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1972-03-23 第68回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月二十三日(木曜日)    午前十時九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         八木 一郎君     理 事                 佐藤 一郎君                 山本 利壽君                 森 元治郎君     委 員                 杉原 荒太君                 塚田十一郎君                 長谷川 仁君                 増原 恵吉君                 田  英夫君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 渋谷 邦彦君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        外務政務次官   大西 正男君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省条約局外        務参事官     穂崎  巧君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君    事務局側        常任委員会専門        員        小倉  満君     —————————————   本日の会議に付した案件所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国フィンランド共和  国との間の条約締結について承認を求めるの  件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (尖閣列島の帰属問題に関する件)  (当面の日ソ問題に関する件)  (核兵器不拡散条約に関する件)  (ベトナム問題に関する件)  (中国問題に関する件)  (朝鮮問題に関する件)     —————————————
  2. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国フィンランド共和国との間の条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本案件につきましては去る三月九日に趣旨説明及び補足説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 森元治郎

    森元治郎君 このフィンランドとの条約ですね、これは非常に一読して特徴的なことは、一体その二重課税回避とか脱税とかいうのは、いろんな貿易商取引、人間の交流などにたいへんお互いに深い関係になってきて、そういうところから、やむを得ずこれはスタートするのが通例のこの種条約だと思うのです。さっと読んでみるだけでも、外務省からくれた資料見ても、何といいますか、貿易関係、航空機、船舶の往来、国費留学生在留者数などフィンランドとの経済関係現況というのを見ても、留学生お互いに一人ずつ、在留人お互いに百人台、飛行機にしてもごく少ない。こちらからいくのは少なくて、向こうからは少し来ます。貿易量にしても日本が千百万ドルですか。向こうからくるのが五千四百万ドルと、非常に少ないですね。これを今回締結した理由提案趣旨説明の中にもかねてから向こうがそういう希望があったんで、というふうに受け取れるふしがあるんですが、その間の事情を御説明いただきます。
  4. 穂崎巧

    政府委員穂崎巧君) お答えいたします。  ただいま森先生から御指摘のありました日本フィンランド経済関係、確かに現在の日本経済規模に比べますと非常に小さいものであります。ただ、御承知のごとく、この種の租税条約と申しますのは、国際的な二重課税を排除する、脱税防止するというようなことによって、両国経済関係なり文化関係交流を深めていくことが目的でございます。一般的に申しますと、日本の今後の経済的な発展という点から申しますと、日本は世界の各国と、そういう関係を深めていくということを考えておるわけでありますので、そういう国から申し出が、あるいはこちらがそういう国と関係を深くしたいということであれば、そういう条約を結んでいくのが妥当ではなかろうかと思われます。今回の条約は、先ほどお話しがありましたように、フィンランド側から結んでくれということでありますし、さらに第二番目の点といたしまして、日本ヨーロッパ経済関係というのは今後ますます重要なものになってくるということでございますし、フィンランドはかつそのヨーロッパ一つでございます。現在はヨーロッパ相当数の国とこの種の租税条約を結んでおります。今後、こういう条約を結ぶことが日本ヨーロッパないしフィンランド経済関係を深めるということに非常に意義があるのじゃないかと思われます。確かにフィンランドだけを取ってみますと、こういう意見もございますけれども、将来の日本と外国との経済関係ということを考えますと、この種の条約は早きに結んでおくということが大事なんじゃないかと思われます。そういう観点からフィンランドとの条約を結んだ次第でございます。
  5. 森元治郎

    森元治郎君 それならば、この提案理由説明の中にありまするように、これができまするとお互いの「経済技術及び文化の面での交流は、一そう促進されるものと期待しておるのであります」、こう書いてありますね。予想はどうなんですか。この種条約というのは、これは前に外務省から刷ってもらったものを見ても、前にもらったイギリスとの経済関係現況などの資料を見ても、一番骨格となる投資所得資本取り引き状況というようなこと、これがくっついてんですよ。それが記載されているわけです。今回のばかりは何にもないんですね。それが「一そう促進される」というならば、どんな段階で促進されていくんですか。見通し、強い期待をひとつ伺いたい。
  6. 穂崎巧

    政府委員穂崎巧君) いま先生から投資の点についてのお話がございましたが、確かに投資は私ないかと思いますが、両国経済関係をあらわします貿易というものを申し上げますと、日本からフィンランドヘの輸出は、一九六一年には三百万ドルでございました。それが年を追いふえまして、現在、これは一九七〇年——一昨年の統計でございますが、貿易量におきましては十八倍にも及びます五千四百万ドルの輸出に及んでおります。他方輸出のほうは六一年には七十七万ドルでございましたが、同じ一九七〇年には一千百万ドルに達しております。で、将来を予測いたしますと、まあこの九年間に伸びていったと同じ割合で伸びるとは存じませんが、現在の状況でまいりますと、やはり毎年二〇%なりあるいは四、五〇%なりの程度でここしばらくは伸びていくのじゃないかと思われます。  それから人的な交流は、先ほども御指摘になりましたように、在留邦人の数は、確かに日本におるフィンランド人が百三十九人に対しまして、フィンランドにおる日本人は百八十八人でございますが、このように貿易関係が伸びますと、それに従って、場合によっては投資も起こる、あるいは人的な交流も深まっていくのじゃないか、そのように考えております。
  7. 森元治郎

    森元治郎君 要するに、フィンランドのほうで、ひとつ結びたいという向こうの強い希望があったので乗ったというのが実情ですね、もう一回。
  8. 穂崎巧

    政府委員穂崎巧君) この条約を結ぶ発端は、確かにフィンランド側からこの条約を結びたいということでございます。
  9. 森元治郎

    森元治郎君 私は、関係が深くないからこんなことはまだ早いと言ってやめろと言っている意味じゃないんです。ただ、事情だけ聞いている。こういう場合には現地の法人ですか、いわゆる支店とか、また駐在員事務所とか、そういうものもまだないですね。全然もうまっ白。それから、フィンランドからは何か二つか三つの技術導入についての使用料支払いぐらいでほんとうに少ないですね。よほどがんばらないと、いまおっしゃったように、いままでの進み方でいくならば一〇%、二〇%伸びていくだろうというのは、単なる「だろう」ということで、なかなかそうは期待できないと思う。しかし、まあフィンランドとの間にこういうのができて、交流が進んでいくということはけっこうなことですから賛成します。  ところで、この重条約アメリカと四十六年の三月八日に全面改正をしておりますね。それから、イタリアとは四十四年の三月二十日に調印をしていて、いずれも未発効になっている。これはどういうことですか。
  10. 穂崎巧

    政府委員穂崎巧君) お答えいたします。  アメリカとの条約は、昨年三月八日に、現在アメリカとの間に持っております租税条約にかわる新しい租税条約が調印されまして、五月四日に国会の御承認を得た次第でございます。  他方アメリカのほうの事情を申し上げますと、昨年の十一月二十九日に上院承認を了しておりますので、アメリカの準備が整い次第、双方の間で批准書の交換が行なわれるものと存じております。  なお、イタリアとの条約でございますが、イタリア昭和四十四年の三月に署名いたしまして、四十五年の五月に国会の御承認を得た次第でございますけれどもイタリア国内手続が終了していないために批准がおくれております。その事情を申し上げますと、昭和四十五年以来、国内政情が非常に不安でございまして、最近も、御承知のように内閣もたびたびかわっております。このような事情で、この条約国会における審議がまだ済んでいないわけでございます。ただ、われわれといたしましては、いままで大臣レベルないし現地大使館を通じまして、再三国内手続を促進するように先方に要望しておりますが、この五月に総選挙がございますので、その総選挙が済んだあと国会審議が始まります際に、ぜひともこの条約審議してもらうように先方に働きかけをするつもりでおります。
  11. 森元治郎

    森元治郎君 国内政情に左右されるほどの、これはそれほどの条約じゃないと思う。内容で、何か政府の、日本との貿易に対する批判、それから向こう外務委員会ですか、そういうところであとあとへと押しやられているのじゃないかと思いますが、どうですか。
  12. 穂崎巧

    政府委員穂崎巧君) この条約は、御承知のように、きわめて技術的な条約でございますし、それから、われわれ日本側がいままで踏襲しておりましたのがOECDモデル条約というものでございまして、これは大体一つモデルでございますが、各国とも大体これによっておるわけでございます。したがって、内容的には何ら問題はございません。ただ、先方のそういう国内政情審議をおくらしているというふうにわれわれは考えております。
  13. 森元治郎

    森元治郎君 これは大体OECDモデル各国とも結んでいることはわかっているが、おそらくこれは、たとえ政情が不安定でも、与野党の理事の打ち合わせで、こんなものは上げちまおうやと簡単にいきそうなもんだが、そういかないんだね。どうですか。
  14. 穂崎巧

    政府委員穂崎巧君) 私もイタリアのことはよく存じませんが、われわれが先方とたびたび話し合ったところでは、国会での審議が進まないということでございますが、いままでずっと見ましたところ、確かに国内政情も不安でございますし、先方の言うとおりではないかと考えております。
  15. 森元治郎

    森元治郎君 終わります。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっといまのに関連して。  いまの、各国との条約関係で森さんから質問がありましたが、フィンランドとの関係ではないですが、これは大臣、実はフィリピンとの通商航海条約が、もう十一年ぐらい前に日本批准をしたわけですね。そのときにこの外務委員会でもう再三念を押したわけです。何回念を押したか。大統領選挙の結果でどうなるのかということで、何回も念を押して、絶対だいじょうぶだと言われて——あれから大統領が三代かわったわけですね。それで、今度は向こうが最終的に批准しないということをきめたのでしょう。どうもけしからぬ話だと思いましてね。こんなに長い間、十一年間もずっと置いて、いまごろになって批准できないというようなことは、非常に国際的に見てもけしからぬ話だと思うのですが、この間の事情は一体どうなのか。そうして今後は一体どうなるのか。日本批准した条約で、相手に拒否されたなんということは前例がないんじゃないですか。ひとつその間の事情を御説明いただきたいと思います。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) フィリピンとの間におきます通商航海条約、これはわが国とすると非常に大きな問題であったわけです。それで、これは歴代外務大臣、これは非常に重点を置いて努力をしてまいり、私になりましてからも、しばしば督促をいたしておるわけです。ところが、先般のフィリピン国会でこの批准案件が否決をされたと、こういうことになり、実は非常に私どもも驚いておるところでございます。そこで今後これ序どういうふうにしていくか、いろんな道があると思うのですが、当面私どもは再交渉というようなことを考えておりません。何とかしていままでの線でまたフィリピン側が再考するようにというふうに念願しておりますが、まだ、その批准案件が否決されたばかりであるというようなことで、フィリピン政府からも遺憾の意の表明がありましたが、これは具体的な接触まで至っておらないのであります。対応のしかたというものをいろいろ考えておりますが、その考えております最中でありますので、まだ、的確な日本政府態度表明というまでに至っておらないわけでございます。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 そのフィリピンでこれを批准がでさなかった理由に、何か一、二、最近の日比間の経済事情をあげておるようですが、十一年も前に日本批准をして、両国間で合意したものを、十一年もほったらかして、事情が違ったなんということは通らぬと思うのですね。その辺の事情は、一体向こうとしては何が中心なのか、おわかりでしょうか。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) フィリピン政府といたしましては、ぜひ批准をいたしたい、こういうかたい方針で歴代政府がおったと、こういうふうに見ております。私もそういうふうな心証を持っておるわけです。ただ、問題はフィリピン国会なんでありまして、この国会の動きが微妙であるという状態がずっと続いてきておりまして、つい先ごろ、ああいう結果になったと、こういうことです。その背景といたしましては、条約内容に、セーフガードのほうの問題があるのです。これが一つの問題だというふうにいわれておりますが、その他にも一、二の問題点があるようでありますが、いずれにいたしましても、日本駐在フィリピン大使は、これはずいぶん努力をしてくれたわけなんですが、ああいう状態になったのは日本政府としてははなはだ遺憾である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点だけ。  そうすると、当面、新たに条約を、向こうの、先方の意向なんかも入れて改定をして、新たに両国間の合意を得るようなことをとらずに、このままの状態でいくと、こういうことですね。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまのところ、条約内容を改定するという考え方は持っておりませんのです。
  22. 森元治郎

    森元治郎君 いま、羽生委員が言うように、さんざんこれはやったんです、この外務委員会で。もう飽きちゃって、このごろはやらなくなっちゃったから……。そこで私は、何でもそうですが、一騒ぎしないと問題が進まないと思うんですよ。   〔委員長退席理事山本利壽君着席〕 一騒ぎすると、遺憾であるというような顔をして、議会がむずかしいとか言って延ばさないで——ちゃんと手があると思うんですよ。まだフィリピン賠償が一億数千万ドル残っているんじゃないですか、五十一年くらいまでの。支払いを考える——これを一発ぶちかければ、これは問題が爼上に載ると思うんです。私は払うなと言うのじゃないんですよ。考えざるを得ない、こういうふうに一発ぶちかけたらどうです。これが外交というものなんですよ。これが、問題を問題にしてテーブルの上に載っけることになるんですね。それはひどい、いやひどくないという交渉で初めて真剣になるんです。賠償支払いについてはしばらくストップ。どうですか、大臣
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 賠償支払い義務があることは私もよく承知しておりますが、これを云々するという、そういう立場はまだいかがかと思います。思いますが、日比間にはこれはいろいろな案件がまだ他にあるわけであります。そういう案件につきましては、私どもといたしましては十分心得てはおるつもりでございます。しかし、まあああいう遺憾なことになった。なったが、まだ上院会議が残っておるというような状態もあるわけです。委員会段階の問題であるということでもありまするし、日比間に横たわる諸案件、そういう問題もありますが、それらは十分腹にたたみ込んでおきまして今後のこの問題の心理に対処したいと、そういうふうに考えております。
  24. 森元治郎

    森元治郎君 もう一問でございますが、そういう強い意見すらもわが国議会にはあるんだということをおっしゃって一向差しつかえない。  それから、いま委員会だから本会議でひっくり返るとかおっしゃったけれども全会一致でだめだと決定しているのが本会議でひっくり返るなんて、そんなばかなことはないでしょう。そんな期待を持っちゃいけませんよ。全会一致で反対。だから、やっぱりこれはね、腹の中へしまっておいては向こうから見えませんから、どこかで出さなくちゃ向こうは見えないでしょう。政界の一部に強いそういう意見すらもあるので、いつまでもこの問題は放置できないから問題を片づけましょうという申し入れをすべきだと思うんです。もうその時期ですよ。
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま森さんの御発言、たいへんありがとうございました。お礼を申し上げます。
  26. 西村関一

    西村関一君 本条約締結につきまして批准をすることについて、私としてはもちろん異論はございません。ただ、この際お伺いいたしておきたいと思いますことは、フィンランドは御承知のとおりに非常に正常な国である。また親日的な国でございます。国民生活水準も平均いたしております。また、産業こそあまりございませんけれども、きわめてよい生活をしている国民でございます。ところが、最近わが国からの旅行者の中に非常に好ましくない者たちが大ぜい入り込みまして、フィンランド国民及び政府ひんしゅくを買っているような事態がたくさんございます。これは、あれだけの親日的な国でありますだけに、非常に残念なことだと思うわけでございます。貿易関係こそいまはまだ低い状態でありますけれども、親日的な国であるということについてはほかの国に劣らない国だと思うので、このフィンランド国民感情を害するような日本からの旅行者につきましては、非常に私は遺憾千万だ、こういう点につきまして政府はこれをどういうふうに受けとめて対処しようとしておられますか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  27. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 西村先生お話しのように、日本フィンランド関係はムード的には非常によろしいのでございます。その上、貿易関係も着増しておる、こういうことです。いまお話しのように、フィンランドの国情は安定し、また国民は品位高く、きわめて平和な生活をしておる。わが国としてもたいへん敬意を払っておる国でございます。ところが、最近、御指摘のように旅行者、特に青年層旅行者フィンランド国民からひんしゅくを買うというような行動が指摘されておりまして、それがフィンランドにおけるマスコミざたになるというような事態もありまして、たいへん実はびっくりしておったような次第でございますが、現地大使館にはもとよりでありますが、外務本省といたしましては、そういうことをしてせっかく盛り上がってきた日本フィンランド友交関係、そういうものにきずがつくというようなことがないようにいろいろ配慮をいたしておる、こういう最中でございます。同時に、そういう一部の青年の非行というか不行儀がかもし出す日本に対するイメージ・ダウン、こういうものと並行しましてまた業界が輸出マナーにおきまして相当正しく理解されるというような状態でなければならぬ、こういうふうに思うわけでございまして、いわゆる輸出の節度、そういうものにつきましても特に注意をしなければならぬ問題である、そういうことでいろいろと気をつかっておる、こういう最中でございます。
  28. 西村関一

    西村関一君 いま大臣からお答えがございましたが、私はこの問題について幾つかの具体的な事例を知っております。そういうことをいまここで申し上げませんが、こういう旅行者として相手国の気持ちをそこねるような者、また旅費、滞在費等につきましても、ほとんど片道の切符だけで、現地で働いて何とかやっていこうというような者、その中にはまじめな者もいると思いますけれども、きわめて不用意なふまじめな者もたくさんあるようでございます。あれだけの親日的なフィンランドにおきましてこれが大きな問題になっているということは、いま大臣お話しになりましたが、これをどのようにしてこういう状態を改めることができるか、また、現実どういうふうになっておるか、そのことに対してどういうふうにこれを規制していくかということについて、参事官、どういうふうにこの事実を掴んでおられますか。
  29. 穂崎巧

    政府委員穂崎巧君) お答えいたします。  先ほど来御指摘のございました、フィンランド日本の若い連中が行ってひんしゅくを買うということでございますが、もともとその原因を申しますと、先ほど指摘がございましたように、向こうへ行けば何とかなると出た連中が集まっているわけでございます。一般的に北欧は御承知のように労働不足でございまして、そういうところへ行って働けば、事実、生活ができたわけでございますが、いろんな問題がありまして、そういう事例が重なるに従いまして、北欧のうちでもスエーデンだとかデンマークあたりでは労働許可をなかなか与えられなくなってきたということから、フィンランドヘこれが来たわけでございます。でいまおっしゃいましたようないろんな問題が起きてきまして、フィンランド側も最近労働許可をきびしくしてきたというようなことも聞いておりますので、そういう人たちフィンランドに入ることも今後はなかなか困難になってくるんじゃないか、そのように考えております。で、われわれ日本政府としてでき得る行政的な措置とあわせまして、今後こういうことはだんだん少なくなってくるんではないかと思われますが、一番大事なのは、フィンランド側がこれを入れないということになれば、そういうことも今後は少なくなってくるんじゃないか、そのように考えております。
  30. 山本利壽

    理事山本利壽君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 山本利壽

    理事山本利壽君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。  別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国フィンランド共和国との間の条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  32. 山本利壽

    理事山本利壽君) 賛成多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 山本利壽

    理事山本利壽君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  34. 山本利壽

    理事山本利壽君) 次に、国際情勢等に関する調査議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 聞きたいことはたくさんあるんですから、ほんとうに明快に御答弁をいただきます。  一つは、尖閣列島問題、だいぶ新聞に大きくなってまいりました。そこで伺いたいのは、政府アメリカに何か厳重申し入れをしていると報道されていますが、したんですか。
  36. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだいたしておりませんです。
  37. 森元治郎

    森元治郎君 新聞なんか見ると、たとえばきょうの朝日新聞、「厳重に申入れていることを明らかにした。」——まだしてない。いっしますか。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、アメリカ政府が公式に尖閣列島帰属問題についての意見表示を行ない、その意見表示を検討いたしまして、これはわが国としては抗議をしておく必要があると認めればこれを行なう、こういう趣旨でございます。
  39. 森元治郎

    森元治郎君 アメリカ政府の見解表明、表示ということは、予想されている、近いうちにあるんですか。
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何かアメリカ政府が他の者から質問を受けました際に、それに応答するというプレス・ガイダンスを検討しているといううわさがあるんです。それに関連いたしまして私が昨日来ああいう発言をした、こういうことでございます。
  41. 森元治郎

    森元治郎君 このプレスのガイダンスではなくて、国務省から公式発表のあることを期待して待っているわけですね。
  42. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いや、プレス・ガイダンス、つまり、これは国務省が……
  43. 森元治郎

    森元治郎君 筋なんという話じゃ私は受けつけないんだよ。
  44. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) プレス・ガイダンスが近く発表されると、そういう内容が、わが国の見解と相反する、アメリカ政府のとるべき態度としては不満である、こういうふうに考えますれば、わが国としてはこれに抗議を申し入れる、こういうことを申し上げておると、こういうことであります。
  45. 森元治郎

    森元治郎君 この問題は、国務省を待つまでもなく、日本側がイニシアチブをとって問題を先取りしてしまうという態度が必要だと思うんですね。こっちがイニシアチブをとる。そのイニシアチブ、何を要求するかというと、簡単だと思うんですね。それは簡単だと思うんですよ。戦争の結果平和条約で北緯二十九度以南の南西諸島——沖繩を含む南西諸島——もちろん尖閣列島入りますが、南西諸島の施政権をアメリカが持つ。潜在主権はあるけれども、三権についてはアメリカが施政権を当分の間行なう、こうなっているんですね、日本の領土だから。施政権は、日本の潜在主権を認めたのです。領土と認めるから、向こうがそういう条約ではっきりして、一応施政権のもとに治めた。今度返すということは、眠っていた主権が顕在化するということですね。ですから、尖閣列島は、眠っていたものが地上に出て立法、司法、行政の三権のもとに入るわけですから、これは当然日本説明も何も要しない。領土であるがゆえに向こうは押えた。施政権を押えた。領土でなければ、何を押えたのかわからない。他人の国を押えたんではなくて、日本の領土を押えたんですから、これははっきりしている。ですから、潜在主権が顕在化すれば、何も説明を要せずして日本の領土である。問題は、そのあとにそのよけいなことをつけ加えるのが気に食わないわけですよ。問題があればその当事者間で話したらいいだろう。だめな場合は裁判のような形式で解決を願ったらいいだろう。わが国はそういう際にはまん中、中立なんだと、よけいなことを言うのですね。必要ないのですよ。だから、アメリカが言うべき、われわれが期待しているのは、日本の主権があった、潜在主権があったところの島々を主権を顕在化させるのである。これ一本でもうどんぴしゃりなんですよ。それ以上、アメリカはよそから聞かれてよけいなことを言う必要はない、どこに所属しているかなんて変なことを。この点だけを強調して私は申し入れるべきだと思うんですね。新聞の見出しもなかなかうまくついていると思うんだが、「発言はつつしめ」なんて。「米に厳重申入れ」、新聞記者の感覚のほうが外務省よりもどんぴしゃりなんですよ。よけいなことを言うな、ということですよ。当事者で話し合うことは当事者が考えることで、第三者のアメリカがよけいなことを言う必要はないんですよ、当事者が考えますから。どこかよその国から、おれのほうだって言えば、違う、交渉しよう。それはこっちがやることです。向こうは返せばいいんですから、返したものの行き先がどこであるかということはよけいなことである。この点はきわめて明快です。私は沖繩返還前にこんな不愉快な、対米不信をさらに深めるようなことは、これはアメリカにも十分注意を喚起する必要がある。対米不信——竹島問題とあわせて対米不信につながりますよ、これは。大臣は、もう飛行機で飛んでいって、くだらぬことを言うなと——ちょっと国会休んで、時間あげますから飛んでいってやってくればいいんですよ、こんなものは。足がおそいんですよ、日本の外交は、かっこうつけていて。これはごまかしてはいけませんよ、簡単なことなんですから。アメリカ理由なんか、施政権と主権をはっきり区別して論議しているなんというあほうなことはないですよ。主権のおるところを向こうが押えて、しばらくは主権を眠らせておいて、その間は向こうは施政権を行使したわけですよ。向こうの新聞記者の質問に対して答えたんでしょうが、国務省のしゃべり方なんというのはダレスそっくりだね、これは。アメリカは弁護士がなかなか横暴ですから、力があるから、三百みたいなことばっかり言うんですね。大アメリカのメンツをそこなうものは私は弁護士だと思う。ロジャーズもそうだ。ニクソンもそうだ。みんな弁護士なんです。(笑声)弁護士がおられてあれでしょうけれども向こうはほんとうにけしからぬのだな。弁護士は自分の立場なんかない。弁護士なんというのは、悪いことをしたやつを弁護するもんで、立場はどっちだって平気なんですから、これは。こういうことを、国際問題で、しかも領土の問題でやられてはかなわぬですから、私は厳重に申し入れをすべきだと思う、文書で。黙っているならば、またよけいなことをして、発言を慎まないで来ますから、私が言ったような趣旨の御質問は当然だと思うんです。われわれはかく解釈する。領土を押えられた。その押えられたものが返ってくるので、眠っていた主権が顕在化したんですから、当然日本のほうが言うべきです。そうでしょうね。イエス、ノーだけもらえばいい。ここで段落して、なお、よけいなことを言うなと。(笑声)
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 森さんのいまの御発言ですね、ニクソン大統領でありますとか、弁護士でありますとか、さようなことはつけたりのお話だったと思いますが、これは別といたしまして、おっしゃられる尖閣列島の帰属に関する御趣旨につきましては、全く同感であります。同じ意見を持っております。私どもは、尖閣列島の帰属の問題というものは、もう一点の疑いも持たない。他国の確認を求めるというような問題ではないのです。こういうふうに思うんです。ですから、正式に何かアメリカ政府でこの段階において意思表示があり、それが意に満たないというものでありますれば、これは当然抗議しようと思っております。ただ、その前において、アメリカに、こうしてください、ああしてくださいというような受けとられるような行動はむしろこれは慎んだほうがいいという見解のもとに、正式な意思表示はまだいたしておらぬ、こういうことでありまして、御趣旨は全く御同感でありますから、ひとつそのように御了承を願います。
  47. 森元治郎

    森元治郎君 この対米不信につながる五月十五日なんというのは、これはますます不明朗になると思うんです。返ってきたと思ったら、何かよその国らしいというようなことの感じがずっと続くのでは、近隣諸国とよけいなごたごたが起きるし、筋がないのですから、わからないわけですから、永久にごたごたになる。ですから、はっきりした、私が質問したような簡単なことを——これは大使でもいいんです——大使とロジャーズと十分話し合いをしてでもいいから、一本取って、国民に示さないと、これは発展しませんよ、この問題は。大陸だなとごちゃごちゃになる、ものをはっきり、大陸だなは大陸だな、領有権は領有権、沖繩返還協定は協定と、きっちりと別でいかないと。私はぜひそういうふうにやってもらいたいと思うんです。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカが非常に法律をとうとぶことは、森さんの御指摘のとおりであります。ですから、論理的には私はアメリカはよくわかっておると思うのです。腹の中では、いまわれわれが考えておる、また森さんもいまおっしゃったとおりのことを私は考えておるに違いないと、こういうふうに思うのです。ただ、私のこれは想像ですが、他の国からの圧力もあるというようなこともあるのじゃないか、そういうようなことで態度を濁しておるのじゃないか、そういうふうな想像をいたしまして、その点が私は非常に不満である、こういうふうに考えておるわけであります。さような考えをしておりますので、もし正式に米側において何か私どもの考え方と違った意思表示をするというようなことがありますれば、私どもはこれを看過するわけにはいかぬと、こういうふうにかたく考えております。
  49. 森元治郎

    森元治郎君 これでやめますけれども、問題は、アメリカの腹の中、第三国を考えておるんだろうという勘ぐりも要らないので、ただ、現実あるがまま、そうでしょうということだけの確認を求める。それからよけいなことをおっしゃっても一向差しつかえないと思うのですよ。日本の領土を押えつけておいて、押えた領土を返したのだ、この一点さえはっきりすれば、何もあと、帰属がどうだなんか、一向差しつかえないのです。それだけとらえればいいのです。問題のポイントはそこなんです。  次に、そこで大臣アメリカの、調子がいいというか、うまくやっているのは、レアード長官の談話なんというのは、相当なめていますね、これは。三月二十一日の新聞の、USニュース・アンド・ワールド・リポートに出ているやつ、「自衛隊の海外派遣示唆」、日本は、ソ連艦隊のインド洋進出に関心があると。米国の関心であると同時に日本の関心だと、関心事だと。というのは、インド洋と日本の間には常時油船が往来している。日本は当然このルートの確保に最大の関心を持っているに違いないと述べ、そして同長官は、それによって日本の海軍力がインド洋に進出する必要が起き得るかとの質問に対して、それはあり得ると答えていますね。これもまたよけいな先ばしりで、日本の海軍が行くだろうというようなことはこれはないということをこの際はっきり言ってもらいたいと思うんです。どうですか。関心事である、油船、ソ連艦隊というのが一つの目標だ、前提となっている。ソ連艦隊が出ていく、油送船を保護するために——コンボイというのですか、無関心ではいられない。要するに、ソ連のインド洋進出に対して無関心ではいられない。第二点は、それはすなわちタンカーの輸送に不安心が起こるから、力をもっても、インド洋まで出てこれを保護しなければならない、こういう方向に日本は行くのだろうとレアード長官はUSリポート記者に答えていますね、談話で。これは、いまのうちに、日本は、さような、インド洋に自衛隊、自衛艦ですね、日本の海軍力、自衛隊の進出というものがあり得ないということをおっしゃられると思うのですがね。そうすれば質問やめます。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) なお、そこのレアード発言というのは正確なところを確かめてみますが、もし日本の海上自衛隊がインド洋にまで行動範囲を持つというようなことであれば、これは間違った見解ですから、その見解をタダします。——タダすというのは、質問をするのじゃないのです。是正をする、こういう意味のタダす、そういうことをしますが、まあよその国のいろいろなわが国に対する発言、それをあんまり気をつかうというのもどうかと思うのです、これは。間違った見解があればこれを正す、これは当然のことでありまするけれども、また、あんまり気をつかい過ぎるというのもどうかと。わが国にはわが国の憲法がある。その憲法の範囲内において行動する。これは厳然たる政府の態度でありまするから、その辺にはまたその辺の自信を持ってしかるべきである、こういうふうに思います。
  51. 森元治郎

    森元治郎君 私は、一喜一憂して新聞記事を取り上げて伺っているのじゃなくて、アメリカの、アジア撤退後の日本、友好同盟国に肩がわりさせるというアメリカの方針から見て、さようなことも考えているのかなあと思うから御質問をしているわけです。ですから、自衛隊は、そういうことはあり得ないんですから、自衛隊の海外派遣のようなことはないと断言してけっこうですね。インド洋に出て油船を護衛するのだといったようなことはない、これはようござんすな。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりに心得ております。
  53. 森元治郎

    森元治郎君 これもまた新聞記事。時間が長ければしつこくねっちりやるんですが、時間もないし、来週は休みになるようだが、佐藤総理が元気出して、私の任期中にソビエトへ行きたい、これもタイムという雑誌にしゃべっているんですね。いい気なもんですよ。われわれはたいへんだと思うんだが、ちょっと行ってくるようなもんでしょう。任期中といえば、総裁で総理大臣を兼任できるのは秋の自民党大会までですね。これは総理と総裁分離なら別ですが、その間に行くつもり。これは大臣、聞いておりますか。
  54. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 最近ソビエトに対し佐藤総理が訪問をするということについて話し合ったことはありませんが、かねがね佐藤総理は、一度訪問をして日ソ関係を論じてみたい、こういう強い希望を持っておったのであります。その強い希望をタイムですか、タイムの記者に表明をした、こういうことは想像するにかたくありません。ただ、私どもは具体的に総理のモスコー訪問日程は検討いたしておりません。
  55. 森元治郎

    森元治郎君 任期中に行きたいと言っても、国会は五月の終わり、少し延びるかもしれぬが。それから間もなく夏に入ります。ニクソン大統領の訪問が五月二十二日、行くにしても、その前はむずかしいでしょう。夏になれば、要人はみんないなかのダーチャのほうへ引き揚げて静養に入る。秋ですね、もし行くとしても。九、十月ごろにならざるを得ないと思いますが、どうですか、これは。
  56. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま総理の訪ソについては具体的な検討というものは全然ないんです。まあ、いやしくもわが国の総理がモスコーを訪問する、ソビエト政府日本の総理を迎えるということになればかなりの準備が必要である、こういうことでございますが、まだその具体的なそういう問題についての話というものは全然ない、こういうのが率直なところでございます。
  57. 森元治郎

    森元治郎君 この間グロムイコ外相が来て平和条約締結までを含めて今度は日ソ相談をしたいということで明るい話題をまいて向こうへ帰った。これに対して、私は外から見ている限り、外務省では、よしそれならばこの平和条約目ざして一挙に最後の大懸案を片づけようという一つのチームができてそれぞれ対策をやっているという様子も見えないんですが、あそことコミュニケを出しっぱなしで、いずれは秋だと、何もしてないように見えるんですが、少し熱意が足りないんじゃないですか。これは大問題でも、従来の、重光、河野一郎さんから松本俊一、あるいは杉原さんもおられるが、一生懸命かかって努力して準備を積み重ねていって交渉に臨んだんですが、平和条約なんという問題非常にむずかしい領土の問題をはらんで、これに対していまからあるチームをつくって対策準備怠りなし。と同時に、ソ連側とコミュニケ結んでつなげていくというのが外交だと思うんですが、何も出てないのは少し怠慢には過ぎないか。あるいは政変近しというので上も下もみんなそわそわしてどうなるかわからない。すべておくれているように見えるんですが、どうですか、これは。
  58. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先般のグロムイコ外相との定期会談では日ソ両国の首脳または首相の交歓訪問を行なう。それから定期協議は年に一回以上行ないましょう。それから平和条約交渉を年内に開始しましょう。こういう三つの大きなことを取りきめたわけでございますが、そのうち最も私どもが重要視いたしておりますのは平和条約交渉なんです。これをコミュニケを結んだらそれでいいんだという、そんななまやさしいとらえ方は決していたしておりませんです。そこで、何もしておらぬじゃないかというようなお話でございますが、実はこの年内にとり行なおうという最初の日ソ平和条約交渉、これをどういうふうに進めていくかということにつきましては、内々ソビエト側と下交渉をいたしておるわけで、その下交渉の結果、大体タイミングは秋から年末にかけてのころが適当であろう、こういうようなことになりつつあるわけなんであります。したがいまして、秋から年末にかけては第一回の交渉がある。この交渉は沖繩返還交渉に次ぐわが国としては最大の外交案件一つになってくるわけであります。したがいまして、それに向かって諸体制を整えなければならぬ、こういうふうに考えまして、すぐそういう準備を進めておくというか、まだこれは表には出ておりませんけれども、決して等閑視しておる、こういうことではありませんから、その辺は十分御理解願いたい、かように存じます。
  59. 森元治郎

    森元治郎君 等閑視はしてないが、どうもさっぱりかっかとエナジェティックに動いている様子はどこにも見えませんな。  質問するばかりが能じゃないが、ソビエト側の感触は、佐藤総理の来訪を歓迎する。佐藤総理というのは、中国関係は佐藤総理はなかなか人気がないようで、佐藤内閣とは話もしないといわれているんですから、佐藤総理があるいはやめるのを間近かに控えている総理であっても、向こうは受け入れるという感触は私は持っております。そういったような感触を総理は取って言ったのかどうかわかりませんが、いずれにせよ、大きな問題ですから、領土問題にしても従来のとおりなのか、あるいはまた変わるのか、いろいろありますわね。そんなことを含めて御検討願いたい。これ以上質問しません。仮定になります。そこで、いよいよ本論。十分しかありませんが、大至急やります。核防条約、これはたぶん調印するまでに一年半ぐらいかかって調印して……二年かな。七〇年の二月だから二年ぐらい経っているんですね。さっぱりこれ以来ずっと静かになってしまった。政府はこれをどうしようと思っているのか、自民党の中でもいろいろ意見が分かれて、すなおに批准までは進めないような様子を聞きます。これを結んだほうがいいという、まだ自民党としても党議が一本になっていないようにも伺うんですが、どうやって対処されるか、その経過と方針を伺いたい。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 核防条約につきましては、これは森さん御承知のように、核防条約の調印をするときにわが国としては声明を出しておるわけであります。その声明は、軍縮交渉の推移を見なきゃならぬ、また、非核兵器国の安全保障に注目しなければならない、それから、原子力の平和利用に対する保障処置がわが国に不利になっては困ると、こういう点を指摘しておるわけなんです。その三つの点についていろいろ内外の推移を注目をいたして、また検討をいたしておる。そういう関係でこの問題の最終的な結論というものが出ないというのが現状でございます。そこで、特に一番私どもがここで問題視しておりますのは、わが国の立場という問題です。これはいま申し上げました三つの点、これはまあわが国の立場に大きな影響があるわけでありますが、軍縮交渉という点から見ますれば、これはSALTの交渉、こういうものが進められておるけれども、これはある程度の前進が見られそうな予想がつくわけでございまするが、まあ、これは広い意味においてわが国にも関係してくる問題です。それから非核兵器国の安全保障問題、これにつきましては、わが国は国連の場におきましてもあるいは軍縮委員会の場におきましてもそういう問題をひっさげましてこの非核兵器保有国の立場、こういうものを最も強調し続けてきておる。それから平和利用、こういう問題に関連いたしましてこの非核兵器国、これの核の状況の査察の問題というものがある。で、この査察につきましては査察協定を締結するということになるわけでございまするが、この査察協定がわが国の核の平和利用につきまして不平等な立場に立たされるということがあっては相ならぬ、こういうふうな立場からこの査察協定の成り行きというものにつきましてこれは一番関心を持っておるわけなんです。つまり、いまユーラトムといいますか、ヨーロッパの国々も査察協定の話をしておる。これもかなり進行しておるというわけでございまするが、他の非核兵器国に対しましてわが国が不利な立場に立つというようなことになっては断じて相ならぬ、こういうふうに考えまして、これはまあどういうふうにこの問題に対処するか、この辺が非常に機微な問題でありまするので、その辺の扱い、これをどうするかについていま検討を続けておると、こういうことでございます。しかし、いずれにいたしましても、非核兵器国としてのわが国ではありまするが、まあ、とにかく条約には調印をいたしておる。調印をいたしておる一人といたしまして、この趣旨には賛成したと、こういうことでございますから、その方向には動かなきゃならぬ。なりませんが、しかし、軽々な批准というようなことになりまして、ただいま申し上げましたような国益を害するということになっても相ならぬ、こういうふうに考え、慎重なかまえをとり、特に査察協定につきましては、これも本式な協定が始まりました場合には一年間しか予備交渉の期間は許されないんですから、軽々にこの予備交渉も正式には始められないと、こういう立場にあるわけです。そこで、まあ内々ではありますが、非公式な予備の予備的な話なんかは多少のことはやっておりまするけれども、まだ本式な予備交渉には入らないというのが現状でございます。
  61. 森元治郎

    森元治郎君 まあ、ずるいと言ってはおかしいが、予備交渉の予備交渉。予備交渉じゃないんだ。しかし、これはそれの予備交渉なんだということで、こそこそとまあ交渉をしているようだな。期間はいま一年と言ったが、十八カ月じゃなかったかな。   〔理事山本利壽君退席、委員長着席〕
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ちょっと私思い違いしましたが、一年じゃなくて一年半でございます。
  63. 森元治郎

    森元治郎君 そうですね、十八カ月。それはいいです。そこで、そうすると、国会批准のために上程するというのはいつごろに予想されるか。ある場合にはもっともっと延びるか、あるいは反対で、調印のままで無期限に流れていくかというそのめどはいつごろ見当がつくつもりですか。
  64. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま申し上げましたような経過、現況でございますので、今日の時点におきまして、いつ批准ということに相なるか、この辺はまだ見当がつきません。しかし、調印をしておるわが国といたしまして永久にこれは批准はいたしませんと、こういう態度はとりません。
  65. 森元治郎

    森元治郎君 もう一つあと田さんがありますから。従来は、アメリカもソ連もいつ核防条約批准するのかとだいぶせき込んで、私らも接触したしかるべき偉い人でさえも、口を開けばその点を言ったもんです。最近日本に言わなくなったんですね、やれと、一つも。これはやはり中国という核を持った大ものが出てきてしまったので、日本あたりは、関心といいますか、何か日本のほうはあまり頭の中になくなったように見える理由はどういうふうにごらんになりますか。
  66. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ソビエトにつきましては、一月にグロムイコ外務大臣が来日をいたしました。その際にグロムイコ外務大臣から、核防条約については早期に批准せられんことを日本政府に対して期待をいたしておる、御協力願いますと、何となれば、わが国はあの条約の言い出しっぺであるからと、こういうことを申しております。決して従来と態度は変わっておらぬと、こういうふうに思います。それからアメリカにつきましては、今度のサンクレメンテ会談は主として沖繩問題だったというような関係でありましょうか、核防条約の問題には双方から言及がなかったと、こういう状態でありまして、アメリカでどういう変化がその後あるのかについては、私は承知しておりません。
  67. 森元治郎

    森元治郎君 いま大臣おっしゃったけれども、グロムイコが来たときに、核防条約を早くやってくれということを向こうが言い出した。これはコミュニケからは落ちているのですね、コミュニケには載っていなかったんじゃないですか。
  68. 有田圭輔

    政府委員(有田圭輔君) 載ってません。
  69. 森元治郎

    森元治郎君 だから、載っていないというのは向こうはコミュニケに入れようとしたのに、こっちがノーと言ったが、折り合いつかないからドロップしたのがあのコミュニケですよ。普通コミュニケになるものは、あるいは並列することもある。あるいはすうっと引っ込んだところを見ると、強いという感じがするんです。ほんとうは載せるはずです。ところがそれがない。消えている。非常に私はまだどういう意味か真相がつかめないんですが、これはおりを改めて筋道立てた御質問をすることにして、きょうは時間がないから、しかも、問題が多いから全部一応さわった次第であります。
  70. 田英夫

    ○田英夫君 ベトナムの問題で伺いたいんですが、最近十四人というかなり大型の北ベトナム経済視察団が来日しております。また、さきには三宅課長がハノイへ行くと。あるいは、パリでかなり北ベトナムのパリ会談代表部と接触があるやに聞いておりますが、そういうことからすると、中国とは国交回復を目ざしてやるんだと福田さんは言っておられるけれども日本に近いアジアの社会主義国中国、朝鮮、ベトナムという中で、ベトナムについてもかなり積極的に接触をしよう、関係を改善しようという方向に進んでいくのではないかというふうに受け取れるわけですが、どう考えておられますか。
  71. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 多極化時代と、こういわれておりますが、世界に臨むわが国の姿勢といたしましては、イデオロギーを超越してどこの国とも仲よくしていこうと、こういう基本的な考え方を持っていることを申し上げておきます。その中において、非常に困難を感じますのは、分裂国家なんです。しかも、その分裂国家がわが周辺に三つある。そういう状態でありますが、その分裂国家の中におきましても、わが国といたしまして、その接触のしかた、これはその相手国事情によりましておのずから差異が出てくる、こういうことに相なろうかと・こういうふうに思いますが、いま御質問のベトナムに対しましても、基本的にはただいま申し上げたような考えでやっておりまするが、まあ文化また人事、そういうような交流、それから、まあひいては民間ベースになりましょうが経済上の接触、そういうものについても考えていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  72. 田英夫

    ○田英夫君 いまちょうどその分裂国家ということばが出ましたけれども、これは三つあるというのは実は私どもにとっては不可解なんで、やはり私はこれは二つというのではないか。中国というのは分裂国家だというふうには考えるべきではないと思っておりますが、この点はともかくとして、まあ分裂国家の二つのうちの朝鮮とベトナムというものを比べてみると、さきに北朝鮮に日朝議連の方々が行かれたときに、政府といいますか、あるいは自民党執行部といいますか、非常に反対に近い態度をとられたわけで、話し合いをつけてこられた問題についても、むしろこれをチェックするというか、やめるような方向に経済問題などは政府のほうで押えておられるようですけれども、そこのところはベトナムは違うと、こういうふうに考えていいですか。
  73. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは違いがあると、こういうふうになると思います。つまり、ベトナムにおいては南北とももう長い間の戦乱ですね。これに飽きたという空気が見える。それを何とか一日も早く和平を回復したいというような傾向になりつつある。こういうふうに見てとっておるわけなんです。事実三宅課長が北ベトナムを訪問いたしまして、その際の北ベトナムにおける空気というものも、早く平和を、という雰囲気だったということを報告をいたしております。南においてもそういうような状態。私はよく承知しております。そういう際でありますので、まあ朝鮮半島における事態とはやや違った趣があるのじゃあるまいか。そういう認識を持っておるわけです。
  74. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、まあ三宅課長が行かれたこともきわめて非公式のものでありましたし、課長のほうはほんの数日しか、井上事務官のほうはだいぶ長くおられたようですけれども、このところ、そういう情勢からすると、もっと積極的に外務省の幹部クラス、あるいはかつて松本俊一さんがインドシナ特使として、これは総理の特使として行かれましたけれども、これを北ベトナムにしぼって接触をはかる、積極的に。こういうことはお考えになっていませんか。
  75. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま今日の段階におきまして、まだそこまでは行っておらぬ、もう少し現実を積み上げながら、かたがた、南北の情勢が客観的にどういうふうに動いていくかということを見守りたいというふうに考えております。
  76. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、政府の立場、あるいは政府につながる立場の方が行くということは当面考えていないということになると、中国の前例から考えても、国会議員——その国会議員の中にベトナム議員懇談会というものが生まれつつあるわけですけれども、そういったところで接触をはかる場合には、朝鮮の場合とはおのずから違ってくるわけなので、その辺を一つのきっかけにして、できれば覚書貿易というような形で、あるいは中国との前例でいえば、記者交換というような形がこれは出てくると、こういう時期が近いと考えてもいいですか。
  77. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま北ベトナムの経済視察団が来ておるんですけれども、これはかなりの長期滞在をして日本のあらゆる面を視察して帰りたい。事、経済に限らず、文化、そういった方面までまあ見て帰りたいと言ってきております。まあ主たるあれは経済状態の視察だと、こういうことでございます。そこで、そういう往来を通じまして、だんだんと交流——経済、これは先ほども申し上げましたが、民間ベースで、経済交流まで含めての接触が高まっていくであろう。そのうちに南北の客観情勢、これも推移をしていくであろう。その推移を見つつ北との間の交流をする。それを考えていく、こういうのが現状です。
  78. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、ベトナム問題を考えるときには、どうしても戦争の成り行きがどうなるという見通し、そういうことが関連してくるわけですけれども、どうも日本にいますと、ベトナム戦争というのはアメリカがそれほど徹底的に負けているということはなかなか考えられないので、ついそこが甘くなるように思いますし、現地に行ってみると、アメリカがいかに負けているか、アメリカの侵略戦争というものが失敗しているかということが非常によくわかるわけですが、そういう中で、まあニクソン大統領大統領選挙を控えて、アメリカ国内世論からすれば、五月には五万を割るわけですけれども、やがてあの戦争も収拾しなくちゃいかぬということですが、その収拾のしかたですね。これは日本にとっても無関係ではないので、当然政府としても一つの見通しを立てておられると思うのですけれども、ベトナム情勢、この見通しというのは、たいへん大まかな部分ですけれども、どういうふうにお考えですか。
  79. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ベトナムはもとよりでありますが、インドシナ三国、この間には、多年の戦争に疲弊をしておると、早く平和回復へという機運がみなぎりつつある、こういうふうに判断をしておるわけであります。そこで、和平の方式を一体どうするかという段階に実は来ておると、こういうふうに見ておるんですが、私は、ここまで機運が来ますと、それは和平という終着への到達、それは長い時間はかからないんじゃないかと、こういうふうに考えておりますが、わが国はアジアの一国といたしまして、インドシナ三国和平が成立した暁におきましては、この三国の当面する重大問題は戦禍からの復興、立ち上がり、そういうことだろうと思うんです。それに対して協力を惜しむことがあっては相ならぬと、こういうふうに考えておるんでありますが、まあ、その前の和平ですね、和平がどういうふうに来るか、また、どういうタイミングで来るかということも傍観視するということはよろしくない。私どもが介入する余地がありますれば、この和平が一日も早く到来するようにという努力はすべきであるというふうに思いまするし、現にそういう態度をもってこのインドシナ三国には臨んでおるのです。こういうふうに御理解願いたいと思います。
  80. 田英夫

    ○田英夫君 インドシナ和平のために、できれば介入しても役に立ちたいということのようですけれども、これは具体的にいうと、一方はアメリカなわけですけれどもアメリカに対して働きかけるのか、あるいはインドシナ三国に経済援助をしますよという意味の働きかけをするのか、そこのところはどうなんですか。
  81. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはあらゆる機会、あらゆる国、またあらゆる場をとらえまして、その際には、ただいま申し上げましたような姿勢で対処していくと、こういうことでございます。
  82. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、問題なのは、日本が介入をしてもいいんだ、あるいは、する意思があるということですけれども、基本的に、このベトナム戦争を収拾するのに、例の一九五四年のジュネーブ会議、ジュネーブ協定、ああいう方式で、つまり関係国だけでなくて、それを取り巻く諸国も含めた会議をやる。そうなれば日本も入れる。入っていく可能性があるわけですが、そういうことをねらっているという意味なのか。そこのところはどうですか。
  83. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういうことを私は申し上げているわけじゃないんです。私が「介入」と言うのは、和平会議、その収拾の会議に割り込むとか、そういうことじゃなくて、この和平回復に向かっての事実上の影響力を及ぼすと、こういう意味を申し上げておるわけなんです。ですから、たとえば北と理解を深める。あるいは南とも理解を深める。そういう理解を深める過程におきましてわが国が和平への推進剤になると、こういうような役割りを尽くしたいんだということを申し上げておるわけです。正式な和平会談が始まりまして、そういう際においてわが国がそれに参加する。これは要請されれば参加する。これはもとよりですけれども、辞退すべきではありませんけれども、主たるねらいは、そういう形式上のことではなく、実質的に早く和平が到来するような傾向に対してわが国一つの媒体になる、こういうことを申し上げておるんです。
  84. 田英夫

    ○田英夫君 どうもちょっと抽象的なんですが、具体的に私なんか考えると、元凶はアメリカなんですから、しかも、日本アメリカとの関係が密接なんだから、いま大臣が言われたような意味で協力を行使できるとすれば、これは主としてアメリカに対して日本が影響力を行使するということであるべきだという気がするのですけれどもアメリカに対してはどうなんですか。
  85. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは田さんと立場が違うかもしれませんけれども、これはアメリカだけが悪者だという考え方は持っておりません。これは両方がとにかく和平の機運が出てくるということでなければならぬ、こういうふうに考えます。双方に対しまして和平を推進するというのが私どもの立場になるわけです。
  86. 田英夫

    ○田英夫君 どうもそこのところが根本的に違っておるように思いますけれども、しかし、和平のために日本が役に立とうということはまことにけっこうだと思いますけれども、どうもベトナム、インドシナ三国に対して影響力を与えていこう、いまその戦争に飽きてきたから、そこで和平のために特に今まで接触のなかった北ベトナムに対してまであえてここで積極的に接触を深めていくということの中に、先ほどやはりちらっと大臣発言の中に出てきましたけれども、復興に協力する、こういうようなことが出てくる。これはどうも南あるいは北を含めて、復興という名のもとで日本がそこでひとつ、かつて賠償という名のもとに金もうけをしたと同じような意味で、そういう心理が働いてくるのじゃなかろうかということを非常に危惧するのです。これは大臣のお考えとはうらはらに、アジアの、特にインドシナ三国の人たちから、戦争のさなかには日本アメリカと友好関係を結んでいるだけでさっぱり自分たちのことを理解してくれなかったのに、和平のにおいがしてきたら、突然接近をしてうまい汁を吸おうとしているという意味でますますきらわれ者になるという結果を招くのではないか。こういうことをたいへんおそれるので実は伺っておるわけですけれども、そのジュネーブ会議方式というものを望んでおるわけではないのだということで、ひとっその点は私は安心をいたしますけれども、しかし、そうでなくて、いま私が申し上げたような意味でなくて、ほんとうに接触を深め、友好を深めるのだということからすれば、やはり文化とかあるいは経済とかいう意味の、純粋の意味の接近をさらに深めるべきではないかという気がいたしますけれども、そういうことからすると、三宅課長がちらりと接触をしたというようなことではなくて、今度の経済視察団にも早急に政府の責任者がお会いになるそういう機会をつくる。そういうことを通じて覚書貿易というような形式の方向へ発展をさせていくとか、ハノイに覚書貿易事務所を設置するとか、東京にもその同じようなものをつくらせるとか、そういう方向をとるならば、変だ意味の誤解を招く結果にならないんじゃないかと思いますが、重ねて今度の経済視察団と接触をするということを含めて、具体的にどうですか、そういう接触は。
  87. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、インドシナ三国に平和が到来した際に日本経済上の協力、その復興に協力をする。これは全くわが日本の善意に基づくものであります。わが日本がアジアに占める立場としての行動である。そこで日本が一もうけするんだとか、そんなけちな考え方に基づいているものではないということは、これははっきりさしておいていただきたい。ですから、もしインドシナ三国が日本からの協力が必要ないのだということであれば、何もわが国がこれに対して押しかけ援助をするというような必要は毛頭ありません。そういうふうに考えます。いま来ておる経済視察団、これはそれなりに私は非常に意義があると思うのです。ですから、これを意義あらしめるものにしたい、こういうふうに考えておりますが、まだこの時点でこの経済視察団と政府当局が正式に接触するという段階まで来てないのです。あの三宅課長が行ったということも、これは一個人の資格であって、それから、向こうの応待する相手はだれであったかというと、政府ではない。商工会議所が相手である。こういうような状態で、どうもそうせっかちにはいかないので、まあ順送りに着実にやっていく、こういう考えでおるわけであります。
  88. 田英夫

    ○田英夫君 まあ、言われる意味はよくわかりますが、北ベトナムのほうでいえば、たとえば化学肥料であるとか、日本のほうで非常にむしろ余っているそういう状況のもので、北べトナムが非常に——私が行ったときも、ぜひ日本から化学肥料をほしいのだというようなことを向こうの責任者が言うているような状況がありまして、そういう意味で、いま大臣言われたように、そのおことばどおり向こうの非常に欲しているもの、また、ホンゲー炭のようにすでに若干の貿易がありますけれども日本のほうで非常に有効に使えるもの、こういうものをひとつ皮切りにしてやっていくということはまことにけっこうだと思うので、このことをお願いいたしまして終わります。
  89. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 前回に引き続いて中国問題を中心に、いままでの福田さんの答弁を整理しながら、不鮮明な点を確認しつつお尋ねをしたいと思いますが、まず一つは、福田さん御自身が何とか日中国交正常化への手がかりをつかもうとしてアヒル外交というようなこともお考えになっておられ、その一環としていろんな人を通じて非公式に接触を続けてこられた。前回は非常に明確さを欠いた点の一つとして、その結果中国側はどういう一体反応を示したのか、その反応をどうとらまえて今後さらにどういう方針に立ってその接触を詰めていくか、まずこの問題からお願いをしたいと思います。
  90. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、非公式な接触、これがいろいろありますが、それに対する中国側の反応、これはまあいろいろあるようです。たとえば平和五原則の問題もあります。あるいは政治三原則というような反応もあります。あるいはまた新しい唯一正統の政府という問題、あるいは台湾帰属に関する問題とか、日華平和条約に関する問題、そういうまた新しい三つの原則が述べられるというような問題とか、いろいろありますが、それらに対しまして中国側に誤解とかそういうような点もあるだろう。わが国の立場を正当に理解されておらないというような点もあるようでございます。そういう点につきましてその解明につとめるということが大事であろうというふうに考えまして、わが国の立場に対する理解、また誤解があれば誤解、そういうことについてただいま努力をいたしておるというのが現況でございます。
  91. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 伺っておりますと、まず第一点は、従来の中国側の基本原則というものは曲げられませんよというたいへんきびしい姿勢を一貫して日本政府へ示しているような印象。第二点は、日本側の考え方に対して誤解を持っているというその誤解についての解明をこれからしなければならない。一体誤解とは何だ。その誤解を解くために一体今後どうするのか。第一点の、基本原則は曲げられないというこの大前提と、それをどういうふうに一体原則をこれから踏まえた上での日本側としての考え方を表明していくのか。それから誤解はどういうふうにして解消していくのか。この点、いかがですか。
  92. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 誤解といえば、最大の誤解は日本の軍国主義化という問題であろうと思います。中国の気持ちはわかる。長い間日本との間に戦争が続いた、日本の軍隊が大陸をじゅうりんした、こういう記憶、これはなかなか払拭できない状態。そういうことはわかるのですが、いまやわが日本は非常に変わっておる。日中間には四十年間にわたって正常な関係がない。したがいまして、日本状態というのがわからなくなるということもまた私にもわかるのでありますが、そのわからなくなっておるその点を十分話してやる必要がある。わが日本は決していま軍事国化するというようなことは考えておりません。これは世界史にはまれなことでございまするが、経済的には強力になったけれども、決して膨張主義あるいは軍事大国、そういうような道を選ばぬ、この点、これが非常に大きな問題じゃないか。  それからもう一つ大きな問題は、日本が中国を、二つの中国というふうに持っていくそのための運動に加担をしているのではないか、そういうようなこと、これも全くの誤解である。佐藤総理自身がしばしば言っておるし、私は、現実にこの目で見ておりますが、台湾独立運動というようなことにつきましてはこれを厳に戒めておる、こういうようなこと。それらの点がすなおに受け入れられておらない。この辺に一つの問題がある。  それからもう一つは、わが国国民政府との間にまあ御承知のような関係がある、この現実。この現実をどういうふうに解消していくか。こういう問題が非常に日本とするとむずかしい立場です。その辺につきましても中国側の理解を求める必要がある、こういうふうな考えです。その辺につきまして、いまこの段階で、基本的に中国の理解を求めなきゃならぬ、これが現段階なんです。これはこれからの問題じゃない、もうすでにそういう努力はやっておるわけです。引き続いてそういう努力をいたすということを申し上げておきます。
  93. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、答弁が非常に巧みにかわされてしまうものですから、伺っているこちらの真意がどうもよく伝わっていないのか。原則はなかなか曲げないというきびしい姿勢が現段階においても変わっていない。それに対しては、いま台湾の独立だとか、いろんな問題を附属的に御答弁なさったようであります。それらも当然含まれる問題でございましょう。ただ、将来の展望に立った場合、日本としてもその接近を非常に強く求めている、これは事実でございましょう。そうした場合に、いま、そういうきびしい中国側の日本に対する態度というものが、きわめて柔軟な、そういう方向に変わる可能性が十二分にあると御判断なさっておりますか。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、中国側が日本の、ただいま申し上げましたようなそういう基本的な考え方を理解をするということになりますれば、おのずから中国の日本に対する考え方というものも変わってくる、こういうふうに確信をいたしております。
  95. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにしても、こういう膠着した状態がどういうところで突破口が開けていくかということは予断できない問題だろうと私は思うんですね。これからも、福田さん御自身がおやりになるかどうかは別問題といたしましても、引き続き、いわゆる特使めいたような人との接触が展開されるであろうと思いますけれども、やはりこの点については、田川報告書に示されているのみならず、将来ともに継続的にそういう福田さんの意中の人を通して接触をする用意を持っていらっしゃるわけですか。
  96. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はまだ正式にこの日中間で政府間の接触を始める段階にはないと、こういうふうに見ております。その前に、いろいろ誤解がある、あるいは理解の足らないところがある、その辺を解明しておかなきゃならぬ、こういうふうに思うわけであります。ただいままさに今日はそういう段階であると、こういう理解であります。したがいまして、あらゆるルートを通じまして、その誤解を解くとかあるいは理解を深めるとか、そういうふうな努力をしていきたい、こういうふうに思っております。
  97. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ですから、非公式接触であれ、何らかの形で中国側とテーブルをおいて話し合うということは考えられるわけですし、その際に、とにかくいままでの日本に対する誤解ということを解く意味からも、意中の人といいますかね、そういう方を継続的に北京なら北京に派遣をして、あるいは、たまたま向こうへ行くどなたかにそれを依頼して話し合いを持つ、そういう機会を絶えずつくっていくのかどうなのかということを伺っているわけです。
  98. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あらゆる機会をとらえまして、ただいま申し上げましたような努力をいたしたい、かように考えております。
  99. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 「あらゆる機会」というと、たいへん幅の広い、そういう意味にもなりましょう。必ずしもその接触の場所は北京とは限らない、東京においてもその可能性はあると見てよろしゅうございますか。
  100. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 東京で中国側のだれそれと接触するというようなケースはいまありませんが、東京以外の場所において、ということであります。
  101. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 東京以外、また北京以外ということは、アメリカとも理解されるしヨーロッパとも理解されるし、そういう地域をさすわけでございますか。
  102. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、私もそういう機会のあるあらゆる場所を考えておるわけです。もとより、これから東京でそういう機会がないということを申し上げているわけではないんで、いま当面、私の頭の中にただいま東京ということはないということを言っておるわけです。
  103. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私があえて東京と申し上げたのは、御承知のとおり貿易弁事処がこちらにございますね。非公式であるならば、当然「あらゆる機会」というものの中にそういう接触のルートをおつくりになってもいいのではあるまいか。むしろ、東京にせっかくそういう民間的なルートがあるわけでございますから、そういう点を通じて、やはり責任ある立場の方々が——何も福田さんと限ったわけじゃございません——明確にやはり北京に対する意向が反映するそういう方途というものが十分講じられていいのではないかということを申し上げたのでございますが、それも、いまおっしゃられたように、ないとは言えない、あるいは十分その可能性を考えてその用意もあると理解してよろしいのですか。
  104. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 将来のことは格別として、ただいま私の頭の中にはありません、こういうことを申し上げているわけであります。
  105. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにしても、こういう状態がこれからいつの時点で終止符が打たれるのかということは、心ある者をして非常に心配させるところであるわけです。しかも、米中接近に対して正式な外交ルートはまだ開けてはいないとはいうものの、おそらくこれから予測される問題の一つとして、アメリカが、新しいマーケットの獲得という点から中国に対して積極的に経済交流等を開始していくのではないだろうか。そういったときに日本の受けるデメリットというものを考えてみた場合でも、非常にはだの寒い思いがしやしませんかという点が一つ。それから同時に、この東南アジア地域において、自由主義国家群というものがございましょう。まあ、そのもとにいろんな安全保障体制というものも組み込まれているわけでありますが、しかし、現在の世界の新しい変貌とともに、あるいは同盟国という表現が当たるかどうか別にいたしましても、オーストラリアであるとか、あるいはニュージーランド等々の国々が急速に北京と接触をして新しい関係を結ぶ、また、タイあたりはもうきわめて流動的である、こういうことが伝えられていると思います。もうすでにインドネシアは非常に北京とも近い。こういうふうな状態が、ごく近い将来にその可能性が十分にあり得るということが判断されるわけであります。こうした場合に、どんどん事態が推移してまいりますと、かねてから危惧されておりますように、日本と韓国あたりはまさしくこのアジアにおける孤児になりはしないかというような、ごく近い将来の展望に立って考えた場合に、非常に心配するのですが、その点はいかがでございますか。
  106. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカと中国との間で接触が始まったわけでありますが、私は、アメリカ経済的に交流を多く期待しておらぬ、こういうふうに思います。また、実際問題の展望として、米中貿易というものが顕著に拡大されていくというふうには、まあ思いません。それから同様なことがアジアの国々についても言えるのじゃないか。何かアジアの孤児になるというふうなことでありますが、そういうような状態ではない。わが日本はアジア諸国の間におきましてはますます連帯感を深めている形勢にある、こういう見解です。
  107. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私は、そういう福田さんの考え方が甘いか辛いかわかりませんけれども、そういう姿勢というものから、日本の頭越し米中接近などと評価されるようなことが起こったのではないか。はたして、そういういま福田さん御自身の見方に立って、東南アジア地域においてもそういうことは将来ともにあり得ないと見ておれるのであるかどうなのか。私は、やはり東南アジア地域も非常に流動しているのではないか。やはり、政治的のみならず、なかんずくその経済交流というような面を積極的に考えているのは必ずしも日本だけではない。いま福田さんの答弁を伺っておりますと、アメリカ自身においてもそれは今後経済交流等は積極的にやる見込みはないだろうというふうにおっしゃっていますけれども、やはりベトナム戦争が、あるいは今年末まであたりにでも終止符が打たれるというような、そういう見通しなんかも取りざたされている昨今、新しい一つの方向転換として、アジア地域に対する、あるいはアメリカの政策の一環ということから考えてみても、せっかく米中接近という緊張緩和の事態をここでつくったことを考えた場合に、もう全然経済交流もやらない、何もやらない。それじゃ、いままで何のために米中接近をあえてはかったのかという疑問点が依然として残るでありましょうし、それは、いま申し上げたように、東南アジア地域においても、オーストラリア、ニュージーランド等々においても、はたしてどうだろうか。あるいは、フィリピンを含めても、十二分に予測されないことはないという、そういういま動きというものがあるんじゃないだろうかというふうに私は感じますがゆえに、あえてそのことを、日本の将来というものをあやまってはならないという観点から、と同時に、やはり中国問題というものはどうしてもできるだけ早い時期に解決をしていかなければならないというそういう結論に立ちますがゆえに、申し上げているわけです。しかし、依然として、福田さん御自身としては、重ねてお伺いしましても、返ってくる答弁は同じでございましょうか。
  108. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ちょっと誤解があるようですが、アメリカは米中経済交流というのは希望しているんです。希望しておるにもかかわらず、これが大きなものになるであろうとの観測はいたしておらないだろうと、こういうことを申し上げておるのです。
  109. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまあとから申し上げた、アジア地域についてはいかがですか。特にタイ、カンボジア、ラオス、あの辺は当然、北京に近い国々のほうが多いとされていますだけに、大勢としては、やはり中国と接近をはかって、アジア地域の繁栄と平和を願おうという動きがあることだけは否定できないんじゃないか、こう思いますけれどもね。
  110. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、米中接近の背景を非常に経済に重きを置いて御観察のようでありますが私のほうは、そうじゃないのです。これは、世界政治ということの観点からのああいう動きになってきた、こういうふうに見ておるわけです。その辺は少し感覚が違うところがあるわけなんですが、いずれにいたしましても、アメリカは、ただいま申し上げたとおりで、政治的には米中接触という動きがずいぶん出てきておる。その余勢というものがアジア全域に及ぶ、これは私は否定をいたしません。そういうことで、政治的側面からいたしますると、これは国によっては違いまするけれども、大局的に見まして、中国というものとの関係を見直す、そういう空気は出てくると、これは私はそのとおりにいま考えておりますが、さて経済的にどういう変化が起こるか、私はそう大きな変化は起こってこないんじゃないか、そういう見方をしております。
  111. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま伺った答弁を整理をして次のまた質問の中身にしてまいりたいと思いますので、次に移りますが、最近、国連の中国代表部では、香港、マカオの領土権をめぐって、その認知を要請するという動きが示されておるようでありますが、香港、マカオが中国本土の領土であることは、過去の歴史がどうあろうとも、これはまぎれもない事実である、こういうように私どもは判断をいたします。そういった点が表面的になった場合、日本政府としては側面的に一あるいは側面的ということよりもむしろ主導的にこれを支持する方向に行くのか。それとも成り行きまかせという方向に行くのか。その点、いかがでしょうか。
  112. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは中国と他の国との間の問題であって、私どもがこれに介入するという立場にはない問題じゃないか、そういうふうに考えます。
  113. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに、中国と英国あるいはポルトガルという国々との間の関係ではございましょうけれども、やはり隣国と友好関係をこれから維持しようという場合に、たとえそれが他国間の問題であるにせよ、同じアジア地域に起こっている問題として、日本がこれからどういう役割りを果たしていくかは別問題といたしましても、側面的にアドバイスをするなり、あるいはそれを何らかの形で支持するというようなことが当然あってしかるべきではないだろうかと、こういうように考えるのですけれども、それでもやはり、これは他国間の問題だからおれは知らないということで、一刀両断で済ましていいものか。先ほどの御答弁でよろしいのでございますか。
  114. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまの段階といたしましては、そのとおりに考えております。
  115. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、かりにそれが国連という公の機関において表面化した場合でも、やはり日本としては、拱手傍観というか、とにかくながめているというふうにしていきたい。賢明といえば賢明かもしれませんけれども、しかし、やっぱり将来ということにいろいろな考え方を置いてみた場合に、これから特に友好関係を結ぼうというときには、多少のことは——それは悪いことはこれはいけませんよね、軍事的に加担するとかそういうようなことがあってはもちろんなりませんけれども、領土として中国に返還されると、それは応援するのが私は当然じゃないかというような感じがするわけであります。  次に、——きょうも脈絡のない質問ばっかりしちゃって、どうかと思うのでありますけれども——先般私が伺った問題点の中で、福田さん御自身の受け取り方がちょっと誤解があったようでありますので、もう一ぺん確認のために申し述べておきたいと思うのですが、それは、先ほどもちょっと話題になっておりました、今年一月来日いたしましたグロムイコソ連外相の訪日に伴いましていろいろな話し合いがなされたと、それで、できる限り年内に平和条約締結に必要な下交渉をしたいと、そのときには当然領土問題が含まれてくることは言うまでもない。これはもう、佐藤さん自身が外人記者団に言明された話の中身からも明確だろうと私は思います。かつて、フルシチョフ首相が、日米安全保障体制というものを解消するならば、これは歯舞、色丹、国後、択捉の北方領土については十分考慮してよろしいというようなことが過去にあったことを記憶しております。しかし、その後一貫して、きわめてかたい姿勢がくずれていなかった。それで、今回、共同声明等から見られる範囲においては、たいへん、ソ連の日本に対する姿勢というものが柔軟になってきたのじゃないかという受け取り方がなされるわけですね。その柔軟な中に、北方領土というもの、日本が非常に希望しております北方領土の返還というものを十分含んで、そうして柔軟な態度を示そうとしている。その背景には、その見返りとして、先ほど申し上げた、あるいは日米安全保障体制というものの解消というものが意図されていはしまいかということをこの間お尋ねしたのでありまして、それで、北方領土が返還になったときに米国側から基地の提供を求められても云々ということじゃないのです。その点について、あらためてその考え方を伺いたいし、そしてまた、それに対する今後の日本の姿勢というものを明確にすべきじゃないかと思いますので、整理をしてその辺をお答えいただきたいと思います。
  116. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) グロムイコ外務大臣が来日して私と会談をした中で、安全保障条約という話は一つも出ておりません。これははっきり申し上げておきます。  次に、渋谷さんからソビエトはわが国に対して柔軟な姿勢が出てきた、こういうふうな御理解を承りましたが、事、領土問題に対しますると、私はソビエトの立場というものは依然としてかなりきついものである、こういうふうな認識を持っております。ただ、いままで、領土問題は解決済みである、ということを言い続けてきたのが、とにかく領土問題が主体にあるべき平和条約交渉に入りましょう、しかも、今年中に入りましょう、こういう態度を示された。これは私は微妙な変化があるのだ、こういうように思いまするが、さあ、微妙な変化があるからといって、領土問題について弾力的になった、こういうふうな受け取り方はしておらないんです。私どもは、まあソビエトとの間の領土交渉、これは平和条約交渉——平和条約交渉は平和条約交渉でありまするから、あるいは経済の問題について、あるいは文化の問題について、あらゆる日ソ間の問題についてこの交渉の場面において話し合いが行なわれるであろう、こういうように存じます。また、そういう交渉につきましてはわが国わが国としてのいろんな考え方をとらなきゃならぬ、こういうふうに考えておりまするが、しかし、領土交渉、領土問題これにつきましては、わが国のしばしば申し上げております従来の姿勢、これは一歩もくずすことは考えない、こういう姿勢で臨みたい、こういうふうに考えております。
  117. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、事、領土問題については依然としてソ連側の姿勢がきびしい。しかし、いまおっしゃったように、微妙な変化があることは間違いない。その微妙な変化の中にはどういうような含みがあるのかわかりませんけれども、ただ、日本側としては、その平和条約締結の前提として領土問題は何としても一貫して貫く、このように理解してよろしゅうございますか。
  118. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりでございます。
  119. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 一方においては非常にきびしい、きびしいけれども微妙な変化がある。そしてまた同時に、日本としてはあくまでもその姿勢はくずさない。本年度、おそらく九月から年末までと先ほど話がありましたけれども、いろんな下交渉が持たれ、締結までの間若干時間がかかるだろうと思いますけれども、その見通しについて、そういう領土問題まで含めてその成立の見通しの可能性ですね、領土問題が全部解消して出てくる、それは相当短期間においてできる。いろいろそういう感触というものが今回のグロムイコ外相の接触において多少なりともその辺の空気というものが感じられはしなかったか、こういうふうに思うのですが、その点、いかがですか。
  120. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日ソ関係は私は今回の第二次定期会談において全体としてかなり前進をした、こういうふうな受け取りをしております。ただ、問題の平和条約交渉、これは秋から暮れにかけて始まるというわけでありますが、この見通しが一体どうなのか、こういうことを申し上げますとまた交渉自体にいろんな微妙な影響を及ぼしますので私は申し上げませんが、ただ、はっきり申し上げておきますことは、事、領土につきましては、広範な議題があると思いますが、事、領土につきましては、私どもの立場は、一歩も譲る、そういう考えは持っておらぬ、そういう形でこの交渉に臨みたいと思います。
  121. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 日ソ関係の改善ということに関連しまして先般福田さんがサンクレメンテに行かれたときにシベリア開発という問題をコナリーあるいはスタンズに提案されたと伺っておりますけれども、将来日米が協力態勢をもってこのシベリア開発というものをやる方向でいるのか、あるいは、たとえ米国側が難色を示したといたしましても、今後の日ソ関係の改善に従って日本独自の立場でソ連から要望されているシベリア開発に乗り出していくのか、その辺をどう評価され、そうしてまた、これからどう一体政府として対応されていくのか。その点だけを大まかでけっこうですけれども、伺っておきます。
  122. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま日ソ関係ではこの間グロムイコとの会談におきましても、また二月の日ソ合同委員会における経済人の会談におきましても、貿易の促進の問題もありますが、同時に、シベリアの開発の問題が論議されております。また、論議されている問題はチュメニというところの石油の開発に関連して日本にパイプ・ラインの面で協力できないか、こういう問題があります。それからもう一つ、ヤクートというところの燃料炭の開発、この問題、それから北樺太の海底油田並びにガスの開発の問題、この三つの問題がテーマとして提起されております。それに対してグロムイコ外務大臣は、もし日本において協力の意思があれば、この協力を受け入れる用意があるというような慎重な発言をしておりましたけれども、日ソ合同委員会の場のほうはやや一歩進んだ討議が行なわれている、こういうふうに承知しております。この日ソ合同委員会におきましては、この三つのプロジェクトにつきましての検討、これがまだ未了でございます。そこで近くというか、たぶん五月ごろになるのじゃないかと思いますが、その際は日本側から財界人がソビエトのほうへ出てまいりまして、またこの検討を継続をするということになっておりますが、その検討のその際に結論が出ますか、あるいはなお検討を要するというようなことになりますか、いずれにいたしましても、財界人を中心としたプロジェクトの検討、これが先行いたしまして、そうしてこの先行される財界人の間の結論が出た場合におきましては、政府も正式にこの問題を、これに協力するかどうか、そういう態度をきめていきたい、こういうふうに考えておる。  それから、サンクレメンテの会談におきましては、これは総理や外務大臣である私と先方との間の話はしません。ただ、通産大臣が、ソビエトとの間にこういう話が出そうだというので、主としてチュメニの話をされたというふうに聞いておりますが、そのときのアメリカ状態は、政府としてはまだ何ら聞いておらぬ、ただ、アメリカの財界の中にそういう動きがあるやに聞いて承知しておる、こういう程度にとどまった、かように聞いております。
  123. 星野力

    ○星野力君 私、先回に引き続いて朝鮮の問題をお尋ねしたいのですが、先回私が韓国の対外借款の返済についてお聞きしました。それに対して政府委員から、韓国の対外借款の償還計画は健全であって今後も心配はないという意味の説明があったと思います。しかし、それは韓国の経済事情が韓国政府なり日本政府なりの期待どおりに発展した場合のことで、実情はなかなかそうはいくまいと思います。韓国の経済危機はきわめて深刻化しておると見ていいと思います。そこで一つお聞きしておきたいのは、昨年十二月五日に韓国政府が出した非常事態の宣布、続いて国家防衛に関する特別措置法というのを強行的に制定しましたが、この事態をどういうふうにごらんになっておられるか。なぜそんなことをやったのかということであります。
  124. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、韓国の非常事態宣言、あの前にまあニクソン訪中というようなものが発表されておる。そういうようなことから、アジアの情勢にかなりのいろんな意味における影響を受けるであろう。それに対するかまえをひとつとらなきゃならぬということが一つ。それからもう一つは、やはりいま星野さんが御指摘のように、経済的に非常に、ニクソン・ショックでありますとか、あるいは円ショックでありますとか、そういうようなことでまあかなりの打撃を受けておる、ここで国民の士気を高めておかなきゃならぬ、こういう時期に際会したという、この内外両面の立場でああいう措置をとったんだと、こういう理解をいたしておるわけでありますが、特に国民の士気を高揚し団結を強めると、こういうところにアクセントがあったと、こういう見方であります。
  125. 星野力

    ○星野力君 内外両面からの事由に基づいてと、そうだと私も思います。経済危機に加えて反動政治に対する南北人民の不満や動揺が、ことにニクソンの訪中というような情勢の中で一そう高まってきておる。それに対して、北の侵略などという口実をかまえて国内を威圧する、それからもう一つ、やはり外国の援助を一そう引き出すための方策でもあったと思うわけであります。対外借款についていえば、韓国の情勢というのは借金を返すために新たな借金を重ねなければならぬという、そういう状況になりつつあると思うのでありますが、前回の政府委員の御説明に、韓国への外国の経済援助は直接投資を主にしていく方針だということを言われました。元利を返済しなきゃならぬ借款よりも、返さなくてもいい直接投資を歓迎するということだと思いますが、そこにも韓国経済の苦しさが反映しておると思います。しかし、直接投資を歓迎するといっても、外資導入企業の八五%が不実企業——これはソウルの東亜日報の報道でありますが、実らない企業ということですか、不実企業という状況では直接投資もそううまくは入ってこないだろうと思います。そういう状況の韓国に対して日本政府経済援助を強化しておる、今後も大いに援助するんだと言っておられます。一体政府は韓国の経済が今後うまく発展すると思って援助を強めていかれるのか。それとも、経済のほうはうまくいく、いかぬにかかわらず援助しなければならぬ。借款の償還なんか、言ってみれば、できてもできなくてもかまわない、しかたがないんだと、そういう立場で援助を強化していかれようとしておるのか。簡単でよろしゅうございますから……。
  126. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、民間の投資ですね、これは民間の発意によるわけでありまして、政府として介入はいたしておりません。まあ、政府の介入する援助といいますか協力ですね、これにつきましては、ケース・バイ・ケース・で十分その援助の効果というものを検討しましてこれに協力すると、こういうことでございまして、決して、大事な国民の税金でございまするから、これを無計画で協力しておると、こういうものではございません。
  127. 星野力

    ○星野力君 一体、韓国のこの総投資に占めておる外国依存度ですね、これは現在どのくらいの割合になっておるんでしょうか。一九六九年の数字が四〇%以上とたしか記憶しておりましたが、どっちにしましても、韓国経済の外国依存度というのはますますこれから高まらざるを得ない。しかし、そういっても、アメリカは御承知のようにニクソン・ドクトリンに基づいて対韓援助を減らしてきておるのです。韓国としてはますます日本に依存しようとしておるわけでありますが、日本としてもますますアメリカの肩がわりを進めようとしておる、こういう状況だと思います。そこに私非常に危険なものを感ずるんであります。といいますのは、日本の援助、そこから生まれる債権がいろいろの形で利権化、権益化する。そういうものとして積み上げられる。そこへ持ってきて一九六九年の例の日米共同声明の韓国条項、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である、韓国は日本の生命線だと言わんばかりのいわば国家意思の表明でありますが、あれやこれやで、韓国がかつての満州になるのではないかと見られたり、また、四次防問題などとも関連しまして、日本の軍国主義の復活が南北朝鮮国民をはじめ外国で警戒されるのは私当然だと思います。この点についての大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  128. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日韓関係は、日韓基本条約が結ばれるあの時点では、いろいろ韓国内においても議論があったことは私も承知しております。しかし、あの条約を結んで以来、逐次日本に対する韓国の理解というものが深まってまいりまして、今日では両国政府間にはかなり高度の信頼関係が形成されつつあると、こういうふうな見方をいたしておるわけであります。これはもう申すまでもございませんけれども、韓国はわが日本とはもうほんとうに一番ずっと隣合い同士である。その一番の隣合いの韓国に対しましてわが日本が特別の関心を持つ、こういうことは、これはもう自然の当然のことであろうと、こういうふうに思うわけであります。ただ、その日韓関係というものは、かつてわが国が朝鮮半島に臨んだときとはもうまるきり姿勢は変わっておるわけでありまして、韓国は主権国家である、わが国もまた主権国家である、相互平等と、こういう立場でありまして、この日韓関係というものはそういう立場において対処していくと、こういうことでございます。
  129. 星野力

    ○星野力君 どうも質問に対して私が求めておるようなお答えじゃないわけなんですが、焦点がかみ合わない、こういう意味でありますが、まあ一応先へ進みます。  ことしの秋の国連総会で朝鮮問題が重要議題になるのは必至と見られておりますが、そこで朝鮮民主主義人民共和国の招請問題がまた討議されるでしょうが、その問題について政府はこれまでどおりの条件つき招請案の立場をとられるのかどうか、ひとつ。
  130. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 秋の国連総会で朝鮮半島の諸問題が取り上げられるかもしらぬ、こういうふうに存じます。しかし、それは六カ月も先のことである。そういうようなことで、まだ時間的余裕もありますので、まあ、その間に客観情勢がどういうふうに推移するかということも踏まえながら、この秋の国連総会の時点までにはわが国の朝鮮半島に対する対処方針というものを固めておかなければならぬというふうに考えておりますが、この時点におきましては、まだそれらを検討する段階でありまして、まだ結論は出ておりません。
  131. 星野力

    ○星野力君 検討の段階、これからいろいろ国際的な状況などを見ていくということでございますが、「検討する」ということは必ずしもこれまでのような態度をとるとは限らないという意味に解してよろしゅうございますか。
  132. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これから検討するわけでありまして、どういう結論が出ますか、これは国連総会が始まる直前のことでよかろうと、こういうふうに思っておるわけであります。
  133. 星野力

    ○星野力君 昨秋の中国問題の国連総会でも同じようなことを言われて、直前にああいう態度を御決定になった。またそんなことになったんじゃ困ると、こういうふうな立場からお聞きしておるわけであります。朝鮮半島は、御承知のように、過去幾たびも日本の対外膨張侵略のこれは第一歩の場所でありまして、それだけに、朝鮮に対しては日本はよほど慎重でなければならないことはいまさら申し上げるまでもない。そうでなければ、これは悔いを百年にまた残すようなことになるわけであります。先ほど大臣は、多極化時代、イデオロギーを越えてどこの国とも仲よくしていこうというのがわが国の基本的な考えであると、こういうことを言われました。が、朝鮮の南北の一方に対しては異常なまでに肩入れをやる。他方に対しては、あたかも敵国扱いしておられるような政策、これは先ほどのそういうおことばとも一致しないわけでありますが、こういう政策は、日本自身が朝鮮民族の非願である自主的平和的統一を妨害することでもありますし、日本自身が、アジアの平和のためにではなくて、アジアの緊張に手をかす結果になることでもありまして、そういう政策をやめなければならぬと思うのでありますが、私の申し上げたいのは、朝鮮政策を根本的にもう再検討しなければならぬ時期に来ておる、転換すべきときであると思うのでありますが、そういう立場から今秋の国連などにも臨んでいただきたい、こういうことであります。その点について大臣から重ねて御見解を聞きたいと思います。
  134. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほども申し上げたんですが、わが国はイデオロギーを超越した立場でどの国とも仲よくしなければならぬ。しかし、そのケース・バイ・ケースの適用、特に分裂国家に対する対処のしかた、これは十分気をつけていかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。ただ、星野さんからいま御指摘ありましたが、北に対しましては、朝鮮半島で敵視政策をとっておる、こういうふうにいまお話がありましたが、決して敵視政策なんかとっておらないのでありまして、あるいは文化でありますとか、あるいはスポーツでありますとか、交流はぼつぼつ始まろうとしておるくらいの状態であります。そこは、もうすでに基本条約を結びまして親善の関係を進めておる韓国とはおのずから違いが出てくる、こういうふうなことも御了解いただきたいと思います。
  135. 星野力

    ○星野力君 時間の関係もありますので、いまのお答えに基づいてもう少しお聞きしたいのでありますが、やめることにいたします。  そのほかに一つ、これは大臣にもそれから委員長にもお願いがあるのですがね。先般の南東アジア第一課長と事務官のハノイ訪問について、どういう目的で行かれたか。また、どういうような話し合いをやられたか。また、どういうふうに状況を観察してこられたか。それらのことについてひとつ御本人から話を聞く機会を参議院でも、この当委員会でもつくっていただきたいと、こう思うのですが、それのお取り計らいをお願いして質問を終わります。
  136. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 理事会にはかって御相談の上、善処します。  本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会をいたします。    午後零時三十六分散会