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1972-05-18 第68回国会 衆議院 内閣委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十八日(木曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 加藤 陽三君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 大出  俊君 理事 伊藤惣助丸君    理事 和田 耕作君       阿部 文男君    笠岡  喬君       辻  寛一君    葉梨 信行君       湊  徹郎君    木原  実君       鈴切 康雄君    東中 光雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林大臣官房技         術審議官    遠藤 寛二君         農林大臣官房参         事官     大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 内村 良英君         農林省農地局長 三善 信二君         農林省畜産局長 増田  久君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         農林水産技術会         議事務局長   加賀山國雄君         食糧庁長官   亀長 友義君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   太田 康二君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一七号)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより会議を開きます。  農林省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  3. 木原実

    木原委員 今度の設置法改正案は、農林省としましては、たいへん思い切った、ある意味では画期的な改革案が提案をされておりまして、大臣意欲のあるところがたいへんわれわれわかるような気がするわけでありますが、それだけに、ある意味ではそれを裏づける農政の大きな問題がやはり残されているような感じがいたします。そういう面で、やや一般的なことから大臣の御所見を少し伺ってまいりたいと思います。  最初に、そろそろ米価のシーズンに入ったわけでございまして、何か新聞報道によりますと、先般、明年度米価についての大臣所見の一部のようなものが発表されておりました。私ども、たいへんむずかしいところに来ておるという感じを抱いておるわけであります。しかしながら、私どももやはり、生産者という立場考えますというと、もう据え置き三年目を迎えまして、一つの限界に来ているやにも感ずるわけであります。しかしながら、米価の問題は、御承知のようにただそれだけでは解決はつかない、幾つかのむずかしい要素の中にある一種の大きな政治問題だ、こういう感じもするわけであります。特に、ある程度生産者米価を上げなければならないのは当然のことですが、そうなりますと、政府売り渡し価格もそれに見合ったものを考慮せざるを得ない、あるいは財政的な措置考えなければならない、さまざまな要因がからんでおることは御承知のとおりなんでありますが、しかしこの両三年は据え置きということを基調にして措置がとられ、一方では減反政策調整が行なわれてきたわけなんですが、そういう状態の中で、少なくとも大臣のお考え方としては、昨年あるいは一昨年に比べて、米価の問題について何かやはり前向きに取り組んでいく、こういうふうなお考えのように報道では見えたのですが、その辺についての所見をまずお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまお話しのような種々むずかしい問題がございますけれども生産者米価につきましてはずっと据え置いたわけでございます。ところが、物価の問題やらあるいは公共料金値上げというような問題も、いい悪いはとにかく、実現しております。そういう中において、生産者農民のつくる米も政府で買い上げる以上は一つの商品でございます。それだけは、もうどんなに労働賃金が上がっておっても、あるいは物価が上昇しても据え置くんだというのは、公平の観念からいってもとるべき態度じゃない、こういうように考えておるものですから、再々私が言っていますことは、少なくとも押えるというようないままでの態度というものは改めたらいい。押えるのを改めるということになれば逆に上げるということになるわけですが、これにつきましては、いま御指摘のように、今度はそれに伴っての政府売り渡し価格の問題もあるし、あるいは財政当局からいえば、そんなよけいな金はないというような財政的な問題もあります。非常にむずかしい問題がありますから、まだどれだけにするかという決定の作業は進めておりません。  そして作業をするのに、生産費補償方式というような算定方式もありますけれども、その算定方式生産者とあるいは物価経済事情というものをしんしゃくしてきめるということですから、そういうものがあるのにかかわらずこれを押えていくということも、その線からも筋が通らない。ですが、その算定方式についての資料といいますか、そういうものもまだそろえておりませんから、どういうふうにするかということはまだきめておりません。それといまの財政方面との話し合いもあります。いずれ米価審議会を六月末か七月の初めには開かざるを得ませんから、それまでには数字をきめて諮問するというような考えで、いまおるわけでございます。
  5. 木原実

    木原委員 私も、大臣がおっしゃいましたように、いろいろな状況から考えて、生産者立場に立てば、ことしあたりは幅はともかくといたしまして、ある程度合理性のある価格の引き上げはやむを得ない、こういうふうに考える一員なんです。ただ、その場合に幾つかむずかしい問題が同時に出てくるわけなんです。たとえば米価をそういう形で幾らか前向きに調整をしていく、値上げをしていく。これは幅にもよりますけれども、そういう場合に、たとえば一つの問題は、減反政策の問題とのかかわり合いというようなことについては御心配は要りませんか。価格条件が少しでもよくなった、しかし一方では減反という基調があるわけでありますけれども、それの政策遂行と何かちぐはぐにならないかという心配があるのですが、いかがでしょう。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 減反政策との関係でございますが、政策的には私はちぐはぐしないと思いますが、具体的には幾ぶん影響があるかと思います。政策にちぐはぐしないということは、減反政策というのは、やはり農業生産物需給バランスをとるという観点からでございます。米の価格に直接関係があるわけじゃございません。やはり生産物需給バランスをとらなくちゃならない。だから、過剰に生産したものは、その過剰は少なくして需要に見合った生産をする。少ないものは自給率を維持するとか増すとかしてバランスをとっていく。こういうのがいまの農業政策どして非常に必要になってきたときでございます。  そこで過剰の米でございますが、これはある程度バランスをとらなきゃ農業生産者のためにならぬ。ですから、いまは食管で統制しておりますから、これが自由であるような場合においては、御承知のとおり豊作貧乏というようなことで、たくさんとっても需給バランスがとれなければ、これは貧乏して、かえって損するということになるのですから、その需給バランスをとるということが統制下においても必要である、このバランスをとっていなければ、だんだん自由化方向への影響力も非常に強くなる、こういうことですから、農民のために減反というものは必要だと私は考えています。ただ、農民に強い組織がありませんから、農民自体自分で相談するというようなことがありませんから、政府がかわって、こうされたらどうかというようにすすめておるのですから、直接いまの米の価格とは関係ない。しかし、具体的には、自分減反したり、あるいはまた作付転換をするよりも、米の価格が上がるなら、減反しないで米をつくっていたほうがいいんじゃないかというような、現実的な判断があるかと思います。しかし、減反を見ていますと、大体減反意味もある程度了解されたと思いますし、減反現状を見ていますと、やはり米をつくっても収穫が非常に少ないとか、米の不適作地を大体選んで減反しておるとか、あるいは、ほかへ移っても移りいい農業多角化を多面的にやっていく、そういうようなものが減反の、あるいは作付転換対象になっているようでございますから、全然影響ないとは言えないかもしれませんが、上げるからやめてしまうというような大きな影響はないのじゃないか、こういうふうに私は見ているわけでございます。
  7. 木原実

    木原委員 私ども政治論としては、あるいは長期的な政策論としては、ともかく何か大きなやはり展望に立って歩いていかなければならないような時期に来ておるわけであります。大臣もおっしゃいましたように、減反という問題をとってみましても、その背景の中には、やはりかなり選別が行なわれておりますし、あるいは残ったところも、たとえば出かせぎのほうが主になっているような状態のところもありますし、いろいろな要素がからんでおるわけでありますが、それはともかくといたしまして、もう一つ価格の問題で心配になりますのは消費者価格の問題でございます。たまたま四月から物統令廃止ということになりまして、小売り段階の米の値動きについては、これはたいへん神経の過敏な時期といいますか、ある意味ではたいへん大事な時期に際会をするわけであります。そうしますと、生産者価格というものが値上げという措置がとられると、おそらく政府の売るほうの価格についても考慮しなければならない、こういうことは当然予想しなくちゃならぬと思うのですが、それへの配慮はいかがでしょう。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御指摘のように、小売り価格というものに対して、物統令適用廃止後非常に敏感でございます。御指摘のとおりでございます。物統令廃止後、現状によりましても小売り価格が非常に上がったのではないか、また上がったという御指摘も議員の中にございます。しかし、私ども調査いたしております結果においては、物統令廃止したから消費者米価が上がったという結論には、調査ではなっておりません。  そこで、この生産者米価を上げたときに、消費者米価はどういうふうになるかということでございます。御承知のように、物統令廃止しましたから、消費者米価を直接に政府できめるわけではなくなりました。政府払い下げ価格をどれくらいにするかということをきめるので、その結果が消費者米価にどういうふうに影響するかということが問題だと思います。そこで、消費者米価につきましては、家計の安定をそこなわないように、そしてまた、経済事情等しんしゃくしてきめるという食管法の規定がございますから、それに沿うような払い下げ価格というものをきめるということにいたしたいと思うのです。ですから、直接消費者米価価格をきめて払い下げるということじゃありませんが、消費者米価にあまり影響ないように、しか消費者米価を直接きめて米を払い下げるわけではありませんから、全体として政府米を払い下げるのに弾力的にならざるを得ない、ストレートにきまりはしない、こういうことでありますので、それに対してのいろいろの問題も十分考慮して払い下げ価格をきめなくちゃならぬ。しかし、食管にあるものでございますから、少し高く払い下げたから、それに便乗して消費者米価を今度小売りの間で高くするということについては、これはやはり食管法のいろいろな取り締まり法規もありますし、あるいは業者の免許を相当押えるとかなんとかいう方法もありますから、そういう面では、かりに便乗的な値上げでもするようなことになれば、それに対しては厳重な措置をとって、影響の少ないようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  9. 木原実

    木原委員 食糧庁長官に伺いたいのですが、いま大臣からいろいろ御答弁いただきましたけれども消費者米価の問題は、社会的には生産者米価を上げるよりもたいへん大きな影響考えなくてはならぬと思うのです。そこでたとえば、政府売り渡し価格を据え置いて何がしか生産者米価を上げると、当然逆ざやの問題が出てくる。食管赤字の問題が出てくる。一部の新聞大臣談話の一部として、そういう際には何か財源については別途考慮したいというような意味報道があったのですが、たとえばそういうことについても事務当局としては何かお考えなんでございますか。
  10. 亀長友義

    亀長政府委員 御指摘のように、消費者米価据え置きまして生産者米価を上げれば、その分だけ食管赤字がふえることになりますけれども予算上は、御承知のとおり両米価とも従来どおりのような水準ということで、これは一般会計からの繰り入れも決定しておるようでございますから、生産者米価を引き上げた分だけその赤字をどう補てんするかという問題がございます。  御承知のように、食管一つ事業会計でございますので、赤字繰り延べという制度は認められておりません。したがいまして、それは一つは、食管の内部で運用上何がしかの金が年度内に生まれ出る可能性があるかどうかという問題。もう一つは、それがない場合には、一般会計予備費が計上されておりますから、そういうものによって食管に補給してもらえるかどうか。それができなければ、今度は一般会計補正予算を組んで、食管繰り入れ費というものを国会で御承認をいただくというようなことができるかどうか。大体方法としてはその三つでございますが、後者の二つにつきましては、これは大蔵当局とも相談をしないと私どもいまお答えができませんが、少なくとも大蔵省の事務当局としては、あまり明るい見通しは持っていないというふうに現段階では申し上げるほかないと思います。  第一の点の食管会計の中で幾らかでも出るのかと申しますと、食管勘定に米の勘定と麦の勘定、これは内麦と外麦とございますけれども、これも御承知のように、いまドルが下がったからその分だけ原麦を下げろというふうな消費者からの御要求もございますし、また、現にふすま等が輸入なり為替レート変更によって大幅な値下がりをしておる。そういう関係から、麦のほうから特に金が浮くということはむしろ考えられないという状況でございますので、結局、ある金といたしましては、現在、食管調整資金というのを九十五億予算で認められておりますので、その金が唯一の、現段階ではそれを使えばまあそういうことが可能であるというだけでございますけれども、九十五億というのは、かりに生産者米価に換算をすればどのくらいに当たるかというと、一%に届かないという数字でございます。
  11. 木原実

    木原委員 確かにことしは何か予備費問題等も出ましたけれども、私ども見ておりましても、なかなかゆとりのないような仕組みになっておるようでございますね。何か私の読み違いかどうかわかりませんけれども、一部の新聞大臣談話のあれとして、何か公債を発行してでも、こういうような何か談話が見えていたようなんですが、そういう斬新な方法考えているのですかいないのですか。
  12. 亀長友義

    亀長政府委員 公債発行してもというのは、おそらくそれは、かりに補正予算を組むというような場合に、財源としてなかなか一般税収がないというような場合にはそういうことにならざるを得ないであろうというようなことのお話だろうと思いますので、その点は別にまだはっきりしたことではございません。ただ、補正予算を組むとすれば、結局それは税収とか公債とかいうことで調達をしなければならぬのではないかというお話だと思います。その点につきましては、財源としましてはまだ確定的な話し合いまで行なわれておりませんし、米価もどのくらいまで上げるかというような問題も、まだ数字的には、先ほどの大臣お話のように、これからの問題でございます。
  13. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 あの記事が出たいきさつを申し上げますと、生産者米価も上げるんじゃないか、上げると公債はもう建設公債しかない、そういう公債なんか出せないから、結局上げることができないんじゃないかという新聞記者の質問だったものですから、公債発行できないからといってこの米の値段をそのままにしておくということは、なかなかおれとしては承服しがたい、こんなことを少し強く言ったものですから、ああいう記事になったわけでございます。
  14. 木原実

    木原委員 私は、その点では赤城農政支持ですからあれなんですが、ともかく景気浮揚策といいましても、どうも建設部門なんかにはずいぶん金が出ますが、昔は農村に金をおろして景気浮揚策をやったものですけれども、どうも最近は、農民だとか農業だとかいうものは景気対策対象にもならないような、たいへんどうもうらぶれた感じで、どうもわれわれも責任を感ずるような気がするわけですが、私は、大臣のそういう積極的な方向というものはたいへん支持をしたいという気持ちなんです。  ただ、それにいたしましても、繰り返すようですけれども、やはり物価問題がたいへんな時期でございますから、それへのはね返り、それへの配慮というものがやはり米価問題のどうしても中心になるような感じがいたします。米作農家の置かれている状況農業一般が置かれている状況から見まして、この辺で何がしか米価調整を行なっていく、そういうことによってもう一ぺん農民の皆さんに生産意欲といいますか、そういうものを植えつけないと、何かずるずると農業が衰微をしていってしまう、こういう感じがするわけであります。この問題、もう少しあとで食糧庁長官にもお伺いしたいことがあるのですが、大臣が中途で御退席になるそうですから、ちょっとほかのことに問題を移したいと思うのです。  米の問題ともある意味では関連をするわけですが、自由化の問題について少し伺いたいと思います。これはいまに始まったことでないわけでありますけれども、やはり最近の動きの中で、特にいまアメリカから大統領の特別代表が参ったりしておりますし、あるいはまたOECDの中でのいきさつ等についてもいろいろお考えかと思いますが、私どもとしては、残存の部分についてどうするかということもあるのですが、自由化の問題についても、私どもとしては何かずるずると来た。ですから、たとえば減反の問題を考えて、米の問題をある程度転換だ、こういうことを考えまして、そう言っちゃなんですが、農林省としては、もう何とかの一つ覚えのように、それでは果樹に転換しなさい、酪農に行きなさい、蔬菜をやりなさい、こういう転換施策をいろいろな形で示してまいりましたけれどもしかし、そっちへ飛びつきますと、これはすぐ自由化の波の中で、農民としては非常に不安定な要素にさらされる。そういうことがあるものですから、なかなか転換も進んでいるようで進んでいない。構造改善のこととも関連をいたしまして、これは施策がかりに追いつきはいたしましても、なかなか農民諸君がやっていけない。どうしてもやはり、食管という一つのワクの中に入っておれば、まあまあ米をつくっておれば間違いがないということでなかなか転換が進まない。そういうことになりますと、自由化の持っている意味は、たとえばいろいろな形で海外から安い食料品が来ればその分だけ食料価格を引き下げるのに役立つとか、あるいはまた最近ではドルをはかす糸口にもなる。いろいろな他の要素で、農業外のそういうような事情自由化が進められている。しかし、これはある意味では、けじめのないような形でいままでも来たような感じがするわけであります。自由化対象になっている、たとえばくだものにいたしましても、あるいは最近では肉の問題等にいたしましても、何かやはり国内施策と十分にマッチしない形で、他の要因によって自由化が推進される。そうなりますと、基本的に国民の食糧というものをできるだけ国内供給をしていこう、その基盤をやはり堅持していこう、こういう観点から見ると、やはりそこに何かむずかしい問題が絶えずつきまとう。しかもまた、ドルの問題と関連をして、あらためてまた海外からそういう強い要請がある、これに対処をしていかなければならぬ、そういう時期だと思うのですが、この自由化の問題について、具体的にはいろいろあると思うのですが、この段階自由化の問題についてどういうふうに対処をされようとしているのか、個々の品目について何をどの程度ならば許容できるとか、この分だけは、これは日本農業を守るためにもどうすることもできないのだ、こういう何かけじめといいますか、そういうものはお持ちでございましょうか。
  15. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農産物自由化の問題も、私から申し上げるまでもなく、貿易自由化という線から出てきたわけでございます。特にアメリカとの貿易自由化については、非常に日本国際収支がよくて向こうの国際収支が悪い、こういうような関係アメリカは、日本貿易自由化さして、そしてアメリカ輸出を多くする、日本輸入は抑制しよう、こういうところから急に自由化の問題が強く推し進められ、しかもその中に農産物自由化というものも、国内的にも、またアメリカのほうからも非常に要請されたわけでございます。  これは毎々私は言っておるのですが、自由化というような一つのプリンシプルというか、それは私も認める。これは、国際的に障壁をいろいろな面で設けるということは国際関係を悪化するもとである。たとえば私は、その例をアメリカとの交渉の場合にも引いたのですが、これはアメリカ側からですが、日本アメリカと大東亜戦争になった一つの原因は、さかのぼれば、アメリカ日本移民などを排撃して、そして国境を非常に強くして移民排斥をした。日本は人口が多いので満州のほうへ出なければならぬ。そうすると、いろいろ中国と衝突したりなんかした。だんだんそれが大東亜戦争になった。こういうふうに、初めはアメリカ日本移民などを排撃したので、そういうことから起きてきた。だから自由化をすべきで、あまり障壁を経済的にもそういう方面に設けるものじゃない。そういう意味からは、私は自由化というものは基本的にはそう排撃するものじゃない。しか日本農業現状というものは、いまのお話のように、自給自足というか、自足がなかなかできていない。米だけは自給以上になっていますが、ほかのものは自給できていない。だから日本農業を定義つければ、日本農業自給農業という形です。アメリカ農業というものは、アメリカから言えば過剰生産でしょうが、輸出農業輸出産業だ。アメリカ農業輸出産業になっている。その輸出産業になっているアメリカ農業日本農業とを、平等な立場自由化して太刀打ちしろ、こういう国際場裏に投げ込むということは弱肉強食で、そういうことはアメリカ世界政策としてもとるべきものじゃないということが私の根本的な考え方でございます。  そういうことで、日本農業というものは輸出産業のようなところまで行っていない、自給産業としてもまだ十分でない、こういうことでございますから、やはり日本農産物というものが国際競争力にたえ得るように、米は押えておるしその他麦など押えていますが、自由の立場に置かれれば非常に日本生産コストというものは高くなっているわけですから、これは日本農業全体がつぶれてしまう。だから日本農業国際競争力に十分にたえ得るように——これは完全にたえ得るようにはなりっこありませんが、幾ぶんでもたえ得るようにやっていかなくちゃならぬ。そういう政策日本農業政策は国策としてやっていかなくちゃならぬ。でありますから、そういう方向へ持っていこう。それには団地的な農業とかいろいろなことを考えてやっていますが、そういうようなことでやっていこうとしているときであり、国内的には、先ほどの米の生産は過剰でございますが、需要供給バランスがとれるようにしていかなくちゃならぬ。この両面を強く推し進めていくときでありますから、日本農業の体質が相当変わっていかない間は自由化という方向に進めない、ここらを私は強く主張しておるのでございます。  しかも国際的に見て、ことしの自由化などを入れれば、国際的にも相当おつき合いできるだけに自由化している。ですから、これからの日本の重要なる農産物の残存品目については、自由化は全然お断わりするほかないし、やるわけにはいかない。しかし、いろいろ国際的なあるいは国内的な食料品調整対策もございます。でございますから、輸入ワクとかなんとか、ものによっては、ある程度は弾力的に考えざるを得ないものもなきにしもあらずだ。これは国内消費者関係もございます。しかし、自由化まで踏み切るということは、国内的にはもちろん、国際的にもそういうことは日本立場としてはできるものではない、こういうことでございますから、私は、またいろいろ国際収支の問題やドルの黒字国としての対策の検討問題が出てくると思いますが、自由化だけは農林省としては、私のほうの立場としては、それで解決をしていこうということには賛成いたしかねる、こういう立場でおるわけでございます。
  16. 木原実

    木原委員 私も、基本的に、食料品自由化という問題については、やはり初めから限界を置かなくちゃならなかったと思うのです。資源輸入との関係で、工業製品等につきましては、ある意味では開かれた体制ということになるのが当然だと思うのですが、しかしながら、農業特に食糧という問題につきましてはどうしても、やはり食糧の自給ということはある意味では国防と匹敵するような側面を持つわけですから、そこにはどうしても経済的な法則以外の政策を何か持って自給率というものをある程度堅持をする、そういう観点があって初めて自由化——部分的な自由化はありましても、ともかくやはり限界がある、こういう考え方を持っているわけです。  そうしますと、大臣の御見解をお聞かせいただいたわけですが、さしあたって、たとえばドルがたまり過ぎているから何とかだということで、ある意味では諸外国からの要求や圧力もかかってくる。それにこたえなくちゃならぬというわが国の立場もある。そういうことで、具体的には、たとえばOECDで何かこちらもそれに対応するような手みやげを持っていく、こういうことである種の輸入食糧については関税を緩和するとか、新しい自由化の残存品目を開放するとか、いろいろな措置を講じなければならないやに伺っているわけなんですが、それらについても、現状としては、そういう食糧については、そういう措置をとらないで政府としては臨んでもらう、こういうお考え方でございますか。
  17. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御説のとおりでございます。日本貿易商品も相当あるのでございます。それを食料品にまで波及させて、たとえばOECDなどへ行っても、自由化もつき合えというようなことは拒否しなくちゃならぬと思います。関税等につきまして、ものによっては、幾ぶん考えざるを得ないものも、まだ検討すれば出てくることもあり得るかと思いますが、いまはしかし、どれがどうなんということを、私、考えておるものはございませんけれども、そういうような検討の結果、あるいはそういうことはあるかもしれませんが、自由化してつき合わなくゃならぬというようなことは、OECDにはまあ経済企画庁長官が行くことになるかもしれませんが、そういう点にも私らの考え方をはっきり言って、いまお話のあったような線で話し合いに行ってもらうということではないか、そう思います。
  18. 木原実

    木原委員 アメリカとの関係の中で、御承知のように繊維の問題でたいへんな波乱がありました。しかし、またあらためて今度はアメリカとの経済関係が、どう言ったらいいのですか、波乱の中で交渉を始めなければならないような状態がある。この前は繊維が矢面に立った。これからは、先ほども大臣のおことばにもありましたように、食料輸出国としてのアメリカが、日本にきびしく食料関係自由化の幅を広げろ、こういう要求をしてくる、当然そこにはわれわれの言い分があるわけでありますから、いろいろなめんどうな問題が起こってくるのじゃないかと思うわけなんですが、アメリカとの関係の中で、たとえばオレンジジュースの問題であるとか、あるいは肉牛の問題であるとかその他にも、アメリカ側がさらに食料関係をこちら側に出したいというような、圧力というよりもむしろそういう強い要請がある、そういう状況を迎えているような感じがするわけです。  そうしますと、大臣考え方では、OECDの話がございましたけれども、これからのアメリカとの食料関係自由化といいますか、輸入の問題については、やはりこちら側で、きちんとした姿勢をもってそれに対処をする。きちんとした姿勢というのは妙な言い方ですけれども、これについても、大臣がいまお述べになりましたような考え方対処をしていく、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  19. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ことばは悪いことはないと思います。きちんとしたことで私は対処していくべきだと思うのです。コナリー財務長官もかわったようでございますが、日本に来たときにも、あのコナリー長官は私のところに会いに来ましたが、自由化してくれとかどうこうしてくれというような要請は一つもしませんでした。ところが新聞では、たいへん要請されたように出ていましたが、そういうことはしなかったです。やはり話せばわかるといいますか、ほんとうに日本農業立場というものは話せば相当わかっているはずなんです。ですから、わからない人にはわかるように話して、きちんとした立場をとりたい、こう思っております。
  20. 木原実

    木原委員 そうしますと、自由化の問題については、残存品目にあげられておるものも含めて、ともかくまあ農林省としてはけじめをつけて対帆をする、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  21. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そう御了解願ってけっこうでございます。
  22. 木原実

    木原委員 そこで、いま食糧全体の自給率はどれくらいですか。
  23. 中野和仁

    ○中野政府委員 最近われわれ作業をいたしました数字で、昭和四十五年度でございますが、昭和四十五年の食糧農産物の総合自給率はただいま七六%になっております。ただ、米は御承知のように取ってございますので、米をもし一〇〇%というように置きかえますと七五%、こういうことになっております。
  24. 木原実

    木原委員 傾向といたしましては、四十五年の数字ですけれども自給率はかなり落ちているというふうに判断してよろしゅうございますか。
  25. 中野和仁

    ○中野政府委員 お話のように落ちておりまして、ちょっといま数字を申し上げますが、昭和三十五年の場合は九〇%でございます。したがいまして、ただいま申し上げましたように、四十五年度は七六とかなり落ちております。ただ、ちょっとつけ加えさしていただきますと、たとえばバナナなどの熱帯産品とかそういうものが、食生活の高度化によって非常に入ってきておるわけでございます。それからもう一つは、畜産の振興に従いまして濃厚飼料を非常にたくさん輸入しておるというふうな関係が、この主たる原因かと思います。なお、麦が非常に減っております。これも非常に輸入をしております。そういう関係で落ちているという状況になっております。
  26. 木原実

    木原委員 確かに、一般的な経済力がついてきて、購買力も進み、それからやはり多様な食糧を消費する、そういう状況になってきて、本来わが国では生産をされないようなものまでかなり入ってくる、このようないろいろな要素があろうかと思うのですが、しかし、やはり基本的には私は、自給率が落ちていくということは憂うべきことではないか、こういう感じがするわけであります。  そこで、私どもとしましては、いま過剰米の問題でたいへん苦労をしておる状況が続いておるわけでありますけれども自給率を一これは大臣の政治的な御見解を聞きたいわけですが、米はそういう状態なんですが、基本的な食糧といいますか、そういうものの自給率は大体政策目標としてはどれくらいに置いたらいいのか、何かお考えございましょうか。
  27. 中野和仁

    ○中野政府委員 われわれのほうといたしましては、昭和五十二年に一応食糧農産物自給の見通しを持っております。それによりますと、ただいまもお話がありましたように、米はもう当然完全自給をいたします。それから小麦、大裸麦、これは非常に裏作が落ちております。これを相当やるのはやはりなかなか容易ではありません。われわれといたしましても、この小麦につきましては、一割か一割二分くらいしか自給できないのではないかと思っております。それから大裸麦は、これはビール麦はかなり生産をする必要があると思っております。ビール麦を含めまして約四割近くというふうに考えております。大豆につきましては、油のほうの大豆は日本ではほとんどとれませんので、現在自給率が四%くらいに落ちております。今度のこの生産調整の転作作物の重点項目といたしまして、大豆の自給率を一割くらいには上げられないかということを考えております。それから野菜につきましては、これはもう生鮮食料品は原則的にといいましょうか、ほぼ完全自給をいたしたいと考えております。それから果実につきましても、ミカン、リンゴその他非常に果樹振興に力を入れておりまして、五十二年といたしましてもやはり八割五分から九割以上自給をいたしたい。それから牛乳、乳製品につきましても同様でございまして、九割程度の自給。それから肉類につきましても、やはり八割から九割。鶏卵につきましては、これはもう現在でもほとんど一〇〇%自給になっております。引き続きこれはそれを目標にいたしたいというふうに考えて、五十二年の目標を一応持っております。
  28. 木原実

    木原委員 飼料についてはどうですか。いま鶏卵等の話が出ましたけれども、このえさの問題がしょっちゅう畜産の関係で問題になるわけですけれども……。
  29. 増田久

    ○増田(久)政府委員 えさの自給率考えます場合に、大家畜と中小家畜とやはり区別して見なければいかぬだろうと思っております。中小家畜につきましては、やはり濃厚飼料の依存率が非常に高い。濃厚飼料、トウモロコシ、マイロ、こういうものにつきまして、やはり日本のようなモンスーン常襲地帯、非常に風のある、それから湿気が多い、こういうようなところでは、率直に申し上げてつくることははなはだむずかしい。これは依存せざるを得ないだろうと思っております。それに対して大家畜、特に牛につきましては、これは本来が草食動物でございますから、その草を食わせるという原則は貫いていくべきである。現在、残念ながら三十数%の自給率にすぎませんけれども、将来の方向としては、まだわが国は土地資源がございますので、それを活用することによって、われわれ、これは地帯によって、北海道のような場合と、内地のような場合と、都市部のような場合と分けて考えておりますけれども、平均的に六割くらいまでに持っていきたい。現在、北海道が七割五分くらいの自給率になっておりますけれども、そういうものを含めて六割程度の自給率に持っていきたいというふうに考えております。
  30. 木原実

    木原委員 自給率を上げていくという努力はいろいろな方面政策基調になるような感じがするわけですが、これは大臣も当然お気づきのことだと思いますけれども、私どもいろいろ調べてみますと、先ほども大臣のおことばにありましたように、たとえばわれわれが自由化という名のもとに海外からいろいろな食糧を入れておるわけでございますけれども、かなりな部分が輸出国であるアメリカから入っておる。えさ等にしましても、かなりな部分がアメリカから入っておる。これはいままでのいきさつの中では当然の成り行きなんですけれども考えてみますと、わが国の必要とするものないしは政策上必要とするものと分けましょうか、そういうものを含めまして、一国にかなり食糧の依存をする、そういう側面がこの十年余りの間に急速に出てきたと思うのですね。終戦直後のいろいろな状況の中では、ある意味ではアメリカにたよる以外にはなかった、こういう側面があるわけですが、それの延長で、この高度成長の時代に自由化も進み、それからそれにつれて食糧の輸入も進んできたわけですが、いろいろな国からも入っているわけです。いるわけですけれどもしかし、かなり大きなウエートがたとえば一つの国に占められているという状態は、考えてみるとこれまた必ずしも望ましいことではないような感じがするわけです。したがいまして、自給率を高めていく、しかし他の半面で、先ほどもえさの問題が出ましたが、たとえばトウモロコシであるとか大豆であるとか、そういうような問題があるわけなんですが、こういうものはやはり将来どうしても海外にたよらざるを得ない部分の農産物だと思うのですが、それはやはり将来の政策としては、特定の国に片寄らないで、トウモロコシについては一部は当然中国から買うとか、あるいは東南アジア諸国からそれに類するものがあれば買っていくとか、分散をして輸入をする、こういうことも考えなければならない時期に来ていると思うのですが、どうでしょうか。
  31. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そのとおりでございます。御承知でしょうが、アメリカから農産物——木材も入れてですが、大豆とか小麦とか、約二十億ドルくらい輸入しております。日本から輸出しているのは一億八千万、そのくらいの輸出です。そういうように一国に非常に依存しているような形になっていては、日本の独立国としての存在から言っても、農業立場から言ってもまずいと思います。ですからやはり輸入先を分散する。そこで、東南アジア等におきましても、トウモロコシなど開発輸入といいますか、トウモロコシの増産をして、ひとつそれを日本輸入しよう、こういうような政策も一部とっておるわけでございます。ですから輸入先なども、これから中国だの多面的に考えなければなりません。もちろん価格の問題はありますが、しかし方針としては多面的に考えなければならぬと思うのです。  これも余談になりますが、この間アメリカ自由化の問題で行きましたときに、アメリカの農務長官が、日本では大豆の輸入アメリカからやめるという方針ですかと私に質問しました。これはその裏を見ると、農協のほうで、そんな自由化するなら大豆なんかアメリカから買うなというようなことが大きく新聞に出たのですね。それを向こうの新聞で見たらしくて、日本では大豆などアメリカから買わぬというような方針をとっているということを新聞で見ましたという。これは非常に逆効果的で、こっちが自由化を押えるのに間接射撃みたいな効果があったのですが、そういうこともありました。そういうことを心配するくらいに、こっちもほんとうは多国間に分散したほうが日本農政上もいいのではないか、こういうことを私は考えていますから、御指摘のとおり、私も非常に賛成の考え方でございます。
  32. 木原実

    木原委員 米のことをもう少し食糧庁長官に聞きたいのですが、過剰米の問題です。これは昨年いわゆる不作の問題があって多少緩和された、こういうような話を聞いているわけですが、見通しとしまして、過剰米の処理の問題については一段落という段階ですか。まだかなり深刻な問題が残っているというふうに判断する段階ですか。
  33. 亀長友義

    亀長政府委員 いわゆる過剰米と申しますのは四十二年から四十三年、四十四年——四十五年にも若干ございますが、そういうものがいわゆる過剰米で、四十六年以降の生産を、必要量だけは生産をするという前提で生産調整もやっておりますので、そういう観点から言えば、それ以前の米は主食用として必要がないということで過剰米処理計画ということで処分をいたしておりますが、この処分状況は大体年間二百万トン、これをえさあるいは輸出、原材料等で処分をするという計画でございまして、計画的には四十六年、昨年の年度から発足をいたし、非常に順調に進捗をいたしております。したがいまして、私ども、現在のような状況でいきますれば、これを本四十七会計年度、四十八会計年度でほとんど終了する。当初四カ年くらいの計画でございましたが、これは三カ年少しで解消するであろうというふうに考えております。  それ以後の生産の問題につきましては、問題は生産調整の大きさの問題でございますが、先ほど申し上げましたように、毎年必要量は生産をする、必要でないものは生産調整をする、かような考えでございます。  米の操作といたしましては、前年度産米を百万トン残して、それを新米にまぜて配給する。新米の中で百万トン残りますから、それを翌年度へ繰り越すという、こういう一つの安定的な操作をするという前提で、生産調整とか単年度需給ということで実施をいたしておるわけでございます。  この米穀年度、これは昨年十一月から始まりましてこの十月に終わりますが、その需給関係を見ますと、生産調整は、御承知のとおり、四十六年産米に関しましては非常に進捗がよかったわけですが、一方不作という問題がございまして、政府の全体的な計画では七百六十万トンの配給量が要るというのに対しまして、政府買い入れ、自主流通、余り米の出回りというものを含めまして六百八十五万トンというふうに計算をいたしております。したがいまして、差額の七十五万トンというものは当年度産では不足をしたということになるわけでございますが、四十五年産米の持ち越しを百万トンだけ今年度において消費をするというのが当初からの計画でございましたので、これを消費をいたしました結果、結局二十五万トンというものが本年度の四十六年産米で年度末には残る。本来百万トン残るべきものが二十五万トンしか残らなかったということになるわけでございます。そこで、ことしの秋から始まります新米穀年度、これは四十七年産米の生産関係があるわけでありますが、四十七年産米の生産は、この秋から始まる四十八米穀年度で必要な配給量よりも二十五万トンほど増産をする、それだけの生産調整を減らすという計画にいたしております。その結果、明年の端境期、すなわちこの秋から始まる新米穀年度の終わりになりますが、明年の端境期には政府の手持ちが五十万トンにふえる、持ち越し五十万トンにふえるというような計画にいたしております。生産調整を片方で進めております関係上、四十六年産米の不作だけをもってして、直ちに生産調整をやめるとか大幅に削減をするということは政策的にも好ましくないので、食糧の操作としても、必要最小限度の生産増加だけにとどめようということで、二十五万トンだけ生産調整のほうを加減をしてやるというような本年度の予算なり方針にいたしておるわけでございます。
  34. 木原実

    木原委員 値段の問題に少しこだわるようなんですけれども、先ほど来大臣の御答弁やそれから長官の御答弁の中にも、ことしの米価については、幅の問題はともかくとして、方式の問題はともかくとしまして、やはり何がしか上げていくんだ、そういう基本的な御見解があったと思うんです。私もそれに基本的に賛成だということを申し上げたのですが、ただ、農家の購入をする諸物価が上がっているとか、労賃も上がっているとか、こういう状況は、昨年も一昨年もあったわけですね。しかし、ことしともかくこの段階で何がしかやはり生産者米価を上げていこうという判断をなさった背景の中には、一つには、いまお話がありましたような需給調整ということがうまくいって、その分の負担が少なくとも昨年、一昨年に比べては軽くなったという理由があったのかどうか。あるいはまたそのほかに、つまり政策の判断の問題といいますか、選択の問題として、上げなければならない要因というものは、生産者立場考えれば昨年も一昨年もあった。しかし、ことしはともかく何がしか合理的な値上げをやりたいんだ、やるべきなんだ、こういう判断の背景にあったものは一体何なのですか。もうここまで来ると、たとえば生産意欲が非常に落ちていく可能性があるとか、あるいはまた一方では、需給のウエートのいままでかぶっていた負担が相対的に軽くなってくるという見通しがついたとか、何かそういう判断は入っているんですか、いないんですか。
  35. 亀長友義

    亀長政府委員 赤城大臣が、御自分のお考えなりで、弾力的に考えるというお話をしばしばなさっておるわけでございます。ただ現段階では、政府全体としては、まだ最終的に、いろいろ財政問題もございますので、確定的な方針というのはきまっていない。米審の時期にいずれ決定をするということでございますので、ひとつ、そういう前提で私のお答えもいたしておるということで御理解願いたいと思いますが、米価を上げなければならぬだろうという要因は、私は、生産調整関係では、いま御質問の趣旨とやや異なるように考えております。と申しますのは、なるほど生産調整が行なわれた結果、先ほど申しましたように、不作等も加わりまして、かつてよりは米の過剰ということが解消したということは事実であります。しかし、この生産調整というのは、いわば片っ方に千七百億の金を出して、休耕者にまで国の金を補助をしておる。こういうことで、同時にそれは県なり国の強力な指導、もちろん同時に農民の御理解もあると思いますが、これは単に米をつくることが不利だからということではないと思います。不利ということではなくて、やはり国のそういう方針に従って農家としてもしんぼうをしている。同時に国としても千七百億の金を出している。いわばこれは一つのつくられた姿であって、まだ自然の姿とまでは言いにくいと私は思っております。そういう観点からいたしますと、米価という問題が非常にそういう空気を刺激するようなことでありますと、これは非常にむずかしい問題になってくるというふうに思います。ただ、米価を上げなければならぬという大臣の御発想なり、そういう空気というものは、やはり過去三カ年間ほとんど据え置きと同じような状態であった、片っ方に都市の労賃は上がっていく。大臣は先ほど公平観念ということばをお使いになりましたが、むしろそういう農業と産業との関係というような観念から、そういうムードが出てくるんだろうと私は考えております。生産調整との関係では、かりに米価を弾力的に考えるにしても、やはりこれは、先ほど大臣もお触れになりましたが、効率的な農業経営、効率的な米作経営、そういうものが育つような米価水準という前提でものを考えなければならぬというふうに思っております。
  36. 木原実

    木原委員 ですから、一方では生産調整というものが進んでいて、たいへん大きな金が政策的に出されている。しかもそれとの見合いの中でいままでは据え置かれてきた。ところがことしになって——ともかく私も、大臣のあの御発言はまことに正鵠を得ていると思う。つまり政策的な判断で上げる時期に来たというふうにお考えになっていると思う。しかし、現実の政策というものは、片方ではまだ減反政策が進んでいるとか、調整を行なう要因がたくさん残っているわけですね。しかし片方では、価格の問題についてはそういう形でやろうというわけですから、これはかなり高度な政治判断といいますか、あるいは政策判断といいますか、そういうような問題だと思うのです。  そこで私が気になりますのは、何かそれ以外に、そういう一つの、価格の面で政策的に転換をしなければならない要因というものが農業の中に起こっているのかいないのかということも、私も門外漢ですからそういう心配があるわけなんです。たとえば、三年やってみて調整というものはある程度うまくいったという側面がありますけれどもしかし同時に、たとえばたいへん農民生産意欲か落ちてきたというような側面、そこへ持ってきて、出かせぎの問題等も従来ある問題ですけれども、エンプロイメントの部分も以前に比べて少なくなっていくような見通しにもなってくる、農業のほうに帰っていく人が多少ふえているとか、何かよくわかりませんけれども、総合的に、政策的に判断をしなければならないそういう要素というものがいろいろ起こっているんですか。いないんですか。そういうことは全然考慮に入れないで、つまり、何か少してこ入れをやっていかないと先行きが非常に心配になる、減反政策がきちんと完成をした、そういう段階へ来てみたら、今度は米の生産意欲が落ちちゃって、今度は大あわてで増産政策をやらなくちゃならぬような状態になる、そういう心配というものはないんですか。一時に比べて食管自体が非常にぐらついてきておりますから、農民のほうも先行きについてはいろいろな不安を覚える。そういうことになりますと、全体として米をつくっておれば安心だという側面かあったわけですけれども政策的な見通しとして、どうもこの辺である程度のてこ入れをやっておかないと、米づくり農家も、これから先、何年か先はたいへんなことになるのではないかといり、こういう御心配等はあったんですか、なかったんですか。
  37. 亀長友義

    亀長政府委員 これは私の考えになりますので、あるいは多少御異論のある点もあるかと思いますが、私は、生産調整なり減反政策との関連で、特にこの米価の問題をとかく結びつけていくというのはあまり適当じゃないんじゃないかと思います。もちろん、政府減反政策とか、あるいは農薬とか、いろいろなことで米の生産意欲が失われているということが全然ないとは私は申しませんけれども、もしそういうことがあるとすれば、むしろ政府減反政策の大きさというものをもう少し弾力的に考えていく、減反政策のほうを増減すべき問題であって、そのほうを数字はあまり再検討しないで、片方で何らかの形で米作を刺激するというのは、これはかえって政策としてもおかしいんじゃないか。減反政策のあり方というものをもう少しきめこまかく、また、その計画の数字についても、それがもし計画以上に減反が行なわれるとか、その減反計画のもとで考えられた生産計画が予想どおりいかないというのであれば、むしろ減反計画のほうを修正すべきであるというふうに思っております。米価との関係でいろいろ考えるというよりも、米の減反のほうについて、もしそういうことがあれば考え直すべきであろう。  それから米価の問題で、もちろんこれは今年度白書に出ておりますように、農業所得が一般他の所得と比べて非常に伸び率が悪い、そういういろいろな問題がありますが、その点、農業所得全般という見地から考えましても、もちろんこれは所得の中でも米価が大きな要素を占めておるということは事実でございますけれども米価だけで農村に所得政策をやるということについては、これはいろいろ問題があることは御承知のとおりでございますから、やるにしても、おのずからそこに米価にも米価なりの限界があるだろうというふうに考えております。
  38. 木原実

    木原委員 一つだけつけ加えておきましてこの問題は打ち切りたいと思うのですが、これは、いままだ米が余っている問題と取り組んでいる段階なので、おかしいのですけれども、私は米ができ過ぎてきた経過を見ておりますと、今度は米が足りなくなるといううらはらの関係で、いままでは、政策的には食管というものがある、新しい技術や農薬等が入ってきて、あらゆる天候にもたえるような全天候性的な米づくりが行なわれてきた、いろんな要因があったと思うのですが、そういう要因が急速に取り払われていくような感じがするわけです。たとえば食管もここまで来れば、われわれが幾ら反対しましても、もう半ばくずれているような状態なんですね。このままでいけば、おそらくはあと何年かで、いろいろな価格問題その他のかね合いの中で、やはり食管というものが事実上廃止される趨勢にあると思うのです。それから技術的に見ましても、従来のような農薬の使用その他についても、次第に公害等との関係で制約を受けてくるとか、そこへもってきてさまざまに農民生産意欲を減退させるような要因が加わっているわけです。  私はこの委員会で先年八郎潟に行ったのですが、私なんか泣きましたよ。行きましたときは、ちょうどあそこで最初の米ができるときだった。あそこには、明治、大正以来営々として蓄積をしてきました農林省のいわば米作技術の、あるいは技術者等の最高の夢がかけられていたと思うのです。そして最初の米がようやくとれた。この段階になったときに、おまえたちは何で米をつくっているんだ、飛行場にしたらよかろう、こういう話が出るわけですから、年配の人たちは、それはもうまことにつらかったと思う。私どももその話を聞きまして、まことに暗然としたわけです。ここにはさまざまに時代の移り変わりもあるし、それからそれに伴っての政策の変化もあった。やむを得ないと言えばそれまでですが、そういう姿を見ておりますと、私は、やはりこれからの米の変遷はまだ終わってないような感じがするわけです。ですから、いままで過剰の問題と取り組んできて、それが何とかバランスがとれたという段階になって、今度はすぐ米が足りなくなるという問題に取り組まなければならないことになるのではなかろうか、こういう心配が絶えずつきまとうわけなんです。私どもとしては、いま米が余っているなんていわれている時代にこそ、やはり長期のゆとりを持って食糧需給計画を立てる時期なんだ、こう思っているんですけれども、歴代の農林大臣は一向にそういうことはやらないで、場当たりのことばかりやっているわけです。だから食糧の問題は、毎日の問題と同時に長期のことを考えてもらわなければならない。まさにそういう長期のことを真剣に考える時期に来ているのではないか、こういう感じがするわけです。非常にむずかしいことです。しかし、それをいたしませんと、ともかく毎年毎年のことだけではどうも追っつかない状況が、もうすぐそばまで来ているような感じがするわけです。  それで、ことしの価格問題等についても、何か政策の中で微妙に考え直していかなければならない時期に来ているのではないか、こういうよけいな勘ぐりをしたわけなんです。  だから、私がこの問題でお願いをしておきたいことは、いま申し上げましたように、米については、いろいろな変遷がございました。しかし食糧というのは、特に主食というのは、基本的にはどういう状態の中でもきちんとやはり一〇〇%に近い自給率をもって、米のことならこれは問題はないんだ、まかしておけ、こういう状態というものをやはりつくるということが、私は農政の基本だと思うのです。少々豚肉が足らなくても野菜がなくてもやっていける要素があるんですが、その大本がゆるんでいますから農政の基本が立たない。農政の基本が立たないから、言ってみれば、今度の機構改革はたいへん前進的な機構改革だという側面を持っているのですけれども、それでも私どもの不安は消えないわけなんです。だから、この米価の問題については、消費者米価とのつり合いの問題財政措置等につきましていろいろな問題が出てこようかと思うのです。しかし、そのときには少なくともこれからきちんとした形で米づくりをやるんだというような考え方、それに対してはやはり国としてはそれだけの支払いはしていく、その生産意欲を絶やさないようにしてそれを堅持しながら、これから長期にわたって一定のバランスのとれた米づくりが続いていくんだ、そのための施策なんだ、こういう姿勢で臨んでもらいたいと思うのです。  それから消費者米価の問題については、私ども、これまた別な意味で非常に心配するところなんです。おそらくいまの財政当局等の考え方からすれば、かりに五%上げたんなら、それに見合うものだけはやはり政府売り渡し価格を上げてバランスをとれ、こういう経済合理主義でくると思います。しかしこれは、政策的にはそういう単純なものではないと私は考えておりまして、消費者米価についてはいろいろお考えでしょうけれども、私どももまた別個の考え方を持っておりますが、きょうは生産者米価の問題についてはそういう意見を申し上げておきたいと思うのですが、当面の局にある長官の感想を聞いて、次に移りたいと思います。
  39. 亀長友義

    亀長政府委員 この米の過剰と需給均衡という問題は、行政的にもそこの境目をどうするかという非常にむずかしい問題があります。それから、御承知のように自然相手の生産でありますから、豊凶のフレがあります。豊凶のフレということは、もちろんこれは統計的に平年作ということでそれを前提にしておるのでございますけれども、やはりそこに、その年々に応じて減反の幅というものにも若干の調整考えながら、不足という事態が起きないように配慮していくべきだろうと思います。もちろん、いまの減反政策をやめればまた過剰に返るという可能性もあるわけでございますから、これは急速にどうこういうわけにはまいりませんけれども、少なくとも国内の食糧確保に必要な調整考えるべきであるというふうに思います。ただ、それではいま生産を刺激するような米価をとるべきかどうかということについては慎重に考えなければいかぬ。しかし別途、たとえば大臣のおっしゃいましたように、社会的均衡という問題はそれとは別に存在するというふうに私も思います。  それから食管制度の問題でございますけれども、やはり食管というものは、過剰になればどうしてもその存在は問題視される。やはり、米の需給がどうなっていくかということが、食管制度の運用のしかた、食管制度の将来というものをきめることになるので、そういう意味から言っても、過剰という状態は決して好ましいものではないというように考えております。また同時に、需給均衡ができれば、やはり米は農家にとっても大事な生産物でありますし、国民にとっても重要な食糧でございますから、米について政府が全然自由にまかすというような時代は、およそ私ども考えておりません。米が、かりに昔のようなすみからすみまでの統制でなくても、少なくとも国が市場、マーケットの支配力を持っているという状態は、私どもは、形に多少の変化はあっても変わらないし、またそれは維持していきたいと思います。  消費者米価の問題については、御承知のように、ものに二つの価格がある。政府が管理をするにしても、管理費とかそういうものを国が持つ。これも同一のものが裏表二重価格というのは経済的にも好ましくないという声もあります。また同時に、逆ざやの拡大というものが財政負担にもなり、自主流通米の促進もなかなか進まないとか、逆ざやが非常にひどくなってきますと管理価格とか妙な問題も起こってまいりますので、そこら辺は慎重に検討しなければなりませんが、同時に、いまの時代でありますから、消費者行政、消費者の声というものは非常に強いし、物価に対する感受性と申しますか、そういうものも毎年非常に違ってきておりますので、その辺は単に財政という問題だけでなくて、そういう消費者の受け方というものも十分配慮していきながら検討すべき問題であると考えております。
  40. 木原実

    木原委員 だいぶ時間を過ごしましたので、米の問題はこの辺で終わりまして、あと少し流通関係で、今度新しく局ができるわけでありますけれども、この新しくできます食品流通局という構想、いろいろ資料をいただいておるわけですが、この新設をされます食品流通局で主としてやる仕事、ごく一般的に言いまして、消費者サイドに立っての行政分野だ、農林省の中におけるそういう分野だ、こういうふうに解釈をしてよろしゅうございますか。
  41. 中野和仁

    ○中野政府委員 今回、食品流通局を新設いたしましたのは、農林省としましては必ずしもそういうつもりはないわけでございますけれども生産者サイドではないかということをよくいわれております。しかしながら、最近、御承知のように、消費者問題物価問題、いろいろ起こってまいりました。その場合に農林省としての対処しかたは、たとえば野菜問題が起きますと、官房に看板を掲げまして、臨時野菜対策本部というようなものをつくり、経済局あるいは蚕糸園芸局その他の局といろいろ相談をして対策を立てる、こういうことであったわけでございます。しかしながら、今後とも国民に安定的に食糧を供給するということを、今回設置法改正のために新しく入れたわけでございます。従来からやっておりますことを明確にいたしましたのは、従来の農家に対する生産対策、価格対策と同時に、消費者対策、物価対策ということを並行して取り上げる必要がある、こういう考え方から新しく食品流通局をつくろうということにいたしたわけでございます。
  42. 木原実

    木原委員 機構のことでもう一つ伺っておきたいのですけれども農林省の中では伝統的な農地局というものが統合される、こういうことになったわけなんですが、これは構造改善局の中に入っているわけですね。農地問題は、かつては農政の中で基本的な問題の一つ、大きな問題であったわけですが、これは局がなくなったからウエートが下がったというように考えたくはないのですけれども、これは構造改善事業の対象の中に農地問題の大部分が包含されるようになった、こういうふうに解釈はしていいのですか、機構を考える場合に。
  43. 中野和仁

    ○中野政府委員 お話のとおりだと思います。日本農業の構造を改善していこうという場合に、まっ先に基盤整備が必要なわけでございます。現に今回の予算でも非常にふやしております。やはり構造改善局の基盤をつくるのが相当なウエートになると思います。  ただ、今回こういうふうにいたしましたのは、とかく従来構造改善をやっていくのは農政局が看板を掲げておりました。そのほかに畜産局、園芸局、それぞれみな構造改善をやっておるわけです。それと農地局の基盤整備とが、いわば底と上ものとがうまく一致しないということもあるわけでございます。今度はそれを両者一体になってやっていくということに考えまして、今回のような改正をいたしたわけでございます。
  44. 木原実

    木原委員 少し野菜対策のことをお伺いをしたいのですが、先般何か行管のほうから勧告が出ておりましたね、野菜の問題について。行管は私どもの委員会が対象になっているあれなものですから、私どものところでもあれを拝見したわけですが、その中でたしか、まず、国の生産計画というものが何かたいへんずれていてうまくいってないじゃないか、こういう指摘があったように思うのですが、そういう指摘を受けておりますか。
  45. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先般の行管からの勧告の中に、ただいま御指摘になりましたように、野菜の生産の見通しについての計画性が足りないのではないか、こういうことが御指摘一つとしてあったわけでございますが、私たち野菜生産を担当いたしております局といたしまして、やはり野菜というものは需要に即した生産が必要であるということ、これが野菜の価格安定の上に一番大事であるというふうに理解しておる次第でございます。したがいまして、農林省の全体の計画の中の農産物需給の長期見通しというものを受けまして、また稲作転換対策事業の一環で農業の地域分担ということも受けまして、それに基づきまして、われわれとしましては野菜の全体の計画を一応考えておりますが、大体、この四、五年間の情勢からいたしますと、野菜は千五百万トンの総需要量があるということで、これは世界的にも相当高水準の需要というふうに理解しておりまして、これに基づきまして、野菜の指定生産地制度というものと指定消費地域制度というものをからみ合わせまして、大消費地を指定消費地域にいたしまして、それに基づきまして、それの結びつけたような形で指定産地制度を野菜の種類ごとにきめておる次第であります。その指定産地から当該指定消費地域への出荷目標といたしまして、指定産地制度ができ上がる過程で大体六、七割の指定出荷量の確保をするという形で生産の指導をしている次第でございます。  この指定産地制度を指定して、それから指定産地として一応りっぱにでき上がりますまでに計画段階と事業実施段階がありまして、おおむね五年ぐらいかかって、従来野菜をつくってなかったような地帯に、キャベツなりハクサイなり大根なりを重点的につくってもらう。そのための補助金をいたしまして出荷量を確保するようにいたしておる次第でございます。  そういう形で年々指定産地もふやしまして、計画に基づきましてやっているわけでございますが、御存じのように、野菜の場合に往々にして二つ、三つそれにうまく合わない場合がある。  一つは、やはり天候に大きく左右されまして、せっかく目標生産に従いまして作付いたしておりましたものが、予想どおりの生産ができなかったというような場合が非常に暴騰の大きな原因になりますし、また予想外にでき過ぎますと、昨年のキャベツにありましたように大暴落する。この辺を、価格安定とか野菜の価格の不足払い制度を強化することによって、農家に不当な被害を与えないように、また消費者のほうにも不当に価格変動がしないように、防止するよう努力している次第でございます。さらに、第二点として、これが前々から各種委員会で御指摘を受けている点でございますが、指定産地制度を設けまして、せっかく五年ぐらいかかりまして産地づくりをしておるわけでございますが、従来、野菜というのは、都市近郊が野菜の供給基地というふうにいわれておりましたし、私たちもそういうふうに理解して生産指導をしてきたわけでありますが、都市化の波が急速に最近近郊地帯に及びまして、指定産地制度をつくったけれども、行ってみますと当該指定産地が住宅団地になってしまっておりまして、この辺の改変といいますか、指定産地を取り消すとともに、われわれといたしましては、道路網の整備あるいは交通機関の整備と相まちまして、今後は極力、近郊地帯よりもむしろ中距離圏あるいは長距離圏まで野菜の指定産地制度を強化してまいりたい。たとえば、総理もたびたび予算委員会でもお話しになりましたが、宮崎等からカーフェリーの整備等がございますので、九州地区に今後大型化の野菜産地を育成してまいりたい。それから北海道あるいは東北方面にも、従来、野菜というものは東北、北海道ではほとんど供給されてなかったのでございますが、今後、指定産地として大型化し、かつ機械化できるような野菜地帯を設定いたしまして、供給の安定に資してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  46. 木原実

    木原委員 野菜の問題は、需給バランスがとれているときはあまり問題がないわけですが、しばしば、いろんな季節的なことやあるいは災害等のことがあって狂うわけですが、しかも、われわれを含めて消費者、特に日本人の場合は、野菜というのは昔から大体ただだという観念がございまして、くみ取りに来る農家のおやじさんが持ってきてくれるとか、裏のほうにちょっとつまむものをつくるというような観念がある。ただ、これがたいへん貴重なものだということを、ある意味では高い代償を払って消費者のほうは教育されたと思うのです。しかし、その反面やはり、指定産地の問題が出ましたけれども、もちろん完全な統制ではありませんから、結局、価格によって相当流れる要素もあると思います。それから近郊の蔬菜地がつぶされるというのは、これは一般的な趨勢としてある。こういうようなことですから、むずかしい要因はわかるのですけれどもしかし統計的には、おのずからある種の必要とする野菜についての必要量というものは把握できるはずですし、それに対して需給の計画というものが何かもう少し緻密に立てられて、生産者のほうからしても、これをつくっておれば安心だ。米のようなわけにはいきませんけれども、うちの畑でこれだけのものをつくっておれば確実にこれくらいの見当の値段ではけるのだ、こういうことでやはり生産者に安心をしてつくらせる、安心をして出荷をさせる。そうすると、需給バランスがそこからおのずからつくられてくるのではないかと思うのです。ところが、何かその辺にそごがあるものだから、ややもすると値動きにつれていろいろなところに流れていく。必ずしも考えたワクどおりにいかない、こういう計画上のそごがそういうところから指摘をされるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。もう少しきちんとした指導の体制というものはとれないでしょうか。あるいはまたそれを促進をするような——あとで触れますけれども、市場の価格関係その他もあるでしょう。何か、そういうこととも関連しながら、もう少し計画を緻密にして生産と消費をつなぐ指導の体制をつくる、こういうことはできないものでしょうか。
  47. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先ほど御答弁申し上げました中に、私たちといたしまして、たとえばことしの三月末に、昭和五十一年度におきます指定消費地域における野菜の需要の見通しについてということで、それぞれの指定野菜につきまして、それぞれの大都市の野菜の見通しをつくったわけでございます。たとえば京浜地区を例にとりますと、大体、五十一年には年間といたしまして二十九万トン前後のキャベツが必要であろう。現在の需要からしますと、約一八%くらいの需要増になるということで、これに基づきまして、このうち約七割前後は指定産地から供給すべきものということで、これは四月—六月、七月—十月、十一月—三月というふうに三期に分けまして、それぞれの期別の指定産地を指定いたしまして、御存じと思いますが、野菜につきましては一産地が年間供給するのではございませんで、いわゆる作型別と申しますか、春は春、夏は夏、冬は冬、それぞれ産地が違いますので、それぞれの産地を指定いたしまして育成していくという形になっているわけでございます。  それでさらに指定産地を指定していくわけでございますが、指定産地の計画を出します場合に、当該指定産地でできる野菜の少なくとも半分以上、大体六割前後は共同出荷体制で当該目標とする指定消費地に出してもらう、残りの部分は地場で食べられるなり他の消費地域へ出してもいいけれども、少なくとも六割前後は目標として出してもらわなければ困るということで、当該指定産地を育成していく。そういう形で大型化し、かつ、生産だけでなく出荷につきましても、選果場等、そういう施設を整備いたしまして、産地と指定都市との間の結びつきを逐次強化していくという形で指導しているわけでございます。  さらに、それは従来の指導でございましたが、特に、従来、夏野菜につきましては、あまり大暴騰がなくて、むしろ暴落ぎみであったわけでありますが、問題になりますのは、冬野菜の特に大根、ハクサイ、キャベツあるいはタマネギ、こういった野菜につきまして、従来から、ともすれば暴騰の機会こそあれ、あまり暴落はない。暴騰の際に消費者に非常に御迷惑をかけるということで、これにつきまして、われわれといたしましては、従来のような単なる指導行政だけではだめだということで、こういった野菜につきましては、夏の間に一種の予約栽培といいますか、計画栽培にほぼ近いような形で、農家との間にいわゆる出荷の予約について指導をいたしまして、予約いたしまして、どんな場合にも必ず目標とする指定消費地域に出荷するという約束のもとにつくられました野菜につきましては、約三割前後の予約概算金をまず払う。それにつきましてさらに金利を政府で負担する。さらにその農家につきましては、基準価格の約五%前後の一種の生産奨励金的な、出荷奨励金とわれわれは言っておりますが、そういった五%前後の手付金のようなものを出しまして、それで農家と結びつきを強化する。さらに、それはどんなに値が高いときでも必ず出してもらうという条件で——政府側でそういう財政支出をいたします関係もありまして、かりに暴落した場合にも考えるかわりに、逆に相当価格補てんを高く行なうということで、その補てん率並びに国庫負担割合等も大幅に引き上げまして、今後冬野菜の確保に大いに努力してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  48. 木原実

    木原委員 これは行管がたしか指摘をしておったと思うのですけれども、それでもやはり横流れというものはある程度やむを得ないということですね。
  49. 荒勝巖

    荒勝政府委員 横流れということについて、昨年ハクサイが大暴騰いたしましたときに横流れの問題が非常に議論されたわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、われわれといたしまして一〇〇%指定産地から指定消費地域へ出してもらう条件はつけてないわけでございまして、元来自由商品でございますので、あまり条件はつけないのでありますが、法律に基づいて補助金を交付しているというたてまえからいたしまして、先ほど来申し上げておりますように、当該産地で補助条件のときにつけております。目的とする消費地域には大体出荷のうちの六割は出してもらいたいという指導方針を固めておりまして、残りは地場で食べられるなり、従来からの取引の消費地域へ残りの四割りは出されてもそれはやむを得ないということでございますが、往々にしてその残りの四割の部分がいかにも横流しというふうに指摘されるわけでございます。都市の野菜の数量の確保が非常にうまくいかないときには、その四割の部分について相当非難が集中される、こういうふうに理解している次第でございます。
  50. 木原実

    木原委員 それとうらはらの関係になるわけですが、でき過ぎた場合ですね。でき過ぎてしまってつぶしたというような新聞報道が間々あるわけですが、あれだけを新聞等で見ておりますと、まことにもったいないことをして、こういう状態になるわけです。確かに生産者のほうにしてみれば、経済的に一つのメリットもないわけですから、つぶしたほうがかえって安上がりだ、こういうことになるわけですが、それへの対策というものはないのですか。そういう際の特別な買い上げであるとか、あるいは備蓄のために回すとか、何かの措置はないものですか。
  51. 荒勝巖

    荒勝政府委員 従来、この四十六年度予算のときに初めて、私たちの局といたしまして、野菜の廃棄についてということで多少の予算をいただいたということが非常に大きく報道されまして、いろいろ議論を生んだわけでありますが、この昨年来の実際の現象といたしまして、過去一年間ほどは野菜の暴落の機会のほうが非常に多かったということで、昨年の七、八月ごろのキャベツあるいは春先の一部の野菜につきましては廃棄というふうな話がしばしば出ているわけでございますが、結果的には廃棄に対する国からの助成金を出すほどの要件を整えるに至りませんで、政府側といたしまして、廃棄に対しまして助成をしたといういきさつは全然ないわけでございます。  ただいま御指摘がございましたように、野菜の廃棄ということにつきまして、いかにでき過ぎたときといえども、どうも政府が補助まで出して廃棄を奨励するということは国民感情として何となくもったいないというふうな御意見等が、昨年以来のいろいろな議論の過程ではっきりいたしまして、その結果、私たちのほうでは、予算につきまして廃棄というふうな考え方はいま直ちには持っておりませんで、むしろ、ただいま御指摘がありましたように、ことしの予算におきましては、何らかの形で野菜につきましては隔離というかっこうで何かいたしたらどうかという考え方を持っているわけでございます。その中身につきましては、まず第一番目に、慈善団体等あるいは養老院とか、そういったものに無償で廃棄するに必要な何か助成事業。あるいはその他、往々にして野菜の種類によりましては加工用といいますか、つけもの等に非常に向くものもあるということで、そういったものは、何らかの形で指導して加工用に優先的に回していくというふうな形で、隔離事業を行なったらどうかというふうに考えておりまして、どうにもこうにも、かりに最後の手でも打つときがないときはまたそういうことも考えられるわけでありますが、やはり廃棄という行為が行なわれる前にあらゆる努力を尽くしてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  52. 木原実

    木原委員 市場の問題について、少し関連をして伺っておきたいのです。いま野菜の問題が出ましたが、これを受ける側の市場の状態なんですが、法律が改正になりまして新法が出て、それでやっているわけなんですが、中央卸売り市場それから地方で開設する市場、これは一定の基準はあるのですが、たとえば数についての方針みたいなものは、これは農林省としては規制できないわけなんですか。最近、たとえば東京の近郊都市の中で、昔からある小さなさしかけの市場なんというものが統合される。統合されるということに名をかりて、たいへん大きな設備を持つ市場がかなり数多くできつつあるように見受けられるのですが、中央卸売り市場の問題の前に、自治体等が参画をして、たいへんな予算を使って、しかも中途はんぱな市場をたくさんつくっているような感じがするのですが、設置の基準はあるのでしょうが、数については何か地域との関連考え方があるのですか。
  53. 小暮光美

    ○小暮政府委員 御指摘のように、国の法律が中央卸売り市場だけを指導の対象といたしまして、地方市場については都道府県知事の自主的な指導にまかされておったというのがこれまでの実態でございますので、現実にさまざまな形の地方市場が現在できておる実態は私どもも率直に認めざるを得ないと思います。これを新法の施行と同時に、あるものはだめだ、こう申し上げるわけにはまいらない。そこで新法で地方卸売り市場も法律の指導の対象にいたしました際に、私どもといたしましては、当然関係の都道府県知事を通じて御指導申し上げるわけでございます。一定の取り扱い規模、これも経営の健全性という角度からも必要でございましょうし、あるいは住民に対して供給いたします立場からも、消費の大型化ということもございます。ある程度の規模のものにこれを逐次結集させていきたいという方針は出しております。ただ、現に毎日毎日生産者消費者の中に立って取引いたしておりますものを、一定の面積以下のものは、これをたとえば認めないと申しますか、閉鎖させるという措置はできません。誘導助長いたしながらある規模のものにしていきたい。その際に、具体的に現在ございます市場を幾つに減らすという数での指導は実は申しておりません。ただ国が中央卸売り市場についての整備の目標を出しまして、これを受けまして現在各都道府県知事が、中央市場との関連で県内の地方市場の整備目標を立てる作業をいたしております。これらの中で、逐次地域ごとに実際に現実の目標を掲げて、これに向かって指導していくということにいたしたいと考えております。
  54. 木原実

    木原委員 これはそうだろうと思うのです。私も広く調査をしたわけではないのですが、たとえば私どもの手近なところで見ておりますと、千葉県の船橋で数年前にたいへんな金を使いましてつくった。いま魚が入ったが、片肺飛行でございまして、たいへんな赤字なんです。自治体が四十何億もかけてりっぱなものをつくりました。ところがこれは閑散市場です。ともかく身分不相当なものをつくっちゃってそういう状態になっておる。ところが、松戸には東京の資本なんかが行きましてできた、柏にもできた、そうしたらたとえば市川なんかは、松戸と船橋にできておれのところにできないのはおかしいじゃないかといって、これまた膨大な金を使って大きな施設をつくった。それは、つくるのはいいですけれども、みんなしろうとですから、これは運営の見通しがあまりない。従来の零細な統合される人たちは、施設の中に入るわけですからいいのですが、どうも何かけじめがつかないような感じがするわけです。おっしゃるように、知事の指導がありまして、県の中にはちゃんとした審議会等もあっていろいろやるわけですけれどもしかしそれは、地域の政治的な関係とかいろいろなこともあるのでしょう。私どもは見ておりまして、今度はどうも市場の過剰競争が起こっているような感じがする。そうすると、買参人の問題だとか、あるいは取り合いも起こるし、さまざまな弊害が出ております。  第一、こういうふうに運営して、はたしてうまくいくのかどうかという懸念が絶えずつきまとうわけなんです。そういうことについては、これは県の段階では、何か全体的な方針は、国の基準に合っておれば大体つくってもいいんだというようなことで押し切られている面があるわけなんです。そうなりますと、せっかく新しい法ができ、全体的に市場関係の整備は進めていくという意欲は出ているのですが、実態は、こういうふうに、特に人口急増地帯の中では、ある程度の商売になるということでそういうものができていくと、これまた統合とか、何か国が手をかさなければならない条件が出てくるんではないだろうか、こういうことがあると思うのです。ですから、市場をつくる場合の基準は示されておるわけですが、しかし、まず地域との関連性。中央卸売り市場との関連の問題がございましたけれども、やはり地域との関係あるいは数の問題、そういうものについてもある程度の考え方は指導方針として随時お出しになっていただくほうがいいんではなかろうか。私はこういう感じがするのですが、どうですか。
  55. 小暮光美

    ○小暮政府委員 御指摘の点、私どももそのとおり痛感いたしております。これまで旧法のもとではどこまでも申請主義と申しますか、地方自治体が一定の規模で計画をする。一定の人口規模等がございまして、その当時人口十五万以上という都市が、いわば市の発議で市場の計画をいたしますれば、これを適切な市場をつくる方向に指導するということが旧法のたてまえでございました。実は隣の町あるいはその地方全体として見て、優先順位がどうだろうとか、つくるとすれば、あとからもう少し大きな市場が近くにできるというような問題があり得る。地域全体の市場の配置ということは、もちろん指導上は私どもは申しますけれども、制度的にそういう形になっていなかったというのが旧法の考えでございます。  新法では、そこのところに着目いたしまして、整備基本方針を定めますと同時に、五カ年の整備計画を国がもうすでに出しまして、中央市場の配置の当面の目標は全部市の名前まで明示いたしておるわけでございます。その明示されております中央市場の建設予定地、そういうものとの関連考えながら中央市場の整備をいたしたい、かように考えておりますので、今後御指摘のようなそごのないように市場の建設の指導をいたしたいと考えております。  なお、具体的な名前で御指摘のございました千葉県の市場につきましては、実は市場建設の当時に、これは率直な感じを申し上げますので一応お聞き取りいただきたいと思いますが、地方自治体では、これは一つのけっこうな話なんですけれども、地元での先陣争いがあるわけであります。できるだけ早く御自分の代につくりたいというような御希望の市長というものもおられます。市場をつくること自身はけっこうなことでございまするけれども、そういう面にややあせりが出てくる。しかし市場の建設は、土地を購入して建物を建てる仕事が実は二割くらいだ、残りの八割は業者をどのように指導して統合していい形の会社にしてそこに入れるか、これが市場建設の仕事の八割だということを常日ごろ申し上げているわけでございます。こういった点について苦い経験が過去にあったことを私ども率直に認めまして、今後の指導の場合の重要な参考にいたしたいというように考えております。
  56. 木原実

    木原委員 中央卸売り市場の問題なんですが、一番大事な問題は、荷さばきの問題もありますけれども、やはり価格形成だと思うのです。せり、これは御承知のように、野菜の値段の問題であるとか魚の値段の問題であるとかということは、国民生活にほんとうに直結した問題なんですが、ともかく昔ながらのこういうことでやられておる。たいへん特殊な値つけの方法だと思うのです。それからまた、これの改善をやろうということで、機械を入れたり何かいろんな方法もとられておるようですが、事実上それは成功していないでああいう形のものがやられている。これは、それでやられておるわけですからいいと思うのですが、見ておりまして気になりますことは、たとえば大手の荷受けで禄をはんでいるせり人がやっていると誘導価格が出るんじゃないかという心配があるわけなんです。昔ながらのせりに参加できるような人たちが伝来の方法でやっているときは、素朴でそれなりの正直な価格が出たと思うのです。ところが、かなり大手の関係の職員の身分だと思うのですが、そういう人たちが今度はせり人として出ていってやっているということになると、これはかなり資本力もあり、市場のかなりの部分を動かすだけの実力を持ったような企業の身分を持った人たちなんですが、それが今度は身分をかえてせり人で出ているということになると、何かそういうところに引っぱられていく要素が出てくるような感じがするわけです。せり人の人たちは、むしろそういう意味では公務員的な要素を持たしていく必要があるのではなかろうか。やはり自分のところで落として売りさばくわけですから、それは自分の判断でやるという前提ですけれどもしかし見ておりますと、そこに不自然な価格形成が行なわれる要因が入る余地がやはり多分に残されている、こういう感じがするわけです。その辺についての規制と言うとあれですが、何か指導の方法というものは考えられないものでしょうか。
  57. 小暮光美

    ○小暮政府委員 せり人の身分の問題につきましては、新法制定の際かなり議論が行なわれました。検討の経過では他国の例等もいろいろ議論いたしまして、オークションカンパニーのようなものをつくって全然別の組織の身分にしたらどうだというような議論も、議論の経過にはございました。ただ、これらの点は取引の実態等から見まして、たとえばアメリカのように非常にのっ広い国で、州を越えて州間の取引が行なわれるような際に、専門のせり会社があるといったようなものと、日本のような地域の生鮮食料品のせりというようなものとはやはり違いますので、これはせり会社といったようなものを独立させることはかえって中間経費を増高させるのではないかということで、実はその方向は放棄いたしました。  現在ございます荷受け会社のせり人という形はこれを踏襲したわけでございますが、ただ荷受け会社のせり人につきましては、市場においての登録制度というものを新法では設けました。市場に登録いたしまして、せり人としての行動に万一間違いがございました場合に登録を取り消すという手段を用意いたしますと同時に、せり人の資質の向上ということでこれに研修等を加えるということを現在考えております。  なお、せりの本質からいたしまして、実はせり人はいまの制度下では、荷主のかわりにできるだけ高く売ってあげましょうという性格がある。そのことが、大企業などがうしろにいます場合に、価格形成の場合に間々力関係がそこに動くのではないかという疑惑が出てくる。しかし、一般論といたしましては、御存じのように、なまもので非常にリスクの多いものを目の前に置いての取引でございます。遠隔地にいて自分の荷を売れない生産者のためにできるだけ高く売ってあげるという機能として発達したということがせり人の本質でございます。  これの弊害を除去するもう一つ考え方としまして、市場の中でせり取引があまり閉鎖的であってはいけない。そこで、大口の需要者、きちんとした小売り人、あるいはスーパーマーケット、こういったようなものが、あまり混雑しては困りますが、物的な施設さえ許せば、できるだけ大ぜい市場の中に入ってきてせりに参加する。これは日ごろきわめて少数の市場の中の業者だけでせりをやります場合よりも、せりの本来の公開性、無作為性、そういうものの性格が強くなるわけでございますから、そういう市場のあり方等についても別途考えてまいりたいと思っております。
  58. 木原実

    木原委員 そうだろうと思うのですが、いろいろな意味で、おそらく市場の中の妥協の産物みたいな形で議論があって、いまのような形に落ちついているんだろうと思うのです。しかし、もう少しせり人というものについての——これは消費者のサイドから見ますと、いま荷主の利益代表というような御発言がございましたけれども、今度は消費者のサイドから見ますと、これは全然預けたようなかっこうになっておりますから、その要素をやはり入れてやるということを考えると、少なくともせり人の資格条件なり何なりについては、もう少しやはり公平な基準を立てて、ともかくどのサイドから見ても公平で安心してまかされるというものでないと、いろいろな要因がやはり入ってくるんです。スーパーというお話もございましたけれども、スーパーも、一般論としては私はよろしいと思うのですけれどもしかしスーパーはまた、独自の経済力と機能を持った背景があるわけです。そういうスーパーの参加ということを考える前に、せり人である要件というものの公平性を保つ条件というものを考えていく必要があるのではないでしょうかね。その辺、どうも私どもは割り切れない。しかも市場の中で、特に、消費者にとっても、生産者にとっても一番大事な価格形成が、まことに不明朗とは申し上げませんけれども、伝来の方式プラス何かが加わってやられている。あっけにとられるような場面もあるわけですけれども、それについて、もう少しいろいろな要件を公平に具備して、少なくとも価格形成についてはどこからも指をさされないで、需給の法則とバランスをきちんとにらんで値をつける、こういう立場のあれはできないものですかね。どうでしょう。
  59. 小暮光美

    ○小暮政府委員 先ほど御説明しましたように、せり人の登録制というものを新法のもとでつくりまして、これにつきましては別途農林省令で「せり人の登録についての基準」というものを明らかにいたしております。「申請に係るせり人が」、たとえば「破産者で復権を得ないもの」あるいは「禁錮以上の刑に処せられた者」といった当然の要件のほかに、「仲卸業者若しくは売買参加者又はこれらの者の役員若しくは使用者人である者」、これは双方代理人という形になりますから、そういう者はいけない。さらに「せりを遂行するのに必要な経験又は能力を有していない者」はだめだ。これは規定としてはまだ抽象的でございますが、これは今後の指導といたしまして、当然この条項との関連で、開設者が行なう試験といったようなものを充実していきたいというように考えております。
  60. 木原実

    木原委員 時間をたいへんとりましたので、そろそろ最後の問題に移りたいと思います。  ひとつ最後に、これは全然また場面が違いまして、林野関係のことを少し伺っておきたいと思います。  林野庁の対象になっている仕事の中でも、森林は何かたいへん転機に来ているんではなかろうか、経営としてもあるいは山の状態としても。何か危機とまでは申しませんけれども一つのたいへん転換を要する時期に来ているんではないのか、こういう感じがするわけであります。  そこで最初に一つ伺っておきたいことは、昨年あたり少しやかましくなっておりました例の農薬の散布ですね。これはいまでもやっているのでございますか。
  61. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 先生ただいま御質問の薬剤でございますが、林野庁で使用しておりますのは、御承知のように、造林事業というのは非常に季節的な事業でございまして、木を植える、それから植えたあとの草を刈る、こういう時期に非常にたくさんの労働力を必要とするわけでございます。それが最近非常に労働力が払底しておるということもございまして、特に、除草の際と、あるいは植栽をします場合の地ごしらえのときと、大体二つの時期がございますが、その際に除草剤を使っておる。ただいまも使っております。
  62. 木原実

    木原委員 除草剤が中心なんでしょうが、最近御承知のように、いろいろな角度から公害の問題、除草剤等につきましてもいろいろな問題が出てまいっておる状態なんですけれども、その問題については、つまり草を枯らすのはいいのですけれども、それに伴って人畜に被害を与えるとか、あるいはそれ自体によって何か森林に長い目で見て荒廃の要因になるとか、そういう要素についてはどういうふうにお考えですか。いま主としてお使いになっている薬剤、除草剤というのはどういうものなんですか。
  63. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 昨年までは実はおもに三種類ございまして、BHC、それから二四五丁、そのほかに塩素酸ソーダ、この三種類ございますが、昨年、BHCと二四五丁は、残留性の問題であるとか、あるいは催奇性の問題とかが問題になりまして、現在使用を中止しております。現在使っておりますのは塩素酸ソーダでございまして、分解しますれば食塩と同じような性質があるものでございますが、これを地ごしらえのときと除草の際に使っておりますけれども、全体の地ごしらえ、除草の面積の中の比率は、現在はまだ労力のあるところは、かまとか手でやっておりますので、全体一割ぐらいの使用ということでございます。
  64. 木原実

    木原委員 お使いになる薬剤の安全性の問題、つまり人畜に被害を与えないか、あるいは長い目で見て森林そのものに何か被害を与えないか、この問題については、私も、何かおたくのほうでお出しになりました、だいじょうぶだという資料等も拝見したことがございます。しかし、そのことによって、たとえばそれを使用した人が何かからだに異常を感じた、こういうふうな幾つかの報告や記録も同時に見ました。ところがこの安全性の問題については、これは学者の中でもいつも意見が分かれるわけですね。そうしますと、私どもとしては、なかなかこの因果関係を、特にしろうとの立場で追及することが非常に困難です。おそらく政府のほうとしても、専門家からさまざまな意見を聴取したり実験をして、だいじょうぶだというデータに基づいてやっておられるに違いない。ところがそれに対してはまた当然反論がある。そうしてまた事実問題として、これは因果関係ははっきりしませんけれども、そのことによって人体にいろいろ影響を受けたという人たちがいる。こういうような状態だと思うのです。これはほかのケースにも間々あることなんです。そういう場合に、これは私どもは、まあそれは当局もそうですけれども、やはりそういうことをやるということについての政策の選択を迫られるわけなんです。  だから、私どもがここで、そういうものをまいてほんとうにだいじょうぶかという議論を幾ら詰めましても、おそらく水かけ論になるだろうと思うのです。しかし、少なくとも疑いがあるような感じはいたします。ですから、先ほど労力の限界もあるんだ、こういうことでお使いになるということなんですが、しかしことさらに、まあ公害の問題で、いままで私たちがわからなかったような要素が次々と出てきている。安全性の問題についても、科学それ自体が進んでいくわけですから、きのうまでは何の感じもなかったのだけれども、それがたいへん悪い影響を持つものだというものもわれわれの前に出てくるような、そういう状態が続いておるわけですね。ですから私は、やはり除草剤の散布については、限定された地域で、そうして限られた労力をカバ一するために使っているのだということなんですが、何かこれは経営を維持していく、あるいは労力を代行していくといいますか、カバーしていくという観点からだけではなくて、あらためてもう一ぺん公害という面から考えていただいて、少なくともこの疑わしい問題がある間は、これは草はやしておいていいというわけではありませんけれども、何かやはり別途の方法考える必要があるのではないか。おそらく何年か前にこういうことをやろうというふうに御判断なさった時期からすれば、その後、学者の人たちの研究もそれなりに進んだ面もあるでしょうし、あるいはまたその後にあらわれてきたいろいろな状態もあると思うのですね。だから、これは大事な資源を守っていく、あるいはそれに関連をする人たちの健康や安全を守っていく、こういう観点を立てて検討をする、こういう余地はございませんか。
  65. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 ただいま先生御指摘のとおりでございまして、被害につきましては二つの面から実は考えているわけでございます。  一つは、実際に薬剤を散布します作業員が、その薬がかかりましてちょっとけがをしたというふうな過去の実例もございます。したがいまして、これにつきましては防護衣を必ずつける、あるいは手袋をするとか、一応人体を保護するというふうなことを指導してまいっておるわけでございます。これは特に衣類につきました場合に、直接はだではなく衣類についた場合に注意をするようにしております。  それから一方、今度は薬剤を散布しました場所の問題でございますが、先生いま御指摘のように、何でもかんでも労力を省くために全面的にやるというふうには考えておりません。先ほど話がありましたように、労力が非常に払底している場所、どうしてもここは人手では不可能だというところに限定しまして使っております。特に、それをまきます場合にも、農地であるとか、あるいは沢水のあるところとか、池のあるところとか、あるいは農家のあるところとか、そのほかまた、レクリエーションのためにだいぶ最近は山の中に人が入ってきますが、そういう場所だとか、あるいは山菜をとる場所であるとか、あるいはまた鳥獣保護員のいるところとか、そういういろいろな場所につきましてはこれをまかない、まいちゃいけないというふうに基準をつくって、それを指導して、できるだけそういう御迷惑はかけないように、御心配のないようにしているわけであります。  なお、私たちも医者の専門家でございませんので、この点についても非常に懸念もありますので、いろいろと公害の心配の全然ないような薬剤の開発、これにつきましても関係機関に調査、研究を依頼しておりますし、また厚生省なり環境庁とも連絡をとりまして、実は登録をされた農薬ではございませんけれども、ただいま申し上げた基準に従ってやった場合には、だいじょうぶであるとは思っておりますが、なお厚生省のほうの試験もお願いしまして、環境庁とも連絡をして、さようなことで万全を期しているわけでございます。これで絶対だいじょうぶだというふうなことでなしに、今後も詰めてそういう御迷惑をかけないように指導し、また試験研究も推進してまいりたい、かように考えております。
  66. 木原実

    木原委員 これは私も、環境庁長官の肩を持つわけではありませんけれども、いま御答弁にもありましたように、ともかく、たとえば山菜がとれるようなところにはまかない、こういうことで地域も限定されておるということになりますと、ことばじりをとらえるようで恐縮でありますけれども、やはりこれは安全だといいながらも、不測の毒性があるということは、お認めになっておるような印象を受けるわけなんです。ですから私は、これは非常にむずかしい問題で、たとえばたんぼにまく農薬等が当初出回り始めたときは、われわれは全然この農薬の被害というものを現在のように深刻には受けとめなかったと思うのですね。しかしその後の経過の中で、これがたいへんないろいろな意味で大きな被害を及ぼしているという状態が出てきている。ましてや森林については、民有林については別にいたしまして、国でやっている仕事ですから、それならば私は、やはり労働力の問題その他の問題があるということは、いわば経営的な立場で、いろいろ考えなくちゃならぬことがあるのはよくわかりますけれどもしかし少なくとも国の事業である以上は、多少でも疑わしいということがあれば、何かやはり他の方法考えるべきではないか、こういう感じがするわけなんです。そういう考えはちょっと成り立ちがたいような状態ですか、どうですか、方針としましては。
  67. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 たとえばマツクイムシが最近問題になっておりまして、特に関西、九州方面では海岸地帯の松が枯れた。最近は宮島、そういったものにつきましても、去年までは先ほどお話ししました薬剤を使っておったわけでありますけれども、これにかわる薬ができたということで、かわりの薬を使い出しておるわけであります。ただこれは、非常に効果が少ないという問題もございますが、それと同じようなことでございまして、いまのところでは、繰り返すようでございますけれども、塩素酸ソーダにつきましては、こちらできめた使用基準に従って厳正に使用するのであれば、先ほど申し上げた場所を除外していく限り心配ないというふうな厚生省の御見解もいただておるわけでございます。しかし、なおもっと、皮膚に衣類と一緒になって、場合によっては嚥下するようなおそれのある心配もございますから、そういう心配のないような薬をさらに開発していくという点に重点を置いて、今後の問題として検討してまいりたい、かように思います。
  68. 木原実

    木原委員 これはしかし、どう言ったらいいのですか、それじゃ、それを何年かおまきになりまして、たとえば被害が出たというようなことについては、追跡調査をなさっていらっしゃいますか。
  69. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 過去数年間にわたりまして、ずっとどういう被害が出たかということについて調査をいたしております。先ほどお話ししました衣類の問題でございますが、ちょっとやけどした場合があるものですから、それ以後、注意しまして、最近ほとんど出ておりません。たしか今年はまだゼロでございます。
  70. 木原実

    木原委員 先ほども申し上げましたように、この議論を、何か私ども借りもののお話で、安全か安全でないかということをこういう場で話していても、なかなかこれは詰められないわけなんです。だから、少なくとも被害が出たという何件かの事例でもあれば、やり方の選択の問題として慎重に対処すべきではないか、こういう感じがするわけです。そこで、幾つかの行政的な措置として、現在、名前をおあげになりました塩素酸ソーダ、そういうような薬品を含めまして、農薬は登録していますね。だから登録しておる農薬等の登録のあり方ですね。いままでの一定の基準にかなったものが登録されるわけでしょう。その基準をさらにもう少し科学的にきびしくしていくとかなんとか、そういうような農薬それ自体についてのもう一ぺん突っ込んだ何か措置をとるとか、つまり安全性の確認の度を高めるわけですね。そういう措置はとられますか。つまり農薬が登録されるわけですが、その登録するには一定の基準に合格したものが登録されるというわけでしょう。
  71. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 登録の問題につきましては、実は農林省の中でも林野庁ではございませんで、農政局の植防課でやっておるわけでございますので、そちらのほうと十分連絡をとってやります。
  72. 木原実

    木原委員 私は長官が、ともかく安全を確認して最小限度のことでやるんだ、こういうようなお話なものですから、それならば、国の事業としてやるわけですから、繰り返し使う薬剤についての安全度をきびしくしていく。かりに基準があるのなら、その基準というものを絶えず再検討して、確認の上に確認をしていくような、そういうことでやってもらいたいということなんです。  それだけではございませんで、毒性の検査その他につきましても範囲を広げるとか、いろいろなやり方があると思います。つまり、ともかく詰めて詰めてだいじょうぶだという、そういうことをやるというならやってもらいたいと思うんです。そんなことを言っちゃあれでしょうけれども、いま厚生省やあるいは環境庁等が、かりにだいじょうぶだと言っておりましても、はたしてそれが、じゃ三年たってだいじょうぶだったかといわれると、その保障が何かないような感じがするんです。私ども自身、科学そのものについて、科学は進歩していくものですから、いまの科学を一〇〇%全部信用してだいじょうぶだと言えないような状況を随所に見ておるわけですね。ましてや、だんだん乏しくなっていくような森林を大事にしていく。ましてや、人畜に不測の被害を与えるというような要因がかりに何%でもあるとすれば、それだけの配慮をして対処しなければならぬのではないか、そういういわば安全の確認のための行政的な努力をしてもらいたい、こういうことなんです。お願いいたします。
  73. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまのお話農政局の所管でございますので、便宜私から申し上げたいと思います。  御指摘のように、どんどん新しい農薬が出てまいりますと、あとからこれが人畜に被害を与える、あるいは作物を通して人の健康を害するとか、いろいろな問題が出てまいります。そこで一昨年のいわゆる公害国会で農薬取り締まり法を改正いたしまして、あとでそういういろいろな問題が起こった場合に、農林大臣が職権によって場合によっては登録を取り消す、あるいはその使用方法を変更させるという制度を設けたわけでございますので、先ほど林野庁長官もおっしゃいましたBHC等については、職権で取り消す前に業者のほうから自主的に登録の抹消の申請がありました。これは全部登録を抹消しております。こういう新しい法律改正がありましたので、今後はそういう方向に沿っていろいろなことが出てまいります。それに対応する措置ができておるわけでございます。
  74. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 そろそろ時間も参りますので……。
  75. 木原実

    木原委員 最後にもう一つだけお伺いして、終わりたいと思います。  林野庁の関係の中では、何か労働組合との関係がたいへん険悪になっているという話を聞いております。この問題につきましては、同僚の委員が別の機会に大臣所見等求めるような状態になっておりますけれども、私も、山の問題、これは森林政策として非常に大事なところに来ておると思いまして、いままでのあり方でいいのかどうかということになると、たいへん大きな問題があるような感じがいたします。一定の資源として材木を供給する、そういう側面のほうに少しウエートがかかり過ぎていたのじゃないのか。実はこういう感じも持つわけなんです。もう少し造林、山の木をふやしていって大事にしていくという方向にウエートを置きかえていくような時期に来ているのではないか、こういう考え方を実は持っているわけなんです。そうなりますと、どういたしましても、いろいろ省力のための機械が入ったり何かいたしましても、一定の人手が要ることも間違いございません。そうなりますと、どうもいままでの長年の慣習でまいりました、山の中に入る人たちの雇用形態、あるいは給与の形態、これはまことに特殊なものですね。特殊なものでございますといってまかり通ってきたのは、これはいままでそういう時期が続いたわけですけれども、それなりのいろいろのしきたりもあったと思うのですが、しかしその限界が来ているのじゃないかと思います。幾ら季節的な作業だといってあれしましても、七カ月か八カ月働いてあとの半年は寝て暮らせ、こういうことではなかなか人も集まらないし、働いている人たちも非常に不安定な思いをしなければならない。いろいろ日給制の問題や月給制の問題を含めまして、私どもははたから見ておりましても、雇用形態については思い切った改善の措置をとる時期が来ているのではないか。お互いに山を守り国民の財産を守っていくという使命感で、ともかく山で働く人たちが、ある意味では、そういう使命感に燃えて働けるだけの条件をつくってやる時期が来ているのではないか、こういう考えを持つのですが、どうでしょうか。
  76. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 まことに先生御指摘のとおりでございまして、戦争中とか戦後でございますと木材の増産、復興用材の増産ということ、特にまた三十六年ごろにおきましては、価格安定のための木材の増産という要請が林野にかけられておったと思います。そういうことで、木材の増産を主にしたことは、大体過去においては御指摘のとおりでございます。今後は、国有林に限らず民有林も全部そうでございましょうけれども、自然保護に対しての要請が非常に強くなってまいっておることは御指摘のとおりでございます。国有林におきましても、この国民の要請にこたえまして、自然保護を重点とした経営のあり方という方向に切りかえるという方針でやってまいりたいと思っております。正式には森林資源の基本計画を改定する作業になるわけでございますが、御指摘方向でやってまいりたいと考えております。  なお、働いておりますところの職員、定員内の職員はもちろん、定員外の作業員でありましても、他の産業に比べても御指摘のように雇用の安定が十分はかられていないという問題はございます。また、給与水準にしても、社会保障の問題にしても、他産業におくれておるということはございます。  ただ、国有林に働いておりますところの林業労務者の人たちのほかに、さらに大きくは民有林に働いております林業労働者もおる。この両者を比較しますと、民有林で働いております労務者の人たちは、給与の問題にしましても、社会保障の問題にしましても、さらに不利な条件になっておることは事実でございます。したがいまして、労働力の流出という現象が出てまいります。将来の造林において、その他森林の培養、育成ということが非常に重大な問題になっておるわけでございますので、国有林、民有林を通じて、場合によっては農業全体として、あるいは新しく興ってまいっておりますところの産業との組み合わせなども考えながら、山に働く人たちの雇用の安定をはかっていくべきだ、かように考えておるわけであります。これらの問題を含めまして、ただいまのところ林政審議会におきまして国有林部会を持ち、そういう国有林の問題について検討しておるところであります。それを受けまして、政府としましても、できるだけ御趣旨に沿うような方向でやってまいりたいと思っております。  労働組合の問題につきましては、よく話し合いをしてまいりたい、かように考えております。
  77. 木原実

    木原委員 これで終わりますが、最後に、農林大臣に山のことで一つだけ申し上げて、御所見を承りたい。  先般も秩父でしたか、営林署長の人たちのあまりよろしくない問題が摘発されておりました。戦後の山の経営の中で、私どもも、先ほど申し上げたように、資源として切り出すことのほうにウエートが置かれたかどうかわかりませんが、そういう傾向が強くて、しかも払い下げあるいは売りさばき、そういう中で、特定の企業と公務員のその衝に当たる者との癒着の度合いがかなり進み過ぎておるのではないか。退職後の就職先等も、われわれ内閣委員ですから見ましても、かなり関律した企業に就職しておるような姿がある。いろいろなことを考えますと、あってはならないことなんですけれども、そういう面での一種の綱紀の乱れのようなものを感ずるわけなんです。しかも一方では、気がついてみると山はかなり荒れておるような状況もあるやに見えるわけなんです。そうなりますと、そういう衝に当たる人たちの規律の問題、それから本来の山の資源を豊かにし守っていく、こういう側面でこれまた非常に大事なときに来ているのではなかろうか、こういうふうに考えるわけなんです。そういう中で、何か労使の関係でいろいろとトラブルもある、こういうふうに聞いているわけです。綱紀の粛正といいますか、厳正な規律と、それから少なくとも山については業者サイドであまり関与させないで、きちんと森林を守って豊かにしていくのだという政策でこれからの施策を進めてもらいたい。これは要望でありますけれども、そういう感じを強く持っております。大臣の御所見を承って、終わりたいと思います。
  78. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この間秩父その他九州なんかに事件が起きまして、私もまことに遺憾に存じております。  最近、山は切るばかりだというふうに新聞にも出ておりまして、私も見ておるのですが、戦争中にほとんど切ってしまいました。それで植林してきたのがちょうど育ってきて、いま伐採期に来ておるのじゃないかと思うのです。そういう点で、伐採期で切るものがあるということと、一つは林野の会計が独立採算みたいな独立会計でありまして、外材が入ってきたり、また木材の価格が、内材がそう高く売れない、あるいはまた労働力不足だ、こういう関係で林野の会計が赤字になってきておる。そういうときなものですから、その赤字を埋めるために非常に売り急いでいるのじゃないか、こういうこともいわれておると思います。この会計も、公益的機能が非常に強くなってきて、認識されてきておるのですから、赤字の分などは、公益的な機能に対するものなどは一般会計から繰り入れるというような方向へ持っていきませんと、いま言ったようなことで伐採を急ぐというような形にもなるかと思います。そういうことも直していかなくちゃならぬと思います。  それからいまの綱紀の粛正でごいざますが、一般的に、官庁の人が業者のほうに入っていって、業者と結託して払い下げなどに便宜をはかるというような形がなきにしもあらずで、ときどきそういうものが問題になるわけであります。秩父の問題などもそれでございます。でございますから、御承知のとおり、森林は国のものであり、国民のものであり、国有林は特にそうで、森野庁、農林省一つの信託を受けているわけですから、善良なる管理者という形で森林を守り、また育成していかなくちゃならぬ責任があると同時に、それに携わる者は、やはり信託者として綱紀を粛正して非難を受けないように管理していかなくちゃならぬ。林野庁に対しても、そういう点で私も特に注意するように命令しておるわけでございます。しかし、誤解を受けている面や、あるいはいろいろ事実に反するような行動もなきにしもあらずだと思って、まことに私はこれを遺憾に存じております。御注意のような点は十分またこれから注意していきたいと思います。
  79. 木原実

    木原委員 終わります。
  80. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 午後一時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  81. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。和田耕作君。
  82. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 今度の農林省の機構改正の設置法案は、非常に大規模な全般にわたる改革でございまして、新しい時代に適応しようとする農林省意欲は高く評価できると思います。しかし、今朝来の木原君のいろいろ質疑を拝聴しておりますと、この機構改革の根本的なねらいというのか、そういうものが若干あいまいになっておる感じがいたします。私は、いままで説明を聞いたところでは、やはりいままでは生産中心と申しますか、生産者保護と申しますか、そういうような農林省の行政の角度を相当修正をして、国民生活とのつながりを持つ流通の問題、あるいは消費者保護の問題のほうに行政の角度を若干変えていくのだ、あるいは相当大きく転換していくのだというふうに受け取っていたのですけれども、今朝来の木原君のいろいろな質問に対する大臣その他の皆さん方の答弁によりますと、どうもそうでもないらしいという印象を持つのですけれども大臣、この機構改正の根本的なねらいというのを、ひとつもう一度御答弁いただきたいと思います。
  83. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農政プロパーの問題としては、やはり日本農業が国際的な競争力に耐え得るような形にしていきませんと、農業自体が必要なくなるではないか。だんだんつぶされるといいますか、そういうような傾向にあるものですから、競争力を養っていこうというような点。  それからもう一つは、この食糧生産というものは、農業者から言えば、農業者だけが食糧を食べていくわけじゃなくて、一億の国民に対して食糧を供給する、こういう農業立場に位置づけられるわけだと思うのです。そういうことから言いますと、やはり農業者にとっては需要供給とのバランスがとれなければ、年によっては豊作貧乏みたいになったり、また十分食糧の供給ができなかったりするというようなことがありますから、そういう面で需給バランスをとるように農業政策を持っていこう、こういうことでございます。  第三点は、いまちょっと触れましたように、農林政策といいますか、農業というものが全国民のためにあるのだ。だから、そういう面から考えますと、やはり消費者行政というものに力を入れていく。だから、ときに農林省は食糧省的の性格を持ち、あるいはまた流通省的な性格を持たなければならぬ。なぜ今度は流通に力を入れなくてはならないかというと、国際競争力を持たせるという意味におきまして、団地的な経営という方向にも相当持っていかなければ、個人個人の農業者が十分やっていけるという時代でもなくて、第一種、第二種兼業農家も非常にふえているということでございますので、そういうことも含めて団地的に経営をしていきませんと、生産性も上がらぬ。生産性が上がってくれば、農産物生産コストもそう上げないで済むわけでございます。そういう面で、農業生産面にも力を入れるが、同時に、その生産面だけでは最終的な消費者に渡る農産物価格というものはそう安くならない部分もございます。流通面で流通機構が生産と結びついて、団地構造などにもそういう結びつきをさせようとしているのですが、どうしても中間的の流通というものがうまくいきませんと、生産から最終的な消費者に渡るのが、生産性だけ上げたといっても、流通面の流通コストといいますか、それが円滑にいきませんと、需給バランスも安定もよく保たれない。そういう点では、どうしてもこの流通面に力を入れなければ、農業プロパーの政策としても、あるいは全国民に対して食糧を供給するという農業立場からいっても十分ではない。ですから流通面に力を入れていこう、こういうことで、それにはやはり農林省の機構の構造改善をしてそれに沿うようなふうにしていったほうがいいのではないか、こういうような踏み出しをしよう、こういうことでございます。
  84. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 さっそく本論に入っていきたいと思いますけれども、ここにもありますように、目的としては「国民食糧の安定的供給」をはかることを加えたということですから、今度の法改正の一つのねらいはここにあるわけですね。これで、いまの食糧需給云々の問題というのはあとで触れますけれども、新しいこの改革の目玉と思われる特に食品流通局というのがありますけれども、この局の中で新設された二つの課があるようですが、この二つの新設した課の要員というのはどういうふうに補充されておるのですか。
  85. 中野和仁

    ○中野政府委員 今度の食品流通局に新設いたします課は、流通企画課というのと野菜振興課でございますが、流通企画課は二十名置くつもりでございます。その中身は、物価の問題あるいは流通改善の問題を総括して取り扱う。いままで農林省に、こういう流通の問題、物価の問題を総括し、それから各局と調整するというところがございませんでしたので、それを一つ新設する中身にいたしたいということでございます。それからもう一つは、午前中もいろいろお話がございましたが、野菜対策を非常に拡充強化をいたします。いままでは、蚕糸園芸局の中の野菜花き課というところでこの仕事をやっておったわけでございますが、それを二つに分けまして、野菜計画課と野菜振興課にいたした。新設課といたしましては野菜振興課で、やはりこれは二十名で構成をいたすということでございます。主として、野菜計画課のほうは、生産計画、出荷計画、あるいは価格問題、需給調整の問題を取り扱い、野菜振興課のほうは、生産の振興、それから野菜につきましての加工あるいは消費面の問題を取り扱う、こういうふうに考えてやったわけでございます。この人は、定員増をやるのではございませんで、内部の振りかえでやったものでございます。
  86. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまの内部の振りかえと申されるのですけれども、流通企画課と野菜振興課、この二十人ずつの課の要員というのは、どこの課からどのように転換さしていくか。この計画をちょっと伺いたい。
  87. 中野和仁

    ○中野政府委員 定員といたしましては、地方農政局、それから地方にあります食糧事務所の定員をこちらに移しかえた。ただ、すぐに食糧事務所、農政局の実員をそのまま全部この中に持ってくるということではなくて、やはり適当な配置転換その他で、この野菜対策に適するような人をそこに充てたいと考えております。
  88. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは本省におる他の部局から移してくるというのではなくて、地方の事務局から移してくるという御方針ですか。
  89. 中野和仁

    ○中野政府委員 定員の操作といたしましては、そういうふうにいたしておるわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、具体的に、たとえばこの野菜振興課の生産を担当する班長をだれにするかということは、もちろん省内全体から適任者を選ぶということにいたしまして、農林省全体として配置転換をやっていく、こういう考え方でございます。
  90. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それで、こういう二つの新しい課をつくって、この問題について責任を持つ課をつくるということであって、新しく人を拡充して、これは地方からでもどこからでも補充してやっていくということでなくて、本省内のやりくりが中心になりますか。
  91. 中野和仁

    ○中野政府委員 まだ個人的な人選までやっておりませんけれども、本体の野菜花き課というのは現在ございます。その人々は大部分ここへ来る。もちろん人数がまだ現在の野菜花き課よりもふえております。その足らぬ分はほかの局、あるいは場合によりましては、地方農政局から本省へ戻しまして担当させるという考え方でございます。
  92. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 このような機構改正のときに、実際上、食品流通局というものをつくりまして、そうしてこれは当面非常に国民生活との連なりを持つために重要な仕事だと思いますけれども、この要員の配置を、単に本省内のいままでやっていた人が場所が変わっただけで、そうしてやる仕事が名称が変わっただけだというふうなものでありますか。あるいは、新しい問題、それに対する人というものの考え方がありますか。
  93. 中野和仁

    ○中野政府委員 今度の野菜対策につきましては、生産の面、価格対策の面、あるいは流通段階の面につきまして、昨年の倍の予算を盛っておるわけでございます。予算面から見ましてもそういうふうになっております。それから、それの実行といたしましても、たとえば秋冬野菜につきましては、価格補てん事業を非常に拡充をいたしております。これにつきましては、相当な人も要る、そういうことになってまいりましょうし、また、今度のこの仕事をやっていくためには、先ほどは触れませんでしたけれども、各地方にあります食糧事務所の職員を特別会計から一般会計へ移しまして、その野菜の末端の計画生産、計画出荷の業務の確認をさせるというところまで徹底をしてやりたいというふうに考えておりますので、単なる名称の変更というふうにはわれわれは考えていないわけでございます。
  94. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 従来からいろいろ問題になっております、いまの食糧事務所の問題とか、あるいは統計調査部の問題とかいうものを、これは人のことですから、そうあちこち移すわけにいきませんけれども、新しく重要な課としてつくった新設の課の拡充のためには、従来、わりあいにひまだと世間から思われているところ——これは内部から見ればそうじゃないかもしれませんが、私どもから見れば、だんだんとひまだというふうに思われるところから要員を大きく転換をさして、新しいものをつくっていくんだという考慮をぜひともしていただきたいと思うわけでございます。  それからもう一つ、いまの国民生活との連なりを考えていくということが今度の機構改正の中心のテーマの一つであるとすれば、当然私は、環境保全の問題を扱う責任の部、あるいはそれに匹敵するようなものをお考えになるのがあたりまえではないかと思うのですけれども、この問題について大臣どういうふうにお考えになりますか。
  95. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 課とかなんとかということはいま直接考えておりませんが、私は農林政策、農林行政そのものが全部環境保全だと思うのです。緑の維持といいますけれども、たとえば稲作などでも、これは冬は枯れていますが、いま田植えをして緑になったときには、これは緑の維持をしておる。あるいは水の問題でも、貯水池やダムなどがありますが、水田全体が日本の水を維持している水源だと思います。そういうふうに深く考えますと、自然を維持しその環境を保っていくということは、森林はもちろんでございますが、農林改策全体の仕事だと思います。でございますから、もしその環境保全のために課とか人を設けようとするということであれば、また設けることもありますが、私は官房長がそういうことは担当すべきことだ、こういうふうに考えているわけであります。
  96. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大臣ひとつお聞きいただきたいと思いますけれども、私、昨年十月にヨーロッパに参りました。ちょうど円の切り上げの問題で、政府も野党も、全くやることの方向感覚がわからないような状態だったので、勉強に行ったわけです。そのときにスウェーデンに寄りまして、スウェーデンの農林大臣にお目にかかりました。そして二、三時間いろいろ話をしておったのですが、農林大臣が言うのには、去年ですから来年の六月、すなわち本年の六月に国連の主催する環境保全の国際会議をここでやるのだ、私が責任を持ってやろうと思っているのだという話が出ておりました。あなた農林大臣なのに環境問題をやりますか、何か環境関係大臣はほかにあるのでしょう。いや、スウェーデンでは農林大臣が環境保全に責任を持っておるのだ、こういうお話でございました。私はちょっと考えさせられました。考えてみれば、公害という考え方からずっと引っぱり出していきますと、農林大臣が公害の本拠になるということはおかしいのですけれども、積極的に環境保全という問題から解きほぐしていきますと、やはり農林省がほんとうだなという感じを持ったのです。田畑の農地の問題を管掌をする、あるいは山林の問題を管掌する、あるいは水資源の問題を管掌するのがどこの国でも農林省の仕事なんですが、公害という受け身ではなくて、環境保全という立場から見れば、農林省が積極的にその問題について責任をとり、そして積極的な施策をやっていく、これがほんとうだなという感じを持ったのです。  そういう感じからいま申し上げておるのですけれども、たとえばいま大臣は、農林省全体が環境をよくするための行政をやっていけば環境はよくなるのだというようなお考えだということで、それはごもっともですけれどもしかし、いままでの実績は必ずしもそうではない。たとえば生産を増強するために、お米の問題であれば例のBHCあるいはDDTの問題が出てきておる。つまり生産増強ということで土地の汚染という問題が出てくる、あるいはその他、たとえばお米でも牛乳でも汚染という問題が出てくる。あるいは土壌の汚染という問題が出てくる。あるいは山の国有林の問題でも、乱伐ではないと思いますけれども、これをできるだけ切らないという考えと、何とか独立採算制でやっていかなければならないと考え方とは大いに違う。あるいは、農林省がそういう問題について責任を持つとすれば、民間の一つの乱伐的な方向に対してもあるチェックを加えるような段階に来ている。  いろいろな面から考えてみて、環境保全というものを積極的につかまえる立場から見て、農林省全体がうまくやればというような考えではなくて、つまりそういう考え方転換する時期に来ておる。今度の機構改正の問題も一つにはそういう面にあるわけですから、これは公害の問題ではないのですけれども、そういうふうに環境問題を積極的に打開していくという考え方を、前向いた姿勢をどこかに出していくのが私はあたりまえだと思うのです。いま官房長がこれに当たるということで、それはけっこうです。官房の有力なところで、これを扱う常設の機関を持って、全農林省をそれを一つのポイントとして推進していくという考え方も成り立つわけです。そういうお考えができないものかどうかということを御質問したいと思います。
  97. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御意見はごもっともであり、私もそのとおりだと思います。でございますからちょっと触れたのでございますが、別に農林行政全体が環境保全ではなくて、農林政策といいますか、農林行政そのもののあり方が農業の維持、保全あるいはより以上よくするための役割りを当然本来持っているのではないかというような意味で私は申し上げたのでございますので、和田さんのいまのお話は、私も全く同感で、共鳴するわけでございます。  土地と水と空気と、こういうものによって農業というものは成り立っているのですから、それをよくしていく。ですから自然環境の保全とか、これをよくしていくということは、プライオリティというか、農林行政の一番先の問題、政策の前の問題として当然の責任であると思うわけでございます。  また公害の問題は、確かに受け身の問題で、その問題までやるのにはちょっと立場が広過ぎますから、その環境保全、自然保持ということは農林政策の前提的な、それがなくては農林政策というのは行なわれない問題だと思いますから、それではそれをどこでこういう機構改革のときに中心になってやらせるかということでございますが、私はやはり、総合的に農林省全体を行政的に扱っておるのは官房長だから官房長ということを申し上げたのですが、官房長のもとにそういうことを全体的に見ていく担当のものを置くことも、私は別に機構改革をしなくても当然できることでございますので、これは考慮していきたいと思います。
  98. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 たいへんいい考えだと思いますけれども赤城さんは非常に試実な方だということでなっておる大臣でございますので、いいかげんなあれじゃないと思いますけれども、ぜひひとつこの官房の中に——いま何かあるんですってね、臨時の集まってくる審議の機関が。ありますか。
  99. 中野和仁

    ○中野政府委員 公害の面からとらえて、公害対策室というものを常設で置いております。そして対外的にも、それから省内の連絡というようなことを、ここを窓口にしておるという室を置いております。
  100. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その公害対策室という常設のような、あるいは問題が起こったときに省内が集まって相談をする機関、これはどうしてもいままでの農林行政の姿勢から言いますと、外部から農薬の汚染はどうだといろいろなことを責められまして、それに対して何とか対策をつくらなければならぬ、あるいは弁解しなければならぬというようなことになりがちなんですね。大臣、いまの室を課にということになれば大臣の一存でできるわけですけれども、環境保全という面で、公害の問題を逆に包含して、官房の中にこういう課を置いていくということで、農林省の環境保全について積極的な姿勢を示していく、こういうふうなお考えになりませんか。
  101. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 たいへんけっこうなことですから、そういう方向で進めていきたいと思います。
  102. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ぜひひとつ、それは大臣のおられる間に、この問題は、いまでも大臣が決意すればできるわけですから、そういうふうな課をはっきり設けて、環境保全の問題には積極的に取り組んでいく、要すればこれを拡充していくというようなことをお考え願いたいと思うのです。  これはとにかく、山の問題緑の問題でも国有林の問題は比較的良好に保全されておるというのが一般の感情です。それでも乱伐的な問題も、あまり特別会計のことをやっていきますとなるわけですが、そのこともさることながら、民間の乱伐と思われる問題については、そういう面からチェックできるように、将来そういうふうなことをもくろみながらお考えをいただきたいと思うのです。そういうふうなことを考えるについても、公害課という考え方では出てこないのです。やはり環境を保全していく、農林省日本の山林に対して責任を持つんだという考え方が出ないと、なかなかそういうような伸びのある考え方は出てこないわけでございまして、ぜひともひとつ官房の中にとりあえず環境保全課のようなものを設けていただきたい。重ねてひとつお願いいたします。
  103. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 確かに、民有林などの保全というか、そういうことをするには、公害の面からだけとらえたのではできないわけでございます。でございますので、実は今度環境庁で環境保全の法律をつくるときにも、民間の森林も自然保護の対象に持っていかなければならないんじゃないか。それで環境庁では、それの伐採などを禁止するという強いことを言っておりましたが、それはけっこうだ、しかし禁止するにはやはり資金を補助しなければいかぬから、もし申し出があったならば、それを国で買って国の森林にするとか、あるいはある時期が来たらば、それに金を貸してやって、伐採させないかわりに何とかしないといけない。森林というものは、いなかなんかでは、冠婚葬祭のときに金が要るときの準備だとか、あるいは財産相続のときに金が払えないから、山を育てておいて相続税のときに切るとか、こういうことがあるんだから、環境庁の考え方はいいんだけれども、それを押えるには、それにかわるべきことをしてやらなければいかぬということで協議をしておったのでございますが、農林省でも林野行政は、私有林まで含めなければ、国有林だけではほんとうはできないのです。しかも環境保全というようなことになれば、なお私有の森林というものをその中に入れなければできないことでございますから、それに対して今度は、環境庁との話とは別に、農林省だけで環境保全のほうのあれを設けるとすれば、そういうことも十分考慮に入れるとか、検討の対象にしていきたい、こう思います。
  104. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それから先ほどの、国民食糧の安定的供給をはかるという大目的があるわけですけれども、これにはいろいろあるわけですね。安定的供給をはかるという面からいえば、午前中の質疑にもありましたように、大体八〇%前後。これは、この前の連合審査のときに総理にお伺いしたら、農林大臣もそういうお答えだったのですけれども、食糧については八〇%くらいの自給率を持つように努力したいというお考えだと思うのですが、これは、米とか野菜とか、あるいはくだものとかいうような、できるものは一〇〇%持ってもらいたい。鶏とか豚の問題は、若干えさの問題がありますから、違った形になりますけれども、それでもできるものはやってほしいと思うのです。やろうと思ってもできないものを無理やりに八〇%まで持っていくという考え方になってもらっては困るというふうに私は思うのですけれども、その点どうでしょう。
  105. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 確かにそのとおりです。できないものまで無理にしようとしても、これはできないことでございまして、御承知のとおり、私の子供のころには、日本でも綿が相当生産され、私の家庭なんかでも綿から糸をとったり何かしてやった。しかしこれは、日本自給しようとか確保しようとしてもなかなかできないのです。そういうものまで無理にやろうとしたらば、国民の税金までむだに使わざるを得ないし、無理になりますから、そういうのは、農業生産からいえば適地適産といいますか、地域指標でどういうものが適するかというガイドポストもつくってありますから、そういうものに沿うてやる。また国際的に見て、どうしても国際的にやっても無理だというのは、転換をだんだんしていくよりしようがないと思うのです。輸入せざるを得ないものはやはり輸入せざるを得ないと思うのです。そういうことは画一的に考えないでやっていくべきだ、こういうふうに考えております。
  106. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私はここで、なかなかむずかしいものの一つとして、しか農林省の重要な非常に力を入れているものとして牛肉の問題を取り上げていきたいと思うのですけれども、牛の生産高は、この数年間、あるいはもっと長くかかって、あまりふえないという事実があると思うのですが、畜産局長、この問題についてお伺いいたします。
  107. 増田久

    ○増田(久)政府委員 先生御存じのとおり、かつて二百数十万頭いましたものが、特に昭和三十八年から減少の一途をたどりまして、一時は百五十万頭台に落ちたわけでございますが、四十二年を底にして若干上向きに向かって、現在百七十五万頭前後になっておりますけれども、また昨年度から停滞らしき減少傾向に入っておるということでございます。
  108. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 農林省も畜産局というものを持っておられて、相当一生懸命にやっておられる。決してサボったり何かしていない。一生懸命やっておられても、相当長きにわたって、いまの三十八年からの例を取り上げると約十年、この十年の例をとりましても、百五十万頭に減ったのがようやく百七十五万頭というような状態は、大臣、これは将来見込みがあるとお思いになりますか。
  109. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は見込みをつけていかなくちゃならぬと思うのです。牛肉は世界的にも非常に不足しているわけでございます。これは日本ばかりではありませんで、輸入したらいいんじゃないかというような面もありますから、ある程度は緊急輸入みたいなことはやりますけれども、生活が異なってきているものですから、だんだん牛肉なんというものの需要はふえてくるし、そうしてまた飼料が草でできるものでございますから、草の資源というのは日本はやりようによっては世界的にも非常に豊富だと思うのです。いまのところ、面積が足りなかったり何かしていますが、去年あたりから森林、国有林などに放牧するようなことも考えたり、あるいはまた酪農の雄牛を途中で殺して需要に提供するというふうな傾向でありましたから、これは少し大きくなるまで育てるための奨励金というものをやりましてこういうものも育成する、こういういろいろな方法で、これは自給はできないが、ぜひふやしていくような方向へ、これは日本の畜産政策としては進めていくべきものだ、あきらめてしまってもだめだ、そういう性格のものじゃない、こう私は思っています。
  110. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私も同感です。これをあきらめてはいけないと思いますけれどもしかし、これを相当奨励してもなかなか予定どおりにはいかないという事実は認めていかなければならない。第一、この牛というのは、おっしゃるように、粗飼料を中心として草を食う。これが牛の食糧の中心なんですから、その点鶏や豚とはだいぶ違ってくる。そういう面からも牛の生産をもっと増強していくような方針をとることには賛成ですけれども、賛成だからといって、外国から肉を入れることを押えて、そしてたいへんな高値を呼んで、いまの日本では、われわれが牛の肉を食おうと思ってもなかなか高ねの花で食われないという状態にいつまでも放置しておくことはどうかと私は思うのですね。  去年の四月でしたか、私、南米の例の議会同盟の会議に行きまして、帰りにアメリカに寄りまして、サンフランシスコの総領事と、それから州の役人と会って、一行五人でめしを食っておりました。そのときにサンフランシスコの人たちが、いま食っている肉はその肉なんだけれども、こちらにこんないい肉があるのだから、何とか日本輸入するようにしてくれまいかという話が雑談に出まして、私ともう一人、ここにおる伊藤君か、これは両方とも東京のどまん中の選挙区で、都市系の議員は、それはいいことだ、雑談でそういう話をしておった。ところが山梨県や富山県に選挙区を持っている人は、そんなことをされてはもうたいへんだということで、酒の上でたいへん議論したことがあるのですけれども大臣、牛肉というものが、国民の需要が一定量であるとか、あるいは減っていくようなものであれば、これはやたらに輸入しちゃいけません。しかし、もっと安くなれば何ぼでも需要は拡大していくものなんです。くだものでも同じ性質を持っている。くだもの以上に牛肉の需要というものは拡大していくものなんです。こういうように拡大していくものですから、そういうものについては、輸入という問題についてあまりかたくなにお考えにならないほうがいいのじゃないか。むしろそうして国内の畜産に対しても適当な援助の手を差し伸べていくということがやはり刺激になっていくのじゃないか、こういうように私は思うのですけれども大臣のお考えをお聞きしたい。
  111. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 考え方がどうもみんな同じようで、答弁するのに恐縮なんですが、そういう考え方なものですから、牛肉も自由化は強く拒否していますが、輸入の面では相当弾力的に考えておるわけでございますから、ときどき価格が上がったり足らぬときには輸入している、こういう状況でございます。なお詳しくは畜産局長からも御答弁申し上げますが、確かにこれは、輸入してもなお需要というものはだんだんふえるようなものでございますから、そういうように弾力的には扱っておる、こういうふうに私は承知しておるのですが……。
  112. 増田久

    ○増田(久)政府委員 ただいま大臣がお答えいたしましたとおり、需要というものは非常な勢いで伸びておる。昨年、おととしあたりは二〇%というような伸び方をした。これはちょっと異常だと思いますけれども、相当高い伸びをしていくものだと思っております。それに対して現実に国内生産というのも、特に和牛のほうの伸びというものは非常に停滞でございますので、現実の需要供給との差というものは輸入せざるを得ない、そういうことで、昨年の下期から輸入制度を変えまして、それから大幅にワクを増大いたしまして、従来二万三千トンベースだったのを約四万トンにするようにいたしたわけでございまして、今後とも、そういう需要に見合って、国内生産との調整考えながら輸入は弾力的にふやしていく、こういう姿勢を現在とっているわけでございます。
  113. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 国内価格がやたらに上がったらやるのだという考えではなくて、やはり国内需要が一〇〇%あれば、その中の五〇%は輸入をするのだというような一つの目安のつく輸入政策というものを考えていい問題ではないか。私は、これで国内の畜産が壊滅的な打撃を受けるというのであれば、こんなことは申しません。飼料も努力すれば、大部分は日本でできるものなんですから。これは牛の特徴がこういうものですから、これの奨励をやっていかなければなりませんけれども、少なくとも総需要の半分くらいは輸入をしていくということをしませんと、なかなか畜産事業そのものへの刺激にもならない。また国民に安い牛肉を提供するという一方の農林省の重要な任務も果たされない。上がったから輸入するという考えではなくて、この問題はもっと積極的に考えてみたらどうだろうか。  この前も、物価の連合審査のあとのNHKのテレビで申し上げたのですけれども、グレープフルーツの問題があまり心配しなくてもいい一つの例だ。あのグレープフルーツの問題で、あれを輸入すれば温州ミカンが壊滅的な打撃を受けると心配なさったけれども、温州ミカンその他も、減ると思われたものがふえたじゃありませんか。ああいう需要の増大するものはそういうものなんですよ。それに刺激されて、かえって国内のそういう産品がふえていくというものだと私は思うのです。それほどこの牛肉あるいはくだものに対する需要は強いのです。所得が上がれば上がるほど強くなってくる。しかも、そのことは国民生活の安定向上、栄養の向上に大きく役立つことなのですから、そういうことをひとつもっと前向きにお考え願えぬだろうか、こういうように思うのですが、これはしつこいようですけれども大臣、少し前を向いて、胸をたたいて、ひとつやってみようというふうにお考えになりませんか。
  114. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 価格の面で輸入やなにかを弾力的に考えるものもあります。しかし、いまの牛肉の問題などは、価格じゃなくて、国内需要国内生産とのにらみ合わせから、需要に対して、輸入を増すべきものだという場合には増していく、こういうふうに弾力的に扱っているわけであります。いまのお話のように、だめなものは、どうしてもかじりついて国内生産させなくちゃならぬというようには考えていません。私も、この前の農林大臣のときに、レモンを自由化しましてだいぶおこられたのですが、あれなんか、農林省で補助をくれてやってたってちょっと無理だと思ったものですから、私はレモンを自由化してやったので、私も何もかたくなにものを考えているわけじゃございません。いろいろ国内の情勢などを考えて、やるべきことはやる、こう考えております。
  115. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これはもうすぐ中国との政府間交渉が始まってくれば、一つの話題になるものだと思うのです。物を売るのに、あの国は買ってあげぬと買えない国なんですから、そういうようなこともあるし、やはりこの問題はもっと積極的に考えてだいじょうぶな問題じゃないのか。  一方畜産振興について手をゆるめてはいけません。第一、畜産局長、いままで草を食べて成長する牛の草の資源が長い間できなかったというのはどういうわけですか。
  116. 増田久

    ○増田(久)政府委員 牛につきましては、和牛とホルスタインとちょっと違うと思います。ホルスタインにつきましては、これは完全に草でも改良しまして、そういう高い地価と申しますか、そういうものも負担し得る能力があったと思うのです。ところがそういう一般の基盤整備したりっぱな高い草を負担するだけの能力が和牛にはなかった。これはどうしても野草に依存せざるを得ない、あるいはわらに依存するという形が、和牛の場合にはどうしても一般的な形であろうかと思っております。特に和牛につきましては西のほうに多いわけでございますけれども、そこのところに一つ所有権の問題があったと思います。  それからもう一つは、農家の側の条件といたしまして、日本は、肉牛と申しましても、従来役牛であったわけです。そういう飼い方の残渣が強く残っている。一家で一頭なり二頭なりしか飼わないで、それを自分のところで余った経営の残渣で飼うという形営形態がいままで強く残っておりました。そこからまた強く草地を要求してくるというようなエネルギーも出てこなかった。こういうことではなかったかと思うわけでございますけれども、最近になりまして、特に南九州地区では、これだけではいかぬということで、山林利用、国有林開放というような動きが積極的に出てきた。それはやはり農家側の経営形態が、それを要求するエネルギーがたまってきたんだと思うのです。そこで和牛についても私は新しい将来の萌芽というものを期待しているわけでございます。
  117. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いま全国を旅行したら、やたらにゴルフ場なんかできているのですけれども、ああいうゴルフ場を牧場にしろとは申しません。ゴルフ場も大事な施設——あまり大事やじないけれども、これはあってもいいでしょう。ああいうふうにやたらにできることを、ちょっとしろうとが考えてみまして、なぜもっとこういう牧草のできるところを積極的に開発していかないのだろうか。畜産振興をやるやると言いながら、一番大事なそういうものの開発に対してはどうも熱が入っているように思われない。こういう点、大臣は農林大臣を何回かおやりになっておるのですけれども、御反省はございませんか。
  118. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 実はそういう反省のもとに草地造成というものを進めておるわけでございます。現に今度の予算でも広域団地、畜産団地なんということで、全国に相当広い草地造成というものをやります。それから県でも岩手県あたりは、相当団地として草をつくるように牧場的にやっています。それから北海道には、草の種類といいますか、牧草の種類を改良する必要もありますから、去年からでしたか、牧草の試験場というようなものをつくっておるようなわけでございます。ゴルフ場なんかから見ると、そういうものは非常に手薄でございますけれども、やってないわけではないし、国有林の中に、木のはえているままで草をつくらして、そこに放牧するというような方法もとって、いろいろな面で進めてはおるわけでございます。
  119. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これはやはり心理的に見れば、外国から入ってくる牛肉を押えている、いつでもチェックしているんだという安心感というものが、逆に牛をどんどん飼っていこうということに積極的なマイナスの刺激になっている、そういうふうに私は思うのですけれども、そういう目から言いましても、外国から牛肉を総需要のとにかく半分くらいは入れてやろう、しかし畜産の振興についてはもっと思い切った援助をしようというふうにお考えにならないと、いままでのように、何とか畜産の振興ははかりたいと言っておると、言うだけになってしまって、手と足が動いていかない、そういう結果になっているのじゃないか。大臣、特にこの際、畜産の振興という目から見ても、そういう有効な刺激としても、肉の輸入という問題を前向きにひとつ考えてもらいたい、このように思うのです。ひとつぜひともお願いします。  それから、その問題と関連しまして鶏と豚の問題ですけれども、これは大部分草以外のものであって、しかもそれは輸入飼料だということになります。鶏は、私も捕虜から帰ってきて、三百羽くらい飼っておったことがあるんです。一向もうからなかったんですけれどもしかし、鶏なんかの食うものがだんだんと輸入の飼料に依存しているということがありますと、これはほんとうの意味の食糧の自給じゃないですね。むしろ逆に食糧の外国依存ということになりかねない。そういう形で鶏と豚の増産が行なわれてくると——いわゆる非常時というのは戦争だけじゃありません。その他にもいろいろそういう問題がありますけれども、そういうときに、えさは全部外国に依存している、しかしえさを輸入して、そのえさをもとに鶏と豚は自給だということは、ちっともいばれない問題です。そういう飼料の問題を、大臣、どのようにお考えになっておられるのか。あるいは相当日本でもできるような工作をしておられるのか。あるいは、けさほどのように、もっと多面的な輸入策を考えるとかいうようなことも大事だと思いますけれども、その問題について、国内のえさの自給度を高めていくというようなお考えがありますか。あるいはそれが可能だと思われますか。どうでしょう。
  120. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 話はちょっと直ちに答弁にならぬかもしれませんが、農業を進めていく上において、どうしても日本農業は小規模経営なので、大きくするというようなことで団地的なことも一つ考えているんですが、鶏のようなのは、別に土地の広さを必要としないわけでございます。そういう意味でやはり養鶏というものも必要だと思うのです。ですから見方によっては、農業であるが工場的経営のような性格を養鶏は相当持っておると思うのでございます。そういう面でございまするから、土地を広めることができない都会に近いようなところ、経営規模を大きくするのに土地の面積を広められないようなところは、やはり養鶏というようなことでいくのが適当だというふうに私は見ておるのでございます。  そのえさの問題でございますが、私は、濃厚飼料の自給は、実際問題として日本ではなかなか困難だと思うのです。米や麦なんかもだいぶ減っておりますし、ふやそうふやそうとしてもなかなかできませんし、それからその他のトウモロコシなんかについてもやはりある程度輸入せざるを得ないのですが、私は、日本の産業全体からしても、その輸入先は、資源を一方的な場所からのみ輸入するというような政策はあまり好ましくないと思うのです。やはり分散すべきだと思うのです。そういう意味におきまして、この飼料などの輸入先もできるだけ分散できるようにする。ですからトウモロコシなどにつきましては、ベトナムやタイあたり、東南アジアなどに開発輸入という名前でいろいろ技術を指導したり援助をしたりしてつくって、そうして輸入するというような方法をとってきているのでございますが、あまり大規模ではありません。考え方としてはやはり分散する、そうしてまかなっていくというようなことが日本の国の政策として重要なことだ、私はこう考えております。
  121. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私、申し上げたい点は、たとえば豚肉でも、結局、豚を飼う飼料はほとんど全部輸入に依存しているということであれば、食糧の自給は絶対必要だというようなものの範疇に豚肉なんかはあまり入れなくてもいいじゃないか。米とか、あるいはその他の野菜とか、そういうものは絶対一〇〇%自給するということは必要ですけれども、豚肉なんというものは、もともと飼料としては外国に依存しているわけです。それでつくったものですから、もっと弾力的に考えて、牛肉と同じようにもっと輸入量をふやしていく。輸入量をふやしていけば国内のそういう生産がひどく打撃を受けるということになれば、これは問題ですけれどもしかし、そういうふうなことにはまだ間があるのじゃないかというふうにも思う。主要な食糧という名前のもとにあっても、内容はいろいろ違うわけであって、違うものについてはもっと輸入政策を活用していく、そうして国民の需要の要求を満たしていくというような配慮が必要ではないかと私は思うのです。  私、いま物価の問題を片一方でやっておりまして、政府物価安定政策会議の提案が幾つかあるのですけれども輸入政策の活用という問題があるわけです。確かに輸入政策の活用というのは効果があります。大臣がおやりになったレモンの問題なんかも、あれは国内の配給の問題については問題がございますけれども、確かにあれは効果がございました。たいへん喜んでおると思います。そういうことで、もっとこまかく検討なさって、食糧は自給しなければならないといっても、えさは輸入していて食糧だけをということになるとちょっとおかしいことになるわけで、そういう点は少し前向きに弾力的にお考えになってほしい、こういうふうに思うのです。
  122. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 実はそういうふうに私も考えております。豚の問題ですが、豚は、食糧の自給という問題ばかりではなくて、豚を飼養する農家というのは、どっちかといえばあまり豊かな資本が要らなくてやっているものですから、どうしても畜産の豚を飼うこともすすめておるわけであります。しかし、食糧の面から言いますならば、いまのお話のように、輸入ワクを肉としてはふやしたらいいじゃないかということもありますので、去年ですか、輸入のほうは豚肉は自由化しておる。こういうことでございますから、御説のとおり、農民立場から言っても、消費者立場から言っても、自給というものが必要なものは進めますが、そうでないものは輸入というものを活用して、そうして国民の食生活が多様化しているのですから、それに対応していく、こういうふうに弾力的に考えていくべきであるという御説、そのとおりでありまして、そういうふうに対処しておるわけでありますし、またそうしたいと思います。
  123. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 法改正の食品流通局と関係した問題に入っていきたいと思います。農民が物をつくった、これが農民の手取りの二倍、三倍の価格消費者に渡っていく、あるいはそれ以上のものがあるというこの状態を放置したままでは、これはいまの安定的供給の精神にももとってくるというわけで、この問題について農林省はもっと本腰を入れてもらいたいと、私、前から思っておったのですけれども、今度は、こういう食品流通局というものをつくって、もっと積極的に乗り出してみようという姿勢が出ているわけですけれども、これはいかんせん、いままで中心の食糧であるお米という問題になりますと、お米は農民の手取りよりも消費者のほうが安いということになりますので、流通機構の問題が農林省の方々の頭の中にあまり入ってこなかったのじゃないかという感じがするわけなんです。  そういうことで、この数年来、野菜の問題が非常に大事になってきているのですけれども、現在、依然として、農民の手から中央卸売り市場を通って、幾つ段階を経て消費者の口に入っていく。その過程の問題がいまだに解決されていない。今度この食品流通局をつくって、この改善についてどのような大きなプラスが出てくるであろうかというふうに思うのですけれども、これについて、こういう点で効果があるのだということを、簡単でけっこうですが、大づかみで御答弁いただければありがたい。
  124. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど御説明申し上げました中に、流通企画課ということを申し上げました。いまの野菜ということが具体的になりますれば、野菜の担当の課がそういう問題を詰めていくことになりますけれども、やはりこれは野菜だけではございませんで、その他の生鮮食料品のほうも全部ございます。この点につきましては、ここが総括してずっと詰めていくというふうに考えておるわけであります。
  125. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは、野菜の集荷、流通ということになると、いまだにいろいろめんどうな問題があると思います。今度農協でスーパーをつくるという話が出ておりましたけれども、あれはいろいろ計画なさっておりますか。
  126. 小暮光美

    ○小暮政府委員 農協スーパーということばが適当かどうか、農林経済局のほうで総合小売り店舗を逐次助成してつくります仕事の一環として、都市部で既存の小売り業者がまとまってやる場合のほかに、新たに団地等が造成されるというような場合に、既存の商圏がない、もともとそこは農業地帯であった。地元に農協もございますから、そういった面で、そういう新たに集団の住宅ができるようなところには農協営で総合店舗をつくるということを認めまして、これも助成の対象にするということでやっております。
  127. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまそういうものは何軒ぐらいありますか。
  128. 小暮光美

    ○小暮政府委員 自発的にやりますものについては、ちょっと私、承知いたしておりませんけれども、私どものほうが直接補助し始めましたのは、実はことしが二年目でございます。昨年助成の対象になったのが十カ所で、現在さらにことし十カ所を選定中でございます。
  129. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 各自治体で産地との直接購入という動きがありますね。ああいう動きに対して、農林省はどういうふうな態度で見ておられますか。
  130. 小暮光美

    ○小暮政府委員 中間段階を省略して直接生産者消費者をつなぐことができれば、生産者の手取りもふえ、消費者も安く買えるのじゃないかという発想があることは、私どもももちろん承知いたしております。  ただ、この問題について行政的にどのように臨むかという点について申し上げますと、何と申しましても、都市が御承知のように次第に巨大化してまいります。そのほかに、各地方の中小都市の皆さんも、交通、通信と申しますか、そういうものが極度に発達いたしまして、全国おしなべてあらゆる場所で大都会と同じような消費生活の水準を皆さんが希望するというような形に相なっておりますので、かつての地方都市におきますように、生産者が直接町に持ち込んでまいりまして台所と相対でやるということはあまりない。地方都市みなそうでございます。ああいうような、きわめて簡素な、中間を省略した段階を生鮮食料品の流通のいわば本命であるというふうに考えるわけにはまいらない。やはり国並びに公共企業体が公の金を利用してしかるべき施設のもとにまとまって流通させる、ここに行政が専念することが大筋である、基本的にはこう思っております。  ただ、そういうことのほかに、消費者がみずから需要をまとめて、需要をまとめることによって、直接どこか供給するもとを求めるという動きがきわめて自然のことでございます。したがいまして、継続反復して、しかも、かなりの品数のものを、代金決済等に間違いなりめんどうを起こさないという形で受け渡しができ、価格形成をみずから行なえる力がある、そういう仕組みがもしあれば流通のもう一つの形になり得るのじゃないか。ただ、いまの三つの点、品ぞろえと代金決済と価格形成、この三つの点はどうも直接取引ではなかなかできない実態でございます。したがいまして、これらの点に十分御注意いただきながら、それぞれのくふうをなさる向きに対しては、私ども、できるだけ情報を提供したり、あるいは過去の事例等を申し上げて、過去の失敗を繰り返さない、こういうような形で指導いたしたい、かように考えております。
  131. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういうふうな取引が次第にふえてくるということは自然なことであって、これを合理的に伸ばしていくということは大事なことだと思うのですけれども、それにつきましても、中央卸売り市場での適正な価格の形成というものが確保されないと、直接の取引にしましても、どういう形で農協がスーパーのようなものを持つにしても、その価格はやはり卸売り市場の価格と無関係ではないということになりますから、どうしても生鮮食料品価格は中央卸売り市場で形成される価格によって右へならえしていくということになるわけですね。  そこで、去年、物価との連合審査でその問題を取り上げたことがありましたけれども、確かに市場法の改正はいたしました。相当の改善は行なわれる可能性があると思いますけれども、現在の段階で中央卸売り市場ではたして適正な価格形成ができておるかということになると、まだまだたくさん問題が残っておると思います。先ほどの木原君の質問に対してのお答えがあったわけで、せりのほうは、つまり荷受け人のほうは、できるだけ高く値段をつけたいという考えを持って、荷受け人のところのせりがそういうふうな考えで働いていくという話があったのですけれども、これじゃ困るのですよね。あそこは正しい価格形成が必要な場なんですから、できるだけ高く値段をつり上げたいという意図を持った荷受け人、あるいはそこに雇われておるせり人がそういう意図を持ってああいうふうな価格形成をするキーポイントにおることは、私は困ると思うのですね。またこれは、あの小さなところに集まって現物を目の前にしてのせりというところに問題がある。幾つか問題があると思いますけれども、そういう問題つまり、農業生産物を安定的に供給するためのいろいろな野菜団地をつくる、あるいは指定産地をつくる、指定の消費地をつくる、それもけっこうですけれども、かなめの卸売市場の価格形成というものをもっと改善をしていかないと、せっかくおつくりになっても、結局、絵にかいたもちになるおそれがあるわけなんですね。  そういう点で、先ほど木原君の質問にもあったのですけれども、せりの人間の身柄の問題ですね。これはやはり一考も二考も要する。そしてまた現地に、狭い卸売り市場の制限というものを何かの形でカバーしていく方法も必要であるということなんです。農協が神田市場で荷受け人になっていますね。あれは農林省としてどう思いますか。
  132. 小暮光美

    ○小暮政府委員 神田市場にはAという名称の農協の荷受けがかなり昔からございます。その後、最近、新たに増設されます市場にも、いろいろな形で農協の資本が参加しております。私どもは、農業協同組合が生産、出荷の活動をやるということは農協の一つの使命でございますから、それが大都市の市場においても合理的に荷受けの機能を営むということは何ら支障がないというふうに考えております。ただ市場の建設は、具体的には、その地域にございました商圏これを望ましい方向に再編成する、公共の施設の中に収容するというのが市場を近代化してまいりました具体的な経緯でございます。そういう既存の商圏を正しい方向に誘導するということが市場行政のもう一つの柱になりますから、こういうものとの調和は十分はからなければならないと考えております。
  133. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 つまり農協のほうは、市場ではできるだけ農産物価格を引き上げるような努力をする。といって大口の消費者に対しては直接の取引もやっていく。しかもその直接の取引というのは、市場でできた価格に右へならえになっていくというようないろんなからくりを考えますと、農協というものが、他の私的な一つの卸売りの役割りを果たしておる荷受け人のような市場での立場になるということは、私はちょっと問題があるのではないかという感じがするのですけれども、そういう問題はありませんか。
  134. 小暮光美

    ○小暮政府委員 資本なりあるいは人的な供給のもとは、農協であるか、あるいは在来の商業者であるかということは必ずしも問わないわけでございまして、これらのものが市場の機構の中に健全に組み込まれて、市場法並びに業務規程等による規制のもとに入るわけでございますから、そこで望ましい荷受けとして機能することが適当であると考えておりまして、必ずしも資本の出所あるいはまた人のおい立ちを問わないような形で私どもとしては考えておるわけでございます。
  135. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 次に、この機構の問題については、せっかくおつくりになるわけですから、この機構ができたので、流通過程の問題を含めて——含めてというよりも、その中心になりますけれども、大いに近代化されてきたのだという実績が示されないと、単なる機構の改廃になる。そして人も、あちらこちらから違った課に集めてくるというような結果になるというおそれも多分にあると私は思うんですね。そういうようなことがないように、この機構の改正と同時に、こうこうこういう新しいことをやっていくのだということが必要だと思うんですね。そういうこともいろいろあると思いますけれども、何か目玉がありますか、この改正に伴って。
  136. 小暮光美

    ○小暮政府委員 市場行政との関連で申し上げますと、先ほど官房長も答弁しておりましたが、従来から、たとえば市場を建設するという仕事を長年やってまいりました市場課というものは、依然として新しい機構の中にございます。企画課を新たにつくることによりまして、従来からの仕事を的確に遂行するということと、あわせて新たな流通の形を模索すると申しますか、あるいは新たな問題点をみずから掘り下げる、こういうようなことを積極的に進めたいというようなことを機構の中にも出しておるわけでございます。  たとえば具体的な研究課題の一つとしましては、すでに市場法の際にも申し上げましたように、せりだけを唯一の価格形成ということに考えませんで、取り扱います荷物の性質が次第に規格化され、あるいは貯蔵性が高まってまいるというような実態、あるいは需要なり消費のほうを組織化する仕組みが次第に固まっておるというような実態を踏まえまして、望ましい形での相対取引の姿を新たに形づくる、こういったようなことがたとえば企画課の一つの具体的に推進すべき仕事になるかと考えております。
  137. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 農協なんという組織は、やはり相対取引を中心にしてやるべき組織だと思うんですね。ああしたせりの中に入ってやるというような性質のものじゃないのじゃないかという感じがするので、そういう質問を申し上げたわけですけれども、そういうような点をひとつ御考慮いただきたいと思います。  それから大臣、今度、国鉄の運賃が大幅に値上げになりました。貨物運賃が二四・六%というかつてない大幅なものですけれども、これが野菜その他の出荷に対して大きな障害にならなければいいがと私は思うのですが、その点どういうふうに御検討なさっておられますか。
  138. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう点を私のほうも心配をいたして抗議をしたといいますか、このままではいかぬのじゃないかということで折衝いたしまして、農産物については特別列車といいますか、緊急で必要なときにはそういうものも出す。そういうことも承知したというか、のんだものですから……。それから、こちらとしては、やはりトラックその他の輸送というようなことも考えなくちゃいけない。それで、野菜などにつきましても、指定産地などを団地的にして、出荷や集荷というものも相当まとめてやっていくというようなことで、国鉄の農産物の運賃の値引きをやめたことに対処していきたい、こう思っております。
  139. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ああいうようなことは私はむちゃだと思うのですね。特にいま旅客の運賃は、これは私ども絶対反対しております。国鉄は自分の責任を十分やりもしないで、政府だって赤字線をいまだに引っぱっておって、あんなものをやるなんてけしからぬと思うのだけれども、旅客の運賃は、独占企業ですから、まだ上げたら上げるだけのあれはありますけれども、貨物の運賃を二四・六%も上げるということ、みずから首を絞めるのと同じようなおそれがなきにしもあらず。ここで国鉄をぼろくそにいってもしようがないのですけれども、持ってきた荷物を運んでやるという体制でしょう。それでフレートライナーとかいろんなことを考えておりますけれども、競争者のある場で、いままでも国鉄運賃はトラックに比べて非常に安いのです。安いけれども、サービスが悪いし、いつになったら荷物が来るかわからぬような状態だから荷物はどんどん減っていく。しかも今度貨物運賃が上がる。しかし野菜の輸送というのは、国鉄を使っている率はかなり多いんじゃないですか。この点おわかりになりますか。
  140. 小暮光美

    ○小暮政府委員 野菜の場合は、実はトラック等に依存するものがきわめて多い部類に属しております。遠距離のために国鉄の依存率が高いものは、たとえば、木材とか、遠隔地の鮮魚とか、それから野菜の中でいえば北海道のタマネギなどが国鉄に対する依存がかなり高いものだと思います。
  141. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 本土の場合はトラックがかなり多いのですけれども、九州だとか、北海道だとか、あるいは野菜でなくてもくだもの、リンゴなんということになるとかなり多いでしょう、汽車利用というのは。そういうような問題について、大臣は閣議なんかで、農林省としてはそんなことをしては困るというような発言をなさったのでしょうか。あるいはそういう検討を次官会議でもなさったのでしょうか。
  142. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これはもう、毎年毎年そういうのを抗議して発言をしておったものですから、延びちゃって、ことしはとうとう押し切られたというような形なんですが、私はやはり、運賃よりも物価だ、こういうように思っていますから、政策としては物価を安定する。と言っても、赤字のためだといってああいうものを上げるというのは、私は閣僚として反対なんです。ですから、あれをきめるときにも、こまかい相談をしないで事務的にだけ相談をして、しっかり研究もしないで、経済企画庁がいいとか大蔵省がいいと言えばきめちゃうというのは、まことにけしからぬと私は不満を言ったのです。ほんとうは不満なんです。そういう考えですが、どうも申しわけないのですが、そういうふうになっちゃった。
  143. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは私らも非常に遺憾に存じておりますけれども、衆議院を通っていった。しかしまだ参議院があるということですから、一これを廃案にしたいと思ってがんばっておるわけですけれども赤城さんのあれで非常に心強く思う次第でございます。  そこで、最後にもう一つ、私、思っていることでちょっと心配になるので、お聞きしたいのですけれども農業生産は、お米にしましても、人手は少なくなる、悪くなる、つまり三ちゃん的なものになる。農地は少なくなるにもかかわらずお米の生産は衰えない、かえってふえるというのは、農薬という問題があるということを普通いわれております。しかもこの農薬という問題が、BHC、DDT等の問題で禁止あるいは制限されるということになると、お米の生産に対する見通しは、大臣、どういうようにお考えになりますか。
  144. 中野和仁

    ○中野政府委員 農薬、特に化学的な農薬というのは非常にふえてまいりました。たしかイスラエルと日本が世界で一番よく使っておるとまでいわれております。ここ数年、逆にそれが人の健康を害するじゃないか、その他のいろいろな問題が出てまいりまして、午前中も御答弁申し上げたわけでございますが、農薬の規制を始めたわけでございます。一方では農林省といたしましては、残留農薬研究所等に補助もいたしますし、試験研究もいたしておりますし、人に無害で、植物の病気なり、あるいはその他のものを殺し得るという農薬を絶えず研究しなければならぬということをやっておるわけでございます。そういうことで、危害を与えるような農薬は規制をしていく。同時に代替農薬というのは順次研究が進んでおります。ただいまの見通しでは、そういう代替農薬で今後の農業生産も続けていけるのではないかというふうに判断をしております。
  145. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 代替の農薬、だいじょうぶできますか。
  146. 中野和仁

    ○中野政府委員 私自身科学者でございませんけれども、先般の農薬法の改正のときも、いろいろそういう御質問等もございました。現にBHCあるいはDDTにつきましても、スミチオンとかいう薬だったと思いますが、順次そういうふうにかえていくということで現在対処をしておるのもあるわけであります。まだできていないものもあるかと思いますけれども、研究が進みますれば大体できるのではないかという見通しでございます。
  147. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 BHCの禁止というのは、代替の見込みなり確実にかわるものがあるのだということなしに、有害だからやめるという御決定だったのですか。これはあげ足とったりなんかするわけじゃないんです。ただ心配になるから。減っては困るからね。
  148. 中野和仁

    ○中野政府委員 特にBHCが問題になりましたのは、牛乳にそれが入っておる、稲わらを通じて入ってくるという問題が一昨年起きてまいりまして、そのときに、消費者サイドからすれば、牛乳の消費の問題等考え、これはすぐやめろという要求があったわけであります。当時、まだ法制的にはそういう整備がされておりませんでしたけれども農林省といたしましては、農薬メーカーに対しまして、自主的にBHCの製造をとめるようにという要請もしたわけでございます。使い方も、一部自主的に基準をつくりまして規制をしたわけでございます。それが一昨年の暮れに法律が通りまして、一昨年の五月法律が施行になると同時に、林業の一部を除きまして、たしか五月の中ごろだったと思いますが、登録の返納をさせまして、これを禁止したわけでございます。ただ、その前から一部代替の薬は順次つくられておりまして、全面的にそれに切りかえるという途中でこれを禁止したというふうになっておるわけでございます。代替品が全部できたからこれに切りかえたということでは必ずしもなかったかというふうに思います。
  149. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういう態度は、私は非常に高く評価したいと思うのです。明らかに国民生活に悪い影響があるということになれば、生産という問題については、心配はあってもまずやはり禁止の措置を上る、そして一生懸命になってそれの代替品をつくっていく、そういう姿勢が必要なんではないかと思うのです。今後も、生産が減っちゃ困るのですから、代替品の研究について、そういう問題を含めて、今度の機構改正では、そういう試験研究機関の拡充という問題が盛られておりますか。
  150. 中野和仁

    ○中野政府委員 今回の改正では、試験研究につきましては二つの改正をやっております。一つは、先ほどからも問題になっております野菜の問題につきまして、従来は園芸試験場で果樹と一緒に研究をしておった。どちらかと言うと、果樹のほうがはなやかで野菜のほうがその次におる、こういうような状況でございました。それではいけないということで、今度は園芸試験場を分割いかしまして、果樹試験場と野菜試験場に分けまして、野菜を専門的に試験研究をやっていこうということにいたしまして、三重県に設置するということにいたしたことが一つと、もう一つは、従来、米麦を中心に加工段階の研究をやっておりました食糧研究所というのがございます。これにつきましても、単に米麦ということだけではなくて、いろいろな食品が出てまいっておりますので、食品の総合的な研究所に衣がえをしようということで、新しく食品総合研究所というものをつくろうということにいたしておるわけであります。
  151. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そういうような研究機関については、お金をいとわないで、ぜひとも積極的に開発をしていただきたい。  それで、もう一つ個別的な問題で、杉並の蚕糸試験場は筑波学園都市に移転する日時はもうきまりましたか。
  152. 加賀山國雄

    ○加賀山政府委員 お答えいたしますが、杉並の蚕糸試験場は、十六日の閣議で筑波研究学園都市に移転するということに決定いたしました。
  153. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いつ、どういうふうな作業を始めますか。
  154. 加賀山國雄

    ○加賀山政府委員 蚕糸試験場は本年度から着工の目鼻がついておりまして、予定でございますと、昭和五十一年を中心といたしまして両三年でございますから、昭和五十二年までには移転いたしたいと考えておりますが、今後の予算のつき方その他もございますし、それまでに全部移転できるかどうか、できるだけそれまでにいたしたい、そういうふうな計画でございます。
  155. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 あのあと地は大蔵省にお返しするわけですか。
  156. 加賀山國雄

    ○加賀山政府委員 筑波研究学園都市の実際の実施のやり方でございますが、農林省関係は、特定国有財産整備特別会計という特別会計がございますが、あの特別会計を使いまして、現在の土地を財源にいたしまして、移転の資金と申しますか、財源を出すということが基本になっておりまして、一応現在では農林省の行政財産になっておりますが、評価をいたしまして、大蔵省のほうに移管いたしまして国有財産になるわけでございます。それを大蔵省のほうの理財局が中心になりまして財源として考えるわけでございますが、そのあとをどう利用するかという問題は、首都圏整備委員会というものがございますが、首都圏整備委員会が中心になられまして、そういった機関のあと地をどのように使うかという審議会等もございまして、大蔵省、またわれわれも参加することになるかと思いますが、東京都全体のためになるようなかっこうで処理をされるのではないか。でございますから、われわれのほうの考え方だけが通るとも考えておりません。
  157. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 あのあと地については、あの辺はあき地のないところでございまして、地元のいろいろな強い要求があるようです。そのうちに御相談、陳情にも参りたいと思いますが、できるだけ地元の要望をお聞き取りいただきますように大蔵省のほうにもお願いしますけれども、そういう心がまえを持っておっていただくようにお願いしたいと思います。
  158. 加賀山國雄

    ○加賀山政府委員 ただいまの問題でございますが、私がいまこの場でどうだと申し上げることもできないのでございますが、やはり東京都民全体と申しますか、国民全体のために一番有効な方法であと地利用をするということになろうかと思います。その点、いろいろ関係するところも多うございますので、そのように御了解いただきたいと思います。
  159. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 最後に林野庁の機構改正の問題なんですけれども、これは私どもの友好的な機関に日林労という労働組合がございます。この人たちのたっての要望、きのう、おとといから話を聞いておりまして、もっともだと思うことが二、三点あるのですが、今度、職員部というのを廃止して国有林部ですか、それに統合するという案ですね。これはつまり、林野庁だけでも職員は五万や六万おるでしょう。大体、職員はどれくらいおりますか。
  160. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 定員内職員が四万でございます。定員外の作業員というものが、最盛期をとりますと七万七千ぐらい。その中にも一年間雇用します常用作業員、半年あるいは十カ月と雇用する定期作業員など、いろいろな種類がございます。そういう情勢でございます。
  161. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 定員が四万、その他合わせて五万をこしていくということになるわけですけれども、このような人たちが、仕事のしぶりにも世上いろいろ問題になっている点があるわけですけれども、労働組合としても二つの組合があるということにもなるわけで、職員の取り扱いの問題は、当局としても非常に力を入れなければならぬ段階だと思うのに、しかも専門の職員部をやめて、国有林部の職員課ですか、こういうふうにした御意図はどういうところにありますか。
  162. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 実は、ただいま国有林の問題につきましては、林政審議会の中に国有林部会を設けまして、いろいろ御検討願っているところでございますが、それは理由をかいつまんで申し上げますと、最近の林業の問題につきましては、外材の輸入の問題に関連しまして、国内の林業が非常に圧迫されているというふうな状態もございます。特に、それに対抗していきますためには、国内の造林事業をはじめ、いろいろと振興をはかっていかなければならぬ問題があるわけですけれども、そういういろいろなきびしい情勢の中の縮図というべきものが実は国有林問題にあらわれておるのでございます。当面、国有林の問題につきましては、四十八年度から抜本的な改正をいたすべく、先ほど申し上げました林政審議会の国有林部会に御検討願っておるところでございます。  そこで、この国有林の問題につきましては、今後は特に近代化、合理化を徹底していかなければならぬということになるわけであります。それにつきましても、特に労働の問題に関係することが非常に大きな問題の一つでございます。そこで従来は、国有林の問題につきましては、管理の問題につきましては、林政部の中に管理課を置く。それから一般的な計画の問題につきましては指導部でやる。それから人事の問題については林政部で行なっております。労働問題につきましては、職員部の中に、職員課、労務課と福利厚生課と、三課を設けてやっておるわけであります。それから平常の業務の問題につきましては業務部がございまして、この中で、業務課、経理課、監査課、こう三つの課がございます。  特に、ただいま申し上げましたように労働の問題につきまして、今後重点的にこれを処理していきますためには、やはりいまありますところの職員部と業務部と一緒にいたしまして——と申しますのは、従来は、組合の問題につきましては職員部だけでやっておる、予算上の問題、その他、経営計画、事業計画全般につきましては業務部でやる、ばらばらであった感じがあるわけであります。今後、非常にきびしい状態を乗り越えていくためには、この両部を合体しまして、なお先ほどお話ししました林政部の中にある管理の問題を含めた管理課を全部まとめまして、国有林部として一つの姿でこの難局を乗り切っていきたいというのがこの趣旨なわけでございます。  それから、なお、この国有林部と一緒にしましても、課は減るのではなくて、職員部に関係します課は全部一緒でございます。それから監査官は、みずから事業を実行してみずから監査するのはやはり本来的な姿でございませんので、これは林政部に移します。国有林部長の仕事はたいへんでございますので、国有林部長を補佐しますところの審議官というものを設けまして、これを補佐するという形にした案でございます。
  163. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは、長官のもとに次長という新しい制度を置くという必要上この改廃が行なわれたという話があるのですが、これはほんとうですか。
  164. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 次長を設けました趣旨は、先ほど御説明申し上げましたように、林業、森林の問題がただいまいろいろと国民の批判あるいは期待を受けておるわけでございます。従来は木材増産を重点にした林業政策であったわけでございますけれども、今後は、公益的な機能を重視して、国民の要請にこたえる施策ということが重要でございます。そこで、これらの問題を含めまして、先ほど来申し上げておりますところの林業を維持していきますためには、やはり今後、いろいろと予算の編成の問題なり、あるいは法律の改正の問題なり業務が山積してまいります。そこで、これを乗り切るためには、農林省内部ばかりでなくて、他官庁との折衝その他いろいろ出てまいるわけでございますので、長官一人の仕事としてなかなかこれはたいへんな仕事でございます。そういう趣旨から長官を補佐する次長というものを設けたものでございます。国有林だけの問題の解決のためであるというふうには、実は次長の問題は考えてないわけでございます。
  165. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 ポストの問題で行政管理庁から要望されて、ポストが一つ余ってくるから、これを改廃するというような考えはなかったのですか。
  166. 中野和仁

    ○中野政府委員 行政管理庁の方針といたしましては、スクラップ・アンド・ビルドということで、どれかをつくるならどれかをつぶせ、こういうことを言われるわけです。  林野庁の問題につきましては、ただいま林野庁長官お話しいたしましたように、非常に重大な時期に際会をしておりまして、林政改革を抜本的にやろうということでございますから、職員部と業務部を統合して一つの部にいたしましたけれども、審議官を置く。それに次長が一つできておりますので、結果といたしましては、スクラップ・アンド・ビルドよりもふえたような勘定にもなるわけでございまして、われわれとしましては、行政管理庁といろいろと予算段階で折衝しました結果、こういうことに落ちついたわけでございます。
  167. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 今後、林野庁としては、国有林の問題を中心にある官庁なんですけれども、外材はどんどん入ってくる、木材の価格はいろいろ圧迫されてくるという状態の中で、いままでのような仕事のしぶりでは赤字がずっと累積してくるという状態だと承っておるのですけれども、この四十八年度から長期計画をつくるとおっしゃるわけですけれども、どういうふうな方針で林野庁の仕事をやっていかれる見通しなのか、おわかりになっておられれば承りたい。
  168. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 長期計画とただいま先生おっしゃいましたが、これは、林野庁が現在やっておりますところの仕事の計画、その長期の見通しについてはどういうものがあるかという意味かと存じます。実は林業基本法ができまして、と同時に、森林をどのように扱うか、それにつきましては、森林資源に関する基本計画があるわけでございます。四十一年度の閣議決定に基づいております。それに基づきまして、森林の将来の資源というものはどのようにしていくか。端的に申し上げますと、現在持っておりますところの森林資源を約倍にふやしていくというようなことでございます。それに伴って伐採をどのようにし、造林をどのようにし、林道をどのようにつけていくかという計画でございます。この点につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように、従来の木材の増産を主とする計画、これを今後は、自然保護その他、国有林、民有林の公益的な機能に対する国民の期待が大きくなってきた点を勘案しまして、伐採の方法なり、あるいは伐採の大きさなり、そういうものを従来の考え方から大きく修正する方針でございます。したがいまして、大面積の伐採をいたすということになれば、したがってまた伐採の量もふえてまいります。そういったことについての具体的な数字はただいまここでは申し上げられませんけれども、そういう意味での森林に関する基本計画の改定ということについて考えておるわけであります。  もう一方では、先生、先ほどお話がありましたように、外材の輸入が最近非常にふえてまいっております。四十五年度ではすでに五五%が外材、むしろ国内材の供給が減りまして、自給率が落ちているわけであります。これに対抗しまして、国内の林業を振興していくという観点に立ちまして、この需給の見通しというものが将来どうなるかという木材の需給に関するおよそ五十年先の見通し、この二つの基本計画をただいま改定する予定にいたしておりまして、年度内にはこれを決定しまして閣議決定されるということになろうかと思います。
  169. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私どもしろうと考えですけれども、こういう貴重な森林資源を、赤字だからといって切らぬでもいいものまで切っていく、樹齢がまだその時期に達してないものまで切っていくということはもってのほかだと思うのです。マキシマムの資源の保護をしていく、そういう資源の保護の上からいって、伐採したほうがいいというものを切っていくというような考え方が大事ではないかと私は思うのです。そういうような意味で、外材の輸入というものはやむを得ないものだ、そのほうが国内の資源の保護からいっても、環境の保護からいっても大事な問題であれば、むしろ安い外材をどんどん入れたほうがよろしい。それで、特別会計でもってやっていけなければ別途財政措置考えたほうがよろしい、こういうふうに考えるわけです。今後、林野庁の仕事の見通しからいって、現在の人員を整理していく必要があるとお思いになるか、あるいはふやしていく必要があるとお思いになるか、この見通しはどうなんです。
  170. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 ただいま申し上げましたことによって、森林に対する計画、施業の方法が変わってまいるわけであります。伐採量が減少し、したがいまして造林量が減少する。しかし、伐採の方法が非常に複雑になりますので、それに対して人手がかかる。そのためには林道を相当多く入れなければならぬとか、いろいろな面もございますので、減っただけ人が減るというわけではありません。一方、公益的な要請に対しまして、たとえばレクリエーションに関連するいろいろな施設、その他国がどの範囲までそれをやるかというような問題もありまして、あるいは山に都市その他から国民の皆さんが相当多数来られます。そうすると、あとの火災の問題とかいろいろな問題についての管理を強化しなければならぬという問題もございます。そういう面にできるだけ職員なり作業員を配置がえいたしまして、内部措置で消化していくということを考えていかなければならぬと思っております。それらのことを含めまして、先ほど来申し上げておりますところの林政審議会の国有林部会で、いろいろとその対策を御検討願っておるわけであります。近くその答申をいただきましたならば、政府としましても、至急四十八年度の予算編成あるいは法律改正に間に合わせたい、かように考えておる次第でございます。
  171. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまの長官としてのお見通しで、人員は将来余るとお思いになるか、あるいは不足するとお思いになるか、その見当がついておられればそのことをお伺いいしておるわけです。
  172. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 ただいま申し上げたような作業をしているわけでございますので、結論的に、余るとかそういう見通しについては、これはなかなかむずかしい問題でございます。ただやはり、国有林と民有林を通じてみますと、現実問題としまして、都市周辺にありますところの山における労働力というのは非常に減少しております。ただ、東北なり、あるいはその他都市から比較的離れたところにおいては労働力はさほど不足していないということは、国有林、民有林通じて言えることであります。  そこで、こういったような現実の状態を踏まえまして、ただいま申し上げておりますような仕事の計画に沿って、国有林はどれぐらい必要か、かつ、管理のための定員内職員はどれぐらい必要かということについては、数字的にはただいま申し上げられませんけれども、いろいろ御検討願い、また内部でも必要な資料は出しておるところであります。ただ、在来の陣容、つまり、伐採事業とか、あるいは造林事業ということについては仕事が減少する。比例的とは申し上げませんけれども、減少する。ただ総体としては林業の中で管理の仕事が相当ふえる。これを全部できるだけ消化したいと思っておりますけれども、もしかりにこれが余るというようなことになりますならば、その他の部面に対してのいろいろな配置がえについてもさらに検討を行なわなければならぬ、かように考えております。
  173. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いま職員の人たちが心配していることは、こういうふうな機構改正によって将来いつの日か整理が行なわれる前提じゃないかということも一つあると思います。国有林の今後の運営についてはいままでどおりではいけないのですから、これは当然合理化していかなければなりません。そういう立場から、人員が減っていって、そしてその人員を他に転用するところがなければ、これは減らしていくということもやむを得ないかもわかりません、  しかし、ここで私がお考えいただきたいのは、大臣にもお伺いしたいのは、先ほども触れましたように、現在の国有林のこのなわ張りの中だけで考えますと、あまりやたらに木を切っちゃいけないということになれば、仕事は少なくなりますけれども、私は国有林の範囲をどんどんふやしていけばいいじゃないかと思います。いまの民間の山でも、有効に利用していない山なんか、これは公共のものですから、どんどん山を動かしていって、そして昔の山のように青々した山をつくっていくということは至上命令の一つだと私は思う。そういうふうな意味で、現在の国有林の伐採等考えても、仕事のしぶりから見れば、これは減っていっても、新しく国有林の対象になる地域を拡大していくということが私は正しい方向だと思うのです。大臣、見通しの問題なんですけれども、この問題についてお考えをお伺いしたい。
  174. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 国有林の仕事というものを、現在だけで、いまのお話のように拡大しなければ、合理化ということですから、私は労務者は当然少しずつ減っていかざるを得ないと思います。しかしながら、林業の労務者というのはなかなか他の職業には向かないようになっています。住んでいるところもそういうところでありますし、仕事そのものも。ですからこれを維持していこうというのには——林野というもの、森林というものは、ほんとうは空気とか水とか同じように固有的な性格を持っておるものだと私は思うのです。そういう意味におきましては、個人的な民有林も管轄というか、何も所有権を取り上げるということじゃありませんが、いろいろ育成していくというか、自然保護の対象にして管理していくような方向に持っていけば、いまの労務のほうもその方面へ充当できるのでございまするから、林野庁の仕事というものは、国有林及び民間の林野に対しても仕事をふやしていく、またふやすのが当然だと思うのです。そういう方向へ持っていきたいと思っております。
  175. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 戦中、戦後の荒廃の時期に、からくも日本の山に緑を維持していたのは国有林が中心だった。これは事実だと思うのです。そしていまの環境問題等もやかましいときに、国土の保全という点から考えても、山を個人のかってに利用さしてしまうということは、これは根本的に再検討する時期に来ていると私は思うのです。国有林の事業も内容的に再検討しなければならないという時期に来ているわけですから、民間のほうには土地収用法というものがありますけれども、有効に利用してない、環境を破壊するような行為をするところは、どんどんと収用していく、これは当然のことですよ。日本の共通の財産なんですから、そういうものを荒らすようなものは、これはどんどん国が収用して、そしてそれに有効な植林をしていく、こういう考え方をもうそろそろ出していく時期に来ていると私は思うのです。  そういうような意味で、・国有林に働いておられる方々に、それはレクリエーションとかそういう面にも利用できましょうけれども、山の植林という問題を中心にしてもっと積極的に拡張していくというようなことで大いに希望を与えて、日本の国土の保全のためにがんばってもらいたいというような気がまえを持たすことが必要だと私は思うのです。  大臣、これはできぬことはないですよ、政府がその気になれば。国会も、そういうことに反対する政党は、この段階でないと私は思う。そういうような時期に来ておりますから、ひとつ緊褌一番、そういうふうな画期的な一つ考え方を練っていただきたい。これは一般の土地の問題もありますけれども、山林の問題は違った視野で緊急に考えなければいけない時期に来ていると私どもは思うのです。そういうふうなときですから、大臣、いま、一歩進んだ御決意が環境の保全のために私は必要だと思う。そういうふうにお思いにならないでしょうか、いつやるかどうかは別として。
  176. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう考え方のもとに、いろいろ研究したり検討を進めていきたいと思います。
  177. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまおられる職員の人たちは、いろいろなエキスパートがたくさんおるわけですね。労務員にしても、作業員にしても、職員にしても。こういうふうなことで、機構改正のときには、ひとつ前向きの大きなビジョンを持って、職員ともよく話し合って、そして、こういうふうにするから一緒にやろうじゃないかというように話し合いをすべき問題の一つだと私は思うのです。どうもそういう点に欠けるところがあったように私は思うのです、この問題のいままでの運び方については。この問題を職員は心配しているわけです。これから林野庁なんてなくなっていくんじゃないか、あるいはことによったら小さくなって公社になるんじゃないかというような心配を事実しているんです。そういうあと向きのことじゃいけません。これはやはり、日本の国土を保全するためにも、そういう前向きの姿勢をもって、そしてしっかりした林野行政をやっていっていただきたい、このことを特にお願いしておきたいと思います。  なお、この問題については、今度の改正の帰趨の問題とあわせまして、まだ若干質問がございますから、質問を保留しておきたいと思います。これで終わります。ありがとうございました。
  178. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 伊藤惣助丸君。   〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕
  179. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 農林省設置法の一部を改正する法律案関連しまして、次の問題について質問したいと思います。  一つは流通機構問題 一つ農業団地の問題一つは国有林及び国有農地の問題、米価問題、自由化の問題サケ、マス漁場におけるソ連軍演習計画についての問題、この点について個別に申し上げますと、みな非常に重大な問題をかかえているわけでありますけれども、私はその中で特に問題点をしぼって質問したいと思います。  初めに、逆に申し上げましたが、サケ、マス漁場における演習問題について伺いたいと思います。これは、ソ連軍がサケ、マスの漁場のA地区において演習をする、こういう計画があったわけでありますけれども、その件について農林省ではどのようにこの問題について対処されたか。
  180. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一昨年、カニの漁場においてソ連軍が演習するというときに、ちょうど私もモスクワへ行っていまして、それをやめてくれということを申し入れましたら、率直にやめました。そういうようないきさつがあるものですから、今度、いまお話しのサケ、マス盛漁期に漁場で軍事演習を行なうという情報がありましたので、これは中止してもらいたいと話をすれば、あるいは受け入れるんじゃないかということに考えましたものですから、さっそく外交ルートを通じまして折衝しておりました。ところが、きのう、ソ連の日で五月十七日、太平洋中央部での軍事演習期間は五月二十日から二十五日までということになっておったのですが、中止する旨の回答がありました。
  181. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このことはもうすでに発表したのですか。いま初めておっしゃるのですか、こういう公の場で。
  182. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 水産庁長官と外務省で、きょうの昼ごろに新聞記者会見で発表したと思います。私は発表しませんが……。
  183. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この問題は漁業者にとって、またサケ、マスの問題については、国民の生活から見れば一つの非常に必要欠くべからざる日本人の食べものになっているわけですね。ですから、こういうことを通じてサケ、マスがとれなくなる、あるいはまたさらに値段が上がるのではないかということで、非常に心配しているわけです。きょう昼ですか、発表になったということでありますから、一応はそれなりの評価はしますけれども、昨年もこんな問題がありまして、やはり関係の官庁がそれに中止の要請をし、そして中止になった。今回もおそらくそういうふうなことになるのじゃないかと思っております。  私は、こういった問題について、その問題が起きた時点についてだけ言うのではなくて、やはり基本的に話し合う。しょっちゅうこんなことがあって、そのたびに申し入れをして何か中止してもらう、これで日本政府が借りるみたいな行き方はうまくない。やはり何らか基本的に、こんなことについては今後しないというような前向きで話し合いをすべきではなかったか、こう思うのです。その点でもう少し中身について伺いたい。
  184. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いろいろ事情はまた事務当局から御答弁申し上げますが、御承知のとおり、ソ連という国は官僚国家で、そして横の連絡があまりないところなんです。だものですから、すべての交渉において、漁業は漁業だけのほうで軍事面との交渉が横の交渉がなかったり、貿易面でまた貿易のほうの交渉がなかったり、こういう性格を持っています。でございますので、軍部は軍部、漁業は漁業でもってこういうことが間々行なわれるようなことがあると思います。でありますから、私などもそういうことが頭にあるものですから、そういうことを頭に置いてそのつど抗議をして中止をしてもらってきたのでございますが、全般的に魚をとる時期等においてはそういうのを避けたほうが私はいいと思うのです。そういうことの御注意もありますから、よくほかの機会にそういうことは話しておきたいと思います。イシコフ漁業大臣も近く来るわけでございますから、そういうことを頭に置いてイシコフ漁業大臣などにもよく言っておきたいと思います。  この前もモスクワに行ったときに、カニの漁場で演習するというのを、イシコフ漁業大臣や外務省にも、それから副首相にも、よく話した経験がございますから、そういうことに話は入れておこうと思います。
  185. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そのうちにソ連のイシコフ漁業相が来る、そのときにそういったことをお話ししておくといういま大臣の答弁があったわけですが、これは日本の自衛隊も、同じように漁場における演習を通じて、よく新聞等にも出ておりますけれども、網が切られたとか、あるいはまた、すぐそばに潜水艦が浮上してたいへん危険な目にあったとかいうことはしばしばあるわけです。ですから私は、演習が起きたからというのではなくて、やはり基本的に、こういう漁場の最盛期については、自衛隊といわず、米軍といわず、あるいはソ連艦隊といわず、そういうことはすべきではない。これは何もソ連軍だけではないと私は思うのです。そういう点ではいかがですか。
  186. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そのとおりと思います。米軍と日本の自衛隊とよく日本海でも演習をやりますが、それからソ連の船がよく網を切ったりなんかもいたします。ですから、別にどこの国ということでなくて、漁業を妨げないように演習するならするように、こういうふうにしむけたい、こういうように考えております。
  187. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで、一番やはり問題になりますのは、サケ、マスの場合は、これは公海上といえどももう少し考えて国際法的にそういった取りきめがあってもいいと私は思うのです。ですから、日本は国連において、それぞれの機関の中で、いつもいろいろな問題について審議には参加するけれども、問題を提起してこのことをこうしようというような、日本が進んでそういう場における発言というのは少ないように思うのですね。ですからこれは国際的規模で考えていく。日本の領海、あるいは領域、あるいはまた太平洋沿岸においては、それぞれの米軍や自衛隊との話し合いを十分することはもちろんでございますけれども、そういうふうに国際的な規模で考えていくべきじゃないか、こう思うのですが、その点はいかがですか。
  188. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私もそう思います。公海は自由なんでございまするけれども、領海なども二百海里などに広げる国も出てきておるし、公海においても、必ずしも絶対自由じゃなくて、お互いの国の協定があって、たとえばサケ、マスの漁業条約みたいなものもあるのでございます。そういう意味で、公海が絶対自由ではなくて、公海も国際的な利用の関係でいろいろ利用する場合もあり、そのときの一つの制約といいますか、そういうことをお互いに考える必要に迫られておるのじゃないかというような御指摘のような感じを私もいたします。でございますので、漁業の面からでも、こういう一つの演習などの制約というか、漁期の時期などにおいては影響を持たないようにし合うという話し合いなどはしてしかるべきものだと思います。機会を見て、そういうものの制約というか、させるように、外務当局や、あるいは何かの会議等において、そういうものを持ち出すようにしたいと思います。
  189. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次の問題として、流通機構の問題。私は都市議員であります。米価の問題にしても、あるいはまた肉の問題にしましても、私たち都会の議員から見ますと、何かあまりにも保護過剰といいますか、そういう面が感じてしょうがないわけです。そこでやはり私は、一番大事なのは消費者である。最近の物価高から見ても、消費者を保護するには物価値上げは防がねばならないという立場に私は立つでいるわけでありますけれども、どうも最近の物価は非常に値段が強いわけですね。どんどん上がっていく。そこで、過日、私は北海道のあるイカをとる漁場に行ったことがあるのです。それが、いわゆる漁師がとってくる原価というのは非常に安いわけですね。   〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕 ところが東京に帰ってきて同じものを買えば決して安くない。それがもう何十倍もしているというのが実態なんです。そこで私は、その問題について、どういう仕組みで消費者に渡るかということについて大体わかっておりますけれども、そういう流通機構の仕組みを簡単に教えていただきたい。
  190. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その前に。どうも都会の人や何かは、農業に対して過剰保護だと、ことに財界などは、物価の問題からいっても米などは外から買えば半値で買えるのだ、それをいろいろ保護しておると、こういう傾向が非常に強いと思うのです。しかし私は、いま都会の人とか農村の人とかいうことを抜きにしまして、農業と工業と比較すると、非常に農業というものは生産性が上がらないのです。機械化するといったって、農業をやっているからといって、一日農業機械を動かしているわけにいかぬが、工業なら一日じゅう機械を回転していれば生産があがっている。大量生産をやれ、マスプロをやれといったって、マスプロは農業はできないという関係もある。気候の関係もあり、天災もある。こういういろいろな関係があり、収穫も毎日生産できるわけじゃないのです。一日機械を動かして工場から毎日どんどん品物が出るというわけに農産物はいかない。そういうような関係ですから、本質的に農業と工業というものを考えると、生産性は弱いのですね。ですから、どうしてもこれは、国民の食糧を生産しているというような立場からいうと、保護じゃなくて、国が力をつけてやらぬと無理だ、こういうふうに私は考えて、これは保護じゃなくて、やはり農業というものを国である程度力をつけてやらぬと滅びてしまう。しかし、農村民が、農業が滅びたということは民族の滅亡で、土に定着していないような、国に定着していないような民族になっちゃってもしようがないじゃないか、その点からいっても農業に力をつけていく。しかし国民はみんな消費者なんですから、そういう面では、農産物も安く生産されるような方向へ国は力を入れてやるべきだ、こういうふうに私は考えるのです。  それはどういうことかというと、生産性を向上する。物の生産の面も、それから労働の生産の面も。労働の生産性を上げていけば、消費者に渡るのがまあ高くならないで済むのだ、こういうような考えを持っているわけです?ですから、農業プロパーの面から言いますと、生産性を上げて、そして国際的にもそうなれば競争力もわいてくるし、それから消費者に対してもそう高くなくて提供できる。  しかし、どうもこれだけで消費者に奉仕ができない。そこでやはり、流通面という方面で、生産性ばかりじゃなく、流通のコストを安くしたり何かして、流通面で消費者農業者が奉仕するという面も加えてやっていかなくちゃだめなんじゃないか。こういう意味におきまして、流通政策というものを非常に重要視してきて、今度の機構改革というところにも到達してきておるわけでございます。ことに農産物は生鮮食料品でございますから、保存があまりきかないというようなことがございますから、流通がほんとうに円滑にいって、そして安定的に需要供給がマッチしていきませんと消費者農業者も奉仕できない。こういう面で機構改革も考えておりますので、決して私は、農業に保護を主張している、農業エゴイズムで問題を持っていこうという考えではなぐ、やはり日本国民全体のための農業のあり方というものがなくてはならぬだろう。それに向いていっていると、こういう考えでございますので、どうぞ御了解願いたいと思います。
  191. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 水産物のおもな流通経路を申し上げますと、御承知のとおり、他の生鮮食料品と違いまして、一応産地でまず漁業者が水揚げするわけでございますけれども、水揚げされますと、産地に産地市場がございまして、そこで卸売り人の手を経て、仲買い人にせり売りあるいは入札売りで渡るわけでございます。産地の仲買い人と申しますのは、地元の卸売り、小売り業者、それに出荷業者、それに加工、冷蔵業者、要するに産地に加工がございますので、どうしても産地で一応値段をつけさせるという行為が行なわれるわけでございます。そこで分荷をされまして、消費地市場に出荷業者の手を経て委託で卸売り人に出荷されるわけでございまして、消費市場におきましては、御承知のとおりせり売りまたは入札売りで、卸売り人から仲買い人、仲買い人から小売り人というような手を経て消費者に渡っていくというのが通常の経路でございます。
  192. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま大臣お話で、財界からよくいわれるということですけれども、私は財界の立場じゃないのです。国民の、弱い大衆の立場に立って私はものを申し上げている。私はいま一つ事例をこれからあげますけれども、非常に過保護のように思える。しかしながら、現地に行ったら安いということも、私またこれは実地にこの目で見てきたわけです。それでどこに問題があるのかということをこれから質問したいと思っているわけなんです。  確かに生産性は低い。日本の工業の業界に比べて非常に生産性が低い。それは保護され、一人前になるまで政府が責任をもってめんどうを見る必要がある。いまは過渡期だ、したがってまだまだめんどうを見なければならぬ、それはわかります。しかし、それが一業者のみ保護することもおかしい。やはり総合農政といいますか、すべての業者に、たとえそれが圧力団体があろうとなかろうと、政府政府みずからの考えでその保護をすることが私は大事だ。そういう点がまた問題がある、そういうことも言えるわけです。  それでいま、一つの例として、水揚げから仲買い人を通じ、そして卸売り業者から出荷業者、そしてそれが市場に行ってせり売りになり、そして消費者に渡るということなんですが、それは聞いて私もわかっています。ただ問題は、なぜ現地でとれる一ぱいのイカ五円が、東京の消費者のわれわれに入るときに百五十円になるか。だれがそこで一番もうけているのか。畑でとれる大根一本が五円で、市場に持っていってもそれこそもう運賃にもならぬといって、大根やキャベツを腐らせる。しかしながら、われわれ消費者が買う大根が一本百円であり、キャベツがまた同じように百円である。だれが途中においてそれだけの利益をあげるのか、そこなんです。その追跡調査をやったことがありますか。
  193. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 私ども、いま御指摘になりましたような各段階別のマージンの調査というのは、しばしば実施をいたしておるのでございまして、ちなみに私どもが昭和四十五年から四十七年で調査をいたしました結果を申し上げますと、マアジが、大体産地の卸売り価格を一といたしますと、消費地の小売り価格が一・六六でございます。それからサバが二・七七、スルメイカが一・五三ということで、大体通常の生鮮食料品の場合と同様な形態になっております。それからさらに、私ども昨年の十一月に調査をいたしました結果を申し上げますと、マアジが二・五四、サバが五・六、スルメイカが一・六八ということで、前回の調査よりも若干流通経費の占める割合が高くなっている、こういう結果を得ております。
  194. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それは統計的に見てあなたがおっしゃるんだろうと思うんです。私は自分で見たことしか言いませんから。なぜ現地でとれる一ぱい五円のイカが百五十円で売られたか。あなたは専門家なんだから、おそらく仲買い人には幾らで売られて、仲買い人が幾ら、また、出荷業者が幾らぐらい取って、市場でどのくらいのセリ売りになって、それで百五十円で売られたか、その予想される一つのあれを言ってみてくれませんか。  その前に、私なぜこういうことを申し上げるかと言いますと、北海道で現地の業者の方々が、一つの箱に七十ぱい入るそうですけれども、きょうは何ぼとってきても一ぱい三百五十円だ、これじゃもう箱代にもならぬ。箱代は大体三百円ぐらいらしいのですね。ですから、もうとってきたって燃料費にもならぬと、みんな昼間から遊んでいるのですよ。漁港にたくさんいるわけです。それで、きのうまでは四百円だったけれども、きょうは三百五十円だ、もう少し相場がつくまでとりにいかないと言うんですね。じゃ、東京のほうの市場からどういうような申し込みが来ているんだと言ったら、何か五千箱とかなんとか言っておりました。その数はさだかでありませんけれども。それに対してこちらから何ぼやったか、その要求に対してその分だけは渡した、そのあとのものはどうした、もう捨てますと、要するに肥やしにすると、こういうわけですね。私はそこで非常に憤激にたえない思いをしたわけであります。なぜかならば、一ぱい五円ともいえる安いイカであれば、少なくともそれが幾つかの経路を通って東京に来た場合でも、あまりにも百五十円では高過ぎる。私も十日間様子を見ていましたけれども、やはり値段は同じ。私も初めてイカを見ましたけれども、ほんとうに生きのいいイカはやはり赤っぽいのですね。それがだんだん白くなる。そして、腐るときにまた赤くなるのです。私もだいぶん関心を持ちまして見ました。私たちはいつも、中間搾取を少なくすることが一番大事だ、一ぱい五円のイカなら、三倍、五倍で二十円とか三十円ならばわれわれもわかるけれども、どうして百五十円になるか。三十倍でしょう。この最盛期にとれたイカが、われわれ都会の者が食べるときには、生きの悪いやつがどうして一ぱい百五十円で買わなければならないのか、私は非常に疑問を持っているわけです。何回聞いてもわからない。だから、どういう経路で大体どのくらいもうけて売っているのかというぐらいのことまでも、あなたは専門家だからわかると思います。われわれが買うときに百五十円になったという、予想される一つのことを考えて言ってみてくれませんか。
  195. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 スルメイカの場合、私ども調査をいたしました数字に基づきまして申し上げますと、四十六年の十一月でございますが、これは境港の例でございまして、小売り調査店舗の数で十二店でございます。この際の段階別の手取り率を順次申し上げますと、生産者の手取りが五〇・一、生産者の負担の水揚げ経費が〇.三、産地の、先ほど申し上げました卸売り人のマージンが二・七、産地の仲買いのマージン比率が一.五、それから消費地の卸売りマージンが三・二、消費地の仲買いのマージン比率が七・六、小売りマージンが三四・六、こういうことでございます。
  196. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 イカについてはわかりませんか。
  197. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 いま申し上げたのがイカの例でございます。
  198. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 どうも、値段で聞かないと、パーセントだけじゃよくわからない。五〇・一というのは幾らの金額なのか、〇・三%というのは何ぼ上がったのか、ちょっと数字で読んでください。
  199. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 いまのは、私どもが具体的なものにつきまして現実にその追跡をした調査の結果の数字でございます。そこで私どもが「産地価格につきましては農林省の水産物の流通統計年報に基づく価格、卸売り価格につきましては東京都が実施いたしておりますところの東京都の中央卸売り市場の年報の価格小売り価格につきましては総理府の小売物価統計調査報告というもので、単純に横に並べて比較をいたしたものがございますので、これで申し上げますと、昭和四十五年、スルメイカにつきましては産地価格がキログラム当たり百十三円、東京都の中央卸売り市場の卸売り価格が百八十一円、東京都の区部の小売り価格でございますが、これが二百九十一円、こういうことに相なっております。
  200. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これもさっぱりわからないね。要するに、先ほどの現地の値段が五〇.一に対して、途中の出荷業者ですか〇.三%、仲買い人が二・七%卸売り業者が一・五%、その次の小売りの卸が三・二%、そのまた仲買い人が七.六%で小売りが三四・六%もうけて売っているわけだ、こういうわけでしょう、さっきの数字で言いますと。聞くたびに違うことを言われたんじゃ、こっちは迷っちゃうんだがね。  問題は、私が申し上げたい点は、あまりにも消費者が買うまでの中間的な仲買い人とか業者が多過ぎるということですよ、私の感じから言って。これはとても、政府はしろうとだし、できないというようなことを皆さん考えているかもしれない。ただ私は、現在の制度というものについてものすごく疑問を持っている。こんな制度は決していいとは思わない。できるならば、この産地の値段については、なるべく仲買い人とかいろいろな業者を入れないで、何らかの方法消費者に安く売る方法をあなた方が考えなければいけないと私は思う。一つのイカのことを聞いたって、数字では言うけれども、実際に値段がわからない。おそらくこういうことが予想されるでしょうなんということがびんとくるようでなくちゃ、私はしようがないだろうと思う。イカが百十三円で、その途中に百八十一円で、それが二百九十一円と言うが、ほんとうに百十三円、現地でそんなに高く売っていますか。こんなことだって正確じゃないじゃないですか。私は、そういうところに政府が真剣に取り組んでメスを入れてほしいと思うのですよ。  私は、そのことを、いつか機会があったら言おうと思っていた。きょう、幸いに農林省設置法がかかりましたから申し上げるわけですが、私は、この仲買い人と会ってけんかしてきました。あなた方は何でもうけるんだ、肥やしにしないでなぜ送らないんだ、二万箱あったらなぜ二万箱送らない、二万箱送れば当然下がるじゃないか。五千箱送ってあと一万五千箱分を捨てるなんてとんでもない、もったいないことをすると私は言いましたよ。そうしたら、かけ出しの公明党が何を言うかなんて言われましたけれどもね。これは事実ですから。その後いろいろありますが、記録されていますから言いませんけれども、たいへんなことを言われてきた。  そこで、私が申し上げたい点は、砂糖の例がいつも頭にあります。砂糖の場合はどういうふうに取り組んでいますか。
  201. 荒勝巖

    荒勝政府委員 砂糖の場合は、糖価安定法という法律に基づきまして、糖価安定事業団を設立いたしまして、輸入の粗糖につきまして、輸入水揚げの場所におきまして関税等徴収いたしまして、そしてそれを製糖メーカーに売却しているわけでございます。一定の安定上限価格と下限価格がありまして、下限価格を下回るような場合におきましては課徴金を徴収し、また一定の安定上限価格を上回っているような場合におきましては、逆に事業団において先ほど申し上げました徴収されました課徴金を積み立てておきまして、これを差額補てんをいたしまして、原糖の価格が下がるような仕組みで現在市場に出しておる。現状につきましては、昨年の末以来非常に国際糖価が暴騰いたしまして、原糖の値段が国際価格で急に倍以上の値段になっておる。平生の場合は四十ポンド前後であったのでありますが、一時は九十ポンド近くまで値上がりいたしまして、その結果、そのまま放置するならば非常に国内糖価が暴騰するおそれがあるということで、現在糖価安定事業団の安定上限価格を、百二十八円だったと思いますが、その価格水準に据え置くようにいたしますために、先ほど申し上げました安定資金を払い戻しまして、現在糖価水準は、国際糖価が非常な暴騰があったにもかかわりませず、現在の時点におきましては、昨年来おおむね砂糖の現物の卸売り価格は百十五円から百二十円の間を大体安定的に推移しておるのではなかろうか、こう思います。  一方国内糖につきましては、毎年政府が事業団による買い入れ価格を指示いたしまして、国内のビート糖なりあるいは南西諸島、沖繩のサトウキビからできます粗糖を事業団によって一定の価格水準で買い上げまして、そしてそれを国内市場に、国内市価になるような価格調整資金を出しまして、少し安く放出しておる、こういう形になっておる次第でございます。
  202. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 仲買い人はいるのですか。
  203. 荒勝巖

    荒勝政府委員 輸入糖の場合について申し上げますと、輸入糖の輸入業社が入れまして、それを精製糖メーカーに引き渡す、その間安定資金による売買操作が行なわれて、課徴金が取られたりあるいは課徴金の払い戻しがあるというかっこうになりますが、精製糖メーカーから元卸、卸、小売りという形で現物は流れております。現実にこの二、三日の粗糖の価格を申し上げますと、現物の価格はキロ当たり大体百十五、六円前後ではなかろうかと思います。それに対しまして、仲買い人が買い取りまして小売りに売却する値段が大体百二十五円くらいではなかろうかと思います。それから小売り業者がこれを売却する場合に、大体スーパーマーケット等におきましては比較的安くて百三十円前後、それから一般の商店では百五十円前後、それからデパート等、あるいは同じ砂糖でも銘柄品によりましては一番高いもので百七十五円くらいではなかろうか、こう思います。一般的には中間経費は、百十五円くらいで現物が精製糖メーカーから出ましたものが、平均的には百四十五円くらいで消費者の手に入っておる、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  204. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、必ずしもすべて砂糖のやり方がいいとは言いませんよ。言いませんけれども、少なくとも、原価がたった五円のものであるなら、それが三十倍もの値段になって消費者に渡るというようなおそれは、そういう事業団が買い上げをすれば絶対ないと思うのですよ。多少の輸入商社が介入をするかもしれませんけれども。さっきのお話を聞きますと、仲買い人が入ってきているわけですよ。私はここに、利幅を少なくしろというのではなくて、やはり流通機構そのものに大きな問題がある。だから、われわれ一般国民から考えますと、非常に高いものしか食べられない、政府は業者を保護している、農業に非常に過保護であるという印象を受ける。または魚の問題にしても、現地では安いのだけれども、途中でうんともうけさしておる、そういう業界に政府は奉仕しているというような誤解を実は受けるわけですよ。ですから、私は、一つの問題を取り上げて、自分が見た目で自分が追跡調査をした感じでものを申し上げておるわけですよ。  同じようなことが大根でもキャベツでもあるわけです。私は練馬が住まいですが、最近、大根がなくなりまして、練馬大根もどうもとても採算が合わないらしくて、昔は練馬は大根がたくさんとれて、つけもの屋さんがたくさんあった。それが最近ない。東北のほうでやっているらしいのですが、キャベツをおもにつくっております。このキャベツにしても、どうもいつまでたってもとらない。私はそのたびに車をおりて聞くんです。とてもじゃないけれども、キャベツだって市場に出したって採算が合わない。それよりもここで腐らしたほうが肥やしになっていい。手間をかけるだけ損だ、そう言って、キャベツ業者が畑で腐らすのですよ。大体キャベツというのは、かごに六つぐらい入れて一かごにするのですね。そうして持っていくわけですよ。だけれども、われわれ消費者が買うときにはそのキャベツはやはり百円。ではその方々は幾らで納めるか、全部でも百円もしない。それが実際の実情じゃないですか。だから、これは何も私が初めて言うのではないのですよ。農林水産委員会においても、物価問題の委員会においても、流通機構についてはみんなが同じような質問をたくさんしているのです。だから、私は、同じことを申し上げて同じ答弁を聞くつもりはないわけでありますけれども。……だから、こういったことについて何らかの方策を講じなければだめだと私は思うのですよ。何か考えていますか、イカの問題でもいいし、大根の問題でもいいし……。
  205. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 私どもの最近の調査によりますと、実は先ほど段階別のシェアを申し上げたわけでございますけれども、水産物の場合は、現在小売り店の扱っておるシェアが全体の九三%くらいでありまして、スーパー等の大口の小売りでございますが、これが七%くらいのシェアになっております。したがいまして、私どもといたしましては、できればそういう大口の小売り、これらをもっと利用するような形の流通にしていかなければならないだろうと思っております。  それからもう一つ、これも言いわけになるわけでございますけれども、魚の場合の小売りの年間の販売額が約七百三十九万くらいなんでございます。これは他の小売り業者の販売額に比べますと、約半分ということになっております。したがいまして、これでかなりの家族を養わなければならないということになると、どうしてもかなりのマージンをこれにかけざるを得ないということになりまして、どうしても小売り段階で値上がりの傾向が出てきておる。これはもう偽らざる事実でございます。したがいまして、私どもといたしましては、現在の小売りでの販売形態も、先生御承知のとおり、対面の調理販売ということで、しかも少量のものを買うこと、しか需要者のほうは多数の品ぞろえをしてもらわなければ困るというようなことで、そういう面も小売り段階ではあるわけでございます。私どもといたしまして、将来は、現在、流通の上で冷凍品の割合もずいぶんふえてきておりますが、生鮮品から冷凍品への移行というような形も取り上げながら、大量販売で、しか消費者のほうも大量に購入されるというふうに、消費形態を変えていくというようなことにもっと力を入れるべきだ、かように存じております。
  206. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 だから、あなたのいまおっしゃったことは、なるべく製造直売、あるいは消費者との間のいろいろなやつを取って、生産者から、卸からすぐ小売りというような簡単なものにしていきたいということが一つありますね。それは私もほんとうにそういうふうにしてももらいたいと思う。しかし、いろいろ問題はありますよね。小売り業者が二倍もうけるとか、生活のためにはやむを得ないということもやはりありますから、それはいいと思うのですよ。ただ、さっき申し上げましたように、いわゆる中間の〇・三%とか二・七%、七・六%、この方々は自分で目で見ておおっとこうやって、それでペ一パーを切ってもうけているんじゃないですか。そうでしょう。何か自分で持っていって運ぶんですか。そんなことはしません。要するにトンネル業者です。ひどい人は、見もしないでただペ一パーだけ切ってやっているじゃないですか。それで七・六%もうけている。こういうようなところは、〇・一%だってもうけていくことは問題だ。その方々も生活権がかかっているというなら、ほかの何らかの形でこれはまた考えるべきじゃないか。こういう中間の——中でめんどうを見るんではない、そういうものをはずして、そしてどこまでも消費者というものを考える。  物価が上がっている。皆さんの家庭だって同じじゃないですか。皆さんうちに帰って奥さんに言われませんか。最近の物価高いですね、あなた専門家でしょう、何をやっているんですかと言われませんか。何てあなたは答えますか。じゃ、あなたの言うこと、みんな聞いてないんですか。そんなことないですよ。みんなまじめにやっていますよ。だから私が言いたいのは、中間の仲買い人制度は決していいとは思わない。それはもういろいろ問題があることはわかりますよ。現在の仲買い人制度が、明治以来始まってもう百年以上の歴史がある。そう簡単にはいまの制度を打ち破ることはできない。ただしかし、将来においては、生産の値段は安いんだから、生産地の、あるいはまた漁場におけるとってきた一個当たりの魚の値段は安いんだから、何とか途中のいろいろなものを除いて、やはり消費者に安く食べさせてあげたいという面から考えて検討する必要がある。私が申し上げたい点は、いろいろな制度はあるかもわからないけれども、砂糖と同じようにやはり政府が買い上げてしまう。そういう中で、今度は消費者に対し直接——輸送機関を通じてでも何でもかまわない、小売り業者に持ってくる。仲買い人のやっていることを一切政府がやる。もし政府ができなければ、現在の仲買いをやっている人は月給制度にしてしまう。これはむちゃなことかもしれませんけれども、私はしろうとだから何でも申し上げます。そういう前向きな姿勢で取り組まない限り、この問題は解決しない。いつまでたっても高いものを食わなければならない。現地は豊作貧乏とかいって畑の中で腐らしてしまう。でも消費者はいつまでも高いものを食わなければならない。そういうことになるでしょう。そういう点、いかがですか。
  207. 小暮光美

    ○小暮政府委員 先ほどの御指摘は魚から始まっておりますので、差し控えておりましたけれども、仲買いの機能全般についての一般論として御指摘ございますのでお答えいたしますが、魚の場合には、水産庁長官が申し上げましたように、野菜と異なりまして、産地で陸揚げするという、これは具体的に一つ段階が多いわけです。多い段階に即していまのような形のものが出てきている。その分が一つだけ多いことは、実態としてお認めいただく以外にないと思うのですが、そこでの取引が適切に消費者に対して直結できないという御指摘に対しては、やはり青果物と同じ問題でございますけれども、常に生産者から消費者に売り渡すまでの中間段階、それぞれリスクを受け渡しておる実態がございます。米とか砂糖のようなものにつきましては、商品そのものについてはきわめて安定性がある。経済的な意味での需給の安定がある。価格の変動は当然ありましょうけれども、物そのものには非常な安定性がある。しかし、なまものの場合には、扱いますものにきわめて不安定な要素があるものでございますから、そのリスクを次々と受け渡していく。そのために鎖ができるというのが実際の取引の実態。この鎖をできるだけ数を減らすとすれば、結局、生産者の力を強くする、消費者の力を強くする、あるいは零細な小売り業者をどこかでまとめる。やはり従来、生産者消費者と零細な取り扱い業者は、それぞれリスクを負う力がないものでございますから、リスクを負わない。リスクをだれかに頼んで、あとは直接そこで売り放すとか、あるいは最終的に買う、あるいは全くの手数料だけをもらってリスクはだれかにかぶってもらってやるという形にならざるを得ない。そこでリスクを負うものは、逆にそこで危険をかぶるけれども、それを取り戻す意味でまたもうける。全体としてリスクをいわば売り買いしておる、こういう実態があるように思います。ですから、先ほどのほかの委員の方の御指摘にお答えしましたように、品ぞろえとか、代金の決済とか、あるいは価格形成、この三つをだれかがやらなければならない。これは個々の消費者とか個々の生産者がやるわけにいかないという実態がございますので、いまの品ぞろえと価格形成、代金決済、その三つの卸売り業務をだれがになうか。これまでは実はそこは、自治体が建物を公設して、その中に業者に入ってもらって、そこでガラス張りでやりなさいというのが指導の基本でございまして、物そのものは、次第に冷凍品とか加工品とか、そういうものに性格がだんだん変わってまいりますから、すべてのものを従来の方式の中に追い込まなくても、新しい流通の形もあり、物の性格が変われば新しい流通の形態もあり得る、その場合にだれがリスクを負うのが最も望ましいかというような角度から、流通します物そのものの物的な性格の安定性、冷蔵、加工等による安定性を次第に高めながら、そういうものを通じて取引のあり方を逐次望ましい方向に変えていくべきだ、かように考えております。  なお、一点だけ仲買いの機能を具体的に御理解いただけます事例を申し上げますと、これはむしろ仲買い撲滅論じゃなくて、仲買いがあとから発生した例でありますが 横浜の青果市場では、関係者の方々の考え方で仲買いなしにしてやっていこうということで、長年、荷受けが直接小売りに売るという受け渡しをやってまいりました。しかし、次第に小売りの数も多くなり消費者の数も多くなってくるということで、やはり市場の中で、だれかがほかの小売りの分もまとめて、右総代というかっこうでその買い受けをしたほうが便利ではないかというようなことが具体的に起こってまいりました。そこから、長年、仲買いなしでやってきましたけれども、何か望ましい形での仲買いというものができないものだろうか。一ぺん仲買いなしで何年かやってみて、その中から必要な機能というものが出てくる、その必要な機能をだれがやるか、こういう形での議論が出てまいっておるようでございます。ですから、昔からあったものが特権的にそこで何か利益を受けるというのではなくて、さっき申しましたリスクをだれがかぶるか、その必要な機能のあるところにはおのずからそういうものが出てくる、その必要最小限度にとどめる、かように考えるわけでございます。
  208. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほど和田委員からもいろいろ話がありましたが、実は私、去年、南米数カ国とアメリカあたりをずっと回ってきました。そこで、どういう流通機能かなということで、非常に関心がありますので見てきました。ペルーあるいはまたアルゼンチン、それからブラジルですね。ブエノスアイレス、ああいうところは、たとえば船が入ったり何かしますと市場を開くのですね、その場所で。だから直接みな買いに来るわけですね。何曜日ごろいつも入ってくる。そこでみんな一週間なり十日なり、物によっては一カ月くらい買い込む。なるほど、これは生産直売だから物が安いんだなということを私は実感したわけです。皆さんだって諸外国ずいぶん歩いておるでしょう。何も日本のそういう悪い仕組みになっているものの中から考えるのじゃなくて、外国のいい例を新たに取り入れるという考え方の中で、思い切って検討したらいいじゃないですか。あまりにもこだわり過ぎたり、あまりにもいままでの制度に注目し過ぎると私は思うのです。  たとえば、生産地、そこに政府の買い上げ公団を置いておいて、各地方自治体に市場を置いておいて、極端に言えばそこに消費者が全部買いに行く、それだけだって済む問題じゃないですか。そこで、製造業者に力がないとか、あるいはまたいろいろな問題でああだこうだというならば、そういう点に政府が補助金を出すとか、助成金を出すとか、もう少しこれは前向きで現在の制度を改善しない限りは、日本は、それこそ世界一悪い流通機構の中で、いつも消費者は高いものを買わなければならぬと私は思うのです。赤城農林大臣は私は非常に尊敬しております。たいへん実力があるので、また今度の機構改革についても私はいろいろな説明を聞きまして、やはり赤城農林大臣でなければ、こういう思い切った機構の改革はできないと考えております。ですから、こういうようなことについて、一ぺん思い切って、砂糖の方式を言うわけじゃありませんけれども政府の買い上げ公団、あるいは地方自治体における市民市場、こういうようなものについて、ある地区で試験的になんということでなくて、これはもう諸外国の例でそれで成功している国はたくさんあるわけなんですから、そういう点については大臣考えを伺いたいと思います。
  209. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまどういうこういうというようなことについて、私も成案があるわけではございませんが、ただいまの御意見等やその他いろいろな御意見を聞きまして、改革すべきものは改革していきたい、こう思います。
  210. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣がよく考えて、いま成案はない、しかし改善するものは思い切ってやるということをおっしゃったわけでありますから、どうかその点ほんとうに検討して、やはり物価値上げを押え、いろいろなこともありますけれども、少なくとも、原価が安いものが三十倍になって消費者の手に渡る、これはもうどう見たってこういった流通機構というものは問題があまりにもあり過ぎる。いつも高いものを見ると、私はにらみつけてその前を通っているわけです。ですから、どうかその点は十分検討して、前向きの機構改革するなり、あるいはまた——そういう仲買い人の撲滅ということを私は言っているんじゃないのですよ。仲買い人だってやはり人間だから、生きていかなければならない。やはりそういう過程の中から一つ一つはずして、そうして庶民に対して安いものを与えていく。たとえばイカが一枚それこそ二十円、三十円だったら、五人家族だったら五枚買いますよ。いまは百五十円のやつを一枚買ってきて五人で食べているじゃありませんか。それは先ほど、小売り業者が少ししか買わないと言いますけれども、安ければ枚数だって幾らでも買いますよ。値段が三倍、五倍になれば、枚数だってそんなに売れぬにきまっていますよ。昔はたくさん食べた覚えがある。いまはあんまり食べられない。これは皆さん方だって同じだと思うんですよ。だから、そういう意味で私はそういう制度の提唱をしておきます。  続いて申し上げますけれども、沖繩の問題です。沖繩は、この五月十五日以降一ドル三百六十円だと思ったのだけれども、実は三百五円である。そのうち五十五円については補償をするとは言っておりますけれども、たいへん物価が上がっている。五月十五日にドルから円に切りかえた。そしてこの一日、二日のうちにどんなに値上げしたか。これは新聞にも出ておりますけれども、小麦粉一袋五百五十グラムが復帰前は十セントだけれども、これは十八セントに上がっている。つまり八割上がった。それから食パン三百三十グラム十五セントが二十五セントになった。これは十セント上がっております。あるいはまた、豚肉ロース六百グラム一ドル五十セントのところが二ドル四十セントになった。ドルから円に切りかえただけで、これほどの物価騰貴があるわけです。  そこで私は、開発庁が沖繩の問題についてはいろいろ取り組むだろうとは思います。ただしかし、いまは沖繩が返還になった以上は、やはり農林省において何らかの行政指導、あるいはまた、開発庁だけにまかしておくことはできない問題が出てきておるわけです。こういうことについて、皆さんどういうふうに認識し、またこういう問題についてはどういうふうに今後対処するのか、この点伺いたいと思います。
  211. 中野和仁

    ○中野政府委員 復帰いたしまして後、数日でございます。私たちといたしまして、沖繩の物価の値上がり状況新聞で知るような状況でございます。ですけれども農林省といたしましては、沖繩の物価対策といたしまして、消費者米価は、内地に比べまして向こうは一応安いわけでございますが、一定期間それを据え置く、あるいは重要な食料品、たとえば加工用の牛肉、還元乳用の、バター、あるいは脱脂粉乳、食用油脂というようなものについては、向こうの前にありました関税並みにするために関税の減免をする。それからまた、砂糖消費税は免除するというような経過措置をとったわけでございます。ただいま御指摘のようないろいろな生鮮食料品を中心にしまして、あるいは小麦粉の値上がり等もあるということでありますれば、それらは十分調査をいたしました上で、農林省としましてやる手がありますれば、また打たなければならぬというふうに考えております。
  212. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに、このことは皆さんが関税を据え置きにしたり、あるいは税金をかけないで優遇措置をはかったりして——われわれが一番心配した問題なんです。それで政府の皆さんは、だいじょうぶだ、そんなことはないと言ったんですよ。だけれども、現実に起きたじゃないかと私は言っているんです。われわれがこういう問題について、物価が高騰するぞ、そしてまた、たいへん沖繩の方々は生活が苦しくなる、これは昨年の沖繩国会でも今度の国会でも、私たちは皆さんに申し上げてきたんです。これで十分だと皆さん言ってきた。しかしながら、現実は違うじゃないですか。見込み違いだ。これだけやったんだから値上げがあってもしようがない、打つべき手は打った、あとはしようがないのだ、こういう考え方では、私は問題だと思うのですよ。  そこで、こういう事態、私だって新聞で知ったわけですし、また電話をかけても聞きました。そうしたら、いまはもうたいへんだそうですよ。新聞で見て、私は信じがたかった。こんなにもすごいのかと思った。そうしたら、もういまは品物を買えるだけ買え、店は出すな、こういう傾向だというのですね。ということは、時間がたてば品物はずっと値段が上がる。いま買っておかないとまだまだ上がる。そういういわば消費者側にとっては買い占め、また売るほうにとっては、これはまた保存してもっと高くなったら売ろうという動きが顕著だというのですね。たいへんわれわれは混乱している、あなた方がそれを言ってくれたことはよくわかるけれども、何の歯どめもないじやないか、現実に物価はこんなに上がったじゃないか、こういうことを実は友だちから文句を言われた。だから私はきょうのこの委員会でも、もちろんこういった問題について開発庁がいろいろやると思います。沖繩県でもそのままおくことはないと思いますが、ただそれを事態の推移を見守りながら考えますなんということでは、私はどうしようもないと思うのですよ。だからこういう事態に対して、緊急に何らかの方策を講ずるために会議をやるとか、あるいはまた、こういった事態に対してほんとうに行政指導を強めるとか、沖繩県に対して、あるいはまた開発庁に対して、何らかのコメントをやるべきじゃないかと私は思うのです。その点いかがですか。
  213. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほども申し上げましたように、われわれもまだ的確には把握しておりませんが、ただいまそういうお話がありましたので、沖繩開発庁、それから現地にも事務局ができておりますし、県庁にもそういう方面の担当部局ができておるように思いますので、そういうところと十分連絡をいたしまして実態把握の上、どういう手を打てるか、早急に農林省といたしましても開発庁にまずお話しを申し上げたいと思います。
  214. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それはいつやるのですか。私たちが質問すると、あなたの意見はよくわかりました、たいへんいい意見なので検討する、考えますで、いつも何もやったことがない。いつやりますか。
  215. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほどから申し上げておりますように、復帰直後の円とドルの切りかえ等の問題での混乱が一部あるのじゃないかという気がいたします。原則的には、特に沖繩が非常に悪性インフレになったとか、非常に物が足りなくなったとかいうことはないのじゃないかと思います。国内に復帰したことでありますし、輸送の問題があるかと思いますけれども、物が不足してそういう事態が起きているというふうにも思えないわけでございます。その辺は明確にしなければならぬと思いますし、農林省だけで東京におりましてわかりませんので、早急に開発庁に、そういう話がきょうあったということをあすにでも申し入れをいたしまして、いろいろ相談をしてみたいと思います。
  216. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣はどういう感触ですか。
  217. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 せっかく私どもとしてはいいことができたのに、そういう点ほんとうに困ったことであるから、不安といえば不安をなくするような方法をとらなければいけないと思います。
  218. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほどイカの問題を申しましたが、今度は自由化の問題について、関連がありますので伺いたいと思います。  私も海外に何回か行っているわけでありますが、たえば一つの問題でバナナの問題があります。バナナは現地で買いますと一円か二円。私は、昨年ベネズエラでIPUの会議がありまして、大使館の人に、夜おそくなっておなかがすくと、あまりああいうところの食べものは食べられませんので、バナナを買ってほしいと言ったのです。そうしましたらもじもじして、バナナを買いに行かないのです。どうしたのかと聞いたら、その辺の人たちはバナナを買うことを軽べつするという。どうしてか。あんな安いもの食うのですかと言う。幾らだと聞くと、日本円にして一円ぐらいだ。中には五十銭のものもあります。私はそこで、とにかくあなた買いに行けなかったら、私が買いに行ってくる。ほかのリンゴとかマンゴとか、別なものにしてくれという話が実はあったのです。安過ぎて高級な人はあまり食べないらしい。そこで今度は帰ってきて台湾の友だちに電話かけて聞いた。やはり現地では一円ないし二円。非常に安いのですよね。それがわれわれが食べるときに、どうして一本五十円も百円もするか。これは銀座あたりへ行って食べると千円もしますが、これは特別なんですね。なぜそういうふうに高くなるのかということなんです。その仕組みについて、だれか知っていたら教えてください。
  219. 荒勝巖

    荒勝政府委員 バナナにつきましては、自由化いたしましたあと逐次輸入量が増大してまいりまして、四十六年におきましては九十八、九万トン、約百万トン近い輸入が行なわれております。これは世界でも有数な輸入国に現在なっている次第でございまして、現在バナナの輸入につきましては、政府といたしましては何ら制約をいたしてない次第でございます。その結果、むしろバナナにつきましては、われわれから見ておりますと、少し過当競争と思われるくらい輸入が激しく行なわれておりまして、かつては台湾バナナだけで二、三十万トン前後でありましたものが、逐次南米のほうに拡大してまいりまして、エクアドル方面から三、四十万トン近いバナナが入る。また最近では、台湾バナナをさらにフィリピンに移植いたしまして、フィリピンでも相当な開発が行なわれて、極端なことを言えば、南米のバナナ、台湾のバナナ、それからフィリピンのバナナと、三国競争という形で日本に入っておりまして、その結果、四十一年前後には、いわゆる浜相場といわれるものがキログラム当たり百十五円あるいはそれを少しこえるというふうな相場だったものが、四十五年ごろから逐次輸入が増大した結果、浜相場が非常に下がってまいりまして、昨年の六、七月ころはキロ当たり六十八円あるいは七十一円というような相場でありまして、現在では非常に浜相場が下がってきておる。  その結果、具体的に輸入している商社の数が非常に多くありまして、全体としてのこまかい、いわゆる正確な統計はわかりませんが、現在われわれが聞いております段階では、たとえば昨年の八月前後には、キログラム当たり浜相場で七十一円のものが卸売り価格が七十二円ということで、先ほど経済局長からお話がありましたように、こういう腐敗性のあるものが浜相場と卸売り価格との間にたった一円しか差がない。この間、いわゆる室に入れまして青いのを黄色くする必要があるわけでありますが、こういった腐敗性のあるものであるにかかわらず、ほとんどノーマージンというほど相場が逆に安くなりまして、その結果、推定でございますが、輸入商社だけで約百億円近い赤字を出しておるというふうにわれわれは聞いておる次第でございまして、その結果、バナナ輸入商から手を引かれた方も最近相当あるように聞いておる次第でございます。  その結果、小売りのほうも、四十一年前後にはキログラムム当たり二百五十円前後しておりましたものが、昨年一年間の平均が大体高いときで百六十円台、安いときには百二十円というふうなことになっておりまして、その結果、小売り価格でありますが、一本につきましては大体安い時期では十八円、高いときでは二十五、六円ということで、これはわれわれの資料では全部総平均でございますので、台湾物等はまだ比較的高くついておりまして、おそらく三十円をこえると思いますし、それからエクアドル物のように多少日本人の嗜好に合わないものにつきましては、さらに十五、六円から二十円というような相場で昨年一年は推移したのではなかろうか、こういうふうに理解しております。  われわれといたしますと、こういう腐敗性のあるものを南米等から長距離運んできて、しか輸入された関係者は相当な赤字を出しておる、かつて四十一年ごろには一本四十円前後だったものが現在約半値近いということで、むしろバナナの相場は安定的に下がってきているものというふうに行政担当官としては理解している次第であります。
  220. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あなたは、最近自分でバナナを買ったことありますか。
  221. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私自身買ったことはありません。
  222. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私はこの質問をするので、ほんとうに幾らかと思って、きのう実は四カ所でバナナを買ってきたのです。確かにあと一日か二日おけば腐るというようなものは四本百円でありました。けれども、バナナは実際問題として、あなたのおっしゃるようにそんなに安くないですよ。まだまだちゃんとしたバナナはやはり一本五十円もします。決してそんなに安くない。統計だとかいろいろなことをおっしゃいますが、実際にスーパーマーケットとかデパートに行ってごらんなさい。決してそんなに安くないです。なぜ一円のバナナがわれわれが買うときに五十円とか百円になるのか。これは仲買い人がいるのですか。
  223. 荒勝巖

    荒勝政府委員 バナナにつきましては、多少普通の青果物と違いまして、輸入商社がありまして、それから輸入港の近くでそれが仲間の間で取引されまして、先ほど浜相場と申し上げましたが、室の段階で一種の加工が行なわれる。青いものを黄色くするということで、それが一つの卸売り的な段階に入る。さらにそれが、ものによりましては直接地方の仲買い人の手に渡っていく場合もありますし、都市の場合は、あらためて卸売り市場で仲間取引されて、それが卸から中卸、仲買い人ですか、それから小売り、こういうふうに多少加工段階につきまして一段階多い、こういうふうに理解している次第でございます。
  224. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 どうもやはり仲買い人がいると高くなりますね。だから結局は、生産地はもう値段だけでほんとうに安くたたかれて、安く買い上げられて、そして消費者は高く買わされる。何の苦労もしない途中の中間の人が、何の肉体労働もせずに、ただ紙だけにらんで横目で品物を見て、そしてこうつけて、それでもうけている。そういう者が私は多過ぎると思う。自由化問題について、競争をいろいろさしておるようでありますけれども、ある時期においては特定の人にしぼっていましたね。それが問題だった。自由化になりましたし、また今度は直接やろうと思っても、そう簡単に役所は認可してくれないとは思いますけれども、いずれにしても私は、やはり消費者の生活を守り、消費者が安く食べられるような仕組みにするためには、どうしても中間的な存在であるこの仲買い人制度を何とかしなければどうにもならない、こう思います。ですから、たとえば、さっき言ったように、いままでいろいろな条件規制をして輸入をしておった。それを自由化してはずしたって、中間の業者は結局はもうけるのですよ。それこそ、室に入れて青いバナナを黄色くするような人は、幾らももうけていない。七十一円が一円しかもうけてない。だれがもうけているのです。そんな者はものすごい赤字なんです。しかし、その間にもうけている人がたくさんある。  私、実は大衆割烹によく行くところがある。そこでは安いものを、いつも生きのいいものを食わしてくれる。最近、航空便がはやってきて、カニとかいろいろな生鮮品の魚がずいぶん飛行機で来る。だけれども、羽田に着いた時点で、大阪の相場が高いというならまた大阪に戻っていってしまうというのです。だから品物が足らないというのです。だれがそうさしているか。やはり仲買い人です。大阪から出荷しても、そのときの相場を見て、東京に着いた、東京はもうからぬとなると、航空便を出して大阪に戻しても、往復さしても、なおかつもうかる値段で出せる。仲買い人は実はそうやっているのです。バナナが自由化になって実際にはものすごく安い、しかしながら、われわれが食べるとき高い。私は、小売り店が何倍ももうけているはずは決してない、こう思うわけです。だから、中間の業者というものについては考えなければいけない、私はその点を輸入の問題についても指摘するわけです。いかがですか、この点。これはやはり政治家の判断ですから、大臣ですね。
  225. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう傾向があると、農産物ばかりでなくて輸入して物価を下げなければならぬのにそれだけ反響がないというようなことで、通産省なんかでも、総代理店にメスを入れて、そして中間経費だの途中のもうけというものを少なくしていかなければならぬ、こういうことについて手を打ちつつあるわけでございます。
  226. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私たちはこの問題については、さっきから言いますように、前から言ってきました。だから今度は、政府がやる気がなければ、私たちが大衆と一緒に、そういった現在のようないろいろな問題点を告発する、そこまで考えているわけですよ。だからどうか政府は前向きに、そういった点について、なるべく安いものを消費者が食べられるように、あるいはまた中間における搾取が少しでもなくなるように、最大の努力をしていただきたい、こう思います。  それで、もう五時ですから、まだたくさんありますけれども簡単に申し上げますから、また前向きで答弁願いたいと思います。  一つ米価問題。大臣は十六日のときに消費者米価引き上げというような話をしましたけれども、これはどういう考えからそのようなことをおっしゃったのでしょうか。
  227. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のとおり物統令の適用を廃止しましたから、消費者米価へ直接政府が、このくらいだとか、いろいろ上げるとか下げるとかということは関係がなくなった。また食管法によると、消費者米価については、家計をそこなわないように経済状況もしんしゃくしてきめるという基本的な問題もあります。それで政府としては、生産者米価据え置きだ、据え置きだ、こういう不公平なことはできないじゃないか、こういうことを私はしばしば言っているわけであります。その裏を返せば、上げるということ。消費者米価はどうかということで質問が新聞からありましたが、これは払い下げ価格をきめるということなんだ、消費者米価でなくて。その場合に消費者米価にあまり影響のないように払い下げるということで、物価にしわ寄せが——これはまだきまっていない。その払い下げ価格がある程度高くなれば消費者米価にも影響する、直接じゃないが影響してくる。こういうことだが、払い下げ価格に便乗して消費者価格を上げるというようなことについては、いまも、物統令を適用排除してから、消費者米価が上がらぬようないろいろな措置をとっているが、もし払い下げ価格消費者米価とマッチしなくて、少し高いので払い下げるというような場合でも、なおさらそれに便乗されては困る。必ずしも消費者米価と同じ価格で払い下げるというようなことをいま言うわけにもいかない、その点は弾力的に考えなくちゃならぬと、こういうことを言ったのがああいう報道になっていると思います。
  228. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 弾力的に考えるということは決して上げることではない、こういう意味ですか。
  229. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いま申し上げましたように、食糧庁は、消費者米価を直接上げるとか下げるとか、こういうことでなくなりました。だけれども、払い下げる米の価格米価審議会に諮問してきめることになります。その際に、いまの消費者米価、標準米価どおりに逆算していって払い下げ価格がいくとばかりは限らない。ですから、弾力的だから少しは上がるかもしれぬというような含みを持って言いましたものですから、結局、消費者米価も上げるんだというような腹のようだというふうに報道があったようでございますが、いま決定はしていません。しかし弾力的で、私は今後は少しは考えなくちゃならぬじゃないか、こういう腹ではおります。
  230. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 弾力的に、まあそういう含みの話をなさったということですが、いまはきめていない。いつごろ、そんな腹づもりでいらっしゃるのですか。
  231. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 米価審議会を、いまの予定では六月末か七月の初めに開きたいと思うのでございます。そのときには当然諮問案を出さなくちゃなりませんから、いま、そういう算定する基準というか、資料も十分整っておりませんので、作業はそういう資料が整ってから始まるということになりますから、いまいつとは申し上げられませんが、いま申し上げました六月中旬ごろまでには、どれくらいにするか、こういうことは資料を土台としてきめていかなくちゃならぬと思います。
  232. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうすると、六月の米価審議会で答申がある。おそらくそれは引き上げのための答申が出るだろうと私は予想できますけれども、それに基づいて、じゃあその六月以降のある時期に、弾力的な、すなわち先ほど言った値上げを含む考え方を発表するという段取りになるわけですか。
  233. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 米価審議会に諮問する諮問案というものを政府でつくることになりますから、諮問をしてからでなく、諮問の前に、大体どのくらいの諮問をするかということがはっきり数字的に判明するわけでございます。六月の初旬から中旬ごろにそういう数字を出さざるを得ないと私は考えております。
  234. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この物統令廃止になりまして非常にいろいろ問題が出てきております。参議院の委員会でもわが党の柏原委員がいろいろ追及しておりましたけれども、何か米には一等、二等、五等まできめておいて、そしてその一番いいもの、一等米ですか、ササニシキだとか、いろいろなものがありますね。それが実はぬかが多かったり、実際にはそうではないようなものを一等品として高く売っておるという実態を柏原委員がやったようですが、これはやはり、物統令廃止するからには、そういったことについては厳にきびしく政府が行政指導をするという前提のもとに出発したのじゃないですか。
  235. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 物統令の適用排除につきましては、いま仰せのような、物統令を適用排除したから消費者米価が上がらないような措置を十分とるという前提で、またそういうことをして適用排除したのでございます。でございますので、その辺の事情等はもう御承知かと思いますが、食糧庁長官から御答弁申し上げますが、その後私も心配でしたから、いろいろ調査してみるということで調査させましたが、私のほうの調査では、物統令廃止以後小売り価格が上がっておるというふうには、調査の結果からは聞いておりません。しかし、その措置等につきましては、食糧庁長官から御答弁申し上げます。
  236. 亀長友義

    亀長政府委員 物統令撤廃後の米の販売価格につきまして私のほうで全国的に調査をいたしておりますが、撤廃前の三月、あるいはそれ以後の四月、現在に至るまで、ほとんど値上がりというものはしておらない、安定した水準を保っておるということが言えると思います。  それから御指摘の点は米の表示の問題であろうかと思います。御承知のように、米は長い間統制のもとにありまして、内容によって表示をして売るというような習慣は、普通の商品と違いまして、非常におくれておるというのが従来の偽らざる実情でございます。今度の物統令撤廃に伴いまして、やはりその点をできるだけ明らかにするような方向で、われわれのほうでも、表示の指導要領というものをでき得る限りやっていくというような方向で指導をいたしております。私どものほうで現在、各県食糧事務所等でその表示のしかた等の調査をいたしておりますが、率直に申し上げてまだ完全に徹底していない面があります。何ぶん過去そういうことをやらずにきたものでありますから。しかし、逐次こういうものも徹底して、消費者の要望にもこたえてまいりたいと考えております。
  237. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いつも政府は何かをやる場合、物統令を撤廃しても絶対値がりさせない。あるいはまた、先ほどの沖繩の問題じゃないけれども、復帰混乱は絶対起きない、歯どめはあると言いながら、実際にやってみるといつの場合でも失敗するわけですよ。実際にはいつも違うわけですよ。歯どめはきいていないわけです。お米の問題についても、あなたの答弁でいうと、何せ長いことやってきたから不手ぎわでついそうなったのだろう、だからやむを得ないじゃないか——まあ、そこまで言わないでしょうけれども、そんなようなニュアンスを私は受けますよ。だから、そうでなくて、もしそういう問題があれば、前向きでそういうことをみんなやるような——お米屋さんに申しわけないですけれども、やるならばやはりきびしい行政指導のもとに指導もし、これは大事な問題なんですから、いかにも表示をごまかして、そしてまずい米を高く売られた消費者こそいい迷惑なんですから、政府がお米の問題を考えた場合にも、お米屋さんの業者の立場をとるのか、食べる消費者の生活を守るのか、それはどちらにも、その場合によっては保護し、また守らなければならぬときもあるだろうと思いますけれども、現在のような物価高、現在のような時代においては、やはり私は、消費者保護のために政府は、物統令撤廃になったあとのいろいろな問題が起きないように、完全に掌握し指導する必要がある、そう思うのですね。ですから必ずしも私は指導不足だとは言わない。そういうような表示をごまかしていることについて、全部がやっているかとは言わないけれども、私はこれは重大な問題だと考えて、やはりそれなりの行政指導をする必要がある、こう思うのです。何かやりましたか、それについて。
  238. 亀長友義

    亀長政府委員 御質問の中の表示の問題につきまして、私のほうで表示指導要領というものをきめまして、これをきめるにつきましても、消費者の方の御意見も聞き、一緒に研究をして、どの程度まで現在の段階で表示が可能か、強制的に表示をするもの、あるいは任意に表示をしてよいものというようなものも一応基準をつくって、各都道府県で指導いたしております。私どものほうで徹底状況等も調査をしておりますが、御指摘のように確かに、まだ発足をしてから一カ月半でございまして、不徹底な面もございます。そういう点につきましてはさらに指導を強化するよう、各県にも通達をいたしております。逐次徹底をしてまいると考えております。
  239. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 農業団地の問題なんですけれども、現在、農業団地は、簡単に言ってどういう構想でいま考えられておるか、まずお伺いしたい。
  240. 中野和仁

    ○中野政府委員 しばしば農林大臣が申し上げておりますように、国際競争力を持つような農業にするように体質改善をするということと、それから食糧につきまして安定的に国民に供給するためには、米の過剰生産をいま生産調整をして押えておりますが、農業の再編成をする、食糧の需給バランスをとるということでございます。この二つをねらってやります場合に、いろいろの政策農林省はとっておりますけれども、急速にやらなければならぬ、こういうことになってまいりました際に、日本農業が何といいましても非常に零細な経営である。これでは生産性を上げるにも限度がある。やはりこの際はひとつ大きな近代的な機械器具を導入いたしまして、その機械が適正に動き得る範囲の規模といいましょうか、そういうものをとりまして、たとえば果樹、養蚕、肉牛、それぞれにつきましてそういう適正な規模をとって、中核的な農家としては専業農家が中心になろうと思いますが、兼業農家も一部労力を出してもらいまして、そういう大きな規模の経営を急速につくっていく、これが末端におきます生産団地でございます。その上に、これは理想的に申し上げての話でございますが、そういう生産団地を結び合わせたようなことで広域の流通団地をつくっていく。これもやはり、いろいろな品物につきましての集荷施設あるいは加工施設その他が要るかと思います。そういうものの施設を整備をする。結局、生産から流通まで一貫した整備をしていこう、これを急速にやろう、今度の構想を簡単に申し上げたらそういうことになるわけでございます。
  241. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 考え方はいいのですが、まず第一に農民はそれに対してどういうふうに考えておりますか。
  242. 中野和仁

    ○中野政府委員 この構想を立てまして、この間予算が通りまして、ただいまそれをどういうふうにして動かしていくかということをつくっておるところでございます。まだ末端の農家までそれは徹底しておりません。現在、各部落まで今度の構想が行き渡りますように、数十万部のパンフレット等をつくっております。それから農家の反応が出てこようかと思いますけれども農業の実態から言いまして、兼業農家がすでに八五%も占めておるような農業の実態もございますので、やはり、こういう団地にひとつまとめて団地的に農業を再編成していこうということは、農家からも理解は得られるのではないかと思います。
  243. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は基本的な問題で申し上げたいのですが、一つの構想なり一つの制度をつくる場合には、やはりそれなりの根拠が必要だと思うのですね。皆さんの考えている農業団地の構想を立てた根拠というのは、何に基づいて考えているのですか。
  244. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど申し上げたつもりでございましたが、外から見ますと、ここ数年来非常に自由化の要請が強い。またそれも、消費者の面から見ればある程度は受けていかざるを得ない、こういうことでございます。  それに対しまして、日本農業を健全に発展させるためには、やはり生産性を上げた規模の大きな経営に持っていかなければならぬということ。それからもう一つは、米の過剰生産を押えながら、まだこれからどんどん伸びていきます畜産なり果樹なり野菜なり、そういうものを国内でできるだけ効率的な生産をしていかなければならない。そうやっていくためには、やはり個々ばらばらの経営ではなかなか限度がある。そこで、先ほどから申し上げておりますように、大きな規模にまとめたやり方で、団地的に農村を再編整備したらいいんじゃないか、こういうところが根拠でございます。
  245. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そういう根拠はよくわかるのですが、やはりそれによって動かされるのは農民なんですよ。だから、何か問題があるときは、たとえばその構想を立てる前に、何を望んでいるのかという、たとえば単純に言ってアンケートをとるなりして、そこから最大公約数の意見をまとめて、それを根拠に構想を立てて、またさらにそれを普及していくという行き方なら、私はうまくいくのじゃないかと思うのですけれども農民を一切無視して、ただ単に先ほどのような理由の中でやるということについては、ちょっと私は問題が出るのじゃないかというふうに思うのですが、そういう点はどういうふうに考えていますか。
  246. 中野和仁

    ○中野政府委員 農業団地の構想を、こういうことにするかどうかということは、アンケートはとっておりませんけれども農林省といたしましては、統計調査部がございまして、農民の意識調査は毎年のようにいろいろな角度からやっております。そういう中からくみ取りまして、今回のことは直接それは結びつくかどうかは別といたしまして、絶えずそういうことでは農家の意向というものをくみ取っております。また、県を通じます農業改良普及制度におきましても、去年から、農家の意向というものをどういうふうに普及事業の上まで上げていって、それをそしゃくしていって、それをまたどういうふうに全国に普及するかという事業も新しく始めております。そういう面からいろいろ農家の実情を知りながらこういう構想を立てたというふうに御理解いただきたいと思います。
  247. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いつもやっている意識調査の中から抽出して考えたということになりますかね。私は、もっと具体的に、今度はこういうことにやりたいのだけれどもどうか、というようなことをやるべきだと思うのですよ。だから、この構想に基づいて、いろいろあるでしょうけれども、その場合、常に農民の意思というものを尊重してやっていただきたいと思いますね。  それからこの作物の導入問題ですが、どのようにされるのか。その問題について伺いたいと思います。
  248. 中野和仁

    ○中野政府委員 作物の導入といいますと、いまの農業団地がどういうふうに入れていくか、こういうことでございましょうか。——それにつきましては、農林省といたしましていま考えておりますのは、今度の農業団地というのは、それぞれの地域に応ずる必要な特性があるわけでございます。それにつきまして、作物別にいろいろな施設をつくっていったらどうかというふうに考えておるわけでございます。
  249. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 個々の問題についてはあまり明確に言えないわけですね。言えますか。まあ、聞いてもだいぶ時間がかかりますからそれはいいとしまして、いずれにしても農業団地の問題については、今度初めて前向きでやるわけですよね。だからその点について、先ほども言いましたように、それを経営しまた推進するのは農民でありますから、どうかくれぐれも十分農民の意思を反映しながら推進していただきたいと思います。その点について、大臣、いかがですか。
  250. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 実際にやるのは農民なんですから、農民の理解といいますか、なしにはでき上がらないと思います。いまおっしゃいましたように、実際にすでに着手しておるところもあるのですね。たとえば野菜の指定産地というのがあるでしょう。これをもっと強化して組織化して団地化すれば、これが野菜の団地ということになるし、あるいはまたビニールのくだものや野菜なんかやっているところはそれをもっと強化するということもあるし、それから畜産もある。そういうふうに、すでに団地という名前なしでも団地的にやっておるところもあるのですね。そういうことをやはり考えて、こういう方向に持っていったらどうかということにしたわけでございますが、実際それを団地化して普遍的にやるということについては、特に農民の意向というか、協力なしでやれるわけではございません。かってにこっちでやったって、そんなものは無意味でございますから、そういう点は、十分農民意欲とか方向というものとマッチするような方向で指導していきたい、こう思います。
  251. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最後に国有林と国有林農地の問題について伺います。  国有林野ですか、これを扱う将来の構想として、何か公社などにするような意図があるように伺っているのですが、その点はいかがですか。
  252. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私、前の農林大臣をやってから休んでいましたが、いろいろ外からの意見を耳にしたことがございます。国有林の経営が赤字になる。これを公社みたいにするとか請負みたいにしてしまえばそんなものもなくなっていいんじゃないか。これは、林野庁にいた林野庁長官などの一人の意見なども、そんなことを私、聞いたことがございます。しかし、いま国でやっていて、公社でうまくいくということはちょっと私は考えられないと思います。国の鉄道だってそうでございます。国の鉄道でやっていたのが公社にしたらよくいったかといったら、いま値上げしなくちゃならぬといって赤字になっている、こういうことであります。でございますから、要は、これは国有林は国民のものであり、しかも、国民のものであるからして公共的な機能というものが本来あるんですが、それを阻害したわけではございませんが、独立採算という方面にばかり追われてきていて、いろいろな批判もあるようでございますから、そういう国のもの、そうして国の自然保護の問題やら公益的の機能というものを十分発揮しながら、国が責任を持って管理していく。政府が信託を受けているようなわけですから、そういうような考え方で、私は公社、公団というふうに持っていくということには賛成しないわけでございます。
  253. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いや、私も実は大臣考えが似ていますよ。要するに、公社にしたら必ずしもいいとは思わない。ただ、やはり林野庁が国有林を管理しているわけですが、実際、林野庁といっても営林署がやっているわけですよ。問題は、この営林署が独立採算制というところに問題がある。環境庁長官がずいぶんと、どんなあれがあるかわかりませんけれども、強いことばで林野庁を非難した。われわれも新聞で読んでおります。しかし、同じ与党の大臣が、根本原因を全然理解しないで言うことも私はおかしいと思う。要するに、確かに事業であれば、やはりその森林を伐採してそれを売って、そうしてこの赤字を解消したりまたは林野業務をやるという現在仕組みになっている以上は、環境庁が何と言おうと、やはり山の木は切らなければいけないというのが、実態的に今後も続くだろうと思うのですね。だから、私は農林大臣に、この辺で明確に言ってもらいたいと思うのですよね。環境庁長官がああ言っていますけれども、農林大臣は、いろいろ答弁なさっているでしょうけれども、もう一回明確に、ああいう問題についてどう思うのか、その所見を伺いたいと思います。
  254. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 木を切らないで捨てておくというなら、林野庁も何も要らないわけです。ほうっておけばいいんですから。しかし、森林政策とか森林行政というのはそういうものじゃなくて、旧幕時代からよく言っているのですが、木を切らぬばか、木を植えぬばかといって、木も切らないのもばかだが、植えないやつはなおばかだ。ですから、木を切ったらば、しかもそれはあんまり皆伐なんかしちゃって、全部切っちゃって荒らしちゃったら、これは公益的機能がなくなりますから、切って植林をしながら造林をしていく、そしてより公益的機能を発揮させ、あるいは自然保護を十分やるようにするというのが森林政策であり、森林行政だ、こう思います。ですから環境庁長官にも、私はそういうことを直接会って言ったことがあるのですが、今度の法案についても、何も保安林だって切ることがたてまえになっているわけじゃない、切らなくて公益的機能を発揮させる。その機能を十分に発揮してないじゃないかと言われれば、まだまだ足らない面があるから直すけれども、木を切らせないために、環境庁は全部森林を切るのはいけないというような考え方。大きな考え方でないぞ、違っておるぞ、こう私もちょいちょい言っておるわけでございます。  そういうわけで、私は森林の持つ機能、そういうものを十分に生かして、公益的機能も、それから採算上も、独立採算できなければ一般会計から、公益的機能を造成しておるのですから、ある程度入れていかなくちゃならぬ。そういうことによって機能を十分発揮させなくちゃならぬ。前向きに森林というものを保護し、育成していく、こういうことが必要だということを、私は前からも、いまでも考えておるわけです。
  255. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、環境庁長官がいろいろなことを発言しておりますけれども、その中でやはり自然保護ということは大事なことだと思います。環境庁長官の言うとおり、そう思う。ただ林野行政というものが独立採算制になっている。赤字を補てんするためにどうしても木を切らなければならないという立場に追い込んでいる政策、これはまた問題ですね。これについてどう思いますか。
  256. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御意見のとおりと思います。環境庁が言っていますように、森林の自然保護、これは非常に大事で、その点はそのとおりに思います。  それから独立採算のために、赤字を出すまいと思ってむやみやたらに乱伐したりするというようなことは、これもよくないと思います。そういう面で、やはり独立採算ではありますが、森林の持つ公益的機能を一そう発揮させるためには、これは、独立採算で、そろばん勘定で森林経営やらせるということは、それは森林の機能をなくしてしまうというようなことになりますから、だから、一般会計からでも繰り入れというようなことによって、国全体として環境を保護していく、こういう方向に持っていくのが至当ではないか、そういうように考えております。
  257. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ここにも、ある一国民が環境庁に味方して、そのとおりだ、現在、林野庁というものは林野荒廃庁だ、だから林野庁なんかつぶして、現在やっているのは営林署だから、それでやったらどうだということが出ております。私はこのことはよくわかります。一国民として、確かに自然を保護し、はげ山をつくらないというためにも、いろいろな災害から守るためにも、木はあったほうがいいにきまっております。だけれども、会計上、独立採算で赤字であるということについては、やはり切らざるを得ないときがあるだろうと思います。制度上において独立採立制をどこまでも押しつける、この行き方に問題があるわけですから、いま大臣が、一般会計からも補てんするというようなことをおっしゃいましたから、林野庁長官も、自然保護というものをよく考えながら、ひとつしっかりした林野行政というものをやっていただきたいと思います。この点、長官、いかがです。
  258. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 ただいま御指摘のとおりでございまして、実は独立採算制の問題がたいへん議論されているわけでございますが、この制度ができました理由を簡単に申し上げておきます。  戦前でございますが、森林の伐採から得られました収入というのは、相当部分が一般会計に回っておりまして、造林とかあるいは治山に必要な経費は森林に十分戻っていなかったわけです。戦後、こういったことでは山は荒廃するということで、林政統一と同時に、森林の収入でもって一切の支出をまかなうという独立採算制度ができたのは、山を守るということが実は趣旨であったわけでございます。収入の約九割以上は木材販売収入なんです。最近では支出のほうの六割くらいは人件費でございます。したがいまして、木材価格は、最近、御承知のように外材の圧迫もありまして、低迷いたしております。一方、人件費は、御承知のように他産業並みに上がってまいりました。当然このバランスはくずれてまいるということから、非常にむずかしい状態に入ってきたわけでございますけれども、こういうような赤字状態を消すために、支出を無理して、たとえば人件費を切り詰めるとか賃金を安くする、あるいは、収入をあげるために販売方法が適正に行なわれないというようなことはやるべきではないと思っております。かなりそこが、一言に申しますならば合理化の問題でもございますけれども、合理化すべき点は十分合理化して、なお、先ほど来大臣がおっしゃっていますように、公益的な事業、例を申しますと治山事業でございます。治山事業は全部木材販売収入でまかなっておったものでございますが、四十七年度から六十六億、一般会計から初めて導入をいたしまして、詳細に申しますと、その六十六億のうち、二十億ばかりはいままでありました積み立て金、これから回したものではございませんけれども一般会計からだけ導入したのはこれが初めてでございます。大臣おっしゃいますように、これは一つの例でございます。事業については、国民の皆さんが納得していただけるような、合理的な、近代的な経営をいたしますと同時に、公益的な事業の面における経費については一般会計にお願いするというふうにしていくべきでなかろうか、かように思うわけであります。  なお、環境庁と農林省との間は、環境保全法案につきましては話がまとまりまして、環境庁はただいま他官庁との折衝に入っておる模様でございます。  なお、自然保護につきましては、私たちも、大臣のおっしゃいますように、従来は何十町歩というような連続伐採をしておりましたが、これは能率重点でございまして、最近は、限度は二十ヘクタールというふうに設け、なおできるだけ択伐なり禁伐なり、特に鉱山地帯にはそれを設けるという方針に切りかえておるはずであります。  先生御承知のように、昭和二十九年、洞爺丸の沈んだ際に、北海道のエゾマツ、トドマツの天然林が、二、三百年を経た天然林、老齢過熟な天然林でございますが、一挙に倒れまして、これの処理には五、六年かかりました。私たちは、こういう森林については、少しずつ切りまして、中に若い木をまぜて、そして健全なものにする、しかもその蓄積が倍になるということを目標に自然保護を実は考えておるわけであります。これは一例でございます。御指摘のような方針に沿いましてやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  259. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 環境庁長官はずいぶんときびしい口調でおっしゃったわけですが、具体的な例はどこかあるのですか。私は昨年国政調査によりまして、五島列島の林野行政を視察しました。非常によく植えてありまして、あれはたしか六月ころ行ったと思いますが、六月でも山が赤くなっているので、こちらはもうすでに秋かなと言ったら、そうじゃない、マツクイムシが松を食っているので全部赤くなっているのだ。そこで営林署は、そういうものを切って、マツクイムシに強いようなものを植えている。非常にりっぱな営林署の林野業務を見てきたわけでありますけれども、事実、環境庁長官の言うようなところがあれば大問題だと私思うのです。そんなところがあるわけですか。
  260. 福田省一

    ○福田(省)政府委員 実は伐採にしましても、造林にしましても、長期計画はおよそ五十年の見通しを立ててやっておりまして、それに基づいて十カ年計画をつくり、さらに五カ年計画、さらに毎年の計画をつくって、計画的に実行いたしておるわけであります。ただ、たまたま能率重点で、過去におきましては若干行き過ぎた伐採をしたとか、その他手抜きもあるいはあったかもしれません。この点につきましては今後引き締めていきたい、かように考えておるわけでございます。先ほど申しました台風、つまり風に強い木であるとか、山火事、火災に強い木であるとか、虫に強い木であるとか、その場所場所によって林相をつくっていかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。  先般、環境庁長官にお会いしましたときに、法案がまとまったのでどうもありがとうと実はお礼を言われたのであります。新聞紙上でああいうことを言われたのはどういう意味か、実は私もよくわからないのであります。具体的な事例も承知しておりません。しかし、自然保護については、環境庁長官のおっしゃることは当然のことでございます。ただ、中身のやり方の問題で若干意見の相違はありましたかもしれませんが、よく連絡いたしまして対処していきたい、かように思っております。
  261. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 非常に御理解をいただいて私は感謝しておるのですが、どうも私の見ている範囲では、非常に国有林の木は育っていると思うのです。実に木並みもよくできている。私は終戦前からこういうことに関係をしておったのですが、終戦時などには木材の供出でずいぶん山が荒れてしまったのです。その荒れたのが、国有林の中も相当回復したのですから、私はむしろ感謝されていいのではないか。しかし、いまの林野庁長官お話のように、ときどき乱伐というか、伐採し過ぎたりなんかした。あるいは、それが先ほども話が出ましたが、秩父のあれのような、あまり好ましからざる不正のような事件などもありましたので、そういう点から環境庁長官も憤慨している点もあるだろうと思いますが、木は確かに私はよく植わっているところを相当見ております。これに対してよく御認識、御理解いただいてありがたいわけでございます。お礼を申し上げておきます。
  262. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 事実あれば、私も環境庁長官のとおりだと思うのです。そういうときには、あればやっぱり林野庁長官の責任ですから、それはしっかり行政指導していくのが当然だと思います。その点もやはり国民から見れば、確かに林野荒廃庁なんとまでいわれてしまうのですが、具体的な事例がないのにいわれたというようにあなたはおっしゃいましたけれども、そうであれば、やっぱりあなた自身も、ちゃんとやっている、それはどこでしょうか、もしあれば行政指導しますぐらいの、前向きで自信を持って取り組んでもらいたいと私は思います。  それで、国有林の問題はそれくらいでありますけれども、実は国有農地というのが非常に多くありますよ。私は実は資料を要求して、いただきましたけれども、この二十三区内の都会の中にも国有農地がたくさんあるわけです。これはおそらく、戦前、戦中あるいは戦後にかけて税金のかわりに農地を物納したというようなところ、あるいはまた、国有地を払い下げたけれどもその部分だけが残っておったというところがあるのじゃないかと思うのです。しかもその数は、各区全体を見たわけではございませんけれども、非常に数が多い。たとえば一例を申し上げますと、練馬区だけでも百カ所近くある。しかもその坪数はきわめて小さい。中にはたった二十坪だとか三十坪であるとか、あるいは大きくても百坪とか二百坪とかであります。しかもその中には、もうだれが管理しているのかわからない、いわば管理者不明の国有農地もたくさんあるわけです。たまたま練馬なんかでも、痴漢がいたりいろいろな犯罪が起きる。どうも考えてみますと、管理者が不明なようなそういうところにいろいろな犯罪が起きる、こういうことも実はあるわけです。ですから私は、こういう国有農地については原則として民間人には払い下げない、そのことは知っております。だけれども、その区、地方自治体なり、あるいはまた公共の用地または福祉施設、たとえば保育園であるとか老人福祉施設とかいうものに対しは、やはりある程度考えて払い下げをすべきではないかと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  263. 三善信二

    ○三善政府委員 国有農地の売り払い、払い下げの問題につきましては、先生御承知のように、昨年五月二十五日に施行になりました国有農地等の売払いに関する特別措置法、これに基づきまして売り払う場合には、できるだけ公用、公共用途に積極的に活用するようにという趣旨になっております。私どもさっそく調査をいたしまして、とりあえず市街化区域内の農地、それから市街化が非常に著しくなっているようなところに位置している農地、そういう農地を調査いたしまして、他方、都道府県を通じまして、公用、公共用の用途に希望があるものが一体どの程度あるかということを、昨年六月ごろから九月にかけて全国的に調査をいたしたわけであります。公園緑地とか、あるいは福祉施設とか、そういう希望が現実に四百六ヘクタール出てまいりました。したがいまして、これに基づきまして、実は現在売り払いの手続を準備している段階でございます。  と申しますのは、そういう不用地ということは、まず法律上認定をいたさなければなりません。認定をして、そのあと旧所有者に売り払いの通知をする。売り払いの通知をいたすような場合に、もとの所有者は、これの売り払いを受けたら、そういう公用、公共用にそれを回すように。また地方公共団体等は、その旧所有者に事前に、売り払いを受けたあとぜひ自分のほうに売ってくれというようなことを勧奨といいますか、指導といいますか、そういうことをやるようにしておるわけであります。したがいまして、現在、不用地の認定の手続をするにしましても、やはり地積を確定する、あるいは価格がどの程度あるか、これは鑑定人に鑑定させておるわけでございます。そういう準備をして、今後、先ほど申し上げました特別措置法の趣旨に即応しまして、できるだけ公用、公共用の用途にこれを活用するように、私ども指導及び積極的な努力をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  264. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは実例ですから、各区または各都道府県でもあることだろうと思いますが、たとえば道路をつくるという場合、お金が少ないからどうしても代替地を求めるわけです。けれども時価が高くてなかなか話し合いがつかないという場合があります。しかし道路は公用地をつくるわけでありますね。だから私は、代替地にもうまくそれが活用できれば非常にいいという考え方もするわけであります。ですから、地方公共団体に等価交換の用地をやることによって、私は非常に効に生かされていくというように考えられるわけです。さらにまた、児童公園であるとか、あるいはまた社会福祉施設であるとか、実は東京あたりはとても土地が高くて、何をするにしても手がつかない。ほしいのだけれども、またやりたい人がいるのだけれども、事実できない、これが現状なんですね。そういうところにうまく活用できれば、これは非常にいいのじゃないかと私は思っているわけですが、そういう点で地方自治体の長とも話し合っておりますけれども農林省にそういう考えがあるのならば、私は積極的にこういう問題は推進したいと思っております。そういう点はいかがですか。
  265. 三善信二

    ○三善政府委員 先ほど申し上げました四百ヘクタールの中には、公園用地あるいは道路、河川等の敷地、それから学校の施設用地、公営住宅等の用地、医療、福祉施設用地、こういうような、全都道府県を通じて私ども用途を一応調べております。したがいまして、今後売り払います場合には、地方公共団体と十分連絡をとり、やっていきたいと思っております。ただ、先生御承知のように、これはやはり原則としては旧所有者に一応売り払って、その旧所有者が買った農地を公共用に地方公共団体等に回すというかっこうになるわけです。旧所有者が、自分はもう要らないということで権利を放棄した場合、あるいは事前に旧所有者の方が公共団体等と交渉し、協議をいたしまして、これは公共団体のほうに売ってくれというような話し合いがついているようなもの、事前に権利放棄されるような旧所有者の場合には、直接そういう公共団体等に売ることができるわけでございます。原則は旧所有者に売るわけでございますから、旧所有者に売り払う場合には、私どもは、先ほど申しましたように、ぜひこれを公共用途に向けるように勧奨し、また指導し、地方公共団体も旧所有者と十分アプローチをとってやっていくというふうにやっていきたいと思っているわけでございます。先生おっしゃいましたような問題につきましても、私ども、当然都道府県と十分連絡を密にして、現実に売り払いをいたします際に、できるだけそういう公用の用途に活用されるように指導いたしていきたいと思っております。
  266. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ちょっとそこで問題あると思うのですが、要するに旧地主に返す、その人が断わればなんということはまずないですよ。まず旧地主はほしいですよ。いつか坪一円何十銭とかなんとかでずいぶん問題になったことがございましたけれども、私は、一たん国有農地、国有地になった場合は公共用のほうを優先的に話し合いに応ずるというのが、やはり国としての基本的な行き方ではないだろうかと思うのです。それを、そういうようなものに申請しても、旧地主がほしいのだから旧地主のほうにやりますということになりましたら、やはり何にも活用ができないということになると思うのですが、この点はいかがですか。
  267. 三善信二

    ○三善政府委員 最初に申し上げました、昨年の五月施行になりましたこの国有農地等の売り払いに関する特別措置、これは先生方の議員立法で、いま私が申し上げましたような方法で公共、公用等に積極的に活用するという趣旨でございます。私ども、できるだけそういうふうに向けるように最善の努力をいたして指導していきたいと思っております。現実に地方公共団体とその旧所有者と話が事前について、公共用に当然向けるというようなものもあるわけでございますし、必ずしも公共用に旧所有者が絶対権利を放棄しないというわけでもございません。また私どもも、できるだけそこのところを公共用に向けるように最善の努力をいたすということでやっていきたいと思っております。
  268. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに国有地や国有農地を個人に払い下げしないという原則は、安く払い下げをして金もうけをする、あるいはまた国有地や国有農地を払い下げて、そこを私的なものに使って、そこで大きな利益をあげる。金もうけも利益をあげるも同じですけれども。そういうことが前提で、国有農地は国民全体の財産なんだ、だから個人には原則として払い下げしないで、公共とか公用のためならば払い下げするけれども、なるべく国民全体の財産は維持していくという原則ではないかと私は思うのです。ですから、先ほどおっしゃいましたように、旧地主に返す、もし旧地主が断われば公共地に次にいく。第二義的になっていますね。そうでなくて、第一義的に、国有地あるいは国有農地というものは、公用もしくは社会福祉施設等について優先的に払い下げを認めていくという行き方のほうがいいのじゃないかと思うのですがね。その点いかがでしょうか。
  269. 三善信二

    ○三善政府委員 この国有農地といいますのは、やはり農地改革で地主から強制的に買収した農地でございます。したがいまして、これは自作農創設維持、自作農創設の目的に供するということで買収した農地でございます。それを現在までまだ国が買収したままで持っている、自作農の創設に供し得る余地がない、適切でない、そういった農地が、結局、先ほど申し上げたような一応不用地というふうに考えているわけでございます。したがいまして、もともと所有者から強制的に買収しました農地でございますから、それが不要になれば第一義的には、やはりもとの所有者に返すというのが、これは法律的にそういうふうになっておりますし、昨年の議員立法もそういうことで先生方の御賛同を得てでき上がっているわけでございます。ただ、それだけでは問題なので、公用、公共用にぜひ積極的に活用するようにこれをしなさいという趣旨になっております。この趣旨を体して、私どもは先ほど申しましたようなことで、積極的にその活用をはかるようにいたしているわけでございます。いずれにしましても都道府県等と、この点、密接に連絡をとりまして、今後の指導を十分やっていきたい、こういうふうに考えております。
  270. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最後に大臣に伺いたいのですが、国有地とか国有農地ですね、これはやはりいい場所は、しかもその地域が必ずしも払い下げしたからといって全体に影響を与えないという、しかもその地域が非常に国民福祉のためになるような場所については、私はやはり、申請があった場合には受け付けて開放することも必要じゃないかと思うのですが、そういう国有地の活用についての基本的な考え方を伺って質問を終わりたいと思います。
  271. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまの農業改革の農地解放のときに国有地になってそのままになっていることについては、これは農地局長が御答弁申し上げたようないきさつでございますが、指導は、公用、公共用、そういう方面に払い下げるというようなことが必要でございます。そうでない国有地等につきましても、利益のためとか私益のためとかというようなことは、これはぜひ押えていかなくちゃならぬと思います。  私は、大体、変な考えだけれども、土地はやはり国全体のものだ、土地の所有者や何かがかわっても、利用する者は国民ですから、そういう点から考えて、そういう頭でいますから、公共用に優先させなくちゃならぬ。しかし、いまの農地解放の、あるいは財産税の物納で来ておるものはそういういきさつがありますから、しかし、いきさついきさつとして、指導の方面はおっしゃるような方向へ指導していきたい、こう思います。
  272. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 質問を終わります。
  273. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 東中光雄君。
  274. 東中光雄

    ○東中委員 最初に機構のことでちょっと聞いておきたいのですが、今度の改正で、第三条の農林省の任務について、「農林畜水産業の改良発達と農山漁家の福祉の増進」とこれまで書いてあったわけですが、これに並んで「国民食糧の安定的供給」ということが入りましたが、農林省の本来の任務というのは、農山漁家の福祉増進というのが非常に重要であり、農林畜水産業の発展、さらに消費者立場に立っても考えるということになったのだということでありますけれども生産増の強、農山漁家の福祉向上が第一義的なものだ。そうしてその結果として食糧の安定的供給をはかる、こういう考え方に立たなければいかぬのじゃないか、こう思うのですが、食糧の安定的供給が前面に出ることによって、国内生産で間に合わないものは安易に輸入によって解決していくという方向になりはせぬかということを思うわけですが、その点どうでしょうか。
  275. 中野和仁

    ○中野政府委員 農林省といたしましては、当然いま御指摘のように、農林水産業の発達と農山漁家の福祉の向上をはかってきておるわけでございます。昔のことを申し上げるまでもなく、終戦後のことを申し上げましても、やはり農林漁業によりまして国民に食糧を供給するということを重要な任務としてやってきたわけでございます。ただ、この設置法にこういうことを明確にしておりませんでしたので、今回、農林省の機構を抜本的に改める際に、いわば明文化をしたというふうに御理解いただければと思います。  その際の食糧の安定的供給と申しますのは、第一義的には、先ほど御質問にもありましたように、国内生産が可能なものについてはできるだけ自給をするという基本的な立場農林省はとつてきております。もちろん、食生活の高度化その他で、国内でできないものについてまで無理してやるということはできないにいたしましても、国内でやり得るものはできるだけ国内でつくるという基本的な方針をとっておりまして、いま御指摘のように、「国民食糧の安定的供給」ということばを入れたから、従来の方針を変えてどんどん輸入に依存していくということではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  276. 東中光雄

    ○東中委員 それはそれとして、原則的なものとしてお聞きしておきますが、同じく三条の一項一号で、生産の増進をはかることが従来のもとの任務の一つだったわけですが、今度は改善、調整が入ったわけですが、結局、米の生産調整を法律的に強制するというか、押しつけていくというか、そういうことの根拠になっていくのではないですか。その点はどうなんです。
  277. 中野和仁

    ○中野政府委員 従来、「生産の増進」ということばだけで、実際問題といたしましては、どんどん悪いものをつくっていくということではございませんで、品質の向上ということは当然農林省としてやってまいったわけでございます。その点を明確にするために改善ということばを入れたわけであります。それから調整ということばにつきまして、御指摘がありましたように、昨年から米の生産過剰に対処いたしまして、需給バランスをとるために生産調整をやっております。この調整というのは、単に米の生産調整をやるためにこれを入れたということではございませんで、米以外の蚕糸にいたしましても、その他の畜産物にいたしましても、いろいろな調整をこの生産の面でも要する場合があり得るわけでございます。そういうことでございますので、今回この法改正の際にこれも明確にしたということでございます。
  278. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、ほかの野菜なんかの調整ということもあると思いますが、米の生産調整の押しつけといいますか、いままでは一応お願いというかっこうになっておったわけですが、強制的にやっていくということを意図しているものではない、こうお聞きしていいわけですか。
  279. 中野和仁

    ○中野政府委員 御承知のように、米の生産調整は、昨年から農林省で、生産調整の目標を、県を通じ町村、そして農家にまで示しております。これを法律でもって強制するということをいたしておりません。これは、先ほども申し上げましたように、米の需給バランスをとるために、本来ならば、農家のほうでも、農協のほうでも、そういうことを考えるべきところを、いまの段階では、農協の段階でそれを自主的に全部やれるかということになりますと、なかなかそうなりませんので、国のほうで目標を示して農家の協力を得ているということでございます。この方針は今後とも続けるつもりでございます。
  280. 東中光雄

    ○東中委員 次の第二号ですが、ここでは、いままで「流通及び消費を規制すること」ということになっておったのが、今度は「消費の増進、改善及び調整を図ること」と、「規制」をはずしたわけですが、これは結局、流通等の規制をやめてしまったという点で、食管法の事実上の改悪の方向——われわれから言えば改悪ですが、そういう方向を目ざしているのではないか。別に規制をはずしたというのはそういうことではないですか。その点どうでしょう。
  281. 中野和仁

    ○中野政府委員 実はここに「消費を規制」と書いてありますのは、この農林省設置法ができましたのは昭和二十四年でございました。当時はまだ占領下でございまして、統制経済の時代でございました。したがいまして、農林省農林省の分野としまして非常に統制をやっておったために、こういうふうに書いたわけでございます。その後、自由経済に順次統制をはずしましてやってまいりました。それの実態をあらわすためには、やはり流通、消費につきましても増進、改善あるいは調整ということばのほうがそぐうということにいたしたわけでございまして、今回消費者米価につきましての物統令をなくしたからこれを消した、こういう端的な趣旨ではございません。
  282. 東中光雄

    ○東中委員 任務のことですから、抽象的にそういうふうにお聞きしておきます。  次の具体的な問題に入っていきたいのですが、生鮮食料品については、野菜は非常に重要でありますが、同時に魚についても非常に大きな問題があります。それで農林省の食糧の長期需給の見通しをいろいろ出されておりますが、水産物の需要供給の差はだんだん開いていくということになっておりますが、これは結局、今後長期的に見ると水産物の価格を一そう押し上げていくことになる、それはまた、同時に大資本による投機の対象にもされていきかねない、そういう傾向を強めていくというふうに思うのですけれども、水産物の需給の差がやはり開いていくというふうな見通しですか。その点どうでしょう。
  283. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 私どもの手元にございます需給表では、昭和四十五年の数字があるわけでございますけれども、このときの総需要量は九百五十三万二千トン、そのうち国内供給が八百七十八万七千トンでございまして、輸入が七十四万五千トンということに相なっております。それから、昨年、海洋水産資源開発促進法という法律ができまして、国が開発の基本方針を定めることになっております。この基本方針におきましては、長期の需給見通しの上に立って立てるということになっておりましたので、一応昭和四十四年をベースといたしまして昭和五十年の需給見通しをわれわれ立てたわけでございますが、その際の総需要が千百八十二万七千トン、それに対しまして国内供給が千二十五万一千トン、差し引き百五十七万六千トンが輸入に仰がざるを得ない。そういった意味では、先生御指摘のとおり輸入がふえるという傾向になっております。しかし、この中身といたしましては、食用が約四十五万七千トン、家畜等のえさになりますミール等の非食用の需要が百一万七千トン、そのほか海藻が十万二千トン、こういうものを輸入に仰ぐという計画を立てた次第であります。
  284. 東中光雄

    ○東中委員 いずれにしましても需給の見通しはその差が広くなっていくということなんですが、そういう点では、まさに野菜についていわれておること以上に、非常に流通その他の部門で機構の変更が必要だと思うのですけれども、今回は水産庁については、そういった面で水産庁の権限移動は一つもないわけですが、それはどういうわけで手をつけられなかったのか。
  285. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 今回の食品流通局の設置の問題にからみまして、いろいろ農林省の内部でも検討いたしたわけでございますけれども、御承知のとおり、現在水産物につきましては、生産、流通、消費に関する行政は一貫して水産庁で担当しているわけでございまして、特に御指摘のとおりな機構改革は行なわなかったわけでございますけれども、やはり水産行政のうち特に流通対策というものはたいへん重要な問題でもございますし、新設の食品流通局の行政と関連するところが深いということで、今後私どもが水産行政を実施してまいります場合に、当然この食品流通局の行政と密接な連携をとりながら施策を進めてまいりたいと考えております。  御承知のとおり、内外をめぐりますところの水産業に対する状況はたいへんきびしいものがあるわけでございまして、これに適切に対処をいたしまして国民の求める行政を行なう、新しい行政需要にこたえる機構改革という問題は当然検討しなければならない問題でございますので、私どもといたしましては、現在の機構がはたしてそういうことになっておるかどうかというような点につきましては、今後も引き続き検討を加えまして、できる限りいま申し上げたような趣旨に沿った機構ということにつとめてまいりたい、かように存じております。
  286. 東中光雄

    ○東中委員 大臣にお聞きしたいのですが、いわば食品流通局の新設に際して、なぜ水産関係については手をおつけにならなかったのか。ここはずいぶん問題があると思いますので、その点をお聞きしたいのです。
  287. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ここへ持ってくるまでにいろいろ意見があっわけです。御承知のように、流通局だけじゃなくて、流通庁にしろとか流通省にしろとかというような話も幾らか出たわけであります。そういうことになれば、これは水産庁も入ってまいることになるわけでございますが、そういうことになると農林省は要らなくなってしまうわけで、そこまで一括してやるということはちょっと考えもので、水産庁は水産から流通から消費まで一貫して担当して、制度としても十分やっているものですから、そのままでいいじゃないか。それで、野菜を中心として流通方面を統一的にやっていくために流通局というものを設ける、こういうことにしたわけでございます。いろいろないきさつからそういうことになりました。そういうふうに御理解願いたいと思います。
  288. 東中光雄

    ○東中委員 実情は、水産関係については非常によくない状態が起こっておるのじゃないかと私は思うわけであります。ここに農林省統計調査部の、昭和四十七年四月十四日公表の水産関係の表が出ておりますが、産地総平均卸売り価格と六大都市生鮮冷凍品平均卸売り価格、この表を見てみますと、消費地では三倍以上に値が上がっているわけであります。産地価格がキロ当たり七十九円であるのに、六大都市の卸売り価格は三百四十七円になっています。消費者に渡る価格は、これよりさらに二、三割、小売り商の利益が入りますから高くなるので、結局四百十六円から四百五十一円ぐらいになっている。産地価格対比で言うと、五倍から六倍。これは平均であります。こういうふうにべらぼうに高くなる。この原因は一体どこにあるか。このままでもうしようがないということなのか。こんな五、六倍にもなっているのに対して、原因がどこにあって、除去できるのかどうか、そういう対策なり方策というものをどう考えていらっしゃるか、水産庁にお聞きしたいのです。
  289. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 先ほど伊藤先生の御質問にもお答えしたわけでございますけれども、私どもが、四十六年の十一月に具体的なものにつきまして追跡調査をいたしたわけでございますけれども、それによりますと、産地の卸売り価格を一といたしますと、小売り価格がマアジでは二・五四倍、二倍半でございますね。サバでは五・六倍で、先生のおっしゃったように、六倍近くになっております。それからスルメイカが一・八八倍、こういうことに相なっています。そこで、言いわけになるようでたいへん恐縮でございますが、実は産地のマアジとかスルメイカはそれほどではございませんが、サバが消費地の価格と産地価格が非常に違うではないかということが昨年来たいへん議論になったわけでございますけれども、産地の価格と申しますのは、水揚げされた全体の平均価格が出るわけでございます。そこで、御承知のとおり、先ほどもお答え申し上げたわけでございますけれども、産地の市場におきましては、これを一部のものは産地の冷蔵庫や、あるいは加工屋さんが買い取る。サバ等は、御承知のとおり、魚体の組成が非常に小さくなってまいりまして、そういったものは産地でほとんど処理をされてしまいまして、消費地に出荷されるものは、ある程度生鮮用としてわれわれの口に入るものがえり分けられて出荷されてくるわけでございまして、単純に水産物の産地価格と消費地価格の比較ということをやりますと、価格形成時におきますところの魚体組成の差というものがあるわけでございますから、一がいに比較ができないということでございます。しかし、いずれにいたしましても、基本的には、旺盛な需要に対しまして生産が追いつかないというところに問題があるわけでございますので、私どもといたしましては、先ほど申し上げた法律に基づきまして、沖合い、遠洋につきましては新漁場の開発ということに力を入れておりますし、沿岸におきましては増養殖の振興ということに積極的に取り組んでおるわけでございまして、これによりまして、まず生産の増強をはかって供給の増加をはかるということが肝要であろうかと思います。それ以外に、こういった需給ギャップに基づく価格の値上がりのほかに、ものによりましては、たとえばマグロ等が非常に高くなっておりまして、これが御指摘の産地の価格あるいは消費地の価格の値上がりの大きな要因をなしておるわけでございますけれども、資源的にも問題がある。これはすでに自由化をいたしておりまして、入るものは入るわけでございますけれども、世界的に資源の問題がありまして、供給が十分でないというような資源の問題、あるいは人件費の上昇等による生産コストの増大の問題さらに市場の施設あるいは輸送手段が未整備である。それから、先ほど申し上げましたように、小売り段階におきますところの零細性等による流通コストの増大の問題があるわけでございまして、私どもといたしましては、やはり生産対策ということに重点を置いてまいりますほか、市場施設の整備あるいは小売り段階の改善という仕事をひとつじみちに積み上げてまいりまして、価格の安定をはかってまいりたい、かように存じておるのでございます。
  290. 東中光雄

    ○東中委員 私は個々の問題についていま言っているのじゃなくて、先ほど言った統計調査部の出しておる四十六年十二月分の数字で言っているわけです。産地卸売り価格でキロ当たり七十九円のものが、消費地、六大都市で卸売り価格がキロ当たり三百四十七円になっている。イカとかイワシとかいうことじゃなくて、全体としてそうなっている。この倍率が非常にひどいじゃないか。さらに小売りになると、これは当然マージンが入りますから、五倍にも六倍にもなる。これは需給関係だというのだったら——生産価格を言っているわけですから。そうして今度は消費地の同じ卸売りでこんなに差が出てくるということについて、いま言われたような説明では全く納得いかないので、流通経路あるいは市場等に問題がある。市場がその間にあるわけなんですから、そこに問題がある。この原因は一体何なのかということを追及しなければ、消費者立場に立って農林省の任務の中へ今度つけ加えたことは、水産庁に関しては関係がないことになっちゃうのじゃないかというふうに私は思うのです。食品流通局を置くというのは、まさにそこにメスを入れるということじゃないですか。そういう点でどこに問題点があるのかということを明らかにしていただきたい。まだそれはよくわからない、最終的には需給関係とか、もっとよくとれるようにするんだという、そんなところへいく問題じゃないのじゃないですか。いかがでございましょうか。
  291. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 だから私が申し上げましたとおり、産地価格といいますのは、魚体の組成の問題を離れて、そこで水揚げされたすべての魚の価格を平均して出しておりますので、実際に消費地の卸売り価格と直に比較できないものがあるわけでございます。その典型的な例としてサバ等があるわけでございまして、産地におきましては、昨年なんかは小サバが非常にうんととれた。だから、産地価格にはそれが反映して、非常に安く出ておりますけれども、消費地に出荷されるものは魚体の大型、中型のものが出荷されておりますから、そういった意味で、消費地価格と産地価格というものを直に比較することに問題があるということを申し上げたのでございます。もちろん、私どもも、さっき申し上げましたように、段階別の調査をいたしておりまして、産地の卸売り人あるいは仲買い人、さらには消費地におきますところの卸売り人、仲買い人等の占めますシニア等も調査いたしております。これらによりますと、これか特に非常にふえたというようなことはないわけでございまして、むしろ最近の傾向といたしましては、小売り段階におけるマージンの比率がふえまして、小売りの占めるシェアが相当大きくなっておるというのが私ども調査の結果で出ておるのでございます。
  292. 東中光雄

    ○東中委員 非常に問題になるのは、生産から流通市場に至るまでに、たとえばまるは大洋だとか日水とか日魯などの漁業大資本が直営とか出資とかいう形でいろいろからんできている。それが価格をつり上げておることになっておるのじゃないか。そこへ水産庁がメスを入れようとされないというところに一番問題があるのじゃないか、こう考えておるわけであります。市場の卸売り業者について見ても、たとえば東京では大都魚類というのがありますが、これの最大出資者は、まるは大洋であります。あるいは中央魚類というのがありますが、その最大株主は日水であります。そして卸売り業者は非常に高利益をあげ高配当を行なっているということが、これは数字で出てきておると思うのですが、たとえばこういう形になっております。  大都魚類の場合を見ますと、昭和四十六年三月決算で利益率は五四%になっております。前年は四一%、その前は三五%。三五%から四一%、さらに五四%と利益率は急速に上がっております。配当は一一割五分の配当をずっとやっておる。中央魚類の場合を見ましても、これは四十六年三月期は、私、数字を持っておりませんが、四十三年三月期は五二%の利益率だった。四十四年三月になると六七%になっている。その次は四十五年三月、七七%になっています。こんなに急速に利益率が上がっておるし、その率自体が非常に高い、こういう形になっておるわけであります。私たちは、卸売り業者と資本金一億円以上の大漁業会社との関係を、どの程度出資が出ておって、どの程度支配をしていると言ったらあれですけれども、なっておるのか、この関係を知りたいのですが、これは資料はございますか。
  293. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 大手の水産会社が全体を支配しているのではないかという御意見、確かにそういう御意見があることは事実でございます。大手の水産会社が冷蔵、加工、輸送、販売等の各面で系列会社を有しているという事実がございますし、全体の大手の水産会社のシェアというものは、漁業生産の面で見ますと、資本金十億円以上の会社が七社あるわけでございますが、一六・五%でございまして、これを多いと見るか少ないと見るかの御議論はあろうかと思いますが、実態はそういうことになっておるのでございます。そういった意味で、生産物の円滑な流通、販売活動を遂行する上から、系列化が進んでおるという面もあるわけでございます。  ちなみに、いまの御指摘の大手の水産会社の取り扱い高で申し上げますと、東都水産は、全体の出荷金額の中で大手水産会社からの出荷金額が六・七%、中央魚類が一〇・四%、大都魚類が一四・五%、築地魚市場が〇・二%、第一水産が〇・七%ということで、大都魚類の場合には、確かに、大洋漁業の資本の系列にあるというようなことで、一四・五%ということになっておりますが、全体的に見ますと、平均的には八・三%というようなことで、それほど中央の卸売り業者が大手のものを取り扱っておるというようなことではないわけでございます。  それから、大手の水産会社の持ち株の状況でございますが、先ほど御指摘の大都魚類は全体で一千万株ありますが、大洋が百万株ということで一〇%。それ以外に、東都水産は、大手の会社が持っている率が二%、中央魚類が四・九%と一・六%、築地魚市場が一・八%、全体の平均で四・五%ということで、それほど大きな持ち株による支配ということはないのではないかというふうに考えております。
  294. 東中光雄

    ○東中委員 たとえば大都魚類の場合は、大洋漁業は一千万株じゃありませんか。
  295. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 全体が一千万株で、大洋がそのうちの一割の百万株というふうになっております。
  296. 東中光雄

    ○東中委員 これは東京都からもらった資料なんですが、ちょっと数字が違いますね。どうですか。——それでは、これは調べてみましょう。  そうすると、いまの大都魚類の場合、まるは大洋が配当はどれぐらい受け取っていることになるのですか。
  297. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 大洋漁業は無配でございます。
  298. 小暮光美

    ○小暮政府委員 大都魚類の配当は一五%というふうに公表されております。
  299. 東中光雄

    ○東中委員 その議論はそれじゃやめますが、それは私が先ほど申し上げたとおりですね。  そこで、この市場における卸売り会社ですけれども、本来卸売り会社というのは、受託をしてせり売りをするというのが本来の業務だと思うのですが、最近は卸売り会社の買い付けが非常にふくれ上がっております。たとえばいまの大都魚類の場合、受託が九百五十三万六千六十二に対して、買い付けが七百七十六万七千二百三十九ということになっています。ずいぶん多いわけですが、なぜ買い付けがこんなにふえるのか、そこらの点を明らかにしていただきたい。
  300. 小暮光美

    ○小暮政府委員 中央卸売り市場における取引が受託によるせりというのを中心として発展してきたことは御承知のとおりでございますが、しかし、取り扱います荷物の性質が変わってまいりまして、冷蔵することによりまして非常に長期間保存がきくという性格の物品が非常にふえております。それが水産物において特に顕著でございます。しかも、大量に一定の時期に漁獲されまして、これを冷蔵いたしまして相当の期間にわたって分けて販売するというようなことを行なわざるを得ないようなものもございます。漁獲の時期が限られておりますから、ある時期にとれましたものを、だれかがだれかのリスクでこれを買い持ちして、これを一定の期間に分けて販売するということは、そうした魚類の販売の形態としてはやむを得ないものがあるのじゃないか。したがいまして、これらの面で青果物に比較いたしますと、水産物の場合に買い付けによる集荷が多くなっている実情でございます。
  301. 東中光雄

    ○東中委員 買い付けがふえるのは冷蔵なんかでストックをする。しかしそれは別の流通という面からいえば、せり値を上げていくためにストックをする、とめちゃう、安いときには売らないということになってくる。それがこんなに現地と比べて消費地の価格差がうんと開いてくる大きな原因になっているんじゃないですか。
  302. 小暮光美

    ○小暮政府委員 私どものほうの調査では、実は水産物全体といたしまして、受託により成立いたしました価格の一定割合を手数料として受け取る部分、それから買い付けによります部分と分けますと、むしろ買い付けによります部分による売り上げ高に対する手取り率はかえって率が低くなっております。したがいまして、荷受け会社があまりにも買い付けを多くすることによって業態を悪くすることがないように通達した事例も過去においてはございます。
  303. 東中光雄

    ○東中委員 いや、私が言っているのは、買い付けをやることによってせり値を上げていくという操作をやっておることになるのじゃないか。加工するからせりに出さなくてもいいんだということで、買い付けをして冷蔵庫に入れる、あるいは若干の塩干物に近いような、塩干物の中に入るのかもしれませんけれども、そういうことで実際になま魚のせり値を上げていく。それはせり値が上がれば手数料が上がっていきますし、そういうことになるのじゃないですか。
  304. 小暮光美

    ○小暮政府委員 買い付けの場合には通常これを相対で売りさばいておるようでございます。せりの場合には、受託によりましてこれをせるという形が通例でございますが、いずれにいたしましても、卸売り市場におけるせり価格はその日の入荷量に最も大きく左右はされますけれども、単にその日の入荷量だけではございませんで、市場の内部あるいは周辺に所在いたします在庫その他代替品の需給の動向等、すべての要因が総合的に勘案されて価格が形成されることになるわけでございます。買い付けによって不当にせり値をつり上げるという実態はございません。
  305. 東中光雄

    ○東中委員 それならなぜ、先ほど言うように、現地の卸値と消費地の卸値でこんなに差が出てくるのですか。そうすると原因は何にもないということになっちゃうじゃないですか。それは水かけ論になりますからやめますが、私たちはここヘメスを入れていかなければ、大資本が流通面でも市場面でも事実上支配していくようになっていくということに非常に根本的な原因があるんだということ、水産庁がそこへ手を入れないというのは非常に遺憾な事態だというふうに私は思うわけであります。  さらに流通面では、先ほどの問題になっておりましたが、流通に必要な運賃、倉庫料の問題が非常に問題になりますが、国鉄が水産物に対して行なってきた運賃割引率を昨年末に五〇%減らした、ことしの秋には全廃の方向にいく、こういうことになるわけですが、これは魚の消費価格にどの程度の影響を及ぼすと農林省としては考えていらっしゃるのですか。
  306. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 今回、六月中旬からでございますが行なわれる予定の倉庫料の値上げというのは、荷役料についての人件費の上昇に伴いまして約一七・五%上げるということになっておるのでございます。これは食料品全体でございますが、食料品消費者価格に及ぼす影響というのは、主としてこの倉庫を利用するイワシとかアジとかイカとかマグロ、タマネギ、リンゴ、チーズ、バター、牛肉、豚肉、こういったものについて運輸省が試算をいたしたものによりますと、〇・〇四四%程度というふうに推定をされております。  それから今回の国鉄運賃改定に伴いますところの食料品消費者価格に及ぼす影響でございますが、たとえばサバでございますと、八戸から東京で見ますと〇・四一%程度、マグロ類で気仙沼から東京で見ますと〇・〇六%程度ということで、これは国鉄の試算による推定値でございますが、そういうことに相なっております。ちなみに昭和四十七年の四月の総理府小売り物価統計にこれを当てはめていまの率で値上がりしたと見ますと、サバが大体百グラム当たり十九円のものが九銭だけ値上がりする。それからマグロでは百五十八円でございますが、これが十六銭、こういうことになることになります。
  307. 東中光雄

    ○東中委員 いま冷蔵庫の、いわゆる倉庫の値上げについて一七・五%引き上げるということを言われたのですが、これは農林省賛成なんですか。
  308. 小暮光美

    ○小暮政府委員 冷蔵倉庫の荷役料金の改定につきましては、荷主でございます水産冷蔵協議会、これが業界に協議いたしまして、ネゴシエーションによってある程度値上げの率を議論するという形になっております。その話し合いがつきました段階で運輸省に申請が出されるという形でございます。農林省といたしましては、水産冷蔵協議会が検討いたします段階を事実上事務的に援助するという形でございます。本件につきましては届け出ということでございますので、申請段階までにできるだけ事実上の議論が出されるように指導いたしておるわけでございます。
  309. 東中光雄

    ○東中委員 「運輸省がまとめた四十五年度中の倉庫事業経営指標から明らかになったもので、冷蔵倉庫業一社当たりの営業収入は約一億六千万円で、八十%の会社が黒字決算を行なっており、所管容積当たりの営業収入は前年比五・八%と増加している。また、従業員一人当たりの冷蔵倉庫業営業収入は、全国平均二百八十万円と前年に比べ二十%の増加となっている一方、営業費用、人件費も前年比十八・二%、十九・八%の増加となっている」、こういうふうにいわれておるのですが、「経営状況、収益性、生産性とも上向きの傾向を示した」ということであります。こういう状態でこれがまた一七・五%アップする。これは流通過程でどんどん上がっていく、消費地の消費価格を流通面で上げないようにするという立場から言えば、こういう大幅な値上げというものに農林省が賛成しておられる。権限上許可するとかしないとかいうことを言っているのじゃない、賛成しておられる、そのままにまかしておられるということになると、一向に国民の消費面、流通過程で上がってくる食料品物価上昇を規制していくということにならぬと思うのですが、その点どうなんでしょうか。
  310. 小暮光美

    ○小暮政府委員 「冷蔵倉庫の荷役料につきましては、前回の改定の際の経過を振り返ってみますと、当初、冷蔵側が四二%の引き上げを要望いたしましたのに対し、水産冷蔵協議会との折衝過程で二一%というところまで詰めました。その後、経済企画庁のあっせんで、最終的には一八%までこれを圧縮したという経緯がございます。その結果、運輸省の報告によりますと、倉庫業の経営指標に年を追ってまた赤字の累積が出てまいったということでございます。四十六年の十一月から再び今回の改定の議論が始まりました。先ほど申しました日本水産冷蔵協議会との協議は、前後十回にわたっておるという報告を受けております。もちろん荷役の合理化等についてこれらの検討の経過を通じていろいろ検討いたしておりますが、これらの検討を含めて、一七・五%の引き上げに最終的に同意したという経緯でございます。
  311. 東中光雄

    ○東中委員 経緯はそうでしょうが、私の聞いているのはそうじゃなくて、じゃ、どんどん上がっていく、産地市場卸価格と消費地の卸価格あるいは小売り価格との問が五倍、六倍になっても、それはやむを得ぬのだということで全部ほっておられるような、結局、全部それを認めていくというかっこうにならざるを得ぬというふうに思うわけです。そういう点で、食品流通局をつくられても、実際実効が何にも出てこないようになるのじゃないか、こう思うわけです。  もう一点、野菜の問題でお聞きしておきたいのですが、大阪の野菜の価格形成にとっては一定の役割りを果たしているのですが、野市というのがあります。いわゆる地方市場でありますが、この地方市場というのは、私、大阪ですので調べてみたのですが、卸売り価格の場合でも中央市場の本場あるいは東部市場と比べても、特に郊外のいわゆる野市の消費者価格が安いのですね。農民もそこへは持っていきたくて、それがなくなったら近郊農業はやっていけなくなるというふうに言っているのですが、この地方市場を統合廃止方向農林省は持っていこうとしておられるというふうに聞いているのですが、そういう統廃合の計画があるのですか、どうですか。
  312. 小暮光美

    ○小暮政府委員 関西特に大阪には、従来から野市と呼ばれます卸売り市場が数多く存在いたしております。四十五年の調査では、大阪府に約八十あるというふうに報告されております。野市と申しますと、一見生産者はそこで直接立ち売りするように聞こえますけれども、大阪での実態は、やはり一つの卸売り機能を営んでおるものであるというふうに私どもは見ております。これまで大阪市並びに大阪府における市場施設が需要の全部をまかなうような形になっておりません。逆にこういう形の卸売り市場類似の施設が数多く存在したということでございます。  市場法の考え方といたしましては、今回大阪のような場合に、市と府が十分協議いたしまして、と申しますのは、大阪の場合は、大阪市のほかに周辺にびっしりと市が並んでおるわけであります。それらの群小の市がそれぞれ市場を持つということは効率の面で適当でございません。従来、市場行政は市がやるということから、府は直接は手を出さないという形でございましたけれども、府と市が十分協議して、大阪府内の各地域ごとに最も適切な形での中央卸売り市場をつくろうという動きに相なっておりまして、これが実現いたしますと、現在の本場並びに東部分場のほかにさらに二カ所ほどの本格的な市場ができることになると見ております。そのようになりましても、なお当然中央市場の規模に達しない市場が数多く残ると思います。これらのものにつきましては、地方市場という形で条例によってこれを指導する規模を示しまして、その方向にこれを整理してまいる考えでございます。
  313. 東中光雄

    ○東中委員 昭和四十五年のやつを見ますと、たとえば大阪府の野菜の市場別入荷量の構成比を見ますと、本場では一三・八%、東部で九・三%、市内のいわゆる野市で二七・六%、郊外府下の野市の入荷量が四九・三%、これは野市全体では約七十数%になっていますね。しかもそれが非常に安いのです。生産者もこれがいいといっているのです。中央市場まで行くのはたまらぬといっている。そうして一番高いのが本場で、一キログラム当たりの卸売り単価を見てみますと、本場は七十六・一円です。東部が七十二・二円、市内で六十七・八円、郊外の府下になると六十七・一円と下がっております。だから、生産者消費者も都合がよくて安くてというものを整理統合するというような方向でなぜ出していかれるのか、そこらがどうも解せないのですけれども、どういうことでしょうか。
  314. 小暮光美

    ○小暮政府委員 卸売り市場の整備の方針といたしましては、野菜の生産流通の実態が、次第に近郊産地が移動いたしまして、産地の大型化、専門化等による出荷の大型化ということが別途野菜の供給を確保するための措置として進行いたしております。これらの生産対策と並行いたしまして、市場につきましての一定の規模を想定いたしておるわけでございます。しかしどこまもで近在の蔬菜がございます。これについてきわめて直截な流通がございます場合、それを禁止したりあるいは阻外したりする考えは全くございません。
  315. 東中光雄

    ○東中委員 阻害したりする意図が全くないのだったら、現に機能して効果をあげておるそのものをなぜそういう統廃合するというような方向で指導されるのか、どうも了解しがたいのですが……。
  316. 小暮光美

    ○小暮政府委員 小売り業の立場から考えますと、一カ所で所要の荷物が全部入手できるということが業務上必要でございます。したがいまして、次第に大型化のものがふえるという現在の実態のもとで、一定の消費規模に対して適切な中央の卸売り市場の施設をつくりますことは流通対策としてきわめて重要であると考えております。これらの市場がつくられます場合に、その市場の機能を十全に発揮いたしますためには、その管内における流通のあり方をその市場と直結させるような形に考えることが一つの市場のあり方であると考えます。しかしながら、先ほど申しましたように、近在のきわめて軟弱な、その朝とって昼までに売ってしまうというような形の軟弱蔬菜の流通につきまして、これを機械的に大型化の市場にまで集めなければならないという指導をいたす必要はないということを申し上げたわけでございます。
  317. 東中光雄

    ○東中委員 大阪府内でできる蔬菜の市場の占有率というのは少しずつ減ってきています。二二・五%まで減っておるようですけれども、それにしましても市場占有率の非常に高いものがたくさんあるわけです。たとえばキャベツなんかは第一位ですし、青ネギが四八・二%、ナスで五七・二%、ホウレンソウで三七・四%、タマネギ三八・五%、特にフキなんかは九一・八%、ミツバは七三・三%、シロウリは六三・〇%、枝豆が四五・四%、タケノコが三六・四%、いずれも第一位になっています。こういうようにずいぶんあるわけですが、その全部がそろわなかったらいかぬ、そろうほうが八百屋のためにはいいのだ、こう言われるけれども、野市が現にあるというのは、全部そろわなくても、八百屋のほうは必要だから、そこに行って、それで間に合うから買っているわけなんだから、それを行政的に整理していくというような必要は全くないわけで、先ほども言いましたように、野市のほうが、七〇数%、約四分の三まで大阪産の野菜の扱いを現にやっているわけですから、それを行政の力で整理していくというような方向はとるべきではない。しか生産者から見ても、遠くまで持っていかなくていいとか、梱包しなくていいとかいうことがあって、そばに野市があるから野菜をつくっているのだという状態になっているわけです。これがなくなればもう野菜はつくらなくなる、こういうふうに言っている農家もたくさんいるわけであります。  私たちは、都市近郊農業というのは、直接新鮮な野菜を供給するという面と同時に、豊かな緑で公害から環境を守っていくという、そういう要素と両方持っておるのでこれを整理していくという、生産ができにくくなっていくような方向、たとえば、市場の面で、あるいは土地の面、農地の面で規制をしていくという方向には反対なんです。そういう点で、生産団地構想なり流通の近代化に力を入れる、これが必要だということは、たとえば大阪のような大消費地の場合に、四国から、あるいは中国地方から大量に持ってこられる、これは当然のことだと思うのですけれども、同時に、近郊農業をつぶしていくというような方向は非常にぐあいが悪い、こう思うのですが、大臣、その点いかがでございますか。
  318. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、都市の農業というものは、緑の土地と、それから近くで野菜が供給できるというようなこと、そういうことで家庭菜園的な農業として都市で農業が必要だったら残していったらいいじゃないか。いまの東中さんのような考え方でございます。でございますので、近郊農業もやはり緑と新鮮な野菜が供給できるという存在価値は相当あると思います。でございますので、いま問題になっておる野市につきましても、経済局長が御答弁申しましたし、これを整理しようという気持ちはないという答弁でございますので、私はそのほうがいいと思います。非常にいい考え方であり、東中さんのお考え実際に適しているのじゃないか。ですから局長もそういう線に沿うて指導していくと思います。
  319. 小暮光美

    ○小暮政府委員 大臣の申されておりますように、流通の実態に即してこれを近代化、合理化していくことが私どもの仕事でございますから、先ほど申しましたように、ある姿があって、それがうまく機能しているのに、それをつぶすなんてことを決して考えるはずはないわけで、そうでなくて、やはり過密都市における生鮮食料品の流通の実態が次第に動いておりますから、やはりきちんとした市場をつくる必要性も明らかにあるわけであります。したがいまして、そういう市場の建設の仕事を法律に基づいてやる段階で、地域の中の再編成ということは当然あり得るだろうということを申し上げておるわけでございます。ただ生産者が直売したり、先ほど申しましたように、きわめて軟弱な蔬菜を簡明直蔵に流通させるという仕組みを助長するのもあわせて当然必要であると考えているわけでございます。
  320. 東中光雄

    ○東中委員 簡明直截にやっておる、そういう軟弱蔬菜の流通を助長させるのも当然だ、こう言われたのですが、まことにありがたいことだと思うのですけれども、その野市なんかのように、そういう面で現に需要があり、生産者消費者も必要だといってやっている分についてはむしろそれは助長をする、政府として援助していくというふうな方法をとられるか。本来の中央市場をつくっていく、これは私は別にそれをやめなさいというのではないので、本来の残っている野市も援助し、助長していくという政策をとられるのか。どうも頭振っておられますけれども、やっぱりそう言いながら統合整理していく。どうも局長態度でそういうように示しておられるようですが、その点どうなんですか。
  321. 小暮光美

    ○小暮政府委員 中央卸売り市場は国が直接助成して地方自治体にこれを開設させるのは従来どおりでございますが、今度の法改正で、特に地方卸売り市場という考えを設けまして、これについて都道府県知事が法律に基づいて条例をつくって指導する。この地方卸売市場に対する助成というものが今回確立いたしたわけでございます。これらの助成の中で御指摘のような点も十分生かされると思います。
  322. 東中光雄

    ○東中委員 もう一点ですが、大阪の場合の畑地の面積を見てみますと、たとえば昭和四十二年から四十三年の間に百八十ヘクタール普通畑地が減っています。次の年には二百五十ヘクタール減っています。その次の年四十四年から四十五年の間にやはり二百五十ヘクタール減っています。これは結局、畑地がつぶされて宅地、工場用地になっているわけですが、例のいわゆる宅地並みの課税の問題があり、市街化区域に非常に広範な部分が入れられておる。大阪府下の農地の半分以上、四十四年統計で一万三千三百八十一・三ヘクタール、農耕地の五一・二%が市街化区域に入れられておるわけであります。こういう調子で近郊の畑地がどんどんつぶされていっておるわけであります。野市の問題もありますけれども、これでは、先ほど言いました緑の問題からいっても、新鮮な野菜を供給するというふうな点からいっても、これはつぶされていく方向に大勢として動いてしまっているわけです。農林省としては、この宅地並み課税をやめさせるように、そういう農業を守っていくという点からいえば当然強く働きかけられるべき性質のものだと思うのですが、ことしはああいう結果になりましたけれども、来年からまた課税の問題が出てくると思いますので、大臣、その点いかがでございましょうか。農林省として見れば、近郊農業、特に野菜の供給というふうな面から見て、この宅地並み課税というものについてどうお考えになるか、いかがでございましょう。
  323. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは土地政策全般からああいうことを考えたんだろうと思うのです、土地造成とか宅地造成という意味で。しかし、農林省サイドから見れば、やはり残っていけるんならば、先ほど申し上げましたような、そういう畑地なら畑地で、戦争中の家庭菜園的な、家庭でそこを使う、あるいはまた野菜を供給できるようなところとして残っていったほうが好ましいわけです、農林省サイドとしては。ですから、宅地並み課税にするというのは、実際に宅地になっているんならいいですけれども、また宅地にするというならいいですけれども、農地として存在していればやはり宅地並み課税は避けたほうがいい、こういう考え方でございます。
  324. 東中光雄

    ○東中委員 それから最後に一つお聞きしたいのは、野菜の値上がりの原因として、行管庁で、農家の生産意欲の減退を第一の原因にあげているわけですが、結局は生産意欲の減退の一番大きなものというのは、暴落時における価格補てん制度が全く不十分だというところにあると思うのです。実際、野菜価格が異常に高かった去年、農林省も各地の生産地の指導を強めて増産対策に力を入れられましたが、一定の効果をあげた。ところが、今度はでき過ぎて、昨年の秋から大根、ネギ、キャベツ、白菜、小松菜等々の野菜が大暴落しております。産地で捨てたり無料配布などがやられているという状態ですけれども、こういうのに対して、農林省として有効な手、施策というのは打てないのかどうか、どうされているんだろうか、ひとつお聞きしたいのです。
  325. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘のように、一昨年は非常に野菜の値段が高かったわけでありますが、昨年来、野菜の生産のほうが多少潤沢になりまして、その結果、野菜の価格がむしろ安定的に安く出荷されていることは事実であります。したがって、われわれといたしまして、国民消費者のために野菜の生産を呼びかける以上は、農家に対して不安感を何らかの形で緩和しなければならないということで、この四十七年度予算におきまして、特に毎年非常に問題になります秋、冬季の重要野菜、すなわち大根、白菜、キャベツあるいはそのほかにタマネギ等につきましては、従来農林省のとってまいりました野菜価格の安定対策について特段の強化をしている次第でございます。これについては、まずそういった大根、白菜、キャベツにつきましては、夏場の間に出荷の予約を農家との間に結んで、一定の量を消費地に必ず出してもらうことといたしまして、大体、標準価格の約三〇%ほどの概算金を仮払いする。それに伴う金利並びに事務費は出す。それから出荷奨励金といたしまして、大体水準価格の五%相当分を奨励金として別途出す。さらに価格の補てん金といたしましては、従来の補償基準価格が趨勢値の大体七五%でありましたものを九〇%まで引き上げる。補てん率も従来八割であったのを十割、一〇〇%補てんいたします。それから国庫負担割合も、従来は二分の一でありましたが、今回は国庫は四分の三ということで、さらに月別計算を毎月いたしまして、従来は期間計算で、冬野菜は十月以降三月まで暴騰、暴落の総平均で見ておりましたが、今回は月別に暴落のときは支払うということで、農家に対して一定の価格水準を相当大幅に補償するということで特に重点的に行なったわけであります。さらに、この秋冬季野菜以外の一般の夏野菜につきましても、往々にして今後暴落のおそれがありますので、これにつきましても、従来、平均値の七五%が補償基準額でありましたが、これを八〇に引き上げ、特にタマネギ等については補てん率も一〇〇%に引き上げるというようなこと、月別計算は従来どおり行なう、国庫負担割合も十分の六にするということで、相当この野菜の価格安定の補てん事業といたしましては強化して、農家の不安感を極力排除するという方向で努力している次第でございます。
  326. 東中光雄

    ○東中委員 いわゆる京都方式というのがあります。農家の希望と過去の粗収益変動をもとにして、地域別、作目別に反当補償基準額を定めておる。そして粗収益がこの基準額を割って下落した場合には、その下落部分の九〇%を補償するという方式をとっていますけれども、特別の条件をつけてじゃなくて、こういう体制をとられる意図はありませんか。
  327. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たちのほうで、昨年の夏ごろから京都府におきまして、ただいま御指摘にありましたいわゆる京都方式ということで、野菜の価格補償制度の一つの形といたしまして反当補償制度をとって、それも粗収益で反当の補償をするという考え方のようであります。われわれの農林省で現に採用しておる一つ価格水準で補償するんじゃなくて、反当粗収入補償という形でありまして、これについてはいろいろな連絡もありましたし、私たちのほうでも相当関心を持ちまして調べ、かつ連絡しておるわけでございますが、そういう構想の段階でございまして、どういう形でどうするかということにつきましては、現在の時点において、京都府においてもまだ実施されておられないようでありまして、今後われわれも京都方式についてはさらに調査をしてまいりたい、こういうふうに考える次第でございます。
  328. 東中光雄

    ○東中委員 質問を終わりますが、結局、野菜の問題としては、生産価格の保証が一番とらるべきどうしてもきめ手になると思います。それから水産関係についても、特に産地市場と消費地市場との差があまりにもひどい、一そうひどくなっていくという関係にありますので、こういった問題について先ほど来私申し上げてまいりましたが、生産から流通から市場まで相当支配しているというか、大きか力を持っている大企業ですね、大企業会社の利潤の独占的な獲得といいますか、収益をあげていく結局はもとになっているように思います。そこへメスを入れる、そういう点での体制をひとつぜひ考えていただきたいと思うのですが、大臣の御所見をお願いして質問を終わりたいと思います。
  329. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いろいろ御意見を承りました。そういう点もあるいはあろうかとも思います。そういう面を詳細に検討いたしまして対策を講ずるべきものは講ずる、こういうふうに考えております。
  330. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。
  331. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 次回は、明十九日金曜日、午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時一分散会