くえ不明がわかっておる。こういうことですから、私はそういう点を考えますと一番肝心な交渉相手というのは臨時革命政府の皆さんじゃなかろうか。この人たちを責めるわけではございませんが、やはり日本人として人道的な立場からこういうケースのものはもう少し問いただしてみるという必要があるのではなかろうか。そういう意味で、これは外交問題とかそういう問題とまた別の問題だと私は理解をいたしております。そういう関係でこの機会におそらく調査究明委員会は積極的にこれらの人々と接触をせられておりますが、私は政府もやはり非公式でもいいから何らかの形で呼びかけをされてもいいのではなかろうか、あるいはそれが政治的な形でできないのだろうか、こういうことに私は疑問を持つわけでございまして、その点にしぼってもう少し積極的にお答えをいただければ幸いです。
  33. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 事柄が御指摘のように人道問題で緊急性を持っておりますので、私たちとしては最も適切な方法で措置をとりたいということは考えておる次第でございます。どういう方法でどういうふうにするかということは一応おまかせをいただきたい、かように考えております。できるだけ適切な方法でこれらの人々の消息を拝見し、もしお元気であれば早く家に帰ってもらえるように全力をあげたいと考えております。
  34. 石井一

    ○石井委員 七日に訪日いたしまして二十九日まで滞在の予定でございます。まだ時間もかなりあるようであります。私は民間人の代表に政府が正式な交渉を持てとは言っておりません。しかし、問題の性格上、その家族の立場も考えた場合に、私は、何らかの形で善処をしていただければ、こういう希望を持っておるわけでございまして、政府委員から前向きの御答弁をいただきましたが、外務大臣、この点について何か御意見がございましたら、一言お聞かせいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 御心配の問題につきまして、あらゆる道を、方法を考えまして対処せなければならぬと考えております。ただ、臨時革命政府への接触の問題でございますが、外交関係を持っていない、あるいは持つ姿勢でないわけでございますので、これとの接触は間接的たらざるを得ないことだけは御了承いただきたいと思います。
  36. 石井一

    ○石井委員 それでは次の問題に移らしていただきたいと思います。  日中の経済関係、とりわけ通商問題についてきょうは質疑を進める予定でございます。  先月、わが党の藤山愛一郎議員が中国を訪問されて、国貿促の立場からいろいろとこういう問題について話し合いをされてきたようでありますが、帰国後、大臣は藤山議員にお会いになったかどうか、この点についてお話し合いをされたかどうか、まずこの点から始めさしていただきます。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 御来訪いただきまして、帰国の御報告を伺いました。
  38. 石井一

    ○石井委員 その話し合いの中から、今後の日中間の経済関係の展望というものについて何か新しいものをお感じになったかどうか。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 いませっかく始めておりまする各種の実務協定の締結を急ぐように、それが先方の意思でもあるし、藤山会長御自身の御希望でもございまして、それが第一でございました。そのほかに、日中経済関係の取り進めにあたりまして、別段新たな問題というものを御提起になったことはございません。
  40. 石井一

    ○石井委員 少し具体的にお伺いをさしていただきますが、今回の藤山訪中団は、今後日中の通商協定その他ができ上がっても、やはり両国の国貿促のルートを通じて民間の意見をどんどんと反映させていきたい、協議内容その他まとまれば両国政府に具申したい、こういうふうな了解がなされたというふうにもいわれております。これまで、日中国交正常化以前に民間貿易活動が両国の関係に貢献したということは、私たちは率直に認めなければいかぬ事実だろうと思うのでございますけれども、政府はこの民間の貿易活動というものに対してどういう評価を与え、また今後もこれを生かしていこうというふうな形なのか、今後は政策的に大きく転換しようとされておるのか、この点はいかがでございますか。
  41. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 御指摘のように、従来の国交正常化以前の中国日本における貿易経済関係というものは、民間の方が非常に御尽力なさったわけであります。その結果として、一つは覚書事務所のような形態も出ておりますし、それ以外に各種の団体がそれぞれ先方としかるべく連絡をとって経済関係の緊密化をはかってこられたわけであります。  貿易事務所につきましては、現在の了解といたしましては、一応年内にこれを終了するということになっておりますので、今後日中国交正常化ができました以後におきましては、中心のパイプといたしましては、日本政府と先方の政府との間でがっちりいろいろな協定をつくって、ゆるぎのない経済関係の基礎をつくっていく必要がある。しかし、経済はやはり生きものでございますから、それぞれの関係のあるところで、必要に応じてある程度の経済活動が促進されていくということを特にわれわれが禁止しようとかどうしようという意図は持っておりませんが、いま一番大切なことは、通商貿易協定のようなものを早くつくって、そしてそれに基づいて、日本国政府と中華人民共和国政府との間に大きなパイプを通して、経済活動の促進をはかっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  42. 石井一

    ○石井委員 明快な御答弁でよくわかりましたが、日中の通商条約についての日本案が提示されたのが六月十八日、それから中国案が提示されて返ってきたのが六月二十六日、その間一週間ほどという非常にスピーディーな形で具体的な反応が中国からあったわけですが、この反応の早さというものをどのようにお考えになりますか。
  43. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 実は国交正常化後、昨年末から私たちのほうはかなり高い政府レベルのミッションを派遣いたしまして、この貿易の問題というものは非常に大きな問題になるという認識のもとに、関係各省も動員いたしまして前々からいろいろな考え方あるいは資料の収集ということにはつとめてきたわけでございまして、中国側におきましてもわがほうにおきましても、なるべく早くこの案をつくって相互の考え方を交換し、早く交渉に入りたいという意図をもってやってきたわけでございます。先方もこの日中間の経済交流というものには非常な熱意を持っておられることは了解いたしますし、この準備はかなり早くから行なわれておった結果、おっしゃいましたように非常にスピーディーな案の交換ということになって、現在交渉に入る最後の詰めに入っておる、こういうことでございます。
  44. 石井一

    ○石井委員 その提示した日本案と、それから反応のあった中国案に大きな違いがございますか。
  45. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これは、大きな問題に関しましては、たとえば最恵国待遇の相互供与とか、いろいろな大きな原則があるわけでございますが、中国のほうがほかの国と結んでおられるいろいろな通商協定、貿易取りきめというようなものを私たちもいま検討しておるところでございます。従来、それぞれの国の経済の成り立ち及び国際社会、貿易関係のまじわり方、なじみというものが多少違った経緯を持っておりますので、必ずしも同一とはいえない点がございますが、こういった点はもちろん技術的に率直に話し合ってこれから解決していく問題であろう。具体的にどことどこがどうなっておるかということは、これから交渉に入るやさきでございますので、いまの段階では申し上げるのは差し控えさせていただきたい、かように考える次第でございます。
  46. 石井一

    ○石井委員 その点についてあまり深く追及する気持ちはございませんが、ただ、いまおことばにもありました最恵国待遇の内容について、これは通商協定の最大の要件で、どの通商協定にも含まれておるわけでありますけれども、基本的に、あるいは抽象的でもけっこうですが、どういうところに問題点があるのでしょうかね。
  47. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 先ほど申し上げましたように、日本案を受けて一週間以内に先方が対案をつくってこちらへ出したというのではございませんで、経緯を申し上げたわけですが、中国側は中国側で独自の立場から先方の案をつくってこられた。これがたまたまこの時期に、ある期間を接して交換されたという形になったわけでございます。貿易あるいは通商関係に関する基本的な考え方というものは、多くの点では一致いたしておりますが、こまかい点ではやはり違う点があるわけでございまして、その具体的な内容は、先ほど申し上げましたように、いましばらく様子を見てから公表させていただきたい。まだ交渉にも入っておらないという段階でございますので、意見を差し控えたい、かように考えるわけでございます。
  48. 石井一

    ○石井委員 それでは、いまの御答弁に関しましては、要するに両者の意見にはかなりの食い違い、格差というものがある。そしてその格差の中に、最恵国待遇に関する取り扱いということも一つの大きな問題だ、こういうふうに私御理解させていただいてよろしゅうございますか。
  49. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 非常に大きな違いがあるというふうな印象をお持ちになったとしましたら、私の説明が少し舌足らずであったのではないかと思いますが、大筋においてはむしろ考え方はそんなに差がないのですが、いろいろな過去の経緯、それぞれの経済体制、ほかの国との交わり方、そういった国際間との関係、そういった点で技術的に考え方のまだ少し離れておるところがある。こういったところは、しかし話し合っていけばお互いに解決できるものであるというふうに私たちは確信している次第でございます。
  50. 石井一

    ○石井委員 わかりました。  そこで、日中覚え書き貿易が今年末で期限切れということで、岡崎事務所長代表などが期限が切れた後の話し合いなどで最近訪中されたわけでございますけれども、政府としては今後もこういう覚え書き貿易というものが継続されるのが望ましい、こういうふうにお考えになっておるのか、それともやはり今年限りで新しい角度に入るのだからやめたほうがいい、こういうお考えなのか、この点はいかがですか。
  51. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これはわがほうと先方との合意が、やはり考え方の一致が必要なわけでございますが、いままでの話し合いでは、当事者を含めまして、年内にこの事務所は終了しよう、覚え書き貿易は終了して、せっかく国交正常化したのだから国家間に協定をつくってがっちりした経済関係をやりたいという希望であると了解いたしております。
  52. 石井一

    ○石井委員 そうすると、日中の通商条約というものの締結時期をいつごろまでにやらなければいかぬというふうに政府はデッドラインを考えておられるのか。去年の末でしたか、政府側の代表が行きましていろいろとこまかいことを詰められて帰ってこられた談話の中に、来年中にめどをつけたい、まためどがつくんだ、そういうふうな発言もあったわけでありますけれども、先ほどの御答弁だと覚え書き貿易というものはもうぼつぼつ今年中にけりをつけようという考え方だから、そうすると年内にはどうしても通商条約を結ばれるという決意のもとに現在細部の交渉に入っておられる、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  53. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 その事実を踏まえまして先方と話し合っておりますし、何もいつまでというのじゃなしに、できるだけ早くやりたいというのが私たちの考え方でございますし、私たちの希望といたしましてはかなり早い機会にこれらの話に入り、妥結しよう、かように考えておる次第でございます。
  54. 石井一

    ○石井委員 先方から返ってきた反応が一週間、八日間、これは非常に向こうの熱意というものを示しておる。またいまの御答弁だと、両国の提案の差はあまりない、技術的な問題である、こういうふうに考えまして、しかも年内に覚え書き貿易をやめなければいかぬ、こういうふうな段階でありますと、今年末といわずもっと早い時期に通商条約はでき上がる、こういう決意であるというふうにとってもよろしゅうございますか。
  55. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 わがほうも先方もできるだけ早くやりましょうという考え方であるというふうに御了解いただきたいと思います。
  56. 石井一

    ○石井委員 新しい日中貿易の協議機関としていわゆる混合委員会というようなものをつくりたい、そういうふうなことが新聞などでもいわれておるようでございますけれども、これについて具体的な構想をお持ちですか。
  57. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 その種の必要性といいますか、考え方というものはあるというふうにも思われるわけでございますが、具体的にどういうふうにどうするのか、どういうものであるのかということは、ちょっとこれから先方と話し合わなければいかぬ問題でございますので、いまの段階で詳細申し上げるのはお許しいただきたい、かように考えます。
  58. 石井一

    ○石井委員 この委員会に関しては、中国側の案にもやはり含まれておる、こういうことでございますか。
  59. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 双方の案の立場がどうであるかということは、ちょっとまだ交渉前でございますので、お許しいただきたいと思います。
  60. 石井一

    ○石井委員 それから大型プラントの中国への輸出について、いま中国は延べ払いを希望しておる、そういうことのようですが、わが国は輸銀の融資ワクの拡大を行なう、そういう方向で進められておるのかどうか、この点はいかがですか。
  61. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 経済の発展に応じて適切な規模の手当てはしていかなければならない。具体的にどの程度のものをどうするかということはまだきまっておりません。
  62. 石井一

    ○石井委員 日中貿易の中でココムの規制のために輸出が不可能となったということ、そういうふうな事例はあるのですか。
  63. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ある種の、きわめて限定された戦術、戦略的な兵器に関しては制限されておるということでございまして、これは通産省のほうで詳細に承知しておられるはずでございますが、私の記憶では、先方の希望するものがこの制限にひっかかる例が若干あったのではないか、かように記憶いたしております。
  64. 石井一

    ○石井委員 交渉の過程のようですから、あまりこれ以上立ち入ったことをお伺いいたしませんが、なお一、二問、漁業協定についてお伺いをしてみたいと思います。  民間協定で一年間の延長というのがきまっておるわけですが、その後政府間の交渉が続いておる。これも急ぐ問題なんですけれども、どうしてこれは延びておるのですか。
  65. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 実はこの東シナ海における漁業問題というのはなかなか複雑な要素を含んでおりますので、技術的な資源の問題からその規制のしかた、あるいはいろいろな双方の立場の技術的な問題がございまして、民間協定が切れる期限が迫っておりましたので、とりあえず一年間民間協定を延長いたしまして、この間精力的に政府間の専門家がまず集まってそういった資料を交換し、意見の交換を行ない、なるべく早い機会に正式の政府間の漁業協定に持っていきたいということを双方で念願いたしておるわけでございます。
  66. 石井一

    ○石井委員 むずかしい問題という中に、資源の保護の問題だとか何海里という水域の問題だとかあるいは軍事的な問題、こういうふうなものもやはり討議の対象になっておるわけですか。
  67. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 先方の規制のしかたが、特殊な軍事関係の区域というものを三種類ばかりにわたって規制しておるわけでございますが、そういった問題を含めまして日中間で率直に意見の交換をしていくということになるかと思いますが、まず最初にやらなければいけないのはやはり漁業の資源確保、安全操業といったようなことでございまして、いまそういうラインで専門家資料を集め、意見の交換をしておる、こういう段階でございます。
  68. 石井一

    ○石井委員 一年たてば民間協定が切れるわけですが、その時点までにはこの漁業協定に関しても政府間レベルの合意に達したい、こういうことで鋭意努力しておる、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  69. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  70. 石井一

    ○石井委員 最後に、外務大臣、先日の委員会にも総理も出席されまして、この日中の航空協定をはじめ日中間の問題についても、いろいろ野党の委員からも、私たちからも議論が出たところであります。日中国交正常化以降、実務協定の締結ということに関して中国側が非常に積極的な姿勢がある。日本側は積極的でないと申しませんが、積極的にやっておられるということはいまの答弁でも非常に明らかなんですけれども、やはり黒白のつけにくい政府問題というか、問題が非常に多いというふうなことですけれども、これは時間がかかって解決するという問題でなく、やはり決断というものが非常に大臣のレベルで重要だ、こういうふうに私考えます。日中航空協定、そして通商協定、漁業協定に関しまして、内容についてはいまよく伺ったわけですけれども、大臣としての今後の取り組み方——総理もスピーディーに、しかし慎重にやるのだ、こういうふうな御答弁でございましたけれども、直接の最高責任者であられる外務大臣としての最近の御心境、これをひとつお伺いしたいと思います。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 実務協定、いずれが重くいずれが軽いというものではございませんで、どれも大事でございますし、どれも早くやらなければならぬと考えて、せっかく努力をいたしておるのでございます。  これからの進め方でございますけれども、目下国会に忙殺されておりますので、私自身が十分時間を割愛できないことを非常に残念に思っておりますけれども、国会の模様を見ながら、仰せのように、政府首脳で決断すべきことはてきぱき決断してまいらなければならぬと思っておりまして、各協定それぞれ大事でございますので、ぜひ全力をあげて取り組んでみたいと思っております。
  72. 石井一

    ○石井委員 最後に、先日訪中されましたときに、周恩来首相を日本に招かれるということ、そういう発言を総理なり外務大臣されたと思います。最近は首脳外交で、アメリカなりソ連の首脳の動き方を見ても非常にスピーディーなものがあるわけでございますけれども、これらの問題はどうも年内には解決しなければいかぬ、また、そういう方向で政府部内では進んでおる、あとは決断だというふうなことですけれども、これらの問題がまとまる時点に、周首相を日本にひとつお招きするというようなことをもう少し積極的にお進めになる気持ちはないだろうか。先日外務委員会では、これらの問題の締結のために外務大臣がおたずねになってはどうかというようなことも、わがほうの委員からもそういう声があったようでございますが、反対に向こうの最高責任者といいますか、これはまあ儀礼的にお招きになっておるわけですが、それをもう少し積極的にお招きになる御意向はございませんか。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 やはり日中ばかりではございませんで、わが国と友好国との間で最高首脳がひんぱんに接触を持たれて、意思の疎通をはかられて理解と信頼を深められるということは非常に大事な外交の要諦であると思っております。  されば、具体的にどういう時期にそういうことを実行してまいるかということでございますが、それは、それぞれの国の都合にもよることでございまして、両国の都合がつけば、われわれはそういう機会を持つことはたいへん歓迎をし、期待もしておるわけでございます。
  74. 石井一

    ○石井委員 ありがとうございました。
  75. 藤井勝志

    藤井委員長 河上民雄君。
  76. 河上民雄

    ○河上委員 大平外務大臣に二、三お尋ねしたいと思います。  先日、軽井沢で生産性本部のセミナーがございましたところで、シベリア経済開発の協力について慎重論を吐かれたというような新聞報道もあるわけでございますが、こういう——大平さんは常に慎重論が専門ですけれども、ここに、非常に問題になっております際に、あらためて慎重論を述べられた根拠というものはどういうところにございましょうか、お聞かせいただければ幸いだと思います。
  77. 大平正芳

    大平国務大臣 せんだってのゼミナールの主題は資源問題であったわけでございます。私の気持ちといたしましては、われわれは人間の生命を大事にしなければいかぬ、われわれの時間も大事にしなければいかぬ、同時にいろいろ物を大切にしなければならぬじゃないか、最近の世相は資源を愛護するというか、節約するというような気持ちにややゆるんでおるのではないかという気持ちが前提にございましたものですから、私といたしましては、そこに力点を置きまして、資源のない国でございますから、資源を大事にしょう、しかし、必要な資源はやはり安定供給、確保をしなければならぬ、そしてできるだけ供給源の分散もはからなければいかぬけれども、それもすいすいと手軽にできる問題ではなくて、それぞれのプロジェクトにつきましていろいろそれなりの問題があるわけであるので、さればこそ資源というものを大事にしなければならぬのだというところに力点を置いて主張したつもりでございます。シベリア開発問題につきましてもその他の問題につきましても、軽率にやっていいということではないのでございまして、いつでも慎重でなければならぬと考えております。
  78. 河上民雄

    ○河上委員 そういう一般人類と資源の関係というような観点から話されたようなお話でございますけれども、これから田中総理ソ連に行かれる、そういう際に、当然これが問題になるわけでございますが、外務大臣としてお話しになった以上、そこには国際情勢の中での御判断というものもあったのではないかと思います。いま言われたような人類的な観点のほかに、当然国際情勢への配慮というものも外務大臣としてはお持ちになったのではないかと思うのでありますが、そういう場合にアメリカあるいは中国そしてソ連という三つの大きな影響力を持った国の中で日本がどう行動するかというような、そういうような配慮がその慎重論の中に投影しておられたのかどうか、そういう点はいかがでございますか。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 日ソ関係ばかりでなく、わが国各国との外交におきましては、バイラテラルな関係でございましても、国際的な第三者から見ましても一応理解ができるというような間柄が望ましいと思うのでございます。日本アメリカとの関係にいたしましても、伝統的な友好関係にあり安保体制下にあるわけでありますけれども、だからといって、日米間のバイラテラルな関係は国際的にも十分理解ができるルールというもの、節度というものがやはりなければならないように、日中関係におきましても、日ソ関係におきましても、第三国から見まして一応十分日本のやっておるということは理解ができるというようなことは、まず私は考えておかなければいかぬと思います。  それから第二に、それよりも何よりも、やっぱり日本の国内で国民が十分理解し、受け入れられるということもまた考えておかなければならぬと思うのでございまして、シベリア開発の問題につきましては、そのプロジェクト自体のフィージビリティーという問題がいま民間で検討されておるようでございますが、信用の規模の問題があると思いますし、技術の問題もあると思いまするし、それから日本だけで取り組むか、あるいは第三国と協力してやるか、そういった問題も非常に重要な課題だと思うのでございまして、そういった問題につきまして私どもは慎重にいま検討していきたい、そういうことを述べたまでのことでございます。
  80. 河上民雄

    ○河上委員 それは慎重論即消極論ということではないわけでございますか。
  81. 大平正芳

    大平国務大臣 慎重に考えてやらぬことにしたということは言ってないのです。慎重にやるということを言っておるわけでございます。
  82. 河上民雄

    ○河上委員 なお同じころに、防衛庁の見解として、軍事的な観点からそういうパイプラインをつくることは好ましくないというような意見が発表されておるようでございますけれども、大平外務大臣はこういう見解にくみせられるのか、そうでないのか、その点ひとつ明らかにしていただきたい。
  83. 大平正芳

    大平国務大臣 防衛庁から正式にそういう御意見は私は聞いていないわけでございまして、ただ、そういう御見解があるというようなことは前々から承知いたしておるわけでございます。ただ、私がいま申し上げたように、プロジェクト自体のフィージビリティーを考え、信用の規模、技術の精度、それからバイラテラルでやるかマルチラテラルでやるか、そういった点が私の主たる検討の問題でございまして、いま仰せになったような安全保障ということは非常に広範な配慮でございまして、われわれがやっておることで安全保障に関係ないことはないと思いまして、そういうことはもう、われわれが常に日本の国の安全保障ということを考えなければならぬことは当然なことでございまして、そういうことを考えないでやるのかというと、いやいやそういうぞんざいなことはやらぬつもりでございますと答えますけれども、しかし、具体的にこのプロジェクトとそしてセキュリティーの関係について非常にプライオリティーを置いて考えておるかと言われますならば、私どもさほど、そういうことを主張される方々のようにはプライオリティーは置いていないと思います。
  84. 河上民雄

    ○河上委員 それじゃあれですか、マクロ的に言えばそういう安全保障の問題と外交の問題とはからんでくるけれども、しかし、少なくとも、この問題について防衛庁が言っているような見解は自分としてはとらないというように理解してよろしいわけなんですか。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 少なくとも、それにファーストプライオリティーを置くというような考えはございません。
  86. 河上民雄

    ○河上委員 この問題は、防衛庁の見解というものは外交にどの程度の影響があるのかということと非常に深い関係があると思いますので、お伺いをしたわけでございまして、たまたま慎重論が外務大臣から出、また防衛庁からも出る、観点は違うかもしれませんけれども、軌を一にして出たというところに、まあある意味で誤解を招くおそれもかなりあると思いますので、お尋ねをしたわけです。  今度は十七日ですかあたりから日米経済閣僚会議が開かれるわけでありますが、ここでの議題につきましてはいままでこの委員会において何度か議論がありましたので、あまり重ねて触れるつもりはございませんけれども、最近大豆、鉄くず、木材などについてアメリカが一方的に禁輸をするというような措置が報道せられまして、大豆につきましては日本のとうふ用については考慮するというようないろいろなこともありましたけれども、大豆の禁輸についてすでに契約した分までも対象にするというようなことが伝えられておりますけれども、これは個人の契約の場合でもこういうことは許されないことだと思うのでありますが、大臣こういう問題につきまして日米関係という観点からどういうふうにお考えになりますか。大臣の御意見を承りたいと思います。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカのとりました措置も理解ができないわけではございません。それから日本の言い分も十分あると考えるのでありまして、問題は七月、八月を一応エンバーゴーしたということと承知をしておるのでございますが、そこで五〇%既契約分を遠慮願おうということに一応なっておるようでございますが、あとの五〇%はそれでは一体どのように処置されるのであるか。少なくとも、私の承知しております限りにおきましてはニュークロップについては触れられていないようでございまして、わが国の大豆のいまの手持ち、これからの需要、これからの輸入をいろいろ考えまして、需給に大きな異変がないように政府としては対処していきたいと思うのであります。  アメリカ側態度として理解ができないわけではないという趣旨を申し述べたのは、アメリカはやはりアメリカの消費者を持ち、アメリカの家畜業者をかかえておるわけでございますし、いまのようにアンタイインフレ政策をとって物価をフリーズするというような非常に手荒なことをおやりになっておる段階でございますので、世界的な天候異変のために大豆の需給が非常に緊張してきたという段階におきまして、政府として何らかの措置をこの際とらなければならない立場に置かれておったという立場につきましては、私も理解をしなければならぬと思います。わが国の大豆の需給関係に異変が起こらないようにしなければならぬのも同時にわれわれの立場でございまして、今度の合同委員会の場におきまして双方フランクな意見調整をいたしてみたいと考えております。
  88. 河上民雄

    ○河上委員 まあ非常に素朴な国民感情ですが、私もとうふ屋さんを知っておるのですけれども、とうふ屋さんの間でも、こういうことをやられたんじゃわれわれとしても反米的にならざるを得ないなんというようなことを言っておるわけでございまして、今後のことはともかくとして、既契約の分まで破棄するようなやり方に対しまして、一般にアメリカというのは国益のためには従来非常に外国に対するコミットメントをばか正直に守るくらいであるというように一応説明されてきたわけですけれども、今度は国益のためには外国との約束はかなぐり捨ててもやるのだという印象を最近非常に強く与えていると思うのであります。そういう際でありますだけに、今度の日米経済閣僚会議というものは日米関係の調整の上で非常に重要な意味があると思うのです。ニクソンの外交教書というものを——非常に膨大なもので、私も全部なかなか読み切れないくらいでございますが、その中で特に日本の部分を読みますと、経済と政治とは分離できないのだ、むしろ政治、経済、軍事は一体のものだという考え方が非常に強く出ているように受け取れるわけであります。たとえていいますと、アメリカとの関係では日本は経済発展だけにほとんど集中するというようなことで、ジュニアパートナーとして行動する習慣を持ってきた、しかしそういうことはもう今後できなくなったんだというようなことを非常に強調しておるわけでございます。日本は安全保障についてアメリカに寄りかかって、そうすることによって経済拡大のために資源を自由に用いる特殊な利益をエンジョイしてきたというようなことをいいまして、現在は日本はジュニアパートナーだ、しかし今後は完全なパートナーになってほしいんだ、こういうことを言って、日本がいままでいわば政経分離という形でアメリカとやってきたのに対して、今度は政、経、軍一体論を彼は非常に強く主張しておるわけです。今度の日米経済閣僚会議におきましても主としてそれが中心課題になるのじゃないかと私は予想するわけでありますが、日本政府としては、特に外務大臣としてはそういうアメリカのたてまえというのですか、論陣というものをどうかわしていくか、そういう点について外務大臣の御意見を、というより覚悟を承りたいと思うのであります。
  89. 大平正芳

    大平国務大臣 私がさか立ちしてみても日本の寸法、日本の力量を越えた仕事はなかなかできません。というて何も日本はいざりのようにはい回る必要はないと思うのです。ですからわれわれの力量と立場、国益というようなものを踏まえた上で、しかもそれを国際的なルールと申しますか、そういうものに従って主張してまいることについて憶病であってはならぬと考えております。それでいまの日本の力量と立場、そういう日本が取り結んでおる日米関係においてどれだけパートナーシップが生かされておるか、どれだけそこなわれておるかということは、これはいろいろの評価のしかたが私はあろうと思うのでありまして、心がけなければいかぬことは、そういう観念的な理解ではなくて、実際上日本の現実の立場と力量を十分評価し、日本の国益のあり方を十分踏まえた上で渡り合ってまいりたいと考えております。  それから、アメリカはこういうコミットメントをそこねるようなことをしておったのではもう反米的たらざるを得ないというお気持ちもわからぬものではないのですけれども、しかし、われわれが国際社会におきまして、いろいろおつき合いを多くの国といたしておりますけれども、アメリカはむしろ信頼できる相手であるということに私は変わりはないと考えておるわけでございまして、問題が出てきた場合に——これは問題が出ないというようなことになりますと、それは死んだ社会でありまして、実際は現実の世界ではいろいろな問題が出てくるし、利害の衝突が起こってまいる、これは当然覚悟しておかなければならぬわけでございます。それをどのように解きほぐしていくかということにわれわれの努力があるわけでございまして、感情的に、情緒的に反発するだけが芸ではないわけでございまして、日米間の今日の問題というようなものはそんなに解決困難な問題であるとは私は考えておりません。
  90. 河上民雄

    ○河上委員 大平さんから一つの覚悟のようなことばがありましたのですが、しかし、依然としてアメリカを最も信頼できる国であるという立場は変えておられないようでございます。戦後二十数年間、いわゆる冷戦の時代におきましては異なる社会体制の国家間の平和共存というのが一番大きな追求の課題であったと思うのでありますけれども、どうも最近はお互いに同じ社会体制であると思っている国の間での平和共存のほうがかえって緊急の大きな課題にさえなっているのではないかと思うのであります。たとえば中ソ対立などもその一つだと思います。日米の間でも最近一番何かと問題が起きますのは、日米の経済関係だと思うのであります。そういう意味で、こういう旧来のそれぞれの冷戦体制下に生まれたお互いの条約体制というものにあまり依存すべき時代ではなくなりつつあるのではないかという気がするわけです。たとえばASPAC、もう数年前、外務委員会、予算委員会などで常に論議されましたASPACも、いまやもう完全に破産状態になっているわけです。SEATOのごときは、半身不随でございます。フランスやオーストラリア、ニュージーランド、パキスタンなどはボイコットする、こういう状態になっております。それからベトナム和平協定というものができまして、東南アジアの中核になるベトナムに対して外国の軍事介入は許さないということが約束されておりますから、そうなってまいりますと、いわゆるSEATOというものもますます事実上困難になってくると思うのですね。そういうような状況の中で、一方ヨーロッパでは両体制間にまたがるヨーロッパの安全保障というものが、現に非常に多数の国が集まってやっているわけです。そういうことを考えますときに、一体いつまで日米安保というものを軸にした外交、そういうことが続けられるかどうか、歴史の流れの中から見ますと、だんだんあやしくなるといいますか、そういうことができなくなるような事態も覚悟するといいますか、歴史の流れとして受け入れるべきときがだんだん近づいているのではないかというような気もするのであります。そういうことも考えまして、ASPACあるいはSEATOあるいは日米安保というものの永続性について、これらのそれぞれの条約体制について一体大平外務大臣はどういうようにお考えになっているか、この機会に伺っておきたいと思います。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 ASPACは条約機構ではないと私は思います。あれはメンバーは各国集まって共通の問題を討議する場であったわけでございます。まず第一に考えておかなければいかぬのは、われわれ何を欲しておるかということですね。それは問題なく、河上さんも私も平和を欲し、安定をこいねがい、欲をいえば繁栄を追求したい、これはあなたも私も議論のないところだと思うのでございます。問題は、そういう状態をつくり上げていく上におきまして既存の条約機構というようなものが一体じゃまになるものかどうか。じゃまになるのだったら、ぼくは、河上さんの御勧告を待つまでもなくこれはやはりやめなければいかぬと思うのです。それからそういう安定、平和の状態をつくり上げていく、繁栄をエンジョイする基盤をつくり上げていく上におきましてやはりなければならぬものだというような評価があれば、それはそれなりに尊重していかなければならぬと思っておるのでありまして、メリット、デメリット、事柄をなす上に必ず明暗はあるものでございまして、絶対的にいいものばかりが世間にあるわけではなくて、いい面もあり、デメリットの面もあることは確かでございますが、われわれ現実に責任を持つ政治家といたしましてそれを計量いたしまして、メリットはできるだけ生かしていかなければいかぬ。同時にデメリットはミニマイズしていく努力をしていくということが手がたい行き方じゃないかと思うのでございます。内政もそうでございますけれども、外交は情緒的に行動を発してはいけないのではないか、そこは現実的に、冷静に処置していかなければならぬと私は思っておるのでございます。いまわれわれがとっておる姿勢というものは明らかにメリットから申しましてデメリットを押えて、はかり知れないメリットを生んでおるものと思うのであります。しかしそれだからといって、それを振り回して安保絶対論なんというようなことを吹聴して回るつもりも私はないのでございます。安保体制というものが緊張を生むことがないように、デメリットの面がないように運営してまいる、またそういう状況をたんねんにつくり上げていくという努力がわれわれの任務ではないかと考えておるのでありまして、いまの段階におきましてこういうものがなくて済むようなときはいつだろうかということを考えると、不敏にいたしまして私にはまだ見当がつきません。
  92. 河上民雄

    ○河上委員 非常に率直な御意見があったのですが、おそらく米中接近が起こる三カ月前でも、こういう段階に国際情勢が入ることは多くの人はなかなか予見できなかったわけです。そういう点から見まして、私は一九八〇年代に入ったら、いまあるようなNATO、ワルシャワ体制あるいは日米安保条約、中ソ友好同盟条約というような、いま冷戦体制下にあった基本的な柱というようなものが形骸化するといいますか、あるいは根本的に考えなければならないような事態に入っていくのじゃないかとさえ思うのであります。  それはそれとして、少し話題を変えますけれども、きのうの朝日新聞に、中国のかつての国民党の有力な将軍であり、現在は中華人民共和国において非常に重要な地位を占める傳作義氏とアメリカの大学で中国系のチアオ教授との対談がかなり大きく出ておりました。それは中国の台湾に対する働きかけというものが一つのテーマになっております。あるいはもうお読みになったと思うのでありますけれども、台湾との実務的な関係が過渡期として、残っている日本としてこういうような問題についてどう考えるか、また在日中国人をかなりの数持っております日本としてこういう問題をどういうように考えるか、実際的な問題を含めて二、三お伺いしたいと思うのであります。  その中では四つの可能性というのがある。第一は蒋政権を倒して大陸と統一する、二は蒋政権を倒して台湾共和国をつくる、三としては蒋政権と手を組んで大陸と統一する、四は蒋政権と手を組んで台湾共和国をつくる、こういう四つの可能性の中、台湾の進路は中国と和平会談をするのが一番いいんだという結論が出ているわけでございます。その中で中国は現在戦うつもりはない。戦うのはたやすいことだけれども、台湾については平和的に解決しようとしている。それからわれわれが戦おうとしても米国は別に動くまい。台湾には艦隊があるなどと大きなことを言ってもものの数ではない。しかし自分たちは和平の会談で台湾問題を解決したい。こういうことを言っておるわけでございます。これらの意味は、一つ出てくることとしましては、一九六九年における日米首脳会談の共同声明の中にありますいわゆる台湾条項というものが消滅したというふうに見るべきではないかと思うのでありますけれども、大平外務大臣としてはどういうふうにお考えになりますか。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 このことにつきましては、政府はたびたび申し上げているとおり、一九六九年当時の日米首脳の認識を述べたものだと承知いたしておるのでございます。その後、台湾をめぐる事態は大きく変わっておるということもまた隠れもない事実だと思うのでございます。わが国といたしまして今日の時点で申し上げられますことは、わが国は中華人民共和国との間に国交の正常化をなしとげた、それは共同声明のラインでなしとげたわけでございまして、共同声明には台湾が中華人民共和国の領土であるということについては政府は理解できるという立場をとっておるわけでございまするし、また二つの中国をつくる陰謀に加担するようなことはしないということもたびたび政府が申し上げているとおりでございまして、今日私に問われますならば、われわれはそういう立場日本政府は堅持いたしておりますということでございまして、台湾の将来というようなことについて言及する立場ではございません。
  94. 河上民雄

    ○河上委員 重ねて伺いますけれども、一九六九年のいわゆる台湾条項は消滅したというふうに認識しておられるかどうかということをもう一度伺いたいと思います。
  95. 大平正芳

    大平国務大臣 消滅しないとか消滅したとかいう問題ではなくて、そのときにおける両国首脳の認識を述べたものでございます。そういう性格のものだとわれわれは承知しておりますということでございまして、消滅する、消滅しないという論理的な文脈の中に乗るものではないと私は思います。
  96. 河上民雄

    ○河上委員 では少なくとも現在の大平さんの外交を拘束する効力は全く持たないものであるというふうに理解してよろしいわけですか。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 一九六九年当時日米首脳がそういう認識を持たれておったということと承知いたしております。
  98. 河上民雄

    ○河上委員 その歴史的な文書である、こういう意味でございますか。
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 繰り返して言うようでございますが、当時の認識を述べたものだと承知しております。
  100. 河上民雄

    ○河上委員 当時の認識を述べたにすぎないものである、こういうことでございますが、そういう一種の歴史的な文書であるというふうに理解する以外にないのでございますけれども、そこで少し具体的な問題になりますけれども、いま日本中国人がどのくらい在住しておられるのか、そしてまたその方々の国籍はいまどういうふうになっておりますか、今後具体的にどういう方向へ行こうとしているのか。すでに昨年の日中国交正常化に伴いまして問題は非常にはっきりしていると思うのでありますけれども、たとえば在日中国人が商用で東南アジアを旅行するとかというような場合にパスポート、ビザの問題などはどういうようになっておるのか、あるいは在日中国人の方で日本に帰化しようと希望された場合に、そういう方々の取り扱いはいまどういうふうになっておるのか、そういうふうなやや具体的なことになりますけれども、事務当局に伺いたいと思います。
  101. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 詳細な正確な御答弁は法務省のほうができると思いますが、私の知っている範囲でお答え申し上げますと、現在日本におられるいわゆる中国人というのは約五万人と了承しております。そのうちの四万数千人、ほとんど大部分はいわゆる元日本人であった人でございます。いわゆる法律第百二十六号というのに基づきまして、戦前日本の領土であったところの人で終戦時に日本におられた人という人たちが、この法律第百二十六号で特定の国籍とか在留資格を持たなくても日本に滞在することが確保されておるということになっておるわけでございます。大部分の人はそういう方々でございます。それ以外に香港からいわゆる中国人として入っておられる方がおる。また大陸のほうから見えておられる方もあるというのが現在のいわゆる中国人の姿であろうと思います。  そこで、これらの人々の国籍がどこであるかというのは、御承知のように国籍はその国の国籍法というものによって一応規定されるわけでございますが、ある特定の選択とか変更という事態が起こりますときに、本人の意思、本人がどこを選択するかあるいは帰化するかどうかというような変更意思が加わってくるということによって法律的には解決されておる問題であろうかと思います。現在日本におられる方々は、したがいまして国籍が何であるかということを厳格に法律的には規定しにくい面もあるのでございますが、滞在そのものには、法的地位には問題はない。ただ、本人が自分は大陸のほうの中国人であるというふうに考えられるか、あるいは自分は依然台湾というところの中国人であるというふうに考えられるかは本人の問題であるという点が多いのでございますが、待遇上は別に何らそのことによって差はない。  そこで、日本政府といたしましてはいわゆる元国民政府、いわゆる現在の台湾のパスポートというものは、外交関係がございませんのでそういうものとしては受け取らない、認識しない。しかし、日本におられる中国人で東南アジアを旅行されるときにいわゆる台湾のパスポートを持って行かれ、そしてそれぞれの東南アジアの国々が現在台湾とまだ外交関係をほとんどの国が維持しておるわけでございますから、そういう中国人として入国をそれぞれの国で許可しておられる、こういう姿になっているのだろう、かように考えるわけでございます。先ほど言いましたこれらの人々は、日本の法令上は外人登録法上はすべて中国人ということで登録されておる、かような姿であろうかと思います。  なお、帰化につきましては、本人の意思がそのようであり、日本における日本の国籍法によって条件が満たされておる人は、相当帰化の数がふえておるというふうに私は了解いたしております。
  102. 河上民雄

    ○河上委員 いま日中関係が昨年の共同声明で正常化しまして、その後実務的な関係をいま煮詰めているところだと思うのでありますが、そういう中でこの国籍問題は将来どういうふうになる見通しでしょうか。いまのお話では国籍といいますか、中国人ということでその中の解釈は本人の主観にまかされておるというようなことでございますけれども、そういう状態がいつまでも継続するのかどうか、出たとこ勝負でいこうというのですか、その辺のところをちょっと伺いたいと思います。
  103. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 出たとこ勝負ということではございませんので、その人々を、当人は非常に深刻な真剣な問題でございまして、この人たちがどこのパスポートを持たれるか、どこの国籍であるかということを主張されるかということは、日本政府が決定したり強制することはできないのでございまして、そういう形で将来あるいは先ほどおっしゃいましたような中華人民共和国政府と台湾のほうとの話し合いが何かつけば、これはそれで一つの解決方法が出てくるかもしれませんが、これまたいま私たちとして何とも申し上げる立場にない、かような次第でございます。一応法律的には中国人であって、しかもそれぞれの法的地位としては何ら差別待遇もないし支障はないというのが現在の姿である、かように承知いたしております。
  104. 河上民雄

    ○河上委員 その問題について最後に一つだけ伺いますが、日本の国籍法では国籍は一つしか持てないようになっておる。日本国籍しか持てないようになっておると思うのですけれども、中国側は在外華僑をたくさん持っておるわけですけれども、そういう場合に中国人のほかにそれぞれの国の国籍を取得するように奨励しておるのか、それとも日本の国籍を取得した者は直ちに中国国籍を失うということになっているのか、そういうことは今後非常に大きな問題になってくると思うのでありますが、その点いかがでございますか。
  105. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 世界的な慣例といたしまして、無国籍の人を防止するあるいは二重国籍を防止するということを各国協力しておるわけでございまして、二つの国籍を持たないようにし、また逆に無国籍にならないように、そこで一つの国籍からほかの国籍に帰化するとかあるいは国籍変更されるときには片一方の国籍が完全に消滅する、もしくはそういう手続を済ませて片一方のほうの国籍を申請されるということになっております。それで、いま御指摘のように日本の国籍法は明瞭に、日本ではただ一つでそういう法定要件を備えた人に対して審査の結果帰化が許される、かようになるわけでございます。  なお東南アジアの多くの国におきましては、約二千万といわれるいわゆる華僑の問題をかかえておる国があるわけでございますが、現在の姿はできるだけ自国民になる、自分の国の市民権なり国籍を取得するようにということの政策をとっておるようであります。しかしそれが二重国籍になっておるというようなことはまず非常にないのが通常である、かように考えております。
  106. 河上民雄

    ○河上委員 あまり詳しいあれは私も存じませんけれども、ただ私の選挙区では中国の方が非常に多いものでございますから、そういう具体的な場面にぶつかるのですけれども、日本政府では中国人が二重国籍を持たないように、相手方の国籍喪失証明書を要求して初めて帰化を許可しているようでございますが、そういうことは今後とも必要なのか 中華人民共和国においてどういう政策をとっておられるのか、その点についての情報といいますか認識というものはどういうことでございましょうか。
  107. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 先ほど申し上げましたように二重国籍を防止しなければならないので、日本の国籍を取得するためにはそれ以外の国籍を持たないあるいはほかの従来持っていた国籍を消滅するという手続を経て日本のほうに申請され、審査の結果日本国籍が取得できるというのが日本の法体系でございます。
  108. 河上民雄

    ○河上委員 その点については中華人民共和国の公民についても同様であるということでございましょうか。
  109. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 世界各国人に対して同様でございます。
  110. 河上民雄

    ○河上委員 これは実務的な関係で、ある意味では非常に気の毒な方もかなり出てくるケースがございます。いまのところ百二十六号でございますか、それで一応日本に市民として居住するにおいてはあまり不便がないようでございますけれども、海外に旅行する場合にいつもそういうことが問題になってくるようでございます。中国の方は商売をやっておられる方が非常に多いものですから、日本の普通どこかの会社につとめているという方は比較的少ないわけで、そういう点今後問題のないように十分配慮していただきたいということをここで特にお願いをいたします。その点についての政府の御答弁をいただいておきたいと思います。
  111. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 御趣旨に沿うようにできるだけ関係官庁と相談いたしまして処理いたします。
  112. 河上民雄

    ○河上委員 この前毎日新聞ですか、かなり大きく出ておりましたのですけれども、今度政府で東南アジア医療保健機構というものをつくることをきめた。いろいろな名前をあげておりますけれども、日本を含めて加盟十カ国と大筋の合意が成立した。日本が費用の九割を分担をいたしますが、表決権については平等であるというような内容が出ておりましたが、非常に唐突にこういう問題が出てまいりましたので、この経過を伺いたいのでございます。その点をお願いいたします。
  113. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 新聞に出ました出方がちょっと唐突だったかと思いますが、実は東南アジア医療保健機構ということが考え出されましたのも大体昭和四十一年ごろからでございまして、たまたまそのころ東南アジア開発閣僚会議というものをわが国の主唱で始めまして、それとほぼ同じころにわが国のお医者さんだとかそういう医療に関係をしておられる有力な方々が、特に東南アジア諸国においてはお医者さんが足りないとかいろいろそういう医療の問題が多いので、わが国の協力の一つの分野としてそういう方面での協力をやったらどうかということが論議されました。それでたまたま東南アジア開発閣僚会議ができましたあとでインドネシアからこうした公共衛生についての作業部会というようなものをつくろうじゃないかという提案もございまして、そういうようなわが国の意向とそういった会議における加盟国の提案とが合流いたしまして、大体において第四回目の東南アジア開発閣僚会議あたりからこういうことが次第に議論をされました。五回、六回、昨年の十二月に開かれました第七回目の東南アジア開発閣僚会議で本格的にこういった東南アジア医療保健機構というようなものをつくろうじゃないかということがきまりまして、コミュニケの中にもその旨が記載されておるわけでございます。  このコミュニケの趣旨によりまして、大体わが国が言い出したものでございますから、東京でこの機構をつくるための条約を審議する会合をやるべきであるということが定められまして、本年の三月それからまた第二回目が七月の初めに東京でそういう作業部会を行ないまして、第二回目の会合におきましてこの条約の大部分の問題が妥結されまして、条約のテキストが、ドラフトでございますができ上がるという事態になりまして、その時点で新聞が機構のことを取り上げたというかっこうになっています。  この機構の経過は大体そういうようなことでございますが、今後この会議の関係国の中からは、やはりこういう大事な機構であるからこういう問題を各国で担当しておる保健大臣とか厚生大臣とかそういうものの会合をやって最終的に条約を固めていく。その上でこの母体であります東南アジア開発閣僚会議に報告して条約のていさいを整えていく。さらに各国の署名準備、そういった手続を経て機構ができ上がる。機構ができ上がったあとでどういう事業をやるかというようなこともきめていこうということで相談ができておるわけでございます。  ただ、何ぶんにもお医者さんの関係のことでございますから、たとえばたくさんお医者さんを養成するとか看護婦を養成するとかそれからいろいろな設備をつくるとか機構運営そのもの、それから機構が持ちます施設等についてかなりのお金がかかるであろう。これからそういうお金をどうするかという問題がたくさん出てくるわけでございますが、東南アジア開発閣僚会議の中で唯一の先進国の立場にありますわが国がその費用の相当なものを持つだけの覚悟がなければこういう機構をやってはいけないであろうと思われまして、新聞に出ておりました九〇%とかいうようなことが完全にわが国の決心を表明した数として出ておるわけではございませんけれども、相当な部分を負担しなければ各国も協力に応じてきてくれないだろうということから、そういうことで今後財源を確保してできるだけ完全なこういった機構をつくり上げていきたいというふうに考えておるわけであります。
  114. 河上民雄

    ○河上委員 経過は一応伺いましてかなりはっきりしたと思うのでございますが、なお二、三疑点がありますので、もう時間も参りましたけれども伺っておきたいと思います。  まず第一に、国連にはWHOというのがあるわけです。それとの関係はどうなるのか、全く無関係にやるつもりなのか、あるいは今後どういうふうになるのか、つまり現在の関係、将来の構想、この加盟国を見ますると、東南アジアといえばそれまでですけれども、中国、南北朝鮮は入っておりませんですね。日本は東南アジアという厳密なあれから言いますと、東北アジアにむしろ入るわけですね。日本が入っておるのになぜ中国、南北朝鮮が入っていないのか、あるいは北ベトナムが入っていないのかという問題が一つございます。こういう問題は将来加盟国の範囲というものについて考慮されるのかどうか、それから特に本委員会でも問題になりましたが、朝鮮民主主義人民共和国は先般WHOに入ったわけでございまして、こういうふうな活動について非常に積極的であるということは証明されておるわけですが、そういうふうな国をどうお考えか。  それから九割の分担金ということが大きく見出しに出ておるのですけれども、大体年間でどのくらいの予算を考えておられるのかというような問題が一つあると思うのです。  もう一つは、これは向こうで大きな病院でもつくられるのかどうか。その病院も一体どういう構想でやるのか。キリスト教医科連盟というのがございまして、ネパールで岩村昇さんというお医者さまが向こうでずっと医療活動を続けておられるのですけれども、そういう人たちのグループのお話なども私はよく聞くのですが、東南アジアの場合、大病院をつくりますと、大体ハイクラスの人たちしか来なくなって、ほんとにいま必要な人は事実上来れなくなる。初めは非常に善意から出発するわけですけれども、実際にはそういうことになってしまう。むしろいま東南アジアで必要なのは、各地域に小さな病院をたくさんつくって、中国で非常に話題になりましたはだしの医者といいますか、そういうふうなむしろ公衆衛生的な仕事をまず先行させなければいかぬのじゃないかという意見を非常にしばしば聞くわけです。こういった病院をつくられるといたしますならば、一体そういう構想は具体的に持っておられるのかどうか、もしそういうことなしにやられるとなると、金はつぎ込んだが、結局不満だということになりはしないかというような気がします。  いろいろなことを言うようですが、それからもう一つは、日本から医師を派遣した場合に、日本の医師のライセンスが向こうで通用するかどうか、そういうふうな問題を含めて十分考えられないと、せっかく相当な金をつぎ込みながら、五年、十年たってみて、怨嗟の的の象徴たる大病院を東南アジアのどこかの都市に、まさに白い巨塔として建っているということになってしまうおそれがあると思うのです。そういう点、いろいろ伺いましたけれども、非常に疑念がございますのでお尋ねいたしまして、あと質問者、いま来たようですから私はこれで終わりにしたいと思います。
  115. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の点、一々ごもっともでございまして、私どももそういう点をいろいろ考えながらいままで構想を進めてきたわけでございます。  まず第一番目に、WHOという世界的な保健機構がございまして、これが各地で活躍をしているということは御指摘のとおりでございまして、この機構を最初から相談いたしますときに、WHOの人と常時連絡をとって、WHOの事業と重復しないような分野でもってこういう機構をつくっていこうということが常に頭の中に置かれておりまして、現実にも毎回の作業部会その他会議、それから開発閣僚会議までにもWHOからオブザーバーが派遣されて、この審議の次第を注視して、彼らも私どものやり方について賛意を表明しておるということになっておる点をお答えしておきたいと思います。  それから加盟国の問題でございますが、新聞に出ておりました十カ国というのは、要するに東南アジア開発閣僚会議のメンバーでございまして、たまたま東南アジア開発閣僚会議というものが、現在ビルマが代表をまだ送ってきておりませんが、一応東南アジアの範囲の中には入っておると考えておりますので、日本も含めて十カ国になるわけでございますが、そのメンバーの間の相談ごととしてこういう機構をつくり、今後この条約ができまして、この機構が独立して動いていく場合に、新たにこの機構にどういう国が加盟していくかということは、その機構そのものが将来決定していくべき問題であろうかと思いますが、東南アジアと私どもが従来そういう字を使います場合に、中国とか韓国とかいうものは通常その対象の中に入っておらない。それならなぜ日本が入っておるのかということになるわけでございますが、これは日本が東南アジアにおける経済開発、社会開発ということの相談相手になるという意味日本が入っているというふうに御理解していただければよろしいかと思います。  それから事業の内容、それとともにまた予算の点でございますが、大体いま考えております事業は、まず医療関係の情報センターというものがかなり重要な事業であろう。これはまだ東南アジア諸国では、こういう情報センターというものはどこでも経験がございません。日本だけがございますので、日本の医療情報センターというものがまず東南アジア向けのサービスをやるというような意味で、これだけは日本がまず先立って事業を開始できるようにしようじゃないかというので、目下準備をしているところでございます。そのほかにはお医者さんであるとか看護婦でありますとか、あるいは医療関係の医師等の養成ということが大きな事業の一つになると思います。そのために研修、研究センターというようなものを各地に設けたいと考えておりますが、具体的にどういう場所でどういうものをつくるかというような点の詳細まではまだ何もきまっておりません。この条約の作業が終わりました段階で、これから各国寄り寄り相談をしてどんなふうにしていくかきめてまいりたいと思います。  そういうわけでございますので、予算もどの程度のものになるかという点はまだはっきりきまっておるわけではございません。各国の分担金もどの程度の規模になるかというような点もきめているわけではございません。ただ日本がかなりの金額を負担するという意向を、日本としてあるいは私どもとして考えておるという程度にすぎないわけでございます。  それから大病院を建設するかという御指摘でございますが、まさに御指摘のように、大きな病院で金持ちだけが入ってくるというようなことをねらっておるものではなくて、むしろ東南アジアで欠けているところの医者とか看護婦とかそういうものを養成して、漸次いままでの無医村とかそういうところへこれが散らばって仕事をしていくような方向で仕事をやっていきたいというふうに思っておるわけでございます。  それからお医者さんのライセンスの関係は、これは河上先生も御存じのように、各国がそれぞれ非常にむずかしい基準を持っておりまして、日本のお医者さんが東南アジアで必ずしも直ちに治療ができるというようなことにはならないし、また各国でも同じようなことになるわけでございますが、ただ研究、研修というような、つまり一般開業医の医療の妨害にならないような範囲では従来も日本のお医者さんが進出して、各地のお医者さんにそういう研究を指導するとか、研修をやるとかいうようなことは認められてきてもおりますし、今後もこの機構の中で活動する限りは、日本のお医者さんが活動できるようにお互いに約束をしながらやっていきたいというふうに思っております。目下のところ直ちに日本のお医者さんが日本の医師の免許を持って外国へ行って、一般開業医と一緒になって治療に従事するというようなことはこの機構の中では考えておらぬということでございます。  大体御質問の点にお答えいたしたかと思います。
  116. 河上民雄

    ○河上委員 たいへん興味のある一つの企画であろうと思いますけれども、しかし意図と結果とは食い違う場合が非常に多いわけでございまして、そのことは経済協力でもわれわれはいやというほど経験しておるわけでございます。したがってこの問題も、慎重に具体的な点まで十分配慮した上で取りかかっていただくように特に希望をいたしたいと思うわけでございます。ただ、どのくらいの金を出すかということについてまだ何のお答えもいただけないのは、もしこういう問題が将来調印ということでわれわれも批准を求められるような段階になります場合に、そういう構想の基礎になる大体の財政規模もわからないようでははなはだ困ると思うのであります。もう時間がございませんので、きょうは質問をこれで終わりにいたしますけれども、そういう点もう少し具体的な話をお伺いできるようにしていただきたいと思います。
  117. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先ほど申し上げましたように、条約の作業をやっと終わったところでございまして、これから事業の内容等詰めまして、条約の御審議を願う段階ではもう少し具体的なことを申し上げられるように準備をしてまいりたいと思っております。
  118. 藤井勝志

    藤井委員長 永末英一君。
  119. 永末英一

    ○永末委員 先週アメリカの国会議員が訪日をいたしまして、私もその人々と会談をする機会を持ったのでございますが、その会談を通じて印象を受けましたことは、アメリカの外国に対する態度、外交方針というかたいことばを使わずとも、やはりワンセットになって考えておる。わが国に対して経済の問題を論じておりますけれども、絶えずその裏に安全保障の問題があるという感じを強くいたしました。せんだっての本外務委員会大平さんもまたそういう見方をとっておられたと思うのです。そうでございますね。経済問題防衛問題すべてワンセットになって国と国との関係は考えられる。わがほうもまたそう考えておる。こう了解してよろしゅうございますね。
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 そのリンケージのあり方というのはいろいろ違いますけれども、経済も防衛の問題も無関係であるなんということは考えられないと思います。
  121. 永末英一

    ○永末委員 さて、このごろの日米両国間で非常に大きな問題となっておりますのは経済問題のように映っております。そしてニクソン大統領の過般の外交教書もまさに経済問題をきわめて大きな課題として取り扱い、そしてその教書のほとんど全部をこの問題に費やしているように見えるのです。しかし随所に、アメリカ側の主張している根拠を説明するために、日本アメリカとの安全保障関係、すなわち安保体制というものに言及しつつ触れているように思います。  さてそこで、第一に伺いたいのは、ニクソン大統領は、わが国は、日本の国は経済的にいえば超大国である、スーパーパワーである、こういう規定をしてわが国を見ておりますが、あなたはそう思われますか。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 GNP自体から申しますと相当な数字にのぼっていることは事実でございますけれども、質的な面から見ますと、まだ豊かさというものを誇ることはできないと思います。
  123. 永末英一

    ○永末委員 アメリカ側の外交教書で日本関係というところに触れております部分は、つまり日本関係だけのことを見ておりますから、私はいまあなたに伺いたいと思いましたのは、アメリカの経済力というのはただ単に日米間の貿易関係の帳じりにあらわれてくるだけのものではない。帳じりだけを見ておりますと、非常に何か日本が経済的な力を持っておるように見えますけれども、アメリカが全世界に展開いたしております私の会社でございますけれども、いわゆる多国籍企業といわれるもの、そしてそれを可能ならしめているアメリカ自体の資本力、さらにはまた石油資源等の問題も枯渇がいわれておりますけれども、アメリカ自体の持っている資源力、これは食糧問題、大豆にしたってみなそうでございますが、そしてまた全世界的にそれを動かし得る彼らの能力、そしてそれを経済力にし得る技術料、これらから考えますと、われわれとアメリカとは段違いにわれわれのほうが力が弱いのである。そういう意味合いで全世界を見ました場合に、いま豊かさ、貧しさという表現を使われましたけれども、そういう潜在的な経済ポテンシャルという点に着目をした場合に、一体日本の国は、ニクソン大統領から超大国といわれるものではないと私は思うのですが、いかがでしょう。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 抑せのとおりと思います。
  125. 永末英一

    ○永末委員 超大国だなんて言っているニクソン大統領の底意は、おまえのところは超大国なんだから譲歩しろ、こういう結論になるでしょうね。しかし大平さんがいま言われたように、おれたちはそんなに超大国でないということになりますと、譲歩すべきものがこれは少なくなるわけでございまして、その意味合いであなたは、いまわが国はニクソン大統領が評価しているほどの超大国ではない、こういうことでございますが、これからこの国会が終わりますと、日米間の政府ベースによる外交交渉が始まるわけでございますけれども、わが国が何か譲歩するものがあるでしょうか。
  126. 大平正芳

    大平国務大臣 譲歩するとかしないとかいうようなことがいま問題になっておるわけではないわけでございまして、日米関係が現状はどうなっておるか、政治面におきましても経済面におきましても、そういう状況はどうなっておるかということをレビューするということ、それから日米関係というのは、世界の中で相当大きなウエートを持っておるわけでございまして、そういった点についてもお互いに検討するということ、それから世界の中でいまいろいろな問題が討議されておる、通貨問題にいたしましても、新国際ラウンドの問題にいたしましても、資源問題、環境問題等にいたしましても、これは両国共通の関心を持った国際的な問題でございますので、そういった問題について十分意思の疎通をはかるということでございまして、永末さんおっしゃるように、譲歩するとかしないとかいうような問題とは私は考えておりません。
  127. 永末英一

    ○永末委員 あの教書の中でも触れており、また当委員会でもあなたが言われたように、先年のホノルルにおけるニクソン大統領と田中総理との会談で、たとえば日米間の貿易のバランスについては、わが方が両三年中にちゃんと均衡するように努力をいたしますと公約をいたしておるというぐあいに映っているわけですね。そうしますと、やはりそのために客観的に見ればわがほうが非常に犠牲をしながら日米間のバランス、均衡をはかっておる。ことしになりましてからなるほどわがほうの輸出が減って、そのために貿易じりはバランスの数字を示しているようですが、アメリカのほうの努力ではなくてわがほうの努力、それは多かれ少なかれ日本の経済に対しまして犠牲をしいることですね。これが譲歩でしょう。そうではございませんか。
  128. 大平正芳

    大平国務大臣 私はそうは考えておりません。日米間の貿易のアンバランスが非常に顕著な姿で出るということ自体は何に因由するかということを見る場合、日本が自国のマーケットを、国際的なものさしから申しまして開放の度合いが少ない、アメリカががむしゃらに要求しているのではなくて、アメリカの言い分は、先進国のレベルから申して日本のマーケットの開放度はまだ十分ではないじゃないですかという注文であったわけなんですから、そのこと自体、アメリカの主張が間違っているとは私は思わない。したがって、またそれを——日本が資本や貿易の自由化をやることは日本の譲歩であり犠牲であるというような見方をあなたはとられておるかのような印象を私は受けましたけれども、私はそう思わないのでございまして、日本が当然追求すべき目標であるわけでございますので、私はあなたのおっしゃるような理解は持っておりません。
  129. 永末英一

    ○永末委員 譲歩、犠牲というのは、わがほうが貿易の自由化——いままでいろいろアメリカからの輸入を壁を立てておったものも取り払う、あるいはまた資本の自由化もはかる、それは外交的にはすべきことですね。しかし、そのために国内のそれぞれの産業部門において影響を受けているものがある。それをあなたの政府が完全に救わないと、その人が犠牲を受けるのでございまして、大きくいいますと、それはやはり政府のいまの方針、しかも、アメリカからの貿易じりをちゃんとしてくれという要求に対してわれわれが歩調を合わそうということが、結果的にはその部門の人々には犠牲となってあらわれておる、こう見てもいいのじゃないですか。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカがやみくもに貿易の累積した黒字の蓄積はいけないじゃないかというのであれば、そしてそれに屈して日本措置するというのでありましたならば、永末さんのおっしゃるとおりでございますけれども、アメリカはそんなことはいっておりません。それから日本は、資本の自由化にいたしましても貿易の自由化にいたしましても、本来日本がやるべきこととわれわれは考えておるわけでございますが、しかし、国内経済政策の立場から申しますと、あなたが御指摘のように、いままでのシステムでやってまいりましたものを自由化の方向に持っていく限りにおきましては、それだけの困難な状況が出てくるわけでございます。それを自由化対策というような名において政府が国内的に措置するということは、また別な意味において政府責任であると思っております。
  131. 永末英一

    ○永末委員 いずれにしてもいままで政府日本の国内経済の安定維持のために必要だというので、いまのような貿易上の障壁を設けておった。それを撤廃してきたということになりますと、いま最後大臣が言われたように、それらの部門に対しましては政府補償措置ということが十分でなければこれらの部門が犠牲をこうむるわけである。しかし、そのことがすでに行なわれておるわけでございます。さて、そういう面で経済的にわれわれがアメリカに対して——いままでアメリカ側からこの部面に対して、いわばアメリカ側にとって改正をしてくれろという話はしょっちゅうございましたね。それに応じて措置をとってきたわけでございますから、もっとも考え方としては当然なすべきことであったといわれるかもしれませんよ。しかし、日米間の最近のいろいろな会合等は主としてこの面に焦点が置かれておったことは、私は天下周知の事実ではなかったかと思います。  さて、そういうぐあいに経済はわがほうが保護のよろいを固めておったのではなくて、両方がやはり国際経済の危険を分担していくという姿勢になった場合に、一方の経済はもう変わってきているわけですから、防衛の問題安全保障の問題はいままでどおりでよいのだろうかどうかという疑問がわいてくるわけですね。いままで当委員会におきましても、いや変わらないのだという言明だけ受けておりますけれども、そしてまた安保条約そのものも経済条項が何か重点みたいな御説明をときどきやられましたけれども、しかし日米間の経済関係はその意味では平等になってきておる、わがほうが彼らに譲るべきものはなくなってきておるという場合に、安全面、安全保障面でもわれわれはアメリカに対してもっと自由にものの言える状態がきているのではないかと思いますが、いかがですか。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 当然のことと思っております。
  133. 永末英一

    ○永末委員 さて、ニクソン大統領の教書の中で、ソ連に関する項で次のようないい方をとっているわけでございます。「米ソ関係をイデオロギーによってあらかじめきめてしまうことはもはや現実的ではなくなった。(中略)イデオロギー的要素は米ソの争点について真剣に考えることを排除するものではなくなった」ということを述べております。なるほど、それ以後の米ソ関係、それ以前からもそうではございましたが、きわめて両国のナショナルインタレストに基づいた交渉が行なわれている。これが過般のブレジネフ・ソ連共産党書記長のワシントン訪問になってあらわれ、そして一連の米ソ間の協定、条約になってあらわれたと思います。さて、しかしながら、この問題は——いままで、いうならばイデオロギーはつけたりであったと思いますよ、私自身は。しかし、とにかく東西両陣営も、それで、それぞれが同盟関係を与国に対して求めてき、与国もそれに応じてきたという関係を基本的に欠いてくるものだ。いうならば、いままで組んできた同盟関係というものに、これはやはり再検討をすべきという問題を投げかけておると私は思うわけであります。あなたはどう思われますか。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 大きな、政治的な動きであったと思います。しかし、しさいに見ますと、米ソ両国がそれぞれの国が持っておる既存のコメットメントを損ねるものではない、あるいは国連憲章五十一条でございますか、そういうものを損ねるものでもないというようなことがちゃんと断わってあるわけでございまして、私はあの動きは政治的に非常に大きな問題だと思いますが、直ちにそのことが既存の条約機構というようなものをゆるがすものであるとは考えておりません。
  135. 永末英一

    ○永末委員 アメリカ態度が同盟条約を結んでおった時代とはきわめて大きく変わっていることは私、事実だと思うのですね。そしていまの表現は、なるほど、あなたが引用されましたように絶えず既存の同盟国に対するコミットメントは破らないとか、いや、国連憲章五十一条を持ち出したり、いってはおりますが、なぜそれを触れなければいかぬかというと、基本のベースが変わっているからだと思わざるを得ない。  いま、米ソ会談のことに触れたのでありますが、あなたはヘルシンキで行なわれました全欧安保会議——いままで普通なら両方が、ワルシャワ機構側とNATO側とが、同じ会場に合して、そして全体、彼ら両方を含むヨーロッパの安全保障について語るということはちょっと考えられなかった。つまり、同盟条約が結ばれておった過程ではですよ。それが変わっておるのでございますから、わが国としてはこの全欧州安保会議というものを一体どう評価しておられますか。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 ああいう寄り合いが行なわれたということはそれなりに歓迎すべきことと思っておりますが、注意せねばならぬのは、両方の陣営ともディスアームというか武装解除して集まっているわけではないことです。全然それに触れていないわけでございまして、十分な武装を整えた上で、相互に何か信頼をつくり上げる糸口がつかめないかということを模索しておる姿だと思うのでございます。そういうことがない時代が——一つのテーブルに着いてそういうことを模索するということ自体は、たいへん歓迎すべき徴候と思いますけれども、しかし、これは平和にとって非常に画期的な前進であるというような、底抜けの手放しの楽観は禁物だと私は考えております。
  137. 永末英一

    ○永末委員 国際関係に手放しで楽観のできるようなものは、つめのあかほどもないと私は思います。すべて二つの要素を含みつつ展開しておる。ただ問題は、この前の戦争後すわったことのないものが同じところにすわっている。それは国連という儀式的な意味合いのあるものではなくて、自発的にすわったというところにやはり意味があると私は思うのです。これですぐに全欧州を包む安全保障体制ができるなどというようなことは思いませんが、少なくともその入り口に集まったことは事実であります。どうなるかわかりません。ただ、そういう角度でこれを見た場合に、同じようなものが、やはりわが国わが国のことでございますから、わが国にとって、似たようなものがアジアにできたほうがいいと私は思うのですが、欧州で可能なことはアジアでも可能なはずだ。もしわが国がそれを望むならば、そういう方向へ向けてわがほうの外交を推進していく必要がある。アメリカソ連は同じテーブルにすわりました。ほかの国を含めてすわりました。アジアではまだできておりませんが、こういうような種類の会合、すぐにそれがアジアの安全保障という固まった体制に至らずとも、少なくとも違った形でアジアにおける安全を望み得る、こうやってすわることがですよ。だとすれば、わがほうの一つの重要な外交の目標にならなければならぬと思いますが、あなたはそういうアジアにおける方向をつくりたいと思われますか、どうですか。
  138. 大平正芳

    大平国務大臣 もとよりアジアにおきましても、安全保障を、各国が集まって、同じテーブルに着いて話し合うような段階を迎えることができたら、たいへんいいことだとも思うし、しかしながら、私どもそれはいつ可能なのか全く見当がつかない状況であることはたいへん残念だと思います。しかし、そういう状況をつくり出すために、一つ一つたんねんに事業実績を積んでいく努力はやっていかなければならぬと思うわけでございます。私どもの外交的努力も、もちろん究極的にはそういう状況をつくり上げる一助になるようにふるまっていかなければならぬと考えます。
  139. 永末英一

    ○永末委員 同じこのニクソン大統領の外交教書の中でも、中国の項で次のようなことばがあるわけでございます。アメリカは、独立の平和的中国について歴史的関心を抱いておる、つまり、これはニクソン大統領の北京訪問以来、急角度にアメリカ中国に対する見方が変わってきた、その一つの終局的表現だと思います。しかし、これはちょうどわれわれがあの悲劇的な戦争に突入する前、日露戦争以後アメリカが歴史的にまた連続的に中国に対して抱いておった考えないしはその表現ときわめて類似をいたしておる。しかも現在ニクソン大統領の外交問題に関する補佐官でございますキッシンジャー博士は、かつて彼の書物に、アメリカの安全保障、アメリカの外交的利益というものは、大陸国との間に一番よく考えられなければならない問題だ、こういうことを述べておるのでございまして、述べておるからそう思っておるのだと思いますが、そう考えますと、今後のアメリカの対中国接近というものはきわめて濃密になるのではなかろうか、中国もまたそのことを予知し、中国は片やソ連との関係がございますが、したがってワシントンには中華民国の旗がひるがえっている建物があると思いますが、にもかかわらず中華人民共和国の旗を立てて、代表を送っておりますね。私は、そういうことをわが国としても予想しなくてはならぬと思いますが、いかがでしょう。
  140. 大平正芳

    大平国務大臣 米中関係の進展ということは、中国にとりましても国際社会の現実の場に出てこられて、体制の違った国々とも話し合うという姿勢になって、現実的な姿勢に変わってきたことを示しておることでございますし、それはわれわれとしても歓迎すべきことだと思うし、また同時にアメリカがそういう動きをとられておることに対しましても評価いたしたいと思います。
  141. 永末英一

    ○永末委員 このニクソン外交教書にあらわれた中国に対する表現のしかたを見ますと、きわめて対等な立場で扱われているわけです。どうも私が最初読み上げました日本に関するくだりは、何か政治的に安全保障の面ではアメリカが負担を負っている、にもかかわらず日本は経済的に好きな、したいことをやっている、これはひとつ両国の協調のために改めてもらわなくてはならぬというような文脈が随所にあらわれている。私は、もし、そういうかまえでアメリカがアジア外交を展開していくとするならば、わが国にとってきわめて重大な問題だと思います。あなたはこの二つを並べてお読みになったと思いますけれども、そういうにおいを感ぜられませんでしたか。
  142. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカの考え方を述べたもので、アメリカ側の考えは考えとして、不審な点は究明していくべきだと思うのでございます。しかし、アメリカがどういう見解を発表したからというので、何もあわてる必要はないのでありまして、問題は、ああいう考え方によってどういう具体的な問題が提示されるか、それに対してわがほうがどう対応していくかということが問題なのでございまして、そんなに私は外交教書で取り越し苦労はいたしていません。
  143. 永末英一

    ○永末委員 私は、アメリカ人というのはきわめて正直だと思うのです。そこで、やはり自分の考え方をあるものによって表明している、その意味合いでは大統領の宣言的な意味を持ったこういう教書というようなものは、並べてずっと経過的に見ておりますと、なるほどそれによって政策が自後展開されているなと思われる節が多々あります。その意味合いで、特に中国に関しては違った形で触れられ、わが国につきましてもこれまでとは全然違った形で取り上げられている、やはりその違いというところは見なければならぬのではないかと思います。したがって、あなたは外交の担当者でございますから、いい例かどうか知りませんが、いうならば、剣道のように、切っ先がこれから触れようとする矢先を見抜いてやっていただかないと、切られてからわかったというのではもうおそいですからね。そういう御注意をしていただきたいなと思うのです。いかがでしょうか。
  144. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり心得てやらなければいかぬと考えます。
  145. 永末英一

    ○永末委員 さて、このところ日米間は、表面は経済問題ですけれども、基地あるいは安保条約関係の会合が、いろいろなレベルで行なわれてまいりましたね。私は、もし、いまのようにアメリカのアジアに対する態度が、ソ連に対しても非常に融和的な態度中国に対してもきわめて親密な融和的な態度で臨んでくるとしますと、もう二十数年も前につくったこの安保条約による軍事基地というようなものは意味が変わってきておる。一つ伺いたいのですが、何か、いままでこの安保条約によってわれわれはアメリカにきわめて負うところが大である、わが国の安全を守るためにですね。そういう説明を伺いましたが、わがほうのこの軍事基地は、アメリカに貸しておる軍事基地はアメリカの安全保障についてどういう意義があるのでしょうか、伺いたい。
  146. 大平正芳

    大平国務大臣 実は安保条約というのが単独であるわけではないわけでありまして、アメリカのアジア政策というものの中で一つの位置づけを持っておることは事実でございます。したがって、これは日米関係のアングルからだけ評価すべきものではないと思います。アメリカはそれだけの、日米安保条約体制というものをそのアジア政策の軸として維持してきたわけでございまして、それだけのメリットはあったと思うわけでございます。問題はいろいろ状況が変わってきているじゃないかということでございます。それはずいぶん状況も変わってきましたが、日本国内の状況も変わってきておるわけでございまして、そういう状況に合うように安保条約を運営してまいらなければならぬわけでございまして、一時御案内のような状況でありましたものも、自然に軍事基地も小さくなり、兵員も大きく減り、量的な大きな転換を遂げておることは事実でございますが、これでもなお私どもは十分とは思わないわけでございます。本質的な機能をそこなわない範囲におきましてやはり基地の整理縮小、とりわけ沖繩の基地の整理縮小というのは急がなければならないと思うわけでございます。そういう意味において、われわれはひんぱんに会合を持って推し進めておるわけでございますので、状況、条件の変化に応じまして運営についていろいろ考えをめぐらしてまいりましたし、今後もそういうことに気をつけてまいるのは当然だと私は思っております。
  147. 永末英一

    ○永末委員 基地縮小のために専心努力をしておられるというのはけっこうでございまして、これはぜひやっていただかなくちゃならない。  さて、その基地縮小の意味合いでございますが、いろいろ意味はございましょうが、われわれは戦争に負けて、彼らが占領してきました。それが基地という形で残っているわけですね。条約上の表現は異なりまして貸与しておることになっておりますが、しかし占領されたものが残っておるわけです。沖繩の基地の問題もまさしくそこに問題がある。占領状態が続いておるというぐあいに見られざるを得ない、もとからそうでございますから。そこでやはり、われわれがほんとうにアメリカとの間でことばどおりイコールパートナーであるというのなら、私はなるほどアメリカ日本に基地を依存しておるわけでございますが、その基地の貸与している姿も変わってくるのはまたあたりまえではないか、占領性がきわめて濃密に見えるような姿のものはやはり早くやめさせていくということが必要ではないかと思いますが、どうでしょうか。われわれが見ておって、なるほどあのときは負けたのだから頭を下げた、彼らが来て占領して星条旗がひるがえった、そして表現は、意味は変わっていっているように見えるけれども、それが二十八年、結局ずっと続いておる。そういうようなものはこれはやめていかなければ、イコールパートナーになった気が日本人としてしないのでありまして、したがって、基地縮小の交渉をする場合には、そういうものからどんどんはずしていくということが必要ではないかと思いますが、どうでしょうか。
  148. 大平正芳

    大平国務大臣 事実おっしゃるような方向でずっと来たわけでございまして、占領直後から考えてみると今昔の感が永末委員にも私はあると思うのであります。問題はしかし一方的にやれる仕事ではないので、アメリカの十分な理解と協力を得ながらやらぬと実効があがらぬわけでございまして、先方の安保条約の機能をそこねるということになりますと、問題は非常に重大でありますが、それをそこねない範囲におきまして、日本の都市化の進展等とあわせまして、精力的に基地の整理縮小を要求してまいる、実現してまいるのが私は当然の道行きだと考えておりまして、これからは政府努力を見守っていただくばかりでなく、御激励もしていただきたいと思います。
  149. 永末英一

    ○永末委員 基地縮小についてアメリカ側の理解と協力が必要だと言われましたが、私は逆に考えているのです。彼らが基地を維持したければ、わがほうの理解と協力を彼らが求めてくるべき筋合いのものでありまして、もう占領されていた過去のことといまのことと比べて、占領されたころよりもよくなったなんて言うことは意味がない、そんなことを思っておるのだったら、日米新時代というものは語られないし、先ほどあなたは、アメリカの要求があったから経済を譲歩したのではない、譲歩という表現は当たらないと言われましたけれども、おかしいと思うのですね。私はその意味合いで、ものの考え方、発想を変えて、アメリカとの外交に当たらなければならない。もう一世代過ぎている、戦争に参加した者の時代は過ぎたのだ、いまの若い世代の人たちは関係がないのですから、その意味合いで、たとえば基地の問題でも、彼らこそが理解と協力をわれわれに求めてくるべきであって、そのためにアメリカが、自分らがアジアの安全のためにどういうように寄与したいとしているのか、なぜ日本列島に当世基地が必要なのか、もっと十分な説明をしてもらわなければこの問題は解決しないと思います。その意味合いで、私が先ほど申し上げた占領性がきわめて濃厚にあらわれているものは、まず彼らとしてはわれわれに返すべきだと思います。たとえば横須賀にありました元横須賀鎮守府の建物ですね。あれは鎮守府の建物ですから、星条旗がひるがえっておりますが、あれをあのままにしておいて、そうして海上自衛隊と何か一緒に住むといいましても、それは私は話の筋合いが通らない。建物は幾らでもできるのです。いま彼らが借りているあそこにいたければ、あの基地のところにさっさと別の建物を建てていけばいいのであって、これは一例でございますけれども、そういうことがやはり何と申しましても、政府が口をすっぱくして日米協力と言ったって、受ける日本国民のほうは、自民党政府というのはやはり占領の落とし子であって、まだまだそれから抜け切れないのである、こう映るのでありまして、いかがでしょうか。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 この事柄はなし遂げて実現をしないと意味がないのであります。からいばりばかりしても実効があがらなければもう何もならないわけでございまして、国会の運営みたいなものでございまして、自民党がわれわれは多数派である、われわれは多数派であるなんていうことを、言わなくてもわかっていることなんで、この自民党が野党に辞を低うしてお願いすることによって円滑な運営ができるわけなのでございまして、日米交渉におきましても、理屈を言って言い合っておって事が済むなら私も仕事が楽なんでございますけれども、われわれは何とかして国民の期待にこたえ得るように実績をあげていかなければならぬと思いまして、いろいろやっておるわけであります。そのあたりは永末委員もよくよく御理解をいただかなければならぬことではないかと私は思うのでございます。私どもも日本人といたしまして、把持すべき根性は把持して措置していくわけでございまして、いまあなたが示唆されましたような占領性の濃厚なものの処理というものにつきましては、十分気をつけていきたいと思っておりますが、とりわけ沖繩はこの間までアメリカの支配権下にあったわけでございまして、返ってきて一年そこそこでありますから、まだ緒についたばかりでございます。したがって、あそこにつきましては特段の配慮をしていかないといかぬと思いまして、いませっかく汗をかいておるところであります。
  151. 永末英一

    ○永末委員 先ほど触れました全欧安保会議でフィンランドの代表でございましたか、この会議はすでに勝者も敗者もなく、大国も小国もない、そういう立場各国が全欧州の安全のために集まったというようなことを言ったと伝えられております。なるほど沖繩の返りましたのは一年前でございますけれども、帰ったからには勝者も敗者もない。もし彼らが少しでも勝者という感覚を持ち、われわれが敗者という感覚を持っておるならば、ほんとうの対等の外交交渉はできない。からいばりする必要はございませんが、新しい時代に立っておるという認識のもとに、もしごうまつでも古い感覚をあっちが持っていてはいかぬことでございますので、そのためにはわれわれのほうで腹固めをすべきである。せっかく御努力願いたいと思います。  終わります。
  152. 藤井勝志

    藤井委員長 次回は、来たる十三日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十一分散会